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1990-04-13 第118回国会 衆議院 予算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年四月十三日(金曜日)     午前九時開議  出席委員    委員長 越智 伊平君    理事 近藤 鉄雄君 理事 佐藤 信二君    理事 野田  毅君 理事 原田昇左右君    理事 宮下 創平君 理事 加藤 万吉君    理事 佐藤 敬治君 理事 村山 富市君    理事 神崎 武法君       粟屋 敏信君    池田 行彦君       石井  一君    稲村 利幸君       岩屋  毅君    内海 英男君      小此木彦三郎君    工藤  巌君       倉成  正君    小坂 憲次君       後藤田正晴君    左藤  恵君       自見庄三郎君    田澤 吉郎君       戸井田三郎君    葉梨 信行君       萩山 教嚴君    長谷川 峻君       浜田 幸一君    林  義郎君       原田  憲君    村田敬次郎君       村山 達雄君    山本 有二君       井上 普方君    川崎 寛治君       北川 昌典君    串原 義直君       嶋崎  譲君    新村 勝雄君       新盛 辰雄君    関  晴正君       戸田 菊雄君    藤田 高敏君       松浦 利尚君    武藤 山治君       和田 静夫君    日笠 勝之君       冬柴 鐵三君    東中 光雄君       三浦  久君    山原健二郎君       大内 啓伍君    中野 寛成君       菅  直人君  出席国務大臣         内閣総理大臣  海部 俊樹君         法 務 大 臣 長谷川 信君         外 務 大 臣 中山 太郎君         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君         文 部 大 臣 保利 耕輔君         厚 生 大 臣 津島 雄二君         農林水産大臣  山本 富雄君         通商産業大臣  武藤 嘉文君         運 輸 大 臣 大野  明君         郵 政 大 臣 深谷 隆司君         労 働 大 臣 塚原 俊平君         建 設 大 臣 綿貫 民輔君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     奥田 敬和君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 坂本三十次君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 塩崎  潤君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      砂田 重民君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 石川 要三君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      相沢 英之君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      大島 友治君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 北川 石松君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 佐藤 守良君  出席政府委員         内閣官房長官 大島 理森君         内閣参事官         兼内閣総理大臣         官房会計課長  荒田  建君         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         内閣法制局第一         部長      大森 政輔君         公正取引委員会         委員長     梅澤 節男君         公正取引委員会         事務局官房審議         官       矢部丈太郎君         公正取引委員会         事務局経済部長 糸田 省吾君         公正取引委員会         事務局審査部長 柴田 章平君         警察庁刑事局長 中門  弘君         警察庁刑事局保         安部長     加美山利弘君         宮内庁次長   宮尾  盤君         宮内庁長官官房         審議官     河部 正之君         皇室経済主管  永岡 祿朗君         総務庁長官官房         審議官         兼内閣審議官  増島 俊之君         総務庁行政監察         局長      鈴木 昭雄君         防衛庁参事官  内田 勝久君         防衛庁参事官  鈴木 輝雄君         防衛庁長官官房         長       児玉 良雄君         防衛庁防衛局長 日吉  章君         防衛庁教育訓練         局長      米山 市郎君         防衛庁経理局長 藤井 一夫君         防衛庁装備局長 植松  敏君         防衛施設庁長官 松本 宗和君         防衛施設庁総務         部長      吉住 愼吾君         防衛施設庁施設         部長      大原 重信君         防衛施設庁建設         部長      黒目 元雄君         防衛施設庁労務         部長      竹下  昭君         経済企画庁国民         生活局長    末木凰太郎君         経済企画庁物価         局長      田中  努君         経済企画庁総合         計画局長    冨金原俊二君         科学技術庁研究         開発局長    須田 忠義君         科学技術庁原子         力局長     緒方謙二郎君         環境庁企画調整         局長      安原  正君         環境庁大気保全         局長      古市 圭治君         国土庁長官官房         長       北村廣太郎君         国土庁長官官房         会計課長    森   悠君         国土庁計画・調         整局長     長瀬 要石君         国土庁土地局長 藤原 良一君         法務省入国管理         局長      股野 景親君         外務大臣官房外         務報道官    渡邊 泰造君         外務大臣官房審         議官      太田  博君         外務大臣官房領         事移住部長   久米 邦貞君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省北米局長 松浦晃一郎君         外務省経済局長 林  貞行君         外務省経済協力         局長      木幡 昭七君         外務省条約局長 福田  博君         外務省国際連合         局長      赤尾 信敏君         大蔵省主計局長 小粥 正巳君         大蔵省主税局長 尾崎  護君         大蔵省理財局次         長       松田 篤之君         大蔵省銀行局長 土田 正顕君         大蔵省国際金融         局長      千野 忠男君         国税庁次長   岡本 吉司君         文部大臣官房長 國分 正明君         文部省初等中等         教育局長    菱村 幸彦君         文部省教育助成         局長      倉地 克次君         文部省学術国際         局長      川村 恒明君         厚生大臣官房総         務審議官    加藤 栄一君         厚生大臣官房老         人保健福祉部長 岡光 序治君         厚生省生活衛生         局長      目黒 克己君         厚生省薬務局長 北郷 勲夫君         農林水産大臣官         房長      鶴岡 俊彦君         農林水産大臣官         房予算課長   山本  徹君         農林水産省経済         局長      川合 淳二君         農林水産省構造         改善局長    片桐 久雄君         農林水産省畜産         局長      岩崎 充利君         食糧庁長官   浜口 義曠君         林野庁長官   甕   滋君         通商産業大臣官         房商務流通審議         官       山本 貞一君         通商産業大臣官         房審議官    横田 捷宏君         通商産業省通商         政策局長    畠山  襄君         通商産業省通商         政策局次長   堤  富男君         通商産業省貿易         局長      内藤 正久君         通商産業省立地         公害局長    岡松壯三郎君         資源エネルギー         庁長官     山本 雅司君         中小企業庁小規         模企業部長   川田 洋輝君         運輸大臣官房審         議官         兼内閣審議官  井上徹太郎君         運輸大臣官房会         計課長     岩田 貞男君         運輸省運輸政策         局長      中村  徹君         運輸省国際運輸         ・観光局長   宮本 春樹君         郵政大臣官房経         理部長     木下 昌浩君         郵政省放送行政         局長      大瀧 泰郎君         労働大臣官房長 若林 之矩君         労働省労働基準         局長      野崎 和昭君         建設大臣官房長 牧野  徹君         建設大臣官房総         務審議官    福本 英三君         建設大臣官房会         計課長     小野 邦久君         建設省建設経済         局長      望月 薫雄君         建設省都市局長 真嶋 一男君         建設省住宅局長 伊藤 茂史君         自治大臣官房総         務審議官    芦尾 長司君         自治省行政局長 森  繁一君         自治省行政局公         務員部長    滝   実君         自治省行政局選         挙部長     浅野大三郎君         自治省財政局長 持永 堯民君         自治省税務局長 湯浅 利夫君  委員外出席者         参  考  人         (税制調査会会         長)      小倉 武一君         予算委員会調査         室長      多田 俊幸君     ───────────── 委員の異動 四月十三日  辞任         補欠選任   越智 通雄君     萩山 教嚴君   工藤  巌君     山本 有二君   倉成  正君     小坂 憲次君   松本 十郎君     岩屋  毅君   村岡 兼造君     自見庄三郎君   串原 義直君     関  晴正君   新盛 辰雄君     北川 昌典君   菅野 悦子君     東中 光雄君   三浦  久君     山原健二郎君   大内 啓伍君     中野 寛成君   楢崎弥之助君     菅  直人君 同日  辞任         補欠選任   岩屋  毅君     松本 十郎君   小坂 憲次君     倉成  正君   自見庄三郎君     村岡 兼造君   萩山 教嚴君     越智 通雄君   山本 有二君     工藤  巌君   北川 昌典君     新盛 辰雄君   関  晴正君     串原 義直君   山原健二郎君     三浦  久君   中野 寛成君     大内 啓伍君   菅  直人君     楢崎弥之助君     ───────────── 本日の会議に付した案件  平成二年度一般会計予算  平成二年度特別会計予算  平成二年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 越智伊平

    越智委員長 これより会議を開きます。  平成二年度一般会計予算平成二年度特別会計予算平成二年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。加藤万吉君。
  3. 加藤万吉

    加藤(万)委員 日米構造協議問題、主要な課題であります総合的な公共投資計画策定、きょうはこの問題に少しく絞って御質問申し上げたいと思います。  このフレームを読んでみますと、二つ課題提起をされています。一つは、九〇年度末に期限の来る八分野の社会資本投資、その策定計画を更新し、現行の制度を上回る計画策定を求められております。二つ目には、今後十年間の新しい総合的な公共投資計画策定を求められております。  今までの質疑のやりとり、政府から聞いておりますと、この策定は、最終報告段階までには支出総額を含めてアメリカ側に提案をする、こういうような内容になっておるわけでありますが、経済企画庁にまずお聞きをしますが、今の二つフレームについて七月の最終報告までにどのようにおまとめになるのですか。同時に、日米構造協議中間報告に対する米国側コメントを見てみますと、支出総額についてまで明らかにする、こうなっておりますが、そこまで策定をされるのでしょうか。
  4. 相沢英之

    相沢国務大臣 「十年間の新しい総合的な公共投資計画策定する」ということになっておりまして、直ちに着手する、そしてその「実質的な社会資本整備総額は、十年間に、現在の水準よりも大幅に拡充されることになろう。」それから、「最終報告において、本計画支出総額を明らかにするものとする。」こうなっておりますが、実は、いろいろこの公共投資計画につきましては、これから早急に各省庁との間におきまして調整を要する問題がございます。  と申しますのは、公共投資計画にどういうものを含めて考えるか。これは、この前大蔵大臣からも答弁された中にございますが、いわゆる公共事業、十五本の計画がございますところの公共事業のほかに、例えば文教関係がありますとか、それからまた、現在は民営化いたしておりますところのJR、NTT、専売、あるいは電発、そういうものがございます。過去における公共投資実績の中には、そういうものを含んで考える場合もございますし、いわゆる公共事業ということで十五本に限って考えることもありますし、ですから、一つカテゴリーの問題がございます。  それからもう一つは、御案内のことと思いますが、例えば道路整備計画にいたしましても、その中には、国の補助負担を伴うところのいわゆる一般公共事業としての事業のほかに地方単独もございますし、そういうようなことがありますものですから、そういうものを含んでどういうものを入れて考えるかということ、そのカテゴリーを決める必要もあるわけなんであります。そこで、そういった点の調整もございます。したがって、実績も、そういう地方単独等も含めて考えるということになりますと、まずこのとおりきちっとやることになれば、そういうことの実績確定も必要になると思います。  それからもう一つ、「現在の水準」というその水準考え方もございますし、そういうことについては、ひとつ早急に各省庁との間においての調整を必要とする、このように考えております。
  5. 加藤万吉

    加藤(万)委員 各省庁間の調整は当然のことなんです。私の言うのは、聞きたいのは、その支出総額を七月までの調整の結果アメリカ側に示すのかどうかということをお聞きをいたしているわけです。と申しますのは、この中間報告アメリカ側コメントを見てみますと、最終報告においてこの計画支出総額を明らかにすることが必要である、同時にその目標を示した場合に初めてこの構造協議の結果を評価をする、こう書いてあるわけですね、コメントされているわけです。こうなりますと、七月までには調整の結果支出総額を決めるのでしょうo
  6. 相沢英之

    相沢国務大臣 ちょっとその前に申し上げますと、このいわゆる支出総額ということについての考え方でありますが、御案内のように、過去におきまして企画庁が中心となっていわゆる経済の五カ年計画というもの、現在におきましては「世界とともに生きる日本」ということで長期計画というものをつくっております。その中において、おおむね公共投資につきましてもその計画期間中にどの程度の支出になるかということを、事業量になるかということを一応見積もっているのであります。現在の計画ではそのことをはっきり数字で示しておりませんが、過去においてもその五カ年計画におきましては、公共投資のおおむねの総額事業別に示しているという例が多いのであります。  ただ、これは、今も申し上げましたように、いわゆる補助負担を伴うところの国の一般的公共事業のほかに地方単独も含んでおりますし、さらに申し上げますと、予備枠と申しますか調整枠も含んで計画自体というものを想定いたしております。したがいまして、その計画のいわゆる支出総額というものも、そういうものを含んだ、言うなれば見積もりというふうに考えませんと、計画経済でありませんし、また、総額を決めたらそれに伴ってすぐ年次割りが決まって各年度の支出総額が決定されるということにはなりませんものですから、そこはその支出に関するところのおおむねの見通しと申しますか、そういうことになるんではなかろうかというふうに今考えています。
  7. 加藤万吉

    加藤(万)委員 調整とか、公共投資以外の投資額その他を調整するのはわかるのですよ。そして、それらをひっくるめて、いずれにしても七月の最終報告までには支出総額を明らかにする、そのことなしにはこの評価ができない、こうアメリカが言っているわけですから、これはするんでしょう、こう聞いているわけです。まあ、これは議論すると少し長くなりますから……。  大蔵大臣、私は大蔵大臣答弁を聞いておりまして、大蔵大臣の言わんとすることはよくわかるのです。それから、期待可能性を含めて本国会で答弁されているのもわかるのです。例えば国の予算編成権がこれによって脅かされる可能性もあるんじゃないか、ないしは経済動向というものは日本の場合には税収との関係に連動する、したがって、アメリカが言うように、今日経済見通し経済企画庁の出しました見通しでは二十六兆三千億の公共投資からさらにどう拡大をするかということは、年次ごとないしは日本経済動向と相まって計画をつくらなければできないという、そういう言われる趣旨はそのとおりだと思うのです。ただ、今の日米間における公共投資支出総額については、大臣がここでおっしゃっているほど甘いものではないという感じが率直に言ってするのです、アメリカ側期待としては。  と申しますのは、これは一昨日の新聞の記事を引用させていただくわけでありますが、アメリカ通商代表部のリン・ウィリアムズ次席代表が十日のワシントンの日米協会の会合で、ちょうど大蔵大臣がここに答弁していることに対して、ややアメリカ側態度はこうですよということをきちっと言っているような発言が幾つ提起をされているのですね。長い記事ですから全部は読み上げませんが、そのうちで最終報告に対する七つの柱から成る説明を加えながら、この講演の中で、日本に対する持続的な圧力の行使が必要だ、日本国民企業への直接の訴え、交渉不調の際の報復措置の用意、さらに管理貿易の回避など七つの柱から成る問題点説明している。こう言っているんですね。  これを見まして、大蔵大臣が当委員会で、アメリカ側はそう言っているけれども、日本はなかなかそういう条件には沿い得ない、例えば公共投資について見てもと、こう今お話がされることに対して、そんなことじゃ困るんですよと。今大臣もここで答弁されておりますように、GNPの一〇%にしてくれというアメリカ側要求は、三年ないしは五年の間に、こういうアメリカ側コメントがあった、こう言われているわけですね。そうすると、大臣がおっしゃっているように、日本経済あるいは日本予算編成権にかかわる問題まで、やや内政干渉的な要素を含めて言われることに対しては、日本側はこう反撃をしました。反撃をしたということはわかるのですが、さてそれが現実の問題として、最終報告段階日米間の協議として調うかどうかという問題とは別次元の問題だと私は思うのですね。四月の十日ですから、ちょうど大臣が本委員会答弁をされたことに対して、そういう状況じゃございませんよ、アメリカ側態度はもっと強硬ですよということを何か意思表示をされている、こんな感じを私は受けないわけではないんです。  こうなってまいりますと、今経済企画庁の方から、私は支出総額について七月の最終報告までにまとめられるのですかという質問をいたしたのは、そこまでにまとめ上げなければだめなんじゃないですか、日米間の状況というのは今そんな生易しい状況下ではない、どうも大臣なり、これは総理答弁も含めてでもそうでありますが、アメリカから受けている衝撃波を国民の目の前に軟着陸させようとする、どうもそういう言葉に聞こえてならないのです。どうでしょうか、大蔵大臣答弁をひとつ。
  8. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 これは、経企庁長官は今後作業を御担当いただくお立場から、その作業をするについて必要なチェックポイントを例示をされましたので、あるいは明確を欠いたという御批判になるのかもしれません。しかし、公共投資に対する今後の十カ年計画今世紀中の目標というものについては、議長省としてアメリカ側と折衝いたしました私どもの役所の立場からいたしますならば、七月の最終報告には数字を入れたものを示すつもりであります。  ただそこで、議員に誤解を受けておるわけではありませんけれども、説明をもう一度させていただきたいのは、これはアメリカ側から押しつけられたものではないということであります。今委員からもお触れになりましたように、この構造協議の論議の中においてアメリカ側はそのGNP対比一〇%、三年ないし五年以内というものを日本に迫った、要求をした、これも事実であります。我々はそれに対して拒否をした。しかし、アメリカ側がそれでは例えばGNP対比目標日本に求める気持ちを捨てているのかと言えば、それは私はアメリカ側気持ちの中にはやはりそういうものは残っておるであろうと思います。そこが先般来総理もまた外務大臣も、この構造協議というものはアイデアの交換ということを繰り返し御説明を申し上げてきたところでありまして、私は、アメリカ側がそういう気持ちを全く捨てたという状況にあるとは思っておりません。  しかし、日本側としてはそのアイデアは受け入れられない。しかし、我々は同時に今世紀中における公共投資総額というものを、これは概数になりますか確定数になりますか、あるいは先ほど経済企画庁長官が述べられましたような幾つかの算定の要因があるわけでありますから、どういう数字固め方ができるかはこれからの問題でありますけれども、いずれにしても、数字を示すというのは我々自身の決断であります。そして、我々自身の決断として、我々がアメリカに負うのではない、我々自身が国民を代表しながら交渉に当たってきたその責任に任ずるということでありまして、事態を甘く見ておるとか、国民に対して事実をいわば緩和して申し上げておるのでは決してない。事態は極めて厳しい交渉の上に日本側の提案としてこれを報告の中に盛り込んだものでありますし、我々についてはその責任をとるだけの覚悟を必要とするものであります。
  9. 加藤万吉

    加藤(万)委員 私は、今大蔵大臣も大分言葉を選んで、国民に緩和という言葉、私も軟着陸という言葉を使ったのです。私は、いわゆる国民をだましたとは言わぬのです。ただ、その衝撃波が相当強いですからね。公共投資に限らず流通関係につきましても、このコメントを読ましていただきますと、アメリカ側は、もし日本側アメリカ期待にこたえないようないわゆる最終報告ということになるとするならばということを前提に置きまして、このようなことに――このようなことにというのはいわゆるこの日米構造協議中間報告ですが、このようなことにならないことが判明したときは、米国政府はより思い切った法的解決の必要性に関する当初の見解に戻ることになるだろう、いわゆる三〇一条のことを指して言っているのだと私は思うのですが、そのくらいの米側の態度なんですね。どうも、そういう態度であるだけに私は、国民の側には大変な衝撃波が起きますよ。衝撃波が起きるが、今の時期にその衝撃波がこうであるということを示すと、少しく国民の中に大変なことになるという不安感が拡大をしてしまうので、それを軟着陸させるための国会のやりとりが続いているような感じがしてならない。先ほど大蔵大臣は緩和という言葉を使われましたけれどもね。したがって、私は、事実を素直にそのまま認めて、そのまま国民に訴えるという姿勢が全般を通して必要だと思うのですね。  それから、企画庁長官大蔵大臣最終報告までには数字を示してやる、こう言ったのです。調整段階のことをやる大臣答弁ですから、私はそれは否定はしません。しかし、少なくとも経済企画庁としても、大蔵大臣答弁があったように、最終段階には数字を示してやるということになることはこれは間違いないわけですね、今の御答弁にも明らかなように。いろいろなものがありますよ、調整段階について、調整の内容については。そう言えば、JRの問題もありましょうし、地下鉄の問題も投資計画にありましょうし、さまざまあると思いますが、結果的に総合的なものをまとめて、最終報告には投資支出総額確定する、いわゆる報告をするということには間違いないわけでしょう、ここだけでいいですよ。
  10. 相沢英之

    相沢国務大臣 先ほどの私からの答弁で明確に申し上げませんでしたが、この「日米構造問題協議に関する日本側の措置について」というのは、四月の六日に閣議了解されているわけでございまして、その中において、「最終報告において、本計画支出総額を明らかにするものとする。」こうなっております。したがいまして、最終報告において支出総額を明らかにすることは、先ほど大蔵大臣答弁申し上げたとおりでございます。
  11. 加藤万吉

    加藤(万)委員 総理、ここで一つ問題になるのは日本経済見通しですね。私は短中期的な経済見通しはできると思うのですが、十カ年、十年というパターンで経済見通しを見るのはなかなか困難だと思うのです、率直に申し上げて。けさほどの新聞にも、大分日本の輸出入など状況変化というものが出ていますからね。二、三年とかあるいは五年ぐらいのパターンならまだ見通しが可能だと思うのですが、十年ということになると、しかも今大蔵大臣からも答弁がありましたように、十年後における日本公共投資総額を明示をする、十年後というか十年間と言った方が正確でしょうが、そうなってきますと、日本経済見通しの長期的なパターンがわからないまま実は支出総額アメリカ側に提示をする、こういうことになってくるわけですね。  ですから、私が一番心配しますのは、本委員会構造協議問題をめぐって大蔵大臣が、財政であるとかあるいは日本経済見通しであるとか、したがって時には単年度ごとの事業計画の積み重ねによってアメリカ側期待にこたえる、こういう要素も含めての御答弁があったわけです。しかし、総体として、アメリカ側の言っているところのGNP一〇%に匹敵する支出総額はある程度提起をしなければ、アメリカ側も承知もしないでしょう。ただ長期的な経済見通しがないという中で十年間の支出総額を決めました、十年分に当たる支出総額を決めました、しかし日本経済情勢あるいは財政事情はそれを許容しません、こうなったときには、実はあのときにそう提起をいたしましたけれども、今の段階ではこれはできなくなりましたということでは済まぬわけですね。これは私は日米間の不信感をより拡大することになろうかと思うのですよ。  したがって、財政事情のいかんにかかわらずそのことはやらざるを得ない、こういう状況も生まれる可能性は十分秘めて、私は支出総額が決まってくると思うのですね。それをしのいでいくんだ、それをしのいでもなお日米間の構造障壁協議の中身を私どもは忠実に実行し、同時にそれによって日米間の信頼関係を強めてくる、こういう姿勢を今からお持ちにならないと、そこまで総理やっていらっしゃるかどうかは別にいたしまして、やるということを、これは自民党政椎が続くということを前提に考えますけれども、そういう決意が今必要であろうと思うのですが、どうでしょうね。総理の御見解をひとつ聞きたいと思うのですよ。
  12. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 委員の御指摘は、私は一面の問題点提起として素直に聞かせていただきます。  ただ、同時に私から申し上げたいことは、委員が今お述べになりました論点、この構造協議というものをいわばベースにして公共投資についての見解をまとめられたわけでありますが、同時にお考えをいただきたいことは、これまでにも何回か私は本院でも御答弁を申し上げ、私なりの見解を申し述べてまいりましたが、国民生活の質を高めるための社会資本の投入というものは、我々が今世紀中に相当程度のものを行っておかなければならないということもまた事実であります。二十一世紀に入りまして、高齢化がいよいよ進んだ状況になりまして、それだけの社会資本の投入がなかなかできにくい状態が来るでありましょう。そして、我々は少なくともその超高齢化社会というものを迎え撃ち、その時点における国民生活の質を向上させ、安定させておきますためには、今世紀中に最大限社会資本整備というものは行わなければならないわけであります。これはみずからの国の国民生活の質を高めるという視点からなさなければなりません。  今委員がお述べになりました視点以外にも、例えば現在既に百六十四兆円、平成二年度末と想定されております国債残高等を考えてまいりますときに、この累増に歯どめをかける、さらには後代に対する負担を少しでも減少しておく努力とともに、それだけの社会資本整備をしていくことには相当な困難があることは間違いはないのです。しかし、同時にその困難を我々はやり上げなければならないわけでありますから、今我々自身がそのつもりでいわば心構えをしながら、どうすればそれができる状態に我が国の経済を維持し続けることができるか。今までのように輸入を拡大しながら、なお内需を中心とした持続的経済成長を維持し続けるために、我々は何をなすべきか、むしろ私はこうした視点から、この構造協議の中の一パートでありますけれども、公共投資計画というものについては取り組んでまいりたい。また、経済企画庁を中心としての作業には、大蔵省の立場からはそうした視点から意見を申し述べたい、そのように考えております。
  13. 加藤万吉

    加藤(万)委員 総理
  14. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 今担当大臣が詳しく御説明しましたとおりでございます。そして、その目標に向かってお互いに努力をしていこうということを構造協議の場ではお互いに提案をし合い、共通の認識に着陸をしておるわけでございます。  ですから、アメリカ側日本に対する答えにしても、例えばグラム・ラドマン法における一九九三年にこれはゼロになることが見込まれるとか、九一年には比率一・一%になることが期待されるとか、あるいは四十の州における職員やその他の者が公的退職金の問題についての立法府の側に服するなれば何億ドルが期待されるとか、いろいろそういう努力目標を置いてそれに向かって全力を挙げて努力しようということが、日米双方に細かくいろいろな分野で交わされておる。そういった努力目標一つが、今まさに大蔵大臣が答えた公共投資のパターンの数字の問題でありますから、十年間先を確実に目指せとおっしゃると、なかなか難しい御指摘のとおりの事情もありましょうが、しかし、昨日来の御議論を聞いても、年率どれくらいの伸び率でこの十年間の見通しに立ってこのような運営をしていきたいと思いますという努力目標というものは、みんな一応設定をして政策に取り組んでおるわけでありますから、そういったことに対する精いっぱいの努力を続けていくということの表明だと思っております。
  15. 加藤万吉

    加藤(万)委員 重大な決意がやはり私は必要だと思いますから、これはもう総理はもちろんですが、大蔵大臣日米間の折衝に当たっても、私は国民にその決意を一方では求めていくという政治姿勢を持ちながら、きちっと対応していかれることが必要だろうと思うのです。  自治大臣公共投資といえば、これはほとんどいわゆる出口は地方日治団体、すなわち地方団体になるわけですね。  今年度の経済見通しでいきますと、二十三兆三千億ですか六千億ですか、経済企画庁が出していますね。そのうちで地方の出口になる直轄補助、それから単独事業を含めますと――ごめんなさい、先ほどのは二十六兆三千億ですね。それに対して地方のやつは、出口で二十三兆七百八十九億。そのうちで今度は地財ベースでいきますと二十一兆三千五百五十億、すなわち、今年度の平成二年度の公共投資ベース二十六兆三千億に対して地方団体の出口は八一%です。これは今度の構造協議の中に、八分野の社会資本整備計画を更新し、現行制度を上回る計画策定コメントとして合意をされておるわけですね。  そうしますと、当然のことですが、これを出口とする地方団体は大変な不安、ある意味じゃ非常な関心、同時に、もし日米構造協議の一〇%を目指して、アメリカが言うように三年ないしは五年の間にと、こんなことになれば、再び地方財政は大変なことになるのではないかという大変な不安と関心と、ある意味じゃ恐怖まで含めて私はあるのじゃないかと思うのです。  どうでしょう、今経済企画庁もおっしゃいました、それから大蔵大臣もこの最終報告の段階までには数字を挙げてと、こうなる答弁がございましたが、それには当然その出口の所管大臣であります自治大臣は、大変な関心と関与を持たなくちゃいかぬと思うのですが、自治大臣のまず決意を私は聞きたいと思うのです。
  16. 奥田敬和

    ○奥田国務大臣 先生の御指摘は、構造協議中間報告においてGNP一〇%というような具体的なコメントが最初なされたようでありますけれども、この中で私たちが非常に関心を持って見ておったことは、公共投資の配分に当たっては、国民生活の質の向上に重点を置いた分野にできる限り配意してやれということでございます。これは、かねて自治省の主張にも合致することでありまして、住民生活に密着した社会資本整備というのはまさに急務でもありますし、先生は、各自治体がこの報告の内容も含めて、将来計画に対して不安と関心とを持っておられるということは、全く私も同感でございます。  これは、アメリカに言われるまでもなく当然やらなきゃならぬことでございますけれども、先生の御心配いただいているのは、地方財政計画策定に当たって、果たしてこれらの国の予算措置の方向に、国庫補助事業もありますし単独事業もあります、これらに対応していけるかどうかということにかかっておると思いますけれども、私たちは、平成三年度から下水道なりあるいは河川、治水の五カ年計画策定されることでもありますし、その中で地方単独事業においても積極的な展開が図っていかれると期待しております。それに対応する地方自治体の財政計画、需要に対しても、もちろん積極的に対応していかにゃならぬ。十分先生の今の不安の面を、自治体が関心を持つ面を助長して、不安の面をできるだけないように配意して努力したいと思っております。
  17. 加藤万吉

    加藤(万)委員 地方財政計画をどう見直されるのか、私の懸念を二つ三つ申し上げてみたいと思うのです。  一つは、やはり地財計画。確かに国民生活に影響を与える部面、今度の場合には、ここでもしばしば議論がありましたように、産業基盤整備というよりも国民生活基盤を拡大しろというアメリカ側の意見、意思が非常に強いわけですね。その限りにおいては、私は国民は歓迎すると思っているのです、この公共投資アメリカ側の提案は。したがって、その出口であります地方財政計画べースの中身が相当変えられてまいりませんと、実際問題としてはアメリカ側との最終報告策定するという意に沿わないと思うのです。アメリカ側のというよりも、むしろアメリカ側のこの意思を受けて国民の中に関心が拡大している。いや、アメリカはいいことを言っているんじゃないかと。今まではどちらかといえば産業基盤整備、道路基盤整備とか港湾基盤整備などというところに財政投資がたくさん使われたにもかかわらず、今度は生活基盤だ。下水道だ、住宅だ、公園だあるいは環境施設だと。いいことじゃないかという、いわば国民からはやや歓迎する状況というものが私は生まれていると思っているのですよ。  それだけに地方財政計画は、私は地方財政計画というのは計画じゃなくて一つの指標だと思っているのですが、これは少しおくにしても、その中身をそういう部面に投資計画を変えていく、あるいはそういう指標を相当抜本的に見直していく、こんなことがないと、年度的に仮に将来、十年後GNPの一〇%の額になるか支出総額になるかどうか、これは後でいずれ経済企画庁が出す数字でしょうが、私はここに地方財政計画のまず見直しの基本的な視点というものを置かなくちゃならぬ、これが第一なんですね。  第二には、さて、そういうことでどんどんどんどん単独にしろ補助事業にしろ直轄事業にしろ拡大するのはいいけれども、再び五十年代と同じになりはしないか。私はそのときに歯どめが二つある。  一つは、地方財政がどのくらいまで耐えられるのか。幸いにして平成二年度の都道府県の公共事業費は伸びているというお話をせんだって聞きました。いいことですね。しかし、日米構造協議に基づいて仮にGNPの一〇%ということになると、おおむね今の公共事業投資の大体倍ですよ。そのうちの八一%の出口が地方自治体なんですから、そうすると倍に至るまでには地方財政はもたないぞと、この不安が一つある。  いま一つは起債の充当率ですね。起債の充当率がどんどんどんどん高くなればなるほど、あるいはそれが足りなくなればなるほど、財源対策債の発行をせざるを得ないのですね。  したがって、地方財源が保つ限界、それから通常の起債充当率の許容される限界、その範囲でこれからの策定計画に自治大臣は臨んでいきませんと、五十年度のちょうどこの交付税法の六条三の二項を改正しなきゃならないような財源対策債の累積にこれまたなりますよ。したがって、今度の日米構造協議経済企画庁策定と、この公共投資計画作成に当たっては、自治省としては何としてもその限界を心得ながらどうつくっていくか、この二つの視点が必要だと思うのですが、自治大臣の見解をまずお聞きしておきたいと思うのです。
  18. 奥田敬和

    ○奥田国務大臣 お答えする前に、ひとつ先生、もうこの地方財政に関しては非常に権威でもいらっしゃいますし、いつも御心配いただいております。まず最初に、今地方自治体が抱える問題点を指摘されました。この面について私もできるだけ頑張りますけれども、ぜひ先生の強力な御支援もまず冒頭に心からお願いしたいのです。  それと同時に、今から私の答えの意の足らぬところはまた政府委員から補足させますけれども、私は、今度の日米中間報告目標を完成させるためには、地方団体、自治体の果たすべき役割は、責任も重いし高いと思っているのです。それで、この社会資本整備に支障が生じないように、地方財政計画策定なんかには必要な地方財源措置を講じてまいるということは、これは私の今大臣としての公式答弁になるわけですけれども、そんなことではなくて、先生の一番心配されるのは、こういった形の中で地方財政が果たして耐えられるか。今のところ確かに好調なんです。これは景気の好調にも支えられておりますし、三割自治と言われた時代はもう今や四割五分、五割自治という形で、地方財政の内容は健全化の方向に来ております。今現在はまだ六十七兆というような累積の残高を持っておりますけれども、しかし、逐年、経済の好調にも支えられまして地方財政は健全化の方向をたどってきておるということだけは間違いありません。  しかしながら、先生の一番心配されるのは、こういった形が果たしていつまでも続くものでもなかろうし、かといってこれから相当大幅な財政需要に対応していくために、起債の充当率等々も含めて今のところ二〇%を上回るというような自治体は本当に少なくなってきておりますし、そしてまた、私たちもできるだけこれらの地方財政の自主財源の確保と同時に健全化には努力をいたしておりますけれども、今後とも今先生の心配される起債の充当率の問題、そしてまたはっきり言いますと国の補助率カット等々で随分しわ寄せしておりますから、それらを何とかここ一年の間に解消して、国の方も今現在地方自治体に迷惑かけている分を早く解消するような方向でも努力しておりますし、これは先生非常に各省庁間にまたがる財源確保の問題もございますから、それらをすべて勘案いたしまして、各省庁とも連絡を密にして、自治体が機動的に対応できるように全力を振るって先生の懸念をないような方向で努力いたしたいと思っております。
  19. 加藤万吉

    加藤(万)委員 恐らく大蔵省の事務当局、自治省の事務当局は私の言っている意味はおわかりになると思うのです。大臣は大まかにしかおわかりになっていないようですから。それは大まかでいいですよ、政治論議を今やっているわけですから。  大臣、問題は公共投資の大半は地方財政の負担を伴うということなんですよ。このことを抜きにして実は論議をされては困りますよ。地方財政が公共事業投資の大半を賄っているんだ。だとすれば、地方財源の一般財源と起債の充当率と、それによって次の日米間の公共投資計画というものが策定されていくという前提で自治省は対各省間の調整、折衝に当たってほしい、こういうことを私は申し上げたかったわけです。  そこで、建設大臣、私はやはり少し最近地方財政が確かに今健全化の方向に向かっていることは否定はいたしません。だからといって地方団体に少し負担が、国と地方との負担区分がアンバランスにだんだんなりつつあるのではないでしょうか。  例えば直轄事業を見てみましょうか。昭和六十年度総事業費の中の地方負担額は約三〇・七%ですよ。ところが、平成二年度予算を見ましたら三六・六%です。いわゆる六%、五%強ですね。なぜかといえば、これはもう言うまでもないが、補助率カットを含めて上がったということですね。公共事業費を見てみましょうか。公共事業費が六十年度四三・九%ですね。平成二年度四七%ですよ。私は直轄事業というのは本来国が必要としてやる事業ですから、これを地方団体の負担の拡大という方向に向けること自身、少し疑問があるのです。むしろ国は直轄事業の全体を含めて財政的な措置を講ずるというのが正しいと思うのですね。しかし、それは地方にも利益は生まれるのだし、例えば国道をつくればそれに伴う地方道もつくるんだから、地方道に対する負担分は地方でやりなさい、これはわかりますよ。しかし、この比率が漸次拡大するというのは、どうも地方は財政が豊かになってきたからこの分は地方で持ってくれ、この分は地方で持ってくれ、こういう形が少し慢性化しているのではないでしょうか。  私が先ほど言ったように、地方が大半を負担するのですよ。それが起債の充当率なり一般財源で賄えるということを考えるとするならば、国の本来負担すべきものをやはりきっちりと定めていく、このことが必要だと思うのです。そういうことがなければ、公共投資日米間の、例えば大臣がおっしゃるように環境整備やこれから日本が必要とする社会資本整備のことを踏まえてみても、なお地方団体は大変な不安を持つのじゃないでしょうか。私はそういう意味で、国と地方との負担区分を、これを機会にいま一遍見直しをされる、このことが必要だと思うのです。建設大臣、こういう推移というのは余りよろしくないと私は思うのです。  いま一つ見てみましょうか。下水道事業に限ってちょっとお話を集約してみたいと思うのです。  例えば今下水道事業は今度の見直しの八分野の中の一つの大きな科目ですね、十二兆円。今度はどのくらいになりましょうか。第六次計画ですか五次計画ですか、相当な額ですね。今政令都市を初め大都市では公共下水道普及率はもう七割以上ですね。ところが、今公共下水道が配備をされている市町村は、全国的に言うと三千三百ある自治体のうちで六百七十ぐらい、最近少しふえていますからせいぜい七百ぐらいじゃないかと思うのですね。  せんだって私は大蔵大臣答弁でちょっと気になったのは、これからの社会資本は、アメリカ側の意向を見てみると、できる限りアメリカが参入しやすいような大都市へ、こういう話がちょっとございました。例えばこの公共下水道に対して、終末処理場を含めさまざまな設備がありますね、これの必要なのは、もはや三十万以下の都市になっているのですよ。したがって、下水道事業を拡大しよう、環境整備の社会資本をそこに投下しようといった場合に、アメリカの参入ということを考えてまいりますと、地方における公共下水道をどう拡大をするかという視点がなければだめなんです。  それじゃなぜ地方で公共下水道が伸びないかということは、一つは地方の、特に市町村に至っては財政力が弱いということですね。それから、その後の管理運営費が財政的に措置ができない。それから、流域下水道で、多少そういうところには国の財政投資が三分の二の補助率ですから、これは少し伸びたところがありますけれども、流域下水道も一定の限界が来ていると私は見ているのですよ。そうすると、それぞれの市町村がもしも公共下水道を拡大するとするならば、今までの雨水処理だとかあるいは浄化槽による処理機能というものを国が何らかの形で補助対象にしなければだめなんですよ。今限られている補助対象から第二の下水道事業、すなわち人口でいけば三十万から四十万以下の市町村までどういう面的な整備を拡大するか、そのために必要な補助率をどう変えていくかということがございませんと、この下水道事業投資を拡大することはできないのです。  そこで建設大臣、これまた今の日米構造協議にひっかけてと言っては申しわけないのですが、国の直轄事業、それといま一つはそういういわば公園もそうです、あるいはさまざまな下水道、住宅あるいは環境整備含めて、この際私は、従来の財政が手元不如意だから補助率をカットするという視点ではなくして、そこの公共事業を伸ばさなければ日米間の話し合いで決めた社会資本投資の拡大にはならないという新しい視点から、いま一遍補助率を見直していく、こういう視点が今度は必要になってきたのじゃないでしょうか。建設大臣答弁を求めたいと思います。
  20. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 済みません。建設大臣の御答弁の前に、今委員から述べられました国と地方の間についての問題点、これは私は財政当局と地財当局とで話し合っていくべきことであり、今後ともに話し合いは行われるであろうと思います。  ただ一点申し上げておきたいのは、確かに私はアメリカ側の関心を御説明するときに、都市に重点を置けという指摘があった、アメリカ側アイデアの中にあったということを申し上げました。ただ、日本側のこの中間報告をごらんいただきますと、私どもはそういう視点に限定をしたものにはいたしておりません。なぜなら、我々は今どうやって一極集中を排除し多極分散型の国土を形成するか、こうした視点から国土問題に取り組んでいるわけでありまして、この点はどうぞ誤解のないようにお願いをいたします。
  21. 綿貫民輔

    ○綿貫国務大臣 公共事業につきましては、まずその事業費を確保するということに最重点を置いておるわけでございます。先ほど加藤先生から御質問のありました下水道等につきましても、御指摘のように、今、日本の普及率は四〇%ということでございますが、特に人口五万人以下のところにおきましては七%、また、未着手というのが二千市町村もあるわけでありまして、確かに公共事業のおくれの中で下水道、公園等は目立っておるところでございます。これらの負担につきまして今いろいろな御指摘がございましたが、ただいまは平成二年度までの暫定措置として補助率のカットというようなことで引き下げが行われておるわけでありまして、これを今引き戻そうというところに一生懸命いっておるわけでございまして、今御指摘のようなところまでいけば大変大きな問題になりますが、とりあえずその問題についてよく各省庁協議をしてまいりたいと考えております。
  22. 加藤万吉

    加藤(万)委員 私は、従来の財政再建途上における補助率カットというものではないのですよ。新たな公共事業投資を拡大するには、補助率の再見直し、いわゆる直轄事業に対する国と地方の負担区分の明確化などなどを含めてこの際新たな見直しを、こういう意味ですから、誤解のないように、誤解というか、そういう視点でひとつとらえてほしい、こう思います。  時間の関係がありますから、少し先に急ぎます。  最近、国の経済成長率に対して地方交付税が全体では前年度に比べて一〇・三%の伸びなんですね。今度の予算でも御承知のように、長期的な地方財政というものをいま一遍考え直すべきではないかという、平成二年度予算をめぐりまして議論が出ておる。例えば平成二年度の予算及び地方財政計画によれば、借入金の返済額が一兆四千百六十億、それから財源対策債として償還基金に積み立てるという金が二兆七百五十三億、そしておおむね三兆五千億円ほどの金が地方の財政需要より他の面、すなわち借入金の返済であるとか財源対策債の積立金であるとかという形に計上されているわけですね。これを称して地方財政は健全化の方向に、私は健全化の方向に向かっているという限りにおいてはこれは認めますけれども、余剰金があるのではないか、地方には今や余剰金が出ているのではないか、こういう議論が巷間よくあるのです。私は、地方財政が剰余金があるというのは、そうではない。一つには、やはり地方の財政需要額を抑えている結果だろう、結果でそれが生じているのではなかろうか。  それから、交付税が三二%、さらに消費税の交付税を加えますと大変多額になってきた。やはり交付税をこの際財政調整財源にすべきではないかなどという意見が実は出ているわけであります。これは大変私は間違った意見だろうと思っているのですね。交付税というのは、私は率直に言って常に安定した財源というふうに見るわけにはいかないと見ている。  例えば今度のでもそうでしょう。大臣、消費税が見直しをされますね。これは大蔵大臣総理もお聞きをいただきたいのですが、私は先般の補正予算の際に、この消費税の見直しによって譲与税が変わってきますよ、変わってくる財源の減収についてどこで穴埋めをするのですか。これは財政計画全体の中で措置をしますという大蔵大臣答弁でありました。そのとおりに実態はなっていますから、これについては言いません、しかし、事ほどそれに見られますように、交付税というのは、酒税にいたしましても所得税にいたしましても法人税にいたしましても、相手があって掛ける三二%なんですね。ですから、今度の消費税の見直し分によりまして、平年度で消費税と交付税で減収になるのは二千三百億円と試算をされているのです。したがって、交付税というものは、安定した財源というよりも、いわゆる交付税そのものの循環的な機能というものから見ていけば、安定したとは言われない。確かに、所得、法人、それから酒税、それぞれに掛ける税率ですから、大きな意味では安定していると言えば言えますが、その減収あるいは税の収入はその時期の経済的な変動によって大きく変わる。交付税がことしは一〇・三%もずっと伸びているから、したがって地方財政は財政需要額に比べて安定的な財源があるから、これを年度間調整資金に回せというのは、どうも当たらないと思っているのです。しかし百歩譲ってみて、今年度は、平成二年度はあるいは平成三年度は確かに地方財源はそういう意味では健全化の方向に向かいつつある。  さて、問題は、それを世上言う余剰金、いや余裕金でしょうね、余裕金という言葉にしょう、剰余金という言葉を使う人もありますけれども。一体どこで年度間調整をするかという問題が起きてくるわけですね。これはまず自治省、自治大臣ちょっと難しかったら財政当局でいいのですが、どこで財政年度間調整をされたらいいと思いますか。
  23. 持永堯民

    ○持永政府委員 地方交付税の年度間調整についてのお尋ねでございますが、これはどこでという御指摘でございますけれども、恐らく国のレベルでやるのかあるいは地方団体レベルでやるのか、どっちかという御趣旨のお尋ねかと思います。  この年度間調整の問題につきましては、実は昭和二十九年に地方交付税制度ができるときから、どういう扱いをすべきかという議論があったわけでございます。しかし、現在の段階では、どちらで年度間調整をやるという制度としてはないわけでございますけれども、昭和四十年度以来あるいは五十年度におきましても、毎年の措置として、毎年法律の御審議をお願いしながら、現実に毎年度の年度間調整をやってきたという経緯は事実あるわけで、これは国のレベル、交付税特会レベルでやってきたという事実はあるわけでございます。ただ、基本的にどちらであるべきかという制度としてはないわけでございまして、やはりそのときの財政状況なりあるいは財政需要というものを見ながら、どういう措置をとっていくかということを具体的に対応していくということかと思います。  もう一つは、仮に年度間調整というものを地方団体レベルでやるといたしますと、交付税というのはやはりあくまで地方税と違いまして、交付税を配分する場合は具体の財政需要というものに着目して措置をするという前提がございますから、そういった問題をどうクリアしていくかというような問題もございますので、そこらも含めて検討し、かつ毎年度の財政状況なり財政需要というものを見ながら検討をしていくべき問題であろう、このように考えております。
  24. 加藤万吉

    加藤(万)委員 大蔵大臣ね、総理ね、この地方財政が健全化の方向に向かっているという議論は、実は相当皆さん避けてきた議論なんです。なぜ避けてきたかというと、いやそれならばということで、例の補助金カットの問題以来、地方財政への負担転嫁という問題が起きるものですから、議論としては実は相当避けてきた課題なんです。  しかし、先ほど申し上げましたように、平成二年度で交付税特会の借入金の返還金とかあるいは財源特例債の積立基金とか、こう見てまいりますと、交付税特会の借入金は一兆五千億前後ですから、これは十年間で返すということになっていますが、やろうと思えば来年できるのですよ。それから、財政特例債の理論的な残額ですが、これは三千三百億ぐらい、これもやろうと思えば平成三年度でできるでしょうね。そうすると、一方の財政需要額が拡大をしませんと、さてこの金が余ったけれどもどうするんだという議論が出ざるを得ないのです。これは、今のままの財政需要額でいけば、平成四年度には産まれてくる可能性があるのですね。恐らく平成三年度、来年度の予算では相当議論になるところでしょう。  それで、この事例があったのは、御案内のように今から二十年近く前になりますが、昭和四十年代の日本の好況に支えられた時分、地方財政が余裕金が出るが、その際にこの余裕金をどう扱うべきかという議論がありまして、当時の大蔵大臣福田さんと自治大臣との間で四十四年の一月の六日、覚書を結んだという経過があるのですね。このときには、この余裕財源をどこにどうするかということは自治、大蔵両省で検討しようということになっているのです。しかし、その検討しようという背景には、率直に言って、自治省と大蔵省との綱引きがございまして、どちらかといえば少し大蔵省向きに、例えばこの余裕金を交付税特会なら特会に積み立てておいて地方団体が必要なときに云々、こういう趣もなきにしもあらずであったのです。  さて、平成三年度以降の財源は、先ほど私は、日米構造協議におけるその裏負担を地方は必ずせざるを得ないのですよということを申し上げましたが、そのことなどを考えてまいりますと、例えば公園用地、どうですかね。議論がありましたように、いわゆる土地取得というのが先行しなければ公園の整備はできないわけですね。したがって私は、公園の事業費を拡大しなさいということを経済企画庁を中心にして策定した場合に、土地取得費をどこでつくってくれるのですか、いやそれは地方財政計画に盛りますよ、地方財政計画に盛ったらば余裕金を、交付税特別会計にありますからそこからカウントして交付税にリンクさせますよ、カウントさせますよというだけでは、地方自治体が意欲的な仕事はできないのですね。そうでなくて、地方自治体にその財源がありますから先行土地取得をしましょう、それによって住宅計画とか公園設備計画とか、そういうものを先に用地を確保していく。あとは上の上物だけですから、ないしは用地費以外のものですから、今の状況から見れば投資額はそう多くはならないですね。こう考えてまいりますと、余裕金をどちらにどう持つかということは、これからの、大蔵大臣の言葉をかりて言えば、社会資本整備に必要な国民のニーズにこたえる面からいっても、地方団体に置くことが結果的にそのニーズに沿い得られる状況を地方団体に与えるのではないか。  先ほど日米構造協議で、私は、地方団体には不安と関心と時には恐怖がある、こう言ったのです。恐怖という意味は、五十年代の例の財源特例債が物すごくかさんじゃって、今日でも地方団体はまだ借金が六十七兆円あるわけですから。この借金は、地方団体がそれぞれ建設投資費でつくったものもありましょう。しかし、あのカット分によって事業計画を伸ばされて、その結果調整債を発行せざるを得ない、調整債を発行した額が六十七兆円。補助率をカットさせておいて、そのカット分は財源を与えるからその分だけ事業量を伸ばせと言ったのですから。事業量を伸ばす金がないものですから、調整債でこれを埋めたわけですね。そういうものを含めてまだ六十七兆円の借金があるわけです。そういう苦い経験の中で社会資本投下を拡大しなさいというならば、それではこれから起きるだろう余裕財源というものは地方団体に任せてくれませんか、こう出てくるのは当然だと思うのですよ。  またいま一つ総理、これは私は大事だと思うのですが、国民のニーズが、日米間の構造協議投資的経費、なかんずく社会資本整備の中で住宅であるとか公園であるとか環境であるとか下水道であるとかそこにある、そのことを国民が知ったときには、ある意味じゃ歓迎しますよね。歓迎して、そのことができないのはどこなんだ、政府だ、こう言ったって、住民から見れば、そこにあるのは県庁であり市役所ですから、あなたたちがやらないのじゃないか。私は、その国民期待にこたえる窓口が地方団体であればあるほど、そこに財政的な、ある意味で言ったら余裕といいましょうか、ある意味で言ったらこの投資計画に沿い得る弾力性を持った財政運用ができる構造というものが必要だと思うのですね。  自治大臣、ここはもう政治論議だからおわかりになったと思うのですが、どうでしょう。今年度はいわゆる借金の返済に充てましたから、財政需要額に比べて余った分はそれにつぎ込みましたからいいですが、平成三年度は今度はないですよ。いわゆる財政需要額が、まだ特会の借り入れが一兆五千億ありますから、それを返済すると言えば、あれは十年計画で返すことになっていますから、それを単年度で返すということですから、それは財政需要になりますよ。しかし、十年計画で返すということを前提に置けば、今度はもう、来年度は自治省は攻め上げられますよ。私はさっきの財政局長答弁はちょっと不満なんですよ。あんなスタンスではだめですよ。自治省はもっと毅然と、おれの方に欲しいのだ、そう言った方がいいですよ。でないと、本当の意味でも、日米構造協議を地方団体におろす面でも、あるいは地方団体が今請われている国民的なニーズを充足する面でも、財政的に弾力的な運用はできませんよ。どっちに置いたらいいか、まず自治大臣の見解を聞きましょう。
  25. 奥田敬和

    ○奥田国務大臣 この前の補正のときも、交付税特会の借入金返済に相当額、六千億近く回した。あれを、大臣就任当初だったですけれども、こんな金があるなら地方にもう少し余計やったらどうだい、こう言ったら、やはり返すべきものはちゃんと返し、財政需要に応じて地方にちゃんと配分すべきものはぎちっとしていく、中期的、長期的な地方財政の健全化のためにはこれはやはり大切なことです、こう言いますから、それもそうだな、借金もできるだけ返して身ぎれいになっていった方がいいわな。今度も、先生の御指摘のとおりに、特会借り入れ返済を一兆四千億やって、あとに残る金は幾らだと言ったら、一兆六千億ばかりが残るということです。となれば、もし順調な経済推移ということを前提に置くならば、もう来年でこういうことはなくなるわけですから、確かに先生の御指摘のように地方財政需要も多いわけですし、今後の社会資本充実という命題にこたえていくためにはそれは大変な、用地の取得も含めて、先買いの取得については今いろいろ難しい、起債も認めないようなこともありますけれども、いろいろな形で長期の公共用地取得にも充てられる形にもなるだろうし、地方財政の健全化にも間違いなく需要にこたえていけるだろうということで、この面においては、返すべきものはきちんとすると同時に、やはり地方交付税は固有の財源だという気持ちでおりますから、そういった方向で努力したいと思っております。
  26. 加藤万吉

    加藤(万)委員 大蔵大臣、どうですか。
  27. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 先ほど大蔵省と自治省の綱引きで大蔵省が勝っちゃったというお話でありましたけれども、大蔵省から見ますと自治省というのは尊敬すべき非常に強力な相手でありまして、自治省と論戦をして勝つのはなかなか至難のわざであります。  今、年度間調整について委員からいろいろな御見解を述べられたわけでありますが、これは過去の経緯がいろいろありますだけに、必要でありますならば事務方から補足をいたさせますけれども、元年十二月二十日の臨時行政改革推進審議会の答申で、委員が御承知のように、「地方交付税総額の年度間の調整について、当面、現行の特例加減算規定の適切な運用を図るほか、中期的には、地方交付税の総額の安定的確保に資するため、年度間調整について制度化を含め検討を行う。」とされておるわけでありまして、大蔵省としてもこの答申の趣旨に沿いつつ、好敵手たる自治省との間に御相談をしながら適切に対応してまいりたいと思っております。
  28. 加藤万吉

    加藤(万)委員 総理に一言だけ言っておきますが、今新行革審からの答申がありました。これは財政審議会でもおおむね骨格的には同じような答申なんです。しかし、私はあの答申は見直しすべきだと思いますよ。というのは、あれは日米構造協議の中身がない前の話なんですよ。日米構造協議、先ほどおっしゃった大蔵大臣社会資本整備というものが仮にGNP一〇%に到達するような計画策定するとなると、その財政が、今まででしたら借入金に返済しなさいなんてなまはんかなことじゃ済まないと思うのですよ。まあ、しかしこれは私の意見ですから申し上げておきますが、そういう意味では、財政審なりあるいは新行革審の答申の償還による云々というところは、私は率直に言ってうなずけない。きょうは時間がありませんから、これはひとつ各論でやらせていただきますので、よろしくお願いします。ありがとうございました。
  29. 越智伊平

    越智委員長 この際、佐藤敬治君から関連質疑の申し出があります。社会党の持ち時間三時間五十分の範囲内においてこれを許します。佐藤敬治君。
  30. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 これはけさの毎日新聞の社説であります。土地、地価の問題について絞って御質問したいと思いますが、けさの社説にこう書いてあります。「いくら働いても普通の仕事では、大都市圏で家が持てなくなった。親から土地資産を受け継ぐ人と、そうでない人には永久に取り戻すことができないほどの人生のハンディがつく。 こうした社会は、だれが考えてもまともだということはできまい。日本はいまや世界で最も不公平感の強い土地問題という病理を抱える国になってしまった。」これは社説の冒頭の文句です。私もこの質問をするために、いろいろ準備してまいりましたが、けさこの社説を読みまして、これはやはり大変な一つの世論として大きな国民的な問題になっているということを改めて強く感じました。  今回は、東京のこの商業地から始まった地価高騰、この間の公示でもわかりますように、地方へどんどん拡散して一段と深刻の度を増しております。東京圏では一遍おさまったかと思われましたけれども、もう一遍、第二波が押し寄せて地価上昇が高まってくる気配があります。昭和六十二年から六十三年にかけての東京圏の狂乱地価、これを再現するというような非常に異常な事態になっておりまして、土地問題は今や日本経済を揺るがし、さらに国民生活に重大な影響をもたらす大問題になってきた、こう思います。  なぜこうなるまで政府は何の手も打たないで今まで放置していたのか。もう大分前から、何年も前からこうなることがわかっておった、いまだに大した効果のある手を打とうとしておりません。なぜこういうふうになったのか、その感想をまず総理からお聞きいたしたいと思います。
  31. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 佐藤先生にお答えいたします。  先生の御指摘のとおりでございまして、今政治の一番大きい問題は土地問題、それから基本的にいけば、全国で六〇%余の人が住まいを持っておりまして、残り四〇%ぐらいは住まいを持っておりません。その住まいを持っていない人に、住まいを持てる意思のある人に住まいをどうして持たせるかというのは大きな政治課題ということで、土地問題に取り組んでおるわけでございます。実は土地というのは、御存じと思いますが、あらゆる政策、金融、税制あるいは諸施策を含めて、いかにして地価を安定させるかに努力しているわけでございますが、それにつきましては、まだある意味でその政策が十分でない点があったかと思います。その一つの前提は、この狭い国土、約三%の土地に六割の人口が住んでいる。しかもそれがふえておるというところに一つの問題があるわけでございまして、そのためには国土庁のやっている四全総、一極集中を廃止し多極分散国土をつくる、地域の振興を図るという政策を徹底してやる必要があると思っていますが、そんなわけでございまして、実は現在地価をどうして抑えるかということで、監視区域の強化、監視区域の適正な運用を図りながら、ひとつ今後も大いに努力したい。そして本当に、総理もいつも言っておられますが、所得の数倍で住まいの持てるような国土づくりをやりたい、こういうように頑張っておるわけでございます。
  32. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 御指摘のように、今の土地の高騰はまさに異常なものだ、これを何とか抑えていかなければならない、まず当面はそこに焦点があると私は強く感じておりますし、同時に、社説を引用してのお話がございましたが、やはり家を持ちたいという働く人々の願いにこたえていくような政策を打ち立てていかなければならぬというのも我々の常に考えておるところでございます。したがいまして、当面は税制とか金融の問題でできる限り家が持ち得るような施策の努力をきょうまでも続けてきたつもりでおりますけれども、これからもさらに一層これを行いますとともに、成立しました土地基本法の趣旨にも従って土地税制というものの総合的な見直しをして、住宅宅地供給、土地というものは利用するものであって投機の対象にするものではないというあの理念に忠実に従った政策努力を続けていかなければならない、こう考えております。  当面、さしあたっては東京圏五十キロぐらいの通勤圏の中で良質な住宅を十年間に百万戸つくり上げたい、こういう目標を置きまして、この目標達成のために努力を続けていきたいと考えております。
  33. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 さっきも申し上げましたとおり、土地がこういうふうになるということは今始まったことではないのです。実は今始まったことではなくて、今終わったんですね。一段落したところなんです。もうてっぺんまで上がってしまって、これから二、三年かけて対策を講じて実施しようなどということは、全く何の手も打たないと同じだと私は思うのです。黙って見ておった。  この間、NHKの「世界が問う日本の土地政策」というのを見ておりました。そうしたら、武藤通産大臣、大変立派な正直なことを言いまして、私は大変感心をしてメモしておったのです。こう言っていました。今まで政府は打つ手打つ手土地を高くするようなことばかりやってきた。私は、大変すばらしいことだと思ってすぐにちゃんとメモしましたから間違いありません。特に閣僚としては大変大胆な、しかも非常に正直な発言だと思って感心して、尊敬しました。これは、まさに私はこのとおりだと思うのです。いろいろな抑える対策じゃなくて上げる対策をしてきた、私はそうとしか思えないのですね。  これは、ある新聞の囲みの欄で非常におもしろいことを書いておるのです。総理はお忙しいからこんなこと読まないと思うのでちょっと紹介させてもらいますけれども、「土地本位制」という題です。  金本位制の国だと、金の値段が二倍にはね上がればその国の人々は海外で二倍の買い物ができる。土地本位制だと、これに非常に似たことが起こって、企業は、百倍の値段になった土地を担保にして大変巨額の金を借りて、その金を利用して海外に工場をつくって、外国の安い不動産をどんどん買いあさる。日本は恐るべき土地本位の国だ。そうして、その次がおもしろい。ああ、海外進出にそんなうまい手があったのかというので、ある国の政府がひそかに地価暴騰を画策しようとした。どんな政策をとろうとしたか。  第一は、一極集中をあおることだ。地価はおおむね山型に高騰するから、頂上を高くすればすそ野の部分も上がる。一部市に政府の機能を全部集めて、情報でおくれをとったら企業は立ち行かないだろうと、情報化時代の到来を利用して企業を集めてしまう。  第二番目。公営アパートをつくるときは、遠くて狭くて高い家賃のところをつくれ。土地に対する国民の飢餓感がなくなれば土地神話が一遍に崩れる。間違っても便利なところに公営アパートなどをつくるな。  第三番目。土地の税金を低目にしておく。企業がこう税金が高くてはとても抱えておられないといって緊急度の低い土地を手放すようなことになったら大変だから、なるべく土地の税金は安くしておきなさい。住民から不公平じゃないかといって文句を言われたら、いや、住民のためにそうしているんだと言って恩恵を売っておけばいい。  第四番目。土地本位制でたった一つ怖いのは住民の反乱だ。政府は、土地対策に取り組んでいるのだというポーズを忘れてはなりません。土地基本法などを制定して、いずれ市街化地域の農地を宅地並みに課税すると言って約束するぐらいのことはやっておかなければだめですよ。  成果がありましたか。ある国で成功したと答えておきます。  こういう非常にアイロニーを、ちょうど日本が今までやってきたこと、逆のことをやっているのですね。まさにこのとおりのことをやってきた。だから私は、武藤通産大臣が、政府のやってきたのは全く打つ手打つ手土地が高くなることしかやってこないじゃないかというあなたの言うことに、大変正直な人だなと思って感心したのですよ。何かありますか。どうぞ。
  34. 武藤山治

    武藤国務大臣 私は、ビデオを撮ってくれているようですから後でそこを見てみますけれども、私は、高くするために政策をやってきたと言ったつもりは全くございませんので、私が申し上げたのは、いろいろ私自身も長い間党の税調の幹部でもございましたし、税制面でいろいろと政策をやってまいりました。あるいはその他、金融政策もやってまいりました。しかし、結果的に土地の抑制には一向にこれは本当に役立たなかったという反省をいたしておりまして、そういう点では大変、後手後手という言葉を使ったのじゃないかと思うのですけれども、高くするために政策をやってきたなんということは私は言ったつもりはございませんので、その点はひとつ誤解のないようにお願い申し上げます。
  35. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 私も本当は後手後手じゃないかと思ってもう一遍メモを読み直したら、打つ手打つ手だったのですね、後手後手じゃなくて。打つ手打つ手土地を高くするようなことばかりやってきた。ちゃんと言いましたから、もう一遍ビデオを見てください。まさにそのとおりなんですね。まだある、どうぞ。
  36. 武藤山治

    武藤国務大臣 その点、誤解があるといけませんので、私は後手後手であったというふうに言ったつもりでございますけれども、ひとつこの国会の場で国民の皆さんにも、そういうことであったということを申し上げておきたいと思います。
  37. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 後手後手だかどうだかわからぬけれども、まさに中曽根民活以来の政府のやったことというのは、本当に土地を高くするようなことばかりやってきて、それに対して十分な手を打ったとは言っているけれども、何の手も打っていない。高くなってもうピークまで来て初めてこれから何かしようか。しかもそれをやるのは、いろいろな税制調査会だとか審議会だとかのあれを見ると、今から始めて二、三年後にこれを実施しようというのですから、これはもう何もやっていないということと全く同じことだと私は思うのですね。  政府は、特に大蔵大臣はそうですが、事あるごとに物価が日本は非常に安定している、世界で一番物価が安定しているということを盛んに誇っております。確かに、消費者物価等安定していることも事実でありましょう。しかし、一家の生計費から見ますと、家賃あるいは地代なりあるいは住宅のローンを払うなりということは非常に大きな比重を持っておるのです。ほかの物価が安定したとしても、こういう物価が上がり、地価がどんどん高くなって家賃がどんどん高くなるということになれば、事実上大変家計としてはどんどん苦しくなる、こういうことになります。したがって、物価が安定しているということで国民の生活が安定しているということとは私は違う。事実上、これは何といいますか、インフレじゃないか、こういうふうな感じを持っております。  総理は、今国土庁長官からも総理からも話されましたが、年収の五倍以内で家を取得するようにしたい、これは再三言っていますね、年収の五倍以内でやりたい。それが一つの住居を取得する限界だ、こういうふうに言われておりますけれども、しかし、土地改革も何もしないでもたもたしている間に、首都圏の平均的な住宅取得価格というものは、総理の言う限界の五倍をとっくの昔に超えてしまっている。今八八年のあれを見ますと、建て売り住宅で七・五、マンションで七倍、これぐらいの高さになってしまっているのです。これを果たして下げることができるかどうか、これはやはり非常に大きな問題であります。  この資産格差は先ほど言いましたように非常に大きな不平等感を起こしまして、一体経済大国というのは我々にとって何だ、こういうような憤りさえ起こしているわけでありまして、土地住宅、この解決は今や海部内閣にとってまさに焦眉の急であると思います。これからやるというのじゃなくて、今何をどうやるか、こういうことをもっと早急に大胆に打ち出すべきじゃないか、こう思いますが、いかがですか。
  38. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 御指摘のいろいろなことを肝に銘じながら、また今何もしないでほっておるわけでは決してございませんので、御指摘のように今、日本では年収の七倍あるいは七・五倍かけなければ首都圏で良好な住宅が手に入らないという現実も我々は調査をして理解をしております。欧米諸国においては数倍で入る、三倍とか四倍とか五倍とか。そういったことになりますと、我々の努力目標は住宅を、まじめに働いて年収の五倍程度で手に入るようなことをきちっと行えるような政策努力をしていきたい。そのために土地税制の問題や住宅金融の問題や、ただ単に融資の戸数をふやすというだけじゃなくて、大都市圏には割り増しをしていくとか、それよりもさらに宅地が提供されるような状況をつくらなければなりませんので、低・未利用地の利用計画をつくるとか、いろいろな政策を総合的に重ねてやっていかなければならないということで鋭意取り組んでおるところでございます。
  39. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 具体的な問題に入りたいと思います。  大蔵省は、この三月の二十七日に土地関連の貸し出しの総量規制の通達を出しました。列島改造ブーム以来の十七年ぶりの通達だ、こう言われております。この前に、昨年の十二月にも同じような、似たような通達を出しておりますけれども、もうそれが全く無視されて、出した途端に高くなっている、こういうような現状があります。いわば今までやったことでは、自粛の通達というのは全く無視されている、こういうふうに思わざるを得ないのです。今度の通達がどのぐらい一体効果があるのか。今までは土地融資の自粛通達というものはたびたび出されたけれども、金融機関はある程度守っているけれども、地価の上昇がちょっとおさまると、地価監視が行き届かない地域からまたまた土地融資を広げて、それが地価高騰に火をつけてきた、こういうイタチごっこを繰り返しておるのです。なぜ、もう土地が高くなるということがずっと前からわかってやっておるのに、一遍通達を出してそのままになって、またそれがおさまって高くなるとまた出すという、こういうイタチごっこを繰り返しているのか。常時、長期間にわたって今のような時代には持続的にこういうものを継続さしてやる必要があるのではないか、こういうふうに思いますけれども、大蔵大臣、いかがですか。
  40. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 委員からいろいろな御指摘をいただきましたけれども、私は前から何遍もここでも申し上げてまいりましたように、税制あるいは金融、これは土地政策の中における重要なわき役ではあるけれども、しょせんはわき役であり、そのわき役が主役を演じなければならないところに一つの大きな問題があったと考えておりますということを申し上げてまいりました。  そして、今委員からは、土地に対する融資を常に規制しろという御指摘でありますけれども、私は、やはり本来我が国の経済運営の基本的な態度というものは、内需を中心とした景気の持続的拡大を図るということでありまして、金融機関の土地関連融資に係る指導に当たりましても、このような視点からの配慮というものは十分に行う必要があるものと基本的には考えております。しかし、今回のような異常な地価高騰の中で、かつて行いました非常に、一番きつい規制でありましたと同様に、総額の伸び以下に抑え込むという通達を出したわけでありますけれども、一方では、内需拡大に必要な資金の円滑な供給というものには配慮をしていかなければなりません。同時に、公的な、第三セクター等による宅地供給の業務が遅滞しないような工夫も一方ではやっていかなければならないわけであります。  私は、今回の措置というものは、不動産業向けの融資について量的規制という従来の措置から一歩さらに踏み込んだ規制を導入したものでありまして、一方では今申し上げましたような内需拡大の要請への配慮を行いながらも、相当程度の効果が上がると考えておりますが、今委員の御指摘になりましたような視点についても私どもなりに心にとめていきたい、そのように思います。
  41. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 さっきも言いましたとおり、これは地価対策として土地融資を抑制するという必要性というのはずっと前からもう言われておったことです。それを今、数年前からの地価急騰のピークになる前にこれが行われたのならまだいいと思うけれども、さんざん地価が暴騰してもうこれ以上上がらないというこの段階になってこういうものをやって、果たして効果があるのかどうか、この点が私は、一生懸命やっている、やっていると言うけれども、本当に一生懸命やっているのか、大変疑わしいのですがね。
  42. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 委員は地価が頭を打ったと言われますけれども、確かに東京圏において一応そういう傾向は出ておりますが、例えば大阪圏あるいは中京経済圏、その他地方都市に至るまでに依然として地価の上昇の傾向はあるわけであります。私どもは、こうした状況に効果は十分にあると考えております。
  43. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 地価の暴騰を抑えるための効果が十分あることを期待するようにひとつやっていただきたいと思います。  今大臣から、この総量規制をするために景気に対する配慮をしてきたんだ、こういうふうに言っております。総量規制を導入したのは不動産向けだけで、都市開発、プロジェクト開発、内需拡大に貢献していろいろなものは対象外にしている、不動産業でも公的な宅地開発などには貸し出しの規制は除外されている、こういうふうに言われていますが、こういうしり抜けをどんどんどんどんやってしまえば、これは景気に対する配慮ということはわかるけれども、結局、本来のこの規制した効果というものが大変減殺されるのではないかと思いますが、いかがですか。  それからもう一つ、時間がないのでお聞きしますが、いつもこれをやると問題になっておりますノンバンクをどういうふうに規制していくのか、この点をひとつお答え願いたいと思います。
  44. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 必要でありましたら事務方から補足をいたさせますけれども、私は、今基本的には、どうして宅地の供給を拡大していくかという施策は欠くことのできない土地政策における視点であると考えております。仮に地方自治体あるいは地方自治体が民間とともに行います第三セクターの土地開発、宅地供給というものに対してまで、その資金の流れをとめてしまった場合にはどういう問題が生じるでしょう。私は、それは委員が御心配になる方向とは違って、むしろ土地の供給、宅地の供給をタイトにしてしまい、より人為的な引き上げの要素を生ずる危険性を持つと思っております。その限りにおきまして、私どもは、不動産業等に対しての貸し出しについては厳しい対応をしてまいりながらも、一方では、宅地供給をいかにして適正な価格で行い得るかという視点から行われる第三セクター等の宅地開発については、その資金を切ることはかえって問題があると思います。これはあるいは見解の相違なのかもしれません。  また、ノンバンクにつきましても、これは銀行等に対するような経営全般にわたる指導監督権限を持っておらないという制約がございます。しかし、その制約の中におきましても、地価高騰問題の重要性にかんがみ、これまでも業界団体に対し投機的な土地取引に係る融資の抑制が図られるような要請を繰り返す等可能な限りの努力はしてまいりました。また、金融機関のノンバンク向けの融資につきましても、このノンバンク向けの融資というものが投機的な土地取引等に利用されるようなことを防止するように、資金の使途について十分な審査を行うよう金融機関に対する指導等を行っておるわけでありまして、基本的に経営全般にわたる銀行等に対するような指導監督権限を与えられていない大蔵省の立場としては、できる限りの努力をしておるつもりであります。
  45. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 時間がもう一時間足らずに限られておりますので、余り深い議論をすることができないのは大変残念です。  問題は、この総量規制という制度を打ち出すのが十分な効果を発揮することを願うのでありまして、特にこの前の規制で問題になりましたノンバンク等に対しましても、苦衷はよくわかります。十分なひとつ効果が発生するように、発揮できるようにお願いしたいと思います。  それで次に、規制区域制度、この問題についてお聞きしたいと思います。  さきの公示価格の動向で改めて浮き彫りになったように、地方にまで燃え広がったこの地価の高騰の火の手、大変大きな問題になってまいりました。私は先ほどから申し上げておりますように、もうほとんど身動きもならない、普通の状態ではもう打つ手がないような状態になっております。したがって、この際、総理は蛮勇を振るって緊急避難の措置としてこういう規制区域制度をやるのではないか、こういうふうに考えております。新聞等の報ずるところによりますと、この問題について総理が一番熱心である、原稿にもないものを自分で言った、こういうふうにまで書いて、大変熱心なようであります。したがって、総理がひとつどういうふうに構想を持っておるのか、この規制区域制度の発動に、ひとつお考えをお聞かせいただきたい。
  46. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 過日の土地対策閣僚会議のときに、発表になりました国土庁の地域の上昇の結果とそれから見通しについていろいろな報告を聞きました。  私は、地価がこれ以上上がるのはいけないということをまず基本的に考えております。ですから、私がそこであいさつをしますときに、これ以上地価の暴騰を防ぐために監視区域制度も念頭に置いて地方自治体を強力に指導してほしいということを担当各大臣に言いました。私は、それは今も気持ちとして変わっておりませんが、ただ、地方の実情に一番詳しい知事さんが、少なくとも現在行われておる監視区域の制度というものが何か後手後手に回っておるのではないか。  それから私は、過日の国土庁の発表を聞いておりましても、何かもうちょっと効力を上げて、もう少しきちっと抑えて、上がることが予測され、上がることがわかっており、そして一年たつとこのとおり上がりましたと言われるのでは、聞いておっていかにもむなしいという気持ちを待ちましたので、当面は監視区域の制度をもっと有効に、的確に思い切って対処してもらう。それでもなおおさまらないでどんどんといろいろな危機的な状況に入っていくというようなときには、これは監視区域のことを念頭に置いてやってもらいたいということを率直に言いました。これは国土利用計画法でも想定して書いてある手続でありましたから、そう思って申し上げたのです。  これに関してはいろいろな御批判がいろいろな角度からあることは、この委員会の論議を通じても私はきちっと肝に銘じました。けれども、私の気持ちは変わりません。
  47. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生ちょっと、今総理答弁の中に監視区域の指定とおっしゃったのは、あれは規制区域の指定の間違いでございますから、規制区域を念頭にということでございます。総理答弁はそういうことです。  それで、実はちょっと付言して先生に御説明……(佐藤敬治委員「あなたの方が間違っているんだよ。総理の方が正しい」と呼ぶ)いや、総理は、急激な上昇をした場合その他においては規制区域の指定も念頭に置いてと、こういう言葉を使われたわけです。そういうことです。今監視区区域とおっしゃったから、ちょっと訂正したわけです。御了承願いたいと思います。
  48. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 もう一遍総理、言ってください。私は総理の言ったことが正しいと思っているけれども。
  49. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 監視区域の制度があって、今それの適用を行ってやっておるわけでありますが、どうしても世の中の御批判が、後手後手に回っておるとか、現実に上がるあれが目につくので、規制区域の制度をも念頭に置いて厳しくこの問題については対処をしてほしいということを私は申し上げました。それについて御批判その他があることもよく承知しておりますけれども、私はそう申しましたし、その気持ちでおります。
  50. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 私もそう聞いたのです。私もそう聞いたのですが、間違いならば今みたいに直したらいいと思います。  それでは、国土庁長官にちょっとお伺いします。  この問題は非常に難しいと私は思いますよ。いいですか。経済界からいきなりこれは反撃を食らうと思いますよ。今までも食らって、やろうとしてやれなかった。それを果たして、国土庁長官も、大規模開発プロジェクト地域を中心にして前向きに検討してやる、こう言っていますが、あなたがやれるかやれないか、やるという決心があるならばそれをひとつお聞かせいただきたい。
  51. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生にお答えします。  その前に、二つちょっと先生に御理解いただきたいことがあるわけでございますが、先ほどの話の中に、総理答弁のとおりでございますが、実は今度の土地対策で基本的に違うのは二つございます。  一つは、土地基本法というのは公共優先という原則を決めたわけでございます。それからもう一つは、実は昨年暮れに総理の指示に基づきまして土地対策関係閣僚会議で十の重点事項を決めまして、内閣を挙げてこれに取り組むということをしているわけでございます。  それともう一つ、実はこれは私見でございますが、今度の土地対策は、政策的配慮だけでは厳しい点がありまして、政治的な配慮が必要だ。その中にやはり遷都とか国会移転を言う人がございますが、そんなものを含めて検討しなければいかぬということを思っているわけです。  それで、先生の御質問に対してでございますが、実は監視区域、これは都道府県の知事とか政令指定都市の長が運用するわけでございまして、今総理がおっしゃったとおりでございますが、的確な運用をどうして図るか。その一番のいい例は、東京都が六十二年に監視区域を強化しまして、割合東京都は地価が安定した、こういう大きな例があるということがございます。けれども、その場合に、どうしても急激な上昇が避けられないという場合には、総理と同じような規制区域の指定を念頭に置いて対処したい、こう考えております。
  52. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 監視を十分にやってから規制をやる、こう言うのですが、監視区域を指定するというのは、これは後手後手に決まっているのですよ。これを発動するのは、高くならなければ発動できないのです。だから、常に後手後手になるのですよ、監視というのは。だから、これではだめだ、こういうので、こういう既成の法律の中で最強の法律である規制区域制度を今やろうとしておるわけです。非常に難しいことは私も存じておりますけれども、もはや監視区域だとかそういうなまぬるい手では、この行き詰まった土地の問題を解決することはできない。まず、さっき私が言いましたとおり、蛮勇を振るって、かみそりで小さくひげをそるような形ではなくて、大きななたでもってずばりとやるような、多少乱暴だけれども、そういうことをしなければもうできませんよ。それをやるためには、最後に残された税以外の方法はこれしかない。それに対して総理は大変積極的であると私は大変喜んでおります。やれとけしかけたいぐらいの気持ちでありますので、今総理からあれを聞いたのですが、ちょっと今茶々が入りましたのであなたにちょっとお伺いしましたが、総理はどうです。もし監視区域をやってある程度の、効果も余りない、やはりまた土地が上がるというようなことが出てくれば、これを方難を排してやる意思がありますか。いやいや、長官じゃない。やれと言っているのは総理なんですよ。
  53. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 先ほども申し上げましたように、これ以上地価がどんどんどんどんと上がっていくことが全国的に普及することは何としてもとめたいという願いを私は持っております。そのために、国会で御審議願った法律の中にいろいろな制度、仕組みが書いてございます。それについていろいろな角度の御批判があったことも十分踏まえて、監視区域の運用強化に強く地方公共団体を指導していくように指示してありますけれども、それによってもなお地価の急激な上昇を抑制することが極めて困難な事態に立ち至った場合には、監視区域の指定も念頭に置いて対処するよう関係地方公共団体を指導していかなければならない、そういったことを申し上げたのです。(佐藤敬治委員「今のは違ったでしょう。今のは、規制区域を念頭に置いてでしょう」と呼ぶ)規制区域を念頭に置いて強く指導していくように言ってあります。
  54. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 何回も申しますが、規制区域制度というのは抜かぬが花の宝刀なんといって新聞に書かれておりますように、抜くぞ抜くぞと言って見せかげておくと、そうすれば、抜かれれば大変だというので怖がってやめるかもしれない、そういう意味を盛んに強調されているのですよ。  それで、私は念を押すのですが、念頭に置いて考えてくれ、これは抜くぞ抜くぞと言って抜かないかもしれないぞという意味にも聞こえるので、もしそういうことになれば、この前も抜こうとして抜かなかった、今度も抜こうとして抜かなかった、この規制区域という法律はもうあってなきがごとしになってしまうのですよ。やると言ったら、これ以上だめになったら、監視区域がだめになってまだ地価が上がるようになったら、断固として抜くという強烈な意思を発揮するようでなければ、こんなことをしゃべったってますますだめになるたけですが、改めて、まことに失礼たけれども、改めてもう一遍総理の決意をお聞かせ願いたい。
  55. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 先ほど申し上げたとおりに私は決意をして、土地問題閣僚会議のときにも、地方公共団体に対して、規制区域のことも念頭に置いて、後手後手に回らないような監視区域の制度を思い切って適用して、値上がりを抑えるような努力をしてほしいということを言いましたし、今もそう思っております。
  56. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 それでは、税制の問題に入っていきたいと思います。  今、日本経済の強さというものは、企業が抱える膨大な含み益に象徴されて、経済全体のパイを大きくして、税制を初め諸制度を通じて国民の所得を向上させる、こういう経済政策であったわけであります。いわば戦後窮乏の時代には、物がないからとにかく物をつくる、生産第一主義で企業優遇の税制がいろいろつくられてきた。しかし今日、企業がこれほど大きくなって金余りで国の内外に怪獣のごとくに暴れ回っている。こういうときに果たしてこういうような企業優遇の税制というものが必要であるのかどうか、ここのところに、何のために現在のような状態で企業優遇税制というものを残さなければいけないか、こういう疑問をみんな持っておるわけです。私もその一人でありまして、この企業優遇税制は早急にいろいろ改革をしなければいけない、こういうふうに思っておりますが、いかがですか。
  57. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今委員企業優遇税制としてお述べになりましたものが、法人に対する税制のうちの何を直接指して意味をされるのか必ずしも明瞭ではありませんが、私どもは、この土地政策の中におきまして、企業に優遇税制を課しておると考えてはおりません。むしろ、投機的な目的を持っての短期の土地取引等について非常に厳しい課税をいたしておることは、委員が御承知のとおりであります。  こうした点を考えてまいりますと、実は私は、今委員が具体的に税制上の何を指してそう言われるのか、ちょっと理解に苦しんでおります。
  58. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 それでは一つ一つ申し上げたいと思います。  まず第一に考えられるのは、膨大な含み資産の問題であります。この膨大な含み資産が、これを担保にして金を借りて、金余りの状態をやっております。したがって、時間がないので急ぎますが、これがいわば土地高騰の一つの根源である、こういうふうに考えてもいいと思いますので、これに対して再評価してやはり税金を取るべきじゃないか。  それからもう一つは、相続税の問題がありますけれども、個人は相続税がかかるけれども、法人の場合には、倒産するか土地を売り払わない間は税金がかからない。これと比べて非常に不公平もあります。したがって含み資産に対して税金をかけるべきではないか。  さらにまた、固定資産税は経費として損金算入が認められております。したがって、地価が上がって固定資産税が高くなっても、法人税が安くなるから法人は何の痛みも感じない。さらに、借入金で土地、建物を購入した場合、利子と建物の減価償却費は経費として損金に算入する。さらに特別土地保有税、これも損金に算入される。さらにまた、短期所有を除いて赤字法人は五年以上たつと譲渡所得が他の所得と合算されるので、結局赤字法人は税金を納めなくてもいい。いろいろなこういうような法人を優遇する税金がたくさんあります。  こういう税金を、今急ぎ走りで言いましたけれども、こういうような税制というものはもう必要はないのではないか、これを改革したらいいか、必要あるかもしれませんけれども、それでも現状のままではおかしいじゃないか、こう考えますので、その点について今お願いしたいと思います。
  59. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 それぞれ具体的な税目についての御指摘でありますので、私は政府委員から間違いのないようにきちんとした御答弁をさせたいと存じますけれども、私は、やはり必ずしも今御指摘になりましたものが全部企業優遇と言われるものばかりとは考えておりません。企業活動に必要な部分として着目すべき点があるように思います。と同時に、いずれにいたしましても土地にかかる税制全体が、たしか本日から小委員会作業がスタートをすると思いましたが、既に税制調査会の中に小委員会を発足させて、これから御論議をいただいていく中で、総合的に検討されていくであろうということは申し上げておきたいと思います。
  60. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 お答え申し上げます。  ただいま大臣から申し上げましたように、本日から土地小委員会、税制調査会で審議を始めます。御指摘いただきましたような点も含めまして広範に検討を進めてまいりたいと思います。  ただ、委員御指摘の点の中には、いわゆる優遇とかいう問題ではなくて、税の仕組みあるいは企業会計のあり方上当然であると言われるものもございまして、必ずしも優遇税制という意味ではないと思いますが、しかしそれらの点も含めまして幅広く検討を進めたいというように考えております。  例えば、個別に申し上げますとかなり時間を要しますので、必要がございましたら申し上げますが、とりあえず含み益の問題だけお答えさせていただきたいと思いますが、従来の税制調査会の考え方は、これは割合に慎重に対処すべきだという意見が多いわけでございます。なぜかといいますと、一つは、所得課税ということで組み立てようといたしますと、含み益の問題は未実現のキャピタルゲインに対する課税となってなかなか難しい。じゃ保有課税かということでいきますと、これは現在固定資産税とか特別土地保有税とかございますから、それとの関係をどう見るかということでございます。それから、何分にもその企業の生産活動に使用されている土地にも課税をするということになりますので、資本集約型の産業でしかも古い産業、そこに非常に大きな影響が及ぶといったことをどう考えるかということがございます。  それからもう一点だけ、申しわけありません。法人の所有する土地の負担をどう考えるか、そこがポイントだ、法人にどのぐらいの土地についての税負担を与えるかということが問題だということでありますと、実は古く買った土地であろうと、含み資産がない最近買った土地であろうと、実は同じ問題があるのではないかという視点もあろうかと思います。  そういうようなことでございますが、いずれにいたしましても広範な検討を加えていきたいというように考えております。
  61. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 時間がないので細かい点を議論している暇がございません。  この間、日経新聞が、大都市圏を対象にして土地問題への解決のアンケートをとりました。その中で、土地供給をふやすための具体的な方策についてどうすればいいか、この中で「法人の持つ遊休地の課税を強化する」というのが七一・二%でもう断然トップであります。国民もこの点に大きな関心を持っておるわけでありますけれども、報道等をお聞きしますと、この遊休地に対して特別土地保有税、これを強化するという報道がありますけれども、これについてはいかがですか。やりますか。
  62. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今、先ほども申し上げましたように、土地税制全体につきまして、土地基本法に示された基本理念にのっとって、土地に関する政策全体を踏まえた上で、税負担の公平の確保を図りながら、取得、保有、譲渡など各段階における適切な課税のあり方について総合的な見直しを行っていただいているところであります。御案内の土地保有税につきましても、私はその中で十分な検討が行われるものと考えております。
  63. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 どうも、新聞の報道だけですが、平成二年度に出そうとしたけれども、いろいろな反対があって大蔵省があきらめた、損金算入をあきらめた、こういうような話もちょっと出ておりますが、これはいかがです。
  64. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、割合にいろいろ否定的な前置きをつけたりして御答弁をいたしておりますが、今土地保有税につきましては一切の留保をつけず、御提案の土地保有税につきましても小委員会で検討が行われるものと考えておると申し上げております点で御理解をいただきたいと思います。
  65. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 次に移りまして、この土地問題というと常に市街化農地の宅地並み課税というのが問題になって、まるで土地高騰の元凶である、これさえ解決されればたちどころに土地問題が解決できる、こういうような感じをもう何年も前から与えておるわけですが、この問題についてちょっとお聞きしたいと思います。  こういう数字があります。東京都の土地の中で、宅地と農地の比率を比べますと、昭和三十年から六十年、この三十年の間、昭和三十年には宅地は二八・九%、農地が三六・二%でありました。それが六十年になりましたら、宅地が五四・六%、農地が一三%になっているんです。これを考えますと、農地が多いから住宅の供給ができない、こういうような宅地並み課税に対する悪者論というものはまことにおかしいということがよくわかるのです。この三十年間の推移を見ますと、農地が三分の一に減っております。しかし、それでも住宅難は同じどころかますますひどくなるだけであります。恐らくこの市街化農地がゼロになっても住宅難というものは何も解消できないと私は思います。したがって、これを単に宅地並み課税をすれば住宅難の解消ができるなどという論が非常に間違いだ、私はこういうふうに思いますが、いかがですか。
  66. 山本貞一

    山本国務大臣 お答えいたします。  今先生の御指摘でございますけれども、市街化区域内の農地の取り扱いにつきましては、大変一般論で恐縮でございますけれども、良好な町づくりをするための土地利用をどうするか、こういうことを旨にしながら今までも進めてきた。それには今問題になっておる税制もあります、あるいは都市基盤整備の問題もあります。それらを総合的に勘案しながら進めていく、こういうことでやってまいりたい、こう考えております。
  67. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 だんだんお話が変わってまいりまして、昔は宅地供給のためにこれを供給しろといって、私は地方行政に長いこと、十年も理事をしておりましたから、保有税をつくったときの経過をみんな知っていますよ。今は良好な町並みをつくるためにやるんだと大分話が変化してきました。それでも結構です。  それからもう一つ、私はこの問題についてお聞きしたいのですが、固定資産税の負担率自体が非常に低い、そのために宅地並み課税を実施しても農地の宅地化は余り進まないのではないかという議論があります。そこで、宅地化を進めるために固定資産税の税率を高くする、こういうことが行われるのではないかという心配があります。これは実はこの日米協議の中にもこの問題が出てきておるのです。  ところが、これは宅地並み課税をするということと固定資産税というのは大変性格が違うのです。宅地並み課税というものは、税を高くしてなるべく手放させて、そうして売ることを強要する一種の追い出し税なんです。ところが、固定資産税というものは、宅地を供給するという土地政策の税金じゃないんです。同じものが反対の性格を二つ持っているんですね。私は、ひょっとするとこの追い出し税を強調する余り固定資産税を高くする、こういう結果が出るのではないかと思いまけれども、自治大臣、いかがですか。
  68. 湯浅利夫

    ○湯浅政府委員 固定資産税は、御指摘のとおり、資産の保有と市町村の行政サービスとの間に存在する受益関係に着目して毎年毎年課税をするという、市町村の基幹的な税でございます。そういう意味で、これを土地政策に使うという点につきましては、慎重な配慮が必要であるということを考えているわけでございます。  ただいま御指摘の市街化区域農地の問題につきましても、この市街化区域というものが、一つには土地政策の観点から論じられますし、もう一つはその周辺の宅地との税負担の不均衡という観点から出される問題もございますので、その両方を踏まえまして、よく関係省庁と話し合いをしながら議論を進めてまいりたいと思うわけでございます。
  69. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 もう一つ、この市街化農地の問題でお話ししたい。  東京は、世界の大都市の中で一番公共空地の少ない都市です。公園が少ない。その中で、この市街化農地というものは貴重な空地であると思っております。これを例えば東京都の中で見ますと、市街化区域農地の面積というものは、東京都区内で八千四百十七ヘクタール、今自民党の方々が二十三区に限ろうとして議論しておるようですけれども、区部に限りますと一千七百四十四ヘクタールなんです。非常に少ない。この大都市の中でこれしか、これだけの農地というものが非常に貴重な空地であるということがこれでよくわかると思うのです。  さっき農林大臣が、良好な町並みをつくるために、このためにもこれは非常に必要なもの、この少ない首都圏の中でこの市街化区域に占める農地というものは、今までは常に住宅を建てる、こういうことだけで議論されてきたけれども、逆にこれを永久空地として残しておくという議論が必要ではないか、こういうふうに私は思います。農地をやるならば農地をどこまでもやりなさい、そして売るときは勝手に売らないで地方公共団体なりどこなりに売りなさい、そのとき金がなければ国が出して起債でもやってやる、その利子は国が補給してやる、これはさっきの規制区域制度の中で、国土利用法の中にちゃんと一つありますから、あれを準用すればそのままできるのです。つぶす方法じゃなくて、残す方法でこれを検討することができないか、この問題についてお伺いします。
  70. 綿貫民輔

    ○綿貫国務大臣 先ほど来、佐藤先生から住宅宅地の問題についていろいろの御質問がございました。今大都市圏におきまして住宅宅地を供給するということは喫緊の重要な政治テーマでございまして、先ほど御指摘のように、今大都市圏において住宅宅地を計画的に供給するために、低・未利用地とかあるいは農地の宅地化を希望の方はさせるように、大都市法の改正というのをこの十七日に閣議決定をして提出させていただきます。それから、先ほどの農業をやりたい方、宅地にしたい方、この方々をきちっとするような法律もいずれ出させていただきたいと思っております。そしてまた、これを裏打ちするための税制等につきましては、既に税制調査会におきまして小委員会もつくられまして、鋭意検討していただいておるわけでございまして、税制と相まって、先ほど御指摘のような点にこたえていきたいと考えております。  この問題はイデオロギーの問題ではございませんので、ひとつ社会党の皆さんも御協力願いたいと思っております。
  71. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 ちょっと時間がないので急ぎますが、法人は土地を担保にして借金をして土地を買いあさっている、こういう事実に基づいて申し上げたいんですけれども、法人はそういうふうにやるけれども、しかし、企業と違って担保力に乏しい個人の場合は、借り入れられる金額というのはもう限定されているんですね。限定されております。自然に土地取得が個人間だけでなされておるならば、地価の上昇も一定限度を超えることはないのです。これは年々の所得のフローの増加と乖離がどんどん進むと買い手がつかなくなるからですね。ところが、法人がここに入ってくると全く話が変わる。借金してどんどん土地を買うから土地が高くなる、こういうことになるわけです。  これから結論を出しますと、こういうことになるわけですね。土地が市場原理に任せられていると投機の対象になって住宅がどんどんどんどん減っていく、だから宅地がふえても結局住宅はふえないという感じが出てきます。したがって、例えばヨーロッパのように住宅地域あるいは商工業地域、これを厳密に土地利用を分けて、絶対に住宅地域にはビルやそういうものは建てさせない、こういうような厳しい認可の制度をとって、企業がむやみに土地あさりをできないように、住宅地域に対してはできないようにすれば住宅がふえていくんじゃないか、こういうふうに私は思います。今のままだと、企業に物すごい力があるから、住宅地域までどんどん進出して皆食ってしまう。ビルがふえても住宅はふえないという現象が起きてくるために、この土地利用規制というものを厳重にする必要がある、こういうふうに思いますけれども、建設大臣、いかがですか。
  72. 望月薫雄

    ○望月政府委員 ただいま御指摘の点は、都市計画の用途地域の決め方にかかわることというふうに受けとめさせていただきますが、現在は、先生お話しのように、幾つかの地区についていわば混在的利用が現実に可能になっておるわけです。今おっしゃったようなことを厳密にやるためには、ヨーロッパ等のように本当に詳細計画というものをしっかり決めなければいかぬということに相なろうかと思いますが、こういったことをやるためには、都市計画の手続問題もありますけれども、何よりも日本の土地利用の実態等も踏まえて、そこまで純化することができるかどうか、大変に難しい問題でございます。この辺については、かつて都市計画法の抜本改正をやったときにも十分に議論をした経緯がございますが、現在私ども、今の段階ではなかなか我が国では難しい制度ではないか、こんな感じをいたしておる次第でございます。
  73. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 そんな難しい難しいと言って何もやらないから今みたいな状態になったんですよ。  今いろいろ土地規制をやる、あるいは住宅供給をやるという方策をいろいろやったけれども、これは供給の問題です。しかし、供給と需要とがバランスがとれていればいいけれども、供給を幾らしてもそれ以上に需要がどんどんどんどんふえてくると、これはいつまでたっても解決できないんです。  そこで、東京、大都市圏に人口集中をどう排除するかということが大きな問題になってくるわけであります。一体、東京へ人口集中を抑えるにはどうすればいいか。地方で生活できるようにするしかないんですよ。地方で生活できないから、みんな大都市へ集まってくる。これは世界のどこの大都市も同じなんです。その地方に何とか生活ができるようにするというので、四全総というものをつくりました。私も土地審議委員のメンバーの一人であれを聞きました。しかし、初めは東京一極集中をうたってきまして、委員から文句をつけられて、一夜にして、一週間たったら今度は多極分散になってきました。内容は何も変わっていません。今現在見たところ、この四全総というものは何の効果も及ぼしていない。四全総を早急に見直すつもりはございませんか。
  74. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生にお答えします。  先生はもう非常によく御存じでございまして、見直しということはもっとしっかりやれ、こういう意味に理解して御答弁させていただきたいわけでございますが、四全総は、先生御存じのことでございますが、一極集中を排除しまして多極分散を図るということで、地域の振興を中心に国土の均衡ある発展を図るということでやっているわけです。特に、実はそのためには社会資本の整備ということで、交通とか情報とかそういう基盤を整備しながらどうするかという問題でございますが、その間における経済社会の変動に対してどう対応するかということでございますが、これは国土審議会の中に小委員会をつくりまして、地域の実情に応じた対応策をつくっていくということでございまして、先生の言うようなことのないように今努力しているわけでございます。
  75. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 小委員会をつくるのじゃなくて、四全総を見直すつもりはあるかないかと聞いているんですよ。小委員会がどうだか、私は何もわかりません。
  76. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えします。  四全総につきましては、六十年九月に制定されたわけでございますが、これは大変骨格は正しいと理解しておりまして、変えるつもりは毛頭ございません。その地域におきまして経済社会の変動に対してどう対処するかということにつきまして、いろいろ今小委員会で検討しておるということでございます。
  77. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 何が何だかさっぱりわからない答弁であります。つき合っておられませんので、次に移ります。  東京が、どんどんどんどん人口が集まってきているので大変な状態になっているのは、御承知のような状態であります。例えばごみの問題、きのうの新聞を見ますと、東京のごみは五百万トンをもう突破してしまって、二年もたたないうちに皆埋まってしまった、こういうようなことを言っております。さらにきのう私の方の委員から出した交通問題、何ともならない状態になっております。特にごみだけじゃございません。このごろは人間を捨ててきているんです、東京都は。私のところに東京都の補助で建設された精神薄弱者更生施設というのが四つあります。それから、養老院と言っては怒られるかもしれませんけれども、そういうのが大野台というところに来ております。これは東京都が自分のところで養えないものだから、東京都が金を出して建物をつくって入れて、そして経営者から何から全部、みんな出しているんです。これは私のところの秋田県だけじゃありませんよ。今あるのだけで、栃木県、静岡県、群馬県、山梨県、千葉県、埼玉県、神奈川県、長野県、福島県、山形県、みんなある。どんどん使い物にならない人を、老人を外へ出して、自分で養おうとしていない。  厚生大臣にちょっとお伺いします。  この間あなたは、NHKの対談で、これからは在宅介護、これを重点にしていかなければいけないと盛んに言っていました。そして、あなたと一緒に出ました加藤六月政調会長がこう言っておりましたね。五九%も老後を子供に頼ることができないという人がいる。そんな親がどうしてそんな子供をつくったのか、親の顔が見たいというような意味のことを言っていました。私はあれを見て大変びっくりしました。あなたも隣にいてやっていたんですね。しかもその前のアンケートは何かというと、親と子供が一緒にいたいというアンケートがこれまた七割あるんです。しかも、果たして頼れるかというのは、頼れないという人が五九%もあります。いいですか、この乖離を、いたいけれどもいられない状態が今なんです。それをあなた方は、ただ在宅介護で、親が年とったら子供が面倒見るのは当たり前じゃないかという、いわゆる新保守主義という思想でもってどんどん犠牲を強いたならば、これは立っていかないんです。  特に東京を見なさい。自分の町でさえ養えないで、みんな地方に、金さえやればいいだろう、おまえのところは老人でも使い物にならない人でも人口さえふえればいいだろう。それでもありがたがってもらわなければいけない過疎地の惨めさ、こういうことがあるんですが、もう東京をこのままにしておいてはどうにもならぬ。だから私は、何とかして一極集中を排除して多極分散をすることはできないかと言ってあなたに聞いたけれども、わけのわからない答弁ばかりするんです。  今、与野党一緒になって首都移転を盛んに議論しておりますね。私はもう今の東京の状態は、このままになっていろんなことをやっても何ともならない、本音から言うとそう思いますよ。むしろ思い切ってこの際首都移転をして、このいろんな問題、行き詰まった問題、これを緩和して解決するようなこと、そういう大胆なことを考えないと、もうこの状態を脱却できないんじゃないか、そんな感じを強くするのですが、いかがですか。これは総理にひとつお聞きしたい。
  78. 津島雄二

    ○津島国務大臣 佐藤委員御指摘のように、大都市圏におきまする廃棄物の圏域内処理が非常に困難になっておる。その結果といたしまして、大都市圏からのごみが持ち込まれるという悩みは、委員の地元におかれましても、私の地元におきましても問題になっているところでございます。北海道、東北六県を初めとする各方面からいろいろな意見が出され、実情については十分調べて理解をしておりますが、ごみの問題は消費経済活動と直結する非常に難しい問題でございます。今この問問の解決のために、地方団体などの関係者の知見を結集しつつ、廃棄物の処理対策の多面的な見直しについて検討しておりますので、だんだんと委員の御指摘にこたえられるように前進をいたしたいと思っております。  一方、お年寄り等の問題でございますけれども、私どもは今考えております十カ年戦略において、お年寄りを本当に地域の一人として人間的に大切に老後を過ごしていただくという見地から在宅介護を打ち出しておるわけでございますが、そういうことの中で、どなたも、御本人も、それから御親族の方も、できるだけ自分の地域に近いところで老後を送っていただきたい、施設に仮にお入りになる場合も。そういう御要望が非常に強いわけでございます。在宅介護は必要でございますが、同時にまた、施設に入らなければならない立場の方もある。そういう方に対しまして、特別養護老人ホーム等をできるだけ、大都市であれば大都市圏内につくって差し上げるというのがやはり基本だと思っております。  そういう中で、委員が御指摘のように、地価が高騰いたしますと非常に土地の確保が難しくなる。これにこたえるためには公有地をやはりできるだけ利用させていただく。それから公有地に複合的な施設をつくりまして、御要望にこたえていただく。それからまた同時に、基本的には所有地に建てるという原則でございます、民間がおやりになる場合に。しかし、これは賃貸でも結構であるという線を出したり、私ども一生懸命努力をいたしておりますので、御理解をいただきたいと思います。
  79. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 ただいま国土の有効利用ということを考え、また四全総の趣旨に伴って一極集中を排除するためにいろいろな努力を重ねておりますが、後半で申された首都の問題につきましては、これはもうさまざまな御意見がございます。私どもも首都機能の移転の問題については、いろいろな提案やいろいろな議論をきょうまでもしてきておりますので、今後とも先生のただいまの御質問のこと等も踏まえながら、私どもがきょうまでやってきた首都機能移転の議論、勉強もさらに進めていきたいと考えております。
  80. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 終わります。
  81. 越智伊平

    越智委員長 これにて加藤君、佐藤君の質疑は終了いたしました。  次に、松浦利尚君。
  82. 松浦利尚

    松浦(利)委員 もう時間が午前中はありませんから、一問に絞って事実を確認して、最後に御意見を承りたいと思います。  総理、私が総理が言われたことで非常に印象に残りますのは、海部内閣は消費者重視の政策をとっていくということを言われました。海部内閣の支持率が上がっておるという世論調査が出ていますが、まさにそのことに対する期待だろうと思うのです。そのことについて総理は、今でも、これからもそういう方向でお進みになるのかどうか、その点をもう一遍、確認のつもりではありませんが、お聞かせいただきたいと思います。
  83. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 私は消費者の立場に立って物を考える、これを大切にしていくということを申し上げてまいりました。それは、私自身も含めてすべての国民は、ある意味では、視点を変えれば消費者であります。同時に、最近国が世界でも指折りの豊かな持てる国になったと言われながら、国民の皆さんにその実感がないという、そういった御指摘等も随分ございました。それは、生活の質が国力にふさわしいものになっておらぬのではないかという世論であると率直に受けとめました。あらゆる立場において努力していただいておる国民の皆さんの生活の質的向上を図るということ、消費者の立場に立って物を考えるということ、これは大切なことだと考えてまいりましたし、現在もこれからも考え続けていくつもりでございます。     〔委員長退席、近藤(鉄)委員長代理着席〕
  84. 松浦利尚

    松浦(利)委員 その立場でこれから質問をさせていただきます。  実は、御承知のように、消費者が非常に大きな犠牲をこうむった事件としてネズミ講事件がありました。あるいは豊田商事事件がありました。APOジャパンという事件もありました。またジャパンライフの事件というのもあったわけですが、現在なおこの問題は進行しています。特に神奈川県下ではMBCあるいはロートスといったマルチ商法が今拡大をし始めておりますし、また全国に波及をしようとしておるわけです。  そこで、まず最初に経企庁にお尋ねをいたしますが、これまでマルチ商法あるいはマルチまがい等について苦情の申告が来ておると思いますが、何件くらい来ておりますか。事務当局で結構です。
  85. 末木凰太郎

    ○末木政府委員 私どもで所管をしております特殊法人の国民生活センターというところでこのような消費者の苦情、相談等を受け付けておりますが、昨年の九月現在で千六十八件ほどこの件についての照会がございました。
  86. 松浦利尚

    松浦(利)委員 そしてまた、私が調査をいたしました東京都消費者センターでは、一万六千九百七十件申告が来ておるわけです。これが全部若者であり、年寄りがその大半の犠牲をこうむっておるわけです。  その中の一つでありますが、もう下火になってきておるのですが、例の原ヘルス工業というのがあるのですね。もうテレビコマーシャルで大変評判をとりましたあのバブルスターを売って歩く商売なんですが、これも事務当局にお尋ねをいたしますが、まず厚生省、このバブルスターというのは八万ヘルツの超音波が出て非常に健康にいいんだという、そういう認可が出されておってそれを承認をしておられると思うのですが、そういう事実があるのかないのか、厚生省、お尋ねをします。  それからまた、これは電気に関する器械ですから、甲種電気器具型式認可というのが必要でありますから、これは通産の方に恐らく出されておると思うのです。通産の方にそういう認可が出されておるかどうか、簡単で結構です。
  87. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 バブルスターにつきましては、医療用具の一つとして、ふろの中でお湯と一緒に泡を出すというような性能のものでございますが、六種類のものが承認されております。医療用具でございます。
  88. 山本雅司

    山本(雅)政府委員 今お尋ねの電気による気泡の発生器でございますが、これは電気用品取締法に基づきまして型式認可を出しております。
  89. 松浦利尚

    松浦(利)委員 通産は、あるいは厚生省は、その許可をするときにはどういう基準で許可をされるのですか。書類審査ですか、それとも実物をちゃんと見た上チェックをして認可をしますか。書類審査だけですか、どうですか。
  90. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 申請書類に基づいて審査いたしますが、必要があります場合には現物を実際に見る、こういうようなやり方をいたしております。
  91. 山本雅司

    山本(雅)政府委員 電気用品取締法に基づきます型式認可は、事業者が登録事業者であること、それから具体的なその物が検査に合格していることを実際に確かめてやっております。
  92. 松浦利尚

    松浦(利)委員 総理にぜひ聞いておっていただきたいと思うのですが、これは八万ヘルツの超音波などは全く出ておらないのですね。そういう検査はされておらないのですよ。申告内容にも八万ヘルツの超音波が出るなどとということで認可、型式等をとっておるはずはない。そしてまた、ここにこのバブルスターを売る人の研修用の書類があるのですが、これを見ますと、もうあらゆる病気に効くのですね。神経痛、痛風、関節リューマチ、高血圧、心臓疾患、胃潰瘍、肝臓病、低血圧、腎臓、不眠症、アレルギー症、むち打ち、糖尿病、自律神経、脳卒中による後遺症。こういうのが配られて、こういうことでそのバブルスターが売られるのですね。  これは厚生大臣、認可されたのは厚生省ですが、現実にこういうことで売られておるのですが、これはお認めになりますか。
  93. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 バブルスターを使いました場合に認められております効能は、いわばマッサージ効果あるいは温熱効果、こういったようなものでございまして、それによって病気が治るとか、こういったような効能を認可いたしておるわけではございません。
  94. 松浦利尚

    松浦(利)委員 これは、バブルスターが別の組織としてつくっておるへルシィバンクというところが出すレポートですが、これで宣伝するわけですね。この宣伝をしておる内容というのは、通産省が認可をした、厚生省が認可をしてくれたということだけが重要視されるのですよ。私の売っておるこの品物は政府が認めた、厚生省やら通産省が認可したり認めたものです、うそは言いません。そうすると、やはり親方日の丸の発想というのが残念だけれどもあるのですよ。ですから、この人がここで何と強調しておるかというと、「一年半かかってようやく通産省から許可をもらうことができました。」「あとは厚生省に医療用具として認可してもらうためにまた一年半」かかりました。非常に難しい許可、認可をやっとこさっとこもらって、これがにしきの御旗になって売られるのです。ここが一つの問題ですね。それに非常に国民が、しかも弱い人たちがごまかされる。  どういうところに問題があるかというと、今度は売り方ですね。結局被害者が加害者になるという、俗に言うと株投機と同じようなもので、株を買った人にも責任があるわけですね、今下がった、下がったと騒ぐけれども、率直に言って。そういうことがあり得るわけですから。ところが、そうは言ってみても、これにかかる人が全部弱い立場国民なのです。ここに切々と訴えた手紙がたくさん来ておるのですよ。要するに若者が、このバブルスターを売ることによって例えば十台売ればこれだけの月々収入をもらえます、さらにこれだけ子をふやせばこれだけのものになります、そういうのが、ここに普及還元プログラムというのがあるのです。これも企業マル秘で使われた書類ですが、これはなぜかというと、これを表に出すとマルチにひっかかるものだから隠密裏に使うのですね。これを見ますと、売り上げがだんだん上がっていくたびごとにその人の収入が上がるようになっていきますね。普及員からゴールド普及員になり、それからスーパーゴールド普及員になるというふうに、どんどん売る台数の多さによってその人の懐に入っていくのが多くなるのです。そういう仕組みなのですね。  ところが改正訪販法では、御承知のように、売る組織とその別の組織と組織を別にして、普及する組織とほかの組織を分ければこれは改正訪販法の対象にならない、そういうことを通産省が指導しておるわけではないが、解説するわけですよ。決してこれは武藤さんのところをいじめるつもりで言っているのではないのですよ。それは質問されたからそう答えざるを得なかったのでしょうが、通産省の担当者は何と答えておるかといいますと、これは訪販新聞で通産省の担当課長、気の毒ですから名前はもう言いません。写真が見えておるそうですが。それでは名前も、課長さんは決して、法律の解釈を言っておられるのですから、課長を追及するつもりはありませんから断って言います。通産省の消費経済課長の田島秀雄さん、この方が法の解釈を求められておるのです。  その法の解釈というのは、実は高知県で警察がしびれを切らして捜査に入ったのですね、訪販法五条違反で。それについていろいろ話をしたら、システム自体に問題はないのですと。ここにこういうふうに、全文読み上げますと、ヘルシィバンク協会というのがあるのですね。これは健康をつくるため、増進させるための組織、このバブルスターを売る社長と同じ人が会長ですが、「ヘルシィバンク協会が連鎖販売取引の組織であると認定はしていません。」ですから、ヘルシィバンクというのは連鎖販売取引の組織ではない、物を売る組織は別個になっておる、だからこれはこのシステム自体に問題はありません、こういうふうにこの方は解説をしておられるのです。なるほど改正訪販法というのはそのとおりなんです。  ところが、これが広く流れるのですね。そしてまた、この原さんというのは何と言うかというと、法に触れないように厳正に法を守る立場でやっておりますと、こう言っておるのです。その裏側では、このヘルシィバンク協会というものを通じて、さっき言ったようにゴールド普及員とかなんとかというのをつくっていくのです。しかも、上に行けば行くほど収入がふえますから、自分で借金をして買うのですね。あるいは自分の友達を会員にしていく。そして青年の人、お年寄りの人たちが実は全部これにひっかかっていっておるのですよ。そして今、これを買った人たちは返済に非常に困っている。しかも、その器械というのは二万もしない器械。分解をしてみたら、超音波も出ない、何でもない簡単な器械、それに二十万近くの金を投じている。これが野放しになっているのですね。  高知県警の捜査について警察庁にお尋ねをいたしますが、捜査に入って調べるのに本当に大変だったと思うのですが、これはどういう状況になっていますか。
  95. 加美山利弘

    ○加美山政府委員 お答えいたします。  バブルスターなる浴用超音波装置の高知県警における捜査についてでございますが、原ヘルス工業の販売組織であるヘルシィバンク協会横浜事務所の販売員らがバブルスターを販売するに際しまして、訪問販売法に定めている契約内容に関する書面を交付せず、かつ相手を不安に陥れたり困惑させたりなどの禁止行為違反をした事実につきまして、平成元年十二月以降、関係箇所の捜索、被疑者、参考人の調べ等所要の捜査を行いまして、本年の二月に被疑者六名を書類送致しているところでございます。
  96. 松浦利尚

    松浦(利)委員 これはもう結審があって、二人で、一人が十五万、もう一人が二十万の罰金刑で終わったそうですが、しかし被害を受けた人は物すごい被害を受けておるのですね。  そうすると、外為法違反の関係はどうなったでしょうか。
  97. 加美山利弘

    ○加美山政府委員 お答えいたします。  外為法違反の関係はどうなったかというお尋ねでございますが、兵庫県警察におきまして、原ヘルス工業の社長らが数回にわたって額面総額約十数億円分の小切手を韓国へ不正に持ち出した容疑で、平成元年十二月同本社などを捜索いたしまして、現在所要の裏づけ捜査を進めているところでございます。  以上でございます。
  98. 松浦利尚

    松浦(利)委員 今言われたとおりです。そして、これは図書館の方でレファレンスで調べたのですが、原ヘルス工業は一九八六年に八千六百万の所得があったと申告されています。ところが、八九年、四年後には三十七億六千百万円の所得を得ている。ですから大変な利益を得ておるわけですね。  大蔵省にお尋ねをしますが、これは個人のプライバシーにかかわる部分ですが、こういうふうに急激に所得を伸ばしてきておる企業ですから、間違いがあってはいけませんので、税務調査等は行われておると思うのですが、調査は行われておるのでしょうか、国税庁。
  99. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今担当の政府委員が参っておりませんので、後刻調べて御報告を申し上げます。
  100. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それで、これからが非常に重要なところだと思うのです。さっきの土地の問題と同じなのですが、実は平成元年の九月二十九日に「浴用超音波装置のマルチまがい取引にご注意」というのを国民生活センターが流しておるのですよ。ですから、政府自体もこれはどうもおかしいから注意しなさいよという警戒警報を出しておられるのですね。ところが、これが警戒警報を出しただけで行政的に何もないのですよ。ですから、もしこういう事実があったら直ちに調査をして許認可を取り消してしまえば、被害は最小限度に食いとめられたはずなんです。  だから、先ほど冒頭確認をしたように、消費者重視の行政をされます、こう言われるけれども、ないんですよ。企業側に対しては先ほど言ったように許認可をして野放しにしておいて、被害者が出る、被害者が出たらこういう情報、警戒警報を流しただけで後は犠牲の出っ放し。株と同じですよね、NTT株と一緒ですよ。それはおまえたち国民が泣くんだ、こういうことではやはり消費者は決してよくはならぬと思うのですよ。  しかも、この訪販法の改正法を審議したときに、マルチまがいについてもこの法律を発動すれば絶対にこれからこういうマルチのようなものは起こりませんと政府ははっきりと答弁しておる、この法案が通ったときに。それはここに会議録があります。商工委員会議事録がちゃんとありますよ。そういうふうに国会で発言をして、さあこれでもうマルチはなくなるだろうかと思ったら、なくなるどころか出るばっかりでしょう。  この問題について、ぜひ厚生大臣、通産大臣、こういうものについての許認可のあり方、それから許認可したものに対する責任、国が許可をしたことによってその許可が利用されておるわけですから、この許可、認可に対しての責任は政府がとらなければいかぬですよ。どうされようとしますか、その点をはっきりお聞かせいただきたいと思う。
  101. 津島雄二

    ○津島国務大臣 松浦委員の御指摘の点で、まず事実関係を若干補足させていただきますが、先ほど薬務局長からお答えいたしましたように、同種のマッサージ効果を有するものと同等のものということで承認をいたしましたが、その広告の仕方に非常に問題がございまして、これまでも承認前の広告、虚偽誇大広告等の例がございまして、違反広告の中止、広告物の廃棄等を強く指導しておったところでございます。  これは、国民生活センターから今のマルチの問題で情報提供がある前に、既に私の方ではそれをしておるわけでございますけれども、その後、国民生活センターから消費者被害早期警戒情報の提供がございましたので、厚生省としましては、薬事法違反の不正な広告がマルチ商法に利用されることのないように、今後とも強く指導、取り締まりを進めてまいりたいと思います。
  102. 松浦利尚

    松浦(利)委員 厚生大臣、決して過去のことを責めておるのじゃないのです。やられたんでしょう、さっき言ったようにこんなことをやっておられるのだから。ただ、言いわけではだめなんですよ。現在犠牲を受けた国民が、言いわけすることによって犠牲がなくなるなら、幾ら言いわけしてもらってもいいのです。しかし、現実に犠牲を受けた国民は言いわけされたってどうにもならないですよ。だから私が今言うのは、こういう状態がこれから起こったときには許認可を取り消しますか、こう聞いているのです。はっきりしてください。
  103. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 今大臣から申し上げましたように、広告の仕方について従来から非常に問題があったわけであります。何回言っても聞かない、こういうことになれば、それは問題をまたいろいろ検討しなければならぬことはあり得ると考えております。
  104. 松浦利尚

    松浦(利)委員 私はお役人の人たちの立場はよくわかりますよ。しかし、悪いことをして、これがまたバブルスターというのは泡だから泡のごとく消えるのですよ。それはもう間違いないです。もうかったら逃げるのだから。もうかってしまったら組織を解散して逃げるんですよ。それがマルチの典型的な例なんです。そのことをよく頭に置いておかなければいかぬですよ。だからもうかる前に、気がついたときにはぱっとしなければ。あなたの今の答弁を聞いておったら、これからもだんだん野放しになりますよ。どんなことをやってみようと何しようと、お役所の方は、一遍許可、認可をもらいさえすれば後は取り消しはないし、どんどんもうかってしまったら自然消滅、こういうことになったら、これからは金もうけする手段として幾らでもマルチまがいは起こりますよ。  今現に私が指摘をした神奈川県で始まっている若者向けのMBC商品というのは、私たちが国会で参考人で呼びつけたAPOジャパンの人が、その系列の人がやっているのですよ。生き残っているのですよ。ロートスというところではリトグラフを売りつけて回るのですよ。この人もかつてマルチ商法で国会に呼びつけた人ですよ。みんな一回やっておるのですよ。逃げてしまってまた始めるのです。ほとぼりが冷めたらまた始めるのですよ。  はっきりしてください、はっきり。いや、あなたはもういい、大臣ですよ、大臣。許認可取り消しましょう。悪いときはぱっと取り消しましょう。
  105. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 訪問販売自体の問題で、薬事法上の問題はまた別の問題でございますが、しかし虚偽の広告とかこういうものを繰り返しやる場合には、業務の停止とか、こういう処分があるわけでありまして、私は、そういうことを含めて検討をしなければならぬ事態もある、こういうことを申し上げたわけでありまして、十分な指導をしてもなお聞かない場合にはそういう措置を講ずる、こういうことは当然のことだと考えております。
  106. 武藤山治

    武藤国務大臣 今お話を承っていて、もう一つ法律で、例えば不当表示防止法という法律がありますね。例えばそういう誇大広告をしているものは、これは公取委員会の方ですけれども、そういうところでも取り締まるということが一つ必要ではないか。やはり消費者はみんな善意ですから、みんなそれをいいと思っているのでしょうから、間違っているものはやはり不当表示なんですから、不当表示防止法できちんと取り締まるというのがまず先ではないか、こういうように私は今お話を承って感じました。  私の方の電気用品取締法というのは、御承知のとおり火災とかあるいは感電とかそういう観点からやっておりますから、これでその型式を取り消すというわけにはまいらないわけですね。  ただ問題は、先ほどのマルチの関係は、これは一昨年ですか、訪販法の改正をやりまして、業務停止命令までできるようになっております。それを十分その効果を上げてないというのなら、これはきちんとまずその法律に従ってやるべきであります。それでもまだ十分でないときは法律改正を考えるべきだ、こういうふうに私は考えております。
  107. 松浦利尚

    松浦(利)委員 もう台湾に逃げよるんですよ、台湾に。これが台湾でバブルスターを宣伝しておるんですよ。これ、台湾ですよ、同じ仕組みで。私は中国語がわかりませんから、どういうことが書いてあるのかわかりませんけれども、外務省の中国語堪能の方はおわかりだと思うのですが。マルチ商法が台湾に輸出されるんですよ。これは必ず対日感情を悪化させますよ。  この前、ホーム・アンド・ファミリーという会社が台湾にできまして、そしてマルチまがいの商法を始めまして、それでわあっと台湾の国民が反発をしたために、法律をつくる前に消えてしまったんですよ。そういう事件が前あるんです、台湾に。ところが、今度具体的に、今度はこの原ヘルスがこういう資料をつくって台湾に乗り込んで今始めておるんです。日本で決着をつけないから、どんどん行くんですよ。そして泡のごとく消え去ってしまったら、もうほったらかしにしておくものだから、今度は生き返るんですね、外国で。これは日本の恥ですよ、こんなマルチ商法が輸出されるなんてことは。  これはもう午前中の時間も余りないんですが、大臣、これは所管は通産ですわね。どういう方向を、台湾なんかに上陸しておるんですが、どうされますかね、これは。
  108. 武藤山治

    武藤国務大臣 先ほど申し上げましたような手だてが必要だと私は思っています。だから、まず私の方の電気用品取締法ではこれはどうにもならないものでございますから、やはりそこは先ほどのように不当表示防止法という法律がありますから、これできちんとやるということがまず第一だろうと思います。  それから、今のマルチの関係で、そういう悪質なものについては、一昨年の法律改正で業務停止ができることになっておりますから、それできちんと執行するということが大事だろう。  外国へ行っちゃったのをどうするかというのは、これは大変私ども難しい。外国でいろいろやっていることまで国内法で規制もできませんから、これは従来、私もよくわかりませんが、これは事務当局が承知していると思いますけれども、接触があるならば、やはり行政的にそういうことは好ましくないことですから、できるだけ指導して、そういうことは控えるように指導するというのは当然の行政官庁の責任だと私は思いますが、ただ、そういう接触があるのかどうか、私もちょっと承知をいたしておりませんので、その点のところは事務当局に後ほど聞きまして、もし接触があるのならば、その辺はきちんと指導するようにさせていただきたいと思っております。
  109. 松浦利尚

    松浦(利)委員 もう午前中これで終わりますけれども――どうぞ。
  110. 津島雄二

    ○津島国務大臣 ただいまのお話を承りまして、大変ふぐあいな状況だと思います。  それで、マルチ商法の方は、やはりマルチ商法を管轄する行政官庁でしっかり対応していただく。今の通産大臣の御答弁のとおりでございますが、私の方といたしましても、薬事法の遵守の見地からもっとうまい対応ができるかどうか研究させていただきたいと思います。
  111. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それでは最後に、公取の方に、こういう問題等についての今後の方針をお聞かせいただいて、最後に総理から、本当に消費者行政の立場に立ってこういう事実をどうするのか、もう雨後のタケノコのように出てくるこういうマルチまがい商法というものに対してどう対応するのか、それをお聞かせいただきたいと存じます。  最後に、余り例として出したくないのですが、「フォーカス」がこの原全三郎という人をフォーカスしておるのですよ。この人が「買い漁った不動産」ということで、ハワイにホワイトハウス、ピンクハウス、マウンテンハウス、ロスでは十七階建ての豪華なビル、こういった設備投資をどんどんしたというふうに書いてあるのです、これに。だから、日本でもうかった金、みんなハワイに行って、ロスで不動産で使っておるわけです、この人は。頭がいいといえば頭がいいのですけれども。こういうことが正義として許されるかどうか。最後に公取、そして総理のお考えをお聞きして、午前中は終わります。
  112. 梅澤節男

    ○梅澤(節)政府委員 不当表示の問題につきましては、早急に関係省庁とも連絡をとりまして、私どもとして厳正な措置をとるべきというふうに判断をいたしましたならば、きちんと措置をいたします。
  113. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 指摘されましたようないろいろな事態を、関係当局も今御答弁申し上げたように受けとめておるわけでありますから、いけないことはいけないときちっと早く処置をとるように指示してまいりたいと思います。
  114. 松浦利尚

    松浦(利)委員 もうそれ以上はあれしません。終わります。
  115. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員長代理 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十六分休憩      ────◇─────     午後一時二分開議
  116. 越智伊平

    越智委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、大蔵省当局から発言を求められておりますので、これを許します。岡本国税庁次長
  117. 岡本吉司

    ○岡本政府委員 先ほど、原ヘルス工業にかかわります法人税の調査につきまして御質問がございました。個々の法人の調査をしているかどうかということは、やはりちょっと御勘弁いただきたいと思うわけでございますが、ちなみに、この法人につきまして所得金額が公示されております。  最近三年分を申し上げてみますと、例えば六十一年の十月期につきましては五億六百九十三万円、それから六十二年の十月期につきましては、当初九億四百九万円で公示されておりますが、その後、この公示金額の所得金額が修正されております。修正にはいろいろ理由があると思うわけでございますが、修正されておりまして、これが十億一千七百六十三万ということで、約一億一千万以上ふえているわけでございます。それから六十三年の十月期でございますが、これが三十七億六千六十三万、こういう公示になっております。
  118. 越智伊平

    越智委員長 質疑を続行いたします。松浦君。
  119. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それでは、今から構造協議関係について最後に御質問させていただくのですが、その前に、実は今度ニコシアで行われましたIPUの総会に院を代表して行かせていただきまして、四月の九日に帰ってきたわけですが、その間実は経験したことを含めて、ちょっとお尋ねをさせていただきたいと思うのです。  それは、飛行機の安全の問題にかかわるパンアメリカンの扱いの問題です。御承知のように、パンアメリカンというのは大相撲の優勝力士にトロフィーを贈られまして、非常に日本国民には親しみやすい航空会社の一つだというふうに私たちは理解をしておるのです。ところが、たまたま同僚議員の中で、キプロス入りするときにパンアメリカンを使用したのですね。もちろん外交旅券を持って行かれたわけです。奥様を同伴をしておられたのですが、たまたま時間の関係でパンアメリカンを使ったところが、御承知のように、航空安全のために金属探知装置を通ることは、これは当然です。ところが、その装置を通り抜けた後の処置、バッグの扱いですね。有色人種である日本人を含めてアジアの人たちは全部抜き出されまして、それでその奥様が持っておられるバッグを、警報が鳴りもしないのに大衆の面前で全部、下着まで広げて振ってみて、大変な屈辱を受けたというお話が実は私たちの議員団の中で出たわけです。  帰りがけに、実は私たちは東西ドイツを訪問する日程がありまして、そちらの方に回らせていただきまして、ジュネーブからチューリヒまではスイス航空を利用して、チューリヒからベルリンまでパンアメリカンを利用したわけです。ところが、最初は全部平等に、あなたが持っておるバッグはこういうものはないですか、ああいうものはないですかと丁寧にチェックをされまして、それは口頭チェックですから、それはそれでいいのです。それから出発ゲートで外交旅券を見せて中に入ります。もう一遍今度は荷物をチェックする場所で外交旅券を見せるのですね。もちろん私たちは外交旅券を持っておりました。私は探知装置を通りましたけれども、一切何も持っておりませんから鳴りません。三人同僚がおりましたが、全部、一人は鳴りましたが、鳴ったのはペンシルが鳴っただけで、それを見せてそのゲートは通ったわけです。ところが、バッグは鳴りもしないのに全部あけられまして、私のフィルムのふたまであけて中をチェックするのですね。私たちの同僚の人たちも全部そうです。ところが、有色人種でない人たちは、探知機で鳴ったやつをちょっと見ただけで、すうすうすうすうみんな出ていくのです。我々だけが引っ張り出されるのです。私は人相が悪いから出されたのかもしれませんけれども。ところが、幸いなことに後ろの二人もやられていますからね。  私は、航空安全ですから厳しくしなければならぬことは認めます。しかし、これはあくまでも平等でなければいかぬ。日本人であろうが、どこの人であろうが、全部平等にチェックをしてもらわなければいかぬ。私たちはジュネーブから荷物を発送しておりますから、チューリヒ経由でベルリンまでずっと行く予定になっておったのですが、たまたま領事館の人がついておられたからわかったのですけれども、私たちだけ別の自動車に乗せられて貨物のあるところに連れていかれまして、それでチェックするのです。おるのは皮膚の同じ人たちばかりです。私たち三人と、あとアジアの人が一人おられましたね、インドネシアの人でしたか。四人。それで、ベルリンでいろいろ邦人の人なんかと会って話をしたのですが、ところが大変なことがあるのですよね。大体外交旅券を持っておる人は日本国を代表して外国へ行かれる人ですね。私は、お名前を出して大変まずいかと思うのですが、一つの例として、今度ウルグアイ・ラウンドに経済大使として行かれた方、その方も同じ扱いを受けておるのです。それで、総領事がベルリンを出発する人に対して、いやこの人は外交旅券を持っておる人だから、こういうふうに幾ら言っても聞かないのだそうですね。ところが、片一方の方はどんどんどんどん通してしまう。  時あたかも構造協議をやっておるさなかですね。これは航空安全のためにされるのだとは思うのですが、なぜ私たち日本人だけがマークされなければいかぬのか、非常に不愉快な思いをしましたね。特別機で行かれる総理など、余り経験されぬと思いますけれどもね。これは皮肉でも何でもないです。こういうことをやったら、恐らく日本人がパンアメリカンに乗らなくなるでしょうね。そうしたらアメリカの方で、日本人は差別しておる、飛行機をパンアメリカンに乗らぬ、だからスーパー三〇一条だとまた脅迫してくるんじゃないですか。結局はアメリカ自体がそういう選別をして、そして日本人が利用しないような方向に持っていっておって、こういう形で経済攻勢をかけてくる、これは非常に問題があると思います。公平を欠きますね。  この問題はただ単に私たちだけの問題じゃないです。英語とかドイツ語のできない人たちは、外国語のできない人たちは、スルーの荷物が着いておるだろうと思って体だけで来てみたら、何のことはない、荷物は危険爆破物として二十四時間隔離されてどこかに置いてあって、荷物が着かない、そういうケースがいっぱいあるのですね、日本人なるがゆえに。英語ができない、ドイツ語ができない、外国語が下手だという悲しさかもしれません。  これは私は非常に問題があると思うのですね。一民間会社の問題じゃないのです。太平洋航路はTWAが買収してしまっていますけれども、やはりヨーロッパの飛行の中心はパンナムです。そして今飛んでおるのは、パンアメリカンが戦勝国として一番ベルリンに入っておる飛行機の便数は多い。これから統一ドイツその他に向かってたくさんの日本人が行くと思うのですが、こうした問題は屈辱的だと思いますね。この問題についてぜひひとつ。これは一民間会社のことだ、民間会社が契約しておる警備会社の問題だということでは解決できない問題だと思うのです。この点についてどのようにお考えになるのか、どなたでも結構ですが、お答えいただきたいと思います。
  120. 久米邦貞

    ○久米政府委員 御指摘のございましたパンアメリカンにつきましては、実は御承知のとおり、八八年の十二月にスコットランドの上空で爆破されるという大変悲惨な爆破事件がございまして、それ以来パンナム航空については特にセキュリティーチェックを非常に厳重にやっているということは我々も承知いたしております。  一般的に申し上げまして、航空機の安全のチェックあるいは手荷物のチェックと申しますのは、第一義的には各航空会社がそれぞれ責任を負っている問題でございまして、そういうことから乗客の手荷物の安全チェックというのを実施するのは、第一義的には航空会社の責任ということになっております。  御指摘のありました扱いが差別的であるという点につきましては、これまでにも幾つか同様のケースがございまして、その際、ケースによっては出先の公館で航空会社に対しても注意喚起をいたして、事情の説明を求めるというようなことも実は行っております。ただ、その際の向こう側の説明としては、これは特に民族的な人種的な基準に基づいて特に厳しくやっているということではないという説明を受けているわけでございます。  航空会社が厳重なセキュリティーチェックをやるということそれ自体につきましては、先ほど申し上げたように、これは航空会社の責任の問題でございますので、そのこと自体について政府として正式に抗議するということには必ずしもならないのだろうと思いますけれども、ただ、そういうチェックが差別的な形で、あるいは差別的と受け取られるような形で行われるということについては、こういうことがないように、今後とも機会をとらえて関係者に対して働きかけを行っていきたいと考えております。
  121. 松浦利尚

    松浦(利)委員 あわせて外務大臣に。今度のウルグアイ・ラウンドに行かれた経済大使あるいは異動でヨーロッパに行かれたそれぞれの大使、公使、総領事、領事、こういった人は皆やられているのですよ。ちゃんと日本政府が責任を持って発行した外交旅券を持っておる人たちでしょう。日本の国を代表する人でしょう。これはまことに日本政府に対して侮辱的ですよ。これは野党、与党の問題じゃないと思うのですね。今言われたように、これは民間会社がやることだということでは済まされぬのですよ。その点をもう一遍外務大臣からはっきり聞かせてください。
  122. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今先生御指摘のようなことは、実は私自身もかつて参議院の議運の委員長時代に、安井参議院議長のお供をして、海外の空港のボディーチェックに遭ったことがございます。その際も非常に不愉快な思いをいたしまして、直ちに大使を通じて相手会社に注意を、抗議を申し入れた、こういう経験者でございまして、先生の御指摘の点はよく理解をできるものでございますが、こういう問題につきまして政府といたしましては、民族的な不平等的な扱いをしない、もちろん犯罪捜査のために予備的にチェックすることは航空会社の一つの大きな安全のための責任問題でございますから、それに干渉することはできませんけれども、差別をするということについては、特殊な事情がない限り、外交旅券、公用旅券を持っている日本の方については当然それなりの扱いをすべきものと考えております。     〔委員長退席、原田(昇)委員長代理着席〕
  123. 松浦利尚

    松浦(利)委員 今言われたとおりですよ。そういう扱いをしておらないパンナムに乗らなくなったら、日本人は当然乗らなくなりますよ、そうしたら今度は差別的だ、日本人は差別しておる、JALばかり乗るじゃないか、こう言ってまた向こうから抗議が来るんですよ。だから、そういう点をアメリカ自身が反省しなければ、幾らこの中間報告、このとおり日本がやってみても、具体的にこれからそういう問題を含めてお尋ねをしますが、今度の中間報告評価について後でまたいろいろアメリカのマスコミ界の状況等を説明しますけれども、これ全部このとおりやってインバランスが解決しなかったときにはどうなるのですか。アメリカの方は、このとおりに日本が実施をしてなおかつ改善されなかったというときには、スーパー三〇一条になるのですか。
  124. 中山太郎

    ○中山国務大臣 この交渉といいますか協議を通じて、先生が言われるように、日本政府日本代表団が書き上げたこの中間報告問題点について、もし日本政府がそれを実施した場合にインバランスが解消しなかったらどうするかというお考えですが、私は、日本政府日本のためにやるべきことをやって、それでインバランスが解消しなくても何ら文句を言われるものではない、このように考えております。
  125. 松浦利尚

    松浦(利)委員 ところが、これは大変申しわけないのですが、政府で集められた中間報告に対する米国の評価を手に入れてそれを引用させてもらうのですけれども、その中にヒルズ代表がこういうことを言っておるのですね。ちょっと済みません、今ちょっとここになかなか見つからぬのですが、要するにヒルズ代表は、これは頭金だ、アメリカに出した日本政府の頭金だ、この中間評価というのは。ヒルズ代表がそういうことを言ったということが報道されておるんですよね。それからまた、ある議員は、スーパー三〇一条という脅迫的な材料があったから日本はここまで譲歩したんだ、これがなかったらだめなんだ、そういったことを発言をしてますね。ですから、私が心配をするのは、アメリカという国は御承知のように結果オーライの国ですから、これがこのとおり解決しなかったときにはすぐ三〇一条を発動する。その証拠には、アメリカ通商代表部が発表した今度の九〇年版の報告書の冒頭に、構造協議の問題に触れておるんですよね。その一番最初の項目に、構造協議の問題に触れている。ということになれば、結果的にこの構造協議というのは、アメリカ側にしてみればあくまでも、ブッシュ大統領はどうお考えになっていたか私は定かではありませんが、アメリカ側の受け取り方としては、三〇一条というものを頭に置いてこの構造協議というものが存在をしておる。構造、貿易障壁問題解決ですな。そういうものがあるというふうに理解をアメリカ側がしておると思うのですが、その点はどうですか。
  126. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 お答えいたします。  この日米構造協議は、昨年の夏のアルシュ・サミットにおきまして、当時の宇野総理とブッシュ大統領との共同声明という形で発足したものでございますが、この共同声明におきまして、この日米横造協議は三〇一条の枠内のものではないということを明記してございます。この点は、少なくともアメリカ政府においては誤解のないところでございます。  他方、先生御指摘のように、一部のアメリカの議員の中には、これが仮に失敗した場合には、これをスーパー三〇一にのせるんだというような趣旨のことを言っている人がおることは事実でございまして、例えば、一部の議員などはそういう趣旨の法案を出していることも事実でございます。  他方、これはボーカス議員でございますが、ボーカス議員は先般の中間報告につきまして、これを評価するということで、自分の出した法案はしばらくそのままにしておくという趣旨のことを発言しております。
  127. 松浦利尚

    松浦(利)委員 問題は、それではこの中間報告書の問題で、仮にこの一部分でも我が国の状況でできなかった場合、そのことについてはアメリカ側は了解するわけですね、できなくても。その点についてお答えをいただきたいと思います。
  128. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 この中間報告に載せてあります事項は、少なくとも我が方の措置につきましては我が国の自主的措置ということで決めたものでございます。それは昨日も議論になっておりましたが、アメリカへの条約的な義務とかそういうことではなくて、我が国みずからが我が国に課した義務、責務というふうに理解していただきたいと思います。  これができなかった場合ということでございますが、海部総理も言っておられますように、これは内閣の最重要課題としてやっておられるわけでございまして、これができなかった場合にどうするかというようなことは、この段階で云々するのは必ずしも適当ではない、こういうふうに思います。
  129. 松浦利尚

    松浦(利)委員 いや、そのことは非常に大切なことなんですよ。なぜかというと、立法府にかかわる部分があるからなんですよ。だから、立法府にかかわるものも含めて政府アメリカとの間に中間報告を出してきておられるから、当然立法府と行政側との間の食い違いというのは起こる可能性はあるんですよ。法律改正が通らない場合だってある。  その場合に、私が心配をするのは、強硬派議員と言われておる人たちが、要するに結果オーライですから、結局日本という国は、約束はしたけれども結果は何も出てこぬじゃないか、それではまたスーパー三〇一条だと。何か常にスーパー三〇一条というものをちらちらちらちら向こう側はちらつかせながら日本に譲歩を追ってきておる、そういうのが見え隠れするんですね。  ですから、立法府でノーと言った場合に、それでは海部内閣はどうなるのか、日本政府はどうなるかという問題は非常に心配ですね。せっかく苦労して苦労して、海部総理の顔を見ておったら、本当に眠たいだろうと思うのですよ。本当に大変な御苦労があったと思いますよ、皆さん方に。しかし、その結果オーライのアメリカに対して、立法府まで拘束するような内容が出てくると、やはりこれは井上議員も指摘したように、我が国の日米関係に大きな傷がつくとまた私たちも困る。そういう点についてどう判断をしていいのか、我々は。その点についてもう一回正確に大臣、お聞かせいただきたいと思います。
  130. 中山太郎

    ○中山国務大臣 御案内のように、今この問題は日米構造協議、障害排除に関する協議ということになっておりますけれども、基本的には我が国自身の問題でございまして、ヨーロッパの統合あるいは将来のEFTAとECとの間の連合というようなことになってまいりますと、アメリカとカナダの共同市場が既にでき上がっております。こういう中で、この将来の国際経済の中で、日米欧の三極構造を築いて経済体制を活性化していくという中で、日本だけが国際ルールにはまらない。つまり消費者重視、そして国民生活の豊かさというものをもっとふやしていくという考え方で、この自由経済を標榜しているヨーロッパの自由主義の国、アメリカ、カナダ等も含めて、この日本の市場というものが閉鎖的であるということで、単なる米国からだけではなく、ECあるいはヨーロッパ各国からも相当な批判を受けて、国際経済社会においては日本が孤立する可能性があるということを外務大臣としては非常に心配をいたしておりまして、この点につきましては、野党の各党の先生方にも、この大きな一つの国の体質転換ということで御理解をいただきたいと考えております。
  131. 松浦利尚

    松浦(利)委員 いや、私が今非常に心配するのは、日米外交というのは我が国の外交の基軸でしょう。しかも、ブッシュ大統領との間に約束事として構造協議というものが結ばれましたね。ところがヒルズ代表は、三〇一条からは除外しない、これはまとまったけれども。将来の様子を見るために、これは正確かどうかわかりませんが、「多くの構造障壁」という言葉を使っていますよね、ヒルズさんは。「「多くの構造障壁を取り除くという真の約束である。」と述べているが、これによって日本が今年のスーパー三〇一条の指定を免がれるかどうかを決めるには、時期尚早」である。だから、結果待ちですよね。  そうすると、逆に言うと、立法府にこれから大店法の問題にしろ独禁法の問題にしろ、いろいろな問題が今度立法化されて新たな法案として出されてきますね。それが通らない、そういうことだってあり得ますな。今言われたのは、通してくれということだと思うのですが、野党も協力してくれと。しかし、協力する分野もあるだろうしできない分野も出てくるだろうと思うのです、当然。しかしその場合、言葉だけで、今はそのように言われるけれども、結果が出たときにどう対応するでしょうかね。それが心配なんです。一番心配なんです。
  132. 中山太郎

    ○中山国務大臣 海部内閣としては、誠心誠意この日米間の協議中間報告を踏まえ、さらに最終報告にかけて協議を調えて、その日本のいわゆる評価というものについて、全力を挙げて国民生活の豊かさを期するために努力をしていく、国会にもお願いをする、このようなことではなかろうかと考えております。
  133. 松浦利尚

    松浦(利)委員 よくわかりました。  しかし、いずれにしてもアメリカ側のとっておるのは、構造協議というのは結果オーライで、もし結果が悪かったら三〇一条でかけてきますよ、個々の問題をどんどん。ところが我が国の方は、これさえやれば三〇一条というものから免れる、当然常識としては。アメリカと我が方と、そういうとり方の食い違いがあるのじゃないですか。こうしておられるから、それは事実でしょう。どうですか。
  134. 中山太郎

    ○中山国務大臣 委員お尋ねのスーパー三〇一条につきましては、これはあくまでアメリカの国内法の問題でございまして、この適用をアメリカの議会がやるかどうか、あるいは政府がそれに関与するかどうかということにつきましては、現時点でこれをコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。
  135. 松浦利尚

    松浦(利)委員 アメリカの報道を見る限り、これは政府が集められた海外の重要な部分を抜粋した資料ですよね、報道やら各議員の発言を。これを見る限り、アメリカの国内事情としては、三〇一条と構造協議というものは一つのものとして見ておる。うちの方は、それはアメリカ側の国内法だ。  それで、そういうことを確認した上でお尋ねをしますが、日本アメリカ要求した構造問題は、この翻訳が正しいとすれば、全部期待可能性の言葉になっておるのですよね。「とりつつある。」とか「されてきている。」とか「予想されている。」とか「達成されよう。」とか、あるいは「削除を求める現実的な機会を与えるであろう。」とか、上院財政委員会において説明を行ったとか「予想される。」とか、こういう言葉ばかりなのですよ、アメリカ側は。日本要求したものについて向こうは責任がないのですよ、言葉で見る限りは。努力はするだろうけれども、その努力に対しては何の責任もないのです、アメリカ側は。ところが、日本側は極めてシビアな形で相手側から要求され、それに回答しておるのですよ。結果的に三〇一条というものがちらちらちらちら後ろでひらめくものだから、だからこういうふうになってしまったんじゃないですか。
  136. 中山太郎

    ○中山国務大臣 日本側からも相当厳しいコメントを出しておりまして、既にアメリカ政府予算編成の過程におきましても、グラム・ラドマン法の目的に従って赤字財政の削減のために予算編成の過程で二度のチェックをするという考え方をあらわしておりますし、また、夫婦で十二万ドルまでの年収の家庭については貯蓄の優遇制度というものを既に導入をして、これも日本政府が指摘をしたいわゆるアメリカの貯蓄率増強に対する一つのポイントでございます。あるいは二〇〇〇年までにアメリカの全子弟が高校卒業率を九〇%まで引き上げないとアメリカの輸出競争力がつかない、あるいはRアンドDの科学振興費につきましても、長期の企業における科学研究の投資が弱い、それでは輸出競争力は弱いですよということをかねがね日本政府は指摘してきましたけれども、今年は相当思い切った研究投資予算を組んでおるという現実のことを私どもは確認をいたしております。
  137. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それでは、もうこれでこの問題の基本的な問題は終わりますけれども、構造協議問題が一〇〇%できなくても自信を持って私たちは外交を展開をしていく、日本の側は。三〇一条などを恐れずに。努力をしていきます。そしてまたこれが完全にできたとしても、パンアメリカンの例があるように貿易収支についてはそんな大きな影響はない、アメリカの商品が売れぬのだから。売れれば別ですよ。飛行機に乗らないようにしておいて乗らぬのがおかしいというのは、これはおかしいですよ。アメリカから買え買え買えと言うなら、アメリカでもっと上等なものをつくって、大店法で、何か知らぬけれども、法律に違反してまでも百平米とか、僕はこれは法律違反だと思うのだけれども、後でまた議論しますけれどもね。そうかといって、売場面積やったって喜ぶのはみんなほかのところですよ。ブランド製品でいいものを持っておるイギリスとかフランスとかああいうところのものがどんどん売れて、アメリカは何にもないですよ。全然これは貿易収支については余り関係ない部分ばかりですよ。そのことは相手、先方も了解しておるでしょうね。
  138. 中山太郎

    ○中山国務大臣 自由に市場にアクセスできるというシステムが導入されることが重要でございまして、そういう自由に競争原理が働くというような過程で消費者の嗜好によってその商品が売れなかった場合には、それは当然の帰結であるというふうに考えております。ちなみに自動車の例を見ましても、外国製の自動車の日本の輸入率は、ヨーロッパの車が圧倒的に多くて米車が非常に少ない。同じような競争条件の中において日本人の嗜好がヨーロッパの車に集中しているという現実をごらんいただいても、御理解がいただけるものではないかと考えております。
  139. 松浦利尚

    松浦(利)委員 ところが、もう一遍確認しておきますが、アメリカの議員は全部そう見ておらぬのですよ。ゲッパート民主党の院内総務は「米国の輸出と雇用がどれ程拡大するかが成否を判断する基準である。」ベンツェン上院財政委員長は「世界の貿易がどの程度拡大するかが重要であって、何が合意されたかには関心がない。」向こうの方はみんな、これができることによってインバランスが解決すると思っているのですよ。そこにもまた食い違いがありますね、全然食い違いが。だから政府は、交渉された皆さん方は、これと貿易収支とは関係ない。だがしかし、これをやったからといってアメリカとの貿易収支が改善されるものではない。しかし、アメリカ側は、これが完全にできなければスーパー三〇一条だよ、そしてまたこれができるということは結果オーライで、貿易収支がちゃんとバランスしてアメリカのものがどんどん売れるということが前提だよと、そこに完全に食い違いがあるのですよ。これは非常に難しい問題だと思いますが、こればかり言っていたら時間がなくなりますから、また次に進めさせてもらいたいと思います。
  140. 原田昇左右

    原田(昇)委員長代理 誤解があるようですから、中山外務大臣、もう一回。
  141. 中山太郎

    ○中山国務大臣 重ねてお答えさせていただきますけれども、やはり自由市場原理というものを導入していく、そして消費者が有利になるという観点で市場を形成するということがこの協議の一番大きな目的であるという御理解をいただき、その結果消費者の嗜好によって商品の売り上げが影響を受けても、それはその消費者の嗜好による自由市場原理の結果であるという認識に立って政府は考えを持っております。
  142. 松浦利尚

    松浦(利)委員 総理、大変疲れておられて申しわけないですけれども、総理どうですか。
  143. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 中間報告の文は、今御指摘になりましたように、双方が非常に幅の広い立場に立っていろいろなアイデアを出し合って、指摘をし合ってまとめ上げた文章でありますし、アメリカ側でもこれは議会の、立法府の審議権を拘束しないということを前提に書いてあるものでありますから、御指摘のように社会保障退職年金制度の対象者を拡大する、約四百方の州、地方の職員が保障対象となる、これによって二十一億ドルの歳入が期待される。「期待される。」ということで結んであるわけでありますが、これは、そういういろいろアメリカ政府自身も日本側の指摘にこたえてこういったことをするぞということをこれだけたくさん羅列して並べてあるということは、そのとおりだと思います。それから、我が方もいろいろのことをしながら、日米二国間の問題で市場を開放していく、国民生活の質を高めるために、指摘されたいろいろな問題を考えて、政府としては、政府間でこれだけのことは日本も国内でいろいろ努力をするということをきちっと書きまとめたのがこの中間報告であると私は思っております。そして、これを誠実に着実に実行することによって、結果として貿易インバランスが是正されていくことが極めて望ましいわけであります。  過去二年間に、おっしゃるけれども、六百十億ドル日本は輸入をふやしておるのです。アメリカからも百七十億ドルも二年間でふやしておるのです。五百億ドルを超えておった、あのマジックナンバーのような五百という数が、アメリカ側の計算によっても確かにそれは五百を切った、四百九十まで来ておるということは既に認められておることでありますから、努力をすれば結果が少しずつでも出てきておったというきょうまでの実績もあるわけですから、さらにこれを踏まえて努力をしていくことによってこの方向というものは私は定着させていきたい、それが共通の今度の認識であった、このように受けとめておりますので、精いっぱい努力を続けさしていただこう、こう思っております。
  144. 松浦利尚

    松浦(利)委員 いや、ほかのことを言おうと思ったけれども、今総理がそんなふうに言われたから、これは図書館のレファレンスからとったのですが、皆さんにもマスプリして差し上げたらと言って政府委員の方には申し上げたのですが、アメリカのフォーチュン誌ですよね、「アメリカ日本たたきをたたく」、こういうことでアメリカのリー・スミスという人が書いておられるのですね。これに、アメリカの人がアメリカの主張に反論を加えておるのですよ。こういう主張はなさったのですか。今総理が言われたことは事実なんですよ。何にもこんなにたたかれる理由はないのですよ。ここに書いてあるように、日本に関する誤った情報と認識のもとにアメリカの議会あたりが日本をたたきよるのですよ。ロックフェラーの問題にしたって、あるいはソニーのコロンビアの映画の買収の問題にしたって、そういうものに対抗するアメリカ関係日本でちゃんと行われておるのですよ、やはり。こういう主張をもっとどんどんどんどんアメリカに対して言える、主張をする姿勢があれば、何もこんなことを言われなくたって、これは日本で当然やるべきことなんだから、今まで日本でも行政改革その他を通じて徐々にではあるがやってきておることなんだから、要らぬお世話ですよ、こんなこと。言わせてもらうと。アメリカから指摘してもらわなくたって、我々が国会で、政府でやれたじゃないですか。だから私は怒るのですよ。今の総理のお話を聞いておったら、日本がやっておることは私は認めますよ、事実だから、我々やってきておるのだから。何でこれを主張せぬのですか、これほどやられる必要はないと。だから、私はそういう点について非常に、今総理が言われたことは認めますよ。日本が努力していることを主張してくれと、アメリカに。もう簡単にしてください、簡単に。もう十分しかないから。
  145. 渡邊泰造

    ○渡邊(泰)政府委員 簡単にお答えいたします。  私、今度日米構造協議で初めて外務報道官として参りまして、先生のおっしゃったようなこと、特に日本実績でこれだけの努力を重ねている、今回日本がこれだけの対案を出したのは、アメリカもやるから日本もやるんだ、一方的にプレッシャーを受けてやるわけではない、そういうことをフォーチュンの記者も含めて、また話してまいりました。記者の方々は私の言うことをかなりわかっていただいたようでございます。
  146. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 総合協議のときにいろいろな主張をしたかとおっしゃいますが、私は今申し上げたようなこともぎちっといたしましたし、それからまた、大統領自身もそれらのやりとりの結果プレスリマークスの中では、日本アメリカの農民にとって最大のお得意様であることも、アメリカの製造業者にとって日本が二番目の市場であることも十分それは承知しておるし、理解もしておるということでございました。  そして、日本が輸入をどんどんふやしてもECやASEANから入ってくるような割でアメリカの比率が上がってこないのはどういうわけだろうか、それはアメリカの競争力が欠けておるからではないだろうか、日本の市場に売り込むための努力をさらにしたらどうかということもいろいろ言いましたら、その指摘は率直に受けて、クエール副大統領を長とする競争力評議会というものもホワイトハウスの中につくった。そういう努力もいろいろしていく。貯蓄と投資のバランスのことをいろいろ言いましたら、日本のかつてのマル優制度のような、一定の限度は設けますけれども無利子の貯蓄増進制度も議会に提案をしてやっていくつもりだ。いろいろなことを向こうも言っておるわけでありますから、どうぞそういう点も、何にも主張しないでおったというのじゃない、両方から出し合って、議論し合っておったのだということを重ねて言わせていただきます。(発言する者あり)非課税です、済みません。無利子じゃありません、非課税です。
  147. 松浦利尚

    松浦(利)委員 もう時間がなくなったのですが、それでは日本側の努力についてちょっと、これは前から物価問題に関連をして私も再三委員会等で取り上げてきた内容なんですが、公収に簡単に教えていただきたいのです。  要するに、これは公正取引委員会が昭和五十九年の二月に編集した「政府規制分野の業種別ウェイト」ですね。この中で、全生産額に対して政府規制分野のウエート、これが四一・四%あったのですね。それから、その中でも政府規制の強い分野というのがさらに一八・七%あるのですよ。ところが、これまた今度、この段階から物価の中で、もう時間がありませんから物価問題だけになりますが、物価の中で一番価格が硬直をし、一番国民の、世界各国に比例して高いところは政府規制分野なんですよ、物価で高いところは。ですから、早くから独占禁止懇話会の方で指摘をしまして、なるたけ政府規制というものを下げていこう、そういうことが五十六年ころからずっとされてきておるのです。ところが、これはこの前もらった昨年の三月三十一日現在をベースにしたものを見ますと、逆に全生産額の中に占める規制ウエートがふえておるのですよ。硬直しておる部分がふえているのですよ。政府規制分野の公共料金が上がりよるわけです、どんどん。これが実態なんですよ。ですから、これについてどうなっておるのか、もう時間がありませんから、公政から教えてください。  それから、総務庁から資料をいただきました。要するに問題は、アメリカから指摘しておる最大の理由というのは、日本の行政の中における許認可が余りにも強大過ぎて市場に参入できない、これがやはり大きな問題点一つなんです。ですから、この政府の許認可件数というものをできるだけ減らしましょう、これが歴代内閣の方針だったと思うのですよ。  ところが、総務庁からこの資料をもらいましたら、昭和六十年の十二月から昭和六十三年、六十年、六十一年、六十二年、六十三年と、こうずっと調べてきていますが、昭和六十年では一万五十四たったものが最近では一万四百四十一件と逆にふえているのですよ。ですから、我が国で国会で議論をし、そしてまた政府が方針を決めてやろうとしても、逆に言うと、このように許認可件数というのは逆にどんどん年がたつごとにふえていくのです。そうすると、政府が全産業に占めておる総金額のGNPの中の占める分野というのは一つも変わらないのです。これでは、今度のアメリカから指摘された構造協議の内容を幾らやってみたって解決しませんよ。だから、内外価格差の問題を一つとってみても非常に大きな問題だと思います。これを総務庁の方から、この統計が正確かどうかをお答えいただきたいと思うのです。  それから、もうなくなりましたから、もう一つ質問だけしておきますが、通産省にお尋ねをしておきますが、通産省はアメリカとの間に内外価格差の調査をされました。ところが、平成元年の十一月八日、通産省は何と発表したかというと、全体を通じていわれなき――これは正確に言いましょう。全体を通じて我が国の製品価格は国内で高く外国で安い、あるいは為替調整メカニズムは日本の輸出品には働かないといった単純化された議論は内外価格の実態に照らして適切なものでないことが明らかになった、だから内外価格差はない、こう言ったのですよ。十一月の八日に内外価格差がないと言っておって、何で内外価格差を日米横造協議でやらなきゃいかぬのですか。矛盾じゃないですか。もう時間が来ましたが、この三つの問題についてお答えください。そして最後に総理からお聞きします。
  148. 梅澤節男

    ○梅澤(節)政府委員 御質問の点だけ簡単に申し上げます。  今おっしゃいましたように、最近まとめましたのは、六十年の産業連関表によりますと、その五年前に比べて政府規制分野のウエートが総生産額ないし付加価値ベースで上がっておるということは御指摘のとおりでありますけれども、それは、顕著に上がっておりますのがサービス業でございます。サービス業のうち、これは大部分は社会保険診療体制における医療でございまして、したがって、この期間、個々の政府規制が高まっておるということではございません。
  149. 鈴木昭雄

    鈴木(昭)政府委員 許認可等の総数のお話が出ましたが、この許認可等の中には、いわゆる許可、認可のほかに規制色の弱い届け出とか報告等も含んだ全体の数字でございます。平成元年におきましては、対前年に比べまして差し引き百六十三件の増。すなわち廃止が八十五、新設が二百四十八、差し引き百六十三件の増加になっています。  その増加の理由を見てみますと、一つには、地球環境保全のための特定フロン製造数量の許可等、こういうような規制の強化に伴って許認可等が新設されたものが九十九件。それから、従来禁止または制限されていたような分野につきまして、実質的な規制の緩和を行うということで許認可等の新設を行ったものがございます。例えて申し上げますと、金融先物取引関係の取引所の設立免許等でございますが、これが百二十四件、その他が二十五件という内訳になっております。
  150. 横田捷宏

    ○横田政府委員 内外価格差の件につきましてお答え申し上げます。  先生がおっしゃられたとおり、通産省の日米の共同価格調査の結果はそのとおりでございますが、日本の輸出品の一部にも若干海外の方が安いというのもあるわけでございますし、また特に輸入品が日本では大変高いということがございまして、そういう意味で内外価格差の存在が否定されたわけではないわけでございます。また、共同で調査をしたわけではございませんけれども、わが国の一般的な物価水準の議論もなされておるわけでございまして、アメリカ側の主張は、そういう日本の全体的な価格構造というものの基本に流通あるいは社会資本、独禁法等々も含めたいろいろな問題がある、こういう立場をとっておられるわけでございまして、その意味で、より幅広い立場で内外価格差の諭点が今回整理されたということでございます。
  151. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 今関係各省が申し上げましたように、日本と比べて高いものも安いものもいろいろ、たくさん品物はありますから、出てきたわけであります。ただ、私の感じを大ざっぱに言いますと、食料品とか加工食料品というものについては日本の方が割高なものが多い。それから、香水だとかネクタイだとか、いろいろな輸入品については日本で売られているものの方が非常に高いものもある。いろいろございます。ばらつきはありますけれども、これらについては内外価格差対策推進本部というのをつくって、各省庁からあらゆる知恵を出して五十二項目をつくり、でき得る限りこれが妥当な線に下がっていくような努力をしていこうというところで価格差の解消に取り組んでおるところでございます。
  152. 松浦利尚

    松浦(利)委員 済みません、もう時間がないですからこれで終わりますけれども、たくさんしようと思いましたけれども時間がなくなったものですから改めて一般質問等でやらしていただきますが、最後に、どなたでも結構ですが、アメリカ側からこの中間報告についての監視機構をつくってもらいたいという提案があったと思うのですね。それに対しては、そういうものはつくらない、こういうふうにわが国は返事をしたと理解をしておるわけですが、それはそれでよろしいですか。
  153. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 今回中間報告をつくる段階におきまして、アメリカ側からこのフォローアップをどうしようかという議論があったことは事実でございます。しかし、この問題は、最終報告をつくるときに考えるべき問題であるということを我が方が申しまして、現在そういうことになっております。
  154. 松浦利尚

    松浦(利)委員 終わります。
  155. 原田昇左右

    原田(昇)委員長代理 これにて松浦君の質疑は終了いたしました。  次に、山原健二郎君。
  156. 山原健二郎

    ○山原委員 経過がありますので、最初に深谷郵政大臣の問題について、真実を明らかにする意味で質問をいたしたいと思います。  官房長官から、深谷氏の秘書石塚猛氏は昭和五十七年一月から六十三年七月末の退社までリクルート社の社員として給与がリクルート社から支払われていたということはお認めになっております。ただ、深谷郵政大臣が、彼はボランティアとして自分の時間を割いて応援をしてくれたと主張しておられるわけでございます。  そこで、時間の関係でもう端的にお伺いしますが、これは委員長理事会で資料配付のあれをいただいておりませんので、関係者の方だけに、深谷大臣、それからできれば総理大臣、それから委員長、この三部、ちょっと名簿だけ見ていただきたいと思いますが、よろしいですか。
  157. 原田昇左右

    原田(昇)委員長代理 いや、ちょっと待ってください。理事でちょっと協議を。――じゃ、私に見せてください、まず。――はい、いいです。
  158. 山原健二郎

    ○山原委員 じゃ大臣に。私、直接お渡ししたらいいのですが、済みませんが……。それから首相にも。  私が今差し上げたものは、昭和五十五年度それから六十年度、六十二年度の衆議院自由民主党秘書会が発行している秘書会名簿なんです。これを見ますと、いずれも石塚猛氏は深谷議員の秘書として登録をされております。その意味で単なるボランティアではなくて、実際は深谷さんの秘書ではないのかということなんですが、この点、深谷さんの方から御答弁をいただきたいのです。
  159. 深谷隆司

    ○深谷国務大臣 お答え申し上げます。  過日御質問がございました自民党の秘書会名簿につきまして、翌日すぐに五十五年の分は取り寄せたんですが、どういうわけだか、ここには御指摘のように名前は載っておりませんでした。あわせて六十年と六十二年を取り寄せまして、それしかないものですから。そこにはお説のとおり名前は載っておりました。私は、こういう名簿がもともとあることすらもちろん知りませんでした。そこで、その後、現在の秘書の者たちに、どういう基準で名前を出したのか、こう尋ねたのでありますが、要するに、自民党本部その他に資料を求めたりいろんな連絡をする、そういうかかわりのあるような者の名前は皆載せているという返事でございました。
  160. 山原健二郎

    ○山原委員 これは、この間参議院の方で問題になりましてね。今大臣おっしゃったように、五十五年度の分について我が党の吉岡議員が提示しましたときには、その方には同じ五十五年度でも秘書の名前に石塚さんの名前が入っているのですね。ところが大臣の持っておられたのにはない。だから五十五年のものに二つあるということで二重名簿ではないかというような話が出たのですが、実際は、これは選挙がありまして、選挙の前の分を、やっぱり同じ五十五年度ですけれども吉岡さんが出して、そして深谷さんの方が持っておられたのは選挙後のものを出した。だから、全く二重名簿などというものではなくて、いずれも正しいものが出たわけですね。  ところがその後、そのときに、秘書名簿の規約三条、これが秘書名簿なんですね。私はこれを見ますと、非常にこれは、前文がありますが、「われわれ、衆議院自由民主党秘書会は、国権の最高機関たる国会の議員秘書として矜持を保ち信義を重んじ、自らの使命感に徹するとともに、党の使命、綱領及び政策の実現を推進する同志の結束をもって党活動に寄与し、議員の開会要務に資するものである。」と書いてあります。  私は本当にこれは大政党のやはり力がこの中に表明されておると思ったのです。この第三条に、この会は、自由民主党秘書会は、「秘書をもって構成する。」こういうふうになっているわけですね。したがって、この六十年、六十二年、それからその前の五十五年というふうに印刷されている秘書会名簿を見ますと、ずっと出ているわけですね。そうしますと、これは明らかに秘書ではないかというふうに思うわけですけれども、もう一回お伺いしますが、そうではないとおっしゃるわけでしょうか。
  161. 深谷隆司

    ○深谷国務大臣 先ほど申し上げましたように、自民党の資料を求めたり出入りをするような場合の便宜も考えて、必ずしも全部秘書が名簿に記載されているというものではなくて、時には後援会の先頭的な活動をやっている者が載っている場合もあるし、私どもの場合には、そういう一つのケースであったと報告を受けております。
  162. 山原健二郎

    ○山原委員 今大事な問題は、深谷さんの秘書で石塚さんがあったかどうかということが問題なのですね。今問題になっているのです、リクルートの関係で。それを立証するにはこれ以外にないのですね、私どもには。ないと言うならば、秘書ではないとおっしゃるならば、秘書でないという立証をしていただかないと、この問題の解決にならぬわけですが、その点できますか。
  163. 深谷隆司

    ○深谷国務大臣 まことに申しわげありませんが、秘書ではないという立証もなかなかしづらいなと思います。     〔原田(昇)委員長代理退席、委員長着席〕
  164. 山原健二郎

    ○山原委員 数年間にわたって秘書の名簿に、しかも石塚さんの場合はずっと年がたつにつれて秘書の筆頭の方に近づいていくわけですね。そういうことから見まして、現在は公設の秘書であるということになりますと、これは明らかに秘書以外に私どもとりようがないわけですね。しかも、この間出されました、大臣が入手された五十五年度の分には名前がなかった、たまたまあなたが入手されたものに名前がなかったということで、いわばそのことによって秘書ではなかったということを証明されようとされたんではないかと思いますが、そうであるならば、現在出てきているこれを見まして、むしろ名簿が信憑性を持って秘書であるということの証明にまた逆になる、こういう事態であると思います。  この点について、今までずっとボランティアということで言われてきたわけですけれども、私どもの調査したところでは、石塚氏は専修大学の学生当時から深谷事務所に出入りをしておられたわけです。一方、あなたはリクルート社の大沢元専務と親しい間柄でございまして、一人分の秘書の給与をリクルート社でも持ってもよい旨の話があって、昭和五十七年の初め、その手続のため、あなたの指示で石塚氏は履歴書を持ってリクルート社に出向した、こういうふうに調査の結果なっていますが、その事実はお認めになりますか。
  165. 深谷隆司

    ○深谷国務大臣 お答えいたします。  過日、週刊誌等で石塚君が私の書生であった云云の話がございました。今の委員の御指摘もややそれに似ておられると思います。ただ、その当時は、もう二十数年前の話でございまして、十分な記憶がございませんが、私は、当時は二十九歳で、区会議員をやめて、都会に出まして、浪人中でございました。家内と二人で都営住宅の六畳二間で学習塾で子供を集めて教えていた時代で、とても書生など雇える身分でもございませんでした。したがいまして、そこいらの件は多分雑誌を御参照なされたと思いますが、必ずしも正確ではありません。  それから、石塚君の入社につきましては、これは本人の行動でございまして、私といたしましては、当時のいきさつを特に承知してはおりません。したがいまして、行けという指示を与えた記憶は、覚えはありません。
  166. 山原健二郎

    ○山原委員 覚えがないとおっしゃるわけですけれども、これは、私が今お聞きしておるのは、あなた自身が関与されておる問題として伺っているわけでございまして、この点を明らかにしていただきたいと思いますが、なお、石塚氏は他の一名の方と一緒にリクルート社を訪問しまして、応対したのは辰巳雅朗氏です。以後、石塚氏の個人の銀行口座にリクルート社から社会保険料などを引いた約十九万円が毎月振り込まれるようになったわけですね。そして住友銀行越谷支店にこの口座があるわけです。こういう経過を見ますと、もともと石塚氏はリ社の社員でボランティアとして自由な時間だけを割いてあなたのところへ出入りをしたというよりも、本来深谷さん御自身の秘書として活動していたと思わざるを得ません。そして、その石塚氏に対して給与を昭和五十七年以降リクルート社に負担をさせたというか負担をしてもらったというのが真相ではないかと思いますが、この点はいかがでしょうか。
  167. 深谷隆司

    ○深谷国務大臣 この間から申し上げたのでありますが、過日、児玉委員の御質問の中にも、五十三年から運転手をしていたのじゃないかという話もございましたが、その当時はまた別の会社に彼は間違いなく勤務しておりました。ただ、政治家志望だったものでありますから、本当に後援会の世話役として頑張ってくれたことは確かであります。それ以外には私の申し上げたとおりでございます。
  168. 山原健二郎

    ○山原委員 結局、私は唯一の資料として秘書と断定するにはこれ以外にないのですから、この今問題になっておる秘書であるかどうかということが、ずっと経過をたどってみますと、この問題では非常に焦点になってきておりますから、したがって、これ以外に私どもが信頼すべきものはあとはないわけです。あるとするならば、秘書ではなかったということを立証していただかなければなりませんが、これは過去の経験からしまして、我が党の児玉議員も指摘しましたが、ちょうど藤波元官房長官の刑事事件の冒頭陳述が引用されたわけですけれども、藤波氏の秘書給与負担と全く同様な姿で、政治資金の提供に当たるのではないかというふうに思わざるを得ないのです。  そうだとしますと、あなたとしては、大臣に就任されるに当たりまして、この事実を報告すべきであったと思います。その金額は千五百万円ぐらいになると思いますが、結局今政治献金として報告されました千二百三十六万と、そしてこの千五百万、これがプラスされて当時、大臣に就任するに当たって報告をされ、それが海部内閣のおっしゃっておられるけじめの線にどうなるかということが判定されなければならなかったのではないかと思います。その点についてはどういうお考えでしょうか、もう一回お聞きしておきたいのです。
  169. 深谷隆司

    ○深谷国務大臣 石塚君の立場というのは、今まで申し上げたとおりであります。ただ、今御指摘の中にもありましたように、本来自主申告すべきところを、私の認識不足やあるいは十分な調査がないためにおくれまして、総理を初め、とりわけ国民の皆様に御迷惑をおかけしてまことに申しわけないと思っております。
  170. 山原健二郎

    ○山原委員 総理にお伺いしますけれども、総理の所信表明ですね、あるいは政治改革の問題あるいは組閣方針から考えまして、クリーン内閣を標榜された、その点から見ますと、これは今までありました長谷川法務大臣の問題や原田経企庁長官辞任されました竹下内閣のときより、これに対する態度というのは後退しているのではないかという感じがしてならぬわけですね。だから、クリーン内閣ということを標榜されて、今後内閣を運営されていくのであれば、この問題についてのきちんとした調査をされまして、そして国民に納得のいく説明をするのが当然のやり方ではないかと思いますが、その点総理はどうお考えになっていますか。
  171. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 海部内閣発足に当たりまして、政治倫理の面で疑いを受けることのいやしくもないようにという趣旨で各閣僚から自主申告を受けたものであります。  深谷君の場合は、本人の今申したとおり、認識不足というか調査の不徹底で閣僚就任当時申告がなされなかったわけでありますが、その後非常に深く反省をしておるということであります。そこで、深谷君の場合につきましては、総理が私に指示をいたしまして、その内容をしっかり点検をするようにということでございまして、本人を呼んで詳細説明を聞くとともに、申告の内容の点につきましていろいろ点検、調査をいたしたわけであります。その調査、点検の限りにおいては、特別の問題はなかろうかということでございました。
  172. 山原健二郎

    ○山原委員 せっかく官房長官お答えですけれども、官房長官の調査は、大体ずっとここへ持ってきておりますけれども、ほとんど御本人の申告をお聞きになっているわけですね。それが真実とすれば問題はない、それが事実であるとすればというのが終始出てまいりまして、官房長官として事実を究明するためにさまざまな資料を集めてやったというふうにはなかなか受け取りがたいのです。  したがって、これ以上時間をとるわけにもまいりませんけれども、やはりこれだけ衆参両院で問題になったことでございますし、また今後においてもこの問題がまだ尾を引く可能性もないとは言えません。したがって、私はこれ以上ここで秘書であるかどうか、あるいは真実はどうかということを詰めるわけにもいきません。けれども、これでほっておくわけにもいかないわけですね。国民と国会の信頼にこたえるかどうかということがこの委員会にも問われておると思いますので、最後に私は、本委員会に、昭和五十七年度から六十一年度までの衆議院自由民主党秘書会発行の秘書会名簿を資料として提出をしていただきたいということが一つでございます。  そして、この問題に絶えず登場してまいります次の二名の方を証人として当委員会に喚問されるよう委員長に御要請を申し上げたい。そして真相をぜひとも究明をしていただきたいと思うのでございますが、その二人は、石塚猛氏、それから、この問題の当初から関係しておられます大沢武志氏、このお二人を証人として喚問していただくよう越智委員長に御要請申し上げたいのですが、委員長の見解を伺いたいと思います。
  173. 越智伊平

    越智委員長 理事会において協議いたします。
  174. 山原健二郎

    ○山原委員 次に、日米構造協議の問題についてお伺いしたいと思います。  一つは、国会との関係です。この中間報告には、次期通常国会における大店法改正案提出を目指すことなど多くの法改正、また立法が予定される事項が盛り込まれております。その数はどれくらいになるのか、お答えをいただきたいのです。
  175. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 今般の中間報告の結果、報告に盛り込まれました事項で我が方が法改正等が検討されるものにつきましては、独禁法、それから大店法、その他外為法等十本程度の予定でございます。
  176. 山原健二郎

    ○山原委員 十本程度の法律の立法がこの中間報告によって予定される、こういうわけですね。  ここで国会との関係ですが、昭和四十九年、これは今までここで既に論議されておると思いますけれども、四十九年二月二十日の本院の外務委員会で、交換公文等の取り扱い問題に関する見解を当時の大平外務大臣が明らかにしております。これちょっと簡単ですから読み上げますと、「憲法第四十一条は、国会は国の唯一の立法機関である旨定めております。したがって、右の憲法の規定に基づく国会の立法権にかかわるような約束を内容として含む国際約束の締結には当然国会の承認が必要であります。ここでいう国会の立法権にかかわるような約束を内容として含む国際約束とは、具体的には、当該国際約束の締結によって、新たな立法措置の必要があるか、あるいは既存の国内法の維持の必要があるという意味において、国会の審議をお願いし承認を得ておく必要があるものをさす」、こういうふうに述べております。  今回の場合、合意内容の事前承認どころか、米国からどんな要求が出され、どんな論議がなされているかについても、国会には全く報告もございません。米国との間で立法措置にかかわる約束を含む合意をした、こういうことになりますと、この大平外務大臣の見解が示す国際約束にかかわる国会審議権保障の立場を逸脱をしているのではないかというふうに思われますが、この点についてはどのような御見解でございますか。
  177. 福田博

    ○福田(博)政府委員 先生お尋ねの御質問は、きのうもほぼ同じような御質問があったかと思いますが、まず日米構造協議問題の中間報告の性格は、日本アメリカがそれぞれのイニシアチブでそれぞれの措置をとろうとしているものを記載したものでございまして、いわゆる条約等の国際合意文書には当たらないものでございます。もちろん、その合意の内容が条約と呼ばれようとほかの名前で呼ばれようと、実質的にいわゆるあの大平三原則、大平外務大臣が述べられました条約に当たる場合には、これを国会の承認を求めるということは当然でございますが、そもそもそういう文書には当たらないわけでございます。したがいまして、続けて申しますと、政府が成案を得て例えば一つの法案を国会へ提出いたす、そうすると、それについて国会が政府の考えとは違った結論をお出しになったとしても、それは法的には何ら日米間の問題ということになるわけではございません。したがいまして、大平外務大臣が当時申されました条約には、そもそも当たらないわけでございます。
  178. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 先ほど法改正がどのくらい予定されるのかということで十本程度と申し上げましたが、実はこれは私の早とちりでございまして、今後関係各省におかれましてどのような法律が改正を要するかということを検討していかれることになりますものですから、現段階では何本ということは申し上げられません。先ほどの答弁を修正さしていただきます。
  179. 山原健二郎

    ○山原委員 今十本とおっしゃったのは、じゃ全く根拠のないものですか。
  180. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 私の最初の答弁は撤回さしていただきます。
  181. 山原健二郎

    ○山原委員 頭の中のは出ないですよね、ここで。本当に国会審議やっている最中、ここは立法府ですからね、立法府が何をするか、この中間報告によってどんなものが法律として予想されておるのかぐらいのことが、中間報告を出した政府として全くわからないんですか。もう一回伺いたい。
  182. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 どのような法律が改正を要するかというのは、今後所管の省庁で検討いただくことになるわけでございまして、第一回目の私の答弁はおわびとともに撤回さしていただきます。
  183. 山原健二郎

    ○山原委員 国会というものは、全く何にもわからぬままでこんな重大な問題を論議するところですかね。  私はきのうの政府側の答弁、この中間報告について、それぞれの国のイニシアチブでやったものであり国際合意文書ではない、しかし閣議で決定したものであり、実行する政治的責務を負うという答弁だった、これは間違いありませんかね。私は速記録見ていませんが、大体そんなことですか。
  184. 福田博

    ○福田(博)政府委員 私答弁したのは、多分その前半だけではないかと思います。つまり、いわゆる条約等の国際文書には当たらず、したがって国会承認の問題は生じない、そこまでは私申し上げましたが、その後、その政治責任とかそういうことを申した記憶はございません。
  185. 山原健二郎

    ○山原委員 そもそも国会の承認事項に当たらぬというのはだれが決定しているのですか、だれが判断しているのですか。
  186. 福田博

    ○福田(博)政府委員 先生が先ほど御引用になりましたように、私ども政府といたしましては、国会の御審議をいただく条約あるいはそのほかのものであって国会に報告をすることが適当である国際約束につきましては、昭和四十九年二月二十日に大平外務大臣が衆議院の外務委員会で詳細に述べておりまして、それに従ってやっておるわけでございます。
  187. 山原健二郎

    ○山原委員 アメリカ側の、これは声明全文が出ております。これは四月の五日ですね、新聞に載ったのは四月の六日ですが。これにはホワイトハウス声明、海部首相及び日本の政治指導者は、中間報告に盛り込まれた政策面の誓約を作成するため長期にわたって努力した、こういうふうに出ておりまして、これは誓約文書じゃないかというふうに思いますが、その点はどういうふうに御理解をしておりますか。
  188. 福田博

    ○福田(博)政府委員 合意文書ではございませんし、このいわゆる中間報告に盛られておるのは、それぞれの行政府の示しているいわば意図ということができると思いますが、先ほどからの先生の御質問は、これはいわゆる法的な文書ではないか、国会の審議権を制約するものではないか、そういう趣旨の御質問だったと思いますので、専ら法的な観点からそういうものではないということをお答えしているわけでございます。
  189. 山原健二郎

    ○山原委員 これはアメリカ側の英文そのものですけれども、コミットメントでございますが、これは政治上の公約というふうに大辞典は示しております。それから、中にはこれは言質、それから公約、そして拘束。公約、拘束、身を縛ることというふうに、これは研究社の大辞典です。それで、中には公約と書いた新聞もありますし、また誓約と訳したところもあります。これは公約じゃないんですね。
  190. 福田博

    ○福田(博)政府委員 私は、その英語のコミットメントという言葉の有権的解釈を私が行うというのは適当ではないかとも思いますが、日本側がこの中間報告で述べていることについては、もちろんいわゆる立法府による立法権あるいは予算、そういうものが前提となっているというものであることは当然理解されているものであると思います。
  191. 山原健二郎

    ○山原委員 もう一回伺いますけれども、これは対外的に拘束されないものだと言いたいんですかね。
  192. 福田博

    ○福田(博)政府委員 先生の御質問が、一部は法的な解釈の御質問だと思います。それからもう一つは、日本がそこに書かれてある、まあ政策といいますか、そういうようなものをやらなかったときに、向こうが、俗な言葉で申せば、どの程度がっかりするか、その話は、二つは別のものだと思います。
  193. 山原健二郎

    ○山原委員 ちょっと時間の関係もありますので……。どうも納得できないんですね。国会が何にも知らない、何がなされたのかもわからない、法律がどんなものが何本出るかもわからない。こんなものが少なくとも外交交渉の中でやられるなんということ、恐らく日本の歴史以来、前代未聞だと思いますよ、そういう状態。  それからさらに、合意事項の推進のため監視部会の設置について合意したという報道がございますが、これは事実でしょうか。
  194. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 中間報告を作成する過程におきまして、このフォローアップをどうするかということがアメリカ側より提起されたことは事実でございます。しかし、私どもの方から、フォローアップの問題を検討するといたしましても、これは最終報告の段階で検討すべき事項であるということを言いまして、その旨、四回会合、中間報告のときに出されましたプレスコミュニケにも書いてございます。
  195. 山原健二郎

    ○山原委員 この問題と関連しまして、大きな問題になっている大店法の問題ですけれども、きょうも新聞を読みますと、例えば新潟市などは十一店が今ひしめき合おうとしている状態の中で、小売業者、商店街の皆さんが反対をしておるというようなことも出ておりますし、また、これはもう御承知のように、全国千三百の商店街振興組合で構成されております全国商店組合連合、また全国中小企業団体中央会、日本専門店会連盟、全国商工会連合会などが反対しておりますね。さらにまた、地方公共団体の独自政策の規制につながるものも含まれておりまして、地方自治権への侵害の内容となっているということも問題になっておるわけでございます。そういう意味では国民的合意はない。  それから、選挙中に海部首相は大阪で、これは記者会見だったというふうにおっしゃっておられるわけですけれども、大店法を変える意思はないということを表明されたと思うのですね。記者会見であろうと、これは一つの選挙中の総理の発言ですから、ちょうど中曽根さんのおっしゃったあの売上税など絶対やりませんという公約と全く質を同じくするものでございますけれども、その公約も無視して、大店法の最終的には改正案の提出までこの中間報告の中に書かれているわけですが、この点については、余りにもこれは国民を無視した態度ではないかと思いますけれども、この点、海部首相はどうお考えですか。
  196. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 最後のところの問題は、御指摘のように、記者会見で質問を受けましたので、私は当時の状況を踏まえてお答えしましたが、大店法の枠組みというものは、これは地方の流通を守るために枠組みは維持しなきゃなりませんが、運用については、消費者の立場に立って、変えるべきものは変えていかなきゃならぬということを、そういった趣旨のことを申し上げたことを覚えております。
  197. 山原健二郎

    ○山原委員 法律改正はしないとおっしゃったんじゃないんですか。
  198. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 そういう言い方はいたしておりません。記者会見でのやりとりの中で、枠組みについては、これは必要だということを述べましたが、しかし中身は変えていかなければならぬということも、そのとき正確な表現まではちょっとあれですけれども、項目に分けていろいろ申し上げました。
  199. 山原健二郎

    ○山原委員 私ここで、この間毎日新聞が出しました、総選挙における二百億円、自民党資金ルート全容判明という記事が、これはもう大変な衝撃を与えておるわけですけれども、この中で、いわゆる今までと――自民党としては、今回限りの非常措置として、経団連を通さずに業績好調な自動車、電機・電子、金融、建設の四業界に総額百六十億の特別献金を要請した。で、政治資金規正法に抵触しないように三年間の分割払いとして、相当分の百五十億を銀行からのつなぎ融資で選挙資金に充てた。その結果、従来の経団連ルートの献金八十億円、借入金などを加え、収入総額は約二百六十一億。総選挙資金は、百三十億前後とされている通常の五割増しの約二百三億円と見られるという記事ですね。これは調査の結果だと思いますが、これに対して自民党の方からは反論もないので、この記事が正確なのではないかと思うのでございます。  そこで私は、この問題の締めくくりとしてお伺いしたいのですが、今度の選挙は戦後最高のいわゆる金権、企業選挙だというふうに呼ばれておりますけれども、もともと考えてみますと、日米間のいわゆる貿易摩擦というもののもともと源は何かといえば、自動車、電機・電子、あるいはそれを支えた金融ですね、この企業から多額の経費をもらう。しかも、この企業が対米黒字の九五%、あるいは八割とも言われておりますけれども、そういうものを生み出して、これが日米間の摩擦の源なんです。その源の大企業からこういう政治献金を受け取って選挙をやるという、この日本政治の構造といいますか、これは本当に問題なんですね。それは今度の問題でも、実際にこの中間報告を見ましても、これらのいわゆる大きな黒字を生み出しているものに対する規制とかそんなものは全くありません。メスは全く入っていません。  ところが一方では、その黒字の解消のために、それだけではありませんけれども、今度の中間報告の中では、汐留駅の問題、関西空港の問題、営業時間の問題、借地・借家法の問題、大店法の問題、宅地並み課税の問題、農業の問題まで出てくるわけでしょう。日本国民にとってみましたら、何のためによその国からしかられておるのか、何のためにアメリカからしかられておるのか、国民はわかりません。全くわからぬです。日本国民はそう豊かでもなく、しかもアメリカに対しても好感も持ち、まじめに生きてきて、何でこれほど長期にわたってしかられなければならないのか。その原因はどこにあるか、みんな考えていますよ。ところが、今度出てきたものは、その庶民そのものが犠牲になる中身を多分に含んでいる中間報告が出てきたわけですね。そうなりますと、これは一体この国の政治そのものがどうなっているんだということが問われていると思います。これに対して海部首相は国民の皆さんにどうお答えになりますか、ぜひ私はこれを聞かしていただきたいと思ってお尋ねをするわけです。
  200. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 第一に、私と山原委員との立っております立場というものがまるっきり違うということを今痛切に感じながら御質問を聞いておりましたが、アメリカへしかられに行ったのでは決してありませんし、アメリカ日本をしかろうというような発想で物を言い始めたものではございません。  遠因を言うと、日米両国というものが自由、民主主義の枠の中で、自由貿易の中で世界経済の四割に近い経済力を持つ二国として、世界経済の中で大きな責任を持つ地位にまで至っております。これは日米両国のためのみならず、世界の経済にとっても極めて重要な二国間関係でありますから、そこがいきなり角突き合わせていろいろな不協和音があってはいけないという背景を、私はまず一つ申し上げさせていただきます。  同時にまた、スーパー三〇一条というようなものが出てまいりまして、日本側の努力にかかわらずインバランスがなくならないのは、これらの問題にあるのではないかという、制裁をちらつかせながらの一方的な交渉には我々としては応ずるわけにいきませんということをはっきり申し上げるとともに、ただし、極めて重要な日米二国間関係でありますし、そんなものは知らないと言って横を向いて、日本だけが小ぢんまりと秩序を守っていこうとすれば、孤立状態で、今の日本はやっていけるものではございません。日本政府がそのような方針をとったら、多くの国民の皆さんはどのような被害を受けられるのかということは目に見えておるわけでありますから、政府の責任としては、その国際的な秩序の枠組みの中で日本の国のいろいろなことを考えてやっていかなければなりません。したがって、制裁をちらつかせての交渉には応じないが、お話し合いはして片づけていきましょうと、個別案件については、それぞれ解決の努力を昨年までしてきたことは、先生も御承知のとおりだと思います。  そこで、それなればもう少し奥深く、幅広く両国の抱えておる問題をあわせて協議をすることによって、三〇一条によって一々一々やってきたことが両国によくない印象、考え方なんかを持たせては、お互い国民のためにもならない、両国のためにもならないというので、この構造協議が去年の九月から始まり、そうしてしかる、しからないではなくて、日本側からもアメリカ側に言うべきことは言い、あなたの方の財政赤字は減らしたがいいよ、あなたの方の貯蓄が少な過ぎるのは仲ばさなきゃならぬ、あなたの方は輸出すると言っても、ECの物やASEANの物よりも日本が買う物の率が少ないではないか、もっとこれは検討して売れる物をつくったらどうだ、こちらもその努力はする、いろんなことを大きく分けて七つに縛ってアメリカ側に言ったわけですよ。アメリカ側は六つに縛ってたくさんのことを日本側に提案もし、言ってまいりました。だから、両方交通で物を言い合っておったわけで、呼ばれてしかられてというような発想では私は全く受けとめておりません。  同時にもう一つ、私はブッシュ大統領と首脳会談のときに、ブッシュ大統領は、アメリカの議会に起こりつつある保護主義というものは抑えていかなきゃならぬと自分は思っておるとアメリカ政府立場で言いました。そして、保護主義を抑えるということは、アメリカにとっても日本にとっても共通の利益なんだから、議会のそういった保護主義に政府がきちっと闘っていくためには、日本の協力も必要だ、それはアメリカの中にあるいろいろな雰囲気をきちっと押さえて、アメリカもこういうことを言っておる、アメリカも努力をする、だから日本にもこういうことを言った、日本も努力をせよという双方の歩み寄りによって保護主義をおさめるようにしなければならぬということも、これはじゅんじゅんと言われました。  私は、その場におって、しかられたというような感じは全く受けないで、これは内閣の重要課題として、国民の皆さんの生活の質を高めるためにも役に立つことでありますし、ここに掲げてあるアメリカからの指摘も随分、考えてみれば、前川レポート以来日本の国が取り組んできた、内需を振興する、輸入を拡大する、国際社会における秩序の中で日本の地位を、相互依存関係を深めていく、消費者の実感として利益が高まっていくように考える、いろいろな面で合致すると思いましたから、最重点項目として取り組んできたわけでございます。どうぞこの点は御理解をいただきたいと思います。
  201. 山原健二郎

    ○山原委員 今私は立場の違いなど言っているのじゃない、また、しかられたなど今言っておりません。そういうことを言っているのじゃないのです。私はやはりこの背景には日米安保条約があると思っていますから、それは立場は違うかもしれませんよ。しかし、今は私言っていないのです。  しかも、保護主義の問題がアメリカの国内に起こっておるということのお話がありましたけれども、日本の国会はどうでずか。日本の議会は、この問題についてはほとんど、ほとんどというか全く新聞で見る程度しかわからぬわけですよね。そんなことを考えたら、しかも今日本側から七つアメリカ側から六つというのが出ましたけれども、これは読んでいますよ、アメリカ側要求し、アメリカのまた出しているものについても。これは随分違います。それは重みが全く違う。それから痛みが全く違います。そういう意味では、私は今の海部さんのお話では納得しませんけれども、しかし、ここでいつまでもそれをやっておるわけにいきません。一つの例を挙げてみたいと思いますので、お答えいただきたいと思います。  これはスーパー三〇一の日米交渉の問題でございますけれども、昨年の五月にこの問題が提起されまして、優先交渉国と特定をして、人工衛星、スーパーコンピューター、木材、木材は間もなく、どういう合意になるか知りませんけれども、これも重大な問題ですけれども、例えば前に、これが出ましたときに、小渕官房長官、当時、昨年の五月ですけれども、「米国の決定は極めて遺憾である」「一方的制裁措置の発動を辞さないという前提で交渉を求めてくるならば、かかる前提の協議には応じない」という態度政府コメントとして発表したのが昨年の五月、そんな遠い昔の話じゃないのです。  それから、この三品目につきましても、所管大臣がそれぞれ大変厳しい対応をされましたね。名前を挙げますと、当時の片岡郵政大臣、西岡文部大臣、三塚、当時のこれは通産大臣でしたか、小此木建設大臣あるいは科学技術庁長官、羽田農水大臣、皆もう一様にアメリカの姿勢に対して厳しい態度をとっておられた、これはもう当然のことですね。ところが今度は、そういうことをおっしゃったのだけれども、海部内閣になりましてから交渉に応じるという構えで、しかもその中身がわからないまま今日に来て、この間の中間報告という状態を迎えているわけです。いろいろ理由はあると思いますけれども、随分態度が変わったものだなというふうに考えざるを得ないのですよ。マスコミ報道もスーパー三〇一交渉と扱っておりますしね。  それから、特に私が一例として申し上げたいのは衛星問題。これは四月三日に実質合意に達したとされている内容を見ますと、我が国の衛星開発に当たって、研究開発を目的とした衛星と実用衛星とは明確に切り離すという原則が示されてまいりました。そして現行の通信衛星四号、CS4の計画を変更し、研究開発目的の衛星として開発する、こういうふうになってくるわけですね。  それで、研究開発の目的で開発をし、その開発に成功すれば、それを実用に供するというやり方がどうしてよくないのか。予算の効果的運用という点からいいましても当然です。それから、宇宙開発には膨大な費用がかかるという点でも、これはなおさら大きな問題でございまして、科学技術庁だってそういう主張を今までしてきたはずですね。「ひまわり」も、あるいは今話題の衛星放送を担っている放送衛星「ゆり」も、それぞれの技術開発の目的を持って開発をされて、同時に実用に供されて、それがどうしてぐあいが悪いのか。ところが、今度はそうじゃないわけでしょう。  私は総理にお聞きしたいのですが、我が国には宇宙開発政策の一番の基本をなす宇宙開発政策大綱、こういうものがあるわけですね。ところが、これはどういうふうに書いてあるかといいますと、「通信の分野においては、当面、衛星技術の開発と実用に供することを目的に「通信・放送・航行衛星シリーズ」を実施する」、また「観測の分野においては、科学研究と実利用との協調の下に、」「各シリーズを実施する。」こうなっているわけです。  しかも、この政策大綱は、これは御承知のように、宇宙開発委員会設置法第三条で、内閣総理大臣は、宇宙開発委員会から意見を受けたときは、これを尊重しなければならぬと明記されている。この政策大綱までゆがめているのじゃないですか。この点はいかがですか。
  202. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 前半御指摘の小渕官房長官の当時の談話と今の海部内閣の態度とがらっと変わっているじゃないかとおっしゃいましたが、私、最初に今ここで先生にお答えしたのは、小渕官房長官の発言と全く同じであって、三〇一条のように制裁をちらつかせての交渉には応じませんということは、海部内閣になってからも一貫して申し上げ続けてきております。  ただ、それだけ言って何もしないというのは、大事な二国間関係である日米関係、国際協調の面からいって、それは好ましいことではありませんので、話し合いによって解決できるものならば、個別的に解決をしようというので話し合いをしておる、こういうことでありますから、態度変更ではありません。  それから、個別品目について一つ一つのことは、今例に挙げられました研究開発用の衛星と実用衛星の問題については、これはちょっと専門用語もたくさん入ってまいりますので、政府委員の方から専門的に答えてもらいます。
  203. 山原健二郎

    ○山原委員 専門的には構いません。ちょっと時間がないから、後でまた時間があれば質問しますから。  衛星の問題を例に出したんですけれども、木材だってそうなんですよね。木材だって去年は羽田農水大臣が、こんなことは受け入れられないと。今おっしゃったのですけれども、私は、本当に宇宙開発委員会設置法に定める総理の尊重義務規定、これに反しているのじゃないか。みずから尊重しなければならない政策の基本まで、これは米国の衛星を購入せよという圧力のもとで、道理の立たない譲歩ではないかと思わざるを得ないのです。結局、世界の衛星市場で八割のシェアを誇るアメリカの衛星大企業であるヒューズ・エアクラフト、RCA、フォードの衛星御三家の利益が保証される合意に結局はなっているのじゃないかという感じかするのです。  だから、この問題についても一般マスコミはどう言っているかというと、「「国産化」大幅変更に」「不信招く「卑屈すぎる日本」」と報じています。ある論評記事を見ますと、「ズバリ、米国が技術水準日本に優位を保っている数少ない産業である宇宙開発の分野で、将来半永久的に日本を支配下に置くことにあった。」と書いておる記事もあるわけでございます。米通商高官は、これは日本の航空宇宙分野における幼稚産業保護政策に終止符を打つものだと述べております。  これらの問題は、こういうふうに見てまいりますと、必ずしもあなたがおっしゃるように、全くそんな屈服したものではないとおっしゃいましても、現実にはそういうことになりかねない面があるわけですね。木材だって、もう過去の経験があるわけでございますから、そういう意味で私は今指摘をしておきたいと思います。  私は、民族というものがやはり毅然とした態度を保持すること、同時に幾ら友好といっても、その国の主権がやはり平等、対等の立場でなければ真の友好というのは出てこないということは申し上げておきたいと思うのですよ。  そういう意味で、私は次の米の問題へ入りたいと思います。
  204. 越智伊平

    越智委員長 山原委員、ただいまのを政府委員から答弁させてください。
  205. 山原健二郎

    ○山原委員 ちょっと時間がありませんからね。
  206. 越智伊平

    越智委員長 いや、時間がなくても、やはり質問、答弁、こういっておかないとね。
  207. 山原健二郎

    ○山原委員 いや、私は尋ねていないのですよ。  じゃ聞きましょう、簡単に言ってください。
  208. 越智伊平

    越智委員長 科学技術庁須田研究開発局長
  209. 須田忠義

    ○須田政府委員 我が国の宇宙開発政策大綱においては、今後我が国は多種多様な宇宙開発活動を展開していかなきゃいかぬ、そういう任に当たっては、前提条件としては、自主技術、基盤技術の確立が我が国の宇宙開発で最大の問題であって、それが最大の重要事項だということで、宇宙開発の自主技術の開発、これを進めていくということになってございます。  今度の日米の合意については、研究開発衛星以外の衛星についての調達について、オープン、透明、無差別に調達するというのが決められたものでございまして、研究開発衛星、これについては、今後とも宇宙開発事業団を中心として我が国で鋭意努力していくということについては何ら変更するものではない、こういうふうに理解しておる次第でございます。
  210. 山原健二郎

    ○山原委員 そんなことをおっしゃったって、あなた方は初めからそう言ってなかったでしょう。だから自主の言葉も消えているじゃないですか、今度の政策大綱の中から、去年から。そんなこと言っておったら時間がたちますので、今までおっしゃってきた自主開発の問題とずっと政策大綱は変わっていますよ。  お米の問題について触れたいと思いますけれども、やはり米の問題も、ヤイター米農務長官が朝日新聞のインタビューに答えまして、日本の米市場開放問題について、新ラウンドでの年内解決が不調の場合、スーパー三〇一条に基づく二国間交渉で解決を迫る考えたということを示しております。  きょうきのうあたり入りました情報では、これは中身が十分わかりませんが、欧州共同体、ECの場合は、去る四月の五日に、米国の新通商法スーパー三〇一条の廃止を要求しておるという記事も出ておるわけでございます。  この米の問題は、実はウルグアイ・ラウンドの多国間協議で話し合っているという状態でございますけれども、これについて同じくヤイター氏は、「コメ問題を解決しないままにウルグアイ・ラウンドをまとめることはできない」、こういうふうに言明をしております。これはヒルズ通商代表の場合も同じことを言っておりますが、一方、総理は、さきの日米首脳会談で、ウルグアイ・ラウンド交渉の成功のため日米が緊密に協力していくことを約束をしておるわけでございますけれども、これは考えてみますと、結局ウルグアイ・ラウンド成功の前提条件だというのが米問題の解決だとアメリカは言っているわけですね。その前提としているウルグアイ・ラウンドの成功のために首相が協力をしていくということは、これは悪く勘ぐっていけば、米国側から見ますと、米開放に向けて協力する態度を示したのじゃないかというふうにとられる可能性があるんじゃないかと思いますけれども、そういう心配はありませんか。
  211. 山本貞一

    山本国務大臣 今いろいろな御指摘がございましたけれども、これは新聞でそういうふうな報道があった、私もそれは見ております。しかし、この米の問題は、先般来当委員会委員の皆様にたびたび私申し上げているとおり、これはウルグアイ・ラウンドで行うということで、各国が提案をしている中で、我が日本の姿勢としてはっきり今まで言い切ってきたことでございますから、これはウルグアイ・ラウンドの場で、米は我が国の主食である、そして我が国農業の基幹である、そして水田稲作というものは非常に重要だということなどを踏まえながら、国会の決議もございますから、これを踏まえて、しっかりウルグアイ・ラウンドに向けてやってまいりたい。既にもう提案していることでございますから、ウルグアイ・ラウンドでやらせていただくということははっきりしております。
  212. 山原健二郎

    ○山原委員 三回にわたる国会の決議は、もう何遍も政府答弁しておりますように、国内自給の堅持、国会決議も国内自給の堅持という決議でございますから、政府の判断で米の部分開放につながるような外交約束は私はできないと思いますが、この点は確認をしてよろしいでしょうか。
  213. 山本貞一

    山本国務大臣 これもこの間当委員会で私申し上げましたけれども、よく例の一粒たりともという議論がマスコミなどで行われておりますけれども、これは既に例の泡盛、しょうちゅうの材料を初めといたしまして部分的には入っておるのです。しかし、大宗として米を入れるというようなことは、国内自給でいくという方針が確認されておるわけですから、それを貫いてまいります。こういうこともこの間委員会で申し上げたとおりでございます。
  214. 山原健二郎

    ○山原委員 部分開放はしないというふうに受け取ってよろしいですね。
  215. 山本貞一

    山本国務大臣 今申し上げたとおりでございます。
  216. 山原健二郎

    ○山原委員 いや、泡盛の話なんか出るからもう一回お聞きしますが、部分開放はしないと、国会決議に基づけばそういう結果は出ないんだということを確認してよろしいですか。
  217. 山本貞一

    山本国務大臣 ただいままでに申し上げてきたとおりでございます。
  218. 山原健二郎

    ○山原委員 今の確認してよろしいですね。部分開放はしないということを、国会決議上からできないということを確認してよろしいですね。
  219. 山本貞一

    山本国務大臣 泡盛の材料としては入れておるのですね。これは主食としてやっているわけではないんです。ですから、そのいきさつをずっと申し上げましたけれども、とにかく国会決議を踏まえて国内自給でいきますという方針には何の変わりもございません。
  220. 山原健二郎

    ○山原委員 国会決議に従えば、これは部分開放できないということなんです。なかなかそこまでははっきりおっしゃいませんけれども、私は前から、我が党としまして、米は我が国の主食であり、もう我が国の文化であり歴史である、あらゆる面から見ましてガットの協議対象にするなという主張をしてきておりますし、これからもこの主張はしていきたいと思いますが、もうこれは首相の決意をお聞きしたいのですけれども、米の自由化、これはやらないということをこの場所でもう一回伺っておきたいのです。
  221. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 今農水産大臣がここでお答え申し上げましたが、国会における決議等の趣旨を体し、今後とも国内産で自給するとの基本的な方針で対処してまいります。
  222. 山原健二郎

    ○山原委員 部分開放はしないという言葉そのものはいただけませんけれども、そのことでそういうことだというふうに理解をしておきたいと思います。  最後に、今問題になっている日の丸・君が代の問題について教育的観点からお伺いしたいと思うのですが、この問題については国会でもしばしば論議されてきておりますが、こういう政府側の答弁があります。日本の教育が、政治というものが教育の場に入ってきて、そして政治の争いが学園を中心として繰り広げられている。こんなことでは幾らいろんなことを言われても、私はだめだと思う。やはり教育を政治の争いの場から外さなければいけない。そういう雰囲気を一掃しなければ、日本の教育というものは、これは軌道に乗ってこない。こういう見解が政府側から出されたことがございますけれども、このことについて、海部総理はこの言葉をどう御理解できるでしょうか。
  223. 菱村幸彦

    ○菱村政府委員 ただいまの御紹介になりました文章はどこから出ているのか私も今直ちに存じませんが、日本の教育は、教育基本法、学校教育法に基づいて行っているところでございます。
  224. 山原健二郎

    ○山原委員 なぜ私は海部総理にお聞きしたかといいますと、この国会における答弁は三木首相の答弁なんです。私はなぜこれをここへ出してきたかといいますと、海部首相は三木首相を師と仰いでおられるということでありますが、随分リベラルな発言ですよね、これは。私は何遍読んでもすばらしい御発言だと思っています。  これはいつこういう答弁が出たかといいますと、ちょうど三木さんが総理大臣のとき、これを質問されたのはここにおいでる外務大臣の中山太郎議員です。現外務大臣ですね。中山さんが日の丸・君が代についての国旗・国歌として認めよと当時の永井文部大臣に迫ったときの答弁でございます。この言葉は、教育を政治の争いの場にするのでなく中立の場に立たせることを強調したものです。何遍読んでもそういうふうになってまいります。  しかも、三木さんは続けてこう言っております。これを強制しなくとも、そういうよき伝統が生まれてくるようにすることが政治だ。こういうふうに答弁をこの国会においてされておるわけでございます。この考え方は、特定の考えを学校教育に対して強制することについての総理一つの見識ある見解だと私は思っているわけです。  こういうふうに説明をしましたが、今の私の例示しました総理大臣の過去における発言について、海部首相、御意見があれば承っておきたいのです。
  225. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 学校教育、特に義務教育の場は、大人の社会のイデオロギーの雑音で汚されてはいけない。やはり真っ白な立場でいろいろなことを身につけてもらうのが教育の場であると私は考えております。そして同時に、それはそういったことで学習指導要領もつくってあるわけでありますし、社会人として必要な身につけてもらうべきことはこれだけだというような基準も示してあるわけでありますから、教育の場ではそれをしっかりと身につけてもらうようにしなければならぬ、私は基本的にこう考えます。
  226. 山原健二郎

    ○山原委員 三木総理の発言ほかなり高い発言ですよ、これは。重みもありますしね。私はその意味で、今の海部首相の御発言は三木首相の発言とトーンがちょっと違いますね。  今学校ではどんな問題が起こっているか。新聞で毎日のように――特にことしの卒業式、入学式ですね。子供抜きの政治の争いでさまざまな形態があらわれておりまして、学校教育の現場にふさわしくないような事態が引き起こされているのです。  これはなぜ混乱しておるかといいますと、これはもちろん、昨年度文部省が一方的に告示しまして、ことしから「入学式や卒業式などにおいては、その意義を踏まえ、国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導するものとする。」という今お話のありました学習指導要領の実施の押しつけからきているのです。だから、今新聞を見ますと、例えば右翼が乗りつけて子供たちが恐怖心を持つとかいう写真入りの記事も出ておりますし、異様な雰囲気、あるいは校長さんが、もう式次第はどうなろうとも、日の丸の掲揚、君が代だけをやってもらったらいいんだ、あとはどうなろうと構わないというようなあきらめ、そういうような状態も出ております。感動的な卒業式、入学式であるべきはずの行事が、この強制ということによりまして、校長、教師、そして父母の間にさまざまな溝をつくっておることも、これはもう新聞を見れば一目瞭然であります。それがますます激しくなるというのが今の情勢でございます。私も教育者の出身です。日の丸・君が代については、私は私なりの意見を持っておりますけれども、しかし、強制によってこういうことが起こることは、学校の現場におった者としてはふさわしくないことだと考えております。  日の丸・君が代が国歌・国旗である法的根拠はありませんね。これは内閣法制局長官答弁では、国旗を掲揚しろとか国歌を斉唱すべしと言うならば、法的根拠が別途必要であるということは御指摘のとおりでございますというのが今までの、これは味村法制局長官の御答弁、これが今までの経過ですね。国民に強制する場合には別途法的根拠が必要であるわけでございます。一指導要領によってこれを義務づけるあるいは強制するというのは明らかに私は間違いだと思う。  しかも、世論調査を見ますと、これは朝日新聞の世論調査ですが、義務づけは行き過ぎであるというのが五〇%、そして掲揚、斉唱そのものに反対するもの六%でございますが、強制に反対をするというのは五六%に上っております。国民世諭ということを言うならば、こういう民意が存在をしておりますときにこれを強制することは私は非常に問題だと思っています。  時間の関係でもう一言言っておきますけれども、この間の新聞の社説を読みましても、「法律に明確な規定もなく、国民の間に十分な合意もなく、しかも過去の戦争に関係して、いまわしい思い出を抱く国民が存在する中で、文部省が一方的に学校現場に対して「日の丸」「君が代」を押し付けることに私たちは強い疑問を感じる。」それから「私たちはかねてから、大人の世界で意見が大きく分かれているこのような問題を、特定の立場から学校教育に押し付けることに疑問を呈してきた。とりわけ、学校が「踏み絵」の道具のように使われることに、危倶と憂慮を表明してきた。 入学式を目前にして、学校をこれ以上暗くさせてはならない。多くの国民が心配している事実に、文部省はいま一度目を向けるべきである。」こう出ております。これは朝日新聞。前のものが毎日新聞ですね。  そして日本ペンクラブも、義務教育で強制するような方針に大転換させたことに強く反対をするものですという声明も出しておりまして、こうした声こそ国民の意見を示した例だと思いますが、私は強制はやめるべきであるというふうに考えますが、これは総理大臣の見解を伺っておきたいのです。
  227. 保利耕輔

    ○保利国務大臣 世界のどこの国におきましても、自国や他国の国旗・国歌を大切にしあるいは敬意を表することは国際的な常識となっておることは、先生御承知のとおりであります。これからの国際社会に生きる児童生徒が、国旗・国歌に対して正しい認識を持ち、それを尊重する態度を身につけることは極めて大切なことであると私は考えております。  学習指導要領におきましては、そうした児童の資質を育てることを国民に必要とされる基礎、基本の一つとしてとらえて、入学式、卒業式において国旗掲揚並びに国歌斉唱をすべての学校で行うこととし、その取り扱いを臨教審並びに教育課程審議会の御答申等を得て明確にしたところでございます。すなわち、生徒児童があるいは児童生徒が自国の国旗・国歌を尊重する態度を学ぶとともに、そのことによってほかの国の国旗・国歌に対して敬意を払うというその態度を育てることが国際社会において信頼される日本人の育成になるものと思います。今後とも、このような考え方で国旗・国歌の適切な取り扱いについて指導してまいりたいと思っております。
  228. 山原健二郎

    ○山原委員 私は最初に三木総理大臣の言葉を出しました。今の文部省の、文部大臣の御発言、またかなり違います。格調が違うのです、やはり。こういう問題は本当に論議をしなければならぬ。おれはこう考えるからこれを押しつける、私はその考えが間違いだと言っているのじゃないのですよ。押しつけることが間違いなんだ。これは当たり前のことですよ。まして今度の新学習指導要領はだれが指導的な立場でやったか。高石邦男氏ですよ。これはもうみんな知っている。経過から見ましても、あのときに選挙に出るために、彼はこれで点数を稼ごうとまでしているのです。そうして出てきて、こうして今このような混乱が起こっておるわけですから、私は本当に文部省にこんなことを押しつける資格があるかということを申し上げたい。  それと同時に、世界各国の例が出ましたけれども、例えばアメリカの例、一九四三年、アメリカは第二次世界大戦の真っ最中です。これはアメリカが愛国主義的な気分が高揚していた一番難しいときですけれども、バーネット事件というのがありますけれども、これは国旗に対して、あの星条旗に対して敬意を表明しなかった生徒が退学をさせられるわけです。放校をされる。それをバーネットさんという父親が訴えて、これは最高裁判所も大論議になりまして、結局どうなったかといいますと、思想及び良心の自由、これを守るということが出されまして、有名なジャクソン判決というのが出てくるわけでございます。ジャクソン判決、今でもアメリカで生き続けています。今でもこのジャクソン判決が重要な中身を持っておりまして、「愛国的な儀式は、自発的で任意な日課ではなく、強制しないと愛国心が育たないという考えがある。そうした考えを信ずることは、自由な精神に訴える我々の制度に不利な評価をすることになる。」これはバーネット裁判の有名な言葉です。さらに彼はこう言っているのです。「強制的に反対を除去し始める人々は、やがて反対者を絶滅させようとしていることに気づく。意見の強制的な統一は墓場への統一をもたらすにすぎない。」こう言っているのです。これがジャクソン判決です。これはアメリカで今でも重要な意味を持っています。  昨年のこれはもう一つの最高裁判所の例ですけれども、これもレーガン大統領が指名しました最高裁判所の判事たちですけれども、これは最も保守的な人たちと言われるわけでございますのに、ここでも本当に国旗の焼却事件が起こりまして、これを国旗棄損罪として訴えたことに対する、五対四ではありますけれども、アメリカで昨年違憲判決が出ています。自由というもの、民主主義というものはどんなものであるか。私はアメリカにおいては少なくともこういう形で生き続けておると思う。私は、その一つの生きた姿を、三木総理大臣がくしくもあの言葉で表現されているのではないかというふうに思っております。だから、あえてきょうの質問の中で取り上げたわけでございます。  最後に、文部省に申し上げたいのですけれども、今、登校拒否四万五千と言われますね。学校が嫌だ。高等学校の中途退学者十一万五千人です。百三十校の学校が消えるぐらい生徒がいなくなるのですね。学校がおもしろくない。バーナード・ショウは言いましたけれども、学校というところは劇場のように楽しいところでなければならぬという言葉がありますけれども、そのせっかく行く学校が嫌になるというこのかわいそうな状態、どうしてこうなったのか。(発言する者あり)やはりここは、先生だけが問題じゃないでしょう、恐らく。先生がなどという決めつけ方そのものが間違っているんだ。これが今問題になっておる。文部省は教育基本法を読むべきです。文部省のやることは教育行政。教育行政は教育条件の整備であります。そのことを忘れて、ただ学校に対してさまざまなことを押しつけること自体が問題の混乱の原因でありまして、こういうことをやれば必ず失敗をするということを私は申し上げたいと思います。恐らく海部総理はこれに対して反論があると思いますが、発言をしてください。
  229. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 学校教育の場におきましては、義務教育において、それぞれの人が社会人となったときにいろいろな判断をして、思想、信条の自由に基づいて社会人として行動しなければならぬのが自由社会であると私は思います。けれども、児童生徒のそれぞれの発達段階においてどの程度のことを身につけるか身につけないかということについては、最初の答弁で申し上げたように、この程度は必要だということをきちっと決めてかかるわけであります。ですから、国旗にいたしましても国歌にいたしましても、委員は今法律の基礎はあるかとおっしゃったが、歴史や文化や伝統や慣習の中で立派な基礎がございますし、今いかなる国際会議に行こうと、日の丸のところへ私が着席すれば絶対に間違いないということは世界じゅうが認めておることでございますし、オリンピックなんかでも、日の丸が揚がるときには君が代が演奏されるということは万国共通のものになっておりまして、法律があるとかないとかという議論ではもう既になくなっております。  それほどのものであるから、学校教育の場で児童生徒にそれを身につけさせる。おっしゃったように、戦争の歴史もあったでしょう、戦場にはためいたこともあったでしょう。けれども、歴史というものをすべて受けて、いいことは繰り返し、よくないことは繰り返さないということもぎちっと教えていくのが教育の責任だと私は思っておりますから、それを教わり、身につけて社会人になった人が、おれはどうしても嫌だから、そちら側の組になろう、いやこちらでやろうと言って分かれるのが自由社会のあるべき姿で、子供のころから教えるな、それは身につけなくてもいいという考え方を私は決してとってはいけない、こう考えております。
  230. 山原健二郎

    ○山原委員 この問題でエキサイトしたってだめですよ。学校がどうなるか、本当に考えなければならぬときでしょう。だから、あなたの考え方もあるわけですよ。でも強制してはいけないということを私は申し上げているのです。これは強制すれば必ずまた問題が出てまいります。  それから、特にいわゆる行政機関であるいわば政府機関としての文部省がやるべきことは、教育基本法第十条です。第十条は、教育行政は、これは御承知のように教育が十分にできるような条件整備ですから、そのことに対して本当に力を入れなければならぬときに、あえてこんな混乱を起こしておる今の文部省に対して私は一つの警告を発する意味で発言をいたしておりますので、これで私の質問を終わります。
  231. 越智伊平

    越智委員長 答弁ないですか。――保利文部大臣
  232. 保利耕輔

    ○保利国務大臣 お話はよく承りました。  しかし、今回の入学式では、国旗・国歌の取り扱いについて全国的におおむね適切に実施されたものと思っております。しかしながら、若干のトラブルが生じたことは事実でまことに遺憾でございますが、文部省といたしましては、今後とも国旗・国歌の正しい取り扱いを指導してまいりたいと思っております。
  233. 山原健二郎

    ○山原委員 教育というものの深みというものをぜひ判断していただきたいと思います。  以上で終わります。
  234. 越智伊平

    越智委員長 これにて山原君の質疑は終了いたしました。  次に、東中光雄君。
  235. 東中光雄

    東中委員 私は、最初に天皇の代がわり儀式、即位の礼と大嘗祭についてお伺いをしたいと思います。  総理は、施政方針演説の中で、本年十一月には、日本国及び日本国民統合の象徴である天皇の皇位継承に伴う儀式として、即位の礼及び大嘗祭が挙行される運びになった、こういうことを言われました。しかし、昨年の一月七日にさきの天皇が亡くなられてすぐ、皇室典範の四条に基づいて新天皇が直ちに即位をした。その日、皇室典範二十四条に言うている即位の礼を天皇の国事行為として一連の儀式が行われております。皇位継承に伴って行う即位の礼はもう昨年の一月七日に済んでおるのです。そして今度は新しく、一年十カ月たって今度は十一月にまたやるんだ、こういうふうに言われたわけですが、普通の常識からいうと、皇位継承に際してやるという儀式をもう二年近くたってからまたやるんだということになる。おかしいのですね。おかしいことを、なぜそうなったのかといえば、皇室典範にも憲法にも何も規定がない、あるのは前の明治憲法下における旧皇室典範に基づく登極令に基づいたやつをやっているわけです。これは廃止されたものに基づいて主権在民の今日の天皇の即位礼をやることは私は許されない、こう思っておりますので、今やろうとしている即位の礼の儀式というのは一体法律上何に基づくものなのか、総理大臣が即位の礼委員会の責任者ですから、お伺いをしたいと思います。
  236. 工藤敦夫

    工藤政府委員 ただいまの委員のお尋ね、法律の根拠というふうなことでございますので、私の方からお答え申し上げます。  皇室典範の二十四条におきまして、「皇位の継承があつたときは、即位の礼を行う。」こういうふうに規定がございます。これは、天皇陛下の御即位に伴いまして、国事行為たる儀式として即位の礼を行うことを予定したものと考えております。  既に、先ほど委員の方からお話がございましたが、天皇陛下の御即位の一月七日の直後に即位の礼の一環として剣璽等承継の儀及び即位後朝見の儀が行われたところでございます。ことしの秋に予定しております即位礼正殿の儀あるいは祝賀御列の儀及び饗宴の儀、これらが行われますが、これらの儀式もいずれも天皇陛下の御即位に伴いまして、国事行為たる儀式として行うにふさわしいもの、かように認識しております。  なお、今委員、登極令のお話も出されましたが、確かに登極令は旧憲法当時におきまして、旧憲法の七十四条で、例えば「皇室典範ノ改正ハ帝国議会ノ議ヲ経ルヲ要セス」というふうなことで、旧皇室典範は、旧憲法下の法律とは異なるいわゆる宮務法という体系に属しておりまして、そういう意味で旧宮務法の体系の旧皇室令、登極令もその一部でございますが、それは現行憲法の施行とともに、そういう法体系自体が認められなくなった、こういうことに伴いまして、その内容が現行の憲法に反するかどうかということにはかかわりなく一律的に廃止されたものでございます。したがいまして、旧皇室典範あるいは旧登極令、こういうものに規定されていた内容がすべて内容として現行憲法に反するということになるわけではございません。現行憲法に反しているかどうかは、その内容ごとに判断していく必要がある、かように考えております。
  237. 東中光雄

    東中委員 法制局長官自身が認めましたように、旧皇室典範並びに登極令は既に内容いかんにかかわらず廃止をされているんだ、現行憲法下ではないんだということであるのにかかわらず、今新たにやろうとしていることというのは全部それに基づいてやっておる。だから、そういうことは許されない、戦前の主権在君の天皇制復活につながっていくようなそういう儀式は許されないというのを私は指摘しているわけであります。何にも今のは答弁にはなっていない。  それで、総理はどうも答弁をしたがらないようですけれども、具体的な問題でお聞きしたいのですが、ことしの一月二十三日に、即位の礼と大嘗祭の期日を天皇が宮中三殿に報告する儀式、いわゆる期日奉告の儀というのが行われました。天皇は黄櫨染御袍、いわゆる正装の束帯ですね、百人一首の絵姿でしか見ぬような、何かそういう姿をされたようですね、私はよくわかりませんが。そういう服装を着用して、そして皇祖神である、神さんであるアマテラスオオミカミの霊の祭ってある賢所の殿上に上がって、殿内に安置された御神体の鏡に向けて拝礼の後、即位の礼の期日を十一月何日にやるという旨を告げるいわゆる御告。文を読み上げた。そしてその後、皇后が古装束で殿上で拝礼をした。皇太子を初め皇族あるいは海部首相を初めとする三権の長、自治体の長は、今度は殿内に入ることが許されないために賢所の前庭から次々に拝礼をした。これが、期日奉告の儀に総理大臣が庭先から参列をし拝礼をするという、こういう祭祀行為に参加をしたということになっております。  そこで、お伺いしたいのですが、この行為は総理大臣である海部俊樹さんが私人の資格で拝礼をしたのか、あるいは内閣総理大臣の公的行為として、職務上の行為として、この期日奉告の儀と称する祭祀行為に参加をされたのか、これは総理大臣自身がやられたことですから、どうなんでしょう。
  238. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 今詳しく申し述べられたとおりの儀式が、奉告の儀が一月二十三日に行われました。私は、公人として参列をいたしました。それは、この儀式は伝統的な皇位継承儀式の一環をなすものと認識をいたしておりますし、天皇陛下は憲法上の象徴でもあられるわけでありますから、社会通念上儀礼的行為の範囲内にとどまるものであると私は考え、これは憲法上の問題は何らないと私は判断いたします。  法制局長官から法律上の問題については答弁をいたさせます。
  239. 越智伊平

  240. 東中光雄

    東中委員 そんなこと聞いてないのです。聞いてないのだ。あなたの見解だけ聞いて、後、次聞きますから。そんなもの聞いてない。
  241. 工藤敦夫

    工藤政府委員 委員長からの御指名でございますので、お答えいたします。
  242. 越智伊平

    越智委員長 はっきりと説明してくださいよ。
  243. 工藤敦夫

    工藤政府委員 一般的に申し上げまして、公務員は職務の遂行をもちろんその使命とするものでございますが、本来の職務行為に当たるとは言えない行為でありましても、その地位から考えまして、社会通念上相当な範囲にとどまるものと認められます儀礼的行為につきましては、いわば本来の職務に関連する行為として公務員がその資格におきまして行うことは許される、かように解するのが相当だと思っております。  ただいま総理からお答えございましたように、日本国の象徴であり、かつ日本国民統合の象徴である天皇に礼を尽くす、こういう意味におきまして内閣総理大臣が参列された、これは当然社会通念上相当な範囲にとどまるもの、かように認められる儀礼的な行為であろうと思います。
  244. 東中光雄

    東中委員 宮中の今まで行われておるいろいろな祭祀があります。その祭祀の中でも大祭と言われて非常に重要だとされている祭祀は、新嘗祭があります。それから秋季皇霊祭、春季皇霊祭があります。これらはいずれも三権の長が今までから参列をしていました。しかし、これらの祭祀は皇室の中の私的行事としてやられてきた。政教分離の体制からいって、そういう祭祀は私的行為であって、公務員でない、天皇家の私的使用人である祭祀長が主宰をして、そして天皇家の私的行為として新嘗祭がやられてきたのです。新穀を供えて五穀豊穣のために祈りをする、天皇が宮中三殿でやる、そういうことをやってきたのですから。それはしかし、天皇の私的行為であった。だから参列する三権の長も私的行為としてやってきたんです。  ところが今度は、この即位の礼に関連をすると称して、祭祀行為ですよ、政教分離を言っている日本総理大臣が天皇家の祭祀行為に職務上に関連する公的な行為だとして参加する。これは今まで扱ってきた、宮内庁における儀式、行事、祭祀というふうに分けていたわけですよ、その祭祀行為について今度初めて枠を超してしまうということになっているのだから、話は重要なんです。今までの、新嘗祭は去年あったかどうか知りませんけれども、三権の長が参加をしていた新嘗祭なり秋季、春季皇霊祭への三権の長の参加は私的な参加であった、その職にあるそれぞれの人たちが私的に参加をしておった、こういうことだと思うのですが、その点はどうでしょう。
  245. 工藤敦夫

    工藤政府委員 ただいま委員御指摘の点でございますが、今回の一連の行事は、皇室の行事ではございますけれども、天皇の御即位にとりまして必要不可欠の儀式、これは大嘗祭につきましても、さきの閣議におきまして了解を得ているところでございますが、そういう必要不可欠の儀式として長い皇室の歴史の中で伝承されてきたものでございます。憲法の二条で規定しております皇位の世襲制、こういうものと結びついた重要な儀式で、即位に伴う儀式の一環をなすもの、こういうことでございますので、従来の、例えば新嘗祭というものとはおのずからその性格が異なるもの、かように考えております。
  246. 東中光雄

    東中委員 即位に伴う儀式、それをやらなければ即位が真っ当にやられたことにならなくなるような儀式というんならわかるんです。ところが、もう去年の一月七日にそういう儀式はやって、後、新天皇は天皇としての国事行為もずっとやっているわけでしょう。もう一年間やったわけです。またさらに半年やるわけでしょう。そして、その後にまたそういう儀式をやる必要が一体あるのかないのか。それは必要があるとすれば、皇室の伝統といいますが、ただ登極令に決めてあったことをこの新憲法のもとでやっていくということにしかすぎないので、これは許せないというふうに思います。  とりわけ、この即位の礼のやり方ですけれども、今相当膨大な予算を組んでやられようとしております。国事行為としてやられる即位の礼の中心儀式、十一月十二日予定の即位礼正殿の儀、これは登極令の即位礼紫宸殿の儀と全く一緒と言ってもいい。場所が京都であったのを東京に、宮殿に変えるということが違うだけで、しかも天皇が先ほどの束帯の服装をして、そして高御座という高い台の上に、何か五メーターとか六メーターとかあるという非常に高い台の上に乗って、そして即位を宣言する。もう新天皇が天皇になってから一年十カ月たってから改めてそれを宣言するというのでしょう。そしてその下に、台の下で総理大臣以下が、特に総理大臣は寿詞を奉呈するという式で、いわば戦前の天皇に対する臣下の忠誠の誓いに相当するようなものを言う。そして総理大臣が万歳を三唱する。このやり方というのは、まさに戦前の主権者である天皇、現人神である天皇、そして統治権の総攬者である天皇が内外にその主権者としての権威を示していく、忠誠を誓う、そういう儀式そのものですね。  そういう儀式をやるということを決めたのは、従来の伝統でも何でもないんです。登極令が明治の末につくられて、その後二回だけですよ。大正と昭和の天皇の即位のときにやっただけでしょう。伝統でも何でもないのです。登極令によって二回やっただけです。それを今度そのまま、登極令が廃止されておるのにやろうというのでしょう。これは主権在民の立場で、そして総理大臣が助言と承認を与えなければできない天皇に対して忠誠を誓うなんという、そんなものは時代錯誤も甚だしいと私は思うのです。憲法上も許されないと思う。改めるべきだと思うのですが、どうでしょう。
  247. 工藤敦夫

    工藤政府委員 ただいま委員御指摘の即位礼正殿の儀でございますけれども、その趣旨は、即位を公に宣明されるとともに、その即位を内外の代表がことほぐ儀式、かように認識しております。ただ、その細目につきましては、この一月に決められました「「即位の礼」の挙行について」というところで大綱までが決まっておりまして、その各儀式の細目、これは今後即位の礼実施連絡本部、ここで細かく詰めました上で内閣総理大臣が決定することになる、かように思っております。  ただ、その際に、現憲法下におきまして国民主権原則に反しないかどうか、あるいは政教分離原則に反しないかどうか、象徴たる天皇にふさわしいものであるかどうか、こういう点は、当然のことながら、その内容として決定いたします際の一つの検討項目として挙がるわけでございます。
  248. 東中光雄

    東中委員 私が今言うた、高御座を持ってきて、そして天皇がそこに乗って、そして内閣総理大臣が寿詞を奉呈し、万歳三唱するという登極令に決まったやり方をどうもやるのだと「今確言はしないけれども、全く否定もしない。これは許されないことだと思います。憲法上、憲法の趣旨にのっとりと言うが、これはやめるべきだと思う。  続けまして、大嘗祭についても同じであります。大嘗祭は、この登極令が廃止されたその当時の旧皇室典範には即位の礼あるいは大礼と合わせて大嘗祭というのは載っておった。その大嘗日祭は、今度の新皇室典範ではわざわざ外したわけでしょう。それはやるべきでないということになっている。だから政府自身の見解でも、こういう大嘗祭は天皇の祭祀であるから、だから儀式は宗教的色彩のものであることは否定し得ない、そう言うているじゃありませんか。「国がその内容に立ち入ることにはなじまない性格の儀式である」、天皇の国事行為とすることは困難である、そう書いていますね。そう言うておいて、しかし皇室の行事だというふうに言うことで国の行事としてやる、国の行事としてやるということは、結局天皇がやる、天皇が主宰する大嘗祭でしょう。中心は天皇でしょう。新嘗祭だって天皇が中心になってやるのでしょう、天皇が新穀を届けて五穀豊穣を祈念するのですから。それを、皇室の行事としてやれば国の予算を出してもいいのだ、こんなものは全く筋が通りません。政教分離の原則からいっても真正面から反することだ。こういうことを、法制局長官がもし法律家だというのなら、こんな論理の通らぬことを、こういう政教一致はだめなんだということをわざわざ憲法八十九条が書いたということに真正面から反しているじゃありませんか。こういうごまかしはやるべきじゃない。  今までは内廷費でやってきた。それは先祖を祭るということだから、内廷費でやる祭祀は、それは天皇家のこととしてよかったでしょう。しかし、今度は即位ということになりますと、象徴天皇の即位というのは今度が初めてなんですから、伝統も何もありはせぬですよ。全体の主権者としての天皇の即位というのは過去にありますよ、象徴天皇の即位というのは今度が初めてですよ。前例も何もありはせぬのです。それを前と同じように、しかもアマテラスオオミカミ、皇祖神と、これは宮内庁が出している文書を見ても、何を祈るのかといったら皇祖、天神地祇に穀物をささげ、そして豊穣を祈るのだ、こう言うのでしょう。皇祖というのは日本国憲法体系にはどこからも出てこない言葉ですよ。皇祖神というのはアマテラスオオミカミという架空の信仰上の人ですよ。歴史的な人じゃない。それと天神地祇を祭るというのですから、これは祭祀そのものじゃありませんか。皇室も神事として扱うてきた。それを国家予算を組んで宮内庁掌管でやるんだ、こんなごまかしというのはあり得ぬ。もし文字どおり八十九条を考えるならば、こういうことは断じて許せぬ。これは政治的な意図で旧天皇制の復活を意図しているというふうに言わざるを得ないです。  法制局長官が本当に法律家としての良心に誓って、憲法擁護義務を持っている最高の専門家の責任者として、これが祭祀でない、天皇の祭祀でないと言えますか。戦前でこそ政教一致だから、祭政一致だからできたのですよ。断じて許せぬと思うのです。総理、もう細かい議論はいいです、やめるべきだと思うのですが、どうですか。
  249. 工藤敦夫

    工藤政府委員 ただいま委員仰せられた点につきまして若干私の方から答弁申し上げますが、まず、先ほど委員読み上げられました部分は「「即位の礼」の挙行について」の、即位の礼準備委員会におきまして取りまとめましたものを内閣で了解された、その中にある文章だと存じます。  大嘗祭につきましてここで若干、今部分的にお引きになりましたので、私の方で申し上げますが、ここで「大嘗祭について」、その「儀式の位置付け及びその費用」、こういうふうな部分でございます。  まずその点につきましては、今これからお読みする前に、大嘗祭の「意義」という部分がありまして、そこで、  稲作農業を中心とした我が国の社会に古くから伝承されてきた収穫儀礼に根ざしたものであり、天皇が即位の後、初めて、大嘗宮において、新穀を皇祖及び天神地祇にお供えになって、みずからもお召し上がりになり、皇祖及び天神地祇に対し、安寧と五穀豊穣などを感謝されるとともに、国家・国民のために安寧と五穀豊穣などを祈念される儀式である。 こういうまず「意義」がございます。しかも、  それは、皇位の継承があったときは、必ず挙行すべきものとされ、皇室の長い伝統を受け継いだ、皇位継承に伴う一世に一度の重要な儀式である。 こういうまず意義づけがございまして、その上に立ちまして、今のそういう儀式から見て、「この趣旨・形式等からして、宗教上の儀式としての性格を有すると見られることは否定することができず、」ここの部分を先ほど委員は御引用になったと思うのですが、「また、その態様においても、国がその内容に立ち入ることにはなじまない性格の儀式であるから、大嘗祭を国事行為として行うことは困難であると考える。」とした上で、皇室の行事として行うのだけれども、先ほど申し上げましたような意義から見て、皇位が憲法二条の世襲制と、これに伴う「一世に一度の極めて重要な伝統的皇位継承儀式であるから、」「その儀式について国としても深い関心を持ち、その挙行を可能にする手だて」、これは側面から人的、物的にお手伝いをする、こういう意味でございますが、そういう「手だてを講ずることは当然と考えられる。」こういうふうに述べているわけでございます。
  250. 東中光雄

    東中委員 述べていることはわかっているんです。わかっているからこそ、それじゃだめじゃないかと言っているんで、それについての答えは何もなかった。弁明の余地がないということですよ。こんなもの、歴史家が考えてみても、法律家が考えてみても、こんなばかなことがありますかということになりますよ、普通に読めば。だから、私はそういう点で、これは象徴天皇では初めてなんですから、主権在民を宣している日本国憲法下において初めてなんだから、伝統だ、伝統だと言うたって、先ほども言いましたように、登極令ができて二回やっただけなんですよ、こういうやり方は。だから、そういうものを長い伝統であるとか、そんなことを言うたってだめです。その点をはっきり指摘しておきます。  時間がなくなるので、もう次に行きます。  次は政治改革の問題ですが、総理大臣は所信演説で政治改革について、「リクルート事件の反省の上に立って、政治倫理を確立するとともに、金のかからない政治活動や政策中心の選挙の実現など実のある政治改革を全力を挙げて進めてまいります。」こう言われておりますね。結局、金のかからない政治活動と、そこから政策中心の選挙をやるんだ、そのための政治改革なんだ。その中身は何なんだということを余りはっきり言われていないんです。どうもその実際の動きを見ますと、金のかからない政治活動と政策中心の選挙をやるために選挙制度を変えねばいかぬ、それは中選挙区制じゃだめなんで、小選挙区制を導入するんだ、それから政治資金の規制については、企業献金禁止というふうなことはやらないで、そして公費負担というふうな方向を目指して政党法を制定するのだ、こういうふうに言われているような印象を私は受けています。  だから、総理の言われておる金のかからない政治活動、政策中心の選挙を実現するための政治改革に全力を挙げる、総理が全力を挙げる政治改革の骨子を明らかにしてほしいのです。
  251. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 御指摘のとおりに私は所信表明演説で申し上げました。それから、今いろいろな問題を反省しながら、去る国会にも自由民主党議員立法の形で公職選挙法の一部改正案を提出し、野党の皆さんとの審議、御議論を通じて成立させていただいたところでありますが、なぜそういうことになったかというと、政治改革というのは、政治と政治資金の問題、これを一面とらえなければなりません。公職選挙法の改正案の方は、その出の方の問題について厳しいチェックがございました。  政府は、今選挙制度審議会に諮問をいたしまして、政治資金の問題、同時に定数是正を含む選挙制度の問題、これはいかにあるべきか諮問をいたしております。それは、必要以上に今の政治にお金がかかり過ぎておるのではないか、今の選挙にお金がかかり過ぎておるのではないか。いい悪いは別にして、各党それぞれ政治資金というものをたくさん使わなければならぬ現状を顧みますと、選挙にお金がかからないようにするにはどうしたらいいか、日常の政治活動にお金がかからないようにするにはどうしたらいいかという面の御議論も随分していただきました。また、その問題の根源を掘り下げていきますと、結局選挙制度に当てはまるのではないか、今の選挙制度のあり方をもう少し政策中心の選挙ができるように改めていくべきではないか、こういう考えがございます。  したがいまして、審議会で各界の代表の方に御議論をいただいて、その答申をいただくことになっておりますから、近くいただいたら、また案をお示しをしながら、あるいは皆様方の間で、直接関係のあることですから、いろいろと御議論をいただきたい、こう思っております。
  252. 東中光雄

    東中委員 私が聞いているのは、選挙制度の改革の方向について、中選挙区制はだめ、小選挙区制を導入する方向ということを考えていらっしゃるのかいらっしゃらないのかということをまず第一点聞きたいのですが、大体総理は、小選挙区制というのは金のかからない、総理の言われている金のかからない政治あるいは金のかからない選挙をやっていく上に小選挙区制はいいのだ、あるいは小選挙区制をやれば金がかからなくなるのだというふうにお考えになっているのかなっていないのか、その考えをちょっと聞かせてください。
  253. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 昨年、与党自由民主党はリクルート事件の反省に立って政治改革推進本部をつくって、そこで政治改革大綱というものをまとめました。私はその組織の中の行動隊長という仕事もやっておりました。ですから、本当に厳しい反省に立って政治改革をしていこうという与党なりの大きな案でございます。その与党の成案の中にも、政策中心の選挙の制度を考えなければならない、それは今の中選挙区制の中でのいろいろな反省もあったと思います。けれども、それを与党だけで決めるのではなくて、各界の代表のいらっしゃる政府の選挙制度審議会で一遍議論をしていただいたらどうかということで、その諮問の中にそういった考えも入れました。  後半で御指摘になったこと、おまえは小選挙区は金がかかると思っておるか、かからぬと思っておるか、こういうことでありますが、先生、例は幾らでもあるのですよ。だから、金のかかるあるいは金のかからぬというのは、例のとり方によって幾らでも例は出てくると思います。しかし、私は全体として考えるときに、政治家個人が、候補者個人が中心になって必要なお金を集めなければならぬという制度よりも、政党の支部とか政党本位の選挙を通じてやった方がお金がかからなくなっていくのではないか、私はそのように考えております。
  254. 東中光雄

    東中委員 総理は政治改革大綱の話を出されましたが、政治改革大綱によりますと、こういう条項がありますね。「中選挙区制下においては、政党本位でなく個人中心の選挙となりがちである。」後をちょっと略しますが、「このことは、日常政治活動や選挙運動の重点を政策以外におく傾向に拍車をかけ、」と書いてありますね。政党中心の政治活動、選挙活動ができなくなる、中選挙区制では。そして「利益誘導の政治や、後援会組織の維持と膨大な有権者への手当のため、多額の金がかかる選挙を生む」ことになる、こう書いてあるのです。だから、要するに中選挙区制でいくと政策中心の選挙がやりにくくなる傾向がある、そして多額の金がかかる選挙になるということになっておって、だから選挙制度を抜本的に変えて、そして「小選挙区制の導入を基本とした選挙制度の抜本改革にとりくむ。そのさい、」「比例代表制を加味することも検討する。」これは自民党の政治改革大綱の中に書いてあるわけです。行動隊長としてつくられたわけです。  そうすると、結論からいえば、中選挙区制は、政策中心の政治活動、選挙ができなくなる、金がかかる選挙になっておる、だから小選挙区制を導入する、それだけじゃぐあいが悪いからちょっと比例代表制も加味する、こう書いてあるのですが、この方針を支持するということで総理大臣もおられるわけですね。そう聞いてよろしいか。
  255. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 御指摘になりましたのは党でまとめました政治改革大綱であります。それは党議決定いたしておりますから、私もその決定のときにはそれに賛成をいたしております。ただ、今政府立場で言うと、選挙制度審議会に諮問をしてあるわけでありますから、選挙制度審議会の答申を政府としては最大限踏まえて御議論に供したい、こういうことであります。
  256. 東中光雄

    東中委員 そうすると、やはり金のかからぬ選挙、政党中心の選挙のためには小選挙区制の導入、それで比例代表制は加味するという方針である、それに賛成してきた、それで諮問をした。今第一委員会、第二委員会の回答が出ていますけれども、小選挙区比例代表並立制、比率は六対四、まさに小選挙区制導入、比例代表制加味という線になっていますね。それを尊重していくということでは、小選挙区制をやれば、そうしたら金がかからなくなるというふうに言われる。選挙区制のいかんにかかわらず金をかける人もかけぬ人もおるのだというふうな問題ではなくて、制度によって金がかかったりかからなかったりするということになっている。そういうものなのかどうかということが一番問題なのであって、私たちは、小選挙区制になれば、余計情実と金がたくさん要るということになると思うのです。  今、衆議院選挙で一人区、いわば小選挙区制というのは奄美特別区であります。奄美特別区での、いわゆる新聞などで言っている保徳戦争の状態では、こういうことが現地から報告されています。一票〇万円などの買収工作、供応を初め、見張り小屋、住民票の不正移動、入場券の買い占め、中傷ビラ合戦、選挙妨害とありとあらゆる手段の選挙犯罪が行われた。買収などにばらまかれた金は十五億円とも二十億円とも言われている。奄美群島区の有権者数は約十万であり、有権者一人当たり一万五千円から二万円の金がまかれたという計算になる。公示前は一票二万円と言われていたのが、終盤には五万円が相場だというようなことさえ公然と言われています。小選挙区で大変なひどい状態になっているということなんです。  警察にお伺いしたいのですが、買収等で、奄美特別区で今度の選挙で検挙された件数それから人数、それから送致された件数、人数並びに逮捕者数、ちょっとお聞きしたいのです。
  257. 中門弘

    ○中門政府委員 お尋ねの件につきましては、投票期日後三十日現在におきまして検挙件数百六十二件、検挙人員百四十五人となっております。この検挙人員のうち逮捕いたしました人員は二十七人でございまして、逮捕罪名はすべて買収でございます。
  258. 東中光雄

    東中委員 非常に異常な状態ですね、有権者が全部で十万というのですから。そして、この状態を現地の新聞、これは南日本新聞ですが、ここにいろいろなことが載っています。私もこれを読んで本当にびっくりしましたね。この新聞によりますと、例えば名瀬市の自営業者、四十五歳の人がこう言うている。もう悲劇だ、「現金買収は当たり前。選挙事務所も知らない現金が勝手に飛んでいるという。かけ屋の仕業だ。」というのですね。選挙賭博のしわざだ。「親類、親子、兄弟がいがみ合う。切り崩しを恐れて深夜に見張り番が立ち、あげくは暴力ざた。こんな選挙を続けていたら島はいつか沈没する」、こう言うておると書いています。それから、本土から来た公務員、二十六歳は「政策など、どこ吹く風。単に骨肉の争いを繰り広げているだけ。暴力団に加え警察の機動隊まで出る選挙が、全国どこにありますか」、こう言うたと書いています。あるいは、東京から沖永良部へ三年前に帰ってきた元会社の役員、六十九歳の人は「原因は一人区に尽きる。小選挙区の弊害が露骨に噴き出した典型的なケース」だ。政治は利権の対象になっている。「代議士が一人しかいないため利権に群がるように業者がまとわりつく。奄美の代議士は年間三百億円を超える奄振を抱え、国家予算と直結している存在だからだ。代議士がこけたら業者も共倒れ。だから強力な対抗馬でも出ようものなら、権益を守りたい一念と、それを奪い取ろうとする側がぶつかり合う。」こういうことで非常に激しいことになるのだ。こういう報道をされているのですね。小選挙区というのはほんまに大変なことになっているというのが現在の実情であります。だから、小選挙区制の導入によって金がなくなり政党中心の選挙ができるんだなんというのは、これはもう全くの虚構ですね。  これについて私たまたま調べてみました。昭和二十二年三月二十八日に、当時の日本自由党並びに日本進歩党を代表して、現在の小沢自民党幹事長のお父さん、小沢佐重喜さんが、中選挙区単記制を採用せいという修正案を、これは大野伴睦さんが出したわけですが、それの説明をしているんです。  その趣旨弁明によりますと、小選挙区制というのはこういう点でいかぬのだということを非常に端的に書いています。四点あるというんですね。一点は、その区域内の地方的人物のみが選出されまして、中央政治界に活動する大人物は当選困難になってしまう。本当に狭いんですから、都議会議員の選挙区より狭うなるんですから、そういうことになってしまう、これが第一点です。第二点は、選挙抗争が非常に激烈になり、その結果は当然の事実であるところの情実と投票買収という点が横行する、こう言うています。それから三番目は、政府の官権乱用による干渉が非常に行われやすくなる、したがって、常に政府・与党が大勝することになる。というのは、奄美振興じゃないけれどもそういうものがずっと使われてくるということを言っておるわけです。そして第四は、議員の行動が常に地方的問題のみに傾きまして、中央の問題なんか言うておったら選挙に通らぬようになるということになってしまうから。今の自民党の先輩の人がこう言うて――小沢幹事長のお父さんです。そういう提案をしているというのが会議録に残っていますよ。それはそのまま生きているでしょう。大正十四年にこの中選挙区制が採用されたときの総理大臣も、小選挙区制でやったら金がかからぬなんというのはうそだということを、加藤高明さんでしたか、言うています。  何が政党中心の政治になるか、なぜ金がかからぬ政治になるか、全く虚構でしょう。現実にそうだった。イギリスだってそうでしょう。だからこそ物すごく腐敗防止法でしなければどうにもならぬようになった。こういう状態ですから、私は自民党の政治改革大綱に基づいて今進められておる小選挙区比例代表制、といっても小選挙区制を中心にした比例代表制を加味するようなそういうやり方とか、政党を規制するような政党法の制定、これは断じて許せぬ。日本の過去の歴史からいっても現状からいってもそう思うのですが、政治改革の断行ということを言われる総理、こういう状態こそなくさにゃいかぬじゃないか。中選挙区制でも金を使わぬ人もようけおるんです。同士打ちになるから金をよく使うというのは――大阪の選挙区なんかでいえば、外務大臣のところでも四人区だけれども自民党は一人しか立っていないですね。私のところは五人区だけれども自民党は一人しか立たなかった。追加公認しただけや。そういうことでしょう。あとは各党ほとんど伯仲ですがな。しかし、自民党は第一等で当選するからあれを小選挙区制にしたら全部自民党がとっちゃうということになるわけですね。こういうことなんで、小選挙区制というのは許されぬと思うのですが、総理の所見をお伺いしたいと思います。
  259. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 最初に申し上げたようにいろいろな例がありますから、その極端な例を一つだけ言われてもいかがかと思いますし、私が頭の中に描いておりました政策本位の選挙というのは、奄美という名前が出ちゃったから言うのですが、あれは要するに自由民主党の立場に立った人同士の選挙でありましたので、自由民主党の候補と野党の候補との政策論争ではなかったと思います。ですから、やはり同じところの選挙でありましたから例として私は適切ではなかろうと思いますし、また、小選挙区の中でやるときには、さらに進んで一体政党とは何だという議論にもなってきますと、同じ政党の同じ政策を持っておる者同士が複数立候補して争うという形は世界の姿からいってもこれはいい姿ではない。ですから、そういったことをすべて踏まえてこれは提案をしてあるわけでありますから、選挙制度審議会の答申というものを受けてさらにそれらのことについても考えてみたい、政治改革の方向を、考え方を述べろとおっしゃるからいろいろ申し上げてまいりましたけれども、そういうことでございます。
  260. 東中光雄

    東中委員 言われておることと提案されておる小選挙区制、政党法というのはこれはもう結びつかない。全く私たちは承服できないし、事実がそれを拒否しているということ、これはこれから大いに続くことだと思いますから。  次、余り時間がありませんが、一、二点お伺いしたいと思います。  二月二十二日にチェイニー米国防長官が来ました。総理も会われたわけですが、そこで、在日米軍の削減について、合理化、効率化のために実施するもので戦闘能力を低下させないというふうにチェイニー国防長官が言うて、前方展開戦略を引き続いて堅持するという発言があったのに対して、総理は、それは評価をする、そして、ミッドウェーのかわりに次の航空母艦が来るということについては歓迎するという趣旨のことを、これは総理が直接会われた中でそういう話が出たと報道されていますね。そのことについてどうなんでしょう。
  261. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 チェイニー国防長官と私は会いました。そして、今おっしゃったことの背景を言いますと、私は今アジアにおける……(東中委員「いや、もういい」と呼ぶ)いや、もういいじゃない、あなたが言えと言われたから言うんですよ。アジアにおける空白をつくっちゃいけない、日本国民のために安全はきちっと確保しなきゃならぬという立場におりますから、いかに米ソの冷戦時代の発想を乗り越えた大きな動きがヨーロッパで起こっておるといっても、アジアの現状には今手のひらを返したような大きな変化はないわけでありますから、ですから前方展開作戦は、これは変えないということ、それから航空母艦も、それはかわりのものが来るということは、アジアの安定と平和を維持していくためにこれは評価すべきことだ、私はそう思いましたから率直にそう申し上げたわけであり、今急激に引き算のように引いてしまうということはアジアの平和と安定にも私は役に立たない、こう判断しましたので、その意味でそれを評価したわけであります。     〔委員長退席、宮下委員長代理着席〕
  262. 東中光雄

    東中委員 ところが、日本に対してアメリカが前方展開戦略でとっておる最近の状態ということですね。例えば日本におけるアメリカの最近の新たな配備、特に一九八〇年代後半になってから非常に顕著に大きくなっているんですね。  例えば八七年には三沢の基地に五十機のF16が配備をされている。そして、東北、北海道であの超低空飛行をやられるということで随分被害が出ていますね。あれは核攻撃機ですよね、本来は。それが五十機も配備されたんですよ。  その後、例えば横須賀でいいますと、八八年の八月にイージス艦バンカーヒル、それから駆逐艦ファイフ、いずれも核トマホーク積載可能の最新鋭艦です。これが配備をされた。そしてさらに、ことしじゅうにイージス艦モービルベイ、駆逐艦ヒューイット、こういうのが新たに配備されるというんでしょう。そこへ航空母艦ミッドウェーがおるわけでしょう。だから、これはもう強力な第七艦隊の空母機動部隊の配備であり、それを母港にしているわけです。そして、そいつがさらに、ことしじゅうに二つふえるわけでしょう、あのイージス艦と駆逐艦が。  さらに、ミッドウェーは来年の夏にはやめる、だからそのかわりにインデペンデンスが入る。インデペンデンスといえば、ミッドウェーと比べますと搭載機で十五機も多いわけです。乗員だけでも六百人ふえるわけです。世界最強のF14トムキャット戦闘機二十機を積んでおる。大変なものですよ。それが新たに基地にする。横須賀を母港にする。十数年前にあのミッドウェーが母港にするというときはたった三年だけだと言うたんでしょう。それがミッドウェーがやめるということになったら、今度は新しく大きいものが出てくるのだ。それを歓迎すると言われておったのでは、低空飛行訓練の被害を受けている国民あるいはミッドウェーの艦載機のあのNLP、夜間訓練での被害、それは厚木基地だけではありません。三宅も皆問題になっているでしょう。逗子だって、七回も選挙をやって全部ノーだという住宅反対の国民の審判が下っているじゃないですか。  そういう状態で軍縮の方向へ向かっているときに、大きな流れが軍事同盟は解消しようという方向へ行こうとしておるそのときに強化をしていく、具体的にインデペンデンスを配備をする。それを総理大臣が歓迎すると言われたんでは私は何とも、むしろこの際やめてくれ、F16も撤去してくれということを言われるのが国民の声じゃないか、なぜこれをふやさなければいかぬのかということを思います。歓迎するというのはやめて、引き揚げてくれとぜひ言うてほしいのですが、どうです。
  263. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 何回も申し上げるようですけれども、我が国は国民生活の安定と向上と国の平和を守っていくという大きな政治の目標がございますから、アメリカとソ連の力による対決が冷戦の発想を乗り越えて変わりつつあるということは評価いたします。しかし、アメリカもソ連もともに有事を想定して、両陣営のリーダーとしての立場で二正面作戦プラス二分の一戦略というような大きな軍備を持っておりました。日本の場合はそれに比べればまことにつつましやかにみずからの国を守るという専守防衛で、ささやかな節度のある防衛力でありました。日米安保条約に頼って抑止力とか世界の均衡の中で平和を守り抜いてきたわけでありますから、また、それがアジアの安定と平和にきちっと役立ってきたことも御理解を賜っておるところだと思います。  私はそういう意味で、現状の大幅な変更はまだ今手のひらを返したようにできないわけですから、世界の緊張緩和が行われておるといっても、されつつあるということで進行形現在の中でありますから、今はきちっと従来の方針に従って日本の平和を確保していかなければなりませんので、その意味で前方展開作戦は評価する、もういいからすぐ帰ってくれと言うほどアジアの状況は変化しておらないし、依然としてまだ力の均衡は世界を支配しておる、今日現在では根底になっておるものだ、私はこういうふうな認識を持っておるところであります。
  264. 東中光雄

    東中委員 前方展開戦略の中で一層ここ数年強化をしてきておる。今度ミッドウェーの問題、ことしじゅうにまたイージス艦をもう一隻入れるというのも、これはことしじゅうに強化する方向でしょう。だから、ミッドウェーが交代してまたインデペンデンスが入ってきて強化しよる。その強化しよるのを歓迎では、私は方向がまるっきり逆ではございませんかということを申し上げているわけです。それさえ、いやどんどん強化したらいいんだ、歓迎をする、これでは海部総理の、もう私が抱いておったイメージとちょっと違ってきますね、そういう感じがするということをまず率直に申し上げておきたいと思います。  それからもう一つ、外務省にお聞きしたいのですが、在日米軍の駐留経費の負担の問題ですけれども、在日米軍の駐留維持経費、アメリカ側が負担しているものは今どういうふうになっているか、その内訳も含めて明らかにしていただきたいと思います。
  265. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 先生御質問の在日米軍が負担しております経費は、八八会計年度、これはアメリカの会計年度でございますけれども、全体で約四十五億ドルでございます。
  266. 東中光雄

    東中委員 その内訳をちょっと言ってください。
  267. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 内訳を申し上げます。  軍人軍属等の関係人件費約二十三億ドル、それから運用維持費約二十億ドル、軍事建設費約〇・二億ドル、燃料油脂費約二億ドル、合わせまして約四十五億ドルでございます。
  268. 東中光雄

    東中委員 日本が現在、在日駐留米軍の経費で負担をしている額は幾らですか。
  269. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 平成元年度で申し上げますと、日本側で負担いたしましたのは三千六百五十六億円でございまして、平成二年度の政府原案の予算案におきまして現在計上させていただいていますのは四千百十五億円でございます。
  270. 東中光雄

    東中委員 それで、外務大臣にお聞きしたいんですが、チェイニー米国防長官とあのとき一緒にアレン・ホームズ、バードンシェアリングの担当移動大使も来たと承知しているんですが、ここでチェイニー国防長官は、あの米国の九〇―九一会計年度の国防支出権限法九百十三条に基づいて日本と交渉をして、その報告をアメリカ議会に出すんだがということで話をされたようですけれども、それで駐留費については、あの法律では、御承知のように米軍人の給料、手当を除くすべての直接経費を日本側に負担するようにしてほしいということが法律には書いていますね。そういうことで、在日米軍の駐留経費の負担を米国の議会との関係でふやしてもらうことが大変重要だということをチェイニー国防長官は言うた。それに対して外務大臣は、米議会の状況はよく承知をしている、そしてできるだけというかどうか知りませんが、要するに努力をするというふうに回答をされたと報道されていますが、その向こうから言うたことの内容とこっち側が努力するという約束された内容をちょっと言うてほしいんです。
  271. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 最初に先生が言及されましたホームズ大使は、確かにチェイニー長官と同行をしておいでになっております。それで、チェイニー長官は、二月に来日された際に海部総理と中山大臣、それから防衛庁長官等にもお会いになっておられますが、先生御質問の中山大臣との会談におきましては、これは海部総理の会談と基本的に同じでございますが、チェイニー長官より、これまでの在日米軍経費負担問題についての日本側の努力に感謝し、それからこれを評価いたします、アメリカの議会との関係でも、日本側が今後とも努力を継続してまいることが重要でありますので、よろしくお願いしますということを言われまして、それに対しまして中山大臣より、日本側がこれまでしてきました努力に対します米側の理解を求めると同時に、これから日米安保体制の円滑な運用を確保するという大局的な見地から、静かな対話を通じて日本側としては自主的に努力していきたい、こういう趣旨を発言されました。  先生、ちょっと念のために申し上げたいと思いますが、先生冒頭、昨年十一月に成立しておりますアメリカの国防予算授権法の九百十三条を援用されましたが、この九百十三条に関しましては、二月のチェイニー長官の訪日の際には一切言及がなく、ホームズ大使も触れておりません。この九百十三条に関しましては、御承知かと思いますが、これが成立した段階、つまり大統領が署名に当たりましてステートメントを出して、この中には、日本の関連条項を含む幾つかの条項は外交政策の実施などに関連する憲法上の大統領の権限を侵すおそれがあると言っております。
  272. 東中光雄

    東中委員 非常に時間がなくなりましたのでまとめて申し上げますと、今先ほど在日米軍の駐留経費、アメリカ側が負担している額は四十五億ドルというふうに言われましたが、これは、この間金子質問で答弁はありましたけれども、初めてのことでした。その内訳が、軍人軍属関係人件費が二十三億ドル、それから運用維持費二十億ドル、燃料油脂費二億ドル、軍事建設費〇・二億ドル、これは初めて明らかにされたことであります。  そして、日本の負担している額も言われましたが、これは分類によりますけれども、少し減らしていると思いますけれども、アメリカ側が言っておる在日米軍軍人の給料、手当を除くすべての直接経費を負担するようにというのが九百十三条です。そうしますと、四十五億ドルのうちの軍人軍属関係人件費二十三億ドルを除くその他の直接経費、だから日本人の労務者のやつもあるでしょう。あるいは燃料費もあるでしょう。そういう運用維持費、燃料油脂費、軍事建設費合計二十二億ドル余りですね。軍人の給料、手当以外を負担せいという法律ですから、その法律は効力があるとかないとかという話は別に、米議会の意思表示として言われておる、その額は、だから米ドルにして二十二億ドル余りということになるんです。  そうしますと、ことしは去年よりも少しふえたというふうに報告をアレン・ホームズ大使はしておりますけれども、しかし日本はさらに負担すべきだし負担することができる、負担することを期待するというふうに言うているわけです。その中身は何かといったら、軍人軍属の手当以外のものを直接経費全部というふうに書いてある法律を背景にして、それの報告をするために交渉に来たんですから、だからその額は、要求している額は二十二億ドル相当になってくるものを、よしあしは別として、アメリカ側が議会で決議しておる、こういうことを日本へ突きつけてくる。拘束力があるかないかの問題じゃないんです。それに対して、努力しますじゃなくて、何ということをやっているかと言うて、そんな負担できるかと言うべきじゃないですか。地位協定では、二十四条で在日米軍の経費については、施設、区域以外はすべてアメリカが負担すると書いてあるじゃありませんか。全く逆のことを言うてきておるということについて、外務省はちゃんとした態度をとるべきだと思うんですが、外務大臣の交渉の経過とあわせて、態度をお伺いをして質問を終わります。
  273. 中山太郎

    ○中山国務大臣 我が国の平和と安全の維持のためには、引き続き効果的抑止力の確保が必要と考えられます。強固な日米同盟関係がこのため不可欠であり、その基礎をなすのが日米安保条約体制でございまして、そういう意味で私どもとしては、この安保体制は軍事大国にならないという日本の政治的コミットメントに国際的信頼性を与え、もって日本が米国と協調しつつ、この地域の発展のためにより大きな政治的、経済的役割を果たしていくことを容易にしていると考えておりまして、我々日本政府としては今日までも自主的に努力をしてまいりましたし、今後とも自主的に努力をしてまいる考えであります。
  274. 東中光雄

    東中委員 終わります。
  275. 宮下創平

    ○宮下委員長代理 これにて東中君の質疑は終了いたしました。  次に、中野寛成君。
  276. 中野寛成

    中野委員 米ソの緊張緩和が進みつつありますことは、世界平和にとっても、また我が国にとっても極めて喜ばしいことであります。  そこで伺いますが、二月七日から九日まで行われました米ソ外相会談、そこで戦略兵器削減条約、それから欧州通常戦力の相互削減条約、これを年内に調印することが確認をされました。それ自身大変結構なことでありますが、そこで、欧州で削減をされます予定のソビエトの核兵器や通常戦力がアジアに振り向けられるということになりますと、我が国にとっては大変心配なことであります。  しかし、このデタントの時代にそんなことがあるかと言う人もあるかもしれません。しかしながら、欧州で削減されたその兵力をそのまま民間へ戻しますと、これは大変な雇用問題が心配をされます。また、装備その他もそのまま廃棄するには大変な問題が起こります。そのようなことから、アジアへの配備というのはこれはあり得ることとして想像をされる方々も多いわけであります。それはそれでまた幾つかの財政的、経済的問題があることも事実であります。しかし、このことについての、すなわちソ連の欧州での軍縮の軍事的、経済的影響とまたアジアに与える影響を分析せずして、我が国のこれからの外交や防衛の問題は論ずることができないと思います。この分析をいかが政府としてなさっておられますか、まずお尋ねをいたします。
  277. 中山太郎

    ○中山国務大臣 委員お尋ねの米ソの軍縮交渉におきまして軍備管理・軍縮問題が大きな議題として上げられ、今年考えられます近いうちに行われる米ソ首脳会談におきましても、軍縮問題が議題となることは明らかであります。先般も、来日されました米国の軍縮局長も私に、ただいま鋭意ソ連側と交渉中であるというお話がございました。  ただ、委員御指摘のように、そのヨーロッパに駐留しておりますソ連軍がいわゆる引き揚げるといった場合に、その膨大な軍人の人たちが除隊をするのか、それが除隊された後にソ連の中における社会においてどのような生産活動に従事していくのか、雇用の問題、今御指摘の点があることは明らかでありますし、ソ連のペレストロイカの現状も決して安易な道をたどっているとは私どもは認識をいたしておりません。そういう中で、御指摘のようなこのソ連の軍縮の動き、それがどういうふうな形で今後展開をしていくのかということは我が国の外交及び安全保障にとっては極めて重要なことでございまして、米ソの首脳会談の成り行きを注目しているところでございます。
  278. 中野寛成

    中野委員 そこで総理にお尋ねをいたしますが、予定されておりますその米ソ首脳会談でありますけれども、今申し上げた問題の詰めが恐らくそこで行われるであろうと思います。万が一にも欧州での軍縮がアジアの軍拡とならないように日本政府としてアメリカ政府に正式に求めるべきではないか、こう思うわけでありますけれども、いかがでございましょうか。
  279. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 米ソで行われております軍備管理から軍縮へ向かっていくという動きは、これは欧州だけで完結してはいけません。そしてそれが、今おっしゃるように、逆にアジアの軍拡といいますか、そんなことになったのでは全くこれは意味がありません。昨日来のここでのいろいろな御議論の中でも、そのような点を御指摘になった、欧州で廃棄した兵器がアジアへ来るようなことになっては困るという御指摘、私も全くそのとおりであると思っております。したがいまして、事あるごとに西側の首脳にも私は、アジア・太平洋地域における平和と安定というものに、欧州における平和と安定への冷戦の発想を乗り越えた動きがそのまま来るように、我々もそれを期待もするし、積極的にその方面の努力もしていかなければならない、こう考えております。全く見解をともにいたします。
  280. 中野寛成

    中野委員 総理のお気持ちはわかりましたが、米国大統領へそのことを協力を要請をする、そのようなお考えはございませんか。
  281. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 きょうまでの首脳会談のときなどに、アジア・太平洋地域において日本の果たしておる役割、果たしてきた役割、同時にアジア・太平洋におけるいろいろな問題について、ヨーロッパの関連とアジアの関連とで既に米国の首脳とは話をいたしておりますし、また同時に、それらのことについて、世界の急激な変化で、アジア・太平洋地域だけが別な突出した関係をとらないように、全体の中で平和と繁栄が定着していくように、このことは常に、アメリカの大統領のみならず、ヨーロッパの首脳とも私は話をいたしております。
  282. 中野寛成

    中野委員 あわせまして、これは防衛庁になるか外務省になりますか、ソ連の欧州での軍縮がアジアへの兵器に振り向けられることにならないようという心配を今申し上げましたが、その中で日本もモニター制導入を求めていると聞いております。この見通しはいかがでございましょうか。  また、そのモニター制がとられましても、例えば米ソ間の合意直前にアジアに移動するとか、または合意後に新しく開発された兵器をアジアに配備するとかというふうなことがあっては、これはしり抜けになってしまいます。これらのことについての配慮、注意も十分払われなければならないと思いますが、いかがでしょうか。
  283. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 先ほど総理大臣及び外務大臣から御説明がありましたとおり、いろいろなレベルで日本側といたしましてはアメリカを初めとするNATO諸国に対して懸念を伝えておりますし、アメリカ及びNATO諸国は、この軍縮交渉がまとまった場合にはこの兵器は破壊されなければいけない、兵器を破壊するというのが原則ということで交渉に臨んでおるというふうに私たちに伝えております。  他方、本当に軍縮が行われ、兵器が破壊されるかどうかということにつきましては、アメリカ及びNATO側はその実施の検証に非常に重要性を置いておりまして、効果的な検証措置を伴う必要があるということを強調しております。例えばその一環といたしましては、先般オタワで開かれましたオープンスカイズ構想、これもその検証の一環として利用されるというふうに伺っております。
  284. 中野寛成

    中野委員 その検証は結構なんですが、合意したときに存在する兵器等について破壊される、これはわかります。合意を前にして事前に移動をしておく、もしくは合意後、その合意のときの兵器は別にいたしまして、合意後新たに開発された兵器、それをこちらへ振り向けるというふうなこと等は、今の検証のその目を逃れる手段ということで十分考えられることでありますが、どうお考えですか。
  285. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 私たち、直接のその交渉の当事者でありませんので、必ずしも詳しい情報までは得ておりませんけれども、日ごろアメリカ及びNATO諸国との情報交換を通じて得ておりますところは、まず効果的な検証、これは合意後の新規の兵器の開発も含めまして効果的に行うために、まず最初にデータの交換、今それぞれ双方が持っている兵器についてのデータの交換を徹底的に行う、それをベースに実際に削減が行われているかどうかということを検証していく、あるいはチャレンジ査察といいますけれども、抜き打ち的な査察についても話し合われているというふうに承知しております。
  286. 中野寛成

    中野委員 トータルとしての軍縮が実現をいたしますようにそのことに十分注意をし、協力を要請をしていただきたい。また、日本政府としての努力を改めて要請をしておきたいと思います。  次に、米ソ首脳は昨年のマルタ会談で冷戦終結を宣言したわけでありますけれども、アジアにはまだ残念ながら冷戦構造が残っていると言わざるを得ません。その一つが北方領土問題であり、もう一つが朝鮮半島の南北の分断問題であるというふうに考えますが、総理はいかがお考えでしょうか。
  287. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 おっしゃるように、北方領土の問題は、我が国が直接国民的合意のもとに返還を求め、平和条約を締結して真に安定した友好な関係を日ソ間に築いていきたい、こう思っておる大きなテーマでございます。  それからもう一つ御指摘の朝鮮半島における軍事力を背景としての対峙の問題も、これもアジアにおいて極めて顕著になっておる東西対立の一つの具体的なあらわれである。これはそれぞれ解決されるように努力をしていくことがアジアの平和と繁栄にとって大切なテーマであると私も考えております。
  288. 中野寛成

    中野委員 そこで、北方領土問題についてはなお一層の努力が必要でありますし、またゴルバチョフ大統領の訪日が一つの大きな前進のきっかけとなることを願っておりますが、きょうは朝鮮半島の緊張緩和について続いてお尋ねをいたしたいと思います。  まず、先ほども話題となりましたけれども、二月十五日、米国のチェイニー国防長官が韓国を訪問いたしまして、在韓米軍の戦闘力に影響のない部分からというただし書きつきながらも、九三年までに在韓米軍を約五千人削減することで合意に達しております。日本政府はこれをどのように評価しておられますか。朝鮮半島の緊張緩和の第一歩と見ているかどうかということが第一点。それから、今後在韓米軍はさらに減ることもあると見ているのかどうか、これが二点。また、韓国とソ連との国交正常化の動きを日本政府ほどのように見ておられますか。あわせてお伺いをいたします。
  289. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 先生最初に御披露されましたように、二月十五日のチェイニー長官の韓国訪問の際には、御指摘のような形で今後在韓米軍の削減が行われるということが発表されておりますけれども、その際チェイニー長官と韓国の国防長官が共同の記者会見をしておりまして、その際のお二人が強調しておられましたことは、在韓米軍に関しますいかなる懸案上の政策も、朝鮮半島におきます戦争勃発の抑止力を維持することのできる範囲内において漸進的かつ段階的に推進されなければならない、こういうふうに言ってきております。  私どもがこれをどう評価しているかという点でございますけれども、東アジア全体に関しまして、チェイニー長官がその後日本に参りました際に、先ほど駐留米軍経費の関係で話題になりましたけれども、東アジア全体に対します米軍の再編問題についても外務大臣等に詳しく説明しておりまして、これに対しまして中山大臣から、全体として再編に関する米側の考え方を理解するということを言っていただいております。ただ、その際に三点指摘していただいておりまして、客観的な軍事、政治情勢を踏まえたものでなければならないということ、それから米国の前方展開体制はこの地域の平和と安定にとって不可欠であるということ、それから今後とも我が国、韓国等と連絡、協議してもらいたい、こういう三点を指摘してもらっております。
  290. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 お答え申し上げます。  後段におきまして、このことが朝鮮半島の緊張緩和にどのように役立つかというお尋ねであったと思いますけれども、ただいま北米局長からも御答弁申し上げましたように、そのような米軍の削減というものが、韓国との十分な合意のもとに漸進的かつ段階的に、すなわち朝鮮半島の全体のバランスを崩さないという前提で進めるということでありますならば、これは一般論といたしましてまことに日本政府としても結構なことではないかと考えます。
  291. 中野寛成

    中野委員 韓国とソ連との国交正常化の動きをどう評価するかという質問についての御答弁がまだないです。
  292. 中山太郎

    ○中山国務大臣 委員お尋ねの韓国とソ連との国交正常化への努力は歓迎すべきものと考えております。
  293. 中野寛成

    中野委員 単純に歓迎する。これは文字どおり外交辞令として、大臣の御答弁はそのとおりであろうと思いますけれども、しかし、その国交正常化への動きの中で、言うならばソビエトとのおつき合いの長さや、また我々日本が持っている情報等々も含めて、やはり韓国と十分そのソビエトとの国交正常化のあり方等については日韓間で協議をする、また情報交換をする等々もあわせて必要なのではないか、こういう気持ちを私は持つのでありますが、いかがお考えですか。
  294. 中山太郎

    ○中山国務大臣 委員の御指摘のとおり、韓国は、ソ連のみならずモンゴルとも最近外交関係を樹立いたしました。また東ヨーロッパの国々とも外交関係を樹立しておりまして、こういう中で日韓の両国担当者の間ではいろいろと情報の交換が行われていると認識をいたしております。
  295. 中野寛成

    中野委員 この問題はそれ以上申し上げませんが、アジアの緊張緩和を促進することに日本が傍観者的な姿勢をとっているのではないかという批判があります。私もややもするとそういう感じを持ちます。日本としても積極的な行動が必要ではないのか。特に朝鮮半島の緊張緩和のために日本が率先して汗を流すべき立場にある、アジアにおける日本の位置づけを考えますときに。ただ過去の暗い歴史がありますから、感情的な問題が諸外国にあることも十分承知しなければなりませんし気をつけなければなりませんが、しかし、現在の日本の置かれている立場は、まさにアジアの平和のために率先して中心的な役割を果たすべき位置にある、こう思うのであります。  そこで、我々はこの見地から、アメリカ、ソ連、中国、日本と韓国、北朝鮮の六カ国が共同のテーブルに着くように日本が呼びかけるべきだという提案をしてまいりました。三月六日の本会議で我が党永末委員長がこの点について質問をいたしました際に、総理はこうお答えになりました。「今御提案のような六カ国の会談が具体的な動きが出てくるとすれば、我が国もできる限りの対応をして成功させていきたいと考えるものでございます。」そういう働きが出てくるとすればという前提条件つきで総理はお答えになりました。むしろ、そういう働きになれば考えるというのではなくて、日本が積極的に韓国とも中国ともソビエトとも、当然米国とも話をし、そして働きかけ、それの実現に向かって積極的に努力をしていく、すなわち傍観者ではなくてみずからが努力するという姿勢、アジアの平和を構築するために日本が積極的に努力するという姿勢が必要だと思うのであります。  もちろん申し上げるまでもなく、ヨーロッパにおける平和がNATOとワルシャワ条約機構という二つのグループの話し合いによって大きな成果をおさめてきたことは既に証明をされておりますが、アジアにおいてはそういうグループ構成がなされているわけではありませんから、この六カ国で話をする以外にないと思います。アジアでヨーロッパの軍縮、緊張緩和をモデルとしてもしまねることができる基盤があるとすれば、それは朝鮮半島問題であろうと思うのであります。この朝鮮半島における軍縮・軍備管理交渉等について、この六カ国会談等を積極的に日本として進めていく決意はありませんか。改めてお伺いをいたします。
  296. 中山太郎

    ○中山国務大臣 委員お尋ねの六カ国の会談、アジアの平和のために日本が積極的に努力すべきではないかという御指摘でございますが、アジアの平和を構築するために積極的に各国と協力していくという基本的な考え方は、もちろん我が国としても当然考えるべきことであろうと思います。  ただ、六カ国の会合自身につきましては、かねて北へ盧泰愚大統領が提案をされて、これが北の方が反対をしたという経過がございます。こういう中で私どもとしては、そのような環境が生まれれば、また生まれさすために努力はいたしますけれども、現実にはそのような状況でございまして、これから盧泰愚大統領が訪日されます際にも、海部総理との間の首脳会談におきまして、この朝鮮半島問題は当然議題にもなりますし、アジアの平和問題につきましても御協議があるものと考えております。
  297. 中野寛成

    中野委員 六カ国会議を盧泰愚大統領が提案をされた、北が断った、私は、それだけで終わらせるのではなくて、せっかくの提案でありますし、南が提案したからということではなくて、韓国が提案したからということではなくて、むしろ日本の主体的な意思によって関係各国への働きかけを行う、また、もちろん朝鮮半島問題は南北の当事者同士の対話が最優先であることは言うをまちませんけれども、しかしながら、やはり環境整備のために日本が積極的に働きかけるということはとりわけ大事なことであります。そのことを強く要請を申し上げますと同時に、今外務大臣がお答えになりました、盧泰愚大統領が間もなく訪日をされますけれども、そのときの話題にもなるであろうとおっしゃられましたが、その際の総理の御決断をお聞きをいたしたいと思います。
  298. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 先ほど永末委員長に対する私の答弁はお触れいただきましたので、そのとおりでありますから繰り返しませんけれども、五月の盧泰愚大統領との会談では、極東アジアの平和構想問題について、これはやはり盧泰愚大統領自身が国連でも演説をされた方でありますから、当然お話をするつもりでおります。同時にまた、日本としてもいろいろな国と個別の接触をし、努力もしておるわけでありますが、韓国との友好関係も深めながら北朝鮮政府とも政府間の話し合いをしたいということを率直に提案をしておりますので、それらの国々と個々の問題についてもいろいろ話し合いながら、アジアの安定と平和のことについてのでき得る限りの努力を今後も続けていきたい、こう思っております。
  299. 中野寛成

    中野委員 最後の質問に入りますが、その盧泰愚大統領の訪日の際の目的の一つとして、一番大きな目的とさえ時に言われます在日韓国人、いわゆる三世問題でございます。  私は、もう十年以上になりますか、まだ盧泰愚大統領が国軍保安司令官であられたころ、全斗煥大統領が就任をされたころに、この在日韓国人の人権問題で韓国から弁護士団を訪日をさせていただきたい、その要請もございましてお会いしたときがあります。そのときに韓国居留民団がおつくりになった差別白書なるものを盧泰愚司令官にお渡ししたことを思い出すのでありますけれども、しかし、それが今や一番大きな日韓間の協議のテーマになっているのであります。  韓国側から、永住権の付与、退去強制問題、再入国許可制度、外国人登録、これには指紋押捺、登録証常時携帯義務の問題、そして公務員採用、これにつきましては地方自治体、国公立小中高の教諭の採用、民間企業への就職、韓国語学級等の民族教育、地方自治体レベルの選挙権、被選挙権等々随分多くの要望があります。三世問題のみにとどまらない部分もありますけれども、しかしながら、韓国と日本との関係というのはアジアの平和ひいては世界の平和にとってとりわけ大事な関係であるということを考えますと、言うならば日韓の間にのどにひっかかったとげのような感じで存在をする。そして、その責任は一にかかって、日本が三十六年間韓国を統治した、そして強制的に韓国人を日本へ連れてきて日本人と国籍を定めた、戦争が終わった、これはまた本人の選択の自由もなく韓国籍に戻された、言うならばそういう歴史的経緯があるわけであります。  当然他の国々の人たちの人権も守らなければなりませんけれども、しかし在日韓国人の存在は、日本における外国人の中では極めて特別な存在と言わなければなりません。国際慣例や相互主義で対応せられるものではありません。まして日韓の法的地位協定に基づく協議が今行われておるわけでありますから、日韓関係の問題として特例措置等をまず講ずる。特別な扱い、措置がここでは講ぜられる。そして他の国々の人々に対する均てんは後で考えるべきである。まず協定に基づく日韓間の新たなる協定を結び、その協定に基づく国内法の整備というふうにしていくことが韓国の要望にもこたえることになるでありましょうし、歴史的経過からしてまた当然日本がなすべき責務があるもの、こう思いますけれども、総理の決意と外務大臣の現在の交渉の過程における経緯等をお聞かせいただきたいと思います。
  300. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 私の方から御答弁させていただきます。  ただいまのお話がございましたいわゆる在日韓国人三世の方々の問題につきましては、これは先生先刻御案内のとおりでございますけれども、六五年の法的地位協定に基づきまして、ただいま八八年の十二月から韓国政府と私どもの間で真剣な協議を進めております。ただいま先生がお話しになりました永住権の付与から始まりまして九項目ほどの要望が出されておるわけでございますけれども、ただいま韓国側の考え方を熱心に聴取する傍ら、政府の部内でもその対応ぶりにつきまして真剣に検討を行っておるところでございます。見通しはなかなか難しい問題もございますけれども、何とか両国の政府の間で協議を進めまして、満足のできる結論が得られるように一生懸命鋭意努力しておるところでございます。
  301. 中野寛成

    中野委員 時間がありませんから最後の質問になりますが、これは日本政府及び日本国民の決意と意識の問題にかかっている、こう言わなければなりません。関係する省庁も法務省、警察庁、文部省、労働省、自治省、外務省、絡んでおりますけれども、とりわけこの問題についての政府としての決意、そして法務省を中心にした法解釈、これをより血の通ったものにしていく、そういう努力が必要であろうと思います。ゆえに、最後に法務大臣の御決意と、包括的に総理の御決意とをお聞きをして、質問を終わりたいと思います。
  302. 長谷川信

    長谷川国務大臣 今委員からお話しの点について御説明をいたします。  在日韓国人三世問題について、御承知のとおりことしに入ってから三回高級事務レベルの会合をソウルあるいは東京でやっております。で、今八項目、九項目という話でございますが、そのうち、かなり煮詰まっておることは煮詰まっておるようでございますが、今お話しのとおり若干の問題は残っておるということでございます。ただ、盧泰愚大統領の訪日を機として、今委員御指摘のとおりこの問題はもうあらゆる努力を払って成功させるように私ども頑張っておるつもりであります。  なお、韓国の第三世、これは永住許可などその法的地位について、今委員おっしゃったように、その歴史的な経緯、日韓友好の関係を特に配慮し、政府といたしましては、日韓法的地位協定の前文に示されておる精神及び目的を十分に尊重しつつ、今後両国政府協議を通じて可及的速やかに双方の満足し得る結論を見出すべく、法務省といたしましては全面的になお努力をいたすつもりであります。  以上であります。
  303. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 お述べになりました協定の精神及びその目的の趣旨を十分に踏まえまして、双方が満足できるような解決に至るべく、政府としては全力を挙げて努力をしてまいります。
  304. 中野寛成

    中野委員 終わります。
  305. 宮下創平

    ○宮下委員長代理 これにて中野君の質疑は終了いたしました。  次に、菅直人君。
  306. 菅直人

    ○菅委員 総括質疑の最終バッターということで質問をさせていただきますが、きょうは日米構造協議に関連をしまして、土地政策を中心にいろいろと質疑を進めていきたいと思います。  日米構造協議についてはいろいろな見方があろうと思いますけれども、私たちは基本的には、アメリカに言われたからやるというのではなくて、本来我々自身がやるべきことであってやれていないことが結果的にかなりダブっている。その中でも土地政策については、従来からいろいろな政策を野党間でも協議をし、あるいは提案をしてきたところでありまして、そういった意味で、今回の構造協議中間報告を見ますと、かなりそういうものともダブったものがあるというふうに思います。  特に、これは総理に御認識をいただきたいのですが、従来の政府考え方以上に相当踏み込んだ表現が幾つか見られます。例えば、大都市地域の市街化区域内農地に対するいわゆる相続税の猶予制度及び固定資産税の徴収猶予制度というふうに個別に税の名前を挙げて、それの見直しといったようなところまで踏み込んだ表現も出ております。こういったことも含めて、総理とは選挙前の予算委員会でも土地問題で一度議論をしたことがありますけれども、いよいよ待ったなしという感じがするこの土地問題について、総理の決意のほどをまずお聞かせをいただきたいと思います。
  307. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 構造協議の問題は、菅委員御指摘のとおりに、我が国もこの数年来、貿易のインバランスをどのようにして是正することによって国際的な相互依存関係を保っていくかという我が国自身の問題として、例えば前川レポートなどに示されたような方向で内需を拡大する、輸入を拡大する、そういう努力はしてきたのでありますし、その結果も幾らかあらわれつつあると思っておりますが、しかし、それでもなお説得力がなかったといいますか、アメリカ側といろいろ構造協議の問題で話し合いますと、御指摘のような点も含めて非常に膨大な意見の交換をしてきた、日米双方ともにどのようなことをしてお互いの認識を定着させていくか、こういう努力をしたのが今度の中間報告だったと思います。  指摘されたテーマはたくさんございましたから我が方が中間報告に盛り込んだテーマもたくさんありますけれども、具体的に土地の問題で御指摘がございましたから、そこに触れて絞って問題を申し上げますと、直ちに対応しなければならない、御指摘のとおりでございます。国会にお願いをして御議論をいただいた土地基本法の成立を受けて、政府といたしましては、今税制調査会にもう既に土地税制を含む多くの総合的な土地問題の見直しのための税制の諮問もいたしております。また、どのようにして未利用地を有効に利用していくかという問題、それらのことも踏まえて、平成二年度中に国会に成案を得て御審議をお願いし、土地問題の解決に踏み出していきたい、こう考えておるところでございます。
  308. 菅直人

    ○菅委員 今、総理の話の中にもありました税制調査会から小倉会長にもおいでをいただいております。どうも御苦労さまです。  この土地政策について考えますと、これは私、何度も申し上げるのですが、これまで政府がとってきたいろいろな施策、監視区域制度でありますとか超短期課税とか、最近は貸し出しの規制の強化とか、それぞれ必要であるということは認めますけれども、結局のところは熱を出した子供に熱冷ましを飲ませるような対症療法であって、本当の意味でのその炎症が、例えば肺炎なら肺炎があるとしたらそれを治す、そういう処方になっていないと思うわけです。  そこで、これは先日の大蔵委員会でも申し上げたのですが、今土地が砂糖のように、つまり持っていれば間違いなくもうかるものだというような、砂糖のようなものになっているからいろいろとアリが群がってくるわけです。幾らそれを塀で覆ってみたりあるいは溝を掘って何か通りにくくしてみても、いろいろな抜け穴を使って当然のごとくアリは砂糖に近づいていくわけです。この砂糖のような土地を、本当に必要な人のみが持てたり使えたりするような塩のような存在にする必要があるのではないか。塩であれば、別に要りもしないのに甘いからといって寄ってくるアリはいないわけですし、そういう存在にする必要があるのではないか。  そこで、それでは基本的にどのようにすればそれができるかということですけれども、昨年通過をした土地基本法、これは御承知のように一昨年野党四党がまず提案をし、昨年春政府が提案をして、最終的には政府案をベースにはしましたけれども、野党案にかなり近づけた修正を行って通過をした法案であります。この基本法の中でも、基本的な考え方としては、土地の利用計画、つまり土地の利用を公共性を持った形で判断をしていこうという利用計画と、そして土地の税制が大きな二つの柱になっている、このように土地基本法の考え方は打ち立てられているというふうに私は理解をいたしております。そういった意味で、政府税調の中につくられた小委員会の結論は、ある意味では大変期待もいたしておりますけれども、その行く末がどうなるのか、非常に関心を強く持っているところです。  きょうは小倉会長においでいただいていますが、こういった基本的な認識について、そしてまた、小委員会のこれからの動きの大体の見通しについてお伺いをいたしたいと思います。
  309. 小倉武一

    ○小倉参考人 ただいまお尋ねでございますが、きょう初めて第一回の小委員会、午後さっきまでございまして、いろいろ今後の審議の参考になるような一般的な議論を闘わせたといいますか、意見の交換をいたしまして、これから毎週一回ぐらい、夏休みを除いて毎週一回ぐらいは小委員会を開いて、この秋十月ころには小委員会としての報告も願うというような段取りで、とりあえずは関係省庁の意見を次の会合からお聞きする。それから、お聞きするだけではなくて、お聞きした後またそれに関連した討議をするというようなことを何回か重ねてまいりまして、回を重ねましたならばそこで中間的な取りまとめをやって、問題点の指摘なり考え方の整理をするというようなことになろうかと思います。  御参考に、きょう議論が出ましたところは、伺いますとかねて委員の御主張のようでございますが、国税としての特別保有税の可否というようなものも議論になりまして、そういう考え方を開陳された方もおりまするし、またそれに対して多少消極的と申しますか、そういう意見の方もございました。これから、そういう議論のあるところ、意見の分かれるところを広くひとつ勉強しまして、だんだんと集約をしていくというようなことになろうかと思います。
  310. 菅直人

    ○菅委員 どうも、きょうの委員会の動きも含めてお述べをいただきまして、ありがとうございました。  私は、土地税制の目的というのは基本的に二つあろうというふうに思っております。一つは、今大変問題になっております資産格差、土地資産の格差の是正という問題、そしてもう一つは、言うまでもなく、土地の適正な利用という方向にそれを誘導していくという、いわゆる資産格差の是正と土地の適正な利用への誘導という二つの目的があろうと思っております。これが相矛盾しない形で、いわゆる両方の目的に沿う形でやる必要があるというふうに思います。  しかし、現在の日本の土地税制の現状を見ると、私は一言で言えば、これは総理にもぜひお聞きいただきたいのですけれども、逆の累進性になっているというのが私の見方です。どういうことかといいますと、たくさん土地を持っている人ほど逆に、少し持っている人よりも実効税率が安くなっているということなんです。  具体的な形で申し上げてみますと、これは都市の土地ですが、都市の土地を税制上考えてみると、三種類に分けることができると思います。第一の種類は、個人が例えば五十坪の宅地を持っている、四十坪の宅地を持っているという、個人所有の宅地です。第二は、いわゆる大都市内の市街化区域内部の農地です。第三は、いわゆる法人が所有をしている土地です。これはあくまで都市の土地に限定しての分類ですけれども、この三種類です。  そうしますと、個人が持っている宅地というのは、もちろん例外的にたくさんの人もいますけれども、普通は五十坪とか四十坪とか、そういう人が多いわけです。で、親が例えば坪十万で買った、相続になる、今坪三百万だ、五十坪でも一億五千万で、まあ路線価で若干、七割あるいは六割だとしても、相当の相続税を取られるわけです。あるいは固定資産税は、かなり実効税率は低いですけれども、普通に取られております。  じゃ、二番目の市街化区域内の農地。これは農地ですから、一反、二反という単位ですから、少なくとも三百坪や五百坪や、あるいは一千坪や一万坪持っている人が結構おられます。こういう人たちの農地の課税がどうなっているか。これもいろいろと議論がなされておりますし、先ほどの中間報告にも出ておりますけれども、いわゆる猶予制度、免除制度という形で、実質上農地という形を二十年間維持することをもってすれば税金は一円もかからない、こういう形になっている。固定資産税も農地並みですから、宅地そのものも決して今高くありませんが、さらにそれよりも百分の一とか七十分の一程度ということになっております。  三番目の法人の土地です。法人の土地は、言うまでもなく相続税はありません。そして、固定資産税も、これは全部ですけれども、個人もそうですが、実勢より非常に低い評価になっておりますから、大した負担にはならない。あわせて言えば、売買のときには、赤字法人であればその赤字補てんという形で譲渡益すら課税されないで済む。  結局のところ、五十坪前後、百坪前後持っているような人の土地には、相続というのは一種の再評価をしての課税ですから、再評価をされてきちんと税が取られるけれども、たくさん土地を持っている人は、大部分は農地の形か法人所有の形ですけれども、こういう人には非常に税が優遇され、あるいは免除されている。これが実態だと思うわけです。  こういう認識そのものについて、まあ総理大臣でも結構ですし、他の大臣でも結構ですが、この逆累進的な状況にあるという認識について、御意見を伺いたいと思います。
  311. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、必ずしも完全に委員と意見を一致するとは申し上げ切れません。と申しますのは、法人の土地所有につきましては必ずしも意見の一致をしないところがあります。  ただ、大都市部における土地の実態というものについて考える場合に、委員のような御見解も成り立ち得る要素があることは、私も否定はいたしません。
  312. 菅直人

    ○菅委員 具体的な問題に入っていきますので、一応否定をされなかったということで話を進めていきたいと思います。  今一番、これは政治的にもなかなか難しい問題でありますけれども、問題になっている一つは、市街化区域内の農地の扱いであります。自民党の方でもいろいろと議論をされてきた経緯があるようですが、なかなかこれといった線が出ておりません。  最近建設省は、いろいろとこの問題についても何らかの改革をしようという案を出されているようですけれども、いろいろ聞いてみますと、生産緑地とか長期営農農地の問題を何らかの手をつけようということであるようですけれども、私は、これは建設大臣や自治大臣にも関係するところなので後ほど見解を聞きたいのですが、基本的には、土地の利用の計画と税制とがきちんと連動していることが最も重要である。ですから、例えば農地として残すべきところ、あるいは緑地として残すべきところは、本来残すべきところである市街化調整区域に編入して、そのかわりに宅地転用は当然のこととして認められない。もちろん、税制は農地並みで当然結構なわけです。しかし、それが市街化区域内というのは、本来市街化を促進するという区域ですから、その中にどうしても残りたいといいましょうか、そこにありたいという人は、これは翌日からでも宅地転用ができるわけですから、翌日でも建設が始められるわけですから、そういうところについては当然の原理として宅地と同じに扱う。ですから、線引きのときにいろいろな議論があったようですけれども、いわゆる現在でも、ここは農地として残すべきである、緑地として残すべきだというところは、逆線引きを行って市街化調整区域に戻すべきだ、それ以外の例外を認めるべきでない、このように私自身は考えております。これについての見解を伺いたいと思います。
  313. 綿貫民輔

    ○綿貫国務大臣 菅さんの御指摘のとおりでございまして、今、大都市圏において住宅宅地の供給を促進するために、農地はもちろんでございますが、先ほどの低・未利用地、工場跡地等、これの宅地化への促進を推進するようなことを含め、さらに、広域的に宅地、住宅の計画を立てるような大都市法の改正案を、この十七日に閣議決定してこの国会に出させていただきたいと考えております。     〔宮下委員長代理退席、委員長着席〕  なお、あわせて農地の問題につきましては、保全すべきもの、宅地化を促進すべきもの、また、宅地化を促進すべきものについては計画的に宅地化を進めるような内容の法律等々を含め、さらにこれを裏打ちしていただくような税制をやってもらいたいと考えております。  今、幸い税制調査会におきましてもこの土地税制の審議が始まるようでございまして、私どもは、この大都市法や、あるいは次期に提出したいと思っております生産緑地法の改正案等々を裏打ちするような税制と相まってその効果が出るように、今御指摘のような点に努力をしておるところでございます。
  314. 菅直人

    ○菅委員 生産緑地のことについては後ほどまたもう一度触れたいと思いますが、自治大臣の方に、自治省としては、長期営農農地というものが管轄になっていると思いますし、主に自体体が課税をしている固定資産税の問題もありますので、この点について、私の申し上げた土地の利用計画、いわゆる線引きに沿って、残すべきところなら市街化調整区域に戻す、小規模であろうとも。そして、そうでないところについては宅地と同じような課税を相続税あるいは固定資産税について行うべきだということについて、自治省の見解を伺いたいと思います。
  315. 奥田敬和

    ○奥田国務大臣 ちょっと余り自信ありませんけれども、私はさっきから先生の御意見を本当に真剣に聞いておったのですけれども、生産緑地で、市街化区域の中の生産緑地は調整区域にしてしまえ、そしてはっきり残すならいわゆる税としての措置を明確にすべきだというような御意見であったように聞いておりました。  確かに現在、これは間違ったら政府委員に訂正させますけれども、十カ年くらいの営農に関しては市街化農地に関しての恩典があるわけですけれども、まあしかし、本当に長期営農というような、いわゆる篤農家と申しますか都市区域にいる人たちは、やはり半世代、二十年くらいあるいは二十年、三十年とやらなければ意味がないような気がします。そういった方たちは、確かに調整区域化というか、そういった別な措置でこれは明確に区別すべきであろう。市街化区域内の農地に関しては厳重にやるべきだという御意見には、全く私は賛成です。間違っていたら政府委員説明させます。
  316. 菅直人

    ○菅委員 自治大臣から大変前向きな答弁をいただいたのですが、それにも関連しまして、建設大臣、先ほどの生産緑地あるいは長期営農農地と市街化調整区域の逆線引きが、意味が若干違うのですね。といいますのは、市街化調整区域に編入した場合には、これは所有者の状態がどういう状態であるなしにかかわらず、基本的には宅地転用は禁止なわけです。ですから、当然土地の値段は宅地の値段にはならないわけです。だれが買ったって、私が買おうが、場合によったら建設業者が買おうが、宅地にはできない土地ですから、それは当然土地の値段そのものも宅地化しないわけです。しかし、長営農地とか生産緑地というのは、条件はいろいろ細かくは違うようですけれども、例えば先ほど自治大臣も言われた十年間の営農の意思とかあるいは五年間でそれを見直すとか、生産緑地の場合も、所有者が亡くなって農業が営農できない状態があったらそれは宅地化していいとか、やめたくなったら買い取り請求をして、それが折り合わなかったら売っていいとか、実際上は土地利用計画といいながら、所有者の状態によって宅地化できる道がかなり広く残されているわけです。  そういう状況だと、先ほど税の目的の第一に言いました資産格差、つまり資産として見れば多くは宅地の真ん中にあるわけですから、坪三百万とか二百万するようなところがたくさんあるわけです。農地であるということですけれども、本人が亡くなったら宅地化していい、あるいは五年たったら、十年たったら宅地化していい、実質上は来年からでも若干さかのぼって固定資産税さえ払えば宅地化しても構わないというのが現状ですから、私は、そういう所有者の状態とか所有者の意思によって土地利用計画をするというのは、これは本来の土地利用計画じゃないと思うのです。土地利用計画というのは本来どうあるべきかをもちろん地権者も含めて社会的に決めて、緑地なり農地にするのだ、このまま継続してそれを社会的に残すべきなのだと言えば、そういう形で線引きによって、調整区域に逆編入することによってやる。この原則に全部立ち戻って、一たん内側に入れておいて長営を認めるとか生産緑地を認めるというような例外を認めると、今のような資産だけは莫大に持って、しかし土地利用には供給されないというこの大きな矛盾の原因になったのは、その例外を認めたことにあると、このように思うわけです。その原則に戻るべきだという意見でありますが、できれば建設大臣、もう一度その趣旨についての見解を伺いたいと思います。
  317. 真嶋一男

    ○真嶋政府委員 お答えをいたします。  農地について逆線引きを行った場合には、それは都市計画上所有者の意思と全く無関係であるということは、先生の御指摘のとおりでございます。  それで生産緑地でございますが、御存じのとおり、一定の要件に該当する農地につきまして、その農地が公害、災害の防止効果とかあるいは環境機能というようなこと、あるいは多目的な公共施設の予定地としての役割もございますので、そういうことに着目して都市計画としてその保全を図っていきたいというのがその趣旨でございます。でございますが、逆線引きのように所有者の状態と全く無関係にというふうになっていないところも御指摘のとおりでございます。しかしながら、一種生産緑地を例にとりますれば、それは指定した以上は都市計画としては永続するというのが原則でございます。  ただ、一定の条件、例えばおっしゃいましたような農林漁業の従事者がそこで亡くなられたというような場合につきまして、それはそのまま残すべきだということを言い続けていいのかどうかという点については、現在の法制では、市町村長への買い取りとか、あるいは一定期間後に解除するというような仕組みになっておりますが、しかし都市計画上、さればといって全く無意味だというふうには私どもは考えておりません。
  318. 菅直人

    ○菅委員 つまり、今お聞きになっていて総理もおわかりかと思いますが、そういう生産緑地を残せば残すほど国民的にはわからないのですよね。だから、私もまさにそういう大都市郊外のど真ん中の選挙区で選挙を戦っておりまして、いろいろな意見はあります。  しかし、一番その問題で難しいのは、緑地は残すのなら結構ですとちゃんと言ってしまえば、それはそういう形はあるんですと言えば、ああそういうことなんですかとなるんですが、それが長営農地だの生産緑地だの、そしてその場合はこうだのああだのとなると、結局のところ、そこからだんだんほころびが大きくなって、その条件をもうちょっと緩和しろ、もうちょっと緩めろということになったら、本人の意思によって、もう農業は嫌になった、だからやめたいとか、年とったからやめたい、それを認めていけばどんどんどんどん、結局は、あしたから農地を宅地化してもきょうまで農地であれば税の免除を受けられる、そういうことが継続する。  そういう意味で、私は基本的な原則に戻るべきだということを申し上げているわけですが、これは相続税の免除にもかかわりますから、大蔵大臣にも一言見解を伺っておきたいと思います。
  319. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 珍しく菅さんと意見の合うのは、今利用計画についてあなたなりの割り切りを述べられたわけでありますが、私は、そういう割り切りを前提にすれば、あなたの議論というのは成立する議論であるということを否定いたしません。ただ、今まで逆に、あなた自身が指摘をされたように、利用計画というものについての性格にあいまい性がありましたから、その限りにおいて、私は常に税はわき役でしかないということを申し上げてきたわけでありまして、仮に今あなたが述べられたような考え方一つの基本線として確定するものであるならば、また違った議論が私は成立をするであろうと思います。
  320. 菅直人

    ○菅委員 市街化農地については、本当に珍しく大蔵大臣とも意見が一致しましたので、次に法人の土地に話を移らせていただきます。  法人の土地所有についてどういうふうな適正課税をするかというのはなかなか難しいと思います。建設省は、遊休地課税の強化ということも考えて、これまでもあります特別土地保有税、これは自治省にかかわっておりますが、これの強化をしようなんということも言われているようです。あるいは、私は挙げてみましたら四種類ぐらい考え方があると思うのですが、そういう考え方ですね。  二つ目は、土地資産の再評価。この資産再評価というのは、もともとシャウプ勧告にも盛られているようでありまして、何度かやられたけれども、この数十年はやられていない。再評価をすれば、当然含み資産が全部利益に上がりますから、これは法人税ががっぽり入って、要らない土地は利用するというか、そういうふうになるという考えだと思います。  あるいは、ナショナルセンターの連合、昨日総理は会長に会われたようですが、連合が昨年提案をした大土地保有税、二千平米以上、五億円以上の土地についてあるパーセンテージの課税をしようという考え方。あるいは固定資産税の評価額そのものを実勢の価格にそろえよう。これも何度も議論いたしましたが、今の地方税法には「適正な時価」と書いてあるのですが、東京の例をとれば、一億円の土地が大体二十分の一程度しか固定資産税評価はなっておりません。ということは、一億円ですと五百万ぐらいの評価ですから、それに一・四%を掛けても大した課税にはならない。一億円とは言いませんけれども、何百方する土地でもそういう二十分の一とか十分の一の評価ですから、保有税が自然にといいましょうか、非常に安くなっている。  ですから、これも土地基本法にもありますし、この中間報告にもありますけれども、公的土地評価の適正化、野党案では一元化となっていたのですが、若干政府案は適正化で緩めたようですけれども、そうすれば、実勢価格に一元化していけば、かなりの保有税が取られるようになる、こんなふうに考えております。そのときに、これらの制度でそれぞれ、固定資産税はもちろん言うまでもなく地方税ですけれども、他の税制をとる場合に、これを国税で取るのか地方税で取るのかという議論も一方であるかと思っております。  そこで、私はさきの大蔵委員会でも少し申し上げたのですけれども、こういう形の保有税というのは考えられないのだろうかということで、個人と法人について提案をいたしております。  一つは、個人については、三大都市圏の市街化区域内部について、六百六十平米以上の土地について相続税評価額、路線価を基準にして、例えば二%程度の課税をする。六百六十平米以下には一切新規課税はしない。大部分の人は六百六十平米で、東京で調べてみましたら五%もおられないと思います、土地所有者の中でそれ以上の人は。ですから、九五%以上の人は影響は受けない。こういう形が個人の場合にとれないだろうか。あるいは法人については、これは遊休地の考え方をとれば、建坪の例えば五倍以上について土地保有をしているときに、その部分にだけ路線価のやはり二%程度を掛けるという考え方。これをA案と申しますと、もう一つB案というのを最近いろんな皆さんと協議をしているのですけれども、再評価を緩やかにやっていくという考え方に立てば、建坪とか遊休地とかという考え方を外してしまって再評価を緩やかにやっていくと考えれば、あるいは個人の相続税との均衡ということを考えれば、持っている土地全部に対して路線価の一%程度を毎年取っていく。こうすれば、百年たって一〇〇%ということは三十年ぐらいで三〇%、個人の相続税の負担率とそう大きくは違わないんじゃないか。しかも、再評価を緩やかにやったことにもつながってくるんではないか。このような考え方もあり得るんではないかと思っております。  こういった点で、特に保有税のあり方、これはなかなか質問の仕方も難しいのですけれども、国税でいくのか地方税でいくのかという議論にもなりますので、まず大蔵大臣にこれらについて、今申し上げたいろんな制度がありますけれども、見解を伺いたいと思います。
  321. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今まで保有税と申しましょうか、そうした点についてなかなか議論のまとまらなかった一つ問題点には、いまだ実現していないキャピタルゲインというものについての考え方があったように思います。ただ、そうしたことを一応よけて考えてみまして、今現実の地価高騰の中において、私はさまざまな御意見が出されるのも当然であろうと思います。  ただ、今私どもは、税制調査会の小委員会が、きょうからであったと思いますが、現実の審議を始めていただいております段階の中で、その方向に一定の枠をはめるようなことをすべきではないという立場におりますので、今委員の御提案になりましたような考え方も、税調会長自身もこの席において聞いておられるわけでありますから、今後の審議の参考にされることもあろうか、そのような感じで拝聴をいたしておりました。
  322. 菅直人

    ○菅委員 今申し上げた中で、少し実際を詰めておきたいのですけれども、建設省が考えられているような遊休地課税、私は、これはなかなか大変ではないかというふうに思っております。というのは、特別土地保有税というものがこれまでもありながら、実際には余り成果が上がっていないという現実を私自身見ているからです。  そういった意味で、この特別土地保有税、つまり土地を買って未利用のまま放置した場合に、買い取ったときの価格のたしか三%ですか一時取る、あるいはその後一・四%取っていくというこの制度がどこまで有効に働いているのか。これは自治省にお聞きしたらいいのでしょうか、自治省の方にお聞きをしておきたいと思います。
  323. 奥田敬和

    ○奥田国務大臣 この遊休地に対する特別土地保有税の強化という形については、建設省は今新しい制度創設で平成二年度に決める、遊休地とは何ぞやというのがはっきりしないために、いろいろこれまで難点があったわけでありますけれども、これはもう確実に二年度内に制度創設を図るということで今検討を行っていただいております。それに基づいて新しい制度創設をしていただければ、当然、先生の御指摘されるような遊休地課税の強化の方向でこれは実現されることだと期待いたしております。
  324. 湯浅利夫

    ○湯浅政府委員 特別土地保有税でございますが、これは前の四十八年当時の地価高騰時期に、地価の抑制を図る、あるいは有効利用の促進を図るという趣旨で、昭和四十八年に地方税としてこの税制度ができ上がったわけでございます。この税制度ができ上がることによりまして、昭和四十四年度以降に取得した土地につきましては、その有効利用をしているかしていないかという判断によりまして、この特別土地保有税を課税を強化するということをやってきたわけでございます。  それはそれなりに私は効果があったものだと思うわけでございますが、御指摘のように、その有効利用をしているかしていないかという点の判断につきまして、見方によってはいろいろと問題があるところもあったかと思います。しかし、この保有税そのものがそれなりにこれまで効果を持ってきたという点は否定はできないのではないかと思うわけでございます。(菅委員「税収の方は」と呼ぶ)ちょっと今手元にございませんが、最近の税収は六百億前後ではなかったかと思います。
  325. 菅直人

    ○菅委員 まあ制度をつくられた立場からいえば効果があったと言わざるを得ないのでしょうけれども、六百億ですよ。取得のとき三%ですよ。しかも取得価額ですから。あるいは一年間で一・四%ですから。これが一・四%の方だけ考えても、とても今の地価高騰に対応できているとは金額的に見ても言えないし、東京などでいろいろな事例を調べてみても、とてもそういうふうには言えないと思うわけです。  ですから、先ほど自治大臣が、建設省が創設されれば大いにやりたいと言われる意欲は大変買うのですけれども、私は、このやり方はなかなか無理なんではないか。先ほど、先に提案のようなことを申し上げてしまいましたけれども、いわゆる遊休地というものを認定して今の特別土地保有税をかけるというのは、結局は今までやってきたことをおまえもうちょっとやってみろという程度にはなるかもしれないけれども、自治体は必ずしも、遊休地が例えばグラウンドだったらいけないとか、駐車場だったらいけないとか、資材置き場だったらいけないとか、そんなに言わなきゃいけない強い動機はないんですね。場合によったらあいた土地の方がいい、家がぎっしりになるよりはよっぽどいいと思っているところもたくさんあるわけですから、私はこの制度を強化するというのが、新しく創設するというのが必ずしも効果的ではないのではないかと思っておりますが、制度を考えておられる建設省の意見を聞いておきたいと思います。
  326. 真嶋一男

    ○真嶋政府委員 お答えいたします。  私どもは、市街化区域内で先ほど来御議論のございました農地の問題を議論するのと同じレベルの議論として、市街化区域内で工場跡地等の低・未利用地を有効に利用するということが都市計画上必要であるというふうに考えているところでございまして、そういう低・未利用地が都市計画上その場所にあることがいいのか悪いのかという判断はやはり地元の公共団体として相当に関心を持っているというふうに承知しておりまして、この制度を活用してまいりたいと思っております。
  327. 菅直人

    ○菅委員 今局長は賛成なのか反対なのか、両方の中身だったのですが、つまり、自治体として果たしてこれを強化してくれと言っているような言っていないようなところなんですね。  これは特に総理に申し上げたいのですけれども、つまり建設省としてはこれしかやりようがないわけですよ。つまり、法人に対する土地保有税を上げますとかつくりますというのは、建設省だけでは言えないことですから。ですから、仕方がないから今までの制度をいろいろつなぎ合わせてやろうとしている。それはそれで意欲は買うのですけれども、私は、どうもこのやり方ではうまくいかなくて、もっと包括的な、先ほど申し上げたような法人というものの――土地所有というのがますます今個人から法人に移っております。それは先ほども申し上げたように、相続税がないとかいろいろな要素で法人所有にどんどん変わっております。そういう流れに対しての抜本的な考え方にはなっていないというふうに思うわけです。  そこでもう一つ、自治省に、固定資産税の評価額を時価、つまり実勢価格にする、これも一つ考え方としてあるわけですけれども、これについての御意見を伺っておきたいと思います。
  328. 湯浅利夫

    ○湯浅政府委員 固定資産税におきます土地の評価につきましては、従来から、固定資産税というものが保有を継続にいたしまして毎年毎年税を負担してもらうという考え方からできている税でございますので、この評価に当たりましては、将来の例えば期待利益でございますとかあるいは投機的な要素で入ってきている価値というものは排除をして、そして固定資産の評価をするという考え方で地方公共団体を指導しているところでございます。そういう意味におきまして、固定資産税におきまする土地の評価額というのは、実勢地価と合わせるということは実際問題としてはできないのではないかというふうに考えているところでございます。
  329. 菅直人

    ○菅委員 この中間報告は余り盾にはしたくないのですけれども、この中に、「九一年度に行われる評価替えの際に均衡化、適正化を図るとともに、基準地等に係る路線価を公開するよう」、これは固定資産税評価ですね。これが日米構造協議中間報告にも出ております。こういう考え方はもう野党は、もちろんこれよりも前の段階で私ども提案をしているところですが、それが今の話だとできないということなんですね。  もう一点だけ聞いておきたいと思います。  今いわゆる固定資産税評価額は公開されておりませんので、非常に土地情報がわからないということになってしまって、我々はプライバシーの問題とはこれは違う、土地の価格なんというのは、地球の表面なんだから、そこが幾らで課税されているかというのは当然オープンにすべきだ。他の国でもほとんどそうなっているわけですけれども、その点について、ここには、中間報告には「公開するよう指導する。」と書いてありますけれども、それについては大臣どうされますか。
  330. 奥田敬和

    ○奥田国務大臣 来年が見直しですから、平成三年から公開します。
  331. 菅直人

    ○菅委員 大変これは前向きな、実は技術的に見て非常に大きな変化になるというふうに思っておりますので、期待をいたしております。  今大臣も申されましたように、九一年度の評価がえというのが目の前にありまして、それだけに、国際公約になったからということを余り盾にはとりたくありませんけれども、これがきちんとやれるかやれないか。やれないとすれば、先ほど来申し上げておりますように、他の新しい制度によって法人の土地に対する適正課税あるいは適正利用を図らなければならないというように思っております。そのことを特に申し上げておきたいのですが――どうしてもあれですか。もういいですよ、それで。
  332. 湯浅利夫

    ○湯浅政府委員 私がちょっと補足させていただきたいと思いますが、次の評価がえにおいて全部一度に公開するということはこれはなかなか難しい問題でございますので、逐次、地方公共団体とよく御相談をしながら、個人のプライバシー保護との関係も考えながら公開を指導してまいりたいということでございますので、ちょっとその点補足させていただきたいと思います。
  333. 奥田敬和

    ○奥田国務大臣 公開するというのは、全部公開するというような形で発言した点は訂正させていただきます。一部であっても公開するという方向は間違っておりません。
  334. 菅直人

    ○菅委員 これは大臣は御存じかどうかわかりませんが、相続税評価額というのは、税務署に行くと全部公開されているんですよ。計算方式があって、何のだれべえが幾らとは書いてありませんけれども、どこのところにあるのは幾らというのは道の上に書いてあるんですよ、路線価が。ですから、ここも「路線価」と書いてありますが、別にやってできないことはないのですよ。私の考えでは、部分的に公開すると余計混乱が起きやすいのではないかとは思います。それは、せっかく少し前向きな話が出てきたんでこれ以上あれしませんが、まあ一応公開をするという返事だけ耳にとめて、もう少し土地問題で前に進みたいと思います。  もう一つ、実はこの大都市の土地の問題で、これを住宅に変えていく上である意味で一番ネックになるのではないかと私が思っておりますのは、自治体が、具体的に言いますと市長さんとか市議会議員とか必ずしも賛成しないということがあると思うのです。それはなぜかというと、今まで畑であったところがワンルームマンションがぎっしり建つとか、一戸建ちの小さな家がぎっしり建つというよりは、今のままの方がいいんだ、都市環境にとってはその方がいいんだ、その周りに住んでいる人も、自分は苦労して小さな家を買ったけれども、隣は畑だ、うらやましいと思う人もあるかもしれないけれども、一方では、まあ畑の方が自分と同じような家がぎっしり建つよりはいいんじゃないか、このことは非常に大きな要素になると思います。私は、このことを、どういうふうにすれば本当に都市環境を悪化させないあるいは都市環境をよりよくする、ない公園ができるとかグラウンドができるとかしながら一部に住宅がふえていくというやり方がないかということを考えてみたわけです。  私の地元のことで恐縮ですけれども、国分寺というところに清算事業団の二十三ヘクタールの鉄道学園跡地という土地がありまして、これを今回、地元の住民とかあるいは国分寺市とか議会とかを含めて、こういう計画で使いたいからぜひ東京都に買ってほしいという提案をいたしまして、基本的には清算事業団から都が買うことになりました。三分の一ぐらいは公園とか、三分の一ぐらいは公共用地にも使える、あとの三分の一ぐらいは住宅を建てる、これは住都公団が建てるのか東京都の供給公社が建てるのか細かくは聞いておりませんけれども、大筋そういう方向です。もちろんこの土地の値段は二千億ですから、とても地元の自治体には買えません。東京都は今かなりお金がありますので買うことができるわけですけれども。  そう考えてみると、先ほど来申し上げたようなきちんとした土地の利用計画、きちんとした法人の土地や市街化農地に対するいわゆる土地利用計画と税制をやれば、私は相当の土地が出てくる。建設省の試算によりましても、首都圏だけでもそういう土地が合わせるとたしか六万坪以上存在するというデータを私もいただいておりますけれども、それらの例えば三分の一でも半分でも利用できれば、相当の量になると思います。  しかし、そのときには、それを一たん自治体なりあるいは公社公団なりあるいは国なりが買って、きちんとした土地の利用計画に沿って使えるようなことを考えない限り、単に全部を民間で自由にやってくださいといって、今の都市計画だけの建ぺい率、容積率という考えでは、とても地元の賛成は得られない。特に地元の市長さんなり市議会の感覚に私たちも常に触れておりますけれども、自分たちが公園をつくったりあるいは体育館をつくったりする土地は当然欲しいわけです、地元住民の要求が多いから。しかし、とっても高くて買えないわけです。ですから、それも国がかなりの割合を費用補てんしてくれるなら、そういう形とあわせてなら住宅を引き受けてもいいというふうになり得ると思うわけです。  これをやらないと、これも中間報告に、数は出ておりませんけれども、「住宅・宅地の供給の促進」とか、いろいろ言っておられますけれども、必ずしもそれが、そのところでとまってしまうんではないかというふうに思っております。この点について、一九九〇年代に入りましたが、今の我が国の非常に経済的な豊かな時代に、その富をフローとして流していくだけではなくて、社会資本、そのベースになる、ある意味では土地がなければ社会資本の整備もできないわけですから、それに振り向けていくという大きな戦略が必要ではないかと思いますが、総理大臣、いかがお考えでしょうか。
  335. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 御指摘の問題は、土地基本法の十二条にも示してありますように、地域の健全な発展と秩序ある整備を進めるためには公有地の計画的な確保が必要なものであると考えます。公有地の確保につきましては、政府としても地方公共団体に対して指導、支援をしてきているとこでありますが、今後においても公有地の計画的な確保と有効活用を推進してまいりたいと考えます。
  336. 菅直人

    ○菅委員 何といいますか、お役人の書かれたその答弁はいいんですけれども、実際にはとても金がないわけですよ、自治体は。個々の小さい自治体ですよ。特に、個々の小さい自治体が賛成しなければこれはなかなか実行できないわけですよ、実際の細かい都市計画の権限は自治体が握っているわけですから。それで、今ある制度というのはせいぜい起債を認めるとか、建設省が、この間聞きましたら、何かの基金があると聞いて、幾らあるんですかと聞いたら、ほんの数百億円、都市開発資金がある。これを使ったらいいと言われて幾らですかと言ったら、六百三十七億だとか。こんなもので今の土地が一体、先ほど申し上げたような土地だってそれだけで二千億ぐらいかかるわけですから、全国的にいえばほとんどまさにスズメの涙です。  ですから、これは大蔵大臣にもお聞きしたいのですが、これはもちろん簡単だとは思っておりません。せんだって大蔵委員会では土地国債ということを申し上げましたが、例えば、新しい土地の保有税を創設をするということと連動して、その新しい土地保有税の財源を逆に公有地拡大に振り向けていくとか、そういうことであれば国民的な合意も得られやすい。つまり、新しい土地保有税が、先ほど私が申し上げたように、資産をたくさん持っている人に負担をしていただくということになれば、資産をたくさん持っている人から保有税を国税としていただいて、そしてそれで、供給をされてきたことが前提ですが、その土地を公有地化して公園や公共住宅に変えていく、あるいは公共用地に変えていく、そうすれば資産格差の是正にもつながってくる、このように思いますが、大蔵大臣いかがでしょうか。
  337. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今委員の議論の出発の部分、フローの財源をフローで使わずにストックで使えという御指摘、そこから今度は公有地の拡大に対する財政対策というところに進まれたわけでありますが、私は、そもそも私どもが例えば元年度補正予算の中で講じました隠れ借金と言われるものに対する返済といったものは、負のストックに対する対応ということでありまして、同じストックでありましても、負のストックに対する解消という対応の方法もあるということは一点申し上げたいと思うのであります。  その上で、これは事務的に議論をすればいろいろの論議の仕方があろうかと思いますけれども、私なりに考えてみますと、これは税調で御論議をいただいております中に個人的見解を申し述べることは本来控えるべきでありますけれども、土地に関する税制の中で果たして目的税を創設することが望ましいことであるのかどうか、また、その目的税化された税で土地の取得を直接に国あるいは自治体が行うとした場合、その入手の方法はいかなるものであるのか、仮に民間の開発業者と競争をしつつ用地を取得するような形でありますならば、国あるいは地方自治体自体が地価の形成の中に一定の役割を演ずるということになり、その結果は必ずしも好ましいものではなかろうと思います。むしろ、現在、具体的な、例えば地方公共団体が行われる補助事業等に供することが明らかな土地についてはさまざまな対応策は用意されておるわけでありますし、そうした制度を拡充していくこと等の方が円滑に物事は動くのではなかろうか、こうした観点もまた論議の中にあり得ることではなかろうか、率直にそういう印象を持ちました。
  338. 菅直人

    ○菅委員 今申し上げた、土地保有税を目的税化するというのは、別にまだ固定的に提案をしたというよりは一つ考え方で申し上げたんです。  もう一つだけ土地問題で最後に申し上げておきますと、これは総理大蔵大臣、特にお聞きいただきたいのですが、私は、先ほど来議論をした幾つかのきちんとした税制と利用計画がつくられた場合は、土地は供給されると思うのです。つまり、先ほど申し上げたように、砂糖から塩に土地が変わったときには、土地をたくさん持っておくことの方が負担になってくると思うのです。そのときにかなりの土地が供給され得ると思うのです、絶対量はあるので。逆に、そのときに土地の暴落を恐れるという空気がもう既に経済界なりあるいは一般社会には一部にあると思うのですね。ですから私は、今の地価は余りにも高過ぎるからある程度低下することは望ましいと思っておりますが、そういうことを想定したときに、一部今ゴルフの会員権が下がっているようですが、地価が急激に下落をするということはこれは信用不安につながりかねないということもありますし、逆に言えば、決して高値を競い合って買うということを想定して言っているんではなくて、ある基準以下まで、公示価格基準以下まで低下したときなどに、当然その以下ということを前提としながら供給されたときには買い入れてやっていくんだという制度も、少し先走っているかもしれませんけれども、用意はします、用意はして確実に町づくりにするんだということの方向が見えてこないと、先ほど来申し上げているように自治体ないしは地域住民の賛成を得られないのではないか、このことを申し上げたところであります。  小倉参考人には、土地問題の質疑はここで終わりますので、もし特に御意見がありましたらあれですが、なければ御退席いただいて結構です。
  339. 小倉武一

    ○小倉参考人 先生の御意見についてかれこれ申し上げるわけにもまいりませんが、大変有益な御意見でございますので、速記録などをひとつ委員にもお配りしまして今後の参考に供したい、かように存じます。どうもありがとうございました。
  340. 菅直人

    ○菅委員 どうも参考人、ありがとうございました。  それでは、土地の問題を一応これまでにしまして、もう一つのエネルギー、環境問題ということについて残りの時間の質疑に充てたいと思います。  総理は、いろいろな機会に地球環境の保全ということを言われているように思います。大体私も含めて政治家は、地球の環境ということを言わない人はほとんどいないと言っていいほど地球環境を守ろうということを言うし、思ってはいると思うんです。しかし、じゃ一体どうすることが地球環境を守ることになるんだということになると、実は簡単なようでこれほど難しいことはないというのが私の実感であります。総理も、いろいろな機会に国際的な協力の中でも地球環境を守ることに役立つ岡際協力なんということも言われておりますし、国内的な政策もあわせて考えられておるかと思いますが、一体どういうことをやろうとしているのか、どういう方向でやろうとされているのか、総理のこの問題についての決意を伺いたいと思います。
  341. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 この数年間、特に地球環境の問題については日本でも国民的ないろいろな話題になってくる。国際会議に行ってもいろいろな問題になる。何を一体どうしたらいいんだろうか。私の素朴な受けとめ方でいきますと、経済がどんどん伸びてくる、それによっていろいろな環境公害の問題なんかに当面しました。日本は環境庁をつくるにしても、世界では先駆けて七〇年に環境庁がスタートをした。そして、狭い国土でいろいろと経済が伸びてきた、産業が伸びてきた。したがって、いろいろな公害にぶつかって体験して、技術や知識や経験の集積もあった。それを国際社会の場で、お役に立つならばそれを知見の交換もするというようなことから始めなきゃならぬと私は考えて、去年、東京会議もいたしました。  東京会議をやりますと、我々が全然経験してないような、知らなかったようないろいろな発表や経験がほかの国にもあるわけです。だから、そういったもので、地球的規模の問題ですから地球的に国際的に協力をして、経験や技術力の交換をしながらどのようにして解決していくかということを話し合う。同時に、大事な途上国の環境の問題については、開発可能ないろいろな途上国との間の関係も必要になってきますから、環境をどのようにして守りながらやっていくか、いろいろ幅広いテーマがいっぱいございます。そういったことに関しては、国内だけでなく二国間で、あるいは国際会議を通じて日本もできるだけの協力をしていかなければならぬという考えをいつも述べておるわけでございます。
  342. 菅直人

    ○菅委員 環境問題に一番かかわりの深いのは、言うまでもなくエネルギーの問題だと思います。これも考えていけばなかなか難しい問題だということを後ほど申し上げたいんですけれども、最近、C02による温暖化の問題がかなり議論をされているように思います。そういう中で、先日、これは経団連でしょうか、いろいろな意見が出ているようですけれども、ややもすれば経済の成長と両立をする環境政策ということを多少強調する節があって、読みようによれば、かつて公害国会において公害対策基本法から削除をされた経済条項をほうふつとさせるような意見も出ているように思います。しかし、経済の問題と環境の問題というのは、もちろん両立をするということは全体としては必要だとは思いますが、このC02問題などはかなりそういうことを超えて取り組んでいく必要があるんじゃないか。近く地球環境のホワイトハウス会合に環境庁長官が臨まれるというふうに聞いておりますが、これらの点について環境庁長官としての御意見なり抱負なりを伺いたいと思います。
  343. 北川石松

    北川国務大臣 ただいま菅委員から御指摘のホワイトハウスにおいて行われまする会議について、ちょっと申し述べたいと思います。  これは、ブッシュ大統領の提案によりまして、世界十八カ国の閣僚級のメンバー及びOECD、ECの代表が参加いたしまして、地球環境問題について討議をすることになっております。  また、いま一つ経済と環境と特にCO2によるところの温暖化、こういう点についてどうだという御意見でございますが、私は、日本が世界最先端の公害対策を進めてきたと思っております。それは、二度にわたる石油ショックのときに、省エネルギーでも経済成長を維持してきた、こういうふうに思っておる次第でございまして、これが一番大事なことじゃないかと思います。というのは、片方で経済を成長させながら、片方で地球環境を守るところの科学的、技術的施策をなしていかなきゃならない、私はこれが大切だと思っておる次第でございます。
  344. 菅直人

    ○菅委員 ぜひCO2問題も積極的に国際会議の中でも中心的に取り組んでいただきたいと思います。  そこで総理大臣、私もこの間いろいろと通産省などにデータを聞いて考えてみたのです。今使われているエネルギーのうちで一番大きいのは、やはり言うまでもなく石油とか天然ガスとか石炭とか、いわゆる化石燃料です。化石燃料を燃やせば、多い少ないは別としてCO2が出ることは、これは免れないわけですね。もう一方で、原子力発電、これも放射性廃棄物が出る、あるいはチェルノブイリの事故のような危険性もはらんでいる。水力というのはある意味では最もクリーンなエネルギーと言えますけれども、これももう国内の立地条件でいうと限界である。それでは今のに属さない、化石燃料でも原子力でも水力でもない、いわゆる新エネルギーと言われるものがどの程度あるか、これを聞いてみても、いろいろなデータはあるようですけれども、まあ一%前後。しかも、その中で完全にCO2も出さないようなもの、例えば太陽エネルギー、風力エネルギー、低温核融合なんというのも私は期待をしておりますけれども、そういうものについては一%以下だというのが現状のように伺っているわけです。     〔委員長退席、原田(昇)委員長代理着席〕  そうすると、こういうことを考えますと、こっちに行ってもCO2、あっちに行ったら放射能ということになって、長期的には何を考えなきゃいけないだろうか。脱化石エネルギー、脱原発エネルギーということを長期的には考えていくことが実は地球環境の問題では必要なんではないか。現在CO2を減らす技術というのはないそうであります。減らすためにまたエネルギーが必要なそうで、一番可能性があるのは木を植えることだそうですけれども、そういうことだそうです。  そうすると、脱化石エネルギー、脱原発エネルギーということになれば、先ほど申し上げたような太陽や風や一部燃料電池の中でもありますが、低温核融合、こういったものが今頭に浮かぶわけですけれども、今回何か地球環境保全関連予算というのを、これは環境庁の方でしょうか、集約をされて発表をされているようですが、その予算総額と大まかな内容をお述べいただきたいと思います。
  345. 北川石松

    北川国務大臣 ただいま菅直人委員の質問でございますが、確かにCO2は原子力によっては出てまいりませんので、これは温暖化には大きく貢献するといたしましても、その安全ということにおいては大きくリードしていかなければいかないと思っております。  なお、今の予算に関しての詳しいことは、局長より説明をいたします。
  346. 安原正

    ○安原政府委員 平成二年度の地球環境保全関係予算でございますが、総額は四千五百二十三億円でございまして、対前年度比六・三%増が確保されているわけでございます。  この中身でございますが、先生御案内のとおり、昨年の六月末に、政府といたしまして一体的に地球環境保全のための施策を展開していくということで、当面の基本方針として六項目を示しております。その六項目に即しまして中身を見ますと、第一の施策でございます国際的な枠組みづくりでございますが、これにつきましては六十四億、それから、科学的な不確実性がまだございますので、調査、モニタリングをし、研究を進めていく必要がございますが、この関係の経費が六百二億、それから、先生も今お触れになりましたが、エネルギー分野とかあるいは特定フロンの代替物質の開発等々、技術開発、それの普及、技術移転が重要でございます。この関係が非常に金額が大きゅうございまして、三千八百十五億でございます。それから、環境分野の政府開発援助でございますが、これは政府といたしまして三年三千億をめどに拡充していくということになっておりますが、これは当初予算では枠予算となっておりまして、内訳が環境分野に幾らということは決まっておりませんので、それは別にございますが、内容がはっきりしておりますものが十四億、それから環境配慮の関係の経費が二十六億、普及啓発の関係が二億というのが内訳でございます。
  347. 菅直人

    ○菅委員 そこにいてください。  今の技術開発の中に原子力発電に関する開発費は入っていますか。
  348. 安原正

    ○安原政府委員 今内訳を申しました中に含まれております。原子力の安全性を確保する等のための技術開発の関係でございますが、総額二千九百七十五億が含まれております。
  349. 菅直人

    ○菅委員 それでは、放射能汚染ですね、チェルノブイリなどで飛んでくるような国際的なものの放射能汚染に対する対策というのは何かありますか、この費用の中に。
  350. 原田昇左右

    原田(昇)委員長代理 質問者に申し上げます。今のは科学技術庁とかエネルギー庁の方にそういうあれはあると思いますよ。
  351. 菅直人

    ○菅委員 いや、まあちょっと……。
  352. 安原正

    ○安原政府委員 原子力の関係予算に関連してお尋ねでございますが、私ども、地球環境保全関係予算としてまとめましたのは、地球環境保全に直接の目的を持つものはもとより、地球環境の保全に資すると認められるものも広く含めて取りまとめをしたところでございます。  そこで、原子力について、入れていることについていろいろ御意見があろうかと存じますが、その点につきましては、私どもとしまして取り込んでおりますのは、国際会議の場でも十分議論がされまして、原子力は十分な安全性の確保を前提としてCO2等の排出量の削減に寄与する代替エネルギーの一つであるということから含めておるものでございまして、安全性の確保を前提といたしておりますので、環境への放射能汚染の関係は、この中には含まれておりません。
  353. 菅直人

    ○菅委員 総理、よく聞いてくださいよ。つまり、地球環境保全予算の中には原子力発電の技術開発、それはもちろん安全性もあるでしょう、あるいは原子力開発そのものが、CO2が減るという立場に立てば、それ自体がCO2対策になるという見解もあるでしょう。一方でそれを二千九百七十五億入れておいて、放射能汚染の問題は入れない。入っていない。放射能汚染というのは、別に日本だけで放射能汚染が来るわけでないことは、チェルノブイリでも明らかなわけですね。普通、地球環境の保全なんていったらまさに地球環境なんですから、世界じゅうからあるいは日本からも、世界に向かって環境汚染をしそうなものについて、どうやってそれを少なくするかという議論があっていいのに、こういう非常にまやかしのデータをとるわけですよ。私は、原子力開発そのものの議論は一応おくとしても、少なくとも環境保全予算の中に原子力開発の問題が入るなんというのは全くおかしな話で、そんなことを言えば、じゃ放射能を防ぐために今度は石炭で燃やす方がいいからといって、今度はそっちも入れなきゃいけない論理になりますから、あくまでそれでCO2が出るあるいは放射能汚染が出る、そういうものをいかになくしていくかということに絞って、しかし、それは世界的なレベルで当然カウントすべきだと思いますが、このことを聞かれて、総理大臣、どう思われますか。
  354. 緒方謙二郎

    ○緒方政府委員 先ほどの環境庁の局長答弁、若干補足さしていただきますが、環境保全のための予算の中に原子力関係予算が入ってございますが、カウントされております原子力関係予算の中には、当然原子力を安全に開発するための問題として、原子力固有の問題でございます放射能対策についての技術開発の予算というのは当然に含まれてございます。  先生の御指摘が放射能除去というようなお話でございましたので、そういう観点で計上しているわけではございませんが、放射性廃棄物の処理、処分、これを安全に行うための技術開発あるいは放射線の危険を伴わないようにして放射原子力の利用を図っていくための技術開発の予算など、これらのものは先ほどの環境保全対策の予算の中に計上されているところでございます。
  355. 菅直人

    ○菅委員 いいですか、今のがいかにまやかしかということですよ。私が聞いているのは、もし入れるのなら、例えばチェルノブイリのように二万キロぐらい飛んで、放射能が日本に現実に飛んできたわけですよ。そういうものを入れるのはわかる。それは、原子炉を開発すれば当然安全性を考えるのは当たり前ですよ。自動車を開発するときにブレーキを開発して、これは安全性で、自動車の開発の費用とは別のカウントだという話は通りますか。当たり前の話ですよ。そんなことをやれば、火力発電所をやったって、当然脱硫施設の問題もありますよ。じゃ、それも入っているんですか。全部入れなきゃいけないじゃないですか、そんなことを言えば。そんなめちゃくちゃな議論はないのですよ。  もう一つ言えば、それじゃ太陽とか風とか燃料電池とか低温核融合とか、そういうものに対する費用はこの中で幾らなんですか。     〔原田(昇)委員長代理退席、委員長着席〕
  356. 北川石松

    北川国務大臣 菅直人委員が原子力を御心配になって、不測の大事が起きた場合の予算がない、開発の予算だけじゃないかというところの御指摘は、ごもっともの点もあると思います。ということは、原子力を一つの大きなエネルギー源としてこれを行うときに、この事故は絶対あってはいけない問題であります。そういう意味におきまして、もし逆説的に、事故のあった場合の予算がこれだけありますと言えば、事故を前提にしておるじゃないかというところの糾弾も受けると私は思います。だから、環境庁といたしましても、CO2対策といたしまして、油とか石炭を使えばCO2が出るから、原子力は出ないからなお優秀な原子力開発をやるべきだ、こういう観点に立ちまして予算を組んだ次第でございます。  なお、詳しいところのなにについては、局長より答弁をさせます。  以上であります。
  357. 安原正

    ○安原政府委員 先生の御質問の新エネルギー開発研究費等でございますが、文部省の関係で約八十九億、それから通産省の関係ではございますが、新・再生可能エネルギー開発・導入促進費といたしまして約三百六十二億という予算が含まれております。
  358. 菅直人

    ○菅委員 総理、これが実態ですよ。私は、長期的に見れば、どう考えてみても地球の問題として脱化石燃料、脱原発という方向を考えざるを得ないだろう。そのときにそれに代替できる、まさに今言われた新エネルギーは合わせて幾らですか、これは四百五十一億じゃないですか。先ほど環境庁長官がわけのわからない答弁をされましたけれども、汚染があることを前提とした研究をやったら、その費用を出したら余計しかられるなんという、一体そんなばかな話があるのですか。  ですから、これ以上この問題をつついても余り実りがないので、総理に特に申し上げておきたいのですが、本当の意味での環境というのは、確かに短期的、中期的に難しい問題があると思います。しかし、本当の意味で環境汚染を防ぐエネルギー開発には、水力以外でいえば先ほど申し上げたようなものぐらいしか、私が通産省なり科学技術庁から聞いても出てこないわけです。低温核融合が簡単にうまくいくとはわかりませんけれども、例えばそういうところに思い切って人を配置していってみるのも新しい方向だと思いますし、それがやっと四百五十一億ついて総額四千五百億つきましたなんという中の一割にも満ちていないというのは、私は環境を言う総理大臣予算としては大変不満足だと思うわけです。  そこで、もう時間もかなり迫ってまいりましたので、私は、それでは今後どういうふうにしていけばいいのかということを考えてみたわけですけれども、長期的には今言ったように脱化石、脱原発だろう。中短期では、国内でいいますと、産業界のエネルギー消費の伸びはとまっているようですけれども、民生と運輸の伸びが非常に高い。オフィスとか個人の家庭ですね。これを例えば建物の構造で冷暖房がしやすくするとか、あるいは運輸といえばやはり車ですね。これだけ車がふえていいのだろうかという思いは、これはいろいろな立場であると思うのです。あるいは世界の問題でいえば、日本GNP対のエネルギー効率は非常にいいということが言われておりますから、先ほど総理も言われておりましたけれども、例えば外国に対しても省エネルギーに集中的な海外援助ということも、これは世界の環境という意味では非常に意味があるのではないだろうか。例えば中国などは、大変たくさんのエネルギーを絶対量というよりはGNPに対してはとっているけれども、同じGNPを維持するのにエネルギー量を半分にできれば相当の環境の保全にもなってくるというふうに思うわけです。  そこで最後に、もう時間がありませんので、私の最近考えております一つの提案をしてみたいと思います。  といいますのは、原子力発電について、この国会の議論でもいろいろありました。私もいろいろ考えてみました。その結果、原発が今なぜ必要かという議論の中で、いろいろな要素がありますけれども、一つは、石油危機が来たときにどうするのだ、当面は石油事情はいいけれども石油危機が来たときにどうするのだという議論がかなりあります。それに向かっては今備蓄などで相当の費用を使っているわけですけれども、私は、当面は原子力発電を備蓄用のエネルギーとして考えて、運転はとめてしまって備蓄用のエネルギーとして置いておく、いざ石油危機が来てどうしても石油が足らないというときに、そんなに時間はかからないはずですから、そういう非常に危機的な条件のときだけ稼働させて、それ以外のときはできるだけCO2の少ない天然ガス等の移転とかあるいは省エネ、それは民生も運輸も含めた省エネという方向で、当面は石油の輸入等が若干ふえても化石燃料で賄っていく、こういう方向が一つの道としてあるのではないだろうか。いわゆる原子力発電所を備蓄用のエネルギーとして運転しないで一部とっておく、こういうことを一つ考え方として考えているわけですが、どなたでも結構ですから見解を伺いたいと思います。
  359. 武藤山治

    武藤国務大臣 私からお答えさせていただきます。  正直、今電力の供給の三割近くを占めているわけでありまして、今ここで今のような御提案をされるのは大変、私は一つの見識としては承りますけれども、それじゃ、もしそれをやっちゃったら一体その三割の電力はどこから供給するのか、これは全く今のところはっきりしていないわけでございますから、一つの御提案として私は承っておきますけれども、今それはとても実現不可能なことだと思います。
  360. 菅直人

    ○菅委員 三割というのはあくまで電力の三割なんですよ。全体のエネルギー総量からいえばどの程度でしょう、原子力は一割前後じゃないでしょうか。それから、電力も施設的には若干不足するかしないか、これはいろいろ議論のあったところですが、施設的には今の火力と水力で十分やれるというデータもあるわけですね。ですから確かに、当面その三割を穴埋めするために、燃やす石油はふえるかもしれない、燃やす天然ガスは今よりはふえなきゃいけないかもしれない。しかし、施設的には現在の施設で結構足りているというデータも私聞いております。多少足らなければ、それはその分普通の火力をつくればいいわけでありまして、つまり、石油代替エネルギーじゃなくて原子力代替エネルギーを石油でやることなんというのは別に技術的に難しいわけじゃありませんから、そういう道をとれば、今通産大臣が言われたように、その三割の電力を賄うなんというのは決してそんなに技術的に難しい問題ではないはずです。
  361. 武藤山治

    武藤国務大臣 今のお話を聞いておりますと、私は非常に矛盾があると思うのですね。結局、原子力を使わなくて化石燃料の石油なり石炭を使えばいいじゃないか、それは今の地球温暖化のいわゆる環境保全という点からいくと逆行しているわけでありまして、私どもはやはり、今の原子力はあくまでクリーンなものである、ただ、御指摘のように安全性の問題、放射能、そういうものを絶対に出さないように、放射能汚染を出さないようにしていくということが大切であって、その管理をしっかりやっていけば原子力発電というのは決して危険なものではない、こう思っておるわけでありまして、今の地球の環境保全という観点からいけば、化石燃料の石炭、石油の電力を多くするよりはやはりこの原子力発電の今の三割は維持していくべきだ、こう考えております。
  362. 菅直人

    ○菅委員 これは多分世界じゅうがこの議論をやっていると思うのですよ。スウェーデンは原子力発電の廃止法をつくりました。あるいは西ドイツも、社会民主党はそういう法案を提出をしております。私はそれがどういう展開をするか大変注意深く見守っておる一人ですけれども、先ほども申し上げたように、私は長期的には、いわゆる何十年、何百年、五十年とか百年という単位で言えば、脱化石、脱原発だろうと思っております。しかし、その間のつなぎを、将来は今言われるいわゆる新エネルギーに移管できることもあり得ると思っておりますけれども、その間はエネルギー使用量をいかに減らして、そしてその中でどういうエネルギーを使っていくか。今申し上げたのは一つの私の私案でありますけれども、大臣も、原子力が安全だといういわば仮説に立って原子力の比重を高めようとされている。しかし、世界の傾向は、必ずしもすべての国あるいは多くの国が原子力は安全だからそちらをふやしてクリーンにしようなんということの議論をしているのではなくて、どちらかといえば、その逆の方向もかなりあるわけでありますから、それもあわせて今後の課題としてぜひ検討していただきたいということを申し上げて、私の質問は終わりたいと思います。
  363. 武藤山治

    武藤国務大臣 一言だけちょっとつけ加えます。  今の省エネルギーというのはこれは当然の話でございますから、それはもう一番大切なことで、エネルギーを有効に使う、エネルギーを節約をする、これは当然の話でありまして、私どもはエネルギー調査会で今六月をめどに答申を待っておりますから、その点は思い切った抜本的な考え方で省エネルギーあるいはエネルギーの効率化、これは考えていきたいと思っております。それだけつけ加えさせていただきます。
  364. 越智伊平

    越智委員長 これにて菅君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして総括質疑は終了いたしました。  次回は、来る十七日午前十時より公聴会を開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十一分散会