運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1990-04-11 第118回国会 参議院 外交・総合安全保障に関する調査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年四月十一日(水曜日)    午後一時開会     ─────────────   委員氏名     会 長         中西 一郎君     理 事         斎藤 文夫君     理 事         下稲葉耕吉君     理 事         梶原 敬義君     理 事         和田 教美君     理 事         上田耕一郎君     理 事         高井 和伸君     理 事         猪木 寛至君                 井上 吉夫君                 井上  孝君                 尾辻 秀久君                 加藤 武徳君                 沓掛 哲男君                 木暮 山人君                 田村 秀昭君                 永野 茂門君                 成瀬 守重君                 宮澤  弘君                 翫  正敏君                 岩本 久人君                 北村 哲男君                 田  英夫君                 堂本 暁子君                 森  暢子君                 矢田部 理君                 山田 健一君                 黒柳  明君                 吉岡 吉典君                 井上  計君                 下村  泰君     ─────────────    委員異動  二月二十七日     辞任         補欠選任     下村  泰君     大河原太一郎君  三月六日     辞任         補欠選任     大河原太一郎君     平野  清君      斎藤 文夫君     野沢 太三君  三月十四日     辞任         補欠選任      吉岡 吉典君     立木  洋君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         中西 一郎君     理 事                 下稲葉耕吉君                 野沢 太三君                 梶原 敬義君                 和田 教美君                 上田耕一郎君                 高井 和伸君                 猪木 寛至君     委 員                 井上 吉夫君                 尾辻 秀久君                 加藤 武徳君                 沓掛 哲男君                 木暮 山人君                 田村 秀昭君                 永野 茂門君                 成瀬 守重君                 平野  清君                 宮澤  弘君                 翫  正敏君                 岩本 久人君                 田  英夫君                 堂本 暁子君                 森  暢子君                 矢田部 理君                 山田 健一君                 立木  洋君    政府委員        環境庁企画調整        局長       安原  正君    事務局側        第一特別調査室        長        荻本 雄三君    説明員        環境庁長官官房        参事官      小林 康彦君        外務大臣官房審        議官       池田 右二君        外務省経済協力        局調査計画課長  北村 隆則君        厚生省生活衛生        局食品保健課長  野村  瞭君        農林水産大臣官        房技術総括審議        官        管原 敏夫君    参考人        朝日新聞社科学        部編集委員    石  弘之君        社団法人海外環        境協力センター        理事長      橋本 道夫君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○参考人出席要求に関する件 ○外交総合安全保障に関する調査  (地球環境問題に関する件)     ─────────────
  2. 中西一郎

    会長中西一郎君) ただいまから外交総合安全保障に関する調査会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る二月二十三日、平野清君が委員辞任され、その補欠として下村泰君が選任されました。  また、去る二月二十七日、下村泰君が委員辞任され、その補欠として大河原太一郎君が選任されました。  また、去る三月六日、斎藤文夫君及び大河原太一郎君が委員辞任され、その補欠として野沢太三君及び平野清君が選任されました。  また、去る三月十四日、吉岡吉典君が委員辞任され、その補欠として立木洋君が選任されました。     ─────────────
  3. 中西一郎

    会長中西一郎君) この際、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、会長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 中西一郎

    会長中西一郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事野沢太三君を指名いたします。     ─────────────
  5. 中西一郎

    会長中西一郎君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  外交総合安全保障に関する調査のため、今期国会中、必要に応じ参考人出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 中西一郎

    会長中西一郎君) 御異議ないと認めます。  なお、その日時及び人選等につきましては、これを会長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 中西一郎

    会長中西一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  8. 中西一郎

    会長中西一郎君) 外交総合安全保障に関する調査のうち、地球環境問題に関する件を議題といたします。  本日は、参考人として、朝日新聞社科学部編集委員石弘之君、社団法人海外環境協力センター理事長橋本道夫君に御出席をいただいております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  参考人方々におかれましては、御多用中のところ、本調査会に御出席をいただきまことにありがとうございます。  本日は、地球環境問題について忌憚のない御意見を伺い、今後の調査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。  なお、本日の議事の進め方でございますが、まず、政府から、昨年十二月十三日の調査会での説明に追加して補足説明をしたいとの申し出がありますので、これを聴取し、次いで石参考人橋本参考人からそれぞれ三十分程度御意見を伺った後、委員の質疑にお答えいただくという順序で進めさせていただきたいと存じます。  それでは、まず政府から説明を聴取いたします。環境庁安原企画調整局長
  9. 安原正

    政府委員安原正君) それでは、お許しをいただきまして、前回の十二月十三日の当調査会での説明に補足して、資料により御説明をさせていただきます。  「地球環境問題」という資料を用意いたしておりますので、ごらんをいただきたいと思います。  一ページ目は、「地球環境問題とは」ということでございますので、これは省略させていただきまして、次のページに入っていただきまして、地球環境問題をめぐる世界動きでございますが、十一月以降のところを説明させていただきたいと存じます。  (7)にございますように、昨年十一月にオランダノルドベイクにおきまして、大気汚染気候変動に関する閣僚会議というのが開催されまして、ノルドベイク宣言が採択されたところでございます。これにつきましては、御承知のとおり、二酸化炭素の排出安定化等につきまして議論がなされまして、先進国としましては安定化を図っていこうということで合意をしたわけでございまして、その安定化レベル及びその時期についてIPCC、そこの次に出てまいります政府間パネル検討を要請するということに相なったわけでございます。  そこで、(8)でございますが、本年二月にIPCCの第三回全体会合が行われまして、今後の検討進め方議論されたわけでございます。その中で、ノルドベイクから要請のありましたCO2の安定化等の問題につきまして、これを受けとめまして検討作業を進め、これから予定されております八月の中間報告の中に検討結果を盛り込んでいこうということになったわけでございます。  そこで、三ページをごらんいただきたいわけでございますが、地球環境問題九項目ほどございますが、当面国際的に大きな問題として特に検討が進められている問題に絞って申しますと、一つオゾン層の保護の問題、そして地球温暖化の問題でございます。その二つの問題等を中心にしまして今後重要な国際会議予定されているわけでございます。  まず、来週になりますが、四月の十七日、十八日に、ブッシュ大統領のイニシアチブによりまして、地球環境ホワイトハウス会議というのが開催予定されております。ここで扱いますのは、温暖化等に限らず広く地球環境問題を取り扱うわけでございますが、主要国十八ヵ国に招請が参っております。そのほかEC、OECDからも代表が加わる予定になっております。各国環境科学経済担当閣僚級代表を構成するということになっておりまして、その大臣級代表で自由な討議をいたしまして、地球環境問題につきましての科学的、経済的な調査研究を今後どういうぐあいに進めるべきか、その検討結果を政策決定にどのようにして生かしていくべきか、あるいはそういう調査研究を国際的にどのように協力をし合って進めていくべきか、この三つの点につきまして主として議論が行われる予定になっております重要な会議がございます。  それから、その次はオゾン層関係でございまして、モントリオール議定書の第二回締約国会議が六月にロンドンで開催予定でございます。これにつきましては、御承知のとおり、オゾン層破壊する特定フロン等につきまして、昭和六十一年度を基準といたしまして十年間に半減するという内容のモントリオール議定書に基づきまして、加盟各国はその規制を昨年の七月から実施に移しているわけでございますが、最近におけるオゾン層破壊に関する科学的な知見によりますと、現在の規制では不十分であるということになりまして、国際的にいろいろ検討をされてまいっております。その結果を持ち寄りましてこの締約国会議でさらに一層の規制強化につきまして結論を出すのではないかと予定されておるわけでございます。  特定フロンにつきましては、できるだけ早く、今世紀末までに全廃をしようという方向で今準備が進められておりますことは御案内のとおりでございます。そういたしますと、特定フロンにかわる代替物質開発が重要になってくるわけでございますが、その関係技術移転等途上国にやっていくという問題がございまして、それを円滑に進める上で資金援助が重要な問題になるわけでございます。それに関連しまして、国際的な基金の設立の問題についても議論される予定でございます。  それから、八月でございますが、先ほども申しましたように第四回IPCCの全体会合開催予定でございまして、これはスウェーデンでございます。ここでこれまで検討が進められてきました結果を中間報告として取りまとめをするということになっておるわけでございます。その中間報告は、十月の末から十一月七日までジュネーブで行われる予定の第二回世界気候会議報告されることになっておりまして、この報告を受けて、世界気候会議温暖化問題に関しまして討議が行われる見込みでございます。最終二日間は大臣レベル議論される予定になっております。この検討を踏まえまして、まだ時期は決まっておりませんが、ブッシュ大統領の提唱に係ります国際会議開催される予定でございます。この会議地球温暖化対策に係る温暖化防止枠組み条約交渉開始最初会議になるということで考えられているわけでございます。  それ以降精力的な交渉が展開されまして、この前のノルドベイク会議によりますと、早ければ一九九一年、来年でございます、どんなに遅くとも一九九二年に予定されております国連会議がございますが、このときまでには採択をしたいというのが全体としての国際的なコンセンサスになっておるということでございます。これが非常に重要な世界動きでございます。  これに対応しまして、政府におきましても地球環境問題に対して積極的な取り組みを進めておるわけでございます。  そこで、その状況につきましては四ページをごらんいただきたいと思いますが、御承知のとおり五月に地球環境保全に関する関係閣僚会議が設置されまして、第一回目が昨年の六月の末に開催されまして、ここで当面の基本的な方向についての申し合わせが行われております。これにつきましては参考資料をつけておりますので後でごらんいただきたいと思います。いわゆる六項目につきましての基本的な方向が示されておるわけでございます。  その後七月に、環境庁長官地球環境問題担当大臣ということで、政府部内の調整に当たるということになったわけでございます。そして予算編成が進んでいく中で、昨年の十月、地球環境問題にはまだいろいろ不確実性がございますので、これを減らしていくためには科学的な研究あるいはモニタリング実施等が必要でございます。さらには技術開発が必要でございます。これらの問題について予算措置を確保し、これを実行に移していくことが必要でございますが、そこで各省庁がバランスのとれた形で重点的にやっていきますために計画を策定しようということで、総合推進計画を策定して、それに従って推進していくという申し合わせが行われたわけでございます。  そしてさらにことしの三月末には、そこにございますように、閣僚会議の下の局長レベルで構成しております幹事会におきまして、「地球環境保全のための普及啓発等推進について」の申し合わせをいたしました。これは、普及啓発を各省それぞれ積極的に展開していこうというのが一点でございます。第二点は、ごみの減量化対策推進しようということ。第三点が、政府部内におきまして率先しまして再生紙の利用を進めようということ。それらの点につきましては、関係団体あるいは地方公共団体に同じく推進していただくように要請しようというものでございます。  以上が大まかな政府の対応でございます。  そして、具体的には予算ということになるわけでございますが、今御審議中の平成二年度の予算におきまして地球環境保全関係予算総額四千五百二十三億円計上されております。これは対前年六・三%増ということで、かなりの増加が確保されておるわけでございます。各省庁とも重点施策と位置づけまして、平成二年度、この予算によりまして施策の展開を図っていくことになっております。  その中で環境庁予算がどうなっているかということでございますが、そこにございますように、地球環境関係では総額二十一億四千七百万円でございまして、これは各省庁役割分担をいたしまして実施していくというものでございまして、金額は二十一億でございますが、伸び率は非常に大きゅうございまして、一一・四倍の予算を計上しているわけでございます。そして組織の方も、体制強化するということで、お認めをいただきますならば、ことしの七月から地球環境部を新設するということを考えておりまして、地球環境保全に関する基本政策企画、立案、調整事務強化するということになっておるわけでございます。さらに研究モニタリング関係では、筑波にございます国立公害研究所を全面改組いたしまして、あわせて地球環境研究センターを設置するということで研究体制強化を図ることにいたしているわけでございます。  以上でございます。
  10. 中西一郎

    会長中西一郎君) 以上で政府からの説明の聴取は終わりました。  それでは、石参考人にお願いいたします。  なお、意見陳述の際は、御着席のままで結構でございます。
  11. 石弘之

    参考人石弘之君) 朝日新聞の編集委員石弘之でございます。かような席にお招きいただきまして、大変光栄に存じます。  失礼して、座って話をさせていただきます。  資料の「地球環境問題」、この資料に沿って御説明いたします。最初の一ページ、一一ページは飛ばさせていただきます。そして三ページから入りますが、最初に「地球環境破壊とリスク」という項でございます。  実は、世界的に環境安全保障という言葉がちらほら聞こえるようになりまして、これは現在の地球環境が実は国際的な安全保障の問題にもかかわってくるという認識が高まってきたためでございます。そして今環境問題をめぐりまして国際的な政治的な紛争が起きております。それが実は①でございます。  最初に「越境汚染」とございますのは、国境を越えて汚染物質が飛んでくる、あるいは環境破壊被害が及んでくるという意味でございまして、最初酸性雨は、これは二十数年来、発生源である中部ヨーロッパと主たる被害国である北ヨーロッパとの間で激しい論争が続いております。あるいは北アメリカでも、アメリカ合衆国とカナダの間で、これも十数年来の政治的な対立となっております。それから海洋汚染につきましても、一昨年北海、バルト海でアザラシの九〇%が死ぬというような大変悲惨な海洋汚染が起きておりますが、ほかに、地中海あるいはカリブ海といった閉鎖及び閉鎖的な海域で各国間のやはり大きな問題となっております。それから国際河川汚染では、ライン川、ドナウ川あるいはエルべ川といった、主としてヨーロッパで何カ国もの国を経過してくる河川、これは上流が主たる加害国、あるいは下流が被害国という図式になる場合が多いんですが、そのような問題も起きております。それから、チェルノブイリの事故で代表されるような放射能による広域汚染といったようなものによって、これは既に越境汚染国際政治の大きな焦点となっております。  それから、二番目の「公害輸出」は、これは国際社会日本がやり玉に上げられるケースが間々ありますが、国内処理に困った有害廃棄物他国へ持っていって捨ててくる、あるいは国内規制が厳しくて立ち行かなくなったような公害発生型の施設を規制の緩い開発途上国へ移転する、あるいは開発援助に伴って、意図的ではないまでも結果的にそれが地域環境に大きな影響を与えるといったようなものであります。それから、国内で既に禁止されたり規制が厳しくなった農薬、医薬品といったものを途上国に行って販売するといったケースもございます。  それから、三番目の「規制の格差」といいますのは、これは日本が自動車で大変経験したことでございますが、日本排ガス規制を厳しくすると海外から日本に車が売れなくなるといった問題もありますし、その逆のケースも出てくるわけでございます。しかも、今、国によりまして環境基準であるとか排出規制、それから食品残留農薬といった規制が違いますので、それによって国際的なダブルスタンダードがもう起きている。これが一つ紛争の種になっております。これはよく農産物の輸出入などで問題になってくるわけでございます。  それから、「環境難民越境」でございますが、環境難民というのも恐らくこの数年来生まれた新しい国際用語と思われます。従来の戦乱あるいは内戦による難民とは違いまして、自然環境破壊によって自分たち地域に住み続けることが不可能になってそこを脱出して都市へ流れ込む、あるいは国境を越えて他国へ流れ込むというケースがこの数年来大変目立ってまいりました。主としてアフリカでございますが、全世界では数千万とかあるいは一億といった人たちがもう既にそのような難民というふうに考えられております。  今後最大の問題は、地球温暖化が近い将来顕著になって、今の予測どおり世界の海面の水位が上昇した場合には、一番新しい予測では、一メーター海水位が上がった場合には世界で三億人が被害を受ける、恐らく数千万人は家を捨てて逃げなくてはならないのではないか、仮にこれを高潮難民と名づければ――早い予測ですと四十年後ぐらいに一メーター上昇します、遅い予測でも来世紀末には上昇するわけでありまして、日本としてもこのようなことを当然考えなくちゃならないのではないかという気がいたします。  それから、最後の「先住・少数民族圧迫」といいますのは、これは熱帯林の問題にかかわる部分が多いのですが、アマゾンに住んでいるインディオ、アフリカピグミー族、あるいは東南アジアの森林地帯に住んでいます多くの少数民族熱帯開発によって圧迫をされるということも、これは大きな問題になっておりまして、国連は一九九三年を世界少数年という指定をいたしましてこのような少数民族の救済を進めることになっておりますが、これは大変悲惨な問題というふうに私は理解しております。  飛ばしまして今度は五ページに参りますが、では、今どのような問題が私たちが緊急と考えなくてはならないかということを列挙したものでありまして、これは私個人の半ば独断に基づくものでありますが、この十数年来世界各地を見る機会に恵まれまして、世界各地を歩いた結果、このようなものが今緊急ではないかと考えた次第であります。  やはり私は、熱帯林破壊が第一の問題と考えております。これは御存じのとおり、日本熱帯材の輸入という形でかなりかかわっている問題であります。  二番目は酸性雨。今一番ひどいのはヨーロッパでございますが、多くの国々で影響を受けた森林の面積がもう半分を超える。ドイツであるとかイギリスであるとかオランダであるとか、それから東ヨーロッパ一帯であるとか、酸性雨は大変にひどい状況になっております。そして日本も、酸性雨関係があるのではと見られる森林の枯死あるいは湖水の酸性化といったものが始まっております。特に今後は、お隣りに中国という世界で三番目の亜硫酸ガス排出国を抱えておりますので、かつてヨーロッパが経験したような、あるいはアメリカカナダ論争が続いているような越境汚染という形に立ち至るのは、私は必然的ではないかというふうに信じております。  それから三番目は廃棄物でありまして、今安原局長からお話があったような、やはりこれは先進国どこでも今廃棄物が大変大きな問題になってきております。その中でも特に有害廃棄物処理に頭を抱えているという国が少なくありません。  それから、四番目の都市への人口集中。これはちょっと異質でございますが、開発途上国で広範な環境の悪化を来した結果、農山村の荒廃がひどくなっております。その結果、都市人口が流れ込んできます。都市といいましてもほとんどスラムでございまして、アフリカ、アジアでは人口増加は二十数年間で二倍になるようなスピードなんですが、都市の膨張だけは五年から十年で二倍になるというすさまじい勢いで今スラムが膨らんでおります。私は、第三世界の最大の問題は、もしかしたらこの都市の急膨張であるとも考えております。  それから、二、三十年後の近い将来に何が問題になるだろうかと考えますと、私は土壌の悪化というのが、これは目に見えないだけに大変恐ろしいと信じております。特に北アメリカあるいはヨーロッパのような、これまで長い農業の歴史があり、高い生産性があった地域で近年土壌の悪化が大変に深刻化しております。特にアメリカの大平原地帯、世界最大の農業地帯ですが、ここにおける土壌の悪化は目を覆うものがあると思います。それからさらに極端な形が砂漠化という形になりますが、これは近年かなり問題になっているような、主としてサハラ砂漠の周辺地帯であるとか、それからインド、パキスタンの国境地帯であるとか、あるいは南米の太平洋岸といった地域では、砂漠の拡大がこれも非常に大きな問題になっております。  それから二番目は、今、地球温暖化が始まったのかあるいは始まらないのか、議論の最中ですが、ほぼもう始まりつつあるというところで恐らく科学者の認識は一致しているというふうに思います。これが二、三十年後には、今の予測でいけば異常気象がさらに多くなっていくという結果を招くのではないかという気がいたします。ここに農業不安と書いてありますのは、一昨年、昨年、アメリカが熱波によって、あの最大の農業国で二五%農業生産が減ってしまうという経験をしているわけでありまして、今後それらの農業不安が襲ってくるのではないか。国内でも既に異常気象の頻発によりまして地域的なさまざまな農業異変が起きているように聞いております。  それから三番目の化学物質汚染といいますのは、かつて私たちが一九六〇年代に母乳から農薬が出たといったときに大変にショックを受けたわけでございますが、今や農薬が出てくるのは至極当たり前であります。私たちもほとんどの人間が体内にもう化学物質を蓄積しているわけでございまして、それが恐らくがんや先天異常の多発と無関係ではないだろうと考える専門家が多いわけでありますが、化学物質汚染はさらに続いております。今後それが近い将来にもっと深刻な問題になるのではないか。一昨年のヨーロッパにおけるアザラシの大量死というのは、恐らく背景にPCBを中心とした化学物質汚染があったのだろうというふうに考えられております。  それから次の海洋汚染も、今は化学物質による海洋汚染が非常に深刻に受け取られておりますが、燐とかあるいは窒素分といった海に栄養分を与えるような形での汚染、富栄養化と呼んでおりますが、そのような汚染が今後深刻になるのではないかということは、これは海洋学者からかなり警告が出ております。  それから、さらに遠い将来になりますと、やはり温暖化による気候異変で、これは台風が大型化してくる、あるいはあちこちで異常な高温が起きる、海面が刻々と上昇してくるといったような地球規模の気候異変、あるいはオゾン層破壊によって紫外線が増加することによりまして皮膚がんがふえてくる、あるいは白内障、目の病気が増大してくる、あるいは農業生産が落ち込んでくるといったことも予測されているわけでございます。  そして次が、このような問題を抱えながら、じゃ、どのような方向で私たち地球環境への対策に取り組んでいくかということでございまして、恐らくその施策方向としましては次の五点に絞られるのではないかと思います。  一つは、法的に縛っていく。これは国際的には条約や協定であり、国内的にはさまざまな国内法によって規制をしていくというのが一つでございます。それから二番目は、政策的な誘導で、例えば二酸化炭素を多く出すところからたくさん税金を取るとかいうような、税制、財政でもって環境への圧力を抑え込んでいくという形でございます。三番目は市民運動、NGO活動でございますが、これは後で詳しく申し上げます。それから四番目は、今日本が大変熱心に始めております途上国への援助である。それから五番目が、技術開発。  このような五点が今後の地球環境施策ではないかというふうに思っております。  そして次に、私が新聞記者としましてこの二十数年来日本環境政策を横から見てまいったわけでございまして、ある意味ではおか目八目でございますが、日本環境政策がどうあってほしいかという私の一方的な希望を申し上げます。  日本環境外交を見ていまして、実はこのようなことを大ざっぱに感じております。  最初に、環境問題は主としてアメリカヨーロッパの市民グループ、科学者、あるいは時には国会議員から提起されます。例を挙げますと、六〇年代後半から鯨を保護せよという声が世界的に起きてまいりました。あるいは最近は地球温暖化を阻止するために二酸化炭素の排出を削減しよう、あるいはフロンガスを規制しようというような形で問題が提起されます。そのとき、大体の場合日本側の反応は、まだ科学的根拠がはっきりしないと、大変否定的でございます。鯨の場合には、科学的な調査結果ではまだとることが可能であるというのが日本の主張でございました。フロンガスが騒ぎになったときには、オゾン層破壊のメカニズムもまだわからないのに、言えるかというような反応が非常に強かったように覚えております。しかし、地球環境問題といいますのは、科学的に証明し切れない段階で手をつけなければならないという宿命を抱えております。これは将来に対する一種の保険であり、あるいは私たち自身のモラル――今の言葉で言うと環境倫理ということになりましょうが、という面が大変強うございます。  第二段階としまして、そのような欧米の問題提起が議会や政府での政策に取り上げられ、あるいは市民運動が盛り上がって各国規制を強めてきます。そして国際的な世論まで高まってきますと、日本側の反応は、日本は特殊事情を抱えているのでそのようなものに簡単に応じられないという反応が出てきたように覚えております。例えば鯨につきましては、伝統的な食文化である、あるいは捕鯨産業の雇用をどうするのだといったような日本の特殊事情があります。あるいは最近の二酸化炭素の問題では、日本のエネルギーの効率は世界で最も高い。絞ったぞうきんをさらに絞り出せと言うのかといったような議論日本国内から出てくるわけであります。あるいは象牙やべっこうといったワシントン条約にかかわる問題では、日本の伝統工芸を破壊する気かといったお家の事情が出てくるわけでありますが、これは各国それぞれにお家の事情があるわけでありまして、例えば二酸化炭素をとりますと、ソ連や東ヨーロッパは、おれたちの国は寒いんだと、寒いからエネルギーを使うのは当たり前じゃないか、あるいは中国は、人口が多いんだ、自分たちの国で今使えるエネルギー源は石炭しかないんだ、だから二酸化炭素が出るのはやむを得ないといったような事情を抱えております。よく日本は、アメリカ世界最大の二酸化炭素の排出国ではないかという批判をしますけれども、アメリカ側に言わせれば我々はもう生産設備が全部老朽化しているんだ、日本のような最新の工場設備並みのエネルギー効率を上げろなんというのは無理だ。それから国だって自動車を前提とした国土である。その国で長距離を走るんだから大型車を導入するのは当たり前であると、彼らもお家の事情があるわけでありまして、日本のお家の事情もその横並びの一つでしかないわけであります。  第三段階で、いよいよ条約づくりの国際会議が始まります。そうすると、日本のお家の事情が大変突出するわけであります。といいますのは、世界がどのような環境の枠組みを目指すかという議論をしている中で、日本の主張が往々にして、すべてとは申しませんが、自国の利益をどうしても主張する。こんなことやると日本の経済に影響をこうむるといったような、古典的な言い方であればエコノミックアニマル的な奇異な印象を国際社会に与えたような気がいたします。当然議論の流れから外れまして、日本に対する批判が起きます。そうすると今度は日本国内では、これは日本たたきだという感情的な反発になってきます。捕鯨が大変典型的な例であったと思いますが、日本の経済に対するやっかみだ、あるいは彼らは牛肉を食っているくせになぜ鯨を食うなと言えるのかといったような感情的な反発になってきます。あるいはフロンガスの場合には、これは御存じのとおり半導体の洗浄に大変使ってまいりましたので、フロンガス規制日本の半導体いじめだというような国内的な反発になってまいります。これが大変国内の世論形成の障害になったような印象を受けました。そしてまた、外圧にやられたといった欲求不満だけが残ったわけであります。  第四段階に、世界主要国がその条約を批准した後でやっと日本が主張する。よく言われるラストランナーということでございます。ところが、その後の対応は大変に模範的でありまして、最も忠実に実行するというのが日本であります。かつて一九七〇年にアメリカにマスキー法という、五年以内に自動車の排ガスを十分の一にするという大変過酷な法案が出たときに、ほとんどは反対したんですが、日本も反対しつつ真っ先にそれをクリアしてしまった。最近は去年から象牙の輸入を全面的に禁止したんですが、つい最近、モーツァルトが使っていたという美術的にも価値のあるピアノが日本に輸入されたんですが、日本の税関は、ピアノの鍵盤の象牙を外さない限り輸入を認めないということで、鍵盤を全部はがして輸入した。そこまで日本というのは大変厳格、忠実に守るという意味においては国際的にはすばらしい国なんです。ただ、日本が守った守ったと言っているときは既に次の問題に関心が移行しておりまして、日本の非常に悪い印象だけが残る。鯨にしましても、ワシントン条約にしましても、最近の二酸化炭素にしましても、結果的に日本は認めたわけです。なぜ結果的に認めるのにこれだけぐずぐずしなくちゃいけなかったのか。その過程において、どうしてもずるい日本人、時間稼ぎしている日本人というような印象を与えたのではないかというふうに私は考えております。  地球環境をめぐる議論というのは、あちこちで危機的な状況が見えてきた地球で、子孫のためにどう守っていくかという議論をしているはずなのに、どうも日本はえてして、守ることは結構だけれども経済的影響はどうかという議論に終始してきたのではないかという印象を強く持っております。世界に貢献する日本というときに、必ずや日本環境問題こそ貢献できると皆さんおっしゃいますけれども、実際にはこのようなパターンの繰り返しであったというような印象を強く持っております。  それで、先ほどに戻りまして六ページに参りますが、(2)で、「日本はどのような地球環境を目指すのか」ということは、今最も世界にアピールをしなくちゃいけないのではないかと思います。これは今地球環境を論ずる基本的なデータは主としてアメリカ、一部ヨーロッパにおんぶして議論しております。やはり日本が独自の情報の切り札を持つべきではないか。それから、もうそろそろ日本のお家の事情から脱却して、日本が率先して国際協力のイニシアチブをとる時期であろうというような気がいたします。  そして(3)で今すぐ何から手をつけなくちゃいけないかという私の思いつきを幾つか並べましたが、その中で、私は熱帯林の保護の緊急性から、もう日本が率先して熱帯材の輸入、消費制限を打ち出すべき時期に来ていると思います。西ドイツでは、自治体が中心になりまして公共建造物への熱帯材使用を禁止するというような動きがもう出ております。ですから、日本でも、少なくとも国や市町村の自治体の建物は熱帯材を制限する、あるいは建物をつくるときに、熱帯材でつくったベニヤの板を使わない、セメントを押さえるための枠を使わないといったようなことが可能ではないか。それから、そろそろ日本は何年後にこのように輸入を規制していきますという長期的なビジョンを国際社会に訴えるべきではないか。それから、主としてアメリカと南米の間に行われているように、債権、つまり国の借金を買い取る形で、その買い取ったお金を実はその国に還元さして、熱帯林を守るための費用に使う。自然と債権のスワッピングと呼んでおりますが、そのようなことに日本がもっと肩入れしてもいいのではないかという気がいたします。  それから二番目は温暖化防止対策でありまして、これはもうたくさん議論が出たので外さしていただきます。  第三番目は酸性雨の防止でございます。日本でももちろん対中国との協力が始まっておりますが、ヨーロッパアメリカの二の舞にならないように、早い時期に中国、韓国と酸性雨の防止の協力体制をつくることが緊急ではないかというふうに考えます。  それから、先ほど申し上げました有害産業廃棄物の対策であります。  それから、実は五番目にあります環境保護の法整備といいますのは、各国が二酸化炭素の排出税に動き始めています。まだ数カ国でございますが、これは私の予想では、かなり近い将来広まってくると思います。それから環境影響製品への課税という意味は、イタリアが始めたような、プラスチックの袋には初めから税金をかける、あるいはアメリカでやっているような、タイヤには初めから税金をかけて、その税金でもって古タイヤ、廃タイヤの回収処理をするとか、あるいは瓶とか空き缶に初めからデポジット制を導入してその回収を促進するといったような法整備をそろそろ日本がやるべきではないかという気がいたします。  それから環境教育の整備。すべては教育にボールを投げると終わってしまうんですが、やはり日本環境教育は欧米に比べてかなり立ちおくれということを言わざるを得ません。  最後にもう一つ。これは本調査会外交・安保とはちょっとずれるかもしれませんけれども、私は今後の環境政策を考える場合、日本が決定的に不足しているのは市民運動ではないかと思います。市民運動はこれまでも七〇年代の公害のときには大変活性化をいたしまして、そのとき日本の公害対策がこれだけ進んだというのも市民運動に負うところが多いと思います。それから行政の監視機構であるとか、政策を補完するとか、特に海外援助の場合には、草の根の手足となって活動してくれるのはそのような市民運動あるいはNGOしかないわけでございます。それから、今求められているような省エネであるとかリサイクル運動といった、よく言う地球に優しい生活というのは、恐らくこのような市民運動からのみ発生するのではないかというふうに私は思っております。  それから、これまでのさまざまな市民運動の歴史的役割ですが、特に強調したいのは、これは次の七ページになりますが、この一、二年盛り上がりました東ヨーロッパの政治的な改革の原動力となったのは環境運動であったということが、もうこれは国際的な定説と言ってよいかと思います。特に東ヨーロッパ世界でも最悪の大気汚染、水質汚染の地帯であったわけですが、これだけ大きなポテンシャルを持っているわけでございます。そして、これまでどうしても日本においては市民運動と行政が反目的な関係になりがちだった、もちろんそれは本質的に欧米においても対立的な関係であるわけですけれども、行政側が積極的に市民運動の人材や情報を活用してきたわけであります。代表的なのは、アメリカ環境庁長官世界自然保護基金のアメリカ支部の会長のライリーであるわけですね。同じようなことが各国環境担当大臣にも例があるわけでございまして、地球一つであるわけでありますから、やっぱり市民運動もあるいは行政も、同じ目的には協力しなくちゃいけないのではないかという気がいたします。  それから「財政的支援」といいますのは、どうしても日本では財政的に市民運動を助成するという形が少ないような気がいたします。海外援助では少し補助が始まったというふうに理解しておりますが、これも欧米のようにもうちょっと市民運動を財政的に育てるという面があってもいいのではないかという気がいたします。  それから「法的な保護」はこのとおりです。  それから「大学教育との連携」は、これはぜひ考えていただきたいんですが、ボランティア活動を社会的に認知して大学の単位として認めるとか、そのような教育の場での配慮はぜひ必要ではないかと思います。といいますのは、一方で近い将来に地球環境問題についての専門家の決定的な不足が予想されております。そのような目を開かせるためにも、大学教育にそのような刺激をぜひ与えていただきたいという気がいたします。  時間になりましたので、とりあえずこれで失礼させていただきます。どうも御清聴ありがとうございました。
  12. 中西一郎

    会長中西一郎君) ありがとうございました。  次に、橋本参考人にお願いいたします。
  13. 橋本道夫

    参考人橋本道夫君) ただいま御紹介いただきました橋本でございます。  きょうお話し申し上げますのは、非常に広い問題の中で、少し絞りまして、地球温暖化の問題とその対応ということについてお話しさせていただきたいと思います。  ここのタイトルにございます海外境協力センターというのは、ほんのこの先月末、初めて環境庁長官のところから社団法人をいただきまして動き出したばかりのものでございまして、まだ正式に皆さんにごあいさつをいたしておりません。そのことだけを前もって申し上げておきます。今IPCC政府間パネルというところの第二作業部会の副議長をいたしておりまして、議長はソ連の国家気象水利委員委員長のイズラエル大臣でございます。そういう関係でこの地球温暖化の問題に触れさせていただきます。  まず、「問題の背景と動向」というところで、これは皆さんよく御存じのことでしょうが、私が特に申し上げたいのは、従来の環境問題とはおよそもうスケール、規模、複雑さ、長さも全部全く次元の違うすごい問題だということでございます。私は、終戦直後からずっと環境衛生それから公害の環境問題を取り上げてまいりました。そういう意味で、戦後は第一次、公害時代が第二次、今度地球は第三次の問題となっておるわけです。ただ、御注意願いたいのは、第一次の問題が何も片づいたわけではない。特に途上国では何にも片づいていないということであります。それから第二の問題はだんだん時代によって移り変わってくると、これも別に完全に片づいたわけではない。そういう中で、百年あるいは二百年のタイムスパンで非常な人類の経験したことのないようなところに入ってきているということを特に強調いたしたいと思います。従来の環境運動的な感覚で取り組めるものではありません。百年間熱意が続くかということが基本であります。これは百年間熱意を続けて、毎十年ごときっちりやってそれをチェックして、そして次に時々飛躍をするというようなことができなければ、地球としてはもう非常に困ったことになるというわけでありまして、人口が三倍になりエネルギーが六十倍、これは考えてみるとすごいことであります。さらに二〇三〇年で一九八六年のエネルギーが二倍になりますし、CO2の放出が三倍に増加するだろうということであります。そしてその中で、現在は先進国の方がエネルギーの消費が大きいわけですが、一九九〇年代の半ば以降から途上国の方がふえてきます。そういうようなことになりまして、途上国の問題もこの問題では決して無視できるような問題ではない。スケールはむしろ先進国以上に大きくなってくるということであります。そして熱帯林がどんどん減少し、砂漠がまた拡大してくる。これは全部この気象やそういうものに関係してきている話であります。現在、五十二億強の人口が、大体二十一世紀初めに六十二億、二〇三〇年に八十七ないし八十九億、二一〇〇年には百億か百四億くらいではないかと、こう言われておるわけです。ですから、同じ部屋の中でこれだけの割合で人がふえてきた場合にどうなるかということをお考えいただくのが一番ぴったりする感じではないかと思います。  その中で、温暖化を起こすというガスの寄与度というのは、これはEPAのデータでございますが、CO2がほとんど半分を占めている。それからCH4、メタンですね。それからCFCこれが先ほどのフロンでございます。それからN2Oでございますね。こういうぐあいになっていますが、この中で今対策が加わっているのはCFCだけです。そのCFCを今世紀末までに半分にカットをするというところまで、これは私はUNEPの非常な努力でここまできたと思います。あれだけ小さな弱い国際機関でよくあそこまで持ち込んだと思います。  そういうことで、このCFCはまず半分のところまできましたが、先ほど安原局長のお話にもありましたように、これだけでは弱いということでさらに厳しくなるという方向でございます。ただこれは一点集中的にたたいて抑え込めるものであります。抑え込んでも大体十年以上たってからでないと結果があらわれない、そういうような代物であるということをお含みおきください。  その中で、CO2は全然一点集中的にたたき込めるものではありません。そういうもので二〇三〇年代にはCO2の濃度が二倍になったときの状態、これがよく言われるんですが、それと等価、これは当という字を使う場合もありますが、CO2当価量という場合には当を使っています。そういうグリーン・ハウス・イフェクトもされております。ここにWMO、UNEP、ICSUが八五年、八七年の会合で大体地表全温度が一・五から四・五上昇する、あるいは水位が二十ないし百四十とありますが、現在IPCC検討しております。いずれこれは正式にされてきますでしょう。いろいろな話をずっと聞いていますと、大体二〇五〇年に海水は五十センチぐらい上がるのは間違いないのではないか、それから二一〇〇年には大体一メートル上がるのは間違いないんじゃないかというような感じのところでございます。私は、最も深刻なこの海水上昇で、日本はもう既に、これは海水上昇ではありませんが、沖ノ鳥島が消えるということに対して二百八十億を日本は投入した。あのちっぽけな島でそれだけ投入したんです。それが太平洋の島とモルジブの島というのは島が大体消えるのではないかという議論になっておりまして、バングラデシュ等はよく日本でも言われますが、島にとってはまさしく生存の問題であるということであります。  そこで、この国際的な取り組みとして、「持続可能な開発」ということを言っておりますが、このCO2の削減もやっぱり持続可能な開発ということが根底にあるわけです。我々は確かにもう既に相当開発しておりますが、途上国はまだ全然開発していません。ぜひそれを頭に置いていかなければならないということでございまして、一九八八年の国連総会の決議でIPCC、インターガバメンタル・パネル・オン・クライメット・チェンジということで、政府間の気候変動に対するパネルというところで、第一作業委員会は予測とシナリオ、第二作業委員会はインパクト、私はここに属しております。それから第三作業委員会は規制と対応ということをいたしております。ただ問題は、そうロジカルなシークエンス、関係で動いておるのではありません。これは非常につらいところでありまして全部同時並行であります。同時並行をやって一番つらいのは実はインパクトでございます。本当は予測がまず出て、そしてそれによってシナリオが決まって、そしてこうなるとインパクトはどうなるかというんですが、そのような余裕が全くありません。そういう点で、今回のレポートが出ても、これは行動を始める準備段階の取り決めのものでしかない。しかもこれは、これから百年続けてだんだんだんだんやっていかなければならないということでありまして、全体の議長のボーリン博士はおっしゃいましたが、この仕事は百年以上かかる仕事なんだ、今回はその事前の準備調査に取りかかっただけのことである、それをゆめゆめ忘れないようにということを申されました。  この中で特に申し上げたいのは、一つはアルシュ・サミットで随分積極的にこれを支持していただいて方向づけをしていただいた。私は、あれだけ不確かさの多いものの中で世界のトップの人が合意されたというのはやはり人類と大政治家の英知だと思います。これは環境運動家や環境学者や環境大臣だけが幾ら張り切ってもできる仕事ではありません。大統領あるいは総理という方が方向づけをしていただいて初めてこれが出発ができたというところであります。そこでノルドベイク環境大臣の宣言が、これはもう環境庁長官からいろいろ言われておりますでしょうが、その中で各国の姿勢が分かれております。このことについては後で申し上げます。  この問題の取り上げというのはUNEPとWMOが協力してやっているわけでありますが、実際、UNEPもWMOも、エネルギーとか開発について何の所管もありません。能力、見識も私は乏しいと思います。それを持っているのはやはりUNDP、国連開発計画とか世界銀行とかUNIDO、あるいはエネルギーではIEAというようなものが一番キーのものでありますが、まだこれは正式に組み入れて入っているわけではない。今後このような実行していくところではここの問題が非常に大きくなるだろうということであります。そういうことで、先ほど企画調整局長のお話のように、一九九二年に向けて、ことしの報告後は枠組み条約環境開発会議というところが一番の出発点の重要なポイントになります。  その活動を少し簡単に御紹介いたしますと、第一グループは、イギリスの気象庁長官のホーグトン博士という方が議長でございまして、このグループは純粋に学問論文ベースであります。すべて学問論文ベースであります。ほかの人の言った、書いたということは全くございませんで、すべて確認されたアカデミックペーパーを基礎にして議論をしているということで、地球を大きく循環するモデルを中心にやっておられますが、海洋をどう組み入れるかとか、雲がどうなるかという点ではまだほとんど入れていない。一番の泣きどころは、いつどこでどのようなことが起こるのかをなかなかはっきり言えないということであります。我々知りたいのは、例えばアジアモンスーン地域ではどうか、あるいは地中海地域ではどうか、サヘルではどうか、そういうことが知りたいわけでありますが、なかなかそこに落として具体的なことが言えるまでには至らないというところでございまして、今回どの辺まで報告で言えるかというところに関心が持たれております。  第二部会は、議長は先ほどのソ連のイズラエル大臣でございますが、ここで私は副議長をいたしておりまして、あと、作業委員会の委員長をいたしております。ここはまた、もう一つのここの泣きどころは、実は学問論文が非常に乏しいわけであります。私はこの仕事をしていまして、いかに先進国が発展途上国にいろいろ今まで植民地をやったりいろんなことをしていました。しかし研究をほとんどしていなかったんだなということをつくづく感じました。これは今後日本にとっても大事なところだと思います。やはり学問がちゃんとしていないと具体的な対応ができないということでございます。そういうことで並行的に進めますから、なかなか理屈の上では難しい問題がございます。  この中で最も切実なのは、私どもは海面上昇であるというように思っています。確かに日本にとっては既に相当な護岸が行われております。日本自身が少しはリスクが高まることが来世紀には起こるかもしれないが、ほかの国のようなことはありません。しかし、先ほど申し上げましたような太平洋の島々、それからインド洋のモルジブアイランド、それからバングラデシュ、それからタイもそうであります。インドネシアのジャカルタももう五十センチ上がったら、大体あそこはもうちょっと荒れると全部つかるんじゃないかと、こう言われております。それからアフリカの国は首都と工業地帯がほとんど海浜と同じところにあるというわけです。ですから、この問題は非常にじわじわ押し寄せてくる難しい問題であります。  それで、なぜマルタがこの国連総会で言い出したかということにつきまして、私はマルタの代表と一緒に食事をしたときに質問をしました。なぜあなたの国は聞いたのかと聞きますと、私の国は小さな島国である、私の国の収入はすべて観光収入がほとんどである、その観光収入というのはすばらしいビーチがある、そこのビーチがだめになったら、もううちの収入はほとんどだめになる。ところが最近、割合高潮とかあらしがふえてきた。私は、米ソ会談のときにあらしの起こったのは象徴的だと思いましたが、それによって住民がパニックになることが比較的ふえてきた、これは大変であるということで主張したんだというわけであります。ですから、日本がどうもないからこれは大したことはないという感覚は絶対に持ってはならないということを強調いたしたいと思います。  それから、アフリカ大陸のバイオマスであります。バイオマスというとえらい進んだような話のように聞こえますが、これは簡単に言いますと家をつくる木とか薪であります。これがどんどん減ってきているということでありまして、そして婦人の年間労働時間の三分の二は薪拾いに充てられておる。それから薪の取り合いで人殺しが起こるというような問題であります。そういう植物の資源、エネルギー源がなくなってきている、これは深刻であります。まさしく生存にかかわります。  それから干天と洪水。これは別に温暖化がなくても起こっておるわけであります。しかし、今起こっている異常がどの程度温暖化によって起こっているかということはまだわからない。私はこの間初めて知りましたが、地球の割合暖かい温度というのは温暖化現象で実は暖かくなっておる、しかももともと温暖化があるんだ。しかし、そこに温暖化がまたさらに進み出している、その影響かどうかがなかなかわからぬのだというよう伺いました。  それから水資源であります。これは、アフリカ等の途上国の工業都市のエネルギーはほとんど水力発電によっているんですね。これ調べてみますと、非常に途上国の水力は高いです。ところが干天が来ますと水位が下がってしまって電気ができないわけです。それから、ザンベジ川に関係しましたが、水は谷底を流れているが、それを揚げるポンプを回す電気がない、こういうわけであります。非常に苦しい。これがさらにひどくなる。現在でも、八一年から三年にかけて三年間の干ばつがザンベジ川流域で起こっています。病気の七割がすべて悪い水関係の病気であります。これが温暖化になるとさらに激しくなってくるということであります。それから、あと水資源、もちろん塩水化とか、遡上してくるとか、そういう問題がございます。  それから、農業生産は、ウクライナ地域と米国中西部の穀倉地帯がどうなるか、ひどいダメージを受けた経験もぽつぽつ今まであるわけでありますが、それを受けて二五から五〇%の削減、それが減産になった場合に世界の市場に大きなインパクトを起こすということであります。それで、値段は上がる、それから市場のインパクトが起こるということが問題になっています。  人間居住で環境難民のお話が既にございましたが、砂漠を遊牧の民として歩いている人々も非常にこれは困ってしまうわけです。水がなくなり地下水がなくなってきます。地下水というのはストックであります。それがなくなってくるというわけであります。  まああとは、このようなものを検討しておるということで、特に御説明は申し上げません。確かに少し、大体三百から五百キロメートルぐらい暖かいところが北に上がっていく。例えば東京が鹿児島ぐらいのところに来るんじゃないかという感じでございます。それで、ある点で熱帯エリアが少し上がってくるだろうということの警告はあります。  それから、この中で余り言いませんでしたが、私ソ連の学者の話を聞いていまして、永久凍土帯、パーマフロストと言われます、そこは凍っているところですが、あそこが解けてくるとこれはまたすごく厄介なことになるということをつくづく感じました。先ほどのメタンガスは出てまいりますし、それから有効成分が全部とろけ出して出てしまうし、今まであったわずかな乏しい生物種がすべてだめになってくる。しかし、ある面では開発ができるようになる。それを目指して今ソ連、カナダ、ノルウェーは北極の開発を一生懸命やっておるわけです。しかし、それを超えると今度はまず砂漠になるだろう、数十年の間に砂漠になるだろうと言われております。しかし、ソ連の発表にはその上の住民の話は一切ございません。僕も驚いたんですが、すごく困ると言いながら住民の話が全くないというような姿でございました。  第三作業部会の方は、アメリカが議長でございます。日本の通産省の横堀さんが最も重要な工業とエネルギーのセクションで座長をして、非常な努力をしていただいております。ここが規制と削減に関する警告が最も大きい関心の的でございます。何とかいい報告がまとまることを期待します。  それから熱帯林業とか農業、河川の方の問題がございますが、再度申し上げたいのは、海面上昇という問題は二〇五〇年ころには相当島国では問題になるでしょう。日本ではございません。島国では問題になるでしょう。あるいはバングラデシュとかそういうところで問題になるだろうということであります。  それから、「政治・外交行動の実績」としてここに出しておりますが、これは八〇年代はよく言われて私は認識を新たにしたんですが、貧困と対外負債と並んで環境というのは三つの大きなテーマになっていました。その中で環境が、これは米ソの冷戦の問題が一応一つの区切りがついたというようなことで環境がぐっと上がってきたというところはありますが、ここでソ連・東欧の問題が上がってきますと、果たしてこの問題がどれぐらいのところに今度は位置づけられるか。国際政治の中での位置づけというのは、私は率直に申して不安であります。特に、東欧の今の環境問題というのは、日本の戦争直後か戦前のような全くひどい状態でありまして、ソ連もかなりこれに近い。一九七〇年代の日本の姿ということでありますから、なかなかこの問題は国際的に関心がどこまで保たれるかということに率直に申して私は不安を持っております。  しかし、アルシュの首脳会議での宣言で非常に強調していただきました。ここでいろいろのCO2の凍結ということが大きく問題になりますが、皆さんのお手元に参考資料でアネックスというのが配ってございます。これの三番目をごらんになってください。これは先ほど石先生からもお話がございました。日本は非常によくやっているが、しかしやる気があるのかというような感じについての御批判でございましたが、どれぐらいよくやっているかということを御理解をお願いするために、私はここに整理をして出したわけであります。日本カナダアメリカとフランスとイギリスとオランダとスウェーデンと西ドイツとあります。この中で省エネをどれだけやったかというと、一九七五年を一〇〇とすると、これは低い方がいいわけですが、日本が七一、カナダが八五、アメリカが七七、フランスが九四、イギリスが八六、オランダが八八。スウェーデンは九九、何もやっておらぬですね。それから西ドイツが八六。これはOECDのデータであります。  それから、今度はエネルギーをGDP当たりどれぐらい使っておるかというのを、下のところのトータル・プライマリー・エナジー・リクアイアメント、GDPというやつでございますが、日本が○・二六、カナダが○・六四、アメリカが○・四四、フランスが○・三七、イギリスが○・四三、それからオランダが、随分熱心に言っていますがエネルギーは使っているんですね、〇・五〇。それからスウェーデンが○・五四、西ドイツが○・四一八。人口割にしてみますと、やはり日本は、これで見ていただきますと、最初のけたの数字だけ見ていただきましても日本というのは非常に抑えておるということは事実であります。  しかし、炭酸ガスにいたしますと、日本に対してやはりフランスは、そこにございますように、原発が七一%もございますからフランスは非常に低いです、日本よりも低いという姿であります。それからカナダも割に低い。カナダは広い国土で六四%を水力発電でやりますからこれは非常に恵まれております。それからスウェーデンもこれで調べてみますと、原発を四五%、それから水力を四九%。スウェーデンは原発をやめるとこう言っておりますが、一つはとめようかと言っているだけの話でありまして、原子力を四五%も現在の発電には使っておる。それから水力は四九。最も有利な姿であります。こういう形であります。  次はSOxを見ていただきますと、GDP当たりで見てみますと、日本が〇・八一に対してカナダは一一・三八。物すごく出しています。それからフランスは三・六二。原子力があるのになぜこんなに出すのかと思います。それからオランダは一番努力をしているなと。スウェーデンは二・六三ということであります。西ドイツは四・一一二。それから人口当たりにしてみましても日本はSOxを随分抑え込んでおります。それからNOxにつきましても、その下のNOxのGDPを見ましても、日本はこれは非常に抑え込んでいます。人口当たりでも抑え込んでおります。  ですから、これは私はアメリカカナダに昨年とことしの初め参りまして、日本は過去二十五年間かけて必死になって公害対策をやり、そしてエネルギー危機が来ても、アメリカのようにエネルギーの問題があるから環境は緩めるということはやらなかった。あるいは代替エネルギー法をつくっても、日本の法律には環境保全の条項がちゃんと中に入っておる。そして非常な投資をまず公害対策にやり、それから自動車の対策にやり、それから省エネルギー対策にやり、約二十五年間かけてやっとここに来たんですということを申しました。  しかし、ここで御注意願いたいのは、効率がいいからふやしてもいいという話では全然ないということであります。これは先ほど石さんの言われたとおりであります。ほかの国は効率の非常に悪いことをやっておりますから減らすのは楽であります。日本はぎりぎりまでやっておりますから減らすのは難しい。しかし、効率がいいから日本のCO2を出すのをふやしてもいいというようなことには一切つながらないというところが国際的な厳しさだということをよく頭に置いていただきたいと思います。  そこの問題、先ほどのペーパーの方にまた返ってまいりまして、ここの中で、よその国が熱心に言っているというのは確かにこれは僕は偉いと思います。というのは、東欧の変化と中国の変化を見てもわかりますように、確かに西と東とはどうも対応が違うと思います。こうあるべきだという方向はどっと出します。何をしているかは全然話は別であります。日本は何をしているか。何ができるかびしっと固めてからしか物を言わないから、非常に煮え切らぬ、けしからぬと、悪い印象を持たれる。しかしやっていることはすごいことをやっている。実はそこが今の一番つらいところであるということを私は申し上げたいと思います。  日本の悪いことは非常に世界的に喧伝されて、どなたもよく知っておられますが、すぐれている点を言うと、日本国内ではたたかれる、それからそれは無視するということでありまして、私は、外交の中で環境というのは十分外交の道具に使い得る。私はOECDの中にも勤めておりました。国際会議にはもう随分出ております。ほかのことを別にして、それだけでたたこうと思ったら日本ぐらいイメージのつぶしやすい国はありません。これをやっぱりどうするかというのは、私は日本の政治の物すごい問題点であり、日本外交でも猛烈に大きな問題点ではないかということを思います。しかし、日本の持っている長所と貴重な経験というのは大した人類の資産であります。これだけの国の中に一億二千三百万生きておるわけであります。しかも何とか成長しながらエフィシェンシーはすごいことをやっています。ただ、伸びるのをどうやって抑えるか、そこに問題があるわけであります。  ただ、日本のやり方のまずさと、フランスの非常にあか抜けしたやり方をちょっとここへ書きました。フランスは三つの委員会以外に、アルシュのサミットのときに、IPCCの方とも話をして途上国だけのグループをつくって、フランスがその座長をして非常によく世話をしております。お金も技術も余り出しません。ただ、世話だけよくやっています。これは実にうまいやり方だと思いますね。そういうやり方をフランスはしている。これはフランス外交の勝ちであります。  私はずっと今まで環境のことをやってきまして、世界でエネルギーと環境政策が統合的に運用されている国は日本を除いてはありません。どこの国に比べても、これは実際そのメンバーというのは調べてきましたからはっきり言えると思います。ですから、外国ではSOx対策は大学の四年間ぐらいのステージである、日本はこれはやりました。NOx対策は大学院の修士課程ぐらいです、これも日本はやりました。乗用車の排ガス規制はこれは大学院博士課程ぐらいです、これも日本はやりました。世界でやったのはアメリカだけである。ヨーロッパはほとんど何もしていない。それから代替エネルギー対策、これはかなり進んできていますが、費用対効果が全然合わないというところに問題があるんです。しかし、日本の持っている経験と技術というのはすごいものを持っている。私はここに、日本はたたかれるばかりでなく自信を持って、別に偉そうにやるということじゃなしに、日本の持っている経験と技術をもって国際的なリーダーシップをとってほしいと思います。  次のところで、IPCCのメンバーの国の中でのギャップを申し上げます。  環境問題ということについての認識ギャップがすごくございます。これは特に私は強調したいと思います。これは、もう一つの重要な問題は、ここの最初に書いてありますように、先進国途上国で問題の受け取り方が違います。先進国、例えば日本ですとライフパターンを改めなければいけない。地球に優しい生活、すばらしい話です。アメニティ、みんなすばらしいです。そのとおりです。いいです。しかし、CO2を安定化しましょう。それはもういいですね。ところが、途上国にしますと全く生存の問題であります。現在既に生存の問題であります。アフリカはまさしくその姿であります。人口はふえて、GNPの伸びはそれに合わないでむしろダウンして困っている。しかもバイオマスは困っている。こういう姿の中であります。ですから全く受け取り方が違う。そのとき日本的な説明だけでは到底相手を説得することはできないという問題であります。しかも島国にとっては国土存立の問題であります。今オーストラリアは非常に熱心に島国のバックをしております。日本は今まで随分地盤沈下やなんかで困って一生懸命やってきました。それをやはり生かすべきだと私は思うんです。非常に高尚な技術も結構ですが、日本の治山治水という長年の伝統というのをもっともっと国際的に応用する。これは例のバングラデシュの問題をとりましても、あれはもう日本とおよそスケールの違う問題でありまして、日本の利根川のことを考えますと、徳川幕府ができて十六年たって初めて河川改修を始めて、それで、昭和五十年ごろになって初めて、まあまあよかったかと思ったらぽっと事件が起こったというような姿であります。つまり四世紀ぐらいかかってやっておるわけです。ですから短いことでできることではありません。治山治水というのは本当に基本の姿で、私は途上国も随分回りましたが、ほとんど治山治水はできていない。ましてや護岸はできていない。それが実はこの地球問題の非常に大きなポイントだと思います。  政策表現の態度については先ほど申しましたからもう省きます。日本は何とかここをもう少し政治、政策のロールと行政、技術とをぴしっと分けてやれという方向を打ち出すというような国にならなければ国際的には非常にまずいということを私は思っております。ですから、三千億も出して非常に一生懸命努力しておりますが、悪いことだけでたたかれているのは全く分が悪いというのが私の現在考えているところであります。  今後の日本の役割としまして、やはり百年を超える長期間でやらなきゃならない。百年から二百年であります。これはすごい問題であります。今までそういうことは絶対にありません。しかも生存にかかわる問題であります。ですから、そういう問題に取り組むというのは一時の熱気でやれることでは全くないです。それからほかの国もすごいことを言っておりますが、一九六八年から酸性雨のことを言うものの、いまだほとんど何もしていないというのがヨーロッパの姿であります。というのがアメリカの姿です。私は、だからしないでいいと申しているのではありません。いかにすごい問題であるか、これはエネルギーと環境が統合されていなければ絶対にできない話です。日本はそれを超えました。超えましたら今度は、日本としての今後の問題は、いかにCO2をふやすことなく日本が成長できるか。特に二〇三〇年以降それができないと袋だたきに遭って単なる孤立どころの騒ぎではないと思います。  通産省は一生懸命今技術開発、テクノロジーブレークスルー等をやっています。私は通産省と随分けんかもしましたが、随分すばらしいことをやります。しかし、それだけではできない。問題は制度であります。例えば地球の電力の配分にしましても、やはり草の根の電力が伸びるような制度にどこまできたか、随分最近改良してくれています。電気事業法を改良してやってくれています。まだまだしかしおくれています。日本のアモルファスはスイスに輸出されて、高速道路の壁に埋め込んで、そしてローカルの電気を供給している。日本の燃料電池はよその国に輸出されてそれをまた使って発電をしようとしている。アメリカはインドに対するODAでコジェネレーションをどんどん進めているのです。日本も随分いいこともしていますが、まずいこともあるのも本当であります。私は両者があるところが本当の姿であると思いますから、今後のODAにおける環境配慮、これは非常に大きな問題で、日本環境アセスメントとはおよそ違います。これはもう詳しい説明はいたしませんが、お配りした資料の中に入っておると思います。  アネックスのIというものの三枚目の資料に、OECDの理事会が勧告しました発展途上国におけるODAの環境アセスメントはこれを注意しろということを書いております。まず問題としてa)の「土壌及び土壌保全」は日本はほとんど経験なし。「砂漠化にさらされている地域」、これもなし。「熱帯雨林及び熱帯植生」、これもほとんど全くなしに等しい。「水源」はかなりある。しかしながら集水域単位としてはやっていない。それから「魚及び野生生物の保護」、これはかなりやっていますが、サファリというような大きなスケールでは物をやっておりません。それから「固有の価値を有する地域」、これはかなり持っていますが、途上国ではどこまでやっているかわかりません。次のg)はかなり経験を持っております。都市、産業の公害問題、これはかなり経験があります。しかしh)は先ほど石参考人のおっしゃった少数部族の問題でありますが、これは国際的な構成、あるいは地域における構成という問題で極めてセンシティブな問題になっています。世界銀行もこのことを融資の条件の中に入れてやっています。難しい問題ですが、これは避けて通れません。  そして、次の3のどんなものをアセスするかということの中にございます「再生可能資源の利用における重大な変更」、これは日本はまずやっていないです。それからb)の「耕作法及び漁法における重大な変更」、これもまずやっていないです。「水資源の開発利用」、これはやっています。流域管理がやっと建設省の最近の流域の管理計画ということで、非常にはっきりしてきました。「インフラストラクチャー」はやっています。「産業活動」もやっています。「採掘産業」もやっています。廃棄物処理もやっています。  このように、日本のアセスという感覚だけでは到底ODAのアセスの問題をこなすことはできない。これを早急に埋めるというのはよほどの人材の養成と層を広くし厚くする必要があるということを特に申し上げたいと思います。  最後に私が申し上げたいと思いますのは、やはりお金を出すということだけではだめだ。人が出ていって一緒に汗を流して一緒に考えるということをしなければだめだ。非常にそれが不足しております。私は、役所をやめましてからインドネシアのスマトラの田舎で井戸掘りもいろいろやってみました。やはり一緒に汗を流して一緒に考えるということがなければだめです。しかも、いろいろな機関がございますが、現地の長期専門家としてODAでやっている人のすばらしい努力、これはぜひとも買ってください。本当に長期専門家で現地ですばらしいことをしているということを特に申し上げたいと思います。  最後に再度申し上げますが、ぜひとも二十一世紀の中ごろにはCO2をふやさないで、むしろ減らして経済成長をするということを日本が身につけるか否かというのが日本の死命を制するということで、地球環境問題は日本にとっての問題であります。  終わります。
  14. 中西一郎

    会長中西一郎君) ありがとうございました。  以上で参考人方々からの意見の聴取を終わります。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  15. 野沢太三

    野沢太三君 野沢太三でございます。私に与えられました時間は往復三十分でございますので、その範囲の中でよろしくお願い申し上げたいと思います。  両先生におかれましては、当外交総合安全保障調査会のために御出席をいただきまして、貴重な御意見をいただきましたことをまずもって御礼を申し上げる次第でございます。  地球環境の良好な保全につきまして、全人類の将来のため、また我が国の将来のために、これから連帯をして取り組むべき大きな課題であることにつきましては、御指摘のとおりと考えるところでございます。とりわけ資源エネルギーの大部分を海外に依存し、加工貿易という宿命を負いながら、しかも世界のGNPの一割以上を占める我が国の責任というものは大変大きいものと考える次第でございます。既にこれまで高度成長時代にさまざまな公害問題あるいは環境問題に取り組みまして多くの克服すべき課題を抱え、この中で問題解決の技術、手段あるいはその結果についての経験、教訓を有する我が国の果たすべき役割というものは大変大きいものと考える次第でございます。参議院におきましても、我が国がこれから地球環境保全のために貢献し得る道がどこにあるか探求をいたしまして、国民の期待にこたえるべく努力をしてまいるつもりでございます。  橋本先生におかれましては、これまで環境庁の諮問機関でございます委員会に所属されまして地球的規模の環境問題に関する懇談会特別委員として御参加いただいております。また、本日いただきましたペーパーに、石先生も御指摘をしておられますが、地球環境問題の一つの考え方として、まず第一に先進国の経済活動に起因する問題としてオゾンの問題、CO2の濃度の増加問題、あるいは酸性雨問題等を挙げておられます。また二番目に、開発途上国において発生している問題としては、熱帯林の減少、砂漠化等が指摘を受けておるところでございますし、また、先進国及び開発途上国のいずれもの活動に起因するものとして、野生動植物の絶滅あるいは海洋汚染等が分類されているのは御承知のことであろうかと思います。  ここにおきまして、いろいろと御議論を伺いますと、このような分類にもかかわりませず、やはり先進国の責任、あるいはまたそこで果たすべき役割というものが大変大きいと思うわけでございます。特にオゾン層の問題、CO2濃度の問題、酸性雨の問題というものは、まさにこれは我々のつくり出した文明の結果としてでき上がったものと考えられるわけでございますので、これらに対する取り組みもやはり先進国がまず第一に手をつけるべきこととこれまでも幾つか御指摘をいただいたわけでございます。  そこで、現状況におきまして、日本のこれまでやってきた経緯、それから国際的な位置づけの中で、さらに諸先生方、政府並びに議会に対してこうしてほしいんだという問題について、端的にひとつ御指摘をいただければ幸いでございます。
  16. 石弘之

    参考人石弘之君) 政府と議会に対しての希望ということでございますので、私は、日本がこれだけ国際的に大きな影響力を持った現在におきまして、まず日本はこのような地球環境を考えているんだ、日本は将来のためにこのように環境を改善するなり保護したいんだという世界に向けての日本のメッセージがほとんど伝わっていないということは極めて残念に思います。  ここにオランダが出しました、これは「ツー・チューズ・オア・ツー・ルーズ」という、選ぶべきか失うべきかというようなものでありますが、さっき橋本先生からもお話がありましたように、確かに何をやっているかというと疑問でございますが、少なくともオランダはこのようなものをもって我々の国はこうやるんだというメッセージを世界に送り出しているわけでございます。ですから、日本もそのような積極的なイニシアチブをとることが日本国際政治上あるいは地球環境上において今一番重要ではないかと思われます。ですから、日本がこんないいことをやっているんだ、同時に日本はこれだけの決意を持っているんだということをぜひ示していただきたいというふうに考えております。
  17. 橋本道夫

    参考人橋本道夫君) 今おっしゃった御意見とほとんど同じでございますが、やはりプラスの面とマイナスの面とございまして、政府のレポートでは大体マイナスの面は余り書きません。プラス面だけ書きます。私は、両方をちゃんと書く、それで両方の全貌をちゃんとみんなに正しく知ってもらうことを対外的に宣伝とともに告白、ざんげもする、そして直すということが基本だと思います。  その中で、特に私は、製造業等は相当なことをやるようになっておりますが、中小企業はまだわかりません。問題は商社であります。やはり世界の資源やそういうものの動きをいじっているのは商社でありまして、やはり持続可能な開発としてどこまで日本がぐっぐっと物をとってやっていけるか。例えば、LNGの貿易の七八%を日本が占めるという話を聞きましてびっくり仰天しました。これはなくなってしまえばもうどうにもなりませんから、やはりそこらのところをどうするかということが一つ。  あとはNGOと政府関係であります。NGOというのはなかなか難しいことも僕はよくわかります。私も住民運動にぼろくそにやられました。けれども、ぼろくそにやられても、これはけんかしながらでも一緒に手を握るところはやる。NGOの方も、手を握るところは手を握るということをちゃんとしなければ、日本というのは本当に困った国であると思います。
  18. 野沢太三

    野沢太三君 大変有益なお話をありがとうございました。ひとつ環境庁ほか関係の官庁におかれましても、今の御指摘についてはしっかり承っていただきたいと思います。  こういう中で、途上国における問題というものが看過できない状況にあると先ほどからも御指摘のとおりでございます。しかし、発展途上国の経済状況その他もろもろの状況からいたしますと、なかなか自力で問題を克服する、環境問題まで手が回らないという感じが大変強いわけでございますが、途上国がこれから何をしてもらったらいいのか、また何をなすべきなのか、そしてまた自律、自活をして克服が可能なのかどうか、それに対する我々のやはり援助なり進め方協力の仕方というものについて御意見を賜れば幸いでございます。先ほどからも幾つかございますが、これについてひとつ重点的にお話をいただきたいと思います。  石先生におかれましては、特にサヘル乾燥地帯の御経験等を踏まえた御意見がいただければ幸いでございますが、よろしくお願いします。
  19. 石弘之

    参考人石弘之君) 途上国といいましても、私は三つぐらいに分類できるような気がいたします。例えばアフリカは五十二カ国ございますが、その中で何とか自律できる国、それから援助で支えられてやっていける国、それから、言葉は悪いんですが、例えば破綻状況でどうしようもないといったような、三つの国に分けて考えることが可能だと思います。  その中で今一番我々が集中しなくちゃいけないのは二番目のグループで、恐らくアフリカの三分の二以上を占めるというふうに私は考えておりますが、今援助を投入して、あるいは人材を投入して、何とかその国の環境を支えないと破綻状況になってしまうと考えられる国が幾つかございます。そこにまず当面援助あるいは人材を集中すべきではないかというふうに考えております。そうしますと、国名を出すことになりますが、例えばエチオピアであるとかモザンビークであるとかアンゴラであるとかあるいはマリといった、これは環境そのものが破綻状況で立ち行かなくて、ちょっとした気候変動のたびに干ばつあるいは大洪水によって多くの人命が失われるという国になってしまうわけでありまして、それから、もちろん第三グループのかなりひどく痛めつけられた国は、これはもう今徹底的に手厚い手当てが必要だというふうに考えております。ですから、当面日本の戦略は、僕は第二グループが中心ではないかというふうに考えております。
  20. 野沢太三

    野沢太三君 大変よくわかるわけでございますが、先ほど橋本先生からも、フランスが非常に途上国の指導といいましょうか、援助に関して独特なやり方で成功しているというお話でございましたが、いいことであれば日本もどんどん後を追ってやったらどうか、こう思うんですが、御意見いかがでしょうか。
  21. 橋本道夫

    参考人橋本道夫君) 今の先生の御質問で、私はフランスのやり方は外交的に極めて上手だということは言いました。本当に技術的にどこまでいいかというのは、別にそこまでの評価はいたしておりません。しかし、日本外交的に極めてまずいと思います。やはり途上国をどういうぐあいにもっと日本がそれをサポートしてやるかということを本当に考えないと、これは向こうへ幾ら結構なことを言っても聞きません。ですから、大きな会合へ行きますともう途上国は圧倒的多数ですから、それにだっと抑えられたらもうどうにもならないというところがございますので、そこが非常に大事ということが一つです。  それからもう一つは、フランスはやっぱり元植民地がありますが、日本はそれがございません。植民地とか宗教とかそういう問題がございますから。私は、日本も長期の専門家を優遇して、そして一定の期間勉強をして、そして彼らの業績に対してもっともっと国としてすぐれた人は認めてやるということが基本ではないかと思います。ただし、非常な高度の学問の生きる場所ではありません。テクノロジートランスファーといっても、相手の最もプリミティブなところでやるわけですから、そこをどういうぐあいにするかは日本の技術援助やすべての援助について、本当にこれは努力をしないと、帳じりで大きな金をどっと動かすということだけでなかなかできるものではありません。例えば日本の明治の中ごろの時代に黒四ダムをぼんとつくるというようなことが起こるわけであります。これは相手にとっては非常に難しい問題でありまして、その辺を日本はこれからどういうぐあいにするか。外務省の開発の大学院もできるそうですから、そこらで研究していただくことを私は望みます。
  22. 野沢太三

    野沢太三君 ただいまのご指摘にもありますように、外国の援助で働いておられる方々あるいはそれからまた帰ってくる方々、そしてまた再度出かけていく方々、こういう方々に対する国としての応援、あるいは民間におきましてもその皆様の処遇というような面で見ますとどうもやっぱり十分でないという声をしばしば伺うわけでございます。今の御指摘は私どももしっかり受けとめまして、今後の施策に反映をさせたいと考えるわけでございます。  そこで、今のお話の中にもありましたように、援助というものが今後どうあったらいいかということは非常に大きな課題だろうと思いますが、幸い我が国は現在の経済力によりましていわゆるODAという面で世界一のレベルに達したわけでございますが、その実態を調べてみると、大プロジェクト中心といいましょうか、向こうから頼まれたものをやるということもあるかもしれませんが、環境面での配慮というものが極めて乏しかった、あるいは欠如していた、こういう御指摘もちょうだいしているわけでございます。幸い最近になりまして、タイ国に初めての公害防止のノーハウを提供する教育研究機関を設置することが決まった。大変歓迎をするわけでございますが、タイ国というのはどちらかというと、先ほどの石先生の御指摘によりますと、大変立派な途上国だ、むしろもうちょっと厳しいところになると公害よりも食べることの方が先だというような形でなかなか環境問題に関する技術援助の要請がない。そういう中で一体どのような援助をするか。大変これは難しい問題であろうかと思います。  両先生、この辺につきましての御意見あるいは御判断がございましたら、お願い申し上げたいと思います。
  23. 石弘之

    参考人石弘之君) 環境に対するニーズというのは、いろんなレベルによって違うのではないかと思うんです。例えばその国の、開発途上国政府レベルが考えていることとその地域住民が欲していることとは必ずしも一致しない場合があると思います。えてして日本のODAが批判にさらされる場合といいますのは、そのような政府の欲求に日本が丸々乗ってしまって、例えば巨大なダムをつくる、そのダムをつくった結果、大変たくさんの人たちがふるさとの村を追われる。最近は開発難民といったような言葉も出ておりますが、そのようなことが今国際的な批判にさらされているのではないかという気がいたしますので、どういうニーズを掘り出すかというのはやはりこれは一朝一夕ではなくて、そこにおける例えば日本の文化人類学者の活躍であるとかあるいは青年協力隊員のそれぞれの活躍といったところから掘り出されてくるものではないかと思います。それにはニーズをどう見きわめるかが一つあるのではないかと思います。  それからもう一つは、もうちょっと援助というものを力を抜いて考える。私はアフリカのサヘル地方でUNEPの職員として砂漠緑化のプロジェクトにちょっとかかわっておりましたのですが、日本人が砂漠を緑化するというのは大変なことです。経験もありませんし、気候、風土も違います。ですけれども、例えば中国であるとかインドといったところには、研究費はないけれどもすばらしい砂漠緑化の技術者、学者がいるわけであります。なぜ日本のお金でそういう人たちを登用してアフリカへ行って働いてもらうといった発想が出ないのかなという気がいたします。  以上です。
  24. 橋本道夫

    参考人橋本道夫君) 今の先生の御指摘のございました点が一番私は難しい点だと思います。現地で援助するには、私はやっぱり実務的な人と本当に専門的な人、両方が要る。片方だけではどうにもできない節があります。しかし、未発達なところで働くのは非常に厳しい条件が多いということで、日本は現地で長く努力する人々について本当にもっと評価をしなければ私はまずいと思います。  それからもう一つは、いろいろプロジェクトの評価というのがございます。非常に短い期間で評価することはこれはまず無理だと思います。私はスマトラの場合に、初め五年やれということだったんですが、五年やそこらでできることじゃない、やはり最短十年一期ですということを申し上げました。十年やって何かちょっと変わったかなぐらいなことが起こってくるのが実は本当ではないか。私はそこが、評価という目が、経済の効率性ということだけではなしに、そういうものをやっぱり頭に置くということであります。  もう一つは、先ほど石さんがおっしゃいました、相手の国の学者とか専門家とか、あるいはよその国の専門家を使う。言ったら悪いですがその方が経済的にもはるかに有効で、しかも向こうに根が残るということがかなり多いのではないかということを申し上げたいと思うんです。そういうことで、草の根というのは口では言いますが、実際にそれじゃ草の根でやってごらんなさいということになると、どれだけの人が本当に現地に行ってやれるのか。私はやっぱり人材の創造だと思います。  そして問題は、今、国のレベルでやっています。国のレベルがなければ外交ですからできません。しかし、国のレベルの人の能力のあることと地方公共団体の人の能力のあることと産業界の人の能力のあること、住民レベルの人の能力、これはみんな違います。これをいかにうまくつながりのあるものにするかということが極めて必要ではないか、私はそのように思っております。
  25. 野沢太三

    野沢太三君 当調査会といたしましても、このODAが本当に心のこもったものであり、また環境問題に関しても有益な形で提供されるように、これからも努力をしてまいりたいと考えるものでございます。  そこでひとつお伺いしたいことがあるわけですが、環境問題あるいは公害問題というものは、いわば経済活動を初めとする人間の諸活動の結果として出てきたということでありますが、これが原因として力になって動いておりますが、一つ人口問題があろうかと思います。大変な人口増加予測をされておるわけでございますが、幾ら努力しても、「稼ぎに追いつく貧乏なし」という逆の形が途上国を中心にどうも見られるのではないか。まあ人様の国の人口問題に口を出すということはなかなかこれはやりにくいことではございますけれども、これまで世界的に見て、そのような形で人口の適正な誘導策をとってある程度成功をおさめている国もあるわけでございますので、その面につきましてこれはどういうふうにしていったらいいのか。環境問題からは少し外れるかもしれませんが、途上国人口問題に関してひとつ、どんなことがこれから必要なのか、また、我々がそのためにどの程度お役に立てるのか、御意見を伺いたいと思います。
  26. 石弘之

    参考人石弘之君) 大変に難しい問題でございまして、アフリカを例にとりますと、例えばケニアですと子供が平均八・一人いるというようなことでございまして、ですけれども希望がないわけじゃございませんで、いろいろな調査をやってみますと、多くの家庭の主婦はやはり子供は少なくしたいというように答える数が急速にふえてまいりまして、潜在的に子供を少なくするという動きは始まったのではないかというような、少し楽観的なものもございます。  それではどうしたらそのような希望に沿えるかということで、実は二つの派がありまして、一つは避妊の要するに物理的な道具を配ることによってそれは可能であるという避妊派と、あるいはやはり貧乏が子供をふやすんだから、開発によって経済レベルを上げない限り、生活水準を上げない限り子供はふえ続けるんだという、両方の意見があるわけですけれども、やはり今見ておりますと、生活水準が上がってこないとどうしても人口の減りぐあいがうまくないということで、どうしたらその社会的な基盤を支えるかが実は人口を減らすための一番早道ではないかというふうに考える人がふえているのではないかと思っております。  それからもう一つは、さっき申し上げたような、今アフリカあるいはインドを例にとりますと、最大の仕事はまき集めと水集めです。まき集めは自分の集落周辺の森林が枯渇したために年々遠くなるわけでありますので、早急なまき、炭をとる薪炭林の植林というのはこれは可及的速やかに必要なことと、それから水集めの労力を少しでも軽減するための井戸掘りであるとか、それから日本で買えば安いものなんですけれども、プラスチック製の水運び容器などというのが実は最も有効なのかもしれないというようなことも考えております。  そういう両面であろうというふうに理解しております。
  27. 橋本道夫

    参考人橋本道夫君) 人口問題は環境問題の中で非常に重要な要素でございまして、日本でいうとすぐ公害、自然環境などということを言いますが、基本的には、世界的に人口と資源と開発環境の複雑な相互関係の帰結として起こるというのが理解であります。そういうことで私は人口問題を非常に重視します。私自身が医師でございますから、もともと戦後の日本の社会で家族計画普及をやってきました。これは非常に難しいです。日本の中でも難しかったです。  そこで、今、家族計画国際協力財団というのがございます。市谷にございますが、ここは非常にいい仕事をしております。ここでインテグレーションプロジェクトといいまして、人口問題を世界二十七、八カ国ぐらいやっています。そのやり方は、バースコントロールだけではなかなか文化的な障害があって入れないわけです。何か彼らの実利になるものをやる。実は私もそれを戦後感じまして、寄生虫の駆除というのは最も安いわけです。お金はかからない。しかも虫が出てくる、つまめばみんなびっくりする。十二指腸虫をつまめばもう血が出ているということであります。そこでそれをやってみると村の中に入れます。家族計画のことは初め言いません。それで入って親しくなります。それから家族計画へ入ります。その方式を家族計画国際協力財団の国井さんが、今理事長をしておりますが、今から大体十数年前に取り入れていただきました。今世界的に進み始めています。これは初め家族計画の専門家たちは、そんなばかな、寄生虫なんか関係あるかと言ったんですが、なるほど実利があるなということであります。  私は、ぜひそういう計画がどんどん伸びるようにバックアップする。やはり人の問題があります。今公衆衛生でも、人々がもう定年退職してやめてくるというのがあり、私も定年退職の組でありますが、そういう人々をいかにうまく生かせるかということはやはり人の資源の問題があるのじゃないでしょうか。私はそういう点をやっぱり考えて、人口問題というのは非常に努力をすべきである。しかし、根本的には経済力を上げるというような石さんの意見に賛成でありますが、それだけにまつわけには私はいかないという感じを持ってます。
  28. 野沢太三

    野沢太三君 ありがとうございました。  いずれにいたしましても、この問題は環境問題の一番底にあります課題として、これからもしっかり取り組むべきことと考えるわけでございます。  これとまたあわせましてエネルギー問題がやはり大きな力、モーメントとしてこの環境を揺り動かす要素になっているのではないかと思うわけでございます。化石燃料を燃やして電気を得る、あるいは車を走らせる、暖房をとる、こういったスタイルが一体いつまで続けられるか。大変有限な資源でもあり、また結果が望ましい姿になっていないということを考えましても、やはりできるだけ早い機会にこの化石燃料依存からの脱却ということをやり遂げる。そしてまた省エネルギーあるいは省資源を含めまして、何としても資源を節約する、こういった生活スタイルあるいは文明、文化といったものを築き上げないと、これはもう際限のない話になるのではないかと心配をするわけでございます。  きょうもこの環境庁のペーパーは再生紙を使っていただいておるということでありまして、大変結構なことかと思いますが、そういうような努力、工夫、場合によっては、先ほどの御指摘の中にもございましたが、法的措置もいたしまして、何としても私ども先進国がぜいたくをしちゃいかぬ。「ぜいたくは敵だ」という標語が昔ございましたが、まさにそういった考え方が必要ではないかと思うわけでございます。エコロジーと言いましょうか、竹林の七賢人というわけにはまいりませんけれども、つつましい生活をするんだというスタイルをみんなでつくり上げる。こういうことがこれから非常に重要であるように思うわけでございます。  この辺につきまして先生方の率直な感想をお伺いいたしたいと思いますが、よろしくお願いします。
  29. 石弘之

    参考人石弘之君) 生活のライフスタイルを変えるというのは口では簡単だと思うのですけれども、やはりこれは大変に難しいので、私なども、「ぜいたくは敵だ」というより、やはり「ぜいたくは素敵だ」の方で育った時代でございますので、恐らくまず社会システムそのものを変えていかなくちゃいけない。  例えば、アメリカで言うとオレゴン州、ワシントン州。ヨーロッパへ行きますとオランダ、デンマーク、西ドイツの一部などが、個人の交通機関からもうバスのような公共交通機関へどんどん今社会全体を振りかえようとしています。それによって個人の交通を、自動車依存を少し減らそうではないか。それは一つは省エネであり、二酸化炭素対策になるわけでありますが、それと同時に、あめとむちで、むちの方としては税金を導入しまして、例えばガソリンを高くする、あるいは二酸化炭素の排出税をかけるとか、そのような形で、税金である程度むちを与える。そしてもう一つは、子供のときから学校教育の中にライフスタイルの変更、それから省資源あるいは環境保護といったものを子供のときから教育の中でたたき込んでいくというような三本柱によって徐々に移行さしていかなくてはいけないのではないかなというふうに考えております。
  30. 橋本道夫

    参考人橋本道夫君) 今おっしゃいましたこと、私非常に基本だと思うのですが、日本は燃料資源がないからやりやすい節があります。燃料資源をたくさん持っている国はその圧力で動けません。例えばアメリカはもう石炭を持っていますから、石炭を使わなきゃ大変なことになるので、今、石炭は絶対やめないよと、もうエネルギー省の次官が大声でわめいております。日本はもう何もありませんから、自由に選択できるわけです。その点は日本は非常に有利であった。そのためにSOx対策は成功したということが言えると思います。  ただ、次の問題は、大きな発生源では確かに日本はすごいエフィシェンシーがあった。しかしながら、考えてみますと、幾ら大きなものでも効率は大体四〇%足らずですから、七〇%はどこかにほったらかし、全部ほうり出しているわけです。ですから、これをどう使うかという苦労をしないとどうにもならない。それをうまく使えば新しくCO2を出さないでそれをエネルギーに変えられる。それは何かことしは環境白書で取り上げるということを言っておられますが、私は非常に結構なことだと思うのです。ぜひ、通産省も今いろいろ制度を改正していただいている最中だそうですが、それをやはり残さないとだめだというように思います。  しかし、ここで申し上げたいのは、今非常にLNGがCO2を出す濃度が低いといって喜んでいますけれども、これは大体二〇三〇年から五〇年の間にぐっと下がります。アメリカの石油はもう今下がってきています。そうしますと、私は二〇五〇年以降に日本はどうするかなと思うんですね。今つくった原子力発電所は、ずっとディコミッションしていきますとその後が一体どうなるのか。日本はその議論を全然していないというのは非常に危ないと思います。今世界的に非常に困っているのは、原子力発電所が反対でなかなかできない。水力発電所も環境の反対でできない。これが一番困っていることであります。もちろん太陽衛星というものが使えれば一番いいんです。しかし費用効果が大体十倍から百倍以上の大台である。これはなかなか難しい。電気代が十倍、百倍でも払いますというならこれは話が別でありますが、なかなかそうはいかない。  そういう点で、私は代替エネルギー技術開発を必死に、新しくそれを強めて、二〇三〇年から五〇年以降にはこうやってやりますよということを打ち出すようなことを日本でやれば、世界にも本はやはりお金と技術を使っていいことをしてくれるなというように思われるのではないか、そういうふうに思っております。
  31. 野沢太三

    野沢太三君 大変ありがとうございました。時間でございますので、これで終わります。
  32. 成瀬守重

    成瀬守重君 石先生と橋本先生には大変感銘深いお話を伺いまして、ありがとうございました。  お二人の先生にお伺いしたいんですが、炭酸ガスのような温室効果気体、これの増量というものが気候変動をもたらし、将来日本農業に対してどういうような影響を与えるようになるか。また、酸性雨などもどういうような影響世界の各地においてもたらすか。そういった面について、まだ両方とも日本ではそれほどの影響はないようでございますけれども、欧米各地、その他の例においてお教えいただきたいと思います。
  33. 石弘之

    参考人石弘之君) 最初の温室効果気体のお話でございますが、日本でも、最近冬の異常高温がこの何年か見られておりまして、それによりまして、既に冬物の野菜それから特に大麦類がかなり深刻な影響を受けているかのように聞いております。むろん農水省の御専門の方がおられると思いますが、そのようなことが今度はもっと恒常的に、広範囲に起こると考えますと、これは非常に大きな影響があるだろうというふうに思われております。  その一方で、例えばアフリカのサハラ砂漠のようなところが非常に雨量が多くなるのではないかという予測もありますので、全世界で見た場合には一時的にかなりの気候の大混乱があると思います。あるいは、いいところ悪いところがかなり変わってくるのではないかと思います。特に世界最大の穀倉地帯であるアメリカの大平原地帯は、かなり気候が乾燥化してくることによって非常に農業地帯としては不適になってきている。むしろカナダのような今ちょっと寒過ぎる地帯あたりが非常によくなってくるのではないかというさまざまな予測が出ているわけでございますが、いずれにしましても、この変化は、過去何十万年とかかった温度変化がたちまちここ十年のオーダーで変化するわけですから、非常に大きな混乱は避けられず、農業にとっては極めて大きな影響があるだろうというふうに予測されていると思います。  それから、酸性雨につきましては、ヨーロッパでは一九五〇年代に実は農業生産が上がりまして、農民が、最近は肥料もやらないのにどうも育ちがいいようだと喜んだ時期がございます。それは酸性雨の中に窒素分が入っていますもので、窒素肥料の役目をしていたわけで、それが何年か続いた後、今度は突然に、湖から魚が消える、木が枯れ始める、あるいは農作物が枯れていくというような被害が出始めたわけでございますので、もちろんそれは農業に対しても酸性雨は極めて大きな被害がございます。日本でも酸性雨というよりも酸性粉じんらしき被害は例えば関東平野における野菜類なんかでも過去何回か記録されておりまして、それからヨーロッパにおきましても今全森林の二五%、ですからヨーロッパでは四本に一本木が影響を受けているというところまで来ておりまして、そこまで深刻で、特に今中国におきましては酸性雨の農業被害が非常に大きく広がっております。こういうわけで、農業被害は将来やはり大変大きな問題になるだろうというふうに考えております。
  34. 橋本道夫

    参考人橋本道夫君) 私は、日本の農業の問題は、日本自身が考えて解決しなければどうにもならないという立場でございます。よそに期待することはできないということでございまして、今、日本の大学から農水省へ多くの研究者の力を本当に結集して、体系的に今からきっちり研究すれば、これは対応できるだろう。なぜ東京が鹿児島程度になったら大変なことになるかということであります。確かに影響を受けます。確かに影響を受けますが、アフリカにおける生きるか死ぬかのような話とはもうおよそ話が違う。それから、ウクライナや中西部のような物すごいあらしにやられているという話ともおよそ違う。影響は受けるけれどもこれは対応できるだろうというように、私はそのような能力というものを非常に信頼しています。そういうことでございますが、これは別に楽観という意味ではございません。よそに期待することはできないという意味と、確かに影響はあるだろうが、そんなに物すごく恐れさすほどのものであるかどうかは私はまだ自信がありません。国際的な場ではむしろ生産がふえてもうかるのではないかというデータも出ています。そういうこともあるということを申し上げておきたいと思います。  それから次は酸性雨の問題でございますが、日本世界的に酸性雨のSOxをカットした、もう最大カットした国であります。大体今八五%カットしています。これ以上カットせいというと、あとは水力か原子力に頼る以外にはまず当面は手がありません。これは全くそういう姿であります。ですから今後どういうことになるかというのはなかなか難しい話であります。そういうことで今後十年ぐらいたったらどうなるか、私もちょっとこれはわからないと思います。  ドイツも、一九七〇年時代OECDで私酸性雨の担当官をやりましたときに、ドイツは全然何でもないんだと言うので、すごく頑張りました。ところが、一九八三年にころりと態度が変わったんです。それで、シュバルツバルドがどうかなった、こう言い出しました。  私は、今の亜硝酸の濃度だけでいけば日本というのは酸性雨の状態はあると思うんです。部分的にちょっと怪しげなサインは僕はなきにしもあらずであると思います。しかし、これから先は並み大抵のことではない。これはディーゼルのトラックがどんどんふえて、もう原子力がいかぬから化石燃料にしようといったら、これはもう覚悟してやらなければならないと思います。  それから中国との関係は、日本も中国に酸性雨を送っておったということはお忘れなくという感じであります。今日本はコントロールしました。今度は中国から来る。これは中国が対応するというのには、日本のような非常な高度成長の金持ちで一生懸命やる国でやって大体二十五年かかっています。私は、あの中国のような巨大な民が二十五年でできようと思いません。やはり相当かかります。日本というのは細長い列島ではすかいになっておりますから、日本が大陸国でべったり横にひっついていましたらこれはもう影響はすごいと思いますけれども、日本の地形と気候というのは不利な面もあるが割合有利な面の方が多いのではないか。その間に中国に対する環境協力を強めて対応する。しかし、決して酸性雨を送ったらいけない、もっと経済開発をとめろというような理不尽なことを言う資格は、日本には全くないと思います。
  35. 成瀬守重

    成瀬守重君 日本は戦後針葉樹林の比率が非常にふえて保水力が減ってきた。しかもある気象条件に対する長期的なシミュレーションによると、将来は炭酸ガス濃度の増加によって気候が温暖化して夏場の雨が非常にふえるんじゃないかということを言われておるわけですが、そういうぐあいに夏場の雨がふえて、しかも針葉樹林がふえて保水力が減り、さらに今田畑が減っておりますから、そういった面での保水力も減って、夏になると相当大規模の水害が出たりなんかするおそれがあるんじゃないかといる意見を聞いたことがございますが、そういった点。  それから、非常に今植生の限界がどんどん北に行っていて、いわゆる米なんかについて新しい品種改良というような問題も出てくるんじゃないか。そうすると、品種改良というような問題は早急にできるものじゃないが、そういったものに対する対応は一体将来どうなるのかという問題も考えられておる。  さらには、現在河口のデルタ地帯ですね、特にいわゆる太平洋岸のベルト地帯の河川地方は非常に湿地帯が多いんですが、そういったところに温暖化によって海水がふえたりあるいは降雨量がふえたりすることによって洪水が起きるというような危険性が将来あるんじゃないか、こういった話を聞いたことがありますが、いかがでございましょうか、両先生にお願いいたします。
  36. 石弘之

    参考人石弘之君) NASAの最新の将来の温暖化モデルを見ますと、日本はわずかに雨はふえるけれども世界的には余り影響はない国というカテゴリーに入っているように私は理解しておりまして、もちろんそれは全世界影響を受けるわけですので、一・五メーター海水が上昇すると日本のゼロメートル地帯が三・五倍になるというような予測を実は建設省が出されております。ですから、おっしゃるとおり日本では海岸地帯に非常に大きな影響、むしろ台風が大型化することによる影響の方が大きいのではないかという気象学者のお話を承ったことがございます。  それから、既にアメリカでは温暖化に備えて小麦を中心とした品種改良に連邦予算を二年前からかなりつけているというふうに聞いておりますが、日本でもそれに備えた、お米は確かに温度が上がった方が恐らくぐあいがいいんだろうと思いますけれども、それ以外に、上がったために影響を受けるような作物の品種改良は時間がかかることから、おっしゃったとおり早急のテーマだと思います。
  37. 橋本道夫

    参考人橋本道夫君) 今先生の御意見のございました新しい品種をどうするかということは、私はこれはもう最も科学者としてキーだと思います。ぜひそれはもう体系的に今からちゃんと始めていないとおかしいと思います。しかも、地理的な条件をあわせて、これは日本国内のみならずほかもあわせてやはりやっていただくことが基本だと思います。  そのことはそうといたしまして、一方の保水力云々の問題というのは、これは日本がみずから招いたことでございますから、日本がみずから解決しなければならないというふうに思っております。  そういう関係でいきますと、従来のアセスメントというのは、ダムをつくったらどうなるかというアセスをしておって、気候が変わって、しかもその上流の流域やなんか変わったらどうなるかなんというアセスは全くしていない。私は驚いたのでありますが、ダムのアセスのときはどうしますかと言うと、ダムが何に影響を及ぼすかアセスをしていますと。しかしダムがどんな影響を及ぼすかはアセスの対象ではないという話を聞いたことがあります。それは驚愕しました。ですから、途上国に行ってやりますと、ダムが早く埋まってしまうんです。私はやっぱりダムというのは今後六十年から百年先をもって見るわけでありまして、IPCC議論の中でも、六十年から百年先を見てつくるような施設は、これから相当な気候変動が起こる、その気候変動を組み入れた形で、従来の水系を延ばすというようなステーショナリーなやり方ではこれは対応できない。新しい対応をすべきである。私はそれは日本の土木技術者がやはり編み出してほしいと思います。土木を初めいろいろな方がそれを編み出してほしいと思います。そういう方向に変えなきゃいけないということをはっきり認識すべきではないかと思います。  そして、危険性そのものでは、石さんのおっしゃったように、例えば台風が非常にきつくなるとか、そういうリスクが、危険性が高まるという程度の話ではないだろうか。日本はもう何世紀にもわたって治山治水、護岸を営々としてやってきた。しかし、やはり五十センチ上がる、一メートル上がるとなるとこれは確かに危険は高まります。その危険の高まりがどれぐらいになるかというのは、これは学者が計算すれば出ることであります。そりによってインベストメントをたくさんすべきならばいつからインベストメントを始めるかをちゃんと考えてやるべきで、そこは十分対応できる問題ではないか。しかし途上国は全然様相が違うということをやはり頭に置いて対応すべきであります。  非常に具体的には、御指摘のあった塩害の問題は私は起こるのではないかと思います。やはりだんだん上に上がってくるということが一体どうなってくるだろうか、その点は私は客観的にはっきりわかりません。しかし理屈としては当然起こり得ることだろう、そういうように思っております。
  38. 成瀬守重

    成瀬守重君 両先生、ありがとうございました。  農林水産省にお伺いしたいと思います。  今お話のありましたように、炭酸ガスの増加によっていろんな気候変動が将来起きると予想されるわけですが、そういったような意味で食糧需給という問題が非常に将来的に不安定要素を含んでいるんじゃないか。特に、北アメリカを中心としたいろんな干ばつもありましたし、ソ連、中国なんかの不作も報じられております。最近の主要先進国の食糧価格の支持政策の抑制だとかあるいは農林予算の削減、そういった傾向を考慮すれば、将来の世界の食糧在庫というものは非常に低い点になるんじゃないかと予想されるわけですが、農産物の多くを海外に依存している我が国にとって、国民に食糧の長期的な安定供給を図ることが不可欠な課題だと思います。そういった意味において、予測される状態に対して現在からもう手を打たなければならないと思いますが、国の食糧安全保障、先ほど環境安全保障というお話がございましたが、国の食糧安全保障のために農産物の自給力を高めることが重要ではないか。  これに対してはケアンズ・グループ、ブラジルだとかカナダだとかタイだとか、そういったグループからも異論がございまして、食糧の安定輸入による安定供給の確保こそ現実的な政策であるというような意見もあります。しかし我が国の現状を考えたときに、どうしても食糧の自給率を高めて国の安全保障を守る必要があるんじゃないか、そういった面を考えているわけですが、特に最近カロリー自給率というものが、昭和四十五年から昨年ぐらいまでの二十年間に六〇%から四九%まで低下しているということを伺っております。また穀物自給率も四六%から三〇%まで大幅に落ちているということを伺っておりますが、こういった事態に対して今後どう対応するか、農林水産省の方の御意見を伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。
  39. 管原敏夫

    説明員(管原敏夫君) ただいま参考人の先生方から世界的な気候変動、特に温暖化等についてお話がございましたけれども、私どもも、農業生産そのものが非常にこういう気候に影響されるということから鋭意研究しておりまして、特に昨年度は学識経験者の皆さん方に研究会を組織していただきましてそこの意見もお伺いし、今後どうすべきか、またどういう影響があるかというようなことも研究していただいたわけでございます。  農業生産につきましては、直接的な影響としましては炭酸ガス濃度がふえれば炭酸同化作用が活発になりまして増収の要因になるというような効果がある反面、また先ほどからいろいろ御意見がありますように、世界的には生産がふえるところ、また減るところということがありまして、まだ気候のシナリオが地域別あるいは細かい点についてのシナリオができておりませんので、世界的な需給、特に生産がどうなるのかというようなことについてはわからないというようなことが現状でございます。  日本につきましては、米について言いますと、北海道の中部まで米がつくれるようになるというようなことになろうかと思います。ただ、今先生からお話がございましたように、日長の問題とかいろいろございまして、品種改良をまたそれに合わせてやっていかなければいけないというようなことがございますので、そういうことも含めて、特に環境との問題を中心にしたプロジェクト研究を本年度から進めるべく予算を御審議いただこうというようなことにしておるわけでございます。  また、食糧の自給率につきましては御説のとおりでございまして、私どもなるべく自給率の向上を図っていかなければいけないというようなことから、特に十年先を見据えました需要と生産の長期見通しを作成いたしまして自給率も引き上げる。これは自給率が低下してきました理由が、米の消費が減退している、一方畜産物の需要がふえているというようなことがございまして、それに伴って自給率が低下してきたというようなこともございますので、米の国内自給を基本とする、また麦、大豆につきましては、生産性の向上と品質の向上を図るということを前提にこれも生産増強を図る。またほかの作物につきましても、野菜、果物につきましても、品質の向上を考えまして生産をやっていくというようなことから、将来にわたりできる部分、特に基本食糧につきましては国内的な生産を重視していく。これは消費者の納得し得る価格ということを考慮いたしまして生産性の向上を図るということを前提にそういうことを考えている次第でございます。
  40. 成瀬守重

    成瀬守重君 スイスでは自給率が六〇%で、しかも明確な食糧安全保障計画を持っておる。特に消費の抑制、まあ備蓄の放出とか作付転換による増産といったような、そういった明確な国民に対する食糧の安定供給のプログラムというものを持っているようでございますが、そういった意味において、我が国においてもやはりそういった食糧の安定供給に対するプログラムというものをつくる必要があるんじゃないか。確かに自給率を高めれば一方においては高い政策コストがかかるわけですし、また、国民のコンセンサスを得るという点においても全部の方々のコンセンサスが得られるわけではないと思いますけれども、そういった意味において食糧の最低限度の、ミニマムといいますか、自給率というものをある程度策定して安全保障計画というかそういうものをつくっていく必要があるのではないかと思いますが、それについては現在までに研究されたことはございますか。
  41. 管原敏夫

    説明員(管原敏夫君) スイスにつきましては、ただいまの先生の御説のとおりでございます。我が国におきましても、先ほど申し上げましたように非常に穀物の自給率は落ちておるわけでございますが、先ほど申し上げました長期見通しにおきましても、エネルギー換算で自給率を上げていく、また穀物の自給率につきましても上げていくという計画をしておりまして、これはまたそれと同時に優良な農地を確保するとか、それから優秀な担い手を育成するとか、それから水資源を大切にするとか、そういうようなことを総合いたしまして国内の供給力を強めていく必要があるのではないかというふうに考えておる次第でございます。  特に自給率につきましては、先ほど申し上げましたように、現在カロリーベースで申し上げまして四九%でございますけれども、平成十二年には五〇%、また、主食用の穀物の自給率につきましては物量ベースで申し上げまして六八%を六九%、また、穀物自給率、これは飼料が多いものですから先ほど申し上げましたように外国からの輸入をベースにしておりますので、これは三〇%、現状のものを維持するというような具体的な数字を出しているところでございます。
  42. 成瀬守重

    成瀬守重君 食糧の自給率に対する向上の兆しが見えるということは大変ありがたいと思うんですが、同時に、一方では今国民の間に食糧の安全性に対する関心が非常に高まっているわけで、特に食料品の中に含まれている食品添加物とか、あるいはまた生産されるまでに至る農薬であるとか化学肥料、そういったものの害悪というものが非常に浸透するようになっているんですね。それで、安全な食糧というものに対するニーズというか、そういうものが深まっておりますけれども、現在、農林水産省としてはどのような対策を考えられているんでしょうか。  特に生産の面において、中西先生は非常にそういう点では力を入れていらっしゃいますけれども、有機農法あるいは自然農法というようないわゆる無公害を目標とした農法というものが全国各地で非常に行われていると思いますが、そういったものに対してどういうような取り組みをされているか伺いたいと思います。
  43. 管原敏夫

    説明員(管原敏夫君) 私ども、やはり農業の生産性を上げていくという面からいいますと、ただいまおっしゃいました農業資材、肥料、農薬というものが非常に役割を果たしてきたというふうに思っております。特に日本はモンスーン地帯にございまして、夏非常に暑いというような、また多湿であるというようなことから、雑草の害、また病害虫が多発するということがございまして、そういう農業生産資材が大きな役割を果たしてきたというふうに思っておりますが、これにつきましてはやはり地球環境の問題、また同時に生産性、コスト低減ということからいいまして、いかにこれを効率的に使用していくのかということが課題でございまして、例えば農薬の問題につきましては病害虫の発生予察を的確にやって、必要なときにだけ使用するというようなことを強力に指導しているところでございます。  また、有機農業につきましては、私どもも、非常に国民の消費者の皆さん方の消費が多様化しているという面、また地域農業を盛んにしていくという面で非常に有効だという面から、いわゆる有機農業につきましても、その実態をよく把握すると同時に、有機農業による生産が安定する必要がある。現在のところ、まだマニュアルというようなことがございません。篤農の方がやっていらっしゃるとか、また個別技術としては確立しておっても、それが全体として、体系として、技術体系になっていないというようなこともございます。したがいまして、農林水産省におきましては昨年度有機農業対策室を設置いたしまして、そういう実態の把握、また技術をよく調べて、ではどういうような技術でやれば安定していくのだろうかというような調査実証というようなことを現在やっておりまして、そういう有機農業の安定的な発展ということの後押しをしていく必要があろうということの対策をやっているわけでございます。
  44. 成瀬守重

    成瀬守重君 今まで日本の農業はどちらかというと集約的でもって、単収当たりの向上を図って、農薬や肥料をどんどん入れて、そのためにコストが上がって、特に米に至っては非常に内外価格差が大きいという点が指摘されて、そういった問題が農村の不安を呼び、農産物自由化の大きな一つのきっかけになりそうなことで私ども大変遺憾に思っているわけですが、そういった意味において、今お話しございました化学肥料とか農薬というものをできるだけ使わないでやれば、国民の健康な食べ物に対するニーズにもマッチするだろうし、同時にまたコストの低減という点にもなるんじゃないか。これは素人考えかもしれませんけれども、そういった点についていかがでしょうか。
  45. 管原敏夫

    説明員(管原敏夫君) 消費者のニーズが多様化している、これに対応するということは非常に重要でございまして、こういう面からいって、有機農業が行われるということは非常に有益ではなかろうかというふうに考えております。ただ、コストの面になりますと、先ほども申し上げましたように、日本の気候からいいまして、例えば除草剤を使わないということになりますとそれに要する労力は非常にかかるとか、また、病害虫が発生しない、良質のものをつくるということになりますと、堆肥を多用する必要があるとか、また病害虫の防除もそれなりの対策が必要だとかいろいろございまして、コスト低減になるかどうかということはいろいろ難しい問題もあろうかというふうに考えております。
  46. 成瀬守重

    成瀬守重君 農水省ありがとうございました。  続いて厚生省に御質問したいと思います。  今もお話が出ましたように、国民の安全な食糧に対するニーズというもの、また将来の国を支える国民の健康という点から見ても、そういう健全な食品が供給されることは必要ですが、現在日本の食糧の相当数、七〇%近くと聞いていますけれども、海外から輸入されているわけですが、そういった輸入食糧に対する検査システムといいますか、検査機関がどのような形で設置されているか伺いたいと思います。
  47. 野村瞭

    説明員(野村瞭君) お答え申し上げます。  輸入食品につきましては、現在全国二十一カ所の海・空港の検疫所におきまして、専門的な知識、技術を持っております食品衛生監視員が食品衛生上の観点から監視業務に当たっているところでございます。
  48. 成瀬守重

    成瀬守重君 ポストハーベストの問題なんかも伺いたいんですが、時間がございませんので厚生省結構でございます。  次に、外務省に伺いたいと思いますが、今お話がございましたように、我が国の安全保障という面についてはさまざまな農業問題、環境問題があるわけですが、そういった各省庁方々と一緒になって最先頭に立って活躍される、そういった外務省の方々、非常に大きな役割を担っていると思うんです。現実にいろいろな通信量だとか活動量もふえていると思いますけれども、現在外務省の定員はどのぐらいありますか。
  49. 池田右二

    説明員(池田右二君) 外務省の定員につきましては、ここにおられる多くの先生方及び各方面の御理解を得ましてこれまでも改善されてきておりまして、平成二年度予算におきましては百八名の増員を計上しております。その結果、平成二年度末の外務省の定員は四千三百二十八名という数字になる予定でございます。  先生おっしゃいましたとおり、外務省の電信量、それから経済協力の額、過去十年間の数字をとってみれば四倍とか十倍とか非常に量がふえております。こういう中にあって、私どもとしましても今後とも厳しい財政状況の中ではありますけれども、各方面の御理解を得まして定員の増加というものに努力してまいりたいと思っております。
  50. 成瀬守重

    成瀬守重君 私の手元にある資料によりますと、主要先進国の中でアメリカは一万六千四百六十七人、英国は八千百七十七人、フランスは七千七十八人、西ドイツは六千四百六十五人と、イタリアに至っても五千百四人と、ちょっと古いかもしれませんがこういうデータを持っております。現在の外交活動の重要さに比べて余りにも日本のそういった人数は少な過ぎるんじゃないか。もちろん量だけではない、質の問題もあるかもしれませんが、また定員という問題もあるかもしれませんが、しかし国の安全保障を考えたときに、大きく外務省のウエートは増してきているわけですから、そういったものに対する各界各層の理解を深めるようなPRが必要じゃないか。  また、私の手元にGNPに対する外交予算というものも出ておりますけれども、もう時間がありませんから申し上げませんが、非常に低い状態じゃないか。そういった面での認識を喚起するために、外務省も従来までのやり方じゃなくて、やはりもっと積極的にその重要性を認識、PRして、外交活動を活発にし、実りのあるように御努力いただきたいと思います。  以上でございます。
  51. 翫正敏

    ○翫正敏君 石弘之参考人の先ほどのお話、このレジュメを読ませていただきますと、地球環境問題のさまざまな大きな問題のうちでも「現在、緊急な地球環境問題」の第一に挙げられておりますのが「熱帯林破壊」という問題として①となっておりますので、この点につきましてもう少し詳しくお話を伺いたいと思うんですけれども、この熱帯林というものは地球の肺と言われるものでありまして、二酸化炭素を酸素に変えるという働きを持っておるわけですから、これを守っていくということが一番緊急、重要な地球環境の問題であるということはテレビなどでもよく報道されているとおりなんですけれども、この大切な地球生態系の破壊という問題において、森林破壊ということについて、現在毎分数十ヘクタールというような猛スピードで森林が消えている、そして今まで五十年間に半分ぐらいになるほど減ってしまっているということを聞いておるわけであります。そして、これが第三世界と言われているところの熱帯林に集中している、そういうことでありますけれども、この森林破壊されるということについて、まず最初にどういうことの原因によって起こるのかということについての御見識をお伺いしたいんです。  一応読ませていただいたものなどを参考にして私なりにメモしてみますと、一番大きいのが焼き畑農業、その農業人口増加であるというふうに書かれている。二番目に、用材として、紙パルプなど用として木が伐採されるという問題。三番目に、薪・炭などに使われると、そういうふうになるのではないかと思うんですが、この森林破壊の現状とその原因ということについて、もう少し先ほどのお話にプラスして御説明していただきたいと思います。
  52. 石弘之

    参考人石弘之君) おっしゃるとおりでございますが、熱帯林と申しましてもこれはさまざまな種類がございまして、人間の手つかずの本当の熱帯林といった場合と、それからかつて焼いたり切ったりした後に生えてくる二次林的な存在と、両方あるわけでございます。その手つかずの純粋な熱帯林における直接的な破壊の最大の理由は焼き畑でございまして、FAOの統計では、大体四割から七割が焼き畑と言われております。それから二次林的な存在の熱帯林破壊の最大の原因は、今、山火事でございます。ですから、手つかずの自然というものはなかなか火が入らないのですけれども、再生してきた木の細かい二次林というのは山火事が非常にたくさん頻発するわけでございます。  そうすると、焼き畑が最も悪いのかというとまた話は複雑でございまして、焼き畑というのは実は純粋な熱帯林にはなかなか起き得ないものであります。熱帯林というのは壁のように立ちはだかっておりまして、地元の住民の非常に素朴な農機具ではなかなか入れないわけであります。そうすると、どういうように入るかといいますと、大体一次的には木材の伐採が起きます。それは東南アジアの場合は日本が大変深くかんでいるわけですが、近代的な装備によって、あるいはブルドーザーによって林道を切り開く。それからチェーンソーによって金になる木を何本か抜いてくる。抜いた木は数は大したことはなくて、東南アジアですと普通一ヘクタール四、五本抜けばいい方というぐらい少ないものでございますが、それによって縦横に林道がつかます。それから、切った大きな太い材木を鎖でくくりつけまして無理やりに機械で引きずり出してきます。その過程においてまた森林の中にかなりすかすかの場所ができます。実はそこにどっと焼き畑民が入っていくわけであります。ですからこれは日本のJICAの研究なんかもございますけれども、一次的な森林の伐採がなかったところでは焼き畑は起きにくいという意味で、私は一時的な原因はやはり伐採ではないかというふうに信じております。ですから決して責任がないわけではないわけであります。  それからもう一つ、今の御指摘にあったマングローブなんですが、それは今製紙、紙のパルプのことでお話しになりましたけれども、実は東南アジアを中心としまして海岸際に生える、これはしょっぱい水としょっぱくない水がまじる汽水域と言っていますが、そこに非常に好んで生えるマングローブという沼沢林がございます。これは海岸線を守っている最も重要な森林地帯なんですが、これが実はパルプ用に近年加速度的に伐採が進んでおりまして、これが今当面は最も深刻な熱帯林問題かとも思います。
  53. 翫正敏

    ○翫正敏君 今のお話を聞きまして、伐採によるものがやはり最も重要であって、そしてそれをどうするかということについても緊急な課題として出てきておるということがわかったわけですが、私が見ました資料によりますと、日本は大体東南アジアを中心にして切っておる。アメリカの方は中南米の方を切って、ヨーロッパアフリカの方の森林を切るという、こういうぐあいになっていて、その切っている量をパーセントで言うと、地球全体の木材の輸入の、森林を切って木材を輸入する五〇%ぐらいが日本である。ヨーロッパが三〇%でアメリカが二〇%であるというような数字も見たようにも思うんですが、数量としてどういうふうに見ればよろしいんでしょうか。間違っていますか、この数字は。日本は五〇%というのは大き過ぎますか。
  54. 石弘之

    参考人石弘之君) ちょっと大きいような気がしますけれども、もちろん御専門の方がいらっしゃいましょうけれども、私の記憶では、恐らく全熱帯木材の三十数%ぐらいが、多分三分の一程度が日本の輸入にかかわるものだろうというふうに存じます。  それから、中南米のアメリカというのは、むしろ今問題になっているのは、木材として持ってくるよりは、ハンバーグ用とかそれからペットフードをつくるために安い牛肉をつくる。そのために膨大な森林を焼いてそこに粗放な牧場を造成する。その方がはるかに今国際的に問題になっているように存じます。
  55. 池田右二

    説明員(池田右二君) 私どもが持ち合わせております資料によりますと、全世界におきます我が国への輸出量、これは全世界の総輸出量における我が国への輸出量の占める比率ですが、これが三七%。地域的に分けてみますと熱帯アフリカ、これが全世界に出している輸出量の中で我が国への輸出量の占める割合が五%、熱帯アメリカが二%、これはわずかに二%でございます。それから熱帯アジア、これが若干大きくなっておりまして四二%。平均いたしますと三七%ということでございます。  なお、ちなみにこれらの地域の総生産量の中に占める我が国への輸出量を見ますと、これは先ほどからお話があります焼き畑によるものだとか、そういうものが大きいものですから、我が国への輸出量の数字になりますとかなり小さくなっておりまして、熱帯アフリカにおいては〇・〇七%、熱帯アメリカにつきましては〇・〇一%、熱帯アジアにおいては二・四〇%、世界平均では日本の輸入が占める割合というのは総生産量に対して一・二五%、こういうふうになっております。  これはFAOの一九八七年の通関統計の数字でございます。
  56. 翫正敏

    ○翫正敏君 石参考人にもう少し森林破壊のことでお伺いしていきたいんですが、今ほどのお話で、私五〇%も日本世界森林に悪影響を与えているのかと思っていましたが、それほどではなくても三分の一というわけですから、一国でそれぐらいの森林破壊の原因をつくっているということは大変なことだと思うんです。その中でも特に日本の場合は東南アジアの森林を伐採して輸入するということについてはもう最大の元凶となっているということなんですが、またこれをちょっと見たところでは、一九七〇年ごろまではフィリピンの森林を切り尽くし、一九七五年ごろまでにはインドネシアへ移ってここの森林を切り尽くし、その後はマレーシアへ行って今森林を食いつぶしておる最中であるというように書いてあった本があるんですが、こういう実情について知っておいでなら少し詳しく述べていただきたいんです。
  57. 石弘之

    参考人石弘之君) それは、食いつぶしたという面と、今度は切られる側が恐れをなして、日本への丸太、つまり製材しないものは日本へ、外へ出さないという意味で国内規制したという面が相まってというふうに私は理解しております。ですから、それだけ恐怖感をあおったのはもちろんその非常な伐採があると言えばあるわけですが、やはりインドネシアなんかでは国内森林資源保護という立場から原木の輸出をかなり早くから制限しておりますから、それで日本がマレーシアに移るという一つの原因になっているわけでございます。マレーシアの場合には、木材の専門家だと数年以内に重立った資源が枯渇する、その後はパプアニューギニアだと言っているそうでございますが、そのように次から次へと日本が産地をかえていくことは紛れもない事実だと思います。その理由は、日本の過剰な伐採とそれからそれに恐れをなした産出国の規制と、両面があると思います。
  58. 橋本道夫

    参考人橋本道夫君) 私は、この問題を特に扱っているわけではございませんが、パプアニューギニアに参りまして環境全体についていろいろアドバイスをしたときに、日本の合弁会社が向こうに入って森林を伐採したというのに対して、オーストリアとスウェーデンのNGOと学者がそれを非常に批判しているというケースにぶつかりました。これは法律的には手続はちゃんとしております。私は、批判している言葉に対しまして責任者に聞きますと、法律的には何ら違法はないという議論をしました。ただ、売るときには喜んで売ったけれども、毎日のお金になる仕事が全部なくなってしまったらそこに何もなくなった、家をつくろうと思ってもできない、それからけだものをとろうと思ってもいない、それから川の水はどろどろになってしまった、これはだれがしたんだ、これは日本じゃないかということになると、スウェーデンとオーストリアが、そうだそうだ日本が悪いというような図式になっているというのを見ました。  これは川岸の材木を全部切ってしまってそれで全部流れ出したと言うそうです。ですから、そこに再植林をしようとしています。しかし、再植林をしようとして申し出ると、それはまた向こうはノーなんです。といいますのは、部族が八種類ぐらいおりまして、みんな小さい土地を持っているわけです。そうすると、彼らはみんな自給自足農業を中心にしていますから、自分のこと以外にはしない。そこに政府がトラクターでも入れてずっと開発してきれいにしましょうというと、いやそれはもう自分たちの伝統の生活の破壊であるということで、再植林ができないということで、なかなか複雑な問題だということを感じました。
  59. 翫正敏

    ○翫正敏君 環境庁のも大体そんなような、私が申し上げましたような認識でしょうか。森林破壊、特に東南アジアにおける森林破壊、それも各国熱帯林を切り回っておるというような日本のやり方は、非常に当該の国においても悪い評判であるという、そういうふうに考えてよろしいでしょうか。
  60. 安原正

    政府委員安原正君) 先ほど外務省の方から数字をもってお示しになりましたが、今議論になっております途上国の広葉樹の木材について、丸太でございますね、それについて見ますと、燃料用とそれから産業用材、この両方を含みましたもの全体を一〇〇としました場合に、産業用材で丸太の形で輸出が行われる、それのうち日本が輸入しております分だけをとりますと、伐採を行ったもの全体を一〇〇としますと〇・九八%ということで、一%を若干切るという程度でございます。ただ、その量はかなり大きゅうございまして、絶対量で申しますと木材量は一千四百二十四万立米の量を我が国は、これは先ほどおっしゃったFAOの一九八七年の林産年報の数字でございますが、そういうことでございまして、我が国の丸太の形での輸入のウエートというのは、先ほど先生がおっしゃいました五〇%ということでございます。伐採量全体の一%であり、貿易量の五〇%ということでございます。そしてその五〇%がどこから輸入されているかということで見ますと、やはり先生がおっしゃいますように、東南アジアの中でマレーシアが約九二%ということで、非常に大きなウエートを占めております。実際マレーシアの中では、サバ、サラワク州からの輸入がほとんどだと聞いております。  そういうことで、全体の伐採量から見れば確かにそれほど大きなあれではございませんが、貿易量の中での日本のウエート、特に東南アジアから集中して輸入しているという形になっているのは事実でございます。
  61. 翫正敏

    ○翫正敏君 石さんにもう一度お伺いしたいんですけれども、森林破壊されますと、地球の肺というわけですから、肺が病むということで、当然二酸化炭素を吸収して酸素をつくるという地球大の影響が削減される、小さくなるということは第一にあると思いますが、それだけではなくて、当該地域においては森林破壊された部分において雨が降ったときに土砂が流れ出すということが起きて、それが下流のところでは川床を押し上げるというようなことになって、それが直接的に雨が降ったときの洪水の原因になるというようなことで、東南アジアのさまざまな国が日本森林の伐採について非常に危惧をしているというふうに聞いておるんですが、大体そういう実情なのでしょうか。
  62. 石弘之

    参考人石弘之君) 地域的にはおっしゃるとおりだと思います。一番いい例をフィリピンにとりますと、フィリピンはかつて世界最大の木材の輸出国だった時代がございます。日本の焼け野原を復興させたのはフィリピンの木を全部日本に持ってきたために今ができたわけでございますが、その後、フィリピンは今世界で第二番目の災害多発国です。なぜかといいますと、おっしゃったとおり、もう国土のかなりの部分が丸坊主になってしまう。そうすると大変保水力が下がってしまいますので、台風が接近して大雨が来るとその水が一気に下流まで流れ出してしまう。あるいは雨が降らないとたちまち干ばつになるということで、フィリピンは今干ばつと洪水にほとんど往復びんたのようにやられているわけですね。これは完全に森林を失ったためということは国際的に一致した見解だと思います。  それから、アマゾンなんかにおきましても、大規模な焼き畑が起きたり大規模な森林伐採で木が消失したところでは急激に雨量が下がっております。例えばアマゾンは平均三千五百ミリぐらい雨量があるんですが、ペルー側国境地帯で大規模に切られたところは今二千から二千五百ミリぐらいまで雨量が落ちてきております。西アフリカの象牙海岸とかの一帯でも同じように雨量の激減現象が起きています。これは明らかに今おっしゃったように木を切ったためでございます。それからもう一つ御指摘にあった土砂の流出量も大変多うございまして、今世界で単位面積当たり一番土砂の流出量の激しいのはアマゾン流域です。以前はほとんどなかったんですけれども、最近はその上流の木を切られたために大変大きな土砂が流れ出して、おっしゃったようなさまざまな自然災害の引き金になっておるということでございます。  それから、ちょっと一つつけ加えさせていただきたいんですが、先ほど外務省の方と環境庁の方から日本は一%以下であるというお話がありましたけれども、それは、焼き畑も燃料用も産業用も全部ひっくるめて一%という数え方は、ちょっと私は納得しがたいのでございます。燃料用というのは大体純粋な木を切ることはないわけです。ほとんどが二次的に生えてきた木を切るわけですから、それも別にカウントして、日本の輸入量をかなり低く見せるにはいい数字かもしれませんけれども、私は正直言ってちょっと承服しかねます。
  63. 橋本道夫

    参考人橋本道夫君) 今のお話の中で私は非常に関心を持っておりますのは、サバ、サラワクのケースに非常に関心を持っておりまして、あれはやっぱり局地の問題だと思いますね。ですから、全世界の統計で言えば小さくなる、しかし局地では非常に問題があるということだと思うんです。  ただそのときに、これはやっぱりカナダともいろいろやりましたときに、カナダは北方材を非常に日本に売り込もうとしまして熱帯林の貿易を徹底的にたたきます。それをまた今度はマレーシア、インドネシアが非常にけしからぬやつであるという、非常な攻撃をいたします。私は熱帯林の問題にはそのような要素も間違いなく入っているというぐあいに思います。やはりああいう国々は北方材を売り込もうということもあるだろうと思います。  ただ、原住民の問題はこれはなかなか難しい問題でございまして、確かに非常な問題ではございますが、やっぱりその国が自分の国の土地や入会権やそういう制度を一体どのように規定するかというのが根底をなすということをもっと日本はちゃんと言わなければいけないと思います。その点では日本の明治維新というのは、土地の制度とか水の制度とか、よその今の途上国に比べるとはるかにぴっちりした、入会権もちゃんと森林法やったと、そういう感じがございまして、私はやっぱり環境対策だけでは到底解決できないと思います。その点はランカウイ宣言というのを私の資料の中に加えておりますが、途上国がどんな目をもって見ているかということも私どもはよっぽどよく注意する必要があると思います。先進国のNGOのグループにのみ日本は耳を傾けている節があると思います。耳は傾けるべきです。しかし、やはり途上国の声をもっと聞くべきであるということで、サスティナブルデベロプメントの味すらも味わったことがない、それでみんな先進国とエンバイロメンタリストで自分のところの国の開発も何も抑えられてしまうということを、そういうことを言っているという点も日本はやっぱり頭に置きながら対応すべきである、そういうふうに思います。
  64. 翫正敏

    ○翫正敏君 次に、環境庁の方にちょっとお聞きしたいんですが、この地球の肺と言われるアマゾンの流域で、日本がかなり力を入れて協力をして開発計画が進められていて、これが森林破壊になっているということの実情でちょっとお伺いしたいんですが、アマゾンの熱帯林がどんどん破壊されていることが深刻な問題として取り上げられるようになっておりまして、アマゾンだけで地球上の酸素の三分の一に寄与しているとまで言われておりますが、このアマゾン流域における大力ラジャス計画というものに日本関係していると思うんですが、どういうふうになっているのか。特に森林破壊という、きょうの地球環境問題のテーマに即して少し御説明願えますか。環境庁の方ではわかりませんか。
  65. 安原正

    政府委員安原正君) その点は外務省から。
  66. 翫正敏

    ○翫正敏君 では、外務省の方お願いします。
  67. 北村隆則

    説明員北村隆則君) 今の御質問に対してお答えいたします。  カラジャス計画というのがございまして、これはカラジャスと申しますのは北部ブラジルの一帯約百万平方キロ、日本の約三倍ばかりの面積の地域でございますが、この地域は鉱物資源その他、農業開発、非常に有望な地域ということで、ブラジル政府が地方開発を進める一環といたしまして、日本側に対しましてこの開発計画をつくっていただきたいという話がございまして、昭和五十七年に事前調査団を送りまして、六十年、約五年前に最終報告書を出しております。我々の協力といたしましては、向こうの要請に応じましてその地域開発計画を提出したということでございまして、それはブラジル側に提出されて、後はブラジル側がそれを参考にしているという状況でございます。  それで、森林との問題あるいは環境との問題で御報告申し上げますと、最終報告書、こういう薄いものでございますけれども、これは最終報告書でございます。この中で、環境配慮につきましては、この時代、約五年前、明確なガイドラインというものをまだ設定していなかったときでございますけれども、この調査におきましては環境配慮を相当なされております。例えば森林関係で申しますと、こういうくだりがございますけれども、先ほど来お話のございます焼き畑農業とも関連しまして、「広範に行われている移動焼畑耕作と相俟って、地域によっては自然環境の悪化が懸念されるにいたっている。」、したがって、こういう面をとらえて、移動農民の定着化が重要であるという提言をし、そういう意味で開発環境保全のバランスをとったやり方が非常に重要だということも申していまして、報告書自体非常に環境に配慮した形で、かつその開発の問題をどういうふうに考えるかということで報告書を提出した経緯がございます。そういう報告書を提出したという協力をいたしました。
  68. 翫正敏

    ○翫正敏君 私もそんなに詳しく調べたわけじゃないんですが、今ほどのお話だと、何か地元の住民の人たちがカラジャス鉱山関係の工事の関係で焼き畑農業をするので、それで森林が減っているというような感じのことをおっしゃったようですが、私の読みましたこの本を見ますと、「カラジャス鉱山は露天掘りであるから、これを覆っている森林を剥がさざるを得ない。この意味では、ある程度の森林破壊は不可避的なことといえよう。しかし、この点での環境への影響は、局地的なものにすぎない。問題は、大カラジャス地域全体の自然環境、特に熱帯林破壊の危機に直面している」というふうに書いてあって、日本がお金を出して進めているカラジャス計画というものそれ自体が、地元の住民の人がそれに即して焼き畑をしているということが主たることではなくて、計画そのものに地球の肺と言われているアマゾン川流域の森林破壊しているということがあるのではないかというふうに思うんですが、そういう認識にはないんでしょうか。
  69. 北村隆則

    説明員北村隆則君) お答え申し上げます。  調査報告書として出しました内容は、農業開発、鉱物資源開発、その他幅広い内容に入っておりまして、私、先ほど焼き畑農業との関連で申しまして、農業との関連で申し上げました。  鉱物資源との関係では、この報告書で申していますのは、事前調査のやり方あるいはその立地条件をどういうふうにしたらいいかということについてのいわゆるアドバイスという形での報告書になっておりまして、私自身、森林破壊が進んでおるということについては非常に残念なことだと思っておりますけれども、ただ森林破壊は、先ほど来御議論いただいておりますとおりいろんな側面がございまして、ほっておいてもあるいは焼き畑で失われるかもしれない、そういうことにつきましては農民の定着化を図って総合的な利用を図る方がむしろ森林の保全にも役立ち、かつ民生の向上にも役立つ、そういう面もございますという意味で私先ほど申し上げた次第でございます。  したがいまして、どういうふうにその開発計画を進めていくかにつきましては、この報告書はそういう意味で、調査という意味での一つ協力あるいは貢献でございますけれども、具体的な進み方についてはブラジル側におきまして統合的な見地から判断すべき事項だとは私は考えております。
  70. 翫正敏

    ○翫正敏君 もう一点だけで終わります。  今のカラジャス計画のことについて、自然林の消滅はこの地域のインディオの住民の方々の生活基盤そのものを奪うことになっていて、この計画によって約四十のインディオの集落が犠牲になり、一万三千人以上の方々の生活基盤が奪われた、こういうふうに報告をされているものを読んだんですけれども、こういうふうなことを把握しておられますかどうか、お聞きいたします。
  71. 北村隆則

    説明員北村隆則君) 今御指摘がございましたインディオの数につきましては、私自身正確な数を把握してはございません。調査によりまして提言しておりますのは、農民の定着化の問題から開発のやり方あるいは保安林の設置の仕方等々提言しておりまして、インディオの数あるいはインディオとの関係でどういうふうに住民関係あるいは開発を進めていく上での住民との関係につきましては一義的にブラジル側の問題だと先ほど申したとおりで、そういうふうに認識してございます。
  72. 翫正敏

    ○翫正敏君 時間がないので、環境庁の方に緊急な森林の対策の問題として一点だけお聞きして終わりますが、石さんの報告書を見ますと、早急な具体的な対策をとらなきゃならない。そのためには熱帯材というものの輸入、消費、これを制限する必要がある。熱帯材の使用制限、長期的輸入制限計画、公共建物への使用制限、こういうものをしなきゃならないというここに提言が書いてあるんですけれども、こういうようなことについてどのようなお考えですか。
  73. 安原正

    政府委員安原正君) 石さんからの御指摘のように、熱帯木材が輸入されまして、そしてかなりの部分が合板の形に加工されるということがございます。そうして、その合板をさらに、例でお挙げになりましたわけですが、コンクリート建物をつくります場合の型枠に利用されているウエートがかなりあるというのが事実でございます。  私どもとしましてもその問題が、コストの問題もあるわけでございますが、できるだけそういう一回限りで使い捨てをしていくという形は決して好ましいものではないと考えておりまして、よく実態の把握に努め、関係業界の実態をよく把握し、どういう対応策を考えたらいいのか、今後検討してまいりたいと考えております。  特に、先ほど申しましたのですが、三月の末に地球環境保全に関する関係閣僚会議幹事会で、政府が率先してやるべき事項を申し合わせているわけでございますが、その中にも、国等の行います事業に関連しまして、廃棄物の形になるものをできるだけ減量化していく、あるいは再資源化していくということをうたっているわけでございますが、その一環として今後十分検討してまいりたいと考えております。
  74. 管原敏夫

    説明員(管原敏夫君) ただいまの輸入削減の問題につきまして、農林水産省から若干コメントさせていただきたいと思います。  先ほど来御意見ありますように、熱帯林減少の主原因が焼き畑耕作の増大とかあるいは過度の放牧というようなことがございますし、また輸出用材での我が国のシェアが大きなものということでもございませんので、これが直接影響を与えるというふうには考えられない。また、消費国側が一方的に輸入削減をやるということになりますと、産地側の社会経済へのさまざまな影響があるというようなこともございますので、これについては慎重に対処すべきではなかろうかというふうに考えております。  また、我が国としましては、熱帯林の重要性ということは十分認識しておりますので、熱帯地域の持続可能な発展に資するためにも、従来にも増しまして二国間の協力あるいは国際熱帯木材機関等を通じました多国間の協力を積極的に推進してまいりたいというふうに思っておりますし、なお、国産材の針葉樹林等を含めまして熱帯木材にかわります原料を使用しました技術開発、あるいは合板製造技術、また原料転換促進事業を実施しているところでございます。,
  75. 森暢子

    ○森暢子君 森でございます。石先生、橋本先生、いろいろと参考になるお話をありがとうございます。  きょうの環境問題の中で、どちらの先生もおっしゃっておられましたけれども、いろんな環境汚染の問題点の中で、やはり放射能汚染のことでございますが、どちらも問題としてお出しになっていたと思います。特に橋本先生は地球温暖化を取り上げられましたので、その中にはどうしてもエネルギーの問題が出てまいります。そうしますと、今いろいろと問題になっておりますが、地球環境保全の立場からは温暖化を防ぐには二酸化炭素を出さない原子力利用拡大が必要である、こういうふうな一つの考え方もありますし、その中には、私どもからいきますと、家庭のエネルギーの利用が今もうどんどん広がっております。それから電力会社の経営の問題もありましょうし、それからもう一つは安全性を今国民は大変心配しているわけであります。絶対安全だ安全だということを電力会社は言いますけれども、これは絶対安全だということは言えないと思うわけです。それはもう既に世界のいろんな原子力発電所の事故を見ますとそれがよくわかるわけでありまして、やはり環境問題の解決は原発でと、こういうわけにはいかないというふうに強く思っております。  それで、お二人の先生にお伺いしたいんですが、原子力発電についてどうすべきか、どのようにお考えになっていらっしゃるかということをお二人にお伺いしたいと思います。
  76. 石弘之

    参考人石弘之君) 大変複雑な問題で、短時間でお答えできるかどうかわかりませんけれども、私は、個人的には原発は反対でございます。  環境問題の鉄則というのは、空間的、時間的になるべく人様に御迷惑をかけないというのが鉄則でございまして、炭酸ガスも、さかのぼってみますれば産業革命以降にばかばかしいまでの大量エネルギーの使用が始まったのが今になってツケが回ってきているわけでございます。そうすると原子力も、私たちが今電気という便益を受けてわずか三十年ももたない原発のために、将来とも膨大な核燃料の廃棄物とそれから取り壊しができないような原発そのものを後世に末長く残さなくちゃいけないという意味において、地球環境の観点からすれば最も後世に御迷惑をかける。それから、チェルノブイリでわかったように、一発事故を起こしますと二週間で北半球が全部汚染される。これも全く地球環境の理念から根本的に反するものでありまして、私は個人的には反対でございます。  じゃ、それにかわる電気をどうするんだというような議論が必ずや出てまいると思いますけれども、それはやはり、私たちはもうこれだけたくさんエネルギーを使っているんだから、みんなで少しずつ遠慮し合って少なくしようよという方向に持っていくしかないと思っています。  以上です。
  77. 橋本道夫

    参考人橋本道夫君) 私の意見は若干異なっておりまして、原子力発電所は極めて危険なものであるという前提で対応するのが当たり前であるということであります。ですから、あれを安全と言うのはなかなか分の悪いPR戦争であるなと思いますね。しかし、絶対安全なものだけをみんな使っているかというと、全然そうではありません。やはり危険性とそのコストとそれから便益と、日本にはやっぱりその上に国のエネルギーの確保という安全保障上の理由が入りますね。ですから、非常に危険であるという前提である。それで反対運動の自由があり、しかも地方自治体が全部のモニタリングをしており、チェルノブイリのようなことは日本では絶対起こらない。  私は、ソ連みたいな国がああいうことを起こすだろうともう前から、役所のときから言っておったんですが、案の定そのとおりのことを起こしました。日本ではあんなことが起きたらすぐさま地方自治体のモニターがだっと怒ります。また、あんなこと起きる気遣いもまずない。リスクは絶無であるかというと、ゼロとは言いません。しかし、リスクのゼロのものでなければいけないという議論には私は賛成いたしかねます。ですから、危ないと。それで両方で徹底的にもみ合う。裁判闘争もあろう、何の闘争もある。それこそ日本の安全性であるという立場で私は対応しております。
  78. 森暢子

    ○森暢子君 何か今聞いておりましたら、絶対にない、そういう事故は絶対にないと、強く自信を持っておっしゃったんですけれども、この世の中には絶対というものは存在しないのではないかと思うわけです。もちろんそういうものがあっては困るんですけれども、でも、今新聞紙上で問題になっていますのに、日本の三十六基あります原子力発電もちょこちょこいろんなところで事故が起こっているわけですね。ですからその辺は、それは危険性がある。絶対ないというのは、ちょっと私どもといたしましては、本当に国民といたしましても不安を感じるわけでございます。  それで、世界の原発をめぐる情勢なんですけれども、アメリカにおきまして十年前にはスリーマイル島の原発事故がありまして、それ以後新規の発注は一件もないというふうなことでございますし、それからイギリスにおきましても、二十一世紀は高速増殖炉の時代のはずだった。まず実用炉の建設の目標なんだけれども、どうも発電コストが今の原発よりも割高であるとかいうふうなことで、やはりいろんな問題が出てきているようです。特に、イギリスが環境に対する脅威についてアンケートをとりましたところ、水の汚染であるとか有害物質とかオゾン破壊とか温室効果を抑えて、核廃棄物の脅威が六六%でトップであった。そういうことを国民が思っているというふうな状況も出ているわけですね。  それで、私どもはこういうふうに新聞紙上で情報を得るだけなんで、大変お詳しい先生方に、原発をめぐる世界の情勢とそして日本が今どういう情勢かというあたりをここでお聞かせ願いたいというふうに思います。
  79. 石弘之

    参考人石弘之君) 世界の情勢は大変複雑でございまして、私も全部わかるわけではございませんけれども、世界の流れからいいますと、やはり原発の持っている本質的な技術というのは大変巨大なものでありまして、そこでチェルノブイリのように、あるいはスリーマイルのように、そこで原子炉が暴走を始めて手に負えなくなると全世界を脅かすという意味において、私は本質的に我々人類になじまない技術だというふうに信じております。ですから、フランスとか日本とか、一部の大変御熱心な国を除きまして、世界的にもうそろそろこれ以上ふやすのやめようよと、あるいはもう住民の反対があってできないよというのが私は大変ノーマルな姿だと信じております。
  80. 橋本道夫

    参考人橋本道夫君) 初めに、ちょっと誤解があったようですが、私が絶対にないと言いますのは、チェルノブイリのようなあきれた事故を起こすようなことは日本ではまずなかろうということでありまして、絶対の安全性など私は毛頭申しておりません。非常に危ないものであるという前提で対応するということでございます。  それから今の問題で、米、英、ソ、仏というのは全部兵器利用をした国であります。日本は原子力は絶対に兵器利用をしない国でございます。この点がもう徹底的に違っておるということでございまして、兵器利用をしたイギリスで一九五二年のウィンズケールの原子力処理施設の事故なんというのは、あれはまだ戦争の尾を引いている最中なんです。アメリカでも実にあっちこっちでいいかげんな処理をしたのはたくさんございます。日本というのはそのようないいかげんなだらしないことは一切やらない国と私は信用しております。これは全く武器として一切やらない国ですから、そういう点で申し上げておるわけであります。  それからもう一つは、日本におけるほど言論の自由と運動の自由と裁判の自由と、徹底的な対決ができるか。それはできる国はなかなかありません。これは非常に難しいです。この間、カナダでアルゼンチンの話がありました。アルゼンチンにカナダのCANDU炉を輸出したんです。それで、アルゼンチンの多大の負債の大部分はカナダのCANDU炉なんです。ところがカナダの人がアルゼンチンのためになったと思って、私の国は何をしましたかといって聞きましたら、アルゼンチンいわく、私の国の借金の大半はあなたのところの炉である、あなたの国はテクノロジー・トランスファーじゃなくてプロブレム・トランスファーをしてくれた、あの炉はほとんど動いていない、動くごとに事故を起こしている。そして何の公表もない。我々が聞いても一切何の答えもない。しかも何かおかしな事象があると。私は、日本はそのような国では一切ないと思います。しかし途上国で、今日本と韓国と台湾とを含めて五十基近くあるわけです。ここで一発変な事故を起こされるとこれは大変なことになるというのは事実でありまして、私は楽観主義は全然持っておりませんが、少なくとも日本に関する限りにおいては、これだけの厳しい中でやっていること自身が、電力会社の人は大変でありましょうが、これはもう覚悟しなきゃだめです。覚悟して、もう一生懸命最善のことをやるということで、必死になってやるということだと思います。ちなみに、東京、大阪のSOx、NOxのばいじんの三分の一は原子力発電所によって除去されています。
  81. 森暢子

    ○森暢子君 必死になってやると、こういうことしかないというふうな結論でございますけれども、今私どもはこうやって電気を使っております。電灯もありマイクもあり暖房もあり、それは電気のエネルギー、原子力のエネルギーに頼っている面もあるということは認めますけれども、これを必死で守りながらこれから長い間原発に頼っていくかどうかということは、これは大変な問題があると思うんです。  例えば、今の安全性の問題の中ですけれども、毎日たくさんの廃棄物を出している。それが今ドラム缶にずっとたまっていっている。そのドラム缶が将来何万本になった場合に、それをどこへどうやって捨てるかということが今大変な問題になっております。これを考えたら、私、環境庁の長官は夜も眠れないのではないかというふうに思うわけですけれども、本当に、毎日たまり続けているあの有害な物質をどうやって処理していくか。つまり、高レベル、低レベル廃棄物処理の問題ですね。このことについて考えないと、まあ危険だけれどもしっかり守りながらと、今原子力発電は必要なんだということでは、これは大変だと思うんですが、そのあたり、どのようにお考えでしょうか。よろしくお願いします。
  82. 橋本道夫

    参考人橋本道夫君) 再度の御質問ではございますが、私は論争する気は全くございません。そのお気持ちをお持ちになるのはもっともだと思います。  しかし、その問題につきまして、ちょっと先ほど私差し上げましたアネックスのIIIをごらんになりますと、みんなどういうぐあいに原子力を使っておるかということを見ますと、カナダは一六%、それからフランスが七一%、スウェーデンは四五%であります。スウェーデンはもう近隣のスペースヒーティングまで原子力を使った国です。それを最近やっと、じゃ今度はやめましょうかと、ふやすのをやめましょうと、こういう国であります。ですから、やめようということだけを見てみんななくなったような錯覚に陥ることは、これは全然そうではないということであります。  日本というのはやはりどう見ても原子力のほかに、日本は必死になってベストミックスをやっている国です。私は、よくこれだけのいろいろのミックスを必死になってしたなと思います。ですから案外CO2は低いです。廃棄物処理はそれは専門家にやってもらう以外にありませんが、私は、水洗便所のないような原子力発電所なんというのは話になりませんで、処理をみんなフランスに回して、フランスから日本に返ってくる分だけです。ですから、それは日本できっちりやるということで、私はその点は技術を持った人々が徹底的にやるというぐあいに、完全な信頼にほぼ近い程度の信頼を持ちながら、しかし危ないと、非常に危ない施設だということで、いっときも気を許すことができない。  再度申しますが、軍事利用は一切しない国であります。
  83. 森暢子

    ○森暢子君 石先生、お願いします。
  84. 石弘之

    参考人石弘之君) わずか三十年、実際には今の日本の大型原子炉は二十数年で動かなくなっておりますから、まあ三十年分の人間が恩恵をこうむっただけで、この後一万年分の人間が、この後一万数千年から二万年の人間が、膨大な廃棄物とそれからお墓のようにどうしようもなくなったどでかい廃炉を抱えていく。わずか三十年の人間が後世二万年にそんな影響を及ぼしていいのかというのが私の疑問でございます。
  85. 森暢子

    ○森暢子君 これは討論しておりましても切りがありませんですけれども、私どもは、今の原発で私どもがこうしてエネルギーの恩恵を受けているということは事実は認めますけれども、やはりこれは大変な環境問題であるという視点から、危険だけれども一生懸命やるというのではなくて、やはり将来的には新しいものはつくらない、そしてそれにかわるエネルギーを考えていくとか、または省エネルギーですね、それをどのようにしていくかということを政府と社会と教育と、もう全部をフルに回転していかなければいけない問題ではないかというふうに思います。だから、日本だけじゃなく、これはもう地球の全人類の問題であると思うんです。  ここで環境庁の方はどのように、私、夜も眠れないんではないかと思うんですけれども、いかがでございましょうか。
  86. 安原正

    政府委員安原正君) 温暖化の防止のためにCO2の排出を抑制していかなければならないという大きな課題があるわけでございます。これをどのように具体的に実施に移していくかということは難しい問題でございますが、やはり第一の方策は、先ほど来参考人からもお話がございますように、省エネルギー、省資源に徹するというのが第一かと考えております。  日本では、橋本先生からお話がありましたように、オイルショックの後、産業部門では相当省エネルギーが進んではまいっておりますが、まだまだいろいろ工夫をすればやる余地はございますし、あるいは交通部門とか民生部門とか、まだまだ省エネルギーをすべき分野は残っているわけでございます。そういう意味で、あらゆる政策手段を動員いたしまして省エネルギー、省資源をさらに一層徹底していくべきものと考えております。  それから第二の方策は、原子力も一つの候補にはなるわけでございますが、できるだけCO2の排出の少ないエネルギーに、可能なものにつきまして、もちろん安全性の確保をしながら転換をしていくということがございます。例えば石炭から石油へ、石油からLNGへということで徐々に移りますと、その分でかなりCO2の排出を抑えることができるわけでございます。  その関連で、原子力と地球環境保全とをどう考えるかということをよく私ども聞かれるわけでございますが、政府の内部では役割分担がございまして、原子力につきましては放射能の問題も含めまして科学技術庁の所管にはなっております。ただ、私どもとして意見を求められれば申し上げておりますのは、この点につきまして非常にたくさんの重要な国際会議がこれまで開かれてまいっておりまして、その場で、アルシュ・サミットでもそうでございますし、いろんな場で、IEAの閣僚理事会でもそうでございます。OECDの閣僚理事会でも議論をされました。そこで大体の御議論は、原子力も十分な安全性の確保を大前提といたしまして、CO2の排出がないという意味で、排出量の削減に寄与する代替エネルギーの一つであるというのが国際的に広く認識されているというぐあいに考えております。  我が国でどういうエネルギーミックスをしていくかということ、これが重要でございまして、原子力も一つのエネルギーでございますが、ほかにもいろいろエネルギー源はございますので、どういう組み合わせにしていくのか、十分エネルギー政策の観点から検討をして対応していくべきだ。いずれのエネルギー源を採択するにいたしましても、環境保全に十分な配慮をしていく必要があるというのが私どもの考え方でございます。  それから第三番目は、やはり技術開発かと存じます。新エネルギーにつきまして、環境に優しいエネルギーというものを開発していく。現に太陽エネルギー等につきまして、橋本先生がおっしゃったように、ある程度開発も進んでいるわけでございますが、コストの面でなかなか普及できないというような問題もございます。そういう普及の問題もありますが、技術開発普及という点でさらに研究を重ねて、環境に問題のない、環境にとって適当なエネルギーの使用がもっと広くできるように、技術開発に努力していくべきものと考えております。
  87. 森暢子

    ○森暢子君 廃棄物をどうするかということはお答えできませんか。
  88. 安原正

    政府委員安原正君) 原子力のですか。
  89. 森暢子

    ○森暢子君 はい。
  90. 安原正

    政府委員安原正君) 私ども専門家ではございませんので、原子力につきましては、それを活用する以上、あらゆる段階において安全性の確保に最大限の努力をすべきものと考えております。
  91. 森暢子

    ○森暢子君 今日本では、至るところで高レベル放射性廃棄物処理場になるのではないかという心配から、市民運動があちらこちらで盛り上がっているわけです。お二人の先生方、どちらも市民運動というのはなかなか重要だと、いろいろ社会を変えていくのに必要な運動だということで認めていらっしゃる。そして、それに政府の援助をつけるというふうなことをお話しになったわけですね。これを政府が援助するなんというのは本当に日本では考えられないことで、本当に原発反対の運動をしておりますと、これ、橋本先生も書いておられますが、日本ではもう危険分子として見られるというふうなことでございますね。  私は岡山の出身なんですが、岡山でも、中国山地が放射性廃棄物処理場になるのではないかということで、大変皆不安を持ちまして、今県条例を求める会をつくり運動をしておりますし、それから、これは農薬関係するんですけれども、河川敷にゴルフ場ができるということで、これは大変だということですね。そういう市民運動が岡山でも盛り上がっているわけです。ちょっと外国の例もお引きになって、それに政府が援助するというふうなことなんですが、どういうふうな具体的なことなんでしょうか。石先生、橋本先生、お願い申し上げます。
  92. 石弘之

    参考人石弘之君) まあ政府に反対するものに政府がお金をつけるというのは考えにくいんですけれども、現実には、幾つか例を挙げますと、例えばカナダの場合には、政府がNGOグループにお金を出しまして、それは結果的にカナダ政府が出資している発電所や鉱山に対して反対運動を展開しているということがございまして、政府は一切くちばしを入れていないわけでございますね。同じような例が北欧でも幾つかございます。ですからこれは結果的に、市民運動が何をやるではなくて、市民運動そのものの育成であると。その市民運動がたまたま原発反対をやるとか、あるいは政府がつくった施設に対して反対するというのは、それは市民運動の問題であってお金の問題ではない。そこまでやっぱり割り切っていただかないと、つまりお金はお上のものであって、下々に分け与えているから、分け与えられた者はお上に対して余計なことを言うなという日本の発想では私は困ると思います。ですから、大いにお金を出していただきたい。それが恐らくいい面にも使われると思います。あるいは、一部は政府の誤った政策を正すためにも使われ得るというふうに考えております。
  93. 橋本道夫

    参考人橋本道夫君) 今の御質問のNGO、私はNGOに非常にいじめられた人間ですが、NGOは重視しています。それがなければ日本環境というのはどうなるのかわからぬと今もやっぱりそう思っています。けれども、そういうことは役人の方に通用する話ではありません。僕は実ははみ出し者です。  それは別にいたしまして、NGOの問題はNGOが団体として、まず政府の金よりも何よりも、自分でちゃんと自律するようなNGOが日本にどれだけあるか。みずから会費を払い、それに参加しと、まずその問題があります。これはイギリスのナショナルトラストにしても随分長い歴史があります。それが日本はまだ浅いということです。  それからもう一つは、このNGOに寄附を例えば会社やいろんな団体からこれを出す。その税制がどうなっているか。今やっとODAの無償のNGOだけこれはスタートしました。すばらしいことです。それは確かにすばらしいことですけれども、それはODAの実績のあるNGOだけが何とかこうなったということでありまして、一般のNGOが皆できる話ではありません。そこらのところで、日本の税制で、NGOの活動に対してお金を出したら税制上の優遇措置が受けられる――アメリカは皆それをやっています。早くからそれをやっています。宗教団体もあります。いろんなそういうものがあります。ですから私は、そういうものがまずちゃんとして、NGO自身が自律的にちゃんとしたものにならないままに政府の金だけでやるということは、僕は実はちょっと首をかしげます。やはりNGOが自分自身で自主的に育つ社会というのは何かということで、実は昨年来NGOの研究を私たちはいたしております。環境庁も非常に重視しているわけです。それをずっとしていきますと、やっぱり税制とかそういう問題がてんで違う、そこに問題があると思います。  ですからODAの場合でも、例のカナダとかお話にありましたノルウェーとかオランダとかあります。それはもう既にNGOが実績としてかなりやったものがあって、それに政府の金を足したらぐあいがいいというものだけにこれを出しておるというものでありまして、政府の金がなければNGOの活動なんてあり得ない、だめだというようなNGOの議論ではないと私は思っております。ですから、日本のNGOも非常に地域的なエゴだけに集中しているようなものではなしに、本当に広範に結集して、自分たちでもちゃんとランニングできるコストをちゃんとする。それをまたみんなが支えるということ。それから、ある意味でかなり政治的にフリーなものでなければならないと思います。いろんな価値観や考え方がありますから。それはやっぱりどの程度できる基盤があり得るかということを本当に考えて対応するのが必要で、私はそれがまた今のような非常に難しい状態でもなおかつNGOは評価される。日本政府がいろいろ言っても、各国がなかなか信頼しないのは、大きな会議にNGOが同席していない。それからNGOの声というのは日本の批判だけを言っておるというところが極めて大きいのであります。これは大局的な国益論から見て非常にまずい話である、そういうふうに思っております。
  94. 森暢子

    ○森暢子君 市民運動に対する政府の援助ということについては、これは本当に私どもにとりましては新しい観点でございまして、きょうはお二人のお話、大変ありがとうございました。ぜひしっかりと記録にとどめておいていただきたいというふうに存じます。  もう時間がなくなったんですけれども、最後に、開発開発援助ですね。つまり、ODAと開発することによって環境破壊をするということが裏腹ではないかと思うわけです。ようやく何か政府の方もそういうことを、持続可能な開発ということで案をお出しになって、今後それに取り組んでいこうというお考えのようですけれども、予算関係を見ますと大変少のうございます。ですけれども多国間協力に対するお金の面は、つまり国連環境基金主要拠出国の中で、一位はアメリカで二位が日本と、お金はたくさん出しているわけですね。お二人の先生方もおっしゃっておりましたが、もう少し技術とか人材とかそういうもので協力すべきだという御意見がきょうございました。それで、技術協力資料というのをちょっと私探しまして見ましたところ、日本のを見ますと、昭和六十二年の技術協力は研修員が百八十三人なんですね。それから専門家派遣が九十四人、青年協力隊というのがありますね、あれが二十七人なんですね。もう大変寂しい感じがいたします。そしてこの海外青年協力隊は、今勤めている仕事をやめて行かなければならないのだそうですね。ところが、帰ってきての再就職の保障がない。こういうのが今の日本の現状なんだそうですね。  日本は、お金だけたくさんばらまき、そして道路をつくり、病院をつくり、それはいいんですけれども、本当に人的な、たくさんの外国の人たちを受け入れて、そして技術やいろんなものを身につけてもう一度国に帰してあげる、またはいっぱい行ってそういう技術を教えてくるとか、もっともっとそういう協力がないと、今のいろんな、日米構造摩擦じゃありませんけれども、世界の中の日本として生きていくすべはないと、こういうふうに思うんですが、そのことにつきまして、環境庁よろしくお願いします。
  95. 安原正

    政府委員安原正君) 援助の問題でございますが、それにつきましては時間の関係で省略いたしましたが、資料の七ページをごらんいただきますと、政府としまして、途上国環境保全に積極的に貢献する見地から環境分野の政府開発援助を拡充していく、そしてその中で技術移転とかあるいは環境分野の人材の育成に最大限の努力をしていくという方針を明らかにしているわけでございます。そしてまた、開発援助のプロジェクトの実施に際しましては途上国環境配慮を強化する。それは政府ベースのみならず民間企業の海外活動についても同じような配慮を徹底していくように関係団体に働きかけていくということで方針を明らかにしておりまして、それぞれその実施に向けて今努力が重ねられておるわけでございます。  環境分野の開発援助につきましては先ほども触れましたが、三年三千億ということを金額的なめどとしてその実行を確保するように各省庁で今検討されておる、実施に移されつつあるという状況でございます。特にその中で人材の養成が重要なことはそのとおりでございます。これは主として外務省の所管のJICAが中心になりまして、専門家を派遣したりあるいは研修員を受け入れたりするようなことで今拡充が行われております。  特にここで御報告しておきたいのは、新しい試みとしまして、タイにおきましてバンコクでそういう人材の養成にも資するということで環境研究研修センターを日本の援助でつくりまして、そこで研究活動、研修活動が行われる拠点にしていこうということで、今実際に着工が行われております。  それからもう一つ、もっと規模は大きいのでございますが、中国との間でもそういう研究研修センターにつきまして今基本構想の話し合いを進めているところでございます。金額の規模は、ごく概算でございますが、約百億円程度をめどにしましていろんな計画策定が行われているというぐあいに承知いたしております。
  96. 中西一郎

    会長中西一郎君) 速記をとめてください。    〔速記中止〕
  97. 中西一郎

    会長中西一郎君) 速記を起こしてください。  質疑を続けます。
  98. 和田教美

    和田教美君 石、橋本参考人の御意見を聞いておりまして、地球環境問題というのが地球温暖化、異常気象の問題、あるいはフロンなどによるオゾン層破壊など、まさに全地球的な大気圏にまで及ぶ問題である。しかも予想される環境破壊のリスクが非常に深刻であるということがよくわかりました。ありがとうございました。  私、時間が制限されておりますので、一番ホットな問題である地球温暖化対策の問題を中心に二、三質問をいたしたいと思います。  地球温暖化対策については先進各国の中でも対立があるというふうに聞いております。一つ環境保護を重視して二〇〇〇年までに二酸化炭素の排出量を現在の水準で凍結するという、これはオランダなどヨーロッパ八カ国の意見。それに対して、日本も含めましてアメリカとかソ連、つまり二酸化炭素排出量の上位国ですね、そんなことをされちゃ大変だということで、できるだけ早い時期に排出量をどの水準まで規制するかというふうなことを決めればいいじゃないかということで、現在の水準に限定するということにどうも反対しているというふうなことを聞いておるわけでございます。  そこで両参考人にお聞きしたいのでございますけれども、この環境開発の問題ですね、これをどうとらえるべきかということでございます。環境庁からいただいたペーパーによりますと、持続可能な開発が今や環境問題でも世界の共通認識となっているということが書いてございます。確かに一般論としては、環境保護をやりながら、しかも適度な高度の経済発展を持続するということがもし可能であれば、つまり両者を調和する、同時達成するということができるならこれにこしたことはないと思います。しかし、最近の地球環境問題の深刻さということから見て、この両者は矛盾なく調和していけるのかどうか。つまり、経済成長をある程度犠牲にしても環境問題を重視するという政策に転換する必要がないかどうか。その辺についてお二人はどういうふうな御見解を持っておられるか、率直にお聞かせ願いたいと思います。
  99. 石弘之

    参考人石弘之君) 私も同意見でございまして、持続可能な開発というのは私は反対でございまして、環境を持続させるためにどう開発規制するかということが私は今焦眉のことだと信じております。  例えばアフリカを例にとりますと、アフリカの奥地でみんなが昔から、何百年以来の同じ生活様式で、同じように薪をとって、同じように水をくんできたのが、人口が爆発したためにその生活様式を維持できない。今はそのように開発ではなくてむしろ環境を、例えば地球上でこれだけの熱帯林が必要なんだ、その今の熱帯林を保持するためにはどのように開発規制するかということが急務だと思うのです。  ですから二酸化炭素に関しましても、やはり現状を凍結するためにはそれを優先にしまして、どのように人間側の活動を抑えていくかという方が私は今理にかなった考え方だと信じております。
  100. 橋本道夫

    参考人橋本道夫君) 私は石先生のお考えとはまたちょっと違いまして、非常にこれは難しい議論だなと思っているんです。特にこの持続可能な開発、サスティナブルデベロプメントというのはあるべき姿であり、必要な姿であり、だれも反対はないと思うのです。また、そのような言葉だからこそWCEDで合意が成立したと思うのです。  しかし、一体何が持続できて、そしてだれが持続のメリットをエンジョイするかという議論をしますと、非常に難しいです。日本は成り立つがよその国の資源はなくなるということが起こります。これは、よそが資源を日本に出さないと日本はどうにもいかなくなるということも起こります。国とリージョンの違いが起こります。ダムなんかはローカルと国の違いが起こります。これを果たしてどうするかということを一つずつのケースについて最善のものを相手国と一生懸命考える。どうにかして考え出す。どこの国も、発展してきた道において一体どんなことをしてきたか。これは日本でもどこでも、今から見れば全くけしからぬことをしているわけです。それと同じ道を踏めとは申しません。それを今ならどういうぐあいに直し得るのだろうか。あるいは果たしてどのような制度をつくることによって、もうちょっとましな、もう少し公正なものを歴史的にだんだんしていくのか。私はやっぱり歴史の段階というのは、どんな国も絶対逃げることはできないと思います。  そういうことで、サスティナブルデベロプメントを今環境庁が必死になって考えているところでございまして、私どもの協会もいろいろ協力しようということで、いろんなケース検討をしながらその問題を考えているところであるということはぜひ御理解いただきたいと思います。  最も難しいのは、開発という問題は、開発をすれば必ずその状態と構成要素とシステムはどうしてもどこか変わります。このどこか変わることによって最も困るのは、そのシステムによって生きてきた人がそのシステムをぶっ壊されると全然だめになる。我々のような貨幣経済で市場経済のある国では補償すればどこかへやれます。けれども、全然自給自足経済の森林の中の人をどこかに移しても、すぐさまはどうにもならない。それを一体どうするか。私は、これは完全に政治ベースの問題だと思います。ですから、そこをやはり一緒になって必死に考えながらやっていくということ以外には私はなかなか言いようがありませんし、日本国内でも、日本開発環境という問題とこのザンベジ流域の開発環境という問題は、これはサハラとはまた違います。おのおのその使い分けは一体何か。これはやっぱり僕は外務省の、将来お認めいただければできるんだろうと思いますが、あの開発の大学院とか、そういうところでやってほしい。  それから、日本の小学校から大学に至るまで、日本のことだけではなく世界のいろんな国々で今死にそうな人々をどうするかということも考えながら、そこの国の歴史のポイントで何をしたら一番いいかということを考える。しかし、それでもやっぱり地球環境問題というのは起こるというところに私は答えをなかなかオプチミスチックに言うことはできません。最善のバランスポイントは何かということを必死になって追求するということ以外には答えがないということに私は思っております。
  101. 和田教美

    和田教美君 石参考人にお聞きしたいんですけれども、先ほど橋本参考人は、日本環境外交は、つまり環境行政にいろいろいい点もあるんだけれども、それはPRしないで、悪い点だけを外国から指摘されていると。金だけ出さされて非常に何というか割の悪い姿になっているということをおっしゃいました。石さんはラストランナーからの脱却というようなことをおっしゃっておるわけですが、今この環境外交、特に環境行政でこれだけはぜひ改めなきゃいかぬという問題点を一つ二つ御指摘を願えませんか。  それからもう一つ、そういうことを申しますのは、実は環境庁からいただいたペーパーを見ますと、地球環境保全に関する関係閣僚会議というのが現在できているんですね。ところが、このペーパーによりますと、それに参加しているのは実に十九省庁だということが書いてあります。ODAについても余りにも寄り合い世帯だということがいろいろ批判になっているんですけれども、それ以上だというふうに私は思うんですね。それで、環境庁の悪口を言うわけではございませんけれども、環境庁調整能力というものもそれほど高いとも思えないし、こういう形のばらばら予算を十九省庁につけた形で果たして先進的な強力な環境行政というものが進展できるのかどうか、いささか疑問を持つ。その点についてもひとつ御見解をお聞かせ願いたい。
  102. 石弘之

    参考人石弘之君) 最大の問題点は、僕は、この日本という大国が地球をどうしたいと思っているかというビジョンが全くなくて、その場その場での日本の利害しか国際的なこういうところでは出てこないということが日本のイメージの一番の低下につながっているのではないかと思っております。鯨しかり今度の二酸化炭素しかりフロンしかり、全部日本がラストランナーとして、最初は反対に回ったのに、最後に認めた段階では、最初日本が反対した段階のものと同じわけですから、なぜもっと先にそれに乗れなかったか、あるいは日本が率先してイニシアチブをとれなかったかということを私は悔やむものであるわけであります。  私は、一つ挙げると言われれば、今、日本の一番緊急課題は熱帯林の保護だと思います。これは大変に今国際的に日本は重大な状況にあります。残念ながら、先ほどの農林省の方のお話では、産出国のこともあって今すぐできないというお話でしたけれども、九二年に第二回目の人間環境会議、今度は名前変わりますけれども、その場で日本は恐らく熱帯林だけでもとんでもない袋だたきになると思います。ですから、今すぐ日本政府が、世界熱帯林日本はこういうふうに守るんだという前向きの方針を打ち出さない限り、日本はもっともっと悪評や批判にさらされると思います。鯨を考えてください。日本が鯨であれだけ苦い思いをして、たかが鯨じゃないかと言っているうちにいかに国際的な威信を下げてしまったかということをぜひもう一度考えていただきたいと思います。
  103. 和田教美

    和田教美君 環境庁にお尋ねしたいんですけれども、去年の十一月のオランダノルドベイクで開かれた大気汚染気候変動に関する閣僚会議、そこでノルドベイク宣言というのが採択されたということは先ほどお話がございましたけれども、その第十六項にCO2の排出安定化が先進工業国ではできるだけ早く達成されるべきことに合意するということがございまして、その次に、「多くの先進工業国の見解によれば、CO2排出のこのような安定化は、第一段階として、遅くとも二〇〇〇年までに達成されるべきである。」ということが書いてございますが、この「二〇〇〇年までに達成されるべきである。」というこの「多くの先進工業国」という中には日本は含まれておるんですか、いないんですか。日本はこれには留保しているんですか。
  104. 安原正

    政府委員安原正君) 昨年の十一月のノルドベイク閣僚会議についてのお尋ねでございますが、先ほど和田委員の方からの御指摘がありました点でございますが、日本が非常に消極的な態度をとったのではないかという点がございましたので、まずその点からお答えしたいと思います。  確かにこの会議では、二酸化炭素の排出安定化をめぐりまして意見が大きく分かれたわけでございます。オランダの原案が、二酸化炭素の排出を現行レベルで二〇〇〇年から安定化させるということで先進国は合意しようというような提案でございました。しかし、その点につきましては、まだ十分な国際的な検討も行われていないわけでございまして、検討をせずにそれにつきまして結論をなかなか出しにくい状況にあったわけでございます。  一方、六十三年の十一月から、この問題も含めまして専門的な立場から国際的な検討が、先ほど来ありますように、政府間パネル検討が行われているということでございますので、この安定化させるべきレベル、あるいはいつから安定化することができるかについてのフィージビリティー調査IPCC検討してもらったらどうか。それで、それは何も検討に時間をかけるということではなくて、IPCC中間報告がことしの八月に出る予定になっております。その中に入れてもらって、それを十月末から十一月にかけて開催される第二回世界気候会議大臣レベル検討をしてもらって、その結果を見て安定化に合意してやっていこうと、こういうことで、我が国が積極的に、その意見が分かれる中で宣言を一本化するイニシアチブをとったわけでございます。結果としまして、米国、英国、ソ連、中国も含めまして、日本の案で結構だということになりまして、その意見につきましてはまたオランダも含めましたEC諸国もそれで一本化しようということになって、最終的に宣言が一本化されたというのが経緯でございます。日本としては決して消極的な態度をとったということではなくて、その合理的な結論に沿ってやっていこうということでイニシアチブをとったということでございますので、御理解を賜りたいと思います。  そこで、先ほどのバラグラフ十六でございますが、確かに「多くの先進工業国の見解によれば、」ということで、CO2の安定化が、「第一段階として、遅くとも二〇〇〇年までに達成されるべきである。」という表現がございますが、これにつきましては、ECあるいはスウェーデンとかの北欧諸国が原案に賛成の立場をとりましたので、原案に賛成の立場をとったような国を包含するような表現としてこういう書き方がされたものと考えております。したがって我が国の立場は、IPCC検討して、その検討結果を待って安定化をし、その時期も決めていこうということでございますので、この中には日本は含まれておりません。
  105. 和田教美

    和田教美君 時間がなくなってまいりましたので最後の質問ですけれども、外務省にお尋ねしたい。  橋本参考人の先ほどのお話で、IPCCのメンバー国の間でギャップがあると、発展途上国はこの問題を生存の問題としてとらえておるというふうなお話がございました。確かに私はそうだろうと思うんですね。それで、これだけとにかく二酸化炭素を排出させておいて、地球温暖化というような現象をもたらしているのは先進国の責任じゃないかというふうな強い批判があるというふうなこともそのとおりだと思うんです。  そこで外務省にお尋ねしたいんですが、ODAとの関連でございますけれども、先ほどからも出ておりますように、日本の業者が熱帯林を乱伐して木材輸入をして、そして熱帯林を崩壊させておるとか、あるいはまた企業行動として、つまり日本からはもうとにかく公害排出の機械だとかというふうなものがどんどん輸出されていくというふうな形の企業行動だとか、そういうふうなものは大いにこれは排撃しなければならないと思うんだけれども、ODAの問題になると、環境の問題とそれから開発という問題をどこで調和するか。ODAについてももちろん環境への配慮ということは非常に重要だと思うんですけれども、非常に難しい問題だと思うので、先ほどからもちょっと議論が出ておりましたけれども、余りにも環境の問題を優先して考えるともうダムもつくれない、あるいはかんがい施設もつくれない、鉄道建設もできない、何がしかの自然破壊は起こるわけですからね。そこをどう調和していくかというのがいわゆるこの環境配慮という問題だと思うんですけれども、その辺について外務省はどういうふうにお考えなのか、どういうふうに指導されていくつもりなのか、お聞きしたい。
  106. 北村隆則

    説明員北村隆則君) お答え申し上げます。  まずODAの援助に関する環境問題でございまして、今御指摘のとおり、援助という面から見ますと二つございまして、環境をよくするためのプロジェクトをどうするかという面と、それから環境配慮をいかにやっていくか、その環境配慮の面について御質問でございますので、それについてお答えさせていただきます。  先ほど橋本参考人の方から御紹介がございましたけれども、OECDの場でガイドラインという、国際的にこういうふうにやっていこうというのがございます。それから、これ、橋本先生に座長になっていただいた、JICAで環境配慮をいかにやったらいいかということでパネルをやっていただきまして、政府の方に提言をいただいております。そういうことを踏まえまして実施機関で、JICA及びOECF、海外経済協力基金でございますが、ガイドラインを制定し、さらにそれを整備しているところでございますけれども、基本的な考え方としては、まず国際的にこうあるべきだというOECDのガイドライン、あるいは国内研究いただいた提言をもとに実施機関がつくっておる。  それで、先生御指摘の途上国との関係でございますけれども、途上国によっていろいろ事情が違います。したがいまして、ガイドラインにおきましては、途上国の例えば法令あるいは考え方、そういうのはまず基準にしなきゃいけない、それを無視した形ではできない。ただし、ないところもございますから、それだけで、ないことをいいことに勝手なことをしてもいけないという面もございます。したがいまして、国際的な基準とそれから現地のそれぞれの状況もかみ合わせて、それで援助としましてこうあるべきだというものをガイドラインの形で制定しておりまして、それにのっとって援助における環境配慮というものを考えていく、こういう仕組みにしてございます。
  107. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 まず、石参考人にお伺いしたいんですが、これまで地球環境問題で大変先駆的なお仕事をなさってこられたことに敬意を表したいと思うんですが、最近書かれた「地球環境報告」の中でも、人類四百万年の歴史の中でわずか最近三十年で人類の生息状態も含めた危機に追い込んでいると、そう書かれていて、まことにそのとおりで、抜本的な行動を起こすべき問題だと改めて思うんです。きょうも石さんは、何よりも熱帯雨林問題、これに緊急に取りかかるべきだとおっしゃっておりまして、私どもも全く賛成なんです。というのは、日本が最大の責任を負っていると。先ほど環境庁安原局長は、焼き畑農業がまず第一の原因で、四割から七割という数字も挙げられたんですが、石さんがおっしゃるように、焼き畑の原因もまた伐採にある、この点をはっきりさせる必要があると思うんです。  世界自然保護基金、WWFが「熱帯林破壊日本の木材貿易」という緊急レポートを英語版と日本語版でわざわざ出したんですね。この中にも、焼き畑が元凶だというのは違う。まず焼き畑による森林破壊が目立つ土地は、第一に過去に伐採が集中的に行われたところだ。第二にそこに政策的移民や自然移民が押し寄せて、伐採道路を伝って入植して、それで荒廃地にしてしまう場合が圧倒的に多いと、こう書かれているんですね。ですから環境庁は、焼き畑が第一位で四割から七割で、日本の伐採は二次的なんだというその前提そのものを検討し直して、熱帯雨林を守るという仕事で日本が最大の責任を持っているということをきちんと踏まえるべきだ、そう思うんです。  それで石さんは、具体的な対策として、「輸入・消費制限」の消費のところで、「公共建造物への熱帯材使用制限、長期的輸入制限計画」と書かれているんですね。お伺いしたいのは、石さんがどういう提案をされるかということは非常に大事で、大体政府は石さんのおっしゃることの十分の一ぐらいしかやらぬのですから、だからやっぱりずばりと抜本的なことをぜひ提案していただきたいと思うんですね。  最近NHKが放映した「地球は救えるか」、これも本も出ておりますけれども、この中に西ドイツの例が出ているんですね。西ドイツの木材輸入協会、これがおととし「行動規範」というのを発表した。これは、「伐採後、植林をして現状を維持すること、現状維持可能な範囲を超えた伐採は行わないこと」、これが「行動規範」の基本的な立場だと、そう述べています。そこで、私ども日本共産党も先日発表した環境問題の政策の中で、「再生・回復の保障が確実にある場合をのぞき、日本企業による熱帯林伐採をただちに禁止すべき」だと。これは西ドイツの木材協会と基本的に同じ考えなんですけれども、やっぱり輸入・消費制限だけでなくて、熱帯雨林に対するああいう非常に不当で危険な伐採そのものを措置しないととまらないと思うんですね。フィリピン、インドネシア、あの雨林をつぶして今マレーシアでしょう。これもそろそろだめになりますと、あとパプア・ニューギニア、これ、もう手をつけていますが、次はアマゾンをねらっているというんですね。  ですから私は、やっぱりそういう措置に日本が踏み切らないと、それこそ先ほどおっしゃった鯨問題で国際的な非難を浴びたようなことになりますし、人類の生態系を守るということが本当に難しくなるんじゃないかと思うんですが、そこら辺の問題についてもう少し具体的な石さんのお考えをお聞きしたいと思います。
  108. 石弘之

    参考人石弘之君) 焼き畑の四割から七割というのは、私が申し上げた数字でございますので……。  今、日本が一番問われているのは、日本熱帯材でひどいことをやっているというのはもう国際的なコンセンサスなわけです。日本は、今そのコンセンサスにこたえて何をやるかというのをもう示さなくちゃいけないところまで来ていまして、周りから何を言うかという目で見詰められているわけですね。このとき、私は、今一番現実的で一番できやすいのは、少なくとも公共建築物で日本はもう一切熱帯材を使うのをやめましたということを世界に公言することだと思います。もちろん伐採がとまるのが一番いいことですけれども、日本が輸入を制限しただけで熱帯林にかかるプレッシャーは随分僕は下がると信じております。  伐採というのはさらに複雑な背景がありまして、現地の産業とかいろいろありますので、日本がそこまで口を出すのは恐らくかなり困難だと思います。ですから、現実的には、日本が今後十年間で熱帯材の輸入は半分に減らします、そのためには今年度はこれだけ、何年度はこれだけという長期計画をまず示しなさい。それから日本はまず国家の要するに公共事業には熱帯材を使いません。それから自治体についても熱帯材をなるべく控えてほしいというような形で示しただけで、僕は世界的には随分日本に対する見方は変わってくるのではないかと思っております。
  109. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 次に、橋本参考人にお伺いしたいと思います。  先ほど、日本のこれまでのいろんな行動などについては、まずい点もあったけれども確かにいい点もあったということをおっしゃいました。しかし、オランダノルドベイク会議などでも、当時の新聞に、やっぱり日本はラストランナーだったと、「地球環境に対する日本の消極性はいまや、確信犯的ですらある。」「通産省主導だった。」、「十二人の代表団に通産省から四人が加わった。」ということを述べられているんですね。オランダ最初の案の二〇〇〇年までに三〇%削減、これももう絶対反対でやっていって、結局二〇〇〇年までに安定化というような抽象的なところにとどまったんですね。これはやはりCO2の排出量を削減するのはできるだけしたくない。先ほどから言われている通産省や大企業の開発とか産業発展とかそこを主にして考えて、地球環境問題についての自覚の非常な薄さがやっぱりどうしても出ているんじゃないかと思うんですね。  そこで一つお伺いしたいのは、橋本さんはIPCCの第二作業部会の副議長でもいらっしゃる。八月には中間報告が出るわけですね。中間報告にも盛り込まれるかもしれないんだけれども、ノルドベイク宣言にはどういう目標を盛り込むかということについて書いてあるわけですね。いただいた資料にもこうあります。「例えば「二〇〇五年にCO2排出量を二〇%削減」を含む、CO2排出の抑制又は削減の目標の達成可能性をIPCC検討することを支持するよう要請。」になっているわけでしょう。八月に中間報告がまとまるんですけれども、橋本参考人御自身は、単なる凍結ではなくて二〇〇五年までに二〇%削減と、宣言そのものにこれを達成しようという希望が表明されているこの目標については御賛成なんですか。その点お伺いしたい。
  110. 橋本道夫

    参考人橋本道夫君) 今の御意見でございますが、私は思想として非常に、やはりヨーロッパはアジアと違って、日本と違ってあるべき姿を打ち出すなということで敬意を表しています。ただ、数字をきちっと言ったということについては何の詰めもないと、これもう全く間違いのない話であります。  私は、ヨーロッパのビヘービアというのはOECDの中にいても嫌というほど見ました。ですから、だから日本はしなくていいという気持ちは全く持っておりません。しかし、日本議論は堂々とやったらどうかということです。日本アメリカとは違います。アメリカは何もしないでぐずぐずしておるわけです。日本はやっています。しかし決めるのにはもう少しフィージビリティーやなんか、ちゃんとしなきゃいけない、こういうことを言っているわけであります。ですから、ノルウェーの言っている理念は非常にいい、やっぱり政治というのはああいう姿があるかと思います。しかし、いつどれだけのことをやるかというのは、一国のエネルギーというのは環境大臣が決められるかというのは、私の感じでありますが、アサンプションとしてなら立てられる。しかし実際実行することになると、やはりいろんなエネルギーや開発や経済や全部絡むような基本的な国益問題ではないか。  そういうことで、二十一世紀のなるべく早い時期にやるということで、通産省というのは非常に皆批判されますが、私は、エネルギーについては実は世界で一番前向きな省だと思っています。正直にそう思っています。けんかもしますがそう思っています。というのは、非常にきっちりこの総合エネルギー調査会でちゃんと作業しています。しかし、それが全部満足かというと満足ではありません。ですから、これは環境庁が今、今度の白書でどうこうやろうとしているわけです。そうすると、今まで巨大なものばかり膨らましてきたものを、もっと細かな草の根みたいなものをあちこち膨らますとか、新しいものを、エネルギーをやるというようなことをもっともっと、世界の国もちゃんと目覚める、なるほど日本というのはすごいことをやったなと思わせるようなことを言って、議論するのはアメリカでもどこでも堂々とやるべきです。私は全くそう思っています。  日本はそう誤った道を歩いているわけではありません。しかし、非常に格好は悪い。これは格好は悪いと思います。そこは日本と欧米の国と政策行動の違いがあるんだろうと思うんですね。ですから、欧米が言うのは何でもよくて日本のは何でも悪いというような考え方は私は、日本の悪い面は確かに悪いと思います。石さんのおっしゃるような象牙とかいろいろな問題は、この生物の面においては日本は随分これはどうも見劣りがしておると思っています。けれども、事エネルギーに関しては、決してそんな弱気を持つべきではないと思っています。それで、IPCCがつくるというのはこれは十八カ月間ですから、その成果のもとでどこまでできるかだと思っています。
  111. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 しかしね、カーター政権のときに「西暦二〇〇〇年の地球」というあれだけの研究をやりまして、地球環境問題について、全部正確とは言わないまでも、あれだけの見通しをアメリカはやっているんですよ。日本政府の出したものを見てごらんなさい、何にもありませんから。ということは一言言っておきたい。  安原局長にお伺いしたい。先ほど翫委員から、ブラジルのアマゾンの大カラジャス計画について質問がありました。外務省からも答弁があったんですけれども、これは事実と全く違うと。これは、私はNHKのテレビも見たし、この本も読んだのですけれども、あそこの熱帯雨林の恐るべき破壊が進んでいるのは、製鉄工場の燃料は木炭を使えと、その木炭は周りの熱帯雨林の木を使えということになったというので、NHKの詳細な取材がここにあるんですよ。それで、JICAの事前報告、最終報告に両方、どうもフィージビリティースタディーの第二報告の中に、事前報告の中にあるらしいのですが、引用がこうあるんです。「この地域は、木炭生産によい条件を備えている。木炭を基礎にした銑鉄の生産が、輸出産品として期待できる」と、こういうものが出ちゃったんですね。だから熱帯雨林はどんどんどんどん伐採して、木炭にしてそれでやっているんですから。こういう事前報告書をJICAが出した。それでNHKによりますと、この大カラジャス計画報告書は、コンサルタント会社が最終報告を作成している。先ほど、当時も余り環境アセスのガイドラインもなかった時期だということを外務省言われたんだけれども、だから、それだけに環境への影響評価は余り行われていなかったんですね。事後調査も余り行われていないというんです。事後調査をしていないことについてはNHKでも、経済同友会の専務理事の河合さんが事前調査団の責任者の一人として、事後調査をやっていないということまでちゃんと述べているわけですから。  私は、こういう恐るべき事態が次々と起こるのは、前回もちょっと申し上げたんですけれども、やっぱり国内にも、閣議でガイドラインが決まっているだけでアセス法はないというような事態に大きな根源があると思うんですね。熱帯雨林の破壊だけでなくて、公害輸出の問題でも、マレーシアの三菱化成の合弁会社による放射能性を持ったトリウムの汚染の問題ね、これは裁判にまでなっている。インドネシアのジャカルタ湾の水銀汚染、フィリピンの銅精錬工場による汚染とか、次々に起きているわけでしょう。日本国内ではできないことを国外でやるわけですよ。現実にこれだけやっているんだから。ですから私は、やっぱりアセス法をちゃんと国内でも制定して、国外に進出する企業は国際条約やその国の法律に従うんだが、同時に日本の企業として、やっぱり日本国内で定めるアセス法の基準に基づいて行動をするような措置をとるべき時期が今来ているんじゃないかと思うんですね。  大カラジャス計画について、細かなことは、もう時間がありませんから答弁は要りませんけれども、安原局長環境庁として、前にアセス法についてあちこちから押されて結局あきらめちゃったわけでしょう。やっぱりこういう事態の中でもう一度、もっと突っ込んだ、国際的な今大きな問題になっているこの地球環境問題や公害輸出の問題まで踏まえた新しいアセス法ですね、環境アセス、こういう法律を改めて出すということをやっぱり環境庁として考えるべき時期に今来ているんじゃないかと思うんですけれども、何の検討もしていないんですか、お伺いします。
  112. 安原正

    政府委員安原正君) アセスメントを的確に実施していくことが、環境破壊を未然に防止する上で重要な手順であるというぐあいに考えております。これにつきましては、先生御案内のとおり、いろんな経緯はございましたが、現在は、大きな影響のあるような公共事業等につきましては閣議決定に基づきましてアセスメントをやっておりますし、それを補完する形で各都道府県で条例とか要綱が制定されておりまして、必要なアセスメントが閣議ベースあるいは地方の要綱、条例ベースで行われているということでございます。具体的なそういう運用に当たりまして、改善すべき点があれば改善していくという努力をしていかなければならないと考えております。そういう形で国内でアセスメントが実施に移されましたのは、いろんな技術指針の制定等若干時間がかかりまして、六十年代に入ってからでございます。これまでのいろんなアセスメントの実例を十分検討しながら、法制化の問題をどう考えたらいいのか、今研究をしているところでございます。  それから、外国におけるODAの関係、あるいは民間企業による環境配慮の徹底、これにつきましては極めて重要であるという認識に立ちまして、先ほど来言及しております地球環境閣僚会議申し合わせの第五項目で、このことをきっちりやるということの基本的な方針を明らかにしておるわけでございます。今、これを受けまして外務省あるいはJICA等でそのガイドラインづくり、あるいは体制の整備をやっていただいている。それからまた、民間企業の関係では経済団体の方で具体的なガイドラインづくりに向けての作業をやっていただいているという状況でございます。今後これが的確な形で実施に移されていくことを期待しているところでございます。
  113. 猪木寛至

    猪木寛至君 きょうは本当に貴重なお話をお伺いしまして、参考人の皆さんありがとうございました。  きょう出ているテーマで、私は三十年間プロレスをやってきましたので本当に世界の隅々まで行きまして、ちょうどこの間ブラジルと南米を回ってきまして、今カラジャスの問題が出まして、またアマゾンにおけるいろんな問題も、アマゾンに入りましていろいろ現地の人たちの声も聞いてまいりました。本当に幾つかの問題があると思います。焼き畑もあります。それから水銀汚染、大変な資源があそこに眠っていますから、人間の欲望を、これを規制するというのは大変難しい。金が出たというニュースが出れば何万人という人がわっとそこへ行って一遍に伐採をしてしまう。そして金の採掘と、今度は採取のときに水銀をまぜますので、それを垂れ流しにする。そして今度は金を分離するときにまたそれを熱を加えて、その水銀が大気中に散らばっていくという、そういうことを何とか規制して、自分たちも悪いのはわかっているんだ、しかしながら、日本政府にもそういうこともお願いしたいという陳情もあったんです。  もう一つ、先ほどラストランナーということが表現が出てきましたけれども、実際私がその後アマゾンからリオへ回りまして着いたところ、消防署の大佐が迎えに出まして、ヘリコプターで案内された。とにかく見てくれということで。どういうことかというと、大変世界的に話題になっているライオンタマリンという、今二百五十頭しか生存していない大変きれいな猿なんですが、これを何とか四百頭までふやさないと絶滅すると。まあ動物保護ということでですね。たまたまそこが大変な山火事というか泥炭地域ということで九年間も燃え続けているということで、私もこのように写真を撮ってまいりましたけれどもね。ずっと燃え続けている。こういうように煙が出ているんです。それで、何とか消すようにということでJICAに今お願いしていますと。しかし、今そこで燃えているのにJICAにお願いしたってしようがないよと。私もそんなに動物保護ということに対して興味は持っていなかったんですが、実際行って見てしまうとやっぱり何とかしなきゃいけないなという気分になりまして、じゃ、どのぐらいかかるんだということになったら、三万ドルぐらいだと。二万か三万ドルで、要するにトラクターを入れて水路を引けばそこに水を引くことができる。火が六メートルも七メートルも下に入っているということでなかなか消せません。まあそういうことで約束してきたんです、その火は私が消しましょうと。それで、あと四百頭にふやしていくためには植林もふやさにゃいけないでしょうと。そういうことで、だから本当に世界で今日本が果たさなきゃいけない役割というのは大変大きなわけですね。  先ほど石先生の、あるいは橋本先生の話を聞いていて、やることは本当に山ほどある。でもどこから手をつけるかということは余りにも問題が大き過ぎますけれども、しかしながら、できることから日本政府がどう対応していくか。私は世界を飛び回っていて、本当に行かなきゃわからないということがたくさんありましてね、百聞は一見にしかず、そういうことで、現地の大使館としてもいろいろ対応したい、したいけれども日本政府の方にお伺いを立てなきゃいかぬ、なかなか返事ができないと。日本の一番困ったことは、いろいろ陳情を受けても、わかりました、大変それは何とかだ、国へ帰ってよく検討して御返事申し上げましょうという、これが一番大きな欠点じゃないか。やっぱり今何をしてくれるんですかという、外国はそういうことを期待している。それがあいまいな返事ということで、いつもそういうことで、本当は日本は一番大きな援助をしているにもかかわらず、それが結果として大変評判が悪いというようなことを感じてまいりました。  そこで、きょうは余り時間がありませんので、アマゾンということでちょっと絞ってみたいんですが、私がいろいろ情報を得た部分では、世界の遺伝子というんでしょうか、種がアマゾンの奥地には恐らく地球上の半分ぐらいがそこに集中しているのではないか。こういう遺伝子を今後、農業政策とかかわってきますが、これはどういう形の保存をしていけばいいんでしょうか。御意見があれば、石先生にちょっとお伺いしたいと思います。
  114. 石弘之

    参考人石弘之君) 推定によりますけれども、世界で五百万から三千万種類ぐらいの動植物がいると言われておりまして、その半分は熱帯林であるというふうによく引用されるわけでございますが、今のライオンタマリンを例にとりますと、あれは御存じのとおり日本が密輸入をいたしまして、そして結果的に何匹かまた返したわけですね。そのとき私は非常にいら立たしい思いをしましたのは、世界じゅうが日本のライオンタマリンの密輸入はけしからぬ、早く返せと言っているのに、なかなか日本にその情報が伝わらなくて、政府の決定に至るまでにさらに時間を食いまして、世界の情報が日本に等身大で伝わってきていないのではないかという、非常に隔靴掻痒をそこで経験したことが一つございます。  あれも大変貴重な遺伝子の資源の一つでございまして、遺伝子資源の保護というのは動物園や植物園ではなくて、特に熱帯林の場合には原産地で保護するしかないわけです。とりもなおさず、人間が手をつけない形でそっくり残すしかないというのが私は少なくとも熱帯林における遺伝子資源のもう基本ではないかというふうに考えております。
  115. 猪木寛至

    猪木寛至君 ちょっと話がそれますが、一つはエネルギーという問題で、さっきカラジャスの話が出たんですが、やっぱり人間が生きていくためにエネルギーという問題をこれは切り離して考えられない、そこと大気汚染という問題、あるいは経済成長という部分のかかわり合いなんですが、さっき原子力の話が出たのでちょっとお伺いしたいんですが、今後の例えば原子力にかわるエネルギー、現実にこれはもう、私も事実原子力というものに対しては反対の意見を持っているんですが、でもそれにかわるものが今見つからない。反対を訴えるのであれば、それにかわるものを何とか我々が見つけ出してこうしようというようなことでないとなかなか説得力がないと思うんですが、橋本先生にちょっと伺いたい。
  116. 橋本道夫

    参考人橋本道夫君) 今の御意見が一番大事なところでございまして、私も全くそれと同じ気持ちを持っています。別に原子力をしたくてサポートしているわけではありません。しかし、なけれぱどうにもならぬということで言っているだけの話でありまして、かわるものとなりますと、やはり廃熱として全部ほうり出している分が随分ある。これをもう少し熱として、いわゆるコジェネレーションですね。熱として、電気として回収するということをもっと広範にやれるように、あるいは燃料電池なんかも随分進んできている。あるいはアモルファスなんかもできてきている。あるいはヒートポンプで随分、例えば花博でも随分冷暖房、全部ヒートポンプでやっていますね。ああいうものがあるわけです。ですから、そういうものをどういうぐあいにしてどんどん伸ばすかという、そういうポジティブなものを、できるだけ大きな政治的なバックもつき、施策も生まれてそれを進めながらやっていけば、原子力にしたって非常にスローにしかいきませんから、やっぱりそういうものでその間を埋めなければどうにもならないと思うんですね。  ですから、そういうのを努力すると同時に、私はやっぱり本質的には原子力というのは過渡期ですから、二〇五〇年以降ぐらいに一体どういうことを新しい技術でやるかということを、日本ぐらいなお金と技術力があれば相当なことができると思うんです。それを今もう一度地球環境に立ち返って新しく目標を立てて、毎十年ごとにチェックをして、二〇五〇年以降にはこうするよというようなことを何とかしてほしいと、それはやはり政治の方々のバックがなければできないことだと思います。
  117. 猪木寛至

    猪木寛至君 ちょうど今、ブラジルが大統領がかわりまして、私、この間その就任式に行ってまいりました。これは、第一次オイルショック以来、アルコール政策ということで、これはCO2とも関係してくる、大変その当時は画期的な代替エネルギーということで登場して、ブラジルとしても大変な力の入れようだったんですが、ここへ来てちょっと陰りが見えてきました。これは土の問題もありますし、それから石油とのかかわり合いもあり、ここのところはっきりしていませんが、今後アルコール政策をどうやっていくんだという、向こうの政府にもまだ返事をもらっておりませんが、このアルコール政策について、石先生、どうお考えでしょう。
  118. 石弘之

    参考人石弘之君) 済みません、これといった意見を持っておるわけじゃございませんけれども、アメリカにガスホールといって、第一次オイルショックの後大分いって、一時一〇%の義務づけした州なんかが出てきたんですけれども、その後どうもアルコールの供給体制がうまくいかなくなって、余りその後続いてないように聞いております。  ブラジルについては、むしろアルコール政策が新たにサトウキビ畑をふやすことによってさらに熱帯林が切られたというような批判を森林保護側からよく耳にします。特に、サトウキビからあれは発酵させるわけですね、その過程で随分森林を切った。それからサトウキビ畑がこの二十年間で随分アルコールをとるためにふやされて、それが海岸地帯の破壊につながったと聞いております。  そのぐらいしか知識がありません。申しわけございません。
  119. 猪木寛至

    猪木寛至君 そのアルコール政策というのと、これからリサイクル農業ということで、大変世界が、土地が荒廃していくという中で、私も子供のときにブラジルに移民した経験がありまして、実際にコーヒーあるいは薪を積んだり、そういう経験があるので、先ほどお話を聞いていて本当に感じることがあったんですね。例えば堆肥の、これから有機農法ということが多く言われていますけれども、私は有機質がどんどん減少していく中で、その有機農法、有機質をどういうところから大量に供給するのか。これはちょっと橋本先生に伺います。
  120. 橋本道夫

    参考人橋本道夫君) 私はこのような分野の専門家ではございませんで、余り言う能力はございません。しかし基本的には、し尿とか下水というのは、片っ端から有機質を全部ほうり出して富栄養源をつくっていることも、これはまた間違いない事実でございますし、しかし一方で農民の方の労働がバランスがとれなきゃこれはまた困りますし、その辺を農業の方がどういうぐあいにされるかということで、私は残念ながらいい答えはできません。
  121. 猪木寛至

    猪木寛至君 私も、その一部ですけれども、リサイクル農業ということでサトウキビの搾りかすを牛のえさにしたり、あるいはそれを直に堆肥にしまして土に戻してやるということで、実験的なものの段階も終えまして、今やっていて非常に効果が出ています。だから、私は余りそういう知識はありませんが、体で世界を飛び回って、そして自分で体験するということしかないもので、数字的なことは申し上げられませんがね。  最後に、今皆さん、世界じゅうの人がアマゾンが大事だ、守れと言われています。だけれども、アマゾンを知らずしてどうしてアマゾンが語れるのかということで、ぜひ私はアマゾンの中に、公害にならない、破壊にならない環境大学をつくりたい。これはブラジルの政府にも提案してあるんですが。そしてそこで、専門家の方もさることながら、世界の人々が、国民の一人一人がそういう環境問題というものに取り組んでもらわないと、この中で幾ら論議しても、実際にそういう世界的な地球村というか、地球にいる一人一人がそういう認識を持ってもらわなきゃならない。そういう意味で、そういう大学を設置したらどうだろう。若い人も年をとった人も含めてそこへ来て、そこで交流をしながら、本当にその破壊を見ながら実際に語ったら、環境問題というのはもっともっと迫力が、あるいは感じが違ってくるんじゃないか。そんなことでこの間ブラジルの政府に提案してまいりました。  そういうことについてこれから政府の方にもいろいろお願いをしなきゃなりませんけれども、とにかく環境問題というのは大変大き過ぎますから、我々が本当にできる限り、私外務委員会でも申し上げたんですが、我々がもっともっと飛んでいってそういう現場を見るチャンスを与えてほしい。いつも金がありません、予算がありませんと。予算はいっぱいあると思うんですね。だから会長にもひとつ頑張っていただいて、そういう予算をとっていただきたいと申し上げまして私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  122. 高井和伸

    高井和伸君 私の時間は十分間でございまして、私がひとり言のようなことを申し上げます。それで、その後環境庁の方、それから石先生、橋本先生にお答えいただきたいと思っております。  実は私の友人から、東京の奥の方、奥と言うと語弊がありますが、東武東上線の東松山、森林公園というあたりに住んでおられる方から手紙をいただきました。そこの松が枯れ始めて、さらに杉だとかヒノキの最上段のこずえが枯れて、これは酸性雨だろうと、このようなことを予想しておられます。酸性雨という言葉につきましては、先ほど中部ヨーロッパ北ヨーロッパ関係アメリカカナダ関係というようなことがございましたけれども、まあ非常に話が小さくなって、地球環境の問題からミクロの世界になっちゃいますが、東京と武蔵野の奥のこういった環境の問題が、かなり進歩速く酸性雨というレベル日本国内だけでも進んでいるんじゃないかと、このようなことで非常に危機感を持った手紙をいただきました。  それから、もう一人私の友人で、イギリスへ十年ぐらい前に留学した男が、これは理論物理をやっている男で、帰ってきて言うことは、もうおれは自動車に乗るのをやめた。自分の個人のレベルでCO2を出すのをやめようという覚悟でその後乗っていないと、このようなことで、個人レベルからの抵抗をするというか、一つの姿勢を示すと、このようなことを言っておりました。  私がきょうのお話を聞いた中で申し上げたいのは、今のところ、使ってしまったエネルギーの後始末、いろんな人間の欲望を満たしてきた、そのツケを今いろんな問題で各国世界レベル日本で、環境庁で、いろいろ御苦労なさってその対応をなさっておられるんだろうと、そのような議論があったわけでございますが、私の考えるのは、もう人間興奮状態になってしまって、GNPを大きくすればいい、経済成長を遂げればいい、人間の欲望が限りなく満たされればいい、そのためにいろんな資源を使ってしまっているというような環境がございます。私が考えるところ、この際、省エネだとか省資源だとかいうことがやはり中心的なテーマにならない限り、対症療法的な面だけではとてもおさまらない問題を抱えておって、将来宇宙人から、地球環境をだめにして滅亡していってしまったという地球人衰亡論なんという本が出るんじゃなかろうかと、このように考えるわけでございます。そのためにも、まあ安上がりな政治というか、安上がりな環境保全というか、そのためにはぜひともこの精神論というんですか、哲学というか、地球に対する、資源に対する、環境に対する哲学をきっちり樹立したところでいろんな施策が実現していくんじゃなかろうかと、こう思うわけでございます。  そこらにつきましての、私に言わせれば、私の育った田舎は飛騨の山の中でございまして、そこで川の水をくんでふろを沸かし、川の水で顔を洗った、御飯もそれで山から木をとってきて炊いたという原始的な生活を高校三年まで過ごしておりますので、自分で畑もやり、有機栽培も自分でやったという経験からいいまして、非常に我々はそういった現代の産業ないしはいろんな科学の進歩による利益を享受しているんですが、そのツケが非常に大きい。ここらでもとへ戻って、そういった側面でもう少し人間禁欲主義にならなきゃいかぬのじゃないか。何のための禁欲かというとまた悩んでしまうんですが、人間の生存それ自身にまつわるツケがこのような格好で来ている。まあ歴史から逃れられないだとか、人間はぜいたくの方がいいに決まっているだとか、いろんな基本的なテーマがあろうかと思うんですが、そこらに関して、特に環境問題を良好な方向に進める上で精神論を樹立しなきゃいかぬと環境庁もお考えで、いろんな面で、ここにもございますパンフレットでは、安らぎと触れ合いのある環境の形成なんという言葉もございますけれども、何とかしてエネルギーを使わない方向だとか水を汚さない方向だとかいうような方向の基本的な哲学樹立が必要な時期に来ている。そういった面からも環境問題に迫らなきゃいかぬと、こう考えるわけでございます。  そこらについての御見解をいただきたいと考えております。  以上です。
  123. 石弘之

    参考人石弘之君) 全く同感でございますが、ただ一つ、今の精神改造の受け皿となるような、自動車をやめた後、じゃだれが目的地まで運んでくれるのかという、バスの整備であるとか公共交通機関の整備であるとか、そのような体制としての受け皿というものもあわせて必要ではないかなということを感じると同時に、例の東松山の酸性雨ではないかという話は、全国的に今そのような大論争が起きているんですけれども、なかなか決着がつきませんで、ある人は地下水が低下したために木が枯れたんだと、ある人はいや酸性雨だということで、むしろ環境庁が主催なさって、世界じゅうから著名な酸性雨の専門家を呼ばれて、日本全体をエクスカーションをやられて、酸性雨かどうかという決着をこの際つけられたらどうかという気がいたしますが、そんなことを考えます。
  124. 橋本道夫

    参考人橋本道夫君) 今のお考え、私も全く賛成でございまして、私役所をやめてから大学に入りまして、大学で環境原論というコースをやりまして、それは全く、その考え方やそれを探索する、いろんなディシプリンの者が寄って探索するという、講義と自宅のレポートと、それからグループディスカッションとを通じてやりましたら、もう実に学生が三十数人、全く出席もとらなくても全部時間的にぴしっと来ていますし、後まで残ってやっています。ですから、そういう気持ちはもうみんなにあるんだと思いますね。そういう意味で、環境というのは文化というふうに思いまして、私は、日本は健康に関する限りは、水俣病や四日市の問題で、一九六〇年代末から七〇年の初めはあれは日本の文化革命だと思うんです。外国に行って全部それを言っているんです。そういうのはがらっと変わったですね。まだ生活環境や生物に対しては変わっていない。そこを一体どうするかということだと思います。  特に、このストックホルム人間環境宣言を読んでみると、あれは余りにも西欧的な思想で書かれています。あれは日本に合うものではありません。しかし、環境をやっている人が余りにもストックホルム人間環境宣言を読んでいないということも事実であります。そういう点で、今おっしゃることを私はもう全く基本のことと考えていたしております。
  125. 安原正

    政府委員安原正君) ただいま先生がおっしゃいましたとおりに私どもも考えております。省資源、省エネルギー対策を従来からやってきましたが、従来に増して思い切った展開をもう一度やらなければならないというぐあいに考えております。  それにつきましては、昨年九月に東京会議開催いたしまして、世界の有識者に集まって議論をしていただきました。そのときの議論でも、環境倫理を確立するということが一番重要だという御指摘もあったわけでございます。そういう環境倫理を確立いたしまして、国民の一人一人、すべての企業がもう一回従来のライフスタイルあるいは企業行動のあり方を見直していただいて環境に優しい形に変えていっていただく、それが全面的な省エネ、省資源につながっていくベースであるというぐあいに考えているわけでございます。  政府といたしましても、先ほどの閣僚会議申し合わせの第六項目に、地球環境に与える負荷をできるだけ少なくするような形での社会経済活動が営まれるように努力していきたいと、それで、そのための第一着手はやはり普及啓発でございまして、国民の一人一人に環境とみずからの行動との関係を正確に理解していただいて、その上での行動をやっていただくということかと存じております。  さきの補正予算におきまして、地域環境改善に資するような形での事業ができるように基金の造成の補助金の予算を計上していただきました。これによりまして年度末には全部の都道府県、政令市も基金の造成を終わっております。これの運用益をもちまして全国的なそういう普及啓発が展開されることを期待しているわけでございます。地球規模で考えて、足元から行動をというのが合い言葉になっているわけでございます。そういうことで、私どもも微力ではございますが、そういう普及啓発に全力を挙げてまいりたいと考えております。  酸性雨につきましては、小林参事官の方からお答えいたします。
  126. 小林康彦

    説明員(小林康彦君) 我が国の酸性雨状況につきましてお答えいたます。  五十八年度から環境庁として調査をしておりますが、我が国でも、PHで四の台の酸性雨が継続して降っておるのが認められております。  影響につきましては、湖沼につきまして影響は認められておりませんが、酸性雨に弱い湖沼の存在を認めております。それから植生につきましては、お話のございました東松山市を含め杉林等一部衰退をしておる事実が認められておりますが、現在のところ、酸性雨との因果関係ははっきりしておりませんで、引き続き検討調査をしておるところでございます。現在、被害は顕在化していないという認識をしておりますけれども、弱い部分がございますので、引き続き調査研究に努めておるところでございます。
  127. 中西一郎

    会長中西一郎君) 以上で質疑は終了いたしました。  参考人方々に一言御礼のごあいさつを申し上げます。  本日は御多忙の中、長時間の御出席をいただきまして貴重な御意見を賜りました。まことにありがとうございました。本調査会代表して厚く御礼を申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十五分散会