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1990-03-29 第118回国会 参議院 文教委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年三月二十九日(木曜日)    午前十時開会     —————————————  委員氏名    委員長          柳川 覺治君    理 事          木宮 和彦君    理 事          田沢 智治君    理 事          粕谷 照美君    理 事          山本 正和君                 井上  裕君                 石井 道子君                 大浜 方栄君                 狩野 明男君                 世耕 政隆君                 森山 眞弓君                 会田 長栄君                 小林  正君                 西岡瑠璃子君                 森  暢子君                 高木健太郎君                 針生 雄吉君                 高崎 裕子君                 笹野 貞子君                 小西 博行君     —————————————    委員異動  三月六日     辞任         補欠選任      大浜 方栄君     石井 一二君      木宮 和彦君     永野 茂門君  三月七日     辞任         補欠選任      永野 茂門君     木宮 和彦君  三月二十八日     辞任         補欠選任      井上  裕君     野沢 太三君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         柳川 覺治君     理 事                 石井 道子君                 田沢 智治君                 粕谷 照美君                 山本 正和君     委 員                 石井 一二君                 狩野 明男君                 木宮 和彦君                 世耕 政隆君                 野沢 太三君                 森山 眞弓君                 会田 長栄君                 小林  正君                 西岡瑠璃子君                 森  暢子君                 高木健太郎君                 針生 雄吉君                 高崎 裕子君                 笹野 貞子君                 小西 博行君    国務大臣        文 部 大 臣  保利 耕輔君    政府委員        文部政務次官   北川 正恭君        文部大臣官房長  國分 正明君        文部省教育助成        局長       倉地 克次君        文化庁次長    遠山 敦子君    事務局側        常任委員会専門        員        菊池  守君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○国政調査に関する件 ○国立劇場法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○教育文化及び学術に関する調査  (派遣委員報告)     —————————————
  2. 柳川覺治

    委員長柳川覺治君) ただいまから文教委員会 を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  本委員会は、塩出啓典君の退職に伴い委員が一名欠員となっておりましたが、去る二月二十三日、針生雄吉君が委員選任されました。  また、去る六日、大浜方栄君が委員辞任され、その補欠として石井一二君が選任されました。  また、昨二十八日、井上裕君が委員辞任され、その補欠として野沢太三君が選任されました。     —————————————
  3. 柳川覺治

    委員長柳川覺治君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在、理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 柳川覺治

    委員長柳川覺治君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事石井道子君を指名いたします。     —————————————
  5. 柳川覺治

    委員長柳川覺治君) 次に、国政調査に関する件についてお諮りいたします。  本委員会は、今期国会におきましても、教育文化及び学術に関する調査を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 柳川覺治

    委員長柳川覺治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  7. 柳川覺治

    委員長柳川覺治君) この際、保利文部大臣及び北川文部政務次官から発言を求められておりますので、順次これを許します。保利文部大臣
  8. 保利耕輔

    国務大臣保利耕輔君) このたび、文部大臣を拝命いたしました保利耕輔でございます。  私は、教育学術文化スポーツ担当大臣といたしまして、みずからに課せられた役割と責務を十分認識し、種々の課題解決のために全力を傾注してまいる決意でございます。委員長並びに各委員先生方の御指導、御鞭撻をお願い申し上げ、甚だ簡単でございますが、就任のごあいさつとさせていただきます。  ありがとうございました。
  9. 柳川覺治

  10. 北川正恭

    政府委員北川正恭君) このたび、政務次官を拝命いたしました北川正恭でございます。  微力ではありますが、大臣を補佐し、全力を尽くして、我が国教育学術文化スポーツ充実発展課題解決のために努力してまいる所存であります。委員長並びに各委員皆様方の御指導、御鞭撻をお願い申し上げます。     —————————————
  11. 柳川覺治

    委員長柳川覺治君) 次に、国立劇場法の一部を改正する法律案議題といたします。  政府から趣旨説明を聴取いたします。保利文部大臣
  12. 保利耕輔

    国務大臣保利耕輔君) このたび、政府から提出いたしました国立劇場法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  これからの我が国は、経済的な豊かさだけではなく、文化的な豊かさを実感できる心豊かな社会へと転換していくことが肝要であります。このため、すべての国民芸術文化に親しみ、みずからの手で新しい文化創造していける環境の醸成とその基盤の強化を図る必要があります。  今回の改正は、このような観点から、芸術文化振興基金を設け、芸術その他の文化振興または普及を図るための活動に対し幅広く援助を行うためのものであり、その内容概要は次のとおりであります。  第一に、法律の題名を「日本芸術文化振興会法」に改めるとともに、特殊法人国立劇場名称を「日本芸術文化振興会」に改めることといたしております。  第二に、振興会目的に、芸術家及び芸術に関する団体が行う芸術創造または普及を図るための活動その他の文化振興または普及を図るための活動に対する援助を行うことを追加することといたしております。  第三に、振興会でない者は日本芸術文化振興会という名称を用いてはならないことといたしております。  第四に、振興会業務に、(一)芸術家及び芸術に関する団体が行う芸術創造または普及を図るための公演展示等活動、(二)文化施設において行う公演展示等活動または文化財保存し、もしくは活用する活動地域文化振興目的とするもの、(三)その他、文化に関する団体が行う公演及び展示文化財である工芸芸術伝承者養成文化財保存のための伝統的な技術または技能の伝承者養成その他の文化振興または普及を図るための活動に対し、資金の支給その他必要な援助を行うこと等を追加することといたしております。  第五に、振興会は、援助業務に必要な経費の財源をその運用によって得るために芸術文化振興基金を設け、政府からの出資金政府以外の者からの出捐金をもってこれに充てるものといたしております。  第六に、関係法律改正等、所要の規定の整備を行うことといたしております。  以上がこの法律案を提出いたしました理由及びその内容概要であります。  何とぞ、十分御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。  ありがとうございました。
  13. 柳川覺治

    委員長柳川覺治君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  14. 会田長栄

    会田長栄君 会田でございます。  国立劇場法の一部改正関連をして、以下質問をいたします。与えられた時間が非常に短いので率直にお伺いしたい、こう思います。  まず、文部大臣にお伺いいたします。  我が国芸術文化振興政策については、中央教育審議会あるいは文部省各種検討委員会などから繰り返しもろもろ答申が出されていると思います。そのような意味から、まず一つは、文化行政をどのように認識し、どのように位置づけをして進めようとしているのか、御所見を伺いたいと思います。
  15. 保利耕輔

    国務大臣保利耕輔君) ただいま先生から御指摘をいただきました、文化行政をどのように認識してこれに当たっていくかという御質問でございます。  今日、日本国民文化に対する関心が非常に高まってきておりますし、国際的にも我が国文化面で貢献をしていかなければならないということが求められておるわけでございます。これからの我が国は、経済的に豊かというだけではなくて、文化的にも豊かさを実感できるような心豊かな社会へ移行していかなければならない、このように考えておるところでございます。  これらのことから、我が国伝統文化、これは貴重なものがたくさんございますけれども、そういったものを継承しながら、また一方で、新しい形の芸術文化創造でありますとか発展を図っていくことが必要であろうかと思います。芸術文化の水準を高めますとともに、国民文化を身近に感じてさらに親しみ、みずから文化創造に参加できるようなことにするなど、広く文化振興を図っていくということが必要だと私は認識をいたしております。  文化行政はこのためにいろいろな基盤整備を図っていくことが必要だと考えておりますし、これまでも諸施策をいろいろと講じてまいったわけでございますが、このたび芸術文化振興基金の創設をお願い申し上げております。これによってさらに文化国家としてふさわしい心豊かな社会をつくっていかなければなりませんが、もとより文化振興は先ほども申しましたとおり極めて重要な事項と考え、私も一生懸命に努力をして文化振興のために働いてまいりたい、このような覚悟をしておりますことを申し上げさせていただきます。
  16. 会田長栄

    会田長栄君 今、御所見を伺いましたが、国民文化的要請がまことに強い、国際的にも国内的にも、経済大国と言われている我が国にとりまして今日ほど芸術文化振興策が叫ばれるときはないという力強い御所見を聞きました。これは長い間、もろもろ審議会の中でも答申が出されているとおりでありますけれども、しかし、言われているとおりの実行策政府予算案の中でどうしても常に弱い、そういう感じは免れません。  もう一つお伺いしますが、平成元年の五月十六日に取りまとめられて提出されている「国際文化交流に関する懇談会報告」で、国際社会に生きる日本として何が不可欠であるとこの報告書指摘していますか、担当官にお伺いしたいと思います。
  17. 遠山敦子

    政府委員遠山敦子君) 御指摘懇談会報告書につきまして、今、手元にございませんけれども、当時携わっておりました者としての記憶によりますと、これは国際文化交流という角度でのいろいろな施策重要性について書かれておりまして、その基盤としての日本文化のさまざまな条件整備必要性について書いてあると思います。それは芸術文化振興に関する事柄もあり、また文化財保護充実についても御指摘があったところでございます。  具体的には、第二国立劇場の問題なり、あるいは芸術文化等振興に資するための財政基盤充実なり、文化財についても具体的な交流必要性中身について書かれていたと存じます。
  18. 会田長栄

    会田長栄君 私から言わせれば、国際社会に生きる日本として何が不可欠であるかの結論というのは、この芸術文化活動振興予算拡充が絶対必要であるということを読み取りますが、これに関連をしてお尋ねいたします。  文化庁発足する以前、国の一般会計予算の中に占める文化予算はどのぐらいでございましたでしょうか。
  19. 遠山敦子

    政府委員遠山敦子君) 文化庁発足いたしまして後のことではなくてそれ以前のということでございますので、具体的な数値を現在持ち合わせておりませんので、また追って御報告申し上げたいと思います。
  20. 会田長栄

    会田長栄君 私は、長い間芸術文化振興策というのが叫ばれて今日まで来ているが、たまたま文化庁発足するときには行政改革というものに名をかりて実は発足している、こういうように認識しているんです。したがいまして、本当に芸術文化振興策について基本的に日本政策を改めるというところから出発したのではないというような受け取り方をしているものですから、今、国立劇場法を一部改正するときにこの議論が非常に大事だと思いましてお聞きしているわけでございまして、二十年前、文化庁発足する以前の文部省一般会計予算の中に占める文化予算比率というものについても私はもう一度振り返っておく必要があるということでお尋ねするわけであります。概括で結構でありますから答えてもらいたい。
  21. 遠山敦子

    政府委員遠山敦子君) 今、記録にございますのは、発足時の文化庁予算が全体の文部省所管一般会計に占める割合等についての数値がございます。それは恐らくそれ以前の数値を引き継いだものであろうかと思うわけでございますけれども、文化庁予算文部省一般会計に占める割合といたしましては〇・七五%でございます。
  22. 会田長栄

    会田長栄君 それでは、それに関連をいたしまして具体的な比率をお聞きしたいわけでありますが、平成元年度の文化庁予算政府一般会計予算の中に占める比率はどうだったでしょうか。
  23. 遠山敦子

    政府委員遠山敦子君) 平成元年度の文化庁予算は四百九億四千五百万円でございまして、これが我が国一般会計予算額に占めます比率は〇・〇七%でございます。  先ほど申し上げましたのは文部省一般会計に占める文化庁予算比率でございまして、今の御質問関連いたしまして四十三年のものを申し上げますと、〇・〇九%でございます。
  24. 会田長栄

    会田長栄君 依然としてその予算的裏づけというのは、傾向としては変わらない状況にあるんです。したがって、経済的な豊かさを脱皮して心の豊かさをということが、今、教育界でも大きく取り上げられているところでございますが、しかし、言われている言葉と中身というものを見ると、政府の対応としては依然として似た傾向にあることを指摘せざるを得ません。  したがいましてここで、単純な比較はできないと思います、行政制度文化芸術振興策とのかかわりがあって単純な比較はできないと思いますが、欧米文化予算というものが一般予算の中で一体どのような比率になっているのかということを、これは文化庁も正確にお調べになっていることでございましょうから簡潔にお答えいただきたい。
  25. 遠山敦子

    政府委員遠山敦子君) 諸外国の文化関係予算は、御指摘のように、それぞれの社会的な背景なりあるいは芸術文化に対する施策の歴史なり、あるいは国内の制度によりましてさまざまであるわけでございますけれども、私どもが調べました範囲内におきまして欧米五カ国の文化予算を見てみますと、それがその国の一般的な政府予算額に占める割合は、イギリスにつきましては〇・三七%、フランスにつきましては〇・八一%、イタリアは〇・七七%、アメリカ、西ドイツは連邦制をとっておりまして、これは連邦政府予算の中に占める文化関係予算は極めて低いものでございます。  以上のような状況でございます。
  26. 会田長栄

    会田長栄君 欧米芸術文化振興予算に関しては、これは政府地方日本でいえば地方自治体との関係がありまして、政府一般会計予算の中に占める比率というのは我が国と似通ったような数字になっておりますが、民間団体その他を含めますと非常に高い数字になっていることは皆さん調査の上で御承知のはずでございます。そういうことを含めますと、我が国芸術文化振興策にかかわっての予算措置というのは大変低いことは間違いございません。  なぜ日本はこのような現状になっているのか、その一番の要因は何だと思うか、この点についてお聞きいたします。
  27. 遠山敦子

    政府委員遠山敦子君) なかなかお答えしにくい御質問でございますけれども、文化庁といたしましても、発足後二十年を一昨年迎えまして、いろいろな施策の展開につきましては努力がなされてまいったと思います。  文化政策の中には、大きな文化施設をつくっていく仕事でありますとか、あるいは文化財保護でありますとか、芸術文化の支援のための各種施策とかあるわけでございますけれども、それらが大きく花開こうとする段階でありましたころにちょうど厳しい国の財政状況というものがありまして、そのような制約もあって伸びなかった面もあろうかと思いますけれども、その中でそれなりに、シーリング等の厳しい制約の中でもさまざまに努力をして、減であるよりは少しずつ伸びてまいってきたというふうに考えております。
  28. 会田長栄

    会田長栄君 私は率直にこの委員会で見解を聞きたいわけでございますが、文化庁平成年度概算要求を出しました。しかし、ここ三年の状況を見ると、芸術文化振興策にとっては実は今日が最もよい財政的チャンスではなかったのかと私は思っているんです。それは御承知のとおりかつてないほどの税収の伸びがある、これはもう補正予算審議しても明らかでございます。とりわけ今、日米構造協議の中でも公共投資の問題が相当やかましく議題になっている。  したがいまして、平成年度概算要求が最もいいチャンスではなかったのかと思うにもかかわらず低い概算要求に抑え、その低い概算要求ですら実は値切られているのが現実ではないですか。概算要求どおり認められたとすれば、それは文化庁の姿勢にかかわってくることでございますからそれはそれでいいです。しかし、概算要求で示した文化庁の主張というものが、その後の査定、そして平成年度予算編成に当たって一体現実的にどのように認められているのかということにつきましては、これと大きくかかわってまいりますから、この点は率直にお聞きしておきたい。
  29. 遠山敦子

    政府委員遠山敦子君) 平成年度予算につきましての要求額は四百四十五億余でございまして、対前年度伸び率は八・七%でございました。平成年度予算として御審議をお願いすることになっております額は四百三十二億余でございまして、対前年度伸び率五・六%でございます。  この数値は、国の一般会計伸び率なりあるいは文部省予算伸び率なりに比較いたしますと、この五・六%という数値はその中では配慮がなされている率だというふうに考えております。
  30. 会田長栄

    会田長栄君 ここで文部大臣決意のほどをお聞きいたします。  文部大臣も御承知のとおり、行政改革という政策が執行されて以来、教育予算も大幅に抑制されてきました。もちろん、教育予算が抑制されてきたわけでありますから当然にして文化庁予算も抑制されてきました。しかし、ここ三年、先ほど申し上げたとおり日本財政状況というのはかつてないほど好転している。その意味で私は、今まで欧米に比べて非常に弱かった芸術文化振興策について具体的、積極的に取り組む最大チャンスというのは平成元年度、二年度ではなかったのかと思っているわけでございます。  しかし、かねてから文部省は、欧米との比較の中で大きく立ちおくれている我が国芸術文化振興策について大いに拡充発展を図らなければならないと今日まで主張してまいりましたにもかかわらず、どうしてもこの問題について具体的、積極的な方策が講じられないまま今日まで来たという状況であります。日本の農水問題ではかつてない実力者を今度は文部省に迎えたというこの機会に、かねてから文部省が主張してきた芸術文化振興策の立ちおくれというものを一気に挽回する、そのチャンスだと私は思いますので、この点、平成年度以降の芸術文化振興策についての決意のほどを伺っておきたいと思います。
  31. 保利耕輔

    国務大臣保利耕輔君) ただいま先生からお話がございましたが、私も実は文教と違う分野で働いてまいりまして、文教につきましてはこれから先生方の御指導をいただきながら勉強をしていかなければならないというふうに考えております。  しかし、私の個人的な経験を申し上げて大変恐縮でございますが、フランスに五年、駐在して仕事をしてきたという経験を持っております。その中で、フランス芸術に対する、あるいは文化に対する予算が国全体の〇・八%であるという文化庁次長からの御答弁がございましたが、私も、ヨーロッパの各国がかなり文化財保存あるいは芸術文化振興のために一生懸命に努力しているということを、薄々とではございますが肌で感じてまいりました。  そういった経験を生かしながら、今後の教育文化あるいは芸術文化振興のためのいろいろな予算について、これは国でございますからそのときそのときの財政事情もございましょうし、政治にはなかなか現実に厳しい面もございますので一挙にというわけにはいきませんけれども、粘り強い努力をもって説得をし、そして、この芸術文化の点については野党の先生方、与党の先生方を問わず振興について御尽力をいただいているというそういう気持ちをしっかり胸に入れて、今後の予算獲得あるいは予算拡充に向けての努力を私なりにしてまいりたい、こういう決意をしておりますことを申し上げたいと存じます。
  32. 会田長栄

    会田長栄君 芸術文化振興策については、それは与野党問わず、一日も早く拡充発展させなければならないという基盤は私は一致していると思うので、それをやはり具体的にどのようにチェックをしていくかというところにかかっていると思うわけであります。  これは文化庁皆さん文部大臣も御承知だと思いますが、過日、茨城県の水戸市で芸術館というのが開館されました。これは学術芸術文化に関する総合的な活動をしていくための拠点づくりということで水戸市が取り組んだと聞いておりますが、この芸術館運営費水戸市は一般予算の一%を充てるという決断をしたわけでございます。今、地方の自治体が思い切ってそういうことに踏み出してきている現状にありますが、このことについての御所見があったら、ここでついででございますが聞いておきます。
  33. 保利耕輔

    国務大臣保利耕輔君) 芸術文化振興につきましては、中央地方とも関心を持ち、また地方皆様方におかれましても大変御尽力をいただいておるということに対して敬意を表したいと存じます。たまたまある地域の点について先生からお触れをいただきましたが、大変な御決断であり御努力であるというふうに私は敬意を払いたいと存じます。  今後、地方中央相協力をする中で、日本芸術文化振興あるいは文化遺産保護、そういった問題について取り組んでまいりますように私も留意をしてまいりたいと思っております。
  34. 会田長栄

    会田長栄君 私は、日本芸術文化振興策努力しているにもかかわらず遅々として欧米におくれをとっている最大の原因は、大蔵省がこの政策に前向き積極的に転換しないというところにあると思っております。何としても大蔵省を動かして、長年の課題でありますこの芸術文化振興策が具体的に進められるように、改めてお願いしておきます。  そこで、もう一点振り返って、文化庁発足して二十年になりますが、発足当時、初代の文化庁長官は発足に当たっての決意のほどを披瀝し、同時に当面の具体的重点施策を掲げておりますが、この二十年間の経緯、努力の成果、そして課題などについてお聞かせ願いたいと思います。
  35. 保利耕輔

    国務大臣保利耕輔君) 先生指摘のとおり、文化庁発足後二十年たつわけでございます。昭和四十三年の六月に文化庁発足をしておるというふうに、私、認識いたしておりますが、当時、二十年前のことでございますが、芸術文化振興普及、それから地方芸術文化振興、あるいは国際文化交流振興、活発化、あるいは史跡、重要文化財保護などが課題であったというふうに私も聞いておるところでございまして、その後こういった線に沿っていろいろな施策が講じられてまいりました。ちなみに、文化庁発足後五年がたちました段階で、文化庁で取りまとめました当面の重点事項というようなものが九項目ほど整理をされております。  これは昭和四十八年、一九七三年にパンフレットになって文化庁から出ているわけでありますが、同じようなことを申し上げておりますほかに、著作権あるいは国語政策等、あるいは国宝、重要文化財保護とか、あるいは明治関係文化財保護、あるいは国立文化施設整備、こういったものを加えまして九項目の重点事項の整理がなされております。さらに下りまして昭和六十三年の六月に文化白書が出されまして、この中でかなり整理をされた今の問題点が紹介されております。  こうしたいろいろな問題点は今日もなお課題として非常に重要なものだと考えておりますが、同時に、最近は国際交流の面でも文化というものが意識をされてき始めまして、日本文化財が海外にかなりございますが、そういった文化財調査あるいは保全等についてのいろいろな協力体制も今後の重要課題一つというふうに認識いたしておるわけでございます。  総じまして、こうした経緯があり、二十年間ずっと文化の維持発展あるいは振興ということについてずっと述べられてきておるところでございますが、こうした先人の御努力を体しながら私も今後の文化行政を進めてまいりたい。そして、先ほど先生から御指摘がございましたが、財政当局も財政運営については大変厳しい考え方を持っておるときではございますが、財政当局にいかに日本文化振興ということが重要なのかということを、私は私の立場からしっかりお願いをしてまいりたい、このように考えておるところであります。
  36. 会田長栄

    会田長栄君 芸術文化振興普及という問題で、実は芸術関係団体活動に対する助成を強化するというのが発足当時の重点施策の重要な一項目でございました。それではこの芸術関係団体活動に対する助成がこの二十年間でどのように推移しているかというと、これまたそんなに褒められたものではございません。こういうところからいって、私はやはりどうしても文化庁が、財政的にも政策的にももう少し強固に一歩踏み出さなければいけない、こう痛感しているものでございますから、どうぞその点は今後ともよろしくお願いしておきたい、こう思います。  とりわけ、中央地方における芸術文化の格差問題というものを解消し特色を生かして発展させていくということをその当時最大課題にしていたわけでありますから、それもどうぞ御努力をお願いしたい、こう思っているところでございます。  次に、国立劇場法改正にかかわって端的に御質問申し上げます。  この法案の成立によって特殊法人国立劇場は、第二国立劇場芸術文化基金等、事業分野が拡大いたしますが、理事会、評議員会のあり方はどうなるのかということをお尋ねいたします。
  37. 遠山敦子

    政府委員遠山敦子君) 現在の特殊法人国立劇場には、会長一名、理事長一名、理事五名、監事二名の役員が置かれております。また、会長の諮問に応じて国立劇場業務の運営に関する重要事項を審議するために、二十名以内の評議員で組織する評議員会が置かれていることは御承知のとおりでございます。今回の改正によって日本芸術文化振興会というふうに改められましても、これを踏襲することといたしております。  それで役員につきましては、これは政府の統一方針といたしまして、行政改革の趣旨にのっとり特殊法人の役員の増員を厳に抑制しているところから、今回の法改正におきましても定数の増を行わないで既存の役員の定数の範囲内で、新たに加わる基金の業務についても職務分担の変更を行って対応するということでございます。新たな基金の仕事は大変重要ではございますけれども、既存の理事の職務の分担を変更することによって対応するということで支障は生じないものと考えております。  また、評議員につきましては、特殊法人の業務運営について高い見地から意見をいただくものでございますので、従来から芸能、伝統芸能関係者に限らないで広く人格、識見の高い有識者の中から任命してきたところでありますので、今回も特に定数の増は行わなかったものでございます。  ただ、実際の配分についての決定に当たりましては、専門家等より成る審査機関を設けて幅広い御意見を吸収しながら適正な運営を図っていくというふうに考えております。
  38. 会田長栄

    会田長栄君 事業が拡大するということでありますから、本来的には理事会、評議員会のあり方についてもこれは拡大をし充実していくというのが趣旨でありますが、運営費その他またここでも金の問題が出てきて、このままいこうとする考え方であるということがわかりました。しかし私は、決してそれは芸術文化振興策にとり好ましいことではない、こう思っているところでございますから、今後ともその点については検討してほしいという意見を出しておきます。  次に、芸術文化振興基金の運営への芸術家あるいは文化人等の関与の問題について二、三点お聞きしておきます。  基金からの援助の方針や援助対象、援助額の決定は、芸術的価値の高さ、社会重要性などを公正、公平に評価して行われるべきものであると思いますが、それを保障する機構、仕組みをどうするのかということは非常に大事な問題だ、こう思います。その点で三点お伺いいたします。  援助対象の選定、援助額の決定を公平、公正に行うには、援助の対象となる芸術についてその芸術的価値を正しく評価しなければならない。この意味で、援助対象の選定に係る専門委員会というものを構成することになるわけでございましょうが、これには芸術家、舞台芸術家等を多数参加させるべきだと私は思います。この点についてまず第一点、お聞きしたい。  それから第二点は、当然これは専門委員会のようなものを設置して運営されるものと思いますが、この専門委員会に参加する芸術家、舞台芸術家は特定の傾向を代表するものであってはならないと私は思っております。援助を公正、公平に行うためには、イギリスのように一千人もの芸術家の参加とまではいかなくても、相当多数の芸術家の参加を前提とすべきと考えますが、どのような規模の専門委員会を考えているのか、それをお聞かせ願いたい。  三つ目は、援助対象の選定でありますとか援助額の決定の前提となる援助方針を協議するのはどこでありましょうか。恐らく運営委員会だと思いますが、基金の存続理由にもかかわってくる重要な点でございますから、この点につきまして、この運営委員会にも芸術家や舞台芸術家、さらには広範な国民の意見を反映するための代表なども参加させるように考えておられるのかどうか、お聞きいたします。
  39. 遠山敦子

    政府委員遠山敦子君) 三点のお尋ねがございました。  まず第一は、配分といいますか援助の対象となるものの選定に当たりまして専門委員会を置くのではないか、その専門委員会には芸術関係の専門家を大いに参加させるべしということでございますが、これは御指摘のとおり、基金の事業運営に関しましては芸術家はもとより各方面の御意見を反映させる必要があると考えておりまして、専門委員会を設け、そして芸術文化関係者、民間人、学識経験者等から成る組織構成によってこれを運営していくつもりでございます。  その規模いかんということでございますが、援助対象はかなり広範な中身を有しております。したがいまして、分野ごとに専門委員会を置いて、そこに芸術文化関係者等から成る専門委員を置いて審査をいただくということになろうかと思います。その規模そのものはまだ現段階では確定はいたしておりませんけれども、今回の基金の業務内容が適正に行われるにふさわしい形で組織されるものと考えておりまして、それに参加される人々の数は三けたに達するというふうに考えているところでございます。  また、事業の運営につきましての基本方針を決める仕組みといたしましては運営委員会のようなものを置くということになろうかと存じますけれども、その場合におきましても、事業の円滑かつ適正な運営に資するために、芸術文化関係者、民間人、学識経験者等、広く御意見を反映させる仕組みになろうかと考えております。
  40. 会田長栄

    会田長栄君 続いて、この法案には建設省設置法の一部改正も提起されております。この点について、結論から申し上げますと改正の必要はなかったのではないかと私は思うわけでありますが、なぜ改正するのか具体的な見解をお聞きしたい。
  41. 遠山敦子

    政府委員遠山敦子君) 特殊法人国立劇場の施設につきましては、これまで国が建設工事を行いましてその施設を国立劇場に現物出資してまいったところでございます。今回、芸術文化振興基金を設けまして芸術その他の文化振興または普及を図るための活動に対する援助を行うことになったわけでございますけれども、この新しい業務を行うに当たりまして必要になる事務所等につきましては、新しくなる日本芸術文化振興会が自己財源で建設することも考えられるわけでございます。  この場合、その建設工事につきましては公共性を確保する必要があるわけでございまして、そのような角度から建設省に委託して行うことが適当であると考えておりまして、このため今回、建設省設置法を改正いたしまして、仕組みとして、そういう必要が出てきた場合にその制度を持ち得ることができるようにこの規定の改正を行うということでございます。
  42. 会田長栄

    会田長栄君 それではそれと関連をして、振興基金の運用益というのは専らソフト面に使われると思いますが、施設、建物の建設にも使う予定はおありなんですか。
  43. 遠山敦子

    政府委員遠山敦子君) 運用益の利用の内容につきましては、これから法案成立後、振興会においてこの法律の趣旨に沿って具体化されるところであると考えております。当面は、施設費等の建設費についてそれを使うということは具体化はまだいたしておりませんが、仕組みとしてそういうこともあり得るということで先ほどの改正につながったわけでございます。
  44. 会田長栄

    会田長栄君 そうすると、この芸術文化振興基金の運用益というのはソフト面にだけ使う、そういうことなんですね。
  45. 遠山敦子

    政府委員遠山敦子君) 劇場法の改正の中に明瞭に書いてございますように、主としてソフト、ほとんどの部分が芸術文化振興のためのソフトの経費ということに使われることになろうかと存じます。  ただ、この運営に当たりましては、基金の事務的な経費なりそれの最小限要する物件的な経費なり、それらのものも運用益の中から、ごく一部でございますけれども、当然その運営を図るために支出する必要があるわけでございまして、ただ事業の内容としてはソフト面重視ということでいくことになろうかと思います。
  46. 会田長栄

    会田長栄君 ちょっと私、頭が悪いからわかりにくいのかもしれませんが、施設建設にはこの芸術文化振興基金の運用益は使わないというのか、使うという意味でおっしゃったのか、どちらなんですか。
  47. 遠山敦子

    政府委員遠山敦子君) 先ほどもお答えいたしましたように、この運用益は、法案の十九条第一項第一号の援助業務、それからその附帯業務に充てられることとしておりまして、基本的には芸術家あるいは芸術団体等に対する助成金に充てられるものでございます。  それで、基金の援助業務遂行に当たりまして必要となる人件費、事務経費等は、業務遂行に必要な財源を運用益によることとしている他の特殊法人と同じように基金の運用益で措置することといたしておりまして、もしその必要が出てまいりました場合には、基金の事務所を建設する場合運用益の一部を充てることもあり得るということでございます。ただ、その場合におきましても、助成金の交付に影響が出るような額を建設費に充てるということは考えておりません。
  48. 会田長栄

    会田長栄君 最後でございますが、文部大臣、初対面でございますからどうしても御所見を伺っておきたいことが一点ありますのでよろしくお願いいたします。  過日の補正予算審議する参議院予算委員会におきまして、連合参議院の委員の方から海外協力隊に関しての御質問がございました。その際、文部省の初中局長から答弁がございましたが、その答弁などにつきまして文部大臣の御所見を伺って、私の質問を終わります。よろしくお願いします。
  49. 保利耕輔

    国務大臣保利耕輔君) 青年海外協力隊の皆様方が常日ごろ日本の国際活動に貢献をしておられるということについては私は心から敬意を表しておりますし、今後もこうした形の活動が正しい形で進められていくということについては、私もそうあってほしいと望んでいるところでございます。  なお、過日の参議院の予算委員会におきましてこの問題が提起をされたところでございますが、もし初等中等教育局長の言葉が足らず、あるいは不適切な点があり青年海外協力隊の皆様方に御不快の念をお与えしたということであるならば、その政府の答弁は大変まずいことであったなというふうに申し上げた次第であります。今後とも十分この問題については留意をし注意をしてまいりたい、こう思っております。
  50. 会田長栄

    会田長栄君 終わります。
  51. 森暢子

    ○森暢子君 まず最初に、今回の振興基金の対象である芸術文化ということについてお聞きしたいわけですが、文化というのは広辞苑によりますと、人間が学習により社会から習得した生活の仕方、つまり衣食住にすごく関係があるということです。技術とか学問とか芸術とか道徳とか宗教とか、生活形成の中でいろいろに関係のあるものが文化ということになっております。  そうしますと、その文化を高め豊かにするのが芸術活動であるというふうにとらえたときに、このように「芸術文化」と芸術が先に来ているこの名称について、どういうようなお気持ちがあったのかということがまず一点です。私は、文化というのがまずすごく広い範囲の人間の生きていく生活のすべてにあって、それを豊かに高めていくのが芸術活動であるというふうにとらえているわけなんですが、それに対して「芸術文化」と名前をつけられたことの意味合い、それをまずお聞きしたいと思います。  続いて、それではその文化が大変範囲が広いとなると、我が国全体を考えるとこれは大変な量になると思うわけですが、その保護すべき文化の範囲をどうとらえていらっしゃるのか、それについて国としてどういう決意でいらっしゃるかということをまずお伺いしたいと思います。
  52. 遠山敦子

    政府委員遠山敦子君) 国立劇場法改正の際に、「目的」の中にるる、基金の援助内容、あるいはそれらも含めて広く、「もつて芸術その他の文化の向上に寄与することを目的とする。」というふうに第一条が改正されております。もともと「文化の向上に寄与することを目的とする。」ということは現行法にもあるわけでございますが、「芸術その他の文化の向上に寄与する」ということに改めましたことも起因いたしまして、今回の日本芸術文化振興会というふうな名称も生まれたわけでございます。  文化とは何か、芸術とは何かということは恐らく委員の方が深い御見識がおありになろうかと存じます。文化につきましてはいろいろな考え方が人さまざまにあるわけでございますけれども、文化庁でも文化白書の中にそのようなことも記述されているわけでございます。  今回の改正に伴っての文化は何を考えているかということでございますけれども、「目的」で述べているところの「芸術その他の文化」という範囲は広いものがあるわけでございますが、法体系といたしまして、やはり文部省設置法の中に文化の定義もございますので、そのようなことを考え合わせますと、ここで考えております文化といたしましては、これは現在の文部省設置法第二条の「定義」であるわけでございますが、   「文化」とは、芸術及び国民娯楽、文化財保護法に規定する文化財、出版及び著作権その他の著作権法に規定する権利並びにこれらに関する国民文化的生活向上のための活動をいう。 ということで、別途、特別法で書いてございます著作権法に係る権利は直接含まれないものと考えますけれども、芸術一つの代表として見る広い文化活動の中で、今申し上げたような定義に係るような事項についてこれの振興を図っていくというのが今回の改正内容でございます。
  53. 保利耕輔

    国務大臣保利耕輔君) ただいま詳細については文化庁次長からお答えを申し上げたとおりでありますが、文化という漢字二文字であらわされた概念というものを正確につかまえるということはなかなか難しゅうございますし、またいろいろな説もあろうかと思います。人間がこの地球の上に誕生いたしましてから長い期間がたつわけでございますが、その人間のあらゆる活動の中で築き上げてきたもの、これを広く文化ととらえるということになりますと、人間活動そのものがもう文化というふうにとらえられるわけであります。  今般の芸術文化振興基金の中で申しております狭い意味文化ということで申し上げますれば、今、文化庁次長がお答えを申し上げたとおりでございますけれども、広い意味でとらえますならば、食生活も文化でありますし、また産業も文化でありますし、その他もろもろ文化に含まれるものですから、ここではある意味での限定的な、「芸術文化」という名称である範囲を限定させていただいた、このように理解をいたしております。
  54. 森暢子

    ○森暢子君 それでは、文化の中でも芸術を中心にやっていこうということがよくわかりました。  次に、亡くなられました大平総理大臣の私的諮問機関、文化の時代研究グループというのが昭和五十五年に報告書を提出なさっております。その中でやはり文化行政の躍進的充実が望まれていて、政府みずからが文化を高めていかなければならない、そのためには芸術文化振興の機関をつくるようにというふうなことが書かれているわけです。この報告が出されてから既に十年近くたっているんですけれども、その間、政府はどのような対策をとってこられたのか、簡単にその経緯をお伺いしたいと思います。
  55. 遠山敦子

    政府委員遠山敦子君) 昭和五十五年七月にまとめられました文化の時代研究グループの報告におきましてはさまざまなことが御提言されておりますけれども、文化の担い手の養成でありますとか、文化振興会など制度や組織の整備、あるいは税制改正予算拡充、民間の活動に対する顕彰、地方における文化振興などがございます。  文化庁といたしましてはこの提言に沿って可能なものから逐次実施に移してきたところでございまして、具体的には、例えば文化の担い手の養成に関しましては、国立劇場における伝承者養成事業でありますとか、芸術家の在外研修、国内研修、あるいは地域文化施設に対する援助でありますとか、文化会館の職員を対象とした研修などがございますし、税制改正につきましても、今年度、特定公益増進法人の対象の拡大でありますとか、来年度芸術賞金の非課税措置の創設などを行ってまいっております。  民間の活動に対する顕彰についても、芸術選奨でありますとか芸術作品賞など、すぐれた芸術的な効果をおさめた芸術家等の成果を顕彰するというふうなこともいたしておりますし、地域における文化振興に功労のあった人々を顕彰するというふうな仕事もいたしております。  その他、国民文化祭の開催でありますとか地域への指導者派遣事業等さまざまな事業をいたしておりますが、特に組織の面につきましても御指摘に沿って、今回、芸術文化振興基金を創設することといたしまして現在御審議をいただいているところでございます。
  56. 森暢子

    ○森暢子君 その経緯を聞いてみましても、それから文化庁予算額の推移を見ましても、まだまだもっともっと文化に対して本腰を入れていかなければいけない。日本もそういう時期に来ているということは会田さんの方からもお話があったと思うわけですが、もっと本腰を入れて文化について取り組んでいっていただきたいと思うわけで、今回のこの振興基金の設立に関してもちろん反対ではありませんけれども、余りにも簡単な審議でいってしまうということに私ども不満を感じる。国会においてもっと十分な審議をしていただきたいと思うわけです。  また、今回、補正予算で基金を手当てするというふうな簡単なことでこれが経緯してしまうということに大変不安を感じるわけですが、この補正予算で基金を手当てすることになった理由をお聞かせ願いたいというふうに思います。
  57. 保利耕輔

    国務大臣保利耕輔君) この基金の設立は長い間望まれていたものでございますが、随分いろいろな構想、考え方が出てまいっておったことは私も承知をいたしておりました。しかしながら直接のきっかけになりましたのは、昨年の十二月に芸術文化振興基金推進委員会というところから具体的な御提言がございまして、民間の方もこの基金の設立には賛成であり、自分たちも応分の資金を出したいのでぜひその受け皿をつくってほしい、そしてまた政府もこれに資金を出してほしいという御要望があったわけでございます。  その機会をとらえまして、長年、基金の設立が要望されておったことでもありますので、文部省文化庁と財政当局と相談をされ、補正予算という形で五百億の予算をいただくという話がつき、それによってこれがスタートをいたしました。そしてその基金の受け皿となるものを、国立劇場、今度法案を通していただきますれば芸術文化振興会というふうになりますが、そこの中に基金を取り扱う部門をつくりまして、それを受け皿として民間からの資金をちょうだいする。  こういうことでスタートをさせていただきましたものですから、極めて緊急な事態として、昨年の暮れに起こったその民間からのアピールを受けて設立をしたという経緯がございますものですから、補正予算に計上をさせていただきこれを設立の方向へ持っていき、そして長年のこの基金の設立の御要望にこたえるべく努力をしたところでございます。
  58. 森暢子

    ○森暢子君 こういう国の文化を高めていくというふうなものが、緊急の事態で設立されたり、それから民間からのアピールがあってから国が動くというのはやはりおくれているのではないかというふうに思います。  いずれにしましても、こういう次の社会を担っていく子供たちとか社会人にとって重要な法案が、こういう簡単な、安易な形と言ったらちょっと失礼かもわかりませんが、そういうことではなくて、やはり設立の仕方については本当に格調の高い、国民が納得のいく形であってほしいというふうに思うわけです。大幅に財源が余ったから政策的にばらまくとかいうふうなものが感じられるんですけれども、やはりこういうことは財政上の民主主義の破壊につながるとも思います。  そういう意味で、ぜひ今度からは本予算の中でこの基金の上積みをしていくという要求を通していくべきだと思うんですけれども、その辺の覚悟のほどをお伺いしたいと思います。
  59. 保利耕輔

    国務大臣保利耕輔君) 私もこの基金は多ければ多いほどよろしいというふうに考えておりますし、芸術文化振興のためにはぜひそうあってほしいものだと思っております。  しかしながら、先生承知のとおり政治というものは現実のものであり、また財政上いろいろな制約があるということにつきましても先生よく御承知のとおりでございます。現実にはシーリングというようなものも行われ、健全財政を目指して財政運営をやっている財政当局の考え方も私はわからないわけではないわけであります。  しかしながら、この芸術文化振興基金充実につきましては今後とも、先生指摘のとおり必要なことだと思いますので、私、文化庁皆さんとともに、そして先生方の御支援を受けながら頑張って、これの上乗せを少しでも図っていくべく努力をしてまいりたい、このような覚悟でおりますことを申し上げさせていただきます。
  60. 森暢子

    ○森暢子君 ありがとうございます。ぜひ本予算の中で文部大臣の方から強く要求していっていただきたいというふうに思います。  法律に関してですが、こういうふうなものを国立劇場法の一部を改正するという形の中に入れるということに対して私どもも不満に思っているわけで、こういう新たなすばらしい事業をやっていくについては独自の特殊法人というものをつくって、そこでやっていかなければならないのではないかと思うんです。それについて今お聞きしましたら、今の体制で役割分担を変えて当分は対処するというふうなお考えのようなんですけれども、それでやっていけるのかどうかということを大変不安に感じるわけです。どうして独自の新たな特殊法人ができなかったのか、そういうあたりをお聞きしたいと思います。
  61. 遠山敦子

    政府委員遠山敦子君) 今回の芸術文化振興基金を新しい特殊法人ではなく特殊法人国立劇場に設置することといたした理由といたしましては、簡素にして効率的な行政の実現を図るために既存の機構の合理的再編成により対処するという行政改革の趣旨を踏まえながら、特殊法人国立劇場自体の持っている機能に着目いたしまして、特殊法人国立劇場を改組するという形になったわけでございます。  その中身といたしましては、現在の特殊法人国立劇場は、基金の援助業務の大変大きな部分を占めることになります伝統芸能あるいは現代舞台芸術に関しては、劇場運営を通じまして幅広い専門的な知識、経験を有しておりまして、伝統芸能、現代舞台芸術振興という点では基金と目的を同じくするものでございます。特に昨年の三月、法改正によりまして、国立劇場に伝統芸能だけではなくて現代舞台芸術の拠点としての機能が加わることになり、これは第二国立劇場の設置主体ともなったわけでございます。そのことから関係者の間で、国立劇場我が国芸術文化のセンターとして位置づけて、さらに幅広い役割を果たすべきであるという声もあったわけでございます。  このようなことから、国立劇場と基金をそれぞれ別の特殊法人の形態とするよりも一つの特殊法人とする方が両者の業務をより充実、活性化できますし、また、文化庁の進めております総合的な文化政策との連携という角度から見ましても、現在の国立劇場日本芸術文化振興会に改めるという形で法改正をお願いした方がよいということで御議論をお願いしているところでございます。
  62. 森暢子

    ○森暢子君 しっかりやっていただきたいと思いますけれども、何か不安が残っております。やはり国立劇場の従来のそういう目的が損なわれてもいけませんし、また、今回、芸術文化となると大変範囲が広がってきますので、ぜひしっかり対応していただきたいというふうにお願いしておきます。  それから、今後基金の運営を適正にやっていくためには、やはり多種多彩な専門家の方々に参加をしていただいて評価のシステムをつくり上げていかなければならないのではないかと思います。それには、できれば異なった意見を持った専門家の方々に入っていただきたいし、政治的な圧力からはもう完全に独立していただきたい。文部省の天下り先というふうなことにならないように、本当に芸術家とか学識経験者とか、そういう方たちの集まりであっていただきたいというふうに思います。  それと、いつもこういうことは密室審議になりましてなかなか国民に知らされないという場合が多いわけです。私どもいつもそれを痛感しておるんですけれども、こういう審議はやはりガラス張りで、国民に知らせていただきたいというふうに思いますが、そういうこともあわせて、その評価のシステムのあたりのことをお聞きしたいと思います。
  63. 遠山敦子

    政府委員遠山敦子君) 委員指摘の御趣旨はよくわかるところでございまして、芸術文化振興基金に係る援助業務を円滑、適切に行いますために、この振興会におきましては援助の実施に当たりまして助成金の交付に関する要綱等をまず制定いたしまして、これに従って申請を受け付け審査し、助成金を交付していくという形になろうかと存じます。  このやり方は特殊法人で援助事業をやっているようなところと大略似ているわけでございますが、特に基金の助成事業の運営につきましては幅広い芸術関係者がこれにかかわるところでございますので、審査組織の構成につきましても広く芸術文化関係者の意見が反映できるような形で委員の選定等も行ってまいりたいと考えているところでございます。  援助事業の評価についても御指摘でございましたが、援助団体に対しましてその事業が計画どおり実施されたかどうか、所期の効果を上げたかどうかにつきまして報告を求める予定でございまして、その際客観的な評価の資料等を添付願ってそのような仕事も行うというふうに考えているわけでございます。  いずれにいたしましても、援助事業の評価に当たりましては、芸術家とか芸術団体の自主性を尊重しながら、自由で濶達な創造活動に干渉することのないよう、日本芸術文化振興会におきましていろいろな方々の御意見を踏まえながら具体的な検討をお願いしたいというふうに考えております。
  64. 森暢子

    ○森暢子君 その報告書などをできましたらやはり国民に公表していただきたいというふうに思います。  さて、次に具体的な援助業務内容についてですが、従来も文化庁芸術文化活動について援助を行っていらっしゃったと思うんですけれども、今後、振興会の行う援助との関係がどうなるのか。二本立てになると思うわけですが、その関係調整というものはどのように考えていらっしゃるかということが一点。  もう一つは、これは会田さんの方からも出たんですけれども、こういう文化というものはやはり地方公共団体とか民間の中にゆだねるというのが望ましい形ではないか。中央でやってそれを地方におろすということではなくて、中央集権というのが今いろいろと言われておりますが、特に芸術文化というものは地方にその主体性をゆだねていくということが大切ではないかと思いますので、そのあたりをお伺いしたいと思います。
  65. 遠山敦子

    政府委員遠山敦子君) 芸術文化振興基金の役割と文化庁の行います国庫補助との関係でございますけれども、文化庁におきましてはこれまで、芸術文化の水準を高めるということを主たる目的といたしまして中核的な芸術団体の基幹的な活動に対する助成というものを行ってまいっておりますし、文化財保護法に基づきまして国が行う文化財の指定及びその保存整備事業、あるいは芸術文化活動の顕著な功績に対する顕彰事業など、全国的な観点に立った文化振興事業を実施しておりますが、これは今後とも充実してまいりたいと考えております。  一方、芸術文化振興基金におきましては、文化のすそ野を広げるということを主たる目的といたしまして、国民に親しみやすい公演あるいは身近なジャンルに対する援助、それから新たな分野を開拓する先駆的、実験的な芸術創造活動の奨励でありますとか、地方公共団体指定等の文化財保存活用事業に対する援助、これはこれまで文化庁でできなかった事柄でございますけれども、そういうものもやりたいと考えておりますし、地方公共団体文化団体が行う文化による町づくり事業に対しても援助をするというふうな考え方になっております。  これは決して中央から地方へという流れをつくることではございませんで、特に地域と密接に関連した事業に対する援助につきましては、振興会が作成する要綱にのっとって申請をしていただき、その申請を審査した上で援助をするということでございまして、その主体性は当然ながら地域にあるわけでございます。
  66. 森暢子

    ○森暢子君 ありがとうございます。  それでは、法案の二十条にこの振興会業務開始のときには方法書を作成して文部大臣の許可を受ける、それから二十三条には事業計画とか予算とか資金の計画を大臣に提出して認可を受ける、また三十三条にも文部大臣の監督権限が認められているというふうになっておりますが、こういうふうなことは、所管大臣の監督を受けることは当然といえば当然であるんですけれども、この振興基金は特に芸術文化ですからその活動が自由な形で認められるように見守っていっていただきたい、そういう姿勢をお願いしたいわけです。  つまり、文化芸術というのはもともとは民衆のエネルギーの中から育ってくるものでありまして、それを国が余り育成しようとしたり内容に介入して失敗した例は多いと思うわけです。例えば、今ソビエトでは民主化のうねりが押し寄せておりますけれども、過去には芸術文化政策においてイデオロギーを押しつけたというふうなことで批判されているというようなことを聞いております。  そういうことで、今後の振興会業務に対しては柔軟な態度をとって、そういう人たちを自由に活動させていっていただきたいというふうに思うわけですが、どういった監督をしていかれるのか、その姿勢を文部大臣にお伺いしたいと思います。
  67. 保利耕輔

    国務大臣保利耕輔君) 芸術活動というのは本来自由なものであるという認識を私は持っております。主流がありそして反主流がありというような形ではなく、たとえ一人でやっていることであっても貴重なものは貴重なものとして尊重されなければならないという芸術の基本的な考え方があろうかと思います。  また同時に、先生指摘のとおり地方には地方の独特の文化もございますが、そうしたものが近年薄れていく傾向がある。いろいろな交通手段等の発達によりまして人間の交流が進むにつれまして、地方特有の文化保存するということがなかなか難しくなってきているというような現状もある。しかしそれは見てみると地方の歴史に根差した一つの人間の文化であるというようなことを考えますと、これまた、いかに少数であるといえどもこれは尊重されなければならない、こういうような基本的な考え方を持っております。  そういった基本的な考え方に立脚いたしまして、監督責任のある私でございますが、基本的にはそういう考え方を持ちまして、これからの成り行き、それから運営を注視してまいりたい、こういう気持ちを持っておりますことを申し上げます。
  68. 森暢子

    ○森暢子君 ありがとうございました。  それでは、次に振興基金の運用についてお伺いしたいんですけれども、二十九条と二十九条の二というところに基金の運用について定めがありますが、基金の規模が六百億円という時点でどのくらいの運用益を見込んでいらっしゃるのかということと、それからこれだけでは、基金の規模を拡大しなければ基金そのものの順調な運転があり得ないのではないかというふうに思います。そういう点について将来的にどのようなお考えを持っていらっしゃるのか、お聞きしたいと思います。
  69. 遠山敦子

    政府委員遠山敦子君) 政府出資金五百億円と、民間が出捐を表明しておられます百億円という目途のもとにこれから民間から拠出をいただくわけでございますが、合わせて六百億円になったといたしまして、大体、年間の運用益というのは三十億円ぐらいではなかろうかというふうに見込んでいるところでございます。  とにかく、当初その三十億円で発足をすることによりまして、これまで文化庁だけではできなかったような多彩な芸術文化の支援ということができてまいろうかと思うわけでございますが、その後の展開につきましては、大臣から再三お話がございますように、状況を見ながら検討してまいるということになろうかと存じます。
  70. 保利耕輔

    国務大臣保利耕輔君) ただいま次長から御答弁を申し上げたとおりでありますが、状況を見ながら、なおかつやはりこの基金についての充実は必要であるという気持ちで努力をしてまいりたいと思います。
  71. 森暢子

    ○森暢子君 ちょっとこの法案の内容から外れますけれども、先般「我が国文化文化行政」といういわば文化白書のようなものを六十三年六月にお出しになっているわけですが、これは大変中身の濃い、すばらしいものだと思います。こういうものは今までもつくっていらっしゃったのかどうか、それから、これがもう六十三年のものですから、今後こういうものをつくっていかれる計画があるのか、そういうあたりをお伺いしたいと思います。
  72. 遠山敦子

    政府委員遠山敦子君) 「我が国文化文化行政」、いわゆる文化白書は、文化庁発足二十周年に当たります一昨年の六月、我が国文化文化行政のこれまでの歩みを振り返った上で現状を的確に把握し将来を展望するための共通の基盤となる資料をつくろうということで、当時の文化庁長官が中心となって努力をされてでき上がったものでございまして、先生から評価をいただきまして私ども大変うれしく思うところでございます。  今後このような資料を刊行するのかということでございますけれども、これまで文化庁では、発足後五年あるいは十年にそれぞれ歩みのような冊子を出してまいったわけでございますが、このような形で文化白書としてかなり体系的に取りまとめたのは初めての試みでございます。今後のことを考えますと、文化の各分野にわたって基礎データの収集でありますとかあるいは十分な準備が必要でございますので、必ずしも毎年というわけにはまいらないと存じますけれども、国民文化に対する関心の高まりにこたえまして時期を見て刊行してまいることになろうかと存じます。  このほか、白書という形をとりませんけれども、文化行政概要等につきましては逐次、広報資料として刊行してまいりたいというふうに考えております。
  73. 森暢子

    ○森暢子君 それでは今後ともひとつよろしくお願い申し上げます。  質問の最後に、今、文部大臣のお言葉の中に、国際的にも文化というもので貢献していかなければいけない、心豊かな社会をつくって、これから文化国家としてやっていきたいというふうなお話がありました。  今、日本は世界でも一番の金持ち国ということで、文化的なものでも、いろいろ芸術品を買いあさったり、そしてそれも贋作をつかまされたりということでいろいろな問題が起こっておりますが、世界では戦争によって失われた文化財というものが数知れずあると思うわけです。今、問題になっているアンコールワットなんか、かけがえのない文化遺産でありながら、戦争で破壊されたまま修復するための予算もないということで放置されている。そのほか世界じゅうに、そういうお金がないまま崩れていっている文化遺産というものがあるわけですね。  そういう中で、金持ち国であります日本がお金をただばらまくだけではなくてやはりそういう方向に援助していくということになれば、世界の中の日本としてこれからも世界の人たちに理解されていくのではないかというふうに思うわけです。何か文化庁予算の中でもネパールや敦煌といったところの文化財保存、修理に乗り出しているということもお聞きしておりまして、大変いいことだと思っております。  それで、これはちょっと文化庁の方ではあれが違うかもわかりませんけれども、ユネスコの方で、世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約とか、それから文化財の不法な輸出及び所有権譲渡の禁止及び防止手段に関する条約とか、こういうふうなものが総会で採択されているわけですが、日本ではまだそれが批准されていないわけです。こういうこともぜひ文化庁の方から声を出していただいて、積極的に世界の文化に貢献していっていただきたいというふうに思うわけです。  そういう意味でも国の文化予算を大幅に増額させていただきたいと思いますが、その辺の取り組む姿勢を聞かせていただきたいというふうに思います。
  74. 保利耕輔

    国務大臣保利耕輔君) 世界のいわゆる文化財保存につきましては、先生指摘の国際機関でございますユネスコ、あるいは外務省などもそれぞれの役割に応じましていろいろ実施をしておるわけでございますが、文部省といたしましても今後、こういった関係機関と調整をとっていく必要があろうかと思いますけれども、特に今、先生指摘の世界に残るいろいろな文化財調査それから保存、そういった問題についての人材の養成でありますとか、あるいは研究協力というような形を通じてこれから世界の文化財保護へ貢献をしてまいりたい、そういう気持ちでおるわけであります。  細かくはいろいろそのポイントポイントで相手国政府とも話し合いをしながらやっていかなければならないかと思いますが、しかし日本に期待をされておりますことは非常に大きいというふうに感じております。相手国の主権を尊重しながら、その中で文化財保護についてできるところは積極的に御協力をしていかなければならないのではないか。また、今、日本にそうした役割が求められているのではないかということを痛切に感じておりますので、この分野におきましてもしっかり頑張ってまいりたい、こういう気持ちを申し上げさせていただきます。
  75. 森暢子

    ○森暢子君 最後に、文部大臣とは初対面でございますのでぜひお願いをしておきたいんですが、実は私は中学校で美術と音楽の教師を三十何年間やってまいりました。その中で今、主要五教科ということで美術や音楽の時間がどんどん狭められていっている。私はその主要というのにちょっと感じるんですけれども、何が主要かといったら、やはり心豊かな社会人を育てるためには芸術というのはすばらしい分野ではないかというふうに思うわけですが、今まで週に二時間、二時間、二時間だったのが、三年生になると一時間になるわけですね。絵をかこうと思って準備をして広げても、ちょっとたったらもうしまわなければいけないということになるわけです。  けれども、数学や英語はできなくても絵は好きだとか粘土をこねるのは好きだとか物をつくるのは好きだという子がたくさんいるわけで、その中で救われている子もたくさんいるわけです。ですから、はっきり申しまして美術の時間にはみんな喜んで飛んでくる。それは、美術というのには間違い、ペケというのがないわけですね。二足す二が四でなくてはいけないとかいうことはないんです。つまり、その一人の子供の一つの分野であって、それぞれがこうした方がいいなという自分の世界をそこに持っているすばらしい分野なんですね。それがどんどん狭められていく今の教育のあり方について私は大変悲しく思っているわけであります。  それから、今、学校が大変荒れている。私も大変荒れた学校の中で、子供と格闘しながら負けないでやめないで頑張ってきて、あの中を通り抜けなければ一人前の教師ではない、こういうことを思っているわけですが、けれども、あの荒れた中で子供たちの叫んだ言葉の半分は真実なんです。その子供たちを本当に中心に置いた教育行政というものをぜひ考えていただきたい。教師も困って悩んでおりますが、一番の被害者は子供たちなんですね。  そういう意味で、ぜひ文部大臣、子供を中心にした教育行政と、そしてその教育に携わる教職員の立場に立った教育行政というものを強くお願いしたいと思うんですが、もしできましたら心構えをお聞きしたいと思います。
  76. 保利耕輔

    国務大臣保利耕輔君) 先生の貴重な御経験からのお話でございます。しっかり受けとめさせていただきました。  実は私自身も余り勉強のできる方ではございませんでした。むしろできなかった方であります。しかし、先生おっしゃるとおり図工の時間というのが大変楽しゅうございました。音楽につきましては、私は音符を読むのがどうも下手くそでございましたので、音符を読まされるときは嫌だったのでございますが、歌を歌うときは大変楽しかった、そういう経験を持っております。それが非常に情操豊かな子供を教育するのだということを、今この大人の身になって考えてみると、私の経験からしてもよくわかるわけでございます。  同時にまた、私はスポーツの面においても、体の非常に弱い子であったのでありますが、学校に入りまして部活動等を通じましてスポーツ選手として過ごしてまいる中で、スポーツのよさというのも感じてまいりました。  言ってみますれば、知育、徳育、体育と申しますが、そういったもののバランスのとれた教育というものが今後目指すべき方向であると思いますし、あすの豊かな、そして立派な文化国家日本をつくっていくためには、先生のようなそういった貴重な御意見をしっかり受けとめさせていただいて、心構えをしっかり持つ中で文教行政を進めていくように努力をしてまいりたい、このような覚悟を申し上げる次第でございます。  ありがとうございました。
  77. 森暢子

    ○森暢子君 ありがとうございました。終わります。
  78. 針生雄吉

    針生雄吉君 来るべき二十一世紀は生命の世紀であるとも言われております。私ども公明党も結党以来、我が国は特に平和と文化教育の分野において世界の先進国たるべし、あるいは生命尊厳の理念を根本とした人間中心の諸施策を展開すべしと主張してきておりますけれども、この立場からいたしまして、自由な生命活動の反映であります芸術文化発展に寄与するところ大と思われるこのたびの芸術文化振興基金の創設を含む本法律案には、心から賛成の意を表するものであります。  さて、今日は、我が国はいろいろな矛盾点をはらみながらも経済的には大変豊かになりまして、国民の多くが、物質的な要求から精神的なゆとりや精神的な心の充実を求める方向へと変わりつつあるわけであります。しかるに、日米構造問題協議等でも指摘されておりますように、我が国では充実した国民生活の基盤であるべき社会資本の整備のおくれというものが浮き彫りにされております。そして、これと同じように、我が国芸術文化教育というものに対する認識の低さ、立ちおくれが目立っていることも指摘されているわけであります。  例えば平成元年度の文化庁予算は人件費を含めて四百九億円余であり、文部省予算の中でもわずかに〇・九%、国全体の予算の中では〇・〇七%と微々たるものにすぎないというのが現状であるわけであります。  ところが、今回創設されます芸術文化振興基金は、国の出資が五百億円、民間の拠出、出捐が百億円見込まれまして、計六百億円ということでありますので、私どもといたしましては、これまでの文化庁予算の規模からしますと大変な前進であると評価するにやぶさかではありません。  しかし、こうした重要な施策補正予算で措置するということにつきましては、いろいろな財政再建上の制限とか予算要求のシーリング、あるいは民間に拠出、出捐を求めるタイミング等の理由はあるにいたしましても、財政法二十九条の規定一つから見ましてもやはり妥当な対応とは言いがたいと思うのであります。今後このようなことが起こらないように求め、苦言を呈しまして、質問に移りたいと思います。  さて、我が国文化予算の歴史におきまして画期的とも言えるこの芸術文化振興基金の創設でありますけれども、将来の健全な発展を期する立場から見て不満足と思われる点もありますし、また、その運用に当たってはさらに万全を期すべきである、そういう考えからして二、三の質問をさせていただきたいと思いますが、まず文部大臣より、芸術文化振興政策重要性について御所信をお伺いしたいと思います。
  79. 保利耕輔

    国務大臣保利耕輔君) 先生指摘のとおり、文化振興重要性ということについては申すまでもないことでございます。さらに、文化振興について最近国民の間にも大変その関心が高くなってまいりました。さらには国際的にも文化面日本が貢献をするように求められてきておるわけでございます。これからの我が国は、経済的な豊かさだけではなくてやはり心豊かな国家になっていかなければならないというふうに私も感じておるところでございます。  そしてまた、日本には昔からの伝統文化というものが根づいておりますし、またいろいろな形で残されております。こうしたものをしっかり継承しながら、なおかつ新しい芸術文化創造発展のためにも努力をしていかなければなりませんし、そうした芸術文化の水準を高めていくことも必要なことであると考えております。さらにはまた、国民文化に親しみながら、さらにみずからの文化創造に参加できるようないろいろな文化振興策を図っていくことが重要であると思っております。  文化行政を担当する私といたしましてもこのための、先生から今お話がございました基金の設立等、基盤整備を図るということが非常に必要なことだと考えておりますし、そのためにこのたび国立劇場法改正をさせていただいて芸術文化振興会というものをつくり、その中でその振興のための基金を扱うことによりまして文化国家にふさわしい一つの心豊かな社会の形成に資するこの基金が、御賛同いただければスタートすることになるわけでございますが、こうしたものの充実について今後も努力をしていかなければならないと思います。  いずれにいたしましても、この基金は長い間国民皆様方から待望されておった点でございますので、国会の御賛同を得てこの基金がスタートをするということは大変画期的な意味を持つものである、私はそのように思っております。なお、充実に向けての努力は、先ほど申し上げましたとおり、頑張ってまいりたいと思います。
  80. 針生雄吉

    針生雄吉君 大変ありがとうございました。  時間も限られておりますので二、三の問題点に絞って質問をさせていただきたいと思いますが、まず外国との比較についてお伺いをいたします。  今回の基金に類似する制度といたしましては、例えばアメリカには国立芸術財団、イギリスでは芸術協議会というものがあります。アメリカの国立芸術財団では、一九八八年の年間予算額日本円にして二百二十一億円、職員数は二百五十人、イギリスの芸術協議会では、一九八〇年度の年間予算額は三百三十億円、職員数が五百八十五人というものであります。単純にこういった数字比較することは無理があるとは思いますけれども、仮に我が国が、六十一年、当時の塩川官房長官の提案せられた三千億円規模の基金を達成したとしても、その年間予算は、年率五%の運用益といたしましても百五十億円にすぎないわけであります。  まして今回の六百億円規模の基金では、文化立国を標榜している我が国といたしましては余りにも見劣りするように思われますが、この点についてはいかがでしょうか、文化庁のお考えをお示しいただきたいと思います。
  81. 遠山敦子

    政府委員遠山敦子君) アメリカやイギリスの芸術文化振興のための機関についての御指摘がございました。確かにこれらの機関の人員あるいは予算の規模を勘案いたしますと、今回発足する芸術文化振興基金の当初のものは十分ではないかもしれません。しかしながら、このような機関間の規模あるいはその果たす機能等について比較いたしますには、芸術文化振興に対する国の役割でありますとか歴史的な経緯等が異なりますので、単純な比較そのものだけでは適当でないと考えるわけでございます。  日本の場合は、御存じのように文化行政全般を統轄する文化庁がございまして四百三十二億円の予算と職員二百名弱を擁しておりまして、今回の基金と文化庁の双方の諸事業というものが車の両輪のようになって、全体として国のレベルにおける芸術文化振興を図るということにいたしております。この点におきましては、文化行政を担当する省庁を持たない米国、あるいはイギリスは芸術図書庁というものを持っておりますけれども、その主たる役割といいますのは英国内の芸術協議会等へのいわばトンネル的な補助金配分のための機関であるという点もございますので、そういうふうなことを勘案した上での比較も大事であろうかと思います。  さはさりながら、我が国芸術文化振興予算につきましては今後一層その充実に努める必要があると思うわけでございます。
  82. 針生雄吉

    針生雄吉君 次に、芸術文化活動への政府・行政の関与の仕方についての基本的姿勢についてお伺いをいたします。  そもそも、文化芸術というものは民衆の生命活動の自然な発露として民衆の中の自発的なエネルギーによって支えられるべきものでありまして、国や行政がその育成、内容に過度に介入すべきものではない。そのような失敗例は歴史上、我が国にも外国にも見られるわけであります。また、一面におきましては、各国とも芸術文化振興については、それぞれ歴史や政治制度の違いはあるにしても、我が国よりはるかに大きな予算規模を持って援助を行っていることもまた事実であります。  芸術文化振興について政府の関与の仕方はどうあるべきかということについて、文化庁のお考えをお示しいただきたいと思います。
  83. 遠山敦子

    政府委員遠山敦子君) 芸術文化活動といいますものは、先ほど大臣もお答え申し上げましたように、芸術家等の自由な闊達な創意に基づく活動によりまして展開されるものであるわけでございます。文化行政の役割といいますのは、そういった諸種の芸術文化活動が活発に行われるように基盤整備を行うということが基本であろうかと思われます。  この基金ができまして多彩な芸術文化活動を支援していくことになろうかと存じますけれども、その際にも、その内容にわたって監督するとかそういうふうなことは全くないわけでございまして、ただしかしながら、政府の資金五百億あるいは民間から拠出をいただく百億というこれまでの日本文化行政でないような多額のお金の運用でございますので、その適正な運用が図られるように、文化庁あるいは日本芸術文化振興基金両方が協力をし合いながら適正な運用を図っていく必要がある。その角度での事業についての管理と申しますか監督という業務は残るかと考えます。
  84. 針生雄吉

    針生雄吉君 次の質問に移りたいと思います。  一口に芸術文化と申しましてもその範囲は大変に広く、芸術家あるいは芸術団体文化関係団体もその数は膨大であるわけであります。基金がそのすべてを援助することは不可能であることは当然でありまして、    〔委員長退席、理事田沢智治君着席〕 将来、基金の運用規模が拡大された場合におきまして、あるいは拡大される以前もそうであると思いますけれども、当然、援助対象を絞り込むことになると思われるわけでありますが、その基準や方法についてのお考えをお示しいただきたいと思います。  つまり、基金の運用に当たって文化庁はその内容に監督の意を及ぼすものではないとおっしゃっておられますけれども、基金の運用に当たりましては当然、専門委員会であるとか運営委員会的なシステムがつくられるわけであります。その運営委員会の準拠すべき援助対象に対する評価基準と申しますか、そのお考えをお示しいただきたいと思います。
  85. 遠山敦子

    政府委員遠山敦子君) 芸術文化振興基金ができました場合の運用のあり方につきましては、何人の先生方からも御指摘いただきましたように、その審査の機構を新たに設けることになろうかと思います。  その具体的な内容につきましては、本法案が成立をいたし日本芸術文化振興会ができ上がりました後に決まってまいるものと思うわけでございますけれども、助成金の交付という角度でございますので、やはりその助成金の交付に関する要綱等をまず制定をして、これに従って申請を受け審査をし、助成金を交付するというふうな仕組みになろうかと思います。その際には運営委員会等の組織を設けまして、幅広い角度からの御意見を参考にしながらその仕組みが構成されていくものと考えております。  また、どのような中身援助をしていくのか、いわば審査基準のようなことについての御質問もあったかと思いますけれども、援助の実施に当たっての助成金の交付に関する要綱等を制定する際に、具体的な援助事業の内容に応じてその必要とする条件と申しますかそういうものも定めていく、そういうシステムになろうかと思います。そして、それの審査につきましては幅広い専門家等の御意見も反映できるように専門委員会などの仕組みをつくっていく、そのように考えておりまして、直接文化庁が監督するとか、そういうふうなことの御心配は杞憂に属するものであろうかと思います。
  86. 針生雄吉

    針生雄吉君 直接の選考はそれぞれの分野ごとの専門委員が当たるということでございますけれども、多くの人が心配していることは、公平で公正な選択が行われるかどうかということであります。  芸術文化の価値判断、評価というものは大変難しいわけでありまして、例えば、今日我々に深い感銘を与えている世界的な天才の業績も、大げさに言えばその人の死後に価値が認められたという例は数多いわけでありますし、あるいはまた、現在の常識では一笑に付されてしまうものであっても将来の宇宙時代において宇宙的規模の芸術文化としての評価を受けるというものもあるかもわからない。あるいはまた、社会的にはまだ認知されていない考え方、例えば脳死とか臓器移植の推進をテーマにしたような芸術作品の登場なども考えられるわけであります。  さらには、運営に当たってのいろいろな分野による差別、派閥による差別、イデオロギーによる差別、そういうことを心配する声も数多く聞かれます。  古典芸能やクラシック音楽、オペラ、美術、新劇といった分野は選定の対象になりやすいけれども、民衆芸術と言うべき講談とか落語、ましてや大道芸の公演といったものがもし申請された場合、そういうたぐいのものには日が当たらないのではないかとか、先ほども触れましたけれども、いわゆる反権力的な考え方、政府に批判的な考え方、例えば金権政治の批判であるとか天皇制の批判であるとか軍縮や核兵器の廃絶を訴えているものであるとか、あるいは時代の矛盾に敏感な若者であるとか前衛的なものは排除されてしまうのではないか、そういうおそれが皆さんの中には多くあるわけであります。  このような不公正な運営は断じてあってはならないと思いますが、このことを重ねて主張しておきたいと思います。  次に、海外交流への援助に対する基本的な態度をお伺いしておきたいと思います。  日米構造協議の場でも話題になっておりますけれども、日本文化異質論というのがございまして、日本人はどうも特別な民族であるようだ、お金をもうけても使おうとしない民族である、こういうような海外批判があるわけであります。そういう批判にこたえるためにも、あるいは当然そのような批判以前の問題として国際平和のベースとなるべき民間外交の促進のためにも、文化芸術の分野での海外交流は非常に大きな役割を持っていると思うわけであります。  先ほどのお話にありました文化遺産とか文化財保護に対する国際的な援助という視点もございますし、我が国の伝統芸術が海外進出、海外交流をする場合の援助もございます。あるいは先ほどの、我が国は世界の文化芸術発展に寄与すべきであるという観点からすれば、将来、基金が潤沢になった段階においてでございましょうけれども、外国のまだ有名ではないけれどもすぐれた才能を持っているアーチストであるとか、東南アジア、アフリカあるいは南米諸国といった発展途上の国々の伝統芸術家芸術団体日本公演に対する援助、そういったものも本基金の対象とすべきであると考えます。  その点で、海外文化交流援助という点に関しましての御所見をお伺いしたいと思います。
  87. 遠山敦子

    政府委員遠山敦子君) もとより芸術文化には国境はないわけでございまして、芸術家同士が相互に交流して刺激し合うことによってまた高い芸術活動が生まれていくというふうなこともあるわけでございます。そのようなことから、文化の国際交流ということは芸術振興にとって極めて重要であると考えております。  そのような角度から既に文化庁でも、芸術分野で、日本のすぐれた舞台芸術を海外に派遣するとか、あるいは諸外国の若手の芸術家日本に招いて研修をしていただくような制度を新たに平成年度から行いますとか、文化財の修復等の関係につきましても力を尽くす等いろいろやってまいっております。  今回の芸術文化振興基金におきましても、国の内外において我が国芸術家芸術団体が外国の芸術家等と行う共演あるいは協同制作等の事業につきましては援助対象とすることも考えておりまして、その運営の中には国際交流のことも視野に入れながら、今後、援助事業が行われるものと考えております。
  88. 針生雄吉

    針生雄吉君 そのように、対象とすべき分野は非常に広いわけでございます。そのことからしても、専門委員会あるいは運営委員会の規模に対しては十分な配慮が必要であると思うわけでありまして、民主的で公平で多様性に富んで、しかもインターナショナルな高い見識を持った専門家のグループが望まれるわけであります。  イギリスの芸術協議会における評価システムでは、千名になんなんとする、あるいは数千名の専門家が関係しているとも言われておりますが、いずれにいたしましても、必要なマンパワーを集めて運用システム、評価システムをスムーズに機能させるのに不可欠ないわゆる事務的経費の確保のためにも、またもちろん基金の運用資金拡大のためにも、基金の積極的な積み増しに向けて、民間資金の導入を容易にするための税制上の優遇措置も含め、積極的な取り組みをお願い申し上げたいと思います。    〔理事田沢智治君退席、委員長着席〕  最後にもう一回文部大臣の御見解をお聞きして質問を終わりたいと思うのでありますけれども、欧米先進国の文化予算に比べて見劣りのする我が国文化予算充実について、将来に向けての抱負をお伺いしたいと思います。特に本基金の来年度以降の積み増しに関して、本予算の中でのシーリングの枠を超えての政治的決断を行い歴史に名を残すべき政治家としての保利文部大臣の見解をお聞きしたい、こう思います。
  89. 保利耕輔

    国務大臣保利耕輔君) 大変力強い御激励をちょうだいいたしたところでございますが、細かく申し上げますれば、平成年度予算にこの積み増しをするということはこれは技術的にもまたできないことであったろうと思います。この法案、基金が成立していない段階で、これを予定して平成年度に積み増し予算を計上するということは無理であったということについては御理解をいただきたいと思います。  平成年度概算要求あるいはその後の予算の問題につきましては、私なりに努力をしてまいりたい、こういうふうに思っておりますけれども、ただいま先生から御指摘がありました非常に大事であるというお気持ちは私もしっかり踏まえさせていただいて努力をしてまいりたいと思っております。
  90. 高崎裕子

    高崎裕子君 私はこの基金の創設が、現在の国家予算の〇・〇六%という貧困な文化予算の改善に少しでも役立つことを心から願っております。しかし、この基金によって運用できる金額は当面三十億円にすぎない、現状を改善するにはほど遠い金額であるということで、ただいま大臣の御決意もありましたが、今後、基金の増額が図られることを最初に強く要望して質問に入りたいと思います。  この立場からまず指摘したいのは、この基金の創設が文化予算を削減したり抑制する口実になってはならないということです。その点で具体的に、まず、これまであった文化庁の優秀映画製作奨励金、これは制作者に対し一作品一千万円、年間十本に交付されるというものが、九〇年度予算案では優秀映画作品賞という名称に変わっています。これは、年間十本というのは変わらないわけですが、金額が一本百万円と十分の一になっています。これまでのこの優秀映画製作奨励金は増額して基金に移すということですね。
  91. 遠山敦子

    政府委員遠山敦子君) 文化庁におきましては昭和四十七年以来、毎年その年度に公開上映された長編映画を十本選びまして、一本につき製作奨励金一千万円を交付する優秀映画製作奨励制度を実施してまいりました。この額は発足当時と同じでございます。  この制度につきましては、すぐれた映画制作を促進するものとして非常に重要な役割を果たしてまいったところでございますけれども、一千万円の奨励金では映画制作経費が制度の創設当時に比べまして大変高額を要する時代になっている現状と必ずしもマッチしていないこと、さらには、次に映画制作をする場合の資金提供という側面とそれから優秀な映画の顕彰という側面が混在しているわけでございます。そこで、交付された奨励金が必ずしも映画制作のための資金として十分活用できないようなことの問題もはらんでいたわけでございます。  そのようなことから、この制度の問題を解決いたしますために、映画制作に対する援助につきましては映画の企画から制作までの期間が長期にわたるというようなことから弾力的、機動的な対応が必要であるということを考えまして、新たにできる芸術文化振興基金におきましてより充実した形で実施することが適当と考えたものでございます。いわば芸術文化振興基金文化庁仕事との機能分担という面があるわけでございまして、文化庁におきましては優秀映画の顕彰を引き続き行うということで、委員指摘のように年間十本、一本百万円ということで形を残しますけれども、映画制作ということにつきましては基金の中で大きな柱の一つとして取り上げるという予定でございます。
  92. 高崎裕子

    高崎裕子君 増額して基金に設置される予定ということですが、たとえ名目が変わりこれまでの助成は基金の方に移すからといって、文化庁予算としては明らかに削減となっているわけで、その変わった理由一つに基金ができるということが挙げられているわけです。  基金の創設が予算削減の口実になることを関係者は最も危惧しているわけですから、基金創設を口実にして民間芸術など活動費補助などの文化予算拡充を放棄することがあってはならないと考えますが、大臣の見解を伺いたいと思います。
  93. 保利耕輔

    国務大臣保利耕輔君) 先ほどからるる御答弁申し上げておりますとおり、文化予算というものはこれからの日本社会のあり方その他を考えてまいります場合に大変重要な予算であると心得ておりますので、今、委員指摘のようなことにならないように一生懸命に努力をしてまいりたいと思います。
  94. 高崎裕子

    高崎裕子君 次に、基金についてお尋ねいたします。  私のところに北海道の子ども劇場おやこ劇場連絡会の方から、この基金の創設に当たっての要望が来ています。その中で切実な問題として、子供のための舞台芸術公演に要する旅費、宿泊費、運搬費の軽減をしてほしいということが挙げられています。  この劇場運動では、上演料のほかに、交通費、運搬費、宿泊費、そして会場費などがかかります。このうち、交通費、運搬費、移動など上演のない日の宿泊・食費について上演する劇場が平等に負担するシステムをとって、これをプール費と呼んでいます。子供のための舞台上演を行う劇団、音楽団体のほとんどは東京圏に集中しているので、北海道では経費が非常に高くなります。どの地域でも同じ上演料になれば、北海道でももっと子供たちにたくさん舞台を見せられます。  また、北海道では、要保護、準要保護の児童生徒の比率が全国平均より高い一〇%から一五%です。この場合、通常の料金の半分にすることが多いのですが、結局その分は劇団の負担になります。劇団は非常に厳しい状況の中で学校公演を続けているわけで、この鑑賞費の負担を公的負担にしてほしい。  あるいは、鑑賞機会を持たない地域の子供のため北海道では巡回小劇場として道が事業を行っていますが、この道の助成も何年も据え置かれ劇団の持ち出しになっており、学校公演の機会が減少するのではないかという危惧も率直に出されています。  私自身は二人の子供の母親で、子供が本当に人間として豊かに育ってほしいと切実に願っています。私はこの子ども劇場おやこ劇場の運動もやっているんですけれども、舞台を見ながらともに喜び怒り涙を流す、まさに舞台と一体となって興奮をしている子供たちの姿に私はいつも本当に感動させられています。そして、人間として大切な情操、感性、豊かな創造性を涵養する上で文化の果たす役割の大きさを実感しています。だからこそ、未来を担う子供たちのためによい文化をと、親は皆、切実に願っているところです。  こういう子供のための上演を行う劇団や音楽団体への助成は子供の舞台鑑賞の機会を広げることにもなるわけですが、こういう劇団などは基金の助成の対象になりますね。また、今後このおやこ劇場などの活動も基金の助成の対象にすべきと考えますが、文化庁の考え方をお聞かせください。
  95. 遠山敦子

    政府委員遠山敦子君) 子供劇場、親子劇場のお話かと存じますが、これらは、すぐれた生の舞台芸術の鑑賞でありますとか、子供の自主的な文化活動を通じて子供を健全に育てるということを目的として地域の住民の方々が結成しておられるいわゆる鑑賞団体でございます。文化庁芸術文化振興の観点から補助対象としております事業は、芸術団体が行います公演事業でありますとかあるいは芸術関係資料整備事業でございまして、個々の鑑賞者団体をとらえて補助対象とはしていないところでございます。  しかしながら、御指摘の旅費、運搬費、宿泊費等につきましては、親子劇場が公演団体を招致するときに係る経費であると思われるところであります。文化庁では巡回事業を行う団体に対して従前から補助を行っているところでありまして、財政状況が年々厳しい折ではございますけれども、予算の確保には努力しているところでございます。これらの効果として、地域におきます子供たちの芸術文化鑑賞というものが充実してまいるのであろうかと思います。
  96. 倉地克次

    政府委員(倉地克次君) 今、御指摘のありました児童生徒の鑑賞費の問題でございますけれども、これは平成年度予算の執行上の課題ではないかというふうに考えているところでございます。市町村が具体的に鑑賞費について児童生徒に補助をしているような場合につきましては、そうしたものについて国の補助金が交付できるかどうかということを今後検討の課題にしてまいりたい、このように考えております。
  97. 高崎裕子

    高崎裕子君 その鑑賞団体についての考え方はわかりました。しかし必要性からいって、文化庁としてもぜひ今後、研究、検討していただきたい、この基金の対象の問題としてしていただきたいという要望にとめておきます。  ただ、こういう劇団に対しての助成は対象になるわけですね。
  98. 遠山敦子

    政府委員遠山敦子君) そのとおりでございます。
  99. 高崎裕子

    高崎裕子君 次に、基金には民間資金の導入が予定され、企業を中心に百億円の寄附が行われるとのことです。民間資金の導入を否定するものでは決してありませんが、企業などの基金提供者が芸術家芸術団体、鑑賞団体などに影響を及ぼすことは、芸術文化の自主性を守る上でも絶対に避けるべきと考えます。  基金提供者が営利を目的とした企業の場合、今、企業が宣伝やイメージアップとして冠スポーツ、冠コンサートを行っていることを考えると、この点は特に重要だと考えるわけです。この趣旨から見て、いわゆる冠方式は認めるべきではないと考えますがいかがでしょうか。  また、したがって企業や団体よりも個人からの寄附の比重を今後高めるべきと考えますけれども、それはどのようになりますか。
  100. 遠山敦子

    政府委員遠山敦子君) 芸術文化振興につきましては、国の努力とともに民間からの支援というものは不可欠であろうかと存じます。これは過去に文化庁の諮問機関として幾つかございました委員会等の報告におきましても、国の資金と民間の資金を合わせて振興会のようなものをつくるべしという御提言もあったところでございます。  そこで、今回の基金につきましても民間からの出捐が予定されているところでございますが、この芸術文化振興基金への寄附につきましては、税制上の優遇措置でありますとか、あるいは多くの人々や企業が芸術文化振興基金の育成に協力していることを一般に周知するということは必要であろうと思いますけれども、企業名を冠したいわゆる冠公演のような形式をとることは考えておりません。  また、個人の寄附につきましても、制度の性質からいってこれは受け入れる体制となっております。そのようなことになってまいればますます民間からの資金の拠出ということが潤ってまいろうかと思うわけでございます。
  101. 高崎裕子

    高崎裕子君 次に、基金からの助成については今後、運営委員会、仮称ですが、ここで具体化されると思いますが、この際文化庁の考え方をお聞きしたいわけです。  ことしの一月四日付の毎日新聞で、文化庁平成三年秋から、国際的なオーケストラやオペラ、バレエなどの舞台芸術や絵画、彫刻などの美術展、あるいは各国の映画祭などを一堂に集めた芸術総合フェスティバル、仮称ジャパンフェスティバルを行う、そしてこれは二年に一回開催すると報じられています。基金の助成はこういういわゆるイベントが中心になるのでしょうか。
  102. 遠山敦子

    政府委員遠山敦子君) 基金の援助事業の具体的な内容につきましては、本法案の成立後に日本芸術文化振興会において具体的に検討されることになるわけでございます。  今回の基金におきましては、新たな芸術文化の開拓を図って広く国民が親しむ機会を設けるもの、あるいは文化による特色ある町づくりを支援するという考え方でございまして、いずれも商業ベースでは実施が困難なようなものを幅広く援助の対象とすることを考えているところでございます。地域文化振興に資する地域の祭りでありますとか、あるいは我が国芸術家とか芸術団体が海外の芸術家等と共同制作をしたりあるいは交流をしたりする場を提供するものとしての国際的な芸術フェスティバルも援助の対象とはなり得るわけでございますけれども、商業ベースに乗って行われる単なるイベント的な活動費については対象にならないというふうに考えております。
  103. 高崎裕子

    高崎裕子君 イベント中心にすることは考えていない、底辺を広げることに役立てたいということで、ぜひそういう方向でやっていただきたいと思います。  時間の関係で二点続けてお尋ねしたいと思いますが、まず一点目は、基金からの助成を行うに当たっては運営委員会をつくるわけですが、この運営委員会芸術文化関係者の意見が十分に反映されるようなものにする必要があると考えるわけです。先ほども少し出ましたけれども、この運営委員会がどういう人たちで構成されるのか、とりわけ、財界関係者とか官僚出身者の方も入るのでしょうか。  それから二点目ですが、さらに振興会そのものも芸術文化振興にふさわしいものにしていく必要があります。  朝日新聞の社説で「芸術文化振興基金に注文する」というのがありましたが、振興会には公平で信頼される在野の文人をトップに充てることだ、組織の性格からいって官僚出身は避けた方がいいと提言もされています。また、音楽ユニオンが文化庁長官にあてた要望の中でも、理事長の条件として、広い分野にわたって高度な芸術的判断をなし得て、かつ総合的な能力を有する人ということを挙げています。これまでの国立劇場のように官僚関係者主導の組織ではなく、芸術文化関係者中心の組織にしていくためにもこの点は大変大切なことだと思います。  振興会理事長は文部大臣の任命ですが、これまでのように安易に官僚出身者を充てるということは避けるべきと考えますが、二点目については特に文部大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  104. 遠山敦子

    政府委員遠山敦子君) 最初の御質問の点でございますが、芸術文化振興基金援助事業の運営につきましては、芸術文化関係者を中心といたしまして、学識経験者でありますとか民間人等から成る運営委員会のような組織を設けて御審議願う予定でございます。  その中に民間企業の代表を委員にお願いする予定はあるかということでございますけれども、今回の基金が民間からの拠出も受けて行うということもございますので、これら寄附をいただいた方々の御意見も伺う必要があると考えておりまして、しかるべき経済界の幅広い見識を有するような方にも御参画いただくこともあろうかと考えます。
  105. 保利耕輔

    国務大臣保利耕輔君) 二番目の御質問でございます。  今般の基金の設立につきましては、いろいろな事情から、これを従来の国立劇場業務に追加をいたしまして名称日本芸術文化振興会というふうに改めたその経緯から、理事長を初めその役員についても現在の国立劇場の体制をそのまま踏襲することといたしております。  なお、委員から御指摘がございました理事長の人選につきましては、国立劇場におきましても従来から、広く各界有識者の中から人格、識見ともにすぐれた適任者を人選する、こういう観点からやってきたわけでございます。日本芸術文化振興会理事長としましても、現在の業務内容などから見て適任であると考えております。今後の人選につきましても引き続き、適任者を人選するという観点から理事長の任免を行ってまいりたいと思っております。  なお、理事につきましてはこれまでも、作家でありますとかあるいは大学教授でありますとか、こういった方々に御就任をいただいて民間人を登用してきたところでございますが、今、委員から御指摘のありました点は私もよく心の中に入れておきたいと思っております。
  106. 高崎裕子

    高崎裕子君 これで質問を終わりますが、本来、補正予算は義務的経費、必要やむを得ない経費に限るとした財政法二十九条から見ても、今回の改正は全く新規の施策を行おうとするものであり、そして海部内閣の独自のカラーをねらって宣伝もされてきたという経緯から見ても極めて問題がある点を指摘して、質問を終わりたいと思います。
  107. 笹野貞子

    笹野貞子君 連合参議院の笹野でございます。私は本来、文教委員会に所属しておったわけですけれども、昨年より税特の方に配置されましてこの委員会に長らく出席できず、大変寂しい思いでおりました。その間、非常に文化におくれてしまいまして、きょうは大変不安な気持ちで質問させていただきますので、よろしくお願いをいたします。  まず第一に、こよなく文化を愛する私といたしましては、この基金の制度というのは大変いいことですし、なぜこんないいことが今まで実現できなかったのか、遅きに失したという感じがひしひしといたします。しかし、ないよりはいいわけですから大いにやらなければいけません。それで、こういう後の順番になりますと皆さん方が大体質問されて私は何を聞いたらいいのか非常に困っているわけですけれども、具体的なことをちょっと突っ込んでお聞きしたいというふうに思います。  文化というのは、文化という非常に高度な情報を発信する方と、その発信した創造文化を受けるという両方の基盤がなければ成り立たないと思います。ともすると日本文化というのは高度な文化創造する方にだけ力を入れて、その文化を受ける方の基盤をおろそかにし過ぎるのではないかという気がいたします。  この基金も、そういう意味で、ひとりよがりな文化援助ということであればこれは大変問題があるというふうに私は思いますが、この政府から五百億、そして民間から百億という考え方は、つまり文化というものを発する方と受ける方との両方のバランスという意味ではこれは非常にいいというふうに思います。なぜかというと、民間が文化援助しようというその気持ちを起こすことがつまり文化というものの基盤を深いものにしていくわけで、そういう意味から、この民間から搬出される百億のことについてちょっとお伺いをしたいというふうに思います。  もともと文化というのは権力とか強制力というものがあってはならないものであって、やはり豊かな発想というのは自由なそういう空気のもとで生まれるわけですから、本来であるならば民間が文化を支えていかなきゃいけないというふうに思います。そういう点では、この百億というのはいかにも少ない数字だというふうに私は思っております。そこで、私の持論でもありますが、その基盤を豊かにするために、民間の企業あるいは個人、何でもよろしいのですけれども、こういうものにどんどん拠出しようというムードをつくっていくためには、その拠出した企業、個人の名前、その金額というものを大いに発表していくべきだというふうに思います。  そこで、ずばりお尋ねいたしますが、今度の税制の優遇措置もあり、この三十日で募集は終わっていなければいけないわけで、きょうは二十九日ですので、現在までにどれだけ基金が集まったか。そしてその拠出した個人名、企業名、そして最高の額、最低の額。  それから、これからこういう基金を出すときにはどういうふうにするとその中に入れられるのか、それらのことを具体的に教えていただければ大変幸いです。
  108. 保利耕輔

    国務大臣保利耕輔君) 先生承知のとおり、この法律が国会を通って成立をし公布をされて、初めて民間からちょうだいをするお金が振り込まれるという行為に移っていくわけでございます。現在の段階では、参議院の文教委員会で御審議をいただいている段階でございますからまだ受け皿ができ上がっておりません。したがって、民間から幾ら振り込まれたかという過去形ではこれはお答えできない状態でございます。  そこで、この法律が幸いにして国会の御了承を得て通りまして明日公布をされた段階で、既にもう月末近くなっておるわけでございますが、振り込まれてくるものと予想されますが、現在のところ、どのくらいのものが振り込まれてくるのか、めどとして百億となっておりますが、それについては、決算期ももうぎりぎり近づいております、企業のいろいろな都合等もございます、なかなか予測の難しいところでございます。詳細にわたりましては文化庁次長から御答弁をさせていただきますが、一般的な状況としてそういうことがありましたことを申し添えます。  なお、先生から前段でいろいろ御指摘のありました、あるいは御意見が述べられました点は、大変貴重な御意見として拝聴させていただきました。ありがとうございました。
  109. 遠山敦子

    政府委員遠山敦子君) 大臣から仕組みにつきまして御説明を申し上げましたとおり、この法案が早くでき上がり年度内に周知徹底できて民間の企業の御協力というものについて活発な要請というものができる状況でございました段階と、今日の御存じのような状況とではやや実情を異にしているわけでございます。  ただ、今回は、民間の各界有志から成る芸術文化振興基金推進委員会からの意見表明あるいは拠出の御協力のお考え等が明らかになってでき上がったものでございまして、委員会を中心にして拠出についての民間の御協力をお願いしているところでございますけれども、年度内のもの、あした公布されまして、あした税制上の優遇措置、指定寄附の手続も終え、あしたじゅうに振り込んでいただくという額につきましては、当初予定していたものよりは少なくなる可能性はあろうかと思います。  ただ、それは拠出の表明自体が年度内に百億円を目途としてということでございますので、今年度を過ぎるとなしになるということではないというふうに考えております。元年度内に拠出の手続を完了することが困難な企業につきましては今後、来年度以降拠出をいただくことになろうかと思いますが、芸術文化支援につきましての民間の熱意自体が薄れるわけではないと聞いておりまして、時期の問題はあるにいたしましても、民間の積極的な御協力をいただけるというふうに考えております。
  110. 笹野貞子

    笹野貞子君 ありがとうございました。  しかし、当面の予定を下回るということをお聞きしましてちょっと不安な感じがいたします。文化というのは効果がすぐわからないものですから、やはりやるかやらないかの情熱になるというふうに思いますので、どうぞこの点もしっかりと文化行政として力を入れていただきたいというふうに思います。  続いてお伺いいたしますけれども、先ほどから、基金の援助についての基準とか方法とか、選定とか対象とかというのがやはり皆さん方から非常に不安というかわかりづらいという御指摘がありました。私もそういう点では、公平で公正というのは非常にきれいな言葉ですけれども抽象的で、こういうことを具体的にしていくというのは大変なことだというふうに思います。そういう意味ではこの点はしっかりやっていただきたいのですが、そこで、ちょっと具体的な内容をお伺いいたします。  この法律を施行するに当たってその対象としては、一般的に芸術と言われるオーケストラとかオペラとかというものとは別に、新たな分野として地域のアマチュアとか青少年とか婦人団体とかというのが入る、しかも町並みとかあるいは集落とかいうようなものまで対象にされるというふうに伺って、それは大変いいことなんですけれども、これはますますやりにくいだろうなというふうに思います。  私は、どうも芸術家というのは既成概念にとらわれて少々頭のかたい方が多いように受けとめられますが、私のように若い学生と接しておりますと余り古典的なものよりも非常に新しいものを好きがって、特にこのごろは、文化祭なんかになりますと学生はロックというものに物すごく熱心です。私の大学でもロックのバンドが幾つもできておりましてほとんどの学生はそちらの方に行って聞くわけですが、私もロックの歌詞を時々見ますと、これは全部学生が作詞あるいは作曲し演奏するんですけれども、なかなかすぐれたものがあるわけですね。素直に若者の喜怒哀楽を表現しており、非常に社会的、政治的なものまでも入っております。  そこでお尋ねをいたしますが、この若者が非常に青春をかけるそういうロックとか、私も余りそっちの方はよくわからないんですけれども、そういうものまで対象にするのか。そして、これは選定委員をつくるんでしょうけれども、その中に若者を入れるのでしょうか。  またもう一つ、集落あるいは町並み保存というのは、私は京都の出身ですけれども、京都というのはほとんど借景によってその価値が保たれております。ですからそういうときには、都市開発、あるいは今、市街化調整区域の撤廃というような問題が叫ばれておりますけれども、そういう横との連絡をとっているのでしょうか、そしてそういう集落あるいは町並み保存ということで話し合ったことが今まであるでしょうか、その点をお尋ねいたします。
  111. 遠山敦子

    政府委員遠山敦子君) 最初の御指摘の点でございますけれども、新しい基金の助成事業の対象につきましては、商業ベースでは採算のとれないすぐれた芸術活動ということが必要条件であろうかと考えております。一方、今回の基金におきましては国民に身近なジャンルのすぐれた芸術活動についても助成の対象とする予定でございまして、したがってロックでありますとか大衆芸能につきましても、すぐれた芸術活動でもあるにかかわらず商業ベースでは実施困難なものに関しましては助成対象になろうかと思われます。  委員につきましては、幅広い御意見を参酌してやるということでございますので、具体的に若者がその委員に選定されるかどうかはちょっとまだ今のところ予測できないところでございますが、委員選定に当たって幅広い層の御意見を反映するという姿勢は貫かれるものと考えております。  町並みの保存でありますとか集落の問題、遺跡等の整備活用についても、今回、地域の町づくりに資するような文化活動については援助の対象にするわけでございますけれども、それらは、これまで文化庁で行っておりましたいろいろな国の指定なり選定を受けた地域についての援助事業とは別途、各地方公共団体でこういうものを整備したいというふうなプランがありましたときに、そのプランの内容がすぐれて文化による地域づくりというものに役立つというようなものがありましたときに援助の対象にしていくということでございまして、その案をおつくりになる際には各地方公共団体において十分な企画プランが練られるものというふうに考えております。
  112. 笹野貞子

    笹野貞子君 官庁同士のお話は。
  113. 遠山敦子

    政府委員遠山敦子君) 伝統的な建造物群のことに関しましては建設省ともこれまで連携をとってまいったところでございまして、かつ、地域の問題につきましてはそれぞれの地域におきまして関係機関間の調整あるいは協力関係というものが前提になろうかと思います。
  114. 笹野貞子

    笹野貞子君 特に私は京都出身ですのでこの点は非常に重大だというふうに思いますので、保存か開発かという非常に古くて新しい問題の点にも十分御配慮いただきたいというふうに思います。  続きまして、この基金の大きさというのでしょうか、つまり六百億の基金というのはどういうことかということをちょっとお聞きいたしたいというふうに思います。  先ほどからの皆さん方の御質問にも外国との比較が非常に出てまいりました。私もちょっとそのパーセントを見ますと、その国の予算に対する文化行政予算というのは日本は諸外国に比べてけた違いですね、全くけたが違う。ちなみに日本は〇・〇七%、これは実際にはほかの予算が非常にふえておりますからもっと下がっているというふうに思います。一方フランスは〇・八ですから、もう、けたが違っています、日本は〇・〇幾らですからね。そしてイタリアは〇・五というふうに、文化に対する意気込みというのはヨーロッパとかいろいろなところではもう全く違う。  その点日本は、皆さん方が先ほどからるる指摘されておりましたように、文化というものに対する取り組みが非常に弱い。私もまさにそのように思っておりますが、昨年、前の石橋文部大臣がこの基金についてゼロが三つの数字にして発足するとおっしゃったというのを私は見ましたけれども、さてこのゼロが三つということは、六百億でしたらゼロが二つですのでけたがちょっと足りない。これをこれからどうなさるおつもりなのか。そして、ゼロが三つと言われたのは具体的にどのような数字として石橋文部大臣は言われ、そして保利文部大臣はそのことをこれから具体的にどのようにされるのか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  115. 保利耕輔

    国務大臣保利耕輔君) 基金の金額は、私自身も大きい方がそれはいいと思っております。多々ますます弁ずという言葉がございますが、そういう考え方でおりますが、政治は現実のものでもございますから、同時に財政当局との話し合いの中で五百億の国の出資というものが決められたのだと思っております。  なお、前任の石橋文部大臣が御発言をなさいましたのはいつごろか詳しくは承知をいたしておりませんが、昨年の夏のころかなと思います。そのころには、そういう意気込みでこれは取り組みたいというお気持ちでそのような御発言をなさったのではないかと私は推測をいたしております。  しかし、委員指摘のように文化関係予算が少ない折、この基金の金額をふやしていくということについては私も重大な使命の一つと考えてこれから努力をしてまいりたいと思います。どうぞ委員各位の御鞭撻を心からお願い申し上げる次第であります。
  116. 笹野貞子

    笹野貞子君 終わります。ありがとうございました。
  117. 小西博行

    小西博行君 午前中から文化芸術につきましていろいろ高尚なお話もございまして何か自分自身も少し文化人になったような錯覚を覚えておるわけでありますが、私は非常に具体的にお聞きしたいと思うんです。  四、五年前だったと思うんですが、愛媛県に大三島という小さい島がありまして、そこに大山祇神社というのがございます。ここは甲冑類、よろいかぶとですね、こういうものが非常にたくさんございまして、国宝、重文という指定もされている非常に有名なところであります。私は特にこういう甲冑とか刀剣に非常に興味があるわけでありますが、刀も随分大きなものがあります。神社へ奉納したものだと思いますけれども、非常に立派なものなんですがこれがもうかなりさびが進んでおりまして、何としてもこれを国の予算で修復してもらいたいんだけれども、申請してもなかなかそこまでいきませんというわけです。  ちなみに一ふりだけさやの部分を、これは非常に古いもので革で編んであるわけですが、そういうものを同じような古さを出しながら修復するんですけれども、このさや一本で八百万かかった。実はこういうようなことがありまして、いろいろ調べてみますと、現在の段階で国宝というのは全国で大体二百五十点、重文が約二千点、このように言われておりますが、それ以外に県の指定とか何かというのがありまして、たくさんのものがあるわけです。  そこで、私はこの美術とか文化というのには二面性があるだろうと思うんです。一つは、この法案にもうたっておりますように、これからの新しい芸術とか、そういう新しいものにどんどん創造性を出していただくような援助の仕方、それからもう一つは古いものをどう維持していくか、こういう二面性があるわけで、私は若い者の創造性という意味では、保利大臣は非常に若いわけですからそういうところにターゲットを絞って、これは今までの大臣になかったようなやり方でどんどん進めてもらいたい。  それから同時に、こういう国宝、重文、あるいはそれに匹敵するような各地域のものを、本当に今回の予算で十分充当しながら、基金という話もありましたが、本気でやる気があるのかどうなのか。ただ従来と同じような形で文部省でやっておるんだということでは恐らく整理がつかないだろうということはもう過去の経験でわかりますので、そういう意味大臣決意と、現状認識といいますか、さっき申し上げた国宝とか重文あるいは各地域のものの保存の仕方とか、その点についてまずお伺いをさせていただきたいと思います。
  118. 保利耕輔

    国務大臣保利耕輔君) 委員からただいま若い文部大臣であるという御指摘をちょうだいいたしました。見ようによっては大変若いのでありますが、見ようによっては年を食っております。昭和九年生まれの五十五歳でございます。  そこで、私は、今御指摘のございました甲冑でありますとか刀剣、そういった日本の古来のいわゆる伝統文化というものは非常に重要であるというふうに認識をいたしております。と申しますのは、私自身、海外経験を積んでくる中で、日本文化のすばらしさというものを日本の国の外から見せていただいた。そして日本文化というものはまた西欧の文化と違ったすばらしいものを持っておったんだなということをつくづく感じておったわけでございます。  これが、日本という国が非常に高温多湿なために、今の甲冑等についてはさびが出やすい、あるいは日本刀等についての保存もなかなか大変だということはよく承知をいたしております。しかし、何といっても日本民族の外国に対して誇るべき伝統文化の一環でありますから、こうしたものについては十分配慮が行われていくべきである、私はそのように考えておることを申し上げたいと存じます。
  119. 小西博行

    小西博行君 それで、修理といいますか修復の問題なんですが、大山祇さんに聞きましても、いろいろ県を通じて申請しましてもなかなか許可がおりない。しかも一、二年待たされてだめだとかそういうようなことですから、あれだけたくさんのものを修理して完全なものにしていくためにはこれではもうとてもできないだろう、そのように言われております。  そこで、これは実績からいくと五〇%から八五%の範囲内で補助を受けるということになっておるようなんですけれども、これをできるだけ早く、鉄はさびますからできるだけ早い段階で手を打たないともう取り返しがつかないことになってきますから、申請してからいざ許可がおりて補助金が出るまでの期間的なもの、これを早く進めるようにはいかないでしょうか。
  120. 遠山敦子

    政府委員遠山敦子君) 重要文化財の修理というのは非常に大事だと私どもももちろん考えておりましていろいろ努力はしているわけでございますが、現在のところ修理要求に対する採択率は、過去三年間の平均で七〇%でございます。重要文化財の多くと申しますのは木材とか紙とか絹あるいは鉄など材料的に脆弱で、耐用年数を経過いたしますと再修理が必要でありますために、破損度あるいは緊急度の高いものから順次修理をしていくということで実施しているわけでございます。今後とも修理予算充実を図ってまいりたいと思います。  ただ、文化財の修理には単に予算措置だけではなくて修理技術者の養成が不可欠でございまして、そのような面も勘案しながらさらに努力を続けたいと考えております。
  121. 小西博行

    小西博行君 その修理技術者のことは今から質問することなんですが、というのは、私は上野の美術館が非常に好きでして、よく参ります。大臣、あの上野の美術館の地下室へ行ったことはありますか。
  122. 保利耕輔

    国務大臣保利耕輔君) これを機会にぜひ一度見せていただきたいと思います。まだ行ったことはございません。
  123. 小西博行

    小西博行君 実はあの地下に小さい部屋がたくさんあって、その中でいろんな仏像とかよろいかぶととかそういう修復を技術者の方が根を詰めてやっているんですね。それからあの一階の横には研究所がありまして、そこでは防腐剤とか何かの研究をやっているわけです。私はそういうふうにして時々参りましてそこの作業を見せていただくわけです。  そこで、さっきの技術者の話なんですけれども、いわゆる甲冑関係の技術者というのは実は一人しかいない。多分四、五年前だったと思うんですが、織田信長のよろい、これの修復が完成したときに私ちょうど行きました。それを見ると非常に体格のいい方だったらしいですが、その修復をするのに大体六年かかっているんですね、これ一つでですよ。というのは、糸つぐりから始まるそうです。あの絹糸を全部色染めして、そして余り新しい感じではいけませんからね。それから鉄の小さい板、革、何十万枚というものを一つずつつくっていくわけでしょう。だから一つで大体五、六年かかって完全に修復するそうです。  そのときにはかなり年配の人だったんですが、いろいろ聞いてみますとその方はもう退官されて、現在は三十七歳の方が一人いらっしゃるというふうに聞いております。その方がよろいかぶとの専門家だろうと思うんですが、これでは全国にある、さっきの大山祇なんというのはなかなかそれはできないのじゃないか。そういうのが実は現実なんですね。  そこで、具体的な専門家の養成ということになるといろんな条件があるだろうと思うんです。ただ本で読んだってできないという分野もあろうかと思うんですが、もう少しその辺を具体的に、これは今たまたまよろいかぶとだけの話ですからね。あと、もう木工関係から仏像関係から何からといったらたくさんあるだろうと思う。そういうようなものを含めて、これからどのようにして技術者の養成ということを本気で考えていくのか、その点を大臣にお聞きしたい。
  124. 保利耕輔

    国務大臣保利耕輔君) 先生の甲冑、刀剣その他伝統文化を持っておる日本のものに対しての御熱意、大変ありがたく拝聴させていただきました。この機会によく勉強させていただきたいと存じますが、細部の、これから技術者を養成していく、あるいは現在いる貴重な技術者を、保護と言っては失礼かもしれませんが、これを支えていくということについては十分に留意をしてまいりたいと思います。  なお、補足は文化庁から答弁をさせます。
  125. 遠山敦子

    政府委員遠山敦子君) 現在、伝統的な修理技術の維持向上あるいは修理技術者の養成を図りますために、選定保存技術保持者というものを認定いたしまして助成措置を行っております。甲冑の修理に例をとりますと、これは先生指摘のとおり選定保存技術保持者に一名が認定されておりまして、後継者に対するわざの伝承が行われているところでございます。  保存、修理のための技術を保持している人の養成につきましては、その分野での保存あるいは修理すべき件数がどれぐらいあるかとか、あるいは技術の達成に要するいろいろな研修の必要でありますとか、そういうことを勘案して養成されていくものと思いますので一律にはまいらないと思いますけれども、いずれにいたしましても、特に今後は海外に保存されている日本のいろいろな甲冑あるいは刀剣等の修理も含めましていろいろな要請が高まってまいろうかと思います。その意味では後継者の確保につきましてさらに努力をしてまいりたいというふうに考えております。  今回の基金の中で、国の認定によります保持者のほかに、いろいろな技術を持っておられる方の後継者養成のために基金の金の一部を援助に充てたいというふうに考えておりまして、少しずつ前進をしてまいりたいというふうに考えております。
  126. 小西博行

    小西博行君 一気に予算を思い切ってというわけにはならぬと思うんですね。しかし一度あの上野の地下室へ行って見てください、タコ部屋ですよ。小さくて、暗いんです、地下ですから。その小さい部屋の中で一生懸命やっておるんだから、もう少し環境のいいところぐらい、あの中でつくることはできると思うんですよ。ぜひともあれは考えてあげてください。大臣も間違いなく行ってくださいね。何かあそこへ修復や何か見にいくのは私だけぐらいらしいですよ。恐らくほかの方は行っていないんだろうと思います、上のきれいなところは見ますけれどもね。  だからその点もあわせて、先ほどからも、日本文化芸術、これは大いに大事だという皆さんの御意見ですが、今までと同じような形でやっていけばこれは何とかいけるんだというものじゃないと思うんです。一つこういう法案を通したからできるというものではないと思うんですね。その辺は、大臣、よほど腹を据えてひとつこれから頑張っていただきたい。きょうはもうみんな賛成なんですから、ですから全力で応援しますから、どうぞよろしくお願いします。  そのことを申し上げて、時間が来ましたので終わりたいと思います。
  127. 柳川覺治

    委員長柳川覺治君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  128. 柳川覺治

    委員長柳川覺治君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  国立劇場法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  129. 柳川覺治

    委員長柳川覺治君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  田沢君から発言を求められておりますので、これを許します。田沢君。
  130. 田沢智治

    田沢智治君 私は、ただいま可決されました法律案に対し、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、日本共産党、連合参議院、民社党・スポーツ国民連合の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     国立劇場法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、芸術文化振興重要性にかんがみ、次の事項について特段の配慮をすべきである。  一 芸術文化振興基金による援助資金については、余りに広範かつ零細な配分をすることによって、援助の趣旨が損なわれることのないように配慮するとともに、援助方針と援助対象の選定が、公正かつ公平に行われるように、その検討には広範な芸術家・実演家の参加を図ること。  二 特定分野における文化財保存修理技術者の不足及び高齢化に対処するため、その後継者の養成・確保に努めること。  三 我が国の経済力と文化予算現状にかんがみ、長期的、総合的、国際的観点に立って、今後とも、文化予算の大幅な増額に努め、併せて芸術文化振興基金拡充に努めること。  四 日本芸術文化振興会が、国立劇場の運営と芸術文化振興基金の運営を兼ねることにより、国立劇場及び「第二国立劇場」の果たすべき役割が軽視されることのないよう、十分な配慮をすること。   右決議する。  以上でございます。
  131. 柳川覺治

    委員長柳川覺治君) ただいま田沢君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  132. 柳川覺治

    委員長柳川覺治君) 全会一致と認めます。よって、田沢君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、保利文部大臣より発言を求められておりますので、これを許します。保利文部大臣
  133. 保利耕輔

    国務大臣保利耕輔君) ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意をいたしまして対処してまいりたいと存じます。
  134. 柳川覺治

    委員長柳川覺治君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  135. 柳川覺治

    委員長柳川覺治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  136. 柳川覺治

    委員長柳川覺治君) 教育文化及び学術に関する調査議題とし、派遣委員報告を聴取いたします。  山本理事より御報告を願います。山本君。
  137. 山本正和

    山本正和君 去る一月十六日から十七日までの二日間、静岡県に委員派遣が行われましたので、その調査結果の概要を御報告申し上げます。  派遣委員柳川覺治委員長木宮和彦理事田沢智治理事粕谷照美理事狩野明男委員世耕政隆委員会田長栄委員小林委員西岡瑠璃子委員、森暢子委員高木健太郎委員笹野貞子委員小西博行委員と私、山本正和でございます。  初日は、まず三島市にある国立遺伝学研究所の視察から始めました。同研究所は、遺伝学の総合研究を行う中枢機関として昭和二十四年に設置されたものであります。現在では十五研究部門四研究施設を擁し、遺伝学の研究に実績を上げております。また、昨年の四月から総合研究大学院大学として遺伝学専攻の博士課程学生を九名受け入れ、人材の育成にも努めております。他大学の博士課程がなかなか定員を充足できないでいる状況の中で定員を超える学生を受け入れられたのも、これまでの研究実績が高く評価されたものと言えるでしょう。  なお、研究所側から、一昨年より同研究所のDNAデータバンクが日本を代表して米国と欧州のデータバンクとともにDNAデータベースを共同構築することになったため、その整備充実は緊急の国際的課題となっていると指摘されました。  次に、日本大学国際関係学部を視察いたしました。同学部は昭和五十三年に我が国で初めて設置された学部で、国際関係学科と国際文化学科が置かれております。両学科とも広い国際的視野と語学の教養を基礎とした国際関係を深く理解できる人材の育成を目的にしており、毎年、海外短期研修を実施しております。  大学の概要説明の後、同学部が誇る視聴覚教育センターを見せていただきました。ここでは、音声や映像を積極的に授業に取り入れるため各種の視聴覚機器を設置して大きな教育効果を上げているとのことでした。しかし、このセンターを有効活用していくためには、教授陣に、語学能力のほかに機器を使いこなす技能や授業に有効利用するための幅広い知識、ユーザーとしての改良意見をメーカーに伝えることのできる見識が求められており、今後ともこのような人材を育成していく必要があるとのことでした。  なお、同学部からは、現在、学問的に確立していないということから認められていない博士課程の設置をぜひ認めてもらいたいとの強い要望がありましたことをつけ加えておきたいと思います。  午後は静岡県庁を訪れまして、県勢と県の教育行政の概況について説明を受けました。  同県は地理的に首都圏、中京圏及び関西圏と近く、紙・パルプ、楽器、オートバイ等の製造業、イチゴやメロン等を主要産物とする農業などが発達しているほか、遠洋漁業の水揚げ港を持つなど恵まれた環境の中にあります。  県の教育行政は、国際化、情報化、高齢化が進展する中で生涯学習体系への移行に努力しております。そこで、平成年度までを目標とした静岡県教育中期計画を昭和六十二年に策定し、現在この計画に従って、生涯学習推進本部と生涯学習推進協議会の設置、図書館の整備促進、学校開放、単位制高校の建設計画、県立大学の整備、外国人英語指導講師の招致、県立美術館の充実等の事業を行っているとのことであります。なお、県から、学級編制及び教職員定数の改善等三件の要望を受けました。  次いで、幼稚園から大学まで十二の学校を擁する常葉学園に赴きました。そこではまず常葉学園大学教育学部附属橘小学校を訪れ、オープンスペースやパソコンを利用した授業風景の視察と、四年生、六年生のすばらしいオーケストラ演奏を聞かせていただきました。同校は情操教育の一環として一学年から楽器演奏を授業の中に取り入れており、私たちは児童と教師たちの真剣な演奏の取り組みに感銘を受けた次第でございます。  その後、常葉学園大学の概況説明を受け、同学園の誇る研修センターを視察いたしました。同センターは、小学校から高校までの児童生徒を対象として、禅を取り入れた一泊から五泊の集団宿泊研修を行っております。私たち一行が視察したときは橘高校の生徒が座禅を組んでいるところでありました。変化の激しい現代社会の中で心の静寂を修養することは、青少年の心の荒廃が叫ばれる折、非常に教育効果の上がる方法の一つではないかと感じました。  二日目は久能山東照宮を視察いたしました。ここは徳川家康を祭るため二代将軍秀忠が造営させたもので、日光東照宮に比べるとやや地味ではあるものの、桃山時代の技法をも取り入れた江戸時代初期の代表的建造物として国の重要文化財に指定されております。また、同宮博物館では家康の遺品を初め同宮が所蔵する宝物を展示しており、その中には貴重な多くの国の重要文化財が含まれております。  次いで東海大学海洋科学博物館を視察いたしました。世界最大のガラス海洋水槽、三百五十種二万匹の魚等を擁するこの博物館は、我が国唯一の海洋科学をテーマにした水族館で、毎年五十三万人前後の来館者があり、社会教育施設として好評を博しているとのことであります。  続いて県立静岡南部養護学校を訪れました。この学校は肢体不自由の児童生徒のための学校で、隣接する静岡医療福祉センター児童部の入所者及び島田病院と静岡地区の在宅の訪問教育対象者が入学しております。教育課程は障害の程度に応じて四種類編成されております。また、児童部に入所して医療・訓練を受けながらの教育は、ともすれば人間関係や生活経験に幅の狭さや偏りが生じやすいことから、校外学習、交流教育、合同養護訓練といった体験的な学習を重視しているとのことであります。  同校を後に、国の特別史跡である登呂遺跡と出土品を展示した登呂博物館、県が生んだ染色の第一人者である芹沢ケイ介の作品とコレクションを展示した芹沢ケイ介美術館の視察を最後に、派遣日程を終えました。  なお、本報告で詳細に触れることのできなかった静岡県の要望につきましては、本日の会議録の末尾に掲載していただくようお願い申し上げます。  最後に、この場をかりまして、視察先の関係者の方々の後労苦に感謝し、改めて御礼申し上げます。  以上で報告を終わらせていただきます。
  138. 柳川覺治

    委員長柳川覺治君) これをもちまして派遣委員報告は終了いたしました。  なお、ただいまの派遣報告につきましては、別途派遣地での要望等をまとめた報告書が提出されておりますので、これを本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  139. 柳川覺治

    委員長柳川覺治君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時六分散会