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1990-10-09 第118回国会 参議院 決算委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年十月九日(火曜日)    午前十時二分開会     ─────────────    委員異動  十日五日     辞任         補欠選任      近藤 忠孝君     沓脱タケ子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         及川 一夫君     理 事                 大浜 方栄君                 後藤 正夫君                 守住 有信君                 会田 長栄君                 千葉 景子君                 猪熊 重二君     委 員                 石渡 清元君                 尾辻 秀久君                 岡野  裕君                 鎌田 要人君                 沓掛 哲男君                 木暮 山人君                 清水嘉与子君                 陣内 孝雄君                 野村 五男君                 福田 宏一君                 大渕 絹子君                 梶原 敬義君                 喜岡  淳君                 種田  誠君                 渕上 貞雄君                 木庭健太郎君                 諫山  博君                 沓脱タケ子君                 高井 和伸君                 三治 重信君    国務大臣        大 蔵 大 臣  橋本龍太郎君         ─────        会計検査院長   中村  清君         ─────    事務局側        事 務 総 長  佐伯 英明君        常任委員会専門        員        吉田 堯躬君    裁判官弾劾裁判所事務局側        事 務 局 長  生天目忠夫君    裁判官訴追委員会事務局側        事 務 局 長  澁川  滿君    国立国会図書館側        館     長  加藤木理勝君    説明員        内閣総理大臣官        房参事官     森高 正俊君        公正取引委員会        事務局取引部景        品表示指導課長  鈴木 恭蔵君        警察庁刑事局捜        査第二課長    増田 生成君        宮内庁次長    宮尾  盤君        外務省北米局北        米第一課長    岡本 行夫君        外務省国際連合        局審議官     池田 右二君        外務省情報調査        局外務参事官   西村 六善君        大蔵大臣官房審        議官       石坂 匡身君        大蔵省理財局長  篠沢 恭助君        大蔵省証券局長  松野 允彦君        大蔵省銀行局長  土田 正顕君        大蔵省銀行局保        険部長      竹内 克伸君        国税庁次長    福井 博夫君        国税庁間税部長  坂本 導聰君        運輸省地域交通        局自動車保障課        長        磯田壯一郎君        自治省行政局行        政課長      岩崎 忠夫君        会計検査院事務        総局次長     疋田 周朗君        会計検査院事務        総局第一局長   安部  彪君        会計検査院事務        総局第二局長   澤井  泰君        会計検査院事務        総局第三局長   川崎 恒夫君        会計検査院事務        総局第四局長   白川  健君        会計検査院事務        総局第五局長   山本  正君    参考人        国民金融公庫総        裁        吉野 良彦君        日本開発銀行総        裁        高橋  元君        日本輸出入銀行        総裁       山口 光秀君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○昭和六十二年度一般会計歳入歳出決算昭和六十二年度特別会計歳入歳出決算昭和六十二年度国税収納金整理資金受払計算書昭和六十二年度政府関係機関決算書(第百十四回国会内閣提出) ○昭和六十二年度国有財産増減及び現在額総計算書(第百十四回国会内閣提出) ○昭和六十二年度国有財産無償貸付状況計算書(第百十四回国会内閣提出)     ─────────────
  2. 及川一夫

    委員長及川一夫君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る五日、近藤忠孝君が委員辞任され、その補欠として沓脱タケ子君が選任されました。     ─────────────
  3. 及川一夫

    委員長及川一夫君) 昭和六十二年度決算外二件を議題といたします。  本日は皇室費国会会計検査院大蔵省国民金融公庫日本開発銀行及び日本輸出入銀行決算について審査を行います。     ─────────────
  4. 及川一夫

    委員長及川一夫君) この際、お諮りいたします。  議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 及川一夫

    委員長及川一夫君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ─────────────
  6. 及川一夫

    委員長及川一夫君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  7. 大渕絹子

    大渕絹子君 私は、本日新潟西山町で起きた不正融資事件についてお尋ねをする予定になっておりますけれども、その前に、大蔵大臣にちょっとお聞きをしておきたいことがございます。  数日来から住友銀行不祥事事件ということで、大変新聞等をにぎわしておるわけですけれども、ついに磯田会長辞任に追いやられるという、そうした一連の事件を踏まえまして、大蔵大臣にも昨日ごあいさつがあったというふうな報道がなされておるわけでございます。またきょうの読売新聞を見ますと、東京銀行でも銀行不祥事ということで、財テク八億円所得隠しというような問題、あるいはつくば銀行では支店次長がみずから融資して今度は恐喝をしたというような、こんな不祥事が相次いで起きている現実でございます。  これは、金融自由化へ向けて銀行が営利というか、そういうものを追求する余りに起きた事件というふうに私はとらえておりますけれども大蔵大臣の御所見あるいはこの事件に関してのお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  8. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今委員から御指摘がございましたような報道は、本日の朝刊におきまして私も目にしましたし、また、金融機関全体に改めてその業務に対する責任と申しましょうか、それぞれの行内における管理体制あるいはその職務規律徹底というものに対して努めてもらいたいという希望を持っております。  ちょうど先週、御承知のように、住友銀行の元青葉台支店長逮捕されるという事態が発生をいたしました際、大蔵省としては銀行局から住友銀行に対しましてその状況報告を求めておりました。そして、その時点において、週明けすなわち今週に入りましてから報告を聞くことになっておりましたところ、日曜日、磯田住友銀行会長辞任意思を発表されたわけであります。そして、私のところに見えましたのは昨日夕方五時でありますが、巽頭取を帯同されまして磯田会長陳謝にお見えになりました。そして、その席におきまして、この事件について、銀行という公共性の極めて高い、社会的責任の大きい職の責任者として、銀行直接の問題ではないまでもこうした事件を起こしたその責任をとって会長職辞任するという意思の表明がございました。  事務次官とともにその陳謝を受けました折に、他山の石という言葉を私は後ほどの記者会見で使いましたけれども住友銀行事件を契機として他の金融機関においても改めて部内管理というものをきちんとしていただきたいものだという印象を持ちました。と同時に、頭取を帯同されて陳謝に見えまして、会長としてなおきちんとすべきことはなして会長職辞任したいという言葉を受けましたので、立つ鳥跡を濁さずという言葉があります、処理すべきものはきちんと処理をしていただきたいということをその席で申し上げたわけであります。同時に、その後記者会見を求められましたので、その席上で私は、こうした事件に対する社会的責任をとるということで磯田会長がみずから決意し辞意を表明されたものと素直にそれを受け取るとともに、まさに他の金融機関におきましても、これを他山の石として、それぞれ自主的に行内管理体制あるいは職務規律徹底に努めていただきたいと願っているということを申したわけでありまして、きょうの報道を見ましても、一層こうした感じを強く持っております。  ただ、その席上で、例えば通達等をすぐ出すつもりがあるかという記者からの質問がございました。私は、この元青葉台支店長のかかわる事件というものが今捜査の俎上にあるわけでありまして、これから全容が当然解明されていくと思います、その結果を見て、とるべき手段というものは考えたい、今直ちに例えば通達を出して事終われりとするつもりはないということをその席上で申し述べております。  私として今受けとめておりますそのままの感じを率直に申し上げました。
  9. 大渕絹子

    大渕絹子君 ありがとうございました。  それでは、きょうの質問の本題であります新潟県刈羽郡西山町で起こった公金不正流用事件についてお尋ねをしてまいりたいと思います。  西山町は、皆さん御存じのように、あのロッキード事件を起こしました元総理田中角栄の故郷であるということで大変有名ではございますけれども、人口は八千名、有権者数が六千百余り、そして当年度会計予算におきましては二十八億四千八百万円というような、こうした純農村地域。この静かな西山町を襲った十五億円にも上る公金不正流用事件、これの概要について、まず警察庁からお話しをいただきたいと思います。
  10. 増田生成

    説明員増田生成君) お尋ね事案につきましては、本年の七月の上旬ころ、西山町の前町長の申告によりまして認知をいたしたものでございます。  西山町の元町長、元収入役等が、返済能力が乏しくかつ十分な担保提供もない土建業者二社から事業資金融資を懇請され、西山町が産業の振興等のため企業等貸し付けを行うに当たっては正現の手続にのっとることはもとより、貸付先の資力、信用状況等調査し十分な担保を徴するなどして貸付金の回収に万全の措置を講ずべき任務を有しているにもかかわらず、その任務に違背し、同業者の利益を図る目的をもって多額の現金を貸し付けて同町に対して財産上の損害を与えたというものでございます。  新潟県警秦におきましては、元町長と元収入役については、昭和六十二年九月上旬ころ一業者に対し四千万円、昭和六十三年八月の上旬ころ他の業者に対して二千八百万円をそれぞれ貸し付けた事実、また前町長と前収入役については、平成元年十二月中旬ころから平成二年二月下旬ころまでの間、三回にわたり一業者に対して約九千万円を貸し付けた事実により、本年の九月四日、貸し付けを受けた業者二名を含め元町長ら六名を背任罪で通常逮捕しております。  元町長、元収入役及び二業者の四名につきましては、九月二十五日、逮捕事実により新潟地検から起訴され、翌九月二十六日、同様の余罪事実で再逮捕して現在捜査中でございます。前町長、前収入役については、九月二十六日付で処分保留のまま保釈をされております。
  11. 大渕絹子

    大渕絹子君 事件発覚以来、西山町議会では早速調査特別委員会を設置して独自の調査を続けています。その調査報告として、七月三十一日第一号、八月十日第二号、八月二十三日第三号を発行いたしましたけれども町議会特別調査委員会では調査をすることに大変行き詰まりを感ずるということで、地方自治法の第百条に決められております百条調査権によるところの百条委員会に切りかえて現在調査を続けているところでございます。西山町は八月三十一日付で不正融資に関する調査とその概要というものを発行しております。七月十五日、警察強制捜査により必要書類等が押収されたために、その書類不備の中での調査は大変困難をきわめているということでございます。  百条委員会で、今回逮捕された六名につきまして、九月五日から六日にかけて集中審議を予定しておりました。ところが、その前日、九月四日にこの六名の中心人物逮捕ということになったわけでございます。百条委員会調査が終わった後でもよかったのではないかという声が聞かれますけれども、この九月四日の逮捕、百条委員会の前日に行ったということに何か特別な理由があったのかどうか。そしてまた、可能な範囲において、百条委員会が必要とする情報の公開について、資料提供などをしていただけるかどうか、お尋ねいたします。
  12. 増田生成

    説明員増田生成君) お尋ね事案につきましては、事案認知後、新潟県警察におきまして関係先の捜索、関係者取り調べ等鋭意捜査を行ったところでございますが、九月の上旬に至りまして逮捕すべき容疑事案が固まり、事案早期解明罪証隠滅防止等必要性から関係者逮捕したものでございます。  それから次に、犯罪捜査のために押収した証拠物件の扱いでございますが、これは法律の規定によりまして検察官に送致をされることになっております。本事案は現在新潟県警察で捜査中でございますが、地方自治法刑事訴訟法等関係法令趣旨に照らしまして、新潟県警察において、検察庁とも協議の上、適切に対処するものと思います。
  13. 大渕絹子

    大渕絹子君 寺沢秀一郎収入役品田建設融資する際、金融機関から借り入れた金利よりも三から五%高い利率を上乗せして貸し出していたという事実が判明をしております。その利ざやを別口座にプールしていたということでございますけれども、このことについて、その金の流れとかについて捜査をいたしましたでしょうか。
  14. 増田生成

    説明員増田生成君) お尋ねの点につきましては、新潟県警察においても西山町議会調査特別委員会で御指摘のような点が報告されたということを承知しておりますが、現在捜査中の事案の内容にわたる事項でございますので、答弁は差し控えさせていただきたいと思います。  なお、一般論として、刑罰法令に触れるような事実があれば厳正に対処するものと思います。
  15. 大渕絹子

    大渕絹子君 捜査中の事件ということで、こちらが求める答弁というのはなかなか出てこないと思いますけれども、それでもでき得る範囲内で答弁をしていただきたいということを申し添えます。  品田建設社長大変ギャンブル競馬等お金をつぎ込んだということで金の流れについて報道されておりますわけですけれども不正融資が一番先にされた時期について私は知りたいと思っています。ギャンブルに手を染めたのはその高額な不正のお金を返すためにやらなければならなかったというような言葉報道されておるわけでございます。品田社長に最初に融資した年月はいつごろであったか。
  16. 増田生成

    説明員増田生成君) 先ほども申し上げましたとおり、ただいま捜査中の事案でございますので詳細な答弁は差し控えさせていただきますが、私ども犯罪捜査の対象としておりますのは時効の完成していない、つまり昭和六十年以降の分について捜査をいたしております。したがって、確定的なものは申し上げられませんが、融資が始まったのはその以前からであるというふうに承知をしております。
  17. 大渕絹子

    大渕絹子君 六十年以降の捜査ということであれば、それ以前の書類については百条委員会に返していただけるというようなことはできませんでしょうか。
  18. 増田生成

    説明員増田生成君) 現在事件の全体について捜査をしておるところでございますので、事件の全体の解明ができた時点で、先ほど申しましたが、検察官とも協議の上対処をしたいというふうに新潟県警が考えておるというふうに承知をしております。
  19. 大渕絹子

    大渕絹子君 それでは、今逮捕された当事者以外に政治家関与、過去に政治家であった者も含みますけれども、この事件にそうした政治家関与というものは判明をしておりますでしょうか。
  20. 増田生成

    説明員増田生成君) 現在までの捜査ではそのような事実は把握しておりません。
  21. 大渕絹子

    大渕絹子君 金融機関からの一時借入金残高は、現在、第四銀行で四億七千四百十七万円、新潟大栄信用組合で五億円、西山農業協同組合で五億六千四百九十六万五千円、合計で十五億三千九百十三万五千円となっております。昭和六十二年以降一時借入金として資金調達され不正流用されたお金は実に五十九回に上り、総額百億三千七万円に及びます。なお、昭和六十二年六月以前一時借入金をされた分は、元利金ともにきれいに返済をされているということでございますけれども、この金の出どころについてもお答えは願えないでしょうか。
  22. 増田生成

    説明員増田生成君) 現在捜査中の事案でございまして、具体的な答弁は、まことに申しわけございませんが差し控えさせていただきたいと思います。  なお、事件概要として申しますならば、当該元町長、元収入役あるいは前町長、前収入役等が、金融機関からの借り入れあるいは公金からの流用等非常に複雑な方法で貸し付けの金を捻出しておるわけでございまして、その解明を現在行っておるところでございます。
  23. 大渕絹子

    大渕絹子君 通常の銀行の操作ということでこういう不正なお金がどんどんと貸し付けられる事実というのは、私たちも全く理解ができないわけでございます。大型不正融資が始まったと言われる五十八年の一月、そして元利金決済が済んだ六十二年六月ごろ一体何があったのかを問いかけて、警察庁徹底した真相究明をお願いして、金融機関に対する責任問題に質問を移させていただきたいと思っております。  品田建設佐藤組への融資の大半が主に税金や補助金などの一般会計から持ち出され、一般会計の穴埋めに金融機関から一時借り入れを繰り返していた。西山町の一時借入金最高限度額は現在六億円に決められております。それにもかかわらず三つの金融機関から十五億円にも上る一時借入金が流用されたということは、金融機関チェック機能が働いていなかったと思われますが、この件について関係者の方、お願いいたします。
  24. 土田正顕

    説明員(土田正顕君) お答えをいたします。  私どもは、第四銀行という銀行がございますが、この銀行から関東財務局への報告を通じて概略承知しているわけでございます。この第四銀行というのは、西山町の指定金融機関になっております。概略承知しておりますけれども、その中で得られた情報は、現在西山町の百条委員会調査が行われているというようなことを中心にしたものでありまして、何分にも現在、既に御答弁がありましたように、警察当局捜査中の事案に関連するような事柄でもございますし、私どもとしてはなおその事実関係については推移を見守りたいと考えております。  なお、金融機関チェック体制云々につきましては、第四銀行の方では百条委員会の場におきまして、自分たちについては正規報告をしておるというような趣旨説明を行ったやに聞いております。
  25. 大渕絹子

    大渕絹子君 それはおかしいと思います。報告が行っておれば当然、町の一時借入金の上限が六億と決められておりますのに十五億という金額が出てくるわけでございますので、報告をしておったという第四銀行答弁というのはおかしいと思いますけれども、いかがですか。
  26. 土田正顕

    説明員(土田正顕君) 第四銀行として一時借入金申し込みに応じました金額は、先ほど委員からもちょっと御披露があったかと思いますが、六億円の範囲内でございます。そのほかのことにつきましては私ども詳細は承知しておりません。他の金融機関からどのような行動があったのかその他についても詳細は承知しておらないわけでございます。
  27. 大渕絹子

    大渕絹子君 第四銀行西山町の指定金融機関として契約をしているわけです。その第四銀行西山農業協同組合との間では指定代理金融機関契約というものがちゃんと契約書として交わされているんです。そしてまた、第四銀行ともう一つの金融機関であります新潟大栄信用組合との間では収納代理金融機関契約書というものがちゃんと正規に交わされています。そうした契約の中において、第四銀行がそのことを知らなかったということは通らないと思います。どうでしょうか。
  28. 土田正顕

    説明員(土田正顕君) その辺のところがまさに町の公の機関であります百条委員会において御調査中のところであろうかと承知しております。
  29. 大渕絹子

    大渕絹子君 これらの金融機関の一時借入金申し込み手続収納手続が、定められた法令とか契約書及び西山町の財務規則等に沿った形でちゃんと行われておったならば、今回のこの事件は起きなかったわけでございます。だから、金融機関同士承知をした上で行ったというふうに見られても仕方がないのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
  30. 土田正顕

    説明員(土田正顕君) 第四銀行借り入れ申し込み及び貸付決定その他に対し、町との関係でどのような手続を行っておったか、それは正規のものであったか不備なものであったか、その他の問題は、御関心はあろうと思いますけれども、これにつきましてもまさに百条委員会で御調査中であるというふうに承知をしております。
  31. 大渕絹子

    大渕絹子君 そんな、書類不備であったかどうかということは、私ここに契約書の控えをいただいてきています。契約書に関しては不備はないと思います。この中にもきちんとその旨うたってあります。そして、地方自治法でしょうか、一時借入金の部分の法令があるわけですけれども、この法令に沿っても一時借入金限度額というものが法令で定められておるわけでございますので、今の答弁は納得できません。
  32. 土田正顕

    説明員(土田正顕君) 一時借入金の問題につきましての契約書、ただいま不備がないというようなお話でございましたが、指定金融機関としましては、そのような申請を受け入れまして、それに対して町に資金を供給したというようなことは、それならば当然業務としてあり得たことと思います。  問題は、ただいまお話しの、なぜほかの金融機関が行った一時借入金について、それが第四銀行承知するところとならなかったのかというような問題があるいはあろうかと思いますが、この点につきましてはなお詳細この百条委員会その他において調査中であると伺っております。
  33. 大渕絹子

    大渕絹子君 どうも私、よくわからないんですけれども、現に貸付金額残高というものが今焦げついた状態になっているのは、先ほど申し上げたように、十五億円という金額があるわけです。そして第四銀行指定金融機関としての契約をしております、指定代理金融機関あるいは収納代理金融機関を総括をする機能をちゃんと果たしていかなければならない任務というものを負っているわけですね。そういうものがありながら承知をしないという、第四銀行自体承知をしておらない、あるいは今御答弁なさった方がわからないということは、どうしてももう少し追及をしていきたいというふうに思うんですけれども捜査中ということで大変御答弁の歯切れが悪いということで、私もこれから先ちょっとどういうふうに質問しましょうかね、困りましたね。ちゃんと答えてほしいんですよね。  実際これはもうわかりきっていることなんですょ。金融機関同士がこうしてお互いに指定機関に関する契約書を一つずつ交わしています。町とそれから第四銀行第四銀行と農協、第四銀行と大栄信用組合ということでちゃんと契約書を交わした中で、一時借入金あるいは西山町の公金の取り扱いについての業務を行ってきているわけなんです。当然、一時借り入れがあった場合には第四銀行報告をする義務というものは負っていたわけなんです。だから、報告はしてあったと思うんです。その上でなおかつ十五億円にも上る不正融資というものが行われておったことは、これはもう百条委員会でも事実として私たちの手元に調査報告がされているわけでございますので、その件についてもう一度御答弁を願いたいのです。
  34. 土田正顕

    説明員(土田正顕君) ただいまのお話でございますが、第四銀行報告がしてあったと思うというお話でございます。まさにその点について調査の必要があるのではないかと思いますのは、たまたま実は地元紙を見ておりますけれども、この百条委員会において関係者がいろいろと供述をいたしまして、その中でこの地元紙の表現によれば、第四銀行から出ました証人は、この新聞の表現をそのまま読みますと、「承知してないところでの発生したことの責任は負いかねる」というような発言をしたというふうに報道されております。  私ども、その事柄の真実がどこら辺にあるかということについて判定すべき責任なり地位にあるとは思っておりませんが、むしろ現在、再三申し上げておりますように、町議会の公の機関であります百条委員会が、まさにこのような問題について事実解明に当たっておられると思いますので、その状況を見守りたいと考えておるわけでございます。
  35. 大渕絹子

    大渕絹子君 では、例えば報告が農協や信用組合からなかったといたしましても、総括責任としての第四銀行の立場ほどうなりますでしょうか。
  36. 土田正顕

    説明員(土田正顕君) その辺につきましては、どちらかと申しますと金融監督当局がお答えすべき問題として適当ではないと思いますので、これは地方自治法に基づく地方制度の問題でございますので、法律的な見解はしかるべきその方面の当局から申し上げることが適当であろうと思います。  ただ、いずれにいたしましても、現在まず事実解明が先行すべき段階ではないかと考えております。
  37. 大渕絹子

    大渕絹子君 事件が発覚をしたのが七月の十日なんですね。銀行局長としては、みずから調査をするとか、そういう義務があるのではないんですか。全部百条委員会あるいは警察捜査にお任せをしているわけでございますか。
  38. 土田正顕

    説明員(土田正顕君) いろいろな事柄はありましょうが、もちろん国会委員会の方で御質問がありますときには、それに対しまして誠実に調査の上お答えを申し上げたいと思っております。
  39. 大渕絹子

    大渕絹子君 ここは国会決算委員会と思いますけれども、誠実なお答えをいただいているようにはどうしても思えないのです。  それでは、今局長から御指摘がありました自治省の関係について移っていきたいと思います。  地方自治法第二百三十五条の三に、一時借入金についての定めがあります。「一時借入金は、その会計年度の歳入をもって償還しなければならない。」。それができずに翌年度に新たに借り入れを起こすいわゆる借りかえが行われていました。昭和六十二年以降だけでも第四銀行で八回、西山農業協同組合で十四回、大栄信用組合で八回もその借りかえということが行われています。特に西山町農協と大栄信用組合では借りかえに加えてさらに追加貸し付けまで行っている。つまり、既にもう焦げつきが生じているのに、今後の償還計画あるいは資金繰り表などの資料提出もないままに追加貸し付けに応じている。しかも、その組織の本部でありますところの稟議にかけられて許可をされているという事実があります。  農協や信用組合の監督指導を行う立場にあります新潟県の金子知事は、九月四日の議会でこの件に触れまして御答弁されました。借りかえが繰り返され、貸し付けが長期化している状況の中で、さらに追加貸し付けに応じたことは資金の固定化などの観点から考えて金融機関としてもう少し配慮があってよかったのではないかと、こういう答弁をしております。  自治省の御見解はいかがてしょうか。
  40. 岩崎忠夫

    説明員(岩崎忠夫君) まず、借りかえについて当該年度の歳入をもって償還しなければならないとされているのじゃないのかということに関しての御質問でございますが、御指摘のとおり、地方自治法上の一時借入金につきましては、自治法の二百三十五条の三の規定にございまして、一時借入金は歳出予算内の支出をするために借り入れをするものである、かつ、借り入れた会計年度の歳入をもって償還しなければならないというふうにされているところでございます。  ただ、問題とされております、ただいま御指摘のありましたいわゆる借りかえについての事実関係についてでございますが、ただいま町と捜査当局において現在その事実の解明中であると伺っているわけでございまして、御指摘の一時借入金返済につきましても、現在のところ地方税等の当該年度の歳入をもって償還されているかどうかも明らかでないと聞いているところでございます。  いずれにしましても、まず町において事実関係解明を進めることが必要であると考えておりまして、自治省としては県に対して早急な事実関係の把握を指示いたしているところでございます。
  41. 大渕絹子

    大渕絹子君 百条委員会では、ある程度の権限を持ってこの調査をしていると思うんですけれども、その百条委員会調査で、先ほど申しましたように、第四銀行で八回、西山町農協で十四回、大栄信用組合で八回という借りかえが行われているというような調査結果が出ているんです。このことをとらえても、まだわからない、捜査中ということになるのでしょうか。
  42. 岩崎忠夫

    説明員(岩崎忠夫君) 問題とされておりますいわゆる借りかえについての事実関係についてでございますが、借りかえが一体どういう立場で、どういった権限に基づいて、どういった内容のものについてされているのか、こういうことについて、事実関係を現在解明中だというように伺っているわけであります。調査委員会で現在調査しておるのも、そういったことについて調査を進めておられるというように承知いたしております。
  43. 大渕絹子

    大渕絹子君 それでは、先ほど私が出しました新潟県知事の答弁についてのお考えはいかがでしょうか。
  44. 岩崎忠夫

    説明員(岩崎忠夫君) 新潟県知事がどういったことについてどういうような答弁をされたか、詳細には承知していないことでございますが、一時借り入れの問題についてはただいまお答えしたとおりのことでございますし、また、追加貸し付けということについて、私どももちろん事実関係をつまびらかに知らないわけでございますが、当然一定の一時借り入れではない一般の貸し付けを行うには、予算に基づいて、予算の執行として行われるべきものと考えております。  それが事実関係とどういうことであったかというようなことについては、私どもまた現在調査中ということでございますので、承知していないところでございます。
  45. 大渕絹子

    大渕絹子君 地方自治法施行令の第百六十八条の二の第一項に「指定金融機関は、指定代理金融機関収納代理金融機関」等の「公金の収納又は支払の事務を総括する。」と規定されています。これは私先ほどの局長さんとのやりとりの中にも出させてもらいました。  同じ条の第二項においては、「地方公共団体に対して責任を有する。」とされています。したがって、西山町農協や大栄信用組合の落ち度は、指定金融機関であります第四銀行がその総括責任を負わねばならないと思いますけれども、この件に関して自治省の御見解を聞かせてください。
  46. 岩崎忠夫

    説明員(岩崎忠夫君) 御指摘がございましたように、指定金融機関は、指定代理金融機関収納代理金融機関公金の収納または支払いの事務を総括する立場にあるわけでございます。地方自治法施行令におきましては、指定金融機関指定代理金融機関及び収納代理金融機関において取り扱う事務を含めまして、公金の収納または支払いの事務につき当該地方公共団体に対して責任を有すると規定されているところであります。  しかしながら、御案内のとおり、西山町の農業協同和合は西山町の指定代理金融機関になっておりますし、新潟大栄信用組合西山町の収納代理金融機関とされているところでございますけれども新潟県を通じて聞いたところによりましても、問題とされている借入金に係る事実関係というのは、いまだ解明を進めている段階にあるということでございます。したがいまして、事実関係が明らかでない以上、具体的にそれぞれの金融機関の行った行為についてどのような責任があり得るかどうかについては、なかなかお答えしかねるところでございます。
  47. 大渕絹子

    大渕絹子君 いや、その事件のことでなくて、規定に定められたことに対してどうかと聞いているんです。
  48. 岩崎忠夫

    説明員(岩崎忠夫君) ただいま御説明申し上げましたように、自治法施行令において、指定代理金融機関及び収納代理金融機関において取り扱う事務を含めまして、指定金融機関は全体を総括する立場として公金の収納または支払いの事務について地方団体に責任を有するということでございます。  ただ、問題とされております事柄がこうした公金の収納または支払いの事務そのものに該当するかどうかとか、どういう立場でどういったような行為がなされているのか、そういうことについては現在事実の解明中であるというように承知いたしているところでございます。
  49. 大渕絹子

    大渕絹子君 捜査中ということでありましょうけれども、なかなか私が期待をするようなものが御答弁に出てこないのは仕方がないと思いますけれども、それでは、この件につきまして大蔵大臣お尋ねをいたしたいと思います。  西山町の不祥事について質疑を続けてまいりましたが、過去においても市町村長や収入役といった自治体の幹部が公金に手をつけて町や村の財源に穴をあげるといった事件が後を絶たないわけでございます。和歌山県下津町の三十億円の不正横領事件、あるいは岐阜県では長い間務めた女性町長が町の開発公社をめぐる問題で辞任に追いこまれるとか、福岡県苅田町の当時の町長による住民税の流用疑惑であるとか、あるいは大阪市の市役所、議会ぐるみの公費乱用の事件、さらに警察庁によりますと、収賄事件で摘発された地方公務員は本年七月末までに四十六人を数えているということでございます。こうした自治体を舞台にした地方公務員の汚職事件は後を絶たない現状です。中央政界でもリクルート事件で厳しく問われたはずの政治浄化や政治改革の実行が遅々として進んでいない現在、こうした地方の草の根レベルでの金権体質、政治腐敗が蔓延していると言えると思います。  金融機関による不正融資事件も先ほど来のお話のように続いているきょうこのごろでございます。財政全般の責任者としての大蔵大臣責任は非常に重いと思います。大臣の所見と今後の行政指導についてお答えをいただきたいと思います。
  50. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 先刻来、委員の御質問に対しましてそれぞれの事務当局から答弁がなされておりますのを私も聞いておりまして、委員が先ほど歯がゆいという言葉を使われたお気持ちもよく理解をいたすつもりであります。  ただ、確かに現在警察捜査が進行中であること、また町における調査というものも進行中であり、それが資料等について捜査当局への提供依頼がなされているような状況の中でなお全容が明らかでないこともまた事実であります。そしてその中には、先刻来委員指摘をされました幾つかの問題点が存在している可能性のあることを私も否定をいたしません。この捜査が今後事実の解明という結論を迎えました段階で、改めてこの中から出てまいりました金融機関に対する指導等の問題点、それを見まして私は適切に対応していきたいと考えております。
  51. 大渕絹子

    大渕絹子君 ありがとうございました。  それでは、次に金融自由化ということでちょっとお尋ねをしていきたいと思います。  大蔵省銀行行政は、都市銀行の力を強くすることが金融コストを下げるというような見解から、これが日本経済を強くさせるというような方針で進められてきたように思われます。こうした都市銀行を強化するというような、そうしたことがとりもなおさず営利主義に走って、先ほど米の不祥事件にも結びついているという現実であろうかと思います。こうした中で、金利の自由化というようなものが取りざたをされて久しいのですけれども、アメリカは日米構造協議金融問題だけはその対象から外したが強く金利の自由化は求めています。  これを受けて大蔵省では、二年から五年ぐらいかけて、国会にはかけないで実施をしたい意向があるやに言われていますけれども、ここら辺のことをちょっとお聞かせいただけませんでしょうか。
  52. 土田正顕

    説明員(土田正顕君) 私からとりあえず従来の事実関係について御説明を申し上げます。  いわゆる金利の自由化、これは金融自由化の中の非常に重要な一部分であるかと存じますが、預金金利の自由化というのは、手続的には、現在臨時金利調整法という法律の体系のもとで、預金金利の最高限度を定められておりますものを漸次部分的に外していくというのが手続の実態でございます。したがいまして、このような臨時金利調整法の運用ということで行政当局でいろいろ段取りを進めてまいっておるところでございます。  それから、この問題につきましての米国の態度というのは、本年五月、日米金融協議の会合が東京でございましたときに、米国から日本の預金金利の自由化についての強い要望が表明されたということは事実でございますが、私どもが預金金利の自由化を進めておりますのは、このような米国の要望を受けてということではございませんで、日本としての自主的な判断に基づいて行っておりますことは今さら申し上げるまでもないところでございます。  そこで、この預金金利の自由化はどういう趣旨から行うのかということでございますけれども、これにつきましては学者によって編成されました金融問題研究会のレポートなどもいろいろあるわけでございますが、そのねらいの要点を申しますと、やはり預金者と金融機関、それから金を借りる借入者との間の公平な所得分配を実現する、それから競争原理の導入による金融機関経営の効率化及び広く申せば資源配分の適正化というようなねらい、さらには、我が国の金融市場は既に世界の三大金融市場の一つになってまいりました。その金融市場の一層の自由化による世界経済への積極的な貢献などの意義が認められるわけでございまして、従来から原則論としては前向きにこれを推進することとしております。ただしその際に、この預金金利の自由化によって無用な混乱を生ずることは避けなければならないということはまさに御指摘をまつまでもないところでございまして、この点につきましては私ども逐次大口の定期性の預金のものから順を追って慎重な配慮のもとに進めたい、着実に推進したいと考えて今日に至っております。  なお、今後もこの信用秩序にも配意しながら着実に、しかし前向きにこの預金金利の自由化を進めたいと考えているところでございます。
  53. 大渕絹子

    大渕絹子君 国民のための行政ということでございますし、金利の自由化によって得られるものについて今お話があったわけですけれども、本当にそんなにスムーズにうまく国民の利益を考えて金融自由化が進められていけるのかどうか疑問に思います。自由化をすることによって大手の銀行金融磯関に利益が集中するというような現象は起きないでしょうか。中小金融機関や地方銀行が大きな痛手を受けるというようなことはないでしょうか。アメリカではこうした問題が大きく取りざたをされて地方の銀行が倒産を続けている現状を、報道を見ておりますけれども、こうした点はいかがでございますか。
  54. 土田正顕

    説明員(土田正顕君) 御指摘のように、預金金利の自由化を進めますと競争は激しくなるわけでございます。その競争を野放しにいたしますと、確かに大手の銀行、例えば都市銀行の力を強くするというような一面的な現象も発生するかと思います。しかしながら他方、これまで日本の金融機関はそれぞれ長い歴史と伝統、地盤を持っておりますので、地方銀行以下信用金庫その他の中小金融機関それぞれが自分の地盤を持ち、自分の固定的な取引先を持っておるわけでございますから、全国を通ずる均一のサービスを提供するような大手の大銀行にないような固有の営業戦略を展開すれば、それそれ自分の金融機関のいわば適所と申しますか、自分の金融機関に向いたところでその技能を発揮すれば、中小金融機関が大都市銀行などに飲み込まれるようなことが一概に起こるはずはない、その辺はいろいろと従来から私ども金融機関の方々と意見交換を続けているところでございます。  なお、これは余談でございますが、アメリカで大きく取りざたされている問題というのは私ども承知をしております。ただ、これが預金金利の自由化のみがその原因であったのかどうか、それについてはいろいろな説があり、またこの五月の日米金融協議で私どもがその問題を提起したときに、アメリカの財務省当局は預金金利の自由化が直接の原因になったものではないということを説明したところでございます。なお今後、実情及びあのような混乱を防ぐべき方策について研究を進めてまいりたいと思っております。
  55. 大渕絹子

    大渕絹子君 現に実施をしたアメリカでそうした混乱が続いている事実をとらえる中で、日本でもそんなに性急にではなくて、本当に国民のための政策として打ち出していってほしいことを強く要望しておきたいと思います。  さて、用意をいたしました質問は以上でございますけれども、内閣総理大臣の代理として橋本大蔵大臣が現在務めておられますので、ちょっと残りました時間で、私お訴えをしたいことがございます。  イラク事件勃発以来、その貢献策を求められた政府は四十億ドルの金銭援助というようなものを決定いたしましたが、さらにアメリカからの強い要請ということで、国連協力隊というような名のもとに自衛隊の派遣の道を開こうとしている。今現在政府でそれの法律、それが可能になるような法律をつくりたいということで努力をされているというニュースを連日私は見ております。このことに非常に憂慮しておるわけでございます。  あの忌まわしい戦争が終わって四十五年、日本は、多くの国々に対して侵略者としての戦争を体験してきた国でございます。私は先月末、社会党の田邊訪朝団の一員として朝鮮民主主義人民共和国を訪れる機会がありました。かの国の人々にとって日本に対するあの植民地支配への怨念、それから四十五年間の冷戦構造の中で日本に対する気持ちというものが非常に冷えているという現実に直面してきました。五万人の子供たちによって行われたマスゲームの中で、抗日魂を忘れるなというスローガンのもとに子供たちが鉄パイプを持って行進するあの姿を見たとき、まさに侵略国日本の姿をまざまざと見せつけられた思いがいたしました。  朝鮮半島はもとよりのこと、中国大陸において、あるいは東南アジアの諸国において私たち日本人が行ってきた侵略者の戦争、そのことは私たち自身はもちろん、子供たちの代、孫の代までその責任とそれに対する償いの気持ちというものを語り継いでいかなければならない責任を私たち国民がみずから持っているわけでございます。  その反面、日本国内はどうだったでしょうか。広島、長崎はもちろんのこと、沖縄、東京、そして私の新潟県は長岡、数々の空襲によって焦土と化していった日本の国内、私たち日本国民は侵略国家であったとともにまた戦争による被害国家でもあったわけでございます。多くの人たちの血が流されました。その反省のもとに日本は平和憲法を掲げる中で、戦争の放棄ということを唱えて今日まで来ました。そして、軍備を行わない国として栄えてきたと私は思っております。現在、ソビエトやアメリカが余りにも軍備を拡大し過ぎたために経済が行き詰まっている状況を見るとき、日本のとってきた方向は決して間違いではなかったと思うんです。こうした中で、今まさに自衛隊の派遣ができる道を開こうとしている政府のとっている態度は、本当に疑問に思われてならないんです。  大蔵大臣、あなたは自分の息子や娘を戦火の中に送り込むことができますか。委員の皆さん、皆さんは戦争経験をなさっている方もあろうかと思います。そうした戦争への道を開く今回の法律に対して、今は亡き鈴木茂三郎さんが、青年よ再び銃をとるなと言った名言を残したわけでございますけれども、それを私は万感の思いを込めてささげたいと思います。そして質問を終わります。  ありがとうございました。
  56. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) これは私が御答弁を申し上げるべきものではないのかもしれません。そして、今の大渕委員の声は、きょう海部総理が帰られますその後におきまして総理にも私からお伝えをしたいと思います。  ただ一点、今のお話を伺いながら、同じように空襲を覚えており、そして自分の家を焼かれ、そして機銃掃射を受けて逃げた記憶のある世代の一人として、私はともにお考えをいただきたいことを持っております。  ちょうどイラン・イラク戦争の最盛期といいましょうか、最も激しかった時期、我が国のタンカーがペルシャ湾においてしばしば被弾し、また船員の中から死亡者を出す事態に至りました。私は当時運輸大臣でありました。そして、そのとき日本の船員たちから、日本の船で何とか守ってほしいという悲痛な叫びが上がっておったことを今も覚えております。しかし、その当時当然のことながら海上自衛隊が領海を越えてペルシャ湾まで日本船の保護に赴くことはできず、そして各国からもそういうことは求められませんでした。しかし同時に、海上保安庁に対してせめて日本の巡視船が現地に赴いて、海上交通の安全確保という視点からでも協力してほしいという要請を受けました。  内々保安庁の職員の意見も聞いた上で、私は必要ならば巡視船を現地に派遣する決心をいたしました。ただし、当時の事務当局と私の間は激烈な議論もいたしました。しかし、最終的に私が巡視船を派遣する必要があるなら派遣をするという決断をいたしましたのは、まさに現地にいる、そして我が国のために、我々の毎日の生活のために石油を運ばなければならない日本の船員たちから何とかしてくれという悲痛な叫びがあったことであります。  我々はあくまでも武力の行使をするつもりはありません。また、国連の要請による行動においても、日本が武力の行使をする、あるいは武力による威嚇を相手に行うといった事態での協力というものはできないでありましょう。また、すべきではありません。しかし、その中において我々が国連に対してどれだけの協力ができるかを模索することは同時に我々の責任でもあると思います。  現在政府は部内において、御指摘のように、国連平和協力というものに対して法制度をもってそれを明定する作業を続けております。これはいずれ国会において御審議をいただく場があろうかと思います。我々はあくまでも武力の行使を前提とする、あるいはその武力をもって他国を威嚇する行動をとる、そんなつもりはありません。憲法のもとにおいて我々の行動にはおのずから限界がございます。しかし、それと同時に、その国連の要請によって行える我々の行動のぎりぎりはどこかということが私は本当に真剣な論議を要するものだと考えておりますし、そうした御論議をいずれ本院においても行う時期があるであろうことを私も脳裏に浮かべているところであります。  御意見は傾聴いたしました。
  57. 喜岡淳

    喜岡淳君 今大渕委員の方から四十億ドルの問題が言われましたけれども、もう既にちまたには、国民の中では、私たちが払った消費税の一部がひょっとして使われるのではなかろうか、お金には色がついていないから何に使われるのかわからないというような不安も広がっております。  さて、きょうここにいる決算委員の皆さん方は、この間の選挙の際、消費税を見直しすると公約した方もいらっしゃるでしょうし、消費税は廃止をするという公約をされた方もいらっしゃると思います。それぞれが公約を実現する立場から決算委員会でやっていくということになるかと思います。  そこで、大蔵大臣大蔵省中心質問をさせていただきたいと思うわけですが、去る八月七日大蔵省の方からいわゆる消費税を一年間やってみた結果の実態報告といいますかフォローアップ、英語で言うのがよくわかりませんが、実態追跡調査とでもいいましょうか、一年間消費税を実施した結果どうだったのか、そういう報告が発表されております。  この調査結果をもとに消費税が定着されたというような御意見も大蔵省の方で聞いたわけでありますが、国民の多くの人たちは、調べてみなければ実態がわからないから今までは黙っていましたけれども、こういう実態調査が出た結果を見て多くの人たちは、何だやっぱり消費税でもうけているではないか、消費税は届いていないではないかと、そういう国民の不満なり疑問の声がこの調査結果によって私は証明されたというふうに思うわけです。そういう意味では税金に対する不信感、政治に対する不信感を解決するためにやはり一日も早くこういうものはやめていただきたい、やめるべきではないか、そういう立場からこのフォローアップ報告についての質問をさせていただきたいというふうに思います。  まず最初にお聞きをいたしますが、国税庁からいただいた資料の中には、平成元年平成二年それぞれ消費税を定着させるために国税庁が行った主な施策等というのが書かれております。これを読んでおりますと、消費税が実施された平成元年、国税庁が消費税のPRをテレビとかラジオで四千二百本やった、新聞広告が七千百万部に上っておる、雑誌広告は五百八十万部、ポスターは数百万枚というふうに書かれております。このほかにも消費税の事業者向け説明会、例えば平成元年の一月から二年三月までで全国で七万二千回ということでたくさんの行事が行われております。こういった消費税を定着させるために一体どれくらいの費用が使われたのか、税金が費やされたのかということでありますが、総理府の方は大体どれぐらい使われたのか、また大蔵省の方もどのぐらいの広報予算というものを使われたのか、教えていただきたいというふうに思います。
  58. 森高正俊

    説明員(森高正俊君) お答え申し上げます。  消費税を含みます税制改革に関する総理府本府のいわゆる政府広報関係経費につきましては、定時広報番組等年間契約をしているものもございまして、税制改革関係の広報経費だけを抽出することは非常に困難でございますが、あえてこれを抽出可能なもののみを集めますと、消費税導入前の昭和六十三年度に実施した経費は総額約二十億円、内訳といたしましては、新聞、雑誌で十億円、それからテレビ、ラジオで六億円、その他四億円程度というふうなことでございます。また、消費税導入後の平成元年度におきましては総額約十五億円程度、内容といたしまして、新聞、雑誌で約十二億円、テレビ、ラジオで約二億円、その他約一億円でございます。
  59. 喜岡淳

    喜岡淳君 日ごろから節約とか行政改革を唱える総理府としては、よくこういう二十億、十五億というお金を使っておるということに改めて驚いたところであります。  なお、大蔵省の方もそれぞれ独自に広報活動等等をされておると思いますが、昭和六十三年あるいは消費税導入の平成元年、どれぐらいの広報予算というものが費やされたのでしょうか。
  60. 石坂匡身

    説明員(石坂匡身君) 消費税の広報につきましては、税制改革分だけを取り出すということはなかなか困難なのでございますけれども、あえて計算をさせていただきますと、昭和六十三年度で約十億円程度、平成元年度で約三十億円程度でございます。これは先ほど委員指摘のように、さまざまな税制改革の広報活動に使わせていただいたということでございます。
  61. 喜岡淳

    喜岡淳君 総理府が使った費用あるいは大蔵省が使った費用、これは六十三年度だけでも両方足しますと単純に約三十億円を超える。元年度は両方足しますと四十五億円を超えるというふうに多額な費用が使われたわけでありますが、総理府としては、日ごろ節約を訴えられる立場から見ましてどうですか、これくらいの費用を使った感想としては。
  62. 森高正俊

    説明員(森高正俊君) 総理府広報室におきましては、執行予算約百二十億円の予算をもちまして政府広報を実施いたしておるわけでございますが、各それぞれの広報テーマにつきましては、そのときどきの重要広報テーマというふうなものにつきまして効果的に実施するように努めているところでございます。
  63. 喜岡淳

    喜岡淳君 それでは次に行かせていただきますが、消費税については、八月七日のフォローアップ小委員会の後加藤小委員長記者会見をされておりますが、おおむね順調にいっておるというような感想を述べられております。私は反対でありまして、国民の多くの人たちの中には消費税が受け入れられたとか定着したという感じは薄いのではないかと思うんです。なぜかといいますと、ほとんどの人たちの本音を言いますと、消費税を払わなければ物を売ってくれないではないか、いいとか悪いとか言ったって売ってくれないんだから嫌々払っているんだというのが本音の気持ちであります。  それから、物価への影響の問題もほとんどないというような言い方をされておったようですが、このフォローアップ小委員会報告を見た中ででも食料品とかサービス関係は三%以上物価への影響が上がっております。食料品が三%以上上がったわけですから、これはもう毎日毎日朝から晩まで買い物をするたびに生活への影響は出るわけですから、物価への影響がほとんどないというのは私はやはり表面的な言い方であろうというふうに思います。  それから、地方自治体の方も、考えてみますと、消費税の転嫁は十分うまくいっていないだろうというふうに思います。私は香川県に住んでおりますが、香川県知事もことし早々と県営住宅への消費税の転嫁はやめますということを発表いたしております。私の調べでは、市町村では下水道で約三〇%が取っておりません。市町村の病院、地方の病院では二〇%が取っておりません。上水道でも地方自治体の一五%程度は消費税を取っていないわけですから、やはり地方自治体の中にも消費税は定着していない。消費税を実施するのに地方自治体の中にも抵抗があるということではないかと思うわけですが、果たして消費税は定着したと言っていいのかどうか。大蔵大臣の御見解を伺いたいと思います。
  64. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、国民の中に消費税についてなおさまざまな御意見があることも承知をいたしております。その上で消費税というものが国民生活の中に定着しつつあるということは事実である、そのように思います。
  65. 喜岡淳

    喜岡淳君 形式的な定着というのと国民から歓迎をされて腹から受け入れられるというのとは全く違うだろうというふうに思いますし、私は国民感情は後者の方だろうというふうに思います。  この関係でありますが、ついせんだって、六月二十九日でしたか、大蔵省の方から八九年度の、つまり消費税をやった一番最初の年の税収実績というものが発表されております。この八九年度の税収実績、一般会計分ですが、これを見ておりますと、消費税の収入予算三兆六千百八十億円の収入を見積もっておったようでありますが、実際は予想を下回って三兆二千六百九十九億円ということであったようであります。この大蔵省の発表を見ますと、消費税は見積もりを一〇%下回って入ってきたという結果になっております。この決算委員会でもいつも税収見積もりの誤りが議論されておるわけですけれども、一〇%というのはやはり大きな見誤りだろうというふうに思うんですが、どうしてこういうふうに一〇%も入ってこないんでしょうか。
  66. 石坂匡身

    説明員(石坂匡身君) 平成元年度の一般会計分の消費税の実績につきまして今数字の御指摘がございました。確かに予算に比べまして三千億強程度の不足が生じた、これは事実でございます。一〇%弱、九%強というふうなことでございました。  これは確かに見積もりを間違えました、これだけの差が出ましたということにつきましてはおわびを申し上げなければならないと存じますけれども、ただ、消費税というものが元年度に入りまして全くの初年度でございます。したがいまして、通常、税収といいますものは前年度の実績というふうなものを十分分析いたしまして、それに基づいた見通しというふうなものをつくっていく、そこで、何というんでしょうか、見通しの正確性というものも上がってまいるというふうなことでございますが、何せ全く初めての税収の見積もりであったものでございますから、なかなか手がかりとなる資料が乏しゅうございました。したがいまして、これを見積もりましたときは、当時の使用し得る法人企業統計等の付加価値、それからGNP統計の消費支出あるいは輸出、そういった数字を使いまして、それを経済見通しに基づきまして補正をしながら税収見通しを当時でき得る限りの努力をいたしまして正確を期したつもりでございます。ただ、残念ながらこうした結果になったことは申しわけないと存じますけれども、やはり初年度でなかなか見積もりというものに難しい点もあったという点は御理解を賜りたいと存じます。
  67. 喜岡淳

    喜岡淳君 確かに初めてのことですから、資料がないということで御答弁になったわけですが、しかし、補正予算の後ですよ。補正後一〇%も下回るということは、これはやっぱり今の説明では理由が説明できないと思うんです、補正後なんですから。もう全然最初からしたんじゃないですからね。そこでこの消費税については、やはり何か入ってこない理由があるのではないか、そういう気がしてならないわけです。  もう一つこの八九年度の税収実績を見て感じましたことは、これまで消費税の導入に当たっては直間比率の是正ということが金科玉条のごとく言われてきたわけであります。しかし、この八九年度税収の実績を見てみた場合、むしろ直接税の比率の方が上回ってしまったわけです。八八年度の直接税は七三・二%、八九年度は消費税をやったわけですが七四・一%に上がっています。間接税は逆に八八年度二六・八%から二五・九%に下がっているわけです。直間比率の是正ということが言われたわけですが、消費税をやった結果、逆に直接税の比率が上がってしまった。こういうことを見ても直間比率の是正などということと消費税というのは、導入当初から全く別問題である、無関係なんだということが証明されているように思うわけであります。  次に、このフォローアップ報告についての質問をさせていただきたいと思います。  このフォローアップ調査といいますか、いろいろなアンケート結果とか物価の動向、集計結果等が出ておりますけれども大蔵大臣、このフォローアップ調査というんですか、この結果を見られて、実際結果が出たわけですけれども、正直な感想はどういう印象を持たれたのか、ぜひ聞かせていただきたいと思います。とりあえず今までの御答弁の中でも、やってみて実態を調べてみないとわからないところが多いという御答弁が多かったわけですが、いよいよ出たわけですね。それでどういう御感想を持っておられますか。これを見ての感想です。
  68. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) これはいろいろな申し上げ方ができると思いますけれども、少なくとも、今後消費税を私どもが定着を前提としながら見直していく上での資料としての役立て方ができる、そう思っております。
  69. 喜岡淳

    喜岡淳君 大蔵大臣の立場としては、見直しの資料という御答弁があるだろうというように思っておったわけですが、僕らは逆に、こんなでたらめな内容ではこれは一日も早くやめてもらいたいというような率直な感想を持ったところです。  この調査資料の中で、私は非常に関心があった問題があります。それは、これまで消費税を運用した場合企業には運用益が入ってくるのではないか、こういう義諭が週刊誌などでも行われておりましたし、多くの国民は消費税の運用ということについて果たしてそんなことができるのか、あるいはそんなことが許されるのか、税金ですから。その運用益について関心を持っておったわけでありますが、この大蔵省の発表によりますと、運用益についての報告というのは全く入っていないわけですね。これはどうして運用益というものを報告されなかったのでしょうか。
  70. 石坂匡身

    説明員(石坂匡身君) 今運用益というお話がございました。恐らく委員がおっしゃっておられますのは、申告が年二回である、その間に消費税が入ってきた分を運用しているのではないか、こういう御指摘であろうと思います。しかし、実際この消費税を納める納税義務者でありますところの事業者の会計を考えてみますと、売り掛け取引というものが当然ございます。売り掛け取引の場合には、売った途端にそのお金は入ってきません。したがって、運用には回せないという問題がございますし、それから輸出取引の場合がございます。輸出取引の場合には、これは仕入れには消費税が入ったものをしょって買ってまいりまして、そして実際にこの消費税を還付しますものは、これは輸出したときということになるわけでございまして、むしろ仕入れにかかっている消費税をその間負っていたというふうなマイナスの要素もございます。したがいまして、運用益というものが常に生ずるというふうなものではないということをまずひとつ御理解を賜りたいと存じます。  それから、確かに事業者の手元にはいろいろな余資がございましょう。したがって、資金運用をするということはあると思うわけでございますけれども、そのどの部分が消費税の部分であるかというふうに区分けをして運用するという実態は恐らくないと思うわけでございます。そういう意味で、この実績というものを把握することは不可能であるというふうに考えております。  ただ、そういうふうな御指摘を野党の先生方からもちょうだいをいたしました。国民の皆様方からもそういう御指摘がございました。そうしたことを踏まえまして、先般政府が提案をいたしました見直し法案におきましては、年二回といいますものを年四回、三カ月に一遍納付をするというふうに変える、そういう見直し法案を提出させていただいたわけでございます。ただ、残念ながらこれは廃案になったというふうな次第でございます。
  71. 喜岡淳

    喜岡淳君 今の御答弁は、非常に技術的な問題を言われたのだろうというふうに思います。消費者から集まった消費税を次に納税するまでの間企業が運用をする。預かり金と企業は言っておるようですけれども、大企業になればなるほど預かり金は大きいわけです。その消費税は大きくなるわけですから、その運用益は大きくなる。しかしてその実態は会計上非常につかみにくいというような技術的な問題だろうというふうに思うんです。  私が質問したのはそういうことではなくて、国民の中には我々の税金で大企業が利益を懐に入れておるのではないか、そういう疑問なんです。その疑問に答えるためにはやはり数字を計算してみるということも必要だろうと思うんです。その際、正確な計算ができるかどうか。できなければできないで概算で計算することはできるだろうと思うんです。もう既に、昭和六十三年十二月でしたか、参議院税制特別委員会で安恒さんがこの問題について質問をされております。議事録にもトヨタ自動車の場合は七十一億八千七百万円とか、東芝の運用益は三十二億九千百万円とか、企業の名前と具体的な数字が試算されて言われておるわけです。国民の多くはこんなことは週刊誌でも知っていますからね。実態はどうだったのか、大体の概算でも計算してつけるのが国民の疑問に答えるということではないんでしょうか。
  72. 石坂匡身

    説明員(石坂匡身君) ただいまお触れになりましたのは、確かに安恒議員からのお話に基づきまして政府が試算としての資料を提出させていただきました。ただ、これはあくまでも幾つかの前提がございまして、安恒議員の御指示に従って計算をさせていただいたものでございます。その前提は、公表された有価証券報告書に基づくということ、それから実際どれだけ売り掛けがあるのか、あるいは輸出があるのかというふうなことがわかりません。先ほど申し上げましたように、売り掛けにつきましては消費税を先に納めればむしろマイナス要素がありますし、輸出の場合にも先に仕入れ分を負担をしておりますからマイナスの要素がございますけれども、そうしたものはこの計算の場合実際わからないものでございますから、一つの前提といたしまして、全部課税売り上げにして計算をしなさい、あるいは全部それを除いて計算をしなさい、そういうふうな前提をいただきまして、その前提のもとに忠実に計算をお手伝いさせていただいたものでございます。したがいまして、それは恐らく現実の運用益の姿というものとは違っているのではないかということであろうかと存じます。
  73. 喜岡淳

    喜岡淳君 ですから、ずっと同じことを答弁されておりますけれども、実態の数字ができるだけそれに近い方がいいわけです。しかし、技術的に無理ならばどういう前提条件で計算をしたのか、そういう前提条件を付記しておればいいわけです。  何度も言いますけれども、国民の中には我々の税金を転がしてもうけておるのはけしからぬではないか、もうけておるのかもうけていないのか、もうけておるとしたら一体どれぐらいの金額が計算上推測されるのか、これぐらい書いてくれないことにはフォローアップの意味がありません。ぜひそこのあたりについて、概算でいいんです、もう納税実態はここに出ておりますから。納税実態は調査されたわけですから、納税実績から逆算をしたらトヨタの場合だったら幾らになるか、東芝なら幾らになるか。トヨタ自動車は七十一億八千万円も運用益、もうけるのではないか。もう既に言われたわけでしょう、社会的に公表されたわけでしょう。実態からいってそんなことはないんだったらないと言わないと、トヨタだって迷惑しますよ。ですから、やはりこのフォローアップ報告の中に今言いました運用盃についてはぜひ調査をして入れていただきたい。そうしないと企業だって、名前と金額を出されて、世間はそう見ておるんですから。どうですか、それは。
  74. 石坂匡身

    説明員(石坂匡身君) 今委員が御指摘になりましたのは、恐らく安恒先生の資料をもとにされた数字だろうと存じます。私どもは一つ一つの企業につきましてどうであったかというふうなことは、これはいわば税務当局としての立場から、申し上げる立場にはございません。  何度も繰り返しになりまして恐縮でございますけれども、この運用益というものを計算いたしますということは、実際企業がどういう取引を個別にやっているかということによって全く変わってくるわけでございます。したがいまして、こうこうこういう前提でこういう金額について計算をしてみるということであるならば、それは計算は可能でございますけれども、一つの企業につきましてその実態がどうなっているのかというのは、恐らくその企業でも把握が不可能であろうと存じますし、私どももまた把握ができないということでございます。
  75. 喜岡淳

    喜岡淳君 要するに、運用益というものに対する不信感が世間にあるわけですから、どうしてその運用益という項目がこの中に一項目も入っていないのかということをずっと聞いておるわけです。どうして入れなかったのか、それです。
  76. 石坂匡身

    説明員(石坂匡身君) 理由はただいま申し上げたとおりでございまして、繰り返しになりますのであれでございますけれども、今申し上げたようなことで、現実にその運用益というものの実績というものをつかまえることができないということでございます。  ただ、私どもは、先生がおっしゃいますような問題意識というものは持っております。持っておりますがゆえに見直し法案、先般廃案になりましたけれども、見直し法案におきましては六カ月に一遍という申告を三カ月に一遍というふうに変えるべきだと判断をして御提案させていただいたということでございます。
  77. 喜岡淳

    喜岡淳君 そういう言い方じゃなくて、運用益については問題意識を持っておられるとおっしゃったわけですから、運用益という項目を入れてくださいよ。正確な数字が計算できないんだったらできないと書けばいいんだし、運用益という項目がないということを僕はずっと問題にしておるわけでありまして、今の御答弁の中には、当局の方も運用益については関心を持っておるということであるんですから、必ずこの中に運用益という項目を入れてやっていただきたいということでよろしいですか。運用益という項目を入れてくださいよ。数字なんか、計算できないんだったらできないでいいじゃないですか。  運用益について国民の中に疑問がある、企業の中にもそういう疑問を持っていらっしゃる方がおるわけですから、どうしてそういうことがこのアンケートの中に一切活字となって出ていないのかということをずっと聞いているわけです。
  78. 石坂匡身

    説明員(石坂匡身君) 非常に計算が難しいということは御理解を賜りましてありがとうございます。  そういうものでありますだけに、そこの資料は実際にそういうふうないろんな調査あるいはアンケート調査、あるいは申告書の分析等をいたしまして、そこで判別できるものを集計をさせていただいたということでございます。そこはそういうものの性格でございますから、それについてはわからないというふうなことは書いていないわけでございますけれども、これにつきましての問題意識は、先ほども答弁申し上げましたように、ことし見直し法案を御提出申し上げましたときから持っておるということでございます。
  79. 喜岡淳

    喜岡淳君 いずれにせよ世間の、国民の見方としては、大蔵省が出したフォローアップ報告の中では運用益の問題に触れていない。それについての理解は国民がそれぞれするということになるだろうと思うんですね、つけない限りは。だから、私はやはり運用益の問題をつければ大蔵省も困ってしまうのでつけなかったのではないかと言う人がおったところで、いやそれはうそだとは言えないということになってしまうわけです。そこで、ぜひ運用益の問題についてはこれからどんどん調べて公表をしていただきたいというふうに思います。  次に、簡易課税の問題についての報告についてお尋ねをいたします。  中小業者の納税事務を簡単にしてあげようということでこの簡易課税制度を採用したわけでありますが、この簡易課税制度によりますと、一般事業者は二割をマージンとみなしてそれに消費税をかけるということになるわけですが、この簡易課税という制度は特例措置というふうに聞いておったのですが、これは特例措置という理解でよろしいんでしょうか。
  80. 石坂匡身

    説明員(石坂匡身君) 本則というものに対してどうかという位置づけであれば、それは本則に対する特例であるということでございますが、この本則課税のほかに簡易課税を選択できるというふうな制度でございます。
  81. 喜岡淳

    喜岡淳君 このフォローアップ報告の資料によりますと、実に、この特例措置という簡易課税制度が一般的に使われておるように思うわけです。  例えば、飲食業の場合は八九・五%の人がこの簡易課税制度を採用いたしております。運輸・通信業では七四・五%、製造業では七四・七%、もう簡易課税制度を使うのが一般的なんです。課税売上高が三千万から五億円の事業主のうち七六・四%もの人がこの簡易課税制度を使っている。もうこれは何が特例で何が本則か全くわからなくなってしまうわけですが、八割近くの事業者が利用しておる実態を見ても、この制度はもう特例とは言えないと思うんですが、大蔵大臣はどういうふうに受けとめておられるでしょうか。
  82. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 簡易課税の問題は、国会におきまして、本院におきましても衆議院におきましてもしばしば御論議がございました。そして、政府としてはこの申告納付の一巡後にさまざまな資料やデータを収集整理した上で検討すると申し上げております。そして現在、税制調査会のフォローアップ小委員会におきましてこうした点についての検討が進められておる段階でありまして、十月中にフォローアップ小委員会としての基本的な考え方を取りまとめていただける、私はそう承知をいたしております。
  83. 喜岡淳

    喜岡淳君 八割近くの人が簡易課税制度を選んでおるわけですが、それでも、八割の人がとるというのもやっぱり特例なんでしょうか。私は、八割もの人が簡易課税制度を選んでおったわけですから、これはもう特例ではなくてこっちの方が一般的にやられておるように思うんですが、八割もいってもやはり特例なんですか。
  84. 石坂匡身

    説明員(石坂匡身君) 先ほど申し上げましたように、あくまでも本則課税というのが原則として書いてあるわけでございます。ただ、非常に売上高の小さい事業者につきましては、事務の簡素化というふうな点からこの簡易課税制度というものが設けられております。そして、その上限が五億円、こういうふうに決まっているわけでございます。  適用者の数は、確かにそのフォローアップ調査によりますれば、これは先生のおっしゃるとおりでございますけれども、一方売上金額で言いますと、これもフォローアップ調査の中に出してございますけれども、約一割でございます。したがいまして、数と売上金額というものは決してパラレルではございません。どうしてもやはり新しい税制というものが始まり、そして大変多くの納税義務者の方々に事務負担をおかげする。そういう中で課税の公平と制度の簡素化というものをどこでバランスをしていくかという問題がこの簡易課税の問題であろうかと存じます。  制度発足に際しましては、いろんな角度から検討いたしまして御案内のような制度をしいたわけでございます。ただ、これは何さま初めてのことでございますものですから、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたように、この消費税の申告納付一巡後にいろんなデータを収集整理して税制調査会でも検討するということになっておりまして、そこで検討が行われているということでございます。
  85. 喜岡淳

    喜岡淳君 初めてのことだからということで、いわゆる見直しによってこれからは四段階にするとかなんとか新聞報道されておりますけれども、これは四段階にしたところで何段階にしたところで、この簡易課税制度というものはやはり根本的な解決はできないというふうに思うわけですね。なぜならば、この簡易課税制度というものをどうして業者が選ぶかということですよ。こづちの方がもうかるからでしょう。本則課税より簡易課税をとった方がもうかるからみんなこっちを選ぶんでしょう。それは皆さん、新聞に書いておるとおりですよ。  例えばこの不動産業者ですね。新聞に出ておりました例でいきますと、不動産業はフォローアップ小委員会調査結果で平均付加価値率は四五・六%となっておりますね。単純計算しますと、売り上げ一億円の不動産屋さんが簡易課税制度を選ぶ場合と選ばない場合とで計算してみましょうか。簡易課税制度を選ばない場合は一億円の付加価値率四五・六%、税率三%で百三十六万八千円です。簡易課税制度を選んだ場合は一億円の二〇%をマージンとみなすわけですから、これに三%で消費税納税額は六十万円、この二つを比べただけでももう七十六万八千円の差が出るわけですよ。ですから、すべての事業主は税理士さんに相談して、税理士さんも一生懸命コンピューターで計算して、どっちが得かを計算してお勧めするわけでしょう。  今本屋さんに行ったら、シミュレーション計算の消費税、どうすればあなたはもうけることができるか、こんな本をいっぱい売っているわけですよ。消費税でいかにもうけるか、この本が新しい市場になりつつあるんですよ、今。私も先週、日本経済新聞社から発行されておる一つを見ましたよ。簡易課税制度について詳しく書いてある、これを選んだら幾らもうかるか。納税どころか還付で返ってくるなどといういろんな実例が全国各地の会社のシミュレーションで上がっていますよ。つまり、この簡易課税制度は業者としてはもうける制度になっているわけですよ。  だから、簡易課税制度をとる限り、私は消費税を納める国民の不満というのはいつまでたっても解決されないというふうに思うわけです。こんなでたらめなやり方というのはどこにあるんですか、税金でもうけるんですよ。だから、この簡易課税制度というのはやっぱり私は悪の温床であるというふうに思うんですが、こんなものは見直ししたって直らないと思いますけれども、どうですか。
  86. 石坂匡身

    説明員(石坂匡身君) ただいま御指摘になりました付加価値につきましては、今度のこのいわゆるいろいろな実績を踏まえて分析をするという中でわかってきた事実でございます。この制度を最初につくりましたときにはそうしたデータはございませんでした。そういう中で、制度を発足するに際しまして、なるべく納税者の方々の事務ということと公平と、どこで線を引くか、こういう議論をしたわけでございますが、あるいは八〇%一本でいいじゃないかという議論もございました。しかし、一本というわけにもいかないだろうということで、卸売につきましては九〇%というふうなことになったわけでございますけれども、それで発足をいたしまして、先ほど申し上げましたように申告一巡後に分析をしてみるという時期に至っているということでございます。そして、その問題につきましては、先ほども申し上げましたようにフォローアップ小委員会で御調論を賜っているという状況でございます。
  87. 喜岡淳

    喜岡淳君 いや、初めてのことだからわからなかったというのは、私はもう全くでたらめな言い方だろうと思うんです。この問題は何回も議論されてきたんじゃないですか、違うんですか。
  88. 石坂匡身

    説明員(石坂匡身君) この制度を初めて創設するときのことでございます。したがいまして、そのときに用い得るデータというものはフルに活用いたしましていろんな角度から研究をしたわけでございます。ただ、それでまあ何とかいくのではないかというふうなことで制度化したわけでございますけれども、しかし、やはり新しい制度でございますから、これをフォローアップしていかなければならないという点は、それは実施後に出てまいろうかと思います。そういうことでフォローアップ小委員会でいろいろな問題を御検討賜っているということでございます。
  89. 喜岡淳

    喜岡淳君 それではお尋ねしますけれども、その創設の際、小売と卸の二業者に分けて、二種類に分けて、八〇%と九〇%でいくのだ、これで対応できるという根拠があったわけですね、これで決めたわけですから。自信があったその根拠があるわけですね、それをお聞かせください。
  90. 石坂匡身

    説明員(石坂匡身君) 当時用い得ますデータは、法人企業統計の全体の平均値でございました。全産業の付加価値平均が当時一六・七%でございました。これをもとにいたしまして、付加価値は一六・七を切り上げて二〇%と見て仕入れを八〇と決めたわけでございます。そのときに卸売の数字もわかっておりましたものですから、卸売はその付加価値率が六・六でございました。そこでこれを一〇にして九〇と決めた。そういうふうな経緯でございます。
  91. 喜岡淳

    喜岡淳君 当時も付加価値率が平均より高いところ低いところ、それぞれ極端にでこぼこはあったと思うわけですが、それでも高いところは放直したままですよね。というふうにこれは決まっていますよ、九〇と八〇になった以上は。私はやっぱりそこがおかしいのではないかというふうに思います。これもやはり益税の実態です。  結局、簡易課税制度をやった結果、私たち消費者が税金として払った消費税の中で、いわゆる簡易課税制度によって国に届かなかった部分は一体どれぐらいあったんですか、金額として。
  92. 石坂匡身

    説明員(石坂匡身君) これは大変難しいお尋ねでございまして、かねて国会に御提出申し上げております資料は五千億程度というふうな数字を申し上げているわけでございます。ただ、これは簡易課税あるいは免税点、そういったものを含めまして一つの理論値でございまして、そういった事業者が三%を全部転嫁された、こう仮定をいたしまして、そして本来納付すべき税額との間にどれくらいの差があるだろうかというものを計算したものがこの数字であるわけでございます。  それが現実にどうであったかということは、実はこれは把握はできないのでございます。と申しますのは、現実に業者が転嫁をしております実態というのは、それぞれの事業者によって区々でございます。したがいまして、これが実績でどうなったかということはなかなか把握が難しいということを御理解賜りたいと存じます。  ただ、特に三千万円以下の事業者でございますけれども、小売事業者でございますとかあるいはサービス事業者でございますとかこういうふうな業者は、アンケート調査等によりますとなかなか転嫁が難しくて転嫁ができていないというふうな通産省の調査もございます。そういうふうなことからいたしますと、実績はその三%を前提としたというものよりは違うのではないかなというふうに思いますけれども、ただ、具体的にこれを計算するということが非常に難しい、なかなかできないということを御理解賜りたいと存じます。
  93. 喜岡淳

    喜岡淳君 簡易課税制度については、悪の温床と言うと言葉が悪いのですが、払っても国庫に納税されない消費税の代名詞としてもう子供でも知っております。この簡易課税制度の結果納税されなかった税金は一体幾らあるのか、それを課税売上階級別にやはり発表していただきたい。そうしないと、なかなか国民の知りたいことに答えた資料にはこれはならないというふうに思いますので、これをぜひつけ加えていただきたいというふうに思います。  それから次に、限界控除制度の問題が、一年間やってきた結果報告されております。  この限界控除制度については激変緩和措置というふうに言われておりますが、この調査結果によりますと、八百十九億九千五百百円の消費税が限界控除の結果控除されている、つまり届かなかったという結果になっております。しかし、そういう数字だけでは詳しいことがわからないわけでありまして、本来納付すべき消費税が幾らあったのか、そして控除された消費税が幾らだったのか、そして益税として幾ら残ったのか、こういうことについてこの中には全く数字が入っていないわけですよね。それを少し載せていただきたいというふうに思います。
  94. 石坂匡身

    説明員(石坂匡身君) 今委員が御指摘になりましたものは、これはフォローアップで発表させていただいた資料でございますが、出てきました申告書、これは満年分ではございません。初年度でございますから初年度分の数字でございます。これを平年に換算いたしました数字がその数字でございます。  八百億とおっしゃいましたけれども、この三千万から六千万のところでございますと六百億ということでございます。そういうふうに数字を把握していただきたいと思うわけでございますが、それはそういうふうな計算をした数字でございますけれども、今委員が御指摘になりましたその限界控除適用前の税額、後の税額、そして限界控除額、これが実際申告書ベースでどうであったかということは、これはまた別途集計をいたしました。  その数字を申し上げさせていただきますと、限界控除適用前の税額は、これは一千六億円でございます。限界控除適用後の税額が四百四十八億円、控除税額が五百五十七億円ということでございます。ただ、これは先ほど委員がお手元に持っていらっしゃる資料とは年換算の関係で数字が食い違っているという点は御理解を賜りたいと存じます。  ただ、この限界適用前の税額といいますものも、これも実際は三%を掛け算をした数字でございまして、三千万から六千万という階級の事業者ですとあるいは限界控除があるがためというふうなことも意識してのことかと思いますけれども、必ずしも全部転嫁でき得ていないというふうな業者もあろうかと思います。したがいまして、この部分が丸々おっしゃるような数字であるということではないと思いますけれども、申告書から集計をいたしました数字はただいま申し上げた数字でございます。
  95. 喜岡淳

    喜岡淳君 大まかに計算をしてみると今のお答えだろうというふうに思うんです。限界控除制度の結果、五百五十七億円がやはり国庫に納まらなかった。全国民、赤ちゃんからお年寄りまで払うわけですから、一人五百円以上の消費税はやっぱり限界控除制度によっても届かなかったという結果が出たというふうに思います。  次に、還付制度の問題でありますが、輸出業者の仕入れ消費税などが還付される制度がいわゆる還付制度としてとられております。  このフォローアップ報告によりますと、還付申告は総額一兆二千七百八十億円にも上っておるということであります。つまり、私たちが納税した消費税のうちから一兆二千七百八十億円は輸出業者等に還付されたという結果になっておるわけです。これは考えてみますと、消費税税収の約四割にも上るわけですね。これは非常に巨額な消費税が還付されておるのではないかというような気がするわけです。この還付に当たっては一体どういうふうなチェック、これは帳簿方式に基づく申告制度ですから、きちんとチェックしないとだれでもかれでも還付請求されますと困りますので、実際そのあたりのチェックはどういうふうなやり方をしておるのでしょうか。
  96. 坂本導聰

    説明員(坂本導聰君) 委員指摘の点でございますが、一般的に申し上げますと、還付申告書が提出された場合、まず申告書上計算誤りがないかどうか等についてチェックをいたします。それからまた、大口の還付の場合には、直接税の課税実績等との突合を行って、不明な点があれば納税者に照会を行い再確認をしていただくというような手続をとっております。  以上は机上の審査でございますが、七月以降は納税申告も一巡したということを踏まえまして、指導の一環として、還付申告者の一部の方々については実際に納税者のお宅にお邪魔いたしまして帳簿等を見させていただきまして誤りがないかどうか、今後誤りがないようにしていただくよう指導しているところでございまして、現在おおむね順調に執行としては推移しているところでございます。
  97. 喜岡淳

    喜岡淳君 この還付制度については、厳格な審査をしなければ払った消費税がすいすい持っていかれてしまいますから、今後も厳格な審査を徹底していただきたいというふうに思います。  さて、還付総額については報告で書かれておるのですが、この還付についてもどういうところへ幾らぐらい還付されたかという内訳がないわけですね。還付の対象になりますのは大きく言って三つでしょう。一つは輸出業者が輸出品を仕入れた場合の還付、それから二つ目には、設備投資をした際支払った消費税が受け取り消費税を上回った分は還付されることになっている。それから三つ目には、一昨年、八八年十二月までの例の建設工事の関係の還付金の問題、この三つの形態しかないと思いますので、それぞれの三つの形態、一番、二番、三番でどれぐらいの消費税が還付されておるのか、それは一、二、三でわかりますか。
  98. 坂本導聰

    説明員(坂本導聰君) 還付の大口は恐らく委員指摘の三つの点であろうかと思います。しかし、私ども執行当局としては、その理由別の還付金額を把握しておりません。
  99. 喜岡淳

    喜岡淳君 把握していないということではなくて、国民の中には疑問があるんです、この還付制度が悪用されているのではないかと。新聞にも大きく出たでしょう。六月十八日の朝日新聞を読まれたと思うんです。「消費税の”裏側”を探る」、この中で還付金の問題が大きく取り上げられていますね。「輸出事業者などへの消費税の「還付」。」、「「臨時ボーナスと思って夫婦で海外旅行にいきました」と言ってのける業者もいる。」、「ネコババ」だと言っていますよ。国民の中にはこの還付制度は何だと非常に疑惑が広がっておるわけですけれども、これについてどうしてフォローアップはしていないんですか。把握していないというふうに今おっしゃいましたけれども、国民の中で関心があるというのは御存じだろうと思うんですが。
  100. 坂本導聰

    説明員(坂本導聰君) 先ほども申し上げましたとおり、還付につきましては、特に大口還付につきまして問題等があるかないかにつきまして、申告が一巡した現時点におきましては、実際に納税者のお宅にお邪魔して帳簿等を見させていただいて指導をしているところでございまして、現在のところ私どもが把握している限りでは、課税仕入れの考え方の誤り等が一部見られますけれども、悪質な非違は見られないというふうに承知しております。
  101. 喜岡淳

    喜岡淳君 そういうことではもう全然国民の期待にこたえるような調査にはならないと思うんです。みんな還付の問題については隠れ補助金ではないかとかもういろいろ言っておるわけです、新聞の投書にもどんどん出ておるし。そういう国民の知りたいところに答えずしてどうしてフォローアップがうまくいったと言えるのか、私は本当に疑問でならないわけです。ですから、還付の対象は三つしかありませんから、今言いましたその三つに分けてぜひ数字を公表していただきたいというふうに思うわけです。  次に、この消費税の問題で一番わからない問題について質問させていただきたいと思うんです。  益税問題が議論されておるのですが、かつての物品税などでしたら、お客さんが払った物品税、それを業者が納税しなかった場合は横領だというふうに言われておる。今度の消費税の場合には、私たちが払った消費税が、今も言いましたように簡易課税制度の結果、約五千億円が納税されていない、限界控除制度の結果五百五十七億円が納税されていない、こういう実態がはっきりしたわけです。納めた税金が国庫に届いていない、消費税の場合はこんなことが許されておるようなんですけれども、何でしょうか、これは。我々は税金を納めたと思っているわけですけれども、どういうふうに理解したらいいんでしょうか。
  102. 石坂匡身

    説明員(石坂匡身君) 消費税の納税義務者は事業者でございます。そして、事業者は価格の中に消費税というものを込めまして、いわば価格の一環をなす、つまり消費税相当分を含めて物品サービスの対価というふうなものを設定いたしましてそれで売却をする、そしてその中から消費税を納税義務者として払っていただく、こういう制度になっているわけでございます。
  103. 喜岡淳

    喜岡淳君 いつもそういう形式論議が出てくるわけなんです。確かに納税義務者は事業主です。だけれども、私たちが払ったのは税金を払ったと思っているんですよね。我々が払っている消費税は税金なんでしょう。そうじゃないんでしょうか。
  104. 石坂匡身

    説明員(石坂匡身君) 法律的に申し上げますと、事業者は物の対価を消費者から受け取る、そして事業者が納税義務者として税金を納めていただく、こういう構成でございます。
  105. 喜岡淳

    喜岡淳君 だから、消費者が払った三%が税金なのかどうかということをずっと聞いておるんです。私はできの悪い国民の一人なんですけれども、わかるように言ってください。私が消費税といって払った三%は税金なのかどうかを教えてください。
  106. 石坂匡身

    説明員(石坂匡身君) 法律的な意味で申し上げますと、納税義務者である事業者に納めていただくものが税金ということになります。ただ、実質的に御負担をいただいているのがだれかということになれば、これは消費税という名前の示すとおり、消費者に実質的には御負担をいただいているということになります。
  107. 喜岡淳

    喜岡淳君 きょうも私、参議院の下の共済売店で買い物をしてきました。二百十円、下に税金六と書いた領収証をいただきました。私は税金を納めたわけです。税金の領収証をいただいておるわけです。これが渡らないということになれば、納税されないということになれば、納税者は何のために払ったのかという気持ちが出てくるわけですし、納めなかったということは犯罪に当たらないんですか。
  108. 石坂匡身

    説明員(石坂匡身君) 法律上の構成といたしましては先ほどから申し上げておるとおりでございまして、それから簡易課税なりあるいはそういう制度が法律上認められているということでございます。  ただ、何度も繰り返して申し上げて恐縮でございますけれども、こうした問題につきましては、申告一巡後の実態というものを十分に分析して検討しようじゃないかということで、現在税制調査会のフォローアップ小委員会で御検討を賜っているということでございます。
  109. 喜岡淳

    喜岡淳君 何回聞いてもわかりませんけれども、税金としての領収証を本人が持っているんですから、これは違うと言う方がおかしいんじゃないんですか。そんなものだれが、国民が信用できるのか、税金と書いてあるんです、領収証と書いて。だから、払った消費者のお金の三%は税金なんですね。そう理解していいんでしょう。
  110. 石坂匡身

    説明員(石坂匡身君) ただいまのお話は、恐らく外税で表示をされている小売業者からお買いになった場合だろうと思います。外税でおやりになっていらっしゃる方あるいは全部価格の中に込めてお売りになっていらっしゃる方、いろいろございます。それは事業者の自由ということに任されている分野の話でございまして、これは経済取引なりあるいはその表示というものについての問題であろうと思います。  法律的に申し上げますと、あくまでも先ほど申し上げたようなことになるわけでございます。
  111. 喜岡淳

    喜岡淳君 いつも話がややこしくなるのは、受け取る側の問題と払う側の問題をごっちゃにしているんです。都合がいいときは払う側はどうで、都合が悪いときは受け取る側がどうだこうだという話だから。私がずっと聞いているのは、払った本人は税金として納めて税金として領収証をいただいているんです。だから、払った私から見れば、その三%というのは税金でしょうと聞いているんです、それでいいんでしょう、理解は。
  112. 石坂匡身

    説明員(石坂匡身君) 先ほどから何度も申し上げているとおりでございまして、実質的に消費者に御負担をいただいているということは先ほどの答弁でも申し上げたとおりでございます。
  113. 喜岡淳

    喜岡淳君 私が払ったのは、領収証もちゃんといただいておりますので、税金というふうに理解をしております。これはもう世間の常識だろうと思うんですね。  それから、次の問題でありますが、表示の問題について公正取引委員会の方にお尋ねしたいと思います。  消費税をやって一年、大蔵省の方からフォローアップの報告が出ましたが、一年やってみて、表示の問題について大体順調にいっておるようでしょうか。
  114. 鈴木恭蔵

    説明員(鈴木恭蔵君) 公正取引委員会は、御案内のとおり、消費者に誤認を与える表示、これを不当表示として規定しております景品表示法、これを運用しております。  今先生御指摘の、表示の面で、消費税の昨年四月からの実際の導入後、うまくいっているだろうかという御指摘でございますが、私どもの方で当初からかなり事業者等にいろいろ指導等を行いました結果、現在までのところ大きい問題等は上がってきていないというふうに報告を聞いております。
  115. 喜岡淳

    喜岡淳君 この消費税の表示の実施については順調にいっておるというのは、私はもう完全に間違いだろうと思うんです。なぜならば、国会の中を見てください、表示されておるところとされていないところ、でたらめでしょう。参議院会館の地下へ行ってみてください。地下二階に共済売店があるでしょう。あそこへ入っていくと左側は文房具とか薬屋さん、ここは外税方式ですという表示がありますよ。入って右側のパン屋さん、内税も外税も、課税も非課税も何にも書いてないんです。国会の中がそんなので果たしていいんですか。
  116. 鈴木恭蔵

    説明員(鈴木恭蔵君) 先ほど景品表示法につきまして御紹介しましたとおり、一般消費者に商品の価格とか品質、これを実際のものよりも有利あるいは優良であるというふうに誤認を与えて、しかも公正な競争を阻害するような、こういった表示を景表法では問題としているわけでございます。したがいまして、こういう表示の仕方でなければならないというものではなくて、表示の仕方は内税方式あるいは外税万式、それは企業の皆様方がいろいろ考えられることではないかと思います。景品表示法の観点からは、あくまでもそれが不当表示かどうかということ、そういう観点から私どもは規制しているところでございます。
  117. 喜岡淳

    喜岡淳君 時間が迫ってきましたので、公正取引委員会の皆さんには次のときにまたよろしくお願いしたいと思います。  最後になりましたが、これは大蔵大臣にお聞きをいたしますけれども、消費税の導入に当たって国税庁が業界に圧力をかけたなどということは決してなかったですね。
  118. 坂本導聰

    説明員(坂本導聰君) 私どもは国税庁として、執行当局として、業界に圧力をかけたという事実は全くございません。
  119. 喜岡淳

    喜岡淳君 徳間書房から「税制こそ国家の背骨」という本が出ておるわけですが、その本の六十三ページには「「三〇〇議席の威力」と「笑顔の恫喝」」というのが書かれておりまして、大蔵省と国税庁はいろんな作戦を立てたという事実を書いております。例えば、業界のある幹部の発言として、「大蔵省や国税庁のカネでめしを食べたのは初めて。」、「落ち着いて味わう気分になれなかった」。ある中小企業関係の団体の幹部は、「私の留守中でも国税庁の職員が毎日のようにやってきて、何時間も座っている。これは、もう、いやがらせとしか言いようがない」、こういう実例がたくさん挙げられておるわけです。  私は、消費税の導入に絡んで国税庁がこういう圧力をかけたり、あるいは税金として払った消費税が、払ったって払ったって税務署に届かないとかあるいはこの消費税でもうける人がおるとか、こういったでたらめなことが進みながら、一方では消費税でもうけた業界は選挙のときに三百億円の政治献金をしたのではないか、ああなるほど消費税導入の意味がやっとわかったわと、こういう国民の声が実際出ておるわけですから、こういった政治不信を助長するようなこんな税金制度についてはやっぱり一日も早くきっぱりやめて、一度消費税を廃止した後、新しい税制のあり方について論議を始めるべきではないかということを発言して終わりたいというふうに思います。
  120. 種田誠

    ○種田誠君 私は、冒頭中東に対する支援について伺いたいと思います。  八月二十九日の閣議によりまして湾岸における平和回復活動に対する協力、さらには中東関係国に対する支援策というものが決められまして、同時に翌日には、いわゆる湾岸における平和回復活動協力資金として十億米ドルを支払う、そして九月十四日には、さらに十億ドルを追加して支払う意向である、あわせて中東関係諸国に対する支援金として二十億の米ドルを支払う、このようなことが公表されてきたわけであります。そして九月二十一日の閣議におきましては、当初の十億米ドルに関しては予備費より支出をして、受け皿も後後決めていくということでありました。  そして、これまでの間にも衆参の外務委員会やその他の委員会でこの支援のあり方に関して質疑がなされ、その当時におきましては一体どこに支払うのか、また何に使うのか、そして歯どめはどこにあるのか、こういうことに関しても質疑が交わされてきたわけでありますが、残念ながら今日までそのすべてがまだ定まっていないわけであります。そういうことで幾つか中東支援策に関してお聞きをしたいわけであります。  九月六日にサウジアラビアに向けまして四輪駆動車八百台が輸送されました。そのころ開かれました委員会で、二、三週間後には現地に着いておりますし、受取人もそのころまでには判明しておりましょう、そして何に使われるかもおおよそわかるでしょう、こういうふうな答弁がなされているわけでありますが、まず、この四輪駆動車八百台は現在どうなっているか、報告をしていただきたいと思います。
  121. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) お尋ねの四輪駆動車約八百台は、九月二十四日、サウジアラビアのダンマン港に到着いたしました。陸揚げを完了いたしまして必要手続を了しました後、十月六日から米側に対する引き渡しが順次行われていると承知しております。
  122. 種田誠

    ○種田誠君 そうしますと、現在米側に引き渡されている最中ということでしょうか。
  123. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) さようでございます。
  124. 種田誠

    ○種田誠君 この四輪駆動車は、そうしますとどのような目的に使われるのか、現時点でわかりますか。
  125. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) 八月二十九日の閣議了解を受けました物資協力、この八百台の四輪駆動車もその一環でございますけれども、これは湾岸における平和維持活動に対する多国籍軍の支援の一環として我が方から提供されたものでございます。
  126. 種田誠

    ○種田誠君 今米軍に引き渡されたと、このように答えがあったと思うんです。  九月二十一日に開かれました参議院の商工委員会でありますが、この委員会で内田説明員は、支援の物資やお金に関してGCCの運営委員会を介して日本との合意の上でこういうものを使っていきたい、こういうふうに言っていると思うんです。そして、最近におきましても政府の方におきましては、これらの支援金や物資に関しましてはGCCの中に受け皿をつくっていきたい、このようにも述べているわけであります。  したがいまして、この十億ドルの対象になる物資や金額については、GCCもしくはGCCの中につくられます平和基金などに引き渡され、そしてそこで日本やGCCの運営委員会協議の上、使途が決められていかなければならないと思うんですが、その点に関しまして、まず米軍に引き渡されたということはいかがなものでしょうか。
  127. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) 私、先ほどの御答弁の中で米側に引き渡されたと申し上げたわけでございますが、お尋ねのとおり、この物資協力と申しますのは、湾岸の平和と安定の回復のために湾岸アラブ諸国協力理事会に設けられます湾岸平和基金に拠出されたものを通じまして米側に供与されているわけでございます。したがいまして、本件八百台の四WDもそのような手続を経て、すなわち湾岸平和基金を通じまして米側に提供されたものでございます。
  128. 種田誠

    ○種田誠君 湾岸協力会議の中における協議の上で米側に引き渡されたと言いましたけれども、過日、駐サウジアラビア恩田大使と湾岸アラブ諸国協力理事会のビシャーラ事務局長との間において具体的な書簡を取り交わして、その上で資金や物資の拠出を図っていく、このように報道がなされ、また発表がなされてきたと思うんです。したがいまして、そうであるならば、この八百台に関しましては、いつどこで、だれとだれとの間でどのような協議がなされて米側に引き渡されるようになったんでしょうか。
  129. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) 四WDの発送は九月五日に行われたわけでございますが、この時点ではもちろん湾岸平和基金の設立はまだなされておりません。したがいまして、この輸送というのは中東支援策の一環としての物資協力の具体的なスキームが決まったときに速やかにこれを行い得るようにするために、企業に政府から要請してその搬出を行ったわけでございます。湾岸平和基金を通じます米側への引き渡し手続というのは、湾岸平和基金が設立されました日に行われたものでございます。
  130. 種田誠

    ○種田誠君 この問題に関してさらに質疑をしていきたいわけでありますが、全体の時間のバランスの関係でもうこれ以上質問を続けることができないわけでありますが、先ほど申し上げました九月二十一日の商工委員会における説明員の発言はもとより、内閣総理大臣におきましても、この支援については憲法の枠内での活動であるということ、このことをはっきりと国民に申しているわけでありますから、むやみに、米軍に直接引き渡されてそれが実際の戦闘に使われるということになりますと、この憲法の枠内ということが極めて問題になります。慎重にお願いをしたいと思います。  さらに引き続きまして、海部総理大臣が八月二十九日、百名を目途に医師団を緊急に派遣して各国に対する医療面の協力を行う、こういう趣旨にのっとりまして九月十八日に先発隊が十七名派遣されたわけでありますが、現状はどのようになっておりますでしょうか。
  131. 池田右二

    説明員(池田右二君) 九月十八日に先遣隊が現地に到着いたしまして、現地の医療需要の把握及び活動拠点の決定のために、サウジアラビアの首都のリヤド及び東部地域におきまして調査あるいは保健省、王立委員会、東部の州政府などの現地関係者との協議を行ったり、また先遣隊の一部は難民キャンプの現状視察などのために十月の初めにジョルダンのアンマンに出張いたしました。また一部は、紅海の方にあります都市のジェッダなどにも赴いて現地の医療状況の視察というようなことをやっております。  これまでの活動を申し上げますと、そういうことでございます。
  132. 種田誠

    ○種田誠君 そうしますと、現実に医療活動は行っているんでしょうか。
  133. 池田右二

    説明員(池田右二君) ただいま申し上げましたとおりに、これまで行ってきた活動は調査活動でございます。  それで、今後の活動として、視察しました東部ダンマンの周辺におきまして医療の需要があるような状況報告されておりますので、検討の上、そういう地域に拠点を定めて現地の人たちの医療活動をしながら、さらに状況調査とかそういうことをやっていこうかということで今検討中でございます。
  134. 種田誠

    ○種田誠君 八月二十九日に発表になっている、百名を目途に緊急に派遣して対応していくということ、そういう必要性があった、またあると思いますので、その辺のところは今後慎重の上にも的確な対策を練っていただいて、さらに本来の目的にこたえるようにしていただきたいと思うわけであります。  一つ気になるのは、イラクからの難民がジョルダンに大変多く流れている。そして、ここでは夜になりますとサソリが出てきたり毒蛇が出てきて刺されたりかみつかれたりして大変な状態が起こっているんだというようなこともテレビなどで報道されているわけであります。そして、医師や医薬品の不足なども報道されていたわけでありますが、この辺のことについてはどうなっておるのでしょうか。
  135. 池田右二

    説明員(池田右二君) 先生からただいまお話がございましたとおり、新聞等ではジョルダンにおける難民の医療の問題があるということを私どもも聞き及びまして、そういうこともあったものですから、先ほど申しましたとおり、十月の初めに今回送った先遣隊の一部にジョルダンのアンマンにも出張してもらったわけです。  そこで現地の情勢を調査いたしましたところ、初期の段階では確かに難民の数も非常に多くて医療の問題があった。ところが、難民の数も逐次減少してまいりました。それから初期の状況を聞き及んだ諸外国、フランス等が何人かの医師を送ったりしておりましたが、だんだん需要がなくなってきたものですから、フランスもその医師団の一部を引き揚げるというような状況になってきて、医療の問題が当初伝えられたように緊急な状況ではないということがわかってまいりました。そこで、先遣隊の方もまた現地のジョルダン政府その他から需要があるということであれば対応しようということで、現地側も現状は特別な需要がないということなものですから、そういう状況調査いたしまして、今サウジアラビアの方に帰って本隊に合流しているところでございます。  なお、ジョルダンの状況につぎましては、将来また難民がふえるというような事態も起こり得るかと思いますので、依然として注目をしていきたいと思っております。
  136. 種田誠

    ○種田誠君 湾岸平和基金の点について一点だけお伺いしておきたいわけであります。  この湾岸平和基金ができたことによりまして、支援金、支援物資などの受け入体制が一応は整ったということになるかと思うわけでありますが、これまでの各委員会などにおける答弁、そして総理大臣の説明などの中から、これらの基金からの具体的な支払いなどに関しましては運営委員会を通じてGCCと日本の合意を確保しながら主張していく、そして憲法の枠の中で活動資金に充てるんだ、こう言っておりますが、この辺のことに関してその後変わっていないかどうか、伺いたいと思います。
  137. 西村六善

    説明員(西村六善君) ただいま先生がおっしゃられましたように、湾岸平和基金におきましては我が国政府の代表とGCCの代表とが運営委員会をつくりまして、そこにおきまして種々の決定をし、合意をしながら資金の配分ないしは物資の調達をしてまいることになっておりまして、我が国政府といたしましてはそのメカニズムを通じまして資金が適切に使用されるように取り進めていく方針でございます。
  138. 種田誠

    ○種田誠君 八月二十九日、実際は三十日に発表になった十億ドルの支払いに関しては、これは予備費から拠出をするということで、九月二十一日の閣議によりますと、九億米ドルがGCCの中の湾岸平和基金の方に払い込まれる、こういうふうなことを聞いたわけであります。と同時に、九月十四日に十億ドルを限度としての追加協力の用意がある、そしてこれを支払っていくというようなことが表明されたわけでありますが、この残りの十億ドルに関して、私はその財源において極めて憂慮しているわけでありますが、大蔵大臣も過日新聞報道などにおきまして、臨時国会において補正予算を組んでいきたい、財政非常事態であるというようなことを述べておりますが、その辺のことについて大蔵大臣の御見解をいただきたいと思います。
  139. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今委員が御指摘になりましたように、我が国の中東に対するいわゆる貢献策というものの中で、多国籍軍に対します支援措置としてまず八月三十日に公表いたしました十億ドルの協力につきましては、その若干部分は既定予算から支出をいたすことにいたしましたが、その大部分につきましては去る九月二十一日の閣議におきまして予備費支出の決定をいたしました。  しかし、その後の中東情勢などにもかんがみ、湾岸における平和回復活動につきまして去る九月十四日、今後の中東情勢の推移などを見守りながら新たに十億ドルを上限として追加的に協力の用意がある旨を公表したこともそのとおりであります。しかし、この追加協力の財源につきましては、直ちに追加の協力を行うことはなかなか容易ではありません。今後の中東情勢の推移を見守りながら、財源事情を見きわめた上で適切に対応してまいりたいと考えております。  今補正予算というお話も出ましたけれども、私はまだ記者会見でも補正予算をいつ出すといったような話を申してはおりません。むしろ、現在既定の二年度予算の適切な執行に努めているさなかでもありますし、補正について申し上げられる状況にはないわけであります。
  140. 種田誠

    ○種田誠君 この九月十四日の十億ドルに関しては、「裏打ち欠く大盤振る舞い」などというような見出しで、極めて財源的なものが心細いというような形の報道がされてきているわけであります。しかしながら、国内的にはもとより海外的にも日本はこの残りの十億ドルを直ちに払えるような経済大国である、そういうふうな印象が今強くあるのではないだろうかと思うわけであります。そして、今大蔵大臣は残りのこの十億ドルに関してはいつ支払うというわけではない、こう述べられていたわけであります。  外務省の方に伺いますが、残りの十億ドルはいつごろまでに支払わなければならないのでしょうか。そしてまた、戦火がこれで終われば払わなくてもよろしいのでしょうか。
  141. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) アメリカから大統領特使としてブレイディ財務長官が訪日をされました際、実質的な議論をいたしましたのは私でありますから、私からお答えを申し上げさせていただきたいと思います。  先ほど正確に申し上げましたように、我々が決定をいたしましたのは、新たに十億ドルを上限として追加的に協力を行う用意があるという内容でありまして、例えばその払い込みをいつまでに行うといった内容は定めておらないわけであります。そして、今後の情勢によりましてどういう変化が生じるか、このまま終息してくれてこの費用を使わずに済むような状態になれば、これが一番望ましいことであります。しかし、今非常に緊張の続いております中で、むしろ私はそのお金を払う払わない以前の問題として、戦火が現実のものにならないことを心から願っております。  ただ、実は私自身がIMF・世銀総会でワシントンに参りました際に、外人記者会見の席で、むしろ日本の追加的な措置というものが十分に知られていない、そして、十億ドルしか日本は負担をしないというのはなぜだという質問を逆に受けて、日本政府は既に総額四十億ドル、そのほかに難民のための経費として二千二百万ドルを支出するということを公表しています。むしろあなた方に正確に日本の貢献について知っていただきたいということを申し上げたような状況でありました。  我々としては、日本がこの情勢の中で中東の平和の回復のために負担しようとしているその努力が世界に正確に伝えられる、知ってもらうことを今必死で願っており、努力をしておるさなかであります。
  142. 種田誠

    ○種田誠君 そうしますと、ちょっと確認しておきたいのですが、これ以上戦火が拡大しないで、この時点でイラクがクウェートから撤退をして、話し合い解決が可能になったということになれば、この後の十億ドルは支払わなくてもよろしい状況が生まれるというふうに理解してもよろしいんですね。
  143. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) むしろ、そういう御議論が現実のものとして行える事態に本当になってもらいたい、私はそう願っております。しかし残念ながら、今そういう見通しを安易にできる情勢でないことも事実でありまして、我々としてはこの情勢を本当に心配しながら見守っておるという状況であることも御理解をいただきたいと思います。
  144. 種田誠

    ○種田誠君 そうしますと、逆にさらに十億ドルを拠出しなければならないかなという可能性が高い。ということであるならば、これに対する財源を早急に裏打ちしていかないと、世界に対して、何だ、約束はしたけれども結局日本は金はないんじゃないか、どうなんだ、こういうそしりを免れないと思うわけであります。  具体的に大蔵大臣として、本年度はどうも税収がかなり厳しい、金融、証券からの税収も上がらない、いわゆるマスコミなどのうわさでは、本年度は六兆円の減収になるだろう、そうも言われております。そして、率直に言ってもう予備費もかなり、一千三百億円近くが支払われているわけでありますから、残りがない。今現実にどういうふうな形でこの十億ドルに関する財源を確保していこうという考えでございましょうか。
  145. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今この中東の問題をわきに置いたといたしましても、私どもにとりまして決して財政運営が楽な情勢でないことは委員承知のとおりであります。  まず、歳入面におきましては、元年度決算剰余金が従前に比して大幅に減少いたしました。また、これまで好調な税収を支えてまいりました経済的な諸要件、石油価格一つをとりましても、その流れが変わってまいっております。こうした状況を考えますと、本院でもしばしばおしかりを受けたことでありますけれども、プラスの税収の見積もり誤りということでしばしば御指摘をいただいたわけでありますが、そういう状況を安易に期待できる状況ではありません。また、歳出面を考えてみましても、健康保険についての義務的な負担の経費でありますとか、あるいは本年は非常に台風の多い年になっておりますが、災害復旧事業などという追加的な財政需要が既に生じてもおりますし、また今後生ずる可能性もあるわけであります。  こうした問題だけでも非常に厳しい中で、今回の中東貢献策にも対応していかなければならないという状況になっておりまして、九月十四日の閣議におきまして、私からは各省庁においてこれまでも執行の留保をお願いしたものがあるわけでありますけれども、さらに各種の既定経費の見直しを行っていただき、一層の徹底した経費の節減に努めていただく必要があるという発言をし、既定経費についての節減合理化について一層の努力をお願いいたしました。  今後の財政運営を考えます場合に、我々は再び特例公債を発行することのないようにということをまず考えておりますし、同時に、一層の既定経費の中の節減合理化に努めることによってできるだけ必要な財源を埋めていきたいということを基本に考えておりますが、まだここから先どういうふうに進めていくべきかということにつきましては、今御報告できる段階にはなっておりません。
  146. 種田誠

    ○種田誠君 いずれにしろ、今般の国際情勢の中において、また国内の諸事情も考えますと、日本の財政は決して豊かではない、日本の民間企業は豊かかもわかりませんが、むしろ国は極めて貧しいんだという、そういうこともよく外国の方にもわかっていただけるように施策を展開していただきたいと思うわけであります。  質問を次に進めたいと思います。  自賠責、自動車損害賠償保険制度についてお伺いをしたいと思います。  私は、この自賠責保険制度は、国の事業として被害者救済という視点からなされている非常に結構な制度であろうと思うわけであります。しかし、制度がよろしいというためには制度本来の趣旨が全うされて、しかも法律がつくられてきたときの、注意を要するという形でつけられた附帯決議などが現実に実現されていく、こういうことがあって初めてこの制度がまさに国民のニーズにこたえられる、そういうふうなものになるのだろうかと思うわけであります。そういう視点で自賠責保険の幾つかの問題点を伺いたいと思います。  現在の自賠責保険の収支勘定がどのようになっておるか、昭和六十二年度決算分から今日までを簡単に示していただきたいと思います。
  147. 竹内克伸

    説明員(竹内克伸君) 自賠責につきましては、ただいま御指摘のございましたような極めて公共性の強い、かつ被害者救済を目的とした強制保険でございます。そういう観点から自賠責の運営について今おっしゃいましたような趣旨に沿って運営してきているわけでございます。  そこで、最近の収支の状況でございますが、六十年のときに料率の見直し等を行いまして、その後収支は改善をしてきてございます。例えば五十九年までは、収入保険料と支払い保険金を比較いたしますと支払い保険金の方が多い赤字の状態でございましたが、六十年から六十三年まで連年黒字になってございます。  数字を申し上げますと、五十九年で見ますと千六百億強の……
  148. 種田誠

    ○種田誠君 六十二年以降でいいですよ。
  149. 竹内克伸

    説明員(竹内克伸君) 六十二年で申し上げますと五百七、八十億ぐらいの黒でございます。六十三年も五百四十億ぐらいの収支の黒でございます。
  150. 種田誠

    ○種田誠君 この自賠責保険には基本的な理念としてノーロス・ノープロフィットの原則というのが働いているわけであります。これがこの法律の基本的な原理だと言っても大げさではないと思うわけでありますが、このノーロス・ノープロフィットの原則というのは、一言で言えば利益を出してはいかぬ、また損害を出してはいかぬ、収支はとんとんでなければならない、そして利益が出た場合には保険料などを値下げすることによって、また欠損が出た場合には保険料を上げることによって調整しなさい、こういう原則だと思うわけです。  そしてさらに、この法律がつくられたときに附帯決議として幾つかの項目が挙げられておりまして、これもやはりこのノーロス・ノープロフィット原則に沿った、またそれを実現するための附帯決議だったと思うわけであります。附帯決議にも書いてありますように、保険料率はついては常にこれの低廉化を図っていかなければならない。算定に当たっては無事故に対する報償制の採用や交通煩雑な地域としからざる地域とにおけるその料率に差等を設けなさいとか、業種別や輸送の態様によって、さらには事故率の差異によって料率を調整していきなさい、こういうようなことも附帯決議に入っていたわけであります。  したがいまして、このノーロス・ノープロフィットの原則、さらには法律ができたときのこの附帯決議などとの関係におきまして、現在の自賠責保険が適正に運用されているかどうか、お考えを伺いたいと思います。
  151. 竹内克伸

    説明員(竹内克伸君) 今御指摘がございましたような制度の趣旨でございますので、附帯決議にございますような考え方も十分取り入れることができる部分は取り入れて運用してきているという考えでおります。御指摘のようなノープロフィット・ノーロスの原則でございます。ただ、極めて多数の車を対象にしたシステムでございますので、事故率あるいは損害率一つとりましても非常に変動をするわけでございます。  そこで、昭和三十年からこの制度が発足して以来、保険料の問題とそれから保険金あるいは保障の限度額というところの二つの点を見てみますと、保険料は昭和三十年から六回改定をしてございます。限度額は九回改定をしてございます。スタートのときの保険金限度額と今日の限度額は、今日約二千五百万になっておりまして約八十三倍になっておりますが、保険料の方は十倍弱というようになってございます。したがいまして、御指摘のように収支の黒字が出た場合赤字が出た場合、もちろん御指摘のような趣旨に沿って調整をしてまいるわけでございますが、やはり社会情勢、ニーズ、世論といったようなものを勘案しまして、その運営は結果として限度額の引き上げに対応したケースが非常に多かった。もちろん限度額との関係で保険料も考えられるわけでございますから、同じ限度額であれば保険料は低い方がいいわけですし、同じ保険料であれば限度額は高い方がいい、そういう要請につきまして、全体としてノープロフィット・ノーロスの原則のもとで今申し上げましたような運営をしてきているわけでございます。
  152. 種田誠

    ○種田誠君 支給限度額が上がることはこれは結構なことだったと思うわけでありますが、では、これまでの間に保険料が下げられたということがありましたでしょうか。さらには、実際、先ほど附帯決議を読みましたけれども、無事故に対する報償制度の採用とか、それから業種別とか輸送の態様別による、またさらには事故率による料率の差等をつけて公平化を図るというようなことがとられたのでしょうか。
  153. 竹内克伸

    説明員(竹内克伸君) まず、今申し上げました六回の保険料の改定の経緯でございますが、保険料のその意味での引き下げというケースはございません。したがって、全体としての運営の趣旨、それから結果的にはただいま申し上げましたように、社会情勢等から余裕が出てきた場合には限度額の引き上げの方で対応してきているという結果になっているわけでございます。  それから、御指摘のございました、いろいろな事故率の差異というようなものを反映しているか、あるいは無事故のときに個別の料率等に反映しているか、その他幾つかの御指摘がございました。もちろんきめ細かく車種別に事故率の状況を見まして、それに相応して車種別の料率の算定を行っております。あるいは無事故の場合の戻しということもございます。ただ、いわゆる地方における差異の問題でありますとかあるいはメリット、デメリットという点については、いろいろ審議会でも議論していただいておりますが、必ずしも適切ではなかろうということで採用していないわけでございます。
  154. 種田誠

    ○種田誠君 では、その中で一つ二つだけ伺いますが、今いわゆる事故率は十二分に反映されておる、こういうふうに述べられたと思うんです。それで、車種別にその辺のところを損害率などで計算してみますと、最も多いのが牽引自動車で、多分これは四〇〇〇以上になるんじゃないかなと思うんです。そして、最も少ない事故率、損害率ですけれども、これが教習用自動車、これは多分二〇%そこそこだと思うんです。さらには自動二輪なども六〇%台だと思うんですね。こういうのがいわゆる車種別に保険料に十二分に考慮されているとすれば、じゃ、なぜ二百五十一CC以上の自動二輪と普通乗用車であれだけの保険料の違いがあるんでしょうか。
  155. 竹内克伸

    説明員(竹内克伸君) ただいま私が御説明した点でちょっと不正確であった点から訂正をさせていただきます。  無事故戻しがあるような御説明、これは間違いでございますので訂正をさせていただきたいと思います。  車種別の状況につきましては、もちろん車種によって事故率等は相当違うわけでございます。したがって、その車種による事故率あるいは損害率というものを極力料率に反映するような努力をしているわけでございます。先ほど、過去六回の保険料の改定がございましたというふうに申し上げましたけれども、全体としての財源事情から保険料全体の改定は行える時期ではない、行うことは適切でないという場合におきましても、車種間の調整だけ行ったことも何回もございます。したがいまして、今後ともそういう調整は続ける必要があろうかと思っております。  ただ、全体としての事故率あるいは損害率あるいは車種別の事故率、損害率は非常に変動するわけでございます。今御指摘のございましたような車種につきましても、前回六十年に料率改定等を行いましたが、当時の状況と現在の状況では全体としての事故率、損害率もかなり違ってきておりますと同時に、車種別個々に見ましてもかなり変動するわけでございます。したがいまして、毎年毎年検証していただいているわけでございますけれども、余り短期間に細かい調整まではなかなか難しいなということで、御指摘のような全体としての調整の必要性と、それからデータとなりますいろいろな計数がかなり年度によって変動するというような実情を両方勘案いたしまして、審議会で十分議論していただきたいと思っているわけでございます。
  156. 種田誠

    ○種田誠君 今、一つ例を挙げました二百五十一CC以上の自動二輪は六万二千四百五十円、二十四カ月ですけれども、これに対して普通乗用車はそれよりも多分安くなっている、四万円台だと思うんですね。この差はどうして出てきたんですか。
  157. 竹内克伸

    説明員(竹内克伸君) これはそれぞれ車種別に事故がどのくらい実績として発生しているかということをベースにしているわけでございます。したがいまして、御指摘の自動二輪でございますと、やはり一般の自家用乗用自動車に比べまして事故の発生頻度が高いということで、最近、例えば御指摘の自動二輪につきましては、事故の、頻度、発生が極力下がるようにということで、関係方面の御研究、御指導ということも行われているわけでございます。そういう点が少し反映してきていると見られなくもないなというようなデータもあることはございます。もっともベーシックに同じ保険金額なのに保険料がかなり違うというのは主として事故率の差によるものということであろうかと思います。
  158. 種田誠

    ○種田誠君 事故率の差であるというならば、私は自動二輪の現在の保険料はむしろ一万円台ぐらいになるんじゃないかなと思うんですよ。その辺のところをもう少し精査していただきたいと思います。  さらに、自動二輪の事故率が高いと言いましたけれども、自動二輪みずからが事故を起こすのではなくて、四輪によって起こる巻き添えの事故が多いという、これが事故の実態じゃないかなと思うんですが、その辺のところはいかがでしょうか。
  159. 竹内克伸

    説明員(竹内克伸君) 事故率からよく検証すれば今おっしゃったような保険料になってしかるべきだという点は宿題としてちょうだいさせていただきますが、直感的には、そういうことにはならぬのではなかろうかというふうに思います。  それから、事故が発生した中で巻き添え事故が、その事故の原因が、どういうことがこの原因になっているかというのは、御案内のように、自賠責は自動車の運行によって他人の生命、身体を害した場合に法律上の損害賠償責任を負担することによる損害を補てんするという措置でございますから、どちらが原因となって事故に結びついたか、その場合の法律上の賠償責任がどちらにあるかということをべースにして算定しているわけでございます。
  160. 種田誠

    ○種田誠君 それでは、その辺のところについてはこれからもより公平な保険料などの算定ができるようにお願いを申し上げたいと思います。  ところで、この自賠責関係などの資料の中を拝見しておりましたら、いわゆるリトンベースという年度別の収支の表があるわけであります。例えば六十二年度を見てみますと、八千八百億ぐらいの収入がありました。そして、支払いが七千二百三十一億ぐらいの支払いがありました。最終的に累積収支残といたしまして一兆四千六百八十一億ぐらいの収支残となっているわけであります。そうしますと、リトンベースで毎年毎年の収支を見ていった場合に、これは大蔵省の金庫の中だと思いますが、その時点では膨大なお金があることになりますね。
  161. 竹内克伸

    説明員(竹内克伸君) リトンベースのただいま御指摘がございました計数につきましては、御指摘のとおりでございます。
  162. 種田誠

    ○種田誠君 今申し上げたように、一兆四千六百八十一億、かなりのお金だと思いますが、これは現実にはどのように使われておりますか。
  163. 竹内克伸

    説明員(竹内克伸君) このリトンベースの計数の性格につきまして若干技術的に、先生御案内のことでございますが、ちょっと申し上げさせていただきたいと思います。  御案内のように、検証の仕組みそのものとしてはリトンベースではなくてポリシーイヤー、つまり契約年度単位でやるわけでございます。この保険が車検とリンクしておりますので、保険の加入も一年、二年、三年というようなタイプがございますが、二年が圧倒的に多いかと思います。したがいまして、ノープロフィット・ノーロスというのは契約単位でもって総保険料収入と総保険金額が等しくなるようにという運営でございます。  保険料は入ったときに、例えば二年単位であれば年初に払っていただく。保険金そのものは事故が発生するたびに出るわけでございますが、それが二年単位であれば、初年度に出ることもあれば二年度に出ることもある、三年単位であれば三年度に出ることもある。かつ、その事故が発生してから実際にその保険金の支払いがいつ行われるかという実態を申しますと、入院が長期化したり示談が長引いたりして結構長くなるということでございます。したがいまして、リトンベースで年度末に幾らお金があるかというのは、契約年度で見れば、翌年度以降にあり得べき保険金の支払いに備えるという性格のものでございます。今御指摘のございましたようなリトンベースの数字というのは、そういう意味では保険料や仕組みの収支の検証の上では使えないわけでございます。  この金額そのものにつきましては審議会でも議論がございまして、圧倒的な大部分は、これは検証の結果でも将来の保険金の支払いの財源に充てるという性格のものであるなと。もちろん厳密に言えば、結果的にはそのうちにあるいは一部黒字ということも入っているかもしれません。これは事後的にしか検証できませんが、現在のような数字では圧倒的な部分が将来の保険金の支払いに充てられるものというふうに理解して差し支えなかろうという審議会の検証結果でございます。
  164. 種田誠

    ○種田誠君 今のお話もよくわかるわけなんです。しかしながら、現実に大蔵省の金庫の中に一兆四千億円強のお金が入っているわけですね。そして、今までの経年度の支払い金を見ていきますと、大体半分の七千億ぐらいのものが保険金の支払いに回っているわけです。大体そうですね。六十三年、平成一年、その前の方も同じぐらいですね。そうすると、少なくとも一兆四千億の半分の七千億台のお金、そしてまた毎年翌年には八千億ぐらいのお金が入ってくるわけですから、結局それが穴埋めになっていくわけですね。そうすると、常時七千億台のお金が滞留しているというふうには言えないんでしょうか。
  165. 竹内克伸

    説明員(竹内克伸君) この仕組みそのものはポリシー・イヤー・ベースという仕組みでございますが、現金の状況で見ればおっしゃるような状況であると理解していいと思います。
  166. 種田誠

    ○種田誠君 では、正確に言いますと六十二年度では幾ら滞留されたお金がありましたか。
  167. 竹内克伸

    説明員(竹内克伸君) この滞留しているお金という表現がちょっと私自身適切かどうかわかりませんが、リトンベースでの六十二年度末における残高は、先ほど御指摘のとおり一兆四千六百八十億ということでございます。
  168. 種田誠

    ○種田誠君 そうすると、滞留しているお金が一兆四千六百億台になるんですか。それでよろしいわけですね。
  169. 竹内克伸

    説明員(竹内克伸君) 年度末におけるこの収支の残高としてあるお金は御指摘のとおりでございます。
  170. 種田誠

    ○種田誠君 では、この滞留しているお金が一兆数千億あるとするならば、実際これはどういうふうに使われていますか。本当は半分でしょう、それは。
  171. 竹内克伸

    説明員(竹内克伸君) 今申し上げておりますような全体の保険料収入、保険金はおおむね六割が再保険として自賠責特会に行きますから、したがって民間部分と政府の分と両方を合わせた数字でございます。
  172. 種田誠

    ○種田誠君 私が今聞いているのは、その滞留資金、これに関しても具体的な運用というのはないんですか。
  173. 磯田壯一郎

    説明員磯田壯一郎君) 具体的な金の六割は私どもの方で再保険をさせていただいております。それで自動車損害賠償再保険特別会計という格好で特別会計で持っておりますので、そちらから運用状況を御説明させていただきます。  六十二年度の決算で申しますと、現金ベースで申し上げまして自動車再保険特別会計に残っております金は約一兆八千億ございます。その一兆八千億のうち、先ほどお話のございましたいわゆる義務経費に対応するもの、それが約一兆円強ございます。それらを一応資金運用部にお預けをいたしまして、資金運用部で運用をしていただく、余裕金はすべて資金運用部に預託するという格好でやらせていただいているわけでございます。
  174. 種田誠

    ○種田誠君 そうしますと、その預託をしたということによって預託先ではそのお金はどうなっていますか。
  175. 磯田壯一郎

    説明員磯田壯一郎君) これは資金運用部資金という格好で、御存じのとおりいろいろな企業にお貸し付けになったり、そういう格好で運用されておりまして、私どもの方はその預託による預託利子をいただく、こういう格好になっております。
  176. 種田誠

    ○種田誠君 六十二年度で幾ら預託利子が入っていますか。
  177. 磯田壯一郎

    説明員磯田壯一郎君) 六十二年度決算でございますが、一応八十五億の利子収入を保険勘定で見ております。
  178. 種田誠

    ○種田誠君 かつて昭和五十八年ごろ、日本の財政は大変厳しかった。その当時、財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置法に基づいて自賠責保険から二千五百億円強のお金一般会計貸し付けられたことがありますか。
  179. 磯田壯一郎

    説明員磯田壯一郎君) お答えの前に、ちょっと数字を間違えまして済みません。八十五億ではなくて八百五十億でございます。失礼をいたしました。  それから、ただいまの御指摘でございますが、昭和五十八年度予算におきまして、自動車損害賠償責任再保険特別会計にございます余裕金の中から二千五百六十億円を一般会計の方に繰り入れるという格好で、事実上の貸し付けのような格好で繰り入れをさせていただいた事実がございます。
  180. 種田誠

    ○種田誠君 そのお金はもとより戻っておりますね。
  181. 磯田壯一郎

    説明員磯田壯一郎君) 六十一年、六十二年、それに六十二年の第二次補正予算で合わせて二千五百六十億、すべて再繰り入れという形で一般会計から繰り入れをさせていただいております。
  182. 種田誠

    ○種田誠君 そのお金には利息をつけてもらいましたか。
  183. 磯田壯一郎

    説明員磯田壯一郎君) これは五十八年度予算の当時にいろいろとお話し合いをさせていただきまして、この繰り入れそのものについて繰り入れ条件をどうするかとか、それからなぜ繰り入れをしなければならないかとか、そういういろんなことをお話しさせていただいたわけでございますが、五十八年度限りの異例特別の措置であるということで、いろいろな状況を勘案いたしまして、これにつきましては繰り入れ条件無利子ということで六十一年から七年でお返しいただくというお約束のもとにお貸ししたという格好になっております。
  184. 種田誠

    ○種田誠君 同じような形で厚生年金の方からも一般会計に繰り入れがあったんですね。それは利息がついているでしょう。なぜこちらは利息をつけなかったんですか。
  185. 磯田壯一郎

    説明員磯田壯一郎君) 先ほども申し上げましたように、繰り返すようで大変失礼でございますが、このときに運輸大臣に対しまして総理大臣から特別異例の措置としていろいろと一般会計の不足を補うために協力してほしいというお話がございまして、その当時自賠責特会そのものの状況資金運用状況から直ちにその資金を必要とするわけではないという状況、それからさらに一般会計から支出しております中にもいろいろと私どの方に裨益するようなそういう事業もあるというような状況、その他もろもろの状況を勘案いたしまして、一応異例の措置として繰り入れ条件を含めて総合的に判断してやむを得ない、こういうふうに判断をしたものでございます。
  186. 種田誠

    ○種田誠君 保険料ですから、慎重にその辺のところをこれからは運用していただきたいと思います。  そして問題は、先ほどこの滞留資金を預託する、そうすると利子が出る、八百五十億の利子が出た。この利子は運用しておりますね。
  187. 磯田壯一郎

    説明員磯田壯一郎君) 八百五十億の利子のうち、ある部分は自動車事故対策センターに対する補助金という形で事故防止と被害者の救済に充てております。それからある部分は、その自賠責特会そのものを運営します要員の経費という格好でその業務勘定に繰り入れるという格好をしております。その余は当然余裕金という格好になりますので、その部分は改めて資金運用部に預託をする、こういう格好になっております。
  188. 種田誠

    ○種田誠君 自動車事故対策センターとか救急医療体制の整備充実、その他もろもろの施策を補助していくこと、私もこれは交通事故の減少につながる重要なことだと思うんです。それはそれで結構なんですが、これは自賠責からではないと思いますが、同じようにこの運用益が実際は警察のパトカーを買うとか白バイを買うとか、そういうお金に充てるための寄附としてなされているということも聞いておるわけなんです。したがいまして、、これらの運用益の利用に関しては極めて慎重に本来の目的が達成されるように運用していただきたいと思いますが、その辺のところ、これからの運用益に対する利用の仕方についての新たな考えはございますか。
  189. 磯田壯一郎

    説明員磯田壯一郎君) 運用益の使用につきましては、御存じのとおり自動車損害賠償責任保険審議会という審議会、自賠審と呼んでおりますが、こちらの方で、その運用益につきましては事故防止それから被害者救済、そして将来の収支の改善のために使うんだと、こういうことで五十九年度のときに答申をいただいておりまして、現在その答申に沿いましていろいろとやっているところでございまして、当然のことでございますが、私どもとしましてもその運用につきましては事故の防止あるいは被害者の救済、こういったこと以外に使うというつもりは毛頭ございません。
  190. 種田誠

    ○種田誠君 ポリシー・イヤー・ベースの年度別収支を見ましても、六十年以降どうも予定利潤が予測されて、そして収支が決済をなされているような感も受けるわけであります。そうしますと、最も大切なノーロス・ノープロフィットの原則というものも破綻してしまう、そういうおそれもあるやにも感ずるわけであります。  したがいまして、これだけいわゆる滞留資金一兆円を超える、そして運用益の利子だけでも八百五十億を超えるということならば、これらに関してこの時点におきましてはもう一度法律などの整備をした上で国民や国会にこの辺のところが透明になるようにしていただきたいと思うわけでありますが、大蔵大臣、いかがでしょうか。
  191. 竹内克伸

    説明員(竹内克伸君) よく御案内のことではございますが、繰り返しになりますが、リトンベースの数字が収支のノープロフィット・ノーロスの原則のもとに運用の基準になるわけではないわけでございます。契約ベースでもって見て全体の保険金と保険料がバランスするようにということで、かつてはそうではございませんでしたが、最近では毎年審議会を開いていただいて、毎年検証して、料率改定等の必要性について検討していただいているわけでございます。  したがいまして、最初の御質問でございますノープロフィット・ノーロスの原則にもとることがないような運用をすべきであるということは当然でございまして、そういう趣旨に沿ってこれからも運用してまいりたい。それから、もう少しよくわかるようにしてもらいたい、極めて技術的な世界でございますのでちょっとおわかりになりにくいという点はどうしてもあるわけでございますが、その点につきましては審議会の答申その他できる限りオープンにしていく。また、関連の資料につきましても、今申しましたような点を含めてなるべくわかりやすい、国民にわかっていただけるような努力はこれからも続けてまいりたいと思います。
  192. 種田誠

    ○種田誠君 ぜひ、法の整備も含めてこれからの検討をお願いしたいと思うわけでありますが、いずれにしろ、最近保険料率に関しての不平等などが訴えられてもおります。公平な保険料の基準などをもう一度見直しをしていただきたいと思うわけであります。  大蔵大臣、最近自動二輪に乗る方が大変ふえました。昔は自動二輪といえば暴走族のようなことを言われましたけれども、最近は女性のドライバーもかなりふえているわけなんですよ。しかも保有台数が二千二百万台、そういうことなものですから、ぜひその辺のところよろしくお願い申し上げます。
  193. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 御指摘を受けました点を含め、これから先も制度の本旨にもとらないような運用に努めてまいります。
  194. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 本日は、私は財政と社会保障とのかかわりを中心に御質問をさせていただきます。  まず冒頭に、橋本大蔵大臣が御就任以来、ヒューストン・サミットに出席のためアメリカに行かれ、それから欧州主要国の大蔵大臣との意見交換でフランス、イタリー、西独、イギリス、最近はまた世銀・IMF総会出席でアメリカ等、東奔西走されておられることに対し深く敬意を表するものであります。  まず私は、財政再建の軌跡と社会保障の予算抑制との関係について御質問をさせていただきます。  昭和五十年度に特例公債が発行されてから今日に至るまで三度にわたり自民党政府は、特例公債依存体質からの脱却目標を年次ごとに設定して、それこそ血のにじむような努力を続けてやっと本年度特例公債依存体質からの脱却が達成されました。その間を振り返ってみて、それの成功、達成ができた要因はいろいろあると思いますけれども、私は何といっても一般歳出の中で最も大きな項目を占める社会保障関係費の調整、もっと削減でもいいし調整でもいいし、しわ寄せでもいいんですけれども、そういうことがあって今日の特例公債依存体質からの脱却も可能になったと言えると思いますが、その間の社会保障予算抑制との関係について最も深くタッチしてこられた橋本大蔵大臣に御見解を承りたい、こう思うわけであります。
  195. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) せっかく褒めていただきましたのに、多少委員の御指摘とは方向の違うお答えを申し上げることになりますが、この点はお許しをいただきたいと思います。  今委員昭和四十八年、いわゆる福祉元年と言われました時点から今日までをとらえて問題を提起されたわけであります。確かに昭和四十八年、今考えてみれば高度経済成長の一番終わりの時期になったわけでありますが、この当時福祉元年という言葉が非常に大きく使われました。しかし、その直後に御承知のように第一次のオイルショックを我々は経験することとなり、それ以来今日まで極めて厳しい財政事情のもとで努力を重ねてきたことも御指摘のとおりであります。殊に五十年代の後半からは非常に厳しい財政事情のもと、同時に臨時行政調査会の答申等も受けながら各部門の歳出の節減合理化に私どもは努めてまいりました。そしてその間、社会保障の関係につきましては、人口の高齢化というものの進展などもにらみながら制度全般にわたってさまざまな合理化、適正化というものを行いながら、一方では真に必要な財政需要に対しては適切に対応を続けてきたと考えております。  ですから、昭和四十八年度と平成二年度を比較してみますと、例えば厚生年金月額はモデル計算の場合には三・八倍になっておりますし、老齢福祉年金の月額は五・八倍になっております。また、医療費関係の国庫負担は四・九倍になっておるわけであります。一方、その間の名目GNP、これは三・六倍でありますし、消費者物価は二倍でありまして、この伸び率を対比してみますと、名目GNPあるいは消費者物価に対し厚生年金月額にいたしましても三・八倍でありますし、それぞれの分野において伸び率はむしろ上回っておりまして、社会保障の充実というものは着実に進捗をしていると思います。  また、社会保障関係費の予算総額を見ましても五・二倍という伸び率になっておりまして、この間における一般会計の歳出の伸びは四・五倍でありますし、税収は四・三倍でありますからそれぞれ上回っているということも事実でありまして、委員は切り下げとかいろいろおっしゃいましたけれども、決して水準は下がっておりません。むしろ向上しておるということを御認識いただきたいと思うのであります。
  196. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 ただいまの大臣の御答弁を拝聴すると、社会保障レベルは決して下がってはいないんだと、こういう御答弁だったと思います。    〔委員長退席、理事千葉景子君着席〕  私も大綱においては下がってはいないんだ、大臣の御答弁のとおりだと、こう思っております。それで、その中の一部はこれはきょうは討論をすることは控えまして、社会保障費、特に医療保障という、医療費というものは消費じゃなくて健康への投資でありますから、これはまた統計等いろいろ二十年後、三十年後に出てくることでございますから、それはまたその時点でお話をさせていただきたいと、こう思います。  次は、財政再建路線と橋本大蔵大臣の演じた役割でございますけれども、こういう席でどうかとも思いましたが、あえて私は、次の項目との連係があるものだから申し上げさせていただきます。  橋本大蔵大臣の御経歴をざっと私は表にしてみましたら、昭和四十八年、福祉元年でございますけれども、これは第一次石油ショック。それから五十年が今申し上げた特例公債の発行。昭和五十四年が橋本厚生大臣。このときが公債依存度が三九・六%。そのときに第二次石油ショックが起こって、昭和五十五年度が自民党行財政調査会長。その年が財政再建の第一歩でございまして、公債の対前年度減額開始をしたときでございます。昭和五十七年度がゼロシーリング、公務員の定員圧縮、それから老人保健制度の創設、いわゆる老人医療の一部負担の導入等をやったところであります。    〔理事千葉景子君退席、委員長着席〕  たくさんありますけれども、五十九年には医療保険制度の改革、健康保険本人一割負担の導入、退職者医療制度の創設。それから六十年が医療法の改正、年金制度の改正、児童扶養手当法の改正、地方負担の導入等。昭和六十一年度が橋本運輸大臣でございまして、老人保健制度の見直し、一部負担額の見直し、拠出金按分率の見直し、老人保健施設の創設。それから六十三年が国民健康保険制度の改革。それで平成元年度が橋本大蔵大臣就任、これは公的年金制度の改革をなさっておられます。平成二年度、ことしが特例公債依存体質の脱却でございまして、ことしは公債依存度八・四%で、御高承のとおりでございます。国民健康保険制度の改革と老人保険制度の基盤安定化と、こういうことが大臣とのかかわりでございます。  大臣は、社会保障のレベルは下がっていないという御答弁でございましたけれども、私は昭和六十一年度の老人保健法の改正のときに自民党の社会部会で医療基本問題調査会等で大臣とやりとりというよりは激論をやったことがございます。そのときは私もまだ議員になってじきでございましたので、人間の命は地球よりも重いという、いわゆる憲法二十五条に保障された権利論だけを振り回していたんじゃなかろうかと、いささか最近は反省もしております。私、大臣を目の前にしてちょっとごまをするようで恐縮ですけれども、消費税問題等を振り返ってみても、自民党の代議士もひっくるめて、ポリティシャンは次の選挙を考え、ステーツマンは次のゼネレーションを考えるということがありますが、先ほどから喜岡先生も消費税の話もなさっておられたけれども、私は消費税五%論を論じた自民党の中のただ一人でございます。そのときは自民党から袋だたきに遭いましたけれども。私は、社会保障の財源と社会保障のあるべき姿というものは非常に大事である、こういうぐあいに思っております。亡くなられた吉村次官、この方とも私はやり合ったことがあるんですが、今は尊敬しています。その吉村次官がこういうことをおっしゃった。大浜先生、厚生省の予算というのは両手両足を縛られてプールに投げ込まれているような状態なんだ、だからなかなか思い切ったことができないんだよということまでおっしゃっておられたのでございます。  そこで、橋本大蔵大臣にお聞きするのでございますが、そういう関係で財政と社会保障の姿はどうあるべきかという基本的な面で、簡潔でようございますから御見解をちょうだいしたい、こう思います。
  197. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 何ともお答えのしにくい御質問をいただきました。簡潔にと言われましたが、必ずしも簡潔にはいかないかもしれません。  基本的に申し上げなければならないことは、社会保障制度というものが個人の生活を保障することによりましてその本来の能力を発揮させる、社会的活力を維持させるという役割があります。また、財政的に見れば非常に重要な機能として所得再分配の機能がございます。その上に立ちまして私どもが社会保障というものを考えてまいります場合、もう一つ落としてならないことは、人口構造の変化に対応してその制度がいかに効率的、機能的かつ現実に合ったものに見直されていくかということであります。  そうした意味からまいりますと、例えば、発足をいたしましたとき、年金制度はまさに我が国のその当時の状況をあわせ世帯単位の年金として組み立ててありました。そして、長い期間それで特に痛痒を感じずに国民もその運営をゆだねてこられたわけであります。しかし、そのうちに婦人の社会進出というものが積極的に行われる状況の中から、個々人の年金権というものが非常に大きな論議の対象になり、あわせて妻の年金権というものも主張をされるようになりました。そして、年金が世帯単位の姿からそれぞれ個人の老後の保障、生活の保障という方向にその姿を変えてきたことは委員承知のとおりであります。また、非常に我が国の平均寿命の短かった時代にスタートいたしました医療保険というものが、そのうちに人口の高齢化に伴い老人医療というものを意識せざるを得ない状態になり、その中で一時期試行錯誤のようにしてさまざまな制度化が行われました中から、いわば健やかに老いるという一つの柱を目標に置いた老人保健という考え方に整理をされてきたことも御承知のとおりであります。  こうした考え方の中でこれから我々が考えていかなければならないことの一つは、一体日本の社会というものが今までのように世代間同居を中心とした家族構造でこれからも動いていくのか、それともむしろ世代間の同居というのはレアケースであるというヨーロッパ、アメリカのような形態に変わっていくのかということであります。これによって社会保障の三本柱の中で医療保障にウエートをかけるべきか所得保障にウエートをかけるべきか、国民の選択もおのずから変化をしてくるであろうと思われます。同時に、その中において公共福祉サービスが大きな役割を果たすわけでありますけれども、その公共福祉サービスの目指す方向というものも世帯構成の変化に対応して変わらなければなりません。  我々は今ちょうどそうした意味での過渡期に位しておると私自身は考えておりまして、高齢者保健福祉推進十カ年戦略が着実に実施されていきます中でおのずから日本国民の将来、選ばれる方向が決まっていくでありましょうし、それに対応した制度を我々はこれからも常に見直しながら組み立てていく責任がある、そのように考えております。
  198. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 私の次の質問までも御答弁をいただきまして、恐縮しております。  次の私の質問は、先ほどから大臣の御答弁にあったとおりの経過を経て日本の社会保障は今日に来ているけれども、私は、今日本は、社会保障の一番大事な転換期にある、こういうぐあいに思っております。それは四日の当委員会でも私申し上げましたとおり、欧米諸国を回ってみて、七月にも視察をしてまいりましたけれども、社会保障給付費の今度の発表を見ても、今大臣がお述べになられた公共福祉サービスが欧米に、特にスカンジナビアに比べて二分の一、三分の一と低い、こういうことでこれから先どうしても公共福祉サービスに力を入れなければいかぬということが一つ。  もう一つは、世界の社会保障が今道に迷っている。アメリカは全人口の一七%もいわゆる公的保障が受けられなくて、病気になったら路頭に迷う。イギリスでは七十万から八十万人が病気になっても入院できない、治療ができない、いわゆるウエーティングリストに七十万も八十万も載っている。そういうような状況の中で、財源をどうするかといういろいろな問題を抱えているわけでございまして、今、日本は、そういう民活の問題をどうするか、財源をどうするか、公共福祉サービスをどうするかということで、その転換期にある社会保障をどういうふうに方向づけるかという非常に大事な時期にあって、実は日本が世界の日本だ、経済大国日本だと言われ出した数年前から私は夢を持っている。その夢はどういうことかというと、二十一世紀、あと十年の間に日本は高齢化率が欧米先進諸国並みになる、高齢化率が達していく。それから社会保障の国民負担率も欧米化、先進諸国並みになるまでどうしてもあと七、八年かかる、その間に我々はノーハウを身につけることができるんだと、それで今非常に大事なときだと思って、特例公債の脱却ができたら社会保障の予算を重点的に回してもらいたいという期待を持っておったら、いろんな問題が起こっちゃって、大臣の先ほどの御答弁にもあるとおり、なかなか金はうまくいかぬよと言わんばかりの御答弁だったので、ちょっとがっかりしておるのでございます。  大臣は、今高齢化社会を二十一世紀に控えて日本の社会保障は今のままでいいのか、それから本当に転換期にあるから、そういった民活の問題、財源の問題、システムの問題等もひっくるめて大事な時期にあるという御認識があられるのかどうか御見解をお伺いしたい、こう思うわけでございます。
  199. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今私自身転換期にあると考えておりますし、同時に、これから高齢化が進めば進むほど我が国の財政の中に占める社会保障費というもののウエートは高くなっていく、これは当然のことでありまして、高くなっていく、そのように思います。問題は、それをどう国民全体の中で負担をし、同時に支えていけるだけの体制をつくり上げるかということでありまして、我々はこれから先も不断の見直しを必要とすると申し上げているのもそうした意味であります。問題意識は持っているつもりです。
  200. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 今中東湾岸危機に際して国連安保理事会の決定、要請に基づいて日本が貢献するとかしないとかいろいろ言われています。私は、日本が世界に貢献するという道はいろいろあるけれども、その最たるものの一つは、今申し上げたように、ロンドンエコノミストも指摘しているとおり、世界の社会保障、先進諸国の社会保障は道に迷っているから、日本は世界の社会保障のモデルをつくるということも大きな日本の国是でなければいけないと心から思っていますが、大臣、いかがでございましょうか。
  201. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) ロンドンエコノミストは、たしか三年ほど前に世界各国の医療費並びに保険制度の分析をいたしました中に、日本の医療保険制度は一番安上がりで効率的な医療を行っているという指摘をされまして、その内容を私も調べたことがございます。相当事実誤認もありましたし、言いたいこともある内容でありました。むしろ、ロンドンエコノミストがどう言おうと、我々は我々の民族としての将来をかけての議論をしていかなければならない、率直に私はそういう感じをいたしております。
  202. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 次は、先ほども申し上げましたとおり、本年度初めて特例公債の依存体質からの脱却ができた、平成七年度までに公債依存度を五%以下にするんだという財政制度審議会の新しい目標が設定されておるわけでございます。  先ほどから申し上げているように、中東危機に対する四十億ドルの問題、また台風災害の問題、あるいは米軍駐留費の肩がわりの問題、あれもこれもといろんなのが入ってくる。世界の日本でございますから、やっぱり責任がありますから、大国としてのやるべきことはやらなければいかぬということはよくわかるのでございます。  世界のバンカーと言われているけれども、正直な話、先ほども種田委員がおっしゃったように、私は、日本の総理や外務大臣や大蔵大臣や、あるいはいろんな偉い大政治家が外国に行くたびごとに最近はびくびくするんですよね。また借金を言われてきて、お土産を持っていかなければいかぬという約束をさせられてくるんじゃないかと思って、本当の話、びくびくしている。日本は金持ちであるのか金持ちでないのかわからない。これは国民は金持ちですわな。国民は貯蓄率一五%以上もあって世界で一番金持ちで三百兆とか幾らとかへそくりいろいろ持っているけれども、実際に公債残高を多く抱えておって、それで今言ったような状況の中で本当に金持ちか貧乏人かわからない状況なんです。  私はそういう意味でお伺いするわけでございますけれども、せんだっても申し上げたように「チャリティー イズ フロム ユア ホーム」ですから、身内のこともできぬで何で他人のことをするかという言葉も出てくるわけでございますが――誤解のないように、私は保守党でございましてリベラリストですから、世界の日本の大国としての役割は十分わかっている。やらなければいかぬことはやる、それは当たり前のことですけれども、まず社会保障を大臣もさっきおっしゃったように世界のモデルにするんだという、これは本委員会で初めて世界のモデルにするということを大蔵大臣が承認いただいた記念すべき日でございますから、ぜひ私は、それで新しい財政再建目標は決めたけれども、こういういろんな中東問題等、臨時の支出がかさんでも社会保障の財源は確保していただきたい、こういうのが私の趣旨でございますが、大臣の御答弁をいただきたい、こう思います。
  203. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 例えば、中東の支援のために四十億ドルという我々は負担をするとしましても、そのために生活保護費の切り下げができるでしょうか、お年寄りに対する年金の給付額を切り下げることができるでしょうか。我々はむだは省きます。そして一層の合理化の努力もいたします。しかし、必要な財源というものは確保しなければなりません。国はそれだけの責任があるはずだと、私はそう思います。
  204. 及川一夫

    委員長及川一夫君) 午前の審査はこの程度とし、午後四時三十分まで休憩いたします。    午後一時二十九分休憩      ─────・─────    午後四時三十分開会
  205. 及川一夫

    委員長及川一夫君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和六十二年度決算外二件を議題とし、皇室費国会会計検査院大蔵省国民金融公庫日本開発銀行及び日本輸出入銀行決算について審査を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  206. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 午前中の質問の続行をさせていただきます。  橋本大蔵大臣は、新しい財政再建目標下、非常に厳しい状況にあるけれども、社会保障の財源は今後も確保していく、こういう御答弁を賜りました。それで私は、具体的にそれなら財源をどういうぐあいに割り振りしていったらいいかという私見を申し述べさせていただきます。  せんだって以来私が主張してきたのは、日本の医療保障は今や先進諸国の中でも最高の水準を行くものである。ただし、せんだって発表になった社会保障給付費の内訳を見てもわかるとおり、その他の保障部門、すなわち公共福祉サービス部門が先進諸国、特に北欧に比べて二分の一、三分の一ぐらいに劣っている。また、実際に私どもが視察をしても、日本よりは北欧あるいはその他の国がすぐれていることは否めないと思います。よくちまたで、いや北欧は金があるんだとか、老人は寂しいんだとか、社会活力に劣っているとかというようなことがありますけれども、実際にはそういうことは私はそんなに強くは受けておりません。私は、今中東問題とかあるいは日米貿易摩擦の問題とか、あるいはいろんな内政、外交、防衛等いろいろな問題がありますけれども、何といっても日本にとって最も大事なのは、これから先の高齢化社会を迎えるに当たって、社会保障政策をどういうぐあいに推し進めていくかという方向づけであると思います。  それで具体的に、日本は御存じのとおり今寝たきり老人が六十万おって、これが十年後には百万になる、あるいは二十年後には百四十万になる。また、痴呆性老人が今六十万おるけれども、これが平成十二年には百十万になり、あるいは百六十万になる。こういう方々に対する作戦として「ねたきり老人ゼロ作戦」、ゴールドプランがなされているのは御高承のとおりでございます。私は、このゴールドプランは日本の社会保障史上大きな効果を上げる作戦である、また上げさせなければいけないと思っていますけれども、しかし実際に、それは言うはやすくて行うのは非常に難しい状況にある。  例えて申し上げますと、デンマークと比べてみた場合に、ホームヘルパーはデンマークは日本の十五倍だ、訪問看護婦は向こうの方が三十五倍も多い。あるいはナーシングホーム一つとっても日本の現在の数の五倍も持っている。そういうような状況であります。そして、その中で特に、今申し上げたように、マンパワーをこれから育成しなければいかぬけれども、これも少し、少しどころか大分遅い。御存じのとおり合計特殊出生率が一・五七というぐあいに先進国の中で最も低い状況にあるわけでございまして、デンマークあたりではそういうのを解決するために、もう既にいろんな政策を細じております。それは御存じのとおり児童手当等でございますけれども、日本は第二子、第三子合わせて七千五百円。それからフランスが三万円、実額六万円と言われております。西ドイツもフランスとほぼ同額の児童手当を出している。スウェーデンのごときはもう御高承のとおり、父親であろうと母親であろうと、子供が産まれた場合には十五カ月間休業手当がもらえる、こういうような状況にあります。  私はそういう点を考えた場合に、本当に日本の社会保障は、先ほども大蔵大臣から御答弁で、日本の社会保障は転換期にあるというお言葉をいただいたんですけれども、いろんな面で劣っている。実際に行ってみて、向こうではお年寄りが入るナーシングホーム等も個室が主、主といっても九〇%以上個室なんです。デンマークあたりでは二人部屋をつくるということ、お年寄りを二人部屋に入れることはデンマークの恥である、こういうことをはっきり言っている。それから継続の精神、いわゆる自分の今まで過ごした生活形態を継続させるということで、家具の持ち込みも自由である。日本の特養のごときは段ボール箱二箱しか持ち込めない。こういうような大変な差があるんですよ。  だから私はそういうことで今具体的な例を申し上げましたけれども、先ほど大蔵大臣から日本も、今後世界の社会保障のモデルになる日本をつくっていくんだというありがたいお言葉をちょうだいしましたけれども、実際に緊急に必要とするナーシングホーム、訪問看護婦、ホームヘルパー、この三者をデンマークあるいはスウェーデン並みにするに当たっても三兆四千億円という金が必要なんですね。これは関西大学の一圓教授の試算、その他の試算も出ています。おおよそそういうぐあいに三兆円以上の金が必要だ、こういうような状況になっていますけれども、これに対して大蔵大臣はどういうお考えであられるのか、大臣の御所見を拝聴したい、こう思います。
  207. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 先刻も私は触れたと思いますけれども、今回私どもは高齢者保健福祉推進十カ年戦略の初年度として現在作業に取り組んでいるわけであります。そしてこの目標は、これからの十年間において我々が二十一世紀を迎えるまでに公共福祉サービスとしての基盤をきちっと確立しておかなければならないという目標に沿ってこれがつくられたものであることは御承知のとおりであります。そして、これを実行していく上で最大の問題点は何かといえば、委員よく御承知のとおりにマンパワーであります。そのマンパワーの確保について、これは国だけでできることでは当然ありません。地方自治体にも積極的な御協力をいただかなければなりませんし、何よりも民間における協力、それぞれの地域社会における協力というものを必要とするものであることは言をまちません。  また、今委員のお話で、一つ私は非常にうれしく拝聴しておりましたのは、昭和四十年代の半ばにおいて既に我が国においてはナーシングホームの必要性というものは叫ばれておりました。清水議員おられますけれども、看護協会を中心としてナーシングホームの必要性が叫ばれておったことは御承知のとおりであります。しかし、当時日本の医学界は、ナーシングホームというものに必ずしも好意を持って対応されたとは言えませんでした。そして、医師の監督指導というものを強調された結果、現実にはナーシングホームの建設というものがほとんど行われなかったことも御承知のとおりであります。  これから先、健やかに老いるという前提を我々が政策の柱に据え、また家族制度の変化に対応していくことを考える場合、いわゆる従来からあります各種の老人福祉施設あるいは医療施設と並行してナーシングホームが積極的に必要になっていくことは委員指摘のとおりでありまして、我々は当然こうしたものに対する整備目標も立てていかなければなりません。また同時に、こうした分野に対する関心を国民により深めていただかなければならないと考えております。こうした点については、私は基本的に委員の御認識と私どもの認識に開きがあるとは考えておりません。  ただ、例えばデンマークあるいはスウェーデン、単純に取り上げて他国の制度とを対比されることには多少私は抵抗がございます。  例えば、それでは国民負担率は一体どうなのか。御承知のように我が国の国民負担率は、たしか四〇%前後であったと記憶をいたしておりますが、たしか一九八七年ぐらいの数字だと思いますけれども、デンマークの場合には国民負担率は七五・二%、果たしてこれだけの高率の負担というものに国民は耐えられるでしょうか。むしろ高福祉、高負担型の社会というよりも、お互いがみずから立ち、ともに助けるという観点からいくならば、私は日本型の福祉というものを必ずしも他国の現況に照らし合わして同一水準を目指すのではなく、日本なりの考え方があってしかるべきであると思います。  これは、我々昭和四十年代の半ばに、大きい施設をつくることが福祉につながるという錯覚を関係者もまた学者も我々も持っていた時期がありまして、福祉関係において大規模施設の建設に走った時期がございました。結果としては、これは失敗でありました。管理者の肌のぬくもりが入所者に伝わる規模がやはり一番よかったということを、我々は高い授業料を出して学んだわけであります。他国の仕組みをそのままに移しかえること、必ずしも我が国にとってふさわしいものでないと私は考えておりますし、我が国の国民の了解していただける負担の範囲において日本型の福祉社会というものを我々は目指すべきであると、そのように考えております。
  208. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 最後に大蔵大臣の御指摘にあったとおり、まさにしかりで、デンマークと日本の国民負担率を比較してみたらもう一目瞭然で、高福祉高負担をとるのかというと、これはまたその国の社会保障制度、医療保障制度というものはその国の歴史とか社会構造とか価値観とか、そういうもので決まってくるわけでございますから、後ほど私はまたこれは財源問題で触れようと思いますが、それで消費税問題も実は先ほども喜岡委員からも出たし、いろんな方々から出ましたけれども、デンマークでは二三%なんです。大浜方栄は五%を主張いたしましたけれども、私より一八%も高い。近ごろは消費税反対反対を唱えた有名な日本の週刊誌でも、こぞって欧米、特に北欧の老人福祉を取り上げておって、財源の問題までも言うているから、私はこれはいい傾向だと、こう思っている。ついでながら、それも報告させていただきます。  それから、私が大臣に直接お聞きしたかったことは、先ほどの問題で、ナーシングホームとかホームヘルパーとか訪問看護婦とか、こういうものをそろえるだけでも単年度で三兆円余りの金が要るんだと、それなら今の日本の社会保障の増分的な予算編成方式では、これはもう逆立ちしても鼻血も出ないぐらい出ないのであって、だから私は増分的な単年度の予算編成ではこれはなかなか難しい。もちろんゼロベースの予算編成方式で政策転換は可能、容易ではあるけれども、しかし現実問題としては、そのゼロベース予算で予算を削られる各省庁の抵抗があるから、これはなかなか言うはやすく実行は難しい。したがって、私は現在の増分主義的予算編成の中でもいいから、政策上のアクセントをつけて、高齢化対策をやるんだ、ゴールドプランを実際にもっと推し進めていくんだと、そういうことで予算をかえるような予算編成はできないか。  それなら過去にそういうことはなかったかというと、実際に福祉元年ですか、昭和四十八年、五万円の年金の実現を見、それから年金のスライド制、これは大蔵大臣はたしか自民党の社会部会部会長であられたと思いますが、そして、その翌年の昭和四十九年の社会保障費の伸びは全体の伸びよりも一七%高い、金にして七千七百億余りの金で、その当時の財政規模は十七兆ですから現在の予算に直すと三兆円余りの社会保障費の獲得ができた。また、それだけじゃなくて、本州と四国との本四架橋ですか、それも三兆円余りの大プロジェクトができた。これはもちろん一般会計から出たものじゃないんですけれども、そういうようにやろうと思えばできるんだ、知恵を絞れば。世界の社会保障のモデルをつくるとさっき大蔵大臣がおっしゃったんですから、それぐらいのことがなければ私はできないんじゃなかろうかと思う。  それで、実際に私はアメリカに一九六五年に行って、それから六七年に行って、お年寄りの方々がナーシングホームに入るときに自分の預金とかなんとか持っているのを全部差し出すんですね。年金も差し出して入っている。今度もスカンジナビアへ行ったら、スカンジナビアでは、年金のうちの八割は自分の入っている老人福祉施設に出して、あとの二割を自分の小遣いにしている。そういうようないろんなことをやっている。日本でも東京で、武蔵野市方式ですか、福祉のケアを受けようとするお年寄りたちは自分の持っている財産の一部を提供する、こういうようなことをやっております。そういう財源等も、これは決して福祉の後退じゃなくて、連帯の精神を推し進め福祉の財源を求めるという意味からも、そういうような予算の仕組み、編成の創意工夫が必要ではなかろうか、私はこういうぐあいに思っておりますけれども大蔵大臣の御意見を拝聴したいと思います。
  209. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、基本的な社会保障の枠組みについては国が責任を負いつつ、その上に民間の協力を得ていく、あるいは個々人の御努力を積み重ねていただく、こうした姿が基幹であろうと思います。そして、今委員が御指摘になりましたように、例えば財政再建という厳しいかけ声のもとで非常につらい予算編成を強いられておりました間にも、御承知のように老人保健制度の完全な再スタートに近い見直しでありますとか、あるいは世帯単位の年金から個人の年金権というものの確立へと政策の移行が行われたことも御承知のとおりであります。また、高齢者保健福祉推進十カ年戦略そのものが今後十年の目標を設定し、毎年その進捗状況に応じて予算ももちろん計上していかなければなりませんし、それを使用してのマンパワーの養成に努めていこうとしていることも御指摘のような考え方を基本に持つわけでありまして、我々は御指摘のような考え方を土台にしながら着実にこれからも進んでまいりたい、そのように思います。
  210. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 最後に私は、本日の冒頭の御質問でも申し上げたとおり、昭和五十年度の特例公債の発行から今日に至るまで、政府・自民党は三度にわたって特例公債依存体質の脱却の目標年次を設定して、やっと本年度特例公債からの脱却ができた、それまでの努力は本当に血のにじむような努力でございました。御本人を前にして恐縮ですけれども、いつか橋本大蔵大臣のパーティーに行きましたら、総理大臣以上の実力のある政策通の大先輩が、橋本先生には我々は足を向けては寝られない、こういうことを言っておるから、私は何のことかと思ってよく調べて、その後政治家としても少しずつ成長して、ああ、橋本先生がいないと予算の編成が組めないぐらい予算のやりくり算段をやったんだ、ということは、逆に言うと社会保障関係を大部分削りに削ったんだな、私はそう思ったのでございます。しかし、先ほど大臣もおっしゃったように、これからの日本は世界のモデルになる社会保障政策をやっていくんだ、こういうことですから、大臣は若くして、しかも総理の道に一番近いと私は思っていますから、今までは削る橋本であったけれども、今後は出す橋本になっていただきたい、私はこう思います。  それは今までは、どうも私が思うに、昭和三十五、六年代から日本医師会の武見会長は今日の高齢化社会の到来を予告して、対策、政策を勉強しなきゃと言ったにもかかわらず、どうも財政主導的になって削ることばかり考えて肝心の勉強、対策がおくれていたから、先ほどから申し上げるように、今医療保障は世界で一番いいところにいっているけれども、その他の公共福祉サービスの部門でスカンジナビアにおくれをとってしまった。だから今後は、財政ありきがもちろん非常に大事だけれども、スカンジナビアでも産業は社会保障の糧と言われているぐらい、金がなければ何にもならないということはよくわかるけれども、しかし金と政策とバランスのとれたことを今後やっていかなきゃいかぬ、私はそう思います。  最後に、私の意見に対する大臣の御意見を拝聴したい、こう思うわけでございます。
  211. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) お褒めにあずかったりくさされたり、大変さまざまな角度から御批判をちょうだいいたしましたが、一番冒頭に申し上げましたように、委員は日本の社会保障水準が低いという御指摘を繰り返されますけれども、数字をもって御説明をいたしましたように、事実問題として社会保障関係費の伸びは予算の伸びを上回っております。そして、公共福祉サービスについて今目標を設定して努力しておるという状況も申し上げました。我々もこれから努力をしてまいります。委員も極めて影響力の強いお立場におありでありますので、どうぞ日本医師会が独自の行動を余りおとりにならず、国の行政に御協力をいただきますようによろしくお願いいたします。
  212. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 最初に、会計検査院の立場について少々お伺いしたいと思います。  会計検査院の立場というのは非常に重要な立場にある。検査院は、憲法に直接根拠を持つ機関でありますし、行政権から独立して決算検査という仕事をすることになっております。  ところで、会計検査院昭和二十二年新憲法制定以降今日まで四十年間、毎会計年度の決算検査をしてきているわけですけれども、しかし近時社会構造は急激に変化してきている。これに応じて行政事務も質量ともに飛躍的に増大しているし、かつ事務内容も高度技術化あるいは国際化が進んでいる。このような行政事務の変化に対応して、会計検査院としては業務を執行するに当たり従前と何か異なるような対応をしているのか、あるいは考えているのか、検査院長の所見を伺いたいと思います。
  213. 中村清

    会計検査院長(中村清君) 私どもは、財政全般に対して目を光らせる、そういう態勢は常にとってきてございますけれども、やはり時代の変化を踏まえまして、また行財政の変化に即応いたしまして、常に新しく、どういうふうな検査をやっていかなきゃならないか、そういう点に留意しているところでございます。  例えば、高齢化に伴いまして年金とかあるいは医療費の検査の充実を図るとか、国際化に伴いましてODAの経費について検査を充実する、あるいは当面する課題といたしまして土地とか住宅、あるいは農業問題につきまして検査の充実を図る、それから公共事業が内容的にも数字の上でも規模が拡大しておりますので、その点を踏まえて私どもとしては検査を充実していく、こういうふうに各種の面から重点を置いてやっているわけでございます。その検査のやり方としましても、個個の会計経理とか個々の事業というものを対象にした個別不当型の検査を徹底することはもちろんでございますが、それと同時に、事業について横並びに見るとかあるいは長期的な視野から見るというふうな形で事業を全体として評価する、こういうふうな検査につきましても大いに力を注いでいきたいと考えております。  最後に、それについて最近コンピューターの活用ということが一般的に普及しておりますので、私どもとしましても、そのコンピューターに関しまして十分留意しながら検査していきたい、こういうふうに考えております。
  214. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 今いろいろおっしゃっていただいたわけですが、従前の検査方法というものがそのまま踏襲されてもいいんだろうか、もう少し改善する余地があるのじゃなかろうかというふうな観点からお伺いします。  会計検査院法二十四条、二十五条に書面検査という方法と実地検査という方法が記載されております。書面検査というのは、字のとおり書面検査ということで、計算書や証拠書類を机の上で検査するということだろうと思いますが、この実地検査という用語が大分私が考えているのと違うように思いますので、実地検査というのは具体的にはどんな検査をやるわけでしょうか。
  215. 中村清

    会計検査院長(中村清君) 実地検査の中身でございますけれども、私どもの職員が全国各地の事務所に赴きまして、そこで実地に検査するのをいわゆる実地検査というふうな言い方をしております。  その内容につきましては、現地におきまして現地の担当者から説明を聞く、そして帳簿とか書類等を調査する、あるいは実際の現場を確認する、検査する、こういう一連の内容を持っております。ただ、会計経理の内容によりましてそのやり方というのは異なっているというのが実情でございます。
  216. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 何か、通常実地検査というと、いわゆる現場検査というふうなことで、予算を実際に執行しているその執行そのもの自体に対する検査というふうに思うんですが、今の御説明だと、要するに検査対象場所に出張して行う検査ということのようです。  そうすると、例えば何々県の何々事務所というところに実地検査に行くといった場合には、その現場においてやはりそこの持っている資料を検査する、それから状況によっては現場にも出ていく、こういうような御説明だと思うんですが、現場に実際に出ていって検査するというのはどの程度あるんでしょうか。
  217. 中村清

    会計検査院長(中村清君) 現地に参りまして書面を検査する、あるいは実際に実地に赴いて内容を確認する、この点につきましてはやはり検査の着眼とかあるいは会計経理の内容の違いによりましていろいろございますので、一概にどの程度ということは申しかねるかと思います。
  218. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 検査院の発行のパンフレットによると、平成二年度版では、重要な検査箇所が四千九百四十九カ所あるうち実地検査を施行した場所は二千七十五カ所だということ、そしてこれは施行率とすると四一・九%になっている、こういうふうな記載がございます。この二千七十五カ所の検査箇所に行って、その現地での机の上での書面検査、それから現地へ行って関連するいわゆる現場への立入検査と両方があるというわけですが、まず書面検査の方は、その検査箇所の決算関係の資料の全部を検査するんですか、それとも行った事務所の決算書類のうちの特定部分を検査することになるわけですか。
  219. 中村清

    会計検査院長(中村清君) 現地に赴きまして、すべての会計経理を検査するということではございませんで一部でございますけれども、しかし私どもの検査というのは、まず年度の始まる前に検査計画というものをつくりまして、項目とか着眼点とかあるいは検査方法というものをいろいろと検討いたしますし、それから先ほどおっしゃいましたような、本庁に、会計検査院書類を送らせて検査する書面検査でございますが、この書面検査におきましても相当程度に内容を詰めてまいります。そうした前提の上で現地において書類を検査するということになりますので、一部ではございますけれども、大幅に検査していると同じような心証を得ているわけでございます。
  220. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 私が申し上げたいのは、重要な検査箇所のうち四一・九%は検査していますよというふうな施行率というものを会計検査院で発表する。この四一・九%、箇所にすると二千七十五カ所。ああここの検査は、ここの決算書類については書類的に言った場合全部検査しているんだなと、あるいはその検査場所に関連するすべての現場検査というふうなこともやっているんだなというふうに考える。というのは、そうでないと、検査の施行率は四一・九%でありますとこういうふうにパンフレットに書いてあっても、出張して検査した場所が四一・九%ありますけれども、そこの検査場所の全部の経理を検査したわけじゃないし、いわんや全部の現場を検査したわけでもないというと、正直に検査院の発表したパンフレットを文字どおりに読むとちょっと実際と違うんじゃなかろうか、このようなことを考えるんです。  それ以上に私が言いたいことは、せっかくそこまで行ったら、いわば素人考えで当たっているか当たらないか知りませんが、全部やったらどうですかとか、あるいはせめて現場の立入検査をもっと多くやるようにしたらどうですかというふうに思うんですが、そういうふうなことはいかがでしょうか。
  221. 中村清

    会計検査院長(中村清君) おっしゃることにつきましては、一般論としましては確かにそのとおりであるというふうに考えております。ただ、実際の検査におきまして、全数を検査するあるいは悉皆的に検査する、こういうことは、例えば民間の公認会計士の場合でもそうした立場はとっておらないわけでございまして、私どもが一部を検査する場合でも、先ほど申し上げたような検査計画の段階から本院で行う書面検査、そういうものを前提とした上でやっている一部の検査でございますので、私どもとしてはその事業所なら事業所へ行った場合には相当程度に検査をやっている、こういうふうに考えております。
  222. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 これに関連して、いわゆる実地検査を施行しようという場所の選定について、先ほど申し上げた二千七十五カ所の選定についてはどのようにして、ことしはここに行こうというふうなことをやっておられるのでしょうか。
  223. 中村清

    会計検査院長(中村清君) この重要箇所と申しますのは、例えば本省であるとか本庁であるとか、あるいは本社であるとか地方ブロックの出先機関であるとか、こうした中心になるような機関をいわば私どもは重要箇所というふうな言い方でとらえているわけでございますが、それだけに一般的に事業の量も多うございますし、また予算の執行も当然多いわけでございまして、こうしたいわば検査上の重要性ということに着目いたしまして重要な箇所ほど頻度を高める、こういうふうなやり方でやっております。  ただ、今申し上げたような予算額の大きい分野とか、さらには予算の伸びが大きい分野、それに限らずやはり不当な問題が出るおそれの多い分野、こういったものにも十分注意しながら検査箇所を選定しているわけでございます。
  224. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 検査院長のおっしゃることも私もよくわかるんです。専門家的立場から行った方がいいなというところを選定して行っているんだということですから、それはそれなりに理由はあるんですが、ただ、そういうふうな検査場所の特定方法だと、先ほど申し上げた実地検査施行率というふうな問題を言う場合に、統計的にサンプルを抽出してこれから全体を推測するというふうな方法には余りふさわしくないのじゃなかろうか。もう少し無作為抽出的な形で実地検査を施行する場所を決めていくというふうな方法も考えてみる余地はあるのじゃなかろうかと思いますが、いかがですか。
  225. 中村清

    会計検査院長(中村清君) 今おっしゃいましたような、全体を推計させるようなそうした情報というものを国会あるいは国民の前に明らかにする、その必要性につきましては私どももまさにそのとおりだというふうに考えております。しかしながら、私どもの使命はあくまでも国の会計経理を監督し、その適正を期し、是正を図るということにあるわけでございますので、それだけに、検査能率を高めるということを常に考えなければいけないわけでございまして、選定に当たりましては、誤りがありそうなところとか不当な事態が発生する確率が高いところとか、あるいは改善の必要性のあるようなところ、こういうふうな形で選定いたしまして検査の密度を高める、その努力を払っているところでございます。  先ほどコンピューターのことを申しましたけれども、先般の検査の結果でございますが、雇用保険の給付の諸問題につきまして、これは会計検査院のコンピューターを使いまして私どもが検査用のプログラムをつくったわけでございますが、それに基づいていわば問題のあるようなものを非常に膨大な対象の中から抜き出していく、こういうふうな形で検査を効率化させるというふうなこともやりまして、私どもとしましては、やはり先ほど申し上げたような諸点に留意しながら検査している、こういう事情がございます。
  226. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 私が申し上げているのは、今検査院長おっしゃったように、能率的に検査する方法ということでいろいろ苦労しているんだ、努力しているんだと、これも私はわかるんです。ちょっと発想を変えて、本当に決算検査をやるためにはどういう方法がいいだろうかという、仕事から予算を考えるような方向で考えてみられたらどうなんだろうか。今検査院長がおっしゃるのは、一口に言うと、限られた現行の予算というものを前提にした上で、それでどういうふうにしたらいいだろうと、効果的に、一生懸命御苦労されている。それはそれでわかるんですが、大蔵大臣もちょうどおられるから、予算から仕事を考えるんじゃなくて仕事から予算を考えるというふうな発想を少しお考えいただいたらどうなんだろうか、こういうふうな観点で申し上げたわけです。  今は仕事の面からお伺いしたんですが、今度は組織の面から少し会計検査院のことをお伺いします。  いわゆる検査官というのは三名である、この三名の検査官は、御承知のとおり衆参両院の同意を経て、内閣が任命し、任期は七年、こういうことになっております。この検査官にはどのような学識、経歴の人が、特にその前職等についてどのような方が検査官に任命されているかお伺いします。
  227. 中村清

    会計検査院長(中村清君) 検査官の任命につきましては、会計検査院法の規定に基づきまして、衆参両議院の同意を経た上で内閣が任命し、天皇がこれを認証するというふうな形でやっておるわけでございます。  今先生のおっしゃった、どういう前歴であるかということにつきましては、現在の三人の検査官は、国会の事務局、それから大蔵省の出身、それから会計検査院の事務総局の出身と、この三者で構成されております。
  228. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 お伺いするところによると、もう二十年間近く今おっしゃったような形で検査官という方が三人、分野別に任命されている。この中で会計検査院の出身者が検査官になる、これは私非常に結構なことだと思うんです。職員も一生懸命努力すれば、何も偉くなることだけが目的じゃないけれども、検査官になれるんだと。ところが、三人のうちの一人というと、なれる可能性はもう三分の一に減っちゃうわけです。しかも、この方が七年間もおられると、職員が行く分は三掛ける七で二十一分の一の可能性しかなくなってしまう。もう少し会計検査院出身の方をふやすようにしたらどうかとか考えますし、また衆議院の事務総長というのも、どういうことでそうされたのかわかりませんが、まあそれなりに、国会の衆参両院の同意というふうな点からそういうことになったのかもしれません。ただ、大蔵省出身の方を会計検査院の検査官にするというのは、大蔵省会計検査院は何もけんかしているわけじゃありませんけれども、本来検査する人と検査される方の元締め的な立場にある人、これが大蔵省をやめたらそっちへ行っちゃったなんというんじゃ、きのうまでは検査を受ける方だったのが今度は検査をする方ということになると、まあ裁判所できのうまで向こうにいた検事が今度は裁判官になっちゃったというふうな形で、非常に仕組みというか、余りふさわしくないんじゃなかろうか。  検査官としては、今職員の方からということも申し上げましたが、あと在野の経済人だとか言論人だとか学識経験者とか、こういう方の任命というふうなこともあってもいいのじゃなかろうか。ただ、これは検査院長が決めることじゃありませんので検査院長にお伺いするのもどうかとは思いますけれども、一般的にこの問題に関しては何か御所見ありますか。
  229. 中村清

    会計検査院長(中村清君) 今先生がおっしゃいましたように、私自身にも関係する問題でございますので恐縮でございますが、やはりこの検査官というのは、法律とか行政とか財政とか経済、それからさらに会計検査、そうした各分野に関しまして知識とか経験が豊富である、さらに公正な判断ができる、そういう立場にある者を選任するという建前になっておりますし、現にそういう形で運用されてきたと思っておりますので、先ほどおっしゃいました会計検査院大蔵省の間には確かにそうした対立関係というものがあるということは当然かもしれませんけれども、しかし同時に、大蔵省といいますのは国の財政を処理する権限を実質的には行使する機関である、こういう立場にあるわけでございますし、また、国の財政運営とかあるいは会計処理が適切に行われるように、こういうふうなことで国の予算とか決算とかあるいは会計に関する制度を整備する、あるいは国の予算執行等に関しまして監視監督する、こういうふうな職責を持っておるわけでございまして、したがいまして、大蔵省会計検査院とは常に対立関係にある、こういうふうには考えておらないわけでございます。むしろバジェットサイクルの中で考えれば、会計検査院大蔵省は一体になってその適正を期するということがいわば大きく車の両輪のように国の財政等の改善に寄与するのではないか、こういうふうに考えるわけでございます。
  230. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 あと、支局の設置の問題であるとか職員の採用方法だとか、あるいは財政法に基づく二重予算とか、いろいろお伺いしようと思いましたが、時間の関係で割愛させていただきます。  ただ、私は今検査院長がおっしゃった言葉の中で、ちょっと違うんじゃなかろうかと考えるのは、学者によっては、日本は三権分立というけれども会計検査院を入れて四権分立なんだということを言われる学者もおられるくらい会計検査というものが重要な憲法上の機関であり、憲法上重要な作用を持っているという点から考えると、大蔵省と二人三脚でという考え方が果たして妥当なのかどうなのか少々疑問に思いますが、この問題は以上にさせていただきます。  次に、記念金貨の問題について少々お伺いします。  現在、政府は天皇の即位記念金貨の発行を計画しているらしい。しかし、さきに発行された昭和天皇在位六十年記念十万円金貨については、大量の偽造金貨が発生した問題だとか、あるいは一般的な通貨だと言いながら流通に非常に支障を来しているなど種々問題があります。  そこで、大分質問通告しましたけれども省略させていただきますが、この昭和天皇在位六十年記念十万円金貨、これは発行枚数のすべてが売り切れたんでしょうか。
  231. 篠沢恭助

    説明員(篠沢恭助君) お答え申し上げます。  昭和天皇の御在位六十年記念金貨幣でございますが、最初に昭和六十一年に一千万枚、さらに昭和六十二年に追加分といたしまして百万枚、一千百万枚を発行したわけでございます。これらにつきましては各金融機関あるいは郵便局が日本銀行からまず全量引き受けを行いまして、窓口で交換に応じてきたわけでございます。これにつきまして、市中金融機関におきます引きかえ未了分がございますが、この引きかえ未了分が恐らく日銀に還流をしてきているというふうに考えますが、いずれにいたしましても、日銀に現在市中金融機関を通じて還流しておりますところの枚数がこの八月末で約二百八十万枚ございます。おっしゃいましたように、その売り出したというか引きかえを行ったその瞬間あるいはその時点においてどれだけどうであったかということは正確に把握できませんが、現段階で日銀に還流をしております枚数がただいま申し上げたとおりでございます。
  232. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 偽造問題について警察庁にお伺いしますが、現在捜査している状況として、偽造枚数とか警察庁で押収している枚数とか、この辺についてお伺いしたいと思います。
  233. 増田生成

    説明員増田生成君) まず、偽造枚数でございますが、現在までの捜査によりまして約十万八千枚が偽貨であることを把握いたしております。  それから押収枚数についてでございますが、現在まで警視庁において約二万二千枚を押収しておりまして、警視庁科学捜査研究所において鑑定の結果、海外から輸入されましたものについては偽貨であるとの結論を得ております。また、日銀に既に還流していたもののうち大蔵省造幣局の現在までの鑑定により偽貨と判明した約八万六千枚の任意提出を受けまして領置いたしております。いずれも証拠品として警視庁において日銀に保管委託の上保管をしております。
  234. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 そうすると、偽造枚数十万八千枚というのは警察庁で押収し、あるいは日銀の保有金貨中から出てきた数字を足したものということらしいですが、そうすると、現にはっきりしているものの枚数を足し算すると十万八千枚ということで、それ以外にも偽貨があり得る可能性はあるんでしょうか。
  235. 増田生成

    説明員増田生成君) 現在のところ、警察において押収をしております偽貨の数と、把握をしております輸入の数量とがおおむね合致をしております。また、市中に出回っているとの情報は私ども得ていないことなどから、市場流通の可能性は低いのではないかというふうに考えております。
  236. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 そうすると、この偽造枚数十万八千枚というのは海外から輸入された枚数で、同時にこれがいわゆる偽貨であって、それ以外に偽貨のルートというか、それ以外のものがある可能性としてはないということを前提にすると、偽貨は一応全部把握できていて市中に流通している可能性はないと、こういうことでしょうか。
  237. 増田生成

    説明員増田生成君) ただいま御説明をいたしましたとおりでございまして、個人的にごく少量何らかの形で海外で取得されて持ち込まれた等の場合があるかどうかは別といたしまして、私どもが現在までの捜査判明をしております国内への流入ルート及びこれまで捜査において押収をいたしました枚数、さらには先ほど申し上げました国内で出回っておるというような情報はないことなどから、そういう市中に出回っているというようなことはほぼないのではないかというふうに判断をいたしております。
  238. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 ちょっとしつこいようですけれども、結局市中に流通している中に偽貨があるかないかというのが国民の非常な関心ですのでしつこくお伺いしますが、先ほどの御説明だと、日銀に現在というか、八月末還流している金貨の枚数は二百八十万枚、この中に八万六千枚の偽貨がある。これはそうするとすべて調べ終わって、日銀に還流した二百八十万枚の中に他にはもう偽貨はないということなんでしょうか。
  239. 篠沢恭助

    説明員(篠沢恭助君) 鑑定の問題につきまして私から先にお答えをさせていただきますが、この御在位六十年記念金貨幣の発行以来、先ほど申しましたように日銀に還流をしてまいりました金貨幣枚数約二百八十万枚ということでございますが、そのうち日銀の本店に還流をしておりますものが約五十万枚ございます。今回の偽造事件との関係で申しますと、いろいろな金融機関、これは捜査の方の御説明になるかと思いますが、幾つかの金融機関から結局日銀に持ち込まれているといったような形になっておりますので、この日銀の本店に還流をしてまいりました約五十万枚について造幣局において鑑定を行っておる、こういうことでございます。  そのうちいろいろな分類上特に問題があると考えますその五十万枚のうちの二十万枚、これは鑑定を一応終わったわけでございまして、その中に先ほど警察の方からお答えになりました八万六千枚の偽貨が確認をされたわけでございます。あと、その五十万枚のうち残り三十万枚というものがございまして、これは現在引き続き造幣局で鑑定を行っておりますが、私どもの感触といたしましては、これは全く念を期すための鑑定ということで、偽貨が含まれる可能性は極めて薄いというふうに考えております。  以上でございます。
  240. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 警察庁、ありがとうございました。  いろいろ細かくお伺いしようと思ったのですが、時間がなくなったので、即位記念金貨についてお伺いします。  昨秋の大蔵省の発表によれば、ことしの秋に三百五十万枚、二十グラムの金を使用して十万円金貨を発行する予定だということだったんですが、この方針は現在でもこのとおりなんでしょうか。
  241. 篠沢恭助

    説明員(篠沢恭助君) この天皇の即位記念金貨につきましては、当初金の量目につきまして二十グラムと考えておりましたが、これを三十グラムに増加させるという変更を行ったことは御承知のとおりでございます。  発行枚数でございますが、当初三百五十万枚と申し上げておりましたが、これはいろいろな偽造防止策そのほかの観点から慎重な製造を行う結果、二百万枚の発行ということにとどまらざるを得なくなったわけでございます。  それから発行時期につきまして、当初ことしの秋というふうに予定をしておりましたが、これも同じような慎重な製造ということで万全の策を期して製造しておりますので、その結果今年度いっぱい、つまり来年の三月末まで製造いたしまして、引きかえを来年の四月に行うということにそれぞれ変更いたしたわけでございます。  それぞれに理由のある変更でございますので、御了承いただきたいと思います。
  242. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 私は、今回の即位記念の金貨が在位六十年の金貨のときのようなことが起こらぬようにしてもらいたい。というのは、大蔵省にお伺いしたら、この前の千百万枚という大量発行によって財政上およそ二千七百億円ぐらいの純益があったのじゃなかろうかというようなお話ですが、新聞報道等によれば、数千億円の利益稼ぎのために天皇在位六十年記念金貨を発行したと。これは私が言っているんじゃなくて新聞の表題に、大蔵省の金貨商法、金貨商法の苦い結末、国の財テクというふうな表題が各新聞に載っているんです。  私が申し上げたいのは、昭和天皇にしてみれば、在位六十年を慶祝するということで出してもらった金貨が売れ残ったり還流してきて、今二百八十万枚戻っている、あるいは市中で流通に非常に支障を来す、あるいはこれ幸いと偽造貨幣が出てくる。この偽造貨幣が出てくることについて、発行前にこんなことをやったら偽造貨幣が出てくるぞということを言っている人もいたわけなんです。にもかかわらず、やって、こういう結末になったということになると、昭和天皇の立場にしてみると、余りうれしいことじゃなかったんじゃなかろうか。これと同じことが、即位記念金貨をやって、この前の反省が十分になされていないとまた同じことになる。国民の立場に立って考えても、当の天皇あるいは前天皇にしてみても、もう少し金もうけというふうなことを言われないようなことをやってもらいたい、こう思います。  以上で終わります。
  243. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは最初に、橋本大蔵大臣にお伺いをしたいと思います。  在日米軍の駐留経費の負担増の問題についてでございます。  アメリカの下院は九月十二日の本会議で、在日米軍の駐留経費の日本側全額負担を求める決議案を採択いたしました。また、アメリカの大統領補佐官などが来日をして、在日米軍駐留経費を一年前倒しにして来年度実施をしてもらいたいと言って迫っているやに聞きます。  報道されるところによりますと、政府はアメリカが新たに要求する主に三つのうち、艦船などの修理費などを除いて、日本人従業員の基本給、それから残業手当等労務費、この五、六億ドル、それから水道、電気等の光熱費二億ドルの合計七、八億ドル、約一千億円を来年度から新たに負担するんだという意向があるなどと取りざたをされているようであります。  大蔵大臣、一体これについてはどうなさるおつもりでございますか。
  244. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 在日米軍駐留経費負担問題というものは、従来から日米安全保障条約に基づき日米安保体制というものの効果的な運用というものを確保するという点において極めて重要な問題という認識のもとに、自主的にできる限りの努力を払ってまいりました。これから先も同様に努力を積み重ねていくつもりであります。  今委員から御指摘になりましたように、アメリカ政府あるいは議会においてさまざまな意見がおありだということは私も承知をいたしておりますし、また先日、海部総理が子供サミットの出席の折にブッシュ大統領と会われたとき、大統領からそういうお話があったという話も聞いておりますけれども、まだ私は正式にその報告を総理から承ってはおりません。  いずれにしても、これ自体、次期防策定作業の中で中長期的な観点から引き続き議論をしていくべきものと、そのように思っております。
  245. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私は、在日米軍の経費というものは地位協定二十四条で、アメリカが負担することになっているということを承知しておりますが、現在でも在日米軍に対して三千五百七十五億円、これは思いやり予算を除いても、負担をしておるわけですが、その上に地位協定を改めるとかあるいは特別協定を新たにつくるとかいうことで、さらに一千億も新たな負担をするなどということは、国民感情からいいましてもなかなか納得されないのではないかと思うのです。  一千億円もあれば、国民が本当にのどから手が出るほど切実な願い、随分たくさんございますよね。例を挙げれば、障害者の小規模作業所の補助金というようなもの。これ、一作業所にわずか年間八十万円ですよ。全国で七百九十四カ所ございますが、総額にして六億三千五百万円なんです。これ三倍にするといったって二十億かからない。そういう問題だとか、あるいは都市児童健全育成事業、俗に言っております学童保育事業などでも、これは六億一千六百万円の予算です。これは平成二年度ですがね。これだって、三倍にしたって二十億に足らないわけです。  先ほど同僚の大浜委員からも御指摘がありました、高齢化社会を迎えて、老人福祉対策あるいは痴呆老人対策等々、本当に差し迫った要求というものはたくさんあるわけでございますからね。一千億あれば、あれもできるこれもできるというのが国民の願いになっておると思うわけでございます。  また、アメリカの議会の議決が、日本政府が全額負担に同意しなければ、在日米軍の兵力を毎年五千人ずつ撤退させるという内容になっているということをとらえて、防衛庁長官が、アメリカの議会は非常識だと。何も頼んでおってもらっているわけではないから、どうぞお帰りになってくださいと言いたいと。まあ防衛庁長官までそうおっしゃっているようなものなんですね、大臣。  ですから、こういう新たな負担というのはやるべきじゃない。余りにもアメリカに対するサービス過剰だと思うのですが、この点について大臣の御見解をお伺いしておきたいと思うのです。
  246. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私どもは、日米安保体制というものを支持いたしておりますし、また、その効率的な運用というものを確保していく必要性というものは認識をしておる立場にございます。いずれにいたしましても、そうした問題については自主的に努力を続けていくべきものという考え方の上で、議論を続けてまいりたいと思っております。
  247. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私は、地位協定二十四条に基づいて出すべきではないということを強く要望しておいて、この問題を終わりたいと思います。  次の問題に入るわけでございますが、実は、ことしの夏随分マスコミをにぎわしました大阪国税局とにせ税理士に関する問題を取り上げたいと思うわけでございます。したがって、当然国税庁の問題を御質問するわけですけれども、長官が御出席をいただけない、こういうわけでございます。長官は当然政府委員ですし、決算委員会だってきのうやおととい決まったものではないわけです。それがどうしても出席できないなどということは、これは明らかに国会軽視と言われてもしようがないと思うのです。けしからぬと思うのですね。国税局の職員に関する問題というのは、国税庁の長官がその管理の責任をお持ちになっているはずなんですね。その昔任者が出ない、こんな国会軽視のやり方というのは私は断じて許せないと思うのです。  委員長、ひとつはっきりしておいてもらいたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  248. 及川一夫

    委員長及川一夫君) 私、委員長に対する御質問の形をとりましたが、理事会でもこの問題が提起をされまして協議をしました結果、いずれにしても政府委員というふうに任命をされ、委員会に出席できる権限というものが与えられている以上、質問通告をし、責任者に出てもらいたい、こういう要請があったことについては、正当な理由がない限り、当然のこととして出席をするのが義務である、このことはお互い確認をいたしております。  ただ、今沓脱先生がおっしゃられた本日の問題として考えるときに、そのような理由が正当性のあるものとして存在したかどうかという点は、質問者との間にもいろいろ話し合いがあったようでございますが、私の方で当局と話をした結果、いずれにしても今回は国際会議等の開催ということがございまして、万やむを得ないではないかというふうに判断をいたしまして、質問者である沓脱先生の御理解をちょうだいをいたしました。  したがって、今後、今御質問になられたような疑問を持たれるようなそういう事態にならないように、政府委員の皆さんは、当局を含めて、しっかりした対応をしてもらいたいということを私の立場からも御要請申し上げますから、ぜひそのように御理解をいただきまして、質問を続けていただきたいと思います。
  249. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 時間をとられるのももったいないので、その問題はこれは委員長にお任せをすることにいたします。  では、ことしの夏マスコミを大変にぎわわせました大阪国税局とにせ税理士、大西省二氏というんですが、そのことに関する問題で御質問をしたいと思っております。  ことしの七月八日の朝日新聞の社説ではこう書いてあります。「これでは納税意欲がなくなる」という見出しです。その中は、「大阪地検特捜部が摘発したニセ税理士と多数の大阪国税局職員の癒着のひどさは、目を覆うものがある。多数の税務署員が脱税に加担した、といわれても仕方がない事件だ。 税理士の資格のない男が、二年間に約百人の顧客に脱税指南をして、ざっと十数億円の報酬を得ていた。その中から多額の資金が税務署員にばらまかれ、とくに付き合いが深かった幹部職員二人は二千万円にのぼる「顧問料」を受け取っていたとされる。このほか総計一億円近くが、約百人もの職員の接待につぎ込まれていたという。」「税務職員の多くは男が税理士資格を持たないと知りながら、申告や税務調査に顔をきかしていたのを黙認していたという。なぜ告発などの措置を取らなかったのか。「チェック態勢が甘かった」ではすまされない。」、こういうふうに述べられておるわけでございます。  国税当局は、この事件に関して懲戒免職二名を含む五十八名の処分をしたようであります。しかし、見出しのとおり、こんな不正がまかり通るということであれば、国民はまじめに税金を納める気がしなくなります。ばからしくなる。絶対にこういうことを繰り返してはならないと思うわけです。  そこでお聞きをしたいと思いますが、このにせ税理士というのが顔をきかせた申告事案、五十四件だと聞いておりますが、この事案については洗い直しなり再調査なりをするのでしょうか。するのでしょうね。
  250. 福井博夫

    説明員(福井博夫君) 最初に当たりまして、ただいま御指摘の大阪の事件につきまして、国税当局といたしましては課税の適正、公平を期し、税務行政に対する国民の信頼を確保するため、従来から綱紀の保持に努力をしてきたところでございますが、今回、このような処分者を出したことはまことに遺憾と思っております。今後、国民の税務行政に対する信頼を確保し、二度とこのような事態が生じないよう万全の対策を講じてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。  ところで、ただいま御指摘の申告書の調査、再点検というような問題でございます。この点につきましてお答えをさせていただきます。  国税当局といたしましては、常々、あらゆる機会を通じまして課税上有効な資料の収集に努めておるところでございます。また、これらの資料等、納税者から提出されました申告と総合検討いたしまして、その結果、課税上問題があると認められる場合には調査を行うということによりまして適正な課税に努めておるということで仕事を進めてまいっておるところでございます。  ただいま御指摘の、何件かの申告書につきましてただいま御指摘がございました。私どもといたしましても、今回このような事件が明らかになったわけでございます。それにつきまして種々新聞報道もございました。それから、ただいま御指摘がありましたように、現実にこういう疑いのある人が関与した申告書もあるというようなことが出てまいりました。したがいまして私どもといたしましては、ただいま申しましたように、一般的な基本方針のもとにおきまして、このような事態、このような報道をされたこと、このような申告書が指摘されたことというのは一つの有効な資料情報であるというふうに考えておりますので、さらにこういったことにつきまして、課税上有効な資料情報を収集を行うというようなことをいたしまして適正な課税処理をするよう努めてまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。
  251. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 ようけ言うてくれたんだけれども、有効な資料情報を用いて、これ、再調査なり洗い直しなりをするのですか、せぬのですか。それがはっきりせぬですな。
  252. 福井博夫

    説明員(福井博夫君) 例えば、起訴状なんかを見ますと具体的な申告書の名前が出ておるわけでございます。こういったことにつきまして、ここでするしないということを具体的に申し上げる立場にはないわけでございますけれども、ただいま申しましたように、今回このような報道がされたり、あるいは申告書が出ておるという事実があるという指摘があったわけでございますので、それを勘案いたしまして、総合的に点検して適正な処理をいたすということでございます。
  253. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それじゃ、再調査をして洗い直しをするということだという理解をしてよろしいか。そこも非常に上手な言い回しをしているのでようわからぬ。
  254. 福井博夫

    説明員(福井博夫君) 私どもから個別のはっきり名前が出ているようなことにつきまして、調査をする、あるいはしないということを明言できにくい立場にあることをひとつ御理解をいただきたいと思いますけれども、今申しましたように、資料を集めまして、そういったことを勘案いたしまして適正な課税処理をする考えであるということでぜひ御理解をいただきたいというふうに考えております。
  255. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 もう非常にわかりにくいな。官庁用語というのは難儀やね。  これ、大体にせ税理士だということで刑事罰決まっているんですよ。その人が顔をきかして脱税指南をやって、十億円以上も二年ほどの間に稼いで、その金で一億円ほどばらまいて、税務署の職員がいろいろ飲み食いやったりゴルフへ招待されたり、あるいは一千万も二千万も金をもらったりしているんです。それにその人が出したものを、明らかに脱税指南したということをわかっている。それを再調査しないというようなことでは、これは国民からいったら大甘だと言われるのは当たり前ですよ。大阪の納税者みんな怒っていますよ。はっきりしなさい。
  256. 福井博夫

    説明員(福井博夫君) ちょっとその再調査するという言葉は、おしかりを受けているわけですけれども、使いにくいわけでございますが、ぜひ私どもの意のあるところをお酌み取りいただきたいと思いますけれども、結論としまして、適正な課税処理をする考えであるということでございます。
  257. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それはもう厳正にやっていただきたい。  綱紀粛正の通達をお出しになりましたね。これは拝見いたしましたら国税庁長官名ですよ。長官が来ていたらちょっと聞こうと思っていたんですが、来てないからこれはやめておきます。やめておきますけれども、それがこんな紙切れ一枚で果たして十分か。再発の可能性はないのか。これは文書による綱紀粛正のかけ声だけでは不十分だというふうに私は思う。こういう癒着が起こる構造にメスを入れなかったら根絶できない。  そこで、時間がないのでたくさん聞けませんので、きょうは二、三点聞きたいと思っております。  一つは、このメスを入れるというのはどこへメスを入れなきゃいかぬかということですが、一つは、やはり税務署の天下りのOB税理士、この人たちとの癒着の問題です。署長や副署長クラスのOB税理士に、税務署を挙げて顧問企業をあっせんするという、こういうやり方ですね。こういうやり方がずっと一貫して続いている。これが企業と税務署の癒着を生み脱税につながるというケースになっているんですね。先輩が後輩に顔をきかす、結局税金の値切りにつながるということになっているわけです。幹部職員のOB税理士への組織ぐるみの顧問先あっせんというのはやめるべきだと思うんですね。まず、この点についてどうですか。
  258. 福井博夫

    説明員(福井博夫君) この顧問先のあっせんという問題でございます。これにつきましては、過去にも国会等におきましていろいろ御議論をいただいたということは私ども承知をいたしておるところでございます。  しかし、現状につきまして最初に御調明をさせていただきたいというふうに思いますけれども、やはり国税局の組織を維持、運営していく場合におきまして、何といいましても人事の刷新でありますとか行政能率の維持向上を図っていくということを考えますと、やはり幹部職員を中心といたしまして、それぞれ個々の事情に応じるわけでございますが、やはり御勇退を願うといいますか退職勧奨といったことを行っていかざるを得ないというのが実は現状でございまして、そういったことによりましてできるだけの人事の刷新を図っていくということを実現していきたいというような状況になっておるわけでございます。  その場合に、退職される職員につきまして、私ども組織を運営している立場からまいりますと、やはり退職後の生活の安定といったことにつきましてもどうしても配慮していかざるを得ないというようなこともございますので、個々の事情に応じましてただいま御指摘のございましたような顧問先のあっせんというようなことを行っておるという次第でございます。  ただ、そういうこともございますけれども、先ほど申しましたように、この点につきましてはさきにいろいろ御議論いただいたというような経緯もございますので、私どもといたしましてはこれを実施するに当たりましては十分慎重に行う、国家公務員法あるいは税理士法上の法律上の違反というようなことを避けること、これはもうもちろんでございますけれども、それ以外にもある意味での一定のスキームといったようなものをつくりまして、そのスキームの中で弊害をもたらさないような形で、すなわち税務行政に対する納税者の信頼を損なうことのないよう、また、職務の公正な執行に疑惑を持たれることのないよう、そういったことに十分配意いたしながらこのような顧問先のあっせんといったものを行っておるというふうに考えておる次第でございます。
  259. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 退職職員全部じゃないですね、署長だとか副署長クラス、税務署の高級職員ですね。それで、顧問先あっせんはやめないと。  時間がないので次に行きますが、このマフラー、これは何でこんなものを持ち出したかといいますと、大阪国税局管内にある東淀川税務署のある幹部が、これは名前も皆わかっていますが本人の名誉のために名前を伏せますが、自宅を新築した際に、新築祝いとして知人に配ったものです、これ。請求書の写しも皆さんに配っているでしょう。一枚二千五百円、百枚二十五万円の請求書。ところがこの金を払ったのは実は本人ではなくて東淀川署の管内にある税理士さんが払っている。この幹部は、同じ税理士事務所の海外旅行、香港へ行ったらしいんですが、これに奥さんなどと招待されているんですね。これも実は写真もあるし請求書も手元にあるんです。本人の名誉のために名前は、これ配りませんけれども、これに写真も入っておるんです。現在この人は奈良県のある税務署の署長です。また、同じ署のほかの幹部がクラブなどで盛んに飲んで、それでやっぱり今の同じ税理士事務所にそのツケを回さしている。これもお手元へ配っている資料にコピーが出ておりますね。なぜ税理士事務所がこんなに税務署の幹部に投資をするか。それは、この税理士さんというのはOB税理士じゃないんです。だから、得意先の企業をあっせんしてもらうために盛んにサービスをしているんですね。  今申し上げたようなケースというのは、表に出たごく一端だと思いますけれども、しかし考えてみたら、税務署の幹部というのは日常的にこんなに甘い汁を吸ってよいのか、こんなこと当たり前でしょうか。いかがですか。
  260. 福井博夫

    説明員(福井博夫君) ただいまの御指摘いただきました具体的な点につきましては、ちょっと私ども十分承知をいたしておらないわけでございますけれども、一般的に申しまして、税務職員たる者が、どのような理由かわかりませんけれども、そういった税理士、これはOBである、OBでないということにかかわりなく税務の関係者ということになるわけでございますけれども、そういった方と外部から批判を招くような行為があったということであれば、これはまことにゆゆしき問題であるというふうに考えておる次第でございます。  そういったことも含めまして、先ほどちょっと通達の話が出ましたけれども、その通達の中でも「税務職員として、いやしくも外部から批判を招かないよう常に公私の区別を明らかにし、」、それから、「部外者との会食等は厳にこれを慎むこと。」ということを改めて指示をいたしたところでございます。
  261. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そういう例をもう一つ御紹介しましょう。  こういう甘い汁というのは、現役のときから退職後も続くんですね。毎日新聞を皆さんにお配りしておりますが、この毎日新聞には、「税務署元幹部に五十万円」、「ボクシング世界チャンピオンの顧問税理士から」、「在職当時、税務調査を担当」という記事が出ております。  時間がないから詳しくお読みをするわけにいきませんが、この人は、退職の十一日前にこのボクシングのチャンピオンの申告を調査をして是認しているんです。「元プロボクサーの経理を担当していた父親によると、「税務調査の前、B税理士から「今度(調査に)来る調査官はもうすぐ退職する。顧問料として金を出してくれ」と言われ、息子の税務調査でいやがらせをされるとたまらないと思い、三十万円を下らない現金をB税理士に渡した」」、こういうわけ。その後、この元幹部の方は六十年七月十日に退職をされた。それで何と、六十年十月に税理士を開業してから月二万円ずつ二年間振り込んでもらった。そのことは本人も認めている。こういう状況なんですね。  この顧問税理士というのはだれかといったら、さっきのマフラー代を払ったり、飲み食いの支払いをした税理士。この新聞に書いてある税務署の元幹部というのは、この税理士からやたらに飲み食いの接待を受けた一人なんですね。こんなことがはっきりしてきたら、税務行政というのは一体何のためにやっているんやということになるんですね。  これは特異なケースかもしれませんけれども、我が党に最近実は投書が来ております。これやっぱり税理士の方から来ているんですが、にせ税理士事件が連日新聞紙上に掲載され、接待づけによる汚職がクローズアップされている。こんなことは頭を下げるだけで解決される問題ではありません。最近特に目に余るのが元税務署長、国税局幹部出身の税務会計士である。一般受験資格獲得税理士の国税局幹部とのコネのないのをあざ笑うかのように、自分は国税局の幹部や署長と知り合いも多く顔がきくことを材料にして云々ということが寄せられておるわけでございます。  私は、実は昭和五十三年の七月五日の本院の本委員会で、国税局幹部のOBが退職前後から顧問先をあっせんするという、こういう悪弊の問題を取り上げました。だから何とかこれはやめるべきだということを強く要請をしたんですが、実態は一向に改善をされていないですね。そのときにも実はお出しになっておられますよ、「退職職員の税理士開業のあり方等について」というて、国税庁長官名で出ておる。きょうは長官来てないですね。  だから、この問題にメスを入れなかったら、徴税の公平感なんというのは国民の中に確保されない、だから抜本的に改める必要があると思います。いかがですか。簡単に。
  262. 福井博夫

    説明員(福井博夫君) 私どもも、ただいま御指摘いただきましたように、五十三年七月ごろにこのことにつきまして御議論があり、また注意も受けたということを重々承知をいたしております。しかし、この顧問のあっせんということにつきましては、一定のフレームの中で人事の刷新というために続けざるを得ないという状況でございますので、先ほどから申し上げておりますように、これが疑惑を招くことがないよう、先ほど御指摘いただいた、注意を受けた以降、私ども一つのフレームをつくりまして、そのフレームの中に留意事項を設けながらこれを実施しているところでございますので、そういった形の中で疑惑を招かないように重々留意をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  263. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 時間がありませんのでね。  もう一つ、やはりこういうルーツをたどっていくと、一番大きな問題というのは、やはり同和関係団体との癒着の問題だと思うんですね。にせ税理士の業務を行った大西省二という人は、二年前まで部溶解放同盟系の大阪府中小企業連合会の税対部長なんです。このときに培った経験と顔を利用して脱税の請負業を始めたと言われているんですね。ですから、本事件のルーツはやっぱり国会でもしばしば問題として挙げられました、大阪府民の間ではもう常識になっておりますが、部落解放同盟と大阪国税局との癒着、部落解放同盟関係税務を特別扱いするというこの構造にある。この構造を是正しない限り腐敗事件や脱税事件は根絶できないと思うんですね。  多くを申し上げたいんですがなかなか時間がありませんので、そこで私は、こういう点での刑事事件になったものだけをちょっと取り上げてみたいと思うんですね。京都の地方裁判所で八五年十一月二十一日の判決、これは相続税法違反で二十九億円の脱税事件ですね。これも判決ではっきりしておるんですが、判決文の中で、税務当局の弱腰がでたらめな申告でも調査なしに通してしまうと被告らに認識をさせた、これにより、被告らが私利私欲に走ったことの責任の一端は税務当局にもある、常に断固たる態度で臨んでいればこの種の犯罪はなかったということが言われています。  もう少し詳しく申し上げたら御理解いただきやすいんですが、もう一つは、大規模な法人税、物品税の脱税事件、いわゆる大阪のパチスロ事件、これも平成元年七月六日、大阪地裁の判決が既に出ております。これは判決書なんです。これを見て驚きましたけれども、こう書いてあります。「量刑の理由」として、「本件各犯行は、部落解放大阪府企業連合会の会員で、大阪府中小企業連合会南事務所長の肩書をも有していた被告人中谷が、」「東京パブコ及びその関連会社の法人税や物品税の申告に際し、大企連の組織と勢威を利用して虚偽過少申告の発覚、摘発を免れさせることにより多額の報酬を得ようと企て、」「中企連南事務所嘱託の肩書で税務指導等を担当していた被告人末村とそれぞれ共謀の上、被告人中谷については合計三七億一〇〇〇万円余り、被告人末村については合計一五億一〇〇〇万円余りの各法人税及び物品税をほ脱したもので、」と、これは脱税なんです、裁判用語なんです。「そのほ脱率も、法人税については九九パーセント余り、物品税についても九八パーセント余りに達するという、稀に見る巨額かつ高率のほ脱事犯である。」、脱税事犯であるということが明確にされています。「同和団体等の活動の本来の趣旨、目的を逸脱して常習的に犯行を繰り返し、もって、善良な納税者の心情と申告納税制度に対する信頼を害し、広く同和団体との間における徴税上の不公平感を助長することとなった点も合わせ考慮すると、」というふうに言われておりますように、脱税率九九%、九八%、いかに考えてもひどいですね。申告額というのは百分の一。何でこんなむちゃくちゃなことがまかり通るか。これは判決書でもはっきり書いておりますけれども、やっぱり大阪国税局とそして大企連、中企連との間のいわゆる七項目確認というのが生きているということを示していると思うんですね。  これはもういろいろ申し上げましても、なかなかこの問題についてはお認めにならないであろうと思いますけれども、時間がありませんから、こういう問題がまかり通っているというのは、これは一般の納税者に対しては大変大きな税務署あるいは税務行政に対する不信、不満を広げているんですね。そこで私はこういう事態が起こっておるということを指摘したのは、脱税事件だとかあるいは国税局の職員との癒着だとかいう、こういうところにメスを入れるためには、やっぱりこういうところの根を断たない限りきっぱりしたものにはならないという点でこの問題は考えなきゃならない時期に来ているんじゃないかということを申し上げたいんです。  大蔵大臣も岡山ですから、同和問題で御認識はおありだと思いますよね。先ほど私、刑事事件になった事例を示しましたけれども、こんなものは本当に氷山の一角、突出したケースですよね。部落解放同盟と大阪国税局の癒着とかあるいは解同の特別扱いというのはしばしば国会でも問題になっているんです。  私はこの際、もう時間ですから、大臣に申し上げておきたいと思いますことは、六十一年に地域改善対策協議会から総理や関係大臣に提出された意見具申というものが出ているのは御承知だと思いますが、これにこういうふうに書かれている。「同和関係者を過度に優遇するような施策の実施は、むしろ同和関係者の自立、向上を阻害する面を持っているとともに、国民に不公平感を招来している。」、「今日的課題を達成するための方策」の中で、「行政機関は、その基本姿勢として、常に主体性を保持し、き然として地域改善対策等の適正な執行を行わなければならない。そのためには、行政機関は、今日、改めて民間運動団体との関係について見直すことが必要である。」ということが具体的に指摘をされているわけでございます。  当局は、私、七項目確認というものを説明する余裕がなかったのですけれども、国税庁と同和団体との七項目の確認というのは、これは幾ら言うても否定なさるんですね。今までもそういうふうに否定をしてこられました。それは当たり前なんですね。特別扱いをしています、申告は全部フリーパスです、こんなこと国税庁が青うたらえらいことになりますからね。言わない。しかし、幾ら言わなくても、否定をしてもだめなんです。ちゃんと相手方はこういうものをかち取ったということを――皆さんの方に資料を差し上げておりますけれども昭和四十三年のときにはこの七項目確認をした。さらに六九年には新たに新七項目確認をかち取ったということを明らかに堂々と大会で報告をしているわけでございます。  ですから、このにせ税理士事件も含めていろいろと出てくる事件というのは、客観的には七項目確認が存在をして、それが生き続けているというところにルーツがあるわけなんですね。  はしょりましたから、大臣、わかりにくかったかと思いますけれども、話の趣旨は御理解をいただけたのではないかと思います。  そこで、今日の状況になりましたらやっぱり一定の是正をするべきときではないかと思いますが、その点について大臣の御見解を伺っておきたいと思います。
  264. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 税務行政の目的というものがすべての納税者に対して税法を適正に執行し課税の公平を図ることにあることは申し上げるまでもありません。したがって、同和団体に対する税の問題につきましても、納税者の信頼を得られるよう適正公平の課税の実現に努力をしておるところでありますし、今後ともさらに努力してまいりたいと思います。
  265. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それじゃ、時間ですので終わります。
  266. 高井和伸

    ○高井和伸君 ただいま税理士の問題が出ましたけれども、私は、前回の全般的な質疑でも質問いたしました大蔵省所管の事項の中で、行政手続法の中の行政処分あるいは行政指導という側面から、大蔵省の御担当についての実際を伺いたいと思います。  それで、私の持ち時間を有効に使うということで、あらかじめ、大蔵省が所管しておられます法律の中で侵害処分、侵害処分というのは例えば税理士の免許を受けていた、その免許を取り消されるというような、そういった過去の利益が阻害されるというような意味で侵害処分というような言葉が使われておりますが、そういった侵害処分が決められている法律は幾つありますか、どんな名前ですか、どんな条項ですかというような質問をいたしまして、その一覧表をいただきましたらば、全部で九十あるということでございました。税理士法だとか酒税法だとか公認会計士法だとか銀行法だとかその他エトセトラでございます。  そこで、前回の全般的な質問の中でも申し上げましたけれども、こういった国の行政機関が国民あるいはある種の法人、会社、企業、そういったところに対しての不利益な処分をする場合に、適正な手続が行われていて行政処分が国民から信頼を受ける、そういう必要性があるというような観点から質問しておるわけでございますが、たくさんの法律を全部やっているわけにいきませんので、代表的なものをあらかじめ私の方で準備し、大蔵省にも伝えてありますが、まず銀行法。せんだって住友銀行の問題がこの委員会でも取り上げられておりますが、銀行が、公益に反したことをやった場合は、極端な話、銀行業の営業の免許を取り消す、そういうこともできる、そういうふうに銀行法にも書いてありましたけれども、そういった銀行法、相互銀行法、信用金庫法、それから公認会計士法、税理士法及び酒税法の七つほどに限定して伺います。  まず、こういった侵害処分の規定があるわけでございますけれども、この規定の手続の中で本来望ましい手続としては、不利益な処分を行政庁がする場合、その不利益を受ける人にあらかじめ弁明だとか聴聞の機会を与えるだとか、処分に関してはその理由をきっちり書いて伝えるだとか、それからまた、そういった不利益の処分をした場合の文書については閲覧させるというようなことが望ましいということで、私も考えますしせんだって総務庁の方でもお話がございました行政手続法研究会の第二次の中間報告にもそのような案が載っているわけでございます。  そこで伺いますが、今のような観点から、先ほど申し上げた法律の中で、その実態、規定上の実際はどのようになっているのか、簡潔に答弁をいただきたいと思います。
  267. 土田正顕

    説明員(土田正顕君) ただいま御指摘の法律につきまして、その所管はそれぞれでございますので、私は銀行法、相互銀行法、信用金庫法について御説明申し上げます。  その中心となりますものは銀行法でございます。銀行法では、付与した免許などを取り消すなどの処分につきましては、第二十六条「業務の停止等」及び第二十七条「免許の取消し等」の規定が設けられております。  銀行法におきましては、そのような処分を行う際に、ただいま御指摘の弁明の機会の付与とか聴聞とか処分理由の付記、処分に関する文書閲覧といった手続をとるよう規定は設けられておりません。ただ、このような強制権限の発動については、預金者保護と信用秩序維持の観点からも、真に必要な場合に行うべぎものであって、慎重な運用をすべきことは当然でございます。  次に、相互銀行法、信用金庫法におきましては、銀行法のただいま申し上げました規定を準用いたしております。
  268. 松野允彦

    説明員(松野允彦君) 公認会計士法について御説明申し上げます。  公認会計士法におきましては、例えば公認会計士が虚偽の証明をした場合などにつきまして懲戒処分の規定を設けております。例えば登録の抹消処分などがあるわけでございますが、この処分を行います場合には、当該公認会計士あるいはその代理人から聴聞をいたしまして、処分も文書によって行い、かつ理由を付記するということになっております。また、利害関係人はその処分の内容につきまして大蔵大臣に対して縦覧を求めることもできるという規定がございます。
  269. 坂本導聰

    説明員(坂本導聰君) 御指摘の酒税法でございますが、酒類の製造、販売業の免許を取り消す際にはあらかじめ本人に対しましてその旨を通知し、釈明のための証拠を提出する機会を与え、なおかつ免許を取り消したときにはその旨を書面で本人に通知することになっております。  税理士法につきましても、懲戒処分をする場合、同様の規定になっております。
  270. 高井和伸

    ○高井和伸君 今のは規定を読めばわかるというような側面もありましたのですが、ちょっとだけ念のために聞きますが、公認会計士法では処分の理由付記というのは具体的には何条に書いてあるんでしょうか。私が見た限りちょっと目につかなかったんですが。
  271. 松野允彦

    説明員(松野允彦君) 理由の付記につきましては、法律には特に条文で明記されておりません。実際上やっているということでございます。
  272. 高井和伸

    ○高井和伸君 それでは、酒税につきましても理由付記は同様の趣旨でございますか。
  273. 坂本導聰

    説明員(坂本導聰君) 酒税法においては明確に規定されておりまして、先ほど申し上げたような規定になっております。税理士法も同様でございます。
  274. 高井和伸

    ○高井和伸君 今のをまとめてみますと、銀行関係については弁明、聴聞の機会を与えるという条項はない。それから処分するときの理由付記については、公認会計士法では規定はないけれども実態としてやっている。税理士法にはある、酒税法にはある。それから文書閲覧については公認会計士法だけがあってあとはない、このようなことでございます。  せんだって住友銀行会長さんや頭取の方が大蔵省を訪ねられたということにつきましては、先ほどの大臣のお話ですと、実情を報告を受けたいということでお呼びになったということだったようでございますけれども、前提事実としては非常に慎重な手続をしながら事実を確定して処分をしていくということが一応予定されているようでございますが、私の言いたかったのは、ここに挙げたピックアップ九十のうちの六つほどの法律の中でも定められていたり定められていなかったり、その中身を少し詳しく検討しますと、かなりばらつきがあるというようなことで、例えば文書閲覧の問題につきましても、公認会計士法を見ますと、調書の部分についてだけの閲覧というふうになっているはずでございまして、ばらつきがあるというふうに私は感じているわけでございます。  次の問題としまして、銀行法、相互銀行法、信用金庫法についてお尋ねしますが、先ほどのような処分、簡単に言えば銀行業務の停止だとか取り消しだとか一部停止だとか、そういった処分が過去になされたことはおありなんでしょうか。
  275. 土田正顕

    説明員(土田正顕君) 私の承知しておりますところでは、過去にそのような処分を行った事例は極めて少ないと思いますが、記憶しておりますものでも三件程度の業務改善命令を出したことはあると思います。
  276. 高井和伸

    ○高井和伸君 ちょっと、今の業務改善命令というのはこれは一種の処分だろうと思いますが、時間もありませんので、次の点へ行きます。  公認会計士、税理士、それから酒税の方の関係でそういった侵害処分を行った実績はおありなんでしょうか。あると思いますが、大体件数、規模、そういったものについてお答え願いたいと思います。
  277. 松野允彦

    説明員(松野允彦君) 公認会計士法によります処分で、例えば登録抹消を行いました件数は、過去トータルいたしまして五件ございます。また、業務停止、これは期間がばらばらでございますが、この業務停止処分につきましてはかなり頻繁に行われておりまして、過去五十件以上あるということでございます。
  278. 坂本導聰

    説明員(坂本導聰君) 最近三年間、具体的には昭和六十一年度から六十三年度までの三年間でございますが、法律に基づきます免許の取り消し処分等の実績でございますが、税理士法による懲戒処分は一件、それから酒税法による免許の取り消し、これは小売業の免許取り消しでございますが、百三件ございます。  なお、百三件と多いのは、二年以上休業しているということの理由で免許の取り消しになっております。
  279. 高井和伸

    ○高井和伸君 続いて行政指導について、私もあらかじめどんな行政指導が大蔵省で行われているのかというようなことでお尋ねしましたならば、最近行われた三つのことが紹介されました。一つは土地関連融資の抑制のこと、二つ目は顧客の行ういわゆる仮名取引の受託、要するに架空の口座を設けて取引をするということ、三つ目は株主への利益配分について行政指導を行った、このようなことが私の方に報告がございました。  そこで、行政指導につきましても、やはり基本的にその手続の中身が透明性があり、公正の確保がなされ、そしてもちろんのことながら法律の趣旨を逸脱してはいけない。  さらに、行政指導というものにつきましてはやはりそれを受ける方々はある種の不利益を受けるわけで、その不利益を受ける前提としては、行政指導をする、任意にして相手が受ければそれは同意したわけだから、損害賠償など、損害があっても賠償しないというふうな論理が背景にあると思うわけでございますが、今言った三つの行政指導につきまして各行政指導の対象者はだれであったか、指導に従われたかどうか。大体従われたと思うんですが、そこの実際。  そして三つ目に、行政指導に従わなかった場合ある種のサンクションというかペナルティーというか、そういったものを予定しておられなかったと思いますが、予定していたことがあったのかどうか。  それで四つ目は、行政指導をする以上何がしかの具体的な損害、あるいは抽象的な損害が受ける方にあるはずでございますが、そういったことをこうむったことが一応考えられるということが具体的に確認されるのかどうか。  そして五つ目には、これらの指導が、せんだっての行政手続法研究会の研究報告の中にもありましたように、文書で行われるのが望ましい、このように言われているわけでございますが、こういった行政指導が文書で行われたのかどうか。  それから六つ目に、そういった行政指導の場合、やはり国民から理解を得られるためにはその理由を文書で示す必要があろうかと思うんですが、理由は示されたかどうか。また、その示し方が口頭であったのか文書であったのか。  こういう点について、簡潔にお答え願いたいと思います。
  280. 土田正顕

    説明員(土田正顕君) 行政指導そのものにつきまして性格をあらかじめ御説明すべきであるかと思いますが、ただいまの御質問趣旨に対してお答えのみを申し上げます。  土地関連融資につきましての行政指導は、最近におきましては昭和六十一年ごろから何回にも分けて行っているところでございますが、さらにこれを絞りまして、本年三月の銀行局通達によりますところの行政指導、いわゆる総量規制と言われておるものにさらに限定いたしまして御説明いたします。  まず、この指導の対象者は、これは生損保を含む金融機関であります。  その次に、この指導に従ったか否かということでございますが、これは第一回の報告を本年度の四―六月期、第一・四半期につきまして受けておるわけでございますが、大半の金融機関は規制目標を達成しております。  それからその次に、ペナルティーは予定されておったかという話でございますが、これは行政指導の問題といたしまして、まず金融機関に規制目標達成の努力を強く促したものであり、規制目標を達成し得なかった場合の罰則等をあらかじめ想定したものではございません。  それからさらに、損害をこうむったか否かという御質問でございますが、この土地関連融資に係る指導は金融機関融資運営方針全体に係るものでありまして、これにより具体的に損害をこうむったということはないのではないかと考えております。  次に、この指導は文書によって行われたかということでございますが、これは最初に申しましたとおり局長通達の発出をいたしております。  最後に、その理由を説明したかということでございますが、この通達の中で理由その他を説明しておりますほか、各業界に対しまして通達発出の日に口頭でも説明を行っております。
  281. 松野允彦

    説明員(松野允彦君) まず、顧客の仮名取引の件でございます。  これは、私ども証券市場におきます取引の公正を確保するという観点から、仮名取引による注文を受けないという指導をしているわけでございます。対象は、証券会社全社でございます。それから、当然証券公社はその指導に従いまして、必要な内部管理体制の充実などに努めているところでございます。  この指導に従わなかった場合のペナルティーでございますが、これは証券会社の従業員が従わなかった場合におきましては証券業協会の規則がございまして、その規則で禁止行為になっておりますので、証券業協会における処分の対象ということになります。また、著しく不適当な様態の場合には、これは証券取引法六十四条の三に基づきまして行政処分の対象にもなることになっております。こういう仮名取引の受託の禁止は、証券会社が業務を適正に行う上での基本的な事項でございますので、これで証券会社が損害をこうむったということは私ども考えていないわけでございます。  この指導は、通達の形で文書により行われておりまして、指導の理由もその通達に書かれております。  それからもう一つの株主への利益配分の件でございますが、これは証券会社が時価発行増資などの引き受けを行います場合に、その株式の投資魅力を高めて株式の発行市場の機能を高める、発揮するという観点から行われている指導でございまして、直接の対象者は引受証券会社でございます。その指導に従って引受証券会社は、引き受けを行いますときに十分な利益配分を株主に行うということを発行会社が約束をするかどうかという点についてチェックをしております。特別のペナルティーというものは予定はしておりませんが、ただ、そういう株主に対する利益配分についての配慮が十分行われていないということになりますと、引き受けについてかなり厳しい対応をとるということにしております。  こういったことでございますから、当然私ども、損害を証券会社なりあるいは発行会社がこうむっているというふうには考えていないわけでございまして、また引受証券会社ということで対象が比較的少数なものですから、これにつきましては、特に文書によらずに口頭によってその理由も説明し、それを通じて発行会社に周知徹底を図るということにしております。
  282. 高井和伸

    ○高井和伸君 終わります。
  283. 三治重信

    ○三治重信君 大蔵大臣に御質問いたします。  最近の株価の急落に関連して、十月一日の記者会見大蔵大臣は、信用取引に必要な有価証券の担保の掛け目を現在の七〇%から八〇%へ引き上げる。二番目に、株価指数の先物とオプションの取引時間を二十分間短縮する。これが新聞だと、いわゆる株価てこ入れ策を大蔵大臣がしたと、こういうふうになっておりますが、この程度のことなら、今までは、普通は何か証券取引所の決定とか理事長の発表とかいうようなことがまず行われて、それからさらに大蔵大臣がそういうことについて指導態度をとるというのが従来の慣例じゃなかったかと思うんですけれども、私の感じだとすると、いきなり、証券取引所の方がこういうようないろんな対策をとったにもかかわらず株価がどんどん下落して、とめどかなくなったから大蔵大臣が出て突っかい棒をしたというふうに理解すべきか。非常に急激なやつだからある程度の御心配は当然かと思うんですけれども、いずれにしてもこの株価と土地の日本の経済におけるここ二、三年のバブル的な動きというものはいずれ鎮静が来るだろうと、これはだれも予想しておったところではないかと思うんですが、その点の大蔵大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  284. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 本年初頭から春先にかけましていわゆるトリプル安という市場の状況がありましたことは委員が御承知のとおりであります。  その後、その状況がある程度回復をいたしました後になりまして、また、最近の株式市場というものがしばらくまた回復をいたしておりますけれども、御承知のように九月のある時期から十月の初めはかけまして中東情勢の緊迫化とこれを受けました原油価格の上昇、また金利の上昇などから見送り気分が強くなり、薄商いの中で小口の売り物によって軟調に推移するという状況が続いておりました。また、現物市場がこのように縮小いたしました結果、逆に先物市場における取引が現物市場の三倍近くの規模になる。そして、先物市場が現物市場に与える影響が非常に大きくなってきたという状況がございました。  このような市場の状況にかんがみて、現物市場における需給の安定、取引の円滑化というものを図りますために、また現物、先物両市場のバランスを回復するために、当局としてまた証券取引所において先物オプション取引の規制及び信用取引規制の緩和などに関する一連の措置をここしばらくの間に講じてきたわけであります。これら一連の措置というものは、株価引き上げのために政府が直接介入するというのではございません。株式市場における需給の安定、取引の円滑化という観点から適切と考えられる措置を講じたということであります。  この証券市場の軟調というのは、必ずしも日本だけの現象でなかったことはこの時期については御承知のとおりであります。しかし、日本経済のファンダメンタルズというものと照らし合わせて考えました場合、他の市場に比べて日本市場が非常により大きな幅で変動しておったという状況も御理解いただきたいと思います。
  285. 三治重信

    ○三治重信君 その点で、非常に日本の証券取引が世界の中心になってきたという意味において御配慮されるのも当然だと思うんですけれども、この大きな急落がどういう理由なのか。国内事情なのか世界的なのか。世界的なということについては、私は本来からいくというと湾岸危機みたいな国際危機の場合には日本は株価が下落するんだけれども、それは同時に円安になるというのが日本経済の体質として今まで言われていたわけですよね。ところが、円はどういう理由で高くなっているかもちょっと御説明を、感触を聞きたいわけなんですけれども、急激に円高になってきたから若干株価も回復してきたと言えば言えるんですけれども、こういうふうな国内情勢の国外情勢と非常にちぐはぐな動きになってきたときに余り行政介入はどうか、もう少し状況を見たらと思うんですけれども、いずれにしても大変な動きが予想されておって、こういう態度をとられておるというふうに認識していいんですか。
  286. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) どういうふうに申し上げたらいいのか、私も必ずしも十分御説明の能力を持ちませんけれども、例えば本年の初頭から春先にかけましてトリプル安という市場の状況になりました。  ちょうど三月末に、私はロサンゼルスでアメリカのブレイディ財務長官との会談の機会を持ち、また四月初頭、パリにおきましてG7を迎えることになりました。その当時におきまして、私の脳裏に一番ありましたものは証券市場ではなく為替でありました。為替も崩れておりましたことは御承知のとおりであります。そして、為替の安定について各国の協力を得たいとそのG7に臨みましたとき、各国から私にぶつけられました疑問というのは、そもそもそのトリプル安という現象は一体どういうことなんだと。というのは、例えばアメリカのブラックマンデーの際、証券市場はたしかに非常に大きく値下がりをした。そこから離脱した資金というのは債券市場に行き、債券市場は非常に強いものになった。結果として、為替はほとんど変動がなくて済んだ。ところが、我々の経験を超えて日本のトリプル安という状況がある。そして、その資金がどこに移動したのかわからない、非常に日本の市場は気持ちが悪い。そういう状況の中で、日本の円の安定というものに積極的に協力ができないという雰囲気が非常に強い会議でありました。そして、我々はそうではなく日本の場合は資金はそれぞれの市場から離脱しておらず、むしろ市況の回復を信じて持ちこたえている人たちが多いんだということを申しましたけれども、なかなか実は理解が得にくい状況でありました。  最終的な協力は得られましたものの、その時点におきまして市場というものの複雑な動きというものを肌身で感じさせられた思いがいたします。ところが、おかげさまでここしばらく円は極めて安定をし、むしろ米国経済の、また米国における予算折衝の成り行き等々の影響も受けまして、むしろ円高に動いておる状況にあります。しかし、同時に中東情勢その他さまざまな影響の中で証券市場が軟調であったことは御承知のとおりでありまして、九月いっぱい、私は本当に様子を見ておりました。そして、どこかで安定してくれることを期待をいたしておりました。ところが、十月一日に至りまして二万円の大台割れという状況になり、非常な不安が世上に走った状況の中で、緊急な対応を必要と判断をいたしたわけであります。  この行動が軽率であったかどうかについてはさまざまな御意見はありましょう。しかし、やはり私は市場のバランスを回復させ安定をさせ、やはり日本の経済のファンダメンタルズというものを反映した市場であっていただきたい、そう願っておることもまた事実であります。
  287. 三治重信

    ○三治重信君 大体大蔵大臣の考え方はわかりまして、非常に難しいことだろうと思うんですが、ひとつ今後とも慎重にやっていただきたいと思います。  それで、時間がないんですが、会計検査院に、この前の総括のときにちょっと保留をしていた分だけ確かめて御報告を得たいと思います。  お願いしていたのはODAの検査について、結局日本は昨年世界一になったわけですが、各国が、ODAの外国での会計検査はどういうふうにやっているか。日本は後発でしかも金額が急に膨張して、今後どういうふうに、世界各国が同じように後進国にたくさんのODAをやっているわけなのですが、各国との比較において本当にどういうふうな均衡を得てやっているのかというようなことについて、御説明願えれば大変ありがたいと思います。
  288. 中村清

    会計検査院長(中村清君) アメリカの会計検査院におきましては、主として議会の要求に基づきまして国際開発庁の活動状況調査し、そして評価しております。この評価を行うに当たりましてよ、ワシントンの国務省及び国際開発庁において調査を行った上で、必要に応じまして国際開発庁の海外事務所でも調査を行いますし、また、被援助国の協力が得られた場合にはプロジェクトの現場に赴いて被援助国の係官の説明も受けている、こういうふうに聞いております。  それから、イギリスの会計検査院の場合でございますが、海外援助につきましても、他の国家施策と同様に検査のテーマとして取り上げております。検査は原則として海外開発庁の本部で行うわけでございますが、しかしテーマによりましては海外に赴きまして現地を調査する、あるいは現地の政府職員と話し合う、こういうふうに聞いております。  それから、ドイツの会計検査院の場合でございますが、海外援助につきましては原則として国内で経済協力省、復興金融公庫及び技術協力公社に対する検査を行いまして、例外的に海外に赴きまして被援助国の同意を得た上で現地政府の職員に質問をする、こういうこともあるというふうに聞いております。  それから、フランスの会計検査院の場合でございますが、海外援助につきましては経済協力庁等に証拠書類を提出させましてこれを常時検査しているわけでございますが、外国で実地に検査を行ったことはない、こういうふうに聞いております。  そうした状況から見ますと、日本の会計検査院の検査の方法というのはアメリカ、イギリスに類似しているわけでございますが、ドイツ、フランスとはかなり異なっている、こういうふうに考えております。
  289. 及川一夫

    委員長及川一夫君) 他に御発言もないようですから、皇室費国会会計検査院大蔵省国民金融公庫日本開発銀行及び日本輸出入銀行決算の審査はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時四十八分散会