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1990-10-30 第119回国会 衆議院 国際連合平和協力に関する特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年十月三十日(火曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 加藤 紘一君    理事 高村 正彦君 理事 西田  司君    理事 浜田卓二郎君 理事 宮下 創平君    理事 山崎  拓君 理事 池端 清一君    理事 上原 康助君 理事 高沢 寅男君    理事 日笠 勝之君       愛知 和男君    井出 正一君       石井  一君    植竹 繁雄君       奥田 幹生君    古賀  誠君       自見庄三郎君    鈴木 宗男君       園田 博之君    近岡理一郎君       中川 昭一君    中村正三郎君       中山 正暉君    野中 広務君       鳩山 邦夫君    浜田 幸一君       林  大幹君    牧野 隆守君       町村 信孝君    三原 朝彦君       渡辺 省一君    石橋 大吉君      宇都宮真由美君    上田 利正君       小澤 克介君    大木 正吾君       岡田 利春君    川崎 寛治君       左近 正男君    水田  稔君       和田 静夫君    井上 義久君       遠藤 乙彦君    冬柴 鐵三君       山口那津男君    児玉 健次君       東中 光雄君    正森 成二君       和田 一仁君    楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣  海部 俊樹君         法 務 大 臣 梶山 静六君         外 務 大 臣 中山 太郎君         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君         文 部 大 臣 保利 耕輔君         厚 生 大 臣 津島 雄二君         通商産業大臣  武藤 嘉文君         運 輸 大 臣 大野  明君         郵 政 大 臣 深谷 隆司君         労 働 大 臣 塚原 俊平君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     奥田 敬和君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 石川 要三君  出席政府委員         内閣官房内閣安         全保障室長         兼内閣総理大臣         官房安全保障室         長       米山 市郎君         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         内閣法制局第一         部長      大森 政輔君         内閣法制局第三         部長      津野  修君         警察庁長官官房         長       浅野信二郎君         防衛庁参事官  内田 勝久君         防衛庁参事官  玉木  武君         防衛庁長官官房         長       日吉  章君         防衛庁防衛局長 藤井 一夫君         防衛庁教育訓練         局長      坪井 龍文君         防衛庁人事局長 村田 直昭君         防衛庁経理局長 畠山  蕃君         防衛庁装備局長 関   收君         防衛施設庁総務         部長      箭内慶次郎君         防衛施設庁施設         部長      大原 重信君         防衛施設庁労務         部長      竹下  昭君         法務大臣官房長 堀田  力君         法務省民事局長 清水  湛君         法務省刑事局長 井嶋 一友君         法務省人権擁護         局長      篠田 省二君         外務大臣官房外         務報道官    渡邊 泰造君         外務省北米局長 松浦晃一郎君         外務省欧亜局長 兵藤 長雄君         外務省中近東ア         フリカ局長   渡辺  允君         外務省経済局長 林  貞行君         外務省経済協力         局長      木幡 昭七君         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合         局長      赤尾 信敏君         外務省情報調査         局長      佐藤 行雄君         大蔵省主計局次         長       田波 耕治君         大蔵省国際金融         局長      千野 忠男君         文部大臣官房長 坂元 弘直君         厚生大臣官房総         務審議官    熊代 昭彦君         厚生省保健医療         局長      寺松  尚君         厚生省年金局長 末次  彬君         通商産業省通商         政策局長    畠山  襄君         通商産業省機械         情報産業局長  山本 幸助君         運輸省国際運         輸・観光局長  寺嶋  潔君         海上保安庁長官 丹羽  晟君         海上保安庁警備         救難監     赤澤 壽男君         郵政大臣官房長 木下 昌浩君         郵政省電気通信         局長      森本 哲夫君         郵政省放送行政         局長      桑野扶美雄君         労働大臣官房長 齋藤 邦彦君         労働省労働基準         局長      佐藤 勝美君         労働省職業安定         局長      若林 之矩君         自治省行政局公         務員部長    滝   実君         消防庁長官   木村  仁君  委員外出席者         国際連合平和協         力に関する特別         委員会調査室長 石田 俊昭君     ───────────── 委員の異動 十月三十日  辞任         補欠選任   東中 光雄君     正森 成二君 同日  辞任         補欠選任   正森 成二君     東中 光雄君     ───────────── 本日の会議に付した案件  国際連合平和協力法案内閣提出第一号)      ────◇─────
  2. 加藤紘一

    加藤委員長 これより会議を開きます。  内閣提出国際連合平和協力法案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中山正暉君。
  3. 中山正暉

    中山(正)委員 私は、若いときから大変親しくさせていただいております海部総理最初に選挙しましたときの推薦状に一文を寄せていただいた その若いときから、若き指導者としての期待をかけておりました海部総理がここに座っておられて、ここから御質問申し上げるというのは感慨無量でございます。時間がたったなという気もいたしますが、それだけに日本情勢も大変変わったな、世界情勢も変わったな、そんな気持ちでここへ立っております。  それから、私事にわたりまして恐縮でございますが、兄貴中山太郎が隣に座らせていただいておりまして、親戚筋からこんなことを言うのはおかしゅうございますが、かなりしっかりやっておるような感じもいたします。ことしはちょうど私どもおやじの十三回忌に当たります。いい供養になっているなという感じがいたしますが、きょうは、そういう私どもおやじも、これはまた恐縮なんでございますが、かつて戦前、ちょうど兄貴が生まれましたときに最初に立候補して落選をいたしました。フルネームを書かないと当選にならなかったころでございますけれども中山福藏福藏という名前が難しい、それで落選したのだと思って、兄貴には太郎という簡単な名前をつけたわけでございます。私は、ちょうど昭和七年、おやじ当選をした年に生まれましたので、私は兄弟余り似通ってない。四郎とかそんなことはついておりません。おやじは、ちょうど昭和十五年の東條陸軍大臣に兵庫県の齋藤隆夫代議士反軍演説をしましたことを、ちょうど進行係を四年間やっておりまして、弁護士でございましたから、国会除名齋藤隆夫が受けるというときに、除名をしてはいかぬ、特に、すぐ判決がおりてもすぐに刑を執行するというようなことはいかぬと言って反対をしたものですから、おやじはついに、永井柳太郎先生にしきりに誘われましたが、大政翼賛会には参加しませんでした。そのために、昭和十六年の選挙が十七年に戦時体制で延びましたときに、非推薦落選をいたしました。大都市で影響があったのだろうと思います。海部総理の師匠であられた三木武夫先生は、そのときに四国から当選をなさいました。若き二十九歳の代議士として国会に出てこられたそのちょうど同じ年月になっております。前は、この席で私が日中条約のときに質問いたしましたその日におやじは亡くなりました。何となく因縁を感じながら、ひとつ日本のために外務大臣も頑張ってほしい、心から、親しき仲にも礼儀あり、敬意を表し、これから総理大臣、各大臣に御質問申し上げたいと思います。  実は、皮肉なことを言うようでございますが、私は、私がもしこういう事態に至っておったら、いろいろな要請に対応するのにもう少し暇をかけたのじゃないかなと思うのでございます。なぜかと申しますと、先般、党内の、私は外交調査会副会長をさせていただいておりますから、その席で、国連平和協力といいながらおかしいではないか、協力をするにしても国連憲章の五十三条と百七条には敵国条項というのがある、それがあるのに平和協力法案という名前は一体どうしてつくのだろうかという一つの疑念がございます。その話をして、国連演説に行った外務大臣国連での演説で、その敵国条項を何とか見直してほしいという演説の中に入ったようでございますが、まずその国連憲章の中の敵国条項に対しまして、これから日本はどんな手を打ってこれの改定に努められるのか、その辺からひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  4. 中山太郎

    中山国務大臣 今お尋ねの国連憲章のいわゆる敵国条項は、第二次世界大戦後の経過的な規定として挿入されているものでありまして、我が国国連憲章第四条に言う平和愛好国として国連加盟が認められ、国連加盟国日本との関係が憲章第二条、なかんずく主権平等の原則に立って規律をされることになった以上、我が国には適用をされないというふうに既に国際社会では認識されていると思っております。  なお、この問題は、憲章改正について改正委員会等におきましても我が国からも意見を出したことがありますし、私が先般の国連総会演説を行った中にもこの問題に触れましたけれどもドイツがいわゆる第二次世界大戦終了戦勝国によって共同管理されていたということから、この敵国条項廃止という問題は、ドイツが統一されるまではベルリン等におきましても占領が続いていたものでございますから、これがなかなか改正に至らなかった。しかし、この十月三日東西両ドイツが歴史的な統一ができたわけでありますから、これからはこの旧敵国条項というものの排除に向かって日本としては積極的に努力をしていかなければならないと考えております。
  5. 中山正暉

    中山(正)委員 ドイツは大変賢明な対応をしてきたと思います。世界ドイツの場合は、わざと十万人のボンというところに首都を置いて、ベルリンは本当の首都だよ、ボンは仮の場所なんだということで、首都もわざと小さな十万人のところに置いておりましたし、それからドイツは、憲法ではなくて基本法というものをつくっておりましたが、基本法を何と三十四回変えております。  ついでのことに、重立った憲法改正をした国、ソビエト社会主義共和国連邦は五十一回で、つい最近変えましたから五十二回かそこらになったと思います。それからスイス連邦、三十三回変えております。それからスウェーデンは三十七回、オーストリアは二十九回、多いところだけ言っておきますと、インドは四十六回変えております。ニュージーランドが二十九回、民主カンボジアが十三回、南アフリカ共和国は二十六回、マラウイ共和国は十三回。  マッカーサーという人が、日本は十二歳だと言ってくれましたが、あのころから随分年月がたちました。海部総理、いかがお考えでございましょうか。十二歳のときの洋服を今戦後四十五歳、まあ四十五歳になったかどうかわかりませんが、四十五歳になったときにそのまま着ているところに、この国会の議論を聞いていて、民衆が何となくおかしいな、何か裏道をすり抜けて何かするんじゃないかしらな、こう思っているのではないかという、私は、民衆声なき声といいますか、雰囲気感じるのでございます。ただし、私申し上げておきますが、私は今すぐに憲法の問題をさわれと言うわけではございません。私は、今の憲法にさわらずに世界緊急情勢に対応するための処置はこれしかない、この国連平和協力法案を私は野党の皆さんに御理解をいただいて、そしてこれしかないという理解民衆の方に、民衆皆さんに、大衆の皆さん理解をしていただくことが必要なんじゃないか。業務規定の中も停戦というところから書いてある。これは私は大きな意味があると思っておりますが、その意味でこの今の日本と、それから十二歳とマッカーサーに言われた時代とをどういうふうに見比べていらっしゃいますでしょうか。その雰囲気から、総理から御答弁いただけたらと思います。
  6. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 顧みますと、お互い政治に志して一緒に研修会をやったり街頭演説しましたころ、もう三十年も三十五年も前になると思います。あのころの日本立場復興途上国と言っていいと私は思います。福祉の制度も充実しておらず、国民所得も低く、何かこう西欧先進国に追いつきたい、追いつきたいというのがお互いのいつもの夢であり、また、国民皆さんにもそういった豊かな暮らしをいたしますということをお約束しながら、国家の安全という方は日米安全保障条約で、しかもこれはバンデンバーグ決議の全くの例外で、日本だけが特別な扱いを受けるということでありますから、十二歳と言われてもいたし方ないようなことであったのだろう。けれども、それによってとにかく平和をきちっと守り、そして豊かになりたいという願望を受け入れて政治が前進をしてきたのが、御指摘のとおり、きょうこれだけ大きな変化となってきました。  世界の中で、好むと好まざるとにかかわらず、事、経済、事、物に関する限り、あるいは教育が普及して技術に関する限り、いろいろな面で日本の地位は大きくなってきております。ですから、世界の総生産でも、これは粗っぽい言い方をしますと、二十兆ドルというものが出される中でアメリカが五兆ドル、ヨーロッパが全部で五兆ドル、 日本が一国で三兆ドルでありますから、だから国連負担金も、今とにかく敵国条項なんというものがあるにかかわらず、もう上から二番目のところを拠出して、国際社会の中で日本立場というものはそれなりに見られておる。けれども、そうであるがために、世界のいろいろな国と貿易摩擦なんということも起こるようになってくる。いろいろな面で影響力は無視できないようになってきておりますから、半面それに伴う自覚と責任と申しますか、世界秩序というものをつくっていくために日本もそれにふさわしい協力をし、貢献をしていかなきゃならぬ。要するに、平和と繁栄のためにどのような役割が期待されるかというところまで、今日の日本立場というものは変わってきたというのが、私も、御質問を聞きながら率直な感じでございます。  したがいまして、そういった意味で、戦後きょうまでお互いに歴史の反省に立って、二度と侵略戦争はしません、軍事大国にはなりませんということはお互いに誓ってきた理念だと思います。同時に、そのことやその立場というのを、これがアジア・太平洋地域の平和と安定にも役立ち、国連憲章の理想もそこにあるわけですから、まさに二十一世紀皆が目指しておるのは、話し合って粘り強く平和な繁栄した世界をつくっていこう。そのために、今現に起こっておるような問題には日本もただ黙って見ておるだけじゃなくて、まあ仕方がないわと言ってああいったことを許してしまうのでは、これはこの平和主義というものが積極的な意味を持たなくなってきます。憲法前文にも国連憲章前文にも、皆が力を合わせて平和はつくっていく、守っていくものだということがちゃんと出てくるわけでありますから、それに対する努力の一環としてこの用意した法案国連平和協力法案で、御指摘のように、三条にもその業務目的はきちっと書いてございますし、武力行使は絶対にしないということも大前提にきちっと置いておるわけでありますから、国際社会の一員としての責任を果たしていかなけりゃならぬ。そして、今御指摘のように、今の憲法の中でできる範囲は何だということをきちっと決めろと、決めたのがこれでございましたので、そのような考え方に立っての提案であるということをどうぞ御理解を賜りたいと思います。
  7. 中山正暉

    中山(正)委員 先ほどドイツの話をいたしましたが、ドイツ基本法の中にはこれだけの有事立法がちゃんと書いてあります。有事立法、特に百十五条なんか「戦争非常状態」。日本憲法の中にはそういう非常体制がありませんし、世界で珍しい憲法戒厳令規定がないという不思議な憲法日本憲法でございます。いざというときに、もし総理大臣が山の中へ連れていかれて誘拐をされたら総理大臣のない日数が続く、これどうしようもないという、そういうときにどうするかというのは一切書いてないのが日本憲法でございます。  それはマッカーサーがいて、吉田茂マッカーサーという人は七十六回会っております。その会ったときにはいつも、自分がやめて帰るときには必ず日本の安全と平和のことをちゃんと考えて帰ると言っておったのですが、御承知の昭和二十五年の六月の二十五日に朝鮮動乱が起こりました。そのときマッカーサーは、中共軍中国戦闘参加によって、満州に二十六カ所に原爆を落とすということを言ったわけでございます。これがそのころ、もうちゃんとアメリカアチソン秘密文書という秘密文書がありまして、中国の抱き込みを考えておったのが朝鮮動乱の一年前でございます。びっくり仰天したトルーマンは、マッカーサーの首を突然切りました。私は学生でございましたが、突然帰るマッカーサーに同情をしてアメリカ大使館の前まで、あのすばらしいトレンチコート、我々から見たら格好がいいなと思いましたが、それから、マッカーサーがかぶっていた帽子というのは、あれはフィリピン元帥帽子でございました。あれはアメリカの将軍の帽子ではございません。一生着ておりましたのは、フィリピン国元帥帽をかぶっておりましたが、あのフィリピン元帥帽をかぶったマッカーサー、私は大使館の前へ学生服を着て見送りに行ったものでございます。  しかし、今から考えると、アメリカ中国を抱き込もう、そのためには中国戦争をしながらそういうことを考えておったという、時代をしみじみと感じるわけでございますが、特に吉田茂が、今海部総理がおっしゃったようなことをうまいこと言っています。  鈴木内閣幣原内閣外務大臣であったので、吉田茂アメリカ製憲法成立事情には一番詳しく知っている日本人の一人だ。彼の著書『回想十年』を見ても「第九条の軍備廃止戦争放棄を発案したのは幣原さんではない。たしかにマッカーサーだ」と明記している。英語の憲法草案ホイットニーケイジスから このホイットニーという人は、これはフィリピン弁護士をしておりまして、このフィリピン弁護士を開業をしていた人を彼は突然軍籍に、陸軍に引きずり込んで、ずっとこれがいわゆる政治局を担当した人でございます。ホイットニー、それからケイジスケイジスというのは、この人は共産主義者だと言われて、マッカーシー旋風で突然日本からこの人もアメリカへ連れ帰られました。だから、このケイジスという人を私はテレビで見ましたが、日本政治家の中でだれを一番尊敬するか、野坂參三と言っておりました。その人が憲法をくれたのですから、ありがたい話だという感じがするのでございますが、その  押しつけられた情景についても詳しく書き残しているが、同じ本の中に”にもかかわらず、この憲法を改めるなどということは特に考えずに、とにかくこのまま手を触れずに維持していたほうがよかろう”と書いてある。これが問題だ。   なぜ吉田茂は、占領終了後の回想でこのようなことをいったのか。アメリカ製憲法草案を受入れるときには、とにかく占領さえ終れば自主的に改めることができると吉田茂は考えていた。サンフランシスコ講和条約のときにも、とにかく相手の言うがままの講和条約安保条約を受け入れて、一刻も早く日本を独立させたい、独立さえすればどうにでも改正できるという、吉田独特の楽観主義があった。米国製憲法受け入れの時にも同様に軽く考えていたらしい。   占領憲法が発布されると間もなく朝鮮戦争が勃発したために、アメリカ日本弱体化から再武装に方針を変え、ダレスを派遣して再軍備を促してきた。吉田は、ダレス申し出を断わるための方便として憲法を持ち出し、「これはアメリカが作った憲法だ。しかも日本国会で承認されて発布したもので、この憲法によって軍備はできないのだ」と憲法を盾にして再三のダレス申し出を逃げ切った。軍備日本防衛アメリカに押しつけたという点では、このアメリカ製憲法は大いに役立ったわけだ。 なかなか吉田茂のずるさがここに如実に出ております。  マッカーサーがまた後にジョージ・H・ブレクスリーという人に言っております。これは「極東委員会国際協力の研究」という、一九四五年から一九五二年にかけての、米国務省出版部、一九五三年、昭和二十八年でございますが、マッカーサーの談話が載っております。どんなによい憲法でも、日本人の胸元に銃剣を突きつけて受諾させた憲法は、銃剣がその場にある間だけしか保てないというのが自分の確信だとマッカーサーは語った。占領軍が撤退し、日本人思いどおりになる状況が生まれた途端に、彼らは押しつけられた諸観念から独立し、自己を主張したいという目的だけのためにも、無理強いされた憲法を捨て去ろうとするだろう。これほど確かなことはないと彼は語った。  それから私が申し上げたいのは、陸戦法規慣例ニ関スル条約という条約があります。これは明治四十年、ハーグで締結をされまして、明治四十五年に日本は批准をしております。この陸戦ノ法 規慣例ニ関スル条約の四十三条、ここには「国ノ権力カ事実上占領者手ニ移リタル上ハ、占領者ハ、絶対的ノ支障ナキ限占領地現行法律尊重シテ成ルヘク公共秩序及生活回復確保スル施シ得ヘキ一切ノ手段ヲ尽スヘシ。」つまり、相手の国に上陸作戦をやって、陸上戦闘をやって機関銃を撃ちまくっても、そこに自分法律を押しつけちゃいかぬと書いてあるわけであります。私は、完全にアメリカはこの条約違反をやったと思います。  日本は、昭和二十年の四月の一日に米軍が沖縄に上陸しました。慶良間列島に上陸をしたのは三月二十六日でございますが、あそこで集団自決がありましたのは、太平洋の側から上陸するのかと思ったら、反対側に回って上陸したわけでございます。突然来た。島の人たちが手りゅう弾で穴の中で死んでいきました。私はそこへお参りもしてきました。六月の二十二日——大田少将は十六日に死んでおります。あの海軍ごうの中で自殺をしておられます。「大君の御旗のもとに死してこそ人と生まれしかいぞありける」という辞世の句であります。牛島中将は「秋待たで枯れゆく島の青草は御国の春によみがえらなむ」。長勇と一緒に腹かっ切って、沖に泊まっている千七百隻のアメリカの軍艦を見ながら、そこへ突っ込んでいく特攻隊を見ながら死んでいきました。バックナーという司令官も日本の狙撃兵に殺されています。アメリカ人が一万八千人、日本人が十八万人死にました。陸上戦闘だけ沖縄で起こったわけでございます。  日本はありがたいことに上陸作戦は、天皇陛下が、日露戦争アメリカが間をとってくれたから——今度の日米戦争は、ロシアに間をとってもらう、まあ泥棒にかぎを預けに行ったわけでございます。残念なことをしました。そのときにソビエトにおられた佐藤尚武大使、どうしておられたのかなと私は「戦中戦後日ソ交渉史」というような本を読んでみると、しみじみと感じるんです。昭和十七年の四月の十八日に、私は小学校三年生でございました。私は防空ごうに初めて入りました。それは、ホーネットという空母から、真珠湾攻撃の逆に、B25を使って東京を奇襲攻撃したわけです。そのときソ連とちゃんと約束して、もうシベリアに着陸することに約束しておったわけでございます。佐藤尚武大使は乗員とそれから飛行機を渡せと言っているのに、スターリンはナシのつぶてでございます。このときに見抜いておかなければいけなかったのですね。  演説をしてしまうといけませんので、陸戦法規慣例ニ関スル条約違反を条約局長、どう見ておられますか。それをアメリカに私は言うべきではないか。この間、オハイオ州の下院議員の奥さんが私に、CNNの放送に日本人の日の丸が見えないじゃないかと言われました。何も協力していない。とにかくCNNに出てこない。若いオハイオ州の下院議員の奥さんでございましたが。それを考えると、そういうときにアメリカに、いや、あなた方がくれた憲法で出られないんですよと、吉田茂のまねしたらいいんです、あなた方の先輩の。そのずるさをひとつ今の外務省、学んでいただきたい、こう思います。ひとつ御答弁をお願いします。
  8. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 お答えを申し上げます。  先ほど委員から御指摘のとおり、陸戦法規慣例ニ関スル条約の第三款第四十三条には、「占領地法律の尊重」という規定がございます。先ほどお読み上げいただいたとおり、「占領者ハ、絶対的ノ支障ナキ限占領地現行法律尊重シテ成ルヘク公共秩序及生活回復確保スル施シ得ヘキ一切ノ手段ヲ尽スヘシ。」という規定がございます。連合軍による占領中にこの規定がどの程度守られたかということにつきましては、具体的な状況はいろいろ複雑だったと思います。私、この時点で、その当時のこの四十三条の適用状況につきまして具体的にお答えを申し上げるだけの知識を持ち合わせておりませんけれども、いずれにいたしましても、占領後はサンフランシスコ平和条約によりまして、その第一条で、「連合国は、日本国及びその領水に対する日本国民の完全な主権を承認する。」ということで、この平和条約によりまして我が国が完全な主権を回復したわけでございます。また、占領中を含めまして、それ以前のいろいろな請求権の問題につきましても、このサンフランシスコ平和条約で請求権の放棄という形で処理がなされているわけでございますので、それ以後の問題につきましては、完全な主権国家として、我が国として我が国の法令その他を決める権利を有するということが言えると思います。
  9. 中山正暉

    中山(正)委員 局長、フランス憲法八十九条を御存じでございますか。
  10. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 突然のお尋ねで、私、今フランス憲法の条文は持っておりません。
  11. 中山正暉

    中山(正)委員 実は、この陸戦法規慣例ニ関スル条約が条文になっているのがフランス憲法でございます。外国の軍隊が国土の一部または全部を占領している間の法律改正は無効である。ですからそれは、サンフランシスコ平和条約昭和二十六年、二十七年でございますか、それ以前の昭和二十一年にできた憲法は完全に占領下でございますね。ですから、後でサンフランシスコ平和条約が——またこれくしき因縁でございますが、そのときの全権団の中に我々の母親、中山マサが参加させてもらった印象が非常にあります。この間、亡くなりました遺品の中、それを整理していましたら、そのときのサンフランシスコのベイブリッジの写真と、それから講和条約で星島さんとか吉田さんが座っていらっしゃるその前の席に座っている写真が出てまいりました。それから独立したのはわかりますけれども。  法制局長官、いかがでございますか。この間、将来できる国連軍の中に今の自衛隊が参加することは憲法に違反する疑いがある。そんな矛盾した話が出てくるんならば、これからの日本というのは世界の中で何をするのか。日本の常識は世界の非常識、世界の常識は日本の非常識と言われることわざがあります。日本の常識と世界の常識と私は合わせていかなければならないと思う。それではどっちに合わせばいいのかな、こんな狭い箱の中で首曲げて、こんなにして入っている日本がいいのか、それとも、天井をぱんとあげて堂々と世界と話し合えるような、特にそうでないと日本の自衛隊も——どなたか知っておられたら、日本自衛隊の建軍の精神というのは何か教えていただきたいと思います。ある人が言っていましたけれども、国籍不明の船を停船を命じる訓練をした。そうしたら、あれは前へ一発撃って、後ろへ一発撃って、三発目は真ん中を撃つんですね。真ん中を撃とうとしたら自衛隊員が、どこの国かわからないやつ何で沈めるんですかと言ったというのですね。もう人道主義が徹底しているわけでございます。だから、何から何を守るかという自衛隊建軍の精神については一体何かな。誇りがないと制服なんか着ていられません、ばかばかしくて。  この間、サウジアラビアに行ってくれと言われたお医者様が、お名前は避けますが、某大学の大教授、細菌学をやっていらっしゃる方でございます。私に何ておっしゃったか。中山さん、サウジアラビアへ行ってくれないかと頼まれたけれども、靖国神社に祭ってくれますかと聞いたら返事がなかったので断ったと言っていました。祭られても、野党の皆さん反対をされますし、総理大臣は参ってくれない、天皇陛下は参ってくださらない、当然のことながら。その辺が日本って何か欠けているな、じっと見ていても真ん中の部分にブラックホールがあるなという、これが日本の何か今の姿みたいな感じです。  昔、共産党はいいことを言っていましたよ。野坂參三さん、国会憲法が提出されたとき何とおっしゃっているか。これは憲法国会に出たときの速記録でございます。「一体此ノ憲法草案戦争一般抛棄ト云フ形デナシニ、我々ハ之ヲ侵略戦争ノ抛棄、斯ウスルノガモツト的確デハナイカ、此ノ問題ニ付テ我々共産党ハ斯ウ云フ風ニ主張シテ居ル、日本国ハ総テノ平和愛好諸国ト緊密ニ協力シ、」いいことを言っている。今の国会に 来ていただきたいようなことをおっしゃっています。それから、「民主主義的国際平和機構ニ参加シ、如何ナル侵略戦争ヲモ支持セズ、又之ニ参加シナイ、私ハ斯フ云ウ風ナ条項ガモツト的確デハナイカト思フ、」憲法九条に反対していらっしゃるのですね。それから、「一体戦争ノ廃棄ト云フモノハ一片ノ宣言ダケデ、或ハ憲法ノ条文ノ中ニ一項目入レルダケニ依ツテ実現サレルモノデハナイ、軍事的、政治的、経済的、思想的根因、此ノ根本原因ヲ廃滅スルコト、是ガ根本ダト思フ、」野坂議長の演説でございます。結果はどうされたかというと、六人、社会党から二人共産党に同調しました。帆足計と穂積七郎、この二人が共産党と同調して反対投票をいたしました。  それから、一番最初に新憲法をつくろうといって改正案を出されたのは、昭和二十四年、共産党でございます。これは軍隊のことは余りはっきり書いてありませんが、人民による軍隊は軍隊ではない。つまり、共産党の世界になったらこれは徴兵制度ですから、いつでもつくれるわけですから、そのことは改めて書いてない。今の自衛隊はどうするんだということには、今の自衛隊は再教育して、そしてやめさせる、こう書いてある。それはどういう意味かというと、役に立つやつはとる、共産党に従わないやつは捨てる、こういう考え方があるわけでございます。——残念ですね、共産党に一番聞いていただきたいと思っていたのですけれども。  ですから、法制局長官、先ほどの陸戦法規慣例ニ関スル条約日本は今こんなことになってしまったわけです。これだけ、何でここにいる皆さんが一緒にやろうという気にならないのかなというのを、私は後ろで座っていて、ずっと聞いていてもう不思議でならないのです。もうテレビ見ていたらこんにゃく問答で、そして、昔ヘルメットをかぶっていたような連中がマスコミの中に、そのころ安保騒動で暴れまくったから就職できなくて、プロダクションに入ったり広告会社に入って、その連中が夜のテレビを独占していますから、みんなそれで頭がぼけてしまうのですね。情報のゼロの位置がない。情報のゼロの位置も失ってしまった。すべての誇りも失ってしまった。外国に対して顔向けできずに非常に生産性の低い日本国会、こんな集中審議をするものすら生産性が低いようなことで、幾ら工業の生産性なんか、こんなもの上がったってガラスの城でございます。だれかが石一発投げたら、このガラスの城は崩壊します。そのもとが、いわゆるこの論議している枠からどうしても出れない。囲いの中に入っている。その囲いを、この間から法制局長官、もうすぐ最高裁判所長官になっていただいた方がいいんじゃないかと思うほど明確な御答弁をいろいろされていますので、ひとつ一般常識として教えていただきたい。陸戦法規慣例ニ関スル条約という古い古い立派な条約がある。これは世界全部に及ぶ、批准をした国に全部及ぶ条約でございますから、みんながわかっているものでございます。日本が突然、本当は今、現憲法を廃棄してもいいのです、この条約に従って。そのぐらいの値打ちのあるものでございますが、答弁していただいた方がいいのかな、このままやめた方がいいのかなという悩みを持ちながら今聞いているのでございますが、余り私の意に沿えないような感じがするのなら、もうやめておきましょうか。  またいずれ、それでは総理大臣に耳打ちをする役割をしていただくことに徹したいと思いますが、実に怪しげな戦後処理をやってきた。国連敵国条項でも、それからこの陸戦法規慣例ニ関スル条約でも、全部これは戦後処理をきちっとしてないのです。戦後処理をしてないうちに、さあ世界の転換に遭った。  私、またここへ毛沢東語録を持ってきています。懐かしい赤い毛沢東語録。この中にちゃんと解説が書いてあります。   戦争と平和 戦争——それは私有財産と階級が発生してからはじまった階級と階級、民族と民族、国家国家政治集団と政治集団とのあいだの、一定の発展段階での矛盾を解決するためにとられる最高の闘争形態である。   「戦争政治の継続である」、この点からいえば、戦争とは政治であり、戦争そのものが政治的性質をもった行動であって、昔から政治性をおびない戦争はなかった……   だが、戦争にはその特殊性があり、この点からいえば、戦争がそのまま政治一般ではない。「戦争は別の手段による政治の継続である」。政治が一定の段階にまで発展して、もうそれ以上従来どおりには前進できなくなると、政治の途上によこたわる障害を一掃するために戦争が勃発する。……障害が一掃され、政治目的が達成されれば、戦争は終わる。障害がすっかり一掃されないうちは、目的をつらぬくために、戦争は依然として継続されるべきである。……したがって、政治は血を流さない戦争であり、戦争は血を流す政治であるといえる。 それから、その戦争に二つあるというのですね。正義が二つあるのですからね。それはサダム・フセインの正義と日本の正義、アメリカの正義と三つあるかもわかりません、今の世の中。本当は二つなんですけれども。   歴史上の戦争は二つの種類にわけられる。一つは正義の戦争であり、もう一つは不正義の戦争である。 さっき野坂さんが言っていたこととちょっと似ています。  すべて、進歩的な戦争は正義のものであり、進歩をはばむ戦争は不正義のものである。われわれ共産党員は、進歩をはばむすべての不正義の戦争反対するが、進歩的な正義の戦争には反対しない。後者にたいしては、われわれ共産党員は反対しないばかりか、積極的に参加する。 だから、共産主義が広まる戦争は正義の戦争で、それが縮まっていく、それを邪魔をする戦争が不正義の戦争だ。だから、あのヘルメットをかぶっておる連中が反戦と書いてありますけれども、あれは自分戦争をやって相手戦争反対するという、うまいこと書いているものだと思いますが。  そういう感覚の中で今度のイラクとそれからクウェートの戦いですね。片一方は百万の軍隊、それから片一方は二万四千しかいませんでした。二万四千で金ばっかり持っている。特に、戦争の原因というのは、いっぱい王族がいますから、それに全部小遣いをやらなきゃいけない。それじゃ石油をやろう。いわゆるプリンスオイルというやつですね。プリンスオイルをオランダへ行って売ったり、いろいろなところへ行って売って、それが収入になっていたというスポット市場に出てくる石油、それがいわゆるプリンスオイル。プリンスメロンぐらいだったらよかったのですが、プリンスオイルというのが戦争の原因になってしまいました。この同じアラブ同士の戦いというのを総理は、この間までイラクとイラン——イランはドイツ系、アーリア民族ですからアラブじゃありません。イラクとイラン、それからイラクとクウェートのこの争いというのをどういうふうに見ていらっしゃいますでしょうか。
  12. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 非常に博学な中山さんの御質問というかお話を私は承っておりましたけれども、今御質問になった、この戦争をどうだと言われると、これは例えばこの間のイラン・イラクの戦争にしても、あれは領土の問題、その背景に宗教の問題があったのではないか、このように私なりに判断をいたしておりますし、また、今アラブが抱えておる戦争の火種というものは、もう随分長い歴史上のいわく因縁がありまして、それこそ一緒にアラブ旅行したときに詳しく解説を受けた、あの三千年前からのいろいろなしがらみの中でこのような問題がある。それを今日、中東の恒久和平という問題をとらえて、今世界の国々が知恵を出し合いながら、粘り強い話し合いをしながらしておるわけでありますから、やはり国際社会全体が受け入れられるような国際社会の大義といいますか、一つだけきちっと人間の将来のために守らなければならぬことは、力の強い者が力の弱い者を黙って侵略して、つぶして、併合して、とっちゃっていいんだというようなことだけは絶 対にこれからは許してはならぬという基本を立てて、お話し合いをしながら片つけていかなければならぬ。アラブにはアラブのいろいろな問題があるということは、もうそれは日ごろよく御存じのとおりのことでございます。
  13. 中山正暉

    中山(正)委員 そこで私は、中東の大事さといいますか、何となくバランスをとっていかなきゃいかぬなという感じがするのです。一九一八年に第一次世界大戦が終わりまして、ヨルダンとそれからパレスチナの部分がイギリスの委任統治領に入った。例のべギン首相なんという方は、デビッドホテルに爆薬を仕掛けて百四名の英国兵士を殺したとか、英国を去らせるために、パレスチナとそのころユダヤ人が一緒になって排撃運動をして、突然一九四八年の五月の十三日にイスラエルは独立したわけですね。ところが、ワイツマン博士という方が、トルーマン、この人もユダヤ系の大統領ですが、この大統領に国を承認してくれと言ったら、何と十一分で承認しているのですね、わずか十一分で。もう私がここへ来てからでも四十分たちますが、四回承認できるぐらいの時間になりました。  ですから、私は、大事なことは——ちょっとここへ、もうほとんどほかの人がいろいろなことを聞いてしまいましたので、私、ひとつドル紙幣を持ってきたのです。一ドル紙幣でございます。一ドル紙幣の裏を見てください。こっちではエジプトのピラミッド、こっちにはダビデの星が入っています。一ドル紙幣だけが不思議なことにワンと書いてあるのですね。ほかの十ドル紙幣の裏には建物の絵が入っている。これはホワイトハウス、二十ドルはホワイトハウス。それから百ドルは例の独立宣言を起草したところですね。独立宣言の話が出てきたところで申し上げておきますが、独立宣言を起草したトーマス・ジェファソンというワシントン大統領の国務長官は、独立宣言を起草すると同時に、我々の旗はアブラハムがメソポタミアのウルからカナンの土地イスラエルに行ったときの歴史をとろう。どうしたかというと、どっちを向いて歩くんですかと言ったら、神様に、おまえは天国へ行けと言われた。どっちを向いて歩いたらいいんですか、青い空と黄色い砂漠しかありませんと言ったら、それでは、よし、昼間は白い煙の柱を立ててやろう。夜はどうするんだ、赤い火の柱を立ててやる。それで私たちどうなるんですかと言ったら、おまえたちユダヤ人はやがて天に満つる星のごとくに地に満つるであろう。実はそのマークが星条旗でございます。白い筋が六本と赤い筋が七本、隅っこにふえていく星。だからアメリカは、イスラエルが目の中で三番叟を踏んでも痛くないというのです。アメリカの目の中でイスラエルが踊りを踊っても痛くないというのがイスラエル。  特に、これはイスラエルの人が言っていましたが、中山さん、なぜイスラエルが大事なのかわかりますか、それはいろいろなことがありますけれども、なぜかといえば、それはスエズ運河という、かつては海を遮断するためにスエズをあける、今はソビエトがアフリカへ行くのはあの陸の橋、絶対に落ちない陸の橋、そこにあるのがイスラエル。そこには二百メートルぐらいのところにキリストが十字架にかかったゴルゴタの丘があって、そのすぐそばにはメッカ、メジナ、そしてテンプル山、いわゆるモハメッドが天に上った金のドームがあります。この間ここで大紛争、二十一人殺された。そのまた後、イスラエルの兵隊が三人殺されたという紛争の地。すぐ横に、そのがけの下は嘆きの壁でございます。世界宗教の三大聖地が目と鼻の先にあるのはどういう意味かというと、向こうの人が言うのですが、ここは自動車のギアで言えばニュートラルですよ、ここでギアを前に入れたり後ろに入れたりしたら、世界はどっちにでも走ります。なかなかうまい表現だと私は思います。  ですから、日本外交を見ていると、アラブとイスラエルというのを今までバランスをとっていなかったのです。宇野総理大臣が一回だけ行ってくださったのです、外務大臣時代に。ですから、私はバランスをとること、これから日本というのはバランスをとっていかなきゃいけない。  そんなことを言っていると時間が来ますので、私は総理大臣に、ヨーロッパにはかつての国際連盟があるのですね、パレ・デ・ナシオンという。ニューヨークには国連ビルがあるのです。日本には何もないのですね。東京に国連大学ほか六つの国連機関があります。横浜に木材の国連の機関があります。それから名古屋に地域開発の国連機構があります。きょうは大阪の方にも国連機構をつくってもらおう、環境機構がやってくる。大阪は何もありませんから、花博の後に何とかひとつ国連機構を持ってこよう。それから滋賀県に湖沼のセンターができそうでございます。そんなことどうでもいいのですが、なぜ私が国連機構を引っ張ってこようとしているかというと、日本がつぶされないようにしなければいけないと思っているのです。日本は平和のメッカがあるのですね。これは広島です。私は総理大臣に、アジアの国連センター、それを広島に誘致したらどうですか、これは提案でございますが、もし総理が意欲があられたら、ひとつ国連を招致して、できたらもう国連の本部にしてもらってもいいと思うのですね。アジアは軽視されています。ヨーロッパとアメリカにだけあってアジアには国連機構というのは実に寂しいものしかありません。ぜひひとつその辺の夢ある御回答がいただけたらありがたいと思います。
  14. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 大変気宇広大な構想を述べていただきましたし、またその構想自身は、国連のセンターを日本に誘致したらどうか、特に広島ということにもお触れになりましたけれども、私も率直にそれは魅力を感ずるテーマでございます。今お触れになりましたように、国連大学とかあるいは名古屋の国連センターとか、いろいろなものがございます。そういった意味で、今後国連活動を中心にやっていこうとしておる日本でありますから、やはりできる限りのことはしていきたい、すべきだと私は考えますので、外務大臣にもよく指示をいたしまして、いろいろと検討をして、どのような道筋があるのか、どのような環境整備をしたらいいのか、どのようなことを考えていったらこういった目標に近づくことができるのだろうか、十分研究をさせていただきたい、こう思います。
  15. 中山正暉

    中山(正)委員 外務大臣、兄上、どうぞひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。  時間も迫ってまいりまして、言うことが多過ぎるものですから、実は時間調整に困っているのですが、郵政大臣にお願いしたいことは、私はさっき言いました、日本には情報ゼロの位置がない。これは、外国へ行くと突然日本がなくなったように思うのです。外国へ行ったら、アメリカなどへ行ったら、電話をかければすぐに家に電話が通じて、今日本で何をやっていると聞けるのですけれどもアメリカ人がさっきCNNでおまえのところの日の丸が出てこないじゃないかと言われる、それは、アメリカ人はどこのホテルへ行っても、全部テレビにCNNと書いてあって、どこのホテルでも契約しているというので、チャンネルを合わせたら全部CNNが出てくるのですね。コマーシャルも、どこを回しても同じ情報でおもしろくない。日本も今はそうなっています。同じ情報ばっかり。  この間たまたま安倍晋太郎外務大臣に顧問議員団で安保三十周年についていけと言われて、私いつも短波放送を持っていくのですが、いつも向こうへ行って聞こえないものですから、そのときはNHKの人に来てもらって、ボタンでディジタルでセットしてもらったのですが、向こうへ行って聞こえないのですね。これは聞こえないからというのでワシントンのNHKの人に来てもらってまたやり直してもらったのです。聞こえませんということなのです。聞いた場所がこっち側とこっち側とでまた違うでしょうから聞き場所がまずかったのかもしれませんが、とうとう聞けなかったのです。  それで私、党の方で、部会で言ったのです。こ れでは困るじゃないかと言っていたそれから一カ月もしないうちにこの中東紛争が起こったわけでございます。そこへ外務省が、イラクの放送時間を三時間から十一時間三十分にふやしてくれたということで感謝状を出されましたけれども、これは私は本当はおかしいと思うのです。これは命令放送なんですね。政府が命令を出して放送をしてもらうように依頼ができることになっておるのですが、考えてみれば、私は、映像の時代に映像を遮断される国がありますから短波が一番いいんだと思いますが、私は構想として、これは、NHKは九波ありますから、特に放送大学などという一波を国営放送みたいなもの、ドイツとイタリーは国営放送を持っておりまして情報のゼロの位置がある。特に国会改革の中で今度はアメリカのC—SPANみたいなものを使ってCATVでやろうかというのですけれども、CATVはまた加入してもらわなければなりません。入会金が要る。NHKの聴視料の上にまた金を払わなければならない。私は、一億二千万の人口のうちで十万人しか難視聴区域がないというような完備した日本のNHKの組織を、これは各省の設置法とかそれから放送法の改正とかいろいろな大きな問題が絡んでくると思いますが、これは郵政大臣、何と思われますでしょうか。
  16. 深谷隆司

    ○深谷国務大臣 世界情勢を確実に手に入れるという点では、世界から入ってくる情報というのはテレビ、ラジオを通じて非常に多いのであります。ところが、肝心の日本の考え方、日本の行動、さまざまな情報を世界に伝えるという点では非常におくれていることは御指摘のとおりでございます。  例えば国際テレビ放送などを見ますと、外国から入ってくるのに比べて我が国の発信というのは十八分の一でございます。その他のNHK等の放送等を比べましても同じような状態がございまして、これは、海外に向けての国際放送ないしはテレビ中継等は大いに拡大していかなければならないというふうに思っております。特に、現在ラジオ日本、NHKにやっていただいておるのですが、短波による放送は、南西アジアの一部を除いてはおおむね主要な地域に良好に伝わっております。たまたま先生と、この間外務大臣にも言われたのですが、兄弟から共通して言われたのですが、両方短波が聞けなかったというお小言をちょうだいしたのでありますが、全体的にはおおむね受信できるという報告になっております。スリランカに今度中継地点を設けますと、南西アジアの方もカバーできると思うのでありますが、ソ連であるとか東欧の方の発信についてはまだ問題がありますから、そういう意味では基地をさらにふやすなど、改良を加えていかなければならないと思っております。  それから、たまたまお話に出ました、外務省がNHKに感謝状を贈ったということ、必ずしも間違いではございませんで、国際放送は命令放送と自主放送と二通りございまして、命令放送としては、日本の政府からこういう放送をしてくれということでそれをやっていただくのは当然でありますが、このたびの中東に関しましては、自主放送も含めて三・五時間を十一時間という長きに及んでやってくれているというのは感謝に値するだろうと思っております。ただ問題は、そういうようなNHKの努力に対して、国が行っている交付金が一体適切であるかどうか、少な過ぎるのではないか、そういった議論もこれから非常に激しくやっていかなければなりませんので、国がもっともっと力を入れるということにウエートを置かなければならぬという点では、むしろ先生の御協力を仰ぎたいというふうに思っております。  なお、国営放送につきましては、一つの重要な御意見として承りまして、今後検討の課題にさせていただきたいと思っておりますが、世界の主要国を見ますと、必ずしも国営放送ではなしに、国が応援をしてやってもらっているというケースの方が多いようであります。これらの検討も含めまして、御意見を大切にして、我が国の情報が正確に世界に伝わるように一層努力したいと思っております。
  17. 中山正暉

    中山(正)委員 どうもありがとうございます。  大蔵省にはお知らせしてないので橋本大臣に御答弁いただくというのはいかがかと思いますので、今の話、ひとつお聞きいただいたと思いますが、NHKもいろいろ苦労しておるようでございます。いろいろ御縁も深いようでございますし、よろしくお願いを申し上げたいと思います。  情報というのは、出したから着いたと思っていたらこれは当て違いなんですね。情報というのは着信で考えなければいけないわけです。向こうへ行って聞いてみないと、こっちは出しているから向こうは聞いているだろうと思ったらこれは大当て違いです。  私はよく例に言うのですが、ミッドウェーの戦いというのはにせ電報にやられたのですね。ミッドウェーに水がないというにせ電報をアメリカは打った。日本上陸作戦をやるのに、水がないと言っておるぞという本当の電報を打ったんです。だから、よく戦記物を読んだら、向こうが雲の間から先に見つけたとかいいかげんなことを書いてありますが、あれはそうではございませんで、一本の電報で日本のミッドウェー上陸作戦が見破られて、うその電報に誘導されて、ミッドウェーは四隻の空母、ほとんど連合艦隊があれで壊滅いたしました。一本の電報で壊滅した。ところが、戦艦大和は二百キロ後ろにおりました。二百キロ後ろにいて、最新のアンテナをつけていたのですが、これはみんなが知っているだろうと思って、自分が聞いた情報を連合艦隊に知らせなかったのです。まあ戦争に敗れるときというのはそんなものでしょう。それが、ミッドウェーの情報が間違って、情報操作によってやられたという例でございます。これからの日本は、ウサギの耳はなぜ長い、ウサギの後ろ足はなぜ長い、これは情報を早くとって逃げ足を速くすることが、私は、日本のこれからの立場じゃないかという感じがいたします。  そこで実は、総理大臣、これは国力の方程式だそうです。国力の方程式。——難しい。やってみたら、後ろをあげたらこれは簡単なんだ。パシーブドパワーというのは国力量です。それから、Cというのはクリティカルマス、基本要素、人口と領土。それから、Eはエコノミックケーパビリティー、経済力。それから、これはミリタリーケーパビリティー、軍事力です。それから、これはストラテジックパーパス、戦略目標。それから、これはウイル・ツー・パシュー・ナショナル・ストラテジー、国家戦略を継続する意思。これが国力だという。これはアメリカの学者のクレインさんという方が考えた国力です。  この国力量を考えてみると、クリティカルマスという人口と領土、これは、人口は一家に一・四七人、大阪市で一・四七人でございますから、一軒の家に二人子供おりません。それから子供を生まない人がいますから、人口はどんどん激減していきます。それで、防衛庁に入ってくれる方がなかなか少ない。五、六人かかって、それから地方連絡部が一生懸命に募集していても、一月に五人入れられたらいい方だ。それも野党の方々のお話を聞いていると、自衛隊がすごく強烈な軍隊のように聞こえますけれども、私はそうだろうかという気がするのです。よく遠いところまで行って、自分の中学生とか高校生なんか連れてきて、それで眼鏡が合いませんと言ったら眼鏡をかえてやる、歯が悪いと言ったら歯をかえてやる、結局は入らないと言って帰ってしまう。「歯を治し眼鏡を直し辞退され」というのが、今自衛隊ではやっているざれ歌だという話を聞きます。ですから、それはちゃんと考えなければいけない。そういう人口と領土。それから、経済力は大きいです。軍事力は今申し上げたとおり。それから、国家目標があるのか、それを継続する意思は何かといえば、ここで今やっている国連協力法で日本協力をして、世界のためにどういう対処をするかというのがある。私は、この総合国力の最後、戦略と、国連協力するという大目標と、それからそれをずっと続けていくという意思を掛けたら日本 というのは安全だと思っております。  時間が来ましたが、時間が足りないのが本当に残念でございますが、またやらせていただくようにお願いをいたしまして、以上で、大変勝手なことを言いましたが、私の質問を終わらせていただきます。最後に答弁が……。
  18. 中山太郎

    中山国務大臣 今委員からお話のありました何点かの中で、私が海外へ出ますと必ず在留邦人に聞くことは、日本のいわゆるラジオ日本がどの程度聞こえるかということを、どの地域に行っても在留邦人の方に伺うことにいたしております。それはどういうことかといいますと、今度のイラク・クウェート戦争で、あの地域におられる在留邦人の方々に的確な日本からの情報をどう伝えるかということは一番大きな問題でございました。それで、各個人のメッセージも送れるようにNHKにお願いをして、実は今お話のあったように三時間半から十一時間半に延ばしていただいて、アラビア語と日本語で放送していただいているのが今日の姿でございますが、これから日本世界各国で企業が進出し、日本の国内におられる方々が外国で生活される。また旅行者が一千万を超えるという事態になりますと、多極化が進んで地域紛争に巻き込まれる日本の方々が世界各地で出てくる可能性が実はあるわけでございまして、日本からの放送の発信パワーというもの、現在世界では第二十位であります。経済力はいわゆるアメリカに次ぐぐらいの大きな経済力、GNPを持つようになりましたが、実は情報発信量は世界で二十位。特にこれから日ソの関係が、友好が促進されて協力していくという中で、やはりソ連圏、東欧圏にも日本の文化が、あるいは情報が伝わるようなことも考えていくとすれば、これから日本の国営放送というものを、あるいはNHKを支援して日本の正しい情報を流すことに努力をしなければならないと考えております。  なお、国家の総合力につきましては、我々の国家の理想というものを世界に認識させるような努力をしなければなりませんし、我々はこの国連憲章というものを、まあきょうお話に出ませんでしたが、日米安保条約の第一条には——国連憲章の理想が達成されるような国際環境ができたときには日米安保条約はこれを廃棄するということが、実はこの安保条約締結後十年間にそれが実施できるように規定されておったわけであります。今日、規定はされておりませんけれどももうその十年間は終わりましたから、最近では、各国から、双方から一年前に通告をすると廃棄することができるように条文は書かれていますけれども、この日米安保条約の理想も実は国連憲章の大目的、大理想が実現されることを第一条にうたっていることを考えますと、この国際連合に協力する法律あるいは国家の考え方というものはいかに大切なものかということを私は痛感をいたしております。
  19. 中山正暉

    中山(正)委員 この法案の一日も早く成立いたしますように祈念して、質問を終わります。
  20. 加藤紘一

    加藤委員長 これにて中山正暉君の質疑は終了いたしました。  次に、和田静夫君。
  21. 和田静夫

    和田(静)委員 昨日の本委員会で自由民主党の国際局長でもある愛知和男君が、国連平和協力法に対するアジア諸国の懸念の表明について発言をされ、マスコミもこれを取り上げているところでありますが、自由民主党の国際局長からこういうような発言が行われるのは、国会における発言はいかに自由だといってみても、事の内容によるものでありますから見逃すわけにはまいりません。これはさきの法務大臣の差別発言に対する政府・自由民主党の厳格な反省がなされていない証左だと思われるのでありますが、首相の見解を承っておきます。
  22. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 この問題につきましては、愛知議員がどのような判断をして質問の中で言われたのか、愛知議員の全くの個人的なお考えであろうと思いますけれども、その後詳しく事情等も聞いておりませんから、私からもよく真意を尋ねてみます。
  23. 和田静夫

    和田(静)委員 私は、中曽根さんの発言にしろ渡辺さんの発言にしろ梶山法務大臣の発言にしろ、あるいは昨日の愛知さんの発言にしろ、どうもかつての加害国が被害国に対する謙虚さを忘れている、経済大国という、知らず知らずのうちに内的に蓄積している他国に対する侮べつ感とでもいいますか、他国に対するそういう本音の発言が自然に出てきている、そういう感じがしてならないのであります。したがって、自由民主党の総裁でもあります海部総理の見解をこの機会にやはり明らかにしておいてもらう方がよいと思いますが。
  24. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私はかねて申し上げておりますように、歴史の反省に立って二度と侵略戦争はしない、軍事大国にならないという誓いを立ててやってきておりますということを何度も申し上げてまいりましたし、同時にこの法案に関しましても、日本が昔のように国権の発動で、自分の国の恣意で近隣諸国に対して武力で侵略行為を行うように出ていくというものでは決してないわけであって、これは国連の安保理の決議を受けて行うもので、その安保理というところには、むしろ日本はまだ入っておらず、中国も入ってらっしゃる、アジアの代表も二カ国ずつ、時々選挙でかわりますけれども入っておって、国連の場で決められる問題、平和の破壊に対して日本はどの程度の協力ができるのだろうか。それは憲法のきょうまでの理念も守って、武力の行使は伴わないものという厳重な大前提をつけてやっておるところでありますし、同時に、これからの新しい世界というのは、平和を皆求めているわけでありますから、力で平和を破壊する行為、国際社会の大義に反する行為は皆でやめさせようということは皆の共通の利益であって、こういったことがいいことだとはだれも思っておらないわけでありますから、そういうこちらの立場、態度というものを十分御説明をしたらアジアの国々にも御理解がいただけるものと思う、十分そこはわかっていただくようにしていきたいということを私は再三申し上げておるわけでありまして、政府の今の考え方というのはそれでございます。
  25. 和田静夫

    和田(静)委員 昨日、自衛隊の部隊の指揮は一切とらない、三回ぐらい確認をいたしましたが、この百条の六との関係で防衛庁長官の指揮も一切ない、こう認識しておいてよいですか。
  26. 藤井一夫

    ○藤井(一)政府委員 昨日のお尋ねは、幕僚長の指揮はあるかというお話でございました。これに対しましては再三、私、幕僚長というのは指揮はしないというお答えを申し上げました。これはもともと幕僚長というものには指揮権、指揮監督権がございませんで、指揮監督権は、これは内閣総理大臣防衛庁長官が持っておるという関係からの御答弁でございました。  それで、それでは防衛庁長官の指揮監督権があるかという御質問だと思いますけれども、制度的には平和協力隊が行う平和協力業務に参加する自衛隊の部隊等は防衛庁長官の指揮監督下にはございます。
  27. 和田静夫

    和田(静)委員 今答弁がありましたように防衛庁長官のもとに指揮権がある。そうすると、指揮は一元化をしているのだという今までの御説というのは明確に答弁としては食い違っているわけですよ。私は昨日そういう意味で申し上げておったつもりですが、それは防衛庁長官、はっきりしてくださいよ。
  28. 石川要三

    ○石川国務大臣 今防衛局長から説明した内容に尽きるわけでありますが、ただ自衛隊がいわゆる国連平和協力隊ということに参加し、そして隊員ということになって仕事するわけでありますから、そういう中においては要するにその本部長たる指揮のもとにその作業が行われる、こういうことでありまして、強いて言えば、私は、潜在的にといいますか、そういう意味では今局長からの答弁のように私は理解しておりますけれども、しかしそれが一たび平和協力隊の隊員としての立場でその任務を遂行するというそういう中においては、一つの組織の中におきましての本部長の指揮下に入る、こういうふうに理解をしているわけであります。
  29. 加藤紘一

    加藤委員長 答弁は終わっていますから、質問 の方をやってください。委員、質疑を続けてください。
  30. 和田静夫

    和田(静)委員 総理が待ってくれと言っているから待っているわけで、協議をされているわけでしょう。
  31. 加藤紘一

    加藤委員長 委員長のところでは質疑が、政府側の答弁は終わって——じゃ、質疑を続けてください。
  32. 和田静夫

    和田(静)委員 防衛庁長官は、潜在的な指揮権があります、こう答弁をされたのですから、今まで本委員会で、本部長である総理のもとに指揮権は一本なのですと言い続けてこられたのですから、明確に違っているじゃありませんかということです。
  33. 加藤紘一

    加藤委員長 そういう質問がありましたから、政府側、答弁してください。だれからやりますか。  防衛庁官房長。
  34. 日吉章

    ○日吉政府委員 法律解釈の問題にかかわりますので、私の方からお答えをさせていただきます。  自衛隊が平和協力業務に従事いたします場合には、自衛隊の行います平和協力業務は本部長の指揮のもとにすべて一元的に行われることとなっております。ただいま委員からお尋ねがございましたように、自衛隊法第百条の六の規定によりまして平和協力隊が行います平和協力業務に参加する自衛隊員は、この法律の第二十二条第四項の規定によりまして平和協力業務に従事し、本部長たる内閣総理大臣の指揮監督に服することとなっております。また、同法案の第二条第三項の規定をごらんいただきますと、内閣総理大臣は、平和協力業務の実施に当たり、内閣を代表して行政各部を指揮監督することとなっております。したがいまして、指揮権の一元化が図られているもの、かように考えております。
  35. 石川要三

    ○石川国務大臣 今官房長が法的な立場を明確に説明いたしました。私長官といたしましても、今官房長が言ったようなそういう認識で、この協力隊の中におきましての指揮系統はまことに一本化しているというふうに認識をしているわけでございますので、御理解をいただきたいと思います。
  36. 和田静夫

    和田(静)委員 それじゃ、潜在的な指揮権があると先ほど答弁されたのでありますが、防衛庁長官はどういう範囲内における指揮権をお持ちになっているのですか。
  37. 日吉章

    ○日吉政府委員 防衛庁長官は、本法案の、百条の六という新しい規定に基づきまして、自衛隊員に対しまして協力隊の任務を行うようにというふうな指示をするわけでございます。したがいまして、協力隊員といたしまして任務を果たすことそのものが自衛隊員としての任務も果たすということになります。そういうことになりますと、協力隊員といたしましては、先ほど私が二十二条の四項で読みましたように、本部長たる内閣総理大臣の指揮に従う、こういうことでございます。
  38. 和田静夫

    和田(静)委員 防衛庁長官、潜在的指揮権の範囲をあなたから。
  39. 石川要三

    ○石川国務大臣 私は、これ以上私の方から説明は要しないと思いますが、要するに、部隊としてあるいはまた隊員としても、この新しい国連平和協力法というものが成立をして、その中でその与えられた任務を要請された場合には、当然今官房長から言うような指揮命令のもとにこの作業に従事する、このような認識を持っているわけであります。
  40. 和田静夫

    和田(静)委員 説明を要しないと言われたところで、あなたの発言がもとになって疑義が生じているのですから説明してもらわぬと困るわけですが、ここだけにあれしているわけに……。  ちょっと進みますが、そうすると、協力隊の部隊の現場での指揮ですが、これは一体だれがとるわけですか。
  41. 石川要三

    ○石川国務大臣 もちろん、その場合には本部長が指揮をとる、現場におきましては当然その現場の責任者といいますか、そういう方が指揮をされる、こういうふうに思います。
  42. 和田静夫

    和田(静)委員 そうすると、協力隊に参加した自衛隊の部隊員の指揮官というのは、自衛官であるのですか、ないのですか。
  43. 日吉章

    ○日吉政府委員 先般来お答えいたしておりますように、協力隊に参加いたします自衛隊員は、自衛隊の身分もあわせ持ちますので、自衛官でございます。その場合には、それぞれ現場の上司の指揮を仰ぐということになりますが、その現場の上司は本部長たる内閣総理大臣の指示を受けている、こういうことでございます。
  44. 和田静夫

    和田(静)委員 それでは、少なくとも補給艦など自衛隊独自の装備については、自衛官が指揮するのでしょう。だとすれば、この指揮官は当然幕僚長の指揮下にあるのじゃないのですか。
  45. 日吉章

    ○日吉政府委員 若干技術的になりまして恐縮でございますが、幕僚長は一種の指揮命令系統のラインに入っているという性格ではございませんで、防衛局長からもお答えいたしましたように、幕僚長は隊員に対します監督権は持っておりますけれども、指揮権は持っておりません。これは、協力隊に入りましたからそうだということではありませんで、そもそも自衛隊法上の組織上、そういうふうな形になってございます。
  46. 和田静夫

    和田(静)委員 それじゃ、私が百条の六との関係で答弁を求めて少し混乱があったのですが、協力隊に参加するように指揮をとる、これは官房長答弁ですが、長官、そうすると参加後にも長官の指揮権というのは残るの、残らないの、これ。どうなの、長官。
  47. 日吉章

    ○日吉政府委員 お答え申し上げます。  完全に一元化されているわけでございます。表裏一体となって一元化されているわけでございます。
  48. 和田静夫

    和田(静)委員 そういうようなことを官房長がここで答弁をされておったって、とても了承できるものじゃありません。ここのところは、少し私の質問のやりとりは保留をしておきます、ちょっと時間の関係がありますから。  そこで、きのうの答弁の中で、情勢が変化すれば実施計画を変更することもある、こういうふうに言われる。計画変更が間に合わないケースというのは、恐らくこれは想定できますね。たくさんできる。緊急の場合、実施計画に定められた方針に反して現場の判断で攻撃から逃避する場合があると、これは外務大臣、明確に答弁されている。この判断は一体だれがするのか。個々のいわゆる協力隊員であるのか、現場の指揮官なのか。ここのところはどうなるのですかね。
  49. 中山太郎

    中山国務大臣 現場の指揮官であろうと思います。指揮官といいますか、指揮者であろうと思います。
  50. 和田静夫

    和田(静)委員 そうすると、実施計画にかかわらず、現場の指揮者が現地の状況によって何でもする可能性というものは、実施計画の協力隊の行動の、何といいますか歯どめというようなものにならないですね、今の答弁を総合すると。どうですか。
  51. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 お答えを申し上げます。  実施計画におきましては、大筋の規則あるいは計画の概要を決めるわけでございますが、仰せのとおり、現場におきましてその場での判断を要することという場合が、現実の問題としてはあるだろうと思います。したがいまして、今後この法案が成立いたしまして、協力隊の派遣を行うという場合に備えまして、現場での判断の指針というようなものをつくっていく必要があるというふうに考えております。
  52. 和田静夫

    和田(静)委員 今の現場での判断の指針というのは、どういうことを考えていらっしゃるのか。
  53. 中山太郎

    中山国務大臣 その地域のいわゆる環境、あらゆるケースが考えられると思います、率直に申し上げて。だから、この条文にも書いてございますように、現地にあります我が方の在外公館、これらと絶えず密接な連絡をとりながらこの派遣も決めていくわけでございますし、実施計画に皆決めたものを会議にかけて、さらには閣議で決定して出すということになっておりますが、現場でどういう環境が生まれてくるかということにつきましては、あくまでも、もしその隊員の生命、安全に危険が生じようとしたような場合には、そこにおります現場の指揮者は直ちにこの隊員の生命の安 全を守るための指揮をとる責任があるし、義務もあると私は考えております。
  54. 和田静夫

    和田(静)委員 指針をつくられるというのはどんなことかという質問の趣旨からいえば答弁は正確ではありませんが、実施計画に反して現場の判断で自衛隊の部隊などが武力行使を行った場合、これはどういうふうに対処されますかね。暴走を防止するための強制力というようなものはございますか。
  55. 中山太郎

    中山国務大臣 本法の第二条第二項に示しておりますように、武力の威嚇または武力の行使は行わないということが原則でございますから、そのようにひとつ御理解をいただきたいと思います。
  56. 和田静夫

    和田(静)委員 我が方の考え方というのはよくわかっているわけですが、しかし相手側から見ればそういうふうにはならないわけでありまして、したがって私が想定をするような問題が起こる可能性というのは十分にあると思うのですよ。その場合の指揮上の抑止力とでもいいますか、歯どめとでもいいますか、そういうものはございますかと聞いているわけです。
  57. 中山太郎

    中山国務大臣 当然、そこに派遣をされた平和協力隊は、その地域の国際環境、そういうものはもうとにかく寸時も惜しまずこれを収集して、指揮者はそれに対して対応するだけの準備を怠ってはならない。その突然な変化に対応して決断をし、指揮をするのが指揮者の責任でございますから、私はそのような意味で、こちらの方から攻撃はもちろんするはずもありませんし、してはならないわけでありますから、その隊員の生命が危険にさらされるというような情報が集まった場合には、指揮者の責任においてその地域から離脱をすることが極めて本法の趣旨に沿うものであると考えております。
  58. 和田静夫

    和田(静)委員 法制局長官、一問だけですが、これまでの政府の見解によりますと、国連軍であっても、目的・任務が武力行使を伴うものであれば、自衛隊がこれに参加することは憲法上許されないということです。で、国連軍でさえだめなことが、明らかに武力行使目的とするとなっているのに、明らかに武力行使目的とするところの多国籍軍の後方支援に参加することは、これは憲法上許されないというのは、もう非常に簡明な論理じゃありませんでしょうかね。
  59. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答え申し上げます。  昨日もお答え申し上げたところでございますが、昭和五十五年の政府の答弁書におきまして述べておりますのは、いわゆる国連軍に対して、これがその任務・目的武力行使を伴うもの、これはそれに対する参加が許されない、かように申し上げましたし、また、その任務・目的武力行使を伴わないものであれば憲法上これは許される、これが昭和五十五年の答弁書でございます。昨日も申し上げたところでございますが、いわゆる国連軍のみならず、そのよって来るところが憲法九条との関係でございます。そういう意味で、多国籍軍が武力行使をその任務・目的に伴うものであれば、それに参加することは許されない。ただし、それがいわゆるその指揮下に入り、あるいはその一員となるという形でない協力という形であれば、これは許されないわけではない。ただ、昨日もそれにつけて申し上げましたけれども、それとその相手方といいますか、指揮下に入り、その一員となるようなものが行う武力の行使と一体となるようなものは許されない、かように昨日も申し上げたところでございます。そのように繰り返す次第でございます。
  60. 和田静夫

    和田(静)委員 我が国の今度の防衛白書第一章第一節によりますと、「整備・補給・輸送・衛生などの後方支援は、作戦実施のための基盤であり、戦闘部隊がその機能を十分に発揮できる態勢を維持することが必要である。」これは後方支援についての防衛白書の一節であります。そうすると、こういう多国籍軍、これがその他の活動に含まれているということは、この協力法自身はやはり憲法違反だというふうに考えざるを得ませんね。いかがですか、法制局長官。
  61. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 防衛白書の記述につきまして、ただいま私、手元に資料を持ち合わせておりませんので、防衛白書の記述についてのお答えは差し控えさせていただきますが、昨日も申し上げましたように、補給一般がすべて例えばそういうものに対する参加になるとか、そういうことではございませんで、そういうものが行う武力行使と一体になるようなもの、これを問題にしているわけでございまして、それ以外にいろいろと形はございますが、一般に協力と言えばそういうものは許されるであろう、かようなことでございます。
  62. 和田静夫

    和田(静)委員 武力行使と一体にならないものは何であるかと非常に疑問があるわけですが、時間が残ればそこのところは後ほどやります。  昨日来お待たせしましたが、自治大臣、消防士や警察官について派遣が要請されたときには、地方公務員であるところの彼らをそれぞれ国家公務員であるところの消防庁及び警察庁の職員にかえて派遣する、そういうふうに協力隊に協力をされるということですか。
  63. 奥田敬和

    奥田国務大臣 そのとおりでございます。派遣要請があればそういう形で、国家公務員、自治省消防庁職員、警察の場合には警察庁職員ということで身分をかえます。
  64. 和田静夫

    和田(静)委員 そうすると、一般地方公務員の場合はどういうふうに取り扱われるのですか。
  65. 奥田敬和

    奥田国務大臣 例えば、恐らく想定されていることは選挙管理関係とか、そういった形のときには地方公務員をやめます。そして、協力隊という国家公務員の資格でやっていただくように、一たんやめていただきます。
  66. 和田静夫

    和田(静)委員 答弁を受けとめておきます。  労働大臣、例えば雇用促進事業団の職員など政府関係諸機関の職員の派遣、これは当然起こり得ると考えているのですが、そういうふうにお考えになっているのですか。
  67. 塚原俊平

    ○塚原国務大臣 雇用促進事業団等特殊法人の職員が平和協力隊員となる場合は、国際連合平和協力法第二十条に基づく「関係行政機関の職員の平和協力隊への派遣」によるものでなく、同法第十九条に基づき、民間の団体の職員として、内閣総理大臣が志望者のうちから選考により採用することとなっております。この場合、その者は国家公務員となるものであります。  なお、事業団の職員の中に平和協力隊参加を志望する者がいる場合の事業団における身分の取り扱いについては、具体事例が発生したところで、職員就業規則に基づき、同事業団においてその取り扱いについて検討するものと考えております。
  68. 和田静夫

    和田(静)委員 防衛庁長官、ちょっとあなたにお聞きしたいのは、あなたは地方自治体のすぐれた長であったことを私は知っています。不幸にして、幾つかの論戦をあなたとここでやらなければならぬ。あなたは余りにも黙っているものだからいろいろなことを申し上げましたが、ただでさえ職員の人員不足が言われているのですよね。特に消防などの場合よくおわかりでしょう。そうすると、自治体の現状として、自治大臣が御答弁になったような形に簡単にできるとお思いになりますか。
  69. 石川要三

    ○石川国務大臣 私もかつて小さい町の市長をしたことがございますけれども、今は防衛庁長官という立場でございますので、今の御質問に対して私の個人的な感想だけを述べることは、かえって私は控えるべきではなかろうかな、かように思いますので、御勘弁をいただきたいと思います。
  70. 和田静夫

    和田(静)委員 この協力隊の会議、機構の中の主要な一員であるあなたでありますから、あえて質問したのですがね。  国連のこの平和維持活動というのは、ほとんどが長期間にわたると思うのですね、もちろん短期なものもありますが。それから、複数の活動が同時に進行するのが私は現状だろうと思うのです。北欧の待機軍にしても一定期間ごとに交代で派遣をされる。政府は、派遣が長期化することを当然考慮されていろいろとお考えになっているのだろうと思うのですが、現状でも警察や消防は要員が余っているわけではない。政府のこだわっている自衛隊にしても、防衛庁は、最小限の侵略に対す る基盤的防衛力であると我々に口を酸っぱく説明をしてきたわけですね。そうすると、長期間人員や船舶、飛行機などを協力隊に派遣すれば、これは本当に持っておるところの日本の防衛に障害が出るのではないだろうか。それを、自衛隊というのはそれほど人員やあるいは装備が余っているのだろうか。そうならば、今後防衛費や組織の縮小も十分可能だということになるのですが、ここのところは防衛庁長官、明らかにしてください。
  71. 藤井一夫

    ○藤井(一)政府委員 今度新設されます百条の六のところには「長官は、国際連合平和協力本部長から国際連合平和協力法第二十二条第一項の規定による要請があった場合には、自衛隊の任務遂行に支障の生じない限度において」これに参加をすることができると、あくまでも自衛隊の任務遂行に支障の生じない限度ということの範囲でございます。
  72. 和田静夫

    和田(静)委員 無理してそういうふうに言われてみたところで、現実に起こることを想定すると、そういう答弁は受けとめることはできませんが、一度この協力隊が海外に派遣されれば、国内の方で人手不足になったので帰りますとは言えないですよね、自治大臣。警察や消防がそれほど余裕のある勤務体制であるとは、私たち決して思えませんね。そうすると、欠けているところの定数の確保というものについては、どういうふうに確保していかれるつもりでいらっしゃいますか。
  73. 奥田敬和

    奥田国務大臣 それはこれからの想定の問題ですけれども、派遣人員の規模等にも関係することは当然ですけれども、今言われたように、長期間ということになれば実質的には実員減という形が生ずるわけですから、さきに委員指摘なさったように、今日の治安を預かっている警察あるいは消防にしましても、余裕人員がうんとあるという状態ではございません。しかしながら、本法の趣旨に照らして、そういった要請があったときには、各自治体も含めまして必ず協力していただけると期待しておりますし、現に、内容は違いますけれども、国際緊急援助隊等々の形につきましては、特にこれは東京、神奈川、大阪という形でしか指定してありませんけれども、希望するあるいは志願される登録隊員、こういった形も、今のところ警察、消防庁とも五百名程度でございますけれども、規模を限って進んで登録に応じていただいておるという現状でございますから、長期にわたった場合の実員減については、これからの検討課題として慎重に研究させていただきます。
  74. 和田静夫

    和田(静)委員 同じ質問で厚生大臣、文部大臣。それぞれ国立の医療機関やあるいは大学の医療機関や、お医者さんばかりじゃない、すべての看護婦さんを含んで同じことが起こり得るんですね。それぞれ答弁いただきたい。
  75. 津島雄二

    ○津島国務大臣 委員御承知のとおり、私どもは先遣隊を派遣するという仕事を担当いたしまして、既にこの種の業務に参加する方の選任という経験を持ったわけでありますけれども、今度の法律では、業務に支障を来さない範囲内で協力をということでございまして、私どもは、当面の医療サービスについての御協力は極力今の体制の中でやっていかなければならないし、やっていきたい、こういうふうに思っております。ただ、長期にわたり、規模がかなり大きくなる場合については、自治大臣から御答弁ございましたように、やはり今後検討しなければならない問題が出てくるだろう、こういうふうに思っております。
  76. 保利耕輔

    ○保利国務大臣 ただいま厚生大臣から御答弁のありましたのとほぼ同じでございますが、私どもは、大学の病院の先生、派遣をしていただく皆さんにつきましては、業務に支障のない範囲でということと、それから期間を定めてということでございますから、その中でできる範囲で御協力をいただくという趣旨で御推薦をいただき、そして派遣をするということになります。ただ、長期間になりましたり、あるいは要員増が必要であるというような場合は、別にやはり対策を講じていかなければならない問題かな、このように考えております。
  77. 和田静夫

    和田(静)委員 ちょっと運輸大臣に違った角度からも少し聞かしてもらいますが、海上保安庁の場合、この平和協力業務のうちどういうような業務を受け持つことになるのだろうか。それから、例えば経済制裁のための公海上における臨検に参加するというようなことが保安庁の場合にありますか。多国籍軍のように海軍力が展開しているところに出ていけば、海上保安庁の船といえども軍艦と間違われて攻撃目標となる可能性が非常に大きいわけですね。紛争状態になる前にその領域から外へ出るように何らかの措置をとられますか。
  78. 丹羽晟

    ○丹羽政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のまず第一点の海上保安庁の平和協力隊に参加するやり方でございますが、国連平和協力法案の第二十一条という規定がございますが、それは「海上保安庁の参加」ということでございますが、中を省略しながら読みますと、「平和協力隊が行う平和協力業務のうち海上保安庁の船舶によって行うことが適当なものとして政令で定めるものを実施するため」ということで、この政令では、紛争によって被害を受けた住民その他の者の救援に係る海難救助、こういうことを規定することを今考えております。  したがいまして、第二点にかかわる問題でございますが、臨検に立ち会う、そのようなことは考えておりません。  それから第三点の御質問のことでございますけれども、これは、この法律規定に従いまして本部長の方からいろいろ御要請をいただく前に、実施計画でどのような海域にどのような派遣をするかということが決まるわけでございますが、当然そういう武力の行使などが予想される海域ということではない前提で考えておりますものですから、私どもに対する攻撃というようなことは特に考えておりません。
  79. 大野明

    ○大野国務大臣 ただいま長官から答弁いたしましたように、いずれにいたしましても海上保安庁に参加要請というようなことがありましたときには、まず平和協力会議への諮問であるとか閣議の決定とか、その際には、いずれにしても武力による威嚇、行使、こういうのはない海域へ派遣するということの上で要請があることになっておりますので、長官申し上げましたように、平和協力業務に参加しておる海上保安庁に攻撃をしてくることはあり得ないと考えております。
  80. 和田静夫

    和田(静)委員 この海上保安庁に関する問題については、私の後、専門家である左近議員から質問を展開しますので、この程度にしておきます。  そこで、公務員一般は、憲法九十九条に基づく、御存じのとおり宣誓に署名捺印をして採用されています。海外派兵される自衛隊と行動をともにするということはもう初めから念頭にないわけであります。そういう予定してない状態になるわけでありますから、職員の意思に反して派遣をすることはあり得ないというのは当然だろうと思うのですが、ここのところは自治大臣いかがですか。
  81. 奥田敬和

    奥田国務大臣 そのとおりで、本人の同意を前提といたしておりますので、そのとおりでございます。
  82. 和田静夫

    和田(静)委員 その場合に、地方公務員やあるいは政府関係職員個々はもちろんのことでありますが、その職員団体、あるいは労働組合がつくれるところでは労働組合でありますが、そことの協議、交渉、それを経ずして派遣行為が命令されることは決してない、今の御答弁はそういうふうにも受けとめておいてよろしいでしょうか。
  83. 奥田敬和

    奥田国務大臣 当然、自治体との協議を経て本人同意という形ですから、今委員の言われたような形の手続は必要だと思っております。
  84. 和田静夫

    和田(静)委員 労働大臣、いいですね、今のところ。
  85. 塚原俊平

    ○塚原国務大臣 労働省職員の派遣に関しましては、派遣の内容等を十分検討させていただきまして決定をすることになると思いますが、何分にも大変にぎりぎりの人数でやっているものでございますから、業務に支障のないような形でいたしてまいりたいというふうに考えております。
  86. 和田静夫

    和田(静)委員 答弁の趣旨が違いますけれども、さきの自治大臣の答弁を政府代表の答弁とし てしっかり受けとめておきます。  そこで総理、昨日もちょっと質問があったところでありますが、民間からも人材の確保に努めるということなんですね。そうすると、どういうようにして人材を確保するのかというのはやはり一つ問題になります。もう一つ非常に気になるのは、行政指導であるとか許認可権とのかかわりで、協力をしなかった民間団体が不利な取り扱いを受けることはない、これは当然ないと思いますが、これは総理、はっきりしておいていただきたいと思います。
  87. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 この協力業務というのは、私の理想を言えば、すべていろいろな立場の人々みんなに協力をしてもらうというのが理想でありますから、広く呼びかけて協力を求めよう、こう思っております。それから、それによって民間の人が不利になるとか、これは、徴用とか徴兵とか、そんなものとは全く違う、全く別の考え方でございますので、そういったことは万々起こらないものであります。あくまで協力を要請するわけでございますから。
  88. 和田静夫

    和田(静)委員 昨日高沢質問にあったところでありますが、自衛隊員が派遣の命令に従わなかったときに懲戒処分になるということでありますが、そもそも現在の自衛官の採用に当たっては平和協力隊への派遣という任務はなかったはずであります。そうすると、採用した際になかった任務をつけ加えておいて、それを拒否したというときに処分をする、これはもう法制局長官、契約の違反ではありませんか。
  89. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 国家公務員の採用につきましては、確かに契約説という説が学説としてないわけではございませんけれども、私ども、従来からそういう契約説というものはとっておりませんで、いわゆる特別の権力関係、この言い方がまた適当かどうかはわかりませんが、そういう関係に立つものと考えておりまして、そういう国家公務員として国家との雇用関係に入ったという前提ですべて考えられますので、そういう意味で契約違反というふうなことは私どもの方は考えておりません。
  90. 和田静夫

    和田(静)委員 特別権力関係などの論議はきょうやっている時間がありませんからあれですが、自衛隊法の個々の条項について、長官、協力隊に派遣される自衛隊員に適用されるものを条目別にちょっと簡単に列挙してもらいたいのですがね。
  91. 石川要三

    ○石川国務大臣 政府委員の方から答弁させます。
  92. 村田直昭

    ○村田政府委員 今ちょっと先生の御質問をよく聞いておらなかったのですが、適用される身分に関する条項ということでございますか。
  93. 和田静夫

    和田(静)委員 自衛隊法上の条項。
  94. 村田直昭

    ○村田政府委員 自衛隊法に関して申し上げますと、自衛隊法上身分に関する条項は、それぞれ第五章、隊員と……
  95. 和田静夫

    和田(静)委員 身分だけじゃありませんよ。いわゆる協力隊に行った場合に自衛隊法の条目で適用されるものです。
  96. 村田直昭

    ○村田政府委員 これにつきましては、一般論として申し上げますと、このたびの国連平和協力隊に派遣されます自衛隊員は、自衛隊員の身分と平和協力隊員の身分をあわせ有するということが国連平和協力法によって規定されておりまして、したがいまして、自衛隊法並びに国家公務員法が全面的に適用になるということでございます。
  97. 和田静夫

    和田(静)委員 全面的に適用になるということが明らかになりましたから、これは後ほどに論議を残します。  そこで、今回のイラク問題でのように国連が次々と決議を出しているのは、決議六百六十の実効性を確保する手段を決議で明らかにするためでしょう。例えば決議六百六十一というのは、イラクが決議六百六十を受け入れてクウェートから撤退しない、それで六百六十の決議を受け入れさせるために、実効性を確保するための措置として経済制裁を決議した。ところが多国籍軍は、実効性を確保するための措置として決議する前にペルシャ湾岸に展開をしている。これでは、ブッシュ大統領も言っていますように、この行動はサウジが母国を守るのを助けるためのものとしか考えようがありませんね。それを、政府のように、さも国連のとった措置ででもあるかのように主張されるのは、これはもう国連中心どころか、国連をないがしろにする行為だろうと私は思いますよ。いかがでしょう。
  98. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 国連安保理決議六六〇が採択をされましたのが八月の二日でございまして、それから六六一が採択されましたのが八月の六日でございます。それで、いわゆる多国籍軍が展開をしてまいりましたのはそれ以降ということでございます。
  99. 和田静夫

    和田(静)委員 昭和三十八年三月四日の参議院予算委員会における林修三法制局長官、ちょっと前段を省きますが、「いわゆる国連における活動として、国連が、国連の組織として国連警察軍を作る、あるいは国連軍を作る、その場合にもまたいろいろな態様などがあることは御承知だと思いますが、その場合に、それぞれの国が主権を存しつつ部隊を派遣する国連軍もございますし、それぞれの国が人員を供出して、国連そのもののもとに一つの総合的な軍隊を作る場合もございます。それによってまた場合も違って参ります。主権を存しつつ派遣をする場合は、いろいろ問題があるわけでございます。」いわゆる主権を存しつつ派遣する場合、すなわち指揮権を総理が持っていて、派遣される平和協力隊はこういうような場合に入るわけですが、それは問題がある、こういうふうに言っているわけですね。これは総理の見解、本部長になられるのですが、ここを明らかにしておいてもらいたいのです。
  100. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 過去の法制局長官の答弁を引用されての御質問でございますので、私の方から先に一言申し上げます。  林元法制局長官あるいは高辻元法制局長官が何度かそのような観点から御答弁申し上げておりますが、その場合に前提としておりますのは、いわば理想的な国際社会におきます国連軍というふうなことでございまして、先日から私が申し上げておりますいわゆる国連憲章の第七章に基づきます国連軍、それよりもさらにもう一歩先の理想的な社会、こういうふうなものを描かれての答弁であると記憶しております。そういう意味におきまして、それよりもう一歩手前のいわゆる国連憲章第七章に基づきます正規の国連軍、これにつきましての答弁は先日から申し上げているところでございまして、要するに四十三条の特別協定のようなもの、こういうふうなものが明らかになりました段階でそういう判断がなされるべきもの、かように考えております。
  101. 和田静夫

    和田(静)委員 先ほどの武力行使と一体をなさないものなんですが、これは具体的に何ですか、法制局長官。まず食糧や水、武器、弾薬などは、これがなければ武力行使などできませんね。そうすると、これはだめだ。日本から多国籍軍、外務省も十月五日の私の安保の特別委員会の集中審議で認められていますが、米軍に提供された四輪駆動車、これは砂漠地帯で兵員輸送などに欠くべからざるものですから、これも憲法違反ということになりますね。どういうことを頭の中に描いていらっしゃるのですか。何ですか。
  102. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 武力行使と一体となるかどうかという点につきましては、いろいろな具体的な状況を総合的に判断して判定する必要があるわけでございます。ただいま、何を提供するか、何を運ぶかという点についての御指摘がございましたが、必ずしも何を提供するかということで一義的に決まるということではございませんで、戦闘行動が行われているところで、これはきのうちょっと私の方からも触れましたけれども、例えば地上で戦闘行動が行われている、そこに物資を空挺部隊が投下するというような場合には武力行使と一体となるというようなことが考えられるわけでございます。その場合に、どのような物資を投下するか、どのような物資を補給するかということは必ずしも関係なく、仮に食糧のようなものでございましても、戦闘行動と、武力行使と一体になるという場合も考えられると思います。他方、武器 弾薬のようなものでございましても、戦闘行動が行われている場所から非常に離れたところでそれと関係なく補給を行うというようなことは、単なる補給活動として、戦闘行動とは、武力行使とは一体とならないということはあると思います。
  103. 和田静夫

    和田(静)委員 ちょっと最後に細かい質問ですが、補給艦はどうかわかりませんが、輸送機の場合、二回ほど給油しなければ行けませんね、中東には。そうすると、給油はどこで行うのだろうかという疑問が出る。これはフィリピンのあるいは米軍基地である、インド洋の米軍基地であるというような形で二回やるのかどうかなどというようなことを含んで、自衛隊機はどの条約を根拠として基地を使用するのだろうということが大変私は理解ができないのです。アメリカだけでなくて、その基地の置かれている国との問題にもなりますしね。日本の自衛隊機となれば、アジア諸国の国民の反発をこれは考慮しなければなりませんね。この辺はどういうふうに大臣お考えになっていますか。
  104. 中山太郎

    中山国務大臣 この国連平和協力法が成立して協力隊が編成される時期で、国際情勢等に応じて国連の決議があった場合に、実施計画をつくり、そしてこれを会議にかけて諮問をして閣議で決定するということでございますが、具体的にどのような場合にどのようなことをとり得るかということは、そのときにやはり判断をしなければ、現時点でどこかの、例えばフィリピンの空軍基地を使うといったような事例を挙げてここで私が申し上げるような状況ではまだない、私はそのように考えておりますが、原則として、武力の威嚇または武力の行使を行わないということは原則でございますから、軍用飛行場に限らずに民間空港も十分使えるものだ、私はそのように考えております。
  105. 和田静夫

    和田(静)委員 最後ですが、歴代の内閣は、自衛権についてでさえも専守防衛という枠の中で、その枠を踏み出さないように平和政策を続けてこられた。しかし近年、国連において世界各国との協調よりもどうもアメリカとの協調に過大な比重を置かれるのかどうか知りませんが、自衛隊も専守防衛の枠から踏み出さんばかりに強化をされてきました。これは戦後政治の総決算を掲げた中曽根内閣以来顕著になった傾向であろうと思うのですが、冷戦後の秩序づくりの名のもとに海部政権が、自衛隊に対する最後の歯どめとも言える海外派遣の禁止を平和協力隊によって今崩されようとしています。これは明らかに今まで日本が堅持してきた平和政策の私は転換にほかならないだろうと思います。過去において国連での外交に現在よりももっと熱心であったころには、国連レバノン監視団に対する自衛隊員の派遣要請に対して、自衛隊員の派遣は我が国の制度上認められないという形で応ぜられなかった。監視団といえばPKOの中でも最も非軍事的なものであるにもかかわらずであります。それが今回は、軍事色の強い多国籍軍にまで後方支援であるとして自衛隊を派遣しようとされる。なぜそれまでにして私は自衛隊にこだわるのだろうということ、そのことを理解することはできません。  したがって、本法案の撤回を強く要求をして、私の質問を終わります。
  106. 加藤紘一

    加藤委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四分休憩      ────◇─────     午後一時開議
  107. 加藤紘一

    加藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。左近正男君。
  108. 左近正男

    ○左近委員 総理にお伺いします。  総理はハトですか、タカですか。
  109. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私は海部俊樹でありまして、ハトでもタカでもございません。
  110. 左近正男

    ○左近委員 ハト派ですか、タカ派ですか。
  111. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 何を基準にタカ派とおっしゃるのかよくわかりませんけれども、もし平和を本当に繁栄とともに築き上げていきたいということを政策の基準に置いておるということにすれば、それは私は平和と繁栄のためにどこまでも協力をしていきたい、こう思っておる人間でございます。
  112. 左近正男

    ○左近委員 憲法をしっかり守っていく総理であるという理解でよろしいですか。
  113. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 そのとおりに御理解いただいて結構でございます。
  114. 左近正男

    ○左近委員 私は、この八月二日のイラクのクウェートの侵攻、これはもうとんでもないことだと思います。イラクのクウェートの侵攻、とんでもないことだ。これは、私ども超党派でそのことは確認できると思います。ところが、八月二日以降政府なり総理がなさってきたこと、例えば八月下旬には、平和協力隊の構想について自衛隊は参加をさせないということを明確に言われた。ところが一カ月後には、自衛隊が国連平和協力法案の中心になっておる。これはどういうことなのか。なぜこの法案の中に——名前は非常にきれいですよ、国連平和協力隊。非常にきれいな名前だ。しかし、その内容は自衛隊が中心になっているじゃないですか。なぜこの法案の中に自衛隊を含まなければならないのか、その柱にしなければならないのか。総理、いかがですか。
  115. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 八月二日のイラクのクウェート侵攻について全く同じ見解をお述べいただいたことを私は今承って、そこまでは同じだな。そこでそのときにそれを何とかしなければならぬというので、国連の決議に従って世界がいろいろやっておる行為に対して貢献をしなければならぬ。そこで今お示しになった八月二十九日に貢献策を発表したことはそのとおりでございます。あのとき発表しました貢献策は、日本に法の仕組みも準備も何もございませんでしたので、ひたすら民間の皆さんにボランティアとしてお願いするという形でここに記者会見して発表した貢献策がございますが、このときにはもちろん自衛隊を自衛隊として入れようというようなことは全く念中になくて、民間だけにお願いをしてできるものならしたい、医療とそれから輸送協力を中心に考えておったことは御承知のとおりであります。  その後、いろいろな経緯がございました。そして、こういったことをしていこうというときには、やはり目的があって効率的な運用をするためにはどうしたらいいだろうか、いろいろ考えました。政府部内で慎重に検討をした結果、それは長年にわたる組織的な訓練や技能や経験を生かして、そして医療協力とか輸送協力とかそういったものに参加をしてもらう、そういったことをこれは自衛隊にも協力を求めたらどうか。そのかわり、自衛隊を自衛隊として武力を持って出ていってもらうということは、これは最初お触れになった憲法の趣旨にももとるわけでありますから、そういったことを十分に考えて、それでは法律の仕組みをつくろう。法律の仕組みをつくって、こちらに参加してもらおう。そして、この法律には、憲法に禁止しておる武力の威嚇、武力行使を伴うものであってはならないということをきちっと書いて、それで協力業務に参加をしてもらう、こういうことにしたわけであります。
  116. 左近正男

    ○左近委員 ともかく総理は、八月下旬から以降変質されたんです。憲法をしっかり守っていくという気持ち、それを変えておられるんですよ。これが今回の法案なんですね。私どもはもっと、例えば八月下旬に、二十九日に閣議で決められた中東の平和回復活動に対する我が国の貢献策、これについて総理が先頭になって、各閣僚が先頭になってどれだけ民間協力を訴えられたのか。私は余りやっておられないと思うんです。  余り幅広いことは私は言いません。きょうは、そのうち輸送関係を中心に、特に民間輸送、こういうものを中心にお尋ねをしていきたいと思いますが、この民間輸送についてどれだけの民間協力をお訴えになったのか。どうですか、その点は。
  117. 中山太郎

    中山国務大臣 輸送関係につきましては、委員からお尋ねのように、航空輸送といわゆる海上輸送というものが二つあろうかと思います。それにつきましては、総理を中心にいろいろ協議をい たしまして、運輸大臣等からそれぞれの関係先に御連絡を願い、お願いをするということで、関係閣僚が何遍か集まりまして協議をやらしていただいたという経過がございます。
  118. 左近正男

    ○左近委員 内部で相談しただけではあきませんがな。民間団体に対してどういうような積極的な訴えをされたのかということを僕は聞いているんです。
  119. 寺嶋潔

    ○寺嶋政府委員 中東関係の輸送協力に関しましては、八月二十八日、運輸大臣から日本船主協会及び航空会社三社に対しまして、直接に日本政府の管理のもとに武器、弾薬、兵員を除く物資を輸送することについて協力を要請申し上げたところでございます。これに対しまして、八月二十九日、日本船主協会及び航空三社から、安全が確保されること等を前提としまして協力するという旨の回答がございました。その結果といたしまして、我が国の船舶につきましては、海運企業の協力のもとに政府が現在二隻の日本籍船を用船して輸送協力を行っておるところでございます。また、航空企業につきましても、国際移住機構からの依頼に応じまして、避難民の本国帰還のための旅客チャーター便を計三回にわたり実施したところであり、さらに各国の輸送需要に対応するために、日本航空、日本貨物航空がそれぞれ週一便程度輸送協力が実施できるように準備を常に整えているところでございます。
  120. 左近正男

    ○左近委員 それでは民間協力は足らないと言われたんですか。どこから言われたんですか。民間は、今お話ありましたように、八月二十九日段階で、航空の面においてもあるいは船の面においても可能な限り協力する。それであればいいんじゃないですか。それでは足らないんですか。足らないということをどこから言われたんですか、外務大臣
  121. 中山太郎

    中山国務大臣 足らないというよりも、できないのが実際のその当時の現状でございました。御案内のように、国際航空をやっております民間航空会社は、海外旅行がもう本当に席がないぐらいの多忙をきわめておりまして、外国人等のいわゆる座席の予約等もございますから、そのような状況の中で予備の飛行機をこちらへ出すということは、彼らはなかなか即答ができない状態にあったんだろうと思います。そういうことで、私どもはこの民間企業の立場も十分理解ができますけれども、政府はお願いをする以上に強制権がございませんから、結果としてわずかな数しか動員ができなかったというのが現実でございます。
  122. 左近正男

    ○左近委員 外務大臣、今のような答弁、私お聞きするのは二回目なんですね。お客さんが飛行機の場合もうかなりエントリーしておるから。そこだと僕は思うんですよ。不要不急の海外旅行については、それでは、中東の情勢はこういう情勢だ、日本も積極的にこれには協力せなあかんのだというようなことの訴えを一回かされましたか。民間協力がない、ない言って、あんたら口だけでしょう。どうですか、その点。
  123. 中山太郎

    中山国務大臣 今いろいろとおしかりに近いようなお話でございますけれども、政府として、運輸大臣立場からいわゆる船主協会とか各民間航空会社にお願いをする以外に、例えば民間の方々に医療の協力の面でもお願いをいたしましても、現地の情勢もその当時は緊迫もいたしておりましたし、なかなかボランティアで出ていこうという方もお申し出が少なかったことは事実でございます。
  124. 左近正男

    ○左近委員 それでは一つ一つ聞いていきましょう。  このシービーナス号、通産大臣、これは中東貢献策の第一弾ですか、名古屋から運んだ四輪駆動。
  125. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 物資協力においては第一弾だと思います。
  126. 左近正男

    ○左近委員 運輸大臣、どうですか。——こんなこと、運輸大臣、簡単なこと、答えてくださいよ。
  127. 大野明

    ○大野国務大臣 お答えします。物資協力でございます。
  128. 左近正男

    ○左近委員 外務大臣、どうですか。私が聞いているのは、中東貢献策の第一弾であったかどうかということを聞いているんです。外務大臣、どうですか。
  129. 中山太郎

    中山国務大臣 私どもが記憶に間違いがなければ、名古屋から出ていった船が海上輸送の面については第一回のことであったと考えております。
  130. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 ちょっと事実関係を御説明いたしますが……(左近委員「もういいよ、あんたはいいよ、また質問するから」と呼ぶ)
  131. 加藤紘一

    加藤委員長 委員長が指名しました。
  132. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 実はこのシービーナス号の問題は、これに積んでまいりました四輪駆動車等がその後物資協力の第一弾になったわけでございますが、このシービーナス号の運航自体は商業ベースで、この四輪駆動車を商業ベースで輸送をしていただいた、そういうことでございます。
  133. 左近正男

    ○左近委員 これはコマーシャルベースでやられたのですか、それとも政府が関与してやったのですか。
  134. 寺嶋潔

    ○寺嶋政府委員 海上輸送の契約自体は自動車メーカーと船会社の間の商業ベースの契約でございます。ただ、自動車メーカーは政府の要請を受けましてこれを積み出したわけでございます。そういう意味で物資協力でございます。
  135. 左近正男

    ○左近委員 それは契約はどうなっていますか。
  136. 寺嶋潔

    ○寺嶋政府委員 先ほども申し上げましたように、輸送契約は自動車メーカーと当該船会社の間で行われております。政府が用船したものではございません。その意味において輸送協力ではございません。
  137. 左近正男

    ○左近委員 それでは、この四輪駆動八百台近くを、これは政府が買い取ったんでしょう。この契約関係はどうなっているんですか。
  138. 畠山襄

    畠山(襄)政府委員 七百八十五台の四輪駆動車でございますけれども、これは当初出しますときはまだ政府全体の本件物資協力のスキームができておりませんので、私どもの、今の寺嶋局長の答弁にございますように、通産省の要請に基づきまして、準備をしておくようにという要請に基づきまして企業が出したわけで、搬送をしたわけでございます。したがいまして、売るとかそういう契約はまだその段階ではなかったわけでございます。
  139. 左近正男

    ○左近委員 それでは契約はいつやったのですか。
  140. 畠山襄

    畠山(襄)政府委員 その政府のスキームができ上がりまして、九月の下旬であったと思いますけれども、九月の下旬に契約は行ったわけでございます。
  141. 左近正男

    ○左近委員 私これだけに時間をとるわけにいきませんので、なぜしつこくお聞きをしたかといいますと、通産大臣は中東貢献策の第一弾だ、外務大臣もそういうような認識、運輸大臣はこれはもう物資のコマーシャル的な取引だ。政府の見解が違うんですよ。したがって、このシービーナス号が出港に当たってかなりもめましたね。時間がおくれましたね。私は、政府がきっしりと中東貢献策をしてなかった関係で関係先とのいろいろな協議がおくれたんじゃないかと思うんですね。その点、外務大臣いかがですか。
  142. 中山太郎

    中山国務大臣 政府の方でお願いをしたいわゆる中東貢献策に御協力をいただくということでは一致していると私は思います。
  143. 左近正男

    ○左近委員 私は運輸大臣の見解を求めたいところですが、もうそんなことはやめましょう。ただ私が思うのは、総理、この委員会でも何回も、海員組合の協力がなかなか得られなかったというようなことを二、三回言われましたね。言いました。それは速記録を見ていただいたらわかるんです。僕はこれはおかしいんじゃないかと思うんです。中東の貢献策ということでなぜ船会社なり当該働く人の海員組合の代表の皆さん方と十分話し合われた上でこの第一弾を出発させなかったのか。このことに手抜かりがあったからあの名古屋港の何時間かおくれた、十何時間おくれたらしいですが、これは何か総理がもうこれでは民間頼りないというような意識を植えつけられたんじゃな いですか。その辺どうですか。
  144. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 実はこの物資協力の第一船が出ます前後のことにつきましてはいろいろなことがあって、私は海員組合の皆様の御理解をいただいてあの船が出ていくことができたということを繰り返し申し上げておるつもりでありますから、それは後ほど速記録をもう一回調べて、本会議でも予算委員会でもこの委員会でも、私は協力が得られなかったとは言っておりません。いろいろな問題があったということは申し上げましたけれども、それは飛行機の方の問題で、これは乗員組合の御協力がいろいろな面で得られなかったことも事実でありますから、そういう細かいことは言いませんでしたが、海員組合に対しては御協力をいただいてと申しましたし、現に名古屋港の沖合にとまづてから海員組合のトップの方がそこで話をして、政府と話し合いができて、それではといって現に動かしてもらったこともこれは事実。私はよくそれを承知しておりますから、そのような言い方を私はした記憶はございません。
  145. 左近正男

    ○左近委員 これはまた速記録を見て総理に話をさせていただきます。私は、名古屋のシービーナス号、それ以前から当然これは運輸省を窓口にして海員組合とお話をされておったと思うんです。その交渉途上にあの問題が起きたわけです。だから非常に手続的にもまずいなという印象を持っているんです。  そこで、九月の六日の日に海員組合と中東貢献の物資輸送について確認書を交わされておる。この確認書の内容はどういう内容ですか。
  146. 寺嶋潔

    ○寺嶋政府委員 先ほど御指摘ございましたように、運輸省と海員組合との間では、まず輸送協力の枠組みそのものについて協議をいたしておったところでございます。そこへこの四輪駆動車の船積みの話が出てまいりまして、これは先ほど申し上げましたように商業ベースの輸送でございますが、これについても海員組合としては安全の確認をしてもらいたい、こういうお話がございまして、五日から深夜にかけまして十分お話し合いの上、物資協力になります、つまり輸送については商業ベースでありますこのシービーナス号の件につきましても輸送協力の場合と同様に、船舶と乗組員の安全について政府と組合の間で確認を取り交わしたわけでございます。  輸送協力についての枠組みでございますけれども、これは船舶及び乗組員の安全を確保するために、航海計画等について十分事前に協議をする、事態が変わった場合にはさらにまた協議をし直すというようなもろもろの取り決めが交わされておるところでございます。
  147. 左近正男

    ○左近委員 僕は余り最後詰めなかったんですよ。余り商業ベース商業ベースと言われたら、政府の見解、外務大臣、通産大臣、運輸大臣の見解、違うんですよ。商業ベースやったら受け取り先についても後から指示する。ツーオーダーで出港されているんですよ。また、三千台も積めるんですよ、あの船。どこの自動車輸送船が、三千台も積めるのに一万キロ離れたところに八百台ぐらい積んで商業ベースで商売しますか。それで会社の煙突のマークも全部消しているんでしょう。こういうことで商業ベースだということで、今の局長の言われたこと、これは統一できるんですか。どっちなんですか、商業ベースなのか、中東貢献策の第一弾なのか。そこらの認識があいまいであったのでああいうトラブルが起こったんじゃないですか。その点をもっと明確にしてもらわぬと困ると私は思うんですよ。もういいですよ、もういい。私は後追いの問題だから余りやらない。だけれども、この出発が行き違いがあったんですよ。あれがスムーズに行っておれば、もっと総理の見解も、自衛隊なんか持ってこぬと、ああ民間に任せてよかったなというようなことになったと私は思うんですよ。そこらが非常に私は残念です。この点、外務大臣、どうですか。
  148. 中山太郎

    中山国務大臣 直接その当時、いわゆる船の問題、航空機の輸送の問題につきましては、所管大臣が運輸大臣としていろいろと御苦労いただいておりまして、結果から見て出港がおくれたといういろいろな問題点が今委員から御指摘をいただきましたが、これからこの中東貢献につきまして、やはり一層の話し合いというものが十分なされて、国際社会の期待にこたえられるような行動が結果的にでき上がるということは、私ども政府としても心から期待をいたしたいと思っております。
  149. 左近正男

    ○左近委員 それでは先に進めますが、六日付で、外務省の先ほど答弁された渡辺中近東アフリカ局長、運輸省の海上技術安全局長の戸田さん、海員組合の組合長の中西さん、三人で協定書、六項目結ばれておるわけですが、この確認書は、今回のこの法案が通ることはないと思いますが、通ろうと通るまいと私は民間協力についてはこれは生かされておると思いますが、その辺の判断はどういうことですか、いいですか。
  150. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 ただいま先生が御指摘のございました九月六日付の確認書と申しますのは、今回の中東貢献策への協力に関して、政府と全日本海員組合との間で確認をしたものでございます。したがいまして、これは法律が成立する以前の別の前提での貢献策についての確認書でございます。ただ、法律のもとでも当然、民間からの御協力を得る場合に、その安全等に十分の配慮をすることは当然であろうかと思います。
  151. 左近正男

    ○左近委員 いや、だから、この法律が通ろうと通るまいと、民間協力の海上輸送については、この確認書は生かされるんですねということを確認しているんですが、生かされないのか生かされるのか、尊重されるのかされないのか、これを明確にしてくださいよ。
  152. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 先ほど申し上げましたように、この確認書自体は、今回やっております中東貢献策についての確認でございます。したがいまして、先ほども申し上げましたように、新しく法律ができました場合にも同じような趣旨でその乗員の方々の安全を確保するということは当然だろうと思いますけれども、この確認書目体が当然にそのまま新法のもとでの輸送協力に適用されるということではないと思います。
  153. 左近正男

    ○左近委員 局長かだれか知らぬけれども、どうですか、これは1から六項目、これは安全も項目に入っていますよ。今の局長の御答弁では、もし仮にこの法案が通れば、この確認書はそこまでの期間だという御答弁ですか。そんなことになっていますか。そんなことではだめじゃないですか、あなたら。
  154. 大野明

    ○大野国務大臣 いずれにしても、これは生かされると同時に、尊重していきたいと考えています。
  155. 左近正男

    ○左近委員 それでは今後の民間協力の輸送面については、本法律が通過しようと廃案になろうと、廃案になると思いますが、確信をしておりますが、ずっとかなり期間の長い確認として尊重される、こういうことでいいんですね。大臣、もう一回答弁してください、大事な点ですから。
  156. 大野明

    ○大野国務大臣 先ほど申し上げたことと同じでございます。
  157. 左近正男

    ○左近委員 この協定書がきっしりと尊重されれば、例えば、八千三百トンの補給艦一隻で九百トンの荷物しか積めないんですよ。答弁されましたね。例えば、今回中東貢献策で平戸丸、この平戸丸でやったら一隻で何トン積めますか。どうですか。専門家の方、答弁してください。
  158. 寺嶋潔

    ○寺嶋政府委員 平戸丸の積載重量はおおむね二万五千トンでございます。
  159. 左近正男

    ○左近委員 だから、九百トンと二万五千トンですよ。民間協力のこの運ぶ量の大きさというのは、今総理おわかりでしょう。だから補給艦なんかやめて、この形で民間協力をさらに積極的に国民にもアピールをしてやるべきじゃないですか。そういう立場が非常に今は大事じゃないかと思うんですよね。我々もそういう面については反対しないんですよ。憲法をしっかり守り、非武装で行く。平和協力については積極的にやっていこう、私どもの党もそういう考え方なんですよね。その辺どうですか、総理。もう自衛隊外してくださいよ。それならお互いもうこの法案一遍やめて、そ れならいい法案できると思いますよ。いかがですか。対案出せ、出せ言っておられるんでしょう。どうですか、その点、総理
  160. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 社会党の大綱を拝見させていただいて、私は、それができるなれば、我々も当初貢献策のときにいろいろ考えて、第一陣を出そうと思っていろいろ努力していろいろ問題があったということを申し上げたわけでありますけれども、どうか法案をお示しいただいて、そしてどのようにして具体的に千人ないし千五百人の方を常時やっていかれるのか、よくお話を聞かせていただきたい、こう思っております。
  161. 左近正男

    ○左近委員 答弁じゃないですね。私どものやつはもう原則はっきりしておる。「憲法上の制約を踏まえ、日本国連平和協力は、非軍事的・民生分野に限定される。」この原則さえ守られれば積極的に協力しますよ。何も、やってない言っているんじゃないですよ。やれますよ。やれると思うんです。それをお互い努力していったらいいじゃないですか。これが政治の共通の場じゃないですか。その辺どうですか。総理、もう一度。総理、さっきの答弁、ちょっと逃げてはったと思うんですよ。
  162. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これは別に逃げるわけではありませんから、私どもも夏休みを返上していろいろ探しましたが、仕組みも法律も制度もございませんでしたので、民間にお願いをしていろいろなことをしたいということで努力をし続けてきたわけでありますが、結果として、いろいろな問題があってできにくい壁がある、それは事実でありますから、そこで、どのようにしたらいいのか。最初申し上げたように、国のすべての皆さんにお願いをしてこの行為ができるようにしたいというのでつくったのがこの国連平和協力法案でありまして、そして、この国連平和協力法案は、先ほどからおっしゃっておるように、とにかく戦闘部隊出して戦争をやりにいこうというのでは決してありませんから。制限的にきちっと書いたそういった目標を武力行使を伴わないでやるようにしたいというのでこの枠組みの中へみんな来ていただく。民間の皆さんにもお願いして出していただければ、それは民間の方が輸送能力大きいことはよくわかっておりますので、何回もこちらもお願いをしておったということでありますから。そういったようなこと等を一つ一つやはり解決をしていきたいと思いますし、この法案はそういう趣旨で出したわけで、いけないということはきちっと歯どめがかけてありますから、よくごらんをいただきたいと思います。
  163. 左近正男

    ○左近委員 この論議の中でもいろいろな意見がありますように、私は、総理が何ぼ危ないとこへ行かさない、行かないと言ったって、我々信用してないんですよ、総理の言葉を、悪いけれども国民も信用してないんですよ。  だから、海員組合の方々が心配をされているのは、イラクとイランの戦争で海員組合の組合員自身も亡くなっているわけですね。中東問題に対しては、イラク・イランの戦争のあのペルシャ湾のそういう具体的な被害も受けておる。そしてまた、例えば海員組合の方々がこの問題に大変神経質になるのは、太平洋戦争のときにも、民間の船がもう全部と言っていいほど海軍や陸軍に徴用されましたね。そして、開戦時の全体の船の八七%が撃沈されているんですよ。で、六万二千人の人が亡くなっているんですよ。海軍の方たちの亡くなった率は一六%、船員の方たちの亡くなった率は四三%なんですよ。やっぱりこういう後方支援をした方々が非常に大きな打撃を受けておる。海員組合というのは非常に歴史のある組合です。また、常識のある組合です。だからこういう協定、確認書も結ばれたのでしょう。こういう彼らが非常にこの問題について神経質になるというのは、私は当然のことだと思うんですよね。だから、その辺の気持ちを十分酌みまして総理は先頭に立って協力要請をしていけば、私は成るものは成るという確信を持っています。そういう努力を私さらに一層していただきたい。  そこで、日本の民間の輸送、その商船団が、総理が一言言えばばっと船が集まるような状態に今なってないんですよね。この辺の状況についても、私は、総理以下関係者の皆さん方も御理解いただきたい。そのために、日本の商船団の現状について一遍ちょっと答弁してください。
  164. 寺嶋潔

    ○寺嶋政府委員 現在、日本商船隊と言われております二千トン以上の外航商船隊でございますが、日本籍船と外国用船から成り立っておりますが、平成元年度年央で申しまして、全体では二千二隻、総トンにいたしましておおむね五千五百万総トンでございます。そのうち、日本籍船が五百三十二隻、おおむね二千百万総トン、外国用船が千四百七十隻、おおむね三千三百万総トンでございます。
  165. 左近正男

    ○左近委員 国がここ近年ずっととってきた日本商船団に対する政策というか、これが今日の状況をあらわしているんですね。日本の純粋な船は二千隻のうち五百三十二隻なんですよ。それにさらに、日本人がフル配置されている、五百三十二隻の中で日本船員だけでその船を維持運航している船は何隻ありますか。     〔委員長退席、宮下委員長代理着席〕
  166. 寺嶋潔

    ○寺嶋政府委員 ただいまちょっと手元に持っておりませんが、おおむね二百隻前後であったかと思います。
  167. 左近正男

    ○左近委員 今日本は、いろいろ外国籍船を使って、世界の海運の半分近くを日本が引き受けているわけですよね。しかし内実を見れば、大体日本人だけで運航している船は二百隻ぐらいしかないということですよね。全く驚きなんです。こういう現状をつくったのは、これはだれなのかと言うんです。政治なんですよ。外国では、これは米と一緒なんですよ。米を守っていく。日本は島国で、船を守っていくという発想が日本政治の中に抜けておったんですよ。これがこういうような現状になっているんです。例えば、外航の二船団の団体でこの五年間でどれだけ人が減っているか。一九八五年には、日本の船員が二万六千百九十三人おったんです。これが今七千五百六十六人ですよ。  こういうような現状になっていることがなかなか、総理が民間協力を求めるにもかなり一定の物量的な限界があるんだということを僕はよくおわかりをいただきたいと思うんですよね。そういうような困難な中で、やることはやろうじゃないかという確認書まで交わしているんですよ。このことについて私は高く評価をしてもらいたい。私は何も海員組合と利害関係ございません。だから私ども、そういう一つの流れをやはり総理としても見詰めていただきたいと思うんですよね。今のやりとりで、総理の感想はどうですか。
  168. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 おっしゃるようなことで、日本は船が必要だということ、そこで、毎年計画造船をして、そして利子補給のこと等も考えながらどのようにして船腹を確保して、日本の国際的な相互依存関係、貿易の中で船の占める大事な役割、そういったものを果たしていくかということの政策努力を続けてきておったと私は承知いたしておりますし、ですから最初から申し上げておるように、第一船が出ましたときも私は、確認書を交わすために夜遅くまでお互い努力されたこと等も一々報告受けて聞いておりましたから、海員組合の皆さんに御協力を願って第一船が出たということもここで申し上げておるわけであります。
  169. 左近正男

    ○左近委員 そこで運輸大臣日本の商船団をやはりもっと大胆に育成せなあかんのではないですか。その辺の見解はどうですか。
  170. 大野明

    ○大野国務大臣 いずれにいたしましても、国際経済国際社会の変化等によって船員の賃金の格差とかいろいろなことがあったときに現在のような形に移行していった経緯はあるにしても、現在も低利融資であるとかあるいは税制面あるいは財投面等いろいろ配慮しながら、やはり海国日本の海運ということについてもう少し思いをはせていきたい、こう考えております。
  171. 左近正男

    ○左近委員 それでは、法三十一条の民間協力について絞って幾つか質問をしたいと思います。  「平和協力業務を十分に実施することができな いと認めるとき、」と法案になっておりますが、この「十分に実施することができないと認めるとき、」というのは、具体的にはどういうことを指すのですか。
  172. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 第三十一条冒頭に、「本部長は、第四章の規定による措置によっては平和協力業務を十分に実施することができないと認めるとき、」とございます。したがいまして、第四章にいろいろな平和協力業務が書いてございますが、このような措置によっては十分実施できないとき、具体的には、例えば、自衛隊の補給艦等による輸送では十分でないと認められるような場合に民間の方の協力をお願いするということでございます。
  173. 左近正男

    ○左近委員 それでは、そのことについて具体的にまたお聞きをしていきますが、この「役務の提供」というのは具体的にはどういうことですか。
  174. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 この「役務の提供」というものは、主として輸送、船舶あるいは航空機による輸送を考えております。
  175. 左近正男

    ○左近委員 民間の船、飛行機ということですね。
  176. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 そうでございます。ただ、法律的には「国以外の者」と書いてありまして、これは地方公共団体及び民間でございますけれども、この役務につきましては、特に輸送につきましては地方公共団体は特に想定されず、主として民間ということでございます。
  177. 左近正男

    ○左近委員 今の国以外の者の協力、今地方公共団体と民間団体を触れられましたが、それだけですね。
  178. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 地方公共団体と民間、民間につきましては、日本と外国の場合と双方が含まれております。
  179. 左近正男

    ○左近委員 外国の企業を含むということですか、国以外の者の協力の中に。
  180. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 そうでございます。これは協力を求めることができるということでございます。
  181. 左近正男

    ○左近委員 それではあと外国の企業の参加について。この国連平和協力法の中で、外国の企業までこの法案の範疇の中に入るということは、これは問題じゃないですか。
  182. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 この三十一条の目的は、まず第一に政府保有の輸送手段を使って物の輸送に当たることが大前提としてありますが、そのような手段ではあるいは十分に実施できないと認めるときには、今役務の提供の御質問でございますが、役務の提供について国以外の者の協力を求めるということでございまして、外国の企業に協力を求めてはいけないということは言えないと存じます。
  183. 左近正男

    ○左近委員 それでは、この民間協力をする船なり飛行機というのは、この平和協力隊全体の構成員に入るんですか、入らないんですか。
  184. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 役務の提供を求めるのでございますので、その乗組員等が平和協力隊員になるわけではございません。
  185. 左近正男

    ○左近委員 だから構成員ではないということですね、船も含めて、飛行機も含めて。
  186. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 そのようでございます。
  187. 左近正男

    ○左近委員 それでは当然、昨日の質疑でも問題になりましたこれらの民間団体に対する協力については、拒否することができますね。
  188. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 この三十一条は、本部長が民間——民間といいますか、「国以外の者に協力を求めることができる。」と書いてあるだけでございますので、協力の要請を受けた国以外の者は、その協力要請を受けなければいけないという法的な義務はございません。したがいまして、断ることは可能でございます。
  189. 左近正男

    ○左近委員 例えば、今どうですか、許認可権が一万ぐらいあるんじゃないですか。その中で運輸省関係なんかは、許認可事項二千件ぐらい、かなり集中しておる。やはり、運輸大臣から船会社なり航空会社に協力要請されたら、これは拒否ができない、なかなか。そういう強い権限を大臣は持ってはるわけですよね。ここらはきっしりした歯どめができますか。その辺どうですか、この法との関係で。
  190. 寺嶋潔

    ○寺嶋政府委員 御指摘のように運輸省は多くの許認可権限を持っておりますが、本件はあくまで法第三十一条に基づきまして協力の要請をするにとどまるものでございまして、決して無理に当事者の意思に反して輸送に参加するということを求めるものではございません。
  191. 左近正男

    ○左近委員 それは、はっきりひとつ今の答弁を確認したいと思います。  そこで、民間の船や飛行機は、武器、弾薬、兵員は輸送しないと常識的に私は思いますが、今まで補給艦の問題についてはいろいろと政府の答弁がされておりますが、その辺の区別はきっしりしていただけるんですね。いかがですか。
  192. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 三十一条の構成につきましては既にお答えしたとおりでございます。民間に対しまして輸送に関する協力をお願いするに当たりましては、現に戦闘が行われております場所でございますとか、あるいは、現に戦闘行為がない場合におきましても将来行われる蓋然性が高い、そういうような場所への輸送につきまして協力をお願いすることは考えておりません。いずれにいたしましても、現実に民間に協力をお願いするに当たりましては、民間の協力に関する重要事項としてこの法案の十七条に定めております実施計画において定めまして、そして閣議の決定を行うということになっております。このような手続を通じまして、民間の協力につき万全を期す所存でございます。  なお、我が国の民間に対して輸送分野での協力をお願いするに当たりましては、武器弾薬を輸送の対象とするというようなことは考えておりません。
  193. 左近正男

    ○左近委員 兵員はどうですか。
  194. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 兵員についても同様でございます。
  195. 左近正男

    ○左近委員 それでは、補給艦は、私ども反対ですが、武器、弾薬、兵員を輸送する。しかし、民間からの協力船については、武器なり弾薬なり兵員は一切輸送の対象にしない。これを再度確認したいんですが、よろしいですね。これは大臣からちょっと、イエスならイエスと言ってください。
  196. 中山太郎

    中山国務大臣 今局長が御答弁申し上げたとおりでございます。
  197. 左近正男

    ○左近委員 それでは、外国企業にも協力要請ができるということですが、外国籍の船なり外国の飛行機についても、これは民間の船、飛行機としての理解でよろしいですか。
  198. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 この法案で考えておりますのは、外国の場合には、外国の民間の船舶、航空機ということを考えております。
  199. 左近正男

    ○左近委員 いや、私、現実問題として今、海運の場合、全体で二千隻日本の支配下にあるけれども、大体五百隻が日本の船籍で、あと千五百は外国籍の船なんですよね。ここらに協力要請する場合でも、武器なり弾薬なり兵員は輸送対象にしない。飛行機についてもしない、外国からチャーターした飛行機については。これは確認できますねということをお尋ねしているのです。
  200. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 この法案においては、法律上は排除しておりません。
  201. 左近正男

    ○左近委員 そこが問題なんですよね。今、日本の船籍、飛行機については武器、弾薬、兵員は輸送の対象にしないということを明確に答弁された。だけれども、外国籍の民間の船なり飛行機についてはこれを明確にしてくださいよ、対象にしない。そんなことだめですよ。
  202. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 この法案上は排除されていないということは先ほど答弁申し上げたとおりでございます。具体的な案件につきましてどうするかという点でございますが、これは、具体的なニーズなり要請なりがありましたところで、この業務計画を定めるに当たって我が国として判断していくということでございます。
  203. 左近正男

    ○左近委員 民間の船だって何も法的にはなってないですが、今答弁によって、武器や弾薬や兵員は運ばないということを明確に答弁されたんですよ。外国の船や飛行機についてもそのとおり答弁なさいよ。これをはっきりさせぬとだめです よ。
  204. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 先ほど御答弁申し上げましたのは、我が国の民間の場合ということでございます。
  205. 左近正男

    ○左近委員 だから、僕は船についても言ったでしょう。外国籍船、便宜置籍船、ここらの協力については要請できる。しかし、そういう便宜置籍船については武器や弾薬や兵員は輸送しないということをなぜ明確にできないのですか、そこら。
  206. 寺嶋潔

    ○寺嶋政府委員 民間協力につきましては武器、弾薬、兵員の輸送を行わせる意図はないと申し上げておりますが、これは、日本の航空会社、海運会社、また関係の労働組合、すべて武器、弾薬、兵員の輸送をしたくないという明確な方針を持っておりますのでこれに無理にお願いすることはない、こういうことでございます。したがって、日本の船会社が外国籍の船を用船しておる場合にも、これは日本の船会社に要請する限りにおいては武器、弾薬、兵員の輸送をお願いすることはないと申し上げられます。  ただ、外国の船会社あるいは航空会社につきましては、先ほど申し上げたような事情がありませんので、先ほど柳井局長から御答弁申し上げたとおり、そのときどきの判断になろうかと思います。
  207. 左近正男

    ○左近委員 それはちょっとぐあい悪い。そういうことではだめです、それは。
  208. 宮下創平

    ○宮下委員長代理 左近君、質問を続けてください。
  209. 左近正男

    ○左近委員 それではだめじゃないですか。外国のチャーターした飛行機や船でどんどんと武器や弾薬や兵員を輸送するようなことを認める、これはどうしても認められない。これは撤回してください。
  210. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 外国の船、飛行機であればこういうものをどんどん運ぶということを申し上げておるわけではございませんで、ただ、法律の立て方としてそういうものも排除されていないということをお答え申し上げた次第でございます。  なお、これは当然のことでございますけれども、この法案全体の仕組みといたしまして、武力行使に当たるようなことは行わない、あるいは武力による威嚇に当たるような業務は行わないということが基本原則として明確になっております。したがいまして、そのようなことに当たるような態様での輸送協力は行わないということはこの法案の基本的な考え方でございます。
  211. 左近正男

    ○左近委員 よくわかっているんですよ。民間の我が国の商船についても飛行機についても、この法では明確になっていないんですよ。これは不満ですよ。だけれども日本の船についても飛行機についても、武器や弾薬や兵員は輸送しないということを明確に今答弁された。外国の政府がチャーターする飛行機なり船について、それをどんどん兵員や弾薬やまた武器を輸送できるということではどうなりますか、これは。そこは認められないですよ。それをきちっと歯どめをしてくださいよ。
  212. 宮下創平

    ○宮下委員長代理 条約局長、答弁願います。
  213. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 先ほど運輸省の方から御答弁がございましたように、日本の船会社なり航空会社につきましては、会社あるいは組合の方でそのようなものは運びたくない、運ばないという明確な意思表示があったわけでございます。ただ、外国の会社につきましてはそのような事情は必ずしもないと承知しております。したがいまして、この法案の上では、そのような外国の会社にお願いするということが排除されてないということを先ほど来答弁申し上げているわけでございます。ただ、こういうことをどんどん行う方針であるというようなことではまたないわけでございます。
  214. 左近正男

    ○左近委員 どんどん行うかどうかは別にして、やはり原則の問題だと思うんですよ。これはだめですよ。こんな、どんどん運ぶとか、どんどん運ばないとかというような問題ではないですよ。やはりこれは明確に民間並みにきちっと位置づける必要がありますよ。
  215. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 この法案法律的な構成について私の方から先ほど来御説明しているところでございますが、外国の会社との関係につきましては、これは当然のことでございますけれども、その都度契約によって決められるわけでございます。したがいまして、そのようなものを運ぶということについて必要があってこれが適当と認められる場合に、その相手方の外国の会社が同意するかどうかということはまた別問題でございます。同意しなければ運べない、同意すれば運べるということでございます。
  216. 左近正男

    ○左近委員 これでどんどんどんどん——どんどんもやらぬかしらぬけれども、どれだけかもわからぬけれども、外国の船、外国の飛行機で武器や弾薬や兵員を運ぶ体制をつくったら、これどうなりますか。これは基本的な問題ですよ。
  217. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 先ほどの若干繰り返しになりますけれども、具体的な業務計画をどうするかということにつきましては、この法案で定められた手続で慎重な検討がなされるわけでございます。慎重な検討がなされた結果できました業務計画につきまして、閣議決定をして実施に移すということでございますので、その際に慎重な検討がなされるということでございます。
  218. 宮下創平

    ○宮下委員長代理 左近君、質疑を続けてください。
  219. 左近正男

    ○左近委員 いや、例えばそれなら、日本商船団の現状も今いろいろ御説明されたわね。日本の全部乗っている、日本人だけの船団は二百隻ちょっとだ。しかし、外国船籍でも、マルシップの問題、仕組み船の問題、いろいろ日本人が例えば二十人の船員の中で何人か乗っておられるケースが何ぼもあるんですよ。どうなりますか。そんな外国の船や飛行機を使ってどんどんと武器の輸送や弾薬の輸送、兵員の輸送がいけるというような法の仕組み、これはどうしても認められません。そうでしょう。答弁、そうでしょう。どんどんではないけれども、どんだと。
  220. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 私は、法律的な側面について担当しているものでございますから、法律的な仕組みについて御説明申し上げた次第でございます。ただ、強いてこの運用の問題について申し上げれば、先ほど来申し上げておりますように、この法律で定められた手続に従いまして慎重に検討するということでございます。
  221. 左近正男

    ○左近委員 きっしりとした歯どめを、やはり日本の民間の船なり飛行機並みの歯どめをきっしりしてください。
  222. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 余り繰り返しませんけれども、そのような慎重な手続を経て、外国の民間の場合にもこれは契約を締結するわけでございますから、その際に、相手方の会社の御意向は尊重するということでございます。
  223. 宮下創平

    ○宮下委員長代理 左近君、続けてください。質問を続けてください。——今の答弁について御質疑があれば、さらに続けてください。続けてください。——左近君に申し上げます。  本件の取り扱いにつきましては、後刻理事会でお諮りすることにいたします。  質問を続行してください。左近君。
  224. 左近正男

    ○左近委員 ともかく、この国連平和協力隊法というのは日本法律でしょう。そうしたら、日本政府がチャーターした外国の船や飛行機というのはこの法律、これと一体なものでない、適用にならぬでしょう。自由の形で平和協力隊の行為の名で武器や弾薬や兵員を輸送されたら、それこそたまったものじゃないですよ。どこまで輸送するか、どこの国に契約するかわかりませんが、値段さえよかったらかなりのところまで行く飛行機会社も船会社もありますよ。こういう危険なことをこの法案の中ではできるんだというようなことでは、私はこれは審議をできませんよ。日本の国の法律の中でそんな底抜けの、穴があいたようなところのブラックゾーンを設けておくなんということは僕はあかんと思うんですよ。難しいこと聞いているんじゃないんです。民間協力であれば民間の限度を、歯どめをしっかりしてくださいということを言っているわけで、この点どうでしょうか、総理。いろいろ答弁のやりとりをお聞きをし て、私の言っていることが間違いなのか、どうですか。もっと常識的に僕はやってほしいと思うんですけれども、いかがですか。
  225. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これは、条約局長法律の解釈という面からいろいろと法律論で答えておりますけれども、私は、先ほど来議論になっておるように、貢献策の第一陣を出しましたときも、やはり民間に頼むときには武器、弾薬、兵員は運ばないということで海員組合の皆さんにも御理解協力を得てきたことは、これは御指摘のとおり。そして業務計画をつくりますときは、これはあくまでも平和協力協力隊でありますから、平和協力会議で業務計画をつくるときに、政策判断として慎重の上にも慎重を期して対処をしていきたいと常々考えております。
  226. 左近正男

    ○左近委員 私は、今やっと総理御答弁いただきましたけれども、その歯どめにはなってないと思うんですよね。だからその点、今委員長理事会ということですので、私はこれは委員長の命を聞かなあきまへんから……
  227. 宮下創平

    ○宮下委員長代理 先ほど申し上げたとおりでございますので、質疑を続けてください。
  228. 左近正男

    ○左近委員 それでは次、この民間輸送の輸送物資のチェックについて、せんだっての委員会で外務大臣は、自主的にチェックし判断するという答弁をされたわけですが、民間の船の場合、飛行機の場合は、自主的にチェックするというのはどういうことですか。
  229. 中山太郎

    中山国務大臣 この協力本部が実施する場合に、船会社等いろいろと積み荷の内容についてもお話し合いが行われますし、また海員組合もあることでございますから、そういう場合において政府は自主的にチェックをしていくというのは基本的な問題であろうと思います。
  230. 左近正男

    ○左近委員 政府がだれか係員を派遣してチェックするんですか。
  231. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 現在の中東貢献策のもとでやっております輸送協力の積み荷の確認のやり方と申しますのは、まず、兵員、武器、弾薬を運ばないという我が国政府の意向をその要請のある国に明確に伝えまして、先方がそれをそのとおり理解したということをまず確認をいたしております。それから、この場合、政府が民間の航空機、船舶を借り上げて、チャーターをして運航いたしますので、当然その民間の航空機、船舶につきましては、その安全性の遵守、安全規則の遵守等の見地から、その荷物のいわば確認が行われておるわけでございます。荷物のリストがございまして、それでそれを船の中のどこへ積むというふうな確認が行われておりますので、それをもってその積み荷の確認をしておるわけでございます。
  232. 左近正男

    ○左近委員 例えば民間協力のシービーナス号が、これは韓国に入って釜山で荷物を積んでダンマムに出航しているんですね。この場合の物資のチェックはどういう形でされたんですか。
  233. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 物資のチェックと申しますか、積み荷の確認は今私が申し上げたような段取りで行われまして、それでまた積み荷の積み込みが円滑に行われますように、我が方の在外公館員が積み荷に立ち会っております。
  234. 左近正男

    ○左近委員 今後の民間協力の場合も、例えば平戸丸はアメリカのユエネメ港ですか、ここからダンマムに行っているわけですね。その場合もすべて外務省の在外の係員が現地へ行って立ち会うわけですか。
  235. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 平戸丸についても、我が方の在外公館員が立ち会いをいたしております。
  236. 左近正男

    ○左近委員 今後の民間協力の場合も、その形が踏襲されるという理解でよろしいですか。
  237. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 今度の法案が成立いたしました場合の手続の詳細はまだ定めておりませんけれども、ただいま中近東アフリカ局長から答弁がございましたようなこれまでの経験というものは十分参考になると思います。
  238. 左近正男

    ○左近委員 私、大変これは、いろいろどういう形で具体的にされるのか、まだ若干の疑点がありますが、次の質問に移りたいと思います。  本委員会でも、公海上または外国領海内で自衛隊の補給艦が攻撃された場合、当該補給艦は自衛の手段として応戦できるのかできないのかという質問に対して、外務大臣は、そんな危ないところへ行かんねんから想定してませんというような御答弁でした。そこで、民間の商船団が外国の民間協力としてこれから公海、領海へ行くわけですが、この場合はどうなりますか。もし攻撃を受けた場合、これについてはどういうような対応をしてもらえますか。
  239. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 これまでもいろいろな機会に御答弁申し上げていますように、民間に対しまして協力をお願いするに当たりましては、そもそも戦闘が行われているところ、あるいはその蓋然性が高いところに行っていただくというようなことをお願いする考えはございません。いずれにしましても、現実に具体的な案件に即しまして輸送業務を決める場合におきましては、この実施計画で慎重にその中身を決めていくということで、そのような事態が起こらないようにしたいと考えております。
  240. 左近正男

    ○左近委員 結局そこらの信用性というか、それが相互不信があるんですよね。危ないところへ行かさない、行かないということを総理が何遍も言っておられますが、この間、自民党の筆頭理事の山崎先生、NHKのテレビの討論会で、あれ、余り信用ならぬ、政府の言っていることが。自民党の筆頭理事でも、あの総理の言っていることについてはちょっと信用ならぬから、ちょっとまゆつばものだということを言うてはるわけで、いや、それに近いことを。だから我々がこれを信頼でき、これははっきりそれならNHKのあれを起こしてもらって結構です。私がちょっとテレビを入れたときに、ちょうど先生が言っておられたときでして、私も聞いていますので。表現の仕方は私は悪いです。悪いかもしらぬけれども、そういう意味のことを言われたことは間違いない。  だから、何ぼ危ないところへ行かさない、行かないということを言われても、紛争地域に対するこれは平和協力の問題ですから、火の粉は多少かぶる危険性があるというのは、常識的にはだれもがそのことを気にしているわけですよ。そのことを、全く何もないんや、パラダイス、天国へ行くような答弁をされたら困る。私はその辺、非常にこれは不満ですよ。民間の船が行った場合、よっしゃ、先、先行けと。何かあった場合、それならペルシャ湾でも現に起こっているでしょう。イランとイラクの戦争の間に日本の商船団が行かれているでしょうな。被害を受けているでしょうな。こういう場合について、そういうことは一切ありません、一〇〇%ありませんという確信がどう持てるんですか。
  241. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 正直申しまして、一〇〇%安全だというようなことは申し上げられません。ただ他方、先ほどの御質問の中に応戦するのかというお話がございましたけれども、これは商船を想定されている場合には、もちろん武装しているわけでもございませんし、応戦ということは考えられないわけでございます。したがいまして、極力そのような危険を回避するという以外に方法はないと思います。
  242. 左近正男

    ○左近委員 僕は何も商船団の応戦のことを言っているわけじゃないんで、その場合は防衛出動の問題の関係はどうなるのか。  法制局長官にお聞きしますが、昭和五十二年十一月十五日、参議院の内閣委員会で、我が国の商船団に対し攻撃を加えられた場合の対処についてということで、その当時の三原防衛庁長官、息子さんいてはって非常にあれですが、長官、「国会の承認を得て防衛出動というようなことがあり得ると思います。」というような答弁を、これを持っていますが、この点について、民間の商船団の場合の防衛出動の関係についてはどのような御見解を法制局長官としてはお持ちでしょうか。
  243. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答え申し上げます。  この委員会におきましてもお答え申し上げたところでございますが、我が国のいわゆる自衛権の発動といいますのは、従来から申し上げておりますように、三要件が必要だということになってお ります。これはもう繰り返しお答え申し上げておりますので、改めて三つのことをそれぞれは申し上げませんけれども、いわゆる三要件の発動、三要件の該当性、簡単に申し上げれば、要するに我が国に対する急迫不正の侵害があること、これが第一です。それから第二に、これを排除するために他の適当な手段がないこと、それから第三に、必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと、これが三要件でございます。  ただいまのような御指摘でございますが、従来からお答え申し上げておりますのは、例えば今の質問の御設定が公海上のような場合であるとしました場合に、直ちにその商船に対する攻撃が今の三要件に当たるとは考えにくいという、一般的にはそういうことであろうと思いますので、いわゆる自衛権の発動、自衛隊法でいきますと防衛出動といったような事態には立ち入らないものと考えております。
  244. 左近正男

    ○左近委員 私この速記録を持っているんですが、これと今法制局長官、三原大臣が言われた見解とかなり違う見解を今言っておられるわけです。だから、今言われたことを突き詰めれば、日本の商船団が公海なりあるいは外国の領海内でもし攻撃されてもほったらかしということですね。
  245. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 今の御質問でございますが、ほったらかしという表現はちょっと余り適当ではないのではなかろうか。私どもの方は、自衛権の行使ができないという意味で申し上げたのでございまして、それを当然その船舶が至急に回避するとか、その船舶としてのいろいろな行動もございますでしょうし、あるいは今回の協力で申し上げれば、そもそも、先ほど運用で申し上げていますが、そういうおそれのあるところには行かないとか、その前提としていろいろな手段があると思います。そういう意味でいわゆる自衛権の行使、それと今の問題とはちょっと区別してお考えいただければと思います。
  246. 左近正男

    ○左近委員 ほったらかしではないけれども、通信とかいろいろ指示とか、口ではサービスはするけれども、結局例えば防衛出動をするとかということはあり得ない、法的にはできないという理解でよろしいですか。
  247. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 繰り返しになって恐縮でございますが、先ほど申し上げました自衛権発動の三要件、これは厳格に守るということをこれまでも繰り返しお答え申し上げてきたところでございます。それに当たるようなケースでなければ自衛権の発動はできない、これははっきり申し上げられると思います。
  248. 左近正男

    ○左近委員 私は余り専門的なことはわかりませんので、次に行きます。  例えば、自衛隊の補給艦が攻撃されても当該補給艦は自衛の手段として応戦できる、そんなことを想定していない、これもいろいろあるんですよ。あるんですが、僕がお聞きしたいのは、自衛隊法九十五条の適用は、この国連平和協力隊法にかかわる問題としては一切しないという理解でいいのか、するのか、その辺、防衛庁長官いかがですか。
  249. 日吉章

    ○日吉政府委員 この点につきましてはこれまでもお答え申し上げたかと思いますが、平和協力隊の派遣に当たりましては、その時点の国際情勢等が十分勘案された上でその海外派遣の可否等については平和協力会議に諮問されまして、協力業務の内容等派遣に関する基本的な事柄は閣議で決定されるなど慎重な手続がとられることとなっております。したがいまして、平和協力隊の平和協力業務に参加します自衛隊の部隊等が攻撃を受けることが見込まれるような状況のもとで、自衛隊の部隊等に対しこのような業務に参加を求めるような要請があるというふうには考えておりません。  なお、現実に参加することが予想される自衛隊の部隊等の能力を見ましても、例えば、ただいま委員が御指摘の補給艦にはけん銃や小銃や散弾銃、機関銃が搭載されておりますけれども、これをもっては攻撃に対し対応をなし得るような状況にはございません。したがいまして、仮にこのような攻撃がなされました場合には、かかる攻撃を回避することに最大限の努力を払うということになろうかと考えております。
  250. 左近正男

    ○左近委員 そんな精神論の答弁は結構なんです。この国際連合平和協力隊法の中で、自衛隊員というのは、これは併任になっている、だからこの平和協力隊の中におる自衛隊員というのは自衛隊法のすべてが適用されるということを今まで答弁されたでしょう。間違いないですか。
  251. 日吉章

    ○日吉政府委員 平和協力隊の平和協力業務につきましては、ただいま御審議をいただいております法案二十二条の四項に基づきまして、本部長の指揮を受けるということになってございます。ただ、自衛艦という船を操艦しておる、そういうような意味におきまして自衛隊法九十五条の適用はあるということでございます。
  252. 左近正男

    ○左近委員 結局、法的には九十五条の適用があるという御答弁でしたね。再確認します。
  253. 日吉章

    ○日吉政府委員 そのとおりでございますが、先ほど私が申し上げましたように、それに基づく行動を起こすというような事態にはまずならないのではないか、かように考えております。
  254. 左近正男

    ○左近委員 そんなことわかりますかいな、あなた。九十五条の適用は、この平和協力隊については適用するということをはっきり言われた。これは、応戦という問題がいやが上にも出てくるじゃないですか、そうなれば。いや、そうですよ。この平和協力隊法については、自衛隊法のすべてを自衛隊員については適用がある、九十五条についても法的には適用される。こうなれば、やはりもし仮に攻撃された場合はその補給艦を守る行為は法的には可能だ。そういう危ないところは行かさぬけれどもと言われますが、法的には可能だということでしょう。防衛庁長官、これは単純な質問ですからお答えください。
  255. 石川要三

    ○石川国務大臣 先ほどの官房長の非常に細かい説明で十分おわかりではないかと思いますが、再度の答弁の中にもございましたように、確かに九十五条というものは、これはあるということははっきり認めているわけでございます。  しかし、その中でも説明してございますように、要するに、では持っておる武器からいっても、いわゆる、先生がどういう形の中の交戦状態というものを言われておるかよくわかりませんが、少なくとも常識的に見て、近代戦争というような状況の中でとても応戦にたえ得るようなそういうものではなく、むしろその九十五条というのは警察法のそういう趣旨の、要するに何といいますか、ゲリラとかあるいはそういった分子の、その武器を奪取せんがために襲われる、そのときの対応というふうなものではなかろうか、こういうふうに私は思うわけでありまして、したがって、まず前段で、それに至るまでに至らない、要するに、安全のところに行くということは大前提でありますけれども、あえて求められればそういうことである、私はかように認識しております。
  256. 左近正男

    ○左近委員 だから僕は、それは武器も補給艦についてはけん銃、小銃、機関銃、散弾銃しか装備しておらないということはわかりますよ。だから、船が攻撃された場合これで応戦して、応戦というか自衛権を発動して自衛の行動をするわけでしょう。警察的な行動をするわけでしょう。正当防衛でしょう。それだけで局限的に終わるのかどうか。やはり、どこかから応援を求めなければあかんというような事態も想定できるでしょう、九十五条を適用するということになれば。その辺はどうですか。
  257. 日吉章

    ○日吉政府委員 ただいま大臣からも御答弁いただきましたことで尽きているわけでございますが、これは、自衛権の発動ではございませんで、あくまでも警察権の発動といたしましての九十五条、武器等装備の防護でございまして、そのためにも法律上非常に厳しい要件が定められておりますし、これそのものが、例えば人で申しますと正当防衛、緊急避難、そういうようなものに当たる概念でございますので、自衛権の発動というようなものとは全く次元を異にするものだというふうに御理解賜りたいと思います。
  258. 左近正男

    ○左近委員 余り難しいことを言うたって我々は わからぬのですよ。だから、自衛権であろうと警察権であろうと、その船の中で応戦することは間違いないんでしょう。そういう行為がこの法の中では法的には認められるということですね。
  259. 石川要三

    ○石川国務大臣 決して難しいことを私は申していないと思います、私自身が余り難しいことを言えないですから。ですから、簡単に申し上げますが……(左近委員「何言うとるんや、それなら、あなた全部答弁せいよ」と呼ぶ)私が答弁しちゃいけないのでしょうか。(左近委員「いや、いいがな。これからずっとしてください」と呼ぶ)いや、それはちょっとおかしいじゃないですか……
  260. 宮下創平

    ○宮下委員長代理 ちょっと、やりとりは委員長の許可を得てやってください。
  261. 石川要三

    ○石川国務大臣 それは、純粋な法的な場合の解釈とかそういったようなことにつきましては、やはり政府委員の力をかりなければ私はいけない場合もあると思います。  いずれにしましても、今政治的な判断として、そういう場合は応戦ではないか、こういうことでございますが、先ほど来の武器の種類、そういうようなことからいっても応戦というようなそういう対応能力というものは持ってない、言うならば警察権的な、そういう発動のようなそういう意味の武器は所持している、こういうことでございまして、したがって、もし万が一そういうことがあるとするならば、これは当然できるだけ速やかにやはり安全な確保のための行動をとる、そして、したがって、業務計画といいますか実施計画ですか、そういうものの変更というものも当然私どもは出てくる、こういうふうに思うわけであります。
  262. 左近正男

    ○左近委員 二十七条の小型武器の貸与については、これは政令の中で、我々はこんなの持つの反対ですが、政令の中でけん銃と小銃ということで一応きっしりとした歯どめをかける。補給艦について、かぎかけて置いてあるのがけん銃と小銃と機関銃と散弾銃だ。この歯どめは、今現在そういうような運用をしておるかもしらぬけれども、これは幾らでも武器を高度化していくともっと違った武器も積み込めるということの可能性もあるんじゃないですか。そこの歯どめはどうなるんですか。これについてもこの法律か政令できちっと歯どめをしてくれますか。
  263. 日吉章

    ○日吉政府委員 お答え申し上げます。  現在御審議をいただいております国連平和協力法案の第二条第二項におきましても武力による威嚇とかまたは武力の行使に当たるものであってはならないということが規定されておりますし、また、平和協力業務はこの法案の第三条第二号に列記されたものに限られておりますけれども、これらの業務はその任務そのものの達成のために武器の使用を必要とするものではございません。これらのことから、平和協力隊の行う平和協力業務へ参加する自衛隊の部隊等がその業務そのものを遂行する上で武器を使用する必要がない以上、そのために武器を携行するということは考えられないわけでございます。ただ、船舶や航空機を防護するために自衛隊法九十五条の規定が置かれておりますけれども、その規定による武器の使用には私がただいま申し上げましたように非常に厳格な要件が課されておりまして、その携行についても使用の限度に伴う制限が当然あるもの、かように考えております。  したがいまして、法律上上限が設けられてないというふうにおっしゃられますけれども、定性的にはおのずからそこには使用の限度が伴う、かように考えている次第でございます。
  264. 左近正男

    ○左近委員 ともかく平和協力隊のこの自衛隊にかかわる部分については自衛隊法九十五条の適用があるということを答弁された。そうなれば、いろいろな事態が派生するわけです。これはまた専門家の方々に質疑をやってもらいますが、僕は、補給艦についてけん銃、小銃、機関銃、散弾銃、これまでしか補給艦には装備をしませんということを答弁してください。できますか。
  265. 日吉章

    ○日吉政府委員 現在のところ、それ以外の装備をする計画はございません。
  266. 左近正男

    ○左近委員 やはりそういう、現在のところとかそんなあやふやな答弁はやめてくださいよ。大臣、明確に答弁してください。お願いします。
  267. 石川要三

    ○石川国務大臣 この法律ができまして自衛隊として参画をする、その中の、自衛隊という部隊の中の九十五条というものはあるわけですけれども、しかし、今答弁いたしましたようにそれ以上の武器というものは積まない、こういうことははっきり申し上げる次第でございます。  なおもう一つ、ちょっと先ほどの答弁で付言することを忘れたのですが、先生御承知のとおりで、九十五条の中にはこういう明示された武器の使用はできることになっておりますが、しかし、その使用をする場合にも、やはりこれが過当防衛とかそういったような場合には、これは当然刑法上のあれは受けるということになっておりますので、そういう意味で、いろいろな武器を使用する場合にも、ただそれがあるから使えるというのじゃなくて、その使用においても非常に厳重なそういう枠がはめられておるということもひとつ御理解をいただきたい、かように思うわけであります。
  268. 左近正男

    ○左近委員 だから、私が今聞きましたのは、今後も含めてこの補給艦に対する装備については、法には明確になってないけれども、けん銃、小銃、機関銃、散弾銃であるということについて、どういう状況の変化があろうともその装備の拡大はしないという答弁として私はお聞きをいたしましたが、もう大臣、いろいろ言わぬと、そうだということだけ答弁してください。
  269. 石川要三

    ○石川国務大臣 さようでございます。
  270. 左近正男

    ○左近委員 次に、自衛隊の輸送機130Hについては、これは現在非武装ですが、これを武装する考えはございませんね。
  271. 宮下創平

    ○宮下委員長代理 日吉官房長、今の質問わかりましたか。
  272. 日吉章

    ○日吉政府委員 現在のところ搭載いたしておりません。(発言する者、離席する者あり)
  273. 宮下創平

    ○宮下委員長代理 お戻りください。  ただいまの議論は130Hのことです。——左近君。
  274. 左近正男

    ○左近委員 補給艦の話はもう済みましたので、もうこれは回答いただきました。だから、輸送機C130Hの問題について、今の装備局長ですか、ただいまのところは装備する考えがない、これでは納得できない、ただいまでは。現在のところでは。——いや、輸送機のことを言っているんですよ、輸送機。今ごたごたやっておられたから、私の質問を大臣、お聞きじゃなかったんですよ。委員長、もう一遍質問します。
  275. 宮下創平

    ○宮下委員長代理 もう一回質問してください。
  276. 左近正男

    ○左近委員 自衛隊の輸送機C130H、これは今現在非武装ですが、将来これについて武器を装備する考えがあるのかないのか、この質問でございます。
  277. 日吉章

    ○日吉政府委員 C130Hには武器は現在装備しておりません。  将来のことでございますが、ただ自衛隊法第九十五条の規定する要件を満たします場合に、当該航空機の防護のために個々の事態に応じ合理的に必要と判断される限度で、当該航空機の乗組員がけん銃、小銃により対応することが考えられます。
  278. 左近正男

    ○左近委員 C130Hについて、その飛行機の装備としては将来とも非武装でいくという理解でよろしいですか。
  279. 日吉章

    ○日吉政府委員 飛行機の装備といたしましては、やはり典型的なのは戦闘機を想像いたしてもらいますとよろしいと思いますが、空対空のミサイル等であろうかと思いますが、輸送機といいますものはそういう性格のものではございませんので、そういう意味での装備を装備するつもりは全くございません。  ただ、航空機という装備を防護するという必要な範囲におきまして、その限度で個々の事態に応じまして航空機に搭乗いたします乗組員がけん銃とか小銃とかいうものを持って乗るということがあり得るということでございます。
  280. 左近正男

    ○左近委員 それでは、二十七条の範囲の武器であるという理解でよろしいですか。
  281. 日吉章

    ○日吉政府委員 法律的に申し上げますと、法益、法の立て方は違うわけでございますが、けん銃、小銃を保持するということにおきましては全く同じでございます。
  282. 左近正男

    ○左近委員 今まで海上保安庁のことは余り触れられておりませんので、少し触れておきたいと思います。  政令でどんなことを決めるのですか。
  283. 丹羽晟

    ○丹羽政府委員 お答え申し上げます。  先生のただいまの御質問は、法案の第二十一条の政令ということだと思います。それで、ここに書いてございます二十一条の規定では、ちょっと読みますが、「本部長は、平和協力隊が行う平和協力業務のうち海上保安庁の船舶(当該船舶に搭載される航空機を含む。)によって行うことが適当なものとして政令で定めるものを実施するため必要があると認めるときは、海上保安庁長官に対し、当該船舶及びその乗組員たる海上保安庁の職員を当該平和協力業務に参加させるよう要請することができる。」、こういう規定でございますが、この政令では紛争によって被害を受けた住民その他の者の救援にかかわる海難救助ということを規定するつもりでおります。これは、ただいま読み上げましたように、二十一条の平和協力業務は御案内のようにこの法律案の三条二号にあるわけでございますが、この三条二号の「へ」というところに「紛争によって被害を受けた住民その他の者の救援のための活動」、これの関係の規定だと理解しております。
  284. 左近正男

    ○左近委員 今あなたが読まれた場所で、必要があると認めたときは、自衛艦の、巡視艇ですか、これをあれすると。必ずしもこの必要が、今度の平和協力隊の業務の中で、必ずしも参加を一〇〇%させる必要がないと私はこの法から解釈したんですが、それでよろしいか。
  285. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 この二十一条の第一項に書いてございますとおり、本部長が海上保安庁の船舶等によって行うことが適当なものとして政令で定めるものを実施するため必要があると認めるときは要請するということでございますから、必ず要請するというものではございません。
  286. 左近正男

    ○左近委員 この海上保安庁法の一部改正の条項で「海上保安庁の任務遂行に支障を生じない限度」という字句がございますが、支障の有無についてはだれが判断するんですか。
  287. 丹羽晟

    ○丹羽政府委員 海上保安庁長官が判断すると考えております。
  288. 左近正男

    ○左近委員 それでは拒否権があるということですね。
  289. 丹羽晟

    ○丹羽政府委員 条文の、「海上保安庁の任務遂行に支障を生じない限度において、」という規定でございますので、その支障を生ずるという判断をされるときはこの規定で派遣するということにはならないと思います。
  290. 左近正男

    ○左近委員 それは海上保安庁長官の判断でいいわけですね。
  291. 丹羽晟

    ○丹羽政府委員 そのとおりでございます。
  292. 左近正男

    ○左近委員 巡視艇、巡視船には武器を装備しておると思いますが、もし本部長から要請があり、海上保安庁長官が、この平和協力隊業務に参加をする場合、この武器についてはそのまま装備をして参加をさせるんですか。
  293. 丹羽晟

    ○丹羽政府委員 先ほど来政府側から御答弁がございましたように、私どもは、海難救助の関係の仕事をするという必要があるときの場合でございますので、派遣する海域、そういうものにつきましてはいろいろ慎重な決定が行われる前提で考えておりますので、その場合の武器は、必要な場合は搭載していくという形になると思います。
  294. 左近正男

    ○左近委員 必要な場合は搭載し、必要でない場合は搭載しないということは、平和協力隊業務の中で海上保安庁の巡視船が協力する場合は武器の装備をする場合としない場合とあり得る、今の御答弁ではそういう理解をしましたが、よろしいですか。
  295. 丹羽晟

    ○丹羽政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  296. 左近正男

    ○左近委員 それでは、今海上保安庁長官がおっしゃいましたように、巡視艇で、その業務の内容によっては武器を外してその平和協力隊業務に参加をするという御答弁をいただきました。くどいようですが、それでよろしいですね。
  297. 丹羽晟

    ○丹羽政府委員 平和協力法案の中では、派遣するその海上保安庁の関係する装備につきましては、実施計画を定める際に定めることになっておりますので、いろいろなケースが考えられると思います。
  298. 左近正男

    ○左近委員 いや、僕の質問しているのは、海上保安庁が平和協力隊の業務に参加をする場合、あなたは武器を装備しているのと装備していない二つの場合があるということを言われたので、だから平和協力隊の業務の中で、巡視艇で今装備している武器を取り外して参加をする場合もあり得ますねということを、あなたの答弁から私は確認しているんです。だから長い答弁は要らない。
  299. 丹羽晟

    ○丹羽政府委員 どうも失礼いたしました。  そのとおりでございます。
  300. 左近正男

    ○左近委員 わかりました。  もし海上保安庁の巡視船が武器を装備をしている場合、公海なり外国の領海に派遣をされた場合、それは軍隊と、軍船としてみなされるのですか、それとも、軍艦としてみなされるのか、民間の船なのか、どちらですか。
  301. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 海上保安庁の船は政府の船でございまして、ただ、軍艦ではございませんで公船というふうに観念されます。公の船でございます。
  302. 左近正男

    ○左近委員 公船という言葉は私は初めて聞きましたが、これは国際的な条約なり通念から見てどういうようなことになるのですか。軍隊ということ、軍艦になるのか、民間船の方になるのか。これは軍隊、軍艦か民間船かによってかなり違うわけでして、その公船だという言葉、ちょっと私わかりませんので、明確にしてください。
  303. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 この言葉は別に新しい言葉ではございませんで、国際法上確立した概念の一つでございます。公船と申しますのは、先ほども申し上げましたように、軍艦ではないけれども政府に属する船舶であるということでございまして、国際法上、一定のいわば特権、免除が認められるというものでございます。
  304. 左近正男

    ○左近委員 それじゃ、海上保安庁の巡視艇は軍艦ではないということですね。
  305. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 海上保安庁の船は軍艦ではございませんで、繰り返しになりますけれども、公船でございます。
  306. 左近正男

    ○左近委員 それなら、今までの答弁、やりとりでは、武器を装備をしていない形で協力隊に参加をした場合の船と、武器を装備をして協力隊に参加をしている場合と二つあると思うのですが、どちらも公船として同じ扱いになるんですか。
  307. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 公船の性格につきましては、一番大事な点は政府の機関に属するということでございまして、海上保安庁の船が載せているような武器があるかないかということで別に取り扱いが変わるものではございません。  なお、若干補足いたしますと、例えば公海条約という公海の制度に関する条約がございます。公海というのは公の海でございますが、その九条に、例えばでございますが、「国が所有し又は運航する船舶で政府の非商業的役務にのみ使用されるものは、公海において旗国以外のいずれの国の管轄権からも完全に免除される。」ということでございまして、国際法上は、公船はこのようないわば特権が認められるということでございます。
  308. 左近正男

    ○左近委員 余り難しいことを答弁されても私よくわかりませんので、また勉強します。  次に、もう時間もありませんので、協力隊の規模と機関の問題について。  この第十七条「実施計画」の二項二号のニ、「平和協力隊の規模及び構成」について、最大何人ぐらい行かすのかという、これを実施計画の中で明らかにするというのを何回も答弁されているんですよね。しかし、予算の関係もあると思いま すよ。だから、大体何人ぐらい、この協力隊については最大規模の限度を法律の中で私は明示してもらいたい。私どもの党の考え方は、これは非武装、憲法を守って、それで千人規模ということを我々は提議しているんです。やはりこの最大規模の限度を法律の中で歯どめをしてもらいたい。これはどうですか。
  309. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 この平和協力隊の規模及び構成につきましては、その都度必要が生じたときに実施計画を策定いたしまして閣議で決定するということになっております。その規模につきましては、その都度、日本協力するあるいは参加する平和維持活動から必要とされる人数でかつ必要最小限度ということが念頭にございます。したがいまして、今の段階で何十人とか何百人ということを決めることは困難でございます。
  310. 左近正男

    ○左近委員 いや、私、何もむちゃな質問をしていないんですよ、局長。私、日本社会党の常識派ですから、本当に常識的な質問をしているんですよ。  あなたの上司の外務事務次官の栗山さん、新聞のインタビューで、少なくとも一千人とか二千人とかという数まで出してインタビューを受けておられるんです。だから、大体平和協力隊というのは最大限度何人までぐらいだということをびっしり、これは法で規制してくださいよ。そんなことできるでしょう。そんな難しいことないですよ。
  311. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 平和協力隊員の必要な数といいますのは、そのときどきの国際情勢等によりますので、何百人とか、今千人、二千人と言われましたけれども法律で特定することは非常に困難だと思います。  例えば、これまで日本が参加してきました平和維持活動の場合は、ナミビアですと二十七人ですとか、あるいは将来カンボジアの和平が実現することになりますと、場合によっては三、四百人というようなことが考えられると思いますけれども……
  312. 左近正男

    ○左近委員 私はそんなこと聞いてないねん。大体千人なら千人、千五百人なら千五百人というような最大規模の限度が引けるでしょうな。予算の関係もありますよ。——いやいや、だから、これにはそういう面の規模の歯どめがないんですよ。そこらはきっしりやる必要があると思いますよ。  外務大臣、どうですか。それなら、今の中東のこの状況の中では何人ぐらいを想定しておりますか。そこらきっしり上限が私引けると思うんですよ。そんなの引けるよ。
  313. 中山太郎

    中山国務大臣 今政府委員が御答弁しましたが、私は率直に申し上げて、委員と同じように、この定員をどうするかという問題にこの法案をつくる過程において一番大きな関心を持っておりました。これを、もし定員を決めた場合の予算の問題、これがついて回るわけですね。  そこで、政令で決めるかどうかということよりも、私が今考えておりますのは、例えば医療協力のような場合でも、私どもは、まあできて、できれば民間だけでやる場合、民間からのボランティアでやる場合、これは私は数はそんなに大きく期待できないと思います。もしこの法案ができた後で自衛隊の医療隊に協力をしてもらうということになりましても、おのずから限度がある。例えば中東地域の問題を対象にして考えましても、この輸送の問題を一体どうするのか、あるいは必要な人員はどの程度のものなのか。我々は自分たちの持っている能力の範囲内、しかもそれは極めて私は常識的な範囲でしか考えられない。膨大な、戦争に行くとかそんなことじゃないのですから、我々としてはあくまでもこの中東問題の解決を期待していますけれども、それじゃカンボジアが、この和平会議が年末ごろにできるだろうと言われていますが、来年早々からカンボジアに対してどれだけの協力ができるだろうか。これは国連ともいろいろ相談をせなければならないと思いますが、私はそんな非常識な数が考えられるものではない、このように考えております。
  314. 左近正男

    ○左近委員 だから、大臣大臣言っているのと私言っているのと一緒なんですよ。たまたま大阪やから一緒やかもわかりませんけれども、一緒なんですよ。大体常識的な線で、上限を千人なら千人以内というような形で、千五百人になるかもわかりませんよ、以内という上限を押さえてくださいよ。そうしたらイメージがはっきりするんですよ。そのことは可能でしょう。何もむちゃなことを私は言ってないですよ。どうですか、大臣
  315. 中山太郎

    中山国務大臣 これからこの法案が成立いたしまして、実施計画等を検討いたします際に、今委員が御不審を持っておられる点もみずから明らかになっていくものと私は期待をいたしております。
  316. 左近正男

    ○左近委員 もう質問終わりだからやめますけれども、法でやってほしいと思うんですよ。法でできなければ政令でやるとか、いろいろあるでしょう。ある程度上限を何人ぐらいまで以内という形で運営できますがな。そこら、総理、どうですか。まあ意見だけ。それで一点だけ。それは要望、また論議してから。  総理、一つ最後、もう時間が来ましたので、これは時間大分中止になっていますよ、委員部。
  317. 宮下創平

    ○宮下委員長代理 時間が来ておりますから、急いでください。
  318. 左近正男

    ○左近委員 いや、ちょっとこれは今中止になったのが入ってないから、もう一問だけ。  総理に最後の一問だけ。人質の解放問題で、総理はこの委員会でもイラクとの二国間の対話はする、あらゆる努力をされるということを言っておられるんですけれども総理のイニシアで、国民に見える形でなかなかなっておらぬわけですね。言葉は多いですよ、総理はうまい言葉言わはりますからね。それで私疑問に思ったのは、対話はすると言っておって、即位の礼で、即位の礼に私ども日本社会党も党では出席するということで、私はこの即位の礼、これは法律にも定められておるし、また政治的にも中立だという立場をとっております。これにイラクの代表を事前に招待しておったのを、この事件があって招待を打ち切った、取りやめた、こんなこと何でするんですか。来てもろうて、ここで人質返せいうのを日本でやったらどうですねん。そういうパイプをみずから政府自身が断ち切るというのは、総理自身、二国間の対話はするという考えと全然逆じゃないですか。そこらの問題はどうですか。それはやっぱり政治と即位とは、これはまた違いますよ。そこら、総理自身がいろいろな形で対話をすると言いながら対話をぶち切っておられるんですよ、日本政府のやり方は。この辺について、総理、どうですか。
  319. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これはできるだけ政治対話はしたいというので、私自身もヨルダンでイラクのラマダン副首相と直接会って話をし、大統領にも直接私の意向は伝えてありますし、その後もここで具体的に一々つまびらかにしませんけれども、いろいろな政治対話を続けていこうという努力を今行っておる最中でありますから、どうぞお見守りをいただきたいと思います。
  320. 宮下創平

    ○宮下委員長代理 これにて和田君、左近君の質疑は終了いたしました。  次に、遠藤乙彦君。
  321. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 私は、湾岸危機の包括的政治解決と日本の役割という角度から、まず質疑をしたいと思っております。  イラクのクウェート侵攻、そしてその併合、さらに人質作戦ということは絶対に国際法上、また人道上許すことができない、もう当然のことでございます。しかしながら、大事なことは、どうやってじゃ現実にこの危機を解決していくか、これを十分に知恵を出して討議することが何よりも大事じゃないかと私は考えております。この臨時国会におきましても、この国連協力法案を中心に中東貢献策ということでずっと議論が行われておりますけれども、これはあくまで一部の議論にしかすぎなくて、その根本はどうやってこの湾岸危機を解決するのか、そして日本がどうそれに貢献するかということをまず考えなければならないと思っております。  そこで、まずこの湾岸危機の解決ということを考えますと、軍事的解決か政治的解決か、二つし かないのだろうと思っております。しかしながら、この軍事的な解決は断じて避けなければならない、どんなことがあってもあってはならないと考えております。これは恐らく総理も同じ考えだろうと思っております。  軍事的解決に乗り出した場合には、まず人質を含めて多数の人命が犠牲になる、特に砂漠の戦闘が行われれば何万という犠牲者が出るであろうと言われております。また、世界経済にもはかり知れない悪影響をもたらすであろう。さらには、一時的には解決があったとしても、長期的にはこの中東地域により大きな不安定性を持ち込むことでしかない。こういったことを考えますと、何としてもこの軍事解決は避けなければならない、政治解決をすべきであるというかたい決意で我が国も臨むべきであると思っております。  まず、この点につきまして、総理の所信をお伺いしたいと思っております。
  322. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 委員の湾岸危機に対する見方、その解決への御希望というのは私は全く正しい方向性だと思います。同時に、私自身もそれをしなければならぬと思っておりますし、恐らく世界のイラクを除くすべての国々というのは、それと同じようなことを心から願っておるのではないでしょうか。私自身が中東の国々を回って首脳と直接話しましたとき、すべての人が今の状況の先行きに非常に大きな懸念を持っておるのです。平和の破壊がクウェートで一たんとまった、サウジに抑止線が張られて、そこにいろいろな国が出ていって、もうこれ以上平和の破壊はいけないぞと言ったことについて、そのときはほっと救われたような気持ちになったそうですが、しかしこの膠着状態がこれから先行きどうなるんだろうか、この深刻な懸念を解くために粘り強く話し合いによって平和的な解決をしてほしい、絶対にこれ以上武力に頼ってこの問題を片つけようとしてくれるなというのが一致した願いでありました。  また、中東へ参ります前に、ニューヨークでアメリカの大統領、カナダの首相、フランスの大統領、イギリスの首相、いろいろな方々があそこに来ておりました。私もなるべく多くの方とお話もしました。国連事務総長とも話し合ってきました。けれども皆さん版で押したようにおっしゃることは、これは平和解決をしなければならぬ、そのために粘り強い努力をしなければならぬ、国連の決めた経済制裁の効果を高からしめるためには、どうしても今みんなが力を合わせてこの効果が上がるようにすることが大切である、そして原理原則に従った解決が大事だということを皆が言っておりました。私もそう思っておりましたので、途中イラクのラマダン副首相と対談しましたときもそのことを中心に、そして局面が転回できるのは、そのかぎを持っているのは今イラクだけですから、イラクが勇気を持ってクウェートから撤退をするという行動によってこの局面を変えて、話し合いの方向に大きく前進していくことを強く要求をしてきたところでございます。
  323. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 総理の御決意のほどはわかるのですが、やはり政治家として大事なことは、我々は心情倫理の世界に生きるわけではない、あくまで責任倫理の世界に生きるわけであって、結果を出す、いかにしてこの解決に導くかということが大事なポイントではないかと思っております。私は、そういった意味では、我が国もこれからいわば新思考といいますか知恵を出していく、自衛隊を出すことよりももっと知恵を出すことに頭を使えということが大事だと思っております。  ソ連の場合は、長いこと軍事力を中心にやってきました。しかしながら、ゴルバチョフ体制になって以来、軍事力ではなし得なかったことを新思考によってなし遂げた。東西冷戦の終えんあるいはまたペレストロイカへの世界の支援ということも、ゴルバチョフ大統領の新思考によってこれはなし遂げられている。また、ノーベル平和質のおまけまでついたわけですけれども、やはり我が国の場合、ポスト冷戦時代、そしてまた世界第二位の経済超大国となって、今の我が国に必要なのは、この我が国のつくった経済力をいかにして世界の平和を構築していくための政治影響力に転換していくか、この知恵を出すことが最も大事なことであって、これこそが我が国が最も評価され得る貢献策と思う次第でございます。  そういった角度からこの湾岸危機の包括的政治解決ということでお伺いをしていきたいわけでございますけれども、私の考えますに、この政治解決を導くに当たっては三つの基本原則ということがあるのだろうと思っております。  一つは、国際社会の結束を維持していく。絶対に足並みが乱れてはならないし、またイラク側に乗じられてはならない。あくまで国際社会の結束をいかに維持するかということだと思います。しかしながら、その結束の中においていろいろな国がそれぞれの役割分担をすることはむしろ大いにすべきであろう。例えば、アメリカ、イギリスは抑止を担当する、日本やソ連やフランス等は政治解決を担当する、そういった全体の中で分業に基づく協業体制といいますか、そういったものをしっかりつくるということがまず大事じゃないかと思っております。  それから第二に、抑止と対話のバランスということではないかと思っております。分権的な国際社会、統一的な権力がなくて、軍事力が統一的にそのもとにあるわけではない、こういった世界にあっては、やはり軍事的な要素というものは平和維持のためには否定できないかもしれません。しかしながら、二十世紀における歴史の教訓というものは、いわゆる平和を維持するためには、抑止と対話のバランスをいかに維持するか、これが非常に大事な二十世紀の教訓だと思っております。抑止なき対話も戦争を抑えられない、また対話なき抑止もそういった戦争を抑えられない、これが教訓だと思います。  例えば、非常に大ざっぱに言えば、第一次大戦の場合には対話なき抑止というものが戦争を起こしてしまった。各国は十分な軍事力を持っていたけれども、一たん戦端が開かれると、対話のメカニズムを欠いたために、あたかも機械仕掛けのように戦争に発展したということ。他方、第二次大戦においては、今度は逆に抑止なき対話というものがまた戦争を起こした。英仏が融和政策といいますか、抑止の決議なしに、準備なしにナチズムに対して融和政策をとったことによって予想外に大きな戦争になってしまった。やはりこの抑止と対話をいかに維持するかということこそが二十世紀の歴史から学ぶ重要な教訓であろうと私は考えております。  そういった意味で、このイラクの湾岸危機の解決、そのためにもこの基本定理はもう一度見直されねばならないかと思っております。例えば、この成功例としては、七九年以降NATOが展開した対ソ二重戦略、これはやはり非常に成功したんだろうと思っております。ソ連のSS20のミサイル展開に対してパーシングIIや巡航ミサイルを展開して抑止を強化するとともに対話を進めて、首脳会談が次々と進んで、結局はゴルバチョフ体制の登場を促して、今日東西冷戦の終えんに導いた、これは非常に抑止と対話の成功の例として見るべきだと思っております。そういった意味から、イラクに対してもいかに抑止と対話を維持するかということだと思っております。特に現在の時点では余りにも抑止が強く出過ぎている、もう少し対話というものをどうやってここに導入するか、これがこれからの大きな国際政治上のポイントではないかと私は考える次第でございます。  それから第三番目に、ちょっと長くなりますが申し上げますと、そのタイミングですね、適切なタイミングを過たない、これが大事なことだと思います。包括的な和平提案というものを出すにしても、早過ぎてもいけない、遅過ぎてもいけない、ちょうどイラクがそういった状況にあるときに世界が一致して和平提案を出す、それによって何といいますか解決を導く、政治の最も大事なことはそういったタイミングの選定ではないかと思っております。その点で、何といいますか、制裁がどの程度効果があるのか、こういったことを十分に分析していく必要があるのではないかと思ってお ります。  いずれにしましても、そういった原則の上に立って、これから我が国がどうやってこの湾岸危機の解決に政治的イニシアチブを発揮するか、私は必ずそれはできると考えておりますけれども、まず質疑をしていきたいと思っております。  まず、ミッテラン大統領の提案ですね、国連総会で出したミッテラン提案、これの政治的ニュアンスというものをどう評価するか。提案そのものにとどまらず、ああいうタイミングで、ああいう大統領が、ああいう場でやったこと、そしてまたその水面下のフランスの動きも含めて、ああいうフランス外交におけるミッテラン提案、これをどのように評価するか、総理の御所見を伺いたいと思います。
  324. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 貴重なお考え方を承りまして、私も同感できるところも多々ございます。というのは、国際社会の結束維持が第一に大切だとおっしゃること、これからはせっかくの、冷戦が発想を変えて、おっしゃるようにペレストロイカになって、欧州で成功したのは、やはり抑止と対話とともに、体制とそれから経済の競争が勝負がついたということでありますから、なお欧州の場合は平和と安定が強固になっていった。私はそう見ておるわけでありますけれども、いずれにしましても国際社会が結束して、平和と繁栄を求める方向に世界の歴史が動いておるということ、それは事実でありますし、また、今回のようなときには抑止と対話、おっしゃるようにあれ以上の平和の破壊が行われないようにいち早く展開された多国籍軍、特に最初に抑止力を張った米軍の行為なんというのは、あの地域の安定のためには非常に役立ったものであったと評価しましたが、それは最初に申し上げたとおりであります。  その次に、今お触れのミッテラン大統領のあの場所のあの時期の提案をどう思うか、こういうことであります。それはイラクの方の意見をいろいろ聞いておりましても、ラマダンさんも私に二時間の中でその大半を割いて説明されたことは、大きく要約すると二つであって、これはアラブの問題だからアラブだけでやるからアラブ以外の人はちょっと待っていてほしい、アメリカもヨーロッパも、そしてアラブだけでやる、これがまず第一。それからもう一つは、クウェートの問題だけじゃなくて、アラブにはパレスチナ問題というのがあるんだ、これと一緒に片つけようではないかという角度の説、この二つが非常に時間をかけて私にも言われたことでございました。  そのとき私は、アラブの中で片つく可能性があり、そういったことが見られるなれば、それはお任せしてもいいと思うが、今やこれは国際社会の問題になったし、アラブの首脳会議はだめであったし、侵攻直前のジェッダにおけるアラブの首脳会議でもいろいろあったようだ、ですから、アラブだけでは無理だと思うから国連がとうとう決議をし、平和の破壊者と決め、これは許されないと決められたんだから、まず局面転回しなければならないのはあなたの方で、これはアラブだけというわけにはもういかない、国際問題になっておるというのが一つ。もう一つは、恒久的にパレスチナ問題を含むアラブの問題、いろいろあることは知っていますが、委員御承知のように、あのころの国連ではミッテラン大統領もああいった演説をいたしましたが、冒頭ではクウェートからの撤兵とクウェート正統政府をどうするか、クウェート人によるきちっとした政府の復活が要るんだ、それが大前提で、それが行われてから次のテーマに入っていらっしゃる。同じころブッシュ大統領も演説をやって同じようなことを言って、完全に撤退をしてクウェートの正統政府ができて人質が帰る、これは国連決議の中に示されている問題ですが、それさえイラクがやれば、イラク・クウェート紛争という言葉までアメリカの大統領は国連で使って、イラク・クウェート紛争もそれからパレスチナ問題を含むアラブ・イスラエルの問題も、恒久平和のためにさまざまな機会が提案されるだろうというようなことを言っておる。みんな同じような考え方で、原則をきちっと踏まえて、まず国連決議の精神に従ってイラクが局面転回すればその先はあるんだ、こういうことなんですね。それは今おっしゃる、まさに抑止の次の対話というやつですね。  私もラマダンさんに言ったことは同じようなことでしたが、日本は恒久平和についてはこれは前から言うべきことは言っておるわけでありまして、イラクの立場から見ればイスラエルが占領地から帰らないのは、この問題も一緒にやれとおっしゃるが、もう国連二四二号決議で日本は、占領地からの撤退、パレスチナ国家の問題を含むパレスチナ問題の解決、そのかわり、イスラエルという国も認めないと言っておらないで、イスラエル国を承認するということもアラブやいろいろなところは認めるべきである、これを盛んに言ってきました。私が就任して以来、PLOのアラファト議長も、もうテロはやめる、そしてイスラエルの存在を認めるというふうに路線転回をするということを、事前に連絡でわかったんです。それじゃ政府の賓客として招きましょう。呼んで、そのような恒久平和についての話もした経緯もあるわけですから、そういう話し合いの機会というのはいろいろ出てくるだろうと思いますし、出たときはまた日本日本として恒久平和にも協力もしていきます。  同時に、日本とイラクの関係は御承知のように非常に大きな関係があって、約七千億円イラクは日本に今債務があり、日本は逆に言うと債権がある。そういう混合借款の使い方の問題についても前日の八月の一日までいろいろお話し合いをしておるさなかの突然のこういう暴挙で皆すっ飛んじゃったわけですから、もう一回局面を変えて、国際社会に帰ってもらったらイラクと日本の関係を再構築していく用意がありますよということは我が方からも時々申し上げておるし、直接も行ってこのことはフセイン大統領にも伝えてもらいたい。これは日本としてもいろいろ対話の窓口も場も開いていこうとしましたら、引き続いてそういった対話は日本とはしていきたいということでありますから、その後もあらゆるレベルを利用して対話を続けていこうということで努力を続けていくつもりでございまして、御指摘のように抑止と対話のバランスをうまくとって、絶対に平和的解決で片つけなければならぬという質問の基本的な御趣旨は、私も全くそのとおり賛成でございます。     〔宮下委員長代理退席、委員長着席〕
  325. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 対話が大事だということは総理理解のとおりだと思うのですけれども、現実に総理が果たして本当に対話路線をやってきているかということは非常に疑問がある、私はそのように感じております。  先ほども社会党の同僚からも指摘があったと思いますけれども総理の言葉と現実においてはかなりギャップがあるのではないかというのが我々国民の率直な印象でございまして、少なくとも、イラクとの対話を重視するといいながら総理の場合は四回にわたって対話をミスしている、そのチャンスを失っているのではないかと考えるわけですね。第一回は、紛争勃発直後に中東訪問を取りやめたこと。せっかくのチャンスだったと思うのですけれどもね。それから二回目は、ラマダン副首相が日本に来たいというときにこれを断った。これはどんなことをしても迎えた方がよかったのではないかと思っております。それから三回目に、総理が中東に行かれたとき、イラクへダイレクトに行かずに周辺国でとどまってしまった。一番大事なイラクとの直接対話、できればフセイン大統領と対話をしてほしかったわけですけれども、その機会を逸した。四つ目に、先ほど指摘があったように今回の即位の礼、最高の対話の、あるいは水面下の外交のチャンスだったと思うわけですけれども、それを日本側から否定してしまったということは非常に大きな問題ではないかと思っております。  特に即位の礼につきましては、どういう御判断だったか知りませんけれども、私たちは三つの点で問題がある。一つは、およそ即位の礼という大 変おめでたい国民的、国家的な慶祝行事を国際政治の具に使って、不快感の表明をするというのはいかがなものかということが一つ言えると思います。それからもう一つは、今も述べましたけれども、絶好の政治対話の機会であったのに、なぜこれをわざわざつぶしたのかということ。それから三つ目に、こういうことはやはりイラクの自尊心をいたく傷つける。必ずそれが我が人質の上にもいろいろな取り扱いとなってはね返る、こういったことを考えなかったのかということなわけです。  こういった点につきまして、総理の所見をお伺いしたいと思います。
  326. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 いろいろ私の行動に対して御批判があることは率直に受けとめさしていただきますが、私の方にも私の方のそれなりの考え方は率直に伝えてございますし、また、まず第一の、あの直後になぜ行かなかったかということでありますが、中東と長い間行き来がなかったものですから、久しぶりに行かなきゃならぬということで決めたその態度と、あのように暴力によって侵略、侵攻したという極めて一触即発というような厳しい状況のあるところへ、久しぶりでしたと言って菓子折り提げていくような、そんな心情、雰囲気ではなかったものですから、これは外務大臣にかわりに行ってもらって、私はどのようなことにしてこれの抑止と対話を達成することができるだろうかということに重点を置きましたし、また、私は、ラマダン副首相が私に面会を求められて、断ったということはございません。それは全くございませんから、私はいつでも会えるところでは会いたいという気持ちを持っておりましたので、二番目の点はちょっと誤解ではないかと思いますし、三回目の点も、私が出発してから向こうからのそういう次官の接触がありましたから、じゃそれはお話をしたい、積極的にお受けをして話をしてきて、言うべきことは言ってきた、こういうわけでありますから、今後もそういう機会を最大限に生かしていきたいということであります。  また、御即位の礼とか北京大会というのは、これはおっしゃるように非常にお祝い事であり、明るい祭典のはずでありますから、そういうときに、どういう判断があるにしても、例えばそれなればそういうところへは、やはり日ごろの仲よくやっていこうという明るいムードのところの会ですから、スポーツの祭典でも即位の礼でも、やはり人道上、国際法上、それは局面打開して来ていただけるなれば一番ありがたいことでありまして、いつでも歓迎をしたいと思いますが。
  327. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 済んだことをとやかく言うつもりはないのですけれども、さてそこで、恐らく湾岸危機は特にアメリカの中間選挙以降急速に政治解決に向かって焦点が動くのではないかという気がいたしております。そこで、ミッテランの向こうを張るわけではありませんけれども世界が注目するような湾岸危機の包括的政治解決に関する海部提案といったものをお持ちかどうか、それをお伺いしたいと思います。
  328. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 先ほどお答えしましたような骨組みで、私は現在の局面を転回して人質問題を解決できれば、恒久平和のために、パレスチナ問題を含んで、二百四十二号の趣旨に従った恒久平和のための国際会議は、日本としても積極的にこれは提案をして協力していくことが、あの地域の完全な和平につながっていく問題でありますし、それはもう国際的に一緒にやります。日本自体としては、きょうまでの技術協力経済協力の関係は一番深かったはずでありますから、先ほどちょっと数字も挙げていろいろ申し上げたり、向こうの要求に応じて話をしておる点もあるわけでございますから、それの再構築のための話し合いは続けたいという気持ちは、向こうとも共通の認識を私と副首相の間では持っておりますから、それらのことについてもこれはきちっとレールに乗せてやっていくことができるようになるでしょう、これは提案を既に伝えてありますけれども、そういったことをもう一回改めて申し上げてみたいと思います。
  329. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 私はこれからの湾岸危機の政治解決に向かって、現在ソ連やフランスが活発に動いておりますけれども我が国も、我が国でなくてはならない一役買うことができるんだろう、そういう切り口があるんだろうと私は感じております。それはいずれにしましても、イラクがなぜこういった挙に出たか、暴挙に出たかということを考えますと、いろいろあるのでしょう。  フセインさんがアラブにおける盟主になりたいとか、いろいろなことがあると思いますけれども、一つ大きな理由はやはり経済困難、イラクが抱えていた経済困難だと思います。特にイランとの戦争で疲弊して、八百億ドルにも及ぶ負債を抱えている。また、紛争以前の石油価格が低迷して財政収入が非常に低迷している、こういったいわば金に困って犯罪、悪事に出た、そういった面が非常に強いわけでして、本当の意味でこれからの平和解決を考えると、イラクを抹殺するわけにはいかない、またイラクと関係を切るわけにいきませんから、イラクにどうしたらもう一度正しい道に戻って更生してくれるか、そういったことを建設的に考えていくべきだと思います。  その点、私が思うのは、例えば日本の提案として、イラクが八月一日以前の状況に戻す、クウェートから撤退し戻る、それから全人質を解放することを条件に我が国がイラクの戦災の復興、それから今後の経済開発のために思い切った資金協力を行うといった提言はできないかどうか。あるいはまたイラクだけ対象とするのはぎらつくというのであれば、例えば中東平和開発基金というような中東全体にかかわるそういう基金をつくって政治解決の一つの要素にしてはどうかと考えるわけです。それも、やはり余りけちってはいけないわけで、やるのならばどんとインパクトのあることでやる必要があるわけでして、例えば今まで我が国は多国籍軍には二十億ドル、あるいは難民救済あるいは災害を受けた国には、含めて二十億ドル出しているわけですけれども、それと並べて例えば二十億ドルぐらいの規模でどんと平和基金というものを提案したらどうか。こういった考え方は恐らく非常に今の政治解決プロセスに一つのインパクトを与えて、触媒的な効果を持つのではないかと考えておるわけでして、我が国が今まで中東において手が汚れてない、またそういった中東諸国の、イラクも含めた中東諸国の今後の発展に十分な経済的な支援ができるという観点からすれば、こういう角度はぜひ研究してみる余地があるのではないかと考えておりまして、ぜひこれにつきまして総理の所見をお伺いしたいと思います。
  330. 中山太郎

    中山国務大臣 委員の御指摘の、イラクのサダム・フセイン大統領が今回クウェートに侵攻したその背景に、例えばイラクがイランとの戦いにおいて抱えた膨大な戦費、財政赤字それから国際石油価格の下落、この御指摘は全く私の認識と一緒であります。  そういう意味で、このイラクのサダム・フセイン大統領の暴挙は我々から見てもまことに残念なこと、これは全く一緒でありますけれども、今例えば御提案ございましたようなアラブ世界、例えば中東地域全域が抱えておるいわゆる累積債務といいますか、千六百五十億ドルぐらいに上るのではないか、ジョルダンの皇太子から私直接お話を聞いております。  そういうことで考えていくと、この地域全体の紛争後のいわゆる経済開発といいますか、この地域の新しい時代をつくるということに日本経済国家として、御指摘のように、例えばこの中東の平和構想に対してどういうふうなファウンデーションをつくるか、国際的なつながりを持っていくかということについては貴重な御提案であると私も認識をしておりまして、政府としてもそのようなことも十分これから検討しなければならないと考えております。
  331. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 ぜひともそういった方向で検討をお願いしたいと思っております。  続いてもう一点ですが、我が国の対中東政策のスタンスと日米関係という問題があるんだと思います。  現在我が国は、国際貢献をめぐって非常に、特にアメリカからの強い要求のもとに、何といいますか苦境に立たされているんだろうと思っておりますけれども、やはり今までの我が国の中東政策というのはアメリカとは一線を画して独自のスタンスがあったわけで、そういった独自のスタンスのもとに、イラン・イラク紛争のころは我が国もイランとの対話のパイプを持って非常に大きな一定の役割を果たしてきたのだと思うのですね。今回の問題によって余りにもアメリカの要望といいますかそれに引っ張られ過ぎることは、我が国の今までの対中東政策のスタンスを非常に損なう、せっかくつくった財産を損なうような面もあるんではないかと思っておりまして、もちろん日米関係の重要性は言うをまたないわけですけれども、しかしながらアメリカの言うことも常に正しいとは限らないわけで、我が国として中東問題はどうあるべきかという視点からアメリカにもっと言うべきことは言う、本当の意味での同盟国としてお互いに率直な意見を言う、そういうことが必要ではないかと思っております。  また、今回アメリカから非常に圧力がかかってきた一つの大きな理由は、我が国の日米関係における対応のあり方、これが非常に問題ではないかと思っております。端的に言いますと、今、日本をやゆする言葉として、ツーリトル・ツーレート、少な過ぎる、遅過ぎるということが言われておりますけれども、まさにこれが日米関係の問題点を端的にあらわす言葉ではないかと思っております。もちろんいろいろあるんでしょうけれども、この日米関係、グローバル・パートナーシップと言われておりますけれども、いまだに言葉のみあって、日本が本当の意味でこのグローバル・パートナーシップを担っていこうという、そういった責任の意識あるいはビジョンに欠けるんではないかということは問題だと思います。特に、アメリカの強い圧力に対して日本が小出しの譲歩をしていく、しかもそれも非常におくれたタイミングでやっていくという、そういった対米関係のあり方というものが日米関係を非常に紛糾させているんではないか、アメリカから見れば非常にフラストレーションを感じて、さらに何といいますか日本に圧力をかけたくなるというような状況にあるんではないかと思います。  そういった意味でぜひとも今回の湾岸危機については、やっぱり日米関係、今までの経済摩擦のみならず平和協力についてもこういった日米摩擦というのは非常に予見されるわけでして、そろそろ我が国ももっと成熟した、政治的に成熟したそういう大国としての政策を持っていっていいんではないかと思うわけでございます。  この日米関係のあり方というものにつきまして、この点、大臣、御所見をお伺いしたいと思います。
  332. 中山太郎

    中山国務大臣 日米関係は日本の外交の基軸での大きな柱の一つであります。そういう意味で日米間の首脳同士が絶えず意思を疎通して、そしていろんな国際社会に対する共同作業といいますか、協力関係というものについて忌憚のない意見交換というのはやらなければならない。  実は私も就任してわずか一年三カ月ですが、ベーカー長官とは既に十一回外相会談をやっている。相当意見の交換は活発にやっております。しかし、委員指摘のように、これからいろいろと難しい問題が日本には振りかかってくる可能性も私は感じております。そういう中で、我々が孤立しないように、特にアメリカと意見を十分協議することは即またECとこれから協議もよくしていかなければならない、アジアの国々ともやっていかなければならないということで、日米関係の意見の交換というのは極めて重要であるという認識を持っております。
  333. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 それではぜひそういう方向で、今後もっともっと日本が国際的な視野を持った政治指導を行っていただきたいということを要望したいと思っております。  続いて、この国連平和協力法案に関する問題点ということで質疑をさしていただきたいと思いますが、まず、この法案の今後の処理についてお伺いしたいと思います。  この法案、随分紛糾をしておるわけでございますけれども、客観的に見れば評価すべき点もあるわけです。いろいろ平和協力業務とかあるいは難民救済、医療協力、その他今後日本として単に物、金のみならず人の面で貢献しなければならないということはもう国民すべてが感じていることであって、この点には恐らく異論がないはずなんですが、ただこの法案の問題点は、私なりに整理しますと、本来の平和協力業務と言える部分、PKOとか難民救済あるいは医療協力、そういった部分と、もう一つは戦争協力といった部分、またそれは言葉が過ぎるとすれば武力行使協力する部分、これが混在している。特に後方支援業務、それから自衛隊をそれに使うという、こういった戦争協力業務が混在していることが大きな国民の反発を招いているということをぜひ御理解いただきたいと思います。  特に、こういった戦争協力業務あるいは自衛隊の出動に関連した部分は、今までるる議論してきたとおり、憲法上も随分疑義のある点でございますから、この際、オール・オア・ナッシングという議論をするのは私も非常に残念に思うわけでして、またそういったことをせざるを得ないように政府がそういった法案をつくっているわけでして、もう一度出発点に返って、日本国民のコンセンサスに従って、コンセンサスのできる部分からこの平和協力業務のあり方あるいはこういった協力隊の創設といったことをもう一度考え直してみる気持ちはないか、ぜひ総理にお伺いしたいと思います。
  334. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 この法律をつくりました趣旨というものは、決して戦争協力をしようというものでもありませんし、今の世界情勢というものは、もう従来の発想による国と国との戦争というものを想定できない状況になってきた。最近、おっしゃいましたように、これはソ連もペレストロイカをやって新思考外交になって、今まで米ソの対立、対決というのが世界戦争の火種であったわけですけれども、それがなくなって、米ソがともに参加しておる国連の安保理事会が機能するようになって国際社会の敵、平和を破壊するものという認定がなされるということは、これは従来の一国と一国の戦争とか、そしてまた武力でもって片つけるというのじゃなくて、今度の国連決議でもよく見ておっていただければ、これは平和の破壊だからもとへ戻しなさい、そのために経済制裁を国際社会みんなで一致結束してやっていきましょう、委員おっしゃるように、平和的に解決しましょうということで、戦争に移らずに膠着状態に入って、さあどうするかこうするかという努力が今ずっと続いておるわけでありまして、私は、国際社会が平和的に問題を片つけていこうという全く新しい姿かたちが今戦後四十五年たって初めて生まれてきたのではないか、こう見ております。  これは思想やイデオロギーを背景にした東西の対決が終わりを告げたからこそ初めてできるような場面であって、そういうときに一国が力が強いから弱いものをやっつけるのは当たり前だというような弱肉強食の時代を今後許してはいけないというので国際社会が立ち上がっておる。そういう国際社会経済制裁に対しては、事は国連の決議を受けてやっていることなのですが、経済制裁にしても、国連加盟していないスイスでもこれはやはり参加した方がいいというので自主的に参加をして、経済制裁で反省を求めていく。もう新しい、昔の大砲の弾とか戦車の進軍によって片をつけようというようなことから、国際社会みんなでこれが許されるか許されないかを決めて平和的に片つけていこうというのが世界の大きな希望の持てる流れだと私は思っておりますから、そういう国連のいわゆる一連の行為に対してその実効性を高めて、もう二度と再び力でやられることはやむを得ないといって許してしまったり、それを認めてしまったりしたのでは、世界の新しい秩序も絶望的になりますから、こういったことは許されない規範であるということを、冒頭委員もおっ しゃったように、国際協力の中できちっとみんなが決めていこう。そのためには抑止は抑止、対話は対話、いろいろ例を引いて大変わかりやすく御質問いただきましたけれども、そういったようなことに対して日本は武力の行使をしないで、武力行使を伴わないで、できる限りの協力をすることが大切ではないかという発想でつくった法案でありますので、どうぞその考え方もお認めをいただきますようにお願いしたいと思うのです。
  335. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 総理はよく我が国が歴史的転換期であるということをおっしゃいまして、私もそれは同感なんですけれども、特に今回の事態が、我が国が心の準備がないままに直面した問題であること、また憲法の問題も含めて原理原則にかかわる問題になっているわけでして、こういった重大な問題をなぜこう拙速にやるかということは非常に疑問を感ずるわけです。やはり国民のコンセンサスのできるところから原理原則にかかわる部分を十分に考え、態勢を整えながら一歩一歩やればいいのではないか、そのように感ずる次第でございます。その点については余りもう議論をするつもりはありませんので、先に進みたいと思っております。  ひとつ総理にお伺いしたい点なんですが、よく最近、アマコスト大使があっちこっちに行きまして提起している問題、それは、日本国際社会の正義や自由のために血を流すことはしないのかということをあっちこっちで言っているそうでございます。これはある意味では非常に核心をついた問題提起であるかとは私は思っております。考え方としては、一つとしては、やはり日本としても国際社会の正義や自由のために、突き詰めていけば血を流すこともやむを得ない、そういう用意を持つべきだということに考えるのか、あるいは、そういった国際社会の正義、自由という名のもとに随分過って血が流された、特に憲法九条の精神はそういった反省を踏まえてつくられたものであるということで、そうあってはならないと考えるのか、この点につきまして総理の率直な信念というものをお聞かせいただきたいと思います。
  336. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 アマコスト大使が何を言って歩いておるか私は知りませんけれども、私のところへは直接言ってこられたこともありませんし、それは当然のことだろうと思います。  私はこの平和協力法案を提案しますに当たりまして、やはり大原則として武力の威嚇、武力の行使をしないということを大前提に置いておりますこと、同時に、国連の平和維持活動あるいは国連決議の実効性を高めるためのいろいろな行動、そういったものに協力をしていこうということでありますから、何と言われてもやはりそれは日本の守るべき一線というものはあるわけでありますから、したがいまして、初めから血を流すことを予想して、血を流す可能性の非常に強いところへどんどん行けというような発想で業務協定その他をやっていこうという気持ちは毛頭ございません。
  337. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 やはり総理、もう少し突き詰めて物を考えていただきたいというのが私の気持ちでして、国連協力法案あるいは現在日本が置かれた立場というものを突き詰めていくと、まさに国際社会の正義や自由を守るためには日本人としても血を流すこともやむを得ないかどうかという、この根本的な問題点にどう答えるかということがなければ安易に進めない問題だと思うのですね。ぜひこの質問にもう一度答えていただきたいと思います。
  338. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 委員最初おっしゃったように、委員自身が私に第一問で、戦争になったら血が流れて世界じゅう大変なことになるから、この湾岸危機はあくまで平和的に解決するように粘り強く努力しろとおっしゃいました。私はその御見識は高く評価する、こう言いましたし、私もまさにそのつもりで全力を挙げて努力をしておるわけでありますし、中東諸国の人々も国際社会の人々も、今そのことによって、サダム・フセインによってクウェートに流されたあの問題、平和の破壊に対しては、平和的に解決して、血を流す解決をしてはいけないということでみんなが共通の目的を持って努力をしておると思っております。その努力を一生懸命にやっていくわけでありますから、どうぞ、あらかじめそういったことを想定しておらない、平和的解決のためにやろうというのが委員の御指摘であり、また私の考えでもございました。
  339. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 それで、もう一つ今回の法案の根本にかかわる問題ですから御質問したいのですが、総理憲法九条に対する基本姿勢、これは解釈論を申し上げるのではありません。憲法九条が厳然とあるわけですけれども、これを総理は、この歴史あるいはそのビジョンあるいは哲学としてどうとらえておられるかというのを伺いたいのです。  といいますのは、憲法九条というものを日本が、これができない、あれができないということの言いわけとしてこれを考え、肩身の狭い思いをしているのか、あるいは憲法九条というものが、かつて太平洋戦争において三百万の血を流し、あるいはアジアにおいては二千万の血が流れ、そういったことを踏まえて、人類の英知として、普遍的な価値として憲法九条が存在しているのか、どちらとして総理はお考えになっているか、その点につきまして所信をお伺いしたいと思います。
  340. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 この委員会でも何回か私は考え方を申し上げましたけれども、歴史の反省に立って、二度と侵略戦争はしない、軍事大国にはならないという平和主義の理念というものは、私はとうといものだと思っております。同時に、日本はそういった立場に立って日米安全保障条約を結び、日本の平和と安全を守る抑止力をアメリカ日米安全保障条約の中で託してきました。憲法前文にもそれは、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して生存を決意したと書いてあります。そしてその中で、「名誉ある地位を占めたいと思ふ。」と書いてあります。そういった我が国の理念や立場というものが、その後四十五年間、アジア・太平洋地域の安定と平和に貢献してきたこともこれは事実でございます。私は、そういう理念と立場日米安全保障条約のもとで守り抜いてきた日本の平和というもの、この価値は非常にとうといものであった、こう思っております。
  341. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 それでは、幾つか具体的な問題点につきましてお伺いをしたいと思います。  一つは、兵器の輸送に関連した問題でございます。  新聞報道によりますと、首相に近い政府筋が、理論上は核兵器や化学兵器の輸送も可能だとする見解を明らかにしたと言っておりますが、これは事実でしょうか。この発言は事実でしょうか。
  342. 中山太郎

    中山国務大臣 そのようなことを政府が正式に政府の意思として申したことはございませんし、第一、核兵器を輸送するということは、核兵器保有国は最高の機密でございますから、外国の艦船にこれを委託したことは今日までもございませんし、これからもない、私どもはそういうふうに認識をしております。また、日本国のいわゆる非核三原則を私どもはコンセンサスとして持っておりますから、そのようなことを我々の国が行うということも決してございません。
  343. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 これは事実の問題として政策の問題として聞いているわけではなくて、理論上の問題として伺っているわけです。理論上、この協力法に従って核兵器、化学兵器の輸送が可能かどうか、これをまずお聞きしたいと思います。
  344. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 お答え申し上げます。  この法案の三条二号でいろいろな協力形態を掲げておるわけでございます。その中の一つに輸送協力というものがあるわけでございます。法案上はこの輸送の対象物に制約があるわけではございませんけれども、ただ、武力の行使と一体をなすような輸送協力はこの法案上行い得ないわけでございます。これは二条の二項の方で、武力の行使に当たるような活動あるいは武力による威嚇に当たるようなものであってはならないという基本原則が明定されているわけでございます。  そこで、そのような輸送の対象物に制約は三条 の上ではございませんけれども、このような基本原則に照らしまして、現に戦闘が行われている場所への武器弾薬の輸送を行うというようなことを行い得ないのは当然でございまして、そのようなことはしないということを従来答弁申し上げているわけでございます。  ただ、核兵器につきましては、ただいま大臣が御答弁申し上げたとおりでございます。
  345. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 私が伺っているのは、理論的に排除されているか否かということを伺っているわけでして、政策としてしないということではないわけでして、もう一度この点につきまして、どういう根拠でそういうことを言われるのかお伺いしたいと思います。
  346. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ただいま申し上げましたとおり、三条二号の輸送業務の対象として法案上制約があるわけではございません。ただ二条二項におきまして、武力の行使あるいは武力による威嚇に当たるような業務は行ってはならないというところから、おのずと制約があるわけでございます。その上で、先ほど大臣から明確に御答弁ございましたように、我が国は非核三原則という国是を持っておるわけでございますので、そのような輸送は行い得ないということでございます。
  347. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 そうしますと、やはり非常にまだ問題点が残っているわけでして、武力の威嚇、武力の行使に当たらない輸送については、例えば戦術核兵器を輸送することもあり得るのではないか、そういう可能性がまだ残されているわけでして、これは非常にこの法案上問題ではないかと思うわけです。  そこで一つ申し上げたいのは、非核三原則というのは、持たず、つくらず、持ち込ませずということになっておりますけれども、今回新たに輸送という新しい分野が入ってきたわけですね。外国における輸送ということがあるわけですから、これに対しても我が国は非核三原則の精神を拡大して、非核四原則とでもいいますか、輸送業務にも核兵器を持たない、核兵器を運ばないという非核四原則にしてはどうかということを提案したいと思います。
  348. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 先ほど外務大臣より、我が国の非核三原則につきましては世界各国に周知されているということがございましたけれども、私どもは、大臣が言われましたように、核保有国が日本に、そのような非核三原則を持ちます日本に核兵器の輸送を依頼してくることがないと考えておりますけれども、万が一依頼がございましてもそれは拒否する所存でございまして、これはまさに先生御指摘の非核三原則の趣旨、精神に沿うものと考えております。
  349. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 非核三原則の趣旨に沿うものであれば、ぜひこの際四原則として明確にしていただきたいと思いますね。どうですか、この点は。四原則にしたところでそもそも一銭もお金はかかりません。予算は全然かかりませんから、大蔵省と協議する必要はないと思いますし、また、この持つ国際的なアピール効果は非常に大きいのだろうと思うのですね。ぜひそういった意味からも四原則とすることはどうかということを改めて申し上げたいと思います。
  350. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 先生から新しい用語の提案がございましたけれども、これは今私が申し上げましたように、非核三原則の趣旨、精神に沿うということでございまして、新たに用語をつくりますよりも、従来御説明しておりましたように、非核三原則、日本の国是でございまして、世界各国に周知されておりますので、まさにその趣旨、精神に沿って、依頼が仮にございましても、そういう依頼があるとは考えませんけれども、拒否するということを繰り返し申し上げておるわけでございまして、非核三原則ということの趣旨に沿うということで十分ではないか、こう考えております。
  351. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 これは趣旨に沿うというだけでは不十分だと思うのでありまして、やはり明確にこれは四原則として運ばないと、持たず、つくらず、持ち込ませず、運ばないということを明確にこの場で表明していただけませんか。
  352. 中山太郎

    中山国務大臣 我々の国が国際社会にこの非核三原則ということの原則を明示しておりまして、運ばないこともこの三原則の精神の中に十分含まれていると私は信じております。
  353. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 それでは、余り議論してもあれですから、今の御答弁、運ばずということも非核三原則の中に含まれる、そのように明言していただいたということを受けとめて、次の質問に移りたいと思います。  次は、一つ非常に基本的な問題になりますけれども、湾岸危機は国際紛争に当たるかということです。これは実は憲法との関係でございますけれども憲法九条には、武力の威嚇あるいは武力の行使は国際紛争解決の手段としては永久にこれを放棄するとありますけれども、そもそもこの湾岸危機は国際紛争に当たるか、これについてお答えをいただきたいと思います。
  354. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 私の方から国際法の観点からお答え申し上げたいと思います。  国際紛争という言葉に国際法上の一般的あるいは抽象的な定義があるわけではございませんけれども、通常、二つ以上の主権国家間で法律または事実につきましての意見の不一致でございますとか法的な見解または利害の衝突が見られる状態を指す意味で用いられているものと理解しております。  そこで、今回のイラクによるクウェート侵攻とその一方的併合でございますが、これはイラク対クウェートの国際紛争という面もただいま申し上げたような意味でございますけれども、それより基本的には、やはり次のような性格を持つものではないかと思います。すなわち、国連憲章第三十九条に基づきまして、国連安保理決議六百六十によりまして国際の平和と安全の破壊というふうにこの行為が認定されたものでございます。そして、このような事態に対しまして、国際社会がイラクのクウェートからの即時無条件撤退を実現するために累次の安保理決議を採択いたしまして、そしてこれを受けてこれらの経済制裁措置等を実施し、国際社会が一致協力してイラクに断固たる態度をとっている、こういう事態であろうというふうに考えております。
  355. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 要するにいろいろ御説明がありましたけれども、いずれにしても国際紛争であることには違いない、そのように受けとめてよろしいわけですね。     〔委員長退席、西田委員長代理着席〕
  356. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 簡単に申しますと、イラク対クウェートの国際紛争であるという面もございますが、それよりもイラク対国際社会の対決、イラクの侵略とそれに対する国際社会の制裁という関係の方が基本的な側面だろうと思います。
  357. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 それでは、法制局長官にも憲法上の観点から解釈をお願いしたいと思います。
  358. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの委員のお尋ね、湾岸危機は国際紛争か、こういうお尋ねでございます。実は、湾岸危機それ自身、今条約局長からお答え申し上げましたように、いわば国際的な場面におきます問題でございますので、憲法の解釈とこの場合におきまして直接のかかわり合いは必ずしもないかと思います。  ただ、お尋ねでございますので、憲法の九条の方のそういう観点の国際紛争というふうなのをどう考えているかというふうなことでお答え申し上げたいと思いますが、それは、従来も今の条約局長のお答えとほとんど同じでございます。要するに、国家間で主張の対立があって、その一国が自分の主張を押し出そう、押し通そう、こういうことで相互に紛争の状態にある、こういうことが憲法九条で言われている国際紛争、かように考えております。
  359. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 ほぼ共通の解釈だろうと思います。日本憲法第九条一項を素直に読んでみますと、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」こ のようにあります。素直に読むと、いかなる理由、大義名分があるにせよ、国際紛争を解決する手段としては武力を永久に放棄する、手段としての極めて厳しい自己規制があるのだろうと思っております。  こういった憲法の条文を素直に読むと、今回のこの湾岸危機、特に多国籍軍、サウジに展開する多国籍軍に協力をしていくこと、これはもちろん国際法上は認められたことであるかもしれないけれども憲法上の問題として少なくとも精神に反するものではないかと考えるわけですが、この点、長官、いかがでしょうか。
  360. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 憲法九条におきましては、「日本国民は、」ということで、途中省略いたしますが、「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」今委員指摘のとおりでございます。  その場合に、これは先日あるいは昨日にも繰り返しお答えしたところでございますが、我が国として武力による威嚇または武力の行使は行わないということでございまして、他国が国際社会の場におきましていかなる立場にあるか、これ自身は、日本憲法の守備範囲といいますかそういうところではないわけでございます。ただ、それにかかわります場合に、我が国が武力の行使あるいは武力による威嚇を行った、あるいは行う、行ったと見られる、客観的にそう評価される、これは許されないこと、かように考えております。
  361. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 この点につきましては、昨日議論もありました武力行使と一体か否かというこの一体性の問題につきまして、なお我が方としては非常に強い疑問を持っているわけでして、この点は留保して先に進みたいと思っております。  次の問いとしてお聞きしたいのは、これも理論的な問題としてお聞きしたいと思うのですが、他国の領土にある自衛隊に対して急迫不正の攻撃を受けた際に、協力隊は固有の自衛権を持つか、こういった問いに対してはいかがでございましょうか。
  362. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 平和協力法におきましては、これまでもしばしば総理からもお答え申し上げておりますように、そういう急迫不正な侵害があるようなことはないということでございますが、一般的に法理論的に申し上げれば、先ほどもお答え申し上げたところでございますが、我が国は、自衛権、個別的自衛権は持っている。しかし、個別的自衛権の発動は、いわゆる自衛権の発動の三要件として申し上げているところでございまして、我が国に対する急迫不正の侵害がある、それから、この場合にこれを排除する適当な手段がないこと、それから三番目として、もしその場合でも必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと、こういう三要件が自衛権発動のための必要要件だ、かようにこれまでも御説明申し上げているところでございます。で、そういう意味で、この三つの要件が満たされない限り自衛権の発動というのはあり得ないというふうに申し上げているところでございます。  ところで、今の御質問の場合でございますが、こういった要件を満たすかどうか、それは個別のケースで判断しなければならない事柄でございます。一概に申し上げるわけにはまいりませんけれども、一般的に申し上げまして、先ほどの場合は船の場合でお答え申し上げましたが、平和協力隊が攻撃されたからといって、直ちに我が国に対する急迫不正の侵害があったというところまでは言い切れないのではないか、かように考えます。
  363. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 そうしますと、外国の領土において自衛隊が侵害を受けた場合に、応戦ということはできるのですか。
  364. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 先生のおっしゃられる応戦ということの意味でございますけれども、いわゆる武力の行使のような、武力の行使に当たるようなことはできません。そういうことを意味しての応戦でございましたら、これはできないと申し上げるべきことだと思います。  それに対しまして、ここで先ほどからも議論がございましたように、いわゆる携行している武器で、危難を避けるために必要最小限度の、いわば正当防衛、緊急避難的な武器の使用ということであれば、これは事態によっては考えられないことはない。ただ、それはいわゆる応戦、通常言われるような意味におきます応戦というふうなものではございませんで、あくまでも護身、身を守りあるいは緊急に避難する、こういう限度において、言ってみれば、本来は回避すべきところでございましょうけれどもそのいとまがないというふうなときに限定されて認められる、こういうふうに考えております。
  365. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 重ねて聞きますが、そうしますと、そういったケースにおいては、例えば隊長の指揮のもとに組織的に対抗することはできない、個人個人として正当防衛の範囲で対応するしかない、そういうことになりますでしょうか。
  366. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 この法案の二十七条のたしか三項であったかと思いますが、いわば武器を使用することができる場合を限定的に書いてございまして、こういう場合でこういう限度でなければ使用することができない、こういうふうな書き方をしてございます。そこでございますのは、あくまでも主語は「小型武器を貸与された平和協力隊員は、」ということでございますから、言ってみればそこにおきます指揮官が一斉に撃てというふうなことではなかろうと思います。
  367. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 それでは、続いて多国籍軍につきまして少し質問をしたいと思います。  多国籍軍の定義、必ずしも明確なものはないようでございますけれども、外務省等の御説明によりますと、いわゆる多国籍軍とは、累次の国連安保理決議を受け、各国がイラクの侵攻地域からの撤退及び対イラク経済制裁措置の実効性確保のために、兵員、艦船等を湾岸地域に展開しているものの総称であり、派遣軍の指揮権は各国がおのおの持っている、こういった御説明があると思いますけれども、こういうことでよろしゅうございましょうか。
  368. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ただいま仰せられたような性格のものでございます。  確認いたしますと、いわゆる多国籍軍とは、累次の国連安保理決議を受けまして、各国がイラクによる軍事行動拡大の抑止及び対イラク経済制裁措置の実効性確保のために、兵員、艦船等を湾岸地域に展開しているものでございます。これは湾岸地域、ひいては国際社会全体の平和と安全の維持に積極的に貢献するものであるというふうに考えております。
  369. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 そうしますと、この多国籍軍というのは統一的な指揮権がないわけで、あくまで各国のそれぞれのボランティアとして集まったというふうに考えられると思うんですが、そうしますと、我が国がこの協力隊をサウジに送ったとした場合、それは多国籍軍に参加するとか協力するとかいうことではなくして、我が国協力隊自体が多国籍軍の一部として国際的には見られるのではないかということになるんだと思いますけれども、この点はいかがなんでしょうか。
  370. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 統一的な指揮系統がないという点はおっしゃったとおりでございます。これは各国の指揮のもとに展開されているわけでございます。  今度の法案との関係について申し上げますと、この法案のもとでは、三条二号に掲げられておりますようないろいろな協力業務を平和協力隊が行うわけでございますが、これには武力の行使あるいは武力による威嚇を伴うようなものは行い得ないわけでございまして、この法案のもとでこの多国籍軍のいずれかの国の指揮のもとに平和協力隊が入るというようなことはできないわけでございます。したがいまして、そのようなものに当たらないような協力であって、かつ武力の行使と一体とならないようなものに限っていわば外から協力するということだけができるということでございます。
  371. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 必ずしも明確な答えとは思いませんけれども、先に進ませていただきます。  この法案が成立したと仮定した場合に、この多 国籍軍に対して我が国として具体的にどのような協力を考えておられるか、できるだけ具体的にお答えをいただきたいと思います。
  372. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 この法律が施行されます時点での湾岸情勢あるいは国際情勢、そのときの必要性等を勘案して慎重に検討する必要があると思いますので、ただいま具体的な詳細について申し上げることは困難でございますが、例えば今のような状況が続いておりますと想定した場合に考えられます協力分野といたしましては、例えば何らかの輸送面での協力ですとかあるいは医療協力等が考えられるかと思います。
  373. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 非常に素朴な質問になるわけなんですけれども、多国籍軍に対して我が国がこの協力法のもとでいろいろ協力をしていくということですが、果たしてそういった協力がこの湾岸危機解決にどれだけ効果を持ち得るか、非常に基本的な疑問でございます。といいますのは、もう既にこの多国籍軍というのは抑止という点では十二分に目的を達していると理解されるわけでございまして、こういったところへ我が国がそういう協力隊を派遣したところで、どれだけ湾岸危機の解決になるのかという点。また、そういうことが対イラクとの関係では、我が国の今後政治解決に乗り出す上において立場を逆に閉ざしてしまう、そういった非常に政治的な意味があるわけでございまして、そういった点から考えて、どれほど一体協力隊による危機解決への効果があるか、それにつきましてお答えをいただきたいと思います。
  374. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 ただいまの御質問にお答えいたしますには、恐らくこういうふうに申し上げたらよろしいかと思いますが、実際の、今国連局長が仮定の問題としてお答え申し上げた輸送協力、医療協力ということ自体の実体的な意味もございますし、それからむしろ我が国が、そういう現在湾岸の平和を回復しようとして行われておる、つまり安保理決議の実効性を確保しようとして行われておる活動に参加するということ自体がそういう意味を持つことであろうと思います。
  375. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 そうしますと、非常に何といいますかノミナルな、名目的意味しか持たないということに私は理解するわけなんですが、実体的にこの湾岸危機解決にはほとんど効果がないというふうに理解できると思います。  そこで、今まで政府の御答弁をずっと伺ってきますと、この協力隊、必ずしもイメージが非常にまだ明確ではないのですけれども、恐らく協力隊のビヘービアに関して三原則とでも言えるようなものがあるんではないかと思うわけですね。一つは、協力隊は指揮下には入らない。それから二番目には、危険なところには行かせない、それから三番目には、戦端が開かれたらすぐに撤退する。これが恐らく政府答弁を集約した協力隊の三原則のようなものになるんだと思うのですがね。果たして、多国籍軍の側から見て一体協力隊は何だということになるんだと私は思うのですね。よく世上、お邪魔虫という言葉がありますけれども、それ以外の何物でもないんじゃないかというふうに感ずる次第でして、こういった中途半端な形で送るんであればむしろ我が国の評価を著しく傷つけるものではないか、そのように考える次第でして、そういうことであれば、こういった協力隊は送らない方がいいんではないか、そのように考えるわけですけれども、いかがでしょうか。     〔西田委員長代理退席、委員長着席〕
  376. 中山太郎

    中山国務大臣 国際社会といいますか、湾岸各国におきましても、私、回りましたときにも日本憲法というものをよく説明をしてまいりました。理解もいただいております。我々は、憲法の許す範囲の中で国際社会の一員として、この国際社会が一致してイラクのクウェート侵略というものを排除しようとしていることに日本ができるだけの協力をするということで、それだけの評価をいただけるものと私は信じております。
  377. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 必ずしもまだ協力隊ということではないにしても、医療先遣隊が先般行ってきたと思うのですけれども、新聞報道等によりましても、危険を回避するというこちら側の姿勢が非常に現地でも評価をされなかったということを伝え聞いております。やはりこういった今申し上げましたようないろいろな制約、余りにも中途半端な制約をつけた形で協力隊が行くことは、非常にむしろ評価を低めるんではないかと私は非常に危惧を持つ次第でございます。  そういった組織としての協力隊のビヘービアに対する制約とともに、もう一点私が指摘したい点は、協力隊の個人の資質に関する問題なわけです。といいますのは、今回協力隊のアイデアというのは人をまさに送るわけでして、人が現地の社会でどういう協力をし、どういう行動をするということですから、非常に我が国のイメージをこれによって決める要素になるわけでして、そういった意味協力隊員の資質というものは非常に問われなければならない。特にこういった形で人が直接飛び込んでいくわけですから、まずこういった協力隊員にはやはり高い志が要るんだと思うのですね。奉仕の精神といいますか、そういったことで高い志が要る。それからあと、そういった非常に異なった環境に、厳しい環境に送られるわけですから、そういった状況に耐えるだけの精神的、肉体的なタフネスといいますかね、これも非常に必要だ。さらに重要なことは、言葉の違う地域ですから、何といっても語学能力、それから人間とのコミュニケーション能力、こういったものがよほど備わっていないと、非常にむしろ誤解を招いたりトラブルを招いたりのもとになるわけでして、単に自衛隊を送ったからといってすぐにこれは間に合うわけではないわけでして、この人的な資質、そういうことは極めて真剣に考えて、十分な準備をして態勢を整えて出すべきではないか、こんな安易な形で協力隊員を出したら、むしろ物笑いになるんではないかと非常に私はこの点を危惧するわけでございますが、いかがでございますか。
  378. 中山太郎

    中山国務大臣 委員も長く外務省で御活躍をいただいてまいったわけでありますから、国際情勢には極めて明るい国会議員のお一人である、私はそのように認識をいたしております。  このような平和協力隊を出します場合に一番問題となりますものは、現地のいわゆる社会環境、それから言語の違い、また宗教上の差異、あらゆる文化の違い、そのようなものは当然そこにございますから、協力隊を出す場合には、外務省が中心となりまして、いかに相手の国に迎えられるか、歓迎されるかという問題が前提にあろうと私も考えておりまして、十分配慮をしなければならないポイントであると考えております。
  379. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 私が特に指摘したい点は、やはり拙速をぜひ避けるべきだというのが私のポイントでございます。いろいろその他の議論も今まで行われてきておりますけれども、特にこういった人的貢献ということは極めて重要な問題であって、よほど慎重に考えて対策をとっていかないと、むしろ非常に大きなマイナスを生むんではないかという面が危惧されるわけでございます。特にこういった大きな日本の将来にかかわる問題でございますので、ぜひともそういう明確なビジョン、明確な方針、態勢づくりを進めるべきであろうかと考えております。その上で、こういったことを国民的コンセンサスに従って一歩一歩、ステップ・バイ・ステップでやるのが正しいやり方だと私は感ずる次第でございます。  そこで、今回のこの法案の出し方、もちろんイラクの紛争という突発事態があったことは一つの背景にあるんでしょうけれども、やはりもう少し政府として国民にわかりやすい形で、もっともっと説得力のある形で、将来の展望を明確にした上で示すべきではないかと感ずる次第でございます。  特に、私は四点申し上げたいわけですけれども、まず、こういった「世界に貢献する日本」、最大の命題でございますので、もう少し、まず国民的コンセンサスの形成に全力を挙げるべしというのが私の意見です。具体的には官も民も含めていろいろなレベルで、例えば審議会あるいは臨調方式だとかいろいろなことをして、そもそも日本世界にどう貢献すべきか、何をなすべきかということを明確に議論をしてコンセンサスをつくっていくことがまず第一だと思います。  それから第二には、当然資金面での手当てが要るわけです。相当膨大な資金的なコストがあることは当然でして、これを避けるべきではない。具体的には、私の一つの提案として、今後日本としても世界貢献のための一つの目標をつくって、いわば世界貢献費とでもいうようなODAに類した目標を立てるべきではないか。その中には私はODAを含めていいんだと思います、ODAも世界貢献ですから。現在、我が国のODAの貢献度はGNPの〇・三二ですか、恐らく、それも含めて、例えばGNPの一%をODA、それから平和のための貢献、文化交流あるいはまたその他地球環境とか、そういった世界貢献の一つの目標としてやっていくべきではないか、そのように私は考える次第でございます。  それから三つ目に、人材の育成ということです。特にこれは重視したい点なんですが、これは人を出す話、やはり人が中心になっていかなければ本当の意味日本世界への貢献というのはできないわけですから、何よりも人材育成ということが大事だと思います。これもいわゆる本当に核になる専門家のレベル、あるいはボランティアのレベル、あるいはさらにNGOみたいないろいろなレベルでこういったものを、国民的なコンセンサスのもとに人材育成を図っていく必要があるんだろうと思います。こういった関連で、例えば今国際開発大学といったものも考えられておりますけれども、これに類した平和貢献のために活躍できるような、専門的訓練を与えるようなそういったコースも考えてもいいのではないかと思っておりまして、いずれにしましても、国全体を挙げて人材育成のコース、組織というものをしっかりと考えていくことが一つ大事だと思っています。  それから四番目に、法体系の整備ということでありまして、今回のこの国連協力法もその一端であると思いますけれども、もっと長期的な展望に立って、どういう方向に日本世界貢献するか、人的貢献をするかと明確なビジョンを立てた上で、拙速ではない形で十分に国民的コンセンサスを得てそういう法体系を整備していく。そのためには十分我々も協力することはやぶさかでないわけですから、ぜひともそういうやり方で進めていただきたいと考えておるわけでございます。  私はこの点で一つ感ずる点は、こういった国際貢献、人的貢献ということを考えるに当たって一つ非常に残念に思うのは、まだ日本の国内、日本社会に世界に通用するようなスケールの大きなボランティア活動家がいないということだと思うのですね。例えば、国際的に見ますと、言うまでもなくシュバイツァー博士、ドイツ人でありますけれども、アフリカの奥地で医療協力に当たった。あるいはまたナイチンゲール、看護の世界でクリミア戦争以来活躍をしております。あるいはまたマザー・テレサ、ユーゴスラビア人ですけれども、カルカッタの地で難民救済あるいはその医療協力に当たっている。あるいはまた、ノルウェー人ですけれども、ナンセンといった人物、難民問題に大きな道を開いている。あるいはまた、国際赤十字をつくったデュナン、これはスイス人でありますけれども、こういった本当に世界に通用する、世界から本当に尊敬されるようなスケールの大きな国際的な政治家といいますかあるいはボランティア活動家は日本にいない。これは非常に大きな問題でありまして、ぜひともこれからは、憲法の精神に沿っても、憲法九条というものを創造的に展開する上からも、ぜひこういう人材の育成にもっともっと力を注いでいくべきではないかと私は痛感をする次第でございまして、ぜひともこれにつきましては政府の御努力を期待をしたいと思っております。  次の質問に移りたいと思うわけですけれども、イラクが今回こういった形で侵攻をして世界に迷惑をかけているわけですけれども、またその関連において我が国が非常に、何といいますか中東における石油依存度が六割以上だということで、我が国責任あるいは負担分が非常に追及をされておるわけで、若干肩身の狭いような面もあるかもしれませんけれども、私が言いたいのは、こんなイラクにだれがしたということをもっともっと追及すべきじゃないかと思うわけですね。イラクがこのようになったのも、もちろんフセイン大統領のそういった野望があるかもしれませんけれども、やはりこういったイラクの軍事大国化を助長した関係大国の責任が問われるべきではないかと思っております。特に軍事的な、武器の面ではソ連が五割近くを占めております。また、フランス、中国、こういった国がイラクの軍事大国化、特に武器移転の点で非常に大きな助長をしておるわけです。またアメリカの場合にも、特にイラン革命に対するいわば抑止力としてイラクの軍事大国化を逆に黙認したといった面もあるわけでございまして、こういった点も追及されるべきではないかと考えるわけでして、何で日本がツケだけ回されてこんなに苦労しなければいかぬかということでございまして、イラクのこういった軍事大国化の責任というものを国際的にもっと日本として主張していいのではないかと思っております。  しかしながら、こういったことを後ろ向きに考えるのではなくして前向きに考えていく必要があると思うわけでして、その関連でお聞きしたいのは、発展途上国への武器の移転、これが非常に結果的には国際的な大きな紛争の根源になっているという認識があるんだと思いますけれども我が国は、こういった武器輸出三原則であるとか非核三原則とかを通じて憲法九条を具体的に展開をしておりますけれども、さらにこの憲法九条の平和主義というものを国際化していく意味において、例えば武器移転を国際的に規制をしていく、国連の場を通じてこういった武器移転を規制していくといったことをもっともっと真剣に考えるべきではないかと私は感ずる次第です。もちろん、この武器移転の問題は難しい問題があることは重々承知しておりますけれども、やはり日本がやらなければどこがやるんだということでございまして、まず我が国がその先頭を切るべきだと思います。  具体的な形としては、最初から法的な規制は無理かと思いますけれども、例えば武器移転規制に関するプレッジのような形、あるいはまたガイドラインみたいな形で、一歩一歩こういう国際的な武器移転の規制に我が国が急先鋒として役割を果たすべきではないか、そのように感ずる次第でございますけれども大臣の御所見を伺いたいと思います。
  380. 中山太郎

    中山国務大臣 いろいろときょうは大変貴重な御意見をちょうだいしたことをまずお礼を申し上げておかなければならないと思います。  私どもは、国連におきまして、日本のいわゆる武器輸出三原則、これも明快に先般の国連総会でも申しておりますし、今委員指摘のように、核を初め生物・化学兵器の移転等につきましては、製造も含めてこれの透明度を高めていく、そして移転に関するこの透明度も高めて、できるだけ国際社会に武器が移転されないように、また、その生産がふえないように我々は努力をしていかなければならない、このように考えております。
  381. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 ぜひそういった御決意とともに、具体的なアクションを起こしていただきたいと思っております。この点はぜひ大臣にも強くお願いをしたいと思っております。  さらに何点かお聞きしたいわけでございますけれども、今度は若干防衛庁にお聞きしたいと思っております。  輸送艦、補給艦、特に補給艦が今、今後の重要な役割を果たすというふうに考えられておりますけれども、補給艦に対するミサイル攻撃があった場合、どうやってこれを防ぐんだという基本的な問題があるのだと思うのですけれども、この点につきましてちょっとお聞きしたいと思っております。
  382. 日吉章

    ○日吉政府委員 先ほどから再三申し述べておりますように、平和協力隊の平和協力業務に参加いたします自衛隊の部隊等が外国からのミサイル攻撃を受けることが見込まれるような状況のもと で、自衛隊の部隊等に対しましてこのような業務に参加を求めるような要請があるというふうには考えられないわけでございますが、お尋ねでございますので、現実に参加することが予想される自衛隊の部隊等の能力を見ましても、例えば補給艦には、先ほどもお答えいたしましたようにけん銃、小銃、散弾銃、機関銃が搭載されているだけでございまして、それが搭載されているとしましても、これをもって委員ただいまお尋ねのような外国からのミサイル攻撃に対し応戦をなし得る能力というものはないわけでございますので、極力こういう事態を回避するということに終始せざるを得ないのではないか、かように考えております。
  383. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 極力回避するということでございますけれども、現実的にイラクのミサイル能力、これは「ミリタリー・バランス」によりますと、アル・フセインというのは射程六百キロ、あるいはアル・アバスというのは九百キロ、あるいはイラクはエグゾセ・ミサイルを保有していると言われております。特にこのエグゾセ・ミサイルの場合は、かつてのフォークランド紛争におきまして、アルゼンチンがこれを用いてイギリスの新鋭駆逐艦であるシェフィールドを一撃のもとで撃沈したということもあるわけでして、現実に大変これは危険性を伴うものだろうと思っております。  現実に、例えば物資協力の場合、船がダンマムまで行っておるわけですから、これは当然射程の範囲に入っておるわけでございまして、こういった現実の危険を考えると、本当にこの補給艦というものを使えるのかどうかということなんですけれども、この点もう一度お聞きしたいと思っております。
  384. 石川要三

    ○石川国務大臣 先ほど官房長からお答えいたしましたとおり、とにかくまずそういう危険ということは、まず私どもは現在の段階においてはそういうところへは輸送はしないという、そういう前提に立っておるわけであります。  しかし、そうはいっても、先生が御心配されるような、現実問題としてはそれは絶無とは言えないわけでありますから、そういうことの上で答弁をするわけでございますけれども、先ほど来官房長が言ったように、所持している武器というものはまことに散弾銃ぐらいが精のいっぱいでございますので、とても応戦能力に立つものではございません。ですから、それ以上のことはもう安全な地域にこれが回避する以外にないわけでありますけれども、そういうわけで、それ以上の私どもは前提には立っておらないわけです。  先ほど左近先生の質問のときにもお答えいたしましたように、今回自衛隊が平和協力隊として参加する場合の船ですね、要するに輸送する補給艦というものは、これはもう武力の行使あるいはそれによる威嚇というもの、全然それは前提にないわけでありますから、したがって協力隊としての業務に携わる限りそれ以上の武器は持たないということが前提としてありますことを重ねて申し添え、そしてくどいようでございますが、極めてそういう近代的な交戦に対しては戦い得ない、こういう状態であります。
  385. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 もう一点、今度は大臣にお聞きしたいと思うのですが、やはりアジア諸国の懸念ですね、この法案に対する懸念、これは非常に深刻なものがあると思います。まず韓国それから中国から強い懸念が表明されていると聞いておりますけれども、中身につきましてひとつお教えいただきたいと思います。
  386. 中山太郎

    中山国務大臣 韓国、中国から懸念が表明されているという電報は読んでおりますけれども、具体的にどの点がどうだというような指摘はありません。  私どもの認識の中で、この法案については中国の外相から私に対して、慎重にこれをやってもらいたい、この法案の作成に当たっては慎重にやってもらいたいというお話を直接ニューヨークで聞いておりますし、韓国の外相から私は直接聞いておりませんが、先日、いわゆるソウルにおける日本の大使と韓国の外務省との間でいろいろとこの法案の説明が行われている、こういうことを認識いたしております。
  387. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 私はぜひ指摘したい点は、アジア諸国の懸念を過小評価すると大変なことになるということをぜひこの機会をかりて指摘したいと思っております。  といいますのは、太平洋戦争においてアジアで二千万の血が流れております。特に韓国、中国その他のアジア諸国に我が国がかけた迷惑というのははかり知れないものがあるわけでございまして、日本人というのはすぐ簡単に水に流すと言いますけれども、彼らにとっては到底水に流せない、そういった思いがあるわけでございまして、大きな、我々としては負の遺産を背負っているということを非常に厳粛に考えていかなければならない。もし安易にそういうことを考えて、協力隊法などで突っ走って自衛隊の海外出動を安易に認めていくようなことになれば、必ずや我が国のアジア外交を根底から覆すようなことになるのではないかと非常に懸念を有する次第でして、この点をぜひ大臣にも強く意識をしていただきたいと思っております。この点、総理大臣に一言お願いしたいと思います。
  388. 中山太郎

    中山国務大臣 委員指摘のように、アジアの各国は大変大きな懸念を有していることは、私は否定をいたしません。先般のASEAN拡大外相会議においても、マレーシアの外相から日本軍事大国になるのではないかという懸念も表明されました。私がそのときに申し上げたことも新聞では報道されておりますが、明年は太平洋戦争が始まってちょうど五十年の記念すべき年になるわけでございまして、私ども改めてここで、前の大戦に迷惑をかけた近隣諸国を初め我々が戦争を行った国々に対しても、日本のこの国連平和協力法というものが国連の決議に基づいてあるいは国連の決議を受けて、武力を行使しない、武力による威嚇は行わないという法律の基本精神で国際的な協力を行うに徹するということを十分これから誠心誠意説明をしなければならない、このように考えております。
  389. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 歴史の反省に立って、二度と侵略戦争はしない、二度と軍事大国にならないという、そういった願いを込めての平和主義の理念を持っておるということを先ほど来委員にもお答えも申し上げましたし、そういった日本立場というものがアジア地域の平和と安定に役立ってきたことも私は事実として大切に評価していくべきだと先ほども申し上げさしていただきました。  ただ、問題は、昔日本が犯したような過ちをまたやるのでは決してない、日本が恣意に自分からいろいろなことを決めて出かけるようなことは毛頭考えておりませんし、この国連で決められる決議というものは、東西の対決が終わって、アメリカもソ連も中国も入っておられる安保常任理事会において、平和の破壊者、平和の敵、これは許してはならぬということを決議をして、国際社会の大義として決められた問題に武力行使を伴わずに日本はどのように協力すべきであろうか、何ができるであろうか、こういうことをいろいろ考えてまとめましたのがこの法案でありますから、これの業務運用に当たりまして、アジアに対する配慮を慎重に対応していかなきゃならぬのは当然のこととして受けとめておりますし、法案の趣旨その他についても、これはあらゆるレベルで十分に御説明をしていかなければならぬと考えております。
  390. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 私と総理は、アジアの日本に対する潜在的な脅威感、これに対する認識がやはり違うのではないかと感ずる次第でして、決してこれは特使を送って説明したからとかその程度では済まない問題である、これは大変深刻な脅威感を持っているということを私は申し上げたいと思うんですね。やはり二千万の血が流れているという厳粛な事実があるわけですから、我が国憲法九条を持ち、これを厳に自己規制をして忠実に守るということからアジアの諸国は一抹の安堵感を持っているわけでして、もしこれを若干なりとも空洞化するような動きがあれば、必ずやアジア語 国は大きな反発をすることは目に見えているんだろうと感ずるわけでして、ぜひこの点は過小評価せずによく考えていただきたいということをお願いをしたいと思っております。  最後になりますけれども、今後のポスト冷戦時代における世界の平和維持のあり方、あるいは日本の役割ということでございますけれども、やはり私はどこまでも憲法の精神に徹して、平和主義、人道主義、文化主義でいくべきであろう。そういう形でやるべきことはたくさんあるわけでございまして、例えばアメリカ世界の警察官を自任するならば日本世界の救急車、世界の救助隊としてやればいいわけで、そういったイメージを定着させていけば日本に対する評価は高まるんだろうと私は思うわけでして、ぜひともそういう純粋な平和主義、人道主義、文化主義に立った今後の国際貢献、平和への協力というものを期待をしまして、私の質問を終わりたいと思います。  以上です。
  391. 加藤紘一

    加藤委員長 これにて遠藤乙彦君の質疑は終了いたしました。  次に、正森成二君。
  392. 正森成二

    ○正森委員 政府は、国連平和協力法を制定して、自衛隊を部隊として、また個々の自衛隊員をその身分のまま海外派遣しようとしております。そのため、附則において自衛隊法第八章「雑則」を改正して、新たに第百条の六を付加して事を処理しようとしていることは皆さん御承知のとおりであります。  そして、国連平和協力法の第一条の「目的」ではどうなっているかといいますと、「この法律は、国際の平和及び安全の維持のために国際連合が行う決議を受けて行われる国際連合平和維持活動その他の活動に対し適切かつ迅速な協力を行う」云々となっており、それを受けて「もって我が国が国際連合を中心とした国際平和のための努力に積極的に寄与する」、こういうぐあいになっております。  ところが、自衛隊の任務はどういうように定められているかといえば、自衛隊法第三条では「自衛隊は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当るものとする。」こういうようになっていることは周知のとおりであります。すなわち、自衛隊は、我が国の平和と独立を守るために直接侵略及び間接侵略に対し我が国を防衛することを主たる任務といたします。「必要に応じ、公共の秩序の維持に当る」、こうなっておりますが、憲法及び自衛隊法の規定から、この「公共の秩序」が我が国の公共の秩序であることは疑う余地がありません。自衛隊の部隊としての併任での海外派遣は、憲法問題はしばらくおくとしても、自衛隊法第三条の改正なくしてはなし得ないことは明白であると言わなければなりません。この点について、総理及び法制局長官の見解を伺います。
  393. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 委員御ご指摘のとおり自衛隊法の三条におきまして、三条の一項でございますが、自衛隊の任務が書いてございます。その中では「国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当るものとする。」これはそのとおりでございます。  それで、今回国際連合平和協力法案の附則四条におきまして改正をいたそうとしておりますのは、自衛隊法の百条の六、一条を追加するわけでございますけれども、この百条の六あるいはそれの前の方の条文といいますのは、いわば「雑則」の章の中にありまして、例えば「土木工事等の受託」でございますとか「教育訓練の受託」、あと「運動競技会に対する協力」「南極地域観測に対する協力」「国賓等の輸送」、この一連の条文は、今の任務との対比で考えますと、言葉は悪いんですけれども、いわばその任務から多少外に出ているといいますか、そういう意味でございまして、自衛隊の任務の先ほどの三条にぴたりと合いますのは、むしろ第六章の「自衛隊の行動」、七十六条以下のところがそのところにぴたりと合うもの、かように考えております。
  394. 正森成二

    ○正森委員 法制局長官がそういうことを言うようではいけませんよ。自衛隊法の百条に御承知のように今言われたようなことが書いてありますけれども、それは、訓練のために土木工事の一つを引き受けていいとか、あるいはオリンピックのときに、この間の北京でもありましたけれども、自衛隊が落下傘で上からおりてきて協力するとか、そういうようなことはやってもいい、我が国が南極の調査をするのに輸送に協力はしていいというようなことであって、今度行おうとしている、国際連合との関係で国際の平和及び維持のために武力行使の任務や目的を持っている軍隊に対して後方支援を行うというような、そんなものはどこからも出てこないじゃないですか。それを、我が国で行われるオリンピックへの協力やら、あるいは海部総理等の要人が行くときの輸送、輸送と言ったら悪いけれども、そういうものと同列に扱うなんというのは、法制局長官、憲法がかかっている問題ですよ。だからこそ、ほかのものは自衛隊の本来の任務からいうと少しあいまいだけれども、まあ雑則の中ならいいであろうということで入れたんじゃないですか。それが本来の自衛隊の任務というものに重大な変更を加えるものを、それでいいというようなことをどんな顔をして法制局長官ともあろう者が言うんですか。法制局長官を辞任してから言うならいいですよ。日本国の法制局長官なら、国民がこれだけ心配しているのですから、もっとまじめな答弁をしたらどうです。そんな言い分が通るか。
  395. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 私がお答えしているのは、決していいかげんな意味で申し上げているわけではございません。私が申し上げておりますのは、ただいまの百条の六の規定との並びで申し上げましても、そういう意味で、いわば自衛隊がここの百条の六、新しく加えようとしている条文でございますが、長官は、長官というのはこれは防衛庁長官でございますが、防衛庁長官は、国連の平和協力部長から要請があった場合に、任務遂行に支障を生じない限度において、この平和協力業務に部隊等または隊員を参加させることができるということでございます。それは、今委員は、軍隊のようなとか、あるいはこういう海外にいわば武力行使をするようなものの協力のためにとか、こういう評価を交えておっしゃいましたけれども、私の方はそういう評価ではございませんで、まさにここの百条以下に並んでおりますような業務と同じように、任務遂行に支障を生じない限度においてそういう平和協力に部隊を長官は参加させることができる、こういう規定で置いているわけでございます。
  396. 正森成二

    ○正森委員 何かややこしい説明をされましたが、そうすると法制局長官は、業務ではあっても任務ではないと言うんですか。今の答弁ならそう聞こえますね。百条というのは任務に支障のない限りということで書いているんだからと、こう言われましたね。そうすると、任務ではないが業務であると。だから、今度の国連平和協力法も、自衛隊の任務ではないが業務であると、こういう論理ですか。今の答弁ならそうなりますよ。それならそうとはっきり答弁しなさい。日本の政府の有権的解釈として聞いておる。そんな解釈がありますか。任務ではないけれども業務だ。それに対して職務命令出すんですか。
  397. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 ただいまお答え申し上げましたように、ここの三条の任務からストレートに出てこないものといいますか、この前から多少おっしゃられた方もいらっしゃいますが、サブワークであるとかそういうふうな評価をされた方もいらっしゃいますが、そういう意味で、ここにおきますものは任務から、その中に全く完全に含まれるというふうなものでは百条以下のところはないかと思います。そういう意味で、雑則の中のこういう業務として書かれているということでございます。
  398. 正森成二

    ○正森委員 非常にはっきりしましたね。  今度の国連平和協力法でやるもろもろの業務、 極めて重大な、後で質問しますが、憲法違反に該当するかもしれないような海外派遣が自衛隊の任務ではないが業務である、そんなことがありますか。  それなら、同僚の楢崎委員も御質問になりましたけれども、自衛隊員は任務につくときに宣誓するでしょうが。「私は、わが国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、日本憲法及び法令を遵守し、一致団結、厳正な規律を保持し、」云々ということを書いて、「身をもって責務の完遂に努め、もって国民の負託にこたえることを誓います。」と、こう書いているじゃないか。そして、その中にそういうぐあいになっているのに、その責務の遂行というのは任務ではない、しかし業務だと言うんですか。こんなおかしな解釈がありますか。しかも、海外へ行け、身を危険にさらすということに従わなければ職務命令違反で処分する、防衛庁長官、そう言いましたね。人事局長もそう答えたじゃないか。任務でもないものに、生命の危険を冒すかもしれないことを命令して、それで参加しなければ職務命令違反で処分するんですか。大体が、憲法違反かどうかは別として、こんな重大なことをやるんなら自衛隊法三条を改正すべきであるにもかかわらず、裏側からこっそり持っていこうとするからそういう不届きなことが起こるんじゃないか。それを法制局長官が、今度の国連平和協力法の内容は任務ではないが業務だ。そんなことでこの質疑が続行できますか。自衛隊員が聞いたら、ほんまに涙を流して残念がるよ。日本国の運命がかかっていることを聞いているんですよ。——今この理事が、それが任務ですよと言いました。いつから彼は答弁の権限を持ったんですか。法制局長官が任務でないと言っているのに、理事は任務だと言う。一体だれに対して私は質問するんですか。
  399. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答え申し上げますが、ただいま自衛隊法の百条の六で書こうとしておりますことは、平和協力隊に参加するということでございます。今委員は、自衛隊が海外派遣というふうなことをおっしゃいましたが、自衛隊はあくまで平和協力隊に参加した上で、その隊として海外に出るわけでございます。そういう意味におきまして、自衛隊のここに書かれておりますのは、まさに平和協力隊に参加するという百条の六を書いているわけでございます。  以上でございます。
  400. 正森成二

    ○正森委員 政党の中には休職・出向というようなことを言われた方がおられるようですが、それならまだ今の答弁もあるいは当たるかもしれない。自衛隊は部隊として行くじゃないですか。自衛隊としての身分を併任して行くじゃないですか。それなのに、任務でないが業務だというようなことを言うて行かして、生命を危険にさらさせる。それを職務命令でやって、違反すれば処分する。そんなばかな法律体系がありますか。それをいやしくも法制局長官が堂々と言う。それは自民党の理事ならずとも、いや任務だよと言うてやじを飛ばしたくなるよ。それぐらいでたらめな解釈じゃないか。こんなことで質疑が続行できますか。——違うよ、業務と言ったのは彼が言っているんですよ。任務ではないと言ったでしょうが。そんなことで質疑が続行できますか。  私はほかに重要な論点を……(発言する者あり)
  401. 加藤紘一

    加藤委員長 質疑を続行してください。
  402. 正森成二

    ○正森委員 時間がありませんので、委員長、今のは重要な問題ですから、法制局長官を含めてよく検討して、統一見解を出していただきたいと思います。それなら質問を続行します。そうしてください。
  403. 加藤紘一

    加藤委員長 政府側の答弁をもう一度お願いいたします。法制局長官。
  404. 正森成二

    ○正森委員 いや、もういい。長官は同じことを答えるのでしょう。それなら時間のむだですよ。
  405. 加藤紘一

    加藤委員長 質疑を続行してください。
  406. 正森成二

    ○正森委員 答えるの。違うことを答えるのですか。
  407. 加藤紘一

    加藤委員長 従来の答弁のようですから、質疑を続行してください。
  408. 正森成二

    ○正森委員 従来の答弁を維持するなら、それが納得できないことは皆、少なくも野党席はそう思っているのですから、統一見解を出していただくことを要望して、時間が貴重ですから、次の質問に移ります。  委員長がなかなか御決断なさらないようですから、ほかに重要な問題がありますので、質疑がきょうで終了するわけではありませんから、次の質問に移らしていただきます。  そこで、次に政府の統一解釈について伺いたいと思います。  政府は、自衛隊の国連軍への派遣について、昭和五十五年十月二十八日付答弁書に関連して先日、統一新見解を発表されました。きのうも同僚委員がその問題について非常に突っ込んだ質問をされました。そこで、私なりにこの問題を質問をいたしたいと思いますが、私の解釈では、政府の新解釈は事を二段階に分けて論じております。すなわち、まず第一に、国連軍への参加と協力に分けて、「「参加」とは、当該「国連軍」の司令官の指揮下に入り、その一員として行動することを意味し、」参加以外の「「協力」とは、「国連軍」の組織の外にあって行う「参加」に至らない各種の支援」、こういうようにしております。すなわち指揮下に入るかどうかを重大なメルクマールとしております。そして、本委員会で工藤法制局長官は、国連軍を多国籍軍と置きかえても基本的な考え方は変わらないというように答弁をされました。  そこで伺いますが、指揮下に入るかどうかをメルクマールにしたのは、それが当該対象軍、国連軍でも多国籍軍でもよろしいが、と一体となることが明白であり、したがってまた多国籍軍としますと、その目的・任務が武力行使を伴うものであれば自衛のための必要最小限度の範囲を超え、憲法上許されないということにつながるからですか。そう理解していいですね。
  409. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 今の御質問につきましては、参加と協力に分け、参加のところで「「国連軍」の司令官の指揮下に入り、その一員として行動することを意味し、」こういうふうなことを言っております。さらに、参加の問題は、国連軍を多国籍軍に置きかえましても、いわゆる多国籍軍がその任務・目的で武力の行使を伴う場合、これは指揮下に入りその一員として行動することは問題である、かように考えております。
  410. 正森成二

    ○正森委員 同じ言葉を反復しただけで、私の質問にもろに答えてはおりませんが、おおむね私の質問を肯定する答弁であったと思います。  そこで次に移りますが、こういう指揮命令下に入るかどうかで分けるというのは問題があるんじゃないですか。安保条約第五条は、我が国が武力攻撃を受けたとき、自衛隊は憲法上の手続に従って、そういう憲法上の手続はないと私どもは思っておりますが、防衛出動を命ぜられて出動し、自衛権を行使することになっております。もちろん在日米軍も、同条により、自国の平和及び安全を危うくするものとして、共通の危険に対処するため共同行動をとり相手国と戦うことになっております。これはすなわち、日米両国、両軍が同盟国として一体となって戦うことになるんではないのですか。
  411. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 第五条におきましては、「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、」各締約国は「自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」まさにこういうふうに規定しているわけでございますが、この場合、共同して日米両国の対処が行われるわけでございますけれども、共通の一つの指揮系統ができるというわけではないというふうに解しております。
  412. 正森成二

    ○正森委員 最後のところは先走って答弁しましたが、共通の危険に対処するために共同行動をとろんですね。それは条約にも明示されているわけであります。ところが、この第五条というのは、 我が国が侵略されて、自衛隊と在日米軍は文字どおり肩を並べて戦い、場合によったら同じざんごうの中で戦うんですよ。まさに共通の危険に対して共同対処をする。ところが、その場合だって自衛隊と米軍との間には指揮命令関係はないんですよ。お互いにそれぞれの指揮命令関係のもとに行動するというように、例えば昭和四十五年の答弁で宍戸政府委員も、あるいは昭和四十九年山中貞則防衛庁長官も、それぞれ系統に分かれて、連絡はもちろんし合いますけれども、いずれか一方が指揮官の立場に立ってその隷下にいずれかが属するということはやらないというように言っているんですよ。それは皆さん方御承知のとおりでしょう。そして、これは四十九年ぐらいの答弁ですけれども、その後日米ガイドラインというのができたでしょう。ガイドラインでもそうなっているんですよ。  これを見ますと、例えば「侵略を未然に防止するための態勢」とか順番に書いておりますが、一番シリアスな「日本に対する武力攻撃がなされた場合」、それを見ますと、「自衛隊及び米軍日本防衛のための作戦を共同して実施する場合には、双方は、相互に緊密な調整を図り、それぞれの防衛力を適時かつ効果的に運用する。」というのが基本であって、そして「自衛隊及び米軍は、陸上作戦、海上作戦及び航空作戦を次のとおり共同して実施する。」こういうぐあいになってずっと並べてあり、「陸上作戦、海上作戦及び航空作戦を実施するに当たり、自衛隊及び米軍は、情報、後方支援等の作戦に係る諸活動について必要な支援を相互に与える。」というようになっております。  ところが、「指揮及び調整」についてはどうなっているかといえば、この場合でも、「自衛隊及び米軍は、緊密な協力の下に、それぞれの指揮系統に従って行動する。自衛隊及び米軍は、整合のとれた作戦を共同して効果的に実施することができるよう、あらかじめ調整された作戦運用上の手続に従って行動する。」そのための調整機関を通じてやる、こういうぐあいになっているのですよ。いいですか。まさに同じざんごうで戦う場合で、外国から見れば一体となって戦うじゃないですか。その場合だって指揮命令関係には立たないのですよ。単に連絡調整をするだけなんです。  ところが、政府の統一見解によれば、指揮命令関係に立つかどうかがまず第一の重大なメルクマールになっているじゃないですか。それによって差異を設けているじゃないですか。こんなおかしな解釈、定義がありますか。法制局長官、あなたが統一見解出すのに重大な役割を果たしたんでしょう。
  413. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 安保条約第五条の場合につきましては、ただいま委員がお述べになりましたような考え方でいわゆるガイドラインも整理されていると思います。ただ、そのことと、今回平和協力隊が国連の決議のもとで、あるいはこれを受けて行われます活動にどのように参加し、協力するかということは、直接は関係ないのではないかというふうに感じます。
  414. 正森成二

    ○正森委員 いいかげんなことを言ったらいけませんよ。昭和五十五年に解釈があって、それに基づいて今度新解釈で、まさに国際連合の平和協力隊がどうするかということについて新解釈が出たんでしょうが。  さらに言いましょうか。あなた方の新解釈は、まず参加か協力かを指揮命令のもとに入るかどうかということで分ける。これが破綻しているということは、今安保条約五条の場合で具体的に私が言いました。さらに新解釈の第二の手品は何かといえば、武力行使と一体という概念です。ここでは、多国籍軍の目的・任務が武力行使を伴うものであっても、協力武力行使と一体とならなければ許される、こういうぐあいに拡大解釈をしているのです。そして、指揮命令下に入る参加なら許されないことも、指揮下に入らない協力なら許される範囲がある、こういう論理になっているんです。そうでしょうが。そしてこの許される範囲をどんどんどんどん拡大しておるというのがこの全審議の過程の実際ではありませんか。  今までの政府答弁によれば、多国籍軍が武力の行使を行っても、国連決議六六〇、六六一の実効性確保の部分は残り、これへの協力は可能であるとか、平和協力隊が行う輸送協力は武器、弾薬、兵員を含むとか、海上自衛隊の補給艦は、国連決議六六五を受けてアメリカ、フランス、イギリス等の艦がペルシャ湾に展開している、それらの艦に決議の実効性を確保するための協力をする、これは後で外務大臣は一つの例だというように修正しましたが、この法案で可能であることは疑いありません。すなわち、燃料、弾薬、食糧を補給する任務を行う、こういうことになっているのでしょう。  元来補給艦というのは、戦闘する艦隊が戦闘海域から離脱して基地に帰って補給する時間を節約するために、戦闘海域、これはまさに戦場です、少なくともその近辺の作戦海域、交戦海域で補給を行うものであることは常識であります。これが仮に直接の指揮命令でなく連絡という名目の協力によるものであっても、実態はいささかも変わりがありません。相手国から見れば一体としての敵対行動であり、一体としての武力行使に当たることは明白であり、相手国の攻撃の対象になることは明白じゃないですか。一体どこに明白な差異、区別がありますか。しかもこれが、政府や法制局によれば、合憲か違憲かを決める重要なメルクマールである。そんなあいまいな基準で合憲か違憲か決められる、そんなばかなことがありますか。きのうも同僚委員が別の角度からさんざん質問しましたけれども、私の今の観点からいうても乱暴きわまりないことじゃないですか。  法制局長官。そんなもの外務省の答えることじゃないよ。憲法問題に関する根本的な解釈じゃないか。そんなもの法制局長官ですよ。
  415. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答え申し上げます。  まず第一に、先ほどの安保条約五条の点につきましては、これは条約局長の方からお答えしたとおりだと存じます。  次に、協力の一体性の問題、これをおっしゃられましたけれども、これは、実は私先日から申し上げておりますように、憲法九条の方から見て何が問題か、憲法九条から見て、我が国が武力の行使あるいは武力による威嚇、こういうものをすること、そういう評価を客観的に受ける、こういうことを申し上げているのであって、そういう意味で決して、何といいますか、協力の部分に一部穴をあげるとか、そういう意味ではございませんで、参加とか、参加の問題であれば指揮下に入り一員として行動する、その場合には我が国はいわゆるフリーハンドはないわけでございますが、そういう意味で、その任務・目的武力行使を伴うものというときにはそういうふうにまた見られるでしょうし、あるいはそういう意味武力行使と一体となる、先方の当該軍の武力行使と一体となる、こういうことになれば当然憲法九条の上から見て問題である、こういうふうに申し上げているわけでございます。
  416. 正森成二

    ○正森委員 おかしな答弁をしますね。いいですか、私が言うたように、安保条約五条が発動されて、我が国に直接侵略があって同じざんごうの中で米軍と自衛隊が戦争、戦闘をしている場合でも、指揮命令関係はないんですよ。連絡調整だけでやるんですよ。例えば、事前砲撃を十分に行い、午前六時を期して日米両軍は相手陣地に対して突撃し、この陣地を奪取するというような物すごいシリアスな問題でも、事前に司令部で連絡調整して、午前六時になれば、同じざんごうの中で、自衛隊の将校は将校が、米軍の将校は将校が、突撃と言って突撃するんですよ。そんなもの、相手方から見れば一体としての武力行使じゃないですか。相手方は、これは自衛隊だからといってだだっと機関銃を撃ち、これは米軍だからといって撃たない、そんなことができますか。  突撃してくる部隊は自衛隊であろうが米軍であろうが、だだだっと撃つんですよ。それでも指揮命令関係にないのですよ。そんなあやふやな指揮命令関係にあるかないかを、憲法の解釈で、指揮命令関係にあれば狭い範囲しか許せないが指揮命 令関係になければ広い範囲の協力も可能だ、そんなことで憲法解釈がいいかげんなことされてたまりますか。よくもそんな解釈を、法制局長官、法律の専門家が思いついたね、あなた。戦闘の実際というのを知らないんじゃないか。私も実際の戦闘はしたことがないけれども、しかし戦争中は、これでも徴兵検査を受けて、地雷を持って戦車に飛び込む訓練までは受けているのですよ。  そんなもの、戦闘の実際を知れば、安保条約五条の場合でさえ指揮命令関係にないのに、それを重要なメルクマールにする、そんなことを法律の専門家が憲法解釈の基準として出すなんておかしなことがありますか。そのことによって国連の平和協力隊の活動できる範囲を広げる。指揮命令関係にあればできない、これは縛り、かかっているのです。指揮命令関係にない参加でない協力なら、任務・目的武力行使を伴うものであっても協力できる、ただ、武力行使と一体とだけはなったらいかぬ、こういうのです。だけれども武力行使と一体と何かなんていったって、安保条約五条のときどうなるのです。これは我が国の自衛権の行使だからいいというかもしらぬけれども、そんな時間や空間だけで判断できるものじゃないのです。  それでは、どうも法制局長官が考えているようだから、次の論点に移って、答えやすいようにしてあげましょうか。  武力行使と一体かどうかについて別の観点から伺いますと、防衛庁、高陞号事件という有名な事件がありますけれども、知っていますか。
  417. 日吉章

    ○日吉政府委員 申しわけございませんが、寡聞にして存じ上げません。
  418. 正森成二

    ○正森委員 私のように今大蔵委員をしている者の方がよく知っておるなんておかしな話ですが、高陞号事件というのは、海部総理、事は明治二十七年の七月二十五日、日清戦争の冒頭で起こったのです。朝鮮の牙山の豊島沖で、日清の小艦隊が遭遇して初めて海戦になり、これで日清戦争が起こったのです。このときに、英国の汽船の高陞号が清国に雇われて、海戦二日前の七月二十三日に太沾を出発いたしまして、清兵千百名、大砲十四門等を太沾より牙山に輸送中であったのです。このときに発見いたしました「浪速」の艦長は東郷平八郎大佐、後の元帥であります。東郷大佐は高陞号を停船させてみずからに随航することを命じましたが、もう海戦が既に始まったわけですからね、英船長らは清兵によって威迫を受けた結果、これに従わなかった。ついに東郷艦長はこれを撃沈して、英人らは救助されましたが、清国兵の大部分は溺死した事件です。  これに対して英国朝野は憤激して、当時のキンバレー英外相は、当初我が青木公使に日本政府の責任を追及しましたが、英国の著名な国際法学者何人かが「タイムズ」紙上に、中立国船舶は、開戦を予想しつつ軍隊、武器弾薬の輸送に従事するときは敵性を帯び、拿捕の対象となり、特定の条件のもとでは破壊することが許される、こうして日本の処置を正当と弁護したので、英政府は抗議を取り下げ、損害賠償を要求し得ないこととしたものであります。  これは国際法上有名な事件で、国際法辞典にも載っているし、ここへ持ってきましたが、東郷元帥の伝記にも長々と載っているのです。それを勉強してきました。  今回の国連の平和協力法は、明白にこの高陞号の立場、いや、それ以上危険な敵性国の立場日本を置くものじゃありませんか、兵員の輸送をできると言うているのだから。それで、兵員の輸送のために出発したときはまだ開戦していなくても、海域に近づいたら、そこで海戦が起こるかもしらぬ。そのとき、相手国は停船を命じて、我に従えと言うことができ、あるいは艦を見捨てよと言うことができ、それに従わなければ撃沈できるのです。現に東郷大佐はやったのだ。当時世界一の強国であるイギリスでさえ、その措置は正当であるといって一言も文句を言えなかったのですよ。イラクに対してそういう立場我が国を置くことになるじゃないですか。そんな危険なことがこの国連平和協力法ではできることになっているのです。それで、それが自衛隊の任務ではなくて、運動会に参加したり手伝ったりするのと同じように業務だ、仕事だ、そんなことで自衛隊員が喜んでこの任務を果たすと思いますか。——答弁できないのですか。国際法上有名な事件ですよ。総理総理答えてください、だれも答える者がないんだから。
  419. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 私の方は国際法の観点についてだけお答え申し上げたいと思います。  御案内のとおり、いわゆる戦時国際法は、戦争が政策遂行の一つの手段として認められておりました時代に、いわば戦争の仕方を規律するものとして発達したものでございます。現在の国連憲章のもとにおきましては、自衛権行使や安保理の決定に基づく軍事行動を別にいたしますれば、武力行使が一般的に禁止されておるわけでございまして、この結果、伝統的な意味での戦争というものは認められなくなったわけでございます。この国際法におけるこのような戦争観の変化の結果、戦時国際法のうち、戦争開始の手続でございますとかあるいは中立国の義務など、戦争が違法でないことを前提とした国際法規がそのままの形で適用される余地はなくなったと思います。他方、従来の戦時国際法中の害敵手段の制限でございますとかあるいは戦争犠牲者の保護等にかかわる国際法規、この方は国連憲章のもとにおきましても武力紛争が生じた場合には適用されるというふうに解しております。したがいまして、中立法規がそのままの形で現在適用になるということは言えないだろうというふうに考えます。
  420. 正森成二

    ○正森委員 今の条約局長の講義は、こんな法案がないときに大学へ行って講義するのならそれで通るのですよ。今まさに自衛隊員をそういうところへ送り込まそうかどうかというときに、法文の審議としてやっているときに、そんな大学の講義みたいなことを聞いて役に立ちますか。あなたがどう言おうと、イラクの方は今までの国際法規でやってきて、敵性があると認めたらそれ相応の行動をとるのは当然じゃないですか。だから、私たちは問題にしているのです。  そして次に移りますが、国連平和協力隊の業務とされているものの中に、物資、人員の輸送、医療、軍事において後方支援あるいは兵たんと呼ばれるものに当たることは認めるわけでしょう。戦闘行為は認めないけれども、物資や人員の輸送、医療、こういうように軍事において後方支援あるいは兵たんと呼ばれるものの一部分あるいは相当部分は認めるのでしょう。
  421. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 いわゆる後方支援という言葉の意味につきましてはいろいろあると思いますけれども、ただこの法案におきましては、御承知のとおり三条二号でいろいろ挙げております平和協力業務を行うことになっておりまして、そこにはいわゆる戦闘行為に当たるようなものはもちろん入っておりません。また、この三条二号に列記しておりますいわゆる輸送、医療活動その他の活動につきましても、このようなものが仮に武力の行使に当たるあるいは武力による威嚇に当たるような場合にありましては、これを行ってはならないということを二条の方で禁じているわけでございます。
  422. 正森成二

    ○正森委員 何かこう、ひっかけられたらいかぬと思って慎重きわまりない答弁をしているけれども、何と言おうと、この法律の三条に規定されている業務が、あるいは補給と呼ばれあるいは後方支援と呼ばれあるいは兵たんと呼ばれるものの一部を含んでいるあるいは相当部分を含んでいることは、これは常識的に考えて隠れもない事実であります。  そこで、問題をさらに進めるために申しますが、防衛庁、あなた方は旧日本軍が使用した統帥綱領や統帥参考について知っていますか。
  423. 日吉章

    ○日吉政府委員 私は存じておりません。
  424. 正森成二

    ○正森委員 防衛局長がおらぬから仕方がないけれども、かつて、この間まで防衛局長を務めておった人物でしょう。今、位が上って官房長をやっておる。それが——下がったのか。何かよく わかりませんが、その統帥綱領や統帥参考を知らないでこの法案を出してきて答弁しよう、相当いい心臓ですよね。  私はここに統帥綱領、統帥参考の書いてある本を持ってまいりました。私は、ともかくこれを重要な部分は全部読んできました。これは何かといいますと、旧日本軍が極秘とされたものですね。戦前はこういう出版も許されなかったのです。それを戦後にこういうことに関係した旧日本軍の幕僚その他幹部が集めて、統帥参考というのはこの統帥綱領を陸軍大学で高級将官及び幕僚に対してだけ講義したものなのです。それが今は出版されているのです。日本軍統帥の根本とされたものなのです。  そんなものを防衛局長、まあ時間がないから言わないけれども委員長、そこではどう書いてあるかといいますと、こう書いてあるのです。「大軍の統帥とは、方向を示して後方(補給)を準備することである。」こう書いてあるのです。つまり、大軍の統帥とは、例えばブッシュ大統領とか、あるいは海部総理もそうなるのでしょうが、それの一番大事なことは、まず軍の進むべき戦争目的の方向、それを示して、それができるように後方あるいはその補給を準備することが統帥たる者の任務であるというように書いているのです。これは有名な言葉です。  そして統帥参考、陸軍大学で講義された第六章に「兵站」というところがある。これにはどう書いてあるかというと、「兵站の適否は直ちに軍の作戦を左右す。」「故に、作戦の指導に任ずる者は常に兵站の状況に通暁し、機を失せずこれに所要の準縄」規則ですね、「準縄を与うるを要す。かくの如くにして初めて兵站は事前の準備を周密にし、その行動を軽快にし、諸種の施設をして状況に適応せしめ得べし。兵站の実務に服する者はあらゆる手段をつくし、万難を排して作戦の要求を充足せざるべからず。」こう言っております。いいですか。「兵站の適否は直ちに軍の作戦を左右す。」「兵站の実務に服する者はあらゆる手段をつくし、万難を排して作戦の要求を充足せざるべからず。」こう書いているのです。それぐらい大事なものが後方支援あるいは兵たん、武器、弾薬、人員の補給、これをやろうというのじゃないですか。  さらに言いましょうか。旧日本軍の将兵や国民にも広く愛唱され、つまり歌われて常識になっている「日本陸軍」という歌があります。この軍歌を、防衛庁長官、知っていますか。
  425. 石川要三

    ○石川国務大臣 残念ながら知りません。
  426. 正森成二

    ○正森委員 海部総理も思い出していただけば御存じかもしれませんが、これはもう人口に広く膾炙された歌で、「天に代りて不義を討つ 忠勇無双のわが兵は 歓呼の声に送られて 今ぞ出でたつ父母の国」という歌なのですよ。それでずっと続くのです。それで、歩兵の任務から砲兵の任務から、騎兵の任務、斥候の任務、全部ずっと書いてあるのです。  その中で輜重兵の任務が書いてあるのです。どう書いてあるか。それは、輜重兵というのは明治時代には「輜重輸卒が兵隊ならばチョウチョ・トンボも鳥のうち」とか「輜重輸卒が兵隊ならば電信柱に花が咲く」とか、そういうように言われて卑しめられた。しかし、今では補給や輜重というのは極めて大事で、防衛庁でも作戦の基盤である。日本軍も、私が言いました作戦綱領やら参考を書いた時代には、昭和になってからですが、そのときには十分に重要性を認めておるのです。  その輜重兵のところでどういうぐあいに言われているか読み上げると、「砲工歩騎の兵強く」これは砲兵と工兵、それから歩兵と騎兵ですね、「砲工歩騎の兵強く 連戦連捷せしことは 百難おかして輸送する 兵粮輜重のたまものぞ 忘るな一日おくれなば 一日たゆとう兵力を」こうなっているのですよ。いいですか。旧軍では「忘るな一日おくれなば 一日たゆとう兵力を」と、こうなっておる。これを我々はずっと歌うてきたし、軍はこうやって軍歌演習しながら戦ってきたのです。  そんなもの、一日おくれたら一日たゆとう兵力をということをやる後方支援、兵たんが武力行使と一体だというのは当たり前じゃないですか。それを法制局長官が紙の上の解釈で、それは武力と一体とならなければ、極めて近いところでやらなければそれは一体ではないんだなんて言って、旧陸軍が笑うよ。世界の軍隊だって——黙って聞きなさい。世界の軍隊だってそんなものは通用しないのですよ。それを、指揮命令関係で一体となっているからとかあるいは武力行使と一体で時間的に非常に近いところにおる場合だけとか、そんなことで憲法解釈が左右されてたまりますか。法制局長官、統一見解つくるのなら、もう少しよく熟慮して批判にたえるものをつくったらどうですか。私は、あの統一見解を読んだときにもうあきれ返ったですね。あなた、こんなもの読んだことありますか。統帥参考なんて知らないのでしょう。——今使われているかなんかじゃないです。今は一層兵たんの任務が重大になっておるのですよ。  委員長、後ろでいろいろ言うておるのをやめさせてください。そうでなければこっちに来い。それなら論戦してやる。(発言する者あり)当たり前じゃないか、国民のために議論しているのだぞ。
  427. 加藤紘一

    加藤委員長 御静粛に願います。
  428. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 私自身ただいまお示しになりましたその旧陸軍のものは読んでおりませんが、ここで考えておりますもの、それがやはり武力行使と一体となる、これが憲法九条の目から見た問題点でございまして、そういう意味で、武力行使と一体とならない、それが何であるか、当てはめの問題はもちろんございます。しかし、当てはめの問題はございましても、例えばこの前中東貢献策の中でとられましたあのようなものは、決して武力行使と一体となったようなものではないと思います。そういう意味で、何か兵たんがすべて武力行使と一体であるとかあるいは後方支援がすべてそうであるというふうにおっしゃられると、私はどうも理解ができないわけでございます。
  429. 正森成二

    ○正森委員 きのう我が党の東中議員が、主として外務省条約局長等とのやりとりで、壊れた蓄音機みたいに同じことを繰り返すということを言いました。私は法制局長官に対してはそういう言葉を用いようとは思いませんが、ややそれに近く、同じことを繰り返し答弁してそれで答弁が完了したというように思われてはならないと思います。  そこで法制局長官、今私の直前に同僚委員の質問に対して、自衛隊法九十五条の武器防護に関連してあるいはその前の自衛隊員の武器使用に関連して、武器を貸与された自衛隊員がいろいろやることだからというように限定されて言いましたね。ところが、国連平和協力法ではそうなっていないのですよ。国連政策課長がきちんと答弁してきましたが、自衛隊法九十五条は排除されないと言っているじゃないですか。自衛隊法九十五条は何かといえば、武器防護の規定で、それは武器、弾薬、食糧とか、そういうものだけでなしに、有線、無線通信から船舶から、そういうものは全部入っているのですよ。車両も入っているのですよ。  伺いますが、輸送に従事する自衛隊の船としては、何かペルシャ湾では補給艦だけみたいなことを言いましたが、輸送艦は法文上排除されているのですか。
  430. 日吉章

    ○日吉政府委員 法文上は排除されておりませんけれども、その能力等から考えまして、補給艦を用いることの方が適切、輸送艦は適していない、こういう判断をいたしております。
  431. 正森成二

    ○正森委員 結局能力の問題になりましたが、それでは条約局長に伺いましょうか。この条文では、協力できる相手は国際連合、国際機関、国際連合加盟国及びその他の国となっていますね。及びその他の国というのは条文上、いまだ国際連合に加盟していない国のことでしょう。その中に、韓国、入りますか。
  432. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 おっしゃいましたとおり、この「その他の国」というのは非加盟国のことでござ います。非加盟国の中に韓国もございます。
  433. 正森成二

    ○正森委員 明白に認めたように、韓国も入っているのですよ。この法律が通れば、国際連合の決議が何らか行われて、韓国に事が起これば、それに対して協力できるようになっているのです。だから、昭和二十五年の朝鮮戦争型のことが起こり、朝鮮戦争型の経緯が進めば、あのときはソ連がおらなかったので拒否権が発動されないで国際連合が武力的に出ていくことになったのです。そうしたらここのとき、この法律では我が国協力できるでしょう。そうしたら朝鮮海峡だけの、水路一帯の近海至近国じゃないですか。自衛隊の輸送艦は、いいですか防衛庁長官、北海道に敵前上陸上陸法の演習をするときには、動員されて兵員運んでいるのですよ。津軽海峡を渡れるものが、朝鮮海峡渡れないはずがないでしょう。だから、法文上は輸送艦は入るし、実際問題としてそれが出ていくことはあり得るのです。  輸送艦は七十六ミリ連装砲を積んでいるでしょう。
  434. 日吉章

    ○日吉政府委員 ただいま委員指摘のは三インチ砲のことかと思いますが、三インチ連装砲を積んでいる大きな輸送艦もございますが、積んでいないものもございます。
  435. 正森成二

    ○正森委員 七十六ミリと言えばいいものをわざわざ三インチなんて言うて、三インチ砲のことを七十六ミリ砲というのですよ。そして、その輸送艦が出ていって、いいですか、その輸送艦が相手国から高陞号事件のように停止を命ぜられて拿捕されるようになった。言うことを聞かない、撃沈されそうになった。向こうはけん銃や小銃や機関銃だけでなしに砲を撃ってきたという場合には、九十五条の規定によれば、そのときの状況から相当と認められる限りは武器を使用することができるのでしょうが。防衛庁、局長がいないのなら官房長が答えなければいけないかもしれないけれども、そのときは組織的に対抗できるのでしょうが。
  436. 日吉章

    ○日吉政府委員 組織的にと委員がおっしゃられました意味は十分に理解できませんが、九十五条によりますと、自衛官は対抗できる、こういうふうになってございますが、それにはおのずから厳格な要件が課せられていることは、委員御承知のとおりでございます。
  437. 正森成二

    ○正森委員 そんなことを答えるだろうと思ったから、昭和六十一年に自衛隊法が改正されたときの内閣委員会の議事録を持ってきたのです。こんなことは防衛庁は答弁していないのです。  そこで、当時の西広政府委員、あなた方の先輩だ。「個々の警護任務艦艇というものが、全体とすればたくさんの武器を積んでおる場合もありますし、いろいろな状況があると思いますが、そういったものが組織的に個々の警護任務を組織化してといいますか、束ねて対応するという格好になるのではないかというように考えております。」と、ぱあんと言っているじゃないか。自衛隊員が個々にやるのじゃないですよ。組織的に束ねて対応する。それだけじゃないですよ。それからさらに二十日間置いて、「警護任務を付与された自衛官、」「これは、複数の自衛官が組織的に防護すること自身を排除しておるものではない」こういうようにはっきり言うておるのですよ。  だから艦艇の場合には、もちろん自衛官は部隊として併任で行くのだから上官の命令に従うのですよ。補給艦や輸送艦の場合には艦長がおる。その艦長が、まさに拿捕されんとする、撃沈されんとするという場合には、それにふさわしい対応をするのですよ。それをやり得るのだと昭和六十一年に答えたじゃないか。そんないいかげんな答弁をしてこの特別委員会が通ると思っているのか。
  438. 日吉章

    ○日吉政府委員 この厳格な要件の中には、一つといたしまして、その際の武器の使用は自衛隊の船舶、航空機等を職務上警護する自衛官に限られる、こういうふうになってございます。  ただいま西広前次官の答弁が引用されましたが、「組織的に」と、これはまさに組織としてということではありませんで、組織的なという状態をあらわしているわけでございまして、組織としてというふうな答弁はいたしてないと理解いたしております。
  439. 正森成二

    ○正森委員 いいかげんな答弁をしたらいけませんよ。ほかに質問事項がありますが、時間が迫ってきましたので、大蔵大臣がお見えでございますので、一問だけ伺いたいと思います。  この平和協力法によりますと、防衛局長は、今ある輸送艦は遠洋航海にたえない、だからペルシャ湾に行けない、だから補給艦を出すのだというように答弁しました。そうすると、将来遠洋航海にたえる輸送艦が国連平和協力に必要となるという事態が起こり得ると思うのです。また、業務に支障なき限り協力とあるが、支障を生ぜしめないために輸送等の能力、人員を増強することもまたこの法律が通れば必要になってくる。大蔵大臣は、そうすると、この法律が通れば、結局そういう要請をもとに防衛庁が予算要求をして、ペルシャ湾までに行ける輸送艦、五千トンあるいは八千トンのものを一隻持ちたいと言えば、それを予算査定上認めざるを得ない。一層防衛費が増大するということになるのじゃないですか。
  440. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 とっさの御質問でありますので、私なりに考えてみましたが、まず第一に、自衛隊の本来の任務として我が国の国土、すなわち領海、領空を守る、そのルールが確定しておることは委員も御承知のとおりであります。そしてそのうちにおきまして、船舶並びに航空機はそれだけの航続距離を持つものでありますから、確かに領海、領空の範囲を超えますけれども、それにもおのずから一定の限界があることは御承知のとおりであります。同時に、防衛計画の大綱において我が国の国防の方針というものは定められておるわけでありまして、その中に平和協力業務が将来どう位置づけられるかは私はわかりませんけれども、少なくとも今日の時点においては、防衛計画の示す中に平和協力業務というものはございません。  こうしたことから考えてまいりますと、仮に防衛庁から、例えば平和協力を前提として相当程度の航続距離を持ち、しかも気象条件等につきましても我が国の近海を想定し得ない構造の船舶の建造要求が出ました場合には、当然ながら財政当局としてこうした点を問題にすることになろうと思います。
  441. 正森成二

    ○正森委員 終わりますが、その前に、総理に一言だけ御決意を承りたいと思います。  九月十九日にソロモンという国務次官補がアメリカの下院外交委員会で言っていることですが、この日本政府の対応は政策の突破口であり将来にとって重要な政策の先例をなすものである、こう言っているのですよ。そして、今までの各委員の質問によっても、憲法問題にも関係する極めて重大な内容を含んでおるということが明らかになっていると思うのです。こういう法案は、わずか一カ月足らずの臨時国会で通すのではなしに、論議を重ねる必要があると思うのですが、いかがですか。
  442. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 随分長時間各党の皆さんに御質疑をいただいて論議を重ねておりますが、これは視点がちょっと違うかもしれませんが、戦後四十五年、初めて起こった国連の決議成立という事態を受けて、そしてイラクという国がこの世の中で武力的に侵略し併合することは許してはならぬということが、米ソも中国も含めた冷戦後の初めての事態として成立しておるのでありますから、これは全く新しい事態だと私は率直に受けとめます。だから、これにどう対応するかということもやはりそれぞれの国で新しい事態でございます。  今長時間正森委員の御質疑を聞いておりまして、明治二十七年の日清戦争のお話とかいろいろお出しになりましたが、正直言って、終戦のとき中学生で軍需工場へ行っておった私には全く理解できないことでございましたが、一つだけ言わしていただきますと、そういう戦闘の場所を予想しながら、そういう戦闘の場所へ出ていって、やれ撃つとか撃たれるとかいうようなそんな雰囲気の中へ入っていこうなんという気持ちはこの平和協 力法には毛頭ないわけでありますし、また百歩譲って——ちょっと聞いてください、答弁するのですから。答弁しているのですから。  それからもう一つ、高陞号ですか、出されたのですけれども、今世界の海軍があそこへ集まって、もうこれ以上平和の破壊をしてはいけないといって抑えておる。そうすると、国と国との戦争のときには、海軍力が出てきて、そういう撃ち合いとかひどいことが起こるでしょうけれども、今イラクの海軍というのはどれくらいあって、本当に出てきて撃つのか撃たないのかということも、私はそういうことを想定される世の中じゃないし、むしろ世界が集まって平和的に解決しましょう、軍事力を使っちゃいけない、軍事力を使うとだめだということで努力しておるさなかですし、お隣の朝鮮半島も、韓国との首脳会談でも私わかったように、北朝鮮も韓国の方も南北首相会談までやって平和統一して、ドイツの統一のように韓半島も統一して朝鮮半島の平和のために一緒にやっていこうという大きな歴史の流れが出てきておるときでありますので、私はそういったことに希望を持ち、そういった国連に期待をし、国連が成果を上げてくれるように、日本としてはあくまでも平和憲法のもとで許される枠組みの中でできる限りの協力は何であろうかと考えておるのがこの協力法案でありますから、どうぞそういう視点があるということもお認めいただいて、弁護士立場でこれを御検討をいただきたい、こう思うのです。
  443. 正森成二

    ○正森委員 終わります。
  444. 加藤紘一

    加藤委員長 これにて正森成二君の質疑は終了いたしました。  次回は、明三十一日午前九時三十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十九分散会