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1990-04-25 第118回国会 衆議院 予算委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年四月二十五日(水曜日)委員長の指名で 、次のとおり分科員及び主査を選任した。  第一分科会皇室費、国会、裁判所、会計検査  院、内閣及び総理府所管経済企画庁環境庁  、国土庁を除く)並びに他の分科会所管以外  の事項〕    主査 池田 行彦君       越智 伊平君    鈴木 宗男君       田澤 吉郎君    新村 勝雄君       藤田 高敏君    冬柴 鐵三君       楢崎弥之助君  第二分科会法務省外務省及び大蔵省所管)    主査 越智 通雄君       倉成  正君    町村 信孝君       宮下 創平君    松浦 利尚君       村山 富市君    山田 英介君       大内 啓伍君  第三分科会文部省及び自治省所管)    主査 工藤  巌君       井出 正一君    葉梨 信行君       加藤 万吉君    佐藤 敬治君       日笠 勝之君    吉井 英勝君  第四分科会厚生省及び労働省所管)    主査 林  義郎君       金子 一義君    戸井田三郎君       武藤 山治君    和田 静夫君  第五分科会総理府環境庁)及び農林水産省  所管〕    主査 内海 英男君       稲村 利幸君    近藤 鉄雄君       自見庄三郎君    戸田 菊雄君  第六分科会総理府経済企画庁)及び通商産  業省所管〕    主査 石井  一君      小此木彦三郎君    佐藤 信二君       野中 広務君    川崎 寛治君       神崎 武法君  第七分科会運輸省及び郵政省所管)    主査 左藤  恵君       伊吹 文明君    原田昇左右君       嶋崎  譲君    新盛 辰雄君       三浦  久君  第八分科会総理府国土庁)及び建設省所管  〕    主査 粟屋 敏信君       亀井 善之君    野田  毅君       井上 普方君    串原 義直君 ────────────────────── 平成二年四月二十五日(水曜日)     午前九時開議  出席委員    委員長 越智 伊平君    理事 近藤 鉄雄君 理事 佐藤 信二君    理事 野田  毅君 理事 原田昇左右君    理事 宮下 創平君 理事 加藤 万吉君    理事 佐藤 敬治君 理事 村山 富市君    理事 神崎 武法君       粟屋 敏信君    井出 正一君       伊吹 文明君    池田 行彦君       稲村 利幸君    内海 英男君      小此木彦三郎君    越智 通雄君       久野統一郎君    工藤  巖君       倉成  正君    左藤  恵君       自見庄三郎君    鈴木 宗男君       田澤 吉郎君    戸井田三郎君       野中 広務君    葉梨 信行君       長谷川 峻君    浜田 幸一君       林  義郎君    松本 十郎君       村岡 兼造君    村山 達雄君       柳本 卓治君    井上 普方君       川崎 寛治君    串原 義直君       嶋崎  譲君    新村 勝雄君       新盛 辰雄君    戸田 菊雄君       藤田 高敏君    松浦 利尚君       武藤 山治君    和田 静夫君       日笠 勝之君    冬柴 鐵三君       山田 英介君    佐藤 祐弘君       古堅 実吉君    正森 成二君       三浦  久君    伊藤 英成君       菅原喜重郎君    楢崎弥之助君  出席国務大臣         外 務 大 臣 中山 太郎君         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君         文 部 大 臣 保利 耕輔君         厚 生 大 臣 津島 雄二君         農林水産大臣  山本 富雄君         通商産業大臣  武藤 嘉文君         運 輸 大 臣 大野  明君         郵 政 大 臣 深谷 隆司君         労 働 大 臣 塚原 俊平君         建 設 大 臣 綿貫 民輔君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     奥田 敬和君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 坂本三十次君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 塩崎  潤君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 石川 要三君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 北川 石松君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 佐藤 守良君  出席政府委員         内閣官房長官 大島 理森君         内閣官房内閣安         全保障室長         兼内閣総理大臣         官房安全保障室         長       依田 智治君         警察庁交通局長 関根 謙一君         総務庁長官官房         交通安全対策室         長       徳宿 恭男君         総務庁行政管理         局長      百崎  英君         防衛庁参事官  内田 勝久君         防衛庁参事官  村田 直昭君         防衛庁参事官  鈴木 輝雄君         防衛庁長官官房         長       児玉 良雄君         防衛庁防衛局長 日吉  章君         防衛庁経理局長 藤井 一夫君         防衛庁装備局長 植松  敏君         防衛施設庁長官 松本 宗和君         防衛施設庁総務         部長      吉住 愼吾君         防衛施設庁施設         部長      大原 重信君         環境庁水質保全         局長      安橋 隆雄君         国土庁長官官房         長       北村廣太郎君         国土庁長官官房         会計課長    森   悠君         国土庁計画・調         整局長     長瀬 要石君         国土庁土地局長 藤原 良一君         法務省入国管理         局長      股野 景親君         外務大臣官房領         事移住部長   久米 邦貞君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省北米局長 松浦晃一郎君         外務省欧亜局長 都甲 岳洋君         外務省経済局長 林  貞行君         外務省経済協力         局長      木幡 昭七君         外務省条約局長 福田  博君         大蔵大臣官房会         計課長     浅見 敏彦君         大蔵省主計局長 小粥 正巳君         大蔵省主税局長 尾崎  護君         大蔵省銀行局長 土田 正顕君         大蔵省国際金融         局長      千野 忠男君         文部省体育局長 前畑 安宏君         厚生大臣官房総         務審議官    加藤 栄一君         厚生省健康政策         局長      仲村 英一君         厚生省保健医療         局長      長谷川慧重君         厚生省生活衛生         局長      目黒 克己君         厚生省児童家庭         局長      古川貞二郎君         厚生省援護局長 末次  彬君         農林水産大臣官         房長      鶴岡 俊彦君         農林水産大臣官         房予算課長   山本  徹君         農林水産省経済         局長      川合 淳二君         農林水産省構造         改善局長    片桐 久雄君         農林水産省農蚕         園芸局長    松山 光治君         食糧庁長官   浜口 義曠君         林野庁長官   甕   滋君         通商産業省通商         政策局次長   堤  富男君         通商産業省産業         政策局長    棚橋 祐治君         通商産業省基礎         産業局長    高橋 達直君         中小企業庁長官 見学 信敬君         中小企業庁計画         部長      高島  章君         運輸大臣官房国         有鉄道改革推進         総括審議官   大塚 秀夫君         運輸省運輸政策         局長      中村  徹君         運輸省海上技術         安全局長    石井 和也君         気象庁長官   立平 良三君         郵政大臣官房経         理部長     木下 昌浩君         郵政省電気通信         局長      森本 哲夫君         労働大臣官房長 若林 之矩君         労働省労働基準         局長      野崎 和昭君         労働省職業安定         局長      清水 傳雄君         建設大臣官房総         務審議官    福本 英三君         建設大臣官房会         計課長     小野 邦久君         建設省建設経済         局長      望月 薫雄君         建設省都市局長 真嶋 一男君         建設省河川局長 近藤  徹君         建設省住宅局長 伊藤 茂史君         自治大臣官房総         務審議官    芦尾 長司君         自治省行政局長 森  繁一君         自治省財政局長 持永 堯民君         自治省税務局長 湯浅 利夫君         消防庁長官   木村  仁君  委員外出席者         会計検査院事務         総局第一局長  疋田 周朗君         予算委員会調査         室長      多田 俊幸君     ───────────── 委員の異動 四月二十五日  辞任         補欠選任   石井  一君     久野統一郎君  小此木彦三郎君     柳本 卓治君   後藤田正晴君     井出 正一君   松本 十郎君     亀井 善之君   長谷川 峻君     町村 信孝君   浜田 幸一君     鈴木 宗男君   原田  憲君     野中 広務君   村岡 兼造君     自見庄三郎君   村田敬次郎君     伊吹 文明君   村山 達雄君     金子 一義君   正森 成二君     古堅 実吉君   三浦  久君     佐藤 祐弘君   菅原喜重郎君     伊藤 英成君 同日  辞任         補欠選任   久野統一郎君     石井  一君  柳本 卓治君     小此木彦三郎君   佐藤 祐弘君     三浦  久君   古堅 実吉君     吉井 英勝君   伊藤 英成君     大内 啓伍君     ───────────── 本日の会議に付した案件  平成二年度一般会計予算  平成二年度特別会計予算  平成二年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 越智伊平

    越智委員長 これより会議を開きます。  平成二年度一般会計予算平成二年度特別会計予算平成二年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。菅原喜重郎君。
  3. 菅原喜重郎

    菅原委員 まず、行政改革について総務庁長官にお尋ね申し上げます。  去る四月十八日、臨時行政改革推進審議会答申が提示されました。臨調は昭和五十六年に発足以来九年間、審議答申を続けましたが、政府が「増税なき財政再建」をてこに、財政再建の第一段階の達成をなしたこと、二つに国鉄、電電、専売の三公社の民営化、三つに年金、医療保険制度改革の実施ができたことを行革の成果として評価しているわけであります。  しかし、一方では、土地対策地方分権規制緩和など未達成課題が多いことを指摘しております。このことは答申の結びで、「提言は、必要最小限度のものにすぎない。問題の抜本的解決のために、外圧によるのではなく、我が国自身のイニシアチブによって改革を断行すべきである。」として、総理に具体的な実行を迫っているものであります。  政府といたしまして、今回の答申を受けての今後の対応と決意のほどをまずお伺いいたします。
  4. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 菅原委員ただいま御指摘のとおり、政府に対しまして去る四月十八日に新行革審最終答申が提出されました。私どもは、この最終答申につきまして、来る四月二十七日の閣議におきまして、これを最大限度に尊重する、そうして今後の行政改革に取り組んでいく旨の基本的な方針を決定するように、現在、努力をしているところでございます。
  5. 菅原喜重郎

    菅原委員 行政改革はまさに言うにやすく行うに難しい重要項目をたくさん抱えているわけでありますが、私は、地方自治の経験を通して、地方自治行政改革を図るためにシティーマネージャーシステムの導入をすることが必要だと今日まで訴えてきました。これは、かつてアメリカで、一九二〇年代、地方行政の積年の赤字と汚職に悩んだとき、このシステムが導入され、財政再建行政の浄化がなされたと言われているものであります。幸い、マネージャーに国と県の管理職クラスの公務員が十分対応できるよう育成されておりますし、地方制度調査会平成元年十二月六日に提出した「小規模町村あり方についての答申」の中にも、いわゆる支配人制導入等基本的な組織形態あり方も今後検討すると記入されてあるわけでありますので、このことについての政府の御見解をお聞かせいただければ幸いと思います。私は、公平公正を正義とする行政制度上からも守られるために、一万以下の自治体にこの改革をぜひ検討してほしいと望むものであります。
  6. 奥田敬和

    奥田国務大臣 昨年暮れの地方制度調査会答申の中で、今先生から御指摘いただきました小規模町村あり方についての問題点として、シティーマネージャーというのですか、この制度導入検討しろという御答申をいただいたわけでございます。  確かに先生の言われるように、行政効率化簡素化という観点から見ますと、この制度検討に値する制度だと思いますが、何せ市町村行政制度の根幹にかかわる問題でもありますので、さらに今後とも検討を重ねてまいりたいということにしております。
  7. 菅原喜重郎

    菅原委員 このことにつきまして、地方自治体行政の根本にかかわる問題という答弁がございましたが、アメリカ民主主義制度のもとで実現できている制度日本に適用できないはずはない、私は基本的にはこう考えております。殊に、やはり行政の首長から現金の取り扱いを分離する、これは近代的な政治実現の第一歩だと思っております。そして、アメリカにおいてもこのことが立派に実証されておるわけでございますので、ぜひ前向きに検討をされまするようにお願い申し上げる次第でございます。  次に、国土基盤の大整備について三庁にお伺いいたします、国土庁長官建設大臣農林大臣。  四全総では、国土基盤整備推進に当たっては「公的部門民間部門の連携を図り、」「国土基盤投資を積極的に推進する」とうたわれておりますが、国土保全については、現在、国土庁建設省農林水産省の三庁にまたがっての施策、予算執行がなされておるわけであります。都市地方の調和のとれた発展我が国産業基盤の強化、国際化を目指した農業生産基盤整備を図る見地からも、国土の大改造、大保全構想しての整備が早急に行われるべきではないかと思うのでございます。  私は、本来、どんな豪雨にもびくともしない国土改造、大保全経済大国日本が今こそ構想し、手がけるべきだと主張してきました。水は、急峻な国土であるからこそ、日本においては平らに流すように知恵を働かさなければなりません。国際化に対応できる農業の創設にも、水はいつでも自由に使えるようにしなければなりませんし、今の最低一五%でも農民負担させるような事業では、早晩再整備が必要になるばかりか、老齢化の深刻な日本農業の救済はできません。     〔委員長退席佐藤(信)委員長代理着席〕  私は、市街化区域内あるいは都市周辺農地の三十万ヘクタールぐらいは思い切った宅地造成計画が必要になると思います。同時に、現在、二百八十万ヘクタール近い水田の二百十万から二十万ヘクタールは早急に、都市計画法区画整理のように減歩をとっても、全額公費でこれに最優良の大整備を実施しないと自由貿易の阻害にもなると思います。こうなりますと、かつての、廃案になった、建設省農林省がばらばらに水源税とか流水占用料だとかというような予算獲得では、到底こういう大事業には取り組むことができないし、また今こそ三庁一体となった国土改造、大整備構想事業推進されなければならないときだと思っております。私は、こういう構想にぜひ三庁が一緒になって前進的対案を考えるべきだと思っているわけでございますが、政府見解を三大臣からお伺いしたいと思います。
  8. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生にお答えいたします。  国土の均衡ある発展を図るためには、農は国の基本であることを踏まえつつ、多極分散型の国土を形成し、地域振興を図ることは重要な国土政策課題となっている、このためには、先生指摘のように国土基盤整備が非常に大切と考えております。農山漁村においてもその多面的役割発揮や、都市との広域的交流促進に配慮しつつ、関係省庁との緊密な連絡のもとに、四全総を踏まえ、生産性向上のための農業生産基盤等国土基盤整備推進に努めてまいりたいと思います。  いずれにいたしましても、国土において持つ農林漁業重要性に十分配慮して対処してまいりたい、このように考えております。
  9. 綿貫民輔

    綿貫国務大臣 御指摘のように、水源保全あるいは開発、また災害の防止、また流水の利用、多目的ないろいろな問題がありますが、一体となってやっていくべきものだと思っております。
  10. 山本富雄

    山本国務大臣 お答えいたします。  今建設大臣からも、あるいは元農林水産大臣でございました国土庁長官からも御答弁のあったとおりでございまして、この四全総の目標である一極集中是正あるいは国土の均衡ある発展、このためには農山漁村活性化地方社会資本整備が最重要の課題だ、こういうふうに農林水産大臣としては心得ております。  さらに、今後とも農山村の活性化のため、あるいは地域社会の維持、国土保全、緑や潤いの提供など、農山漁村の果たす多面的な役割を踏まえまして、建設省あるいは国土庁関係省庁十分連絡の上、農林水産業基盤整備などに向かいまして着実に前進をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  11. 菅原喜重郎

    菅原委員 御承知のように、日本行政は各省庁が群雄割拠的なあり方を示していることも事実でございます。しかし、今や各省庁がやはり国土の大改造保全のために一体となった政策をどうか今後つくっていっていただきたい。  さらに、農林大臣に関連して質問するわけでございますが、今国営かん排事業の一五%の農民負担事業費最低六、七十万以上の長期負債になるわけでございます。老齢化を迎えてしまっている現農家にとりましては、既に五十歳以上が六〇%の比率のこういう農家にとりましては、死後に子供に借金を残したくないという意識が、かん排事業促進を願いながらもこれになかなか同調し切れていないという現状も多発しているわけでございますので、何とか建設省都市計画法に基づくような、減歩をとっても全額公費でこれを負担する、三庁が力を合わせ得ないならば、農林省だけでもこういう建設省に倣った制度事業に切りかえていくというお考えがないのかどうか、農林大臣からお聞きいたしたいと思います。
  12. 片桐久雄

    片桐政府委員 先生指摘かん排事業を初めといたしまして農業基盤整備事業につきましては、その公共性の程度に応じまして適切な国庫負担、補助を行っているわけでございます。ただ、この農業基盤整備事業によります利益が個別の農家にも帰するというものでありますので、受益農家にも応分の負担をしていただくということが基本になっているわけでございます。  ただ、最近の農業を取り巻く厳しい情勢にかんがみまして、農家負担の軽減を図るという観点から、できるだけ高率の国庫負担を行うような新しい国営事業を創設するとか、そういうようなことでいろいろ措置を講じているわけでございますけれども、さらに平成二年度予算におきましても、農家負担償還円滑化を図るために、土地改良負担金総合償還対策事業を新たに実施することといたしております。  それからまた、先生指摘の、減歩による事業費を調達してはどうか、こういう御提案でございますけれども、私ども農業基盤整備におきましては、公共用地、道路とか水路に使う土地につきましては共同減歩でやっておりますけれども事業費を賄うための保留地減歩というような手法は、農業基盤の場合には農地をできるだけ保全するという観点からとっておらないわけでございます。
  13. 菅原喜重郎

    菅原委員 今の説明では、個々の個別の農家利益にもなる関係から公共性との整合性負担は取らざるを得ないような回答でございましたが、実は本来、土地整備は、これは国家の責任でなすべきであると私は考えております。しかし、そのかわり公共性負担の問題につきましては、やはり土地減歩でとる、これは建設省もやっておるわけでございますので、農林省ができないわけはない、こう思いますので、ぜひこのことを前向きに検討していただきたいと思います。  次に、林業活性化山村振興についてお伺いいたします。  林業白書並びに新行革審答申は、緑と水に恵まれた国土保全形成に対する森林公益的機能発揮と、林業生産性向上による林産物の安定供給を求めています。そのための山村振興を図るとともに、国有林民有林一体となった施業体系の確立が必要であることを明らかにしております。  しかしながら、木材価格の長年にわたる低迷や、七〇%を超える輸入材及び農山村の過疎化林業労働力高齢化など、林業を取り巻く厳しい情勢の中で、国、民間を問わず、林業経営の不振が続いております。その打開を図るため、国政における思い切った対策が求められていると考えます。  まず、農林水産大臣から、このことについての見解をお伺いいたします。
  14. 山本富雄

    山本国務大臣 お答えいたします。  先般行われました森林に対する国民世論調査、この数字委員も御承知だと思いますけれども、とにかく九割の国民が森や林に関心を持っておる、こういう数字が出ているわけでございます。  そういった国民森林に対する世論が非常に高まっている中で、さて、林業の実態を見ますと、御指摘のとおり木材需要というのは堅調に推移をしておりますけれども国産材供給の停滞、あるいはまた林業就業者の減少、あるいはまた一般的に高齢化などの進行がございまして、依然として日本林業は厳しい状況にあるというふうに認識をしております。  こういう中で、林業、木材産業の振興と山村地域の活性化を図るということは当省の非常に重要な仕事の一つであるというふうに考えております。そしてこのために、国産材の供給体制の整備、あるいは林業事業体の強化、林業就業者の育成確保、こういうことを総合的に進めておりますが、特に、やはり農村と同じように林業の場合にも担い手対策、これが中心にならなければならない、こういうふうに考えておりまして、今度の予算が成立をさせていただきまするならば、新しく就労の長期化、安定化、あるいは若年労働者の新規参入の促進というふうなことを行うための林業担い手育成総合対策というものを実施をいたしたいというふうに考えております。  いずれにいたしましても、林業山村の活性化に向けまして、全省一丸になりまして、林野庁を中心にしてこれを進めてまいりたいというふうに考えております。
  15. 菅原喜重郎

    菅原委員 国有林事業特別会計が財投資金から借入している累積債務額は、平成元年度末で二兆七百二十六億円に及んでおるわけです。この元本返済は、平成二年度予算案で見ますと約八百五十五億円となっていますから、単純に毎年同程度返済していっても二十四年という計算になります。ところが、元本を返済する一方で、平成二年度予算案では新たに二千六百四十億円を借入するようになっています。したがって、累積債務は本年度末では約二兆二千五百億円にも膨れ上がることになるわけですから、林野庁はまさにサラ金地獄から抜けられないという大変な事態に追い込まれているわけであります。  森林重要性は今さら申し上げるまでもなく熟知されているところで、国民の大切な財産としても今後継続して保全を図る必要があると考えるわけです。そして、このことは平和的国土防衛という意味も担うわけでありますから、発想を転換して、こういう立場からの経費として国にこれを肩がわりさせる考え方はないのか。もしないとするなら、今後この累積債務の対策をいかにするのか、お伺いしたいと思います。
  16. 甕滋

    ○甕政府委員 ただいま御指摘ございましたように、国有林事業の経営の状況が大変厳しい段階を迎えております。現在、昭和六十二年度に改定強化いたしました改善計画に従いまして、自主的な改善努力を基本に、所要の財政措置も講じながら鋭意改善努力を続けておるところでございますが、ただいまもお話ございましたように、平成元年末に二兆円を超える債務残高という状況でございます。  また今後につきましても、現在の自然保護の要請に対応しまして、伐採量等には制約がさらに加わるであろうということもございますし、なお要員調整の過程にもあるということ等からいたしますと、さらに厳しい状況も見通されるわけでございまして、今後ますます重要性指摘されております国有林事業の使命を十全に果たしていく上で何らかの対策が必要であろうというふうに思っておるわけでございます。  また、国有林事業がその使命を十分果たしていくためには、基本的には早急に健全な経営を確立するということが求められておりますので、現在、累積債務対策も含めまして総括的な対応策を林政審議会の場で検討を始めておるところでございまして、その検討結果にのっとりまして適切な対応を図ってまいりたいと考えております。
  17. 菅原喜重郎

    菅原委員 審議会で累積債務も含めて再建を考えているという答弁でございましたが、このような、先ほど申し上げましたようなサラ金地獄のような債務を抱えては、到底この再建は林野庁単独では解決が及びつかないものだと思っております。しかし、森林事業重要性から考えまして、これはやはり国家規模での考え方で何とかこれへの対応をなさない限り、ますます現在の採算性を要求される中にありましては、ブナ林とかその他の乱伐が続いていくのではないかということも危惧されますので、早急にこのことはぜひ国家的見地からの検討をなしていただくように私から要請するわけでございます。  さらに質問をいたしますが、戦後の拡大造林では植栽樹種が杉、ヒノキ、カラマツに代表されるわけであります。最近林野庁では複層林施業が取り入れられたことは大変結構なことだと思います。なぜなら、今起きております地すべりによる杉山崩壊の防止対策の一つにもなってくると私は思うからであります。私は以前にも申し上げておりますが、本来、戦前までの私たちの杉の植林は、一反歩、すなわち十アール当たり百本で、それも当日掘り起こした苗を当日中に植栽した健全活着の植林施業でありました。今の、十アール当たり三百本植え、それも掘り起こしてから二、三日さらさなければ、運搬のために、どうしても植林できない。そしてその植林も、裸苗の密植では山も林相もこれから守られないと思います。かえってこのような杉山崩壊の現象を引き起こすものだと考えます。  そこで一つの提案ですが、最終的な省力化、経費節減はもとより、国土保全、造林効果の上からもポット植林をぜひ導入されてはいかがかと考えますが、所見をお伺いいたしたいと思います。
  18. 甕滋

    ○甕政府委員 ただいまお話しのポット造林の点でございますけれども、御指摘のように、ポットに苗をセットいたしまして、これを山で植えていくといった植林の技術上の利点はあるわけでございます。植えつけの適期もそれで拡大できる、あるいは植えつけ後の活着、成長がよい、こういう点はその利点が指摘をされておるわけでございます。ただ、使っておられる状況の中で、難点といたしましては、ポット代でございますとか運搬費等の経費がどうしても高くつく。それからまた、最近全体として新植面積が減少しているということもございまして、民有林におけるポット造林の実施面積は毎年二百ヘクタール程度で横ばい状況になっておるわけでございます。私ども、このポット造林につきましては、各都道府県の種苗組合等にその技術の開発につきましての助成をいたしまして、育苗技術指針の作成といったこともいたしておるわけでございますけれども、現状はそういう状況にございます。  しかしながら、今後とも活力ある健全な森林の育成といった目的のために、ポット造林も含めまして現地の実態、自然状況等に応じた造林事業を進めてまいるように心がけたいと思います。
  19. 菅原喜重郎

    菅原委員 ただいまは、技術上の利点を認めながらもポット代、経費の増高あるいは運搬の困難性を指摘いたしまして、なかなか当局としての普及に踏み切れないような答弁でございましたが、実は現在の裸苗のままの植林では、かえって山を荒らすものだと私は考えております。なぜなら、重大な欠陥は、植林した苗には直立根が出てこないわけでございます。しかし私は、このポット植林の技術を導入いたしますならば、自然実生の状態での直立根を必ず出すことができると確信しているわけでございます。さらに、運搬の困難性と言いましたが、このポットを使用いたしますと、機械植えの開発ももうできているわけでございますので、どうか前向きにこの点についての検討を当局がなしていただくようにお願いいたします。民間に任せていてはこういうよい技術導入が出てこないのも事実でございますので、この点を強く要請しておきます。  次に厚生大臣に、遺骨収集につきましてお伺いいたします。  大戦後既に四十五年が過ぎ去った今日、我が国は敗戦の痛手から立ち直り、今や世界の経済大国と評されるまでに至りました。その陰には、遠い外地で国のため戦い、まだ帰らない戦没者が数多く存在しているわけでもあります。まことに悔いの残るところでございます。各地域での戦没者は総数二百十二万人を数えるわけですが、そのうち東、西ニューギニアでは十二万七千六百人が亡くなっております。  パプアニューギニア駐日大使は、こう語っております。日本発展途上国に対する経済及び技術援助をする際、なぜ我が国のような戦場になった国々に特恵的待遇を与えないのか。我が国に放置されている旧日本軍軍人の道体収集は、戦争の犠牲になった後片づけ、また日本、昭和の後片づけであるとも思う。多くの心ある日本国民の皆さんに、私たちパプアニューギニアが過去日本国の軍隊に何をされ、また私たちパプアニューギニアの国民が何をしてさしあげたかということを思い起こしていただきたいと言っております。  私も現地に行ってまいりましてこの目で見てきましたが、一刻も早く遺体の収集が行われてしかるべきだと思うのであります。つきましては、外交上の問題が介在しているとはいえ、大臣、東北編成の部隊も多いというわけでありませんが、西ニューギニア地方の遺骨収集が大臣の手によってその突破口が開きまするよう強くお願いするものでございます。この点に関しまして大臣の所信をお伺いいたします。
  20. 津島雄二

    ○津島国務大臣 さきの大戦におきましては、実に多くの方が外地で散華をされました。これらの戦没者の遺骨の収集という仕事は、委員指摘のとおり、国としても取り組むべき大変重要な仕事であると認識をいたしております。昭和二十七年度以降、相手国政府の理解、また国民の理解と協力を得ながら積極的に進めてまいったところでございます。  委員が言及されましたパプアニューギニア、東ニューギニア地域においては、お話のとおり、努力が積み重ねられ、相当の成果が上がっておると承っております。問題は、西部ニューギニアにおける遺骨収集でございますけれども、昭和四十九年度まで四回実施をいたしたのでありますが、その後は、再三にわたる遺骨収集の実施を申し入れておりますが、御案内のとおり、ここはインドネシアの領域になっておりますが、インドネシア政府日本が同国内で行う遺骨収集は既に終了したという考え方のもとで、許可していただけない状態が続いております。しかし、御遺族の御心情を踏まえ、またこの仕事の重要性を考えますときに、今後とも外務省と協議をしながら遣骨収集の再開に全力を挙げて努力をしなければならないと決意をしておるところでございます。
  21. 菅原喜重郎

    菅原委員 ぜひ大臣にもニューギニアの現地を視察されまするよう、また西部ニューギニアの問題につきましても、外務省と積極的に対応してその突破口を開いていただきまするように強く要望しておきます。  次に、運輸大臣に東北新幹線盛岡以北の早期本格着工についてお伺いいたします。  東北新幹線の建設完成は、国土縦貫高速幹線鉄道といたしまして四全総の中の主眼でもあります。多極分散型形成と国土の均衡ある発展を図る上で極めて重要かつ緊急を要する国家課題であると認識しておりますが、東北地方にとりまして、盛岡以北が整備されて初めて全線一体としての機能が発揮されるものであります。また同時に、このことは、当地域の生産基盤の確立と今後の経済社会の新たな局面に対応した開発を進めるためにも必須条件でございます。整備新幹線への政府・与党申し合わせにより、幸い今年度難工事部門に着手されましたことは、盛岡以北の建設に向けて大きく前進したものと受けとめておりますが、おおよそその見通し、完成の目途について大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  22. 大塚秀夫

    ○大塚(秀)政府委員 東北新幹線につきましては、今年度から難工事調査、これは岩手トンネルでございますが、そのほかに三戸トンネルについてトンネル技術調査を行うことになっておりますが、この本格着工につきましては、昨年一月に定まりました基本スキームに従って今後検討してまいりたいと考えております。
  23. 菅原喜重郎

    菅原委員 今日の段階ではその完成目途も予想され得ないわけでございますか、再度お伺いいたします。
  24. 大塚秀夫

    ○大塚(秀)政府委員 整備新幹線につきましては、昨年高崎—軽井沢間が本格着工をいたしましたが、その他の区間につきましては、今申し上げました基本スキームに従って着実に整備してまいりたいと考えております。その時期等については今後の検討課題であると考えております。
  25. 菅原喜重郎

    菅原委員 次に、外務大臣に北方領土についてお伺いいたします。  我が国固有の領土である北方領土四島が、戦後四十五年を経た今日なおソ連によって不法に占拠されていることはまことに遺憾であります。政府としてもこれまで日ソ外相間の定期協議等を通じて交渉されていることは承知いたしておりますが、北方領土にかつて居住していた多くの方々は、領土の早期返還を切望されているのであります。先般、道北からのサケ・マス日ソ漁業交渉促進の陳情団の中にもそれらの方が参加しており、漁場の問題とともに強く要請して帰りました。このことは、日本民族、全国民の悲願でもあります。  来年は、ソ連首脳として初めてゴルバチョフ大統領の訪日が表明されるなど、日ソ関係は領土返還も含め新しい局面を迎えるのかと思っていたやさき、北方領土について自民党の元副総理による二島返還でもよしとする発言が、昨二十四日、各紙の朝刊で大々的に報道されたわけであります。四島返還は、昨年四月衆参両院で全会一致の決議をしていることからもわかるように、重要な責任政治上の合意事項であります。かかるとき、かかる発言は全く残念でありますが、しかし当事国のある外交ともなれば、政経不可分の原則は堅持しながらも、シベリア開発も含め、日ソ関係全体は拡大均衡で発展させるとの戦略も考え得るわけであります。四島一括返還の原則の上に、期間、期限の段階的返還も猶予されるのでありますから、この際、政府の方針を大臣に聞いておきたいと思います。
  26. 中山太郎

    ○中山国務大臣 北方領土に関します御質問に対しまして、政府見解を改めて申し上げさせていただきます。  四島の一括返還という政府の立場はいささかも変わっておりません。  第二に、昭和五十六年に既にソ連は二島の引き渡しを約束をいたしております。私ども政府としては、四島の返還こそが領土問題の基本である、こういうふうに考えまして、二島でとりあえずでも合意するとの選択肢はございません。  御指摘のとおり、四島一括返還こそ我が国の貫くべき道でございまして、国民世論の一致した対ソ対応がこれからも求められるところでございます。
  27. 菅原喜重郎

    菅原委員 まことに領土問題は国家千年の大計でございますので、ひとつこの領土問題につきましては、どうか基本方針を守り、経済交渉におきましては弾力性を持つといたしましても、一坪たりともこの国土だけは防衛する、この線をぜひ貫いていただきたいことを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  28. 中山太郎

    ○中山国務大臣 ちょっと、ただいまお答えいたしました中で、昭和五十六年と申しましたのは一九五六年の誤りでございます。訂正をさせていただきます。
  29. 佐藤信二

    佐藤(信)委員長代理 この際伊藤英成君から関連質疑の申し出があります。菅原君の持ち時間の範囲内でこれを許します。伊藤英成君。
  30. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 まず外務大臣にお伺いしますが、今話題となりました北方領土の問題ですね。あの問題で一昨日自民党の実力者が二島返還論について言及をされました。実は昨日、私はある人からこのように言われました。自分は昨夜一睡もできませんでした。極めて残念な、今まで何のために四島一括返還ということでやってきたのだろうかということで一睡もできませんでしたというふうに言ってまいりました。私も、もっともだと、このように思いました。もちろんきのうの本委員会でも議論になったようでありますけれども、改めて私はお伺いしたいと思うのですが、まず、あの二島返還論と言われることの二島はどこを指すと思われるでしょうか。
  31. 中山太郎

    ○中山国務大臣 具体的に御本人からお話を承っておりませんので、今先生お話しの二島という島の固有名詞については、ここで言及を差し控えさせていただきたいと思っております。
  32. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 それでは、一般的に二島と言われるのはどこだと大臣は考えておられますか。
  33. 中山太郎

    ○中山国務大臣 さきに、一九五六年にソ連から二島を返すというふうな話のあったことが想起されます。
  34. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 ではその二島は、いわゆる私たちが四島と言う全体の面積の何%を占めますか。
  35. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 今御指摘の二島が歯舞群島、色丹島であれば、これは全体の四島の中の七%ぐらいというふうに承知しております。
  36. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 私は、その七%を占める歯舞、色丹、その中はどういうことになっているのか、あるいは国後、択捉、そこにどういう施設があるかとかいうようなことは今は言及いたしませんけれども、私たちが例えば四島のうちで二島だと言ったときに、五〇%でも六〇%でもない、もちろんこれはただ面積だけで物を考えるわけではありませんけれども、わずかと言ったら問題かもしれませんが、私たちが二島返還論云々ということを耳にしたり口にするときの二島は恐らくこの七%の二島を意味していると私は思うのです。だから、このことはまず十分に私たちは理解しあるいは認識しなければいかぬと思うのですね。そして、そういう状況の中で今日までこの北方四島の問題についてみんなが努力をしてきた。そして今、世界の情勢が大きく変化をしている、あるいはソ連の経済状況等もいろいろ困難な状況になりつつあったりしていることも、またみんなも理解をしております。そしてまた一方では、日本の経済状態あるいは技術水準等についても一つの日本の有力な点として理解しているということもあると思うのです。  そういう状況の中で外交ということを考えたときに、今有力者が二島返還論の妥当性といいましょうか、そういうことについて言われることは、外交上いろいろな問題を持っている、私はこう思うのですが、外務大臣としてはどのように考えられますか。
  37. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今日ただいまの時点でいろいろと日ソ間の交渉がこれから展開していくことは明らかでありますし、さらに明年はゴルバチョフ大統領の訪日が予定をされております。既に平和条約作業グループでもいろいろと議論が進んでいるさなかに、政府並びに国会の御決議の意思あるいは国民の願望と違うような御意見が個人の立場といえ出されることは、外交をやっていく立場にとっては極めて行いにくい状態が起こるという不安を持っております。
  38. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 本日の新聞にもある大学の教授がこういうふうに書いております。ちょっと長くなりますが、「ソ連の指導部のなかでは、北方領土をめぐって旧思考派と一括返還派がたたかっている。今、日本から変なシグナルを送ったら、味方のうしろから鉄砲を撃つようなものだ。ペレストロイカの危機を乗り越えるには日本の資金と技術が必要なのだ。その見返りに四島を返還してもいい、とゴルバチョフがせっかくその気になりかけているのに、日本からぶち壊すのはやめてくれ、と私のソ連の知人は悲鳴をあげている。決して政治家個人の野心で北方領土問題を扱ってはならない」このように、ある大学教授の意見として新聞に報道されております。これ以上申し上げることはないと思いますが、ぜひまた——御意見ありますか。
  39. 中山太郎

    ○中山国務大臣 国会の御決議も踏まえ、また全国民の熱い願望のもとに、この四島一括返還の交渉を政府は引き続き続けてまいりたい、このように考えております。
  40. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 次に、いわゆる外国人労働者の問題についてお伺いをいたします。  私は、今、日本の労働市場を見てみますと、極めて重大な問題はこの不法な外国人労働者が急増をしているということだ、このように思います。新聞とかテレビあるいは雑誌等についても、少し前はそれぞれの新聞等がいろいろ大キャンペーンを張ったというぐらいな感じで大きく報道をされておりました。最近はちょっとそういう報道の仕方等を見ますと静かかなという気はいたしますけれども、しかし事の重要性ということを考えたときには、これは大変なことだろう、私はこのように思っております。  そういう意味でこの問題を質問したいわけでありますが、まず法務省にお伺いします。今不法就労者というのはどのくらいいるのか、これが最近どのようにふえているのか、ここ五、六年とってみてどのようにふえているのか、まず伺います。
  41. 股野景親

    股野政府委員 まず不法就労につきまして、当局で現実に摘発を行いました不法就労事犯の人員の数について申し上げますと、平成元年じゅうに不法就労で摘発をされた人員の数は一万六千六百八人ということになっておりまして、これは五年前の年に比べまして約三・五倍、こういう伸びになっております。この摘発人員の数を見ても大きな伸びがあるわけでございます。  別途、これとまた、現在不法就労を行っているのではないかと思われる外国人の数について当局としても調査をしておりますが、これは出入国管理統計からの推計によるしかありませんが、昨年の夏半ばにおいては、十万を超えるものがあるのではないかという推計をいたしております。
  42. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今のお話、十万人を超えるのではないか、こう言われております。私は、それぞれの国籍、出身の国がこれまたどんどんふえているのではないかと思うのですが、その状況はどうですか。
  43. 股野景親

    股野政府委員 ただいま御説明を申し上げました昨年じゅうにおける不法就労の摘発事犯について、これを国別に見てみますと、最も多かったのがフィリピンからであって三千七百四十人、全体の約二二・五%という割合になっております。以下多い順に申し上げますと、パキスタン、韓国、バングラデシュ、マレーシア、こういうような国からの外国人の不法就労者が多い、こういう状況がございます。
  44. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今の説明ですと、多くなっているとは言いながら国の数を列挙したのは少なかったのですが、実際には国の数から数えればどんどん多くなっている。今ではアフリカの方からも来ているというのが実態だ、このように思います。そしてまた同時に、国内の状況を見ても、その地域が、いわゆる不法就労者がいて働いている地域というのがこれまたどんどん全国に波及をしている、このように思うのですが、この辺の認識はいかがですか。
  45. 股野景親

    股野政府委員 ただいま委員指摘のとおり、日本の国内において不法就労が行われている地域ということについても変化が見られておりまして、従前は首都圏に集中しておりましたが、近年にはブローカー等の介在によりまして、大都市圏を拠点としながら地方に拡散するという傾向がございます。  都道府県別に昨年の不法就労摘発の実態を見てみますと、最も多かったのは東京都でございますが、そのほかに大阪府あるいは東京近県の埼玉、千葉、神奈川、さらに茨城、群馬、長野、こういう地域あるいは愛知県、静岡県、こういうような地域に拡散をしているという状況が見られます。
  46. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今のお話のように、あるいは今のお話以上に、実際には各地方にまで拡散をしているということだと私は思うのですね。したがって、今私は、この外国人労働者の問題というのは、言いかえれば、いわゆる法治国家日本が不法就労者が本格的になってしまった、あるいは日本の国に定着をしてしまったというくらいの状況だ、こういうふうに思うのです。だからこそ何とかしなきゃならぬ。こんな状態を本当に日本がそのまま許していていいんだろうか、国家として、そういうふうに思いますよ。  多分、そういうような意味で、先般も入管法の改正をしたりしたと思うのです。じゃ、この改正入管法なるものは、そういう意味でどのくらいの効果があるのかということだ、こういうふうに思うのでありますけれども、今回この改正入管法で、その不法就労に当たる外国人を雇用した者等あるいは不法就労を助長する者に対する罰則規定を設けて、不法就労の阻止を図るということになっているわけでありますが、これは六月一日から実行するものでありますけれども、具体的に取り締まりがどういうふうにできると考えているのでしょうか。
  47. 股野景親

    股野政府委員 委員指摘のとおり、この不法就労の増大ということについては、法務当局といたしまして重大な関心を持ってその対策に努力をいたしておるところでございまして、入管法の改正を行いまして、ことしの六月一日から改正入管法の実施を見ることになっております。  その改正入管法の中で不法就労対策ということについての法的な整備を行っておるわけでございますが、この中でまず就労のできる人とできない人の区分ということについてより明確な規定を設け、さらにただいま委員指摘のとおり、不法就労を助長するような人々、すなわち雇用、王あるいはブローカー、あっせん者、こういった者に対する直接の処罰規定を設けております。こういう法整備の内容を十分に生かしまして、また関係行政機関と密接な提携を行って、それでこの不法就労の防止ということについて有効に対処したいと考えているところでございます。
  48. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今ブローカーなんかの話が出ましたけれども、労働者派遣法ですね。あの中には、無許可営業やあるいは管理台帳が不備なもの等について、当局が立入検査をすることができるようになっておりますが、今までどのくらいそういうのはやっておりますか。
  49. 清水傳雄

    ○清水(傳)政府委員 派遣法に関する事業所の指導監督は、都道府県なり安定所で計画的に実施をいたしております。全体で定期的なものを含めますと二千件を超えるくらいの状況になっておりますが、そのうち、派遣法違反というふうな形で指導監督をいたしました件数は、派遣元及び派遣先を合わせますと、年間約四百件程度という状況でございます。
  50. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今違法な派遣業を、派遣業といいますか、そういう仕事をやっている人たちというのはどのくらいいると思われますか。
  51. 清水傳雄

    ○清水(傳)政府委員 違法な派遣事業者、これは多くは無許可なり届け出なしでやっているわけでございますし、それからいわゆる暴力団事案とかそういうようなものもございますし、外国人労働問題もそういう形のものがあるわけでございますが、そうした形態が、言うなれば派遣業法違反というふうな形で構成要件的にとらえやすいという事案が出てくるわけでございまして、いわゆる違法な形で実施をしている事業所がどれくらいあるかということを推計すること自体がちょっと困難かと思います。
  52. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 要するに、わからないくらいいっぱいいる。今このたぐいの状況は実はよくわからないということだと思うのですね。だからこそこんなにも、十万人を超す不法就労者がいるという状況がまたできてくるということだと私は思うのです。  だから、もう一度法務省にお伺いしますけれども、さっきこういうことでやろうと思っていますという話をされましたけれども、じゃこれから取り締まり等もやるんでしょう。そして、その結果、いわゆる不法就労者と言われる人たちが激減するないしはほとんどいなくなるというような状況ができると考えておりますか。
  53. 股野景親

    股野政府委員 まず、法的な整備ということを行いまして、これを六月一日の改正入管法実施によっていよいよ実際のその効果を発揮すべき段階を迎えるわけでございます。法改正がその基本にございまして、これを今度その規定を効果的にまた活用するということになりますが、これについては法の規定の改正が基礎にあって、関係省庁等の協力を得て、これで十分な効果が上がるように努力をしてまいるということでございますが、現段階において新しい制度というもの、そしてまたそれに基づく関係省庁間の協力ということは、有効な対処ができるようになる、我々がそういうことができるようになるものと考えております。
  54. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 労働大臣に伺います。  私は、今の答弁のように、努力はすると思うのですよ。努力はしなければならぬ。しかし、日本の労働市場を見ておられる労働大臣の立場からして、そういうことで非常に効果が上がって、結果として不法就労者なる人たちが激減するないしはほとんどいなくなるというような状況になりそうだと労働大臣は考えておられますか。
  55. 塚原俊平

    ○塚原国務大臣 労働省の方でともかくやらなくちゃいけないことは、雇用主、事業主に、いわゆるこれはいけないんです、不法なんですよということをしっかり認識してもらわなくちゃいけないわけで、意外にみんな正々堂々と、私どもに陳情に来るときも、割に、うちでは何人使っているんだけれどもどうだこうだなんというのがあることがございますから、余り違法性に気がついてないというところもあると思うのです。ですから、ともかく入管法が変わります、これはいい機会でございます。今までもいろいろな機会を通じて事業主に指導はしていたんですけれども、さらに指導の徹底を図っていくことによって、ともかく認識をしっかり持っていただく。ですから、もしやる場合は、見つかったらどうしようというような、どきどきしながらやるような感じじゃないと、正々堂々とというのは、これはなかなかなくならないと思うんですが、事業主の方にしっかりと認識を持っていただ〈ということは、そういうことによってかなりの効果が上がるんじゃないかなと思うので、そういう努力をしていきたいと思います。
  56. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 それはしっかりやっていただきたいと思っております。ただし、これは私が考えれば、実際にはなかなか大変だろう、このように思います。そのくらいに、現在はある意味では定着してしまっているということだと私は思うんですね。そういう意味で、実はこれはいろいろな問題があるんですよ。いわゆる単純労働者と言われる人たちを日本に入れることを、そもそもこれは否定をした内容になっていますね、改正入管法なるものも。それもそういう状況になっております。それがいいかどうかという話はもう一方の方でありますけれども、いずれにしても、今のような状況は、法を守るということそれ自身さえ私は非常に難しい状況になっていると思いますし、これからもそんなだろうとこの問題については考えられます。  そして、もう一つの別の観点から見たときに、これは外務大臣にお伺いしたいんですが、私は、例えば今国会の初めに総理が施政方針演説をされました。あのときの最後の方の結びは何と書いてあるかといいますと、こう書いてあります。これをちょっと読ませていただきますと、「我が国は、国際社会の恩恵を受けて蓄積してきた経済力、技術力、経験をもとに、地球社会のために積極的に貢献し得るときを迎えたのであります。我々の周りには、現在も、貧困や病気に苦しむ人々、開発途上にあって援助に頼らざるを得ない国々、自由を求めて歩み始めた国々、そして環境破壊の脅威にさらされている地球があります。」云々と書いてありまして、そして「全世界の人々の人間的でより豊かな生活を可能とし、美しく快適な地球を創出していくという高い理想の実現に向けて汗を流していこうではありませんか。」と、このように総理は力強く、あのときは演説をされました。もちろんこういう方針で外務大臣も演説をされましたし、今、日本の置かれている状況は、いかにして世界の中で日本はどうあって生きていくか、どうあって責任を果たしていくか、どのようにして日本が、本当に近隣の国々を中心にして世界から、ある意味では信頼をされ、尊敬をされる国としてやっていこうかということが、今まさに期待されている、それこそが求められていることだと私は思うのですね。  そういうふうに考えたときに、日本がこのように経済的に繁栄をしている、労働需給関係もだからこそ極めて逼迫しているという国内の状況がある。そして、すぐ日本の周りには、極めて貧しいといいましょうか、経済的に困難な国々があり、そして働くところもない、失業者がいっぱいいる、あるいは累積債務等に悩まされている国々が周りにあるときに、これはいろんなやり方はあるんですよ。やり方はありますけれども、今のような状況で、ただただだめですよ、来た者は不法ですよということが本当に許されるのかな。だから、昨年も竹下総理がアジアに行かれたとき、たしかフィリピンの大統領には言われたと思いますが、新聞にはそう報道されておりましたけれども、今やこの問題は人権問題じゃありませんか、そういう面からも日本は対処をしてほしいということを要請されたということが新聞に報道されておりました。私はもっともだという気がしますね。そういう観点から見たときに、外務大臣としてはこの問題をどのように考えられますか。
  57. 中山太郎

    ○中山国務大臣 委員指摘の問題は、国際国家を目指す日本にとりましては極めて重要な問題であると認識をいたしております。少なくても国内に十万人近い外国人の不法就労が行われている。しかも、それが危険であるとかあるいは汚いとかあるいはきついというような労働条件のところに集まる方々が多い。片や日本人の若い職を求める人たちはそういうところを避けていくという、この現実的な姿を見ながら、私どもは、不法就労ということを避けるために、正規のいわゆる入国手続をきちっとつくって、そして相手国政府と協定をつくり、そして決められた期間日本において求めるところの場所で就労ができ、しかもその方々が日本の社会保険の中のシステムにどのような形で参加をできるか、あるいは改めた形での別の社会保険システムをつくってその方々の日本における社会人としての生活を可能ならしめるかということにつきましては、日本政府としては急いでこの問題の検討に入らなければならない、このように考えまして、さきの内閣においては外国人の就労問題に関しての閣僚懇談会が設置されておりますが、この問題の処理にはなおさら政府としては一層の努力を続けなければならないと考えております。
  58. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今のお話のように閣僚懇談会もつくられて議論をされているようでありますし、ぜひこれは実際の行動として実を結ぶようにしていただきたいと私は思うんです。  特に私はこの問題というのは、さっき周辺諸国の話をちょっと言いましたけれども、これは何も私は日本にどんどん入れればいいというふうに言っているつもりじゃありませんし、それぞれの国の発展のために日本が尽くさなきゃならぬ、あるいは協力できる部分は協力しなきゃならぬ、そういうのが第一歩だと思うんですよね。それぞれの国の中に雇用をつくり出す、あるいは経済発展をさせるために日本がやらなきゃならぬということもありますし、そして、しかしもう一方の方では、日本の方としても今大臣が言われたようにこれから対処していかなきゃならぬ、こういうふうに思います。  そのときに特にまず考えられる話は、短期的にどういうふうなやり方をしていくんだろう。そしてそのときには、ある限られた数だけというふうに私はいずれにしてもなる、こう思うんですが、そのときに日本にずっと永住をしてもらわないようにするためにどういうシステムをつくるんだとかいうようなことも考えるかもしれません。そのときに相手側の国に、日本に来てもらう前に日本語等いろんな勉強、研修をさせる。だから、研修をしてから日本に出す。そのためには、例えばODAの使い方ということもあるかもしれません。そういう意味での短期的な対処の仕方をどうするか。そしてさらには、ずっと長期の問題を考えれば、日本にいわゆる外国人単純労働者を要するにこれからずっと認めていかないということができるかどうか、極めて長期的な問題、私はこの二つに分かれると思うのですね。そういう両方の対処の仕方をしなければならぬ、こう思いますが、いずれにしても今のような状況だけですと、これはもう極めて日本としては本当に、国際的に云々というようなことを総理が言い、あるいは外務大臣が話したとしても、あるいは言葉でしゃべったとしても、口だけでは言っているけれども実行しないじゃないかということになってしまう、こう思うんですね。そういう意味で、今後のこの問題についての決意をもう一度労働大臣と外務大臣にお伺いをしたいと思います。
  59. 塚原俊平

    ○塚原国務大臣 ともかく、日本の国の中だけでも結構、地域差とか高齢者を雇わなくちゃいけない、女性がどんどん職場に進出するというようなこともあって、雇用が果たしてこれからどうなるか、あるいは機械化がどうなっていくか、なかなか不透明な部分もございまして、現実に昭和四十年代の前半にも外国人労働者を入れろという議論があったんですが、そのときは何とか入れないでいたら、五十年の初頭にはもうレイオフにまでなっちゃったというようなことがございますので、やはり、かなり先生今おっしゃっていたような中期的な判断と長期的な判断というものもしなければいけないと思うのです。万々が一、今外務大臣がおっしゃるような形に、かなり前向きの御答弁だったような気がするんですが、長期的にそういうようないろんな国とお話し合いになってくるということになると、今度は仮に不法の方がいるとすると、不法の方と正規の方でもめたりする、そんなこともありますし、当面としてはやはり慎重に考えるのが一つと、やはり不法就労については、まずしっかりと、新しい改正された入管法を機会にしてできるだけこれを少なくするように努力をしていく、当面はそういうようなことをしていかなければいけないのじゃないかなと思っております。
  60. 中山太郎

    ○中山国務大臣 委員指摘のように、短期的な問題と長期的な問題を当然考えておかなければならない。それは、今労働大臣がお話しになりましたが、将来の日本の労働市場というものが外国人によってどのような形で構成されていくのか、これも一つの大きな問題点でございましょう。また、ここへ働きに来られる方々の中には若い方々が多い。そういう方々が、日本の婦人との間にあるいは内縁関係ができるとか子供ができるといったような場合の国籍の問題、また入国期限が切れた場合にそのような方が帰国をせざるを得ないというようなときの取り扱いの問題、こういうものは関係各省の中で十分協議をいたしまして、制度をきちっと完備をすることが前提条件ではないか。そういう意味で、私どもはそのような目的が実現できるように関係省庁で協議をしなければならないという考えでございます。
  61. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 時間が参りました。終わります。
  62. 佐藤信二

    佐藤(信)委員長代理 これにて菅原君、伊藤君の質疑は終了いたしました。  次に、戸田菊雄君。
  63. 戸田菊雄

    戸田委員 大臣の運用で参議院にお貸ししましたので、順序を変更して交通問題から入ります。  総務庁長官、交通対策部長、現下の交通事情は全くこんぱいの状況だと思うのですね。私は総合交通政策を確立することは大事だと思うのですが、これは後で触れることにしまして、当面交通対策として、一つはやはり渋滞の解消、それから過疎地における公共の足を守る、そして大量にふえている交通事故をやはり撲滅することだと思うのですね。だから、そういう点について長官はどのようにお考えになっているか。
  64. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 ただいま戸田委員指摘のように、私は交通対策部長といたしまして、最近の大都市、そしてまた今言われました過疎地域において交通を守ること、さらにまた交通事故、この三つの観点対策は最も重要な対策である、私どもはその観点を集中をして対策に取り組まなければならないと思っているところでございます。特に最近、御承知のように自動車の保有台数、免許者の数がふえたことが新たな問題を生んでいるように思います。  結局は、私どもは、昭和六十三年七月二十八日に、まず第一に御指摘の大都市における道路交通円滑化対策について、基本的な総合対策方針を決定していることは御案内のとおりだと思います。これに基づきまして、現在のところ警察庁あるいは運輸省、さらにまた建設省等が取り締まりあるいは各種の施策の実現等について努力をしているところでございます。その努力がまた新しい問題の発見につながりまして、例えば御承知のように駐車場の不足あるいは車庫の保有の問題、これらの問題がございますことを十分に認識をして、またこれらに対しての根本的な対策を講じていこう、こんなふうにしていることは御案内のとおりでございます。
  65. 戸田菊雄

    戸田委員 警察庁おいでになっていると思うのですが、渋滞の根源は何でしょう。また、その解決策はどのように考えていますか。
  66. 関根謙一

    ○関根政府委員 お答えを申し上げます。  交通渋滞の原因といたしましては、道路工事でありますとか交通事故でありますとかいろいろあろうかと思いますが、路上駐車の問題が大きな原因の一つであると考えております。そこで警察庁といたしましては、違法駐車車両の取り締まりとあわせまして、パーキングメーター等の駐車施設の拡充、それから駐車誘導システムの整備等の施策を講じているところでございます。今後は、これらの施策とあわせまして、さらに駐車秩序の確立を図るべく、立法措置を含め総合的に対策を講ずるよう関係省庁と協力して取り組むこととしております。
  67. 戸田菊雄

    戸田委員 最近、建設省を中心にしまして駐車場六万カ所等々計画があるようでありますけれども、路面駐車場設定の許認可、これは建設省が持っているのですね。ですから、私はその辺が一つネックになっているのじゃないかと思うのですね。こういった許認可というのは、一番知っている県、市町村、こういうところに移管をしたらどうかという気がするのですね。四全総の多極分散型、これで地方都市圏は一時間交通体制をつくる、こういうことを言っているわけですね。だから、一番知っているのは県知事であり市町村長ですから、駐車場設置についてもその許認可条項というものは建設省で持っているものを地方自治体に全部譲る。こういうことで地方分権体制をとったら、もう少し円滑にスムーズに、駐車場設置その他交通の渋滞解消、こういうものができるのじゃないかと私は思うのですが、自治大臣どうですか、見解は。移管事項について自治大臣がどうのこうのということは言えないでしょうけれども、そういう構想はどうでしょうね。
  68. 森繁一

    ○森(繁)政府委員 今お話しの、特に国道におきます路上の駐車場の問題、これは委員承知のように、現在の法制上原則として都道府県または政令指定都市ができることになっておりまして、一般の市も都道府県と協議すればできる、こういうシステムになっております。ただ、路上駐車場の設置計画は市町村がそれぞれ定めますけれども、国道の指定区間につきましては国道の管理者であります建設大臣の意見を聞く、こういうことになっております。この点は道路管理の観点からはある程度はやむを得ないものであろう、こう考えておりますが、今お話しの路上駐車場の設置権限のあり方につきましては、主務官庁が建設省でございますので、今御指摘の問題を含めまして私どもといたしましてもよく調べてみたい、かように考えております。
  69. 戸田菊雄

    戸田委員 駐車場が少ないですからほとんどが有料制、そこに入ると非常に金が高い。時間当たり三百円とか、それを五時間置くと千五百円、等々考えますと、路上駐車違反であってもその方が、罰金の方が安いというそういう考えもあるのですね。だから、面倒くさいからそのままもう違反であっても駐車しようという等々の皆さんがいる。これはにっちもさっちもいかないのですね、利用者についても。  だから、そういう意味においては、駐車場をやはり造成をしていく、そういうことが一つはやはり渋滞解消の大きな決め手になるんじゃないだろうかというふうに考えますが、その辺については、これは長官どうですか。
  70. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 建設省所管だと私は思うのでございまするけれども、駐車場についての増設の問題は、これはもう真剣に考えなければならないかと思うわけでございます。特に商店街等について前から言われているやかましい問題でございますし、荷おろしの問題にいつもこの駐車場の問題がひっかかって、違法駐車の問題となって大変苦しんでおる。取り締まりとあわせて、私は、この駐車場の増設、そして駐車場の要件等について緩和をしながら増設したいというような建設省の考え方を新聞で拝見しているところでございます。
  71. 戸田菊雄

    戸田委員 そういう上に立って、私は、やはり陸海空ともの、これは事業を守る立場でも、採算のとれるようなそういういわば総合交通政策、こういうものをやはり確定して具体的に実行していく段階ではないか。  長官がおっしゃられましたように、六十三年に国土庁提案の総合交通政策、これは閣議決定しているのですね。閣議決定しています。それを受けて運輸省は、十五年目当てに一定の総合交通政策の大綱を決めた。これを見ますとすべて開発なんですね。悪いとは言いません。例えば港湾は、何々港を五年以内にこういうふうに整備拡大をします、あるいは飛行場は、これもまた将来の海外旅行その他二千万人程度に押し上げていくためには羽田の拡張をやらなくちゃいけない、あるいは今大阪でつくっておられる新空港をつくるとかあるいはコミューター、そういうものもいろいろつくっていこうというような、いわば一つの開発が中心なんですね。ところが、今言ったような交通整備、あるいは渋滞解消、あるいは事故防止、こういうものに対しては全然触れられていないのですね。だから、こういった問題について私は徹底したメスを入れていくべきだと思うのですよ。殊にその運輸省の総合交通政策の大綱を見ますと、今後十五年間で日本のGNP約一千兆円になるというのですね。そうすると現在の約三倍、それだけ流通がずっとふえていくわけですから、そういうことになり、あるいは人間の移動も大変多くなっていく、国内的に、国際的に。そういう状況になっていくわけですから、今ですら満杯状況ですね、身動きとれないような状況なんですから、そういうものを含めて駐車場設置その他交通環境の整備、こういうものをやっていかなければ、私は、大変な効率のよい交通運用というものができないんじゃないか、こういうように考えるのでがね。  だから、ぜひひとつ、今警察庁がおっしゃられましたように、渋滞は駐車のこれが最大原因だ、こう言っているのですから、これをなくすことが当面一番大事だ。だから、駐車場というものを増設して国全体として、それは予算関係いろいろありましょうけれども、等々の問題について最大検討して実行に移すべきじゃないか、これが一つであります。  それから、事故の問題ですね。これはもう可及的速やかに、即刻これは対策を立てなくちゃいけないと思いますね。というのは、少なくとも自動車事故で被害者、この傷害者、これは七十万超えるわけでしょう、年間。死者が一万を超えるということ。こんな調子でいったら一億二千万の日本国民は十年間で、これはどうですか、かつての大束亜戦争に近づくくらい死傷者が出てしまうわけです。これはゆゆしき問題だと思うのですね。だから、この交通事故防止というものを徹底してやはりやらなくちゃいけないと思いますが、何が決め手だと思いますかね。
  72. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 先般新盛委員にもお答えしたようなことでございまするけれども、私の範囲でございますこの交通安全問題、さらに交通対策の全般に関する問題、これはもう最も最近注目すべき事態が生じたと思うのでございます。一つは、もう何といっても自動車の保有台数が最近想像もつかないほどふえたことがまた新しい総合交通対策を立てなければならない事態を生んだ最大の原因だと思っているところでございます。さらにまた、御承知のように、六十三年の先ほど申し上げました総合政策が、取り締まりを強化をし、そしていろいろな施策を進めれば進めるほど、新しい問題がまた生じてきたような気がいたします。駐車場、車庫の問題がそのような問題でございますが、そして同時にまた一万一千八十六人ですか、死者を生んだというような問題、これらの問題をひっくるめまして最近私は、交通安全対策懇談会を開きまして、そこで今委員が御要望されましたような総合的な対策の問題を御論議を願って、ひとつ新しい事態に応じますところの対策を進めてまいりたい、こんなふうに考えております。
  73. 戸田菊雄

    戸田委員 私も地元に帰りますとしょっちゅう車をいろいろ利用させていただいています。やはりこの事故の発生要因は私は一番スピードにあると思うのですね。殊に追い越し、こういったことが最大の原因じゃないか。だから、このスピードについて一定の制限を、これをやるべきじゃないか。ただ、高速道とか何かという場合は、スピードを遅くするとむしろ渋滞をする、こういうことがありますが、そういう面についての配慮は、これは法律的に、どうでしょう、規制というわけにはまいりませんかね。     〔佐藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕
  74. 関根謙一

    ○関根政府委員 お答えを申し上げます。  交通事故の最大の原因の一つとして、過度のスピード運転というものがあることは御指摘のとおりでございます。そこで、私ども警察といたしましては、そのスピードが原因となるような事故を防止するため、若年者の無謀運転を防ぐための教育でありますとか、シートベルトの着用を徹底していただくようにすること等の施策を講じているところでございます。また、あわせて必要な速度制限のための規制措置も講じているところでございます。これらはいずれも法律上の根拠に基づく措置でございまして、現在の法のシステムのもとで必要な措置を講じていると考えております。
  75. 戸田菊雄

    戸田委員 必要によってということですが、これは例えば東京都内とか大阪市内とかあるいは仙台市内とか等々の市内状況については、大体守られていると思うのですよね。比較的に事故の多いというのは、非常に長距離で、殊にこれから春眠暁を覚えずで居眠りとか何か出ます、そういう長い、いわば地方、こういったところが非常に多いんですね。だからこれは、ドライバーのマナーにもよりますけれども、等々についてやはり一定の指導といいますかそういうものが必要じゃないか、このような気がするのでありまするが、そういう点についてやはり今まで警察庁関係、公安の皆さんが大変御苦労なさっておりますけれども、もう一回ひとつ踏み込んでその辺の検討をお願いしたいものだ、このように考えます。  そしてまた、総合交通政策の中で、過疎地帯ですね、これは今大概マイカーでもって走れる状況になっていますけれども、やはり老人の皆さんとか、おばあちゃん、おじいちゃんということになると、どうにも自分で運転というわけにいかない。そうすると全く交通から隔離されてしまうのですよね。そうすると病院に行くとか何かというようなこと、そういうものがあります。ですから、私鉄交通が赤字を出していろいろやっているのでありまするけれども、だからそういうものに対してこれはやはり一定の助成、今もやっていますよ。やっていますが、全国で百億ちょっとですよ。これじゃやはり、赤字を出すにしてもほどほどでないと、これは企業ですからとてもやり切れない状況だ。だからこういったいわば助成体制というものを、それは市町村段階でもやっていますよ。国もやっている。市町村段階もやっています。やっていますが、現在の助成ではどうにもならない。もう少しこれを計算し直して、そして四割ぐらいふやすような、そういう状況に私はいってもらいたいと思うのですが、これはどうですか。  これは運輸省だけれども運輸省を呼んでないから……
  76. 持永堯民

    ○持永政府委員 今お話しのいわゆる過疎バス等の問題につきましては、運輸省所管省でございまして、国が一定の基準に基づいていわゆる赤字補てん的な補助金を出しております。  地方団体におきましても、これに裏負担に対応して措置をいたしておりまして、中央が持つ分については私ども交付税で措置しておりますけれども、今のお話は全体の国の基準を含めて全体の問題についてもう少しレベルアップといいましょうか、そういう御指摘かと思いますけれども、これはまず何としても運輸省の問題でございますので、今お話ございましたことは運輸省所管の方に申し伝えさせていただきたいと思います。
  77. 戸田菊雄

    戸田委員 これは、その面の主管庁は大蔵省ですが、大臣今ちょっと参議院に行っていますからあれですが、問題はやはり、現在財政上の措置としては予算補助とそれから法律補助、こうあるわけですね。ですから、我々としてはそういうものをやはり法律補助として明確に決めて、そして状況を見て、それでふやすときはふやしていく、積み重ねていく、こういうことにした方がいいんじゃないかと思っているんですが、これはどうですか、考えは。
  78. 小粥正巳

    ○小粥政府委員 ただいまのお尋ねでございますけれども、御高承のように大変厳しい財政事情の中で精いっぱいの措置をさせていただいているつもりでございます。ただいまの法律補助、予算補助の問題あるいは先生のこの問題についての強い御要請がございましたけれども、私どもといたしますと、現在の財政事情のもとでは、この問題の重要性を認識しつつ精いっぱいの措置はさせていただいておる、こういうつもりでございますが、きょうは主管の運輸省も見えておりませんので、またこの点運輸省ともよく御相談をしてまいるつもりでございますが、財政事情極めて厳しい折でもございます、その辺も御賢察をいただきたいと存じます。
  79. 戸田菊雄

    戸田委員 検討はいいんですが、現在予算補助になっている、これを法律補助に切りかえたらどうか、こう考えるんですが、その点はどうですか。
  80. 小粥正巳

    ○小粥政府委員 この問題の内容からいたしまして、それぞれの経営主体あるいは地域の実情に応じて予算措置をしているわけでございます。その内容として、今御指摘のように予算補助を法律補助に変えてはどうかという点でございますけれども、私どもこれまでのところ、今申し上げましたそれぞれの経営主体、地域の実情、それから毎年の予算編成におきましてのそのときどきの実情に適した、限られた財源の中での適切な補助ということで、法律上義務づけられました法律補助よりも、ある意味で弾力的な対応ができます予算補助の方を従来考えて、これに従って予算上の手当てをしてまいったわけでございますが、その点も含めて今後の検討課題にさせていただきたいと存じます。
  81. 戸田菊雄

    戸田委員 警察庁の方、結構です。ありがとうございました。  総合交通政策、具体的にいつごろに整備されますか。
  82. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 企画庁だと思いますから、総合交通体系は。
  83. 戸田菊雄

    戸田委員 わかりました。  じゃもう一つは自治大臣の方にお伺いをしますが、産業廃棄物、それから一般廃棄物等々が今全国的に大変な問題になっておりますね。まさにごみ戦争ということで、これに対応する自治体としての何か方策はございましょうか。
  84. 森繁一

    ○森(繁)政府委員 一般廃棄物、それから産業廃棄物の処理が、特に一般廃棄物につきましては市町村の大きな仕事になっておりまして、地域での大変重要な課題になっておるわけでございます。私ども、一方では行政改革ということもございまして、たびたび行革審等からも御答申いただいておりますが、民間委託を積極的に推進をいたしておるわけでございますが、ただ民間に委託をいたします場合にも、委託契約などにおきましてその責任関係を明らかにしておくように、こういうことを指導いたしておるわけでございます。今後とも地域の実情に即しまして、当該団体が十分な管理監督のもとに事務が執行できますように、そういう体制で指導をしてまいりたい、かように考えております。
  85. 戸田菊雄

    戸田委員 今東京都だけでどのくらい廃棄物が出るのですか。ごみ、全国でどのくらいですか。
  86. 目黒克己

    ○目黒政府委員 東京都の実態は私どもきょう今つかんでおりませんが、全国ではごみが全体といたしまして三億七千万トン出るわけでございます。そのうちの三億二千万トンが産業廃棄物でございまして、一般の廃棄物、いわゆるごみと言われているものが残りの約四千万トン、そのような状況にあるのでございます。
  87. 戸田菊雄

    戸田委員 これは私の地元の河北新報です。購読者は四十数万おりますが、共同通信です。この社で最近廃棄物等に対する市町村に対するアンケート調査があった。そのアンケート調査の結果はこういうふうになっているんですね。「ごみの分別の徹底」をしてください、それから「資源回収の回数増」、これをふやしてください、それから「リサイクル運動の推進」、いわゆる資源回収を徹底してやってもらいたい、それから「ごみ埋め立て地の確保」「ごみ焼却の徹底」「ごみ量の伸びの的確な把握」「その他」、こうなっているんですがね。そして、なおかつ現下の廃棄物処理法は、これはどうも少し企業に寄り過ぎているんじゃないだろうか、もう少し公平な、そういう法律改正があってもいいんじゃないだろうかというところの要請まで出ているわけなんですがね。  こういったことを見た場合に、現下こういう状況が徹底してやられていましょうかね。これは厚生大臣でしょうか。
  88. 目黒克己

    ○目黒政府委員 このごみの問題につきましては、御指摘の分別収集、これはもう各地の市町村でかなりの率をやられているわけでございますが、私ども厚生省といたしましても、この再資源化の推進等ということで通知等を流しておりまして、各市町村に対して再利用について指導、徹底をいたしているところでございますし、またリサイクルにつきましても、この自治体のごみ処理業の中でリサイクルを徹底すべきだ、こういう考え方をいたしておるのでございます。  先生の御指摘の産業寄り云々ということにつきましては、一般にごみと言われておりますものは、一般の廃棄物と産業廃棄物に分かれておりまして、一般の廃棄物は市町村が処理をする、それから産業廃棄物につきましては、いわゆる排出事業者の責任において、基本的にそういう態度で私どもこの制度を組み立てておるところでございます。
  89. 戸田菊雄

    戸田委員 結論的に、厚生大臣、一つはやはり法律の見直し、これをやっていただかなければいけないじゃないか。ちょうど交通渋滞その他でもって今道交法の検討もやっていますが、それと同じように一回これを検討していただく。それからもう一つは、そういうことですから、ますますごみは天井知らずの増加だ、こう言う。政府財政援助といいますか、これは地方自治体で非常に欲しているんですね。そういう状況になって、非常に財政圧迫。それから直轄事業でやっているところとそうでないところがありますから、下請業者等々の問題につきましても、やはり再点検をしてしかるべく、財政上圧迫をされてにっちもさっちもいかない、そのまま放棄してしまうというようなことにならないように、三点についてぜひ御検討願いたいと思うんですが、どうでしょう。
  90. 津島雄二

    ○津島国務大臣 委員指摘のとおり、年々著しくふえてまいります廃棄物の処理、大変な仕事になっております。これは国民の生活、福祉、環境にはかり知れない影響を及ぼす重要問題であるというふうに受けとめております。  これまで、ごみ処理の基本は焼却、埋め立て、再利用ということでやってまいりましたが、また考え方としては、一つはその発生者の責任はこれは明確にしなきゃいけない。と同時に、やはり法律等の定めるところで、公共的にも政府、公共団体が責任を持つという一定のルールはできておるわけでありますが、近時の状況を見まするに、廃棄物の発生量が非常に多くなって内容が多様化してきたということ、それから不法投棄を初めとする不適正な処理事例が幾つも発生をしておる。委員の地元の東北の南部あたりに広域的に廃棄物が入ってくるということはお聞きになっておられると思います。そういう意味で、処分場の不足から広域移動にどういうふうに対応したらいいかという問題。それから減量化、再利用が社会のシステムとしてまだ十分定着していないという御指摘のような問題。それから公共関与に対する考え方がまだ必ずしも明確と言えない。御指摘のような数々の問題がございます。  そこで、私も当委員会にこれまでも申し上げておりますように、この際、法律改正を含めて廃棄物対策について幅広く検討いたしたいと思っております。検討におきまする課題としては、廃棄物処理に伴う負担あり方、今御指摘問題点、それから規制強化と経済活動の自由、それから財産権の保障とのバランスをどうやってとっていくか、それから廃棄物処理への国等公共関与のあり方について明確にしておく、そして全体として国土の均衡ある発展、利用と廃棄物処理との整合性を考える、こういうことで今積極的に検討をして結論を出したいと思っております。一生懸命努力をいたしますので、よろしく御理解いただきたいと思います。
  91. 戸田菊雄

    戸田委員 ぜひ早期に検討していただきたいと思います。  大蔵大臣、外務大臣参られましたが、ついでに救急問題をやっちゃってから税制の方に入りますので。長官、結構です。ありがとうございました。  今予算委員会で我が党の新盛議員が救急対策についてちょっとお尋ねをしました。直ちにこれは効果があらわれたと思うのですが、「救急隊員の”権限”を拡大」「心臓マッサージ機器や異物除去点滴もOK」と、いわゆるプレホスピタルケアという欧米並みの体制をとろうということで、救急業務懇話会、会長都築正和東大教授から答申があったようであります。これは直ちに厚生省としてもこの答申を受けて実行、着手する、こういう考えでしょうね。
  92. 仲村英一

    ○仲村政府委員 ただいまお触れいただきました答申は、東京消防庁へ救急業務懇話会から答申なされたものの内容だと思いますが、これは自治省を通じるなりして私どもとも御相談にあずかる時期が参るのではないかと考えておりますが、救急医療全体のプレホスピタルケアとおっしゃいましたその部分でございますとか、救急搬送すべき患者さんの病気の種類の変化でございますとか、いろいろあるわけでございまして、それにどう対応するか、大都会あるいは地方でもまたいろいろ形が違っておるのではないか、そういう形で考えますと、もっともっと検討すべき問題はあるというふうに私ども考えております。  厚生省といたしましては、現在、実は昨年の九月から救急医療体制検討会というのを設けておりまして、今おっしゃられたような問題も含めまして総合的に検討をお願いしているというのが現段階の状況でございます。
  93. 戸田菊雄

    戸田委員 これは早期実現を目指してひとつ検討していただきたいと思うのです。  それからもう一つ、私はそれに必要なのが救急医療センターだろうと思うのですね。これを、やはり地方を含めて国が責任を持ってセンター設立をやっていっていただきたいと思うのです。これは、私は参議院におるときに社労委員長をやっておって、そのときに救急医療センターの設置ということでいろいろ御協力をいただきましたが、当面できたところもありますが、情報公開程度で終わっているところがございますね。例えば仙台等は、市でもって積極的に開業医の皆さんに協力をいただいて、そしてセンターをつくりました。それで救恵日に、日曜とか祭日その他休みのときには指定医でもって、きょうはあなたが当番ということでやって、急病人が発生したということになれば内科関係に直ちに診察に行けるというような状況に、広報いわば情報公開までは来た。来たけれども、医療そのもののセンターにはなっていない。これは医療そのもののセンターを対応としてつくるべきだ、私はこう考えておるのです。  殊に交通事故の場合、これは緊急を要しますから、そしてなおかつ総身至るところ傷ついている場合があるのですから、そうしますと単に内科医だけでは間に合わない、そういう状態があるわけでございます。だから、そういった各科のお医者さんが全部センターに拠出をしていただいて、そして十分な対応のできる医療体制、こういうものをつくっていくことが必要じゃないか。殊に自動車事故というと、八割はどうしても一番頭を打つのですね。だから、脳神経外科、この専門医の検診はぜひ必要だ。かつて、岐阜県の大垣市病院でしたけれども、交通事故の方がそこに救急治療されて、そして異常なしということで帰りましたけれども、実は頭を打っておったのですね。それで脳内出血ですぐ死んじゃった等々があります。ですから、そういうことを万般遺漏のないような治療方式をとるとすれば、そういう医療センター、各科含めた専門の先生方が寄り合って治療ができる、そういうところに完備していただきたい。  開業医の医師会とか県の医師会とか皆さんにいろいろ協力をしてやることも一つの手だてですけれども、まず国の出先機関ですね。例えば文部省であれば各種大学病院を持っている。地方自治体であれば町立病院を持っている。あるいは企業でいきますと郵政省は郵政病院を持っている。かつてはNTT等々についてもそういう病院を持っているのですから、そういった国のいわば関係の医療機関をまず出向させるような方式でセンターをつくる、これを模範的に推し進めていく必要があるのじゃないかというふうに考えますが、その辺はどうでしょうか。
  94. 仲村英一

    ○仲村政府委員 救急医療体制の問題についてのお尋ねでございますが、比較的軽症な患者さんを扱う場合と、それから手術、入院を必要とする患者さんの場合、さらには今お尋ねの非常に重い、重篤の患者さんの扱いの部分と、いろいろのレベルと申しますか、分担を考えまして、私ども現在まで、初期救急医療体制でございますとか第二次救急医療体制、さらには今おっしゃいました二十四時間体制の第三次救命救急センターというようなことで整備をしてきております。  そこで、救命救急センターというのは人口百万に一カ所ということで私ども計画しておりまして、現在百数カ所できておりますが、計画が百三十ぐらいでございましてもう少しでございますので、各県とも御相談しながら、おっしゃるような方向での整備も進めてまいりたいと思います。  それから、そこでお働きになるお医者さんの技術レベルの問題も御指摘のようにございまして、脳外科でございますとか麻酔でございますとか心臓その他いろいろのコースにつきまして、直接私どもが研修をするというふうな事業も組んでおりまして、量、質両面についてなお今後とも努力をしていくという必要性を感じておるわけでございます。
  95. 戸田菊雄

    戸田委員 ありがとうございました。通産大臣、質問はたっぷりあるのですけれども、結構です。変更します。  それで、消費税問題に入りたいと思いますが、まず大蔵大臣、竹下元総理が当時、消費税には八つの懸念があります、こう言われました。政府対策でこれらの懸念条項は解消されたと思いますか。
  96. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 既によく委員が御承知のように、消費税の実施前に心配されました各種の懸念につきまして、実施後一年余りの実体経済の現実、また政府の各種取り組みについて、まとめてそれでは御報告をさせていただきたいと思います。  まず第一に、よく言われましたことは逆進性であります。私どもは、この逆進性というものにつきましては、一つの税目のみを取り上げて議論すべきものではないということを申し上げてまいりました。そして、所得税を含めた税体系全体、さらには社会保障制度など歳出面まで含めた財政全体で判断すべきものであると申し上げてきたところであります。  今回は、この消費税の導入に当たりまして、他方で大幅な所得税減税を行い、また、真に手を差し伸べるべき方々に対しての各種の配慮を行っていたところでありますが、今回の見直し案におきましても、逆進性の緩和等の観点から、飲食料品に対しての特例措置を講じますとともに、住宅家賃、身体障害者用物品、お年寄りに対する在宅福祉サービスなどを非課税にいたしましたほかに、年金生活の方々のために、所得税や住民税において公的年金等の控除額を引き上げ、一層の減税を実施することにいたしました。また、歳出面におきましては、「高齢者保健福祉推進十か年戦略」を策定し、その着実な実施を図ることとしておりまして、こうした措置によりまして、消費税の持つ所得に対する逆進性はさらに緩和をされると考えております。  また、税率引き上げというのがもう一つの懸念にあったわけでありますが、この点につきましては、総理から再三にわたりまして、私の内閣、これは総理の御発言でありますが、私の内閣においては税率を引き上げる考えはないということを申し上げ続けておるところであります。  もう一つの問題点は物価でありました。また、転嫁がうまく行えるかということでありましたが、物価水準への影響は、旧物品税の廃止などに伴う効果も適切に反映をし、おおむね政府が見込んだ範囲内で一回限りのものにとどまり、他方転嫁もおおむね円滑かつ適正に行われております。  また、事業者の事務負担の懸念につきましては、その仕組みにおきまして、中小事業者の納税事務負担に配慮してさまざまな措置を講じてまいりました。  さらに、その納付した消費税が国庫には入らないのではないかという御懸念に対しましては、免税事業者は課税事業者とは異なって転嫁をしておられない事業者が多いという実態、及び、今回消費者の御立場からの御指摘をいただきましたので、これを踏まえまして、消費税の申告納付が一巡する平成二年五月までは実態把握を行う、そしてそれに基づいてこれらの制度をどう見直すかについて十分検討の上提示するということを既に閣議で決めているということにも御留意をいただきたいと思うのであります。  また、地方財政地方団体の財政運営についての懸念が示されたところでありますが、これは地方に対する財源配分など必要な措置を講じてまいりました。  こうして考えてみますと、消費税導入前に御指摘を受けておりました懸念の多くは、既に大幅に解消されてきております。また、逆進性の問題などにつきましては、今回の見直し案の実施によりまして、国民の御理解はさらに一層いただけるものと私どもは確信をしているところであります。
  97. 戸田菊雄

    戸田委員 具体的に質問をしてまいりますが、確かに大蔵大臣が言われましたように、租税体系というものは総体的に判断をしなければいけない。これは全く私もそうだと思います。しかし、今の消費税の懸念八項目、その欠陥というもの、これは私は解消されていないと思いますね。  例えば逆進的な問題についてですが、乗用車、これは減税ですよ。従来一五%ですかね、これは現行三年間六%。しかし、自転車とか乳母車、これは新しい税金がかかっていくんですね、三%。それからダイヤモンドとかミンクのコート、これは従来一五%でしたね、これが三%。子供のシャツや靴下、おむつ、こういったものは三%軒並みかかるのですからね。あるいは演劇料にしましても、五千円以上、これは一〇%から確かに三%になりました。子供劇場はゼロであったものが三%かかります。子供劇場、今全国に目いっぱいあります。それからグリーン車の料金、これはまさに減税。通学通勤定期代はこれは課税ですよ。それから食事の場合でも、五千円以上の食事は従前一〇%、これが六%になった。カレーライスとかざるそば、これは全部三%課税です。だから、見直しその他大臣がいろいろ言われた。あるいは懸念条項に対して確かにそれぞれ各項目に対する対応措置を政府はとりました。とったけれども、そのことによって何らこの逆進性というものは解消されていない。解消されておりません。  殊に、私は問題だと思うのは転嫁問題。これは消費税の私はかなめだと思うのですが、その転嫁問題について、いろいろありますが、結果的には、これ最終的に消費者に帰着するのですからね、全部。そういう中で、一つの手段、方法等いろいろやったけれども、この転嫁の問題で大体、いろいろと私調べましたら、一つはやはり個別一律三%型。これは個別型と私は言うのですが、それから二つ目は、転嫁がまちまちですね、トータル型、こういうのがある。それから第三は、売り上げを維持するために、時期判断で、納期が半年ですから、そういうことになると、その間に前段の三カ月は税金取られてどんどん出る、それで後段で勝負する、こういう格好になるのですね。税制上、租税体系上こんなことがあっていいのかどうかですね。後で触れますけれども、結局税金というのは租税法定主義、法律で決められなければ税金取れないのですから。ところがそうでないのですね。  例えば一つの例ですけれども、JRの料金、百二十円、これは転嫁しませんよ。それは自動販売機で最高料金二百円なら二百円とこうなっていますから、全国至るところの自動販売機、これをつくりかえるわけにいかない、大変な費用がかかりますから。そうすると、あめ玉百円買っても三%取られるのですから、百二十円の料金のところにも、これは取らなくちゃいけないですね。そうすると三円六十銭、だから百二十三円六十銭。そういう自動販売機ないですからね。だから、これは全部カットですよ。そのかわり、五百円のところにくると、これは五、三、十五でもって、四捨五入でもって十円とにかく上積みですよ。こういうのがいっぱいある。単にJRだけじゃありません、これは。御商売やっている皆さんでも、トータルで勝負しているところありまするから。こういう租税体系があっていいのでしょうかね。これはどうでしょう。
  98. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は、従来の個別物品税の体系の中で非常にまちまちでありました課税、非課税の問題に対し、むしろ消費税を採用いたしましたことにより、広く薄く全体にかける税ということで、そうした問題に対する不満が一つ解消したと考えております。  また同時に、逆進性というものは、これは確かに消費税の持つ固有の性格でありますけれども、それのみを、消費税のみを税制として我が国が採用しておるのであれば、これまたいろいろな問題点がありましょう。しかし、税制全体の組み立ての中で御論議をいただけば、今お話しをいただきましたような中の諸点について相当程度の答えは出るものと理解をいたしております。  また、これはちょっと運賃体系につきまして私は細かい算定のルールを存じませんので、これについてお答えをする能力を持ちませんので、こうした点については政府委員から補足をさせますが、私は今消費税というものは非常に定着の度を深めておる、そのように理解をしておるところであります。
  99. 大塚秀夫

    ○大塚(秀)政府委員 ただいまJR運賃について御指摘がございましたが、JR運賃への消費税の転嫁につきましては、従前の運賃に三%を加算して、十円未満を四捨五入した上で、各社の増収率が三%以内になるように調整したものでございます。したがいまして、御指摘のように、一部区間について四捨五入の関係で、これは実額で言えば四・九円程度の範囲内でございますが、三%を超えるものがございますが、全体として増収率は三%以内におさめられておりますし、利用者の利便、事業者の手続等総合的に勘案して、妥当な転嫁であったと考えております。
  100. 戸田菊雄

    戸田委員 結局、個別課税じゃなくてトータルでいっているわけでしょう、四捨五入方式で。その根源はどこにあるのですか、そういうことをやってもいいというのは。行政サイドで決めただけでしょう。
  101. 大塚秀夫

    ○大塚(秀)政府委員 税制改革の適正かつ円滑な転嫁という趣旨から、JR運賃に限らず私鉄運賃等についても、そのような四捨五入というようなこと、これも最小の十円未満の範囲で行ったということでございます。
  102. 戸田菊雄

    戸田委員 ですから、その根源は何ですかと聞いているのですよ。法律によってやっているのですか、施行令によってやっているのですか、通達でやっているのですか。何によってやっているのですか。
  103. 大塚秀夫

    ○大塚(秀)政府委員 運輸省の手続としましては、運賃改定の手続、鉄道事業法に基づいて行っております。
  104. 戸田菊雄

    戸田委員 大蔵大臣、そういう税法、税制の取り扱いはありましょうか。
  105. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は、ですから鉄道運賃につきまして、その運賃決定の詳細を存じませんので、今運輸省の事務方が御答弁を申し上げたとおりと申し上げる以外にありません。
  106. 戸田菊雄

    戸田委員 それですから、私は運輸省を責めているわけじゃないのですよ。この税源のそもそもの根本法律は消費税なんですから、大蔵省でつくったのですから、それに基づいてやって運用したわけですからね。だけれども、そういうことが大蔵省がいいと言うことは、ちょっと私はおかしいと思うのですね。  例えば別な面もありますよ。商店の皆さんが年始の大売り出しをやるというような場合。そうすると、公取委の決定によって、景品は三段階ありましていろいろと枠がある。これだけの販売価格に対しては一万円まで景品をつけてもいいですよ、二十万円以上は五万円、ちょっと正確なものは定かでないのですが、とにかくそういうことで三段階決まっている。そうすると、景品仕入れだって三%かかっているわけですから、お客さんにやるときにはやはり三%本当はかけてやらなければ損してしまうのですね。ところが、それをやっておったら商売にならぬ。それを一日でもって半年分ぐらい勝負するわけですから、そういうことになるとその取り扱いは、今運輸省で運賃、料金、それと同じようなものでトータル方式でやはりやらざるを得ないのですね。そういう状況が各所にあるのです。だから、こういうことで勝手に事業者やそういった皆さんが税金の判断をしてそして税金を徴収するというようなことは、これは国民からいったら私は納得いかないと思いますね。だから、そういう点についてやはり改めていかなくてはいけないと思うのですが、大臣、どうでしょう。
  107. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 しかし、お言葉を返して恐縮ですが、その大売り出しという行為は、その事業者そのものの経営判断の中から出てくる行為であります。そして、当然その仕入れには消費税は転嫁をされてきておるわけでありまして、事業者の判断においてそれを、顧客を誘引するために思い切って値引きをして販売をされる、あるいは景品として一定額の商品を無償で一定以上の買い物をされた方にお渡しになる、これは商行為として事業者の判断で行われる話でありまして、景品としてお渡しになる商品は、景品ですから、料金をお客さんからいただくわけではない、ただで差し上げるということでありますから、その場合にはその事業者そのものが、税の体系からいうならば消費者の立場に立たれるということになるのではありませんか。三%の転嫁というものはそこの時点まで行われている、そこからただで差し上げる分は、むしろ事業者の経営判断の問題ではないでしょうか。
  108. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 大臣の御答弁、ちょっと補足をさせていただきたいと思うのでございますが、まさに今大臣より申し上げましたように、価格の決定というのは基本的に事業者の判断の問題であります。消費税は、申し上げるまでもなく納税義務者は事業者でございまして、先ほど委員のお話に、消費者からちょっと特別徴収をしているような感じでのお話がございましたけれども、そうではございません。納税義務者は事業者であることはもう御承知のとおりであります。ただ、消費税でございます、間接税でございますから、それを転嫁をする。転嫁のあり方はどのように考えているかといいますと、税制改革法の十一条に、「事業者は、消費に広く薄く負担を求めるという消費税の性格にかんがみ、消費税を円滑かつ適正に転嫁するものとする。」ということでございます。  通常の取引でございますと、まさにそこは事業者の判断で行われるわけでございますが、たまたまJRの運賃のように国の認可にかかわっているようなものにつきましては御当局に御相談がある、そこでまたいろいろ御判断があるということになろうかと思います。そこは価格に上乗せをする値決めの問題でございますから、一般の料金改定と同じようなことになりまして、例えば十円刻みで利用者の便宜のために決めていくということも行われますし、その転嫁のやり方は業種、業態によりまして、例えばスーパーのようにきちっと最後の代金に三%をかけてそこで計算をするというやり方もございましょうし、書籍のように丸い価格で示し、ただしその中に税金分幾らが入っているというように示す方法もございましょうし、いろいろございます。  しかし、そこは基本的にはまさに自由な取引の話でございまして、各事業者の判断で、それぞれの業種、業態に応じて便宜なようにやっていく。ただ、便乗値上げ等に対する監視というのはまた別の消費者行政の立場からあるわけでございますが、税の転嫁という点に関しましては、そこは基本的には事業主の値決めの問題であるわけでございます。
  109. 戸田菊雄

    戸田委員 八項目それぞれ具体的事例でもって説明をして検討していただこうと思ったのですが、時間がありませんので飛ばしますが、一つは、地方税等の問題について、これは大蔵大臣にもお願いをしたいのです。  地方税等の減収により地方団体の財政運営に支障が生ずるのではないか、こういう質問を私はきのう申し上げておる。それに対して政府は、消費税導入のときに、この問題に対して、一つは、消費税、国税の税収五分の一、人口基準、地方自治体に譲与いたします。これが一つですね。それから、消費税の税収、譲与分を除いて二四%、地方交付税、これを交付します等々の措置をもって地方団体配分は三九%程度、地方財政の円滑な運営を確保します。それから、地方間接税減収分、消費譲与税として確保して補てんをいたします。従来の国税三税の減税分、従前は御存じのように所得、法人、酒税、この三税の三二%でしたからね。そういうものに対して補てんをいたしますよと。それで消費税の配分率は、国として七三%、地方六七%、こういう大蔵省の税収見積もりの説明なんですね。  だけれども、実際は違うのですね。相当な減収になっているのですよ。それは間接税その他いろいろと従前あったものが、あるいは物品税も廃止されましたし、間接税廃止、そういうことを考えますと、相当違う。それと、消費税三%かかりますからね。県庁、各事務用品その他全部やりますと、地方公共団体の持ち出し分は大体二%くらいオーバーですよ、従前の。宮城県のような場合ですと約百億近い。そういうことになって財政が非常に圧迫される、そういう状況が出ているのでありますが、この対応策では完全にいかないのですね。だから、これはやはり従前の三税補てんの交付金、私たちは当面四〇%まで引き上げなさいよと今日まで言ってまいりましたけれども、その程度までは補てんをしていかなければ、私は、地方財政はやり切れぬのじゃないか。いろいろともかく地方財政の富裕論者もいるようですけれども、実際はそうじゃない。そういう点の検討はぜひ必要ではないかと思うのですが、大蔵大臣どうでしょう。自治大臣にもひとつ。
  110. 奥田敬和

    奥田国務大臣 先生指摘のように、地方税財源の減収があることは事実でございます。消費税の約四割、今御指摘がありましたように、消費譲与税ですか、あるいは地方交付税ということで約四割が消費税の中から地方に還元されることになっておるわけでありますけれども、しかしながら、改革全体といたしまして、地方の赤字分といいますか超過額が、八千八百億くらい減収となっていることは御指摘のとおりです。ですけれどもこれらは、電気ガス税、料飲税もなくなったわけでございますし、所得税、法人税も減収に伴ってそういった結果が出たわけでありますけれども、幸いに、非常に好景気と申しますか、好調な経済に支えられまして、大変地方税、地方交付税の増収と申しますか、非常に順調な伸びを見せました。そういうことで、これらの補てん分も含めて地方財政計画には万遺憾なく措置できたわけでありますけれども、こういった景気の好調に支えられておるわけでございますから、今後どうせよという形になりますと、確かに先生指摘のように、地方財政の健全化、長期的に見た場合に私たちも十分検討してまいりたいと思っております。
  111. 戸田菊雄

    戸田委員 もう一つだけ。時間がありませんから全部触れるわけにはいきませんが、納税業者の事務分担が非常に複雑で負担が重いのですね。  御存じのように、免税業者あり、あるいは限界控除があり、あるいはもう一つ、ちょっと忘れましたが、しかし、いずれにしても業者は納税義務者になるわけですね。そうすると、その納税義務者に対して今は非常に緩和政策をとっているようですけれども、三年経過して定着をしたということになると、従前のような査察、調査等々で私はぎゅうぎゅうやられるのじゃないだろうかなというような気がするのです。  というのは、罰則規定は懲役を含むでしょう。だから最低五百万円以下、懲役五年以下、虚偽の報告をした場合は懲役一年、罰則二十万等々、こう決められているわけですね。だからこういった問題の扱い方についても、私は十分将来検討していかなければ業者は大変だろうと思うのです。少なくとも御商売をやっている人の九〇%は中小業者ですからね。そういった人がとにかく申告するにしたって、昼間精いっぱい働いて、それで夜中にこれをやらなくちゃいけない。とても消化し切れない、こう言っているのですよ。  例えば人件費、それから支払い利息、割引料、支払い地代、保険料、公租公課、寄附金、経常利益等、これは粗収入ですけれどもね。等々の付加価値に課せられる資産の売却価格あるいは価格償却費を加え課税される資産の取得価額を差し引いた金額に三%の税率となる。このような計算を税額表等の証拠書類なしで計算するのは簡素どころかその困難は並み大抵ではありません。だから結局自分でできないから、どなたかにお頼みをするということになると、それはまた出費がかさむ、こういうことになるわけでありまして、だからこういった問題についても私はもう少し簡素化して、どだい業者に対しては税金の三%というのは、あるいは納税義務者として簡素化から来ているわけですから、そういうものがそうなっていない、こういうところに私は非常に消費税の欠陥というものがある、こういうふうに考えておりますから、そういう面の検討をぜひお願いをしたい。  殊に宮城県等は船乗りの方が多いのです、海岸の方に行きますと。若い人はみんな船乗りで出払っちゃっていますからね。そうすると、残っておるのはばあちゃん、じいちゃんなんです。そういった者が全部申告その他ずっとやるということで、御商売やっておって、小売商をやっておって、そしてやるといったら、これは大変なことですね。だから、これは私も長らく大蔵におりましたから、かつて今の国税庁長官と、申告制が今の税法の建前ですからそれは当然だけれども、例えば一人大工の社長さんとか自営業者の大工さんとか、こういったものは一々申告を書いている、また書けない。だからそういう人に対しては暦年の暦、これでもって記帳して、それを土台として了承する、こういうことで決着をつけたときもあるのですけれども、そういう面について、納税業者の申告その他については十分尊重する形で、やりやすい形で、これをやはり弾力運用で持っていっていただきたい、このように私は考えるのですが、どうでしょう。
  112. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 事業者の方々が御苦労にならないような工夫をできるだけしていくというのは当然のことでありますし、今までも私はしてきていると思っております。  ただ、問題は、私はこれは実際上の執行の問題であろうと思いますけれども、うっかりミスというのはこれは人間にあり得ることでありますから、そうしたうっかりしたミスをとがめ立てし、ぎりぎりと意地の悪い行動をするような国税庁ではないと私は信じております。そして、そういう姿勢はこれからも当然続くでありましょう。  ただ、同時に、悪質な者に対してこれを厳しく取り締まっていくことは当然のことでありますから、その罰則その他がきちんと整備をされ、必要なときにはそうした罰則が発動される状況に常にあるということは、私は必要なことであろうと思います。一般国民に対し必要以上に威圧感を与えるような税務調査のやり方というものは私は現在もとっておらないと信じておりますし、そうした考え方はこれからも変えないと思いますけれども、やはり悪質者に対して対応できるだけの罰則というものは担保しておくべきではなかろうか、私はそう考えております。
  113. 戸田菊雄

    戸田委員 もう二点だけちょっと指摘をして消費税は終わりたいと思うのですが、消費税は、独禁法に関する除外例、これを設けていますね。三年間に限ってでありますが、表示、転嫁の方法、この共同行為、いわゆる価格カルテル、これを認めたわけですが、その加盟が三分の二、これは中小企業参加条件ですね。三分の一は大企業参加。こうなってきますと、これはねらいが何にあるのか私はわかりませんけれども、結果的にはどうしても大きい企業の価格保証体制になってしまうのですね。なってしまうと思う。中小企業には決して有利ではないだろうと思うのですね。等々がありますのですが、これは何をねらいでこういう価格カルテルを、共同行為を許可したのですか。
  114. 見学信敬

    ○見学政府委員 消費税に関するカルテルの御質問かと思いますが、現在の実態として、大企業が中心になってそのカルテルを進めているという実態だというふうに直接聞いているわけではございませんが、そういうことに万々ならないように、中小企業のためのカルテルでございますので、そういうふうに気をつけてまいりたいと思っております。
  115. 戸田菊雄

    戸田委員 いわゆる中小企業、卸売業の場合は資本金三千万円以下、従業員百人以下、それから製造業の場合は資本金一億円以下、従業員三百人以下、小売業、サービス業、資本金一千万円以下、従業員五十人以下、こうなって、総体的に九〇%を超す事業者がこの中小企業の部分に入っているのですね。だから、いわゆる消費者に対して便乗値上げといいますか、こういうものをさせないために今回このような措置をとったというのが今までの説明だったのですけれども、それは保証されない状況じゃないか。これでいくと、構成からいけば、三分の一大企業、三分の二中小企業、こうなるのですから。どうしてもやはり大きいものにおおむね示談をしてやられるということになりかねぬ、だから保証にはならぬのじゃないのかということなのですね。どうですか。
  116. 見学信敬

    ○見学政府委員 先ほどもお答えしましたように、これは中小企業者の方々がなかなか消費者に対して転嫁しにくい、あるいは取引先に対して転嫁しにくいという観点から、そのカルテルをもってして転嫁をしてもよろしい、こういう観点で設けられたものでございまして、したがって、三分の二以上の中小企業者が入るというようなことは御指摘のとおりでございます。経済実態として、大企業が中心になってみずからのために中小企業者を率いて転嫁を強引にしているという個別実態がございますれば、それなりにまた調査の上対処したいと思っております。今現在のところそういうふうに認識はしておりません。
  117. 戸田菊雄

    戸田委員 十分実態を調査して、そのようにねらいどおりにいっているかどうか、これは調査しておいてください。  それからもう一つは、結局名目成長が続けば税収は膨らみますね。そうすると、増収分は必ず出てきます、GNPも大きくなっていくのですから。名目成長が毎年、ことしの場合は六・四%ですか、これはふえているわけですから、来年もそれはふえる。ということになると、消費税の増収分というのが必ずふえてくる。そのふえてきた場合に、これは国債の償還に充てるというのが今まで大蔵省の説明だった、あるいは国債発行削減、この両方、そういう措置をとります。それからもう一つは歳出増に使います。もう一つは減税。だから今までの超高度成長時代には、増収分があった場合、これは大体減税に回してきた。増収分についてこれからどういうふうに使いますかね。大臣、どうでしょう。
  118. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は、今委員がお述べになりましたように、むしろ今後日本の経済が順調な発展を遂げ続けてくれることを期待をいたしております。そして、その場合の税収、これは使用はいろいろなことが考えられますけれども、消費税収につきましては福祉に優先して充当していくということを申し上げてまいっておるわけでありまして、歳出の中における福祉関係財源というものは今後ますます拡大していく要素を持っておるわけでありますから、当然そうした方面に使われていく分野が多かろうと存じます。  同時に、我々としては、ようやく赤字国債依存体質を脱却したとは申しながら、多額の国債残高を抱えておるわけでありますから、その累増にどう歯どめをかけるかという問題にも答えを出していかなければならないわけでありまして、歳出歳入のバランスを見ながら、こうした方面にも意を用いていくことは当然今後ともに考えていかなければならないことであろう、そのように考えております。
  119. 戸田菊雄

    戸田委員 最後に、いろいろと御説明いただきましたが、これはある商工団体の調査ですが、現状の消費税導入後に、御商売をやっている人とか消費者は次のようなことを考えているのですね。一つは、消費税導入で予想どおり混乱が出ています、それから不透明、不公平、不公正です、それから便乗値上げが多発していますよ、事業者転嫁が不透明だ、払った税金はどこへいっているのですか、物価、暮らし、景気にどう響きますかわかっていますか、高齢化社会のための税制かと非常に疑問を持っている、直間比率は全然改善されていないのじゃないでしょうか、こういう実感を持っているのが今の消費者、国民、業者の皆さん。ですから、再度この点については大蔵大臣に、ぜひ原点に立って点検をしていただきたい、このようにお願いをしておきたいと思います。  非常に時間がなくて米問題に触れずじまいで申しわけなかったのですが、これも三十分時間を見込んでおったのですが、大分狂いました。ただ一点だけ、外務大臣がこの間ガットの非公式会議に行きまして一定のコメントをやりましたが、あのコメントを読む限りでは、どうも日本の米一〇〇%自給率、これは検討しなくちゃいけないのかな、あるいは自由化しなくちゃいけないのかなというような感じがするのでありますけれども、真意のほどはどういうことでございますか。
  120. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先般のガット・ウルグアイ・ラウンドの非公式の閣僚会議におきましては、私は日本政府として次のような意見を申し述べております。  「農業についても、我が国はこれまで多くの品目について輸入アクセスを拡大してきており、世界最大の農産物純輸入国として安定した市場を提供し農業貿易の安定的発展に大きく貢献してきています。しかしながら、その結果、我が国の自給率は、四九%と著しく低い水準となっており、「食糧安全保障」への配慮の必要性が不可欠となっています。国内における農業役割には、更に、国土・環境保全、雇用、地域社会の維持等極めて重要なものがあり、「食糧安全保障」を含むこれら「非貿易的関心事項」への配慮は不可欠と考えます。 このような状況にあることから、昨年末、我が国は、「基礎的食糧」に関し、「所要の国内生産水準を維持するために必要な国境調整措置を採ることが認められるべし」との提案を行なったところであり、各国の理解を得たいと思います。」こういう政府としての意見を申し述べております。
  121. 戸田菊雄

    戸田委員 三点について質問して終わりたいと思うのですが、今日までいわゆるケネディ・ラウンドを経て、東京ラウンドを経て、そしてウルグアイ・ラウンドに今行っているわけですね。このねらいは、私は、東京ラウンドで言われましたように、やはり残存農産物制限品目を撤廃しよう、それが今ウルグアイ・ラウンドにも持ち越されているのだと思うのですね。したがって、RMAが日本の米自由化を求め三〇一条提訴した、あるいはUSTRが提訴を却下して、米問題は新ラウンドの議題にする方針を示す、八七年に来日したリン農務長官、ヤイター等々といろいろなやりとりがあったわけでありますけれども、結果的に、こういった各会議を通じて、いずれにしても今焦点になっているのは日本の米の自由化、これは必ずやってくるだろうということがだれにも想定できるのですね。だけれども、こういった問題については国会の決議もあり、それから今の日本の農政事情等々こういうものがありますから、こういった問題について、私は、やはり完全自給率一〇〇%で各大臣の皆さんはいっていただきたい、こういうことが一つであります。  それからもう一つは、今後の日本の農政の長期展望というのがないのですね。殊に今、世界的にもいろいろありますけれども、やはり食糧は一貫して不安定状況にございますよというのが学者や見識者の言っている見方ですね。そういう中で気象条件が非常に大変化をしている。いわば一つは温暖化。この温暖化になっていきますと、南極の氷が解けて数メートルの水がかさんできて、日本みたいな平たん地は埋没するんじゃないだろうか、あるいは世界的にそういうところがいっぱいある。こういう状況の中で食糧を確保して、世界人口四十、五十億が一体どう食っていくか、生命を保持していくかということは重大な問題だということになっているのです。  それで、気象庁長官来ておられると思いますが、その辺の、温暖と寒冷、両論ありますが、どうですか、気象条件としては。
  122. 立平良三

    立平政府委員 今までの観測によりますと、二酸化炭素やフロンなどのいわゆる温室効果を持ちます気体が現在増加しつつあります。現在の増加率がそのまま続きますと、地球表面の平均気温というのは変動を繰り返しながら徐々に上昇する可能性がございます。その結果、海面水位の上昇とか降水量の分布の変動というふうなことも予想されておりますが、量的な詳しいことにつきましては、まだまだこれから研究を続けなければいけない段階だというふうに承知しております。
  123. 戸田菊雄

    戸田委員 時間がなくて農林大臣環境庁長官も申しわけありませんでした。これで終わりますが、いずれ機会を見てゆっくりやります。ありがとうございました。
  124. 越智伊平

    越智委員長 これにて戸田君の質疑は終了いたしました。  午後零時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十一分休憩      ────◇─────     午後零時三十分開議
  125. 越智伊平

    越智委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。串原義直君。
  126. 串原義直

    串原委員 米ソのマルタ会談、マルタ首脳会談以降、冷戦の終結の機運が盛り上がってまいりました今日、今後のヨーロッパ、さらにはアジアを含めた戦後体制の枠組みの解体と再編を展望する上で、極めて緊迫した状況にありますところのリトアニアの情勢について、政府の認識をお聞きしたいのであります。  ソ連によるエネルギー封鎖から工業原材料、さらには食糧に至る経済封鎖が強行された今日の段階で、どう対話をしてまいりますか。
  127. 中山太郎

    ○中山国務大臣 我が国は、リトアニア情勢に関し従来より重大な関心を持っておりまして、事態の推移を注目するとともに、この双方が平和的な話し合いによって解決の道を見出されるように期待をするということを各種の委員会で私申し上げております。それにもかかわらず、ソ連政府がリトアニアに対し、エネルギー供給停止等の措置をとっていることを強く憂慮をいたしております。  当面、我が国としての対応につきましては検討中でございます。我が国としては、一刻も早く今次措置が解除され、実質的な話し合いが速やかに開始されて、対話による解決の方途が探求されることを強く期待をいたしております。  なお、バルト三国のうち他の二国につきましては、リトアニア情勢ほどの緊張は見られておらないという認識を持っております。
  128. 串原義直

    串原委員 当面の考え方については伺ったのですけれども、そうすると外務大臣、西側諸国の今後の対応と事態の推移によりましては、また改めた検討が加えられる、こういうことですか。
  129. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  本件は、民族自決というより、リトアニア国民の主張とそれからソ連の連邦そのものの行方、それからゴルバチョフ政権の基盤ということにもかかわっている複雑な問題でございますので、西側といたしましては、特にゴルバチョフ大統領のもとで進められている新思考外交のもとで、欧州情勢あるいは米ソ関係等が基本的に改善してきているという状況を踏まえて、全般的な影響を及ぼさないように、他方そのリトアニア人の民族自決の気持ちはこれを支持していくという、その二つの問題を非常に慎重にバランスをとって考えている次第でございます。  そういうことで、米国としてもまだとるべき措置は決めておりませんし、それからECにおきましては二十五日に専門家会議を開いてこの問題を検討するということになっております。  私どもとしては、こういう成り行きを慎重に見きわめながら政府としての措置を検討していきたい、そういうふうに考えている次第でございます。
  130. 串原義直

    串原委員 では外務大臣、今ちょっと外務大臣も触れられたけれども、リトアニアを含むバルト三国の独立要求についての政府基本的な認識を、この際明らかにしておいていただきたいというふうに思うのであります。  民主主義と民族自決権擁護の基本姿勢というものは鮮明にしておく必要があるんじゃないか、こう考えますので伺うわけでございます。
  131. 中山太郎

    ○中山国務大臣 私どもの国は、民主主義、自由主義経済というものを基盤にこの国を堅持しているわけでありますが、民主主義を求めていかれるこの各国のあり方、それはそれぞれの国の成り立つ経過がございますけれども、今般の事件に関しましては、ソ連連邦内の問題として、私どもはソ連の国内におきます民主化が、この地域においても両国の政府の間で話し合いが進められることを心から期待をするという姿勢でございます。
  132. 串原義直

    串原委員 これは慎重でございましょう。  そこで、リトアニア独立などソ連の民族問題に対する対応というのは、今後のペレストロイカ、新思考外交路線の行方を占う大きな要素であると私は思うのであります。  ここで注目すべきことは、リトアニアへのソ連軍の威嚇演習、空挺部隊による党施設の占拠などの背景に、武力行使を求めていたソ連の国防総省、参謀本部などソ連軍内部の強硬派将官の強い要求というものがある、こう伝えられているのですけれども、どう受けとめておられますか。  いま一つ、ソ連内部で民族問題に対する方針をめぐって党及び軍内部に深刻な亀裂と対立がある、こう言われているのですけれども政府としてはどう受けとめていらっしゃいますか。
  133. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  日本政府といたしましては、軍事力によるものであれ経済力によるものであれ、強権的な方法によって実質的な解決をもたらせないという基本的な考え方をとっております。  そういうことから、ソ連側に対しては自制を求めているわけでございますが、西側全般といたしまして、もしソ連が軍事力を使うようなことがあれば、東西関係基本に非常に大きなひびが入るということから、その点についてはかなり強い調子でソ連に対して警告を発しておりますし、それから、従来からの外相会談あるいはその他の会談におきましても、ソ連側としても武力行使をするつもりはないということを重ねて表明してきているというふうに理解しておりますので、私は、今のような先生の御指摘のようなことは、やはり交渉の機運を誘い出すための一つの過程において起こっていることだと思います。ですから私どもは、今後ともソ連政府としてそのような強権的な措置に訴えるということがないように、自制を求めていくというのを基本的な姿勢としていきたいというふうに考えております。  それから、民族問題につきまして、ソ連の国内でのいろいろな意見が出てきていることは確かでございます。その民族問題の措置の難しさから大統領制ということが導入され、権力を強化したというのが現状でございますけれども、保守派の方からいろいろな意見が出てきていることは私ども情報を得ておりますけれども、具体的にどういう状況にあるかということを判断し得る状況にはないということをつけ加えさせていただきたいと思います。
  134. 串原義直

    串原委員 そのソ連軍内部の論争や、内外政策にわたるこのペレストロイカ路線に対するソ連軍の批判というものは、東ヨーロッパ革命と結びついたワルシャワ条約機構の変質やソ連軍の撤退、防衛的軍事ドクトリンや軍事力の合理的十分性など、西側に冷戦終結の機運を生んでいる新思考外交や軍備管理・軍縮にかかわる革新的な問題に及んでいるというふうに伝えられているわけですね。これは非常に重要なところかなと思うのですけれども、この辺に対する外務大臣の認識を伺っておきたい。
  135. 中山太郎

    ○中山国務大臣 お答えをいたします。  ソビエトにおけるこのグラスノスチあるいはペレストロイカというような内政の問題、また新思考による外交というような問題が展開されて、東西両陣営が米ソを中心として対立から対話、協力という雰囲気の中で、実は世界じゅうの人々がこの流れを歓迎し、支持してきたことは事実であろうと思います。しかし、このような事態が今後どう経過をするか、私どもが絶えずお答えをいたしておりますように、この流れは冷戦の終結への過程へ進行中であるという認識で、極めて不透明であり不確実であり不安定だ、引き続き十分注目をしていかなければならない、このような認識でおります。
  136. 串原義直

    串原委員 さらに、ソ連軍内部論争、ゴルバチョフ大統領が進める改革への軍上層部の不満、これが今世界から期待されているところの軍縮交渉の遅滞、遅延、停滞ですね、あるいはペレストロイカの停滞まで結びつく可能性というものに対して、政府はどういう判断でございますか。
  137. 中山太郎

    ○中山国務大臣 米ソの首脳会談が近く行われることになっておりますが、その前にヤコブレフ氏が訪米をされるというような情報も聞いておりましたが、けさあたりの新聞紙上では、これがいわゆる米ソ関係の対話が中断するという意味でなしに、ヤコブレフ氏の旅行は内部の事情で取りやめになったというふうに報道されていることは私も知っております。こういう中で、私どもは米ソの間で引き続き対話が、さらに新しい時代への協力が首脳会談に向けて準備をされる、さらに軍縮、軍備問題というものもただいま交渉中でございますから、私は全部ひっくるめて一つの形で認識を、判断をするべき状態にはまだ立ち至っていない。しかし、極めて不確実である、不透明である、絶えず我が国も各国に駐在している大使館からの情報を集めながら、この状況の推移を見詰めているという状況でございます。
  138. 串原義直

    串原委員 我が国政府としては、ソ連が進めているペレストロイカ、大きな流れ、路線、これを支持する、こういう立場で今後とも行動をする、こういうことでございますか。
  139. 中山太郎

    ○中山国務大臣 日本政府としては、ペレストロイカの正しい方向性を支持するという立場を維持しております。
  140. 串原義直

    串原委員 そこで、ことしに入りましてから発表されましたアメリカ大統領一般教書、「我々は欧州地域におけるソ連の軍事力の脅威がなくなりつつあることを認める」、こう言っているわけであります。さらに、国防報告では、「一九八九年の出来事は欧州に対するソ連の奇襲攻撃の脅威を軽減し、一九九〇年代における米国の国防政策の再検討が必要となった」、こう指摘しているわけでございますけれども、これらの問題や、報道されておりますように米軍部首脳などの議会証言は、ヨーロッパにおけるソ連の大規模奇襲攻撃の脅威の低下という認識を示していると私は思う。この辺についてはいかがですか。
  141. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 先生が引用されました大統領の一般教書、それから九一年の国防報告でございますが、例えば国防報告におきましては、先生が触れられました「八九年の出来事は欧州におけるソ連の奇襲攻撃の脅威を減少させ、九〇年代における米国防政策の優先順位の見直しを求めることとなった」という表現がございますけれども、同時に「ソ連の戦力は米国及びその同盟国にとり、依然最も深刻な軍事的脅威である」という箇所もございますし、それからさらには「ソ連の戦略核体制は依然強大、ソ連は米ソ戦略兵器削減条約締結後も、戦略核戦力の強力な近代化を継続する予定」、「ソ連指導者は、核戦争における残存性と耐久性を強化し続けており、防空及び弾道弾要撃ミサイルシステム近代化、確証化をも継続している」、こういうようないろいろな表現がございまして、米国側のソ連に関します認識に関しましては、九〇年におきましても依然として最も深刻な軍事的な脅威であるというふうに米国は認識をしております。ただ、つい先日出ましたアジア・太平洋地域に関します戦略的枠組みに関しましても、アジアにおけるソ連の問題にも言及しておりますが、先生の御質問がヨーロッパでございましたので、ヨーロッパの点に絞ってお答えさせていただきました。
  142. 串原義直

    串原委員 今お答えをいただきましたが、そこでアジアの問題についても触れようと思ったのでございますが、アメリカの各種軍事報告書や軍部の首脳の証言、中でも日経等で報道しておりますが、二月二十四日、「ソ連太平洋艦隊の軍事的能力が潜在的脅威であることには変わりはないが、日本周辺で西側の利益を侵す敵対行動に出る可能性は薄まった」、これはパウエル統合参謀本部議長のアメリカ上院の軍事委員会での証言でありますね。というように、アジア・太平洋におけるソ連の脅威についてもその低下あるいは変化をそれぞれの立場で示唆をしているというふうに私は受けとめているのですけれども、いかがでしょうか。
  143. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 先生が今引用されましたのは、二月一日にパウエル米統合参謀本部議長がアメリカの上院の軍事委員会におきまして証言いたしました証言におきまして、先生が今引用されましたような言及がございます。太平洋におきまして「ソ連は我々の利益を脅かすような敵対行動をとる可能性は小さい」その次に、しかしながらパウエル統合参謀本部議長は続けましてこう言っております。「しかし、ソ連海軍の軍事的能力は、太平洋地域における米国の安全保障上の利益にとり潜在的脅威であり続けるだろう。」ということを言っております。そのほかいろいろな米政府の幹部が議会証言その他で、基本的には先ほどちょっと全体のところで御披露いたしましたようなソ連の脅威の位置づけを行っておりまして、先ほどちょっと私が引用しかけました、今般、これはつい先日、四月十九日でございますけれども、米国防省が議会に出しました報告書、「アジア太平洋地域の戦略的枠組み」という報告書におきまして、このアジアにおきますソ連の脅威の問題に関しましてこういうふうな形で言及しております。「ソ連は依然としてアジアにおける主要な脅威であるが、一九七〇年代、八〇年代のような重大なものとはもはや認識されていない。」という記述がございます。しかし同時に、日本との関係におきましてはこういう記述がございます。「日本と対峙するソ連の極東軍管区では、ソ連の能力は依然防衛のための能力をはるかに超えていると思われる。少なくとも短期的にはソ連の近代化計画、特に航空、海上戦力の近代化は、北東アジアにおける米国の利益、同盟国及び米軍にとり引き続き脅威である。」以上でございます。
  144. 串原義直

    串原委員 それは軍事力ですから、ゼロになるなんていうことはあり得ないことですよ、いつの段階で判断しても。ですから、今答弁の中に触れられたような問題は当然出てくるでございましょう。それはつまり重さの問題、程度の問題ですよね。数字で申し上げるというのはどうかと思うけれども、従来どこどこの脅威、Aという国の脅威を一〇〇と見るならば今日現在どうなのか、この脅威は今日現在では七〇である、しかし脅威は去らないという判断は、それはするでしょうね。しかし間違いなく、私がヨーロッパの立場アジアについても若干触れてきたのですけれども、ソ連の脅威が少なくなっている、低下をしている、国際情勢も随分と変わってきている、こういうことだけは間違いないわけですよ。程度は難しい、確かに難しいと思う。外務大臣、その認識は一致するでしょう。
  145. 中山太郎

    ○中山国務大臣 お答え申し上げます。  委員指摘のように、全体的な米ソの超大国の緊張が緩和して対話が進みつつあるということは御指摘のとおりだと思いますが、問題は、ソ連のいわゆる内政上の問題が私どもは実は一番気になっておりまして、特に経済政策がうまくいくのかいかないのか、あるいはそれに対して国民がどのような反応をしてくるのか、あるいはそれに対してソ連の各クラスの方々がどういう判断をされるのか。私は数日前にNHKの「社会主義の二十世紀」というビデオを拝見しましたけれども、この社会というものに全くいろいろな意見が出てきている。そういう中で、私どもはこの不透明な成り行きというものを、十分同盟国と協議しながら監視というよりも注目をしていかなければならない、このように考えております。
  146. 串原義直

    串原委員 それはそうでしょう。  そこで、先ごろからこの委員会でも議論されてまいりましたように、私も今少し触れてまいりましたように、この緊張緩和が欧州で進んでいることは事実でありますね。これは事実です。それから、程度の問題はそれぞれの判断があるから別といたしまして、ソ連の脅威の低下ということも現実にヨーロッパにおいてもアジアにおいても具体的に受けとめることができるようになってきたと私は思うわけですね。そういう情勢を踏まえているんですけれども政府は欧州とアジアでは違うと先刻からこの委員会でも答弁されてきた。これが私どもはすっきり受け取ることができないんですよ。  そこで伺うのですけれども、地政学的条件が欧州とアジアとどんなぐあいに違うのか。あるいはそれが我が国と極東の軍事、政治的情勢、安全保障政策に及ぼす影響、緊張緩和をおくらせている根拠はどのようなものなのか、また環境の相違というのは具体的に何でしょうか。欧州の緊張緩和の波というものが直ちにアジアに波及しないとするなら、その要因は一体どこにあるのか。私はこれは重要な判断だと思う。具体的にひとつ教えてください。
  147. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 欧州とアジア方面における地政学上の差については幾つか具体的な例があると思います。  例えば欧州におきましては、軍事面におきましてはNATOとワルソー条約というものが陸上兵力を中心として対峙しているという極めて明確な図式がございましたので、それを中心として軍備管理・軍縮交渉が長年にわたって話し合いが行われるという素地が既に存在していたということ、ヘルシンキ会合以来その中で対話が続いてきていたわけでございます。それから、その中において東欧における民主化ということが起こり、そして東西の対立がその面から消えていき、共通の社会体制、経済体制を目指しての動きが始まったということで、欧州が一つになりつつあること。それから、そういう中においてワルソー条約機構が軍事的な意味を減退しつつあるということ。そのような全般的な中において、欧州においては国際情勢はかなりいわば緊張緩和の方向に動きつつあるということは事実だと思います。  他方、アジアにおきましては、朝鮮半島におきましてはなお対立が続いておりますし、それから中国の存在というものは非常に大きな一つの要因になっております。あるいはベトナム、インドシナ半島等におきましてそれぞれまだ紛争が継続しているという状況もございます。それから、アジアの地域におきましてそれぞれの国が持っている安全保障上の考え、安全保障観というものは必ずしも一致していない、そういうことから共通の場から話し合うという素地がなかなか出てきていないということがございます。それから軍事的に見ましても、ヨーロッパにおけるほど明確な対峙ではなくて、二国間の安全保障の枠組みというものが主になっているということもございます。  さらに軍事的に見ますと、海軍の軍縮の問題がございます。欧州におきましても、海軍の軍縮につきましては、御承知のようにこれは米国の抑止力を維持する上で非常に重要だ。海軍というのはソ連にとってのいわば鉄道のようなものであるとよく比喩されますけれども、そういうことで海軍軍縮については欧州方面においてもいまだこれを進めるという雰囲気になってきておりません。極東について見ますと、この海軍が米国の抑止力の主な要因になっておりまして、その米国の海軍の存在というのは、アジア全般的にこれは安定勢力として受け入れられるという情勢があると思います。そういう中において極東におきましてはこの海軍軍縮を進め得るという状況にないということ、これも一つの大きな要因になっていると思います。  そのような要因が重なりまして、欧州方面とアジア方面におきましてはいろいろな意味で政治的にもあるいは軍事的にも情勢は異なっているということで、欧州に起こっているような変化が直ちにアジアにおいて起こっていないというのはそういう背景があるというふうに私どもは考えております。
  148. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今欧亜局長から地政学的な問題、また民族的な問題等も触れてお話をし、御理解をいただいていると思いますが、私は、ヨーロッパの共産主義運動というものが、戦争の終結以後ソ連の指導といいますか、ワルシャワ軍事機構ができていったというこの一つの姿、アジアでは民族運動と共産主義運動というものがどうも一体になって起こってきたような歴史を感じるわけであります。  そういうことで、アジアでは一番先に社会主義国になったのがモンゴル、一九二四年でございます。ちょうどソ連の革命の起こった直後の姿、こういうことで、私どもアジアを見ていく場合に、まだ閉鎖的な北朝鮮あるいは天安門事件等において私どもが失望した中国の政府の立場あるいはカンボジアの問題等ございますけれども、私どもとしては、委員も御関心の深いこの地域の平和への構築というのに日本としてはどうすれば貢献できるのか、これに最大の関心を持ちながら、実は日本日本なりの努力をしているというふうな状況ではないかと考えております。
  149. 串原義直

    串原委員 アジアの地域紛争あるいはその他この地域の政治的な不安定要素が、アジアにおける米ソの二極的世界から多極的世界への変化という状況の進展に伴いまして、我が国周辺地域の安定にとって相対的に重要性が増大しているという判断は、私は一応理解はできるわけであります。しかし、それらの要因の多くはこれからできるだけなくしていくということですね。このことは、軍事力による抑止ではなくて、つまり当局間の話し合い、対話、米ソを交えた関係国での交渉、国連の枠組みの活用、つまり東西緊張緩和の推進による開放と改革の拡大といった外交努力による解決以外にない、こう私は判断しているわけですよ。外務大臣、どうですか。
  150. 中山太郎

    ○中山国務大臣 私は、委員のお説というものは非常に高く評価させていただきたいと思います。それは、この日本にとりましても、平和を志向する国家として外交が極めて大切である。特にアジアの地域紛争を解決していく一つの方途として、私どもとしては目下一番関心を持っているのがこの朝鮮半島の南北の対立の緩和、この問題であります。  さらに、最近、昨年の八月に開かれましたカンボジア和平会議、これはフランスが非常に力を入れた会議でございましたが、ソ連、アメリカ等も、あるいはASEAN諸国等もともどもに、私も日本政府代表として出席をいたしておりました。昨年来AsEAN各国も非常に苦労しておりますが、先日日本を訪問されましたタイのチャチャイ首相から海部総理に、この日本でカンボジアの目下四派の中心と言われるシアヌーク殿下と、それからヘン・サムリン政権のフン・セン首相との平和への会議の舞台をセットしてはどうか、こういうお話がございまして、早速海部総理からこの旨をそれぞれに連絡をいたしましたところ、昨日、タイのバンコクでシアヌーク殿下が、六月の初めに東京でへン・サムリン政権のフン・セン首相とシアヌーク殿下との二者会談ができるように、五月の終わりに事務レベルでの協議を始めてはどうかという新聞記者会見があったと伺っております。  このようなことは、日本国がいかにこのアジアの平和をつくり出すための、現在紛争中の各国がみんな関与をしているカンボジアの内戦の閉鎖に向かって、終了に向かって、私どもの国も平和を志向する国家としてみずからの国を、舞台を提供して、対峙しているこの二つの派の首脳をお越しいただいて、ここで協議を願うということに努力をしているということを御理解をいただき、さらにそのことがまたこのカンボジアの長い内戦に関与してきたフランスとかあるいはまた中国、ソ連、ベトナム、あるいはASEANの諸国あるいはオーストラリア、いろいろな国が平和を求めて努力してきておりますけれども、これらの国々と日本との腹を割った話し合いの舞台もそれを機会に新しい展開が見せられるのではないか、こういうことで、海部首相を初め、私どもはこの方向に向かって誠意と努力をいたしてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  151. 串原義直

    串原委員 新しい情勢を踏まえて答弁願ったのですけれども、せっかくの日本の立場を強調してもらいながら御検討を期待をするわけであります。一層汗を流していただきたいというふうに思うわけでございます。  そういう情勢であります。そういう情勢でありますとともに、先ほどから触れてまいりましたように世界の情勢は大きく変わってきていると改めて強調さしてもらいたいのですけれども、そこで、私は官房長官防衛庁長官に伺いたいのでございますが、論議をしてまいりましたように、いずれにしても、それ以外に我が国に着上陸侵攻する兵力、投射の能力を有する国はソ連だけだ、ソ連以外にない、こう考える。あるいは、そこでソ連の我が国への着上陸侵攻は欧州あるいは中東有事の波及のケース以外に考えられないこと、日米防衛協力のための指針のもとに策定されてきたさまざまな日米共同作戦計画も欧州・中東地域の有事の波及による日本有事を想定して立案されていることは周知のとおりでございます。しかし、先ほど触れたように、欧州におけるソ連の大規模奇襲の脅威は戦後最低と言われる、中東有事に関しても米国は従来のソ連の直接侵攻に対する防衛計画を撤回していると伝えられているわけであります。  そこで、この防衛計画の大綱の国際情勢認識というのは、戦後体制の枠組みのもとでデタントを背景とする情勢認識であろう。ヨーロッパを中心にした戦後体制の崩壊と流動化を目の当たりにしている現在の情勢と大きく異なっていることは事実だと思うのですね。私はこう判断をしているわけであります。  総理大臣は、二十三日でしたか、予算委員会において、日本は力の対決の時代に力で参加しているわけではない、有事を想定して日本の防衛力を整備したのではない、こう答弁しているのですけれどもアメリカは防衛計画の大綱策定直後の七六年七月に設置された日米防衛協力小委員会での協議を通じまして、ガイドラインといいますか日米防衛協力のための指針、七八年十一月に策定をいたしまして、自衛隊を米国の戦略に組み込むための共同作戦体制の構築を開始したのであります。以来、二国によりますところの防衛体制が構築されてきた、二国というのは日米ですね、私はこう判断をしているわけであります。そこで、八〇年代を通じまして政府、防衛庁は、こうした海洋戦略などグローバルで攻勢的な米国の戦略を補完する形で自衛隊の三海峡封鎖、シーレーン防衛体制や北方重視の陸上防衛体制を構築してきたことは周知の事実だというふうに思うわけであります。  ですから、ここで伺いますけれども、今こそこうした攻勢的な日米共同作戦体制から脱却をして、我が国は独自の地政戦略上の考察と国際情勢認識を踏まえた安全保障の議論を進めるべきであると思うのですけれども、どうでしょうか。安全保障会議の責任者として官房長官の御所見を伺いたいのであります。  そこで、続いて防衛庁長官に伺うのですけれども、ただいま申し上げてまいりました情勢を踏まえて、欧州・中東有事と連動した日米共同作戦体制、攻勢的なアメリカ海洋戦略に組み込まれた形での自衛隊の三海峡封鎖や北方防衛の作戦体制、それらの戦略作戦計画に基づく戦力整備計画であるところの次期防の策定作業をこの際全面的に見直すべきだと考えるのですよ。いかがでしょう。
  152. 石川要三

    ○石川国務大臣 お答えさしていただきます。  ただいまの委員の御質問、大変幅の広い角度からの御質問であったようでございます。したがいまして、的確に御趣旨に沿っての御回答ができるかどうかちょっと不安でございますが、私なりに今の委員の御質問を要約をいたしまして、防衛庁という立場でお答えをさしていただきたい、かように思います。  まず第一に軍事情勢、特にアジア・太平洋の中における軍事情勢についていろいろと御見解が申されました。これは、先ほどのヨーロッパを中心としてのいろいろな、米ソの緊張緩和、特に軍縮へ向かっていろいろと、外務大臣から情勢の変化につきましては詳細に御回答がございましたが、その中でも特にアジアに触れましてまたいろいろとお話がされているようでございます。特にまたそういう中で、ヨーロッパと同じように、アジアにおきましてもさらなる平和を構築するための我が国の外交努力ということにつきましても述べられました。私はそういう見解につきましては、全く防衛庁の責任者という立場からも、一つの世界情勢の流れにつきましては考えを一にするものでございます。  特にその中で、再三私が申し上げましたように、ヨーロッパに比べてアジア・太平洋の中では依然としてヨーロッパと違った極端な緊張緩和というものが、特にソ連の平和に向かってのそういう流れというものが比較的にヨーロッパに比べてテンポが遅いというようなことにつきましても再三申し上げたわけでありますが、それは、先ほど来外務大臣が申しましたような地政学上の理由、そしてまた、さらにソ連の今日までの蓄積された軍事力の存在、そしてまた、そのソ連の軍事力の近代化、そういうものが非常に、かなりまだ存在している、こういうことを特に強調して申し上げたわけでございまして、そういう中からいって、結論的には潜在的な脅威というものを私どもは感じているわけである、こういうふうに申し上げたわけでございます。  その中で、私どもはこれからの防衛大綱というものをどう踏まえていくかというならば、やはり今日の国際情勢と当時のデタントというものにつきましては、これは現象面においてはかなり違いがあるけれども、しかし、その根底に、私どもは、この防衛大綱の策定に当たっての国際情勢の見方というものにつきましてはやはり共通点がある。特に二点につきまして共通点がある。  一つには、やはり依然として東西の力の均衡、こういうものがあり、それがまたさらにこれからの国際社会の平和と安全のために非常に大きに寄与している、これが一点であるし、その結果として、当時は恐らく大きな大局的な戦争はなかろうという前提のもとに大綱に従っての整備が行われているわけでありますし、もう一点につきましては、やはり日米安保条約というものの、今日までの私ども日本にとりましては大変な平和のために大きな寄与をされておる、こういう点をとらえて、今日の大綱につきましては、やはりこれに従って今後の防衛計画というものは立案すべきではなかろうかな、こういうふうに申し上げたわけでございます。  先ほど先生もちょっと御質問でございましたが、特に日米共同作戦の例を挙げまして、これからは我が国の、この激変する国際情勢に伴って、米国から脱却した我が国独自の防衛政策というものをとるべきではなかろうか、こういうお尋ねもあったわけでございます。我が国の置かれた戦略環境等から日米安保体制を堅持するということはこれは先ほど来申し上げましたとおりでございまして、それを堅持するとともに、みずから適切な規模の防衛力をこれからも保持するようにして、我が国への侵略を未然に防止することが防衛政策基本である、このように考えておるわけでございます。  先生の御指摘されたような、米国から脱却した我が国独自の防衛政策というものにつきましては、これはちょっと御質問の趣旨が必ずしも私としても正しくつかめないので、なかなか御質問に対しては的確なお答えにならないと思いますが、仮に御質問が日米安保条約を破棄すべきであるというもし御趣旨であるとするならば、その場合は、さらに我が国の防衛につきましては現在よりも膨大な防衛力というものを必要とするのではなかろうかな、こういうふうにも思考されるわけでございます。しかし、このことは財政的な視点からしても、また近隣諸国に与える影響からしても適当とは考えられない、かように思うわけでございます。  また、仮に御質問が我が国の自主判断に基づき防衛政策を進めるべきであるという御趣旨であるとするならば、我が国は、従来からあくまでも自主的な判断のもとに防衛政策を進めてきたわけでございますので、今後ともこの方針を堅持してまいりたい、かように思うわけでございます。
  153. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 国際情勢は欧州を中心にして冷戦からデタントの方に大きく情勢を変化しておるということは、これは委員と私も同感であります。しかし、それだからといって直ちにアメリカ関係を薄めようとか、そういうようなわけにはまいらぬと思うわけでありまして、我が国は日米安保体制を堅持するということは変わらない原則でありまして、そして同時に、みずから適切な規模の防衛力を保持する、この原則は変わりません。政府としては引き続き自主的な判断のもとで防衛政策を進めてまいるわけでありまして、その自主的な判断とは、我が国の憲法及び専守防衛などというような基本的な独自の路線というものは守っていきたい、こういうわけであります。
  154. 串原義直

    串原委員 私は、ここの議論は深めていきたいのですけれども、きょうは時間がありませんけれども、今までの日米共同作戦体制というものをとってきた安全保障の立場と、もう二十年前と今日とでは随分違う、二十年、三十年前と随分違っております。こういうことを踏まえて、新しい立場で——私は、日米安保体制をきょうからやめろなんということを言っているのじゃありませんよ。それを踏まえる中で、しかし新しい情勢の中で、我が国独自の安全保障体制を考えるときに来ているのではないか、こういうことをきょうは強調させていただいたところであります。これは実は時間がかかりますから、きょうはこの提起を申し上げておきまして、改めた機会に申し上げることにいたしましょう。  そこで、ただいままで若干議論してまいりましたように、新しい国際情勢の変化を踏まえて次期防を見直して、できるところから軍事費を削減していくということが国民の期待に沿うという立場から、私は、新戦車について伺いたいのであります。  今年度の防衛計画によりますというと、何台か新戦車を調達するようでありますが、この新戦車一両の調達価格は、単価は幾らなのか、今年何両購入するのか、お示しください。
  155. 植松敏

    ○植松政府委員 お尋ねの新戦車につきましては、平成二年度予算におきまして三十両の必要予算を計上し、御審議をお願いしております。平均単価で申しますと、一両当たり十一・二億円になります。
  156. 串原義直

    串原委員 七四式戦車、これは八九年度予算の調達単価は幾らですか。それから、西独のレオパルトII、アメリカのM1A1は、およそ幾らぐらいになるのでしょうか。
  157. 植松敏

    ○植松政府委員 七四式戦車でございますが、これは平成元年度まで調達いたしております。平成元年度の予算におきましては五十六両調達いたしておりまして、一両当たり約三・九億円でございます。  それから、今お尋ねの外国の戦車の価格でございますが、これはなかなか正確な情報というのが得られません。こういったものを比較します場合には、当然のことながら、それぞれその装備内容、さらにその価格構成等を調べませんと正確なことを申し上げるわけにいきませんし、また、実際にレオパルトIIあるいはM1A1についての公表データも十分に得られません。ただ、御参考に私ども公刊資料、公刊されております資料の中で参考になる数字をいろいろ調べてみますと、こういった数字がございます。  例えばレオパルトII、西独の戦車でございますが、一九八六年の雑誌から得られた資料でございますが、五百六十一万ドイツ・マルクという数字がございまして、当時の為替レートで円換算いたしてみますと約四億五千万ぐらいに相当するのではないかというふうに思われます。  また、米国のM1A1につきましては、国防報告書等からはじき出してみますと、一九九〇年の国防報告に三百十万ドルという数字がございます。為替レートで見ますと、これは四億円台になろうかと存じます。また、この価格その他のものを最近の雑誌等を見ますと、この改良型でありますM1A2の戦車につきましては四百五十万ドルから五百万ドルぐらい一台かかるというような情報もございまして、現在の為替レートで申しますと約一両当たり七億円前後になるのではないかというふうに考えられます。
  158. 串原義直

    串原委員 今お話がありましたけれども、私が調査したところによる数字とは、西独の場合、アメリカの場合、ちょっと違いますね。専門誌によるともっと安いように見える。しかし、それはいいでしょう。  それにしても、この新戦車は従来の七四式戦車の約三倍になるわけですね。この三倍の高価な戦車、これは今年度の防衛力整備概要によりますと、戦車は、ことしの三十両入れるというと千二百五両だ、こういうのですけれども、この新しい戦車は順次かえていくのですか。
  159. 日吉章

    ○日吉政府委員 新戦車の調達の目的と申しますか、それは、現在保有しております戦車には六一式戦車と七四式戦車がございますが、この六一式といいますのは一九六一年に制式化いたしまして採用した戦車でございますが、かなり古くなって、現代の国際的な軍事技術の水準とかなりかけ離れておりますので、その戦車が損耗、更新の時期が近づいてきておりますので、その損耗、更新に充当したいということでございます。あわせて、ただいま申しましたように諸外国の現在の戦車の動向にも対応したような戦車で、この損耗、更新に充当したいというのが基本的な考え方でございます。
  160. 串原義直

    串原委員 これはしかし、金額的に見ましても、予算から見ても、従来の戦車とは大変な違いなんですね。この調達量、生産量の相違を、違いを考えたとしても、新戦車は余りにも高いと私は思う。こんな高い戦車、仮想敵国のない時代と言われる今日、従来の戦車の三倍もするような新戦車の必要性、これをどこに配置するのですか。その必要性をもう少し詳しく教えてください。
  161. 日吉章

    ○日吉政府委員 お答え申し上げます。  戦車の具体的な配備計画につきましては、これから順次、現在保有しております戦車の損耗状況等々を勘案しながら検討していきたいと思いますので、今ここで総括的にお答え申し上げられるような段階に至っておりません。  それから、戦車の必要性でございますけれども、この戦車は、私ども我が国が平時から保有すべき防衛力の水準を定めております大綱に基づきまして現在も戦車を保有しているわけでございまして、その戦車の損耗、更新に係るというものでございまして、各国、現代の社会、国際社会におきまして地上部隊の基幹的な戦闘力の中心、中核といたしまして戦車というものは必要欠くべからざるものでございまして、我が日本におきましてもそれは例外でございませんので、陸上自衛隊の基幹部隊の戦闘力の中核としてこの保有をいたしたい、保有する必要がある、かように考えております。
  162. 串原義直

    串原委員 どうも理由がはっきりいたしませんね。  そこで、私は、これは大蔵大臣に聞きたいと思う。今私は、高い戦車ですねということを指摘をいたしました。どうしてこんなに高いのかなと思いまして専門誌を見ましたところが、これはいろいろな意見がありますけれども、幾つか指摘がありました。  「ファミリー化による車体生産総数の増加等とそれによるコスト低減についての配慮が不足する」、あるいは「指名随意契約による調達は、競争条件が欠けるためにコスト低減のインセンチブ(誘因)が不足する」、あるいは「現行の調達システムでは、仮制式のシステムや実用実績のないままに調達するために、改修、改良の経費をコストに折り込んで原価として計算することを認め、結果的にコスト高を招くことになっている」等々、いろいろな指摘をされているわけですよ。  しかし、予算を編成する担当大臣として、私は、いずれにしても主力戦車の国産方針はどうしても動かせないと仮にいたしますならば、これはもう少しコスト低減のための方策について議論をしたり、予算編成等々のときに厳しい配慮がなければいけないのではないか、こう思うのですよ。そう思いませんか、大臣
  163. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今委員から、現在の情勢の中において戦車の保有の必要性から始められ、その中における新型戦車の採用についても御議論があったところでありますが、それにつきましては防衛庁側から御説明を申し上げたとおりであります。私は、詳細のその構成内容を十分存じておるわけではありませんけれども、事務方としては十分なチェックをした上でこれを必要と認め予算計上いたしたと存じております。
  164. 串原義直

    串原委員 そこで、私は、まことに高い戦車だな、高価な戦車だなと思うのであります。ところが、ある専門誌が指摘するところによりますと、この戦車は重量が五十トンですね。ところが、道路構造令によりますというと、橋梁等は十四トンあるいは二十トンというふうに設計されているわけですよ。日本の橋はこの戦車は通れない、こういうことですね。このことも専門誌は指摘をしております。多くの問題を抱えているというふうに指摘をしております。  それから、新戦車のクルーは六一式、七四式戦車の四人制から一人減の三人と省人化されたけれども、これが問題だ。つまり戦闘行動は自動装てん装置により三人で十分可能なんだけれども、戦車クルーの仕事はそれだけではないのだ、作戦会議、戦車警備、警戒、燃料補給等々戦車クルーの仕事量は非常に多く、とてもとても三人ではできないのである、今後の大きな課題となるだろう、こう言っているのですね。つまり、この戦車は高いということだけではなくて、日本の道路も通れないというほどの重量の重いものである。それから、この専門誌が指摘するように、防衛庁の人員にも大きな問題が出てくる、こういうふうに言っておるのであります。  このように、我が国の新戦車の開発、調達に関しては、その運用構想や調達のコスト、調達経過などにどうも私は胸に落ちない、落ちるものがない、納得ができない。特に、政府、防衛庁は装備の運用構想について秘密にしているという現状から、装備の開発、調達の妥当性について、その性能や数量、コストなどあらゆる角度からの国民的な討議を妨げていると思うのですよ。中期防衛力整備計画を策定作業中と聞くのですけれども、これらの兵器、つまり装備の調達あるいは整備につきましては、先ほどから申し上げてまいりましたように、国際的な情勢の分析、我が国の戦略等々を踏まえて、もう少し国民的な討議がいよいよ必要になってきているのではないか、こう思うのであります。防衛庁長官、どうですか。
  165. 日吉章

    ○日吉政府委員 大臣の方から国民的討議が必要ではないかという御質問につきましての御答弁はしていただきたいと思いますが、その前に、事実関係につきまして二点ばかりの御指摘がございましたので、それにお答えを申し上げさせていただきたいと思います。  新戦車の重量から見て、一般の道路とか橋は通れないのではないか、そういう通れないような戦車をどうして装備する必要があるのかというような御指摘があったかと思います。新戦車の輸送につきましては、これは砲塔部、車体部というように分割をいたしまして、大型トレーラー等によりまして道路輸送をするようなことができることになっておりまして、その点は十分輸送にたえ得るようにしてございます。  それから、従来の四人乗りから三人乗りにしたわけでございますが、この点につきまして本当に三人乗りでうまくできるのかということでございましたが、私どもは前々からも申し上げておりますように、できるだけ自衛隊員の省力化を図りたいと考えておりまして、その一環といたしまして、戦車につきましても四人乗りを三人乗りにしたわけでございまして、これは委員も御指摘のように、自動装てん装置を装備するということによりまして十分三人で対応できる、かように考えております。
  166. 石川要三

    ○石川国務大臣 確かに今御指摘の新戦車につきましての値段というものは、大変高価なものであるわけでありますが、なぜそういう高価なものが必要なのかということにつきましては、やはりこれは専門家ではありませんけれども、諸外国の戦車の技術の向上ということを考えた場合に、そういうふうな高価なものも配備していかなければならない、こういうふうに考えるわけでございます。そして、そういう高価な兵器の購入については、国民的な討議ということを触れられましたが、その内容につきましてはちょっとつかみにくいわけでございますけれども、私としては、やはり国防の基本方針あるいは国防に関する政府基本的な計画というものは、安全保障会議設置法に基づき、この安保会議に諮った上で政府が責任を持って決定すべきものと、かように理解しているわけでございまして、その策定したものにつきましては、もちろん国民の理解と協力なくしては国防は成り立たないわけでありますので、国権の最高機関である国会において十二分に御審議をいただく、こういうことが要するに先生の御指摘のことになろう、かように思うわけでございます。
  167. 串原義直

    串原委員 実は時間がなくなってきますので、残念ですけれども。私は装備は必要でないと言っているのじゃありませんよ。必要なものは必要でしょう、しかし余りにも高いじゃありませんか、こんなに高いものを急に必要なんでしょうか、デタントの時代に、こう言っているわけであります。ですから、どうしても必要ならばもう少しオープンにして、それは秘密にしなければならぬことも若干あるでしょう、それは理解しますよ。それにしてもオープンにして、国民的討議が必要ではないか。話し合っていかなければいけないじゃありませんか。そういうことを話さなければ国民の皆さんは理解してくれませんよ。  今安全保障会議等で相談していきますという話があった。それはそうでしょう。けれども、そういう大きな会議では、例えばP3Cを何機買いましょう、必要なんです、まあこの程度の話でしょうな。どうしてこれが高いのか安いかなんという議論はしていないはずだと思う。でありますから、私はきょうこの場でこれだけで時間をとるわけにいけないけれども、強く強く政府に求めておきますことは、必要なものは必要でありましょうけれども、なぜこんなに高いものが必要だと議論をする場がもう少しオープンになされなければいかぬ、持たれなければいかぬ。方法はどうするかはわかりませんよ、あなた方が考えればいい。考えればいいけれども、もう少しオーブンに討議をする機会を持たなければいけませんよ。強く強くきょうはそのことを強調させていただいて、次に移ります。  そこで農業問題に触れるのですけれども総理は所信表明演説でこう言いました。「農業が自立できるよう、確固たる長期展望のもと、誇りと希望を持って農業を営める環境をつくり上げてまいります。急速な高齢化が進んでいる今、進取の気性に富んだ後継者を育成する」こう言っているのですね。これはごあいさつとしてはまことにすばらしいのですけれども、実はとてもそんな内容じゃない、日本農業は。今まさに穀物自給率三〇%を割ってしまった。農家の中核農家は常に百万戸必要なんですということを農林省は従来から言ってきた。それが今日、資料を見ますというとだんだん減ってまいりまして、この五年ほどの間に七十万二千戸に減ってしまった。大変なことですね。それから、資料を見ますと、学卒の農業後継者、何と去年は日本じゅうで二千百人なんですよ。こんな実態で総理が言われるような、こんなすばらしい演説をなさったような農業日本に横築できるでしょうか。どうやろうとお考えになっているのですか、まずそれを伺います。
  168. 山本富雄

    山本国務大臣 お答えいたします。  総理の演説の例を引かれて今お話しでございますが、総理は理想をかざしながら日本農業の将来について展望を語った、こういうふうに私どもは考えております。  そこで、今さら先生農業のノの字から申し上げる必要もなかろうと思いますが、いずれにしても将来に向かって誇りを持ち得るような、希望を持ち得るような農業を構築しなければならない、農村をつくり上げなければならない、こういうことで私どもさまざまな施策をそれなりに総合的に推進をしてきたということでございます。  そこで、何もやっていないじゃないか、こういうふうな御指摘もございましたが、平成二年度につきまして、これは予算を成立をさせていただきまするならば、例えば緊急焦眉でございます、今数が減っている、こういうお話でございますが、この後継者づくり、特に都市と農村との交流を非常に農村の青年あるいは女性も含めまして望んでおるというふうな希望もございます。そこで、まちとむらの若者交流促進事業、これを新しくとにかく始めようということで、これも予算の中に盛らせていただいた。それからまた、組織の面でございますけれども農業後継者対策室というのも新たに設けまして、そして、遅いと言われればそれまででございますけれども、しかし、将来に向かってできるだけ後継者の育成について、ここを中心にして進めてまいろうというふうなこと等でございます。  今後とも、いろいろなハンディはございます、ございますけれども、しかし農は国のもとでございまして、これを続けていくことが日本の将来をより明るくしていく、支えていくということでございますから、さまざまな工夫を総合的に施しつつ、農山村の発展のために、特に後継者に希望を持っていただくような具体的な施策を予算の裏づけをもって進めてまいりたい、こう考えております。
  169. 串原義直

    串原委員 先ほど申し上げたように、中核農家は将来ともに百万戸必要ですというのが政府の方針であった。私もそう思う。これが五十万戸、三十万戸になったら大変なことなんですよ。百万戸中核農家を維持するとするならば、一世代三十年で交代するとした場合に、農業後継者は三万三千三百人は毎年必要なんです。それが二千百人しか学卒の農業後継者はいない。必要数の〇・〇七%しかない。これは大変なことですよ。とにかく農業後継者が、これは事ほど演説するほど簡単じゃないことは私も承知している。しかし、これは国を挙げて、政府を挙げて取り組まなければならぬ重要な問題です。農業後継者が少なくとも一年で二、三万人ずつは確保できるような農業情勢をつくり上げようじゃありませんか。機会を改めて私は質問いたしますけれども、強く要請をしておきたいわけです。  そこで、通産大臣お見えいただきました。忙しいところ済みませんでしたが、実は伺いたいことは、前の松永通産大臣は、米市場開放容認発言をいたしまして大騒ぎになったわけです。この発言は衆参の米自由化反対の国会決議、あるいはこの決議に基づいて政府がウルグアイ・ラウンドに提出いたしましたいわゆる日本提案と矛盾するわけですね。そういうことで大騒ぎになった。一部には、一部というか大勢は、もっともっと厳しい対応を総理は前大臣にとらなければいけなかったという声が非常に高かったわけです。私もそう思うくらいです。  そこで私は、あなたは貿易にかかわる、通商にかかわる担当大臣ですから通産大臣に聞くのですけれども、まさか新通産大臣は前大臣と同じような発想や発言をなさったりお持ちになるということはないだろうと思う。大事なところだから確認しておきたいと思うのです。どうですか。
  170. 武藤山治

    武藤国務大臣 私は以前農林水産大臣も務めさしていただきましたし、米に関する国会の決議が両院で行われていることも十分承知をいたしておりますので、その趣旨を体して慎重にこの問題については対処していきたいと考えております。
  171. 串原義直

    串原委員 慎重に対処と大臣言われたけれども、つまり国会決議を踏まえて完全自給という政府農林省の方針をともに守っていきます、通産省という立場でも、こういうことでしょう。そういうことですか。
  172. 武藤山治

    武藤国務大臣 国会の決議を尊重して対処してまいります。
  173. 串原義直

    串原委員 そこで、外務大臣に伺います。  我が国は世界第一の農産物の純輸入国でありまして、基礎的食糧の輸入制限をガット協定上明確に認めさせるという提案をガット農業交渉へ我が国政府が提示したのは当然であると思うのでございますが、特に中長期的な視点に立つなら、食糧安保の問題が国内で真剣に論議される必要があります。食の供給が安定することこそ国民生活の基盤であり、外交上も必要条件であるというふうに確信をいたします。我が国の食糧安保の問題に対する外務大臣基本的な考え方をお示しを願いたい。特にあなたは四月二十日、ウルグアイ・ラウンドの非公式閣僚会議に出席した際に、若干発言をなさったということもありますから、この際明確にお答えおきを願いたい。
  174. 中山太郎

    ○中山国務大臣 委員から明確に外務大臣として答えろということでございますから、今から、日本政府を代表して外務大臣として発言をいたしました言葉を、議事録からそのまま御紹介をさせていただきたいと思います。  「農業についても、我が国はこれまで多くの品目について輸入アクセスを拡大してきており、世界最大の農産物純輸入国として安定した市場を提供し農業貿易の安定的発展に大きく貢献してきています。しかしながら、その結果、我が国の自給率は、四九%と著しく低い水準となっており、「食糧安全保障」への配慮の必要性が不可欠となっています。国内における農業役割には、更に、国土・環境保全、雇用、地域社会の維持等極めて重要なものがあり、「食糧安全保障」を含むこれら「非貿易的関心事項」への配慮は不可欠と考えます。 このような状況にあることから、昨年来、我が国は、「基礎的食糧」に関し、「所要の国内生産水準を維持するために必要な国境調整措置を採ることが認められるべし」との提案を行ったところであり、各国の理解を得たいと思います。」このように発言をし、この非公式閣僚会議の議長を務めましたメキシコの議長はその報告で次のように記載をいたしております。「何人かの閣僚は食糧安全保障問題について懸念を表明した。彼らは均衡のとれたパッケージの中の一つの要素として必要としている。」このように報告をいたしております。  以上でございます。
  175. 串原義直

    串原委員 つまり、大臣我が国の方針は、米は完全自給でいきます、そういうことですよ、これからも各国にそう訴え続けていきます、こういうことですね。
  176. 中山太郎

    ○中山国務大臣 さようでございます。
  177. 串原義直

    串原委員 そこで、外務大臣にさらに伺いたいわけでございますが、先ほども触れましたが、我が国政府の基礎的食糧論を中心とする提案について各国の理解と支援を求めるために具体的にどのような活動をなさってきたかということと、そして今後、このような活動を外務大臣の立場でどうお進めになっていきますか。
  178. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今日までの経過につきましては、経済局長から御報告をさしていただきますが、私ども日本政府としては、引き続きただいま申し上げましたような基本的枠組み、考え方でガット・ウルグアイ・ラウンドの会議日本の代表団に指示をいたす考えであります。
  179. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 先生先ほど御指摘いただきました昨年末の農業グループにおける我が国の提案を提出いたしました際に、私どもからアメリカ、EC及び輸入国に対してジュネーブにおいてそれぞれ事前に説明いたしましたし、その後、二国間協議その他あらゆる場を通じて我が方の考え方を説明しております。外国のプレス等につきましても種々の機会をとらえまして我が国の立場を説明している次第でございます。先ほど先生が御指摘ありましたように、日本は世界最大の農産物純輸入国として安定した市場を提供しておるわけでございまして、農業貿易の安定的発展に大きく寄与している、こういう認識に基づきまして私どもは在外公館を通しまして政策広報の資料を配布するとか、また主要国におきましては大使及び館員による講演等を積極的に使いまして、我が方の立場につき理解を求めるように努力しておる次第でございます。今後ともこのような努力は続けていきたいと考えております。
  180. 串原義直

    串原委員 そこで外務大臣、このガット農業交渉は多国間交渉ではありますけれども我が国政府の提案に最も強く異論を持っているのはやはりアメリカですね。したがいまして、私は、アメリカ政府及びアメリカ議会に対して我が国の基礎的食糧論、この提案の理解と支援を求める、このために、この際超党派で議員団をアメリカに派遣して努力をする、こういう配慮がいよいよ必要なときになってきたんじゃないかと思うのです。御所見を伺います。
  181. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今日までも政府間レベルあるいは各級でいろいろとこの日本の状況等の説明に努めてまいりましたが、先生指摘のことも極めて有効なことであろうと考えております。
  182. 串原義直

    串原委員 ですから大臣、そういうことをおやりになるおつもりはありませんか。
  183. 中山太郎

    ○中山国務大臣 院の問題ではなかろうか。政府の主宰することではないという御趣旨でお話しになっていただいていると思いますので、院の御決定に政府は従いたい、このように考えております。
  184. 串原義直

    串原委員 いま一つ、多国間交渉でありますから、幾つもの交渉項目がありますね。お聞きいたしますところ、それぞれのグループがある。アメリカ、EC、ケアンズ・グループ、それぞれのグループがあって農業問題等も討議をされているようであります。そうでしょう、それは。けれども、これは農業新聞にきょうも出ていることでありますけれども農業団体が北欧へ参りまして話をしたところが、食糧安保に理解を示して、お互いに頑張ろうということであったというふうに報道されている。そういうこともありますだけに、食糧安保論をとっている日本の立場と同調し得る国々と一つのグループをつくる、話し合いができるグループをつくる、そういう立場で今後ウルグアイ・ラウンドの場で努力をしていくべきではないか、こう私は思うのです。いかがでしょうか。
  185. 中山太郎

    ○中山国務大臣 委員お尋ねの、食糧安保論を主張している国と日本とが協力をし合いながらみずからの考え方を広めていくということは重要であり、私が先般出席いたしましたメキシコにおける非公式閣僚会議におきましても、スイス、オーストリア、このような国の代表者は食糧安保論というものを申しておったことをこの機会に申し上げておきたいと思います。
  186. 串原義直

    串原委員 そこで、これは最後の質問になりますけれども建設大臣、多目的ダムが全国にありますね。私はこれは非常に大きな効用を果たしていると思う。直轄ダムやあるいは補助ダムについての数が載っておりますところの資料もありますけれども、これを議論をしている時間はございませんが、非常に全国に多い、機能もしている。この多目的ダムというのは、上水道用水、工業用水、農業用水等々にダムから出る水を利用しているということが非常に多いわけですね。つまり、それらの水は住民の生活に直結しているわけですよ。  ところが、重大なことは、このダムを設計いたします場合に、百年計画でおよそ堆砂量を設計しているというふうになっているのは御承知のとおりであります。ところが、不幸なことに災害があったり山が荒れましたときに、百年計画の堆砂量が十年で満杯になるということが十分にあり得るわけです。あり得るではない、現にそういうことが全国各地に起きている。これは恐らく大臣もお聞き及びのところであろうというふうに思う。このダムの機能が、百年計画で地域の住民が利用できると思っていたのが十年で堆砂量が満杯になってダムが機能しないということになるなら、これは事は重大なんですね。これは今まさに建設省が腹を据えて、新規事業として全国各地における機能しなくなりつつあるダムの機能復活のために、堆砂排除のために新事業を起こすべきではないか、こう思う。いかがでしょう。
  187. 綿貫民輔

    綿貫国務大臣 私の選挙区も富山県で川の物すごく多い、ダムの多いところで、実情をよく知っております。  今御指摘のダムの機能を保全するとかあるいは向上させるということで、堆砂排除事業は積極的に進めていきたいと思っております。
  188. 串原義直

    串原委員 積極的に進めていくという答弁でございます。だが、具体的に今日ではきちっとした制度がないわけですよ。ですから、積極的に進めていきたいという大臣答弁でありましたから再度伺いますが、少なくとも平成三年度から新規事業としてこの種の事業を起こしていこう、こういうことで取り組もうじゃありませんか。いかがです。
  189. 近藤徹

    近藤政府委員 堆砂排除事業につきましては、従来からも各種の制度を活用して進めてきたところでございます。例えば昭和五十四年度に創設しました貯水池保全事業におきましては、民間の方が砂利採取を可能にするために貯砂ダムあるいは進入路の設置等を行ってまいりました。また、昭和六十二年から特定ダム堆砂排除事業によりまして、ダム建設事業予算の中で排砂事業を行っておるところでございます。今後もこの方針で進めてまいりたいと考えております。
  190. 串原義直

    串原委員 私は、六十二年度から始まっていることも知っているわけだ。ところが、この事業ではそれぞれの機能しなくなったダム全部に適用する事業制度じゃないでしょう。機能を失いつつあるダム機能回復のためにむしろ新しい制度をつくろうじゃないか、こういうことを私は言っているのですよ。いかがです。
  191. 近藤徹

    近藤政府委員 従来の事業でも十分対応可能と考えておりまして、なお予算の確保に努めまして、努力してまいりたいと考えております。
  192. 串原義直

    串原委員 それでは、従来の事業で今申し上げてまいりました機能を失いつつあるダムの堆砂排除事業等を含めて、機能回復事業はどこのダムにも適用しますか。
  193. 近藤徹

    近藤政府委員 御承知のとおり、先生もおっしゃいましたように、各ダムについてはあらかじめ堆砂容量を見込んで計画しております。ただ、さまざまの災害その他によって堆砂容量を食い込んで機能が著しく低下しているダムにつきましては、このような事業で対応していきたいと考えておるところでございます。
  194. 串原義直

    串原委員 時間がもうありませんから端的に聞きますが、百年計画で堆砂計画をした、それが十年で埋まってしまってほとんど機能を失いつつあるダムについては、今の砂を取る、除く、それぞれの事業建設省の公共事業として全部取り入れられますか、取り入れてまいりますか、明確にお答えください。
  195. 近藤徹

    近藤政府委員 機能を喪失しているものについては、建設省の公共事業で取り上げてまいりたいと考えております。
  196. 串原義直

    串原委員 それでは、時間が参りましたから終わります。
  197. 越智伊平

    越智委員長 これにて串原君の質疑は終了いたしました。  次に、日笠勝之君。
  198. 日笠勝之

    日笠委員 文教委員会を行っているようでございますから、まず文部大臣にお聞きを申し上げたいと思います。  実は、小中高校生の、いわゆる子供の成人病が大変ふえておる。例えば子供用の血圧測定基準を用いても、小中高校生の二、三%は高血圧の疑いがある、こういうふうなデータも出ておるわけでございます。そこで、実は昭和六十三年の三月一日のこの予算委員会におきまして、私このことについて御質問を申し上げました。当時の中島文部大臣からは大変前向きな、積極的な御答弁をいただいております。確認のためにちょっと読んでみます。「心臓病の原因にもなるものが高血圧でございますから、糖尿あるいは高血圧の一つに血圧をはかれ、こうおっしゃる、この御提案は一つの識見といたしまして取り入れてまいりたい、今検討を進めておりますが、その中に入れてまいりたい、こう思っております。」こういう力強い前向きな御答弁をいただいたわけでございますが、その後実行されておるとは聞いておりませんが、現況はいかがでございましょうか、お答えいただきたいと思います。
  199. 保利耕輔

    ○保利国務大臣 時間について御配慮をいただきましてありがとうございます。  先生指摘の話につきましては、私も議事録を拝見させていただきました。大変御熱心にお取り組みをいただいておりまして、敬意を表したいと思います。  この問題につきましては、日本学校保健会の健康診断調査研究委員会に検討をお願いしているところでございますが、同研究委員会におきましては、今後専門家から成る小委員会を設けまして、そしてさらに具体的な検討を経た上で最終の報告を取りまとめるという段階に来ております。文部省といたしましては、この最終報告を待ちまして、この問題に対する基本方針を検討してまいりたい、このように考えております。  具体の問題について、やや詳細にわたりますので、体育局長が来ておりますから御説明をさせます。     〔委員長退席宮下委員長代理着席
  200. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 ただいま大臣からお答え申し上げましたように、糖であるとか高血圧であるとかいった若年性成人病の予防という観点から、どういうふうな検査方法ができるかということで検討を行っておるところでございます。しかしながら、この問題は、先生も御高承のとおり内科、小児科といった臨床部門とそれから公衆衛生、予防医学といった部門、なかなか意見がまとまらないわけでございまして、実施方法であるとか制度管理の統一調整の必要性とか、また検査の効果と限界といったような点について議論がありますので、先ほど大臣がお答え申し上げましたように、さらに小委員会を設けて専門的な検討を深めたい、このように考えておる次第であります。
  201. 日笠勝之

    日笠委員 費用対効果の問題を取り上げられましたけれども、実は、既に先駆的にこの問題についてやっておられる地域がございます。すなわち、学校において、特別の学校を指定いたしましてスクリーニングということでやります。その中でおかしい方だけ精密検査して、さらにコレステロールが高いとかまた血圧が高いという方は、食事療法を徹底して栄養士さんとか学校にいらっしゃる保健の先生方とタイアップをいたしましてやりますと、二、三年でもとへ戻るのですね。ですから、今医療費というものが膨大に伸びておる、この今のうちに高血圧なりまた心臓病の疾患を早く見つけてあげることが結局は予防になります。ほっておくとこれが成人まで続いていくわけですね。そうすると、結局は予防に費用をかけるか、いざ病気になってからかけるか、この費用対効果を言いますと、当然これは予防にお金を使った方が総トータル的な医療費というものは抑制もできるわけなんです。  そこで、学校保健法もできましてもう三十年以上たっております。十一、二項目の健康診断項目がございますけれども、やはりその中に、尿はとって検尿しますが、糖尿はやらないのです。糖尿だけでもやるとか、また血圧も今、市町村の窓口に行っても腕だけ突っ込めばすぐディジタルでぱぱっと数字が出てきますね、そういうものが学校に一台あればいいわけですし、そんなに費用もかからないのではないかな、かように思います。  最後に、時間もございませんから文部大臣に、ではいつごろまでをめどにこういうふうに学校保健法施行規則を変えてその子供の成人病対策といいましょうか、いわゆるこれも一つの健康教育でございますから、そのめどと御決意をお聞きしておきたいと思います。
  202. 保利耕輔

    ○保利国務大臣 委員の御指摘でございますから、できるだけ早くそういうことが実現をするように努力を重ねていかなければならないと思いますが、医学的な問題も入っておりますし、その分野の討議も重ねていかなければなりませんから、小委員会の結論ができるだけ早く、報告ができるだけ早く出るように希望いたしておるところであります。
  203. 日笠勝之

    日笠委員 体育局長でいいのですけれども、どこかモデル的に、何でもモデル指定というのがありますね、モデル的に何校かやってみて、その成果をもってその小委員会なりに諮っていく、こういうことでモデル校をつくる、そういうようなお考えはないのでしょうか。
  204. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 先ほど先生指摘になりましたが、既に幾つかの地区ではそういった検査をやっておるということも聞いておりますので、まずはどういう地域でそういう検査をやっておるのか、その検査の、先生指摘のように実績がどういうものであるかというのを調査をいたしましてそれを小委員会に諮ってまいりたい、このように考えております。
  205. 日笠勝之

    日笠委員 では文部大臣、結構でございます。  次は、NTTのいわゆる電話案内番号の問い合わせにつきましての有料化のことでございます。  これは既に三月の二十九日に、郵政省はNTTから申請のあった番号案内については受益者負担の原則を導入ということで、原則といたしまして一番号案内ごとに三十円課金をするということを認可をしたわけでございます。  そこで、最近、選挙が終わるのを待ったかのようにいろいろなものがどんどん値上げをされていく。例えばNHKも料金が上がりました、受信料が上がりました。また、タクシーも近々上がろうとしております。国公立の授業料も上がりました。これも一種のサービスであるわけでございますが、三十円ということで、一種の値上げでないかと私は思うのですが、今の時期にどうして三十円のいわゆる謀金をするのか、このことをまずお聞きしたいと思います。
  206. 森本哲夫

    ○森本政府委員 一〇四の費用負担のお話でございますが、御案内のとおりこの制度、御指摘のとおりこれまでずっと無料でやってきた次第ではございますけれども、この年間のコール数といいますか案内についてのお問い合わせが、NTTの調べでは年間に十二億五千万回ある、オペレーターがそのために二万三千人全国で従事をしておる、全体の経費が二千四百億円近くもかかる、しかもその利用実態が非常に偏っておって、大半の方は御利用になっていない、特定の方が頻繁に御利用になる、こういう問題がございますものですから、いわば費用負担の公平を図る、受益者負担の考え方でいかがか、こういうNTTからのお話がございまして、できるだけNTTも経営効率化を進めたい、こういう視点からのお話がございまして認可申請がございましたが、このたび審議会でこれについてはやむを得なかろう、ただそのかわり、これによって浮いた費用あるいは新たに増収になる部分は料金値下げに回せ、こういう観点で今回の運びになった次第でございます。
  207. 日笠勝之

    日笠委員 ここに朝日新聞の投書がございます。これは西宮の方でございますけれども、概略を申し上げますと、一〇四番で長銀の〇〇支店の電話番号を尋ねた。そして、その番号は、と機械から答えが返ってきた。かけてみるとどうも話していくうちに朝銀であることがわかった。このチョウは朝鮮銀行の「朝」なんです。私がかけたかったのは長期信用銀行のことだった。それでもう一度かけ直して、そしてこの正確な電話番号を聞いて電話をかけた。こういうことで、間違いということもあるわけですね。  それともう一つ、回線使用料といいまして、まあ俗に言う基本料金も取っております。先ほど局長おっしゃったのは、偏った方と言いましたね。結局偏ってどんどんどんどん、一つのダイレクトメールなんかかもしれませんけれども、そういう方がどんどんどんどん聞く、その方の負担が、余り問い合わせをしない方に結局は負担になっておるわけですね。そうなれば、私はぜひ、家庭用の電話であれば一電話機でまあ三回か五回ぐらいまでの問い合わせは無料にする、間違いもあるでしょうし、偏った方だけがする、それのしわ寄せが余りかけない方に負担になっちゃいかぬわけですから、そういうふうに、ぜひこれは三回ないし五回までの問い合わせは無料、それ以上は取りますよ、こういう御配慮があってもいいんじゃないかと思うのですが、郵政大臣、これはもう政治的な決断ですからね、どうですか。
  208. 深谷隆司

    ○深谷国務大臣 日笠委員の御指摘で、かけたところが間違いであった、三十円そのまま取られた、だからまあ一回か二回無料化せよというお話でございますが、実はその投書を私ども読みまして内部でもいろいろ検討させてみたんですけれども、現在のNTTの交換機の技術的な制約からいくと、最初の、毎月一回か二回までは無料で別扱いするというのが技術的にあるいは物理的に困難だという状況であるようでございます。十分に検討しなければならない課題でもございますけれども、間違えたときにどうするか。しかし、頭から毎月一回か二回無料にするというのは技術的に物理的に現在は無理だという、そういう回答が返っておりました。
  209. 日笠勝之

    日笠委員 クロスバー交換機はできないわけですね。まだ四割ぐらい残っておるんでしょうか。だから、できればディジタル交換機にかえた時点でやるとか、そういうペンディングで、将来できたときにやるということでもよかったのではないかなと、かようにも思います。ですから、じゃ全国ディジタル交換機になったときにはそういうことも、いろいろ苦情も来たり問題も起こってくるでしょうから、検討課題にしていただくということにしておきたいと思います。  それから厚生大臣、この一〇四の問い合わせが無料になる方々がいらっしゃるわけですね。ところが、その該当にならない例えばハンセン病の方であるとか、この方々の場合、ちょっとお聞きいたしますと、七割ぐらいの方は該当になるんじゃないか、あとの三割ぐらいの方はどうも該当者じゃないような気がする。同じ療養所の中でその該当を受ける人と受けない人という、こういう差が出てきますね。もう御存じのとおり、これは療養所でございますから。そういう差別が出る、こういうことも考えられます。それから精神薄弱者、薄弱児、三十数万人いらっしゃると言われています。こういう方々に聞きましても、ハローページをいただいても字がわからない、しかし話はできるんだ、電話ぐらいかけられる、こういう方々もいらっしゃるわけですが、また難病患者の方もいらっしゃいます。お聞きしますと、それぞれの中央の団体から厚生省の方に、ぜひ一〇四の番号案内は無料にしていただきたい、こう要請をした、こう言うんですが、厚生省はそれについてどうお取り計りをなさったんでしょうか、お聞きします。
  210. 加藤栄一

    加藤(栄)政府委員 今御質問のありました各障害者の方々、特に耳の聞こえないお方などについてはそれぞれの団体で、まあほかの方に頼まれるようなカードをお持ちになるとかいろいろ配慮はしておりまして、厚生省の方でもそういうものを推奨するようにいたしておりますが、一〇四の件につきましては、それぞれの団体からの御要望につきましては現在慎重に検討してまいりたい、かように考えております。
  211. 日笠勝之

    日笠委員 現在慎重に検討と言うたって、もう十二月からやろうとしておるわけですが、じゃ、郵政省さんの方はそういう方々も今後検討の対象に加える余地がまだあるんでしょうか。
  212. 森本哲夫

    ○森本政府委員 今回の有料化といいますか費用負担の適正化に当たりましては、今お話に出ていますように、電話帳によって自分のかけたい電話を確認するということがいろいろな障害によって不可能である、あるいはまた著しく困難である、こういう方々には当然のことながら何らかの対策を講じる必要があるということで、今NTTの申請にはこれは無料扱いにする、こういうことに相なっておる次第でございます。  お話しの、いろんなグループの方で障害なり疾病をお持ちの方でありましても、今の予定ではこうした障害の事実、視覚障害がある、あるいは上体が不自由でおありになる方、あるいは体のしんの方が御不自由で電話のところまで歩み寄れない、こんな障害を持たれた方を特定いたしまして、したがいまして、今お話しのような方々であってもこういう障害に具体的に該当しておれば、当然のことながら無料にさせていただく、こういうことになっているわけでございます。  ちょっとくどいようでございますが、端的に申すれば、電話帳を引いてかけることが非常に困難または著しく難しい方あるいはそのことが客観的に確認できるということが必要でございますので、以上のような形で進めようといたしておるところでございます。
  213. 日笠勝之

    日笠委員 どうも厚生省さんの言うことは違いますね。じゃ、厚生省さんの方はそのことを一度強く要請すべきだと思いますね。  今おっしゃいましたハローページの電話帳を見てもわからない方、精薄の方わかりませんですよ。しゃべれるんですよ、電話かけていますね、そういう方々は入れる余地がまだありますか。療育手帳というのを持っておられますから、精薄の方は。どうですか、見てもわからないでしょう、ハローページ見ても。これはもう、そうですね、大臣の決裁ですね、検討してください。
  214. 深谷隆司

    ○深谷国務大臣 さっき局長から申し上げたように、有料化に当たってどういう方たちを引き続いて無料化にしていくかということで随分いろんな議論がなされたようであります。原則として、今申し上げたように、自分で探せない人たちは引き続いて無料でいこうではないかという原則になったわけです。しかし、今先生が御指摘いただいたそういう難病をお持ちの方々というのは、精神的な問題の方も含めてですが、やっぱり検討の余地は私は十分あるだろうと思うのです。これは本来社会福祉全体の中で考えるべきことだと思うのですけれども、私はこの適正化、つまり実際に実現した後も継続的に実施後の状況を見ながら検討していくということは大事だと思いますので、そのような指示をNTTにさせていただきたいと思います。
  215. 日笠勝之

    日笠委員 ぜひひとつ、できれば実施する前にもう一度検討していただくということがありがたいのです。精薄の方は療育手帳を持っておられますからすぐわかります。ぜひひとつ前向きにこれは御検討いただきたいと思います。  それから、認可されたときの条件がございますね。「値下げによる利用者への還元」というところで、いわゆる一〇四番の「費用負担の適正化に係る収入増及び経費削減」、これはNTT全体で人員整理なんかの問題も入っていると思うのですが、「経費削減の効果については、通話料金の値下げにより利用者への還元を図る」とあります。これも、通話料金の値下げも当然大事でございますが、その根っこにある回線使用料、この回線使用料も諸外国に比べて安い場合もあれば高い場合もありますけれども、この年間一兆円と言われております回線使用料も値下げをする検討の対象に入れるべきではないか、このように私は思うのです。そうしないと、いわゆる電話をしょっちゅうかけてサービスを受ける人、それこそ独居老人か何かで月に何回もかけない人、これは同じなんですね、根っこの回線使用料は、基本料金ですから。そういう意味では当然今後値下げによる利用者への還元は通話料の値下げのみならず回線使用料の値下げも検討する、こういうふうに思うのですが、これは郵政大臣いかがでしょうか。
  216. 深谷隆司

    ○深谷国務大臣 お答えいたしますが、先生指摘のように、電話料金というのは、回線使用料つまり基本料金と通話料金から成っているわけでございます。通話料金は、御案内のように、かけるたびに費用が重なっていくわけです。今回の場合も、電話をかける有無にかかわらず固定的にかかる回線使用料とそのたびにかかっていくという電話料金と区別して考えた場合、やはり番号案内の費用というのは通話料金で、その部分が三十円となるわけでございますので、従来から固定的にかかる費用を負担していただいている回線使用料ではなくて通話料金で判断をしていくということが適切ではないだろうか、こう思うわけであります。  電気通信審議会からも、番号案内の費用負担の適正化に係る収入増と経費節減については、通話料金の値下げにより利用者への還元を図る、こういう答申が出ておりますので、私どもも通話料金の値下げに回すのが適当であろうと考えております。
  217. 日笠勝之

    日笠委員 では、時間の関係で次に参ります。郵政大臣、まだありますから、ちょっとお待ちくださいね。  これは、精神薄弱者、難病患者の方々の旅客運賃の割引制度をぜひ適用していただきたいということでございます。  本年二月に内部障害者の方に運賃の割引制度が適用されました。まことに結構なことだと思います。しかし、十五年来、例えば全日本精神薄弱者育成会なんかは十五年にわたって一生懸命運動してきたわけでございますけれども、残念ながら適用外ということになっておるわけでございます。しかしながら、政府が昭和五十七年四月に設置いたしました障害者対策推進本部において、昭和六十二年の六月には、長期計画の後期重点施策として、生活環境の改善について、移動、交通対策のうち「移動・交通に係る経費負担については、一般利用者との均衡等にも配慮しつつ、必要な軽減措置に努める」こうはっきりとあるわけでございます。  そこで、精神薄弱者、薄弱児、難病患者の方、それぞれ何人ぐらいいらっしゃいましょうか、そして、もしこの運賃割引制度を内部障害者と同じように適用した場合は、推定それぞれ幾らぐらいの割引額になるのでしょうか、お答えいただきたいと思います。
  218. 中村徹

    ○中村(徹)政府委員 お答え申し上げます。  私どもで把握しております精神障害者及び難病患者の数は、合わせて約五十万人弱というふうに私どもは把握をいたしております。  それから、それがどのくらいの減収額になるかということがお尋ねだと思いますけれども、これはそれぞれによって違うかと思いますけれども、二十億円程度ではないかというふうに考えております。
  219. 日笠勝之

    日笠委員 以前は、旧国鉄の場合は大変な赤字でございまして、そういうことはできない。しかし、最近のJR各社は黒字で大変大増益ということでございますし、フルムーンなんというさまざまな割引制度を既につくっております。ですから、私はこの際、JR、民鉄、航空会社も含めてもう一歩御協力をお願いしてみたらどうだろうか、かように思いますが、いかがでしょうか。
  220. 中村徹

    ○中村(徹)政府委員 現在、身体障害者に対する運賃割引というのは、先生よく御承知のとおり、割引によります減収というのは事業者の負担になる、言いかえれば一般的にほかの利用者の負担によって賄うということになっているわけでございます。ただ、私どもの考えでは、やはり本来こういう公共的政策の遂行のための費用というものを他の利用者の負担によってやるということについては問題があるというふうに考えております。  ただいまお話のございましたように、内部障害者に対する割引制度を適用するということについては、長い間国会からの御請願もございまして、私ども検討事業者を指導してやっと実現にまでこぎつけたという状況でございますので、やはり現状におきましてはそのようなことを拡大していくということについては困難があるというふうに考えております。
  221. 日笠勝之

    日笠委員 そうしますと、確かに民間会社にこれ以上の負担をおかけするのはというのはわかります。わかるような気がします。そうなってくると、これは国の補助、国の方の予算措置で助成をしていかなければならないのではないか。  そこで、大蔵大臣。厚生大臣も運輸大臣も御経験をされておられるわけでございまして、当然そういうこともよく御存じだと思いますが、どうなんでしょう、こういう精神薄弱者、薄弱児または難病患者の方々にほかの障害者と同じように国の助成で割引をやったらどうだろうか。実は前任の運輸大臣の江藤大臣、私昨年十二月に要請に行きましたところ、本来は社会福祉政策として国がやるべきなんだ、だからもう運輸省に来てもらっては困るのです、どうぞ大蔵省さんにお願いします、こういうふうにおっしゃっておられましたので、ぜひその点の御見解をお聞きしたいと思います。
  222. 津島雄二

    ○津島国務大臣 日笠委員指摘のとおり、ハンディキャップのある方々に広範な分野でいろいろ配慮をしてさしあげていただきたいというのは私ども基本的な願いでございます。ただ、先ほどのNTTの場合もそうでございますし、それからJRの場合も運賃の割引の問題等について、公共交通機関とか通信機関とかの運営に責任を有する方々に配慮をお願いをするという立場なものでございますから、そこに当然技術的ないろんな問題もおありであろう。私どもはこれまで、例えば運賃で配慮をしていただいておることは大変ありがたいというふうに思っておりますけれども、それではああしてほしい、こうしてほしいということまで踏み込める立場にはないわけであります。しからば、こういう方々に対してどういう施策で対応しているかと申しますと、やはり基本的には各種の福祉施策であるとか税制であるとかいう福祉全般で、精薄の方であるとか障害者の方であるとかにいろいろな基本的な政策を組み合わせて配慮をしてさしあげるというのが基本ではないであろうかというふうに考えておりますので、御理解をいただきたいと思います。
  223. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今、委員が御指摘になりました問題は、たしか昭和四十四年から五年にかけまして障害者対策について基本法をつくろうということで超党派で論議をいたしました当時から、社会労働委員会を中心に非常に問題になった部分でありました。しかし、結局なかなか手がつきませんでした最大の原因は、身体障害者の場合と違い、内部疾患、内部障害の場合に、その基準が大変難しいといったようなことから、ついに議論が成立をいたさなかった経緯を今思い起こしております。  今行われておりますその身体障害者に対する運賃割引制度というものも、JR各社あるいは民鉄事業者等によって実施がされているわけでありますし、本年二月にその対象が拡大を、ようやくと言ってもいいぐらい長い時間をかけて内部障害にまで拡大をしたわけですけれども、実はこれはそれぞれの事業者の自主的判断というものに基づいて、事業者の負担によって実施をされているものばかりであります。  こうした従来の運賃割引制度とのバランスあるいは社会福祉施策全体の中における位置づけ、さらに財政負担等を勘案をしますと、やはり相当慎重に検討をする必要がある課題だという気は私はどうしてもぬぐえません。殊に、内部障害をとらえていきました場合に、長期慢性疾患の中のどこまでを一体対象にするんだといったような議論はなかなか線引きのできるものではなかったという記憶を私は持っておりまして、今委員が言われますとおり、過去にそうしたものに携わっておりましただけに、問題の所在をある意味では多少知り過ぎて憶病になっているのかもしれませんけれども、非常に判断の難しい部分がこれ以上拡大をしていった場合にはどうしても生じてくる、私はそういう感じがぬぐえません。
  224. 日笠勝之

    日笠委員 同じ障害者の中で、確かに精神薄弱者の方は療育手帳というもので、これが都道府県によってばらばらでなかなか認定が難しい、こうおっしゃるのですが、しかし、この手帳があるからいろいろな行政サービスが受けられているわけでございますから、この手帳は各都道府県が責任を持って発行したわけでございますので、それは信用申し上げる以外ないと思います。ですからあとは、事業者に負担をかけるのがこれ以上忍びないということであれば、歳出面でのいろいろな福祉施策でやるかということは、厚生大臣おっしゃいましたけれども、しかし、やはりこういう長い運動の蓄積があるわけでざいますし、ぜひ今後とも運賃割引制度が実現するように、私自身も粘り強く主張申し上げていくことを申し上げておきたいと思います。  続きまして、列車し尿処理問題でございます。イエロー公害とか黄害。とかいう名前で呼ばれて久しくなるわけでございます。いわゆる列車便所汚水対策問題について御質問申し上げたいと思います。  御承知のように、し尿を垂れ流しをしながら走る列車のことは、ちょっとオーバーな言い方かもしれませんが別名たれ流し黄金列車とか、列車が通った後には黄金のにじが出るとか、そのように言われてもおります。経済大国日本といたしまして、豊かさを感じられる生活、また生活者重視の生活というのは、これは海部内閣も同じ目的であると思います。今もってこういうことが解決されていないというのはまことに残念なことでございます。国民の衛生面から見ても、ぜひ早期解決をしていかなければならないと思います。  そこで、まず運輸省にお伺いいたしますが、JR及び民間鉄道においていまだ車内トイレの汚物を直接線路上に排出している路線の数と車両数がわかればお教えいただきたいと思います。
  225. 大塚秀夫

    ○大塚(秀)政府委員 列車のし尿処理問題につきましては、沿線住民の環境衛生上極めて重要であると考え、従来からJRを指導してきたところでございますが、いまだ全車両——これは客車でございますが、全車両二万五千両のうち約三千六百両、一四%が開放式トイレを備えて走行しているという状況で、特に地方においては開放式トイレを備えた列車の走行が多いというのが現状でございます。  私鉄においては、二社を除いて開放式トイレを持った車両で走行しているところはないと聞いております。  営業キロで申しますと、全営業キロの九〇%で開放式トイレを備えた列車が走行しているということでございます。
  226. 日笠勝之

    日笠委員 路線の数を聞いたのですよ、私は。
  227. 大塚秀夫

    ○大塚(秀)政府委員 路線の数でもほとんどの区間で開放式トイレの列車が走行しているところでございます。先ほど申し上げましたのは営業キロと車両数でございます。
  228. 日笠勝之

    日笠委員 この現状を聞かれまして、厚生大臣、これは衛生面は厚生省でございますね。廃棄物処理法の見地から見ましても、どのようにお考えでしょうか。
  229. 津島雄二

    ○津島国務大臣 委員指摘のとおり、私どもの方も廃棄物の処理及び清掃に関する法律、その第五条によりまして、車両、船舶等について御指摘行政責任を負っておるわけでございます。便所が設けられている列車を運行する鉄道事業者、今の御答弁で、今ではJRだけだということでございますが……(日笠委員「いや、民鉄が二社」と呼ぶ)訂正をいたします。運行する鉄道事業者が適正に処理できるように法律でも定められておるわけでありますから、私どもといたしましても、対策に一層の努力を払っていただきたい、今ここで御答弁を申し上げ、改めて事業者にお願いを申し上げるつもりでございます。
  230. 日笠勝之

    日笠委員 労働大臣、し尿を垂れ流している線路上において保線作業をしておる労働者がいますね。この方々の労働条件というのは非常に劣悪なわけですが、これについて、そういう労働者を管轄される労働省としてどうお考えですか。
  231. 塚原俊平

    ○塚原国務大臣 まず、今のお話は、労働衛生環境上はこれはもう決して好ましいことじゃないわけでございまして、ともかくこのような車両のし尿処理を改善するように関係方面に働きかけてまいりたいと思います。
  232. 日笠勝之

    日笠委員 そこで運輸省、今先ほどからの厚生省、労働省の各大臣からのお話もございました。これは古くて新しいお話でございまして、急に取り上げたわけではございません。もう十何年来というか二十年来といいましょうか、相当昔からこの問題は言われているわけでございますね。ぜひひとつこれは早急にめどを立てて、いつごろまでにやります、そういう解決をしていかなければできないんじゃないかと思うのですが、その辺はどのように御決意を持っておられますか、お伺いをしたいと思います。
  233. 大塚秀夫

    ○大塚(秀)政府委員 車両の交代時期におきましては、新しい車両について便所を設置するときにはタンク式のものを備えさせるようにしていくこととしております。また、既存の車両についての改造、これも今後のJRの投資の中で重点的に行っていくように指導したいと考えております。  時期について今申し上げることができませんが、し尿処理基地及び車両の改造をできるだけ早期になるべく多くの車両が改造されるように指導していきたいと考えております。  民鉄につきましては、私の聞いておるところは、島原鉄道と大井川鉄道で例外的にそのような車両が走行しているので、一般的に問題はないと聞いております。
  234. 日笠勝之

    日笠委員 大蔵大臣、やはり厚生大臣、運輸大臣を御経験ですので……。私たちの地元にも吉備線というのがありますね。私の選挙区の岡山と大臣のお住まいの総社市をつないでおる吉備線、もう住宅の密集地帯を高架で走っておりますね。高架というのは高架の線路のことですよ。岡山市も昭和五十一年旧国鉄へ、それから最近は昭和六十三年九月にはJR西日本岡山支社にも主として改善要求をしておるわけですね。ところが一向に、先ほどのお話じゃございませんが、めどが立たないわけなんです。財政的な助成措置も、廃棄物処理法の二十三条で特別な助成ができるともあるわけですね。財政的にもし厳しいというなら、これは大蔵省さんの方から——国際社会日本で今もって町の中をそういう列車が走っておるというのは、幾らインフラで下水道をつくってみたって、空港だの港湾を幾ら整備してみたって、町の中を黄金列車が走っているというようなことでは、これはもう国際日本ではとてもとても私たちもたまりません。  そこで、大蔵大臣、どうなんでしょうか。三省庁とよく協議をされて、金がないのなら助成で出してあげましょう、ちょうどSIIの日米構造協議で設備投資してあげましょう、JRのがそれにカウントされるのかどうかわかりませんけれども、この際積極的な、この廃棄物処理法二十三条に基づいても、助成をしてでも早くやりなさい、こういうふうな、両大臣を経験された大蔵大臣にお伺いをしたいと思います。
  235. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 確かにこの数字を見ると、相当まだ残存車両があるなと思います。ただ私は、それこそ今まで民間鉄道は、今運輸省からも答弁がありましたように、例外的にあと二社のみを残す、そこまで整備を自力でやってきておられる、JRとしても当然自力できちんとやってもらいたい、そう思っております。
  236. 日笠勝之

    日笠委員 じゃ、運輸省さんは、いわゆるお金がないからできないのでしょうか。それともいろいろ技術的に難しいのでしょうか。
  237. 大塚秀夫

    ○大塚(秀)政府委員 JRも毎年設備投資に総額五千億円ぐらいを計上しておりますし、また、その設備投資については、開銀融資等の制度もございますので、その中でこのし尿処理施設の問題も今後検討し、必要な措置をとっていきたいと考えます。
  238. 日笠勝之

    日笠委員 特段の御配慮をお願いして、次の質問に移ります。  資料をちょっとお配りさせていただきたいと思います。  時間も大分たってまいりましたので、私は、この予算委員会におきまして、同僚の委員の方々の大変グローバルな観点からの御質問をずっと敬服しながら拝聴をしておりました。私は、実はそういうことではございませんで、予算書と各目明細書、これを正直言いまして丹念に見させていただきました。なぜかならば、これもちょっと大げさな言い方ですが、国民の血税の使い方をあらわしたものでございます。心して読んでいかなければ、また精査していかなければならないと自分に言い聞かせながらやったわけでございます。今御出席いただいておる大臣の方は、前大臣のときに決まった予算でございますから、私が決めたんじゃない、私は関係ないとおっしゃるかもしれませんが、継続性ということがあるわけでございますから、もうしばらくお時間をいただきたいと思います。  そこで、まずお手元の資料の一のナンバー12、これは国会図書館の支部庁費という目のところでございます。すなわち、各省庁に国会図書館の支部がございます。それを開設しますといろいろな国会図書館からのサービスが受けられるわけです。  ところが、この一般会計歳出予算書を見ますと、郵政省だけはないのですね。これは、まず御答弁いただきましょうか、なぜないのでしょうか。どういう今までのいきさつがあったのでしょうか。
  239. 木下昌浩

    ○木下政府委員 歳出予算各目明細のいわゆる内訳のお話でございますが、国立国会図書館の支部の郵政省図書館でございますけれども、これは郵政省の電気通信行政、それと郵政事業に従事する職員、両方が共同で利用いたしております。ところが、郵政省の業務量を見てみますと、その業務量の目安となります職員数、それから予算規模は圧倒的に郵政事業分野のものが大きいわけでございまして、私どもはこれらを総合的に勘案いたしまして、国立国会図書館支部庁費は郵政事業特別会計に百四十七万八千円計上しているところでございます。
  240. 日笠勝之

    日笠委員 郵政特会ですね。こういう特会があると非常に便利ですね。全部そこへ回せばいいわけです。例えば、きょうは農水省、食糧庁呼んでいませんけれども、食糧庁にはこの予算書を見ると一台も車がないのです。官用車はありません。しかし、二台か三台あるそうです。じゃ、どこでその車の費用は見ているのですかというと、食管会計です、こう言う。特別会計です。赤字の会計にッケ回しして長官が乗り回すというのはいかがなものかな。だから、特会があれば何か面倒くさいものはもうそっちへ回しておけ、そっちへ回しておけということになってしまうわけですね。ですから、本省にある国会図書館の支部の費用は、それは特別会計の人数が多いです、業務量も多いですということはわかりますけれども、しかし厳然と本省にあるわけですから、そこで光熱費も使っているわけでしょう。そういう意味でも、やはりこれは本省予算にきちっと目として立目をして郵政省さんは計上すべきだ。これは大蔵省さんの方と打ち合わせしたら、それでいいと。実は去年はなかったのです。私が指摘したのです。そうすると、ことしは特別会計の需品費の中に入れてきたのです。去年までは全然支部庁費がなかったのです。  そういうことでございますから、これはひとつもう一度、業務量、人数じゃなくて、本来の国会図書館支部として——国会図書館にも聞いてみてください。特会からいただいておるとなると、何となく皆さんの郵便料金の何か上前をはねたようなものをもらうというような感じでいい気持ちしないと言っています、向こうの方が。ですから、これはどうでしょうか、来年からちゃんと本省予算に立目して入れる。これは大蔵省さんですね。
  241. 小粥正巳

    ○小粥政府委員 お答え申し上げます。  ただいま委員からのお尋ねは、予算書の参考資料の大事なものの一つでございますいわゆる各目明細書の記載について、ただいま郵政省の御所管の問題について御指摘をいただきましたが、記載の内容が各省庁によって、同じ事項について場合によってその統一を欠くところがあるのではないか、こういう御指摘かと存じます。  実は、各目明細書の作成方法につきましては、これは御存じのとおり予算決算及び会計令の第十二条にその規定がございますが、私ども予算当局といたしましても、その予決令の規定する要件を盛り込みました各目明細書の様式を定めております。それから、その記載内容の概略、いわば作成要領でございますけれども、これを各省、各庁にお示しをしまして、そして毎年、具体的にはこれは各省庁がおつくりになるわけでございますけれども、事実上国会に御提出をいたしまして審議の参考に供しているわけでございますから、できるだけわかりやすく丁寧なものにしていただくようにお願いをしております。  ただ、今郵政省からも御答弁がありましたように、それぞれの問題について各省庁でそれなりの特殊性がございます。固有の事情に基づいて作成しておるということもございます。それから、これは申し上げては恐縮ですが、予算関係書類としてせいぜい二、三週間という期間の間にかなり膨大な書類を作成するということもございまして、結果として問題によってはやや各省庁の間で区々になった部分が生じていることは、御指摘いただきましたようにそういう事実もございます。  そこで、これをどうしたらよろしいかということでありますけれども、それぞれ申し上げましたように、すべて一律に統一を図ることは、それぞれの事情、特殊性もございまして困難な面もあると考えますけれども、ただいま御指摘をいただきましたような問題につきましては、統一をすることも可能であろうと考えております。したがいまして、今後ただいまの御指摘も踏まえまして、各省庁とよく御相談をしながら真剣に対応を考えてまいりたいと存じます。
  242. 日笠勝之

    日笠委員 個別にやりましょう。  郵政省さん、各自明細書の二十四ページ、開いてみてください。きょう通告していますから持ってきておられますね。二十四ページ、郵政事業特会でございますが、この通勤手当、百七十人、下が五万一千九百五十八、これは単価ですか。何ですか、この数は。二十四ページの一番下の行ですが、通勤手当、百七十人ですね、それで五万一千九百五十八、これは単価ですか。
  243. 木下昌浩

    ○木下政府委員 ただいま二十四ページの御質問でございますが、ちょっと今私の手元にございませんので、調べましてお答え申し上げます。
  244. 日笠勝之

    日笠委員 それでは調べていただいておきましよう。  では、実はほかの大臣のところもあるのですが、きょうは時間がありませんからカットしましよう。  そこで、資料へ戻っていただきたいと思いますが、この資料の一というのは、いわゆる各目明細書の積算内訳でいかに各省庁がそれぞれ記入がてんでばらばらであるか。例えば5を見てください。ナンバー5、通勤手当。人数を記入していればマルです。してなければペケです。厚生省と労働省はペケ、いわゆる人数は記入しておりません。あとは全部記入しております。ナンバー9住居手当の人数も法務省運輸省と労働省以外は記入しておりません。それからナンバー17、一番右の端、いわゆる国家公務員財産形成法施行事務費というのが、これは「法」という字がないのがございますし、一番下の自治省さんは勤労者財産形成事務費となっております。三通り書いておりますが、どれが正しいのかわかりません。さらに資料二、次のページをめくっていただきますと、当然庁費の中には光熱水料がなければ電気も水道も使えないわけでございますが、なぜかしら環境庁、沖縄開発庁、国土庁は一切記載をされておりません。それからさらに、その次の、隣の一般行政事務費、これは言うと時間がかかります。七通りございます、七通り。  事ほどさように大変ばらばらで、一生懸命見ても、どれが正しいのかわからない。これは大蔵大臣のところに送付するようになっているのですね。送付すれば、そこで当然精査をされなきゃいけない、時間がないということはわかりますが。ですから私は、まず一つ申し上げたいのは——もうちょっと時間がありますので、結論は最後にします。  資料三を見てください。厚生省さん、大臣申しわけありません、通告をしたつもりでございますが、厚生省さんの各目明細書の二十三ページ、重要医薬品及びあへんの供給確保に必要な経費で、自動車重量税が目の項目で五万七千円計上されておりますが、庁費の中に自動車損害賠償責任保険料が計上されておりません。車というものは、当然自動車税とこの強制保険合わせて新車登録をするなり車検をしなければいけないのです。ということは、この予算書から見る限り、特段の説明がなければ、厚生省さんの車は何台かは強制保険に入っていない車が動いているのかな、このようになるわけでございます。ほか、農水省、自治省、それぞれ当然これは重量税と強制責任保険料はセットで記入されていなければならないものがされていないものだけリストアップいたしました。事ほどさように、各省庁さんの書き方が非常に不統一で見づらいわけでございます。  ところが、地方自治法の施行令百四十七条第二項には、これは自治省の場合は「自治省令で定める様式を基準としなければならない。」ということで、もう釈迦に説法でございましょう、施行規則十五条に基づき別記様式がきちんと決まっております。  私はここでお願い申し上げたいのは、一度各目明細書を洗い直していただきまして、大蔵省さんでひとつガイドラインをつくっていただく。「予算事務提要」というのがございますが、これをもう少し各省庁さんの方々とすり合わせをしていただきまして、そして、これはこのように記入したらどうだろうか、ぜひこういうふうに統一をされたらいいのじゃないかと思うのです。  実は大蔵大臣、この前の大蔵委員会で私は、国庫債務負担行為の歳出化のあの書き方も、いろいろ三種類、四種類、見方じゃ五種類もあると申し上げましたけれども、各省庁の会計課の方もどこに合わせたらいいのだろうと悩んでおられます。ぜひひとつこれは主計局長、どうでしょうか、一度各省庁すり合わせをして、実はこれ以上にもたくさんございますけれども、ぜひ統一をするということで前向きな御答弁がいただけないでしょうか。
  245. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 まず第一に、大変失礼でありますが、本当によく調べられたということで、半ば感心し、半ばかぶとを脱ぎ、半ばあきれております。  しかし、こうして拝見をしてみますと、確かに考えなければならない点があるような気がいたします。私は実は、予算書の作成の印刷の作業というのは、初めて自分が大蔵大臣になりまして、その現場を見ておりまして、あの作業の中でそれぞれの係がそれぞれの係の守備範囲を精査し間違いがないように全力投球をしておりました姿を見ておりますだけに、こうした点までチェックが及ばなかったとおしかりを受ければ、それはむしろ私どもが甘受をしなければならぬと思います。と同時に、先ほど主計局長から御答弁を申しましたように、やはり各省のそれぞれの性格、また特別会計を使う使わない、さまざまな差異は現実にございますから、どこまでこれが統合できるものか私にもわかりません。しかし、こうして見ておりまして、例えば先ほどの財産形成で挙げられましたような例、こうしたものはやはり余りばらばらであるというのはいかがなものかと私も思いますし、どこまでやれるかわかりませんが、事務方に検討は指示したいと思います。
  246. 小粥正巳

    ○小粥政府委員 ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、それから、先ほど私もお答え申し上げましたように、それぞれ固有の事情があることも御賢察いただきたいと存じますけれども、その中で、きょうの委員からの御指摘をよく念頭に置きまして、検討させていただきたいと思います。
  247. 日笠勝之

    日笠委員 郵政省さん、どうでした。
  248. 木下昌浩

    ○木下政府委員 大変失礼いたしました。とっさのことでちょっと資料の見間違いをしておりまして……  その二十四ページでございますが、百七十人、五万一千九百五十八とある数字は、いずれも人でございまして、上段が行政職俸給表適用職員の数でございます。後段の五万一千九百五十八というのが国の経営する企業に勤務する職員の給与等に関する法律、この適用対象職員でございます。
  249. 日笠勝之

    日笠委員 ほかにも、郵政省さん、正誤表が後で出ますね。ほかのところは言いませんけれども、具体的に言うと気の毒ですから。正式に出ますか、委員会へ。
  250. 木下昌浩

    ○木下政府委員 ただいまのお話でございますが、明細表の中で若干訂正ミスがございましたので、後日手続を経まして提出させていただきたいと思っております。
  251. 日笠勝之

    日笠委員 じゃ、終わります。
  252. 宮下創平

    宮下委員長代理 これにて日笠君の質疑は終了いたしました。  次に、佐藤祐弘君。
  253. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 四年前東京都を中心に始まった地価の異常高騰が、先日の国土庁の地価公示では五六・一%の急上昇となりました大阪圏を初め地方都市にも波及しておりまして、国民生活に深刻な影響をもたらしております。とりわけ住宅地の急騰は勤労者のマイホームの夢を奪い、公共住宅の応募倍率も五十倍、六十倍、さらには、加えて来年の固定資産税評価がえによる大幅引き上げへの不安が広がっております。この事態をどうするか、どう解決するか、これはまさに政治の重大課題となっていると思います。  そこで、まず国土庁長官にお聞きをいたします。  海部首相は、三月二十三日の土地対策関係閣僚会議及び本委員会の答弁でも、事態解決のために必要に応じて規制区域の指定も念頭に置いて対処する、こう述べられました。国土庁長官はそれをどのように具体的に進められておるのか。その点をまずお聞きいたします。
  254. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えします。  佐藤委員の御指摘のとおり、ことしの一月の国土地価調査におきますと、全国で住宅地が一七%アップ、大阪では五七%アップいたしましたということでございまして、いかに地価を安定するかにつきましては全努力を挙げている最中でございますが、実は先ほど委員の御指摘の規制区域の指定という話がございましたけれども、規制区域というのは二つの前提条件がございまして、一つは地価の凍結ということ、それからもう一つは一定の取引以外は取引を認めないということで、ほとんど取引を認めないということがございまして、経済社会に大きな変動を与えることでございまして、非常に慎重にやっているというのが現状でございます。  地価の安定には、基本的には適正な地価安定におきましては宅地の需給をどうするかということを含めていろいろな諸施策をやっているわけでございますが、これは土地取引のみでは片づかない、このように理解しているわけでございます。そんなことでございますが、とりあえずは監視区域を強化するということでございまして、監視区域が後手に回らないように。というのは、役所が全力投球しておりますが、民間の知恵が上回る場合があるものですから、それの後手に回らないということで、監視区域を強化するというようなことをもちまして地価の安定に努めておりますが、どうしてもこの監視区域を強化しましても急に急激な上昇をした場合には、規制区域も念頭に置いて対処したい。このような考えを持っておりますが、先ほど言ったようなことでございますが、規制区域というのは大変なことでございまして、特にその付近の経済社会に大きな変動を与えるものですから慎重に対処したい、ただしいつも念頭に置いている。このように御理解願いたいと思うわけでございます。     〔宮下委員長代理退席、委員長着席〕
  255. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 しかし、やはり地価高騰は取引というのが重要な部分を占めるわけですから、これに対する対応というのは私は大切だというふうに思います。今長官おっしゃられたように、まず監視区域、そして面積を小さくしていく、そしてなおかつ上昇傾向が弱まらない、こういう場合に規制区域という段取りになっているわけですが、私はこういう段取り、手順等運用にやはり問題があるんじゃないかというふうに思うわけです。  御承知のとおりで、東京都の地価高騰が始まりましたときにも、結局百平米以上の監視区域の指定というのが行われましたのは、高騰がある意味ではもうピークに達して、関係業界ではもう頭打ちだと言われ始めた八七年の十一月に初めてその指定が行われる、こういうことでありました。非常に後手だということが強く指摘もされたということです。  ところが、その教訓は生かされなかったといいますか、大阪圏の場合、東京都で百平米指定が行われたときには既に値上がり傾向が出始めていたわけですね。国土庁の調べでももう値上がり傾向が始まっているというのが出ております。ところが、なかなか即座に監視区域の指定も行われなかったということだと思うのです。その年に行われましたのは大阪市の中心六区ですね、三百平方メートル以上。中心に絞って、しかも三百ということでやられた。だから、これは余り効果を発揮しなかったのですね。ですから、八七年、八八年、八九年と急騰したわけですよ。ようやく全体的に百平米の指定が行われたのはことしの四月ということじゃありませんか。ですから、さっきの答弁の中でも後手の問題に触れられましたけれども、後手後手になっているという問題と、結局、東京、大阪の事実から考えましても、高値安定にしてしまったといいますか、そういうことになっていると思うのですね。  本来この地価問題というのは、私は国民生活、住宅建設、いろいろな問題からいいましても地価を引き下げなければ解決できない問題が非常に多いと思うのですね。ところが、それには役に立っていないという状況もあるわけです。こういう点について本当に抜本的な対策が私は必要になっていると思うのですが、東京でもまた再び値上がり傾向も出ているんですね。そういう点はどう認識しておられますか。どういうようにやられようと思っておられますか。
  256. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えいたします。  実は、今度は土地対策の取り組みは今までと違いまして、二つの点が違うと思います。一つは、昨年暮れに土地基本法を制定いたしましたことでございます。特に、公共優先を打ち出したわけでございます。その次においては、土地対策関係閣僚会議を実は開催しまして、今後の重点方針を約十項目決めました。これは大都市の宅地供給を含めて決めたわけでして、海部内閣挙げて取り組もうという姿勢を示したということでございまして、この二点が違ってきたわけでございます。  そんなことでございまして、三月二十日には国土利用計画法の一部を改正しまして取引の中止勧告もできるようにしましたし、それからまた、先ほど委員指摘のようなことでございますが、監視区域の適用がいわゆる後手に回らないようにということでございまして、三月二十七日には全国の府県の関係者を集めてその指示をしましたし、また、実は必要に応じてむしろ私が、愛知県、名古屋市、それから大阪、京都、それからきのうは奈良等を集めまして、全国の特に土地の上がりそうな地域につきましての首長を皆集めて、その点特にお願いいたしておるということでございます。そんなことでございまして、現在のところできるだけ監視区域の的確な運用を図りたい、こういうことで地価の安定に努力しております。  ただ問題はひとつ、委員も御理解願っておると思うのですが、届け出面積が三百から百平米といいますと、三百平米では大体捕捉率が一五%ぐらいあると思います。百平米で六〇から七〇ぐらい捕捉できるということでかなり効果を上げておる。また、実は監視区域につきましては、委員も御高承のとおりでございますが、非常に地方自治体が乏しい予算で乏しい人員で頑張っておる、こういう点を特に御理解願いたい。したがって、現在考えておりますのはもちろん地価を下げることでございますが、とりあえずは地価の安定、それから地価を下げる、そのためにはやはり適正な宅地供給が必要、こんなふうな考えで全努力を挙げているわけでございます。
  257. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 宅地供給の問題はまた後で触れたいと思いますが、いろいろ手を打っておられるというお話でした。しかし、そういう間にも深刻な問題は続いているという状況ですね。  実は大阪ですが、昨年の暮れに大阪の泉南、南の方ですね、新興住宅地である不動産会社のチラシがまかれた。これは、「坪単価百二十万前後で買い取りします。」そこまでは普通なんですが、その後に「国土法(監視区域)に御用心!」、こういうチラシが、不動産でいろいろ入ってきますよね、新聞に。そういう形で約五千枚まかれたということなんですね。どういう意味かというと、この業者は昨年の段階で監視区域の適用が百平米になるという情報を察知して、だからそれまでに、今が売りどきですよ、今なら売れますよということでやったんですね。私は本当にこれは抜け駆けといいますか、悪質だというふうに思うのですが、そして十数戸ですか入手して、途端に坪二十万とか三十万上乗せしてすぐに売りに出した、売る方も四月一日までに売らなければいけませんから。そういうことをやられたんですね。ですから、これはまさに後手後手になっている具体的な例だというふうに思うのですね。  ですから、昨年来、閣僚会議などで対策を強めてきたとおっしゃるけれども、この間に、ことしの四月までの間にこういう商法もやられているわけですよ。ですから、事実の経過からいいますと、結局地上げで業者が大いにもうける。いろんな問題がありますよ。それを除いて、もうけてもうけてピークに達したころに監視区域の指定が行われる、厳しい百平米の指定が。これが東京でもそうだったし、大阪圏でもそう、そういうことになっているのです。ですから、単なる後手というので済まずに、それがむしろ結果的にはもうけを保証してやっているといいますか、そういうのが事実なんですよ。それだけに、本当に監視区域の指定にしましても機敏にやらなきゃ意味がない。そういう点、これから機敏にやられるかどうか、どうお考えですか。
  258. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えします。  先ほど私が、後手という言葉が適切かどうかわかりませんけれども民間の知恵が役所を上回ると、こう申しました。これがそのことを意味しておるわけでございまして、したがって、大阪の地価の高騰もやはり金融緩和とか、あるいは東京の地価に比べて割安感が強いとか、特にまた関西新空港のプロジェクトとか、いろんな社会資本整備が大きい、こんなことが言われておるわけでございます。そんなことがございまして、これからは民間の知恵を上回るような知恵を出して頑張りたい、こう思っておりますので、御支援と御理解をお願いする次第でございます。
  259. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 民間の知恵が上回ったと言うが、しかし優秀な人材もそろえておられるわけだし、実際にこれは、私は国土庁の資料できょうはお話ししているのですが、ちゃんと公示価格ということで捕捉してここに反映しているのですよ。この場合も、大阪の公示地価が急上昇の兆しを見せたのは六十三年ですよ。八八年、一昨年ですよ。それで、そのときには一八・六。ですから、実態はつまりそのもう一年前ですね。それから、その次の平成元年、八九年には三二・七と、まさに急上昇しているわけです。これは別に民間の知恵だけじゃなくて、国土庁自身が掌握されているわけですね。だから、これに対して素早く手を打つということは私は可能だと思うのです。だから、やはりそのおくれた問題というのは非常に私は重大だと思っています。  それから、次に規制区域指定の問題でありますけれども、今のような監視区域の指定状況、監視区域の指定をしましてからなおしばらくある程度様子を見る、こうなりますと、結局地価上昇が始まってから三年、四年とたってしまうのですね。現にたっています。そうすると、その間に地価が二倍、三倍と上がるということですね。やはりこれでは間尺に合わないということでは済まないというふうに私は思うのです。  それで調べてみたのですが、実は国土庁御自身が八八年に規制区域検討会議というものを開かれて、「規制区域の指定について」というものが出ております。この検討の結果、どういうことを言っておられるか。膨大なものでありますけれども、私が非常に注目をしましたのは、こういうふうに言っておられるのですね。「指定時期、指定期間の考え方」というところで、「地価が既に相当程度上昇した後に規制区域を指定する場合には、」「規制区域指定の効果は限定されたものとなる。 したがって、規制区域の指定は、地価が相当程度上昇する前の段階で行うことが適当であると考えられる。」このとおりだと思うのです。こういうように国土庁自身が言っておられながら、どうして機敏にやられないのか。何か伝家の宝刀とかいろんな言い方がされておりますが、このかつてない異常な時期ですよ、異常高騰、この時期に抜かないでいつ抜くのか、早く抜くべきだというふうに私は主張したいのです。そうでなければ、監視区域が後手後手のなまくらで、規制区域というのは結局のところは竹光だ、こういうことになるのじゃないのでしょうか。その点、長官見解を伺いたいと思います。
  260. 藤原良一

    ○藤原(良)政府委員 監視区域が後手に回っているのじゃないか、特に大阪圏の例を挙げてお尋ねでございますが、私どもも、監視区域の効果をより一層発揮させていくためには、できるだけ早く指定をすること、また、地価の動向に応じてより厳しい監視ができるように届け出対象面積を引き下げること、また、届け出の審査に当たりましては、厳正的確に行う、この三つが必要だということで、常々関係行政機関を指導してまいってきておるわけです。  大阪の事例につきましては、結果的に大変後手に回っておると率直に認めるわけでございますが、ただ公共団体側も、市町村長の同意を取りつけたり、あるいは土地利用審査会に諮ったり、場合によっては議会の意見を聞く、さらには執務執行体制を整備する、いろいろ問題がございまして、そういうこともあっておくれてしまったのじゃないかというふうな気がしております。そこで、私どもとしましても、できるだけ自治体の長が客観的に動きやすいようなガイドラインを監視区域についても作成した方がいいのじゃないかということで、現在急いでそのガイドラインの作成に当たっております。  なお、規制区域につきましては、御指摘ございましたように、六十三年に関係公共団体と検討会を持ちまして、監視区域指定の際におけるマニュアルのようなものをまとめております。これにつきましても、せんだっても会議におきまして、監視区域を指定し、厳正に行っても、なお著しい地価の上昇を抑制することができない、そういうときは常にやはり規制区域の指定を念頭に置かないといけない、そういうことでこの規制区域についてももう一度、実際に運用するという観点から検討もし、準備もしてほしい、そういうふうに言っております。規制区域につきましても、必要な場合にはできるだけタイムリーにやる、そういう気持ちでやはり対応しないといけない、そういうふうに思っております。
  261. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 二つ問題が今の答弁でもあると思うのですが、一つは規制区域ですね。これは伝家の宝刀と言われて、一度でもこれまで抜いたことがあればいいですよ。そうすれば関係の方も、いつ今度はまた政府がそういうことをやられるかわからぬということで緊張するとか。しかし、抜かれたことはないわけだから、現実にはどうせ抜かないよと言われているのですよ。これでは伝家の宝刀でもないですよ、本当に。あれは、いよいよという場合には抜くのだぞということで意味があるわけですね。だからやはり、しかも今はかってない異常高騰ですよ、歴史の中でも。こういうときに抜かないで本当にいつ抜くのかということです。  しかも、もう一つの問題点は監視をやりまして、しばらくたって抜きます、規制区域に至りますという手法が、運用の仕方が私は事態解決にならないと思うのですね。監視区域の指定してきたところの実際の地価動向ですよ。あれは規制区域適用の立派な条件を満たしているのじゃないですか、急騰しているのですから。だから、監視区域をまずやって規制でなければならぬということは法律にもないと思うのです。しかも、規制区域については総理の権限もあるのです、地方自治体の長に指示できるわけですから。だから、本気でこれを使う気があるのか。使って地価を抑制し、引き下げる、そういう姿勢に立たなきゃうそだと思うのです。その点、長官の決意を再度私は聞きたいと思うのです。
  262. 藤原良一

    ○藤原(良)政府委員 私どもとしましては、規制区域についてもいざというときには発動するのだということを念頭に置きながら、とりあえず監視区域を的確にしかも厳正に運用していくのだ、そういうことで今進めております。  規制区域についてはマニュアルをつくってございますが、そうは申しましても、最終的にこれを運用するかどうかというのはそれぞれやはり地方自治の責任を持っておられます知事の判断に最終的にはかかるわけでございます。いろいろ意見を交換する中で、やはりこの規制区域制度につきましては地域経済に与える大きな影響、さらには非常に多数の職員を準備しなければならないとか、あるいは運用に当たっていろいろまだ若干詰める必要がある部分もなきにしもあらずでございます。そういうこともありまして、簡単にはいかないと私は思います、現実の問題として。しかし、問題があるのならどの辺に問題があるか、その辺は監視区域の運用をする中で規制区域についてもさらに詰めていこう、そういうことで現在公共団体と意見交換し、さらに連絡を密にしておるところであります。
  263. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 なかなか実施が難しいような答弁ですが、こういうことではちょっと困ると思うのですね。結局監視、規制という段階を踏んでという発想、これは変えなければだめだと思うのです。異常事態にはやはり特別な対応が必要だと私は思うのですよ、そういう姿勢をとることが。ところがそうじゃない。いろいろ影響についてお述べになった。しかし、その前にこの地価高騰が生んでいる国民生活に対する重大な影響、国民は居住権を侵害されるとかいろいろな問題が現に起きているわけですよ。それをどうするのか。それをやはり守らなければならぬということからこれだけ大きな問題になっているわけですね。それを従来の手法の延長でやっているのでは、これは間尺に合わぬですよ。こういう点、姿勢を変えなければならぬという点を私は特に強調したいと思います。  それから、具体的な問題でひとつ国土庁にお聞きいたしますが、東京・文京区での土地取引をめぐる問題が先日来大きく報道されています。当然御承知だと思いますが、長谷エコーポレーションとイギリスの銀行、この取引をめぐる問題ですね。取引価格は約二百億円、面積が六千百五十平方メートルということですが、その際に裏金のやりとりがあったのではないかとか、そういう問題も報道されております。これについて、これは重大な土地行政に係る問題ですからお調べになったと思うし、その調査の結果をお知らせいただきたい。たしかきのう東京都から報告が来ているのだろうと思います。
  264. 藤原良一

    ○藤原(良)政府委員 御指摘の件につきましては、現在東京都において事実関係調査中でございます。まだその報告は受けていないわけでございます。
  265. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 ちょっとのんびりし過ぎていないですかね。これだけ土地住宅問題が大問題になっている、海部首相も決意を述べられて本委員会でも論議が交わされているそのときに、これが起きたのは先週の十九日ですよ。莫大な取引ですね、裏金疑惑とかいうこともある。ほぼ一週間ですよ。それがまだ報告を待っている。そうじゃなくて、きのう報告に来たのじゃありませんか。
  266. 藤原良一

    ○藤原(良)政府委員 お答えいたします。  新聞報道されました当日、東京都に対しまして、早急に事実関係調査するように指示したところであります。ただ、東京都の方ではその後調査をやっておると思います。一両日中には報告が来るのじゃないかと思っておりますが、現時点ではまだ東京都の調査結果が届いておりません。
  267. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 ちょっといささかその点は疑問ですが、私は特に土地関係で重視をしておるのは、この中で東京都が価格指導したわけですよ。大きな土地ですから当然届け出るわけですね。で、指導価格というのがあります。報道によりますと、たしか百八十九億円でしたね。百八十九億円が上限だ、こういう指導を東京都はされた。私も独自の調査でそれは確認しました。六千百五十平米で総額百八十九億円です。ところが、調べてみますと、この土地の周辺、文京区の関口二丁目というのですが、ここはこの取引が行われた年もそれ以降も四年間ほど余り変動がないのです。昭和で言いますと、六十二年が、平米です、百三十万、六十三年百四十八万、元年百四十四万、今度は百四十四万、こういう土地ですね。ですから、これに面積を掛けますと八十億ぐらいにしかならないのです。総額が八十億円弱です。それを百八十九億円が上限だというふうに指導したというのです。これだと実勢価格、公示価格からいいますと二倍以上ですね。大変な指導価格という実態ですよ。これは確認されておらないということになるかわかりませんが、私は確認しているのですが、こういう価格指導をしているという点について国土庁はどう判断し、どう対応されますか。
  268. 藤原良一

    ○藤原(良)政府委員 監視区域における届け出案件の価格指導に当たりましては、地価公示あるいは都道府県地価調査の結果に基づきまして比準等しつつ、著しく適正を欠くことのないように指導しておるわけでありまして、むしろ関係者からは、東京都、神奈川県、埼玉県、そういったところの価格指導はやや厳し過ぎるのではないかというふうな話も最近ではよく耳にすることがございまして、それぞれ自治体は厳正的確に行政指導しておると考えております。
  269. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 これはぜひ確認をしていただきたいと思うのです、実際どうだったか。この価格だとすれば厳正とは言えませんよ、百八十九億円。私が承知しているのでも区レベル、大体公示地価の二、三割増しなら無条件で通すと言っているのですよ。だから、結局監視区域指定でやりましたけれども、公示価格よりも上の値段、つまりつくられた値段を保証する結果になっているというのが実態です。だから、これは今そういう答弁でまだ報告がないということですが、ぜひ確認をして、そしてまた私もお尋ねしたいと思うし、そういうべらぼうな指導価格は大問題だということにされなければならぬというふうに思います。  ついでに言っておきますと、この土地は、本当は報告が来ているはずだと思ったので私はお聞きしたかったのだけれども、三カ月後、七月に売買契約が成立しまして十月には今度は半分以上が住友生命に転売されている。現在残っているのはわずか五百六十平米ですね、長谷エコーポレーションが持っているのは。あとはほとんどが住友生命に転売された、こういうことになっている。ですから、この指導価格、後段の転売の価格についても調査をしていただきたい、そのことを要求しておきたいと思います。  それで次に、地価高騰の大きな原因に金融機関の不動産業向けの融資があるということは周知の事実でございます。この点で大蔵大臣にお聞きをしたいわけですが、大蔵省としましては八六年ごろから通達を出して自粛を要請されるとか、いわゆる特別ヒアリングですか、個別案件にまで踏み込む、こういうこともやってこられた。そして三月二十七日ですか、総量規制という方針を打ち出されました。この総量規制なんですけれども、不動産業向け貸し出しについてその増勢を総貸し出しの増勢以下に抑制するということですね。そうしますと、銀行にとっては、総貸し出しに占める不動産産業向け貸し出し、これがありますよね、ある銀行の総貸し出しの中で不動産業向けの貸し出しの比率、これを上げなければいいんだ、こういうことになるのですね。ですから逆に言いますと、総貸し出しが伸びれば不動産業向けの貸し出しも伸びてもよろしい、こういうことになるんじゃありませんか。
  270. 土田正顕

    ○土田政府委員 金融機関の土地関連融資につきましてもう数年来いろいろ指導しておるわけでございますが、その点は省略いたしまして、ただいま御指摘の三月二十七日の銀行局長通達で申しますと、「当面、不動産業向け貸出については、公的な宅地開発機関等に対する貸出を除き、その増勢を総貸出の増勢以下に抑制することを目途として各金融機関においてその調整を図る」こととなっております。当然、融資の総額そのものの伸び縮みは、その銀行の置かれておりますいろいろな状況によりまして変化をいたします。それに即応してその不動産業向け貸し出しについても節度を持った融資をしてもらいたいということでございますので、総貸し出しが自然の勢いで伸びますならば、それと均衡のとれた範囲内において不動産業向け貸し出しも伸ばしてよろしい、その点は御指摘のとおりであります。
  271. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 総量規制ということで、これは十七年ぶりの強い措置だという御説明もいただいたのですが、どうも実際にはこれをやっても不動産向けの融資は実額としては減っていかない。むしろこのところは預金獲得作戦に大変力を入れておられるようですが、総貸出額が伸びればその範囲では伸ばしてもよろしいんだということですから、これは私は非常に問題を残しているというふうに言わざるを得ないと思うのです。  この間いろいろやってこられたということであるわけですが、不動産向け融資の残高で見ますと、昭和五十九年の三月末、これは地上げが始まる以前ですね、この段階では十七兆四千億だったわけです。それがことしの一月末では四十七兆円、残高がすごい勢いでふえているわけですね。この間にもいわゆる特別ヒアリングとか自粛通達とかが行われたわけですが、それにもかかわらずふえてきたという実態があるわけですね。しかも、今の総量規制で果たしてどこまで抑制効果が出るのか、大変私は疑問に思っておるわけであります。これだけ不動産融資の残高が激増しているということは、この融資が地価を押し上げるといいますか、そういう要因になってきたという証拠でもあろうというふうに思うのです。  もう一つお聞きしたい問題は、ノンバンクの問題です。リース業などのノンバンクから巨額の不動産融資が行われているというのは常識のようなことだと思います。大蔵省の銀行局調査課の中井課長も、「金融財政事情」、最近の四月二十三日号ですが、これにインタビューに答えてしゃべっておられる。その中でも、このノンバンクからの事業者向け金融が非常に多い。それから、業態別で見ると、やはり建設、不動産関係、これが三年間で四倍にもふえている。急テンポでノンバンクから不動産業への貸し出しがふえているということをしゃべっておられるわけですが、ここにもメスをしっかりと入れなければならぬのじゃないか。その点についてまずお聞きいたします。
  272. 土田正顕

    ○土田政府委員 お答え申し上げます。  いわゆるノンバンクについてその実態をいろいろ把握する必要があるということで、私どもは多少問題意識を持ちましてそのための研究会も、内部的なものでございますが、発足させたところでございます。ただ、このノンバンクというのは、実はその内容は非常に多種多様でございまして、みんなが同じような仕事をやっているわけではない。例えば、無担保消費者金融を専門にしているものもあれば、事業者向けの金融をやっているものもあれば、リースもあればクレジットもある。いろいろでございますので、これを一律に把握し、一律に規制することは恐らくなじまないと思うのでございます。  またその前に、これは現在の法制の問題になりますが、貸金業に対する規制は貸金業の規制等に関する法律というもので一応行われておりますけれども、これは専ら債務者の地位を保護するという観点から、例えば誇大広告の禁止とか行き過ぎた取り立ての禁止とか、そういう行為規制を中心にするものでありまして、私どもが免許業種でございますところの銀行その他の金融機関に対する一般的な業法上の監督権を持っているのとは非常に趣を異にしておるわけでございますので、このノンバンクに対するいろいろな指導というのは、当然法律上はそれなりの限界がございます。その限界の範囲内で、私どもは専らノンバンクの個々の業者の自主的な節度を期待するということでぎりぎりの指導をやっておるわけでございます。  それから、土地融資そのものにつきましては、多少前の答弁を補足いたしますけれども、ただ減らせばいいというものではございませんので、公的な機関によりますところの宅地の供給とか、そういう供給面での配慮というものは必要であろうと思いますし、そういう適正な宅地の供給につながるような融資はとめることは適当ではないということで、例えばその点も三月二十七日の通達で念のために我々の態度を示しておるところでございます。
  273. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 今のは若干問題発言だと思うのですね。やはりどう強めていくか、地上げのもとに金融がなっているのは明らかなんですから、そこに対してきめ細かい対策が必要だ。もちろん必要な公共的な建設もあるし、そのために必要な土地の買い上げもまた当然のことですよ。そういうことを問題にしているわけではないわけですね。後で問題にしたいと思いますが、いろいろ金もうけをするために土地転がしをやるとか、そういうことが中心になってこの地価高騰を引き起こしてきたわけだから、そこに対してどう対応するかという問題です。  ちょっと時間が詰まってきましたので、ノンバンクの問題については要するにこういうことですよね。銀行に対してはいろいろやられる、それについても私は疑問があるということを申し上げましたが、ノンバンクに貸し出して、ノンバンクから不動産へ流れる、これはやはりかなりの額なのですね。これは大蔵省にお聞きしました。これは完全な資料ではなくて、アンケートに答えたのは七割五分程度の業者だそうですが、そのうちで見ましても、事業者向けの残高というのはノンバンクだけで三十九兆になっている。そのほとんどが不動産向けというのは常識なのですね。三十九兆といいますと、これは都市銀行十三行、今一緒になりましたから十二行になるのですかね、この都市銀行の総額が十六兆六千億ですから、それよりもノンバンクの方がはるかに多いという実態ですね。こういう実態があるだけに厳しくこれはメスを入れていただきたいし、対策をとっていただきたいということを申し上げて、次に移ります。  次は、土地供給の問題です。いろいろこの点でも解決すべき問題があるわけですが、私は、土地供給、有効活用ということでいうならば、やはり国公有地、それと企業保有の未利用地、こういうものを積極的に活用していく、そういうことをやるべきだというふうに思うのです。  まず、国公有地ですが、東京都内に未利用地はどれほどあるか、これは国土庁でわかるでしょうか。
  274. 藤原良一

    ○藤原(良)政府委員 お尋ねの都内における国公有地の存在量でございますが、行政財産、普通財産合わせまして約二万七千ヘクタールあると聞いております。  ただ、そのうち活用していないものはどうかというお尋ねでございますが、昨年末の土地対策関係閣僚会議における申し合わせに従いまして、国有地につきましては現在その使用状況を平成二年度末を目途に点検中でございます。また、公有地につきましても、同様の趣旨の要請を地方公共団体に行っておる状況でございまして、現時点であいているか、どういう用途に使っているか、把握していないわけであります。
  275. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 これもまたテンポがちょっと遅過ぎるのじゃないかということを言わざるを得ませんが、実は東京都で調べたのがあるのです。東京都の調査結果というのはもうまとまったものがあるのですよ。国土庁の方では、所管が違うというようなこともあるのかわかりませんが、それを私の方から申し上げますと、都有地の未利用地が五百八十九ヘクタールとか、大規模施設の移転跡地というのが十八・九ヘクタールあるとかいうことがありますし、国有地でいいますと、行政機関の移転跡地、これが三十九ヘクタール、それから在日米軍基地と自衛隊基地、これが千四百六十二ヘクタール、さらに国鉄清算事業団の処分予定地がありますね、これは都内だけで百十七・九ヘクタールということで、計二千二百三十・七へクタール現にある。ですから、これを思い切って都民のためといいますか国民のために活用していく、公共的な目的で使っていくということを私はやるべきだろうと思うのです。試算もあるわけですが、仮にそのうちの半分を公共住宅、これに充てるだけで十万戸以上建つんだという計算も出ているのですね。ですから問題は、そういう国公有地の未利用地をどう活用するか、積極的に国民本位に活用するという立場が今こそ必要だということを申し上げたいと思います。  もう一つ大きな問題と思いますのは、先日国土庁が発表されました企業の保有地の問題、私はあれを見ましてちょっと驚いたわけですね。といいますのも、企業の保有地で利用予定の具体的な計画がないというお答えが七八%、約八割ですね。そしてまた、購入の当初から利用する意思なしと答えられたのが五〇%ということが出ているのですね。これは全く投機目的以外ないじゃありませんか。あるいは含み資産として活用していくとか値上がりを待つとか、こういうことですね。ですから私は、こういうことは今のこの状況の中で本当に許しがたいことだというふうに思っています。  実態はどういうことになっているのか、つまりどういう企業がどれほど持っているのか、そして国土庁はどんな対策で臨まれるのか、その点をまずお聞きしたい。
  276. 藤原良一

    ○藤原(良)政府委員 私ども調査によりますと、四十八年ころからそういう企業の土地保有状況、取得状況等を調査しておるわけでございますが、企業で事業用及び販売用の土地として保有しており、かつ未着手だという土地の割合は、事業用では六十三年で六・二%、販売用では四五%余りでございまして、所有土地全体に占める未着手、未利用を全部合計しますと、平均九・三となっておるわけです。  これを四十八年ころからずっと見ますと、例えば販売用土地につきましては、高い年では七〇%そこそこの保有状況になっております。したがって、六十三年の四五%余りというのは、販売用土地のストックとしては減ってきておるというふうな実態がうかがえるのじゃないかと思っております。  ただ、御指摘の、そのうち当初から利用する目的がなくて数年土地を保有したままの状態でおるというのが、ことしの調査では御指摘のとおり五〇%と非常にふえてきております。そういう実態もございまして、やはり資産保有目的のものもふえてきているなというふうな認識はしております。
  277. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 私は、本当にこれだけ深刻になっているときにこういう状況があるということ自体が問題だ。これもやはり国土庁長官、思い切ったメスを入れることが必要じゃないですか。そういう点では、保有税の問題とかきのうもいろいろ議論されていたようですが、特別土地保有税ですか、そういう考え方もあるようですが、私は、今の状況のままで仮に保有税を上げる、保有税自体は大いに検討されるべきだと思いますよ。思いますが、そうしますと、土地を吐き出してもまた別の資金力のあるところが買っちゃうということにこれはなりかねないわけですね。可能性はむしろ強いわけですよ。ですから、そういう点ではそういうふうにならないように思い切った対策が必要じゃないか。  具体的にはそういう土地を、当初から使う予定もなかった、しかもいまだ未利用で具体的な計画もない、そういうところは指導で放出させる。原価プラス利子あるいは管理費、こういうものを足した適正な価格で買い上げられるようにする。こういうことに私は踏み切るべき時期じゃないかというふうに思うのです。現在の法律ではそれが難しいというのならば、緊急事態に対する対応ですから、それができるような法律もつくるというぐらいのことをやるべきじゃないかと思うのですが、これは建設省、自治省さんもかかわると思うのですが、国土庁長官にまずお聞きしたいと思います。
  278. 藤原良一

    ○藤原(良)政府委員 国土利用計画法におきましても遊休土地制度というのがございまして、取得後二年以上低・未利用のまま放置した土地につきましては、遊休土地である旨を通知いたしまして、一定期間内に処分利用計画を出していただくということになっております。また、その計画に対しまして行政側から勧告したり、買い取り協議を行ったりすることができることとなっております。もちろん一定規模以上の土地についてでございますが。ただ、この制度は、取得に関連して、取得後の利用目的をフォローするための制度でございますので、古くから所有しておる土地については適用にならないということでございます。  ただ、さきに建設省から提出されております都市計画法及び建築基準法の一部改正案の中で、都市地域におけるそういうストックの未利用土地についてもそういう遊休土地制度に類似の有効利用促進のための制度を考えておられると聞いておりますので、私どもの方は、国土利用計画法の制度と相まって、よりそういう企業等の低・未利用地の利用促進に資するのじゃないかと大変期待しておるところでございます。
  279. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 土地というのは本来国民の生活の基盤といいますか共有財産、そういうことですから、やはり単に自由主義経済だから市場原理に任せるというのでは、これは弱肉強食になるだけですね。だから、当然そうではない、いろいろな方策もとられなきゃならぬということですね。今御説明ありましたが、もっと明確なといいますか、思い切った対策が必要じゃないか。  実はヨーロッパの資本主義各国もいろいろその点では工夫してきているといいますか努力をしてきているのですね。特にフランス、西ドイツなどでは自治体の先買い権というのを法律で保障しているわけですね。それによって今パリ市内では六〇%が市有地だというふうに聞いていますし、西ドイツの場合も地方都市でほぼ五割が市有地、平均四六%ですね、西ドイツの人口百万人以上の都市では。公有地を確保するということをやっている。そうしなければ住民本位の住宅政策とかそれから都市計画、こういうものはなかなか進めることができないということからそういう手も打たれてきたわけですね。  今、日本の場合は公有地拡大法というのがあって、今その説明はありませんでしたが、売り主が自治体と協議するということが、優先協議が義務づけられているというのはあります。しかし、これは協議だけなんですね。だからその協議が不調になれば、自治体が欲しい土地であっても買うことができない。私は、そういう点はむしろもっと強化していく。例えば、フランスで一九八三年に法改正があったわけですが、これでは、所有者が仮に五百万円で自分の土地を売りたい、それに対し自治体側が、いや、それはとても出せない、二百万円程度だというようなことになりますと鑑定委員会に持ち込まれる、そこで鑑定結果が出れば、それが二百万円であろうと三百万円であろうとそれに従わなきゃならぬ、こういうことになっていますね。その鑑定結果では不満だからということになりますと、これは永久に売ることができない、結局自治体に買ってもらう以外にないというような力を持った法律ができているのですね。これは、別にこれには限りませんが、やはり国民の公共的な設備、住宅その他を本当に保障していくという観点に立てば、こういった方策もやっぱり私は学ぶべきところがあるんじゃないかというふうに思っております。  こういう点で、これは建設大臣にお聞きをしたいのですが、自治体の先買い権の確立の問題、これは私はもうそういうところに踏み切るべき段階じゃないかというふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  280. 望月薫雄

    ○望月政府委員 都市整備なり地域の整備のためにいわゆる公共施設のための用地を確実に確保しなきゃいかぬということは当然のことでございますが、そういった観点から、あるいはそういったことも含めて公有地というものは大事でございます。おっしゃるように、現在はいわゆる公有地拡大法、これによってその制度が定着しておりますが、現在の我が国公共用地あるいは公有地の確保に関する一連の法制を見てまいりますと、いわゆる都市計画決定をして事業認可を受けたような施設の用地、あるいはもっと言えば土地収用法による事業認定を受けたような用地などのように、事業が非常に具体性を持ってある実施時期が明確になっておる、こういったものについてはかなり強い先買い権あるいは土地を取得する権能を与えられているわけでございますけれども、一般的に非常に長期にわたってどう使うかということがわかりにくい段階では、やっぱり私権との調整ということからしまして、現在の公拡法のような制度が限界ではなかろうかと思っておるところでございます。  ともあれ、こういった公有地の拡大について私どももいろいろと勉強してみたいと思いますが、現行の制度の枠組みとしてはそういったことが現実ではなかろうかと思っているところです。
  281. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 私は、従来の延長ではなくて、思い切った指導とか、場合によっては立法も必要ではないか。そうしないと、本当にこの土地問題を抜本的に解決していく、地価を引き下げていくという方向で、今のような高値安定では解決できないのですよ、都内で持てないんだから。例えば東京の場合でいいますと、これはもう五十キロ圏以上行かないと買えないという状況ですね。だからやっぱり発想も変えてぜひ取り組んでもらう必要があるということを強調したいと思います。  それで、一つその中でも深刻なのがお年寄りなんです。たまたまけさの朝日新聞でも、これまで住んでいた木賃アパート、これを追い出されて途方に暮れて福祉に相談に来たという例が出ております。これは全くひどくて、六十九歳と七十歳のお年寄り、御夫婦なんだけれども、もう期限が来たからというので家主さんが荷物を表へほうり出しちゃったというのですね。状況は具体的に聞いてみないとわかりませんけれども、しかし、現にこういうことは起きているし、去年からふえているんですね。私たちの周辺でもそれはふえています。  ですから、今東京では自治体、中野区初め目黒その他十六の区で、区がアパートを借り上げてお年寄りに貸すというような施策をとったり、例えば江戸川では家賃補助をする。これまで住んでいたところが立ち退きを迫られた、立ち退くときにはやはり相当お金がかかるのですね、家賃も上がりますし、保証金とか要りますから、その差額については区が保障する、補助するというので非常に評判にもなっているということがあります。  それで、建設大臣にお伺いしたいのですが、建設省御自身の施策の問題もあります、老人住宅ですね。それについてはきょうはもう時間もありませんし、お聞きいたしませんが、こういう自治体がやっているそういうせっぱ詰まっての努力、非常に御苦労ですし救われている面もあると思うのですが、こういうものに対して建設省として、政府として支援していく、こういうことをぜひやってもらわなければならぬのじゃないか、こう私は思いますが、いかがでしょうか。
  282. 伊藤茂史

    伊藤(茂)政府委員 今お話に出ましたような措置は、公共団体の判断に基づきまして、それぞれの地域の住宅事情、今申されましたようにいろいろと民間賃貸住宅が建てかわるような事情等々ございまして、講じられてきているものと見ております。  国の方の施策としては、御案内のとおり、高齢者の居住の安定ということが住宅対策の中でも非常に大きな柱だと思っております。したがいまして、国の方の施策としましては、現に住宅に困窮しているという状況にあります高齢者に対して、老人世帯向けの公営住宅の供給、優先入居というのが柱でございます。したがいまして、本来的には、公営住宅をきちっと公共団体に建てていただいて管理をするというのが基本かと存じます。ただ、実際の問題として、土地の問題いろいろございまして、公共団体もなかなか手が回らないということから、先ほど先生指摘のような状況が生まれているとは思っております。  したがいまして、今後とも私どもとしましては、老人世帯向けの公営住宅の的確な供給に努めると同時に、これから先高齢化社会に向けてどういう高齢者対策に対応する住宅対策がとれるかということで、ただいま住宅宅地審議会でも議論しておりますので、この次の五カ年計画、平成三年度から参ります際には大きな柱になっていくものと考えております。
  283. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 一体高齢者が入っている都営住宅がどれほどあるのかということですね。東京都の場合でもシルバーピアとかいろいろ私は知っていますが、非常におくれていますよ。だからこういうことが起きるのですね。転々としなければならぬという実態も起きているわけですから、これはいろいろやっていますということで済ますのじゃなくて、本当に事実上高齢化社会に備えなければならぬということを再三繰り返されておられるわけでしょう。その具体的な施策として取り組まなければならぬということを強調しておきたいと思います。  それで、自治大臣、大変申しわけないのですが、固定資産税関係をお聞きしようと思ったのですが、ちょっと時間がなくなりましたので失礼します。  最後に、厚生大臣にお聞きします。  これは心身障害者、特に精神薄弱者の方をめぐる問題です。学校教育の方では特殊学級とか養護学級とか手が打たれて、今深刻なのはそこを卒業されていよいよ仕事に出る、社会に出る、仕事を始められた、ということは、つまりは二十前後になっておられて、親御さんは五十代、六十代になっているということですね。ですから、自分たちが死んだ後どうなるだろう、親亡き後というのが大問題になっているわけです。  それで、東京都の場合には、一九七八年、革新都政の時代ですが、そのための生活寮というシステムをつくられた、これは大変歓迎をされておるわけです。厚生省も去年からグループホームという名前で始められたわけですが、これは生活寮と基本的には同じような発想のもので、これはいいというふうに関係者の方も言っておられるのですが、去年百カ所、ことし百カ所ということで、やっぱりいかにも数が少ないといいますか、もっとふやしてもらいたい、こういう強い要望があるわけです。  あわせてお聞きいたしますけれども、世話人という方がいらっしゃいます。世話をするわけですね。ある一軒の家なりで四人ぐらいの障害者の方を、大体四人ぐらいが多いのですが、一人の世話人の方が世話をされる、そういう形態になっていますが、この世話人の方の社会保障の問題、これが不十分なんです。例えば、スウェーデンなんかの実例も聞いてみましたが、その場合には、世話人の方がそういう主宰団体に雇用されている、だから社会保険もきちっと確保されているのですね。ところが、日本の場合にはそうでなくて、ボランティア的にとかいろいろな形態がありまして、社会保険を適用されていない、加入していないという方の方が多いという状況だと聞いているわけです。この点についてもぜひ対策をとってもらいたい、とる必要があるんじゃないか、こう私は思いますが、その点お聞きしたいと思います。
  284. 津島雄二

    ○津島国務大臣 ハンディキャップのある方々に多くの施策を積み重ねていかなければならない、まだ課題がたくさん残っておるわけでありますが、精神薄弱者の方々のためにグループホーム事業委員指摘のとおり昨年度に創設をして始めたわけでございますが、初年度において百カ所確保をいたしまして実施をしておりまして、おかげさまで関係者から大変好評を得ております。本年度の予算では今、倍増の二百カ所を計上したいというところでお願いを申し上げておるところでございます。こういうグループホーム事業を通じまして、精神薄弱者の方々が地域の中で生活を送ることを可能とするための条件がだんだん整えられていくと思いますので、重要な施策として充実に努めてまいりたいと思います。  なお、世話人の方の身分につきましては、グループホーム事業を運営している地方公共団体または社会福祉法人と委託契約または雇用契約を結んだものであるということになっておりますけれども、なお詳細の必要がございましたら政府委員から答弁をさせます。
  285. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 終わります。
  286. 越智伊平

    越智委員長 この際、古堅実吉君から関連質疑の申し出があります。佐藤君の持ち時間の範囲内でこれを許します。古堅実吉君。
  287. 古堅実吉

    古堅委員 アメリカ国防省は四月十九日「アジア・環太平洋戦略構想—二十一世紀に向かって」と題する報告書を発表し、米議会に提出しています。その内容についても広く質疑しておくべきことがあるというふうに考えますが、時間もございませんので、今回は沖縄の米軍や基地にかかわる部分についての具体的な質問をさせていただきたい、こう考えています。  この戦略構想では、米軍の兵力削減について、二〇〇〇年までの十年間を三段階に分けて在日米軍の丘ハ力の一部を削減する計画を明らかにし、その第一段階として、一、沖縄における地上戦力及び一部支援空軍戦力の削減の可能性も含め、全体で五千人から六千人程度の兵員削減、一一、既に確立された手続を通じた日本政府への、特に沖縄における余剰施設の返還を進めることが明らかにされています。そのことに関連してお伺いしますが、最初に、兵員削減計画についての具体的な話し合いは、いつからどういうレベルでいつまでに検討していかれるおつもりであるか、そこをお聞かせいただきたい。
  288. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 今般、米国防省が議会に送りました「アジア太平洋地域の戦略的枠組み」と題します報告書におきまして、現在、先生が御紹介されましたような形で日本におきます米軍の削減計画が紹介されておりますが、同時に、韓国、フィリピン等にも触れてございまして、東アジア全体についての記述がございます。  ことしの二月に、チェイニー国防長官が韓国、フィリピン訪問とあわせまして日本に参りまして、海部総理、外務大臣及び防衛庁長官といろいろ話をされました際に、一般的な形で、今回触れてございます東アジアにおきます米軍の再編問題に関しまして、今回の報告書ではその第一段階と呼んでおります今後一—三年間の期間におきます削減問題について説明がございました。それは、全体として約一割の削減を再編という形で、戦力を減退させない形で考えていきたいという話がございまして、それを踏まえまして、今回、今先生が御指摘のように、日本に関しましては、この第一段階一—三年において五千名—六千名ということでございまして、あくまでも一般的な形で従来から説明がございまして、今後、今回の報告書にも説明ございますけれども、米国の軍司令官が正確な軍の構成に関しては検討していくということになっておりますので、このアメリカの現場の軍司令官を中心に具体的な検討が行われると考えておりますが、私どもも十分米側と連絡をとっていきたい、こう考えております。
  289. 古堅実吉

    古堅委員 日本に前方展開戦力を維持することが前提とされているこの計画で、第一段階における在沖米軍兵力の削減では具体的にどんな部隊が考えられるのか、在沖米海兵隊の削減があるのかどうかということについても御意見を伺いたい。
  290. 越智伊平

    越智委員長 松浦北米局長答弁、簡明に願います。
  291. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 これは先ほど先生が既に読み上げられましたような表現が報告にございまして、全般的に日本における実質的な空海軍のプレゼンスは継続させる、しかしながら、特に沖縄において恐らく陸上及び若干の空軍支援部隊の控え目な削減を行うだろうということでございまして、私どもは、それ以上に出まして、具体的に今沖縄のいかなる部隊が対象になっていかなる形で行っていくかということに関しましては、今回の報告書は触れておりませんので、先ほどもちょっと御説明しましたように、軍の正確な構成については今後軍司令官にゆだねるという表現がございますので、そういうふうに理解しております。詳細については現段階では承知しておりません。
  292. 古堅実吉

    古堅委員 これ以上突っ込んで聞いても答えは出てきそうにありませんので、先へ進めます。  次に、沖縄での米軍演習問題についてお伺いします。  戦後四十五年がたちました。しかし、アメリカの基地は強化されるし演習は激化で、戦場さながらの状況が続いています。そのことが県民の生命と安全を脅かし、自然を破壊する、そういう状況が続いています。委員長、この資料を皆さんにお配りしたいと思います、説明資料。  大臣長官、持っておりますこの資料は、県道百四号を封鎖して毎年何回となく繰り返されているアメリカの百五十五ミリりゅう弾砲、核、非核、その演習にかかわる資料です。復帰直後から昨年までのものですが、それを見ればいかに演習が激化してきたか一目瞭然です。例えば五年前の一九八五年、回数が六回でその演習の日数が八日でありましたが、昨年の一九八九年では回数が十二回で日数が三十日、このようにおびただしく激化した状況がわかります。そういう激化について、状況、事実を認められますか。長官の沖縄についての状況の認識の問題もありますから、直接お答えをお聞きしたい。
  293. 石川要三

    ○石川国務大臣 今この表を初めて私も拝見したわけでありますが、今委員のお話のように、数字的には非常に激増しているな、こういうまず感じがするわけでありまして、これについての、とにかく沖縄というこの一つの県に非常に多く、米軍の我が国における全体の中の七五%がそこに存在するという一つの特徴といいますか、そういう中からのこういう問題であろう、こういうふうに認識するわけであります。
  294. 古堅実吉

    古堅委員 沖縄の北部地域での実弾射撃演習がたび重なる重大事故を起こし、極めて危険な演習場となっている、そのことについての認識はあられますか。
  295. 松本宗和

    松本(宗)政府委員 ただいま先生指摘のように、過去たびたび沖縄の北部地域の演習場におきまして事故が発生しております。基本的には、米軍は、日米安全保障条約に基づきまして我が国に駐留しておりまして、その目的の達成をいたしますために当然の義務といたしまして所要の訓練を行っているところでありまして、当庁といたしまして、この提供された施設、区域において演習を実施することにつきまして、これに対してとやかく、中止を求めたりするという立場にはございませんが、訓練に際しまして、地域に対して及ぼす影響をできるだけ少なくするというような配慮は当然必要であるということから、これは米軍においても十分当局は注意をしておると存じますが、私どもといたしましても、再々注意を喚起しておるところでございます。今後とも、米軍の訓練に際しましては、十分周辺に配慮いたしますように注意を喚起してまいりたいと思っております。
  296. 古堅実吉

    古堅委員 先回りされて答弁までやっておられるのですが、どんな説明をされても、そういう演習場を認めるわけにいかぬというのが県民の立場です。  今まで長い間沖縄の自民党・西銘知事が、軍隊は演習をしないんでは役に立たぬなどということを言ってこられました。事故が起きれば、二度と引き起こさないように安全についての申し入れをしますという立場から対処をしようとしてこられた。しかし、日本政府がそのように答え、西銘知事がそのような立場で対処しようとしても、事故は相次いで起きる。人間は神様じゃないですから、訓練の中でどんなに二度と起こさないようにしますと言っても、この演習場が欠陥を持っている限りにおいては起きてくるんですよ。ですから、西銘知事は、そういう対処では県民の命、安全を預かる立場から、これは責任を持った態度にならぬなというふうに悟って、アメリカに二度行きましたが、直訴という形で、日米安保条約を認めるその立場に立ちながらも、北部におけるあの実弾射撃演習場の廃止を要望しておるではありませんか。日本政府がまともに国民、県民の命、安全を本当に真剣に考えるという立場に立つのであれば、今のように安全を確保するような形で許しますということにはならぬはずです。長官の御意見を賜りたい。
  297. 石川要三

    ○石川国務大臣 今委員が申されましたように、沖縄の中におきまして事故が大変ふえている、この事実は私も承知をしておるわけでありまして、ただ、やはり軍隊といいますか、とにかくそういうものは、訓練というものはこれはもう絶対それをやめるというわけにはまいらないわけでありますから、そういうことは私は当然必要である。ただし、問題は、そういう訓練があっても最大限の努力で事故をいかに少なくするか、この熱意といいますか、そういうことに最終的にはかかってくると私は思うのです。ですから、先ほど施設庁長官が申されたように、何か同じことを繰り返しているというふうに印象を受けたかもしれませんけれども、最終的には、私どもはやはり米軍の基地というものの存在を認め、その中で当然訓練も認め、しかし事故は、最大限の注意を払ってこれをできるだけ少なくしてもらいたいということに私は尽きる、残念ながら、これを廃止するというわけにはいかない、このように思うわけであります。
  298. 古堅実吉

    古堅委員 私は、つい最近この本をいただきました。これはあの北部訓練場の地域を抱える恩納村、そこでの一年余にわたる激しい切実な思いを込めての闘いを記録した本です。その題名は「山死して国栄え 山死なば村滅ぶ」そういう題名の本です。  その刊行に当たっての村長のあいさつ文がございますが、こう書いてあります。「さて、沖縄がかかえている課題は多くありますが、その最大のものは米軍基地であります。狭小な地にあまりにも過密な基地。ましてや実弾射撃演習については主義、主張の如何を問わず容認できるはずがありません。私たちの願いは、いつの日にか「基地のない恩納村に生活がしたい」この一言につきます。」こう言っています。そして、七十を超える、八十を超えるおじいちゃん、おばあちゃんたちも一緒になって、本当に必死になって、命を守る、安全を守る、村を守る闘いだということで一歩も引けぬ、そういう立場で頑張っています。  そこにあの都市型戦闘訓練施設がつくられました。やがて演習がなされるかということについての懸念もあります。その住民が反対したところの施設、そこで行われようとしているところの実弾演習、それは直ちにやめろと日本政府から申し入れ、その要望にこたえられるような結論が出るように努力をすべきだというように思いますが、長官、お考えどうですか。
  299. 石川要三

    ○石川国務大臣 先ほど申し上げましたように、都市型の訓練施設というものにつきまして、これを中止せよ、やめろという立場は、私は防衛庁という立場からしてこれを言うことは不可能である、かように考えます。ただ問題は、それと事故の防止ということ、こういう事故の防止という立場から最善の努力をしていかなければいけない、かように思います。
  300. 古堅実吉

    古堅委員 今示しました本の一ページ目にこういう詩文が載っています。   山は心のささえ   山死なば村も死す   山死なば我身諸共   我が身死すとも山守れ   我が心の富士恩納岳   山青き水清き   心のふるさと恩納岳   見殺すな恩納岳   戦世の思い忘れるな   山死して国栄え   山死して村滅ぶ   許すまじ国の横暴 命にかかわる問題だということでそれだけ切実に訴え続けても、国はアメリカの立場に立って、県民、村民の立場に立たぬ。そういうことに対する国の横暴さについての告発の詩でもございます。  この問題は損得の問題ではありません。国民の命、安全のかかわっている問題です。こういう問題について、日本政府が本当に国民の命、安全を大事にしようと思うのであれば、日米安保条約のもとにおいても、これほど欠陥のある実弾射撃演習場の問題にかかわっては、命、安全の問題、県民の立場からの折衝のしようもあろうもの。そういうことについていま一度、こういう思いを込めた告発、それにもこたえる立場で、それは外務省にもかかわる問題だと思います、長官大臣、お二人からお聞きしたい。
  301. 石川要三

    ○石川国務大臣 その美しい山、川を守る、国を守るということが、私はやはり防衛だと思うのです。そういう意味からいって、日米安保条約のもとに私ども日本を守っているという立場からして、その米軍の訓練の施設を中止しろということは私は言いかねる、こういうわけでございまして、ただ問題は、そういう訓練と往々にして起こり得る事故、これにいかに対処し、いかにこれを防止するか、ここに私は問題点があるのではなかろうか、こういうふうに申し上げたわけであります。
  302. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今防衛庁長官がお答え申し上げたとおりであると思っています。
  303. 越智伊平

    越智委員長 時間です。
  304. 古堅実吉

    古堅委員 政府が、アメリカの立場から物を考え県民に対処するということではなしに、目前の国民の安全を守る立場から厳しくこの問題について対処してもらうよう要求して、終わります。
  305. 越智伊平

    越智委員長 これにて佐藤君、古堅君の質疑は終了いたしました。  次に、楢崎弥之助君。
  306. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、おとついに引き続いてバングラデシュに対する救命ボート援助、ODAの疑問についてただしたいと思います。  会計検査院も見えておると思いますから、よくきょうの質疑の内容を聞いておっていただきたい。最後に見解を求めます。  それで、運輸大臣にお伺いしますが、小型船舶の検査は、運輸省の傘下にあります日本小型船舶検査機構がやっていると思いますが、どうでしょうか。
  307. 石井和也

    石井(和)政府委員 小型船舶の検査は、小型船舶検査機構で実施いたしております。
  308. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは、輸出する場合にいろいろと手抜きがあったりしてはいけないし、またダンピング等を防止することも目的の中へ入っておると思いますが、どうでしょうか。
  309. 石井和也

    石井(和)政府委員 輸出ボートの検査につきましては、輸出検査法に基づきまして私ども地方運輸局等で検査を実施いたしております。この検査は、輸出品の品質を維持させるという観点から、一定の検査基準に基づきまして検査を実施いたしております。
  310. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私の質問には直接答えられておりませんけれども、私が言っているのは、輸出品ですから手抜きがあったり、あるいはダンピングの問題が起きたり、そういうことを防ぐこともその検査の目的の中へ入っていますねと聞いておるのです。
  311. 石井和也

    石井(和)政府委員 お答え申し上げます。  一定の検査基準に基づきまして検査を行います。したがいまして、一定以上の品質を確保するということでございますので、手抜き等については検査法に基づきましてチェックをするということでございます。  それから、ダンピングの話がございましたけれども、輸出検査法に基づきましては品質についての検査を行うわけでございまして、価格のチェック等については、そういう仕組みが検査法の中にはございませんので、いたしておりません。
  312. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 運輸大臣はもう退席いただいていいですが、一つだけ言っておきますけれども、きょうはこの問題には触れませんが、ことしの二月の十二日付のバングラデシュの「ウイークリー・コリエール」という週刊誌があります。この中に私が取り上げておりますボートの問題もありますが、もう一つありますから、念のためにこれから問題にしますから言っておきますけれども、救援復興省のもう一つの購入である二百台の五トントラックと二百台の救急車、これについてもこのボート以上に非常に非合法的なものがあると指摘しています。これには伊藤忠、丸紅等が出てまいりますから、これはきょうは触れませんけれども、この次やりますから、テークノートしておって御退席をいただいて結構です。  そこで、通産大臣は商工委員会へ行かれるそうですから先に、順序がちょっと変わって質問上は都合悪いのですけれどもお聞きをしておきますが、バングラデシュにこの救命ボートを送るにつきまして、輸出するについて、発煙筒は許可が要りますね、通産省の。で、その発煙筒と絡んでどういう種類のボートを何隻船積みしたか、何日の日に、ついでにお伺いをしておきます。
  313. 高橋達直

    ○高橋(達)政府委員 お尋ねの発煙筒の関係でございますけれども、本年三月十四日に輸出許可を外為法に基づきましてやっております。この許可に関連いたしまして船積み報告などを受け取っておるわけでございますが、それらを総合して見ますと、具体的には本年四月の二日に二十本の発煙筒の船積みがあったわけでございますけれども、同時にその報告書によりますと、三十二フィート救命ボート五隻、二十九フィート救命ボート二十隻、合計二十五隻の救命ボートが現在までに輸出されているという状況に相なっております。
  314. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 通産大臣はおとついおられましたでしょうか。——じゃ、大体の内容は御存じだと思います。  それで、既に二十五隻は輸出されている。ボート自身は許可の対象になっていないことはわかっています。しかし、問題が問題ですから、私は、できればこれからの輸出について、問題点が明確になるまで保留するわけにはいかないだろうか、このように思うのですが、どうでしょうか。
  315. 武藤山治

    武藤国務大臣 実は、私も事実関係はこの間確かにいろいろ御質問がございましたので承っておりましたけれども、私の聞いておるのは、何かこの件は債務救済無償資金協力、その協力の中で行われていると私は報告を聞いておりまして、そうなりますと、これは通産省がとやかく言うべきことではなくて、外務省で専管でやっていただいていることでございますから、私は外務省がそこはきちんとやっていただいておると承知をいたしておりまして、私の方から輸出許可に当たってこれはけしからぬと言うわけにはなかなかいかないのではないかなと、いわゆる縦割り行政でございますので、その点はそんな感じがいたすわけでございます。
  316. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 現在のところはそうでしょう。しかし、やはりお役所仕事というか、こういう問題が外務省関係で起こっているのだから、やはり少しは注意を払われた方がいいのではなかろうか、こう思います。どうぞ、商工委員会へ行かれて結構です。  官房長官がお見えでございますが、おとつい、在日バングラデシュの商社マンや留学生でつくられておる市民フォーラムの議長さんが、総理あてにこの救命ボートの疑惑について調べてほしいというアピールの書簡が送られておる。総理は御存じなかった。はっきり私も日時を確かめました。これは四月の二十一日午後六時、速達で二通。一通は総理官邸、もう一通は総理の議員会館の部屋に速達で送られております。届いておりましょうか。
  317. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 二十三日の委員会終了後に調査を行いましたら、同陳情書の受領が確認されましたので、関係省庁外務省に対応するように回しておきました。  もういいですね。
  318. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 じゃ退席されていいです。  それで、まず私は、この救命ボートのどういう入札の仕様書がバングラデシュから来ているか、一応明らかにしておきたいと思います、若干おとついとダブる点はございますけれども。  三種類あります。大型救命ボート、マザーレスキューボートと書いてあります。これが二十隻。小型救命ボート百隻、これはスモールレスキューボートと書いてあります。三番目は、強化プラスチック製ボート四百隻、ファイバーグラスボート。それでそのほかに、小型救命ボート用の予備エンジン二十台。一番目のものは五十一フィート大型救命ボート、仕様書はこうなっています。全長が十五・三メートル、幅が三・八メートル、総トン数十トン、乗員三十名、エンジンは百二十五馬力二台、船内エンジン。二つ目は、二十九フィート小型救命ボート仕様書、全長八・八二メートル、幅二・三四メートル、総トン数二トン、乗員は十二名、エンジンは船外エンジンでありまして、七十五馬力一台。三番目は、三十二フィートプラスチック製ボート、これは全長九・七七メートル、幅三・〇三メートル、総トン数二・七トン、乗員三十名、エンジンは船外または船内エンジンになっておりまして、五十馬力一台。こういうことになっておるわけですね。  そこで、私は外務省にお伺いしますけれども、おとついも言いましたけれども伊藤公使の書簡に対してのバングラデシュ政府からの回答はいつ来たのでしょうか。
  319. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 本件書簡につきましては、四月十日付で私どもに返簡がセットをいたしております。
  320. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 バングラデシュのどこから来たのでしょう、どのセクションから。
  321. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 政府間の外交交渉の問題もございまして、詳しい形式そのものまで御説明するのはどうも私ども差し控えさせていただきたいと存じますが、返答のポイントについては先生の御質問にお答えして、内容を御説明させていただく用意がございます。
  322. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 先ほど紹介をいたしました「ウイークリー・コリエール」によりますと、この伊藤公使が計画省対外資源課アユブ・クァドリ殿に出しておられるわけです。それで、この対外資源課は直ちに、直ちにというか一月一日に救援復興省に満足のいくような書簡を送られておるのですね。どうして四月までかかったのでしょうね、回答が。
  323. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 バングラデシュ政府内のことでございますので、その辺の事情は私ども承知いたしておりませんが、先方がこういう照会に対していろいろ配慮して、よく調べて答えてくれるまでに時間がかかったものであろうと推測いたしております。
  324. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これほど時間がかかったということは、やはりいろいろと解明しなければならない問題点があったからだと私は思うのですね。三カ月以上かかっているでしょう、正式に回答するまでに。それほど問題があったということではないでしょうか。  そこで、向こうの政府からの日本の企業に対する入札要請は、去年の七月二十三日にあっていますね。それで、大体ダッカに出張所というか駐在所がある日本の商社、伊藤忠、伊藤萬、金商又一、兼松、丸紅、三菱商事、三井物産、ニチメン、日商岩井、住友商事、トーメン、こういうところに要請が行っている。そして受けたのが、おとついも言いました四社であります。すなわち、金商又一、丸紅、住友商事、そして兼松。  それで、これはもう公にされておるのですけれども、そのときの入札案内書の概要というのが出ています、バングラデシュ政府から。バングラデシュ政府日本政府の十一次債務救済資金より二十五億円の無償援助を受領した、上記無償援助の額あるいは一部は救済及び救命に使用する、以下三種類のエンジンつき強化プラスチック製ボートの購入に充てる、もう金額も示されております。そして、さっき言ったとおり隻数もこの入札案内書の中に示されておる。そして、この中には、見積書を提出する際には見積もりに対する保証金として見積金額の二%相当額の金を出さなくてはいけない、バングラデシュ政府救援省次官あてに提出となっています。つまり見積書と一緒に去年の八月十四日午前十一時までに救援省の次官補佐に提出しなさいと書いてあるのですね。それで、大体二十五億という金額が示されておりますね。  それに対して、私がおとつい明らかにいたしましたとおり、一番札の金商又一は二十二億九千七百八十九万円、二番札、丸紅五十九億一千六百三十一万円、三番札は住友商事六十二億、四番札、兼松六十七億、こういうことになっているのですね。だから、私が言ったとおり、二十五億に一番近いのは金商又一ですね、向こうの示された金額に一番近いのは。それがどうして二・六倍の五十九億の丸紅に決まったのか。おとついも言いましたとおり、水は低きに流れるけれども、どうしてこの入札とか応札は金額の高い方に行くのでしょうかね。ここに非常にわかりやすい疑問があるのですよ。わかりやすい疑問がある。  それからまた、この入札の案内書には、これも書いてありますよ、期限九十日と書いてある。納期九十日と書いてある。ところが丸紅は、金額もそうですけれども、金商の方は九十日に大体おさまっているけれども、丸紅の方は納期が、例えばマザーボートの方は百五十日から三百六十日間かかるとか、こうなっている。それからスモールボートは九十日から百八十日かかる。それからファイバーグラスのボートは九十日から三百三十日かかる。納期も長いのですね。丸紅は要求よりもはみ出ている。金額も三倍近い。どうして丸紅に決まったのでしょうね。だれだってこれは不思議に思うのじゃありませんか。私はそう思うのですね。そこで、この伊藤公使はやはりその辺がおかしいと思って照会、その経緯の説明を求められたのではないか、こう思います。  そこで、どういう内容の回答が来ているのですか。説明する用意があるとおっしゃいますが、できれば文書でいただきたいのですけれども、どうでしょうか。
  325. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 このバングラデシュによるボートの調達に係る我が国の援助は、いわゆる債務救済無償援助というものでございまして、国連貿易開発会議、いわゆるUNCTADの決議に基づきまして、後発開発途上国に対してよその援助国は債務帳消しをしている、それに日本側としてこたえる形でやっている援助でございます。したがいまして、過去の債務の債務帳消しに相当する効果を上げることを念頭に置きつつ実施すべき措置であるとされておりまして、まず一つは、即効性を有するものであるということが必要とされているわけでございます。先方政府の国際収支困難を助けるという意味で緊急の援助をしているわけでございます。したがいまして、その援助資金については、先方政府が国際入札等のちゃんとした手続に従って物資を調達するということでございまして、調達手続は先方政府が専ら行うわけでございます。もとより、そこに至る過程におきまして、どのような品目を購入するか、軍事目的には転用されないようにとか、いろいろ適正な使用については事前の協議をしているところでございます。しかし、事物資の調達に関しましては、専ら先方政府が行っているものでございます。  そういう仕組みをまず御説明申し上げた上で、ただし、私ども我が国の援助について常に適正に用いられているということを確保するという見地から、大使館においては先方と常に口頭または文書でいろいろ確かめ合っているところでございます。伊藤公使の書簡もそういうことであるということは先般申し上げましたが、それに対する返答、先生の御要望に応じまして、ポイントを御説明申し上げます。  まず第一に、先方政府の担当部局は救援ボート調達を目的として技術委員会を設置いたしました。本件救援ボートの技術仕様及び入札図書をそこで準備したわけでございます。そして先方委員会は、洪水期のやってくる前にボートを緊急に調達する必要があるということから、限られた製造期間を考慮し、また特別の仕様等もいろいろ考慮した結果、本件ボートを日本の業者から調達するということを進言したようでございます。そして、担当部局は上記の入札図書をダッカに駐在する日本商社等に送付したところ、これに応じたものが我が方四社であったということでございます。さらにまた、先方の関係部局は、応札書類を技術的、経済的見地から評価するための評価委員会をさらに設置して、いろいろな観点から十分な検討をした結果、技術仕様に合致しているということで我が方の丸紅の応札に対してこれを落札者とするという決定を下したということでございます。
  326. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 後でそれを文書にしたものを私に下さい。よろしゅうございますか。
  327. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 ただいま御説明したものについて、文書にしてお届けいたします。
  328. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これもバングラデシュ現地のマスコミでありますが、「デーリー・メイレット」という新聞があります。これが昨年の十一月二十二日付でこういう記事を出している。  「大統領の入札承認をめぐる疑惑」、バングラデシュの場合は、政府がそういう調達をする場合には諮問委員会というものがあるわけであります。それで、この記事によりますと、「規則上は、各省庁に受け入れられた調達・輸入案件は、諮問委員会によって承認を勧告されたあと、大統領に送られ大統領の最終承認を受ける。問題の案件は、」つまり、このボートの問題。「問題の案件は、救援省が諮問委を出し抜いて事前に大統領の承認を得たもので、したがって、事後的にその案件を諮問委に送ることは意味がなかった。それはルール違反であり、非常に問題のあるやり方だ。大統領が救援省案を承認した後にそれを調達委員会に送ることは、正規のルール・規制に反している。だが救援省は、大統領の案件承認について委員会に文書で通知することを怠ったのである。」つまり、本来ならば諮問委員会にかけなくちゃいけないのに、諮問委員会を通り越して、頭越しに大統領の承認を得た、こういう記事になっておるわけです。  こういういろいろな記事が出ているから、伊藤公使の問い合わせの文書の中に、現地のいろいろなマスコミを通じて問題があることを知ったから、一体なぜ丸紅に行ったのか、その経緯を説明してください、こういうことになったんだと思うのですね。今私が読んだような「デーリー・メイレット」とか、あるいは先ほどの「ウイークリー・コリエール」ですか、そういうものが出たから、伊藤公使は問い合わせの照会状を出された、このように私は思うのです。  そこで、今お読みになりましたが、それだけで外務省は納得されたのでしょうかね。伊藤公使さんどうでしょうか、納得されたのですか。私はさっぱりわかりませんけれどもね。
  329. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 伊藤公使がどういう判断をしたかということは私どもこちらでわかりませんが、私どもといたしましては、先方政府が、適正使用について大使館、日本政府、常に監視といいますか強い警戒といいますか注意といいますか、むしろ注意という言葉が適当だと思いますが、注意の目を向けているということは承知しているわけでございます。それで、常時コンタクトしている中で、先ほど御説明申し上げましたようなことをきちんと答えてくれたということは、私どもとしてこれは先方の正式な回答であるというふうに受けとめている次第でございます。
  330. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 現地の記事によりますと、金額は二十五億円なのに、二・六倍の丸紅に入札させたから隻数の方を減らした。本来ならば五百二十隻必要なのに二百七十五隻になっているのですよ。種類別に幾ら減らしたか、報告してください。
  331. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 先ほど債務救済の仕組みを御説明申し上げましたときにポイントとして申し上げたところでございますが、この債務救済援助の資金を使って先方が緊急に必要とする物資を購入する、その購入手続については専ら先方政府所管において、権限において行っているという仕組みでございまして、私ども、入札に当たって、あるいは現実の調達に隻数がどうなったか、その辺のところは現時点では詳細は承知していないわけでございます。  もとより、これでもってそれでは日本側としてのチェックが甘いのではないかという御質問が出ると思いますが、我が方が供与した資金が全部使われた後では、必ず先方からこういうふうに使いましたという報告は来ることにちゃんと約束がなっておりますので、その時点でございますればまた御説明できるかと存じます。
  332. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 隻数が半減したことは御承知ですか。
  333. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 私ども、本件の取り決めを行うに当たって、どういう品目を購入するか、軍事目的には使われないか、ODAの趣旨に合致しているかということで、そこをチェックした上でやっておりまして、何隻購入するか、どの仕様のものであるか、その辺のところまでは私ども常時知り得る立場にはない次第でございます。
  334. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 先ほど紹介したとおり、バングラデシュの方から入札のための案内書が各省庁へ届いているのです。その中に書いてありますよ。どうしてそのくらいのこと、わからないのですか。
  335. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 入札手続は、先方の政府とそれに応札する民間の企業等の間で結ばれる、そういう私的なものでございまして、私ども、入札の仕様、さらに実際に調達された中身がどうなったかということは、その辺までは常時知り得る立場にはない次第でございます。
  336. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなたのポケットマネーから金出しているんじゃないのですよ。何言っているんですか。国民の税金でしょうが。だから私もこんなに問題にしているのですよ。本当に有効に使われているのかどうか、あるいは何か疑問点があるのではないか、そういうことがあったんじゃ、これは国民に対して申しわけないでしょう。  私が調べたところでは、マザーボートは二十隻が五隻になった、スモールボートは百隻が九十九隻、それからファイバーグラスは四百隻が百七十一隻、合計二百七十五隻に減った。これは事実かどうか調べてくださいよ。どうですか。
  337. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 これは、繰り返して恐縮でございますが、先方政府の調達手続でございまして、私どもとしては、本件のスキーム上そこまで先方に要求する立場には実はない次第でございます。援助の目的に従って使われているということ、さらにまた合意された対象品目の範囲内であること等については常にチェックをいたしておりますが、その後、全額使用された後の報告書が参ったときには今お尋ねの点はあるいはわかるかと存じますが、現時点においては私ども承知していない次第でございます。
  338. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 会計検査院の方はよく話の内容を聞いておってくださいね。貴重な国民の税金を使うのにそういうていたらくで一体どうなるんですか。ちゃんと入札案内書に書いてあるでしょう、五百二十隻要る。それが二百七十五隻に減らされた。五百二十隻必要だからバングラは要求したんでしょう、日本から買いたいと。それが二百七十五隻に減ったということは、あとその差額はまたバングラデシュは要るんじゃないですか。そうすると、またお金をやらにゃならぬようになるんじゃないですか。どうですか、その点は。八九年度はどうなるんです。今私が問題にしているのは八八年度のやつですが、八九年度はどうなっているんです。
  339. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 水難救助用のボートにつきましては、先方の必要とする型式のボートを先方が先方の入札手続に従ってやっているということでございまして、その次の翌年について改めて同じ要請はこれまでのところ私ども承知いたしておりません。
  340. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 どうもおかしいんですね。先方としては、洪水の多いところだから救助ボートと申しますか救命ボートと申しますか、それが種類は三種類で五百二十隻要るんだというふうに入札案内書にはなっている。それが二百七十五隻に減った。それくらいのものですかね、必要な隻数というのは。だけれども、もしどうしても必要な隻数だったら後でまたその差額を埋めるというふうに持っていくのは当然じゃないでしょうかね。どうもよくわかりませんよね、私は。
  341. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 日本側が債務救済資金協力という形で供与した資金をどのような品目に使うかということについて、品目の対象は、繰り返し申し上げておりますとおり、購入前には日本側に相談をしてまいることは御案内のとおりでございます。しかし、実際にどのような型式のどのような大きさのものを購入するか等細部については、先方はその合意の範囲内で調達をするわけでございまして、価格差についての先ほどからの御指摘でございますが、仕様が異なればまた価格もさまざま異なってくるということは、こういう問題についてあることであろうと存じます。  したがいまして、私ども、翌年度また同じものをやるのかという御指摘をいただいておりますその質問につきましては、先方がまた必要だと判断する場合は要請してくる可能性は排除できませんけれども、これまでのところは水難救助の救助艇につきましては、先方は自分たちの必要とする仕様のもの、それに基づいて応札したものの中から技術的観点も加味して十分検討した結果の決定である、価格が安かったものについても十分技術的な仕様まで含めて検討した結果先方の需要にマッチしなかったものである、こういうことであろうかと存じます。
  342. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これも現地のマスコミですか、「ベンガル.ウイークリー」というやつがある。今あなたがおっしゃった、丸紅が適当だ、予算の範囲内で出した金商は適格性がなかった、こういうお話のようですが、この雑誌によりますと、金商又一社が不適当であることを、在日バングラデシュ大使館のハク大使が金商はだめだというレポートを本国に送っている。それによって丸紅に決まった。そういう話、知っていますか。
  343. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 先方大使の連絡の内容等私ども知り得る立場にないので、承知いたしておりません。
  344. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これは非常に重大なレポートがハク大使から現地に、本国に行っている、こういうことでしょう。丸紅とこのバングラデシュの在日のハク大使との間がとやかく言われている。言うならば癒着があるのではないかということが言われておる。  さらに私は、わからない点を問いただしてまいりたいと思います。  例えば、三種類目のファイバーグラスの三十二フィートのやつ。これは一隻、金商の方は三百十八万円、丸紅の方は三倍の九百四十九万六千円。どうして三倍にもなっているんですかね。どうしてこんなに違うんでしょうか。どうもわかりませんよ。わかるようにしてもらいたい。どうして三倍もする方に決めるんでしょうかね。私はどうもわからないんですよ。  それで、私はまだわからない点があるのですが、いいですか。私もいろんな資料を取り寄せてみましたよ、日本の場合のボートについて。例えば三十二フィート、三種類のうちの一つ、つまりファイバーグラスの四百隻というやつですが、これは日本のメーカーの一覧表があります。その資料を通して私は調べてみました。この三十二フィートに匹敵するやつはYDX—三二—OA—EKというやつが匹敵しますね。それで今私が申し上げたこの種類は、三十二フィートではありますけれどもエンジンは三百四十馬力。ところが向こうが要求している三十二フィートのものは五十馬力。  通産おられますかね。もう帰られましたか。大体一馬力について一万円ぐらいするんじゃないですか。おられぬですかね。——大体私の調べたところではそうです。そうすると、日本の今申し上げたボートに直してみますと、向こうが要求しているのは三十二フィートのやつは五十馬力ですから、一馬力について一万円だとしますと二百九十万円安くなるわけですね、このボートに比べたら。このボートは生産工場は天草になっていますが、日本の場合、五百八十一万九千円になっておる。これが三百四十馬力ですから、五十馬力ならば二百九十万円安くなる。そうすると二百九十二万円になる、日本の場合は。ところが丸紅の場合は九百四十九万円になっている。どうしてこんなに開いているんでしょうね。わからないんですよ。どこかで検証しなければいけないんじゃないですか、認証と申しますか。それは事の性質上、向こうに何もかも任せている、それじゃ私は済まぬと思うんですよ。どこかに欠陥がある、この救援の制度に。だから私は、今あなたがおっしゃった債務救済無償援助のあり方にどこかおかしいところがあるのではないか、つまり構造的な欠陥があるのではないかという気がしてしようがないんですね。  どこにあるかというと、無償の資金協力は通常、契約内容を外務省がチェックをして認証する。それで日本政府から直接受注の企業に援助資金が支払われる。つまり、後払い方式である。ところが、債務救済無償援助の方は外務省による認証が省略されておる。つまり、チェックができない仕組みになっておる。それで、外務省による事前のチェック機能が働かないから、非常に高値の援助になるのではないか。だからそういう、あなたもさっき答弁していたけれども、向こうから口上書として来る、何を幾ら買いました。そのとき初めて何もかもわかる。ああそうですか、それで済むのですね。そういうチェック機能がこの制度にはないのです。だから公使もわざわざ問い合わせしなければならない、こういうことになっておるのではないかと思う。私は、この債務救済無償援助の制度としてのあり方について再考される必要があるのではないかと思いますが、外務大臣、いかがでしょうか。
  345. 中山太郎

    ○中山国務大臣 ちょっと先生、その前に局長からこの件の仕組みについてもう一度説明をさせていただきます。
  346. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 債務救済のための無償援助と申しますのは、国連貿易開発会議の閣僚会議の決議に基づきまして、特におくれている後発開発途上国等を対象とする援助の一形態でございます。それで、日本を除くそれ以外の援助国は、過去のこれだけおくれている後発開発途上国の有する債務につきまして、帳消し、もうゼロにしちゃっているわけです。ところが、我が国の場合にはそれができないのでございます。したがいまして、私どもは、一たん返してもらってそれに見合う無償援助をしているというのが、この債務救済の無償援助でございます。その上で、なおかつ向こうにちゃんと適正に使ってほしいということを交換公文等にはきちんと書かせ、また、先ほど申し上げましたように調達物資も軍事目的などに使われないように、ちゃんと先方と常時その辺は明らかにし得るような協議をしているわけでございます。  それから、価格差についてしばしば疑問を先生から御提起なすったわけでございますが、この水難救助のボートにつきましては、先方は自分たちが必要とする仕様に合致しているものということを非常に重視していたようでございまして、一番安い価格の企業については、その関連の造船会社がドックを有していなかったとか、あるいはプラスチックボートの製造経験が十分でない、その辺を先方は随分技術委員会で調べた結果であるというような、そういう情報もございます。
  347. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 さっき私は現地の雑誌を紹介しましたが、そういう委員会を頭越しに大統領は決めているのでしょう。あなたの今の答弁と違うのです、実際は。問題は、大臣、やはりこの債務救済の無償援助は要するにこれは——外務省が監修されていますね、この「経済協力参加への手引き 外務省監修」となっている。これにも書いてありますが、要するに、何といいますか、問題のアンタイドのキャッシュグラントですね。ここに問題がある。アンタイド、これはしばしば国会で問題にしたところです。だから私は、このあり方ですね、「この援助はいわゆる「アンタイドのキャッシュ・グラント」の形態をとっており、特に具体的な開発計画に基づかなくても、相手国が希望する商品の第三国から」「その使途については口上書形式で報告する義務を負っている。」さっき私が申し上げたとおりです。単に口上書が来るだけでして、外務省が認証と申しますか、そういうチェックをする仕組みになっていない。これは私は再考を要するのではなかろうか。考え直していただきたい。そうしないと、また私、トラックの問題をやりますが、同じことが出てきますよ。外務大臣の御見解を聞いておきたいと思います。
  348. 中山太郎

    ○中山国務大臣 私も就任以来、このODAが国民の貴重な税によって運用されているということを十分認識をいたしまして、この問題については格段の注意を払っております。  今先生指摘の債務救済の無償援助という問題につきましては、発展途上国で累積債務が返せないという国々が、いわゆる一たん債務を返済して、それに見合った分を改めて帳消しにするというような仕組みになっております、私の聞いておるところでは。その場合にあくまでも、先ほど委員指摘のように、後から報告書が来ればそれでいいというようなお話でございましたが、私どもは主権の問題、ここに一つのひっかかりがあることは委員も十分御存じだと思います。ほかの疑惑問題でいろいろと議論になっておりますけれども、問題は、我が国会計検査院が相手国の主権を侵害して相手国の会計検査をできないというところに今日の疑惑という問題あるいは疑問という問題が出ていることは私も十分認識をいたしておりまして、このことにつきましては、担当大臣といたしましても今後とも十分検討をさせていただきたい、研究をさせていただきたい。ただこれは、国連イニシアチブによるこういうふうな援助でございますから、他の援助国との兼ね合いもございまして、その点は委員も十分御理解をいただきたいと思います。
  349. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 十分検討してみるという話ですが、ぜひそうしていただきたい。つまり私が言いたいのは、チェック機能を持つようにしてくださいということです。つまり、私いろいろ聞いたんですよ、外務省関係も、名前を言えませんが。要するに向こうから口上書が来るだけですね。口上書が来るだけ、この仕組みは。そうすると、口上書どおりの品物が果たして購入されているかどうかチェックできないのですね。これは仕組みに欠陥があるのではないか。だれでも指摘していますよ、これは。常識的にもそうじゃないでしょうか。だからこの辺は十分、国民の税金ですから、ひとつこの仕組みについて御検討をいただきたい、私はそのように思います。
  350. 中山太郎

    ○中山国務大臣 委員重ねての御意見承りましたが、他の援助国は債務が返済できない場合にはそれを全部ゼロにしてしまう、こういうことでございます。だから、我が国ももし疑惑が将来発生しないようにしようと思えば、返済できない国に対する債務は全部ゼロにするというようなことを考えなければ、この問題の解決というものはなかなかできていけない。しかし、私どもとしては、国民の大事な税金を運用するわけでありますから、この点については今後とも引き続き検討をしてまいりたい、このように考えております。
  351. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 先ほどるる申し上げたとおりに、この仕組みに欠陥がある。  それからもう一つ、どうして日本の企業だけが参入したのでしょうかね。
  352. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 入札の手続についてはあくまで先方が専管的にやるものであるということを繰り返し申し上げた上でお答え申し上げますが、在ダッカの企業関係に広く案内書を配ったと私どもは聞いております。しかし、結果としてこの型式に合うものをつくれる、納め得る企業ということで日本の四社のみが応札したという結果になっているわけでございます。
  353. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 こういう疑問も私は消し得ないのですよ。どうも丸紅と住友商事と兼松は談合したんじゃないかという感じがするんですね、結果を見てみて。そういう疑いがあるということを現地の新聞も指摘しているのです。要するにこの入札はおかしい、結論を言えば。値段の点においても納期の点においても適合していない丸紅がなぜわざわざ決定されたのか、納得がいかない。幾ら相手の政府のすることだといいましても、大臣も何回もおっしゃっているとおり、これは貴重な国民の税金ですからね。だから私はおとついも言ったとおり、あの公使の手紙にはザ・ガバメント・オブ・ジャパン、「日本政府」という言葉が四回も出ていますよ。日本政府が疑問を呈しているでしょう。日本政府ですら疑問を呈しているのですから、私どもが疑問を持つのは当たり前でしょう。そうすると私どもは、こう言ってはなんですけれども国民の代表ですから、私どもがわからないと国民に対して申し開きができない。だからそれを解明する責任がある。先ほどの返答の内容だけでは私はわかりませんね。国民の皆さんもあれではなおさらわからぬと思いますよ。だからこの疑問あるいは疑惑に対してもう少し徹底した調査を私はお願いしたいんだ。当たり前の話でしょうが。何回も言うが、また出てきますよ、トラックの問題が。救急車の問題も出てくる。だから、私はだれが悪いと言っているんじゃないんですよ。制度に欠陥があるのではないか。だから国民の税金を使う以上は制度的にもぜひチェックができる仕組みにしていただきたい。それを再三私は申し上げておるわけですよね。
  354. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 もう一度仕組みについてお答え申し上げますが、先方が返済不可能に陥っているような、そういう累積債務を抱えた国に日本としましては、それを債務を棒引きする、帳消しするということは制度上できないわけでございます。したがいまして、先方に一たん債務を返させる形をとりました上で、これが一つ自助努力を求めているゆえんでもございます。その上で無償の資金協力をしている。その使途についても軍事目的等はいけませんということを注文もつけている。こういうことで、私ども先方の、言うなれば財政資金の一部に入ったものについて本当に相当なる介入をしていると言われてもやむを得ないくらいまでチェックはしているわけでございます。しかし、入札手続そのものはあくまで先方政府のやることでございまして、私どもの照会に対しまして、先方は何でこんなに日本側は細かいことをいろいろ聞いてくるんだと、言うなれば向こうも愉快でないことを言っているのでございますが、私ども先生おっしゃるとおり、国民の税金であるということから、できるだけ向こうに対する情報は求める、そういうことは常時やっている次第でございます。このスキームが先方に対して帳消しできないためにやっている救済である、そういう性格に基づいてやっているこのスキーム、ぜひ御理解を賜りたいと存じます。
  355. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 なかなか理解できませんね。あなたはおとつい私の質問に対して、伊藤公使の書簡であるかどうかまで、私その点について、それを確認する立場にない、何ですか、これは。外務省の出先の公使が書簡を出しているのでしょう。それを確認する立場にあなたはないんですか。じゃだれが確認する立場にあるのでしょう、大臣。あの人は確認する立場にないと言っているが。あの伊藤公使の書簡、本物かどうか確認する立場にないと言うんだから。
  356. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先日の先生のお尋ねに対して局長が不用意な答弁をいたしたのかもわかりません。もし不行き届きな点がございましたら、私がここでそれを取り消させていただきたいと思います。
  357. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、あの伊藤公使の書簡というのはあのとおりであるというふうに私は今の大臣答弁を理解をいたします。  そこで、再三先ほどから局長は、私が申し上げる仕組みの点について、大臣もおっしゃいました、現行法制上債権のキャンセルは困難だと盛んにおっしゃった。外国のこともある。それは、外務省の考えとしては、現行法制度上というのは財政法の第八条「国の債権の全部若しくは一部を免除し又はその効力を変更するには、法律に基くことを要する。」これをおっしゃっているのですか。
  358. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 私ども調査しましたところによりますと、現行制度上の制約としましては、基金法上、第三十九条第二項におきまして、債権のキャンセルは、主管官庁が認可して決算するという立場はあるわけでございますけれども、その際にさらに損益決算上の問題として、不足があるときにはその不足額の処理をしなければならないというような規定があるので、いわゆる帳消しというようなことは非常に困難がある、こういうことでございます。
  359. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 大臣、お聞きのとおりなんですね。法制上欠陥があるなら、できないんだったら法律変えればいいでしょう。いい方に変えたらいいのじゃないですか。私はそう思うのですよ。それでやはり国民が納得するような方法でぜひ再検討をいただきたい。  それで、大蔵大臣、このようなODAのあり方について何かお考えがありますか。お金を出される方ですけれども
  360. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 これは先般来、委員の御論議とはまた別個にODAについてさまざまな論議が交わされております。そうして、従来のODAの中で、ややもするとハードに偏り、それが関係省庁の協力を十分に得ないままに、例えば農業協力の場合におきましても、医療協力の場合におきましても、機材の選定等が特定の業者に任せられたケースがあったような気がすることは私自身が否定をいたしておりません。そうした状況の上に立って、対外経済協力関係閣僚会議というものを一昨年の十二月につくりますと同時に、事務的にも各省庁間の連絡を緊密にするようにしながら、それぞれの国内における専門省庁の意見も聞き対外経済協力というものを進めていくようにしていく、そうして相願わくばハードのみではなく、それに付随するソフトも組み合わせた援助の体系に持っていくように努力をするということで、現在努力を続けているということであります。
  361. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ここに昭和六十三年度決算検査報告があります。六十四年のは十二月ころにしか出ませんから。会計検査院、これを見てみますと、二百八十九ページでございますが、「第三節 特に掲記を要すると認めた事項」があって、その中に「政府開発援助の実施について」、つまりODAについて、これは第一局長、見えていると思いますが、会計検査院としては初めてODAについていわゆるメスを入れられたのじゃないですか。どうですか。問題提起と言ってもいいです。
  362. 疋田周朗

    ○疋田会計検査院説明員 お答えいたします。  政府開発援助のプロジェクト本体に関する指摘としては初めての指摘でございます。
  363. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この報告ではプロジェクトだけじゃないでしょう。無償資金協力もあるでしょう。プロジェクトの方は国際協力事業団の方でしょう。無償資金協力の方は外務省でしょう。どっちも触れられておるじゃありませんか。
  364. 疋田周朗

    ○疋田会計検査院説明員 先ほどプロジェクトと申し上げましたのは、無償それから有償あるいは技術協力すべてにわたりまして、現地で特別な施設をつくりますとかあるいは機材を調達する、そういうようなものを包括的に申し上げたわけでございます。
  365. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は無償資金協力を言っているのですよ。これは初めて問題提起をされたんじゃないですかと聞いている、会計検査院としては、ODAについて。
  366. 疋田周朗

    ○疋田会計検査院説明員 無償資金協力の部分につきましては、委員指摘のとおり初めての指摘でございます。
  367. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうだと思うのですね、そうだと思うのです。やはりODAに問題があるからだと思うのですよ、いろいろと。  こう書いてありますね。「無償資金協力の実施に当たっては、外務省では、相手国からの要請に基づき、事前の調査を通じ、協力内容及び協力範囲につき合意した後、当該事業に係る両国の権利・義務関係を明記した交換公文を締結し、相手国が我が国の業者と締結した契約の認証を行うとともに、必要に応じて事業完了後に在外公館による事業の評価等を行っている。」こうなっている。ところが、先ほど申し上げたとおり、債務救済無償援助の場合はそのチェックがない。それについて会計検査院はどのように思っておられますか。ここは認証を行うという、一般の無償援助のことを言っていらっしゃるのだと思うのです。一般の場合は認証は、先ほど申し上げたとおり、相手の国と日本の企業が契約をする、その契約を外務省が認証する。つまりチェックする。そして、お金は政府が業者にやるんですね、普通の場合は。業者にやる。ところが、このいわゆる債務救済無償援助の場合は、日本の業者にやるのじゃなしに相手の国にやる。ここが違うのですよ。そうでしょう。だから、やはり認証する必要があるのではないか、さっきから言っているとおり。会計検査院のお考えを聞いておきたい。
  368. 疋田周朗

    ○疋田会計検査院説明員 この債務救済無償援助につきましては、実は私どもまだなかなかそこまで従来検査に手が回っていなかったところでございまして、今後のあり方につきましては外務省から説明を伺いながら検討してまいりたいと考えております。
  369. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 その答弁を私も期待をいたします。それで大臣も再検討の必要があるような御答弁でしたから、ひとつよく検査院とも御相談なさって、この債務救済無償援助制度そのもののあり方についてきちっとしていただきたい。  それで、直接このこととは関係していませんけれども、この報告書に「事例1」と「事例2」と二つ報告に出ています。これは具体的に相手の国のことを言えますか。
  370. 疋田周朗

    ○疋田会計検査院説明員 私どもの検査の対象はあくまでも外務省あるいはその他の我が国援助実施機関でございまして、相手国につきましては直接検査の権限がございません。そういったことで、従来から検査報告では検査権限のない相手方につきましては特にその固有名詞を出さない、こういう取り扱いでやってきておりますので、その点、御理解いただきたいと存じます。
  371. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それはよくわかりました。  それで、くどいようですが、こう書いてありますよ。外務省の関連のところだけ読みますけれども、いいですか。ほかのところは省きます。こうなんです。外務省から「提出された計算書、証拠書類等に関する書面検査」ということを書いてある。それから「会計実地検査を行う」、そういうことを書いてあるのですね。だから会計検査院はその気になれば調べられるのですよ。調べられる。だから制度あり方とともにこれはぜひきちっとしていただきたい。もう一度外務大臣の御見解を聞いておきます。
  372. 中山太郎

    ○中山国務大臣 重ねてのお尋ねでございますが、私は外務大臣として、これから国際社会において日本は援助を強化して貢献していかなければならない、そういう国家でございますから、国民のとうとい血税を使ってこの援助を行う以上は国民の皆様方が御理解できるようなことでなければならないということで、絶えず私は自分の考えを堅持しております。そういう意味におきまして、きょう委員の御指摘を踏まえて、今後ともこのODAのシステムが国民の理解が得られ、支持が得られるような方向に努力をさしていただきたい、このように考えております。
  373. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 恐らく最後になると思いますが、今の債務救済無償援助のあり方、ODAの何といいますか、どれだけ支出しているかというその計算の仕方について、一遍債務を返還、円借款やってそれを返させる、利子も返させる。それはそのODAの中に入っている。それを今度はまた補ってやるのでしょう。そうすると、ODAの額と二重にやらせるのですか、報告としては。余計出したような、つまり水増しのような感じになりませんか。わかりますか、私が言っている意味は。つまり、この債務救済無償援助のあり方は、大臣もおっしゃっているとおり、局長も言っていますが、一遍返させるわけですね。一遍返さして、それで、それはODAの援助費用の中へ入っている、計算上は、対外的には。それで、今度はまたそれを埋めてやるのでしょう。そうすると、それもODAの援助の費用の中へ加算されるんではないか、つまり水増しのような形になるんではないか、それを聞いているんですよ。
  374. 中山太郎

    ○中山国務大臣 極めて事務的な会計上の問題でございますから、担当の責任者から御答弁をさせていただきます。
  375. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 通常ODAの実績の計算をいたします場合には、いわゆる支出純額ベースという統計が用いられております。これによりますと、債務救済無償の供与の場合、過去の供与いたしました円借款の債務の帳消しもODA実績の総額としては全く統計上は同じ結果となるわけでございまして、二重計算という御指摘には当たらないわけでございます。その点は、決して私ども水増しして二重計算などをしているということはございませんので、差し引きゼロになるという点で御理解を賜りたいと思います。
  376. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 時間来ましたから、まだ言い分ありますけれども、これで終わります。ありがとうございました。
  377. 越智伊平

    越智委員長 これにて楢崎君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして一般質疑は終了いたしました。     ─────────────
  378. 越智伊平

    越智委員長 この際、御報告いたします。  去る二十三日、分科会設置の際、分科員の配置及び主査の選任につきましては委員長に御一任を願っておりましたが、分科員の配置につきましてはお手元に配付いたしておりますとおりといたします。     ─────────────   第一分科員       池田 行彦君    越智 伊平君       鈴木 宗男君    田澤 吉郎君       新村 勝雄君    藤田 高敏君       冬柴 鐵三君    楢崎弥之助君   第二分科員       越智 通雄君    倉成  正君       町村 信孝君    宮下 創平君       松浦 利尚君    村山 富市君       山田 英介君    大内 啓伍君   第三分科員       井出 正一君    工藤  巌君       葉梨 信行君    加藤 万吉君       佐藤 敬治君    日笠 勝之君       吉井 英勝君   第四分科員       金子 一義君    戸井田三郎君       林  義郎君    武藤 山治君       和田 静夫君   第五分科員       稲村 利幸君    内海 英男君       近藤 鉄雄君    自見庄三郎君       戸田 菊雄君   第六分科員      石井  一君    小此木彦三郎君       佐藤 信二君    野中 広務君       川崎 寛治君    神崎 武法君   第七分科員       伊吹 文明君    左藤  恵君       原田昇左右君    嶋崎  譲君       新盛 辰雄君    三浦  久君   第八分科員       粟屋 敏信君    亀井 善之君       野田  毅君    井上 普方君       串原 義直君     ─────────────
  379. 越智伊平

    越智委員長 次に、分科会主査は次のとおり指名いたします。         第一分科会主査 池田 行彦君         第二分科会主査 越智 通雄君         第三分科会主査 工藤  巌君         第四分科会主査 林  義郎君         第五分科会主査 内海 英男君         第六分科会主査 石井  一君         第七分科会主査 左藤  恵君         第八分科会主査 粟屋 敏信君 以上であります。  明二十六日及び二十七日は、分科会の審査を行います。  本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十二分散会