運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1990-04-24 第118回国会 衆議院 予算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年四月二十四日(火曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 越智 伊平君    理事 近藤 鉄雄君 理事 佐藤 信二君    理事 野田  毅君 理事 原田昇左右君    理事 宮下 創平君 理事 加藤 万吉君    理事 佐藤 敬治君 理事 村山 富市君    理事 神崎 武法君       粟屋 敏信君    池田 行彦君       石井  一君    稲村 利幸君       内海 英男君   小此木彦三郎君       越智 通雄君    久野統一郎君       工藤  巌君    倉成  正君       後藤田正晴君    左藤  恵君       田澤 吉郎君    戸井田三郎君       葉梨 信行君    長谷川 峻君       浜田 幸一君    林  義郎君       原田  憲君    松本 十郎君       村山 達雄君    井上 普方君       川崎 寛治君    串原 義直君       嶋崎  譲君    新村 勝雄君       新盛 辰雄君    戸田 菊雄君       藤田 高敏君    松浦 利尚君       武藤 山治君    和田 静夫君       日笠 勝之君    冬柴 鐵三君       山田 英介君    正森 成二君       三浦  久君    川端 達夫君       菅  直人君    楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣  海部 俊樹君         法 務 大 臣 長谷川 信君         外 務 大 臣 中山 太郎君         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君         農林水産大臣  山本 富雄君         通商産業大臣  武藤 嘉文君         運 輸 大 臣 大野  明君         建 設 大 臣 綿貫 民輔君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     奥田 敬和君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 塩崎  潤君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      砂田 重民君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 石川 要三君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      相沢 英之君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      大島 友治君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 北川 石松君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 佐藤 守良君  出席政府委員         内閣官房長官 大島 理森君         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         公正取引委員会         委員長     梅澤 節男君         公正取引委員会         事務局官房審議         官       矢部丈太郎君         公正取引委員会         事務局経済部長 糸田 省吾君         公正取引委員会         事務局取引部長 土原 陽美君         公正取引委員会         事務局審査部長 柴田 章平君         総務庁長官官房         審議官         兼内閣審議官  杉浦  力君         総務庁長官官房         審議官         兼内閣審議官  増島 俊之君         総務庁人事局長 勝又 博明君         防衛庁参事官  内田 勝久君         防衛庁長官官房         長       児玉 良雄君         防衛庁防衛局長 日吉  章君         防衛庁人事局長 畠山  蕃君         防衛庁経理局長 藤井 一夫君         防衛施設庁長官 松本 宗和君         防衛施設庁総務         部長      吉住 愼吾君         防衛施設庁施設         部長      大原 重信君         経済企画庁調整         局長      勝村 坦郎君         経済企画庁国民         生活局長    末木凰太郎君         経済企画庁物価         局長      田中  努君         経済企画庁総合         計画局長    冨金原俊二君         科学技術庁原子         力局長     緒方謙二郎君         環境庁企画調整         局長      安原  正君         沖縄開発庁総務         局長      藤田 康夫君         国土庁長官官房         長       北村廣太郎君         国土庁長官官房         会計課長    森   悠君         国土庁長官官房         水資源部長   苗村 滋克君         国土庁計画・調         整局長     長瀬 要石君         国土庁土地局長 藤原 良一君         国土庁大都市圏         整備局長    三木 克彦君         国土庁地方振興         局長      野沢 達夫君         国土庁防災局長 市川 一朗君         法務省刑事局長 根來 泰周君         外務大臣官房審         議官      太田  博君         外務省北米局長 松浦晃一郎君         外務省欧亜局長 都甲 岳洋君         外務省経済局長 林  貞行君         外務省経済協力         局長      木幡 昭七君         外務省条約局長 福田  博君         外務省情報調査         局長      佐藤 行雄君         大蔵大臣官房審         議官         兼内閣審議官  谷口 米生君         大蔵大臣官房審         議官      西村 吉正君         大蔵省主計局長 小粥 正巳君         大蔵省主税局長 尾崎  護君         大蔵省理財局次         長       松田 篤之君         大蔵省銀行局保         険部長     大津 隆文君         大蔵省国際金融         局長      千野 忠男君         農林水産大臣官         房長      鶴岡 俊彦君         農林水産大臣官         房予算課長   山本  徹君         農林水産省経済         局長      川合 淳二君         農林水産省構造         改善局長    片桐 久雄君         農林水産省農蚕         園芸局長    松山 光治君         農林水産省畜産         局長      岩崎 充利君         農林水産省食品         流通局長    鷲野  宏君         林野庁長官   甕   滋君         通商産業大臣官         房商務流通審議         官       山本 貞一君         通商産業大臣官         房審議官    横田 捷宏君         通商産業省通商         政策局次長   堤  富男君         通商産業省立地         公害局長    岡松壯三郎君         中小企業庁小規         模企業部長   川田 洋輝君         運輸省国際運輸         ・観光局長   宮本 春樹君         海上保安庁次長 野尻  豊君         建設大臣官房長 牧野  徹君         建設大臣官房総         務審議官    福本 英三君         建設大臣官房会         計課長     小野 邦久君         建設省建設経済         局長      望月 薫雄君         建設省都市局長 真嶋 一男君         建設省河川局長 近藤  徹君         建設省道路局長 三谷  浩君         建設省住宅局長 伊藤 茂史君         自治大臣官房総         務審議官    芦尾 長司君         自治省行政局長 森  繁一君         自治省財政局長 持永 堯民君         自治省税務局長 湯浅 利夫君 委員外出席者         予算委員会調査         室長      多田 俊幸君     ───────────── 委員の異動 四月二十四日  辞任         補欠選任   戸井田三郎君     久野統一郎君   大内 啓伍君     川端 達夫君   楢崎弥之助君     菅  直人君 同日  辞任         補欠選任   久野統一郎君     戸井田三郎君   川端 達夫君     菅原喜重郎君   菅  直人君     楢崎弥之助君     ───────────── 本日の会議に付した案件  平成二年度一般会計予算  平成二年度特別会計予算  平成二年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 越智伊平

    越智委員長 これより会議を開きます。  平成二年度一般会計予算平成二年度特別会計予算平成二年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  昨日に引き続き、外交防衛及び日米構造問題協議等について集中審議を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。和田静夫君。
  3. 和田静夫

    和田(静)委員 おはようございます。  昨日の川崎委員質問をベースにいたしまして、若干の外交防衛問題を中心的にお尋ねをいたしたいと思います。  今、世界は大きな構造的な変化時代に入っていると私は見ます。マルタ会談以降、東西関係変化ソ連市場経済の導入、東ヨーロッパ民主主義体制ドイツ統一統合ヨーロッパの成立、そういうものを展望しますと、世界の新しい政治枠組みが生まれつつあるんだろうと思うのです。特にソビエトのペレストロイカの行方、一九九二年のECの統合、そしてもちろんアメリカ、カナダの一体的経済圏世界経済先進地域である種のブロック化が進んでいるのではないだろうか、私はそういうふうに考えます。  そうした中で、東アジア日本の位置についてどう考えるのか、どういう展望を持てばいいのか、政府考え方がどうも見えないのであります。一つには、日米経済関係の良好な発展を軸にしまして、環太平洋あるいは北太平洋経済圏といった協力関係の構築の道もあるかもしれません。また、中国、シベリアへの経済援助、東南アジア経済協力を通じてのアジア主義という考え方、もちろんこれはかつての大東亜共栄圏ではありません、新しい理念に基づくものでありますが、言ってみれば民主主義的アジア主義という考え方があってもよいのではないだろうか。  いずれにせよ、世界ブロック化的な傾向と日本が置かれているアジアにおける二十一世紀の姿というものをどうとらえていくのだろうか。政治が五十年、百年の大計を立てるものであるとするならば、二十一世紀国際関係の見方というものをひとつ総理に伺っておきたいのであります。
  4. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今前半に和田委員がお示しになりました世界の最近の大きな流れというものは、私も全く認識を同じくいたします。そうして、東西ヨーロッパに起こりましたあの劇的な変化というものは、まさしく冷戦時代の発想を乗り越えて、力の対立時代から協力協調を模索して新しい秩序をつくっていこう、こういう動きが出てきておること、これはそのとおりだと思います。それから、アジア太平洋地域に関しましては、ヨーロッパほど劇的に、急速に、全面的にという変化がまだ見られませんけれども、見られるように我々は努力をしていかなければならぬことは当然のことであります。  そして、今、二十一世紀を目指してどう見通すかと言われますが、私はこれを、非常に希望的観測も含むわけですけれども、この流れが一層定着をしていって、世界に自由と民主主義市場経済の価値を大切にしながら、そういった一つ共通目標を持ちながら、共通理念を持ちながら、皆が助け合い、そして国づくり人づくりお互い協力をし合っていくような、そしてまさに冷戦という言葉が歴史的なものになってしまうような新しい競争的共存時代が始まっておるのではないだろうか、またそうあるべきだと強く希望もし、そのためにこれからの十年間の二十一世紀へ向けての助走期間というものは、それぞれの国でそれぞれの立場に応じてそういった世界に向かって努力をしていかなければならない時期だ、このように受けとめさせていただいております。
  5. 和田静夫

    和田(静)委員 東西関係冷戦から対話時代、そして協調時代に今入っていくだろう、そこのところは総理と思いを一つにしますが、つまり、米ソという二極対立から米欧ソ、そういう三極になって、東アジア日本がこの世界政治の極としての役割を果たしていく、そこをどういうふうにこれから展望するかということが大変重要だろうと私は思うのであります。  そういう視野に立って考えてみますと、好むと好まざるとにかかわらず、アジア経済圏とでもいいますか、そういう枠組み、あるいはアジア経済発展計画というような、そういうものにどういうふうに協力をするのか、総理のお考えを……。
  6. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 日本外交座標軸一つが、日米関係を基軸として自由陣営一員であるという位置づけ、そしてサミット参加国の一国としてその立場において責任も果たしていく、もう一つ座標軸が、アジア人アジア一員としてアジアのために日本がいかなる貢献ができるか、そしてアジアアメリカヨーロッパと、今おっしゃったような三極関係の中でアジアにどう貢献し、アジアをどう考えるか、こういう角度のお尋ねだったと私は思いますけれども、アジア重要性というものは日本もずっと考え続けてきておることでございますし、また同時に、アジアというものが、今のところはまだいろいろな国々によって問題を抱えておりますけれども、二十一世紀までにはそれを片づける努力をしながら、同時にこの数年だけを振り返っていただいても、やはり日本世界国々経済的に力を持って、それぞれの国が経済的にみずからの国のことをみずからの力でできるように離陸していくといいますか、ガルブレイス流の言い方で言うと、その国が離陸をするための協力をしていかなければならぬという目標で、アジア諸国に対しては日本人づくり国づくりにもきょうまでも一生懸命御協力をしてきたつもりでございます。  この数年来、アジア諸国からの日本に対する製品輸入は、日本内需拡大輸入拡大政策と相まってふえてきておりますし、同時にアジア地域に対する日本の投資もいろいろふえてきて、アジア全体の経済成長率というのは世界全体の成長率を大きく上回っておるという実績もこの数年間上がってきておるわけでありまして、経済がそのように底力を持っていくということ、その上に東西対立のような冷戦構造が解けていくということは、二十一世紀アジア存在感というものを高めていくことになると同時に、経済が力を持ってくることはアジア地域の安定、繁栄に直結していくことでありますから、そういったきょうまでやってきた努力日本はさらに続けると同時に、アジアの中にありますいろいろな不透明、不安定な要素を一つ一つ片づけるためにも積極的に努力をしていかなければならない、名実ともにこの三極の中の一つアジア地域というものが安定して、繁栄していくように協力をしていかなければならないと考えております。
  7. 和田静夫

    和田(静)委員 そこで総理、コムソモリスカヤ・プラウダのインタビューに答えられて、二十一世紀には「両国国民相互信頼を揺るぎないものとする平和条約が締結されている。」と述べられています。つまり、この十年で日ソ平和条約が締結されるという見通しを総理は語られたということになるのでありましょうが、この新聞は御存じのとおりソ連の青年を読者としておりますので、総理は「将来の世代にそのような日ソ関係を約束するためにこそ、今日われわれが責任をもって日ソ関係改善に努めなければならないと決意」、そういうふうに述べられていますね。  そうすると、私はこれまでの政府の硬直した姿勢では、実は五十年も百年も平和条約はできないのではないかという心配をしていましたが、海部総理の発言で大変意を強くいたしました。二十一世紀というとあと十年でありますから、この十年の間に日ソ平和条約を結びたいという意味になるわけでありますが、米ソ関係対話時代に入っている、東西軍事対立変化をしてきている、自由民主党の中でも安倍さんや小沢さんなどが日ソ関係改善への意欲を大変述べられて、訪ソ希望をお持ちになる。北方領土問題を除いては日ソ平和条約締結を阻害する大きな要因はもうないように思うのでありますが、そういう観点での総理のお考えを述べてください。
  8. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今例に引かれましたように、私はソ連新聞から文書質問を受けましたので、文書で答えを出しておきました。二十一世紀日ソ関係をどのように展望しておるかということでありますから、私は自分の考え方を率直に申し上げて、二十一世紀における日ソ関係はあらゆる潜在的な発展可能性を開花させた新しい章に入るようにしたい、二十一世紀は新しい日ソ関係が確立されるようにしたい、私の強い日ごろの希望願望も込めながら、そして二十一世紀には——日ソの間にわだかまる大きな問題は、何度も申し上げますように領土問題を解決して平和条約を締結することでありますから、私はむしろ二十一世紀という十年間もじゃなくて、本当はもっとできるだけ早くこれらの願望は解決して、日ソ両国の歩み寄りによって解決させたいものだという強い願いを持っておりますが、とにかく二十一世紀ということに焦点を置けば、それらの問題をお互い努力によって解決させていきたいという強い希望を述べるとともに、同時に最近の日ソ関係というものは、今御指摘になりましたようにいろいろな面で私は節目を迎えつつあるのではないだろうか。  それは、その背後にある東西対立時代が終わりを告げることや、あるいはソ連の新思考と言われる外交方針アジアに持ってくるとするなれば、アジアでは日ソ関係を安定的な、真に友好的なものにさせていくことに尽きる、私はこう思っておりますので、政府といたしましても、日ソ関係はただ単に領土問題そして条約ということだけにこだわっておるのではなくて、拡大均衡方向で解決可能な問題をいろいろ抱えておるわけでありますけれども、人物交流だとかあるいは経済調査団の受け入れだとかいろいろなことを通じて、拡大均衡方向の中でこの基本問題も片づけながら日ソ友好関係を確立していきたい。  幸い、初めてソ連最高責任者日本へいらっしゃる。ゴルバチョフ大統領からは私あてにも親書が来て、来年訪日ということは出ておるわけでありますから、それを新しい節目にしたいという期待もこちらも持つし、同時にソ連に対してもいろいろ話し合いを通じてこれらの状況を打開していくように努力を続けていきたい、こう考えておりますので、率直にあのようなことを申し上げました。
  9. 和田静夫

    和田(静)委員 今も述べられましたように、来年ゴルバチョフ大統領来日をされる予定である。そこで、私はこれを大きなきっかけにしなければならない。だれしもが考えることでありますが、そのために日ソ関係改善の条件の整備を進めて、国民世論日ソ平和条約に向けて友好的になっていくような、そういう政府としてのリード、そういうものが今必要なんではないかと思うのですが、ゴルバチョフ大統領訪日の時期を総理はいつごろにお考えになりながら、今申し上げたような国民的な世論リードなどについて具体的に何かお考えがありますか。
  10. 中山太郎

    中山国務大臣 お尋ねゴルバチョフ大統領訪日の時期は、まだ具体的に日取りの確認はされておりません。ただ、先日も当委員会で御答弁申し上げましたように、その前に外相会談が開催されます。外相会談は、米ソ首脳会談の終わった時点でシェワルナゼ外相から私あて来日の時期が近く通告されるもの、このように考えておりまして、そういう話し合いを通じて両国間の外相レベルでの両国友好関係及び領土問題の解決等を踏まえた議論が展開されていく、そういう過程の中で大統領訪日の時期を双方が確認した時期で設定をさせていただきたい、このように考えております。
  11. 和田静夫

    和田(静)委員 総理国民世論リードに向かってのお考えを聞きたいのでありますが、同時に、総理訪ソの大変強い意欲をお持ちのようであります。私は来年の政治日程の中で当然お考えになることなんだろうと思うのですが、その辺を含んで総理からの答弁を求めます。
  12. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これは、具体的にどういう日程でどうということを決めたわけでもございませんが、ソ連新聞質問の中に私自身訪ソ考えはあるかということがございましたので、私はそれに対しては、歴史上初めてのソ連大統領訪日日ソ関係正常化契機となる真に歴史的に意義のあるものとなるよう全力を尽くしていきたいと今考えておるし、そのような日ソ最高首脳間の対話というものは大切だから、それをさらに継続していくことは日ソ間にとって極めて重要であると考えますので、そのような視点に立って私の訪ソの問題も検討したいと考えておりますと、このように答えましたが、これは日本側からは最高首脳がきょうまで何回も訪ソもいたしました。初めて今度訪日されますので、そこで節目になって、何か契機があって、対話の継続の必要が出てくるなれば、それは日本側としても引き続いて対話は継続して、日ソの真に安定したいい関係をつくっていかなければならぬという私の心構えについての返答をした、こういうことでございます。
  13. 和田静夫

    和田(静)委員 ゴルバチョフ大統領訪日機会にぐっと突っ込んだ話し合いが進む。そのためには私は国民世論に対する政府側リードが今大変必要なんではないかということを述べたのでありますが、その中で一つ考えなければならないのは、やはり領土問題だと思うのであります。  私はこの総括の中でも実は質問をいたしました。外務大臣から御答弁をいただきましたが、総理から答弁をいただく機会を失いましたが、今ソ連がバルト三国などの分離独立要求を抱えています。その問題を抱えている限り北方領土の問題について交渉に入りにくいのではなかろうか。そういう何といいますか、これまでの主張をそう簡単に変えることができないような事情の中に置かれているのではないだろうかというふうに考えざるを得ないのでありまして、まずその辺をどういうふうにお考えになりますか。
  14. 中山太郎

    中山国務大臣 ソ連から外務省の招待で日本に来られるマスコミあるいは経済研究所の所長あるいは先般来られたエリツィン氏等のお話を聞きましても、ソ連においてもこの日ソ間の問題解決をしなければならないという強い願望があるという認識を私はいたしております。そういう中で、領土問題につきましてはやはりソ連も、大統領制が導入され民主化が進む中で世論というものも極めて大きな意味を持つものではないか、私どもはそういう観点から日ソ間のオピニオンリーダー交流あるいはハイレベルの事務協議あるいは両国首脳の相互訪問等が実現できれば、そのような環境の中で信頼が深まっていく、こういう中での日ソの新しい時代を迎える環境が整備されていくものと私は期待をいたしております。
  15. 和田静夫

    和田(静)委員 それは大体総括のときに外務大臣から御答弁いただいたのを出ていないのでありますが、政府の主張が、北方領土問題を解決してそして平和条約を締結するという、そういう表現なんですね。この問題の解決という場合に、四島即時一括返還ばかりではなくて、段階的な返還や方法としての多様な形式というものがやはりあり得ると思うのです。その辺は総括のときにも実は質問したつもりなんですが、外務大臣だけで、総理答弁をいただく機会を失いました。  そうこう思っていましたら、昨日、金丸元副総理が福岡で二島返還論というものを発表になりました。あるいは、総括のときに私も述べましたが、小沢幹事長は御存じのとおり訪ソ意欲的に考えながら、領土問題についても相互の譲り合いというものが必要であるということを明確にお述べになっていますし、安倍さんもあの八項目の提案の中で大変進んだ、意欲的な解決の仕方についての考え方というものを吐露されています。ここでやはり総裁としての海部総理が、自由民主党の中にあるこれらの考え方、また私が述べた、我々が持ち続けてきている考え方、これらについてお考えになる、そういう機会に恵まれているのではなかろうか。ぜひ総理の見解を承りたいと思います。
  16. 中山太郎

    中山国務大臣 ソ連日本を訪問される方々の中には、領土の段階的な返還というような御意見を承ったこともございます。そういう御意見もあり、また領土返還が大事だというような御意見もソ連の国の中にもあるということは聞いておりますけれども、ソ連政府の基本的な領土問題に対する考え方には一切変化が見られていないというのが今日の現状ではないか、私はそのように認識をいたし、日本政府も、先生のお尋ねにお答えする機会を与えられましたので、この機会に基本的な原則だけを申し上げて御理解をいただきたいと思いますが、いずれも北方領土問題を棚上げにして経済関係のみを進めるとの無原則な政経分離の方針はとらないという政経不可分の基本原則を何ら変更する趣旨のものでないと私は認識をしております。  すなわち、我が国の対ソ政策の基本的な考え方は、戦後最大の懸案である北方領土問題を解決して平和条約を締結することを最重要課題として、日ソ関係全体を均衡のとれた形で拡大させつつその正常化と抜本的な改善を図ること、このような拡大均衡考え方については、昨年我が国より提案をし、ソ連側の基本的な賛同も得ております。こういう関係の中で、平和条約作業グループが五つの課題について具体的に事務レベルでの意見の交換を進めているということを御理解いただきたいと思います。
  17. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 政府の基本的な考え方というものは、今外務大臣が申し上げましたように従来一貫しておるわけでありまして、日ソ間において平和条約を締結し、領土問題を解決し、そのことだけにこだわっておらないで拡大均衡の方針で、それも含めて同時に前進させていきたいという態度表明を続けて、そのことを何回もここでお答えしておることも委員御承知のとおりと思います。四島を北方領土として日本に返してもらいたい、このことが国民的な合意であると私どもは考えております。
  18. 和田静夫

    和田(静)委員 私は、外交の折衝でありますから、政府の態度が今ここでそれ以上の答弁が出るとも決して思っていませんが、しかしながら、我が方に言い分があると同様に相手方にも言い分があることでありますから、その辺は折衝の中で段階的ないろいろのものが出てくる、それにはやはり十分に対応する用意がお互いにある、このことは確認をしておいてよいでしょうか。
  19. 中山太郎

    中山国務大臣 今御指摘の点は、現在まだ具体的な交渉が煮え詰まっているような状況ではございません。近く来日を予定されているシェワルナゼ外相が来られて日ソ外相会談が持たれたときに、いろいろとソ連側の考え方もその中に出てくるものと私は推測をいたしております。
  20. 和田静夫

    和田(静)委員 四島一括返還、もちろん私たちがすべて求めているところでありますから、そのことにおいて誤りがあるわけじゃありませんが、いわゆる領土問題が自縄自縛の形になってしまって、そして海部総理が述べられましたような形の二十一世紀に向かっての平和条約がもうでき上がっているという姿が遠のいてしまうというようなことのないように私は強く求めておきたいと思うのであります。  日ソ平和条約が締結をされた場合をちょっと想定をしてみました。そうすると、日米安全保障条約はその持つ意味が変わってくるのではないだろうかということを思うのであります。言うまでもなく日米安保は一九五一年のサンフランシスコ講和と同時に締結されたものですから、まさに東西対立の産物として日本を基地にしたものであった。それが六〇年安保の改定で双務的な規定になりましたが、いずれにいたしましても、東西対立での日本の役割を主体的か受動的かは別といたしまして果たそうとしているものであります。そうしますと、仮に日ソ平和条約が結ばれた、ソ連がもはや対立する相手ではなくなったときに、安保条約が対ソ関係からつくられてきた、構築をされてきたという意味が変質をするのではないだろうか。これはどうでしょう。
  21. 中山太郎

    中山国務大臣 日米安保条約が将来どのような形になるかということにつきましてのお尋ねかと認識をいたしております。その前提として、北方領土が返ってくる、平和条約が締結をされるということの後に日米安保条約が性格を変えるかどうかというお尋ねではないかと私は考えておりますが、それでよろしゅうございましょうか、先生。  既に御答弁をした部分もございますが、日ソ平和条約締結への問題の過程の中に現存する日米安保条約というものが何ら障害にならないということは、ソビエト政府も理解をいたしておりますし、日本側もそのようにソ連側に申しております。そういう環境の中でこれから日ソ間の交渉が大詰めに向かう過程でなければならない、つまり日ソ間の平和条約締結に向けての双方の努力が必要であるということは先生御指摘のとおりでございますけれども、そういう中で安全保障条約は、我が国は専守防衛でございますし、憲法上交戦権を否定しておりますから、我々の国が平和であるために、またアジア太平洋地域が平和であるための日米安保条約というものがその性格を変えるということは、アジア太平洋地域に平和が構築されていなければこの安全保障条約が持っている意味の性質を変えるというものではなかろう。すなわち、それは我が国の安全について重大な関係のある問題でございますので、私どもは周辺諸国のいわゆる国際軍事情勢というものを十分見きわめながら、単にソ連だけではなく東南アジア全体の問題としてこれをとらえて、日米双方がいろいろと協議をしなければならない問題であろうと考えております。
  22. 和田静夫

    和田(静)委員 日ソ平和条約を結ぶとしますと、当然にソ連を脅威とは見ない。そうすると、自衛隊の配備を含めて対立的な政策を避けるということになるのでしょうね、これは総理。——じゃ防衛庁長官
  23. 石川要三

    ○石川国務大臣 大変申しわけございません。ただいまちょっと打ち合わせをしておりましたので先生の質問を聞き落としました。申しわけございません。
  24. 日吉章

    ○日吉政府委員 先般来から再三申し上げておりますように、我が国の防衛力の整備というものは、仮想敵国あるいは特定の国を対象といたしましてそれに直接対処することを目的として整備を進めているものではございません。したがいまして、私どもの防衛力の整備といいますものは、独立主権国家として平時から保有すべき基盤的なものを整備しておくというような性格のものでございます。
  25. 和田静夫

    和田(静)委員 答弁にならないと思うのですが、しばしば軍事的脅威を論ずる中で、明確に意図と能力に分けて、例えばソ連軍は現在日本に侵略する意図はないものと思われるというふうに述べられて、しかし侵略できるだけの能力がある、また意図というものはいつでもすぐ変えることができるものだという主張があるわけでありますが、もし意図というものを判断をしないということになればアメリカ軍だって脅威ということになってしまうのでありますが、ソ連軍には日本侵略の意図がないということを日本政府認識としても持つに至るとでもいいますか、日ソ平和条約によってそういうことになるのでしょうか、それとも日ソ平和条約を結んだとしてもなおソ連軍は脅威なのでしょうか。この辺は防衛庁長官どうですか。
  26. 日吉章

    ○日吉政府委員 お答え申し上げます。  先生ただいまおっしゃられましたように、脅威といいますものは侵略し得る能力と侵略しようとする意図とが結びつきまして初めて顕在化するものでございますが、意図というものはそもそも外から正確に見ることができないというような性格もあります上に、さらに委員ただいま御指摘のように非常に変わりやすい、変わり得るものでございます。したがいまして、この点、我々が防衛力を整備するに当たりましては、能力というものを前提に置きまして防衛力の整備等をする必要があるわけでございますが、ただこの点誤解のないようにしていただきたいわけでございますが、私ども、日本防衛力の整備というものは、周辺諸国の脅威に直接対処するということを目的といたしまして、それにたえ得るような装備を整備しているというものではない点は補足させていただきたいと思います。  それで、ソ連を含めまして、現在我が国を武力をもって侵略しようとする意図を持つ国があるとは考えていないのは事実でございます。したがいまして、今後情勢の変化等によりましてそういう能力のある国があると考えるのかどうかという点につきましては、周辺諸国の軍事的能力がどういうものであるかということをまさに客観的、冷静に見定める必要があるのだろうと思います。
  27. 和田静夫

    和田(静)委員 どうも答弁すっきりしないのですけれども、ちょっと話題を変えまして、冷戦的な思考からどういうふうに脱却するか、いかに脱却するかという総理の施政方針演説からしますと、日本政府は国際政治から取り残されないためにどうも頭の切りかえが必要なのではないだろうか、俗な言い方をすれば、というふうに私は思っているのですが、日ソ平和条約までずっと視野に入れてみますと、日本を含む極東アジアの新しい安全保障の枠組みとでもいいますか、そういうものを考えておく必要があるように思うのですが、総理どうお考えになりましょうか。
  28. 中山太郎

    中山国務大臣 今、アジア全体の将来のいわゆる和平というもの、平和というものの構想についてのお尋ねと思いますが、御案内のように、私どもの身近な朝鮮半島の軍事的対決の解消また南北の対話、それから往来が自由になるというような環境がつくられることがまず第一ではないか。それには日本政府としても協力を続けていかなければならない。また、中国との関係も孤立をさせないようにしなければならない。もう一つ、インドシナ半島ではカンボジアの和平を構築しなければならない。そのために先般来日されたチャチャイ・タイ国首相の御意見も踏まえて、現在海部総理から、ヘン・サムリン政権のフン・セン首相またシアヌーク殿下の日本での平和への協議のための舞台づくり、そういうものに日本政府としても積極的に努力する姿勢を示しておりますし、この地域の対立が緩和されるように日本政府としては今後とも努力をしていかなければならない。そういう全体構想の中で、インドシナ半島の問題につきましても、ソビエトもアメリカもフランスもあるいはASEAN諸国も中国もすべてこれに関連をした国家でございますから、その中での平和づくりの中で我々は将来のアジアの平和のために各国との腹を割った話し合いというものが外交の舞台で展開されていくということが最も好ましいのではないか。それにはもちろんソビエトも含め、アメリカも含め、東南アジア各国の首脳間の忌憚のない意見がこの地域の平和と繁栄に大きな貢献をするものであると日本政府としては考えております。
  29. 和田静夫

    和田(静)委員 前の話にちょっと戻りますが、日米ソアジアでの対立克服のために、端的に言って防衛庁ないしは自衛隊の幹部のソ連軍との人的交流ないし情報交流、そういう交流を進めていくことを考えて接触をしていくということを私はもうかなり大胆にやってもいいことではないかと思っているのですが、そういうようなことを日ソ外相会議などで具体的に提案をされて話し合ってみるというようなおつもりはありませんか。
  30. 日吉章

    ○日吉政府委員 ただいま委員の方から、日ソ双方が軍事的、国防に関する情報交換等を積極的に進めるように日本側から提案する考えはないかという御質問であったと思いますが、日ソ双方の軍事情勢といいますか国防に関する情勢につきましては、委員も御案内のように、私どもはソ連につきましては、ソ連側がそれほど正確な発表をしているとも思えませんで、性格はわかりにくい点があるわけでございますが、我が方の情報につきましては国会の御審議も含めできる限りの情報をオープンにしているわけでございまして、そういう観点から軍事情勢につきましての、あるいは防衛関係情報につきましての相互交換というような形の段階ではないのではないかと思います。  いずれにいたしましても、日ソ全体が今後友好関係に入っていくことが望ましいわけでありますので、そういう点につきましては、先般来外務大臣から御答弁いただいておりますように、日ソ全体の信頼関係をどういう形で醸成していくかということの一環として、防衛関係につきましても話し合いを進めていくべき問題ではなかろうかと考えております。
  31. 和田静夫

    和田(静)委員 原則的な御答弁はもういいんですよ。実は昨日の川崎委員とのやりとりの中で、原則的なことはもう語り尽くされたと言っていいほど論戦がありましたし、私はそれを基礎にしながら具体的な、ある意味では提言をしているつもりなので、今の答弁を日吉局長から受けるというのは、実は私にとっては非常に不満でありまして、この辺はやっぱり総理なり外務大臣なり防衛庁長官なりが大胆に踏み込んで、今考えてみる必要があることだと思うのです。私は、そういう意味での日米ソ対立関係の解消に向かっての政府の具体的な一つ一つの提言がなくて、総理新聞にお答えになったような形での、二十一世紀に向かっての日ソ平和条約は既にでき上がっているという、この十年間を展望することはなかなか難しいと思うがゆえに、領土の問題もあえて取り上げてみたのでありまして、ぜひこの辺は総理の御見解を承りたいところです。
  32. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今やりとりをお聞きいたしておりまして、日ソの軍レベルにおける交流とかお互いの交換というような問題は、これは大変失礼な言い方になるかもしれませんが、私はこれはお芝居で言うなれば、第二幕になって出てくるテーマであって、今開幕の序曲をどのように協調してやろうかということに心を砕いておるときでございますので、そういった全体の環境をきちっとして、まず第一幕をあける。そこから入っていくときには、それはもちろんのこと、経済交流や文化交流を、今でもやっておりますが、もっとそれは促進していくとか、いろいろなテーマの中で出てくる大事な御示唆である、このように私は拝聴しておりました。
  33. 和田静夫

    和田(静)委員 ぜひ頭の中に置きながらお考え願いたいと思います。  北方領土問題を解決して日ソ平和条約を締結してこそ日本にとって本当の戦後の終わりがやってくるであろう、冷戦の終わりでもありましょう。新しい時代への出発で、まさに戦争を経験した我々の世代が解決をしなければならないことであると、これはもう立場を超えて考えます。  同時に、まだ平和条約の構想は恐らく今もお話があったようにお持ちにならないのでありましょうが、しっかりしたアジアの平和を構築できるようなものにしなければならないことは先ほど来論議をしてきたとおりであります。このアジアの共同ではなくて共通の安全保障を含んでのものを、私はやはり構想しておくべきなんだろうというふうに考えています。つまり、アジアの新世紀を開くものを構想すべきであるし、またそうした政治構想を議論する時代に私は入ったと認識をしますがゆえに、一歩踏み込んだ具体的な題材を提供しながら論議をしてきているつもりであります。概括的に総理のお考えを……。
  34. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 二十一世紀という長い目盛りで、そしてまたアジアにおける平和を確固たるものにしていくためにはどうしたらいいかという視点に立ってのお尋ねでございますので、私もそれは方向として全く賛成の方向でございます。  そして、ただ現実に、例えばカンボジアの問題にしても、戦争の火種をアジアからまず取り除く努力をしなきゃならぬというときに、四派会談はもちろんのこと、その前提となるべき二派の会談を呼びかけても、時期の問題その他の問題でなかなか進んでおらない。また、ソ連、中国、アメリカ、それらの国々が一堂に会してそういった話をしようというときに、アジア関係諸国に呼びかけても、アジアの六カ国の会合一つについても、いろいろ今は実現不可能な問題がたくさんあるという、こういう不透明な時期でございますので、それぞれの国、それぞれの地域に、そういった問題をずっと解消していくための努力を当面日本は全力を挙げてアジアの安定のためにやっていかなきゃならぬことであろう、このように思っております。そういったことができて、関係者がみんな一堂に会して話が進んでいくという状況がつくれるということを目指して今後も努力をしていかなきゃならぬテーマであると受けとめております。
  35. 和田静夫

    和田(静)委員 さて、アメリカ国防総省がアジア太平洋地域の戦略的枠組みを発表いたしました。これを見ますと、今後十年ぐらいの見通しに立って、まずできるだけ在日米軍の兵力水準を下げるとしていますね。  第一段階が、一—三年後の間に五、六千人を削減する。それから第二段階は、三—五年後の間に一層の効率化と削減を目指す。第三段階が、五—十年後の間に一層の削減に着手することが可能になる。日本を母港としている空母、戦略輸送航空機、空軍攻撃部隊など日本における米軍の抑止力、これを除いて削減するというふうに述べていますね。  こうした方針が出てきたのは、冷戦の終了に伴う米ソ軍事関係変化あるいはアメリカ国内政治変化からなんでしょうけれども、アメリカのこの削減なんですが、この削減は今後十年間で結局どれくらいの規模に達すると防衛庁長官、見られるのですか。そして同時に、日本はそれにどう対処されるのですか。
  36. 日吉章

    ○日吉政府委員 今般、米国防省が米国議会に提出いたしました報告書の概要についてのお尋ねでございます。  これについてはただいま委員からも詳細に御説明がございましたように、アメリカは二十一世紀に向けまして九〇年代を三段階に分けまして、極東におきます戦力再配置の構想を示しているわけでございますが、第一段階の三年目までにつきましては、ただいま委員も御指摘のように詳細が述べられておりますが、第二段階、第三段階につきましては、今後の不透明なアジアにおきます軍事情勢を十分見定めて、この地域の安定にも配慮しつつ再配置を進めていかなければならないというような観点に立ちまして、委員御指摘のように詳細が述べられていないわけでございます。この点につきましては、まさにこの地域の情勢が不透明である以上、私どもといたしましても、米国と同様、詳細な見通しを立てるということはでき得ないものだと考えております。  なお、この報告によりまして日本防衛整備防衛政策にどのような影響があるのかというお尋ねが次のお尋ねでございましたが、これはアメリカの報告書は、全般を通して読んでみますと、米国がグローバルな役割と同盟国に対しますコミットメントを今後とも果たしていくために、引き続き前方展開戦略を維持することを明らかにしております。しかしながら、財政状況の制約等もありますので、その点を十分考慮した上で段階的に米軍の再編合理化を進めていくというようなものでございます。したがいまして、アメリカの基本的な戦略は不変であると私どもは受けとめておりますので、私ども日本防衛整備方針あるいは防衛政策にも基本的な影響はないものと、かように考えております。
  37. 和田静夫

    和田(静)委員 もう一度伺いますが、この米軍の削減というのは、ソ連の脅威の減少に伴うものとして自衛隊の削減を検討する、あるいは米軍の削減の肩がわりのために装備等の拡充を図る、これはどちらですか、防衛庁長官
  38. 日吉章

    ○日吉政府委員 まず、この報告の極東におきます現状認識でございますけれども、この報告書の中にはソ連は依然としてアジアにおける主要な脅威であるとの認識に立っておりまして、この点につきましては、ソ連の脅威の減少を前提といたしまして再配備をするというようなことが明確に書かれているわけではないと思います。現在の国際情勢も念頭には置いておりますけれども、それ以外に米国内におきます財政状況、こういうようなものも双方にらみながら、基本的な前方展開戦略は維持しながら合理化、再編成を進める、こういう趣旨だ、こう理解いたしております。  なお、日本との関係でございますけれども、日本と米国との間におきましては防衛上は明確なる役割の分担がございまして、この役割の分担を変える、米軍が再編成されることに伴いまして、これまで米側が持っておりました地域の安定と平和のための役割を日本側にかわってくれ、こういうようなものでは決してないということで、そういう趣旨の記述は数カ所に散見されるところでございます。
  39. 和田静夫

    和田(静)委員 局長、都合のいいところだけ言われましたけれども、後を読んでもらわないと。ソ連は依然として脅威だ、そこまでは言われましたね。しかし、その程度は七〇、八〇年代ほど強くないと、こう言っているわけですよ。私はここのところを見ながら、かなり重視をしながら論議をしているということなんでして、私はアメリカの言うとおりになる必要は決してあると思っているわけではありませんが、防衛庁は常にアメリカの戦略に従ってきた事実が今日まであるわけであります。  そこで、今後の問題を考える場合に、この国防総省報告に沿った自衛方針を立てる、そういうふうにこれは防衛庁長官、お考えになっていますか。あなたはそういうふうに指導されますか。
  40. 日吉章

    ○日吉政府委員 大臣からお答えいただきます前に私の方から事実関係を重ねて申し上げますが、極東におきます防衛につきましては、米国は日本を含みますアジア太平洋地域の平和と安定のために寄与する役割を担っておりますが、日本日本国家そのものを専ら守るという役割のみを持っておりまして、したがいまして、この役割というものは今後とも変わることはないということでございます。
  41. 和田静夫

    和田(静)委員 そもそも在日アメリカ軍というものは、日本防衛に関与したり支援体制をつくっているのではないのではないかというように私は思うのですね、思う一人なんです。  ジェームズ・デービス在日米軍総司令官は最近の「アエラ」の記者の質問に対してこういうふうに答えていますね。「日本の場合、自衛隊がすでに、核抑止を除けば、防衛責任を負っていると思いますが。」こういうふうに問うたわけですね。それに彼は答えて、「イエス・アンド・ノー」である。この「イエス・アンド・ノーです」という答え方ですね。「陸上自衛隊に関してはそうだ。防空も各国の主権の問題、航空自衛隊が立派にやっている。しかし、日本という安全な待機所を確保することはわれわれの最大の利益だから、われわれも防空に参加します。」こういうふうにジェームズ・デービスさんは述べているわけですね。つまり、アメリカの判断あるいはアメリカの利益なのであって、日本防衛には参加しているのだ、こういう言い方にすぎません。  そうしますと、日米安保というものは日本防衛のためという意味はもともと小さかったかもしれませんが、ますます小さくなっているのでしょう。逆にアメリカ世界戦略の一環であって、日本の憲兵の性格を持つと表現しているに私は等しいのじゃないかと思っているのですが、将来的観点から日米安保の持つ役割がどうも変質してきている、どういうふうに答弁をされましても。そのことをやはり念頭に置くべきではないかとこれは思うのですが、外務大臣、いかがです。
  42. 中山太郎

    中山国務大臣 重ねてのお尋ねでございますけれども、日米安保条約を堅持をして、この不透明、不確実な国際情勢の中で我が国の安定した経済発展と国の安全を守っていくというこの必要事項、絶対かつ必要なこれは条件だと私は今思っております。国際情勢が大きな、さらなる発展的な緊張緩和に向かう場合もやがて想定はできるかもわかりませんけれども、現実の状況ではまだそのような事態には到達しておらないという判断をいたしております。
  43. 和田静夫

    和田(静)委員 どうも外務大臣、腹の中、頭の中のことと違ったことを答えなきゃならぬ立場でしょうから、その辺で我慢しておきますが、国防総省の報告の中で気になるのは、日本から千海里海上交通防衛能力を高めるよう促すという、このところなんですね。いわゆるシーレーン防衛ですが、これは防衛目標を対ソ脅威論から移すものとも受けとめることができますけれども、この辺は防衛庁はどう考えているのです。
  44. 日吉章

    ○日吉政府委員 再三お答え申し上げておりますように、我が国の防衛整備は直接的に対ソ脅威に対処するということで整備されているものではないということをあらかじめ申し上げておきたいと思います。  なお、シーレーン防衛につきましては、委員も御案内のように我が国はまさに資源を海外からの輸入に依存し、それをもって国の存立が保たれているという意味から、海上交通の安全を確保するということは我が国にとってはまさに死活問題でございます。したがいまして、国土そのものを守るということと全く同じような重要性を持って我が国にとりましては海上交通の安全確保、シーレーン防衛ということは重要だということで、シーレーン防衛につきまして格段の防衛整備努力を続けているところでございます。
  45. 和田静夫

    和田(静)委員 そうすると、一体日本の、今の答弁、前々からあることでありまして、よくわきまえているつもりですが、もう一遍シーレーンの防衛論争のときを振り返ってみて、どうもやはり国民の立場に立って見れば、日本防衛の範囲はどこまでなのか、どの程度の装備が必要なのかという疑問はずっと解けないのですね。シーレーン防衛まで分担を今の答弁のようにするとなりますと、国防総省がこういうふうに言っていますね。「戦力投入能力のいかなる向上も思いとどまらせる。」こういうふうに言ってみたところで、東アジア、東南アジア諸国に不安を与えるおそれが強いことはもう紛れもないのであります。そうすると、日本防衛の範囲、そのための装備の水準がどこまでなのかということですね。これは防衛庁長官はどういうふうにお考えになります。
  46. 日吉章

    ○日吉政府委員 我が国防衛整備の基本につきましては、私たちは一般的、包括的に、限定的・小規模侵攻に対しまして原則として独力で対処し得るような防衛力という表現で御説明を申し上げているわけでございますが、シーレーン防衛につきましても、我が国は各国と貿易をしており、特に輸入物資を海外に仰いでいるわけでございます。それは千海里どころか、はるか遠くの国から輸入しているわけでございますが、私どもとしましては、一応千海里という目標を、限定・小規模侵攻に対してという目標を設定したのと同じように一定の防衛整備の限界を設定いたしまして、節度ある自衛力の整備に努めているところでございまして、この点はきちっとした節度を持って防衛整備を進めているつもりでございます。  なお、アメリカの報告書に書かれておりますのは、先ほど私が触れましたこととも関連するわけでございますが、米側が前方展開戦略に基づきまして、それは維持しながらも、極東におきます兵力の再配備を行ったとしましても、日米間の軍事的な役割というものには変わりはないんだ、我が国に対しては従来以上の軍事的な役割を期待しているものではないんだということを米側はこの報告書に書いているんだと理解いたしております。
  47. 和田静夫

    和田(静)委員 シーレーン防衛日米共同研究は、一部報道されましたとおりとしますと、中東方面での米ソ衝突が極東にも波及をする、主として自衛隊がこれに対戦するという戦争シナリオ、まさに有事のシナリオで、そのシナリオに基づいて七項目、洋上防空、対潜、通峡阻止、港湾防備、本土防空、洋上阻止、陸上戦闘の各能力の向上が提言をされていますね。事実、それに基づいた防衛整備、訓練などが行われてきたと考えられます。こういうような対ソ防衛戦力装備が必要なのか。それに、平時ではなく有事を想定した装備をこの大綱のもとで行ってきたのは私は大変不自然、おかしいと思っているのですが、これは防衛庁長官、どうです。
  48. 日吉章

    ○日吉政府委員 我が国は、再三申し上げておりますように、有事を期待しているものでももちろんなければ、直接周辺諸国の脅威に対処することを念頭といたしまして、それを目的といたしまして防衛整備を行っていないことは繰り返すまでもないところでございます。  ところが、このようにして整備いたしました防衛力、保有している防衛力というものは、我が国が持っておりますのは自衛隊でございまして、自衛隊はまさに我が国を防衛するための実力組織であるわけでございますから、このようにして保有しております防衛力、兵力を仮にそういうふうな不幸な事態が発生いたしましたようなときに、その持てるものを最も有効に使用し、発揮し得るような訓練等をしておくということは当然のことではないか、これこそがまさに自衛隊が実力組織として国民から期待されているものではないかと考えておりまして、防衛計画の大綱に基づいて認められております装備を最も有効に活用するためにはどうすればよいかという訓練を常日ごろしているわけでございます。
  49. 和田静夫

    和田(静)委員 それだから、私は過日日米共同作戦研究を資料として提出してもらいたいということを言ったのでありまして、どうも共通の基盤の上に立った論議ができないのでありますが、細部は結構ですが、どうでしょう、おおよそのこのシナリオとその結果だけは、局長、説明できますか。
  50. 日吉章

    ○日吉政府委員 先般の委員会でも御答弁を申し上げたわけでございますが、日米共同作戦計画の一環として行われましたシーレーン防衛研究でございますが、これは、まさに有事になりました場合に日米が共同いたしまして侵攻勢力に対しましてどのように対処するかという研究をしているわけでございまして、これは委員に御説明するまでもないかと思いますが、まさにそういう場合の手のうちを研究しているわけでございまして、このようなものを公表する、あるいはお話し申し上げるということは、そもそもこういう事柄の性質上許されないこと、あるいはお話しできないことが御理解賜れることではないか、かように考えております。
  51. 和田静夫

    和田(静)委員 それじゃ安保特別委員会ででももう少し具体的な論議をここのところはやらしてもらいましょう。  防衛計画の大綱が平時を想定しているのに対して、やはり私は、日米防衛協力のための指針、いわゆるガイドラインは有事を想定している、これは言葉じりで言っているのでは決してありません。大綱が限定的かつ小規模侵略までの事態を想定をしているのに対して、ガイドラインというのは、それ以上の事態を想定をして日米共同作戦を展開することを目的としている。そしてガイドラインに基づいて日米共同作戦研究が行われ、もちろん研究しただけではない、その整備をしてきたわけであります。  つまり、何が平時で何が有事か、これは軍隊というものは線を引くことはなかなか困難であることに違いはありませんが、とにかく自衛隊の整備目標として、一方は平時の防衛力の整備、そして他方では有事の日米共同作戦を掲げているわけであります。しかも、シーレーン防衛研究のとおり専ら自衛隊が、もうどんなに答弁をされてみたところで、ソ連軍と戦うというシナリオで、ソ連軍と戦うための整備を整えてきたのであります。そういうようなガイドライン防衛は、今後の国際的な情勢を考えてみた場合に私は想定しにくいのであります。平時のための防衛整備とも異なる、私はそういうふうに考えますが、いかがでしょう。
  52. 日吉章

    ○日吉政府委員 防衛計画の大綱に定めております防衛力の整備水準といいますのは、まさに防衛力の整備水準を定めているわけでございまして、その整備水準を算定するための前提になっております限定的・小規模侵攻というものの蓋然性が高い、こういうような観点からのものではございません。国際情勢、我が国の国情、安保体制の存在、そういうようなもろもろの条件を総合勘案いたしまして、我が国が防衛力を平時から保有するものとしては、限定・小規模に独力で原則として対処し得る程度のものを持っておればよろしいんではないかという観点から、防衛力の整備の水準を定めているものでございます。したがいまして、防衛計画の大綱そのものでも、不幸にして有事が発生いたしました場合には、米軍と共同作戦をとることによって、持てる我が国の防衛力と米軍との間で共同作戦をもって対処するというふうになっているわけでございます。  なお、ガイドラインは、そのようにして保有している日本防衛力をどのように有事の際有効に使うか、特にガイドライン研究では、日米間の研究でございますから、日米共同対処するときにどのようにすると最も効果的に対処し得るかということを検討しているわけでございまして、こういうふうな有事を望んでいるわけでは全くございませんし、特定の国を仮想敵国としているわけではございませんけれども、有事ということが全く考えられないということでない以上、そうであるからこそ自衛隊の存在というものが認められているんだと思いますので、その自衛隊が実力集団としてそういう認識に立って存在が認められている以上、そのときに最も有効に持てる装備の効果を発揮するためにはどうすればいいかという勉強をしておくということは当然のことではないか、かように考えております。
  53. 和田静夫

    和田(静)委員 私がこのガイドライン防衛の見直しを総括以来主張しているのは、もう一つには、このガイドライン以降防衛費が急増していることに気づくからであります。今や毎年世界第三位の規模に達していること、その結果、アメリカのアーミテージ国防次官補が、日本の駆逐艦保有数というのは西太平洋とインド洋全域を守備する米第七艦隊の二倍以上の五十隻を超えている、二、第七艦隊の対潜哨戒機は二十三機だが、日本は百機を備えようとしている、三、航空自衛隊はF4ファントム百機のほか、九〇年までにはF15約二百機を備えて三百機体制となるが、これは米本土を防衛する戦術戦闘機の数に相当する、というふうにアメリカのアーミテージ氏が指摘をしていますね。金持ち日本世界一高い値段でアメリカから買う、そして、アメリカの戦略に従ってきた結果こうなったのでありますが、平時、平時といっても、世界第三位のお金を使って今後どこまで予算を使えば満足できる水準に達するのでしょうか。大綱というのは量的規定ですけれども、結局ざるのごとくに融通無碍ではないかというふうに考えざるを得ない。また、多くの国民はそういう疑問を持つと思うのであります。本来、限定的かつ小規模な侵略に備えるというのは、世界最高の装備を整えることでないと私は思うのですね。日本の国土を守るためのもっとつつましやかなものなのではないだろうか。いかがでしょう、総理
  54. 日吉章

    ○日吉政府委員 ただいま委員から幾つかの御指摘がございましたが、まず、我が国の防衛予算が世界第三位ではないかということでございましたが、そもそも防衛予算といいますものは、これはすべての予算がさようでございますけれども、それぞれの国によりまして予算制度が違いますので、一概に同じレベルで比較するのが極めて困難な問題がある。特に、社会主義、共産主義諸国の計数等につきましてはなかなか正確なものが把握できないという点がございます。第二点は、最近の状況でございますけれども、極めて為替変動が激しゅうございますので、ここのところは若干円安になっておりますけれども、一年ぐらい前までは、ドル建てで見ました日本防衛費というものは実力以上に高く見られがちな数字を示していたという点があろうかと思います。と申しますのは、ちなみに申しますと、予算というものはまさにフローの概念でございまして、日本は戦後ゼロから出発してきたわけでございます。したがいまして、兵力、戦力といたしましては、能力といたしましてはストックの概念で見る必要があるわけでございますが、私はここでるる申し上げませんけれども、地上兵力、海上兵力、航空兵力、それぞれ類似の国あるいは周辺の国と比較をしていただきますと、日本はそれほど高いストックのレベルに達していないことがおわかりいただけると思います。  それから、アーミテージ前国防次官補の指摘がございましたけれども、私、正確には記憶いたしておりませんが、そのような指摘があったことは記憶いたしておりますが、これは少し以前の状況ではないかと思います。アーミテージ次官補が国防総省の次官補についておった時期のことだと思います。その当時、米国議会及び米国民の中には、さらなる日本防衛努力を望む非常に強い声がございました。アーミテージ次官補は日本防衛努力を高く買っておりまして、それ以上の防衛努力を米国議会並びに米国民が期待するということは誤っているということを説得するための例証として、若干わかりやすいといいますか、ただいま委員御指摘のような、少し私どもから言わせますと誤解を生ずる点があるわけでございますが、そういうふうな目的を持って表現されたものだと思います。  しからば日本防衛整備目標はどこにあるのかということでございますが、これにつきましては、五十一年につくりました防衛計画の大綱を目標と定めておりまして、ただいま御審議をいただいております平成二年度をもちましておおむねこの防衛計画の大綱の整備水準が達成されるということになるわけでございます。
  55. 和田静夫

    和田(静)委員 国防総省報告は、在日米軍の削減と同時に、駐留経費の負担増を要求する姿勢を明らかにしていますね。既に日本は経費の四割程度を負担しているわけですが、地位協定二十四条に言う施設、区域の中に、隊舎は入るのでしょうかね、労務費の一部負担として福利費、各種手当や賞与まで。これはもう平成三年度までの特別協定を結んでおりますが、地位協定の原則から逸脱しつつあるのではないだろうか。原則は、日本国に合衆国軍隊を維持することに伴うすべての経費は日本国に負担をかけないで合衆国が負担する、こうなっているわけですね。これ以上負担をふやすのであれば、地位協定そのものを見直すべきではないでしょうか。それとも新たに、先日も本委員会で論議がありましたが、特別協定を結ぶという考え方を、防衛庁長官、お持ちですか。     〔委員長退席、宮下委員長代理着席〕
  56. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 外務省から最初に御答弁さしていただきますけれども、先生御指摘のように、今回の国防省の報告の中に在日米軍の経費に関します記述が何カ所かございます。一番典型的な例は、一九九〇年二月のチェイニー国防長官訪日の際、日本政府は接受国支援に向け、さらに多くの努力を行うことの必要性を認めた、ただし、その方法と日程を予測することは困難であるという記述がございます。  チェイニー長官が二月に参りましたときも、総理それから外務大臣防衛庁長官との間にも一般的な形で話題になっておりますが、先生御指摘の、現在日本がどういう形でどういう根拠に基づいて見ているかという点でございますけれども、これは安保条約及び地位協定に基づきまして在日米軍の駐留にかかわる経費を日本側で負担しておりまして、これはさらに申し上げれば、基本的には先生今二十四条の一項を援用になりましたけれども、地位協定の第二十四条の二項、それから二十四条についての特別措置を定めました特別協定及びその改定議定書に基づいて負担してきております。  それで、今後のことに関しましては私どもこれから検討をしていくことでございまして、現段階ではまだ考えが固まっておりませんで、先生が言及されました具体的な対応についてはまだ申し上げる段階にございません。
  57. 和田静夫

    和田(静)委員 今後この経費をふやすとしますと、国防科学委員会報告書、それから国防歳出権限法案に明記されていますように、「直接経費を肩がわりすべきで、そのための協定交渉に入れ、」こう述べていますね。これは防衛庁、どうなんですか。外務省ですか。
  58. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 外務省から御答弁させていただきますけれども、先生が言及されましたのは昨年十一月二十九日に成立いたしましたアメリカの国防予算授権法の九百十三条のことだと思いますけれども、この九百十三条は、グローバルな安全保障に対します日本の貢献ということで、その中に議会の意向等が言及をされておりまして、そこに先生が今引用されました「直接経費」という言葉も入っております。  ただ、この九百十三条を含めまして国防予算授権法全体に関しまして、ブッシュ大統領は署名をする際にステートメントを出しておりまして、この法案の中の幾つかの条項については留保があるにもかかわらず署名したと。しかしながら、この日本関連条項を含む幾つかの条項は外交政策の実施などに関する憲法上の大統領の権限を侵すおそれがあると指摘しておりまして、このような大統領の権限が制約を受けないよう関連条項を解釈するということも言っております。  いずれにしましても、この法律はアメリカの国内法でございまして、私どもがとやかく申し上げるものではございませんで、先ほどちょっと御披露いたしましたように、ことしの二月にチェイニー国防長官来日の際に一般的な形で話し合いをしておりますけれども、特にアメリカ側からこの国防予算授権法への言及もございませんし、私どもといたしまして、ここで先生が御指摘のような直接経費が何を意味しているのか云々ということについて話し合うことは有意義だと思っておりません。  それから、アメリカとの話し合いはそういうことで非常に一般的な形でしておりまして、まだ具体的な要求はアメリカから出ているわけでございませんで、今回の報告書でもそうでございますが、さかのぼりますと二月のチェイニー長官訪日の際も、アメリカ側から今後日本政府がさらに多くの在日米軍駐留にかかわる経費の負担をしてほしいという一般的な希望表明は累次出ておりますけれども、それ以上に具体的な要求を出して、それに基づいて交渉しているということはございません。
  59. 和田静夫

    和田(静)委員 それでは進めますが、在日米軍の基地返還について、一定の計画を立てて、従来の迷惑を考えて地域住民の福利の向上に資するように私はしていくべきであろうと思うのですが、仮にも今はやりの不動産業者などの手に渡ってリゾートなどの乱開発にならないように注意して取り組むべきですが、これは防衛庁長官、そういうおつもりでしょうね。
  60. 石川要三

    ○石川国務大臣 沖縄における施設あるいは区域の整理統合につきましては、早期に結論を得るように現在日米合同委員会でベストを尽くしているわけでございます。かなりこれが前進されるものと期待を持っておるわけでございますが、その際に、今委員が御心配になりましたようなことがあってはこれは大変なことになるわけでありますので、十二分にその点も配慮すると同時に、やはり当時の賃貸借契約というものに基づいて、これが的確に対応できるように努力をすべきである、かように考えているわけであります。
  61. 和田静夫

    和田(静)委員 沖縄開発庁長官、この返還は、今も防衛庁長官から答弁がありましたように、沖縄にかなり多く出てくると思われるわけですが、今言いましたように、計画的に民生の向上に努めることが必要であります。そうした点で防衛庁と協議をされて、返還後の計画を立てていくべきだと思いますが、いかがですか。
  62. 砂田重民

    ○砂田国務大臣 まず第一に、第二次沖縄振興開発計画におきまして、土地利用に大きな制約となっている米軍施設、区域をできるだけ早期に整理縮小し、産業の振興、生活環境の整備に資するよう跡地の有効利用を図るための施策を推進するということが明文化されているわけでございます。具体的な結論を日米合同委員会の協議に期待をしているところでございます。  今御指摘の跡地利用の問題については、やはり跡地利用計画を立てるというのは地方自治の本旨からいたしましても市町村がまずその中心でなければならない、かように認識をいたしておりまして、地元住民や土地所有者の意見を十分しんしゃくの上、市町村が跡地利用計画を策定する。現に、沖縄県も積極的にその指導をしておられるところでございます。  開発庁といたしましても、地元の跡地利用計画が確定したものにつきましては、沖縄振興特別措置法に基づいた高率補助で各様の事業を導入してきたところでございますが、今後につきましても、個々の返還跡地の実情を踏まえてこれらの事業を積極的に御支援をしていきたい、かように考えているところでございます。必要に応じて関係各省と連絡をとりまして、跡地利用対策に遺漏のないように努力しますことばもちろんでございます。
  63. 和田静夫

    和田(静)委員 どうもありがとうございました。開発庁長官、もう結構です。  これからの日本防衛についてずっと質問をしてまいりましたが、結局、次期防をどうするかが当面の問題だったわけであります。これは昨日、川崎委員との質疑を通じまして、与党の質問も加えてとにかく総額明示方式だけは明らかになったようであります。  私は、いろいろ報道されていますように、次期防の総額が大体二十三兆ということについて総括のときにも述べたのでありますが、今大蔵に向かって物をどうするかという折衝に入る段階で、額までは云々するわけにはなかなかいかぬという答弁で終始をされたわけでありますが、この次期防で一つだけ伺っておきたいのは、現在の伸び率でいくと、今五・四ですね、一体幾らになるのか。三%伸び率でいくとすればどうなるのか。その辺だけは、大変単純な質問でありますが、一遍確認をしておきたいと思います。
  64. 日吉章

    ○日吉政府委員 突然御質問をいただきましたので、ただいますぐ計算をいたして、しばらく時間をちょうだいしまして御答弁させていただきたいと思います。
  65. 和田静夫

    和田(静)委員 じゃ、答弁の用意ができたところで答弁を求めます。  ここで、一つ……
  66. 宮下創平

    ○宮下委員長代理 答弁できますか。——日吉防衛局長
  67. 日吉章

    ○日吉政府委員 既に計算してありました資料が見つかりましたので、申しわけありません、申し上げます。  中期防と同じ伸び率ということは実質伸び率五・四%を指すと思いますが、それで計算いたしますと約二十四兆五千億弱でございます。それから、もう一つの設定の三%ということでございますと約二十三兆弱でございます。
  68. 和田静夫

    和田(静)委員 大体二十三兆からやはり二十四兆四千百八十ぐらいまでの間で次期防が設定をされていく、こういうふうに理解をしながら、これからさらに論議を深めていきたいと思います。  そこで、ここで一つ、過去も議論をされたことでありますが、問題を提起したいのですが、国際連合憲章第五十三条及び第百七条に敵国条項があります。国際連合というのは、釈迦に説法でありますが、日本ではそういうふうに言っていますけれども、英語ではユナイテッドネーションズでありますから、連合国であります。そうすると、第二次大戦の大西洋憲章に署名した国々、一九四五年四月二十五日にサンフランシスコに集まって国連を結成した戦勝国であります。つまり、日本やドイツというのは相変わらず敵国ということになります。日本、ドイツが国連に復帰して日も長く、平和的に行動をし、ドイツはまさに統合しようとしています。敵国条項は事実的にはもちろん法的にも感情的にも終えんをしていることは、これはだれしも思うところでありますが、この条項の改正を私は世界各国に提起をして、各国の了承をとることが日本など敵国条項該当国の責務ではないかということを常日ごろ思っているのでありますが、総理、いかがでしょう。
  69. 福田博

    ○福田(博)政府委員 突然のお尋ねでございますが、敵国条項というのが先生ただいま申されましたように国連憲章の五十三条と百七条にございます。我が国は、国連加盟国となったときから我が国について本規定が適用されることはないという解釈に立っております。つまり、我が国が国連加盟を認められたということは、我が国が憲章第四条の要件を満たす平和愛好国であるということを他の国が承認したということを意味しておりますし、また国連加盟国間の関係は、第二条の原則、なかんずく主権平等の原則により規制されるということで、本規定の適用がないというふうに解釈するのが条理上妥当であると考えております。  今先生のおっしゃいました連合国の戦後の処理というものが、今もはや意味がなくなった現在、そういうものを改正していくというのが妥当ではないかというのは、それはまさにおっしゃるとおりでございまして、今後とも機会を見てそのような方向に向かって努力したいと考えております。
  70. 和田静夫

    和田(静)委員 この問題は国連憲章改正につながる問題でありますが、私は今も言われましたようにその時期に来ていると考えているがゆえに提起したんですが、国連の中にも既に憲章再検討委員会ができております。ドイツ統一という情勢が生まれてきていることを踏まえて、私は、ドイツとともに、これはもう死文だからいいじゃないかという話がないわけじゃないのでありますが、そういうことはなおざりにしてはいかぬと私は思っていまして、憲章改正を提起すべきだと述べたのであります。ただし、問題提起するに当たっては、憲章を世界の現実に立脚したものにして、かつ世界の将来を見通すものでなければならないと思います。理想主義に走るのが私は適当だとばかり思っているわけじゃありませんけれども、日本国憲法にも日米安全保障条約にもあるとおりに、再び国連による安全保障機能の強化を図っていくという理想を、私は、日本は追求していく義務があると思いますから、海部総理、ぜひこのことはなし遂げてもらいたいと思いますが、いかがでしょう。
  71. 中山太郎

    中山国務大臣 先生御指摘の国連憲章の案文、敵国条項の問題の修正とかあるいは新しい時代に向かう国連の機能を果たすための憲章づくりというもの、憲章というか細則づくりというものは、極めて重要な御指摘であると考えております。我我の国も、既に国連に加盟して毎年九千万ドルという多額の国民の税金を国連に拠出している立場で国連活動にも協力をしておりますので、こういう点については今後全力を挙げて努力をしてまいる、このように考えております。
  72. 和田静夫

    和田(静)委員 各大臣、非常にお待たせしまして済みませんでした。  経済大国日本が国際社会に貢献する方法として、政府開発援助は大きな役割を担っておるはずでありますが、金額的にも近年急増をしていまして、前年、平成元年度予算ベースで一兆三千六百九十八億円、国民一人当たり一万千二百円ということになります。しかし、ODAが実際に被援助国の国民の生活向上にどれくらい役に立っているかとなりますと、我が党の井上委員が本委員会で鋭く指摘をしていましたように、さまざまの批判があるのであります。私も大きな疑問を提起をせざるを得ません。  特に、私は約四年前にマルコス疑惑について国会で最初に取り上げさせていただきながら、衆参両院の特別委員会の発足などでODA問題の論戦が行われたことを記憶をいたしていまして、実はあの後の選挙で我が党が伸び悩み、三百有議席を自由民主党がおとりになって、その特別委員会がその次の国会では立ち消えになってしまったことを大変私は残念に思いながら、国民の一人として国会を眺めていたのでありますが、何よりも問題なのは、日本の援助が日本企業の商行為と一体になっていること、つまり、日本企業の利益のためになっているのではないかと推定される点だったんです。ここのところは、当時の安倍外務大臣といろいろ突っ込んだ論議を私はさせてもらったのでありますが、実例も当然当時挙げました。これが、今度も資料をいただきましたから、事実であるわけでありますが、はっきり言って、援助というのはそういう意味では名ばかりであって、実際は日本企業のために日本政府が金を使っているという結果はなっているのではないだろうかという批判をよく耳にするわけであります。これに対して、外務大臣、どういうふうに御見解をお持ちになりますか。
  73. 中山太郎

    中山国務大臣 委員御指摘のように、このODAのいわゆる目的に使われる資金というものは、国民が納めていただく貴重な税金の一部でございます。このことにつきまして、今御指摘のように、それが有効に相手国の国民に受け入れられているかという問題につきましては、外務大臣としても十分この点に留意をするように事務当局に就任以来厳命をいたしております。  なお、お尋ねの点につきましては、円借につきましては、七八年以来一般アンタイド化に努めてきておりまして、八八年の交換公文ベースでは約八割が既に一般アンタイドとなっております。DAC諸国の中でも最も高いアンタイ率となっておることも御承知をいただきたいと思います。  円借款の実際の契約受注を見れば、他の先進国及び開発途上国の企業の占める割合は増加の傾向にございまして、既に外国企業の受注が五割以上となっております。とりわけ一般アンタイド化された円借款につきましては、日本企業以外の外国企業の受注が七割を上回っております。  無償資金協力につきましては、契約者が交換公文上日本企業とされているものにつきましても、ほとんどの場合、合意により第三国の資材、機材を調達できることとなっております。その結果、施設、物の、資機材等については半数以上の高い現地調達率が達成をされていると承知をいたしておりまして、また、一九八七年度より実施している構造改善努力支援無償を初めとして、受注企業の国籍を問わない援助形態も増大をいたしております。  以上のように、我が国としては、我が国のODAプロジェクトへの外国企業の参加の道を開いております。今後とも、第四次中期目標にある我が国円借款の一般アンタイ化を含め、我が国のODA実施における外国企業のさらなる参加につき道を開いてまいりたいと考えております。
  74. 和田静夫

    和田(静)委員 ほとんどの援助プロジェクトは、日本企業がつくって、そして相手の政府に働きかけてできているのであります。早く言えば、日本企業の自作自演ということに今なっています。今、いろいろ答弁がありましたがね、ずっとこれは変わらないのです。改善の努力をされていることを認めないわけじゃありませんよ。努力は認めますがね。ところが、プロファイするのは日本のコンサルタント会社なんですね。日本のコンサルタント会社以外がプロファイするケースというのは、これはもう探す方が難しいですよ、これはマルコス疑惑のときもそうだったのですが。そして、コンサルタント会社の業界団体に援助関連省庁、私は人が行かれることを全部悪いなどと言うつもりは全然ないのですけれども、通産省、農水省、建設省、運輸省あるいは国土庁のOBがずっといらっしゃるわけであります。そして、念の入ったことに、そこに国から補助金が出ているわけですね。きょうこれを細かく述べる時間的な余裕はもうありませんけれども、要するに官庁と企業との結びつき、世の中ではこれを癒着と言っているのですが、そういうのが強い。その関係での調査に始まって、そして終わるという状態になっていることは、これは抗弁の余地がない。  もちろん、このコンサルタント会社だって、資本の系列やらいろいろありますがね。商社が情報提供者であって、コンサルタントは何といいますか、表に出た顔であるとでもいいますかね、そういうケースが多いのです。つまり、援助は相手国の要請に基づいて行うことになっているが、事実というのは、日本企業と官庁との合作といった性質のものになってしまっている。それは国の利益のためにという論理が一面であることを知らないわけで言っているわけじゃありませんが、まあ自作自演という形なんですね。この援助成約までのシステムを変えない限り、かえって援助が相手国や国民にとってマイナスとなってしまう、そして反発を買う、昨日も本委員会の最終段階でバングラデシュの問題が出ましたけれども。  ここのところは、関連官庁の方々それぞれはどういうふうにお考えなのか、そして総括的に、やっぱり総理としてどういうふうにお考えになるのか、ちょっと明確にしておきたいと思います。
  75. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 ただいま先生から御指摘がございましたコンサルタント会社と援助との関連について、私の方から先にまず事実関係を含めて御説明申し上げます。  御案内のとおり、一般にコンサルタントの会社が援助関係のプロジェクトの調査等について仕事をしているということは日本だけに限られているわけではございませんで、他の援助国も必要に応じて行っているところでございます。私どもとしまして、ただいま先生御指摘のように、問題は、それが本当に被援助国のニーズにマッチした形で、かつ適正な我が国の援助の仕方にのっとって行われるということを確保するという点にあろうかと存じます。私ども、コンサルタントの関係につきましては、その点につきまして常時チェックを怠らないように、いろいろなチェック体制を内部的にもやっているところでございます。  それからまた、援助の要請主義との関連では、コンサルタントが調査したプロジェクトが本当に被援助国において必要だと被援助国政府が判断する場合には、先方の要請に乗ってまいるわけでございます。その要請に従って私どもそのフィージビリティーとかあるいは被援助国の全体の経済開発に役に立つかどうか十分なるチェック体制を行っているというふうに努力しているところでございます。
  76. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 ODAが真に相手国に喜ばれるような、そういった方法で行われていくべきことは最も望ましい姿であり、また、そのようになるようにきょうまでもそれぞれ努力を続けてきたと思いますが、しかし御指摘をされるような問題点があったことも率直に認めなければならないと思います。  ODAの実施に当たりましては、制度、文化が異なりますけれども、円滑にこれが遂行されるよう、反省すべきことはさらに反省して、改善を加えながら、実施体制、全体として順調に行くように今後とも鋭意努力をしていかなければならぬ問題である、このように受けとめております。
  77. 和田静夫

    和田(静)委員 ぜひ、そういうようにお願いしたいと思います。  きょうは幾つかの例を挙げてと思っておったのですが、もう時間もなくなってまいりましたので、ちょっと一つだけ例を挙げますと、フィリピン国立航海技術訓練所、これは中曽根元総理とマルコス大統領の会談のお土産だと言われた比喩があるのですが、一九八三年の五月七日の会談の直前、四月十九日に、当時の兵藤臨時大使から外務省に公電が入って、そして特段の配慮をもって事態が進んだものであります。  同年八月、事前調査団、十月、基本設計調査団、そして翌年の八四年一月に最終原案説明チームがフィリピンに派遣されて、六月二十五日に第一期交換公文が調印されて十二億七千三百万円の無償援助。直ちに松田・平田・坂本という事務所がコンサルタント契約を結んで、八月の入札でトーメンと鹿島建設が落札をした。翌八五年六月には実施協議チームが派遣をされてその直後に第二期交換公文、二十四億二千七百万円の無償援助がある。そして十月、計画打ち合わせチームの派遣。十二月、技術協力のための専門家五名が現地タクロバンに行ったのですよ、ここが問題なんですがね。翌八六年三月、引き渡し。この船員養成数というのは五カ年計画延べ一万三千六百四十名だったのですよ。ところが、目標の五%にも達しなかった。全然応募者がないんです。コースによってはゼロなんです。  なぜかというと、この訓練所はレイテ島タクロバンにあって、マニラから二十四時間という場所でイメルダ夫人の出身地。外務省の説明では、当時相手国からの要望ということになっていました。が、計画工事までは日本企業が行っています。つまり、ろくに役に立たないものに無償援助の美名で三十七億円の税金が使われたのですよ。日本の企業にお金が落ちたということであります。こういう援助というのは、一体政府はどういうふうに反省をし、どういうふうに外務大臣、具体的には改められますか。
  78. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 フィリピンの国立航海技術訓練所拡充計画について、我が国が先方の要請に応じましていろいろ協力していることは先生御指摘のとおりでございます。特にフィリピンにおきましては、国際的な水準に達するようなレベルの技術者、特に国際航海に従事する技術者が少ないということを踏まえまして、先方政府が船員の再訓練をしてほしいという観点から要請してきたものでございます。先方の正式要請を受けまして、日本政府といたしましては、船員の技術水準の向上、雇用機会の増大、経済開発の基礎となります海上輸送力の向上、また外貨収入を通じたフィリピン経済全体への貢献等々を考えまして、これに協力することとした次第でございます。  先ほど先生から訓練計画、特に人数が当初計画よりも非常に少ないではないかという御指摘もございました。確かに発足当初は予定をはるかに下回る規模でございましたが、これは海運不況の影響とかあるいはフィリピンにおいての六十一年の政権交代、それに伴う行政事務の停滞等があって、この訓練所の組織体制の整備が大変おくれたという事情がございます。しかし、最近の数字は大変好転しておりまして、平成元年におきましては一千四十九名というふうに大変応募者の数もふえてきているわけでございます。そしてこれを受けまして、アキノ大統領からもこのプロジェクトはフィリピンの社会経済開発の促進に資するということで感謝状までいただいている次第でございます。
  79. 和田静夫

    和田(静)委員 今の田中大使を中心として大変なフィリピンにおける努力が続いていることを私は知らぬわけじゃありません。きょう申し上げているのは、前段申し上げたところの仕組みの問題のやり方を変えていきませんと、出先の政府代表大使が本当に献身的に努力をされたって、結果的にはその地域住民からは、政府は別としましてありがたがられない、そういう状態になっていることだけはやはり真剣に考えておく必要があると思うのですよ。  無償援助の例はもうそれできょうはやめますが、経企庁長官に来ていただいているのですが、借款についての批判もやはりこれは御存じのとおり深刻です。対ミャンマーの賠償は四大工業プロジェクトが含まれていて、乗用車、トラック、農機具、もう時間がありませんから早目にいたしますが、電気製品の製造に対する百五億円が供与されましたね。マツダ工業が乗用車、日野自動車がトラック、久保田鉄工が農機具、松下電器が家電工場に関係した。これらのプロジェクトはどういうわけか国内生産が達成できずに、賠償終了後は膨大な円借款がずっと続けられた。相変わらず日本からの部品輸入なしに生産が続けられないわけですね。ということは、債務がふえるばかりだという結果になっているだけだ。  援助供与から三十五年たって自立できないというのは、どこか根本的な問題があるんじゃないでしょうか。関連日本企業が現地生産を可能とするような技術移転と人材養成を行わず、かえって援助資金を利用して部品輸出を図れる構造を意図的につくり出し、それを持続化させているものと見るほかないという批判もあります。一体この日本の援助はどういう役に立ってきたのかということを、これらのことを私ずっと読みながら思ったのです。ミャンマーのような国にさらに借金をふやしてしまって工場は自立できないという援助、この援助といっても円を貸しているわけですけれども、これは果たしてマイナス効果ではなかったのだろうか。日本人として私は自責の念を感じないわけにはまいらないのでありますが、長官いかがです。
  80. 相沢英之

    ○相沢国務大臣 ODAの予算の使い方について適当でない例があるではないかというお話でありますけれども、確かにそういった事例がないわけではないと思います。ただ、各国におけるところの円借款の果たした役割については、委員もこれは十分にお認めになっているところだと思いますし、また、それがいろいろな形で、貧困の救済ということよりむしろそれぞれの国におけるところの経済発展に大きく寄与している面もまた多いと思うのであります。  ミャンマーの今御指摘になりました案件につきましては、私も詳しく承知をしているわけではないのでありますけれども、聞きましたところによりますと、一九六二年以来の長い期間にわたるところの援助でありますし、また、既に過去において投資されましたところのいろいろな設備その他も必ずしも現時点におきましては余り新鋭とは申しかねる、またいろいろな点におきまして追加投資等の必要もあるようでございますけれども、そういった点についての問題点が確かにないわけではない。また、いわゆる生産体制として自立できるような姿になっていない点についても、委員御指摘のような問題点があろうかと存じますが、なお、これらの点につきましては、またひとつ詳しく調べさしていただきたいと思いますけれども、外務省局長から詳細また答弁をするようにいたしたいと思います。
  81. 和田静夫

    和田(静)委員 きょうは、それで……。  それで、もう一つの援助といいますか融資ですね、今度は。大蔵で一言だけ答弁もらっておきますが、世銀融資に協調して日本輸出入銀行も融資して、ニチメンが落札、間組が施行したインドネシアのクドンオンボダムですね。これは水門が閉められて十三カ村が水没をした。しかし、立ち退きを拒否した住民が一千五百世帯、約七千人がボートやいかだを利用しながら生活をしているそうですね。これは去年六月の調査の話ですが、そうすると、その後彼らは、大蔵省、どうしているか御存じですか。
  82. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 私が承知しておるものと件名がもし違いましたら、突然の御質問でございますので、改めて調べさしていただきたいと存じますが、インドネシア政府の要請で海外経済協力基金が融資の検討を進めておりますスマトラ島のコタパンジャンの水力発電所計画に係るものかと存じますが、それにつきましては、現在海外経済協力基金が要請案件の妥当性につき審査を行っているところでございまして、その審査の過程におきまして、住民の移転や生息動物の保護を含む環境面への影響についても慎重な配慮をしているところでございます。
  83. 和田静夫

    和田(静)委員 終わります。
  84. 宮下創平

    ○宮下委員長代理 これにて和田君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時一分休憩      ────◇─────     午後一時九分開議
  85. 越智伊平

    越智委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。松浦利尚君。
  86. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それでは私は、きのう嶋崎委員が構造協議について総論を質疑をいたしましたので、具体的な内容について詰めさせていただきたいと思います。  まず最初にお尋ねをしたいのは、御承知のように七月、テキサス州でサミットが開かれる予定になっているやにお聞きをいたします。このサミットに対する事務方、その準備のために、すべてが構造協議の関係者とダブっておる関係で、アメリカ側としては七月の報告をできるだけ早めて六月末には作業を終了してもらいたい、こういう要望が出されておると聞いておるのでありますが、事実かどうか。もし事実だとすれば、これからわずか二カ月の間に、これだけ我が国の構造について大きな変革をもたらす内容が短期間で合意するだけのものをつくることができるのかどうか、その点についてお尋ねをします。
  87. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 日米構造協議は、昨年の夏のアルシュ・サミットにおきまして当時の宇野総理とブッシュ大統領との共同記者発表という形で決まったものでございます。それは七月十四日の日付でございます。最終報告を一年以内に出すというのがその共同記者発表で述べられておりますが、そうしますと、一年以内ということでございますから、ことしの七月の中ごろということになります。  で、今先生のおっしゃいました今後の日程につきましては、いずれにせよ七月十四日以前にやらなければいけないわけでございますが、現在アメリカ側とどういうふうな日程でやるか調整中でございます。
  88. 松浦利尚

    松浦(利)委員 どういう日程でやるかというのを調整中だと言われますけれども、この構造協議は各委員政府との間に真剣な議論を今日までしてきたはずです。また集中審議もしているのですね。非常に重大な内容を含んでいるのです。それが、七月中旬ごろというのが六月に早まってくるということはそれだけ作業を急ぐということですから、アメリカ側の期待するものができるのか、あるいは国内の調整がその間に可能なのか、そういった意味では期間が短くなるということは非常に大きな問題だと思うのです。我が国としては、それじゃアメリカ側に対してどういうことを希望されるのですか、従来方針どおりやってくれ、こういうふうに日程の要求はなさるのか、そういうふうに理解していいですか。
  89. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 今後最終報告に向けての作業は、基本的には今回の中間報告に盛られた諸措置の具体化ということが中心になると考えておりますが、具体的に、例えば最終報告はいつの日にするかというようなことは、こういう問題も踏まえまして今現在調整中でございます。
  90. 松浦利尚

    松浦(利)委員 これは外務大臣、事務方ではどうにもならぬので。  アメリカ側はサミットの関係者が全部同じメンバーだから、できればこの中間報告に対する報告は六月末には終了したいという申し入れが日本側になされておると聞いておるのですよ。ところが、今依然として事務方の方は調整中だということですけれども、そういうことで実際こういう重大な問題がいいのでしょうかね。
  91. 中山太郎

    中山国務大臣 今政府委員が御答弁申し上げましたように現在調整中でございまして、日程が確定をするのも、まだどういう日程になるかということははっきりしておりません。
  92. 松浦利尚

    松浦(利)委員 ここで水かけ論をしても中身に入らぬから先に進ませていただきますが、いずれにいたしましても、日程を、アメリカが言うように六月末には報告してくれというようなことになると大変なことですから、少なくとも我が国の希望としては七月末ということでぜひ交渉を進めていただきたい、慎重に国内調整等含めて対応していただきたい、これは希望として申し上げておきたいと思います。  それから次の問題ですが、これは我が党の井上委員が冒頭質問をしたところですが、アメリカ側の要求は二百項目近くにわたっておるという報道が既にされておったわけですね。しかし、私たちに見せられたのは、閣議決定した部分だけを配られて承知をしたところです。それで、私たちが心配をするのは、この構造協議というのは今度の閣議決定した部分ですべて終了をするのか、あるいは新聞等で報道されておるその他残余の二百項目にわたるものについてさらに構造協議というものを進めなければならぬ立場に我が国は置かれておるのかどうか、これでおしまいになるのかどうか、その点を明確にしていただきたいというふうに思います。
  93. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 先ほども申し上げましたとおり、最終報告に向けての今後の作業は、基本的には今回の中間報告に盛られた措置の具体化ということが中心になると思っております。先ほど二百項目についてどうするのかというお話がございましたが、これは本院でも大臣からも申し上げましたとおり、日米双方からいろいろなアイデアが出てきたという性格のものでございまして、これをどうするとか、残ったものをどうするとかという問題はないわけでございます。冒頭申し上げましたように、最終報告へ向けての作業は中間報告に盛られた事項の具体化というふうに私どもは認識しております。
  94. 松浦利尚

    松浦(利)委員 もっと具体的にお尋ねしますが、それでは、今交渉しておるこの内容で終わり、決着、それ以外の問題については出てこない、凍結ではなくて、凍結では解けて出てきますから、もうこれ以外のものについては一切将来議論の対象にならない、そういうふうに我々は理解をしてよろしいのですか。
  95. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 双方から出し合ったアイデアも参考としながらそれぞれの措置として決めたのが今回の中間報告でございます。その中間報告の中に、例えば最終報告までに何々するという記述がございますが、そういうものを中心に具体化していくというのが最終報告と考えております。
  96. 松浦利尚

    松浦(利)委員 総理、今お聞きになったとおりなんですよ。私の質問に答えておらないのですよね。これの最終報告を出すことはこれは当然のことなんです。これが最終報告を出した後、また今度は別な問題で構造協議の二百項目というのが、これはどうなっておるかわかりませんけれども、こういったものがどんどん出されてくるのではないか、そういうことはこれから絶対ないというふうに理解をしていいかどうか、こうお聞きをしているのです。事務方の御答弁はそのことについては触れておられないのですよね。私が言っておるのは、構造協議はもうこれでおしまい、この二百項目の中から選ばれたものについて日米間で協議をしておるのであるから、これの結論が出ればあとはもう一切なし、そういうふうに理解をしていいかどうかと聞いているのです。これは大臣じゃないでしょうか。もう同じことの繰り返しですから時間がもったいないです。(中山国務大臣「念のために」と呼ぶ)いや、念のためじゃなくて、念のためにもう二回答弁したのです。もう同じことですよ。官僚がおらなければ答弁できないことないでしょう、大臣。
  97. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 ちょっと私、先生の御質問を誤解したかと思いますが、最終報告まで行くのは当然である、それでおしまいかという御質問であったとすれば失礼いたしました。  先生の念頭におありなのは、その後のフォローアップの問題があるのかどうかという御質問かと思いますが、これは——その最終報告に向けての作業というものは中間報告でまとめた作業の具体化というふうに認識しております。そこで最終報告ができるわけでございます。
  98. 松浦利尚

    松浦(利)委員 申しわけないですけれども、今答弁したとおりなんですよ。何遍聞いても同じことですよ。委員長も聞いておられるとおりです。ですから、これはやはり大臣がこういうのは答弁してもらわないと、何か時間がたてばいいという議論ならしない方がましです。
  99. 中山太郎

    中山国務大臣 昨年九月に第一回の日米構造協議が行われまして以来、双方からいろいろと出し合った問題が、先生の御指摘のように日本側に対して二百近いアイデアが出ている。我が方から八十近いものが出ている。その中で、両国の代表者たちがいろいろ協議をいたしまして、まず中間報告で大体最終報告に向けての大事なポイントを網羅したい、こういう考え方で実は海部内閣としてもこの中間報告に対する全力的な努力をしてきたことは御理解をいただけると思います。  ただ、これから七月の最終報告に向けまして具体的にどのようなことになるか、あるいはその詰めの作業を国内的にどういうふうにするか、それはもちろんアメリカ側にも当然やってもらわなければならないことがある、我々政府もやらなきゃならないことがある、そういうことで最終報告をつくり上げて、それでその後、朝からもお話がございましたように、国内のいろいろな法律の整備あるいは政令の改正等も含めましてこれを着実に実行していくということが必要となってくるだろうと私は考えております。
  100. 松浦利尚

    松浦(利)委員 私は、それじゃ今言われたような作業が終了した後はアメリカの方からこうした、また再び違う形での要求というものはもう出てこない、これで決着というふうに理解させていただきます。よろしいですね。
  101. 中山太郎

    中山国務大臣 重ねてお答え申し上げて大変恐縮でございますが、最終報告に向けましてさらに両方の責任者が協議を進めている最中でございますから、どうぞひとつ最終報告を御確認いただいた上でいろいろと御批判をいただくなり御指導をいただく。これは政府間のいわゆる協議でございますから、そういう努力をしている最中の過程であるというふうに御理解をいただきたい。その過程で中間報告という形で日本政府がみずからの意思によって発表した、こういうことでございます。
  102. 松浦利尚

    松浦(利)委員 井上委員質問をしたときに、二百項目にわたる問題について質問したんです。そうすると、皆さん方は閣議決定の部分についてのみ我々にお示しいただいたんです。ですから、これについて国内の調整あるいは立法措置等の作業があるでしょう。いずれにしても閣議決定の部分はすべて終了しますね、国内の調整その他も全部。問題は、その後、済んだ後のことほどうなるかわからぬと言えばそれまでだけれども、改めてまた違う角度のものが、この二百項目の中にいろいろなことがさらに書いてありますから、こういうのがまた次々次々アメリカ側から出てくるんではないかという疑問がある。それはないというふうに理解をしていいかということだけなんです。だから、それをぽっと教えてください。
  103. 中山太郎

    中山国務大臣 米側から提議されたいろいろな項目について日本でできることとできないことがあるということは、かねて申し上げております。そういうことで、私ども日本としてこれが消費者のためになる、あるいは国民生活がもっと豊かになるという二つの視点でやれるものはやっていくということが原則であろうと思っております。
  104. 松浦利尚

    松浦(利)委員 どうもかみ合わぬですけれども、何か奥歯に物が挟まっておるような感じで、頭が私は悪いのかもしれませんね。少しずれておるんですよ。  前半はよくわかるんです。私はそのことは認めます。否定もしません。当然のことです。ただ、その後の処理が、どうも私たち不安でたまらぬのは、これ以外にアメリカ側から出されておることが、この要求項目が事実であるとすれば、物すごくいろいろな問題が入っているんですね。これを実現すると言ったらもうえらいことですよ、また。そういうのがまた、これが済んだら次出てくるということについての不安感が伴っておるから、そういうのがあるのかないのか、こう聞いておるだけのことなんですよ。
  105. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 これは私からお答えするのが適切かどうかわかりませんけれども、例えば公共投資につきまして、御承知のようにアメリカ側のアイデアとしてはGNP対比一〇%という数字を出し、そのほかに例えば建設公債を限度いっぱい出すべきだとか、いろいろなアイデアを今まで言っておりました。それに対して日本の態度として、そうした言い分は拒否しつつ、社会資本整備についての重要性日本自身の問題としてそれを認め、公共投資の十カ年計画とそれぞれの長期計画をまとめていくという答えを出しております。  ただ、それでアメリカ側がGNP一〇%という考え方を捨てるかと言われれば、恐らくアメリカ側にはいつまでもそういう議論をする人はおるでありましょう。ですから、そういう限りにおきまして、委員が先ほどから御心配になっておられますような、この中間報告に盛られた事項のみでアメリカ側の議論が完全に終息するという保証はありません。そして、それは問題としてアメリカ側がなお言い続ける可能性のあるテーマは、今の公共投資を例にして申し上げますようにあるわけでありますけれども、それは日本政府として受け入れられないことでありますから、我々として中間報告に盛ったような考え方で対応していくということでありまして、論議としては残るテーマはあり得るということは事実であります。
  106. 松浦利尚

    松浦(利)委員 わかりました。それじゃ次に進ましていただきます。  独禁政策についてお尋ねをさせていただきますが、これは総理にもぜひお聞き取りいただきたいと思うのですが、この前時間がなくて具体的にお話しする機会がなかったわけですけれども、いずれにいたしましても、政府にはいろいろな政府規制とか慣行とかというのが従来あったわけですけれども、一九七九年の九月二十五日にOECDが競争政策と適用除外または規制分野に関する理事会勧告というのを出されまして、以来、公正取引委員会はこの分野について積極的にデータを集めて、その都度、政府関係の向きに対してデータをお示しになってきているんです。  この前はちょっと公取委員長質問の内容を誤解されて御答弁いただいたんですが、トータル的に、これは五十七年の公取の調査資料ですが、全生産額に占める政府規制分野のウエートが四一・四%だったんですね。全生産額に対して政府が何らかの規制を加えている分野のウエートが四一・四%。そうすると今度は、平成元年の十月に昭和六十年度の政府規制のウエートを出しておられます、公正取引委員会が。これは政府規制分野が全生産額に対して三八・五%ですね。余り変わらないんです。減ったところがあればまたふえてくるという状況ですから。ですから、まずこの数字について間違いかどうか、私は公取の資料で申し上げていますから正確だと思うのですが、その点の確認を委員長からお願いします。
  107. 糸田省吾

    ○糸田政府委員 ただいま委員御指摘の数字でございますけれども、昭和五十七年に昭和五十年の産業連関表をベースにいたしまして政府規制分野の生産額によるウエートを出してございます。その数字は今委員御指摘のとおりでございます。それから、その後に、今昭和六十年というお話がございましたのですが、一番新しい数字では、昭和六十年の産業連関表を使いまして平成元年の時点で同様に政府規制分野の生産額のウエートを出してございます。これまたただいま先生御指摘の数字のとおりでございます。
  108. 松浦利尚

    松浦(利)委員 総理、今御案内のとおりなんです。  それで、経済企画庁長官は物価担当大臣ですが、いずれにしても、物価問題を議論するときにこの政府規制分野の問題というのがいつも出てくるんです。確かに基盤の弱い部分、必要なところだと言われればそうだと思うのですが、アメリカ等と比較をしてみましても、政府規制をしておる分野の比較において非常に日本のものが高いんですね。なぜこれが改まらないのか。依然としてこういう状況が、何遍物価問題を議論し、公取がいろいろな意味でこういった勧告をされているか、勧告じゃありませんが、資料を提出されても改まらない。どこに原因があると思いますか。
  109. 相沢英之

    ○相沢国務大臣 確かに、内外価格差ということで諸外国と日本との物価を比較した場合に、いろいろな面におきましての格差がある。その原因の一つとして政府規制が取り上げられていることはもう今委員おっしゃるとおりでございますが、政府規制ということのその観念で、例えば全業種が四一・四%というその規制のウエートの中に建設業は一〇・五ある。これはもう建設業が政府規制一〇〇%ということでこういう数字になっておるのでありまして、だから、そういうふうないかにも何か建設業全体が政府規制下にあるような印象を受けるんですけれども、そういうようなことでは実態はないのでありまして、これはただそういう業を始めるのに際しましての許認可が規制ということになっているのでこういう数字になってきているんだと思うのであります。  でありますから、私は、ただその政府規制が諸外国との比較において非常に分野が広い、率が高いということのみをもって内外物価差の原因の一つというふうに考えるのはどうかなというふうに思うのでありますけれども、これでお答えになっているかどうかあれでありますけれども……。     〔委員長退席、原田(昇)委員長代理着席〕
  110. 松浦利尚

    松浦(利)委員 いずれにしても政府規制が改まらないんですよね。今大臣が言われたようなものなら、これは改めればいいんですよ、この統計数字を。しかし、依然として同じなんですよね。寡聞にして経済企画庁に対してそういったことの修正を求めたという話は聞かないんですよ。ですから問題は、せっかく物価の番人である公正取引委員会がこういったことを調査をして、具体的に提案をしても、各省庁間の縄張りがあって、経済企画庁長官もなかなか省庁の各大臣に、あなたのところはこうしなさいと言って指示する立場にない。要するに各省庁の縄張りというのが歴然としておるものだから、調整機能が働かないんですよね。そのことが私は今日の内外価格差の政府規制分野における改まらない大きな原因だと思うのです。  総理、この際、独禁政策、法律を改めまして、独占禁止法を改めて、公正取引委員会に勧告権を与えたらどうかという学者の説があるんですよ。力の強い勧告権を与える。そうすると改まるんですよ。そうすると、公正取引委員会はこれを見られて、今経済企画庁長官が言われたようにこれが一〇〇なのがおかしければこれを修正して、そして公取の方で的確にこれが物価に影響しておるというふうに判断されれば勧告をする、その省庁に。これは政府だからね、民間企業じゃない、企業じゃないんだから、政府だから。ですから、そういったことをするお考えがあるのかないのか。学者の中では、もうこの際勧告権ぐらいは思い切って、アメリカが言ってきたことに便乗するわけじゃないけれども、勧告権ぐらいは与えたらどうか、こういう説があるんですが、これはもう総理でなければ回答できないと思うので、総理から御答弁をいただきたいと思うのですよ。
  111. 相沢英之

    ○相沢国務大臣 私が先ほどお答えを申し上げましたのは、いわゆる政府規制の範囲が非常に広い、あるいは規制の程度がきついという御意見に対しまして、いわゆる政府規制の中にはそういうものが入っている、それをカウントするのはいかがかなという私の考え方を申し上げたのでありまして、そういうことならば規制の範囲に入れることについて検討しろという御意見がございましたので、その点は検討させていただきますが、いわゆる政府規制で問題になる点は、農林漁業の分野とかあるいは商工業の分野とかいろいろあると思います。それは我が国のそれぞれの分野におけるところの問題点がありますし、また中小企業に対する配慮あるいは農林漁業に対するところの政策上の問題からして、各種の価格支持その他の規制が行われているという点がありますから、一概に、私はそれをもって直ちにこれを物価サイドだけからその規制の当否について意見を言うことは問題があろうかと思いますが、ただ、確かに物価あるいは国民生活の面から申しますと、そういう点についての問題点がないわけじゃありません。その点につきましては、私どもといたしましてもさらに前向きに取り組んでまいりたい、このように考えております。
  112. 松浦利尚

    松浦(利)委員 アメリカ側に対してはこのように答弁しておるのですよ。「政府規制の緩和については、臨時行政改革推進審議会の答申を踏まえ、引き続き推進する。」と言っておられるのですよ。アメリカに対して答弁しておるのです、これ、緩和すると。引き続いて緩和していくと答弁しておられる。ところが、引き続いてやってもこういう結果でしょう。もう公取に勧告権ぐらい与えて、アメリカから指摘された規制の緩和をする以外にないじゃないですか。そうでしょう。だから私が言うんですよ。  今までやるやると言ってきて、やってこれない。臨時行政調査会でも行革審でも常に規制緩和ということを言ってきたんだ。ところが全然だめなんだ。そうすると、公取の方としては、それに対応するだけの資料を作成して、そしてそれを政府に提出をする、しかし政府は、それは馬耳東風、各省庁ばらばら、これはおれのエリアだから介入してくれるな。それではアメリカに対するこの回答どおりにはならぬでしょう。どうやって規制緩和しますか。それじゃ、これからアメリカに対して具体的にどういう規制緩和をすると御答弁なさるんでしょうか。それが理解できれば、勧告権の問題については引っ込めていいです。
  113. 梅澤節男

    ○梅澤(節)政府委員 いわゆる政府規制の分野というのは、先ほど委員が一九七九年のOECDの理事会勧告を引用されたわけでありますけれども、共通認識としては、この種の分野は、公共政策と競争政策のいわばポリシーミックスの分野である、したがって公共政策と競争政策をいかに調整していくか、その中でも、なるべく競争政策の観点から市場のメカニズムに任せてよい部分はどんどんそちらの方に任せるということが今各国の共通認識になっておりまして、ちょうどその勧告が出まして、相前後いたしまして我が国でもいわゆる臨調の考え方が出まして、一連の改革が行われてきたわけであります。現在、一昨年でございましたか、臨時行革審の議論が、答申がまとまりまして、あれを各省が着実に実行していく、その一翼といたしまして公正取引委員会が研究会を組織いたしまして、昨年の七月にレポートを出しました。  そういった一連の動きがあるわけでございますけれども、いずれにいたしましても二つの政策のポリシーミックスの分野でありますから、私も、ちょっと話が長くなりますけれども、ECのある国のこの問題を担当しております大臣ともお話をしたんですけれども、各国ともやはりコンセンサスの形成というのは一番難しいのだ。日本では、総理大臣の指揮のもとに審議会という方式をとりながら考え方をまとめてきておられるわけでございます。委員の御質問の勧告権の問題でございますけれども、これは私の立場からお答え申すべき分野ではあるいはないかと思いますけれども、これは政府の行政組織全般にかかわる問題でございますし、各省大臣の法案の立案をなさるという行政組織法の考え方もございますので、私の立場からそういうことを申し上げる立場にはございません。
  114. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それじゃ、政府規制の緩和については、臨時行政改革推進審議会の答申を踏まえて引き続き推進しますということは、何にもないということじゃないですか。依然として残るということですよ。結局、アメリカにうそを回答したということですね。我々国民に対して、内閣の決定に従ってこれを議論してくれというから、これについてこれからも議論をしますけれども、全然答えがないじゃないですか。どうしますか、総理大臣。お答えいただきたいと思います。お気の毒ですけれども、やはり総理にお答えいただく以外にないと思うのですよね。
  115. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 一昨年十二月に規制緩和推進要綱というのを閣議で決定しまして、それの推進を行っておるところでありますし、例えばその推進要綱に盛られております中では、御協力もいただきながら物流二法案の改正を着実に実施してきておるところでございますし、今後についても行革審の最終答申でさらに公的規制の緩和を進めるべきことが指摘されており、政府としてはこの最終報告を尊重しながら進めていきたいと考えておる次第であります。  さらに、今前半で御指摘になりましたが、行政指導を受けた事業者が共同して価格、数量等につき取り決めを行い、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合には、これは独禁法上問題となり、公正取引委員会において厳正に対処するものと承知をいたしておりますし、また公正取引委員会は、他の行政機関が特定の政策的必要から行う行政指導について、独禁法上、政策上問題が生じないように、必要に応じて当該行政機関と調整を厳正に行っている、私はそのように承知しております。
  116. 松浦利尚

    松浦(利)委員 アメリカ側はこの独禁政策について非常に詳しく要求を突きつけていますね。ですから、「競争政策の観点からの政府規制の見直し」というのが平成元年十月三十一日に公正取引委員会の事務局から出されていますね。これは恐らく向こうは手に入れておるはずですよ。  これを見ますと、もう時間がないから余り読み上げませんけれども、「規制の問題点」というのが的確にここに指摘されているのです。「適正な資源配分の阻害」「競争制限的体質の助長」「既得権益の擁護」「規制変更の困難性」「規制の不透明性」、そういうふうにして分析しているのですよ。  これは非常に字句として簡単に書いてあることだけれども、歴史的に見て、我が国では物価問題を議論する場合に長年議論してきたけれども、政府規制分野というのは改まらなかったところなんです。しかし、今度のこれを契機として、日本アメリカに回答しなければいかぬわけですから、どういう規制緩和をするのか、それこそ具体的な案が出てきたときに再度また議論をさせていただきたい、そういうふうに思うところです。  それから続いて、これは公取委員長お尋ねをしますけれども、カルテルに対する課徴金の問題です。これはこの前も本委員会で議論がありましたけれども、我が国は課徴金の金額が過小なんですよね。そう余り大きな金額ではないのです。諸外国を見ますと、違法なカルテルで得た不当利益は全部取り上げるという国もありますね。あるいは米国では罰金が一千万ドル、EC諸国の過料は前年度売り上げの一〇%、こういった金額なんですよ。我が国の場合は五百万円以下ですよね。ですから、カルテルのやりほうだいという状況が実はあるのです。ですから、こういったものを一挙に大幅に引き上げるということについてはいろいろ抵抗もあるでしょうが、現在の二倍あるいは三倍ぐらいは課徴金として取っていいのではないか、こういう主張がありますが、公取委員長としてはどう思われますか。
  117. 梅澤節男

    ○梅澤(節)政府委員 課徴金の問題につきましては、御案内のとおり今回の報告で、これを引き上げる方向平成三年度中に立法措置を講ずるという政府の方針が明確にされておるわけでございます。  そこで、これからどうするかという話でございますけれども、たまたま今委員が御指摘になりましたように、各国いろいろな制度を持っておるわけであります。ヨーロッパで申しますと、例えばECとかドイツは表面上の課徴金の上限の率は確かに日本より高い。しかし、これらの国には刑罰がないという関係もございます。したがいまして、いずれにいたしましてもこの課徴金による違法カルテルに対する政策効果、抑止力を上げるために法律の改正が行われることが既に決まったわけでございますから、これからこれをどういう方向で持っていくかということは、私どもといたしましては法制の各方面の、主として学者の方の意見を十分伺いまして、来年度の政府の国会に対する立案に間に合うように、これから準備作業を進めるという段階でございます。具体的な内容について申し上げる段階ではございません。
  118. 松浦利尚

    松浦(利)委員 私は希望として申し上げておきますが、恐らくアメリカ側は、我が国と同列の先進諸国、少なくともG5等の課徴金にかかる金額よりも少ないときにはやはりクレームがつくと思いますよ。少なくとも課徴金の引き上げについて政府は約束をしたわけですから、先進国並みにこれまた上げざるを得ない、そう思いますね。ですから、その点はよく熟慮してやっていただかないと、せっかくつくってもまたアメリカ側からクレームがつくということになりかねない、そう思うのです。  それじゃまた次ですが、それから今、公取の委員長初め一生懸命少ない人数で頑張っていただいておるわけですが、これも本委員会で同じ資料で議論されましたけれども、今までの公取の実績をずっと見てまいりますと、いずれにしても警告が非常に多いのですよね。多くて勧告ぐらいで、告発というのは一件もないのです。ところが、これからはやはり告発ということが非常に多くなってくるケースがあると思うのです。従来は勧告程度にとどめてきたものについては、やはりもう告発をする。警告した程度のものについては勧告をする。ワンレベルずつアップしていかなければならぬというようなそういう時代が来ると思うのです、今度の日米協議を踏まえて。そうした場合に、恐らく、私はあってはならぬことだと思いますが、今までの例から見て、告発というのを当然せざるを得ない場面というのが非常に多くなってくると思うのです。  そういった場合に、来年度で二十五人の公取の職員の増加が大蔵大臣の配慮で予算化しておられるようですが、それではやはり少ないのではないか、もっとふやす必要があるのではないか。少なくとも総理の政策の中心が消費者のために、国民のためにということであれば、そういった面からすれば公取の人員の充実というのがもっと図られるべきだ。ですから、二十五名来年ふえるということについて私は大変いいことだと思いますが、大蔵大臣はさらに再来年度人員を増加するように配慮していただきたい。  そしてまた、きょう法務大臣がおいでですが、これから公取からの告発件数が多くなってくると思いますね。そうなった場合に、やはり検察庁にこうした独禁専門の部とかそういった担当検事というものを増員する必要があるのではないか、そういう学者の説があるのですよ。だから、そういった問題について法務大臣、そして、前半の部分について公取委員長からお答えいただきたい、こう思います。
  119. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 今委員お話しのことで適切な御意見を承りましたが、法務省としてもかなり一生懸命努力していることはしておるのです。独占禁止法違反につきましては、法務省において公正取引委員会等との間において連絡会を設けて、この種の事犯に的確に対処するため体制整備を図ることとしております。また、検察におきましても、具体的な事件が発生した場合は、その規模等に応じ適切な捜査体制を整え、的確に対処するものと思われます。  このような中で、今後、事件の発生状況、告発件数及び捜査等に要する事務量の推移等を勘案いたし、必要があれば、御指摘のような点につきまして十分に配慮をいたして、努力するつもりであります。  以上であります。
  120. 梅澤節男

    ○梅澤(節)政府委員 ただいまおっしゃいましたように、本年度の政府予算で、現在違反事件の処理を担当しております部門、二十五名というのはおよそ二割ぐらいの増員になると思いますが、御配慮を願ったわけでございます。私どもはこれを生かしながら、今委員がおっしゃいましたように、厳正で的確な法的措置を積極的に打ち出してまいりたい。  なお、今後とも各方面の御配慮をいただきまして、その体制の充実、予算の配慮等に手を打っていただければ大変ありがたいことだと思っております。
  121. 松浦利尚

    松浦(利)委員 大蔵大臣。
  122. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 行政需要の増減に伴って定員の見直しが行われるというのは当然のことでありますし、今、定員削減計画のもとにおいて、年々の定員は厳しくチェックをしながら、真に必要なところにはそれなりの増員を図ってまいりました。これからもそうした点でめり張りをつけながら、行政需要の増減に対応してまいります。
  123. 松浦利尚

    松浦(利)委員 ありがとうございました。  それから次に、損害賠償請求の問題ですが、これは御承知のように、一番有名なのが、これは私も本院で議論したことがありますが、鶴岡の灯油損害賠償事件の最高裁判決の問題なんですがね。  これは今損害賠償請求制度の有効活用について検討するということになっているのですが、手数料を免除するとかあるいは挙証責任の転換をするとかあるいはクラスアクションの導入、こういった踏み込んだところまで議論をされておるのかどうか、その点をちょっとお聞かせいただきたいと思うのです。
  124. 梅澤節男

    ○梅澤(節)政府委員 いわゆる灯油裁判という問題に関します最近の最高裁の判決の問題でございますが、この判決自体につきましては、行政府に属する者といたしまして、コメントは差し控えるべきだと思います。  今、委員が損害賠償制度についていろいろな議論、論点をお挙げになりましたけれども、これも相当部分は公正取引委員会と申しますよりも、我が国の訴訟制度全般にかかわる問題がございますので、詳しい御答弁は避けたいと思いますけれども、ただ一点、その挙証責任の問題がございます。  これは現在、独占禁止法二十五条で無過失賠償責任の制度があって、実際に裁判が提起されました場合に、裁判所は遅滞なく公正取引委員会の損害額に対する意見を聞かなければならないという規定がございます。現実にはしかし、二十五条の訴訟提起の事例は、非常に現在まで少のうございます。  私ども率直に考えますのは、例えばアメリカでございますと、三倍額損害賠償制度というので年間数百件ぐらいの訴訟事件が処理をされておる。その場合の立証責任というのは、やはり被害者側にあることは変わりがないわけであります。したがいまして、私どもとしては、二十五条による損害賠償請求については、この活用方法についてどう考えたらいいのかということで、今、法律専門家によります研究会におきまして検討をお願いいたしておりまして、恐らく六月ごろにこの結果が出ると思います。  ただ、その制度の議論よりも、現行の訴訟制度のもとでこれが有効に活用されるためには、私は、前回もあるいは御答弁申し上げたかと思いますけれども、学説とか判例の発展に期待すべき部分が非常に多いのではないか、制度論のほかに非常に大きな問題もあるというふうに考えております。
  125. 松浦利尚

    松浦(利)委員 法務大臣、事前に質問をレクチャーしておりませんでしたけれども、三権に属するものですから余り踏み込んでは言えませんが、いずれにいたしましても、現在ある損害賠償請求制度の中で、やはり有効に活用できる道というのがあってしかるべきだと思うのです。そういう点についての法務大臣としての御見解をちょっとお聞かせいただきたいと思うのです。
  126. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 御通告を受けておりませんので、詳しい話はできないかもわかりませんが、一応お答え申し上げます。  委員御指摘のクラスアクションなどの問題は、司法制度の根幹にかかわるものでありまして、相当研究、検討をする必要があるものと理解をいたしております。
  127. 松浦利尚

    松浦(利)委員 時間の関係で先に進めさせていただきますが、それで、公正取引委員長アメリカ側の要求内容を見ますと、要するに景品及び広告規制の問題に絡んで、これは聞いてみましたらチョコレートなんだそうですが、これを取っ払ってしまえという、そういう乱暴な意見が出されておるわけですよね。ところが我が国としては、公正競争規約というものができて、やはり市場における公正な競争を確保するためにでき上がっておるのですね。  この問題についてアメリカ側が、ちょっと私は、これは無理難題を押しつけてきておる、こう理解をするのですが、この問題について公取の見解をお聞かせいただきたいと思うのです。
  128. 梅澤節男

    ○梅澤(節)政府委員 景品規制の問題は、日米構造協議よりずっと以前から、アメリカの競争当局と日本公正取引委員会でずっと議論してきた問題でございます。  アメリカは、景品規制は原則自由になっております。一方、ヨーロッパは原則禁止、我が国は、景品による競争が促進されるという面を評価しつつ、しかし、景品競争というものを野放しにいたしますと、価格とか品質の競争というものがないがしろになって、究極的には消費者のプラスにならないということで、一定限度の景品を認めるという景品規制を行っておるわけであります。  この点につきましては、日本の現行の景品規制の枠組みを外すことはできないという、日本政府なり公正取引委員会考え方は変わっておりません。したがって、今回の中間報告でも——ただ、現在ある公正競争規約の中には、この公正競争規約というのは、一般的な景品規制よりも上乗せの規制をしている部分が多いわけでございます。その公正競争規約の中には、できましてから非常に年月のたっているものもございますから、現在の市場の情勢を見ながら、現在の実態に合わす、なるべく一般基準に近いような、一般基準そのものでなくとも私はいいと思いますけれども、できるものは緩和していくという方向で、今回の構造協議の中間報告にも盛り込まれておるわけであります。考え方は変わらないわけであります。
  129. 松浦利尚

    松浦(利)委員 ぜひそういった主張を押し通していただきたいというふうに思います。  それから、これは総理お尋ねした方がいいと思うのですが、公正取引委員会、今五名の委員によって構成されているのです。この五名の内訳を見ますと、大蔵が二名、法務が一名、通産が一名、公取が一名なのですね。そして、この中に消費者とか学者というのはだれも入っておられないのです。ですから、今おられる方がどうこうという意味ではありませんが、この公取の委員を五人を少し七人ぐらいに拡大をしまして、もちろん奇数じゃなければなりませんから七人ぐらいに拡大をして、消費者の代表、そしてまた学者の代表を入れるべきではないかという国民の声も、消費者の声も非常に多くなっておるわけでありますが、そういう問題について総理の御見解を承りたいというふうに思います。だれか前に答弁される方がおられればその方で結構ですが、恐らくこれは総理大臣以外にお答えする人がおらぬと思うのですが。
  130. 梅澤節男

    ○梅澤(節)政府委員 独禁法の二十九条で、今委員がおっしゃいましたように、法律または経済に関する学識経験者のうちから内閣総理大臣が両院の同意を得てこれを任命するということでございまして、この規定はずっと、独占禁止法ができましてから変わっていないわけであります。その前段には、「委員長及び委員は、独立してその職権を行う。」という条項があるわけでございます。  それで、今の委員の御質問に私が直接お答えをするというのは大変難しい問題でございますけれども、歴代の総理大臣の的確な御任命により、私ども現行の委員は非常に一生懸命仕事をいたしておるということだけを申し上げます。
  131. 松浦利尚

    松浦(利)委員 公取の委員長が一生懸命しておられることはよく理解しているのです。だから五名を七名ぐらいにして消費者、学者を入れたらどうか。総理の御見解を承ります。
  132. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 公正取引委員会というのは、やはり職務上、法律、経済に関する豊富な知識と経験を有する者が行うべきものである、こう考えておりますが、私の日ごろの持論からいきますと、私も含めて何省出身の者であろうがどんな人でも消費者であることは間違いない、こう思っておりますので、そういった立場も十分踏まえて厳正な行為を行ってくれておるもの、このように期待をし、信頼しております。
  133. 松浦利尚

    松浦(利)委員 総理、誤解しないでください。今の公取委員長以下委員の皆さん、職員の方が少ないスタッフで、アメリカなどと比べれば、アメリカの半分ぐらいですよ。もっと以下ですかね。それぐらいで一生懸命しておられるのです。そのことは理解した上で、やはり消費者代表あるいは学者代表、そういった人をお入れになったらどうでしょうか、こう申し上げておるのです。ですから、総理がそういう方向で検討してみようというお気持ちになられれば、そういう方向で具体的に検討していただけるのじゃないでしょうか。どうでしょうか、もう一遍お答えいただきたいと思います。
  134. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 公正取引委員会がいろいろ人数その他のことについて非常に少数精鋭主義で頑張っておってくれた、けれどもそれは限度があるので、でき得る限り拡大していかなければならぬという基本方針は全くそのとおりでございまして、いろいろ厳しい状況の中でも予算措置等もとっておるところでありますし、また今申し上げましたことは法律事項でございますので、法律に従って人数も決まっており、その中で法律上の、経済上の学識経験者という観点からやっておる今の委員会の仕組みでありますから、そのスタッフをふやしたりいろいろすることによって御期待に十分こたえていくようにしなければならぬ、こう考えております。具体的に消費者の立場に立って物を考えてやってくれておると僕はここで申し上げましたけれども、そういう点については私もよくこれから研究をさせていただきます。
  135. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それでは、続いて大店舗法の関係に移らしていただきます。恐れ入りますが、もう時間が時間ですから、建設大臣、通産大臣、国土庁長官質問が行かぬと思いますので、どうぞお引き取りください。失礼しました、自治省です。法務省も結構です。済みません、通産は一番要るのです。  それでは、続いて大店法についてお尋ねをしたいと思うのですが、その一つは、今度の大店法関係の、いろいろ御苦労なさって大臣が、百平米以下とかあるいは一〇%または五十平米以下、こういうふうにしておるのですが、ただ一つここでわからないのは、一〇%または五十平米以内ということは、下回る方をとるということでしょう。大きい方をとるのですか。それをお答えいただきたいと思うのです。
  136. 山本貞一

    山本(貞)政府委員 今回の通達なり省令の変更で考えております軽微な変更につきまして、五十平方メートル以下または一〇%以下のものについては調整手続を不要ということにしております。これはいずれか小さい方でございまして、したがって、ただ、その建物の中にいろいろなテナントが入っておられる場合もありますから、原則五百平米を超えるものが法律の対象でございますが、その中で五百平米以下のテナントも合わせて二千とか三千とかなっているわけですから、その小さなテナントについては、五十平米ということになりますと、例えば二百平米のところに五十平米があると非常に大きな、四割増になりますから、その場合は一〇%増、そういう意味でございます。
  137. 松浦利尚

    松浦(利)委員 結局、今まで五百平米以下の問題についてここに記載をしておるということですね。はい、わかりました。小さい方ですね。  それで、非常に私が不思議に思いますのは、これは本当なら大臣、やはり法違反になるのじゃないですかね、行政指導でこういうことをやると言われても。その点はどうですか。
  138. 武藤山治

    武藤国務大臣 御承知のように、第六条の二項で、今の五十平米または一〇%、これは通産省令で決めておるわけでありまして、その通産省令で決めておる範囲においては変更はよろしい、こう六条の二項に書いてありますから、そういう意味合いで、今度アメリカとの間でとやかくではなくて、従来からそれは法律上認められておる、こういうことだと思います。
  139. 松浦利尚

    松浦(利)委員 ですから、不思議に思いますね。法律上決められておることを何でここに記載せないかぬかったのでしょうか。
  140. 武藤山治

    武藤国務大臣 第六条の二項は、そういう場合にはいろいろ届け出て、そうして法律上それはもう何も特に調整の手続は要らないということになっているわけですが、それをそうじゃなくて、いつでも結局五十平米以下のものはもう結果的にはよろしいということにしようというのが、私は今度の運用改善の考え方だと思うのです。
  141. 松浦利尚

    松浦(利)委員 結局、調整手続を省略するということですか。
  142. 武藤山治

    武藤国務大臣 五十平米以下については、届け出をしてもらっても調整は必要がない、こういう形でやっていこうということでございます。
  143. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それでは、ちょっとお尋ねしますけれども、通産省は従来、出店に対して出店抑制地域というものを設けて、それで実質的に行政指導という、行政指導なのかどうなのかわかりませんが、規制をしておられたのですね。例えば出店予定地の大型店の商圏支持人口、大型店一平方メートル当たりの購買人口で判断をする。それで人口十万人以上の都市は三・四人、五万人以上十万人未満では三・七人、三万人以上五万人未満では三・九人、それを下回る都市を出店抑制地域として認定していた。そして、その地域の出店は町村長の同意がない限り認めなかった。  ですから、こういうことを仮にしましても、通産省は、現在ある行政指導、大体全体で全国に、この前お聞きをしたときに幾らと言いましたか、二百二十都市と言われたですかね。二百二十ぐらいあるというふうに聞いておるわけですが、実質的に、大型店舗でこういうふうに自由裁量でやられても、そういう内容が厳然として存在すれば、結果的に従来と何も変わらぬ、こういうことになるわけですね。そういう事実があるのかないのか、ちょっと聞かしてください。
  144. 山本貞一

    山本(貞)政府委員 今先生御質問の点でございますが、昭和五十七年の通達というか、通達で運用が強化されたわけですが、その際に導入された措置といたしまして、言葉は特にはございませんが、そういう相当水準に達している市町村については、今委員御指摘のような運用になっております。ただ、それは一つの私どものそういう運用の目安でございまして、市町村あるいは商工会議所、商工会、地元の方でこれは進めようという方向があれば大いに進めていただいておりまして、現実、今のようなそういう市町村でも従来、出店はもう八割以上のところで進められておるわけでございます。
  145. 松浦利尚

    松浦(利)委員 通産大臣、これも「排他的取引慣行」の中に、これは政府アメリカに出されたものですよ。「行政指導等の政府慣行に関する一層の透明性・公正性の確保。」そしてまた「日本政府は、行政指導の透明性及び公正性を確保するため、行政指導の内容が市場閉鎖的な意図をもたないものであること及び公正な競争を阻害するようなものとならないことを確認する。また、行政指導は可能な限り文書で行うこと」とする、こうなっておるのです。それで、言葉は悪いのですが、今までなかなかこの出店規制にかかわる地域、これの標準ガイドラインですね、これが全然示されないのですよ。  委員長、このアメリカに対する要望の内容から見ても、この際こうしたものは透明性を確保するという意味で、しかも最大の日本アメリカとの障害になっておる大店舗法の改正の問題ですから、この際どういう内容のものか、資料を出していただきたい。  それは、私が申し上げたように、通産当局が先ほど言ったように、出店予定地の大型店の商圏支持人口、これで判断をして指示をしておられる、それは全然私たちは知るところでないのです。それを本委員会に出していただきたいと思いますね、議論ができないですから。これは何も悪いと言っておるんじゃないのです。そのことをはっきりさして、なぜそれが必要なのかということをアメリカ側に言わなければならぬから、私は議員の立場で主張しているのです。間違わないようにしてください。
  146. 武藤山治

    武藤国務大臣 先ほど審議官から答弁をいたしましたように、まあこれは一つの目安でございまして、きちんとした基準でもないわけでございます。  しかし今御指摘の、アメリカから言われておりますように、行政指導とか、非常に日本の場合わかりにくい点が多いというのは、私はそのとおりだと思うのです。そこで、私自身大店法の改正を次の通常国会ではぜひお願いを申し上げたいと思っておりますけれども、その中においてはやはり透明性というのが非常に大切であるということからいって、いろいろの従来の通達についてもぜひ整理をし、そして法律でやるべきものはきちんと法律で書き、そしてだれでもわかるような形で法律をつくり、それによって行政官庁がしっかりと行政をやっていくというのが私は正しい姿だと思いますので、そういうことをぜひ次の通常国会の法律改正のときにはお願いをしたいと思っておりますので、今はその目安のものまで出すというのもいささかどうかと思いますので、その点だけはひとつ御理解をいただければ大変ありがたいと思います。
  147. 松浦利尚

    松浦(利)委員 大臣の言われた気持ちは、私は理解をいたします。しかし、なぜそういうことが不透明な形で指導されておったか、それはそれが必要だったからこそされておるわけですからね。ですからこの際、それを具体的に本委員会に出していただかないと、アメリカ側に対してこういうちゃんと文書報告をしておられるのですから、これはやはり審議の促進をする意味でぜひお出しいただきたい。  委員長、出してもらってください。あるのですから、内規があるのですから。
  148. 武藤山治

    武藤国務大臣 もちろん予算委員会で御審議を願うわけでございますから、こういう問題は理事会で御検討いただくということでございましょうから、私の方がどうこう申し上げるわけではございませんけれども、できれば、正式の基準ではないものでございますから、お許しがいただければと私は申し上げたわけでございます。
  149. 松浦利尚

    松浦(利)委員 総理、さっきから申し上げておるように、大店舗法の問題をめぐって非常に大きな、これは法律の改正なんです。しかも、先ほど言いましたように、アメリカに対しては、行政指導の一層の透明性、公正性の確保、そしてまた行政指導が市場閉鎖的な意図を持っていないことを明らかにしなければいかぬのです。  すると、今まで出店規制が行われておった根拠としては、今私が申し上げたように出店を一定の規制をするために、内規というものかどうかわかりませんけれども、一つのガイドラインというのが今まで働いてきたのですね。もっと言うなら、出店抑制地域というものができておったのですよ。ここにはもう大型店は出店はさせない、それが全国で二百二十。ちょっと資料を持ってこなかったのですが、二百二十とか二百三十都市とか、こう言われておるのですが、そこはもう出店できないのです。そういう基準を持っておられるのを、この際、必要でやっておられるのですから、ぜひ出していただいて、それまで私は何も廃止せよとかなんとか言っているつもりはありません。必要なものならアメリカに対してこれは絶対にこういうことで必要なんだ、こういう主張をする意味でぜひ出していただかないと、大店舗法の質疑に進まない。
  150. 武藤山治

    武藤国務大臣 大変恐縮でございますけれども、私は委員会の審議を妨害するつもりもございません。ですから、そういうものは理事会でしかるべく御検討いただくものだと思いますが、あえて申し上げれば、その今お話のありました正式の基準ではございませんので、あくまで一つの目安として、まあ何というか内規みたいなものをつくっているというか、そういうものでございますから、できれば、いわゆる今までの資料要求とはいささか私は性格が違うんじゃないか、こう思いますので、そういう点で御理解をいただければ大変ありがたいと思うわけであります。
  151. 松浦利尚

    松浦(利)委員 委員長、それはただ単なる内規じゃないのですよ。実効性を持った内規なんですよ。今までそれが働いてきたわけですよ。だから、それを出していただかぬと前に進まないのです。
  152. 山本貞一

    山本(貞)政府委員 今の私どもの目安は、普通の行政指導の場合は恐らく民間の事業者なり個人が何かやられるときの指導ということだったと思いますが、この場合は私ども、自治体なり通産局なり私どもなりがいろいろな法律で認められました判断を、あるいはその手続を進める際の行政手続の中の判断基準というか、一つの目安でございます。そういう意味では、もちろん出店される側あるいは市町村あるいは中小商店にも間接的には関係いたしますが、行政を行う場合の一つの目安だと考えておりまして、いわば自分のところの家庭の中のもののようなものというふうに私ども理解しておるわけでございます。よろしくお願いいたします。
  153. 松浦利尚

    松浦(利)委員 こんなやりとりしておったら前に進まぬのですけれども、昨年のあの九〇年ビジョンですね。あの中でも、我が国はこの出店抑制地域というのは存在をさせた方がいいということが結論になっているのですよ。そうすると、アメリカに対してはこういうふうに回答しておるんですよ。回答しておらなければ私は言いませんよ、それは現に行政指導されているわけだから。しかも、大店舗法というのは今度の改革の中の重大なポイントでしょう。これが出てこなければ審議できぬじゃないですか、あるものも出してもらえないのでは。
  154. 武藤山治

    武藤国務大臣 私も細かいところまでは事務当局からまだ聞いておりませんので、ひとつよく聞きまして、私自身が判断をさせていただきたいと思いますので、ひとつこの問題は預からせていただきたいと思います。
  155. 原田昇左右

    原田(昇)委員長代理 それでは、理事会に諮って処理いたします。
  156. 松浦利尚

    松浦(利)委員 もうあと八分しかなくなりましたが、ですからその問題が出てきたときに、この大店舗法の問題についてはまた同僚議員あるいは私から質問をさせていただくことにして、その部分については留保いたします。  それで、これは通産大臣、ぜひこれだけは正確に御返事いただきたいと思うのですが、棚橋産業政策局長が、商調協のメンバーですね、この商調協の皆さん方は御苦労いただいておるのですが、いろいろ変なうわさも出たりなんかしておるものですから、ですからこの際準公務員にしよう、こういうことを発表しておられるのですね。私はこれはいいことだと思うのです。この棚橋産業政策局長が言われておる準公務員にするということについて、法改正その他について考えておられるのかどうか、お聞かせいただきたいと思います。
  157. 武藤山治

    武藤国務大臣 これは私自身もこの委員会におきまして、たしか村山さんにお答えしたのじゃなかったかと思いますけれども、そういうことをお答えをいたしておるわけでございまして、先ほど申し上げておりますいわゆる透明性の確保という観点からいっても、また消費者の皆さんにわかりやすいという点からいっても、私は商調協のあり方というのはもっと明朗でなければいけないと思っております。その意味において、その委員の資格というものはやはり法律によってある程度規定をすべきではないかという考え方を持っておりますので、まあ、言ってみると準公務員化というか、公務員に相当するような地位というか権限も与え、そのかわりまた責任もしっかりと持っていただく、こういうことを考えており、これはぜひ審議会にも諮りまして、次の通常国会における法律改正にはぜひ織り込みたい、こう考えておるわけであります。
  158. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それから、出店を一年半に短縮する、そういうことは方針として出されておるわけですけれども、異議申請ですね、変更勧告、七条三項。これが延長できる期間は四カ月、こういうふうになっているのですが、この期間についてはこの一年半との関係でどうなるのですか。
  159. 山本貞一

    山本(貞)政府委員 出店調整処理期間というのは、私ども、今の運用で申します事前説明、事前商調協、それから正式商調協その他今委員御指摘の法律上の手続、その三つに分けられると思います。この三つに分けられまして、実は昨年の流通ビジョンでイメージしていましたのは、今のそれぞれの三段階をほぼというか八カ月ずつ、八、八、八と二年程度というふうに考えておったわけです。これを一年六カ月ということにいたしますと、そのいずれかを数カ月ずつ切るかという知恵を絞らなければいけないわけですが、これにつきましては、今後審議会にも諮りまして、関係方面の御意見も伺って、五月に予定しております通達の中に入れたいと思っておるわけでございます。その中には、今委員御指摘の法律上の手続の勧告期間というのも入っておりますが、その勧告期間を一般は四カ月と、四カ月さらに延長できるとありますが、実際の運用上は、私どもの努力で、例えばそれを延長する四カ月を削減するというか努力をする、そういうようなのも一つの方法だとは存じます。
  160. 松浦利尚

    松浦(利)委員 もう時間が来ましたからこれで譲りますが、ただ私は、外務大臣、あなたにこんなことを言っては大変失礼ですが、この文章、気になるのが非常に多いのですよね。例えば「排他的取引慣行」の中に「外国事業者からの独占禁止法の違反事案等に関する通報、苦情の申し出について、公正取引委員会に相談・苦情窓口を設置し、迅速な処理を行う。」こうなっておるのですよ。何で外国事業者だけなんですか。本来なら内外無差別でしょう。公正取引委員会は内外無差別でやってきておるのですよ。にもかかわらず何でこういうことを書くのですか。
  161. 梅澤節男

    ○梅澤(節)政府委員 その問題につきましては、本年度の予算でも既に政府案で措置をしていただいておるところであります。  おっしゃるとおり内外無差別、当然でございます。ただ、外国事業者についてなぜそういうものを設置したかと申しますと、現在でも外国の事業者から、日本の独占禁止法の運用についていろいろな通報はございます。ございますけれども、参入企業によりましては、やはり言語の問題とかいろいろの関係がございまして、むしろこれはアメリカの事業者だけに限りませず、およそ日本の市場で活動する外国の事業者に対していわばアクセスをしやすいようにしてやる、してやるというか、そういう措置をとるということ自身は内外無差別原則とは全然関係のない話でございまして、むしろ日本の市場の開放性、透明性というものを外国の過中にもよくわからせるという意味では、私は、今の公正取引委員会としてそういう措置をとるということは時宜に適した措置であるというふうに確信をいたしております。
  162. 松浦利尚

    松浦(利)委員 公取の人数が少ないですからね。ですから、端的に言うと、公正取引委員会の迅速な処理の問題については、消費者の間にもいろいろ問題があるのですよ。外国ばかりではないのですよ。これを見ておると、何か外国だけこうして——だから問題は、内外無差別の原則に反するようなことは私は避けてもらいたい。  それからもう一つは、さっきも指摘をしましたけれども、いろいろ議論をしてまいりましたけれども、今までの行政指導は日本政府が認めておられるのです。今日までの行政指導は、「透明性及び公正性を確保するため、行政指導の内容が市場閉鎖的な意図をもたないものであること及び公正な競争を阻害するようなものとならないことを確認する。」今まで透明性、公正性が確保されておらなかったということを政府自身が認めておられるわけですよね。ですからこれは言葉の問題だと思うのですが。だから、こういう点を認めておられる以上は、これからはやはり国の行政指導、勧告あるいは慣行、こういったものについてはあくまでも公正公平、しかも口頭にあらざる文書ですべて出していただきたいということを最後につけ加えて、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  163. 原田昇左右

    原田(昇)委員長代理 この際、井上普方君から関連質疑の申し出があります。松浦君の持ち時間の範囲内でこれを許します。井上普方君。
  164. 井上普方

    ○井上(普)委員 日米構造協議につきましては、どうも政府の方から資料が十分出てこない。しかしながら、おいおいと報道機関等々が出してまいりまして、昨今の国会における審議というものは非常に深まったように私には思われるのであります。  そこで、報道機関が出しておりますものにつきまして、アメリカ側が二百四十項目のうちの、発表しろと言えば、これは発表しない約束になっているから発表しない、個々の問題についてひとつ聞いてくれれば答弁します、こういう話なので、一つ一つ、二、三お伺いいたしたいと思います。  アメリカのこのたびの日米協議の中で、「公共投資のGNPに対する比率は今後三年ないし五年の間に約一〇%とする。」ということは、これはアメリカからの申し出があったということはもうお聞きいたしております。しかしその次に、「一五の長期公共事業支出計画を作り直すこと。このうち七計画は九〇年度中に、さらに三計画は九一年度中に終了する。この場合期間全体の支出総額を設定するのではなく、投資の段階的な目標の達成と、毎年の着実な財源措置を促進することが必要である。」こういう要求があったように伝えられております。さらに飛ばしますと、予算編成についても「”単年度”予算主義の重視を改めること。例えば公共事業計画などについては、多年度資金配分や”年度制限なし”(いつでも使用できる)の資金配分を利用することである。」あるいはまた「建設国債発行額以上の水準まで公共投資を拡大する。つまり税収から引き出しても公共事業への資金を配分する。」というようなことまで言われておるように伝えられておるのであります。さらにはまた「通常予算での公共事業への重点資金配分に加えて、今後数年間は公共投資にすべて振り向ける”夏季補正予算”の編成を準備する。」こういうことをアメリカ側は日本に対して要求したと伝えられておるのでありますが、本当でございますか。
  165. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 アメリカ側のアイデアの中には、玉石混交という言葉そのとおりにいろいろなものがございました。ただ、それは我々がその中からアイデアとして受けとめたものもありましょうし、またGNP比一〇%論に象徴されますように、日本として予算管理に応じる意思なしということで明瞭に拒否したものもございます。ですから、それらにつきましてのいわばエッセンスというものが中間報告として我々がまとめたものである、そのように御理解をいただければ幸いであります。
  166. 井上普方

    ○井上(普)委員 こういうアメリカが政策実行計画として出された、話の途中どういうように出されたかは別にいたしましても、出されたことは事実ですか。今数点挙げましたが、どうでございます。
  167. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 第三回協議に出席をいたしました事務当局から受けました報告によりますと、例えばその中の幾つかのテーマについては、アメリカ側からも、口頭の説明にあったと存じます。ただ、例えばその建設公債云々までそのときに言葉として出たかどうか、ちょっと今私そこのところの報告があったかどうか正確に覚えておりませんけれども、何点かのものはアメリカ側アイデアとして報告をされたものの中にありました。
  168. 井上普方

    ○井上(普)委員 外務大臣、いかがでございます。
  169. 中山太郎

    中山国務大臣 今大蔵大臣がお答えしたことと同じでございます。
  170. 井上普方

    ○井上(普)委員 我々に伝えられておるアメリカの「政策実行計画提案」というものが実は出ておるわけなんです。これを見ますというと、それらしきことがともかくこの中に入れられて、取り入れられておるものもあるし取り入れられていないものもある。しかし、これを読みますと、あるいはまた日米構造協議の中間報告を見てみますというと、甚だ日本の側よりも向こうの方から非常に強い要求があるように思われてならない。イニシアは完全にアメリカが持っておる。  例えて言いますというと、日米構造協議に、四月五日に日本団のコメントがここにございます。「米国の中間報告に対する日本代表団のコメント」というのがある。読んでみますと、すべて「期待する。」「希望する。」最後に全部そんななんですよ。こうなっている。しかし、アメリカ側の代表団のコメントというものはすべて断定的に書かれている。こういうことを見ますというと、一体この日米構造協議なるものは、格好だけはアメリカに対しても要求したというけれども、内容とすれば完全にアメリカ日本に対する要求ばかりではなかったのか、こういう気がいたすのでありますが、いかがでございます、外務大臣
  171. 中山太郎

    中山国務大臣 一方的にアメリカ側が自分の意見を日本側に押しつけているというふうな御発言でございますが、我が方からは米国に対して、貯蓄率の低さ、それではこの国の経済がなかなかうまくいかない、もっと貯蓄率を上げるべきだ、あるいは企業経営者が短期的な考え方で企業を経営して会社を売買するようなことでは、研究開発に対する投資の意欲が少なくて、市場経済を原則にする双方の国家が市場を開放した場合にでも、競争力が弱いために米国製品は日本の市場で販売できないぞというようなこと、あるいはまた膨大な双子の赤字に対して日本側は、そのような赤字財政は放漫である、もっと緊縮財政に転ずるべきだ、このようなことを強く申しました結果、米国は日本側考え方を十分認識をして、みずからの判断に基づいて、二〇〇〇年までに高校卒業・進学率を九〇%までに引き上げる、あるいは米国の学生たちが数学、科学については世界で一位のようないわゆる教育水準に誘導したいというようなことまで米国側は言っておりまして、私どもは、一方的に米国から言われたことをそのままうのみにしているというようなことでは決してないということをこの機会に明確に申し上げておきたいと思います。
  172. 井上普方

    ○井上(普)委員 しかしながら、四月五日に出されましたアメリカの中間報告に対する日本代表団のコメント、これを読みましたならば、皆さん方とか今外務大臣の言われた考え方と大いに違うように思われてならない。今のアメリカの構造問題として認識された措置については、これは一つずつ申し上げますと、「政府及び民間の貯蓄率の引き上げのための諸措置を採用しようとしていることを歓迎する。」いいですか。「政府部門の赤字の縮減に取り組む決意を明らかにしていることを歓迎」する。「各年次におけるグラム・ラドマン・ホリングス法に基づく赤字削減目標が現実に達成されることを期待する。」期待もしくは希望する。あなた方日本代表団のコメントというのはすべてこれじゃありませんか。アメリカの中間報告に対するコメントというものは全部断定的に書かれている。ここに日本の代表団とアメリカの代表団との姿勢の違いが明らかになるのであります。外務大臣、いかがでございます。この文章で見る限りそうなってはおりませんか。
  173. 中山太郎

    中山国務大臣 文言等の扱いにつきましては、それぞれの出先での協議で、いわゆるそれぞれの代表団の考え方に基づいてこのような文言が書かれたものと認識をいたしておりますが、具体的に、例えば膨大な双子の赤字を縮小するためにいわゆる米国が予算編成をする際には二度にわたる予算のチェックをするようなことも米国側の意見としては既に出されておりまして、私どもとしては、米国の努力も認めますとともに、我が方も我が方なりのこれからやるべきこととして中間評価の報告をいたしたもの、このように考えております。
  174. 井上普方

    ○井上(普)委員 言葉の上ではそうなっていない。この「貯蓄・投資パターン」の文章を見ましても、この間に最後に項目別に書かれておるのは、十カ所にわたって、「期待する」「希望する」です、日本側の代表団のコメントは。アメリカの代表団の日本に対するコメントというのはすべて断定的に書かれている。  最後に聞こうと思いますけれども、「日本政府が、公共投資への支出の時期及び水準についての積極的かつ具体的な目標を示した場合にはじめて日本の投資・貯蓄パターンや、経常黒字への影響を評価することが可能となる。」ここまで断定的に書いておるのであります。これと日本代表団のアメリカの中間報告に対するコメントを比べれば、まさに雲泥の相違があるじゃありませんか。一方的に、しかも内容を見てみるというと、アメリカの要求、あるいは協議の最中に出てきたかと思いますけれども、日本の予算編成権にまで口入れをするような言動、要求がともかくあらわれておる。まことに私は残念に思われてならないのであります。  だから、アメリカが一体日本に対してどのような考え方でこの構造協議に臨んでおるのか。海部総理に言わすと、あるいは消費者のためにというような、ともかくおためごかしの言葉ではないだろうか。我々の日本の社会あるいは経済あるいは財政、行政の構造それ自体を変革させようという気持ちで臨んできておるのではないかと私には思われてならないのでありますが、総理、いかがでございます。
  175. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 日米経済協議というのは、何回も申し上げましたが、日米両国にこの数年間極めて目立った貿易の不均衡というものをどうしたら是正することができるかという点に立って、その経済政策を補完するものとしてお互いにアイデアを出し合って共通認識に到達するようにしていこうというのが事のスタート点であったと私は理解しております。そうして、それはただ単に、委員、消費者のおためごかしではなくて、日本がその問題点を気づいて、そして内需を拡大しなければならない、輸入を促進してインバランスを是正していかなければならぬという体質改善といいますか、構造改革に取り組み、努力をしてきたのも、これは国民生活の質を高めるための努力でありました。そういったことがずっと続いてきたところに今度日米の経済協議が始まり、双方からアイデアを指摘し合う。会合が始まって、会議を通じて議論をしておる中にアメリカ側から指摘される問題の中には、重ね絵のように合わせてみると、今自分たちがきょうまで取り組んできたこと、問題意識を持って気づいてきたこと、それがたくさんあったわけでありますから、これは全力を挙げて取り組んでいくことは、日米関係というのは世界で大切な二国間関係でありますし、同時に、消費者の立場に立って物を考えるという視点からいく内政問題においても、気づき、着手し、努力中の問題と合致するわけでありますから、そういった面を考えて真剣に取り組んできたということでございます。     〔原田(昇)委員長代理退席、委員長着席〕
  176. 井上普方

    ○井上(普)委員 海部総理のお話を承ります。しかも、この代表団のコメントを両方比べますと、まさに日本に対する厳しい要求だけが出てきておるように思われてならないのであります。あなた、お読みになりましたか。
  177. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 読みました。
  178. 井上普方

    ○井上(普)委員 今も外務大臣おっしゃいましたけれども、この中で書かれておることは、アメリカ政府努力に期待するとか、あるいは実施されることを期待するとか、すべてそれであります。例えて言いますならば、先ほども外務大臣が言われました、「労働力の訓練・教育の各項目につき、日本政府は米政府が引続き努力することを強く希望する。」と書かれておるのであります。中間報告に対してですよ。しかし、日本に対しましては、コメントには、希望するとかそういう文言は全然ありません。すべて断定的に書かれておるのであります。ここにこの文章二つを比べただけで、この日米協議の性格それ自体がわかると私は思う。それは副次的に消費物資の値下がりということは問題になりましょう。起こってくるかもしれません。しかしながら、しかも片方、あなたの方、政府が出さないから私はあえて言うのだが、アメリカの報道機関が報ずるこの日本の「政策実行計画提案」なるものを読むと、日本政府の提案権、財政権あるいはまた日本の社会の変革あるいは経済の変革それ自体にまでくちばしを入れておるような感がしてならないのであります。そこに私は大きな疑問を感ずるので、あえてこのことをお伺いいたしておるのであります。  それで、消費者の立場に立ってとかおっしゃいますけれども、それはあくまでも黒字減らしのために、経常収支の黒字の削減のためにこのことを考え経済協議というものはあるんじゃございませんか。そしてその副次的に消費者の立場というものを重視しろということが言われておるのじゃございませんか。私は、日本のといいますよりは世界経済の基軸通貨であるドルが崩壊することを最も恐れる、そういう立場に立ってこの経済協議なるものを、構造協議なるものを私は読ませていただいておるのであります。しかし、そのときには余りにもアメリカの要求というものが日本の内政にまで干渉しておるという気がしてならないので、あえてこのことをお伺いいたしておるのであります。  そこで、ひとつお伺いいたしたいのですが、大蔵大臣は、公共投資をGNPの一〇%に三年から五年の間に引き上げるというアメリカの要求がある、こういうお話でございました。そのうちで、特に公共事業関係総予算は、本年は「七兆四千四百四十七億円を確保する予算を編成した。」こうありますが、これは予算に出てきた数字であります。しかし、「地方公共団体の単独事業費及び財政投融資における公共事業実施機関の事業規模は、それぞれ七%ずつ増加した。これらの結果、IGベースでは、統計約二十六・三兆円に上る。」こうあります。これは、大蔵大臣が先般も言われましたが、NTTの予算であるとか投資であるとかあるいはまた学校等々に使った金とか、こういうものを合わすとなるんだとおっしゃいますが、私はこの二十六兆三千億円の内容が知りたい。これを公共投資と言うのかどうか。将来ここに問題が出てくると私は思いますので、二十六兆三千億円の内容を詳細にひとつお示し願いたいと思います。
  179. 中山太郎

    中山国務大臣 先ほど委員からお尋ねのございました点で、私の方から少し補足をさせていただきたいと思います。  日本側からの米国の全体の経済問題についての指摘の中で、冒頭に向こうがつくっております文章は以下のとおりであります。「日本政府は、国際収支の調整及び長期的な競争力を妨げる米国経済のいくつかの制約を識別し、これら制約を是正するための有益な提案を行った。以下は日本政府により指摘された問題に対処するための米国のイニシャティヴのレヴューである。」  まず、そこで、アメリカは、予算のプロセスとして、御案内のように膨大な赤字を抱えておりますから、「大統領の一九九一年度予算教書はGRH法の強化を提案したが、これにより法の抜け穴は閉ざされ、赤字削減のプロセスは強化される。例えば、大統領の予算教書は、予算期中において目標が達成されなかった場合には自動的に第二次一律削減命令が行われることを提案している。」まさしくアメリカの予算編成に対する日本側の指摘を米国政府がみずからのイニシアチブでそのような評価をしたわけであります。  また、家計の貯蓄増加につきましては、「行政府は家計貯蓄口座(FSA)の創設を提案した。FSAは同口座から生ずる利子への課税を免除することにより、個人貯蓄を奨励する。」すなわち、「納税者の調整後の年間総所得が六万ドル(家長の場合には十万ドル、共同口座を有する夫婦の場合十二万ドル)以下の場合、個人は年間二千五百ドルまで、夫婦は年間五千ドルまでの非控除の貯蓄を行うことができる。」すなわち、米国の低い五・五%という家計貯蓄率を高めるための日本政府の指摘を米国政府は素直に認めて、みずからのこの貯蓄制度に対する課税制度の改正を行おうとしているものでございます。
  180. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 数字の話ですので、主計局長から答えさせます。
  181. 小粥正巳

    ○小粥政府委員 お答えいたします。  先ほど、政府投資、いわゆるIG平成二年度ベースで二十六兆三千億円という数字がございました。その内訳でございますけれども、実はこの内訳は、中央、地方、公的機関・政府関係機関、この三つに分かれておるわけでございます。ただ、平成二年度の二十六兆三千億、合計の内訳は現在まだ数字が確定したものがございませんので、実は実績として出ておりますのは六十三年度まででございます。そこで便宜六十三年度で申し上げます。これはちょうど合計額が平成二年度の二十六兆三千億に相当いたします総額では二十四兆八千億でございますが、その内訳は、中央が三兆二千九十三億円、地方が十五兆五千八十二億円、公的機関が六兆八百九十九億円でございます。  なお、いわゆるこのIG、公的資本形成の範囲を投資主体別に申し上げますと、先ほどお尋ねがございました旧三公社、現在のNTT、JRあるいはたばこ、これは御承知のとおり、従来は、民営化いたします前はいわゆる公社でございましたから、その公社でありました当時はこの公的資本形成に含まれておりましたが、現在、民間に移行いたしましてからは、投資主体が、経営形態が民営、株式会社となっておりますために、現在では含まれておりません。そのような分類でございます。
  182. 井上普方

    ○井上(普)委員 宙で言われてもなかなかわからない。ひとつ文書にして私のところへ、後ほどでよろしゅうございますから、お示しいただきたいと思います。よろしゅうございますな。
  183. 小粥正巳

    ○小粥政府委員 はい。
  184. 井上普方

    ○井上(普)委員 今外務大臣は反論されました。私もそれは読みました。もう既にアメリカはそれはやらざるを得ない立場に立っている。もう既にやっているのでしょう。日本側が指摘するまでもなく、個人貯蓄の場合には八九年には出てきた。「一九八九年には五・四%に達し、現在は、一層高い水準に移行しつつあるように見える。」アメリカのこれに書いてありますよ。「個人貯蓄を刺激するための数多くのオプションを検討した。この検討及び分析の成果として、行政府は議会に対し民間部門の貯蓄と投資を更に刺激する幾つかの奨励措置を提案した。」と言うけれども、実際何をやりますかということを掲げておらぬじゃありませんか、ここに一切。しかし片方、日本側に対しましては厳しくその内容が示されておる。その一つが、先ほど来問題になっておる大店法であり、あるいはまた予算に対する要求であります。それは、日本側としては、アメリカの伝えられるような財政計画に対しましては、これはのめないのは当たり前の話です。  そこで、ひとつ大蔵大臣にお尋ねするのでございますが、公共投資という言葉がございますな。この構造協議の中でも盛んにその言葉が出てくる。しかし、この公共投資は、先ほど大蔵大臣がおっしゃった、何というのですか、公的資本形成と申しますか、公的機関の資本形成、こういう名前で言われました二十六兆三千億と一般会計、こういうことはアメリカ側と合意しておるのでございますか。これを公共投資というのだ、これが六・七%に当たるのだということは合意しておるのでございますか。いかがでございますか。
  185. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今委員が引用されました数字、先ほど局長から申し上げましたようにまだ確定をいたした状態ではございません、二十六兆幾らという数字は。ですから、便宜六十三年度の数字で御説明を申し上げた内容でございます。  そして、委員が今はしなくも御心配になりましたように、当初この部分についてアメリカ側の言う公共投資が果たして何であるのか、その辺については議論がございました。そして事務的なすり合わせをいたしております。ただし、アメリカ側が完全に日本側の説明を納得したかと言われれば、私は、議会までを含めて完全に納得したという自信はございませんが、日本側が中間報告において公共投資の十カ年計画をつくると申しております内容が何であるかということについては、これは向こう側に理解をしていただく話ではございませんで、我々はこういう内容をもって十カ年計画をつくるという趣旨の説明はいたしております。説明はいたしております。
  186. 井上普方

    ○井上(普)委員 そうするならば、今のお話でございますと、日本側の主張は申した、しかしまだそれは合意には立ち至っていない、こう考えてよろしゅうございますか。
  187. 福本英三

    ○福本国務大臣 公共投資の十カ年計画は、アメリカ側にお許しを得てつくるものではございません。日本自身が、二十一世紀までの間に整備しようとする社会資本の水準というものを頭に描きながら今後の十カ年間の公共投資の計画をまとめようとするものであります。そして、その中に何が含まれるかは我々が判断をし、数字を固め、その説明としてこれらのものを含んでいるということを向こう側に説明するという性格のものであります。アメリカからお許しをいただくとかそういう性格のものではございませんので、その点ははっきりさせておいていただきたいと思います。
  188. 井上普方

    ○井上(普)委員 大蔵大臣の御説明で、その点についてはわかりました。しかし、それでアメリカ側は、今後六月の末とかあるいは七月に行われる最終協議ですか、それに納得するであろうか。また日本は二枚舌を使ったのじゃないだろうかと言いかぬないおそれが私はあると思うので、あえて伺っておるのであります。  ここでアメリカ側の日本の中間報告に対する代表団のコメントを拝見いたしますというと、このことにつきまして「新たな総合的な公共投資十ケ年計画において、」「現在の水準よりも大幅に拡充し、」「投資の不足を減少させることになる。」「この新しい総合的な計画」は「直ちに着手する。」「最終報告において、この計画の支出総額を明らかにする。」こうある。そして、「最終報告において、これら分野別長期計画の策定に当たっての積極的かつ具体的な整備目標を示す。」とある。これは六月の終わりまでにですよ。それからさらに最後には、「これらの決定は、中間的評価の目的のための実質的な進展を示すものである。しかし、貯蓄に対する、又、対GNP比での投資の実質的な増加を碓保するためには更なる行動と具体化が必要である。日本政府が、公共投資への支出の時期及び水準についての積極的かつ具体的な目標を示した場合にはじめて日本の投資・貯蓄パターンや、経常黒字への影響を評価することが可能となる。」こう書いてあるのです。これがアメリカ代表団のコメントです。大分大蔵大臣のお気持ちと違うように思われるのですが、いかがでございますか。
  189. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 大変恐縮でありますけれども、私は先ほども申し上げました、委員にではありません、アメリカは、例えばそれでは中間報告で日本側から日本側としての考え方をまとめたものを手渡した折に、それですべてが完了したかと言われれば、アメリカとしてはあくまでもGNP対比一〇%という数字は捨てておらないのでありますからその不満は残るでありましょうということを申し上げました。  今委員お尋ねも実は同様の問題点でありまして、いかに言われても、我々はGNP対比で公共投資の計画を示すことはできません。これは我が国の予算編成権を他国に譲り渡すことでありますし、これを年次計画のような形で発表いたしますならば、我が国の予算そのものを管理されることにもなります。ですから、これは何と言われましても譲れないことでありまして、その結果として、あるいはアメリカ側とすれば依然としてGNP対比を言っておられるわけですから、そういう意味での議論のすれ違い部分は残るでしょう。しかし、幾ら言われてもできないことはできないのでありまして、我々としては、我が国自身の国民生活の質を高めるという視点から社会資本の充実というものには今まで以上に努力はする、今後十年間の公共投資総額の計画はつくる、それは数字もきちんと入れて示そうということを申しているという、ですから、一体になっていないのですから、向こう側のコメントがこちら側に対してぴたりとこないと言われましても、それはそうでありましょう。向こう側の言うとおりに私は了解して中間報告をまとめているわけではないのでありますから、それはぴたりとこない部分はありましょう。
  190. 井上普方

    ○井上(普)委員 私はぴたりときておるとは思っていないのです。ここにともかく日米の代表団のコメントの違いがあると私は思う。これがはっきりと示されておるゆえんだと思うのですよ。それほどまでに日本に対して厳しい要求を向こう側からしてきた。今もはしなくも言われましたけれども、日本の予算編成権にまでもタッチするような要求がアメリカからは言われてきておる。しかし、この中身を見てみますというと、だからこの投資パターンのところでも、「公共投資への支出の時期及び水準についての積極的かつ具体的な目標を示した場合にはじめて日本の投資・貯蓄パターンや、経常黒字への影響を評価することが可能となる。」ということは、これからが問題だぞということを書いてあるのじゃないだろうかと私は思われるのであります。  そこで、ひとつお伺いいたしたいのだが、今までは日本の公共事業というものは五カ年計画で推移してきたと思います。あるいは中期経済計画なるものもありましたけれども、各公共事業の分野別についての計画というものは、実は中期計画というものはなかったと私は記憶するのであります。しかし、今度初めてここで公共投資十カ年計画というものを出さなきゃならないのでございますが、どういうような手順でこれを行っていくのか、お伺いいたしたい。  もう一つ、さらにアメリカ側は四全総、第四次総合計画を、これをともかく評価し直せという要求があるのでございますが、とするならば、今までの中期の経済計画それ自体が大きくアメリカ側の要求と日本の要求とは違ってくると思うのです。ここらあたりをどういうように調整するのか、お伺いいたしたい。
  191. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 十カ年計画につきましては経済企画庁を中心に、もちろん財政当局として大蔵省も加わりながら、関係省庁でこれから数字を煮詰めていくことになるわけであります。  また、平成二年度中に終期が参ります八本の長期計画につきましては、関係省庁それぞれのお立場で御検討になるものを財政当局としても御相談に乗りながら、ある程度どういう形に最終的になるか、私には今まだ申し上げられませんけれども、今後引き続く計画というものの概要が示せるような努力をしていただくということになります。
  192. 長瀬要石

    ○長瀬政府委員 お答えをいたします。  今後予定されます十カ年間の新しい総合的な公共投資計画の策定に当たりましては、四全総を踏まえまして関係省庁と十分連絡調整を図ってまいりたいと考えております。  御高承のように四全総、これは長期的な観点から国土総合開発の基本的な方向を示すものでありますので、そのような観点から十分連絡調整を図ってまいりたいと考えております。
  193. 井上普方

    ○井上(普)委員 その十カ年計画は四全総を踏まえ、こう今も言われたけれども、アメリカ側は四全総を見直せ、こう言っているのでしょう。それはこの中にあるのじゃございませんか、中間報告について。四全総を見直せということがアメリカの要求じゃございませんか。国土庁長官、どうです。
  194. 長瀬要石

    ○長瀬政府委員 四全総の再検討に関して日米間でどのような議論があったかについて申し上げる立場にはございませんけれども、中間報告におきまして四全総についての直接的な言及がなされていないことは委員御高承のとおりと存じます。
  195. 井上普方

    ○井上(普)委員 四全総を再検討せいということを申し上げる立場にないということは、あなたは知っておるけれどもここでは言えぬということか、どういうことなんですか。
  196. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 それこそ私が御答弁するのもおかしいのですが、委員が先ほどから御指摘になっております中にもありましたように、きょうではありません、先日来ですね、アメリカ側の公共投資に対する考え方の中には、都市への集中という考え方があったわけであります。しかし、今都市への集中ということは、一極集中排除を必死で努力をしております日本として受け入れられるものではございません。そういう意味で、もしアメリカ側から、私はその具体的な議論は存じませんけれども、例えば四全総をやり直せと言われましても、あるいは公共投資を都市に集中しろと言われましても、日本の国土形成の上においてそのような議論は我々としては採用することはできない、そう御理解をいただく方がいいんじゃないでしょうか。
  197. 井上普方

    ○井上(普)委員 わかりました。それは日本立場日本の独立性といいますか、これは当然守らなきゃならない。しかも、この四全総を見直すというアメリカの要求に対しましては、これは簡単にそう四全総を見直すわけにはいかない。あらゆる審議会を積み上げて、一年あるいは一年有半にわたる積み上げによってつくられた四全総であります。しかしながらこの四全総、これも改定の時期が来ているのじゃありませんか。どうです、国土庁長官
  198. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 四全総は先生御指摘のとおりでございまして、二十一世紀を踏まえて今後十年間の長期的な国土政策を策定をしているわけでございますが、そんなことでございまして六十二年六月に策定されたわけでございまして、ただ問題は、経済社会の変動において地域的な若干の修正は必要でございます。そういう点につきましては国土審議会の政策部会で検討しているわけでございまして、基本的にはこの方向で間違いない、このように考えております。
  199. 井上普方

    ○井上(普)委員 そういたしますと、アメリカ側の要求というものとただいまの大蔵大臣の御答弁あるいはまた国土庁の長官の御答弁と比べますというと、非常に大きな隔たりがあるように思われてならないのであります。中間報告として出されておるこの文書というものは、一応の文書としてではございましょうが、これから最終答申をつくるに際しましては非常な難関が来るのではないだろうかと思われてなりません。  そこで、今までの大蔵大臣の態度ではアメリカ側はなかなか納得しないでございましょう。そしてまた、新しい何と申しますか日本たたきが起こるのじゃないかと私は憂うるものであります。しかしながら、我々はやはりアメリカの占領国ではございません。アメリカの要求に対しては、理不尽なる要求がかなり多いことは、これは事実であります。それらに対して毅然とした態度をおとりになっていただきたい。ただ消費者の利益のためにとかなんとかいうようなことで、いたずらなる妥協を強いられたら困る。私はこう思うのでございます。  私どもは、日米関係は大切にしなきゃならぬということはわかります。そしてまた、アメリカのドルが崩壊するようなことになったら世界経済はめちゃくらゃになる。こういう立場から、日米の構造協議に対しましても、私はこの黒字減らしに対して関心を寄せておったのであります。しかし、この黒字減らしが日本の国内政治それ自体に対して指を突っ込んできておる、この状況については、アメリカ側にも反省を求めなければならない。その上へもってまいりまして、アメリカの議会側と行政府を巧みに使い分けておるのがアメリカのこの構造協議に対する態度じゃございませんか。結果が出なければ、すなわち黒字が減らなければこんな構造協議なんというのは意味ないということを有力なるアメリカの議員諸君が発言しておる事実を見まして、これからは大変な時期が来るんじゃなかろうかと私は思います。しかしながら、それはあくまでも日本の主体性、言いかえますならば日本の主権というものを守り、——守るといいますか、これを毅然として打ち立てながらあくまでもこの構造協議をやっていただきたい、こう思うのであります。  そのためにも、アメリカ側が何を日本に要求しておるか、この全容を我々に明らかはしていただかなければ我々の判断基準というのは間違ってくる。だから私は、アメリカ側は何を日本に対して要求しておるのか、何を提案してきておるのか、この全貌を明らかにしろということを先般も要求したゆえんはそこにあるのであります。このままいけばアメリカの理不尽なる要求それ自体がクローズアップされてきます。現に、朝日ジャーナルが出しておりますアメリカの「政策実行計画提案」なるものを読みましたときに、私どもも唖然とするんです。しかも、大体これに沿うたアメリカの要求が協議の中においてなされておることは、もう外務大臣もお認めになっておるところであります。どうでございます。海部総理大臣、いかがでございます。
  200. 中山太郎

    中山国務大臣 私は、委員御指摘のアメリカ考え方というものは、一番原点に戻れば日米の貿易不均衡、対外不均衡が原点にあると思います。貿易は相互に拡大していくというのが友好国の間では好ましいことである。しかし、私が外務大臣として、このアメリカ日本に対する構造調整の申し入れをして協議をしようといった背景には、現在の日米間の貿易収支を見ますと、日本アメリカの赤字の千億ドルでなく、ちょうど半分の四百九十億ドル、日本の貿易でアメリカは赤字になっている。そういう中で、三十年前の日米間にはこういう問題はございませんでした。ちょうど一九六〇年には日本の対米輸出は十億ドルです、十億八千万ドルです。そしてアメリカからの輸入が十五億五千万ドルです。日本の対米収支は四億七千万ドルの赤字でございました。それがこの三十年の間に、日米関係が良好に堅持できたために、また自由貿易が認められてきたために、今日までは昨年度で、一九六〇年度に比べて八六・三倍の輸出の伸びがございました。また、輸入はそれほどいっておりません、三十一倍であります。こういうことで赤字が累増していく、こういう一つの原点が、アメリカ政府の中にも議会の中にもある。だからアメリカの方は、日本からの輸出をとめるということよりも、アメリカからの輸入品が日本の市場で出回って、こういうふうなバランスがとれた貿易関係というのは堅持してもらいたい、これが私はアメリカ政府及び議会の原点にあるのだろうと思います。  だから私どもは、相互に、アメリカの競争力の弱さ、あるいは労働力のいわゆる訓練の未熟さ、あるいは長期の研究投資に対する意欲の不足、貯蓄率が不足しているから金利が高くなる、こういったようなことを率直にアメリカ側に言っておりますが、アメリカ側も、日本の市場の閉鎖した問題点について厳しく申し入れをしてきたものというふうに理解をしておりまして、日米関係の今後ともの友好を委員も守っていかなければならない、またドルを維持していかなければならないという先ほどの御指摘は、全く私どもも一緒でございまして、新しい日米関係発展のために、ここで相互に意見を交換し、みずから反省すべきところは反省をし、消費者の利益が増大するためなら、あるいは国民生活がもっと豊かになるためなら、みずからの政府の判断によってこの国民のための努力をしていかなければならない、このように考えておるわけでございます。
  201. 井上普方

    ○井上(普)委員 今のお話は、原則は、私は先ほども申しましたように、日米関係は大事にしなければいかぬ。しかしながら、伝えられておるこのアメリカ日本に対する「政策実行計画提案」、これは決して日本側で出たのじゃありません。ワシントンで出たものです、これは。これを拝見して、あなたの方はおっしゃらないから一つ一つ聞けというので二、三お伺いしましたら、大体この話は協議の最中に出てきておる話です。これを読みましたならば、まことに理不尽と言うよりほか言葉のない要求が提案されておる。それを日本政府は今のところはシャットアウトしている。しかし、この間から申されておりますように、この構造協議が成立いたしましたとしても、効果があらわれるには時間がかかるのでしょう。時間がかかる。片方、議会側あるいは保守主義と言われる人たちは、結果を見てでなければ、すなわち黒字が減らなければ、日本の対米貿易の黒字が減らなければ、それはやったって意味ないと、こううそぶいておる、これが現実でしょう。  しかも、アメリカ側は日本に対しまして、先ほども大蔵大臣が申されましたように、私もそう思うし、GNP一〇%の公共投資をやれなんという、これこそ理不尽な要求です。こんなことをやれば日本は一発でインフレになってしまう。日本の財政計画それ自体は、営々として赤字をなくそうとしてきた計画は、根本から覆ってしまう。こういうような要求に対して毅然とした態度をとられるのは当然のことなんです。そういうことを明確に向こうさんにも話をしなければならぬと思いますし、また、この大変難しい外交部面に出てきておりますが、これを解決するには一体どうすればいいか、まさに大変な時期に来ておると思うのですが、大蔵大臣、あなたの先ほど来の主張は私はよくわかるし、当然なことだと思います。しかし、アメリカが聞かなければ、これはどうされたらいいと思いますか、お伺いいたしたい。
  202. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私、気が弱いので、そんな怖い顔して聞かぬでください。そして、アメリカ側が聞かなければと言われますけれども、私は、中間報告の中における大蔵省が共同議長として担当いたしました分野の中で、随分アメリカ側の主張をなるほどと我々も考え、今後に向けて前進の努力をしようと我々自身が思っておるテーマも多数あるわけであります。しかし、その公共投資の一点をもって、これが聞かれなければということでありますなら、これは私どもとしては了承しようのないことであります。幾ら気の弱い私でも、これは了解できません。  ただ、先ほどからの委員の御議論を伺いながら私ちょっと感じたのですけれども、同時に我々自身が自分の国の足元を見ましたときに、社会資本は随分このところ力を入れて整備努力はしてまいりました。しかし、なお欧米水準に比べればおくれておる部分があることは事実ですから、これは我々自身がやはりその水準を高めていく努力も国民生活の質の向上という視点からいってもやらなければなりません。そうした考え方から我々が立てる計画というものが、アメリカ側から見て日本は本気で国民生活の質の向上に努める気になったんだなという受けとめられ方をすることを私は願っております。願っております。しかし、それがアメリカ側が考えていたものと合わないからと言われましても、聞ける話と聞けない話があるということは先ほど来申し上げておるところでありまして、幾ら気の弱い私でも、この任にあります限り、譲れる話と譲れない話があるということであります。
  203. 井上普方

    ○井上(普)委員 これから、公共投資の一つをとりましてもなかなかアメリカ側は納得しないでございましょうし、厳しい事態があらわれてくることを私は憂えるものであります。  そこで、今もちょっと大蔵大臣おっしゃいましたが、快適な生活を送らすために公共投資をやらなければいかぬ、こう言っております。この点も、私も、下水道の普及率なんというのは低い、これは率直に認めなければならないところでありますが、しかし、都市計画区域を、市街化区域の線引きを見直せということを向こうさんは言ってきておるし、これに対して中間報告ではどういうように考えられておるのですか。これは見直すことを約束しておるのですか。建設省、だれかわかるか。
  204. 真嶋一男

    ○真嶋政府委員 お答えをいたします。  市街化区域及び市街化調整区域の線引き制度は、効率的な公共投資及び計画的な市街地の形成を図るための都市計画におきまする基本的な制度でございまして、これにつきましては見直しは今までもやってまいりましたし、これからもやってまいりますが、廃止というようなことは考えておりません。見直しをやっていくということでございます。
  205. 井上普方

    ○井上(普)委員 線引きの見直しということは、これはもう約束している。しかし、アメリカ側はもう少しきつい要求を出しておるはずであります。時間がございませんので、この点、アメリカの提案は省きますけれども、要求をしてきておるはずです。  そこで、この都市計画法をつくったときに、見直しは五年ごとにやるということを決めておるのでありますが、しかし都市施設が、すなわち一例を申しますと、下水道工事というものが伸びないために、まだまだ既成の、今の都市計画区域の中における下水道の普及率というのは低いのであります。建設省はあの当時、大体十五年ないし二十年でこれは全部やります、こういうことで、一〇〇%にしますという約束だったのだけれども、これはできていない。しかも今度は線引きで見直しを、これを広げる、都市区域を広げるということになったならば、またまた都市施設というものがふえてくるというようなイタチごっこになる可能性がある。大変な問題を、ここに線引きの見直しということが書いてありますが、これはやはり今までの方針どおり、五年間で一回の見直しをやるということで、あえて大きく見直しをするつもりはないのですか、どうですか。あれはたしか何%かというパーセンテージまで入れた数字であったと思いますが、いかがでございます。
  206. 真嶋一男

    ○真嶋政府委員 お答えをいたします。  基本的には、これまでどおり五年に一度というペースでやりたいと思っておりますが、制度の変更等がこれからございまして、今国会に御提案申し上げておる法律などの審議状況によっては、適時適切に行うことも考えていきたいと思っております。
  207. 井上普方

    ○井上(普)委員 どっちでもとれるような答弁してここをごまかそうとしたってだめですよ、それは。今までどおりの考え方でいくというのであれば、まだまだこれは大きな問題が出てくると私は思いますので、あえて伺っているのだ。  いずれにいたしましても、時間が参りましたので、この程度にさせていただきますが、まだまだ建設国債の問題や、あるいはまた特別資金の配分等々、あるいは公的資本形成等につきましてお伺いいたしたかったのでございますが、時間の関係でこれでやめますが、どうか日本の主体性というものはあくまでも貫いていただきたい。そして、その中において、ひとつアメリカの理不尽なる要求に対しては断々固としてこれに対処していただきたいことを最後に申し上げまして、質問を終わります。
  208. 越智伊平

    越智委員長 これにて松浦君、井上君の質疑は終了いたしました。  次に、冬柴鐵三君。
  209. 冬柴鐵三

    冬柴委員 公明党の冬柴鐵三でございます。  「綸言汗の如し」。古い言葉で、しかもこの民主主義時代にこんな綸言というような、君主の言葉というような言葉の引用は妥当じゃないかもわかりませんけれども、この民主主義世界で、総理大臣がこの予算委員会で発言をされた言葉というのは大変に重いものである、あらゆる行政機関を拘束するほどの効力がある、このように私は思いながら、あそこの席で聞かせていただいていたわけでございます。  この平成三年度から始まりますいわゆる防衛整備計画につきまして、どのようなことを配慮すべきがいいか、このよるな点につきまして、総理は、この四月九日、予算委員会で我が党の市川書記長に対して、同じ言葉で四回にわたって発言をされた内容がありました。ところが、その後、同僚の委員の発言を聞いていますと、ちょっとニュアンスが違うのかな、総理のお言葉、私どもは汗のごとしで、口から出たらもう絶対取り消すことはないのだという信用をして私は伺っていたわけでありますけれども、どうもニュアンスが変わってきたのではないか、このように私は感じながら聞いていましたところ、総理もお読みだと思いますけれども、日刊新聞も各紙非常に総理が前言を修正したような、そのようなことを記事に書いていられるのを見まして、これは大変なことだ、このように考えましたので、冒頭その点を確かめたいわけでありますが、総理は、平成三年度以降の防衛整備につきまして、このように述べられている言葉は現在も一切変えられないかどうかということを確認したいわけでございます。  総理の言葉でございますが、「六十三年十二月の安全保障会議における討議を踏まえ、その具体的内容について、大綱の取り扱いを含め、国際情勢及び財政経済事情等を勘案しつつ、安全保障会議を中心とする適切な文民統制のもとに逐次検討を重ねてまいります。」こんな言葉を、この全文ではないにしても、少なくとも「大綱の取り扱いを含め、」という部分は前後四回にわたって、四月九日、総理は述べられました。現在もこれにはいささかの相違もないというふうに伺ってよろしゅうございますか。
  210. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私は、おっしゃるとおりのことを言いましたし、言い続けてきましたし、それを訂正したことは一度もございません。ただ、私が同じことを申しましても、翌日の新聞によっては、下方修正したとか、あるいは現状維持とか、堅持とか、それぞれ各紙の取り扱いによっていろいろニュアンスの違った報道がなされたことも私は承知しておりますけれども、私は、今委員がおっしゃったとおりに、これはここで発言をしておるわけでありますから、それを変えたり、取り消したりしたことはございません。
  211. 冬柴鐵三

    冬柴委員 今総理は、もう一切前言を修正したり、訂正したり、ニュアンスが変わったり、そういうことは一切ないんだという力強い言葉を承りました。  そこで、次に防衛庁長官に、質問通告していない事項ですけれども、長官は、まだ議事録ができていないようですけれども、昨日、同僚議員の質疑に答えられまして、いわゆる次期防について、艦艇や航空機の取得については三ないし五年を必要とし、施設建設も数年要する。単年度のものでなく一定期間を設け、整備の総額を明示することが合理的と考えている。それからまた、次期防では量的な面より質的向上を図り、特に後方整備に重点を置きたい。このように述べられたと私は聞いていたのです。それは間違いないと思うのですが、その点に関しまして防衛計画の大綱、五十一年の十月二十九日に閣議決定をした防衛計画の大綱の中に、この大綱はいわゆる「四次防までの防衛整備は、三年なり五年を対象とする「防衛整備計画」を決定し、これに基づき年々進められてきた。」これは書いてあることですよ。「このような計画方式はいわば「五か年固定方式」とでもいうべきものであろうが、防衛力の量的な増強過程にあっては、それなりに適切な方式であったといえよう。 これに対して、基盤的防衛力の整備は「五か年固定方式」をとらずに、年々必要な決定を行ういわば「単年度方式」を主体として行うこととなった。」このように書かれておるのです。  そして、「その理由の第一は、基盤的防衛力の観点に立って防衛力の現状を見ると、規模的には、すでに目標とするところとほぼ同水準にあると判断されるため、目標に至る過程を示す意義ないし必要性が乏しくなったことである。」これが第一点。  「第二の理由は、防衛力が規模的に概成すれば、じ後の」、これは「概成すれば」と書いてある。これは、ちょっと私はこういう言葉は知りませんけれども、でき上がればという意味なんでしょうか。「じ後の整備防衛力の量的増強よりも、装備の更新近代化等質的な面における充実、向上を図ることが主体となるが、質的な充実、向上は、そのときどきにおける諸外国の技術的水準の動向等情況の変化に柔軟に対応しつつ実施すべきものであることである。」これが単年度方式の理由の第二です。  「更に第三に、転換期にあり流動的な要因の多いわが国経済財政事情からしても、従来のような「五か年固定方式」の整備計画を決定し、あらかじめ防衛費の大わくを決めることは適当でなく、年々の経済財政事情等を勘案しつつ、弾力的に対処しうる方が適当であると考えられることである。」ここで「転換期にあり流動的な要因の多いわが国経済財政事情からしても」というところを「激動する国際状況からしても」と読みかえてもおかしくない表現だと思うのです。  この三つの理由を挙げまして、この防衛計画の大綱では単年度方式を採用したわけです。採用した理由をこういうふうに三つの理由を挙げているわけです。  しかも、念を入れて、「このような理由から、今後の防衛整備は、原則として「単年度方式」により行われることとなった。ここで「原則として」とあるのは、ある特定の整備事項、例えば新戦闘機(F—X)や次期対港機(PX—L)等の導入について、特にその必要が認められれば、当該事項に限って一定期間にわたる計画を策定することまでも排斥する趣旨ではないからである。」こんなに詳しく、単年度方式を採用する方が実情に合っているし、すぐれているんだ。これは閣議決定した文書ですよ。  それに対して長官が昨日同僚議員に答えられたところは、艦艇や航空機が取得に時間がかかる、だから三年ないし五年がいいんだというような発言は、この閣議決定から比べますと非常に根拠が薄弱なように思われるわけです。どうですか。その点についてお答えをいただきたいと思います。
  212. 日吉章

    ○日吉政府委員 お答え申し上げます。  防衛計画の大綱ができましたのは昭和五十一年でございますが、それまでの間は、第一次防から第四次防までの三年ないし五年の年次計画をつくっておりました。それにつきましては、二つの反省あるいは情勢の変化がありまして防衛計画の大綱ができたわけでございます。  その二つのうちの一つは、第一次防から第四次防、主としてその中でも二次防から四次防でございますが、その計画の防衛整備目標は、通常兵器によります局地戦以下の侵略事態に最も有効に対処し得るような防衛力を整備しようという目標を掲げておったわけでございます。これは言うなれば、局地戦に対しましては、すべて独力でもって完全に対処し得るような防衛力を整備しなければいけないということで二次防から四次防まで整備をしてきたわけでございますけれども、その整備目標になかなか到達し得るめどが立ちがたいというような状況がございまして、いろいろ国会でも、また世論の中からも、エンドレスに防衛整備の水準といいますか、目標が高いものになっていくのではないだろうかというような懸念あるいは不安の御意見がございましたので、その点につきまして我が国の国情あるいは国際情勢等に合致した目標を設定する必要があるということで、大綱では限定的・小規模な侵略までに原則独力で対処するという目標を掲げたわけでございまして、そういう意味で、この究極の到達可能な目標を掲げたという意味で、この年次計画的なようなものをつくる必要性がある程度薄らいだのではないかというような判断が一つございました。  それともう一つは、ちょうど四十八年の秋であったかと思いますが、中東戦争を契機としましてオイルショックが起こりまして、大変な経済混乱が起こりました。
  213. 越智伊平

    越智委員長 簡明に願います。
  214. 冬柴鐵三

    冬柴委員 私が聞いたことだけでいいですから。三年か五年ということを言われているけれども、大綱ではそう言っていないのじゃないか、単年度がすぐれていると言っている。それだけに答えてくれればいいです。
  215. 日吉章

    ○日吉政府委員 確かにそういうふうな判断であったわけでございますが、五十二年から五十四年までは、したがいまして、中期的な計画なくして毎年度の予算を策定したわけでございますが、やはり昨日大臣からも御答弁申し上げましたような事情がございまして、五十五年度から六十年までの予算は防衛庁限りで中期業務見積もりというものを策定いたしまして、それを前提といたしまして予算要求をし、政府で御査定をいただき、政府原案ができるというような経緯がございましたので、それによりまして、やはりその根底にあります中期的な見方も、政府レベルでもって決定した方がシビリアンコントロールの観点からよろしいのではないかというような御議論もありまして、そういう反省に立って中期計画を立てた方がより望ましいのではないかということで中期計画を策定したわけでございます。
  216. 冬柴鐵三

    冬柴委員 これはもう余り、時間を六十一分しかいただいておりませんので、答弁は私の尋ねたこと、そのことについて的確に答えていただくように委員長からよろしくお願いしたいと思います。  さて、このヨーロッパを中心とするニューデタントの大きなうねりというのは、当然に極東と呼ばれる我が国周辺の太平洋北西部にも及びつつある、そしてそれはもちろん、そこに時差とかあるいは地域偏差というものはあるとしても、既に決定的に及びつつある、私はそのように認識をしているのでありますけれども、これも簡単で結構ですが、外務大臣、ひとつ御答弁を。
  217. 中山太郎

    中山国務大臣 委員御指摘のように、ヨーロッパにおける変革の一つ流れアジア地域に起こりつつあるということは事実でございまして、最もアジアで古い社会主義国であるモンゴルがいわゆるこの考え方を転換いたしました。これは極めて意義のあることであろうと思っております。
  218. 冬柴鐵三

    冬柴委員 その認識について防衛庁長官にもお願いをします。
  219. 石川要三

    ○石川国務大臣 再三本委員会におきましても私もその点についてはお答えを申し上げてまいったわけでありますが、確かに極東とアジアを見ますると、やはり委員がおっしゃったような大きな変化の波は起こりつつあるということは、これはわかるわけでありますが、しかし、片や現実のいわゆる軍事力の存在あるいはまたさらに不安要素、こういうようなことから見ると、ヨーロッパとはかなりの地政学的に違いがある、こういう認識を持っているわけでございます。
  220. 冬柴鐵三

    冬柴委員 この平成元年版の防衛白書についてこれから順次伺っていきたい、このように思うわけでありますけれども、ここでは、私が今申し述べたようなグローバルに現に展開されつつあるニューデタントというものの影響を極東地域におきましては全く認めない、このような態度がとられているように思われてならないわけであります。例えば「極東ソ連軍の動向は、わが国に対する潜在的脅威であるのみならず、この地域の軍事情勢を厳しくしている要因」である、このように述べているような部分は、その総括的な認識を示しているように思われるわけでございます。これは私の見るところとは相当開きがあるな、このように感じます。  そこで防衛庁に伺いますが、平成元年版の「日本防衛」、すなわち防衛白書の最終原稿の締め切り日はいつであったのか、そこで示されている認識というのはその締め切り日と一致していると見ていいかどうか、その点についてまずお伺いをしていきたいと思います。
  221. 内田勝久

    ○内田政府委員 お答え申し上げます。  平成元年度の防衛白書の原稿の締め切りでございますが、この防衛白書は平成元年六月末までの事項を対象に記述したものでございます。
  222. 冬柴鐵三

    冬柴委員 さて、脅威とは我が国に対するある特定国の侵略の意図と能力を言うと私は定義することができると思うのでありますが、脅威の一要素である能力、これは総合的な軍事力の蓄積であると説明できると思います。  元年版の白書では、極東ソ連の「軍事力蓄積には膨大なものがある。」このように書かれておりますし、また「海・空戦力の顕著な増強を行うなど、一貫して質量両面にわたり軍事力を増強してきた。」等の記載があります。しかしながら、私は白書を精査いたしましたけれども、白書に示された数字の上でソ連極東海軍が量的に増強されているという記載を読み取ることが非常に困難で、私は読み取ることができないように思われるわけでありますけれども、その点について伺いたいと思います。特に、従来の防衛白書に比べまして元年版の防衛白書は数字があやふやになっています。  まず、海上戦力について伺います。  平成元年時点、先ほど六月末と言われましたけれども、極東に配備されたソ連太平洋艦隊の総隻数と総トン数は何隻、何トンなのですか、明確にお答えをいただきたいと思います。
  223. 内田勝久

    ○内田政府委員 ソ連太平洋艦隊でございますが、極東におりますのは艦艇数約八百四十隻を擁しております。それから総トン数でございますが、約百九十万トン、私どもそのように判断しております。
  224. 冬柴鐵三

    冬柴委員 今言われた数字は何ページに書かれていますか。
  225. 内田勝久

    ○内田政府委員 平成元年の「日本防衛」、いわゆる防衛白書の四十八ページの脚注に記載されております。
  226. 冬柴鐵三

    冬柴委員 なぜ脚注に落としたのですか。
  227. 内田勝久

    ○内田政府委員 お答え申し上げます。  防衛白書の第二節「極東ソ連軍の軍事態勢と動向」その一「全般的な軍事態勢」というくだりで極東ソ連軍について解説いたしておりますが、その中でソ連の太平洋艦隊に言及する部分で、この八百四十隻、百九十万トンという数字をそこで解説していくことが適当であると思い、そこの脚注に記した次第でございまして、特に他意はございません。
  228. 冬柴鐵三

    冬柴委員 六十三年版の白書四十ページでは、ソ連極東海上兵力は、今日では、「ソ連の全艦艇約三千八十隻約七百六十三万トンのうち、主要水上艦艇約百隻、潜水艦約百四十隻(うち原子力潜水艦約七十五隻)を含む約八百四十五隻約百九十万トンを擁するソ連海軍最大の太平洋艦隊が展開している。」こういうふうに六十三年は書かれています。ところが、平成元年版の白書四十八ページでは、「海上戦力は、今日では、ソ連の全主要水上艦艇約二百八十五隻と全潜水艦約三百六十隻約二百九十万トンのうち、主要水上艦艇約百隻、潜水艦約百四十隻の約百万トンを擁するソ連最大の太平洋艦隊が展開している。」こういうふうに書きかえられているのです。  ちょっと一回読んだのではわかりませんけれども、どこが違うかといいますと、六十三年版では、ソ連全般艇の隻数、トン数を示しています。三千八十隻、約七百六十三万トン、こういうふうにはっきり書いているわけです。ところが、平成元年版では、ソ連の全艦艇という表示にかえまして全主要水上艦艇という従来使ってなかった、ソ連全体については使ってなかった概念を入れまして三百六十隻、いいですか、ソ連全体の主要艦艇が三百六十隻しかない。今までは三千八十隻です。三千八十隻が、その主要水上艦艇という言葉を入れて三百六十隻に減ってしまいました。そして、総トン数が七百六十三万トンと表示されていたものがわずか二百九十万トンと表示されるに至っています。いわゆる前年比で二千七百二十隻、四百七十三万トンのソ連艦艇が何か不分明なものになってしまっているのです。防衛庁は、この二千七百二十隻、四百七十三万トンのソ連の艦艇というものをどう評価しておられるのか、なぜこういう記載方法を変更されたのか、それをお答えいただきたいと思います。
  229. 内田勝久

    ○内田政府委員 委員御指摘のとおり、昭和六十三年の日本防衛白書及び平成元年の日本防衛白書の間には記述の仕方の違いがございます。ただそれは、それぞれの年においてその特徴となっているところに着目いたしまして、焦点を合わせて記述するという趣旨からこのような着眼点の違いということでございまして、それによって過去との比較ができなくならないようにするためもございまして、一つには脚注でソ連太平洋艦隊全艦艇の隻数八百四十隻あるいは百九十万トンという数字を掲げさせていただいた次第でございます。  ただ、ここで大事なことは、極東ソ連軍の海上戦力を把握するに当たりましては、基本的に主要水上艦艇及び潜水艦というものが一番大事でございますので、その点について特にここで書き記したというものでございます。
  230. 冬柴鐵三

    冬柴委員 答えていないわけです。それ以外のものはどう評価しているのですか。消してしまったものはどう評価しているのですか。その膨大なトン数と隻数をどう評価するのですか。
  231. 内田勝久

    ○内田政府委員 主要水上艦艇及び潜水艦以外にも各種のより小さな小型の艦艇というものがございますが、これは、そのまま存在している。特に記載してないものについて私ここで具体的な数字をただいま持ち合わせておりませんけれども、それが全部消えてしまったということをここで記載しているつもりはございません。
  232. 冬柴鐵三

    冬柴委員 ちょっと時間がないからそちらで割り算してほしいのですけれども、四百七十三万トンで二千七百二十隻といえば平均一隻何トンに当たるのか、それを、算術ですから計算して、後で答弁のときに教えていただきたいと思います。  第二は、極東配備艦艇について、六十三年版白書では、本文の中に八百四十五隻、百九十万トンと記載していたわけですね。膨大な軍事力の蓄積ですよ。極東に八百四十五隻、百九十万トンのソ連の極東海軍があるというわけですから、これは大変な蓄積だと思います。これを元年版では一挙に主要水上艦艇百隻、潜水艦百四十隻の百万トン、こう書きかえられました、本文で。先ほど読んだとおりです。そうすると、前年に比べますと、今まで潜在的脅威だというふうに言われていた極東におけるソ連の海上戦力が、何と六百五隻、九十万トン一挙に白書の上から減ってしまうわけですよ。防衛庁はこれらの艦艇を、先ほど聞いたのと同じことですが、どう評価されてこのような記載の変更をなされたのか。六百五隻で九十万トンといえば、それは余り戦力にならない、そういう戦力だというふうに見ておられるのか、それはどういうことなんですか。
  233. 内田勝久

    ○内田政府委員 私どもがただいま把握しておりますソ連太平洋艦隊の兵力でございますが、艦艇総数が八百四十隻、百九十万トンでございまして、そのうち主要水上艦艇が四百四十隻、それから潜水艦が百四十隻でございます。そのほかのはどこに行ったのかという御指摘でございますが、補助艦艇二日六十隻が残るわけでございますが、これは、洋上補給艦でありますとか工作艦でありますとかあるいはサルベージ、救難艦等々の艦船が現に存在をしておりまして、それは、そういう艦としての役割を果たしている、極東ソ連軍の太平洋艦隊の中でそういう役割を果たしている、このように理解をしております。
  234. 冬柴鐵三

    冬柴委員 念のため、昭和六十二年版の白書の記載は昭和六十三年の白書の記載と全く同様で、数字がちょっと違うだけです。ソ連の全艦艇二千九百八十隻、七百十八万トンのうち主要水上艦艇九十五隻、潜水艦百四十隻、うち原子力潜水艦七十五隻を含む八百四十隻、百八十五万トンが極東に配備されている、こういうふうに同じ文章で、これは私過去五年間さかのぼって読み比べましたが、平成元年版だけが変わっているわけでありまして、私は非常に疑念を感ずるわけであります。  ついでに伺っておきますけれども、六十二年から六十三年の間にソ連の極東海上兵力は五隻で五万トン増加したことがわかります。これは同じ書式を使って連続して書けばそういうふうに比較することができるわけであります。  そこで伺いますが、主要水上戦力でありますけれども、五隻で五万トンも増加したということが読み取れるわけでありますが、一体これは六十三年から平成元年の間にはソ連の極東海上兵力は何隻で何トンふえたと言われるのか。いわゆる増強したというふうに言われるわけですから、何隻で何トンふえたのか。私はむしろこの白書の上からは減少しているとしか読めないわけでありますが、その点についてお答えをいただきたい、このように思います。
  235. 内田勝久

    ○内田政府委員 お答え申し上げます。  極東ソ連軍太平洋艦隊の総トン数につきましては、昭和六十三年防衛白書において百九十万トン、平成元年の防衛白書において同じく百九十万トン。それから総隻数につきましては、昭和六十三年防衛白書において八百四十五隻に対しまして平成元年の総隻数八百四十隻、五隻減少しているということでございます。
  236. 冬柴鐵三

    冬柴委員 量も一方的にふやしているというふうに総論で書いてあることを先ほど申し上げたとおりですが、今の答弁では五隻減っているのですね。それじゃ念のために伺っておきますけれども、六十二年から六十三年の間に極東ソ連海軍が増強したと言われる五隻、五万トンの艦艇についての具体的な艦種と艦名、それを教えていただきたいと思います。     〔委員長退席、佐藤(信)委員長代理着席〕
  237. 内田勝久

    ○内田政府委員 ただいまの五隻の増加についての艦種が何かという御質問でございますが、この点につきましては、我々内部での調査の結果、総体としてただいまのような隻数の判断をしているわけでございまして、その内訳につきましては答弁を差し控えさせていただきたいと思う次第でございます。
  238. 冬柴鐵三

    冬柴委員 答弁を差し控えるのじゃなしに、わからないのじゃないですか。わかっていないのじゃないですか。非常に大事なことです。  じゃ、時間がありますので次に進みますが、ソ連の極東空軍について伺いますが、平成元年時点において、作戦機の内訳として爆撃機と戦闘機と及び哨戒機がそれぞれ何機なのか、それをお示しいただきたいと思います。
  239. 内田勝久

    ○内田政府委員 極東配備のソ連作戦機の現状でございますが、合計私ども二千四百三十機と把握しておりまして、うち爆撃機四百六十機、戦闘機千七百七十機、哨戒機二百機でございます。
  240. 冬柴鐵三

    冬柴委員 それほどこに書いてありますか。白書の何ページに書いてありますか。
  241. 内田勝久

    ○内田政府委員 平成元年の防衛白書にはこの内訳については記載してございませんが、ただいま委員からのお尋ねでございますので、それに対して答弁申し上げたものでございます。
  242. 冬柴鐵三

    冬柴委員 これは大事なことです。私は読み比べますと、煩雑ですから、六十三年までは同じ書式で書かれておりました。このように書かれています。六十三年版四十二ページでは、「航空兵力は、ソ連の全作戦機約八千八百九十機のうち、その約四分の一に当たる約二千四百三十機が極東に配備されており、その内訳は、爆撃機約四百七十機、戦闘機約一千七百六十機、哨戒機約二百機である。」このように書かれていました。これに対して平成元年版ではわずか二行、「航空戦力は、着実に増強されており、現在では、ソ連の全作戦機のうち約四分の一に当たる約二千四百三十機が配備されている。」これだけです。  ここで欠落したのは、ソ連の全作戦機数が欠落しました。前年版で八千八百九十機と書かれていたところが、この部分から欠落しています。いわゆる分母がなくなっちゃったわけです。それから、極東配備が二千四百三十機であることは書かれていますけれども、その内訳で、爆撃機と戦闘機と哨戒機の内訳が前年まで書かれていたのが、ここで欠落しているということがわかると思います。しかも元年版白書では、戦闘機の約七割が第三世代航空機、約一割が第四世代航空機で占められ、こういう表現も書かれているのですけれども、分母がないのですよ。何機のうちの七割が第三世代機なのか、何機のうちの一割が第四世代機なのかわからずに、着実に増強されている、これは言えますか、その点について、もう簡単で結構ですから。
  243. 内田勝久

    ○内田政府委員 お答え申し上げます。  委員御指摘の数字につきましては、私どもが把握しているものをお示しになったのだと思いますが、具体的な細かい数字についてはなかなか申し上げられないところがございまして残念でございますが、基本的にはソ連の作戦機の戦力、ソ連空軍の戦力というものは、委員が御指摘のとおり、第三世代のものあるいは第四世代のものの増加という形を通じまして戦力的に強化されているというのが私どもの総合的な評価の一つでございます。
  244. 冬柴鐵三

    冬柴委員 済みませんが、うちの資料配ってくれますか。よろしくお願いします。
  245. 佐藤信二

    佐藤(信)委員長代理 どうぞ。
  246. 冬柴鐵三

    冬柴委員 この一覧表は、昭和六十年から平成元年版までの防衛白書五冊の中から、それぞれ上にページが示されておりますけれども、ソ連全体の軍事力と極東配備の軍事力の態勢という記載部分を抜き出しまして私が一覧表にまとめたものでございます。この表を一べつすればわかるとおり、平成元年版の白書の記載が前年までの記載と比較したときに全く異常であるということをおわかりいただけると思います。  例えば真ん中の欄、航空欄を見ていただきますと、六十年は真ん中に、全体は八千八百二十となっています。そして六十一年は九千六十、六十二年は八千八百四十、そして六十三年は八千八百九十でありますが、元年になりますと、極東すなわち二千四百三十機の四倍、数字がわからないわけであります、ここでは。そして爆撃機の内訳であります。極東配備には総数と爆撃機、戦闘機、哨戒機について逐年その内訳が表示されてありました。六十年版で見ますと、総数二千二百機に対し、爆撃機は四百四十機、戦闘機は千六百機、哨戒機は百六十機と書かれていたわけでありますが、元年版では、先ほど読みましたように総数二千四百三十が示されるのみでありまして、爆撃機、戦闘機、哨戒機の明細が欠落することになっております。明細は書かれていない。書きませんでしたという答弁があったとおりであります。しかしながら、脚注に書きましたように、Bすなわち戦闘機の七〇%は第三世代機で、一〇%は第四世代機である、このような、分母を示さずにパーセントだけが示されている、そして近代化されているんだ、そして増強されているんだというような記載になっております。  海上戦力につきましても、一番下の欄でありますけれども、六十年には全体が二千八百八十隻で六百四十六万トンと記載され、逐年そのようにきちっと書かれていまして、六十三年には、実に三千八十隻で七百六十三万トンものソ連艦隊というのは戦力なんだという記載がされていました。ところが、元年になりますと、その総数と総トン数の表示が欠落をいたしまして、上にちょっと書きましたけれども、主要水上艦艇だけが記載されることになりました。ソ連全体で二百八十五隻だ、そして潜水艦が三百六十隻ある、これだけの記載になってしまいました。極東配備につきましては、今まで、例えば前年度でも示されていますように、八百四十五隻で百九十万トンという膨大な数字が示されていたわけでありますけれども、元年版ではこれが一切欠落してしまいました。書かれていません。それにかえまして、従来は、主要艦艇、主要水上艦が百隻で、潜水艦が百四十隻、これに対するトン数は示されていませんでしたが、今年初めてそれが百万トンであるということが示されるに至りました。  今まで言われていたソ連の海軍力、空軍力と、この元年版で示されている海軍力、空軍力には膨大な懸隔がある、このように私は言わざるを得ないと思うわけでありますが、防衛庁長官の御感想といいますか、なぜこうされたのか御答弁をいただきたいと思います。
  247. 内田勝久

    ○内田政府委員 お答え申し上げます。  防衛白書は、毎年、その前年一年間に起こった事象を中心に取りまとめておりまして、長い間で見れば若干の変化というものは極東ソ連軍においても起こり得るわけでございまして、ここに記載されております委員おまとめの数字においても若干の差が出てきておることは、委員御自身が御理解になっておられることだと思いますのですが、それが平成元年度に至って大きな変革をもたらしているというようには私どもは考えておりません。  例えば、極東での航空戦力でございますが、ソ連の作戦機の全体数は極東の四倍とお書きになっておりますけれども、これはただいまページ数を忘れましたけれども、平成元年度の防衛白書におきまして、九千三百八十機という数字を記載してございます。私ども、六十三年に比べますと、八千八百九十機から若干の増加になっているというようには把握している次第でございます。
  248. 冬柴鐵三

    冬柴委員 総理、この白書は閣議決定をして、もちろん国民だけではなく外国にも表示される重要な文献でありますし、これが毎年毎年公刊される文献だけに、そこにおのずから継続性の原則というものが働くと思うわけですね。あらゆる統計数字を前年度とずっと比較して、私が一覧表にまとめたように、白書を逐年追っていけばどういう数字が動いたかということがとれるように書かなきゃならないという、そういうふうに私は思うわけであります。そういうものを特段の事由を示すことなく変更してしまうということは許されない、私はそう思うわけであります。  そこでお願いしたいのですが、この白書、元年版の白書を今から補訂をされる、ずっと逐年刊行してきた白書と比較できるように、同じ書式で書き改めるという、そういうことをしていただけるかどうかお伺いをしたい、このように思います。
  249. 内田勝久

    ○内田政府委員 ただいま申し上げましたとおり、白書といいますのは過去一年間の出来事を中心に取りまとめたものでございまして、白書の記述内容につきましては、毎年、その前年に起こった、前年に変化したところが反映されてくるものであると考えております。  平成元年の白書の中身と、その後こういうふうに変わっているではないかという御指摘が委員からの御指摘であるといたしましたら、それが変わっている変わっていないの判断は別といたしまして、いずれにしても一つのその結論というものは次回の白書で取りまとめられるべき、そういう事柄である、私どもはこのように考えている次第でございます。
  250. 冬柴鐵三

    冬柴委員 おかしいと思うのですね。総隻数も戦闘機の数もわかっていながら、前年までずっと書いていた数字をここで欠落させるというのは、そこに何があったんだろう。  そこで、私は考えました。今お手元に配付しました資料でございますけれども、これは「ソ連・要人が明らかにした極東ソ連軍の軍事態勢」とする一覧表であります。これはここに書かれているように、ヤゾフ国防相、ソ連のですね、それからアフロメーエフ前ソ連参謀総長、現在ゴルバチョフ大統領の軍事顧問をしていられるというふうに聞いておりますけれども、その人たちがそれぞれ公式に極東ソ連軍の軍事態勢について述べたところを、新聞記事に従って私がまとめさしていただいたものでございます。これも継続性の原則によりまして、比較できるように、前の表と同じ書式によって私はつくってみました。  外務大臣に伺いますが、このような人々が極東の軍事力について、例えばヤゾフ国防相は、これはプラウダとのインタビューです。ところが、アフロメーエフさんは、八九年七月二十一日に米下院軍事委員会、アスピン委員長委員会で証言をしていられる内容なんですね。こういうことがあったかどうか御存じですか。
  251. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  ソ連の極東における軍事力につきましては、累次にわたり、私どもから公表するように要請しておりまして、一昨年の十二月にシェワルナゼ外務大臣訪日したときに、公表すると約束したわけでございますけれども、その後も公表がございませんでした。  そういう中で、委員御指摘のように、昨年の五月の二十八日付のプラウダで、ヤゾフ国防相が極東ソ連軍のデータ、それからアフロメーエフ前ソ連軍の参謀総長が昨年の七月の二十一日に米国の下院軍事委員会の公聴会におきましてソ連の国防軍事データを公表した中で、極東及び太平洋の軍事データに言及したことは承知しております。そのような事実がございます。
  252. 冬柴鐵三

    冬柴委員 この白書というのは毎年八月に出ますね。元年版は九月に出ました。これはただ五年比較しただけですから。前四年間は毎年八月。平成元年は九月に出ました。先ほどこの元年版の原稿締め切りはいつかとお尋ねしましたら六月末だ、こうおっしゃいました。その前後にこのような証言がなされていることに私は興味を持ったわけであります。  ここで一覧表に書かれているとおりでありますけれども、そのソ連の要人が証言したところによりますと、陸上の兵員数につきましては三十二万六千人だというふうに言っています。ヤゾフさんは六千二百人ということで二百人だけ多いですけれども、まあほぼそういうところで、白書も四十三個師団、三十九万人と言っていられるわけですから、まあアバウト、それは三十九万と三十二万、違うじゃないか、七万人も違うわけですから。しかし、それは僕はやむを得ないことだろうと思うわけでありますけれども、航空機の数であります。航空機が、白書では極東配備は二千四百三十機と書かれているわけでありますけれども、実にこのお二人は八百七十機しかないと言っているわけであります。これは重要でありまして、千五百六十機も少ないわけでありますから、これは確かめなければならないというふうに私は思います。それから海上戦力も、主要水上艦は空母二隻を含めて五十五隻だということをお二人はおっしゃっているわけですね。それをこの白書では、水上艦船が百隻で潜水艦百四十隻、二百四十隻だ。二百四十隻と五十五隻では四分の一ですから、これは無視するわけにいかないと思うわけであります。  まさに米下院の軍事委員会での証言の中でアフロメーエフさんは、「日米合同の軍事力は、ソ連の同地域の兵力に対して、兵員数が二倍、戦闘水上艦は四倍、戦闘航空機は二倍である。」こういうふうに言明したとも伝えられております。外務大臣防衛庁長官ソ連の相当高官ですけれども、このお二人が公の場で述べられたこと、この評価をどうされますか。
  253. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 私どもといたしましては、このような形で一部なりともソ連の軍の責任者が極東軍事力につきましてデータを公表したこと自体は評価しておるわけでございますが、その分類の仕方等におきましてどうもかなり恣意的なところがあるというふうに感じております。というのは、この説明におきまして、極東の軍事力を、艦船とか航空機も含めまして、陸上の国境防衛のためのものとそれから日米の両方の軍事力に向けられたものというふうに分けてこれを数えているわけでございます。ところが私どもは、例えば航空機等につきまして、これをそのように極東にあるものを二つに分けるというようなことは余りにも恣意的だというふうに感じておりますし、それから潜水艦につきましても、戦略的なミサイルの搭載艦を含んでいないということを言っておりますので、やはりそういうところは詳細にもう少しデータを公表してもらわなければソ連軍の全貌はつかめない、そういうふうに考えておりますので、データの公表そのものは評価するにしても、やはり一部であり、そして恣意的な評価になっているということが私どもの考えでございます。
  254. 冬柴鐵三

    冬柴委員 時間がだんだん迫ってきました。脅威のもう一つの要素であるいわゆる意図、軍事行動、これにつきましても、海幕の広報室から発表しているというふうに書かれているのですが、「ソ連艦船極東回航一覧」というようなもので、我が国の防衛庁がP3Cとかそういう、あるいは艦船においてソ連海軍の動向というものを確認、認知できた分を日にちと時間、そして艦名、そういうものを全部とったものを私、手に入れていますけれども、これによりますと、八七年は五十六件で百三十六隻、空母が、同じ空母ですけれども三回認められております。ところが八八年は五十二件で延べ九十六隻で、空母が一回しか認められておりません。八九年になりますと四十一件、延べ四十六隻で、空母はゼロでございます。ノボロシスクというキエフ級の空母、空母といいますけれども、これは艦載機が三十二機しか載らないものでありまして、トン数も三万七千百トンです。この空母の最後の姿を見たのは八八年四月四日でありまして、それ以来今日まで二年間この空母は姿を見せていないわけであります。このようにどんどん減っているわけであります。作戦の意図というものを軍事行動というふうに見るならば、ここでも大きな変化は起こっているということであります。  スクランブルの回数についてもお尋ねしたいのですけれども、過去三年間の回数だけで結構です、一言お答えいただきたいと思います。     〔佐藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕
  255. 日吉章

    ○日吉政府委員 お答え申し上げます。  航空自衛隊の緊急発進回数でございますが、昭和六十二年度八百四十八回、六十三年度八百七十九回、平成元年度は八百十二回であります。これらのほとんどの場合がソ連機に対するものと考えられます。
  256. 冬柴鐵三

    冬柴委員 これについてはまた吟味させていただきますけれども、私は、いずれにいたしましても、基盤的防衛整備という問題は脅威に対応するものではなく、平時に限定的・小規模な侵略に対して我が国が独力で対処するという、そういうことを前提にした防衛力の整備の基準でありますから、脅威対応ではないからソ連の戦力がどうかということは余り影響がないようでありますけれども、防衛白書あるいは防衛庁はどうも脅威がある、脅威があるということをいつも言われて、だから備えなければならないのだとおっしゃるから、私はこの白書で、これは防衛庁が出された公式文書ですから、白書からそういうことが認められるのかな。調べてみたところ私の目からは決してそうは見えない、むしろ減っている、こういうことであります。それを指摘したいわけであります。しかしながら、これでもソ連の高官が述べたのは、実にその四倍とか二倍とか、我が方が少ないと向こうは言っているわけでありますから、これはどうしても確かめなければならないと思います。  私はかねてから、予算委員会とかあるいは安全保障特別委員会で、日ソ間の信頼醸成措置の確立、これの必要性を再三にわたって述べてまいりました。ことしはシェワルナゼ外相訪日されるようでありますし、また中山外務大臣訪ソされるということ、そのような予定だということを聞いていますし、また来年はゴルバチョフ大統領来日されるということになります。その節、私はぜひこの信頼醸成措置確立、これをやはり一つ外交の柱にしていただきたいと思うわけであります。  この信頼醸成措置というのは軍備管理あるいは軍縮の基礎をなすものでありまして、私はとりあえず、我が党が招聘して来日されたヤコブレフというソ連共産党政治局員が、平成元年十一月二十四日発売のソ連政治週刊誌「新時代」のインタビューにおいて、極東でソ連軍が増強されているとする日本防衛白書を批判して、ソ連の軍事的脅威増大論は誤りである、このように言っておられます。そう言った上で、極東での両国の軍事力の実態把握のために両国による軍事オブザーバーや査察団の交換、さらには軍事データの交換を行ってもいいし、こうした交流をテレビを通じて両国の国民に公開してもいいじゃないかという提言をしていられるわけでありますけれども、私は全く同感でありまして、このような信頼醸成措置、まずは軍事データの交換あるいは人事の交流、さらに進めば演習の公開とか基地の相互視察、こういうふうに進めていかなければ、この極東アジアにおける軍備管理や軍縮というのはいつまでたっても進まないというふうに思うわけであります。  時間が参りましたので、外務大臣内閣総理大臣の、一言ずつで結構ですからその点についてのお言葉をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。よろしくお願いします。
  257. 中山太郎

    中山国務大臣 委員から大変これもよく研究をされた防衛白書の御批判をいただいておりますが、今、日ソ間で信頼醸成の環境をつくるべきだという御意見は私も原則賛成でございます。  しかし、現実には北方領土が不法に占拠され、しかもそこには、一万人と言われておりますけれども、軍隊が駐留している、そういうふうな、あるいは日本海における海軍戦力が増強されているというような環境の中で、私は、やはり日ソ双方が努力をしていくことが極めて大切である、こういうことでシェワルナゼ外相来日機会にまたいろいろと議論をすることも有益であろうというふうには考えております。
  258. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 いろいろな御意見を交えての御質問を私も聞いておりました。  結論を申し上げますと、やはりアジア太平洋地域にも私は平和と安定がきちっと醸成されるようにしていきたいという願いを持って対処しておるわけでありますから、対話協調考え方の中でどのようにしたら本当の信頼関係に裏づけされた安定と平和を構築することができるか、それを目指して今後も努力をしていきたいと考えます。
  259. 冬柴鐵三

    冬柴委員 どうもありがとうございました。
  260. 越智伊平

    越智委員長 これにて冬柴君の質疑は終了いたしました。  次に、正森成二君。
  261. 正森成二

    ○正森委員 私は、きょうは十二分という非常に短い時間ですが、外交防衛の問題についてきょうは短時間聞かしていただきたいと思います。  まず第一に、チェイニー米国防長官が「アジア太平洋地域の戦略的枠組み」というのを議会に報告されました。その日本関係分を見ますと、「日本における米戦略の根幹要素は次の五項目である。」これは訳でございますが、その中の二番目に、「領域防衛能力を向上させ、千カイリの海上交通路防衛能力を高めるよう促す。同時に不安定要因となる戦力投入能力のいかなる向上も思いとどまらせる。」こういうぐあいに言われております。英文では「ア・パワー・プロジェクション・キャパピリティー」、こうなっております。  防衛庁ないし外務省に伺いますが、この戦力投入能力というのは一体どういうように理解していますか。
  262. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 戦力投入能力とは、一般的に申し上げまして、危機に際しまして自国から遠く離れた遠隔地に迅速に軍事力を動員し展開する能力のことを指しまして、例えば爆撃機による爆撃能力、空母打撃力等を指すと理解しております。
  263. 正森成二

    ○正森委員 次に、四番目を見ますと、「最大限米国から調達させ、技術の還流を増やすことによって日米兵器体系の相互運用性維持の重要性を強調する。両国が補完的にならないような兵器体系の開発は控えさせる。」というようになっております。このようにアメリカの国防報告を見ますと、何々を控えさせるとか、何々をさせないというような、著しく他国に対してさせるとかさせないとかいう表現が強くなっております。  あるいはチェイニー米国防長官が「西側同盟諸国の共同防衛に対する貢献度について」という報告を出しておりますが、それを見ますと、「日本の千カイリ防衛能力は米軍部隊との相互運用性に大幅に依存する。地域の安定は、日本の陸、海、空自衛隊と米軍部隊との補完的な形での統合により強化される。」こうなっておりまして、その中では「インテグレート」「ウイズ・USフォーシズ」という言葉が使われております。これは結局、我が国を米軍の補完的な一附属物と考えているから、こういう表現が出るんじゃないんですか。
  264. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 全体といたしまして先生御指摘の点に関しまして、今回の「アジア太平洋地域の戦略的枠組み」全体を通してアメリカが強調しておりますのは、日米の安保体制というのはアメリカにとりましてアジア・太平洋におきます最も重要な安全保障の体制であるということでございまして、先生がおっしゃられたような意味日本に言及しているとは私どもは考えておりません。
  265. 正森成二

    ○正森委員 今事務当局が答弁になりましたが、防衛庁長官外務大臣はどのように考えておられますか。
  266. 石川要三

    ○石川国務大臣 委員がいろいろと報告書の内容の、特に表現等につきまして付言されましたけれども、それはいずれにしましても、私どもとしては今政府委員から言われたような、やはり今回のこの報告というものは、今後もアメリカがグローバルな役割というものはちゃんと果たしていく、そしてなおかつ私どもにコミットされましたそれを実現するために引き続いて前方展開戦略を維持する、こういうことが明確に約束されている、このように評価するわけであります。
  267. 正森成二

    ○正森委員 外務省に伺いますが、外務省が当予算委員会にこの予算委員会の審議のために提出した資料の中に入っておりますが、我が国が米軍のために負担している予算額あるいはそれに普通財産の借り上げ試算も入れたものが報告されております。それは平成二年度で総計幾らになるか、答えてください。
  268. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 お答えいたします。  平成二年度の政府原案に入っております在日米軍にかかわります日本側の経費負担の予算額は全体で四千百十五億円でございます。
  269. 正森成二

    ○正森委員 今の額の中には、厚木海軍飛行場に係る住宅防音経費が入っておりませんね。それを入れると四千四百五億円になるんじゃないんですか。
  270. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 従来、先生御指摘の厚木の関係を私どもは入れておりませんので、それを入れますと先生御指摘のような数字になります。
  271. 正森成二

    ○正森委員 そこで伺いますが、これは昨日ですか、同僚議員も指摘になりましたが、米海兵隊の司令官のスタックポールという人が重大な発言をいたしまして、これはワシントン・ポストの三月二十七日号に載っております。  これを見ると、これは総理にぜひ伺いたいと思うのですが、米軍は日本を再び軍国主義化するのを防ぐために少なくとも向こう十年間は駐留し続けなければならない、もし米軍が撤去すれば、日本は既に非常に強力になっている軍隊を一層増強するだろう、こう言いまして、我々は瓶の栓である、「ウイ・アー・ア・キャップ・イン・ザ・ボトル」という言葉を使っております。これは重大な発言ではないですか。  外務大臣も伺いたいと思いますが、日米安保条約の公式の文言によれば、我々は日米安保条約に断固反対でありますが、それでも安保条約によれば、米軍は日本の安全のために、防衛のために、あるいは極東の平和と安全に寄与するために日本の基地を使用することができる、こうなっているんじゃないですか。ところが、このスタックポールという人物は、そうじゃないと、日本の軍国主義化を防ぐために、日本の瓶の栓をしてそうならないようにするために我々は日本におるんだ、そういうことを言うているんですね。これは重大な、条約上から見ても看過することのできない発言だ。「イン・ラージ・パート」、こう言っているんですよ。その大部分は、「ッー・プリベント・ジャパン・フロム・リミリタライジング」、こういうように言うているんですね。そうすると、明らかにこれは、米軍としては日米安保条約に違反して、違った目的のために諸基地を使用しておる、少なくとも海兵隊についてはそうだということになるんじゃないんですか。
  272. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 最初にちょっと事実関係を御披露させていただきたいのですが、先生が御指摘のような報道が、三月二十七日のワシントン・ポスト紙には確かに報道がございますけれども、同じ二十七日に、ワシントンでの国防省の定例の記者会見におきまして国防省のスポークスマンが、今先生が引用されましたこのスタックポール司令官の発言はチェイニー国防長官または米国政府の見解を反映したものではないというふうに発言しております。その上で、チェイニー国防長官訪日の際の日本側との議論を披露した上で、結論といたしまして、アメリカにとりまして日本は緊密な同盟国であり、日米間には良好な協力関係があるという発言をしております。これを御披露さしていただきます。
  273. 正森成二

    ○正森委員 今の説明のようなことは、私も新聞を読んでおりますから知っております。しかし、あえて言いますが、我が国におる第三海兵の司令官がそういう発言を公然とやって、取り消ししたんですか。取り消しもせず辞任もしてないんじゃないですか。幾ら米政府が、あの人物の言うことは個人的な見解であって米政府は関知しないと言っても、我が国にいる最大の実力部隊の司令官が、日本の軍国主義化を防ぐためにおれはおるんだ、そのための瓶の栓だというように思っていることで、一国の独立国としての誇りを保つことができますか。少なくとも、本当に日本が独立国であるということを考えるなら、こういう司令官の更迭を要求するのが当然じゃないですか。それをやりましたか。やっていないんですか。——だめだ。何も北米局長の言うことじゃない。外務大臣総理の言うことじゃないか。
  274. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 恐縮ですけれども、繰り返しになりますけれども、国防省のスポークスマンが、先ほど申し上げましたように、アメリカ政府として、今回の司令官の発言に関しますワシントン・ポスト紙の報道を正式に否定しておりますので、先生がいろいろ御指摘でございますけれども、私どもとしては、国防省のスポークスマンのこの否定発言をアメリカ政府の正式な見解の表明と受けとめております。
  275. 正森成二

    ○正森委員 アメリカ政府の正式見解であるかどうかを聞いているんじゃないんです。こういうことを言われて、そういう司令官の更迭要求さえもできないようなことで主権のある国であると言うことができるかということを聞いているんです。それは北米局長などが答えることじゃなくて、外務大臣総理が答えることです。  そこで総理に、時間がもう参りましたので私は伺います。  日本が軍備をどんどん増強して軍国主義化する危険が絶対にないとは私は言いません。それはあるかもしれない。しかし、それを防ぐのは、外国軍隊に四千四百億円も金を払って、そして駐留しておる軍隊がその役目を果たすというようなことでは絶対ないはずです。それは、シビリアンコントロールによって、行政府を監督する我々国会によって、その根本は主権を有する日本の有権者によってそういう軍国主義化しないように監視するというのが当然のことじゃないですか。それを、そんな一海兵隊の司令官がこういう傲慢不遜なことを言う、それをほっておいて独立国としての誇りがありますか。総理、お答えください。
  276. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 我が国が軍事大国にならないということは、これは皆きちっと心の中で決めておることであり、政策的にも表明しておることであり、車守防衛、憲法のもとでシビリアンコントロールに従っていろいろやっていくという大方針は決めておるわけでありますから、しかもアメリカのことについては今北米局長が事実をここで御報告いたしました。  私は、どうぞ、この国会の御論議では、国会のお互い立場考えるならば、我が国の政府がここで申し上げることを御信頼いただきたいと思います。軍国主義に走ろうとは毛頭考えておりません。
  277. 越智伊平

    越智委員長 これにて正森君の質疑は終了いたしました。  次に、川端達夫君。
  278. 川端達夫

    川端委員 昨日に続いて大店法についてお伺いしたいと思いますが、わずか六分でございますので、よろしくお願いいたします。  通産大臣、きのうも触れましたが、中間報告の中で、大店法改正後の見直しということで特定地域云々がありまして、特定地域に関する規制の撤廃を含めて今後検討していくという項目があります。特定地域という部分の言葉自体、このいろいろな大店法の審議の中で恐らく初めて出てきたんではないかなというふうに理解するのですが、大体どういうふうなイメージをお持ちなのか、どういう観点なのかということをお聞かせいただきたいと思います。
  279. 武藤山治

    武藤国務大臣 これはまだ、中間報告にも書いてありますように三年先のことでございますし、これから審議会を開いていろいろ御意見も承り、また各界各層の御意見も十分時間がございますから私どもは聞いて参考にし、将来の検討に参考にさせていただきたいと思っておりますが、どういうイメージかとおっしゃれば、まあ大体大きな都市という感じを私は持っておるわけであります。
  280. 川端達夫

    川端委員 報道でも初め大都市圏とかいろいろな言葉遣いがされましたけれども、日経新聞がこういう大店法の動きがあるということで大手・中堅スーパー、百貨店四十社を対象にした出店計画緊急アンケート調査というのが報道でされております。  そういう中で、大店法がいろいろな運用改善をされていって進出計画がどういうふうになるんだろうかという調査ですけれども、その中でアンケート調査では、スーパー新規出店重点地区は地方中核都市の近郊が七六%、大都市近郊が六八%、地方中核都市の中心部は四%、大都市の中心部はゼロ。逆にスーパーがスクラップの対象にしているのは商店街内の小型店舗五二%と駅前の小型店舗四四%が大きなウエートを占めているという部分で、肝心のというか、スーパー、百貨店なんかが大都市の中心部は出店する計画はもうさらさらない、こういうふうに言っているわけですね。  そういう部分で、大都市圏の部分で撤廃しようがしまいがもともと出る気は全くない、今やはり大規模店が来て非常に競争が激化する、あるいはいろいろなことで地元との調整を図らなければいけないのがいわゆる郊外での出店問題である。そういう部分で、大都市と言われてもいろいろな考え方もあるという部分で、今までの議論の積み重ねの中でそういうところを別に廃止をしようというふうな議論がなかった中でこういう問題が出てきたということで非常に混乱を来している、そして問題点も非常に多いと思うのですね。そういう部分で、一概に大都市を想定をされたと言われても、これからの議論の推移では無用の混乱しか招かないということになるのではないかという懸念を持っております。  そういう意味で、この問題、改正後二年間いろいろ調査をする中でということでありますけれども、既にこういう方向を示されたということで、具体的にどういう項目に関して調査をされ、分析をされ、そして議論の場はどういう形を考えておられるのかということに対してお聞かせを願いたいというふうに思います。
  281. 武藤山治

    武藤国務大臣 これは新しい私どもの、先ほど御指摘のとおりで一つの新しい考え方に立ってやっておりますので、これからの話でございまして、今具体的にどうこうということを全くまだ考えておりません。
  282. 川端達夫

    川端委員 きのうの議論の続きにも結局なってしまうのですけれども、これから考えていくという部分に対して具体的な、廃止という言葉を登場さすときに、特定地域で廃止も含めてというふうなことでニュアンスとしてにじみ出てきた。結局、それは今までの議論の積み重ねの中で出てきたものでもないし、具体的にこれからどういうことを検討要因に入れてそういうことをやろうかということも、やってみてから、改正をしてからの話だということで、はっきりしたフレームもない。そうすると、やはり日米構造協議の中で何らかの形で廃止という部分をにじませなければいけないような雰囲気であったのではないかというのが、巷間も言われますし、私もそういう背景があるのかなと。そういう議論のやり方自体が国内の問題としては非常に混乱を招くと同時に、本当に生活者の視点に立った法律の改正、あるいは国内の構造を変えていくという姿勢というものではやはりないなというふうに思うわけです。  その部分に関してこれからの話だと言われると言葉の継ぎようがないのですけれども、現に大都市に関して全く出店計画もないという部分を撤廃することでお茶を濁すということであってはもちろんいけないことだというふうに思います。そういう部分でこの問題に関しては非常に大きな問題を含んでいる。これから大店法を議論していくときに、常にこの部分に逆に焦点が当たって、やはり廃止するということになるのではないかという不安をあおることになると思いますが、そういうことでもっと抜本的に、急がば回れという部分でゼロからの分析とその改正というものを、まさにきのう総理に確認したような国民の立場に立って、アメリカから指摘はされたけれども、まさに国益に沿って、そして国民の利益に立って議論をしていくべきだというふうに思いますし、ぜひとものお願いをしておきたいというふうに思います。  時間が既に来てしまいまして、お願いで終わることになりますが、よろしくお願いしたいと思います。終わります。
  283. 越智伊平

    越智委員長 これにて川端君の質疑は終了いたしました。  次に、菅直人君。
  284. 菅直人

    ○菅委員 私も六分という大変短い時間ですので、一言二言総理と通産大臣に日米構造協議について見解を伺っておきたいと思います。  総理に、一言で言えば日米構造障害といいますか構造摩擦の原因というのは何だろうか、そういうことをお尋ねをしたいのですけれども、私は、いろいろな原因が日本側アメリカ側にあるというのは当然なんですが、一応日本側の原因というものを考えてみると、日本の社会の構造が余りにも会社を中心にした行動が中心になり過ぎているのではないか。  例えば二つの電機会社がある。そうすると、隣の電機会社に負けないためには多少は残業でも仕方がない、多少は、余り賃上げをしたら競争に負ける。つまり、欲しがりません勝つまではという言葉が戦前あったようですけれども、今の日本人の行動というのは、企業間競争の中で欲しがりません勝つまではという形が非常に熾烈に続いている。ある意味ではそのことが日本の現在の経済的な成功をもたらした最大の要因とも言えると思うのですが、つまり、成功したところで結果において行き詰まってきたのが今の、せんだっての予算委員会でも取り上げました国内の土地問題であったり、あるいは日米間のこういう障害、摩擦といったものを生む原因になっているのではないか、そんなふうにも思うわけですけれども、総理にこの日米構造問題の日本としての原因というのをどのようにお考えになっているか、見解を伺っておきたいと思います。
  285. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今菅委員おっしゃったそういった見方も確かに一つあると思います。  それから、私なりに今御質問を聞きながら考えましたことは、例えば日本の場合には中小企業というものが物すごい数があって、下請の系列というものがごく当たり前のこととして、第二次、第三次の下請、孫請、いろいろございました。それらのものが今度は自分の与えられた分野で、部品なら部品に全精魂を打ち込んで非常に努力をしてつくってくる。だからトヨタでも日産でも数え切れぬぐらいの下請系列工場があって、正確に言うと本社は自動車組み立て工場のような観すらあるように広いすそ野があった。そういったことは日本で見ておればごく当たり前のことで、そういったところで切磋琢磨して努力をするというのはいいことだとむしろ私どもは受けとめながら来たのですが、そういったこと自体がまた別の物差しで見ると、それは何か門戸を閉ざしておるのじゃないか、世界に開かれたものじゃないではないかというような指摘を受けるような一因になったのかなという反省なんかも踏まえながら、私は考えてきたわけでございます。  数え上げればその他いろいろございますけれども、やはり生活文化とか暮らしぶりとか伝統というものが絡んだ環境でありますので、社会構造に根差したいろんな変化があったと思います。私はそう受けとめております。
  286. 菅直人

    ○菅委員 総理認識もそう大きくは私などとも違っていないのかと思いますが、通産省というこの役所ですね。まさに通商産業省で、日本の産業育成という意味では大変大きな役割を果たしてきたという多分自負を持っておられると思うのですね。しかし、先ほどの議論の中でも、考えてみますと、確かに産業の育成ということは非常に重要で、まさにそのことが日本の現在の産業社会をつくった大きな要因になっているわけですが、まさに同じことですけれども、その成功が今やある種の行き詰まりを招いてきている。そこで、基本的な枠組みを変えていくことが今まさに必要になっていると思うわけです。  これは私は、ある通産省のOBの人と話をしているときに、通産省も少し役所の名前でも変えたらどうですか、通商産業省の上に、生活通商産業省ぐらいにしたらどうですかと言ったら、そのOBの方は、それも悪くないねというようなことをおっしゃっておりましたけれども、これからの通産行政というものを考える上で、特に日米間あるいは国際間の問題を考えるときに、いわゆる産業育成というところから大きなウエートを生活に対するウエートに移していくという、そういうことを通産省も逆の責任として考えられる必要があるのじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  287. 武藤山治

    武藤国務大臣 日本人は、やはり経済はどんどん成長し発展をしてきたけれども、自分たちの生活は必ずしもゆとりもまだないし、豊かさもないのじゃないかという実感を持っている方もいらっしゃるわけでございますから、そういう面ではやはり経済発展経済成長というものが、真に国民生活の質的向上というか、豊かさ、ゆとりさを感じていただけるような形にいくということが私は大切だと思います。  今、産業育成という形で今日までやってきたというお話でございますが、経済政策の最終目的は必ずしも産業の育成が最終目的ではなくて、産業の育成によってやはり国民生活が充実していくというところに私は本当の目的があるだろうと思いますので、そんなような観点に立って、今いわゆる九〇年代の通商産業政策、産構審に私はお願いをいたしておりますけれども、そんなような形で答申が出てくることを実は期待をいたしておるわけであります。
  288. 菅直人

    ○菅委員 じゃ、終わります。
  289. 越智伊平

    越智委員長 これにて菅君の質疑は終了いたしました。  以上をもって外交防衛及び日米構造問題協議等についての集中審議は終了いたしました。  次回は、明二十五日午前九時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十分散会