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1990-11-06 第119回国会 衆議院 国際連合平和協力に関する特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年十一月六日(火曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 加藤 紘一君    理事 高村 正彦君 理事 西田  司君    理事 浜田卓二郎君 理事 宮下 創平君    理事 山崎  拓君 理事 池端 清一君    理事 上原 康助君 理事 高沢 寅男君    理事 日笠 勝之君       愛知 和男君    赤城 徳彦君       井出 正一君    石井  一君       植竹 繁雄君    奥田 幹生君       古賀  誠君    自見庄三郎君       杉浦 正健君    鈴木 宗男君       園田 博之君    近岡理一郎君       中川 昭一君    中谷  元君       中村正三郎君    中山 正暉君       野中 広務君    鳩山 邦夫君       浜田 幸一君    林  大幹君       町村 信孝君    三原 朝彦君       渡辺 省一君    石橋 大吉君      宇都宮真由美君    上田 利正君       小澤 克介君    大木 正吾君       岡田 利春君    川崎 寛治君       左近 正男君    水田  稔君       和田 静夫君    井上 義久君       遠藤 乙彦君    冬柴 鐵三君       山口那津男君    渡部 一郎君       児玉 健次君    辻  第一君       東中 光雄君    吉井 英勝君       川端 達夫君    和田 一仁君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣  海部 俊樹君         外 務 大 臣 中山 太郎君         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君         文 部 大 臣 保利 耕輔君         厚 生 大 臣 津島 雄二君         通商産業大臣  武藤 嘉文君         運 輸 大 臣 大野  明君         自 治 大 臣 奥田 敬和君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 石川 要三君  出席政府委員         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         内閣法制局第一         部長      大森 政輔君         内閣法制局第三         部長      津野  修君         警察庁長官官房         長       浅野信二郎君         警察庁警務局長 仁平 圀雄君         防衛庁参事官  内田 勝久君         防衛庁参事官  玉木  武君         防衛庁長官官房         長       日吉  章君         防衛庁教育訓練         局長      坪井 龍文君         防衛庁人事局長 村田 直昭君         防衛庁装備局長 関   收君         防衛施設庁総務         部長      箭内慶次郎君         防衛施設庁施設         部長      大原 重信君         防衛施設庁建設         部長      黒目 元雄君         外務大臣官房領         事移住部長   久米 邦貞君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省北米局長 松浦晃一郎君         外務省中近東ア         フリカ局長   渡辺  允君         外務省経済協力         局長      木幡 昭七君         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合         局長      赤尾 信敏君         大蔵省主計局次         長       小村  武君         文部省初等中等         教育局長    菱村 幸彦君         通商産業省通商         政策局長    畠山  襄君         通商産業省貿易         局長      堤  富男君         通商産業省機械         情報産業局長  山本 幸助君         資源エネルギー         庁石油部長   黒田 直樹君         運輸省国際運         輸・観光局長  寺嶋  潔君         海上保安庁長官 丹羽  晟君         海上保安庁警備         救難監     赤澤 壽男君         自治省行政局公         務員部長    滝   実君         消防庁長官   木村  仁君         消防庁次長   島崎  実君  委員外出席者         国際連合平和協         力に関する特別         委員会調査室長 石田 俊昭君     ───────────── 委員の異動 十一月六日  辞任         補欠選任   井出 正一君     赤城 徳彦君   牧野 隆守君     中谷  元君   井上 義久君     渡部 一郎君   菅野 悦子君     辻  第一君   和田 一仁君     川端 達夫君 同日  辞任         補欠選任   赤城 徳彦君     井出 正一君   中谷  元君     牧野 隆守君   渡部 一郎君     井上 義久君   辻  第一君     吉井 英勝君   川端 達夫君     和田 一仁君 同日  辞任         補欠選任   吉井 英勝君     東中 光雄君     ───────────── 本日の会議に付した案件  国際連合平和協力法案内閣提出第一号)      ────◇─────
  2. 加藤紘一

    加藤委員長 これより会議を開きます。  内閣提出国際連合平和協力法案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中谷元君。
  3. 中谷元

    中谷委員 自由民主党の中谷元でございます。  イラク紛争から三カ月近くが経過しておりますけれども、この委員会も十月の十八日から開催されまして、連日積極的に御審議が続いているわけであります。今回の議論を通じまして私が感じておりますのは、国際責任といわゆる日本平和主義のバランスの中で与野党間からいろいろな意見が出されまして、その相違点も明らかになり、それによって国民感情も今大きく揺れている時期に差しかかっているんじゃないかと考えております。  しかし、私が今考えておりますのは、今やらなければならないのは、ポスト冷戦後の激動を続ける国際社会の中で、日本の平和と繁栄を維持していくためには一体何ができるのかという前向きな献身的な姿勢でありまして、これまでのように金だけで済まされるという小切手外交や、それはできない、だめなものはだめだ、これは日本で許されないといった後ろ向きの日本だけの理論では、これからの国際社会では通用されないのじゃないかということを心配をいたしております。いわゆる「井の中の蛙大海を知らず」という言葉がありますけれども、最近の中東イラク情勢における外務大臣の御認識を御説明いただきたいというふうに考えております。
  4. 中山正暉

    中山国務大臣 中東における今回の問題は、すべてイラク武力によるクウェートへの侵攻、また併呑という国際法上も認められない平和の破壊であるという認識を持っておりますが、今回の事態につきまして国連安保理決議が行われましたが、それを受けてこの実効性を確保するために多国籍軍展開をしている、そしてイラクが一層南下することに対する大きな抑止力効果を上げているという認識をいたしております。
  5. 中谷元

    中谷委員 どうもありがとうございました。  それでは、それに対します各国の取り組み方でございますけれども、いろいろな支援の仕方があると思われます。日本国以外の国々では果たしてどこがどのようにどれだけの支援活動を行っているのか、御説明をお願いいたしたいと思います。
  6. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 我が国以外の国の貢献でございますが、従来から申し上げておりますとおり、湾岸展開をしておりますいわゆる多国籍軍には全体で二十カ国以上の国、これも地域的に申し上げて世界の、ヨーロッパ、アラブあるいはアジア、南米、アフリカにまで及んでおりますが、それらの国からの参加がございます。それからまた、比較的日本と状況の似ておりますドイツ貢献でございますが、ドイツの場合には、まずNATOの合意に基づきまして地中海に掃海艇等派遣しておりますほかに、いわゆる多国籍軍に対し約十億ドルの援助を行い、また、周辺国に対する経済支援といたしまして約十一億ドルの援助を行っております。
  7. 中谷元

    中谷委員 先ほどドイツお話をしていただきましたけれどもドイツ日本と同じように終戦後占領下に置かれておりましたが、新聞報道等によりますと、ドイツ憲法によってNATO圏域以外は派兵ができないというふうになっております。この件について今後見直しを検討するという報道もありますし、また、現在永世中立を宣言しておりますスイスとかオーストリア、こういった国々対応日本にとって非常に関心のあるものであると思いますが、そういった国々対応についてお聞かせをいただきたいと思います。
  8. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 先生御指摘のとおり、現在ドイツ政府の中で、今回の事態を契機といたしましてドイツ基本法改正の是非について議論が行われているというふうに承知をいたしております。例えばコール首相が十月三日に、ドイツは将来、平和の維持及び回復のための国連の措置に、戦力の投入によっても参加する用意があるので、このための憲法上の条件を満たすことについて検討するという趣旨のことを言っております。  それから中立国でございますが、スイス、これは国連加盟国でございませんけれども、現在の経済制裁参加をいたしておりますし、オーストリアは当然国連加盟国としてそうでございます。また、国際機関等に対する難民支援その他、スイスにつきまして約七百八十万ドル、オーストリアにつきましても百万ドル以上の貢献をしておるわけでございます。
  9. 中谷元

    中谷委員 そういった永世中立を宣言した国とかドイツでも非常に前向きな考え方を持ちまして努力をしているわけでありまして、本当に実に多くの国々イラク秩序破壊行為制裁を実行しているわけであります。  そこで私は、この委員会の論戦を通じまして、何かこういったイラク地域の多国籍軍日本支援協力をすることがあたかも悪いことをするかのように言われる方、考えておられる方もおるように感じるわけでありますけれども、もしイラク侵攻直後にサウジアラビアがアメリカの支援を得ていなかったと仮定した場合、一体日本はどうなっていたかと私は想像をいたします。日本石油の九九%を輸入いたしておりまして、特にその七〇%を湾岸諸国から買っているわけであります。石油価格は今一応落ちつきをしておる状態でありますけれども、これも世界各国協力、協調をいたしまして石油価格の安定に努力している成果であります。そういった現状を踏まえて、この多国籍軍日本支援をする、また協力をするというふうなことにつきまして、政府のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  10. 中山正暉

    中山国務大臣 今回のイラククウェート侵攻に関する国連安保理決議を受けまして各国展開しております多国籍軍への協力という問題は、今も委員からお話がございましたように、単に我が国経済に大きな影響があるというだけではなしに、世界的な問題、世界的な経済に極めて大きな影響を与えるものでございまして、そのような観点から、ここに展開しておる多国籍軍武力行使あるいは武力の威嚇に当たらないような我が国憲法の枠内で協力することは極めて必要なことである、このように理解をいたしております。
  11. 中谷元

    中谷委員 いわゆる武力行使を伴わない範囲憲法範囲協力するというふうな姿勢でありまして、私も大いにその範囲内で協力をしなければならないと考えております。  そこで、果たして日本がどういう形で協力支援ができるかということを考えていきたいわけでありますけれども、これまで政府民間民間人に対して協力支援要請を行われたわけでありますけれども、その成果と、そしてその現況がいかなるものであったかということにつきまして御説明をいただきたいと思います。
  12. 中山正暉

    中山国務大臣 今回、八月二日のイラククウェート侵攻によりまして、我が国はいち早く国連安保理決議がその効果を発揮するように協力する態度を固めたわけでございますが、資金的な協力あるいは物的協力あるいは輸送協力医療協力といった中東貢献策がございますけれども、それにあわせて、このような貢献がその実効性を確保するためには、やはりそれぞれの民間に対する御協力をお願いするということになったわけでありますが、そのいわゆる経過を見ましても、所期の期待どおりの結果が出たかというとさようなことはございませんで、私どもとしては実はこの目的に大きく誤差が生じた。そういう観点から、私どもといたしましては、ぜひとも今回お願いをいたしておりますような国連平和協力法案なるものが成立をし、そしてこのような協力が一層効果が上がるようにぜひ御審議をお願いしたいということで、今現在審議をお願いしているようなことでございます。
  13. 中谷元

    中谷委員 当初は民間協力を求めたところ、なかなか成果が上がらなかったというふうな御答弁でありましたけれども、そのようなことを背景に、なぜ自衛隊国連平和協力隊への参加が必要なのであるかということが大きなテーマでありますが、ある政党では自衛官以外のメンバーで協力隊を構成して派遣すべきだというふうに考えておられますが、自衛官であるからだめで、それ以外の人なら安心して出てもいいという、こういう発想は私はどうかと思います。自衛官市民であり、また平和と安定を祈っておる一人の国民であるわけでありまして、昼夜連日、雨風に打たれ、大変厳しい条件にかかわりませず一生懸命に黙々と訓練を続けているわけであります。日ごろからの災害派遣とか民生協力支援などでも見られるように、どんな厳しい条件のもとでもチームワークや使命感を持って自分の身をも守りながら果たすべき役割を遂行できる能力が、少なくとも一般の人よりは訓練した分だけ高いのではないかと思いますが、今回のように国連決議した平和協力参加することが何か悪いことでもしに行くかのごとく、また国としても戦争につながるから不幸になるというふうな考え方で論ぜられることは大いに疑問に思うことであります。そういった自衛官市民であるというふうな見地から、国連平和協力業務に積極的に参加する方がより効果的で、海外からも正当な評価を受けるわけであります。  そこで、防衛庁の方にお聞きをしたいわけですが、現職の自衛官一般の人とのそういった意識とか感覚の差、こういう差はどれくらいの開きがあるかということについてお伺いをしたいと思います。
  14. 石川要三

    石川国務大臣 中谷先生は数少ない自衛隊体験者でございまして、特に幹部自衛官としての過去の経験を持っているまことに数少ない議員さんであるわけであります。そういう立場から今御質問ございました。自衛隊隊員というものと一般国民というものとのいわゆる平和というものあるいはこういう国際的な協力というものについての意識の差、こういうことを問われたわけでございます。  精密にどのような一般国民との差異があるか、そういうあえて調査分析をしたわけではございませんから私の感覚的な答えになろうかと思いますが、私は大臣に就任いたしましてから約十カ月近くなるわけでありまして、その間にできるだけ各部隊を視察してまいりました。北海道から九州までできるだけの部隊を歩いてみたわけでありますが、その部隊視察の際に、これまたできるだけ若い隊員、また時には幹部隊員、そういうような方々と昼食をとりながら、あるいはまた特別に時間を割いて意見交換をしてまいりました。  その中で私が感じましたことは、一般の私どもが日常接している若い世代の青年たち、そういう方々から見ると、私があえて防衛庁長官であるから身びいきをするわけではありませんけれども、やはり国家的な意識といいますか、その中での自分の与えられた使命感というものは非常にしっかりした考えをお持ちであるということを私は肌身に感じております。しかし中には、特に若いヤングの方、そういう方々は私どもの年代から見ると、ああこういう考えもあるのかな、また今の時代で、私は少なくとも防衛庁長官という立場で一緒に会食をしながら話し合う中で、こういうふうに率直に自分感情を赤裸々に表現できるものかな、もし昔だったら、とてもじゃないけれども将校さんの前に行って兵隊さんが自分意見を吐くなんということは恐らく不可能であった、そういうようなことから見ると非常に時代差異といいますか、そういうものを痛切に感じてまいったわけであります。  いずれにしましても、私は総括的に言えることは、そういう自衛隊任務についている方々こそかえって平和というものに対するしっかりした考え方というものは非常に持っているということを私はつくづく肌身に感じたわけでございまして、大勢の方ですから恐らくいろいろな意見があるかと思いますが、総体的には私は、こういう法律の中で与えられた任務によって、世界的な平和の回復のためには整々としてその任につくであろうという確信は持っているわけでございます。
  15. 中谷元

    中谷委員 そういう御判断で今回の法案自衛隊参加するという趣旨でありましたら、海外的に見ましても非常にお役に立てるような態勢にあると思いますので、積極的に前向きに検討していただきたいというふうに考えております。  また、ある政党では、自衛隊参加の様態につきまして、併任参加の形はだめであるけれども休職出向ならば検討の余地があるというふうなところもございますが、この休職出向の取り扱いというのはどういうものなのか、そしてそれではどういうふうな事態が発生するのか、これにつきまして防衛庁から御説明をいただきたいと思います。
  16. 石川要三

    石川国務大臣 休職とか等の扱いの内容については人事局長の方から答弁させたいと思いますが、その前に、今の自衛隊参加する参加の仕方、身分をそういう凍結的なことにした方がいいとか悪いとか、いろいろと意見があるわけでありますが、私はいろいろと部隊視察の中で肌に感じたことから私の主観的に申し上げますならば、そういう余り無理に身分を凍結して休職にするというような形が果たしていいか悪いかということには私は大変疑問を持つわけでございます。むしろ自衛隊にはやはり自衛隊員としての誇りもあるし使命感もあるわけでありますので、もしそういう立場世界の国際的な平和の寄与のために働くことができるということであるならば、やはりそういう使命感誇りというものをできるだけ尊重して、私は任務についていただく方がよろしいんではなかろうかな、こういう感じがするわけでございますので、一言主観的なことでございますが申し添えて、答弁は詳細に人事局長の方からお答えさしていただきたいと思います。
  17. 村田直昭

    村田政府委員 お答えいたします。  まず第一点でございますが、どうして身分をあわせ有するように考えておるのか、こういうことでございますが、この件につきましては再々御答弁しているわけでございますけれども一つは、長年にわたって蓄積してきました技能とか経験とか組織的な機能を最大限に発揮して平和協力業務効果的に実施するためには、自衛隊として参加することが最も適切であるという判断がなされたわけでございます。それで、その結果、当然自衛隊として参加するということであれば自衛隊員としての身分が必須ということになったわけでございます。他方、国連平和協力法によってつくられる枠組みの中で本部長の指揮のもとに活動することが必要であるということになりまして、このため平和協力隊員身分もあわせ有することが必要となる、こういう経緯でございます。  なお、お尋ねの休職でございますが、自衛隊員休職にすることにつきましては、自衛隊法第四十三条及び同法施行令の五十六条の規定に基づきまして、休職規定は次のようになっております。心身の故障のため長期の休養を要する場合、あるいは刑事事件に関し起訴された場合、学校、研究所その他これらに準ずる施設において、隊員職務に関係があると認められる調査、研究、指導、技能修得等に従事する場合、外国政府の招きによってその機関業務に従事する場合、水難、火災その他自衛隊法第六章に規定する行動に際し所在不明となった場合などにおいて、自衛隊員としての身分を保有するが、その職務には従事しないということで休職になるとされています。  しかし、休職という制度はそもそも個人的な事情に着目した制度であると考えられまして、部隊単位休職にするといったことは予想されていないと考えられております。また、出向につきましては、出向することによって自衛隊員身分が、何といいますか切れるということになって、出向した先の身分制度が適用になるということから、そういう場合には当然本人の同意を要するということが問題になってまいりまして、同意を要して相当人数の者を部隊単位で出すというようなことは極めて、極めてというか、できないということから、出向というような制度はとらなかったわけでございます。
  18. 中谷元

    中谷委員 自衛官一つの非常に重要な仕事でありますから、誇りもあれば家庭もある、生活もあるということで、きちっとした身分で堂々と、社会的にも認められる形で世界貢献できるように、そういった体制づくりをしていただきたいと思っております。  ところで、防衛庁の組織の中には予備自衛官制度というものがあるというふうに承知しておりますけれども、この制度について御説明いただきたいと思います。
  19. 村田直昭

    村田政府委員 お答えいたします。  予備自衛官制度でございますが、予備自衛官と申しますのは非常勤の自衛隊員でございまして、自衛官であった者のうちから一定年齢範囲の者を、その志願に基づきまして三年の任用期間として採用している制度でございます。  予備自衛官任務でございますが、有事の際、防衛庁長官防衛招集命令により招集された場合に自衛官として勤務するということが一つ、それから平時におきましては、防衛庁長官訓練招集命令に応じまして訓練に従事するということが平時任務として規定されております。  処遇でございますが、予備自衛官手当として月額四千円、訓練招集時には訓練招集手当として日額五千六百円が支給されております。  現在、定員は四万七千九百人、現員は平成二年九月三十日現在で四万七千二百二十四人でございます。
  20. 中谷元

    中谷委員 そのような予備自衛官制度が設けられているということでありますけれども身分の問題でありますけれども、そういった予備自衛官平和協力隊参加した場合には自衛官として認められるのか、そしてまた対外的に軍人もしくは戦闘員として扱われるかどうかについてお聞かせいただきたいと思います。
  21. 村田直昭

    村田政府委員 ただいまお答えしましたように、予備自衛官任務防衛招集命令により招集され自衛官として勤務するということと、訓練招集命令により招集され訓練に従事するという任務でございまして、それ以外の場合には一般企業等において働いておられるわけでございます。したがいまして、この国連平和協力法に基づきまして防衛庁長官国連平和協力隊派遣をするということはできません。したがって、もし国連平和協力隊参加する場合には、十九条のいわゆる志願をして一定の任期を限って平和協力隊参加するということがあろうかと思いますが、その場合には当然一般職国家公務員として扱われるものと承知しております。
  22. 中谷元

    中谷委員 もう一つお伺いしておりますが、協力隊の一員として参加するわけでありますが、対外的に見てそういった予備役の自衛官戦闘員、軍人扱いになるのかどうかについてお聞かせいただきたいと思います。
  23. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 お答え申し上げます。  この法案のもとで一般の募集に応じまして自衛官身分をあわせ持たない形で平和協力隊員の一員になるという場合におきましては、これは自衛官身分を持たないわけでございますので、国際法上軍隊の構成員という取り扱いは受けないわけでございます。したがいまして、平和協力隊の一員ということで国際的に扱われるということでございます。
  24. 中谷元

    中谷委員 我が国には予備自衛官制度という、そういった組織も大いにあるわけでありまして、こういった人々は民間の中に入って国を守るという士気のもと、訓練も続けているわけでありますので、こういった組織も検討してはどうかと、私も私なりに考えておる次第でございます。  次に、処遇面でお伺いをしたいわけでありますけれども協力隊一般職と特別職の公務員が混合する組織でありますけれども、そういった組織で事故や災害が発生した場合に補償はどうなるのかということについて、まず、一般的に公務員が災害で死亡したとき、どのような補償がとられるのか、お伺いしたいと思います。
  25. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 一般職国家公務員が災害に遭いました場合には、国家公務員災害補償法に基づきましていろいろな補償のあり方が規定されてございます。
  26. 中谷元

    中谷委員 そのいろいろな補償がされているという内容を御説明いただきたいと思います。
  27. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 私が今申しました補償といいますのは、特に職務遂行中に殉職した場合の補償でございますが、これは国家公務員災害補償法によりまして遺族補償の対象となるということでございます。  具体的にどういうものかということでございますが、これは遺族の状況に応じて遺族補償年金または遺族補償一時金が支給されるということになっております。遺族補償年金と一時金の支給につきましては、まず年金につきましては、遺族の数、一人、二人、三人、五人以上というような数によって規定がなされておりますし、遺族補償一時金につきましても、その配偶者であるとか子であるとか父母であるとか三親等以内の者である等、そういう関係に応じて支給されるように規定がなされております。
  28. 中谷元

    中谷委員 一般職の場合は理解させていただきましたが、自衛官のような特別職公務員の場合はどうなっているわけでございますか。
  29. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 自衛官のような特別職の方につきましては、別途防衛庁職員給与法に規定がございますが、その法律のもとでは、国家公務員災害補償法等が準用されるというふうになってございます。
  30. 中谷元

    中谷委員 将来協力隊が出た場合、こういった不慮の事故による死亡というのが大いに考えられるわけでありまして、もし自衛隊員参加した場合、この事態についでどういうふうな問題点が発生するかという一例として、過去の自衛官の殉職事故について事例を挙げてお話しさせていただきます。  これは本年の二月十七日未明のことでありますけれども、宮古島で起きた交通事故被害者を沖縄本島へ搬送するために出動した一〇一飛行隊の連絡機LR1が宮古島近くで行方不明になり、搭乗していた三人の自衛官のクルーが殉職をしました。自衛隊の三人は公務中の殉職であると認定されて一階級特進し、公務災害の補償として国が定めた賞じゅつ金が支払われることになりましたわけでありますが、賞じゅつ金は防衛庁の訓令によりまして、特に著しい功績があると認められるものは九百万円、特に抜群の功績があり一般の模範となると認められるものが千七百万円と決められているそうでございます。そして特別昇任、これは一階級、二階級上がるわけでありますけれども、その特別昇任と賞じゅつ金の額は連動しておりまして、二階級特進だと千七百万円、一階級だと九百万円というふうになっているわけであります。  これまで自衛官が二階級特進した例といたしましては二つしかないと報道されておりますけれども一つは、少年工科学校で生徒ら十三人が訓練中に池で溺死したやすらぎ池の事件の犠牲者の皆様と、それから四十六年、朝霞駐屯地で過激派に刺殺された陸士長、この二例が二階級特進の例でありまして、今回の沖縄の事故の場合は、人命救助に従事していたときに殉職した場合と考えられるわけでありますけれども、一階級特進しかしなくて九百万円しか国からいただかなかったということがあります。  そこで、この一般職と特別職の公務員の補償についてお伺いをいたしたいわけですけれども自衛官とよく似た職業に警察官とか消防隊員がございますが、この消防隊におきます国家の補償また組織の補償というのはどういった補償がいただけるのでしょうか。
  31. 木村仁

    ○木村政府委員 消防職員の殉職に際しましては、国といたしましては三百三十万円から二千万円まで、功績の大きさによってランクがありまして、賞じゅつ金が出されることになっております。
  32. 仁平圀雄

    ○仁平政府委員 警察官が殉職した場合におきまして、いわゆる公務災害補償以外にどのような補償がなされているかということでございますが、一つは、内閣総理大臣特別ほう賞金の制度というのがございます。根拠は、昭和三十六年の閣議決定でございまして、「警察官等に対する特別ほう賞実施要領」というものでございまして、どういう場合に支給されるかという要件でございますが、「暴力犯罪を鎮圧するため、危害を加えられることをかえりみることなく犯人の逮捕または犯罪の制止を行なうに当たり、」死亡したような場合、功労の程度によりまして一千万円以下の支給がございます。この対象は、警察官、海上保安官、麻薬取締官、その他法令により司法警察職員として職務を行うべき者等でございまして、武器の携帯を認められているものということになっております。これが一つでございます。  それから二つ目には、警察庁長官賞じゅつ金の制度というものがございます。この根拠は、国家公安委員会規則であります警察表彰規則によっているわけでございまして、警察職員が職務を執行したことに基づいて死亡し、賞詞以上の表彰を受けた場合に支給されることになっております。金額は、特別の場合、正確に申し上げますと、「上官の命を受けて特に生命の危険が予想される地域に出動し、危害を加えられることが予断できるにかかわらず、生命の危険を顧みることなくその職務を遂行したことに基づいて危害を受け」死亡したような場合でございますが、そういった場合には二千万円でございますが、通常の場合は一千七百万円以下、功労の程度によって支給されることになっております。  それから三つ目には、都道府県の救慰金、これは名称はいろいろでございますが、救慰金等の制度がございます。その根拠は、府県によりまして異なりますが、条例等で定められているのが通常でございまして、また支給される金額につきましても各府県によりまして一様でございませんが、最高は四千万円、最低は二千万円となっております。  ちなみに東京都の場合で申し上げますと、その根拠といたしましては救慰金の授与に関する規程というのがございます。「支給の要件」でございますが、「職員が生命、身体の危険を省みることなく職務を執行したことにより殉職した場合において、特に功労があると認められるとき」におきまして三千万円以内で支給されることになっております。  以上でございます。
  33. 中谷元

    中谷委員 ただいま御説明いただきましたとおり、消防庁の場合は三百三十万から二千万の範囲、それから警察庁の場合は三段階にわたってそれぞれの段階で補償があるというふうに御説明がありました。自衛官の場合は、先ほど沖縄の事例で御説明しましたが九百万円だったというふうなことでありますが、防衛庁の見解をいただきたいのですが、自衛官の場合はどうなんでしょうか。
  34. 村田直昭

    村田政府委員 お答え申し上げます。  まず、今先生御指摘のように、沖縄の事故につきましては賞じゅつ金を先般お出ししたわけでございますけれども、その御指摘とは違いまして、最高級の千七百万円を支給しておりますので、御理解をお願いしたいと思います。  その点は御理解いただきたいと思いますが、それから先ほどから階級の問題が出ておりまして、防衛庁自衛隊法施行規則第三十条に基づきまして一階級または二階級上位の階級に昇進できるわけでございますが、今まで二階級特進の例は先生御指摘のとおりでございますけれども、二階級特進もできる制度になっておるわけでございます。前回のLRの事故の場合には一階級特進でございました。  それから、賞じゅつ金の制度につきましては、きのうもお答えを申し上げたわけでございますけれども防衛庁の場合には最高千七百万円、御指摘のとおりでございまして、ただ、任務の程度を見まして、困難の程度を見まして、大臣の裁量行為として若干の増減ができるようになっております。  それで、随分差があるじゃないかというような御指摘でございますが、この国から授与される一般の質じゅつ金制度については全く同様でございまして、先ほど警察の方から御説明ありましたいわゆる特別ほう賞金という制度がございますけれども、これは、自衛官の場合では、司法警察に当たります警務官については適用になっておりますが、一般自衛官には適用になっておりませんので、大体のものにつきましては千七百万円ということになろうかと思います。そのほかに、今お話がありましたように、地方公共団体の職員である警察官等については、地方公共団体から、先ほど御説明のとおりいろいろ出ておりますので、その点では自衛官より多くなっているというのが実情でございます。
  35. 中谷元

    中谷委員 ただいま御説明がありましたようでございますけれども、そのように、同じ災害派遣とか人命救助をして、命をかけてやっている一人の命に係る補償というのがそれぞれの職種でまちまちであるというのも、やる気とか士気の混乱を招くもとでありますので、その点の整備も今後考えなければならないと思います。  今回の質問は、前提としては国連平和協力隊へ行く上においての隊員身分の保障ということに発したわけでありまして、自衛官とかがそういった危険な職務に行く動機というのは、とにかく人のために役立つことをしているという誇り使命感でありまして、それに対して社会から与えられるような名誉、万一殉職するようなことがあっても家族が路頭に迷わないだけの十分な補償がどうしても必要でありまして、自衛官には、諸外国のような、軍人に与えるような国民的な名誉がまだ十分でありませんし、補償も論外の少額でありますので、彼らが使命感誇りを支えにして危険な職務にでも張り切って職責を遂行できるようにしていただきたいと思います。  ところで、そういった一連の社会情勢によりまして、自衛隊の現在の募集協力業務が非常に影響が出始めているということが報道されております。防衛大学校の入学の志願者数も一割も少なくなっているというふうなことも報道されておりますけれども一般自衛隊員の募集協力について、現状はいかがなものでございますか。
  36. 石川要三

    石川国務大臣 詳しいことは政府委員の方から答弁させたいと思いますが、先に私の方から一言、今の先生の御質問に対しての所見を申し上げたいと思います。  新聞で先生方御承知と思いますけれども、今回、防衛大学の受験者の数が約千二百人減ったということが報道されました。それは事実であるわけでありますが、それがどういう理由でこういうふうな一割減になったか、こういう理由については定かにつかめないと思います。  内容を分析しますと、例えば文科系と理科系に分けて、文科系の方はむしろ若干ふえている、理科系の方が減っている、こういう実態、それからまた、医科大学の方を見ると、それは決して減っていない。こういうようなトータルの数字を比べましていろいろと検討いたしますと、やはり平和協力隊法の問題が今回のこの受験の数の上にあらわれたということではないんじゃないか、私はこういうふうに思うわけでありますけれども、しかし、それはもう少し時間がたってみなければはっきりしたことはまたつかめないかもしれませんが、今、当面ではそんなような感じがするわけでございます。  それからまた、最近、自衛隊の募集の実態につきましては、もし必要ならば詳しく政府委員の方から答弁させますが、全体から眺めますと、今の法案審議の過程の中においての減数にはなっていない。こういうことから見て、直ちにこれが影響されているとは私は即断できない、こういう認識を持っているわけでございます。
  37. 中谷元

    中谷委員 御答弁がありましたとおり、その理由の一つにやはり防衛庁におきます身分とか処遇のことが挙げられておりますけれども、要は、これからの我が国の将来を考えてみますと、人のやりたがらないことやきついこととか危険なこと、こういった国家のために必要でありだれかがやらなければならない問題についても、もっと国民的な評価と認識がなければ自衛隊に対する魅力も向上しないわけでありまして、その点、国を守るという一番大事な職業でありますから、国家としても大いに社会的身分とその処遇をきちっとして、評価も上げなければならない問題だと思います。  そこで、もとの協力隊の話に戻りますけれども、今後政府として、民間企業や公務員等を含めて、この協力隊隊員にいかにすればたくさんの人が応募をし、日本もそれだけの能力を持ちながら協力隊としてすばらしい貢献ができるか、この人的貢献に対する具体策についてお話しいただきたいと思います。
  38. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 平和協力隊員の募集の方式につきましては、十九条から二十二条までにわたりまして、民間からの採用あるいは各行政機関からの採用につきまして具体的に定めてございますが、基本的な原則といたしましては、「関係行政機関若しくは地方公共団体又は民間の団体の協力を得て、広く人材の確保に努める」というのがございます。それが大前提でございます。  実際の採用に当たりましては、これらの組織、特に行政機関等の組織の協力を得て、また広く広報とか啓発でございますとか募集活動等を行うことによって、円滑かつ十分な採用を図るということが重要であるというふうに考えております。特に民間からの採用に当たりましては、このような啓発でありますとか募集活動に重点を置く必要があると思いますが、同時に、政府関係機関からの参加あるいは派遣に当たりましては、本部長等関係行政機関との緊密な連絡をとりながら、実施計画の策定等を通じて人材の確保に当たる必要があるというふうに考えております。
  39. 中谷元

    中谷委員 そのような形で積極的に人材確保に努めていただきたいというふうに考えております。  いずれにしましても、今回のこの法案の成立によって人は集まり、組織がつくられるわけでありますが、この法案審議を通じまして、自衛官だからだめだというふうなことで、今後どのように法案が転がっていくか、それはまあ今後のことでございますが、外務大臣にお伺いしたいのですが、もしこの法案が通らないとしますと、対外的にはどのような影響が出てくるというふうに考えられますか。
  40. 中山正暉

    中山国務大臣 新しく変化を遂げつつある国際政治環境の中で、従来安保理決議というものがなかなか拒否権の発動によって決議があり得なかった過去の時代から、米ソの対立が終わった、安保理各国協力をしながら、常任理事国がこの安保理決議を実行していく、こういう新しい国際情勢の中で、国連では拠出金が世界で第二位という経済大国になった日本が、小切手だけではなしに我々の国が汗をかくということが国際社会に信頼を打ち立てる大きな一つのとりでである、こういうことで今回この法案をお願いしたわけでございますが、これはあくまで我が国の自主的な判断でこの法案を出しております。  この法案がもし不成立になるというようなことがあったらどうなるかというお尋ねでございますけれども、私どもはこの法案の成立に全力を挙げてまいりたい、このように考えております。
  41. 中谷元

    中谷委員 問題は、我が国国際社会の中でどのような評価を受け、どのような声の中に立たされるかということでございますが、これからの日本の将来を考えてみますと、お米の自由化の問題、農産物の問題や、アメリカが非常に今業界が不況になって経済の発展が著しく落ちているというふうに聞いておりますし、また、イラクの問題も長期化しますと石油価格をめぐって非常に大きな影響を与えるわけであります。ここでもし人的に何らかの貢献をしておかないと新しい日本たたきの言葉が生まれまして、ずるいとかまたひきょうだとか、そういった外交上は最低、最悪のレッテルが日本に張られるということを危惧しなければならないわけであります。  きょう結論として言いたいことは、そういった平和というものは眠っていては得られないわけでありますし、今回のイラクの紛争を見てもわかりますように、人類の歴史の史上から侵略と紛争の歴史はなくならないということが証明されているわけでありますし、また、平和を守り、そして保っていくということは、お互いが汗をかいて努力をして積極的に前向きに活動をしていかなければならないということでございます。どうぞ政府としてもしっかりと腹を据えて今後とも頑張ってもらいたいというふうに念願をしている次第であります。  時間が参りましたので、以上で質問を終わらせていただきます。
  42. 加藤紘一

    加藤委員長 次に、赤城徳彦君。
  43. 赤城徳彦

    赤城委員 赤城徳彦でございます。御質問の機会を与えていただきましてありがとうございます。  当委員会で諸先輩方の熱心な御議論をいただきまして、これからの国際社会日本がどういう立場貢献をしていかなければならないのかという新しい枠組みを今こそつくらなければいけない、そのために皆様の熱心な御議論、まことに敬服する次第でございます。ただ、この議論の中でともすれば専門的といいますか、非常に細かい議論、木を見て森を見ないといいますか、重箱の隅をつつくといいますか、どうもそういうところへ拘泥しているようでございまして、本質的な部分、今国際社会がどうなっているのか、その中で日本は何をしなければいけないのか、そういったところ、また、この法案につきましても実に幅広い業務規定していると思うのです。そういったさまざまな面に目を向ける、そしてしっかりとした土台に立った議論を積み重ねていくべきではないか、そういうふうに考えます。  先ほど御質問に立たれました中谷先生、それから私もそうでございますけれども、戦後の世代でございます。戦争の経験はございませんけれども、逆に平和憲法で育った世代でもございます。頭の先からつま先までこの憲法がしみついている世代でございます。この憲法というのをよく読みますと、一方では戦争の放棄ということが書かれております。他方では国際協調主義ということがうたわれております。どうも戦争の放棄というところだけをとらえて、これを拡大解釈いたしまして、日本は自衛権すら持てないとか、あるいは金を出すのも憲法違反であるというような極端な解釈をされている向きもあるのではないか、そういうように思います。我が国は決して高みの見物をしていたり汗を流さない国であってはいけない、国際協調主義ということをしっかり考えて、国連を中心としてどういうことをやっていったらいいのか、それを考えていくべきだろう、そういうように思います。  そういう立場に立ちまして、今の国際情勢でありますとか中東情勢等々を御質問さしていただきたいと思います。  まず、中東の情勢でございますけれども、新聞情報等で拝察する限りでございますけれども、さまざまな見方があろうかと思います。一方では、経済制裁がそれなりに効果を上げてきた、イラクが態度を軟化させているのではないか、またフランスの人質解放、それから日本につきましても、このたび人質解放の方向で動いているという報道がございます。またイラクの方から、人質解放の条件につきましてあるいは撤退の条件、そういう提示がなされているということも聞きます。和平に向けて一定の前進がある、こういうふうに見る見方が一方でありますが、他方、中東への軍事力の展開でありますとか軍事的衝突、この可能性もまた否定できないのではないか、そういうように考えますが、外務大臣にお伺いします。現在の中東情勢というのはどういうふうになっているというふうに判断をされますか。
  44. 中山正暉

    中山国務大臣 今委員お尋ねの中東情勢全般につきましては、御案内のように、イラククウェート侵攻に対して行われた安保理決議を受けまして、各国がその実効性を確保するために展開をしているというのが一般の状況ではなかろうか。しかし、それに対して、イラク軍はクウェートに相当数の兵力を投入して相対峙し緊張が続いているという状況が実は現在見られておるわけでございます。しかし一方におきましては、各国とも平和的な解決というものがぜひ必要であるということも共通の認識が持たれておりまして、私どもは、この国連決議経済制裁実効性を確保するために各国協力しながら経済制裁を行っている、こういう中でイラクは今日基本的な態度の変化はまだ見られていないと思います。  そういう中で、これから非常に各国ともデリケートなイラクとの折衝といいますか、国連国連各国各国でいろいろと人質の解放に向かって努力をしている、そして念願とするものは平和的な解決、平和的な解決とは即イラク安保理決議を実行してクウェートからの即時撤退と人質の即時解放、こういうことが必要である、このように各国認識していると私は考えております。
  45. 赤城徳彦

    赤城委員 その人質問題なんでございますけれども、中曽根元総理のイラク訪問について新聞報道がされてございます。現在人質問題についてどういうふうな状況になっているか、簡単に御報告いただきたいと思います。
  46. 久米邦貞

    ○久米政府委員 今般の中曽根元総理のイラク訪問をめぐりまして、人質問題をめぐってのいろいろな動き、現在新聞、テレビ等で報道されておりますけれども、現在のところ非常に流動的でございまして、はっきりした確たる情報は我々も入手しておりませんので、現段階でコメントをすることは差し控えさせていただきたいと思います。
  47. 赤城徳彦

    赤城委員 まだ流動的で確たる情報がないということでございますので、情報が得られ次第御報告をいただきたいと思います。  また、もう一つの動きでございますけれども、ベーカー長官が中東へ訪問されて、またミッテラン大統領の中東訪問と、さまざまな動きがあります。その中で、フセイン大統領が、日本を含む一部の国が武力行使をしないということを宣言するなら人質を全員解放するというふうな提言を行ったというふうに聞いておりますけれども、真相はどうでございましたか。また、どういうふうにこれを評価されるでございましょうか。
  48. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 ただいま先生が御指摘になりましたように、幾つかの国の武力の不行使と、それから外国人の出国の問題とを関連づけたイラク一つの提案があるようでございますけれども、必ずしもその内容、それからその提案の趣旨等がまだはっきりしないところがございますので、私どもとしては慎重にさらにこの状況を見きわめて対処していきたいと思っております。
  49. 赤城徳彦

    赤城委員 中東問題については、さらに平和的解決に向けて努力をしていただきたいと思います。  なお、この人質が解放されるのではないかということでございます。もしも人質が解放された場合、ともすればもう人質が帰ってきたからいいんじゃないかということで、急速に日本の世論が冷えてしまって、また高みの見物を決め込むということになりはしないか。とかくのど元過ぎれば熱さ忘れるということで、そういう空気になってしまうのではないかということを心配するわけでございます。イラク国際法を犯して武力クウェートを併合した、これを既成事実化しようとしている、こういう動き、これは否定できないことだと思うのですね。仮に人質が帰ってきたとしても、我が国としては国連決議に基づいてクウェートからの撤退、そういうことを続けて要求していかなければいけない、そういうふうに考えます。これからは国際社会の正義を守るという立場から中東貢献策をさらに推進すべきだと思いますけれども、お考えをお伺いします。
  50. 中山正暉

    中山国務大臣 人質をとるということ自身、これは人道上許されない行為であると考えておりますし、国際法的に見てもこれは許しがたいことである、こういうことで、人質の解放はクウェートへの侵攻とは別次元のことで、イラク政府が当然即刻各国の人質を解放することが緊急の課題であると認識をいたしております。一方、クウェートからの完全撤退のために国連加盟国は一致協力をして経済制裁をやっていく、そのために日本協力をするということは、委員御指摘のとおりと私も考えております。
  51. 赤城徳彦

    赤城委員 人質とクウェート侵攻、これは別次元の話ということでございます。人質が帰ったからそれでよかったよかったということでただ安心するだけではなくて、こういう国際秩序を破壊するものに対して断固たる態度をこれからもとっていただきたい、そういうふうに思います。  ところで、この法律でございますけれども、これは何も中東問題だけに限ったわけではなくて、いろいろな場面を想定してつくられていると思います。この法案が成立したとして、実際に政省令が整備されるのが来年の一月ごろだろう、協力隊派遣できるのは来年の六月じゃないかというふうな話を伺ったのですけれども、そのころには中東問題も解決をしているかもしれない。この先まだまだ中東問題はわかりませんけれども、果たして中東問題に間に合わないのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
  52. 中山正暉

    中山国務大臣 今委員お尋ねのように、この法案が成立をいたしましても、それに引き続きまして政令等の問題が、あるいは省令等の問題が整備されなければ、平和協力隊というものが具体的に平和協力会議にその実施計画が諮問され、閣議で決定されて海外へ派遣されるという手続がとれないわけでございますから、そのような最低限の時間は必要であろうと思っております。  しかし、いずれにいたしましても、中東問題だけにかかわらず、これから多極化する国際社会において、いろいろなところで地域紛争が予想されております。なお、このアジアでは近くカンボジアの和平も実現することに各国協力をいたしておりまして、私どもは、中東問題の解決の一日も早いことも期待いたしておりますけれども、カンボジア和平が成立後、この平和協力隊法に基づいていかような協力日本としてできるかということについても、真剣に外務省としては現在検討をいたしているわけでございます。
  53. 赤城徳彦

    赤城委員 私が申し上げたいのは、中東問題に間に合わないからこの法案が意味がないとかそういうことではなくて、先ほども言いましたけれども、人質が帰ってきたらもうそれで終わりとか、中東問題が解決すればもうそれで日本としては何もしなくていい、そういうことではなくて、これからも国際社会の中でさまざまな紛争もあるでしょうし、そういったものに対してしっかりとした貢献ができる枠組みを今つくらなければこれはいけないんだ、そういうことで、これは中長期の課題としても引き続き取り組んでいくべきものだと思います。  日本は、戦後アメリカの傘の下といいますか、自由主義体制の中で経済第一主義に徹してまいったわけでございます。高度成長を経て世界第二位の経済大国、こう言われるようになったわけでございますけれども、逆に日本は、金しか出さない、危険できつくて苦労の多い仕事はしない、みずから汗は流さない、そういう国だ、そういう批判を受けているのではないかと思います。国際社会の中で、大国としてその指導力が今こそ問われておる。これは憲法の前文に書いてあることなんですけれども、「いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、」「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたい」と思い、「日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成すること」を誓っているんだということを憲法前文にもうたっているわけでございます。ですから、中東を対岸の火事として見過ごすことはできない。我が国としてもこれを目前の課題として取り組み、さらに国際社会の中で平和を守るために積極的貢献を果たすべきだ、そういうふうに考えるわけでございますけれども、その基本的な考え方と申しますか、国際社会の中で日本がどういうふうな貢献を、あるべき貢献をすればいいのかということをぜひ外務大臣にお尋ねしたいと思います。
  54. 中山正暉

    中山国務大臣 日本は、国際社会の中で国連加盟国として現在何を行っているのか、またこれから何を行わなければならないのかというお尋ねでございますが、まず第一に、日本経済大国として世界のGNPの一二%ぐらいの域に達し、まあ三兆ドルぐらいの実績を示しておりますけれども国連加盟国としては国連への拠出金は世界第二位であります。そしてODAの金額も世界で第一位、こういうことに相なってきておりますが、このいわゆる国際社会の紛争等について、現在までは人の協力という面では極めて微々たる貢献しかやってこなかったわけであります。最近ではナミビアの選挙に対する人の派遣あるいはニカラグアの選挙に対する人の派遣といったものも、考えてみれば外務省からの職員も合わせて三十一名前後でありましたし、ニカラグアでは六名というわずかな数でございました。こういうことで、これからもっと人の面で国際社会日本に期待しているという面は極めて大きいということで、私どもとしては、憲法の枠内で国際社会貢献をしていくということを国家としても考えなければならない時代がやってきたと認識をいたしております。
  55. 赤城徳彦

    赤城委員 日本は金を出すだけではだめだ、人の協力もこれは憲法の枠内でやっていかなければならないというお話でございました。これは中東問題に限らないわけなんですけれども、中長期の話もあると思いますけれども、具体的に幾つか日本ができることというのはあると思うのですね。  四つぐらいパターンを分けて考えてみたいと思うのですけれども一つは、例えば中東のヨルダンにいる難民の救済とか周辺国の戦災復旧みたいな活動。それからもう一つは、国連がやりますPKO、平和維持活動に対してどういう協力ができるのか。それから、国連軍ができた場合に日本はどういうふうな協力をしたらいいのか。最後に、多国籍軍のような、実効性を確保するといいますか、そういう行動に対して日本は何ができるのかということにおおよそ分けられるのじゃないかと思います。  最初の難民救済でございますけれども、現在ヨルダンに数十万人に及ぶ難民が本国に帰れない状態でいるということで、医療や水、食料の状況も非常に悪い、こういうふうに聞いております。この周辺諸国に対する支援策として、さきに閣議決定されたところによりますと、二十億ドルの経済協力、それから難民援助のために日航、全日空、合計三機ですか、フィリピン人難民計八百人を本国へ送った、こういうことを今までやったというふうに聞いておるのですけれども、難民の本国移送これ一つとっても、ヨルダンにいる難民は現在数十万人ですか、いる、そのうち国際移住機構が移送したのが十二万二千人、その中のたったの八百人ということでございますから、甚だこれは不十分ではないかと思うのです。これからさらに日航、全日空とか、あるいは船舶、そういったものについて、この法案にかかわらず民間に対する協力を呼びかけるべきではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
  56. 中山正暉

    中山国務大臣 クウェート侵攻直後におきましては相当数の難民がジョルダンに流れ込んでおりましたし、現在もサウジの国境には二十万以上の人がそこにいるというふうに私どもは報告を受けておりますが、ジョルダンでは既に総数では七十万と言われる数が難民として記録されておりますけれども、現実にはそれぞれの難民はいろいろな国連の組織あるいはまた各国協力によってそれぞれ出国をいたしておりまして、現在では大体四千人から七千人の間の人たちだけがいわゆる難民としてそこにいるという認識を持っております。私どもは、今委員からも御指摘のように二千二百万ドルの難民援助の資金を出しました。これは加盟各国が出した資金協力の約五〇%に達する金額を拠出いたしております。  なお、難民の母国への帰還につきましては、日本政府もできるだけ民間にお願いをして協力をいたしてまいりましたが、これからもさらに一層、そのような事態が発生した場合には、民間にも政府は積極的にお願いをすることを考えていかなければならないと考えております。
  57. 赤城徳彦

    赤城委員 ヨルダンの方の難民は大分本国へ帰ったということでございますので、そっちの方ではかなり前進があったというふうに思いますが、さらにこういうふうな事態があったときに、これからも民間にお願いするというだけで果たして十分できるかという問題があるかと思うのですね。  それで、この国連平和協力法案が成立した場合に難民救済、こういった事態にどの程度対応できるかということについては、これまでの質疑の中で答弁があったと思うのですが、航空自衛隊の輸送機が十三機あって、そのうち活用できるのが三、四機。一機当たりの輸送能力が九十人ということで、なかなかこれは十分な対応ができない。それから政府専用機が導入されたら一機で五百人運べるので、これはかなりいいんじゃないかということですけれども、まだ現在導入されておりませんので、そういう状況だというふうに聞いております。この法案ができたときに、法案の三十一条で民間に対して協力を求めることができることになっておりますし、自衛隊機、輸送機等々活用できるのではないかと思いますけれども、この法案に基づいてこういう難民救済についてどういう活動をすると想定されているか、お答えいただきたいと思います。
  58. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 先ほどからお話に出ておりますとおり、現在の法制度のもとである程度の難民救済というのは可能でございます。特に国際機関への拠出金等を通じてこれまで日本がいろいろとやっておりまして、その点につきまして非常に評価されております。  他方、この法律におきましては、第三条の二号のへにおきまして「紛争によって被害を受けた住民その他の者の救援のための活動」を行うことができるというふうに平和協力業務一つとして規定されてございまして、このもとで避難民の救済活動に当たることができるということで、この法律のもとで一層効果的な協力ができるというふうに考えております。  具体的には、政府の持つ輸送手段による難民の輸送等の協力、さらには今先生も言及されました第三十一条の民間への協力の要請に基づく避難民の輸送等の協力が可能になると思います。特に三十一条二項におきまして、政府から協力要請を受けて、その協力を求められた民間に対しては「適正な対価を支払う」というふうにも書いてございまして、できるだけ民間からの協力も得られやすいようにという配慮がしてございます。
  59. 赤城徳彦

    赤城委員 私、ちょっと素朴な疑問があるので確認いたしたいのですけれども、この法案の三条に、国連決議に基づき、または実効性を確保するために行う活動である、こういうふうに書いてございますので、この平和協力業務というのはその決議が根っこにあることが前提だと思うのですね。そうしますと、周辺国の難民救済に対しての国連決議があったのかどうか。どうもそういう直接の決議がなかったのじゃないかと思うのですけれども、どうでしょう。
  60. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 第三条は、従来から御説明しておりますとおり、国連決議がありまして、それに基づく活動またはそれの実効性を確保するための活動でございます。  今の中東湾岸情勢の絡みで申し上げますと、先生の御指摘、非常に適切な御指摘でございますので、関係の決議を今ちょっと探しておりますけれどもイラクにいる外国人の出国等に関する決議がまずございます。その決議を受けまして安保理制裁監視委員会議長の声明というのがございまして、その声明におきまして、イラククウェートアジア及びその他の国民が困難な状況にあることを認識し、これら国民の脱出支援のため緊急な国際的救助努力をアピールするというくだりがございますが、このような決議安保理制裁監視委員会の議長声明を受けて行うということでございます。一般的には、もちろん先生が御指摘のとおり、国連決議がない場合にはそういうことはしないということでございます。
  61. 赤城徳彦

    赤城委員 イラクの外国人出国に関する決議、それから安保理議長の声明、これを受けてということでございますけれども、難民を本国へ送れというふうな直接の決議というのはないのじゃないかと思うのですね。私が考えますに、本来この法案の目的とすることはいろいろなことがある。何も多国籍軍に対して協力することばかりじゃない。まさにヨルダン難民とか周辺国協力、こういったものを中心に据えてやっていかなければいけないと思うのですね。その際に、国連決議がないからとか余りその国連決議という縛りをきつくかけると、本来やらなければいけないことまでできなくなってしまうのじゃないか、そういうふうに感じるわけなんです。ですから、本来やるべきことは何なのかということを、本部長の決定あるいは実施計画の中で明らかにしてやっていくべきじゃないか。国連決議実効性でありますとか中東の平和回復、そういったものはより自主的に判断していかなければならない部分があるのではないか、そういうふうに考えます。  次に、国連の平和維持活動に対する協力についてでございますけれども、先ほど外務大臣からお話ございましたように、これまで平和維持活動についてアフガニスタン問題、イラン・イラク紛争、ナミビア独立問題、さまざまな局面で、我が国としても金だけでなく、金についても九千万ドルですか一般的に貢献して、さらに個別にそれぞれ拠出しているわけでございますが、人的面でも、それぞれ外務公務員でありますとか民間人を活用している、こういうふうに聞いております。  今後、中東紛争が終結した場合、それから先ほどお話ありましたカンボジアの和平、これが実現した場合、国連のPKO活動が行われるというふうに想定されるのですが、こういうふうなPKO活動、これまでもやってきたわけですし、政府職員あるいは民間がやってこられたわけなんですね。ですから、中東紛争、カンボジア和平の場合にPKO活動が行われたときに、果たして自衛隊をこれに使わなければならないのかどうか、あるいは政府職員、民間人だけで対応できるのかどうか、その点お尋ねしたいと思います。
  62. 中山正暉

    中山国務大臣 委員お尋ねのPKO活動の中で、この法案に掲げておりますように「停戦の監視」あるいは「紛争終了後の暫定政府等の行政事務に関する助言」あるいは「紛争終了後の議会の選挙」、「物資協力」あるいは「医療活動」、こういろいろとトまで掲げてございますけれども、この中で、一般民間協力を得て行われるもの、あるいは一般の行政官庁からお願いをして平和協力隊に御参加をいただいてできるものとの、いわゆる蓄積された経験の種類がそれぞれあろうかと思います。  その中で、例えば「停戦の監視」といったようなものは、この平和協力隊員身分を持つ自衛隊の方が最も適しているんではなかろうか。あるいは、このロに掲げております「紛争終了後の暫定政府等の行政事務に関する助言」、これなどは政府の各省からの方あるいはまた地方自治体からの参加をいただく方々、あるいは「議会の選挙」等につきましても、例えば自治省で選挙の経験を待っておられる方々、こういうふうに考えてまいりますと、この平和協力隊法案に掲げられております大きな実施計画の中の各項目については、それぞれ適性があろうかと思っております。自衛隊員がすべてやれるものではない。それぞれ経験を持った組織からの人がそのような大きな協力効果を発揮するのではなかろうか、私はそのように認識をしております。
  63. 赤城徳彦

    赤城委員 平和協力業務のうち、ロとハ、行政事務に対する指導助言とか選挙管理、こういったものは何も自衛隊である必要はないですし、また専門的な職員がこれに当たるのが適当であるということでございますから、この法案は何も自衛隊を出したいがためにつくっているわけでもないですし、さまざまな協力の形態がある、それにふさわしい人を使うということだと思うのですね。ですから、自衛隊を使うのがふさわしい場合にはもちろんこれは自衛隊を使うということになろうかと思います。  次に、国連軍に対する協力なんですけれども、将来国連軍ができた場合どういうふうな対応をとるかということは、さまざま議論があったところでございますし、この問題につきましては改めて繰り返す必要はないかと思うのですけれども国連憲章における国連軍の位置づけ、これを明確にする必要があると思うのですね。  国連憲章の四十二条で、四十一条の経済封鎖とか国交断絶が十分な実効性がないときに、安保理決議を経て、国際の平和、安全の維持、回復に必要欠くべからざる措置として、必要がある場合には陸海空軍の行動をとることができる、こういうことで、国連の活動の重要な部分として位置づけているわけでございます。我が国として、国連中心主義ということを唱える以上、この国連加盟国が一致してとる行動である国連軍の活動についても、これは一定の評価をして、これに対して協力をするというのが当然だと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  64. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ただいま委員御指摘のとおり、国連憲章第四十二条、第四十三条におきまして国連軍の創設が想定されているわけでございます。  御承知のとおり、国連憲章の枠組みといたしましては、二つ大きな考え方あるいは制度がございます。一つは、紛争の平和的解決でございます。これは第六章に規定されているところでございまして、いま一つがただいま御指摘の四十二条、四十三条を含む第七章でございます。これはいわゆる紛争の強制的解決、つまり侵略等がございましたときに、国際社会が力を合わせてこれに対して実力をもって制裁を加えるというところでございます。ただ、遺憾ながら国際関係、特に米ソの対立というような背景のもとに、これまでこの四十二条、四十三条に基づく国連軍が創設されることはございませんでした。最近、幸いにいたしまして米ソ間の緊張緩和ということがございまして、安保理での合意というものが得られやすくはなっておりますけれども、ただ、今すぐこのような国連軍が創設され、特別協定が締結されるという見通しにはございません。  この国連軍の創設に当たりまして、我が国がどのように関与するかという点につきましては、これまで当委員会におきましても種々議論がございました。特に憲法との関係につきましては法制局長官から何度か御答弁ございましたので、私、その点は繰り返さないつもりでございますけれども、ただこの問題、特に国連憲章第七章に基づく国連軍への我が国の関与の仕方あるいは参加の態様につきましては、これまで研究を行っておりますけれども、結論をまだ明確に申し上げる段階にはございません。  法制局長官から、従来からの我が国憲法解釈について何度か御答弁になっております。この点繰り返しませんが、他方、国連憲章第七章に基づく国連軍につきましては、先ほど申し上げましたようにまだ設けられたことがございませんで、またこの四十三条に基づく特別協定についてもいかなる内容になるか不明でございます。国際情勢も急速に変化しております。したがいまして、将来この七章に基づく国連軍の編成が現実の問題となる場合に、その時点で、これまで御答弁申し上げたようなことを総合して具体的な判断をすべきものだというのが政府立場でございます。  ただ、一般論といたしまして、この国連憲章、そして国連の平和維持、回復活動に対しては、我が国として憲法の枠内で積極的に協力すべきであるという点は仰せのとおりだと思います。
  65. 赤城徳彦

    赤城委員 国連軍に対しての協力の形態としてもいろいろあると思うのですね。兵力の提供をするかどうか、ここが要するに問題だと思うのですけれども、そのほかの協力援助、便益の提供、こういう部分もあるわけですから、そういう部分については積極的に協力していくというのは当然だと思うのです。  一つ確認したいのですけれども、この平和協力法案に基づいて多国籍軍に対していろいろできるとされている輸送、通信等の協力があるわけですけれども、その同じ程度のことは国連軍に対してもできると思うのですけれども、いかがでしょうか。
  66. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ただいま委員御指摘のとおり、この国連軍との関係におきましてはいわゆる兵力の提供というのが問題の核心でございます。ただ、これも御指摘のとおり、第四十三条では必要な兵力のほかに援助、便益というものも規定しているわけでございますので、この範囲のものであれば、我が国も現行憲法上あるいは現在の憲法解釈上もできることが多々あると思います。  そして、この法案との関係につきましては、多国籍軍の活動に対する協力につきましても行えるものがあるわけでございますが、もとより、この法案におきましては、武力行使あるいは武力による威嚇に当たるようなことは行ってはならないという基本的な制約があるわけでございまして、そのような制約の中で、そのような憲法の枠内におきまして、この法案規定されているもろもろの任務の中には、あるいは将来国連軍ができた場合、この国連軍の態様がどういうものになるかあるいは特別協定がどういうものになるかによって判断すべきものではございますけれども、この点も御指摘のとおり我が国として兵力の提供以外になすべきことあるいはなし得ることがいろいろあるというふうに考えております。
  67. 赤城徳彦

    赤城委員 何か国連軍が、あるいは国連軍に参加するのが悪いことのような議論があったと思うのですけれども、それはむしろ逆だと思うのですね。国連軍というのは世界各国協調して平和の回復のために行動するわけですから、それに対して現行憲法の中でできる協力というのを積極的にやっていかなきゃいけない、そういうように思うわけであります。なお、実際の国連軍というのはまだできていないわけですので、これはさらに検討を進めていただきたいと思います。  次に、多国籍軍に対する協力なんですけれども、現在国連軍ができていないわけですから、この多国籍軍というものを、イラクがサウジまで侵攻するのをとめた一定抑止力としての効果がある、こういうふうに評価していいと思うのですね。多国籍軍に対する評価は一体どういうものなのかということと、実効性を確保するかどうかということが判断の分かれ目だと思うのですけれども、その実効性が確保されるならば、各国が集まっていなくても一国だけの行動でもいいのかどうか。その何カ国もが集まってやっているのだというところを評価するかどうか、そこもあわせてお聞かせください。
  68. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 現在の多国籍軍は、たびたび御説明申し上げておるとおりでございますけれども、累次の安全保障理事会の決議を受けまして、その実効性を確保するために展開しておるわけでございます。したがいまして、その根底にございますものは、安全保障理事会という国際の平和と安全の維持に中心的な地位を占める機関の決定を、その実効性を確保するということでございますので、これはやはり国際的な活動としての意味があると思います。現に多国籍軍にこれまでのところ二十カ国以上の国が参加をいたしておりまして、これの地理的な配分から見ましても、これはほとんど世界の全大陸に及んでおるような次第でございます。
  69. 赤城徳彦

    赤城委員 多国籍軍というけれども実質は米軍じゃないか、アメリカの決断一つでバグダッドまで攻め込めるのじゃないかというようなことを言われるのですけれども、果たしてそうなのか。今のお話では二十カ国以上が参加している、そういうところを実効性確保という言葉であわせて評価しているのかどうか、再度お願いします。
  70. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 イラククウェートからの撤退を求める決議、それからイラクに対する経済制裁を決定した決議、それぞれの実効性を確保するというためには、やはり国際社会全体の意思があるということに非常に意味があると思いますので、そういう意味でやはりこのような多数の国が展開しておるということがその実効性確保に非常に役に立っているというふうに考えます。
  71. 赤城徳彦

    赤城委員 国際社会全体がやっている行動なんだ、決してアメリカだけがやっているわけじゃないんだということをぜひ強調していただきたいと思うのです。  さて、いろいろな行動がとれる、日本としてやるべきことはいろいろな場面があるということでございますけれども、ではそれをやるのはだれが適当なのかという問題があると思うのです。民間人だけでやれという話も片方にあります。一方で、民間人ばかり汗流して専門家が高みの見物をしておっていいのかという話もあります。この法案では、その専門家として自衛隊を活用するということを書いておるわけでございますけれども、なぜ自衛隊でなければいけないのか、それからなぜ自衛隊身分を併任にしなければいけないのかということを、これは何度もお話あったかと思いますけれども、わかりやすく簡潔に御答弁いただきたいと思います。
  72. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 いろいろとこの法律のもとでの、国連決議を受けて行われる平和維持活動等への参加の態様につきましては、広く民間からあるいは行政機関あるいはさらに自衛隊ということになっております。特に自衛隊につきましては、その長年にわたって蓄積されてきました経験でありますとか技術でありますとかあるいは組織力、そういうものを大いに活用してやっていくということが重要であるというふうに考えております。特に具体的には、例えば国連等の行っております停戦監視でありますとかあるいは医療活動でありますとかあるいは紛争終了後に行われます戦災復旧でありますとか、そういう分野で大いにその組織力あるいは経験技能を発揮していただけるということから、今のような法案の体裁になったわけでございます。  もう一つ、なぜ出向休職でなく併任かという点につきましての御質問でございますけれども自衛隊自衛隊身分を持って、あるいは部隊等として参加していただくというためには、休職出向ではなく併任の形で、したがいまして、自衛隊員身分を持つと同時に平和協力隊身分をあわせ有して参加していただくということが、その今の自衛隊の組織を活用する上で非常に有効であるというふうに判断しているわけでございます。  なお、そのような場合にも、あくまでも内閣総理大臣の一元的な指揮監督下に入る、あるいは本部長の指揮監督を受けて平和協力業務に従事するという点は、法律のもとにはっきりうたわれてございます。
  73. 赤城徳彦

    赤城委員 実際の活動を行う上でやはり専門家でなければできない部分もあるし、そのためには組織なり身分なりということも考えていかなければならない、そういうふうに思うのですね。基本的に日本国際社会貢献する、人的貢献をする、この点については異論がないと思うのです。それも国連を中心とした活動に対して日本が積極的にかかわっていくということ、これはもうほぼだれでも意見が一致するところだと思うのです。要は、どのような活動に対してだれが適当なのか、そこについての議論が残念ながら各党具体的な対案が示されていないので、どういうことを考えているのかよくわからないところなんですね。そこを、それぞれ代案があるのならあるでそれを出して、それを重ね合わせて議論していくということが大事だと思うのです。  そこで、さらにお尋ねしたいのですけれども自衛隊が海外に出て平和協力業務をやる、これを憲法違反だと言う方もあるわけなんですけれども自衛隊が海外に出たからといって直ちに憲法違反になるのかならないのか、ならないとしたら、なぜ憲法違反にならないのか、お答えください。
  74. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 これはむしろ法制局の方の問題になるわけでございますけれども、現在長官お見えになっておりませんので、私が理解するところをお答え申し上げたいと思います。  従来、憲法自衛隊の派兵は禁止されているというふうに言われているわけでございますが、このいわゆる海外派兵とは、一般的に申しますれば、武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣することであるというふうに定義づけられて説明されていると理解しております。このような海外派兵は、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであって、憲法上許されないというのが従来からの解釈でございます。  この国連平和協力隊につきましては、国際の平和及び安全の維持のために国連が行う決議を受けまして行われる国連の平和維持活動その他の活動に対する協力任務とするものでございまして、その平和協力業務の実施は、「武力による威嚇又は武力行使に当たるものであってはならない。」ということが明記されているわけでございます。したがいまして、このような国連平和協力隊の海外への派遣がいわゆる憲法で禁ぜられておりますところの海外派兵に当たらないというのは明らかであるというふうに考える次第でございます。
  75. 赤城徳彦

    赤城委員 要するに、憲法違反になるかどうかというのは、武力行使をするかどうかということだと思うのですね。だから、自衛隊参加したから直ちにこれが憲法違反なんじゃなくて、民間のチームあるいは政府職員がチームを編成して行ったとしても、これが武力行使をすれば、これは憲法違反になる。民間がやるか自衛隊がやるかじゃなくて、武力行使に対する歯どめをどうきかせるかということだと思うのですね。ともすれば自衛隊が行ったから直ちに憲法違反だというふうな、あるいはテレビなんかで戦車を持っていってドンパチやっているようなところばかりを映す、何か危ないことをやるんじゃないか、そういう報道ばかりされるように感じるのですけれども、そういうことではないんだということをぜひ強調していただきたいと思うのです。  最後に、国連平和協力法案の行く末について、これが廃案だとか継続審議だとかいろいろな話を漏れ聞くわけなんですけれども、いずれにしても、国際社会の中で日本が何をしなければならないのかということ、これは待ったなしの状況で、こういう枠組みをつくっていかなければならないときだと思うのです。先ほども中谷委員から、この法案がもし廃案になったらどうなるのか、国際的にどんな非難を受けるんだろうかという御質問があったところです。私も、全く日本が何もしないで高みの見物をしていていいとは言えない、今こそ国際協力の枠組みをつくるときだと思うのですね。  よく、いつか来た道を繰り返すなとか、戦争への道を許すな、そういうふうな宣伝が言われるわけなんですけれども、このいつか来た道というのは何なのかということを考えてみますと、まさに今のサダム・フセインが国際秩序を無視してクウェート侵攻していく、そういう孤立の道を歩んだ、これがいつか来た道であって、我が国がとるべき道というのはフセインの道ではなくて、国際的に協調して、国連の加盟国の一員として世界国々とともに協調行動をとることである、そのための枠組みを今どうしようかと考えているのじゃないか、そういうように考えるわけです。総理が所信表明演説の中でも言われた言葉ですけれども、真の平和国家とは、平和を守るために何にもしない国じゃなくて、平和を守るために真剣に汗を流し努力する国なんだ、そういうことをいま一度かみしめるべきだと思います。  今後とも、この国際社会の一員としてどういうことをしなければならないのか、こういうことを広く一般の方にも理解していただく努力を続けていただいて、さらにこの法律の目指すところ、この趣旨を理解していただくよう、この平和協力隊が海外に出るときに、国民がこぞって、頑張ってこいよ、頑張ってやってくれ、そう言えるように理解を得る努力を今後とも続けていくべきだと思いますけれども、今後の御決意について最後にお尋ねして、終わります。
  76. 中山正暉

    中山国務大臣 日本が行ってまいりました人的貢献というものは、先ほども申し上げましたように極めて微々たるものでございます。  しかし一方、国連の統計によりますと、我々の国のような経済大国でない国、そして小さな——小さいと言えば大変失礼になりますけれども経済的にはスケールの小さな国でどのくらいのことをやっておるかというと、ネパールが国連レバノン暫定軍に八百五十七名出しております。それからノルウェーが同じく国連レバノン暫定軍に九百名、それからスウェーデンが六百六十名、それからガーナが八百九十八名、フィジーが七百二十一名、こういうふうに統計が出ておりますし、また、国連兵力引き離し監視軍というのは、オーストラリアが五百三十名、それからカナダが二百二十六名、フィンランドが四百三十一名、こういうふうな数値が出ております。なお、フランスは相当大きな経済大国でありますけれども、フランスでは五百二名を国連レバノン暫定軍に出している。日本は、今までの総トータルで、恥ずかしくて数値を公表できない——実際は公表されているわけですけれども、例えばニカラグアには六名とかナミビアには三十二名外務省チームとして出しております。  こういうふうなことで、私どもは、これから国際社会に、国連に対する協力として、我々の国家がさらに人的貢献をやることがこの数値から見ても各国から大きく期待をされるものではなかろうか、このように思っております。
  77. 赤城徳彦

    赤城委員 ありがとうございました。
  78. 加藤紘一

    加藤委員長 これにて中谷君、赤城君の質疑は終了いたしました。  午後一時二十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時四十八分休憩      ────◇─────     午後一時二十分開議
  79. 加藤紘一

    加藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。石橋大吉君。
  80. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 私は、国会へ出まして四年と三カ月ぐらいになりますが、一貫してずっと農林水産委員会におりますので、こういう大場で外交、防衛問題などに関する質問をしたことは全くありません。総理が非常に急いでこういう難しい法案を出されるものですから、私も農林水産委員会から急遽臨時招集をされましてこの場に立っているわけであります。まあ簡単に言えば農民兵の一人でありまして、なかなかベテランの総理大臣以下を相手にしてやり合うことができるかどうか全く自信はありませんが、それだけに簡単明瞭な質問をしたいと思っておりますので、きょうは、できるだけ法制局長官や条約局長はお立ちにならないで、大臣のレベルでひとつお答えいただきたい、こういうことで最初にお願いをしておきます。  最初に、ちょっと特別な質問を二つ、三つさせていただきますが、まず第一は、十九日の衆議院予算委員会におきまして、自民党の谷川和穗委員の質問に対しまして条約局長は、平和協力隊自体は軍隊でないけれども平和協力隊を構成する自衛隊部隊等または自衛官であれば、それらは国際法上、軍隊または軍隊の構成員という地位を保持するということになる、こういうふうに答弁をされております。これは政府の統一見解だと思いますから、海部総理の見解もそのとおりですな。お答え願います。確認をします。
  81. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 お答えさせたとおりでございます。
  82. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 それでは、自衛隊派遣国際法上軍隊と認められるということは、ひっくり返して言うと、国際法上、自衛隊派遣は派兵と認められる、こういうふうに私は理解されると思いますが、どうですか。
  83. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 簡単に御答弁申し上げますが、国際法上、自衛隊が軍隊として取り扱われるということでございますが、その意味するところは、自衛隊国際法上、すなわち、例えば外国にありますときの特権免除の問題でございますとか、あるいはいわゆる戦時における人道的な取り扱いの問題でございますとか、そういう国際法の上で軍隊としての取り扱いを受けるということでございます。  他方、いわゆる海外派兵でございますけれども、これは我が国憲法との関係でいろいろ御議論がございましたが、その意味は、一般的に申せば、武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣することであるというふうに理解されているわけでございます。そのような海外派兵は我が国憲法では認められないという解釈が従来からとられているわけでございます。  したがいまして、国際法上、自衛隊が先ほど申し上げたようないろいろな取り扱いにおいて軍隊として取り扱われるということと、我が国憲法上いわゆる海外派兵が禁ぜられているということとは、全く次元の異なる問題でございまして、国際法上、例えば捕虜等の待遇に関して自衛隊員が軍人として取り扱われるということはございましても、これが海外派兵になるということではないわけでございます。     〔委員長退席、西田委員長代理着席〕
  84. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 私は、その説明は納得できません。今までも再々その説明が繰り返されておりますが、簡単に言って、国際法上、捕虜の取り扱い等について、軍隊として扱われた方が有利な扱いを受ける、こういうことですが、どっちにしても自衛隊が海外に出るということは、国際法上軍隊として扱われるということでしょう。そのこと自体間違いないでしょう。説明はいいですよ。簡単に答えてくださいよ。解説は要らぬですよ。端的にお答えいただきたい。
  85. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 国際法上軍隊として取り扱われるということは、そのとおりでございます。ただし、それは海外派兵を意味するものではございません。
  86. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 そんなのはわかっていますよ。問題は、国内向けには、武力を持っていくわけじゃないから派兵でなくて派遣だ、こう言い、国際的には、国際法上軍隊、こう認められると言うわけでしょう。国際的にはやはり派兵と認められるわけですよ。そういう内向けと外向けと、まあわかったようなわからぬような説明をして派兵を派兵でない、こういうところがやはり国民もわからないし、国際的にも非常に不信感を招く大きな原因の一つだ、私はこう思っていますよ。だから、そういう答弁は納得できませんわ。簡単に答えてくださいよ、簡単に。ひっくり返せばそのとおりじゃないですか。
  87. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 自衛隊が、先ほど申したようないわゆる武力行使の目的を持って海外に派遣されるというものでない場合に、武力行使を目的としない形で海外に出ていくということは、いわゆる海外派遣と言われているわけでございますが、このようなことは従来から、例えば練習艦隊の外国親善訪問でございますとか、いろいろな形であるわけでございます。また、外国の軍隊が我が国に親善訪問をしてくるということも多々あるわけでございます。このようなものは、いずれも国際法上は軍隊として取り扱われるわけでございますけれども、しかし、それでは親善訪問が海外派兵かということになりますと、そういうことは全くないわけでございます。
  88. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 今言われるような説明かどうかは、後の質問の中でまた私は私なりに明らかにしたいと思いますから、時間が余りたってもいけませんので、先に進みます。  次にもう一つ、総理にできればお伺いしたいのですが、これは平和協力隊員で海外へ出て、もし事故で亡くなったり、戦禍に巻き込まれて倒れるということはもちろんですが、そのときは靖国神社に合祀されますかどうか、ちょっとお伺いしたい。
  89. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答え申し上げます。  靖国神社は現在宗教法人でございまして、靖国神社でいかに取り扱われるかといいますか、失礼な言い方ですが、そういうことは、靖国神社が主体を持ってお決めになることだ、かように考えております。
  90. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 防衛庁長官自衛隊で過去に亡くなった人は大体合祀されておるのじゃないかと私は思いますが、それはどうですか。自衛隊員で、過去、事故で亡くなったりした人は、全部靖国神社に合肥されているのじゃないですか。どうですか、実態を。
  91. 村田直昭

    村田政府委員 突然のお尋ねで、ちょっと定かにはあれしませんが、約千五百人程度ではなかろうか、警察予備隊発足以来、千五百人程度ではなかろうかと思います。(「合祀されているかどうか」と呼ぶ者あり)ちょっと私、定かに、今存じよりませんので……。
  92. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 じゃ、後から調べて答弁してください。  恐らく今まで、例えば五〇年ですか五一年ですか、朝鮮海峡へ掃海艇で出た人なんかもちゃんと合祀をされていますから、恐らく自衛隊で出て、もし万一亡くなられたときにはそうなるんじゃないか、私はこう思っていますから、ぜひひとつ後で具体的に明らかにしていただきたい、こういうように思います。  それから次に、小火器の使用についてちょっとお伺いをしたいと思います。  法案もそうなっておりますが、政府答弁を聞いておりましても、小火器については専ら貸与することができる、そういうことと、護身用だ、こういうことを非常に強調されています。二十七条もそうなっていることはなっています。  そこで、例えばサウジアラビアに派遣された自衛隊員である平和協力隊員は、現地では常時小銃を携行することになるのかならないのか。今までの政府説明から推測すれば、一々計画変更を求めて、本部長である内閣総理大臣の許可を得て初めて携行する、こういうことになるのではないかと思いますが、その点どうですか。
  93. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ただいま御指摘のとおり、二十七条で小型武器、これは小火器という言葉ではございませんで、小型武器という言葉を使っておりますが、この貸与等について定めているわけでございます。この目的は、治安の悪いような状態におきまして、特に本部長が必要と認める場合には、平和協力隊員に小型武器を貸与することができるということでございまして、御指摘のとおり、常に貸与するというものではございません。必要と認めるときにおいてのみ貸与するということでございます。また、その使用につきましても、非常に厳格な制限がこの二十七条の三項におきまして定められているわけでございます。
  94. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 今のお話をもう少し確認をしますが、要するに、仮にサウジアラビアへ上陸したとしても、ふだんは丸腰で行動しておるということですな。
  95. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 どのような状況で、どのような時点で、例えばサウジのような国に協力隊員が派遣されるかということは、現時点ではわかりませんけれども、例えば現状のような場合でございましたら、別に治安が悪いというようなことがないと思いますので、そのような場合には護身用の小型武器というのは必要がないわけでございますから、そのような場合には武器の貸与も行わない、したがって、丸腰で行くということでございます。
  96. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 今は幸いか不幸か、両軍、国境線を挟んで対峙したままですから、あるいはそれでいいかもしれませんが、もし作戦行動が起こったときどうなりますか。
  97. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 この二十七条の規定趣旨は、先ほど申し上げましたように、治安の悪いような場合を想定しているわけでございます。この平和協力隊任務は、武力による威嚇または武力行使に当たるようなことは行ってはならないということが明定されておるわけでございますので、平和協力隊任務の遂行のためにこのような小型武器を携行するというものではございません。専ら護身用ということでございます。
  98. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 ということは、今、戦争状態になっていないときはもちろん、もし不幸にして多国籍軍と例えばイラク軍が軍事衝突をして戦争をやった、そのときも、とにかくふだんは小銃、けん銃は携行しない、するときには本部長に計画変更を求めて、その上で携行させる、そういうことですか。
  99. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 具体的な場合に平和協力隊をどういう形でどこに派遣するかということにつきましては、この法案の第十七条におきまして、業務実施計画をつくります際に決めるわけでございます。その際、これまでも繰り返し御答弁申し上げているところでございますが、この平和協力隊と申しますのは、先ほど申し上げましたように、その任務武力行使を伴うようなものではございません。そのような性格の組織でございますので、したがいまして、武力行使が現に行われているような場所、あるいは極めてその蓋然性が高いような場所に平和協力隊派遣するということは考えておらないわけでございます。したがいまして、計画を作成する際には、そのような問題が生じないように万全を期するという方針でございます。
  100. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 言われるように、武力行使をしないで済むところ、安全なところだけで行動できるかどうかは後でまたやりますが、もうちょっと確認したいのですが、サウジアラビアへ派遣された部隊が現地で行動するときには、小銃、けん銃を常時携行するかどうかは計画作成の段階で決めるということですか。現地の判断で、現地の状況を見て携帯させるかどうかを決めるということじゃないですか。どっちですか。今の話を聞いていると、計画作成の段階みたいな感じもしますよ。
  101. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 第十七条におきまして実施計画の作成の手続が定めてあるわけでございます。最終的には閣議決定を行うわけでございますが、この実施計画に定める事項として、十七条の二項第二号にいろいろ掲げてございますが、その中にホとしまして「平和協力隊の装備」という条項がございます。この中には当然、武器の貸与の必要があるかどうかという点の判断も含まれると思います。
  102. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 ちょっとよくわかりませんがね。あらかじめ計画の中に入れて、なおかつその上で、現地で行動しているときには、そこの部隊長か隊長か知りませんが、そういう指揮官の判断によって常時携行させることもある、こういうふうに理解していいですか。どうですか。
  103. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 基本的な事項は業務実施計画を定めますときに決定する必要があると思います。ただ、その運用につきましては現地で判断すべき問題も、この問題のみならずいろいろあると思いますが、その場合の行動の指針というようなもの、現地に派遣される責任者、あるいは隊長と言ってもいいかもしれませんが、そのような人に与える指針というものも実施上はつくっていく必要があると思っております。
  104. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 そうすると、やはり現地で行動隊の部隊長かなんかが判断をして、それから何日間かは、やはり現地の状況によっては常時携行することもあり得るわけですな。
  105. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 常時とおっしゃる意味いかんにもよりますけれども……(石橋(大)委員「日常ということですよ」と呼ぶ)日常携行するかどうかという点につきましては、まず基本的にはこの計画の決定の際に決めておきまして、その上で、その範囲内で現地の判断で日常携行するか、あるいは現地と申しましてもいろいろな場所があると思います、特別に治安の悪い場所あるいはそうでない場所もあると思いますが、特別治安の悪いところに行くときだけ持っていくというようなことも考えられると思います。
  106. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 ちょっと参考までに伺いますが、自衛隊部隊が行動するときの単位ですね、例えば今一番最小の単位を分隊というのか班というのか知りませんが、班で何人、小隊で何人、中隊で何人、たしか大隊というのは自衛隊にないはずですから、連隊で何人と、部隊の規模について、普通科の部隊でいいですが、ちょっとお教え願いたい。
  107. 日吉章

    ○日吉政府委員 区々に分かれておりますので、ちょっと一概に申し上げるのが困難でございますが、普通科連隊で申しますと、大体千人内外というふうに御理解いただければと思います。それで、班という組織はございませんで、下に中隊、小隊とあるわけでございますが、これはちょっと区々に分かれてございますので一概に申し上げるのは困難でございます。連隊規模で約千人内外、こういうふうにお考えいただければと思います。
  108. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 ちょっと参考までに中隊、小隊まで、普通科の場合、教えてください。わかるでしょう、ごく簡単な質問ですからね。中隊の規模、小隊の規模、これは普通科の場合でいいですからね。厳密なことはいいですよ。大体これぐらいだという話でいいですよ。
  109. 日吉章

    ○日吉政府委員 正確を期す必要がございますので、少々お時間をちょうだいしたいと思います。その後で調べまして……。
  110. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 ちょっと、先へ進められぬから早く答えてください。委員長、暫時休憩させてください。質問時間は留保します。——そんな厳密なこと、私言っていないですよ。まあまあのところを聞いているんです。ちょっと、先へ進めないです。
  111. 西田司

    ○西田委員長代理 ほかの質問もありましょうから、質問しておってください。今準備しておりますから。
  112. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 これは非常に大事なんですよ。今の部隊の関係がわからぬと、ちょっと次の質問ができませんがね。  問題は、護身用と言われるけれども、私はけん銃は護身用だと常識的に見ていいと思うのですよ。しかし、小銃はちょっと護身用の域を脱している、私はこう思う。特に、何十人かの部隊が常時携行して前線を歩く、前線かどうかはまた後でやりますが、どっちにしても、多国籍軍の後方支援ということで常時何人かの、小隊や中隊でもいいですよ、部隊が小銃を持って歩くということは、これはもう完全に武装して歩く、護身用の域を超えている、私はこういうように思うのですよ。だから、その点非常に大事ですから早く答えてください。
  113. 日吉章

    ○日吉政府委員 申し上げます。  小隊で約三十名、中隊で約二百名、連隊で千名強でございます。
  114. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 今明らかなように、小隊で三十人、中隊で二百人、連隊で千人でしょう。仮に、一番小さい小隊でもいいですよ、三十人の自衛隊員が自動小銃を持って歩くということになれば、これはもう完全に武装して歩くということですよ。大体第一線に出て普通科の、例えば歩兵という、自衛隊では歩兵なんという言葉使っていないけれども、わかりやすく言えば歩兵が最低の武装といったら、やはり小銃ですよ。小銃を持って作戦行動するというのが普通じゃないですか。その意味で、私はやはりこれは部隊の規模が大きくなればなるほど完全武装して自衛隊は行動する、こういうことになると思いますよ。どうですか、その点。——ちょっと待ってください。これは最高指揮官に聞きたいんですよ。防衛庁長官でもいいし、総理でもいいですよ。どう思いますか、それを。やはり本部長ですからね、答えてくださいよ。
  115. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 今御議論を聞いておって私の直観をお答えしますけれども、そういうような大部隊を完全武装して、先生第一線とおっしゃいますが、そんなところへまで行くようなことは毛頭考えておりませんし、平和協力隊というのはそのために、二条に書いてあるように原則非武装で、そして特定の業務だけするわけですから、ですから完全武装して一個連隊が行くとか、前線、第一線に行ってやるとか、それはまるっきり私は想定しておりませんので、そういう業務計画は断じて組みません。
  116. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 総理、あなたが言われることはわかりますよ。毎日その同じ言葉が繰り返されているのだからわかりますよ。それはわかっている。わかっているが、一般論として三十人、二百人の自衛隊員が自動小銃持って歩いたら、あなたどう思いますか。やはり護身用の武器提げて歩いているな、こう思われますか。
  117. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 これはこの法律の第二条に「武力による威嚇又は武力行使に当たるものであってはならない。」ということを大前提として置いておりますから、私が業務計画を想定するときにも、医療部隊とか輸送ということを例示として申し上げましたが、陸上の部隊が単位として武装して出ていくということは、当初からこの法律では想定しておらぬところでありますから、それは委員の方も御理解を賜りたいと思います。何度お尋ねいただいても同じ答弁をいたします。
  118. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 それじゃいいですよ。それはまあ後でね。総理が言われているような、そんなのんきな格好でサウジアラビアの後方支援ができるかどうか。私はできないと思っているから、後からこれはずっと言いますけれども、そういう意味でいろいろとお尋ねをしているわけで、あなたの答弁はよくわかっていますよ。  それじゃ、次に行きます。  今も繰り返されましたが、総理は、十月二十四日の本委員会の総括質問以来きょうまで一貫して、多国籍軍平和協力に関連をして、多国籍軍の指揮下には入らない、武力行使と一体となるような協力はしない、危険なところへは行かせない、再々にわたって繰り返しております。それだけに、あなたが言われていることは私もよくわかっています。そうしてまた、外務省や法制局長官は、多国籍軍への参加、指揮命令下に入ることはだめだが、そうでない協力はできる、こういうふうにもお答えになっている。  果たして武力行使と一体にならぬ協力などというものが可能かどうか、危険なところへ行かない平和協力などというものが可能かどうか、参加協力を画然と区別した活動が可能かどうか。私は、今日これが最大の焦点として残っている、こういうふうに思いますから、以下そこに焦点を絞って、私はあんまり法律問題をやる気はありませんから、軍の最高指揮官である防衛庁長官か総理大臣に主としてお答えをいただきたい、そういう立場でひとつお答えをいただきたいと思います。  十月十九日の衆議院の予算委員会で、我が党の山口書記長の質問に対しまして政府の統一見解が出されました。そして最後の方で、国連決議で行われている活動に関して二つの活動がある。二種類ある。第一は、国連決議に基づき国連が行う活動であり、国連平和維持活動がその典型的なものだ。第二は、決議実効性を確保するため加盟国等が行うその他の活動であり、一連の決議実効性を確保するためにペルシャ湾岸展開している多国籍軍の活動はこのような活動の一例である。こういうことで多国籍軍の後方支援をやる、こういうことを言われております。  そこで伺いたいのは、後方支援というものについて防衛庁長官や総理はどういうふうにお考えになっているか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  119. 石川要三

    石川国務大臣 後方か前線かということでございますが、これははっきりどこまでが後方、どこまでが後方でないということはなかなか明確に言えないことではないかと思います。ただ、一般論として言えば、いわゆる戦闘を展開する、そういうところが前線であるし、また、その前線の部隊に整備とかあるいは補給とかそういったようなものをする、後ろから要するに援護する、そういうところが後方、こういうふうな一つの概念があるわけでありますが、ではどこまでがという、そのきちんとしたものはないのではないか、私はかように思います。
  120. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 「国防用語辞典」によりますと、後方というのは   装備品等の補給・整備・回収・輸送等、人員の輸送、傷病者の収療・後送等、施設の取得・建設・維持・運営等および上記に関連する役務の取得・供給等をいい、この場合、後方補給という こういうふうに解説をされております。こういう意味でいうと、後方という言葉は、これは軍事用語ですね。どうですか。
  121. 日吉章

    ○日吉政府委員 軍事用語として用いられることが多い言葉だと思います。
  122. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 自衛隊では後方という言葉を兵たんと、こういうふうにどうも日常使われておるようであります。そしてその兵たんとは何か、ちょっと兵たんについて聞きます。大臣、ちょっと答えてくださいよ。これは役人の答えじゃないですよ。
  123. 日吉章

    ○日吉政府委員 軍事用語として正確な定義があるわけではございませんが、概して申しますと、兵たんという言葉は戦前において日本で使われました言葉でございまして、戦後は後方というような言葉を用いているということで、おおむね等しい概念だとお考えいただければよろしいかと思います。
  124. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 確かに、今言われますように、自衛隊では大体後方という言葉を兵たん、こういう言葉を使っておるようですが、最近は国際的には兵たんよりももっと非常に幅広い意味で後方、こういう言葉を使っている、これは今御答弁があったとおりです。  それで、兵たんということについても、後方ということとちょっとよく似ていますが、   部隊の戦闘力を維持増進して、作戦を支援する機能であって、補給、整備、回収、交通、衛生、建設、不動産および労務・役務等を総称し、個人や部隊に対する糧食、燃料、弾薬、武器、築城資材等の補給、故障車両・武器等の修理、破壊された戦車の回収、道路・橋梁の補修、車両・鉄道等による人員・物資の輸送、負傷者の治療、その他宿泊、入浴、洗濯、給食等に及ぶ広範な業務を含んでいる。兵站活動を任務とする部隊には、補給処、病院、各職種の補給整備部隊、駐とん地業務隊等があり、師団では武器隊、補給隊等の部隊が、連隊では本部管理中隊が部隊における兵站活動に任じている。 こういうふうに解説をされているわけであります。  ところで、防衛庁長官大臣に聞きたいのですが、これは平和協力のやり方と非常に関係ありますから聞いているわけですよ。後方といっても、今言ったようなことからいえば、軍の作戦の一環の中に位置づけられた活動だ、こういうふうに私は思いますが、どうですか。
  125. 日吉章

    ○日吉政府委員 自衛隊というものはそもそも国防に携わることを主たる任務といたしておりますので、その部隊組織編成はやはり自衛権の発動に絡むことを前提としてつくられております。  しかしながら、その中におきます後方部門といいますものは、まさにある意味では災害派遣のときにその組織そのものがその力が発揮できまして、活用できるようなことになっておりますので、今回平和協力業務につきましても、その自衛隊の組織の中の後方部門の能力というものが十分に生かされるのではないか、かような観点から、自衛隊が組織として参加してこれに寄与することができるのではないか、かように考えている次第でございます。
  126. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 ですから、私は仕事の中身はもうさっき言ったわけですからわかっていますよ。軍の作戦計画の一端として後方支援というものは成立するものだ、そのことを聞いているわけです。その点どうですか。
  127. 日吉章

    ○日吉政府委員 まさに先生のおっしゃられるとおりでございますけれども、その後方の能力というものは軍の作戦計画に寄与することのみしか利用できないのかというとそうではありませんで、その後方の持っております能力を平和活動の方に利用する、活用するということはでき得るわけでございます。
  128. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 私は国連軍の平和活動との関連で聞いているわけじゃないのですよ。あくまでも多国籍軍との後方支援に焦点を絞って聞いているわけですよ。そういう意味でいえば、後方支援というのは軍の作戦計画の一部でしょう。防衛庁長官、どうですか。
  129. 石川要三

    石川国務大臣 軍事的な意味で、いわゆる後方とかまた後方と前線との関係とかということにつきましては、ただいま官房長からいろいろと答弁があったようなことであると思いますが、ただ、国連平和協力隊という中ではなくて、イラクから見た場合の後方ということについての先生の御質問ではないかと思いますが……
  130. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 私はそういうことを聞いていない。イラクとかサウジアラビアとかいうことを聞いていない。要するに、後方というのは軍の作戦行動の中で成立をしている、こういうものだろうということを聞いたわけですよ。今イラクとかサウジアラビアとかそんなことは一応こっちにおいて、一般的な位置づけを聞いているわけですよ。
  131. 日吉章

    ○日吉政府委員 同じ答弁を繰り返して恐縮でございますが、先生おっしゃられますように、作戦部隊全体の中での後方支援部隊というものは位置づけがされているということは事実でございますが、これはその際に作戦行動を支援する能力のみしか持たないかといいますと、そうではありませんで、平和協力業務とかあるいは災害復旧業務の場合には、その部分の能力が生かし得るというのが一点でございます。  もう一点は、先生のお尋ねは、現在サウジに展開されております多国籍軍に対して一体となって後方支援をするのではないか、こういうふうなお尋ねではないかと思いますが、その点につきましては、多国籍軍そのものはそれぞれの部隊、師団とか連隊とか、そういう形で出ておりますので、それぞれのユニットにはそれぞれが既に後方支援部隊を抱えた形で出ていっております。そういう意味で多国籍軍は後方支援部隊も含めた形で完結したものとなっております。したがいまして、もし日本協力隊協力するとしますと、その完結された後方支援部隊も含めたユニットの外から何がしかの協力をする、こういうことでございます。
  132. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 私は、今官房長ですか言われたとおりだと思うから、平和協力隊が出る場所はない、こう思っているわけですよ、本当は。後でそれは言いますが。  どっちにしても、私が再々ここで確認をしておるのは、後方支援というものはあくまでも軍の全体の作戦計画の中にきちっと位置づけられたものだ、このことをとにかく認めるかどうか、こう言っているわけですよ。そういうものでしょう。平和協力隊の関係とはちょっと切り離して答えてくださいよ。
  133. 日吉章

    ○日吉政府委員 それは、何度もお答え申し上げておりますように、委員御指摘のとおりでございます。しかしながら、作戦行動と一体とならないとその後方支援部隊が何の役にも立たないかというと、そうではありませんで、別の災害復旧とかそういう形でのお役にも立ち得るということでございます。
  134. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 災害派遣だとか、そんないわゆるPKへの活動は私は聞いていないですよ、ここでは。聞いていないことまで答えなくていいですよ。  それで、これは自衛隊のテキストですよね、野外令合本というのをちょっとコピーして持ってきましたが、何と言われようと、兵たんというのは、後方支援というのは軍の作戦行動と一体でなければ役に立たぬのですよ。  例えばこういうふうに書いてある。   兵站の目的は、部隊の戦闘力を維持増進して、作戦を支援するにある。   兵站は、国家の策源から末端の個人に至るまでの一貫的かつ継続的な機能であり、補給、整備、回収、交通、衛生、建設、不動産及び労務・役務等の総称である。 こうなっています。そして、   兵站は、立体的、流動的、かつ直接・間接両侵略の複合した現代戦の様相から、常に戦闘態勢を保持しつつ、作戦の支援に万全を期することが重要である。 こう言っているわけですよ。  余り詳しいことは言いませんが、まだほかのところをちょっと言いますと、例えば、   兵站運用にあたっては、 ここが大事なところだ。  作戦構想に基づき、明確な方針のもとに、兵站組織の構成、兵站部隊の運用及び兵站業務の運営を有機的に総合一体化し、兵站活動を適切に律する。   兵站組織は、作戦構想に基づき、戦況の推移、地域の特性、兵站部隊の能力、平素の準備状況、利用可能な部外力及び作戦準備期間等を考慮し、部隊の規模に応じて、所要の支援地域と、これらを有機的に連接するための交通網とをもって構成する。 こういうふうに、部隊の作戦行動と切り離すことができないというふうにちゃんと自衛隊の一番初歩的な教科書の中に書いてあるわけですよ。どう思いますか、防衛庁長官
  135. 石川要三

    石川国務大臣 今先生がおっしゃったことを私どもは否定しているわけじゃないと思うのです。先ほど官房長から言った内容も、今先生のおっしゃったことを真っ向から否定しているわけではございません。  ただし、官房長も言うように、いわゆるそういう面ももちろんあるわけですけれども、しかし、災害ということになるとまた怒られますけれども、そういう平和的な面でこのノーハウといいますか機能というものを活用できる面もある、こういうふうに私は申し上げるわけでございます。
  136. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 もうちょっと詳しくやりたいのですが、時間がありませんので先に進みますが、それでは、防衛庁長官も大体作戦行動と一体のものであるということは基本的には認められた。しかし、それ以外の仕事もある、こう言ってはおられますがね。  そこで、これは総理に本当は一番お伺いしたいのですが、平和協力隊を出して、安全なところだけで危険なところへ行かせない、武力行使にわたるなら行かせない、こう言って再々繰り返しておられるが、平和協力隊というのは、例えば戦闘部隊展開をしておるところは、皆さん御承知のように、最前線から後方までを縦深、こういうふうに言っている。その縦深のどの位置で平和協力隊は活動することになるのか、縦深陣地の中へ入るのか入らぬのか。この点ちょっとお聞きしたい。
  137. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 具体的にどのような場所に平和協力隊派遣するかという点につきましては、先ほど御答弁申し上げましたように、具体的な事案に即して業務実施計画を作成いたしまして、そして決定するということでございます。したがいまして、抽象的にどのようなところに行くかということはお答えしにくいわけでございますが、いずれにいたしましても、武力行使と一体となるような態様での派遣は行うことができないというのがこの法案の基本的な組み立て方でございます。
  138. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 私の質問に対する答えには私はなっていないと思う。防衛庁長官御存じでしょう、第一線の部隊展開している最前線から、さっき言った、兵たんの任務を担っている病院から補給部隊が位置しているところまで、まあ後方ですな、前線から後方までを縦深とこう言っていますね。軍事用語でしょう。縦深を防衛庁長官わからぬと困りますよ。その縦深の中に位置するのかしないのか、こう聞いているわけですよ。これは具体的に聞いていますよ。抽象論じゃないですよ。
  139. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 具体的にというお尋ねでございますけれども、どのような態様で平和協力隊派遣するかということは、具体的な案件を離れてどこまでかということは申し上げにくいわけでございます。  縦深ということをおっしゃいますけれども、これは軍事的に明確な定義があるかどうか私よく知りませんけれども、いずれにいたしましても、もし武力行使と一体となるような態様で協力することになるということであれば、そのようなところには派遣しないということでございます。
  140. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 これは条約局長の所管じゃないですよ、防衛庁ですよ。第一線のいつ戦争を始めるかわからぬような、軍隊が展開しておるところですよ。縦深の中に入るのか入らぬのかというのは大問題ですよ。ちょっと専門的なこともあろうかと思うので、防衛庁どうですか、お考えをはっきりしてください。
  141. 日吉章

    ○日吉政府委員 閣議決定をされました業務派遣計画に基づきまして、防衛庁といたしましては、自衛隊等あるいは自衛官派遣するということになるわけでございます。  したがいまして、そのときにどのような派遣計画が決定されるかによるわけでございますが、私どもの理解しておりますところでは、仮に多国籍軍に何らかの形で協力するというような計画でありました場合にも、先ほど私がお答え申し上げましたように、多国籍軍そのものが一つの完結されたユニットといいますか、後方支援部隊も従えました部隊として展開されていると思いますので、それらに対しまして何らかの協力をするといたしましても、多国籍軍武力行使と一体となって協力をするというようなことは考えられない、かように考えております。
  142. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 多国籍軍の後方支援平和協力部隊一つの大きな仕事だ、こう言っておるわけでしょう。それが、効果的な支援をするのに全く無関係に切断をされたままで有効な支援協力活動なんかできないですよ。どうしてやりますか。はっきりしてください。
  143. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 先ほど来御答弁申し上げておりますように、平和協力隊というのはあくまでもこれは戦闘部隊ではないわけでございます。そしてその任務は、御承知のとおり三条に列記されているものでございますし、また、これが武力行使等に当たるようなものであってはならないという基本的な制約があるわけでございます。したがいまして、仮に多国籍軍に対する何らかの協力を行う場合におきましても、そのような制約の中で行われるわけでございますから、前線に出ていって協力をするということはできないわけでございます。したがいまして、そのような制約の中でできることを行うということでございます。
  144. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 私の質問に対する答えになっていないですよ。私は前線の話なんか聞いていない。後方のどの位置に入るのか。縦深陣地というのは前線から後方まで全部一切合財含めた用語でしょう。だからその前線でない後方のどの位置におって働くのか。武力行使をするとかなんとか私言っていないですよ。丸腰でも結構ですよ。その中へ入るのか入らないのか、こう聞いているわけですよ。大事なことですよ。安全なところかどうか、私、確かめたいから聞いているわけですよ。
  145. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 現実に起こります武力紛争の発現形態というのは大変複雑であろうと思います。したがいまして、御指摘のような地理的な関係というのはもちろん考慮すべき一つの要素であると思いますが、それだけで決まるということではないと思います。武力行使の具体的な状況でございますとかその他の態様を総合的に判断いたしまして、武力行使と一体となるかどうかということを判断すべき問題であろうと思います。
  146. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 全然私の質問に対する答えになっていないですよ。  防衛庁長官、あなたは三軍の長ですが、現代戦で第一線から後方まで部隊展開するとどれぐらい距離があると思っていますか。
  147. 日吉章

    ○日吉政府委員 大体師団を単位に展開されるのが通常であろうかと思いますが、国際的に師団といいましても区々に分かれておりましてその大きさが違います。したがいまして一概に申し上げることはできませんが、数十キロというふうにお考えいただければよろしいかと思います。
  148. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 まあ答えがないから私が言いますが、軍事専門家の言うところによると、サウジアラビアなんかに展開している多国籍軍、何十万の軍隊ですよ、大体縦深六百キロメートルというのですよ、主力部隊展開するのは。海部総理が言っているような意味で安全なところというたら陸へ上がれないですよ。いいですか、上がらないのですか。平和協力隊、それならばサウジアラビアの陸へ上がらぬのですか。大事なことですから確認しますよ、上がらないのですか。
  149. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 それは前からお答えしておりますけれども、危険な前線とかそういうようなところへそもそも行くべき性格のものじゃございませんので、業務計画だってそういう戦闘の行われておるような危険地域は外して、そして今、貢献策をつくるときにもいろいろ想定しましたのは、空と陸で一定の地点まで輸送協力をするということに限定しておりますから、部隊派遣して陸上へ上げてというようなこと、それは毛頭想定しておりません。
  150. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 部隊とかなんとかということは別にして、私が言っているのは第一線じゃないですよ、必ずしも。第一線から後方まで縦深陣地の中に入るか入らぬか、こう聞いているわけでしょう。第一線でドンパチやっているところばかりじゃないですよ。そういうことも含めて、もし縦深陣地の中へ入らぬというのだったら、主力が六百キロもあったらサウジアラビアへ上陸しなくてもいいのですよ、上がることはできなくなりますよ、そういうふうに聞いているわけですよ。だからそういう意味で、陸へは上がれないのですな、こう聞いたら、上がらぬと。私は初めて聞いたような気がしますね、陸へ上がれないというのは。(海部内閣総理大臣部隊は上がれない」と呼ぶ)いや、部隊に限らず平和協力隊そのものが上がれなくなりますよ。そうじゃないですか、もしものときは。ちょっとはっきりしてくださいよ。どうですか。
  151. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 言葉じりをとらえてお言葉を返すようで恐縮ですけれども、私は、現に交戦が行われるような危険なところへ派遣するつもりは毛頭ありませんし、また、そういうところへ行ってお役に立つような戦闘部隊を出そうということも冒頭から全然考えておりませんから。ただ個々のケースを見たときに、じゃ今日、私もサウジアラビアへこの間行ってまいりましたけれども、ああいう状況のときであったら生命の危険は特に感じませんし、それから絶えず六百キロというのは僕は想定できません。前線が奥まで六百キロいつも続くとは思いません、これはどう常識的に考えても。  それから、むしろ今回の場合は国と国との戦闘状態を想定して物を言っているのじゃなくて、国連が戦争をやるなと言って、戦争抑止力を配備しているわけですから、それが六百キロの後ろまで、難しい名前の、縦深と言ったですか、そういうのを配置して、その間が全部危険地帯で、その間はいつでも戦闘地帯でというような、私はそういう発想は全然考えられませんので、具体的に要請があったときにはどのような協力がこの平和協力隊の仕組みの中でできるか、それを真剣に慎重に考えていくと何回もお答えしておるところであります。
  152. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 それではちょっと聞きますが、防衛庁長官、今サウジアラビアへ展開しているアメリカ軍は幾らですか、兵数。
  153. 内田勝久

    ○内田(勝)政府委員 私どもが承知しておりますのは、多国籍軍のうち米軍がサウジアラビアに展開しております数ですけれども、十万人を超えている、このように理解をしております。
  154. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 まあ新聞などによりますと二十一万、こういう数字もありますね。最近また十万人増派するかという話もありますね。もし二十万になったら、防衛庁長官、全自衛隊が配置をされるのと同じくらいな規模になりますね。だからもう数十キロなんて規模じゃないですよ、そんな大部隊が配置をされたときには。まあいいですわ、時間が刻々過ぎますから先へ進みます。  それで、総理は今陸へ上げないと言われるから、陸へ上げなければ余り問題ないかもしれませんが、部隊といったっていろいろある、数十人の小隊もあれば千人の部隊もあるわけだから。全然上げないというわけじゃないでしょう。どうぞ答えてください。上がらないなら上がらないで結構ですよ。
  155. 石川要三

    石川国務大臣 上がるとか上がらないとかということはさておきまして、先ほど来総理がもう再三繰り返して申し上げておりますように、これは先生の質問を私も拝聴しておりまして感じますことは、例えば多国籍軍一つの主要な軍でありますアメリカ軍がやがて二十万を超えるであろうとか、いろいろと数字を挙げて御質問されておりますが、感覚的にかなり私は隔たりがある。私どもが仮に平和協力隊参加をして物資を輸送する、例えば飛行機なら飛行機で物資を輸送するという場合に、当然どこかの飛行場におりなければならない。その飛行場の完全な安全性がなければこれは私どもはできないわけでありますから、そういう中でまずこの平和協力隊の仕事をする、私どもはこういう認識でありますから、その点ひとつ誤解なく、戦闘の状態の中でやるということじゃございませんので、その点はひとつ御理解をいただきたい。
  156. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 ちょっと伺いますが、確かに今は戦闘行動に入っていない、いわゆる抑止力として今は展開している。しかしそれはあくまでもそれが抑止力であるためには、場合によってはいつからでも戦端開くよ、こういう状況が前提にならなければ抑止力の意味ないでしょう。そうでしょう。どうですか。
  157. 石川要三

    石川国務大臣 抑止力という意味からいえばそういう面もあろうかと思います。ただ、繰り返すようでございますけれども、これはまた総理も再三申し上げておりますように、とにかくそういう飛行機の輸送一つとってみても、そのような前提条件があるわけであります。その中で私どもが作業をする、こういうわけでありますから、今言うようなそういう状態の場合には、例えば急遽途中で戦争が始まったらどうするかというようなそういう場合には、これはもちろんとっさ的なことでありますから、初めからわかっていないようなことでありましょうけれども、十二分に国際情勢、国際軍事情勢、そういう前提のもとにやる。それで、万々が一そういうような場合には最善の努力で安全の確保を図る、こう言う以外に私はないんではないか、かように思います。
  158. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 あなた方言われるように、そんなにきれいにいかないだろう、私はこう思っているから、繰り返しいろいろ聞いているわけですよ。  時間がありませんのでちょっと先へ進みますが、現代の戦争において後方を非常に重要な攻撃の目標にして戦争をする、これはもう第一線で正面作戦をやるということもあるけれども、後方の物資だとか弾薬だとか、そういうところをやはり攻撃をしてそういう補給を断つ、これが重要な戦略の一つでしょう。どうですか、防衛庁長官
  159. 石川要三

    石川国務大臣 先生の御指摘は私は正しいと思います。特に、去るいわゆる第二次世界大戦のあの戦史を読んでみてもおわかりのように、いかに後方部隊というものがいわゆる勝利に結びつくものであるかということは、もう歴然たる歴史が証明しているわけでございますから、まさにその点は、後方の重要性というのは御指摘のとおりだと思う。  ただ、私どもは繰り返すようでございますが、やはりできる範囲は何かということですね。ですから、よく私はこの国会が始まって先生方の御質問あるいはまた政府答弁、やりとりを聞いておりまして感じますことは、例えば戦後四十五年たった。もう四十五年かという見方、まだ四十五年かという見方、同じ四十五年というものには変わらないけれども、いかにもうとまだとの違いが非常に大きくあるか。ですから私は、今回のこの平和協力隊の中の仕事にしても、初めからできない、できない、できないと言えば非常にまた狭くなる、しかし、その中でも何かできるものがあるかという努力、これを私どもがやらなければならない、かように思うわけであります。
  160. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 大体十六、七世紀ぐらいまでの戦争は、ほとんど食糧は現地調達、武器はもう刀かやりかそんなものですから、余り消耗しない。余り補給は考えなくてもよかった。しかし、現代戦になればなるほど消耗が激しくなって、いわゆる消耗戦、総力戦、こういう戦争の形になりました。結果、後方をどうするかということが非常に重要な戦略的な目標になってきた。  まあ、今防衛庁長官も大体基本的には認められましたが、そういう意味で言うと、例えば二十世紀最高の軍事戦略家であるリデル・ハートの戦略論を読むと、間接アプローチ、交通線の切断、退路の遮断、補給線の破壊による後方攪乱、破壊の重視。結局は孫子が言っているように戦わずして勝つ、そのためにできるだけ正面作戦を避けてこういうところへ攻撃を集中する、これが非常に重要な戦略の一つになっているわけですね。そして、補給線は戦争の八割を制する、こういう補給線についての専門家の研究の結果もある。  ですから、一たん戦争になったときには後方が非常に重視をされる。攻撃の対象にされる。そういう意味で、縦深陣地の中で後方の配置に仮についたとすれば、安全なところではないのですね。非常に攻撃の対象にされる。これはそういう意味で軍事戦略として後方支援が極めて重要だ、現代戦の中では。もう一遍確認をしたいと思うのですが、そのとおりですな。     〔西田委員長代理退席、委員長着席〕
  161. 石川要三

    石川国務大臣 確認でございますから同じ答えになると思いますが、第二次世界大戦のあれを振り返ってみても、私は、我が軍が負けたということの大きな原因の一つは、後方というものが力が弱かったということはもう歴然たる事実でありますから、後方の重要性はしかりであります。それだけは確認いたしますが、平和協力隊の中の私どものやるべき任務というものは、また別でございます。
  162. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 ちょっとこれは総理大臣に簡単な質問ですから聞きますが、あなたは、ベトナム戦でアメリカが敗北をした、アフガンからソ連軍が撤退をせざるを得なかった、この最大の敗因というか原因は何だとお考えですか。
  163. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 質問通告の中に入っておりませんでしたので、私も戦史を詳しく読んだわけではありませんから、率直な感じですけれども、アメリカの考えておる戦略というものと戦術のやり方というものと、それからベトナムで現実に行われている戦略、戦術のやり方というものの差があったのではないだろうか。同じように……(発言する者あり)答弁中ですから聞いてください。同じように、ソ連がアフガンに入ったときも、ソ連の持っていったあの近代的な兵器とか戦車とかいろいろなものと、アフガンの人々の対応したやり方というものとが全然食い違っておったのではないだろうか。その結果があのようなことになったのではないかな。今突然の御質問ですから、私のあらん限りの記憶と知識でお答えを申し上げると、そういうことでございます。
  164. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 御承知のとおり、ベトナムでゴ・ジン・ジェムの独裁政権に対する武装闘争、ゲリラが始まったのが一九五九年ですから、その一九五九年から六〇年にかけてですが、六〇年十二月二十日の南ベトナム解放民族戦線の結成に続いて、六一年二月十四日に解放民族戦線人民武装勢力が成立をする。アメリカは六一年の七月から特殊戦争を開始をし——特殊戦争というのはゲリラ戦のことですね。特殊戦争を開始し、そしてサイゴンに軍事司令部を設置する。そして、六四年八月のトンキン湾戦争に続いて北爆を開始する。特殊戦争が開始されたころのアメリカ軍は二万人程度。六五年、特殊戦争から局地戦争に移ったころ、アメリカ軍二十万人。そして、六九年の六月にアメリカ軍は五十四万人。これに衛星国の軍隊約七万人、南ベトナムの政府軍六十万人を合わせて、合計百二十万人の兵力が戦闘に参加した。しかし、七五年四月、ホー・チ・ミン作戦でサイゴン解放、ベトナムの独立と南北統一を実現した。最新の近代装備を持つアメリカ軍の、しかも五十万を超える大軍を投入して、なおかつベトナム解放軍との戦いに勝てなかった。  そして、ソ連軍のアフガニスタン侵攻についても、投入兵力はちょっと公開されていませんからわかりませんが、どっちにしたってアメリカ軍に負けない近代装備の恐らく十万や十五万を超える大軍だったと思う。アフガニスタンに侵攻しました七九年の末から八九年に撤退が終わるまで約十年間、大体十五年間のアメリカ軍の戦死者は五万七千九百三十九人、ソ連軍の戦死者は一万四千百四十三人、こういうふうに言われています。全く近代装備を欠いたアフガニスタンのゲリラ、そしてベトナム民族解放戦線のいわば、最後は正規戦になりますから正規の軍隊の戦いになりますが、相当期間はゲリラの戦いですよね。そのことをお認めになりますか。
  165. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 いずれにしても、武力でもって他国に入っていくということの結果を厳粛に私は受けとめております。
  166. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 最高の現代的な武装をしたアメリカ軍、ソ連軍とアフガンのゲリラ、ベトナムの人民解放軍、戦いの勝因は、やはり最後は正規軍の決戦だけれども、相当長期にわたっていますから、ゲリラ戦で近代装備のアメリカ軍やソ連軍を事実上敗北に追いやった、こういうふうに私は思いますが、皆さんどうですか。
  167. 内田勝久

    ○内田(勝)政府委員 お答え申し上げたいと思います。  突然のお尋ねですので、私もただいま直ちにベトナム戦争及びアフガン戦争におきまする米軍あるいはソ連軍の敗北の原因について定かに申し上げる立場にございませんけれども一つには、委員御指摘のとおり、ゲリラ戦の力あるいはその土地の土着の力というものがあずかって、ゲリラ側あるいはゲリラ戦をやっておりました側の戦争の勝因になった、このように理解しております。
  168. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 総理、ベトナムでは御承知のように、ゲリラが相当な正規軍を持つまでは、例えばジャングルの中に落とし穴を掘って、そこへいわばとがった木をちょっと並べたり、そしてアメリカ軍の何十人かを落とし込むようなそういう方法をとったり、それから、私は田舎の生まれですからよくわかりますが、海部総理はわかるかどうか知りませんが、例えば竹でもってシカやイノシシをとるようなそういうわなをたくさん仕掛けて、アメリカ軍をばあっとつるし上げてやっつけるとか、鉄砲や大砲じゃないですよ、そういう戦術を不断に採用しながら影響力を増加をして、最後は強力な正規軍をつくって戦った。要するにゲリラ戦ですよ。アフガニスタンでもやはりゲリラ戦でソ連軍は勝てなかったわけですな。険峻な山岳を利用したゲリラ戦。大体、発展途上国や第三世界の戦争というのは、こういうゲリラを主体にした国民戦というか、そういうのが本流なんですよね。そのことを認めますか。
  169. 内田勝久

    ○内田(勝)政府委員 ただいま委員御指摘のような側面もあったと私も考える次第でございます。
  170. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 ベトナムのジャングル、アフガニスタンの険峻な山岳地帯、それに比べればサウジアラビア、とにかくアラブ地帯は砂漠だ。そういう点では砂漠地帯はゲリラ戦には非常に不適じゃないか、こういう説もあります。しかし、私はそうは思わない。  御承知でしょうが、有名な「アラビアのロレンス」という映画があった。あれは、イラクが一九二二年ですか独立するまでに、トルコ軍との争いの中で、いわば砂漠を利用したゲリラ戦で勝ったわけですよね。だから、サウジアラビアやアラブの砂漠地帯でも私はゲリラ戦はないとは言い切れない。むしろ何千年砂漠で生活をしてきた知恵があるわけですから、そういう知恵を駆使して、我々がもし行ったときには、御承知のように摂氏の四十度から五十度、灼熱の太陽、砂漠地帯、そういう知恵を駆使をされたときには、やはり近代装備を持ったアメリカ軍といえどもそう簡単ではないんじゃないか、私はこう思うのですよ。要するにゲリラが非常に大きな戦い、戦略の柱になっている。そのことをまずここで申し上げておきたい。  余り時間がありませんから先を急ぎますが、もう一つはテロですね。アラブを中心にしたテロの実態がもしわかったらちょっとお答えいただきたい。
  171. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 アラブあるいは中東におきますテロ活動につきましては、いろいろなグループがございますし、いろいろな形態のものがあるというふうに考えます。ただ、詳細につきましては、ちょっとただいま私も資料を持っておりませんので、その点調査させます。
  172. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 アメリカの国務省の調査によると、一九六八年当時、世界じゅうで百四十二件、死者二十人のテロがあった。一九八〇年には約五百件を超え、さらに一九八七年には八百三十二件、死亡者六百三十三人、負傷二千二百七十二人に達している。近年増加の一途をたどっている。こうした発生件数の急増に加えて、最近におけるテロ活動の特色として、攻撃目標の無差別化や手段の拡大、高度化、テロ行為の国際化、国際テロの発生ですね。それから国家支援によるテロの増加等が挙げられる、こう言っているわけですよ。  国際テロの発生について見ますと、一九六四年のPLOの結成を契機とし、六七年には過激派の集団PFLPですかが誕生し、このほか暗黒の九月だとか赤い旅団だとか、極左イデオロギーを標接する集団が共産主義諸国や、特に大事なのは、リビア、アルジェリアの支持のもとに、六〇年代から七〇年代にかけて国境を越えたテロ活動が活発に行われた。一九八〇年代に入ると、今度はイラン、リビア、シリア等、イスラム原理主義を唱える国が中心となり、国際テロが再び増加。しかも、かつてと異なり、これら特定の国家自身もテロ活動のプレーヤーとなる国家テロの時代に入った。現代はまさに国際テロと国家テロの融合化した時代であり、テロリストとそれを防ぐ国家との対決はまさに国家間戦争の様相を呈しており、一九八六年の米軍機よるリビア爆撃はその代表と言えよう、こういうふうになっているわけです。アメリカの国防省レベルではテロ対策専門の部隊がつくられている、こういうふうに言われておるわけですね。  今のことからも明らかなように、テロが一番頻発をしているのはアラブ諸国なんですね。ゲリラは武装部隊に対する攻撃であり、テロは普通一般人に対する攻撃、そういうふうに一応分かれていますが、そういうことからいって、私は、海部総理が言われているように、幾ら小人数であっても、この地域に多国籍軍支援で上陸をする、ゲリラの対象にされテロの対象にされる、その可能性は非常に大きいと思う。どうですか。
  173. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 ただいま先生が米国の資料を引いてお述べになりましたように、歴史的な経緯もございまして、例えば六七年の中東戦争以降のある時期において、パレスチナ系のゲリラ活動が盛んに行われたということもございますけれども、他方、PLOについて申しますれば、既にテロを放棄して路線の転換をいたしておりますし、そのときそのときによってやはりどこでどういう種類のテロが起こるかということは異なるかと思います。それからまた、テロ活動は中東そのもので起こっておると申しますよりは、例えばヨーロッパその他を舞台にして起こっておることも非常に多いかと思いますので、特にアラブ諸国においてテロの危険が高いということは一概には言えないのではないかと思います。
  174. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 いずれにしましても、さっきから言っていますように、現代戦の性格からいって後方といえども非常に危険だということ、ゲリラ戦、テロの拡大、そういうことからいって私は、総理が繰り返し言われているように、仮に安全地帯に行ったとしても安全とは言えないような状況がある、そういうことを繰り返し強調しているわけであります。しかし、これは答弁は食い違ったままですから、あと、少ししか時間がありませんので次に移りたい、こう思います。  最後に、本当は時間があれば制服組の主張についていろいろと詳しく聞きたかったのですが、時間がありませんので、一つだけ聞きたいと思います。  文芸春秋の十一月号に「檄文 統幕議長に告ぐ たとえ首を切られても「丸腰派遣命令」は拒否せよ」、こういう陸上自衛隊東部方面総監部前総監・陸将源川幸夫氏の論文が載っておりますが、総理、読まれたんですか、ちょっとお聞きします。
  175. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 まだ読んでおりませんです。
  176. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 こういうことを言っているわけですよ。防衛庁長官に特に聞きたい、あなたの立場もあるでしょう。   政府が進めている国連平和協力隊(仮称)の創設構想でも、案の定、自衛隊をオモチャ扱いしようとしている。巷間論議の的となっている自衛官の”丸腰派遣”など、制服自衛官立場からすれば、これほど人をバカにした話はない。呼び名はともかく自衛隊といえども一歩国外へ出れば、軍隊であることに変わりはない。国際的な常識で言えば、そうなる。 こう言っているわけですよ。  「とすると、”丸腰”で出掛けろというのは、軍隊に対し武装解除して出掛けると言っていること」と同じだ、「もし自衛隊が”丸腰”で派遣されたなら、世界中から物笑いの種になることは」必至だ、こう言っているわけですよ。防衛庁長官、どう思いますか、この辺について。
  177. 石川要三

    石川国務大臣 実は、その文芸春秋をまだ読んでおりませんので、その点については私はコメントは避けさせていただきたいと思いますが、今のお話を聞いただけでどう思うかということでございますが、ただ、丸腰で戦争に行けというんじゃないので、丸腰で平和協力隊業務に携わるわけでありますから、そこいらがどういう意味ですか、よく意味はつかめないのですけれども、コメントは避けさせていただきたいと思います。
  178. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 今戦争に行くって言っているわけじゃないんですがな。ちゃんと平和協力隊として丸腰で行くって言っているわけですから、これは。  もう一つ、   自衛隊を本当に派遣するというのなら、小銃を携えるなど最小限の武装をさせ、制服姿で行かせる。何も戦車や大砲を持って行けと言っているのではない。しかも、指揮系統を明確にした部隊編成をして行かなければ、行っても何の意味もない。それができないと言うのなら、絶対に自衛隊派遣すべきではない。   制服自衛官派遣命令に断固、抵抗すべきである。例え処罰されても、”丸腰派遣”は承服してはならない。一体、”丸腰自衛官”にどの面下げて中東へ赴けと言うのか、逆に問い返したいぐらいだ。  私は、小銃の携行というのは恐らく外務省は本音のところ反対だったと思う。ある新聞によると海部総理は、平和協力隊については恐らく青年海外協力隊派遣ぐらいに思っていたんじゃないか。これは新聞記事ですよ。ところが小銃を持つことになった。これはやはり制服と外務省か政府の妥協の産物として私は恐らく小銃だけは持たせる、こうなったんじゃないかと思うのですよ。どっちにしても、断固抵抗すべきだ。まだこれからも抵抗されるかもしれませんよ。どう思いますか。
  179. 日吉章

    ○日吉政府委員 ただいま委員が御引用になられました文書は、既に退官をしております一元自衛官意見でございます。したがいまして、これが自衛官全体の意見を代表しているというわけではございません。なおかつ、先ほども大臣から御答弁を申し上げましたように、平和協力隊につきましては、第一線に行って作戦行動に参加するというようなことではございませんで、あくまでも平和協力活動に従事するということでございます。なお、治安の悪い地域もあろうかというようなことで、必要と認められる場合には二十七条でもって小型武器を携行することができるというふうになっているわけでございまして、その点は十分御理解をいただきたいと思います。
  180. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 自衛隊をやめた人の話だ、こういうことですが、これは自衛官を辞して七十日余り、毎日テレビを見ていて、こういう論文を書いておるわけですよ。お互い人間が、きのうまで制服を着ておったから、この間脱いだばかりだから、がらっと人間が変わるというものでもないでしょう。また、ずばり制服ではなかなか本音は言えない、だから元制服の人の立場をかりてこういう論文を書いている、私はこう思いますよ。全く無関係などとは私は言えないと思いますよ。  それで、もう一つはこう書いてある。  制服トップが本音を言うことが、少しは政治を動かすパワーになるかも知れない。制服の本音を国民もバックアップしてくれるはずだ。   まず、陸、海、空の各幕僚長が制服の本音をまとめ、「やる」と決める。それを(寺島泰三)統幕議長に具申する。「俺は首をかけてやる。ただし、言いたいことは言う。それでダメなら、どうか音を切ってくれ。しかし、これは自衛官の良心であり、本音である」と。 こう言っておるわけですよ。これは自衛隊部隊の大部分を代表しておるかどうかは別だ。どっちにしても、元陸将ですよ、陸上自衛隊東部方面総監部前総監ですよ、大将ですがね。私は、制服の人々がここまできているということは非常に危険だと思うし、重大なことだと思う。総理大臣どう思いますか。
  181. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 私は、今委員の御質問を聞いておりまして、もし本当にすべての自衛隊の人がそう思っているんだということになれば、これは重大だと思います。  同時に、私は昨日以来いろいろ御議論を聞いておって、与党の皆さんはもちろんのこと、野党の皆さんの中にも、新聞の見出しに出るように非武装の自衛官派遣しなさい、冷戦後の自衛隊はどのようにするか考えなさい、あるいは自衛官派遣は異議がある、いろいろな御意見を各党それぞれのお立場で述べておってくださるということの中に一貫して、その論文とは違って、自衛官が行くときもやはり今の状況では非武装で行くのがいいだろう、原則非武装で自衛隊参加をして、組織された経験とか訓練技能を発揮することが国連の平和維持活動に協力するにはいいことだという角度のコンセンサスはそこにあると思うのですよ。  そうしますと、そういった意味において、それでもなおかつだめだから武装させなければだめだというような、そういう発想的なお考えは、これは私はやはりごく一部の限られた議論として聞いておくより仕方がない問題で、それが自衛隊のすべてであるとはどうしても思えませんし、同時に、この国会の議論こそが文民統制の中で一番求められておる平和と繁栄のために日本はどのような協力ができるかということの議論の場でありますから、ここの皆さん方の代表的な声もこういうことになっておりますので、私はそれは一部の希有な御意見である、このように受けとめさせていただこう、こう思いました。
  182. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 最後に、一つだけ聞きたいのですが、総理はシビリアンコントロールについてはどういうふうにお考えですか。
  183. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 文民統制と申しますか、武官の意見が先行するんじゃなくて、むしろ政治の中で文民が考え、コントロールしていくことが極めて大切である、そういうふうに私は理解をしております。
  184. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 私は、やはりシビリアンコントロールの焦点は政治家の責任、特に国家の長期にわたるいわば大戦略というか、そういうのを扱うのはやはり内閣総理大臣の最高の仕事だと思うのですね。そういう意味で、内閣総理大臣姿勢がちゃんとしておって、しかも、ずっと長期にわたって国際情勢を見通し、また我が国の将来を見通してちゃんとした軍に対する指導をする、それがやはりシビリアンコントロールの一番大事なところだと思う。今度のこの法案審議をめぐる経過が明らかにしているように、その内閣の姿勢が絶えず右に揺れ左に揺れする、そういうことでは私はシビリアンコントロールは全く意味をなさない、こういうふうに思っています。  きょうは時間がありませんので十分できませんでしたが、さっき防衛庁の方からもありましたように、大体多国籍軍は後方支援、後方の体制からワンセットで全部持っているわけですから、そこに協力隊が手を出すすきは全然ないのですよ。どっちにしても私は、そういう意味であえて平和協力隊の中に自衛隊を込みにして海外へ出す必要は毛頭ない、全くその状況はない、こういうふうに思います。ですから、そういう観点に立ってこの法案は潔く撤回をされて、新規まき直しでひとつ出直していただきたい。これだけ申しまして、私の質問を終わります。
  185. 加藤紘一

    加藤委員長 次に、水田稔君。
  186. 水田稔

    ○水田委員 二十三日からこの委員会での審議がずっと行われておるわけでありますが、聞いておりまして、一体この法案というのは何だろうか、例えば便宜置籍船なら何を運んでもいい、あるいはまた指揮権は一体どうなっておるのだろう、総理は危ないところへは行かせないと言うけれども、今の戦争の態様からいえば、危なくないというのは前方後方を問わずそんなことはないわけでありますから、そういう点で多くの疑問が残ったままであります。  そこで私たちは、イラククウェートへの侵攻というのは許されないことである、それはもう当然なことでありますが、我々が、日本が一体国際社会で何をすべきかという基本になるのはやはり国連決議だろうと思うのです。そのもとのところを再確認の意味でお尋ねをしたいと思うのです。一つは、国連安保理事会の六百六十号というのは一体どういう決議なのか伺いたいと思います。
  187. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 ただいま国連決議六百六十号についてお尋ねかと存じますが、この決議六百六十号は、「イラクのクウェイト侵攻に関し国際の平和と安全に対する侵害が存在する」ということを決定するということがまず前文にうたわれております。したがって、憲章三十九条及び四十条のもとで行動して、イラククウェート侵攻を非難する、次いで、イラクがすべての部隊を即刻かつ無条件に撤退させることを要求する等が主な項目になっております。
  188. 水田稔

    ○水田委員 確認いたしますが、一つは、イラククウェート侵攻を非難するということですね。そして、無条件に撤退することを要求する。イラククウェートに対して、立場の違いの解決に向けた集中的な交渉を即座に開始するよう要請するというようなことでございますね。
  189. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 そういうことでございます。
  190. 水田稔

    ○水田委員 そうするとこれは、これに基づいて例えば具体的に日本に何をしろという要求があったのでしょうか。
  191. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 この決議自体は、イラククウェート侵攻非難とイラクに対する無条件撤退要求、それとイラククウェートに対して集中的な交渉を即座に開始するよう要請すること、同時に、この点に関するすべての努力、特にアラブ連盟の努力を支援するということでございまして、日本に対する直接の要請はございません。
  192. 水田稔

    ○水田委員 答弁は簡潔に、質問に対してそのものに答えてもらいたいと思います。  具体的な要求はこれによってはない、こういう勧告が決議されたという通知が来たというだけですね。  それから、決議六百六十一号のいわゆる主要な経済的な制裁といいますか、具体的にはどういう内容のものがここで決議されたのか、答弁を願いたいと思います。
  193. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 六百六十一号の主な点でございますが、主文だけ御紹介いたします。  まず第一に、イラク決議六百六十の主文を遵守していないということを認定しつつ、「クウェイトの正統な政府の権威を侵害したことを認定する。」というふうに改めて確認しておりますと同時に、「クウェイトの正統な政府の権威を回復するため、以下の措置をとることを決定する。」これは安保理の決定でございます。以下が決定の内容でございまして、イラクまたはクウェートのもの、これは正確には「イラク又はクウェイトを原産地とし、かつ、この決議の日の後に」同地域から「輸出されるすべての産品又は製品の自国の領域への輸入」を阻止すること。  二番目に、「イラク又はクウェイトからの産品又は製品の輸出又は積み換えを促進する又は促進することを目的とする活動で自国民によって又は自国の領域において行われるもの、及びイラク又はクウェイトを原産地とし、かつ、この決議の日の後に」同地域から「輸出される産品又は製品に係る取引で自国民若しくは自国旗船によって又は自国の領域において行われるもの」の阻止でございます。  その次は……(発言する者あり)それじゃ、もう少し簡略に言いますと、「自国民による若しくは自国旗船の使用による又は自国の領域からの産品又は製品の販売又は供給及びそのような販売若しくは供給を促進する」こと等を阻止するということが第三番目でございます。  その次は、「すべての国家が、イラク政府に対し、又はイラク若しくはクウェイトにおける商業企業、工業企業若しくは公益企業に対し、いかなる資金又はその他のいかなる財政的若しくは経済的資源をも利用させてはならない」ということが主な点でございますが、そのほか、「そのような資金又は資源を自国の領域外へ移転すること」その他を阻止しなければいけないということを言うと同時に、「厳密に、医療上又は人道上の目的のため及び人道上の問題がある場合における食糧のための支払を除き、その他の資金を送金すること」を阻止しなければいけないという点でございます。  もう一つだけ申しますと、「この決議の日の前に締結された契約又は付与された許可にかかわらず、」事前に契約または許可が与えられた場合にも「この決議に従って行動することを要請する。」という点が主な点でございます。
  194. 水田稔

    ○水田委員 要約すると、経済的な措置というのは、輸出とか輸入とか金の出入り、こういう経済的な点で国連加盟国イラクに対してはしないという決議と思うのですが、その点はいかがですか。  それからもう一つは、この決議に基づいて具体的に日本国連から公にどういう要請があったか。
  195. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 主な点は、もう一度かいつまんで申しますと、イラク及びクウェートとの輸出入の停止、資金の移動等の禁止、もう一つは、自国船等による輸送の禁止でございます。  この決議を受けまして、国連事務総長より外務大臣に対しまして、こういう決議が通った旨通報がございました。この国連決議安保理決議でございますが、拘束力がございまして、国連憲章に従いまして加盟国に拘束力を有するということでございます。
  196. 水田稔

    ○水田委員 国連から、例えば中東に配置された各軍隊に対する支援の要請というのは国連からは来たのでしょうか。
  197. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 ただいまの御質問が決議六六一の関連での御質問であれば、この決議においてはそのような要請はございません。
  198. 水田稔

    ○水田委員 国連からは具体的にあの地域へ配置された軍隊に対する支援の要請というのはなかったということですね。  それじゃ、六百六十五号というのはどういう決議ですか。
  199. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 私、ただいま六百六十号と六六一までのことに言及したわけでございますけれども、その後、八月二十五日に採択されました安保理決議六百六十五号がございまして、この決議の特に日本に関係しますのは第二項と第三項でございますが、まず第二項におきまして、「すべての国連加盟国に対し、本決議第一項に基づき、政治的外交的手段を最大限に活用し、決議六六一の規定の履行を確保するため協力するよう慫慂する。」というのがまず第一にございます。第二に、「全ての国家に対し、本決議の第一項に言及されている国家が必要とするであろう援助国連憲章に基づき提供することを要請する。」となされております。  したがって、この第二項がまず加盟国に対する慫慂、第三項が加盟国に対する要請でございまして、その要請の内容は、第一項で言及された国家に対する援助の要請でございます。
  200. 水田稔

    ○水田委員 六百六十五号による、一の「特別な状況下に即した必要と思われる措置」というのは具体的にどういうことですか。
  201. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 これは「船舶の貨物と目的地の検査・確認、及び、安保理決議六六一に示されたそれら船舶に関する措置の厳格な実施の確保を目的とし、」以上が目的でございます。「全ての出入港する船舶を停止させるため、安保理の権威の下、特別な状況下に即した必要と思われる措置を取ることを要請する。」ということになっております。だから、「必要と思われる措置を取ることを要請する。」ということでございます。
  202. 水田稔

    ○水田委員 この経済的な制裁というのは経済封鎖ではないですね。
  203. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 これは、イラク等に向かう船舶を、停止等によってその船舶に積まれている貨物と目的地の検査・確認及び確保を行うということでございますので、国連憲章四十二条に言う封鎖ではございません。
  204. 水田稔

    ○水田委員 そうすると、それに必要な艦船というのは、例えば航空母艦四隻を含む五十とか七十とか百隻近い大艦隊が必要なものですか、この六百六十五号の決議を実際に効果あらしめるためには。どういうぐあいに考えますか。
  205. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 現在、ペルシャ湾に展開しております艦船と、それからただいま先生御指摘の決議六六五の、これらの海上部隊展開している国連加盟国に対して要請しているところのものとの関係を若干申し上げますと、最初に決議六六〇が採択をされまして、これはイラク非難……
  206. 水田稔

    ○水田委員 質問に対して答えてくださいよ。大艦隊が要るのか要らぬのかということ、この六六五を実効あらしめるために何が要るのかということですよ。
  207. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 ですから、私が申し上げておりますのは、ただいま展開しております艦隊は六六〇、六六一のそれぞれの実効性を確保するために展開しております多国籍軍の一部であるということを申し上げておるわけでございまして、それで、その艦隊の行動の一部としてこの六六五が要請している「特別な状況下に即した必要と思われる措置を取ること」があるわけでございます。
  208. 水田稔

    ○水田委員 それでは、六百六十、六百六十一、六百六十五に関して国連から日本に具体的に、この決議は各加盟国へ来るわけですから、それ以上に具体的に何らかの、例えば輸送のための、何を送れとかそういうような具体的な要請がありましたか。
  209. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 安保理がこのような決議を通しますと、事務総長から外務大臣あてにこういう決議が通ったという連絡がございます。それに従いまして、各国を拘束するような決議であれば当然にその国がその決議に従って行動するということになります。
  210. 水田稔

    ○水田委員 それでは、このイラククウェートの問題で国連から今日まで六百六十から六百七十、それの後もありますけれども日本に対して国連から具体的にあそこへ派遣した軍隊にどうこうという要請はない、そういうことが確認されたと思うのですが、そうすると、サウジに展開しておるアメリカ軍というのは、これはアメリカのいわゆる政策判断で、そしてサウジとの協議によっていわゆる集団安全保障ということで配置についた軍隊と考えていいわけですか。国連から、アメリカ軍はサウジへ展開しろ、サウジヘイラクが攻めてくるかもしれないから展開しろという決議は、読んでみてもないわけですが、そういうぐあいに理解してよろしいですか。
  211. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 米軍がサウジに展開をいたしております政策目的と申しますか、その理由は、一つにはただいま先生御指摘のとおりサウジアラビアの要請によって展開をしておるということがございます。それともう一つ並びまして、国連安保理が採択をいたしました強制的経済制裁措置、その実効性を確保するということもその派兵の理由に挙げられておるわけでございます。
  212. 水田稔

    ○水田委員 そうすると、日本がこれまでに例えば四輪駆動車八百台ですか、いろいろな軍需物資でしょうね、武器とは申し上げませんが、それは国連の要請で送ったのですか。
  213. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 我が国といたしましては、これまで御説明申し上げたような国連安保理決議に見られますように、国際社会湾岸地域の平和と安定、国際法秩序回復のための国際的努力を行っておる、それに対して日本としても積極的に貢献していく必要があるという観点から、一連の貢献策をとっておるわけでございます。
  214. 水田稔

    ○水田委員 私が聞いておるのは、国連からそういう要請があったかと聞いておるのですよ。だから、アメリカから要請があって出したのはそうですね。多国籍軍としてアメリカが主力になって行っておるのは事実ですから、サウジと話したのですからね。ですから、国連からの要請はないということでしょう。
  215. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 我が国貢献策は、ただいま申し上げましたような国連安保理決議を受けて各国湾岸の平和と安定の回復のために努力をしておる、それに対して、日本としても日本としての立場から貢献していくということで実施をしているものでございます。したがいまして、我が国貢献策の対象となりますものは、このような活動をしている国すべてを理論的に含んでおるわけでございます。
  216. 水田稔

    ○水田委員 質問に答えてください。国連から具体的に四輪駆動車をアメリカ軍に出してくれ、あるいは何を出してくれという要請があったのか。なかったということでしょう、ないのでしょう。あるかないかだけ答えてください。
  217. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 先生御指摘のような意味では国連から直接要請があったということはございません。
  218. 水田稔

    ○水田委員 よろしい、それで。その点を明確にしないと、これから日本がどういうぐあいに国際的に貢献していくかということの論議の基本が狂うわけですよ。だからアメリカからの要請によってあったということで、日本政府が……(発言する者あり)質問は僕がしておるのですから黙ってください。いいですか。アメリカがあそこへ展開したことがこれからどうなるかということは五分五分なんです、見通しは。あそこで火を噴いたらどういうことになるか、あるいはこれから長期にあそこへアメリカ軍が張りつくかもしれない、そういうことに対して日本がどういう政策をとるかというのは、アメリカとは違う立場なはずなんですね。ですから、それに対して支援をするということを決定したのは、アメリカがあそこへ兵を出すことについて日本政府は、アメリカの政策決定ですよ、日本政府はそれに相談にあずかったのですか。
  219. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 具体的にアメリカから相談にあずかったということはございませんが、アメリカの湾岸政策全般につきましては、随時連絡を受けております。
  220. 水田稔

    ○水田委員 この問題は日本のこれからあるいは中東のこれからの推移ということで極めて関係がありますから、最後のところでまた総理なり外務大臣にお伺いしたいと思います。  限られた時間ですから、次に、先ほどの石橋大吉委員からの質問もありましたが、時間がありませんから、ひとつ例を挙げて防衛庁長官にお伺いしたいのです。  一つは、例えば指揮権が、きのうの論議で船をどこからどこへ持っていけというのは平和協力隊任務、船を実際に動かすのは自衛隊のマニュアルで、それに従ってやる。船がそんなに勝手に動くわけはないんで、マニュアルで規則があったら、艦長がちゃんと命令して操舵手へ面かじ、取りかじ何度、ゴーヘー、号令を出すわけですね。それによって動くわけです。ですから、指揮命令の問題というのがそこにはあるわけですね。  ですから、一つ例を挙げますと、安全と言われても、ミサイルが飛んでくるのは六百キロ、九百キロ飛ぶわけですね。後方が大事だということは長官、先ほどの論議で認められた、私もそう思うのです。ですから逆に言えば、攻撃する側からいえば、我が平和協力隊は、多国籍軍が前の方におる、後ろの方で日の丸の旗を立てるのですか。これは平和協力隊だから、別の赤旗か白旗か何か知りませんが、源氏か平家か知らぬけれども、そういう旗を二本立てて、これは違うから攻撃しては困るよ、こう言っても、相手から見たらこれは一体でしょう。極めて重要な後方の任務を負っておるのが、命令系統は別かどうか知らぬけれども、そんなことは書いてないわけです、相手から、攻める方から見たら見えぬわけですからね。これは一番攻撃をしなければならぬところです。飛んでくる、あるいは爆撃機が、戦闘機が攻撃する、その場合艦長はどうするのですか、艦長は。
  221. 加藤紘一

    加藤委員長 日吉官房長。
  222. 水田稔

    ○水田委員 委員長、ちょっと待ってください。官房長は軍を指揮する権限はあるのですか。あなたは軍政でしょう。軍政の権限しかないでしょう。軍令の権限があるのは防衛庁長官しかない、こういうのには。引っ込んでください。軍令と軍政は全然違う。一番よく知っておるはずです。委員長も一番よく知っておるはずです。
  223. 石川要三

    石川国務大臣 わかりました。私の方からまず答弁いたしますが、一つの例を挙げてそういう場合どうするかということですけれども、これも再三この場所で私から答弁いたしておりますが、繰り返すようでございますけれども、少なくともそういう攻撃をされるという可能性の蓋然性が高い、まずそういう場合には私どもはその輸送ということを行わない、こういう一つの前提条件があるわけであります。したがって、万々が一ということになれば今のような御質問があろうかと思いますが、そのときには当然緊急にいわゆる安全地帯に行動を変更する、こういうことになろうかと思います。
  224. 水田稔

    ○水田委員 例えば戦闘機か爆撃機が来て撃つんですよ。相当な距離来ますよね。それはないとは言い切れぬわけですね。その場合に安全なところへ逃げると言うても、撃たれたら沈むんですよ。艦長はどうするのですか。それは自衛官ですから、どうされるかということなんです。安全なところへ逃げるといったのは、それは答弁にならぬですからね。
  225. 石川要三

    石川国務大臣 私どもが飛行機なりあるいは補給艦で物資を輸送する、こういう場合には、当然船の場合には完全な安全航路というものの確保、それから飛行機の輸送の場合には当然その離着陸の飛行場の安全性、こういうことをまず前提条件に行うわけでありますから、万々が一ということもあろうかとは思いますけれども、したがって、戦闘が開始されてそういうような危険性があれば当然そういう業務というものは行われない、かように私は認識をしておるわけであります。
  226. 水田稔

    ○水田委員 第二次世界大戦から四十五年、もっと兵器は進歩しておるのですよね。そういう中で戦闘を、防衛庁長官経験されたかどうか知りません、私も経験がありますが、そんな甘いものじゃないと思いますね。そんなことがもう想像できないというようなことはあり得ぬわけですよ。その場合、指揮権は平和協力隊本部長が持っておる、しかし船を動かすだけは防衛庁の長官が持っておる。そこで起こる事態に対して、どっちを聞いたらいいのですか。それで、これは小銃、けん銃だけじゃないでしょう、補給艦の場合は機関銃も積むわけでしょう。だから、撃たれて沈むのをじっと待てと言うのか、逃げると言ったところでそれは逃げられぬわけですから、だから白旗掲げて補獲されるか、逃げるか、撃つかしかないのですよ。どれをされるんですか。
  227. 石川要三

    石川国務大臣 今の先生とのやりとりは、いわゆる禅問答のような形になろうかと私は思いますけれども、再三くどいようでございますけれども、まず戦闘が始まるというそういう事態、もし戦闘が起こった場合のその危険性、こういう場合には、当然その業務を決定する実施計画を決定する際に十二分にその前提条件、安全の確保ということを前提にやるわけでありますから、戦争が始まれば一切やらないのかという、そういう断定的なことは言えませんけれども、少なくとも今、今日では戦争状態になっていない、そういう事態と、それからいよいよ宣戦布告されて戦争になっておる場合、そういう場合にはまたその実施計画の作成というものにつきましての判断、これは当然変わってくると思います。ただ、くどいようでございますが、私どもは、輸送の飛行機にしろ補給艦にしろ、すべてその安全航路あるいは飛行場の安全ということを十二分に確認し、その上でこの作業というものが行われる、かように思うわけであります。
  228. 水田稔

    ○水田委員 実は、これまでの論議に関連して極めて重要な問題なんですよ。常識的に考えれば、人間の心理として、例えば機関銃でも持っておれば、その場合、攻撃されれば逃げようもないわけですから、逃げようもないとしたならばかなわぬまでもやはり機関銃で撃つだろうと思うのです、僕は。撃たざるを得ぬですね。そういう事態が予測されるのです。  その場合、今までの答弁では、一人一人の場合はけん銃、小銃というのは刑法三十五条、六条、七条のところで正当防衛というような形しかやらない、こう言うのですね。もう一つは、船の場合はどうするのかということですね。船の場合は、個人でそんなことしないでしょう。艦長の命がなかったらやらないでしょう、軍隊として対応するわけですね。それは、白旗掲げてもう捕まえてくださいというのなら捕虜になるわけです、これは。それから、沈められて死んだらしようがないというのならもうしようがないです、それは。しかし、そんなばかおらぬですよね。そういうことなんです。撃った場合に刑法三十五条、六条、七条は、これは適用されぬですよ。軍隊の応戦ですから戦闘になるのです。そうすると、これは自衛権との絡みで一体どうかという重要な問題が絡んでおるのです。だから何回も聞くのですよ。全くないということじゃないのですよ、起こり得る事態を予測しておるわけですから。これは時間の関係で、そういう大変な問題があるということだけ指摘して、次へ進みたいと思います。  次は、これは総理大臣、ぜひお伺いしたいのですが、アジア国々というのは、今度のこの法案についてやはり大変な懸念を持っておるし、心配をしておるわけです。それは、第二次世界大戦で日本がどれだけのことをしてきたかということは、もう皆さん言っておるとおりですね。具体的なことは申し上げませんが、韓国やあるいは中国では、それぞれの新聞もらって見てみますと、大変な心配をしておるし、中国は、もしこの法案が通るのならば国内での意見というのは相当大きくなってくるだろうということを、これは宇都宮徳馬先生それから久野忠治先生が行かれたのに対して、中国の首相ですかがそういうお話をしておるわけですね。それについて、この法案を今日まで審議してきた、提案をされた総理大臣として、アジア国々に対してどういうお考えでおられるか、伺いたいと思うのです。
  229. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 その点に関しましては、私も法案作成のときから十分に考えの中に入れながら法案を作成をしたわけでありまして、そのために、武力による威嚇、武力行使は絶対にしないということが大前提と、もう一つは、国際連合の決議を受けて、世界の平和の敵、そしてこの冷戦時代の終わった時代になおかつ力でもって一国を侵略、併合するということがいいか悪いかという基本に立って申しますと、将来の平和と繁栄のためにはこのようなことを黙視してはならない、二度と起こらないようにしなきゃならぬという国連決議を受けての行動であるという二重の大枠がはまっておるわけでありますから、戦前の日本の歴史を反省して、日本武力をもってアジア国々に出ていったようなことは極めて厳しい反省を私どももしておりますし、二度と侵略戦争はしない、二度と軍事大国の道は歩まないという、その誓いはきちっと守っていかなきゃならぬということを十二分に配慮してつくった法案でありますから、この内容をよく御理解いただければと私も願っておるわけです。  ただ、最近いろいろな報道がございます。先生御指摘のように全体としての懸念を表明される報道もありますけれども、しかし、日本の国会で今憲法を改正して自衛隊の海外派兵をまたやろうとしておるという前提の報道になりますと、そのようなことは考えておりません、憲法の枠内で、武力行使を伴わず、原則非武装で行くのです、お手伝いですというようなことを真意を十分に説明すれば、少なくとも戦前の侵略戦争、日本だけの意思で目的を決めて、近所隣へ迷惑をかけに出ていくというようなことはまるっきり考えておらぬのですということは御理解がいただけるのではないかと思って、そこは法案が成立いたしましたならば、誠心誠意あらゆるレベルを通じて説明を繰り返していかなきゃならぬと思いますし、また私は、この間うちもおいでになるアジア国々のマスコミの代表の方とは、時間を割いてお会いするようにしております。新華社の社長さん初め編集の方や北京日報の社長さん以下、野党の皆さんが御案内してくださってもお目にかかって、私はこの法案の真意については時間をかけて御説明をしておるわけでありまして、そういう努力を今後とも誠意を持って続けていこうと思っております。
  230. 水田稔

    ○水田委員 足を踏まれた人の痛みは踏んだ人にはわからぬという言葉がある。御存じだと思うのですね。今の答弁を聞いてそういうぐあいに思うのです。  総理、壬辰の倭乱というのを御存じですか。聞かれたことないですか。外務大臣どうですか。お聞きになったことないですか。韓国のソウルのあの一番大通りに武将の像がありますね、テレビへ出る。何という人の像か御存じですか。これは四百年前の豊臣秀吉が朝鮮半島に攻め入ったときの乱です。(発言する者あり)いやいや、像はそうです。これは、亀甲船で日本の海軍を破ったという、その将軍として大変なあれがある。景福宮という宮殿があります。この中へ行くと、壬辰の倭乱で焼かれたという王宮の中の建物がいっぱい、再建したのがある。行きますと、四百年前の恨みが今でも言われるわけですよ、どれだけの被害を与えたか。日本じゃそんなことは考えないですよ。  じゃ総理、閔妃という人を、日本読みをすればビンヒですがね、朝鮮読みではミンピという王妃がおられたのを御存じですか、外務大臣どうですか。(海部内閣総理大臣「知っております」と呼ぶ)今、景福宮で、外国人は案内するけれども日本人の客はできるだけ案内しないのです。御存じですね。高宗の王妃である閔妃を、日本の大使館におる守備隊が王宮へ攻め入って、この王妃を斬殺したわけですね、国王の目の前で。あの三十六年の支配の中で万歳事件というのがありました。ソウルの南に、永登浦からちょっとまた釜山の方へ寄ったところに水原というところがあります。ここで日本の軍隊がキリスト教の教会におる人を全部焼き討ちにしたのです。一般市民ですよ。その中でただ一人生き残った娘さんが今八十近くで生きております。  そういう被害を受けた人たちが、たかだか戦後四十五年です。四百年前、百年前の事件をそういう思いで見ておる人が、日本が今こういう形に変わっていくのかということをどういう思いで見ておるかということ。私は日本はそういう点が国際化、国際化と言う中で欠けておるのではないか。だから、こういう法律をやるときにはそのことを考えるべきではないか。もう一つは、中国でも、撫順へ行ったら万人坑というのがありますね。虐殺されたそのままの跡が、人骨がそのままある。南京に行ってもそういう記念館があります。もちろん韓国にもありますね。そういった人たちに、今総理が言われたように、我々はそういうことはしないんだからと、説明で済む問題じゃないわけですね。  文部大臣、おいでになっていますかね。例えばそういう思いでおられる人たちに対して、この前総理は何か御注意か何か、聞かれたようでありますが、この委員会で聞いておりますと、自民党の議員が、率直に言ってアジア国々の中でいろいろ懸念を抱いている国々を見ると、いわゆる民主主義の成熟度がまだまだという国が多いような気がしてならない。この国会、この場面での発言ですからね。そういうことが、日本が国際化と言いながら、まさにそういう点では思い上がった日本の態度じゃないかとアジア国々から見られるわけですよ。  確かにアメリカとの関係は私ども大事に考えたい。考えたいけれどもアジア国々あるいは中東との関係、独自のね、そういう関係を大事に考えれば、アメリカとの関係も含めて、そういう点では、教育という面から、例えば韓国の若者はそれをこんこんと教えられて、毎日のように見て育っておる。日本ではそういうことを余り教えないでしょう。段差がどんどんついていく。そういう中で、先ほどの総理の発言というのは、私たちがよく説明したらというのは、四百年前の恨みが今残っているのに、百年前のが残っているのに、たかだか四十五年前に植民地支配が終わったからそれは説明すればわかるんだということでは私はいけない、もっとそういうアジア国々に対する思いというのがなきゃならぬと思うのですね。  その点は、総理大臣外務大臣、あるいは文部大臣に、教育という問題でそのことをどういうぐあいに考えておるか、お伺いしたいと思います。
  231. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 おっしゃる意味よくわかりますので、私は歴史の反省に立って二度と侵略戦争はしない、軍事大国にならないということを、日本としては厳しく決めておるんだということを大前提として申し上げました。  ただ、歴史の反省もさることながら、私は今、世界が東西の対決、対立の時代が終わりを告げて、社会主義と共産主義、自由主義と市場経済というこの二つの対立、冷戦時代が終わりを遂げて、世界一つになろう、平和と繁栄でいこうとしておるこのときでございます。そして、国連というものが四十五年ぶりに初めて全会一致で平和の破壊者がここにおるということを認定するところまで、世界というものが大きく国際社会の大義というものを、旗を掲げてきた。しかもその決議をするところには、これは安全保障理事会には中国も常任理事国として審議に常に参加していらっしゃる。アジア地域の代表も二つずつ、地域代表、非常任理事国として参加をしておる。ソ連もフランスも皆加わっておる。そこで決めた決議というのは、力でもって弱い国を抑えてはいけませんよという国際社会の大義ですから、アジア・太平洋地域にもその原則は当然及ばなきゃならぬし、新しい歴史の規範というものは、強い国が弱い国をつぶしても構わないんだ、日本はもう仕方がない、何もできないから仕方がない、そういう事実を黙って見ておれというのでいいんだろうかという気持ちが私にはいたします。  ですから、こういった国際社会に対して力でもって抑えてもいいんだという規範は許されないんだということをみんなが声を上げて言っているときには、日本も過去の反省に立った憲法の枠内で、そしてできるだけのことは協力をしていかないと、国際社会日本自分の国だけ豊かになればそれでいいのか、世界の平和の中でこれだけ豊かになりながらそれでいいのかということになりますと、アジアの地域の平和と安定のためにも、そういった国際社会の、何というのでしょう、力でもって抑えればいいんだ、正義よりも力の方がいいんだというような感覚は今後地球上から抹殺することも、アジア・太平洋地域の平和と安定にも役に立つし、そういった面で、過去に大変な御迷惑をかけてきた日本の反省に立っての行動としてはそれはやるべきではないだろうか。  ただ、大前提として、武力による威嚇は絶対にいけませんよということは前段にきちっとうたってあるわけでありますから、そういったことを誠意を持って御説明をしたら、昔の、四十五年前のあるいはそれ以前の日本のさまざまな行動と、今の新しい世界の大きな枠組みの変化の中で日本が果たそうとしておる役割との違いというものも御理解いただけるのではないだろうか、私はこう思っておりますので、そのことを申し上げた次第であります。
  232. 中山正暉

    中山国務大臣 今、委員から御指摘になりました歴史の教訓といいますか、私どもの過去の侵略というものが、私どものこの時代の中にまだ相手の国の人たちの心の中には生き続けているということは、私たちは決して忘れてはならないことであるという認識を持っております。  私は、外務大臣として、やはりアジア・太平洋地域の安定をいかにするか、また信頼関係をどうするかということで、微力でございますけれども、九月二十七日に、ソ連も含めて中国あるいは韓国、あるいはベトナムを含めた、ASEANの外務大臣方々やら、皆さんをお招きをしたわけです。そういう中でアジアのこれからの時代というものを語り合っておりまして、私どもはあくまでも、日本のためにアジアがあるのじゃない、ア ジアの中の一員として、アジアの人たちと一緒にこの地域の繁栄に貢献していくということが我々に負わされた大きな責務であるという認識に立って今日外交を務めさせていただいておる、こういう認識を持っております。
  233. 保利耕輔

    ○保利国務大臣 基本的には、ただいま総理大臣並びに外務大臣からお答えを申し上げたとおりでございますが、さらにつけ加えさせていただきますれば、学校教育におきましては、諸外国の文化、歴史、伝統というものを正しく理解させるというような観点から、このたびも学習指導要領の改訂を行っております。国際化という時代を踏まえて、小学校、中学校そして高等学校におきましても、この国際的な理解と交流に役立つような学習指導要領をつくって、これを徹底させるべく努力をいたしておるところでございます。  私の出身地も韓国の対岸の町でございますが、少年少女が常に交流をいたしまして、そして率直に自分たちの国のことを話し合いながら、これから先どういうふうに親善関係を進めていくかということを民間レベルでもいろいろお話をしております。ひとり学校教育のみならず、こういったことが今後の国際親善に非常に重要な役割を果たしていくのではないか、このように考えております。
  234. 水田稔

    ○水田委員 私たちも冒頭申し上げましたように、イラククウェート侵攻、これが許されていいとはかけらも思っておりません。これは許されるべきことではない。ただし、先ほど冒頭に質問しましたように、国連決議我が国が要請されたことというのと、枠を広げて、関連するあれというので、今のこの法律案でもべらぼうに広げておる、何でもできる。これは川崎委員が指摘したように、国家授権法じゃないか、国家総動員法に似たような、政令を見ると実際には何でもできるような形になっておる。ずっと論議を続けていってそういうぐあいに感ずるわけですから、その点だけは違う、だから我々が国際社会貢献するということは、やはり憲法を守りながら、そして国連という中でどうあるべきかというその点だけは枠を守っていくべきじゃないか、そういうことで違いがあるということだけ申し上げておきます。  それから……(発言する者あり)要らぬことは言わぬでよろしい。こちらが質問しておるのだから、一々。  そこで総理、最後に、やはりこれはぜひ、総理も歴史の反省の上にと言われたのですが、十月三日のドイツ統一のときのワイツゼッカー初代統一ドイツ大統領が言われた「ナチ政権およびそれが起こした戦争は、欧州のほぼ全土や我が国で、人々に計り知れない非道や苦しみを与えた。我々はその犠牲者を決して忘れない。」これは四十五年たった今日、やはり国の最高責任者がそういったことをきちっと言える、そのことが国際社会の中で信頼を回復する道だろうと思うのですね。ぜひこういう心がけでやっていただきたいと思うのです。  全然別の問題になりますが、文部大臣おいでいただいておるので、実はこの間、質疑の中で外務大臣が、小学校段階から国連憲章を教える、こう言われたのです。もう文部省はこれから指導要領なんか外務省へ頼んでやめるんだろうか、実際にそういう答弁がここであったわけですが、それはどうされるのか、文部省の御見解もちょっと聞いておきたいと思います。
  235. 保利耕輔

    ○保利国務大臣 国連憲章あるいは国連についての教育の問題でございますけれども、現在の実態を申し上げておきたいと思います。  これは、義務教育段階におきましてこの国連憲章あるいは国連ということについての知識というものは一生懸命教えるように努力をしております。たまたま私、教科書の写しがございますのでこれを一部紹介をさせていただきますが、小学校の六年生の教科書に、「国際連合の働き」ということで次のような文章が書いてありますので、一部御紹介をさせていただきます。  「国連の目的と仕組み」「国際連合憲章の初めにある文章は、「我らは一生のうちに二度まで深い悲しみを人類に与えた戦争から将来の世代を救い…」と記されています。これから、国連の最も大きな役割は、世界の平和と安全を守ることだということがわかります。国連は、第二次世界大戦で大きな被害を受けた国々の、戦争をなくしたいという願いのもとに、一九四五(昭和二十)年に五十一か国が参加してつくられた機関です。国連には、現在、約一六〇か国が加盟し、アメリカ合衆国のニューヨークにある国連本部には、これらの加盟国の国旗が翻っています。」というようなことでずっと紹介をしております。  中学の教科書も持っておりますが、時間が限られておりますので紹介は失礼をさせていただきますが、このように中学あるいは小学校におきまして、国際連合というものはいかなものかということをはっきりと教えるようにいたしております。
  236. 水田稔

    ○水田委員 大蔵大臣にお伺いしたいのですが、四十億ドルの支援策を決めた。十億ドルは既に支出した、あと十億ドルは支援を表明したということだろうと思います。それから二十億ドルについては周辺の国々に対する経済支援ということで、六億ドルぐらいですか海部総理が行ってこうやってきた。これは国連から要請があってやられたものなのかどうかということです。  それから、具体的に今ちょっと私も言いましたけれども、どういうぐあいな処理がされておるのか、お伺いしたいと思います。
  237. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 確かに政府は当初、多国籍軍に対する資金協力として十億ドルの拠出を八月三十日に公表をいたしました。そしてその十億ドルにつきましては、一部既定経費から支出をいたしておりますが、その大部分につきましては、去る九月二十一日の閣議におきまして予備費使用を決定いたしております。また、その後情勢の緊迫化が続く中で、九月十四日、今後の中東情勢の推移などを見守りながら新たに十億ドルを上限として追加的に協力を行う用意がある旨を表明をいたしました。しかし、この財源につきましては、現時点におきましても直ちに決定をするだけの状況にはございませんので、現在も、その後の中東情勢の推移というものを見守りながら、今後の情勢を勘案し、同時に財源事情を見きわめながら適切に対応していこうと考えております。  また、周辺国支援ということで三十億ドルの協力を約しておりますが、先般総理が中東五カ国を訪問されました際、そのうちのトルコ、ジョルダン、そしてエジプトに対しては、それぞれ支援の内容というものを相手国との間に打ち合わせております。  詳細は、私が申し上げますよりも中近東アフリカ局長の方からお答えをいただく方が正確であると思いますので、支出内容につきましては外務省からお答えをいただこうと思います。
  238. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 ただいま大蔵大臣から御答弁のございました後を受けましてさらに申し上げますと、我が国中東貢献策のうち、まず湾岸における平和回復活動に対する協力という分野で四つの協力をいたしております。  そのうち、我が国政府民間航空機、船舶を借り上げて輸送協力を行うためのものがございます。いわゆる輸送協力でございますが、これは現在までに航空輸送として十九便を運航いたしまして、また海上輸送については船舶二隻を借り上げて運航中でございます。  それからもう一つ医療協力、これも我が国が行っておるものでございますが、これにつきましては医療チームの先遣隊をサウジアラビアに派遣をいたしまして、またその後、今月初めから後続の医師団を派遣いたしております。  それから、物資協力及び資金協力という分野がございますが、これにつきましては、いわゆるGCCの湾岸平和基金への拠出を九月二十九日に行っております。それで、そのうち資金協力につきましてはいわゆる輸送関連経費、それから物資協力は資機材の調達等に、これが湾岸平和基金の運営委員会によって使用されることとなっております。     〔委員長退席、浜田(卓)委員長代理着席〕
  239. 水田稔

    ○水田委員 この湾岸平和基金というのは、輸送協力とか物資協力医療協力、こうあるのですが、これは例えば難民とかその国の国民のためなのか、その国の軍のためなのか、そういう点の使途についてはどうなんですか。
  240. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 湾岸平和基金に対します我が国の拠出金は、湾岸の平和と……(水田委員「金額を聞いておるのじゃないのです。性格を聞いておるのです」と呼ぶ)湾岸平和基金の性格は、湾岸の平和と安定の回復のために、国連安保理事会の関連諸決議に従って活動している各国支援するために設けられたものでございます。
  241. 水田稔

    ○水田委員 質問をまともに聞いていないんじゃないの、あなたは。
  242. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 補足をさせていただきます。  今委員から御指摘のありました多国籍軍に対する資金協力、また周辺諸国に対する支援策とは別に、難民に対しましては今日までに二千二百万ドルの拠出を日本政府としては既にいたしております。
  243. 水田稔

    ○水田委員 局長、私が聞いたのは、平和基金には、例えば輸送協力とか物資協力医療協力というようなことをやっておる。それぞれその基金で各国へやるわけですよ。その国の民生に使うのか、例えば軍に使ってもいいという、そういう使途は一体何なのだと、軍も入っているのかと、こう言って聞いたのですよ。
  244. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 この平和回復活動に関する我が国貢献策に限って申し上げますと、そのほかに周辺国支援に対するものがございますけれども、この湾岸における平和回復活動に限って申し上げますと、先ほど申し上げましたように、輸送協力、それから医療協力、これは我が国自身が行っておるものでございますので、これは湾岸平和基金とは関係のないものでございます。  それから、その湾岸平和基金に対します我が国の拠出金は、先ほど申し上げましたように、湾岸の平和と安定の回復のために安保理決議に従って活動している各国支援するために使用されるものでございます。
  245. 水田稔

    ○水田委員 使用される内容、中身を聞いておるのです。何回言うても……。まともに答弁してくださいよ。委員長、質問に対して明確に答えるように言ってくださいよ。
  246. 浜田卓二郎

    浜田(卓)委員長代理 答弁は明確にお願いします。
  247. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 もう一度御答弁申し上げます。  湾岸平和基金の我が国拠出金のうち、資金協力と言われるものにつきましては、これは航空機及び船舶の借り上げ経費その他の輸送関連経費でございます。それから、物資協力と言われて行っておりますものは、防暑機材、水関連機材、車両、宿舎及びその附属機材、建設資機材及び通信機材、事務用資機材、食料品及び医薬品を対象としておるわけでございます。  それで、これらはいずれも湾岸に現在展開をしております国の使用に供されるものでございます。
  248. 水田稔

    ○水田委員 展開しておる軍に対する支援ですね。
  249. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 これはこの支援が対象としております国の要請に基づいて供与するものでございますので、それは軍である場合もございますし、軍でない場合もございます。
  250. 水田稔

    ○水田委員 大蔵大臣、いろいろ調べてみたんですが、手続上は予備費の使用について、まあ手続はきちっとされておるわけです。ただ、この予備費を使用した場合は、後で国会の承認を求めなければならぬ、そういう条項もあるぐらい使途については厳しい縛りがあると考えていいと思うのです。  八月の二日に起こって、それから貢献策もたもたしたようです、政府の方は。それで九月の二十一日ですから、二カ月ぐらいあるわけですね。国会が開かれておる間には予備費は本当は使わなくて補正を組むというのが普通のあり方だろうと思うのですね。そうすると、二カ月もあればそこらあたりは本来は補正で、三千五百億のうち一千三百幾らですから、約三分の一くらいですから、大きいですからね。ほかのものを調べてみるとやむを得ないものもずっとあるわけですから、そういう点では若干そういう予備費の使い方についての配慮があっていいんじゃないかと思うのと——これは手続上間違いという意味じゃないのです。  ただ、私はこれは外務大臣にその点ではお伺いしたいのですが、日本のこれまでの経済援助を調べてみますと、経済協力を調べてみますと、これは純然たる軍事用のあれは入っていないです。ですから、この予備費を使用というのは、大変な日本政府の政策転換なんです、他国に対する軍事援助日本がこれからやるんだという大変な転換をする決定を、閣議決定だけで予備費を使うということでやっていいのかどうかという。ですから、そこらあたりの論議は私は、もちろんこれは決算でやることになるだろうし報告が求められるのですが、外務大臣が従来、対外的な援助というのは経済協力も民需を中心にして、少なくともいわゆる武器は輸出しないと同時に軍事的な経済援助等はしてきていない。そういう大転換をされたのは、これは総理大臣にも聞きたいのですが、そういうぐあいに日本政府はこれからは他国に対して軍事援助も大々的にやる国に変わったのかどうか、基本的な考え方を聞きたいと思うのです。
  251. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今委員から予備費の使用の性格というものからの御質問がございました。しかし、八月三十日に私どもとして当初の十億ドルを負担する用意がある意思を表示をいたしましたが、当時私どもが決断をいたしましたものを正確に申し上げますならば、国際的な受け皿が外交当局によって用意されることを前提に十億ドルの支出ということを表明したわけであります。これが八月三十日でありました。そして、その国際的な受け皿というものが外交当局の御努力の中でGCCというものに指定をされまして、直近の閣議において予備費の使用を決したわけでありまして、時間的な経過からいいますと、むしろ他国の経済支援策よりも日本政府の決定は非常に早かったということは事実関係として申し上げなければなりません。  また、中東の情勢の変化というものはまさに突如起こった状態というものでありまして、我々としては、予備費で対応いたすのに、ふさわしいという言い方が適切かどうかはわかりませんけれども対応すべき内容であったと考えております。  また、今外務省からの御説明にもありましたように、その十億ドルと言われます中におきまして約一億ドル相当分、これが外交当局の、外務省の手元に残り、日本としての医療協力あるいは輸送協力の費用に充てられておる。九億ドル相当分、すなわち千三百五十六億円がGCCに渡されておるわけでありますが、その内容として、例えば防暑あるいは水の確保のための機材などというものが対象になっている物資協力と、これらの物を輸送するための航空機及び船舶の借り上げ費用等を対象としておりますものと、資金協力の中身が分かれておるわけであります。
  252. 中山正暉

    中山国務大臣 今大蔵大臣が御説明申し上げましたが、一つだけ私の方から補足をさせていただくということであれば、今回のいわゆる湾岸協力は、日本政府が直接やりますものについては、武器のたぐい、兵員というものは輸送の面では一切やらないということ、またGCCに対して拠出いたしました物資協力につきましても、今大蔵大臣からお話のございましたように、兵器あるいは弾薬というのは対象外になっておりまして、私ども国連決議を受けて、国際の平和のために今回このような拠出を行ったということでございまして、日本の平和国家としての理念を決して損なうものであってはならないと考えております。
  253. 水田稔

    ○水田委員 冒頭、私が国連決議の六百六十、六百六十一、六百六十五をしつこくやったのは、国連決議というものと、枠を広げてこの法律で何でもできるようにしようとする違いを——今の答弁でも、国連決議に基づいて。そうじゃなくて、その国連決議を狭い意味できちっと見れば、軍事支援というのはその中に入っていない。入っていないですよ。  例えば、単にあそこへ輸出輸入をとめるということで、加盟国がそれぞれやらないということ。加盟してないところがやるのをそれを封鎖する四十二条の決議はないわけですから、それを実効あらしめるといったら、五十隻も百隻もの、航空母艦を含めて行く必要はないのです、本当は。それを実効あらしめるといったら、海防艦のようなものが幾つか行って、大砲を積んでない船、貨物船ですから、それをとめるぐらいはいわゆる海防艦ぐらいの船が何隻か、十隻かおればできることなのね。だからそれは、いわゆる多国籍軍というのは集団安全保障ということで自衛権ということを行使する国々が寄っておるわけで、国連決議そのものじゃないわけですね。  ですから、日本政府がこれまでとってきた経済協力というのは、やはり平和憲法に基づく、武器の輸出はもちろんしない、同時に軍事援助はしないという基本的な政策で今日まで来た。だから、国連決議じゃないわけですよ。それを国連決議があるからこれは別なんだということにはならぬだろうと思う。そういう政策の大転換をやる、そういう論議は恐らくやられたんじゃないですか。やらずに予備費の支出だけ、金だけ出せばいいという閣議ではないと私は思うのですね。そういう重大な問題を、この転換というのはここで出した。だから、アメリカとどういう形で日本協力関係を持つかというのは別の次元の問題なんです。それを国連決議の枠を広げた形で何でもそれにくっつけてやるというやり方は、これはすべきじゃない。だから国民の反発を買うわけですからね。  外務大臣もう一遍、国連決議に基づいてこれを、いわゆる軍事援助のあれをやったので別だということじゃなくて、基本的な我が国の外国とのつき合いの中で経済協力というのは一体何かという点で、これが大変な転換のあれを含んでおるということを認められるのかどうか、御答弁いただきたいと思います。
  254. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 最初にまず私から申し上げますが、先ほども申し上げましたように、今回の事態と申しますのは、そもそもイラククウェート侵攻がございまして、国連安保理決議六百六十が、国連憲章のもとに、これが平和の破壊であるという認定をいたしました。その上でイラククウェートからの撤退を要求しているわけでございます。さらに、それを受けまして決議六六一で経済制裁決議がございまして、それから先ほど御指摘の六六五の決議もございます。  それで、このような安保理決議を受けまして、その実効性を確保するために二十カ国以上にわたる国が兵力を展開して今国際的な努力をしておる、それに対して我が国としても貢献をするということでございますので、これはあくまでも国連安保理決議を受けた国際的な行動の一環でございます。そういう意味で、我が国といたしまして、現在の体制のもとでできるだけの貢献をするということで取りまとめ、実施しておりますのが八月二十九日に決定をした我が国貢献策でございます。
  255. 水田稔

    ○水田委員 一番最初にきちっと整理をしたのをまた蒸し返すようなことを言いなさんなよ。六百六十と六百六十一の実効あらしめるために六百六十五があるのです。——いやいや六百六十五は六百六十一を、そのためにあるのですよ。六百六十というのは何も具体的なことはついていない、そういう軍隊を出すというのは。だから何回となく私は言ったんだ。サウジへ軍隊をアメリカが出せというのは国連決議にあるのかというと、ないでしょう、そんなものは。国連決議とは違うんですよ。  だから、その点は違うというだけで、もう時間がありませんから、最後のところで、大変通産大臣、日程お忙しいところ無理を言って来ていただきましたので、一番に質問さしていただきたいと思うのですが、今の状況というのは、アメリカは長期にわたってあそこへ軍を置くという、ベーカー国務長官がそういう発言をしておりますし、またチェイニー国防長官は今ずっと回って、武力行使について合意をとるような、そういう行動がある。あそこでもし、これは日本政府の政策決定じゃない、アメリカの、国連決議はあるかどうかわかりませんが、アメリカも恐らくそういう努力をするのでしょうが、とれなくても多国籍という形でやるかもしれない。  その場合に起こり得る事態というのは、今原油が大変高くなって、日本も物価の値上がりがずっときておる、そういう影響が出ておるけれども、もし火を噴いたら一体どうなるのかということは大変なことだろう。全体的な状況になると経済企画庁かもしれませんけれども、油だけで考えてみても、これは想像するだに、日本経済というのは、国内に物がないわけですから大変な影響を受けると思うのですが、見通しは五分ですから、長期にわたってアメリカ軍が居座るのか、あるいは火を噴くのか、それは見通しは五分だろうと思うのです。その場合、もし火を噴いたというときは、一体通産大臣としては我が国経済なり我が国の産業をどうやって守っていくか。今からある程度の青写真を持っておかぬと、火を噴いたら大変です、お手上げですでは、これはもう日本経済日本国民の生活はもちませんから、お伺いしたいと思います。
  256. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 私どもとしては武力衝突がないことを願っておりますけれども、今の御質問は、幾ら願っていても結果的にそういう事態が起きたら、大変これは日本経済に大きな影響を与えるのではないか。これは日本経済だけではなくて、私は世界経済に大きな影響を与えるだろうと思います。  そういう中で、私どもいわゆるエネルギーの安定供給という役割を担っておるわけでございまして、今御指摘のとおり油の値段、上がってきてはおりますけれども、万が一武力衝突になれば、これはもう大幅に値上げになるだろうと言われておるわけでございます。私どもとしては、今そういう意味で備蓄というのがあるわけでございまして、世界的には百四十九日、日本は百四十二日の備蓄を抱えておるわけでございます。そういうような事態が万が一起きたときは、即刻IEAともよく協議をしながら、このような備蓄をお互いに放出をすることによって価格の高騰を抑える、また供給を確保するということに、私どもはそういう事態が起きたときには対処しなければならない、こう考えておるわけであります。
  257. 水田稔

    ○水田委員 大蔵大臣にお伺いしたいのですが、二つあるのですね。  一つは、いわゆるベーカー国務長官が言っているように、こういうふうに言われていますね、西側諸国の軍隊は当分は中東から撤退するつもりはない。こういう発言もありますから、その場合、今言ったのに対して要求されたわけですね、協力しろと。これがずっと続くとしたらそれをまた要求される可能性はある。また、火を噴いたら大変天文学的な数字の戦費というのがかかるだろうと思うのですね。世界の警察的な役割を持っておるのだが、金は足らぬから日本に出せという形になる、そういう可能性はあると思うのですね。そういう点について、我が国の財布を握る大蔵大臣として、それはやはり言われれば世界の安全と安定のために我が国が裸になっても金を出さにゃいけぬ、そういうことになるのでしょうか。
  258. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今非常に単純化をしてお尋ねをいただきました御設問でありますけれども、この中には幾つかのケースを想定する必要があると考えております。そして、今年九月に行われましたG7の際に、現在の情勢というものを、各国の財政担当閣僚並びに中央銀行総裁の立場で隔意ない議論が行われました。このとき一つ大きな結論として出てまいりましたのは、インフレに対するリスクと成長の鈍化に対するリスクの両にらみで我々はこれからの経済運営を考えなければならないということであります。これはある程度中東の情勢が緊迫したまま持続することを頭に描いた議論であったと思います。  しかし同時に、これはもう率直に申し上げますけれども、戦乱が起こった場合というものについては、だれもがその心配を持ちながら、この席上においても議論をするには至りませんでした。そして、そのおそれを皆が心に持ちながら、ある程度こうした緊迫状態が継続する場合におきましても、先進諸国におきまして、殊に周辺国、いわゆるエジプト、トルコ、ジョルダンといったよく名前の挙げられる国々ばかりではなく、石油を産出せず中低所得国として今日もなお累積債務にあえいでいるような国々は、セブンの国々経済破綻以前の状況として非常な困難に陥ることが予測される。これは戦端が開かれなくても、この緊迫状態が続くことだけにおいても、そうした国々に対する経済支援をお互いは考えなければならない、これが一つの大きな議論でありました。  我々はそうした情勢を決して想定いたしたくはありませんけれども、今戦端が開かれる以前の状況として、この緊迫した状況が今後中長期に継続をした場合には、日本としては、債務に苦しむ、原油を生産することのない中低所得国に対する経済支援というものを、我が国自身が相当厳しい状況を迎えた場合においても責任を持っていくだけの覚悟はしておかなければならない、私はそう考えております。日本だけがみずからの国の財政状況のみを考え、他国に対する支援を全く論議の外に置けるような情勢ではない、それだけの国際的責任は我々にある、私はそう考えております。
  259. 水田稔

    ○水田委員 防衛庁長官にお伺いしたいのですが、九月の十二日ですか、アメリカ下院が、日本中東に対する貢献が余り十分でない、だから日本に駐留する米軍の経費を全部負担しろという決議をした。それに対して、まあ最初は防衛庁首脳と書いてあったのですが、お名前も出ておったようですが、防衛庁長官は不快の念を示した。この中東への支援と国内に駐留しておる日米安保に基づく駐留米軍との関係というのはあると見るべきなんでしょうか。
  260. 石川要三

    石川国務大臣 ないと思います。
  261. 水田稔

    ○水田委員 あってはならぬと思うのですがね。我々やはりきちっと日米関係、そして国連、そして中東とのかかわり、アジアとのかかわりというのは、我が国独自の日本の政策決定ということでなきゃならぬ、そういうぐあいに思います。  最後になりますが外務大臣と総理大臣に。今通産大臣や大蔵大臣にお伺いしたのですが、もしもということ、極めて日本の将来にとって重大な局面を迎えるわけですね。それに対して我が国が政策決定に関与できるかできぬかということは、我が国の生存にかかわる問題、全く関係ないところで決められたことで引っ張っていかれるということは大変なことだろうと思うのです。ですから、冒頭もお伺いしたように、サウジへ出ていくのに日本は相談を受けて、いや、それは行ってくださいよ、金は少し見ますという話じゃない。行った後で金を出す、こういう話になったと思うのですがね。これは今はこのくらいで済んでおるけれども、もし火を噴くというような決断をアメリカがする場合に、何の御相談もなしにやられたんではたまったものじゃないと思うのですが、そういう点でアメリカの政策決定について、あるいはアメリカの中東に対する政策判断が誤りではないかというようなこともあるかもしれないのですね。そういうことについての話は外交交渉の中で表でできない場合もあるでしょうけれども、そういうことがなければ日本は、すべてアメリカの政策決定に日本民族全体が引っ張られて大変なところへ行くかもしれないという、そういう場面を迎えるかもしれないと思うのですね。それに対する外務大臣のアメリカと、それはアメリカは主権を持った国ですからアメリカが決めることはどうもできぬというのはしようがないことですけれども、どういうぐあいに対処されるのか。総理大臣にも最後にその点についてのお考えをお伺いしたいと思うのです。
  262. 中山正暉

    中山国務大臣 今回の中東問題に関連して日本政府のとった外交の選択、これは、国際法的にイラククウェート侵攻というものは認められない問題で、強者が弱者を併呑するというようなことは決してあってはならない、こういうことがまかり通れば国際社会は乱れてくるというのが一つの問題点でございました。また、中東が平和が維持できなくなるということになると、国際経済全体が大きな影響を受けてくる。もう一つの面で自分日本立場で見ると、我々はこの地域から原油を約六五%輸入をしている、これが国民生活と我が国の産業に大影響を与えてくるという一つの問題が選択の中にあったことは事実でございます。  一方、アメリカとの関係におきましては、我々、アメリカは同盟国であるという関係は経済的にも軍事的にも安全保障条約の中でうたわれている。アメリカとの間に我々の国の経済はどうなっているか、そういうことを考えれば、アメリカの貿易赤字の半分を日本が黒字として計上している、こういう関係にあって、我々は国際社会全体のために、そして我々の国のために、また同盟国であるアメリカの意見も十分尊重しながら、アメリカに対して物を言わなければならないときは日本としてもきちっと物を言う、言わなければならない。こういう考えを持って、ただいまも小和田外務審議官を最初にモスクワを訪問させましてソ連の外交責任者と会わせ、あとヨーロッパを回っておりますけれども、最後はワシントンに行ってアメリカにもこの事態の収拾について日本政府としての意見を交換する、こういう努力をしている過程であると御理解をいただきたいと思っております。
  263. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 段々の御意見を聞いておりまして、全く仮定の話でありますけれども、先ほど通産大臣が答えましたように、石油のあの地域の安定が害されることは世界経済に大変な影響が参ります。そして日本経済的な安全保障にとっても死活的な影響が来るということは委員御指摘のとおりでありますが、私は、日本のみならずアジア全体にも死活的な影響が来ると思うのです。  というのは、アジア国々との相互依存関係の中で、日本は昨年一年間で六百四十億ドル、アジアから輸入しておるわけでありますから、九兆円に及ぶそれだけのものを輸入しておることがアジア経済の活力にどれだけ役立ってきておったのか。現在、世界の平均の成長率よりアジア平均の成長率の方が高いというのは、その日本の対アジア貿易の貢献もあるなあということを謙虚な気持ちで私は思っておるのです。その反面、アメリカに毎年五百億ドル近い貿易上のインバランスをつくってきておるということも、日米関係の世界経済の中で示しておる一つの結果でございます。  そういった世界の共通相互依存関係が乱れたり崩れたりしていくことは大変なことでありますから、大前提としての平和と安定を大切にしていかなきゃならぬというのは委員御指摘のとおりでありますし、私も、九月の日米首脳会談はもちろんのこと、その前のパームスプリングズの日米首脳会談のときにも、アメリカに対してできることとできないことは分けてお話をしてきたつもりでありますし、これはSIIのときでも同じでありました。今回の湾岸危機の解決をめぐっては、私は粘り強く平和的な解決をしてほしい、軍事的オプションを云々される方もあるけれども、それは絶対に避けてもらわなければならぬ問題であるということと、アメリカが世界の民主主義のリーダーとして、しかもせっかく世界のイデオロギーの対立が今自由と民主主義と市場経済の価値を求めて一つに集まってきておるときでありますから、どうか指導力を発揮して平和的解決のために十分な努力を続けてもらいたいということは、日本考えとして十分にそれは事あるごとに伝えておるテーマでございます。
  264. 水田稔

    ○水田委員 終わります。
  265. 浜田卓二郎

    浜田(卓)委員長代理 これにて石橋君、水田君の質疑は終了いたしました。  次に、渡部一郎君。
  266. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私は、きょうはこの議題となっております国連平和協力法に対して、これまで随分の審議と論議が繰り返されてきたわけでございますが、この法案の結果はそろそろ明らかになってきたのではないかと率直に申し上げたいと思います。  総理がもう奮戦力闘なさり、御自分がこの委員会で大変な努力と説得力を発揮されたことに対しては、私は率直に敬意を表したい、立場の相違を超えて敬意を表したいと思います。しかしながら、お話の筋は相当無理があったんではないかと率直に申し上げなければならぬと存じます。  そこで私は、こういう議論の積み重ねの中に次のものを見出さなければならない時代がもう来たのではないかと思います。  本日の朝の新聞を見てみましても、私は国会対策の上から論じるのじゃなく、マスコミはどう見ているか。朝日新聞は「衆院廃案やむなし」、毎日新聞は「衆院特別委採決を断念」、日経新聞は「話し合い決着めざす」、産経新聞は「平和協力法案 衆院通過もムリ」、そして夕刊の読売は「「協力法」衆院で廃案へ」、これら相当の有力新聞がこういうふうにお書きになっておるということに関しては、私は横から——産経新聞を除きましたか。済みません。産経新聞は「衆院通過もムリ今国会は延長しない」、ここにこれだけ書かれておりますというところを見ますと、国民を代表して報道されている諸機関の目にも、実際的にこの法案は衆議院通過も無理な状況が生じつつあるという認識が生まれているものと私は思います。  国会議員として各党で交渉しておる我々は、もっと鋭くその実感を得ているわけでありまして、この法案については、まず参議院についてはもう論議のほか、衆議院については相当無理だな、そして会期延長も相当無理だな、場合によっては衆議院通過も無理になるのではないかな、こういう印象を受けているわけであります。この時期に当たって私は、強弁を繰り返す、無理やりの議論を繰り返すということはあんまり賢明ではない。また、この法案を提出するために努力された官僚諸氏におかれても、これはもう疲労甚だしいものがあるのではないかな、つまりだめなものを立ち上がらせようと無益な試みを繰り返しているのではないかという、その感じほど人を意欲をなくさせるものはないのではないか。  私は今回の答弁を拝見していて、思いも寄らぬ珍答弁と混乱が繰り返された。あるときは、大臣答弁とお役人の答弁が混乱している、閣僚と閣僚の答弁がそごしている。野党側として積極的にこれを時間を押さえ込んで審議不能に追い込むというような悪いテクニックを加えるとすれば、何十時間も引き延ばすことのできるような状況が発生した。それをあえてしないで質疑を繰り返して今日まで至ったけれども、もうどうしようもないところまで至った。これを考えますときに、私はこの法案はもうそろそろだめなので、次はどうすべきかということを決断なさるタイミングが来たんではないかと思うわけであります。  私がそれを総理に今言わせるのは酷であって、最後の瞬間まで奮戦力闘、努力を怠らぬ人生観の持ち主である総理はきっと、いいえ、そうではない、私は最後の一秒まで奮闘いたしますとおっしゃるだろうということは、多年の尊敬する友人としてわかりますけれども、だけれども、それだけで突っぱねたとしたら、この委員会審議は何だったのか。ここは弁論大会ではなくて、お互いの論者の論議を尊敬を持って伺い、そしてお互いにその中からとるべきものをとり、啓蒙するべきものは啓蒙し、そして酌み取るところから次のものをつくり出す場所であるはずである。我々は口だけを持っているのではなくて耳まで持っているのですから、十分いろいろな意見をお互いに拝聴したわけですね。そうすると、ここから何かが出てくるのではないか。私はあえて聞きにくいことを申し上げ、総理に、難しいお立場の方でございますから、一遍に何か言えというのが無理なことはわかっていますけれども、もう見るにたえない。それで、ここで私がまた総理をぎゅうぎゅういつものように追い詰めたとしても、何にもならないとしみじみ思うものですから、総理、ここのところは何とかなさるおつもりはございませんか、まず私はそれを伺いたい。
  267. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 今回の法案は、おっしゃるように、全く新しい世界情勢の変化の中で突然起こったイラククウェートに対する侵略、併合という事態を踏まえて、どうしたらああいったことを仕方がないといって見逃してしまわないで済むだろうか、貢献策はないんだろうか、そういった発想に立っていろいろ努力をし、政府内で検討をし提案をして、きょうまで随分御指摘のように各党の皆さんに議論を続けていただいてきました。国際社会の中で日本自分考えるよりももっと大きな影響力と責任を持つ国になってきたということも事実でありますし、また、日本の国が今こうして非常に質の高い国民生活が充実してきた、こういう生活ができるということについても、世界国々との相互依存関係と世界が平和であったという環境の中で初めて営まれたものでありますから、その中にあって、日本が黙って自分のところさえよければいいだろうというのではもう済まない時代が来た、こう判断をしてこの法案をお願いをしたわけであります。  私は、今渡部委員御指摘いただきましたが、しかし、今回のこの質疑を通じ、討議を通じて、きょうまで何日間かやってきましたが、私自身が謙虚に受けとめさせていただくと、それはわかる。イラクが悪いということもわかるし、国際社会が平和でなければならぬということもわかるし、日本が何かしなければならぬということもわかるし、物やお金だけでは済まない、人も出ていって許される貢献をしようではないか。ただ、日本には許されない貢献もあるんだよということも随分議論がございました。私は皆それを謙虚に受けとめておりますし、同時にこの法案の中にも、武力による威嚇、武力行使はしてはならぬということを第二条にきちっと大前提として書いたわけでありますし、また、私自身は歴史に対する反省を持っております。終戦のとき中学二年生で、軍需工場に行っておって、あの歴史と戦争に対する反省はたくさんありますから、二度と再び侵略戦争はしない、再び軍事国家にはならないということも何度も申し上げながら、それだけ言っておっただけでは、国際社会が今現に行われている秩序を守ろうという国連中心主義の動きの中でいけないから、何ができるだろうか、できない、できない、いけないじゃなくて、何ができるだろうかを考えてつくってきたのがこの法案でございました。  与野党の議論の中でも、そういったところに対する必要性やそうでないところの問題点も、私は今回の討議を通じて刺激を受けたり教訓を受けたことも随分ございました。また、将来の日本の国のあり方、また将来の国連の姿というものに対して、社会党の新人議員の皆さんがおまとめ願った見解の一部もここで発表されたこともありました。あるいはまた、このような姿かたちで自衛隊の海外派遣というものは、丸腰で、非武装で行くなればそれはいいではないかという御意見も、もっと堂々と出せという御意見も承りました。しかし、事はすべて平和協力でありまして、戦争をやろうというわけではなかったわけでありますから、国連に対する平和協力をどのような角度でやったらいいかという各党の熱心な御議論の中で、そういった相交わるところ、交わらないところ、出てきつつあったと私は考えます。  せっかく代案の大綱までお示しいただいた党もあれば、こうこうこうなればいいということをお示し願っておる党もあるわけでございますので、私は議会政治のルールに従って、とことんまでそういった議論を積み重ねながら、もうこの辺であきらめろとか、これはもう各新聞全部書いてあるんだからどうなんだ、これに従ったらどうだと、そうおっしゃりたいお気持ちもよくわかりますが、あえて言わせていただくと、あれは新聞の御議論であって、各党の皆さんにこれからもできるだけ御議論いただいて、ではどうしたらいいかということも共通して御議論いただきますように心から私はお願いと、そしてこちらは政府立場として、どうか国連に対してどのようなことが許される協力かということを国会の場を通じて御理解を深め、協力を賜りたい、この気持ちを持っておりますので、ちょっと言い過ぎたかもしれませんが、率直に申し上げさせていただきました。
  268. 渡部一郎

    渡部(一)委員 今の、総理例によって非常にお上手におっしゃいました。それは、この法案は通る見込みは大変薄いけれども最後の瞬間まで努力をする、各党もいろいろな対案を出されているのだからすり合わせをしたい、そのためにも政府案を一生懸命最後まで御理解いただくように頑張りたいとおっしゃったと私は伺いました。  これは私は総理のお立場として当然だろうと思うけれども、余りにもちょっとこの法案は、これは総理、まことに申しわけない言い方ではありますけれども、余りにもちょっとできが悪いと言うしかないですね。私も、この委員会、予算委員会等何回も属させていただいて法案とか条約とか見させていただいてきたけれども、これぐらいひどいのはちょっと類例を見ない、通常のルールででき上がっていない。ですから、まあほかのときだったらもう通らないけれども国連の大問題だ、イラク侵攻もある、何とかしなければいかぬ、政府はきっといい手を出してくださるだろうという期待感を持って法案を拝見した。その事前に説明された総理の新聞を通しての御説明によれば、自衛隊派遣しないよとかあるいは自衛隊身分は一遍捨てて出るのだよとか、甘く美しいことをおっしゃった。私になんかは直接にまでおっしゃった。私は、期待して、すっかりよろめいて、総理が出す法案には何でも賛成したいとまで思い込んでいた。そうしたら最後に、法案を見たら物すごいものが出てきた。花嫁さんを迎えると思ったら鬼ばばが登場した。この裏切られた実感というのは、もうどうしようもない。  それで、見たら、各党議員が怒るわけであって、「その他」「政令」だらけである。何カ所とは申しませんけれども、「その他」と「政令」に全部ゆだねるんだったらこれは法案ではないのであって、任せろ、おれが勝手にやるという封建時代の領主が出すような法案を堂々と出してくる。自衛隊の海外派兵はだめだよと言うのに、複雑きわまる論理を用いて自衛隊を表へ出そうとする。世界の人が驚こうと何だろうとへっちゃらで押そうとする。そして、それに対して特殊な複雑な論理を次々に組み立てていく。余り複雑なので言う方の外務省が間違ったりする。防衛庁に至っては声も出さない。担当の総理府はもう何も言わないで下を向いている。ただ一人光っているのは法制局長官などというのは、これはもう本当に何と言っていいか、我ら仲間同士の、議員仲間の用語でひどく言うのは許していただきたいのですが、もう何ともかんとも言いがたい醜状なんですね。私は、これ以上この法案をがんがんやることによって、押し通そうとして押せば押すほどみっともない状況が出てくるなと。  私が心配をしておるのは、総理、これはアメリカが見ているわけですね。ソビエトももう克明に見ておる。各国の大使館ときた日には、どうして手に入れるかわからぬけれども、速記録まで手に入れて克明にそれを見て、日本は本当に我が国に襲いかからぬかという観点で見ている国もある。それから、日本は本当に自衛隊を出してくれるのかと期待して見ている国もある。そういうのから取材まで来る。それを見ていると、私はこの法案審議で、何でこんなお粗末なものを総理が強引にこの場所に出されなければならなかったか。あの聡明な、平和主義者の、そしてもうそれこそ何とも言えぬ愛きょうのある弁論でみんなを誘惑していくあの人から、どうしてこんなすごいものががんと出てくる、不思議だ。  私は、したがって聞きたいんですね。どうしてこんな変な法案を持たされてしまったのか。総理は、こういう物すごい変な法案を抱かされて、自民党の派閥同士の抗争のために、この悪い法案を抱かすことによって総理をたたき落とすための戦略にひっかかったんだという好意的な批評すらある。これは総理に対する好意的な批評ですね。  そしてもう一つは、この変な法案を出すことによって、アメリカからの圧力を避けて、アメリカは、議会でノックアウトされたと言うと説明がつく。アメリカのブッシュホンと称する猛烈な圧力が日夜海部さんのところへ、きょうも頑張ったかというお電話が最近ちょくちょくかかってこられるそうだから、きょうも頑張っています、きょうも各党やっつけましたと言わなければいけないのかもしれない。だけれども、議会がどうもうなのでどうしようもないと言うと、ブッシュさんはひどくわかってくれて、そうか、議会はお互い大変だからなと言う。だからここでやっつけてもらいたいと。あえて変な答弁をすることによって、日本の国会は恐ろしいところでだめですという答弁をするためにここでわざわざみっともない答弁を繰り返すのか。  あるいは、ここでもっと悪いことを言うと、もう自衛隊はたび重なるまま子扱いされてきたとひがんでいる人もいるから、その自衛隊をこの際海外へ出そうとするとどんなにひどい反撃が日本国じゅうから起こるかということをこの際自衛隊員たちに教えて、平和の内国軍隊として、専守防御の軍隊としての自衛隊を実物教育するためにこれはやった方がいいと思われてやられたのか。私は、考えてみたらそれぐらいしか考えつかない。  そうしたら、自民党のある偉い方にこう申し上げましたら、その人が、これは君、そうじゃないよ、あの人はもっともっと深い読みをしている人だ、だから聞いてごらんになったらいかがかと私は言われたんです。だから総理に伺わなければならぬと思っているのはそれなんですね。何のためにこんなみっともないのをお出しになって頑張っておられるのか、その意図を伺いたい。いかがでございましょうか。
  269. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 ぎゅうぎゅういじめないとおっしゃりながら随分ぎゅうぎゅうおっしゃいますけれども、私の意図は、そんな複雑怪奇な意図でこれを出したりしておるわけではございません。  最初に率直に申し上げましたように、たしか委員もお触れになりましたから私も申しますが、お尋ねいただいたころは、まだ、クウェートの侵略が終わり、そして併合を発表されて、ただアメリカがいち早くサウジに抑止力展開して、そしてアラブの首脳会議が崩れてアラブ連合軍もそこに入り、戦線が不安定な中で膠着状態が起こった後でございました。そうして私は、東西の対立、対決が終わりを告げて、平和な国連の機能というものがまさに機能し始めようとしておるときに、日本が何もしないでこういったものを黙って見逃してしまったんではいかにもいけないではないかという感じがありましたから、貢献策というものをいろいろ考えておった。あの当時いろいろ先生から御注意いただいたことや御意見を申し上げたことも確かにございました。  しかし、当時、私がいろいろな法律とか制度、仕組みを調べてみましても、日本にはこういった、どういうんでしょう、国際的ないろんなことが起こったときに、国連決議があったときに、その実効性を確保するために皆が動いておるときにどういう対応をしたらいいかという仕組みも法律も制度もございませんでした。党首会談のときに正直に私は、一切の参考書や教科書を調べてみたが全く書いてないんだということを申し上げた。あのとき全部調べても、ありませんので、それじゃ今できる方法でやろうとしたら何だろうかというので、物資協力とか資金協力とか輸送協力医療協力、難民の輸送協力周辺国支援という六項目にわたる当初の貢献策を発表しました。そのときはなし得ることすべてを動員してやったらこの程度のことかということでありました。  以来、政府部内でいろいろと協議もし、相談もし、まあ私はこれは非常にいい法案だと思ってお示ししたのですが、鬼ばばあのようだと言われましたけれども、まあそれは立場が違うからやむを得ぬとして、ただ、これは大前提として、日本が歴史の反省に立って、ここへ行こうとかあそこへ出ていこうとか、日本もまた今のイラクのように力をもって日本だけの理由で弱いところへ出ていこうなんという法律では絶対ありませんし、同時 にまた、憲法の精神を踏まえて、武力による威嚇または武力行使をしてはならないということも第二条の大前提にきちっと踏まえてありますし、そして国連が初めて国際社会でここに正義に反するものがある、ここに許されないものがあると決めたときには、それは許さないという規範をつくることがこれからの世界にとって大切だ。アメリカとソ連の力が相対的に衰えてきたときには、国際社会の高いレベルの機構というものがその責任を果たさなきゃならぬ。日ごろ国連活動に大いに御尽力いただいておる渡部議員には、その面で私は敬意を表するわけでありますが、その国連を育てていかなきゃならぬ。その国連がもっと平和の破壊者に対してきちっとけじめをつけることができるようにしておかないと、冷戦後の最初のテストケースの、これは今後の世界の秩序が問われておると私は受けとめましたので、できる限りのことを日本もしようというのがこの法律案を出した理由でございました。日本政府独自の判断でいろいろ考えて出したものでございまして、そのほか議会でしかられておるとか議会がうるさいからとか、そんなような気持ちは毛頭、だれにも言っておりませんし、言う必要もないことだと思って、自分一人でじっとここで議論を聞いておるわけであります。
  270. 渡部一郎

    渡部(一)委員 さぞかしおつらかろうと私も同情しておるわけであります。しかし、総理というのは私は孤独なものだと思う。そして、アメリカから時々無法な要求が来たときに、はね返す役は結局は総理大臣一人に課せられてしまう。それはできません、自衛隊を出す、無理ですと言わなきゃならない。それは総理大臣としていろんな職務はあるけれども、身を削ってもできぬことはできぬと大声で言わなきゃならぬところがあるなと私は思うのですね。  私は、今度一番総理が難しかった仕事は、アメリカに対して自衛隊はそう簡単に使えませんよという説明だったと思う。それは事実上不可能に近いほどのすごい圧力がその総理の小さい体の上にどっかりかかったのは、もう目に見えておる。総理はその何百トンの圧力の中に、起重機に踏みつぶされるみたいな中で、平らになってつぶされてみせながら頑張られたのは目に見えておる。だけれども、これはできないものはできないと言わなきゃならない。日本国民の支える日本国憲法に抵触して自衛隊を海外へ出すことはできないと言わなきゃならない。そして死ななきゃならない。それによって、日本国憲法は次の時代を迎えるように、私はなると思うのです。  私はこれは答弁を求めませんよ。それはなぜか。そのつらい立場に総理はならざるを得ない。だって、この法案つぶれるんだもの。つぶれたら総理は何と説明しなきゃいけないかというと、国会には野蛮な野党議員を初め、理解してくれない与党議員が山ほどいるおかげで、とうとうあの法案はつぶれたのです、ブッシュさん済みません、アイアムベリーソーリーと。そして泣いてみせる芝居をしなきゃならない、あなたは。それが私は総理の役職だと思う、残念ながら。そういう立場にあなた一人を追い込んでおいて私は笑っているつもりはない。笑っていられない。だって、その次の瞬間にアメリカが怒ることは目に見えているんだもの。何だ、おまえの方は何も協力しないのか、タンカーに載せて油をしょっちゅう買っておる日本が何も協力しないで何をするかという猛烈なパンチが来るのは目に見えておるじゃありませんか。私はそうなったら、今総理が言っているのと同じようなことを同じように言いながら説得しなきゃならない、みんなを。だから、この時期、私はこの平和協力法にこだわり過ぎたと思っている、この形に。  私は国連平和協力というのはよかったと思うけれども、名前はよかった。ところが、この中身についてやるんだったら、今は与党と野党がねじれ現象を国会で起こしているでしょう。言うまでもなく、衆議院では与党が強い、参議院では野党が強いじゃないですか。そうしたら、通そうと思ったら与党と野党の大物が集まって法案つくらなきゃできなかったじゃないですか、こんな新しいものは。何でその手続を省かれたのか。与野党の国対委員長会談か両院の議運が提案するか、あるいは与野党書記長・幹事長会談かなんかでこうした法案をつくるなら、私は通ったと思います。  その手続を一切しないで突っ込んできた。そしてむざむざつぶれた。これは、明らかに別の意図があるな。ある、ある、絶対ある。もうあなたの深い判断がそこにある。泥を野党に全部かぶせて、自分だけいい子になってアメリカのブッシュさんにうまく言おうという作戦があるのかもしれない。その芝居に参加してあげてもいいですよ。ほら、公明党がわからず屋のおかげでつぶれたんです、ブッシュさん済みません、あのがらくたのおかげでとうとうつぶれちゃった、社会、共産はひどいけれども、わかってくれると思った公明党までが背いたのですと。助けてくださいブッシュさんと言ってもいいさ。だけれども、言ってもいいけれども、それじゃ——同僚の諸君済みません、本当に。そう言ってもいいけれども、それだけの芝居をやるんだったらどうしてもっと早く我々に対して打ち明けた上で何かを言わないのか。こんながらくた法案で来るのか。だから私は、きょうは今法律論を一つも述べていないのですよ。憲法学者のまねもしておらぬですよ。私は法学博士でもありませんよ。だけれども、余りにもこの審議の中身は政治論として幼稚過ぎたのではないかと思って心配しておるのです、こんなことでは。  総理、これは問題ですよ、こんなままこの法案審議を終わってしまうのは。あした採決するとか採決しないとか、会期延長するかしないか、もう瑣末だ、そんなことは。もう見え見えの幼稚極まる政治交渉ね。そんな幼稚なことにこれ以上時間使うのはやめようじゃないですか。本当の意味で平和協力、これは国連のという字をかぶった平和でなければならない。もう明らかにただの平和ではだめだ、平和と称していかに多くの戦争が行われたかわからない。だから、今のところは国連という名を冠した平和、それに対する我が国協力というその大観点に立ってほかの問題を模索しなきゃならない。その提案が山ほど出てくる委員会審議でなかったら審議にならなかったと私は思うのですね。委員会の大半は、この法案のぼろいところをひっかいて、つっついて、穴をあげて、そして相互にサディスティックに応酬することに終わってしまいそうだ、これでは。それは我が国議員のすることじゃないのじゃないだろうか。総理、ちょっとおかしくありませんか、これ。何を考えておられたんですか、本当に。
  271. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 何をお答えしたら御満足いただけるのか、ちょっと私も考えたんですけれども、おかしいと思って出してもおりませんし、それからそんな奥深いことや、私は二重三重の、ひねって物を考えてお出ししておるわけでもありませんし、むしろ率直にお願いしたかったことは、いつかも申し上げたと思いますが、国連協力するということは大事だよ、そこまでは皆さんわかってくださる。これがおかしい、変だ、いけないとおっしゃるなれば、代案を出していただくと、どこが重ね絵のように合わせたら合うところか、どこが合わないところかわかってきたら、そこでまた議論が深まっていくし、我が方もいろいろな御批判にこたえて、それはどういうことでしょうかといろいろな話が進んでいくと思ったのです。むしろ逆に、率直に、先生ならば何をしたらいいとお考えになっておるのでしょうか。立場がもし変わるならば、私は聞かせていただきたいと思うほどです。  というのは、国連に対するこういった問題、安保理事会でこういった決議ができるようになったというのは、これは全く初めてのケース、経験でございます。そして、将来の国連がどのようなものになっていかなければならぬかということも、まだ随分いろいろ人によって意見が違うわけでございます。しかし、みんなで助けていかないと、イデオロギーのバックにある二大勢力の対立という世界の構図は変わりつつあるわけですし、両陣営は両陣営の中だけを超大国がそれぞれ抑えつけておれば力の均衡で平和が保たれるという、ああいった構図のうちはそれでよかったのですが、相対的な力の低下によって、何か、どこで何が起こるかもわからぬというような不安な状況になってきますと、この辺で冷戦後の最初のテストケースとして、力による侵略、併合はこういったことによって許されなくなったんだ、それは国際社会がこういうふうにそれぞれの持ち分において、それぞれの可能な問題について力を出し合って片づけたのだということをつくっていかないと、やはり将来に余り希望が持てないなという心配が私にはありますので、そういう意味で法案をつくり、議論をお願いをしておるというところでございます。
  272. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私がつくった法案をここに提示するのは、私が与党でないのでいささかいかがなるものかと私は思いますが、ここの審議の中で、与党と野党の対決というよりも政府と議員の心配との対決は、かかって自衛隊参加問題です。もう明らかなのです。自衛隊員参加する、自衛隊参加するというこの二つは違いますけれども参加するとなれば自衛隊の論理から当然併任という問題が出てくる。そして、併任という問題が出てくると同時に、指揮権を持っての部隊というものの参加というものが出てくる。独自の指揮系統という問題が出てきてしまう。そして防御的兵器の携行という問題になってしまう。そしてそれによって結局は憲法違反だどうだ、あるいは国民の大きな不安というのと正面衝突してしまう。そうすると、結局はその部分を、当初政府がお考えになった幾つかの案の中には自衛隊部分は切り落とされて、なかったはずだ。後から追加されたはずです。私は、交渉していらっしゃる皆様方のいろいろな御努力を横で拝見しておって、そういう案もあったことを知ったためにとりわけ思うのですけれども、何でそこの自衛隊の部分でそこまで妥協しなければならなかったか。  私は総理に自分でお目にかかったときに申し上げましたら、総理はそのときにいろいろなお話を、内輪話はしてくださいましたが、公にしていい話として申し上げるならば、自衛隊でないと参加する人がいないのだ、お医者さんも集めてみたけれどもほとんど集まらなかったのだ、飛行機も出そうとしたのだけれども労働組合が反対して飛行機は飛ばないなんという事態にもなったのだ、どうしようもないのだよ渡部君とおっしゃいました、私に。しかし、それだからといって直ちに自衛隊に飛びつくということは私はないと思うのです。その中間にはいろいろなやり口がある。PRすることもできる、国民を教育することもできる、給料を高くすることだってできるでしょう。それを一気にそこへ飛びついてしまう、ここに私は変な急ぎ方をした敗北主義があると思うのですね。  私は、そこのところは、まだもしこの法案について何らかのやり方をするとすればその部分からまず直さなければならない。しかし、これは修正にならないですよ、一番大きな大骨を取ったみたいなものだから。お魚でいったら、刺身になるはずがうまく刺身にならなくて、大骨も小骨も頭もしっぽも肉まで取ったらあとに何が残るかといったら何にもなくなってしまうでしょう。それはだめですよ。だから、私らとしては修正という話では言えない、これは。観点まで違ってしまう、これじゃ。だけれども、この部分がもう最大の激突現象であって、しかも国民の大多数は、特に婦人層は自衛隊が出てくるのではないかとはらはらして見守っている中では、これ以上無理できませんよ。私、この問題については総理に、総理がどうお考えになっているかもうさんざん伺わせていただきましたので聞きません。いいですか。  それで、私、自治大臣に……(海部内閣総理大臣「答えさせてください」と呼ぶ)そうですか。どうぞ。
  273. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 当初からいろいろと御意見をいただいておった渡部議員のお話でありますから、私がそのようなやりとりがあったこともここで率直に御指摘がありましたから認めさしていただきます。と同時に、あのとき私がいろいろ申し上げましたことの中にも、今度の国会の議論を通じてあるいは報道を通じても、何か初めから戦闘目的で武装した自衛隊自衛隊として武力行使に出ていくような錯覚があったのではないか。逆にこちらの説明不足であったとおっしゃればその御批判は受けなければならぬかもしれませんが、この法案はどこを読んでもそんなことにはならないように歯どめはきちっとしてあるはずであります。武力行使を目的としない、武力の威嚇は伴わない、それはきちっとしております。  そして、これは委員にも申し上げましたが、貢献策をつくって本当に呼びかけました。あらゆる企業、あらゆる民間、あらゆるところへ御協力を呼びかけましたが、残念ながら飛行機はとうとう一便も出ることができませんでした。ただ、船の物資輸送のときに、物資協力で第一船がようやく出てもらうというときにちょっとまた港の入り口でとまったのが世界じゅうのテレビに報道されたことも委員御承知のとおりでございました。あのとき上空から衛星で見ると、日本の油送船はペルシャ湾にはまだ何十杯もおるではないか、協力する物資を輸送するのがいけなくて、これはいいのかというようないろいろな御批判も来ました。けれども。そこで海員組合の皆さんにお願いをして、お話をして、きちっと取り決めをして、協力を願って、第一船がようやく出てもらったことも、これは委員よく御承知のとおりであります。そういったことをいろいろ研究、検討しながら、政府部内で説得した結果、要するに自衛隊自衛隊のままで、武装集団として、戦闘集団として出ていくのは、これは歴史の反省から許されることではありませんが、非武装であるなれば、原則丸腰であるなれば、しかも国連決議を受けての平和協力であるなれば、それは許されることではないか。  むしろそれをすべきだというのは、私ここへあえてお名前のところは出しませんけれども、見てください、渡部委員、これは皆さんの党の方がこうして非武装の自衛隊ならば考えろということは何回も何回もそのころお書きになった論です。これは事実です。そしてまた、ある方は、そういうことをやるなればなぜ国が先頭に立って公務員がまず行かないのだ、民間ばかりにやれやれと言うのは何だ。テレビを聞いておったら、ある有名な評論家が、今後就職するときは日本航空へ行くよりも自衛隊へ行った方がいいのかどっちがいいのか、自衛隊へ行くのがいいのか日本航空へ行くのがいいか。日本航空へ行くと政府がペルシャ湾へ飛んで行け飛んで行けと言うからというようなことまで言われて、私は大変残念に思ったこともありましたが、そうであるなれば、一層きょうまでの組織的な訓練とか技能とか、そういったものを生かしてそういったところに要請するのが国際協力、国家としての協力にはふさわしいのではないだろうかと思うということを私は渡部委員にも率直に申し上げたことはそのとおりでございます。  そのとき先生は、それはよくわかった、わかるけれども、しかし自衛隊をやめてこなければならぬよ、身分はきちっと切りかえてこなければならぬよという御注意まで賜ったことも事実でございましたが、しかし、今度はいろいろなことを法規、典例調べますと、船だけ借りてくるとか飛行機だけ借りてくるとかいうようなことは、これは不可能であって、船には船の、飛行機には飛行機の動かし方とかそれまでのチームワークとか、いろいろなものがあるのだということも随分いろいろな方面から私は聞かしてもらいました。そうであるなれば、その船の動かし方の訓練もできており、なれておる人にお願いしないと、新しく船をつくるとか新しく飛行機をつくって、それから乗員を訓練して、要員を集めてと言っているのでは、これはとても間に合わないから、思い切ってやはり非武装を原則として武力行使武力の威嚇をしないということをきちっと前提に書くならば、これはお認め願えるぎりぎりの選択ではないかという判断で、この法案の中にはそういうことを書き込んだわけでありますので、アジアに対する戦争の反省を失ったわけでもございませんし、力でもって力と力の対決の中へお役に立とうと言って入っていこうというような大それた思い上がりがあったわけでもありません。国連のそういった考え方決議実効性を高めるために、日本もできる限りの平和的な協力というものは何であろうか、平和政策の一環として考えてきたつもりでありますので、どうぞその真意だけは御理解をいただきたいと思います。
  274. 渡部一郎

    渡部(一)委員 まさにそのときの応酬で私は総理に忠告をしました、口幅ったいんですけれども。それで、自衛隊がそのまま出てくるのはだめです、自衛隊員の帽子をかぶったままじゃ無理です、北欧における国連待機軍の例を見ても、帽子を脱いで退職して、もう一回採用試験を受けてくるではありませんか、そうすればまた考え直しようもある、ルールの立てようもある、国民に対する説得の仕方もある、ここだけはさわったらだめですよと私は二度も繰り返して申し上げました。そこのところは物別れになったことが残念でございました。本日、たくさんの、こうした惨たんたる形でこの委員会の質疑が終結しようとしている直前に当たるということはまことに残念ですけれども、私はこれは本当に残念だったと思う。あのときに頑張ってくださればよかった。あの一点ですな、これを頑張ってくださればよかった。それは確かに説得は難しいかもしれない、人は集まりにくいかもしれない。だけれども、そこなんです。そこの、政治家も政党もそうですけれども、頑張らなきゃならない一点というか一線というのが時々目の前に出てくる。それは一生のうち一回か二回しかないのかもしれないけれども、問題だと私は思っているのです。今後の御行動においてその辺を何とかしていただけるとありがたいなと私は希望します。  ただぶっ壊すだけの議論で申し上げるつもりはなくて、政治論をしたいのではございますが、法制局長官にちょっと伺いたいのですが、国連待機軍、自民党の有力な方が、北欧四国、フィンランド、スウェーデン、ノルウェー、デンマークの四国におきまして国連待機軍というのがございまして、国連平和維持軍等に出動する人々を訓練をいたしているわけであります。ボランティアで人を集めておりまして、そしてその国連待機軍は非常に高い評価を受けているものでございますけれども、この国連待機軍を日本では考えたらどうか。  最近は、自民党はここの委員会に出てこないところで大声で何か言われる方がおありになりまして、総理を気取っておるような方がおられるものですからひどくやりにくい。ああいう人はこの委員会に来て物を言うべきですな、本当に。委員の人選が間違っているんじゃないかと私は思う。そう差しかえるべきだ。だけれども、この国連待機軍に対して日本は、日本の法制上これを検討してどういうことになっているのか、そこをちょっと御説明をいただきたいと思います。
  275. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答え申し上げます。  ただいま国連待機軍というふうなお話がございました。国連待機軍の実態につきまして私は十分に承知しているわけではございません。そういう意味では私が的確にお答えできるかどうか若干問題はございますが、従来の私どもがこの委員会においても述べておりますところから敷衍して若干申し上げたいと思いますが、それは、この委員会でもたびたび引用させていただいております昭和五十五年の十月の政府からの質問主意書に対する答弁書、これが基本になろうかと思うわけでございます。  で、その内容も、もう時間でございますので繰り返し細かくは申しませんが、要するに、従来のいわゆる国連軍あるいはその他の諸外国における組織、こういうものでございました場合に、その目的・任務武力行使を伴うものであれば我が国としてこれに参加することは憲法上許されない。ただ、他方、当該国連軍あるいはそういった組織の目的・任務武力行使を伴わないものであれば、これに対して我が国として参加することは憲法上許されないわけではない。こういうのが質問主意書に対する答弁書のその当該部分でございます。  そういう意味で、御質問の案件が、今申し上げたような目的・任務武力行使を伴うかあるいは伴わないか、そういった事態を、そういった内容といいますかを個々に判断した上で、そういう形で参加できるあるいは参加できない、かようにお答えすべきかと思います。  なお、当然のことながら、その場合におきましても、憲法上許されるといいましても、法律上そういうふうなことが許されるというところもまた必要でございます。そういう意味で、憲法上の許される許されないという議論と、それから法律上そういうものをいわば認めているか認めていないか、こういう二段の議論になろうかと思います。     〔浜田(卓)委員長代理退席、高村委員長代理着席〕
  276. 渡部一郎

    渡部(一)委員 今法制局長官の言われたのは、一般国連軍及び多国籍軍に対するたび重なる御答弁の総論の部分でお答えになったなと私は見ておるわけでありますが、そうすると、国連待機軍の中身については、それをどう判断されるのでございますか。
  277. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 今御答弁申し上げたのが総論部分という御指摘でございますが、結局、例えば我が国国連待機軍のようなものを設けます場合のことを考えますと、それがいかなる形になりますかは、これは立法政策の問題が大いにかかわってくると思いますので、そちらの面は省略させていただきまして、結局、国連待機軍としてつくられた場合に、それが参加しますというか、その先がその任務・目的において武力行使を伴うものであるかどうか、そこでいわば区別されるといいますか判断される、かようなことでございます。
  278. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そういたしますと、国連待機軍が先方に出張した、海外に出動したときの態様というものが判断を決定する要件になるというふうに解釈すればよろしいわけですね。
  279. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 原則としてそのようにお考えいただいて結構だと思いますが、今私が申し上げましたのは、むしろ国連待機軍が先方の、先方のというのは諸外国のでございますが、あるいは国連組織でございますが、そこに参加することを中心に申し上げました。  それに対する協力というのがまたもう一段ございまして、協力の場合にも、先日から申し上げておりますように、先方が例えばその任務・目的が武力行使を伴うもの、それと一体になるような協力は許されないけれども、それと一体とならないような協力ならば、これはまた全然別な話として憲法上許される、かように考えます。
  280. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それでは、今度はPKOについてでございますが、PKOの内容については、非強制的、同意的性格を持ち、第三者的役割を果たすという形で、国連憲章上には載っておりませんけれども各国の合意を得て一九六〇年代前半以降非常に活躍をされ、ノーベル平和賞も二度にわたっていただくような活躍をしているわけでございます。  この御存じのピース・キーピング・オペレーションズ、PKOに対しまして、我が国がそれを保有する、あるいはそうしたグループを育成にかかる、組織する、あるいはそういう外交上の申し出をする、そうしたことは、現憲法上から見ていいか悪いか、お答えをいただきたいと存じます。
  281. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 ただいまの御質問を私、正確に受けとめたかどうか若干自信がございませんが、結局、我が国といたしまして憲法上許されることあるいは許されないことというその分かれ目は、憲法の九条、武力行使あるいは武力による威嚇を我が国として行ってはならない、ここから発するものだと思っております。したがいまして、先ほど申し上げましたのもそこにつながるわけでございますが、我が国が行うものがそのようなものに当たる、あるいは協力をすることがそういうことで一体となった結果武力行使を行う、あるいは武力による威嚇を行うという形になるものがいけないということでございます。  そういう意味で、今委員御指摘のような我が国で育成するあるいはというふうなことが今のような観点からどういうふうに当たるのか、若干私正確には申しかねますが、そういう観点から判断されるべきもの、こういうふうに思っております。
  282. 渡部一郎

    渡部(一)委員 本当に法律家というのは難しいことを言われるものだと思います。  さて、ここに私が持っているのは、国立国会図書館外交防衛調査室の報告であります。PKOに対して、  過去の経験から一応定着したPKOの構成要素は以下の通り。  i、国際の平和と安全を脅かすおそれのある局地的な紛争や事態に対し、  ii、安保理(または例外的に総会)の決議(勧告)に基づいて、  iii、関係当事者、特に受入当事国の同意を得て、  iv、加盟国の軍隊等により構成される国連監視団ないし平和維持軍を現地に派遣し、  v、紛争当事者間に介在させることによって、停戦の監視や治安の維持等に当たり、  vi、もって戦闘の再発や拡大を防止し、事態の鎮静化を図ること。 と、こういう六項目の規定をここに記されております。僕の見たところでは、大体これは当たっているのではないかと思います。今これ差し上げますから。  このような活動の中には、監視団、事務総長の指揮、要請に基づきまして、紛争当事者が中立的と考える加盟国の提供する軍事監視員グループを受け入れる、もめている両者が受け入れる、そういう監視団がある。停戦の維持を監視し、停戦に違反する行為があったら事務総長に報告し、ただし武器は携帯しない、こういう監視団。それから平和維持軍、PKFですね、これは加盟国の提供する軽武装の部隊で構成される。ただしこの部隊は、防御的武器の所持を認められるけれども武力行使は自衛以外には認められない。そして、典型的任務は、戦闘の再発を防止し、法と秩序を維持し、事態の正常化を図る。そのために、安保理の付託事項に従って、紛争地域等における停戦の監視、交戦部隊の引き離し、外国軍隊撤退の実施確保、停戦条件の違反防止等を行う。必要に応じて交渉、説得、監視、事実調査を行う権限も付与され、巡回パトロールを実施して対立する当事者の間に介在する。  さて、こういう代物は、今の日本国憲法から見てつくれますか、つくれませんか、合憲か、合憲でないか。  ちょっと、しばらく考えておられる間にほかの質問をします。これは今私は、総理、極めて重大なことを言っているわけであります。それは、我が国がこの平和協力法、もう一段飛びでここへ飛びつこうとしたのでさんざん大きな問題が起こったわけでありますが、それ以前に我が国としてなすべきことがいろいろあるのではないかという私は観点がございまして、この平和協力法以外にまず考えられるべきことは、PKOのある部分については全く合憲的に参加することができるのではないか、むしろ我が国はその義務を怠ってきたというよりも、余り口を出さないでおいた方が何かともめごとが少なくていいというような後退的な立場があり過ぎたのではないかと私は思っておるわけでありますから、PKOのことについて伺ったわけであります。このPKOの御返事はもうちょっと後にしまして、御相談中の御様子ですから。  自治大臣に特にきょう来ていただきましたのは、自治大臣と私は国連議員連盟創設の当時からのパートナーであります。全力を挙げて国連活動を国会の中で推進されたお一人であります。私どもがしょっちゅう言っていたことにこういうことがあるわけです。  戦争が始まったときに日本が手を出すというのは、大変困難なことは今度もうよくわかっています。それで、どこが後方でどこが前線かなんという論争は神学的論争に近いと私は思っておるのでありまして、後方などというものが地球上にあるのかというような、ぐるっと回れば皆前線という言葉があるくらいであって、もう本当に議論にならぬ議論が随分繰り返されたと私は思っておるわけであります。ところが、やれることがある。それは自治省が持っておられる国際緊急救助隊でございますが、それが物すごく喜ばれておる。ただ人数がひどく少ない。そしていろいろな、地方自治体の職員とかボランティアまで含んでおって、消防署の非常にベテランの人たちも含んでいて、地震とか火事とか災害とか、そういったときに出動していく。そして日の丸を掲げてやってきたこれらに対して、日本貢献はもう物すごく大きく評価されておる。ところがやってみてわかったことは、戦争に伴って、あるいは戦争類似行為の紛争のために大発生する難民、飢餓、そして流民等の人々に対して手の打ちようがない。ですから、むしろ国連事務総長のところで指揮をする、そういう国際災害の、相当幅を広げた国際災害に対する救助隊をつくりたいということを日本が提案したらどうだろうかというお話が出ていたわけでございます。  そこでこの間、大臣のお勧めもありまして、デクエヤル国連事務総長にお目にかかったとき、国連議連の意見として、国連事務総長の指揮下に置く国際災害救助隊のようなものを、つまり予算は我が国で払っておくけれども国連事務総長の要請でいつでも出ていく、そういう世界的な災害救助隊を、大きなレベルのものを、数千、できたら数万というレベルで世界じゅうが拠出し合ってバックアップするというようなやり方をしたらいいのではなかろうか、こういう意見が出ておったわけでございまして、これを事務総長に申し上げた。事務総長はそれに対して、法律的な立場というものを精査するとはおっしゃいましたけれども、そうした部隊を、グループを自分の指揮権のもとに置くことができればこれにまさる喜びはありませんというのがお答えでございました。  さて、こうした問題について、もし貢献をされるとすれば、私は、今度のヨルダンの難民の処理の問題なんかはそちらでも相当部分できるのではないか。むしろそれの方がはるかに、日の丸を掲げ、そして日本人が大量に出てくるわけでありますから、どんなに喜ばれたかわからない。しかも戦闘するわけじゃないのですから、私は将来のアラブ方面におけるところの日本国民の信用の上にも大きなプラスになったのではないかと思うわけでございますが、いかがなものか。  まず、これは発案者であります大臣に敬意を表してちょっと先にお答えをいただきたいと思っております。お願いします。
  283. 奥田敬和

    奥田国務大臣 私に新しい御提議に対する御質問でございますけれども、今現在は国連平和協力法案の審議中でもございますし、私が委員と常にこの国連議員連盟の仲間内として、新しい国連のあり方、国連中心で日本が生きるならばどういう形で日本貢献できるだろうか。委員と私がよくアメリカの国連本部へ行きまして、そして、かつてはアメリカやソ連が冷戦、対立のときに、国連に対しての負担金もろくに納めなくて、口だけ出して金は出さないというアメリカ、ソ連の態度に憤慨して、お互いに抗議に行ったこともございます。いろいろな意味で、口では国連中心を言いながら、今までのいわゆる冷戦構造下の超大国が果たして国連の機能を充実させるためにどれくらい貢献して動いたのかということになると、甚だ疑問の点が多かった。そして、そういう時期に、率先して国連中心、そして国連のあるべき機能を充実させるために日本がまずお手本を示そうじゃないかという形で、委員とともに私はそういった活動に参画して情熱をたぎらして、現在もおります。     〔高村委員長代理退席、委員長着席〕  しかし、今御提議の国連待機軍的な、救助隊ですか、そういったことに対する私に対する御質疑で、私も今どういう答弁をしたらいいのか。私は今も閣僚の一員として、今日の御提案なさっている本法を何とかして御審議願い、かつそういった意味ではいい形で法案通過を願う立場の一人でございますけれども、今仮に、こういった形は、日本は率先して平和的な、いわゆる難民なりあるいは貧困を救うための医療、飢餓、環境、地球環境あるいは災害全般に関するそういった形で地球全体、人類、人権の問題に関して、本当に世界貢献する国として、しかも国連を通じて、国連国連総長の指揮のもとにそういった実効性を担保する組織が、もし日本経済情勢も許し、他国の協力があるならばそういった常設的なものは日本が率先提案すべきではなかろうか、これは私の一政治家としての持論であります。ですから、このことに関しては、委員の御同意を得てそういった国連活動の中心的なテーマにやっていこうじゃないかということで御相談申し上げてきたことも事実でございます。  しかし、私は委員にお願いしたいのは、今が日本が本当に国連を舞台に世界平和に貢献できる国としての出番のチャンスのときである、何も中東湾岸の今緊急的な問題だけじゃなくて、冷戦が解消したこのときこそ、日本は今貢献できる何かの方策を与野党接点を見出すべきじゃなかろうか。私は、だからそういった意味においては賛成でございます。
  284. 渡部一郎

    渡部(一)委員 ありがとうございました。  それでは、話が飛び飛びになりますが、法制局長官、先ほどのPKOに対する画期的な、歴史的な見解をお述べいただきたい。これは我が国にとってどれくらいの選択肢があるのか、これはまさに我が国がこれから考えなければならぬテーマでございますから、大丈夫な面と危ない面と、法律的見地からちょっとお述べいただきたい。
  285. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答え申し上げます。  委員のお尋ね、二段に分けてちょっと考える必要があるのかなというふうに感ずるわけでございます。といいますのは、従来のいわゆる国連軍、PKOでよろしいわけですが、これがいわば国連で組織されて、それに我が国がほかの国とともに参加するあるいは協力するというケース、それから、先ほど委員がちょっとおっしゃられましたが、我が国がむしろ何か組織をつくって、それが他国とともにであるのかどうか、そこは若干不分明な点がございますが、そういう形で我が国が独自でといいますか、国連の慫慂などを受けて活躍する、どうもこういう二段、二つに分かれるのではなかろうかという感じがいたしました。  それで、まず第一番目の方でございますが、これがいわば従来、昭和五十五年に政府答弁申し上げているところでございます。その場合のPKOに、いわば先ほどおっしゃいましたおおむね二通り、大きく二つに分けられる。一つが停戦監視団のようなものであり、一つが平和維持軍のようなものであるということだろうと思います。  それで、あの答弁書にも述べておりますように、その停戦監視団的なものあるいは平和維持軍的なもの、それもそれぞれの中に多少の差があるように私は従来承知しておりまして、停戦監視団だからすべていいとか平和維持軍だからすべてだめだということではないと思いますが、概して申し上げれば、停戦監視団あるいは選挙監視団のようなものは、その任務・目的に武力行使を伴うようなものがない、あるいは、まあないと申し上げていいと思いますが、そういうものが概して多いということが言えると思いますし、それに対しまして、平和維持軍の方は、どちらかというといわば紛争が再発した場合の抑圧というふうなことまで考えたものがございますので、軽武装をしたりというふうなことで、二つの性格はおのずから違ってきているのではなかろうかと思っております。  そういうふうに考えてまいりますと、これはその個々の組織が組織されますときの当然の個々の確認をいたさなければならないと思いますが、今のようなことで概して言えば、停戦監視団的なものに対しては我が国参加できる場合が多いと思いますし、平和維持軍的なものに対しては参加することが困難な場合が多いのではなかろうか、かように考えるわけでございます。それで現に、過去我が国が、これは組織としてではございませんが、要員を何人か派遣したようなケース、これは今申し上げた停戦監視団的なものであったと考えております。  それから、第二番目の方でございますが、我が国国連からの慫慂を受けてといいますか、そういうふうな場合も今とほぼ同様の考えでございまして、いわば我が国がそういう任務に当たるときに、そこがいわば全く武力行使あるいは武力による威嚇というふうなものを伴わずに任務が達成できるのかあるいはそうでないのか、こういうことでいわゆる国連待機軍のようなものを考えました場合にも、待機軍を考え、かつ我が国が独自で出ていく、国連の慫慂を受けて出ていくというような場合を考えましても、今とほぼ同じような判断があるのではなかろうか、このように考えております。
  286. 渡部一郎

    渡部(一)委員 では総理、私は先ほど申しましたように、このPKOに対する考え方はぜひ政府において、いろいろな問題点はあるかと存じますが、今後の研究課題にしていただきたいと存じます。  また、先ほど申しましたような国連事務総長の指揮下にあります国際的な災害の救助、援助隊のようなものを我が国が提案する件についても、積極的に御研究をいただければどうかなと思っているわけであります。  また私は、三つ目にもう一つ申し上げますと、どうしても今度の場合に、イラククウェートに対する侵入は、これは何とかしなければならぬのは確かでありますけれども、戦闘行為でそれを排除するという立場でなくて、できたら平和裏にイラククウェートから戻ればいいには決まっているわけであります。それについては政府は特段の意思表明をもってそれを推進していただきたいと思うわけでございますが、以上三項目まとめて御返事をいただきたいと存じます。
  287. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 国連の平和維持軍の問題につきましては、いろいろ御指摘になった点等を踏まえてこれは研究を続けていかなければならぬ大事な問題だと思っておりますし、今度の法案の第三条のところに停戦監視のことはきちっと列挙しましたが、すべての平和維持軍についてはいろいろとまだ問題があるということもありましたので、平和維持軍に直ちにこの法案参加することができるようにはなっておりません。それは武力行使を伴うか伴わないか、その形態その他いろいろあるということ等を勘案した結果でございました。  それから、国連事務総長のもとに常設的な緊急援助、災害援助とおっしゃいましたね、そういったものを置いたらどうだという御意見でございました。私は、今度の場合でも私自身がジョルダンへ参りましたときに、あそこに九十万を超える難民の人が集まり、ほとんどは通過客であったけれども、残っていらっしゃる難民キャンプなんかも見に参りました。あのときに、国連の、何と言いましたか、被災救済機関というのがあって、そこの調査官の人がたまたまちょうどヨルダンへ来ておりまして、私は訪問を受けてヨルダンの内務次官とともにお話を聞き、難民キャンプも実際に見てまいりました。また、日本としてはその国連機関が必要とする世界に向けて要請をした資金の半額を既に拠出をしてやっておりますので、国連のその機関からは非常に現場で感謝をされましたということを御報告させていただきたいと思いますが、さらに大きなものが常設的にできるのかどうか。例えば、そういった国際的な災害が起こりますときには確かに必要が生じて各国から集まっていろいろやっております。けれども、それが終わるとそれぞれのところへ帰っていってもらわなければならぬという問題等もあろうと思いますが、そういったことも踏まえてよく研究、検討をさせていただきたい、こう思います。  三つ目は何だったですかね。(渡部(一)委員イラククウェートからの、平和裏に」と呼ぶ)それはもう申し上げるまでもなく、私は今までも再三答弁で申し上げたように、軍事オプションで解決をするというのは最悪の事態だと思っておりますから、粘り強く平和的な交渉によって、平和的な努力によって解決すべきであって、今行われておる経済制裁というものもまさにそれを目指しての国際的な努力だと思いますし、そういったものに対してできるだけその実効性を確保するために我が国支援をしていかなければならぬということでありますから、あくまで平和解決を求めておることは変わりありませんし、今後も機会を通じて、あらゆる場を通じてその声を上げ続け、努力を続けていかなければならない、御指摘のとおりでございます。
  288. 渡部一郎

    渡部(一)委員 質疑持ち時間が終了いたしましたので、恐縮でございますが質問をたくさん残しまして終わりにさせていただきますが、どうか、まことにこれまでの政府関係者のこの法案に対する御努力に対しては深い敬意を表しますけれども、この法案は余りにも問題が多過ぎるので、今後においてこの御研究の成果は必ず生きるものと私は存じておりますので、私は別の形で日本貢献策をお考えくださいますように希望いたしまして、私の質問とさせていただきます。  終わります。
  289. 加藤紘一

    加藤委員長 これにて渡部一郎君の質疑は終了いたしました。  次に、東中光雄君。
  290. 東中光雄

    東中委員 国連平和維持活動について伺いたいと思います。  この法律では、国連平和維持活動その他への適切かつ迅速な協力を目的とするということに第一条でなっております。いわゆる国連平和維持活動の歴史は、一九四〇年代から長い歴史を持っております。我が国は、この国連平和維持活動については、資金協力はやっても要員の派遣というのはずっとやってこなかった。いつから国連平和維持活動への要員の派遣等を含めた積極的な参加をするようになったのか、外交方針としてそうなったのはどういう経緯でいつからですか、外務大臣にお伺いしたいと思います。
  291. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 私の方から先に事実関係を申し上げます。  日本が、先ほども先生が申されましたように、従来国連の平和維持活動に対しましてはいろいろな面で、特に資金面を中心にいろいろと協力してまいりましたけれども、特に二年前のアフガニスタン・パキスタン仲介ミッション及び国連イラン・イラク監視団、これに対しまして、まず一人ずつ外務省員を国連の政務官として派遣いたしました。その後、ナミビアの選挙監視団、これは去年でございます、及び本年のニカラグアの選挙監視団に対して選挙監視要員を派遣いたしました。
  292. 中山正暉

    中山国務大臣 今政府委員がお答えいたしましたように、我が国の今日までの参加形態というものは、けさもこの委員会の質疑で出ましたけれども、フィジーというような国の七百人といったようなケースから比べると経済国家としては極めて低い立場にあるということで、これからこの問題について日本としては相当配慮をしなければならない、このような認識を持っております。
  293. 東中光雄

    東中委員 全然外務省は、外務省の方針自体がわかっていないのですね。毎年外交青書が出ていますよ。こういう要員を派遣しようということを外交の課題として提起したのは、八八年十一月に発行されたこの外交青書で初めてですよ。そうでしょう。それまでは、平和維持活動に要員を派遣するなんというようなことは言うてなかったのです。  なぜそういうふうに外務省で出てきたかといえば、これは八八年の五月四日にロンドンで当時の竹下首相が「日欧新時代の開幕」ということで演説をされて、「国際協力構想」というのを発表したのです。その中で「紛争解決のための外交努力への積極的参加、要員の派遣、資金協力等を含む、新たな「平和のための協力」の構想」を出したのです。だから要員の派遣というのは、紛争解決のための外交努力への積極的参加と要員の派遣なんです。今の、国連軍に参加するとかせぬとか、そんなものと全然違うのですね。  それから、同じ年の六月一日に第三回国運軍縮特別総会で竹下さんが演説をして、「国連による平和維持活動等が開始されるに至った段階において、」「積極的な資金的協力を行ってきた」、今度は「更に、」「我が国にとって適切な協力分野における要員の派遣を考慮する」。これが総会での最初の発言ですわ。それまでは全然派遣していないのですからね。  そして、六月二十二日、トロントのサミットの直後、シカゴで竹下さんが演説した。このころはバードンシェアリングがえらい問題になっていたのです。日本は国力がうんと強くなってきた、だからあらゆる分野で協力せないかぬ、分担せないかぬということを言われている中で、竹下さんが演説をしたのは、「近年」「国際社会において一層大きな能力を持つようになっていること」、だから、「わが国がその国力に相応しい役割を自ら積極的に担うこと」ということを強調して、そして「平和維持活動への参加貢献」「ODAの拡充」、こういうことを言ったのですよ。これが日本世界に対して言うた、世界に対して申し上げます、ロンドン演説ではそう言うていますね。だから、総理、このトロントのサミットの直後のシカゴ演説というのは日米首脳会議をやったすぐ後ですから、これは対米公約にもなっているわけですよ。そういう意味での、バードンシェアリングとしての平和維持活動への参加貢献ということなんです。だから、平和維持活動だから何でも派遣していくんだ、それは国連協力でいいんだ、ずっと戦後四十年余りそんなことを言うてこなかったのです。おととしから言い出したばかりでしょう。そうでしょう。何も国連中心でも何でもなかったわけです。特に軍事的な参加というのは、これはとてもじゃないがやるべきじゃないということが前提になっているわけであります。  私、今申し上げたこと、そういうことで、この外交青書にも我が国の外交の課題として、三本柱の一つとして派遣協力ということが出てきたのですが、外務大臣、違いますか。違うところがあったら指摘してください。
  294. 中山正暉

    中山国務大臣 日本も民主主義と自由経済の原則で、戦後の廃墟の中から今日のような世界での経済大国と大変評価されるような国家になって、そのような中で、我々の国が貧しかった時代にはまだ世界への貢献ということが具体的な政治課題に上がっておらなかったと思います。ここ数年間日本の国際的地位が極めて高くなり、国連に対する協力の資金拠出も世界の第二位というようなランクになってまいりますと、我々は、竹下総理が言われたような国際社会への国家としての貢献をどうするかというような一つ考え方から、ナミビアあるいはニカラグアへの選挙監視団への参加というものも含めて、これから新しい国際社会づくりに貢献をしていかなければならない、このような認識に国家というものが今日到達している、私はそのように思っております。
  295. 東中光雄

    東中委員 昨年の十一月、国連ナミビア独立支援グループに対する三十一名の監視団を派遣をしました。十九地方公共団体から参加をした。この国連ナミビア独立支援グループは、そこへ参加をしてどういう活動をやったのか。制憲会議選挙の監視活動をやったのではないか。日本政府派遣したわけですが、その派遣するについての法律上の根拠は何に基づいてやったのか、お伺いしたいと思います。
  296. 中山正暉

    中山国務大臣 ナミビアの選挙監視につきましては、国連への協力という国家の考え方で、二十七名の地方自治体の方々と四名の外務省職員をつけて三十一名派遣したわけでございますが、その選挙監視の状況等については国連局長から御説明をさせていただきたいと思います。
  297. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 一言だけ外務大臣の発言に補足させていただきますけれども、二十七名の選挙監視要員、大部分が地方自治体の方々ですが、一部自治省と外務省の人間も入っておりました。どういうステータスで行ったかということでございますが、すべてが外務公務員になりまして、公務出張の形で参加いたしました。
  298. 東中光雄

    東中委員 外務職員として公務出張で参加した選挙監視であるということですね。
  299. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 そうでございます。
  300. 東中光雄

    東中委員 そのときにこの監視団は、南ア軍の撤退の監視というのもその団の任務になっておったのですが、日本の監視団参加者はそういうものにはタッチしておりませんね。
  301. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 ナミビアの独立に至る過程で設立されました国連の平和維持活動にはいろいろな種類のものがございまして、一つは平和維持軍、一つは軍事監視団、あとは文民警察官のグループもございましたが、それとは別に選挙監視団が設立されまして、日本からの要員はすべて選挙監視団に参加したわけでございます。
  302. 東中光雄

    東中委員 ニカラグアに対して本年二月二十五日、総選挙監視のために選挙監視団を派遣をしておりますが、これも今のナミビアと同じように参加をしたと思うのですが、この要員派遣の法律上の根拠は何ですか。
  303. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 ニカラグアの国連選挙監視団に参加いたしました六名は、すべて外務公務員として参加いたしました。  なお、六名のうち一名はもともと外務公務員で、五名の方が民間から外務省に採用されて外務公務員として参加いたしました。これも公務出張でございます。
  304. 東中光雄

    東中委員 これらの監視は、この協力法の三条二号のハですね、「紛争終了後の議会の選挙、住民投票等の監視又は管理」という条項がありますが、この条項と同じことをやっているということになるので、この条文がなくても外務公務員として監視団に参加ができる、こういうことになると思うのですが、間違いございませんか。
  305. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 選挙だけをとってみますれば、今先生が言われましたとおりでございます。
  306. 東中光雄

    東中委員 だから、ハは選挙のことだけ書いてあるわけですから、そのとおりであります。  ついでに申し上げておきますが、同じ三条二号のロですね、「紛争終了後の暫定政府等の行政事務に関する助言又は指導」ということで派遣する必要があるとすれば、この法律がなくても外務公務員にして公務出張で十分やっていけることではございませんか。
  307. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 実際上は、例えば外務省なら外務省の職員にしまして、その職員を国連が行う平和維持活動、例えば今の行政事務の助言、指導に関する平和維持活動があるとすれば、そこへ派遣すること自体現行の制度のもとで可能でございますが、ただ、人数等によりましては今の制度上、例えば定員の問題でありますとか財政的裏づけの問題でありますとか、そういう制度上可能かどうかという問題が別途生じてまいります。
  308. 東中光雄

    東中委員 可能であるということははっきり答弁がありました。ただ、定員の問題とかなんとかで、協力法だったら定員がないから何ぼでもやれるということになるだけだという話でありました。この条文は、だからやれることを書いてあるだけだということにしかすぎない。  もう一つお伺いをします。  一九八八年八月九日の国連安保理事会決議六百十九号によって、国連イラン・イラク監視団がイラン・イラク国境に派遣をされています。イラン・イラク停戦監視、両軍撤退の監視のためであります。政府がこの委員会に提出された「国連平和維持活動一覧表」十五にそういうふうに書いています。我が国はこの監視団に政務官一名を派遣しています。一名を派遣をした法的根拠、それから一名以外に派遣をしなかった理由、お伺いしたいと思います。
  309. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 国連のイラン・イラク監視団に一人政務官を派遣いたしましたが、これは外務省から直接先ほどの選挙監視要員のようなステータスで派遣したということではなくて、国連にまず出向させまして、国連職員として彼は行ったわけで、その法的根拠は国際機関への派遣法でございます。
  310. 東中光雄

    東中委員 何で一名にしたんです。
  311. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 当時の外務省の定員事情あるいは先方の受け入れ事情等から、一名をまず派遣したわけでございます。
  312. 東中光雄

    東中委員 この監視団の主要任務、活動、これは停戦監視とイラン・イラク両軍撤退の監視であります。それを監視する部隊はどういう構成になっておりますか。説明をしていただきたいと思います。
  313. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 この国連イラン・イラク監視団、UNIIMOGと言っておりますけれども、これはいわゆる停戦の監視と撤退の監視をやっているわけでございます。その中身を申しますと、軍事監視員と航空部隊、警察隊、医療部隊の四つの種類から成り立っております。
  314. 東中光雄

    東中委員 二十五カ国、三百五十人のミリタリーオブザーバー、軍事監視員、それぞれの航空部隊、あるいはそれぞれの国の、例えばニュージーランドなら航空部隊、空軍部隊、あるいはアイルランドの場合はミリタリーポリス、こういう形で三百五十人参加をしています。四十九人のサポートスタッフというのでも構成されています。合計三百九十九名です。このイラン・イラク国境停戦監視、両軍撤退の監視、皆部隊が入っているんです、軍隊が入っているんです。これに日本の外務省は派遣することができるのですか、現行法上できますか、できないですか。
  315. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 最初に、このイラン・イラク監視団へ日本の政務官一名を派遣しましたが、その政務官は司令官のもとでのいわゆる国連職員として派遣、勤務したものでございまして、ただいま先生が言われました軍事監視員三百五十名余りですとか、航空部隊あるいは軍警察、医療部隊等には所属しておりませんでした。  他方、今言われましたとおり、この軍事監視員ですとか航空部隊、軍警察、医療部隊等はいずれも軍の出身、ほとんどが軍の出身者だと思います。したがいまして、日本から文民をこのような軍事監視要員あるいは医療部隊等へ派遣し得るかどうかということにつきましては、そのときに国連と話し合って、そういう文民をミックスして、混成でとるかどうかということによると思いますので、今ここでお答えする立場にございません。
  316. 東中光雄

    東中委員 法制局長官、現実にそういう監視団があるわけですが、それに対して現行法上日本派遣ができるのかどうかということをお伺いをします。
  317. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 実態を私存じませんので、何ともお答えすることができません。
  318. 東中光雄

    東中委員 それじゃ、外務省にお伺いしましょう。  実態がどうなっておるのか、御承知なんでしょうね。知らぬで、もうとにかく初めから政務官だけで、日本は現行法上参加ができるのかできないのかということについては一体——現に参加させていないわけですね。三百九十九人部隊がいる。政務官というのはその部隊の中じゃないでしょう。しかし、それは監視団と言うているというのに現行法上外務省は参加さすことができるのかできないのか。参加さすことができないから参加していないのか、参加さすことができるんだけれども、政策上、定員上、定数上参加していないのか、どちらなんですか。
  319. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 この国連職員として司令官のもとで働くためには、外務省員その他文官を出すことは可能でございます。他方、軍事監視員ですとか、航空部隊、軍警察、医療部隊、この医療部隊も軍人から構成されていたと思いますが、これらがすべて軍人であるという場合には、現行法のもとで、例えば自衛官をそのままの形で派遣するということはできないと思います。
  320. 東中光雄

    東中委員 現行法上はできない。この軍事監視団の現地司令部、ヘッドクオーターのチーフ・ミリタリー・オブザーバーはユーゴスラビアのジャビックというのですか、どう読むのか知りませんが、少将が監視団の指揮者で、その上に国連事務総長がいるわけです。こういう状態になっているのですが、現行法上は行けない。ここの三条二号のイ「停戦(武力紛争の停止、兵力の撤退その他これらに類するものをいう。)の監視」に監視活動は平和協力隊業務として挙げられているわけですから、この法律が通れば、イラン、イラク自衛隊部隊派遣さすことができるということになる。そういう法律なんですか、どうなんでしょう。
  321. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 このイラン・イラク停戦監視団は、いわゆる停戦監視団でございます。先ほどから問題になっております平和維持軍ではございません。したがいまして、この停戦監視団は、その任務・目的が武力行使を伴うものでないということでありますので、この新しい法律のもとで平和協力隊員派遣することが可能でございます。
  322. 東中光雄

    東中委員 この法律のねらいは、結局そこにあったわけですね。だから、自衛隊部隊として参加する、協力隊じゃなくて。文民じゃなくて部隊として参加する。それで、ニュージーランドの空軍部隊あるいはアイルランドのミリタリーポリス、オーストリアの医療部隊、軍隊ですね、それからカナダの通信部隊、そういう軍隊と一緒にこの監視団に参加をして、そしてヘッドクォーターの、ユーゴスラビアの将官の指揮のもとに今度は軍事監視団として行動を起こす。空軍部隊はちゃんと武装していますよ。日本自衛隊も、自衛隊だけれども武装せぬで行くというわけにはいきませんね。停戦を監視するんですから、停戦はなっておるけれども停戦の違反があるかもしれない。違反があって紛争が——紛争というのは戦争ですね。それが起こらないように監視をする、そういうことですから、当然危ないところですね。総理の言われる安全でないところということになると思うのです。各部隊参加して、そして外国の少将が指揮をしている中でそれに派遣をさせよう、自衛隊を軍隊として派遣をする、これは憲法上許されることですか。
  323. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 私の方からまず事実関係を先に申し上げます。  この国連イラン・イラク監視団といいますのは、あくまで停戦監視及び撤退監視、両軍の撤退監視、ですから停戦監視団でございます。軍事監視団という名前も使われますけれども、あくまで私たちの言う平和維持軍に対する停戦監視団でございまして、国連の今のルールから原則非武装、丸腰でございます。したがいまして、そういう武力行使等に当たるような任務はないというふうに理解しておりますし、実際これまで私たちが得ております情報によりましても、既にこの監視団は八八年以来二年余り存続しているわけでございますけれども、今のところそういう武力衝突等によって犠牲者が出たという情報にも接しておりません。
  324. 東中光雄

    東中委員 空軍部隊が武装しておらぬと、ナンセンスですね。そういう形容矛盾みたいなことは言わぬでほしいと思うのですよ。  法制局長官、あなたは、いわゆる平和維持活動のようなものを行っておりますものにつきましても、その目的・任務武力行使を伴うようなものであればこれに参加することは許されない、もう何回もそういう趣旨のことを言われましたね。これは紛争して戦争状態になっておるのを引き離す。完全にそれがもう引き離されてしまっておったら監視も何も要らぬわけですね。違反が起こってくるからこそ監視をし、だからそこで、すべての点でいえば七百人を超すような犠牲者も出ておるということなので、各参加国二十五カ国は全部軍隊を送っているのです。日本協力隊として、今度は民間じゃなくて協力隊自衛隊部隊として出すということになるわけですね。そして、そこでもし撃ち合うというようなことになったらどうなるのですか。そういう派遣憲法上許されますか。
  325. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 まず過去の、今のお話のイラン・イラクにつきましては、先ほどからお答え申し上げておりますように、昭和五十五年に質問答弁書で書きましたように、その任務・目的が武力行使を伴うもの、これは許されないということで申し上げておりますし、そういう実態、私詳しく実態は存じませんけれども、それに照らして外務省として当然それに沿った判断をしているもの、かように考えます。  それから、今後の問題につきましても今の答えと全く同じでございまして、昭和五十五年の答弁書、これはきっちり守るべきものであり、また守られるもの、かように考えます。
  326. 東中光雄

    東中委員 したがいまして、停戦の監視の場合も武装監視団、外務省の出しておりますこの資料によりましても武装監視団という言葉を使っています。そういう武装監視団、軍としてユーゴスラビアの将官の指揮のもとに活動をするようなものは武力行使にわたる。それから自衛隊の専守防衛という点からいえば、日本における専守防衛という皆さん方の建前ですね、我々は自衛隊の存在自身は憲法違反、認められないと思っておりますが、皆さん方の言われておる専守防衛、国内での攻撃があった場合にそれを処置するんだという点から自衛の組織なんだということからいえば、外へ出ていって部隊として武力——原則非武装と言いましたね。絶対非武装じゃないのです、現に空軍部隊が行っているんだから。そういうものに参加をすることができるようにということでこの法律をつくっているということになれば、これはまさに自衛隊を監視という名前で派兵をするということになる。私たちはそういう点で許されないというふうに思っていますが、どうでしょうか。
  327. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 私の発言につきまして誤解があるようですので、一つだけ事実関係を再度御説明させていただきたいと思います。  軍事監視団、国連の停戦監視団自体は原則非武装でございます。特に、このイラン・イラク監視団につきましては、私たちが国連の事務局等に当たって調べましたところ、監視要員は自衛のためのピストル等も含め—切武器を携行していないという回答に接しておりますので、この事実関係だけ先に御説明させていただきたいと思います。
  328. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 先ほどの答弁を繰り返すことになりますが、昭和五十五年の答弁書の線は守られていると思いますし、また今後とも守るべきもの、かように考えます。
  329. 東中光雄

    東中委員 要するに武力行使にわたるものであれば部隊としては参加できない、当該具体的なものについて言えば、法制局長官としては具体的適用はする立場にない、こういう答弁だと思うのです。私たちは、具体的な問題について国内の専守防衛という建前にしておる自衛隊が他国の紛争の間へ部隊として参加をするということは、これは海外派兵であって許されないというふうに考えます。  いずれにしましても、停戦監視、国連平和維持活動というものには大いに参加しなきゃいけないんだという発想が今出てきておって、この法案では自衛隊部隊として参加させるという点でこれは許されないということになっておりますが、そのほかに各党いろいろ意見を出されております。  例えば小沢幹事長は、民放の番組の中で、スウェーデンなどが採用している国連の平和維持活動のための待機軍について、国民にわかりやすい形で国連協力する部隊を創設するのも一つの道であるというふうなことを言われている。だから自衛隊と別に国連待機軍をつくって、それが外へ出ていくというのも方法だというようなことを言っていますね、この法案をやめにしての話ですけれども。  それから公明党の委員長も、自衛隊とは別の形で平和協力隊をつくってはどうかと考えている、国連の平和維持活動などに参加する常設の協力隊自衛隊と切り離した形で創設する案を検討しているというようなことが報道されています。  それから社会党は、既に、国連平和協力隊自衛隊と切り離して創設するという機構案を出しています。  そして民社党は、自衛官などや民間からの応募で組織する国連待機部隊の編成を提案する考え。いろいろ言われているわけですね。  要するに、国連平和維持活動に参加をするための実力部隊といいますか、自衛隊でないしかし実力部隊というものをつくる方向が出されておる。もしそういう部隊が——国連平和維持活動というのは、これはいずれも監視軍から、維持軍、国連軍、いろいろあるわけですから、非常に範囲が広い。監視団という場合でさえ今言っているような非常に問題があるという状態で、国連平和維持活動に協力する常設部隊なんというようなものをつくるということになれば、これは憲法上同じ問題が起こってくる。武力行使ということに関連をしてくれば、自衛隊について起こるのと同じ問題が起こってくるというふうに思うのでありますが、法制局長官、その点は部隊の形がどう変わろうと憲法との関係でいえば、国連平和維持活動の種類によっては協力参加するということ自体は同じ問題が起こってくると思うのですが、いかがでございましょうか。
  330. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 ただいま委員仰せられました幾つかの構想といいますかにつきまして私詳細を承知しておりませんので、それ自身御意見を申し上げるわけにはまいりません。  それから、国際連合平和維持活動につきましては、先ほど渡部委員にお答えしたところでございまして、その中にさまざまなものがある、許されるものもあれば許されないものもあるということでございますし、そういうことで、それの構想が具体化しないと私としては何とも申し上げられませんが、そういう意味で昭和五十五年の答弁書の線、それに沿って検討されるべきもの、かように考えております。
  331. 東中光雄

    東中委員 結局五十五年の答弁の線というのは、いわゆる平和維持活動のようなものを行っておりますものにつきましても、その目的・任務武力行使を伴うようなものであれば、その主体が自衛隊であろうと常設の国連協力隊であろうとあるいは国連待機軍であろうとそういうものには参加できないということは、自衛隊の場合と同じであるということですね。
  332. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 結局、昭和五十五年の答弁書で述べておりますものも憲法の九条から発するわけでございまして、そこに根底があると申しますか、そういうことでございます。したがいまして、それが実力、いわゆるその先の任務・目的が武力行使を伴うものであれば、これに参加することというのは、我が方のいわゆる組織がどういうものであるか憲法の九条の目から見て判断されるべきもの、自衛隊だからどうと、こういうことではないということまでは言えると思います。
  333. 東中光雄

    東中委員 時間ですから、終わります。
  334. 加藤紘一

    加藤委員長 これにて東中光雄君の質疑は終了いたしました。  次に、川端達夫君。
  335. 川端達夫

    川端委員 総理、大変御苦労さまでございます。  本法に対して質問をさせていただく前に、現在、自民党代表団がバグダッド入りをされ、中曽根元総理も含めていろいろな活動をされておりますけれども、いろいろな動きが現時点であるようでございます。自民党としての活動でございますので、政府立場においてという分ではございませんが、非常に国民の関心も強いことでもございます。現時点で承知されている情報と、それに対しての御感想がいただければ幸いかと思います。
  336. 中山正暉

    中山国務大臣 委員お尋ねのバグダッドにおける日本の自由民主党の代表団とイラク政府との間の話し合いで、今私の手元に参りました一般の情報でございます。これは外務省が確認をした情報ではございません。その点先にお断り申し上げておきますが、イラク当局によると、日本人人質約二十人と在留邦人約五十人の計約七十人が解放される見通しとなったという報道があるということでございます。
  337. 川端達夫

    川端委員 お立場上非常に難しいと思いますが、何か御所見か御感想かはございますか。
  338. 中山正暉

    中山国務大臣 八月二日以来、人質として、あるいはまた出国がなかなかできなかった邦人の方々が今回出国ができるということの知らせは、御家族またお知り合いの方々にとっても極めて大きい喜びであろうと思いますし、私も外務大臣として、人質が解放された、あるいは邦人が出国できるということは大変うれしく思いますが、一方まだ現地には、日本の在留邦人を含め、あるいは各国の人質の方々が出国を求めて御苦労されていることと思いまして、私は、一日も早く人道上の観点から、あらゆる人質また出国を希望する各国方々に自由を与えていただくように、外務大臣としてイラク政府に心から期待したいと思います。
  339. 川端達夫

    川端委員 大変ありがとうございました。  それでは本題に入らせていただきたいと思うのですが、今回のこの中東情勢をめぐるいろいろな動き、もともとイラククウェート侵攻に始まったわけですけれども、これに対して、いわゆる国際平和のために日本がどういう貢献をしていくのか、どういう役割を果たしていくかということ、どういう対応をするかということが、これからの日本国際社会の中でどういう道を歩んでいくのかということを決める非常に大きな問題であるということだというふうに思いますし、連日、総理も大変御苦労さまでございますが、国会でも議論が続いております。そして、マスコミもいろいろな形で報道がされております。  世界にいわゆる人的な貢献日本として、国としてやるという趣旨のこの法律、私はこの法律がすべてだと思いませんが、こういうものが本当に、法文ではないですが、真に実効あらしめるものになるには幾つかの要件があると思います。  一つは、こういう種の法律が、その解釈も含めて憲法の枠内にきっちりと整合性がとれている、そしてそれがその枠内において可能な限りの日本の機能を尽くして世界平和に貢献する形のものになっていること、これが一つ条件だというふうに思います。もう一つは、やはり何といいましても国民の皆さんが十分に理解をし支持をしていただくことが肝要ではないかというふうに思います。例えば、この法案あるいはこういう協力隊というものができましたときには、やはり国民の皆さんがこぞって、日本協力隊の皆さん、大変つらくて御苦労だけれども世界平和のため、そして日本国際社会の地位のために頑張って行ってきてくださいよという声がなければいけないと思いますし、行っていただく方、協力隊の皆さんもそういう重い使命を背負って責任感を持ってこそ、つらくて苦しいことも多いと思いますが、そういうところへの活動に頑張れるんだというふうに思いますし、そういうことであってこそ世界方々も、日本はよく頑張っていただいた、ありがとうと言っていただけるのではないかなというふうに思います。  そういう意味で、今日までの議論、そしてマスコミ等々でいろいろな意識調査というのですか、そういうのもされていまして、いろいろ報道がされます。きょうの朝刊にも一部の新聞に載っていましたけれども、正直申し上げて、総理、今日までかなりの期間議論も尽くしてきたことも事実ですし、報道もいろいろされてきた中で、今総理御自身として、国民の皆さんのこのことに関しての理解というものがどのようにされていると御認識をされているのか。国民の皆さんがこぞって、そうだ、総理の言うとおりだ、やろうと言っておられるのか、どういうふうに御認識されているのか。とりわけ先般は、そういう広く国民の各層の声を聞くということで、本委員会においても中央、地方の公聴会も開かれました。一つ国民の御意見という部分が反映される愛知県の補欠選挙もございました。そういうふうな状況の中で、総理御自身として国民のこういうことに対する理解というものに対しての御認識をまずお聞かせいただきたいというふうに思います。
  340. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 日本が戦後初めて国際的な貢献をしなきゃならぬということを法律に示してお願いしようとしたのは、私は初めてのことであったと考えます。  国民の皆さんの御理解は、我々の努力不足や説明不足もあるのかもしれません。けれども、私が一点だけ真意をどうしても御理解願いたいと思っておりますことは、ややもすると戦争か平和かというとらえ方が非常になされておりますし、息子を戦場に送るなというようなお話も出ておると私は報道を通じて聞きますけれども、そんなことを考えておる法案では毛頭ないんだというのをどうしてわかっていただけないんだろうかというのが私の本当の今の率直な気持ちで、この間うちもこの審議を通じて、ちょっと言い過ぎたかもしれませんが、私は、テレビの解説のときにいつも戦車が火を吐いて走っている姿とか武装部隊が歩いている姿を見ますと、そうすると、皆さんに法案をお届けしたり、それから私どもの真意を事細かに説明したパンフレットなんかを全国へお配りしてからならまた別かもしれませんが、そういったことも日にちの関係で、あるいは努力不足で十分でなかったのかなと思うところにああいったものだけがどんどん出ますと、すぐに私のところに来る手紙なんかによると、戦争だ、戦車を出すんですか、あれは反対ですよという、まあ言っては失礼ですが、非常に短絡的な、我々は国連協力で、平和協力で、この法案の中身にも武力行使はしない、また国連決議があって、平和の敵だ、許されない問題があるんだということが国際社会の大義のもとで決められたときに、初めてその実効性を確保するために日本も何ができるかということを考えるんですけれども、何かすべてが感覚的にといいますか、むしろ情緒的にとらえられてしまって、すぐ戦争だ戦争だ、戦車や武力部隊が出ていくのではないかという、反対というところに結びついてしまうのではないかということが私は大変残念なことでございました。  そういった意味で、この委員会を通じましても、政府考え方やこの法案に盛ってある言葉の根底は、戦争でなくて平和な世界をつくり、平和な世界を欠かそうとするような具体的な行為に対しては、国際社会の、特に国連決議を中心として実効性をあらしめていくためにみんなが協力をする。残念ながら日本は多国籍軍に入ったり抑止力として力を展開することはできないわけですから、せめてできる範囲のことは何であろうかというので、列挙しました三条の協力業務がしたいんだ、こう思っておるところでありますので、国際社会における日本立場、同時に、国民生活がここまで豊かにできますのも、世界が平和で、世界と貿易関係を通じて国際社会の中で日本が非常に幸運にこの環境の中で大きくなってきたということと、もう日本は復興途上国の時代が終わって、好むと好まざるとにかかわらず、責任と影響力のある国になったわけでありますから、それにふさわしい国際社会における協力貢献もしていかなければならぬ、こういう真意でつくっておる法案でありますから、その本当の願っておるところ、真意を御理解願えたらなというのが私の今の率直な心情でございます。
  341. 川端達夫

    川端委員 るるお述べいただきまして、そのお悩みは非常によくわかるのでございますが、私も考えますに、やはり今、国民の多数の皆さんは、物と金だけではいけない、日本もこれだけ世界の平和の恩恵を受けて大きくなってきた中で、こういう世界平和に対して同じように仲間として汗をかき、努力をしていく、むしろ率先して頑張らなければいけないという理解は、私は、総理いろいろ御熱心にお述べになった部分で進んでいるのではないかなというふうに思っております。  しかし、法案に関して言いますと、具体的に何をやるべきか、それから、だれがやるのが一番いいのかというふうな議論の順追いではなくて、未消化の中で、余りはっきりと何をやるかはわからない中で自衛隊がやるということが非常に突出した議論としてあったことも事実だと思います。そういう中で、今いみじくも議論が、まあ自衛隊も含んでいるからだと思うのですが、戦争か平和かというふうな情緒的な議論になっている、私も非常に残念だと思うのです。そういうときに、どうしてわかっていただけないのか、これだけ一生懸命、というふうにおっしゃるのですけれども、今までの御質疑を見ますと、それで、とにかくただひたすらに、熱心に、一生懸命御答弁をされるということで大部分の期間がたったわけですが、それによって随分その理解、状況が変わってきたなというふうには私なっていないのじゃないかな、かなり初期の段階の意識調査と今日ただいまの調査でそんなに変わらない、相変わらずそういう議論があるという部分がやはり一番大きな障害になっているなというふうに思います。  私自身は、一つにはやはり国民の皆さんにとって、今まで自衛隊自衛隊としていわゆる平和目的のために海外に出たという実績が、南極観測船「しらせ」ですか、以外にない。自衛隊が海外で平和のために頑張っているんだなという実績がないわけですね。ですから、海外に自衛隊が出るということ、イコールその武力行使というイメージ、いわゆる戦争か平和ですよという、海の外へ出ることが戦争につながるのですよという議論に対して、今の国民の理解を含めての環境という部分では、それをそういう環境にむしろ今までの政府姿勢が置いてきたのではないかな。ですから幾ら口を酸っぱくして、これは平和の目的で第二条で武力行使も威嚇もしないし大丈夫なんですよと言われても、海外に自衛隊国民の皆さん行ってきます、国民の皆さんも頑張って行ってきてください、平和のために頑張ってくださいという事例がないのですね、今まで。そういう中で海外へ行って、やっぱり戦争が昔あったんだし、そういうことをしてはいけないというみんなの気持ちの中で、それと違うのですよと幾ら言われても比較のしようがないのですね。そこが私は非常に難しい状態になっているのではないかなというふうに思います。  もう一つは、やはり国民の目から見て、いろんな活動をするというときに、本当に明確に歯どめというものがきいているのだろうか、ひょっとしてややこしいのではないかという、何となくの疑念というのはいまだにこの法案上やっぱり残っていると言わざるを得ないというふうに思います。  そういう意味で、ちょっと観点を変えましてきょうは御質問したいのですが、六十二年の九月十六日公布で国際緊急援助隊法というのができました。まず基本的な部分で、この法律の要するに本来の精神というのですか、そういうようなものについてお触れをいただきたいと思います。
  342. 中山正暉

    中山国務大臣 委員お尋ねの国際緊急援助隊による活動の対象は、自然災害ということにございまして、いわゆる紛争とか内乱等による被害は対象とされておりません。これに対しまして平和協力隊平和協力業務というのは、自然災害活動は対象としていないということに相なっております。こういうことで、この法律ができましたころは、この緊急援助隊の派遣に関する法律の中で、警察庁、消防庁あるいは関係十六省庁、都道府県警察、市町村消防等の協力で十分国際緊急援助活動ができるという認識にあったというふうに理解をいたしております。
  343. 川端達夫

    川端委員 総理は今国会で、我が党の大内委員長の代表質問で、いわゆる国際社会の中で日本の進むべき道はいかがという問いに対して、本会議で「私は、従来、ややもすると物とお金に頼りがちであった我が国の国際協調行動というものに、人も出て、汗も流して日本立場を明らかにしていかなければならない、国際平和の中で日本の果たすべき役割というものをきちっと果たしていくべきであるという考えに立っておりますので、」「これからも努力を続けてまいりたいと考えております。」  私も全く同感でございます。そういうときに、そういう国際協調の中で日本世界の中で果たすべき役割という観点に立っていま一度この国際緊急援助隊法を考えるときに、まさにそういう観点に立った一つの法律であろう。日本が自然災害に限定はされておりますけれども、そういう部分に対して活動をするということで貢献をしていくというか、積極的に果たしていこうということだと思いますが、それはそういう認識でよろしいですか。
  344. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 異なる視点から問題を眺めてみますと、積極的に許される範囲のことで出ていってお役に立つことが大切だと私はそういう立場に立って物を考えておりますので、委員の御指摘の点はそのとおりだと思います。
  345. 川端達夫

    川端委員 そういう部分で今外務大臣は消防庁、警察庁で十分だというふうにおっしゃいました。今、総理の御答弁でもありましたけれども、要するに積極的に持てる力を十二分に発揮するというのが本当に国際社会の中に貢献をするあるべき姿ではないか。そういう部分で、果たして今の機能で十分なんだろうかという部分にやや疑念があるわけでございます。消防、警察以外に自衛隊もそれなりに得意とする、あるいは非常に特徴的な、もちろん武装ということではなく全く災害救助ということに限定してでございますが、その機能、能力という部分ではそれなりの特徴を持っていると思います。そういう部分でなぜ自衛隊防衛庁がそういう法案の機能から除外をされているのだろうか。持てる力を十二分に発揮するという部分でいえば、いろいろな検討の中でそのことはやるべきではないのかなというふうに考えますが、いかがでしょうか。なぜ入れなかったのかということでございます。
  346. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 ただいまお尋ねの国際緊急援助隊の派遣に関する法律が制定されるまでに、既に医療チームの派遣等の実績がございました。そうした経験に照らしまして、先ほど大臣から御答弁がございましたように、警察庁、消防庁等関係十六省庁、都道府県の警察、市町村消防等の協力によって十分な国際緊急援助活動を実施できる、そういう判断があったからでございます。  ちなみにこの法律ができましてから派遣されました実績を申し上げますと、昭和六十二年度三件、六十三年度三件、平成元年度二件、平成二年度二件の計十件でございますが、その中で、特にイランの地震あるいはフィリピンにおける地震災害等については、極めて迅速にこういう緊急援助隊が派遣され、先方政府からも非常に高い評価を得ているという実績がございます。
  347. 川端達夫

    川端委員 それではお尋ねいたしますが、そういう過去の、現行隊の実績の中で今非常に高く評価されているその御努力、私は現にそうだと思います。しかし、他の国の同じ災害に対して、例えばイランの地震に対しての他の国の活動の状況と比較して、日本の救助隊の機能として、やはりもう少しこういう機能を持たした方がいいのではないか、こういう能力を有すべきではないかというふうな観点での評価というのはいかがなものでしょうか。これでもう誇り得るべき最高の機能を各国と比較しても十二分に持っているという評価なんでしょうか。
  348. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 もとより私ども、この緊急援助隊法に基づく緊急援助活動がこれまで十分な実績を上げてきたということで満足しているわけでは決してないわけでございますが、少なくとも経験を踏まえまして改善の努力は鋭意やっているところでございます。例えば、こちらから緊急援助のための物資を運ぶ労を省くあるいは時間を節約する等の努力の結果、海外、シンガポールとかあるいはイタリーのピサ等にそういう緊急援助関係の物資も一時貯蔵してございますし、あるいはまたそういう災害が起こったときの情報をいち早くキャッチする等のネットワークづくり、そうした面でいろいろ努力すべき点はあろうかと存じます。ただ、それは努力によって漸次改善されていく問題でございますので、この点私ども一層努力をしなければいけないと考えております。
  349. 川端達夫

    川端委員 各国との比較はどうですか。
  350. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 イランについて各国の比較、その御質問ございましたが、例えばフランスにおきましては、国境のない医師団と称する国際的な緊急活動をやっている医師チームがございます。そういうチームは、やはりヨーロッパと災害が起こったイランとの交通の便とかあるいはこれまでの歴史的なつながり等々もございますために、いち早く災害の情報も入るという面はございますが、しかし最近は、そういうチームからも日本に対して連携してやろうとか、日本からそういうチームに対して援助もしてほしいというような話すら出てきている。そういう意味でいろいろな広がりがある、そういう状況でございます。
  351. 川端達夫

    川端委員 新聞情報で恐縮なんですが、いわゆる伝聞になるかもしれませんが、イラン地震の日本チームの総括官、自治省消防庁予防課の小林さんという方が「月刊消防」で、このイラン地震活動を総括するとともに、「今後の課題」として提言をしているということで、提言を要約すると、一つは外部からの補給なしで一定の活動ができる資機材の確保、二番目が早く現地入りするための専用機などの必要性、三番目が海外での兵たん、いわゆる後方支援活動や大部隊派遣の必要性とそのノーハウの蓄績、現場での運搬、通信手段の確保というふうなものを提起をされております。  そういう部分で言うときに、今御答弁がありましたように、いろんな角度で今の枠で努力をされていることは認めますけれども、そういうときに自衛隊の機能というものを考慮に入れて、そういう役割を分担するということが不可欠ではないかなというふうに思います。なぜならば、今日日本においていろんな災害が起こる、台風あるいは水害、まあ地震は幸いにもそう大きな地震はありませんが、あるいは離島、僻地からの緊急医療輸送、あるいは先般の航空機の墜落事故、そういう部分の災害救助活動に対して自衛隊の皆さんが大変な御苦労の中でまさに命がけで懸命の活動をされている、そして大きな実績を上げ、国民の皆さんもその部分に関して非常に感謝をされている、そういう実態があるわけです。  そういう部分に、先ほど申し上げました輸送でありますとか、通信、運輸、そういうふうな機能というものはやはり災害活動の場合の非常に主要な任務、しかもそれを最も得意とし、経験、蓄積、ノーハウのある自衛官が、世界のそういう災害に対して、まさにこれは平和目的でありますから、平和目的のためにいち早く駆けつけて世界の災害復旧に活躍することをやろうということに対して、私はこのことこそ国民の皆さんに、これは派兵につながるからという議論ではなくて、御理解がいただけるんではないかなと思うのですが、いかがでしょうか。
  352. 中山正暉

    中山国務大臣 極めて貴重な御意見と私は拝聴いたしておりまして、十分検討をさせていただきたいと思います。
  353. 川端達夫

    川端委員 そういう御答弁を何年も聞かされておるわけであります。もう一々取り上げませんけれども、この法案ができる少し前の中曽根総理以降、竹下総理にも宇野総理にもお伺いをいたしました。見識として承っておきますという御答弁がございました。  例えば、当時の中曽根総理は、「国民感情とか、あるいはにわかにそういうことをやってうまくいくかとか、やはり物事というのはよほど国民の皆さんが理解してもっともだと、自然に流れるようにこの問題は持っていく方がいい。」と何か人ごとのようにおっしゃっておりますけれども、このことこそ本当に、そうしたら逆に言えば、自衛隊を今入れない、そういう平和目的の災害活動に入れないということにどうしてそうこだわりをお持ちになるのかということに対しては、いかがですか、入れた方がより機能は充実するということはお認めになりますか。
  354. 中山正暉

    中山国務大臣 この今回の平和協力法に関しましても、自衛隊の今日まで蓄積された技術力あるいは組織力というものがそういう技術部隊については極めて高いということで、私どもは大変高い評価をいたしておりまして、今回の法案にもそのような形で、この法案が成立後にはお願いをするというような形をとらしていただいておるということでございます。
  355. 川端達夫

    川端委員 いや、その問題ではなくて、災害救助派遣法に関して現行の能力も非常に高く評価をされ、いろいろ努力されていることは事実でございますが、その部分に今自衛隊の持っているいろんな機能を付加することの方が機能的にはよりいい救助隊になると私は思いますが、その点に関してはいかがでございましょうか。
  356. 中山正暉

    中山国務大臣 国際緊急救助隊のいわゆる持ち出す機材等につきましても制限がございますし、そのような面では、委員御指摘のように輸送協力とかあるいは衛生隊の派遣等に関しましても、まあ一つの能力というか力を持って、力というのはなんでございますけれども、能力を持っているグループであると考えております。
  357. 川端達夫

    川端委員 私は総理、なぜこういうことをくどくどと聞いたかといいますと、この問題こそ私は、国民に対して自衛隊が平和の目的のために海外で堂々と活動をするということがありますよという説得、説得というか理解を求め、実績を積むことができる非常に重大なケースだと思うのですよ。この問題に関して従来から、前向きに検討しますとか見識として伺いますとかいう形の中で、私今の外務大臣の御答弁を聞いてもよくわからないですけれども、間違いなく今よりも機能をアップさせることだと思います。総理も、持てる力を十二分に発揮してそういうことには尽くすべきだとおっしゃっている。そういうことに対しての自衛隊がというときにも、今まで歴代内閣は避けてこられた、国民の皆さんにそういうことでやりますよと堂々とやることを避けてこられた。ですから、いつまでたっても海外に自衛隊は出ないものだ、出るときは戦争なんだという話になるわけです。もし六十二年のこのときに御努力いただいて言われたら、私はそれは国民の皆さんはわかっていただけたと思うのです。  そうしたときに、それであれば自衛隊が海外に行くのに二つある。一つは戦車とミサイルを持っていくことですよ。これは絶対してはいけない。これは国民の合意であり、我々の憲法のもとで、みんなの誓いですよ。そして、そうではなくて、全く平和のために堂々と、国民も感謝して頑張ってきてください、行く人もそういうところへ行くのは大変つらいことですけれども使命感に燃えて頑張ってきて、世界の人も日本の皆さんありがとうと言ってもらえる、そういう活動がある。そういう中で、今回提起される国連平和協力法というのは、その間にある議論として初めて存在するのですよ。そうすると、一生懸命に言われている部分で、そういう平和目的で海外に行くこと、災害のために行くことと性格が同じなんですよという部分と、いや、戦車を持っていくのと一緒なんだという議論の中で、明確にどこに歯どめがあるんだろう、初めてそういう議論になるわけです。これをつくるという努力を今まで放棄され、逃げてこられて、そして、いやいや、これは戦車を持っていくのではありませんよと幾ら百万遍言われてもわからないですよ、それは。  ですから私は、そういう意味で、本当に国民の理解が得られないぞ、どうして戦争と平和の話になるんだとおっしゃるけれども、やるべきことをやってこられなかったツケが来ていると思うのですよ。(発言する者あり)これからじゃないですよ、そんなものは。そういう意味で、今いろんな疑念がある、不安があるというときに、まさにこの問題は、どこかの国がやれやれとも言わないですよ、正直言って。まさにみずからの責任としてそのことをやろうという決意がなくて、こっちの話のときに、世界のために頑張ってやるんですと言われてもその心は伝わらないと思います。いかがですか。総理、どうですか。
  358. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 おっしゃることは私もよくわかります。そうして、当時どのような理由でそうなったかというと、それは結局、自衛隊、海外、戦争につながる、反省が足りない、行けないという非常に四捨五入された粗っぽい結論ではなかったかと私なりに推測しますので、十分に私も検討をさせていただきます。
  359. 川端達夫

    川端委員 議論はいろいろありますよ。私が問題にしているのは、そのときに、政府は初めから外して提案されたんでしょう。避けて通っておるわけですよ。世界の災害に活動、助けに行くという自衛隊でさえ、みずからの意思として、国民の皆さん、こういうことだから理解してください、世界のために役割を果たしましょうという汗をかくことをされずに、今、自衛隊が要るんだ、要るんだと言われても、どういう説得力があるんですか。災害には行ってはいけない、しかし紛争の解決の国連の部分には行ってくださいという法律を今出しておられるんですよ、現実に。ですから私は一度、どうしてこういう議論になるんだとおっしゃるけれども国民の理解という部分でいえば、そんなものをやぶから棒に言われてもびっくり仰天するだけですよ。だから議論を正常に戻すためにも、このことに関しては可及的速やかに、政府としてみずからの意思で国民に理解を求める努力を、決断をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。何か粗っぽい議論で、同じでしょう、議論は今のと。海外派兵だという議論はあるんですよ、いつまでたっても。そのときに説得できるかどうかという部分に、もっと説得できる話もみずから法律を出すときに抜いておられるんですから。そうでしょう。(発言する者あり)これは自民党内閣です。
  360. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 そのいろいろな経緯のあった問題と、それから今回の問題と、今回の問題はむしろ人災の方であって、突然起こったもので、遅過ぎる、少な過ぎるといってさんざん批判を受けて着手しましたので、古い法律のことまで正直言って研究し、検討し、こちらから着手していくのが道であるというようなところまで考えが及ばなかったことも率直にここで申し上げさせていただきますけれども、それは先ほども申し上げたように、よく検討させていただきます。そして、この今の人災で起こった突然の侵略、併合という不幸の問題と、それから災害のときにやる、しかも現にやっており、それなりに成果も上げて頑張っておるという問題とのよって立つ次元の差もございましたので、そういった御指摘いただくような、順番を間違えた手抜かりはあったかもしれませんが、その点については、私もさっきから何遍も率直に申し上げておるように、よく検討さしていただきます。
  361. 川端達夫

    川端委員 どうかこの問題は避けて通らずに、やはりそういう姿勢でやらないと、本当に世界貢献するという言葉だけでは私は国民の理解は得られないと思いますし、説得するとしても、災害はだめで紛争はいいなんていうのは、人災と天災の違いだということでは、とてもじゃないが通る理屈ではないと思います。過去は過去としてこれからの問題を提起しているわけですから、本当に真剣に対応していただきたいと思います。  時間が迫ってまいりました。そういう部分で、私は、やはり議論として、今判断するのに非常に難しい状況になっているんですね。海外に出たことのないという、やはりあのときにあってほしかった、それがあれば、それはいいけれどもこれはだめと、その真ん中の話なんですから、そのときにどこに線があるのかという議論が私はできたと思います。  そういう部分でもう一つの問題は、その歯どめという部分が明らかになるということがもう一つの大事なことだというふうに思います。そういう意味で、かねがね我が党がいろいろな機会に主張しているんですけれども法案の三条の国連決議実効性を確保するための活動というのがこの委員会でもいろいろ議論になりました。そういう部分で、この国連決議実効性を確保するということで例えば今回の中東情勢を見たときに、果たしてどの国連決議なんだ、そうすると、イラク侵攻はとんでもない、すぐにやめるということの決議によるのか、あるいは経済封鎖をやろうという決議を受けて今度やろうとしているのかというふうな部分でいうと、混然一体としたような議論になってしまうわけです。そういう意味では、純粋に法案として見ますときに、この実効性を確保するための活動の定義というのは、解釈の仕方によっては、疑念として、いろんな紛争のところに今何でも理屈をつけたら行けるんではないかという不安はやはり残ると思います。しかし、逆にPKOに限る、国連に言われたのをPKOでやるんだということであれば、例えば今回の中東紛争は何もしない、それで済むんだろうかという今度はやはり微妙なところが残っている。その部分で総理の御答弁を拝聴しておりますと、いわゆる実行計画を立てて、いろんなケースを考えてきちっとやるんだ、任せなさいということでございます。それも一つのことでございますが、今回のいろいろな議論の中では、やはりなかなかそれで心配な部分があるのも事実でございます。  そういう意味では、やはりこの十七条の実施計画を国会承認というものを諮るということをして、この場でなるほどということをすべきではないかなというふうに私たちは考えておりますが、その点に関しての御見解をお伺いしたいと思います。実施計画に対して国会の承認事項とするということについての御見解をお伺いしたいと思います。
  362. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 これは、委員長がたしかそのことにもお触れになって、私は、それについてはどのような決議が行われるのか、まず国連決議というのは国際社会の大義でありますから、余り一方に偏った、どちらつかずの決議はないと思いますから、国際社会の大義でこれは平和の破壊者だ、ここに正義に反するものがある、そしてしかも、きょうまでは東西両陣営の対決のときはできなかったものが冷戦後初めてできるようになってきたんですから、それは信頼をして、その決議を受けて行われる実効性の確保ということは、これは国際社会の正義を実現するためのものである。  そして、そのときにどのようなことが我が国はできるかというのは、まさに我が国の方で決めなきゃならぬことでありますから、そこで実行計画を立てるということを何度もここで申し上げましたけれども、それは国連平和会議できちっと決め、閣議決定までさせますので、二重三重にきちっと歯どめもかけておるつもりでありますし、同時に、その実行計画を決めますときには原則非武装でありますけれども、行く先々によっていろいろな問題があれば、例えば護身用のものはどうするかとか、あるいは現に戦闘の行われているような危険なところへ初めから危険を想定してそこへ持っていく、入っていくということは慎重に対処して考えませんとか、いろいろなことをずっと一般論としては言えますけれども、じゃ具体的にどういうことが起こって、どういう協力ができるのかということになりますと、その具体的なケースが起こりませんとなかなか対応もできないわけでありますし、医療団を派遣するのがふさわしいところもあれば、それは来てもらわなくてもいい、もう済んでおるとおっしゃるところもあるかもしれません。輸送業務だって、それがふさわしいところがあるのかないのかも具体的なケースが出てこないとわかりませんから、私はそれは業務計画の中できちっと立てさせていただきます、こういうことを申し上げたわけであります。  したがいまして、そういったことにはいつも遅過ぎる、少な過ぎるという御批判を受け続けながらやってきたこの作業でありましたので、決まった以上はなるべくきちっと迅速にまず行われなければならない。ただ、歯どめだけはきちっとかけなければならぬということでこの法案をつくり上げてきたのでありますので、その辺のところにつきましては今後の検討課題にさせていただきたいと思います。
  363. 川端達夫

    川端委員 時間が参りましたので終わりますが、今の平和会議と閣議がほとんどメンバーが一緒だということ、あるいは今おっしゃった部分でもやはりいろいろ疑念があるというのがこの国会の議論だったというふうに思いますので、この歯どめとして国会承認を申し上げたわけであります。  またの機会に譲りたいと思います。どうもありがとうございました。
  364. 加藤紘一

    加藤委員長 これにて川端達夫君の質疑は終了いたしました。  次に、楢崎弥之助君。
  365. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 先ほど外務大臣は、入手している情報として、いわゆる人質の方々クウェートから行かれた百三十九名のうち二十名、それからもともとイラクにおられた人百六十七名ですかね、そのうち五十名と、外務省からのもうちょっと詳しいあれは別にこういうことを聞いているんですけれども、人質十数名を含む六十名ないし七十名がマンスールメリアホテルに今集められつつある、そういう情報ですが、どっちが正しいんですか。
  366. 中山正暉

    中山国務大臣 先ほど私がお答えいたしましたのも、いわゆる一般情報として通信社から来ているものでございますし、今委員から御指摘のお話は私も手元に持っておりますニュースの状況で、バグダッド市内のマンスールメリアホテルに人質約十五人を含むおよそ六十人から七十人の日本人が集められつつある、少なくともこれら日本人が解放されるものと見られるというふうな情報もただいま到着をいたしております。
  367. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私の感じでは、残っておられる方々にはまことにお気の毒ですけれども、想像以上に多数の人が解放されるという感じを持っております。  そこで、私は総理大臣にお伺いをしますが、私はバグダッドに行く前にいろいろな人とお会いしまして、結局この平和的解決のキーワードは、かぎは、九月二十四日にミッテラン・フランス大統領が国連総会で演説をされたその中の四項目にわたる平和提案、これが一つのキーワードだという感じを持ってこちらの在日イラクの大使にも会いましたし、それを確認された。向こうに行きまして国民議会のサレハ議長ですか、あるいは文化情報大臣に会ったときも同じことを言われました。  それで、そのうちのどの部分がイラク側をして評価せしめておるのか、イラク側がそのミッテラン四提案のうちのどの部分を評価しているのか。これに関してたしか十六日だったと思いますが、社会党の土井委員長が本会議でこのミッテラン提案の評価についてあなたに質問をしたときにあなたは、第一項目のクウェートからイラクの即時撤退、人質の解放、それは第一項目、それだけしかあなたはたしか私のあれでは答弁なさらなかったと思うのですけれども、では、あの四項目のうちのどこをイラク側は評価していると思いますか。
  368. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 イラク側の対外発表も一部については評価ができるというようなことでありますが、これは私の全く個人的な推測ですけれども、撤退しろとか人質の解放というところを取り上げたんじゃなくて、むしろ私にラマダン副首相が時間をかけて説明されたことは要約すると二点であって、アラブのことはアラブで片づけるという話と、それからもう一つは恒久和平についての話の中でこのクウェート問題は片づけられるべきものだと思うという、表現はちょっと違いますよ、粗っぽく言っているんだから。その点でありますから、その辺のところの、次のステージで恒久和平の問題についても触れてあるというところを評価しておるのではなかろうか、私はそういうふうに受けとめます。
  369. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 表現は別としまして、率直に言って第三項目なんですね。つまりパレスチナの問題を含んでこの現在の湾岸紛争問題をパッケージで、パレスチナ問題もパッケージ、つまり包括的な解決、そして対話、三項目がそうなんだ、そこを評価している。これは私が確認しました、こっちの大使にも、向こう側に行って今言いました要人とも。その点は向こうが強調するところですから、十月四日、あなたがアンマンでイラクのラマダン第一副首相と会われたときにも彼はそれを強調したと私は想像しますが、もしそれを言われたときに、あなたはどういう御返事をなさいましたか。
  370. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 その点については随分時間をかけて向こうから説明もされました。したがいまして、その問題については、それを言っているのは何もミッテラン大統領一人ではなくて、ブッシュ大統領の同じニューヨークにおける国連の演説の中でも、この問題は、原則に従って撤兵が行われればその次のステージでは、ミッテラン大統領のときよりももうちょっと、イラククウェート間の立場の違いを調整することや、あるいはアラブとパレスチナを含む問題についてもさまざまな解決の機会が提供されるであろうということをブッシュ大統領も言っておる。それから、私も日本立場としては、国連決議の二百四十二号の決議が行われたときに、イスラエルの占領地からの撤退ということと、同時にパレスチナの権利を認めるという立場に立ってのあの決議の内容、同時にイスラエルの国としての存在を認めるということもあの中には含まれておるわけでありますから、恒久和平の骨組みになっておるわけですので、それに従ってさまざまな機会が提供されるわけだから、局面がまず転回されればそういったことにも出ていく、そして、ついでに日本イラクとの経済の再構築の準備もあるということも私は率直に伝えてきておるところであります。
  371. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 じゃ、率直にお伺いします。  そのミッテラン四提案のうちの第三項目、つまりパレスチナ問題を含む湾岸紛争を包括的に解決する、リンケージと言ってみたり、パッケージと言ってみたりしていますが、そのことについては海部総理は賛成ですか。
  372. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 それは将来の恒久和平に対して、日本も二百四十二号の決議に従って恒久的な和平ができるようになっていくこと、それは賛成であります。
  373. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 今ちょっとほかのこともつけ加えられましたけれども、二百四十二のことも、それも向こうは問題にしていますよ。あのときに、二百四十二でイスラエルがパレスチナを追い出したときに非難決議をしたんでしょう。ところが、非難した方をアメリカは応援したわけですよ。今度の場合は、決議が出る前、いち早くアメリカは湾岸に出ていった。これはダブルスタンダードではないか、二重の基準ではないかということを非常に言いますよ、向こうは。  それはおきまして、今言った第三項目をあなたが評価するとすれば、大変私はいいことだと思いますよ。恐らく今度思いのほか、七十名という人質が解放されるとしたら、中曽根さんや自民党の代表団は、この三項目を必ず向こうは出しているはずだから、それを評価されたと思いますよ。評価されたと思う。それでああいう解放が私は実現した。それで今海部総理がやはり評価するということをおっしゃいましたから、もしそれが本当に伝われば、私はさらにこの問題は、解放問題は前進する、そのように確信をいたします。それで、何らかの形で私は、中曽根さんや自民党の代議士が帰ってきたときに恐らくそういうことがはっきりすると思いますが、それはその方向で総理もさらにそれが前進するような何らかの努力をされた方がいい。これは特に私は望んでおきますから、最後にもう一遍、そのことについてのお考えを聞いておきます。
  374. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 私は、中東和平に対してはこの問題が起こる前からもいろいろ恒久和平が達成されることを強く望んでおりまして、したがって、例えばPLOのアラファト議長がもうテロは今後やめる、イスラエルの存在、建国も認めるということを言われたので、それじゃお目にかかりましょうというので政府賓客で来てもらって対談したこともございます。同時に今度の問題については、局面打開と、そしてクウェートからの撤兵と全部の人質が早く自由に解放されることを強く願っておりますし、同時にその次のステージでは恒久和平ができ上がることを願っておりますから、できる限り日本としてもそれには賛成の立場で努力を積み重ねていきたいと考えております。
  375. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 時間が参りました。しかし最後にもう一言言っておきますが、第三項目をあなたが評価されたことは私は大変いいことだと思いますよ、本当に。これはさらに人質を解放することに通じる。非常にいい答弁をいただきまして、ありがとうございました。  終わります。
  376. 加藤紘一

    加藤委員長 これにて楢崎弥之助君の質疑は終了いたしました。  次回は、明七日午前九時三十分理事会、同十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時八分散会