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1990-05-24 第118回国会 参議院 予算委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年五月二十四日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  五月二十三日     辞任         補欠選任      須藤良太郎君     合馬  敬君      近藤 忠孝君     諫山  博君      池田  治君     古川太三郎君      小西 博行君     井上  計君  五月二十四日     辞任         補欠選任      野末 陳平君     星野 朋市君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         林田悠紀夫君     理 事                 伊江 朝雄君                 石原健太郎君                 下稲葉耕吉君                 平井 卓志君                 穐山  篤君                 矢田部 理君                 太田 淳夫君                 吉岡 吉典君     委 員                 青木 幹雄君                 井上 章平君                 石井 道子君                 遠藤  要君                大河原太一郎君                 片山虎之助君                 北  修二君                 斎藤栄三郎君                 関口 恵造君                 谷川 寛三君                 中曽根弘文君                 西田 吉宏君                 稲村 稔夫君                 梶原 敬義君                 久保  亘君                 竹村 泰子君                 角田 義一君                 堂本 暁子君                 細谷 昭雄君                 本岡 昭次君                 山本 正和君                 猪熊 重二君                 白浜 一良君                 和田 教美君                 諫山  博君                 粟森  喬君                 古川太三郎君                 足立 良平君                 井上  計君                 下村  泰君                 星野 朋市君    政府委員        大蔵政務次官   山岡 賢次君        大蔵省主計局次        長        小村  武君    事務局側        常任委員会専門        員        宮下 忠安君    公述人        国際金融セン        ター理事長    大場 智満君        日本大学教授   北野 弘久君        早稲田大学教授  宇野 政雄君        軍事問題評論家  藤井 治夫君        上智大学教授   岩田規久男君        労働経済研究所        所長       庄司 博一君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○平成二年度一般会計予算内閣提出衆議院送付) ○平成二年度特別会計予算内閣提出衆議院送付) ○平成二年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 予算委員会公聴会を開会いたします。  平成二年度一般会計予算平成二年度特別会計予算平成二年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  本日は、平成二年度総予算三案について、お手元の名簿の六名の公述人の方からそれぞれの項目について御意見を拝聴いたします。  一言ごあいさつ申し上げます。  大場公述人北野公述人におかれましては、御多用中にもかかわりませず本委員会のために御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして心から厚く御礼を申し上げます。  本日は忌憚のない御意見を承りまして今後の審査の参考にいたしてまいりたいと存じますので、どうかよろしくお願い申し上げます。  次に、会議進め方について申し上げます。  まずお一人二十分程度の御意見を順次お述べいただきまして、その後で委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、順次御意見を承りたいと存じます。  まず、国際経済金融につきまして大場公述人にお願いいたします。国際金融センター理事長大場智満君。
  3. 大場智満

    公述人大場智満君) 今御紹介にあずかりました大場でございます。  本日は、皆様方も御関心をお持ちだろうと思いますし、私自身大変関心のあります四つの問題を中心お話し申し上げたいと思います。  第一は、現在の国際経済というもの、あるいはこの数年の動きをどういうふうに見たらいいかという問題であります。それから第二、第三の問題は、私がいずれもG2と言っておりまして関心を持っている問題でございますが、最初G2アメリカ日本の問題であります。特に両国政策協調の問題でございます。それから三番目のG2はツー・ジャーマニーズの問題でして、ドイツ統一問題、そのドイツ統一の問題を東ヨーロッパの最近の動きの中でとらえてみたいと思います。もし時間がございますればECとの関係についても触れたいと思います。それから最後に、為替相場の問題につきまして若干私の考え方を述べさせていただきたい、このように考えております。  まず、現在の国際経済につきましてですが、私は一言で申し上げますと、一つ経済への動きかなり早まってきているという気がしております。ですから、別の言葉で申し上げますと、相互依存関係がこの数年非常に深まっているというのが私が見ている国際経済の一番大事な点だと思っております。相互依存関係が深まっていきますと、第一には両国あるいは両国民の間の相互理解が深まっていくわけですけれども、同時に摩擦が多発していく、またその摩擦が深刻になっていくということが言えるかと思います。ですから、摩擦の問題は相互依存関係が深まる国際経済の中では当然発生してくるものというふうに私はとらえております。これが第一の国際経済につ いての私の現在の認識でございます。  それから二番目に、日米問題について若干申し上げたいと思います。  私は、かねがね日本アメリカにつきまして一番の問題は、特にアメリカに問題があるわけですけれども、アメリカ世界最大債務国であるということが問題だと考えております。もちろん日本世界最大債権国でございますが。アメリカ世界最大債務国、恐らく昨年末で債務超過が六千億ドルを超えたのではないかと思っておりますが、実はブラジルとかメキシコの債務残高が千億ドルだと言われているわけですから、やはり六千億ドルというのはかなりの規模だと思います。  もちろん、GNP対比で見ますとまだGNPの一二%ぐらいで大したことはないというお考えの方もおいでかと思いますけれども、私はこの昨年末の六千億ドルの債務超過が年に一千億ドルずつふえていくような政策アメリカがとり続けておりますと、アメリカは例えば軍事力、現在軍事力を低下する政策をとっていることは非常に結構でございますけれども、例えばそういう軍事力を維持できないとか、国際政治国際外交の舞台でリーダーシップあるいはイニシアチブを発揮できないというような事態になっていくのではないかという気がいたします。ですから、リーダーシップを維持するためにも米国は経常収支赤字、そ債務残高をふやしているわけでございますが、この問題に取り組んでいかなければいけないというのが私の考え方でございます。  日米間の不均衡の問題につきましては、私は三つの問題があると思っております。つまり、日本経常収支黒字の問題、それからアメリカ経常収支赤字の問題、それから両国間の不均衡の問題であります。  初め私は、この三つのうちの一つが解決すればあと二つの問題も問題ではなくなる、また摩擦かなり軽減される、少なくなるというふうに考えていたわけでございますけれども、最近は、この三つのうちの一つが解決してもあと二つの問題は指摘し続けられるかもしれないし、またこういう問題が解決されても摩擦の問題が残るのではないかなというような気がしております。いずれにしましても、世界最大債務国であるアメリカということから、私は第一にはアメリカ自身に問題が出ている、第二に第三世界開発途上国にまた大きな問題を投げかけているというふうに考えております。  第一の問題につきましては、先ほど申し上げましたとおり、アメリカ経常収支赤字をふやし続けるのであればアメリカリーダーシップをとれなくなるという問題、アメリカ自身の問題であります。  第二の問題は、アメリカが例えば経常収支赤字、昨年は大体千二百億ドル、ことしも千百億ドルぐらいが見通されるわけですけれども、昨年について考えてみますと、日本経常収支黒字六百億ドル、ドイツ経常収支黒字六百億ドル、これに対してアメリカ経常収支赤字千二百億ドル、少し数字を丸めて申し上げておりますが、こういう状態ですと、アメリカという国は非常に魅力的な資産をたくさん持っている国ですから、どうしても日本ドイツ経常収支黒字アメリカ経常収支赤字をファイナンスするということにまず使われてしまう。したがって、本当に資金を必要としている中南米とかアジアとか、あるいは東ヨーロッパになかなか資金が向かわないという問題、これは一般的に申し上げているのですけれども、そういう問題があるのではないか。ですから、私はアメリカ経常収支赤字の削減というのは、アメリカ自身のためだけでなくして、開発途上国のためにもどうしても取り上げていかなければいけない問題だというふうに考えているわけです。  それで、このアメリカ経常収支赤字を削減するためにはどうしたらいいかということは、もう皆様お詳しい点だと思いますけれども、二つしかないわけでございまして、一つは貯蓄をふやすということ、もう一つ予算赤字を減らすということでして、この二つを同時にやってもらってもいいわけですけれども、これしか道はないというのが私の考え方でございます。  それでは次の三番目の問題、ドイツの問題を中心にしまして東ヨーロッパの問題について私の現在での見方を申し上げたいと思います。  昨年の秋以降かなり東ヨーロッパ中心とする政治改革経済改革動きに進展がありましたものですから、この時点で少し整理して私の考え方を申し上げてみたいと思います。  私は、東ヨーロッパ改革につきましては、改革というのは経済改革政治改革二つあるわけでございますが、東ヨーロッパの場合にはどちらかといいますと政治改革優先動き出したのではないかと思っております。しかし、経済改革を伴わないとその政治改革自体も崩れる可能性があるということだと思います。  これに対してソ連中国経済改革先行改革を始めたと思っております。ですから、この両国につきましては政治改革を伴いませんとその経済改革自体も崩れる可能性があると思っております。ソ連の場合には、これは皮肉な言い方をして恐縮ですが、経済改革がうまくいかないものですから政治改革動きが早まったのかなと思ったりしているわけです。これは私自身考え方でございます。これに対して中国の場合には、経済改革が比較的円滑に推移しているものですから、最近は物価も低下し成長率かなり高まってきているというようなことがあるわけですが、したがって政治改革への動きが遅いのかなというような感じで見ております。これは政治改革経済改革関係についてですが、いずれにしても両方の改革を進めないことには将来は明るくならないというふうに私は見ております。  次に、この段階で経済改革進め方について取りまとめて私の感じを申し上げますと、三つあると思います。  第一は、いわゆる計画経済市場経済といいますか、マーケットメカニズムをミックスして改革を進めようという国々です。私はソ連中国はこの分類分類と言うと失礼かもしれませんが、このような進め方をしているのではないかと思います。英語で申し上げますと、ソーシャル・マーケット・エコノミー、社会主義的市場経済とでも申し上げるんでしょうか、これが一つグループです。  それから第二に、第二、第三のグループは、共通点市場経済を最終的に目指しているという意味では共通しておりますが、そのやり方、要するにスピードが違うという問題です。  市場経済を目指すうち、急速にそれを進めるということで取り組んでいる国が、私の見るところでは現在ユーゴスラビアポーランドだと見ております。例えばユーゴスラビアはこの二十年間、川を跳び越えよう跳び越えようと思いながら川に沿って歩いてきてしまったという気がいたしておりますが、最近川を跳び越えたわけでして、ただその川の向こう岸が未知の国であったわけですけれども、ユーゴスラビアは最近非常に積極的といいますか、市場経済への動き急速かっかなり積極的に進めております。それからポーランドも同様であります。  ハンガリーは現在、私は四月の末に現在のアンタル首相、そのときはまだ首相になっておいでになりませんでしたが、お目にかかっていろいろお話はしてまいりましたけれども、市場経済を目指していることは間違いないんですけれども、急速にその道を歩むのか、あるいはステップ・バイ・ステップといいますか、漸進的に向かうのか、私はまだ判断をつけるまでに至っておりません。  もう一つグループ、同じ市場経済を目指すわけですけれども、漸進的にやろうとしている国が私はチェコスロバキア、ブルガリアではないかと見ております。ただ、チェコスロバキアの場合も六月の八日に選挙がございますので、その後新しい体制がどのような戦略をとっていくかわかりませんけれども、現状で見ますとこの両国は漸進的に市場経済に向かおうとしているように私には見 受けられております。  以上が、現在進められている改革についてこの時点で各国のやり方を取りまとめてお話ししたわけでございます。  次に、ドイツの問題について触れてみたいと思います。  私は、ドイツ統一についてはその見通しを間違っておりました。昨年の十二月まで、一つ経済二つ政府が実現されるのは二年ないし三年、一つ経済一つ政府が日の目を見るのは五年ないし十年と、こういうふうに言っておりました。ことしの二月以降、この考え方を変えざるを得なくなったわけでありまして、一つ経済二つ政府は半年以内、一つ経済一つ政府は二年ないし三年で見られるのではないかというふうに私の見方を変えているわけでございますが、このような早い動きになりましたのは、やはり東ドイツ経済東ドイツの若い人たち西ドイツへの流出によって非常に混乱状態が進んだということだと思います。ですから、これ以上東ドイツの若い方々が西ドイツに来なくて済むように、つまり東ドイツにいるままで西ドイツ生活ができるようにというのがこの統一を動かしてきている一番大事な問題だというふうに私は考えております。  このドイツ統一の問題に関連しまして、マクロ経済政策の問題として私が若干心配しておりますのは、今後西ドイツ政府東ドイツかなり財政支援を強めざるを得ないのではないかと思っております。EC委員会あたりでも、一年に二百五十億マルクぐらいは新たに投入しなければいけないのではないかという見方もあるわけです。もっとも、私の友人のドイツ連銀首脳の一人は、これまでも西ベルリンとかあるいは国境地帯かなり財政支出を行っているので、東ドイツに対する財政支援でふえる部分はそれほど多くはないはずだと。それからまた、日本ヨーロッパあるいはアメリカの直接投資も期待できるというようなことで、財政上の負担はそれほど大きくはないのではないかという見通しを漏らしている方がおりますけれども、私はやはり財政は緩むのではないかと見ております。イージーフィスカルポリシーということになるのではないかと思います。  そうしますと、当然、ポリシーミックスとして考えますと、ドイツ金融政策はややタイト、やや引き締めぎみになっていくのではないか、金利はやや高まっていくのではないかという気がしております。この点もドイツ連銀首脳は否定しているわけでございまして、そのような運営を自分たちはしないというふうにおっしゃっておりますけれども、私はやはり金融政策はタイトになっていくのではないかなという気がしております。問題は、ですから、そういった金利の上昇を他のヨーロッパ諸国あるいは日本アメリカに波及させないようなことが大事だなという気がしております。  それから、ドイツ統一EC統合に与える影響でございますけれども、私はドイツ統一問題が一九九二年のEC統合に対してマイナス要因として働くことはないのではないかという気がいたしております。昨年十二月のストラスブール・サミットにおける一番大事な点は、当時ミッテラン大統領ドイツ統一を初めて認めたのに対して、ドイツ側がオーデル・ナイセの国境線の尊重、それからことしの十二月から予定されているEC統合のための政府間交渉に積極的に参加するというそういうコミットメントをしたことだと私は思っておりますけれども、そのような状況から考えますと、基本的にドイツ問題がEC統合に対してこれをおくらせる要因にはならないのではないかという見通しを持っております。  最後に、為替相場の問題について若干触れさせていただきたいと思います。  最近の動き、最新の動きと申しますのは、まず最初は、ことしになってきましてから円が従来ボックス相場と言われていた百四十円、百四十五円というところから百六十円に向かってきまして、それがまたやや現在百五十円に近づいている、こういう動きなんですけれども、私は百六十円に向かっているときに、これは最近の為替市場ファンダメンタルズ変化に着目したのではないかなという見方をとっておりました。つまり、ファンダメンタルズ変化で一番大きいのは、日本経常収支黒字が縮小し始めていることです。一、二月は一年前に比べまして月に二十億ドルぐらいの減少になっておりますし、最近ではやはり十億ドルぐらいは一年前に比べて要するに月々減っていくようなスピードではないかと見ておりますけれども、この経常収支黒字の縮小に非常に為替市場が注目したんではないか、これが百六十円の方向に円レートを変えていった一番大きな要因ではないかなと私は見ていたわけでございますが、百六十円になりましたときに少し見方を変えたわけでございまして、第一には、これだけ為替レートを動かせば為替市場自分の力に満足してもいいんじゃないかな、通貨当局の意向にもかかわらずこれだけ動かしてきたんだから自分の力に満足してもう矛をおさめたらどうなんだろうというのが第一の感想でございます。  第二の感想は、ファンダメンタルズ変化を見てここまで来たのならば、この辺でファンダメンタルズそのものを見直してみたらどうだろうか。為替相場影響を与えますファンダメンタルズはいろいろありますけれども、私は成長率とかインフレ率とかあるいは経常収支黒字赤字、あるいは金利等々だと思っております。もし日米ファンダメンタルズ現状そのものを比較しますと、例えば日本成長率は四ないし四・五%、アメリカはことし二%。インフレ率アメリカが四%で日本が二%。それから経常収支黒字は、減り続けているとはいってもこちらは黒字でございます。アメリカ赤字が減るとはいっても依然として赤字です。それから金利につきましては、名目金利アメリカの方が高いんですけれども、実質金利は既に日本の方が高くなっております。  そのような問題に着目しますと、市場というのは為替レートのレベルについてまた別の考え方をお持ちになるのではないかなというようなことを四月の初め考えていたわけでございますが、最近やや円高の方になってきております。ここまで来ますと、あと振り子がとまるのを待っていればいいのかなと実は思っております。これまで、行き過ぎたレートというのは二つしかないわけでございまして、プラザ合意前の二百四十円と、二度ほど近づきました百二十円、この二つが行き過ぎた為替相場でございまして:…
  4. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 大場公述人、時間が参りましたのでおまとめ願います。
  5. 大場智満

    公述人大場智満君) はい。  この二つ相場の間で振り子が振れておりまして、だんだんその振り子のサイズが小さくなってきているというのが現状であろうと思っております。  以上で四つの点につきまして私の説明を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
  6. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) ありがとうございました。  次に、財政・税制につきまして北野公述人にお願いいたします。日本大学教授北野弘久君。
  7. 北野弘久

    公述人北野弘久君) それでは、時間の関係もありまして三つの問題についてお話をしたいと思います。  第一は消費税問題でありまして、消費税法で規定いたします消費税は学問上の一般消費税であります、いわゆる大型間接税に該当します。日本国家財政収入のほとんどを租税収入に依存するという租税国家、シュトイエルシュタートの体制をとっております。日本国憲法の予定する国家体制も実はこの租税国家体制でございます。日本経済的には、基本的には資本主義経済体制を前提とすることになります。最近の東欧諸国等動きを見ましても、日本はこの租税国家体制を恐らく永続的に、半永久的と言っては言い過ぎかもしれませんが、維持していくものと考えております。  租税国家におきましては、租税の取り方と租税使い方、つまり広い意味での税金問題のあり方が実質的には憲法政治の中身を決定するということになります。人々生活であるとか人権であるとか、日本の平和の問題も実質的には税金問題のあり方によって決まると言っても決して言い過ぎではありません。租税国家では、人々税金問題を通じまして政治あり方、つまり税金の取り方と使い方を民主的にコントロールすることが期待されておるのであります。消費税は、本当の納税者である人々担税者皆さんを各人の意思とは無関係租税法律関係から形式的にも排除してしまう税金であります。私は、人々は自己の意思とは無関係租税国家におきまして法的に植物人間の地位に追いやられるということを言っておるのであります。これは決して差別用語ではありません。  このように見ていきますと、消費税の定着、そして拡大というものは、日本租税国家あるいは日本憲法政治を変質させるおそれがあります。そして、このような形で消費税問題というのは単なる税金問題ではないということに御注意願いたいと思います。それは日本租税国家の危機の問題につながる問題であります。  消費税について申しますと、このような租税国家における重大な本質的な問題のほかに、皆さん御存じ憲法議会制民主主義の初歩的な要請に反するという重大な問題がございます。消費税を強行成立させました国会は、御承知のように大型間接税は導入しないということを国民に公約しまして当選されました議員を主体とするものでありました、これは衆議院の話でありますが。  その後、各種の地方選挙であるとか、あるいは昨年七月の参議院選挙等におきまして国民は、消費税はノーである、あるいは消費税はまず廃止すべきであるという審判を下しました。本年二月の総選挙におきましてもそのような審判は下されておると私は見ておりますんですが、自民党は、一方におきまして選挙の過程におきまして人々を惑わすようなわけのわからない、私から申しますとわけのわからない消費税の見直し案を国民に発表しました。他方におきまして消費税問題を総選挙の争点から外すような戦略を用いたのであります。それにもかかわらず、自民党の得票率はわずか四六%にすぎなかったのであります。したがいまして、この前の総選挙におきまして消費税問題が国民から信任されたということにはなりません。私としましては、日本の民主主義を守るために、何としても消費税を廃止していただきたいと考えるのであります。  もし自民党の皆さん消費税を本当に見直したいというのであるならば、次のようなことを国民に公表すべきであります。まず第一に、免税点を五百万円に引き下げる。二番目に、簡易課税、限界控除の制度を廃止するかまたは大幅に縮小する。三番目に、伝票式に切りかえる。四番目に、逆進性を緩和するために伝票式を前提としましてゼロ税率等の制度を導入する。第五番目に、対消費者、消費者に向かってはむしろ外税方式を今後とも徹底する。そして第六番目に、税率は一五%に引き上げますということを国民に発表すべきであります。これは一たん廃止した後で、この恐るべき消費税の見直し案を国民に問う必要があると考えておるのであります。  昨年の大蔵省の計算によりますと、導入時の計算でありますが、竹下税制改革では二兆六千億円の減税超過をもたらす、歳入不足をもたらす、これは少な目の数字だと私は考えておりますが、加えまして民間の専門家グループの計算によりますと二兆円ないし二兆五千億円の財政の自動支出増をもたらす。それに税務職員一万人以上をふやす必要がありますので、徴税費の増大などを考える必要があります。そうしますと、三%では私たちの計算では数兆円の歳入不足となります。三%では一円も福祉に回す金は出てきません。消費税を本当に福祉目的税にしたいというのであるならば、最低限度、国の予算の社会保障費十一兆円をもカバーしなければなりません。数兆円の歳入不足分、そして社会保障費十一兆円をカバーするためには、消費税率は最低一五%に本年からも引き上げる必要があります。消費税収入の約四割が地方自治体に還元されるという現行制度を前提にしますと、一%で二兆円の税収計算を行ったとしますと、どうしてもこのように一五%にしなくちゃならないことになってきます。  自民党の見直し案はこの恐るべき本当の見直し案を覆い隠すものでありまして、国民消費税の恐ろしさを忘れさせようとするものであると私は考えております。  四十一年前にシャウプ教授は、日本が間接税に傾斜した租税国家となることに対しまして大変な危機を感じられまして、警鐘を発しておられます。政治後進国であり、九九%以上が中小業者という日本経済構造の特殊性は、私はある意味では資本主義のすぐれた面を示すものと考えております。つまり自由競争の原理を活性化させるというそういう意味では非常にすぐれた面だと考えておりますが、この二つ日本社会の特殊性からいきまして、消費税をまともに日本社会に適用した場合には大変恐ろしいことが起こるであろうと考えております。今のところ、いかなる型の大型間接税日本社会に合わないと考えておるのであります。後に述べますように、大型間接税を導入しなくても二十一世紀の日本租税国家を展望することができます。  以上が消費税問題でありますが、第二の問題としまして土地税制について簡単に触れておきたいと思います。  四月二十日から五月の初旬にかけましてドイツを含むヨーロッパ等に調査に行ってきました。その辺のことも確認した上で申し上げたいと思いますが、日本における土地価格の異常な高騰というものはこれは常識で考えられないことでありまして、ドイツの学者に申しましたらみんなびっくりして、本当かということを盛んに言っておりました。決して土地の需要と供給の関係から生じているものではありません。地価高騰の原因、土地の私物化、商品化、土地投機、スペキュレーションを容認し、むしろそれに拍車をかけてきたのは政治であります。  欧米社会では、土地は社会公共のものであるという土地公有権の思想が定着しております。これは資本主義法の思想であります。社会主義法の思想じゃありません。資本主義土地法の思想であります。土地所有権者の私の権利、プライベートライトと言っておりますが、私権は、現にその者が居住なり職業従事なりに必要な限りの範囲の土地利用をなし得るにすぎない。その者の一定の生存権的財産のみが人権として保護されるというのが資本主義土地法の考え方であります。この人々の生存権的財産を確保するために、むしろ非生存権的財産である投機的な財産等に対しましては国または地方公共団体の実質的な管理下に置くべきであるというのが欧米社会の土地法理論であります。  私たちは、日本国憲法もこのような土地公有権の理論を採用していると考えております。  実は、マッカーサー憲法草案におきましては、この土地公有権の思想を明文で規定するドラフトもございました。各地域にふさわしい土地利用計画、都市計画を設定しまして、各土地利用区分ごとに日本国憲法の土地法理論に適合する土地税制を含む土地政策を区別して適用すべきであります。  憲法の意図する土地税制は次のようなものになります。  第一に、法人、個人ともに所有期間、保有期間ですね、長短を問わず、地価高騰前の一定の基準日における適正価格までの土地の譲渡所得分、譲渡益分に対しましては総合累進課税を行います。適正価格を超える譲渡所得部分、つまり超過利益分に対しましては、これは社会公共に還元するという意味で一〇〇%の課税を行う。  二番目に、固定資産税等につきましては、土地を生存権的財産、投機的財産、資本的財産等に区分しまして、区分したところで各別の課税の仕方 を適用していくことになります。  一定の生存権的財産につきましては非課税にするという、これは憲法の要求でありますが、非課税、またはもし課税するとするならば、生存権的財産は売却をしませんので、譲渡をしないことを前提として利用するだけでありますから、資本主義法の理論としては利用権の価格しかありません。利用価格、あるいはユースバリューと言っておりますが、経済学では収益還元価格という言葉で表現する価格でありますけれども、それを課税標準としまして低い税率で課税する。一方投機的財産につきましては、これは不動産業者の商品としての土地であるとか企業が買い占めた土地であるとか高級別荘地等を指すんですが、そういう投機的財産につきましては、実勢価格、実際の不動産取引価格を課税標準としまして、しかも保有できない、キープできないほどの禁止的な高税率を適用する。そうするとぱっと地価が下がります。だれも土地を商品化する者が出てこなくなる。そして資本的財産、これは大企業の事業用の敷地等でありますが、これは事業の継続が必要でありますので二つの財産の中間程度の負担を課す。こういうふうに区別して課税の仕方を考えなきゃいけない。  現行法のもとでも、各自治体は固定資産評価条例におきまして、一定の生存権的財産については憲法が要求するような利用価格で評価することを適法に定めることができるというのが私の税法理論でありまして、これは明年からも可能であります。  三番目に、金融緩和とともに、企業の実質税負担率が非常に軽いということが金余り現象をもたらしておりまして、土地の仮需要の増大、そして地価上昇に拍車をかけてきたのであります。そこで土地税制という観点からも、すべての不公平税制の典型である租税特別措置の全廃を行うべきである。それから法人税率等の累進税化、私は法人税につきましては一五%から五〇%の累進税化を行うべきだと考えておりますが、を行う。  四番目に、法人所得の計算上、土地を取得した場合に借金をしましたその借金の利子の損金算入の大幅な規制を行う。一部現行法では特例として規定されておりますが、それを全面的に導入することを検討する。固定資産税等の保有税の支払い分についても法人所得計算上の損金算入の規制を考えるべきであるということであります。  五番目に、所得に表現されない隠れた担税力をつかまえるために財産課税をもっと整備するということでありまして、さしあたり国税として土地と株式、これは日本政治の恥部でありますが、土地と株式等に限定しまして、これは表現された財産ですから隠しようがありません、大企業に対しまして限定財産税を毎年課税する。課税標準は基準日の、毎年の一定日の時価であります。  個人の資産家につきましても、一定の生存権的財産以外の土地と株式。個人の場合は住宅地等の一定の生存権的財産を除外します。農地等も除外しますし、中小零細業者の事業用の敷地であるとか、中小企業のオーナー社長が持っておる自社株の持ち株、こういったものは生存権的財産でありますから、一定の要件を決めてそれは除外します。それ以外の土地、株式等の一定以上のものを持っている者について限定財産の税を毎年課税する。こういう形で、これからは二十一世紀に向かって所得課税と財産課税とをセットにしたところで直接税の公平論を考えなきゃいけない、こういうことであります。もしこの限定財産税を直ちに導入できない場合には、皆さん御存じの、企業を中心に土地増加益税というものを早急に導入するということを考えるべきだと考えております。  第六番目に、相続税につきましても一定の生存権的財産については非課税にするか、あるいは課税するとしましても利用価格による課税を行うべきであります。課税最低限の引き上げだけでは対応できないということであります。相続税は金持ちの財産でありますから、ネズミ小屋を残したといっても東京では相続税が大幅に変わってくる危険性があります。  七番目に、目下一部で論議されております市街化区域内の農地に対する固定資産税、相続税のいわゆる宅地並み課税論でありますが、現在の土地行政を前提とする限りは私は地価の高騰の抑制にならないと考えております。むしろかえって地価が高騰するであろうと考えております。農業をやめましてせっかく放出されましたダイヤのような農地が、現行の土地行政を前提とするなら新しく資本のえじきになるだけでありまして、地価高騰をもたらすだけであります。  それから食糧の確保のほかに、都市環境の保全であるとか、防災等の観占…からも、現代においては整備された、秩序化された、整序された都市農園というものは大都市の基本施設として不可欠であるということを申し上げておきたいと思います。  第三の問題、最後でありますが、時間が少なくなりましたので大急ぎで申しますが、二十一世紀の日本租税国家あり方をどうするかということについて、簡単に申し上げておきます。  第一に、さきにも述べましたところですが、租税特別措置の全廃を行う。  二番目に、法人税等の累進税化。  三番目に、所得課税と財産課税とをセットにしまして直接税制度の抜本的整備を行います。財産課税につきましては、大企業、大資産家については、さっき申しました土地と株式等を中心に抜本的に財産課税を整備する。  四番目ですが、所得課税においては、憲法の最低生活費非課税の観点から、基礎控除等の課税最低限を大幅に引き上げます。また、物価にスライドしまして減税する自動物価調整税制を整備いたします。これは、日本社会党も大分前に法案を用意しているのでありますが、ぜひこれを実現させてほしいと思います。財産課税におきましては、一定の生存権的財産は非課税にする。または課税するとしましても利用価格で課税するということを考える。  五番目に、以上のように、今後とも所得課税、財産課税の直接税を中心としまして日本租税国家を維持していく。間接税は個別消費税の枠ので直接税を補う税金、補完税として位置づけて備いたします。その際、例えば自動車等はもう衆化しておりますので、大衆車はむしろ免税点以下にするという形で、消費の実態に適合するような形で個別消費税を抜本的に整備する。  六番目ですが、税の使い方についても、納税者国民が法的にコントロールすることができるようにするために、税の使い方についても、それなりの法律の基準を整備いたします。それからさらに、納税者が税の使い方についても訴追できるように納税者検査請求であるとか納税者訴訟の制度を導入いたします。この制度は不公平税制、不公平税務行政についても適用することができるようにいたします。つまり、納税者税金使い方、取り方について法的にコントロールできるようにする、こういうことであります。  七番目に、ますます重要になってきます健康保険財政であるとか年金財政につきましては、福祉憲法考え方に従って現在の独立採算制の建前をやめまして、一般財源、一般の税金によって賄う建前に基づいて日本の年金財政等をどうするか考えていただく。  それから八番目ですが、高齢化社会論から大型間接税の導入の必要性が一部において主張されておりますが、二十一世紀においては子供の人口はふえないというふうに人口学者は言っておりますし、一方、医学の発達によって六十歳、六十五歳以上の人もみんなぴんぴんしておるということで、自分の熟年時代を豊かに生きるためには生涯働いてもらう。そして、直接税である目に見える所得税、財産税を納めてもらう。この直接税の方が人々のタックスライフを豊かにする、こういうことであります。それから、二十一世紀は戦争の危険は全くありません。軍事費を大幅に縮減していただく。そして、税源配分の構造でありますが、憲法の地方自治、福祉国家、平和国家の理念に従って地方の分権国家をつくっていただく。そ のためには、現在の中央集権的な租税国家体制をやめていただく。税金は、できるだけ市町村で取っていただきまして、そして余ったものを都道府県に持っていく、そして余ったものを国へ持っていくという形で現在の税源の配分構造を変えていただく、こういうことで分権国家をつくっていただきたい、こういうふうに考えるのであります。  御清聴どうもありがとうございました。(拍手)
  8. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) ありがとうございました。  それでは、これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  9. 青木幹雄

    ○青木幹雄君 公述人の両先生には、お忙しいところ本当にありがとうございました。  最初に、大場公述人三つの点についてお尋ねをしたいと思います。  一つは、我が国は今や世界最大の債権大国となりました。対外純資産の額は昨年末に三千五百億ドル、これを日本円に換算いたしますと約五十二兆円に達したと言われております。また、対米資産も一兆四千億ドル、これは二百兆円、英国を抜いて世界一になったということが言われております。こうした金はジャパンマネーとして今や世界をまたにかけて地球上を駆けめぐっておるわけでございますが、このジャパンマネーが近年海外の不動産投資に向かっているということが言われております。特に話題になっております日本企業による米国のロックフェラービルの買収や、これは不動産ではありませんが、コロンビア映画会社の買収などがございました。しかし、この急激なジャパンマネーによる海外不動産買収、直接投資には海外からも警戒、非難の声が多いこともまた事実であります。  こういうふうにして、ふえる一方の不動産買収、直接投資について、今後日本はどうあるべきか、金持ち日本の「世界に貢献する日本」という立場において、正しい金の使い方があればひとつ公述人の御意見を伺いたいと思います。これが第一点であります。  第二点は、ジャパンマネーの源泉は我が国の経常収支黒字が累積したものでありますが、米国との間に大きな摩擦を引き起こしたこの経常黒字も、昭和六十一年度の九百四十一億ドルをピークといたしまして、昭和六十二年度が八百四十五億ドル、昭和六十三年度が七百七十三億ドル、平成元年度は五百三十五億ドルと、かなり急激に減少の傾向にございます。これを対GNp比で見てまいりますと、六十一年度は世界経済の上でもまれに見る四・五%という高い水準でございましたが、昨年度は一・九%程度になる見通しと言われておりまして、二%を切ることになりそうであります。米国は我が国の経常黒字に対しなお厳しい姿勢を変えてはおりません。しかし一方では、IMFなどからは日本黒字は必要という有益論も出始めております。大場公述人も雑誌等で対GNP比一%の黒字は必要であるということを述べられておりますが、必要と言われるその根拠をお聞かせ願いたいと同時に、あわせて、公述人は我が国の経常黒字が減ってゼロになるという事態を予想されていらっしゃるのかどうか、お尋ねをしたいのが第二点であります。  三点は、今公述人からもいろいろドイツの当面する問題についてお話がございましたが、世界経済は今大きく動いており、第二次世界大戦後の体制が変革期を迎えたと言っても過言ではございません。とりわけ再来年に迫ったEC統合と、ことし七月といわれる東西両ドイツの通貨統一、東欧諸国の自由主義経済体制への転換と、実に目まぐるしい変転を遂げております。  そこで、東西ドイツの通貨の交換は一対一にする、もちろんこれは一定の制限があるわけでございますが、決定されたと報じられております。これによって早ければことしじゅう、遅くても来年末までという東西ドイツの国家統合見通しも先が大きく開けてきたような感じであります。問題は、西ドイツの負担がかなりの額に上ると言われ、一説には年間四百億西ドイツマルクに達すると言われております。今公述人は二百五十億西ドイツマルクとおっしゃったように聞いておりますが、数字の問題は別にいたしまして、巨額な金がこうして出回りますと、経済も成長いたしますが、反面、物価の上昇や金利も上がると考えられるわけであります。ある銀行の試算によりますと、そういう場合に公定歩合が九%ぐらいになるんじゃないかということも予想されております。この東西ドイツの通貨統合ドイツ経済に中長期的にどのような影響を及ぼすのか、またこれがEC全体にどのような影響を及ぼすのか、それがひいては日本経済にどのような影響を与えるのか、公述人のこの問題に対する見通しをお聞かせ願いたいと考えております。  次に、北野公述人にお尋ねをいたします。  公述人からはただいま、私どもとは基本的に考え方の大きく違う見解を聞かせていただきました。しかし、消費税導入当初の不安や混乱、また説明不足、理解不足も絡んでおおむね五割程度でありました消費税廃止論は、時がたつにつれて次第に減少してまいりました。一年を経過した今日では三割にまで後退をいたしております。かわって、このままで存続ないし見直しして存続を合わせた存続論が六割を超え、ほぼ三分の二に達していることが世論調査の推移でもはっきりいたしております。また、私どもも日常の生活を通じて身をもってこのことは体験をいたしております。各新聞社を初めその他の機関の世論調査でもおおむね同様の傾向にありますし、また町や村の実際の店頭の状況を見てみましても、当初のいわゆるつり銭騒動等の混乱も今はほとんどなくなってまいりました。私は、現行消費税が完全にいいものであるということを申し上げておるのではありません。消費税はおおむね定着したと私は考えておりますが、この点についての御意見をお聞かせ願いたいのが一点であります。  二点目は、経済の国際化が進展し、地球は狭くなって、日本だけが小ぢんまりとやっていける時代では今はございません。これを消費税に当てはめてみましても、消費税を採用している国は実に四十七カ国にも及んでおります。その中にはいわゆる社会主義国家も含まれておるわけでございまして、これだけ相互依存関係を深め、一国の経済動向がすぐ他国に波及をする、あるいは企業の多国籍化が進んでおる現在、物、金のみならず人の交流もまたますます活発化する傾向にあります。今後もこの傾向は強まることがあっても弱まることは私はないと思います。そうだとしますと、ECの例を見てもわかるように、経済の仕組みはもちろん、基本的な社会経済の仕組みを可能な限り統一していかなければならないと考えております。このことは、昨日までのこの予算委員会のいろんな議論を通じても、まさに与野党の一致した共通の認識になりつつあるんじゃないかと私は考えております。反面、従来の経済に係る私権の制限ないし放棄、これが現実であり、また今後の国際経済社会をうまく機能させていくための鉄則ではないかと考えております。さらに、これだけ大きくなった日本経済の力を考えれば、協調を考えないと世界経済の中で当然孤立をしていくわけであります。ソ連や東欧の経済が破綻し失敗をした例を見てその感を強くするわけでありますが、北野公述人は、消費税世界の流れであるという点と国際的な協調という視野から、消費税をどう判断されているのかお尋ねをしたいと思います。  なお、経済のサービス化が顕著な今日の状況で、いわゆる消費税、サービスを重要な課税対象と考えなくていいのでしょうか。それで税制度が納税者から信頼されるのかどうか、中期的な展望についてお尋ねをしたいと思います。  それから三番目、これは時間があればひとつお答えを願いたいと思いますが、公述人は今もかなりの時間を割いてこの問題を取り上げられましたし、いろんなシンポジウム等で土地税制については独特なお考えを披露されております。いわゆる居住者の生存権的土地と投機的な非生存権土地に分け、非生存権土地については公共の福祉のために制限されるべきであるということであります。 私も投機目当ての土地売買には強く反対をするものでございます。ただ、現実に実行可能な税制をつくる場合、公述人の御意見を先ほど聞きますと、やろうと思えば一年間でできるというようなこともおっしゃいましたが、実際問題として私は公述人がお述べになったような簡単な問題じゃないと考えておりますので、時間があれば、この問題についても御意見をお聞かせ願いたいと思います。  以上でございます。ありがとうございました。
  10. 大場智満

    公述人大場智満君) ただいまの三点の問題につきましてお答え申し上げたいと思います。  最初はジャパンマネーといいますか、特にアメリカへの投資の問題でございますが、三、四年前に私がアメリカへの投資の問題について若干心配し始めましたのは、フィラデルフィアの新聞に出ました漫画を見てからでございます。この漫画は一枚の漫画でして、大変簡単な漫画なんですけれども、要するにアメリカの労働者たちがプラカードを掲げて行進しているわけですが、そのプラカードには「バイ・アメリカン」と書いてあるわけです。アメリカ商品を買えと書いてあるわけですが、その漫画の右の隅に小さな男が小さなプラカードを持っているわけです。その小さな男はどう見ても日本人のように見えるわけです。下に金袋が置いてあるんですけれども、¥という字が書いてあるわけですから多分日本人だということになるんですが、その小さな日本人が持っている小さなプラカードに何と書かれているかというと、「バイ・アメリカ」と書いてあるわけです。アメリカを買ってしまえと書いてある。私三、四年前にその漫画を見たときから、直接投資とかあるいは不動産投資、アメリカに対する投資について若干心配をしてまいりました。  第一は、やはり御指摘のとおり、日本経常収支黒字、それに伴う資金が豊富になったということが一つあると思いますが、もう一つ忘れてならないのはドルが弱くなっていったことでございます。先ほど申し上げましたように、アメリカの資産というのは非常に魅力的なものがたくさんあるわけでございますから、そこでアメリカのドルが弱くなりますと、ますます買いやすくなるというか、要するにダンピングして自国を売るようなことになるわけでございまして、うついうことから投資が急速に進んだということだと思います。  御指摘のとおり、私も不動産投資につきましては若干心配しておりますが、基本的にはやはり民間に任せておけばいいかなというふうに考えております。例えばアメリカ側で時々規制の動きが出てくるわけでございます、例えば報告制度を強化しろとか。このような動きに対して、私は、これまでアメリカが外に向かって言ってきていることと違うんではないか。一九〇〇年代はアメリカは外に対しては自由にしろ自由にしろということを言い続けてきたわけでございますから、そういうアメリカの意向とちょっと違うんではないかなということもあり、アメリカ側の規制の動きに対しては私は感心しないわけでございますが、我が方も民間の、何といいますか、善意の考え方といいますか、適切な考え方にお任せしたらどうかなと思っております。  ただ、注意しなければいけませんのは、モニュメントは買うべきではないと思います。アメリカとか外国の方々が大事に考えている不動産を取得するということは、やはり気をつけた方がいいんではないかなという気がしております。  それから二番目に、経常収支黒字とこの問題とは大変深く結びついているわけでございまして、経常収支黒字がネットの長期の資本流出を決めているわけでございます。ほぼ等しいわけでございます。ただ、ネットの長期資本の流出額と経常収支黒字がほぼ等しいということですから、もし日本金融機関にリサイクリングの能力、外からお金を借りてきてまた外へ貸すという働きを強めますと、今度はグロスといいますか、ネットではございませんで、長期の貸し付けとか長期の資本投下が大きくなるわけでございますけれども、やはり経常収支黒字の縮小は少なくともネットの長期の資本輸出を減らすことは間違いないわけでございます。  私はGNPの二%くらい持っていたいなと実は昔言っていたわけでございまして、最近、少なくともGNPの一%は持つ必要があると申しておりますが、GNPの二%と申しましたときの考え方の基礎は、開発途上国への資金協力がGNPの一%は少なくとも必要なんじゃないだろうか。ODAだけ考えてみましてもGNPの一〇・三%ございますし、直接投資もありますし、あるいはこれから証券投資も少しは出てくるかもしれません。  ですから、LDCへの協力が一%は必要なんではないかなと漠然と考えた。それからもう一%は、アメリカのファイナンスを現実の問題として我々はしてきているわけです。と同時に、ECの一九九二年を控えてECの域内に生産拠点を持たなきゃいけない。それからまた、アメリカにも自動車産業を中心にして製造業投資が行われるわけでございまして、そういったことを考えて、やはり少なくともGNPの一%ぐらいの黒字を持ちたいなと。ですから両方合わせますと二%。ですから、今や先進諸国への投資が余り必要がないとか、もう大体展開が終わっているとか、あるいはアメリカのファイナンスをこれ以上続ける必要はないという考え方に立ちますと、少なくともGNPの一%ぐらいの経常収支黒字は持ちたいな、そういう考えを実は持っているわけでございます。  それから御指摘のゼロになるかどうかということでございますが、私はゼロにはならないと思います。私の友人で三年以内に日本経常収支黒字はゼロになると言う方がおりますけれども、ISバランスといいますか、貯蓄・投資、御承知のように、貯蓄引く投資が日本の場合には経常収支黒字になっているわけでございますが、貯蓄はそう急速には減らないんではないかと思いますし、ただ投資の方はかなり急激にふえる可能性があるわけでございます。いずれにしましても、今の日本の貯蓄・投資の状況を考えますと、三年以内に経常収支黒字がゼロになるという考え方私はとりません。ただ、経常収支黒字が徐々にあるいは着実に減りつつあるという状況は事実だというふうに考えております。それをもうしばらく私改善という言葉であらわして使っていきたいと思いますが、ある時期になりますと経常収支黒字の縮小が悪化ということになるのかと思ったりもしております。  三番目の問題でございまして、EC統合の問題でございますが、特に金融問題についての御質問かと思うわけでございます。  私は、よくブンデスバンク、西ドイツ連銀のペール総裁のジョークを引用しておりました。ペール総裁のジョークというのは、御承知かと思いますけれども、今ECの通貨の統一に一番熱心なのはフランスだから、したがって新しい通貨の名称はフランにしてやってもいい。しかし新しいフランは強くなきゃ困る、新しい通貨ですから。そうしますと、ストロング、強いというのはフランス語でフォールトでございますから、新しい通貨の名称はフランフォールトだ。したがって、問題になっている中央銀行の所在地は明らかである、フランクフルトだと、こういうのがペール総裁のジョークだったんです。最近、彼はこういうジョークを使わなくなったわけでございます。つまり、ジョークの世界から最近はやや現実味を帯びた野心的な目標というようなところに変わってきているような気がいたします。それだけ現実性を帯びてきているというのが私の認識でございますが、御指摘の西ドイツ金融政策金利を高める、EMSは二・二五%の幅ですから、もし万一ドイツ金利が上がりますと、これが他のEMS参加国に波及することは非常に容易だと思うんです。それを日本とかアメリカに波及させないように我々は心していかなければいけないんではないかなという気がしております。  EC統合につきましては、今ペール総裁のお話をちょっと引用させていただきましたけれども、私が冒頭に申し上げましたように、ドイツ統一問題はEC統合の促進材料にこそなれ、これをおくらせる要因にはならないんじゃないかなという気がしております。心配しておりますのは、むしろサッチャー首相ECに対する考え方が今後どうなるかということでございます。  それから日本経済への影響でございますが、私は実は十二月までは一九九〇年代は日本の時代だというふうに言っておりました。しかし、この二月からは一九九〇年代はヨーロッパの時代であるというふうに言わざるを得なくなってきております。しかし、日本成長率は減少といいますか、少し伸び率が減る傾向にあるかもしれませんが、依然として先進諸国の中では一番高いわけでございまして、したがって、やがてまた日本の時代かな、二十一世紀は日本の時代、あるいは日本とアジア・太平洋の時代かな、こういうふうに思っているわけでございます。EC統合が進みましても、ECはフォートレス、少なくとも要塞化するようなことはないんではないかと思います。垣根は少しは高まるとは思いますけれども、また、その垣根が少し高まることを想定して日本の企業は既にECの中に生産拠点を持っているわけでございますので、私はそれほど甚大な影響が我が国経済に及んでくるとは考えておりません。  以上、三点でございました。
  11. 北野弘久

    公述人北野弘久君) 七分しかありませんので、まず大急ぎで一番最後の問題、西ベルリンのかつて日本大使館のありました建物が改築されまして、目下、日独センターというふうになっておりますが、そこで東西の学者が集まりまして土地問題のシンポジウムをやったのであります。私は、基調報告におきまして開口一番、日本で一番大きな大学の教授を三十年やっておるけれどもいまだに外国の方を我が家に招待できないんだ、日本の名誉を維持するためなんだ、それほど東京の住宅事情は悪いんだということを申しまして、みんなびっくりしたんです。  要するに大事なことは、市場経済を前提とした体制をとる場合におきましても土地だけは例外だ、土地の投機化、商品化は神の摂理に反するんだということを土地税制の観点から申し上げただけでありまして、そう難しいことを言っているわけじゃありません。この考え方は一九一九年のワイマール憲法で既に憲法学の上では確認された思想でありまして、そういうことで東京を反面教師にしてほしい、西ドイツ東ドイツ統合する場合におきましても、土地問題だけは東京を反面教師にして考えてほしいということを訴えたのでありまして、その点を申し上げておきたいと思います。  それから、第一の問題ですが、消費税の世論調査の傾向は最近は変わりつつあるということは御指摘のとおりであります。これは日本人が悪いんですね。こんなに大学まで行って勉強しておるんですが、国民性が悪いんです、政治意識が低いという。欧米人はいまだにユダヤ人の虐殺を忘れません。韓国の方も日本の侵略を忘れないという、アメリカはパールハーバーをいまだに忘れません。日本人は簡単に忘れるんですね。七十五日過ぎないうちに参議院選挙のあの熱風を忘れてしまう。ならされちゃうんですね。これは浄土真宗が影響しておるのだと僕は思いますが、この辺からでありまして、先生のおっしゃるような世論調査の傾向は決して日本人の真意ではないというふうに私は考えております。  もし本当に消費税の恐ろしさを、ただ十数%にしますよ、中小業者の方に免税点をやめますよと、免税点をやめないといけませんからね。あるいは消費者の方が納めた税金が税務署へ行かないという、大蔵省計算で五千億も行かないということになっておるわけですが、それを改めるにはどうするか。だから、簡易課税をやめますとか限界控除をやめますとか免税点を引き下げますということにしないといけませんね、伝票方式に切りかえますと。  税率はヨーロッパ並みに十数%にしますと言った場合、恐らく世論調査をしますとみんな反対すると思います。そして私は、これをまともに国税庁が実行しました場合、税法違反で一々摘発をしていくと恐らく日本社会は混乱すると思います。日本の中小企業はほとんどつぶれるでしょう。多段階の製造、卸、小売段階で付加価値に十数%の税金がかかってきた場合、つぶれますよ。戦前から一回も大型間接税は成功していないんです。あの昭和十二年二月の明治憲法体制のもとにおいてすら大型間接税は廃案になったのであります。これは日本社会には合わないんです、今のところ。  ですから、この税金を定着させるためには、日本の企業の大企業化、寡占化、中小企業を全部つぶしてもいいということになりますよ。せっかく日本の文化である何十年続いたしにせをなくしていくという、もう既にどんどんつぶれつつありますからね、後継者の問題もありますが。そういうことです。ですから、私は少なくとも今のところはその世論調査は日本人の真意を反映していないと考えております。  二番目に国際化の問題、おっしゃるとおりですが、しかし国際化といっても、その国の歴史、国民性、風土、社会の水準によって決まってくるのでありまして、ヨーロッパECという一つ統一国家をつくろうという動きがございますのでちょっと違った事情もございますし、フランス人なんかは大型間接税を好むという国民性が社会学の調査でもあるというふうに言われておりまして、直接税は嫌いだという面がフランス人にございます。日本は、明治以来、直接税中心の国であります。そういうことも考えた上で、一挙にとは私は考えておりませんが、特に今のところは大型間接税をまず廃止してもらって、そして時間をかけて二十一世紀の日本のすばらしい租税国家をどうやって維持していくかということを慎重に国会議員の皆様中心に図っていただく。  そういうことを考えておるのでありまして、私は国際化ということは決して否定しませんけれども、大型間接税問題は、日本の国際交流とか国際生活における円滑化のための障害にならないと考えておりますので、これはもともと国内消費税ですから、しかも日本は島国でありますし。そういうことで、まず大事なことは直接税を中心とした日本人の政治意識、それから納税者意識を高めるということ。こんなに大学まで行って勉強しておるのに、政治意識は一番おくれているという政治後進国。社会主義国家ですら政権交代が行われておるんですよ。日本は国政選挙のレベルでいまだに自民党の皆さんが強いという、これは自民党の皆さんが悪いんじゃないんですよ、国民が悪いんですが。そういうことで、ドイツのシンポジウムで、僕はもう日本人をやめたいと思っているんだということをジョークで言いましたら、よくわかるということをドイツの学者が言いました。  そういうことで、先生の御質問の趣旨一般は私も賛成でありますし、恐らく二十一世紀に入った段階で政治意識も高まりますし、日本の中小企業も洗練化され、かなり健全な体制になって、大型間接税も受け入れるだけの経済基盤、社会基盤ができた段階では将来検討していいと思いますけれども、当面二十一世紀に入ってしばらくの間は私は今のところ必要ではない。これは日本社会をつぶす危険性がある。もし本当に自民党の皆さんがあるべき消費税の本質を皆さんに知らせた場合、私は専門店協会などの勉強会によく出ておるんですけれども、その話をしますとみんなびっくりしまして、じゃ、またもう一遍社会党を応援しましょうかということを社長さんたちみんなが言うんです。そういうことで、ぜひ本当の姿を国民に訴えてほしいと思います。  以上です。
  12. 青木幹雄

    ○青木幹雄君 いろいろいいお話をお聞かせいただきましたが、北野先生とかなり考え方が違うということを申し上げて、質問を終わります。
  13. 穐山篤

    ○穐山篤君 きょうはどうも御苦労さまです。  最初大場公述人にお伺いしますが、長い間大蔵省におられて金融自由化その他日米協議では大変御苦労いただいたこともよく知っております。そういう御経験に照らして、米国の中では、政府は総じて自由貿易を重視、維持したいと見えるわけですが、議会側が保護主義に陥りやすい、陥っている、あるいはいら立ちが非常に強いわけですけれども、この背景というものは何から起きているのか、まず第一にお伺いします。  それから二つ目は、先ほどお話がありましたように、経常収支あるいは貿易収支におきましても依然として赤字である。米国も、赤字を減らすために議会が努力して一定の法律も出ているわけですが、なかなか赤字が減らない。その原因とこれからの見通しについて、二つ目にお伺いをしたいと思っております。  それから三つ目は、日本構造協議の問題です。  実は私もワシントン、ニューヨーク、シカゴ、その他を歩いてみまして、例えばこういう事例に当たったわけです。シカゴでは、この教育施設は日本のお金でつくりましたと非常に感謝をしているわけですが、今度は金を貸した日本金融機関の幹部に会ってみますと、返してもらえる当てがあるんでしょうか、そういうことを質問しますと、いや、アメリカ国民が担保です、こういうことをいとも簡単に言うわけです。そういう意味で言いますと、アメリカの国債を日本がその都度三分の一程度買っているわけですけれども、売る方も買う方も少しイージーではないかと思うんです。その点が三つ目です。  それから、日米構造協議の問題について中間評価ができました。最終的には七月で取りまとめをすることになると思いますが、私は、一定の段階まではまとまると思いますが、後に問題が多分残るであろうというふうに思います。その残るということは二つあると思いますが、一つは、黒字減らしにそれほど貢献をしなかったという意味でさらに問題を提起してくるであろうというふうに考えますが、その点はいかがでしょうか。  それからもう一つ今問題になっておりますのは、日米構造協議で協議がまとまったものの後の始末ですね。これをモニターにするかサポートにするかという意味で議論がまだ残っているやに思うわけですけれども、これは私はサポートの方がいいと思います。もしモニターということになると、双方でそれをモニターにするということでなければならぬと思いますが、その点です。  それから、この日米構造協議の中で公共投資についてかなり厳しい注文がついていますね。四百兆とも五百兆とも言われているわけですが、アメリカのこの公共投資への気持ちは、大きなプロジェクトに参入をするという前提条件で注文がついているのではないかと思って、非常にその点を憂えているわけですが、こういう問題についてのアメリカ経済人あるいはアメリカ政府考え方はどうなんでしょうか。  最後に、EC統合というようなお話が先ほどありました。私どもも勉強しておるつもりですが、イギリスが多少ごねてはおりますけれども、多分EC統合というのは段階的に実現をするであろうと思います。その場合の経済体制ですね。私は、EC域内の団結といいますか、結束というものがまず優先をされて、経済的にも域内の経済の活性化ということがまず先であろう、優先されるであろうということになりますと、日本への影響というのは非常に甚大なものを考えるわけですが、その見通しについて。  以上、少し多くなりましたけれども、先にお伺いしておきます。
  14. 大場智満

    公述人大場智満君) たくさんの質問をいただきまして、できるだけ簡単にお答え申し上げたいと思うんです。  第一の、議会側の保護主義の背景は何かということでございますが、これは議会の方がむしろ各企業あるいは選挙区の方々の意向が直接反映されるという面があるのかなと思ったりしているわけでございます。つまり競争というものに対して、もし保護主義的な考えというか、保護主義的なというよりも保守的な考え方をとりますと、競争というものはできるだけ避けたいというのが企業とか、あるいは人間もそうかもしれませんが、そういう考え方がむしろ行政府よりも議会の方により反映されるのかなというような感じを私は持っております。  それからもう一つは、政府の場合には、直接相手国との交渉とか協議がありますものですから、どうしても相手国に自由を要求する以上、自分の方も保護主義に走ってはならないという考え方になってくるわけでございまして、ちょっと今の御質問が議会と政府のその差がどうかということでございまして、程度の問題だと思うんですけれども、そんなような感じを今持ったわけでございます。お答えになっておりますかどうか。  それから二番目に、財政赤字の原因と見通しということでございますが、私は、アメリカ財政赤字の原因といいますのは、原因といいますよりも、国防費の支出がかなり大きいということがやはり一つ要因だというふうに見ております。それ以外にも社会保障面でもいろんな施策は講じているわけでございますけれども。それからもう一つ、これはややアメリカの独特な立場でございますが、基軸通貨国ということで、普通の国ですと財政赤字経常収支面に響いてきますとこれがいろいろなデメリットを生むわけでございますけれども、アメリカの場合にはややそこが違っておりまして、インフレを覚悟すれば財政赤字かなり大きくなってもまあ何とかやっていける国でございまして、少なくとも対外面ではこれまでのところ余り支障が出ていないというようなことも影響しているのかと思います。  今後の見通しでございますが、私が注目しておりますのは、一つはもちろん国防費の削減でございます。チェイニー国防長官は六年間で千数百億ドルというような規模の数字を挙げているようでございますけれども、国防費の削減は、これは米ソの交渉いかんにも依存するわけですけれども、実現可能だと私は見ております。ただ問題は、その財源が歳出が減らされた分減税財源とかあるいは他の歳出の増加につながる可能性はないだろうかというのが私の心配でございます。  それから、歳出がふえる要因もございます。SアンドL、御承知のことだと思いますが、貯蓄銀行の倒産が相次いでおりまして、このSアンドLの救済資金が結局は政府の負担になっていくのではないかなと。これがあるいは数百億ドルに達するというような算定もございまして、この点は財政赤字を減らせない要因として考えておかなければいけないというような気がしております。したがって、歳出を減らせる要因と歳出、歳出といいますか赤字をふやす要因と両方ありまして、今まさに米国政府の動向を見ているわけでございます。ただ、最近ロステンコウスキ上院議員が民主党側から増税を含む改革案を出したことは、私は一歩前進だと見ております。恐らく大統領あるいはダーマン長官は、内心大変これを歓迎しているんではないかと思っておりますが、増税問題を含めてアメリカで議論がスタートするということは私はいい方向ではないかなと思っております。  それから三番目に国債の三分の一も買っている状況という御指摘、そのとおりでございまして、売る方も買う方もイージーではないかというお話でございますけれども、アメリカサイドに立ってみますと、経常収支赤字、まあそれは財政赤字とつながっているわけでございますが、そのファイナンスはだれかにしてもらわなければいけないわけでございまして、そうしますと、先ほど申し上げましたように黒字国というのは日本ドイツが一番大きいわけでございまして、日本経常収支黒字が減りつつあるとはいいましても例えばことし五百億ドル、あるいはドイツは六百億ドル、このような規模になるとすれば、引き続き魅力のあるアメリカの資産を買っていくという傾向は変わらないんではないかなという気が私はしております。売る方も買う方もイージーではないかという御指摘でございますが、私はやはり需要があるから取得していくんではないかなというふうに考えております。  それから四番目にSIIの問題でございますが、最初の御指摘の黒字減らしには貢献しないんじゃないかということについては、つまり障害を減らすわけですからそれが黒字を減らすことにつ ながるという見方もできますけれども、私は多くは期待できないと思います。黒字を減らすとかあるいはアメリカ赤字を減らすとかということはマクロ経済政策の問題だと私は考えておりまして、障害を除去することは非常に大事なことですけれども、それが直ちに黒字の縮小とか赤字の縮小にはつながるものではないというふうに考えております。  それからSII協議がまとまった後モニターにするのかどうかということでございますが、一九八四年に行いました日米円・ドル委員会の場でもその後協議は続けていこうということにしたわけでございますが、私は、サーベイランスといいますとちょっと言葉が強いんですけれども、双方が相手国に対して、まあモニターという言葉もちょっと強いんですけれども、やはりお互いに自分たちの状況がどう進んでいるかというのを協議するということは、広い意味での政策協調の一環でございまして、私は大事なことだとむしろ考えております。ただ、ワンサイドになってはいけないんではないかと。こちらもアメリカに対しましてはいろいろ言うことが、指摘することが多いわけでございますから、何といいますか、対称的に行われることが大事だろうと思います。一方的というのはよくないかと思っております。  それから公共投資について、どういう意図でアメリカは考えたのかという御質問でございますけれども、私は参入の問題もあるとは思いますけれども、基本的にはやはりISバランス、つまり貯蓄・投資の問題からこういったことを考えているのではないかと思います。つまり、一九八五年の九月のプラザ合意以来日本アメリカの二国間の政策協調の柱というのは、日本の内需拡大を志向する財政政策金融政策アメリカ財政赤字の削減だと思っております。アメリカ側だけがこれはまだ未達成なんでございますけれども、そういうマクロ経済政策の観点から内需拡大ということを志向し、この公共投資の問題をアメリカ側としては頭に描いてきたのではないかなという気がしております。  それから最後EC統合でございますけれども、御指摘のとおり、一九九二年のEC統合がうまくいきますと成長率は中期的に四・五%ぐらい高まりますし、消費者物価は六%低下する、あるいは雇用は百八十万人増加するというようなEC委員会の試算がございます。ですから、まずECにブームというほどではございませんが活性化が期待できるわけでございまして、日本の企業はECの中にもうかなりの企業が生産拠点を持っておりますので、私は先生のようにEC統合日本に甚大な影響を与える、つまりマイナス面で影響を与えるというふうには考えていないわけでございます。ただ、垣根ができると。先ほど申し上げましたように垣根はできますものですから、その垣根をできるだけ低める努力あるいはそれを飛び越えて相手国に入るような対応が大事かなというような感じを持っております。  以上でございます。
  15. 穐山篤

    ○穐山篤君 どうもありがとうございました。  それでは北野公述人にお願いをしたいんですけれども、消費税を廃止するという基本的なスタンスですから私ども全く賛成でありまして、それで具体的に幾つか提案がございますね。これも十分に私ども参考にさせていただきたいと思っております。  そこで三つほどお伺いをしたいんですけれども、例の国民負担率が一昨年三八・八%、去年で四〇・四%というふうに、従来計算しておったものよりも非常に速い速度で国民負担率が上がっているわけですね。これは税金プラス社会保障負担費ということですから、どちらかが減れば減るしどちらかが上がればふえていくという相関関係になるわけですが、機械的に分けることは難しいと思いますけれども、先生の御意見ではどうでしょうか、税金と社会保障負担費の割合を日本的に見てどういう程度がよかろうかということが一つと、それから二十一世紀に向けて高齢化社会を迎えるわけですが、むちゃくちゃに高い負担というわけにはいかないと思います。一定のめど、目標というものを決める必要があるし、行革推進会議でも五〇%以内というようなことが出ているわけですが、先生のお考えをまず第一にそこはお伺いをしたいと思います。  それから二つ目は土地税制の問題ですが、率直に申し上げて私ども一番困っておりますのは、例えば東京で一平米二千万円なんというべらぼうなところがあるわけですね。それを今後上げないようにする努力というのは当然であります。ところが、その平米二千万円を一千万円に下げるということは全くできないですね、不可能なんですね。そうした場合、この一極集中の東京の地価というものを冷却させる、上げないあるいはもっと下げさせるという一つの構想に、ちょっとでかい話ですけれども、東京から地方に遷都をするあるいは分都をするというふうな話がもし政治論としてうんと高まってきますと、途端に上がらないあるいは下がるという問題が起きるわけですが、逆に言えば、経済あるいは金融の分野で物すごい混乱が起きるというそういう不安を持つわけですが、こういう特に物すごく上がっている土地の価格の抑制という問題について、先ほど若干の税制上のお話がありましたけれども、これは今後についてはそういう知恵を出すとしても、これだけ上がったものはもう庶民の手にはどうにも負えないわけですね。何か抜本的な方法があればひとつお伺いをしたいと思います。  それから三つ目は政治論ですけれども、衆議院で野党が廃止論を出している。政府が見直し論を出している。機械的にこれを計算すれば、衆議院で見直しが通る。送られてきまして参議院で見直しがつぶれる。そうしますと、物理的に言えば現行の消費税三%がそのまま残る。そうなりますと、国民消費税に対する改革意見というのは何ら取り上げられない、取り入れられないという結果になるおそれがあるわけですね。そこで、国会としては知恵を出すべき段階にぼつぼつ来ていると思いますけれども、国会の外からごらんになりましてこういう場合にどういうふうに国民意見といいますか世論といいますかをごらんになるのか、そういう点について先生の御意見があればこの際お聞かせをいただきたい。  以上です。
  16. 北野弘久

    公述人北野弘久君) 先ほど青木先生から質問のあったことにお答えするのをちょっと忘れたことをまず申し上げましょう。  特定のサービス、サービス課税については大型間接税を必要とするんじゃないかということだったんですが、私は現在の個別消費税体系のもとでも今日の消費生活の実態を研究しまして特定のサービスについては個別消費税の対象にすべきであるということを考えておりますので、サービス課税についての必要性という点では先生と同じ意見であります。  それからただいまの先生の御意見なんですが、国民の負担率というのは非常に難しい問題でありまして、機械的に総国民所得と租税負担と社会保険料等の負担を合計して計算しても余り意味がないんですね、学問的には。まず一人当たりの国民所得が何ぼであるかということを考えないといけませんし、その国の物価状況、もう日本なんかめちゃくちゃですね。円なんか一ドル百数十円とか五十円とか言っておりますけれども、実力以上です、私に言わせますと。とにかく外国へ行ったら物価がもう驚くほど安いものですからね。ですから、日本へ来ますと千円なんかはほとんど値打ちがないでしょう。外国へ行きますと千円が非常な値打ちがあるんですね。そういうことで、そういう物価状況も考えないといけませんし、住宅事情、社会保障制度の発達なども考えないといけませんから、機械的に数字的な負担率を論じても余り意味はないと思っております。  そこで、租税負担と社会保障等の掛金の負担率との関係なんですが、日本世界に誇るべき憲法を持っておる。福祉憲法なんですね。人々は、所得税だとか、あるいは会社の場合は法人税であるとか固定資産税だとか、あるいはお酒の税金だと か、すべての税金自分たちの福祉国家を支えるためのものとして税金を負担しているんですね。ですから福祉税なんです、すべては。であるならば、二十一世紀の福祉国家ということでまず年金財政、それから健康保険の財政をどうするかということを考える場合に、所得税等の一般財源で賄う、そうして足らない分をちょっと公共図書館を利用する場合の利用料、使用料的な発想で、病気になった人だとか年金をもらう人に若干の掛金を負担してもらうという、そういう発想で二十一世紀の福祉国家の財政租税の仕組みを考えるべきじゃないかと言っているんです。  そういう意味で、私に言わせますと掛金の負担という形の負担金は憲法学上は一種の租税である、タックスである、こういうふうに考えておるのでありまして、こういう考え方憲法学者にも最近ふえてきておりますけれども、ですから公行政の租税を使っていく仕事の一番大事なことは、これからは軍事ではなくて、年金財政であるとか福祉とかという社会保障の方に一般の税金を使っていく。そういう発想で考えていきますと、租税と掛金の負担を論ずることは余り意味がない、その割合をですね。ですから、私に言わせますと掛金の負担自身租税であり、掛金の負担のあり方も通常の租税と同じような法理――法律理論に基づいて整備化すべきであるということを考えておりますので、方向としましてはできるだけ一般の税金の負担を負担割合としては多くしていく、社会保障等の掛金は減らしていくという方向で、全体の負担率は現在の四〇・四%とおっしゃいましたか、それ以上に超えない範囲内でどうするか考えていくという方向で御検討願いたいと思っております。  それから地価を下げる方ですね。私の申し上げた土地税制を中心とした地価対策はこれ以上上げないということですが、土地は国民生活にとって大変なことですから、土地の値段というのはね、ですから日本の国家の非常事態ということで、もう方法がなければ、余りよくない方法ですけれども、物価統制令、地価統制令というものをつくって、本当の地価統制令というのをつくって、例えば二千万円の地価を何百万円ですか、国民の感情に合う程度の五百万円に下げるとかということで銀座の何丁目はどうだと法律で決めまして、それを超える場合は債権法的に無効にする、債権法的に。売り主はその法定価格を超えた超過利益は適法に収受できない、不当利得を構成するという形で法律構成をしていくという、そういう余りよくない戦争中はやったあの地価統制令というものを、これは環境庁が常時監視するという形で、その地価統制令に違反するような売買等を行った場合、それから銀行だとかその他民間企業も全部地価統制令に従って担保などの取引もやっていくという、そういうことをやるわけですね。それに違反した人はどんどん刑務所へぶち込むという気持ちで、非常事態だと、土地というのはもう国民生活に大変なことですからね。  その程度の抜本的な対策しかないと思っておりますが、ちょっと余計なことを申しましたけれども……。
  17. 穐山篤

    ○穐山篤君 一番最後政治論ですが、先ほどの廃止と見直しの……。
  18. 北野弘久

    公述人北野弘久君) 政治論の方は、これは私は、かつてグリーンカードの凍結ですね、法律の規定によって凍結した、延期するという形でね。それから昭和二十五年のシャウプ税制における企業税としての付加価値税、内容は企業税ですが、あれも地方税法に条文化されたんですが、実施延期、延期というか法律による凍結が行われて結局廃止になったという経緯もありますので、これほどの民主主義の根本に関する問題ですから、税特ですか、設定されましたらそこで凍結を国民世論だということで確認してもらいまして、凍結してあとは時間をかけてどうするかを検討してもらう。まず何年何月何日から凍結する、実施しない、消費税を適用しないということを御検討いただくよりほかないと思っておりますが……。
  19. 穐山篤

    ○穐山篤君 ありがとうございました。
  20. 和田教美

    和田教美君 私の持ち時間は八分しかございませんので、最初にお二人に一問ずつ簡単に御質問申し上げますから、簡潔にひとつお答え願いたいと思います。  まず、大場公述人にお願いしたいのでございますけれども、ジャパンバッシングなど日本黒字減らし、つまり黒字悪玉論というのが相当横行した中で、我々も一生懸命黒字減らしに努めたと思うんですよね。その結果が、例えば大蔵省が最近発表した国際収支状況によりますと、一九八九年度の経常収支が前年度に比べて三〇%も減っているという状況になっておりますね。ところが、ここに来て今度は全く反対の日本黒字善玉論が出てまいりましたね。例えばIMFの最近発表した世界経済見通しの中での表現だとか、余り日本黒字を減らしてもらっては困るというような意見ヨーロッパ関係者の間にもそういう意見が大分多くなってきておりますね。我々おやおやと思うんですよね。アメリカはまだやっぱり黒字を減らせということだろうと思うので、この間にどうも対立も感じられるわけですけれども、我々として基本的にこれをどういうふうに受け取って対処していったらいいのか、それをひとつ専門家の立場からお答えを願いたいと思います。  それから北野先生にお尋ねをしたいんですが、これは消費税政府の見直し案についてでございますけれども、さっきのお話で、この見直し案は全くわけのわからないものだというふうなお話がございました。私も全くそのとおりだと思うんで、全体として見直しという名に値しないものだと思うんですが、時間もございませんので問題を絞って、竹下元総理がいわゆる消費税の九つの懸念ですかということを言いましたね。その中でやっぱり最大の問題は逆進性の問題だろうと思うんです。  大蔵省の説明資料なんかに、ここにも持ってきておりますけれども、この逆進性の緩和ということが今度の見直し案で大いに行われておるということを盛んに強調しておるんですよ。消費税の見直しの効果は低所得者ほど大きく、逆進性は大きく緩和されるということで、食料品の非課税によって税負担は一・五%までは確実に軽減されるとか、その他社会政策的配慮で大いにやっているんだとか、いろんなことを言っておるわけですけれども、この逆進性という問題について本当に政府の言うように緩和されるのかどうか。専門的な立場からいろいろ検討されておると思いますから、その二点についてひとつお答えを願いたいと思います。よろしくどうぞ。
  21. 大場智満

    公述人大場智満君) 最初の御質問でございますが、黒字善玉論という言葉をお使いになりましたが、確かに最近、ヨーロッパ中心だと思いますけれども、経常収支黒字について従来と違う見解が出てまいりました。恐らくきっかけは、東ヨーロッパに対して莫大な資本投下といいますか、資金需要が非常に大きいわけですから、これにこたえていくためには日本とかドイツとか経常収支黒字の大きい国、つまりは貯蓄が投資を上回る国に期待するということになるわけでございますから、したがって余り今までのように貯蓄を減らせとか投資をふやせとか、そういうことを言わなくてもいいのではないかという空気が出てきたことは事実だと思います。  ですから、例えばもし輸入面でアーティフィシャルといいますか人為的な輸入をふやすというようなことがあるいは企業に対してあるとすれば、そこまではやらなくてもいいかなというのが私の考え方でございまして、ただ先ほど申し上げましたように、いましばらくは経常収支黒字の縮小を悪化という言葉でなしに歓迎するという言葉で見ていきたいと思っております。
  22. 北野弘久

    公述人北野弘久君) それじゃお答えします。  逆進性の緩和ということを自民党の皆さんが言っておられますけれども、そもそも三%という世界に例を見ない税率自身が私は日本の後進性を示す制度と思います。こんな国は世界じゃありません。三%の段階で逆進性を緩和すること自身がごまかしでありまして、本当にやるんだったら十 数%の段階で、そしてちゃんと伝票式に切りかえてどうするかという段階で逆進性の緩和ということを論ずる実益があるわけでありまして、三%の段階でしかも帳簿式のままでやっていることはほとんど無意味であります。  そこで、一・五%の税率が食料品についても製造段階、流通段階でかかってくる。それを小売段階で仕入れるわけですから、小売の段階の付加価値の分だけは非課税といったって、もう実際現実の問題としては一体どうなっているのかということはわけがわからなくなってくるということですね。しかも帳簿式で。税の実務では、中小企業については認定課税が行われます。今国税庁は動いておりませんけれども、消費税の規定に基づいて税務調査を行い、やった場合は認定課税なんです。付加価値税という間接税の認定課税が行われる。どんどん中小企業に自殺者が出てきますよ。  そういうことで、まやかしの緩和というのはほとんど無意味なんですね。非課税製品をたくさんふやしたといったって、それはふやすのは当たり前なんだけれども、しかしそれを保障するものは何もないということですね。そういうことで逆進性の緩和にならないということでありますし、本当に真剣にやっているのかどうかわからない。しかも、食料品等について小売段階では外税方式をやめたいと言っているんでしょう。外税方式をやめちゃ――租税国家では小売の段階でこそ一般の消費者の皆さんに税を負担しているんだという意識を徹底しないといけません、政治を監督してもらうために。そういう意味でも必要なんですが、それを小売段階では外税方式をやめますということを自民党の案では言っていますでしょう。こういうことで、これは行政指導だと思いますが、いずれにしましてもまやかしだということで、私は逆進性の緩和にならない、逆進性ということを論ずること自身がごまかしである、こういうふうに考えております。
  23. 和田教美

    和田教美君 もうちょっと時間がございますから、大場さんに。  先ほど日本黒字というのは大体GNPの一%ぐらいは必要だというふうなお話でございましたけれども、前川レポートを検討したときには一・五%とか二%ぐらいのところを言っておりましたね。その段階までもう来ちゃったわけですね。それでもまだアメリカとの摩擦が絶えないということで、多少あるいは下げるべきだというお考えですか。
  24. 大場智満

    公述人大場智満君) 私も当初二%ぐらいと申しておりましたのは、日本開発途上国への資金の協力とともに先進諸国、アメリカとかECへの直接投資あるいはこういった国々の赤字のファイナンス、特にアメリカ赤字のファイナンス、これをしなければならない立場にあったわけでございます。したがって、もしアメリカ経常収支赤字が引き続くのであれば、私はアメリカのファイナンスの問題を含めて日本経常収支黒字の問題を考えていいと思うんですけれども、仮にもう開発途上国への資金協力あるいは直接投資ということにだけ焦点を合わせて考えますと、GNPの一%は少なくとも持ちたいなとこんなふうに考えているわけでございまして、二%というのを捨てたわけではないわけでございます。
  25. 諫山博

    諫山博君 短い時間ですから、北野公述人に一点だけ質問します。  固定資産税の評価がえが今大変心配されております。今までのような一律時価評価方式でいったらたくさんの人が固定資産税を払えなくなるんじゃないか、こういう心配です。実際、例えば大変な利益を上げている大銀行の敷地とその隣にある小さなお店の敷地と同じような方式で評価されるというのはやはり合理的ではないと思うんです。  北野先生が土地を三つの性格に分類されて、その性格に応じて課税の方式を検討すべきだという提案、大変私興味深く思いました。私たちは、やはり一律に時価で評価するんじゃなくて、例えば収益還元方式とでもいいますか、たくさんの利益を上げているような土地には違った方式で固定資産税を計算すべきだという提案をしているんですけれども、先生のさっきの御説明との関係で今の問題について聞かせてください。
  26. 北野弘久

    公述人北野弘久君) 先ほど社会党の穐山先生の御質問でちょっとお答えするのを忘れた点がございますが、遷都の問題ですね、東京からどこかへ首都を移すという話ですが、これをちょっと一言申しますと、実はイスタンブールについ最近行ってきました。あれはトルコの首都じゃないんですね。そこで、私はイスタンブールの学者に質問しました。トルコの首都でないのにどうしてイスタンブールに全部集中して大変な土地問題あるいは都市問題、いろんな混乱が起こっておるのかと言うと、これはやっぱりいろんな歴史的なものがあって、だから首都がどこにあるかというのは余り関係がないんだと、こういうことも向こうの専門家が言っておりました。都市工学者なんかがですね。そういうことにもなりかねませんので、仮に東京から首都を京都なりどこか、大阪か知りませんけれども移したとしても、僕は変わらないんじゃないかという危険性もあると思いますので、その点をお答えしておきます。  それから、ただいまの諫山先生、これは弁護士の先生ですから法律家ですが、現行法のもとでも地方税法は単に適正な価格としか言っておりません。現代法の実態を考えますと、生存権的財産についてはいわゆる売買時価はないんです。私の固定資産税を国分寺市が上げましても僕は土地を売りません。土地を売るのは人生とお別れする場合だけです。生きるためなんですね。地価の高騰と全く無関係です、固定資産税の関係におきましても。  そういうことで、私は、自治省の固定資産評価基準は告示という法形式を使っておりますし、憲法の自治体課税権の法理からいきまして、あの告示は法的には単なるガイドラインである、何らの法的な規範力はないとこういうふうに考えておりますから、現行法のもとでも各自治体が地方議会で自分たちの地域のこういう要件を満たすものは生存権的財産であるということを決めまして、足で調べてもらって、これこれしかじかの要件を満たすものは、先生がおっしゃった収益還元価格、利用価格、私が言ったようにユースバリューですね、利用権の価格です、賃貸価格に近い価格ですね、そういう価格で我が市は評価するということを決めればいいと言っているんです、私は。  そういうことを明年からでも実施してほしいということを、国会が地方税法の改正をしないんだったら、地方税法は単に時価しか言っておりませんから、時価の解釈を私は憲法に適合するような形で考える場合は条例でそれができる、固定資産評価条例というものを各自治体がつくっていけばよろしいんだとこういう趣旨の議論を展開しておりますので、全く先生の趣旨と同じ考え方を持っております。
  27. 粟森喬

    粟森喬君 私どもに与えられました時間も四分でございますので、大場さんには大変申しわけございませんが、北野さんに質問を集中させていただきたいと思います。  税制の問題でございますが、消費税の是非論が大変論議になっているわけでございますが、サラリーマンを中心にするところでは不公平税制の是正がすべての出発点だというふうに思ったと。それが何となく直間比率になりこの種の論議になってしまったわけでございますが、今、源泉所得といいますか給与所得をやっている層から減税をすべきだという意見がやっぱりあります。このことに対して北野さんの立場からどうお考えかお聞かせいただきたいと思います。
  28. 北野弘久

    公述人北野弘久君) 時間が四分しかありませんが、減税をすべきなんです。  私は法律家ですから税法学の研究といったら法律学の観点からやるんですが、税制専門ですけれども、大抵の税制の専門家はエコノミストでありまして、私はローヤーですからそういう関係から申しますと、日本の所得税法の基礎控除は三十五万円ですね。これは日本の恥なんですね。三十五万円で飯を食えますか、先生。健康で文化的な最 低生活という憲法二十五条の要求を具体化する条文が所得税法の基礎控除の金額です。  これは政府の税調でも二、三年前に参考人として述べたところでありまして、東京都の生活保護基準額の金額よりも日本の標準世帯の課税最低額は百万以上も低いんです。東京都の標準世帯の一級地の生活保護金額は二百数十万円でしょう。所得税の基礎控除、夫婦子供二人で百四十万円でしょう。これは国の恥ですよ、こんなことをやっているのは。しかも物価は世界一高いという。そういうことで、基礎控除等を大幅に上げないといけません。ですからそういう意味で、さっき申しました憲法二十五条の趣旨等に適合するような形でサラリーマンを中心とした人たちのメリットになるように課税最低限の大幅な引き上げが必要だと思っております。そのためにも不公平な税制をきちっと是正する。で、消費税は今のところ最大の不公平税制ですから、これをまず廃止してもらうということです。  そういうことで日本はいろいろ問題がありますけれども、特に日本の資産家、大企業、ほとんど税金を納めてないという。私の友達はみんな会社の重役をしていますが、私だけはこういう貧乏な教授をしておりますけれども、みんな悩んでおるんです。どうやって金を使うか悩んでいるんですよ。あるところにはあるんです。そこでさっきの国際的な問題が起こっておりまして、ニューヨークにまで買い占めに行くとか土地転がしに行くとかというふうになっちゃうんですな。ですから、この不公平税制がそういう金余り現象をつくっているということ。ぜひ、財源はありますから、先生のおっしゃるとおりやっぱりサラリーマンを中心とした減税をやらなきゃいけないということですね。
  29. 粟森喬

    粟森喬君 大場さん、今の意見に対して、北野さんの意見なり私の減税をすべきだという意見に対して御意見がありましたら……。
  30. 大場智満

    公述人大場智満君) 私のきょうの課題ではございませんが、私、日米問題を日米政策協調を進めておりますときに、アメリカ側から所得税の減税を強く働きかけられたことがございました。そのときのアメリカ側の考え方はやはり所得税の最高税率の問題でございまして、最高税率が今のような状況で日本のようにそれで皆さんよくお働きになる意欲がわくなというようなことを言われたことがございまして、以来、何も外国に言われたということじゃございませんが、所得税の減税の問題につきましては私は絶えず関心を持ち続けてまいったわけでございます。  以上でよろしゅうございましょうか。
  31. 足立良平

    ○足立良平君 私も時間が大変短いものでございますから、大変失礼でございますけれども、北野公述人にはちょっと質問を差し控えさせていただきたいと存じます。  それで、大場公述人にお聞かせをいただきたいと思うわけでございますが、EC統合というのを考えてみましたときに、これは考えてみましたらもう四十年、五十年、半世紀にわたって、しかもそれは国家主権というものを制限するないしは放棄するという方向で今日まで協議を進めてきたということは、私は大変なことではないかとこのように思うわけでございまして、そのような方向性をとろうとしたEC諸国は一体どういうところからその方向性をとろうとしてきたのだろうかということをひとつお聞かせ願いたいと思います。  それと同時に、これはECがある面におきましてはブロック経済化していくわけでございますし、そして一方におきましてはアメリカ、カナダもそういう方向へ今向かっているわけでございまして、これから一般的に日欧あるいは米とかよく三極構造とか言いますけれども、日本の置かれている状況というものは国際的に見ましても大変脆弱な状況にあるのではないか、このようにも思うわけでございまして、そういう観点でひとつ公述人考え方をお聞かせ願いたい、このように存じます。
  32. 大場智満

    公述人大場智満君) 最初の御質問でございますが、EC諸国はもともと同質性がある社会、アジアとその点がかなり違うと思うんですけれども、そういう状況がありましたのにもかかわらず、二度三度にわたる戦争で大変な辛酸をなめたわけでございまして、やはり平和と繁栄のためには我々はまとまるほかはないということで今の統合が進められてきたんだという気がしております。しかしながら、これからがなかなか大変でございます。経済統合の方はある程度進んでまいりましたけれども、政治的な統合になりますとこれはかなりの困難があるかと思っております。  それから二番目にブロック化でございますが、私の外国の友人たちは非常に嫌がるんですけれども、ECの一九九二年の統合とかあるいは米加貿易協定というのを私は地域主義、ブロック化というふうに定義づけているんですけれども、ただもし一つ救いがあるとすれば、これらの地域を構成している国々あるいは人たちが、一つ世界へ向かっての過渡期というかあるいは過渡的な段階として、地域主義というかEC統合とかあるいは米加貿易協定とかそういうものを考えていただきたい、そうすれば地域主義がブロック化だけにとどまらないで、一つ世界へ向かっての一つのステージといいますかステップになるんではないか、そんなふうに考えております。  それから、日本はやはりこの機会にアジアに目を向けるべきだと思っております。ただ先生も御承知のように、アジアというのはECに比べまして一つ一つの国が大変違っております。多様性に富んだ地域でございます。これが一つ問題。それからもう一つは、アジアは今世界のグロースセンター、特にNIESとかASEAN諸国を中心にしまして世界の成長の中心でございまして、世界平均の成長率の二倍の成長率を享受しているわけでございます。したがってうまくいっている国々が多いわけでございまして、大体うまくいっている国々というのは現状を変えたくないというところがあります。そういうことでアジア・太平洋地域の協力というのは大事なんですけれども、ECほどの何といいますかまとまる力が出てこないというのが現状かと思っております。
  33. 星野朋市

    星野朋市君 時間がございませんので、北野先生に一点だけお伺いいたします。  昨日も橋本大蔵大臣がいろんな土地税制の議論を超えて法人の含み益課税について検討すべき段階に来ている、こういうことでございますが、含み益課税であるとか増価税、そういうことではなくていわゆる法人の持つ土地の再評価をすべきだろうと思うんですね。  それで、これはさらに突っ込んだ意見として、私は再評価をして資本組み入れをすべきだというふうな考えを持っております。これは戦後一回これが行われました。ただ、そのときは残念ながらほとんどが資本組み入れをして償却資産に向けられてしまったわけですね。したがって、土地についての再評価というのは実態的には行われなかったわけです。これは個人の相続税それから法人の非相続性の問題とも絡んで、再評価を一定の時期に一定の間隔を置いてすべきだという考えを持っておりますが、この資本組み入れの件についてどうお考えでございますか。
  34. 北野弘久

    公述人北野弘久君) 再評価をやっぱり考えるべきだと思います。それで、その場合再評価差益についてはきちっとやっぱり税金を取る。これは再評価益税と言うか土地増加益税と言うかは別としまして、そういうことを処理した上でそれを資本組み入れするということについては私も考えていいんじゃないかと思っております。
  35. 星野朋市

    星野朋市君 終わります。
  36. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) ありがとうございました。  以上で国際経済金融及び財政・税制に関する意見聴取は終了いたしました。  一言御礼を申し上げます。  大場公述人北野公述人には、それぞれのお立場から貴重な御意見をお聞かせいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして衷心から厚く御礼申し上げます。(拍手)  午後一時に公聴会を再開することとし、これにて休憩いたします。    午後零時三分休憩      ─────・─────    午後一時一分開会
  37. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 予算委員会公聴会を再開いたします。  一言ごあいさつ申し上げます。  宇野公述人、藤井公述人におかれましては、御多用中にもかかわりませず本委員会のために御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして心から厚く御礼を申し上げます。  本日は忌憚のない御意見を承りまして今後の審査の参考にいたしてまいりたいと存じますので、どうかよろしくお願い申し上げます。  次に、会議進め方について申し上げます。  まずお一人二十分程度の御意見を順次お述べいただきまして、その後で委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、順次御意見を承りたいと存じます。  まず、流通問題につきまして宇野公述人にお願いいたします。早稲田大学教授宇野政雄君。
  38. 宇野政雄

    公述人(宇野政雄君) 二十分ということでございますので、私の考えを要約して申し上げたいと思います。  事務局からいただきましたいろいろ資料などを拝見いたしますと、これからの経済運営の基本的な考え方というようなことで、特に強調されておりますことが消費者利益の視点というものを重視していくんだ、こういう考え方に立ってこれからの経済運営を図る、こういうことが出ておるかと思うわけでありますが、その中の一つの問題として私に流通問題ということについて見解を述べよ、こういうことでございます。  この場合、流通というのは、御存じのように生産と消費を結ぶものが流通でございますから、そういう意味におきまして流通の近代化ということが提唱されましてから随分長いわけでございますが、それは御存じのように、消費者が支払います価格の中を分けて見ますと、生産にかかわるコストと流通にかかわるコストというものに分かれるわけでございます。  今申しました生産にかかわるコストは、これはだれも言わなくとも企業の方は一生懸命コストダウンをする。コストダウンをすれば、それだけ利潤が上がりますので、一生懸命頑張るわけでありますが、それに対して消費者が支払う価格の中で流通コストの方でどう見たらいいだろうか。物の値段が上がっていきます場合には、流通コストというものがもっと下げられないかということがよく言われるわけでございますが、その意味において流通近代化ということが提唱されているかと思うわけでございます。その点を見てまいりますると、最近における流通に関する規制緩和の方向、これはやはり一つ意味のあることだろうと思いまして、賛成をするわけでございます。  この問題に関連いたしまして、現在、例の日米構造協議の中間報告などでアメリカから大店法というようなものについて問題が提起されておりまして、それに関しましては法の運用の改善を図るということを手始めにいたしまして、法そのものの改正につきましてもいずれ検討を進めよう、こういうようなことを聞いておるわけでございますが、問題はこういったような大きな流れの中で流通そのもののあり方というものをやはりこの機会にはっきりとしておくのが必要ではないかということで、学校の教師でございますから、当たり前なことでございますが、改めて申し上げたいわけでございます。  まず、言うまでもないことですが、流通というのは、円滑な供給を行う、生産から消費へ円滑に供給をしていく、しかも価格の安定または低下というものが期待されていると思います。しかも、そこに関連いたしましては、競争が促進されることが望ましい。そして、そこに関連いたしまする、例えば中小小売業の安定とか効率化ということも期待されるわけでありますし、それらの小売業で申し上げますと、いろんな多様な業種業態というものがそれぞれ併存することによりまして消費者選択というものが保障される、こういうことが消費者利益につながると思うわけでございます。もう一つ最後には、都市空間と申しましょうか、後ほど申し上げますが、そこに適切に配置される、これが流通構造というものの望ましい姿である、こういうように一般的に考えられるかと思うわけでございます。  今のような点を見てまいりますと、例えば最後に申し上げました都市空間というような点で考えてみますと、この十年間に郊外型のショッピングセンターというのは十年前に倍するものでございまして、今日約千三百を超えるショッピングセンターというものができております。それに対しまして、町中のいわゆる商店街というものをとってみますと、これはかなり歯抜けの状態というものが出ているわけでありまして、問題は、この辺バランスのある方向が出ませんと、先ほど言いましたような都市空間における適切な配置ということにならないと思うのでありまして、今、私も関係いたしましたが、九〇年代流通ビジョンなんていうので昨年通産大臣への答申で出ておりますところで、例えば「街づくり会社構想」というようなものを具体的にどう持っていくのかというようなことの提案がなされておりますのはその町中の問題に関してのことでございます。  皆様方御存じのように、私、昭和三十年ごろから毎年のように研究の関係もありましてアメリカへ行く機会がございますが、例えば、いい例じゃないかもしれませんが、ロサンゼルスなんていうところを見てみますと、そのまま自然に任せておりましたことが、郊外には大変なショッピングセンターがどんどんできる、そして町の真ん中のダウンタウンというのがゴーストタウンになってくる。昼間でもうっかり歩けないというようなことがひとときあったように覚えております。それに気がつきまして、今は町中の再開発というものを一生懸命やっているわけでありますが、私は、そういう意味での都市の中における過疎化といいますか、こういうようなものは、過去の今のような例を考えてみますと、日本でそういうことになってはいかぬと思うのであります。  現在この国会がございまする千代田区というものを一つとってみましても、御存じだと思いますが、過去においては人口が十五万ございましたが、現在夜間人口というのは五万を切っているはずでございます。ところが、昼間ここの地区に勤めております連中というのは百五十万人なんですね。それから、マリオンの辺のところへと買い物に来るような人たちを加えますと約二百万ということでございまして、そういう点で見ますと、ここの千代田区に住んでおりまする方々から見ますならば、まさにこのままでいきますとゴーストタウンに近いものになってくる。これは決していいことだと私は思わないわけでありまして、そういう意味において、先ほど申し上げましたような都市空間における適切な配置、こういうようなことを頭に置きながら、これからいずれ諸先生方の方で大店舗法などの改正についての御議論があるだろうと思うのでありますが、一大店とか一小店というそういうことではなくて、今のような地域というもののもっとにぎやかさといいましょうか、そういうものへの発展というものがあってしかるべきではないかという気がしております。  実は、大店法の是非云々ということにつきましては、発端は、アメリカ側から御存じのように貿易収支のバランスをもっと何とかならぬか、こういうことで、最初は製品輸入ということにつきまして積極的である大型の店の方でなかなか面積を広げられない、それなら売り場をもっと広げてあげたらどうだろうか、こういうような形から問題が提起されてきたように思うのでありますが、その後、アメリカの御存じのように企業そのものも日本に参入をしていきたい、こういうようなこともございまして、例の大店法の問題などが国際的に問題にされてきたかと思うわけであります。  例えば今の製品輸入というようなものを促進していくという点で申しますと、御案内のように、日本で例えば小売店の売り上げの中で大型のお店が占めておりまする市場占拠率というのは約三割と見ていいと思うのであります。あとの七割は小さい小売店が皆売っているわけでございます。小さいところでありますから、そこへは当然問屋さんを通して流れていく。こういう点を考えてみますと、大型のお店に関しまして、最近、製品輸入をするところについては、わずかのようでございますが、少し売り場面積を広げさせようじゃないか、こういうようなことが取り上げられているわけでございますが、それも私、決して悪いとは思っておりませんが、より重要な問題は、七割を占めるところがその気になってもらえるような仕組みを考えていく、それに対する何らかの促進策を考える、これが私は非常に重要な問題じゃないかという気がするわけであります。しかもそれをてこにいたしまして、中小商業者の活性化ということを考えてもしかるべきではないかというのが一つ考え方でございます。  そういう点を考えますと、私かつて審議会の方でお手伝いをしたことがございますが、御案内のように昭和四十九年に大店舗法と一緒に小売商業振興法というものができておるはずでございまして、大店法は前の百貨店法の時代からよく頭にあるわけでございますが、本来は、冒頭に申し上げましたような消費者利益の保護に配慮するということを入れて、中小商業者に事業機会を与えるためにこの法律をつくる、こういう感覚であったと思うのでありますが、百貨店法のときは消費者利益という言葉はなかったはずでございます。  その点を考えてまいりますと、若干緩やかな形で大型のお店の活動に対してはブレーキをかけよう、それが許可制から届け出制なんてものになされた理由だろうと思うのでありますが、その間に小売商業振興法の方でもっと前向きに伸びてもらう。つまり、一方においてはブレーキをかけるが、一方においては大いにアクセルを踏んでもらう。この辺の兼ね合いが必ずしも十分いかなかったというのが過去の十数年間の取り上げ方の問題であったんだろうと思うのでありまして、大店舗法だけが大変クローズアップしておるわけでございますが、これをどう手直しするかというようなことも問題になっているわけであります。私は、今申し上げましたような理由で、小売商業振興法というようなものをもう一度全面的に見直していただいて、そしてもっとみんなが十二分に生き得るような道というものが考えられると望ましいなと、こんなような気もしているわけでございます。  そういう意味で考えてみますと、実は基本的なことを申し上げましたが、消費者利益と言っておりますが、たしか昭和四十九年ごろの辺での考え方は、冒頭にも触れましたように、消費者というものは少しでも安く買いたいという、もちろん選択の幅も広げて買いたいということもございますが、経済性の追求ということが消費者の基本の考え方だったと思うのでありますが、今日はもっと多面的になっているわけであります。  いろいろ政党のお方もお使いになっているようでございますが、生活者という言葉があると思うんですね。私はこれを二つの側面からとらえているわけでありまして、講義申し上げるのはどうかと思うのでありますが、生まれた以上生きていきたいとする者、そういう意味生活者だと思うのでありますが、その意味ではだれでも安全に生きていきたい。しかも、そういう意味での生活者であると同時に、自分らしい生活をしていきたい。個性的な、主体性を持った、そういう二面性を持っていると思うのでありまして、そういう意味での生活者たらんがために我々は物を購買して使用しているわけでありますので、消費するために生活をしているのではないわけでありまして、私は基本的にはその意味で消費者利益と言っておりますることは、生活者利益という言葉で置きかえてお考えいただくことが望ましいという気がしておるわけでございます。  そういう視点から見てまいりますると、今までの大店法なりそのほかのものを考えましても、経済的な側面からのいろいろな検討があったと思いますが、今のようなプラスアルファを考えてみますと、少しく検討を要するところがあるのではないかな、こういう気がしておるわけであります。  最後一言申し上げたいわけでございますが、私に与えられたのは流通問題ということでございますが、流通というものは、言うまでもなく生産と消費を結ぶものでございまして、生産というものの円滑化を期待して流通のあり方は考えなければいけないし、また消費も、先ほど言いましたように、円滑な供給を受けることによって安心した生活をしていく、そういう意味においての両方に対してプラスを与え、と同時に、流通に関連する方々もやっぱり立派に生きていかれるようなそういうあり方が望ましいという気がしているわけでございます。  そういう観点から見ますと、どうも従来の予算案とかその他を拝見して見てまいりますと、商業とかそれからまたは鉄道とか港湾とかというような形でのいろいろ予算のつけ方とかその他はございますが、流通という視点から問題を取り上げているというのは極めて希薄ではないかなという印象を実は持っております。そういう意味で見ますと、聞くところによりますと、今度予算が通りますと、通産省の産業政策局の中の今までの大規模小売店舗調整官というところの室が流通産業課という名前になるんだという話でありますが、流通というものが課の程度の問題で果たしていいのだろうか、もっと大きな存在としてお考えいただかないとまずいのだろう、こういう気が実はしているわけでございます。  と同時に、もう一つ申し上げたいことは、いろいろと皆さん方の方からお出しになっておりますもので、消費者重視ということが言われているのは結構なんでありますが、消費者自身がこういうものについてどう考えているのか。本来、今の我々の経済の仕組みから見ますと、企業も自立していかなければいけない自己責任があります。消費者も同じことでございまして、そういう意味から申しますと、だれかが言ってくれて重視されなきゃならないというのじゃなくて、社会的な存在としての立場から消費者がもっといい意味において発言をしていく。そういう意味においては消費者教育というようなものにつきましてもっといろいろと策が講ぜられてしかるべきではないか。  企画庁とそれから今度文部省とが共管で、例えば消費者教育支援センターなんというものがつくられたわけでございますが、こういったことも実は重要性なんというのは昭和四十一年ごろから取り上げられてきているようです。いろんな方たちがいろいろやってきたわけでありますが、やはりこの辺でせっかく消費者重視ということをうたい文句にするのならば、このようなものにつきましても流通とあわせて国会の先生方の方で十二分なる御検討をいただくことがあって望ましいのではないか、これが私の考えでございます。  ちょうど時間のようですから、これで終わらせていただきます。  とうもありがとうございました。(拍手)
  39. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) ありがとうございました。  次に、外交・防衛につきまして藤井公述人にお願いいたします。軍事問題評論家藤井治夫君。
  40. 藤井治夫

    公述人(藤井治夫君) 藤井でございます。  公述人として意見を述べる機会を与えていただきましたことに対して感謝申し上げます。  世界の大勢は、今とうとうとして軍縮に向かっております。御承知のように、アメリカは既に一九八六年度以来実質軍事費を削減しております。今日まで五年、今後さらに五カ年間にわたり毎年実質約二%のカットを続けるという計画を立てております。八六年から九五年までの削減は累計二二・四%に及ぶわけであります。しかも、さらに大幅な削減をやる可能性がある。こういうふうに国防総省の文書も述べているわけであります。また、人員も今後三十万人削減する、こういうこと も検討されているようであります。  一方、ソ連は九〇年度から二年間に国防費を一四%カットする、こういうふうになっております。さらにいろんな意見が出ておりまして、ソ連軍参謀長は今後も減らしていく、約四〇%のカット、こういう可能性があると申しております。人員はゴルバチョフさんが五十万人を一方的に減らす、こういうことを国連総会で発表しております。  また、この二、三日新聞が伝えるところでは、NATOが、もはやワルシャワ条約機構はNATOにとっての脅威ではない、こういうことを公式に認めまして、そうして国防費の実質三%増をやめる、そういう目標は廃止すると申しております。軍事演習を大幅に削減する、こういうふうにもなってきているわけであります。まさに世界は軍縮と平和に向かっている、これは否定しがたい現実であります。  だが、残念ながら、予算案を拝見いたしますと、九〇年度の防衛関係費はこの世界の大勢に逆行するものと言わざるを得ないわけであります。予算の支出において六・一 %増、二千三百九十五億円がふえるということである。自衛官の定員は二百九十二人ふやすということである。これは何かの間違いではなかろうか、マイナスという符号が落ちているのではなかろうかと思ったぐらいですが、そうではない、ふやすのであります。やはり昨年の三兆九千一百九十八億円に対してマイナス六・一で三兆六千八百三億円にするくらいが世界の大勢から判断して適切ではなかろうかと思うわけであります。  また、基地の問題にいたしましても、アメリカは六十九の基地を閉鎖、縮小すると発表しております。だが、この予算案を拝見いたしますと、例えば陸上自衛隊は三十キロメートルも撃てる、そういう大砲の全射程で撃てるところの長射程射場を新たに設けるということになっている。あるいは対上陸演習場を新たに設置するということになっており、さらに演習場の集中整備を進めるともなっておるわけであります。航空自衛隊は燃料及び弾薬、そういう施設を各一カ所ふやすということになっております。  そういうふうにどんどん各国は基地を減らしているのに、日本は基地をふやし、自衛官の定数をふやし、また予算をふやすということである。一体日本国憲法の理念である平和国家としての立場、平和主義の理念というのはどこへいったのであろうか、こういう疑問を抱かざるを得ないわけであります。だが、どういたしましても、この軍拡をこれ以上続けていくということは不可能なのであります。これが内外の客観的な状況であります。つまり日本もまたその軍拡が壁に突き当たっているというこの現実を直視する必要があると私は思います。  その現実、そのような制約というものがある。それは幾つかございますが、まず第一に、隊員確保の限界がございます。九〇年度予算につきましても、概算要求におきましては定員を千八百七十人ふやすということになっていた、それが政府予算案におきましては二百九十二人の増に削られているわけであります。なぜ削られたかと申しますと、これは軍縮の意思によって削られているのではなく、人員募集が難しく到底それは不可能であるということを確認したから千五百七十八人を減らしたということになっております。また、充足率も二%ずつカットしております。陸海空とも概算要求定員に対しまして政府予算案では二%カットになっている。そうして、さらに今後もっともっとこの募集の問題は厳しくなってくるということがはっきりしているわけであります。  いわゆる一般隊員、任期制隊員の適齢人口がどのくらい減っていくかと申しますと、十八歳男子の人口は九〇年現在におきまして百五万人でありますが、これが二〇〇〇年になりますと七十五万一千人、二〇〇一年には六十九万一千人になるということが厚生省の人口問題研究によって明らかにされている。つまり三十五万九千人がこの十年ばかりの間に減ってしまうわけであります。三四%カットである。こういうふうに入隊する方々が、対象の方々が減っていくのでありますから、もう三四%減らすという方向に踏み出していいはずであると私は思うわけであります。これが第一。  第二は、都市化がどんどん進んでいっております。そういう中で基地被害が激増している、こういう現実がございます。都市化と軍事基地とは共存できないのであります。そういう点からいたしまして、軍事基地は縮小、廃止に向かわざるを得ない。  例えば厚木で行われているNLPがございますが、被害者は四十万世帯、百二十万人と言われている。住宅防音対象の世帯は十万世帯である。そうして、八五年以来、毎年二百億円ものお金をこのために費やしているわけでありますが、まだ完成していないわけであります。そういうこと自体、極めて不経済であり、また大変国民にとって迷惑なことでもあります。そういうことはやめなくてはならない。また、沖縄、ここも大変な被害が出ております。フィリピンで今基地問題が問題になっておりますが、広さを調べてみますと、クラークという米空軍基地は厚木基地の百四倍ございます。スビックの海軍基地は百五十平方キロメートル、横須賀の六十五倍であります。大変広いのであります。広くとれば被害は少なくなる、そういう関係がございます。沖縄の場合は基地は極めて広い、だが島は小さいのであります。だから被害は大きいわけであります。  そういうふうに見てまいりますと、首都圏には大変たくさんの基地がございます。首都圏にこういうふうなたくさんの基地を置いておくということ自体無理な話である。これを減らすという方向で、軍縮の問題とあわせて考えていくべきではなかろうかと思うわけであります。  しかも、我が国におきましては、基地を減らすどころか、基地をふやす方向で、先ほども申しましたが、やろうとしている。とりわけ問題なのは防衛庁の移転問題であります。これは明らかに基地の強化である。しかも、九〇年度には六百四十三億円を使うということになっておりますが、その内訳について説明したものが、いろいろ予算委員会からいただきました文書も拝見しましたが、どこにも載っていないのであります。六百四十三億円も使って一体どういうふうにやっていくのか、これが明らかではない。総額は三千億円であると言われている。あの防衛庁に数年前につくりました中央指揮所というのは一体どうなるのであろうか。あれは八十六億円もかけたものであります。移転してしまうと、あの大変な、コンクリートで固めた中央指揮所を一体何にするのであろうか。そういうふうなもう本当にむだの上にむだを重ねるというふうなことが行われようとしている、それでいいのであろうか。いいはずはないわけであります。  また、もう一つ申し上げておきたいのは、こういうふうに軍事力によって安全を確保しようといたしましても、日本の場合は万一の事態になれば国民の安全を軍事力によって確保するということは不可能である。かつて防衛事務次官であった方は、日本は戦争に耐えられないと喝破したことがございます。まさにそのとおりであると申し上げなくてはならないと思います。  そこで私は、戦略構想を見直す必要があるという問題を提起させていただきたいと思うわけであります。三つの問題をさしあたり申し上げたいと思います。  一つは北方防衛体制の強化ということで、いわゆる中期防衛力整備計画によって陸上自衛隊の戦車をどんどんと南から青森県及び北海道に持っていっているわけであります。そして関連の施設をどんどんつくっている。だが、一体これは何のためなのか。今米ソは冷戦を終結し、そしてヨーロッパのデタントは必ずアジアにも及んでくるということは明らかである。そういう中で、なぜ北日本がそれほど重視され、そこに戦力が増強されなければならないのか。この説明は不可能であると思います。  これはつまり、一九八六年から始まった中期防のスタートした時点においてはそういう主張もある意味では成り立ったと思いますが、今ではもう全く完全に破綻していることである。こんなことはもう早くやめなくちゃならない。にもかかわらず今年度予算でまだまだそれをやっていこうというのは大きな国費のむだ遣いであると言わざるを得ない。一体なぜ北方を重視するのか。そういうふうになりましたのは、やはりアメリカソ連を主敵とし、対ソ抑止体制を強化するという戦略をとっていた、これはレーガン政権時代のことでありますが、今はそうではなくなったわけであります。北海道は最前線である、そういうような考え方はもはや時代錯誤であると言わざるを得ない。にもかかわらずそれをやっていこうというのでありますから、これはやはり国会においてそのような行政府の方針というものを是正していただかなきゃならない、こう申し上げるべきだと思います。  第二の問題は、シーレーン防衛であります。  これは過去の戦争を戦う途方もない間違いである。そういうことをユニホームはえてしてやりたがるという話でありますが、シーレーン防衛というのは、第二次世界大戦において、対米戦争において日本がこのシーレーンを攻められて決定的な痛手を受けたという経験はございますが、しかし今日の世界ではそういうことは全く無意味である。なぜならば、シーレーンというのは平和であればこれは安全であり、戦後四十数年にわたって基本的にシーレーンの安全は確保できてきたわけであります。そうしてまた、今ソ連との対決ということを考えるのであれば、もうそれも時代遅れですが、日ソの対決ということになれば危ないのは何もシーレーンではない。こういうことは、例えば陸上自衛隊のユニホームなどはとうに主張していることであります。そんなことをやってもむだだ、こういうふうにユニホームの中にも主張する人がいるわけでありまして、なぜならばソ連の潜水艦が出てこない、こう言っているのであります。出てこない、だから守る必要もない。  また、第三に申し上げたいのは、対潜機能の問題でありますが、ソ連の潜水艦が出てくれば、それを哨戒し、そして所在を突きとめて攻撃するというふうなことも必要になるという主張も成り立ちますが、もう今はソ連が出てこなくなってきつつあるわけでありますから、そういうことに大量の国税を投入していくということは全くむだなことである。そういうことをやめれば防衛関係費は大幅に減らすことができるわけであります。  では、一体どういうふうにして日本の安全を確保するのか。大事な変化一つございます。それはソ連の脅威がだれの目にも明らかなように減少してきているということである。あれほど脅威だと言われていたSS20がアジアにおいては昨年全廃されているわけであります。また、極東ソ連軍は十二万人、二〇%カットされております。在外兵力は撤収されている。そして、ソ連海軍の外洋作戦は顕著に減少しているわけであります。また、極東ソ連軍の実力というものもそれほど大きいものではない。アメリカ太平洋軍と比べまして大体バランスがとれていると考えていい、そういう状況である。そして、ソ連自身がとにかく軍縮と平和に向けてシグナルを送ってきているわけでありますから、日本としてそれに対応することこそが大事である。なぜならば、日本の安全保障の根本目的は国民の安全であり、そのために日本に対する脅威をなくすことが基本であるはずだからであります。日本への脅威をなくせばいいわけでありますから、そのためにどうするのか、これを考えればいいわけであります。  方法は、まずさしあたり緊張緩和の問題がございます。やはり、これは長い長い努力が必要である。ヨーロッパにおいては全欧安保十五年の積み重ねがあるわけであります。そういう努力をいたしましていわゆる信頼醸成措置、お互いに奇襲攻撃のおそれ、あるいは偶発戦争の可能性があるというふうな状況をなくしていくことが必要であろうと思います。そして、さらに軍縮におきましては、ソ連の攻撃戦力を削減してもらう方向で話し合いを進める必要があると思います。ソ連に攻撃戦力がなくなれば我が国の安全は確保できるわけであります。もちろんそのためには互いに専守防衛でなくてはならないと思います。そういう交渉をすれば日本の安全は確保できるのであって、日本が幾ら軍事力を増強しても今日の核時代において、ミサイル時代において国民の安全を確保するということは不可能である。こういう余りにも明らかなことがなぜ予算案においてその方向が盛り込まれていないのか、非常に私は疑問に思うわけであります。  アジアはヨーロッパとは別である、決してそういうことではないのでありまして、まあアジアは別だという主張をなさる方々はアジアは広いというふうにおっしゃいますが、広かったら平和が確保しにくいのか、そんなことはないはずであります。今は情報化社会、決してそんなことはありませんし、またアジアには軍事ブロックがないから軍縮がしにくいというふうに言われておりますが、これも全く違う。国連の調査においても明らかなように、軍事ブロックの加盟国は軍事費が非常に多いのであります。中立国は少ないのであります。軍事ブロックというのは軍拡の要因であって、決して軍縮の要因ではない。じゃなぜ軍事ブロック加盟国の方で軍縮の問題が出てくるかといいますと、それは軍拡をやり過ぎた結果としてそれが出てきているだけの話であって、何も軍事ブロックが軍縮をやっているわけじゃございません。  そういう意味で私は、積極的にいかに平和をつくり出していくかという努力を我が国はやるべきであり、平和をつくる、あるいは安全を確保するという点で軍事的な手段の価値というものは極めて大きく低下しているのが今日の状況である、軍事力以外の手段でもって安全を確保することが大事であり、その責任は政治にある、そのことを申し上げまして私の陳述にさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
  41. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) ありがとうございました。  それでは、これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  42. 西田吉宏

    ○西田吉宏君 与えられた時間が限られておりますので、お二人の公述人に対しましては、私の方から三点ほどずつ述べさせていただきながら一括して質問をし、後ほど御答弁をいただきたい、このように思いますので、よろしくお願いします。  まず最初に、宇野公述人に三点ほどお伺いをいたしたいと思います。特に流通問題についてであります。  まず一つは、日本経済の国際的地位の向上が実現をいたしまして、我が国の国際社会への経済的貢献の責務が重視されておるところでございます。貿易黒字の異常拡大が引き金となりまして日米経済構造協議が開かれ、これを契機に指摘されることになった先ほどお述べになりました大店法でございます。これに代表されるように、日本の流通機構とその行動様式に特異性が今内外で論議の焦点に据えられておると思うのでございます。しかし、我が国の流通に関する制度、構造問題に関し世界との双務性については前川レポートを皮切りに新行革審あるいは通産省の九〇年代流通ビジョン等でも指摘したところでございます。これら指摘に共通するものは、自由主義経済下で公正な競争政策を確保し、もって日本経済の一層の発展を実現しようということであったわけであります。こうした発想の延長線上で我が国流通業界の体質改善が進められようとしておりますが、宇野公述人は、豊かな国民生活の実現を視野に据えた流通政策あり方をどのようにお考えになっておられるのか。その中でも、小売商業対策における競争政策あり方をどのようにお考えになっておるのかお伺いをいたしたい、このように思うわけであります。  二番目は、可処分所得の増加や生活様式の変化は、これまでの消費者の品質及び価格志向、こういうものにかわりまして個性重視のライフスタイ ルに合った商品選択や利便性重視などの消費行動となって今日あらわれておるのであります。特に耐久消費財の普及が一巡した今日、心の豊かさを求める消費者は旅行、生涯学習、趣味及び健康などいわゆる物からサービス部門の消費へ重点を移していると言われておるのであります。これに対して大手小売業者は、異業種企業と提携はしながら、例えばレジャー産業への進出を初め新業態の開発を進める一方で、物の販売分野においても高級化をテーマとする消費者ニーズに適応するための商品開発、調達をいかに迅速に行うか、そのシステムづくりにしのぎを削っておるのが今日であります。また、その他日本の流通業にとって大きな変化を及ぼす要因といたしましては、人口の都市集中、モータリゼーションの進展や小売業の情報産業化等が挙げられると思うのであります。  そこで、公述人にお伺いをいたしますが、二十一世紀に向かって流通業を取り巻く環境はどのように変化し、どのように対処すれば先ほどお述べになったような中小小売業者を含む流通業及び流通業界が発展し、生き長らえていけるものか、この点についてお伺いを申し上げたい、このように思います。  三番目の問題であります。  一九八五年の円高現象発生以来指摘され続けられている内外価格差問題は依然として解消をしておらないところであります。昨年九月、経済企画庁が発表いたしました物価レポートでも、東京の物価はニューヨークの約四割も高い、このように報告をされているところであります。この内外価格差の増大は、我が国市場の閉鎖性のバロメーターともみなされております。国民生活の豊かさや消費生活の充実感のためには、内外価格差の解消要求が今高まっているところであります。そうした中で内外価格差の原因と見られている各種の規制による価格の下方硬直性、輸入総代理店制度、系列化、さらには返品制または建て値制等による商慣習の問題が取り上げられているところであります。公述人におかれましては、まず、内外価格差の要因として挙げられる事項を取り除くことは可能だとお考えでありましょうか、お伺いをいたしたいと思います。  さらに、これら各種規制や商慣習を撤廃ないし急激に変更した場合、既存の流通業界にどのような事態を招来するとお考えになるのでしょうか、お伺いをいたしたいと思います。  流通業界の混乱を避けつつ消費生活に豊かさを実現するための内外価格差の縮小、解消には、どんな手法や手順で実行していったらいいのか、お考えをお伺いいたしたい。この三点をお願いを申し上げたいと思います。  さらに藤井公述人に三点お伺いいたしたいと思います。  安保、防衛の大前提となる我が国周辺の国際情勢の判断をお伺いいたしたいと思います。  まず、マルタ島の米ソ首脳会談以来、米ソの超軍事大国が、これまでの行きがかりを捨てて軍備縮小の方向に向かいつつあることは、それぞれの国にそうせざるを得ない背景があるとはいえ、世界の緊張緩和に大変好ましいことであると私は考えるのであります。しかし、この軍備縮小は、欧州を中心とするNATO軍とワルシャワ条約軍の戦闘能力の引き下げが中心であります。アジア地域では、朝鮮半島における対立があります。カンボジアでは内戦が引き続き行われておるところでございます。また今日、極東地域におけるソ連軍の動向は、全ソ連軍の三分の一ないし四分の一に相当する軍事力が蓄積されており、さらに海空軍を中心に兵器システムの近代化が進められると言われておるのであります。したがって、以前に比べソ連の我が国に対する侵略的要素は薄まってきつつありますが、まだその過程で不透明な問題や不安定な問題が前途に横たわっているというのが政府与党自民党、私どもの認識であります。  藤井公述人は、マルタ島会談以降の日本周辺をめぐる軍事情勢、軍事的脅威をどう判断しておられますか。先ほどお述べになったようなあなたの論理のように、一足飛びに軍事的脅威が解消した、みずからの国をみずからの手で守る防衛努力が不必要だというほど情勢は甘くないと考えるのであります。もう一度御意見のほどをお聞かせいただきたいと思う次第であります。  二番目の問題は、我が国の防衛費についてお伺いを申し上げたいと思うのであります。  さきにも触れましたが、今日デタントとか冷戦終結とか言われていますが、そのことが直ちに防衛費が不要になるとか防衛力整備は要らないというようなことにはならないと私は考えておるのであります。もとより我が国の防衛費は、専守防衛の基本方針のもと、平和時における必要にして節度ある防衛力を維持するためのものであります。金額で見ても、社会保障関係費の約三分の一、防衛費の歯どめと言われておりますGNP一%の範囲におさまって推移してまいりました。節度ある防衛費の支出と私は評価をいたしておるところであります。現在のような変化の時代であればこそ、その将来を慎重に見定めつつ、防衛費のあり方を検討すべきで、直ちに凍結とか漸減とかの方針を決めるには、現時点においては判断材料は大変不足をいたしておると私は存じております。公述人のお考えをもう一度お聞かせいただきたいと思うのであります。  最後でございますが、私は昨年七月の選挙で当選いたしました新人議員でございます。昭和四十六年から約二十年足らず、地方議会に籍を置いてまいりました。  私は国会に来て驚いたのでありますが、我が国の最も重要な安全保障、防衛問題を担当する専門の委員会がないということであります。外交関係を含む安全保障問題と防衛問題は地方議会にないのは当たり前であります。これは国会の専権事項に属するといってもいいであろうと私は思います。軍事問題評論家の肩書をお持ちでありますそうした分野を専門に御研究をしておられます公述人から見て、現在の国会の状況、防衛委の設置されていないことについてどのように御判断をされておるのか、この点についてもお聞かせをいただきたいと思います。
  43. 宇野政雄

    公述人(宇野政雄君) 今三点問題が提起されましたけれども、若干それぞれ関連のあるものもあるかと思いますが、まず基本的に申し上げたいと思います。  それは、先ほど来申し上げましたように、流通というものの役割をどう見るかということでは、生産と消費を結ぶものだと。その意味で見ますと、消費というものがどう変わっていくか、そういうことに対応しなければ流通というものは成り立たないわけでございまして、それに比べますと、二番目におっしゃられた問題に関連するのでありますが、一般の消費生活というもので見ますと、御案内のように、御案内と申しますか、九〇年代流通ビジョンの前の八〇年代流通ビジョンを審議いたしますときに、私、頭にあるのでありますが、昭和四十一年と五十七年というその約十六年間のところですが、五十九年にそのビジョンが出ましたので、その前のところの統計数字でございましたが、それで見ますと、四十一年では、平均の標準家庭が約十五万円で生活するのが普通でございました。それに対して、五十七年では二十三万円で生活するのが普通であると。約五割アップしたわけでございます。  その前の昭和三十年代は御案内のように倍増をしているわけで、いわば高度成長、それに対して約二十年まではかかりませんけれども、十五、六年で五割アップでございますから、低成長であったわけですが、問題は、その中身を見てみますと、物に関する支出、つまり食とか衣とか住というものへの支出と、それから先ほど御指摘のありましたサービスへの支出とでも言いましょうか、無形サービスへの支出というものを見てみますと、ちょうどこれは四十一年と五十七年で逆転したところでございまして、食、衣、住に関する支出が四十一年のときには約六〇%、それに対して無形サービスへの支出が四〇、それが五十七年では逆に財に対する支出の方が四〇で無形サービスへの支出が六〇、こういうような形へ変わったわ けでございますけれども、問題はそれらにどう対応していくのか。  その点で計画的に郊外につくりますショッピングセンターは、そういうものにあわせて無形サービスの購入とも言うべき美容院だとか、スポーツクラブであるとか、旅行代理店を置くだとか、冠婚葬祭の場であるとか、そういうものを中へちりばめながら動いていったわけですが、自然発生的な町中の方は必ずしもそういかなかった、その辺で、さっきお話し申し上げましたように町中の方がどうも寂れてきている。それで、むしろ周りの方へと人が行ってしまう。それから、さっき御指摘がありましたように、モータリゼーションという関係もございまして、町中へ来るよりは外へ行った方が駐車場もあるしと。こういうようなことも重なってさっき言ったようにショッピングセンターが倍増してしまった、こういうことを申し上げたわけでございますが、その基本にありますのは、そういう消費者行動というようなものを特に小売業の方たちがどうお考えいただけるのかというところが一つポイントだろうと思うんですね。  そういう点からもう一つ申し上げたいことは、これはよく言われることでございますが、従来、私たちは時間創造型の商品やサービスというものを求めてまいりました。つまり私の母親が一生懸命子供の着る下着類などを二時間かけてごしごしと洗濯板で洗ったその時代から、今私の家内たちが十分か十五分で全自動洗濯機で同じ行為を行う。そうしますと、そういう今申し上げたような耐久消費財は非常に受けたわけで、これはいわば時間創造型の商品でございますね。これからは、今申し上げました二時間のものを二、三十分でやってしまうならば、一時間三十分をいかに有効に活用するかという意味での時間消費型の商品なりサービスが求められる、こういうような時代へと変わってきているわけでございます。  今のような消費構造が変わるし、消費者行動が変わるし、消費者意識も変わってくる、そういうものに一体流通に関連する方たちがどう対応していくのか。その点で、大型の方だけではなく、小さい方々も今のようなものにどううまく対応できるかということを検討する必要があるだろうというのが大前提になるわけでありますが、その中で、特に一番目に御指摘のありました小さい小売商の方たちが競争力をどうつけていけるかという点になりますと、やはり今のようなこと、情報力をうまく持ち得るか得ないかということが問題になるわけであります。  その意味では情報格差というのがこのままでございますとどんどん出てくるわけでありますから、先ほど私は申し上げませんでしたが、流通政策の中で今のような大きいところはそのままにいたしましても、情報力をいかにつくり上げていくかということは一生懸命やっているわけでありますが、小さいところに対して、従来のようなただ単にお金を幾らか出すといったような程度のことじゃなくて、情報格差を縮めていけるような、そのことを通しての小売商に対する振興策、こういうことが考えられていいのではないかなという気がしております。  大変前置きの長いことを申し上げましたが、それから三番目の問題といたしまして内外価格差との関連の問題がございました。かなり内外価格差のありまする一因というものはどこに問題があるのかということでございますが、これはいろんな調べから見てもわかりますように、先ほど陳述いたしましたように、消費者の方たちがもう少し正しい意味での消費者としての意識を持ちますと――何か非常にブランド物などに追われていく、私は基本的には内外価格差でブランド物というのは大きな差があってもどうということはないんじゃないかという気が基本的にしております。それよりも、基礎的なものについて差があるとするならばこれをどうするんだということの方が私はより問題だと思うのでありまして、その意味では、消費者教育ということでまず消費者が目覚めていただく、こういうことを期待したいということでございます。  ただ問題は、先ほど来、返品制であるとかそのほかの商慣行についてどういう問題を考えるのかということですが、これはどうもいろいろ公正取引委員会であるとか通産省などでも系列化とか輸入総代理店の問題とかいろいろ検討していることを私は承っておりますけれども、この辺で一番基本は何かというと、それぞれの業者の方たちがだれが本当に自分のやった仕事に対して危険負担をしていくのかということに対する明確なものを持っていかないといけないんじゃないか、これが基本的に欧米なんかと日本との違いのような気もいたします。  その辺がございませんでうやむやなままでやっていこうとすると、結果的には取引の大きいところのものに従わざるを得ないというような問題もあるわけであります。これはまた、それを抑えるための法律などもあるわけでしょうが、その運用によって云々ということもございますでしょうが、基本的には業界の方たちが危険負担というものをだれが持つんだと。つまり消費者が自立していくと同様に企業もやっぱり自立していくという態度が基本的にないと、この問題というものはいい方向というものはなかなか出にくいのかな、こんな気もしているわけでございます。
  44. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 公述人にお願いをいたします。限られた時間でありますので、答弁は簡潔にお願い申し上げます。
  45. 宇野政雄

    公述人(宇野政雄君) まとまらないことを申し上げましたけれども、基本的には以上申し上げたことで御回答にかえさせていただきます。
  46. 藤井治夫

    公述人(藤井治夫君) お答えさせていただきたいと思います。  まず最初に、私は、こういうことを申し上げるまでもないと思いますが、非常に達識の洞察力を持った西田議員のことでありますから十分御理解のこととは思いますが、やはり人類の歴史が今大きな変わり目に来ている、そういう変わり目の中でどういうふうに対処していくのか、これを考えるのが非常に大事ではないかと思うのであります。人類が四千年余りにわたって続けてきたこの戦争と軍拡の歴史にようやく転機が訪れてきた。そうして二十世紀、既に九十年間戦争に次ぐ戦争をやってまいりました、日露戦争から今日まで。そして、人類史において初めての世界大戦を二回もやって、それに懲りもせずに戦後冷たい戦争ということで大変な核軍拡を続けてきたわけであります。  人類がそんなにも愚かであるのか。そうであるはずはないわけでありまして、ようやく今転機がやってきている。私たちは、そういう状況の中でどこに向けて力を入れていくのかということを考えなくてはならないのではなかろうかと思うわけであります。確かに逆さまに流れていこうという動きもございますし、そんなに平たんな道路をどんどんと歩んでいくというふうに変わっていくものではないということは十分承知した上で、しかも私たちの方向を定めなくてはならない。  そういうことを前提として考えますと、確かに今日本の周辺の軍事情勢というのはそんなに大きく変わっていないということは事実であります。アジアは確かにおくれている。だが、ヨーロッパが進んでいるというのは、ヨーロッパに一番矛盾が生じていたからであり、またヨーロッパにおいて、東西を問わず民主主義の古い伝統の上に立って非常に多くの人々が努力を積み重ねてきた。そういう点でまだアジアには足りない点がある、だからおくれているのであるというふうに見る必要があろうと思うのであります。基本的な要因というものは変わらない。だが条件が違うのである。その要因と条件の関係をよく見て対応しないと政策判断を誤るということにもなりかねないわけでありまして、そういう点をよく御承知おきいただきたいと思うわけであります。  また今日、安全保障が問題なのであって、初めに軍拡ありきということではないはずである、それは当然のことであります。では安全保障の手段は何があるのか。これはやはり経済や外交や文化 の役割が今日非常に増大してきているということは否定しがたい。しかも軍事力というのは使い道が少ない。使った場合に失敗したことが多いというのも今日の特徴であります。アフガンがしかり、チェコがしかり、ベトナムがしかりであります。そして、軍事力の出番はだんだんと限定されてきている。アメリカにおきましてもはっきり戦争権限法というものが議会において制定されている。そして限定がなされている。ソ連においてもそうであります。そういう状況の中での今日のこの変化の始まりでありまして、そしてこれから先軍事的安全保障というものの持つ意味というのはどんどんと低下していく。そこで、かつてソ連アメリカが歩んだ道をもう一度日本がその後を追って歩んでいくというふうな愚かなことはやめて、平和憲法の理念に立った外交や防衛政策を展開していくべきではなかろうかと思うわけであります。  そして、防衛費の問題にいたしましても他国に比べればGNP比率は少ない、これは言えます。しかし、GNP一%というのは、アメリカが太平洋戦争に入る直前の軍事費のGNp比率、これは一%であったわけですからそのころと変わりがないわけですね。つまりアメリカでも今日非常に間違った、偏った方向にいってしまっているわけでありまして、そういう点からいいますと、一 %以下に抑えていくというのはこれは当然のことであり、全世界の国々がそうすればいいのである、そう思います。
  47. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 藤井公述人、時間でございますので、おまとめを願います。
  48. 藤井治夫

    公述人(藤井治夫君) 最後に、国会の専門委員会の問題でありますが、一番大事なのはシビリアンコントロールということであります。そして、その中で一番大事なのは国民であり、また国会である。そういう観点からこの問題は十分議論しなければならないし、またそこで一番出発点になるのは情報公開の問題である、そういうふうに思います。
  49. 西田吉宏

    ○西田吉宏君 終わります。
  50. 角田義一

    ○角田義一君 角田でございますが、お二人の先生から御高説を賜りまして大変勉強になったわけでございますけれども、まず藤井公述人にお尋ねをいたします。  最近、米ソの外務大臣の会談がございまして、戦略核の削減の問題が合意をされる。それは私どもまさかと思いましたが、いわば海上の巡航ミサイルまで政治的な拘束力ということで検証は伴わないようでございますが、双方八百八十基というようなところで抑えるというような形で、我々が思っている以上にこの米ソの核を中心とする軍縮交渉というものが進んでおる。これはいよいよ本物かなと。米ソ戦わずということがお互いもう確認をされておるのではないかな、これはいよいよ本物かな、こういう気もいたすわけでありますが、どうしてこれほどまで急激に米ソが核を中心とする軍縮に踏み切ったのか、この辺についてはどういうふうに御理解をされておるのでございましょうか。
  51. 藤井治夫

    公述人(藤井治夫君) こういうふうな現在の米ソ関係の進展、いわゆる冷戦の終結というものをもたらした背景の根本要因は一体何であるのか。それは、先ほどもちょっとお話がございましたが、やはり何といっても、アメリカソ連が極めて愚かな軍拡をやり過ぎて、そしてもうぎりぎり限界に来てしまった、もはやこれ以上続けていけないというそういう問題が一つあろうかと思います。  しかも、もう一つこの核時代の安全保障の特徴として、通常軍備であれば相当大きなものを持つということになりますと、それによって相当の安全度が確保されるというふうに言える場合もあるわけですが、核ミサイル時代においては幾らやってもやっても安全の保障自体が確保できないという問題が出てきます。つまり米ソの核軍備というのは、最初は小さな核兵器からどんどんミサイルの開発を続けていって、そして相手の本国を撃てるようなものを持つ。これでやっと自国の安全が確保できたかと思うと、相手がそれを持つことになって、かえって自分の国の本土が、そういうことがなければ首都が安全であるというふうな状況であっても、ミサイルが飛び交うということになれば首都自体も最初にやられるということになってきた。  こういうことになってまいりまして、軍事力は安全保障の手段として適切ではないというふうに国民が考えるようになった、こういう問題。そうして世論の変化というものが起きてくる。その世論の変化が例えば国連軍縮総会というふうな形で国連にまで反映されている。そうしてまた国連軍縮総会の開催過程で、例えば非同盟諸国が非常に大きな役割を果たす、あるいはまたヨーロッパにおける中立諸国が大きな役割を果たすというふうなことと関連し合いながら、さらに議会がそれぞれ非常にはっきりとした意思表示をするようになってきている。  例えば、アメリカでもあのレーガン政権の時代の軍拡に終止符を打ったのは、議会がはっきり財政均衡化の法律をつくったからであります。もしそれをやらなければ、レーガンさんはどんどんまだ軍拡をやったに違いないと思います。そういう歯どめというものを国民の良識によってしっかりかけるということがなされている。そういう中でだんだんと政府自体も話し合いの方向で安全を確保するということに変わっていった。  ソ連の場合などは特に矛盾が集中しているわけでありまして、レーガン政権に対抗して軍拡をやろうとしても続かないということで、財政赤字が膨大なものになっていく。最近の五カ年間で日本円にして八十兆円ぐらいの赤字が出ているというふうな深刻な事態になってきているわけで、どうしてもこれは今までの政策を切りかえなくちゃならないということになってきて、ヨーロッパの中立国を中心にしているんな良識のある人々によって出されてきた共通の安全保障というふうな考え方がゴルバチョフ政権によって取り入れられている。その方向で安全保障政策を考えていくというふうに切りかわった。非常に大きな転換であります。だから、これは従来の安全保障、古い、二十世紀といいますか、それ以前のそういう安全保障についての考え方が根本的に変わるきっかけ、第一歩をゴルバチョフさんあたりが切り開いたといっても言い過ぎではなかろうかと思いますが、そういう大きな変化が起きてきた。  そういう超大国に対して働きかけてくる客観的な財政経済上の要因とか、あるいはまた今日の国民世論の変化とか、そういうものの中で行われてきた交渉、これがINFの問題、順次成果を固めてきているわけであって、私は逆戻りすることはないと思います。  なぜかといいますと、例えばアメリカ財政赤字でもレーガンさんの八年間に一兆四千億ドル、二百十兆円という膨大な赤字を出しているわけですね。ところが、レーガンさんがやめてもこの赤字は減っていないんですね。本当に構造的な赤字であるというふうなことですから、これは簡単にいかないということははっきりしている。もとへ戻るということはできないと思いますね。アメリカソ連もできない。あるいはまた、国民考え方がまたもとへ戻るか、戻らないと思いますね。一たん目覚めた人々が再び愚かなことをやり始めるということはないはずですね。そういう意味で、基本的には私は二十一世紀へ向けて平和な世界を築く方向で動いていくであろう、そういうふうに思っております。
  52. 角田義一

    ○角田義一君 公述人も御承知のとおり、日米安保条約体制というものができて今日まで三十年になっておりますが、特に一九七八年のいわば日米の防衛協力指針、俗にガイドライン、こう言われておりますが、そのガイドライン安保といいましょうか、それ以来日米安保の体制というものが変質をしたのではないか。アメリカの対ソ戦略に完全に日本が組み込まれておる。そういう状況の中で、例えばリムパックであるとか、あるいはPACEXであるとかいうような共同の軍事演習あるいは日米共同作戦というものが行われてきたん じゃないかというふうに思うわけであります。  そうなりますと、今日、米ソがもう戦わないんだと、恐らくどんどん軍縮の方へ進むだろう、平和の方へ進むだろうということになってまいりますと、今度は仮に日米安保条約というものを、条約の継続性という観点から、例えば社会党を中心とする連合政府ができたとしても、これは条約を破棄するわけにはいきませんし、守っていかなきゃいかぬと思いますが、さりとて、今私が申し上げたようなガイドライン安保で対ソ戦略にかっちりと組み込まれておるというようなものをそのまま放置しておくわけにはやっぱりいかないんじゃないか。安保体制そのもののあり方日米安保のあり方ということがやっぱり問われなきゃいけないんじゃないかという気持ちを持っておる一人ではございますが、公述人のその辺のお考えを承りたいと思っております。
  53. 藤井治夫

    公述人(藤井治夫君) 日米安保体制というものをどう見るか、これは私自身といたしましては、やはり第二次世界大戦における敗戦の結果として、経過を見ますとはっきりいたしておりますように、いわば最初は無理やり結ばされたものである。そしてアメリカにとっては日本に基地を置くことがやはり国益にかなう。最近国防総省が発表いたしましたいわゆる戦略的枠組みに関するレポートにおきましても、戦略的には基地として非常に大事だと、アメリカにとってですよ。何よりもアメリカの本土の安全を守るために大事なんだと、こういう位置づけをしておりますが、そういう観点から安保体制の強化ということ、つまり別の言葉で言えば自衛隊を補完戦力とし、日本を前線基地としていくという方向でやってきておるわけですね。  それに対して日本は一体どうであったかといいますと、もちろん憲法の制約があり、軍事同盟的なものを結ぶことはできないというふうなことで、アメリカ、つまりアメリカ軍、それは海外に派兵されており、攻撃戦力としての性格を強く持っておるものですから、それとの共同作戦などというものは絶対できないという、これが常識だったんですね。六〇年安保時代ははっきりそうであったわけです。  ところが、それが今おっしゃいましたようにガイドラインによって大きく変わったということになります。これは非常に危険なと申しますか、日本の国是から逸脱していく方向に変わったというふうに言わざるを得ない。最近の戦略的枠組みに関するレポートにおきましても、今後はもっともっと安保というものの対象を広げていく、ソ連だけではない、第三世界、極東、こういう方向へ広げていくというふうにこれを変えようとしているわけであります。言葉をかえて申しますと、これは日本にとっては海外派兵とか、あるいはそういう他国に対する軍事介入の足場を提供するとか、そういう意味合いを持ちますから、これは非常に問題だと思います。  それからもう一つ、これはよく新聞でも問題になったことですが、アメリカとしてはあくまで日本は対米補完戦力、自衛隊はあくまでアメリカのお手伝いである、そういう役割に限定するのであって、それ以上出てこないように瓶のふたの役割を在日米軍は果たすというふうなことを申しておりますから、非常に基本的な性格は維持されながら、かつ極めて危険な内容を盛り込む、そういう安保条約になってきている。その安保条約に日本が深入りしていくということは極めて危険であるから、私といたしましては、日米安保条約はその危険な機能をなくしていくという方向でよりよいものにといいますか、悪い面を改める必要があるだろうと。特に危険なのは、やはり非核三原則が損なわれてきているということと、日米共同作戦が行われ、自衛隊が攻撃戦力としての米軍と共同行動をとろうとしている、これが極めて危険なことになるんじゃなかろうか、そういうふうに思っております。
  54. 角田義一

    ○角田義一君 先生御案内のとおり、低強度紛争というのがアメリカの大きな戦略の一つになっておりまして、これは核戦争でもない、通常戦争でもない、第三の戦争だといいましょうか、そういうふうにアメリカは位置づけているようであります。日本の沖縄のキャンプ・ハンセンにおける都市型の訓練であるとか、あるいは私は最近における超低空の飛行訓練であるとかというような問題は、どうもアメリカの低強度紛争というようなものにまでこの日米安保体制というものが組み込まれていくんじゃないか。要するに先ほど先生がおっしゃったアジアあるいはさらにそれ以外のところのいろいろな民衆が起こす例えば暴動であるとか、そういう民衆を押さえつけるようなそういう形に日本が加担をしていくんじゃないかということで、これは本来の安保として大変逸脱したことじゃないかというふうな気もするわけでありますが、先生いかがに思っていますか。
  55. 藤井治夫

    公述人(藤井治夫君) 先ほど申し上げましたように、軍事力の価値というものが低下してきて使い道がだんだん少なくなってくる。うっかり使えば自国の安全そのものが損なわれるというふうになってまいりまして、そこで特に比重を増してまいりましたのが今おっしゃいました低強度紛争に対処するということだろうと思います。  レーガン政権下に行われましたあの恐るべき軍拡の中でいわゆる特殊部隊とかそういうふうな部隊の増強がなされまして、そして今日ではソ連との間の緊張が緩和しても、アメリカ軍事力の前方展開というものの主な意味合いというのは、地域の安定、言葉をかえて言いますと地域紛争に対処していく、あるいはまたアメリカの在外権益を守っていく、こういうことにあるんだということで、そこに今力を入れているわけであります。  そういうふうな低強度紛争に対処するということは、軍事力によって行うべきことではない、別の方法でそれぞれの国の内政の安定を図るべきである、こういう手段があるわけでありますから、軍事力は使ってはならないはずであります。とりわけ、日本としてはそういうことに手をかしたり後押しをしたり、あるいはまたそれに一緒に参加していくというようなことはあってはならない。確かに日本は国際国家として海外にもいろんな在留邦人がおりますし、あるいは経済権益もできてきておりますけれども、これを軍事力を担保として確保していくというふうなことになってまいりますとかつてと同じような過ちを犯すことになりますから、絶対それはやってはならないと思います。  つまり、日本軍事力はもう本当に掛け値なしに専守防衛であるべきである。四つの島を守るというだけでいいわけですね。それ以上のことはやるべきではない。そういう点からいいますと、現在安保条約というものがそういうLIC機能といいますか、対低水準紛争機能というものを強化していくという方向で変質させられようとしているのは極めて危険であり、そういうことは自衛隊はもとより安保そのものも一切そういう機能を持たすべきではないということをしっかり限界として設定すべきだと思います。
  56. 角田義一

    ○角田義一君 これだけいわば国際緊張緩和の方向が本物になりつつあるときに、御案内のとおり、次期防はこれから将来五年間で約二十三兆五千億円。しかも、空中給油機であるとかあるいは早期警戒機であるとか、そういうどう見ても専守防衛から逸脱をしているような、あるいはイージス艦であるとか、そういう非常にハイテクを備えた航空機あるいは艦船というものを一層充実させていくような傾向があるわけでありまして、これは到底今の世界の流れから許されるべきものじゃないというふうに私どもは考えておるわけでありますけれども、公述人はその辺いかがでございますか。
  57. 藤井治夫

    公述人(藤井治夫君) 現在のような年々細切れに見ますと六%、わずかであるというふうに理解される方もいらっしゃるんですが、決してそうではない。本当にこの積み上げというのは大変なことであります。  私がちょっと計算してみましても、もしこれから十年六%ずつ積み上げていったら一体どうなるのか。もし今のままでいっても四十一兆円になる わけですから、それよりも十六兆五千億円上積みすることになります。五十八兆円ぐらいになるという防衛費を、そういうほとんどいわば使い道のない、むしろ逆効果しかもたらさないようなことに一体使っていいのであろうか。そうではなくて、上積みする分だけでもせめてもっと平和を、あるいは安定をつくるような方向に支出できないのか。私は防衛費をもし半分に減らすことができたら、二兆円ですから、二兆円でも大変なことができるはずでありまして、そういうことに国会の皆さん方も協力して知恵を使っていただいて、そして日本が全世界から本当に信頼され、尊敬され、愛される国になっていくというふうにしていただけないものかと思います。
  58. 角田義一

    ○角田義一君 米ソがこれだけ緊張緩和のために努力をしておる。そしてヨーロッパでは、先ほど公述人おっしゃるとおり、NATOの事務総長が、もうワルシャワ機構は脅威ではないんだと。恐らくここ十年以内に私はNATO、ワルシャワ両機構ともなくなるんじゃないか、消滅するんじゃないかというふうに思うわけです。  欧州で米ソが戦わないという一つの確約といいましょうか、そういう確信をお互いに持っておって、アジアで戦争をやろうじゃないかということには私は常識で考えてならぬのじゃないかと思うんですね。欧州でやらぬものはやはりアジアでもやらないんですよ、これは。アジアで米ソが戦う、その中に日本が加担をするということではなくて、やはりアジアでも米ソはもう戦わないんだ、基本的にはですよ、そういうことになりますると、先ほどの全欧安保、これが十五年もかかっていろいろ努力をしてきてああいう形になった。それはこの北東アジアにおいて、アメリカソ連中国、南北朝鮮、日本、さらにはカナダというような北東アジアの沿岸諸国がやっぱり一つにまとまって平和構想を持つということ、そういうものを創設して、そして軍縮を進めるということ、そのイニシアチブを日本がとる、そういうことが今日非常に大事じゃないかというような感じを私は強く持っておるものでありますが、先生の御意見を承りたいと思います。
  59. 藤井治夫

    公述人(藤井治夫君) アジアにおいては、ヨーロッパのようないわゆる平和あるいは軍縮に関する交渉のテーブルができていない。なぜできないのか、それは不可能なのか、ヨーロッパに比べて極めて困難な事情があるのかといいますと、これは決してそうではないと思います。ヨーロッパの場合は、むしろ二つの軍事同盟が対決しておりましたので極めて困難であったという面があったと思います。軍事ブロックがあるということは、軍縮交渉にとってブラスじゃなくてマイナスなのである。もちろんアジアにも二国間の軍事同盟条約がございますが、しかしまた、そういうものにかかわりを持っていないいわゆる非同盟国家、中立国家というのもあるわけであります。そういう国々がすべて話し合いを進めていって、そしてテーブルをつくる。仮に最初参加しない国がいても、それはいいと思います。例えば朝鮮半島、南北が来なくてもそういうテーブルをつくって、そして雪解けの方向へ進めていけば、朝鮮半島の状況もよくなるはずであります。  今までそういうことが全然できなかったというのは一体どういうわけか。やはり日本がイニシアチブをとりまして、中国やオーストラリアあるいはニュージーランド、そういう国々に呼びかけていく。インドネシアも来る。そういうふうになってまいりますと、話し合いというものが非常に和やかになりますね。いろんな意見を取り入れながら、もちろんまとまる点は極めて微温的なことでまとまるほかないだろうと初めは思いまするが、とにかく一歩前進することはできるんじゃないかと思います。  一番大事なことは、戦争を防ぐためにそういうふうな雰囲気をつくっていくということ、そして相互の信頼関係をつっていく。相手の手のうちがわかる、奇襲攻撃を受けるおそれがないということになりましたら、軍拡競争もとまるわけであります。そういう雰囲気をつくることで日本が何の役割も果たしていないということは非常に不可解なことであって、そういうことにもっと力を入れるべきではなかろうかと思います。  そういうふうにしていってその次にやるべきことは、相互に攻撃兵力を削減するということであります。そのことにつきましても、ソ連の方はそういう方向でいわゆる防衛的ドクトリンということでやろうとしておりますし、日本はもとより専守防衛という政策を持っているわけでありますから、それを徹底するというふうにしていきますと話し合いが進んでいく。そういう見通しを立てることが可能だと思いますので、即刻日本政府あるいは国会とかそういう形で呼びかけを始めていただくことが大事だというふうに思っております。
  60. 角田義一

    ○角田義一君 先ほどの先生のお話の中で、ちょっと一つだけお聞きしておきたいことがあるわけでありますが、ソ連の原潜というものがいわば日本の三海峡を通って出てこないんだ、今日出てくるあれはないじゃないか、シーレーン防衛の観点から。そういうちょっとお話があったんですけれども、その辺もう一度御説明していただけませんか、ちょっと私理解できないんですけれども。
  61. 藤井治夫

    公述人(藤井治夫君) ソ連海軍の外洋進出が目立って低下してきているというふうなことは、もうこれは方々で言われているわけであります。アメリカ海軍長官が八七年三月に発言いたしましたことは、ソ連海軍の外洋配備率は著しく低下してきている、こういうことであります。その具体的な状況につきましては、ノルウェーの海軍当局筋が言ったのは、ノルウェー海にソ連海軍は八五年には四百五十六隻出てきていたが、八六年は二百七隻であり、八七年は百十四隻に減っている。もう激減しているわけであります。そういうことは日本周辺でも当然あるわけでありまして、防衛白書のデータは非常に不明確ではありますが、私が調べたところでも、やはり対馬海峡あるいは津軽海峡を通過していくソ連の海軍艦艇は非常に減ってきているというふうになっております。  ソ連のドクトリン自体が、在外兵力を撤収し、外交のことに軍事力をもってくちばしを入れていかない、こういうふうになっているわけでありますから、当然これは専守防衛の方向へ切りかえていくことになると思います。ソ連の海軍は当然やはり自国の沿岸の中で自国の防衛の任務につくべきであり、現にそういうふうになってきている。  ただ、問題は、その海軍に装備されているミサイルの射程が非常に長くて、沿岸から発射しても他国の領土へ撃ち込むことができるという、そういう戦略ミサイルを積んでいるわけですから、沿岸にあっても、決してそれはそれでいいというふうに言えませんから、その攻撃的兵力が沿海にあったとしても、それ自体を減らしてもらう。しかし、これはSTART、戦略兵器削減交渉のテーマで、これをなくしていく一歩が踏み出されようとしているわけですから、それを促進していけばいいんであって、ソ連のタイフーンとか、そういう戦略ミサイルを積んだ潜水艦を軍事力で何とかしてやろうといったら、これは私は不可能だと思うんですね。まさか沈めに行くというわけにもいきませんからね。やっぱり交渉によってそれをなくすという、いわゆる軍縮の一環としてその問題に対処すべきであって、軍事力で対処すべき問題ではなかろう、こう思います。
  62. 角田義一

    ○角田義一君 最後に。  予算委員会の御議論を私聞いておりまして、特に防衛庁の最高幹部の方々は何とかソ連の脅威というもの、変な話ですが、これにしがみついて、そして日本の軍縮というものはやろうとしない。防衛庁に軍縮を求めてもどだい無理なような気もするのでありますけれども、ソ連の脅威というものについて日本の制服組ももう少し柔軟に対応できないものかというような気もするんですけれども、軍事専門家としてはどうですか、最後にその点お聞きします。
  63. 藤井治夫

    公述人(藤井治夫君) 防衛白書を拝見しておりましても、非常に無理があると思いますね。それから、昨年の防衛白書でやっと訂正していました が、ソ連の太平洋艦隊とアメリカ第七艦隊の軍事力バランスを出しまして、大変だ大変だと、こういうことを言っている。やっと昨年になってアメリカの太平洋艦隊とソ連の太平洋艦隊の比較をするようになって、アメリカが百七十万トン、ソ連が百万トン、アメリカの方が多いということをやっと去年になって認めたわけですね。そういうふうな無理なトリックといいますか、そういうことまでして行政庁ともあろうものがソ連の脅威を国民にキャンペーンをして、そして軍拡を正当化していくというのは、本当にこれは嘆かわしいことではないかと思います。やはり事実を正確に国民に知らせる、また防衛庁が握っている情報は情報公開の原理に従いまして国民にどんどんと提供していくというふうにしていただきたいと思うわけです。
  64. 角田義一

    ○角田義一君 終わります。どうもありがとうございました。
  65. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 最初に宇野先生にお尋ねしたいと思うんですが、先ほど流通についていろいろとお話を承りましたが、大店法に限って二点だけお伺いしたいと思うんです。  大店法につきましては、日米構造協議で大分アメリカ側からやり玉に上げられた感じがするわけですが、いろんな問題点があろうと思いますけれども、純粋に輸出入の問題として見た場合に、例えば大店法が撤廃になってどれほどのアメリカ製品の輸入が見込めるのか。また、大店法が撤廃されますと、やはり現在の流通制度に大きな影響を与えてくるんじゃないだろうか。先ほど先生のお話をいろいろと承っていたわけでございますが、やはり中小小売店業界の皆さん方に大きな影響を与えていくんじゃないかということで私たち危惧しておりますし、それに対する影響あるいは度合いについてまたお考えをお伺いさせていただきたいと思いますし、地域全体としての発展を考えるということでお話がありました。東京でもかつての大きな盛り場だった浅草等は、大店法と関係はないようでございますが、今地域の発展について非常な懸念を持っている状況でございますし、先ほど千代田区の例を挙げられておりましたが、もしそういうもので何か具体的な方法があれば教えていただきたいと思います。  また、藤井先生でございますが、防衛問題の今お話をお聞きいたしました。角田先生と重複する点を省きまして、防衛大綱の問題と防衛費の凍結の問題について先生のお考えを承っておきたいんですが、その前に、せんだって私ども予算委員会で市川書記長が防衛費の三年凍結案を提示いたしました。先ほど先生からお話がありましたように、世界の情勢というのは大きく変わりました。軍縮の進む中で平和の配当がいかに価値あるものかということを世界各国の皆さん方が知ってきているわけでございます。したがって、今後ますます軍縮の方向というのは大きな世界の潮流となって進んでいくことは間違いない、このように思うわけでございます。  その中で、防衛大綱でございますが、国際情勢の変化があれば見直しをすると防衛大綱は言っているわけでございます。私どもこの防衛計画の大綱というのが既に形骸化をしているととらえておりますのは、一つは潜在的脅威があるんだということでやってまいりました脅威対応論、こういうものが失われてきているんじゃないか、定性的な歯どめと申しますか、それはもう失われてきている。二つ目は、防衛力の定量的な歯どめであったいわゆる一%の枠が崩れてきているんじゃないか。あるいは三点目は、一千海里のシーレーン防衛、こういうことを進めることによりまして、今まで防衛庁が言ってまいりました限定的小規模侵略対応という基盤防衛力構想、このシナリオというものが崩れてきているのじゃないか。この三つの大綱をめぐる大きな形骸化によりまして、この大綱それ自身がもう既に見直しをしなければならない時点に来ているのじゃないか、こういう認識のもとに私たちは申し上げてきたわけです。  そうなりますと、やはりこれからの世界の大きな流れでありますところの軍縮の方向の中で、世界平和を世界全体の国民がみんな求め、それをともに手を携えてつくり上げていかなきゃならない中で、先ほど先生からお話がありましたように、防衛力だけがひとり歩きする時代ではない。そうなりますと、やはり三年間ぐらいは現在のまま凍結をしながら、その中でこれからやはり国民皆さん方のコンセンサスを得られるような新しい防衛哲学というものを持つべきではないか。これはもう全体的な、政府だけではなくて、私たち議員も含めまして、日本国民としてのこれは一つの大きな果たすべき仕事ではないかな、こういう感じがしてせんだって三年凍結案ということを私たち提示したわけでございますが、それに対する先生のお考えをお聞かせいただきたいと思います。よろしくお願いします。
  66. 宇野政雄

    公述人(宇野政雄君) お答えいたします。  仮に大店舗法を撤廃したらば製品輸入が見込めるか、こういうお話でございますが、私はそれほど期待したようなことは出てこないであろう、こういうように思います。そういう意味で、先ほど言いましたように、むしろ七割を占めまする中小小売店の方々の方がどううまく売る気を持ってくれるか、こういうことへの何か方法が考えられてしかるべきであろう、こう申し上げたわけでございます。  それで、先ほどもちょっと触れました例の八〇年代の流通ビジョンというもののところで出しました案で、先ほど来申し上げましたように、だんだんと町の真ん中が衰微していくという点で、もっとにぎわいのある町づくりをしなきゃいけないというので、単なる物を買う場であるというよりは、皆さん方の集いの場で憩いのある場にしていかなければいけないであろう、こういう商店街の活性化という、再開発というようなことから見まして、コミュニティーマート構想というものがそのビジョンで出されているわけでございます。それに対していろいろと国の方で面倒を見ると。ですから、これはあくまでもモデルを構築していくということでございまして、それがいわば設計が出てきた段階で、これからは先ほど申し上げた九〇年代流通ビジョンで出ておりますような、問題は「街づくり会社構想」というようなものをどのように積極的にみんなで盛り上げていけるのかということがこれからの課題であろうという気がいたします。  それで、この大店舗法がいずれまた国会などで討議されると思いますが、フランスなどには大店舗法に近いものがございますが、これは大店舗法と先ほど言いました小売商業振興法をあわせたようなものが、もっと新しい都市生活をいたします方たちを頭に置いてのもので、視点を変えて取り上げられていると思うのでありまして、こういう点もぜひ、アメリカとの関連だけを考えるんじゃなくて、検討していただきたいなという気もしております。  また、私の仲間でありますが、イギリスのこういう問題に関する学者がおるのでありますが、これは大ざっぱに言いますと、日本で言ういわゆる量販店、大型店でありますが、これに相当するものがイギリスにございますが、これらが六、七店舗で過去三十年ぐらい前のところでは市場占拠率が六%か七%であったわけですが、今はそれが六、七〇%を握っております。ですから、確かに小さなお店を全部コントロールして本部が一括して物を流しているわけでありますが、それについて地域住民として、その教授が私どもへ……
  67. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 時間が限られておりまするので、簡潔にお願いします。
  68. 宇野政雄

    公述人(宇野政雄君) 言ったことでございますが、どうもどこへ行っても目をつぶっていて物が買えるけれどもおもしろみがない。日本へ来ていろいろ見ますと、何かそこににぎわいがあっていい、これはやっぱり大事にしてもらう必要があるのじゃないでしょうか、こういうことを言っておったわけですが、私はこれからもっと今のような温かみのある町づくりというようなものが考えられてしかるべきであろう、こんなことを考える次第でございます。
  69. 藤井治夫

    公述人(藤井治夫君) 防衛計画大綱が定められてから今日までの間に防衛関係費は恐ろしい勢いでふえてきたわけでありまして、七六年の一兆五千億円が今日四兆円を超えるものになっている。あれは、別表を含めまして防衛費の急増に歯どめをかけるという趣旨でつくったと言われていたんですが、残念ながら決してそういうものではなかったわけであります。大綱自体の表現等にも反するようなことがどんどんと行われてきている、これが今日までの経過であります。  やはりそれには大綱自体にも欠陥があったと思います。そういう点につきましては私も当時、大綱を定める中枢にいた人にもいろいろ御意見を伺ったことがございますが、やはり妥協の産物として防衛費の急増に道をあげたそういう大綱であった。今日求められているのはそのようなものではないはずでありまして、はっきり歯どめをかけられるようなものでなくてはならないと思います。それは単に予算だけではなく、防衛構想の点においても全部やはり見直す必要があろうかと思います。  先ほども申しましたように、アメリカは平均二%ずつどんどんカットしていく。十年で二〇%以上カットするわけでありまして、日本もせめて名目額による凍結、実質物価上昇分の軍縮というくらいのことはまずやるべきではなかろうか。私は試みに計算をいたしまして十年で八一・七%、二十年で六六・七%、三十年で五四・五%まで、その方式で仮に実質二%の減であればそうなるわけでありますから……
  70. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 時間が参っておりますので、答弁をおまとめ願います。
  71. 藤井治夫

    公述人(藤井治夫君) そのことが非常に求められているんじゃなかろうかと思っております。
  72. 諫山博

    諫山博君 藤井公述人に二点質問いたします。  第一は軍事費の削減の問題です。  私たちは軍事費を削って教育や福祉を守れ、こういう主張をしています。そして、具体的には軍事予算の半分は今直ちに削減できるし削減すべきだということを主張しています。委員会で私たちがこういう主張をしますと、与党席から失笑がわくというのが現実です。公述人の発言に軍事費の削減が触れられましたけれども、今すぐ軍事予算の半分を削減すべきだというのは非現実的な言い方なのか、この点について公述人の御意見を聞きたいと思います。  第二は安保条約の問題です。  マルタで米ソ首脳会談が開かれ、冷戦の終結を口にせざるを得ないという状況になりました。ところが、アメリカ側もソ連側も軍事ブロックを解消するということは言わないんですね。言わないどころか、会談が終わってかえって軍事ブロックを肯定するような発言がされています。  この問題は日米安保条約を持っている日本にとっては非常に重大な問題だと思います。アメリカの戦争に日本が巻き込まれるのではないか、こういう仕組みをつくっているのが日米軍事同盟ではないかということを主張していますけれども、さっき公述人から安保条約の危険性について強調されましたけれども、廃棄すべきだという御意見はどのように考えておられるのかお聞かせください。私たちは安保条約は廃棄して非核非同盟中立の道を進め、こういう主張をしています。  以上です。
  73. 藤井治夫

    公述人(藤井治夫君) 二点のお尋ねにお答えいたしたいと思います。  まず、軍事費の削減でありますが、私は、軍事費は究極的に言いますとこれはない、ゼロである、半分どころではないゼロにしたらいいと思います。そういうふうに二十一世紀にはなってもらいたいと思っておりますが、その方向へ行くのにどうしたらいいかということは、これは大変なことでありまして、簡単にはいきません。と申しますのは、米ソは言うまでもなく、あらゆる国々の政府軍事力を必要だと考えているからであります。ですから、私は国家主義あるいは国権主義ではなく民権主義の世の中にならないと軍事費がゼロということにならないと思いますが、では民権主義というのはどうだといいますと、これはなかなかそう簡単に確立できないわけでありまして、ソ連などを見ておりましても、ゴルバチョフというのは要するにまだ国権主義者であるにすぎないと私は思います。ですから、現実的にどうしたらいいかということはこれは慎重にかつ民主的に議論をして、そしてその方向、国民的な合意として形成していく必要があると思うんです。  根本的に言えば、戦争の根元というのは何であるかというと、やはり軍隊、軍事同盟あるいは権力というふうなものにあるように私は思います。ただ、それが一気になくせるわけじゃございませんので、まあ三段階というふうに私は思うんです。第一段階は信頼醸成、平和のため緊急の措置をとるということです。第二段階は、戦争が起こるそういう条件、根本原因じゃなくてその条件をなくすということでありまして、これはやはり民主主義、人権の確立、あるいは軍備の縮小、こういうことでもって戦争の起こる条件をなくしていくというふうに考えていかないと、一挙にこれをなくすということはできないので、非現実的であるという御批判も一面当たっている点があるんじゃなかろうかと思うわけであります。
  74. 粟森喬

    粟森喬君 国会の中でも防衛問題はかなり今回は論議をされているわけでございますが、政府の答弁の中に時々アジアにおける潜在的脅威という言葉が出ます。これは明らかにソビエトを除いたのだと思いますが、私どもとしてはその真意がまだわからないわけでございますが、外側におる藤井さんといいますか、軍事評論家という立場でそういう潜在的脅威というのは存在すると考えているかどうか、この点についてお聞きをしたい、こういうふうに思います。  それから宇野先生にちょっとお尋ねをしたいんですが、今、日米構造協議ということで問題が端を発していますが、消費者といいますか、買う側からの問題というのは必ずしも十分に論議をされていない。一般論として申し上げると、大店法でスーパーの進出が規制されたり、あるいはアメリカ日米構造協議で求めていることを拒否するというのは、消費者の側から見ると必ずしも納得できないという立場をとっておるんです。ですから、結果が生み出す問題と今の日米構造協議というのは、業界内の市場原理みたいなもの、市場競争みたいなものの一端ではないかというふうに私どもは考えておるわけですが、その辺のところについて見解をお聞かせ願えたらいいと思います。大変時間が短いものですから、簡単なコメントで結構でございます。
  75. 藤井治夫

    公述人(藤井治夫君) 潜在的脅威がソ連以外という形で日本に対してあり得るのかということにつきましては、私は日本の生存にかかわるような、日本の国土の安全にかかわるようなそういう脅威というものはない、こういうふうにはっきり言えると思います。朝鮮半島の問題にいたしましても、あるいは中国の問題にいたしましても、カンボジアの問題にいたしましても皆そうである。ただし、国というものを非常に広げて考えていく考え方がありまして、国益というものがそこにかかっているとか、こういうふうになってまいりますと一つ問題が出てくると思うんです。  それからもう一つは、日本の周辺に日本と友好的な関係に立てないような国ができていくということについて危惧、不安を持っている人たちが多いんです。朝鮮半島が統一されたら、これは大変だ、厄介だ、力が強くなっていろいろまたクレームをつけてくる、こういう理解をする人がいますが、それは全く間違っているわけであって、それぞれの国は民族主権を持ち、自分自分たちの方向を決めていくわけですから、多少の行き違いができてきてもこれはやむを得ない、話し合いによって解決していくということでいいんじゃないかと思います。  タカ派の人たちはいろいろ言っておりまして、中国が潜在的脅威になってくる可能性があるとか、それから朝鮮半島の問題とか、いろいろ挙げている人もいますが、それは今申しましたように、考えている安全というものが非常に広くとら えられているというところから出てくるのじゃないかと思います。
  76. 宇野政雄

    公述人(宇野政雄君) 消費者利益という観点をどう見るのかということであったかと思いますが、私は先ほど生活者というような言葉で私なりの考え方を申し上げたわけですが、では横文字でどう言うんだということをよく聞かれるわけですが、消費者というのはコンシューマーシチズンである。実は会社の連中もカンパニーシチズンである。シチズンという形でこういうような問題はもう一度見直してみる、そうしますと答えが出てくるのではないか、こういうように考えております。先ほどちょっと申し上げたフランスのロワイエ法なんという法律はそういう視点がございますし、イギリスとかその他でも皆大きいものが出るのに無制限に出てくるところは一つもないのでありまして、問題はそれをどういう形でうまく出すようにするのか、制約するのか。それは今申し上げたような視点からとらえているようなところがあるのでありまして、その辺は十二分にまた御検討いただきたいなと、こんな気がいたしております。
  77. 足立良平

    ○足立良平君 これも時間が四分しかございませんので、藤井先生に失礼でございますが、ちょっと質問は省略をさせていただきたい、もし余れば後ほどお願いしたいと思います。  宇野先生に一点だけちょっとお聞きをいたしたいと思いますが、大店法の問題でいろんな議論が実は今も継続をされているわけでございますが、大店法というものが存在する、これは法律の行為と、それから商調協を初めとして実際の運用というものについては若干問題なきにしもあらずでございますので、実際の運営の問題、こういう観点で、この大店法というものが存在したことによって我が国の流通業界というものが一体どのような影響を受けたのかという、その評価をきちんとしておかないと、これについての大店法の議論というのは私は成り立っていかないと、このように思うわけでございまして、特に小売商業等を中心にどういう影響を与えてきたのかということについて先生の考え方をお聞かせ願いたいと存じます。
  78. 宇野政雄

    公述人(宇野政雄君) 実は日本のいろいろな法律というのは、何を見ましてもそうなんですが、教科書に書いてみますと、世界のどこの国よりも立派な体系になっております。ですから、この大店舗法とか小売商業振興法というものも外国の連中に見せますとびっくりするわけですが、今御指摘があったように、問題は運用をどうするのか、その辺のことについては過去十数年間の大店舗法の運用というのが必ずしも十分機能していなかったと、こういうように私も考えます。十分であったとは思いません。  しかし、ではこれが全然なかったらばどうであろうかとなりますと、これはやはり問題があるわけでありまして、その意味ではある程度の両方の枠の中でどういう形で動いていただけるのか、こういうのが決められてしかるべきだと、こんなような気が実はしているわけでございまして、私はあったことはそれなりの意味があったと思います。しかし、今の時点で見ますと、経済性追求だけでこれを議論しようとすると、この大店舗法そのものを何か手を加えてみたり、また今のままの問題で運用をやってみても十分にいくとは思っておりません。それだけは申し上げておきます。
  79. 足立良平

    ○足立良平君 ちょっと時間が余ったようでございますから藤井先生にちょっとお聞きいたしたいと思いますが、防衛力の問題を考えますときに一番重要な視点と申しますのは、私はシビリアンコントロールをどれだけ強化していくのかということではないかと、こういうように思っているわけでございまして、これを強化をしていく具体的な手法とか、そういう観点でもし先生の考え方がございましたら、ひとつお聞かせを願いたいと存じます。
  80. 藤井治夫

    公述人(藤井治夫君) シビリアンコントロールにつきまして先ほどちょっと申しましたが、現状は非常に嘆かわしいといいますか、そういう状況ではないかと思うんです。  と申しますのは、例えば防衛庁の内部を見てみましても、ユニホームの力が非常に強くなっている。判断が大体ユニホームにおいて最終的に行われる方向で戦力とか装備計画などが決まっていく。ほとんどチェックできない。そして、内局のいわゆる文官の公務員の方々は、やはり予算の獲得とか国会における答弁とか、あるいはPR活動とか、そういう一つの分野を受け持っているにすぎない。したがって、この地位が非常に低下してきまして、昔の軍政、軍令の分離とか、そういうふうな状況をほうふつさせるような姿がございます。そうであってはならないわけでありまして、非常に高い立場から統一的に日本の防衛政策あるいは防衛戦略、あるいは安全保障政策はどうあるべきかということを決めていかなければならない。国会でそれをやっていただくのが一番大事だと思いますけれども、しかし、そのためのデータがほとんど出てきていないという状況ではないかと思います。  つまり、国政に関する情報を最大限に公開するという認識が防衛当局には残念ながらないわけでございます。公開できるものは最大限に公開して、それを全部国会に出して、そして国会において判断をしていく、方向が決められていく。予算等につきましてもそうでありますが、それだけではなく、いろんな戦略の問題につきましては、アウトラインはやはりみんなが納得する方向で決めなければならないと思います。
  81. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 時間が参っておりますので、答弁をおまとめ願います。
  82. 藤井治夫

    公述人(藤井治夫君) 非常に合理性に欠けたような戦略が立てられるというふうなことになりかねませんので、大変な間違いを犯す、そういうことのないようにしていくのがシビリアンコントロールの根本じゃないかと思います。
  83. 足立良平

    ○足立良平君 どうもありがとうございました。
  84. 星野朋市

    星野朋市君 宇野先生に一点だけお伺いいたします。  今アメリカの流通業界における一つの特徴として、デパートメントストアの衰退とそれからハイパーマーケットの隆盛という現象が起こっていると思います。ハイパーマーケットというのは、よく調べてみますと、日本的な大型店舗とよく似ておるのでございます。アメリカから出たスーパーマーケットが日本流に改組されて、日本特有の大型店舗ができたと思うんです。  私はつい最近まで民間におりまして、実は建物設置業者としてこの大店法の問題にかかわってまいりました。そのときに消費者調査をしてみますと、何よりも一番先にワンストップショッピング、それから駐輪、駐車場が欲しいと、この二点でございまして、結局旧商店街には裏返しに言えばこれが欠けているわけでございます。それに対しまして私どもは、先生がおっしゃるように、コミュニティーホールとプラザをもって解決いたしました。  ところが、この大型店舗の経営者は、さらにこれから発達した通信販売と、それから宅配業者におけるシステム化されたいわゆる産地直送品、これに対して非常に脅威を持っているわけですね。ということは、日本の消費者のいわゆる消費構造が変わってきたということと、日本特有の多段階の流通制度のやがて崩壊が始まるんじゃないかと私は思っておるんですが、いかがでございましょうか。
  85. 宇野政雄

    公述人(宇野政雄君) 今御指摘がございましたのですが、店舗販売だけではなくて無店舗販売、こういうものが伸びてくるであろうということは確かにおっしゃるとおりだろうと思うのであります。方向から見ますと、大きいものをつくってお客を引きつけようとする経営戦略と、それから中型小型という形でお客のすぐそばへ接近していこうと、そういう一つの戦略と、それからもう一つは、もっといきますと、うちの中で購買意思決定をする、それが無店舗販売になるわけです、通信とかカタログとかそのほかですね。そういう意味で、経営の方から見れば、どちらでお客を引きつけるかということの競争になっているわけでござ いますが、消費者から見れば、いろいろな幅の広い選択があり得るわけでございますから、その意味では、私は方向的に消費者が選択し得るという点で大変いいことだと思っています。  ただ問題は、先ほどちょっと触れませんでしたけれども、それに対してそれぞれが例えば情報化をどううまく活用できるかという点で見ますならば、特に小さい方たちなどがいかに連鎖化をするのか。従来考えられたようなボランタリーチェーンとかフランチャイズチェーンというだけじゃなくて、情報を中心としたチェーン化をどう展開できるかというようなことがやはりこの問題を乗り越えてやっていき得るそれぞれの生きる道なのかなと、こんなような印象は持っております。
  86. 星野朋市

    星野朋市君 ありがとうございました。
  87. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) ありがとうございました。  以上で流通問題及び外交・防衛に関する意見聴取は終了いたしました。  一言御礼を申し上げます。  宇野公述人、藤井公述人には、それぞれのお立場から貴重な御意見をお聞かせいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして衷心から厚く御礼申し上げます。(拍手)     ─────────────
  88. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 一言ごあいさつ申し上げます。  岩田公述人、庄司公述人におかれましては、御多用中にもかかわりませず本委員会のために御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして心から厚く御礼を申し上げます。  本日は忌憚のない御意見を承りまして今後の審査の参考にいたしてまいりたいと存じますので、どうかよろしくお願い申し上げます。  次に、会議進め方について申し上げます。  まずお一人二十分程度の御意見を順次お述べいただきまして、その後で委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、順次御意見を承りたいと存じます。  まず、土地・都市問題につきまして岩田公述人にお願いいたします。上智大学教授岩田規久男君。
  89. 岩田規久男

    公述人岩田規久男君) 岩田でございます。よろしくお願いします。  私は、土地・都市問題ということで、特に今回の地価高騰が起こりまして、その結果、サラリーマンの住宅問題あるいは通勤問題がますます深刻になっているというふうに思います。それがどのようにして生じたかということ、及びそれに対してどのような政策が望ましいと考えられるかという私の考えを述べさせていただきたいというふうに思います。    〔委員長退席、理事平井卓志君着席〕  今回の地価高騰に関してはいろいろ要因が言われているわけですが、一、二年の間に二倍にも地価が高くなるというような異常な状況が生じていたわけですが、よく言われる一つは、金余り現象という金融的な要因で、金融が特に八五年のプラザ合意以後緩和をいたしまして、したがって安い金利でお金を借りて土地に投資するということが非常に有利になったということで、土地投資あるいは土地投機が非常に盛んになったという要因がございました。この要因は、普通、銀行等が投資資金を供給するということで金余りが生じたと言われるわけですが、銀行がどれだけ土地投資にあるいは土地投機に融資できるかという基本的な量を最終的に決めているのは、実は日銀の都市銀行に対する資金の供給量でありまして、日銀が資金供給量をふやさない限りは、実はどんなに土地担保があったとしても、銀行が最終的には貸し出しをふやして、それによって預金通貨がふえるという、マネーサプライがふえるということは起きないのでありまして、この点を十分理解しておくことが必要だと思います。  そういう面からいたしますと、内需拡大ということが必要で、八五年の九月ぐらいから盛んに金融を緩和していくわけですが、その後、日本経済は八六年の第四・四半期に大体底を打ちまして、八七年からは非常に経済が拡大していくわけでありますが、したがって、八七年から経済が拡大した後、ずっと三年余りも日銀が銀行等に対する資金供給を非常に潤沢にしたわけですが、果たしてその必要があったかどうかということが一つ重要な問題であろうかと思います。  実は八九年に日銀は公定歩合を引き上げ始めまして、ことしの三月までで四回にわたって公定歩合を引き上げるわけです。ところがこの間、ごく最近までのデータで見ますと、日銀から銀行等に流れる資金の量の増加率というのは全然減っていないのであります。つまり、公定歩合は引き上げているんですが、日銀から出ていくお金の量は減っていない。銀行というのは日銀から供給されたお金をもとにしていわば貸し出し等を行っていくわけでありますので、そういう意味で、引き締めに転じたと言われながら、根っこのところでは日銀から出てくる資金の供給量は実は鈍化しておりませんで、八九年は結局は八八年と全く同じ資金が日銀から供給されております。  そういう意味で、金融は引き締めた、公定歩合を引き上げることで引き締めたというふうに一見思われているんですが、必ずしもそういうふうにはなっていないということがいわば金余り現象というものを長期にわたって持続させた一つ要因となっているかと思います。  そのほか構造的な変化がいろいろ起こったということが挙げられまして、経済がだんだんいわばソフト化というかあるいは情報化ということによって情報が大事だということになりますと、やはり都市での情報が一番得やすいということで、特に日本の場合一極集中ということで首都圏への集中が起こっておりますが、その後全国的な内需拡大をいたしまして、全国にも内需拡大によって土地需要が波及するということによって全国的な地価の高騰が波及をいたしました。こういう要因があるわけですが、しかし、そういう要因以外にも土地の税制であるとか、もともと都市基盤整備が非常におくれているとか、そういった問題が制度的にありまして、地価の高騰に拍車をかけているというふうに考えられます。  きょうお話しするのは、金融政策がいつまでも緩和し続けたということがたとえあったとしても、もしも土地税制等の制度的なものが地価の高騰を抑制するように作用していたならば、これほど問題は深刻にならなかったのではないかということで、土地税制ということに少し焦点を合わせてお話ししたいというふうに思います。あるいは金融が緩和するかしないかにかかわらず、やはり今後の日本において、土地の税制というものが都市計画とともに非常に重要な役割を担うというふうに考えておるわけです。  そこで、このような土地税制あるいは都市政策一般を考えていく基本的なスタンスといいますか、それはどういうところに置くべきかということでありますが、基本的には私は一人一人、個人にせよあるいは法人にせよ、そういう個々の経済主体が自分にとって一番最適である、合理的であるという行動をとったときに、社会的にもやはり最適な結果が生まれるというふうに土地の市場というものを設計する必要があろうかと思います。これは結局どういう意味を申し上げているかというと、現在例えば不動産業に対して銀行は融資を自粛されたいということで、融資の自粛規制ということが通達で行われているわけでありますが、このような政策は依然として土地に投資したりあるいは投機したりすることを税制上も非常に有利にしている。有利にしておいて、一方で自粛を頼むという政策は、やはり効果に非常に限界があります。ですから、むしろ土地投機や土地に過剰な融資が行われるということが土地問題を引き起こす、地価の高騰を引き起こしているという、それが非常に問題であるということであれば、もともとそのような土地に投機をしたり、過剰な投資をするということが不利になるように税制の仕組みを変えた方がいいですね。融資の自粛をお願いす るという政策よりも効果的であるというふうに考えられるわけです。それが、個々の法人なら法人が自分にとって一番望ましい政策をしても、望ましい行動をとったときにも、社会的に一番いい結果を生むという制度のあり方を申し上げたいわけです。  そのような観点から、それでは土地税制が今いろいろ議論になっておりますので、どういうふうに設計するのが望ましいだろうかといいますと、土地税制というのは三つの機能を持っておりまして、一つは社会資本あるいは都市基盤整備をする場合の財源を調達するという、そういう機能がございまして、一般に社会資本を整備いたしますと、そこの土地が便利になるといったこと、あるいは住むのに非常に便利になるとか、あるいは事業を展開するのにも非常に都合がよくなるといったことで地価が上がってまいります。これを開発利益と言っているわけですが、こういう開発利益というものも、土地に関する税金をうまく仕組んでおきますと、自然と開発利益が公的に税金でもって吸収されていきます。そして、その公的な主体はその税金でもって逆に公園であるとかオープンスペースであるとか道路用地といったものを、あるいは道路だけではなく、道路の周りの用地を確保していくということが可能になるわけであります。このような税を仕組んでおきませんと、公共投資をして社会資本を整備すると周りの地価が、社会資本を形成しようという計画が立った段階で既に地価が上がってしまって、公共当局は土地を取得できないということになってしまう可能性があります。あるいは開発利益が全部旧来の地主に、土地所有者に帰属してしまうというのは、社会資本を例えば所得税や住民税で調達いたしますと、利益はむしろ地主の方に地価の上昇を通じていってしまうという問題があります。それを土地税制を組み合わせることによってむしろ開発利益というものを自動的に公的に還元する仕組みができ上がってまいります。  それから第二番目の土地税制の機能というのは、土地を計画に沿って有効に利用するという役目がございます。これは計画に沿ってということでありまして、したがって計画がある程度きちんとしていなければならないということでありまして、そのような都市計画の中で一番望ましいと考えられていた土地の利用の仕方というものは税制がやはり組み合わさっておりませんとなかなか進みません。税金が安いと、むしろ土地を何も計画に沿って利用しないで、値上がりを待ってそれを売るとかいう行動がどうしても出てまいります。したがって、計画に沿った土地の有効利用を促進するためにも、土地税制というものを活用することが望ましいということであります。    〔理事平井卓志君退席、委員長着席〕  それから第三番目の機能は、いわゆる資産格差を是正するというそういう役割であります。  以上のような三つの役割を土地税制というものは担っていると思います。  このような観点から、それでは税を今後どのように改革していったらいいかということを幾つか述べたいと思います。  税金には固定資産税と譲渡所得税と、もう一つ土地に関しては相続税がございます。  まず保有税としての固定資産税でありますが、これは現在市街化区域の農地と宅地とでは税金が全く違うわけであります。これは一つには宅地所有者と農地所有者との間で非常に税制上の不公平を生んでおりますので、是正する必要が私はあるのではないかというふうに考えます。これによっていわゆる農地を宅地並みに課税する必要があろうかと思いますが、それによって不公平な税制がある程度是正されるということと、それからある程度宅地化が進展して住宅供給が増加して地価が引き下がるであろうということであります。しかし、農地の宅地並み課税だけをしたのではいわゆる乱開発が起こってきます。また、インフラ整備のないところにどんどん住宅が建つとかいうことも困りますし、あるいはかえってすべてが宅地化してオープンスペースがなくなるということも困りますので、やはりこの税制とともに計画を導入して、まず例えば都市公園にするとか、そういったことも決めなければいけませんし、あるいはもう少し計画的、面的な開発を誘導するようなそういう措置も必要でありまして、例えば面的開発にした方が容積率が高くなるとか、あるいはそのような計画に参加した方が少し例えば譲渡税が安くなるとか、そういった誘導措置が必要かと思います。  次に、ただいまのは農地の問題ですが、あと一般の固定資産税でありますが、これは一つには評価額が非常に低くて、持ち越し費用が非常に低過ぎるために土地の有効利用が進まないと言われているところがありますので、これをもう少し評価額を上げていくということが必要かと思いますが、果たしてその時価評価にするかどうかというのは後でお話しすることにして、評価額を上げていくということが必要であります。そうして、固定資産税の財源を使ってインフラ整備の財源として都市基盤を整備していく。しかし、それによって住民の負担が多くなる分は住民税の減税であるとか、建物、家屋の固定資産税を減税するといったことを組み合わせることによって必ずしも負担は多くならないという形をとれるかと思います。  それから譲渡税でありますが、譲渡税というのは土地の値上がりから得られる利益というものに直接かかってくる税でありますので、投機を抑制する効果は最も強い税であります。したがって、私は譲渡税はむしろ余り安くするということには賛成いたしませんで、むしろ将来的には少しずつ高目にした方がいいのではないかというふうに考えております。また、譲渡税は資産格差の是正にも非常に大きな役割を担います。  しかし、譲渡税というのは土地を売らない限りはかからない税であるために、全く有効に利用していないにもかかわらず土地を売らないという、いわゆる凍結効果と言われるんですが、そういう効果を発揮いたします。これはいわば売らないことによって税金を払わずということで、税金をいわば延納していく効果と同じわけでありまして、延納していけるからどんどん延納していってずっと売らないということでありますので、税金の延納ということは、一年当たりで考えれば、その金利分が土地を売らないことによって譲渡税を延納する利益でありますので、もしも売った場合にはかかったであろう譲渡税に金利をかけまして、その金利分だけ税金を負担していただくということを考えてはどうかということであります。  これは、まずその土地を持っている場合のいわゆる含み益を計算いたしまして、もしも土地を売ってその含み益を実現しますと譲渡税がかかるわけですので、譲渡税がかかるから売らなくなるわけですので、したがってそれにちょうど金利をかけた分を払っていただく、そういう税金を私は考えておりまして、これを含み益税と呼んでおります。例えば、譲渡税率を二〇%として金利分を五%としますと、二〇%の五%ですので一%の含み益税ということになります。今のは例でありますが、そのような税金をかけていってはどうかということであります。  最近の国土庁の調べによりますと、法人の土地所有が非常に進んでおりまして、事業用地に占める未利用地の割合というものが四十八年には五・二%でしたが、六十三年にはこれが六・二%になっておりました。しかも、具体的に計画がないという未利用地が昭和六十三年には実に七八%というような高い率になっております。また、保有土地の未利用の理由といたしまして、法人に関して言いますと、当初から利用する計画がないという法人が昭和五十三年には九%しかなかったんですが、実に平成元年では五〇%は未利用地をもともと初めから利用する計画がないというふうに答えているという状況であります。そして、そうした法人の含み益は実に四十五年には三十四・九兆円でしたんですが、六十三年の十八年間で十二・四倍の四百三十三・九兆円になりまして、これはGNPが三百六十七兆円ですので、そのGNPよりも大きな含み益がもう既に六十三年には生じて おります。  このようにして含み益をもとにして日本経済が結局成立してしまう、そして土地の有効利用は進まず地価の高騰だけを招くという結果になっておりますので、このような含み益にごく薄い税金を先ほど申したようにかけるということが非常に重要ではないかというふうに思います。  私自身は含み益税というものは個人と法人両方にかけるということを考えておりますが、ただ、個人よりも法人の方がはるかに土地の投機というものに税制上有利になっておりますので、含み益を導入するにしても、個人には軽く法人には少し重くするということが必要かというふうに考えております。このような税金をかけますと、何か含み益税というのは非常に高くて大変だというふうに思われるのは、現状が含み益が大きいからでありますが、こういう税金が導入されるということが知らされると、土地の投機をするといったこと、当初から利用する意思のないような土地をずっと五%も持つというようなことは不利になります。毎年税金がかかってくるわけですから不利になりますので、そこでそのような未利用地は売却されるし、逆に未利用の土地をそんなに買おうという法人も個人もいなくなりますので地価が下がってまいります。地価が下がった結果、含み益自体が減ってまいりまして、したがって含み益の税負担自体が減るという効果が発揮されるわけです。  以上で終わります。
  90. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) ありがとうございました。  次に、高齢者問題につきまして庄司公述人にお願いいたします。労働経済研究所所長庄司博一君。
  91. 庄司博一

    公述人(庄司博一君) 労働経済研究所の庄司博一でございます。  九〇年度の予算案について高齢者問題の観点から公述させていただきます。  まず第一は、高齢者の仕事と生活の問題です。  六十歳定年法が実施されています。文字どおりの定年延長もありますが、再雇用という形式ならば六十歳まで働けるというものもあり、その内容は多種多様です。問題なのは確かに定年年齢は六十歳になっているが、それ以前に出向や転籍になるケースが多いというのが高齢者層の不安です。  労働省の八九年雇用管理調査を見ますと、まだ定年年齢が五十五歳以下の企業が二一・二%、五十六ないし五十九歳が一七%になっています。厚生年金の支給開始年齢を六十五歳に引き上げるという問題と関連して六十五歳までの雇用機会を確保するため高年齢者雇用安定法の改定が考えられていますが、それ以前の問題としてとりあえず六十歳定年法を完全に実施させることです。  日経連は、この十五日、高齢化問題研究委員会の最終報告を決定、発表されました。その詳しい内容はまだ読んでいませんが、中間報告を見たところでは六十歳前半層の雇用問題について一、一律定年延長は行わない、二、雇用延長・就業形態の弾力化と個別対応、三、企業サイドの採用・不採用の選択権の確保、四、雇用延長適用の段階的拡大という考え方を打ち出されています。高年齢者雇用安定法の改定に当たっては、六十歳定年法の二の舞を踏まないためにも、単に企業の努力義務規定にとどめるのではなくて、拘束力のあるものにすることだと思います。そのために財界、大企業に対する指導を強めていただきたいと要請します。  労働省の高齢者就業実態調査を見ますと、五十五歳から六十九歳までの高年齢者の就業率は男子七三・八%、女子四一・四%になっています。就業の理由は、経済上の理由を挙げている割合は男子八四・五%、女子六九・八%になっています。年金等仕事以外の収入が少ない者ほど就業率は高くなっています。男子六十歳台前半では年金が八万円以下、これはこのときの調査の年金受給者の約三五%に当たっていますけれども、この人たちの七割から八割は就業しています。  それでは年金額の実態はどうかを社会保険庁の八八年度事業年報で見ますと、厚生年金の老齢年金は旧法適用者三百五十四万人の平均受給額で十二万九千六百三十九円、新法適用の六十九万人の平均額でも十三万九千九百六十八円にすぎません。  それでは国民年金の場合はどうか、旧法拠出制の年金受給者六百八十八万人の平均額は二万九千六百四十一円、新法の基礎年金の受給者約五十三万人の平均額は水準切り下げによってこれよりも低く二万八千六百二十九円に減少しています。このような実態なので、生活のために働き続けなければならない人は増加をしています。  しかし、人手不足が叫ばれている中で、総務庁や労働省の調査を見ても、六十から六十四歳の完全失業率は他の年齢階層の二倍近くになっています。有効求人倍率は百人中十人、よくて十五人程度にすぎません。このようにして高齢の不安定雇用者が増加しているのが今日の状態です。  年金生活者の稼働収入と家計費について行った調査の例を見ますと、高齢単身者世帯ではその六〇%以上が月額十万円未満層で占められ、高齢夫婦世帯では月額十万未満層がその一八・九%を占め、月額十万から十五万未満層がその二三・七%になっています。つまり、月額十五万円未満の低水準の年金受給者層が全体の四二・六%にもなっています。労働省は六十五歳以上の人にはかかわり合いがないと言い、一方厚生省は年金額を引き上げるのは無理だと言います。このような人たちは一体どうすればいいのか。いわゆる谷間に置かれている人たちのことを政府に十分考えていただきたいと思います。  第二は、年金と医療の問題です。  老齢基礎年金は今年度スライド分を含めて月額五万六千七百七十五円になるということですが、これは昭和十六年、一九四一年四月二日以降に生まれた人の場合だと、二十歳から四十年間保険料を完納したとき六十五歳から支給される完全年金です。遠い遠い先の話です。  年金受給者の受給額の実態はさきに述べたとおりですが、私たちは老齢基礎年金の水準引き上げについて基本的な討議が次期の財政再計算期まで先送りされたことを遺憾に思っています。今年度、厚生年金に対する国庫負担の繰り延べがなかったのはよかったと思っています。しかし、九〇年度補正予算で返済されるはずの一兆五千億が厚生保険特別会計に資金として設けられ、その運用益七百五十億円を老人保健の基盤安定化のための事業に流用するのは、会計処理上は合法かもしれませんが、同じ社会保険であり被用者保険であるといっても、制度と目的の異なるものを混同するのは納得できません。  老人保健への拠出金引き上げの按分率が一〇〇%になったことによって、健康保険組合では百二十四組合が保険料引き上げに追い込まれています。老人保健に対する国庫負担の引き上げについては、日本医師会もそうだったと思いますけれども、関係審議会や日経連・健保組合連合会もこぞって要求しているところです。国庫負担の五〇%への引き上げを即刻実施していただきたいと思います。  老人保健に一部負担が導入され、中間施設がつくられることになりました。診療報酬が改定されて、老人は入院期間の期限が来たからといって退院を迫られるケースが多くなっています。中間施設では食事代やお世話料が徴収され、費用がかさみます。その上医療法の改定が考えられています。老人に対する差別医療がさらに強化されるのではないか、老人はますます医療から遠ざけられているのではないかというのが老人の不安です。  政府は長寿が喜べる社会をつくると言っています。そうであるならば、住宅問題を初め受け入れの環境が伴わない家庭にまで在宅医療を強要するのではなくて、老人が病気になっても一日も早く健康を回復できるような医療、また適切なリハビリが行えるような血の通った医療を行うのが国と地方自治体の責任ではないかと思います。老人の自殺率が世界のトップクラスというのは経済大国日本の大きな恥ではないでしょうか。老人福祉法 にうたわれている精神は形骸化され、老人の基本的権利が次第に侵害されているのではないでしょうか。  第三は福祉にかかわる問題です。  政府は高齢者保健福祉推進十カ年計画を発表しました。在宅福祉、介護の施設増、マンパワー、民間事業への援助など予算規模は十年間で六兆円と見込まれています。その第一次着手と言える九〇年度の厚生省予算では高齢者対策を最優先させたと言っています。在宅福祉サービスを拡充し、特別養護老人ホーム等を緊急整備する等々を挙げられています。そして、その一方では老人福祉法の改定、私たちは今まで社会福祉事業法の改定と言っていましたけれども、老人福祉法等の改定がされることになっています。華々しく打ち上げられた高齢者保健福祉推進十カ年計画についても、例えばホームヘルパーの問題一つ取り上げても、年末の主要各紙の社説は、果たしてそれだけの要員が確保できるのか、現実味がないと疑問視しています。また、たとえ確保できたとしてもデンマークの五分の一程度にすぎないのではないかと冷ややかな取り上げ方をしていました。  厚生省は、看護職員の需給見通しについて、九四年度、平成六年には九十三万五千人を確保でき、充足率は一〇〇%になるという推定をしています。現在、看護婦不足が病院、診療所の大きな悩みになっていることは御承知のとおりです。看護婦さんたちは二人夜勤で、夜勤回数は月八回以下、看護婦さんの労働条件を改善して、本当に手厚い看護をするためには今の倍の百五十万人が必要だと言っています。病院のベッド数をふやさず、看護基準を切り下げていけば確かに充足率は高まります。まさか政府はそんなことを考えているのではないかと心配されています。  最近、社会保障・福祉の分野にもニーズの多様化、高度化、効率性が強調されるようになってきました。それが民間活力とドッキングしています。また、福祉医療という言葉にもあらわれているように、医療と福祉の相互乗り入れが現実化しようとしています。社会保障・福祉の営利化が進み、福祉サービスも金次第の世の中になるのではないか、また社会福祉サービスの質が低下するのではないかという心配があります。量とともにその質が問われる時期になってきたと思います。新行革審の最終答申も資産格差等が一層拡大していることを認めています。  最近のいま一つの特徴は、自立自助と社会的公正が強調されていることです。格差が拡大している状況下で定額または定率の自己負担や費用徴収が強化されているのは新たな逆格差を生み出しているのではないか。自立自助にはおのずから限界があります。こうしたことは低所得の老人にとっては新たな不公正や格差を生み出すことにもなりかねません。  臨調行革以降、地方自治体等に対する国庫負担や補助金は削減されました。先ほども言いました社会福祉事業法の改定内容から酌み取れることは、福祉に対する公的責任が一層あいまいになっていること、自治体、地域における福祉行政に新たな混乱と格差が持ち込まれるのではないかという心配です。申すまでもないことですが、これらのしわ寄せを最も受けやすいのは老人たちです。  最後に、社会保障・福祉に関する費用を抑制するために、国民負担率の問題が大きく取り上げられています。高齢化が進行すれば年金、医療、福祉に費用がかさむのは当然の成り行きです。これを公的扶養とするか私的扶養とするか、また別の観点から他者扶養にするのか自己扶養にするのか、いずれにしてもかかる費用はかかるのです。したがって、国民負担率を四〇%台半ばあるいは五〇%に抑えれば庶民の負担が軽減されるというものではないと思います。国民経済の負担の問題というよりは、その内部の再配分の問題と言えるんじゃないかと思います。  国庫負担が削減され、地方自治体に負担が転嫁され、それが地域住民の負担になってはね返っていることはひとしく経験済みのことです。要は、その費用をだれがどのように負担するかという再配分の問題だと思います。  社会保障費の伸び率を抑制しながら、一方で軍事費やODA、政府開発援助を突出させているのは国民には納得できません。緊張が緩和され軍縮の方向に進んでいる国際情勢のもとで軍拡路線を維持し、ODAについては大盤振る舞いをしているのじゃないかという印象が強いと思います。その前に国民になすべきことがあるのではないかというのが庶民の偽らざる感想だと思います。冒頭に申し上げました低所得の年金生活者の家計調査を見ますと、消費税の重み、逆進性がはっきりあらわれています。消費税は社会保障制度の充実に向けられると言ってもなかなか釈然としないのは当然という結果になってあらわれています。  私は新宿に住んでいますけれども、都庁の移転、防衛庁の移転とのかかわりで地上げ攻勢が強まっています。特にねらわれているのは老人世帯、ひとり暮らしの老人です。住みなれた町会から移転して、こんなはずではなかったということで後悔している人がたくさん出ています。現在町会の役員もやっていますけれども、この地上げのことが町会の一番大きな問題になってきています。老人の住宅問題についても、安心して住める老人住宅の建設についていま少し手厚い政策を考えていただきたいというふうに思います。  以上申し上げましたことから、思い切った政策の転換を要望せざるを得ません。この公述の趣旨を今後の審議に活用していただくことをお願いしまして、公述を終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
  92. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) ありがとうございました。  それでは、これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  93. 関口恵造

    ○関口恵造君 本日は、岩田公述人の先生、また庄司公述人の先生にお忙しい中をいろいろとお話を承りましてまことにありがとう存じました。  まず、岩田公述人にお願いを申し上げます。  岩田先生の土地税制についてのお立場は、いわゆる土地の供給をふやすために土地の含み益課税や固定資産税の時価評価税といったようなことが必要であるとのお考えと今承ったわけでございます。確かに、こうした方策は東京を初め大都市圏の土地供給にプラスの面を持っておるということはよくわかります。しかし、問題がないわけではないと思うのであります。  例えば含み益課税につきましては、未実現の収益いわゆる所得に課税することになり、不況時や産業構造の変革時に収益が落ちても、土地、いわゆる工場用地や諸施設用地を持っているために税負担は避けられないという問題が起きてまいります。また、固定資産税の課税評価を時価に引き上げた場合、年金生活者等に対します負担がきつくなると言われておりますし、住宅用地はそれ自体収益を生み出すわけではないと考えるべきと思いますが、公述人の御意見を伺いたいと思う次第でございます。  大都市圏の土地重課にそれなりの合理性はありましょうが、一方そうした税制がそのまま地方にも適用されますと、もともと収益率の低い土地なのに税負担はさらに重くなる。このことが、過疎地などでは税制を使って地価を抑制するということに非常に難しい問題があるのではないかと思われるわけですが、土地税制の改正が地方に及ぼす影響をどのように考えておられるか、お伺いいたしたいと思います。
  94. 岩田規久男

    公述人岩田規久男君) 第一点の含み益税が未実現のキャピタルゲインに関する税金であるために、利益が上がっていないのにかかわらず負担が増大するのではないかということですが、この税金は未実現のキャピタンゲインのいわば金利分だけでありますので、いわゆる未実現キャピタルゲインそのものに大きな税金がかかるという意味ではありませんので、それほど大きな負担ではないかというふうに思います。  ただ、今までこういう税がありませんので、今まではこういう税がないという前提のもとで経済は組み立てられておりますので膨大な含み益が発 生しているわけでありますので、したがって、それに対する利子分でも非常に高い税金のように思われるわけですが、したがってこの税金を導入するときに一体どこまでさかのぼって取得価格を設定するかという、実際導入するに当たっては実はそういう問題がございます。その問題が過渡期にはございますが、一応過渡期を越えれば、もともと未実現キャピタルゲイン自体が非常に減ってまいりまして含み益自体が減ってまいりますので、それほど負担にならないということであります。  それから、土地の場合には、必ずしもそれで利益が上がっていなくてもしかしある程度負担するという構造になりませんと、土地が非常に有効に利用できないというそういう面もございますので、その辺のバランスを考える必要があろうかと思いますのでそのような税金を考えたわけです。  もう一つ、固定資産税に関しては、住宅は収益を生むわけでないという問題で、この固定資産税というのは実際は一つには応益税という観点から、むしろ社会資本のサービスを受けているからその対価として払うという考え方でありまして、そういう点からいたしますと時価評価をするということは必ずしも望ましいとは言えないのでありますが、今言った応益課税の観点から言いますと、地代あるいは自分で使っている場合には帰属地代にかけるのが一番望ましいのでありますが、現在、地代市場、土地の賃貸市場はほとんどありませんのでそのような情報が得られませんので、それにかわる何か課税標準が必要ということになりますが、もしも含み益税が導入されれば地価は非常に下がってまいりまして、地代と地価との間にもう少し安定的な関係が出てくることによってある程度時価評価をしても応益税としてかなうであろうということであります。  その場合に、先ほど申しました住民税等を減税すれば税負担がそれほど大きくならないということと、このような税金を導入すると地価自体が非常に下がるので、それに時価評価したりあるいは含み益税をかけてもそれほど負担が大きくはならないということであります。ただ、年金生活者の場合には住民税の減税の恩恵を受けないということでありますが、この問題に関しては、実は年金自体で本来は解決すべき問題なのでありまして、年金自体が非常に問題であるために、土地問題が逆に犠牲になるということになるわけですが、年金問題だけで実は解決すべきものであります。ただ、それがさしあたりうまく機能しない場合には、固定資産税が含み益税で増税になった部分というものを住民税の減税で相殺できない部分に関してはある程度相続まで延納を認めるといったような制度も考えられるかというふうに思います。  それから、これによって地方のような収益の低い土地にも税負担が上昇ということでありますが、収益の低い土地に関しては地価自体が安くなるはずでありまして、なおかつこのような税負担が課せられるということであれば地価が非常に安く、低くなるはずであります。したがって含み益も低くなるし、また時価評価した場合にも時価自体が低くなりますので、税負担はそれなりの収益に見合ってついてくる。現状はそのような収益に見合って地価がついていないで、投機的な利益、ただ上がるから上がるだろうと思うというような形で投機的な利益を反映して非常に地価が高いというところに問題があるわけで、投機的な利益をこのような税金によって非常に少なくしてやれば収益に見合った地価がついてくるというのが基本的な考え方です。  以上です。
  95. 関口恵造

    ○関口恵造君 いろいろお話を承りまして、また御意見等もございますが、時間の関係で省略させていただきます。  次に庄司公述人にお願いを申し上げるわけですが、いわゆる望ましい福祉国家像というものがあるわけでございますが、ピーク時には四人に一人が六十五歳以上という超高齢化社会の到来を目前に、社会保障制度の再構築が我々の課せられた大きな政治課題であります。国民負担率八割に近い高福祉高負担型の北欧型でもなく、民間活力中心アメリカ型でもない、いわゆる効率的で活力に満ちた日本独自の日本型福祉社会を実現すべきと考えるわけですが、御意見を伺いたいわけであります。  なお、関連の事項を申し上げるわけでございますが、公的年金につきまして、高齢化社会でもう一つ大きな重要な点はいわゆる年金制度であります。公的年金は現在高齢者世帯の所得の約半分に当たっており、高齢者の生活のよりどころとなっておるわけであります。今後一層の高齢化が進展する中に確実に老後生活を支えていけるような公的年金制度としていくことが必要であります。その際に大切なことは、給付と負担のバランスをとっていくという点であります。受け取る年金額は多い方がよい、一方で負担する保険料は少ない方がよいというのでは制度全体としての安定が損なわれ、結局老後生活を支えるという公的年金の役割が果たされないことになってしまうわけであります。そこで、こうした年金制度における給付と負担の関係についてどのようにお考えですか、御教示を願いたいと思う次第であります。  なお、労働問題につきまして、今後の労働力人口を展望したときに、年少人口の急激な低下により労働力人口の増加の大半を高齢者が占めると予想されるわけであります。高齢者の豊かな経験と意欲、活力を生かし、雇用環境の積極的な改善を図るべきだと思うわけでありますが、高齢化が雇用の面でどのような影響を与えるとお考えですか、お聞かせを願いたいわけであります。  次に高齢者雇用については、平成二年度予算案において六十五歳までの雇用機会を確保するため各種助成金制度の充実、高年齢者の地域雇用開発事業の創設等の措置が講ぜられ、高年齢者雇用安定法の改正案も提出されているところであります。私はこれらが一日も早く実施され、実効ある対策が進められる必要があると考えるわけでありますが、公述人の高齢者雇用の考え方についてその対策を含めてお尋ねをいたします。  以上、よろしくお願いします。
  96. 庄司博一

    公述人(庄司博一君) 高齢化社会がやってくれば、若者二人で一人のお年寄りを支えなきゃいけない大変な時代がやってくるということがよく言われるのですけれども、それから二十一世紀になってくると超高齢社会がやってくるということが強調されるんですけれども、二十一世紀になって六十五歳以上の老齢人口が二〇%を超えるというのは、我が国だけじゃなくて先進国共通の問題ではないか。日本の特殊性が余りに強調され過ぎているんじゃないかということが一点。それから諸外国では高齢化社会に到達するまでに六十年、百年かかっている。それで、我が国の高齢化のスピードが非常に速いということが言われるのですけれども、先進国の場合でも本当に高齢者対策に取り組んだのは一九六〇年代以降が本格的な時期じゃないか。そうすると、我が国と余り大差がないんじゃないかというふうにも一つ考えられます。  それから、高齢化社会になると大変だということが強調されて、国民の負担率が非常に高まるということが強調されていますけれども、この国民負担率の税収の伸びのところを一つ見ましても、国民所得が一%伸びればサラリーマンから一・九%の税金が増収になる。一方、法人税は〇・九だという。弾性値一・九と法人税の場合はなぜ○・九なのか、この点なども私たちにはなかなか理解のできないところです。  それから二十以下の人口と六十五歳以上の人口、この問題で老齢人口の比率が高まるということが言われるんですけれども、私たちは就業者と被扶養者側のこの比率でやっぱり考えていくべきじゃないか。片一方では子供の数が減ってきているという問題と、片一方では老人がふえているという問題がありますけれども、二十一世紀になっても就業人口といいますか働いている人たち、それから援助を受ける側の人たち、この比率には余り大きな変化がないんじゃないかということが一つです。  それから我が国の場合女性は生涯に一・六人し か子供を産まないという厚生省の統計はでたらめじゃないか。一・三三まで下がるんじゃないか。人口の減少がひのえうまの年よりももっと悪くなってきている。私は、自由に子供が産める世の中をつくれ、こういうことを言っているんですけれども、スウェーデンの場合には人口の出産率が低下しておったのが最近二・一にまで回復をした。そうすると二十一世紀になっても現在の一七・五%という高齢の比率は余り大きく変化しない。我が国の場合も高齢化のピークと言われる二○二〇年までにはまだ三十年あるわけですから、それから共働きがふえていますけれども、本当に生みたい子供が生める、そういう環境をつくっていくことがこの高齢化社会危機論を解決していく一つの方法じゃないかというふうにも考えています。  それから年金問題について給付と負担のバランスを考えるべきじゃないかというお話ですけれども、これは総務庁が毎年発表しています社会保障統計年報なんです。社会保障の費用をだれがどのように負担しているかという国際比較なんですけれども、国庫負担とかその他の公費負担が一番多いのがニュージーランドの九一・六%、次がカナダの六三・七%、イギリスの五五・六%、スウェーデンの四六・〇%になっています。それから一方、事業主負担の多いのはフランスで五〇・四%、イタリーで四八・三%、スウェーデンが四三・八%になっています。我が国の場合は二八・九%が事業主負担です。それから被保険者負担の面で見ますと、スウェーデンは一・〇、ニュージーランドは二・二ということになっています。我が国の場合は被保険者負担は二六・三%、この労使の負担割合で見ますと労働者四七・六、事業主の方が五二・四という比率になっています。  我が国の場合の特徴は、その社会保障の財源を年金積立金等によっているというのが一〇・八%、これは諸外国に見られないほど高い数字になって突出をしています。そうしますと、我が国の場合社会保障にもっと国庫負担をつぎ込んでいいんじゃないかという問題と、それからアメリカの場合でも労使の負担割合を見ますと、アメリカは使用者が六〇・三%、労働者が三九・七%になっています。我が国の場合は、労働者負担が四七・六%、事業主負担が五二・四%になっていますから、よくアメリカとの比較が出されますけれども、アメリカの労働者よりも日本の被保険者の方が負担が重くなっている。こういう点も改善していただければ、この費用負担の問題とそれから負担と給付のバランスの面での負担の問題、ここのところの問題がひとつほぐれていくんじゃないかというふうに思います。  あと申し落とした点を補足しますけれども、年少人口の減少の問題と、高齢者の占める割合が高くなっていくその活力を生かせという非常に積極的な御発言をいただきましたけれども、もう少し高齢労働者を活用する方策を考えていただく。まあことしの予算でもいろいろな助成金等々含まれていることは承知しておりますけれども、ここでやはり一番考えていただきたいのは、六十歳定年法の二の舞を踏まないということをさっき申しましたけれども、単に努力義務規定じゃなくてもう少しはっきり義務化するところまでいかないと本気でこの六十五歳までの高齢者の雇用の問題は前進しないんじゃないか。企業に選択権があるんだ、企業が望ましい人だけ採用するというこういう方式では、なかなか高齢者の雇用も前進しないんじゃないか。  それから労働科学その他の面から、じゃ高齢労働者の能力は低下するかという問題についていろいろ科学的なあるいは労働衛生の面からも調査がございますけれども、場合によっては高齢者の方がより適した労働もあるという結果発表がされておりますし、我が国の国民はやはり社会参加をしたい、もっと働きたい、社会のためになりたいというこういう意欲も強いわけですから、こういう高齢者の活力を生かしていただく方向をさらに強化していただきたい、そのように思います。  先ほども申しましたように政府は十カ年戦略というのを出されていますけれども、これも今年度予算で見ますと国がどのくらい負担するかというのも一つ出ていますし、それから六兆円の中身を見ましても国の負担はそのうちの半分の三兆円ぐらいだろうということなども言われています。どんどんこういう計画が進められるのは結構なんですけれども、それによって地方自治体の負担がどんどんどんどんふえてくる。国の責任がどんどん地方自治体に転嫁をされてくる。こういう点がこの十カ年戦略の中でも私たちが非常に心配をしているところです。
  97. 関口恵造

    ○関口恵造君 ただいま公述人からいろいろ反論がございまして、そのとおりだと思う面もいろいろございますが、まだ問題点につきましていろいろと伺うべき点もあると思います。  ただ、公述人お話の中に医療関係についてのお話がございましたが、いわゆる公費の負担増と定額制の堅持という問題が我々の最終課題であるという点についても申し上げておくわけでございます。  先ほどお話しになりました十カ年戦略というものが、先般出されました臨時行政改革審議会の最終答申で国民負担率は高齢化のピーク時においても五〇%を下回ることを目標とするとされました。明るい長寿福祉社会を実現するためには、高齢者保健福祉推進十カ年戦略の実施など思い切った福祉施策の充実も必要だと考えております。給付と負担の関係についての見解の問題。また、政府は老人が住みなれた家庭、地域の中で暮らすという在宅福祉の緊急整備に努力しておりますが、その充実についての御見解。十カ年戦略は、在宅での介護が困難な場合には待つことなく必要な施設、サービスが利用できるよう、特別養護老人ホーム、老人保健施設、ケアハウス等の施設の緊急整備をも推進することとしております。私は、これらの施策で在宅看護で御苦労されている家族の負担が軽減される一方、御老人自身も本来いるべき場所で生活することができるようになり、生きがいの確保という大きなプラスにもなると思っておりますが、この点についてお伺いを申し上げます。
  98. 庄司博一

    公述人(庄司博一君) ちょっと御質問とずれるかもわかりませんけれども、先ほどちょっと申し落としましたので。  老人の同居率を見ますと、所得が高い人ほど同居率が高い、低所得者ほど同居率が低いという問題が一つあります。それから、家族の援助も高所得者ほど家族の援助が多くて低所得者の場合には家族の援助が期待できないという、こういう調査結果も出ています。それから、自己扶養という形で貯金を引き出して生活をしていくという場合、例えばこの二十年なら二十年をとってみますと、貯金には確かに利子がつくけれどもその分は物価上昇で減価するという問題と、一方労働者の場合も実質賃金はある程度上がっていますけれども、預金生活で決まった生活をしている以上生活の向上は望めないというこういう問題がありますので、私たちは、高齢者の場合はやはり公的扶養とそれから他者扶養といいますか、こういうのが高齢者にとって一番望ましい。自立自助とかいうことを言われましても、先ほど言いましたようにおのずから限界がありますので、こちらの方を充実させていただくようにひとつお願いをしたいというふうに思います。  十カ年戦略の問題につきましては壮大な計画が出されているんですけれども、果たしてここで働く人たち、これが充足できるのかどうかというこのことが心配です。先ほど朝日や毎日の社説をちょっと引用しましたけれども、ここでも本当にできるのかということが心配されていますし、先ほども申しましたけれども、看護婦さんの問題一つにしても、ベッド数はふやさないで看護の基準をどんどん下げていけば充足率は高まるということだけれども、これじゃ本当に手厚い心のこもった看護ができないというのが看護婦さんたち、現場の人たちの声だと、私はそのように聞いています。ですから、あそこでずっと計画されていることがもう少し国の負担をふやして地方自治体がそ れぞれの特性を発揮してできるような、そういう施策にしていただくようにお願いしたいというふうに思います。
  99. 関口恵造

    ○関口恵造君 時間が参りましたのでこれで質問を終わります。ありがとうございました。
  100. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 きょうお二人の大変貴重なお話を伺いまして、いろいろ得ることがございました。本当にありがとうございました。  まず岩田さんに伺いたいと申しますか、先ほどのお話の中で、個人そして法人にとって最適であることが社会にとっても最適であるべきだということが土地の問題でお話があったと思います。そして、土地の基盤整備が始まるとそこで地上げがあり開発利益が出る、そこに税金で吸い上げて公園とか公的な社会資本を整備すべきであるという御意見だったと思うのですが、私も一番大事なのは、そういった公的な公園なんかは非常に日本の場合にはおくれておりまして、世界の国々から比べましても大変小さい。それだけにそういった土地利用とその公的な部分、それから社会資本の整備、これは大変大事だと思いますけれども、もう少し具体的に税金でのそこの対応の仕方、これを伺いたい。  なぜならば、今私どもが大変危惧しております地上げそのものも、それがうまくいかないためにむしろ逆の結果が起こっている。土地の基盤整備というのが決まると周りが買いあさられて、そこで全く公的な資産が残らないというのが現実だと思います。岩田さんがお考えになるそこでの税制はどういうものなのか、もう一度説明していただきたいと思います。
  101. 岩田規久男

    公述人岩田規久男君) ただいまの都市基盤整備をするということが発表されるとか、あるいはそういう計画がありそうだということになると周りが開発とか買いあさられてしまってくるという問題ですが、買いあさるというのは都市基盤整備をした後は土地の値上げで地価が上昇するということが期待されているので、投機的な利益があるということで買いあさるわけでありますので、土地を売った場合の税金を高くするという、先ほどちょっと言い忘れましたが、譲渡税は個人だけではなくて法人の場合にも法人税の体系から外しまして、譲渡税を別の体系にするということであります。そういう税金があり、かつずっと持っていても含み益に対しても金利相当分的なものが税金として課せられるということが前もってわかっておりますと、そのように買いあさっても余り利益がないということで買いあさりが起こらないわけであります。仮に起こったとしてもそこから最終的には税金が取れますので、その税金でもって土地を買うことが公的にもできるわけでありますが、いずれにしても買いあさるというようなことがかなり未然に防げるということであります。  もう一つは、そういう買いあさりというものを阻止するのは、計画を立てまして先にそこはもう公的なものにするということによって扱うこともできるわけですが、それでも公的に買うという前に私的な企業なりが買えばやはり上がってしまいますので、やはり税制がどうしても同時に連動していかないとうまくいかないのではないか。西ドイツなどは割合基盤整備を計画できちんと進めるようにしていますが、それでも開発利益の還元ができないという問題を抱えておりまして、したがってこのような税金が導入される必要があるのではないかというふうに思います。
  102. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 続いて伺いますけれども、今計画とおっしゃったその都市計画なり開発の計画なりが大変貧弱だというふうに思いますけれども、現実的なことでつい私なんかは伺いたいんですが、実際問題として公有地の拡大が大変急がれるわけですけれども、そういった開発計画と税制の問題、その点について十分であるかどうか。開発の方の計画ですね、そういった点についてはどのようにお考えでしょうか。
  103. 岩田規久男

    公述人岩田規久男君) 計画という点に関しては、貧弱といいますか実はほとんどなきに等しいというのが日本の実は現状であります。この問題は非常に根が深いものがありまして、計画というのは一応は立てるわけでありますが、日本でも都市計画というのはたくさんあります。しかし、もう戦後に立てられた都市計画でたなざらしになっているものはたくさんありまして、二十年も三十年も着手されておりません。その問題はどうしてそういうふうになっているのだろうかということは、一つは、計画を余り十分に考えた上で立てたのでなくて何かある程度適当に立ててしまったというところもあるわけですが、その後計画を立てても実行に移す財源等もないといったような問題もございます。  しかし、もう一つ非常に重要なのは、日本では計画の段階で市民の参加がないという点が非常に重要な問題です。市民の参加と申しましても、必ずしもそこに住んでいる人あるいは土地を持っている人だけの参加を考えますと単なる住民エゴに終わってしまいますので、もう少し広い参加、広く声を聞くという意味でありますが、西ドイツなどでは計画に参加するときにはいろいろな意見を聞いたりする、あるいは環境団体が物を言ったりするというようなことを、別に地域の住民とかそういうことで制限しておりません。そういう意味での広い参加のもとで徹底して議論をし、そしてそれを公開するということは非常に重要です。その中で計画を練っていきますと、非合理的な意見というのはだんだん影を潜めまして収束していって、社会的な観点からどうあるべきかということが公に議論されるようになるということによって計画に合理性が出てくるんじゃないかというふうに思います。  ところが、日本ではそういう仕組みがありませんので、結局そういう意見を聞かずに公的な主体が自分で計画を立ててしまう。それによってそれを事業に移そうとすると、だれも市民が参加しておりませんでしたので、そこで事業の段階でいろいろすったもんだしてしまっていく。そしてまた、計画があるということも情報としてきちんと土地の売買などが行われるときにしておりませんので、知らないで土地を買うとかいろいろな問題が生じております。  そういう意味で、計画がほとんどないというところに重大な問題があるということであります。そして、計画のない中で土地の所有者というのはほとんど自由勝手ほうだいに土地の利用ができる、都市基盤整備のないところでも建物を建てたりいろいろできるわけでありますので、そういった点で今後の計画のあり方というのを考える必要があると思います。  ただ、日本では計画を立てるときに非常に狭い範囲での参加を考えたりいたしますので、もう少し広いということと、それから今後計画に参加した方が経済的にも有利だというそういうインセンティブを与える必要があろうかと思います。そのようなことを考えながら、計画のあり方を考えていくという面では欧米に少し学ぶ点が多いのではないかというふうに思います。
  104. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 今お話を伺っていますと、計画がほとんどないというに等しい状態で、しかも税制も後手後手に回っているということで、もう今本当に東京、大阪だけではなくて全国的に広がっているということも先ほど言われましたけれども、まさに大都市だけではなくてもう今では沖縄から北海道まで土地の値上がりというのが広がってきている。そういう中で、やはり可及的速やかに、計画性も大事でありましょうし税制も大事でしょうけれども、ここまでどんどん進んできているそういう中で一体どういう手があるのか。けさほども利用権それから所有権そして税制の問題というお話があったんですけれども、そういったものがもう既に個人あるいは法人の利害とがんじがらめに絡んでしまっているような現状ではないかと思います。  そこで、どういう方法で実行に踏み切れるのか。大変に政策がないまま来てしまった現実があると思いますけれども、それでもなお今現状を打開しなければならないと思うんですけれども、岩田さんはどのようにお考えでしょうか。
  105. 岩田規久男

    公述人岩田規久男君) そのような一環として 今さっきちょっと計画に触れましたが、土地税制というのが重要なキーポイントの一つじゃないかということできょう土地税制の改革の方向をちょっとお話ししたわけでありますので、その意味で土地税制の改革というのは必要だというふうに思います。  ただ、土地税制というのは、結局土地を持っている個人、土地を持っている法人はどの人でも痛みを伴います。したがって、一切痛みをだれも負担しないということであれば、結局は土地を持たないで住宅難、通勤難にあえいでいる、一番多いのはサラリーマンですが、その人が負担をし続けるということになるわけであります。したがって、土地を持っている人たちがある程度痛みを分かち合っていただくということが必要であります。  ただその場合、痛みを分かち合うときにその痛みをやはりできるだけ軽減するためには、先ほど申しましたように住民税の減税と組み合わせるとか、あるいは建物や家屋に対する固定資産税というのはむしろなくす方向の方がいいのであります。つまり、それは有意義な建築あるいは住宅投資を妨げることになりますので、そういったものも減税していく、そうやって痛みを和らげる。あるいはその町づくりや計画の中で少し中層化していただいた方がいい。そして、中層化することによってかえって周りにオープンスペースや緑地帯をつくることができるというようなところも随分あろうかと思います。  そのような場合に、そこで結局ある程度税金を負担していただくということが必要なんですが、ほっといて自由にてんでんばらばらに土地所有者などが対応しますと、地上げが入ってきてコミュニティーが崩壊して皆どこかへ移転しなければならないということになりますので、もう少し自治体などが計画的にその一帯を少し中高層化したいということを示して、そして土地の所有者にも協力していただく。そして共同住宅などを建てて、そしてそれには融資も低利の融資をつけるとか、そういうふうにしますとそこで既存の住んでいた人たちはその一室に住んでいただき、残ったフロアを分譲するなり賃貸するなりしていただく。そのようにすれば、固定資産税を十分支払っていくことができるわけであります。そして住民税も減税となっていれば、それほど私は負担はないというふうに思います。  そのようにして、いわゆる生存権的な土地所有権ということを言われる方があります。非常に零細な場合にはむしろ固定資産税は安くするという方向にすべきだというような問題がありますが、ただ余り安くしますと今言った中高層化というのはやはり進みません。というのは、やはり税負担が少なければ別に中高層化する必要は全然ありませんので進まないということもありますので、結局少し中高層化して遠くにある通勤者の住宅を近くにつくるということによって、通勤難に苦しんでいる人たちかなり快適な住宅を供給するという問題と生存権的な土地所有権というものを保障するという問題が、今言った組み合わせによって同時に解決されるんではないかというふうに思います。  したがって、結局土地政策というのはどれか一つをとると必ず副作用を伴いますので、今までの議論はその副作用というネガティブな部分を必ず問題にして、デメリットがあるじゃないかと言ってこれは全部だめだというのが戦後日本の一貫した議論の仕方であろうかと思いますので、デメリットがある場合には何かそれを防ぐ方法を考えて総合的にやっていくという姿勢が必要かと思います。  今、例えば中高層化したら昔から住んでいた借家人が家賃が高くなって住めなくなるじゃないかというような問題に関しては、例えば家賃補助をするとか近くに公的な住宅を建てて同時に公的な住宅に世話するとかいろいろ工夫があるわけでありますので、そのような工夫を知恵を働かせて総合的に使うことによって、一つ一つ政策を取り上げてそのデメリットをついてすべてを否定するというこの思考方法を直すということが非常に重要だというふうに思います。
  106. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 大変総合的な施策が必要だということがよくわかりましたが、今や大変重病といいますか、後手後手に回った結果もうだれが考えても病んだ部分があると思います。  そこで、最後に短く伺いたいのですが、可及的速やかにやらなければならないこと、繰り返しになるかもしれませんが、政府にどういう施策を求められているか、その点を伺いたいと思います。
  107. 岩田規久男

    公述人岩田規久男君) 現在、一応土地税調やあるいは財界等でもいろいろ土地税制に対して議論が出てまいりまして、従来土地税制というのは土地問題に関してあるいは土地政策に対して非常に補完的あるいは従であって、あくまでも計画とかそういったことが重要だということでありますが、そういったことが計画も大事だけれども土地税制も重要である、そして投機的な土地需要あるいは土地騰貴ということを抑制することが非常に重要だということがだんだん国民的コンセンサスを得てきているのではないかというふうに私は思います。  したがって、こういう状況のときはぜひ政府も国会も国民的な立場に立っていただいて、特に住宅問題あるいは通勤問題で大変な目に遭っている人たちのことをお考えになって、ここでは国会の議員さんにぜひお願いしたいと思いますが、御自分選挙の直接の選挙民のことだけではなくて全体を考えていただきたい。それがまた国会の役割でもあるし政府の役割でもあると思いますので、ぜひそういう広い視野から十分議論していただいていろんな副作用というものに対しても詰めをしていただいて、土地税制を初めとして土地政策の抜本的改革へ向けての元年としていただきたいというふうに思っております。
  108. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 どうもありがとうございました。  次に庄司さんに伺いたいのですが、先ほど最後の方で国民負担率の問題に触れておられまして、お話を伺っておりますと高福祉低負担と申しますか、そういったビジョンを描いておられるように伺いましたけれども、もし間違いがなければ、そのことが可能だとお考えでしょうか。
  109. 庄司博一

    公述人(庄司博一君) 厚生省は四月の三十日に「社会保障入門」というものを発表されています。この中に国民負担に対する租税負担率と社会保障負担率の国際比較というのを出されています。これは大蔵省が出されました「歳出百科」以降、この負担率の問題がずっと言われてきているわけですけれども、最新のもので見ますと、スウェーデンの場合ですと七七・〇%という数字になっています。  では、スウェーデンの国民税金や社会保険料の負担が高いということを本当に黙って我慢しているのかということなんですけれども、先般スウェーデンに行かれた方から聞きましたら、私たちが選出した議員さんがいる限りは大丈夫なんだという国に対する信頼感というのが非常に強い。そういうことですから、政権がかわってもこういう状態がずっと続けられてきている。なぜかというと、やはり国民は納めてもその分だけは社会保障で給付を受けて見返りがちゃんとある。だから、この負担率を言うときには納めたものがどう返ってくるか純負担率で計算しないと、高く取られて戻ってくるものが少ないということであれば国民はこういうことにはとても耐えられないと思うんですね。だから、国民負担率を四〇%に抑えればいいあるいはどう抑えればいいということじゃなくて、本当にそれが国民にどう返ってきて納めてよかったとそう言えるような国に対する信頼というのがあれば、もう少しいろんな論議も方向が変わってくるんじゃないかというふうに思います。  それからこの負担率の問題については、先ほども言いましたけれども、国民経済関係から言えばだれがどう負担するかという一つの問題でありまして、公的負担を減らせば私的扶養、自己扶養がふえていくわけで、金はやっぱりかかるわけなんで、それはやはりみんなの納得のいく形で納め ていくべきじゃないか。ただ抑えればいいという、そういう問題じゃないというふうに思います。
  110. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 私は全く国が信頼されて、その誠実な福祉が行われることが大変大事だと思いますし、まさにおっしゃったとおりかと思いますが、一方で確かに日本の場合には低負担で、実際には大変国民の貯蓄というのが私的負担になっているという面もあるとは思いますが、やはり高福祉低負担というのは難しいのかなと、ちょっとそこのところは見解を別にしているかもしれません。ただ、この場は議論をする場でもございませんから、先に行かせていただきます。  先ほど、出生率の問題を取り上げられました。女性の一人ですのであえて伺おうと思いますが、女性の労働条件と申しますか社会進出ゆえに出生率が大変下がっているというような言い方がされますけれども、やはりもっと働きながら健全に子供を、それは女性だけの問題ではないと思うんですけれども、子供を産み育てていけるような社会の条件が整う必要があるんではないかというふうに思います。そのことが、言葉をかえて言えばさっきスウェーデンでは二・一%にまた合計特殊出生率がふえたということをおっしゃいましたが、なぜスウェーデンではふえたのか、その辺がポイントではないかと思いますが。
  111. 庄司博一

    公述人(庄司博一君) スウェーデンの場合は、十八歳から二十になると八五%の子供たちはもう独立をするという、それで結婚して生活できるそういう状況になってきたというふうにも言われています。我が国の場合、今若い人たちが結婚年齢がどんどんおくれてきている。そこが我が国との違いじゃないかというふうに思います。  もう一点は、これは厚生省の人口統計研究所もちゃんとそういうデータを持っておられるらしいんですけれども、例えば東京の二十三区の中でも保育所とかそういう施設の整っておるところの各年代別の女性の出生率はちゃんと高い、そうでないところと明らかに差が出てきているというそういうデータも持っておられるようなんです、一般には公表はされていませんけれども。そういう環境を整備することが、やはり産みたいだけ子供が産める、そういう状況をつくっていくんじゃないかというふうに思います。
  112. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 私自身は余り――確かに保育所も大事ですししますけれども、もう少し労働の条件ですね、その辺が、確かに勤続年数とかそれから学歴とかいろいろありましょうけれども、日本の場合はやはり女性は男性の半分ぐらい、パートが多いということもございます。そういうことのために再就職も非常に難しいというようないろいろな条件がありますけれども、その辺。そして女性が健康に、男性の労働時間も減った方がいいと思いますけれども、そういったもうちょっと子供を育てやすい環境が必要じゃないかとちょっと思っていまして。  次の質問に移りますけれども、先ほど日経連の発表にお触れになりました。私初めて知りましたけれども、一律定年制をしないように、それからできるだけ選択をしたい、これは企業の側の選択ですかというふうにおっしゃったんですが、私は逆の立場で、例えば個人にしても本当に体力のある人、能力のある人、長く働きたい人、それからもっと早く定年と申しますか仕事から退きたいというような発想を持っている人もいると思うんです。将来、近い将来か遠い将来かそういった時期に、先ほど収入とそして年金の谷間、大変悲惨な数字をお出しいただいて私も本当にショックを受けたんですけれども、そういった存在のない形で、例えばこれも北欧が多くやっている部分年金というようなものがあります。そういった形で、むしろ年金の受給とそれから定年とが接触のないのが日本ですけれども、そういったところをむしろ個人の生き方に合わせてつないでいくというような方法を逆の意味でお考えにはならないでしょうか。
  113. 庄司博一

    公述人(庄司博一君) 先ほどの出産率の低下の問題のところで、堂本先生おっしゃられました育児休業の問題とか出産休暇の問題とか雇用均等法の問題、そういう条件整備が必要だ、もう当然のことだと思います。また今その方向で皆さん努力されていると思うんですけれども、看護婦さんの場合を例にとりますと病人が病人を看護している、こういうやっぱり過酷な労働条件のもとで働いています。こういう点など、やはりこれから改めていただきたい点が多々あるんじゃないかというように思います。  それから先ほど言いました、十五日に日経連は最終報告が決定されて発表されています。私それを全部を読んでいないんですけれども、それまでの中間報告では、先ほど箇条書きで挙げたようなことが中間報告の中に盛られていますので、これは心配だなというふうに感じているところです。  それから部分年金、部分就労の問題につきましては、今まで厚生年金にも在職老齢年金がありまして、三段階で在職老齢年金が支給されたわけですけれども、この場合もあなたは年金を幾らもらっているから賃金は幾らでいいだろうという格好で、高齢者を低賃金で使う材料にそういうことが使われたという問題が一つあるので、この点は十分注意する必要があるんじゃないかというふうに思います。それから部分就労、部分年金については、外国でもやられていたけれども余り成功していない、こういうことが報告されていますので、この点は十分研究をしてみる必要があるんじゃないかというふうに思います。といいますのは、部分就労、部分年金をやりますと、皆生涯年金をもらう方向にどんどん進んでいくといいますか、そういう問題なんかもありましたし、それからこれが高齢労働者の雇用拡大の方に余り結びついていないというそういう報告なども出されていますので、この点は先進国の例を十分検討されて慎重に検討いただければというふうに思います。
  114. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 どうもありがとうございました。  終わります。
  115. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 本日はどうもありがとうございました。  岩田先生に含み益課税の問題に関して四点ほどお伺いしたいと思います。  第一点は、確かに未実現利益に対する課税ではないということはわかるんですが、しかし譲渡利益という観点から見れば未実現利益に対する課税ではないということになりますけれども、含み益の利子に対する課税というふうになると、その利子自体については未実現利子所得に対する課税ということにはなるんじゃないんでしょうか。これが一点です。  二点目は、含み益の額の算定はどんな方法をお考えいただいているんでしょうかという点です。  三点目は、先ほどのお話でこれを個人にも法人にもというふうにおっしゃられたと思うんですが、例えば個人ということになると、私は横浜の山の中に坪四万円で買った土地百坪を持っているんです、これっきり持っていませんけれども。坪四万円で百坪で四百万で買ったんですが、今これが坪大体八十万ぐらいになっていまして、そうすると百坪だから八千万ぐらいになるんです。じゃ、四百万で買って八千万だから、含み益に対する利子課税というふうなことにされると私としては大変困るわけなんですが、個人にというのについて何かの限定はお考えなんでしょうか。これが三点目です。  最後に四点目としては、今先生がおっしゃられた含み益課税という問題と、それから従前各方面で言っておられる法人の資産の部における不動産の簿価評価というものを時価に評価し直して法人税等を課税したらどうだというようなことが言われているわけですが、それと先生がおっしゃっておられることとの異同、差異というか違い。  以上四点お教えください。
  116. 岩田規久男

    公述人岩田規久男君) 未実現に関する問題ですが、これは先ほど未実現でないというふうに申したんじゃなくて、未実現の全額に譲渡税ぐらいの税率がかかるというような非常に高い税金ではなくて、それの金利相当分であるからそれほどの大きな負担ではないというふうにだけ申し上げま したので、基本的には未実現というふうに考えられるわけです。  それから含み益の額の算定でありますが、こういう税金がかけられますと、土地を持っている場合には利益が二つあるわけですが、一つは地代、あるいは持っている場合に自分で利用している場合帰属地代と言われるものですが、それとキャピタルゲインですが、キャピタルゲインに関しては実現に関しても未実現に関してもかなり利益がなくなってまいりますので、土地がいわば将来の地代、帰属地代を利子率で割り引いた価値に等しくなってまいりまして、いわゆる不動産鑑定で言う収益還元法というのがございますが、それに非常に近づいてきまして、実際の売買事例もそういう価格に落ちつくわけでありますので、不動産鑑定が非常にやりやすくなってまいります。  現在は収益還元法はほとんど使えないで、売買事例がもう収益還元法を使ったよりもはるかに高い価格がつきますので、実際に現在の地価公示などではこの収益還元法は使えないのですが、これからはこういう税金があれば使えるようになりまして、したがって、一つ一つの土地に関して時価を算定するのは現状よりはかなり容易になるだろうというふうに考えます。ただ、これを毎年毎年するというのは行政費用がかなりかかると思いますので、三年置きとかに評価すれば十分である、現実にはそういうふうに思います。  それから今四百万が八千万になったということで大変うらやましいというふうに思いましたが、そういうことでこれは持っていらっしゃる方とは関係なく上がったので迷惑だということなのかもしれませんが、この含み益税というのがありますと、実は四百万でお買いになったのが八千万になるようなことが起こらなくなっちゃって、それが困るということになると困りますけれども、せいぜいこの半分もいかないぐらいになってしまうんですね、こういう税を入れると。ですから、急激にこの税を入れると今度は自分の資産がなくなるといって逆にそれに反対されるんですが、資産が減りますので含み益税はそれほど大して負担にならないというふうになってまいります。どの人も負担になって大変だというのであればみんなが土地を売ってしまいますので、それだけ非常に地価が下がってしまうわけであります。  個人に限定があるのかという問題に関しては、個人と法人とでは税率を変えるということは必要かというふうに思いますが、それ以外で余り細かい差を設けるとかえって土地の細分化を招いたりいろいろするという問題がありますので、私は税率を個人は安くする法人は少し高目にするというふうに考えております。  それから法人の簿価を時価に評価して、いわゆる再評価税と言われるものですが、これと同じかということでありますが、私この再評価税を主張されている方はどういう税を言っていらっしゃるのかよくわかりません。恐らく再評価税というのは一度だけおやりになるのではないかと思いますが、私の場合は毎年かかってくるわけであります。そして税率が金利相当分ということでありますので、そういう意味で、その金利相当分というふうなのはむしろ投機的利益を防ごうとして譲渡税をかけるとかえって土地が有効に利用する人の手に渡らずに、有効に利用しない人に土地が凍結されてしまうというそういう効果がございますので、それを防ぐという意味で使っているという点でもともと導入の動機が少し違うのかもしれません。そういうふうに思います。  以上です。
  117. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 どうもありがとうございました。  庄司公述人に、時間がありませんので。  超高齢化社会というふうなことを余りに世間で言った場合に、お年寄りに対しては不安を与えるし若い人に対しては不満を与えると私は思うんです。労働環境だとか社会環境がいろいろ違ってくれば、またそれなりに人間の知恵でうまくやっていくんだろうと私は思うんです。ですから、先生の労働経済研究所というところでも悲観的なことばかりじゃなくして何とかうまくやっていくというふうなところの方も御研究いただきたいと思いますが、それについて一言だけお願いします。
  118. 庄司博一

    公述人(庄司博一君) 今おっしゃっていただきましたようなことを私は日常地道にやっているつもりでございます。
  119. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 以上でございます。ありがとうございました。
  120. 諫山博

    諫山博君 極めて短い時間ですから、庄司公述人に年金について一点だけお聞きします。  年金の六十五歳支給は一応先送りになりましたけれども、五年すればこれが再び浮上してくる危険性が相当あると思っております。しかも、保険料は次々に上げられる。こういうやり方を抜本的に改めて、私たちは少なくとも直ちに六十歳以上のすべての人に月六万円、夫婦で十二万円の年金を保障すべきだ、これはできるはずだという主張をしております。公述人は財源問題についても触れられましたけれども、この年金の抜本的な改善と財源問題についてどのように考えておられるのか、お聞かせください。
  121. 庄司博一

    公述人(庄司博一君) 先ほど社会保障の財源をだれがどのように負担しているかというILOの国際比較をお話ししましたけれども、この中でも事業主負担が多い国はフランスの五〇・四%、それからイタリーの四八・三%、スウェーデンが四一ニ・八%。このように、我が国の場合労使折半負担が原則になっていますけれども、やはり国と事業主負担が多い、そういうことで社会保障を充実させている、こういう国が先進国の中では多いんじゃないか。我が国と西ドイツアメリカ三つが似たような形になっていますけれども、それ以外の社会保障の進んでいる国では、先ほど申し上げましたように国と事業主負担が多い、こういうのが特徴として言えるんじゃないかというふうに思います。  それからいま一つは年金積立金の問題なんですけれども、先ほどの厚生省のこの本でもそうですし、この間の年金改定のときの財政の収支見通しのところでも出されていましたけれども、二〇二〇年に厚生年金の場合は一・八三年分の積立金を保有するという。その積立金を二〇二〇年にどれだけ保有するかという、そういう前提があって保険料が計算されてきている。逆に言えばそういうことが考えられる。先ほど社会保障の財源で年金積立金等の利子を収入に合わせている、これは日本が一番大きいということを言いましたけれども、この年金積立金の活用の方法にしましても、ことしの予算を見ましても、年金福祉事業団を通じて高利運用をやるということが言われていますけれども、私たちが言った年金積立金の管理、運用の民主化という、こういう方向とは全く違う方向で年金積立金の自主運用が始まってきている、この辺。  それからもう一つは、この運用について労働者の発言権が全くない。労働者、年金受給者もそういうことに発言できる参画の場を与えてほしいという、そういうことも一つ言えると思います。  それから先ほど国民負担率の問題で言いましたけれども、我が国の場合政府見通しなどを見ましても、経済成長率がやはり上がっていくというそういうことを含めて考えますと、負担のところを言うときには経済成長のことを全然抜きにしてそして大変だ大変だと言われるけれども、片一方で経済成長率が伸びれば保険料収入も伸びてくる面もありますし給付もよくできる、こういう面もありますから、先ほど言った年金積立金のあり方あるいは財源の調達の仕方、それから国と事業主の負担割合の変更、労働者は社会保険料の負担を事業主七、労働者三に負担割合を変更してほしいということを一貫して要求してきているわけですけれども、そういうことを総合して考えていけば……
  122. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 時間が参っておりますので、答弁をおまとめ願います。
  123. 庄司博一

    公述人(庄司博一君) 我が国の場合の基礎年金というようなものじゃなくて、すべての国民に無条件で保障できるような最低保障年金が実現できるのじゃないかというふうに考えます。
  124. 諫山博

    諫山博君 ありがとうございました。
  125. 古川太三郎

    古川太三郎君 連合参議院の古川でございます。  岩田先生にまずお伺いしたいと思います。  確かに、土地問題は今緊急を必要とする大きな問題だと思います。ただ、今まで所有についてあるいはその利用についての税がどうあるべきかというようなことばかりが話題になってきたように思いますが、土地というのは利用価値ばかりじゃございませんで担保価値もございます。そういう意味でその担保価値に関して税法をどのように入れるべきかどうか、またこれは入れてはいけないものかどうか。  私が申しますのは、先ほど先生もおっしゃいましたように、今までの政府の対策としては大蔵省は銀行に対し融資の自粛を求める。しかし、これからそういう自粛ばかりを求めていて、法律で――私の今の案ですけれども、ちょっと考えたことだけなんですが、例えば固定資産税の二倍までしか金融会社は、金融を登録している会社は貸してはいけないとかあるいは評価してはいけない、またそれ以上に評価してもそれまでしか優先弁済権がないようなそういう法律を作成するような場合、またこういったものをつくっておかないと、これから銀行に自粛を申し込んでも外国の金融会社もたくさん出てきます。そういう場合に通達だけでは、これは日本には法治国家というプライドもありますから、どうしても通達行政だけではこれはよその外国銀行にも理解されないというようなことも出てくるのではないか。固定資産税の二倍ぐらい、あるいはまた路線価格ならば一・五倍とか、そういった本当に低い評価しかしないんだ、それ以上はお金を貸しても取れないんだというものをつくってしまえば、今言われるバブル現象とかいうようなものがなくなる、金融がもっともっと有効な方向に使われていくのではないかというように思うのです。  今のようなときでございますと、不動産を持っていないベンチャービジネスはなかなか金融をしていただくのに大変なんです。そういったことも考えて、担保価値についての税法はどのようにあるべきだろうかということをお尋ねしたいと思います。
  126. 岩田規久男

    公述人岩田規久男君) 今おっしゃいました不動産のない、持っていないベンチャービジネスの資金の供給が非常に困難になっているということ、そのとおりだというふうに思います。そういう意味では、土地だけを担保にしてそれさえあれば借りられるという構造は、確かに資金の配分上非常に問題が生じているわけです。  ただしかし、担保の価値のどこまでを担保価値として認めてそれ以上は認めないというようなことは、なかなか難しいわけであります。というのは、やはり少し恣意的になるという面がございますので、私はむしろその土地を担保にするというのは非常に確実に上がっていって一番安全だということでしていると思いますので、むしろ土地の担保価値自体というのは結局地価でありますから、その地価自体を抑制し上昇率も抑制するということによって、土地を担保にするよりもベンチャービジネス等のような収益をよく見て貸すという方向に変わるのではないかというふうに思います。そうしますと、やはり地価を抑制するような土地税制がひとつ非常に今おっしゃった目的のためにも有効ではないかというふうに考えております。
  127. 足立良平

    ○足立良平君 それでは私、岩田公述人にお聞きをいたしたいと思うわけでございますが、農地の宅地並み課税につきまして、岩田公述人は完全に実施した場合の効果等につきましても今日まで詳しく研究をされているというふうにもお聞きをいたしておるわけでございますが、最近この宅地並み課税だけでは土地の供給というものは大してふえないのではないかというふうな考え方も出ているようでございまして、その辺のところを含めましてその考え方についてお聞かせを願いたいと、このように思います。
  128. 岩田規久男

    公述人岩田規久男君) 農地の宅地並み課税の効果に対しましては、去年の十月に、もしも十年ぐらい前にかけていたらば、していたならばという試算をいたしましたが、ただその後、その場合のデータ等に推定作業をしなきゃいけないところが大分ありまして改訂いたしまして、現在改訂中でありますが、その結果というのは、私だけの研究ではございませんでこれは公的な研究といいますか、そういうことでその結果をここで申し上げることはできないのでありますが、それはいずれにしてもそういう過去にしたという場合であります。  今後ということになりますと、まず固定資産税の税率が、地価に対する税率自体が七七年の地価高騰以来それまでの大体三分の一ぐらいまで減ってきております。したがって、それで宅地並み課税をした場合には、確かに十年前のようにもう少し固定資産税の地価に対する税率が高かった時代とは効果は大分違うんだということは言えるかと思います。そういう意味で、恐らくやはり宅地並み課税だけでは土地の供給はふえないといいますか、むしろ有効利用は必ずしも十分に進まないということは確かに言えるというふうに思います。
  129. 足立良平

    ○足立良平君 それでは、庄司公述人に簡単にお聞きをいたしたいと思うわけでございますが、高齢化社会の問題で特に出生率の低下の問題が提起をされておりまして、これも先ほど若干意見も出ていたわけでございますが、そういう社会的な背景というものを整えなきゃならないということも当然でございますけれども、今具体的に国会等におきましてもまた議論がされようといたしておりまするのに児童手当の問題があるわけでございますが、この問題につきまして公述人として一体どのようにお考えになっているか、考え方をお聞かせ願いたいと思います。
  130. 庄司博一

    公述人(庄司博一君) 一時日経連は、児童手当をつけたけれども子供はふえないじゃないか、やめてしまえというようなことを言った時期がございましたけれども、最近、ことしの一月に日経連から出されたものを見ましても、やはり出生率低下のことを非常に心配されてこの対策を考えていかなきゃいけない、事業内保育所の問題も含めて考えなきゃいけないというふうに言われてきています。  我が国の児童手当というのは非常に内容が不完全ですし、それから諸外国の場合は、先ほど高福祉高負担のこともありましたけれども、それから国民の負担率の話も出ましたけれども、児童手当で返ってくる分が結局可処分所得をふやしていくといいますか、そういうことにもなって非常に大きな役割を果たしている。我が国の今の児童手当ではまだまだ中身が非常にお粗末じゃないか、もう少し充実していく必要がある、そのように考えております。
  131. 足立良平

    ○足立良平君 ありがとうございました。
  132. 星野朋市

    星野朋市君 最後でございますので、岩田先生にあえて二つお聞きしたいと思います。  実は、土地問題というのは何が視点で何が重要問題なのかということが今いろいろ意見が分かれているわけですね。それで、例えば持たざる者と持っている者との不公平感なのか、それからいわゆる首都圏に住居を持てない者のための施策なのか、政策はそういう問題をとらえてこれに対応しなくちゃいけないと思っているわけですが、先生があえてこれを最大公約数と考えられる問題点は何か、一つです。  私はけさも公述人意見を申し上げたんですけれども、いわゆる法人の土地保有税、それからこれは戦後一回あったんですが、残念ながら再評価税をかけられたためにその金をほとんどの法人がいわゆる償却資産に向けてしまったんですね。土地はそのまま再評価されないで済まされました。この再評価税をかけてこれを資本組み入れすべきだという考えを持っております。ということは、過大な土地を有するところは過大な自己資本に耐え切れなくなるという問題がございます。  それからもう一つ日本は多分これはもう実例もあることでございますけれども、外国からいわゆるダンピング性を持った国であると、膨大な土 地の含みをちょっと吐き出しただけで利益の補てんができる体質である、そういう潜在的な見方をされておりますけれども、再評価税をかけることによってここら辺がかなり外国からの懸念を払拭できると思っておりますが、その二点について御意見を伺いたいと思います。
  133. 岩田規久男

    公述人岩田規久男君) 不公平の問題か持たざる者のための政策かということですが、私が申し上げた税制で土地の有効利用を進めますと、持てない者が持てるようになるということと同時に、キャピタルゲインなどに税金がかかってまいりますので資産格差というものもなくなるという意味で、両方が一挙に解決できるというふうに私は考えております。  法人の再評価税に関しては、いわば私が申し上げた含み益税を一回限りかけるんでしょうかこれはということなのかもしれませんが、それでは、一回限りでは税率にもよりますが不十分でありますし、どんどんまた含み益が出てくるわけですので、やはり含み益税というものを導入する必要があるのじゃないかというふうに思いますので、再評価税というのは、私が申し上げた含み益税を法人にのみ適用したということではないかというふうに思います。
  134. 星野朋市

    星野朋市君 終わります。
  135. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) ありがとうございました。  以上で土地・都市問題及び高齢者問題に関する意見聴取は終了いたしました。  一言御礼を申し上げます。  岩田公述人、庄司公述人には、それぞれのお立場から貴重な御意見をお聞かせいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして衷心から厚く御礼申し上げます。(拍手)  明日は午前十時十五分に委員会を開会することとし、これにて予算委員会公聴会を終了いたします。    午後五時三分散会