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1990-04-26 第118回国会 衆議院 予算委員会第一分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    分科会平成二年四月二十三日(月曜日)委員 会において、設置することに決した。 四月二十五日  本分科員委員長指名で、次のとおり選任さ  れた。       池田 行彦君    越智 伊平君       鈴木 宗男君    田澤 吉郎君       新村 勝雄君    藤田 高敏君       冬柴 鐵三君    楢崎弥之助君 四月二十五日  池田行彦君が委員長指名で、主査選任され  た。 ────────────────────── 平成二年四月二十六日(木曜日)     午前九時開議  出席分科員    主 査 池田 行彦君       越智 伊平君    鈴木 宗男君       田澤 吉郎君    小松 定男君       沢田  広君    新村 勝雄君       鈴木喜久子君    外口 玉子君       藤田 高敏君    元信  堯君       山花 貞夫君    坂井 弘一君       冬柴 鐵三君    楢崎弥之助君    兼務 上原 康助君 兼務 小森 龍邦君    兼務 渡部 行雄君 兼務 遠藤 和良君    兼務 河上 覃雄君 兼務 玉城 栄一君    兼務 吉井 光照君 兼務 古堅 実吉君  出席国務大臣         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 坂本三十次君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 塩崎  潤君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 石川 要三君         国 務 大 臣         (沖縄開発庁長         官)      砂田 重民君  出席政府委員         内閣参事官         兼内閣総理大臣         官房会計課長  荒田  建君         人事院総裁   弥富啓之助君         人事院事務総局         任用局長    大島  満君         人事院事務総局         給与局長    森園 幸男君         人事院事務総局         職員局長    大城 二郎君         警察庁長官官房         会計課長    田中 節夫君         総務庁長官官房         審議官         兼内閣審議官  杉浦  力君         総務庁長官官房         会計課長    大橋 豊彦君         総務庁人事局長 勝又 博明君         防衛庁参事官  内田 勝久君         防衛庁参事官  玉木  武君         防衛庁参事官  村田 直昭君         防衛庁参事官  鈴木 輝雄君         防衛庁長官官房         長       児玉 良雄君         防衛庁防衛局長 日吉  章君         防衛庁教育訓練         局長      米山 市郎君         防衛庁人事局長 畠山  蕃君         防衛庁経理局長 藤井 一夫君         防衛庁装備局長 植松  敏君         防衛施設庁長官 松本 宗和君         防衛施設庁総務         部長      吉住 愼吾君         防衛施設庁施設         部長      大原 重信君         防衛施設庁建設         部長      黒目 元雄君         防衛施設庁労務         部長      竹下  昭君         沖縄開発庁総務         局長      藤田 康夫君         沖縄開発庁総務         局会計課長   山城  勉君         沖縄開発庁振興         局長      水谷 文彦君  分科員外出席者         衆議院事務総長 緒方信一郎君         参議院事務総長 佐伯 英明君         裁判官弾劾裁判         所事務局長   新川 行雄君         裁判官訴追委員         会事務局長   澁川  滿君         国立国会図書館         長       指宿 清秀君         公正取引委員会         事務局官房庶務         課長      平林 英勝君         総務庁人事局参         事官      畠中誠二郎君         外務省北米局地         位協定課長   森  敏光君         外務省国際連合         局人権難民課長 角崎 利夫君         大蔵省主計局主         計官      浜中秀一郎君         大蔵省主計局主         計官      渡辺 裕泰君         大蔵省理財局国         有財産第一課長 鈴木 一元君         大蔵省印刷局業         務部長     小野 榮一君         国税庁徴収部徴         収課長     島田 眞一君         文化庁文化財保         護部記念物課長 大津 幸夫君         文化庁文化財保         護部建造物課長 吉田  靖君         厚生省健康政策         局指導課長   澤  宏紀君         厚生省保健医療         局管理課長   矢野 朝水君         運輸省国際運         輸・観光局政策         課長      長尾 正和君         運輸省航空局監         理部航空事業課         長       荒井 正吾君         運輸省航空局飛         行場部計画課長 小坂 英治君         運輸省航空局飛         行場部環境整備         課長      松尾 徹人君         郵政省電気通信         局電波部監視監         理課長     石原 秀昭君         労働省婦人局婦         人福祉課長   堀内 光子君         労働省職業安定         局高齢障害者         対策部企画課長 野寺 康幸君         自治省行政局公         務員部公務員第         二課長     谷本 正憲君         会計検査院事務         総長      秋本 勝彦君         会計検査院事務         総局事務長官         房総務審議官  白川  健君         会計検査院事務         総局第五局長  安部  彪君         最高裁判所事務         総長      川嵜 義徳君         最高裁判所事務         総局総務局長  金谷 利廣君         最高裁判所事務         総局人事局長  泉  徳治君         最高裁判所事務         総局刑事局長  島田 仁郎君         予算委員会調査         室長      多田 俊幸君     ───────────── 分科員の異動 四月二十六日  辞任         補欠選任   田澤 吉郎君     岩屋  毅君   新村 勝雄君     沢田  広君   藤田 高敏君     元信  堯君   冬柴 鐵三君     近江巳記夫君   楢崎弥之助君     江田 五月君 同日  辞任         補欠選任   岩屋  毅君     田澤 吉郎君   沢田  広君     小松 定男君   元信  堯君     山花 貞夫君   近江巳記夫君     貝沼 次郎君   江田 五月君     阿部 昭吾君 同日  辞任         補欠選任   小松 定男君     沢田  広君   山花 貞夫君     鈴木喜久子君   貝沼 次郎君     薮仲 義彦君   阿部 昭吾君     楢崎弥之助君 同日  辞任         補欠選任   沢田  広君     新村 勝雄君   鈴木喜久子君     外口 玉子君   薮仲 義彦君     近江巳記夫君 同日  辞任         補欠選任   外口 玉子君     藤田 高敏君   近江巳記夫君     倉田 栄喜君 同日  辞任         補欠選任   倉田 栄喜君     坂井 弘一君 同日  辞任         補欠選任   坂井 弘一君     薮仲 義彦君 同日  辞任         補欠選任   薮仲 義彦君     貝沼 次郎君 同日  辞任         補欠選任   貝沼 次郎君     冬柴 鐵三君 同日  第二分科員上原康助君、渡部行雄君、遠藤和良  君、河上覃雄君吉井光照君、第三分科員玉城  栄一君、第七分科員小森龍邦君及び古堅実吉君  が本分科兼務となった。     ───────────── 本日の会議に付した案件  平成二年度一般会計予算  平成二年度特別会計予算  平成二年度政府関係機関予算  〔国会裁判所会計検査院内閣及び総理府所管経済企画庁環境庁国土庁を除く)〕      ────◇─────
  2. 池田行彦

    池田主査 これより予算委員会第一分科会を開会いたします。  私が本分科会主査を務めることになりましたので、よろしく御協力のほどお願い申し上げます。  本分科会は、皇室費国会裁判所会計検査院内閣及び総理府並びに他の分科会所管以外の事項、なお、総理府につきましては経済企画庁環境庁及び国土庁を除く所管についての審査を行うことになっております。  平成二年度一般会計予算平成二年度特別会計予算及び平成二年度政府関係機関予算裁判所所管について審査を進めます。  最高裁判所当局から説明を聴取いたします。川嵜事務総長
  3. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 平成二年度裁判所所管歳出予算要求額について御説明申し上げます。  平成二年度裁判所所管歳出予算要求額の総額は、二千五百七十四億三百七十二万七千円でありまして、これを前年度予算額二千四百八十八億四千百四十一万円に比較いたしますと、差し引き八十五億六千二百三十一万七千円の増加となっております。  これは、人件費において七十八億六百八十六万六千円、裁判費において一千六百十七万九千円、施設費において一億六千三百四十二万四千円、司法行政事務を行うために必要な庁費等において五億七千五百八十四万八千円が増加した結果であります。  次に、平成二年度歳出予算要求額のうち、主な事項について御説明申し上げます。  まず、人的機構充実、すなわち増員であります。  民事訴訟事件民事執行法に基づく執行事件及び破産事件の適正迅速な処理を図るため、簡易裁判所判事五人、裁判所書記官十二人、裁判所事務官五十人、合計六十七人の増員をすることとしております。他方、定員削減計画に基づく平成二年度削減分として裁判所事務官等三十七人が減員されることになりますので、差し引き三十人の定員増となるわけであります。  次は、司法の体制の強化に必要な経費であります。  裁判運営効率化及び近代化のため、庁用図書等裁判資料整備に要する経費として六億七千六百二十九万二千円、複写機計算機等裁判事務能率化器具整備に要する経費として六億五千六百八十八万一千円、調停委員に支給する手当として五十億二千三百五十六万三千円、裁判費充実を図るため、国選弁護人報酬に要する経費として二十五億九千百八十八万一千円、証人、司法委員参与員等旅費として六億九千五百三十三万七千円を計上しております。また、裁判所施設整備を図るため、裁判所庁舎の新営、増築等に必要な経費として百四億六千七百十五万一千円を計上しております。  以上が平成二年度裁判所所管歳出予算要求額の大要であります。  よろしく御審議のほどお願いいたします。
  4. 池田行彦

    池田主査 以上で説明は終わりました。     ─────────────
  5. 池田行彦

    池田主査 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。沢田広君。
  6. 沢田広

    沢田分科員 お忙しい中おいでをいただきまして、御苦労さまでございます。  裁判所関係というのは、三権分立の関係がありますから、お互いに遠慮しつつ対応してくるという傾向が今日まで現存していることは事実だと思うのであります。ですから、裁判所関係についての質疑となりますと、やはり慎重を期すということになります。また、裁判所の方でも、定数是正を初めとして、まだるっこいとか、何てだらしがない結論だろうとかいうような、我々国民から見て、やはりこれも介入の限界というもので言われているのかな、こういうふうに思います。  国会事情とか、例えば国会動きとか、そういうものは最高裁判所としてはどういう方法で、マスコミ以外では聞く機会はないのでしょうか、あるいはどういう方法でそういうものを聴取しているのでしょうか、お伺いいたしたい。
  7. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 国会関係のことにつきましては、一般新聞等によって知るほか、主としまして衆議院参議院法務委員会の方でいろんなことにつきまして御審議いただくことが多うございますので、そういった審議をめぐってのいろいろな接触の中でいろんなことを知る機会も多うございます。主としてそういったところでございます。
  8. 沢田広

    沢田分科員 そういうところに、私は、やはり判決などが出てきている経過が、そういう閉鎖的な間口といいますか、そういうような法務だとかいうのは、これは大体プロだけが集まっている委員会みたいなものでして、そういうところでは一般的な議論というものは非常に少ないというようなことから見ると、もっと定期的に何か交換をして、国会とかあるいは政府とか、これは三権ですから三権お互いに忌憚のない意見を取り交わすとかそういう場所があっていいのではないか、こういうふうに思いますが、そういうことに対しての希望といいますか、必要性とか、そういうものについてはお感じになりませんか。
  9. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げましたのは、主としてそういったところでということでございまして、委員の御指摘趣旨を体しまして、今後も国会等のことにつきましてできるだけいろいろ知り得る機会は私どもの方も努力して持ちたいと、こう考えます。
  10. 沢田広

    沢田分科員 これはあるいはきょうがこういう質問なんか受けるのは初めてかもわかりませんが、そういう意味においてはいろいろな立場意見を、ちょっとテストみたいになってしまって悪いですけれども、今の日本の第一次産業、第二次産業、第三次産業というものの割り振りがどんなふうになっていると思っておられますか。簡単で結構です。感じで結構です。
  11. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 恥ずかしゅうございますが、ここでいきなり聞かれましてきちっとお答えできるような知識を私個人として持ち合わせておりません。申しわけございません。
  12. 沢田広

    沢田分科員 別にテストしたりいじめたりしているつもりではないのであります。やはり世の中犯罪というものは犯罪背景があって犯罪が起きるわけですから、その背景それ自体の分析なくしてその犯罪分析もあり得ないし、その結果も恐らくあり得ないというふうに思いますから、あえて世の中動きといいますか、そういうものに対する認識というものを深めることが必要なのではないだろうか、こういうふうに思います。  これは行政府の方も必要かもわかりませんし、また立法府においても必要かもしれませんが、本当はこういう席に最高裁判事さんぐらいがたまには来て、そして自分なりの見解を述べる。これは国民の前に言うことですからね。沢田広答えるのじゃないのですから、やはり国民に対してみずからの所信なり抱負なりというものを述べるという機会を持つことは私は積極的に必要なのではないか。あるいはこういう判決に対してはどうなんだという質問を受ける場合もあってもいいのではないか。干渉という意味ではありません。それを公の席で国民に、主権在民なんですから主権者に対して答える、こういうこともやはり考えてもらう必要性があるのじゃないか。マスコミを通じてだけというのは、やはりマスコミというのは一つの偏向がないとは言えませんから、そういうものだけに依存するということは極めて危険性があるということだけ言っておきたいと思います。  そういうことを通じて、今の司法試験制度というものの中から生まれてきておる先生方と言われるものですね、その人たちの処遇のこともありますけれども、今言った世俗との習慣なりそういう動きとかいうものについてどういうふうに摂取しているのであろうか、どういうふうに受けとめているのであろうか、こういうふうに疑問を持つわけですよね。それで、おいでをいただきましたが、それではどういう方法で今の社会のあれを聴取するという方法をとっているのだろうかということについて、我々は若干疑問を持たざるを得ない。  それで、ここで、時間の関係がありますが、ある機会に、皆さん仲間のある裁判官の方の御意見をちょっと聞く機会を得ました。金額は三十万か二十万ぐらいのものだったと思いますけれども、それの裁判に出て、そんなものに膨大な経費をかけて取るということは意味がないじゃないか、これは言葉どおりには言っておりませんが、そういう趣旨のことなのです。  しかし、税というものは、千円を取るのにも一万円をかける場合は当然あり得る。まじめに苦労して納めている人と全然納めていない人との公平をしなければ、税そのものの信頼がなくなってしまう。だれだって納めたくない、納めないで済むなら納めたくないというのが本心でしょう。ですから、そういう場合に、そんな経費をかけて取ることはあほったらしい、そういうちょっとした発言ではあったけれども、これが裁判所認識なのかなということを感じたわけですね。エリートの集まりですからそういうことなのかもしれません。  会社ならそうかもしれません。会社だったら、そのかかる経費よりも失う損失を差し引いて、それなら損金で落とせばいいのですから、経理上からいって。しかし、行政というものはやはり公平というものが必要ですし、そういう意味において、この発言には私は非常に驚いたんですよ。もしこういう認識でそれぞれの裁判が行われているとすれば、これは極めて憂慮することだというふうに感じたんですね。  それは特別に固まった話じゃないときなのですが、そんな千円や一万円、裁判まで持ってくる話じゃないじゃないか、あんな経費をかけてばかばかしい話だ、こういうちょっとしたことなのでありますが、それは一つのバックボーンだと思うんです。哲学だと思うんですね。その哲学に我々の認識と狂いがあったのでは、これはどう見たって裁判の結果に不信感が増幅することは間違いないことですから、そこで、あえて税の問題だけでもきちんとした、これはその一片ですけれども、きちんとしていく必要があるというふうに思って、きょうもその一つの中に入れたわけですね。  ですから、皆さんの方の見解もひとつ。ここに来ている人は恐らく述べられないのだろうと思うんですね、答えても、違う人の答えを代弁することになってしまうので。でも答えてみてくれますか。そうでしょうという答えしか今は戻ってこないだろうと思うんですね、もう二度と失敗はしたくないでしょうから。そう言うとは思いますけれども、まあお答えください。あと大蔵省からもお答えください。
  13. 泉徳治

    泉最高裁判所長官代理者 ただいま沢田委員が御指摘裁判官発言というものがどういう状況のもとで、またどういう脈絡のもとで行われましたのか、私どもはその具体的事情を確認いたしておりませんので、当該発言につきましての具体的な論評というものは避けるべきかと考えております。  ただ、一般論を申し上げますと、租税制度のよるべき原則の中に、最小徴税費原則と並びまして公平の原則、平等の原則があることは御指摘のとおりでございます。したがいまして、一般的な影響を考慮し、かつ、公平、平等主義を貫くために、少額の租税であっても、費用をかけて徴収していかなければならないケースは多々あろうかと存じております。  かつて裁判所に係属した事件でございますけれども給与所得者必要経費の控除をめぐりまして納税者税務当局が争った事件がございます。これはサラリーマン税金訴訟と言われまして、御承知のところと存じますけれども、この事件で争いになりました税額というものは約五万五千円ぐらいのものでございました。しかしながら、裁判所はこれに真剣に取り組みまして、最後は最高裁判所の大法廷でもって判断しているわけでございます。  このように、私ども税額多寡にかかわらず一つ一つ事件につきまして真剣に取り組んでいるということを御理解いただきたいと存ずる次第でございます。
  14. 島田眞一

    島田説明員 お答えいたします。  国税滞納になりまして納付されない場合には、私たちといたしましては、その滞納金額多寡にかかわらず、国税徴収法の定めるところによりまして、適正かつ公平に徴収を図っているところでございます。
  15. 沢田広

    沢田分科員 まあ当たり前の答えなのですが、そうでない、やはり当たり前でないものが現存するというところに、きょうこういうふうに出番をつくったということなんですね。それをどうやったらなくしていけるかということなのです。私は、言った人がいいとか悪いとか言っているのじゃないんですね。ですから、それをどういうふうにしたら正鵠性というか正当性を裏づけることができるだろうか。  そこで、提案としては、やはり陪審員制度をある程度入れていくということが必要なのではないか。今言ったように、国会の情勢を、一つ国会との会談といいますか懇談会といいますか、そういうものを積極的に持つようにしていくことが必要ではないかというのがまず第一に一つ提案なのです。これは、司法行政を十分知る、それには国会も必要でしょうが、あるいは地方も含めても構いませんが、それぞれ地方地方なりの懇談会を持っていく。別にそれに左右されるというものではないだろうし、また議員でなくてもいいんですね。だれであってもいいが、多くの人と接触するという場面をつくるという必要性があると思うのです。そういう点は、それを究極には、最高裁の場合なり、あるいは地方裁判所でもそうでしょうが、とりあえずは、陪審員というものをある程度参考意見にするという程度に置いてみたらどうかというふうに思いますが、この点はいかがでしょうか。
  16. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 陪審員制度等司法に対する国民参加の問題につきましては、委員も御承知と存じますが、近時、最高裁判所の方といたしましても、国民司法をより理解してもらうといった意味からも検討に値するということで、基礎的ないろいろな外国陪審参審制度のところを文献で調査しました上、さらに外国裁判官を派遣いたしまして、現在調査検討しているところでございます。
  17. 沢田広

    沢田分科員 これは言葉じりをとらえられると困るのでありますが、弁護士さんなどは、やはり営業上というような場面もなくはありません。そういうようなことで、やはりそういうものが余り出てくることについて、自分たちのやり方にうまくいかない場合も起こり得るという心配もあるでしょうから、いろいろ意見はあるけれども言葉は悪いけれどもお互い商売仲間だけでこれをやっていたって話にならないんですよ。やはり一般国民が求めているという立場では、もっときちんと進めるものは進めていく方が、私の今言ったような話が幾らかでも希釈するという意味においては必要性はある。こういうふうに言って、あなたが今答えられたことが、ちゃんとその長に伝わるのですか。ここで答えたことは伝わるのだろうと思うのですが、これはきちんと伝えてもらえるのですか。
  18. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 もちろん、きょう委員からいただきました貴重な御指摘、帰りまして長官初め上の方々にお伝えいたします。  それから、先ほど来先生のおっしゃっておられるような趣旨で、いろいろな司法の運営につきましても、一般国民から見て理解の得られやすい、そういう司法の運営にしなければいけないということで、裁判所全体といたしまして、最近、今まで行ってきた事務を、単に専門家、内輪の目から見るだけではなくて、一般国民から見てそれでいいのかといった観点からの広範な見直しをしなければいけないということで、もろもろのことにつきまして、いろいろ見直しているところでございます。
  19. 沢田広

    沢田分科員 それからもう一つは、人事局長さん来ておられますが、裁判官なり警察なりそれから税務関係を扱っている者は、世間からある意味においては白い目で見られる面もなきにしもあらず。しもあらずというよりも、きっとそうなんじゃないかと思うのですよね。大体罰を加える側だから、これは褒められることはない。無罪になった人は褒めるかもしれぬが、大体言えば恨まれる側に立っておる。そういうのですから、やはり不満もあるだろうし、いろいろ意見もあるだろうけれども、やはり給与の面で対外的な身分というか安定度を加える。  やはりいろいろな制約がありますね。人のごちそうになっちゃいけないとか、お中元もらっちゃいけないとか、お歳暮もらっちゃいけないとか、お礼はもちろんいけないとか。たまには悪いのもいますけれども、大体常識的にそういうことになっている。それを保障するのには、やはり世間の生活が可能になるような措置を講ずる、こういうことだと思うのですね。特に東京なんかにいる人たちの生活というものを考えた場合には、宿舎だけに押し込めておいていいということでもないでしょうから、やはり給与の上で、昔は二九ベース時代には考えたわけですから、それと同じように、二割なり二割五分というか、そのくらいの割合のものはやはり考えていくということが必要だと思うのです。  人事局長さんにちょっと聞きますが、皆さんのところにいる人は、年齢に二万円掛けぐらいの給料に、給料といってもボーナスは別ですよ、給料になっている人たちですか、それとも一万円程度が相場になっている人たちですか。割合わかりやすい数字で申し上げました。
  20. 泉徳治

    泉最高裁判所長官代理者 大変温かいお言葉をいただきまして感謝しているところでございます。  裁判官が安心して職務に精励できるように、現在のところ、裁判官報酬法というもので、一般行政官よりも手厚い給与を支給するように手当てをしていただいております。判事補時代が十年間ございますが、その判事補時代で号俸の刻みが十二ございます。それから判事になりましてから八つの刻みがございます。そういった合計で二十の刻みを裁判官、長い三十年なり四十年なりの生活の中で給与が上がっていく、こういう仕組みになっております。  その仕組みは、若い判事補時代におきましては御指摘のように一年間で一万とか二万という小さい刻みのものもございますけれども判事の上の方に参りますと一号と一号の間の格差が三万円なり四万円という大きな開きになっていく、こういう仕組みになっておりまして、裁判官が生涯を通じて安心して職務に精励できるような仕組みをとらしていただいている次第でございます。
  21. 沢田広

    沢田分科員 だから、それを暗算で言うと、あなたのことを聞いては悪いからあえて言わなかったのですが、あなたの年齢が幾つだかわかりませんが、それに二万円掛けた分になっていますか一万円掛けた分になっていますか、こういう質問だったわけです。  それで、今の回答は、別にそういうことじゃないのですね。例えばなぜそういう人たちがやめて弁護士になる率が多いかということ、弁護士の収入と判事補なりの収入がどういう比較にあるかを調べたことがありますか。弁護士の収入、売れている弁護士と売れていない弁護士で下の方をたどればいろいろあるでしょうけれども一般的にどの程度の差があると思いますか。これはお医者さんにも通用することですが、あなたの方の社会においてはどの程度の差があるか調べたことがあるのですかないのですか。
  22. 泉徳治

    泉最高裁判所長官代理者 都会地におきます弁護士の報酬というものが最近非常に高くなっているということは私ども承知しております。特に、現在都会地におきましては弁護士不足という現象がございまして、渉外事務所等を中心といたしましてかなり高い報酬を得ているようでございます。弁護士になりました一年生におきましても、渉外事務所の場合ですと、低いところで年俸六百万、高いところで八百万というふうに言われております。とても私どもの方は、やはりキャリアシステムでございますから、初任の段階からそういう高い給与を支給するということはできません。  しかしながら、私どもの方では、定期的にそういう弁護士と裁判官との報酬の開きを調査いたしまして、その開きをできるだけ埋めようという考えのもとに初任給調整手当というものを判事補の若い時代につけてございます。その初任給調整手当をつけましても、もちろんこの弁護士の高い方の報酬を受けていらっしゃる方々から比べますと落ちるかもしれませんが、先ほども指摘になりましたように、裁判所におきましては宿舎の提供をしております。特に大都会地におきましては、宿舎、マンションを借りるといたしましても相当な多額の賃料を払わなければいけません。そういうことで手当てをしているわけでございます。
  23. 沢田広

    沢田分科員 提言ですが、私は、判事補であろうと判事になろうと、判事になったらもう同じ給料でもいいんじゃないか。裁判所はいわゆる職務給でいいんじゃないか。判決に当たるという場合は、給料の差はないですよ。これは職務の年功序列賃金とは違うだろうと思う。裁判官になればやはり一つの責任を負って一つ判決を出す。判決は我々は法律ですからね。皆さんがつくってくれた裁判判決というのは法律になってやはり世の中には拘束力を持っていくわけですから、我々も黙って放置しているわけにはいかないわけですね。ですから、それだけの責任を持つならば、職務給でいいんじゃないのか。判事補になったら判事補の給料で、やはり一番生活の苦しい、子供が大きくなる時代のときの給料も、あるいは年功が上になっても同じでいいじゃないか。裁判官になったら裁判官になったで、やはり次官ぐらいの給料をくれたっていいじゃないか。そのぐらいの発想の転換が、独法からきているから皆こうなっちゃっているのか、あるいはアメリカが急にやった給与制度が入ったからなのかどうかわかりませんが、私は裁判所は職務給でいいんじゃないのかと思う。これはそこまで一挙にいきませんよ。私の言うとおりにはならぬでしょうが、そういう発想が必要なんじゃないか。時間がないですから、そういうことをひとつ検討してもらいたい。  人事院は来ておりませんけれども、人事院の方にも提言して、せっかく一生懸命勉強してようやく判事補になった給料で食っていけない、まともな生活ができない、これはまあこっちの課長クラスにもあるんですが、そういう状況をなくさなければ、やはり弁護士なんかに行っちゃってもうけた方が、それは言葉は悪いけれども、得だなんという打算が生まれてくるんですね。やはりそれを保障していくということが必要なんじゃないかと思うのです。  簡単に、一言でいいですから、言ってください。
  24. 泉徳治

    泉最高裁判所長官代理者 ただいまの御指摘、大変ありがたくお聞きしたわけでございますけれども裁判官の報酬につきましては、確かに今委員が御指摘になりましたような発想というものは私どももたびたび聞いているわけでございます。私どもの報酬は、先ほども申しましたように、判事の間、これは三十年間ぐらいございますけれども、その間の刻みが八つだけでございます。これは一般行政官から比べますと相当に少ない刻みでございまして、現在の報酬法でも、委員の御指摘になられた趣旨はかなりの程度生かされているというふうに考えているわけでございます。
  25. 沢田広

    沢田分科員 生かされていれば、司法修習生からどんどんすぐに弁護士になんかなって自由業になるというようなことは少ないんじゃないかという気がするんですが、これはもう時間がありませんからまたいずれ議論することがある。  まとめて申し上げますが、国会行政、そういうものの事情をよく聞く機会というものを、懇談会でいいのでありますから、持ってもらいたいということが一つ。これはいいですか。そういうことで検討してもらいたい。  それから、きょうの話がきちんと最高裁の上に伝わるようにしてほしい。これもよろしいですか。  両方とも首を縦に振っているから、イエスという返事だと解釈をいたします。  それから陪審員制度について、速やかに結論を出しながら、あるいはその二次的な次元のものでもいいですから、とりあえずつくって意見を聞く、それで左右されるということではなくて、一応二次的な委員会であろうと、そういう制度をつくるようにしてもらいたい、こういうふうに思います。これは返事をもらわなくちゃ困りますが、めどは大体どのぐらいに考えていますか。
  26. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 陪審、参審の問題につきましては、先ほど申し上げましたとおり、私どもの方で研究、検討しているところでございますが、何分この問題は司法の根幹にかかわります非常に重要な問題でございます。いろいろな角度から、原理的な点、また実際的な点ということを十分検討してまいらなければならない問題でございます。そういったところで早急に結論を出すということは、率直に申し上げまして大変困難な問題でございます。十分時間をかけながら、また多角的にいろんなことを研究して進めてまいりたい、こう思っておるところでございます。
  27. 沢田広

    沢田分科員 だから陪審制度というかたくなな制度という意味じゃなくて、第三者の意見、我々が言う公聴会であるとか参考人の意見とか、そういうものを国会の方は運用しているでしょう。そういう意味のものを当面考えてみたらどうか、同じものであってもいろいろな人の意見を吸収するということが必要ではないのかという意味で提言しているんですから、そういうものを陪審員、こう言ってしまうと制度の根幹だということになるから、そうでなくて、いろいろな第三者の意見を聞くということで配慮してもらいたいという意味で言ったんですが、それはどうですか、その程度は
  28. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 委員指摘のような趣旨の制度は現行の制度にもございまして、調停委員とかあるいは司法委員、参与員という形で、法律の専門家でない人の意見、見方も裁判の上で取り入れながら裁判を進めていくという制度はございます。  それからまた、ただいま申し上げましたのも、陪審ということだけじゃなくて、陪審、参審、そういったものを含みました国民司法参加の制度はいかなるものがよいかといった角度から検討してまいりたい、こう考えているところでございます。
  29. 沢田広

    沢田分科員 一番最初に戻りますが、税の哲学ではありませんけれども、修習生時代においてももっともっと世間というものを知ってもらう。社会の、随分俗悪だと思いますが、世俗の傾向というものを知ってもらうという期間。あるいはなってからも会社へ一カ月ぐらい研修に行くとかあるいは現場へ出るとか、そういうこともやはり必要じゃないか。いわゆる身分を離れて研修するということが必要なんじゃないのか、こういうふうに思いますが、その点はどういうふうに措置しておりますか。
  30. 泉徳治

    泉最高裁判所長官代理者 司法試験に受かりましてから裁判官に任官するまでの間に二年間の司法修習期間がございますが、その二年間の司法修習期間の中には、弁護士事務所に実務修習として四カ月間、それから検察庁にも参ります。そういったところに参りまして、実務修習を通じまして社会の実情に接しているわけでございます。  それから裁判官になりましてからも、私どもは通常の社会人と同じ生活をしておりますので一般常識というものは備えているわけでございますけれども、何分にも、社会の高度化、国際化に伴いまして、私どもの方に持ち込まれる事件というものが年々複雑、多様化の度を加えております。どんな事件が参りましても、私ども裁判所の判断というものが社会の実情から遊離したり社会常識から外れることのないよう、裁判官は常に常識を養っていかなければならぬと思っております。  そこで最高裁判所といたしましては、裁判官裁判所の外の世界で生きた社会事情に接してもらうとか、こういうことを考えまして、若い判事補を中心といたしまして報道機関なり民間会社それから法律事務所等に送り込みまして、そこで研修を受けさせていただく、こういうことをやっている次第でございます。
  31. 沢田広

    沢田分科員 終わります。
  32. 池田行彦

    池田主査 これにて沢田広君の質疑は終了いたしました。  次に、渡部行雄君。
  33. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 これは最高裁判所長官に聞くわけですが、その長官は御出席されていないようです。そこで、予算委員会等には普通総理以下全大臣が出席して、国民に向かって国政の重要な問題について御説明しているわけですが、裁判所のこの最高裁判所長官というのはどういう場合に国民に接触できるのか。こういうときにでも国会に出てきて、そして国会のあり方に直接触れることによって、私はもっと日本全体の動きというようなものあるいは国会議員の考え方というものをみずから肌で感ずるべきだと思うのです。そういう点で、長官は出てこなくていいというようなことが常識化しているようですが、その点はどういうものでしょうか。
  34. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 私ども最高裁判所におる者といたしましても、国会議員あるいはこういう委員会等で行われます議論については重視しているところでございまして、各委員会の特に裁判所関係でのいろいろ御審議になられた場合の議事録等は、長官を含めまして十分読ませていただいているところでございます。  また、この予算委員会関係では、私どもの事務総局部門の一番のトップでございます事務総長が出させていただく、こういうことで、決して国会を軽視するとか、そういうことをいたしていないところでございます。御理解いただきたいと存じます。
  35. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 ほかの裁判官ならいざ知らず、国民審査を受けて出てきておる最高裁判所長官というのは、やっぱりそれなりの責任を持つべきだと思いますね。だから、実際はそうすると長官裁判所を一切取り仕切るのではなくて、事務方で取り仕切るというふうに受け取られて仕方がないと思うのです。その点についてはどういうものでしょうか。
  36. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 最高裁判所司法行政権は、改めて申し上げるまでもなく、最高裁裁判官会議にございます。そういったことで、もろもろのことにつきまして、最高裁判所裁判官会議で慎重にお決めいただいているわけでございます。事務総局といたしましては、それの補佐として庶務的なことに携わっているということでございます。  それからもう一つ、基本的に一般行政官庁と違うところといたしましては、裁判所というのは、何しろ受け身的に、来た事件、その一つ一つ事件を裁くというところでございまして、その事件の処理を離れて、一般的に政策を打ち出す、何か事業をやるという官庁ではない。そういったところから今までのような慣行もできているのではないか。これは私個人が思うところでございますが、そんなところも御理解願いたいと存じます。
  37. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 余りこんなところに時間とりたくないんだけれども、私はそういう感覚自体がおかしいと思うのですよ。受け身で事件だけに対処するという。そうじゃないと思う。裁判を通じて、この社会の秩序なりあるいは国民に対する教育なりあるいは犯罪に対する量刑の問題が適正であるかどうか。今しかも死刑の問題が社会の議論の的になっておる。こういう問題についても、国際条約までできておる。そういう中で、一切この法の仕切りというのはどういうふうにやっていくか、そういう立場で臨んでもらわないと私は困ると思うのです。
  38. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 私の申し上げたのも、委員の御指摘趣旨と違うことを申し上げたわけではございませんで、ただ、裁判所は、積極的に一つの政策を打ち出すということではなくて、来た事件を処理する中でその事件を適切妥当に処理する、そのために、もちろん単に法律のことだけではいけませんので、裁判官自身が日ごろから好奇心を持って社会のいろんな事象に対して文献その他のことについてよく知ろうという姿勢をとらなければならないし、現にそういうことで努力しているところでございます。いろんなことを広く見て、そして来た事件を適切妥当に判断できるよう、できるだけ広い視野からいい判断ができるよう、そういうことで努力しているのでございまして、その点は委員指摘のとおりのようなことを心がけてやっておるところでございます。
  39. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 それでは本論に入りますが、まず刑事裁判の手続についてでございますが、特に刑事裁判というのは、私から言わせると、中立性、正義、そして客観性、こういうものが裁判の制度の中に担保されなければならないと思っておりますが、そういう点でどのような工夫をされておりますか、お伺いいたします。
  40. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 裁判の中立性及び客観性、今おっしゃった正義、それを担保するためには、まず法律制度上保障がございます。  刑事訴訟法によれば、まず公平な裁判所という観点から、第一には、事件を担当する裁判官あるいは裁判所の構成面においていろいろな配慮をしておるわけであります。また第二には、裁判官事件に関して予断、偏見を持たないように、例えば捜査と裁判を遮断するという観点からも、手続面でいろいろな制約を設けておるわけであります。  今申し上げた第一の裁判所の構成面につきまして具体的に申し上げますと、例えば裁判官が被告人、被疑者の親兄弟である場合とか、そういった法律上一定の事由がある場合には、当然に当該裁判官をその職務の執行から排除するという、これは除斥の制度でございます。それからまた、そういう除斥の理由があるとき、あるいはまた、その他不公平な裁判をするおそれがある場合には、当事者の方からその裁判官の職務の執行を排除することを申し立てることができます。これが忌避の制度でございます。また、裁判官の方は、みずから忌避されるべき原因があると考える場合には、自発的にその職務執行から脱退するという、回避の制度もございます。  また、先ほど申し上げました第二番目の裁判官が予断、偏見を持たずに事件に臨むというためには、いわゆる起訴状一本主義と申しておりますが、起訴状には、予断を生ぜしめるおそれのあるような書類その他のものを添付したりあるいは文書の内容等を引用してはならないという規定もございます。また、第一回の公判が開かれる前には証拠調べ等の請求も許されませんし、また、被告人の逮捕とか勾留、身柄に関係する処分は、その事件を扱う裁判所ではなくて別の裁判官が行うといったもろもろの制度の保障がございます。  制度面の保障としてはそのようなものがございます。
  41. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 答弁は少し簡潔にお願いします。時間が非常に足りませんから。  そこで、今二つの側面を述べられましたが、私は、そういう構成で果たして本当に客観性が担保されている、あるいは中立性が担保されている、そういうふうには考えられないわけです。なぜかと申しますと、今の裁判制度は、いわゆる裁判官という権力構造の一部が一方的に判断するようになっておるわけです。そういう点では、英、米、そういうところでは、陪審制度というものを持って、常に裁判の中にあるいは起訴するまでに国民が介入する制度を持っておる。したがって、権力と国民と共同で犯罪を裁いていく、こういうシステムになっているわけです。あるいは、西ドイツのようなところでは、参審制度というものでそれをカバーしておる。こういうのに、なぜ日本は権力が一方的なやり方でやらなければならないのか。しかも、これはもともとあったんですよ。この陪審制度というのは日本にもあったわけです。大正十二年から陪審制度が存在してずっとやられておったが、これは昭和十八年に停止されているわけです。そういう法律上はあるのにかかわらずそれをやめて今日に至っているというのは、余りにも権力主義が横行してきているのではないか、こういうふうに私は思うのですが、その点はどうでしょうか。
  42. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘陪審法が存在するにかかわらずそれが現在停止されておる、それは今委員の御指摘のような理由とは私どもは理解しておりませんで、これにつきましては、現在陪審制度が停止されておる原因につきましていろいろなことが言われておりますけれども、概略を申し上げますと、これは何よりもまずこの陪審裁判が実際に運用されてもほとんど利用されなくなったという状況がございました。昭和十五、六年になりますと年間一、二件しか利用されない状況になり、そこで先ほど御指摘のように昭和十八年に停止されるに至ったということであります。  このように陪審制度が利用されなくなった原因でありますが、これは陪審制度が国民の間に根づかなかったということになります。この根づかなかった理由は幾つかございますが、時間の関係で詳しくは申しませんが、要するに、以前の陪審制度につきましては、いろいろな制度上の問題点、例えば被告人に控訴の制限があるとか、あるいは陪審裁判の負担が弁護人にとっても非常に重過ぎたものであったとか、いろいろな面がございます。その他、欧米と日本との歴史的な背景の差とかあるいは国民性の相違というようなことも指摘されております。  したがって、そのようなことを考えますと、将来仮に例えば陪審制をとることを考えるにいたしましても、その前にはぜひ国民大方のコンセンサスを現在の時点でとることが必要であると思いますし、また、制度を実施するためにはいろいろな人的、物的条件をそろえることも必要でありますし、現存する、そして停止されておる陪審法をそのまま見直しもせずに施行するというようなことは、ちょっと到底考えられないことというふうに御理解いただきたいと思います。
  43. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 陪審制を利用する者がいなくなった、こういうことを言われますが、実際はそうじゃないのじゃないですか。金がかかり過ぎるとか、別にこの事務が多くなるとか、そういうのが原因して、しかもまた、こういう陪審制度の中で権力的に一方的にこれをやめてそうしてずっと長く続いたところが、国民の方からもう一度復活してくれという声が余りなかった、こういう判断をしておるようですが、その当時は情報化社会でなかったんですよ。したがって、今のように裁判に対する国民の関心もなかったし、直接そこにかかわっておる人たち以外の人は、裁判所でどんなことをされているか、そんなことにも関心がなかった時代なんです。だから権力が一方的にやめたりやったりすることができたわけなんで、そういう今のような答弁の認識では、これは正しい裁判ができるはずがないですよ。  それで、裁判官というのは、大体どこに行っても皆さん一般の人に聞いてみなさいよ、常識がない。国民的常識がないんです。それはなぜか。先ほど若干質問の中にあったようですが、社会との接触が少ないのです。非常に少ないから、そして一つの何というか、おりに入れられたものみたいに自由がきかなくなってきておる。そこで判断も非常に官僚的になる。そこに事務量が物すごく大きくなってくると、そうそう念を入れてやれなくなってくる。これは人間の常ですよ。そういうものをどういうふうに考えておられるのか。  つまり、私が言わんとするのは、一方的に権力側が主宰してこの裁判を進める限り、ここに中立性はない。いわゆる権力型の、権力の側に有利に判断されがちである。  そしてまた、客観性が担保されていない。どこでこれを客観的に見るか。今最高裁の出しておる判決に対する一般国民の受け取り方がどうなっているか知っていますか。下級審ほど正しい判決を出すが、上級審になればなるほどおかしな判決になる、こういうことが言われているんですよ。これが国民判決に対する受け取り方です。全部が全部とは言いませんけれども、そういう傾向になってきている。だとすれば、この客観性も担保されない。そして、もちろん中立性というものが担保されないところに、どうして正義というものを貫くことができるかということなんです。  だから、今の日本の裁判のやり方は非常に一方的で民主的でない、このことが言えると思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  44. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 先ほど冒頭でお答えいたしましたように、裁判の中立、公正、客観性につきまして制度上いろいろ保障もございますが、その上に、制度の保障のみならず、個々の裁判官は一件一件中立、公正、客観性を目指して努力を重ね、そのつもりでやっております。  したがって、私どもといたしましては、一部の国民の間に今仰せのような批判があることは十分存じてはおりますけれども、私ども認識として、中立、公正、客観性がそのように損なわれているとは思ってはおりませんが、ただし、裁判所としては、単に客観的に中立、公正、客観であることが必要なだけではなくて、委員が御指摘のように、やはりそれについて国民の理解と信頼を得ていく必要はあると思います。  そのために、裁判所といたしましては、もろもろの手続、慣例、慣行につきましても、これまでのやり方に安住するのではなく、やはり見直すべき点は見直して、多角的に検討し、国民の目から見て理解と支持を得られやすいものにしていこうというふうに考えております。そのための一環として、先ほど話題になりました陪審あるいは参審制度の導入というようなことも、将来の問題として現在検討中であるわけでございます。
  45. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 この問題は将来に向かって検討中というと非常に長い将来を想定させますが、近い将来にこれは実現しなくちゃだめですよ。  しかも世論は、国民の側から陪審制度を求める運動が起きている、こういうふうになっているのですからね。もうこの情報化社会では、早く陪審制度なり参審制度なりを検討して、そして最も民主国家にふさわしい裁判の形態、あり方というものを決定すべきだと思いますが、急いでやりますか、どうですか。
  46. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 ただいま委員がお話しのように、この問題は非常に重要な問題であるし、私どもとしては、決して手を抜かず、一生懸命にやってまいりたいとは思っております。ただし、先ほども総務局長の方から答弁されましたように、非常に司法制度の根幹にかかわる重大な問題でありますので、やる以上は十分に慎重に間違いのないように制度上のいろいろな面で考えてからということになりますと、この問題はなかなかそう早くは解決しないものという点は御理解いただきたいと思います。
  47. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 時間がありませんからちょっと困っているのですが、そういう裁判だからこそ最近冤罪というものが非常にふえておる。私は冤罪の根本原因はそういうところに求めるべきだと思いますよ。ここにありますけれども、今一々読む時間がありませんから、そういう冤罪の中身を考えてみると、これは大変なことなんですよ。  例えば死刑の判決が出た、そしてそれが後で再審の請求によって無罪の判決が出た、死刑と無罪との関係というのは、これはとても人間の力ではどうすることもできないわけですよ。それを裁判官だけがやれるわけです。そうしたら、仮に死刑が終わってからこれは無罪だった、真犯人が別に出た場合には、裁判官が殺人を犯したことになるのですよ。それは一応裁判官の身分というものは法律で保障されているものの、本当に厳密にその人道性、人間性あるいは社会秩序というような面からこれを追及していったら、これは許されない判決なのです。しかも、裁判官がそういう殺人を犯しても罰せられない。しかし、そういう間違った判決を是正するものが何かありますか、指導方針とか何か。
  48. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 今仰せのように、例えば死刑の判決が後で無罪になるというふうなことはおよそあってはならないことでありますし、にもかかわらず、希有の例であるとはいえ現実に御指摘のような事例が生じたということは、私どもとしては、本当に遺憾なことでありますし、深刻に受けとめております。  したがって、どうしてそのようなことが生じたか、それにつきましては、私ども裁判官はいろいろと会同、協議会等でも集まり、その他個々の裁判官にいたしましても日夜研究を重ねておるところでございます。そして、そのようなことのないように、事実認定につきましてとか証拠の評価について、特に自白の評価の問題につきまして、いろいろと検討、工夫を重ねてきておるところでございます。
  49. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 それで、今裁判所判事が処理しておる年間の件数、地裁分と、それから最高裁で確定までの分と、そしてそれに要する平均的な時間、これをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  50. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 要する期間でございますが、地方裁判所におきましては、平均審理期間が大体三・四月でございます。簡易裁判所においては、二・五カ月でございます。  それから、件数でございますが、これは裁判官事件処理体制が庁の規模によって違いますので、例えば一人の裁判官が刑事裁判も民事裁判もやるあるいは家庭裁判所事件まで担当しておるというような小規模の庁とか、あるいは刑事裁判のみを担当しておる地方裁判所本庁の刑事部もございます。したがって、一概には言えないのでございますが、例えば昭和六十三年度末の地方裁判所本庁の裁判官の訴訟事件の手持ち件数に限って申しますと、幾つかの庁について調べてみますと、裁判官一人当たりの手持ち件数の平均としまして、大規模な地方裁判所の刑事部におきましては、大体三十件から七十件程度の間を動いております。小規模な庁におきましては、四十件から百件程度というようなところでございます。
  51. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 だから、これはとても人の能力ではさばき切れないほどの事務量ですよ。私はそう思う。こういう膨大な事務を一人の裁判官に押しつけておいて、正しい裁判をしろと言う方が無理じゃないでしょうか、私はそんな感じがしてならないのです。しかも、裁判というのは非常に厳格でなければならないし、また正確、迅速、信頼性というものが保たれなければならないと思うのです。それを保つためには、今のような体制ではどうしても保ち得ないと思うのです。だとすれば、裁判官をふやすか他の方法を考えるか、これしかないじゃないですか。他の方法とは何だ。今はやりのコンピューターですよ。こういう最新の武器ができてきておる。しかも、第五世代コンピューターがもうすぐ実用化されようとしておると言われておりますから、そういうものをどこまで入れてこの人手不足を補い、また不正確さを補っていくかという観点が私は必要だと思うのですが、その点についてはどうでしょうか。
  52. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 確かに最近のコンピューターを初めとするOA機器の発達と普及には目覚ましいものもございますし、裁判所としても事務処理の効率化裁判運営を円滑にするためになるべくOA機器を活用していこうではないかということで、その可能性、方法等について現在検討し、その導入を図っているところでございます。  具体的に申し上げますと、現在、刑事裁判の手続について言いますならば、財政経済事件の処理につきまして、東京、大阪、名古屋等の刑事部にパソコンを導入いたしまして計数関係の調査事務、特に税法関係の計算書の計算事務、あるいは判決に添付する表の作成事務の合理化を図るためのプログラム問題研究に取り組んでおるわけでございます。また、刑事裁判における量刑を適正に行うために、コンピューターによる量刑検索システムの実用化に向けた開発を現在行っておるところでもございます。
  53. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 もう時間がありませんから最後ですが、そこで、量刑についてもどういう量刑という、インプットするときに問題が出てくるのですよ。基本は、罪に対する哲学をもっときちっと持つべきだと思うのです。  例えば殺人の中にも、質的にいろいろ違いがある。そして、麻薬関係の売人とかそういういろいろな犯罪があるわけです。あるいは幼児誘拐とか、あるいは一生せっせと働いてためた金を、それをばかにして詐欺して強奪する、こういうような人間として許せない事件は、私はもっと徹底した重い罪を科すべきだと思うのですよ。ところが、最近は、やっとこの間入ったと思ったらすぐ出てきているんだね。殺人犯あるいは暴力犯あるいは詐欺犯、皆そうじゃないですか。何億という金を詐欺しておきながら執行猶予つきの人さえあるというようなことは許されないと思うのですよ。そして、人が死んだとき、その死んだ人に対する補償金は幾ら出るのですか。冤罪で一生を失った人に対する補償金は幾ら出るのですか。金の価値も全然違っているのですよ、判断が。そういう点に対する、罪状に対してのいわゆる可罰というこの問題をもっと厳格に考えて見直していただきたい、これを要望しておきます。それについての御決意を聞いて、終わります。
  54. 池田行彦

    池田主査 島田刑事局長。時間が経過しておりますので、簡潔に御答弁願います。
  55. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 委員の御指摘のように、量刑面につきましては、今後とも十分適正化を図るために鋭意努力してまいりたいと思っております。
  56. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 どうもありがとうございました。
  57. 池田行彦

    池田主査 これにて渡部行雄君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして裁判所所管についての質疑は終了いたしました。     ─────────────
  58. 池田行彦

    池田主査 次に、会計検査院所管について審査を進めます。  会計検査院当局から予算の説明を聴取いたします。秋本事務総長
  59. 秋本勝彦

    ○秋本会計検査院説明員 平成二年度会計検査院所管の歳出予算について御説明いたします。  会計検査院平成二年度予定経費要求額は、百十九億六千五百九十万三千円でありまして、これは、日本国憲法第九十条及び会計検査院法の規定に基づく、本院の一般事務処理及び検査業務を行うために必要な経費であります。  今、要求額の主なものについて申し上げますと、一、人件費として百三億六千七百六十三万円を計上いたしましたが、これは総額の八七%に当たっております。これらのうちには、会計検査の充実を図るため、一般職員十人を増置する経費も含まれております。  二、旅費として七億四千三百八十万一千円を計上いたしましたが、このうち主なものは、会計実地検査旅費が七億一千九十三万七千円、外国旅費が二千百二万円であります。  三、施設整備費として二億二百六十四万円を計上いたしましたが、このうち主なものは、庁舎空気調和設備改修工事費一億二千百四十三万七千円、宿舎関係修繕費五千八十三万五千円であります。  四、その他の経費として六億五千百八十三万二千円を計上いたしましたが、これらのうちには、検査の円滑な実施を図るための会計検査活動費七千八百二十一万六千円、検査業務の効率化を図るための経費一億八千四百六十九万八千円、並びに会計検査の充実強化のための経費七千百四十万四千円及び検査手法開発のための経費一千六百三十六万四千円が含まれております。  次に、ただいま申し上げました平成二年度予定経費要求額百十九億六千五百九十万三千円を前年度予算額百十四億二千百三十九万六千円に比較いたしますと、五億四千四百五十万七千円の増加となっておりますが、これは、人件費において三億四千三百三十二万四千円増加したことなどによるものであります。  以上、簡単でありますが、本院の平成二年度予定経費要求額の概要の御説明を終わります。  よろしく御審議のほどお願いいたします。
  60. 池田行彦

    池田主査 以上で説明は終わりました。     ─────────────
  61. 池田行彦

    池田主査 質疑の申し出がありますので、これを許します。沢田広君。
  62. 沢田広

    沢田分科員 御苦労さまでございます。  会計検査院皆さん方がいろいろ御苦労いただいて、国会の方にも決算に付表としてそれぞれ実績の報告が、指摘事項があります。この指摘事項が少し甘く扱われているのじゃないかという問題点がある。指摘した以上は、会計検査院自分の腹を切る覚悟で政府にその改革を求める、そういう権威がなくなってきつつあるのじゃないか。ごちそうになるとか、何かそういうことにばかり気を使ってしまって、国の会計検査院としての役割というものに対して少し薄くなっている観なきにしもあらず。  もう一つは、未発表の指摘事項がどういうふうに処理されたか、その点検が必要ではないのかということを感じます。  この二点についてお答えいただきたいと思います。
  63. 秋本勝彦

    ○秋本会計検査院説明員 お答えいたします。  後の方の、指摘後の是正状況あるいは私どもの事後的なトレースと申しますか、そういうものが不十分な点もあるのじゃないかというようなことからお答えいたしたいと思います。  指摘後の是正状況につきましては、指摘事項のすべてにつきまして追跡調査を行って状況の把握に努めておりまして、私ども承知している限りでは、それぞれの指摘の事態に応じまして、当局ではできる限りの是正措置を速やかに行っていると理解しております。  それから、不当事項関係者については、その厳正な処分が一罰百戒といいますか、実を上げるように、それによりまして同種事態の再発防止の効果を上げるということで、相手方のとった処分状況の把握、それからその処分の軽重につきましても検討を行っておりまして、その検討の結果によりますれば、少なくとも不正行為について厳正な処分が行われているのはもちろんのことでございます。また、その他の不当事項につきましても、指摘を受けました各省庁におきまして、その不当の度合いあるいは責任の度合いに応じましてそれぞれ適正な処分が行われていると考えております。  委員指摘のように、最近は処分が緩やかになっているのではないかということでございますけれども、その一つといたしましては、昔に比べまして比較的、不正に近いような不当性の色彩の強いそういう案件が幸いなことに少なくなってきているということもあろうかと思います。  それから、私どもの検査というものは、当然各分野について厳正、適正に行われているかということで、常時検査という建前で、かつまた検査の効率性も考えまして十分行っているつもりでありますが、委員指摘のようなあるいは見方がされるということは、私ども努力している者にとりましては残念なところでございます。  それから、公表しているもののみではなくして未発表のものも相当あるのではないか、そういうものの処置は適正に行われているかというようなお尋ねではなかったかと思いますが、これにつきましても、私ども、検査の過程から申し上げますと、書面検査も常時やっておりますけれども、実地検査を行います。仮にそこで問題があったということになりますと、私どもは必ず文書をもって相手方に質問をいたします。これに対して相手方から回答をいただくということでございまして、その段階におきましてまた資料などの提出をいただきましたり、あるいは私どもの検査院に御出頭いただきまして、私ども質問内容について相手方のさらに弁明を聞き取りながら相手方の正式な回答をいただくことになっていくわけでございます。  その過程におきまして、最初私どもが問題点として指摘した事項につきましても、相手方の資料による弁明によりましてなるほど相手方の言い分にも十分な根拠があるというようなことになりますと、最終的に検査報告として報告されることはないわけでございます。その過程におきまして、私ども言うならばさらに厳重な検討を加えているわけでございまして、指摘したものの中でも特に不当性の低いものから、あるいはもう少し工夫をすればよかったのではないかというように、我々の問題点の指摘の内容につきましても軽重があるわけでございまして、したがいまして、最終的に決算検査報告に載せるものは、私どもができ得る限り客観的に判断した結果これは国民国会に御報告しなければならないというものに絞りまして報告しているわけでございまして、そのようなものの処理について決して甘いというようなことはございません。  私ども質問の結果によりまして、検査報告には載らなくても、私どもの言い分が取り入れられましてそれなりの効果を発揮しているものも多々あるわけでございますけれども、そういうものにつきましては、ただ不当性の程度において軽微なものであるから決算検査報告には載らないということでございます。そういうことで御理解いただければ幸いでございます。
  64. 沢田広

    沢田分科員 わずか三十分の間ですから簡潔にひとつお答えいただきたいのです。  私は、実績に対する確認事項をとるべきではないか、その点検をしてほしい、こういうことをまず第一点と言ったので、これはイエスかノーか、それでお答えいただきたいと思うのです。
  65. 秋本勝彦

    ○秋本会計検査院説明員 その点検につきましては十分やっているつもりでございますし、これからも厳重にやってまいります。
  66. 沢田広

    沢田分科員 それから、もちろん未発表の指摘事項についても、これは憲法九十条における指摘ということにはならないわけですから、それなりの行政指導というものを求める、こういう行為はこれからもするということで確認してよろしゅうございますか。
  67. 秋本勝彦

    ○秋本会計検査院説明員 そのとおりでございます。
  68. 沢田広

    沢田分科員 それから、先般報道関係を通じて、会計検査院の諸君がいろいろ行った場所でごちそうになったりあるいは何かをしたという、その報道の内容は一応細かく言うことは避けますけれども、とにかくそういうような事件が起きて大変苦労したのじゃないのかなというふうに、ごちそうになるのをいいという意味で言っているわけではないのですが、要すれば、正当な旅費、日当というものが払われてきたのかどうかということの適否なんですね。これはそういうことが起きたからプラスマイナスで我慢せいという論理の方が先行した観もなきにしもあらず、先般旅費規程が幾らか改正されましたけれども、まだ身分によって旅費、日当、食卓料は差がついているんですか、会計検査院の場合でも。どうですか、これは。
  69. 秋本勝彦

    ○秋本会計検査院説明員 会計検査院一般職の公務員で、旅費法の適用は同じでございますので、何等級が幾らということは各省と変わりございません。
  70. 沢田広

    沢田分科員 これは人事院の方に来ていただいておりますが、会計検査院の職務の執行のために行ったときに、昔の高等官、判任官、この前大蔵でも言いましたけれども、そういう差で旅費、日当が変わるものではないじゃないか。時には、偉い人よりももっと苦労することが多い場合もあり得るのだから、同じ会計検査という事務執行を行っていく上においての旅費、日当は、食卓料も含めて同じであっていいのではないか。完全に同じだということではなくて、やはりその近くにあってしかるべきじゃないか。そこまで身分差をつける必要はないというふうに感ずるのでありますが、その点は人事院としてはどういうふうに考えておりますか。
  71. 大城二郎

    ○大城政府委員 旅費の問題でございますが、旅費は、職員が公務のため旅行する際の費用として補てんするものとして制度的に定められておりまして、その中で今お話のございましたような級別に金額が定められるということになっております。これらにつきましては、所管省庁である大蔵省が、旅行の実態等に即して適切に判断をしてそういう形を決めてきているというふうに私ども理解しておりまして、この点は大方の御理解が得られているところではないかというふうに考えております。
  72. 沢田広

    沢田分科員 随行の場合はいわゆる上級職の旅費、日当に準ずる、こういう扱いになってはおりますが、今順当にと言うが、問題を会計検査院は大蔵省の方へ持ち出さないんじゃないか。会計検査をやって同じに行っている場合は上級に準ずるというものはあるけれども、そうでない場合にはそれぞれの差があるのが、何か偉い人と偉くない人との差がそこにあることで自分で自己満足を感じているという面があって、言うならばそれを肯定しているというのが現実ではないのでしょうか。ようやく局長になったとかあるいは何になったから旅費が上がったとか、我々の時代もありましたよ。ようやくこれでグリーン車に乗れるかなという、確かにその気持ちはわからないではない。しかし、もうこういう時代になってくれば、同じ職務の執行について同じ水準であってしかるべきではないのか。偉い人がうまいものを食って偉くない人はまずいものを食う、こういう食卓料の差別は、今日時代的には成り立たないんじゃないかと思うのです。これは大蔵省の方に言っていくという意欲が必要なんではないのかというふうに思いますが、まずこの点どうですか。
  73. 大城二郎

    ○大城政府委員 私どもも、先生の御指摘のような問題、いろいろな角度から検討して、必要なことは大蔵省に要望するなり意見を申し上げるなりしてまいりたいと考えております。
  74. 沢田広

    沢田分科員 必ず言いますね。――頭を下げて言ったから、イエスということだろうというふうに解釈をしておきます。  それからもう一つは、あの問題が起きてから若干萎縮しているんじゃないのかというふうに、殊さらに世間の目というものに気を使う。それから同じ公務員の中でも、しかるところはしかって、やはり苦労に謝するところは苦労に謝さなければならぬ。我々も会計検査院の監査を受ける場合もありますから、嫌だなとは思いますよ。とにかく職員で一番嫌なのは、異動の発表と、給与、昇給の発表と、それから会計検査院、こういうふうに昔から言われてきたわけでありますから、そういう意味において一番嫌なものであることは事実でありますが、しかし、だからと言って、ほかの職員よりもより以上世間を狭くして生きていかなくちゃならぬ。ちょっと何かもらい物でもあれば返送しなくちゃならぬという、これは全公務員がそうですが、気を使う面が多い。だから、争議行為もできないだろうし、そういう形になっているので、その点に見合うものはやって、しかっていく、こういうことが必要だと思うのです。  昔のことでありますけれども、そういう徴税事務に携わる者あるいは裁判官というような者、警察事務を取り扱う者等については特別配慮をしてきたはずなんですね。これは会計検査院についても同じことが言えるんじゃないかと思うので、その点はどうお考えになっておりますか。これは人事院の方でひとつお答えいただきたいと思う。
  75. 森園幸男

    ○森園政府委員 会計検査院の調査官等につきましては、職務の専門性等を考慮いたしまして、職務の給与の格付の面におきまして専門職としての適正な評価をしておるところでございます。また、実際に検査に従事いたします場合の困難性等を考慮いたしまして、昭和四十九年に特殊勤務手当の一つといたしまして会計実地検査手当という手当を新設し、その後おおむね二年に一回くらいの頻度で手当額あるいは支給範囲の是正ということをやってまいっております。したがいまして、私どもといたしましては、調査官等の職責に応じた給与上の措置をおおむね講じておるというふうに認識をいたしております。
  76. 沢田広

    沢田分科員 この前、三年くらい前でありましたが、ODAとか海外開発援助資金の問題あるいはまた東南アジア関係の開銀の関係等々について質問をした際、会計検査院は手は触れられません、こういう答えが当時あったわけなんであります。  今日、日本もODAを初めとして相当な金額を諸外国に出しているわけでありますが、やはり国民の利益を損なってはならないという義務もあるわけでありますから、出した金が正当に使われたかどうかということの検分なり、また報告をする義務は当然伴ってくると思うのですね。それがよかったとか悪かったとかということは別問題としても、そのことについての報告の義務、この二千二百万組んである予算というものはそういうものだろうと思っているのでありますが、そういう点に対する調査あるいは検査等については、どのように対応するお考えですか。
  77. 秋本勝彦

    ○秋本会計検査院説明員 ODAの検査は、六十二年以降、マルコス事件以降、特に海外援助の検査について検査院が積極的に調査すべきであるという国会における御議論等を踏まえまして、私どもも鋭意検査をしてきているところでございますが、何分にも相手国に対して会計検査院の検査権限が及ばないということは、るる毎回申し上げているところでございます。しかしながら、今委員もおっしゃいましたように、私どものできる範囲内で、相手国の御協力あるいは援助実施機関である外務省あるいは経済協力基金あるいはJICAといったような方の立ち会いも得まして、現地における現場の調査などは行えるようになっておりまして、その結果につきましても、平成元年度の決算検査報告において初めて、特記事項ではございましたけれども、援助のプロジェクトの中で効果が十分上がっていないといったような事例も掲げまして、さらに実効の上がるようなODA援助が行われるようにという期待を込めて検査報告に掲記したものもある次第でございます。  なお、今後とも、私どもといたしましては、そういった国民国会の御要望に沿うべく、さらに、検査権限は十分ない分野ではございますけれども、工夫をしながら御要望にこたえていく所存でございます。
  78. 沢田広

    沢田分科員 やはりいろいろ言われてくる一番大きいのは、低開発国援助資金、それからアジアの開銀、こういうような資金については、いろいろなデマも入るでしょうが、いろいろ伝えられるものが多いわけでありますから、その辺は、相手の国にも被害は及ぶんですから、こういうことは未然に防止できれば未然に防止することが一番望ましいんですから、そういう意味においては、やはり計画を聞くということの事務も必要だろうし、あるいはそれを点検するということも必要になってきておる。  きょうはもう時間がないですから、いろいろな具体的な例も若干申し上げようかと思ったが、それが目的じゃありませんので、要すれば、会計検査院が正常な業務として国民の負託にこたえて行政をチェックする、そういう機能が十分に発揮され、罪人をつくることではなく、それが公正に行われて執行が改まっていく、そういうことに重点があるわけでありますから、それにまた見合う職員の処遇も考えてやらなければならぬだろう。大ざっぱなことを言えば、それに尽きるわけです。ですから、その意味においては、ひとつその責任者になった方は、国民の期待にこたえるという立場でこれに対応してほしいということを切望してやみません。  七分あったのですが、三十分に戻さなくちゃ悪いだろうと思いますから、説明の分までもとへ戻すために一応ここで終わりにしていきますが、これに対する見解を、せっかくおいでになったから、ここに出なかった人はこのことについて一言ずつ言ってもらって、終わりにしたいと思います。
  79. 秋本勝彦

    ○秋本会計検査院説明員 ただいまは委員から大変温かい御理解と励ましのお言葉をいただきまして、私ども大変ありがたく存じております。さらに一生懸命御期待に沿うべく努力させていただきます。
  80. 白川健

    ○白川会計検査院説明員 私どもわずか千二百人の小さな世帯でございますけれども、検査の手法についていろいろ工夫を重ねながら、委員の御期待に沿えるように頑張ってまいりたいと思っております。
  81. 秋本勝彦

    ○秋本会計検査院説明員 ちょっと済みません。間に挟まって申しわけございません。  先ほど平成元年度決算検査報告と申し上げましたけれども、昭和六十三年度決算検査報告ということに直させていただきます。
  82. 安部彪

    ○安部会計検査院説明員 第五局を担当しておまして、実際の検査を実施している部門を扱っておるわけでございますけれども、先生のただいまのいろいろな御激励を踏まえまして、今後一層の検査に努力を払ってまいりたいと思います。  また、検査いたしました結果につきましては十分フォローアップいたしまして、今後の行政の改善とか事務改善に役立てていただくように事後処理についても十分チェックしてまいりたいというふうに考えております。
  83. 沢田広

    沢田分科員 以上で終わります。
  84. 池田行彦

    池田主査 これにて沢田広君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして会計検査院所管についての質疑は終了いたしました。     ─────────────
  85. 池田行彦

    池田主査 次に、国会所管について審査を進めます。  まず、衆議院関係予算の説明を聴取いたします。緒方衆議院事務総長
  86. 緒方信一郎

    ○緒方事務総長 平成二年度衆議院関係歳出予算について御説明申し上げます。  平成二年度国会所管衆議院関係歳出予算要求額は、五百億九百万円余でありまして、これを前年度予算額と比較いたしますと、二十一億七千六百万円余の増加となっております。  次に、その概略を御説明申し上げますと、第一は、国会の運営に必要な経費でありまして四百八十六億千四百万円余を計上いたしております。  この経費は、議員関係の諸経費、職員の人件費並びに事務局及び法制局の所掌事務を処理するために必要な経費でありまして、前年度に比し二十一億七千二百万円余の増加となっておりますが、その主なものは、国会議員航空機利用経費の増額、議員秘書の待遇改善経費、議会開設百年記念行事経費、議員歳費並びに議員秘書及び職員の人件費等の増加によるものであります。  第二は、本院の施設整備に必要な経費といたしまして、十三億八千八百万円余を計上いたしております。これは、第二議員会館の昇降機改修費、噴泉の新設、本館塔屋照明装置の設置及びその他庁舎の諸整備に要する経費でございます。  また、国会周辺等整備に必要な土地購入費は、引き続き一億円計上することといたしております。  第三は、国会予備金に必要な経費といたしまして、前年度同額の七百万円を計上いたしております。  以上簡単でありますが、衆議院関係歳出予算の概要を御説明申し上げました。よろしく御審議のほどをお願いいたします。
  87. 池田行彦

    池田主査 次に、参議院関係予算の説明を聴取いたします。佐伯参議院事務総長
  88. 佐伯英明

    ○佐伯参議院事務総長 平成二年度参議院関係歳出予算について御説明申し上げます。  平成二年度国会所管参議院関係歳出予算要求額は、二百八十八億五千三百万円余でありまして、これを前年度予算額と比較いたしますと、約三億六千万円の増加となっております。  次に、その概略を御説明申し上げます。  第一は、国会の運営に必要な経費でありまして、二百七十八億五千七百万円余を計上いたしております。  この経費は、議員関係の諸経費、職員の人件費並びに事務局及び法制局の所掌事務を処理するために必要な経費でありまして、前年度に比し約三億五千万円の増加となっております。これは主として、国会議員航空機利用経費の増額、議員秘書の待遇改善、議会開設百年記念行事経費の計上のほか、議員歳費及び議員秘書、職員の人件費の増加等によるものであります。  第二は、参議院の施設整備に必要な経費でありまして、九億九千万円余を計上いたしております。  これは、本館その他庁舎等の整備に要する経費であります。  なお、議会開設百年記念行事の一環として、本館正玄関前噴泉及び本館塔屋照明装置の設置に要する経費を計上いたしております。  第三は、国会予備金に必要な経費でありまして、前年度同額の五百万円を計上いたしております。  以上簡単でありますが、参議院関係歳出予算の概要を御説明申し上げました。よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。  以上でございます。
  89. 池田行彦

    池田主査 次に、国立国会図書館関係予算の説明を聴取いたします。指宿国立国会図書館長。
  90. 指宿清秀

    ○指宿国立国会図書館長 平成二年度国立国会図書館歳出予算について御説明申し上げます。  平成二年度国会所管国立国会図書館関係歳出予算要求額は、百二十九億三千五百万円余でありまして、これを前年度予算額百二十五億一千万円余と比較いたしますと、四億二千四百万円余の増額となっております。  要求額の主なものについて、その概略を御説明申し上げます。  第一は、管理運営に必要な経費であります。その総額は、百六億八千九百万円余でありまして、これを前年度予算額と比較いたしますと、三億九千九百万円余の増額となっております。これは主として、図書館資料の購入費、立法調査業務に必要な経費、図書館業務の機械化に必要な経費、関西図書館プロジェクトの調査を実施するために必要な経費及び職員の人件費等について増額計上いたしましたことと、新たに和図書書誌情報遡及入力経費及び議会開設百年記念展示会のための経費を計上いたしましたことによるものでございます。  第二は、科学技術関係資料購入に必要な経費でありまして、前年度と同額の五億三千二百万円余を計上いたしております。  第三は、施設整備に必要な経費でありまして、十七億一千三百万円余を計上いたしております。これは、主に新館整備及び本館改修に要する経費で、前年度予算額と比較いたしますと、二千四百万円余の増額となっております。  なお、新館整備に関しまして、平成二年度を初年度とする三カ年の国庫債務負担行為二十四億五百万円余、本館改修に関しまして、平成二年度を初年度とする二カ年の国庫債務負担行為四億円余を要求いたしております。  以上、簡単でありますが、国立国会図書館歳出予算の概要を御説明申し上げました。  よろしく御審議のほどをお願いいたします。
  91. 池田行彦

    池田主査 次に、裁判官弾劾裁判関係予算の説明を聴取いたします。新川裁判官弾劾裁判所事務局長
  92. 新川行雄

    ○新川裁判官弾劾裁判所参事 平成二年度裁判官弾劾裁判関係歳出予算について御説明申し上げます。  平成二年度国会所管裁判官弾劾裁判関係歳出予算要求額は、九千五百三十五万一千円でありまして、これを前年度予算額九千百二十万八千円に比較いたしますと、四百十四万三千円の増加となっております。  この要求額は、裁判官弾劾裁判所における裁判長の職務雑費、裁判員の旅費及び事務局職員の給与に関する経費、その他の事務処理費並びに裁判官弾劾法に基づく裁判官の弾劾裁判に直接必要な旅費、庁費でありまして、前年度に比し増加となっておりますのは、主として職員給与関係経費の増加によるものであります。  以上、簡単でありますが、裁判官弾劾裁判関係歳出予算の概要を御説明申し上げました。  よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  93. 池田行彦

    池田主査 次に、裁判官訴追委員関係予算の説明を聴取いたします。澁川裁判官訴追委員会事務局長
  94. 澁川滿

    ○澁川裁判官訴追委員会参事 平成二年度裁判官訴追委員関係歳出予算について御説明申し上げます。  平成二年度国会所管裁判官訴追委員関係歳出予算要求額は、一億一千三十一万五千円でありまして、これを前年度予算額一億四百十万九千円に比較いたしますと、六百二十万六千円の増加となっております。  この要求額は、裁判官訴追委員会における委員長の職務雑費及び事務局職員の給与に関する経費並びに訴追事案の審査に要する旅費その他の事務費でありまして、前年度に比し増加となっておりますのは、職員給与関係経費等の増加によるものであります。  以上、簡単でありますが、裁判官訴追委員関係歳出予算の概要を御説明申し上げました。  よろしく御審議のほどお願いいたします。
  95. 池田行彦

    池田主査 以上で説明は終わりました。     ─────────────
  96. 池田行彦

    池田主査 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。元信堯君
  97. 元信堯

    元信分科員 私は、国会の機能の中で、とりわけ情報化の問題について質問をいたしたいと思います。  実は私、前回の選挙で落選をいたしまして、足かけ四年ぶりに国会へ戻ってきたわけでございます。世の中この間に随分進歩したわけでございますが、国会の方はどうであるかと大変期待を持って帰ってまいりました。その間、新聞などでも散見をいたしましたのは、例えば国会の索引がデータベース化されるとか、そういうようなことが伝えられておりまして、随分国会活動も変わっただろうなと思って出てきたわけでございますが、実際出てきて調べてみますと、これが案に相違をいたしまして、どうも世の中一般から見まして甚だ立ちおくれた状況にあると言わざるを得ない状況にあるのではないか、いささか驚いているところであります。数え出せば切りのないことでございます。多岐にわたっておるわけでございますが、きょうは主に国会の会議録の調製とそのデータベース化について御質問をさしていただきたいと思います。  まず現状について伺いたいと思いますが、衆議院において本会議、各常任委員会、特別委員会等の会議録が、会議が行われて以降どれぐらいの早さで出版されておるか、現状について大まかなことを教えていただきたいと思います。
  98. 緒方信一郎

    ○緒方事務総長 本院の会議録は、本会議録、委員会議録とも大蔵省印刷局で印刷をして印刷物の形で作成しておるわけでございます。委員会審議時間等によりましてかなり差はございますけれども、平均いたしますと、本会議録で約十日、それから委員会議録で約七日ぐらいというふうに承知をいたしております。
  99. 元信堯

    元信分科員 現状では本会議の会議録、委員会の会議録とも、出版後国立国会図書館において索引をおつくりになって、それの検索データベースをつくられておる、こういうふうに承知をしておりますけれども、実際に会議録が今お話のあった十日ないし七日で出版をされて、データベースへ登録されて実際検索可能になるまでどれぐらい時間がかかっているものか、大ざっぱなところで結構ですが、お答えいただきます。
  100. 指宿清秀

    ○指宿国立国会図書館長 会議録が配付をされまして当館の方に入手できました状態からデータベースの入力作業が始まるわけでございますが、おおむね一カ月で入力作業は終わるというのが現状でございます。
  101. 元信堯

    元信分科員 そうしますと、一カ月たちますとそのデータベースが利用できる、こういうことと考えてよろしいわけですね。
  102. 指宿清秀

    ○指宿国立国会図書館長 御指摘のとおりでございます。
  103. 元信堯

    元信分科員 そういたしますと、膨大な会議録が毎日毎日出てくるわけでございまして、その中から索引になる文字列を抽出をしてそれを入力をして、かつデータベースに登録をしていく。なかなか大変なお仕事で、一カ月というのはその意味では大変努力をされた結果であるだろうと私どもは思います。  しかしながら他方、これの利用ということを考えてまいりますと、国会は日々審議をしているわけでございまして、きょうの審議があすに影響し、あすの審議がまたどこでどういうふうにはね返ってくるかわからない。データベースというのは実はこういうところに最大の利点があるのではないか。例えば、私はきょうこういう質問をしようとすれば、過去にこの国会の中でどのような議論がされたか、一カ月前までは今のお話で検索できるわけでございますが、国会が始まってしまいますと、一カ月ではやっぱり時間がかかり過ぎているのではないか、こういうふうに思っております。そういう意味でもっともっと早くしなければならないというふうに思います。  しかも、今構築されておりますデータベースは索引のデータベースでございまして、実際にどういうふうに使うかといいますと、きょうちょっといただいたのを持ってまいりましたが、これは発言者の索引でございますが、発言者あるいは事項別索引というのも国会議員には配付をされておりまして、これをざっと見る。これが大変ならば電子計算機の端末でこれを電子的に検索するということも可能でございますが、それで、どの会議でだれの発言の中にそういう言葉があったかということがまずわかる。そういたしますと、それを今度は実際にどういう発言がされたかということは、今のシステムの中では知ることができない。それを知るためには、もう一度国会図書館へ足を運んでその会議録を見せていただく、あるいは写しをいただく、こういうことになるわけであります。もっといい姿というのは何か。それは言うまでもなく、会議録そのものをドキュメントとしてデータベースの中に取り込んでいく、それの方が利用する勝手としては甚だよろしいかと思いますし、あるいはまたこれをドキュメントファイルとするためには、一遍印刷物となって出版されたものをまた全部登録するというのは実際上不可能であろうかというふうに考えまして、これを出版の段階において電子化することが有用ではないかというふうに思うわけであります。  こういうような観点に立って考えてみますと、国会の側で会議録を調製する作業の途中の段階で、例えばこうして速記をとっていただいておるわけですが、速記を原稿に起こしていく、この段階でワードプロセッサーを使って原稿をつくっていただけば、これは自動的に記録が電子的に残ってまいります。そういうものを利用することはできないか、あるいはまたそれが何らかの理由で不可能ということであれば、印刷をする段階で、お聞きしますと、今の印刷は活版を手で拾っておる。これが案外早いのだそうでありまして、スピード化のためにはその方がいいとかいう御意見もあるようでございますが、それを電子化しておけば、つまり電算写植化しておけば、その段階でやはりデータベースのための記録が残っていくわけでございまして、あとは電子的な作業だけ、こういうことになるわけでありまして、いろいろなやり方が考えられるだろうと思いますが、今日に至るまでこのデータベース化が進まない、その原因をどの辺にお考えであるか、衆議院の事務総長に伺いたいと思います。
  104. 緒方信一郎

    ○緒方事務総長 本院のいろいろな業務のデータ化あるいはそういう情報処理というものが大変おくれておるという印象をお持ちである、まことに恐縮に存ずる次第でございます。  会議録につきましては、伝統的に速記によりまして記録をいたしまして、それを反訳、印刷するということでずっとやってまいっております。今までもいろいろそういう会議録の作成に日時がかかり過ぎるのではないかという御指摘はしばしば受けておるわけでございまして、私ども鋭意いろいろ研究は内部的にはいたしておる段階ではございますけれども、大変非常に手間がかかるということと、それからこう言ってはあれですけれども、そういう需要が今まで比較的、何といいましょうか、データベース化という直接のそういう需要というものがそれほどほかの業務といいますか、一般の民間のものに比べて少なかったというようなこととの兼ね合いで検討がおくれてきたのではないか。もろちん我々の頭がかたかったということも十分反省いたしておりますけれども、そういうことではないかと思います。いろいろそういう将来に向けて必要性は我々自身も痛感しておりますので、なかなか急にということはあれでございますが、今後そういう方向に向けて検討していきたいということで内部でもいろいろ研究しておる段階でございます。
  105. 元信堯

    元信分科員 手間がかかるというのは、どこへ手間がかかるのか。内部の検討に手間がかかるというふうに今承ったわけでありますが、私先ほど幾らか立ち入って申しましたように、道そのものは世の中でそんなに難しいことではない。これは皆さん御存じだろうと思いますが、例えば新聞データベースというものがございます。新聞は記事をつくっていくそばから入力化されていって、それが過去にわたって集積をされておる。もう主な新聞はほとんどデータベース化されておりまして、普通の例えば私どもでも簡単に利用することができる。例えば、衆議院情報化というようなキーワードを幾つか選んで入力をしてやりますと、たしか一九八五年からだと承知をしておりますが、それ以来の主な新聞の中にそういう文字列があったかどうか、それを数秒で検索をいたしましてたちまち画面に出力をしてくるというようなことはごく簡単なことでございまして、一体どこに手間がかかるのか。需要がないというのであれば、これは私どもの議員の方にも問題があろうかというふうに思うわけでありますが、検討をされていてどこかでひっかかっているのであれば、それを排除しながら進まねばならぬ、こう思うわけでございます。  恐れ入りますがもう少し詳細に、どこに問題があるとお考えなのか、手間がかかるとすればどこだとお考えなのか、お聞かせいただけるといいんですが……
  106. 緒方信一郎

    ○緒方事務総長 基本的にいわゆる本会議にしろ委員会にしましても会議録というものが、例えばテープでとって、起こしたものをそのまま公式の会議録ということにしていないという問題が一つございます。いろいろ明白な過ちを正すとか、その他いろいろ若干の点検といいましょうか、そういう作業があるということでございますので、新聞のようにここでぱっと機械で打ってしまって、それをそのまま機械化するということはまずなかなか難しい。  現実的な問題としましては、速記は従来どおり速記で記録をいたしまして、それを反訳をいたしますときにもう直接ワープロに入力をしてしまうというのが一番現実的な方法であろうかと思います。我々としては検討の方向としてはそういう方向で今検討しておるわけで、現実に記録部の中でもワープロ等に習熟するための努力をしておるという段階でありますけれども、何分何といいましょうか、そういう体制に切りかえていくということに時間がかかるということが一つあるだろうと思います。  それと、そういうふうに完全に反訳がワープロ化しまして、そうしますと、やりようによっては会議録も活版を組まなくてもできることになるし、やりようによりましてはそのままデータベースに入れることもできるという、そういう道が開けてくるわけでございますけれども、何分そういう実際の我々の対応とかそういう研究そのものにやはりちょっと時間がかかるだろうということでございます。実際にもしそういうことで進めることになりますと、これはまた議会制度協議会とか議運とかそういうような内部で十分お話し合いをいただいて、方向をお示しをいただいた上でということにもちろんなるわけでございます。
  107. 元信堯

    元信分科員 大分わかってまいりました。そういたしますと、関係のほかの機関とも十分協議をしてということになると思います。  そこで、国会図書館と衆議院との関係をちょっとお聞きしておきたいと思うのですが、今、国会図書館は出版されたものを手に入れてそれを索引をつくる、こういう作業をされていると思います。仮にデータベースを構築するとすると、その検索の索引のつくり方なども衆議院と、あるいは参議院も含めて国会図書館の間で十分協議がなされなければならぬと思いますが、現在のこの索引の作成について両院と国会図書館との間でどんなふうな協議がされておるのか、ちょっと教えていただきましょうか。
  108. 指宿清秀

    ○指宿国立国会図書館長 お答え申し上げます。  ただいまのお尋ねの件でございますが、私ども国会会議録の索引のみならず、収集いたしました多くの情報、これをできるだけ利用者に速やかに、しかも正確に提供したい、こういうことで、まず第一義的にはどうしても索引の整理、これが優先するわけでございます。ただ、利用者、ユーザーの方にいたしますれば、その現物、本文が必要であるということは当然のことであろう、こう思いますが、第一義的には索引等の書誌情報を提供するということでございます。  そういう前提でございますので、これは国会の会議録の索引に限らずそういうことでございますが、現在、索引の項目その他につきましては、特に両院の事務局等と協議を重ねるということではなしに、独自の判断で整理をし、入力しておるというのが実情でございます。
  109. 元信堯

    元信分科員 そもそも会議録の管理をどこがするかという問題も一つあるだろうと思うのですね。  国会図書館のお仕事は、記録を収集をし利用者の利便を図る、こういうことである。会議録を調製をし、それを国会議員を初め関係者に配付をするというのは国会の仕事、こういうことになりますね。そうしますと、データベースというのはその境目ぐらいに位置するようなものではないか。どちらがどこまで仕事をするのか、ここらがなかなか難しいところだと思うのですね。特に索引のつくり方などについては、恐らく、例えば仮に国会側がデータベースを構築するということになりますと、これは索引なしのデータベースというのは、なくはないでしょうが、設備の面とか利用の面からいってなかなか難しいかというふうに思います。  そうしますと、今度は索引を調製せねばならぬ。そうしますと、今ある国会図書館の索引と、索引の抽出の基準というのは実は恐らくできないだろう。これを索引に採用し、これを索引に採用しないというようなことは、時々刻々新しいのが出てくるわけですから事実上不可能ということになるので、結局今まで図書館でやっていたのを国会の方もそれに準じて、あるいは利用させていただいてというようなことになるんじゃないか。今まで出た部分とこれからつくる部分についてもそういう問題が出てくるだろうと思うのですね。  そうしますと、いずれにせよ両院と国会図書館の中でこの境目あるいは両方にまたがって関係をしてくる部分については十分な協議をしなければならぬだろう。今のお話ですと、全くそのことについては話をしておらぬ、独立にやっておるということですが、将来にわたってそういうことではちょっとぐあいが悪いんじゃないかと思います。まず衆議院の側から、国会図書館とそういうことについて十分協議をするお考えがあるか、あるいは国会図書館の方からも衆議院に対して、そういう申し入れがあったら必要な援助をするようなお考えがあるか、伺いたいと思います。
  110. 緒方信一郎

    ○緒方事務総長 どういう索引をつけるかというのがどこまで国会の仕事であろうかという、先生御指摘になった問題があろうかと思います。  我々は、まず第一義的には正確な記録をしまして保存するということが使命でございまして、それをどう御利用いただくかということについては、いろいろそれの需要に応じてもちろん御協力できるところには御協力するということであろうと思います。もちろん、議員が利用するということと外部とこれまた基本的に考え方が違うと思いますが、議員が御利用することについては最大限の便宜を図るという義務が我々にあると思っておりますけれども一般的に広くどこでも使えるデータベースあるいは索引とかいうようなことになりますと、これはいろいろ研究させていただきたいと思います。今の段階ではなかなかそこまで、衆議院事務局で索引をつくるというところまでちょっとなかなか手が回らないのではないだろうかというふうに考えております。
  111. 指宿清秀

    ○指宿国立国会図書館長 国会会議録の索引のデータベース化に当たりましての項目等の判断は、国会図書館独自で現在やっておることは先ほど御答弁したとおりでございますが、事柄が国会全体にかかわることでもございますので、私どもといたしましても、両院の事務局等とも今後十分協議をいたしまして、新たな問題を含めまして検討することにやぶさかではない、こういうふうにお答え申し上げておきたいと思います。
  112. 元信堯

    元信分科員 それではちょっと角度を変えて、先ほどの衆議院事務総長のお話ですと、速記を起こしてそれを反訳をする、反訳した原稿をワードプロセッサーによって印刷へ回すというあたりのお考えのように承りましたが、きょうは大蔵省の印刷局、おいでいただいておりますね。――印刷を今大蔵省でしていただいているわけですが、電子化された原稿というものを入手をして、それですと電算写植ということになろうかと思いますが、印刷の速度あるいは印刷の品質、品位、そういうような点から見まして、何か印刷側に問題が生じる可能性がありますか。
  113. 小野榮一

    ○小野説明員 私どもの方は、伝統的に速記録、本会議録その他請願、いろいろと国会事務局さんの方でお取り上げになっておりますお仕事をちょうだいして今日に至っておりますが、もう既に昭和四十九年ごろから電算写植化の空気が印刷界に及んでまいりましたのを察知しまして試行に入りまして、いろいろトライを重ねて今日まで参っております。その過程で、既に御承知のように官報を平成二年の四月から全面的に電算写植方式でやらせていただいておりますので、品質につきましては官報をごらんいただければ、その程度のものは製造できるという状況にございます。  また、ただいま御指摘のありましたFDあるいはディジタル化したような原稿を衆議院さんの方からちょうだいしますれば、私どもの方としましては、受け皿と申しますか、対応は十分にとることが可能でございます。  そして、その早さということの御質問がございましたけれども、このことに関しましては、一時間当たりのボリューム、消化する能力というのが、まあコンピューターの規模にもよりますけれども、ただいま手前どもの方では三十二メガバイトのものと十六メガバイトの二台を使って白書とかいろいろなお仕事を、FDでちょうだいしたものを加工をさしていただいておりますので、インターフェースをとらないでダイレクトで入れられるようなお打ち合わせをさしていただきまして、それでお仕事をさしていただければ、非常に早くなるかと思います。
  114. 元信堯

    元信分科員 印刷面では全然問題がないということがわかったと思います。  したがいまして、今の議論をずっとつないでまいりますと、速記を起こして、それをワードプロセッサーに打って、それをフロッピーで渡すあるいはオンラインで渡すというふうにしますと、まず時間的にもかなり早くなるであろう。それから、事務方で御心配のあります誤植の問題、これも原則的には誤植は生じない。反訳が正確であれば、もうそこから先は誤植の余地はないということになりますし、また印刷の品位等からも問題がなく、それからそれをそのままデータベースに登録することについてもきちっとやることは可能である、かように考えるわけであります。そうはいいましても、速記者の皆さんのワードプロセッサーに対する習熟の問題ですとかいろいろありましょうから、一朝一夕には片づかないと考えますが、しかし、根本的にこれを不可能としているということはない。需要がないという仰せでありますが、需要はございます。ぜひお願いをしておきたい、こういうふうに思うわけでございます。  大体時間が参りましたが、じゃ、あと一、二点、もう少し全体的なことを伺いたいと思います。  伝えられるところによりますと、首相官邸が建てかえられるというようなことを聞いておりまして、そのときはインテリジェント化といいますか、ハイテクノロジーを十分に活用したようなビルになるというふうに言われております。  立法府の方はどうかと申しますと、不足を言うようで申しわけないのですが、例えば議員会館、これに私どももファクシミリでありますとかコンピューターでありますとかが必要になってまいります。端末として引こうとしても、まず電話の回線が入らない。一回線より以上は、今当初からある一回線にもう一回線増設したらそれでおしまいということになります。なるべくいろいろなふうに使いたいと思いまして、例えばINS64でも多少便利になろうかと思いますが、こういうふうにしてはどうかと考えますと、これは衆議院の、まあ議院ということじゃないと思いますが、この地域の交換機がディジタル化されていないので、日本じゅうで使えるINSが国会では使えないというような事態にもあるようであります。さらに進んで、国会内でももっと早く情報が通じるようにローカル・エリア・ネットワークとかそういうようなものがいろいろ考えられると思いますが、施設的に対応できぬのじゃないかなというふうに思います。  そうしますと、やはり立法府として、そういう情報化に対して、今は会議録のことだけ申し上げましたが、全体的に再検討するべき時期が来ているのじゃないかというふうに思いますが、そのようなことについて、先ほどお話がありました議会制度協議会ですか、そういうところなどで今日まで議論をされた経過があるのか、あるいは検討をする用意があるのか、ことしは議会百年、節目ということでいろいろなことが考えられているようですが、そういう計画の中でどういうふうに検討されているか、御教示いただきたいと思います。
  115. 緒方信一郎

    ○緒方事務総長 一つは、具体的に検討が始まりました問題としては、国会審議を常時テレビ中継をしよう、そういう問題がございまして、これはアメリカのシースパンというようなものに今触発をされてといいますか、そういういろいろ御要望、時代の要請にこたえて議運の中で小委員会を設けて検討を始められております。これは、そうなりますとその映像を全部保存するということになりますので、そういう点でまた別の利用が出てくるというあれがありましょうし、それに関連をしていろいろな新しいそういう情報処理というようなことがまたそこから派生的に出てこようかと思います。これは検討が始まったばかりでございますが、そういうことが一つございます。  それから、官邸がインテリジェント化するということに関連しましてですが、将来国会の議員会館等も建てかえあるいは増築その他を考えておるわけでございまして、現在調査費がついて議員会館の改築というようなことで研究をしておりますけれども、そういう場合に当然そういう時代の趨勢というものにおこたえをするということについて検討していかなければならない問題だろうと思いますので、今後議院運営委員会その他各方面の御意見を十分承りながら、そういう方向でひとつ検討を進めていきたいと思っております。
  116. 元信堯

    元信分科員 ありがとうございました。  世の中は驚くべき速さで進んでいるのでございまして、国会だけがそれに超然としておって、ただ伝統の中に閉じこもっているということはもちろん許されぬわけでございます。いろいろ制約は多いだろうというふうに思いますが、ぜひ開かれた国会とするためにも、あるいは国際的にも今のような状態では通用しないと思いますので、御努力をお願いを申し上げて、終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  117. 池田行彦

    池田主査 これにて元信堯君質疑は終了いたしました。  次に、山花貞夫君。
  118. 山花貞夫

    山花分科員 私は、国会職員の皆さんの労働条件にかかわる問題についてお伺いいたしたいと思います。  まず初めに、完全週休二日制の問題について人事院に伺います。  世界的な労働時間短縮の風潮の中で、海外からも日本人は働き過ぎだとの指摘を受けている昨今でございます。完全週休二日制の実施は既に時代の要請であるということについては、だれもが承知しているところでございます。人事院の第六代総裁におつきになりました弥富新総裁の就任記者会見などを拝見いたしますと、人勧の問題あるいは週休二日の問題について、そうした問題点を正面から受けとめての御発言を伺いまして、大変関心を持って伺っておったところでございます。  また、公務員、金融機関の週休二日制がもたらす民間企業への波及効果につきましても、非常に大きいと思います。  このような状況のもとで、昨年二月から銀行が完全週休二日制を実施いたしまして、国家公務員においても昨年の一月から土曜閉庁方式による四週六休制が行われております。  人事院としては、昨年の人勧では、完全週休二日制については「計画期間内における速やかな実現に向けて、更に積極的な検討を進める必要がある」との表現にとどまりまして、一昨年に続いて、関心を持たれております実施年度の明示ということについては欠けておったところであります。  しかし、その後の昨年十二月の人事院の勤務時間問題研究会の最終報告では、交代制職員の週四十時間勤務制の「試行終了後速やかに公務全体の完全週休二日制へと移行すべきである。」と提案されています。  そこで、人事院に伺いたいのですけれども、本年の人事院勧告に完全週休二日制の実施年次を明示することになりますでしょうか、さらにはその実施年次とはいつごろをめどとするかということについてお伺いしたいと思います。
  119. 弥富啓之助

    ○弥富政府委員 お答えいたします前に、山花先生にはいろいろと本委員会で御教示を賜りまして、ありがとうございました。  さて、今の問題でございますが、まさにおっしゃいますとおりに、政府の経済運営五カ年計画におきましても完全週休二日制、それは大きく言いますと、ただいまの国民的課題になっているというようなことも言われておるわけでございます。それに伴いまして、職員の完全週休二日制、これにつきましては、たびたび申し上げていたかと思いますけれども、国全体の労働時間の短縮の計画期間内、これは平成四年というふうに予定をいたしておりますが、それまでの速やかな実現を目標に施策の検討をさらに積極的に進めるという従来からの人事院の考え方でございます。  人事院といたしましては、引き続き民間におきます週休二日制や時短の進行状況、それから土曜閉庁の定着状態、それから今言われましたように、本年四月から御存じのとおりに交代制等職員の週四十時間勤務の試行を実施いたしておりますが、その試行状況を踏まえつつ、計画期間内における完全週休二日制を先生の言われるように、御趣旨を体して、速やかに実現が図られるよう全力を尽くしてまいりたいということでございますが、ただいま言われたように、いつまでだというふうに御質問がございましたが、去年の、平成元年の四月現在におきましては、完全週休二日制をとっておる、事業所単位でございますけれども、これが大体二五・四%、それで隔週週休二日制あるいは週休二日以上、三日等をとっておる事業所の割合が七割ちょっと欠けるぐらい、これは去年でございます。ことしは今これから調べてみないとわからないわけでございますが、大体、御存じのとおりに、勤務条件につきまして、勤務条件の基本問題につきましては、根本基準につきましては、これは社会一般の情勢に適応するといういわゆる情勢適応の原則と言われるものがございますので、これは社会の週休二日制が、もちろん去年の二五・四%より徐々にふえているということは考えられるわけでございますが、それが事業所単位でございまして、人員の数で申しますと相当な数になってきているのではないか。そういうのを勘案しながら速やかに対処して適切な処置をとっていきたい、かように申し上げて、お答えといたします。
  120. 山花貞夫

    山花分科員 速やかにというお話がございましたけれども、従来から積極的にといった取り組みの姿勢についてはよく伺う機会があるわけですけれども、やはり関心としては、一つの目標をきちんと設置するというところが非常に意義があるのではなかろうかと思っております。  公務員の関係での波及効果の問題につきましてもお話がございましたけれども、よく民間の労働組合の皆さんに伺いますと、やはり個別労使交渉での限界というところから、公務員が一体どうなるかということについて、そこでの関心も持たれているところでありまして、これから人勧ということになりました場合には、実施年次の問題につきましても、もう一歩ぜひ進めてお考えを打ち出していただきたいということについて要請をしておきたいと思います。  次に、事務総長にお伺いしたいと思いますけれども、金融機関や公務員の週休二日制が民間に及ぼす波及効果が大きいことと同様に、国会が他の省庁に先駆けまして週休二日を実施するということにつきましては、これまた他省庁に対して大きな波及効果を及ぼすのではなかろうか、こういうように思います。確かに国会の役割、そして従来の議論でもこの点についていろいろやりとりがございましたけれども、現実には土曜の国会審議というものについて、最近は特別の事態を除いてはほとんど行われていない、こういう実情を見ますと、十分可能なのではないか、こういう気もしているわけでありまして、衆議院が率先をして週休二日問題について取り組んで実施をするということはいかがかと思いますけれども、この点について総長のお考えを伺いたいと思います。
  121. 緒方信一郎

    ○緒方事務総長 勤務条件の問題につきましてはいろいろ問題があろうかと思います。国会職員はいわゆる通常の国家公務員と全く同じでなければならないということはございませんので、先生御指摘のようなお考えもおありになろうかと思います。ただ、基本的に一般の公務員と余り変わらない、同様の部門につきましては、一般の公務員に準じた取り扱いを従来も続けてきておりまして、したがいまして、この休暇の問題につきましても、従来政府職員と同様の足並みをとってきているという経緯がございます。いろいろそういうお考えもあると思いますけれども、基本的にそういう国会の特殊性ということが特別ない問題につきましては、一般職員に準じて、そのかわりおくれずといいますか、同時に実施をしていく、こういうことが望ましいのではないだろうかというふうに思われます。
  122. 山花貞夫

    山花分科員 一般公務員に比較して非常に不利な条件を持っている部分もあるわけでありまして、その意味におきましては、まずこうした問題について一歩進めるということが十分あってもよろしいのではなかろうか、こう思います。もちろん国会の中の各関係の部署との協議も必要だと思いますけれども、ぜひこの点については一度積極的に取り組むことについて御検討をいただきたいということを重ねてお願いをしておきたいと思います。  なお、労使の交渉の議事録などを拝見しますと、やはり横にらみといいますか、後おくれないようにといったような感じが強いわけでありますけれども、横にらみ、後おくれないようにというよりは、やはり後からついてくるかな、大丈夫かなというぐらいの、そのくらいのペースが必要なのではなかろうか、こう思っているところでございまして、その他の労働条件との兼ね合いについても十分ごしんしゃくいただきたいということについて要請をしておきたいと思います。  次に、定年の問題について質問いたします。  昭和六十年に公務員の六十歳定年制が導入されましたけれども、高齢化社会の到来を目前にして、また公的年金の受給開始年齢の繰り延べが議論されているということの中でその見直しを求める声が強いことについては、御承知のとおりであります。  今般、極めて不十分ながら労働省が高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部改正案を提出されるに至りましたことは、高年齢者の雇用機会を確保しようとする点でわずかながらでも前進が見られるということだと思っています。  そこで労働省に伺いたいのですけれども、我が国が世界でも類例を見ない速さで高齢化社会の仲間入りをしているということの中で、定年延長や高齢者の雇用の確保について基本的にどのような考えを持っておられるのか、いろいろあると思いますけれども、要点をひとつ簡潔に御説明いただきたいと思います。
  123. 野寺康幸

    ○野寺説明員 本格的な高齢化社会の到来を迎えまして、高齢者の雇用確保は労働行政としての最重要課題の一つであるというふうに考えております。このため、先生御指摘になられましたように、六十五歳までの雇用機会を図るために高齢者雇用安定法の改正法案を今国会に提出させていただいております。  今後とも、まず六十歳定年の定着を基盤といたしまして、その上に六十五歳までの継続雇用等によります雇用機会の確保を図るための施策を積極的に推進してまいるというのが基本的な姿勢でございます。
  124. 山花貞夫

    山花分科員 また、問題を少し絞る形になるかもしれませんけれども、総務庁に伺いたいと思うのです。  労働省は、今お話しのとおり、法案の提出等にもその姿勢がうかがわれるわけでありますけれども、高齢者の雇用対策に力を入れておられる。できるならば、定年は六十五歳ぐらいまでよろしいのじゃないか、こう考えますけれども、国家公務員の雇用主としての国において、そうした方向について政策を進めるべきではなかろうか、こう思います。  総務庁は、国家公務員の六十歳定年の延長についてどうお考えなのか、また当面の問題としては、定年を迎えられる方々の再就職のためにどういう努力をされているのか、この点についてお伺いをいたしたいと思います。
  125. 畠中誠二郎

    ○畠中説明員 お答えいたします。  国家公務員の定年制度につきましては、計画的な人事管理を通じて公務の能率的な運営を図ることを目的としております。定年の延長につきましては、このような公務の能率的運営に与える影響とか民間企業の定年制の動向など、諸般の事情を総合的に勘案して検討する必要がある課題であるというふうに考えております。  次に、定年を迎える方々の再就職の問題でありますが、総務庁といたしましては、職員が退職後の新しい生活にスムーズに適応できるようにするため、退職準備プログラムというものを推進しております。従前から「退職準備プログラムモデルガイドブック」を作成、配付し、昨年度には新たに各省庁の退職準備プログラムに従事する職員を対象とした講習会を開催したところでございます。総務庁といたしましては、今後とも各省庁におきまして退職準備プログラムの充実が図られるよう一層努力してまいりたいというふうに考えております。
  126. 山花貞夫

    山花分科員 これまでの御答弁を踏まえまして、事務総長国会職員の定年問題についてお伺いをいたします。  申すまでもなく、国会職員の場合は定年制導入に伴いまして退職年齢が早くなりました。暫定定年を設けたとはいえ、政府職員が実質的な定年延長になったのに対して短縮されたわけでありまして、六十五歳程度までの継続雇用促進を図るべきであるとする世の中の大きな流れに逆行した措置ではなかったかと思っています。逆に言えば、かつての国会職員の退職年齢の設定は、時代を先取りした、むしろ非常にすぐれた制度であったということではなかったかとも思うのであります。  定年制導入までの国会職員の定年が比較的長かった理由を今改めて考えてみますと、一つには、国会という非常に特殊な勤務環境のもとで、どうしても長い経験が必要な職務であるということ、また、そのことに伴って職員の職務内容が特殊なものとなり、再就職できる機会というものが極めて少ないということにあったのではなかろうかと思っています。こうした問題点については従来も予算の分科会で幾度か取り上げられたところでございます。  こうした国会職員の職務内容は、定年制が導入されたからといっても、これは何も変わったところがございません。大方の職員の皆さんは定年の後には、いろいろ他省庁に言われるような天下りというようなことがなく、直ちに年金生活を強いられる、あるいは年金だけでは生活資金が不足するものですから、みずから、自分で再就職先を見つけるべく大変御苦労されなければならないというのが実態であるということについては、御承知のとおりです。こうした定年後の生活、老後への不安というものは職員の士気にも影響を及ぼすという心配があるのではないでしょうか。  特殊な職場環境には特別な就労条件があるということがあってもよろしいのではないかと思っています。かつて、国会職員の特殊事情から昇給延と停止の問題が起こりましたときに、当局みずから関係機関を説得するという努力をされたということについても伺っているところでありまして、行政府の職員とは二年の差を設けられて実施されているわけでありますから、この定年の問題についても、他の省庁に比較して国会職員は退職条件の実質的切り下げになったという点や、他への再就職の不自由さの点からいっても、将来的には国会職員の定年の延長、当面六十二歳での暫定齢の凍結ということを考えてもよろしいのではなかろうか。今暫定年齢が六十二歳というところで来ていますけれども、この辺について事務総長の御見解を伺いたいと思います。
  127. 緒方信一郎

    ○緒方事務総長 国会職員に定年制を導入するに際しましては、ただいまいろいろ先生御指摘のようなさまざまな御議論がありまして、そういう御議論の上に導入に踏み切ったという一つの経緯がございます。  昭和六十年の三月から実施をされておるわけでございますが、衆議院について言いますと、そのときの勧奨年齢は六十三歳十一月ということでございました。その後、経過措置で十年間、つまり平成七年の三月までの間に六十歳となるように順次逓減をしていこうということで現在暫定年齢というものを定めておるというのは、御指摘のとおりでございます。現在では六十二歳と二月という暫定年齢になっておる、こういう実情でございます。  こういうものをこの際停止してはどうかという御意見でございますけれども、一度そういういろいろな議論を踏まえまして踏み切ったことでございまして、いろいろな公務員を取り巻く諸情勢というものは十分慎重に眺めながら運営をしていきたいと思っておりますけれども、現時点で根本的に考え直す諸情勢の変化はまだ生じていないのじゃないか。ただ、今後いろいろ民間雇用事情の変化でありますとか、あるいは年金制度の改正問題等々、いろいろ公務員を取り巻く諸情勢というものを慎重に見きわめながら慎重に運営をしていきたい、かように考えておる次第でございます。  なお、先生の御指摘になりました昇給延伸あるいは停止の年齢、五十八歳で昇給延伸、六十歳で停止ということで、導入前にそういう措置をあれしたわけでございますけれども政府職員と二年の差があるということは、これは平均年齢が高いということに伴います給与上の問題であるというふうに考えておりまして、定年制の問題とは一応分けて考えていいのではないだろうかというふうに考えております。
  128. 山花貞夫

    山花分科員 御指摘のとおり、取り巻くさまざまな環境というものが、またここ数年非常に変わってきたということではないかと思っております。確かに暫定年齢問題につきましては、大変御苦労された議論の上での今日の進行ということについては承知しているつもりでありますけれども、しかし、この数年間の新しい情勢ということを考えますと、やはりこの問題については、ただ決めたから漫然とそのままということではなく、改めて時代の変化に応じて、そして今後の問題も踏まえて検討していただくということが大変必要なのではないか、このことについて指摘をし、要望をさせていただきたいと思います。  なお、退職後の問題等につきましては、後ほど団塊の世代の問題との関係でさらにつけ加えて伺っておきたい、こういうように思います。  次に、婦人問題についてお伺いしたいと思います。  まず、労働省にお伺いしたいのですけれども、八六年に男女雇用機会均等法が成立して丸四年が経過しました。八八年の調査では、女子雇用者が家事専業者を百三十七万人上回るという結果が出ています。そして、仕事を将来もずっと続けたいと希望している女子労働者は、八九年の労働省の調査の結果によりましても五四・五%、非常にふえている。こうした状況の中で、女性が働き続けていくための社会環境の整備、職場環境の整備というものが大変大事になっていると思います。  男女雇用機会均等法には、育児休業の普及のための措置とか、再雇用の特別措置などが一応うたわれておりますけれども、現在までにどういう形でこういった措置が生かされているのか、あるいは生かすべく施策を講じてきたのかということについてお伺いをしたいと思います。  また、核家族化に加えまして高齢化社会を迎えつつある現在、親の介護や家族の病気の際に男女とも取得できる看護休暇制度の導入に対する要望は、極めて大きくなっています。年々関心も高まっているというのが、今日の社会状況ではなかろうかと受けとめています。家族がある以上、いつ起こるかもしれない看護の問題につきましては、看護のために長期の欠勤や休職ができないという現在の状況のもとにおきましては、そのために実際には退職を余儀なくされるという皆さんの例についても伺うことがございます。早急な看護休暇の新設が望まれていると思いますけれども、以上の問題点につきまして労働省にお伺いいたしたいと思います。
  129. 堀内光子

    ○堀内説明員 育児休業制度につきましては、先生御指摘のとおり、男女雇用機会均等法に事業主に対しまして努力義務を課しておるわけでございますが、それとともに、普及促進のための国の助言、指導、援助の義務が規定されております。  労働省では、同制度の普及促進を図るために、昭和五十年度から一定の要件を備えました育児休業制度を実施した企業に対しまして、育児休業奨励金の支給を行ってきておりますが、この奨励金につきまして、六十年度、六十三年度に充実を図ったところでございます。  それから、育児休業制度の普及促進を図るための周知広報にも力を入れておりまして、育児休業制度普及促進旬間というものを十月に設定いたしまして、同旬間中に集中的な広報活動を行っているところでございますが、その旬間の中で、重点業種の使用者会議あるいは仕事と育児を考えるシンポジウムというものを開催いたしております。  さらに、育児休業制度普及指導員を全婦人少年室に配置いたしておりまして、育児休業制度に関します相談指導体制の充実を図っているところでございます。  それから介護休業制度のことでございますけれども、御指摘のとおり、人口の高齢化、それから核家族化、そしてまた女性の就業増加が進展している中で、老親と家族介護の負担は、労働者にとって大きな問題になってきていると私どもの方も認識しております。労働省といたしましても、今後介護休業制度の必要性は高くなるものというふうに考えておりまして、同制度の普及促進を積極的に図ってまいりたいと考えておるところでございます。
  130. 山花貞夫

    山花分科員 人事院にお伺いしたいと思います。  女性が働き続けていく上での最大の難関は、育児と看護の問題です。産休明けに子供を預かってくれる保育所を見つけることは極めて困難です。また、病人が出た、親が寝たきりになったなどのさまざまな悩みがありまして、育児休業制度、看護休暇の導入を求める声は切実なものがございます。  国家公務員の場合、育児休業制度が適用されるのは、教員など一部の職種で、条件があり、これは国際的に見ても日本の制度が大変おくれているということであります。  育児休業率を見ますと、国家公務員特定職種で平均七割と高水準になっており、その他の普及状況は、地方自治体で現在二百四十余りが取り入れており、民間では平均二割となっています。看護休暇については、人事院から昨年十二月、「家族の病気看護を要件とする休暇制度の導入を検討すべきである。」との提言も出されているところであります。時代のニーズにこたえ、育児休業制度を広く女性公務員全体に広げ、また看護休暇を制度として導入する時期ではないでしょうか。御見解を伺いたいと思います。  また、女性職員が出産、看護等でやむなく退職し、その後、再度働ける状況になったとき復職できるような再雇用制度も検討すべきではないかと思いますが、人事院に伺いたいと思います。
  131. 弥富啓之助

    ○弥富政府委員 お答えを申し上げます。  確かにただいま先生の御指摘のありましたように、社会の高齢化や核家族化の進展やそれから女性の社会進出の活発化、こういう状況を踏まえまして、育児休業制度や看護休暇制度、特に今言われましたように、家族が急病になった、あるいはお年寄りの緊急事態に対処するというようなために看護休暇制度の導入について非常に関心が高まっている、これは我々も十分に承知をいたしております。  さらにまた、四野党共同によりまして育児休業法案が提出されている。それから公務員の勤務時間制度の今後のあり方について、我が人事院の内部で有識者から意見を聞いた勤務時間問題研究会、この報告にもその必要性指摘せられていることなどから、人事院といたしましても重大な関心を持っているところでございまして、今後とも民間の状況の把握にさらに努めるなどしながら、先生のただいま言われた御趣旨を生かすように総合的な検討を行ってまいりたい、かように考えている次第でございます。
  132. 山花貞夫

    山花分科員 ただいまの労働省、人事院の答弁をお聞きになられまして、事務総長は本院における育児休業制度、看護休暇、再雇用制度の導入についてどうお考えでしょうか、お伺いをいたします。
  133. 緒方信一郎

    ○緒方事務総長 本院では、育児休業制度については看護婦だけが対象になっているわけでございます。将来、政府職員において何らかの措置がとられました場合には、もちろん本院においても同様な措置をとっていきたいというふうに考えております。  看護休暇につきましては、これも現在本院でも、休暇制度全体が政府職員の例によってきております関係で、趣旨は十分理解できますのですが、現状では年次休暇で処理をしていただかざるを得ないというふうに御承知を賜りたいと存じます。  なお、政府職員において措置されれば、当然本院も同様の措置をとりたい、かように考えておるところでございます。
  134. 山花貞夫

    山花分科員 先ほど、再雇用制度の関係についてちょっと聞き漏らしたようなのですが……
  135. 弥富啓之助

    ○弥富政府委員 申しわけございませんでした。女子の出産や看護等でやむなく退職したとき、その後、再度働けるようになったときの復職できるような再雇用制度を取り入れる考えはないかという御質問についてお答えが欠落しておりました。申しわけございませんでした。  近年の女性の目覚ましい社会進出あるいは共働き世帯の増加というようなこと、社会の高齢化、核家族化が進展する中で、育児、看護と職業生活の調和を図るという観点から、御質問のような御要望があることは重々承知をいたしております。  ただ、この問題につきましては、再雇用いたしますにしても、そこにいろいろ問題も予想されないこともないものでございますから、今後十分にいろいろと検討をさせていただきたい、そういうふうに考えております。
  136. 山花貞夫

    山花分科員 育児休業制度、看護休暇、再雇用制度につきましては、とりわけ育児休暇問題については、国会でも具体的な議論が始まっているという状況でございます。  今それぞれお話を伺いましたけれども、事務総長におかれましても、この問題については、ぜひ労使協議の場でじっくり検討の機会をつくっていただきまして、他省庁におくれないということだけではなく、この問題に積極的に取り組んでいただきたいと思いますので、この点を要望しておきたいと思います。  その点についていかがかということと、また、この数年来女性の登用や配属につきまして、あるいは研修、出向など職能育成につきましても男女の機会均等を図ろうとする当局の努力は、これはある程度評価されるところがあるのではなかろうかと私たちも思っております。これからもさらにその努力を続けていただきたいと希望いたしますと同時に、積極的に女子職員の資質や能力を見出しまして、管理職にもどんどん登用すべきである、こう思いますけれども、この点について事務総長から御見解を承りたいと思います。
  137. 緒方信一郎

    ○緒方事務総長 女子の職員の問題につきましては、近年次第に職域も拡大をされてきておりますし、その職責もだんだん重くなってきておるわけでございまして、それぞれの職場において十分実力が発揮されますよう期待をしておるところでございます。  ちなみに本院におきます全職員に対する女子職員の比率というのは二五%程度でございますけれども、女子職員の中のいわゆる役職率といいますか、係長以上の役職率は四八%とかなり高率になっておりまして、昇任においても男女の差はないと申し上げていいと思います。  さらに近年は、研修参加あるいは出張者の中に女性の占める比率が年々高くなっておりまして、今後とも職責に見合う処遇についてはできる範囲で万全を期していきたい、かように考えております。  管理職への登用等につきましても、既に実績もあるわけでございますが、今後ともひとつ一層そういう面でも女子職員に能力を発揮していただくように期待をしておる、そういうところでございます。
  138. 山花貞夫

    山花分科員 とりわけこのテーマに……
  139. 池田行彦

    池田主査 山花君、時間ですから。
  140. 山花貞夫

    山花分科員 はい。このテーマにつきましては、従来、とりわけ前事務総長の時代から非常に進んだというように我々評価している次第でございまして、ぜひ御努力の方をお願いしたいと思います。  時間ですので、一つだけ、ちょっと済みませんが……
  141. 池田行彦

    池田主査 時間ですから。
  142. 山花貞夫

    山花分科員 そうですか。一言だけ。  きょうもう一つ伺いたいと思いましたことは、OA化の問題についての対策でございます。ぜひこの点について、これはまた職場環境の変更を伴うということになると思いますから、労働条件の悪化を伴わないように、こういうことで御努力の方をお願い申し上げたいと思います。  時間の関係でちょっと一つ質問が落ちましたけれども、団塊の対策につきましても従来から幾度か取り上げさせていただきました。この問題につきましては、退職後の問題、退職後の人員の補充問題等につきましても、どうか職員組合の皆さんの要請につきまして十分お聞き届けいただきまして、さまざまな機会に協議の機会をつくる。あるいは他の省庁におきましては、再就職問題などにつきましては対策委員会をつくっているというところについても聞いているところでございまして、委員会をつくるかあるいは懇談会にするかという機関の設置等についても、ぜひ御検討いただきたいということについて要請をしておく次第でございます。  以上をもちまして質問を終わります。
  143. 池田行彦

    池田主査 これにて山花貞夫君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして国会所管についての質疑は終了いたしました。  午後零時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時四十四分休憩      ────◇─────     午後零時三十分開議
  144. 鈴木宗男

    鈴木(宗)主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣及び総理府、ただし経済企画庁環境庁及び国土庁を除く所管について審査を進めます。  政府からの説明を聴取いたします。坂本内閣官房長官
  145. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 平成二年度における内閣及び総理府所管歳出予算要求額について、その概要を御説明いたします。  内閣所管平成二年度における歳出予算要求額は百二十六億五千六百万円でありまして、これを前年度歳出予算額百二十二億二千七百万円に比較いたしますと四億二千九百万円の増額となっております。  次に、総理府所管平成二年度における歳出予算要求額は七兆八千二百五十八億六千五百万円でありまして、これを前年度歳出予算額七兆五千二百八十八億一千七百万円に比較いたしますと二千九百七十億四千八百万円の増額となっております。  このうち、経済企画庁環境庁及び国土庁に関する歳出予算要求額については、他の分科会において御審議を願っておりますので、それ以外の経費について御説明いたします。  以下、順を追って主なものを申し上げますと、総理本府に必要な経費四百三十六億八千万円、警察庁に必要な経費一千九百五十八億一千四百万円、総務庁に必要な経費一兆七千九百三十三億六千七百万円、北海道開発庁に必要な経費六千九百七十九億二千二百万円、防衛本庁に必要な経費三兆七千二百十七億八千七百万円、防衛施設庁に必要な経費四千三百七十三億六千四百万円、科学技術庁に必要な経費三千六百九十八億三千八百万円、沖縄開発庁に必要な経費二千二百二十億九百万円等であります。  次に、これらの経費についてその概要を御説明申します。  総理本府に必要な経費は、政府広報、栄典関係、平和祈念事業特別基金事業の推進、航空機の購入並びに即位の礼挙行等のための経費でありまして、前年度に比較して八十六億五千六百万円の増額となっております。  警察庁に必要な経費は、警察庁、その附属機関及び地方機関の経費並びに都道府県警察費補助等のための経費でありまして、前年度に比較して八十五億六千四百万円の増額となっております。  総務庁に必要な経費は、総務庁一般行政、恩給の支給、統計調査等のための経費でありまして、前年度に比較して二百九十六億九千六百万円の増額となっております。  北海道開発庁に必要な経費は、北海道における海岸、漁港、住宅、公園、下水道、農業基盤整備、造林、林道、沿岸漁場整備等の事業の経費及び治水、治山、道路整備、港湾整備、空港整備、農業基盤整備のうち国営土地改良の事業に充てるための財源の各特別会計への繰入金等の経費でありまして、前年度に比較して十八億二千五百万円の減額となっております。  防衛本庁に必要な経費は、陸上、海上、航空自衛隊等の運営、武器車両及び航空機等の購入並びに艦船の建造等のための経費でありまして、前年度に比較して二千六十三億二千三百万円の増額となっております。  防衛施設庁に必要な経費は、基地周辺対策事業、提供施設の整備、補償経費、基地従業員対策、提供施設の移設等のための経費でありまして、前年度に比較して三百三十一億七千七百万円の増額となっております。  科学技術庁に必要な経費は、科学技術面での国際貢献の推進、科学技術振興調整費、創造科学術推進制度の拡充等による創造的・基礎的な研究の推進、大型放射光施設等の研究開発基盤の備、並びに原子力、宇宙、海洋、地球科学技術、物質・材料系科学技術、ライフサイエンス等の研究開発の推進等のための経費でありまして、前年度に比較して百四十三億九千六百万円の増額となっております。  沖縄開発庁に必要な経費は、沖縄における教育振興、保健衛生対策、農業振興に要する経費並びに沖縄開発事業に要する海岸、漁港、住宅、環境衛生施設、都市計画、農業基盤整備、造林等の事業の経費及び治水、治山、道路整備、港湾整備、空港整備、農業基盤整備のうち国営土地改良の事業に充てるための財源の各特別会計への繰入金等の経費でありまして、前年度に比較して二十九億六百万円の増額となっております。  また、以上のほか新規継続費として、防衛本庁において一千六百八十八億四千三百万円、国庫債務負担行為として、総理本府において二十二億七千三百万円、総務庁において五百万円、北海道開発庁において百五十三億二千三百万円、防衛本庁において一兆五千二百五十億二千六百万円、防衛施設庁において八百九十四億八千八百万円、科学技術庁において一千四百四十三億三千三百万円、沖縄開発庁において九十一億二千百万円を計上いたしております。  以上をもって平成二年度内閣及び総理府所管歳出予算要求額の概要の説明を終わります。  よろしく御審議くださるようお願いをいたします。
  146. 鈴木宗男

    鈴木(宗)主査代理 以上で説明は終わりました。     ─────────────
  147. 鈴木宗男

    鈴木(宗)主査代理 防衛庁について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木喜久子君。
  148. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)分科員 私は、防衛庁の移転の問題、赤坂の檜町、六本木から市谷の基地の方に移すという移転の計画について、順次基本的な問題について伺いたいと思います。  まず、この問題というのは、首都の中心から中心にいわゆる防衛中枢というものが移るという、非常にその点では何のためかと思うようなその移転の問題と、そしてそれに玉突き現象としまして、首都の周辺の首都圏と言われているところにいろいろと基地が動きまして、そのための再配置、そして再編の強化というものが行われているというふうに理解されます。  この点につきまして、まず、六十三年度から既に予算がついておるということでありますので、これまでの計画の進行状況について伺いたいと思います。     〔鈴木(宗)主査代理退席、新村主査代理着席〕
  149. 村田直昭

    ○村田政府委員 お答えいたします。  防衛庁本庁庁舎等の移転計画は、いわゆる防衛中枢の所在する檜町地区周辺の商業地化が進んでいるため、国土の有効利用の観点から行うものであるということでございます。  この観点から、防衛中枢を檜町地区から市谷地区に移転させ、これに伴い、先生御指摘のように首都及びその近郊の防衛施設の再配置を図るものでございます。施設整備は、昭和六十三年度から平成七年度、八年計画ということで見込んでおりますが、六十三年度予算におきましては市谷、十条、目黒、大宮、朝霞及び霞ケ浦の六地区に係る調査工事費及び基本設計費を計上し、また平成元年度予算においては、同じく同六地区に係る環境調査費並びに大宮、朝霞及び霞ケ浦の三地区に係る実施設計費を計上しておるところでございます。  なお、平成二年度の予算の要求につきましては、予算案としまして市谷、十条及び目黒の三地区に係る実施設計費並びに市谷、目黒、大宮、朝霞及び霞ケ浦の五地区に係る本工事費を計上しているところでございます。
  150. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)分科員 現在までの進行状況におきますと、既に実施設計まで至っているということでありますと、基本設計は当然終わっているということでございますが、この基本設計に係る設計図その他の書類というものについて、これを御提出いただけますか。
  151. 村田直昭

    ○村田政府委員 この設計図等は、まさに建物の構造その他内容にかかわることでございますので、そのものを御提出することは差し控えさせていただきたい。
  152. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)分科員 建物の内容に関することが、それほどに我々国民の目に触れてはいけないという内容の建物なのですか。本庁の移転ということであれば、どこのビルだってそのような基本設計というものは近隣に示すことがあります。基本設計は実施設計ほど緻密なものではありませんけれども、大体どこに何があるということをその近所の人に知らせるぐらいは、どこでもお互いの義務だと思います。その基本設計も示せないほど非常な機密に属するような設計があるのでしょうか。
  153. 村田直昭

    ○村田政府委員 現在まで、地元との関係では、各種いろいろな折に触れて調整をしてまいっておりますけれども、その段階では、それぞれ施設の概要でありますとかいうようなことについては御説明をしておる、必要なものについては御説明をしておりますが、建物全体あるいは内部の構造というものについては、提出を差し控えさせていただきたい。
  154. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)分科員 こういうものについては、差し支えのない限りという条件つきでもいいですから、国民の目に触れさせていただきたいと思います。再度お願いをしておきます。  そして、檜町地区のあたりに商業地化が進んでいるということで移転を計画されたということで、土地の有効利用ということをお考えになったのだと思いますけれども、この新宿区という移転先もやはり商業地化の進んでおるところでございまして、ここだったらばよろしいというところではないような気がいたしますが、この点はいかがでしょうか。
  155. 村田直昭

    ○村田政府委員 御指摘のとおり、新宿区も商業地化が進んでおりますけれども、商業地化の進んでいるところすべからく全部そこが適地でないということになりますと、本来あるべきところに置けないという事態にもなりますので、これは六本地区の商業地化に伴って同地区の有効利用を図るということで計画したものでございます。
  156. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)分科員 キツネにつままれたようなお話を伺いました。六本木地区の商業地化に伴って有効利用をする、だからどこに越すかというときには、新宿も商業地化があるけれども、結局それはどうしようもないというふうなお話だろうと思います。この点で議論しても始まりませんので、このぐらいにしておきます。  その次に、私言葉でよくわからないのですが、防衛中枢というのは一体どういう意味を持っているのか、一言だけお聞かせください。
  157. 村田直昭

    ○村田政府委員 私どもここで言っております防衛中枢というのは、防衛庁の本庁の各種の機構がそこに入る構造物をまず防衛中枢と言っておりますが、その果たしている機能は、防衛についての各種の判断あるいは指揮、運用、政策の決定等を行う機構が入る建物等を指してそのように称しております。
  158. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)分科員 それでは、移転計画ということの予算について伺いたいのですけれども、この移転については、本計画については特定国有財産整備特別会計により実施するということになっていて、「所要経費は跡地処分収入により賄うこととする。」というふうに書かれております。この点で伺いたいのでございますけれども、所要経費の総額は一体どのくらいで、その中でどんなふうな内訳、要するに各基地にいろいろ移転をするわけで、また基地の中で必要な経費もあるようでございますが、わかる限りで結構でございますから、それを教えていただきたいと思います。
  159. 村田直昭

    ○村田政府委員 防衛庁本庁庁舎の移転計画に係る総経費でございますが、現時点において確定的なことは申し上げられませんが、現在のところ約三千億円程度かかるものと考えております。  なお、お尋ねの各地区ごとの経費というようなものにつきましては、この計画が長期にわたるものであり、今後細部にわたっての調整が必要とされておりますし、計画内容の変更等も考えられることから、答弁をすることは差し控えさせていただきたいと思っております。
  160. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)分科員 この中で特別会計、要するに跡地処分によって賄うことに関する費用が三千億円ということですが、これは一体どういうことに使われる費用なのでしょうか。
  161. 村田直昭

    ○村田政府委員 本移転事業の六カ所の地区においていわゆる施設を建設するために必要な経費でございます。
  162. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)分科員 施設を建設するのに必要な費用という中にはいわゆる戦力というものは入っていないということと理解しておりますけれども、それでいいかどうかということと、施設の中には、例えば通常のビルなどを建てる場合とは違いまして、非常に地下深く掘ったところに司令部ができるとか、通信機能とかそういうものを生かすためにビルの構造そのものにいろいろな違いが出てくると思います。大変厚いコンクリートを使いますとか、その他いろいろな防衛上に必要な防衛的な設備といいますか、そういうものがどうしても不可分一体としてビルの中に組み込まれると思いますけれども、そういうものもこの予算の中に入るのでしょうか。
  163. 村田直昭

    ○村田政府委員 お答えします。  先生御指摘の戦力アップというようなことがどういうことを指して言われているのかちょっと理解しかねるわけでございますが、後半の部分のお尋ねのビルの構造というものにつきましては、当然建物として必要な強度を持ったビルということでございますし、現在中央指揮所というのがいわゆる六本木にございますが、この六本木の中央指揮所の構造というようなものを移すわけでございますから、同様の機能を持ったものを移していくということになろうかと思います。
  164. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)分科員 この特別会計というものについては、現在はそこのところが緩やかになっているかもしれませんが、GNPの割合を考えて支出する場合の中には組み込まれる数字ではないというふうに聞いておりますが、そういうことでございましょうか。
  165. 村田直昭

    ○村田政府委員 お答えいたします。  この計画は、先ほど来お答えしておりますように、檜町地区の商業地化が進んでいるため、国土の有効利用の観点から防衛本庁等の既存施設の移転を行おうとするものでございまして、防衛力の整備を目的とする一般会計予算による事業とは性格を異にするということ、また、同計画により取得する施設は従来の施設と機能的な代替関係に当たるものであるということで、同計画に要する経費は防衛関係経費の枠外で処理すべきものと考えて、そのようにしております。
  166. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)分科員 枠外にあるというふうに言われますけれども、さっきも伺いましたように、その中にはそういう通常のビル、通常の建物ということではない、防衛施設としての問題があります。売却をするときの費用というのは、そういう大きな司令所があるとかそういうことによってその土地の値段が高くなるわけではなく、かえってそれを取り除くための費用がかかるようなものでございまして、その費用というものもすべて一%枠の中ではないというお考えでは、私は大変納得しかねるところでございます。ただ、時間の関係もございますので、その点よくこれからも御検討いただきたいと思います。  その次でございますけれども、朝霞の基地の方に行くという部分がございます。市谷から朝霞の方に向かって平成四年度からは始まるということでございますけれども、このようなときに、朝霞の地域というものに関して、今まで米軍がいましたところが出ていって、一体だれがそこを、自治体が手に入れるのかどうかというふうにして留保されている土地がかなりの広さあると思いますが、そこを防衛庁が今度使われるというような御計画でいらっしゃるのでしょうか。
  167. 村田直昭

    ○村田政府委員 本計画を推進するためには、六本木から防衛中枢が市谷に参るわけでございます。そうしますと、市谷におりますところの東部方面総監部等の部隊あるいは司令部というものが、そこにおっては市谷に移転できないわけでございますから、それに従って朝霞の方に移っていく。そうしますと、朝霞の地積が非常に狭いということもございます。それから、ちょうど留保地なるものが演習場と部隊のおります地区との間に挟まる格好になっておりまして、そういうような問題もあり、これを防衛庁で利用させていただきたいということで考えております。
  168. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)分科員 利用するに際しては、費用というものがかかるのかどうかということと、もう一つ、こういった形で留保地その他について今までよりも広いところを御使用ないし購入されるというようなものが、ほかにもこの計画の中にあるのかどうか伺いたいと思います。
  169. 村田直昭

    ○村田政府委員 留保地の利用につきましては、これは国同士の関係ということで、もしそのことが許されるならば、手続を経て所管がえということで行われると考えます。  そのほかに、他に用地を取得する計画があるかということにつきましては、現時点ではすべて移っていく先は既設の自衛隊の敷地内に移っていくということでございます。
  170. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)分科員 今ちょっとわからなかったところは、有料なのかどうかということについてはっきりと伺っていないと思いますので、これをこの際まず伺いたいと思います。  そしてもう一つ、この移転にはいろいろな工事がたくさんあると思います。これについて、基本設計ができるという程度ですから、もう民間企業へ発注はされていると思いますが、企業にまだ発注はされていないのでしょうか。
  171. 鈴木輝雄

    鈴木説明員 後の、工事の発注が済んでいるかどうかというのは、防衛庁の方からお答え申し上げます。  私の方は、土地を使用するに当たりまして有料かどうか。現在朝霞の留保地の地区は、大蔵省の所管する一般会計の普通財産ということになっておりまして、それで仮に防衛庁がその跡を使うということになりましても、やはりそれも一般会計でございますので、直接的に管理する機関が大蔵省から防衛庁に移るという、そこの違いはございますけれども金額的な意味での、土地を防衛庁が使うことについての費用はかかりません。
  172. 村田直昭

    ○村田政府委員 ただいま後段の質問の、工事を発注しておるかどうかという御質問でございますが、今まで発注しておりますのは、実施設計まででございます。それから環境調査等の関係の発注はしておりますけれども、工事はまだ発注しておりません。
  173. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)分科員 六本木の方の檜町ですけれども、そこの跡地の処分について伺いたいのです。これについての処分先または売却とか、そのようなことについてはいろいろともうお決まりでいらっしゃいましょうか。
  174. 鈴木輝雄

    鈴木説明員 先ほど村田参事官の方から御説明申し上げたように、移転計画は今の予定でも平成七年度までかかるわけで、実際にその処分を始めるのはその後でございますので、まだこれから数年以上あるわけでございます。ですから、現時点であそこの檜町の跡地をどうするかということについては、具体的なことは何も決まっておりません。今後、国有財産一般原則であります公共用優先という原則のもとで、国有財産審議会等におきまして、地元の公共団体とか有識者の意見などを聞きながら決めていきたいと思っております。
  175. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)分科員 このお話の中で、移転する側また受け入れる側の自治体その他についての話し合いの状況について伺いたいと思います。  受け入れ側に立たされた新宿区の方からは撤回を求めるという意見書が出ておりますけれども、こういうことを含めてどのような話し合いが各治体と行われているのか伺いたいと思います。
  176. 村田直昭

    ○村田政府委員 先ほどもちょっと申し上げましたが、今回の施設再配置計画に関係する地方公共団体としましては一都二県十一市町区にまたがっておりますが、各地方公共団体に対しては、計画の趣旨、概要等について随時説明を行って、理解と協力を求めてきているところでございます。  なお、今先生御指摘のように、新宿区議会議長から防衛庁長官に対して意見書が出ておることは承知しております。昭和六十二年十一月十六日付で受理されているということでございます。
  177. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)分科員 受理されているものについてはどのように扱われて、どういう話し合いをされるお気持ちがあるのかを伺いたいと思います。
  178. 村田直昭

    ○村田政府委員 先ほど来申し上げておりますように、今回の施設再配置計画は、国有財産の有効利用の観点から、檜町地区に所在する防衛本庁等の既存施設を、現在市谷駐屯地として用に供している場所に移転させるものでありまして、この趣旨関係地方公共団体にも今までも説明してまいりましたが、るる御説明をし、理解と協力が得られるようにさらに努力してまいりたいと考えております。
  179. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)分科員 結局、理解と協力が得られるように説明をしたいということは、そのまま御自分の方の考えを押しつけたいということに聞こえてしまいます。付近の者は、そこにそういうものが来ることは決していい感じを持って見るわけではありません。そして、そういうものが来られたことによって、これからどれだけ危ないことがあるのかなというような危険まで感ずるわけでございます。ですから、こういうものをなさる場合に、そうした方々に本当に――今の御答弁だけでは誠意が認められない。  こういう問題は民間の建築紛争の中でもよくあることではございますけれども、防衛庁だからといってそれを押しつけることなく、これからも関係の各自治体と十分の話し合いをされて、そこで納得と理解を得た上での工事を、その期間もいつまでにしなければならないということではなくて、その点、十分なお話し合いをして納得をしてもらってから進めていただきたいと思います。このことをお願い申し上げます。  話は変わりますが、この市谷という基地に現在建っております建物の中には、かなり歴史的にも重要であるようなものがございます。  まず防衛庁長官に伺いたいと思います。ここにある建物の中で残しておきたいなと思われるものはあるでしょうか。
  180. 村田直昭

    ○村田政府委員 私どもはこの移転計画で、歴史的に由緒あるいはゆえんがある記念物についてはできるだけ残置する考え方でございますけれども、これも、次に来る建物の配置上、移設せざるを得ない場合もありましょう。それから、移設が非常に困難なものについては取り壊さざるを得ない事態も考えられますが、現時点で、どれを残し、どれを移設する、どれを取り壊すというようなことについては、まだ決定されておりません。
  181. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)分科員 長官おいでになっておられないですか、きょうは。いらっしゃいますよね。私は長官に伺いたいと思ったわけでございますけれども、御同様の答弁になりますかどうか、伺いたいと思います。
  182. 石川要三

    ○石川国務大臣 私が防衛庁長官の石川要三でございます。  答えは、先ほど政府委員から答えた内容と同じであります。
  183. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)分科員 同じであるということを伺いまして、ここから長官によくお願いしておきます。  これは、一遍こういうものをなくしてしまいましたら、もう本当に消えてしまってなくなってしまいます。これは後に時間がある限り文化庁の方からも伺いたいと思いますけれども、戦争というものについての傷跡、心の中のもの、ちょうど広島市での原爆ドームと同様で、極東裁判裁判所の置かれた地域でございます。この建物について、これを残しておくということは、一つの防衛庁の良心のあらわれになると私は思います。こういうものを残しておかれることによって、またそこに国民との心のつながりというものもできてくるはずでございます。その点もよくよくお考えいただきまして、おれの勝手だろと言わずに、その点はしっかりとよく覚えておいていただきたいと思います。どうぞその点勘案していただいて、残せるものは、移設困難ということで片づけませんで、なるべく万全の措置をとって、それを残しておくために努力をしていただきたいというふうにお願い申し上げます。  それで、その問題の最後になりますけれども、市谷の基地のところは、現在一種の名所旧跡というような形になっております。そこでは、旧大本営のありました建物でありますとか、トンネルがありますとか、そして今申し上げました士官学校の建物、そしてそれが極東裁判裁判所の建物になっておるところとかがございますが、これについて文化庁の方から伺いたいと思います。この名所旧跡というものについて、これを文化財としてまたは建物として保存するというお考えはございませんでしょうか。
  184. 大澤幸夫

    ○大澤説明員 先生お尋ねございました文化財保護法上の文化財といいますか、史跡とのかかわりという観点から御説明を申し上げます。  御案内と思いますけれども、文化財保護法によります国の史跡の指定は、例えば古墳とか寺だとかお城跡とかそういった遺跡で我が国にとって歴史上あるいは学術上価値の高いものについて行うことができるとされているわけでございますが、近現代史に属する遺跡に関しましては、余りに時代が接近しているということから、一般的にはまだ多様な価値観が併存しており、したがいまして、歴史的な評価が確定しているとは言いがたいものが多いわけでございます。そういうことから、統一的あるいは体系的な基準によってそれらを選択し史跡としていくためには、まだ機が熟していない段階にあると考えられるわけでございます。このため、現在国におきまして史跡の指定の対象といたしているものは、最も時代の新しいものでございましても明治時代の初めごろのものまででございまして、それ以降のものにつきましては検討対象にいたしていない状況にございます。  このような意味合いから、御指摘の市谷にございます防衛庁の関連施設等につきましては、お話のような事件の舞台になったことは承知してございますけれども、それを国の文化財として保護するかどうかにつきましては、今後、かなり時代が経過し、近現代史にかかわります遺跡についての評価が確立した段階にならなければ、検討の対象にするのは難しいのではないかと考えておるところでございます。     〔新村主査代理退席、鈴木(宗)主査代理着席〕
  185. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)分科員 よくわかりました。  また、あそこは士官学校という学校としての建物という観点もございますので、文化庁の方からもう一つ伺いたいと思いますが、簡単にお願いいたします。
  186. 吉田靖

    ○吉田説明員 簡単に申し上げますと、私ども三千余棟の建造物を国の重要文化財に指定をしておりますが、それは明治以前のものがほとんどで、大正のものが十一棟でございます。昭和のものは手をつけてない状態でございます。御指摘の建物は、陸軍士官学校として昭和九年から十二年にかけて建設されたものでございます。これは分類上は鉄筋コンクリート造の近代の学校建築の一種と思われますが、建設当時あるいは近年の文化財の所在調査などでもリストアップされていないものでありまして、特に建造物として高い価値があるとは考えられないものでございます。
  187. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)分科員 わかりました。  こういう状態ですので、ここで壊してしまいますと、時間がたつ前に壊れてしまって、文化財としてもまた建造物としてもなかなか文化庁の方で残していただくわけにはいかないというわけでございますので、この点も防衛庁の方で御配慮いただきたいと思います。  最後でありますけれども長官からこの移転について所信をお伺いいたしたいと思います。
  188. 石川要三

    ○石川国務大臣 政府委員からるる申されましたような理由と計画に基づいてこの移転をこれから進めていくわけでございます。もちろん、新宿区の方から反対意見書も出されておることは私も十二分に承知しております。ただ、先生にあえて反論する意味ではございませんが、危険物が何か移転するような、そういうお考えが一部の方にもしあるとするならば、それはいささか誤解に基づいているんじゃないかなという感じを強めるわけであります。言うならば、農林省、建設省、その他の本庁の要するに事務所が移転するのと根本的には違わないんじゃなかろうか。決してその中で軍隊が実弾射撃をしたり、そういったものでもないし、また、これが移転することによって防衛力が拡充するというような関連のものでもないし、いわゆる一つの総括的な事務所といいますか、そういう行政をつかさどっている本拠が移転する、こういうことでございますので、その点はひとつ御理解をいただければありがたい、こんなふうに思っております。
  189. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)分科員 終わりますけれども、一言だけ。
  190. 鈴木宗男

    鈴木(宗)主査代理 時間はオーバーしておりますが、特別に許します。
  191. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)分科員 よくわかりました。そういうふうにおっしゃるのであれば大変安心をいたします。そこに来るのが、ごく普通の省庁の事務所が移転するのと大差のないものであるということであれば、先ほどの村田参事官の方からの御発言にありましたように、基本設計ぐらいは見せてもらうとか、設計図ぐらいをそんな機密だ機密だと隠すことなく示していただいて、そういう一般の建物と変わりないのだよということをみんなにわかっていただくようなことをしていただきたいというのが私の願いでございますし、それ以上の戦的なもの、戦力の強くなるようなものは決して寸ち込まないし、建てていただきたくない、いろいろなコンピューター類にしても、それが余りに戦力強化にわたるようなものは入れていただきたないということをお願い申し上げまして、終わます。時間をオーバーしましてどうも済みません。
  192. 鈴木宗男

    鈴木(宗)主査代理 これにて鈴木喜久子君の質疑は終了いたしました。  次に、上原康助君。
  193. 上原康助

    上原分科員 極めて限られた時間ですから、端的にお尋ねをいたします。  まず最初に、去る十九日に米政府が米議会に報告を出したアジア・太平洋戦略構想との関連でお伺いをいたします。  この新しい戦略構想というか、アジア・太平洋における米軍の削減あるいは特に在日米軍の相当量の削減というものが、第一段階、第二段階、第三段階として方向づけられております。このことによって日本の安全保障あるいは今後の防衛政策にどういう影響を与えると御認識しておられるのか。そういったこの報告書との関連における基本的な御見解防衛庁長官からお聞かせいただきたいと思います。
  194. 石川要三

    ○石川国務大臣 先般発表されましたいわゆる「二十一世紀に向けてのアジア・太平洋地域の戦略的枠組み」、こういう内容につきまして、いろいろとこれを拝見いたしますと、先生もおっしゃったように、特に沖縄における地上要員及び航空支援部隊の一部慎重な削減ということが拝察されるわけでございます。この内容につきましても、三段階にわたっておりまして、その具体的なことにつきましてはこれから太平洋軍司令官が決定する、こういうふうに言われておりますので、今後を見なければなかなか具体的なことはわからないわけでありますが、一応そういうふうに行われるということに承知しているわけであります。  これについて、これと関係して我がいわゆる防衛政策とどういう関係があるかということでございますが、これにつきましては、直接的な影響はない、私はこのように判断をしているわけでございます。それはなぜかというならば、我が国の防衛政策というものは、もちろん世界軍事情勢というものとはこれは関連がないというわけじゃございませんけれども、それと同時に、さらに、やはり大綱に基づく、しかも憲法あるいは専守防衛、こういう枠組みの中から、私どもは、その地域においての完全に防衛力を持たないということの方がかえって不安を発生するおそれがある、こういう中で平時において最低限持つべきものを持つ、こういうのは基本的な我が国の防衛政策でありますので、そういう観点から見て、今回のこの発表の内容と直ちに連動して変動されるものではなかろう、こういうふうに認識をしているわけでございます。
  195. 上原康助

    上原分科員 これは議論すれば少し時間をかけていろいろやらなければいけませんが、私はその基本認識というのはいかがかと思いますよ。要するに、対ソ脅威論に大きな変化が出てヤルタからマルタに変わり、東欧情勢の変化、グローバルな国際的な軍縮、軍事費の削減というのが出てきている中でのアジア・太平洋における新たな戦略構想ですから、これが基本的に米軍の前方展開戦略は変わらないという防衛庁の認識は非常に甘いし、国民は非常な疑問を持つという点を私は指摘をしておきたいと思います。  そこで、過般の予算委員会でも、防衛計画大綱の見直しはしないということを何か長官は明らかにしたということ。しないということは、強化する方向で防衛計画大綱をしないということでしょうね。従来は見直し問題には含みを持たせてきておった。その点はどうなんですか。はっきりさせてください。防衛計画大綱を見直ししないということは、基盤的防衛力構想そのものを堅持をしていくという立場に立った見直し論なのか、その点はぜひ、将来のこれからの論議の一つの基礎ですから、簡単に答えてください。
  196. 日吉章

    ○日吉政府委員 従来の経緯がございますので私から御答弁させていただきます。  従来は、どちらかといいますと、緊張が高まってきている過程におきまして緊張緩和時代にできました防衛計画の大綱を変える必要はないかというような観点からの議論がございまして、私どもは、国際情勢の基本的な枠組み、そこに流れている枠組みそのものは防衛計画の大綱をつくったときと基本的には変わっていないと思うので、緊張が高まってきた現在においても変える必要はないのではないかと言い続けてまいりました。現在におきましては、まさに防衛計画の大綱をつくりましたときに私どもが将来を見通して立てた基本的な枠組みがより妥当するような形の国際情勢になってきているわけでございますから、私どもといたしましては、まさに現在においてはこの基本的な枠組み、防衛計画の大綱の考え方は踏襲していいのではないか、そういう方向で言っているわけでございまして、ただ、最終的には安保会議等政府全体で検討した上決められるべき問題だと考えております。
  197. 上原康助

    上原分科員 かなり三段論法的な飛躍的情勢認識分析のような感を受けますので、そこはその程度にとめて、またいずれ内閣委員会などで機会があると思いますから。  そこで、在日米軍の削減計画なんですが、これは一体今後どういう方向で進めていくのか。特に、きのうもまた明らかにされたように、嘉手納空軍基地に配備をされているいわゆる海軍航空支援ですか、海軍航空施設が閉鎖をされる中に具体的に入っている。初めて特定されましたね。このことについては、防衛庁はどういうふうに認識をしておられるのか。あるいは、今年度中にたしかP3Cが那覇基地に配備されるようになっている。これはいつごろから配備するのか、何機配備するのか、これとの関連はあるのかないのか、その点をお答えいただきたいと存じます。
  198. 日吉章

    ○日吉政府委員 昨日報道されました報道は、私どもは正式の米国政府の情報としてまだ把握しておりませんし、そういうふうな情報ではないと理解いたしております。  そこに幾つかの米軍の海外基地等が列記されておりまして、ただいま委員指摘の嘉手納の海軍関係の基地の名称が出ておりますが、その海軍関係の基地は、委員はもう十分御承知のように、嘉手納の中におきましては空軍が主力でございまして、それほど大きな部隊ではない、かように認識いたしております。  それから、我が方のP3Cの那覇基地への配備でございますが、これはまさに我々日本自身が現在配備いたしております那覇基地のP2Jの減耗に対処する形でP3Cを配備していくということでございまして、米側の再編成とは全く関係のないものでございます。私どもは、現在のところ十機の配備を予定いたしております。
  199. 上原康助

    上原分科員 全く何かどこかの国のような話をあなたはやるが、閉鎖するという情報ではないというのはどういう意味なの。その海軍航空施設は、本当にそれほど大きな部隊じゃないんですか。さらに、十機配備するのは、いつ配備するのですか。
  200. 日吉章

    ○日吉政府委員 現在御審議をお願いいたしております平成二年度予算中、平成二年度でございます。
  201. 上原康助

    上原分科員 これは明らかに連動していますよ。いわゆる南西航路の対潜については日本側に肩がわりをする、そういう米側の戦略変更によって進められてきている。これだけ日米防衛協力とかなんとか言いながら、外務省もこのことについて知らなかった。防衛庁も知らない。知って知らぬふりしているかどうかはわかりませんがね。こういう重大なものについて、米議会で明らかにならなければ日本側の政府が知らないということ自体が僕は問題だと思うのですね。極めてゆゆしきことだということを指摘しておきたいと思います。  そこで、この新しい戦略的枠組みとのかかわりで、在日米軍の縮小あるいは基地の整理縮小問題が大変話題というか進んでいるようであります。長官は、この報道がなされた段階で、国防総省報告によって在日米軍基地の返還交渉は早まる。具体的にどう早まるのか。これまでも何回かいろいろな場で日米安保協で合意に達した案件についてのことをお尋ねしてまいりましたし、春から夏にかけてとか――もう時期は今春から夏にかけてでしょう。一体全体、これだけ米議会でも問題になり大きな変化が出ようとしている中で、日本政府の態度というものは、明確な方針なり内容というのは一向に明らかにされない。それは極めて大事な問題であるだけに、私たちとしては、これ以上、これを、協議中であるとか交渉中であるとかまだ煮詰まっていない、そういう抽象的な答弁で納得できる筋合いのものではない。したがって、いつ日米間で交渉しているという在沖米軍基地の返還のあり方について具体的に内容をお示しできるのか、この際ぜひ防衛庁長官の方からお示しをいただきたい、明らかにしてもらいたい。
  202. 石川要三

    ○石川国務大臣 詳細については施設庁長官の方からまたお答えをすることといたしまして、私の立場から一言申し上げたいと思います。  先般、私が、これが返還が早まるだろう、こういうような意味発言を新聞に報道されたわけでありますが、委員も御承知だと思いますけれども、今回のいわゆる新しい枠組みといいますか、再編成といいますか、そういうものの計画と沖縄における米軍施設のいろいろな整理統合というものとは本来は別だと私は思うのです。関連はない、こういうふうに思います。従来からもそれに努力をしてきたわけでありますが、特に、今回のこの議会に報告した内容の中にもその点は触れられておりますので、そういう意味も含めて、さらにそれが加速されることを期待してそのような発言を私は申し上げたわけでございます。したがって、今精力的に外務省、防衛庁ともども日米の合同会議の中でこの問題に取り組んでいるわけでありますが、その内容についての進捗状況については後ほどお答えはいたすといたしましても、全体については私はそのような見解を持っているわけであります。
  203. 上原康助

    上原分科員 それは絶対別じゃないですよ。もちろんそれは、安保協で決められたことはもう十四、五年も皆さんやってないわけだからね。それは継続した懸案として今日まで引きずってきたことは間違いない。だが、もう指摘するまでもなく、この新しい枠組みの中でちゃんと書いてあるじゃないですか。沖縄の軍事基地の密度は高い、地域住民が非常な不満を持っている、だから整理縮小を早めなければならぬということは、明らかにこの枠組みと連動も連動、一致しているじゃないですか。そうであるなら、従来のものもさることながら、新しい枠組みの中で基地の整理、返還、縮小というものを皆さん具体的にどうやるかは、まさに政府の主体的態度でやらなければいかない極めて大きな課題じゃないの。いつ明らかにできるのですか。明らかにできなければ中間報告くらいやらないと、これだけ毎日マスコミに報じられて、地主の地権者の皆さんにしてみれば、働いている労働者にしても、あるいは沖縄の経済全体に及ぼす影響は極めて大きいのですよ。FSXとかなんとかの問題では、すぐ事務次官を飛ばしたり、防衛庁はじたばたしてアメリカに行くといっていろいろ根回しをする。どうしてこういう県民生活、国民生活と密接なかかわりのある問題についてそれほどのんきに構えるの。具体的にぜひお示しください。
  204. 松本宗和

    ○松本(宗)政府委員 先生御案内のとおり、現在進めております作業は、戦後沖縄復帰後のたしか五十一年までに安保協議委員会で決められました返還計画、これの残余の部分についての作業を実施しておるのが一つと、それから、最近西銘知事が米国を訪問されまして要求してこられました七つの施設でございますが、これについての返還あるいは整理統合、これについての具体的な検討、方向づけを日米合同委員会の場で今やっておる最中でございます。  ただ、この作業で非常に困難を伴っておりますのは、例えば移設を条件としておるものというようなものもございます。それから、土地所有者の方の御意向というものもございます。こういうようなことで、直ちに結論がなかなか出し得ないということで日米合同委員会の場でもいろいろ苦労しておるということでございますが、いずれにいたしましても、この基地の整理統合の問題は、沖縄県の皆様方にとりまして大変重要な、また緊急な課題でございますので、できるだけ早くこの方向づけぐらいはしなければならないということで鋭意努力をしておる、防衛施設庁も努力をしておるということでございますが、何分にもそういうような事情でございますので、具体的にまだいつというぐあいに時期を明示することができないということをひとつ御了解いただきたいと思います。
  205. 上原康助

    上原分科員 御了解できないのよ。あなた、年じゅう同じことを、できるだけ早くと去年から同じことを言っているのだ。そう言いながら、アマコスト大使とか米側の方がどんどん先取りしていっているじゃないですか。早ければ四月、遅くても六月というその範囲では明らかにできますか。
  206. 松本宗和

    ○松本(宗)政府委員 確かに、大使その他がある程度の期間をおっしゃっていることは承知しております。私はできるだけその時期ぐらいにはめどをつけたいという気持ちで言われているものというぐあいに理解しておりますが、実際に作業しております私どもといたしましては、責任を持ってこの時期にと申し上げる段階にはまだ至っていないということを申さざるを得ないということでございます。
  207. 上原康助

    上原分科員 それと、検討しているのは合同委員会ですね。施設部会じゃないですね。それもはっきりさせてください。
  208. 松本宗和

    ○松本(宗)政府委員 合同委員会の下部機関でございます調整部会でございます。
  209. 上原康助

    上原分科員 こういう調子なんだよ、あなた。まだ課長レベルでしか検討されてないじゃないですか。何が合同委員会ですか。  長官、これはこんなにのんきじゃいかない。問題があるならば中間報告をやるとか。これだけ大問題になってどんどんいろいろな情報が流れているのに、まだ合同委員会に上がっていませんよ。これはひとつ防衛庁長官として、施設庁だってあなたの監督権だ、促進してください。大臣の方からお答えください。
  210. 石川要三

    ○石川国務大臣 私、防衛庁長官という立場でお答えさせていただきますが、実は、私、就任してまだ日が浅いわけでありますけれども、前にも内閣委員会におりまして、先生とも高所大所からいろいろとこういう問題を論じ合ったわけでありますが、大変恥ずかしい次第ですが、私は沖縄へ初めて行ったわけです。これも先生の御意見を私ももっともと思いまして行きまして、なるほど、行ってみると、いろいろ沖縄県民のこの感情、気持ちというものは、これは行かなければわからなかった。これは、先生のお勧めに従ったことが今日でも非常に私は実は参考になっているわけであります。  そんなわけで、就任日は浅いわけでありまが、何とかこの問題を、とにかく七五%の米軍施設があるのですから、現に。一一五%しかあと我々の内地にないのですからね。そういう観点から見ても、私はこの問題はこれは沖縄県民じゃなければわからない気持ちだな、したがって、そういう中からこの米軍施設の整理統合というものを向こうも言い出しているのですから、何とかこれは、いい一つの潮どきだ、このときをとらえて精力的にひとつ頑張って、できるだけの、せめて県民のそういう長い間の御苦労、そういうものに私はこたえるべきではなかろうかなというのが実は私が就任しての直観でございます。  そんなわけで、施設庁長官ともいろいろとこの問題については、報告も受けたし、いろいろと話も聞いております。かなり、私としては、努力をされているな、そういう感を深めているわけでありますが、具体的な問題になると今御指摘をいただいたような点もあろう、こういうふうに思っているわけであります。何とかひとつ前進できるように、私はそういう気持ちでいるわけでございますので、とりあえずお答えをさせていただきたい、こんなふうに思います。
  211. 上原康助

    上原分科員 その心情はわかりますが、これだけ復帰直後からの懸案を引きずって、なお米側からいろんなボールが投げられても、具体的に聞くと、わかりません、わかっていない。実際に知らなかった、外務省を含めて。一体こんなのってありますか。ぜひひとつ具体的に進めてください。  改めて施設庁長官に念を押しておきますが、六月段階までには結論を出すように努力しますね。もしどうしても全体像が明らかにできない場合は、中間報告でもやりますね、外務省と相談して。それだけは明確にしておいてください。
  212. 松本宗和

    ○松本(宗)政府委員 正確に六月までというように限定をさせていただくのは非常に困難でございますが、可能な限り早く、ただいま先生御指摘になりましたとおり、中間報告なりとも外務省と調整の上公表させていただけるようにしたいと思っております。
  213. 上原康助

    上原分科員 ぜひそうしていただきたいと存じます。  そこでもう一点。この間も、四月の十二日でしたか、防衛庁長官に那覇飛行場内の自衛隊の弾薬庫の新増設問題について、私たち県選出の四名の衆参議員で強く申し入れをいたしました。その際、趣旨はわかったので検討してみたいということでした。だが、沖特で十八日に質問をしますと、計画は変更しがたいという答弁があったわけですが、これは納得できません。  といいますのは、皆さんにもいろいろ言い分があるでしょう、それは。防衛庁だから。しかし、これは復帰時点での民間専用空港が約束されておったということ、これは県民のもう党派を超えた願いなんですね。最近になって那覇市議会、県議会でも決議がなされている。きょうはその反対の県民大会もある。これはもう沖縄の朝野を挙げて反対なんです。  なぜなら、ああいう民間専用空港の近接で弾薬庫を新しくつくるということは、今でも四棟あるわけですから、しかも倍の貯蔵量だ、そういう面で、安全性の面からも極めて問題がある。皆さんは、これは防災規定に従ってそういうことはないと言うわけですが、こういう背景があるということ。さらに、自衛隊と米軍は違うと言うかもしれませんが、沖縄には何百万、何千万トンという、何千万トンという数量はまあわかりませんが、大量の高性能米軍火薬が既にたくさん貯蔵されているということです。だが、県民はトータルでしか見ない。いみじくも大臣がおっしゃったように、七五%の専用基地が沖縄にあって弾薬庫もたくさんある。そういう中で民間空港に新たに弾薬庫をつくるというのは、これはどういう理由があろうがまかりならぬ。このことについては、ぜひ改めて再検討していただいて、県民の期待にこたえてもらいたい。
  214. 鈴木宗男

    鈴木(宗)主査代理 村田参事官
  215. 上原康助

    上原分科員 いや、もう村田参事官はいいよ。大臣が来ているから。
  216. 鈴木宗男

    鈴木(宗)主査代理 指名権は私にありますから。村田参事官
  217. 村田直昭

    ○村田政府委員 お答えいたします。  先般の沖特委でも私お答えしたわけでございますが、簡単に申しますと、那覇基地の航空基地につきましては、航空自衛隊並びに海上自衛隊がおるわけでございますが、それに必要な弾薬類の備蓄が非常に不足しているという基地要請と、それから弾薬庫の安全性については、通産省等の御承認をいただいて設置するものでございますので、安全性も確認できるということで、ぜひ設置をお願いしたい、このようにお答えしたわけでございます。
  218. 上原康助

    上原分科員 これは事務当局はそうお答えになっても、大臣、今私が言ったように、皆さんは力で押しまくればいいと思うかもしれませんが、これだけ県民規模で、今しかもデタントの時代、米ソを含めての軍縮状況の中で、しかも年じゅう米軍の実弾射撃訓練もやる、事件、事故も多い、そういう中で、自衛隊まで何で、おまえもかというのが県民の偽らざる感情なんだよ、それは。やはり政治レベルの判断というものをやってもらわなければいかぬと思うのですが、いかがですか。
  219. 石川要三

    ○石川国務大臣 私の率直な感じ答えとして申し上げたいと思いますが、先般、上原先生ほか三名の先生方から、私も反対の旨の陳情を受けたわけでございます。その際は、物の考え方は違っておっても、とにかく皆さんの御意見をよく頭に入れて検討してみたい、こんなつもりで帰りました。早速帰りましていろいろと事務当局とこの内容について私なりに検討をしてみたわけでございます。  その結果は、大変御不満だと思いますけれども一つの理由は、やはり自衛隊というものがそこに存在する限り、当然弾薬庫というのは多かれ少なかれ必要なものだということで、その必要性から今るる事務当局からお話をされたようなことで予算化がされてきたわけであります。しかし、その実態はどうなのか。特に、日本全体の中で七五%も米軍基地がある、こういう中で、今先生がるる言われたようなことも配慮しながら、この内容をさらに検討すると、どうしても、これはほかの全国の弾薬庫の所在地から怒られるかもしれませんが、しかしそういうようなことから比較して見ると、やはり沖縄の弾薬庫の量から見ると、今までの約十五分の一だというような実態、今度、実はここで予算化されてこれを実行するわけであります。そうなると、その結果はどうかというと、やはりまだ五分の一ぐらいだ、こういう現実が私なりにつかめたわけであります。  それともう一つは、じゃ一体あることがどれだけの危険になるのか。これは危険というのは絶無というのはないわけでありますが、しかし、その可能性は極めて少ない。〇・〇〇〇幾つかは知りませんが、いずれにしましても万全を期しての安全が行われている。  こういう二点から見て、せっかくの陳情でございましたけれども、やはり御趣旨には沿いがたい、私はこういう結論を出したわけでございます。  米軍がたくさんあるじゃないか、これも確かにそのとおりだと思いますが、米軍もあるからこちらがゼロでいいという論理は成り立たないわけでありますので、そこいらは、要するに基地と沖縄県の一つの比重関係、こういう全体のトータルの中から、今後政治問題として、先ほど来の施設の統合整理もひっくるめていろいろな点で考えていかなければいけないのじゃないかな、こんなふうに思います。  実は、私の選挙区にも横田基地というのがありまして、騒音だとかいろいろな点で時々トラブルがありますけれども、確かに、この問題は、基地のないところの方々、あるところの方々、特に沖縄県のようにあんな量的にも多い米軍基地や何かがあるところでは、これは本当に私どもの日本全体として十分に考えていかなければいけない、もっともっと違う角度から総合的に政治的な対策を立てていかなければ、これはイデオロギーの問題までもない、そのとおりだと思うのです。私は、県民感情としてはそのとおりでよくわかるのですが、今回のこの弾薬庫の建設については、未熟なことでございますが、そのような私なりの結論を導き出したというわけでございますので、御理解をいただきたい、かように思います。
  220. 上原康助

    上原分科員 何か、再検討しそうな、しないような、結局やらぬということでしょうが、これはやらなければやらないで結構というより、結構かもしらぬ。しかし、自衛隊に対する県民感情、反自衛隊感情というのは火に油を注ぐ結果になりますよ。それでも皆さんが将来も含めていいというなら結構でしょう。そう簡単に権力で地方自治体やそういう地域住民の意思を踏みにじって政治や行政や自衛隊の存在が成り立つと思ったら大間違い。その点を特に強く――ですから、このことは改めて防衛庁長官の政治判断で再検討いただきたい、強く求めて終わります。
  221. 鈴木宗男

    鈴木(宗)主査代理 これにて上原康助君の質疑は終了いたしました。  次に、吉井光照君。
  222. 吉井光照

    吉井(光)分科員 私は、まず最初に、米国の東アジア戦略構想につきまして、日本政府見解並びに次期防策定への影響についてお尋ねをしておきたいと思います。  去る四月二十日の新聞報道によりますと、ブッシュ・アメリカ大統領が同月十八日に、東西の安全保障環境の歴史的変化を踏まえて、今世紀末までのいわゆる軍事戦略を展望した国防総省報告「アジア・太平洋地域の戦略的枠組み」、いわゆる東アジア戦略構想をアメリカ議会に送付をいたしまして、これが公表されたということでございます。その中で、対日戦略の基本として、在日米軍基地の維持と兵力削減を初め五項目を挙げまして、日米一体化を通じて将来とも日本の軍事的突出を抑えて地域的安定を図る考えを明示した、このようにあるわけでございますが、これは非常に注目すべき点ではないかと思います。  そして、在日米軍の削減計画は、今後三年間に五千から六千人がいわゆる沖縄を中心に実施されまして、十年間に計三段階でより大幅な削減を継続する方針を打ち出しているわけでございますが、この報告書につきまして、日本政府はどのような見解をお持ちなのか、また、今後の我が国の次期防衛力整備計画の策定にどのような影響を与えると見ていらっしゃるのか、まずここらあたりをお聞きしておきたいと思います。
  223. 石川要三

    ○石川国務大臣 簡潔にお答え申し上げたいと思います。  まず、今回のこの報告の評価といいますか、受けとめ方でありますが、今回の報告は、アメリカ政府が米国のグローバルな役割と同盟国に対するコミットメントを今後とも果たしていくために引き続き前方展開戦略を維持するということが明らかになっているというふうに受けとめております。また、米軍の再編については、財政事情の制約にもかかわらず、東アジアにおける不透明な軍事情勢を十分に踏まえながら、この地域の安定に配慮しつつこれを慎重に推進しよう、こういうふうに受けとめているわけでございます。したがって、防衛庁といたしましては、米軍がこの地域で果たしている役割に大きな変化はまずなかろう、ないという理解をしているわけでございまして、次期防の策定には基本的には影響はない、このようにこれを受けとめているわけでございます。
  224. 吉井光照

    吉井(光)分科員 そこで、岩国米軍基地への影響でございますが、アメリカの国防総省の政策担当でありますところのウォルフォウィッツ次官が四月十九日にこの報告を審議するため開かれたところの上院軍事委員会で証言をいたしておりますが、「横須賀、三沢のほか、横田基地も空輸支援部隊の中軸として堅持する方針であることを明らかにした。」こういう報道もあるわけですが、この戦略構想が米軍岩国基地に与える影響としてはどのようなことが考えられるのか。  岩国基地は、御承知のように沖縄に駐留する第一海兵航空団指揮下の攻撃中隊などが配備をされておりまして、航空機約七十機と将兵、家族約六千五百人が駐留をいたしまして、当然岩国市には毎年国から二十数億の基地関連交付金が入っておるわけです。そういうことから考えましても、わずか十万そこそこの都市でございますし、いわば基地への依存度というのが非常に高いわけでございます。また、市の人口の約一割弱に当たる約一万人、これだけの人がいわゆる基地関連で生計を立てているわけですが、沖縄の海兵隊撤退のニュースにつきまして、地元では、じゃ岩国は一体どうなるんだろうか、このように非常に強い関心を持っているわけでございます。  そこで、県としてもこうした地域の皆さん方の不安を早く除去しなければならないということで、去る二月二十二日に県が外務省に対しましてこの件について文書で照会中ということでございますが、いまだもって全然回答もない、こういうことでございますけれども、ここらの事情についてお聞かせを願いたいと思います。
  225. 日吉章

    ○日吉政府委員 ただいま委員指摘の米国政府の議会に対する報告書でございますが、その中につきまして特別の基地の名前あるいは地域の名前がメンションされておりますところは、ただいま委員も御指摘のように、横須賀、三沢につきましては特に基地機能を維持し続けることが書かれております。それから兵員の削減につきましては、特に沖縄も含めというような形で書かれてございますが、それ以外につきましては、これから米国政府が在日米軍をも指揮する立場にございます米太平洋軍司令官のもとで地元の事情等も十分勘案の上具体的に決定していくというふうに理解いたしておりまして、今後米政府内におきまして現地司令官の意見等も聞きながら具体的なものを決めていくのだと思います。その中で岩国基地につきましての取り扱いも決まっていくこと、かように考えております。
  226. 吉井光照

    吉井(光)分科員 それでは防衛庁の見通しとしてはどうなんですか。どういうお考えをお持ちなんですか。こういった報告書から見れば、岩国基地というのは沖縄とも非常に関連性が強いわけですけれども、沖縄あたりが対象に挙げられますと当然岩国あたりも影響があるのではないか、私ら素人でもこういうふうに考えるわけです。防衛庁としては、専門的な立場でこうしたことについてはいろいろ検討もされているとも思いますけれども、見通しぐらいわかりませんか、岩国基地に対する。
  227. 日吉章

    ○日吉政府委員 私どもといたしましてはわからないというふうに申し上げるしかしようがないと思いますが、今回の報告書は、どちらかといいますと、基本的には基地機能を維持しながら合理化再編を進めて兵員の削減合理化を図りたい、こういうふうなところに重点が置かれているというふうに理解いたしております。したがいまして、現在日本に駐留いたしております米軍の中の大半が沖縄に所在するというような意味で、兵員の削減合理化を行う場合には沖縄というものが大きなウエートを占めるであろうという意味で沖縄が特に掲げられているのではないか、かように考えております。
  228. 吉井光照

    吉井(光)分科員 それでは、基地周辺の住宅防音工事対策について若干お尋ねをしておきたいと思うのですが、昨年の十一月二十日に、私たち公明党の山口県本部といたしまして、松本防衛施設庁長官に対しまして、岩国基地の防音工事に関する四項目の申し入れを行ったわけでございます。これは、政府が昭和四十九年度から取り組んでいらっしゃるところの住宅防音事業が既に十五年を経過したことに伴うところの種々の問題提起が住民からされまして、それを受けまして私たちが実態調査をいたしまして、その結果を踏まえて行った申し入れでございます。防衛施設庁としてはこの四項目に対しましてどのような対応をしていただいたのか、あるいはしていらっしゃるのか、ここらあたりをちょっとお聞かせを願いたいと思います。
  229. 松本宗和

    ○松本(宗)政府委員 お答えいたします。  昨年十一月二十九日に今先生御指摘のアンケート調査の結果に基づきます要請をちょうだいしております。それに基づきましていろいろ措置をとっておりますので、一つ一つ答えをさせていただきます。  まず一番目の、防音工事に係ります故障、破損等の修理のための相談窓口を地域の実情に即して設置してほしいというお話がございました。これにつきましては、私ども直ちに広島防衛施設局の岩国防衛施設事務所等を窓口として岩国市にお伝えさせていただいております。  それから二番目に、工事施工後の保証期間及び財産処分にかかる期間、諸手続について明確に関係住民に周知徹底することということについてでございます。これにつきましては、工事施工後の保証期間については、住民の方々と施工業者との間で締結されました請負契約書に明示されておりましたり、あるいはメーカーの保証書等に期間が明示されておるところでございますが、私どもの方といたしましても、いろいろ御承知いただくためにパンフレット等を配らせていただいております。しかしながら、なお徹底を図るために今後十分な措置を図っていくこととしております。  それから三番目でございますが、冷暖房、換気扇等の耐用年数が既に経過しているものが相当数に上ってきておるということから、このことに関する対処について明確にしてほしいというお話でございました。これにつきましては、住宅防音工事によりまして設置いたしました冷暖房機の機能復旧工事を、設置後十年以上経過いたしまして現に故障等が生じておるものを対象といたしまして平成元年度から実際に対応を実施したところでございまして、岩国飛行場の周辺におきましても、二十世帯につきまして実施をしたところでございます。なお今後とも引き続いて努力してまいりたいと考えております。  最後になりましたが、防音工事施工後相当の年数が経過いたしまして防音機能が失われているものについての対応の問題でございますが、この問題は、住宅防音工事施工後のアフターケアの問題であると存じます。この点につきましては、広島防衛施設局からサッシメーカーあるいは冷暖房機器メーカーに対しまして、住民の方々から補修依頼があった場合に早急に対応するようにということで申し入れをいたしたところでございます。  以上でございます。
  230. 吉井光照

    吉井(光)分科員 引き続きひとつよろしくお願いしたいと思います。  次に、岩国基地の沖合移設の問題ですが、この経過等につきましては、今さら言うまでもなく既に御存じのとおりでございます。  そこで、まず基本設計の状況についてお尋ねをしておきたいのですが、平成元年度の岩国基地沖合移設関連経費として基本設計費等約二億五千八百万円が計上されたわけですが、実際に基本設計の作業に取りかかったのが十二月八日、そのように聞いております。作業の進捗が大幅におくれた、こういうことでございますが、これはどうしてこうなったのか、また平成元年度中に基本設計が完了できたのかどうか、まず確認をしておきたいと思います。
  231. 大原重信

    ○大原政府委員 お答え申し上げます。  岩国飛行場滑走路問題に係る基本設計は、埋立地の造成、敷地造成、滑走路、誘導路等の飛行場施設の建物及び岩国市のし尿処理場についてそれぞれ実施しているところでございます。この基本設計につきましては、諸般の事情によりましておくれを見たところでございますが、平成二年度予算が成立後直ちに環境影響調査にかかれますように、その以前に完了するようにただいま鋭意努力中でございます。
  232. 吉井光照

    吉井(光)分科員 では、その環境影響調査の内容と見通しについてでございますが、平成二年度以降に実施が予定されている環境影響調査、これは当然基本設計に基づいて実施をされるということですが、この調査内容はどういうものなのか。また、平成三年度末までの調査終了の見通しがあるのかどうか。四年度でこの調査結果を取りまとめて、その上で政府としては、千メートル沖合移設の俗に言うA案、それから滑走路の角度を変えるだけの併用案であるB案、これをどちらかを決めたいということでございますが、このスケジュールからするならばこの調査見通しは非常に重要な意味を持っているわけですが、先ほどお尋ねした諸点についてお尋ねをしておきたいと思います。
  233. 大原重信

    ○大原政府委員 お答え申し上げます。  平成二年度に計画をしております環境影響調査は、事業を実施いたします場合の具体的な項目について、A案及びB案の基本設計に基づき、両案それぞれの環境影響評価にかかわる予測評価を行うものでございます。その内容は、鳥類や海生生物等の調査でございます。平成三年度以降もこのような調査を行いまして、平成四年度まで検討を行うことといたしております。
  234. 吉井光照

    吉井(光)分科員 そこで問題になるのがいわゆるB案でございます。  政府は昭和六十三年八月にB案なるものを新たに提示をされたわけですが、五十七年に発表され、そして地元の意思でもあるところのA案、これは建設費約二千億、これに比べて四分の一の五百億程度、非常に安上がりである、工期も七年から五年、二年ぐらいは短縮できるのではないか。しかし、御承知のように、B案には非常に問題点が多過ぎるわけです。  例えば、第一に、B案では、沖合移設ではなくして地元の意思に反するし、新たな住宅防音対策を講ずればかえって膨大な予算と時間を要するわけです。第二に、五年の工事期間中現滑走路が使用できない。第三には、二つの滑走路の併用で基地機能が強化される可能性もあるのではないか。強化されない方向で沖合移設を求めた、これは昭和四十九年三月二十六日の県議会の決議でございますが、これにも反する。第四には、跡地の利用による地域活性化が図られない、こういうことでございます。そして、何よりこのB案が問題なのは、いわゆる市南部地域に新たな騒音問題と安全面の問題が起こることでございます。  このことにつきまして、政府は新旧二本の滑走路の機能分担論、すなわち現行滑走路を着陸用に、そして新滑走路を離陸用にすれば、北部はもとより南部地域も影響はない、このようにしているわけですが、タッチ・アンド・ゴー、着艦訓練を主体としている飛行場ですから、これは現実問題として急激な方向転換など不可能です。とともに、接触等の危険も非常に生じてくるわけです。また新滑走路、その南側に離着陸する場合、飛行コースのちょうど下の中国電力火力発電所の二百メートルの煙突と山が障害となって大変危険だ、こういうことでございます。この点についてだけは防衛庁の考えを確認しておきたいのですが、果たしてそういう訓練ができるのかどうか、そういうタッチ・アンド・ゴー、こうしたものが技術的に可能なのかどうか、この問題点については、既に昨年五月に私が質問主意書によって確認をいたしたわけでございますけれども、明確な答弁が得られておりません。これらの諸問題について、地元が納得のいく明快な説明をお願いしたいわけでございます。  このA案、B案、この選択の問題について大変な議論が交わされておりまして、B案ではもう話にならない、もしB案が強行されるようであるならば市民挙げて撤去運動を起こさなければならない、こういった時点まで来ておるわけでございますから、今申し上げましたように、地元の皆さんが納得のいくようなB案、A案の御説明を願いたいと思います。
  235. 松本宗和

    ○松本(宗)政府委員 御指摘のように現在計画は、今先生がおっしゃいましたA案、B案、この一一つにつきまして基本設計をいたしまして、これから環境調査に入ろうということでございますが、このB案が出てまいりましたのは、確かにA案についての経済性あるいは効率の観点からもございますし、またA案についての環境に及ぼす影響の大きさというようなことも頭に入れまして、なおもう一つ案があるのではないかということからB案が出てきたわけでございます。  現在、A案、B案並列的に検討いたしまして、そうしてそれぞれにつきまして環境調査その他の影響をきちっと調査いたしまして、しかる後にA案がいいかB案がいいかという結論を出させていただくということにいたしておりますので、現在まだA案かB案かという結論を我々は得ていない、むしろそのためにこれから調査をさしていただくということでございます。     〔鈴木(宗)主査代理退席、主査着席〕
  236. 吉井光照

    吉井(光)分科員 今御回答いただいたわけでございますが、いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたようにB案では地元の不信をますます大きくしてくる、こういったことは事実でございます。  そうした意味で、平成二年度に直ちに工事にかかれなくても、いわゆる環境アセスは必要であるとして、四季を通じて丸一年調査をすれば十分ではないか。例えば平成二年七月から三年六月まで調査をして、そして三年度の残り期間をA案による実施設計に充てる。そして平成二年八月の時点で、平成三年度の概算要求として環境アセスの二年次分予算とあわせて、工事の着工に直接つながる実施設計に要する予算の要求に踏み切って、工着手の意思表示を明らかにして地元の信頼にこたえるべきではないか、このように思うわけですが、長官、いかがですか。
  237. 松本宗和

    ○松本(宗)政府委員 確かに岩国の移転問題は相当の期間を経過しておりまして、早く結論を得なければならないということは当然のことでございますが、現在実施しております基本設計、これが終わりまして環境調査を徹底的に実施いたしませんと、その次の段階の実施設計には入っていけないというのが仕事の段取りではなかろうかと存じます。私どももできるだけ早く結論を得るように作業を進めてまいりたいと思いますが、環境影響調査、これは非常に重要な問題でございますので、これにも慎重を期してやってまいらせていただきたいと存じます。
  238. 吉井光照

    吉井(光)分科員 これはスケジュール的に長官が御回答いただいたように十分理解はできるわけでございますけれども、今もおっしゃったようにもう二十二年経過をしているわけでございます。そうした意味で、地元の実情も十分おわかりいただいておると思いますけれども、ここ一、二年B案というものが出てまいりまして、一体政府には沖合移設の意思があるのだろうかどうだろうか、する気がないのではないか、こういう疑義の念も非常に高まりつつあるわけでございます。去年も同じ、ことしも同じ、こうなりますと、先ほどおっしゃったその順序というのは理解できるわけでございますけれども、何かここで一歩でも二歩でも前進したお答えをお願いしたいと思うのですが、いかがですか。
  239. 松本宗和

    ○松本(宗)政府委員 私どももできるだけ早く結論を出したいと考えておりますが、慎重な調査も実施しなければならないということにつきまして改めて御理解を賜りたいと存じます。
  240. 吉井光照

    吉井(光)分科員 以上で終わります。
  241. 池田行彦

    池田主査 これにて吉井光照君の質疑は終了いたしました。  次に、河上覃雄君
  242. 河上覃雄

    河上分科員 私は、厚木基地のNLPの問題並びに硫黄島の整備について質問をさせていただきたいと思います。  まず、硫黄島等の関連施設の問題でございますけれども、現在、硫黄島のNLP暫定使用に伴う関連施設の整備の進捗状況並びに完成時期の目安等についてお尋ねしたいと思います。
  243. 大原重信

    ○大原政府委員 御答弁申し上げます。  硫黄島における艦載機着陸訓練の早期実現を図りますために、平成元年度から灯火施設等の滑走路関連施設、給油施設等の施設の整備に着手いたしております。平成二年度におきましては、隊舎及び冷凍冷蔵倉庫等の倉庫の整備を計画しております。これらの施設の整備が完了するまでにはおおむね四年間を要する見込みでございます。
  244. 河上覃雄

    河上分科員 NLPの硫黄島暫定使用につきまして小笠原村との間に合意ができました段階で、施設庁は早ければ本年秋ごろから訓練を開始したい旨の意向と聞き及んでおりましたけれども、ただいまの説明あるいは進捗状況の上から果たしてそれが可能なのかどうか、この点についてお尋ねしたいと思います。
  245. 大原重信

    ○大原政府委員 お答え申し上げます。  硫黄島での訓練の開始時期等につきましては、米軍の運用上のことでございますから明確には申し上げられないのでございますが、整備の進捗に応じまして可能な規模で訓練が開始されることを我々といたしましては期待いたしております。今後、施設整備の進捗状況も踏まえながら米側との間で調整してまいりたい、かように考えております。
  246. 河上覃雄

    河上分科員 もう一歩立ち入ってお伺いしたいと思いますが、硫黄島におけるNLPの訓練内容等につきましては、既に米軍と具体的なお話し合いを進めているのか、いるとするならば、現在までの段階における説明を求めたいと思います。
  247. 松本宗和

    ○松本(宗)政府委員 硫黄島で行いますNLPの内容でございますけれども、これは現在まで厚木で行っておりますNLPの一部を持っていくということでございまして、その内容につきましては米軍サイドとは具体的には詰めておりませんし、詰めるような性格のものではないかと存じます。ただ、そこに整備いたします施設等につきましては、米軍の要望を踏まえながら整備しておるということでございます。
  248. 河上覃雄

    河上分科員 ただいまのお話にも出ましたように、硫黄島の施設整備に伴いましてその一部程度の機能を移転するとしておりますけれども、この程度というのはどの程度なのか、さらに厚木基地におけるNLPについてもそのまま同程度減少するのかということについてお尋ねをいたします。
  249. 松本宗和

    ○松本(宗)政府委員 厳密な意味でどの程度ということはなかなか申し上げにくいかと存じます。  ただ、相当程度というぐあいに申し上げておるわけでございますが、現在行われております厚木でのNLP自体、米軍にとりましても非常に不自由だということでございます。例えば、周辺が非常に明るくなってきて訓練の効果が上がらないとか、あるいは周辺に対する影響等を配慮して十分な訓練ができないというような問題がございます。そういうところから考えますと、相当の部分は硫黄島に持っていって、硫黄島で十分な訓練を実施するということをアメリカの方でも希望しておるというぐあいに私ども理解しておりますので、相当程度といいましても、非常に厳しい部分は持っていくのではなかろうかというぐあいに期待しております。
  250. 河上覃雄

    河上分科員 この硫黄島暫定使用に至る経過の中で、小笠原村との間に合意した内容につきましてお尋ねをしたいと思います。  またさらに、その合意以外に小笠原村との間でどのようなことが問題になっているのか、この点について御質問いたします。
  251. 大原重信

    ○大原政府委員 お答え申し上げます。  昨年一月、硫黄島での艦載機着陸訓練を行うことが日米間で基本的了解に達したのを受けまして、防衛施設庁といたしましては、東京都及び小笠原村に協力要請を行ったところでございます。  小笠原村等からは、硫黄島戦没者の遺骨の早期収集、旧島民の方々の墓参等の際の訪島手段の確保等、硫黄島におけるいわゆる戦後処理問題の解決方を要望されました。当庁といたしましては、これら地元の要望に沿うべく関係機関とも調整いたしまして最大限協力いたします旨回答させていただきましたところ、小笠原村及び同村議会の理解が得られたところでございます。
  252. 河上覃雄

    河上分科員 厚木基地というのは、大臣も御存じであると思いますけれども、神奈川県内の人口のおよそ七分の一に相当いたします百万を超える住民が現在生活をしているわけでございます。特に、最も危険な滑走路北側部分におきましては、人口密度で申し上げますと東京二十三区に匹敵するような超過密地域でもございます。米軍自身も、世界の中で一番人口密度が過密な基地であると認めておるところでございますが、こうした厚木基地の周辺の現状を強く認識していただくとともに、小笠原島民、そして遺族の方々の心情を踏まえつつ、一日も早い移転と、そしてまたこれらのNLPの具体的訓練内容が早く公知できるようにひとつよろしくお願いしたいと思います。  続いて、この問題につきましては、音の問題だけではなくして、もう一つ大きな問題があります。それは事故の問題でございます。強く安全性を求めていかなくてはならないわけでございますが、神奈川県内におきましても、米軍の事故は、大小合わせましてこれまでに百八十五件に及ぶような事故が起きております。その中で最大の問題は、五十二年に横浜の緑区の荏田というところにファントムが墜落して死に至る人が出たという痛ましい惨事も惹起せしめているところでございますけれども、つい先日、昨年の九月でございますが、厚木基地周辺に最も近い部分、大和市内に米軍のヘリコプターが不時着するという事件が起きております。  こうした実情を踏まえながら、小さな要素かもしれませんけれども、私にとっては大きな要素であると思いますので、住民に対する大きな不安感を増長させることにつながっていく、万が一これがヘリコプターではなくして戦闘機であったらどうなるのだという声は大きく広がるわけでございますけれども、この事故に対しましてどのような申し入れを米軍にはしたのか。またさらに、その原因について調査をしっかりとしていただいたのか、この点についてお尋ねをしたいと思います。
  253. 吉住愼吾

    ○吉住政府委員 事故の概要から簡単に説明いたしたいと思いますが、去年の九月七日十四時五十分ごろ、米陸軍キャンプ座間所属のUH1ヘリコプターが飛行中にエンジンの出力低下のために、今先生がおっしゃいました大和市の下鶴間の植木畑に緊急着陸いたしまして、これによる被害としましては、植木畑の苗木の折損等でございました。  私どもの対応としましては、翌八日に横浜防衛施設局の担当課長が被害者のお宅に伺いまして、まず遺憾の意をあらわしますとともに、本件の事情等の説明を行いまして、また横浜防衛施設局長は、在日米陸軍司令部及びキャンプ座間の第十七地域支援軍司令官に安全飛行について強く申し入れを行ったところでございます。  米軍はこれに対しまして、原因はエンジンの故障によるものとして、今後航空機エンジンの整備及び飛行前の点検の強化を図る旨を表明しております。  なお、苗木等の被害につきましては、昨年十二月十五日に地位協定に基づきまして賠償を行いまして、円満に解決しております。  以上でございます。
  254. 河上覃雄

    河上分科員 非常に重要な問題だと思われます。離着陸が回数が多くなればなるほど、それに伴って事故の危険性の頻度も増すように思われますし、この点につきましては一朝起きれば大変な惨事になるわけでございまして、こうした観点からも、米軍側に対してさらに強く安全性を求めていただきたい、このように思う次第でございます。  時間の関係もございますので、次の問題に移らせていただきますけれども、先ほどのお話にもございましたが、厚木基地周辺の防音工事の件についてお尋ねをしたいと思っております。  先ほども少し触れましたが、実は私自身も厚木基地におけるNLPの洗礼を受けている一人でございまして、日常的にその音のすさまじさについては十分承知しているところでございます。我が家の上空を飛行するわけでございますので、これについては言語に絶するものがある、このように思っております。耳鳴りがするとか食欲不振であるとか、あるいは頭痛を引き起こすとか子供さんは引きつけを起こすとかさまざまな苦情等も寄せられておりますし、もう不眠症で寝られない、こういう事態まで出てきておることは既に承知であると思います。私も電話などをしておりますと、全く通過するまでは話にならないような状態でございまして、これは大変な実態であるということをさらに強く感じているところでございます。最高音平均値で百二十ホンを超えるような事態もあるわけでございますが、百十ホンといいますと一メートル前で自動車のクラクションを鳴らした音、百二十であればもう工事現場に終日いるような音でございまして、もうあと十ホン、百三十ホンになれば限界可聴値である。こうした中で百二十ホンの持つ意味というものは非常に大きいと思います。  そうした事実に基づきまして、昭和四十九年に法律が生まれまして、そうして防音工事等も進められておるわけでございますが、この防音工事の対象についてこういう考え方は成り立つのか、またできるのかお尋ねをしたいわけでございます。  それは、区域指定の決まった後に移転をしてきている者も現在たくさんおります。これらの方々の住宅に対しては防音工事が必要とされておりません。私は、そこにある一定期間生活をしているという事実があるならば、こうした人たちに対してもこの防音工事の手だてを加えていただきたい、またなすべきではないか、このように思う次第でございますが、これについての見解を伺いたいと思います。
  255. 松本宗和

    ○松本(宗)政府委員 確かに今先生御指摘の問題は、私どもドーナツ現象と呼んでおりまして、一つの大きな問題だと考えております。ただ、何分にも住宅防音工事の対象世帯数が非常に膨大でございます。したがいまして、いまだ実施していないものが相当ございまして、これの対策が先決であると考えて現在努力をしております。したがいまして、施設庁といたしましては、ただいま申しましたいわゆるドーナツ現象と、告示後に建設されました住宅の防音工事の助成につきましては、大変困難な問題ではございますけれども、現在実施しております住宅防音工事、現在なすべきものについて早く実施を終えた後、将来検討すべき課題ではないかというぐあいに考えております。
  256. 河上覃雄

    河上分科員 現実的にはなかなか進捗いたしてない事実もあるわけでありまして、あと何年先かなと思うようなこともございます。それらも考え合わせるとともに、最近では、硫黄島の暫定使用が可能になるまではこのNLPが多分存続するのであろうと思いますけれども、これにつきましてもまた新しい要素が加わったように承知するところであります。これはさらにNLPの音等拡大の方向をたどるのかなと思われるような問題点がございます。  それは、ミッドウェーが本年度で退役をいたしまして、新たにその規模をはるかに上回り、かつ搭載機の量並びに質ともにミッドウェーをしのぐインデペンデンスが配備されることがこの二月にチェイニー米国防長官によって伝えられているところでございますが、私は今申し上げましたように、音の問題としてとらえると従来よりもはるかに大きくなるのではないか、こう思っておりますけれども、これに対する見解をお伺いしたいと思っております。
  257. 松本宗和

    ○松本(宗)政府委員 ミッドウェーが退役いたしまして、インデペンデンスが横須賀に配置されることに伴いまして、厚木周辺での騒音の程度がどの程度になるかということにつきましては、私ども具体的にまだ把握し得ないというのが現状でございます。  いずれにいたしましても、その時点をとらえまして、今のうちからできるだけ早く対策をとっておかなければならないわけでございますが、先ほどから申し上げておりますように、現在の住宅音工事をできるだけ早く進捗させて、かつ硫黄でのNLPが一刻も早くできるように、こちらの工事もできるだけ促進させるということで私どもの努力を続けてまいりたいというのが現在の対応でございます。
  258. 河上覃雄

    河上分科員 それでは、インデペンデンスに伴って音が大きくなっても、現状の防音工事は変わりがないということでございますか。その点について重ねて御質問したいと思います。
  259. 松本宗和

    ○松本(宗)政府委員 ただいまも申し上げましたように、具体的にどうなるかということにつきましては、実際その時点になってみないと何とも申し上げられないということを御理解賜りたいと思います。したがいまして、その時点、つまりインデペンデンスが配属されまして、その航空機が厚木でミッションに入るようになった段階で改めて調査をさせていただきたいと存じます。
  260. 河上覃雄

    河上分科員 どうか、大事な問題でございますので、この点一つ一つ検討をしていただきたい、このように強く訴えておきたいと思っております。  さらに、観点が変わると思いますが、ただいま申し上げましたようなこのインデペンデンスの配備の決定の経緯、そして米ソ緊張緩和の中におけるこうした配備が軍縮の流れに逆行するものであると私は思うわけでございますが、これについて御見解を承りたい、このように思います。
  261. 日吉章

    ○日吉政府委員 先般米国国防省が議会に提出いたしました報告書にも書かれておりますように、現在の極東におきますいろいろな情勢分析に基づきまして、米側としましては、これまでの前方展開戦略を維持する必要がある、維持するという判断に立っておりまして、私どもも同じような情勢判断をいたしております。  ところで、これまでのミッドウェーは、委員も既に御案内のように、就役いたしました時期がかなり古いものでございますので、前々からこのミッドウェーにかわります後継艦を米国側は考えていたわけでございまして、ミッドウェーが就役いたしました後の国際的な軍事技術の動向に対応するという形で、ミッドウェーよりは新しいインデペンデンスを配備するということになったもの、かように理解いたしております。
  262. 河上覃雄

    河上分科員 もう一点、同じく米ソ緊張緩和の中における厚木基地の位置づけについての見解をお示しいただきたいと思います。
  263. 日吉章

    ○日吉政府委員 これにつきましては、先ほど来お話が出ております米国の議会への報告の中で、日本の基地におきます横須賀及び三沢の基地の重要性が間接的に述べられておりますけれども、その横須賀を母港といたします航空母艦、それに搭載いたします艦載機等が訓練をいたします基地として厚木が使われているというような意味におきまして、同じように米国にとりましては重要な基地の一つだと認識いたしているものだと私たちは理解いたしております。
  264. 河上覃雄

    河上分科員 大臣は横田基地と伺いました。厚市も多分周辺だと思いますが、すぐ近くである思いますけれども、厚木基地をのぞいたことがるかどうかわかりませんけれども、ぜひ一度NLPの訓練期間を通じまして御視察いただければりがたいと思います。いかがでございましょうか
  265. 石川要三

    ○石川国務大臣 お答えいたします。  先生は、大変騒音の中で生活をされて、その苦しみというものは肌身に感じていらっしゃるわけでありまして、私も、飛行場は違いますけれども、横田飛行場がすぐそばにございまして、本当にハリアーの、何というのですか、タッチ・アンド・ゴーというのですか、ああいうものが盛んに行われますと、そのときの騒音のすさまじさというものは、先ほど先生がおっしゃったように、もう本当に会話が途絶えるほどでありまして、学校の授業も一時的にストップする、子供は泣き出す、本当にこれはそばに住んでいる人でなきゃわからない苦痛でもある。またそれだけではなく、事故があった場合の恐ろしさ、そういう点は、本当にこれは言葉ではなかなか言いあらわせないほどのものであるということは、私も先生とやや同じぐらいに認識しているつもりでございます。  そんなわけで、先ほど来いろいろとやりとりがありましたように、硫黄島の施設が一日も早く完成されるように、これを促進することがまず第一ではないか、こういうふうに思うわけでございますが、これからも、仮にそれが完全にできたとしても、まだまだいろいろな問題が残っておると思います。そういったような基地問題、これからもいろいろと御指摘いただきましてできるだけの処置をしてまいりたい、こんな気持ちでおります。  それで、今、視察をするかどうかということにつきましては、突然の御質問でございますので、まだ何とも申し上げられないわけでございます。
  266. 河上覃雄

    河上分科員 突然で申しわけございませんが、いずれにいたしましても極めて大事な問題であると私は思います。一つ一つの処置につきまして明確な対応をお願いするとともに、ともかく住民の安全、生活を守れるような環境を一日も早く実現することを強くお願い申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
  267. 池田行彦

    池田主査 これにて河上覃雄君質疑は終了いたしました。  次に、遠藤和良君。
  268. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 私は、官民共用の飛行場でございます徳島飛行場の問題について、的を絞りまして質問をさせていただきたいと思います。  まず運輸省に確認をいたしますが、最近この徳島飛行場の利用客が急増しておると聞いておりますけれども、徳島―東京便、徳島―大阪便に分けまして、最近の利用客の推移をお伺いしたいと思います。
  269. 荒井正吾

    ○荒井説明員 お答え申し上げます。  徳島空港の関係路線といたしまして、徳島―東京、徳島―大阪は、それぞれ日本エアシステムによって運航されておりますが、六十三年度の輸送実績、徳島―東京線で五十四万九千人、徳島―大阪線は三十九万八千人でございまして、合計で九十四万七千人でございます。対前年度の伸び率は約一割を超えておる状況でございます。今後とも利用客全体としては伸びる見込みがあると思っております。
  270. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 徳島―東京便が七十万人を超えるのはいつごろと見込んでおりますか。
  271. 荒井正吾

    ○荒井説明員 全体といたしまして、ここ一年の傾向でございますが、一割を超える伸びが各路線ともございます。徳島―東京もそのような状況でございます。今五十四万人でございますので、ここ数年のうちにダブル化の基準でございます七十万人に達する、順調にいきますればそのようになると思います。
  272. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 確かに徳島の飛行場はなかなか客席がとれないという悩みがあるわけですね。私も毎週地元を往復しているわけでございますが、なかなか予約が難しい状態です。特に東京―徳島便、今A300が五便のうち三便たしか就航していると思いますが、これを全部A300にしてもらいたいという要望が地元からかなり強くあります。これについてはどういうふうな考え方を持っておられますか。
  273. 荒井正吾

    ○荒井説明員 今、東京―徳島便につきまして、通常でございますとA300は二便でございます。御存じのようにA300は二百八十席ございまして、もう一つの機材でございますMD81が百六十席ぐらいでございますので、込んでまいりますと大型機の導入が望ましいと考えております。このように需要が伸びますと、できるだけ大型化をしてほしいということをエアラインの方には要望しておりますが、会社の方としまして、なかなか機材が入りにくい状況が現在世界のマーケットの方で続いておりまして、会社の方の機材繰りの事情等ございますので、いろいろ工夫をして入れていただくというような状況に各路線ともなっております。
  274. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 ということは、運輸省としては、潜在的な需要は十分にある、あとは会社の努力である、こういうことですか。
  275. 荒井正吾

    ○荒井説明員 総合的に言いますと、そういうことでございます。
  276. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 それから、今地元ではターミナル地域の拡張整備、あるいは民間機専用の北側平行誘導路の建設が進んでいるわけでございますが、これはたしか平成二年度に完成予定と聞いておりますが、間違いなく完了いたしますか。
  277. 小坂英治

    ○小坂説明員 先生今言われましたターミナル地域整備の関連と北側平行誘導路の整備関係でございますが、ターミナル地域の整備につきましては、昭和六十三年度末までに一応の整備を終えまして、平成元年四月に供用を開始したところであります。しかしながら、一部移転補償等が完了していない民家等が残っておりますけれども、これにつきましては鋭意徳島県の方でいろいろと御努力していただいているところでございます。  また、北側平行誘導路の整備につきましては、これも一部未買収地がございまして、現在徳島県の方で地権者と代替地の取得を行っているところでございまして、いずれにしましても地権者の理解と協力が必要でございますが、今のところ、平成二年度末の完成を目途に鋭意整備を進めたいと考えておるところでございます。
  278. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 ターミナル地域の拡張整備には、一軒家が残っておりますね。それから北側平行誘導路の方は工場が残っていると思うのですが、これはやはり代替地等の手当てが必要ではないかと思うのです。これは県の仕事であると言ってしまえばそれまでですが、やはりこれは運輸省が少しリーダーシップをとってその辺はきちっと進めていく、こういう姿勢が必要じゃないかと思うのです。  ここで、平成二年度に完了して、平成三年四月一日には供用開始できる、このような決意であるかどうか、これを確認したいと思います。
  279. 小坂英治

    ○小坂説明員 お答えいたします。  私どもとしましては、地元の協力を得まして、ぜひともやり遂げたいというように考えております。
  280. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 それから、先ほど東京―徳島便は数年のうちに恐らく七十万の利用客になるのではないか、こういうような推定の話がありましたが、そうなるといわゆるダブルトラッキングの可能性が出てくるわけでございます。  確かに、競争の原理と申しますか、民間会社がダブルあるいはトリプルで入りますと、非常にサービスもよくなるし、また利用客にとっても大変好都合な問題点があると思います。それで、その時期になりましたらダブルトラッキングということは十分に考えられる、この見通しいかがであるか、これを確認したいと思います。
  281. 荒井正吾

    ○荒井説明員 各地で七十万を超えますと大体ダブル化を図るという競争促進政策をとっておりまして、現在まで、ダブル化を図りますと、いずれも競争によりましてサービスが改善されましたり、いろいろ好結果が出ております。したがいまして、そういう需要基準も一つの基準でございますので、達しましたら十分検討させていただきたいと思っております。
  282. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 それから、徳島―大阪便の方も大変込んでおりまして、今YSが就航しているのでございますが、このYSにかわる機材並びにジェット化に向けてどういうふうな基本的な考えであるのか。これは徳島―大阪便ばかりではなくて全国の問題でもあると思いますが、その辺を、徳島―大阪のような短い航路においてもジェット化というものは可能であるのかどうか。それから、いわゆるハブ空港ですね、大阪空港あるいは羽田等でジェットの乗り入れが十分な枠があるのかどうか。その辺も問題になろうかと思いますけれども、その辺についてはどういうふうな考え方を持っておりますか。
  283. 荒井正吾

    ○荒井説明員 大阪空港につきましては、ジェットの枠が一日二百枠ということでずっと推移しております。一方、YSの便がございますので、ここ三年ほどYSをジェット代替するということを進めてきておりまして、長距離路線から随時やってきております。来年度からは、短距離路線を対象にしてYSの代替を進める予定がございます。  一方、徳島―大阪便につきましては、先生御紹介のとおり現在十便YSが入っておりますが、輸送量が約四十万人ございまして、乗車効率も非常に高くて非常に込んでおりますので、今後YSの代替のジェット化とか、今、三年度、来年度の事業として対象路線として入ってくるものと思っております。
  284. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 あと、ただいま確認をいたしましたけれども、平行誘導路の工事が終了いたしますと、徳島飛行場といたしましてはハードの面での整備は一応終わるわけですね。そうしますと、今後は新しい路線をつくるとかあるいは増便ということが大きな課題になるわけでございます。徳島―東京便は今五便でございますが、これを増便する、あるいは新しく徳島―名古屋便をつくる、あるいは徳島―福岡便をつくる。あるいは、四国の島の中も大変不便でございまして、私もこの間松山に行ったんですが、松山に行く一番早いのは、徳島から大阪に一回行きまして、大阪から松山に行く、これが今一番早いのです。このようにいたしておりますけれども、これはできれば徳島から松山に行く直行便が欲しい、こういうふうな希望もあるわけでございまして、こういう意味での需要予測、これをしたことがあるのかどつか。  それからもう一つは、最近運輸省は地方空港の国際化ということをいろいろ言っているわけですね。国際空港がかなり、成田も大変でございますし、そういう意味地方空港を国際化しよう、こついうお話があるわけであります。徳島空港も時々チャーター便が、修学旅行のお客が飛んだりあるいは民間会社が見学旅行等で外国に出かける、こういう形で使っているわけでございますが、このチャーター便としての実績等を踏まえて国際化にどう対応するか、この辺の基本的なお考えを確認しておきたいと思います。
  285. 荒井正吾

    ○荒井説明員 まず最初の徳島から出る飛行機の路線の便をもう少しいろいろな方面によくできないかという御指摘かと思いますが、東京便につきまして羽田枠をどれくらい出せるか、大変枠が窮屈でございまして、今四苦八苦しております。今後いろいろな工夫を重ねていきたいと思っております。  そのほかの路線につきましては、例えば今先生おっしゃいました名古屋便だとか松山便だとかというのは、空港制約はそれほどございませんので、お客様があれば飛んでもらえるということでございまして、当方の免許関係でも、どうぞ飛んでくださいという姿勢でございます。問題は需要でございますので、その需要がどの程度あるかということを十分吟味して飛ぶということになろうかと思いますが、需要の見込み自身はなかなか難しい面がございますので、その点で若干慎重になる面もあろうかと思います。
  286. 長尾正和

    ○長尾説明員 お答えいたします。  地方空港の国際化の問題でございますけれども地方圏におきます利用者利便の向上でございますとかあるいは観光の振興、それから臨空産業の展開など地方都市の国際化を進めるというその見地、あるいはまた御指摘のように、我が国の基幹的な国際空港でございます成田あるいは大阪の空港能力の制約にもかんがみまして、運輸省といたしましてはこの地方空港の国際化ということを鋭意推進していくこととしておるところでございます。  徳島空港でございますけれども、国際チャーター便については必ずしも実績は高くはございませんけれども、今後具体的なチャーター便の計画が出てきますれば、徳島空港におきます受け入れ態勢が整うということを前提といたしまして、前向きに検討してまいりたいと考えております。
  287. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 そういうことで、徳島空港の利用客は今後だんだんとふえていく。それに伴いまして航空機の騒音というものも大きくなるわけでございますが、この徳島飛行場の騒音について運輸省はどう対応しますか。
  288. 松尾徹人

    ○松尾説明員 徳島空港につきましては民間航空機も利用しておるわけでございますが、防衛庁長官が設置、管理する飛行場ということでございますので、当空港周辺の騒音対策につきましては、防衛施設庁におきまして一括対応されておるところでございます。
  289. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 長官、今お聞きしたとおり、この共用空港の飛行場の騒音対策というものは、民間飛行機の騒音も含めて一元的に防衛庁が騒音対策を行う、これが国の基本的な考えであると私は思います。  そういう視点からお伺いしたいのでございますが、徳島飛行場の拡張に伴いまして周辺の住民に対する騒音対策、これはかなり進んでまいりました。確かに全国レベルでもトップレベルにある、こういう認識を私も持っておりますが、地元からも、W七十五地域におきましてもW八十地域と同じように全室最高五室ですか、この完全防音の追加工事の該当世帯は千六百二十一と聞いておりますが、これをぜひやってもらいたい。これをやっていただかないと、今後の徳島飛行場のいろいろな拡張に対して住民の理解が十分得にくい状態にある。地元町長さんあるいは県知事さんからのこういうふうな要請が恐らく施設庁の方にも通じていると思いますけれども、私は、防衛庁が管理す飛行場としては全国レベルの状況にあるけれども、やはりこういう民間の飛行機が今後も増大するんだという認識に立って積極的な防音対策をぜひやってもらいたい、こう強く要望したいのでございますが、長官、早くやっていただけませんか。お願いします。
  290. 石川要三

    ○石川国務大臣 今の御意見については、私もよく理解できます。その要望についても前向きの姿勢でやることを私も考えていきたいと思いますが、いろいろと予算的なこともお話をした方がよくわかるのじゃなかろうかと思いますので、きょうは施設庁長官もおりますから、どうぞひとつそちらからも答弁をさせていただき、よく御理解をいただきたいと思います。
  291. 松本宗和

    ○松本(宗)政府委員 事務的に私の方からお答えさせていただきます。  先生ただいま御指摘になりましたように、住宅防音工事につきましては、徳島空港は私どもが管理しております、管理といいますか防音工事を担当しております飛行場の中では、最も進んだ飛行場の一つでございます。  具体的に申し上げますと、住宅防音工事を希望なさるすべての方については、いわゆる新規と申しておりますが、一室、二室関係の防音工事は完了しておりまして、かつ、今追加工事という言葉を申されましたが、いわゆる複数の部屋についての防音工事でございますけれども、これも八十W以上の区域についてはほぼ完了しておるということでございます。  なお、七十五Wないし八十W、これについては実は現在まだ手がつけられておりません。全国的に今非常に急いでやっておりますけれども、また防衛施設庁といたしましても、基地対策の中では住宅防音工事を最重点事項として置いてございますけれども、何分全国的に非常に戸数が多うございまして、特に先ほどの御質問で厚木の問題もございましたけれども、そちらではまだこの程度までなかなか達していないというような状況もございますので、この辺御理解いただきまして、私どもなお一層努力はさせていただきますが、若干御猶予を賜らなければならないかと思います。
  292. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 それはよく承知した上で質問しておるわけでございます。  対象世帯が少ないわけでございますし、そんなにお金もかからないと思います。ただ横並びで、徳島は進み過ぎているからどうのこうのというお話はわかるのでございますけれども、今後の航空行政も全体的に含めまして、ぜひ格段の配慮を特にお願いを申し上げたい、こう強く要請をしておきたいと思います。長官、やってくれますか。
  293. 松本宗和

    ○松本(宗)政府委員 お答えいたします。  全国レベルを頭に入れまして、鋭意努力をさせていただきます。
  294. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 全国レベルを入れないでやってもらいたいんですけれどもね。  次の問題に入りたいと思います。  徳島飛行場に米軍のヘリが年間三十回ほど発着しておるということが報道されております。これは事実でしょうか。
  295. 米山市郎

    ○米山政府委員 そのような報道を、私もこの先生の本日の御質問に関連をいたしまして、報道につきましては読ませていただきました。私どもが進入管制及び飛行場管制等をやっているわけでございますが、その関係で米軍機の発着管制回数というものをつかんでおります。これは、昭和六十三年に四十回、到着、出発それぞれ二十回、合わせまして四十回ということでございます。それから、平成元年は到着、出発それぞれ七回の十四回という数字をつかんでございます。
  296. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 これはどういう理由で発着しているんですか。理由はわかりますか。
  297. 米山市郎

    ○米山政府委員 私どもといたしましては、管制機能の面からとらえておりますものですから、発着の理由等については把握はいたしておりません。
  298. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 これは日米安保の地位協定によると、何かトラブルがあったとか緊急避難的に着陸する、こういうことはどこの空港もいいようでございますが、住民が不安を持っておりますのは、こういうふうにしばしば発着をしておるということは、何か徳島飛行場の周辺で米軍が訓練をしているのではないか。飛行場がいわゆる訓練区域にされているのではないかという不安を持っているわけですね。そういう不安を解消する意味でも、過去に発着したのはそれぞれ、こうこうしかじかの理由である、これは明確にする必要がある、このように思いますが、どうですか。
  299. 森敏光

    ○森説明員 米軍の飛行を含めまして米軍の運用の詳細につきましては、私ども承知する立場にございませんので、ただいま御答弁がございましたように、私どもとしては、いかなる理由で徳島空港を使用しているか等については承知しておりません。
  300. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 それはおかしいと思うのでよ。米軍が来まして、自衛隊の飛行場にいわゆる不時着といいますか、定期的に発着してない、しかもその自衛隊の飛行場は米軍と一緒に使うという話にはなっていない。こういうところに飛来しているわけでありますから、それがいかなる理由によるものであるのか、これは発着した事実があるということだけではなくて、この目的の確認をぜひしてもらいたい、そうでなければ住民の不安の解消のしょうがない、このように私は考えます。積極的に調査するべきではないですか。
  301. 森敏光

    ○森説明員 ただいま先生の方から御指摘ございましたように、米軍は地位協定の第五条の規定によりまして、我が国の飛行場に出入りする権利が認められております。御指摘の、米軍の航空機の徳島飛行場におきます離発着につきましても、この地位協定第五条の規定により認められている次第でございますので、私どもとしては、米軍の利用の目的等詳細については承知する立場にはございません。
  302. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 徳島飛行場というのは、訓練禁止区域ではないのですか。
  303. 森敏光

    ○森説明員 米軍は、安保条約の六条の規定に基づきまして、我が国において施設、区域を使用することが許されております。こういう目的で我が国に米軍が駐留するということをその条約が認めているということは、こういう目的を達成するために、訓練等を含めまして軍隊としての機能に属する諸活動を一般的に行うことを当然の前提としております。具体的に訓練の禁止等の規制はございません。
  304. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 もう一点確認をしたいのですが、徳島県の県南部、那賀郡丹生谷地方と言われるところがあるのですが、そこで米軍機と見られるジェット機が低空飛行をしておる。これに対して外務省にも問い合わせが県知事あるいは県議会議長の名前で行っていると思いますけれども、この低空飛行した物体は間違いなく米軍機であるかどうか、まずその確認をしたいと思います。
  305. 森敏光

    ○森説明員 本年二月、徳島県の方から私どもの方に、同県の山合いで米軍機と思われる航空機が飛行を行っているということで、これが米軍機であるかどうかということにつきまして照会がございました。私ども即刻米軍の方に照会をいたしました。その結果、米側よりは、徳島県におきましてミッドウェーの艦載機が飛行訓練を行っているということはあるという回答を得ております。
  306. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 県に口頭で回答されたというふうに私も伺っております。ことしの三月二十六日ですか、   米側より個々の飛行について確認することは困難だが、米海軍ミッドウェー艦載機A6等が徳島県において、飛行訓練を行なっているむね回答してきた。   米軍にとってパイロットの技能の維持向上等は日米安保条約の目的の達成のため、きわめて重要であるところ、本件飛行訓練についても、右目的達成のため重要な訓練であると承知してる。 こういう確認を口頭で徳島県に回答したということだと思いますが、その際問題なのは、低空で飛行するところに問題があると私は思うのです。低空飛行ということは、いつ落ちるかわからないという不安を住民は持っています。住民の生命と財産を守るということは非常に大事でございまして、この安全性のために外務省は米軍に対してきちんと申し入れをすべきである。この申し入れをいたしましたか。
  307. 森敏光

    ○森説明員 先ほど申し上げましたとおり、米軍が安保条約の目的の達成のために必要な訓練を行うということは、特段の定めがある場合は認められるわけでございますが、他方で、先生御指摘のとおり、米軍が飛行活動を行うに当たりましては公共の安全に妥当な考慮を払うべきことは当然である、かように考えております。これまでも飛行の安全確保あるいは住民への影響を最小限にとどめるよう米側に対して申し入れをしてきているところでございます。徳島県からの要請がございました、その要請の趣旨を踏まえて私どもも米側に申し入れをしておりますし、本日の先生の御指摘を踏まえて今後とも米側との間で適切に対処していきたい、かように考えております。
  308. 池田行彦

    池田主査 遠藤君、時間が参りましたので……。
  309. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 はい、わかりました。  最後に長官に確認だけさせてもらいますが、今お聞きのように、徳島県におきましても、徳島の飛行場に米軍のヘリコプターが着陸をしたり、あるいは徳島県の上空を低空で米軍の飛行機が飛来をしておる、飛行訓練を行っている、こういう事実があるわけでございまして、徳島県民は大変不安を持っております。日米安保条約というのは、やはり日本国民の理解と安心がなければ、日米関係というのはうまく機能しないわけでございまして、そういうふうな不安解消を積極的に米軍にも理解を求めるという姿勢を堅持してもらいたい、このように要請をいたします。  最後に、長官の決意を聞いて終わりたいと思います。
  310. 石川要三

    ○石川国務大臣 いろいろと政府委員から答弁のありましたような法律に基づいてやっているわけでありますから、これ自体にストップをかけることはなかなか難しい面もあろうかと思います。しかし、先生の御意見のように、やはり安全ということはもう最大限に優先して考えなければなりません。不安もまた除去することに努力をしなければならないわけでありますので、今御指摘のような姿勢といいますか、スタンスはこれからも堅持していきたい、かように思います。
  311. 池田行彦

    池田主査 これにて遠藤和良君の質疑は終了いたしました。  次に、古堅実吉君。
  312. 古堅実吉

    古堅分科員 那覇空港が、民間専用化への県民の願いとは逆に、年々自衛隊の基地として強化されるという方向にございます。特に今年度計画されているp3Cの那覇基地への配備は、いよいよ沖縄海上自衛隊が米軍のシーレーン防衛戦略を本格的に補完する新たな段階を意味しているというふうに考えておりますし、その問題に関連して質問をいたします。  最初に、自衛隊那覇基地へのP3C配備についてですが、メモしてください。一つ、配備の時期、二つ、今年度の配備の機数、三つ、将来の配備機数、四つ、P3C配備に伴ってどういう施設ができるか、五つ、P2J部隊とP3C部隊では要員はどれだけふえるか、その五点についてまとめてお答え願いたい。
  313. 日吉章

    ○日吉政府委員 お答え申し上げます。  防衛庁は、現在那覇基地にございますP2Jの減耗に伴いまして、逐次P3Cへの代替更新を進めていきたいと考えているわけでございますが、これは現在全国的に防衛庁がP2Jの基地として持っております厚木、八戸、下総、鹿屋、これらの基地と同じように、これらの基地の計画に引き続きまして平成二年度から那覇基地にP3Cを配備するということでございます。したがいまして、時期といたしましては平成二年度に予定をいたしているわけでございます。  それから、配備の機数でございますが、私どもといたしましては、平成二年度当初におきましては約十機程度予定いたしておりますが、今後この機数をどのようにするかという点につきましては、今のところ計画を立ててございませんで、未定でございます。  それから、P2JからP3Cに配備機種を変えることに伴いましてどのような設備が必要かという点でございますが、それにつきましては、p3Cのための格納庫、それからP3Cの持っております機器を有効に利用いたしますための陸上施設としてのASWOC施設、これが主要なものでございまして、これらを整備したいと考えております。これらとの関係におきまして、既に昭和六十三年度からこれら関連する施設の整備に着手いたしておりますが、現在御審議をいただいております平成二年度におきましては、ASWOC用の送信所施設等の整備を計画させていただいております。  それから第五項目目の、P2JからP3Cに配備がえになるに伴いまして要員がどれだけ増加するという点でございますが、これにつきましては、突然お尋ねでございましたので、ちょっと調べさせていただきまして、後ほどお答えさせていただきたいと思います。
  314. 古堅実吉

    古堅分科員 厚木や八戸のP3Cの配備が二個飛行隊であります。約二十機規模。那覇のP3Cの今後の配備ですが、まだ未定だということなんですけれども、当初配備されると今説明がありました十機にとどめようというお考えなのか、それとも、今後さらに二個飛行隊とかいうことで増強についての計画もあられるのか、もう一度確かめておきたい。
  315. 日吉章

    ○日吉政府委員 ただいま委員が御指摘になられましたように、厚木、八戸につきましては約二十機の計画を進めておりますけれども、お尋ねの那覇につきましては、先ほどもお話し申し上げましたように、まだ将来どうするかという確たる計画を持ち合わせておりません。したがいまして、今後のP3Cの運用状況等によりまして検討していきたい、かように考えております。  なお、P2JからP3Cに配備をかえるに伴います要員の増員でございますが、増加人数は約二百五十名を見積もっております。
  316. 古堅実吉

    古堅分科員 那覇飛行場へのP3Cの配備は、配置される予定の十機でとどめるということについての方針が確認されているということでもないわけですね。
  317. 日吉章

    ○日吉政府委員 お尋ねのとおり、十機で将来もいくというように決めているわけでもございせんで、これは全く未定でございます。
  318. 古堅実吉

    古堅分科員 米下院軍事委員会に提出された公式資料、これはマスコミが報道しているものでありますけれども、米海軍当局が提出した資料でございます。米軍の海外基地の閉鎖計画を示しておりますけれども、その中で嘉手納のP3Cの撤去の考えを打ち出しております。これは自衛隊那覇基地へのP3C配備がなされることによって米軍の肩がわりが本格化するために打ち出された、そのようにも受け取れますが、将来、米軍嘉手納基地のP3Cを撤去する可能性についてどう見ておられるか。
  319. 日吉章

    ○日吉政府委員 先ほどもこれに関連いたしました御質問をちょうだいしたわけでございますが、私どもも昨夜御指摘のような報道があることを承知したわけでございます。しかしながら、これは米行政府が公式に発表したというようなものではないと理解いたしておりまして、私どもも正式には何も承知いたしておりません。ただ、そこに書かれておりますのは、嘉手納基地内に所在する米海軍関係の施設というふうに理解できます英語の表現でございまして、したがいまして、これが嘉手納基地内の米海軍のP3C施設あるいはP3Cの基地機能を閉鎖するということを意味するのかどうかということは、私ども全くわかりません。なおかつ、この報道そのものが正確なのかどうかもわからないというのが事実でございます。
  320. 古堅実吉

    古堅分科員 それでは前に進みます。  P2JとP3Cでは、航続距離がP2Jで二千三百マイル、P3Cでは三千五百マイル、索敵能力、情報解析能力で格段にP3Cの方が上であります。鹿児島県鹿屋基地には既にP3Cが十機配備されております。鹿屋部隊は東シナ海、那覇P3C部隊は東京からグアム方面の南東シーレーンと大阪からフィリピン方面の南西シーレーンに囲まれた扇形の海域を主として担当するということになるのではないかというふうに考えられますが、どうですか。
  321. 日吉章

    ○日吉政府委員 P3Cが配備されている基地は、ただいまお尋ねのように何カ所かございますけれども、それぞれの行動範囲をただいまお尋ねのように確と定めているわけではございません。
  322. 古堅実吉

    古堅分科員 こういう説明でありますが、今質問いたしたような、そういうことになる可能性もございますか。
  323. 日吉章

    ○日吉政府委員 防衛庁が保有しております装備の運用は、そのときの状況に応じましてできるだけ効率的、弾力的に対応できるようにする必要がございますので、委員ただいまおっしゃられましたような形で運用するというふうにしかと定めるわけにはまいらないと思いますし、現在そのような定めをいたしてもおりません。
  324. 古堅実吉

    古堅分科員 それではお尋ねしますが、バシー海峡以南の今指摘した太平洋海域の哨戒もする、それは否定できない方針ではありませんか。
  325. 日吉章

    ○日吉政府委員 海上自衛隊におきましては、P3Cによりまして日本周辺の哨戒、監視活動をいたしておりますけれども、太平洋側におきましてはおおむね三百海里程度、日本海側におきましては百海里ないし二百海里程度の範囲内で行動をすることにいたしております。
  326. 古堅実吉

    古堅分科員 那覇基地から展開するP3C一個飛行隊を同時に指揮コントロールするためにつくられるのが送受信所だというふうに理解しております。送信所が本部町豊原に、受信所が国頭村伊地にそれぞれつくられようとしておりますけれども、用地の取得状況はどうなっておりますか。
  327. 大原重信

    ○大原政府委員 お答え申し上げます。  受信所は国頭村に、送信所は本部町に建設する計画でございまして、昭和六十三年七月から国頭村及び本部町に対し、施設の概要等を説明させていただきまして、理解と協力を求めてまいったものでございます。  受信所用地は、国頭村の伊地区の民有地約二十ヘクタール、村有地約十ヘクタールを予定いたしまして、現在民有地につきましては賃貸借契約を締結し、また村有地につきましても、村当局の御理解を賜りまして、測量及び設計を進めているところでございます。送信所用地は、本部町豊原区の旧本部補助飛行場跡地の一部約三十二ヘクタールを予定地といたしまして、現在地権者の約八八%、面積にいたしまして約九〇%の土地について賃貸借契約を締結いたしまして、他の土地についても契約交渉を現在進めているところでございます。  本施設はP3Cの運用に必要不可欠な施設でございますので、今後とも地権者、自治体等、地一の方々の御理解と御協力が得られますように懸命に努めてまいる所存でございます。
  328. 古堅実吉

    古堅分科員 それぞれの施設はいつ建設される予定なのか。さらに、本部町豊原に予定します送信所は八八%の契約がなされておるということなのですが、その範囲で施設は可能なのか、それだけでもつくるという方針なのか、そこらあたりを明らかにしてほしい。
  329. 大原重信

    ○大原政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御理解と御協力を賜っていない部分につきまして、鋭意努力してまいります。
  330. 古堅実吉

    古堅分科員 私が質問をしているのは、八八%の契約が達成されておるのだが、それでも施設は可能なのか、あるいはその範囲で施設はつくるという方針なのかというのが質問です。
  331. 大原重信

    ○大原政府委員 お答え申し上げます。  再度の御答弁になると思いますが、現在八八%でございますので、あとの一二%につきまして、今鋭意努力をいたしている段階でございますので、その段階を見まして考えたいと思います。
  332. 古堅実吉

    古堅分科員 再度質問しますが、八八%では予定している施設はつくれないというふうに理解してよろしいですか。
  333. 大原重信

    ○大原政府委員 お答え申し上げます。  八八%の御理解を得た段階でその施設が建設できるかどうかという点につきましては、まだいまだ私どもは検討いたしておりません。
  334. 古堅実吉

    古堅分科員 第五航空群のP3Cが入手する潜水艦情報は、この対潜作戦センター、そこで分析されるのですか。
  335. 日吉章

    ○日吉政府委員 P3Cみずからが機上におきまして分析し得る能力のある部分もございますが、今お尋ねの、地上の対潜作戦センターの方に送りまして、そちらの方で総合的に分析をするというような部分もございます。
  336. 古堅実吉

    古堅分科員 第五航空群のP3Cが入手した情報は、沖縄米軍にも提供されるのですか。
  337. 日吉章

    ○日吉政府委員 これは、あくまでも我が国が、我が自衛隊、海上自衛隊が収集したデータ、資料でございまして、これが沖縄に駐在する米軍に当然に提供されるというようなものではございません。  ただ、日米間におきまして、安全保障条約等も締結している同盟関係にある中でございますので、情報につきましては、このP3Cが収集した情報も含めて情報一般はそのときの状況に応じて、必要性に応じ交換あるいは提供することもあり得ると思います。
  338. 古堅実吉

    古堅分科員 今までもそういう情報は、その他のP3Cのつくられた情報としてずっと提供してきたのですか。
  339. 日吉章

    ○日吉政府委員 事防衛に関します情報の事柄につきましては、具体的に申し上げるのは事柄の性質上いかがかと思いますので、こういうような形で得られた情報につきましては、一般論として日米間において交換されることがあり得る、かつ、それは当然ではないかということでございまして、具体的にこれまでP2JあるいはP3Cで収集いたしました情報をどう処理したかということについては、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。
  340. 古堅実吉

    古堅分科員 重ねて別の立場からお伺いするのですが、提供することがあり得るということは、これまでもそうしてきた事例に照らしての説明でもあろうかと思うのですが、どういう形態で情報を提供するのか。例えば幹部が出向いていってやるのか、電話でやるのか、磁気テープのようなものを持っていってやるのか、そういう具体的なものについてお尋ねします。
  341. 日吉章

    ○日吉政府委員 情報交換の具体的な方法につきましては、その情報の内容あるいは形式等によりまして区々に分かれると思いますので、今お尋ねのような問題につきまして具体的にお答えすることはできかねるところでございます。
  342. 古堅実吉

    古堅分科員 嘉手納の米軍対潜作戦センターと那覇の自衛隊対潜センターの間で連絡体制がつくられるのではないかと思われますが、どうですか。
  343. 日吉章

    ○日吉政府委員 御質問意味が必ずしも私、正確に把握できているのかどうか自信がございませんが、いずれにいたしましても、米軍基地と我が自衛隊の基地との間で何らかの連絡体制あるいは連絡方法があり得るということは当然なことでございますが、それ以上のお尋ねということになりますと、これは御質問趣旨も十分理解でき得ませんので、お答えできないところでございますので、御容赦いただきたいと思います。
  344. 古堅実吉

    古堅分科員 那覇基地につくられる対潜作戦センター、そこに米軍の方から出向いていって何らかの形で自衛隊とのかかわりを持つ、そういう関係もできますか。
  345. 日吉章

    ○日吉政府委員 対潜センターであるがゆえということではございませんで、一般的に自衛隊の基地と米軍の基地との間で、それぞれそこに配置されております人間が、必要に応じて往来があるということは自然なことであろうと思います。
  346. 古堅実吉

    古堅分科員 一般的なものについて否定していませんが、私が尋ねているのは対潜作戦センターにかかわるものです。自衛隊と米軍との関係で、そういう交換があっても不自然ではないということなのですが、これは対潜作戦センターとの関係においても、そういうことがあり得るということを意味するわけですか。
  347. 日吉章

    ○日吉政府委員 お尋ねの趣旨を正確に理解していないのかもしれませんけれども、米軍と自衛隊との間で緊密な連絡をとる必要がある以上、対潜センターも含めまして、必要に応じましてそれに対応する米軍の米軍人との間で連絡があるということは当然のことではないか、かように考えております。
  348. 古堅実吉

    古堅分科員 対潜作戦センターに米軍が来る、そういう関係があり得るということは否定していません。そういう面で理解します。  那覇自衛隊基地に新たに三つ建設が計画されている弾薬庫のうち、一つは海上自衛隊用というふうに言われますけれども、新たに配備するP3Cに対応したものではありませんか。
  349. 日吉章

    ○日吉政府委員 那覇基地に現在建設を計画しております弾薬庫でございますけれども、これは海上自衛隊にとどまらず航空自衛隊等も含めまして、広く当該基地に配備されている部隊の任務を十全に遂行するために必要な弾薬類を貯蔵するための火薬庫が従来から極めて不足しておりました関係上、今回那覇基地に火薬庫を建設するということでございます。  したがいまして、今回新設されます弾薬庫には、P3Cの配備に関連する弾薬も当然保管されることになりますけれども、P3Cの配備に直接関連してこれを整備するというものではございません。
  350. 古堅実吉

    古堅分科員 P3Cが配備されるので、弾薬庫としてそれだけでは間に合わなかったものを、それに合わせて増設するという意味合いは持たないのですか。
  351. 日吉章

    ○日吉政府委員 ただいまもお答え申し上げましたように、そもそもこの周辺におきます弾薬庫が極めて不足している状況にありましたので、それを整備するというのが今回弾薬庫を整備する目的でございます。その際、その整備されました弾薬庫の中に当然P3Cで必要となります弾薬も格納したい、収納したいということでございます。
  352. 古堅実吉

    古堅分科員 自衛隊基地としての那覇基地全体として見た立場からも、さらに今回P2JからP3Cに変わっていく、そういうことにも照らして、自衛隊の立場から那覇基地を一層強化していくということになると受けとめておられるかどうか、そこをお尋ねします。
  353. 日吉章

    ○日吉政府委員 私が先ほどから申し上げておりますように、P3Cの配備そのものが現在配備されておりますP2Jの損耗に対処するものでございますし、それから現在計画をいたしております弾薬庫の建設は、そもそも弾薬庫の所要量に対しまして極めて不足している、著しく不足している、その不足の状態を改善したいということでございまして、これら一連の事柄は、那覇基地を強化しようという目的ではございませんで、那覇基地の機能を十全に発揮できるような体制を整えたいということでございます。
  354. 古堅実吉

    古堅分科員 機能の面から見ても、これまでよりは強化されるということは認めますか。
  355. 日吉章

    ○日吉政府委員 あるいは言葉の表現の問題かもしれませんけれども、私どもは、従来から那覇基地に期待をしております機能が十分に発揮できるような体制を整えたいということでございまして、従来から那覇基地に期待をしておりました機能そのものを、さらに目標を高めるというようなことを目的としているわけではございません。
  356. 古堅実吉

    古堅分科員 P3Cの那覇配備は、米軍から要請されている南西、南東に囲まれたシーレーン作戦を遂行するものと思われます。言いかえれば、米軍の核戦争に米軍の目となり耳となって参戦する体制を強化するものだというふうにも受け取れます。そのために民間専用空港という県民の願いが一層踏みにじられる、そして那覇基地のP3Cへの配置がえに伴い一層米軍の戦争政策に日本自体が組み込まれる可能性が強まる、そういうふうにも理解します。こういうことは、那覇空港の民間専用化を求めて切実な訴えを展開し続けてきた沖縄県民の立場から、許せるものではありません。  同時に、あの沖縄戦の体験を経て、戦後四十五年たった今日もなお戦場さなかの状況に置かれている沖縄県民の戦争の体験に照らしても、二度と戦争への道につながるという、そういう施策や施設が強化されるということについても、絶対認めるわけにはまいりません。那覇空港の民間専用化という県民の切実な願いに照らして、このP3Cの配置と那覇基地の一層の強化への方向に対して断じて認めるわけにはいかない、そういうものは直ちにやめるべきであるということを表明して、質問を終わらしていただきます。
  357. 池田行彦

    池田主査 これにて古堅実吉君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして防衛庁についての質疑は終了いたしました。     ─────────────
  358. 池田行彦

    池田主査 次に、沖縄開発庁について質疑の申し出がありますので、これを許します。玉城栄一君。
  359. 玉城栄一

    玉城分科員 沖縄開発庁長官にお伺いいたしますが、今月、沖縄県の方で沖縄振興開発計画、一一次振計についての総点検報告書というのを発表しているのですが、これはいろいろな研究課題、そういうものを網羅しまして相当分厚い報告書なのですが、長官もごらんになったと思いますけれども、いかがでしょうか、お伺いいたします。
  360. 砂田重民

    ○砂田国務大臣 事務的に沖縄開発庁に県から提出されたと伺っておりますが、まだ私自身が目を通すところまでいっておりません。
  361. 玉城栄一

    玉城分科員 局長、ごらんになりましたか。
  362. 藤田康夫

    藤田政府委員 沖縄県から点検の結果について報告書はいただいております。  ただ、先生御案内のとおり、点検自体は、県も点検いたしますし、私どもも現在総点検の最中でございまして、それぞれの立場から点検を進めていく、こういう体制になっていることは事実でございます。
  363. 玉城栄一

    玉城分科員 では、今沖縄開発庁が総点検している進捗状況と申しますか、それはどういうふうになっておりますか。
  364. 藤田康夫

    藤田政府委員 開発庁といたしましては、一つは昨年からつけていただいております総合調査費一億九千万に基づいて、当庁だけではなく各省にもお願いしまして総合調査をいたしておるのが一つでございます。  それともう一つは、私ども、これまで沖縄振興開発について事務的に仕事を進めてまいってきておりますので、その結果、十八年間これまでやってきたこと、事務的にどういう結果にあるか、現在それぞれの担当の段階で事務を進めておる段階でございます。夏ごろまでには何とか取りまとめをいたしたい、かような方向で現在事務を進めております。  それから沖縄振興開発審議会でございますが、総合部会に専門委員会を設けまして、ここにおいてもこれまでいろいろなテーマを決めまして四回ばかり審議を進めてまいっておりまして、これも夏ないし秋口までぐらいに一定の方向を出したい、検討をさせていただきたい、この三本柱で現在総点検と申しますか、今までの振興開発について検討を進めておる、こういうことでございます。
  365. 玉城栄一

    玉城分科員 沖縄の第三次振興開発計画、いろいろ準備しておられますけれども、今非常に沖縄で関心の高まっている問題は、大臣もおわかりのように米軍基地の返還問題ですね。いわゆる米軍基地が返還される、返還されてその跡地をどう利用するか、また地主、いわゆる地権者に対する地料とかそういうもののいわゆる補償体制は大丈夫なのか、あるいはまた基地が返還されますと、そこに働いている日本人従業員、いわゆる基地の雇用員の削減もそれ相応にあるいは並行して出てくる可能性もあるわけですが、その辺の雇用問題というようなさまざまな問題があるわけです。  ですから、返還された土地の跡利用、沖縄振興開発上どう位置づけて今後三次振計の中に織り込むことが――さまざまな問題が出てくるわけですが、大臣としてどういうふうにこの問題をお考えになっていらっしゃいますか。
  366. 砂田重民

    ○砂田国務大臣 この問題は、やはり第一義的には市町村が中心になって、米軍施設区域、その整理縮小が実現をいたしました後の土地の利用計画というのは、地方自治ということの本旨を踏まえましても、やはり市町村が中心になって地元住民や土地所有者の意見を十分にしんしゃくの上で跡地利用計画を策定されるべきもの、かように考えております。ただいま積極的に、県もこの問題を市町村に対して指導をしておられるように伺っているものでございますから、土地利用計画というものがまとまってまいりますことを期待をいたしているものでございます。  地元の住民や土地所有者の意見を十分市町村がしんしゃくしておられるその段階で国が口出しをすることは、やはり地方自治の本旨から避けるべきことではないか。指導しておられる県から助言を求められれば、当然それに御協力するのは一つもやぶさかではございませんけれども、やはり市町村が中心になって跡地利用計画をお取りまとめになる、そして開発庁としましては、この跡地利用計画が固められましたものについては、沖振法に定められております高率の各様の補助による事業、これを導入してまいることに積極的に御支援をしていく、従来も既に返還されました軍用地についても同様な事業をしてまいったわけでございますから、今後もそのようにしてまいりたい、かように考えているところでございます。
  367. 玉城栄一

    玉城分科員 土地の返還された跡地の利用については、当然県なり市町村なりが、地域の問題ですから独自に意見も聞きながら作成する、これは当然だと思うのですが、それはそのとおりで結構なんです。問題は、返還される段階で地権者、いわゆる地主、例えば普天間飛行場ですね、あれは地主が約二千名ぐらい、それで年間地料が約三十一億、こういう地料の問題。例えば普天間飛行場に例をとりますと、宜野湾市が今長官がおっしゃるように、利用計画をつくる。もし仮に、普天間飛行場がいつの時点で返還されるかわかりませんが、しかし、今の空気からすると、もう春の終わり、夏の初めとかという話もありますし、あるいはそのとおり返ってくるのかどうかまだ定かではありませんけれども、いずれにしても、跡地の利用計画はまだされてないですよ。それで、もしこれが返還された場合に、地料とか復元補償とか、そこにいる基地従業員は、もし一緒に削減されると、これはどういうふうになるのでしょうか。
  368. 藤田康夫

    藤田政府委員 玉城先生がお尋ねの件は、跡地利用に至るまでの地代の問題あるいは基地で働いている従業員の雇用の問題がどうなるか、こういうことについてのお尋ねかと存じます。  直接所管をいたしておりますのは、それぞれ防衛施設庁ということになろうかと思います。こういうことを役人言葉で申し上げて恐縮でございますが、私どもの役所の性格から申し上げまして、その返ってきた土地の跡をどう利用していくのか、私どもはこれに主眼を置いて、先ほど大臣から御答弁申し上げておりますとおり、地元でしっかりした跡地利用計画をつくっていただきまして、それに合った事業がございますなら積極的に土地改良事業ないし区画整理事業、そういったものを採択して対応してまいりたい、かように考えておるところでございます。
  369. 玉城栄一

    玉城分科員 いや、そこなんですよ。ある意味では、沖縄開発庁は非常にずるいと申しますか、とにかく米軍基地は地位協定によって政府が提供します。それで、もう要らないから返還される。返還の時点において、米軍は復元補償も何もする必要はない、条約上そうなっていますね。そうすると、その土地をいわゆる地権者から借りて米軍に提供したのは防衛施設庁ですよね。だから、その復元補償とか、まさか飛行場をコンクリートのまま返されたってどうしようもないのですから、これはもちろん防衛施設庁がやる、それも本当にそういう責任、ちゃんと制度上の補償があるのかどうか、それが一つありますね。  今度は沖縄開発庁、沖縄振興開発を担当していらっしゃるわけですから、今おっしゃる跡地の利用とかそれはみんな合意がされる必要があるのですが、何もきちっとしていない、国の方針も制度もないのですよ。ですから、そこを今きちっとしなければいかぬということをお伺いしているわけですが、そういう流れになっていますので、返還されますね。返還されるのは結構で、それを要求してきたわけですから。その跡をちゃんと地権者、いわゆる地主もちゃんと今までの、例えば今さっき申し上げましたような二千名の方々が年間三十一億というものをもらっている、あるいはパイプライン、これも早晩返されるということですから、大体六億ですか、こういうものがいつまで地主にちゃんと補償されるようになるのか、その辺はどうなんでしょうか。
  370. 藤田康夫

    藤田政府委員 先生、例で申し上げて恐縮でございますが、先生御案内のとおり、那覇の牧港のハウジングエリアがございまして、かなり人家があき出してから相当の期間があったかと思っております。返還の時期をどうするか、いつ地主に返すか、これは一つに防衛施設庁の御判断かと思っておりますが、それがやはり問題は地代の問題なり、いろいろな問題に関連しておる事柄かと思いますが、牧港の住宅地につきましては、跡地につきまして、現在、地振公団が乗り出しまして、土地区画整理事業をやらせていただいております。開発庁といたしましては、その観点から、私どもは沖縄振興のために力を出させていただく、かような役割の役所でございますので、御理解を賜りたい、かように考えておるところでございます。
  371. 玉城栄一

    玉城分科員 役所の役割もよくわかりますけれども、今までのお話を伺っていますと、利用計画はちゃんと地元で考えてください、そのとき何か相談があればこちらも助言はしますという程度じゃ、この問題は済まないのですよね。御存じのとおり、今、世界的には冷戦終えん体制ということで、沖縄の基地についても、チェイニー国防長官も議会に対して、沖縄を中心にして五、六千名を削減する、基地も返還するというような話が出てきていますから、早急にやはり政府として、開発庁としての方針を決めていただかないと、この地主あるいは軍雇用員、みんな不安がっているわけですね。これは、よかれあしかれ基地経済というものも沖縄には現実にあるわけですから、そこで沖縄県も苦慮しているわけです。  そこで、今までの流れですが、昭和四十七年十二月の沖縄振興開発計画において、「大規模かつ高密度に形成され、しかもその多くが地域開発上重要な本島中南部地域に存在しており、那覇市を中心とする中南部都市圏の形成に影響を与えているので、開発をすすめるうえで、できるだけ早期にその整理縮小をはかる必要がある。米軍施設・区域の転用にあたっては、」「総合的な土地利用の観点に立って具体的施策を検討する必要がある。」として、軍用地の整理縮小の促進、転用、軍用地跡地の有効利用をその基本課題として、沖縄県は当時打ち出したわけですね。  そして、昭和五十年十二月に、軍用地の利、転用にかかわる県の基本的な考え方や姿勢を示した沖縄県軍用地転用基本方針を当時沖縄県は策定したのですね。  内容は、この問題は戦後処理の一環として国の責任においてちゃんと解決してもらいたいということ、また二番目に、転用に際しては、地主の意向を尊重し、他の計画との整合性を確保しつつ、地域特性に基づく利、転用を行うことを基本理念に、県、市町村がそれぞれ転用基本計画を作成して、軍用地跡地を積極的に活用する、したいということを、県は方針理念みたいなものをつくっている。  ところが、国は何の方針もないのですね。いわゆる沖縄の軍用地というのは、県とか市町村が何も好きこのんでやったことでなくて、国と国の関係ででき上がってきたものですから、それはある面では無理やりというか、そういうことで、政府が土地を借りて米軍に提供してきたわけですからね。  さて、これがいざこういう情勢になってきて、返ってくるとなりますと、どこかどうもあいまいなんですよね。ちゃんとした復元補償もあるのか、あるいはいつまでの期間、地料に相当するものを地主は補償されるのか。その跡地利用についてのいろんな、さっき長官、高率補助を適用してというお話もありましたけれども、どうも一貫した国の方針がないものですから、今地主の方々は非常に不安がって、いやもう返還されると困るという意見も大分出てきているわけですね。はっきりした国の方針がないということですね。  昭和五十三年十一月に、沖縄県が、二十四条から成る、沖縄県における軍用地の転用及び跡利用促進に関する特別措置法県案の要綱を作成して、昭和五十三年十二月二日、当時の沖縄県知事が政府に要請をしたわけです。これはもう御存じのとおりですね。  ところが、昭和五十五年五月五日に、沖縄県のその方針が、軍転特措法の立法化を断念という意思表示で、方針転換したわけです。その方針転換のときには、沖縄開発庁のそんなこと無理だよという話が県にあって、そういう転換をしたというふうに聞いているのですが、そのとおりですか。
  372. 藤田康夫

    藤田政府委員 突然の御質問でございますので、そのときの経過、私つまびらかではございませんが、現在のところ、沖縄県の考え方につきましては、先ほど大臣から御答弁申し上げておりますように、地元の市町村が地方自治の本旨に従って、地主とか関係住民の意見をいろいろしんしゃくして計画をつくっていく、それを指導していく、こういう方針と伺っております。
  373. 玉城栄一

    玉城分科員 いや、それは先ほどから伺っていてわかりますが、この際、沖縄開発庁がこれをきちっと制度化して、あるいは立法措置が必要なのかも含めてきちっとしたものをつくっていただく、これは早急にやっていただかないと混乱するばかりだと思うのですね。  そこで、お聞きになっていただきたいのですが、そういうこともありまして、沖縄県の方では、沖縄振興開発特別措置法、沖振法の中に、軍用地跡地利用促進のための特別措置という制度を一章設ける、いわゆる沖振法改正といいますか、追加一章、そういう特別措置の制度を入れるべきである。  その内容は、一つは、軍用地の返還計画、いわゆる整理縮小、二番目は、軍用地の返還方法の特例に関する条項、三番目は、軍用地跡利用計画の策定に関する条項、軍用地跡利用基金に関する条項、地方債の特例に関する条項、国有財産の譲与等に関する条項、その他必要な特別措置事項として、土地区画整理事業における施行の特例、軍用地の返還方法の特例というのを一章にまとめて沖振法に追加をして、この米軍基地の返還に伴う問題を制度的にきちっと補償すべきだと沖縄県は考えて、このようなものをつくった。ところが、沖縄開発庁は、それはだめだ、そういうことはできないということで、さたやみになっているというふうに伺っておりますが、どうですか。
  374. 藤田康夫

    藤田政府委員 先生お話しの点につきましては、私ども沖縄県からそういう話を聞いたことは、今の段階ではございません。  ただ、先生御指摘のいろいろな方針がございました、整理縮小の基本方針等の規定あるいは地方債の特例等々、いろいろな財政措置に関する規定を入れてはどうか、立法化したらどうか、こういうお話でございます。  駐留軍の軍用地の整理縮小等の方針に関する問題につきましては、これは私どもの庁の仕事ではございませんので、私コメントするのは差し控えたいと思いますが、跡地利用の促進につきましては、従来から、先ほどから大臣が御答弁をしてまいっておりますように、具体的な利用計画は、固められたものにつきまして、これは振興法で定めております高率の国庫補助によります土地改良事業あるいは土地区画整理事業で努めてきておるところでございまして、そのほか、主要な公共施設に関する事業についても、振興法にそれぞれ必要に応じまして高率の補助が定められておるところでございます。  その裏負担につきましても、用地費を含め、起債の対象となるところでございまして、したがいまして、現行制度の効率的運用で今の段階では十分対応できるのではないか。したがいまして、直ちに立法化する必要はないもの、跡地利用の部分についてはそう考えておるところでございます。
  375. 玉城栄一

    玉城分科員 局長さんがおっしゃるのは、きちっと跡地利用ができて、さて区画整理事業をこれから用意ドンで始めます、それにはこういうお金が必要だから高率補助を適用するということだと思いますが、例えばさっき申し上げました普天間飛行場が今年なり来年なり返る、そしてその跡地利用について地域住民のコンセンサス、地権者のコンセンサスも含めて、いつできるのかもはっきりしない、例えばこれが二、三年延びた場合に、地主さんは、従来の軍用地利用といいますか、沖縄ではそう言っていますが、これはそれまでちゃんともらえるという保証はありますか。同時に、ここは飛行場ですから、復元補償も含めてちゃんと保証はありますか。
  376. 藤田康夫

    藤田政府委員 玉城先生、繰り返しになって恐縮でございますが、地主の地代の問題、それは返還時期、いつ返すかという問題とも絡む問題でございまして、防衛施設庁のお仕事かと思っております。そういうお話があることは防衛施設庁の方にも御連絡は申し上げますが、先ほどから繰り返して申し上げておりますように、私どもといたしましては、跡地の利用というのを本来の任務といたしております役所でございますので、従来そういう方法でやってきたということを申し上げ、さらにうまくこういう方法でやっていくということにとどめさせていただきたい、かように考えておるところでございます。
  377. 玉城栄一

    玉城分科員 そこで、長官、高率補助というお話がたびたび出ますけれども、この高率補助はいつまでありますか。ずっと延長されますか。
  378. 藤田康夫

    藤田政府委員 振興法でございますので、平成四年の三月三十一日までの時限立法になってございます。  この問題をどうするかということでございますが、これは当然三次振計と絡む問題でございまして、現在総点検等を実施いたしておる段階でございます。この総点検及び当然のことといたしまして沖縄振興開発計画、この原案提出権は県にあるわけでございまして、県の意見というのが大きなポイントになろうかと思います。県の意見等も判断しながら次期振計というのは検討していかれるものと考えておりますが、その中に、当然のこととして現在の沖縄振興開発計画をどう扱っていくのか、こういう問題が出てこようかと考えております。
  379. 玉城栄一

    玉城分科員 ですから、返還された基地の跡地利用について、ちゃんとできて、これだけの資金手当ても必要だ、それには高率補助も適用するとおっしゃいますが、その高率補助は一応形は平成四年で切れる。これはずっと続いてもらわぬと全然成り立ちませんね、今の返還地の跡利用がきちっと実現されるにはですよ。だから、これはどうしてもやっていただかなくちゃいかぬ問題ですね。  もう一つは、返還時点において、防衛施設庁の担当だとおっしゃいますが、だからその辺が非常にあいまいで、空白が起きる可能性もあるんですよね。ですから、長官、その辺をどうしても、防衛施設庁とも合議されて、これは私見ですが、特別立法ということで制度化をきちっとすべきではないか、あるいはさっき申し上げました沖振法の部分改正ですか、その中できちっと制度的な補償をすべきではないか、そういうふうに考えるのです。これはきちっと制度化しないと、今のお話だと、高率補助があるからというだけの問題じゃいかぬわけですね。この米軍基地の返還された跡地の問題、それと、先ほど来申し上げました日本人従業員問題等、つまり雇用問題にも関係します。沖縄は失業率も高いわけですからね。だから、その辺をどうしますか、国の方針。制度、法制化が必要なのか、法制化するならどういうふうに位置づけするのか、あるいは議員立法でやってくれという意味なのか、やはりその辺の政府の考え方もちょっとお聞きしておきたいのです。
  380. 砂田重民

    ○砂田国務大臣 お話のお気持ちは私もよくわかります。御心配になっている点は、私どもの沖縄開発庁が所管をいたしております職務というものはきちっと線が引かれているわけです。総務局長はその範囲でお答えしているわけでございますが、玉城委員の御心配は、そこへ行くまでの空白が生まれはしないか。防衛施設庁の所管のところではないだろうか、そう私は考えるわけでございますから、そこの点は防衛施設庁にも私どもの方から一遍連絡をとっておきたいな、こう考えます。  そして、三次振計というお話でございますが、今二次振計の残された二年間に全力投球していこう、同時に、並行して総点検を行っているところでございまして、県もまた二次振計の総点検をやられまして一応の報告書をまとめられたわけでございますけれども、ポスト二次振計にどういう計画を持つかということについては、原案はやはり県知事が作成されることになっております。県からポスト二次振計についての具体的な県知事案というものがまだ明示されていない、ちょうどそういう時期でございます。知事からこの御提案がありましたときに、政府としてはそれを受けて関係各省の間で協議していくわけでございます。その上でポスト二次振計、第三次振計というものをつくるとすればどういうものをつくるか。ですから、知事の提案がない今の段階では、政府内では公式に三次振計という言葉はまだないわけでございます。  今おっしゃいました沖振法を延長するか、延長だけでいいのか、中を何か少し改正するのか、これも、知事からのポスト二次振計の、沖縄振興計画の進め方についての原案の御提示をいただいてから、各省間で、それこそ私どもが中心になってまとめていくことでございますので、ちょうど今その端境期といいますか、そういうときにあるものですから、三次振計をどういうものでつくるとか、あるいは特別措置法をただ延長するだけなのか、どういうところを改正するのか、まだ明確なお答えができない、ちょうどそういう時期でございます。  ただ、言えますことは、残された二年のこの二次振計を精いっぱい努力して執行していく、これは開発庁も県も同じように考えているところでありますし、総点検もまた双方でやっておるわけでございますから、この総点検の作業を進めながら県との協議を進めて、知事さんも原案作成に協議をしつつおまとめになるものと期待をしているわけでございます。  一言つけ加えさせていただきますならば、沖縄開発担当大臣としては、三次振計が政府内でまとまりますことにひとつ力いっぱい働いていこう、こういう私の決意は変わっておりません。
  381. 玉城栄一

    玉城分科員 時間が来ましたので最後に一言、大臣の誠意については高く評価もしており、本当に感謝もしておりますが、この米軍基地の返還問題は、三次振計できちっと位置づけなければいかぬ非常に重要な問題です。といいますのは、御存じのとおり、沖縄というのは、基地の中に沖縄があると言われるぐらいに、七五%という状況ですから、重要な場所は全部基地にあって、それが振興開発に障害になっていることも御存じのとおりですからね。それがいよいよ返ってくるという御時世に今なりつつあるわけですから、その受け入れ方を、国としてもきちっと制度的に補償してあげないと、地主も含めてこれは大変です。今まで日米安保体制ということで協力もしながら自分の土地を提供して、貸してきて、返される段階になると何か不安でしようがない、こういうことでは無責任だと私は思いますので、ひとつよろしくお願いします。  終わります。
  382. 池田行彦

    池田主査 これにて玉城栄一君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして沖縄開発庁についての質疑は終了いたしました。     ─────────────
  383. 池田行彦

    池田主査 次に、総務庁について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。外口玉子君。
  384. 外口玉子

    外口分科員 社会党・護憲共同、外口玉子でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  実は、私、去る四月十九日の社会労働委員会におきまして、保健医療福祉サービスに従事する人たちの育成と確保について質問をさせていただきました。そこでは、政府の言われる「高齢者保健福祉推進十か年戦略」を初め、高齢化社会への対応としてのもろもろの施策、制度を生かしていくためにはマンパワーの確保が緊急かつ重大な課題であることを確認した次第です。席上厚生大臣はその実現に向けての並み並みならぬ決意を表明されましたことを、私ども大変に心強く存じております。  しかし、我が国の経済が一定の好景気を保ち続けている現在、医療福祉以外の一般企業の労働条件の改善は進められていっております。こうした傾向が強まれば強まるほど、本来的に人手を必要とする医療福祉の分野においてはますますマンパワーの確保が困難になってくる事態が生じるわけでありまして、今後のマンパワー需給の見通しについて私は大変に危惧している次第です。  さて、こうした国内外の昨今の情勢から、医療福祉分野に人材を得るためには、改善すべき条件の重要課題として労働時間の短縮、完全週休二日制の早期実現が挙げられますが、この問題につきまして、関連各省庁の方々の御見解をお尋ねいたしたいと存じます。  まず、人事院の方にお聞きしたいと思います。  公務員の労働時間短縮の実施に当たっては多面にわたる懸念があったにもかかわらず、八九年一月から土曜閉庁方式による四週六休制に踏み切ったことは私どもも大変に評価しております。そこで、例年八月ごろに勧告を行っておられますが、今年度においても労働時間短縮に向けての人事院による指導、各官庁との調整に期待するところ大なのですが、この問題につきましてさらに一歩進めていくための人事院のお考えをお伺いいたしたいと存じます。お願いいたします。
  385. 大城二郎

    ○大城政府委員 労働時間の短縮を進めるに当たりまして、やはり完全週休二日制の実現というのは非常に大きな要素になるという考え方を持っておりまして、私どもは、昨年、一昨年夏の報告、勧告の時期におきまして、国全体の労働時間短縮計画の期間内における速やかな実現を目指すということで、完全週休二日制の方向を進めてきているわけでございます。そういう方向の中で、そのための具体的な条件整備を進めていくということが非常に重要であるという認識に立ちまして、昨年の夏の時点で交代制等の勤務者に対しまして週四十時間制の試行を行う等の提言をいたしまして、そういう方向を進めてきているところでございます。今後におきましても、そういう方向に沿ってできるだけ速やかに完全二日制への実現に向けて積極的に取り組みを進めていきたいというふうに考えております。
  386. 外口玉子

    外口分科員 引き続き御尽力くださるということですので、ぜひとも御尽力いただきたいと思います。  次に、交代制職場で週休二日制に向けて四月から週四十時間の試行に入っておりますが、しかし、まだ試行にさえ入れない職場があるようです。特に、交代制職場の本体であります病院のことについて、このまま積み残しされてしまうことを私は大変に心配しております。とりわけ女性の夜勤労働が不可欠である病院職場におきまして、長時間労働が放置されたままでは働きやすい職場とはならない。このような慢性的人手不足の悪循環を断ち切るためにも、関係機関と協議して円滑に試行ができるように条件整備を早急に進めてほしいと願っております。病院についてはどのように進めていこうとされているのか、具体的にお伺いしたいと思います。
  387. 大城二郎

    ○大城政府委員 病院についての試行の進め方ということでございましたけれども、病院につきましては、現在までのところ、施設ごとに非常にさまざまな事情がありまして、なかなか試行に入ることが難しいというふうに聞いております。しかし、私どもの考え方といたしましては、試行というのは具体的に実地に即して問題点を把握し対応策を検討するというところに意義があるというふうに考えておりますので、そういう意味では試行に向けての具体的な計画づくりをそれぞれの職場において考えていただく、いろいろ工夫をしていただく、そういうことを関係のところと協議をしながら進めていこうということを考えているわけでございます。そういう意味で、いろいろ個々の職場において非常に困難な状況があるということを伺っておりますが、私どもとしてはできるだけ円滑に試行に入れるようなお話し合いを進めていきたいというふうに考えております。
  388. 外口玉子

    外口分科員 具体的に病院においても試行に入れるように努力したいというお考えだと受けとめてよろしいでしょうか。
  389. 大城二郎

    ○大城政府委員 そういうことでございます。私どもとしても最大限の努力を傾けてまいりたいと考えております。
  390. 外口玉子

    外口分科員 ただいまの人事院のそのような考え方を受けまして、その管理担当部局としての総務庁は、その具体化に向けていつごろどのように始めようとお考えなのでしょうか。交代制職場をも含めて、今後の対応について具体的にお聞かせいただきたいと思います。
  391. 勝又博明

    ○勝又政府委員 国家公務員の時間短縮、完全週休二日制につきましては、御案内のように、本年四月から交代制等職員の週四十時間勤務制の試行を開始したところでございます。今後は、その試行の実施状況であるとかあるいは土曜閉庁の定着状況などを見きわめながら、一方においては民間におきます週休二日制の普及状況あるいは国民世論の動向などを考えながら、交代制勤務職員の四十時間勤務制を含め、我が国民の時短、完全週休二日制について検討していくべきものというふうに考えております。
  392. 外口玉子

    外口分科員 ただいま総務庁から全体についてのお考えをお聞きしましたけれども、この病院職場についてより直接的な指導責任を持たれている厚生省の方に幾つかお尋ねいたしたいと思います。
  393. 矢野朝水

    ○矢野説明員 この週四十時間の問題ですけれども、私どももこれはぜひ試行に入りたいということでいろいろ検討したわけでございます。ただ、実施に当たりまして、現行の予算定員の範囲ですとかサービスを低下させないとかいろいろ条件がございまして、そういう中でぎりぎり考えた結果、やはり問題が多い。例えば看護婦さんにとりましても、そういう週四十時間で勤務割りを組むということが現実問題としてできない、こういう実態があるものですから、残念ながらことしの四月一日試行は見送らざるを得なかった、こういうことでございます。  それで、今後の条件整備ということでございますけれども、勤務時間短縮というのは非常に結構なことですが、そのために公務員がどんどんふえるということですと、これまた国民の理解を得られないということで、現行の体制でやれないかどうかということでとことん自助努力が必要だ、こう思っております。例えば、業務委託できるようなところは業務委託をするとか、あるいは効率の悪い病棟がありますとそういうのを集約することによって人手を生み出すとか、いろいろそういう工夫が必要だ。ただ、それだけによって週四十時間制がとれるとかいいますと、これまた非常に難しいと私どもは見ておりまして、そういった場合には、予算とか定員問題を含めまして関係省庁にいろいろお願いしていかなければいかぬだろう、こう思っております。
  394. 外口玉子

    外口分科員 ただいまのお話の中の委託につきましては、サービスの質の低下を防ぐという観点から幾つか今後検討しなければならない問題がありますが、それはまた社会労働委員会で検討させていただきたいと思います。  厚生省の方にもう一度お伺いしますが、一般公務員は試行しているのに国立の病院では試行にさえ入っていないという実情について、四週五休のときには実施できたのに今回はどうして見送られたのか、それはどういうような理由によるものなのかということについてお伺いしたいと思います。
  395. 矢野朝水

    ○矢野説明員 四週五休から四週六休、それで今回四週八休というぐあいに進んでおるわけですけれども、四週五休のときには特段対応策を講じるということもなく何とかやれたわけです。ただ、四週六休のときにはいろいろ問題がございました。それでいろいろ創意工夫をいたしまして、例えば土曜日の予約制を徹底させるとか、省力機械をいろいろ入れるとか、コンピューターを入れるとか、そういう努力をしたわけでございます。ただ、病院にはいろいろな職種の方がいっぱいおりまして、ボイラー技士ですとか調理員という方についてはどうしても勤務割りが組めないということでございまして、非常に残念だったのですけれどもやむを得ざる措置として賃金職員を採用するということもやりまして、何とか実施にこぎつけたということでございます。
  396. 外口玉子

    外口分科員 ただいま、日米構造協議を持ち出すまでもなく、大変に労働時間短縮についての社会的機運というのは高まりつつありますが、国が率先して実施に踏み切っていくという時期をどうも逸してしまうのではないかという懸念がありますが、その点について、具体的な取り組みの姿勢についてもう一度お伺いしたいと思います。
  397. 池田行彦

    池田主査 どちらから答弁してもらいますか。総務庁からですか。
  398. 外口玉子

    外口分科員 いいえ、厚生省からです。もう一度厚生省の方にお願いします。
  399. 矢野朝水

    ○矢野説明員 労働時間短縮というのは今世界的な日本の公約にもなっているようでございますけれども、私どもは、そういうこともさることながら、現に現場を持っておりますので、職員の処遇をよくすることによって優秀な人を確保しなければいかぬ、それでまた医療の質を高めなければいかぬ、こう思っておるわけでございまして、そういう点からいいましても、ぜひこの労働時間の短縮には一生懸命取り組んでいきたいと思っております。
  400. 外口玉子

    外口分科員 私が入手いたしました「社会保険診療報酬の改定の概要」の中にも、厚生省は、「社会全体の労働時間短縮の動向(四週六休制の普及)等を勘案して、看護料の引上げを行う。」というふうに明記されております。したがって、労働時間短縮を実現しなければならないと考えておいでのことと思いますけれども、民間病院をも含めて、病院全体についての見解をお聞かせいただきたいと思います。
  401. 澤宏紀

    ○澤説明員 民間病院も含めた医療機関全体ということでございますけれども、医療機関におきます週休二日制の実施につきましては、地域におけるその医療機関の役割及び患者さんのニーズ等を考慮して各医療機関において創意工夫を行い、労働時間の短縮に向けて検討を進めていただく必要があろうかと考えております。
  402. 外口玉子

    外口分科員 ただいま、地域における事情をかんがみて、地域における役割を踏まえてというお話でございますが、それぞれの地域の事情に合わせて、例えば条件整備一つとして、各地域ごとに休日夜間診療体制あるいはまた救急医療体制の拡充が必要な条件であると考えています。厚生省が提案した地域医療計画の第二次医療圏の充実を進めていく上でも、職員の労働条件の整備が必要と思います。この二点についてお伺いしたいと思います。
  403. 澤宏紀

    ○澤説明員 地域の医療機関で週休二日制をとられる場合に、患者サービスの低下を来さないように努力しながらやっていただきたいと思うわけでございますけれども、先生おっしゃられますように、医療計画の中で救急医療体制の整備を図りながらとか、あるいは各医療機関の連携をとりながら、そのような観点で週休二日制が実施されることが望ましいというように考えるわけでございます。
  404. 外口玉子

    外口分科員 そうしますと、かなり各地域の事情に応じてというような今厚生省の方のお考えですので、自治省の方に御質問申し上げたいと思います。  ただいま厚生省の方のお考えをお聞きしましたけれども、これからの病院における労働時間短縮の推進に当たっては、もちろん国がリーダーシップをとるべきなのですけれども、それぞれの地域において住民とのコンセンサスを得る努力をしながら自治体病院がどのように取り入れていくかということが国全体が労働時間短縮を進めていく上で重要な要素であると私も思いますが、自治省の方のお考えをぜひ伺いたいと思います。
  405. 谷本正憲

    ○谷本説明員 地方公務員の交代制等職員の週四十時間の勤務制の試行でございますが、これにつきましては、私ども、国に準じて実施をされるように、去る平成二年の三月十六日付でございますが、行政局長の通知で既に指導をいたしておるところでございます。御指摘のいわゆる地方公共団体の公立病院におきます交代制等職員につきましても、この通知の趣旨を踏まえまして、地域住民の十分な理解を得ていただいた上で、所要の条件整備が整った団体から基本的には速やかに試行に移していただきたい、それが望ましいというふうに考えておるところでございます。
  406. 外口玉子

    外口分科員 ただいまの平成二年三月十六日付の通知の中に、「各省庁の試行計画については、その内容をおって連絡する予定であるので、試行の実施に当たっては、それらを参考として試行計画を策定すること。」とございますが、この具体的な内容についてお伺いできますでしょうか。
  407. 谷本正憲

    ○谷本説明員 先ほど申し上げました行政局長通知の中では、国に準じてということでございます。これは、週四十時間勤務というのを試行していくためには国とのバランスということも当然私ども考えていかなければなりませんので、そういうことで国に準じてということで通知を流したわけでございますが、国家公務員の方の交代制等職員の週四十時間勤務制の試行計画、これはそれぞれの各省庁が人事院と協議をして試行計画を策定をして、それに基づいて試行を行うというふうなことになっておりますが、私ども仄聞するところではまだ協議中のところもあるというふうに聞いておりますので、まだ私どもとしては国の試行計画の内容につきましていわゆる地方公共団体に文書で連絡を行うというところまでは立ち至っていないわけでございますけれども、国のそれぞれの協議状況を見ながら、私ども関係機関とも調整をさせていただいた上で、取りまとめが終わり次第これを参考資料として送付をするという考えであります。
  408. 外口玉子

    外口分科員 平成二年四月十八日付の「地方公共団体における週休二日制・土曜閉庁の実施状況」というのを見ますと、既に多くの自治体では土曜閉庁方式に基づく週休二日制が実施されているようです。ただ、幾つかの病院では先駆的に試みておりますが、この現状をどのように把握され、今後この先駆的な試みを踏まえて他の病院職場にも普及していく用意があるのかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
  409. 谷本正憲

    ○谷本説明員 御指摘のように、土曜閉庁につきましては、昨年の一月自治法の一部改正法が施行されまして、私ども指導をいたしておるところでございますが、平成二年四月一日現在でこのいわゆる土曜閉庁の条例を制定しております団体、あるいは実行に移しております団体が大体七四%弱というところまで進んでおります。そういう意味では、私ども、極めて順調に推移をしておるのではないかというふうに考えております。  ただ、先ほど来議論になっておりますように、いわゆる交代制等職員が勤務する職場におきましては、さらに完全週休二日制へ向けましては週四十時間勤務が避けられない、とりわけ交代制動務職場ではそれについていろいろな工夫をしなければならないということで、国におかれましてもそれをまず試行ということで問題点の把握なり検討をしようということで四月から試行に入られるということでございますので、私ども、各自治体の方でそういう交代制動務職場に勤務しております職員の方々につきましては、国に準じましてそういう週四十時間勤務の体制に移行すべく、国に準じて試行をお願いしておるということでございます。
  410. 外口玉子

    外口分科員 ただいま国に準じてということですが、先ほど厚生省の方の御意見も伺いましたが、国と歩調を合わせていてはどうも実現できないのではないか、率先して自治省が自治体病院から先駆的な試みの病院の経験を踏まえて進めていただけないだろうかと考えますが、いかがでしょうか。
  411. 谷本正憲

    ○谷本説明員 先ほど厚生省の担当課長の大変難しいというふうな御答弁があったわけでございます。私どもも、それぞれの自治体病院、それぞれの地域の実情によって恐らくいろいろ対応が異なってくるであろうと思います。ただ、基本的にはそれぞれの地方公共団体がそれぞれ自主的に判断をされましてこの週四十時間勤務に向けての試行にお入りになるということでございますが、そのためには、やはり地域住民の理解というものが必要でございますし、行政サービスに急激な変化を来すというようなことがあってはならないということでございますし、また、これは国の機関との均衡というものを十分念頭に置いて対応していかなければならないものであろうかというふうに私ども考えております。
  412. 外口玉子

    外口分科員 伺っていますと、特に交代制勤務の職場では国を初め自治体が積極的に努力していただかなければいけないと思うのですが、どうも消極的過ぎるように思うのです。その辺、関係諸団体との積極的な取り組みをぜひしてほしいと思いますので、その辺の御決意を伺いたいと思います。
  413. 谷本正憲

    ○谷本説明員 御指摘のように、いわゆる労働時間の短縮は当面の大変大きな政策課題の一つであるということは、私ども認識をいたしておるわけでございます。そういう見地から、地方公共団体につきましても、先ほど御答弁申し上げましたように、地方自治法を一部改正をいたしまして地方公共団体に係る休日制度の整備を図ったわけでございます。それを踏まえまして、土曜閉庁の仕組みを各地方団体にそれぞれ導入をしていただくべく御要請をしておるわけでございます。  これがさらに進んでまいりますと、完全週休二日制というところへ恐らく将来は移行していくのではないかなというふうに思われるわけでございますが、そのためには、交代制勤務の職場に勤めておられる職員の方々につきましても、それとのバランスから週四十時間勤務ということについてやはり検討していく必要がある。これは国も同様でございますから、その際には、それが果たしてうまくスムーズにいけるのかどうかということについて、問題点の把握なりそれを踏まえての検討を行うということで、この平成二年四月から試行に入るということでございますので、基本的な方向としては、いわゆる労働時間の短縮に向けて地方公共団体はそういう方向で取り組んでおるものというふうに私ども理解をしておるところでございます。
  414. 外口玉子

    外口分科員 ただいま将来的にはとおっしゃいましたが、今年度中に取り組みを具体的に開始していくという計画はおありでしょうか。
  415. 谷本正憲

    ○谷本説明員 今年度中というのは、いわゆる交代制動務の職場に勤務をしておられる職員に係る週四十時間勤務についての試行を今年度、これは国の場合も平成二年四月から六カ月の範囲内でということで試行を行うということでございますので、地方公共団体につきましても国のこの扱いに準じてそれをやっていただくようにということで、先ほど申し上げました行政局長通知でお願いをしておるところでございます。
  416. 外口玉子

    外口分科員 では、ただいまの答弁で、国と地方自治体とが一体となって労働時間短縮を促進していく努力をするというふうに私は受けとめましたが、それでよろしゅうございましょうか。
  417. 谷本正憲

    ○谷本説明員 先ほど来お答えを申し上げておりますように、当面の大きな政策課題の一つであるという認識をいたしております。そういう観点から、自治法の改正もいたしましたし、土曜閉庁制度の導入を地方公共団体にも私ども要請をしておるということでございますので、私ども地方公共団体に対しましては、そういう方向で取り組んでいただきたいということを今も要請しておりますし、今後もそういう要請をしてまいるということでございます。
  418. 外口玉子

    外口分科員 塩崎総務庁長官は以前から看護の労働については大変理解を示されている方で、看護仲間では夜勤の塩崎さんと言われるほど夜勤等の改善に大変尽力された方でもありますので、ぜひとも今回の労働時間の短縮についても関係各省全体の協議を進めて、医療福祉現場により人材が得られるように条件整備をしていってほしいと願う次第です。  最後に私の率直な気持ちを申し述べて質問を終わりたいと思いますが、従来の閣議決定方針の中で、労働時間短縮に当たっては、いわゆる三ない主義といいますか、定員増なし、予算増なし、サービスの低下を来さないということが言われ、方針として出されてきておりますが、これは本来成り立たない命題を掲げているというふうに私は考えております。日本政府がみずから人間の暮らしを優先する方向へと切りかえるべきこの転換期にありまして、医療福祉現場においてこそ早急な対応がなされる必要があると思います。病んだり老いたりしている人の傍らで仕事をする者が社会の中で大切にされ、ゆとりのある心でよいサービスを提供するための条件整備こそが今最も求められているのだと思います。それがまた医療福祉現場によい人材を得られる有効な手だてでもあると私は考えます。  本日質問させていただきましたのは、単に労働時間短縮の問題ではなく、そこに象徴されている私たちの社会の仕組みのゆがみを是正していく一つの切り口であると考えるから質問させていただきました。人が直接人を支えるという仕事、その仕組みづくりこそが今政治の課題として問われているのだと考える立場から発言させていただきました。これからも関係官庁の方の御努力をよろしくお願い申し上げたいと思います。  質問を終わります。ありがとうございました。
  419. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 今、外口委員の、看護問題と申しますか、病院におきますところの労働時間についての御心配の御発言がございました。私は、公務員全体の週四十時間労働を進めていきたい、週休二日の実現を図っていきたい、これはもう閣議で六十三年に決定されたところでございます。その中にもちろん看護職員も当然公務員の形で入っているところでございます。  今申されました定員あるいは予算、これは現行のままで試行するということは、生産性が上がったためにこのような労働時間のゆとりが出てきたというふうな考え方のもとでこの問題が出てきたとすれば、一応は確かに定員あるいは予算はそのままで考える、しかし、試行の過程において、そしてまた労働条件として果たして週休二日制がどのように労働条件の中に入って、そして例えば看護婦さんの応募に影響していくか、これらの問題も十分に見きわめて週休二日制を実現する方向で考えていかなければならない、こんなふうに考えておりますので、また御指導、御鞭撻をお願いしたいと思います。
  420. 池田行彦

    池田主査 これにて外口玉子君の質疑は終了いたしました。  次に、小森龍邦君。
  421. 小森龍邦

    小森分科員 それでは私の方から質問を始めさせていただきたいと思います。  私がお尋ねしたいと思っておりますことは、最近非常に悪質な差別事件が次から次へと惹起いたしますので、今日の我が国における社会情勢とその社会情勢の中で培われる人間の意識、社会情勢が差別的であれば当然人間の意識も差別的にならざるを得ない、そういう関係のものだと思うわけでありますが、総務庁とされては特に啓発が大事だということを最近打ち出されておりますので、啓発ということになりますと、人間の意識とか観念とか気持ちとか、俗に言う、総合的に言いまして心の活動、心的活動に対して取り組まなければならないわけでございます。社会の差別的存在というものと意識との関係をどのように把握をなさって啓発ということをお考えになっておられるか、まずこの点をお尋ねしたいと思います。
  422. 杉浦力

    ○杉浦(力)政府委員 先生この点大変な御専門家でございますので私が申し上げるのはどうかと思いますが、先生御存じの四十年の同対審の答申がございます。この中にも、心理的な差別、それから実態的差別という関連を説いておるわけでございます。私どもが現在までやってまいりましたのは、実態的な差別、こういったものをまずなくすということで、逆に言いますと、心理的差別にも影響がある、よい環境になっていくということもございまして、実態的な差別をなくすと同時に啓発にも力を入れさせていただいておるということでございます。
  423. 小森龍邦

    小森分科員 一番典型的な問題は、部落地名総鑑による差別というのが一九七〇年代の初頭にかなり大きな問題となりました。この部落地名総鑑というのは、明治以後の我が国社会にあって、近代化の方向が打ち出されているのにもかかわらず部落差別がなお温存され続けてきたその最大の要因は、近代化の方向をたどりながら部落の青少年特に青年労働者の労働力が近代産業に吸収されなかった、ここが一番大きな問題だということを御存じのとおり同対審は指摘をいたしておるわけでございますので、就職を意図的に阻もうとするそういう材料を流すということは断じて許されないことでございまして、我々が部落地名総鑑のこの差別事件を重視したのはそこにあるわけであります。  同対審答申が一九六五年に出されまして、そして特別措置法が六九年にできまして、政府がそういうふうな解決の方向に向かおうとして予算面では相当の投資もし、さらに地方自治体もこれに協力をしていろいろな取り組みをした、その時点でどういうわけで部落地名縦鑑のごとき我が国歴史にかつてなかったような悪質な事件が、それも一つや二つでなくて物すごい勢いで出てきたか、これを意識と実態との関係においてどのように把握をなさっておるでしょうか。
  424. 杉浦力

    ○杉浦(力)政府委員 部落地名総鑑につきましては、先生御存じのように大変遺憾なものでございます。政府といたしましては、あれが出ました当時、五十年代でございますが、これについては大変困るということで、当時は総理府でございましたのですが、総理府総務長官の談話を出して、こういったものは困る、そして関係省庁も、談話、あるいは企業等に対して、こういうものを使わないあるいは回収廃棄しろというようなことをさせていただいたわけでございます。したがいまして、こういうものが出てきたというのは、いわゆる自由、人権に対して大変な反乱と申すのですか、こういったものがまだあったということだと思っております。しかし、その後私ども啓発等一生懸命させていただきましてだんだんなくなってきておるかと思っておりますが、まだこれに類似する事件が若干起こっている事態がございます。これにつきましても、今後とも一生懸命啓発を通しましてなくすように努力したいと思っております。
  425. 小森龍邦

    小森分科員 少し大げさな言い方をしますと、人間の意識自体も、人間というものの存在の根底的事実にさかのぼって、つまり人間というものの実存的把握というものをしっかり行って、そして人間の意識というものが客観的な存在とどういうふうな絡み合いでいくか、同対審答申の言葉を使えば、実態的差別と心理的差別の相互因果関係、互いに因となり果となる相互因果関係、こういう分析になっておるわけでございますが、御答弁によりましても私はいま一つ総務庁の認識というものを十分に酌み取れないのでありますが、ある程度同和対策を進めていって、それが軌道に乗ったところで、なぜ歴史上かつてなかった部落地名総鑑のごとき事件が起きるのか、ここの分析がしっかりしないとまた認識が間違うのですね。  例えば、揚げ足を取るのじゃありませんけれども、先ほど審議官がおっしゃったのは、その後は大体うまくいっておってあとは啓発だ、こういう言い方でありますが、そうはいかないのです。これまたかつてない電波に部落地名総鑑の中身と同じようなものを乗せて不特定多数の者にばんぱん電波を送っておる、こういう事件が起きておりまして、法務省がよく物がわからずに部落地名総鑑の取り組みの終了宣言などをするということは、これは終了宣言をして、我々はどんどんやっていますよ、問題を片づけつつありますということを世間に宣伝しようと思ってやったのでしょうけれども、その舌の根の乾かないうちに、パケット通信というあの電波に乗せて部落地名総鑑と同じ中身がどんどん流される。それは大阪でも福岡でもあちこちでキャッチできる。  こういう状況になっておるのは、意識と実態との関係を相互因果関係だと同対審が指摘をしておることについて、関係省庁がいわば部落問題に対する認識論的なところを理論的にしっかり把握していなかった。理論というのは、実際の物事の行動を起こす場合には一種の羅針盤ですから、方針を打ち出すための基準になるわけです。ところが、それをやっていなかったから、同和対策審議会の答申が出、措置法ができてある程度予算も組まれてどんどん前に進むかに見えたときに都落地名総鑑が出てきた、こういうことだと思うのです。  そこで、どういう社会的な、つまり実態と心理との相互因果関係ですが、相互因果関係の実態側のどういう触発によってこういう事実が起きたか、ここのところをひとつ分析していただきたいのです。
  426. 杉浦力

    ○杉浦(力)政府委員 ただいまのお話につきまして私どもが今考えておりますのは、ある程度実態、環境がよくなってきた点、これに対する国民のうちのある一部の人が、逆差別というのですか、言葉は適当でないかもわかりませんが、ねたみとかあるいはこういった問題が若干あるということが一つの問題、それからもう一つは、相変わらずよくわからない、そういう差別という概念、考え方がよくわからないような人たちがまだ相当あるという、この二つだろうと思っております。私どもは、先ほど申し上げましたように、わからない人にはよくわかるようにし、そしていわゆるねたみのようなことを持っておるような人には、そういうことは全くないのだということを十分お知らせするような格好で啓発に取り組んでおるということでございます。
  427. 小森龍邦

    小森分科員 ねたみというのは、それはある程度よくなって、例えば大学進学率でも少し部落がよくなった、世間一般よりは、奨学金があるから、世間が一〇〇%ならば一〇二%になった、何で彼らが二%高い水準にならなきゃならないのかということで起きてきたねたみがねたみなのでありまして、世間は一〇〇%と見ると、六〇%か六五%しか到達してない。広島県の例で申し上げますと、大体県全体の大学進学率が三六、七%に対して都落の場合が一九%、一七%もその差はある。だから、それは百分比で一七%でありますが、双方の関係分析すると、六割か五割五分かぐらいしかいっていない。  ニューヨーク市内だけでの調査で、アメリカの白人と黒人の大学進学率がどの程度かということについて調査をしたものを読んだことがありますが、大体アメリカの場合がほぼ一四%の格差なのであります。私が押さえる数字が正確ではありませんけれども、一四パーというのは正確です。三八対二四と、こんな程度の、一四パーの開きであります。  しかし、広島県の部落の場合は、これでも東京文理大と広島文理大と、高等師範も東京、広島高師があったから、教育の伝統のあるところですよ。だから、高等学校進学率だって、しばらく東京に次いで広島は一位、二位を争った時期がございますね。今でも相当高い水準です。それでさえそういうことになっているときに、ねたみが起きるといったところで、例えば広島県の大企業に部落の者がどんどん入って、何で部落の者がどんどん入るのかということでねたみが起きるのならわかりますけれども、ほとんど門戸を閉ざされておって、それでねたみが起きるというのはどういうことでしょうか。
  428. 杉浦力

    ○杉浦(力)政府委員 ちょっと言葉の使い方が非常にまずくて先生に今おしかりを受けておるわけでありますが、そういう意味のつもりで言ったわけではありませんものですから。私が申し上げたかったのは、非常にだんだんよくなってきた、言葉は悪いのですが、今まで自分たちより悪い段階におられた方がよくなってきた、こういうのを見て、少し攪乱してやろうという意味でああいうようなのが出てきたのだろうと私は今申し上げたわけであります。ねたみとか、言葉の問題ではないつもりであったのでございます。
  429. 小森龍邦

    小森分科員 私とすれば、きょうは大臣もお聞きをいただいておりまして、また、最終的に多少見解も聞かしてもらいたいと思っているのですが、十分にお聞き取りをいただいておきたいと思いますのは、そういう部落問題というのが我が国社会にあって、瀬戸内海の波のさざ波程度の表面的、皮相的なものでないという理解をぜひこの問題の主管省庁である総務庁に私は持っていただきたい。  これは一口に言いますと、我が国の経済の発展が高度経済成長の時代をしばらく経験しました。そして、ようやく高度経済成長が、よい言葉で言えば安定成長あるいは低成長、こういう高度経済成長に陰りが来たときに、労働力と雇用の需要との関係で、企業がどうしてそこに一つの門を閉ざすか。その門を閉ざす場合に、まずどこから一番に手をつけるか。そしてその手をつけること自体が、どう見てもあれは部落なるがゆえにのけ者にされておる、こういうことになれば、土地カンのある者はみんな、ああ我々は部落に生まれなくてよかったなという、上見て暮らすな下見て暮らせの感覚で自己の置かれている状況に満足感を持つ、そういう心理的作用を持つのであります。  人間というものは、ある程度啓発してよくなるという性質も持っています。しかしまた、残念ながら、人間というものはちょっとしたことに触発されて悪くなるという性質も持っています。精神的に鍛えて鍛えて、理性的なものを養成して、社会の情勢が多少揺れてもその揺れには余り動かない泰然自若たる立派な大人物ができるのであります。  私は、部落地名総鑑の問題というのは、七〇年代の我が国の経済にようやく陰りが生じてこようかとしたときの産物であると思う。そういう時期に部落地名総鑑をつくれば売れる。これは利益ということに関しては動物的触覚でにおいをかいでいく、資本主義社会はそういう人間をつくりますけれども、要するにまさに動物的触覚とも思われるほどの、こういうものをつくったら大企業が買ってくれるだろうと思って、余り印刷費のかかっていないものを一冊何万円でダイレクトメールで送りつければ、すぐそれに飛びついて我が国のいろいろな大企業がそれを買う。こういう形になっておるのでありますから、社会の経済構造の根底的事実と、それから人間の持っているいわば人間なるものの存在の根源にさかのぼった心理と存在、心理と実態との相互因果関係ととらまえなければ、審議官、私は正直言ってちょっと心配ですよ。我が国の主管官庁が今のような答弁では私はちょっと心配ですよ。私の話を聞かれた後の審議官認識はどうですか。
  430. 杉浦力

    ○杉浦(力)政府委員 いろいろ言葉足らずの発言を申し上げまして大変申しわけないと思っておりますが、考え方は今先生のおっしゃったような社会的な問題ということで、そして表面的な話として先ほど私が話したような事態があったと私は思ったということで申し上げておりますので、基本的には変わってないのだろうと思っております。
  431. 小森龍邦

    小森分科員 わかりました。そういう認識で深く物事を掘り下げて対処していただきたいということをお願いを申し上げておきたいと思います。  それから、私は、きょうこの予算分科会皆さんに少しお願いをして、全部の分科会を回らしてもらっておるのであります。一日八分科会を今、回っておるのです。もう体力的にはふらふらになっていますけれども、なぜ私がそういうことをお願いをしたかといいますと、今の部落地名総鑑の例を出すと、その時点における我が国社会の経済の構造というか社会構造といいますか、そういうものと人間の根源的なあり方との絡み合いというものがその時期の差別事件を起こすわけでありまして、ではなぜ現時点でパケット通信が起きるのか、また、余り申し上げておりませんけれども、あれこれいっぱいあるのであります。それは例に挙げるとまた話が散漫になって、あと十分余りですから、私も十分に意を尽くせないからそういうことはもう話題に出しませんけれども。  それで結局今日の時点で、通産省に対しても私は申し上げましたし、他の省庁にも少しずつそういう問題を出しておきましたが、この部落問題というのは、なるほど人口の問題からいくと、昔から六千部落三百万と言われておる。しかし、その人口の数字は何かごろ合わせみたいな形で三百万が出てきておるようでありますので、部落の数は大体六千部落だろう。これは私は長らくの運動の経験でそう思いますし、また大正時代からの厚生省の調査などを見ても、一番多いときには五千七百というのが出ておるし、その次に五千三百というのが出ていますので、それでもみんなが部落を名のって出ることはないから、その五千七百とか五千三百の数字より多いだろうということは予測がつくのだ。だから、私は約六千部落だと思っています。  それで、つまりこの段階において六千部落の歴史的系譜から言うと、私の生まれてきたような立場の者がこの世の中で少し不利な目に遭うからこの問題を何とかしてください、こんなことを言っているのじゃないですよ。私はこれを各省庁にわかってもらおうと思って全部回ったのです。本来なら、これは同和対策審議会の答申が十分にのみ込めておったらわかるのです。同対審答申ではどう書いているかといったら、この問題は、人間の自由と平等に関する市民的権利の問題であり、基本的人権の問題であり、言うなれば人類普遍の原理だと言っているのですね。したがって、人類普遍の原理だというのは、はあ理論上人類普遍の原理かと思ってもらっては困るのでありまして、この問題を解決せずんば、我が国社会は幾ら表面を糊塗してうまくやっても根底的な問題は解決しないのであります。  私は、この間からもこの予算委員会の会場のあそこへ来てしばらく傍聴させてもらいましたし、あっちの方でうろうろしておるときにはラジオで聞きましたけれども、日米構造協議の問題がかなり議論されました。それで、日米構造協議の問題で、アメリカ自体は自分の直接的な利益を素材として、日本にいろいろなことをこうやってもらいたい、ああやってもらいたいという構造協議の中身を出しておるわけでありますが、私は、今申し上げましたように、社会の構造と人間の持っておる本源的、根底的事実というか根底的性質というものとの絡み合いからそれを見させてもらいますから、あの日米構造協議の中に随所に差別という言葉が出ていますよ。  先ほども通産省の方は、差別というのは、内外平等に物事の取引をしようじゃないかという意味ではないですかという話でありました。確かにそういう使い方のところもあります。しかし、問題は、差別とか不平等とか恣意的とか行政の自由裁量をもう少し規制しなければならぬとか、そういう書き方はいっぱいしていますよ。赤線を引いてみたらいっぱいあるのです。ということは、アメリカは、日本社会の根底的なところに気づいておるかどうかはわからないけれども自分らの利害から見て、どうも日本の社会の中に、あれほど高度な経済が進んでいる日本社会の中に、前近代的な不合理な、人間をいびつにする、そして、そのいびつにした人間を使って経済の表面的数量的繁栄を目指しておる国ではないのかということに気づき始めておるのではないかな、それを私はさっき通産省とも話したのであります。  しかし、私は通産省に対してそれを言うて、的確な返事をもらうことはできません。あの通産省よりも、例えばもっと人権に近いところといったら、まず法務省人権擁護局がありますし、同和問題の主管官庁といえば総務庁がありますし、さらに同和教育の問題で一番わからねばならぬ文部省もありますからね。だから、通産省に対して私は余り厳格な議論をいたさなかったのでありますが、これは、日米構造協議というものが、恣意とか不平等とか、行政の裁量をもう少し客観的にしなければいかぬのではないかという意味のことを書いていますが、そこらのところとの関係において、全般的に我が国に部落差別が存在してなおそれが解決しないような雰囲気ならば、随所にそういう問題が散らばっておるという見方をしていただかなければならぬと私は思うのですね。  だから、アメリカが自分の利益のために言っておることで、これは筋が通っておるところと、ちょっとおかしいなと思うところもあります。私は日本国民ですからどうしても日本のことをひいきに考えますから、どうもそういうふうに思うところもあります。しかし、アメリカが見て日本の前近代化なところが――前近代的という指摘はしてないですけれども、恣意とか不透明とか不平等とか規制がきつ過ぎるということですね。それは今回日米構造協議の問題が提起されて、国際的友好関係というもので真剣にそれを考えねばならぬ時期でありますから、塩崎大臣、この辺も、そういうところへ目を向けて、そして全体が我が国における前近代的なものを取り除くことに焦点が向き、しかもその中で近代化な人間にみんななっていく、こういう方策を閣内で他の省庁に総務庁長官という立場から働きかけていただければよいのじゃないか、こう思うのです。  だから、文部省で言いましたら、私がきょう文部省で指摘したのは、今から十年くらい前は学校の中で校内暴力が一番大きい問題だったのです。学校が荒れておる、学校が荒廃しておるのは校内暴力だった。しかし、私らの経験からすれば、あのときに校内暴力を余りがたがた言うたら、これは余計悪くなるぞ。があっと私らの胸ぐらつかんでくるような中学生はまだ迫力があって、おお、おまえ、そのくらいの気力があるんだったらもう少し勉強して文句言ってみい、こういう形で整理できるんだけれども、これが今度は、強い者にかかっていっておったのがだんだん弱い者いじめの方向に向かう、いじめの方向に向かっておったものが次第に全体的な雰囲気としては無気力、停滞になって学校に行かなくなる。きょう聞きましたが、小中学校で五十日以上休んでおる者が四万二千人。文部省に、じゃ三十五日とか三十九日はどうかと言ったら、その資料をつかんでおらぬと言うから、私の方から提示した。約四十万人。  そういうふうに世の中が随分いびつになっておるわけでありますから、そのいびつというのは、我が国社会が持っておる前近代性、具体的な現象でいえば部落差別にあらわれてくるような前近代性、これを解決しなければ、教育でも損をするし、国際関係でも損をするし、それは指摘すればさまざま。今建設省が言いましたよ。部落のところの堤防をうまくやっておらぬためにそれが切れて、部落だけが流れたのではなしに、広島県の三次市ですよ、人口四万の町が全部流れて、電気製品から何から全部水につかって大損したじゃないか。建設省だってそういうことが言えるのであります。そういうことでありますので、ひとつ大臣に十分にお考えをいただきまして、主管官庁でありますから、各省庁にその角度で働きかけをしていただきたい。ひとつ大臣の所信を聞いておきましょう。
  432. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 私は、同和問題、いわゆる部落差別の問題は、憲法十四条の基本的人権に関するまさしく重要な問題だ、こういうふうに認識しておりますし、この問題は、私どももう子供のころから大変悩んできた問題であることを深刻に感じておるものでございます。地名総鑑というようなものが出てきたことは大変残念な、どういう動機かわかりませんけれども、特殊な、不当不心得な者によって偶発的に出たんではないかというふうに申したらおしかりを受けるかもわかりません。しかし、本当に残念なことでございます。このようなことが二度とあってはならない、こんなふうに考えているところでございます。あの問題も、各省の努力と同時に、また同和団体の努力によって今収束しているように見えるわけでございますし、二度とあってはならない問題だというふうに考えているところでございます。  しかし、今、小森委員が言われましたように、日米構造協議の日本側がとるべき措置の中に見られる差別という言葉ですか、この問題は私はそこまで考えるだけの勉強をまだしていないと思っております。私ども日本人の心の中に、何と申しますか心理的な差別というものが潜在的にあって、これが部落差別に出るのみならず、アメリカとの貿易、経済交流の中に出るというところまで私は解しておりませんでしたし、解することもしたくない気持ちでございます。そして、私は、この同和問題は私どもの努力によって解決しなければならないし、また解決できる問題だ、こういうふうに考えているわけでございます。  自民党に入りまして二十年間、私は同対問題特別委員会でこの問題を勉強させていただきましたが、その当初に地名縦鑑の問題も起こったわけでございましたが、当時から比べましたらこの問題は、小森議員、そんな表現を使いますとまた批判があろうかと思いまするけれども、私は本当に前進してきた、改善の方向に進みつつある。しかし、まだまだ私どもは、特に心理的差別の問題についての解消を目指して努力を続けていくということは当然のことでありますし、私どものエネルギーもひとつここに投じていくべきである、各省に対してもこのようなことはお願いをして強く推進していきたい、こんなふうに考えております。
  433. 小森龍邦

    小森分科員 では、これで終了します。
  434. 池田行彦

    池田主査 これにて小森龍邦君の質疑は終了いたしました。  次に、小松定男君。
  435. 小松定男

    小松分科員 日本社会党の小松定男でございます。  総務庁長官に対しまして、まず差別問題の基本的な問題について大臣の所見を伺っておきたいと思うのです。  ただいまもちょっとお聞きいたしましたが、大変さまざまな形で差別問題が今なお発生をしております。このことは、もう今日まで一つ一つの事例も具体的に総務庁の方でもつかんでおるものと思いますけれども、あるいはまたわかってないものもあるかもわかりませんが、ただ、やはり今の憲法下においてこういう問題が、いろいろ今まで総務庁としてもあるいは政府としても、あるいはまたいろいろな団体においても努力をしたということは、言葉の上では一応出てくるのですけれども、なお一層この問題が深刻な問題になっているということについて、やはり新たな認識を持ってこの差別の解消に向かわなければならないんじゃないか。中には、差別のそうしたことによって大変な被害も受けておるし、またこのことは部落の人たちだけではなくて、私は、日本全国の国民としてこういう問題についてはもっともっと真剣に対処し、そしてまた取り組んでいかなければならない課題だろうと思っております。したがいまして、その点についてのまず総務庁長官としての、これは各省庁なりすべてを主管している総務庁ですから、そういった点についてまずお伺いしておきたいと思います。
  436. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 この問題につきましては、先ほど小森委員にお答えした私の答弁の中に尽くされると思うのでございます。私どもは、この問題は、憲法十四条の基本的な人権の問題として大変重要に考えなければならないと思っております。したがって、私どもは一九六五年のあの答申以来、この問題について本当に真剣に取り組んでまいってきた。そして特別措置法までつくって、実態的な差別が生じないような方向での努力はもううんとやってきたつもりでございます。  確かに心理的差別と実態的差別との相互因果関係、大事なことでございますけれども、私の見るところ、これは私の子供のころに比べ、さらにまた答申が出たとき以来、さらに現在において見ますと、私は改善の方向に向かっていることは間違いない、いろいろな事件も過去に比べて少なくなった。ただ、地名総鑑というような大変残念な事件があったことは、戦前にも見られなかったことでございまして、これも大変遺憾なことである。このようなことは何としても再発を防止していくような対策を講じ、また各省もその努力を重ねていかなければならない、こんなふうに考えておるところでございます。
  437. 小松定男

    小松分科員 それでは具体的に伺わせていただきたいと思うのですけれども長官、今もいろいろと今まで努力をしてきて成果もかなりあった、私もそれは全部は否定しませんけれども、ただ、最近の高度に技術化してきた状況の中で、先ほど地名総鑑に対して非常に遺憾なことだということで長官はお話しがございましたが、それと同じような事件がまたつい最近出ているわけなんです。  これはどういうことかというと、パケット通信というので、今のこういう実情を長官は知っているかどうかわかりませんが、要するにアマチュア無線を使ったパソコン通信で、被差別部落の所在地のリストだとかいろいろな差別的な言葉だとかがアマチュア無線を使って、特に今具体的に出ているのは、大阪から九州の方にかけてこういう問題が現実に起きているわけなんです。地名総鑑の場合にはああいう一冊の本になって、そして企業に売り込むということですが、今度はアマチュア無線を使ってやりますので、やっている人を捕まえようと思ってもなかなか捕まらない、そういうことが現実に出ているわけなんです。これが行われてきたのは大体ここ二、三年なんです。これは形の変わった地名総鑑ではないかというふうにとらえても決しておかしくない問題なんです。高度情報化社会の中で、こういう形を変えたとらえにくい問題でも差別問題が現実に出ているということなんです。この点についてどういうふうに考えるか。これは具体的なことですから、長官でなくてもいいです。
  438. 杉浦力

    ○杉浦(力)政府委員 お答え申し上げます。  パケット通信につきましては、先生おっしゃるとおり、パソコンと無線を使ったいわゆる掲示板みたいな感じの使い方をされているわけでありますが、そこに地名総鑑、総覧のようなもの、あるいはいろいろな情報が出ておりまして、自由にだれでもそれが見られる、非常に問題のあるものでございます。先ほど私どもの大臣から申し上げたように、いろいろな啓発を一生懸命やってある程度効果は上がってきておるやさき、こういう問題が出るのは大変遺憾であります。ただ、この中身につきましては、やめさせるために技術的に非常に難しい問題があるということで、郵政省あるいは方々と今協議しながら防止に努めたいと思っております。やり方としては、まず国民一般にもこういうものは悪いんだという啓発も、私ども関係省庁と手をつなぎながらやっていきたいと思っております。
  439. 小松定男

    小松分科員 ちょっと大臣、今の問題で、これが具体的なものですから。  大臣、今手元に渡したようなこういう通信で行われるわけです。これはそういう通信を使ってやるものですから、なかなかこれを発信しているところをとらえるということが非常に難しい状況で、ですからかえってこれは悪質だと私たちはとらえているわけなんです。  そこで、この問題で、大臣に渡した半ぺらの方にあると思うのですが、このパケット通信の内容も非常に問題があります。そこにも書いてありますように、結婚を控えている方へということで「BIGなBIGなPRESENT」、「時代の流れに逆行し、企業の人事採用の参考資料として利用していただく為に作成した」こういうふうに明記されております。それ以上まだあるんですけれども。  こういう形の変わったことですから、大変とらえにくい問題を利用してやられておりますので、先ほど総務庁の方では、こうした一連の問題についてもぜひ関係官庁とも十分打ち合わせてやりたいということでございますが、こういう悪質な手口も差別の一環として出されているという現実をひとつ各省庁それからすべての機関に徹底をするような、そういう方策をぜひとるべきだと思うのですが、その点について再度伺っておきたいと思うのです。
  440. 杉浦力

    ○杉浦(力)政府委員 啓発の関連につきましては、私ども関係省庁と常時連絡をとり合っておりますので、その場を使いまして、既にやっておりますが、今後もなお一層やらせていただきたいと思っております。
  441. 小松定男

    小松分科員 大臣の手元にも行っておりますが、このパケット通信を使って送られている悪質な差別文書の中にこういう文章、表現があります。  原発が危険なものなら 部落につくればよい  それもいやなら 韓国につくり日本までケーブル引っ張って 送電してもらえ  部落民は 昔から エタとか非人と呼ばれ人間としてあつかわれていない  いまもそうである  奴らは 人間ではなく 人権など無い  奴らは 殺しても よい  奴らの所には 原発のような なまやさしいもの ではなく  原爆実験場を つくれ  奴らを 殺せ  ヨツ エタ ヒニン ブラク チョンコ  みんなカスや こういう、全く言語に絶する問題でしょう、これは。日本の今の憲法下にあって、少なくもこれほどまでに非人間的な言葉、これは全く事実なんですからね、こういう文章で。  私は先ほど言いましたように、これはもうとんでもないことだ。今までいろいろな形でやってきたけれども、なおかつ、まあどなたがこれやったかいまだにわかりません。わからないけれども、こういう似た問題は、私は埼玉ですが、埼玉にも、きょうも聞きましたら、やはり最近、内容はちょっと違いますけれども、手紙や何かでも今わかっているだけでも四通くらい送られてくるというのですね。だから、こういうふうに問題がなっているということも、これは深刻に受けとめなきゃならぬと思うのですね。したがって、私は、この問題を見たときに、今までいろいろやってきたけれども、これはやはりただ単に言葉やいろいろな、今日までやっただけではなかなかこの長い間の差別事件というのは一掃されないんだなということを痛切に感じているわけなんです。その点どういうふうに思いますか。これは大臣でも、どちらでもいいです。
  442. 杉浦力

    ○杉浦(力)政府委員 お答え申し上げます。  今のお話は、先生おっしゃるとおりだと思っております。私どももこの問題につきましては、既に各省と協議をいたしました経緯もございますし、あるいは今後もこういったことのないように国民に向けて啓発をまずする。と申しますのは、先生御存じのように、このパケット通信にだれが入れているのか、どういう格好で入れているのかというのは実はつかまえようが今のところないんだそうであります。つかまればその人に直接言うことができるわけでありますが、そういう手がとれない場合は、私どもとしては国民一般に、こういうのはよくない、差別というのは非常にまずいんだという意味の啓発をより一層していくということが当面の課題かと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。
  443. 小松定男

    小松分科員 まだ聞きたい問題がありますので、この具体的な問題はまた機会があれば発言します。  次に、やはりこれは本来戸籍などいろいろと調べて、そして部落の人であるとかないとか、それでそのことを地名総鑑なんかではいろいろと企業に売ったり、あるいはまた今結婚問題なんかでもそういった問題がこれまでたくさん出ているわけです。今いろいろとそういう問題に努力していると言いながら、まだまだ、日本の中でですよ、いろいろと聞いてみますと、やはり六〇%、七〇%の人が、例えば子供きんが結婚する場合にいろいろとそういう点について身元、戸籍というものに対する関心が高いというのがデータで出ているのですね。ですから、そういう限りにおきましてもまだまだ問題があると私は思うのです。  そういうことがありますので、普通の一般の人には人の戸籍をとったりなんかすることはできないということで一応規制といいますか、法律では網をかけてあるのですけれども、しかしこれでも職業によってはそれが許されている。例えば弁護士とか行政書士とか、そういう立場の人ですね。ところが、最近、これまたつい最近、今度は、これは悪徳弁護士でしょう。今いろいろと弁護士の資格がどうのこうのというようになっているようですけれども、そういう特定の人が今度はそれを悪用して、そのことを集めて売る、こんなようなことも発生しているのですが、この点はどうですか。
  444. 杉浦力

    ○杉浦(力)政府委員 弁護士さんが自分の名前で他人の戸籍をもらって、あるいはもらえるようにして興信所等に渡しておるというのは、本当に先生がおっしゃるまでもなく大変これは遺憾な話であります。私どもは、こういう問題がなくなるようにするのが私どもの仕事の大きな一つだと思っておりますので、今後も努力いたしますが、このケースにつきましては、現にその問題の弁護士さんは弁護士協会で除会とかいう格好である程度の措置が進んでおると聞いております。こういう話が外へ出ることによって、こういう不心得な方が少しでもなくなるかと逆に思っております。  私どもといたしましては、既に前にも申し上げましたのですが、地名総鑑が出ましたときに、法務省の方から興信所の方にあてまして、結婚とかこういった関連の情報を調査の結果として依頼者に渡さないようにという指導もいたしておりますので、今後ともこういったことがなくなるように一生懸命努力させていただきます。
  445. 小松定男

    小松分科員 時間もあと十分足らずですけれども、先に進みます。  私は、今特徴的なところだけこれは言っているのですが、差別事件に関連してたくさんあるわけなんです。今これから言うのは、今度は労働関係のところにこれまた出ているのですが、ブルーチップスタンプ社の、要するにこれも一つの大きな特徴的な問題だと思うのですが、これはそうした企業が、一九八七年というのですから二年とちょっと前なんですが、「人事労務管理」というテキストの中に、社員として不適格な者を絶対に採用してはいけない。これまた約三年もたちませんけれども、そういう通達が出されているわけなんです。その中に、採用してはいけない、採用しては手おくれだということを出しているのですね。これも大変大きな問題だと思うのです。  幾つかあるのですが、その一番最初にやはり同和者、要するに部落出身者、これを名前をはっきり挙げているわけなんです。こういう社ですから、あと思想関係とかいろいろ列挙していますけれども、一番最初に同和者、部落出身者、こう挙げているのです。こういうことがこれもまたつい最近、これは労働関係に、本来ならそういうところでも十分やらなきゃならないことだと思うのですけれども、やはり所管する総務庁として私が指摘したいのは、こういう問題についてはわかっていますか、もしそれだったらちょっと答えてもらいたいと思うのです。
  446. 杉浦力

    ○杉浦(力)政府委員 ブルーチップ社のマニュアルの件については、いろいろな団体からの情報あるいは関係のところからの情報をいただいておりまして、実態についてはわかっております。そして、現在関係の団体の方とこの会社の方でいろいろな善後措置というのですか、やめさせる、あるいはもうやめますというような話が進んでおるということも聞いております。  こういう問題は本来あってはならない話でございますので、先ほど申し上げましたように、本当に出てから後では大変申しわけないと思うのですが、出ないように私ども一生懸命努力をさせていただき、また関係省庁ともいろいろな相談をさせていただくということしか実はお答えしようがないわけでありますので、よろしくお願いいたします。
  447. 小松定男

    小松分科員 総括的には後で大臣の方にいろいろと伺いたいと思うのです。  もう一点、これは公務員の問題で、大阪の箕面 市ですか、ここで部落出身者の公務員の人に対して、ロッカーの中にやはりその人を攻撃するような文書が入っていたわけなんです。さっきのは民間会社ですけれども、これは公の市役所ですから、いわゆる官庁ですね。そういうところにもやはりこういう問題が出ているわけです。個人のロッカーの中に入っておったのですけれども、     辞令  貴方はたいへんめざわりな人です  エタ人のくせに 下足番に任命します  同じ課の全員の代表で四月より消えて下さい    青木エタコ殿                  箕面市長 ということで、こういう手紙が投げ込まれているのですね。  時間もありませんから、私は今特徴的な四つの問題だけ申し上げましたが、これなども大変な、これもまだ最近のことですから、総務庁としてこれがわかっているのか、あるいはどういうことなのか、ちょっとお答えいただきたいと思います。
  448. 杉浦力

    ○杉浦(力)政府委員 お答え申し上げます。  昨年の三月、先生おっしゃいましたような事件が箕面市であったわけであります。そして、これにつきまして市の方は大変早くこれに手を打っていただきまして、まず市長さんが幹部を集め、こういうのは困る、なくすようにしなさい、それからもう一つ、こういうことを書いたような人は名のり出なさいということを申されると同時に、職員に対しても、こういうことはあってはならない差別だ、こういうのは困るというような措置をされたわけであります。しかし、残念ながらいまだだれが書いたかということはわかりません。しかし、こういうのは悪い問題だという点は、実はもう市役所の内外に出ておるわけであります。  私どもこういう点に対して、じゃ総務庁は何をしているかということがもう一つあると思いますが、私ども国家公務員等の中央の官庁につきましては、年数回、同和の関係、差別問題についての研修をさせていただいております。地方自治体につきましては、本来地方自治体独自にやっていただくということになっておるのですが、私の方も地方自治体の指導者を集めました研修会を年一回やっておりまして、差別あるいはこういったものをなくすような勉強をしているところであります。先ほど申し上げまして、何度も同じことで大変恐縮でございますが、こういうものがなくなるように今後ともなお一層努力していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  449. 小松定男

    小松分科員 そこで大臣に伺いたいと思うのですが、一つは、今私が幾つかの事例を出しましたが、やはりまずこうした差別事件の実態を把握をし、差別が許しがたい社会悪であるということを明らかにするということは、同対審答申にはっきり明記されているわけです。ですから、主管官庁としても、まず十分実態を把握するということが一つ。それからもう一つは、やはりこれも同対審答申にも出ておりますが、これは先ほどの小森さんも意見を出されておりましたが、同和地区住民に就職と教育の機会均等を完全に保障すること、これも同対審答申にも示されております。それからもう一つ、国の責務、この同和問題というのは国の責務だ、そしてまた国民的な急務の課題だということもこれに明確に出ているわけです。にもかかわらずに、やはり次から次と出ているというのは国としても大変大きな責任じゃないかということで、私はこの同対審答申のここに出されている、今三つの問題を挙げましたけれども、国の責務である、国民の課題だということに対して、総括として大臣、今後も全くこのとおり、言葉じゃなくて、もう本当にそうだということで認識を深めているか、この点ちょっと一つだけ。
  450. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 小松委員の御主張、私は三点ともごもっともだと思うところであります。  私どもは、基本的人権の観念が本当に乏しい人がまだこんなに残っているのかと思うぐらい残念な、恥ずかしい宣伝文書を見せられるわけでございまして、これは何としてもまだまだ同和問題の中の心理的差別をなくする方向においての努力を思い切って進めていかなければならないと私は思いますし、各省に対してこれの取り締まり、そしてまた防止について思い切った力を入れるように要請をしたいと思うところでございます。  私は生をうけてこの方、この問題は随分よくなってきた、本当に心理的差別の問題も、私どもの子供のころに比べれば改善したと、これは主観的な考え方、判断かもしれませんが、私自身そう思っておりますから、それをさらに進めていかなければならぬ、粘り強い努力によって本当に根絶するような方向に持っていきたい、私はこんなふうに思っているところでございます。
  451. 池田行彦

    池田主査 小松君、時間が参っておりますから……
  452. 小松定男

    小松分科員 最後に一点だけ、これは簡単です。  そういういろいろな問題を抱えている被差別部落というのがまだ全国各地区にたくさんあります。最後に大臣に伺いたいのですが、そういった点で、例えば大阪でもいい、私は埼玉ですけれども、埼玉にも部落があります、そういうところを、大臣どうですか、視察をする考えはありますか。それだけ一つ
  453. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 私はもうこの地域についてはたびたび見てまいりましたし、大阪にも居住をしたことがございますので勉強したことがございますが、また機会がありましたらそのような勉強をすることも考えていきたいと思っております。
  454. 小松定男

    小松分科員 終わります。
  455. 池田行彦

    池田主査 これにて小松定男君の質疑は終了いたしました。  次に、坂井弘一君。
  456. 坂井弘一

    坂井(弘)分科員 最近におきましても差別事象が頻発をいたしております。特に情報化時代といいますか、現行法ではどうにも想定してなかったような新しい形の、しかも悪質巧妙な差別事件が随分起こってきた。今もあるいは質問にあったかと思いますが、例えばパソコン通信による差別、これは随分見ましたが、ひどいですね。大臣、これはごらんになりましたか。全部あるんですよ、職業から始まって所在から。これは後でまた申しましょう。  いずれにしましても、こういうパソコンによる差別、部落の所在地、それから部落民に対します悪質、陰湿きわまりない、見るにたえない、聞くにたえない、そういう差別事象、事件、この調査なりされてはいらっしゃるのでしょうが、いかんせん現行の電波法ではこの種の差別事件には対応できないですね。  お答えをちょうだいする前に、私の方で、何とかならぬものかと思って随分電波法も見てみました。電波法百六条、虚偽の通信による利益または損害、百七条、政府を暴力で破壊する通信、百八条、わいせつ通信。差別につきましては、刑法にも具体的な規定はございません。電波法においてもこれを取り締まることはできないということだと思います。そこで勢いこの種の差別パソコン通信、これはよろしくないということで行政指導といいましょうか、こういうことはしないようにという対応にとどまっておるということだろうと思いますね。それは各誉棄損であるとか誣告であるとかいうことであれば、また別途刑法において対抗手段としてはある。しかしながら、いかんせん差別ということに対しては、我が国の法体系から見ますと、刑法においても電波法においても、直接的にこれを禁止する、差別をした者に対してはこういう法的な力をもって差別を禁止する、罰則もつきますよ、こういう話にはならないですね。これが現状だろうと思います。そういう現状だろうと私は認識をいたしておりますので、簡潔にまず御答弁をいただきたいと思います。
  457. 石原秀昭

    ○石原説明員 ただいま電波法上の取り扱いについての御質問でございますが、先生のおっしゃられましたとおり、電波法上におきましては、わいせつ通信等の特別の規定を除きまして、通信の内容を規制する規定というものの定めは設けられてございません。
  458. 坂井弘一

    坂井(弘)分科員 しかもこれがどういうように使われておるのか、実態は定かではございませんが、ただ一方、例えば部落解放同盟が関西方面の各地の人々の意識調査をやりました。その結果を見ますと、子供の結婚に際して部落の出身であるかどうかを調べる必要があると答えた人が実に六割を超えておるということなのです。今大臣手元にお持ちのとおり、パケット通信で送られているまことに悪質な差別文書、これを読みます。  原発が危険なものなら 部落につくればよい  それもいやなら 韓国につくり 日本までケーブル引っ張って 送電してもらえ  部落民は 昔から エタとか非人と呼ばれ人間としてあつかわれていない  いまもそうである  奴らは 人間ではなく 人権など無い  奴らは 殺しても よい  奴らの所には 原発のような なまやさしいもの ではなく  原爆実験場を つくれ  奴らを 殺せ  ヨツ エタ ヒニン ブラク チョンコ  みんなカスや 私は、この人間社会、人が人とのつながりの中で生きている、そのつながりから排除される、差別される、これほど悲しいことはないと思いますね。残酷ですね。こういうことで自殺にまで追いやられるというようなことが現に我が国においてはあるというこの事実を一体どう見るか。本当に私自身、長年この差別あるいは部落問題等について深い関心を持ち、かつまたそういう中でこの悲しむべき現状に対して、時には憤り、何とかこの差別をなくさなければならぬぞ、こんな気持ちいっぱいで参りました。しかし、今申しましたように、また新しいこういう形の差別があちこちに起こっておる。  そこでお伺いをいたしたいのでございますが、こういったような行為というのはまさに人種差別撤廃条約第四条に規定している行為に当たると思いますけれども、イエスかノーか、お答えをいただきたい。
  459. 角崎利夫

    ○角崎説明員 お答え申し上げます。  ただいまの点も含めまして、現在、関係省庁を含めまして政府の方で検討を行っておるところでございます。
  460. 坂井弘一

    坂井(弘)分科員 人種差別撤廃条約はあらゆる形態の差別を禁止する、こういうことですね。そこで、条約第四条、これは差別の扇動は許しませんよ、罰則をもって臨みます。そうすると、一方我が国憲法十九条から二十一条、言論の自由、表現の自由、結社、集会の自由、こうした基本的人権と、そして今申しましたこの差別するという行為、これは人種差別撤廃条約第四条においては明らかに禁止だ、罰則だ、このことと今の我が国憲法とは真正面から衝突をする。かつまた、もう一方において憲法三十一条、罪刑法定主義、この問題が一つある。つまり、ここのところの調整がどうにもつかないということで、日本政府は随分政府部内において関係各省庁が今日まで、難しい問題だと言われながら作業を続けてこられたと思います。  かつて私は、もう何回も繰り返しこの問題を質問いたしまして、例えば昭和五十九年、国内法制と条約の整合性を検討し、終われば国会の御承認、御審議をお願いしたい、これは政府の答弁。六十年には、早期締結のために努力をいたします。つまり、人種差別撤廃条約の批准をしなさいという私の質問に対しまして今の御答弁。まだできないですね。  端的に伺いますが、いつこの人種差別撤廃条約の締結をいたしますか。その場合に、時間がございませんからあえて申し上げますけれども、完全批准をいたしますか。それとも解釈宣言でいきますか。それともある部分を留保しますか。それとも署名だけはするということにとどめますか。どういう対応をお考えですか。そして、それはいつやるのか。はっきりお答えをちょうだいしたいと思います。
  461. 角崎利夫

    ○角崎説明員 お答え申し上げます。  政府といたしましては、本条約の趣旨にかんがみましてできるだけ早期に締結すべく作業を進めておりますが、先生御指摘のとおり、本条約に規定します処罰義務と憲法の保障する表現の自由、基本的人権との関係がございまして、これをいかに調整するかということにつきましてまだ困難な問題が残っておる次第でございます。したがいまして、批准の具体的見通しにつきましては、今はっきり申し上げる状況には残念ながらございません。  それから、解釈宣言にするか、留保をつけるか、あるいは署名だけするか、そういった問題につきましてもまだ検討をしておる段階でございます。
  462. 坂井弘一

    坂井(弘)分科員 もう十年河情を待つ、十年じゃないですよ、大臣。恐らく二十年からですよ。同じことばかり言っておるのです。日本は経済大国にはなった。一方において生活小国だと言われる。しかし、それよりも根源的に大事な問題は、人権小国だと思いますよ、日本のこの状況は。例えば、今この人種差別撤廃条約の批准をした国は、国連加盟国のうち百二十九カ国、実に八一%です。うち条約四条について解釈宣言をした国は十五カ国、留保したと思われる国が十五カ国のうち三カ国、署名国は六カ国、これは加入する意思表示ですね、それが六カ国。こういう状況でございますね。  我が国憲法というものは、高らかに平和、人権、民主をうたい上げた。平和憲法を持つ、また人権を――私はやはり平和の一番根本に人権があると思いますよ。平和というのは、言うなれば人と人が仲よくするということでありまして、それはまた言うなれば相手の人権を認める、お互いに生きている人間の尊厳、立場を認め合ってということだと思います。逆に、差別をするということは、私は平和を否定するということにもつながると思いますよ。今世界の大きな流れというのは、確かにかつてのあの冷戦構造というものがもう崩壊をして、そして世界、地球が大きく平和の方向に、こういう流れが出てきましたね、芽が。しかも、その根底になるのはやはり人権ですよ。この人権を大事にしよう、たっとび合おう、確立をしていこう、そのことに対していかにも我が国政府は、こう言いたくなる。  国際社会の中に伍して日本がこれだけすぐれた平和憲法を持つ、人権をたっとぶ国だと言うならば、むしろどこよりも早く人種差別撤廃条約、この目指す方向は政府は賛成だとおっしゃるのだから。否定はしないのですよ。そうしたら、今の国内法との調整の問題がございますと。どちらが大事なんですか。国内法が大事なんですか。そうじゃないでしょう。人種差別撤廃条約は世界のそういう人権をたっとぶ趨勢、方向である。そうしたならば、これを踏まえて、国内法に不備がありとするならば、これを整備するということじゃありませんか。どうも物の考え方が逆転しているのじゃないかと私は思うのです。この問題は後に譲ります。  人種差別撤廃条約の翻訳はできましたか、外務省。日本語に訳されておりますか。
  463. 角崎利夫

    ○角崎説明員 お答え申し上げます。  本条約の日本語訳につきましては、検討中の段階におきまして政府として確定した日本語訳としてお出しすることはできないということでございます。
  464. 坂井弘一

    坂井(弘)分科員 これはいつまでに翻訳されますか。
  465. 角崎利夫

    ○角崎説明員 お答え申し上げます。  政府として対外的に訳文を提供し得ますのは、訳文についての考え方が確定した時点以降ということになろうかと思います。
  466. 坂井弘一

    坂井(弘)分科員 大臣、すべてスローモーですよ、率直に申し上げて。これで本当にいいのかなと、正直、心配しますね。  そこで、差別の禁止ということと、もう一方における言論等の自由、この問題が衝突するのかしないのか。かつて田中耕太郎さん、お亡くなりになりましたが、国際司法裁判所判事、この方が有名な言葉を残されましたよ。南西アフリカの差別事件がございまして、そのときに田中耕太郎国際司法裁判所判事は、人種差別の禁止は言論等の自由に伍する、相反しない、こう言っているのですね。確かに第二次世界大戦というあのとうとい犠牲、それから営々として国際社会の中で人権も大事にしようと築き上げてきた。そこで出てきたのがこの人種差別撤廃条約。ある意味では、これは国際社会の強行規範です。しかし、我が国憲法は、集会、結社、表現の自由、しかしもう一方、法のもとに平等である、こうなっておるでしょう。法のもとに平等なのです。ある人が、おまえなんか死んでしまえ、殺してやる、これは法のもとに平等では決してありません。  そんなことを考えますと、調和点を見出すことは絶対できると私は思うのです。できないという考えで、感じで今日まで各省庁、なかなか国内法との調整がつきません、その物の考え方を捨てていただきたい。調和点、調整点を見出すのだ、人種差別撤廃条約、これは大事だ、これはもう批准するんだ、この決意に立って、その上で国内法の調整をすればできない話ではない。しかも解釈宣言の問題だってあるのですよ。今留保しろとかなんとか言いませんよ。しかし、方法は幾つかあるでしょう。少なくともこの人種差別撤廃条約の締結国になろうという、そういう前を向いた姿勢が日本政府に今見られないのです。これからの国際社会の中で、日本は本当にいろいろな難問を抱えておりますけれども、それらの中でこれは一番根本をなす問題だろう、こう思います。大臣の御所見を承りたい。
  467. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 条約の問題は外務省の所管でございますので、私が意見を申し上げるのは適切ではないかもしれません。しかし、人種差別撤廃条約の中に、同時にまた部落差別といったものが入っておるとすれば、総務庁としても関心を持ってどうしても研究をさせていただきたい。おっしゃるように条約と国内法との調和、これまた努力をどこまでやるかという私どもの大きな政治的な判断のもとで進めるということもできないかと思っているのでございます。  アメリカが批准をしていないということで、私も驚いたわけでございますが、このような問題は何かというようなことも恐らく外務省は研究されているに違いない。そして、同和問題だけじゃなくして、より広い範囲の観点からの法律問題を考えての今までの結論だ、こんなふうに思いますので、十分に私は外務省の御意見などを聞きながら、私どもの同和問題の解決に大きく役立つとすれば、これまたひとつ考えて研究をしていきたい、こんなふうに考えておるところでございます。
  468. 坂井弘一

    坂井(弘)分科員 大臣、アメリカは署名はしているのですよ。署名国は六カ国ありまして、アメリカ、トルコ、アイルランド、グレナダ、ベナン、ブータン、これは加入する意思ありと意思表示をしたのです。  アメリカの国内法も調べましたよ。政府もお調べでしょう。随分調べました、先進国も。みんなそれなりに苦労しています。だけれども、それはそれなりにやっています。アメリカにおいては長年にわたる解放運動がございまして、差別撤廃法、この中軸として一九六四年公民権法、これができた。あるいはまた、差別に遭った者、人々に対してそういうことからいろいろな措置を講じておる。したがって、公然たる直接の差別というものはもう時代錯誤だという認識にアメリカは急速に変わりつつある。やはり黒人、白人の深刻な差別を持っている国だからこうだとあるいはおっしゃるかもしれない。しかし、質は違うけれども、日本における差別というのは、質としてはまだ悪いと私は思います。  いろいろな難しい問題がある。しかし総務庁長官、塩崎大臣に私は期待をいたしたい。ぜひ閣議あたりで御発言いただきまして、人種差別撤廃条約、これに加入、締結する方向で政府としては取り組もうじゃないか、いかがですか。
  469. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 総務庁長官としては、先ほど申し上げたような方向に沿ってこの問題は検討していきたい、こんなふうに思います。
  470. 坂井弘一

    坂井(弘)分科員 海部総理にもひとつ御進言をいただきたいと思います。  アパルトヘイト、これは日本政府も人種差別だから反対だと表明しているのですよね。表明しながら、今既に百二十九カ国この人種差別撤廃条約に加入している。それが日本が加入、締結できない。私は何回も何回も申し上げてきた。その都度、努力する努力すると言いながらお茶を濁されたような感じがしまして、正直言いまして不愉快なんですよ。だから、この問題については本当に真剣に、早く条約が締結できるようにお骨折りをいただきたい、御努力をいただきたい。それは、言葉ではなくして現実のものに一日も早くしていただきたい。これは私の切望でございます。また、当然日本政府としてやらなければならぬことだ、そう思っております。  この条約で言う人種差別につきましては、門地、つまり家柄、出どころ、出生、出身による差別あるいは民族差別に包含される外国人の差別もまさにこれに含まれますね。だから、日本におきましては同和問題あるいはアイヌ、こういうことに当然なっていくんだろうと思います。しかし、あらゆる形態の差別をなくそうというのがこの条約のねらいですから、日本においてもさまざまな法律上の困難はある。しかし、国内法を整備をして条約を締結をするということで、ぜひ本当に前を向いたお取り組みだけはお願いをいたしたいと思います。  余り何回も何回も言いながらまたきょうもたってしまったものですから、塩崎大臣のお顔を拝見しながら、先ほどの大臣の御決意なりお考えは承りましたけれども、重ねてこんなことを申し上げまして本当に恐縮、非礼ではございますけれども、本当に日本政府として、塩崎大臣の御熱意でひとつ政府を動かしていただきたい。  各省庁間でやっている、これは事務的な――こう言ってもまた失礼ですけれども、各省庁間と言ったって法務省、外務省あるいは文部省も関係するでしょう。あるいはまた関係の省庁その他非常に広がりがございまして、法律上の難しい問題がある。翻訳一つにしましても、それがなかなか日本語に翻訳しかねる。こんなことでございますから、なかなか進まないのだと思うのです。ですから、まさに大所高所に立ちまして、政治的にもこの国際状況をごらんになって、政府として決断をしなければこの決着はつかないと思いますので、大臣として強い御決意でお取り組みをいただきたい。これは繰り返し繰り返し御要請を申し上げておきたいと思います。  なお、そういうことでありますので、大臣、視察をされるのも結構だけれども、部落の実態点検をぜひもう一度おやりになりませんか。
  471. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 まず第一に、坂井委員の人種差別条約にかけますところの御熱意には私もただいま感激したところでございます。  しかし、私は、この人種差別がどのように私どもの国内で、人種差別ではないと私は考えておりますけれども、都落の差別問題に関係するか、実はまだ勉強しておりませんので、そういった部落差別の問題の解決に役立つなら、これはもう総務庁としても研究しなければなるまい、そしてまた外務省に対して意見も申し上げなければなるまい、こんなふうに思って検討してまいりたい。私も初めての総務庁長官でございますから、この問題についての答弁は初めてのことでございます。こういった方向での検討をひとつやっていきたいということでお許しを得たいと思うところでございます。  それから、実態の調査の問題でございますが、先ほど私自身がつぶさに地域へ行って研究するということはやぶさかではないと申し上げましたけれども、全体的な問題については、現在、現行法でありますところのいわゆる地対財特法、まだ期限が二年もございまするが、その進捗状況等については常に私どもの中で把握をして、その実態的差別と申しますか、それらについては検討しているところでございまして、特にもう一遍やり直すという必要があるかどうかは、これはよほど検討してみなければまだ判断がつきかねる、私はこんなふうに御答弁をさせていただきたいと思うのでございます。
  472. 坂井弘一

    坂井(弘)分科員 終わります。
  473. 池田行彦

    池田主査 これにて坂井弘一君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十七日午前九時から開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十二分散会