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1990-04-20 第118回国会 参議院 外交・総合安全保障に関する調査会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年四月二十日(金曜日)    午後一時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         中西 一郎君     理 事                 下稲葉耕吉君                 野沢 太三君                 梶原 敬義君                 和田 教美君                 上田耕一郎君                 高井 和伸君                 猪木 寛至君     委 員                 井上 吉夫君                 井上  孝君                 尾辻 秀久君                 加藤 武徳君                 沓掛 哲男君                 木暮 山人君                 田村 秀昭君                 成瀬 守重君                 平野  清君                 宮澤  弘君                 翫  正敏君                 北村 哲男君                 田  英夫君                 堂本 暁子君                 井上  計君    事務局側        第一特別調査室        長        荻本 雄三君    参考人        丸紅株式会社国        際経済研究室長        多摩大学教授   井上 宗迪君        一橋大学教授   野林  健君        朝日新聞社外報        部長       村上 吉男君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○外交総合安全保障に関する調査  (日米経済摩擦と今後の両国関係に関する件)     ─────────────
  2. 中西一郎

    会長中西一郎君) ただいまから外交総合安全保障に関する調査会を開会いたします。  議事に先立ちまして一言申し上げます。  本院副議長小野明君におかれましては、昨十九日急逝されました。まことに哀惜痛恨にたえません。謹んで御冥福をお祈りいたします。     ─────────────
  3. 中西一郎

    会長中西一郎君) 外交総合安全保障に関する調査のうち、日米経済摩擦と今後の両国関係に関する件を議題といたします。  本日は、参考人として丸紅株式会社国際経済研究室長多摩大学教授井上宗迪君、一橋大学教授野林健君、朝日新聞社外報部長村上吉男君に御出席をいただいております。  この際、参考人方々一言ごあいさつを申し上げます。  参考人方々におかれましては、御多用中のところ本調査会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。  本日は、日米経済摩擦と今後の両国関係について忌憚のない御意見を伺い、今後の調査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  なお、本日の議事の進め方でございますが、井上参考人野林参考人村上参考人の順で、それぞれ三十分程度御意見を伺った後、委員の質疑にお答えいただくという順序で進めさせていただきたいと存じます。  なお、意見陳述の際は御着席のままで結構でございます。  それでは井上参考人にお願いいたします。
  4. 井上宗迪

    参考人井上宗迪君) 井上と申します。よろしく御清聴をいただきたいと思います。  本日は、いただいたテーマに関して、お手元に配付させていただいたレジュメによって、三つの柱に沿って私の考え方を御紹介させていただきたいと思っております。  まず最初に、今回の摩擦注目点について三点取り上げて私の考え方を紹介させていただきたいと思います。二つ目に、アメリカ経済現状について私なりにまとめさせていただきたい。アメリカ経済動きがどうなっているのか、これからどうなるかというテーマは、これからの日米摩擦を考える際、大きな課題だと私はとらえておりまして、アメリカ経済現状について二番目に取り上げさせていただきたいと思います。それから、レジュメを一枚めくっていただきまして三番目に、日米両国関係のこれからを考える上での日本側留意点について四点取り上げて、また私の考え方を整理させていただきたいと思っております。  それでは最初の、今回の摩擦注目点から話をスタートさせていただきますが、本日は三点取り上げさせていただきたいと思っております。  まず第一点ですが、日本側がこの四月上旬の日米構造問題協議の合意を踏まえて七月に具体策をとらなければいけなくなっております。今回の摩擦の第一の注目点として、日本側具体策を緊急にとらなければいけない必要に迫られているということですが、これは注目すべき一点だと思います。  摩擦注目点二つ目ですが、アメリカにおいては、経済的側面は当然のことながら、非経済的な側面摩擦においてより重視されるようになっていること、これが今回の摩擦を考える際注目すべき二点目ではないかと私はとらえております。代表的な教科書一つが次のような新しい章立てを加えております。自由貿易ですが、輸入が急増して自国産業がダメージを受ける、また失業者を大量に発生させてしまう。そういう場合、経済的な摩擦が生じてきているけれども、現在またこれからはそれ以外の要因自由貿易を抑制する材料になるのではないか。そういうふうに論陣を張っております。非経済的要因として、標準的な教科書は三点取り上げております。まず第一点ですが、国威が自由貿易の結果として損なわれるようになった場合、自由貿易は怪しいと取り上げております。二つ目に、国家安全保障自由貿易の結果として脅かされるようになるに至ってしまった場合、また自由貿易は怪しいと取り上げております。三番目に、福祉国家を目指して経済建設を進めてきた、その結果所得分配一つの望ましい仕組みをつくった。この福祉国家を志向して望ましい所得分配仕組みをつくった結果が自由貿易を通じた輸入急増によってゆがめられるようになった場合、また自由貿易は怪しいと取り上げております。  今回の摩擦三つ目注目点ですが、アメリカ経済の実態が一般に取り上げられているよりもよくなっていることが、日米摩擦がさらに激化するのを抑制する要因として働いていると思います。この点、今回の摩擦のもう一つ注目点として取り上げてみたいと思っております。  アメリカ経済現状について、また同じように三点取り上げさせていただきたいと思います。  まず第一点目ですが、双子赤字が大変だと取り上げられてきております。「事実は小説よりも奇なり」と言われております。アメリカ双子赤字を抱えて大変だという解釈ですが、私は、現 在考え得る最もひどい、格好な「事実は小説よりも奇なり」の一例だと取り上げてきております。アメリカが確かに対外赤字あるいは財政赤字をつくっていることは間違いないと思うんですが、伝えられている双子赤字説現実と離れております。まず、アメリカ外国に対して借金国になってしまったという解釈ですが、私は間違っているととらえております。アメリカの毎月の外国とのバランスシートを集計してきているお役所、商務省が、アメリカ外国に対して多額借金国になってしまったという情報の発信地点になっております。この商務省計算ですが、基本的な間違いをたくさん犯しております。例えば、一九八七年の十二月末のアメリカがそれまで世界に貸してきたお金を足し算して、その数字プラス記号をつけ、一方、アメリカが一九八三年以降多額お金外国から借りるようになっておりますが、このお金を集計してマイナス記号をつけた場合、マイナス数字が大きくなった。例えば八七年十二月末の場合は、貸したお金よりも借りたお金が三千六百億ドル上回ってしまった。そういうふうに商務省は発表してきております。八八年十二月末時点でのまた借りたお金ですが、貸したお金に比較して五千二百億ドルちょっと大きくなってしまったと商務省は発表してきております。このプラスマイナス計算ですが、基本的な間違いをたくさん犯しております。本日はこの基本的な間違いをたくさん取り上げる時間がないという私の時間の持ち分になっております。そこで二つだけ、基本的な間違いの中で私が大事と思っているものを取り上げさせていただきたいと思っております。  まず一つ目ですが、数字を比較するときに単位を一致させなきゃいけないというのはイロハのイになっていると思います。会計数字ですが、私たち通常帳簿上の値段、すなわち簿価とそのときどきの経済状況によって決まる時価を取り上げてきております。アメリカが戦後貸してきたお金ですが、簿価時価ギャップは大きな数字になっております。一方、一九八三年以降アメリカ外国から急に借りるようになったお金ですが、簿価時価ギャップがあるわけですが、そのギャップは無視してもいいような、そういう二つ数字関係になっております。いずれにせよ外国に対して借金国になってしまったかどうかという議論をする際の数字ですが、私は時価ベースで比較しなければおかしいと考えております。  それから、双子赤字説計算の間違っている基本的な二つ目ですが、同じ商務省公式統計に目を向けた場合に、商務省アメリカ世界に貸したお金から入手している利子の受け取り、また世界から借りるようになって借りたお金利子支払い数字を同時に発表してきております。一九八七年の年間利払い収支、何と二百四億ドルの黒字になっております。借りて払った利息よりも貸してもらった利息の方が大きな数字として計上されております。八八年十二月末の利払い収支ですが黒字は減っております。しかし、まだ依然として黒字を計上しております。利払い収支が依然として黒字を続けているという現実ですが、アメリカ借金国になったと考えるのはおかしいのではないか、そういうことを教えてくれていると思います。  財政赤字についてですが、この財政赤字についても、アメリカ計算方法ですが、からくりを持っております。一部のアメリカ人方々日本常識世界非常識だと言っておられるわけですが、同時に、アメリカ常識の中に世界非常識がたくさんある、これを我々は言わせてもらわなきゃいけない、そして多くのアメリカ人の友人に申し上げてきております。アメリカ財政収支計算方法ですが、アメリカにおいては常識になっているわけですが、私は日本世界から見て非常識になっているととらえてきております。  アメリカ財政収支計算方法においてからくりがあるということを明らかにするために、日本財政収支をここで簡単に取り上げさせていただきたいと思います。  御承知のように、日本政府は数え切れない項目を通じて民間お金支出してきております。この項目二つに分類すると次のように私たちは分けることができる、そういう現実になっております。すなわち一般会計財政投融資、この二つの範疇に分けることができるようになっております。現実に私たちは分けております。財政収支計算する際、日本政府一般会計を通じて民間支出した数字財政収支支払い数字として計上してきております。一方、財政投融資を通じて支出した数字は、財政収支計算する際、日本政府は除いてきております。この理屈ははっきりしております。一般会計から民間支出された数字は行ったきり戻ってこない。それに対して財政投融資を通じて民間支出したお金は後で融資先から戻ってくる。後で戻ってくるために日本政府財政収支計算する際、財政投融資勘定で出ていったお金支出数字から除いております。もっともな計算方法だと考えられると思います。  アメリカですが、財政投融資勘定を大きく膨らましてきております。そして、財政投融資残高のふえた分を財政赤字支払い数字として計上してきております。カーターさんがおやめになるときに財政投融資残高は二千億ドル近い数字にされたわけですが、レーガン大統領がおやめになるときにその数字を七千億ドル近くにふやしております。このふえた分が財政赤字に計上されております。税金を取らなくても後で融資先から戻ってくる数字財政支出に入れて、大変だ大変だと取り上げられているわけですが、私はその解釈はおかしいと思っております。  アメリカ財政赤字を考える際、もう一点注目しなきゃいけない勘定があると私はとらえております。地方財政が大きな黒字を続けてきております。御承知のように日本首都圏一極集中、それをいかに是正すべきか国家課題として取り上げております。一方アメリカですが、国づくり日本と大きく対象的になっております。アメリカ経済の担い手、企業ですが、人口三十万以下の全米都市、そういうところに本拠地を構えて事業活動を行ってきております。アメリカ経済拡大に入って現在七年目を迎えております。今回の拡大局面ですが、地方財政収支が好転しております。現在、年間五百億ドル近い地方財政黒字になっております。こういった点を正しくとらえてアメリカ財政赤字を読み直した場合、アメリカ財政赤字にはなっているわけですが、その赤字はどうしようもないという数字ではないという現実になっております。  アメリカ経済現状を考える際、二つ目に、アメリカが三十年ぶりに物づくりUターンを始めた、これを大きな課題として私は取り上げる必要があると思っております。ことしの大統領経済報告も指摘しております。去年のアメリカ製造業設備投資に占める外国企業のウエートは何と一四%に達したということを明らかにしてくれております。MアンドA企業買収において、アメリカから見ての外国企業はおよそ三分の一を占めるようになっております。アメリカ物づくりへのカムバックへの動きを担っているグループとして私は三つグループを挙げることができると思っております。まず第一に、今取り上げさせていただいたわけですが、外国企業ですね、日本企業ですが、五百五十社が去年までに千三十四の工場をアメリカにつくっております。いずれにせよ外国企業アメリカ物づくりの拠点の一つをつくるようになっております。二つ目に、アメリカ輸出の四分の三を担っている多国籍企業と呼ばれる二百三十余りの企業ドル安のもとでアメリカUターンを始めております。このUターン動きアメリカ物づくりの足腰を強くするもう一つ材料として作用を始めております。三つ目ですが、今も指摘させていただいたわけですが、全米人口三十万以下の地方都市事業活動を行っている中堅企業、こういった企業が今それぞれの企業が描いた自由市場のもとにおける筋書きに基づいて設備投資に挑戦しております。いずれにせよ、アメリカ物づくりへの動きですが、現下の アメリカ経済を考える際、新しい動きとして私は取り上げる必要があると思っております。  アメリカ経済現状を取り上げた場合の第三点目ですが、貿易赤字が着実に縮小するようになったということですが、これも注目すべき現状動きではないかと思います。以前、月間百四十億ドル前後の赤字を出していたわけですが、この赤字が半年前ごろから百億ドル前後に縮小しております。そして今後月間六十億ドル前後に縮小する、そう見て私は間違いないと思っております。アメリカ貿易赤字縮小を考える際、アメリカ輸出がとてつもなく増加しているという現実を取り上げなきゃいけないと思います。アメリカ輸出ですが、去年とおととし二年間に何と千億ドル輸出を増加させております。過去二年間輸出を千億ドル増加させた国を探すのは難しいという現実になっております。  きょうの私の三番目の柱、今後の日米関係を考える上での日本側留意点について、四点駆け足で取り上げさせていただきたいと思います。  まず第一点目ですが、日本が今後とも内需拡大策を続けていけば、そして為替レート現状以上大きく円安に振れない。そういうことを前提とした場合、日米間の貿易不均衡は今後二年以内にアメリカが政治的に許容できる、我慢できると指摘している三百億ドル前後まで縮小することが私は十分可能だと思っております。対米貿易黒字をいかに縮小すべきか、日本の大きな課題になっております。この点で、過去二年間アメリカからの日本輸入は百五十億ドル近く増加しております。日米貿易収支ですが、およそ百億ドル改善しております。今後二年以内に再び百億ドルの貿易収支の改善は私可能だと予想しております。繰り返しになるわけですが、そのためには内需拡大策を続けてとっていくことが大事な課題になっているととらえております。  二つ目に、アメリカの対日パーセプションギャップが大きくずれております。日本市場開放アンフェアだという見方がアメリカ良識派、対日親派の人々まで広がっております。このパーセプションギャップを解くために粘り強く、また幅広い交渉を今後も私は続けていく必要があると思っております。  三番目の今後の日米関係を考える上での日本側留意点として、自由化をさらに進めていくことが引き続いて大事な課題だと思っております。その際、日本立場を考慮して筋を通すことが大きな課題だと思っております。ほとんどのアメリカ人、またほとんどのヨーロッパ人国家安全保障食べ物、これを自分の手で守る、自分でつくると考えていると見て間違いないと思います。国家安全保障とか食べ物、そういうところまで自由化を進めるのはもう少し議論の余地があると私は思っております。  四番目の留意点として、一九九〇年代半ばに石油を含めて非鉄金属鉱物資源、木材、穀物類、その他重要な一次産品において資源が枯渇する、そういうおそれが高まっております。日米合わせて世界工業力のおよそ四割を占めております。資源の入手が難しくなった場合、日米取り合いをするのではないか、こういうことがアメリカ識者によって取り上げられております。そしてアメリカ識者はそうなってはまずい、そのために今から調査研究をするだけじゃなくて、二つ経済大国がツー・ハングリー・ジャイアンツ、資源に飢えた国として取り合いをしないように協調路線をとるべき筋書きを描くべきだと、そういう筋書き描きに着手しております。これからの日米関係を考えた場合、特に九〇年代後半を考えた場合、予想される資源の需給の大きな逆転、これまでの買い手市場に対して売り手市場に変わると私は予想しております。そういう状況下を踏まえて、資源問題に関して日米協調路線をつくっていくことが新たな課題になっている、また日本の大きな留意点になっているととらえております。  時間が参りましたので、私の話はこれでとりあえずストップさせていただきたいと思います。
  5. 中西一郎

    会長中西一郎君) ありがとうございました。  次に、野林参考人にお願いいたします。
  6. 野林健

    参考人野林健君) 一橋大学野林でございます。  ただいま井上先生から主として経済学立場からお話を伺ったわけでございますけれども、私はあえてレッテルをつけるとすれば国際政治学者でございますので、主として政治学的な関心からお話しさせていただきたいというふうに思います。  私のテーマは、日米構造障壁問題協議及び最近欧米で盛んになりつつあると言われている日本異質論日本は非常に変わった国だという議論、この二つを絡ませながらお話しさせていただきたいというふうに思います。  御承知のように、一九五〇年代後半の繊維摩擦以来今日まで数々の日米貿易摩擦がございました。これからもいろいろ出てくると覚悟しなければならないと思いますし、ある意味で、いい意味でそれになれる、それと共存するという粘り強さとたくましさ、同時に行動力も必要かというふうに思います。しかし、今回の構造問題協議は、既に皆様もよく御存じのとおりでございますけれども、幾つかの点でこれまでの摩擦とはかなり違うところがあるように思います。  まず、第一点でございますけれども、自動車であるとか鉄鋼であるとか、そういう個別品目の問題から経済構造あるいは経済運営全般にかかわる問題へと非常に争点が拡大していったということ。言いかえれば日米両国経済システムの枠組みといったものが問題になっているということ。そして協議の性格上、少なくとも原理としては双方向、日本アメリカに物を言うしアメリカ日本に物を言う。原理としてはそういうことになっているわけでございます。  第二点目に、アメリカ議会の中でいわゆる対日強硬派と言われる人たち、これがかなりこれまでになく勢いを持ち始めているというふうに思います。既にその動きは例のスーパー三〇一条の制定あるいは発動の折に見られたことでございますけれども、その背景には、もちろんなかなか滅らない対日貿易赤字、そういうものへのいら立ちに加えまして、ハイテク問題を中心としたアメリカ経済安全保障に対する日本脅威というパーセプションが生まれつつあるというふうに思います。  それから第三点、そのような経済安全保障に絡む日本脅威というものの背後には、いわゆる日本異質論といった考え方が広まり始めていて、一言で申せば日本は我々と似て非なる国なのではないかというイメージが生まれつつあるように思います。  しかも問題なのは、このような対日イメージ、これは議会のみならず行政府の内部、特に日本関係の深い貿易問題を担当する人たちの中にも、強弱はございますけれども広まりつつあるのではないかというふうな印象を持っております。したがいまして、これまでの日米貿易摩擦解決パターン、つまりアメリカ行政府日本から一定の譲歩を引き出す、そのことによってアメリカ議会の対日強硬路線に歯どめをかけるといった一種の抑制メカニズム、こういったものがこれまでどおりうまく機能するのかどうか、この点もいささか心配なところでございます。  それから、もうこれは皆様もよく御存じのことかと思いますけれども、目を広くアメリカ世論一般に広げますと、いろいろな調査があるわけでございますけれども、東西冷戦というイメージが昨今のソ連・東欧情勢の変化に呼応いたしまして後退する一方で、ソビエトにかわる新たな脅威としての日本経済的な脅威としての日本というイメージがこれまた広がりつつあることはやはり念頭に置かなければならないように思います。  以上指摘をいたしました問題に加えまして、今回の構造協議というものはそもそも大変大きなジレンマを抱えていると思います。構造障壁問題、それは日本の側であれアメリカのサイドであれ、その名前からして即効性を期待することはできない。仮に構造障壁と言われるものが取り除かれたといたしましても、すぐに貿易赤字の解消、そう いう意味における効果が出るとは考えられないわけでございます。商慣習経営風土あるいは長年とられてきた政策の遺産といったものはすぐ改めることなど到底無理でありますし、アメリカ国際競争力、こういったものは一朝一夕に改善されるといったこともあり得ない。この意味からも中期的な展望に立った改革努力でなければならないわけでございますけれども、実際には五百億ドル近くの日米貿易不均衡問題とどうしても現実政治の中では切り離すことができない。冷静に考えればこれは切り離せるわけでございますけれども、それをなかなか許さない差し迫った状況日米関係があるというふうに私は認識をしております。日米政府当局者学者あるいは少なくとも日本の国会の先生方、こういう方々は冷静に見ることはできても、日本はけしからぬ、日本はこれまで口約束だけだった、そういういわゆるジャパンバッシング日本たたきの風潮が非常に強いアメリカ議会、まあ一種の流行になっている感もあるかと思いますけれども、そういうグループからすれば構造協議の結果だけを重視するだろうというふうに思います。率直に申しまして、このようなジャパンバッシング的な動きに対する盾、防御としては、構造協議はかなり弱いものではないかというふうに思います。私は、一、二年後、構造協議は不均衡の是正に何の役にも立たなかったとアメリカ議会が結論を出す事態を憂慮しているわけでございます。  それでは、今回の構造協議、これが全く日米関係の改善といった面、そういう面において不毛かというと私はそうではないというふうに思います。第一に、最近のとげとげしい日米関係の改善に一定の効果が期待されるということ。構造協議のフォローアップ、実行には少なくとも一、二年の期間が必要であります。その間に日本がいろいろ努力をし、アメリカ政府も努力をし、かつこれを評価し、議会に対して冷静に対処するよう説得するというシナリオに期待をしているわけでございます。この間に個別の貿易摩擦案件を精力的に処理していく必要があることは言うまでもありません。実際には円とドルのレートの問題、その他不確定な要素はいろいろあるわけではございますけれども、先ほど井上先生も御指摘になりましたようにアメリカ経済は順調に推移していくように思います。日本の製品輸入も増加をしております。また、アメリカ企業の対日進出や投資といったことも、そういう環境づくりに日本側が努力をする、そういうことが望ましと思いますし、また、できていくのではないかと期待をしております。以上もろもろの日本側の対応あるいはアメリカの努力といったものが、政治的な発想からすればそれが構造協議の成果であるかどうかといったことはある意味ではさほど重要ではない。要するに、具体的な成果を目に見える形で示すことが大事であろうというふうに思います。  アメリカではこの秋に中間選挙がございますけれども、構造協議が着々と進行していくということならば、貿易問題で共和党が民主党から責められるというような事態は回避できるのではないかと思います。二年半後の大統領選挙までうまく乗り切れるかどうかはわからない。しかし、今からそんな先のことまで心配しても仕方がないというようにあえて申し上げたいと思います。日本としては、何はともあれ何とか貿易不均衡のレベルをアメリカ政治の許容水準にまで下げる努力が必要でありますし、これにはいろいろな外在的な環境要因もございますので難しい面もあろうかと思いますけれども、先ほど井上先生の御指摘では、かなり可能性もあるということのようでございます。日本としては、今回非常にシンボリックな形で話題になりました大店法であるとかあるいは独占禁止法といったいわゆる政治的な意味でのシンボリックな問題をアメリカ側にわかりやすい形で、ある意味で単純でなければわからないわけでありますので、アメリカ側にわかりやすい形で処理していくことも必要であるというふうに思います。  以上、今回の構造協議問題につきまして、いわゆる短期的な政治的効果という観点から意見を述べさせていただいたわけでございます。要するに先送り効果と申しますか、あるいは当面の危機回避の効果、こういったものはあると思いますし、結局そういうものの積み重ねの中でしか現実の改革、現実の改善というものはないのではないか。私自身は、ある意味で冷めているかもしれませんけれども、そのような印象を持っております。  しかし、もう一つ大事なことを私どもは忘れてはならないというふうに思います。構造協議のもう一つの重要なメッセージ、それはアメリカからのメッセージでございますけれども、日本は本当に自由経済体制、自由貿易体制の一員なのかとアメリカが問いかけているという点ではないでしょうか。日本は異質な国だと、この後もう少し詳しくお話しさせていただきますけれども、そういう見方がアメリカに広がりつつある、そういう状況は認識しなければならないと思います。いわく、日本は自由経済体制の国だと言うが、本当は我々と違った経済原理、社会原理、これで動いているのではないか、そのことが結果として経済貿易の分野における日本のひとり勝ちをつくり出した根本原因ではないかというふうな印象、イメージを持っている人たちアメリカのビジネスリーダー、政治のリーダー、あるいは官僚機構、こういったところにふえつつあるように思います。このような極端な議論の芽というものは当然早目に摘み取っておく必要があるわけで、アメリカ良識派の努力、奮闘に期待するところも多いわけでございますけれども、日本側がみずから明確なメッセージを発信する必要が特にあるということを私は強調したいと思います。  そこで、先ほど指摘をいたしましたいわゆる日本異質論、これについて少し説明をさせていただきたいと思います。  日本異質論は英語ではリビジョニズムというふうに申します。リビジョニズムと申しますのは修正主義、ある考え方を修正する、リバイズするという、そういう立場なわけでございます。つまり、どういう従来の立場をリバイズ、修正するのかと申しますと、日本は非西洋の中で始めて民主的な政治システムをつくり上げ、かつその中で経済的にも奇跡的な発展を遂げてきたすばらしい国だ、すばらしい経済大国である。そういう非常に積極的な日本に対してポジティブな評価をする、そういう従来の見方、恐らくライシャワーさん、その他従来の親日派のグループはそういう方が多かったように思いますけれども、そういう従来の見方を修正すべきであるというのが、私がきょうお話をさせていただきます日本異質論、あるいはそういう人たちを修正主義者、リビジョニストというわけでございます。先ほども申しましたように彼らからいいますと、日本という国は欧米の感覚から言えばユニークとしか言いようがない。政治権力の中心があるようでないように見える。しかし、外には一致団結、欧米のルールとは全く違ったルールでプレーする国だということになろうかと思います。私ども日本人が、現在の世界は相互依存の時代に入り、今後ますます世界は狭くなっていく、経済的な力をつけた日本はより一層国際社会に貢献するよう努力していかなければならないというふうに思い始めたやさきに、おまえは我々のクラブに入る資格はないよと言われているようなものでありまして、極めて憂慮すべき事態になる危険はあると思います。このような状況、あるいはこのような背景と申しますのは、皆様もよく御存じの小泉八雲、ラフカディオ・ハーンですね、こういう人に代表されるようなエキゾチックな日本、あるいは東洋の神秘の国といったたぐいの日本論とは全く別のものでありまして、ルース・ベネディクトの「菊と刀」、西洋の罪の文化に対する日本の恥の文化、こういう対比論、これにある意味で近いところがある。べネディクトが「菊と刀」を書いたのは随分昔でありまして、日本経済脅威などというものはだれの念頭にもなかった。そういう意味では全然別の背景があるわけでございますけれども、西洋との比較を極端な形で行う、そしてその中で日本の特殊性を指摘す るといった意味では、ルース・ベネディクトなどは今の日本異質論のある意味で元祖の一人ではないかというふうに思います。  今、日本異質論者、リビジョニストを十把一からげにしましたけれども、もちろんこれは大変極論でございまして、実際にはいろいろな考え方がございます。時間もございませんので、何人か代表的な人の議論をかいつまんでお話をしたいと思います。  まず、私どもにある種のカルチャーショックを与えたその人物は、セオドア・ホワイトというアメリカのジャーナリストでございまして、彼は一九八五年の七月、ニューヨークタイムズ・マガジンというニューヨークタイムズが出している新聞のサンデー・エディションに入って、大変プレステージの高い読み物ですけれども、そこに「ザ・デンジャー・フロム・ジャパン」、日本からの危険という論文を発表しました。その中で彼は、我々アメリカ人日本と戦争して勝ったはずだけれども、実際には経済戦争で日本が勝利者になりつつあるのではないか。日本は、政府の号令一下、一致団結してアメリカ産業に攻撃をしかけているんだというふうに論じました。この論文は、アメリカを代表する、また特に知的レベルの高い政治、経済界を含めまして、非常にレベルの高い層に多く読まれているいわゆるクオリティーペーパーであるニューヨークタイムズに、しかも非常なセンセーショナルな、派手なレイアウトでこの論文が掲載されましたので、日本人にはいささかショッキングなところがございました。この論文は「諸君」という雑誌に翻訳がされておりますので御記憶の方もあろうかと思います。  二人目は、クライド・プレストウイッツというアメリカ人でございます。きょう彼の本の翻訳を持ってまいりましたので、後ほど御関心のある向きはごらんいただければと思いますけれども、彼は日米半導体摩擦のとき、アメリカ商務省の担当官の一人でございました。現在は民間経済研究機関に入っておりますけれども、彼の「日米逆転」という本のサブタイトルは、「アメリカはいかにして日本に遅れをとってしまったのか」というサブタイトルであり、まさに彼の問題意識がそこにあるわけでございます。彼の主張はさほど過激ではありませんで、日本はもっと国際化しなければならない、世界の中にいるだけではなくて世界に属さなければならない、市場開放こそ日本の責任である。それがまた唯一日本が生き残る道であるにもかかわらず、自分が長らく経験をしてきたあるいは見てきた日本側の対応というのはまさに小手先の対応でしかない。一体どういう感覚かというところから議論が始まるわけでございます。彼が最近まで商務省の中堅官僚であったということ、そしてこれからも直接間接に日米経済問題に登場する、そういう人物であるだけに、彼の見方というのは行政府の官僚レベルの人たちにかなり広まっていく可能性はある、あるいは既に広まっているかもしれないというふうに思います。  三人目は、ジェームズ・ファローズという、これもアメリカ人でございまして、彼はジャーナリストでございますけれども、二流、三流のジャーナリストではなくて「アトランチック・マンスリー」という大変プレステージのある雑誌の記者、編集者をしている人物でありまして、いわゆるむちゃくちゃ日本をこきおろすといった、そういう人間ではございません。波の主張と申しますのはかなり文化論に近くなってくるわけでございまして、彼いわく、アメリカのよき伝統、強みというのは個人の尊重である。他方、日本の強みは集団であり、それは明らかに対立する。だから、日本から学ぶといったような幻想は抱くべきでない。それはむしろアメリカの強みを損なうものだ。日本アメリカは根本的に相入れない。日本が強大になり過ぎることを警戒すべし。極論すれば日本は封じ込めなければならない。ちょっと単純化し過ぎておりますけれども、そういう趣旨でございます。実際に時々日本の本は翻訳などコマーシャルベースでたくさん売ろうということで派手なタイトルをつけますけれども、この中でファローズ自身「コンテイニング・ジャパン」、日本を封じ込めるという論文を書いておりまして、コンテインという言葉は冷戦のときに言われました封じ込め政策、コンテインメントポリシーをイメージすることになろうかと思います。そういう意味では、やはり封じ込めという言葉は彼の本意ではないかもしれませんけれども、そういう趣旨は確かにあると思います。  次は、チャルマーズ・ジョンソンという学者でございます。彼は有名なアメリカ日本研究者でありまして、皆様の中にもおつき合いのある方がいらっしゃるかと思います。彼の書いた「通産省と日本の奇跡」、これは八二年に出た本でございますけれども、これも翻訳をされておりまして、彼は、戦後日本の目覚ましい経済発展は通産省による見事な政策運営の結果であるというふうに分析をしたわけでございます。通産省の役人が聞けば泣いて喜びそうな内容でありますけれども、実際に私の知り合いの役人に何人か聞きますと、ここまで褒められると気持ちが悪くなるというふうに言っておりました。確かに戦後のある時期、官僚主導の政策運営といったものが大きな力を持っていたことは事実だと思いますけれども、それが今日まで、そしてこれから先も続くというふうな見方は単純な見方だと思います。このチャルマーズ・ジョンソンの立場というのは、ある種の善意の陰謀説というふうに言えるのではないかと思います。  彼自身は学者でありまして、単純な文化論、日本の文化の特殊性という説明はしておりません。この意味で他のリビジョニストと必ずしも同じではないかもしれませんけれども、結果として日本の資本主義、経済システムが非常に異質であり、アメリカの自由放任、自由競争的な原理とは根本的に異なる。したがって、日本人がみずからの歴史体験の中から発明した資本主義なるものは、アダム・スミスもカール・マルクスもできないようなものだというふうな言い方をしております。例えば市場、マーケットという概念ですけれども、アメリカ人がそれを聞けば自由競争がもたらす効率ということを思い浮かべるはずだけれども、日本人が聞けば官民が一致団結して追求する経済成長の結果あるいは効果といったものをイメージする。同様に労働組合、株式会社等々の言葉も日本アメリカではその意味するところは非常に違う。だから日本アメリカと、学者レベルであれあるいは政府レベルであれ、日本アメリカ経済を論ずるとき結局はすれ違いの議論に終わってしまうのだ。それは極端に言えば不可避であるという言い方をしているわけでございます。  いろいろ申し上げましたけれども、また、かなり単純化して要約をした点はお許しを願いたいと思います。とまれ、こういう論調がアメリカを中心に、今まさに日本人が国際社会の中での新たな役割と責任ということについて考える、国際社会に貢献していこうと決意し始めたときに、相手側が、君たちとはとてもやっていけないよといった対日世論をリードしていく危険はあると思います。こういうイメージアメリカ議会の対日強硬派の姿勢に弾みをつけてしまう可能性、あるいは経済界さらには行政府、ホワイトハウス、こういった大事な政治的な中心に広まっていく、そういう危険を私は危惧しております。今それが広がっていると言うつもりはございませんけれども、それが広がる危険は十分にあるのではないかというふうに思います。  その事態の進行というものを食いとめる、その流れをいい方向に変えていくという努力は一つには日本側の努力にかかっているわけでございまして、その打つ手の一つが、いささか弱い面がなきにしもあらずではあるけれども、しかし構造協議についての日本側の真剣な対応であるというふうに思います。もちろんアメリカの言うことをすべてごもっともと頭を下げる必要は毛頭ありませんし、イエス・ノーのめり張りはつけなければならない。つけないと、日本人が考えているめり張りよりも五倍ぐらい強くはっきりさせないとアメリカ人には伝わらない。そういうやはり感覚の違い はあると思います。これだけ経済の国際化が進み、また日本がその中で繁栄していくということを考えるならば、ビジネスのルール、こういったものはできるだけ国際的な水準でなければならないと私は思います。したがいまして、変にナショナリスティックにならずに主体的な自己変革としてとらえ、行動すべきであるというふうに思います。もし、日本的なるものを何が何でも維持したいと我々日本人が思うならば、恐らく外国からは、それでは日本経済の国際的な活動、貿易であれ投資であれ、日本はもっと縮小すべきだ、そういう国際世論が強くなっていく、そういう危険はあると思います。いわゆる縮小均衡あるいは管理貿易、こういったシナリオでございます。そんなことは日本にとっても世界経済の発展にとってもいいはずがないわけで、これを機会に日本が主体的に自分たち経済仕組みを問い直すいい機会だというふうに思います。それで日本文化のよさ、あるいは本当の意味での特徴といったものがなくなってしまうほど日本文化というものの底が浅いはずはないわけで、文化文化と言っているものの多くは変わり得る慣習であり、社会的あるいは政治的しがらみではないかというふうに私は考えているところでございます。  確かに、日本の中には内政干渉はけしからぬと反応する向きもある。しかし我々が忘れてはならないのは、実は今回のアメリカの要求の多く、基本的な考えといったものは、何年か前に日本政府が鳴り物入りで作成をし、しかもアメリカ政府に提出した例の前川レポートで指摘されているところである、この事実は忘れてはならないというふうに思います。  二、三週間ほど前でしょうか、ちょうど日米構造協議の中間報告がまとまった直後にNHKのテレビで特集番組がございました。その中で電話による世論調査がございまして、番組を見ている七百五十四名を対象にした電話調査がございました。その中の最初の質問が、構造協議アメリカ政府が指摘したことは全体的に見てそのとおりと思うかという質問でありまして、そう思うと答えた方が六一%、そうは思わないと答えた人は三六%、わからないと答えた人が三%でありました。これは質問の仕方にもよりますし、したがいまして、質問が大ざっぱ過ぎると言ってしまえばそのとおりかもしれませんけれども、私はこの数字は決して無視できないものだろうというふうに思います。私自身、この数字は健全な庶民感覚としてとらえるべきであるというふうに思っております。  私ども、あるいは皆様方も今回の日米構造協議問題で一番危惧をされたことの一つは、交渉が、まあ政府は交渉ではないと言っておりますけれどもそれは言葉の問題でありまして、交渉がこじれて日本の反米感情、アメリカの対日感情が悪くなるということでありましたけれども、幸いこのような事態は回避された。消費者の利益という大義名分を上手に利用したアメリカの作戦がうまくいったということでもありますけれども、また、アメリカが本気で日本の消費者のことを心配してくれたというようなことは、幾らお人よしの日本人でも思っていないと思いますけれども、結果として消費者の利益といったものが日米共通のルールとして前面に出てきたことは有意義だと思います。産業優先、企業優先のこれまでの日本の政治の仕組み、官僚機構の仕組みあるいは価値観、こういったものに対して日本が反省期に入っていることとも一致していると思います。今回の構造協議というものは、日本が自由経済体制の一員としてアメリカと同じ土俵の上に立っているのだと、土俵の上に立って初めて相撲が始まるわけでありまして、まず土俵の上に立っているのだと強くアピールする絶好の機会にできるのではないかというふうに思います。アメリカに限らず、途上国を含めて諸外国の誤解あるいは十分納得できないような点があれば、制度であれ慣習であれ、彼らの目から見て透明度の高いビジネスのルールをつくり上げていくことが必要だというふうに思います。そしてそれが日米という二国間にとどまるのではなくて、多国間、マルチラテラルな枠組みで日本も努力をしていく必要があるのではないかというふうに思います。  非常に駆け足でございましたけれども、私の陳述はこれで終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。
  7. 中西一郎

    会長中西一郎君) ありがとうございました。  次に、村上参考人にお願いいたします。
  8. 村上吉男

    参考人村上吉男君) 村上でございます。  与えられましたテーマについて、私個人の意見を述べさせていただきます。テーマは、日米経済摩擦両国関係の今後ということでございますけれども、今のような世界が非常に大きな動きをしているときに、これはやはり世界の中での日本世界の中での日米関係ということを強く意識して当たらなければならない問題だと思いますし、日米両国関係というよりも、むしろ日本がこれから国内的にも国際的にもどうあるべきかということを考える必要があるんじゃないかと思います。  そこで、最初に私が思いつきますことですけれども、昨年からの東欧の激変、現在のソ連の激変、次々と共産政権が変わっていくような状況の中でやはり一般的に言えることは、自由、民主主義、人権、ボーダーレスの時代、あるいは軍備よりも生活、大砲よりもバターということ、それから大変な情報化の時代といったような大きな要素が急速に強まってきて、これが恐らくイレバーシブルと申しますか、当面続くのではないかという気がするわけです。そういった中で、非軍事、経済力を中心としてきまして、さらにコンピューター技術を中心とした日本というのは、まさに日本の時代到来せりという大変有利な状況にあるかと思います。キッシンジャーさんなどは、経済大国であって軍事大国でなかった国はかつてないということの信奉者で、いまだに予言されていますけれども、私は、日本世界史上経済大国で初めて軍事大国にならなかった国という壮大な歴史的な実験をやり遂げてみたらいかがであろうかというふうに思う次第でございます。同時に、今申し上げたような状況の中の日本で不利な点というのはどういうことだろうかと申しますと、一見矛盾するようですけれども、非軍事と言いながら、既に世界で軍事支出といいますか、防衛支出が第三位に上がってしまった。さらにその傾向が続いておりまして、一方米ソはどんどん軍備の削減をこれから続ける時代に入っているわけですけれども、そういうことで周辺諸国から、ちょうど統一ドイツに対する近隣諸国の疑惑の目と申しますか、そういった目が高まってくるおそれがあるのではないかということがあると思います。  それから、東西対立が解けることによって、両陣営の中での今まで伏せられてきた問題が非常に噴き出してくる。ソ連側にありましてはリトアニアに象徴されるああいった少数民族の問題、東欧諸国の中でも既に出ておりますけれども、一方、西側陣営の中では象徴的なのは日米摩擦であり、米国とECとの経済摩擦だという気がいたします。  それから、そういう時代に入れば入るほど、日本という国は金もうけはやるけれども、その理念とか国際社会の共同構成員としての認識が不足しているのじゃないかといったようなことが目立ってくるし、また批判の対象にもなってくると思います。さらには、経済お金もうけはうまいけれども、積極的なリーダーシップをとっていない。そのリーダーシップというのは非軍事、経済力あるいは例えば技術の移転なんかでの国際的な貢献ですか、そういった問題も含めてでございますけれども、そういった日本のリーダーシップというのは必ずしも日本世界を動かすようなことをやれとかいうのじゃなくて、日本というのは一体積極的にどういうふうなリーダーシップをとっていくのであろうかといったようなところが見られるのじゃないかと思います。  それからまた、日本のやり方が公正でない。これは主として経済活動を中心にですけれども、そういった批判も高まってくると思います。それの典型的なのが日米経済摩擦で、これは後で申し上 げます。さらに、自由とか民主主義とか経済、軍備よりも経済となるとやはり日本の時代と最初申し上げたようなことが起こるんですけれども、それを履き違えたおごりとか高慢な態度というものに対する批判が既に日本人に対して、あるいは日本に対して国際社会の中で非常に頻繁に見られるようになってきましたけれども、我々日本人というのは一体それほど力を持っているのだろうかということも深刻に考えなければならないと思います。現在の一時的にちょっと起こっているトリプル安などを見ますと、それほど日本経済力の底というものはあるいは底力というものがそういう一部のおごり高ぶり、あるいは経済力を過信していいほどあるのかどうかといったことが問われていると思います。  具体的に申し上げますと、今、例えば日本が東欧諸国に対して、世界的な規模の目玉商品として、注目を引くために巨額の経済援助をすることは財政的には可能ではないかと思うんですけれども、それは恐らく許されないでしょうね。アメリカ側がそういうことを好まない。つまりどこに援助するにしても日本側は常にアメリカのことを横目で見ながら、アメリカが十やるなら八ぐらいでやっていかなければならないのが現状ですし、あるいは例えばIMFでの発言を強めたいとしてIMFへ増資したくてもこれは許されない。あるいは外貨保有高が、台湾もありますけれども、西独などと並んで世界の第一線にありながら、そのうちの金の保有高というのは非常に少ないんですが、これもふやすとやはりいい顔をされないのでふやせないできているわけですね。これだけの力を言われながら、例えば国際連合の安全保障理事会で、そろそろ日本も常任理事国ということを考えたらどうだろうかというふうな、そういった声は全く出てこないというふうなことがあるわけですから、やはり我々の力というのがどの程度のものか、国際的にどの程度認められているのだろうか、あるいは認められるためにはもっとどういうことをしなきゃならないのだろうかということを考えなければならないのじゃないかという気がいたします。  問題の日米関係でございますけれども、これはやはり根本的には巨額の貿易赤字に尽きるという気がいたします。世界に百六十カ国ありますけれども、五百億ドルなどという赤字を何年も何年も続けられるような国は、我が国を含めてもございません。その両国関係の今後をどう見るかということでございますけれども、この深刻な問題に対して解決策が打たれなければ、今後決して楽ではなく、極めて難しい状態になっていくと思います。五百億ドルをゼロにするのじゃなくて、例えば二、三百億ドルぐらいのことであれば、両国の貿易構造の違いから、こちら側は工業製品を輸出し、向こう側から農産品などを中心に買うわけですから、その辺はアメリカも十分理解していますし、アメリカ全体の中で日米関係に対する赤字が他の分野で補てんできるということがあるわけですが、この五百億ドルというのはいかにも大き過ぎるわけです。  私、たまたま昨年まで四年二カ月ばかりワシントンでカバーしておりましたので、そこで、なぜアメリカのいら立ちというものがこんなにまできてしまったのだろうかということを多少御説明申し上げたいと思うのですけれども、例えば、これだけの貿易不均衡があるのに牛肉・オレンジをやったところで幾らだ、米を六十万トン入れたところで幾らだ、こういうのは焼け石に水であるというふうな議論がやはりどうしても日本から出てくる。これに対してアメリカ側は非常に神経を逆なでされた感じを持つわけですね。私よく例で挙げるんですけれども、日韓関係、現在日本黒字です。これ、お隣の国で、ちょうどNIESで伸びている国ですから、そういう意味でこの韓国を例に引かせていただくんですけれども、仮に韓国が日本に対して二百億ドルの黒字があったと御想定ください。日本はこの二百億ドルが続いていて、何とかしたいということで、あれをこうしてくれ、あれをもっと輸入してもらえないかと言います。しかしもし韓国側に、そんなことをしたところでこの二百億ドルは焼け石に水だからというふうなことを言われたとされますと、皆さん方はどうお考えになるか。あるいは、日韓のこの二百億ドルの不均衡というのは、根本は日本側財政赤字にあるのでございましてと言われたときに、なるほど我々の財政赤字が悪いのか、韓国側に罪はないのかと皆さん方がお考えになるかどうかというふうな感じを持っていただければ多少はおわかりいただけるんではないかと思います。  この五百億ドルというのは日本側の取り分ですけれども、これが日本側に入ってくる。それに高い貯蓄率の日本で蓄えているお金、それに生保なんかのお金、これが為替交換比率で、日本にいますと生活水準のよさというのはそれほど実感として感じないんですが、日本の円というのが一たん日本の海岸線を離れると、これはとてつもない力を今発揮しているわけです。それが五百億ドルにさらにそういった生保のお金とか貯蓄が上乗せされて、世界をぐるっと見回してどこへ行くかというと、行くところはやはりアメリカが一番効率が高いということで、またアメリカにどばんとこう返っていくわけですね。この五百億ドルというのは、日本の防衛費の一・六倍とか、場合によっては二倍近いものであって巨額なんですが、それだけじゃなくて、それにさらに上乗せされてアメリカにまた金利その他を求めて入っていく。のみならず、それでは不十分なので、結局ハリウッドを買ったり、ロックフェラーセンターを買ったり、ティファニーを買ったりという非常に目立つ形で入っていく。つまり我々の国が貿易赤字国から東京タワーや帝国ホテルなどを買われていく状況に近いと言ってもいいかと思います。  そういった中で、アメリカ側が日本と交渉を始めますと、例えば自動車なんかで、そんなこと言ったって日本は自主規制しているじゃないか、鉄鋼だってそうじゃないかということを言うわけですけれども、アメリカ側が言いますのは――それではもう一度韓国の例を引きますが、日本が今黒字である韓国に対して、例えばニットウエアなんかがどっと入ってきたときは自主規制をしたと思いますね。だから、自分のところは黒字であるにもかかわらず相手国に自主規制を要求する。アメリカ側が日本に対して大幅赤字であって自主規制をお願いする。それに対して管理貿易だ何とか言うのは、日本はこれはダブルスタンダードの国じゃないか、  あるいはFSX交渉のときに、レーガン政権で一たんまとまったものを新しいブッシュ政権ができたらどんと変えちゃった、こんな国とはもうやっていられないということが日本側で広がっていくわけですけれども。まず第一にアメリカという国は、国の命運にかかわるような米ソ間の戦略兵器の交渉でも、カーター政権がSALTといいますか制限条約交渉をやって、大詰めに来たところで次の政権が出てきて、今度はSTART、削減というふうにぼんと変えちゃいましたよね。このときのアメリカ政権に対するモスクワの不信感はいかばかりかと思うんですけれども、こういった、政権がかわったときにそれまでまとまっていたものを変えるなんということはよくあることであり、翻って、我が国がパキスタンなんかと繊維交渉をやるときには、じゃ我が国は態度を変えないのかというと、これはやっぱり日本も態度はよく変えるわけですから、それを理由にアメリカ側がけしからぬと言うのが日本の国内で広がるということは、かえっていわゆるパーセプションギャップを広げて感情論が先立つような、いい感じではないという気がいたします。  モトローラ交渉のときも、アメリカ政府にはモトローラなんという私企業が出てきて、私企業がやっているみたいな印象が非常に国内で広げられ、それが報道されましたけれども、まあモトローラという私企業をホワイトハウスも議会も全部承認して、私企業のためにアメリカ政府が外国政府と交渉することは、これはないんですね。やはり非常に人間の数が少ないですから、USTRなんといったところで日本の通産省とか日本の官庁 に比べたら非常に少ないわけです。そういうところは極限利用するということであり、日本側の官庁も郵政省にせよ通産省にせよ日本関係企業の課長さんなんかを呼びつけて、全部資料を集めて――法学部出身の方が多いわけですからギガヘルツなんというのはそんなにわかるわけないんで、それらを全部資料を集めて言っているだけであって、実態的にはやはり日本側でも企業が大きくそれに加わっているということにおいては、モトローラ側が向こう側に関連しているのと余り変わらないわけです。  あるいは今問題になっています大店法につきましても、日本側が、例えば香港、シンガポール、バンコク、ジャカルタなどへ大きな店で出ていって、あそこのじいさんばあさんの店がばたばた倒れていくのはいいのか。現にそれはやっているわけです。それを今度は日本には来るのは困ると。これではやはり日本という国は、自分の都合のいいときはやるけれども、都合の悪いときはやらせないということではないのかというふうなことでございます。これ、アメリカ側の考え方ですよ。アメリカ側のいら立ちとその背景に何があるかということを今御説明しているわけですけれども、そういったことで申し上げますと、例えば繊維産業、カメラ産業、オートバイ産業、テレビ産業、それから半導体、そういうものはアメリカでは主として日本の進出によってばたばたと産業が倒れていったわけですけれども、アメリカの産業が倒れるのはそれはいいのか、日本の場合は何一つ倒れたりしてはいけないのかというふうな考え方をやはりアメリカ側としては持っているようでございます。  こういうふうな日米交渉が、今回の構造協議に限らず、その前のMOSS交渉を見ましても、もう毎週のようにいろんなレベルで続けられているんですけれども、私、ワシントンで見ておりまして、日本側に立って応援してくれる国というのがないんですね。これは、アメリカの方が非常に理不尽だと言ってくれるような人が、あるいは国がいないということをやはり日本としてはよく認識していく必要があると思います。つまり、事経済、事貿易に関して日本アメリカとやり、アメリカが非常に強い態度で日本に出てくる場合、これはアジア諸国にしてもかなり応援しているわけです。  私、七三年にバンコク支局長をやっておりましたけれども、タイ国の貿易赤字の八割は対日貿易赤字でございます。この間、タイの大使に会いまして聞いたところ、一九九〇年、それから十七年後ですが、タイの貿易赤字の八割は日本です、対日赤字です。やはり日本が、その間にもちろん貿易は広がっていますし、非常に水準的には高くなっているんですが、それだけにとどまらず、やはり日本が八割だったものを七割、六割ぐらいにするという努力ができなかったこと、これのツケが将来来る、必ず来ると私は思います。  ODAをふやすのは大変結構ですけれども、やはり皆さん方お隣同士で物の売り買いの交渉があるとして、毎年毎年片方が五百万円ずつ取られて、もうそれの改善のめどが立たない。だけれども、取っている側が経済援助というような名前、あるいはボーナスでもいいんですが、年末に三十万円取られている方に渡すとすれば、取られている方は恐らくお金は要らないから来年四百七十万円にしてくれ、再来年は四百二十万円にしてくれと。つまり対等の形を、恵んでもらう形じゃないものを望んでくるようになってくると思います。そういった考え方を既に第三世界外交官やジャーナリストなども言っておりますし、さらにODAをふやしていけば、これからアメリカが、日本が軍事力で得られなかったスフィアー・オブ・インフルエンスと申しますか、日本の影響力というものがアジアを中心に非常に強まっていくということに対する懸念も抱かれているわけですね。  私なんかいつも思うんですが、やはり国際社会での国のあり方というのは、我々人間社会での人間像のあり方というものと余り変わらないのじゃないかという気がいたします。だから、日本が非常に頭がいいと、これはそう思われておりますね、人間に例えれば。国際社会で。日本という国は非常に頭脳優秀な国である。あるいは日本というのは非常に手先が器用だと思われていると思います。組織力があると思われていると思います。では人間に例えれば立派な人間か。日本が立派な人間であるかと思われているかと申しますと、これは残念ながらそうは思われてないのじゃないかという気がいたします。  多少厳しい見方を申し上げたんですけれども、まあ、相手を考えないで日本だけを見れば、やはりこれは大変成功しているわけですよね。成功している者に対するねたみそねみというものは確かにございますし、さらに人間社会的に申しますと、日本世界のランキングの五位、六位、七位であったころに比べて、日本の国力が上がってくればそれだけ風当たりは強くなります。現在西側のリーダーであるところのアメリカは、それこそ人間社会の組織ではございませんが、やはり自分の地位、影響力というのを保持していくためには、自分の地位を脅かしてくるナンバーツーを切るのが一番ですから、そういったようなことから、日本がそういう立場に上がってきているということが言えると思います。  それからもう一つ日米の今後ということで大事なことは、やはり安全保障関係じゃないかという気がいたします。けさの新聞に、米国防総省からの議会に対する、アジア・太平洋に対する戦略的枠組みというものが出されまして、これから一体日米のみならずアジアでどうやっていくんだというようなことが報告されています。詳しくは新聞に出ておりますので省略いたしますけれども、やはり米側としては、これからは安全保障条約というものを単なる軍事同盟としてとらえるのではなくて、軍事的にはむしろ、これは私の個人的な考え方なんですが、統一ドイツをヨーロッパの枠組みの中ではめ込んでいくといったようなことで、日本というものを日米安全保障の枠組みの中で抑え込んでいくと申しますか、協力していくといったような感じが強くなっていくのではないかと思います。それから、第二条なんかを中心に経済協力ということを軍事協力と並列させて、もし米ソ関係が引き続きよくなっていくのなら軍事面の重点を下げていくというふうなことを考えているのじゃないかという気がいたします。  日本側アメリカ側と軌を一にして、ペレストロイカというのは極東では全く感じられない、だから欧州で軍事削減が盛んに進められているけれども日本は当面これでいいんだという考え方のようでございますけれども、アメリカはあくまでも国益を追求していく国でございます。どんな国もそうなんですが、徹底的にそういう国だという印象を私は強く持っているんですけれども、そういった中でやはりアメリカとしては、マリタイムパワーと申しますか、海洋国としての地位を絶対に譲りたくないと考えていると思います。したがって、御承知のように地上発射の核ミサイル、ICBMはもう全廃してもいいなんという大胆なことを言う一方で、海軍の軍縮は、まだそんな時期じゃないと、今はそういう言い方をしながら一切応じる気配は見せていませんし、私はないと思います。世界の七つの海に君臨していき続けたいということがあるわけで、アメリカ側がペレストロイカが極東でそれほどないということを言っているのは、現にアメリカ人がそう思っているからではなくて、やはり先ほど申し上げたアメリカの国益という面からそれが必要なんじゃないかという気がするんです。ニューヨークタイムズなどは、例えば三月二十七日の社説だと思いますけれども、極東においてゴルバチョフさんは中距離核ミサイル四百基をアジアから撤去する、アジアから二十万人の兵力を引くと言った、アフガニスタンからも兵力を引いた、ベトナム軍のカンボジア撤退もやった、太平洋艦隊を三分の一に減らしていく計画をしている、これだけやっているのに、それにブッシュ政権は応じているのかということで、たった少しを引いているだけじゃないかということを社説で言っていますけれども。ですから、米国 内にもそれに対する批判の意見があるということでございます。私は、それがどうであるこうであるということじゃなくて、アメリカの国益、考え方としては今そういうことが都合がいいと感じているように思うわけです。  そういった面からいいますと、アメリカ側がヘルシンキのレーガン大統領声明で初めて公式に北方領土の返還について日本側を支持する立場を表明し、以来この問題を言っていますが、アメリカ側も四島一括返還ということを日本にいつも確認しているわけですね。その背景には、四島一括というのではすぐは、当分難しいんじゃないかという読みがあるように私には思えるんです。と申しますのは、本当にこの問題で仲介しようと思えば、アメリカは恐らく唯一の仲介できる国じゃないかと思いますね。一九〇五年のあのポーツマス条約のときだったですか――そういうふうなあらゆるオプションを探りながら、極東・太平洋地域での緊張緩和に積極的に向けるというところまで全力を挙げているという感じは受けないような気がするわけですが、それはやはり自分の国の海洋国としてのプロジェクション・オブ・パワーなどのオプションを引き続き持っていきたいという考えがあるのではないかと思います。  いずれにしても、今日米交渉が行われているアメリカのムードというのは、東欧の激変、ソ連の変化で、アメリカ国内には御承知のようにドイツ系、ポーランド系、ハンガリー系、チェコスロバキア、東欧諸国の系統、それからもちろんロシア系のアメリカ人が非常に多いんですが、もうこれほどいいニュースはない。大西洋越しに伝わってくるニュースは本当に耳に響きがいい。勝った、うれしいという一語に尽きると思いますね。それに引きかえ、残念ながら、太平洋越しに伝わってくるニュースは聞きたくもないというふうなムードが現在のアメリカだと思います。したがって、先ほど先生がおっしゃった異質論なんというのならどんどん出てきますけれども、日本を擁護しようとするようなアメリカの知日派の学者とか経済人たちは今大変苦しいといいますか、何となく落ちつきの悪い立場に立たされているというふうに私などはよく聞くんです。  そういったことからも、やはり日本が首尾一貫してダブルスタンダードでやっているんじゃないというふうな姿勢を見せていかなければならないと思いますし、やはりこれからは日本一国でアメリカ、ECあるいは他の諸国とやり合っていくというのは非常に難しいですね。そういうのじゃなくて、もう少し友達をつくってアメリカとも交渉できるようにするにはどういうふうにしたらいいのだろうかといったような考えをめぐらす時期じゃないかという気がいたします。  どうもありがとうございました。
  9. 中西一郎

    会長中西一郎君) ありがとうございました。  以上で参考人方々からの意見の聴取を終わります。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  10. 平野清

    ○平野清君 平野と申します。本日は、三人の先生方にはお忙しいところ、貴重なお話を聞かせていただきまして、本当にありがとうございました。  さて、今回の日米構造協議問題ですけれども、恐らく世界史の中で、平和のときに相手国の民政問題までくちばしを入れて交渉が行われたということはかつてなかったと思います。この点、ある人たちは、アメリカ日本消費者のための健全野党であると言う人もいれば、反対の人たちは公共投資などまで注文を加えてくることは内政干渉だと言っているわけです。私にとっては、どちらも相当部分当たっていると思います。  そこで、これは大変失礼な質問なんですが、きょうのお話に直接関係ないことをまず質問させていただきます。  これまでの日米関係というものを歴史的に見てまいりますと、大変おもしろいというか、奇妙と言うべきか、その交渉、対決の結果が出ております。まず、一番最初日本の鎖国を開国させたのはアメリカの黒船四杯であります。そして日本を戦争に追い込んだABC包囲陣であり、また終戦によって日本経済、教育、防衛問題等を根本的に覆したのもアメリカだと思います。そして今、四番目に今回の構造問題協議が登場しております。黒船はアメリカの捕鯨のための開港要求だったわけですけれども、鎖国日本を開国させることによって一流国にのし上げました。そしてABCの問題は、日本を戦争に突入させて敗戦に追い込むことはアメリカは成功したと思いますけれども、日本に非軍備といいますか、アメリカの傘の中に入れてしまったことによって、日本は軍事に大きな金を使わないで済むことができた。それが大きな今日の経済大国になった要因だろうと思います。もう一方の敗戦国西ドイツを見てもそういうことが言えるのじゃないかと思います。GHQが占領を開始して財閥を解体いたしました。財閥を解体したつもりだったんですけれども、あっという間に日本の系列会社は勢いを盛り返して今日の大きな経済大国の先兵となっております。しかも教育も、六三制を押しつけたと言ってはなんですが、アメリカの六三制によって技術者養成にも大きな道が開けて、今日の技術摩擦というようなことが起きた一因じゃないかと考えます。そうしますと、今までアメリカ日本に対する交渉でやってきたことが三つともすべてアメリカにとってマイナス要因といいますか、皮肉な結果に終わっているような気がいたします。  今回の構造問題協議ですけれども、大店法、土地利用、公共投資というようなことで、そう簡単には日本側は対応できないと思いますけれども、円高を含めて、あれだけの日本人の対応力を見ていきますと、早急にはできなくてもこの構造協議問題を逆手にとって、さらに強い日本ができ上がってしまうんじゃないかという見方すらできるような気がいたします。  今までの皮肉な歴史の日米交渉を見ていって、三人の先生に簡単で結構でございますが、お答えいただければと思うんです。
  11. 井上宗迪

    参考人井上宗迪君) 私は、アメリカは基本的にはシンドロームにかかりやすい国だととらえております。「将軍」のテレビ映画がヒットしたときのお話ですが、視聴率六割に達しております。そのとき多くのアメリカ人から招待をいただいたんですが、日本人と一緒に町を歩いていると大人になったような気がする、それから友人からあなたはすごいと言われる、一緒に歩いてくれという招待を随分いただいております。また、「将軍」のテレビ映画がヒットしたときに、私がいた大学に全米の各地の大学から日本のセミナーを聞きたい、日本人を送ってほしいという電話が舞い込んでおります。ライシャワー先生からよく電話をいただきまして、時間があったら行ってくれないかということで、毎週のようにボストンから飛行機に乗って全米を訪問しております。そして日本経済、産業、それから政府と産業の関係について、また、日本がいかに市場経済であるかということを説明する機会をいただいたことを今思い出します。  いずれにせよ、アメリカはシンドロームに非常にかかりやすい。キャンサーシンドローム、がんのシンドロームにかかってたばこを吸う人が減っております。今アメリカ日本工業力、ハイテクを中心とした工業力に間違った恐怖感を備えたシンドロームにかかっていると思います。慎重に我々対応すれば必ずこのシンドロームは私は解くことができる、治療することができると思っております。
  12. 野林健

    参考人野林健君) 平野先生の御質問につきましては、一言で申しますならば私も全く同感でありまして、ますます日本経済は効率的になるだろうというふうに思います。  ただ、そこで大事なことはと申しますか、それはそう日本も急激には変われない。特に黒船来航のときは日本は全く予期もしなかったわけですし、戦後の問題についてはやはり力関係が全然違ったわけでございます。今回は、ある意味日本は非常に強いから攻められているという部分もあ るわけで、随分そういう意味で環境が違うだろう。したがって日本が変われば、アメリカが言うような形で変われば、日本経済の効率は非常に高くなろうと思いますし、土地問題など含めて一般庶民はそれを強く、土地問題などの解決を望んでいるわけですけれども、さあそれはどこまですんなりと進むのかどうか、ここはよくも悪くも現実の問題としてあると思います。  アメリカが要求しているのは、少なくともビジネスの土俵といいますか、基本的なルールが日本アメリカと、相撲の土俵で言えば広さなどが違うんじゃないか、あるいは俵の高さが日本アメリカではどうも高い低いで違いがあるんじゃないかということだと思いますので、そういう意味でビジネスのルール、慣行といったものはできるだけ早く直すべきだと思いますし、実際に、独禁法などは手当ては十分できると思います。そういう意味で部分的にやれることはありますし、それは早急にすべきでしょうけれども、大きな問題はなかなか変わらないだろう。  それから、これは政治学者的な発想かもしれませんけれども、今こうやってアメリカはがんがん行っておりますけれども、場合によっては一、二年のうちにこの問題は、アメリカのサイドから言えば雲散霧消するシナリオもなきにしもあらず、つまり貿易赤字の問題がかなり解消していけばもう次の新しい問題にアメリカも首を突っ込む、日本もそれに首を突っ込むという場合もあるわけで、そういう意味では構造協議も、今非常にセンセーショナルになっておりますけれども、しかしそれはある意味で政治のシンボリックな問題であって、シンボルはいずれなくなり、また新たなシンボルが出てくるということもあると思います。ですから、私は構造協議日本が変わるということはないというふうに基本的には思いますけれども、しかし、ルールを整備するということをアメリカが忘れようが忘れまいが、何度も繰り返されることだと思いますので、できるだけ早く思い切ってやった方がいいというふうに思っている次第でございます。
  13. 村上吉男

    参考人村上吉男君) 私も平野さんの見方に同感でございます。
  14. 平野清

    ○平野清君 では、次に井上先生にお尋ねしたいんですけれども、先生は御著書「アメリカ経済を読む」または「世界週報」の特集号で、日米摩擦は見えない文化の面まで広がってきていると警告されております。そのためには関税や数量規制以外の見えない障壁を取り除けと御主張なさっているんだろうと私思いますけれども、それは既得権益に甘んじている慣行などを指すのでしょうか、文化の面というのは具体的にどんなことをお指しになっているんでしょうか。
  15. 井上宗迪

    参考人井上宗迪君) 商慣習、これはビジネスの世界ですが、それから一般世界、人の生き方まで含めております。この商慣習あるいは一般の生き方まで、見えないところですが、これを変えることは私は非常に難しいと思っております。ただ、見えないところを見るようにする工夫を我々は行うべきじゃないかと思っております。  英語でスピル・ザ・ビーンズという言葉があるのですが、これはそのまま訳せば豆をまくという意味なんですが、現代的な意味は、ある地域や組織に属していた人が後になって自分が属していた地域やまた組織にこれこれしかじかのすぐれたところがあった、逆にこれこれしかじかのまずいところがあった、こういうことを明らかにすることをスピル・ザ・ビーンズと言っております。このスピル・ザ・ビーンズですが、アメリカではかなり行われていると私は観察しております。一方、これに対して日本ではこういった慣習は余りないと私は受けとめております。日本人自身が、日本の各地でいろんなことが行われてきているわけですが、特に目に見えないものについて日本人自身もよくとらえていないという現実になっていると思います。  私たちはお互いに目に見えないものをよりよく知るためにもスピル・ザ・ビーンズを行うべきだと私は思っているわけですが、さらに日米交渉、日米関係を考えた場合、一層、見えないアメリカ人にも知っていただく、理解していただく、そういうスピル・ザ・ビーンズを行っていくべきじゃないかと思っております。これが変わるかどうかは非常に議論の多い難しいテーマだと思っております。見えない文化面まで表に出したとしても、それを変えていくことは千年単位の歴史を考えればあり得ると思うんですが、ワンゼネレーション、三十年、あるいはツーゼネレーション、また複数のゼネレーションを考えても私は難しいと思っております。
  16. 平野清

    ○平野清君 それでは、野林先生と村上先生にお尋ねをしたいと思います。  野林先生は、何はともあれ日米貿易不均衡のレベルを何とかアメリカの許容水準まで下げよと物の本に書いていらっしゃいます。一方、村上先生も、以前お勤めになっていらっしゃいます朝日新聞紙上で、理屈抜きの一方的な荒稼ぎをすることは絶対に許されない、日本が通商国家として将来にわたって国際社会で長く商いをするためには、どのくらい稼ぎ、どのくらい相手に稼がせるか、つまり自分はどれくらい損するかが最も大切なことだというふうに御主張されております。加えて、今回の交渉について、アメリカが求めているものは単なるかすり傷ではなくて、本当に血の出るような、日本はここまでやったぞという実績を示す必要があるというふうに主張されていたと私読ませていただきました。野林先生の米の許容水準というものは、日米貿易の中の黒字の五百億ドルの中に占める数字としてはどのくらいのことを指されているのか。また、村上先生がおっしゃいます血の出るような、ここまでやったぞという実績というものは何を指されているのかお伺いしたいと思うんです。
  17. 野林健

    参考人野林健君) そのような政治的に許容し得る水準になるとしても恐らく数年先であろうと思いますし、その問題に絡んでは円とドルの問題、あるいは日米両国経済のこれからの推移といういろんな不確定要因があるわけでございますけれども、あえて今の時点で申しますと、先ほど井上先生も御指摘になりました三百億ドルあたりかなと。しかし、これがどんと下がるということはまずあり得ないわけで、やはり何年間かかかって段階的に下がっていくという形で、ソフトランディングになれば大変いいのになと。そうすれば、構造協議問題云々というのも、ある意味では具体的な政治的イシューとしてはアメリカサイドからは消える可能性はある。しかし、それがまた水準が上がるとまた出てくるというふうに予測できるのではないかというふうに思います。
  18. 村上吉男

    参考人村上吉男君) こういう言い方はどうかと思うんですが、結局、政治的な決断力というものがやはり非常に日本の場合はまだまだぬるま湯的じゃないかという気がいたしますのは、我々が、恐らく皆さん方もそうだと思うんですけれども、例えばゴルバチョフさんが五十万人の削減とか、あるいはブッシュ大統領が三十八万人を十九万五千に削減するとか、アメリカ国内の米軍基地を八十カ所整理していくとかいった場合に、すごいなと驚くと思うんですが、やはりそういったすごいなと世界が感心するようなことを日本ができないだろうかという気がするわけです。私自身日本人ですし、よくその難しさは存じているんですけれども、例えば捕鯨ですね、鯨をとるのをやめるといったようなことをあす何時かを期して日本の総理大臣が発表すれば全世界一面は間違いないし、全世界が拍手してくれることはこれは間違いございません。我々としては、文化でありということはよくわかっているんですけれども、やはり国際的な普遍的尺度というものがどんなところにあるんだろうか、もう百六十のうちの非常に少ない部分しかそれをやっていなくて説得力にも欠けるような状況でそれを続ける、これは血の出るような努力の一つで、これは国内的にはお金が相当かかるんでしょうけれども。  それからまた、もう一つ考えられますのは、自動車業界に怒られるかもしれませんけれども、二百三十万台も売って、さらに数年後には日系米自 動車工場で二百万台もできるという、単純計算すれば四百三十万台ですよね。アメリカの一千万の市場でそんな一国が全部、日本の車を走らすわけにいかないわけですから、何とか日本の自動車工業界が一緒になって、皆さん方もそれに協力して、あす、ことしから米国製の自動車を三十万台輸入するということを言えば、デトロイトにとどまらず大変な拍手、それから、日本がとにかく血の出るような努力を始めているなという印象を全世界的に与え、これはやはり仲間意識を生み出す第一歩に必ずやなると私は思います、といったようなことを指して申し上げました。
  19. 平野清

    ○平野清君 多分そういうことだろうと思いましたけれども、日本の対応、例えば自動車を三十万台減らすというようなことになりますと、国内でコンセンサスを得るには大変難しい問題が起きると思います。これから日本人が一生懸命研究していかなければならないかと思います。  続いて村上先生で申しわけないんですけれども、先生は都合八年五カ月ですか、アメリカで勤務されました。今回の日米構造協議に対しましても、マスコミのあり方、いわゆる日本の情報伝達というものに対してのいろいろな意見が聞かれます。そこで私は、日本アメリカに対して、政治家、外交官は言うに及ばず財界人のPRが極めて少なかったのではないかというような気がしてなりません。一年間リクルート問題、消費税等で国内に全部目が向けられてしまって、その一年間の間にアメリカはがっちりとこの日米構造問題を研究して、ぶつけてきているというふうに思います。そこで、先生は二十一世紀フォーラムの講師をされて、アメリカ報道陣にもっともっと取材に来てもらって、環境問題とか貧困な家庭状況、物価高の問題で日本もこんなに苦しんでいるんだということをアメリカの全テレビ網でどんどんどんどん流してもらって、日本も大変なんだということを大いにPRする必要があるとおっしゃっています。日米のマスコミの構造協議に対する今までの経緯、現状、それから御注告がありましたらお聞かせいただければと思います。
  20. 村上吉男

    参考人村上吉男君) 最も新しいニューヨークタイムズの社説で、アメリカ貿易世界の警察官になるなと、自分の方でも相当悪いところがあるぞということを警告しております。それは詳しくは日本では報道されていませんでしたが、私はそのことが非常にいいと思います。やはり今まで日本に都合のいいこと、耳ざわりのいいことはどんどん報道するが都合が悪いことはネグレクトするということがあったけれども、いいことはもう余り報道しないでよくて、日本にとって悪いことあるいはアメリカにとって悪いことをその自分の国のマスコミが、苦しいけれども、耳ざわりになるだろうけれども報道していくということが大事ではないかと思います。また、そのように少しずつなっているんじゃないかという気がいたします。提言を始めている新聞もございますようですが、これなんかは大変新しいやり方だと思って、私は個人的には敬意を表しております。  それから、今御指摘がありました、日本についてもっともっと、苦しい、悪いところをどんどん見てもらって報道してもらうということが、結局は先ほど申し上げました同情、理解、仲間意識につながっていくんじゃないかと思うんです。もうすばらしい新幹線とか技術とかロボットばかりをやらないで、日本の苦しみ、こんなまだおくれているところがあるというのをどんどん報道していって、ああそうかと思っていただく方がいいと思うので、マスコミだけに限れば、そういうことをこれからエンカレッジしてどんどん出してもらって、さらしていくということが大事だと思います。
  21. 平野清

    ○平野清君 どうもありがとうございました。  時間が参りましたので、この辺にさせていただきます。
  22. 沓掛哲男

    ○沓掛哲男君 三人の先生から今ほど大変有意義なお話をいただきました。では、これから簡潔に質問させていただきたいと思います。  まず、日米経済摩擦の根源には、私は一つには日本人と米国人の倫理観、道徳観の違い、二つには企業観、すなわち企業経済社会に対する役割とか責任の違いがあるというふうに思います。例えば企業について見ますと、アメリカにおいては、企業は資本家、つまり株主のものである。それに対して日本の場合、企業には社会的責任があるということが強調されております。すなわち企業というものは、株主に対する責任のほかに従業員に対する責任、取引先に対する責任、顧客に対する責任、下請や外注先に対する責任、さらに企業として社会に貢献する、そういうふうな総合的な責任を負った社会的な構成単位であるというふうに思います。どちらがよいかは分かれるところでしょうが、私は自由主義社会において、富の源泉を資本家だけのものと考えることには疑問を感じますし、冷酷な資本市場の論理よりは企業の社会的責任を全うするために、お互いに最も関係の深い人々が資本家というより協力者として株主を構成する。経営者も、米国のように毎回の決算に全力投球するといった短期的な経営でなくて、中長期的に見て望ましい経営を行うことにより、一般には失業もレイオフも少なく、そのために従業員も会社を信頼して熱心に働くという良好な循環が認められるのだと思います。今日の日本の繁栄、強さが何よりもこの日本的な資本主義の正当さを物語っているというふうに思います。  しかし、日本型の企業に対しても次の二点には留意する必要があると思っております。  一つは、我が国は、明治以来企業の育成策により、企業を発展させることにより国も富み消費者を含めた国民も豊かになるという考え方で、企業対策に重点を置いた政策が主でありましたが、今後は消費者が豊かな生活実感を得られるよう直接的な対策が重視されねばならないというふうに思っております。  二つには、経営能力のない人が経営者のいすに居座り続けたり、系列内から物やサービスを購入するという不必要な仲よしクラブは当然是正していかなければならないというふうに思っておりますが、今申しましたようなこの日本企業をひとつ米国の資本主義的な企業にしていこうという構造協議構造協議をやっていけば自然とそういう形の方向に向かわざるを得なくなるんだろうと思いますが、そういうやり方には無理があるように思うのですが、それについてひとつ野林先生からの御意見をいただければと思います。
  23. 野林健

    参考人野林健君) 今の御質問の最後の部分をもう一度お願いできますでしょうか。
  24. 沓掛哲男

    ○沓掛哲男君 アメリカ企業というのは株主、資本家のものだ、しかし日本企業はそうではなくて社会全体のものだ、そういう違いがある。そこから日本企業にはバイタリティーが出てきたり、いろんないい面があるんじゃないか。それを今の構造協議等でアメリカ的なものに直していくということは非常に国益を損ずるものであるし、無理があるのではないでしょうかという質問でございます。
  25. 野林健

    参考人野林健君) 今度の構造協議の中でも議論はされていたと思いますけれども、アメリカの資本主義のシステムに日本の資本主義のシステムが同一化されなければならないという議論あるいは問題意識は両国の政府当局者にはないと思います。むしろ中間報告に書かれていること、あるいはそれに直接書かれてはいなくとも議論が大いにされたであろう、そしてアメリカ側もかなりうなずいたであろうということの一つは、日本的経営のいいところはむしろアメリカ側も学ぶべきところがあるという、そういう問題意識がアメリカ側にあったと思います。ただ、アメリカの政治経済システムとして、政府がそう思っても、号令をかけて大いに学ぶべしということを政府自体が直接に口に出すことはできないというようなことで、いろいろ投資・貯蓄のパターンを改めるとか、あるいは経営者の短期的な行動に対して、もっと中長期的な観点から対応できるようなそういう税制その他の制度をアメリカ政府としては変えていきたいんだということは言っておりますので、何でもかんでもアメリカのとおりにならなければいけ ないというようなことは言っていないと思います。それは、もう少し論点を狭めますと、系列の問題をどうとらえるかということになるわけかと思います。  系列の問題も、実は大きく分けて二つ意味といいますか、次元があると思います。  一つは、中心の企業、そしてその関連企業、下請等も含めまして、そういう企業がお互いに協力をし、いろんな意味で中長期的な観点から生産活動を進めていく、あるいは投資活動を進めていくというような、これは日本の自動車産業の成功の一つの大きな原因だと言われているわけで、これなどはむしろ日本のやり方をそのままそっくりアメリカ輸入はできないにしても、そういういい意味での集合システムと申しますか、そういうことはアメリカの経営も取り入れるべきであるという世論はアメリカの中に強くなってきていると思います。  そういう意味での系列の問題と、一方で、これはよく言われますけれども、どこどこ銀行系の人はその系列のビールしか飲まないとか、これは冗談ではなしにかなり今でもよくあることだそうですけれども、まあ日本人にとっては同窓会の延長のような、ある意味グループ意識が高まって楽しいということかもしれませんけれども、それはやはり結果的には外から見た場合排他的である、そもそも同じ条件で競争をしようにも初めからつまはじきされているというふうな意識になるんじゃないかと思うんです。ですから、系列の問題も、その後者の部分というのは日本は意識して改めるべきである。何々グループの社長会の議事録を公開せよというふうにアメリカは言っていて、本当に公開したらゴルフの話しか出てこなかったら非常に格好が悪いと日本の経営者たちが思っているかどうかわかりませんけれども、それほどある意味では子供げんかみたいなことをやっているわけで、しかし、そういう子供のけんかのようなことをあえてアメリカ側がまじめな顔をして言うというのは、これはかなりおかしい、よくわからないけれどもおかしいという気持ちはあると思います。ですから、日本の経営体質の中に何となく慣行としてあるものは、できるだけよくないと思うものは改めていけばいいと思いますし、いいところは伸ばしていけばいい。  私は、アメリカ人はある意味では素朴なところがあって、初めはおれたちの方がいいと確信はあるんですけれども、説得して事実を示していけば割合すんなりと、ああそれもなかなかいいなという面もあると思いますので、私は今の御質問については余り、アメリカのものを日本に全面的に移植するとか、日本のものを全面的にアメリカに移植するというのではなしに、何がお互いにとって了解でき、プラスであるのかというところを政治レベル、官僚レベル含めてよく詰めていく、そういう努力の中で徐々に相互理解が深まるのではないかというふうに期待をしているということでございます。
  26. 沓掛哲男

    ○沓掛哲男君 どうも質問が必ずしも適切でなかったので申しわけございませんでした。  今、私言いたかったのは系列問題、それから独禁法関係でしたのですが、ちょうど二週間前に日米構造協議を終えて帰ってきた人たちといろいろ話したところ、アメリカ側では、密告制度をもっと勧奨しろ、そして密告をやったらちゃんと各省庁は褒美を出すようにしろとか、おとり制度をやれとか、そういういろんなことを盛んに言っていたということでしたので、そういうことをも含めてでしたが、余りそこまで言うのはちょっと品がないと思って申し上げませんでした。失礼いたしました。  次に進めさせていただきますが、今回の日米構造協議のもとにもなっている日米貿易インバランスについてアメリカ側に焦点を当ててみますと、一つには二、三十年前から始まったアメリカの脱工業化と、二つには米国民の過度な大衆消費活動があるというふうに思います。十年前に米国では、工学部を出ても物をつくる会社へ行かないで金融、証券会社に行くという、三次産業に勤務するという話を聞いて私たちも驚いたんですが、今の日本がちょうどそんな現象が始まってはいるんですけれども、米国に望みたいことは、一つには三次産業に特化するのではなく、もちろん一次産業も一生懸命にやっておられますが、ひとつ二次産業にも、いわゆる物をつくる分野にも優秀な人材と資源の配分を行ってほしいということ、これについては先ほど井上先生からかなりそういう方向づけがあるというお話でもございました。二つ目には、いわゆる米国人の生活もスリムにしてもらいたい。現在の生活水準を維持する以上のむだをなくしてもらいたい。いろいろほかの本にも出ていましたけれども、冬に、大きな家で暖房をして、そこでTシャツを着てアイスクリームを食べているというのじゃなくて、やはり日本人のように必要な暖房はきちっとするけれども、むだは省く、そういうようなこともやっていただかないと、この日米貿易インバランスの改善には、幾ら日本側が一生懸命になっても改善していかないのではないかというふうに思いますが、これは井上先生にお願いしたいと思います。
  27. 井上宗迪

    参考人井上宗迪君) 先ほどアメリカ物づくりにカムバック、Uターンを始めるようになったということを指摘させていただいたわけですが、この物づくりへの動きですが、広がりと深さを持ってくるようになっていると私はとらえております。この動きを最も包括的に明らかにしてくれているものとして、アメリカの科学技術の研究、教育を代表するMIT、マサチューセッツ工科大学の大学の先生による報告書を私は取り上げさせていただきたいと思っております。この報告書、去年の夏場に出版されております。また、一般アメリカ人向けには「メード・イン・アメリカ」というタイトルで出版されております。日本でも最近翻訳が出ております。この報告書が明らかにしてくれている点ですが、三十年ぶりにアメリカがソフト化、サービス化の呪縛を解き放とうとするようになっている。主要八つの産業において物づくりへの動きが始まっているということを明らかにしております。そして、今始まったこの芽を育てるために、日本の政府と産業の関係、また日本企業が行ってきた人間を重視するマネジメント、これを行うべきだということを随分詳細に取り上げております。  また同時に、おととし、御承知のようにアメリカがスーパー三〇一条を盛り込んだ包括貿易競争法案を通しているわけですが、この法案で私大事な柱が二つあると思っております。一つはスーパー三〇一条に代表される非常に危険な側面と、もう一つ、競争法案、これを日本のように実行すべきだ、こういう観点からこの競争法案を見ることが大事になっていると思っております。アメリカ商務省が今までいろんな会社の研究者を集めて研究会を開いてきたわけですが、人を送った会社は間違ってもその研究会で開発された結果を工業化、商業化してはいけないというルールになっております。こういうありさまではそれぞれのメーカーはすぐれた研究者を商務省主催の研究会に送らない。それで研究会が有名無実化していたわけですが、今後は独禁法を改正して、緩めて、各社の研究者が政府の開く研究会の結果を持ち帰って日本のように工業化、商業化すべきだ、そういう方向に動き出しております。この点、おととし八月の、八八年包括貿易競争法案は、もう一つの大事なアメリカの新しい動きとして注目すべきだと私はとらえてきております。  それからもう一つ言わせていただきたいと思います。  私、最近の日米構造問題協議のニュースあるいはこの言葉に接したときに、いつもニューヨークに世界のエンターテイナーの舞台をつくったカーネギーさんを思い出しております。カーネギーさんが最初に住みついた南部のアラバマ州、鉄の工場、私はニューヨークよりもアラバマ州のバーミングハムという町をいつも思い出しております。ちょっと細かい話になるわけですが、カーネギーさんは、最初お金のためにすべてを犠牲にする、そういう経営を実践しております。一八九二 年、およそ百年前ですが、ホーム・ステイド・ストというのがアメリカで時折取り上げられております。カーネギーさんはロックアウトをやっております。工場に入ろうとした労働者を三百人の武装した警備兵を雇って徹底的に弾圧しております。アメリカの州政府は、当時その争議を調停するために八千人の兵隊を送っております。この事件が後で、大企業は悪いことをする、ひどいことをする、そこで独禁法を強化しなきゃいけないという動きに結びついております。  日米構造問題協議のニュース、活字に接するたびに、私はカーネギーさんが最初に工場をつくられたアラバマ州のバーミングハムという町を思い出しております。私も何度も招待していただいております。私ごとで申しわけないんですが、バーミングハムで日本企業の経営のあり方についてお話しする機会をいただいております。
  28. 沓掛哲男

    ○沓掛哲男君 では、三番目の質問をさせていただきたいと思います。  これはちょっと構造協議の内容ではなくて手続のことについてですけれども、経済問題については日米二国間協議でなく、いわゆるガットのもとの多国間協議でやるべきではないかというふうに思うんです。それは国際化の進んだ今、経済には国境がなくなりつつあります。日米間で決めたことは世界じゅうに通用させねばなりません。利害の対立した当事者間で、安保等の政治的課題をバックに高圧的な米国、これはいわゆる交渉技術上の一つだともいう話もあります。ペリーが嘉永六年に日本に来たとき、日本人に自分らの要求をのますときには、高圧的にやらなければこれはのまない民族だということを彼はオランダ等から教えられてきたということを読んだことがありますが、その高圧的な米国と交渉して世界に通用するルールができるのかどうか。やはり第三者も入れての多国間協議にするルールづくりが大切ではないかというふうに思うんです。  ことしの暮れのウルグアイ・ラウンドで、もし米の一部の市場開放も認められなければ日米二国間協議でやるんだということを先日も米国の閣僚が言っているわけですが、これからはひとつそういうもののきちんとしたルールづくりが大切ではないか。もともとガットでやるべきことになっているのを昨年七月ですか、サミットでそういうふうにブッシュさんと宇野総理が話してやったわけですけれども、やはりこれからは世界のルールをつくるわけですから、多国間協議でやっていくべきではないかというふうに思うんですが、それについての御意見村上さんにお願いしたいと思います。
  29. 村上吉男

    参考人村上吉男君) おっしゃるとおりだと思います。それで、その努力は続けるべきだと思いますけれども、そういうことがなかなかうまくいかないというのが現状でございまして、例えば国際司法裁判所へ持っていって北方領土の問題なんかを解くことができないのと同じように、やはり国際社会というのが一つのそういった枠組みがある反面で、二国間の力関係とか利害関係というものがございますのが現状でございます。したがって、日本としてはできるだけその努力を続けていく。しかし、それを支援してくれるような国があればそれだけ効果的なわけで、先ほど申しましたように、そういった支援を取りつける努力をしていかないと、これはウルグアイ・ラウンドのものであると幾ら日本ひとりが叫んでも、だれも支援してくれなければ、二国問の土俵に、ほかの利害が絡んできますから、無理やり引っ張り出されてしまうということがあるんだと思います。理想的には全くおっしゃるとおりだと思います。
  30. 沓掛哲男

    ○沓掛哲男君 それから、先ほど来の先生方のいろいろなお話を承っているのと、一方、海部総理以下全力を挙げてこの日米構造協議に対応しているわけでございまして、政府首脳が日米開戦前夜のような様相であるとか、あるいは二週間前に帰ってきた人たちの話を聞くと、まあこういうことを言っておりました。まさに昭和十六年の十月でございましたか、ハル国務長官がハルノートを日本にたたきつけたそのときの日本代表の気持ちがよくわかるというようなことも言っておりました。それはあくまでもアメリカの交渉技術上の問題もいろいろあるんだろうというふうに思います  そこで、今回の問題が、いわゆる繊維摩擦以来、先般のハイテク摩擦までのものと、非常に飛躍しているのかどうか、従来のそういう摩擦問題の延長線上をはるかに超えて、いわゆるクライシスマネジメントの対応を必要とする、そういうものなのかどうか。先ほど来、井上先生野林さんのお話を聞いているとそんなでもないような気がするんですけれども、彼らの政策を進める上で必要だということでそういうことをやっているのであって、従来の延長線上にあるのか、あるいはそれを超えたいわゆるクライシスマネジメントを必要とするものなのかを、実は私の時間ももう余りないので一言で結構ですから、これについてお言葉をいただきたいと思います。よろしくお願いします。
  31. 井上宗迪

    参考人井上宗迪君) 日米貿易のインバランスの数字を私たち取り上げてきているわけですが、私は同時にサービス収支数字も加えなきゃいけないと思っております。一九八五年の数字を点検した場合、日本の、アメリカのサービス赤字ですが、百六十四億ドルに達しております。一方、アメリカ公式統計ですが、五十億ドル少ない数字になっております。サービスを含めた日米の物とサービスの収支計算し直すと現在五百億ドル弱の日本の物の黒字になっているわけですが、日米のインバランスですね、これは三百五十億ドルに現実になっております。この貿易インバランスが、私の計算では、先ほど言わせていただいたんですが、三百億ドルに縮小した場合、サービスの赤字を加味すると物とサービス、いわゆる経常収支日米のインバランスが百億ドル台の赤字に縮小するということになります。  いずれにせよ、日米間の大きな争点になっている貿易のインバランスの数字ですが、同時にサービスをつけ加えて、ぜひアメリカ側と正面切った交渉を続けていただきたいと思っております。
  32. 沓掛哲男

    ○沓掛哲男君 時間がないので、一言ずつにさせていただきます。  野林さんにお願いしたいんですけれども、レーガンさん、ブッシュさんは共和党政権でございますが、この政党は自由な企業活動を非常に重視している、民主党に比べて。民主党は幾分社会政策的なことも加味するとはいかないまでも、アンケート上ではそういうような意思も出るんですね。共和党政権では非常に自由な企業活動を重視しておりますが、今のこの厳しさというのも共和党政権であるから、あるいは次も当然中間選挙があるからというような、そういう政策、政治的な要因が多いのかそうでないのか、そのことについて一言野林さんからコメントをいただきたいと思います。
  33. 野林健

    参考人野林健君) アメリカはこれまで一般的に貿易問題が、大統領選挙あるいは中間選挙のような大きな選挙のときに第一番目の問題になったことはなかったわけでございます。前回の大統領選挙のときそれがなりかけましたけれども、結局ゲッパートは保護主義的なことを言い過ぎて途中でダウンしてしまったということで、私は基本的には貿易問題が選挙の第一番の問題になることは少ないだろうと思います。しかし、意図的にそういうことを考える向きもあるのは事実でありまして、これはむしろ中間選挙よりも今度の大統領選挙のときの方に保護主義的な傾向の強い民主党が勢いを持っていく危険はあると思います。その意味では政治的なものだと思います。
  34. 沓掛哲男

    ○沓掛哲男君 それでは村上さんに一言。  村上先生が我が国の政治経済の最高責任者になられたら、日米構造協議日米間の問題解決のために一番先にやられること、これをどうしてもやらにゃいかぬという、そのことを一言教えていただきたいと思います。
  35. 村上吉男

    参考人村上吉男君) 私ごときが思いつくようなことはとっくに先人がおやりになっていると思いますので、たった一つだけというのはございま せん。系列の仲よしクラブよりも国際的な仲よしクラブに属する努力をすると思います。
  36. 沓掛哲男

    ○沓掛哲男君 どうもありがとうございました。
  37. 中西一郎

    会長中西一郎君) 速記をとめてください。    〔速記中止〕
  38. 中西一郎

    会長中西一郎君) 速記を起こしてください。  質疑を続けます。
  39. 北村哲男

    ○北村哲男君 北村でございます。参考人先生方には、本日はどうもありがとうございました。  私は所属は社会党でありまして、出身は弁護士でございます。つい昨年比例区から参議院議員になったもので、まだ国会のルール等は余りわからない者なんです。そこでまず、ジャーナリストでいらっしゃる村上先生にお伺いしたいんですが、今回の構造協議アメリカから日本に対する要求についてですけれども、ことしの三月二十三日の朝日新聞に「構造協議 米の対日要求全容」というものが朝日新聞紙上に発表されました。また、今回何回かに分けて「朝日ジャーナル」で政策実行提案全文としてアメリカからの要求文書が掲載されておるんです。ところが、私が外務省にこの原文をくれないかと、その原文というのは、英文ないしもとになるものをくれないかと聞きましたところ、これはない、政府にはないんだと、そういう回答でありました。ところが朝日には全文出しておるわけですよね。そして、これはどういうことなのだと言いましたら、これは政府にはないんだ、あれは朝日が勝手にやったんだというふうな言い方なんです。  また、去年九月、たしか構造協議の第一回があったときに、私も議員になったばかりだったんですけれども、英文の全文をくれないかというふうに外務省に聞いたんです。そうしたら、あれは外交機密文書だからお渡しできませんというふう言われたんです。これでは私どもは検討のしようがないということですね。ところが、その日か明くる日には日経に全文が出ているわけです。国会議員になって間もないんですけれども、もとの職業が弁護士ということもありまして、それが国民の代表になったというんで、意気込んで原文から調べて、オリジナルの資料に当たって勉強しようとした第一歩でがつんとつまずいて、何もわからないということでした。それで今回中間報告がぽこっと出てきた、これがそうだと言われた。経過がわからなくて中間文書だけ出まして、理解のしようがない。そこで、友人の新聞記者にどういうふうにして手に入れるんだと聞いたら、いや、もちはもち屋だよという調子で軽くいなされてよくわからないんですね。  そこで、質問なんですけれども、未熟で大変恥ずかしい限りなんですが、外務省の言うとおりだとすると、政府はアメリカの要求文書がないのにどうして同じ議題について協議をして中間文書がああいうふうに出てくるのか。新聞社が集めてきたものとぴったり合ったものが出てくるのか。その外交交渉のやり方について、ジャーナリストの目から見てどういうふうに理解しておられるのか。  それから、新聞記者の方にニュースソースを聞くことは大変失礼だと思うんですけれども、私たちは、新聞が出さなければ、もとの要求文書はないし、どういう問題が提起されたかというその内容がわからないのに中間報告が突然発表される、それを読まされ、それから議論が開始されるということになるんですけれども、その問題提起に対して、一つの世論をつくるという道が封じられているような気がするんですけれども、このあたりの仕組みというかメカニズムというか、新聞の役割は極めて重要と思いますけれども、その取材の方法とか、どういうふうにしてとられて、ああいうふうに、ぴったりと出て、ある時期には国民は知り得る、しかし国会議員は後回しというふうな感じで、国民の方が先に知っちゃうというか、その辺はどういうことなのか。  それから、今回の文書については、聞くところによると実は竹下元首相がアメリカに行かれて要求を突きつけられた、しかしお断りになったということがあるんですけれども、そうすると断られたまま、ないままに今回の構造協議に臨まれたのかという、その辺がよくわからないんです、もやもやとして。その辺について、先生のお立場で御説明というか、お教え願いたいんですが。
  40. 村上吉男

    参考人村上吉男君) 大変多岐にわたる複雑な御質問ですので、一般的に申し上げますと、私が前にワシントンにいたころは、東西間の戦略交渉が非常に盛んだったんですけれども、そのころからよく言われたのが、一に西独、二に日本、三、四がなくて五にアメリカというぐらい、リークが多い国のことを言っているんですが、そういうリークがあるということは、ある意味では報道の自由が保障されているということで、私どもは大変ありがたいと思いますし、皆様方にもぜひこの憲法で保障されている報道の自由については今後とも御支援いただきたいと心からお願い申し上げる次第でございます。  一般的に言って、政府間交渉では、秘密協定というものは当然政府間で出さない約束でございますから出ないんですけれども、例えばアメリカですと共和党政権がこういうふうな非常に込み入った問題で、水上・水中発射の巡航ミサイルでこんなことを交渉しつつあるということを見つけた民主党系の議員さんなりあるいは政府のお役人さんが、これはけしからぬと、自分たちは絶対これはまずいと思っているという場合には、相手方を倒すためにそれがニューヨークタイムズとかワシントンポストにリークされていくということで、レーガン政権のころはもう何度か、それこそFBIを動員してリーク源を探ろうとしたんですが、いつもうまくいかないんですね。やはりそういった国内絡みのこととか、あるいは二国間になった場合に、相手側から全然出てこないので少しプレッシャーをかけたり、それこそ外交駆け引き上出そうかというようなこともあり得ると思います。その辺、日本は、リークするということでは国際的に高いんですけれども、逆になかなか官僚レベルはしっかりしていて、出ない国でないかと思います。  今回の構造協議の二百数十項目のあれにつきましては、外務省側の御説明がどういうふうになっているのか直接存じ上げないのでコメントできませんけれども、ああいう要求というものが公式議題用の文書として出されていない場合には、そういうものはないということは言えると思います。ですから、公式として出ているんじゃないんだ、参考みたいなもので出ているという場合もございましょうし、半導体のときの何割日本側が受け入れていくというのも、これも双方の了解事項で、先ほど野林先生がおっしゃったプレストウィッツさんがあれを明らかにしたんですが、日本側は最後までそういうものはないということで突っぱねておりましたけれども、一応そういうものはないということで了解した了解事項でございますから、ないと言ってそれは構わないわけですね。そういうふうなことがございます。
  41. 北村哲男

    ○北村哲男君 次に、井上先生にお伺いしたいと思いますが、日本の不動産屋がアメリカの有名なゴルフ場とかあるいはティファニービルとかあるいはモービル、エクソンのビルなんかを買いあさっておる。それからハワイもワイキキの有名な二十のホテルのうち四分の三が日本の資本下に入ったというふうなことを言われています。そうして、これらはある意味では嫌悪感を持って語られておりますけれども、貿易摩擦経済摩擦の面から見ると、何か輸入しろということ、たくさん買いなさいというふうに言われている点から見ると、アメリカのものを買うことはむしろ貿易摩擦の緩和に役に立つのではないかという気もするんですが、そしてまた、アメリカの社会の中に日本企業が積極的に入り込んでいってある意味の同化をするという意味、あるいは貿易赤字を減らすというふうなこと、これらに貢献できるような気がするんですけれども、それがどういうわけで嫌悪感を持って語られておるのか。それはやめるべきだというふうにお考えなのか。その辺について御意見をいただきたいと思います。
  42. 井上宗迪

    参考人井上宗迪君) まず、対米不動産投資で すが、買収資金ですけれども、日本から出ていくお金は全体で四分の一にとどまっていると思います。四分の三のお金はジャパンマネーと称して世界のいろいろの国際金融センターから調達しております。不動産投資の金額ですが、私は、短期間にまた大き過ぎると思っております。  それから、多くの向こうの方が言っておられるわけですが、不動産投資をする場合には、どういう町づくりをしたいのか、どういうコミュニティーづくりをしたいのか、そういうビジョンを示してくれないと困ると言っておられるわけです。この点、日本で買っている方々がそういうプレゼンテーションをしていない、これがもう一つ不動産摩擦を大きくしていると思います。  それから不動産投資ですが、数年たってみたらやはり高い買い物であったということになってしまうのではないかと恐れております。なぜなら、不動産投資をする場合、それぞれの町の委員会、この委員会のメンバーはしょっちゅう変わっているわけですが、そういうことしの委員会のメンバーのキャラクターとかキャリアとか、あるいは外国から来るお金に対する見方を知らないと本当の不動産投資ができなくなっているんですが、これを無視して不動産投資を行っております。  ハワイを取り上げさせていただきたいと思うんですが、一般日本の旅行者ですが、以前はホノルル空港に着いたときにすぐ入国審査できたんですが、現在二時間ないし三時間待たされております。なぜかということなんですが、ジャンボ機が一機ホノルル空港に到着するたびに三百人ないし五百人の日本人が乗っているわけですが、そのうち一人から複数の日本人がトランクにいっぱいお金を詰めて不動産投資に来ている。そういう人は申告していない。今のホノルルの市長さんは、それはまずいけれども、お金を持ってきてくれるのでまあ我慢しようと、そういう考え方を持っておられるらしいんですが、税関の人が、私たちはやはり申告してくれないのでチェックしなきゃいけない。それで細かくチェックされているわけですね。そこで、ホノルル空港に一般の旅行者がおりた場合、すぐ入国審査ができなくなっております。一部の声ですけれども、次に当選するであろう市長さんですね、その方は厳しいルールを採用するのではないか、そういううわさがあるわけですが、もし万が一そうなってしまった場合、これまで投資してきた不動産投資ですが、とんでもない結果になるというおそれがあると思います。
  43. 北村哲男

    ○北村哲男君 重ねて一点だけお伺いしますけれども、こういうやり方の投資ないし買い物ですね、これは日米貿易摩擦というか赤字解消のために役に立つ方向に動いているんですか、あるいはマイナスに働いているんでしょうか。
  44. 井上宗迪

    参考人井上宗迪君) 私は、日本貿易黒字縮小には、大きな寄与はしていないと思います。
  45. 北村哲男

    ○北村哲男君 野林先生に同じようなことでお伺いしますけれども、今回の日米構造協議課題一つに、日本の土地改革が一つテーマに挙げられておりますけれども、その背景に日本の業者によるアメリカの不動産投資というものがあるというふうに言われているんですけれども、土地改革があって、日本の不動産の価格が下がると、アメリカの土地への投資というか、アメリカにおける土地買いがなくなるのか、その関連性というのはどういうふうに考えればよろしいんでしょうか。私は国内の土地、日本の土地が下がるということは、何か非常に国内的な、私ども市民の立場からすると、安い方が住宅なんかの土地を手に入れることができるというふうな感じに受け取れるんですが、これがアメリカとの関係で特に不動産投資との関連があるのかないのか。何か物の本によると関係があるようなことを言っておるんですけれども、その辺について御意見があればお伺いしたいと思います。
  46. 野林健

    参考人野林健君) 不動産会社、特に中小の不動産業者さんたちの仕事の口といいますか、それは減るんじゃないかと思います。日本において余りうまみがなくなると、アメリカにおいてもうまみがなくなるというようなことはあるかもしれませんけれども、大きな流れとしては、特に強いインパクトというのはないような気がいたします。
  47. 北村哲男

    ○北村哲男君 それからもう一つ関連ですけれども、日本の若者が大挙してハワイやアメリカ、諸外国へ旅行に行ったりしておって、そこで高価なブランド品を買いあさるという表現がよくなされているんです。これも先ほど井上先生に申し上げたように、ある意味では嫌悪感というか、日本のマナーのなさというふうな意味で語られていることが多いような気がするんですけれども、しかし、輸入をふやすべし、消費をふやすべし、貿易黒字を減らすべしというふうな命題に対してはある意味じゃ貢献しているように思えるんですけれども、この海外旅行とか、買い物という現象も不動産投資と同じようなレベルで考えた方がよろしいんでしょうか。あるいは、ある意味では今言われている命題に対して我々はそれに適当に対応しているというふうに考えた方がよろしいんでしょうか。
  48. 野林健

    参考人野林健君) 買い物ツアーという表現がいいかどうかわかりませんけれども、ともかくアメリカで庶民が買う金額は、そもそもトータルとして非常に少ないわけですから、大勢には何ら影響はないというふうに思います。品性がどうのこうのということは、またこれは別の問題ですけれども、今まで貧しい日本人がやっとここまでになれたということで、それを余り神経質に考え過ぎてもどうかなという気もいたしますが、悪い評判は一つでも少ない方がいいという意味からすれば余り好ましくないことだろう。しかし、それを抑えようとしましても、親も問題になってくるわけで、社会の問題にもなってくるわけで、なかなか解決というような妙案はないように思います。
  49. 北村哲男

    ○北村哲男君 もう一つ野林先生にお伺いしたいんですが、先生も先ほどのレジュメの中で、今回の構造協議の中でシンボリックな問題で大店法あるいは独禁法ということが言われておるということでありましたので、その独禁法の関係でひとつ御意見を伺いたいんですが、この排他的取引慣行の改善について、中間報告では課徴金の引き上げとか刑事罰の適用、活用、あるいは損害賠償制度の有効利用というふうな形で対応するというふうに日本政府は答えておりますけれども、また、公取自身も独禁法の改正に取り組むという報道も既になされております。  その問題点の指摘自体は、あるいは改善の方向としては正しいと思うんですけれども、言うまでもなく独禁法というのは大企業あるいはその企業の利益追求という一つの横暴なメカニズムから一般消費者の権利を守るためのとりでのような法律であるわけですけれども、にもかかわらず、これが企業の自由な活動を制限する側面も持つために、今まで財界とかあるいはこれに支持された政権からは冷遇視されてきたという経過があります。あるいは適用について骨抜きにされてきた経過があるというんですけれども、今のような状態で果たして日本経済構造や政治構造の中で、独禁法が形式的に改善されたとしても一般消費者のために有効に機能することができるか、その見通しがあるかどうか、法改正、運用、実行面というふうなことで、犯罪捜査とか税務署の脱税捜査に比べて非常に弱いような気がするんですけれども、その辺の見通しと今回の協議の内容についての御意見を聞かせていただきたいと思います。
  50. 野林健

    参考人野林健君) 法律の改正は、やろうと思えばできるわけでございます。それから、組織の面から申しますと、公取は余りにも貧弱過ぎるということで、これは強い権限を与えるためには数も多くしなければいけませんし、いろいろな省庁からの出向というような形でうやむやにすることはよくないというふうに思います。  それから、これは、もっと広い意味での法律というものに関する風土の違いというのは日本アメリカは随分違うわけで、これは北村先生の方がお詳しいことかと思いますけれども、風土に絡めて考えればやはりアメリカと同じようなことになるとは思いませんし、なることがいいかどうかもこれは疑問があると思います。先ほど密告奨励制 度など云々というお話もございましたけれども、やはりこれは日本にはなじまないものであるし、そういうカウボーイ的と言うとアメリカは怒るかもしれませんけれども、そういう発想で日本がすることはしない、それは品位の問題であると言い返せばいいと思います。ただ、しかし、独禁法は大事であると言いつつ実際にそれをきちっと運用しないという、こういうダブルスタンダードはよくないのであって、もしも本当に独禁法は日本の法体系になじまない、アメリカから押しつけられたものであるということであれば、正々堂々とその根本的なところから議論をすればいいというふうに思います。したがいまして、ともかくも口ではやるよと言いながら何となく終わってしまうという、そういうことが一番よくないと思います。  それと、これは独禁法以外すべての問題にかかわる、構造協議の内容にかかわる問題だと思いますけれども、私が一番恐れるシナリオは、これは日本側のシナリオですけれども、官僚が、今度の構造協議、最終報告がこれから出るわけでございますけれども、その時点で我々の仕事は終わった、文言その他大いに詰めた、エネルギーも大変費やした、ああこれで我々の仕事は終わったというふうに思ってしまう、そういうシナリオが一番危険だと思います。しかし、これは従来のいろいろなことを見ますと、どうもそういう危険はあるなというふうに思いますので、本当に日本政府が責任を持って実行するんだということについて監視をする必要がある。それは国民一般が監視するということもありますし、政治家の先生方が監視をされるという責任は非常に重いと思います。賛成、反対のお立場がありますから、それは明確にされるのはもちろんですけれども、特に与党の先生方の責任は非常に重いと思います。  先ほど、最初のころに、アメリカは今回健全野党的ではないかというようなお話がございましたが、まあ健全かどうかは別といたしまして、やはり今日本の政治の質が問われている。それはアメリカから問われている以上に日本人が問うているという面はあると思うんですね。外圧でしか動けない、あるいは外圧でしか動かないけれども、実際はうやむやに終わらせてしまう。これは官僚レベルの問題だと思いますけれども、やはり官僚を監視するのは、職業別で申せば国会議員なわけでありますから、私は一国民としてぜひ官僚機構を監視していただきたい。本当に構造協議なるものを意味のあるものにするためにはそれが一番大事だろうというふうに思います。  繰り返しますけれども、最終報告の作成でエネルギーを費やして、これで終わったというふうに日本の官僚機構が早合点といいますか、もうそこで仕事は終わったというシナリオを私は一番今危惧しているところでございます。
  51. 北村哲男

    ○北村哲男君 どうもありがとうございました。大変力強いお言葉で、私どもも頑張っていきたいと思います。  質問を終わります。
  52. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 堂本暁子でございます。  北村さんに右へ倣えをして自己紹介をいたしますと、三十年ほどTBSで報道の記者をしておりました。向こうのあの記者席にずっと座っていたんですが、今は去年の七月の参議院選挙で、日本社会党・護憲共同の国会議員をしております。村上さんもいらっしゃいますけれども、記者席とここの席を比べますと、記者席の方がはるかに座り心地がようございまして、国会議員の席というのはもう針のむしろの上に座っているような、そういう感想でございます。参考人席には座ったことがないので、そちらの座り心地は余りよくわかりません。きょうは、特に大変針のむしろという一つに、やはり日米構造協議のプロジェクトを担当させられまして、外交問題は専門じゃなかったものですから、非常に驚くこととか、それから日本がこんなにも談合や何かがやりやすいような、今の独禁法のお話なんかが出まして、そのことでもうとにかく記者としてはこういうことが全然見えていなかったなということを痛感いたしましたし、それから最後に野林さんがおっしゃいました官僚の壁の厚さに、今職業政治家というお言葉がございましたけれども、またこの席の座り心地の悪さということを、四十年間の政権交代のなかった国の官僚制度というものにまたもう一度体で唖然としているのが現状でございます。  自己紹介が長くなりましたが、具体的なことを二つと、ちょっと抽象的なことを井上参考人に伺いたいんですが、二年後に日米関係は改善されるであろうという比較的楽観的と申しますか、見通しをお持ちでいらっしゃいましたけれども、例えば先ほどアメリカ財政赤字の問題にお触れになりましたけれども、日本も大変に巨額の国債の赤字を抱えた国で、そういう意味では大変経済的にある種の経済トップの国と言われながらもろさを持っているのではないか。そういった中での二年後というようなことについて、簡単に伺えればと存じます。
  53. 井上宗迪

    参考人井上宗迪君) いろいろのところで私の見方は楽観的だと言われております。そういう言葉をいただいたときにいつも、楽観、悲観に分けてしまうと確率が五割になってしまう、現実的か非現実的かで読んでいただきたいと申し上げてきております。私は、七、八割の確率をもって日米摩擦は今と随分局面、状況が変わると予想しております。  財政赤字のお話ですが、これは日本も大変もろさがあるという話ですが、私は、経済の基本的な考え方ですけれども、そろばんの収支、これは経済を考える際基本ではないと思っております。お金は天下の回りものと我々は呼んできているわけですが、お金の出と入りを最終的に決めるのは実業の世界ですね。お金を動かす、最終的に出と入りを左右するのは現実世界だと思うんですが、その出と入りを左右する日本の現場を四つにとらえた場合、すなわち研究開発と、作業の現場と、物を一生懸命売る販売部門、それからこういったものを全部統括する経営、労使関係、こういうものをとらえた場合、私はこの四つの現場で日本がもろさを持っている、そういうことはとても考えられないと思っております。また、多くの識者方々がそう強調されております。  最近、「日はまた沈む」という本を書かれて日本で時の人になっておられる「ロンドン・エコノミスト」のビジネスアフェアの編集長のビル・エモットさんも、作業の現場における日本の足腰、これは世界に冠たるものだ、ぜひこの足腰をヨーロッパ経済物づくり再生のために活用すべきだということを強調されております。
  54. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 今、販売というお話が出ましたけれども、ヨーロッパの方でございますけれども、きょうはお話出ませんでしたけれども、ココムの問題があるのではないかと思います。ヨーロッパに比べて日本は大変忠実にココム規制を守っていますけれども、その点と、それから日米摩擦の問題についてはどのようにお考えか、伺いたいと思います。
  55. 井上宗迪

    参考人井上宗迪君) 最初のコメントのときに、アメリカ貿易摩擦において非経済的な側面を重視するようになった、なかんずく安全保障問題を特に大きく取り上げるようになったということを指摘させていただいたわけですが、アメリカは、ハイテク、高度技術、半導体を中心とした細かいものをベースとした近代ハイテク、この点では日本の力が一番強いのではないかととらえていると思います。正しいかどうかは別にしてですね。その国のノーハウが東側の国に流れてはまずいと異常な執念を持っていると思います。それがココム問題で特に日本に強く当たっている理由じゃないかと思っております。
  56. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 もう一つ井上さんに伺いたいんですが、楽観的ではなくて実質的なお話の展開の中で、最後に残りますのがやはりパーセプションギャップの問題ではないかという気がいたします。シンドローム現象の起きる国というふうにアメリカを分析なさいましたけれども、「将軍」の場合はイメージで済んだ。果たしてこの経済摩擦が「将軍」のような形でいくのかどうか、そこもちょっと危惧するのですけれども、日本の文化まではや はり変えられないのではないか。そういったときにパーセプションギャップアンフェアとか、それから対日不信感が今親日家の間にまで広がっている。最後の「以上」と書かれたもう一つ先の部分でございますが、ここのところを短くお話しいただければうれしいんですが。
  57. 井上宗迪

    参考人井上宗迪君) アメリカ人と一緒に会議をしている場合、違った意見が出ることを非常に喜びます。同じ意見だとおかしいと皆さん言っているわけです。違いのわかる国だと思います。違いのわかる国が、日本を違いのわからない国にさせようと考えているとは私はとても思えない。我々はそうとらえてはまずいと思います。日本ではそういうふうにとらえている論調が余りに多過ぎると思っております。違いは違いとして、私はその違いの意味を我々は理解しておくべきだと思っております。  それから、パーセプションギャップですが、特に日本が不公正だというギャップですが、この点では、残念なことに貿易交渉のたびに後からいろいろ出てくるわけですね、ぞろぞろぞろぞろ。今まで随分出てきたんですが、もうそろそろ私はネタ切れになるのではないかと思っております。日本が市場を閉鎖していて不公正だというアメリカ側のとらえ方ですが。今までだってどんどんどんどん出てくるわけです。我々はないと言っていたんですが出てきたわけです。これからもどんどん雨後のタケノコのように出てくるかということを予想した場合、私はもうそろそろ品切れになるのではないかと期待しております。
  58. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 次に、野林さんに伺いたいんですけれども、きょうの日本異質論、大変興味深く伺いました。結論でおっしゃった産業優先、企業優先、これがまさに日本経済大国、金融大国を実現したんだと思います。先ほども最後におっしゃった、まさに官僚機構の仕組み、そして政治の仕組み、これは本当に大きな問題だろうと思うんですけれども、一方で、その産業優先、企業優先の反対側と申しますか、裏側でやはり消費者の側がないがしろにされてきた高度経済成長の時期だったのではないか。そこで福祉小国とか生活小国、文化小国とか環境小国とかいろいろ言われますけれども、やはりそこが、先ほど最後におっしゃった価値観の問題に関係してくるのではないか。  今、井上参考人がおっしゃったように、本当に出尽くしているのか。それともこの価値観の問題、果たして建設的にここから日本が抜け出ることができるのか。受け身の日本からもっと能動的なと申しますか、積極性を持つ、日米の間だけではなくて、むしろ世界経済の中でイニシアチブがとれるようなそういった価値観のようなものを、そしてしかも日本の文化というのは体質と申しますか、恐らく変えられないものなんでしょうから、どういうイメージをお持ちになるか、大変抽象的で申しわけないんですけれども、伺いたいんです。
  59. 野林健

    参考人野林健君) 私はまだ四十代でございますので、そう長い間日本で生きているわけではございませんが、しかし、日本お金持ちになったといいますか、土地の問題を別としまして、日本人が豊かになった。これは日本の歴史始まって以来ということだと思いますし、その豊かになった経験そのものが非常に短いというふうに思います。  したがいまして、これから日本がどうなっていくのかということについては、日本人自身ある程度長い目で見なければ、日本は非常に文化レベルの低い国だなどと自虐的になってしまう危険があると思いますので、今確かに成金、まあ小さな成金ですけれども、やっと成金になれたというところで、この後どういう方向づけを自分たちでしていくのかということが、抽象的な言い方ですけれども、今問われているわけで、そういう中で企業あるいは産業、こういうバイタリティーがなければ、一億数千万の人間は食っていけないわけで、それは非常に重要である。  同時に、別の観点、それは個人の生活を豊かにするということもありましょうし、もちろん消費者という新しい目標もあると思いますけれども、今その過渡期にあって、この過渡期はしばらく続くだろう。そして過渡期の中で苦労をし努力をしていくことによって新しい展望が開けるのではないか。私は、私が定年退職するころにはそういう日本になってほしいと思いますし、恐らくなれるんだろうというふうに楽観的に思っております。大変抽象的なお答えで申しわけございません。
  60. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 そこのところで、確かに過渡期であり、そして問われているということもよくわかるんですけれども、なおかつアメリカやヨーロッパの尺度だけで私たち考える必要もないのではないかというふうに思います。特にお米の問題など考えると、本当にすべて後手後手に回ってしまっていた日本という気がしてならないんですけれども、そういった中で、やはり日本がきちんと自己主張しながら何か相手を説得できるようなそういうこと、実際にずっと御専門にこの問題、鉄鋼の問題その他専門にかかわってこられまして、研究してこられて、お考えになることはないでしょう
  61. 野林健

    参考人野林健君) 一言で申せば、戦後の日本には国際的に通用するビジョンがなかったということだと思います。しかし、それはある意味でやむを得ないところがあって、とてもそんな大それたことなど考える余裕がなかったということだと思います。しかし今、ある意味日本人がまだ我々はこの程度だと思っているよりも、世界日本に対する目が随分、日本はもうこのあたりだというところになってきていると思います。このギャップ日本人からいえば過大に評価されている、外国から見ればまだそんなことを言っているのかという、こういうパーセプションギャップと申しますか、認識のギャップは非常に強いと思います。そして、これがある意味日米構造協議のいろいろな奇妙な話し合いのテーマの中にも散見できるように思いますが、やはり我々はビジョンを持たないといけないというふうに思いますし、そういう意味で、また官僚機構の問題になりますけれども、日本の官僚機構はこれからも小さなビジョンはつくっていくと思いますけれども、大きなビジョンはもうつくれない。第一忙し過ぎるということもありましょうし、しょせん組織の歯車の一つだと思います。もちろん政治家の先生方も大きな歯車の一つかもしれませんし、選挙民という怖い目があるわけですけれども、しかしやはり日本を動かすのは国民であり、そしてその中で問われているのはステーツマンシップだというふうに思います。非常に抽象的な言い方ですけれども、私はそういう意味でもっと国民の目から見てわかる政治であり経済運営であるべきである。黒子のような形で存在している官僚機構、その意義はもちろんこれからも続くと思いますけれども、やはり政治家のレベルでのなすべきことは極めて多いだろうというふうに思います。  構造協議についても他の委員会でいろいろこれから御議論があると思いますけれども、反対なら反対、賛成なら賛成、あるいは日本政府が何とかごまかして対処しようというところがあれば、賛成、反対を含めてどんどん厳しく追及していただくことが、今具体的な構造問題に絡めて申せば皆様のお仕事ではないかというふうに考えております。
  62. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 どうもありがとうございました。おっしゃったことを大事に心にとめていきたいと思います。  村上参考人に伺いたいんですが、先ほどおっしゃいました軍事同盟からむしろ平和協力――多分中曽根総理大臣がワシントンに行かれたときに同盟ということにそういう軍事的な意味が非常に強く強調された、その時期ちょうど村上さんがワシントンにおられたときでしょうか、そういうことだったのではないかと思うので、そのことが一つ。  それからもう一つ。さっき北方領土の問題に対応できるのはアメリカだけだというお話がございまして、大変興味がございます。アメリカが仲介できる唯一の国と。そして先ほどのココムのお話 も井上さんからございましたけれども、その辺の可能性というのをどのように見ていらっしゃるか。この二点を伺わせていただきます。
  63. 村上吉男

    参考人村上吉男君) 軍事同盟が強く出たのがロン・ヤス関係のときだったという認識はそのとおりだと思いますけれども、大平総理が訪米されたとき、あるいは鈴木さんのときも含めて、一千海里シーレーンとかいうことが出たときがちょうどレーガン政権の軍拡、それからソ連ととことん軍拡をやっていくということで、今米国内ではある意味ではレーガン政権があったから結局ペレストロイカが出てきたという見方もされているわけで、それはそれなりに一つの見方だと思います。  それから、これからの安保のことでございますけれども、まず、ココムにも言及されたんですけれども、ココムにつきましては、先ほど日本は非常に守っているというふうにおっしゃいましたが、アメリカなどではそういうふうに見られていないということがあの東芝機械のココム事件、あるいはそのほかにもありましたし、それから最近ではリビアの化学工場で日本企業の名前も挙がったりしています。それらが必ずしも純粋なアメリカ安全保障上の配慮からではなく、上院のスタッフで日本企業をねらい撃ちすることに重点をシフトしている人たちの見方とも一致して出てきているという面はあるんです。しかし、そういったことで非常に大きな事件となりましたが、世界が先ほど申しましたように非常に急速に変わっておりまして、ココムの問題も以前とは全く違った性格、次元でこれからは取り扱われていくし、そういった中で新たにココムの事件が出てくるとすれば、それは全く私どもが今考えつかないようなことで出てくる可能性としてはありますけれども、従来のような形では余り出てこないんじゃないかという気がいたします。  それから北方領土の点ですけれども、日本では四島返還以外というのはもう成り立たないと言っていいかと思いますね。あらゆる党派、マスコミを含めまして四島返還と言っているわけで、仮に本当にこの問題を解決させるということで今一番いい立場にいるのがアメリカだと思います。もしアメリカが、二島返還をとりあえずやりあとの二島は責任を持って何年か後にまた日本に返すことを前提といいますか、そういった線で、文脈でやっていくと言えば、これは日本側の、四島でなければだめだという、右から左すべて多少は動かせる。そうでなければ、先ほど総理大臣の政治決断と申しましたが、とても四島以外の決断をできるような状況に我が日本国内がもうないと思いますので、そればかり突っ張っていてソ連もそれはできないということがあればいつまでもこの状況が続き、この状況が続いて少なくとも損をしないのはアメリカですよね、というふうなことでちょっと触れたわけでございます。  それで、もしそういったような正式の仲介、調停ということでアメリカが腰を上げれば、これはソ連も日本もそんな仲介欲しくないとは言わないと思うんですが、そういったようなかけらも今見えてないということをちょっと強調したかったわけです。
  64. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 村上さんに続いて伺いたいんですけれども、やはり日本のあり方、大変ジャパンバッシングという言い方をされていますけれども、日本のあり方がルールを守っていないようなところが多いというふうにワシントンでお感じになったとおっしゃっていらっしゃいました。やはり政治的決断の中で、今一番日本の政府としてこういうことをやるべきだということを具体的に何かお考えございますか。
  65. 村上吉男

    参考人村上吉男君) 先ほど、血の出るような努力ということでも申し上げましたけれども、一つだけやれば全部解けるという問題ではございませんね。これはやはり続けていって、まあいわば人間社会で言うところの一生懸命努力しているし、ぞうきんがけもしているということが次第に認識されているということになっていくんじゃないか、国際社会でもなっていくんじゃないかと思いますので、いろいろやっていかざるを得ないんじゃないかと思います。  先ほど別の方から、日本の資本主義のやり方というのがアメリカと同じようにいかないのじゃないかということを御指摘がありまして、私もそのとおりだと思うんですけれども、例えば独禁法にしましても、アメリカ型の考え方ですと、薄利多売で市場をまず席巻しちゃってその後で市場を支配するということがやはり日本のやり方だ、国際貿易においてもそういうやり方をやっているということを言われるわけです。これはアメリカ側では余り考えられないんですね。薄利多売というのはもうばかの骨頂である。なぜならば、薄利多売で市場を自分のものにしてようやく市場を支配できたと思った瞬間にはもう独禁法があるわけですから、いずれやられるのに何で初めからそんな安い利益でいくのか。これは例えば、皆さんも御存じの方多いと思うんですけれども、半導体交渉のときに日本が安過ぎるというので、その製造原価から全部、計算をやり合ったわけですね、両方で。日本の交渉団が一番驚いたのは、日本はそのマージンを二%で計算して、アメリカ側のマージンが八%で計算していたわけですね。あちらは、何でたった二%の利益を得るためにそんなに努力をするのか、もっと楽にもうけるのが本当の自由主義、資本主義じゃないんだろうかというふうな意見を持っているわけですが、日本は、先ほど申しましたように対米輸出している企業が全部もうけているわけじゃなくて、とんとんに回ればそれでもういいということで出ていくんですが、これはNIESの国とか開発途上国はそういうことも仕方がないとは思うんですが、もうメジャーリーグ入りしていると思われている日本につきましては、そういったことをやると、やはりこれは市場を支配する戦略であるというふうに、もうアメリカのみならずヨーロッパでもどこでもそう見られますから、そこら辺からまず非常に気をつけていかなきゃいけないというふうに思います。
  66. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 どうもありがとうございました。
  67. 和田教美

    ○和田教美君 公明党・国民会議の和田教美でございます。私に与えられました時間が十五分と極めて短いので、まずお三人方に一つずつ質問いたしまして、時間があれば次の質問に移らせていただきます。  そこで、まず井上先生にお尋ねしたいのでございますけれども、先ほどのお話で、私は、井上さんの日米経済摩擦に対する展望は、長期的にはかなり楽観論だというふうに受け取ったわけです。つまり、この二年後にアメリカが政治的に許容できるという三百億ドル前後まで日本とのインバランスが縮小するということは、私もあるいはそういうことが可能ではないかというふうに思うんですけれども、しかし短期的、中期的にはなかなか今の状況は厳しいのではないか。というのは、この構造協議の結論を全部実行してもそれほどインバランスに影響はないということは、この間も政府側を呼んで聞いてみましたら皆そう言うんですね。そこへもってきて、特に議会筋なんかでは、まあこれは第一歩であるというふうなことで、最終的には七月の最終報告を見なきゃわからないというふうな突き放した意見も大分出ておりますね。そういうことと、仮に構造協議の問題が一段落しても、いわゆる複合摩擦と言われる、例えば投資摩擦だとかあるいは金融の問題だとか、あるいは防衛摩擦などという問題まで出てきているということで、次から次に問題が出てくるというふうな不幸な状態が続く可能性がないかどうか。それを避けるためには一体どういうことをやればいいか、その辺のところをお聞かせ願いたいと思います。
  68. 井上宗迪

    参考人井上宗迪君) 御承知のように、日米の相互依存度、この場は広がっております。物だけじゃなくて、工場レベル、それから金融、それからサービスのレベルまで広がっております。この相互依存度、広がりを持って深さを持った相互依存関係ですが、これからも私は続いていくと思っております。そういう相互依存度が高まる中で摩擦は避けられないと思います。問題は、どういう摩擦か、二つの国の外交関係を切断してしまうよ うな摩擦なのか、あるいはそうじゃない摩擦なのか、その二つに分けて考える必要があると思っております。  今の日米摩擦ですが、日米外交関係が切れそうな雰囲気になっていると思います。この切れそうな雰囲気ですが、私は現実的と考えていただきたい。改めてまた指摘させていただきたいと思うんですが、外交関係が切れそうな今の雰囲気ですが、二年たてば私は大きく修正されるはずだと思っております。  一方、今御指摘の投資とか金融摩擦ですが、こういう摩擦は新たな摩擦として取り上げられるようになると思います。ただ、そのときの摩擦の取り上げ方ですが、今のような切迫感を持ったものではないと私は予想しております。
  69. 和田教美

    ○和田教美君 まだ時間が大分あるようですから、もう一つ井上さんにお伺いしますけれども、日米のこの貿易摩擦ということを考える場合に、日本の対米貿易の比重が余りにも大きい、ほかに比べて。そういう問題があると思うんですね。だからやっぱり、日米貿易インバランスを直していくためには、もう少し何というか、輸出の要するに多角化といいますか、地域的な多角化を図っていくことが必要だということは前々から言われておるわけですけれども、それが一向に行われない。むしろ横ばい、パーセントからいけば横ばいないしちょっとふえている、対米の依存度が。というふうな形になっていると思うんですけれども、これは丸紅の関係の研究機関もやっておられるわけですから大変情報があると思うんですけれども、そういうことが可能なのかどうか。もし可能だとすれば非常にいいことだと思うんですけれども、その点はいかがでございますか。
  70. 井上宗迪

    参考人井上宗迪君) 日本貿易に占めるアメリカのウエートですが、輸出面ではここ五年来高まってきております。ただ、おととしから急激な円高、また摩擦激化、かてて加えて企業による現地生産への動き、そういうもとでの対米依存度のシェアアップ、日本輸出におけるシェアアップはストップしただけじゃなくて逆に縮小し始めております。それで、市場の多角化ですが、現在進みつつあると見て私は間違いないと思います。  それから、アメリカへの輸出がふえた理由ですが、日本がおどしてアメリカの消費者、需要家に買ってもらったのではなくて、アメリカの消費者それから企業を含めた需要家がぜひ日本の製品を欲しい、そこで日本輸出がふえております。ですからこの点では、アメリカの必要とするものをタイミングをとらえて、アメリカ輸出している世界の国の中で、日本が一番タイムリーにアメリカが必要とするものを輸出する時期にあった、そのためにアメリカ向け輸出アメリカから見れば対日輸入が大きくふえたということになっていると思います。ただ、最近はアメリカ輸入は伸び率としては日本よりもお隣の韓国、台湾等々からふえております。
  71. 和田教美

    ○和田教美君 次に、野林先生にお伺いいたします。  先ほど日本異質論ということについて触れられまして大変参考になりましたけれども、その日本異質論というものの一つに入ると思うんですけれども、日米構造協議の政府の対応を見ておりましても、例によって、外圧が強い、アメリカからの外圧が起こることによって初めて構造的な転換をやろう、そして国内政治をおさめていこうというふうな発想が常に繰り返されるわけですね。しかし私は、今度の経過を見ておりまして、これはもう限界に来たんじゃないか。これからはもうもっと新しい発想で日本の政府がもっと主体的にやっていく時代に入ったんじゃないかというふうに思うのですけれども、その点はどういうふうにお考えになっておられますか。
  72. 野林健

    参考人野林健君) 外圧を通して国内政治を進めるというのは、最初はそういうことを日本側は意図したわけではないのですけれども、結果的に、最近は外圧を期待する向きが政府内部あるいは官僚機構の内部にもあるという見方が出てきて、私もそうかなというふうに思います。政治のリーダーシップの形として、大統領型と申しますか、アメリカ、フランスのような、あるいは最近はソ連も入れた方がいいかもしれませんけれども、そういう政治のシステムではないので、外圧があって初めて動きがとれるというのもやむを得ないかなというふうに思ったりはします。ただ問題は、そのときどきの政権担当者あるいは政治家の皆さんはそれでいいかもしれませんけれども、問題は、国民がもうそれでしか日本は動かないというふうに思い始めるのが非常に危険なわけですね。しかし同時に日本の世論には、かつて日本は頑張り過ぎて失敗をしたという思いもあるわけで、その間で迷っているのではないかというふうに思います。  しかし、基本的にはその外圧でしか動かない、あるいは動けないというシステムは日本の努力で変えていかざるを得ないし、もしそういうものを変えることができなければ、結局日本は幾ら経済的に大きくなっても国際的に受け身にならざるを得ないし、非常にアイソレートをされる危険があるというふうに思います。そういうことをひしひしと感じることができれば、楽観的かもしれませんけれども、日本の社会、政治の仕組みというものもおのずと変わっていくのではないか。そういう適応力、潜在的な能力があるからこそ日本はここまでいろいろな歴史的な体験、失敗を含めて、沈んでは起き上がり、伸びてきたんだろうと、最終的には私の個人的な感想になって恐縮ですけれども、そのように考えております。
  73. 和田教美

    ○和田教美君 村上さんにお伺いいたします。  先ほど、アジア・太平洋地域の戦略的枠組みという国防総省の報告、これについて触れられまして、これからの日米安全保障関係、よく考えていかなきゃいかぬというようなお話がありましたけれども、私も全くそのとおりだと思います。  このアジアの戦略構想、まだ新聞記事だけですけれども、これを読んだ限り、自衛隊について、余り自衛隊が大きくなっていくということについて、抑制的な、警戒的な見方がアメリカに出ているということがこれでもはっきりしてきたと思うのですが、さらに今話題になっております沖縄の駐在の海兵隊司令官のスタックポール少将がワシントンポストに語ったという発言、インタビューの記事ですね。これで、要するに沖縄の駐留米軍というのは瓶のふただと。つまり、日本の自衛力が余り強大にならないために抑えているんだというふうな趣旨を述べておる。これは議会対策という面もあるだろうと思うのですけれども、ある意味で僕はアメリカ側の本音もそこに出ておるというふうに思うのですね。  ただ、この前のこの調査会でもその問題が出まして、西ドイツに対してはNATOで、要するに封じ込めると。日本に対しては日米安保という形で封じ込めるというような考え方だというふうなことをおっしゃる方もあったんですが、それを承知の上でやはり日米安保に乗った方がいいという御意見でございました。伊藤憲一さんの話はですね。私は必ずしもそうは思わないのであって、日米のこの安保関係というものは、さっきも触れられましたように、やはり軍事的な側面をだんだん薄めていって、政治的、経済的な関係というものを、第二条の関係を強めていくということが必要だろう、いずれにしても再検討の時期が来ると私は思うのですけれども、村上さんは、個人的な見解で結構でございますから、どういうふうにこれをとらえておられるか、お伺いしたいと思います。
  74. 村上吉男

    参考人村上吉男君) 先ほど申しましたように、日本が壮大な実験を今行っているわけで、それをぜひやり遂げて、史上初めて軍事大国にならない立派な経済・福祉大国ができたということが歴史に残せればこれは本当に大変なことだと思います。しかし、これは理想論でありまして、果たしてそううまくいくかどうかは皆さん方の御努力にかかっているんじゃないかと思いますが、この今回出ましたアメリカの報告書を見ましても、最初の三年間については具体的ですが、第二段階の九五年までになるとベイグ、ぼやっとしていまし て、最後の第三段階の五年間はまるで何も言ってないというようなことですね。  世界の変わり方というのが非常に激しいものですから、日米経済関係の行方も含めて、いわんや安保につきましては全く予測できないです。アメリカの例えば六〇年代、十年ごとに過去を見ていって、六〇年代のアメリカというのは非常に楽観の時代、ケネディ登場の時代、アポロ計画の時代、技術革新の時代。若い意気に燃えていた時代だと思いますが、七〇年代になりますと、まるで一転しまして悲観の時代に入りまして、ベトナム撤退とかオイルショック、それからイランのホメイニ革命によって四百四十日もアメリカ外交官が人質にされるといったような屈辱的な時代。それから七〇年代の最後にはソ連軍のアフガニスタン侵攻ということがございました。それを受けて登場した八〇年代のレーガンさんがいきなり軍拡を始めまして、アメリカが一遍に世界最大の債務国に転落し、麻薬、暴力がはびこり、ついにはポール・ケネディさんの「大国の興亡」というような、アメリカの衰退が言われているような時代だったわけですね。それがゴルバチョフさんのペレストロイカで八〇年代の後半に明るさが出てきて、ついに九〇年代に入って、全くまた新しい世界アメリカの時代と今また言われているような状況です。そんなことを見てきますと、私ごときが今後十年どうなるかというのはとってもわかりません。  安保につきましても、現状では国会の方で、現状がこうなっておるのでございますから、それを何とか世界に敵をつくらない方向で行かなきゃならないと思うんですね。日本ばかりがアメリカとの関係を見て理想的に動いても、いろいろ近隣諸国への配慮などというのがユニホームの方にはあるやもしれませんし、そういったことも勘案しながら、この一番最終目標としては軍事大国にならない立派な国ということであれば、どうやってそれを実現していくか、与件は変わってきましょうけれども、その与件に対応するに当たっては短期的な視野でなく長期的に視野を持っていけるような努力ということをするのが一番いいんじゃないかと私は個人的に思います。
  75. 和田教美

    ○和田教美君 ありがとうございました。
  76. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 日本共産党の上田です。三人の参考人の方どうもありがとうございました。  まず、井上参考人にお伺いしたいんですが、アメリカ経済的復権が今見られるというのは確かだと思うんですね。それは今村上参考人も触れられたゴルバチョフ、東ヨーロッパ・ソ連のあの激動の中からアメリカの政治的地位の向上があらわれてきたこととも関連があるだろうと思うんですね。そのアメリカ動きともつながりがあるんですけれども、御意見で、日米貿易アンバランス二年後に三百億ドルと、条件つきですけれどもおっしゃった。私も前回の調査会で取り上げたんですが、三月十二日号の日経ビジネスに「午後四時の日本経済」という非常にショッキングな特集がありましてね。これを見ると、例えば五百億ドルの巨額の対米貿易収支の中身は自動車、VTR、電子計算機、半導体の四品目で九五%を占めるという数字が出ていて、その中の自動車は、日経ビジネスの調査によると、九五年にアメリカの現地生産三百万台という数字が出ています。それからアメリカ、ヨーロッパ、NIES諸国からの製品輸入もふえていくと産業空洞化がどんどん進むだろう。トリプル安に見られる日本のジャパンマネーも、ある大手都銀の話が出ていて、額は巨額だけれども相撲でいえば大乃国みたいなもので千代の富士じゃないというようなことまでありまして、数年でこの対米黒字は消えるというショッキングなあれになっているんですね。  井上参考人に、三百億ドルにまで減った先ゼロになるという時期が来るのかどうか、その見通しをお伺いしたいことと、それから、ゼロになるかどうか別にして、井上参考人の、二年後に三百億ドルという見通しからも日米構造協議なんというのは要らないんじゃないかという問題も不可避的に出てくると思うんですけれども、御意見をお伺いしたいと思います。
  77. 井上宗迪

    参考人井上宗迪君) まず、三百億ドルの数字ですが、繰り返しですけれども、貿易ですね、サービスを入れますと、アメリカは武器をサービスに入れております。それから、アメリカは映画の放映料とか特許の受取金額とかもろもろのサービスの分野で世界でダントツの力を依然として現在でも持っている、私はそう観察しております。アメリカのサービスの黒字、非常に大きな黒字になっております。  今、アメリカ議会一つの委員会ですが、技術評価局という委員会が、アメリカ商務省公式統計のサービスの受け取りの数字年間五百億ドルから八百億ドル漏れているのではないか、そういう問題意識のもとで調査を重ねております。中間報告が以前出たんですが、やはりそのぐらいの数字がどうも公式統計から漏れているというそういう一時的な中間報告になっております。日本ですが、サービスは、アメリカに対して日本公式統計によれば年間百五十から二百億ドル近い赤字を計上しております。  そこで私は、これから日米貿易のインバランスを議論する際、サービス化の進んでいる世界経済、ウルグアイ・ラウンドでもサービスを取り上げているわけですが、ぜひサービスの項目も含めて議論をすべきじゃないかと思っております。そのサービスを入れれば、三百億ドルの貿易黒字日本が縮小した場合、サービスの百五十億ドル赤字をつけ加えるともっと、対米黒字は百五十億ドルという数字に縮小するわけです。もしそうなった場合、日米構造問題の協議ですが、本当に意味があるのだろうかということですが、私はそのときにはなくなると思っております。
  78. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 村上参考人にお伺いしたいんですが、大変興味深く聞かせていただいたんですが、日米関係は巨額の貿易赤字に尽きるとおっしゃって、なぜアメリカでこんないら立ちが生まれるのかということについてもいろいろお話しになりました。先ほど申し上げたように、九五%、四品目なんですから、大企業の行動についてはかなり当たっている面があると思うんです。が、私は、この面で日本国民が負っている負担、犠牲ですね、この問題を我々は見ておかなきゃならぬと思うんです。  東経大の宮崎義一教授の「ドルと円」、岩波新書で出ていて、これ大変興味深く読んだんですが、例えばこの中で八六年の東京の地価暴騰ですね、これを非常に数字的に詳細に追求されているんですけれども、あれの大きな原因は、日銀が余りに急激にドル安が進まないように大量の外為市場を通じてのドル買いの介入をやった。八六年に四兆円という数字が載っていますけれども、その日銀のドル買い介入と円資金の過剰流出、これが地価暴騰、また株投機、これに回っていったということがあるんですね。今勤労都民が本当に困っている東京の地価暴騰も、日米関係の、特に日本政府、また日銀の行動が大きな原因になっているという問題が一つあるわけですね。  それから、もう一つ宮崎さんが指摘している問題は、アメリカのレーガン政権の軍拡の負担も日本国民が背負ったということが言われているのであります。「端的にいえばアメリカの軍事支出を賄う巨額な赤字国債はあまりアメリカ国民の貯蓄によっては購入されないで、その大部分が海外資金によって購入されており、しかもそのうち約四四%までが日本国民の貯蓄によって(金融機関を経由して)消化されているというまぎれもない事実」という指摘があるんですよね。そうすると、アメリカのレーガン政権のあの巨額の軍事支出、それに基づく財政赤字四四%を日本国民が背負わされているという構図が明らかにあったわけで、それが今この国際情勢の変動の中で、村上参考人も触れられた、アジアの情勢はペレストロイカじゃないという国防総省からああいう報告が出てくるわけですね。日本アメリカが軍事費を削減するとさらに、今度の報告に載っているけれども、軍事負担をもっと持ってくれということになっていくわけですね。世界の軍縮の大勢に抗して日本 だけ軍拡をやっていく構図が先ほど言った構図に引き継がれて続いていくわけでしょう。  僕は、エンゲルスが十九世紀についてツァーリズムというのはヨーロッパの反動のとりでだと言ったことがあるんですけれども、このままいくとアジアの反動のとりでは日本だというふうに世論から言われかねないような事実が生まれてしまうんじゃないかと思うんですけれども、そういう日米関係貿易摩擦、安保関係とつながっている日本国民のこういう重荷の負担、それと国際的な批判、これについて御意見をお伺いしたいと思います。
  79. 村上吉男

    参考人村上吉男君) 日本国民の負担においてそういうことが行われているかどうかということにつきましては、いろいろ見方とか数字のとり方とかございますので、私は一概にどれがということは申し上げられないんじゃないかと思います。よその国の資金によってアメリカ財政赤字が支えられている、だからそれはその国の犠牲においてで、ずるいじゃないかということなんですが、それなら我が国の政府もそれをやる用意があるか、日本赤字を韓国やなんかのお金に支えさせるだけの度胸があるかというとこれはないし、やはり国民としてそういうものは嫌な感情を抱くと思うので、アメリカも決して、台所が日本によって支えられているということについてはうれしく思ってないと思います。  それから、世界の流れの、米ソ、NATO諸国を中心とした軍縮の中で、私は日本は皆さん方の御努力により、軍拡ではないと思いますけれども、横ばいながら質的向上を目指しているという状況にあるということにおいては、日本だけがちょっと流れに沿っていないということははっきり言えると思います。したがって、そこらあたりをどうしていくのかということが日米間安保のこれからの話し合いと認識の仕方にかかわってくると思うんです。  先ほども申しましたように、周辺諸国を中心に非常に不安感が出てくる一方、この辺の周辺諸国が全部軍縮に向かっているなら、これは日本だけが孤立するんですが、朝鮮半島の状況とか中国の独特な行き方がそうでない面もあることはこれはまた認識する必要があると思うので、そういうところでむしろ日本が積極的にイニシアチブをとる立場にこれからなってくるんじゃないかと思います。その場合にそういう用意があるのか、従来どおり受け身でそのときばったりでいくのか。先ほど沓掛さんから御質問があって私は答える機会がなかったんですが、今の日米関係は、摩擦を従来の延長線上としてとらえるべきか、そうでないと見るかということなんですが、私はもう従来の延長線でとらえたら本当にオオカミ少年で非常にまずい立場になると思います。開戦前夜とは申しませんけれども、はるかにそれを超えた深刻な状況にあると思います。アメリカ日本なしで生きていけますが、日本資源がないですから、アメリカのマーケットなしには生きていけないし、アメリカのマーケットが閉まればこれはヨーロッパが閉まる。米欧が閉まったら、どこへ潮の流れが行っているかをじっと見続けているアジアを初め開発途上国は日本を外してくる可能性がある。そういうまだ分水嶺まで行っていないといえばそうかもしれませんけれども、それに非常に差しかかっている状態じゃないかというふうに思います。
  80. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いろいろ反論したいこともありますけれども……。  最後に野林参考人にお伺いしたいんですが、日米構造協議がガットの原則に外れているんじゃないかという問題を私前々回の調査会で取り上げたんですが、その後、宮澤元大蔵大臣が私と同じようなことをおっしゃっていることを本で見ましておもしろく思ったんですが、九〇年東京フォーラムでの宮澤元大蔵大臣の御発言で、ガットの原則というのは内国民待遇だというんですね。しかし、今度の構造協議考え方というのは内国民待遇ではなく相互主義という主張なのでして、これはとてもガットでは原則にはできませんと。日本の銀行がニューヨークでできることは、アメリカの銀行も東京で同じようにやらなきゃならない、これは相互主義だ、これは結局、いろいろ制度を同じにしなきゃならないわけだと、こう言われているんですね。もちろん宮澤さんは賛成なんで、賛成なんだけれども、性質としてはそういうものだと。だからガットの原則と違って、相互主義で日本の制度をアメリカと同じにしろというものだというんですね。だから我々はやっぱり内政干渉だと言ってきましたし、臨時行政改革推進審議会に宮崎輝委員が出した意見書でも内政干渉と言われるおそれがあるということを言われているんですけれども、先ほどの井上さんのおっしゃるような、日米貿易収支のインバランスが減っていく見通しがもし確実だとして、しかもこういう相互主義という、制度を同じにしろという内政干渉のおそれがあるようなケースでも、野林さんはやっぱり日米構造協議は全体としてはプラスに運用できるとお考えなんでしょうか、お伺いします。
  81. 野林健

    参考人野林健君) 日米がビジネスのルールにおいて特殊な関係になり過ぎてはならない、それは結果的に他の諸国、それはECなどの先進国のみならず、ある意味で非常に日本にとって重要である途上国をも差別する危険がある。こういうことは肝に銘じておかなければならないと思います。  そういう意味で、日米構造協議の中には確かに日米だけがお互いに優遇し合うといいますか、そういう面があるというよりも日本だけがアメリカに譲るという面はあると思います。しかし、国際的なビジネスのルールといった場合、これは自由経済市場という前提ですけれども、やはりアメリカのルールがかなり、普遍的ではないのですけれども、実態面としては強く機能してきましたし、これからもしていくだろうと思います。そういう意味では、アメリカのルールと調整を図るということは大事だと思います。しかし、それが行き過ぎてはならないわけですし、考え方としては、日米構造協議もたまたまアメリカから市場開放という形で出てきた交渉アイテム、争点ではあるけれども、しかし日本としては、日米でどういう協議が行われたにしても、その結果は、つまり日本の中のいろいろなルール、慣習といったものをある方向に変えるとして、それはやはり広く諸外国に利益が及ぶものでなければならないということは忘れてはならないと思います。  ただ実際には、火が出ているところに水をかけるのが精いっぱいというのが政府の対応のように思いますので、その点はこの後二国間の問題ではなくて多国間の中で日本は重要な役割を果たすんだという意識が出てくることを私は期待をしておりますし、既にそういう批判も出てきておりますので、それは非常に健全な方向だろうというふうに思います。
  82. 猪木寛至

    ○猪木寛至君 きょうは、本当に貴重なお話ありがとうございます。お聞きしたいことはもう大体出尽くしたのでありますが、それで私はひとつ、よく問題にぶつかったときにこの図式を出して説明することがありますので、これを見ていただきます。(図表掲示)  私、一九六四年にアメリカに行きました。プロレスという職業で大体アメリカの全部を回ったんですけれども、当時は日本人が本当に少なくて、カンザスシティーなんかへ行くと日本の家族が二家族と大学の教授が一家族というようなことで、そういう意味では日本人はまだ珍しい存在であったんです。まあアメリカという国を地で歩いて、アメリカ人というものにある意味では肌で接する部分があった。今ここで構造協議が問われている中で、アメリカ人目体を我々からすると余り研究されていない。アメリカの方はかなり日本を研究してきているという最近の経過です。そういうことから、先ほど出ましたけれども、今まで日本は敗戦という中でとにかく成長だけ、アメリカも力をかしてやろうということで、この図の赤い部分で、日本は成長をしてきたと思うんです。まあいろんなことも許されましたけれども、ある一つのものから、これが例えば個人ということにすれば自己資金、そして個人の資産ということで、この 全体を含めて信用という部分で、あるいは私がもう一つ何かをやるとすればここの部分で、この位置から物を見なきゃいけない、そしてここの管理者を置かないといけない。  これは経済仕組みをチョウのプロセスで書いたんですが、例えば青虫からサナギに、それからチョウチョウになる。そして羽を生やして飛んでいく。これで一つの生命は、まあ生命は同じなんですけれども、その都度変わっていかなきゃいけない。それをこの図式に書いたんです。生あるものは必ず終わりがある。そういうことから、永続していくとすればその質を変えていかなきゃいけないんじゃないか。それが構造の変化ということである。  今まで日本は、第一次オイルショック、第二次オイルショック、その中でいろいろな教訓を得て、省エネとか、あるいは排気ガス規制、いろんなことにこう対応していき、そして最近では公害問題が特に大きくなっている。その公害も、単なる地域的なものだけではなく、広がりは国境を越えるというか、地球的規模のものに変わってきている。それに今度はどう対応していくかということもある。そういうことで、今、日米構造協議の中で、この二十年間を振り返ってみると、第一次摩擦というのが繊維摩擦、それで第二が鉄鋼摩擦ですね、それからカラーテレビ、自動車、そしてハイテクと、こう幾つか段階があるんですが、ここへきて今までの摩擦とはちょっと意味合いの違う、経済的な側面であるが政治的にも、最も新しい、目に見えない、すなわち文化的にも及ぶような構造問題に今発展してきている。そういうことから我々が本当に日本人の意識、政治家だけではなく、また専門家だけではなく、日本人自身がこの変化をどう遂げていくかということが大きな問題だと思います。  それで、個人のレベルでいえば、私なら家庭、家族、そして東京都民として、あるいは日本人としての顔、まあ私が外に出ればどうあがいても外人にはなれませんね。もう一つは動物として地球に存在しています。そしてあと今度は地球上に生きる生物としてですね。この間アマゾン問題もり上げましたけれども、本当に人間だけが生きているんじゃなくて、生物もともに生きていかなきゃいけないという仕組みですね。  そういう中でこれから日本構造協議をするのに、アメリカ人をどう知るか。あるいはアメリカ人も、相当日本を研究してきていますが、まだまだ十分ではないでしょう。まあ最終的には私は米ソの関係なくして日本構造協議は語れないんじゃないか。もう一つは、アメリカ日本のお家の事情ですね。先ほど出ましたけれども、レーガンさんが軍拡という形で力のアメリカということでやった政策が結果的には破綻をした。ソ連の方にしても、チェルノブイリからいろいろ背伸びした部分がある。そういう構造の中で、お家の事情から経済が成り立たないということで、今平和という大義名分で、これ、先ほども出ましたけれども、本当に平和というものをにしきの御旗というか、そういう形で歩み寄っていくという図式があるんじゃないか。  そういうことで、今まさに日本人が本当に質を、今まではこの部分で物を見ていればよかった、この部分で物を考えていればよかったものが、やはり今日本世界から求められているのはもっとこんな高いところかもしれませんが、とにかくこの経済力の中で我々の目線というのがいつもここでは対応し切れない。それでこういう図を書かせてもらいました。今我々はどこの部分かわかりませんが、やっぱりこれから日本が成長していくとすれば、この質をどんどん変えていかなければいけない。このチョウのあれではありませんが、本当に青虫から始まって羽を生やして飛ぶ、そういうことでこれから日本経済が成長し続ける。同時に、アメリカも同じように、今まで力だけで世界を支配してきたそのおごりというか、その部分でアメリカ自体が今もっと反省をしてもらわなければいけない。この辺の日米のずれが余りにも大き過ぎて、本音の話が出てこない、ここが私はきょう一番指摘したい部分であります。まあ余り時間がありませんので、このことはこれで終わりにします。  そういうことでいろいろ先ほどから出ておりましたけれども、なぜアメリカから要求されていることに今日本がこたえ切れないか、これちょっと参考人の先生にお聞きしたいんですが、まず井上先生に、一つはさっき言った日本の構造の変化という部分で、例えばよく言われる族議員がくっついている、だから米問題とかあるいはいろいろな問題でそういう圧力がいつもあるから、本音としてはそういうことを受け入れた方が有利なんだが、でも、いつも後ろにそういう政治家がバックについている、そのために本当の話ができないということも私は耳にしているんですけれども、その辺いかがでしょうか。
  83. 井上宗迪

    参考人井上宗迪君) 横文字をちょっと引用させていただきたいと思うんですが、すなわちより低いというローアーシングズという英語と、それからより高いハイアーシングズという二つの横文字を引用させていただきたいと思います。多くのアメリカの私の友人が言っている点なんですが、どんな国も経済が成長し所得がふえると、例えばある時代自転車が買えなかった、経済が成長するとみんな自動車を買えるようになる。ローアーシングズはどんな国でも変わっていく。ハイアーシングズは人と人の関係。先生と生徒の関係、親子の関係、上司と部下の関係ですね。ハイアーシングズ、それはそう簡単に変わるものじゃない。日本について、向こうの私の友人ですが、いろいろな人にインタビューをしてきた限り、そのハイアーシングズは変わっていない。それから我々もハイアーシングズはそう簡単に変わるものじゃないと思っているということを言ってくれているんですが、今の構造協議で問題になっておるのは私はハイアーシングズに関連したところであるととらえております。これを猪木先生の御指摘のように短期に変えていくことは私は非常に難しいんじゃないかと思っております。  それともう一つ、オーストリアのウィーン生まれで今アメリカで活躍されているフルシチョフ・カプラという科学者なんですが、その方が日本のあいまいさ、これがヨーロッパが築き上げてきた科学の土台を考えた場合、本当に参考になるんじゃないかという論陣を展開されております。松尾芭蕉が、「蛙飛び込む水の音」、この静寂さにびっくりした。同じ時期にニュートンが、リンゴが木から落ちて万有引力の法則、因果関係を見つけ出したわけです。そこでニュートンはすごくて芭蕉はちょっとという議論が以前あったのですが、フルシチョフ・カプラさんの論陣なんですが、芭蕉の方がすごいんじゃないかというような論陣を展開されております。すなわち、細かいところが見えるようになってきているわけですね。一兆分の一のさらに十億分の一まで科学が明らかにすることができるようになっているわけですが、そこではニュートンが考えたように、あるいはアメリカ人ヨーロッパ人が考えたように、すべての因果関係は還元していって元素や分子で議論できたと言っていたわけですが、そうはなっていない。分解していったら最後に分子や原子に出会う。それがさらに細かく分析できるようになっているわけですが、そこではすべてのものがうごめいている。光子というコンセプトを使っておられるんですが、そこでは何も決まっていないと。その何も決まっていない本当に信じられない小さい世界ですが、それをとらえる際、東洋の人、日本人が持っているあいまいさといいますか、そういうものが役に立つんじゃないかという問題提起をしてくれているわけです。日米構造協議の問題について向こうの方々議論する際、私はいつもこのことを引用してきております。それから、向こうの人にぜひこのフルシチョフ・カプラさんの書いた本を読んでほしいとお願いしてきております。
  84. 猪木寛至

    ○猪木寛至君 今お話があったあいまいさというのは、私も世界を歩いていて本当に痛切に感じるんですね。今まで日本の総理経験者というか、政治家の方が外国に行ったときにいろいろな約束事 をしてくるんですが、そのことが結局その後実行されていない。だからその辺の部分で、これからイエスかノーかということが随分これは問われますけれども。  私がアメリカ行きまして、プロレスというのは大変現実的というか、世相をすごく反映しているんですね。昔、日本の敗戦の直後は、日本人が悪役で舞台で暴れまくる。そうするとお客が来て大変興行が成功した。最初日本人とドイツ人で、その後にソ連の選手が悪役になって、それからイランでああいう問題が起きると、今度はイランの旗を持って出てくる。そうするとお客がものすごく興奮して集まってくる。何か悪役をつくってという、さっきの日本たたきもそれとすごく関係しているような気がするんですね。何かその辺アメリカ人の、非常に単純と言えば単純だしね。  ですから、先ほど申し上げた、日本人がもっとアメリカを研究すべきだ。今政治の中で、お互いの主張だけでぶつかっている。でも、実際話し合えば話し合える部分があるんじゃないか。そこでアメリカの評価というものを全部並べて、これもこれもこれも、日本はこういうことで大変お世話になって今成長できましたよという評価もしてあげると、アメリカ人はいやそれがわかっているんだったらおれたちはもう言うことはないよという、まあそんな単純なわけにはいかないでしょうけれども、非常に構造協議という難しい字が並んで難しい問題のように見えますけれども、実際、人間がやっていることですから、その辺のやはり国際社会における日本人の外交のやり方みたいなものをもうちょっとこちらも研究していくという必要もあるんじゃないか。その辺についてどうでしょう。これは野林さんに伺います。
  85. 野林健

    参考人野林健君) いろいろな御指摘がありまして、私十分にお答えできるかどうか自信ございませんけれども、日本人が錯覚していることがあると思います。それは一つは、日本人は随分アメリカのことを知っているという意識があると思います。これだけ情報がありますし、今は若い人もアメリカに気楽に行ける時代ですし、そういう意味で、またアメリカのいろいろな研究なども、学者その他大変数はふえているんです。したがって日本人はアメリカをかなり知っているというふうに思っているんですけれども、ひょっとしてそれは案外間違いじゃないかと思うときがございます。余りにアメリカがある意味日本からすれば近過ぎて、旅行もするし住んだこともある。官僚なども通産、大蔵等々必ずアメリカ経験を持っている人が多い。それでもうアメリカのことはわかった、かなりわかったという気持ちがある。一方アメリカは、もともと日本への関心も少ないわけで、非常に数の上でも限られている。しかし、この構造協議アメリカ側の日本へのいろいろな要望などは、かなり日本のことについて詳しく勉強し始めたアメリカ人がふえてきている。それは官僚レベルとか政治レベルではまだ少ないかもしれません。しかし、一般学者などでは随分ふえてきている。非常に実践的な訓練を受けておるそういう人たち意見を非常にうまく使って、そういう人たちをうまく使いながらこの構造協議日本への要求というものがあったと思うんです。中には思わず笑ってしまうようなものもありますけれども、しかし大部分はなかなか一生懸命調べたなという感じはします。  一方、日本側アメリカに要求したこと、これは何か余りにも教科書的で、もう既に、経済学者のみならず今まで言っていることしか日本側アメリカに要求していないんですね。これなどは、案外日本側がもっとアメリカのことについて詳しく知る必要があるんじゃないか。抽象的ですけれども、日本アメリカのことをかなり知っているんだという前提を少し疑って、もう一度アメリカの問題を考えた方がいいんじゃないかというような気がいたします。  お答えにならなかったかもしれませんけれども、御勘弁願います。
  86. 猪木寛至

    ○猪木寛至君 どうもありがとうございました。
  87. 高井和伸

    ○高井和伸君 連合参議院の高井和伸でございます。  お三方にお話をお聞きしますが、その前提といたしまして、アメリカ日本に持っているいら立ちがこの日米経済摩擦という側面に出ているんだろうと思っておりますけれども、その背景には、金持ち国日本、お前は国として立派なことをやっているのか、経済的には大国になったんだけれども、もう少し品のいい国になるべきだというようないら立ちがバックにあるんだろう。その一つに、やはり政治の構造というか、日本の政治過程において自分の力でそれを処理する能力が欠けているんじゃないか。おせっかいだけれどもいろいろ要求するというような前提にアメリカ立場があるんじゃないか、本音があるんじゃないか。その裏側にはやはり安保条約というものがあって、軍事力の問題で、それの費用負担というような問題、そういった問題がいろいろ複雑に絡み合って結局はわかりにくくなっているんだろうと、私はそのように思うわけでございます。そういったような前提でお三方にお聞きいたします。  まず井上先生に伺いますが、先ほどおっしゃられた中で、こういった摩擦注目点というようなことで当初おっしゃられました。具体策を早目に出せというように迫られている、そしてテーマが非経済的な側面に行っている。そこで、アメリカの方が自由貿易政策をとってきたんだけれども、その結果、日本によって国威が損なわれている、安全保障も脅かされている、福祉国家仕組みもどうもおかしくなっているというようなことを指摘されました。そういった側面から私が立てた仮説というか総括ですね。私なりの頭の中で整理した総括でございますが、そういった面はいかがでございましょうか。
  88. 井上宗迪

    参考人井上宗迪君) まず最初に、アメリカの政治が立派で日本が落ちているとか、アメリカが消費者重視の国で日本が供給者重視の国であるとか、もろもろのことが言われてきているわけですが、私はすべて間違っているととらえております。また、私だけじゃなくて多くのアメリカ人の研究者、経済学者、政治学者識者が指摘しております。アメリカを理想の国として日本人はとらえ過ぎていると強調しております。そういうことを、御質問にお答えするんじゃないんですが、まず、私の感想を今は言わせていただいたわけです。  それから、今の構造協議ですが、それもアメリカが言っているところももっともなところがあると思うんですが、ただそれが、向こうは賢者の国、すべて非のない人たちが考えて我々に言ってきている、それで我々はそれを実行しなきゃいけないという雰囲気にとらわれている、そういうムードが日本にあるんじゃないかと思っております。私は、まず数字を、貿易の巨額な黒字を減らす。これは減らし始めているわけです。現に減っているわけです。これから減ると予想しているわけです。それから、例えば自動車、鉄鋼が物すごく進出してアメリカの国威を損なってきたわけですが、それを自動車産業は輸出を抑えて海外生産をふやす、鉄も輸出を減らして現地技術協力をする、そういうふうに動いているわけであります。  いずれしても、日本が今まで行ってきたこと、今行っていること、これから行おうとしていることですが、私は、最初に注目しなきゃいけないと言った注目点三つに沿って日本は対応していると思っております。
  89. 高井和伸

    ○高井和伸君 野林先生にお尋ねいたします。  先ほどの当初のお話の中に、アメリカの今までの脅威の相手はソ連だったんだけれども、東欧情勢、いろんな変化を見て、新たに日本がその対象になったんだというような側面をおっしゃっておられました。そしてまた質疑の中で、日本の政治の質が問われているんじゃないかと、外圧でしか動き得ないような日本の政治、こういったものに対するアメリカのいら立ちがあるんじゃなかろうかというようなことをおっしゃったというふうに聞いておりますが、私が言いたいのは、健全野党というような言葉でアメリカ立場を説明したりする流れの中で、現実的に、私が参議院議員にな りまして半年過ぎた段階でやはり同じようなことを考えましてですね、外圧があるからぱっと日本の政府が受けて立ってくれる。ところが、我々が幾ら大きい声を出してもなかなか動かない。このギャップをもう非常に細かいことですがいっぱい感じているわけでございます。  そんなことで、私は、アメリカの政治が立派かどうかそれは別としまして、日本の政治は立派でないという側面をかなりアメリカは意識して、余り表から言えないのをこういった経済構造摩擦というようなことで言っているんじゃなかろうかと推測するわけでございますが、いかがでございましょうか。
  90. 野林健

    参考人野林健君) 先ほど、族議員云々というような御指摘がございました。私はいささか余りにもリアリスティック過ぎるのかもしれませんけれども、アメリカもそういう政治のメカニズムであって、族議員があるのが民主主義のある側面であるという事実はやはり忘れてはならないというふうに思います。そういういろいろな利害をどう国益あるいは国際益という観点から調整をしていくのかというのが政治であって、やはり基本的にはいろいろな個々の社会集団の利益の表現というものがなければならないし、それを代表する人たちもいなければならないし、それを調整する場がなければこれまたならないということだろうというふうに思います。  構造協議について私はいろいろ申しましたけれども、最後にまだ申さなかったことを一つ感想としてお話しさせていただきたいと思うんですけれども、アメリカの今回の報告書の内容をつらつら読むに、私の第一印象は、個別の内容云々ということは別にしまして、これはアメリカのうっぷん晴らしだ。アメリカのだれかというと、特に政府、実際に交渉を担当していた中堅官僚と申しますか、まあアメリカは中堅官僚も民間に出たりして、出入りが激しいわけでございますから、日本のようにずっと長く組織にはいないわけですが、ともかくそういう人たちが長年日本と交渉をしてきた。特に深刻な問題になってきたこの十年、まあ金属バットのような、ある意味でマイナーな問題も含めて経験してきたことは、余りにも日本の対応が遅いし、わからない。そもそも何でこんな小さいことにこだわるのか。それはある意味日本の官僚の能力の高さを証明している。その能力の高さというのは何かというと、つまり、こう言われれば必ずこう反論をする。エクスキューズと言うと大変言葉が悪いのですけれども、極めて巧みに言葉で対応する。日本人は大体お互いの社会的な立場というのがわかっておりますから、それで何となく了解できるわけですけれども、アメリカなどはそういう対応をされても全くわからない。だから、日本側は逃げまくっていると。政治家が約束を破ったり時々うそを、まあ外交的な面、内政的な面で結果的にうそをつくようになるようなことはアメリカでもこれは幾らでもあるわけで、政治家同士は、私はある意味で同じ職業意識で了解し得るところもあると思うんですけれども、問題は、日本の官僚が余りにも頭がかた過ぎる。しかし、日本はそういう訓練を積んでおりますし、組織の中に長くおりますから、アメリカが何か言えば必ず三つぐらい答えが返ってくる。しかし、返ってくる答えがどうもアメリカにははっきり理解できないということで、これは私の仮説、間違った説かもしれませんけれども、ある側面アメリカの交渉担当者の日本の官僚に対するうっぷん晴らしというところがあると思います。だからこれだけ出てきた。うっぷん晴らしの面ということだけで申せば、それが一挙に噴き出しましたから向こうは非常にフラストレーションが解消された。これは日米のアンバランスの問題等々もありますけれども、まあ一、二年はこれでフラストレーションもちょっと静まって、日本側の対応を、じゃお手並み拝見というところではないかというふうに思います。  日米構造協議の一番教育的な意義は、ある意味では、ワシントンの会合などで六十人以上日本の官僚機構から行ったそうで、アメリカは二十何人だとか聞きましたけれども、まあ彼らに一番効果があったのではないか。ただ、彼らは日本に帰ればすぐ偉くなりますから、偉く扱われますから忘れてしまうので、ワシントンでアメリカ側の圧力を受けたその記憶を忘れさせないためにもぜひ監視をしていただきたいというのが私の、これは私の主張のすべてではございませんけれども、主張の一部でございます。
  91. 高井和伸

    ○高井和伸君 、村上参考人にもお尋ねしたかったんですが、時間がございませんのでまたの機会にさせていただきます。ありがとうございました。
  92. 中西一郎

    会長中西一郎君) 以上で質疑は終わりました。  参考人方々一言御礼のごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙の中、長時間の御出席をいただき、貴重な御意見を賜りましてまことにありがとうございました。調査会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十一分散会