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1990-04-17 第118回国会 衆議院 予算委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年四月十七日(火曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 越智 伊平君    理事 近藤 鉄雄君 理事 佐藤 信二君    理事 野田  毅君 理事 原田昇左右君    理事 宮下 創平君 理事 加藤 万吉君    理事 佐藤 敬治君 理事 村山 富市君    理事 神崎 武法君       粟屋 敏信君    池田 行彦君       稲村 利幸君    内海 英男君       越智 通雄君    金子 一義君       後藤田正晴君    左藤  恵君       笹川  堯君    田澤 吉郎君       戸井田三郎君    葉梨 信行君       林  義郎君    村山 達雄君       川崎 寛治君    串原 義直君       新村 勝雄君    新盛 辰雄君       戸田 菊雄君    藤田 高敏君       松浦 利尚君    武藤 山治君       和田 静夫君    日笠 勝之君       冬柴 鐵三君    山田 英介君       児玉 健次君    菅野 悦子君       三浦  久君    大内 啓伍君       阿部 昭吾君  出席公述人         全国法人会総連         合顧問         経済評論家   立山 武司君         日本労働組合総         連合会事務局         長       坂本哲之助君         経済団体連合会         常務理事    糠沢 和夫君         筑波大学助教授 進藤 榮一君         全国農業協同組         合中央会常務理         事       石倉 皓哉君         東洋大学経済学         部教授     八巻 節夫君  出席政府委員         内閣官房副長官 大島 理森君         総務政務次官  虎島 和夫君         北海道開発政務         次官      武部  勤君         防衛政務次官  谷垣 禎一君         経済企画政務次         官       高橋 一郎君         沖縄開発政務次         官       宮里 松正君         国土政務次官  伊藤 公介君         大蔵政務次官  尾身 幸次君         大蔵省主計局次         長       小村  武君         文部政務次官  北川 正恭君         厚生政務次官  野呂 昭彦君         農林水産政務次         官       東   力君         通商産業政務次         官       額賀福志郎君         運輸政務次官  二階 俊博君         郵政政務次官  川崎 二郎君         労働政務次官  加藤 卓二君         建設政務次官  金子原二郎君         自治政務次官  中馬 弘毅君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      多田 俊幸君     ───────────── 委員の異動 四月十七日  辞任         補欠選任   松本 十郎君     金子 一義君   村岡 兼造君     笹川  堯君   東中 光雄君     菅野 悦子君   楢崎弥之助君     阿部 昭吾君 同日  辞任         補欠選任   金子 一義君     松本 十郎君   笹川  堯君     村岡 兼造君   菅野 悦子君     児玉 健次君   阿部 昭吾君     楢崎弥之助君     ───────────── 本日の公聴会意見を聞いた案件  平成二年度一般会計予算  平成二年度特別会計予算  平成二年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 越智伊平

    越智委員長 これより会議を開きます。  平成二年度一般会計予算平成二年度特別会計予算平成二年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会を開きます。  この際、御出席公述人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわりませず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。平成二年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  なお、御意見を承る順序といたしましては、まず立山公述人、次に坂本公述人、続いて糠沢公述人順序で、一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、立山公述人にお願いいたします。
  3. 立山武司

    立山公述人 立山でございます。  平成二年度政府予算案に対して意見を述べよということです。私、税制に長らくかかわっております関係上、税制の問題を中心意見をお聞き願いたい、こういうふうに思います。  もう新聞紙上などでも報道されておりますけれども、今度の予算委員会、ある意味ではこの数年の中では極めて平穏、平静、粛々とした審議がなされているようですけれども、それでも今後、例えば消費税の取り扱いをめぐっていろいろな攻防が予想されております。だから、税制一般というよりは消費税の問題に絞って私の考えを述べた方が話が具体的になる、こう思っております。  政府予算案に対して、新聞紙上などで伝えられるところでは、野党の方は消費税廃止を打ち出して、したがって十月以降の税収分二兆五千億をカットした予算組み替え要求を出されるとか、あるいは廃止関連法案を同時に出されるというふうに伝えられております。こういうことというのは、私の目から見ますとどうも理屈にも道理にもかなっていないというふうに思っております。こうした消費税廃止という声が出るには、どうも消費税というのは悪い税だ、だからない方がいいというような、一種の思い込みあるいは決め込みがあるかと思います。  もう実施して一年たつ、それなりに機能している税金、それもかなりの大きさの、何兆円というオーダーの税金廃止しろと言うからには、それなり理由がなくてはならない。許されるとすればどういう理由かといえば、例えば国の経済あるいは国民生活あたりが随分大きな混乱を巻き起こしているとか、あるいは消費者事業者の間でもとんでもないトラブルがずっと続いていて、到底その重みに耐えかねるというような事態があれば、廃止というような声が出てもこれは不思議でない。しかし、私が見たところ、そういう事柄、事実として存在はしていない。ある意味では予想を超える順調さで機能しているというのが今日の消費税の姿だと思います。  先ほどの、非常に大きな障害があるのかどうかというような問題については、消費税導入前にいろいろなことが言われた。例えば、導入すれば、それがインフレの引き金になって物価がどんどん上がるというようなことが言われた。あるいは消費税導入によって消費の傾向が変わってきて、消費需要ひいては景気に大きなマイナスがあるというようなことも言われた。あるいは事業者、これはとてもじゃないけれども転嫁ができないから、それをかぶって非常に苦しむ、場合によれば消費税倒産なんというのができるじゃないかというようなことまで言われた。  ところが現実はどうだったか。少なくともここ一年やってみて、例えば消費者物価の問題について言えば、税金物価の形をとるわけですから当然今までよりは上昇率はその分だけ上がる、これはしようがないことです。しかしその物価も、今日でも大体前年同期比で三%台ぐらいのもので、その中に占める消費税の割合といいますか、あるいは物価に与えた影響というのは、年率にして一・一ないし一・二くらいだろうという政府あるいは我々の当初の見通し、これはほぼその見通し範囲内におさまっている。特にこの四月からになりますと、もう消費税影響は消えていきます。だから、前年同月比で見ると、三月よりは四月の方が通常でいえば低い上昇率になる、そういう姿でございます。つまり、インフレ云々と言われたことは、少なくとも今までのところそういう実態はなくて、杞憂といいますか心配のし過ぎに終わっている。  二番目の消費支出、これは多少でこぼこがございました。何といったっていろいろ皆さんおっしゃるものだから、それで慌てふためいた消費者の方などが去年の二月、三月あたりに買いだめをした、日用品などは。当然のことながらその反動で、四月あるいは五月あたり消費性向といいますか消費支出がちょっと低く出た。というようなことがあっても、それは言うなれば一過性のものであって、その後、期を追うごとといいますか月を追うごとに消費支出は堅調さを取り戻してきている。だから、消費に対してマイナスに働いて景気がおかしくなるよと言われたこと自体、これまた心配のし過ぎであった。  問題は事業者転嫁という問題ですけれども、これについては、例えばことし一月ですか行った通産省の調査あたりを見ましても、ごく一部の小さな事業者、大体調査対象課税事業者免税事業者かというようなことをはっきりしないまま行われておりますけれども、小さな事業者、特にサービス業なんかの一部に、十分な転嫁ができなかったとか転嫁できなかったということを答えた方がいらっしゃいますけれども、少なくともある程度の大きさを持った企業、特に製造業などで調べてみますと、大体順調な転嫁ができているという答えでございます。転嫁の問題も事前にいろいろ言われたことはほとんど心配のし過ぎに終わっている。事実はそうでなかったということです。  そういうふうに、実態面では別にここでやめなければならないということがないにもかかわらず、相変わらず廃止廃止というようなことが言われるその理由は何だろうかといったら、一つ考えられるのは税金性格の問題だろうと思います。  この税金性格について、皆さん御承知のとおりに、やれ逆進性があるとか、あるいはそれが転じて弱い者いじめ税金であるとか、あるいは比較的最近になってからですけれども、やはり納めた税金が素直に国庫に届かずに事業者の懐にとどまっている、これはけしからぬといういわゆる猫ばば論が唱えられている。そのほかにもいろいろございます。そして、その一つ一つについては私なりの反論ができるのですけれども、時間の制約がございますので主要なものだけにとどめます。  一つ逆進性の問題です。  この税金は、言うまでもなく、消費した金額一定の率の、今の場合は三%ですけれども税金をいただくということですから、消費の大きさあるいは暮らしぶりに比例した税負担になっております。あくまでも消費比例的である。ただ、所得基準で見るとどうかと言われますと、所得の高さによって消費性向などは違います。したがって、所得基準で見る限り、累進性を持たないどころか、逆進的だと言えば言えないことはございません。確かにそういう性格を持っている。これはある意味では消費税に限らず間接税に共通の宿命だと思います。  しかし、そういうふうに累進性を持たない、逆進的だからだめだと言っていいのかというと、私はそうではないと思います。この世の中国民経済あるいは国民生活、具体的に言えば所得の稼ぎ方とかあるいは消費の仕方というのは最近極めて多様化しております。そういう多様化した中でいろいろな側面に着目して税金をいただく、しかもそれが公平であるという税の原則を貫徹するとすれば、いろいろな税目を組み合わせて縦、横の公平を確保しなければならない。  税の性格からいいますと、これはもう釈迦に説法みたいなものですけれども所得税を代表とする直接税、特に所得課税で考えてみますと、これは縦の公平には極めて強い。いわゆる累進性を持たしてそれで縦の公平には強い。しかし反面、どうも横の公平ということになると、所得は隠せるけれども消費は隠せないなんという言葉があるように、いろいろな問題で、実際の税務統計などにあらわれてくる所得は必ずしも実態に合わないで、横の点で言えば実質的には同じような暮らしぶりをしているのに税負担は重い軽いということが所得税世界ではあり得る。  これに対して間接税、この場合消費税ですけれども消費税は縦の公平にはなるほど弱い面がある。しかし、横の公平に対しては極めて強い。所得はごまかせるけれども消費云々という言葉がございましたけれども、同じ消費をするとすれば、これは同じ金額消費税をいや応なしに負担せざるを得ない。だから、所得世界で逃れた人でも消費世界ではちゃんと税金を払わなければならないということで、横の公平、これに極めて強い。  したがって、所得の稼ぎ方、消費の仕方が多様化している今日では、税金の取り方も、縦の公平に強い税金と横の公平に強い税金とを組み合わせて全体として適正な負担を実現し、かつ公平を確保するというようなことが必要で、税の世界ではタックスミックスという言い方で表現されておりますけれども、これは一応の税制を備えたくらいの国ならどこでもやっていることですね。間接税消費税、これは累進性を持たないからだめな税だという言い方は実際問題としては非常に間違った主張だというふうに私は思っております。  それに絡んで、よく弱い者いじめということを言いますけれども、もともと、今までの個別間接税はだめだからということで、広く薄くということでこの消費税の仕組みができ上がっている。したがって、例えば物を買いに来る人を年齢とか立場とかいろいろなことで区別するわけにはいかない。広く薄くという以上、これはどなたが買いに来ても、ある物を買ったら一定税金を含んだ値段で売るということになるわけで、人によってどうだこうだ、弱いから勘弁してやるとかいうようなことは、実際の問題としてそういうことはできません。それをやろうと思えば非常に複雑怪奇になって、とてもじゃないけれども事業者消費者も大変です。  そこで、広く薄くということで、ある意味では反射的にいろいろな方、例えば年金暮らしている方、生活保護を受けていらっしゃる方、こういった人も税金負担していただく。しかし、じゃ受益負担と比べるとどうかというと、これはもう言うまでもなく受益の方がそういう人たちはずっと強いということで、別に弱い者いじめでも何でもない。  もう一つ言えば、本当に逆進的かどうか、弱い者いじめかどうかというようなことは、本当は個々の税目で物を言うことではないんだ。税体系全体として果たして適当な累進性を持っているのかどうかということで判断すべきだし、それから、財政ですから、単に歳入面、税の話だけじゃなくて、一体どういう人たちに重点的に使われているかという歳出面をもあわせて判断すべき問題だろうと思います。  そういった点で考えると、我が国税制構造歳出歳入を合わせてですけれども、これはまだ先進国の中では累進性の強い構造になっております。裏返せば弱い者には温かい構造になっております。そういうことでございまして、それでも本当に気の毒な人がいるよということであれば、その人たちにはむしろ歳出面などできちんと手当てすべき問題で、例えば生活保護基準なんかで面倒を見るとかあるいは年金支給額で面倒を見るということで、事実そういうことはもう既に物価完全スライド制ということでなされております。だから、そういうことまで考えると、弱い者いじめ税金だというような非難は見当外れであると私は思っております。  三つ目の、国庫に届かない云々というのは、これは中小事業者に対する特例の扱い、これを指してそういうことを言っておられる。しかし、国庫に届かないということを言われるけれども、この問題の本質は何かといえば、国庫に届かないとすれば、仮に国庫消費者事業者とあるとしてだれが損をするのだ、結局国庫が損しているのです。国庫が損をした分をある場合には事業者が得るし、ある場合には消費者が得るというのが、この制度の持っている意味合いなんですね。  そして、こういう制度がなぜ必要かといえば、広く薄くというのは、これはもう全部の品目について全部の事業者納税義務者にするというのが一番簡明なやり方です。だけれども、実際にそれを運営するという点を考えれば、力の弱い事業者にはある程度納税義務を外したり、あるいはやり方、計算の仕方などを簡便な方法事務負担を軽減してあげるというようなことが必要になってくる。これは各国はどこでも程度の差こそあれやっていることなんです。ただ、問題はといえば、三千万円という免税点の引き方あるいは五億円以下という簡易課税制度を適用できる範囲、採用できる範囲、これが適正かどうかというのは今後も検討課題になると思います。  ただ、それをやるには、ヤマカン、腰だめで幾らにしてしまえというようなそんな乱暴なことをしていたら、これはまた後で問題が出てくる。だから、実際の納税に当たって事業者あたりがどの程度事務負担がふえたのかどうなのかというような問題をきちんとデータでつかまえた上で、このままでいいのかあるいはもう少し低い線に置いても差し支えないのか、そういうことを判断すべきだというふうに思います。  最後ですけれども、もう余り時間がございません、駆け足で参ります。個別間接税制度の話です。  野党の方あたり廃止法案を出す場合に個別間接税、具体的にどういうものになるかはまだ私は存じませんけれども、例えば物品税みたいなものを復活するというようなことが代替財源一つの案だというふうに承知しております。それで、消費税廃止というのは、それだけを切り離せば大変結構な話ですけれども、どんな事柄でもあるプラスを得ようと思えば必ずそれの対価、代償というものが要るというのが世の中の常でございまして、今の消費税廃止という考え方でも、一体やってどうするの、財源として穴があくねということで、一つは、それに合わせて歳出をカットするというのが一つ方法、そうでなければ他の代替財源を見つける、それから三つ目は、これはもうやっちゃいかぬということはだれしも思っていらっしゃると思いますけれども、再び借金して赤字国債で後世にツケを残す、この三つないしそれの組み合わせしか、実は、消費税をやめればそういう道しかないのですね。  そういうことを言うと、すぐ自然増収があるじゃないのというような議論、これはこの国会の場で出るかどうかは別にして、巷間ではそういう気持ちがかなりあります。だけれども、私は平成二年度ないしそれ以降ということを考えると、今までのような税収の好調が続くと当てにすると当て外れになる危険性が非常に大きい、こういうふうに思っております。  経済実体あたりももうそろそろピークかねということのほかに、税収好調を支えた、一種のあだ花なんですけれども、土地とか株とかの投機と商いが盛んであったというようなことがあった。経済実体について言えば、金利安とかあるいは円高とかあるいは原油安とかこういう景気を支えた条件が、ここのところ、この半年ぐらいで大きく変わってきている。ということは、税収について言えば、今まで追い風予想以上に伸びたその追い風がストップする、場合によればそれが向かい風になる危険性というのは非常に強い。そのことをやっぱり覚悟しなければならないというふうに思います。  何らかの方策を、さっき言ったようなものをとらなきゃならないということで、例えば物品税のようなものを復活して云々というような考え方がちらほら出ているわけですけれども、私はこういう個別間接税の復活というのは非常に愚かな行為だと思います。というのは、もともと今度の消費税導入というのは、個別間接税ではいろいろの問題がある。一つは、かかるものとかからないものとの不公平があるじゃないか、あるいは課税対象を限定するからどうしても税収が大して上がらない、だから、そのしわが直接税に寄ってサラリーマンなどを中心所得税が重い、住民税が重いというような話になってくる。それは今問題であるだけじゃなくて、これからの高齢化社会を考えるとなおさら問題で、とてもこういう税制では対応できないということで、広く薄くの消費課税導入したという経緯がございます。  それを一時かあるいは恒久かは知りませんけれども、もう一度個別間接税物品税みたいなものを復活して、それで当座をしのごうということは、要するに時計の針の逆回しみたいなことで、殊にそういうことをやるとすれば実際の問題として——ごめんなさい、委員長、ちょっと時間超えていますけれども、実際の問題として、例えば価格体系がまた変わる、値決めしなきゃならない、値札をつけかえなきゃならない、タクシーのメーターをかえなきゃならない、自動発券機をかえなきゃならない、自動販売機をかえなきゃならない、そうでない事業者もコンピューターソフトなどをまた組みかえなきゃならない。ある意味では壮大なロスになります。そういう国民経済あるいは国民生活あるいは企業活動、そういうものから見て、何らプラスにならないことで大きな出費と手数を必要とするような措置、これは政治としてとるべきではない、こういうふうに思います。  時間が超過しました。公述を終わります。(拍手)
  4. 越智伊平

    越智委員長 どうもありがとうございました。  次に、坂本公述人にお願いいたします。
  5. 坂本哲之助

    坂本公述人 私は連合坂本でございます。  連合と申しますのは、昨年の十一月、日本労働界の悲願でありました統一をなし遂げ、八百万名労働組合員で構成する労働団体であります。私は、本日、この連合組合員八百万、そしてサラリーマン、さらには国民生活を守るという視点から、幾つかの見解を述べさせていただきたいというふうに思います。  我が国にとって日米関係を初め、緊急な課題が山積をしております。これらを解決するためには、今回のこの特別国会において与野党が英知を傾けて論議を尽くすことは申すまでもありませんが、政府みずからが積極的に国民の合意を図っていくことが何よりも大切であるというふうに考えております。そこで私は、幾つかの連合の基本的な考え方を述べながら、皆様方に御意見を申し上げたいというふうに思います。  本来、経済の成長は、国民生活や福祉の向上のために必要とされているはずであります。経済が成長すれば、私ども勤労者やあるいはまた国民生活水準が向上するはずであります。ですから、私どもは額に汗して働くのであります。  我が国経済は今や世界GNPの一五%を占め、一人当たりGNPでも世界最高水準に達しております。にもかかわらず、我々の生活の実質的な内容は、欧米諸国に比べてそれは極めて立ちおくれていると言わざるを得ないと思います。  毎日の暮らしに不可欠な食料やサービス価格、これは相当に割高になっておりますし、家賃やマイホームの取得費、これは極端に高くなり、まして広さや設備も著しく見劣りがする昨今の実情であります。さらに、社会資本と言われる下水道や公園ないしは緑地あるいはまた通勤交通機関などの生活環境の整備が極めて不十分であると思います。さらに、一日の労働時間あるいはまた年間労働日数、これも西欧に比べて年間でほぼ二カ月も日本労働者は長く働いているのであります。これはまことにゆとりが乏しく、お年寄りが安心して暮らせるための諸条件などは余りにも整っていないということが言われると思います。このように具体的な問題を挙げますと、切りがないほど数々の多くの問題点を抱えております。  こうした暮らし現実、つまり、経済大国となった日本生活面では生活小国であり、そのギャップというものをいつまでも放置しておくことは、私は、今や国際社会の中でも許されなくなったというふうに考えております。私は、それが昨今、欧米各国から突きつけられております日本異質論、これであると思います。政府は、これまでのような生活を軽視し経済産業を優先させる政策を、もはやドラスチックに変えていく必要があるのではないでしょうか。  次に、私どもはもう一点、資産の格差の拡大阻止という視点を重視しております。  戦後、我が国の社会は平等性の高さによって特徴づけられ、所得、資産の格差は西側先進国の中で最も小さいと言われてまいりました。しかしながら、八五年の円高以来、異常な金余りと超低金利時代の出現によって土地や株式といった資産価格の驚異的な騰貴をもたらしました。資産の時価総額は実体経済の活動を上回るようなテンポで膨張し、国民の中に持てる層と持てない層の二大階層を生み出しまして、その両者の資産格差を容認できないところにまで拡大してきております。それは、今や社会の平等性をゆがめるばかりではなく、所得労働を通じて、つまり額に汗して働くことで稼ぐものであるという常識、勤労観、こういうものを過去のものにしつつあると思います。それだけに、資産保有の不平等の拡大が、持てない層の反感、ひいてはモラールの低下を招き、中期的に見るならば、我が国社会の活力をそぐことにもなりかねないというふうに考えております。このような課題の解決を目指し、ゆとりある豊かさを実感できる暮らし現実的なものにすることこそ、私たちの当面の緊急な課題というふうに考えております。     〔委員長退席、近藤(鉄)委員長代理着席〕  次に、日米構造問題でございますが、連合は、この日米交渉を外交問題としてとらえるのみでなく、国内経済問題としてとらえ、日本経済重視から国民生活優先への構造転換が、連合を初めとして勤労国民意見ばかりではなく、ひいてはアメリカを代表とする世界からも指摘をされているものだというふうに考えます。  その点からいえば、消費者生活者の立場を基本とし、アメリカに対して個々の対応を明らかにすることも重要でありますが、政府みずからがその重要性を十分認識し、速やかに実施することが国内的にも国際的にも重要であるというふうに考えております。  次に、国際貢献の問題であります。  我が国経済的地位にふさわしい国際社会への貢献を確立していくことが必要であります。我が国経済の発展が国際的な経済社会との密接な関係の上に成り立っている以上、世界のうらやむ繁栄を謳歌している我が国には、それに見合った重要な使命が課せられていることを認識しなければなりません。  世界は今大きく変わろうとしています。戦後最大の転換期に直面しております。国際秩序構築への模索が始まっております。我が国の果たさなければならない役割は、これまで以上に大きいと思います。  その意味で、国際貢献の具体策といたしましては、人、物、技術、資金など経済的な側面からの最大限の貢献が必要だと思います。二つ目の貢献は、世界の平和実現に向けた責任、役割がそれぞれ分担をされておると思います。日本はその大きな役割を背負っていくべきだと思います。三つ目には、近年急速な盛り上がりを見せている地球規模の環境保全についても積極的な役割が求められていると思います。我が国が「世界の中の日本」から、より主体的な「世界に貢献する日本」への転換、これが求められていることを十分認識の上、政府もこれに対する対応を十分積極的に行うことを願っております。  連合は、以上のような基本的な考え方に基づいて、政策あるいは制度の改善要求を提言してまいりました。今日まで政府に対し、あるいは各省庁に対し、あるいはまた経済団体に対し、この話し合いの場をつくってまいりました。先週は海部総理ともお会いをし、構造的緊急政策と官公労働者生活向上課題について申し入れたところであります。  本日は、以下私たちが考えております四つの課題について、さらに意見をつけ加えたいと思います。  第一に、税制問題であります。  この際、まず申し上げておきたいことは、いわゆるクロヨンと言われる税の不公平さ、これは長年私たちも提言をしてきておりますが、一向に改善されていないのは極めて残念であります。私たち連合も、将来の活力ある高度福祉社会に向けて、経済社会の発展、動向に合わせて、所得、資産、消費の間の課税のバランスのとれた税制を確立することが重要であることは、十分認識をしているところであります。しかし、消費税はその負担をすべて消費者が負う消費者税であり、したがって、その改革に当たっては、影響を受ける消費者の立場というものを十分配慮し、その合意を得るよう十分時間をかけて検討するように私たちは提言をしてまいりました。ところが、消費税導入に当たっては、政府はひたすら業界の意向に配慮をし、消費者の立場からの議論は全くと言っていいほど行われていないのは、まことに残念でありました。私たちは、消費税については一たん廃止をし、バランスのとれた税制の確立を目指すという観点から、消費者生活者の立場に立って議論を十分にかけて、合意形成を図っていただきたいと思います。  連合は、不公平税制の是正のために多くの提言を今日まで行ってまいりました。その中の一つに、物価に中立的な所得税住民税制を実現するための物価調整減税制度を導入すべきであると考えております。昭和五十二年から今日まで、物価上昇は実に三九・三%にもなります。その後、減税を確かにされておりますが、それでも補い切れない部分、サラリーマン所得に対する精算として、いわば物価にスライドした減税分として、連合の計算でいきますと一兆四千三百億円にもなります。この減税を私たちは要求をしてまいりたいと思います。  次に、源泉納税者であるサラリーマンと申告納税者である事業者との間の制度と執行面での不公平があります。さらには、サラリーマンに重く、資産を持っている者には余りにも軽い現行の課税のあり方を抜本的に見直していただきたいと思います。  次に、税制改革の問題でありますが、税制改革の進め方については、消費税問題で国民税金に対して大変強い関心と、そしてまた大いに知恵がついてまいりました。国会の対応というものを国民は注目をしております。したがいまして、国民に、何のためにどのように課税をしていくのかというまず全体像を明らかにし、合意を形成していくことが大変重要だと思います。  税制改革に当たっては、二十一世紀を展望し、高齢化社会の姿を明らかにし、経済社会の活力の維持、受益負担関係国民負担率の問題、所得、資産、消費の間のバランスのとれた課税のあり方について国民の合意を得るよう、順序立った提案が必要だと思います。まず、国民税制改革の理念を示す税制の基本構想の策定と明示であります。これに基づいて税制改革全体の大枠を固め、次に個々の税目について検討していく、こういう手順を踏むべきだろうと思います。  いずれにしましても、税制改革は大きな政治課題であります。与野党が十分な論議をすることと、そしてまた、国民にわかりやすい審議をお願いをしたいと思います。  次に、物価問題であります。  物価問題は、物価の上昇問題と内外価格差という物価水準の問題、この二つがあると思います。  最近の物価上昇は憂慮すべき状態になっていると思います。平成二年一月以降の全国及び東京都区部の物価上昇率は三%以上を示しております。最終的には、年度集計では三%前後と推定をされております。当初見通しとは一%も上回る物価の上昇であります。このことについては、私たちも大変大きな関心を持っております。  もう一点、日本の勤労者の購買力が先進国に比べてかなり低い、これは既に皆様方が御承知のとおりだろうと思います。物価水準そのものを引き下げることは、いろいろな角度からメスを入れなければなりません。しかし、当面内外価格差を縮小することは極めて重要なことであろうと思います。日本国民は、アメリカやヨーロッパよりも三〇%から四〇%高い生活費の支出を強いられている実情にあります。これに対し抜本的な是正策が見られないことは、極めて残念なことであります。  連合は、消費者の立場に立って、物価対策のために物価対策実行機関の設置を提唱します。この機関は、具体的に労働組合を初めとする国民各層の代表者による推進機関とし、構造的要因を解明するとともに、アクションプログラムを策定し、実施すること、さらには、監視体制をつくり上げることが私たちは必要だと思っております。  平成二年度の消費者物価上昇率は、最大限でも一・六%以下に抑えていただきたいと思います。内外価格差を実効あらしむるために、購買力平価を政府の責任で毎年公表することにし、さらには、便乗値上げ、公共料金の値上げ等についても極力その抑制に努力を願いたいと思います。  三番目には、土地、住宅の問題であります。  大都市における土地住宅対策は、もはや全く手おくれでどうすることもできない状態にあると思います。これはまさに政府、自治体が余りにも策を講じなかったゆえんではないかというふうに考えております。特に東京圏では、中高層の住宅価格が平均的勤労者の年収、その十倍にも上る結果になっております。したがいまして、もはやサラリーマンが持ち家を持つということが極めて困難になっております。  そこで、私たちは、東京区部、大都市では、良質な低廉な公共賃貸住宅を優先する政策に転換すべきであろうと考えるわけであります。家賃は勤労者の平均の年収の一五%程度に抑え、賃貸住宅の建設に全力を挙げていただきたいと思います。さらには、家賃控除制度等を新設し、サラリーマン、働く人たちの持ち家制度への対策にしていくべきだと思います。  次に、土地税制の抜本改革の問題であります。  保有税、相続税など、極端な土地資産に対する優遇税制を是正し、宅地供給を促進する一環として、大土地保有税の創設を私たちは考えております。都市計画区域内の二千平米以上の土地、しかも公示地価五億円以上の土地所有者に対して、毎年〇・七%程度の税率で課税するというものであります。また、三大都市圏における市街化区域内の農地、これは速やかに固定資産税、相続税の宅地並み課税を実施するべきであると思います。その際、都市計画に沿って、生産緑地の指定など、保全すべき農地と宅地化すべき農地との見直しは明確にすべきだと考えております。  連合は、日経連とともに進めております共同社宅事業をこの大都市圏において住宅供給施策の中に位置づけて、その事業化に対して努力を積み重ねております。政府に対する御支援もお願いをしたいところであります。  いずれにしましても、土地住宅問題は政府予算も極めて不十分であります。諸悪の根源と言われる土地問題に対する抜本的な改革案、さらには住宅建設についての意欲的な政策をお願いしたいところであります。  最後に、福祉、社会保障制度の問題あるいはゆとり、豊かさの実感できる社会というものを形成するために若干の提起をしたいと思います。     〔近藤(鉄)委員長代理退席、委員長着席〕  政府が「高齢者保健福祉推進十か年戦略」を策定しました。これは私たちとしては評価できるものと思います。しかし、戦略ができても実行に移すという財政的な裏づけ、これがなくてはならないと思いますし、年度的な具体的な展望を明らかにして、来るべき高齢化社会が明るい社会になるようなビジョンを示すべきだと思います。  いずれにしても、福祉にはお金がかかります。先進諸国に比べて遜色のない我が国制度がございますが、これからは自助努力が必要だという政府の政策路線を転換し、福祉、社会保障の充実強化は経済成長を下支えするばかりでなく、社会資本の充実や生産性向上など、経済効果を高めるための重要な役割を果たすものであるという認識に立って取り組むことを要望いたします。  そして、労働時間、雇用の問題でありますが、六十歳定年制というものを履行し、そして六十歳代前半の雇用に対する政府の具体的な施策というものを要請するものであります。  さらには、我が国においても五月一日のメーデーを国民祝日にするということをかねてから要望しておりますが、この五月一日を国民祝日とし、四月二十九日から五月五日までを太陽と緑の週としてこれの休日化を強く求めるものであります。  最後に、育児休業法、パート労働法。  いずれにしましても今の日本を支える労働力の大きな糧になるはずであります。六十歳定年法の制定と六十歳代の雇用の拡大あるいはまたパート労働法、育児休業法、さらには看護休暇制度を早急に実現することにより、私たち日本の働く者の場をもっともっと広げ、この日本経済をみんなで支え合おうという決意に燃えております。  そういう意味での政府に対する要望を申し上げ、そして政府がこれを十分反映して予算編成されることを望んで、私の公述を終わりたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
  6. 越智伊平

    越智委員長 どうもありがとうございました。     ─────────────
  7. 越智伊平

    越智委員長 途中ではありますが、ただいまサー・ケリー・バーク・ニュージーランド国会議長御一行が、本委員会の傍聴にお見えになりました。御紹介を申し上げますとともに、拍手をお願いいたします。     〔拍手〕     ─────────────
  8. 越智伊平

    越智委員長 次に、糠沢公述人にお願いをいたします。
  9. 糠沢和夫

    糠沢公述人 経団連の糠沢でございます。  経団連は、大きな企業千社をメンバーとし、それからまた業種別団体を中心に百二十の団体を傘下に持っている日本の団体でございます。  本日は、若干経緯がございまして、国際経済の問題から論じていただきたい、そういうふうな連絡がございましたので、私は経団連の中で国際関係の担当をいたしております常務理事でございますので、日米構造問題の協議を含む日米経済関係について、経団連の考え方を御披露したいというふうに考えております。  初めに、日米構造問題協議についてコメントした後に、日米経済関係の現状と今後の問題をどう考えているかという問題について申し上げたいと思います。  構造問題協議につきましては、昨年十月に松沢副会長、富士銀行の相談役を委員長とする懇談会を設置しまして、幾つかの下部の小委員会をつくりまして、経団連としての考え方を取りまとめました。お手元にあります分厚いものはその結論でございます。それは三月十三日に発表いたしました。この見解については、もちろん我が国政府にはお渡ししてありますけれども、その主文につきましては英訳し、米国等にもお伝え申し上げております。  その後、政府の方から中間報告が出されましたので、それに触れつつ主要点を取り上げて、経団連の受けとめ方、中間報告の受けとめ方という観点から御紹介申し上げたいと思います。  全体に対する評価でございますが、中間報告の内容を見ると非常に細部にわたっていて、若干米国側の要求が内政干渉ではないかというふうな意見もありますけれども日本の社会が国際社会と調和する上で必要な改革が多く含まれているというふうに受けとめております。  個別の問題については次のように考えております。  第一に、大きな問題として浮かび上がってまいりました社会資本の充実の問題でございます。  中間報告では、最終報告までに、まず平成二年度末に期限の来る分野、住宅、下水道、公園、それから空港、港湾施設等の社会資本整備計画を更新してその主要分野について現行規模を上回る計画を策定する、それから第二に、今後十年間の新しい総合的な公共投資計画を策定し、支出総額を明らかにするというふうになっておりますが、この点については、経団連としても、将来予想される我が国貯蓄率の低下という観点を考慮すれば、今が非常に社会資本整備を積極的に進める好機であるというふうに考えております。欧米諸国社会資本水準、そういったものを当面の目標として具体的な整備計画を策定すべきであるというふうに経団連は主張してまいりましたので、今回の結論は妥当だというふうに考えております。また、これまで公共投資予算がややもすれば固定的に配分されてきたということも問題でございますし、これを是正して国民生活の向上に資するという観点から重点配分を行うべきであるというふうに考えております。     〔委員長退席、佐藤(信)委員長代理着席〕  いずれにいたしましても、最終報告を含め、今後における我が国政府の意欲的な取り組みに大いに期待いたしますとともに、インフレを招くことのないような適切な財政金融政策を求めていきたいというふうに考えております。  第二番目の問題は、排他的取引慣行、つまり独禁法に関連する問題でございます。  中間報告では、まず第一に、平成三年度に課徴金引き上げを含む独禁法改正案の作成、刑事罰の活用などを中心とした独禁法の運用及び抜本的強化を行うということが書いてあります。それから行政指導の文書化、審議会等の成果の公表など政府の慣行の一層の透明性、公正性を確保するというふうなことが書いてあります。経団連としては、日本の独禁法は法制的には十分整備されているというふうに見ております。そして、その現行法の厳正な運用は当然なことでありますが、課徴金の引き上げなどは当面必要ないというのが基本的な態度であります。ただ、いろんな経緯があり、今回政府欧米各国との整合性、それから日本の法体系とのバランス等を十分考慮してこのような結論を出されたというふうに理解いたしますので、政治決断としてこういう結論に至ったというならば、法改正もやむを得ないというふうに受けとめておりますが、具体的な法律改正案をお詰めになる段階で、また改めて何らかの形で意見を申し述べたいというふうに考えております。  ただし、我が国企業の行動、それから商慣習、そういったものがこれまでいろんな経緯、歴史的な経緯から産業政策あるいは政府規制の影響を大きく受けてきたことは事実でありまして、今後の競争政策については、消費者の立場に立っていろんな個別の業法、それから独禁法適用除外立法などを再検討すべき時期に来ているのではないかというふうに思っております。  政府が関与する分野を縮小し、経済活動については、原則自由、例外規制のルールを確立し、原則的には独禁法を経済の全領域に適用していくということが何よりも重要であると思います。そうすることが独禁法を強化することにつながり、また消費者利益を確保することになると思います。一部の規制というものを残して、ある部分について非常に強い独禁法を施行するということになりますと、難しく言えば資源の配分をゆがめるということになるというふうに考えております。また、二国間で競争政策を支配する法律の調整を求めるというよりは、OECD、ガット等の国際的な場で調和を求めていくという方が望ましいというふうに考えております。  第三に、土地政策の問題でございます。  中間報告でいろいろな個別の問題について具体的な施策を推進していくこととしておりますが、これはすべて経団連の考え方と非常に似ておりまして評価しております。経団連では、土地問題については需給両面から対策を講ずることを主張してきておりまして、大都市圏における土地供給の拡大と有効利用を図る一方で、許認可権限の地方移譲などというふうな、企業が東京にいなければいけないというふうな効果を持ついろいろな規制でございますね、そういった規制の緩和を通じて土地需要の分散を進めることが必要であるというふうに訴えてきております。また、土地税制の問題はもっと詳しくこれから意見を取りまとめていく予定でございます。  第四に、流通については、今度の中間報告は空港、港湾、道路等の輸入インフラを整備する、それから大店法、景品規制、酒類販売、薬事法等に関する規制の緩和を行うことというふうに書いてございますが、経団連としては、流通、運輸にかかわる規制全般を緩和し、そのために包括的なアクションプログラムを策定し、実行すべきであるというふうにかねがね主張してまいりました。大店法については、適正な運用の即時実施、地方公共団体の行き過ぎた独自規制の撤廃、さらに改廃を含めた三年後の抜本的な見直しをすべきであるというふうに主張してまいりました。今回の中間報告につきましては、さまざまな経緯を経てできたものでございまして、おおむね妥当な決着であるというふうに考えております。  ここで、流通については少々詳しく経団連の考え方を紹介したいと思いますが、我が国の流通について、非常に多数の零細な商店の存在、それから流通経路が非常に多段階であり複雑である、だから非効率であるというふうな批判がよくなされております。  小売価格に占める卸マージン、それから小売マージン、両方のマージンを合わせたものの比率を見てみますと、日本が五七・六%。アメリカが四九・七%というふうに低うございますけれども、西ドイツは五八・九%で日本よりちょっと高い。英国は五五・六%、まあ大体同じ。フランスも五五・三%。そういうことで、大体日本と似たり寄ったり、アメリカが非常に低うございますが、そういうことでございます。余り遜色がないというふうに見ております。また、多様な消費形態に対応して商品を提供するという面では、日本の流通システムにもメリットがあるのじゃないかというふうに見ております。さらに、現在我が国の流通システムは非常に急激に実態が変化しておって、諸外国が日本の流通が硬直的であるという批判も当たらない面もあるのではないかというふうに見ております。ただ、経済的に合理性があるというのはどういうことかというと、本来さまざまな規制を外しても存続するということが経済的合理性があるということの定義のように思っております。したがって、過度に規制に依存するものは経済的に合理性を有しているとは言えないのではないかというふうに思っております。  問題は、大店法や酒類販売免許等の個別品目に対する販売規制を初めとした各種の流通、それから物流の規制、参入規制や事業規制いろいろございますが、そういった規制が競争制限的に作用し、このようなことが構造改革や新業態創造の障害になっている。特に、個別品目の免許それから許可につきましては、許認可権に基づいた不透明な行政指導が見られるのであります。こういうことが、難しく言えば資源配分にゆがみをもたらし、また取引のコストを高くしているということを我々は指摘してまいりました。我々は、規制緩和を徹底して行えば消費者利益の実現ができるというふうに考えております。  第五に、企業のビヘービアの問題、それから系列の問題でございます。  中間報告では、政府が民間の調達活動についてその透明性を確保するよう勧奨する、勧めるというふうに書いてあります。この報告を踏まえて政府では、民間の調達のガイドラインをつくって、各企業がこれを遵守するように指導する考えがあるやに聞いております。しかし、行政指導によって企業のビヘービアを律するということは好ましくないというふうに基本的に考えております。経団連としては、これは企業自身の問題であり、企業の自主的な取り組みによって調達行動の公正、それから透明性、そういったものを確保していく必要があると考えて、既に外国企業の社内コードなども勉強したりしておりまして、現在、購買取引活動に関する自主的な指針を作成しておりまして、来週発表いたします。  系列の問題については、系列は生産合理化のために長年企業が知恵を絞ってつくってきたものである、長期的な企業関係であるというふうに考えております。そういう長期的な企業関係が成立するに至った理由につきましては、供給の安定性を維持したい、それから高品質、低価格の製品をつくりたいというふうな気持ちがその背後にあった。したがって、それ自体は経済的合理性に基づいたものであるというのが我々の基本的な認識であります。こういった系列とか長期的安定的な取引というような行動が非常に不合理な行動であったとすれば、日本企業世界消費者から求められているような高品質で安い製品というものを次から次へと供給できたわけはないのではないかというふうに見ております。競争が非常に激しかったからこそ、日本製造業の対売上高、対総資本の利益率はいずれも、一九七六年から八七年の十二年間、両端入れますから十二年間でございますが、この十二年の間、米国よりもずっと一貫して低かったのであります。日本の方がアメリカよりも製造業の利益率が一貫して低かったのであります。また、その間に日本製造業がずっと技術革新のリード役を世界で占めてきたということは見逃せない事実であって、日本企業が非合理的な調達行動をとってきたというふうには考えないというのが我々の立場であります。  それから、日米構造協議は、米国から指摘されたから対応を講ずるというものではなくて、我が国にとって一層徹底した経済民主主義の実現を図る上で必要な改革であり、また国際社会の対日信頼感の向上に努め、世界の安定と繁栄にイニシアチブを発揮するための一つの前提としてとらえるべき側面を持っていると思います。  幾つかの点について配慮すべきであると思いますが、その幾つかの点を述べるとすれば、世界と調和し孤立を避けなければいけない。それから、経済の領域において自己責任の原則で進まなければいけない。行政依存から脱却しなければいけない。市場原理の全面的活用を図らなければいけない。企業の社会性を自覚しなければいけないというふうなところが重要な観点であるというふうに思います。  以上が構造協議の問題でございますが、日米関係全般について次に申し上げたいと思います。  第一に、日米経済関係のきしみが両国の友好関係に影を落としております。その背景には、確かに貿易の不均衡の問題がまず取り上げられておりますが、そのほかに米国の経済的地位の相対的な低下、それからソ連、東欧諸国などの民主化への動きによる世界情勢の変化、それからそういった背景をもとにして米国の政治外交政策の根本に揺らぎが見られるなどのことが挙げられると思います。日本としては、こういった世界的な変化に対してグローバルな見地から世界の安定と繁栄に資したいという観点から臨むならば、日米関係の維持強化につながるのではないかというふうに考えております。  第二に、日本自体のグローバルな貿易黒字でございますが、これは非常に縮小しつつございます。また、経常収支の黒字もここ三年間三百億ドルの縮小を示したということは、日本経済というものが主として為替レートと成長率、そういった経済的ないろいろな要因によって非常に変わってきている、為替レートに見られる価格変化に正確に、かつ敏感に反応している経済なのだということを示していると思います。こういったことから見ますと、我が国市場が閉鎖的であって価格というシグナルに反応しない経済であるというふうな批判があるとすれば、それは当たらないというふうに思っております。  ただ、問題は二国間の収支でございまして、アメリカに対して非常に黒字が大きい。しかも、日本の黒字に占める対米黒字あるいはアメリカの赤字に占める日本向けの赤字、日本からの赤字、そういったものが非常に大きいという問題があります。こういった問題は我々としても非常に憂慮しておりますが、何としてもこれは両国のマクロ政策、それから為替レートなどの影響が貿易政策よりもずっと大きいというのが基本的な観察であるということを申し上げたいと思います。  第三に、アメリカ内における対日感情の悪化の問題につきまして非常に我々は憂慮しております。日本は信頼できるパートナーでないとか、あるいは脅威になっているというふうな見方がアメリカの中で増加してきており、米国行政府のいろいろな政策の選択肢を非常に狭めてきているというふうに見ております。さらに、一般に日本の社会が欧米の社会とは異質である、どうも日本に対しては特別のルールによって臨むべきであるというふうな修正主義の考え方がこのごろ勢いがあるように存じております。日本としては、実態の改善を進めながら民間レベルを含め両国の交流を深めて、地道に誤解を解いていく以外にないというふうに思います。     〔佐藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕  第四に、対米投資の問題がこのごろ非常にクローズアップしてまいりました。対米直接投資が非常にふえたことから、日系企業の対米進出に感情的な反発が見られております。日本の投資の中に債券それから不動産の比率が非常に高いということがございまして、欧州の方の対米投資とは少しその構成が違うということから、日本企業が米国資産を買いあさっているというふうな批判がある、また米国社会に日本の投資企業が溶け込まないというような批判があります。こういった点については、我々としてもいろいろ気を使って、耳を傾け、いろいろアメリカの考え方日本企業に知らせる機会をつくり、かつアメリカのよき企業市民となるように別途団体を組織いたしております。海外投資関連協議会という協議会を組織して積極的に働きかけを行っておりますし、また、マイノリティー問題などについても十分気をつけて行動していくように努力しております。  最後に、今後の展望について触れて締めくくりといたしたいと思います。  今後の日米経済関係は、政治の情勢、それから構造問題協議のフォローアップ、スーパー三〇一条等々いろいろありまして、かなり緊迫した状態が続くのではないかと思います。我が国としては、米国の主張を冷静に受けとめ、我が国がみずから国際社会と調和し、それへの貢献を積極的に行うという決意のもとに、基本的に市場メカニズムを尊重するという視点のもとで国内の仕組みを見直していくことが必要であるというふうに基本的に考えております。そういうふうなことを進めれば、改革すべきもの、あるいは普遍的な制度として残すもの、あるいは合理性があって自然に残るものなどというものがおのずから振り分けされてくるものだというふうに見ております。  今後のことでございますが、米国が仮に一方的な措置をとるという場合には、ガットなどの多国間の場において協議し、諸国の判断を仰ぎ、少なくとも記録に残すようにすべきではないかというふうに考えております。  以上でございます。どうもありがとうございました。(拍手)
  10. 越智伊平

    越智委員長 ありがとうございました。     ─────────────
  11. 越智伊平

    越智委員長 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。笹川堯君
  12. 笹川堯

    笹川委員 公述人の皆さん、大変お忙しい中ありがとうございました。大変いいお話を聞かしていただいて、質問したいことが実はたくさんあるわけでございますが、私の方も持ち時間が大変少のうございますので、全部の先生にお聞きすることができないかもわかりませんが、坂本さんにちょっとお尋ねをいたします。  平成二年度の予算の今審議の最中でございますが、御案内のように野党の方々は消費税廃止問題につきまして法案を提出するということで、御案内のように個別間接税を復活させるとか、あるいはまた自然増収を見込んだらどうだというようなお話がございますが、御案内のようにこのところ円安、そして株が非常に安い、非常にまた金利高、こういうことになりますと、企業の財政を圧迫しまして自然増収が非常に見込みにくくなってくるのじゃないかと思いますが、これについてちょっとお考えを聞かしていただければ大変ありがたいと思います。
  13. 坂本哲之助

    坂本公述人 先ほども申し上げましたように、私たちは消費税については一たん廃止をするべきであろうという見解を申し上げました。そして、さらには十分国民の理解が求められる形の審議を尽くすべきだというお話をさせていただきました。その意味では、私たちは、直間比率の問題というのはやはり抜本的に集中した論議を十分尽くさなければいけない時期が必ずあるし、またしなければいけないというふうに考えております。しかし、今回の消費税問題につきましては、その導入の仕方、経過からいって、余りにも国民とかけ離れていたという観点から先ほどのような意見を申し上げさせていただきました。  したがいまして、私たちは労働団体でありますけれども、実は労働組合の先輩の教えに、困ったり悩んだりしたときには職場へ帰れ、職場が必ずその答えを持っているという教えがあります。そういう意味では、この消費税問題も、やはり本当に政治が国民の場に踏み込んで、今国民が何を考え、どうしているのかということを、本当に国会として政治を担当する皆様方が十分知る必要があるだろう。その上に立って、国民にわかりやすい、そして国民が理解できるような審議を尽くしていただきたい。その上に立った合意形成というものならば、私たちとしてそれは正しいものであるだろうというふうに考える次第であります。  以上であります。
  14. 笹川堯

    笹川委員 ありがとうございました。  今の同じ質問を立山先生にお尋ねしたいと思いますが、いかがでございますか。
  15. 立山武司

    立山公述人 お答えします。  先ほど申し上げましたように、ここ数年非常に増収があった、見込み以上の税収があった。この原因、私は基本的に言えば景気の拡大基調、四十カ月というような格好で拡大基調にあったというようなことに加えて、株、土地、最近少しずつおかしくなっておりますけれども、そういったものの例えば譲渡所得がふえるとか、あるいは、よく資産効果といいますように、別に売らなくたって持っているものが上がっただけで気が大きくなって消費をふやすというようなものが税収にはね返ってきているということで、ある意味では、よくバブル、バブルといいますけれども税収の増加にも実はバブル部分の反映の部分がかなり大きい。そういう前提で考えますと、景気の実際の足取り自体が、先ほど言われたように例えば金利とか円レートとかそういうのがみんな逆転してきているということを考えますと、景気実態自体果たして今後何カ月も何年も拡大が続くとはとても思えない。一たんは調整期間を迎えざるを得ない。加えてバブルがはげる部分、これもやはり税収に響いてくるということで、私は、先ほど言いましたように、平成二年度、これは何とか政府見込みぐらいいけば御の字で、三年度以降になると余り甘い見通しを立てると裏目が出てしまうというふうに思っております。  もう委員の方が先刻御承知だと思いますけれども、実は、例えば昭和四十八、九年若干の自然増収が二年続けて出ました、二兆円、一兆円というような格好で。ところが、五十年、五十一年と、これはどちらかといえば見積もり以下の税収しか出なかった。五十四、五年、同じような問題ですね。しかもあのときはたしか二兆五千億円ぐらいで三兆弱なんですけれども、その次の年と次の年に一年で六兆何千億円へこんじゃったというようなことがあります。だから、税収見積もりというのは非常に難しいし、この精度をできるだけ高める工夫を財政当局あたりにやっていただきたいけれども、まあ神ならぬ身でぴたり当てるということは難しいとすれば、私は税収はできるだけかた目に、どっちかにするとすればかた目に見ておいた方が無難である。自然増収が出た場合には、それは次年度への繰り越しとかあるいは債務の繰り上げ償還とかいろいろな処理の仕方がございます。ところが、多目に見ていてへこんだ場合に、それは予算の執行停止とかあるいは何かの政策をやめるというようなことはできませんから、結局は特例国債みたいなものに依存せざるを得なくて、財政体質をやはり悪くしていくということになります。  私は、実は税収見通しについてはかなり懸念、心配をしているということでございます。よろしゅうございますか。
  16. 笹川堯

    笹川委員 それでは、坂本さんにもう一つお尋ねします。  先ほどお話の中に、法人の、あるいはまた固定資産税を少し上げて社会資本の充実に充てたらどうだ、こういうお話があったわけであります。実は資産格差の拡大というのは国民ひとしくみんな心配をいたしておりますが、中でも法人が土地投機をした、非常に金利が安かった、あるいはまた株式に投資をして、今は株式が安くなりましたから恐らく損失が出るだろうと思うのですが、まさに非常に不純な動機で、俗に言う本業よりもアルバイトの方が収入が高かった。  ここで一つ問題提起でありますが、よく土地の値段は四つあると申しますね。固定資産税の評価額、あるいはまた相続税の値段、あるいは路線価額、あるいは実際の売買価格ですね。こういうものを踏まえて、一般の国民の方々が非常にやはり不満に思っておられますので、企業の所有の土地、これを再評価してある程度税金をいただいて社会資本のおくれている充実を果たす、あるいはまた、今あなたが言われたように固定資産税の税金を少し余分目にいただいたらどうかというような議論がありますが、それについて今私が申し上げたように再評価税を取ったらどうだ。もちろん法人所有といっても、小さな土地もありますし大きなものもございますが、それは別といたしまして、基本的にその考え方はどうでしょうか。
  17. 坂本哲之助

    坂本公述人 私が申し上げましたのは、私たちの考えとしては、企業も個人も、所有して現に使っているものについてよりもむしろ遊んでいるもの、これに対する課税を考えるべきであろうということが主体であります。したがいまして、いわば遊休地といいましょうか、こういうものに対しては厳しくするべきであろうという考え方であります。  さらに、先ほど自然増収の件でちょっとお答えが漏れておりましたが、自然増収というのは見通しの乖離だというふうに私たちはとらえております。したがいまして、これは納税者に対する実質的な増税となった結果というふうにも考えますので、これはやはり納税者にいろいろな形で還元をするべきだというふうに考えております。
  18. 笹川堯

    笹川委員 糠沢さんにお尋ねをいたします。  日米構造協議が今大変問題になりまして、大変触れる事項が多いわけですから根本的な問題をひとつお尋ねしますが、日本企業日本の土地を担保にして海外にどんどん投資されました。特に投資した先はアメリカが多いわけですが、非常にひんしゅくを買って、我々もテレビでそういう問題についてお答えしたことがあるのですが、売る方が悪いか買う方が悪いか、こういう議論もありました。率直に言って、売らなければだれも買えないわけでございますが、企業として、企業のモラルにどうも反するのじゃないか、ただ買えばいいというものじゃないんだ、こういうような議論が随分新聞紙上あるいはまた一般国民の中にあると思うのですが、その点についてどうでしょうか。
  19. 糠沢和夫

    糠沢公述人 お答え申し上げます。  今の問題は、対外直接投資全般というよりは、むしろ不動産の問題が主になっていると思います。対外直接投資全体につきましては、例えばアメリカが四十州、東京に事務所を設けて、一生懸命日本の直接投資を早くもっと来てくださいというふうにいろいろ働きかけております。毎日のようにセミナーを行っておりますので、来てもらいたいという気持ちは非常に強いのだろうと思います。  ただ、土地それから不動産、ビル、そういったものですと、一般にどうも雇用を生まない、その州内あるいはアメリカの中で雇用を生まないという観点から、ほかの投資、製造業でございますね、製造業の投資の方が好ましいんだという考え方が一般にあると思います。それから、不動産の投資によって周辺の価格が上がるとか、そういった問題があると思います。そこで、ひんしゅくを買っているという表現が合っているかどうかは知りませんが、非難があるということは事実だと思います。  経団連としては、先ほど申し上げましたように海外投資関連協議会というのをつくりまして、そこで、なるべく相手の国の所得、雇用、国際収支、そういったものに資するような投資をしよう、それから周辺の社会になるべく溶け込むような企業活動をやろう、それからアメリカの中でいろいろ生じているマイノリティーの問題、そういった問題の解決に資するようにしようといって、まあ全部がそれで、日本企業が千五百社くらいアメリカに投資しているうちで会員がわずか二百六十社でございますから全部とは申し上げませんが、一生懸命努力をしております。なおまた、一層御指導を仰ぎながらいろいろ努力したいと思っております。
  20. 笹川堯

    笹川委員 それでは、経済団体の方々にもぜひひとつ、経済構造協議の以前に今申し上げたようなやはり企業家としての、あるいは投資家としてのモラルがあるので、ぜひひとつ直していただきたい。  最後になりましたが、坂本さんにもう一点お尋ねします。  今社会福祉の充実、非常にみんなの話題になっておりますが、アメリカ型とヨーロッパ型というふうに分かれまして、ヨーロッパ型というのは御存じのように負担も高いぞ、そのかわり受ける方も、受益も高いぞ、アメリカのはそれをほどほどにというのですけれども、どちらの方に御賛成ですか。
  21. 坂本哲之助

    坂本公述人 いわばほどほどにと考えておりまして、率で言えば四〇%の前半であり、五〇%を絶対に超えてはならない、こんなふうに考えております。
  22. 笹川堯

    笹川委員 それでは、終わります。
  23. 越智伊平

    越智委員長 次に、加藤万吉君。
  24. 加藤万吉

    加藤(万)委員 公述人の皆さん、御苦労さまです。ありがとうございます。  最初に立山公述人の方にお聞きをいたしますが、今の公述の中で、国庫消費税の届かないという問題、御説ですと、国が損をする、事業者も損をする、消費者も損をする、こういうお話がございました。  私ども考えてみますと、確かに本来消費者から取って国庫に入らないという面はあるわけですね。それから、消費者が損をするというのは、本来それが国に使われる面でありながら実は国に使われない、そういう面で損をする。これはわかるのですが、事業者消費税、例えば三千万円以下の事業者が損をするというこの意味がちょっとわかりにくいので、教えていただきたい、こう思います。  それから、三千万の問題、五億円の問題含めて一定の見直しが必要だろう、こういうお話がございました。一方、野党側も、間接税問題については、間接税導入すれば壮大なロスが生まれるではないか。今度の政府の見直し案についてどのようにお考えになっているのか。私ども消費税導入されたときに、まさに壮大なロスが生まれるのではないか、企業側からとれば。今度見直しによりましても、米であるとか医療とか教育とか税控除がなされる、免税になるということからくると、例えばマーケットでお米と一緒に売っているところなどはいわゆるロスコストといいましょうか、これが生まれてくるのではないか、こう思うのです。  この二点についてまずお伺いしたい。
  25. 立山武司

    立山公述人 お答えします。  一体今度の免税措置の利益はどこに帰属するのかというようなことで例の猫ばば論云々が出ているけれども、当たらないというふうに私は申し上げた、そのことについてもう少し敷衍しろということだと思うのです。  端的に免税点制度を考えてみたいと思うのです。免税点制度を考えてみますと、御承知のとおり、三千万円以下の事業者納税義務はありませんよということになっているわけですね。にもかかわらず、その人たちもやはり仕入れにかかった税金というのはこれは負担しなければならない。その人たちの業種の需給というか、お客さんとの関係その他で、三%をほかの事業者並みに上げている人もいれば、三%以下の値上げで済ませている人がいる、せいぜい仕入れにかかった税金分、これを上乗せしているというだけの人もいる。  それで、三%丸々上げた場合ですね。これはもし免税点制度がなかったら一体どういうことになるだろうかというふうに考えてみますと、これはもうそういう人たち免税事業者でなくなるわけですから、当然のことながら、消費税法に規定したとおり、大体三%上げて消費者の方に負担していただくということになるので、その場合、三%今の免税点制度のもとで上げた人も、これは若干懐に残る、あるいは国庫に届かないということはあると思います。しかし、これは何も消費者が損しているわけではないわけですね。消費者というのは、もし免税点制度や何かがなければ、三%税金を含んだもので売り買いしなければならないわけですから、この場合には別に問題ない。  問題は、今度は二%台の値上げにとどめている人ということで見ますと、この場合には業者は何も得にはならない、事業者は。消費者の方では免税制度なかりせば三%払うべきもの、これが今度の場合には二%なら二%のもので済んでいるということですから、この場合には消費者が得をする。お互いにそのケース、ケースで、事業者が若干得をするものがあるし、消費者が得をするものがある。しかし、だれも損せずにそんな得をする人が出てくるはずはない。じゃだれが損しているかといえば、それは得べかりし税収免税点制度で逃している国庫であるというふうに私は理解するわけです。それが第一点でございます。  見直しの問題ですけれども、ざっくばらんに申しまして、新しい制度がいろいろ論議されながら何とかスタートして、やっとこさ一年たって、まあこれは定着していないという人もいらっしゃるかもしれないけれども、形としては少なくとも定着してきている。どの案だって、どの案というか、今の現行法で見ますと、これは百点満点だとはなかなか言い切れない面がございます。ただし、エクスキューズを言えば、従来の税体系、これはどっちかといえば個別間接税を代表にして落第点であった。それに比べればましだという意味で、まずこれでやってみる。そして現実に二年たち三年たって問題点などが明らかになって、皆さんがここはこう直した方がいいという合意が成立したら、そのような措置を国会などでなされればいいのじゃないかというふうに私は思っております。  ただ、現実の問題として、今度政府は見直し案を出しております。これは、税制の筋としては、例えば課税ベースを今までより若干狭めるよとかいうようなことは、筋からいえばちょっと緩い方向に来るのかなと思いますけれども、何で見直し案を出さざるを得なかったかという経過を考えてみますと、一般国民の方も、なれない税制であるというようなことである意味では拒絶反応が強かった、野党の方も皆さんで反対なされたということから、何らかの譲歩をしないと政治的にもたないとでもいいますか、実際の問題としてこのまま突っぱねていくわけにはいかぬということで恐らく見直し案を出されたんだと思います。  見直し案の中に、私ども税制の立場から見て、これはまあ前進だねと思われる部分と、それからこの点はやはりちょっとどちらかといえば後退ではないかという部分とございます。だけれども、まあこれは民主主義の世の中で、租税法定主義のこの世の中でやはり法律として通さなければならないし、そのためには国民の大方の合意というものはどうしても必要になるということで、現行法をそのまま一字一句も変えないよということじゃなくて、若干、いろいろな世論の動向にかんがみて、譲歩するものは譲歩しましょうという政治的な判断をなされた結果が今度の見直し法案であるというふうに私は理解しております。  それで、じゃ大混乱が起こるのかというと、それはそうじゃないと思いますね。今度の場合、何がしかの摩擦、混乱で制度を途中、部分にしろ変えるとすれば、まあこれはあり得るでしょう。あり得るけれども、その程度というものは、例えば廃止とか凍結とかいう場合に比べれば非常に程度が小さいというのは、今度の例えば非課税範囲の拡大にしても、原則として、例えば学校関係費用とか出産あるいは埋葬というような格好で、大体サービス部分に限っている。だから、一般の方、一般の事業者がしょっちゅう当面するような性格のものというのはなるべく避けているということでございます。  それから、問題は食料品の扱いが今度変わるというふうに改正案の内容はなっているわけですけれども、これも、じゃ摩擦ロスがないかといえば、何がしかあると思います。あるとは思うけれども、まあ、こう言っちゃなんだけれども、許容範囲の摩擦かなと思います。廃止したり凍結したりするようなことに比べればはるかにマイナーな摩擦で済むということでございます。  よろしゅうございますか。
  26. 加藤万吉

    加藤(万)委員 坂本公述人にお聞きをしますが、世界に貢献する日本、こういうことで今連合傘下の組合のそれぞれの企業も外国進出を大分しているわけですが、最近の東欧の政治情勢の変化、ヨーロッパの変化などなど見ますると、従来の民間企業の外国への進出、いわゆる資本の進出、これに対して別の視点から日本政府側としてのアドバイスといいましょうかあるいはアクションといいましょうか、こういうものが今日の世界情勢から見て必要ではないか。先ほど公述人の話では、人、物、資金、こういう面で日本世界に貢献する政府側のアクションが必要だ、こういうお話ですが、どうでしょうか、今のこの世界情勢の変化に伴う新たな日本政府のアクションといいましょうかあるいは各企業進出に対するアドバイザーといいましょうか、こういう点は一体どういうように考えたらよろしいのでしょうか、あるいは公述人はどういう気持ちをその辺では持っていらっしゃるのか、これをひとつお聞きをしたいと思うのです。  それから二つ目に、物価の上昇に比べて減税が極めて弱い、したがって減税をもっと拡大をすべきだ。先ほどでは三九・何%ですか、物価の上昇が。それに対して今日までの減税がとても追いついていない。今一兆四千億何がしの減税をすべきというのは、いわば従来の物価の上昇分に見合うものとして今日の段階でそれだけの減税が必要なのか、これが二つ目の問題です。  三つ目は、これからの福祉社会に労働力の問題を、特に六十歳の定年制の定着、同時に六十歳以降の労働力というものをどう我々は判断してよろしいのか。なかんずく、政府は、厚生年金あるいは各種年金を六十五歳に、これは年度は大分先にはなりますようなものの、いずれにしても年金制度をこの際改正しよう、こういう意思があるわけでして、そうなりますと、六十歳から六十五歳までの間の老後所得といいましょうか、こういう面に対して大変不安を持っているんじゃないか、こんな気持ちがするのですが、この辺はどういう施策をもって老後社会というものを考えていったらよろしいのか。  以上三点についてまずお聞きしたいと思います。
  27. 坂本哲之助

    坂本公述人 最初の企業の海外進出の問題でありますけれども、私たちは、企業の海外進出がなぜ行われるかということを考えてみますときに、今まではともすると国内にそれだけ投資をするに足りるものがなく、そして海外に進出をしたというとらえ方をしております。その意味では、国内のいわば内需活性化を行って、国内に十分投資をするそういう場をこれは政治の力でつくっていくべきであろう、こんなふうにも考えております。したがいまして、本来国内に投資すべき企業の資本というものが海外に行くのは憂うることであり、同時にこれはできれば私たちとしては本来の国内にというふうに考えていかねばならないと思っております。  当然、その意味からいくと、産業、雇用の空洞化の問題等々もこれによって解消されるのではないかというふうに思いますし、輸入の急増によるいわば生産の縮小ということが問題になっておりますけれども、こういうものに対しても、私たちは、雇用の安定とか確保とかあるいは労働条件の確保という点から労使で真剣な話し合いをしていくという視点に立っております。そこで、政府に対しましては、先ほど申し上げましたように、私たちは、経済的に考えますと内需を拡大をして五%程度の安定的な成長をと考えておりますので、それに呼応した形での施策をするべきだというふうに考えます。  次に、物価の問題でありますけれども、私たちは、先ほど申し上げましたが、サラリーマンのいわば必要経費というものは固定化されております。したがって、事業者との違いは、物価が上昇したときに、私たちの必要経費というものがいつも固定しているので、物価が上がってもそれが額が変わらないというところに問題意識を持っております。したがいまして、それを是正するための提言をと要求をしているわけですが、もし行われたとするならばというのが先ほどの三九・三%の話でございます。したがいまして、これが一兆四千三百億円になるという観点から、やはり私たちサラリーマンの必要経費というものに対して物価に呼応した形の制度というものをつくっていただきたい、それがいわば事業者サラリーマンとの不公平さをなくすというふうな判断に立っているわけであります。  三点目の、六十歳問題と、そして厚生年金の支給の問題でありますけれども、私たちは、現在たしか六十歳の定年制が言われていながら、まだまだこの六十歳定年がしかれている事業所、企業というものは極めて少のうございます。したがいまして、まず六十歳定年というものをひとつ完全に実施をしていくこと、そしてこの六十歳定年をまず法制化によって施行することと、そして、六十五歳に年金というのはこれは基本的には私たちは反対でございますけれども、六十歳から支給されるべきであるというふうに考えておりますが、いずれにしても、まだまだお若く、そして六十歳といえばまだ仕事ができる年齢というふうに考えておりますので、これに対する雇用の問題は、日本の昨今の労働力不足の問題、人材不足の問題からいっても、当然女性問題とともに高齢者の雇用問題というのは日本経済として必要だというふうに考えるわけであります。したがいまして、その問題につきましては、高齢者対策の具体策といたしまして、高齢者雇用の十カ年計画というものを具体的に作成してこの実施に入ること、これを私たちは提言をしているわけであります。特に中小企業者の労働条件の格差是正という面からも、六十歳定年制というものは速やかに制定すべきだというふうに考えます。  さらには、高年齢者雇用安定法を改正して、事業主に対して六十歳代前半層の雇用努力というものも義務づけていただきたいな、こんなふうに考えております。そして、未達成の事業主に対してはペナルティーを科せるぐらいの措置をしていかないと、これまた実行が遠くなるのかなという気がしております。いずれにしましても、高齢者雇用というものは、高年齢者雇用確保助成金などというものを措置をしていただいて、特に中小企業に対してはこういう助成措置等が有効かと思いますので、こんな点についても私たちの望むところでございます。  いずれにしても、最終的には、先ほど申し上げました高齢者雇用の十カ年計画等を策定しながら、労使でもって構成する高齢者雇用推進国民会議、こんなものを直ちに設置して、今後の日本労働力確保の問題、雇用の問題、さらには高齢者対策の問題ということを考えながら実施に移すべきであろう、こんなふうに考えております。  以上でございます。
  28. 加藤万吉

    加藤(万)委員 生活にゆとりを求める面から、土地税制の問題、それから住宅、社会資本整備、さまざまな課題をいただきましたが、私は、その前提になるのは、やはり日本労働時間というものを相当考える必要があるのではなかろうか。ことしの春闘の各組合の要求などを見ておりましても、労働時間短縮というのは大分要求が出ているのですね。しかし、労働時間短縮に、今日労働力不足ということも背景にはあるのでしょうが、一定の定時間的なものは短くなっても、残業が多いとか休日出勤が多いとか、政府が言っている千八百時間にやがて到達するという目標が、今の状況では、率直に言って、とてもではないけれども目標年次に完成されるとは思わない。すなわち、生活のゆとりという問題をまず労働の現場から解消するというためには時間短縮というものは最大の課題ではないか、こう思うのですが、現状進まないのをどういう形で政府が施策をとれば、ないしは私ども国会でどのような法律的な規制を行っていけばそれが目標に近くなるかどうか、労働時間短縮についての御意見をひとつお聞かせいただきたいと思うのです。
  29. 坂本哲之助

    坂本公述人 御承知のように、日本労働時間は、平成元年度の総労働時間は実は二千八十八時間でございました。これは前年に比べると若干は減っております。しかし、西ドイツ、フランスの一千五、六百時間あるいはイギリス、アメリカの一千九百時間弱の問題と比べても大変大きな差があるところであります。政府は一九九二年に千八百時間にするということを言っておられますけれども、これは今の状況では極めて困難と言わざるを得ないと思います。今年度に例えば百時間短縮をしていかないとこの目標は達成できないのであります。したがって、早急にまず週四十時間制度の法制化、これを履行していかなければいけないと思います。  先ほども申し上げましたように、もう一つは休日の増加という問題があります。これは、日本の祝祭日は欧米に比べて多いと言われますけれども、逆に日本労働時間が長いというこの乖離から見ますと、こういう形で推進していきませんと、中小企業を抱える日本という実態からは具体的に進まないだろうというふうに考えております。  そして、この総労働時間を短縮するということと、そしてまた休日をふやすということ、これが相まっていかなければいけないわけですが、もう一つ、総労働時間の短縮という問題には有給休暇の取得という問題があります。日本は、日本的な風土といいましょうか、この有給休暇が大変とりにくい実態にございます。それだけ働く者がまじめで勤勉だということが言えるのかもしれませんが、これはやはり労使の理解が高まっていきませんと、この有給休暇の取得というものがなかなか実現しにくいというふうに考えるわけであります。したがいまして、私たちはこの有給休暇の取得というところに大きなウエートをかけた活動をしていかなければいけないというふうに思います。  もう一点、連合はゆとり宣言ということを提唱いたしまして、それぞれの議会で決議をしていただくようにお願いをいたしました。最近、自民党さんでもゆとり創造宣言という形で私たちの後追いの形で提起をされたようでありますが、既に百三十の地方議会でこれが決議をされております。御承知のように、このゆとり宣言というのは、やはり人間の本当の幸せというものは、労働時間、働く時間を短くし、短くしといってもいわば国際的にして、しかも家庭の幸せというものを進めていこう、生活環境というものを整備をしていこう、こういう考え方にのっとったゆとり宣言でございます。ぜひ、このゆとり宣言を国会でも決議していただくよう、この場をかりてお願いしたいところであります。
  30. 加藤万吉

    加藤(万)委員 糠沢公述人にお聞きしますが、今日、日米構造協議の中で一番中心になっているのは、社会資本整備、いわば公共投資ですね。そして、従来、どちらかといえば、日本の公共設備投資は産業基盤整備的な要素を非常に持っておったわけです。もちろん生活環境整備がないというわけではございませんけれども。今度の日米構造協議の指摘は、相当いわゆる生活基盤整備的な要素、例えば下水道にしましても、公園にしましても、住宅にしましても、こういうところに視点が置かれているということを振り返ってみますと、従来日本の財政投資を行ってまいりました根底をやや変えていく、日本改造なんという言葉も出ておりますけれども、そういう視点を持っているのではなかろうか。前川レポートが出まして、大分そういう意味での指摘が日本の場合に政界にもあったわけですが、これが一体なされなかった原因がどこにあったんでしょうか。いわば、今日、公述人がおっしゃいますように、これはアメリカから圧力として受けるものではなくて、むしろ日本の国内の政治課題として政治家、我々も考えなくてはいかぬ、こういう御意見をお述べになったわけなんで、一体そういういわば産業基盤整備から生活基盤整備に変えなければならない、ないしは変えられなかった今までの元凶についてどんなお考えをお持ちか、やや政治に踏み込んだ話になるかもしれませんけれども、御意見をお聞かせいただければ、こう思います。
  31. 糠沢和夫

    糠沢公述人 お答えいたします。  社会資本の充実ということは、経団連でもたびたびいろいろ意見を申し上げてきたところでございますが、財政整備期間中やや遠慮して、量的拡大について遠慮して声を低くしてきたということはございますが、今度アメリカの方からいろいろ生活関連の社会資本を充実すべきであるということを言われてきて、それに対して日本政府も応じているということで、それについて経団連が支持しているということを先ほど申し上げたとおりでございます。  ただ、米国が言っていることの中に、輸入インフラですね、空港の改善であるとか、これも非常にやかましく言っております。港湾施設とかそういったところも言っておりまして、輸入インフラの方も非常に充実しなければいけないなということでございます。  それから、こういったことが前川レポートのとおり行われなかったのはなぜかということになりますが、それは、いろいろ固定的な関係、政治と経済との間の固定的関係、あるいは個別利益ですね、それから票と政治の問題、いろいろありますけれども、どれが根本理由かということになると、よくまだ研究しておりませんが、日本全体の利益、日本全体として国際的視野から見たらこういうふうにあらねばならないという視点がやや欠けていたというふうに思います。それから、個別利益その他について、いろいろそれにつながってきた規制その他がありまして、その規制のために全体としての日本の投資がゆがめられてきたという面もあると思います。これは社会資本ばかりでなくて、社会資本とそれからいろいろな社会資本以外の投資ですね、そういったもの全体を含めますと、やはり規制の緩和というふうなことが行われていれば全体として投資がより効率的に行われてきたであろうというふうに考えております。  お答えになっているかどうかわかりませんが。
  32. 加藤万吉

    加藤(万)委員 どうもありがとうございました。
  33. 越智伊平

    越智委員長 次に、山田英介君。
  34. 山田英介

    ○山田委員 三人の公述人の方々、それぞれお伺いをしたいと思っておりますが、まず立山公述人にお尋ねをしたいと思います。  私どもは、消費税廃止、その持つ逆進性、あるいは新たな不公平が内包されている、あるいはまた非常に複雑な仕組みになってしまう、あるいはなっている、そういうような観点から我々は廃止をすべきだと考えるわけでございますが、見直し案について三点ほどお考えをお聞かせいただければと思うのです。  一つは、先ほどから出ております簡易課税制度、五億まで。この簡易課税制度を選択をした場合には、通常の消費税納税をするそういうことから比べますと、かなり事業者に有利になっていると思われるわけでございます。例えば、通常納税する額の四分の一ぐらいで済んでしまう。四百万納税しなければならないところが百万ぐらいで済んでしまうとか、あるいは二百万のところが百万とかということですね。これは先ほど立山公述人おっしゃられましたけれども、国が損をするんだ、消費者あるいは事業者、いずれかがまた損をする場合もあるし、得をする場合もあるんだというようにおっしゃられたわけでございますが、ちょっとここのところが余りにも事業者にとって有利過ぎるのではないか、税が定着をしあるいは受け入れられるということの基本は、やはり公平性の確保、それが一点でございます。  いま一つは、見直し案によりますと、飲料品、食料品につきましては、御案内のとおり流通段階で一・五%の軽減税率、小売段階ではこれを非課税、その他の物品・サービス等につきましては現行の三%、この税率一つを見ましても、このように三通りになっております。非常に複雑なものにしてしまうのではないか、これが二点目でございます。  もう一つは、この見直し案の柱の一つに、総額明示方式をとるように事業者に指導をする、こういう趣旨のものがございます。はしょって申し上げますけれども心配をいたしておりますことは、総額明示方式がとられますと、例えば言葉の上では消費税が消えてしまう。しかし、レシート等の文字の上ではまだそれでも残っている。しかし、これがやがて内税に移行をしていくそのワンステップなのではないかという非常に抜きがたい心配、不安というものがございます。内税に一本化されますと、これは言葉の上でも文字の上でも消費税消費者の目の前からその姿を消してしまう。隠してしまう。それは痛税感をなくするという効果、作用を伴うものでございますから、やがてそれは、三%であっても五%であっても一〇%であっても、痛税感がなくなるという点においては同じことでございますから、将来の税率の引き上げにつながりかねない、つながるのではないかという心配が率直に言ってあるわけでございます。  この三点につきまして、簡潔な御意見をお聞かせをいただければと存じます。
  35. 立山武司

    立山公述人 お答えします。  事業者が有利になっているのではないか、簡易課税制度の結果。確かにそう言えるような現象というのはあちこちで耳にいたします。もともと簡易課税制度を含めて中小事業者に特例的な扱いをしたのは、先ほども委員がちょっと触れられました公平性、公平、公正ということと、といって事業者に余り事務負担その他重い荷をかけちゃいけない、だからある程度簡素な便法みたいなのをつくる必要があるだろう。公平性と簡素さという税の世界での二つの原則、これは往々にしてそっぽを向き合うことが多いわけですね、あっち立てればこっち立たず。その二つの原則のはざま、これを探って、それで今の簡易課税制度あるいは免税点制度というようなものがつくられたということなんですが、問題は、そういう接点を探ったにしても、先ほど私も申し上げましたけれども、五億円という線の引き方が果たして妥当であったかどうかという、これは検討すべき問題として残っているわけですね。  ただ、それを腰だめでやっこらやった、じゃ、半分にしてしまえとかあるいは一億にしたらいいだろうというようなことをやると、これまた後で問題が起こるといけないから、どこにどういうような問題があって、どの程度例えば事業者がもうかっていると言われるような現象があるのか、それを直すにはどうすればいいか、そのためには線引きをどういうふうに置いたら妥当なのかというようなこと、これは感情とか気分とかでなくて、実際のデータに基づいてやはり論議する必要があるのではないか。当然、例えば政府税調なら政府税調でも論議しますし、自民党税調でも論議するだろうし、あるいは国会として一体どうしたらいいのかということを論議すべき問題ではなかろうかというふうに思います。  それから、税率など今度の見直し案でも三%のものと一・五のもの、あるいは非課税、ゼロのものもある、ややややこしいということを言われます。それは確かに税制の簡明さということからいえば一本税率の方がこれは簡単です。ただ、例えばヨーロッパなんかの例を見ましても、これは国民の声があるからだろうと思いますけれども、標準税率を置いている、食料品などは軽減税率の方に持っていく、そのかわり一般の観念でこれはちょっと高級品で普通の税率でかけるのはどうかなというものは割り増し税率を置いて適用するというような複数税率制をとっている国もかなりありますね。だからその辺は、日本の場合には三%というある意味では低い水準で始めているわけですから、それに軽減といったらどういうことになるのかなというような問題が当初あって、いっそのこと一本税率にしてしまえで現行法はスタートしたわけですけれども国民多くの方が、国民感情としても食料品、口に入れるものまで普通のとおり課税というのはこれは納得しがたいというような声があるので、そういう声に考慮して、若干今度の場合扱いを変えようというのが見直し案だと思うのです。  それは非常にややこしいじゃないかと言われますし、確かに一本税率よりはややややこしくなります、事業者の事業内容によっては。なりますけれども、個々の具体的な事業者で考えてみますと、例えば税務計算などの上では、三%が適用されるもの、一・五%で処理すべきものというものはその仕分けが必要だという意味ではややこしいのですけれども、一たん仕分けさえしてしまえばあとは、こんなことを言ったら怒られますけれども小学生でもできる算術の問題になってきますね。だから、今度の場合今までに比べれば見直し案はやや手間がかかりますねということはそのとおりでございますけれども、その手間のかかる程度というのは、事業者が何とか対応できる範囲かなというふうに思います。  それから、総額表示方式のお話でございますけれども、私なんかが総額表示方式というのを必要かなと思いましたのは、内税、外税と俗に言っておりますが、いろいろあります。外税なんかで、定価は幾らです、ただしこのほかに三%の消費税がかかりますよということを大体どのお店でも明示したりしていますね。とっさに暗算で、じゃ全体として幾ら払ったらいいのかということは、なかなか値段の大きさによってはぴんとこない場合がある。それなら内税、外税という議論とは別に、ともかくも全体として幾ら払ったらその物が買えますというものをはっきりさせた方が、これは消費者に対して親切であろうということが総額明示方式を持ち出した基本的な理由なんですね。  それは実は内税か外税かということとは無関係なんです。当然のことながら、内税の場合ですとそれがそのまま支払い金額になるから、これは一つの値段でわかるわけですね。外税にしている場合に、全体としてじゃ税金足して幾ら払えば買えるんだという額を明示しましょうということで、だから内税にしなさいということではないのですが、委員がおっしゃるように、それが内税化への布石みたいに、そういうふうに感じる人もいるだろうと思います。  ただ、内税と外税どちらがいいかといいますと、それぞれ一長一短あるわけですね。つまり、痛税感があった方がいいのかないのがいいのかというような問題、これは個人個人の感じ方でまた違うわけですね。だから、私どもも別に内税方式にしなさいの外税方式にしなさいのというような要するに推奨銘柄の推薦はしていないということでございます。それは自然に落ちついていくだろう、そういうふうに思います。
  36. 山田英介

    ○山田委員 坂本公述人にお伺いをしたいと思いますが、何点かお聞きしたかったのですが、ちょっと絞りまして、先ほど御意見をお伺いしておりましたその中に、近年の土地の価格の高騰、これに関連をいたしまして、大阪圏では住宅地で五六%も一年間価格が暴騰した、大変な事態、局面を迎えていると思います。  そこで、家賃控除制度の創設を連合におかれましても提唱なされておられる。私ども公明党も、家賃控除制度というのは必要である、ぜひ創設をすべきである、こういう考え方でございます。この連合のお考えですね、家賃控除制度、簡潔にひとつお願いします。  それからいま一つは、低所得の方々に対する一定の、例えば月収の一五%を超えた部分については家賃手当を国が支給をすべきだという考え方を私たちは持っております。この家賃手当の制度につきましても一言御意見をちょうだいできればと存じます。
  37. 坂本哲之助

    坂本公述人 まず最初に、家賃の控除制度でありますけれども、今具体的に私たちが幾らということではございませんけれども、いずれにしてもこういう控除制度導入して、いわば働く者の、勤労者の少しでも負担にこたえて減税措置を講ずるべきであろうというのが私たちの基本的な考えでありますので、これから十分な中身の検討に入りたい、こんなふうに思っておりますので、御協力をお願いしたいと思います。  同時に、今の委員の御発言にありました低所得者に対する家賃の一定の補助といいましょうか、こういうものは私たちのまさに望むところでございまして、ともにできれば研究させていただき、一緒になって実現にこぎつけてまいりたい、こんなふうに考えておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
  38. 山田英介

    ○山田委員 最後になりますが、糠沢公述人にお伺いをいたします。  実は日米構造協議を中心に日米の主として経済関係について御意見を聞かせていただきました。その中の土地問題をちょっと伺いたかったのですが、時間がもうございませんのでこれは割愛をさせていただいて、糠沢公述人が経団連の国際問題御担当だと先ほど伺いましたので、ちょっと日米関係じゃなくて恐縮なんですが、よろしかったら一言御見解を伺いたいのですが、我が国の対ソ連外交の基本方針というのは、政経分離、領土解決なくして本格的な経済交流あるいは援助というものはあり得ない、これは政府の一貫した姿勢になっているわけでございます。経済界におられます糠沢公述人は、このいわゆる対ソ基本政策、政経不可分、これについてどんな御意見をお持ちでございましょうか、お伺いをいたします。
  39. 糠沢和夫

    糠沢公述人 お答えをいたします。  経団連の会員も皆国民の一部でございますから、国民のみんなが四島の返還を強く望んでいるということは十分理解しております。したがいまして、今その問題がひっかかっていて、いろいろ経済的な援助あるいは援助に類するようなそういったものについて政府経済界が前に乗り出すということがなかなか難しいのではないかということもよく理解しております。ただ、いろいろ今のペレストロイカ、そういった点で日本が技術的に協力してあげて相手の国のペレストロイカを助けてあげる、ソ連が市場経済への色彩を強めていくことについて助けてあげるというふうなことは、それはそれとして進めてあげることが非常に世界のためになるのではないかというふうに考えております。  また一方、通常貿易については何ら妨げがございませんし、今まで日本がソ連の三番目とか四番目とかいう貿易相手になっていることは事実ですから、そのこと自体は何ら妨げなくやっていっていいのではないかというふうに思います。  要するに、非常に大きなプロジェクトあるいは援助に類するような大きな、シベリア開発の問題であるとかそういった日本の公的な支持が必要なような問題について乗り出していくということは、政府にそういうことを要望するのは今差し控えているというのが経団連の態度であるということを申し上げておきます。
  40. 山田英介

    ○山田委員 終わります。ありがとうございました。
  41. 越智伊平

    越智委員長 次に、三浦久君。
  42. 三浦久

    ○三浦委員 まず最初に、立山先生にお尋ねいたしたいと思います。また、公述人の皆さん、本当に御苦労さまでございます。  先生、消費税廃止すれば経済界に混乱を起こすということを言われましたですね。それは確かに消費税導入したときと同じように一時的に混乱があると私は思います。しかし、一時そういう混乱があったからといって、いわゆる公約違反なんですね、この消費税というのは。公約違反である消費税の定着を図ろうというのはまるで居直り強盗みたいじゃないか、こういうことを言う学者の先生方もいらっしゃいます。この点についてはどういうふうにお考えになっていらっしゃいますでしょうか。
  43. 立山武司

    立山公述人 お答えします。  仮に消費税廃止するとすれば、混乱が起こるけれどもそれは導入時と同じことじゃないかということですが、何で消費税導入したか、あるいはせざるを得なかったかという経過を考えていただきたいと思うのです。というのは、今までの税体系のままではいろいろ所得税に非常に重い荷がかかっているとか、あるいは間接税の分野でも課税されるものとされないものとの不公平があるとか、そういったことを含めて税体系全体を変えなければいけないねということがそもそもの動機だったわけですね。  だから、税制改革というのは、そういう意味でなされたわけだし、消費税導入とそれに伴う間接税制の整備、例えば物品税廃止とかそういった問題は、それに必要なコストとして行ったわけですね、多少手間暇がかかっても。そのことと、そういう改革がなされた後、その改革自体はいい方向に前進したと私は思っております。これを言うなればオシャカにしてもう一度やり直そう、考え直そうというようなことであれば、これはある意味ではそのコストはむだな費用になっているわけですね。そういう点では私は、同じじゃないかと言われると、それは違うんじゃないでしょうかと申し上げざるを得ないわけです。  それからもう一つ、居直り強盗云々は例えの話だろうと思いますけれども、別に強盗を働いているわけでも何でもないわけですね。それで、公約違反だとおっしゃるその公約というのは一体どういう公約だったかといって、中曽根さんがああ言った、こう言ったとかいろいろなことがございます。だけれども、同時にまた、あれはたしか議長裁定で直間比率の見直しなどを院として合意されたはずだと思うのです。三浦さんというか、あるいは共産党の方は合意されなかったかもしれません。院として多数で合意した。間接民主主義というのは、議会制民主主義はやはり多数決原理なんで、そういう経過を考えますと、全くの公約違反と言い切っていいのかどうかということで、私はそうではないというふうに思っております。  それからもう一つ、公約違反かどうかというものは、言うなれば倫理の分野に属する話ですね。そうですね。約束を破ったとか、あるいはうそをついたとか、ついたか破ったかどうかは別にしまして。しかし、税制をどうするかというのはすぐれて論理的な判断を要求される政策問題ですね。だから、昔どうこう言ってそれと話が違うじゃないのといつまでも言って、肝心の政策それ自体、税制それ自体が妥当かどうかということの検討をいつも避けてくるということは、賢明な態度とは言えないのじゃないかというふうに私は思っております。
  44. 三浦久

    ○三浦委員 きょうは論争の場ではございませんので、お尋ねするという立場でございますので、もう一点お尋ねしたいと思います。  今、税制改革上必要だというふうにおっしゃいましたね。そうすると、そういうお立場から考えて、この消費税率の三%というものが将来ずっと続いていくとお思いでしょうか。例えば、先生は経済評論家でございますね。財政上の問題、また経済上の問題、また税制改革の効果がどう上がるかという問題、そういう点から考えて、三%の税率がそのまま推移していくということでその目的を達成することができるのかどうか、この点についてお尋ねをいたしたいというふうに思います。
  45. 立山武司

    立山公述人 お答えします。  私は、三%がずっと続くだろうとか、あるいは上がるだろうとか下がるだろうということを申し上げる立場にはございません。  それで、結局どういうことかといいますと、事が将来の話でございます。一体どういう財政需要に対して、どういう税目でどのような割合で必要な財源を確保していくかという観点の問題でございます。それで、国民が合意して例えば財政需要がふえる。公共サービス水準をどうしてももっと上げろというようなことで必要な財源がふえてくる。そのときに、じゃどういう調達の仕方をしたらいいんだ。所得税をもっと高めるのか、あるいは間接税分野にそのかなりの部分を負わせるのか。間接税分野というのは端的に言えば消費税中心だろうと思うのですけれども、そういうことはそのときにそれこそ判断すべき問題で、実は将来の問題、今の世代がああこう言うのはある意味では少し行き過ぎかな。そのときに現実に問題にした世代が自分たちの合意として、判断として、どういうやり方が好ましいかということを判断されるべきだというふうに思います。
  46. 三浦久

    ○三浦委員 どうもありがとうございました。  糠沢先生に、同じような質問なんですが、三越の社長さんが消費税率を政府は大体一五%前後をねらっているのじゃないかという発言をいたしたことがあります。私はテレビで見ておりましたから鮮明に記憶をいたしておりますが、財界として将来も消費税は三%でいいと思っていらっしゃるのかどうか、国際比較との関係でどういうふうにお思いでございましょうか。
  47. 糠沢和夫

    糠沢公述人 一五%という数字を挙げたそのテレビというのは私見ておりませんが、経団連の中でそういう一五%というような数字を現実的なものとして受けとめて議論している人は今のところいないと思います。将来の財政需要、それから国民の担税力、それから海外とのいろいろな摩擦を生じないかとかいろいろなことを考えて将来の水準が決まっていくのだろうと思います。三%で将来の財政が十分に賄えるか、高齢化の問題でどうなるかというふうなこと、これから国会でいろいろな議論があるのだろうというふうに思っております。
  48. 三浦久

    ○三浦委員 坂本さんにお尋ねをいたしたいと思います。  日本労働者労働時間は本当に異常に長いですね。時間というのは人間成長の場ですから、ただ家に帰って寝るだけというようなことではだめだと思うのですね。やはりおっしゃるとおり、芸術とか文化とかレジャーとかスポーツとか、そういうものを楽しむ時間的な余裕というものがないと、人間の成長、発展というのは私はあり得ないだろうと思うのですね。  そういう意味で、今政府生活白書が出ても、年間に二千三百時間も働いている。しかし、これは統計上あらわれたものであって、私は実際はもっとうんと長いと思います。それは、ただ働き残業があるからなんですよ。私は、今の長時間労働の背景並びにジャパニーズ・カローシなどという日本独特の現象が起こっておりますね、これは非常に悲しいことであります。こういうものの背景に、やはりただ働き残業があるのではないかと私は思っております。  これは私、摘発したことがありますが、そういう御認識をお持ちなのかということと、もう一つは、そのただ働き残業をなくしていくためにはどういうふうにしたらいいというふうにお考えになっていらっしゃるのか、お尋ねいたしたいと思います。
  49. 坂本哲之助

    坂本公述人 お答えします。  私たちは労働組合でありますから、働いたものに対する正当な報酬というものを団体交渉という場を通じて私たちがしっかりと要求し、かち得ている、労使の話し合いでもって獲得をしている、そういう見地に立ちますので、このただ働き残業ということがあるということに対しての認識は私たちとしてはございません。  ただ、一部職制といいましょうか、これは残業がつく、つかないの問題がありますけれども、そういう人たち企業に献身的にやる部分については承知をしておりますけれども、いわば一般労働者として、ただ働き残業というものを私たちは到底容認することができませんし、私たち労働界にとっては絶対にあってはならないことだというふうな観点でございますので、そういう認識は持っておらないということであります。
  50. 三浦久

    ○三浦委員 これはまた、論争じゃないのですが、私の経験を申し上げますと、私、昨年の秋でございますけれども、北九州市の小倉ですけれども、安川電機の小倉工場、六百人ぐらいの従業員です。ここでただ働き残業がありまして、一般の労働者よりも何かちょびっと役がつきますと、もう百時間とか百二十時間残業させられましても十時間しか残業手当は払っていないということがわかったのですね。それは会社の書類によってわかりました。それで、私、一年間かかって労働基準監督署と交渉いたしました。労働基準監督署は何回も検査に入りました。そして、とうとう勧告を出しました。実際、私たちが計算すると、一年間に数億円に上るのですけれども、しかし、労働基準監督署は計算できないわけですね。ただし、構造的にそういうただ働き残業、サービス残業があるということを認められまして、そして、支払えという勧告を出されたのです。それで、労使が交渉しまして、一千万円支払いましたですね。一千万円。そういう事実があるのです。ですから、サービス残業がないという御認識はちょっと違うのじゃないかな。  それから、大きな銀行ですね、銀行なんか、私も弁護士事務所を経営しておりますから、取引銀行があります。
  51. 越智伊平

    越智委員長 三浦君、個々のその問題は政府に質問なり意見を申し述べて、きょうは公述人の方で、だから公述に対してまたお考え方、これを述べてもらわないと、個々の問題は政府側に質問をしていただきたいと思います。
  52. 三浦久

    ○三浦委員 わかりました。  銀行なんかでも、一般的にサービス残業が常態化しているということになっておるのですが、もしかそうだとすれば、それをなくすためにはどういうふうにしたらいいというふうにお考えでございましょうか。
  53. 坂本哲之助

    坂本公述人 今具体的な事例が挙げられましたので、私たちとしても直ちに調査をし、その問題に対応したいというふうには思いますが、私たちはサービス残業というのは絶対に容認できない、容認すべきでないという見解を持っておりますので、そして労働組合として正々堂々とこの問題については要求をし、しっかりした賃金の支払いを求めていくべきだろうというふうに考えております。
  54. 三浦久

    ○三浦委員 終わります。
  55. 越智伊平

    越智委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  午後一時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十六分休憩      ────◇─────     午後一時三十一分開議
  56. 越智伊平

    越智委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、御出席公述人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわりませず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。平成二年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  なお、御意見を承る順序といたしましては、まず進藤公述人、次に石倉公述人、続いて八巻公述人の順序で、一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、進藤公述人にお願いいたします。
  57. 進藤榮一

    ○進藤公述人 御紹介にあずかりました進藤でございます。  今日、私ども世界を歩いておりますと、非常に激しい変化の波というのを実感するわけでございます。とりわけヨーロッパ情勢を中心として世界は非常に激しく動いている。もはや、一九四五年から四十年の間私どもがなれ親しんできたいわゆるヤルタ体制下の世界であり得なくなっているという現実をひしひしと感ずるわけです。しかし翻って、そういった状況の中から日本に帰ってまいります。帰ってまいりまして、日本の現在の外交なりあるいは内政のあり方なりを勘案しますときに、どうも非常に大きな時差を感ぜざるを得ない。一体なぜこんなに大きな時差があるのかという思いにとらわれざるを得ないわけでございます。例えばそのいい例が、あるいはもっとその典型的な例が、私の見るところ防衛予算ではないのかというふうに考えます。  御承知のように日本の防衛予算は、世界諸国家の防衛予算、特に西側先進国が軒並み凍結もしくは縮小を続けているにもかかわらず、しかもこれはソビエトあるいはいわゆる東欧圏を含めて凍結もしくは大幅な縮小を続けているにもかかわらず、日本だけが突出をし続けている。しかも、この増加傾向というのは一向に変わることなく、既にこの十年間、一九八一年から一九九〇年までの間にほぼ二倍近くの、指数にして一八〇%近い伸びを示している。一体これはなぜであるのか。恐らく、一九八五年段階で日本の防衛予算が突出している状況を目にしたとき、私どもはそれほど異議を唱えないかもしれない。私もかつて、一九八四年だったと記憶しておりますけれども、参議院の公聴会で、なぜ日本の防衛予算はこんなに突出しているのか。ソ連の脅威というものはもはやない、あるいはあり得なくなってきている、現実に東西の軍事バランスなかんずく太平洋・アジア地域における軍事バランスは、日本プラスアメリカとソ連と比べた場合に、日本プラスアメリカの方がはるかに優位しているのだという現実を私は指摘いたしまして、こんなに軍事予算に金を使う必要がないじゃないかということを私は申し上げたのです。  例えば、当時SS20という中距離核をソビエトが極東地域に配備するという決定がなされた。その決定に対して日本は、SS20に対抗するためと称して三沢その他に、三沢を中心としてF16、これは最先鋭の爆撃機でございますけれども、このF16配備を決定している。一体そのF16配備を決定する必要があるのかということを私は繰り返し申し上げたのですけれども、しかし今日、あれから五年ないし六年たって、私が当時申し上げたように、ソビエトの脅威というのはますます、少なくとも西側にとって感知し得なくなってきている。例えばアメリカの世論調査の中にそれが顕著にあらわれていることは、皆様方御承知のことと存じます。  アメリカの世論調査、たび重なる世論調査の中で、ここ二年ぐらい年を追うごとに、いわゆるアメリカの安全保障にとってどこの国が脅威かという問いに対して、ソビエトの脅威というのが例えば一九八七年段階ではほぼ日本と均衡しておりました。ところが、それが半年後あるいはさらに一年後あるいはさらに二年後、例えば八九年、昨年の夏に調査した段階では、ソビエトが脅威であると感知しているアメリカ国民は、世論調査の結果によれば二二%しかない。それに対して、日本が脅威であると考えているアメリカ国民は既に六八%になっている。しかも、これは単にアメリカにとっての脅威というばかりではなくて、アメリカの安全保障にとっての脅威という問いに対する答えでございます。  そういった状況の中で考えるときに、一体なぜ日本は依然としてヤルタ体制下の安全保障システム、あるいはヤルタ体制下の世界システムの中でしか日本の外交なり日本の防衛のあり方を考えることができないのかという思いに強くとらわれざるを得ないのです。もう既にアメリカの国防総省では、アメリカの安全保障にとってソビエトが脅威であるという言葉を使わなくなり始めております。  例えばアメリカの国防総省が毎年出しております「ソ連の軍事力」という年鑑がございますけれども、この「ソ連の軍事力」はレーガン政権になりましてから出たものでございまして、ソ連の軍事力がいかに強大であってアメリカにとって脅威であるかということを非常に誇大した、あるいは部分的に大変誇大した形で述べ続けてきた軍事年鑑なんでございますけれども、この軍事年鑑の中で、一九八九年版から微妙な違いが出てきている。例えば「脅威の評価」という主題はもはや使われていない。「変化への見通し」という主題が使われている。あるいは第一部の表題は、「ソ連の脅威の性格」という主題がずっと使われてきた。それが八九年版では「ソ連の挑戦の性格」というふうな表題に変わっている。あるいは第二部では、「脅威の評価」というタイトルが使われてきたのにもかかわらず、昨年からは「バランスの評価」というふうに名前が変わっている。表題のつけられ方が変わっている。明らかに疑いもなくアメリカは、その最もタカ派であってしかるべき国防総省を含めて外交政策の見直しを始めている、あるいは国防予算の見直しを始めている。  御承知と存じますが、チェイニー国防長官は、昨年十月ですか十一月に、アメリカの国防予算に関して向こう三カ年間に関して削減方向を打ち出しました。具体的にこれは三カ年で現在の総額、国防予算の三千五十億ドルの二〇%に当たる六百億ドルを毎年毎年削減するということを明らかにしました。ブッシュ政権は、既にブッシュ施政四カ年の間にほぼ千八百億ドルの国防予算を削減するという方向も打ち出しております。あるいは民主党系の民間団体でございますブルッキングス研究所の政策勧告書では、向こう十年間に約五千億ドル国防予算を削減すべきであるという方向を打ち出しております。  これは、疑いもなくアメリカは双子の赤字に悩んでおりまして、その双子の赤字、とりわけ財政赤字に対処するためにこれはとらざるを得ない政策であると申し上げていいと思います。そして同時に、こういったアメリカのいわゆる軍備削減の動きあるいは軍縮の動きというのは、一連のソ連との間の取り決めによっても進められていることは御承知のとおりです。INF条約が調印されました。それからINF条約の中に短射程の中距離核も包摂されました。それから御承知のように、中央ヨーロッパにおける、特にドイツを中心とする東西間の軍事力の削減をほぼ五〇%、十九万五千人の線に削減するということで米ソ双方は合意いたしました。もちろん長距離核に関しても、これは今年の夏からあるいは来年にかけて確実に撤廃の方向に動いていくだろうということが予測されております。  そういった軍縮の動きが国際的に非常に顕著に進んでいる。そして緊張緩和がもはや後戻しのきかない状況に来ているにもかかわらずなぜ日本だけが軍拡予算を続けているのかということは、私は非常にいぶかしく考え続けざるを得ないのでございます。なぜ世界が変わっているのに日本だけが変わりがないのか。恐らく答えは幾つかあるでございましょう。  例えば、一つは日米基軸論というのがございます。日本の外交にとってはアメリカとの関係が一番大切だという考えがございます。しかし、一体日本がこのまま軍拡を続けていったら日米基軸論自体を傷つけることになるのではないのかという現実を、もっと直視していいのではないかと私は思います。先ごろアメリカのワシントン・ポストでアメリカの某軍人が、日米安保というのは日本の軍事強大化を防ぐためのふたのようなものだ、日本の軍事大国化を防ぐためのコップの上を覆っているふたのようなものだということを言って、要するにアメリカの在日米軍は日本の軍事大国化を防ぐために、我々が日本を監視するための役割を果たしているんだという発言をしたということで非常に大きなニュースの種となっておりますけれども、こういった動き、あるいはキッシンジャーとかアメリカの枢要な要人たち日本の軍事大国化を警戒すべしということは繰り返し繰り返し述べております。こういった動きは、私は日米関係を考えるときに決して好ましい事態ではないのではないのかしらというふうに考えます。もし日本を本当に憂うなら、あるいは日本の将来を本当に憂うなら、金満日本と言われるほどの経済大国になった日本はもっとお金の使い方を考えるべきではないのか。一体なぜ世界の大勢に逆行するがごとき軍事予算を作成し続けるのかということに私は強い疑念を抱かざるを得ないのでございます。  例えば、そういった私どもの見解に対して、ソ連の政治情勢というのは非常に不安定であって、もう一回逆戻りするのではないのかという説もございます。しかし、私はそれは正しくないと思います。もはや世界は東西間の対立の時代ではなくなっている。イデオロギーの壁によって東西が分かたれている世界ではなくなっているというふうに私は見るべきではないかと存じます。ベルリンの壁は崩壊いたしました。東ドイツと西ドイツというヨーロッパを二つに分かっていた緊張のホットラインがもうなくなりました。WTO対NATO、北大西洋条約機構軍対ワルシャワ条約機構軍という対立的な軍事機構は遅かれ早かれ経済の側面から失われていくのではありませんでしょうか。御承知のように、ECはEFTAと一九九三年に統合するプログラムが組まれております。コメコンは恐らく一九九〇年代にはなくなるだろう。事実上EC、EFTAと合体するだろうということが予測されております。そういった東西間の経済的な相互依存状況の展開、あるいは東西間の経済的なつながりの強化、これ自体が恐らく軍事的な敵対によって東西が分かれているということをもはや無意味なものに変えていくのではないでしょうか。  緊張緩和の流れは、東ヨーロッパの動向あるいはソ連の動向に関してもそうなんでございますが、これは内側から出てきているというふうに私は見るべきだと思うのです。それであるがゆえに、もう緊張緩和の流れというのは、少なくともヨーロッパに関する限り後戻しをし得ないものになっていると見るべきだと思います。例えば、東ヨーロッパはもうかっての東ヨーロッパではありません。  ソ連もそうです。例えば都市化の度合いが非常に進んでおります。それから大衆学歴化の状況というのが大変進んでおります。西側と同じような形で、例えば同世代の中の三割近くが大学に進学しております、都市部にあっては。それから同世代の中の九割から十割が高校卒業であるという状況が、高等教育を受けているという状況が普遍化しております。都市人口は既に六割から七割を超えております。かつて労働者と農民の国家であったソビエトは、もはやホワイトカラーを中心とした国家に変わっております。もはや労働者と農民の国家でなくなっている。前衛党というものが意味を持たなくなってきている。市民というものが大変賢くなってきている、それなりに。ですから、無知蒙昧な民衆を一握りのエリートたちが情報を操作することによって強権体制を維持し続けるというかつてのスターリン型社会主義体制というのは、もうこれは根底から覆されざるを得ないという状況が展開されているわけです。  これは私の見るところ、前衛党の終えんであり、マルクス・レーニン主義の終えんであり、共産主義の終えんを引き出しているんだ。共産主義の終えんというものが、少なくともヨーロッパに関する限りもはや後戻しのきかないものとなっているのであるならば、デタントの流れというものも当然後戻しのきかないものとなっているというふうに見るべきではありませんでしょうか。  そういった状況の中で私どもがアジアを見たときに、確かにアジアにあってはデタントの流れというのは一進一退でありまして、なおも緊張緩和のスポットといいましょうか、緊張緩和の地域というのは残し続けております。しかし、にもかかわらず、それを三つのレベルで見たときに、私はアジアにあっても一体なぜ日本がそれだけの軍備増強の動きを維持し続けるのかということに大変大きな疑問を抱かざるを得ないのです。  第一番目に、ソ連と日本もしくはアメリカとの軍事バランスの関係でございます。御承知のように、ソ連は極東においても次々に軍縮計画を発表しております。そして軍縮の漸次的な、軍備の漸次的な削減を続けております。単にソ連は量から質への軍拡をしているにすぎないんだという弁明は、もはや成り立ち得なくなってきているのではありませんでしょうか。これが第一です。  第二番目に、そういった状況は、アメリカ側でももはや極東においてソ連は脅威でなくなっているという言説が出てくるようになっているわけであります。例えばアジアについてこういうことを、先ほど引用しました、先ほど触れました「ソ連の軍事力」というペンタゴンからの一九八九年度の年報の中で書いているわけでございます。  アジアにおいてソ連太平洋艦隊は数の上では目をみはるものがあるが、多数の老朽化した潜水艦と駆逐艦を抱えており、その大半は現代戦ではほとんど役立たないものである。ソ連はアジア大陸に強力な地上戦闘部隊を保有しているが、それらの戦力は主として中国に対抗するためのものであり、アメリカに対しては航空戦と海洋戦の多くの分野で挑戦している。それでも、アメリカと同盟国のこの地域での戦力は、予見し得る将来、世界的、地域的な紛争に効果的に対処できる力を持っている。いや、それどころか、東アジア・太平洋地域での軍事バランスにおいてアメリカとその友好国は、対潜水艦戦、対空戦、海洋長距離攻撃システム、水陸両用戦、さらに全般的な海洋能力の面では優位に立っている、こういうふうに言い切っているわけであります。これが第一番目の点です。  第二番目は中国の問題です。中国は、御承知のように天安門事件以後いわば民主化のセットバックといいましょうか揺り戻しの動きが進んでおります。しかし、この中国の民主化からの撤退の動きは、同時に西側からする中国との経済的提携の動きというものを後戻しのきかないものにしているということも忘れてはならないと思います。ですから、中国の脅威を今さら云々する必要は私はあり得ないだろう。  残るは恐らく北朝鮮の脅威だというふうに指摘されるかもしれません。しかし、昨今の新聞に出ておりますように、北朝鮮に関しても、ソ連を中心にして韓国と北朝鮮との間の経済的な交流の動きというのが進み始めております。さまざまな形で、ワシントンを舞台にして南北両朝鮮の接触の動きというものが進んでおります。しかも、私どもが最後に気をつけておかなければいけないのは、北朝鮮の動きにしろあるいは中国の動きあるいはその他さまざまの東南アジアを含めた諸国家の動きにしろ、これは決して外側に対して脅威をもたらすものではないということですね。済みません、ちょっと、私話しておりますので、お話やめていただけませんか。東南アジアを含めた第三世界の動きというのは外に対する脅威ではあり得なくて、これは内側の近代化に向けた努力であるという事実を認識すべきだと思うのです。  そういったとき私どもは、一体なぜ日本が旧態依然としてヤルタ体制下の外交政策方針を維持し続けるのか、私は極めて疑問に思います。世界日本だけがただ一人孤児になっていくのではあるまいか。私は、今日の日米安保のあり方を考えるとき、かつての日英同盟を思い出すのです。パックス・アメリカーナの時代の日英同盟がもはや意味を持たなくなって、一方的にイギリスの方から断ち切られたと同じように、そして時代おくれの同盟体制に固執し続けたかつての大日本帝国と同じように、今日日米同盟という、何といいましょうか、いわば古い時代の同盟体制に固執し続けるという愚を私は犯しているようでならないのであります。  時間が参りましたので、この辺でやめさせていただきます。(拍手)
  58. 越智伊平

    越智委員長 ありがとうございました。  次に、石倉公述人にお願いいたします。
  59. 石倉皓哉

    ○石倉公述人 ただいま御紹介いただきました、全国農協中央会の常務理事をしております石倉でございます。本日は公述人としまして発言の機会を賜りましたことを深く感謝を申し上げたいと思います。  まず最初に、平成二年度の農林水産関係予算案について御意見を申し上げたいと思います。  結論から先に申し上げますと、基本的に賛成をしたいというふうに思っております。その理由でございますが、大変厳しい財政事情の中で、確かに対前年比三百六十九億円の減額、率でいいますとマイナスの二・四%、こういうふうになって大変厳しいわけでありますが、しかし過去十年間にわたって削減されてまいりました農業構造改善事業等主要な生産対策が今回初めて、十年ぶりといいますか、一〇%以上の増額になったということが第一点であります。  それから二点目は、これは従来から非常に、農業従事者のかねてからの念願でありました中山間地域の活性化対策あるいは土地改良負担金の対策等が新しい施策として実現を見たということを踏まえまして、総合的といいますか、全体を通じまして評価できるのではないか、こういうふうに思っているわけであります。  さて、せっかくの機会でございますので、農業に関連した何点かの問題について意見を申し上げさせていただきたい、こういうふうに思うわけであります。大別しますと、四つの柱といいますか、四つの項目にわたって意見を申し上げたいと思いますが、まず一つ目の柱でありますが、農業過保護論の問題について申し上げたいと思います。  四点にわたって以下意見を申し上げますが、まず第一点は、日米の貿易摩擦あるいは日米構造協議あるいはウルグアイ・ラウンド等に関連をしまして、農業過保護論が非常に依然として根強いわけでありますが、私は、最近農業、農村の高齢化が非常にハイピッチで進んでおる、そういう中で、なかなか後継者が見つからない、そういう農業、農村の実態をかなり無視をした、あるいは現実とかけ離れた議論であり、大変心外であるということが第一点であります。  それから二点目は、農業関係予算につきましては、昭和五十七年度以降八年間で六千四百九十一億円、率にしますと八年間で二一%も減額になっている、こういう事実を直視をしていただきたい。  三点目は、これまた一九八〇年から一九八九年の約十年間のアメリカ及びECの農業関係予算を見ますと、いずれも大幅に増額をしている。とりわけ価格所得支持関係予算がふえている、こういうことであります。もう少し具体的に数字で申し上げますと、一九八〇年から八九年の間の伸びはアメリカが一・四倍、ECが二・四倍、日本がそれに比べまして〇・九倍であります。その中で、価格所得支持関係でございますが、アメリカが三・九倍、ECが二・四倍、日本はそれに対しまして〇・六倍、こういうことでございます。これは三点目です。  それから四点目は、主要な農産物の価格が、これまた一九八五年以降引き下げないしは据え置き等で抑制的に決定をされてきておりまして、ほとんどの品目で十年前の水準に戻っている、こういうことであります。  以上の四点から申し上げますと、農業の過保護論がまさにためにする論議であるということを強く申し上げたいと思うわけであります。  次に、二つ目の柱でございますが、内外価格差の問題でございます。これにつきましても、六点から意見を申し上げます。  まず、第一点は、日米構造協議などに関連しまして、農産物、食料品の内外価格差が非常に新聞等で取り上げられているわけであります。しかし、食料品は、私は、工業製品と異なりまして、銘柄、それから品質、それから鮮度、規格等が各国別に非常にさまざまである、こういう実態であり、価格の比較が技術的に困難であるという中で、極めて単純化した形で価格比較をすべきでないというふうに考えるわけであります。そういうことは、消費者あるいは国民にとって、いたずらに国民に誤った議論をさせるといいますか、国民の議論を誤らせることになるということをあえて申し上げたい、こう思うわけであります。  二点目は、非常に食料品は身近な問題でありまして、関心を呼ぶという点はよくわかるわけでありますが、内外価格差の問題は工業製品についてもあるのだ、時間がありませんから具体的な数字は言いませんが、そのことを申し上げて、農産物の問題だけが標的にされるということは論外であるということが二点目であります。  それから三点目は、農業は土地とか気象条件、そういう自然条件に非常に左右される、こういう中で、しかも年間に一回しか生産がされない、こういうことですね。かつまた、一農家当たりの耕地面積がアメリカに比べまして百分の一にすぎない、こういう実態の中で、さらには一九八五年以降の急速な円高をわずかの期間で内外価格差を埋めろ、これは非常に暴論ではないか、こういうことが三点目であります。  四点目は、食料品の価格消費者の嗜好とか購買行動によっても左右されるわけであります。産業連関表によりますと、食料品の最終消費支出に占める国内農林水産業の産出額は二割にも満たない、こういうことも申し上げておきたいと思うわけであります。  それから五点目は、また我が国のエンゲル係数は着実に低下をしておりまして、ほとんどEC諸国並みに達しておるというのが五点目であります。  六点目は、公的規制をやめれば内外価格差が縮小するがごとき議論もあるわけでありますが、各種の規制というものは、農産物につきものの豊凶変動あるいは土地条件の制約等をも考慮しまして、価格や需給の安定を図るということによりまして農業経営あるいは国民生活の安定に寄与するということによって設けられているものでありまして、規制を撤廃しさえすれば云々、こういう議論は一面的な意見ではなかろうかというふうに存ずるわけであります。  次に、三つ目の柱であります農産物の輸入問題について申し上げたいと思います。四点について申し上げたいと思います。  まず第一点は、日米貿易摩擦に関連しまして、農産物の市場開放をしろ、こういう意見が非常にあるわけでありますが、農産物の輸入実態について申し上げてみたいと思います。  既に一九七〇年から今日まで二十年間で約七倍と大幅にふえておりまして、一九八五年以降さらに二倍にふえておる。その結果我が国世界で最大の農産物の純輸入国になっている。別の言い方をされますと、これほど日本世界の貿易に貢献していることはない。さらには、アメリカにとっては最大のお得意さんといいますか最大の市場になっている、こういう実態を十分に御賢察賜りたいと思うわけであります。  三点目でありますが、輸入制限品目は、いわゆるガットの十二品目、それから平成三年、四年にかけましての牛肉・かんきつの自由化を経ますと日本は十三品目になりまして、アメリカ、ECを追い越しまして、輸入制限品目は非常に少なくなっている、こういう問題であります。  それから、四点目でありますが、日米の貿易摩擦の問題は、まさに工業部門といいますか、輸出産業こそが輸入を拡大することによって解決すべきであるというのが、まさに農業関係者の一致した意見であります。  最後に四番目でありますが、米の市場開放問題について申し上げたいと思います。  まず第一点は、ウルグアイ・ラウンドがこれから本格化しようとしている現段階で、基礎的な食糧の自給の権利を主張する我が国政府の提案につきまして、米を一粒も輸入しないのは国際社会に通用しない、こういう主張が新聞などで報道されているわけでありますが、衆参両院の国会の決議、あるいはさきの衆議院選挙で各党が公約として打ち出していることをあたかもあざ笑うかのごとき主張というものは、まさに私は国会の権威を侮辱するものであり、農業者の神経を逆なでするものである、断じて容認することはできない、こう申し上げたいと思うわけであります。  第二点目は、我が国の米が我が国農業の根幹である、あるいは国民の身体と健康を支える主食であり、我が国の歴史と文化を支え、地域経済の発展や国土保全等に果たしている重要な役割につきましては、言うまでもないことであります。  第三点目は、農産物の自由化につきましては、昭和三十七年以降一貫して今日まで国際社会の一員として大幅な自由化を進めてまいりまして、最近時点におけるいわゆる十二品目あるいは牛肉・かんきつの自由化を含めまして、血のにじみ出るような自由化努力をしてまいったわけであります。平成四年には輸入制限品目は十三品目となりまして、アメリカやECに比較しましても十分過ぎるほどの市場開放をしているところでありまして、この上、米のような基礎的な食糧についてまで自由化せよというのは断じて認められないわけであります。衆参両院で三次にわたる決議に対し、米を一粒も輸入しないことは国際社会で通用しないというような報道機関のキャンペーンというものは、相手国を利する以外の何物でもない。我が国のカロリー自給率は、世界百六十四カ国の中で百四十五番目であります。こういう日本経済大国がこのように低い自給率であるということを、この際強調しておきたいと思うわけであります。  それから四点目は、主要な農産物輸入につきましては、アメリカもECも我が国の米と同様の水準の厳しい輸入制限をしておりまして、厳しい国際社会現実を見ていただきたい。  それから、最後でありますが、国会の決議をぜひとも守っていただきたい。全国の農業者の切なる願いである。このことは国民の負託にこたえる大事な点であろうかと思うわけであります。  まことに最後になりましたが、終わりに当たりまして、農業関係者も国際化という時代の流れの中で、コストの低減、農産物の品質向上、消費者のニーズにこたえるべく必死の努力をしているわけであります。都市に住む消費者の方々は、田舎に残した父母や兄弟、姉妹の努力をどうか温かく見守ってほしいと思うわけであります。農林水産業の健全な発展こそが一極集中に歯どめをかけ、健全な国土と社会を築いていくための基盤ではないでしょうか。首都圏を中心とする一極集中を是正し、国民生活の質の向上を図るため、国土の均衡ある発展を図ることが緊急課題であります。このため、農山漁村が国土保全、水と緑の豊かな居住空間として、また健康な余暇空間提供の場としての多面的な機能を果たしていることを踏まえまして、さらに生活環境整備を初めとする公共投資を一層農山漁村に対し積極的に行っていくべきであるというふうに申し上げます。  以上、御清聴ありがとうございました。(拍手)     〔委員長退席、近藤(鉄)委員長代理着席〕
  60. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員長代理 どうもありがとうございました。  次に、八巻公述人にお願いいたします。
  61. 八巻節夫

    ○八巻公述人 ただいま御紹介にあずかりました東洋大学の八巻と申します。この席で御意見を述べさせていただくことを本当に感謝しております。  私の方からは、平成二年度の特に一般会計に絞らせていただきまして論評させていただきたいと思います。  まず、全体的な印象でございますが、今回の予算は、経済的な高度成長というかそれの持続によって支えられて、いろいろな点で非常に配慮の行き届いた予算になっているというふうに一応評価させていただきたいと思います。  まず、総額が前年度比九・七%増と九年ぶりの伸びを確保したということですね。それから、十五年ぶりに赤字国債がゼロになったという点ですが、私なんか講義で二、三年前は学生に対しては、財政再建の目標の実現はもう決してできないというような講義をしてまいりましたけれども、これを非常に急スピードで解決しまして、十五年ぶりでそれをゼロにするというまさに快挙というか、そういうことで、非常に評価できるのではないかと思います。それから、国債整理基金への定率繰り入れも復活いたしまして、いわゆる隠れ借金の整理も配慮しました。それから、予算配分にしても、外圧がありましたけれども、ODAに対して八・二%増と重点配分されておりますし、社会保障予算も防衛費の伸びを上回って六・六%増、そういった形で非常に配慮の行き届いた予算となっているということをまず評価させていただきたいと思います。  ただ、問題点もございまして、赤字国債からの脱却といいますけれども、やはりそれは経済の好調に支えられた当然の自然の結果でございましたので、その点必ずしも、まあ努力もありましたけれども、それに救われたという点があると思うのです。それから国債費も、予算の二一・六%と第二番目の予算の配分比率になっておりますので、これもやはり硬直的な体質というのはまだ変わっていないというふうに思うのですね。それから公共事業費の伸びも、また中身も、やはり今回の日米構造協議のそういう方向性からは非常にほど遠い内容になっておるという点、さらにグランドデタントのそういう時代において防衛費が相変わらず突出的な伸びを確保しているという点が目につく問題点だと思うのです。  次に、個別問題について幾つかに絞って論評させていただきたいと思います。  まず、赤字国債から脱却した、では新しい健全財政の目標というのは一体どこに定めるべきかという問題でございます。これは財政制度審議会で公債依存度を五%以下に抑える、そういう新しい目標も示唆されているようでありますが、私の方からはむしろ西ドイツのやり方といいますか、そういう考え方をちょっと御紹介させていただきたいと思うのです。  西ドイツの公債の概念というのは、循環的赤字と構造的赤字というほかに、正常赤字という考え方があるのですね。それで、循環的な赤字は、それは景気のよしあしによって変化しますので、これはほっておいてもいい。問題なのは構造的赤字を解消することであるということですけれども、ただそこに正常赤字という概念がつけ加わっているのが非常に興味ある点だと思うのです。  この正常赤字でございますが、これはある一定の、経済が順調に進んでいるという好ましい期間を基準期間と定めまして、そのときの公債の比率を望ましい比率としてあるパーセントを設定します。その望ましい正常赤字比率、これにそのときどきの物価でデフレートした潜在GNPを掛け合わせまして、そして赤字額を出すというわけです。例えば正常赤字比率を一%として、それで今年度の実質潜在GNPを、これは計算したわけではありませんので適当な数字でございますが、例えば三百五十兆円だというふうに見積もりますと、一%掛ける三百五十兆円ということになりまして、これは三兆五千億円ということで、これは現公共事業費の半分強という形になりますね。このように潜在GNPにリンクさせるということは、むしろ現実GNPの動きに対してカウンターエフェクトを与えまして、フィスカルポリシーの効果としてもある程度自動的な効果を発揮できるのではないかと思いますので、一つ考え方として正常赤字というものは、これは別に財政再建の対象にもならないし、またそれを解消する必要もないし、また望ましくないと思うのですね。だから、ある一定の正常赤字があってもしかるべきではないかというふうに考えます。  第二番目は、公共事業費の構造と財政計画についてでございますが、日米構造協議の提案にもありましたように、従来の公共事業の中身を生活関連施設の方に重点的な配分をしろ、こういうふうに方向転換をしろ、そういう提案があったわけでございますが、今回の中身を見ましても、公共事業の転換というのは旧態依然でございまして、転換の兆しというか意気込みが見られないということが一つ指摘できますね。ですから、やはり十カ年計画というものをきちんと立ててやっていく必要があるし、またほかにも「高齢者保健福祉推進十か年戦略」というものがありますし、またデタント後の防衛計画にしても、またODAの国際的な公約にしても、これを実現するには長期的な財政計画に基づかなければ非常に計画的な処理というものができないのではないかと思うのです。  これもやはり西ドイツの例なんですけれども、地方財政を含んだ五カ年計画というものを立てる必要があるのじゃないか。財政五カ年計画ですね。この財政五カ年計画は、西ドイツの場合は三年間の実質的な数字といいますか現実の数字ですね、一年前のものと今年度と来年度のという、そういう三年度の現実の数字をまず算定して、あと二年間は全くの予測値ということで毎年毎年ローリングするわけですね。そういうことで、非常に計画的な政策の実行が可能ではないかと思うのです。  それから第三番目でございますが、消費税廃止代替財源について意見を述べさせていただきたいと思います。  今回の消費税でございますが、反対派は最悪の税金である、賛成派は若干の累進効果があって不公平の是正のために消費税導入すべきであるというふうな主張をなさるわけですけれども国民にとっては一体どっちが正しいのかという判断に迷うという部分があるのですね。一種の政治的なスローガンに化している部分がありますので、この点、本当に実証理論というか実証分析は一体どうなっているかというふうに思うのですが、例えば一つ主張されているのは、税金というのは全体の体系の中で初めて位置づけられることでございまして、一つ税金だけ取り上げましてこれが逆進的であるとかあるいはこれは最悪の税金であるという主張はやはり単なる、まあ政治的なアピールがあるかもしれませんけれども、余り納得させる議論じゃないと思うのですね。ですから、やはり全体の体系の中で一体消費税導入が果たして必要であったのかどうかという点が一番問題になると思うのです。  全体の租税体系の中で、特に所得税が今回非常に水平的不公平になっているので、それを緩和するために水平的公平を確保できるような消費税導入をすべきである、こういうことで消費税導入されたわけでございます。ところが、垂直的に見ると消費税というのはやはり逆進性が厳然としてあるわけでございまして、それでなくても所得税が累進度が非常に侵食されている状況にある中に、また新たにこの消費税、垂直的に逆進的な消費税導入はさらに垂直的な不公平を拡大するということが巷間叫ばれているわけです。  私は西ドイツについてちょっと、西ドイツの付加価値税は一体逆進性はどうなっているのかということで調べてみましたらば、西ドイツの場合は、例えば所得を十分位に分けまして、最低所得層と最高所得層とを比較いたしまして、消費負担で〇・九ポイント、それから可処分所得で三・六ポイント、そして実効税率つまり総所得負担で四・九ポイントも負担が最低所得層の方が最高所得層よりも重いというふうに出ております。  このような逆進性というのは至るところで指摘されているわけでございまして、例えば一九八八年のOECDの研究もそうでございますが、この場合はむしろより多く逆進度が明らかになっているケースもございました。スウェーデンなんかそうでございましたね。それよりも私興味があるのは、職業別、年齢別、家計タイプ別、これの負担の形態がシミュレーションで分析されている研究結果が出ているのですね。これは非常に興味ある結果でございまして、ちょっと御紹介させていただきます。  例えば職業別負担を見てみますと、今回クロヨン問題があるから水平的公平を確保するために消費税導入するんだという論理でございますが、職業別に見てみますと、例えば自営業とか農家が一番負担が軽くあらわれまして、そして一番負担が重かったのは非就業世帯、つまり年金生活者とかそれから学生とか公的扶助を受けている人たちが最も負担が重いという結果が明らかになっているわけでございまして、もしこれが本当だとしたならば、日本にも当てはまるとするならば、これは水平的不公平さえもさらに拡大するような効果を持ってしまうのではないかというふうに思うわけでございます。  それから、次に年齢別負担についてでございますが、これは二十五歳未満の若年層が最も高いという負担の結果になっておりますが、これはどうしてかといいますと、いわゆる食料品とか家賃という軽課されている支出割合が非常に低いのですね。若者ですから、どちらかというとたばことかお酒とか自動車とか、そういう高課されている財の支出比率が高いという結果でございますので、これは余り問題にしなくてもよろしいのではないかと思いますが、問題なのは、その次に高負担になっている世帯というのは、いわゆる働き盛りの中年層なんですね。この中年層の世代というのは、住宅ローンとか教育支出とか非常に調整の難しい硬直的な支出の割合が高く出ておりますので、この点の高負担の緩和の調整の必要性というのはやはり高いのではないか。例えば住宅ローンの金利の税額控除の拡大とか、それとセットにした家賃の補助制の導入とか、そういった形での配慮が必要ではなかろうかというふうに思います。  それから、次に家計タイプ別の負担について見ますと、独身男性が最も高くて独身女性が最も低いという非常に奇妙な形になっておりますが、これは奇妙でも何でもなくて、独身女性の場合は先ほど言いました家賃とか食料品という軽課されている支出割合が比較的高いのですね。その結果のあらわれなんです。  またおもしろいことには、子供を持っている世帯の比較をいたしますと、子供の数が多ければ多いほどむしろ負担が軽くなっていく、そういう現象があらわれております。これはそんなに程度は大きくはないのですけれども、わずかですけれども、そういう傾向が見られます。それはなぜかといいますと、家族が多ければ規模の経済が働くといいますか、お下がりとかそういう点もあるでありましょうけれども、やはりどちらかというと食料品支出やあるいは家賃支出、そういうものの支出比率が高いという結果であると思います。  それから、同じ研究でございますが、差別帰着という言葉がございます。このシミュレーション結果でありますと、架空の比例所得税とそれから同額の付加価値税、だから架空の比例所得税を減税しましてそれと同じ額で付加価値税を増税したケースについての比較をやっております。それによりますと、むしろ付加価値税だけ増税する、所得税をそのままにしておくというケースよりも逆進度がさらに大きくなったという結果が出ております。これもしかも比例所得税でやっておりますが、日本のように累進所得税の減税とセットにした場合はこれが逆進的な程度がさらに大きく深刻にあらわれるという可能性が高いのではないかというふうに考えられます。  このように、逆進負担の形態の問題というのは、やはり集約いたしますと、食料品とか教育費とか住宅ローンなどの非弾力的な支出が大きく影響を与えているという点がうかがえますので、この点を考えますと、日本の場合は、ECと異なりましてその土壌の全くないところに消費税というものを新しい税金として導入するわけですから、その影響というものはかなり大きいのではないかというふうに考えます。それから、今回の場合は非課税措置はあるけれどもゼロ税率も許しませんので、その選択的な幅が非常に狭いという点がやはり問題ではないかというふうに思います。  それから、消費税というのは確かに政府にとっては非常に魅力的な調達法でございまして、まず一つは広い課税標準を持つということと、それからもう一つは、特に内税方式なんかになればますますそうですけれども知覚性に劣る、目立たないという点がありますね。こういうことで、低い税率で比較的大きな税収を上げることができるという点で、確かに政府にとっては魅力的な財源だというふうに思いますけれども、しかし、支払う側からすればやはりこの負担というものは非常に大きいというふうに考えられます。  したがって、今後消費税を撤廃しないでずっと定着させたいというのであるならば、やはり三つ条件が必要じゃないかというふうに思うのです。一つは、福祉サービスに目的拘束する、そして将来の増税に対して枠をはめる、それから二番目は、転嫁と帰着の明確化のためにインボイス式に改めるということ、そして三番目には、逆進性の緩和のために食料品を初めとする必需的な基礎的な支出については、特に食料品についてだけ言えばこれをゼロ税率にするということが、今後の定着についての必要な措置ではないかというふうに思うのです。  それから、福祉目的税の問題でございますが、ある財源の支出を特定化するというのは非常に非効率的な予算の配分になって非常にまずいのではないかという意見、これは財政学の初歩の初歩でノン・アフェクタシオンなどという一番最初に学ぶ原則でございますが、しかしこれは必ずしもそうじゃないのじゃないかというふうに思うのですね。なぜかというと、やはり負担と利益とを結びつけた場合に、例えばある利益グループが利益の拡大を目指して予算を獲得する場合に、それは自己負担というか自分が負担しなければならないという厳しいコントロールのむちといいますか、そういうむちが働きますので、浪費とか過剰給付の可能性をむしろ狭めるのではないかというふうに思うのです。しかも、近年非常に租税民主主義というか、納税者の反乱というか、そういう現象があらわれておりまして、一体自分の税金は何に使われているのかというそういう負担と利益の結びつきに非常に厳しい目が国民に最近ありますので、そういった観点からも目的拘束というものは今後考えられていい方式ではないかと思うのです。  やはり財政意思形成というものの質を高めるには、むしろ政治家もそうですけれども国民もそうですが、公共サービスの費用と便益について両者を比較勘案できるような総合的な情報を頭に置いて意思決定すればその質を高めることができるというふうに思うのですね。そういうことで、今までみたいな、税金はだれかが払う、だから無料の公共サービスが他人の負担で可能になるといった、そういう財政錯覚を少なくともなくすことができるのではないかというふうに思うのです。今後やはり公共サービスをさまざまに分類いたしまして、その公共サービスの性質に応じて負担のあり方を考えるという、そういった意味での大きな目的拘束の総合的な開発、こういうシステムの開発が二十一世紀に向けての政治の重要な課題になるというふうに私は思うのです。  そういった意味で、消費税を、例えば基礎年金国庫負担部分であるとかあるいは公的扶助費、社会福祉費、これは両方合わせますと三兆五千億円でございますので、消費税税収部分にほぼ匹敵するのではないかと思いますので、そのリンクも考慮に値することではないかというふうに思うのですね。  最後に、今後の税制改革のあり方について、ちょっと意見の一端を述べさせていただきます。  税制改革というのは、簡素、公平、効率といった観点から、全体観に立ったバランスのある構想を持ったものでなければならないと思うのですね。そういった意味で、単に直間比率などという非常にあいまいな、また人をだますような、誤解を招くような、そういう概念を使うのではなくして、やはり所得にはどのくらいかかっているか、あるいは資産課税あるいは財・サービス課税、それに収益課税あるいは応益課税、そういった全体のバランスがどうなっているかという観点から、やはり税体系というものを考えていかなければならないと思うのです。  そういった意味で、まず公平目的を達成するには人税が中心である。したがって、所得税を主要税といたしまして、これを総合課税化いたしまして、垂直的、水平的公平を図る。それに法人税と財産税と相続税、贈与税がそれぞれ補完する形ですね。そして、第二の主要税として、財・サービス課税が考えられます。これは、そのほかに受益負担というか応益負担として応益目的税とか、それから社会保険負担が適度に配分されているのが望ましい税体系じゃないかと思うのです。  日本の場合ですけれども、国税ばかりが負担じゃありませんので、地方税も含めた実質的な負担国民にとっては問題でありますので、そういった実質的な負担から見ますと、日本の場合は、OECDの統計によりますと、一九八六年で、個人所得税が二五・一%、法人所得税が二〇・七%、資産課税が一〇・九%、財・サービス課税が一三・四%、社会保険負担が二九・八%と、社会保険負担が非常に大きくなっております。ただし、この社会保険負担の個人部分、これが一〇・九%ですので、それだけを問題にするとするならば、個人所得税がトップであるということになります。しかし、個人所得税がトップであるからといって、じゃ所得税がほかと比べまして高いかというと、必ずしもそうはなっておりません。ただ、法人税が非常に高いということは、これはほかの国と比べまして明らかに出ている統計の数字でございますけれども、しかしこれは周知のように非常に法人の数が多いという結果のあらわれでございまして、必ずしも税率が高いという結果ではないというふうに、比較的高い方ですけれども、ずば抜けて高いとは言えないということで、このようなことを考えますと、次のような財政改革というか租税改革が提案できるのではないかと思うのです。  一つは、実質的な企業所得税となっている事業税、これはOECD統計によると、大蔵省の分類に従って事業そのものにかけるということで所得税になっていなかったのですね。それが数年前、これはおかしいというので事業税が企業所得税というふうに訂正されてOECDの資料に載っていますが、これはいつまでもそのまま放置、毎回それが書かれるのですね、注意書きに。いつまでも放置しておいていいものじゃないんじゃないかと思うのですが、実質的な所得税になっているのですね。これはやはり加算方式の付加価値税に改めて収益課税化すれば、応益課税としての租税のバランスを保つ一つの要因になるのではないか、こういうふうに思います。  それから、消費税でございますが、もうこのように矛盾のあらわれている、指摘されている消費税を撤廃いたしまして、ある一定の、現段階では製造業者売上税が非常に簡素な税金でありますし、また物品税の経験が日本は長いのでありますので、そういった経験から日本の国情に違和感なくすんなり入るというふうに思うのです。もちろん単段階課税でありますから複数税率を持つことも簡単でありますし、またゼロ税率の領域を持つことも非課税の領域を持つことも比較的容易なんですね。ただ、もちろん欠点というのはサービス課税ができないということでございますが、これは並行的なサービス課税、そういうことをとることによりまして補完できると思うのです。インボイスとかゼロ税率とか目的拘束がもし消費税導入できないとするならば、このような製造段階での単段階課税プラスサービス課税というものも現段階では最適ではないかというふうに思うのですね、将来についてはまた問題は別でございますが。  今回の消費税導入で問題を見てみますと、徴税者としての政府納税者としての事業者、これに非常に配慮をし過ぎて、実際肝心かなめの負担をする側の配慮が足らなかったのでこのような紛糾があったのではないかというふうに思います。やはり担税者の視点を欠いた税制改革というのは、たとえ導入されても長続きしないと思いますので、改革の方向をそのような方向に合わせていく必要があるのではないかと思います。  以上でございます。どうもありがとうございました。(拍手)
  62. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員長代理 どうもありがとうございました。     ─────────────
  63. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員長代理 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。金子一義君。
  64. 金子一義

    金子(一)委員 ただいま進藤先生、石倉先生、八巻先生、それぞれの公述人の方々から大変詳しい、また貴重な御意見を拝聴させていただきました。私の時間が十五分でございますので、多くを質問できませんが、二つばかり御質問をさせていただければと思います。  冒頭に、八巻公述人に対しての御質問なんでございますけれども、現行の消費税、むしろこれは欠陥であって、それよりも我が国の現状から見ると、いわゆる製造業者課税が実情に合っているのではないかという税の論理も本当に傾聴をさせていただきました。ただ、税の論理は今お伺いさせていただいたとして、一方で現行の消費税が実施をされておる。そうして、そういう中で今度は野党皆様方もこの消費税廃止法案を提出される用意をされておられるやに伺っておるのでございますけれども、同時に自民党側も新しい見直し法案というものを既に提出をしておる。これがお互いに今、国会に上程をされてまいりまして、現下の政治の構図の中でいきますと、両方ともこれは通らないということになって、結果として現在の消費税の体系が残ってしまう。これが現実的な、理論は別として、今先生のおっしゃられました理論は別として、こういう状況になっていきかねないわけでございまして、果たしてこれが本当に国民の声を聞いたことになるんだろうか、政治として成り立ち得るんだろうか、私たちも本当にこれを今真剣に考えているところであります。  私も今度の衆議院の選挙では、消費税の必要性を正面に据えまして堂々と議論をいたしまして戦って勝ってまいっておりまして、自民党も見直し法案、これは廃止法案ではなくて見直し法案を掲げて自民党も勝たしていただいた。前回の参議院選、これが、参議院選の自民党の負けが国民の声だ、つまり消費税廃止だという論理があったわけでございますけれども、その結果廃止法案というのが準備されたわけでございますけれども、その論理からいえば、今度の衆議院の選挙の結果、国民の声というのはむしろ廃止ではなくて見直しではないか、そのところからスタートをしていただくのが、これは国民の声を素直に聞くところではないだろうか。  最近のNHKの調査を見ましても、廃止というよりもむしろ見直して存続していこうという声が、だんだん割合もふえてくる、七〇%弱にまで達したやに伺っておりますけれども、そういう現況を考えますと、我々はこれをお互いに見直し法案、廃止法案を出し合って、そしてそれがつぶれてしまって現行が残ってくるというよりも、やはりこの見直しという国民の声というものを素直に聞ける、その方法というものを何とか糸口をつかんでいくことができないだろうか、むしろそういう考え方を私も持っております。そういうことで、今まで廃止と言っておられました、また先生のお考え方からも廃止ということになりますと、これを見直しということになりますと百八十度違ってまいりますから、ある意味で勇気ある転進ということになるのかもしれませんけれども、この見直しという土壌に乗っていただける、そういう糸口、そしてそこでまた糸口を見つけていくという、そういう考え方というのを私たちは何とかとっていけないだろうか。  そこで、そういう前提でこの見直しというものを考える場合に、我々はもちろん、野党の先生方からお出しいただくいろいろな見直しの考え方というのは、これはもう本当に弾力的に考えていきたい、いいものは本当にお互いに議論して取り入れていきたいと思っておるわけでございますけれども、今先生のお話の中で、もし見直しをするとせばとおっしゃったのか、ちょっとはっきりわからなかったのですが、四点。福祉目的税にしなさいよ、それから歯どめをかけなさいよ、インボイスの仕組みにしなさいよ、それから逆進性が非常に、一番きいてくる食料品等々の非課税の分野についての措置、これはゼロ税率をとれとおっしゃったのか、ちょっとはっきり聞き取れなかったのでございますが、この四点を御示唆、サジェストされたのかな、見直しをするとせばこの四点ですよということをサジェストされたのかなと思いながら伺っておったのですが、それについてもう一度御意見をお願い申し上げます。
  65. 八巻節夫

    ○八巻公述人 先ほどの三点でございます、四点ではなくて。三つ条件が定着には必要ではないか。いろいろな問題複雑にありますけれども、本質的な点だけ取り出しますと、やはり一つは将来についての増税のしやすさというか、そういう税金であるという点での歯どめとしての福祉目的税ですね、そういった増税に枠をはめるという、そういう観点での福祉目的税の導入です。  それからもう一つは、やはりどうしても消費者の、負担する側にいつも疑念として残るのが、一体自分が払った税金が果たして国庫にそのまま入るのかどうかという、そういう疑念でございまして、今回の消費税、やはりそういった意味で非常に不透明な部分が大きいのでありますので、そういうことでの明確化のためのインボイスの導入ということでございます。  それから三つ目は、やはりこの食料品、統計なんか見てみますと、食料品をゼロ税率にいたしますと、かなり私が先ほど指摘しました家計タイプあるいは職業別あるいは全体の逆進度、これが緩和できるということが出ているのです。そういう効果を持つならば、単なる軽減課税じゃなくて、軽減課税すれば、食品とは一体何かという定義から始まりましてますます事務負担の複雑化が出てきますので、そういった意味でこのゼロ税率でやったらどうかということが私の提案でございまして、そういうことでございます。
  66. 金子一義

    金子(一)委員 八巻先生、ちょっと視点は変わるのでございますけれども、今の政治状況から考えて、国会全体としてこういう状況下で見直しというテーブルにお互いに着いたらいいのじゃないかという点について、コメントがもしございましたらお願いを申し上げます。
  67. 八巻節夫

    ○八巻公述人 見直しについては、本当に政治というのは我々よくわからない部分があるのです。だからそんなに角を立てて、初めに消費税ありきというところから出発しなくてもいいのではないかというふうに率直な感想として申し述べるわけでございますが、ともかくやはり国民にとって、だんだん賛成派がふえているというふうに先ほどおっしゃいましたけれども、一番問題なのは、不透明な部分が多くて、租税の絶対額じゃなくて、支払う絶対額じゃなくて、ほかの人と比べて自分は何か損をしているのじゃないかという、そういう相対的な税の感覚が国民にとっては非常に物すごくシビアに感じるわけです。だから、そういったことの疑念が晴らせるという意味でのこの三つ条件がのめるかのめないかというとちょっとまた政治絡みになりますけれども、そこでの問題が前提条件としてあれば、整えば、テーブルにお互いにのってそこからいろいろな譲歩とかあれができるのではないかと思いますので、そこはもう先生方の政治の場でございますので、私の出る幕じゃございませんので、よろしくお願いします。
  68. 金子一義

    金子(一)委員 ありがとうございました。  まさに今御指摘いただいたような意見を踏まえて、我々も何とかこの問題というのをお互いに乗り越えてまいりたいと思っております。  次に、石倉公述人に対してなんでございますけれども、米の自由化の問題、国会決議を無視するな、一言、一刀両断で今お話があったわけでございますけれども、我々も確かにこれは国民の七〇%以上の方が主食、米、これだけは自給していこうよ、そういう世論調査もいまだに出ておりますし、ただ、やはりこの方々のほとんど多くの方が、そうはいってももっとお米の価格は下げてちょうだいよ、同時にそういうことを言っておられるわけでございまして、これに向けての御努力というものを、もう当然でございますけれども、血のにじむような御努力をされておられる。そういう方向の中で我々もこの米の自由化というものは、この秋のウルグアイ・ラウンドに向けましても頑張って死守をしてまいりたいと思っておるわけでございます。  しかしながら、一方で農業は文明であり、また地域に根差した文化であるとよく言われるのでございますけれども、農業は米だけでもちろんない。まさに地域に根差した文明であり、そして文化である。そういう中で私はよく思いますのは、今の農政というものが全国一律の農政、減反するにしても補助金を出すにしても、ざあっと全国的なやり方を今とっておる面があるのでございますけれども、これから、それぞれの地域に根差した特性、地域特性というのをもう少し生かせる、そういう中での農政のめり張りというものがあり得るのではないだろうか。米どころは米、中山間地対策、今度、中山間地対策をさっき評価をしていただきましたけれども、もう確かに中山間地の米をつくっているところに、全国一律農政で五ヘクタール以上の農家の生産者米価に合わせますよ、米作農家の生産者米価に合わせますよと中山間地帯で言われたのでは、これはもう農家はやっていけないわけでございますけれども、中山間地は中山間地でやはり生きる道というものがもっと多分あるんだろう。  米についていえば、非常に特化した米、はざさ米ですとか、そういったようなものに努力していく。それから高冷地蔬菜といったようなものをもっと努力をしていく。全国の中山間地でも高冷地蔬菜、非常に若い、やる気のある農家の方々が新しい品種を持ってきて、そして品種の改良をやっている、そういう努力というのもずっとやっておるのを私も見ておるのでございますけれども、そういうような品質改良といったようなものを、これは野菜、果樹でございますけれども、こういったようなものをより容易に手助けしてやれるような、例えば規模の大きい試験研究所みたいなものをそういう地域にはつくっていって、米どころではない地域特性というものをさらに伸ばしてやれるような、そういうような農政というものをこれからさらに重視していかなければならないと思っておりまして、そういう中で農協が、また公述人として、これからの農業の進め方としてどういうところに重点を置いてこれからの国際社会を乗り切っていきたいか、そういう地域特性という観点から御意見を承らせていただきたいと思います。
  69. 石倉皓哉

    ○石倉公述人 先生の御指摘のように、日本農業といっても大変幅広うございまして、土地利用型農業、あるいはいわゆる技術集約型あるいは労働集約型、これはまあ施設型農業とこう言っておるんですが、問題はやはり、施設型農業はほぼこれはEC水準を追い越したということが言えると思いますが、何といっても大きな課題は土地利用型農業、こういうことが言える。  それから、先生の御指摘のように、最近は地域農業ということが非常に重要になってきておりまして、農協としましても、先般の第十八回農協大会で、コスト低減とそれから消費者のニーズにこたえていくという観点で、適正な価格でかつ良質な農産物を安定的に供給していこう、こういう方針を打ち出しまして、しかも、具体的に三H農業と言っておるんですが、健康志向、それからハイクォリティー、それからハイテクノロジー、こういう手法を組み合わせて地域農業を振興していこう。特に地域の実態がありまして、これから生産性を上げていく、あるいはコストを下げていくという場合でも、個別経営の規模拡大という手法のほかに、生産の集団化といいますか、組織化あるいは複合経営、こういった手法を組み合わせながら、それぞれ地域に応じた、それを踏まえてやっていこうというふうにしております。  特に現実的な対応としましては、なかなか個別経営の規模拡大は言うは易しくて現実は難しい、こういうことで、我々全中としましては地域営農集団という形で進めておりまして、現在全国に約二万九千集団のそういう集団ができておりますが、さらに今後、量的な拡大もさることながら、質の向上を目指す、こういうことで努力をしてまいりたい、こう思っております。
  70. 金子一義

    金子(一)委員 ありがとうございました。  進藤先生には時間がなくて残念ながら御質問できませんが、別の機会にさせていただきたいと思います。これで終わります。
  71. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員長代理 武藤山治君。
  72. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 進藤先生を中心にちょっとお尋ねをしたいのでありますが、先ほどのわずか二十分の先生の公述でございますが、大変感銘深く、明快で、卓見を聞かせていただきまして感謝をいたします。  私も、先生と世界情勢の見方はやや同じような見方をしている一人でございます。そういう立場で聞くのは聞きにくいのでありますが、端的にひとつお尋ねをいたしたいのは、東ヨーロッパの激変でヤルタ体制は崩壊した、そしてそれにかわる新しい欧州の秩序をどうつくるか、これが今模索されている最中で、少し煙は立ってきたような気がするのでありますが、その際に、特に今いろいろ三十五カ国を集めて欧州安保協力会議、こういう新しい仕組みをつくって、まあこれは白人国家だから容易にまとまるのかどうか、そこらの原因はよくわかりませんが、いずれにしてもこの三十五カ国でワルシャワ条約やNATO機構を乗り越えた、さらにもっと広い、大きな安保会議を開こう、こういう動向のようでありますが、これはうまく作動し、機能すると先生はお考えになるかどうか。七十年続いた一党独裁の共産主義体制の国々が含まれてこういう安保会議というのがうまくいくだろうかどうかというのが一点。  それからもう一つは、当面、東ドイツと西ドイツが来年は統一をされるという機運になりました。東ドイツは従来ワルシャワ条約、片方はNATO機構、これは一体西ドイツの力の方が強いからNATOに入ると即断できるのかどうか、ソ連がそれを容易に認めるだろうかどうか。となると、ワルシャワ条約機構にも足を踏み込み、NATOにも足を踏み込んだドイツという形になるおそれもあるわけでありますが、その辺の見通しは先生としてどうお持ちになっていらっしゃるのか。  この二点をまず先にちょっとお尋ねをしておきたいと思います。
  73. 進藤榮一

    ○進藤公述人 欧州安保会議、三十五カ国から成るヨーロッパの安全保障に関する国際会議が一体うまく作動するのかどうなのかという御質問でございますが、私は、これは時間はかかるかもしれないけれども定着していくだろうと見ております。やはり、ベルリンの壁が崩壊し、一つのヨーロッパに変わり始めているのではないのか。これは、ジブラルタルからウラルまで巨大なヨーロッパの市場の登場を意味するでありましょうし、同時にそれは、一つの文明圏の再興を意味するのではないのかというふうに考えます。根底にはやはり、軍備によって経済の繁栄を図るという、あるいは軍備と経済の繁栄という二つの目的を追求することが相矛盾し合うんだということを、ヨーロッパの指導者たちあるいは民衆が、市民が十分認識し始めているのではないのか。一体、なぜ、これからもお互いに高い国境の壁と高い体制の壁を前提にして外交を展開せざるを得ないのか、しなければいけないのかという疑問が根底に定着しているというふうに私は考えます。  例えば二千何年かにはモスクワからパリまで八時間で走れるようになります、現在三十数時間でございますけれども。これはやはり巨大な一つの地域共同体ができるのではないのか。ECがEFTAと合体し、コメコンを吸収していくというふうに私はとらえていいと思います。そういった経済の動きは、いや応なしに高い国境の壁あるいはたくさんの軍備をお互いに持って対峙し合うということを、事実上無意味にしていくのではないのかというふうに考えます。具体的にCFE、通常兵力削減計画において、もうある種の見通しが出始めているのではございませんでしょうか。  二つ目の質問でございますが、これは大変読みの難しい問題だというふうに答えた方が正しいと思います。力関係でまいりますと、例えばNATOの側あるいはアメリカの側は、あくまでも東独と西独の統一後の軍事状況、防衛体制のあり方に関して、NATOに編入された形での統一という線を主張するでありましょう。逆にソ連は、あくまでも東独と西独の統一されたドイツの中立化構想を主張するに違いありません。ただ問題は、ポーランドとかチェコスロバキアあるいはフランス、こういった国々。フランスはきておきましても、チェコスロバキア、ポーランドのように、かつて統一ドイツによって手ひどい侵攻、侵略の犠牲に遭った経験を持っている国にとって、やはり東独、西独がNATOに参入していくという、依然としてたくさんの軍備を保持していくという防衛ポスチャーに対しては、かなり警戒心がこれから出てくるのではありませんでしょうか。ただ、その場合でも、私はたとえ統一されたドイツがNATOに参入するという形で解決を見たにしても、やはり九〇年代以前の世界、ヤルタ体制時代の世界とポスト・ヤルタ体制時代の世界というのは基本的に違うと思うのですよ。  歴史というのはジグザグを経て進行してまいります。もう既に東西両独から米ソ双方が軍隊を撤退させるという合意が出てきております。兵力を現有の三十六万から十九万五千に削減するという、ほぼ五〇%削減するということに関して米ソ双方で合意が出ております。それから、両独が統一された後、たとえNATOに参入したとしても、ヨーロッパにおける軍縮の動きというのは進まざるを得ないのではありませんでしょうか。NATOはもう軍事同盟ではなくて政治同盟に転換したというふうに言明しておりますし、同じことはワルシャワ条約機構に関しても言えるわけです。そうなりますと、政治同盟に転換した二つの体制が対峙し合って、かつ経済の側面で一つのヨーロッパができていくという状況が出たときに、私は経済が政治を併呑していくのではないのかというふうに読んだ方が正しいというふうに考えますと、デタントの流れというのは押し戻し得ないと見るべきだと思います。
  74. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 次に、ソ連の民主化運動、ペレストロイカとグラスノスチがかなり世界の歴史を好ましい方向に展開させていると私は歓迎をするものでありますが、四年前に私もゴルバチョフにモスコーで会って、そのときに、この男はロシア人ではない、これは洗練されたヨーロッパ人だなというインスピレーションを非常に強く感じたのを今思い出すのであります。ゴルバチョフのなさんとする路線をぜひ成功させたいと多くの世界の人々が注視をしていると思うのですね。その場合に、日本として何をなすべきであるか、どういう支援策をとるべきであるか。従来どおりの政経不可分論に立って北方四島問題に固執して、そのままの姿勢をとり続けることが好ましいのか。この際、思い切って一歩二歩踏み込んで、このゴルバチョフの路線を成功させる方向に応援をしてやる、そういう日本になるべきではないのかと私は思うのでありますが、先生の見解は、その辺は、こんなことを具体的にやったらよかろうというような発想がありましたら、ちょっとお示しをいただきたいと思います。
  75. 進藤榮一

    ○進藤公述人 ゴルバチョフの政治的安定性の将来に対する見通しを含めて御質問に答えたいと思いますが、ゴルバチョフ体制の持っている安定度に関してさまざまな読みが可能だと思います。  例えば、大統領制を御承知のように導入いたしまして、複数政党制と大統領制を巧みにかみ合わせるという新しい政治改革の動きが着々と進行しております。しかしこれは、一方の複数政党制、つまり野党の存在自体がもっと具体化しない限り、絶えず独裁制への逆戻りの危険性というものをはらんでいるわけでございます。それがゆえに、ソビエト体制の持っている将来に対して危惧の念が西側から繰り返されるわけでございますが、しかし、にもかかわらず、私は、今次の大統領制の導入自体が、今危機的な状況に立っている、とりわけ民族問題と経済改革に関して危機的な状況に立たされたゴルバチョフが、ある種の強権を手にすることによって初めてその危機を乗り切ろうとする一つの避け得がたい路線の選択ではなかったかというふうに見るべきだと思うのです。  しかも片方で、ソビエト体制自体が今日あることは、私は先ほども申しましたように、東ヨーロッパ諸国と同じようにソビエトの社会自体が内側からもう変わってしまっているわけでございますね。六〇年代、五〇年代のソ連と違ったソ連ができてしまっている。そういったソ連社会が何よりも求めているのは民衆の生活の豊かさです。それから自由度の高さです。それは何よりも経済改革の定着をゴルバチョフ体制に求めてやまない内側からの動向となって強まってくるでありましょう。そのときに、私どもがもしデタントの動きをこれよりもさらに豊かなものにし、定着を確実なものにするためには、やはりある種のゴルバチョフ体制に対する、あるいは東ヨーロッパを含めたかってのソ連・東欧圏に対する経済的な支援を積極的にすべきではないかというふうに私は考えます。  西側諸国家のビジネスマン、ビジネス界は、既に巨大なヨーロッパ圏、ソ連経済圏の登場を目にして、これに対して非常に熱いまなざしを送っております。日本側も政府を含めてもっとソ連なり東ヨーロッパに対する経済的な価値の高さというものを認識すべきではないのかというふうに考えます。そのことは、アジアに関して申し上げますならば、中国と韓国、日本、あるいは北朝鮮を含めて、よしんば北朝鮮がいまだ入らないにしても、少なくとも中国、ソ連、日本、韓国のこの四カ国による太平洋地域、太平洋・シベリア地域の日本海圏における共同開発構想を積極的に進めていく、その方向に日本の豊かな資本なりテクノロジーを投下していくという積極策をもっと打ち出してしかるべきではないのかというふうに私は考えます。これは同時に、日米摩擦によって狭隘化した世界市場のボトルネックの状況を打開する一つの解決策になり得るのではないのかというふうに私は考えます。
  76. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 大変明快でございます。  もう一点、アジアの問題でありますが、先生の専門は国際政治、国際外交、そういう問題で、あるいはアジアじゃないのかもわかりませんが、失礼になるかもしれませんが、アジアの問題をちょっとお尋ねしたいのであります。  アジアは、とにかく地球全人口の半分近い人間が住んでいる大変広大な地域であり、面積は非常に大きい、人口は多い。このアジアでヨーロッパのような統合や新秩序はなかなか厳しいな、手法は難しいな、しかし何か考えなければいかぬ。私は去年、自民党の方々と一緒にEC評議会に国会代表で行ってまいりましたときに痛感をしたのですが、ヨーロッパではソ連のオブザーバーも来ておりましたしポーランドからも来ておりまして、自由に、環境汚染、宇宙問題の解決には国境はない、全ヨーロッパで解決しなければ公害問題は処理できないという議題で、ちょうちょうはっし論戦を展開していたのでありますが、アジアで、ASEANを含めアジア全体の国々の議員——政府ではなかなか難しいのですね。今アジア・太平洋閣僚会議というのがありまして、日本の閣僚も出ていって議論をするのでしょうが、政権を握っているのは、どうもアジアでは、本当の民主国家というのは幾つもないものですから、複数政党制で選挙をやる国がまだ少ない。そういう後発の地域だけに、アジアの秩序をどう建設をするかというのは、これからの課題であり、しかも大変重要な大問題だと私は思うのですね。だから、EC評議会のような、議員同士で与党も野党も自由に一堂に会して議論をする、そして次の方向性をそこでお互いが出し合ってみる、そういうような会議というのは大変必要じゃないのかなと、素人考えでそんな構想をいつも思っているのでありますが、先生の、もしアジアの問題についてこんなことをやれたらなあ、そう常日ごろ感じている、考えていることをちょっと御披露いただければありがたい、こう思っております。
  77. 進藤榮一

    ○進藤公述人 私ども学問の世界では、今日の国際情勢の基軸を流れているのは相互依存あるいは相互浸透の深化である、深まりであるというふうにとらえております。この相互浸透の深まり、資本と市場と商品と労働力、これがお互いに国境の壁を越えて浸透し合っている状況が二十世紀末の国際情勢の基底をなしているのだ。しかも、こういったいわばボーダーレスな状況が進展すればするほど、諸国家は第三世界を含めてある種の近代化へ向かわざるを得ない。国家が近代化へ向かえば、これは同時に民主化を誘発し、それによって政治体制が安定する、政治体制の安定が曲がりなりにも実現するんだ。少なくとも不安定ではなくて安定。かたい国家ではなくてやわらかい社会ができ上がってくる。そういった未来像をかくわけです。  そういった形で二十世紀末の国際関係を展望したときに、私は、アジアにおいて、確かにヨーロッパのような対等な諸国家間のつき合いというのはないかもしれませんですけれども、逆に、それがゆえに日本外交の選択というのは広がっていくのではないのか。日本外交が日本経済力、日本の政治力、外交力をもってASEAN諸国を包摂し、中国を同朋に入れて、朝鮮半島、ソビエトを含めて、あるいは広くオセアニア諸国家を含めて、アジア・太平洋圏におけるある種の経済共同体なりあるいは政治共同体の方向を打ち出していく。そのために、例えば今御質問になったように、あるいは御示唆なさったような形で政治家相互間の協議体のようなものをおつくりになるのも一つの方策ではないかというふうに考えます。幾つもの可能性を秘めた地域であるというふうにとらえてよろしいんじゃありませんでしょうか。
  78. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 これはけさの読売新聞なんですが、チェイニー国防長官が「共同防衛のための同盟国の貢献」という報告書を国会にきのう出したようであります。一九九〇年版でありますが、それをちょっと読みますと、日本の次期中期防衛力整備計画、九一年から九五年度で、「対空防衛能力、情報・通信、抗たん性の向上に向けて努力を維持するよう要請している。」そして報告書の冒頭で「東欧における政治的な変化にもかかわらず、我々が軽視してはならない軍事的な能力や不安定な状況がある」。依然として潜在脅威論がこの根底にある感じなんですね、アメリカは。これは国防長官の報告。  一方、アメリカの国防情報センター所長がインタビューに答えている文字は、大変これまたおもしろい未来像を語っておるのでありますが、佐世保、横須賀など在日米軍軍事基地も、五年後には閉鎖されるだろう。横須賀で艦船を修理するのは、円高の現在、金がかかり過ぎるのだ。そして海軍力削減は遅かれ早かれ日本の海上自衛隊の戦力にも影響してくるだろう。こういうことを所長が語り、そして一方ではアメリカは、ソ連との軍縮の話で、ICBMや中距離核ミサイルは、地上のものは減らすが艦船のものは減らさない。そしてソ連よりはるかに優位にある海軍の核ミサイルは、これは当分このまま維持する。ゴルバチョフの方は、これも話し合いで減らそうじゃないかと呼びかけておるんですね。しかしアメリカは、これを拒否しておるわけですね。そこらの見通しなんですが、これからそういう海軍艦艇に載せているミサイルも軍縮の話し合いに早晩入る、そういう状況になると見通していいのかどうか。  それからもう一つ、アメリカがこういう要請をしてきておるときに、日本は航空関係を強化せよという場合に、陸上部隊なんというのはもうほとんど日本は要らないんじゃないのか、私の感じは。この海洋国家日本は他国を侵略しないという専守防衛に徹する防衛ならば、もう陸上部隊はごくごくわずかで、災害に間に合う程度の兵員でよろしいんじゃないかという感じなんです、私は。そういう軍のあり方並びに今の艦船の横須賀、佐世保などの五年先の閉鎖論、そんな新聞報道がけさの新聞にあるわけでありますが、総合して、今申し上げた幾つかの点についての先生のお感じをちょっとお話しいただければと思います。
  79. 進藤榮一

    ○進藤公述人 昨年私の友人であるあるジャーナリストがソ連のフルンゼ参謀学院という、これはソ連の将校のエリート学校なんですけれども日本のかつての陸士のようなところでございますが、そこを訪ねたときにインタビューいたしまして、たくさんのエリート将校の卵たちを前に議論をいたしましたときに、連中から日本陸軍は何を脅威として考えているのかという質問が出たんだそうです。それに対して御本人が、もちろんソ連陸軍の北海道侵攻に備えていると答えますと、エリート将校の卵たちは大爆笑したというんですね。私は、これは二十一世紀の世界の米ソ関係なり極東状況を非常に示唆的に示しているエピソードの一つではないかというふうに考えます。  私ども短期的に見ますと、過渡的な状況というのは繰り返し軍縮と軍拡のせめぎ合いの中で展開するに違いないわけです。しかも、国家間関係というのは理性によって展開するわけじゃございませんで、いや応なしに現代の軍拡というのは膨大な軍需産業群を抱えておりますし、一気に軍需産業を半減することなんかとてもできない。だから、今のアメリカの国家予算も、削減しているのはたかだか二%とか三%、三年間で二〇%という形でございます。  しかし、にもかかわらず私は、今日の国際情勢の先を読んで、十年先を読んだときに、これはやはり軍拡ではなくて軍縮の時代が到来しているというふうに見るべきではないかというふうに考えるのです。軍需産業は抵抗するでございましょう。しかも国境の壁を越えて日本の防衛庁あるいはアメリカのペンタゴンは、自分たちのやはり、私たちの言葉を使いますと官僚制利益が侵食される機会として軍縮の動きをとらえざるを得ないというのは、これはもう当然考えられることでございます。しかし、にもかかわらず、もはや敵がなくなった状況においてなおかつ敵を迎え撃つ武装集団がどこまで必要なのかということになると、やはりこれは漸減の方向をたどらざるを得ないだろう。それは完全撤廃なんということは、これはユートピアでしかないと私は存じます。にもかかわらず漸減せざるを得ないというのは、これは歴史の示すところじゃありませんでしょうか。  海軍軍縮の動きというのも、特に最先端技術が海軍技術にあるいは核海軍技術の中に集約されているものですから、なかなか進まない。これは十分そういうふうに言って差し支えないと思うのです。しかし、にもかかわらず、ここ最近の報道によりますと、ソ連側の大幅譲歩をきっかけにして、アメリカもまた海軍軍縮に進まざるを得ないという状況が出ているんではないでしょうか。  一口だけつけ加えますと、私はよく経済が外交を規定するという言葉を使うんですけれども、この場合も、アメリカが二十一世紀に向かって一流国家として生き残るためには、いや応なしにハイテク海軍軍縮を含めて軍縮予算に組みかえていかざるを得ないというふうに読んだ方が正しいと思います。その方が人類のためになるんじゃありませんでしょうか。軍拡をやらなくて、もっと民生予算を豊かにすることが、日米摩擦を究極的に解決していく一番の近道だというふうにとらえるべきではないかと考えます。
  80. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 あとわずかで、石倉さん、ちょっと余り親しい間で質問するのはしにくいのだけれども、せっかくのきょうは公述人でおいでですから、一つだけ。  私は、実は農協推薦は全然一回も、十三回選挙をやりましたが、いただいておりません。しかし、自分が百姓ですから、農業問題、農免道路の制度をつくらせたのは私です。農家の二十年営農を続ければ相続税を免税にしろという提案を大蔵で前後五回質問をして、あの制度ができたのも、私が口を切ったわけですね。そういう農業に対しては大変な愛情を持っている一人であります。  そこで、ちょっと聞くのですが、きのう政府は二つの法案を提案しましたね。住宅地高度利用地区計画などが全部変更になる、あるいは用途別容積。この記事の中に、市街化区域内でもどこでも今農家が土地を出さないのは、出すと相続税がバックしてかかってしまうわけですね、二十年経過してない土地は。そうすると、あの法律ができてちょうどまだ二十年ぐらいじゃないですか、ことしあたりが。そうすると、まだほとんど相続税が免税になるかならないかのかつかつの人が最初の人ですね。ですから、うっかり売れないわけですね。売れば相続税がもとへバックですから。しかも、今地価が上がっているし、大変な金額になってきておりますから。しかし、今度の建設省の発想では、新築賃貸住宅をつくった場合、これは税金を減税しましょう、もう一つが、住宅・都市整備公団など公的機関に農地を貸して、そこへ高層マンションをつくる、そういう貸し地も相続税の免税措置を戻さないでそのままひとつ生かそうじゃないか、こういう発想が大変強くなってきましたね。これは、農協中央会では、この農地相続の問題と、賃貸で土地を出した場合に、相続税さえ廃止にならないのなら認めてもいいではないかという発想になるのか、それでも農地がつぶれるということは断固いかぬのじゃ、こういう姿勢なのか、この一点だけお尋ねして、持ち時間ですからやめます。
  81. 石倉皓哉

    ○石倉公述人 冒頭、先生が相続税の納税猶予制度、この制度をおつくりになったということは十分承知しております。  そこで、我々は、現在非常に異常な地価の高騰で、大都市住民といいますか、サラリーマン層がマイホームを持つことは夢の夢、手の届かない話になっているという事実は十分直視をせざるを得ないと思いますが、問題は、そういった市街化区域内の農地を宅地並み課税という税制で追い出そう、こういう方法は邪道ではないか、もっと総合的な観点で、一体都市計画をどうするか、住宅宅地の促進をどうするかという観点がなければならぬ。我々はあくまでも緑豊かな潤いある町づくりという中で当然に大都市に農業は必要だという観点で、この相続税納税猶予制度は絶対廃止してもらっては困る。ただ建設省は、生産緑地法を改正をしよう、その前提はこの長営制度廃止というのが前提であるということでありまして、十分に今後この問題についても、組織としてもいろいろ勉強して頑張っていきたいと思っております。よろしくお願いしたいと思います。
  82. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 時間でありますから、終わります。
  83. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員長代理 次に、冬柴鐵三君。
  84. 冬柴鐵三

    冬柴委員 公明党の冬柴鐵三でございます。  本日は、公述人におかれましては、お忙しい中をわざわざお越しをいただき、貴重な意見を伺いまして本当にありがとうございました。私がいただいている時間はわずか十五分でありますので、よろしく御協力のほどをお願いいたします。  まず、八巻先生にお尋ねいたします。  先生は、消費税導入についての問題をいろいろ述べられました。その中で、年齢別、職業別、家計タイプ別の負担をいかに調整するかという観点もお述べになったように思います。裏返して言えば、そのような調整がないと逆進性というものが大変顕著になってしまう、こういうようなことが裏腹になっていると思うのですが、なかんずく私は、消費税を回避する弾力的調整反応ができない家計群である非就業世帯について非常に問題があるようにお述べになりましたので、その点をもう少し詳しくお聞きしたいことと、この消費税導入の節に大きな減税がなされました。これは法人税減税あるいは所得税減税がなされたわけでありますが、その所得税減税は、控除の引き上げとかあるいは累進緩和税制の簡素化、こういうものを採用されたと思うのですね。そういたしますと、差別帰着の累進性をより非就業世帯において拡大してしまうのではないかということを私心配するわけですが、その点について先生の御意見をお伺いしたいと思います。
  85. 八巻節夫

    ○八巻公述人 初めに第一の質問でございますが、非就業世帯が非常にシビアに高い負担となってあらわれてくるという点について御説明いたしますと、先ほどもお話し申し上げましたけれども、やはり所得全体が低いものですから、消費水準の低下の仕方が非常に緩やかというか、つまり所得消費水準と両方の作用が非就業世帯にあらわれるのです。ですから、非常に高い消費水準を持っているということと、所得自体の中で消費支出の割合が非常に高いということで、特に食料品については弾力的な反応が非常にしにくいわけですね。価格が高くなったということから、ではすぐ弾力的に消費支出を減らすことができるかというとできない世帯、これが非就業世帯の特質でありますので、そこに配慮をいたさなければ、やはり逆進性がもろにそこにあらわれてくるというふうに思うのです。  それから、今まで完全に税金負担所得税がゼロであったという世帯が、これが新たに導入されるわけですから、その消費税をもろにかぶるという点、この負担のショックというのは、やはりECとは違いまして大きいものがあるのではないかという点で、やはり食料品をゼロ税率にした方がよろしいのではないかというふうに思うのです。
  86. 冬柴鐵三

    冬柴委員 次に、進藤先生にお伺いいたします。  ポスト冷戦がどうなるかということでポール・ケネディの「大国の興亡」の中で、もうアメリカは既に軍拡をこれ以上進める力を失いつつあって、その肩がわりを同盟国、とりわけ日本に求めていく、このような予言がされたわけですが、まさに先生が述べられたところは、グローバルデタントとアジアにおける、とりわけ日本における軍拡というのは、ポール・ケネディの予言というものが的中しているように思われるわけです。しかしながら、我々は、日米というのは単に安全保障だけじゃなしに、例えば日本の輸出の中に占める対米輸出割合というのは非常に高くて、九〇年代でも二〇%を下がることはないと思いますし、またアメリカの日本に対する対日依存度というのもカナダに次いで今高くて、いずれ抜くでしょうけれども、そういうことで不即不離の関係にあるわけですね。そういうことも考えながら、我々はどこを注目してどの線を押さえていけば、いかにアジア部でも世界の平和あるいは軍縮の時代をつくり出していくためにリーダーシップをとり得るのか、日本はどうあるべきか、この点について先生の御意見を拝聴したい、このように思います。
  87. 進藤榮一

    ○進藤公述人 アメリカの日本に対する防衛力肩がわり政策という御指摘は、まさにポール・ケネディの触れているように、帝国の衰退期における、移行期における、パックス・アメリカーナのたそがれの時期における一つの典型的なあらわれであるというふうな御指摘は正しいと存じます。  私は二つの意味を持っていると思うのです。一つは、これは今までアメリカが日本の面倒を見てきた、そのために日本経済繁栄があったのだから、今度は日本経済繁栄を少し押しとめるために日本に軍事力を持たせるべきだという、表面にあらわれてこないけれども底流に流れ続けている反日本平和主義論の流れがそこかしこに見えているというふうにとらえるべきだと思います。二つは、私が最前申し上げましたように、やはりアメリカの突出したハイテク軍需産業でございますね、最も国際競争力の高いハイテク軍需部門における対日市場取り込みの一つの手段として、日本に対する防衛協力あるいは防衛力の肩がわり政策が進行しているというリアルな面をもっと押さえてしかるべきじゃないかなというふうに私は考えます。ですから、その意味で軍縮と軍拡がねじれながら同時進行しているという状況が特に対日政策において顕著になってきている。  しかし、その場合私どもが押さえなければいけないのは、一方でアメリカがそういった政策を続けること自体がアメリカの経済力の回復に必ずしもつながらないのだということを、やはり対等のパートナーとしてアメリカに対して率直に言うべきじゃないかというふうに私思います。アメリカの言うことに対してすべてノーと言うことではなくて、選択的にノーと言うことのできる日本というのがやはり私は求められているのだと、そのことは同時に、アメリカに対して選択的にイエスと言うことのできる能力を持った、高いリーダーシップを持った日本というものが求められているというふうに、具体的なリーダーシップのあり方というのは疑いもなくアジア・太平洋における軍縮を進めることだというふうに私は申し上げて差し支えないと思います。緊張緩和を進めることだと申し上げて差し支えないことだと思います。  そのことは、それぞれの国における民生部門を豊かにすることであって、例えば日本の国内投資をもっとやはり豊かにすべきだというアメリカの構造協議における対日要求というのは、率直に受けてしかるべきではないかというふうに私は思います。たとえ日本がアメリカの要求どおり国内市場に対して国内投資を一〇%までふやしたとしても、決してアメリカに対する貿易黒字は減らないのですね。減らないけれども、そのことにやはりこたえることが日本の市民にとっても、日本社会をつくりかえていくことにとってもプラスになるし、同時にそのことはアメリカの国内市場、アメリカの国内投資、民生投資部門の投資高というのは日本の投資高の四分の一ぐらいしかございませんですよね。やはりもっとアメリカ自身が民生部門にたくさんのお金を使って、アメリカの民衆も、それから市民たちの生活を豊かにすること。道路は、四分の一でございましたですか、四〇%でございましたでしょうか、もうぼろぼろの状況ですよね。いつ壊れてもおかしくないという状況、耐用年数が既に来ているという、そういった貧しい国内投資状況がアメリカにあること、そのことをやはり私はアメリカに対して積極的に指摘してもおかしくないのじゃないかなというふうに思います。  どうも言葉足らずになって恐縮でございますが、時間がございますので……
  88. 冬柴鐵三

    冬柴委員 どうもありがとうございました。  石倉先生にお尋ねしたいと思います。  私も、米の自由化というものに慎重であるべき点につきましては同じなんですが、ただ、全量管理と二重価格制を基本とする食管制度の今日的意義をどう考えられるのか。それからもう一つは、米の集荷とか保管管理、備蓄米も百五十万トンほどあるようですが、こういうものについてもっと市場原理を導入するべきじゃないかというふうに私考えるわけです。これはただに米の集荷、保管管理だけではなしに、農機具あるいは肥料、その他農家が使ういろいろな物品等につきましても、もっともっと市場原理、競争原理が導入されてしかるべきではないかというふうに考えているのですが、先生の御意見を伺いたいと思います。
  89. 石倉皓哉

    ○石倉公述人 まず食管制度の問題でありますが、私は、食管制度の根幹といいますか、一番大事なところはやはり安定的供給あるいは価格の安定、これを確保していくことが我々食管制度の最大の機能である、こう思っているわけであります。よく世間では昭和十七年にできた法律だからけしからぬから廃止をしろとか、いろいろ言われておりますが、私は、この食管制度の本質は今言った価格の安定と量の安定、これが国民経済国民生活にとって非常に重要な役割を果たしておる、こう思っておるわけです。  したがいまして、現実の今日の情勢の中で、仮に生産、流通、消費にわたって現実に合わない点が出てきたとすれば、それは大いに改善をしたらいいのではないか。だから、そういった生産から流通、消費にわたるその運用の問題と、それから食管制度そのものの本質をチャンポンにして議論すべきではない、こういうふうに思っております。  それから先生は、集荷、保管あるいはえさとか肥料、農機具、そういったものに対する競争原理の導入ということをおっしゃったのでありますが、私ども農業協同組合は、あくまでも零細な、弱小な生産者が団結をして、結集して、それぞれの生活、社会的な地位の向上を図るというのが目的でありまして、共同の力によってそれを確保していこうという形で、いろいろ販売事業、購買事業それぞれそういう目的でやっているわけでありまして、したがいまして、そのことと、そういう協同組合の本来の機能というのはそこにあるということを申し上げたいと思います。  お答えになったかどうかわかりませんが、よろしくお願いします。
  90. 冬柴鐵三

    冬柴委員 あと一分残りました。八巻先生に再度伺いたいのですが、直間比率が他の主要国に比較して、いわゆる直接税が高過ぎるから、その見直しのために消費税導入すべきである、このような考え方が述べられたと思うのですが、そもそもこの直間比率は何か是正しなければならないという確かな根拠、理論的に根拠があるのですか、それとも、直接税、間接税というのはそれぞれの国の歴史とか経済情勢、体制、そういうようなものを総合してそれぞれあるわけであって、こうあらねばならないという理論的な根拠とかそういうものはあるのかどうか、その一点を伺いまして、私の質疑を終わらしていただきたいと思います。
  91. 八巻節夫

    ○八巻公述人 直間比率そのものの理念的な根拠というのは全くありません。ただ言えるのは、現実問題として、要するに公共支出の側面ですね、その支出の側面が例えば非常に応益的な公共サービスであれば、応益原則で目的税でリンクさせるとか、そういうことで、例えば純粋公共財的な全国民を対象にするような公共サービスならばそれは一般税でリンクさせるとか、そういう形でのバランスというのはございますけれども、しかし直間比率が五対五でなければならないなどというのは、理念的な根拠というのは全くございません。  ただ、やはり直間比率といっても、それは直接税の中身でございますが、法人税なんかも必ずしも直接税の仲間に入らないのではないかと思うのですね。というのは、やはり価格とかあるいはベアとか、あるいは仕入れ業者の価格をまけさせるとか、いろいろな形であちこちに負担が分散しますので、ですから、そういった意味では必ずしも直接税であるというふうな確たる実証はできないのですね。ですから、仮説のもとで直接税というふうに仲間に入れているわけでございまして、そういった意味でその直間比率の言葉そのものも非常にあいまいであるというように思います。
  92. 冬柴鐵三

    冬柴委員 どうもありがとうございました。終わります。
  93. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員長代理 次に、児玉健次君。
  94. 児玉健次

    児玉委員 三人の方にお忙しい中御意見いただいたことを私からもお礼申し上げます。  最初に、進藤公述人にお伺いしたいのですが、私どももヨーロッパの情勢については大変強い関心を持っております。ハンガリーとチェコスロバキアでソ連の駐留軍を撤退せよ、こういう声が強く出て、一部はそれが始まっている。一方、ベルギー、オランダでも西ドイツの駐留部隊の撤退を意思表明する、そういうふうな事態も起きているようです。  そこで、我々が見る一つのかぎが軍事同盟といいますか軍事ブロックだと思うのですが、その点で私は、ここまでのさまざまな問題については米ソをそれぞれ中心とした東西両方の側から見なければいけない。その一つにもちろん東側があるわけですが、ここで特にブレジネフなどに代表される極端な核均衡論というか核抑止論、具体的には一九八一年二月のソ連共産党二十六大会で展開されたものがもう最悪の内容だと思うのですが、両方の軍事体制のさまざまな武器における均衡、それが平和を保っているのだ、これは本来の社会主義の道からも恐るべき逸脱、許すことのできない逸脱だと私どもは考えております。その道でない道を歩まなければならない。  そこで、先ほど進藤公述人の方からヨーロッパと日本の時差という、時差があるという興味深い御表現でお話がありましたが、日本とアメリカの関係を軍事費で見た場合に、ちょっと卑俗な言い方ですけれども、レーガン大統領は軍事費について、おれもふやすからおまえもふやせという形で迫ってきたと思うのです。今ブッシュ大統領は、おれは減らすがおまえはふやせという形で迫ってくる。両者を共通して土台にあるものは日米軍事同盟、安保条約だと思うのですね。軍縮をきちっと進めていくために今日本においても日米安保条約の廃棄というのが実践的な課題にならなければいけない、そういう時期にまさしく来ているのではないか、そのように私は考えますが、この点で公述人の御意見を聞きたい、こう思います。
  95. 進藤榮一

    ○進藤公述人 外交史家として、例えば日米安保条約が本当に必要であったのかということを一九四九年から五二年にかけての、つまり日米安保が成立する過程に関する外交文書、ほぼ解禁されているのでございますが、それをたどってまいりましたときに、これはやはりボタンのかけ違いだった。日米安保は、あの時期にあって実際にソ連の脅威があったのかどうなのかというのは、一九五〇年代当初、一九四〇年代末の時点にあっても極めて疑問であるという結論を引き出さざるを得ないというふうに私申し上げていいと思うのです。  ましていわんや、一九六〇年段階にあって、六〇年の安保改定のときに、あの時点で既に、一九五七年で日ソ共同宣言ができているわけでございますね。鳩山首相がモスクワを訪問し、河野さんと鳩山さんが音頭をとって日ソ平和条約への地ならしをしてきた、基盤をつくった。しかも片方で、一枚岩と見られていた中ソ間に敵対状況が、亀裂が入っていたという、そういった状況のもとで一体六〇年安保が必要だったのかということも、歴史家として見たとき、これまた大変な疑問に思わざるを得ない。ですからその意味で、純理論的あるいは純歴史的と申しましょうか、あるいは今日の状況を見た場合でも、一体ソ連が脅威なのかというと、先ほども申しましたように、フルンゼの将校の卵たちが大爆笑をするようなそういった状況が展開されているにもかかわらず、なぜ軍備なのかという、あるいはなぜ敵を想定した軍事同盟なのかという疑問というのは繰り返し出てくると思うのです。しかし私は、外交というのはやはりある種の、どなたかの言葉かもしれませんけれども、継続性と申しましょうか、やはりある種の過渡期が必要だと思うのですね。そういった環境づくりをしていくことが私は平和戦略の展開にとって必要なのではないのかというように考えるのです。  その意味で、むしろまずなすべきは、例えば日ソ国交回復に踏み切ることだというふうに私は考えます。第二番目になすことは、朝鮮半島の緊張緩和に向けて、例えばもっと具体的に、クロス承認の方針まで踏み込んだ再検討をしていってもいいのではないかというふうに考えます。それから、いわゆる信頼醸成措置をはっきりつくってもいいのじゃないか、全くない状況からつくり出してもいいのじゃないか。もし不安を感ずるというのであれば、日米同盟がなくなって不安を感ずるという、人間の習性がございますですから、長年にわたって、四十年近くにわたって同盟とともに生き続けてきたという日本のいわば外交基盤が一朝にしてなくなることに対する不安感、あるいはアメリカに対する経済依存度というところから来る、ある種の日米基軸論から来る反論というものに対する不安状況に対処するために、やはり私は過渡期としてもう一つ別のオールターナティブを探してもいいのではないか。例えば、これは私見でございますが、日米中ソ四カ国間の相互集団安全保障協定というものをつくり出すとか、そういった形でむしろ環境づくりに第一の外交目標を置くべきではないのかというふうに考えております。  お答えになったかどうかわかりませんが、そのように考えます。
  96. 児玉健次

    児玉委員 石倉公述人にお伺いしたいと思います。  先ほどの御意見との関連ですが、私は食糧管理費の推移を重視いたします。なぜかといいますと、米の輸入自由化が万一国民の強い反対にもかかわらず実現したとする、そういうふうになってはなりませんが。そこに向けての国内体制づくりという側面を食糧管理制度の改廃は持っていると思います。その点で予算を見ますと、九年連続削減ですね。そして、先ほどいろいろ興味深い重要な御指摘がありましたが、食管費についていえば、昭和五十七年が九千九百億、それがついに今度の予算で四千億の大台を割りましたね。この点についてどうお考えでしょうかというのが一つです。  二つ目の御質問は、最後に公述人がおっしゃったことですが、米の輸入自由化問題で、さまざまのことはあります。国会も確かに決議をしております。今米の輸入自由化に道が開くとすれば、それはウルグアイ・ラウンドであろう、そこでの論議であろう。ウルグアイ・ラウンドにおける協議から米問題を排除すべきだ、除外すべきだという国会決議を私たちは行うことが現在至当だと考えているのですが、その点についてのお考えを伺いたい。  以上でございます。
  97. 石倉皓哉

    ○石倉公述人 まず、食糧管理費の先生の御指摘の減額、そのとおりでございまして、私先ほど申しましたように、農業関係予算が一貫して減り続けてきた。具体的に言いますと、昭和五十七年から八年間で約六千五百億円ですね。そういう中で食糧管理費も同じような減額、流れは同じでありまして、これは非常に重要視をしているわけであります。  ただ、若干その内容を立ち入って分析してみますと、非常に今までは政府米と自主流通米の比率が、最近逆に七、三とか逆転をしてきている、こういうことも減額の一つのファクターではないか、こう思っているわけでありますが、いずれにしましても、そうではなくて、やはり将来にわたって農業者が農業に対して魅力を感じていくためには、具体的にやはり予算の増額が必要である。ましてや、いろいろ農業、農村の活性化とかあるいは地域経済の活性化、こういうことを進める上では、やはり農業が基軸にならぬといかぬのではないか、こういうふうに思っております。  それから、米の市場開放問題でございますが、先生のおっしゃったこともわからぬわけではありませんが、現在いろいろの経過がありまして、ウルグアイ・ラウンドの中で、例えばアメリカのウエーバー問題あるいはECの可変課徴金問題が同じテーブルで論議されるなら、米問題を論議してもやぶさかでないという経過の中で、ウルグアイ・ラウンドで進めておりまして、本来であればことしの十二月末が交渉期限になっていくと思いますが、今後の見通しはよくわかりませんが、そういうことでお答えになったかどうかわかりませんが、この事態の推移をやはり見詰めながら、この阻止のために全力を挙げたい、こう思っております。
  98. 児玉健次

    児玉委員 八巻公述人お伺いしたいのですが、御意見の中で、社会保障費というのがかなり全体の御意見の中で、消費税がもし定着させられるのであれば、満たされるべき三条件の冒頭に福祉・サービス云々というのも出てきたりいたしますので、今年度予算に対する認識の問題がちょっとありますので、一つだけ指摘させていただきたいのです。  それは社会保障費の伸びの問題です。確かに名目六・六%伸びておりますが、しかしこの中には先生よく御存じのとおり厚生年金等に対する国庫負担の繰り入れがこれまで停止されておりまして、言ってみれば隠れ借金だったんですが、そこについて一部新しいというか、本来の措置がされただけで、社会保障全体で言えば、実際は三・六%の伸びにとどまると私たちはそのように見ています。その点を一つ指摘させていただいた上で、先生の御主張の中で消費税の問題は、全体的な税制の体系の中でつかむべきだ、私たちも全くそのように思います。  税制全体の大きな体系の中でどうやってこの税制の問題を考えているか。確かに消費税が実施されていますけれども、好ましい方向を見ていこうという場合に、例えば先生がお話しなさったもの以外にも幾つかのメニューがあるんじゃないのだろうか。多国籍企業に対する課税をどうするかという問題だとか、土地、株式の含み益に対する課税の問題だとか、そういった点について御意見があればお聞かせいただきたい。今のことに限定いたしません、私は例示をしただけでございまして。
  99. 八巻節夫

    ○八巻公述人 非常に感想的なことになりますけれども、今現在でいろいろな税制改革のメニュー、そのメニューの可能性というものは数多く残されておると思いますけれども、例えば消費税につきましても、先ほど申しました製造業者売上税とかあるいはサービス課税とか、そういったことは一つの可能性であるわけですね。しかし、いろいろな現状の導入とか、それから定着とか、そういう点も考え、また不透明な部分も解消するというそういう観点から立てば、現段階では製造業者売上税というものが一つ方法として考えられるのじゃないか。やはり例えば、いろいろな法人税の改革だとか、それから土地課税の問題であるとか、そういった改革全体は一つの大きな理念のもとで行われなければならないのじゃないか。つまり、各国民経済状態を非常に反映するような形の租税が好ましいというふうに思うのですね。  そういった意味で、できるだけ選択の余地を残した租税ということでの改革、こういうものが大きな改革の柱として出てこなければならないんじゃないか。そういう意味では、製造業者売上税あるいは物品税、個別消費税の拡大なんというものは、むしろ各人が選択の余地が残されていますので、そういった意味では経済状態を反映するよりよい税金であるというふうに思うのですね。そういった観点は、やはり今後の税制改革の柱として、メニューを考える場合に一つのガイドラインになるのではないかというふうに思うのですね。
  100. 児玉健次

    児玉委員 時間もありませんから、八巻公述人に今のこととの関連で、先ほどの御意見の中で、福祉・サービスに限定する、それからインボイス方式の導入逆進性の緩和、例えば食料品をゼロ税率にする、このことが実現しないのであればという、私の聞き取り違いかもしれませんが、そういう論理、導きで製造業者売上税というふうになりましたが、この三つ条件が実現すれば消費税国民が受け入れるベターなものになるというお考えなんでしょうか。その点だけ聞かしていただきたい。
  101. 八巻節夫

    ○八巻公述人 消費税の中で、やはりベターであるというか、公平の観点からすれば、やはりEC型付加価値税というものが理論上は理想であるというふうに思うのです。ただ、現実導入の問題、あるいは先ほど言いました選択の余地の問題、そういったものの観点を考えますと、やはり現段階で導入するには非常に好ましくない、非常にあいまいでございますが、そういう対立する部分があるわけですね。ということで……
  102. 児玉健次

    児玉委員 終わります。
  103. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員長代理 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  明十八日の公聴会は、午前十時より開催いたします。  本日の公聴会は、これにて散会いたします。     午後三時五十八分散会