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1990-04-12 第118回国会 衆議院 予算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年四月十二日(木曜日)     午前九時開議  出席委員    委員長 越智 伊平君    理事 近藤 鉄雄君 理事 佐藤 信二君    理事 野田  毅君 理事 原田昇左右君    理事 官下 創平君 理事 加藤 万吉君    理事 佐藤 敬治君 理事 村山 富市君    理事 神崎 武法君       粟屋 敏信君    池田 行彦君       石井  一君    稲村 利幸君       内海 英男君   小此木彦三郎君       越智 通雄君    工藤  巌君       倉成  正君    後藤田正晴君       左藤  恵君    自見庄三郎君       鈴木 俊一君    田澤 吉郎君       田辺 広雄君    戸井田三郎君       葉梨 信行君    長谷川 峻君       浜田 幸一君    林  義郎君       原田  憲君    村田敬次郎君       村山 達雄君    井上 普方君       川崎 寛治君    串原 義直君       嶋崎  譲君    新村 勝雄君       新盛 辰雄君    戸田 菊雄君       藤田 高敏君    松浦 利尚君       武藤 山治君    和田 静夫君       草川 昭三君    日笠 勝之君       冬柴 鐵三君    木島日出夫君       菅野 悦子君    三浦  久君       大内 啓伍君    楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣  海部 俊樹君         法 務 大 臣 長谷川 信君         外 務 大 臣 中山 太郎君         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君         文 部 大 臣 保利 耕輔君         厚 生 大 臣 津島 雄二君         農林水産大臣  山本 富雄君         通商産業大臣  武藤 嘉文君         運 輸 大 臣 大野  明君         郵 政 大 臣 深谷 隆司君         労 働 大 臣 塚原 俊平君         建 設 大 臣 綿貫 民輔君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     奥田 敬和君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 坂本三十次君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 塩崎  潤君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      砂田 重民君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 石川 要三君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      相沢 英之君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      大島 友治君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 北川 石松君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 佐藤 守良君  出席政府委員         内閣官房長官 大島 理森君         内閣参事官         兼内閣総理大臣         官房会計課長  荒田  建君         内閣官房内閣内         政審議室長         兼内閣総理大臣         官房内政審議室         長       公文  宏君         内閣官房内閣安         全保障室長         兼内閣総理大臣         官房安全保障室         長       依田 智治君         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         内閣法制局第一         部長      大森 政輔君         公正取引委員会         委員長     梅澤 節男君         公正取引委員会         事務局審査部長 柴田 章平君         警察庁刑事局長 中門  弘君         警察庁交通局長 関根 謙一君         警察庁警備局長 城内 康光君         総務庁長官官房         会計課長    大橋 豊彦君         総務庁長官官房         交通安全対策室         長       徳宿 恭男君         総務庁行政監察         局長      鈴木 昭雄君         総務庁統計局長 井出  満君         北海道開発庁総         務監理官    松野 一博君         北海道開発庁予         算課長     仁尾  徹君         防衛庁参事官  内田 勝久君         防衛庁参事官  玉木  武君         防衛庁参事官  鈴木 輝雄君         防衛庁長官官房         長       児玉 良雄君         防衛庁防衛局長 日吉  章君         防衛庁教育訓練         局長      米山 市郎君         防衛庁経理局長 藤井 一夫君         防衛庁装備局長 植松  敏君         防衛施設庁長官 松本 宗和君         防衛施設庁総務         部長      吉住 愼吾君         防衛施設庁施設         部長      大原 重信君         防衛施設庁建設         部長      黒目 元雄君         防衛施設庁労務         部長      竹下  昭君         経済企画庁調整         局長      勝村 坦郎君         経済企画庁調整         局審議官    安田  靖君         経済企画庁物価         局長      田中  努君         経済企画庁総合         計画局長    冨金原俊二君         経済企画庁調査         局長      田中 章介君         科学技術庁長官         官房会計課長  中村 光弘君         科学技術庁研究         開発局長    須田 忠義君         環境庁長官官房         長       渡辺  修君         環境庁自然保護         局長      山内 豊徳君         環境庁水質保全         局長      安橋 隆雄君         沖縄開発庁総務         局長      藤田 康夫君         沖縄開発庁総務         局会計課長   山城  勉君         国土庁長官官房         長       北村廣太郎君         国土庁長官官房         会計課長    森   悠君         国土庁計画・調         整局長     長瀬 要石君         法務大臣官房会         計課長     木藤 繁夫君         法務省民事局長 清水  湛君         法務省刑事局長 根來 泰周君         法務省入国管理         局長      股野 景親君         外務大臣官房長 佐藤 嘉恭君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省北米局長 松浦晃一郎君         外務省欧亜局長 都甲 岳洋君         外務省経済局長 林  貞行君         外務省経済協力         局長      木幡 昭七君         外務省条約局長 福田  博君         外務省国際連合         局長      赤尾 信敏君         大蔵省主計局長 小粥 正巳君         大蔵省主税局長 尾崎  護君         大蔵省理財局長 大須 敏生君         大蔵省証券局長 角谷 正彦君         大蔵省銀行局長 土田 正顕君         大蔵省国際金融         局次長     江沢 雄一君         国税庁次長   岡本 吉司君         文部大臣官房長 國分 正明君         文部大臣官房会         計課長     吉田  茂君         文部省教育助成         局長      倉地 克次君         文部省学術国際         局長      川村 恒明君         文部省体育局長 前畑 安宏君         厚生大臣官房総         務審議官    加藤 栄一君         厚生大臣官房会         計課長     山口 剛彦君         厚生省保健医療         局長      長谷川慧重君         厚生省生活衛生         局長      目黒 克己君         農林水産大臣官         房長      鶴岡 俊彦君         農林水産大臣官         房予算課長   山本  徹君         農林水産省経済         局長      川合 淳二君         農林水産省構造         改善局長    片桐 久雄君         農林水産省農蚕         園芸局長    松山 光治君         食糧庁長官   浜口 義曠君         林野庁長官   甕   滋君         水産庁長官   京谷 昭夫君         通商産業大臣官         房総務審議官  関   収君         通商産業大臣官         房商務流通審議         官       山本 貞一君         通商産業大臣官         房審議官    横田 捷宏君         通商産業大臣官         房会計課長   土居 征夫君         通商産業省通商         政策局次長   堤  富男君         通商産業省貿易         局長      内藤 正久君         通商産業省産業         政策局長    棚橋 祐治君         通商産業省生活         産業局長    南学 政明君         中小企業庁小規         模企業部長   川田 洋輝君         運輸大臣官房審         議官         兼内閣審議官  井上徹太郎君         運輸大臣官房会         計課長     岩田 貞男君         運輸大臣官房国         有鉄道改革推進         総括審議官   大塚 秀夫君         運輸省運輸政策         局長      中村  徹君         運輸省国際運         輸・観光局長  宮本 春樹君         運輸省地域交通         局長      早川  章君         運輸省海上技術         安全局船員部長 田辺 淳也君         運輸省航空局長 丹羽  晟君         海上保安庁次長 野尻  豊君         郵政大臣官房経         理部長     木下 昌浩君         郵政省通信政策         局長      中村 泰三君         郵政省電気通信         局長      森本 哲夫君         労働大臣官房長 若林 之矩君         労働省労政局長 岡部 晃三君         労働省労働基準         局長      野崎 和昭君         労働省職業安定         局長      清水 傳雄君         労働省職業安定         局次長     齋藤 邦彦君         建設大臣官房長 牧野  徹君         建設大臣官房総         務審議官    福本 英三君         建設大臣官房会         計課長     小野 邦久君         建設省建設経済         局長      望月 薫雄君         建設省都市局長 真嶋 一男君         建設省河川局長 近藤  徹君         建設省道路局長 三谷  浩君         自治大臣官房長 小林  実君         自治省行政局長 森  繁一君         自治省行政局公         務員部長    滝   実君         自治省財政局長 持永 堯民君         自治省税務局長 湯浅 利夫君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      多田 俊幸君     ───────────── 委員の異動 四月十二日  辞任         補欠選任   内海 英男君     鈴木 俊一君   松本 十郎君     田辺 広雄君   村岡 兼造君     自見庄三郎君   山田 英介君     草川 昭三君   小沢 和秋君     木島日出夫君 同日  辞任         補欠選任   自見庄三郎君     村岡 兼造君   鈴木 俊一君     内海 英男君   田辺 広雄君     松本 十郎君   草川 昭三君     山田 英介君   木島日出夫君     菅野 悦子君     ───────────── 本日の会議に付した案件  平成二年度一般会計予算  平成二年度特別会計予算  平成二年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 越智伊平

    越智委員長 これより会議を開きます。  平成二年度一般会計予算平成二年度特別会計予算平成二年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。串原義直君。
  3. 串原義直

    串原委員 米軍ジェット機による低空飛行訓練というのが徳島県で大きな問題となりました。同様なことが全国各地に起きておるわけであります。私は、この問題をこの際、日本の空を守るために議論を深めつつ、いわゆる日米地位協定の見直しにつきましてただしてまいりたい、こう思うのであります。  そこで、具体的に伺ってまいりますが、二月二日午後三時十五分、長野県白馬村の八方尾根スキー場白樺ゲレンデに、上空飛行中の米軍機から大小の金属片ワイヤロープ落下をいたしました。このアメリカ軍所属部隊、配備の基地はどこなのか、また落下物は何であったか、お示しください。
  4. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 お答えいたします。  先生指摘事故は、米側によりますと第五空母航空団所属のA6でございまして、これはミッドウェーの艦載機でございます。このA6は、厚木飛行場へ帰る途中に、航法訓練飛行中でございますけれども先生指摘のようなものを落下している、落下させたということが判明しております。  落下物は、エンジン後部パネルの一部と承知しておりますけれども、具体的にはエンジンパネルのカバー、それからアルミ箔、それからワイヤロープ二本と聞いております。
  5. 串原義直

    串原委員 このA6米軍機、これが発進をいたしました基地あるいは帰った基地、それからその時間はどうでしょう。
  6. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 御指摘のA6が帰還いたしましたのは、午後四時過ぎに厚木飛行場へと承知して おりますけれども、どこから出発したかに関しましては、私どもは承知しておりません。
  7. 串原義直

    串原委員 帰った時間は四時ころだと承知しているけれども、もう一度明確にお答えください。
  8. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 帰還いたしました時間は午後四時過ぎでございます。
  9. 串原義直

    串原委員 帰還したのは四時過ぎだけれども、どこをどう通ったかはわからないということでありますが、その辺も大きな問題になりましょう。後ほど触れてまいります。  このアメリカ軍機飛行は、日米地位協定第五条第二項に言うところの「移動」ということに該当するのでしょうか。
  10. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 先生指摘日米地位協定第五条第二項は、米軍機移動に関する規定でございますけれども、今回のこのA6が第五条第二項に言う「移動」に該当するか否かは、その個々の活動の具体的な実態に即して判断する必要がございますけれども、私どもその詳細は承知しておりません。ただ、私どもの了解しておりますのは、このA6は通常訓練飛行中であったと聞いております。
  11. 串原義直

    串原委員 正確には答えられないけれども、私が質問した「移動」ということに該当するかどうかは答えられないけれども通常飛行訓練であったと思う、こういうお答えでございます。これも後ほどまた触れてまいります。  アメリカ軍が、先ほど御答弁いただいた当該磯部品落下ないし部品損失ですね、これに気がついたときはいつなんでしょう。  それからもう一つ飛行中に飛行士というのはこれらの部品落下について知ることはできないんでしょうか。
  12. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 先生最初の御質問の、飛行士飛行中に落下させたことを承知していたかという点に関しましては、私どもが聞いておりますのは、先ほど申し上げましたように、この飛行機厚木飛行場帰還いたしましたけれども、この厚木飛行場帰還後、エンジンパネルの一部などが落下していたことに気がついたということでございます。  それから先生次に御質問の、通常気がつくものかどうかという点に関しましては、申しわけございませんが、私どもは承知しておりません。
  13. 串原義直

    串原委員 私の質問したことに答えてないんですけれども部品損失つまり部品がなくなっている、このことに気がついた時間はわかりませんか。
  14. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 先ほど来申し上げておりますように、この飛行機厚木飛行場帰還いたしましたのは午後四時過ぎと聞いておりますが、この帰還後にエンジンパネルの一部等が落下したことに気がついたということで、今先生質問の、それが何時であるのかということは私ども承知しておりません。
  15. 串原義直

    串原委員 私ども、そういたしますと、つまり四時過ぎに厚木飛行場に到着をした、帰ってきた、そこで気がついたということで受けとめておくことにいたします。  そこで、落下物を当日保管をいたしましたのはどこの警察署でしょうか。また、当該警察署はいつ、どこにこのことを連絡したんでしょうか。
  16. 中門弘

    中門政府委員 お尋ねの落下物につきましては、長野県の大町警察署におきましてこれを領置いたしております。  警察としましては、この事案につきましては、二月二日の午後三時半過ぎに一一〇番通報によりまして認知をいたしまして、直ちに必要な警察官を現場に急行させまして、周辺の捜索あるいは落下物によります人的な被害等の有無について確認等の作業を行ったところでございます。  なお、通報の時間等については、ちょっと手持ちの資料がございませんので、後で調べさせていただきます。
  17. 串原義直

    串原委員 防衛施設庁最初にこの件を知ったのはいつでございますか。それからその情報、それはどこから入ったのか、お示しください。
  18. 松本宗和

    松本(宗)政府委員 お答えいたします。  二月二日の午後四時三十分ごろ、長野警察本部から東京防衛施設局前橋防衛施設事務所に対しまして、落下物があったということの通知がございまして、これが米軍のものか否かについて確認方の依頼がございました。私どもといたしましては、これの事実確認をいたしますために直ちに米海軍厚木基地に対して照会を行い、米軍調査をいたしました結果、隷下部隊のものであるということが判明したということで、警察の方に通知をさせていただいております。     〔委員長退席宮下委員長代理着席
  19. 串原義直

    串原委員 この情報の入手というのは、つまり日本側問い合わせによるものなんですね。これが一点。  いま一つは、防衛施設庁が県に、この落下物当該米軍機のものであることを知らせたのは何時ごろでしょうか。
  20. 松本宗和

    松本(宗)政府委員 地元八方尾根スキー場管理事務所代表者及び長野県に事実関係を御連絡させていただきましたのは、午後九時三十分でございます。これは連絡をいただきましてから米軍に対しまして通知をし、調査をお願いいたしまして、その事実確認に相当時間を要したということでございます。
  21. 串原義直

    串原委員 つまり、私ここで触れておきたいことは、私どもが考えます以上に、あるいは、私はこの報道を見まして、どうしてこんなに時間がかかるのだろうと思ったわけでありますけれども、今確認いたしましたとおり事故は午後三時十五分ごろに起きた。ところが、今御答弁のように県への連絡は九時三十分ごろであった。信濃毎日新聞の報道によると、当日、県は午後九時過ぎに緊急打ち合わせをやった、こういうふうに報じられているので、そのとおりだと思うのですけれども、まことに時間がかかった。それからまた、この事故がすべて日本側問い合わせによるものである、米軍側から日本側への連絡でないものである、この辺も大きな問題だなということを、私は今御答弁を聞いていて痛感をした次第であります。このことは、後刻また触れてまいりたいと思います。  そこで、当時金属片などが落下いたしましたゲレンデには二、三百人、このスキー場全体には四千人のスキーヤーがいたというのであります。落ちる場所がちょっとずれていたら大変なことになっていたというふうに考えられるわけでございます。そしてまた地元自治体への情報伝達が、先ほどお話がありましたように、つまり六時間ぐらい経過をしている。これもちょっと問題だなと思うのでございますが、人命にかかわるような事故につながるこの事態になって、アメリカ軍は我が国への通報、説明と言ってもいいですね、これは義務はないのでしょうか。
  22. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 一般論として申し上げますと、米側事故の発生につきまして日本側通報する義務はございませんが、公共の安全に大きな影響を及ぼす事態につきましては、米軍が起こしたものであるということが判明次第、日本側連絡してくるべきであることは当然であると私ども考えておりまして、従来もそのように運用されてきております。
  23. 串原義直

    串原委員 一般論という前置きはあったけれどもアメリカ側から日本に、こういう事故のときも連絡をする義務はない、こういう御答弁をいただきました。県民の生活、生命を脅かすようなアメリカ軍飛行訓練、これは八七年、八八年以来何度となく繰り返してきていることは、政府も御承知のとおりでございましょう。特に我が長野県だけでなくて、アメリカ軍機低空飛行訓練というのは、北海道、青森、岩手、奈良、愛媛など全国に広がっているわけですね。  特にこのところ愛媛県の南部、徳島県等でアメリカ軍と推定されるジェット機低空飛行を繰り返している、こういう報道があります。これに対して徳島県当局は、外務省あるいは自衛隊徳島地方連絡部文書照会していると聞くのですけれども、この実態はどうなんでしょう。
  24. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 先生指摘徳島についてでございますけれども徳島県から外務省に対しまし て、事実関係について文書照会がございましたので、外務省側よりアメリカ側に対しまして事実関係確認を行いまして、その上で判明した事実につきまして徳島県側に報告をしております。
  25. 串原義直

    串原委員 その報告をしたときはいつですか。
  26. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 外務省照会がございましたのがことしの二月でございまして、正確には二月十七日でございますが、外務省から徳島県に回答いたしましたのは三月二十六日でございます。
  27. 米山市郎

    米山政府委員 防衛庁関係について御答弁いたします。  本年の二月、今外務省局長からお話がございましたように二月十七日でございますが、徳島県から自衛隊徳島地連部長に対しまして、一月中旬から二月上旬にかけて、日時を特定いたしまして、那賀郡木頭村周辺で自衛隊機が低空飛行を行った事実があるか否かの照会がございました。私ども当該日の自衛隊機の飛行すべてチェックをいたしまして、そのような事実がないということが判明をいたしましたので、その旨回答申し上げてございます。
  28. 串原義直

    串原委員 つまりアメリカ軍が飛んでいたということはあるわけですね。しかし、地元からそれぞれ要請があったはずですね。県議会でも決議をして申し入れがあったはずです。そのことに対して外務省及び防衛庁はどのように対処したのですか。
  29. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 先ほど二月十七日に徳島県から照会があり、米側確認の上、三月二十六日に回答したということを申し上げましたけれども、この内容に関しまして徳島県から聞いてまいりましたのは、昨年夏八月ごろから、米国の軍用機と思われるジェット機低空飛行を行って、地元住民が不満を募らせているということで、いろいろ地元で話題になっているということで具体的に照会があったわけでございまして、これに関しまして、私どもアメリカ側から得ました回答を徳島県側に伝えましたけれども、その内容は、個々の飛行につき確認することは困難であるけれども米海軍ミッドウェー艦載機のA6などが徳島県において飛行訓練を行っている旨回答してきております。
  30. 串原義直

    串原委員 まことに、米軍機低空飛行訓練を実施している内容を正確に把握することは難しい、できていないという実態が明らかになったのでございまするけれども、そこで、これは私は大臣に聞きたい、そう思います。  この八九年防衛白書の資料の「防衛年表」には、八七年七月、米軍FA18ホーネットのロケット模擬弾、サガ号を直撃、これは航行不能になって、乗組員が右腕を切断されたという事件ですね、これの記載がない。あるいは、その年八月十二日、アメリカ軍EA6Bプラウラー、これは奈良の十津川のケーブルワイヤを切断した等でありますが、これも記載がないのですね。それから、六十三年、次の年六月二十五日、アメリカ軍のヘリによりますところの事故愛媛県伊方原発近くに墜落、このときはアメリカ軍七人が死亡した。こういう重大な事故がこの防衛白書に記載されていない。  今質問をしてまいりましたように、アメリカ軍低空飛行にかかわる具体的な事実について伺ってきたのでありますが、どうもはっきりしない面が多い。また、アメリカ軍から、いろいろなことがあっても日本通報する義務はない、こういうようなことであったわけですけれども、この防衛白書には、この重大な事故が、当然掲載されるべきものが欠落をしている。これは大変な事故が三つ落ちているということになるわけでありますが、これは一体どういうことなんですか。これは大臣からお答えください。
  31. 児玉良雄

    ○児玉政府委員 お答えいたします。  防衛白書は、我が国の防衛問題につきまして、おおむね最近一年間を対象期間といたしまして、その現状だとか課題だとかを広くお示しいたしまして、その実態を正しく認識していただいて御理解をいただく、その一助にしようとして刊行しているものでございます。  平成元年版の防衛白書につきましては、このような考え方で、世界の軍事情勢であるとか我が国の基本的な防衛政策あるいは防衛力整備、民生協力、基地問題というようなことを記述しておりますが、限られた紙数ということもございまして、今御指摘のような個々の事故についてまでは記述をするに至っていないというのが、これまでの編集の結果でございます。  本文に記述できなかったものにつきまして、一部でございますけれども、今言われましたように、巻末に資料といたしまして、年表の中でその一部だけを掲載をしているようにしております。
  32. 串原義直

    串原委員 いやいや、今の答弁で私は納得できませんな。そうすると、この資料にあるそれぞれの、アメリカ軍、自衛隊を含めてですね、これは幾つもアメリカの軍による事故がその他にもありますよ、時間がかかりますから触れませんが、これは一部ということなんですか。この資料は適当ということなんですか。そんな答弁納得できませんよ、私は。  大臣、そういう姿勢でいいのですか、防衛白書は。あなたからお答えください。
  33. 宮下創平

    ○宮下委員長代理 児玉官房長
  34. 串原義直

    串原委員 いやいや、違うんだ、それは。
  35. 宮下創平

    ○宮下委員長代理 いや、ちょっとその前に、委員長が命じます。(発言する者あり)いや、それは私の判断でやります。
  36. 児玉良雄

    ○児玉政府委員 巻末に出しております事故は、航空機の墜落事故その他の事故でございまして、ここに書いてあるものだけが事故であるというふうに私ども思っておりませんが、一つ一つのものについて、紙面に限りがあるということもあって、記載をしていないというのが、我々の白書の作成の仕方でございます。
  37. 串原義直

    串原委員 ますます納得できませんね。一つ一つの点についてという今御答弁があったけれども、これは重大な事故について、こういうことがあったから気をつけなきゃいかぬということも含めて、日本の防衛上の問題も含めてきちっと、防衛白書ですから対応しなきゃいかぬと思う。今後こういうことは絶対にないように、明確にしなきゃいかぬと思う。事故は全部一〇〇%掲載をしながら、その今後の対応を資料にしなきゃいかぬ、こう考える。  私は今までの答弁に納得しない。大臣の答弁を求めます。
  38. 宮下創平

    ○宮下委員長代理 大臣の前に、児玉官房長
  39. 児玉良雄

    ○児玉政府委員 今後の防衛白書の作成につきましては、現在検討の作業をしておるところでございますけれども、今のような御意見を勘案といいますか、考えに入れまして、拳々服膺させていただきたいと思います。
  40. 串原義直

    串原委員 この答弁に私は納得しない。また、大臣が答弁できないということにも納得しない。また後ほど触れてまいります。  これは、駐留米軍の訓練、行動に関する事柄を決めた日米地位協定にやはり問題があると考えるわけです。そのことを踏まえて、以下若干触れてまいります。  さきに触れました、二月二日、長野県の白馬村におけるこのアメリカ軍機の航路及び飛行状態というもの、態様というのはどんなものであったのか。ゲレンデを通過したときの高度、高さ、どんなものであったかお知らせください。
  41. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 具体的な高度については、私ども承知しておりません。
  42. 串原義直

    串原委員 報道によりますと、非常に低いところを飛んだ、まあ超低空と言っていいかわかりませんけれども、低いところを飛んだ、こういうふうに報道されているわけであります。  ところで、アメリカ軍機長野県で、ここだけではなくて、八八年から頻繁に各地で超低空飛行を行った。そして地元から大きな反対の声が上がった、中止してもらいたいという声が上がった。県でもその問題を取り上げ、県議会でも問題になった。そして、何度も何度も協議等々を経る中で、八八年十一月から十二月にわたって、再三と言ってもいいでしょう、政府並びにアメリカ軍当 局に対して、協議や飛行訓練について申し入れを行ったことは、御承知のとおりだと思う。このことをアメリカ軍にどの程度、どういう形で要請、地元の声を伝達、協議したのか。特に、長野県の大鹿村におきまして、送電線工事に従事するヘリコプターに関するニアミスがあった。これは何度もあったと言われております。このことを伝達、協議をいたしましたか。     〔宮下委員長代理退席、委員長着席〕
  43. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 私どもは、一般に地元から陳情がございましたときには、その都度米国側に伝えておりまして、今先生指摘長野県に関しましても、御要望いただくたびに米国側に伝えております。先ほど先生から御質問ございました徳島県についても同様でございまして、徳島県に関しましても知事から三月二十七日に飛行中止の要請をいただいておりますので、これは米国側に伝えております。  しかしながら、私どもの基本的な考えを申し上げますと、米国軍にとりましてパイロットの技能の維持向上等というのは、日米安保条約の目的の達成のために極めて重要でございまして、この飛行訓練につきましても、この目的達成のため重要な訓練であると承知しておりまして、政府として米国側に飛行の訓練の中止を求める考えは持っておりません。  しかしながら、ぜひこれは申し上げたいと思いますけれども、米国軍がこのような飛行活動を行うに当たりまして、我が国の公共の安全に妥当な考慮を払って活動すべきであるということは当然でございまして、この点に関しましては、私どもは累次の機会に米国側に安全確保につきまして万全の措置をとるよう、それから地元住民に与える影響を最小限にとどめるよう申し入れてきているところでございまして、先ほど来先生指摘の今回の長野県におきます事故の後にも、改めて米国側に、これは外務省といたしましても事故原因の究明、それから再発防止等の飛行の安全の徹底を図るように申し入れているところでございます。  それから、先生が具体的に御指摘になりました地元のヘリコプターとの関係でございますけれども、これは先生指摘のように、昨年の七月に米軍機によるニアミスがあったという報道がございましたので、私ども米国側に照会をいたしましたところ、米国側よりは、地元のヘリコプターの飛行に危険を及ぼすような飛行状況にはなかったという回答を得ました。しかしながら、私どもは米国側に対しましては、改めて安全確保につき万全の措置をとるよう当時も申し入れてございました。
  44. 串原義直

    串原委員 アメリカ軍機のニアミスはなかったということですけれども報道によりますというと、このヘリと百メートル、これは大変なニアミスだと私は思っているのでございますが、この問題についてはきょう質問を深めることを保留しておきましょう、そういうことであれば。  しかしいずれにしても、長野県の、つまり長野県議会が八九年十月、意見書をまとめているわけでありますが、これは御承知だと思う。相当な低空飛行、それから相当な高音、騒音であった、こういうことを意見書の中に触れていて、意見書を長野県議会で確認したようでありますが、長野県での一昨年以来の一連の超低空飛行による最高騒音値は幾らであったのか、また最低高度というのをどの程度に確認をされているか。これは後ほどの質問に重要な関連がありますから、お答えください。
  45. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 先ほど御答弁申し上げましたように、今回の事故を起こしましたA6の具体的な飛行高度については承知しておりませんけれども一般論として申し上げますと、先生たびたび言及しておられます近年の飛行訓練の際の飛行高度について申し上げますと、これも先ほどのA6と同じでございまして、私ども具体的には承知しておりませんけれども一般論で申し上げますと、アメリカ側は、我が国領空内におきます通常飛行訓練におきましては、航空法に言う最低安全高度、これは政令で、人家の密集していないところにおいては、人または物件より百五十メートルの距離を保って飛行できる高度とされております。この最低安全高度を尊重して飛行活動を行っているものと承知しております。
  46. 串原義直

    串原委員 今お答えいただきましたが、先ほど申し上げたように、八九年十月の長野県議会の意見書によりますというと、確認できたものは、最高騒音値が百ホン、最低高度が百五十メートルであった、こう言われています。これは確認できたというふうに言われております。これは私は大変なことだというふうに思うわけであります。  そこで伺いますが、航空法八十一条及び航空法施行規則百七十四条に規定する最低高度、今百五十メートルというふうに言われましたが、アメリカ軍はこれらの航空法八十一条、これを適用されているのか除外なのか、どうですか。
  47. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 最初一般論を御説明させていただきたいと思います。  これは先生重々御承知のことと思いますけれどもアメリカ軍は、日米の安全保障条約の第六条の規定に基づきまして、日本の安全に寄与し、それから極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、我が国におきまして施設、区域を使用することを許されております。したがいまして、アメリカ軍がそういう目的で我が国に駐留することを安保条約が認めているということは、事前協議にかかわる事項のように別段の定めがあります場合は除きまして、アメリカ軍がこの目的達成のため、今話題になっておりますような飛行訓練を含めまして、軍隊としての機能に属する活動を一般的に行うことを当然の前提としております。  このような前提のもとで、日米地位協定は、我が国に駐留するアメリカ軍が使用する飛行場及び航空保安施設並びに航空機及びその乗組員等に関する諸規定を置いておりますが、その趣旨にかんがみまして航空特例法というものがございまして、航空法の規定の一部除外を定めておりまして、これは航空特例法によりまして「航空法第六章の規定は、政令で定めるものを除き、適用しない。」ということになっております。
  48. 串原義直

    串原委員 つまり、航空特例法によりまして適用除外となっている、こういうことですね。  そこで、私触れたいわけですけれども、八八年十二月に私はこの種の質問主意書を当時の竹下総理に提出をいたしました。ところが、その答弁書によりますというと、政府は、航空法の適用除外の現状においても、アメリカ軍は「我が国の公共の安全に妥当な考慮を払って活動すべきものであることは言うまでもなく、」と言い、アメリカ軍もこの点は「十分に留意して、安全面の配慮を払うとともに、地域住民に与える影響を最小限にとどめるよう努めているものと承知をしている。」こういうふうに言われております。  さらに、当時、政府米側に対し、累次の機会に、米軍機飛行に際し、安全確保について要望をし、また長野県の低空飛行についても万全の措置をとるよう申し入れた、そして、これに対してアメリカ軍は、航空法に規定された最低安全高度を尊重し、極力村落を避けて飛行を行う等安全面での配慮を払う旨を述べたとされているのであります。  ところが、その後におきましても低空飛行が繰り返されて、二度にわたってニアミスを起こして住民に不安感を与えている。こういうふうに思いますとき、さらに先ほど申し上げましたように、人のいるところに、人の密集地、スキー場金属片まで落下をさせた、こういう経緯から見まして、安全飛行のための我が国法規が米軍機に適用されていない現状において、一般論として、公共の安全に対する考慮をアメリカ軍に期待をし、安全確保の措置を単に申し入れているという事態だけでは、一向に是正されていないことは明らかであります。問題は、航空法の適用除外と、それを裏づけている日米地位協定そのものにあることは、明確になったと私は思うのでございます。  その立場に立って、別の問題に触れてみたいと思います。  航空法というのは、この第六章の中で、最低安全高度のほかに、飛行禁止区域の設定、粗暴な操縦禁止、これは宙返りとかいろいろありますね、など安全運航に関する規定を設けているのでありますが、いわゆる日米安保条約、地位協定の実施に伴う航空法の特例に関する法律、以下航空特例法というふうに言いますけれども、施設、区域上空など一定の訓練空域の使用に限定することなく、我が国上空全域において米軍に対するこの航空法の適用を除外しているというふうに読めるわけであります。この適用除外というのは、一定の空域、空路に限定しているんでしょうか。
  49. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 限定しておりませんと私ども考えております。
  50. 串原義直

    串原委員 限定していない、つまり全部いい、こういうことなんですね。  施設、区域上空など特定の空域にのみ限定されている飛行訓練というのはどのようなものですか。
  51. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 射爆等を伴う訓練でございまして、これは先生が先ほど引用されました先生質問主意書に対しまして、昭和六十三年十二月二十三日の政府側の答弁の方にも言及されておりますけれども、この米軍による実弾射撃等を伴わない通常飛行訓練というのは、先ほど来申し上げているようなことでございまして、その裏返しでございますけれども、実弾射撃等を伴うものに関しましては限定がございます。
  52. 串原義直

    串原委員 つまり、こういうことですか。実弾射撃等を伴う飛行訓練は、施設、区域上空など特定の空域のみに限定される飛行訓練、こういうことなんですか。
  53. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 全体として申し上げますと、これも一般論ですけれども、個々の活動の目的とか態様等、具体的な実態に即しまして合理的に判断していくべきものと私ども考えておりますけれども、先ほど来申し上げておりますように、私ども通常飛行訓練とそれから実弾射撃等を伴う飛行訓練に分けて考えておりまして、通常飛行訓練は、施設、区域の上空外の領空においてこれを行うことは地位協定上も認められている。さらに申し上げれば、実弾射撃等を伴う訓練は、これは施設、区域の領空に限定されるべきものである、こう考えております。
  54. 串原義直

    串原委員 今の答弁で明らかになってまいったのですけれども、実弾射撃等を伴わない通常飛行訓練については、日米地位協定というのは、施設、区域の上空外においてこれを行うことは認められる、こういうことですね。アメリカ軍の訓練運用に関する基本的立場をとっておりますために、この航空特例法は、空域を限定することの、我が国領空の全域において低空飛行訓練等の障害となる、つまり、安全飛行に関する法規のアメリカ軍への適用を除外している、こういうことになるわけですね。  そこで伺いますけれども、西ドイツに駐留するNATO軍に関する地位協定、これは時間がかかりますからこの資料に基づいてずっと正確には長いものを読みませんけれども、この地位協定では、飛行訓練に対する西独法規の適用はどうなっていると承知しておりますか。
  55. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 西ドイツに駐留しておりますNATO軍の地位にかかわる協定、これはボン協定と呼ばれておりますけれども、このボン協定の第四十六条におきまして、別段の規定のある場合を除き、西ドイツ国内法令によって規制されるとされていることは承知しておりますけれども、その詳細については承知しておりません。
  56. 串原義直

    串原委員 詳細は結構でしょう。つまり、お答えのように、西ドイツの国内法規によるということになっているということが明確になれば、私は結構だと思うわけであります。  そこで、低空飛行に関する規制というのはどうなっているでしょう。
  57. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 先ほど引用させていただきましたボン協定におきまして、西ドイツに駐留いたしますアメリカの軍隊を含みます外国軍隊の訓練にかかわります規定があることは承知しておりますけれども先生指摘低空飛行訓練という具体的なことに関しましてどうなっているかということは、私どもから有権的に申し上げる立場にございません。
  58. 串原義直

    串原委員 私は、同協定の四十六条三項によって、「許可されている高度より低い高度で飛行しうる地域に関して協定を結ぶことができる。」こうなっていると承知をするわけです。これは国会図書館から資料をいただいた協定の内容であります。そうでしょう、いかがですか。
  59. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 ボン協定の第四十六条の三項は、先生指摘のように、確かに許可されている高度以下の高度で飛行することができる区域に関し合意しなければならないというふうになっていると承知しております。
  60. 串原義直

    串原委員 西独政府は、低空飛行訓練のための空域を設定しておりますか。
  61. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 西ドイツの領空の約三分の二の空域が低空飛行訓練が実施されている地域と承知しております。
  62. 串原義直

    串原委員 そこで私が調査をしたところによりますと、西独政府は高度四百五十メートルから百五十メートルの通常低空飛行訓練空域、そのほかに七十五メートルまでの超低空飛行訓練空域を七カ所設定している。これは朝日、読売、産経等々報道をされていること、これも御承知のとおりだと思うわけであります。  ここでそれほど時間をとるわけにはまいりませんけれども、申し上げたいことは、これで明らかになりましたように、一般論といたしまして、我が国領空空域において低空飛行を無制限に行うことができる日米地位協定に比べまして、西独の地位協定というのは、低空飛行について、空域を協定によって限定することができることになっているようであります。そして実際には低空飛行訓練空域を設定しているようであります。さらに八八年の墜落事故続発を契機といたしまして、関係国は低空飛行訓練空域における高度、速度、訓練時間、空路、飛行持続時間など、具体的に協議して取り決めていると言われているのであります。西独は一昨年来の相次ぐ交通事故、激化する訓練に伴う騒音に対する西独国民の不安、あるいは欧州通常戦力削減交渉の進展の機運を背景にいたしまして大きな政治問題となり、これに対応して原発や化学工場など危険地域上空の飛行規制、制限高度の引き上げなど、西独の与野党はさまざまな規制案を提案していると言われているのであります。西独政府や軍も低空飛行訓練削減策を模索しておりまして、訓練地の移行、低空飛行時間の削減、シミュレーターでの模擬飛行訓練時間の増加などの対策を具体化しつつあると伝えられているのであります。  そこで伺いますが、我が国自衛隊の実弾射撃等を伴わない低空飛行訓練、これは我が国領空のどこでも行えるのか、それとも特定の訓練空域に限定されているのでしょうか。
  63. 米山市郎

    米山政府委員 先生お尋ねの低空飛行訓練というものの定義について明確なものがあるわけではございませんけれども、自衛隊機の飛行につきましても当然航空法の適用がございます。自衛隊の戦闘機につきましては、必要に応じ公海上やあるいは演習場の上空等で航法訓練、対艦攻撃訓練等を行っておりまして、その際法律の規定を遵守をし、また、必要がありまして最低安全高度以下で飛行する場合には、運輸大臣の許可を得て実施をいたしております。
  64. 串原義直

    串原委員 そこで私は総理、外務大臣に伺うのでございますけれども、私はいささか時間をかけ過ぎたかなと思いますほどに事実関係を踏まえて、今まで白馬村スキー場におけるアメリカ軍機による物品の落下、この問題等々に触れながら事実関係確認をしてきたところであります。  そこで、これまでの論議で明らかになったと思いますけれども、在日米軍機飛行については、大別して、通常飛行による基地間の移動あるいは低空飛行などの危険性のある訓練を伴う移動基地間の移動の目的を持たずに実弾射撃等を伴わない低空飛行などの訓練のための飛行、実弾射撃 等を伴う飛行、四つに分けることができるかな、こんなふうに思います。ところが、西独駐留NATO軍や我が国自衛隊と異なりまして、自衛隊に対して今答弁がございましたが、在日米軍に関しては、実弾射撃等を伴う飛行訓練以外の飛行について移動と訓練の区別がなく、航空特例法によって低空飛行等の危険な訓練についても野放しの状態であるのですね。私は、我が国の国民の生命、安全と生活を守るために、米軍機の危険な低空飛行訓練の中止を改めて強く求めますとともに、当面の緊急の措置として、現在の日米地位協定とその運用を見直し、西独ですら実施しているような最低限の協議あるいは規則の枠組みというものを日米地位協定に設けるように要求したいのであります。  すなわち、私は具体的に提案をしたいのでありますが、一つといたしまして、米軍機の単なる基地間の移動と訓練を厳格に区別して、訓練は実施空域を極力限定すること。訓練というのは極力一定のところに限定すべきではないか。特に、現在の日米地位協定のもとで空域を特定せずに行われると言われている低空飛行訓練や曲技的なアクロバットなど危険な飛行について、国民の生命と生活を脅かさないよう訓練空域を設定して、高度、飛行持続時間等の安全規則を協議するようにすること。二つ目は、核関連施設や化学工場などの危険地域周辺上空での飛行を禁止すること。また、沖縄の金武町伊芸区の米軍基地の訓練演習場では、実弾が民間地域に飛び込むような演習訓練が行われました。まさに生命の危険にさらされているということであります。したがって三つといたしまして、区域外への流弾、被弾などを起こす危険な訓練演習の規制、演習訓練施設の設置禁止を明記すること。このような訓練区域内での訓練の規制とともに、四つといたしまして、訓練施設・区域外での訓練に関する計画の詳細の通告、我が国の要請に基づく協議、異議申し立ての権利等を明記すること。さらに、基地施設の建設につきましては、五つ目になりますが、国立公園等の自然保護を要する地域での基地施設建設の規制や基地施設建設に関する地方自治体、住民の意思の尊重を明確にすること。  これを踏まえて、もう日米地位協定が一番最初にできたとき、協定されてからは四十年弱になるでしょう。時間の経過も随分あります。世界的にも国内的にも情勢は変わりました。このことを踏まえて、先ほど申し上げましたように緊急の措置として、今申し上げましたようなことを踏まえて、日米地位協定の見直し、改定を行うべきときに来ている、行うべきではないか、こう思うのであります。明確な御回答を求めます。
  65. 中山太郎

    ○中山国務大臣 委員の大変熱心なこの問題に関する御意見等十分拝聴をさしていただきました。米軍にとりまして、日米安保条約の目的の達成のために、米軍のパイロットの訓練というものは極めて重要な問題であろうかという認識を持っておりますが、米軍が地域住民に危険を与えるというようなことにつきましては、政府としてもかねてより米側に十分注意を払うように申し入れをしてきておるところでございまして、私どもといたしましては、地域住民の安全のために引き続き十分な配慮を払うように米側に要請をしてまいりたいと考えております。  ただいまのところ、御指摘のような地位協定の改定は考えておりません。
  66. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 ただいま外務大臣が申し上げましたことと軌を一にするわけでありますけれども米軍のパイロットの技術の維持向上等のために飛行訓練を行っておるのは、これは安保条約の目的達成のために重要であると考えますけれども、きょうの御質疑を通じていろいろと示されておりますような問題については、我が国の公共の安全に妥当な考慮を払いながら米軍も活動すべきことは、これは当然のことだと考えますし、またこのような趣旨については、きょうまでも米軍にいろいろな機会を通じて我が方から要望をし、これを守ってもらうように伝えてあると言っておりますが、十分今後とも安全面での配慮を行うとともに、地域住民に与える影響を最小限度にとどめるように今後とも努めていかなければならないと考えます。
  67. 串原義直

    串原委員 私はただいまの答弁、まことに不満ですね。安全面に注意しなきゃならぬ、これは当然ですね。当然のことですけれども、それがなかなか地域住民、国民の皆さんの意見にかかわらず、繰り返し繰り返し申し入れにもかかわらず、アメリカ軍低空飛行が行われてきた。これは安全面に注意しなきゃならぬことは当然のことですよね。ところが、それがなかなか具体的に表にあらわれてこない。さらにまた、先ほど触れましたけれども、安全に飛行訓練やってくださいよ、こういうことをアメリカ軍に申し入れるだけで問題は解決しないところにある。そういう協定になっているわけですね。もう繰り返して御答弁を願ったように、そういう協定の中身になっている。  したがいまして、触れましたけれども、四十年前日米地位協定を両国で策定をした、協議をして決めた。自来時代は流れている、変化をしている。こういう状況の中で、日米地位協定全面改定ということを言っているわけではなくて、ただいま触れてまいりました超低空飛行、危険な飛行訓練、これについては地域を決めたところでやるようにしたらいかがでございましょうか、このことをアメリカ側と話そうではありませんか、話す気はありませんか、そういう姿勢になりませんかと、こういうふうに私は求めているわけであります。あしたから一〇〇%アメリカのジェット機飛行訓練低空飛行訓練やめい、こんなことを言っているんじゃありません。  このことに対して関係してまいりました各県、関係団体、非常に強い考え方を持っていると同時に、私の質問してまいりました立場に立った考え方を持っていると同時に、この辺で何とか考えなきゃいかぬではないか、繰り返されるアメリカ軍による低空飛行訓練を見てそう思うのは、これは関係してまいりました地域の国民だけではないと思う。これは一足、一足とは言わなくても半歩前へ進んで取り組んでいこう、検討していこう、こういう姿勢になるべきときだ、こう考えるわけです。いかがでしょう。
  68. 中山太郎

    ○中山国務大臣 御意見は十分承りました。これから政府としても検討をしてまいりたいと考えております。
  69. 串原義直

    串原委員 今外務大臣が、政府としても検討してまいりましょう、こういう御答弁をちょうだいしたのでありますが、重要な点でありますから、総理からいま一言。検討するということでありましたが、ただいままで触れてまいりましたアメリカ軍の訓練、野放しではいけないなというふうに私は強く強く考えますだけに、やはり限定したものにしよう、限定した地域、限定した方法で低空飛行訓練をやるようにしよう、両国で話し合いを始めたい、こういう立場で検討するということ、総理からひとつ御答弁を、所見を伺いたい。
  70. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 これは極めて専門的、技術的なことも含まれると思いますので、私は、外務大臣がそれらの御質疑の趣旨を踏まえていろいろと考えてみる、こう言っておるわけでありますから、そのような対応をしてもらいたいと考えます。
  71. 串原義直

    串原委員 ぜひひとつ、ぜひひとつ今御答弁のように検討をされる、その検討も一足前に足を踏み込んだ検討を強く求めたいわけであります。私は、この問題は機会を得るごとに取り上げて議論を深めていきたい、こう考えておりますことを申し添えて、次の質問をいたします。  低空飛行問題について触れてきたのですけれども、これは大事なことですから、大臣に伺いますか、どなたが御答弁をされるかわかりませんけれども警察長官ですかね、伺いますけれども、二月二日のA6Eイントルーダー、これの落下さした金属片等の写真撮影をしようとした報道陣に対して、所管の警察署はいわゆる刑特法を根拠にした在日米軍の要請で撮影を拒否した、こう伝えられているのであります。これは本当でしょうか。これは事実とすれば刑特法のどの規定に基づ いて拒否したのか。どうも私は納得できない。ほかの県でも刑特法を根拠に取材拒否されたということを聞くんですけれども、刑特法ではこのようなことはできないと私は思う。これは報道の自由を脅かすもので断じて容認できない、こう思うのであります。これはひとつ明確な御答弁を大臣から願います。
  72. 中門弘

    中門政府委員 今のお尋ねにお答えする前に、先ほどの関係機関への連絡関係でお答え漏れがございましたのを先にお答えしたいと思います。  この事案につきましては、同日の午後四時三十分ごろに前橋防衛施設事務所に対しまして問い合わせを行っております。  それから、ただいまの落下物の取材に関するお尋ねでございますが、一般的に申し上げまして、警察が捜査の過程で領置あるいは押収いたしましたものにつきましては、公開捜査をすべきものを除きましては、一般的に撮影等を控えていただくということをやっておるわけでございますが、本件につきましてもそういう一般原則を踏まえましたのとあわせまして、米軍側からも、これはまあこの落下物の所有者ということになるわけでございますが、防衛施設庁当局を通じましてそのような要請がございまして、そういうことも踏まえまして、報道機関に対しましてその旨をお伝えしまして説明し、御理解をいただいたものというふうに承知をいたしております。
  73. 奥田敬和

    ○奥田国務大臣 決して、刑特法と申しますか、そういった形だけに頼って取材拒否をしたとかということじゃなくて、これは日米地位協定にのっとりまして米軍のやはり御意向もあったようでございます。そして、そのときに写真撮影を控えてほしいという形を御説明申し上げまして、取材陣から御協力をいただいたという形の報告を私の方は受け取っております。
  74. 串原義直

    串原委員 そういたしますと、やはり私が指摘したように、刑特法ではそういう規定はないというふうに申し上げましたが、ないことは確認できたわけですね。したがって、防衛施設庁からの要請もあり、米軍側からの要請もあり遠慮してもらった、こういうことなんですね。そういたしますと、取材拒否ということではないわけですね。ちょっと待ってください、こういう程度なんですね。  それにしてはどうも話が大分違うんですね、現場の様子を聞きますと。つまり、写真を撮らせてくださいと言ったところが、それはだめだ。これはこういう理由でちょっと待ってくださいよというような程度の話ではないらしい。したがいまして、今後、重大な事件は知りませんよ。重大というこの分岐点は私はなかなか難しいけれども、しかし重大なときもありますでしょう。ところが、例えば二月二日の白馬スキー場落下したアルミ箔あるいはロープ、こんなものは写真撮影を拒否するほどの問題ではない、私はこう思う。取材拒否をするほどの問題ではない、物件ではない、私から見るとそう思う。でありますから、この取材拒否は、取材拒否ということにならないために万全の配慮をしなきゃならぬですね、これから。これは、取材拒否ということは私は重大問題だと思うんですよ。時によれば協力してもらいたいなということもあるでしょう、ないとは私は申し上げません。けれども、二月二日の落下物の写真撮影を拒否するような話はちょっと行き過ぎ、こう考えるのですね。今後は取材拒否というようなことに対しては、刑特法に規定されていないということであるならば、十二分に気を配りながら対応してもらわなければいかぬ、こう思う。いま一度その点について大臣から御答弁ください。
  75. 奥田敬和

    ○奥田国務大臣 先生の御指摘のとおり、報道の自由ということをよくわきまえて今後対応いたしたいと思います。  ただ、地位協定の関係もございまして、米軍の意向でそれがどういう形で取材を遠慮してほしいということになったか詳細心得ておりませんから、余り明確に今お答えするわけにはまいりませんけれども、できるだけ取材陣には丁寧に御説明申し上げて御協力を得たという報告を得ておるので、その内容について詳細また調べた上で御返答申し上げたいと思っております。  いずれにしても、報道の自由の原則はできるだけ尊重して配慮してまいりたいということは常に認識いたしております。
  76. 串原義直

    串原委員 それでは次の質問に移りますが、プロ野球の桑田問題でありますが、このプロ野球の桑田問題は大きな社会的な関心を呼んでおります。今リクルートに関係をいたしまして国会でもそれぞれ政治責任の問題等が議論されているところでありますけれども、登板日の疑惑問題に関連をいたしまして後援者からの金銭の授受等につきまして虚偽の発言が明らかとなって、プロ野球ファンの心、特に青少年の野球ファンの心を傷つけているわけであります。  まあこれ、百万円という金が高いか低いかは別といたしまして、百万円も人からもらって、それがお小遣いだという感覚というのは、どうも庶民から見ると理解できないことでございましょう。桑田選手は甲子園のヒーローでございました。甲子園での高校野球大会では文部大臣が始球を行うことになっておりますように、教育的な影響というのは極めて大きいのではないか、こう思います。  今回の問題は、金銭万能の社会風潮ともかかわり、プロ野球ファンの問題だ、これはプロ野球の問題だということだけで済まされない問題ではないかというふうに私は思うのです。海部総理、それからスポーツ行政の責任者でありますところの文部大臣の見解、いかがでございましょうか。
  77. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 御指摘のようなことがございまして、特に野球協約第百八十条、賭博行為に該当することがあり、コミッショナーがその点について厳重に注意をし、また処置をしたということば、おっしゃるように、広範なファンの心理にもよくない影響を与えたでしょうし、また、プロ野球人自身がすべて今後ともみずからの置かれておる立場を十分に考えて、このようなことが再び起こらないように行動をとってもらいたい、このことを私は強く感じております。
  78. 保利耕輔

    ○保利国務大臣 ただいま総理からお答えがございましたとおりでございます。  プロ野球は広く国民の間で親しまれているスポーツでございます。また、野球選手に対しましては、子供たちの間にもファンが多く、またあこがれの的にもなっている選手がたくさんございます。今回の桑田選手にまつわる問題につきましては、スポーツの明るいイメージを傷つけるもので、大変残念に思います。また、子供たちへの影響も少なくないと存じます。先生指摘のとおりだと存じます。今後、同選手が反省をしていただいて、良識と節度を持って行動をしていただくことを強く望むものでございますし、またプロ野球関係者におかれましては、十分自重自戒をされまして、スポーツの明るいイメージを落とすことのないように努力をしていただきたいと強く期待するものでございます。  なお、経緯等については、文部省の体育局長が参っておりますので、必要でございましたら説明をさせていただきます。
  79. 串原義直

    串原委員 御答弁をいただきましたが、これは二度とあっては困るなと、私も野球ファンの一人としてそう思うのでございますが、これからの防止策、二度とあってはいけませんけれども、今後の防止策というようなことについて、大臣、どうお考えでございますか。
  80. 保利耕輔

    ○保利国務大臣 今回の問題は、プロ野球のいわゆる内部規律の問題であるかと思います。既に内部規律といたしまして、巨人軍あるいはセントラルリーグ及びコミッショナーにおかれまして、それぞれ関係者に対して処分が行われております。また、今後の対応といたしまして、コミッショナーにおいては調査機関を設置し、またリーグにおける綱紀委員会の設置も検討されていると聞いております。そのような事情に照らしまして、私どもといたしましては、プロ野球界の自主的な改善の努力をしっかり見守ってまりたいと思っております。重大な関心を持って見守ってまいりたい と思っております。
  81. 串原義直

    串原委員 それでは、次に山の問題に移ります。  国有林というのは国土の二割を占めております。しかも、日本列島の脊髄、脊梁地帯を持っておりまして、国有であるからこそ国の施策をダイレクトに反映できる経営形態にあります。しかし、このことが戦中戦後過大な伐採を国有林に押しつけたり、戦後四十一万ヘクタールの森林を開拓用地に解放したり、政治の後始末をさせた嫌いもあるのでございますが、しかし、この長所というものを生かした経営を今後強めていくべきではないか、この点が非常に大事ではないか、こう思うのです。農林大臣いかがですか。
  82. 山本貞一

    山本国務大臣 お答えいたします。  今先生の御指摘のとおりでございまして、国有林は非常に重要である。それは、国土の保全あるいは水資源の涵養、自然環境の保全というような公的な機能が根本にある。また、林産物の安定供給あるいは農山村地域の振興などなどたくさんございます。また、昨日嶋崎先生からも御指摘がございましたけれども日本じゅうの森や林は国民共有の財産だ、こういう観点も当然ございます。しかし、国民全体の財産であればこそ、この保全に関しましては十分な将来を展望しての健全な経営の方策が立てられなければならない、健全な経営を確立することが非常に大事だというふうに考えております。  そこで、先生も山で育ち、私も山で育ったわけでございますが、お互いにそういう観点を踏まえながら、これから先も国有林をいかにしたら将来二十一世紀につなげていくことができるかということで諸施策を展開してまいりたい。その基本は林政審等でやっております総合的な対応策ということでございますので、これらを踏まえながらしっかりやっていきたい、こう考えております。
  83. 串原義直

    串原委員 お答えを願いましたが、つまり国有林であるからこそこういうことはできる、こういうことは将来ともに楽しみなんです、国のためにこれが保証できるのです、こういうことになるわけですね。だから、国有林の長所を将来ともに本当に生かさなければいかぬ、これが一番大事なポイントだと私は思う。  それを踏まえて伺いますが、国有林の経営の目的、これは何なんでしょうか。
  84. 甕滋

    ○甕政府委員 お尋ねの点でございますけれども、ただいま大臣から申し上げましたとおり、国有林野事業は国土の保全あるいは水資源の涵養といった公益的機能の高度発揮、さらには林産物の安定的供給、またその事業活動における農山村地域への寄与、こういう面で重要な使命を持っていると考えております。
  85. 串原義直

    串原委員 そこで、前から私、痛感をしているわけでありますが、国有林の重要性ですね。国有林でなければならないということは明確にわかっているのですけれども、法律で規定をしていないわけでありますから、資源の保全、こういうことに関係のないような乱伐がやられたり、時によりますと、町村合併や開拓奨励などの時の政権に国有林が利用される。これはそのときどきの経済情勢等でよかったこともありますよとは思う。思うけれども、町村合併や開拓奨励などの時の政権に国有林が利用されてきたことは事実なんですね。このことは、国有林にとってはマイナスであったということも言えるわけですね。そういうようなことが国民から指弾される結果になってきたことも事実です。したがいまして、国有林経営の目的、これはもう明確に法制化さるべきではないか、こう思う。大臣、いかがですか。
  86. 甕滋

    ○甕政府委員 国有林野事業の運営につきましての法制上の位置づけでございますけれども、まずその林政におきますあり方につきましては、林業基本法において規定があるわけでございます。また、その管理のあり方につきましては、国有財産法を基本にいたしまして国有林野法といった特例が定められております。また、事業運営のあり方につきましては、国有林野事業特別会計法によりまして、国有林野事業は特別会計方式による国営企業とされておるところでございます。さらに、現在当面いたしております国有林野事業のいろいろ難しい状況を踏まえまして、特例措置として国有林野事業改善特別措置法が定められておる、こういう状況がございます。こうした所要の法制度にのっとった運用が図られている実態にございます。
  87. 串原義直

    串原委員 私の指摘するのは、国有林野の特別会計法、これは会計、賄いはこうやりましょう、こういう法律ですね。それぞれの法律があることは承知しています。ところが、基本的に国有林の経営の目的、これがどうも明確化されていない。国有林はこの目的によって存在をいたします、こういうきちっとした経営の目的というものが法制化されていない。このところに、国有林がともいたしますと、総論はどなたも賛成をする、ところが、なかなか具体的な諸事業、諸施策あるいは予算を伴う仕事になってまいりますと一足下がる、こういう格好になるわけですね。総論賛成、国有林はこうあらなければなりません、このために存在をいたします、国有林の経営目的はここにございます、このことを法制化すべきではございませんかと、こう私は伺っているわけなのであります。いかがでしょう。
  88. 甕滋

    ○甕政府委員 国有林野事業をめぐりまして、御指摘のように過去においてもいろいろ論議がございましたし、また、ただいま御指摘のような法制度の必要性といったことも御論議の中にもあったわけでございます。私どもとしましては、先ほど申し上げました法制にのっとりまして運用してまいってきておる、こういう状況でございます。  新しい法制度をその中でつくっていくかどうかということにつきましては、大変大きな問題でもございまして、今後の国有林野事業のあり方の検討の中で慎重な検討が必要な問題ではないか、このように考えております。
  89. 串原義直

    串原委員 昨日も、同僚嶋崎議員の質疑、議論の展開がございました。その中でも触れられておりました。国有林野事業特別会計の累積赤字は一兆七千億、このできた原因はきのうも触れておりましたし、きょうはそれほどこの原因について深めてまいるつもりはございませんが、これはできるだけ早く何とかなくさなきゃいかぬ。しかし、この一兆七千億と言われる累積赤字の、累積債務の償還の平均利率というのは、今どのくらいになっているのですか。
  90. 甕滋

    ○甕政府委員 国有林野事業についての借入金でございますけれども、もろもろの原因が重なりまして、昭和四十年代から財務事情が悪化いたしまして、しかしながら、その中において国有林らしい森林を適正に管理、経営する資金を確保しなければならないということで、昭和五十一年度から借入金を継続的に導入をするようになったわけでございます。その結果、六十三年度末までの債務残高が一兆八千八百七十六億円という状況でございます。  そこで、その借入金につきましての借入利率でございますが、これはそのときどきの財投金利の変動によりましてそれぞれ異なるわけでございますけれども、八・五%のものから四・六%のものまでございます。六十三年度末の債務残高の平均利率としては六・三三%になっております。
  91. 串原義直

    串原委員 これは大蔵大臣に伺いましょう。  昨日の嶋崎議員の議論の中でも数字が出ておりましたが、林業経営というのは、私は経営と言えるほどのことではありませんけれども、少し自分の山もございまして楽しんでおりますが、山の経営、山の事業、山を管理しながら利回りを考えていくというと、どうしても一・五%ないし一・七%と言われている。私の感覚ではそれほどの利回りには山仕事はならない、こう思っているのです。  それはそれといたしまして、一・数%ということにしておきましょう。これはもう全国的にその数字はまあ間違いない数字であると言われているわけであります。今、林野庁長官から、国有林野事業におけるこの累積赤字の償還の平均利子、八・五%のもあります、もう少し安いのもありま すといった話があった。けれども、平均は六・三三%だ、こう言って話がありました。農林省とすれば、当然のことながら、安い金利にしてもらうことを要請しているだろう、考えているだろうと思うのです。これは国の財産でありますから、そういう意味も含めて、少なくとも大蔵省、大蔵大臣のところで山の管理に見合う利子程度に、一・数%と言われておりますところの山の管理に見合う利子、それくらいに国有林といえども横並びにしなければどうにもならないじゃありませんか。  先ほど申し上げますように、一兆数千億と言われる累積赤字の解消は早めなければいかぬ、これは申し上げましたが、これは別の時点で議論をいたしますけれども、それにしても、その利子が、一生懸命汗を流して仕事をするのに利子が大変になって、利子を払うために汗を流す国有林の職員の皆さんというような話になったのでは、これはまるで、天につばするという表現はどうか知らぬけれども、自分にかかってくるような感じがするわけですね。ですから、少なくとも山の管理に見合う利子のお金を用意していくべきではないのか、こう思うのです。大臣、いかがですか。
  92. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 きのう、嶋崎委員からも国有林についてさまざまな御指摘がございました。そしてまた今、委員から御指摘を受けておるわけであります。  それで、私は今、国有林野特会という制度があり、その中において御論議を進めていただいております中においてお答えをいたしますとすれば、きのう嶋崎委員にお答えを申し上げたのと同様の内容にならざるを得ません。そして、独立採算で経営すべきものとされている状況の中において、平成二年度におきましてもたしか百八十六億でしたか、一般会計からの繰り入れを行い、その経営を助けると同時に、今、林政審で抜本的な改革についての御検討をいただいておるということでありまして、今後にまちたいと思います。  ただ、実はきのう嶋崎委員の御質問の際にも、私は申し上げたいと思いながら申し上げる機会を失しておったことが一点ありました。委員の御質問の機会に多少お聞きをいただきたいと思うのであります。  私にとりまして国有林関係でどうしても忘れられませんのは、昭和四十五年の秋に行われました、いわゆる公害国会と呼ばれました臨時国会から環境庁創設の前後についての経緯であります。当時、環境庁が創設をされる時点において、起きてしまった公害をどうして回復するかということとは別に、国土の保全という視点からいわゆる緑の資源というものを保護しよう、そのために、厚生省の国立公園部をただ単に環境庁に移しかえるだけではなく、積極的に自然保護という視点から物事を考えようということで、環境庁に自然保護局を創設いたすことになり、そのとき、国有林行政の中において、環境庁が自然保護の視点から保護すべきものがあるのではないかという議論が非常に強く行われたことがございます。当時関係しておりました一人として、私にとっては忘れられないことであります。  しかし、当時、これは大変失礼でありますけれども、与野党を通じて、こうした考え方に対してはなかなか御理解がいただけませんでした。林野庁の労使からも理解が得られなかったのであります。そして、ある意味では自然保護局の権能は非常に制限をされたまま環境庁は発足をいたしました。その後、三木副総理が環境庁長官を兼務しておられますとき、亡くなられた社会党の島本虎三委員、あるいは公明党の岡本富夫委員たちと私どもは、せめて鳥獣保護に関する権限のみでも国有林行政の中に環境庁自然保護局の行政が及ぶように、また、文部省の天然記念物における動植生の保護にその権限が拡大するように随分議論をいたしました。文化庁の天然記念物行政につきましては、自然保護局の権能がある程度その結果三木副総理の御努力により及ぶようになりました。  しかし、林野庁との間におきましては、当時の国有林の経営状況その他もありましたでしょう、残念ながら、昨日嶋崎委員から御指摘がありましたような緑の資源という発想に基づいての自然保護という視点からの努力は、全く受け入れていただけなかったわけであります。そしてある意味では、国有林野特会というものは聖域のような形でその後も続いてまいりました。  今日こうした御議論をいただきます中において、当時与野党の中にこうした問題について、国土保全、自然の保護、緑の資源の保護ということに目を向けて論議をしておられた同僚、先輩のおられたことを私は今想起し、今後、林政審において抜本的な国有林野についての見直しをしていただくとするならば、そうした視点もぜひ加えていただきたいものである、私は真剣にそんな感じを持っております。
  93. 串原義直

    串原委員 これは今後の問題として強く要請をしておきたいというふうに思うわけであります。  そこで、総理に伺うわけでございますが、今大蔵大臣からも答弁願ったのでありますけれども、基本的なことでございますが、二十一世紀は環境問題が世界の課題になる。これは昨日も議論がされました。したがいまして、豊かな緑と水をはぐくむこの森林の保全、育成を抜きにいたしまして環境問題は語り得ないわけでございます。国有林野事業はその根幹をなすものでございます。根本的な対応策をこの際真剣に検討する時期に来ているのではないか、こう思います。総理の所信を伺います。
  94. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 環境問題の角度から申し上げても、御指摘のように緑は極めて大切なものであります。国有林につきましてもさまざまな御意見、御議論を承りながら、私は、それが果たす国土の保全など公益的機能の発揮、木材の安定供給、地域振興等の役割を果たしていくためには、国有林野事業の経営の健全性を確立していくということが基本的に大事な問題である、こう受けとめております。このため、国有林野事業の累積債務対策、要員の適正化を含めた総括的対応策について、現在林政審議会で検討願っているところでございます。
  95. 串原義直

    串原委員 そこで総理、昨日も同僚嶋崎議員も提起をしておりました。つくづく私もそう思うのですけれども、時間は少のうございましたが、今も議論をしてまいりましたように、林野行政は重要である、環境問題を含めて国有林を守る行政は非常に大事である。そこで、これはまさに先ほど私は一言触れておきましたが、山を守るということになると総論は賛成なんですね。ところが、各論になるとなかなか姿勢が、時によると違うような格好になりがちであります。  そこで総理に、あるいは自民党総裁としての海部さんに強く要請するのですけれども、今国会の中で全与野党相協議をいたしまして、山を守るためにどうするべきか、林政審では林政審で協議していてくれますよ、協議してくれます。しかし、我々は政治家という立場、政党という立場における腹を割った話し合いをする中で、どうしていくことがいいだろう、こういう話をすることが非常に重要なときに来ているのではないかと思うのですね。これにはどなたの党も異論はないと思うのですね。そういう話し合いをする機会を持ち得るように、ぜひひとつ配慮をしようではありませんか。いかがでしょう。
  96. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 御自身も山の経営者でいらっしゃる先生からのいろいろ貴重な体験を踏まえての御提言であろうと受けとめさせていただきます。  自由民主党にもそれぞれ山のこと、林業のことを大切に考える議員がたくさんおりますので、私はそういった人々にも指示をしながら、各党間の皆さん方とどのようなところでお話し合いができるのか、党としてもそういったことを私からその道の詳しい担当者に申し伝えたいと思います。
  97. 串原義直

    串原委員 それでは次に、ちょっとゴルフ場問題に触れていきたいと思うのですけれども、ゴルフは今空前のブームのようであります。ゴルフはスポーツだと言われているのですけれども、私はその意味で大いに歓迎をいたします。  ところが、一方ではあれこれという批判もござ います。三月二十四日、二十五日、朝日、毎日等々の新聞によりますと、その資料を読み上げておる時間はありませんけれども、ゴルフ場は三月初め既設で千七百六カ所ぐらいある、造成中は三百二十五くらいある、合わせて二千カ所、さらに計画中のものも含めますとどうも将来、見通し得る限り三千ぐらいできる、こういう報道があります。そしてちょっと心配なのは、数がふえてくればくるほど、これは意見が出てくるのでございましょう。今全国で三百カ所くらいいろいろな反対や御意見の運動が盛り上がっているようであります。それから、三月二十五日に神戸で開催した第三回ゴルフ場問題全国交流集会、これは全国から七百人も集まって討論をされた、こういうのであります。  したがいまして、このゴルフ場問題というのは今や大変な社会問題のように私は思うのですね。政府はこの状態をどのように考えていらっしゃるか、ひとつ御見解を伺いたいのであります。
  98. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 ゴルフ事業というのもサービス産業の一つということでございまして、その意味においては私どもの所管かと思いますけれども、正直今ゴルフ場の開発許可に当たりましては、私もこの間見てみましたら、一番最大関係しますと中央の役所だけでも八つなのですね。それから法律は、一番最大二十四本関係しているところがあるわけです。しかもまた、開発許可に当たっては各部道府県がいろいろおやりをいただいておりますから、これは自治省も関係をしてくる。これは非常にその範囲が広うございまして、とても私どものところだけの手には負えない問題でございます。  しかし、今お話のございましたように、会員権の問題であるとか、きのうも御質問がございましたが、農薬その他のいわゆる自然環境破壊と申しますか、地域住民との摩擦とか、いろいろの問題が起きておることは事実でございますから、私どもも早急にそれぞれ関係しておられる省庁の方々とよく事務的に打ち合わせをいたしまして、これは何らかの一つの方向だけは見出していかないといけない。それはゴルフ場の事業としての健全な運営も図られませんし、同時にまた、地元の方々にも大変御迷惑をおかけをいたしますし、また、会員権などで投機的な動きがあってもいけませんし、それらのいろいろのことをできるだけ早く、うまくいい方向に行くように、そして本当に健全なスポーツとしてゴルフが受け入れられるようなそういうことにしていきたいと考えております。
  99. 串原義直

    串原委員 ただいまゴルフ場の問題について質問いたしましたら、政府の立場で通産大臣から御答弁をいただきました。  実は私、このゴルフ場の問題は、農薬問題がこのところ社会をにぎわすようになりましたが、それ以前から、素人だけれども環境を守る、山を守るということも含めて関心を持っていた者の一人なのでありますが、今国会が始まって直ちに、実は承知の上で通産省を除く建設省、環境庁、国土庁、自治省、農水省、これらの政府委員室の室長さんに御照会をいたしました。実はゴルフ場のことについてちょっと知りたいんだけれども、各県ごとに今できているゴルフ場の数、今つくっている数、造成中と言ってもいいでしょうね、造成中の数、将来どんなふうに希望があるのかという数、お知らせくださいませんか、こう聞いたところが、建設省は、ゴルフ場の問題は私の所管ではありません。言葉遣いは別ですよ、もっと丁寧でした。丁寧だけれども、えらい丁寧なことを言っていると時間がかかりますから率直に言うと、所管じゃありません、わかりません、こう言うんですね。資料ありません、こう言うんです。ああそうか。環境庁にも聞いたらそのとおり。国土庁もそうでした。ただ、自治省さんが数だけはわかりますというふうに持ってきたのがここに私の手元にあります。まあ余り、心もとない数字ですね。この程度の資料かなと思ったものをただお持ちをいただきました。農林省は、ここにありますところの資料を持ってまいりまして、農薬に関する解説を丁寧にこれはいただきました。しかし、新聞報道と数も随分違うわけですね。  つまり言いたいことは、ゴルフ場を私の所管ではありませんと、こういうことで、資料という資料のようなものは明確なものはない。それから、真剣に検討するという姿勢も伝わってこない感じなんですね。国土庁や環境庁さん、これは随分関係があると思うのに、あるいは建設省も関係があると思うのに、こんな程度でいいのかなと思ったのが感慨でございました。  そこで伺うのでございます。今大臣が御答弁いただきました、各省庁に随分とかかわりがございますと。これはそのとおりでしょう。そのとおりだから、それだけに、私の所管ではございませんというので、資料も私のところに出してくるような用意もない、こういうことでございましたが、そこで、ゴルフ場問題というのはこれだけ社会問題になっておりますだけに、関係の省庁が非常に多岐にわたっております。ところが所管の省庁がない。営業という立場から通産大臣は今、私のところでしょうかという意味も含めて御答弁をいただいた。それはそれで結構であります。  しかし、ここまで来れば私は総理に伺いたいのですよ。ここまで来れば、ゴルフ場問題は、国土を守る、環境を守る、あるいは災害防止等の問題もあるでしょう、この問題も含めて、どうしても総合的に検討しなければならぬときに来ている。だから、窓口と言ったらいいのでしょうか、あるいは総合して管理、指導する機関と言ったらいいのでしょうか、こういうようなものを設けて、連絡をし合いつつ万遺漏なきを期した行政を行えるようにすべきときに来ているのじゃないか、私はこう思うのですよ。御所見はいかがでしょう。
  100. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、私どもは、ゴルフ事業というのも一つのサービス産業でございますから、そういう形で私のところではいろいろ研究会を設けまして今検討させております。しかし、先ほど申し上げるように、実際ゴルフ場の開発許可ということになりますと、私ども以外の所管庁が非常に関係をしておられますので、なかなかその辺のところは難しいのでございますが、幸い、きのう、おとといでしたか、農薬の問題も御質問いただきましたので、早速私どもの方が音頭をとらせていただいて関係省庁にお集まりをいただいて、事務的に詰めることにいたしております。これを契機に、ゴルフ場の今後の問題につきましても、何か一元的になるような方向をひとつ努力をして検討させていただきたいと思いますので、少しお時間をいただきたいと思います。
  101. 串原義直

    串原委員 わかりました。つまり、今私はあえて窓口、機関というふうに申し上げましたが、協議会でも結構でしょう、とにかくそういうものをつくって総合的に——いいですか、大臣、つまり、今御答弁をいただきましたが、私はあえて窓口とか機関という言葉を使いましたが、その言葉には私はこだわりませんが、いずれにせよ、一元化した管理、指導が行える組織をつくっていく必要を感じてその方向で進んでいく、こういうことに受けとめてよろしゅうございますか。
  102. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほども答弁申し上げましたように、私どもの方として今事務協議をこれからやってまいりますので、これは農薬の問題を中心として事務協議を始めますけれども、せっかくのお話でございますから、これをもう少し広げて、全体的にいかにこれをうまくお互いに協調して一元的な方向でいけないかということもあわせて検討させていただきます。
  103. 串原義直

    串原委員 時間が迫ってまいりましたけれども、それでは、今お答えをいただきましたことを大いに進めてもらいたいと思います。  そこで、一昨日も取り上げられましたのですけれども、当面、世論の大きな問題になっておりますところの農薬問題にちょっと触れさせていただきますが、ゴルフ場の農薬使用による汚染問題は、現実のところどうなっているのですか。  それから、実は一昨日私はこの質疑を聞いていて、非常に危険な農薬が多数使用されているとの印象を受けたのですよ。ある種の農薬も指定がさ れたような記憶があります。これは大変だなという感じを持ったのでありますが、その辺の実態、あるいは国の登録、検査、こういうものの実態というのはどうなっているのでしょう、お知らせください。
  104. 松山光治

    ○松山政府委員 農薬の使用に伴います危被害の防止、大変重要なことだと考えております。したがいまして、もう二十数年来何か事があれば報告するようにということで、私どもは都道府県を指導しておるところでございますし、関係省庁におきましてもそれぞれの立場での情報の収集にお努めいただいておる、こういう実態にございます。  これまでに私どものところにゴルフ場の農薬の使用と関連いたしました事故として報告のございましたのが、一昨日御報告申し上げました、北海道におきますいささか適切な使用方法からしますと問題のある使用方法のもとで起こりました養殖魚の被害の問題でございます。また、そのほかには三件ほど、消毒をしますときに防毒マスクをつけてやらなかった等で被災したという事例もございます。  公共水域におきます水質調査の面では、ほとんどの地点で農薬が検出されない、検出されたところでもごく微量で、周囲の環境に及ぼす影響という点からすれば懸念するほどのものではないというような状況にあるというふうな話を私ども承っておるところでございます。  登録制度の問題でございますが、農薬取締法に基づきまして厳正なチェックを行って登録した農薬を使っていただくというのが制度の基本でございます。いろんな御心配いただいておる毒性の問題があるわけでございますが、急性毒性、慢性毒性を含め、あるいは発がん性でございますとか催奇形性でございますとか変異原性等々、幾つかの特殊毒性も含めまして大量の試験成績の提出を求め、環境庁が厚生省等の毒性学の専門家の協力を得てお定めいただいております登録保留基準、一定の基準に照らして安全性の確認を行いました上で、人畜なり環境に影響が及ばないような適正な使用方法を定めて農薬登録を行っておる、そういう形で安全性の確保を図っておるというのが現在でございます。  引き続き厳正な登録審査に努めてまいりたい、また適正使用を指導してまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  105. 越智伊平

    越智委員長 これにて串原君の質疑は終了いたしました。  次に、新盛辰雄君。
  106. 新盛辰雄

    ○新盛委員 交通総合政策、いわば地味な問題でもあり、かつ極めて重要な当面の問題としてこれから少し議論をしたいと思います。  モータリゼーションの発達、高速化あるいは快適性などライフスタイルの変化に伴って国民の価値観も多様化してきている現状であります。これまで運政審、運輸政策審議会などあるいは交通警察行政としても安全、環境そしてその保全、これを第一義的に公共交通機関という面から一層の整備をこれまでもしてこられたのでしょうが、さらに継続をしてやっていかなきゃならない。  まず、この原点でございます交通総合政策という全体を網羅したその政策を立てていただくところはどこなんでしょうか。経企庁だと思うのですが、まずお答えいただきたい。
  107. 相沢英之

    ○相沢国務大臣 私は、経済企画庁長官を拝命いたしますと同時に、総合交通対策担当の大臣を命ぜられておりますので、経済企画庁がその総合的な対策を担当するということになっております。
  108. 新盛辰雄

    ○新盛委員 だとすれば、これまで総合交通体系の中長期に対する展望、二十一世紀にかかり合っていく今大事な状況になっているわけですが、どういう対策がございますか。
  109. 相沢英之

    ○相沢国務大臣 御案内のように、交通体系は各種ございますし、またそれが各省各庁にまたがっているということでありますので、それらの交通の体系を総合的に調整を行うということは極めて難しい問題であるわけであります。  そこで、若干過去の経緯を申し上げますと、昭和四十五年に自動車重量税が創設されました際に、早急に総合交通体系の考え方を確立をいたしまして、樹立をして、その考え方に基づいて自動車重量税の配分をするということが一つの契機になりまして、そしてその総合的な交通体系に係る事務の調整を行うために、四十五年の十二月に経済企画庁長官が総合交通対策の担当大臣に任命され、今日に至っているのであります。  そこで、四十六年に臨時総合交通問題閣僚協議会というものが設置をされまして、今日いわゆる四六方針というようなものがそこで取りまとめられたのであります。その四六方針におきましては、長期的展望に立った交通関係諸方策の総合化、体系化、それから受益者負担の原則の確立、それから交通機関の競争と利用者の自由な選択による機関分担、こういうような四六方針というものが決められまして、その後、五十四年におきまして、さらにエネルギー制約の進行を踏まえましての四六方針の見直しが提案され、結局、その際にも、この四六方針の基本的な考え方は現在も妥当だということで確認をされたのでございます。  その後、この四六方針を一つ踏まえまして、六十二年におきまして策定されたいわゆる四全総、第四次全国総合開発計画、それから六十三年五月に策定されました「世界とともに生きる日本」(経済運営五カ年計画)、現在の五カ年計画でございますが、この考え方におきましても、総合交通体系の考え方に基づいて、交通施設の整備に当たっては、各種交通機関の適切な競争と利用者の自由な選択を通じて全体としての効率性、整合性を確保しつつ、多極分散型国土形成に資する高速交通ネットワークの整備を推進することが基本方針、基本的な方向というように定められているわけでございまして、現在、この方針に基づいて各省庁におきまして総合交通体系の整備を促進するという形になっております。
  110. 新盛辰雄

    ○新盛委員 あたかも春の交通安全週間、この四月六日から四月十五日までの間に週間が設けられています。そして、第四次の交通安全基本計画も六十一年からことしまで、こういう計画で陸海空の分野にわたって交通安全対策がそれぞれ立てられている、こういうことなのでございますが、最近の交通事故、渋滞、もうどうにもならない。これを解消するために抜本的な各種の施策をする必要があるのでしょうが、今経企庁から言われるように、縦割り行政というよりは横の各省庁の相互関係を密にしてやらなきゃならない。そうした面で、この交通事故あるいは渋滞の解消に努めなきゃならないのでありますが、それを総称して、現場の関係ですから恐らく警察庁が中心になるのだろうと思いますけれども、最近のこうした総合交通の中における交通体系上からくる事故、いわゆる人身事故も含めて道路の事故もございましょう。あるいは空での事故もございます、最近は減少しておるようですが。また、海運における事故もあるわけでありますが、こうした全体的なとらえ方をして見る場合もございますけれども、とりわけ陸上のこの交通事故、最近の事故に対して、ここ近年でいいですから、なぜ第二次交通戦争と言われるのか、何がそういうことになったのか、その原因を含めて件数も明らかにしていただきたい。
  111. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 ただいま新盛委員が申されました交通安全の対策の総合的な責任は総務庁にありまして、私が交通安全対策本部長を務めているところでございます。  ただいまお話しのように、平成元年には十五年ぶりで一万一千八十六人という高い数字の交通事故死者が出たわけでございます。非常事態宣言をいたしまして、非常事態宣言に対応するところの交通安全運動を推進中であることは、もう御案内のとおりでございますが、今年になりましてもなかなか予断を許さない、二%ぐらいの減少の数字が見えるわけでございますので、なおなお交通安全対策を総合的に進めてまいりたい、こんなふうに思っているところでございますが、さしあたっては、春の運動週間を今行っていることにあらわれておりますように、まず第一は、高齢者の交通安全対策、第二は、若者を中心といたしました二 輪車の事故防止対策、さらにまた、そのような抜本的な対策を講ずるための交通安全対策に関する懇談会を私どもは招集いたしまして、抜本的な対策についてもこれからさらにまたまた論議をしていこう、こんなふうに考えているところでございます。まだまだ油断ができない状態でございます。  渋滞対策につきましても、警察庁が今車庫証明あるいはその他を通じていろいろ取り締まりの強化をして都市交通の渋滞、それからくるところの事故を防止する現場的な取り締まりを強化して、またそれから一つの方策を見出そうとしているところでございます。     〔委員長退席原田(昇)委員長代理着席〕
  112. 新盛辰雄

    ○新盛委員 昨年の交通事故死傷者をはるかにもう上回っているという最近の状況にございます。既に今次の事態まで一万一千人を超えているわけですから、これから年度いっぱいに至るまでどういう結果になるのかと憂慮すべき事態であります。確かに、非常事態宣言を出されてこの激増する事故についてあらゆる手を打っておられるわけでしょうが、一番この事故の原因は何か。この原因は、確かに高齢者対策だとか若者の二輪車の対策だとか言っておられますけれども、現実的に今発生している事故、これにはいろいろな要素が私はあると思いますね。ゆとり、豊かさ、あるいはすぐ物が買える。  実は、これは話題になっているのですが、「オプション」という雑誌がありますよ。四百円ですよ、これ。随分自動車のメカについて、若い者たちが飛びつくような内容であることは事実ですね。ただ、この中に、これは何かテレビでも出たのだそうですが、「’90年度版日本全国ゴマメ絵巻」「それぞれのゴ・マ・メ模・様」、実はこれは中を見ますと、まあ十九歳か二十ぐらいの青年でしょうが、二百万、三百万は言うに及ばず、四、五百万円の自動車をどうして買えるのかわかりませんが、買って、これがぶち当たる。新車でこうして事故を起こしてそれを写真に載っけて、そしてこれが何か誇りに感ずるのかどうかわかりません。これはオプションという賞がもらえるのだそうですね。こんなのを、突き当たったり、人身事故になったのもあるのかどうかわかりませんが、衝突の現場を写真に写してこうして出して、いかにもそのことが誇りに感ぜられる。書いてある内容からいいましても、生命ということに対する人間の尊厳をも、これは極めて我々も、どう考えているのかなと不思議に思うような状況ですよ。これは総理、ちょっと見てください。いいですね。
  113. 原田昇左右

    原田(昇)委員長代理 はい。
  114. 新盛辰雄

    ○新盛委員 こういう状況でございまして、思いどおりに車を動かせる、走る凶器ですよね。これは若者にとってはおもちゃだ。  そういうようなことで、今も暴走族の取り締まりに苦慮されているようでございますが、こういういわゆる人に見せつけるとか、何かに報道機関を通して出すとかという、そのいわゆるモラルですね。こうしたことに対しても裏側の指導というのは必要だと私は思うのですよ。  警察庁あたりも、こうした問題についてどういう取り締まりをしているのか。また、この春の交通安全週間だというのだけれども、現実に第二次交通戦争とまで言われているのに、何らの、みんながよくわかるような状況にない。後ほど駐車場問題に触れますけれども、こうしたことについて、総合交通政策はただ基本計画だ。実際にこれが発生する原因、その要素、今その「オプション」の内容もそうでございますが、こうしたことに対してどういう御感想なんですか。総理、総理の方からもひとつ総括的にお答えいただきたいと思うのです。
  115. 奥田敬和

    ○奥田国務大臣 確かに今御提示されたように、一万一千人を突破するというような大変な事態になっております。御指摘されたように事故の原因についてはいろいろあるかと思いますけれども、特にスピードなり違法駐車なり、現場で立ち会う警察庁としては、本当に今日の違法駐車問題一つとってみても、まさに大都市は窒息状況にありますし、もう放置しがたい状況にまで参っておることは、御存じのとおりでございます。特に、かといって自動車はもう生活の大変な不可欠な手段になっておることでございますから、今後とも、各省庁にわたることでありますけれども、インフラ整備もさることながら、公共の施設、駐車場の公営問題等々の多岐にわたるわけでありますけれども、何といっても基本は車を持つドライバーの一つのモラルもございますし、こういった形で徹底的に今法改正を含めて車社会の新しい秩序をいかにつくるかという形で検討を進めて、先生方に道交法の改正等々で御審議をお願いしようという段階でございます。
  116. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 交通安全が非常に重要であるということは、事故死の方の数が一万名を超えたということを見ましても、一万名といえば一つの町村を形成できる人口でありまして、私はそのことを思いながら心を痛めて御質疑を聞いておったところでございます。また、今この御本を見せていただいて、これは初めて私も拝見しましたけれども、こういう角度で取り上げていくのもいかがなものかな。これはやはりそういったことを起こさないように、どのようにして予防措置をとるなり善導するなりしていかなければならぬ角度の問題ではなかろうか。  交通安全対策については、去年も閣議で担当の総務庁からは非常事態宣言まで出して各界の皆さんにお訴えをし、閣僚全員がそれを了承したわけでありますけれども、今後とも心を引き締めて対応していかなければならぬ大きな問題である、このように受けとめさせていただきます。
  117. 新盛辰雄

    ○新盛委員 担当事務局にお尋ねしますが、今自動車保有台数は何台ですか。その中に軽自動車は何台ですか。それと、この一億二千万人口のいわゆる免許取得者は何名ですか。
  118. 早川章

    ○早川政府委員 お答えいたします。  まず、全体の自動車保有車両数でございますが、この六十三年度末、ちょっと数字が古うございますが、五千五百十四万台、そのうちに軽の貨物自動車が千百九十四万台、軽の乗用車が百七十四万台でございます。
  119. 関根謙一

    ○関根政府委員 運転免許取得者数についてお尋ねでございますが、平成元年末で五千九百十二万人でございます。
  120. 新盛辰雄

    ○新盛委員 今度、九日に公表されました車庫法、自動車保管場所法あるいは道交法の一部改正をやらなきゃならぬと警察庁が、これは自民党の交通部会に御発表になったんだそうですけれども、我々野党だから知らせもないわけでしょうが、こういうことを新聞で知ることしかないわけですね。今のこの国会運営の中でも、これはやはり公表する場所を明確に、与野党ともに重要な関心を持っているわけですから、次の特別国会にというのじゃなくて、今度の国会に成案を得て出したいとおっしゃっているんだそうですが、以下、この内容について少し聞いておきたいと思います。  車庫法は、昭和三十七年、当時自動車が百万台という状況のときから以降今日まで改正されないできているわけですね。そして今示されましたように、自動車五千五百万台を迎えている。それから五千万台ふえたわけですね。そして、そのうちの四分の一が軽自動車千五百万台、異常なふえ方ですし、またドライバーも、今お示しになったように五千九百十二万、まさに国民の二人に一人は免許を持っているという交通社会になったわけですね。まさにモータリゼーションの時代、これは豊かさが証明するわけですから結構なことでしょう。しかし、道路事情は依然として厳しい。道路五カ年計画その他今日まで社会資本の蓄積あるいは公共投資という面でも相当御努力は見られますけれども、もはや今日、こういう自動車がたくさんふえてきて道路は狭隘である。いかに立派な交通施設、信号あるいは公共輸送機関との関係を見て対策をお立てになっても、もはや限界だろうと思います。  これからそうしたことについて、しかも道路にはいっぱい駐車違反、これは当たり前だという。とめない方がばかだ。車はまたとめなければ、自 分のうちから会社に出てきて道路にとめなければならないような今状況ですね。しかも、車庫をつくりたいといいましても、都市周辺は特にそうであります、土地がこんなにも暴騰してきて車庫どころじゃない。しかも、これはメーカーやディーラーの側で、特に販売のルートでは、車庫証明は行政書士がやる、主たる任務があるにもかかわらず、やみでこうしたいわゆる代行事務をやっている。しかも自動車工業会は、車庫証明書を出す際に、おれたちにもやれといって一っとき両者が、行政書士側と自動車工業会が大げんかをやってきた経緯がありますね、交通局長は御存じだと思います。こういう状況になっておりますから、特にディーラーなどの方から見ますと、これは不正取得というのですか飛び抜けというか、一時的に便宜的に、あなたの車庫をここに設置してございます、だから自動車をお買いなさいと、自動車を売る方が大切ですから。私は自動車を売ることによって生産性が上がっているということもよく承知しておりますけれども、余りにも簡便過ぎる。警察庁の方でも、これは厄介なことだと思っていらっしゃるだろうと思いますね。こういう状況の中に、両者相まっていろいろ問題が出てくると思うのです。  今度のいわゆる車庫法、道交法の一部改正の視点はどこにあるのか、それを明確にひとつお示しいただきたい。
  121. 関根謙一

    ○関根政府委員 現在警察庁で検討中の法律案でございます道路交通法の一部改正と自動車の保管場所の確保等に関する法律の改正におきまして、主として私どもがねらいとしております点、これは全くのまだ内部的な検討事項でございますが、その点について御説明を申し上げます。  現在の都市機能を麻痺させかねないような違法駐車の実態にかんがみまして、都市機能の回復を図るべく緊急に必要とする措置といたしまして、今回、駐車問題についての責任の帰属の問題、それから保管場所法につきましては、脱法行為がしにくいようなシステムの構築の問題等について険討しているところでございます。
  122. 新盛辰雄

    ○新盛委員 いずれ法案が提出されるでしょうから、その際に論議をすることになりましょう。特に、これを利用する側、自動車を放置されて困る側、そしてまた、それを売る側、これはいろいろ三者三様ですね。また、取り締まる側の総括的な立場の面から総合的に検討する必要があると思います。特に車社会の中で、これは建設省を初めとして、その任に当たる箇所で、この公共的な車庫、これの設営がこれから必要になってくるのじゃないかと思うのですが、その点をひとつお聞かせください。
  123. 関根謙一

    ○関根政府委員 警察庁の所管行政たる交通の安全と円滑という観点から見まして、御指摘のような視点が必要であると考えております。
  124. 新盛辰雄

    ○新盛委員 軽自動車千五百万台にも確固とした車庫証明書がなければ駐車違反でひっくくる。ある意味では、今度はこれは車庫証明を受けましたというステッカーを全部張るんだそうですね。だから明確になってくるわけですから、車庫を持たない人は一体どうなるか、持たない人が多いのですから。恐らく六〇%は車庫を持ってないんじゃないですか。そういう中で車庫を公共的に設営する、この日本の今の国土の狭い中で、それも難しい話だけれども、それぐらいのことは団地形成の中においても考えてしかるべきじゃないか。これは行政だと思うのですがね。この点はどうですかと聞いているわけです。
  125. 関根謙一

    ○関根政府委員 現在、団地等でお住まいの方で、その団地に駐車施設がないという場合に、自動車は持っているが車庫はお持ちでないという方がおられるということは、私どもも承知しておりますが、その方々につきまして、今回私どもが考えておりますシステムを適用するという際におきましては、スムーズに秩序維持の状態に移行できるように工夫をしてまいりたいと考えております。
  126. 新盛辰雄

    ○新盛委員 あなたのそれは答えになっておらぬですよ。こちらが聞いているのはそんなことじゃない。いわゆる行政として、これからこうして厳しく取り締まりをするというのですから、五千五百万台の車を全部車庫がなければ走っちゃならないということになるのですよ。大変な規制ですよ。しかも、使用者あるいはレンタカーでも持っておられる企業の方、責任はそこまで及んでいくのですね。これは、今度の改正は特にそれがねらいですよ。所有者、運行者、管理者、行政制裁金、課徴金、従来の駐車違反の一万から一万二千円くらいの二倍か三倍かとおっしゃっているのですからね。そうなると、車庫を持たなきゃ車は走れないのですよね。だから、行政の面で、こういういわゆる集団的な車庫とか、そういうものを考えていかなければ、売る側の方は、それは新車ができたからすぐ買いなさい買いなさいと宣伝をするわけです。それは当然でしょう、営業活動ですから。それを阻害するような形になりはしまいか。これは両方相反する問題ですよ。  そこで、その問題が出てきますと、どうしても、これまで議論がされてきました公共交通大量輸送機関なのか私的輸送手段なのか、いわゆるどちらを選ぶのか。結局、国民のニーズからいえば、今公共交通大量輸送機関を確保してほしい、これが主力であって、豊かさの中における私的交通手段というのがあっても、ある程度社会的な規制を受けてもいいじゃないかというのがいろいろ議論されてきているのですね。これは一体どちらを優先されるのか。そして、では車庫を公共的につくるのかつくらないのか、こうした問題に発展するから聞いているのです。どうですか。
  127. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 新盛委員、大変根本的な問題を持ち出されております。私どもは、今のような問題、今も自治大臣とも御相談申し上げておりましたが、交通安全対策に関する懇談会で、ひとつ根本的に議論もしてみなければならない大事な問題だと思います。 今もお話がありましたように、国民は確かに公共的な大量輸送機関の整備も希望しておりますけれども、同時に、私的な自動車等の輸送機関を車社会の中で希望もしております。そしてまた商店街などは、何としても駐車場をつくってくれというような要望を市町村に出し、あるいは国にも補助の形でも出してくれないか、こんなような要望もあることを考えますと、さらにまた、新盛委員のお話のように、違法駐車を厳格に取り締まっていくんだというようなことになりますれば、その反面、車庫の問題といいますか駐車場の問題をどのように国がバックアップしていくかというような問題、これはもう一つ深く研究させていただきたいと思います。
  128. 新盛辰雄

    ○新盛委員 こういう交通渋滞を来す、あるいは言ってみれば、これからの国民生活にも大変に影響のあるという状況の中にございますので、私的輸送機関をその手段としてやっておられる方々には極めて問題になるんでしょうが、ノー・マイカー・デー、前からも議論されていたことですけれども、こういう設定などはできないものかどうか。ある時期、ある日、私的交通手段は自動車に関する限り、あるいは船を持っていて、あるいはヘリコプターを持っていてという方もいらっしゃるかもしれませんが、ひとつ交通渋滞を抑制するという意味でノー・マイカー・デー、そういうものはできないかどうか。これは総理、どうでしょうかね。担当の方と、また総理の御見解をいただきたい。
  129. 奥田敬和

    ○奥田国務大臣 委員指摘のように、今警察庁の方で検討している形の問題は、もう都市機能が麻痺寸前の状態に来ておるという実態を踏まえて、少し衝撃的な法律になるかもしれませんけれども、非常に関係各省多岐にわたる法案でございますので、これは今御指摘されたような問題点も確かに存します。車庫づくり一つにしても、建築基準法の問題もございます。しかしながら、車を持っておるマイカー族の人も、車を買われたときには当然車庫をお持ちになってもらわなければ困るという形は、法的には整備されておるわけでございますけれども、現実には、今言われたように、違法覚悟で車を売る、しかし車庫を持たな い、そういった方たちがふえて、今日の状態に至っていることも現実でございます。  ですから、原点に返って、新しい車社会構築のためには、やはりインフラの整備もあるし、今御指摘の公営駐車場の問題もあるでしょうし、いろいろな形が並行して進んでいかなければならぬという問題点もよく認識をしております。したがって、激変緩和と申しますか、一つの方向を示すと同時に、これに対してどういう対応をしたらいいかということを、先生方のお知恵を絞っていただいて、そして何とか現状をいかに改善していくかということをひとつ皆さんと一緒に検討させていただきたい。そして、これからの新しい車社会はいかにあるべきかという問題点を提起して、この問題点解消に向かって努力したいということでございますので、御了解賜りたいと思っております。
  130. 新盛辰雄

    ○新盛委員 この問題、ちょっとまだ残っているのがたくさんございますので、また一般質問の際でもやりたいと思いますが、今ここで明確にしておきたいのは、こちらからも声が出ておりますが、私は、総合交通政策を申し上げたのは、近時大変モータリゼーションが発達しておりますし、もう論理的に見ましても、今日のこうした交通状況というのは、もはや我々がかつて十年、二十年前に想像できなかった状態になっているのですよ。  だからこの際、そのときにつくられたあの道交法などは、もう抜本的に改正する必要があると思います。そして私ども、昨年は貨物自動車を道交法から抜き出しましたね。貨物自動車運送事業法、こうして抜き出して、物流に対応するデレギュレーション、いわゆる規制緩和に対しての一つの方法も考えたわけですね。では今度は道交法のこうして今日の渋滞、しかも車社会である、しかもこれだけ莫大にふえつつあるという状況の中では、もう昔の道交法でぶら下がっておったってどうにもならないと思いますよ。だからこの際、ぜひ新たに発想の転換といいますか、先ほど経企長官が言っているように、総合的交通政策の視点に立って物事を判断をしてほしい、このことを申し上げておきたいのですが、決意を聞かしてください。どうですか、大臣。
  131. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 ただいまの新盛委員の仰せられた総合的な観点から、根本的にひとつ検討をしていきたいと思います。
  132. 新盛辰雄

    ○新盛委員 次に、新幹線の問題で申し上げておきますが、もはやこの基本的な考え方は申すに及ばずでございます。  私どもは、新幹線時代、二十一世紀にわたって、リニアモーターカーとかございますけれども、第一世代を東海、山陽、第二世代を東北、上越、第三世代が今の整備新幹線、また新幹線総合計画はまだまだ遠い二十一世紀の段階だろう、こう思うのでありますけれども、こうしたことを踏まえていろいろとこれまで関係各地における御活動がございました。私は、この問題は国家的なプロジェクトとして、しかも今一番大事なネットワーク、日本の高速交通、特に今の社会資本の云々の問題もございますが、こうした面では新幹線はまだまだ古い時代をということではないと思うのですね。リニアモーターカーは特殊な問題として今日話題にはなっておりますが、新幹線は今まさに途上にある、そう理解をいたしております。  大蔵省のある某が昭和の三大ばかなどと言って冷やかしたという話を聞いておりますけれども、しかしこういう新幹線の問題で、位置づけとして確認しておきますが、国家的なプロジェクトとして位置づけされるものかどうか。第二番目、多極分散型国土の構築に必要である、どう見ているのかということをお聞きしたい。第三に、既設新幹線は地元負担がない、いわゆる国の政策として行われたものであります。今日の第三世代と言われる整備新幹線は、取り扱いはそうなっていません。ここに大変苦労のあったところだと理解をします。しかし、今内需拡大と言われているさなかでございまして、この新幹線をこれから精力的に推し進めていくという基本的な原則について、これは内閣総理大臣、お答えいただきたいと思います。
  133. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 御議論になっております新幹線の問題は、国土の均衡ある発展と地域の開発振興に大きな役割を果たすものと受けとめております。したがいまして、今後とも、昨年決定いたしました基本的スキームに従って着実に整備を行っていく所存であります。
  134. 新盛辰雄

    ○新盛委員 そこで、基本的なことについては総理も心構えとして持っておられるようでありますが、この中で、今度皆さん方、というのは政府・与党の間で申し合わせ事項として結論が出されました。それは各地域の綱引きがあったからだと聞いておりますが、昨年整備新幹線保有機構あるいは鉄道建設公団などの一部改正で、財源の問題について一応裏打ちをする形で法案の成立を見たわけでありますが、昨年と今回と、いわゆる高崎—軽井沢間は本格着工、そしてあと残り三線区は去年から難工事を進めていく。さらに加えて、今回の予算で見ますと、新たに三線区が技術調査をするということで資金計画が出されております。この経過と、将来一体どうなるのか。特に、今本格着工しております区間は高崎ルートでありますが、これは当然地元としても、経済的その他、国費でもってやるわけですから地元負担ないのですから、そう問題はないのでしょうが、これから後の難工事区間を含めるところは一体どうなっていくのか、まずそこのところから聞かしていただきたい。
  135. 大野明

    ○大野国務大臣 お答えいたします。  これらの区間の本格着工については、整備新幹線の建設申し合わせに従いまして、着工の優先順位、あるいはまた並行して走っております在来線の問題、あるいは財源等を考えた上で、今先生おっしゃるように進めてまいりたい、こう思っております。
  136. 新盛辰雄

    ○新盛委員 大臣、そういうのはもう形式論なのですよ。もう今作業続けているのでしょう。応援している自民党の方だって、これは地域エゴで言っているのじゃないのですから、日本の国土開発のために、これは私も九州新幹線早期着工論で一生懸命これまでやってきたのだけれども、一向に言うことを聞いてくれない。今ようやく八代—西鹿児島間、難工事という区間を設けましてやっているのですが、これは鹿児島から、そして今博多から山陽、東海道、そして東北は盛岡まで、いわゆる日本列島のバックボーンとして一本線が通っていく。今度は盛岡から先の青森まで一向に進まない。また海底隧道はできた、これはちゃんと広軌でできている。その次の札幌まで通らない。しかし横に、どういうわけか政治的に動くのかどうかわかりませんが、上越線ができた。これは確かに地域開発のために大変な今経済的な効果も上げていらっしゃると聞いていますよ。だから各地域地域は必死な状況にあるのです。だから、こうした面で優先順位をつける、いやそれをしたら大変なことになる、大変なことになるどころじゃなくて、金がないのだからここのところはひとつ辛抱せいや、こういう意見等があったわけですね。だから、ここは地域エゴを言っているのじゃなくて、日本の国土形成の中におけるいわゆる高速の交通幹線輸送体制というものをつくるという必要から申し上げているわけです。  そこで、今回の財政的な措置はどうも隔靴掻痒といいますか、一向に先に届かない、また先が見えない。しかも、今回申し合わせ事項の中で、内容を見ますと、当時、昭和六十三年のあれで決められたわけですが、自民党政府の間においてお取り決めになって、その際に確認されている事項、さらには平成元年一月十七日、申し合わされてから資金計画がついたわけです。そこで、五年後は見直しますよ、こういう文言が六十三年八月三十一日の中には入っていますね。これは「経済社会情勢の変化等を考慮して、五年後に見直す」、もうあと三年後ですよ。経済的な状況においては今日の日米構造協議という問題もあって、私どもは非常に期待をしております。その問題はちょっと 後に触れますが、今そうした中における現実の予算措置として、これは来年度、平成三年度は一体どういう進展になるのか、財政当局としてはどういうお考えを持っていらっしゃるのか、そこのところを聞かしてください。
  137. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今平成二年度の予算を御審議をいただく中におきまして平成三年度と言われましても、これは今申し上げようのないことであります。  ただ、私どもとしては、整備新幹線の建設につきましては、六十三年八月に確かに政府・与党の申し合わせによりまして、着工優先順位を決定をいたしました。同時に、平成元年一月の政府・与党申し合わせによりまして、北陸新幹線高崎—軽井沢間の本格着工とその財源等が決定をされたわけであります。そこで、それを受けまして、平成二年度予算におきましては、これらの政府・与党申し合わせを踏まえまして、北陸新幹線の高崎—軽井沢間の整備を引き続き推進するということにいたしまして、新幹線鉄道整備事業資金の無利子貸付金七十一億円、事業費百九十億円などを計上いたしました。しかし同時に、高崎—軽井沢間以外の区間の着工につきましては、平成元年一月の政府・与党申し合わせの中におきまして、「新たな区間等に引き続き着工する場合は、当該区間の並行在来線の取扱い、建設費、収支採算性等に関し、具体的な結論を得たのち、これを行うものとする。」とされておりまして、私どもとしては、今後この申し合わせに沿って適切に対処していきたいと考えております。
  138. 新盛辰雄

    ○新盛委員 確かに来年度の話を言えば鬼が笑うわけですから、今年度の分についてはよくわかりました。しかし、ここでぜひとも確認しておきたいことがあるのですよ。  それで余り自前の問題もなんですが、この社会資本の整備の必要性というのは、これはきのう配っていただきました日米構造協議の中間報告の中においても議論されたやに聞いておるわけでありますが、この中にございます都市交通云々というのが入っている文言がございますけれども、確かにアメリカ側が求めているこの構造協議の範疇の中に、我々は、新幹線というのも理解をされているのじゃないか。いわゆる社会投資、公共投資、いわゆる社会資本という蓄積の中では当然なことでございまして、そういう面ではどう理解していますか。特にまた、これを今回はいいチャンスだと私は思うのですが、来年度のシーリングに入れられることは当然ではないか、どうでしょうか。
  139. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 大変お答えしにくい、また今の時期においてお答えすることが適切であるかどうか、非常にためらう御指摘でありますが、私は、余りここで御議論をなさらない方がいいのではないか、こう思います。
  140. 新盛辰雄

    ○新盛委員 非常に苦しい御答弁で、意のあるところは十分踏まえましょう。  しかし、これは期待をしますよ。これは一番問題の国家的プロジェクトである、多極分散の、これが地域開発に貢献をするであろうと総理はさっきおっしゃったんですから、国益につながれば当然ここにこれは内需の拡大を含めて出てくる答えだ、私どもはそう思うのですよ。今外野席から応援が来るのは、これはみんなそう思っているのですね。だからこの際、それこそ新幹線全体の、私は、これは希望されておられる方々の一番大事なところでございますから、ぜひひとつ我々の気持ちをそのまま政治の場面で解決していただくように要望しておきます。  そして、もう一つ言わしてください。  さらに、このことで優先順位がどうのこうのということは、私はここでは議論しません。同時着工がどうだああだということで、それが問題になって今日まで来ているわけでしょう。だがしかし、今鹿児島頑張れとおっしゃっていたんだけれども、同時着工というのは当然日本のバックボーンをつくるということの意味をも含めて言っているわけですから。青森もそうです。そしてまた高崎、今度は軽井沢から長野へ、今度はオリンピックがあるからそっちが先だとか、そんな話をしておったんではこれはだめなんですよ。だから、国家的なプロジェクトだというその一点をとらえて、今度の中間報告等もございますので、ぜひともここのところは強く言っておきますので、御回答ください。  あとは総理のお答えをいただきたい。
  141. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は適切ではないと申し上げましたけれども、そこまでおっしゃられますと、言わないでいいことをお答えをしなければならなくなります。  と申しますのは、整備新幹線の建設費につきまして、現在高崎—軽井沢間の工事が進捗しておるわけでありますが、この建設費のJR、国、地域の負担割合あるいは財源というものは、委員が御承知のような配分で決めております。その理由というものは、国鉄改革の趣旨また行財政改革の趣旨などに配慮しながら、同時に従来の民間鉄道に対する助成、民間企業に対する他の公的助成とのバランスを考慮しながら、適正なJR負担、また受益の発生する地域の適切な地方負担等を踏まえて決定をいたしてまいりました。これが公共投資計画の中の範囲に入る入らないの問題とは別に、民間鉄道に対する助成等、あるいは他の民間企業に対する公的助成とのバランス等を考えましても、この水準というものについて限界があるということは御理解をいただかなければなりません。  こうしたことを踏まえながら、まあこの程度に御論議をとどめていただくことの方がお互いに望ましいのではなかろうかと率直に思います。
  142. 新盛辰雄

    ○新盛委員 苦しい胸のうちは財政当局だからわかりますよ。しかし、やっぱりかぎをあげるのは、何といってもこれは社会資本の整備という視点に立てば、当然今度の構造協議の中においても内容的に明らかにされていることですから、それを思い合わせて今後とも御努力をいただきたい。今回の平成二年度の予算の内容においては、それもやはり努力の跡を評価しますよ。しかし、問題は今度が正念場だ、ちょうどいい時期に来ている、私はそう思います。それは大蔵とすればそうでしょう。橋本さん、そんな頭振らぬでいいんだよ、なるようになるのだから。総理、お答えくださいよ。これはあなた答えなければだめだ。
  143. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 整備新幹線は、国土の均衡ある発展と地域の開発振興に大きな役割を果たすものと認識をしておりますので、今後とも、昨年決定した基本的スキームに従って着実に整備を行っていきたいという所存でございます。
  144. 新盛辰雄

    ○新盛委員 これは答弁になっておりませんから、また後日、日を改めます。午前中はこれで終わります。
  145. 原田昇左右

    原田(昇)委員長代理 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時一分休憩      ────◇─────     午後一時開議
  146. 越智伊平

    越智委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。新盛辰雄君。
  147. 新盛辰雄

    ○新盛委員 どうも設問している内容がたくさんあるものですから、また二十日に一般質問があるそうですけれども、その際残余の問題等については質問をいたします。特に橋本大蔵大臣、新幹線の問題になると頭を抱えるので、これは武士の情けじゃありませんが、少し間を置いて、また次回やらしていただきます。  続いて、趣旨をがらりと変えまして、水産関係、特に水産政策問題についてこれから所見をお聞かせをいただきたいと思います。  最近の漁業界、特に水産物を初めとして大変な状況であることは論をまちませんね。総理、実はあなたの施政方針演説をお聞かせをいただいたのであります。その三月二日の施政方針演説であなたが言われた中に、記憶を新たにしてほしいと思いますが、水産の水という言葉、漁業の漁という言葉、幾ら文言として言われましたか。
  148. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 ちょっと冒頭に、御質問の意味がよくあれですけれども、農林水産業というのについては、私は非常に重要なものだと認識し ておりますし、特に水産業界の現状が、二百海里体制の定着等に伴う国際規則の一層の強化、我が国周辺における資源状況の悪化など厳しい状況にある、こう認識しており、安定的な供給を図っていくためにも、つくり育てる漁業の推進などを通じた我が国周辺水域における漁業の振興、国際漁業情勢への的確な対応等に努めていきたい、こういう気持ちを申し述べたところでございます。  それから、ちょっと済みません。委員長委員にお許しをいただいて、午前中、串原委員に対する答弁のことでございますけれども、私は、桑田選手に対する制裁について、野球協約第百八十条、賭博行為に該当する行為があったことによるかのようにお答えをいたしましたが、コミッショナーにおいてもそのような事実は否定されており、事実に反するものでありましたので、ここにおわびして訂正をさしていただきます。
  149. 保利耕輔

    ○保利国務大臣 ちょっとお時間をちょうだいします。  桑田問題に対します私の発言冒頭部分で、記憶が定かではありませんが、総理のお答えになったとおりでありますがという発言があったように思います。その部分は、誤解を生ずる可能性がありますので、大変恐縮でございますが、謹んで削除をお願いを申し上げたいと存じます。よろしくお願いいたします。
  150. 新盛辰雄

    ○新盛委員 先ほどの総理に対する水とか漁というのが何かという、非常に不明だったとおっしゃるのですが、それほどおわかりにならないほど軽視されているという、いわゆる長い施政方針演説の中に四文字しかないのですよ。いわゆる農業の方は、米の問題、ウルグアイ・ラウンドあるいはガットその他でいろいろ議論はございまして、いつも関心を持って農林水産の諸問題ということでおっしゃいますが、水産業あるいは漁業振興、こうした問題についての文言に触れられているのは四文字しかないというほど余り関心を持っていらっしゃらない——いやいや、私持っているんだから、記録を。  それで、そういう状況の中で、この水産業振興というのはどういうとらえ方をしていらっしゃるのか。今遠洋漁業は御承知のとおり二百海里。昭和五十二年の四月、私は本会議で、漁業専管水域の、日本が初めて二百海里を設定をした際に代表質問をいたしましたから、記憶を新たにしております。その今の漁業が、もはや遠洋漁業も撤退をせざるを得ない。日本の動物性たんぱく質を補給する大事な漁業、これが沖合漁業から沿岸へとだんだん振り戻されてきております。しかし、それはそれとして、大変今日の漁業環境が悪化しているということは事実なんですね。そうした面に加えて、急増する輸入水産物、これはもう大変なものでございまして、もはや日本は世界最大の水産市場の場となっていると言われています。だから、こうした状況を踏まえまして、毎日総理も魚は食べておられると思いますね、それだけに魚のことは、日本が伝統的に食文化の中に位置づけておるわけでございますから、この問題のいわゆる基本的な考え方を先ほどお聞きしたわけです。  総理は、我が国の国民経済社会の中でこうした水産漁業をどう位置づけているか、そして将来この水産漁業振興をどういう角度から進展をされていこうと考えていらっしゃるのか。  また、この水産業振興費はわずか五百四十億四千五百万円、大蔵大臣はすぐ渋い顔をされるかしれませんが、去年よりは八億六千万低くなっています。しかも、我が国農林水産関係予算三兆円前後の中の十分の一、三千億、これが水産業の公共、非公共にわたる予算の内容です。年々下がっています。こういう状況ですから、水産振興のことについてどうお考えになっていらっしゃるか、それをお聞きしたんです。ただ形式的な質問じゃないんですね。もっと深い意味で言っているわけですから、総理の御見解並びに農林水産大臣の御見解をいただきたい。
  151. 山本貞一

    山本国務大臣 お答えいたします。  もう今お触れのとおり、この二百海里の当時、代表質問なすった先生でございますが、私は山育ちでございまして、海のことは非常に実は不得手でございます。しかし、農林水産大臣になりまして以来、もう水産庁の皆さんが心配なさいまして、ほかの方の三倍も水産問題についてレクをしてくださる。けさも七時からレクをしてくださる。にわか勉強で恐縮でございますが、不敏な点はひとつお許しをいただくといたしまして、一生懸命答弁をさせていただきたい、こう思っております。  まず、水産業を取り巻く現状の認識でございますが、これはお話しのとおりでございまして、二百海里体制が定着をしてきた、さらに公海の漁場においての漁業規制の動きが非常に強まっている、ソビエトもアメリカもカナダもみんなそうでございます。また、我が国周辺水域の資源の状態がだんだん悪くなっている、とり過ぎたということもあったと思います。それから、それに基づいて漁業の就業人口というのが、四面海に囲まれた我が日本でございますけれども、その漁業がだんだんだんだん数が減ってきた、魚をとる人が減ってきた。漁村の活力の低下ということでございまして、その限りでは非常に厳しい状態に今我が国の水産業がある、こういう状況だという認識を持っております。  それから、水産業の振興でございますが、細かい施策あるいは予算などにつきましては後ほど水産庁長官から申し上げさせていただきたいと思っておりますが、私はこの二百海里水域、昔から言われておりますけれども日本の近海というのは世界の三大漁場の一つだと、これは私どもでも聞かされておったことでございます。また、四面海でございますから、その二百海里水域の総面積というのは世界の第七位だと、こういう数字もここに持っておるわけでございます。こういうことは、基礎的な条件として他国に比べて決して悪いどころかいいんだ、こういう認識でございます。しかも魚を食べる。日本民族はお米と魚を食べて今日あるというふうにも認識をしておりまして、これを国民に安定的に供給して、しかも地域の経済は支えていかなくちゃならない、その意味での重要な産業だというふうに認識をしております。  そこで幾つかの柱がございまして、一つは、我が国周辺水域における漁業の振興と活力ある漁村の建設、二つは、漁協の経営基盤の強化、そして水産物の需給安定、三つは今お話しの国際漁業、これも非常に難しく日々なっておりますけれども、この国際漁業の将来に対して的確な見通しを持って、この国際漁業の再編成等を柱とした基本方針を打ち立てて、そして所要の施策を講じていきたいというふうなことでございます。  なお、予算その他につきまして、水産庁長官から補足的にお話をさせていただきます。
  152. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 ただいま御質問のございました水産関係予算でございますが、ただいま大臣から申し上げました基本方針に沿いまして水産業施策を進めていくため、かねてから所要の予算確保に努めておるわけでございます。  ただいま御審議をいただいております平成二年度の一般会計予算におきましても、関係予算額、総額で三千三百四十五億円、前年対比で、わずかではございますが、一〇〇・五%に相当する予算を計上しているところでございまして、今後とも所要の施策推進のために必要な予算確保に努力してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  153. 新盛辰雄

    ○新盛委員 総理の施政方針演説の中でも地球環境の保全について触れられておりますね。そして、総理がおっしゃっておりますように、オゾン層の破壊あるいは酸性雨の問題、世界じゅうが協力していかなきゃならない、こういうことも言われましたし、また、四月六日我が党の山口書記長の方からも厳しい指摘が行われた問題でございます。  それで、この世界的な規模の地球のいわゆる破壊、特に海洋での汚染、これも今日人間が自然と共存していくということにおいては、いかに調和させていくかという面でも大変知恵の要るところであります。そこで今、沖合沿岸漁業振興のためにいろいろな手が尽くされています。しかし、最 近の海水汚染、これはもう目に余るものがある。特に後ほど議論したいと思う捕鯨の問題では、海洋環境の保全という問題もグリーンピースを中心にしてございます。  しかし、今ここで言う沿岸での汚染というのは、これは何としても沿岸に魚がすみつかない今日の状況。既に下水道整備問題で、政府の諮問機関でございます中央公害対策審議会が先月の十六日に、河川や海の汚染の主要な原因は、家庭から排水される化学洗剤、あるいはまたそれに付随する汚染度を高めていくような油、そういうものによって河川が汚れ、そして海が汚れる、こういうふうになっている。産業廃棄物は、御承知のようにきちっとした汚濁の防止をするために水質汚濁防止法というのがありまして、法律でちゃんと規制されていますね。しかし、生活排水についてはそれが規制されていない以上、下水道の整備を急がなきゃならないわけです。今度の日米構造協議の中でも下水道の整備が言われております。  だからこの整備計画は、国内においても第六次計画で八六年から九〇年まで十二兆二千億という公共投資で、既にその進捗率は八九・九%の八兆二千億。下水の整備のために一生懸命努力されていることはうかがわれます。しかし、それでもまだ東京湾に出ていく排水の中で、生活排水が未処理のまま出ていくのが四四%もある。伊勢湾においては四二%、瀬戸内では三五%。こういう状況で、処理をされていない排水というのが非常に多く流れ出している。この状況から、排水の汚染、いわゆる海洋の汚染、こうしたものについてどのような対策を立てていくか、これは重大な問題でありまして、生活をしておられる国民の皆さんが自粛して化学洗剤を使わないようにとか、漁業系統では一生懸命その宣伝、キャンペーンを張っているようでありますが、国としてはこれらについての基本的な姿勢はどうなのか。担当大臣並びに総理の御見解をいただきたいと思うのです。
  154. 北川石松

    ○北川国務大臣 新盛委員の御質問にお答え申し上げます。  近年、東京湾、瀬戸内海等沿岸水域を初めとする水質の汚濁は、大きく御指摘生活排水にかかっておると思います。このために、先般中央公害対策審議会より、生活排水対策の推進方策といたしまして、生活雑排水対策の実施に関する国と地方公共団体の責任を明らかにするとともに、市町村が生活排水対策を総合的に推進するための計画を策定するなどの制度の創設が必要である旨答申された次第であります。環境庁といたしましては、この答申の内容を実現するため、水質汚濁防止法改正案を今国会に提出すべく準備を進めており、近々提出できる運びといたしたいと思っております。  以上でございます。
  155. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 沿岸の水質を保っていくということは、これは沿岸漁業の問題ももちろんそうでありますけれども、広い立場に立って大事な施策だと思います。環境庁長官が今申し上げましたような考え方で、それらの施策を一層推進していかなければならないと考えております。
  156. 新盛辰雄

    ○新盛委員 これからの漁場環境保全の対策として、これらの水銀あるいは油、有害化学物質の、また家庭から排水されるこうした水質汚濁に対して、ぜひとも漁場汚染をさせないように、これは赤潮の発生源にもなっている、これは科学的にはまだそこまでいっていないのだそうですけれども、こうした問題もございますので、ぜひこの漁場環境を保全をして、魚がすみつくような状況を早急に図ってほしい。これは国民がというよりは、我々の食生活の面にかかわる重要な問題でありますから、指摘しておきたいと思うのです。  次に、日米間の今大きな課題は構造協議の問題でありますが、この中で包括貿易法のスーパー三〇一条、こうした制裁措置をちらつかせながら、今日本に対してもいろいろな問題提起をやっているわけですね。この産業構造の改革を含めて、今アメリカがやっておることの以前に、もはや水産界ではもうそれより以上に厳しいものが指摘をされていたし、また事実実力行使でもって制裁を受けているというのもございます。  一々例を挙げるのもはばかりますが、特に、後ほど申し上げます商業捕鯨が禁止になった。この禁止をさせるときに、あのIWC、国際捕鯨取締条約に基づいて、この委員会でアメリカは、鯨も見ないようなお国の方々を集めまして、投票権をちゃんと保留しながら、そして日本の捕鯨を禁止するために大変ないろいろ外圧をかけたわけですよ。それで、特に日本にはパックウッド・マグナソン法、これはPM法案という修正法案でもありますね。あるいはペリー修正法もございますが、こういうものを矢継ぎ早に発動して、そして漁獲の割り当て量を削減をしてきたわけですね。あげくの果ては、アメリカの二百海里内にはもはや日本漁船は入ってはならない、おれたちが魚をとった残りを、とるなら買ってとれ。まあ言うなら、入漁料は各国全部取っておるわけですけれども、そういうことでいたし方なく、鯨を守るために、じゃ約束を守りましょうということだったのだけれども、去年から割り当てはゼロですね。もう全然日本のスケトウその他、とっちゃならないということで、日本の北洋漁船を初めとして大変な打撃を受けて、しかもアメリカが言う鯨とバーターでということで、これもまさしく我々から見れば大変な圧力を受けて、そのまま引っ込んでいる。  今度は、日本とアメリカ、カナダ、漁業条約を結んでおるのですが、これも今あちこちで決起集会が開かれていると言われるぐらい北洋のサケ・マス漁業の縮小を求めてきているわけです。これによって減船を余儀なくされているという状況。しかも日ソ漁業交渉では、御承知のようにもはや九二年に一切公海上でのサケ・マスの漁業をしてはならない、こんな仕打ちをしてソ連の方もやってくる。そして、アメリカはこれまでも何回か日本の母船式のサケ・マス漁業に対する注文もつけてきましたが、今外務大臣が非常に頭を悩ましている、例の、国連でも話題になっています流し網の禁止、これもその原点はアメリカにあるわけであります。  水産物は今、日本にこうしてアメリカを中心にして入ってきていますね、どんどん。米を一粒たりともという議論どころじゃないのです。この数値については水産庁から後ほど御報告をいただきますが、こういう全体的な流れを、一つ日本が譲歩すればその次が来る、今回は九〇年の、モラトリアムのいわゆるIWCでの商業捕鯨復活、ここに向かって、今まさしく食文化を守ろうとして日本政府も一生懸命になっているだろうと思いますが、私は一面水産におけるバッシング・ジャパン、日本の水産をつぶすんじゃないか、こんな気がしてならないわけであります。  この一連の流れについて関係大臣の御報告並びに状況、そして日本のこれからの決意、特にまた総理は、構造協議等これからやられるわけですから、そういう中でどのように考えておられるかをお聞かせをいただきたい。
  157. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 ただいま先生から御指摘ございました捕鯨問題、あるいは日米間の二百海里水域での操業問題、サケ・マス問題、流し網問題、それから日ソサケ・マス問題といったような面で、我が国の漁業が大変厳しい立場に置かれていること、御指摘のとおりでございます。  それぞれ個別案件ごとに背景になっております事情は違いますけれども、基本的には、それぞれの国の二百海里体制の定着、あるいはまた二百海里体制の中で国際的な約束として今日確立をしております遡河性魚類、サケ・マス類の母川国の第一義的権限の容認といったような事態を背景にした出来事であろうかと考えております。確かに、捕鯨問題と絡めてやや報復的な措置がとられている実例もございますけれども、これも基本的には今日確立をされた二百海里体制ルールの中で行われていることだという認識をしております。  それから、若干お話にございました、捕鯨問題に絡みましてアメリカがペリー修正法による対日報復をしているという御指摘がございましたけれども、現在までのところ、具体的に捕鯨問題に絡んだペリー修正法の発動は行われておりません。  それからまた、若干異質な問題として捕鯨の問題がございますが、必要があればまた後ほど詳しく御答弁を申し上げたいと思います。
  158. 山本貞一

    山本国務大臣 今水産庁長官から中身について、先生も御高承のとおりでございますけれども、話がありました。先ほど、二百海里体制が定着をし、さらに公海の漁業規制が強まっておって非常に厳しい立場に日々立たされておる、こういう認識を私から示しましたけれども、今御指摘のとおり、日米あるいは日ソ、日加その他の国との間で、きょうもつい先ほど、実は日ソのサケ・マスの交渉に我が方の赤保谷代表を送り出した、私から向こうの漁業大臣に手紙をつけて送り出したというふうなこともございまして、とにかく日本の漁業を守るために言うべきは言う、やるべきはやる。もちろん外務大臣等のいろいろな御教示もいただきながら、私ども日本漁業を守るためにこれからも言うべきは言い、やるべきはやる、こういう姿勢で対処してまいりたい、こういうふうに思っております。
  159. 中山太郎

    ○中山国務大臣 委員お尋ねの日本の遠洋漁業における問題点は、先ほどの水産庁長官並びに山本農水大臣からの御答弁のとおりでございますが、外務大臣といたしまして、先日も根室地域の漁業組合の方々から、一九九二年以降の公海上のサケ・マスの全面禁止をソ連が要請している、これに対して日本政府はしっかりと交渉してもらいたいという強い要請を受けております。また、各国の外務大臣との二国間外相会談におきましては、流し網漁業に対する厳しい批判を日本政府は受けておりまして、昨年末の国連における決議においても、どうやら一応急場をしのぐような形で収拾ができましたけれども、今後南洋海及び北洋における流し網漁業についての日本の立場というものは、政府としては主張いたしますけれども、国際的な、いろいろな国の意見というものにも十分耳をかさないといけないような状況に近づきつつあるという厳しい認識を外務大臣としては持っております。
  160. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 近年、御指摘になったサケ・マス漁業及び流し網漁業等について、水産資源の管理保全や海洋環境の保全の観点から規制を行おうとする国際的な動きが活発になってきておることもよく承知をいたしております。このような我が国遠洋漁業にとって極めて厳しい情勢に対応し、対外協議を通じて操業確保に努める一方、必要に応じ、計画的かつ円滑な漁業の再編整備を進めていかなければならないと考えます。  また、捕鯨問題につきましては、国際捕鯨取締条約に基づいて合理的な解決に向けて努力を重ねていかなければならないと思っております。
  161. 新盛辰雄

    ○新盛委員 北洋のサケ・マスそして流し網の国連の規制、この発想というか、先ほどから申し上げております日本の水産業に対して大変な外圧を、ここまでくれば、何か日本の方でもこれに対抗する方法がないものか。私どもは、実はこの問題で、これは与野党ともに三、四年前から一生懸命研究してまいりました。特に今の日米構造協議の中でこれから一体どうするか。日本に対する内政干渉じゃないかと言われる議論もございますけれども、この水産物の問題、特に水産漁業全般にわたって公海を締め出される話、あるいは主権たる国の二百海里内において漁業はもうないものとせよ、ある意味では自国のとった魚を売るから日本は買いなさい、漁業もおやめなさいと言わんばかりのことなのですね。これは世界の資源の中で日本がそれこそ七分の一と言われるぐらいの捕獲量、千百万トン、金額にして二兆九千億ぐらい、それがだんだんこうして狭まってくるわけでありますが、これはゆゆしき問題だ。  そういう認識の上に立って、相手がそう出てくるなら、本邦の水産業を守るために、私どもは本邦水産活動に関する措置法案というのをつくりまして、呼称ですが、いわゆる水産対抗法とこう名づけて、前回の第百十七国会までずっと農林水産委員会にぶら下げてあるのです。今度はもうこうして新たになりましたから、また出しますが、社公民共の共同提案であります。しかも、自民党の担当者の方では心得たということであったのだけれども、どういうわけか、自民党内々で御相談の中では、今こんなものを出したら大変なことになる。この骨格は、アメリカが不当な保護措置をとるなら、我々の方もアメリカの水産物輸入をひとつ制限しようじゃないか、課徴金をもう少し考えようじゃないか、こういうような内容であります。  ところが、これはどういうわけか、通産省あたりから横やりが入ったとも言われるし、外務省からも、ちょっと米の問題もこれあり、いろいろと実態は困る、あるいはアメリカの双子の赤字がどうやこうやという話も出たりして、関係ないところまで尾を引いちゃって、そのままたなざらしになっている経緯でございます。しかし、この対抗法をもうつくる時期に来ているのではないか。  私ども、実はアメリカ側のこの対策についていろいろ資料も入れましたよ。日本が本邦漁業者の漁業生産活動の確保に関する法律案を出したそうだ、国会に野党が出したそうだと言った途端に、アメリカ側の水産関係者はびっくりして、これはいわゆるパックウッド・マグナソン修正法やあるいはペリー修正法等アメリカも持っておるわけですから、自国の保護のために持っておるわけですから、これに対抗が出たらこれはどうにもならないというのでいろいろ騒いだという話も聞いているわけであります。もう二百海里水域をこうして各国が全部つくった以上、我が国の場合でも商業捕鯨が復活をしてもらわなければならぬ。さっき総理は決然として、今度のIWCでは捕鯨の問題を主張するとおっしゃっておりますけれども、こういう仕打ちを受けるなら、我々も今度は対抗法みたいなものを出して、ここで日本の水産活動を活発にする必要がある、こういう認識をしているわけでありますが、この見解は通産省も少しかかわり合いがある。  そしてまた、特に外務の方でこの種問題の、いわゆる日米間あるいはカナダを含めまして、こういう取り扱いができるのかどうか。いわゆる我が国のサケ・マスあるいは流し網あるいはイカ流し網、こういうのを守っていくためには遠洋漁業の縮図として当然出てくる課題でありますし、日本の漁業を守るためにも必要なんですから、そのことについてお聞かせをいただきたいと思うのです。
  162. 福田博

    ○福田(博)政府委員 ただいまの先生のお尋ねは、米国等に日本の漁業者に不利益になる一方的な法律があるので、我が国においても対抗立法というものを考えるべきではないかという御質問ではないかと思います。  それにつきましては、大変法律的な答え方で恐縮でございますが、そういう立法がされれば、私どもとしては国際法違反となる可能性が強いと考えております。つまり具体的にはガットそれから日米友好通商航海条約、したがいまして、心情的にはわかるところもいろいろございますが、やはり自由貿易主義とかそういう類似の動きに強く反対してきた基本的な立場からしても、そういうことにそういう方途をとるのは適当でないと考えます。
  163. 新盛辰雄

    ○新盛委員 そういうしり込みをした言い方をされるから、我々がない知恵を絞って一生懸命日本の漁業を守るために頑張っているわけですよ。  では、スーパー三〇一条との関係はどうなんですか。
  164. 福田博

    ○福田(博)政府委員 国際法違反になる問題というのは、スーパー三〇一条あるいは三〇一条というような外国の法律そのものが具体的なケースに適用されて、その結果がいわゆるガット等の規定あるいは考え方に反するというときにガットへ行って闘うというのが筋道であろうと思います。
  165. 新盛辰雄

    ○新盛委員 ガットで米の問題について、日本の毅然たる態度ということで国会でも決議を衆参両議会でもやった。それでもってこれで交渉しなさいということになっているのですね。だけれども、この水産物の問題だって米と同じでしょう。さっき総理は、私は毎日魚も食べております。これは米と一緒ですよ。そういう取り扱いの中で、 向こうは保護措置を持っている。米と違うのですよ。だからこれがガットにどうこうということにはならないでしょう。担当の外務大臣、これはどうなんですか。
  166. 福田博

    ○福田(博)政府委員 たびたびの答弁で恐縮でございますが、少しく詳しく申し上げますと、ガット上対抗措置というのが二十三条に規定されておりますが、二十三条の対抗措置をとり得るのは、貿易に関する具体的な利益の侵害行為に対する場合に限られております。漁獲割り当て等による既得権の侵害があっても、それは貿易上の利益侵害とは必ずしも言えないという問題が実はガットの規定との関係ではございます。  それから、我が方の措置を何かとったときに、通商航海条約というのがアメリカとの間にございますが、それとの関係でどういうことになるかと申しますと、何らかの輸入制限的措置をとるような場合には、これは通商航海条約の規定によりまして無差別でなければいけません。したがいまして、例えば仮の話でございますが、今アメリカというものを仮定いたしますと、そのアメリカというところだけからその輸入を制限するというようなことは、それ自身通商航海条約違反の問題を惹起いたします。  いずれにしましても、先生大変恐縮ですが、先ほど申し上げましたように、心情的には大変よくわかるわけでございますが、いわゆる米国内の類似の動きには、我々従来から強烈に反対してきているわけでございます。いろいろ申し入れてきているわけでございます。その申し入れてきている根拠になることに反することを我々自身がやろうということは、それ自身動きを弱めることになる。やはり正攻法といたしましては、我々があくまでも粘り強くアメリカ等にそのいわゆる不当性というようなことを申し入れ、考えてもらうということがあるべき姿ではないかと思います。
  167. 新盛辰雄

    ○新盛委員 だから、今具体例で言っているわけでしょう。IWC、今度委員会を開きますよ。それで、捕鯨の問題ではここで商業捕鯨復活をと。今まで既に調査捕鯨第三次やりましたよ。それもこれはちゃんと国際捕鯨取締条約の中で第八条で明らかになっているわけですから、科学的調査をする必要があると言って日本は出たんだ。ところが、それもだめだと言われて、郵便投票でもって可否同数、成立をしなかったからようやくこれは保障されましたよね。これはIWCでの話。ところが、今度は商業捕鯨を復活するために、日本の代表は一生懸命頑張るんですよ。ところが、向こうは国内法で、IWCで捕鯨を日本が継続をすると言うなら、PM法、ペリー修正法、これを発動をして、日本の漁船が鯨と関係ないのに、アメリカの二百海里水域の中でとってはならないと禁止を出すわけでしょう。そういう制裁を向こうがするんなら、日本もアメリカの水産物輸入を制限をする必要があるんじゃないかという面で対抗法をつくろうと言うんですよ。どうなんです。
  168. 福田博

    ○福田(博)政府委員 幾つか先生のおっしゃったことはあると思います。  まず、調査捕鯨につきましては、捕鯨取締条約第八条の規定によりまして、我が国はとる権利がございまして、この三年間とってきているわけでございます。いろいろ、いわゆる郵便投票とかそういうのがございますけれども、これは勧告であって拘束力はございません。これは先生よく御存じのとおりでございます。  それから、一点だけぜひ申し上げておきたいのは、仮に先方がガット違反の措置をとれば、それは我々はガットに行って闘うことができる、それでガットできちっとした手続を経れば、それはそれで対抗措置とかそういうことがガット上決められておるわけでございます。
  169. 新盛辰雄

    ○新盛委員 我が国の水産対抗法の措置の問題はまだこれから、課題でございますから、整理をして各面で働きかけたいと思います。  同時に、この捕鯨の問題については、まさにタイムリミットでございますから、今共同捕鯨は鯨類研究所に変わったし、随分と縮小して日本の母船はほとんどいなくなってしまった。こうした面から、各国々の中で、特にアメリカを中心にして、動物愛護、哺乳動物を捕獲をする日本人は野蛮人だというぐあいで、流し網の規制も、実はイルカが入るとかオットセイが入るとか、そういうものによって日本はこの規制を受けようとしているわけでしょう。あれは入るんじゃなくてそういう仕掛けになっているんだけれども、ほとんど日本は漁業秩序を守ってやっているのですよ。なのに、そういう仕打ちを受ける。そして、とどのつまりは、一部のグリーンピース団体が大変このことについて関心を持っているというだけのことでしょう。だから、日本のこれからの外交姿勢として、外務大臣、ぜひとも商業捕鯨復活へあるいは近海捕鯨の復活へ向けて全力を挙げてもらいたいと思いますが、どうですか。決意を聞かしてください。
  170. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先生のお話を承っておりまして、政府は、捕鯨問題につきましては、国際捕鯨取締条約に基づき合理的な解決が図られるように、引き続き最大限の努力をしてまいる決意でございます。
  171. 新盛辰雄

    ○新盛委員 先ほどのサケ・マスあるいは流し網規制、こうした問題で減船になることについての漁業再建整備などの取り扱いをしておられますが、もう時間がありませんので、これはまた二十日の一般質問のときにやりたいと思います。  そこで最後に、これはまだたくさんございますが、日本海での漁業の保障を求めることについて、二百海里を設定できるのかできないのか。  昨年の暮れに日韓の実務者会議がございました。それまでには、大変な日本海における韓国の不法漁業、いわゆる目に余る、日韓協定どころじゃないのですが、漁業協定を守らない。もうめちゃくちゃな韓国、最近は中国漁船の横暴ぶり、これは目に余るものがある。しかも西日本の以西底びき網など、刺し網を初めとして、全部これが漁具の破壊までされる。しかもそういうものに対して、日本の海上保安庁が、監視船が現場に来まして拿捕する。拿捕すると、今度は韓国の巡視船がやってきて妨害をして、そして韓国の漁船を、日本が拿捕しかけたものを今度は韓国の巡視船が連れ去っていく。また巡視船がそばに来て、違法な韓国漁船を捕らえようとすると、ボルトを投げるわ、石を積んでいるらしくて石を投げつけてもう大変なことをやっているのですよ。この韓国船の不法操業、領海侵犯、これによってもう日本海はまさに戦場ですね。竹島は日本の固有の領土でしょう。あそこはもう既に韓国の漁船基地。しかも海上保安庁、韓国の保安庁が守っている。尖閣列島もそう。日本の主権、管轄権、これは一体どうなるんだろうか。  だから、二百海里を設定をせよというこの系統の御意見というのはよくわかりますよ。日本だけでしょう。日本海の太平洋側の二百海里、韓国と中国は除外されているのですよ。こんな二百海里設定というのはないですよ。私も実は、五十二年のこの二百海里設定で代表質問した際に、これはおかしいと思ったけれども、友好の面で、これからの状況を踏まえてということもあったので、それは認めざるを得ない状況でしたが、今こんなことを許していいのか。もう二百海里は各国全部旗国王義、こういう状況になっているのですから、この点はひとつ、具体的なのはまた二十日以降にやりますが、基本的な考え方をお聞かせをいただきたいと思うのです。これは外務大臣並びに総理の力強いひとつ御返事をもらわなきゃ下がるわけにはいきません。
  172. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 後ほど大臣あるいは総理から御答弁いただきます前に、私の方から簡単に現在の考え方を申し上げたいと思います。  御案内のとおり、確かに先生指摘のとおり、西日本水域で二百海里の漁業水域というものを全面的に設けてはどうだという御意見があることは私どもも十分承知しております。  ただ、これも先生御案内のとおりでございますけれども、韓国とは一応漁業関係につきまして漁業協定の枠組みというのがございまして、長年これが維持されてきたという経緯もございます。もちろん、御指摘のような不心得な、あるいは秩序 を乱す操業はなくはございませんけれども、韓国側もそれなりに監視船をふやしたり、あるいは監視の方法を共同で日本とするというようなことで努力をしてきておりまして、今のところは、水産庁とも御相談しておりますけれども、そういう状況を見守っていきたい。中国との関係におきましても、長くは御説明いたしませんけれども、一応の漁業秩序というのがございますので、それに基づく良好な関係を維持していきたいということでございます。  ただ、お触れになりました幾つかの大変残念な遺憾なことがございます。これにつきましては、外務大臣も、先方の韓国につきましては、たしかニューヨークにおきまして強く、この問題の指摘以上に、韓国側の実情に対して遺憾の点を外務大臣から先方の外務長官に申し述べられたことがございます。  それから、先ほどお話しの対馬仲の遺憾な事件につきましては、直ちに私の方から大変強い調子で韓国に注意喚起をいたしまして、現在調査が進行しておるようでございますけれども、事実であったとすれば大変遺憾なことであったという返事が韓国側から返ってきております。
  173. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今アジア局長からお答えを申し上げましたとおり、日本周辺における漁業問題につきましては、御指摘のような事件があることは事実でございまして、私ども政府といたしましては、日本の漁業者の権益保護のために今日までもしかるべき場所で発言をしてまいりましたが、今後とも積極的にこの問題については努力をしてまいりたい、このように考えております。
  174. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 外務大臣が申し上げましたように、近隣諸国との間柄でありますから、今行われておる既存の自主規制等もあるようでありますが、それをしっかりまずやること、同時に、それからについては方針に従って努力をさせてまいります。
  175. 新盛辰雄

    ○新盛委員 じゃ終わります。
  176. 越智伊平

    越智委員長 これにて新盛君の質疑は終了いたしました。  次に、和田静夫君。
  177. 和田静夫

    ○和田(静)委員 まず総理に、財政体質の強化であるとか財政の弾力性の回復だとか、あるいは健全な財政運営などとよく言われているわけでありますが、どうもわかりにくいわけでありまして、どういうことを、何を物差しにして財政の健全化などと言われるのか。
  178. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 これは、委員に繰り返して申し上げるのがむしろ失礼なぐらいな話でありますけれども、過去十五年間、日本は赤字公債に依存せざるを得ない財政状況が続いてまいりました。そして、その中において私どもの第一の財政再建に向けての努力というものは、この赤字公債の発行をゼロにしたいということであったわけであります。そして、おかげさまで平成二年度予算におきましては、赤字公債依存体質から脱却をいたしますとともに、公債依存度も八・四まで下げることができました。  しかし、同時に今後を考えますと、なお平成二年度末におきまして百六十四兆という国債残高を抱えることになるわけでありまして、しかも建設公債の発行は続いておるわけでありますから、この国債残高の累増についてどう歯どめをかけ、抑え込むことができるか、さらには、よく御承知であり、本院でも御論議をいただいております、この財政体質改善の経過におきまして講じてまいりましたさまざまな歳出繰り延べの特例措置、いわゆる隠れ借金と言われておりますもの、こうしたものの返済にどうめどをつけていくか。これは元年度の補正予算におきましてもある程度の対策は講じたわけでありますが、さらに国鉄清算事業団の累積債務の償還等の問題もあるわけでございまして、こうしたものについてどう対処していくかが今後の我々の目標でなければならぬと考えております。  さしずめ今一番我々が考えなければならないことは、どうやっていつの時点で国債の残高の累増に歯どめをかけ、これの削減に着手することができるかでありまして、当面の私どもの目標としてはこうしたことに主眼を置いてまいりたい。そのためには、なおこれからも予算編成のたびに非常に厳しいチェックを行い、最大限の歳出削減の努力を積み重ねていかなければならない、そうした厳しい姿勢をとっていきたいと考えております。
  179. 和田静夫

    ○和田(静)委員 私も言われるとおりなんだと思うのですが、そこで、国債残高などを指標として財政が強化をされたなどというような物の言い方をされますと、これは私はやはり大変なんだと思うのです。政府はかって、建設国債は六十年、赤字国債は十年、その償還の期限が来たときに勝手に六十年に赤字国債を延ばしてしまった、そういう経過が、よく覚えていますが、あります。しかも、今言われたように、百六十兆円余の国債を償還をしなきゃならぬ、こういう状態で、これも政府提出の国債整理基金の資金繰り状況からちょっと計算してみますと、大体年度平均で二兆五千億から三兆五千億、こういう数字が出てくるわけです。  したがって、国債残高などから財政の健全化という言い方をされますと、これは今も言われましたように、非常に長期にわたって我が国の財政体質の強化というのは不可能なんだろうというふうに考えざるを得ないわけであります。政府の見通しでも、平成二年の百六十四兆一千億円の国債残高が平成十五年には百七十九兆九千億にふえてしまう、こういうことになっているのであります。したがって、私は、財政体質が強化をしたんだという言い方というのはどうも理解ができないわけですが、いかがでしょう。
  180. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は、財政体質が強化したとは申し上げておらないのであります。ようやく赤字公債依存体質を脱却することができた、しかし、なお平成二年度末における国債残高は百六十四兆円、その利払い費は一般会計予算の歳出予算の中に二割を占めるという状況でありますし、この百六十四兆という国債残高は発展途上国の全累積債務に等しい、あるいはそれより多いかもしらぬという数字でありますから、この状況というものは大変重いものであり、厳しいものであります。  ですから、私は、体質が直ったと一回も申し上げておりません。ようやく赤字公債依存体質を脱却し得た、しかし、なおこの国債の重圧というものは非常に深刻なものがあり、いかにしてこの累増に歯どめをかけ、後代に対する負担を減らしていくことができるか、そのためには、赤字公債依存という一つの目標を到達したからといって財政に緩みを来すことはなく、今後においても歳出削減の努力は、それこそ血のにじむようなものを続けていかなければなるまい、それだけの覚悟を持って臨むべきである、私はそう申し上げたつもりでありますので、御理解をいただきたいと思います。
  181. 和田静夫

    ○和田(静)委員 そういうことなんでしょう。  そこで、私はきょう言いたいことは、やはり政府もあるいは財政審もでありますが、財政法四条の一項の趣旨といいますか、本旨というものをしっかりと踏まえてこれからの財政運営をおやりになろうという姿勢がどうもないのではないだろうか。そこのところが非常に危惧されるのであります。  例えば、公共投資を全額建設国債で賄うという従来方式を、少しその賄う部分というものを税金で賄って広げる、それですき間率を高めるとかいうような便法でもってどうもいこうとされているのですが、これは私は五十歩百歩だろうという感じがせざるを得ない。当然、経済の循環を考えた場合に、今のような状態ばかりではないでしょう。そうすると、そういう不況期といいますか、財政出動が非常に必要になる時期、そういうものを考慮しますと、これは大変なことではないだろうか。百六十四兆円というのは非常な重みを持っているものだろう。ここのところを今何とかしないとという感じが非常にするわけですが、いかがですか、総理。
  182. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 確かに今委員が仰せられましたように、この百六十四兆という数字は、先ほども申し上げましたように、発展途上国の全累積債務 に匹敵するあるいはそれを超える数字でありますから、これがいかに重いものであるかということは、国民にも御理解をいただかなければなりません。そうした中で、今委員が御指摘になりましたように、我々としても建設公債に対する依存度はできるだけ落としていきたい、そして一方では、国民生活の質の向上という視点から社会資本の整備はできる限り努力をしていく責務があるわけでありますから、その部分においてはいわば国民からお預かりをした税によって充当していきたい、そういう願いは持っております。  建設公債におきましても、その発行を少しでも抑える努力を今日までもしてまいったわけでありますが、当然今後ともにできる限り一般歳出によって社会資本整備をも賄うという努力は続けていく必要がございます。今委員が御指摘になりましたように、幸いに我が国の経済情勢は内需を中心として安定的な成長をなお続けておる状況でありますから、財政が景気対策のために出動するような状況にはございません。しかし、もしそうした事態を想定いたしました場合に、やはり建設公債の発行限度額にゆとりがある状況にしておかなければ我々は非常に苦しい場面に追い込まれるわけでありまして、御指摘の点は私も基本的にそのように心得ております。
  183. 和田静夫

    ○和田(静)委員 国債を利用した財政運営というものを理論的に言えば、経済の不況期に国債を発行する、しかし好況期には、国債をやめるだけではなくて税収増加分で黒字予算を組む、そして中期的に財政のバランスを回復する、そういうものであったはずですね。私は、大平大蔵大臣やあるいは福田大蔵大臣とそういう意味での国債論争というのを参議院の予算委員会、大蔵委員会で十分にやったつもりです。そして、大平さんも福田さんも今私が述べたようなことを結論とされていました。  ところが、どうしても理解ができないのは、そうした弾力性を持った国債政策というものを国債発行当初責任を負った自由民主党の責任者たちが述べておったにもかかわらず、一向に改まらないという、そういう予算、しかも一方に偏した国債増発と累増、そういう国債政策で、今も大臣がお答えになったように過去十五年間決してバランス復原力というのは働かなかったわけですね。私はここのところは大変重要なところだと思うのでありまして、最近では、今もお話がありましたように、新イザナギ景気とか内需主導の経済大国とかということを言われているわけですし、税収も政府の予想を裏切ってといえば裏切って七兆円を超える、そういう形での好調ぶりだ、それも二、三年も続いている。こうなってきますと、こういう絶好調なときにどうして黒字予算をお組みにならないのだろう。ここのところは素人目に見て非常に不思議なところなんですよ。いかがですか。
  184. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は、委員のお述べになりたいお立場、御議論、かつて参議院で委員の御意見を拝聴した記憶からいきましてもよく理解はできるつもりであります。ただ同時に、赤字公債の発行をゼロにする過程におきましても血のにじむ努力がありましたことは、委員が御承知のとおりであります。今日まで参ります間にも、例えば医療保険制度において、あるいは年金制度において、非常に大きな制度改革を含む将来に向けての姿を国会でも御論議をいただいてまいりました。そして、今日までの過程におきましては、一方で赤字公債依存体質から脱却すると同時に、高齢化社会の到来というものを見据えながらの制度改変の努力というものがあわせ行われてきたということを御留意をいただきたいと思うのであります。  そうした中におきまして、これは現在御論議をいただいております平成二年度予算におきましても、一般歳出三十五兆円の中で十一兆六千億が社会保障関係費によって占められるほど、しかもこれについてまだ不足という御意見が審議の間に出てくるほど、高齢化というものは進捗しつつあります。そうなりますと、制度改変によって出てくる財源というものにはおのずから限界がございます。言いかえれば、歳出削減というものに向けてやはり年々、一度にどんという影響を与えずにやっていこうとすれば、その努力には一つは限界があるということであります。同時に、これは先般来、構造協議をめぐりまして、社会資本整備について本院においてもいろいろな角度から御議論をいただいておるところでありますが、やはり二十一世紀が到来し、高齢化と申しますより超高齢化時代に日本が突入していったとき、おのずからその時代における努力には限界が生ずることを考えれば、今のうちにできるだけお互いの国民生活の質の向上を図っておく必要がある。そうした視点から社会資本整備というものに手を抜くわけにはいかない。  こうしたことを考えてまいりますと、思い切って黒字予算を今こそ編成しておくべきであったと言われる委員の御意見には、心のどこかでうなずくものを持ちながらも、現実の状況と見合わせて、我々としては現時点における最適の決断を下し、本予算を編成した、あえてそう申し上げさせていただきたいと思うものであります。
  185. 和田静夫

    ○和田(静)委員 橋本大蔵大臣、私は暫定予算のときにも一つの提案を、収納の期限問題などでいたしました、改めるべきだろうと。きょうは黒字予算の編成という課題を投げました。戦後日本財政史の中で橋本龍太郎という大蔵大臣が果たした役割はこんなものであったということをしっかりおやりになるためにも、私の二つの提言というのは十分に熟考してもらいたい、こういうふうに考えている。できれば海部内閣でそういう措置を大胆におとりになることが日本の財政史上大変大切なことではないだろうかというふうに実は私は真剣に考えています。理論的に考えても、日本の財政というのは何かどこか根本のところでどうも狂いが生じているのじゃないだろうかということを非常に危惧するからであります。これはそういう意味で強く要望をいたしておきたいと思うのであります。  そこで、来年早々にもゴルバチョフ大統領がやってくる、いや、そういう言い方はいけません、来日する予定だと言われているわけでありますが、日ソ関係の改善を図ることが私は日本の外交にとって最大の課題であろうというふうに今日思いますけれども、まず、安倍さんが英知を持って解決しようという姿勢をお持ちになりました。私は、日ソ平和関係のいろいろなことを最大のテーマとして国民的なコンセンサスというようなものを得ていくことが今非常に重要なんだろうというふうに考えているのですが、大変抽象的な質問ですが、総理、いかがでしょう。
  186. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 日ソ関係を改善し、真に安定したものに持っていくということは国民の皆が望んでおるテーマであるというのは、御指摘のとおりだと思います。  今、世界の大きな情勢の中で、むしろソ連が大きく変化をしておる。ゴルバチョフ大統領が生まれて、一党独裁制がなくなって、いろいろ変わりつつある変化の中で、アジア・太平洋地域のためにも、そして日本とソ連のためにも、その変化というものが双方の努力によって真に安定した関係に移行していくことが極めて望ましいわけでありますから、私は、そういった意味で、来年のゴルバチョフ大統領の来日ということも一つの大きな節目として我々が望む方向になっていくように、同時に、我が方も、長い間念願の国民的合意ともいうべき領土問題を解決して平和条約を締結したい、同時に、ソ連との間には拡大均衡の方式によって友好関係が本当に打ち立てられていくように、安定した関係ができるように努力を続けていきたい、こう考えております。
  187. 和田静夫

    ○和田(静)委員 安倍元幹事長が八項目の提案をされました。そうした土壌づくりが私も関係改善に非常に役に立つのだろうというふうに考えています。  そうした努力を続けるためには、私は、今や大胆にサンフランシスコ講和あるいは日米安保の時代を振り返ってみて、新しい日本の国際関係を形成をしていく、そういう要件を整えるべきだろう、それもかなり大胆に整えていいのではないだ ろうか、そういうふうに思うのです。つまり、反ソ政策であるとかあるいはソ連の脅威論はもう控える。例えば、今度小沢幹事長が訪ソをされるようでありますけれども、彼はかなり大胆に、北方領土問題では相互譲歩をやらなければ結局は答えにならないんだということまで言い切っていらっしゃいます。私は、実はそうだと思っているのです、もともと。そういう領土問題が桎梏となっているような政策というようなものもこの機会に改める大胆さというものが、グローバルな日ソ関係を考えた場合に、アジア、世界を考えた場合に、やはり非常に必要なんだ。日ソ平和関係の構築という意味での国民的なコンセンサスに向かって努力があってしかるべきだ。外務大臣、今総理はそういう方向での御答弁があったと思うのですが、いかがです。
  188. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今総理が御答弁されましたと同じでございまして、私どもは、この日ソ間の拡大均衡による信頼が醸成されていく、そういう過程の中で、私どもの二国間の最大の問題はやはり何といいましても領土問題でございますが、これが解決されて平和条約が締結される、そのために全力を挙げて努力しなければならないと考えております。  実は、昨日もソ連の外交専門誌の編集長が来られまして、いろいろと意見の交換もいたしておりますが、来年ゴルバチョフ大統領が来られるまでにできるだけの問題が二国間で解決されるように日ソ両方で努力をされなければならない、このような意見の交換が行われたことをこの機会に申し上げておきたいと思います。
  189. 和田静夫

    ○和田(静)委員 アジアの情勢の中で朝鮮半島ですが、朝鮮半島ではソ連と韓国が近い将来に国交を開くのはもう確実になってきていると思うのですね。そういうアジア情勢、朝鮮半島の情勢をどうするのかということは、海部内閣としてももうしっかりお決めになっておく必要があるというふうに思うのです。表にお出しになっていないだけだと言われるのかもしれません。そのときにやはり必要なのは、戦前、朝鮮半島を植民地支配をしたことは間違いないわけであります。そして、南半分の大韓民国とのいわゆる条約締結、そして一応の戦後処理を我が国はした。しかし、北半分の朝鮮民主主義人民共和国は無視をした、存在をしているが無視をしてしまった、というよりも、日韓条約を結ぶことによって朝鮮民主主義人民共和国との敵対関係が確立してしまったと言ってもよいのではないだろうか。そこで今日、ソ連と韓国との国交が樹立をされるという事態に至れば、これは日本と朝鮮民主主義人民共和国との関係改善はもう急務になっていると私は思うのです。  そこで、関係打開の糸口をつけるために、日本は戦前の朝鮮半島全域での植民地支配をまず謝罪をすることが必要でしょう。関係改善のために努力する再出発点としてそのことをやる、総理にそういう構えがあってもよいのではないかと思うのです。あるいはそういうようなお考えをお持ちになりながら金丸元副総理が朝鮮民主主義人民共和国を訪れようとされているのか、その辺のところはいかがでしょう。
  190. 中山太郎

    ○中山国務大臣 日本政府といたしましては、朝鮮半島の軍事境界線を境に対決している二国の軍事情勢、これが一日も早く話し合いによって解決をされ、そして平和が醸成されるというために私どもは大きな期待もいたしておりますし、そのためにはできるだけの協力もしなければならないと考えております。
  191. 和田静夫

    ○和田(静)委員 今のことは、国会は国会の責任において国会で決議を上げるなどというようなことを考えてもいいぐらいに私は思っています。そういう意味で、ぜひ政府の前進的な対応というものを求めておきたいのであります。  日ソ平和条約を締結するという状態も私はそんなに遠い将来のことではないだろう。そういう場合でも、相手に軍事力がある限り潜在的脅威になるのだというような論理というのは、どうも理解が実はできないのであります。ヨーロッパでは、政治関係が軍事関係に反映をしたことはすべてが認めるところです。そして、通常兵力の削減交渉が年内にも大幅に大きく進展をするだろう、そういうふうに見ておいてもよいのでしょう。そうすると、アジアにおいてもそういうような状態が急ピッチにこれから進んでいくのではないだろうかと思われますが、総理のお考えを……。
  192. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 今ヨーロッパにおいて軍備管理と申しますか軍縮の方向にいろいろ進んでおるという事実は、私も先日来率直に評価もいたしましたし、認めてもまいりました。それから、アジアにおける構図というのは、ヨーロッパにおける構図と、地政学的にもあるいは軍事同盟同士の対決という面からいってもいささか違う点があるわけでありますから、目に見えるように向こうがこれだけ、こちらがこれだけというようなことには直ちになっていかないだろうという私の受けとめ方も率直に言わせていただきました。  ただ、我が国に関する限りは、何度も申し上げるように有事を想定しての自衛力ではございませんので、つつましやかに自分の国の専守防衛ということで、しかも抑止力あるいはその他の問題については日米安保条約の補完をお願いしながらの安全保障の自衛力でありましたから、ヨーロッパでそういった通常兵力の削減とかいろいろなものが行われておるからといって、直ちにそれをもって我が国にもそれが及ぶことが難しいということ等についても率直に申し上げさせていただいてまいったつもりでございます。     〔委員長退席宮下委員長代理着席
  193. 和田静夫

    ○和田(静)委員 今の総理答弁、ずっと予算委員会で聞かせていただきました。それにもかかわらず、私はきょうどうしてもやはり総理のお考えの一部はお直しにならなければならぬのだろうという考え方で述べるのですが、例えばゴルバチョフ大統領が北京の演説で、これも量だけの問題で質はまた逆だと言われてしまう論理を皆さんはお持ちなのでありますが、そのことをよくわきまえながら述べさせていただきますが、極東ソ連軍を例えば兵力で十二万人、師団で十二個、航空連隊で十一個、艦艇で十六隻、一方的に削減をする、こういうふうに発表しました。そうすると、単純計算をすれば、兵力、師団で約三割の削減のわけであります。防衛白書を見てみますと、この軍縮は信用できないと書いているわけですね、日本政府は。  私は、平和というものは基本的に軍縮には軍縮で対応すべきだと考えるわけであります。書生の論理だと片づけられては困るのであります。相手はできるだけゼロに近くなることを期待する、自国はできる限り一〇〇に近づけるのだ、そういうようなことではどうにもならぬのではないだろうか。今防衛白書などを読みますと、どうも日本防衛庁の方向というのはそういうふうに動いている。私は、こんなことをやっておったら戦前の日本の軍隊が太っていったことと何にも変わりがないではないか、そういうことを指摘せざるを得ません。  現にアメリカの中でさえ、自衛隊について対日警戒論というのが出てきていますし、ブッシュ大統領だって、あるいは国務長官だって、また多くの知日派のアメリカの有識者たちが、日本の軍事大国化というものに対してかなり警戒心を持ち出していますね。そしてそれらが日本の封じ込め論、あるいは日米安保、そういうものを今後日本封じ込めに使っていったらいいじゃないかというような見解を述べる方々さえ出てくる、こういう状態です。したがって、みずから軍縮するという姿勢というものが私たちにとってあっていいし、どうもそれが否定をされるような機構に我が国の場合なっているのではないだろうか。ここのところいかがです。
  194. 石川要三

    ○石川国務大臣 お答えいたします。  防衛と外交というものは表裏一体のような関係にあるわけでありますが、先ほど総理からもいろいろと欧州並びにアジア・太平洋の国際情勢についての認識が詳細に御答弁されました。基本的には私も全く同感でございまして、そういう点は総理からも詳細に答えられましたので省略をいたし まして、今の御質問に触れたいと思いますが、防衛庁は依然としてかたくなに脅威論というものを振りかざして一歩も前進してないというような御指摘、御質問があったわけであります。ただ、私は本席におきましてもしばしば見解を申し上げておりますけれども、現在の欧州においての軍縮、また民主化、こういう点につきましては大変歓迎をしているわけであります。しかし、それとこのアジア・太平洋というものとはいわゆる地政学的な違いがある。しかも、私どもの防衛というものは、先ほど総理みずからも防衛政策について触れられましたけれども、全くそのとおり、いわゆる大綱に準じて平時においても最低限持つべき、むしろ日本が防衛の面において空白になることにおいてのいろいろな不安がそこに醸成される、こういうことから見て最低限の防衛を確保しているのが今日の我が国の防衛の基本であります。でありますから、そういう点で直ちに大きく変動するような要素もなかろう、こういうふうに私は思うわけであります。  しかし、アメリカにおきましては、今先生も御指摘のようないろいろな見解を述べる方が次から次へあらわれていることも事実であります。しかし、アメリカの国防関係の方、特にチェイニーさんとかそういう方々も最近におきましてはいろいろなところにおきまして意見を申されておりますが、そういう方々の大ざっぱな意見を要約しますと、やはり依然としてソビエトの今日の軍事力というものはかなりある、それは量的にも質的にも、いやむしろ質的にも決してこれは減少しているものではないというようなことも明言しているような事実もございます。  いずれにしましても、一九六〇年以来の今日までのあのストックというものを見た場合には、まだ相当の軍事力というものが存在をするし、現にゴルバチョフさんが政権をとった今日になりましても、それ以後におきましても、決して軍事力の削減というものは正直なところ私どもにはまだ認識されていない、むしろ非常に近代化されたためにかえって質的には軍事力が増強しているような面もあるということ、これが私どもの認識していることでございます。そういう中におきまして私ども日本の防衛というものを考えていっているわけでございますので、御理解を賜りたい、かように思うわけであります。
  195. 和田静夫

    ○和田(静)委員 政府がかたくなに姿勢をお改めにならないのですが、私は、マルタ以降のヨーロッパ情勢というものはもう急速にアジアの情勢に反映をしてくると私たち見ておいていいのだと思うのです。もうしばらくたって、何であんな論議をしたんだろうというようなことになる可能性が非常にあると私は思います。そこで、このまま冷戦時代の発想から政府が抜け切らないとした場合に、端的に言ってアメリカとソビエトで頭越しのアジア軍縮交渉が始まる、そういうことを私は指摘をしたいのです。私はそういう情勢に動いていると思うのです。アジアにおいて日本政府があるいは我が国が、我々を含んでの話でありますが、主導的にアジアの平和に向かって歴史的な役割を担わないなどということは許されないという感じがしているのですよ。どうですか。
  196. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今の先生のお尋ねにつきまして外務大臣としては、米ソは言うまでもなくスーパーパワーであります。特に軍事力の面においてはこの二国にまさるものはない。この二国はもちろん世界全体を見回したいわゆる軍事戦略を張っている国家でありまして、この二つのスーパーパワーがいわゆる軍備の管理あるいは軍縮、こういうものを両大国で協議をしていくということは、事の成り行き上当然のことであろうと思っております。
  197. 和田静夫

    ○和田(静)委員 総理、いかがですか。
  198. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 外務大臣が申し上げたことをさらに追加いたしますと、米ソの間においてなるほどヨーロッパを中心に冷戦時代の発想を乗り越えた動きが出てきておる、そして兵力の問題についても、十九万五千とかそれに三万足すとか、いろいろな議論が具体的な数値も前に置いて議論されていること、これは私もよく承知をいたしております。しかし、アジアにおいてそれがそのまま押し及ぶかというと、ちょっとアジアの情勢は違うわけでありますから不透明なところが非常に多い。  そして現に、じゃそれを手をこまねいて見ておるのかとおっしゃると、そうではございません。例えば、カンボジアで今でも続いております内戦状態というようなものをどうやって抑えるのか。つい先日もタイのチャチャイ首相との首脳会談のときに、それに対してきょうまでタイが果たしてきた努力も聞く、日本もできるだけ努力をするということで、まずそこで戦争の火種というものがアジアから消えていくような努力を、日本もタイ国とも相談しながら、関係四派の会談の前に二派の話し合いを持つようにできるだけ協力、努力をしたらどうかとか、あるいは朝鮮半島の緊張の問題にしても、日本は韓国との友好関係を維持しながら、北朝鮮政府とも政府間の話し合いをしたい、そういったメッセージも送って、いろいろな面で努力をしていこう、できる限りのことはしていこう、一つ一つ違う状況の問題の中で、より安定するように、より繁栄するように。そして今、アジアの中でそういった不幸な力の対立とか内戦状態というものに絡まれていない地域に対しては、これは製品輸入とか直接投資とか、いろいろなことでアジアの経済力というものが高まっていくようなことに日本もできるだけの貢献を現にしておるわけでありますから、あらゆる方面でそれぞれの国に対して日本のなし得る努力というものを見定めて、それぞれに対応をしておるところでございます。
  199. 和田静夫

    ○和田(静)委員 防衛庁は「防衛計画の大綱」を堅持と言っているわけですが、軍事的脅威に直接対抗するもので大綱はない、平時において十分な警戒態勢をとるもの、これはまあ明確でありますね。言うまでもなく今は平時なんですから、今後も大規模武力衝突の可能性というのは日本の周辺では可能性は少ない。そういう認識に立って防衛力を保持する、これは防衛庁長官、そこのところは間違いありませんね。
  200. 石川要三

    ○石川国務大臣 そういう認識でございます。
  201. 和田静夫

    ○和田(静)委員 そこで、「防衛計画の大綱」を堅持するということになると、どうも幾つかの疑問が出てくるのであります。  それは、いわゆるガイドライン、日米防衛協力の指針ですが、これは各年版の防衛白書をじっくり読んでみましたけれども、有事に備えて日本に対する武力攻撃に際しての対処行動であるとか、あるいは日本に対する武力攻撃がなされる場合の指針、それらに基づいて、例えば日米共同訓練を行ってきたなどということが明確です。これはソ連脅威論ですね、それに対処をするため。そうすると、ガイドライン、ソ連の脅威に対抗する、有事に備えて、こういう方針はこの際廃止をする、ないしは停止をする、そういうふうに考えていかがですか。
  202. 日吉章

    ○日吉政府委員 お答え申し上げます。  「防衛計画の大綱」とそれから日米防衛協力のための指針でございますが、これはいずれも防衛力に関係する国の方針といいますか指針を示しているものでございますけれども、ディメンションが違いまして、「防衛計画の大綱」の方は、どちらかといいますと我が国が保有する防衛力の整備水準を示したものでございます。これは我が国といたしましては、ただいま委員が御指摘になられましたように、大規模な武力紛争が起こる、あるいは我が国に本格的な侵攻が予測されるというような状況ではないという前提に立ちまして、しからば憲法で認めております自衛権のそのさらに範囲内で独立主権国家として平時から持つべき兵力を持っておこう、こういうことで定めたものでございます。  ところが、日米防衛協力のための指針はそれの運用に関する指針でございます。したがいまして、我が国といたしましては、不幸にして武力侵攻がありましたときに、原則として独力で対処をするわけではございますけれども、原則としてと いいますか独力で対処をする努力はいたしましても、しょせん先ほど申しましたような整備水準のものでございますので、侵攻勢力いかんによりましては、米国と共同いたしましてそれに対処しなければいけないわけでございます。このガイドラインといいますのは、その運用に関する指針を示したものでございます。したがいまして、作戦行動というようなものあるいは訓練というようなものにつきましてのガイドラインを示しているものでございまして、これは当然に、当然といいますか、そういうことでございまして、それそのものが特にソ連に対して対処する、そういうようなことではございませんで、これは第三国から不幸にして武力侵攻があった場合、米国と協力しながら、どのような形で対処するのが最も効率的であろうかということを決めたものでございまして、決してこの「防衛計画の大綱」と矛盾するものではない、かように考えております。
  203. 和田静夫

    ○和田(静)委員 ここのところは余り長い時間かけるわけにいかないのですが、つまり、平時における十分な警戒態勢をとるということではガイドラインはないのですね。有事対応なんですよ。このことだけは間違いないのです、これは防衛白書だってそう書いているわけですから。したがって、ガイドライン防衛を廃止するか凍結をする、そこがまず今後の日本の防衛のあり方を決める上で、私は、大前提に今の世界の情勢からいってなるべきなんだ、こう考えているのですよ。これは防衛庁長官、あなたの答弁だ。
  204. 日吉章

    ○日吉政府委員 防衛力の整備水準が直接脅威に対処することを念頭に置きまして、それに見合う量の水準の防衛力を整備していないといたしましても、不幸にして我が国に侵略がありましたときには、その足らざるにしましても持てる防衛力でもってそれに対処する、最も効率よく対処するというのは当然でございまして、そのことのために自衛隊が存在しているのだと思いますので、かつ日米安保体制のもと、米軍と共同でそれに対処するということであるとしますと、持てる防衛力を最も効果的に活用し得るような訓練なりあるいは計画を立てておくということは当然のことだと考えております。
  205. 和田静夫

    ○和田(静)委員 防衛費がどういう形で増大をしてきたかなどということを今一々述べませんが、とにかく私は、今の答弁は納得ができません。ガイドラインの防衛をやめる、有事の対応から平時の対応に変える、それが今の日本の防衛のとるべき道だ。そう思いませんか、防衛庁長官
  206. 石川要三

    ○石川国務大臣 先ほど局長から大綱とガイドラインについての説明があったと思いますが、そのような説明の中でもおわかりいただくように、幾ら平時であっても、私どもはやはり国を守るという立場になれば、有事のことも考えたりいろいろなことも考えている、そういう中での一つの運用といいますか指針であるということで私はよく御理解いただけたのじゃないか、かように思うわけでございまして、これをなくさなければ平和的云々ということには私はちょっと当たらないのではなかろうか、こういう見解を持っております。
  207. 和田静夫

    ○和田(静)委員 防衛庁長官、そういう御答弁をされますから、それではあなたは防衛庁長官なんだ、あなたに答弁を求めますよ。  ガイドラインに基づく研究が行われてきました。そして、日米共同作戦研究は一九八四年の十一月に完成をしています。これは一体内容はどんなものですか。  それからシーレーン防衛研究、これは八六年の十二月に完成しています。あなたは防衛庁長官なんですから、全部これは知っているでしょう。この研究結果を今あなたから発表してください。
  208. 日吉章

    ○日吉政府委員 お答えいたします。  ただいま御質問がございました共同作戦計画の研究でございますが、これは一つの侵略態様を想定いたしまして、それでもちまして、日米双方がどのように対処すれば最も効果的に対処し得るかということで研究をいたしましたものでございまして、一応の概成といいますか、研究を終了いたしておりますけれども、装備の変化あるいは情勢の変化等に応じまして逐次補備修正していく必要はあろうかと思いますが、ひとまず研究は終えたというところでございます。  それからシーレーン研究でございますが、これにつきましては、シーレーン防衛のためにはどのような運用をするのが最も効果的であり、なおかつ我が自衛隊が持っておりますシーレーン防衛の装備の能力がどのようなものであるかということを検証するための研究をしたものでございます。  ただ、それ以上詳しい内容は、事柄の性質上、委員も十分御理解いただけると思いますが、御説明を申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  209. 和田静夫

    ○和田(静)委員 これは十分に御理解ができないのですよ。これはできませんので、今の答弁じゃ納得できない。長官、これは資料でお出しになりますか。
  210. 日吉章

    ○日吉政府委員 お答え申し上げます。  それぞれにつきまして、いつ研究を始め、どういう目的でどういう前提のもとに研究をし、いつ研究を終えたというような形のものでございますれば、二つのものにつきまして資料として提出させていただきたいと思います。
  211. 和田静夫

    ○和田(静)委員 いや、今あなたが答弁をされた限りのことを理解はできない、内容的には何も触れていらっしゃらないわけでありますから。私に対して、内容は御理解願っているでしょうという答弁だったわけですから、それは理解ができません。私に内容を満足させるための資料を提出をしなさい。  さらに続けますが、ガイドラインに基づいて事務次官、統幕による防衛改革委員会が設置をされました。そのもとに洋上防空体制研究会、陸上防衛態勢研究会が設置されていますね。この三つの議事録、検討事項、防衛庁長官、これ出してください。
  212. 日吉章

    ○日吉政府委員 まず、これに先立ちます御質問に対する御答弁を申し上げますが、私が御理解いただけると思いますと申し上げましたのは、事柄の性質上公表に適さない内容であるという点の御理解かいただけるものと思いますと、そのつもりで申し上げたつもりでございます。  なお、防衛庁内の組織で研究をいたしました洋上防空体制研究会、それから陸上防衛態勢研究会でございますが、これはガイドラインに基づきまして設置されているものではございませんで、防衛庁限りのものといたしまして事務次官のもとに設置されているものでございます。  それぞれ研究をいたしまして、まず洋上防空体制研究につきましては、航空機やミサイルによります空からの攻撃を洋上において撃破したり阻止する機能をどのように我が自衛隊は擁し、かつどのように運用することが最も効果的であるか、あるいは装備上もどういう装備を備えればより有効になるかというようなことで研究をいたしたわけでございます。この根拠は中期防衛力整備計画の中にございまして、各種装備の組み合わせによる効率的な洋上防空体制のあり方について検討するというふうに定められておりまして、それに基づきまして防衛庁の中において研究をしたものでございます。  それから陸上防衛態勢研究の方でございますが、これは将来の効率的な陸上防衛態勢のあり方につきまして基礎的な研究を実施したわけでございまして、目的としましては、我が国の特殊な地理的な特性、それから将来の軍事科学技術なり陸上兵器体系の趨勢、そういうようなものを見通しまして、そういたしますと将来陸上戦闘様相がどういうふうに変わってくるであろうか、それに対処するためにはどういうふうな陸上防衛態勢をとればいいかということで研究をしたものでございます。     〔宮下委員長代理退席、委員長着席〕
  213. 和田静夫

    ○和田(静)委員 議事録の提出を求めて公開を求めているわけでありまして、情報公開の時代ですからこの辺のものをちゃんとお出しになってもいいと思うので、それも要求をしておきますが、さらに少し進んでから結論を言います。  そこで、一体あとどれくらいで防衛の大綱というのは防衛庁として満足がいくのかということについて、一言で答えられますか。
  214. 日吉章

    ○日吉政府委員 中期防衛力整備計画は、ただいま御審議をいただいております平成二年度が最終年度でございまして、その平成二年度予算によりましておおむねその水準に達し得るのではないか、かように考えております。おおむねと申しますのは、一部の正面装備のようなものにつきましては達していないところもございますが、おおむね達しているということでございます。したがいまして、これは「防衛計画の大綱」に基づいてその大綱の水準を整備するということを目標とした中期防でございましたので、今後どういうふうにするかということにつきましては、大綱をどのように取り扱うかということに係るわけでございますけれども、先般来防衛庁長官から申し上げておりますように、「防衛計画の大綱」の基本的な考え方というのは、防衛庁としては継続し得るのではないかというような考えを持っておりますので、防衛庁限りの考え方として申し上げますと、この水準を維持していくというような点が一つの重点ではなかろうかと思います。  なおかつ、どちらかといいますと正面装備に重点が置かれた形で整備が進んできておりますので、この整備されました正面装備の能力を有効に発揮し得るために、それを支援する後方支援体制の方に今後の防衛力整備は重点が移されるべきではなかろうか、これはあくまでも比較の問題でございますが、そのような問題意識を持ってございます。  ただし、あえて御質問でございましたので踏み込んでお答え申し上げましたが、これは現在検討中の防衛庁限りの問題意識でございます。
  215. 和田静夫

    ○和田(静)委員 そこで次期防なんですが、今のような考え方でいくと、次期防というのはどういうふうになるのですか。
  216. 日吉章

    ○日吉政府委員 お尋ねの次期防をどのように検討しているのかということでございますが、これにつきましては、安全保障会議等を通じまして最終的には政府全体として検討される事柄でございますけれども、その安全保障会議の一メンバーに防衛庁長官もなっておられますので、防衛庁といたしましていろいろ考えておりますところでは、先般来も申し上げておりますように、大綱の基本的な考え方というものは今後も踏襲をしていくことができるもの、いくべきものではなかろうか、こういうふうに考えておりますので、そういう観点に立ちまして、私が先ほど申しましたように「防衛計画の大綱」で定められました防衛力の整備の水準がおおむね達成されましたので、それを今後有効に生かし得るような体制を整え、維持していくということに主眼が置かれるべきではなかろうか、かように考えておりますが、いずれにいたしましても、これは今後政府全体で検討すべき問題だと考えております。
  217. 和田静夫

    ○和田(静)委員 とにかく私も驚いたのだけれども防衛庁防衛庁長官、総額二十三兆円という次期防に関するところの資料を少し出したらどうだとこう言ったのだ。いや、私も二十年国会にいてこんな目に遭ったのは初めてですが、持ってきた資料は新聞記事ですよ。防衛庁はこれが資料だと言うわけですが、私は調査室が初め説明のために持ってきたのかと思った。防衛庁長官、あなたが答弁をしない姿勢のように、防衛庁というのはこの程度のものですよ、今。この二十三兆を解明してください。これはあなたがやってくださいよ。腕組んで座っているだけが能じゃないですよ。
  218. 石川要三

    ○石川国務大臣 その資料が、どういう意図でそれが資料になったかわかりませんけれども、いずれにしましても、二十三兆というのは私もまだ全然聞いておらないものでございまして、ただ、先般何か新聞の中で一つの仮定といいますか、そういうような積算の中でそういう数字がはじかれているのかな、こういうふうに感じるわけでありますが、正式の、何らのそれは根拠のない数字である、私はこのように思っております。
  219. 和田静夫

    ○和田(静)委員 防衛庁長官、全然根拠がないとあなたは言われた。しかしながら、お持ちになって説明をしたのは、今大蔵省と金額を煮詰めています、待ってください。そこで私は、待ってあげましょう。どういう煮詰め方をされておるのですか。具体的に今、積算と言われた。どういう積算を根拠にして煮詰めているのですか。あなたの答弁ですから、あなた。
  220. 越智伊平

    越智委員長 ちょっと打ち合わせして、長官と打ち合わせして。——まあ、答えさしてみい。日吉防衛局長
  221. 日吉章

    ○日吉政府委員 お答え申し上げます。  委員のところにあらかじめ御説明に参上いたしましたのは、委員の方から、総額二十三兆円という次期防に関する報道があるけれども、その報道について聞きたいというお話でございました。したがいまして、その報道の中に二十三兆の積算根拠と思われるものがございましたので、この積算根拠と思われるものがございますのでそういう計算をいたしますと二十三兆という数字になりますと。  しかしながら、防衛庁におきましては今、次期防の作業を防衛庁限りとしていたしておりますけれども、私どもといたしましては、先に総額ありきという考え方ではありませんで、主として防衛目的という点から照らしまして具体的な事業を、今後の次期防期間中にどのようなものを整備する必要があるか、すべきかという点を精査して、それを積み上げた結果、その金額が経済財政事情、その他国の諸施策とのバランスを考えて適当かどうかというふうに検討すべきものだと考えておりますと、もしその全体的なバランス等を検討すべき段階に立ち至りましたときには、当然のこととしまして財政当局を含む政府レベル全体で御審議をいただかないといけないことだと思いますと、こういうふうなお話を申し上げたのではないかと思いますし、ただいま大臣の御答弁は、まさに私が今申し上げたようなことを言わんとされたのではないかと私は思います。
  222. 和田静夫

    ○和田(静)委員 いや、これは日吉さん持ってきたわけじゃないのだから誤解がないようにしておきますけれども、しかし僕は、さっきから防衛局長答弁していますけれども局長と私とがやりとりをするのなら私の部屋ででもできるのですよ。大臣なんかとはめったに会うこともできないのですからね。この予算委員会の部屋でもってしっかり答弁してもらわなければ、あなた何を考えているか、日本はこれからどこへ行くのか、さっぱりわからぬわけですから。その辺のことをちゃんとわきまえてやってもらいたいと思うのですよ。  それで、いろいろの答弁がありますが、昭和五十二年五月十九日の本院の内閣委員会、ここでもって当時の伊藤防衛局長は、大綱達成のための費用というのはあと三千億から五千億円あればよいとしっかり答弁されているわけです。四次防で概成をした、こうなっているわけです。いいですか。昭和五十二年の時点であと三千億から五千億と答弁されているのですよ。そのときから今日まで、いわゆる平成元年度予算までで四十兆三千六百八十億、きのう僕がはじいてみたら使っているわけですね。その上に、二十兆か二十三兆か二十四兆か知りませんけれども、また必要だ、こういう論理になっていくわけです。  私は、これはもう量の問題じゃない、質の問題だとかなんとか、いろいろ答弁されるでしょう。しかし、もうそんな問題じゃない。我々が共通にこの論議をするためには、積算の基礎とされているところのものをしっかり出していただいて、そして共通の広場でもって論議をする、外に漏れて困るのならば秘密にやるくらいのことをやっていくのが、今日の日本の国内におけるところの政治の情勢との照合において、やり方として必要なんでしょう。そういうやり方しませんか。——いやいや、これは大臣ですよ。幾ら何でもこんなものひど過ぎるよ、あなた。
  223. 越智伊平

    越智委員長 打ち合わせをしなさい。——石川防衛庁長官
  224. 石川要三

    ○石川国務大臣 先ほど来申し上げましたように、これからいよいよ次期防の作業に入るわけで ありまして、これについては、局長から申し上げましたように、最終的には大綱に基づいて次期防というものが政府全体の、政府としての立場でこれが作成されるわけであります。  ただ、防衛庁としてはその一つのメンバーになるわけでありますが、そういう立場で今作業をしているというのが事実でございます。今私の段階まで、そういう積算とかそういったようなものはまだ上ってまいっておりません。したがって、私はその内容については今ここでお答えできないわけでありますが、特に、ちょっと外れますけれども、二十三兆円というその内容も、そういう意味で私は先ほど申し上げたわけでございまして、今の段階で積算根拠をどうのこうのという、そういうところまで、防衛庁としてもまだそこまでは進んでいない、こういうように私は見ているわけであります。
  225. 和田静夫

    ○和田(静)委員 先ほど委員長は席を外されていましたから、私はあえてそれ以上深追いしなかったのですが、内容が内容だから資料提出するのを勘弁してくれ、こういう話でした。しかし、私はこれは了解することができません、理解することができませんと言ったのは、一九八四年十一月に完成している日米共同作戦研究、それから八六年十二月に完成をしている、先ほども答弁されましたが、シーレーン防衛研究、これは福田総理大臣、金丸防衛庁長官は、これが完成した時点で私に提出をする、参議院予算委員会の実は約束なんです。これが提出できないということならば、これ以上私は審議できません。
  226. 越智伊平

    越智委員長 ちょっと速記とめて。     〔速記中止〕
  227. 越智伊平

    越智委員長 速記を起こしてください。  和田委員に申し上げます。  今、理事の間で協議をいたしましたが、改めて資料要求をするなら資料要求をしていただいて、理事の間で協議をしよう、こういうことに決定いたしましたので、質問を続けていただきます。
  228. 和田静夫

    ○和田(静)委員 先ほど資料要求をしまして、答弁があって、出せませんと言われたから、出せませんと言われるのならば、福田総理や金丸さんと私は約束したことがありますと。それはいわゆる院が違うという問題ではなくて、そういうような政府の態度をお示しになった時代もあるんですから、したがって、それらに基づいて資料をお出しになるような協議をされたらどうですか、防衛庁長官。私の言っていることは筋が通っていますよ。資料をちゃんと要求したのですから。できないと答弁したんじゃないの。資料を出すことができませんと先ほど防衛局長答弁したわけですから、それじゃだめですと、念のために言うけれども、私と福田さんや金丸さんとはこういう約束があった時代もあるんだから、それらをしんしゃくしながらお考えになったらどうですかと。今相談しているのでしょう。
  229. 越智伊平

    越智委員長 石川防衛庁長官答弁を願います。
  230. 石川要三

    ○石川国務大臣 委員御要請の件でございますが、日米共同作戦計画の研究の内容は、事柄の性質上、公表はいたしかねるわけでございますので、御了承いただきたいと思います。
  231. 和田静夫

    ○和田(静)委員 今のような答弁では、やはりこれは進めるわけにはいきません。それは政府側だけが一方的にいろいろの資料をお持ちになっていて、野党の側には防衛計画その他についての物の考え方、判断をする基準になるような資料は一切お出しになれません、こういう状態というのは、これは幾ら何でも了承するわけにはいきません。
  232. 越智伊平

    越智委員長 速記をちょっととめてください。     〔速記中止〕
  233. 越智伊平

    越智委員長 速記を起こしてください。  石川防衛庁長官より発言を求められておりますので、これを許します。防衛庁長官石川要三君。
  234. 石川要三

    ○石川国務大臣 再度答弁をさせていただきます。  繰り返すようなことになろうかと思いますが、日米共同作戦計画の研究の内容は事の性格上公表はいたしかねる、こういうことでぜひ御理解を賜りたい、かように思います。
  235. 和田静夫

    ○和田(静)委員 それではここの部分は質問を留保いたしまして、私の方は資料としてお出し願うことを要求をしておきます。  さらに、先ほど答弁がありましたけれども、新聞内容をそのまま複写して持ってきてこれが資料ですなどという資料の出し方などというのは、これは大変ふざけた話でありまして、こういう点は許すわけにはいきませんから、委員長、資料提出問題等について、委員会の権威にかけても各大臣、省庁に徹底をしてもらいたい、そう要求をします。いいですか。
  236. 越智伊平

    越智委員長 理事会で協議をいたします。  質問を続けてください。
  237. 和田静夫

    ○和田(静)委員 それでは、残念ながら次期防の論議に入ることができませんので後ほどに譲らせていただきまして、総理にお尋ねしますが、昨年九月に訪米をされましてブッシュ大統領と会談をされましたが、構造障壁問題等についてはそのときはどうだったのでしょう。
  238. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 昨年九月の首脳会談のときには、テーマに出ましたのは、むしろ個別品目についてスーパー三〇一条の問題が私の頭にありましたので、そういう交渉を一方的な制裁のもとでやるというのはいけない、ただし、日米関係は重要であるから静かな話し合いの中において解決するように日本もできるだけの努力はいたします、ただ、管理貿易とか保護貿易とかいうのは日米両国のためにならないと思っておりますので、そういったものを防ぐようにお互いに、我が国も努力をしますがアメリカも対応してほしいというようなことについて話し合ったということを覚えております。
  239. 和田静夫

    ○和田(静)委員 この前の日曜日の10チャンネルを偶然見ていましたら、自由民主党の経済調整に関する調査会長である山口敏夫代議士がテレビに出られまして、昨年九月の海部総理の訪米というのは、総選挙の前に構造協議について問題化をしないということをブッシュさんと話をしに行ったんだ、こういうふうに言われたのですよ。もっと言えば、それを頼むだけに、私はそうも思いませんでしたが、総理が行かれたんだという表現になっているわけであります。そうすれば、選挙が終わって自由民主党が大勝をされて、ブッシュさんから電話が来て、後始末しようじゃないか、それじゃ行きましょう、こういう話になったのかなとテレビを見る限りにおいては類推をして、ああなるほど一連の流れはわかった、国民や国会は日米構造障壁問題で大変心配をし、議論をしているけれども、実際問題としてはやはりこういう政治の流れだったんだなというふうに思わざるを得なかったのでありますが、そのとき、海部さんも恐らくこのテレビをごらんになっていましょうからということまであったのです。  もう一つは、日米の構造障壁問題で、アメリカの対日要求というのは、実は日本の大蔵省が相手方の財務省、アメリカの財務省に知恵をつけたんだ、こういうような話も出ていましたがね。後になって気づいたのは、外務省が松永さんをというようなことで、大蔵省のペースというものを何というか巻き返すという意味を含んでどうも派遣されたのではないかというふうに考えられるようなことがありました。前々から国内における、日本政府の中における省庁間のこの問題をめぐってのいろいろ違った動きがあるということは、これは我々も仄聞をしていたところなんですが、後ほど海部総理がそれをおまとめになった政治的な手腕、あるいは自由民主党の中の動きも一本にされた手腕というのは、私は大変高く評価をしているのではありますけれども、実際問題としては今述べたような動きというのがあったというふうに理解をしておいてよいのでしょうか。
  240. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 それは少し誤解が先走ったのではないだろうかと思います。というのは、去年の九月私がアメリカへ行きましたときは、この日米構造協議はまさに第一回目がたしかそんなころからだったと思うんです。サミットで日米首脳が合意して、お互いに抱えている問題を精いっぱい話し合おうということでありますから、どんな テーマがどれくらい出てきて、どれくらいの話になっていくかというのもわかっていないときで、スーパー三〇一については、私もいろいろ意見を今ここで申し上げたようにしましたけれども、協議については、当時からいえば年を越した来年の春に中間的評価、そして夏に最終合意ですから、できることとできないこともあるけれどもというような、そういった全体としての漠然としての話をしましたが、それを待ってくれとか、待っておってくれとかいうようなことは一言も言っておりませんし、同時に、現に九月から、十一月からと、一回、二回、三回、四回と四回にわたって構造協議の実務者レベルの会議が行われたのでありますけれども先生、今御指摘になったようなことはちょっと誤解をした人の意見をもとにおっしゃったんではないだろうか、こんな気がいたしますから、率直に申し上げさしていただきます。
  241. 和田静夫

    ○和田(静)委員 ともあれ、余分な話ですけれども、いや海部さんはブッシュ派だからこれから長もちしますよなんという話も出ていまして、大変見るに値する、聞くに値することではあったんですが、しかし、総理がまとめられてきたことについての手腕というものは私は評価をしておきます。  ちょっと清算事業団の問題に入るんですが、運輸大臣、これも院が違うところの約束だと言われればそれまでですが、昭和六十一年の五月二十日の参議院運輸委員会で、私は、これは参議院議員最後の質問でありますからよく覚えておるのでありますが、三塚運輸大臣は一人も首を切るようなことがないということを明確に言われ、中曽根総理も当時の国会、衆参両院を通じてそのことは明確に言われていたんだが、実際問題としては、ここにきて実質首切りという形になってしまった。それはそれぞれが就職の希望がなかったんだとか、いろいろな言い方をされている向きがありますが、私は交渉の、JR当局並びにこの今度やめた諸君のやりとりのテープから全部持っていますけれども、大変強い希望を持ちながらこういう状態になってきた。この状態というのは、やっぱり私は戦後政治史の中における一つの汚点だと思うのですね。  国会では明確に総理も担当運輸大臣もあるいは労働大臣もしっかり答えてきた、それが守られなかったという状態が起きている。もう時間がありませんので続けますが、また労働大臣は、それぞれの地方労働委員会が百十にわたって、JRがやってきていることは間違いなんだという意味での地方労働委員会の決定が出ていますね、これが守られていかないというようなことになれば、せっかく築いてきたところの戦後労働行政は一体何だったんだということを塚原労働大臣のときに私は問われると思う。これらを一体どういうふうにしようとされているのかですね。
  242. 塚原俊平

    ○塚原国務大臣 先生指摘ございましたように、地労委の決定というのはもう大変に重みのあるものであると思います。ただ、中労委もやはり同じように重みのあるものでございまして、ただいま中労委の方でまた、案件が上がっておりまして係争中でございますので、地労委の決定についてどうこうというなかなかコメントが言いにくい状況でございますので、中労委の御審議を見守りたいというふうに思っております。
  243. 和田静夫

    ○和田(静)委員 運輸大臣は。
  244. 大野明

    ○大野国務大臣 ただいま労働大臣が答弁したと同じことでございますが、中労委で今係争中ということでございますので、私がコメントするのはいかがかと存じます。
  245. 和田静夫

    ○和田(静)委員 ちょっと最後は何ですか、今……
  246. 大野明

    ○大野国務大臣 私がコメントするのは差し控えさせていただきますと。
  247. 和田静夫

    ○和田(静)委員 いやいや、運輸大臣には前段で質問しているのですよ。
  248. 大野明

    ○大野国務大臣 前段って、どこの部分ですか。
  249. 和田静夫

    ○和田(静)委員 一人といえどもとにかく首切ることはないということですね。
  250. 大野明

    ○大野国務大臣 それじゃ、今のは訂正いたしまして、前段の分については、政府としてはこの三年間、清算事業団職員の再就職につきましては最大限の努力を最後まで払ってきたと申し上げて過言じゃないと思います。その間におきましても、四次にわたるところのJRの広域追加採用、あるいはまた公的部分あるいはまた民間部分等におきましても数多くの再就職先をあっせんさしていただいたところでございますが、残念ながら最後へきて千四十一名の方々が解雇で退職なさったということでございますけれども、しかしこれは、本当に再就職というものに対して前向きであった方々はもうすべて政府としてはやってきたと思っております。それだけに、三塚元運輸大臣が申したようなことについては私としては公約違反でないと考えております。
  251. 和田静夫

    ○和田(静)委員 私は、これはもう明確に人道的な問題になってきている、そういう状態でありますからやっぱり運輸大臣、もっと強い指導力を持って解雇者の回復への道というものを真摯に検討していく、そういう態度があってしかるべきだと思うんです。いかがです。これはもう役人の答弁じゃなくて、大臣。
  252. 大野明

    ○大野国務大臣 再就職の促進法も失効した今日でございますので、私としては、現在その法的効果もございませんので、今労働省に対しても、職業安定機関においてこれらの人たちをひとつ十分に考えて、それは個々の適性とかいろいろありますけれども、十分聞いた上であっせんをしてほしいというお願いをいたしております。
  253. 和田静夫

    ○和田(静)委員 やっぱり労働委員会決定を忠実に守りながら、労働大臣、しっかり回復の道を図る、よろしいですね。
  254. 塚原俊平

    ○塚原国務大臣 労働省といたしまして、まず本当にぎりぎりになりましてから、また田邊委員会から本当に悲壮なまでの御陳情もいただきまして、各職安にもう一度再度の通告を出したのですけれども、残念ながら数多くの方がお残りになった、解雇をされたということで、まことに残念だと思っております。(発言する者あり)
  255. 越智伊平

    越智委員長 お静かに願います。
  256. 塚原俊平

    ○塚原国務大臣 ただ、これは物すごく難しいと思うのです。というのは、地労委の命令を守って、仮にその命令どおりになると、中労委はもうそれで終わっちゃうんですよね。だけれども、今度は中労委に行く資格もあるわけですから、中労委の方にお話をする。だから、そこが物すごく難しいところだと思うので、一応、中労委の現在ケースをお話しになっておりますので、何とかそれを見守らしていただきたい。  それから、当然、職業安定局の方としては、職安の方としては、御相談にぜひおいでいただきまして、一日でも早く御満足のいくところを御紹介をいたしたいと思っていますが、ただ、こちらから何か出前を聞くと言っては失礼ですけれども、こちらから聞きに行くというのもなかなか難しいものでございますから、ぜひとも御相談においでいただくようにお願いをいたします。
  257. 和田静夫

    ○和田(静)委員 ともあれ、権利の問題でもありますので、地労委の決定をしっかり守らせる、そういう労働行政というものを強く求めておきます。  御徒町のトンネル凝固剤注入の手抜き工事ですが、これはどのくらいの区間にわたって、どういう手抜きがあったのか。労働省、もう上野の労働基準監督署でわかりましたか。
  258. 野崎和昭

    ○野崎(和)政府委員 御指摘のJR御徒町駅での陥没事故につきましては、地盤凝固剤でございます薬液注入に関し、工事が施工計画どおり行われていなかったのではないかという疑いがございましたので、所轄の上野労働監督署におきまして捜査を進めておりましたところ、一部の工事関係者からその事実を認める供述がございましたので、その供述も踏まえまして、現在違反の具体的な事実、責任の所在等について鋭意捜査を進めているところでございます。
  259. 和田静夫

    ○和田(静)委員 私の調査では、下請業者の工事区間二百八十メートルの全体にわたって手抜きが あった。恐らく規定量の三〇%ぐらいしか注入していないということなんですがね。そういうふうに見ておいていいですか。
  260. 野崎和昭

    ○野崎(和)政府委員 先ほどお答え申し上げましたとおり、現在、鋭意捜査中の事柄でございまして、具体的な点につきましては答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  261. 和田静夫

    ○和田(静)委員 これはなぜ手抜きが行われて書類が改ざんをされたのか、JRはなぜそれが見抜けなかったのか。運輸大臣。
  262. 大塚秀夫

    ○大塚(秀)政府委員 この事故の直後に、JR東日本では学識経験者から成る事故究明のための委員会を設置しまして、その機関で現在検討中でございますが、その間、下請業者から手抜き工事があった事実の報告もあり、私どももその報告を受けておりますが、今後監督責任者であるJR東日本において巡回検査あるいは竣工検査、またデータチェック、どのように行っていけばこのような事故の再発が防止できるか検討させているところでございまして、できるだけ早急に結論を得たいと思っております。
  263. 和田静夫

    ○和田(静)委員 それじゃ、それぞれの答弁は、結果を詳細に、後ほど調査の結果を報告、説明をしてもらいたい。求めておきます。委員長、いいですか。
  264. 越智伊平

    越智委員長 協議をいたします。
  265. 和田静夫

    ○和田(静)委員 リクルートの問題なんですが、特に郵政大臣をめぐって多くの論議が重ねられてきました。しかし、私はさっぱりわかりません。大臣みずから責任を感じておやめになろうとしないということも全然わからぬ。私は、郵政大臣が隠し通そうとして海部総理大臣に食言をさせた。この事実は、あなた政治家ですから、しっかり責任を持って感じ取らなければ私はいかぬと思うのであります。累総理に及ぶという状態のことでしょう、三月六日の本会議答弁。私は、結果的に海部総理に食言的な答弁をさせた、そういう政治責任というのは非常に重いんだと思うのです。幾人かの方々があなたに自発的におやめになるべきだということを述べてこられた。当然私も、きょうぐらいはもうおやめになっているのかと思ったら、やっぱりお座りになっているのですが、我が党の新村質問が本会議であって、そしてリクルート社及び関連会社から政治献金を受けた者がないというのは真実かと問うたわけです。それに対して海部総理は、深谷さんのうそを信じて、結果的にはあなたを除く七人の報告答弁を行われたわけです。これは国会と国民はそれを信じたのですよ。そして海部総理の、ある意味では国民的な世論も大変にリクルート問題をめぐって上がった。  しかし、どうです。それを裏切ったのが深谷さん、あなたなんですよ。私は、これはあくまでも追及されなければならぬと思うのです。もうあなたは、あなたの自発的な判断で今の立場をおやめになる、それぐらいの決意をされて、将来のある方、ともに東京で活動してきたからあなたを私はよく知っているが、この辺でやっぱり決意をされるべきだと思うが、いかがか。
  266. 深谷隆司

    ○深谷国務大臣 私の認識の足りなさやあるいは事務方の報告の相違やその他で自主的に申告することがおくれたことは、本当に済まないと思っています。そのことで海部総理を初め、とりわけ国民の皆様に御迷惑をかけたことは、まことに申しわけないと思っております。
  267. 和田静夫

    ○和田(静)委員 残念ながら、郵政大臣の答弁をずっと聞いてまいりまして、この予算委員会あるいは参議院の予算委員会を通じて、どうもその後も虚言が積み重ねられているのではないかと言われる状態が続いていますよ。  で、石塚さんという秘書がボランティアなんだという主張をあなたはずっとされているのですが、実際はボランティアではなくて、あなたの秘書であった人をリクルートの社員としての形をとられたのではないかというふうに報道されたりしていますね。そういう件。あるいはリクルートの脱会届をどうも前へさかのぼって作成したというふうな言われ方をしていますね。こういう件。あるいは昭和五十三年、これはあなたは落選中のことですね、二回目の選挙だったでしょう、たしか。そのときに既に石塚さんは秘書として採用されているという石塚さんの履歴書が存在をしているという件。さらには、自由民主党の基準に照らしても、それ以降もリクルートから受け取ったというそういう事実。まああなたはお返しになったんだという強弁をされているのですが、などなど、どうもうその積み重ねと思われるものが非常に続いているわけです。  官房長官、これはもう自主申告という形ではこの問題はやっぱりおさまらない。どうしてあなた自身の手でもっとしっかり責任を持った調査を、裏づけをおやりになろうとしないのですか。
  268. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 事閣僚の自主申告というものは、やはり閣僚の地位にふさわしい道義的な責任から行われておるべきものだと信じております。やはり本人が徹底的に、みずからのことはみずからが一番詳しいのでありますから、責任を持って申告する。それを私は、最初は申告がなかった、まことに遺憾だということで厳重注意をいたしまして、本人も申しわけなかったということで、改めて徹底調査の上で申告をされた。その点について私がチェックをいたしたり、それから事務方に命じて裏づけもさせたら、このような、この前報告をしたようなああいうことになったわけであります。やはり自主申告というものは、御本人を信頼をしてお願いをする、本人がそれにこたえる、これが基本だろうと思っております。
  269. 和田静夫

    ○和田(静)委員 当然の答弁なんです。私もそう思いますよ。思いますけれども、自主申告をされなかったことによって、官房長官調査に基づく、言ってみれば海部総理答弁というものが、本会議答弁としては残念ながら食言になったわけです。そうすれば、海部内閣としてしっかり責任をおとりになる、そのことが必要です。  そして、先ほど私は四点にわたって、郵政大臣のその後の答弁、言動をめぐる問題点について、疑わしき問題を発言をいたしました。これを官房長官、しっかり裏づけをおとりになる、そしてここに資料を提出をされる、お約束できますか。
  270. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 先ほど委員が言われましたような問題点、四つばかり言われましたね。それは申告に基づいて私のところで本人によく確かめたり、あるいはまた事務方を使って裏打ちの点検をしたわけであります。その点については、できるだけのことをしたと思っております。やはり本人が反省して、徹底的に調査して持ってきたということでありまして、それを点検をし念を入れた、その結果を私は信頼をしたということでありまして、その疑問点についての基準というものは、前々からも申し上げたように、自民党のリクルート問題に対する見解というものも基準としたわけであります。
  271. 和田静夫

    ○和田(静)委員 官房長官答弁ですが、その裏づけをされたと言い切られますと、それじゃ裏づけをされたことに間違いがあった場合にはしっかりした責任を海部内閣としておとりになる、そう受けとめておいてよいですか、今の答弁
  272. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 私の立場は、やはり本人の自主申告に基づいてそれの内容について点検をし調査をした、こういうことであります。
  273. 和田静夫

    ○和田(静)委員 郵政大臣、私が指摘したことについて間違いがありますか。
  274. 深谷隆司

    ○深谷国務大臣 失礼ですが、どの部分でしょうか。
  275. 和田静夫

    ○和田(静)委員 時間がないのであれですが、秘書がボランティアで来ておったということを強弁をされていたわけですが、どうもそれは違って、リクルートの社員としての形をとってもらったというような経過があったということ。リクルートが後援会から脱会をする脱会届というのは、前にさかのぼって日付がつくられていったというふうに報道をされていること。昭和五十三年から既に石塚さんはあなたの秘書であったということ、これは履歴書で明確ですが。それから、自由民主党の基準以降リクルートから受け取っておった事実、これはお返しになったと言っているのだが、これ。
  276. 深谷隆司

    ○深谷国務大臣 石塚君が熱心な私どもの応援者、手伝ってくれた人、後に後援会の世話役として頑張ってくれたこと、それらは私が申し上げたとおりでございます。  それから、リクルート社の退会についても、今まで申し上げたとおりでございます。  それから、五十三年当時云々というお話でございますが、今その書類がありませんから定かでありませんが、当時は彼は他の会社に勤務しておりました。  以上でございます。
  277. 和田静夫

    ○和田(静)委員 それでは、改めて院が違いますから求めておきますが、千二百三十六万円の内訳、その年月日、名目、それから支払い者、受領者、現金・小切手等の別、受領方法、これを、深谷さんは御趣旨に沿って努力いたしますと既に答弁をされていることでありますが、これをお出しを願いたい。  それから、リクルート社から石塚さん本人の口座に払い込まれておったと言われるその具体的な証拠書類としての本人の口座、それから払込人、受取人の資料、これも努力をすると言われていますが、本院でもこのことを求めます。よろしいでしょうか。
  278. 深谷隆司

    ○深谷国務大臣 後段の本人の口座云々については、個人のプライバシーでありますから、私どもとしてはいかがかと思います。  それから、私どもの献金の内訳、パーティーについては、過日官房長官から御報告いただいた、そのとおりでございます。
  279. 和田静夫

    ○和田(静)委員 官房長官、御提出願えますね。
  280. 越智伊平

    越智委員長 和田委員に申し上げます。  資料につきましては、委員長からの指示があれば出しますということでございますので、先般来理事会で協議いたしますということで理事会で協議中でありますので、お預かりをいたしたい、かように思います。
  281. 和田静夫

    ○和田(静)委員 もう時間ですのであれですが、私の一般質問の日までに出していただきたい、前日までに。二十日に予定をしていますから、十九日までに。
  282. 越智伊平

    越智委員長 協議いたします。
  283. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 先ほどの委員の御質問の中において、念のため議事録に明らかにさせていただきたい点がありますので、一点申し述べたいと存じます。  構造協議の中における、日本における大蔵省、アメリカ側における財務省の役割についてでありますが、これはそれぞれ三省庁が議長役の役所として選任をされております。そして、大蔵省も通産省、外務省と並びまして議長省の一つであります。また、アメリカ合衆国側の代表の中において財務省も議長省の一つであります。そして、いわば大蔵省と財務省はカウンターパートとして分担をしておるテーマが同じでありますので、この限りにおいて両省は常に連絡もとり合い、またお互いの意見の交換をいたしておることでありまして、先ほど報道を引用されての御質問でありますから、これは委員に対して抗議をするというのではありません、ただ、これが議事録に残りました場合を心配をいたしますので、構造協議における両省の役割、日米双方における役割というものだけはここに明確にさせていただきたいと思います。
  284. 越智伊平

    越智委員長 これにて和田君の質疑は、中断の十七分間を延長し、終了いたしました。  次に、草川昭三君。
  285. 草川昭三

    草川委員 公明党・国民会議草川昭三であります。  まず最初に、日米構造問題協議の性格について、総理を初め外務大臣にお伺いをいたします。  この日米構造協議というものの性格でございますけれども、これはいわゆる国際約束ということになるのかということをお伺いをしたいわけであります。なぜそういうことを申し上げるかといいますと、昭和四十九年の二月の外務委員会で、大平外務大臣のときでございますけれども、国際間のいろんな約束があるんだ、例えば将来法律を改正する場合、あるいはまた財政的な措置が必要な場合、そういう場合には、少なくともこれはもう条約なんだという三つの見解が出ているわけでございます。これはもうまさしく、大店法の問題であろうと独禁法の問題であろうと、あるいは公共投資の問題等を含めまして、私は、大平外務大臣当時の三原則そのままの問題ではないだろうか、ですから、これは明らかに国際約束ではないだろうか、いわゆる意思表明というようなものではない、こういうように思うのですが、その点どのような御見解か、お伺いをします。
  286. 福田博

    ○福田(博)政府委員 ただいま先生お尋ねの、当時の大平外務大臣の発言になられました条約の国会提出の問題についての答弁、昭和四十九年二月二十日、衆議院外務委員会で行われておりますが、ここにおけるその条約の内容につきましては、かいつまんで申せば、憲法第七十三条第三号に基づき、その締結につき政府が国会の承認を経るべき条約の範囲というものは何か、及びその他の国際約束のうち、一定のものについては国会に報告すべきではないかという問題につきまして、第一に、国会の承認を経るべき条約について、名称が条約であるかどうかということにはかかわりはないが、承認を求めるべき第一のカテゴリーとしては、いわゆる法律事項を含む国際約束、第二が、いわゆる財政事項を含む国際約束、それから第三が、そのいずれにも当たらないが、国家間一般の基本的な関係を法的に規定するという意味で政治的に非常に重要な国際約束であって、それゆえに、発効のために批准が条件とされているものというものも国会の承認を求めるべきものであるということを発言されております。  それから、国会承認条約に該当するかどうかの基準はそのとおりとして、その承認を得た条約あるいは国内法あるいは国会の議決を経た予算の範囲内で実施し得る国際約束についても、行政取り決めとして締結はできるが、その一部については国会へ報告する場合があるというようなことを、簡単に申しますとそういうことをお述べになっておられます。  今回の中間報告というものがその条約あるいは行政取り決めに当たるかどうかということかと思いますが、この日米構造問題協議の中間報告は、日本とアメリカがみずからのイニシアチブでとるそれぞれの措置を記載したものであって、いわゆる条約等の国際合意文書には当たりませんので、したがって条約とかいうこととは関係なく、国会の承認の問題は生じないわけでございます。
  287. 草川昭三

    草川委員 ですから、その後を受けて立つわけですが、じゃ、これは参議院等でねじれ国会のいろいろな関係があるわけですけれども、もし中間報告の決定が実行されないという場合は、それはもう仕方がない、こういうことになるのですか。その点は特に総理大臣に御見解をお伺いをしたい、こう思います。
  288. 福田博

    ○福田(博)政府委員 問題は、その中間報告というふうに報告と書いてあるか条約と書いてあるかとかそういうことではなくて、要するに中身で判断すべきであるというのは先生おっしゃるとおりでございますが、ここに書いてあることを、仮に法律の改正を要するようなことがあってというか、事実あるわけでございますが、それについて政府がある決定をして国会にお諮りをする、そうすると、国会においてその審議の結果がどのようなものであっても、それによって政府がそれで対米約束に反するというようなことには、そもそもこの中間報告の内容がそれぞれのイニシアチブでとるべき措置を記載したものである以上、そういう問題は生じません。     〔委員長退席宮下委員長代理着席
  289. 草川昭三

    草川委員 そういう結論ですけれども、日米間というこの国際的ないわゆる協議の経過からいうと、そういうわけにはいかぬと思うのですよ、現実の問題としては。ですから私は、きちっと国会に同様な扱いをして承認を受ける、そしてそれぞれの心構えというものをしないと、日米間の将来の問題にかえって亀裂が生ずるのではないだろうか。そもそも前川レポートのときにも、前川レ ポートはいわゆる我が国の国際的なあれは約束だったのかどうか、あるいは、中曽根総理のときにこの問題については国会でも何回か議論になったわけですけれども、これはあくまでも私的諮問機関の問題であると言いながら、これは将来の日本の基本的な政策だと言う。だから、相手側はその気になって受けとめるわけですよ。ところが、さあ話し合いになると、今回の場合も、日本側日本側で記者発表をしなさい、アメリカはアメリカで記者発表をしなさい。でございますから、いろいろと詰めるとかなりの食い違いが出てくるわけであります。  さあ、この食い違いが一体この七月にどういうことになるのか。例えばきょうの新聞等でも、アメリカの国内では、最近改めてこの中間報告報道がアメリカ国内に流れることによって日本市場の不公平さが明らかになってきた、だから、そういうことならば要求を上乗せしようではないか、要求を上乗せすべきではないかという声が盛り上がっておるというような報道もあるわけであります。このような状況が続いていきますと、私は最終報告を控えて回答の上乗せをしなければならない状況が来ると思うのですが、その点はどうでしょう。
  290. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 今般の中間報告におきましては、先ほどから申し上げておりますように、日米双方がそれぞれ相手国から示されたアイデアを参考としながら、みずからこれまでにとった措置、今後とることを予定している措置を取りまとめたものでございまして、日米双方はさらに協議をして夏までに最終報告を取りまとめることになっているわけでございます。  政府といたしましては、今回の中間報告は極めて重要であると認識しておりまして、現段階において私どもとしてとり得る最大限の措置を盛り込んだところでございます。今後、基本的には今回中間報告に盛り込んだ内容の具体化作業が最終報告に向けての作業となると考えております。
  291. 草川昭三

    草川委員 この問題についてはかみ合うことがないと思うので、残念ですけれども次の方に移ります。  日米構造協議で日本側から米国に対して、俗に言うところのLBOというものの問題提起をいたしました。その背景を、私の方から答弁を求めておるとかえって長いのでごく簡単に申し上げますと、LBOというのは、買収対象企業の資産というのを見合いに調達をした借入資金に買収資金の大半を依存するということのようであります。一口で言うならば、企業を買収する、その相手の財産をひとつ担保として金を借りてきて、やろう、こういうことで、それは決して健全な企業の発展ではないだろう、考えたらどうでしょうかというので、日本側がアメリカに問題提起をした。アメリカも米国経済に対する悪影響を避けることの必要性は認めておるというのがどうも向こう側の答弁のようでございます。  そこで私が言いたいのは、この問題を日本に置きかえてみると一体どういうことが現実に行われているのかということを一つ事例研究のためにも申し上げてみたいと思うのです。  もう新聞等でも随分紹介をされておりますが、日本で国際航業という会社があるわけでございます。この会社が日本では初の敵対性のあるMアンドAというのですか、要するに企業買収ですね、しかもそれは敵対性の第一の事例だ、こう言われておるわけであります。  なぜこの委員会で一企業の名前を持ち出したのかという背景を説明をする前に、大変この会社は公共的な影響力のある仕事を建設省から受けておるわけでありますから、国際航業という会社の資本金、売り上げ、あるいはまたそこの副社長に建設省からもOBが参加をしておりますから、その事実だけお伺いをしたいと思います。
  292. 望月薫雄

    ○望月政府委員 国際航業でございますが、この会社は測量業者でございます。測量業を営む者は測量法によって建設大臣に登録するということになっておるわけでございますが、その関係書類によって御答弁を申し上げさせていただきますが、創業は昭和二十二年九月十二日、資本金が百六十九億円、これは平成二年三月末現在でございます。売上高は六十三年度で約三百九十四億円、従業員が千百十一名、こういう状況になっております。  なお、今お話の中にございました、建設省にかつて籍を置いた者の在職状況でございますが、副社長に三浦孝雄氏がついております。この三浦氏におきましては、昭和四十八年の七月一日、当時の建設省計画局の技術調査官、こういったポストを最後に退官されまして、その後昭和五十五年の九月に入社しておると承知いたしております。
  293. 草川昭三

    草川委員 この会社は、今も答弁がありましたように三百九十三億というような年間の売り上げをする、そして航空測量会社の大手でございまして、官公需が九割を占める、こういうような会社であります。この会社が、有力な旧コーリン産業、現在では光進と言われるわけでございますが、この企業に買い占められた、こういうわけでありまして、このコーリンが一七・五五%、そしてその中心人物である小谷さんというのが六・二一%、こういう株を持っているわけでございまして、実質的に支配が移ったわけであります。  この国際航業というのは技術者集団では大変立派な会社でありまして、数が多いだけではなくて、多数のノーハウを蓄積をしている高度な企業であるわけであります。一大頭脳集団と言ってもいいわけでありますけれども、これが乗っ取られた。ところが、乗っ取られたわけでありますから、その企業が乗っ取られてますます発展をするための企業買収、買い占め、乗っ取りならばこれはいたし方ないわけでありますけれども、実は、その資本というものが食いつぶされていくのではないだろうか、社会的な信用が失墜をするのではないだろうか、従業員にとってみると借金の肩がわりあるいは返済のために働くことになるのではないだろうか、千四百億の資産というのが不良債権に変わるのではないだろうか、もう既に半分ぐらいに資産というのが、損失というのですか少なくなってきておる、社会的な損失ではないだろうかというわけで、労働組合もいろいろと反対の声明を出しておるようであります。  しかも、この企業に対するさまざまな問題というのが既に新聞等にも出ておるわけでありますから、詳しく承る必要はございませんけれども、ごく簡単に、現状が一体どうなっておるかということだけ、ひとつそれぞれの省庁の方から、私の問題点を証明する形で御質問したいと思うのです。  まず国税庁に、この新聞報道によると、国際航業の株に絡んで国際航業の元役員ら六名、石橋紀男、浜口博光、脇坂嘉紀、酒井永治、山口明志、瀬戸恒貴の査察調査を行ったんではないだろうか、こう言われておりますが、その結果検察庁に告発をしたとのことでありますけれども、そのことは事実かどうかお伺いをしたい、こう思います。
  294. 岡本吉司

    ○岡本政府委員 既に新聞等各紙で報道されておりますので、やや周知の事柄かとも存ずるわけでございますけれども、昭和六十三年の暮れから平成元年の春にかけまして、ただいま先生お名前を挙げられました方々につきまして所得税法違反の疑いで東京地検に告発したのではないか、今こういう御指摘がございました。御指摘のとおりでございます。
  295. 草川昭三

    草川委員 法務省の方は、答弁どうでしょう。
  296. 根來泰周

    根來政府委員 そのとおりでございます。
  297. 草川昭三

    草川委員 この山口さんというのはいろいろと名前が出てくる方でございますけれども、また瀬戸恒貴という方も三井信託銀行におみえになった方で、七億の脱税だ、こう言われています。瀬戸恒貴さんなんというのは、実は買い占め側の企業の融資の窓口になっている三井信託銀行の支店の次長だった。ですから、買い占め側と三井信託というような大きな会社とが、ある程度買い占め資金ということを承知をしていて融資をしたのではないだろうか。あるいはまた石橋、浜口、脇坂、酒井、こういうような方々はそれぞれ国際航業の元役員であります。だから、いろいろな事情を知っていて脱税をするということになってくると、 インサイダー的な問題ではないだろうかというようなことも出てくるわけであります。一体そういう、そういうという言葉は言葉が多いのでありますけれども、例えば、言われるところによりますと石橋氏は六億円、浜口氏は三億一千万円、脇坂氏三億八千万円、酒井氏二億五千万円、こういうようなのはいわゆる自社株の防戦買いで便乗してもうけたのではないだろうか。しかも、自社株というのは持ってはいけないということになっておるわけでありますから、子会社を使ってその株を購入する、まあ防衛をする、こういうことになるわけでございますけれども。  ここに株式売買の予約覚書というのがあるわけでありますけれども、これも、子会社に対して株を持ってもらいたい、例えばここの場合は十万株を持ってもらいたいという売買予約書があるわけでありますけれども、「貴社が当社に対し上記株式の買い取りの申し出をされた場合には協議の上、利子をつけて金利相当額を加算した金額で引き取る。」というような約束の覚書もあるわけでありますし、さまざまな問題があります。  こういうことは、子会社といっても一〇〇%出資の子会社でありますけれども、この子会社の持ち株比率を少しずつ下げていくというような工作もあるわけでありますが、こういうことになってまいりますと、これはもう明らかに私は現在の商法に反するのではないだろうかと思うのですが、子会社が持ち株を持つというようなことについて商法ではどういう指摘をしているのか、これも法務省にお伺いをしたい、こう思います。
  298. 清水湛

    清水(湛)政府委員 お答え申し上げます。  子会社による親会社の株式の取得は、商法二百十一条ノ二で禁止されております。この場合の親会社というのは当該子会社の株式の過半を所有する、こういうのを親会社というわけでございます。先ほど先生指摘のように、一般に株式会社につきましては、会社は自分の会社の株、つまり自己株を取得することを禁止されております。これは、自己株を取得いたしますと実質的には、それは出資の払い戻しに該当する、すなわち資本の空洞化を生ずる、資本の維持の要請に反するということから禁止されているわけでございまして、このようなことが親会社と子会社の関係にある会社におきまして、子会社が親会社の株を取得するということになりますと、実質的にはそれと同じような関係が生ずる、つまり、資本の空洞化を生ずるというようなことからこれが禁止されているわけでございます。  そのほか、例えば親会社株式につきまして不当な株価操作をする。つまり、みずからは自己の株式を取得することができないけれども、子会社に対する支配力、過半の株式を持っているわけでございますから、支配力がある、そういうものを利用いたしまして株価操作をする。あるいは、いろいろな内部の者しか知り得ない情報というものがあるわけでございますが、そういう情報を利用いたしまして、支配力の及ぶ子会社をして株の取得あるいは売却をさせるというようなこと、そういうような親会社がいわば子会社を不当に支配するというようなことを防ぐ、こういうような趣旨から、子会社による親会社の株式取得を禁止しておる、こういうふうに立法の趣旨を理解しているところでございます。
  299. 草川昭三

    草川委員 ここにことしの三月七日の、国際航業の管理本部長の竹川さんという方がある企業に弁解がましい文書を出しているのがありますけれども、株の売買はほかの金を使ったのだという一種の弁解の文章でありますけれども、こういうのを見てみますと、この会社というのは四月、五月、六月に官庁からの入金で潤沢になる経常資金の余資というものを株に運用しておるのだというような説明文があります。この返済、お金を借りた会社に対して金融機関への返済が予定より遅くなったこと、不動産の購入がよい物件がないため計画どおり進まなかったことにより会社全体の資金に余剰が出たので、短期的に光進グループに有利な資金運用をしてもらったのである云々というような言い方があるわけです。  これはごく口元のところの資料を申し上げたわけで、一般の方には何を言っておるかおわかりにならないかもわかりませんが、私はここで問題提起をしたいのは、先ほど来から申し上げておりますように、日本の企業というのは買収、買い占めということを予期していないのが普通なんですよ。ところが、もうこういうように経済がどんどん変わってくると、そういうことはあり得るわけです。そのために、それぞれ企業というのは大変この経営ということに身を引き締めてかからなければいけない。それはそれでいいのでございますけれども、あるときに、買い占め側が膨大な資金が要るわけでありますから、一般の市中銀行から金を集めてくる。市中銀行も運用したいために、買収資金だということを承知の上でお金を貸してくる。そしてまた、その金で株を売り買いする。お互いに防衛戦とかということがありますから、株式市場というのは乱高下をする、乱れることになる、一種の仕手株もそこに参加をする。非常に金融市場が混乱をするのではないだろうかということになってまいりますと、私はこれは一企業の問題ではない。しかも、この企業というのは官公需九割を受けている日本でも有数な企業でありますから、こういうものを放置するということがいかがなものだろうかというのが私の問題提起なんです。そういう意味で大蔵大臣の意見を賜りたい、こう思うのですが、どうでしょう。
  300. 土田正顕

    ○土田政府委員 金融に関するお尋ねにつきまして、私の方から申し上げます。  お尋ねの会社につきましてどのような銀行が取引をしているかというようなことは、やはり個別取引に係る問題でございますので、答弁は差し控えるべきものと存じますが、例えばこの有価証券報告書によれば、平成元年三月末の国際航業の借入金総額は約二百九十三億円となっております。それの借入先の銀行名も上っておるようでございます。いろいろな問題がございましたが、自社株の取得資金を融資したりするというようなこと、そのような融資態度は問題があるのではないかというようなお尋ねであろうかと思います。  これにつきましては、やはり銀行の融資につきましては、やや一般論でございますが、銀行業務の公共性というものを踏まえまして、また健全経営を確保するという観点から、担保その他の判断も含め原則はやはり銀行がみずからの経営判断において決定するのが基本でございます。自社株につきましての説明は法務省からあったわけでございますが、これも一般論でございますが、金融機関はその公共性にかんがみまして法令違反となるような行為を行ってはならないことはもちろんのことでございますし、さらに取引先がそのような行為を行っていることを承知の上で融資などを行うことによってこれに加担するということも厳に慎むべきであることと存じます。  ただし、この辺は銀行のみずからの経営判断におきまして、法律に抵触しないというようなことを確かめていろいろと行動をしているというようなことが通例であろうと存じますが、詳細本件についてはまだ存じませんし、それ以上の答弁は差し控えたいと存じます。
  301. 草川昭三

    草川委員 今私が申し上げたように、取引銀行の支店の次長の脱税容疑というのが明らかになった。それは株の売買による差益というものを申告しなかった。そういう情報を知り得たというのは明らかにインサイダーではないだろうか、しかも、それは窓口であるところの本人だ、これはもう都市銀行の有名な銀行ではないだろうかというので私は一つの例を出し、国税も起訴した、こう言っておるわけですから、今の銀行局の答弁では我々は納得をしない、こう思うのです。現実にそういうことが起きておるのではないでしょうかということを私は問題提起をしておるわけであります。  この問題も余り長くなってもあれでございますから、要するに私なりの意見をまとめてまいりますと、国際航業というのがコーリン、今の光進というものに買収、乗っ取りをされた。このことに対して非常に旧経営陣というものがびっくりして 自己株、自社株の取得、いわゆる防戦買いをした。これはいわゆる商法四百八十九条違反ではないだろうか、会社財産危殆罪というような言い方があるんだそうでございますけれども、また、今申し上げた金融機関による防戦買い幇助、不正融資の疑いあり、あるいはまた国際航業首脳部によるところの背任というようなものもあるわけであります。これも既に一部新聞等に出ておりますけれども、乗っ取り工作を防ぐ意味でいろいろと金を使っているということが明らかになっております。あるいは具体的なことは申し上げませんけれども、政界、官界への利益供与の疑いというのが既にいろいろと言われているところであります。要するに、こういうような企業の乗っ取りあるいはまた株の取引、特に中には転換社債の発行という、百億の転換社債の発行もあるわけでありますけれども、その問題をめぐってさまざまなことが指摘をされているわけであります。  我々は、リクルート問題についてあれだけ本国会でいろいろと反省をしておる、あるいはまた改めようとしている、しかし一方では相も変わらずそういうものが出てき、そこの中に政治家の名前も散見をするような形が出ています。ということになりますと、一体日本のこのような一流企業、社会的ないろいろと責任のある、社会的な必要のある企業が、大変問題というよりもいろいろな問題が出てきておるわけでございますが、こういう事例が今後ふえるということになると私は大変なことになると思うのでありますけれども、その点についての総理の見解をひとつここで賜っておきたい、こういうふうに思います。
  302. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 詳細についてはよく承知しておりませんし、今お話をここで承っておったその感想でありますけれども、企業の買収という問題については、日常茶飯事で行われる国とそれが行われていない国との相違等もあって、今度の日米経済協議のときにも、いろいろな意見の中に持ち株の五%条項の問題その他について議論のあったことは、委員も御承知のとおりだと思います。ただ、それが経済行為の範疇を超えていろいろおしかりを受けるような、また、法に触れるようなことに踏み込んでいくことは、これは断じてよくないことであるということを感じながら、今御質問を聞いておったところでございます。
  303. 草川昭三

    草川委員 そういうことが私は今後多くなると思うのです、正直な話。だからこそ、日米構造問題で日本側も問題提起をしたり、あるいは向こう側からも問題提起がある。だから、これは今非常に遠い存在のようですけれども、このようなことが多くなると我々は腹に受けとめて、これからの企業経営なり、あるいは社会的な責任なり、金融上の対応ということをきちっとしなければいかぬ、こういう一つの事例だと思うのです、私は。だから、あえてこの問題を申し上げたわけであります。  そこで、同じようなことになりますが、実は日米構造問題の中で、アメリカ側の要求というのに一般個別企業の要求というのが非常に鋭く反映をするような事例があるのではないかと思うのです。  アメリカの場合は、どちらかというと企業と議員、そして議員からまた大統領、こういう形の声がたくさんある。ところが、日本側は御存じのとおり個別企業の問題について、どこどこにこの企業の仕事をやれなんということはめったに私はないと思うのです。もうリクルート問題もしかりあるいはロッキード問題しかり。だから、日本の国会議員とアメリカの国会議員とは、私はこの日米構造問題でいろいろとこうお話を聞いておっても多少違う点があると思うのですね。だけれども政府間の問題になってきますと非常に鋭いやりとりになってくるわけでございますけれども、要するに企業個人の個別要求というのが向こう側には目立ち過ぎるのではないだろうかと思うのですが、その点はどうでしょう。
  304. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 日米構造協議と申しますのは、何度も申し上げておりますように日米双方が相手の話を聞きながらみずからのイニシアチブでとる措置というものでございまして、これをまとめたのが中間報告でございます。  今のお話で、アメリカのアイデアというものが、議員と企業と非常に密接な関係のものが非常にストレートに出てきているという趣旨のお話かと思いますが、私ども、アメリカのアイデアを聞くに当たって必ずしもそういうふうには聞いておりません。アメリカが求めておりましたのは、外国の企業の参入または物の参入がよりスムーズになるような経済をつくってほしい、一口で言えばそういうようなことで今回の話し合いが行われたわけでございます。
  305. 草川昭三

    草川委員 そこで、この日米構造協議の向こう側の要求の中に、これは細かいのは新聞等で出たわけでありますけれども米側が中部新空港に大変興味を持って、五カ年計画の間に実施をしろなんということがあったわけですが、中間報告にはそれは消えているわけであります。だから私は、なぜその中部新空港等に興味を持つのかという意味で、例えばアメリカのべクテル、こういうような大きな空港コンサルタントが問題提起を持ち出したのではないかということを申し上げておるわけです。だから今の質問をしたわけです。  そこで、その問題はいいです。今のような答弁で、総理、結構なんですが、問題は、中部新空港を国のプロジェクトにするためにクリアすべき問題があると私は思うのです。特に、地元は大変な熱意を持っておりますけれども、中部地域全体が世界に知られて中部新空港に飛行機を飛ばしたいという声が上がってこなければいけない。過日、第一回の質問のときに、まずそういうことよりも関西空港を中心にすべきだというような御発言が与党の方からもあったようでございますが、私はやはりこの際、中部という問題について総理の見解をしっかり承っておきたい、こう思うのですよ。特に、先般来与党の幹事長がわざわざ名古屋へ来て、バックアップするというようなことも言っておみえになりますので、その問題についてお答えを願いたい、こう思います。
  306. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 国全体の姿を見て、今、日本にあります国際空港、それを中部に置いたらどうか、それは産業集積の非常に多い地域でもありますし、また、地理的に見ても中部に一つぐらい国際空港があって窓口が開かれることは国の健全なバランスある発展のためにも私は必要なものだ、こう個人としては考えておりますし、また、地元の熱意、要望が非常に強いことはよく承知をいたしております。また、地元で多くの方々がこれを促進しようという、私も一員となり先生も一員となりこの願いを届けようと努力をしてきておることもこれは間違いございません。したがいまして、そういった国全体の立場から見てもこれは必要があるんだという気持ちで頑張っておりますので、どうぞ御理解と御協力をお願いしたいと思います。
  307. 草川昭三

    草川委員 そこで、これは運輸省にお尋ねしますが、日米構造協議の最終報告が七月でしょう。ところが、航空審議会のスケジュールというのはたしか八月ですね。そうするとこの航空審議会の結論というのは前倒しになるのか。やはりこの七月の日米構造協議の最終報告に間に合わさせなければいかぬと思うのですが、その点について運輸省の見解を賜りたい、こう思います。
  308. 丹羽晟

    ○丹羽政府委員 お答え申し上げます。  航空審議会でただいま第六次空港整備五カ年計画の御審議をいただいておりますけれども、これは今先生の御指摘のように、ことしの八月にその中間取りまとめをいただきたいということで審議会の方にお願いする予定になっておりますが、日米構造協議との関係におきまして実質的に関係の深い部分ということが出ることも予想されますので、その航空審議会におきます審議の内容につきましても、できるだけ精力的に取り組んでいただくようお願いするつもりでおります。
  309. 草川昭三

    草川委員 それは前倒しにならざるを得ない、こういうことですね。これは運輸大臣ちょっと、あなたも地元ですから、あなたからひとつ答弁してください。
  310. 大野明

    ○大野国務大臣 ただいまも総理から新空港については御答弁あったのですが、今また七月の日米構造協議に八月の中間的な航空審議会の答申では間に合わぬじゃないかということですが、その点は米国側との交渉の過程においてやっていただけるようにしたい、こう思っております。  いずれにしても、私も総理同様、それから草川先生同様地元の代議士でございますから、運輸大臣というよりも地元の代議士として、何としてでもつくらなきゃならないということで前々から私もその一員としてやってきたから事実関係を言っているだけなんで、運輸大臣になってからいろいろと、地元で考えるほど簡単なものじゃないという、検討課題もあるなということも今感じております。しかし、それをクリアしてやっていくのがこれはやはり国家のためですから何としてでもしなきゃならぬ、こういう考え方に立って、前任の江藤運輸大臣が名古屋における一日運輸省におきましても、また昨年十二月ですか、先生が決算委員会で質問しておりますね、そのときにも六空整にのせるんだというような力強い答弁もしておるようでございますし、また同時に、私は長期的展望に立って行う航空審議会においてこれらを取り上げてもらえるように最善の努力をしたいと考えております。
  311. 草川昭三

    草川委員 じゃ、話題を変えて農業問題に入ります。  私がきょう農業問題、特に国際化の中での全農のあり方という問題提起をする基本的な第一歩は、農家子弟の新規学卒者の動向が、昭和三十八年時代は後継ぎをしようという農家子弟が約九万人いたんですね。ところが、平成元年になりますと二千百人しかいない。やがて二千人を割ろうとしておる。一体日本の農業はこういうことでいいのだろうかというのがそもそもの発想であります。  それで、農業白書が出ましたけれども、農業白書も随分厚いものでありますけれども、やる気のある農業者たちを育てていく、農業の新しい芽がたくましく生育する環境を考えることが必要だ、こういうようなことも言っておりますし、日本の農作物が輸入農作物に対抗するためにはやはり生産性を高め、コストを下げることが緊急課題だ、同時に品質の向上や安定供給も欠かせない、いろいろなことを言っておるわけでございます。  実はある農協の、これは単位農協でありますけれども、二千人から三千人の単位農協の組合長が私に、良質米奨励金をもらっておるんだけれども、良質米奨励金に全農の手数料がかかっているんじゃないかという質問があったんです。私は、これは大変だというので、そんなばかなことはないよと言って調べて、裏日本のいろいろな米どころの農協もお伺いをいたしてきました。単位農協といっても三千人ぐらいの農協なんです。一晩かかっても良質米奨励金に全農の手数料がかかっているかどうか明快な答弁がないんですよ。仕方がないので翌日、県の経済連へ行こうやと言って経済連へその組合長と行ったんですよ。県の経済連の部長と話を二時間したんです。いや多分かかってないと思うんだけれどもと言ったから、いや建て値の中に良質米奨励金が入っておるじゃないかと言ったら、うーんとこう言うわけですよ。一時間ぐらい話して、最後に係長を呼んできたら、係長が、実は全農の手数料〇・四は入ってない、こう言うわけです。そこで一日半かかったんです。  それで、一体どういうように引き算があるんだ、良質米奨励金から天引きなんかできぬことになっているんじゃないかと言ったら、いや実はいろいろな規則があって、引いてもいいんだ、良質米奨励金の交付要領なんかがあって、いろいろな前払いをした場合には後で精算することができる、ただし本人の了解が要るんだよというようなことが一日半かかってわかった。それで、一体どれだけ引かれておるんだと言ったら、ここにあるのでございますけれども、何と驚くなかれ、控除金は全部で三十三項目引かれるんですよ。これは私自身は百姓でも農家でもありませんからあれですけれども、三十三も引かれちゃお百姓さんはわからぬでしょう。青年労働者、青年がこんな数字を見て、おやじ、農協から幾らもらったんだと言ったら、何かわからぬけれども、これだけ引かれるとこれしかない、これだったら跡継ぎなんかできませんよ。だから私は、概念的に言うならば、夫婦そろって一年間の収入は一千万ぐらいあるんだよと言えば、若い青年は農家の跡継ぎになりますよ。だから私の原則は、安い米であろうとおいしい米であらうと我々は手に入れることは大歓迎だけれども、大根つくる人、菜っぱつくる人がいなくなるのは困るというのが私のスタンスなんです。  そういう立場から、私はずっと歩いてきた結論をちょっと申し上げますと、何といっても全農が悪いと思うんです、全農が。全国連の体質というのは実に悪い。全国連の売り上げというのは今年間六兆円。日商岩井に近い。日商岩井はちょっと差がありますけれども、兼松江商とほぼ同じですよ。これで一体末端の農家が六兆円の規模の組織に対してああやってくれ、こうやってくれと言えますか。安い肥料が買いたい、安い段ボールが買いたいということを言えるわけがない。そして、農協の経理については今から申し上げますけれども、まず第一に私が申し上げたいのは、具体的な事例で言うと段ボールからいきます。  お百姓さんは菜っぱをつくる、大根をつくる。段ボールへ入れます。単位農協は安い段ボールを買いたいでしょう。買えると思いますか。総理大臣、買えると思いますか。買えないんですよ、安い段ボールを。事実、私の選挙区にはたくさんの段ボール会社がありますから、おい、安い段ボールをあの農協が欲しがっているから一緒に行ってくれというので、私行ったことがある。そうしたら単位農協の専務さんがおっしゃるには、草川さん、あなた素人ですね、私も安い段ボールが欲しいんだ、しかし買えないのです。なぜか。県の経済連へ言ってくれ。県の経済連へ言ったら全農に言ってくれ。全農は、御存じのとおり段ボールの委託加工をやっているわけですよ。たくさんの段ボール会社があるんだけれども、段ボールなんというのは私どこでも同じだと思うんですよ、言っちゃ悪いですが、今は通産省がきちっと規格をつくって、JISという規格があるんだから。  ところが農協に言わしてみると、いや、だめなんだ、荷物を積んだときにつぶれるかもわからないから、我々が一々きちっとした規格の指定をしなければだめだと言って、まず全農が認めた材料をメーカーから段ボール会社に全農が売るわけですよ。そこでマージンを取るわけです。それで段ボール会社がその段ボールを使ってこういう何というのですか、ライナーというのですけれども原紙をつくって、それを中小企業の段ボール屋さんが中しんを入れて、それで加工をするわけです。それをまた経済連へ卸し、マージンを取って、ダブルでマージンを取って、そして県から単位農協にそれがおりてきて、マークをつけて、大根であろうリンゴであろう、いろいろな野菜を売るわけです。だから、単位農協では幾ら安い段ボ!ルがあっても買えないわけです。だけれどもお百姓さんは買いたいわけですから、買おうとするわけです。当たり前でしょう。  そのときに、ことしの一月十一日に公正取引委員会が公取違反だということを言ったわけですが、こういう例がありました。全農が指定メーカーに対し段ボール箱を直接農協や出荷組合に販売しないよう指示した件、こういうものがある。全農は、何々段ボール会社はこの県しか売っちゃいかぬよという指定をするわけです。全国売っちゃいかぬ、こういうわけですから、その県しか売れないわけです。よその県で売ろうとすると、ばんと怒られるわけですよ。原紙の支給をとめられるというようなこともあるわけです。よその県に売ろうとすると、全農がそのメーカーに原紙を搬入させないわけですよ。だから公取がけしからぬ、こう言ったわけです。あるいは指定メーカーでない者も、農協なんか勘弁してくれ、私は自分で段ボールをつくるという会社はたくさんあります。その会社がどこかの農協に、これは安いから 売ってくれと言って買おうというと、それもだめだ、こう言うわけです。それも公取は公取違反だ、こう一月に言ったわけですよ。  しかも、中にはしっかりとした単位農協の組合長がいるから、よしわかった、全農なんかほっておいて、私と段ボール会社と話し合いをして段ボールやろうや。どこかで板紙だけ買ってきて、うちだけで、あなたの農協だけで買ってくれよ、やろう、こういうわけです。そうすると、そのメーカーにこの原紙を提供している親元のメーカー、そのメーカーに、おまえ、けしからぬじゃないか、なぜあのアウトサイダーの段ボール会社にこの段ボールの原紙を支給するのか、こう言って怒るわけです。それもけしからぬと公取が言ったわけですよ。  さらにもっとひどいのは、そういうことをおいておいて今度は農協が、まあ何だかんだ言うけれども中にはへそ曲がりの段ボール屋がいて、その単位農協に売るわけですよ。これでひとつミカンの箱をよそより安いからやりなさいと言って強引にやらせると、周辺の単位農協は怒るわけでしょう。あの農協だけ安い段ボールを買えるじゃないか、私のところは買えぬじゃないかと言って県の経済連に文句を言うわけです。県の経済連は全農に文句を言うと、全農はどういうことをやるかというと、市場調整金という金を、つかみ金をその周辺の農協に渡すわけです。周辺に、おい、ちょっとおまえ文句を言うなよ、隣の農協は安い段ボールを買っているから、おまえさんは高いから、高い差額分だけは市場調整金だといって全農がくれるのですよ。  その全農が払うところの市場調整金は、全農の自分の懐から払えばいいですよ。そうではなくて、今度は段ボールメーカーを呼んで、おまえら、こういうアウトサイダーがいるから、けしからぬから、おまえさんたち市場調整金を負担をしろ、こうやるわけですよ。アウトサイダーが安い材料を売るからそこの農協だけはもう得をする、周辺が迷惑をするから迷惑料を自分の懐から全農が払うというならまだいざ知らず、その市場調整金を親会社に、おまえら、仲間がだらしがないから、変なことをやるから、乱すから少しよこせ、こうやるわけです。ということを公正取引委員会は一月の十一日に不公正なやり方だというので処置をしたと思うのですが、私の言っていることがいいかどうか、公敗の委員長からお答えを願いたい、こう思います。
  312. 柴田章平

    ○柴田(章)政府委員 事実に関することでございますので、私から申し上げたいと存じます。  先生今御指摘のように、公正取引委員会全国農業協同組合連合会、これが東日本において青果物用の段ボール箱、それから段ボール原紙メーカーとの取引に関しまして、今先生から御指摘がございましたような取引がございましたので、こういう事実が認められましたので、ことしの二月二十日でございますけれども当該行為の排除を命ずる審決を行っております。
  313. 草川昭三

    草川委員 今のようなことでございますから、これは、私が言っているのは勝手なことを言ったわけだが、現実はそういうことなのです。だから若い青年が、農業青年が跡を継がないわけですよ、そういう不合理なことがわかるから。当たり前でしょう、今の若い青年というのはみんなしっかりしているのだから。どこかおかしいと、こう言っておるわけです。その声が県の経済連にも通じない。まして全農の本部に行かないですよ、年間六兆円の大組織だから。とてもそんな現場、末端の農民の声というのは反映しない。  こういう点について、行政監察の方からはさまざまな指摘がなされているわけであります。行政監察の指摘については、きょうは時間がございませんので、もう皆さん方御承知のとおりですから細かい点を後で聞きますけれども、行政監察も、いいかげんにしなきゃだめよ、こういうことを言っておるわけでありますが、同じように私は、肥料もそういうことが言えるわけでございます。  言わずもがなの話ですが、通産省にちょっと念のために聞きます。  全農はこういう段ボールを使うのに、いやいや、JISであろうと何であろうとだめなんだ、荷崩れなんかしないような箱にしなければいかぬためにわざわざ全農がこの材料を指定するのだよ、こう言っておるので、通産省に聞きますが、何のためのJISなのか、規格なのか。今の通産省の規定をしておる段ボールでは荷物を積んだらもうくしゃくしゃに崩れてしまうのか、そういう程度の通産省の指導なのか、そうでないのか、一言だけはっきりしておいてください。
  314. 南学政明

    南学政府委員 段ボールに関しましてJIS規格が古くから設けられております。段ボール原紙、シート、箱等について設けられておるわけでありますが、それぞれにつきまして、例えば圧縮の強さ等の品質、それから用いるべき材料、品質を維持するための試験方法等が詳細に決められております。これらのJISに適合し、かつ使用目的に合致しておれば、品質上私たちは問題はないものと考えております。
  315. 草川昭三

    草川委員 今通産省が説明したとおり、今の日本の技術力はしっかりしておるわけですから、わざわざ全農がダブルマージンを取って一々段ボールの検査をしなくてもいいという、私は裏腹だと思うのです。私は全農をえらくたたいておりますけれども、普通のそこらの、興味的に全農をたたくつもりはありません。やはり協同組合をつくったときの、戦前の苦労をした農民の協同組合精神というのがこう大きくなってきておるわけですから、それは高く評価するけれども、今のような事例は明らかに私はおかしいと思うのです。そうでしょう。その点、農林大臣どうでしょう。
  316. 山本貞一

    山本国務大臣 いろいろ御指摘がございましたけれども、若い人が全農に対する不信感を持って、それで跡継ぎが出ない、これは先生の非常に鋭い御指摘ですけれども、私は、それだけではない、足腰の強い農業、将来の展望の明るい農業をつくっていくことに対して若い者が不安を抱いたり不満を抱いている、その中に今の全農の問題も一つとしてあるのではないかというふうに思っておりますので、そこで、今先生が最後におっしゃった、農協精神というものが今やどこに行ったんだ、こういう御指摘でございますが、私はその点につきましてはやはり同感の点が多いのです。  そこで、原点に返りまして、こういう難しい農業事情、農政の状態でありますから、しかも若い人がこれから継いでいってくれるかどうかということも非常に心配される厳しい農業の現状でございますから、ひとつ農協精神の原点に立ち返ってしっかり頑張るように系統農協に対しまして強力に指導していきたい、こういうふうに考えております。
  317. 草川昭三

    草川委員 系統三段階、単位農協、経済運、そして全農、これを見直すべき時期が来たと思うのです。戦後の大変立派な時代があったと思うのです、この三段階というのは。しかし、もう明らかに邪魔になってきておる、時によっては。一つ少なくても、外してもいいじゃないかという声があるわけです。  それで肥料の問題も、繰り返し申し上げませんけれども、肥料の輸入価格と国際価格を比較をすると、少なくとも裸で比べてみると三割は違うのです。高いものを買っておるのです。じゃ全農が高いマージンかけているかというと、そうじゃないのです。平均して一二・二か三でしょう。一般の商社は少なくとも消費税の関係からいったって二〇ですから。もっと上じゃないですか。二五、六でしょう。だから、全農のマージンが低いということにもかかわらず今のこの肥料が高いというのは、高い仕入れをやっておるということなんです、全農は。高い仕入れをやっておるわけです。それで、我々が肥料のカルテルをやめろと言って、安くしろと言ったときに、全農は物すごく反対したのです。なぜ反対かといったら手数料が減るから反対だと言ったでしょう。農民の安い機材を買いたいというのは、これはどこか行っちゃったわけですよ。これは真剣に本当に考えてもらわなきゃ困ると思うのですよ。  例えば今の市場調整金というのはどこから出て くるかというのを私調べてみたら、全農というのは六兆円の規模ですけれども、俗に言う貸借対照表、損益計算書では約一兆円の姿で出てくるのです。その一兆円の中でも、支払い手形が大変多いんですね、千百三十億。未払い金が四千三百十二億。六兆円規模だからそんな程度の未払いがあったって仕方がないというのだけれども、お百姓さんは現金で肥料を払っているでしょう、末端では。もちろん予約ですけれども。下から現金が上がっていくんだけれども、上の方へいくと支払いは、肥料は月二回払いで三十日から四十五日払い、農薬は月二回払いで百二十日手形、農業機械は月一回払いで九十日手形、今の段ボール箱、月一回払いで九十日手形です。三カ月でしょう。金利を稼いでいるわけですよ、全農は。  そしてもっと驚くべきことは、一兆円の負債及び資本という姿ですけれども、事業雑収入に七十三億持っておるんです。雑収入ですよ。七十三億八千九百万円。これは今度のものですよ。事業雑収入の七十三億というのは一体何かというと、メーカーからのバックマージンなんですよ。バックマージン取って、先ほど言った、うるさい場合は頭なで賃を払うわけですよ。そうでしょう、これ。私は、この事業雑収入の内容を明らかにしろ、こう言っておるのですが、これはほとんどは、九割はメーカーからの納入金です。一兆円規模の企業で、私が先ほど申し上げましたように日商岩井と比べてみたり兼松江商と比べてみたんだけれども、明らかに全農の方の未払い金は大きいですね、率でいうと。しかも、どこの会社を探しても事業雑収入七十三億、取引先からバックマージンを取るような企業は全農だけです。企業ではありませんけれども、組織は全農だけですよ。  こういう姿というのは、少しみんなで、これは与党も野党も我々は農業問題についてここの議論をしたことないわけですよ。みんな遠慮しているわけですよ。私にも、おまえやめると言うのですよ、応援団が。全農とけんかしたっておまえつぶされるだけだからやめろ、こう言うのだが、いいじゃないか、つぶすならつぶしたっていいじゃないですかと。明らかに農民はそういう声を求めておるのですから、農民というか、本当に額に汗して働く人たちは。しかも、若い人はそういう農協であってもらいたい、終戦後の、あのみんなはだしで夜の公民館に集まって日本の農業はどうあるべきかといった議論をした農協にしなければだめだ、こういうわけですよ。全国で役職員を入れると三十五万人、正規職員が三十万、十人に一人じゃないですか、今農業人口との比率からいえば。しかも、農協というのはもう営農指導が非常に少なくなってきた。信用事業に依拠せざるを得ない。信用事業だって今の経済状況から考えればだんだん下降線でしょう。膨大な組織だけ残っておるのです。  私は、裏日本の経済連どこにあるかと行ってみたら、県庁より立派ですな、農業協同組合会館というのは。これはどこか絶対狂っていますよ。だから、そういうことは今のうちに我々が本当に反省をしながら、言いにくいことを言いながらやっていかないと日本の農業というのはない。だから、米の自由化どうのこうのと言う前に、私はこの種の議論を真剣にやることが大切だと思うのですが、農林水産省の方もいろいろとやっておみえになることは十分承知をしておりますけれども、あえてこの問題を提起したわけです。この点について総理の感想をひとつこの際聞かせていただきたい、こう思うのですが、どうでしょう。
  318. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 草川委員が自分で足で歩いて肌で体験されたお話ですから私もじっと承っておりましたが、これはやはり今の日本の農協の中にある光の面と影の面とあるとするなれば、影の面の一番よくない面が凝固されておるのではないだろうか。もう公取から二度とそういった不公正な取引という指摘を受けないように、組合自身も初心に返って本当に農民のためになる仕事をしていただきたいということを私は心から願います。
  319. 草川昭三

    草川委員 公取の委員長もお見えになっていますから、実は、全農あるいは経済連、いろいろと問題が段ボール以外にもたくさんあるわけでございますが、要するに農業協同組合だから独禁法からは関係ないと案外思ってみえる幹部の方がたくさんおるのです。しかし、そうはいうけれども、不公正な取引をしたらこれはだめだということもあるわけでございますので、公取の委員長の方からその点ひとつ、この問題についての最後の見解をお聞かせ願いたい、こう思います。
  320. 梅澤節男

    ○梅澤(節)政府委員 農業協同組合につきましては、独占禁止法で正当な協同組合行為については当然のことながら適用の除外になっておるわけでありますけれども、その行為がはみ出まして、例えば値上げカルテルとか不公正な取引方法に該当するようなことを行われますと、これは独占禁止法に禁止する規定がございまして、その条項に基づきまして、先ほど来の青果物段ボールについての措置をこの二月に行ったわけであります。私どもは今回の審決等を契機に、協同組合として現在の各種の取引体系そのものについて独占禁止法の観点から総点検されることを期待しておりますし、またそういうふうな作業が行われておるというふうに私は聞いております。
  321. 草川昭三

    草川委員 この農協問題について私、失礼な発言も随分しましたけれども、私が申し上げた趣旨は、日本の農業の将来のあり方、そしてまた、日本が戦争に負けたときに日本の農家の方々が非常に歯を食いしばって日本の農業というのを再建をした、そういう姿にいま一度戻すべき必要がある、こういうつもりで申し上げたつもりでございますので、農林水産省あるいは農林大臣も私の意見をぜひ生かしていただいて、今後の運営をしていただきたいということを強く要望をして、質問予定はまだ行管にもあるわけでありますし、検査院にもありますが、時間の配分の関係で次に移らさしていただきたい、こう思います。  そこで、最後になりますが、これはきょうは細かい話を役所から聞くということでなくて、これはあらかじめ総理あるいは外務大臣あるいは関係省庁の方々に篤と基本的な考え方をひとつ披瀝をしていただきたい、あるいはまた私どもの声を聞いてもらいたいという意味で、在日韓国人の法的地位協定の再協議に関する問題を取り上げたい、こういうように思います。  これは言わずもがなの話でありますが、現在日韓両国間で在日韓国人の協定三代目への協定永住の付与や在日韓国人の法的地位及び待遇をめぐって交渉が行われております。これはもう御存じのとおりです。そこで、在日韓国・朝鮮人の方々は、日本の植民地支配によって日本に居住をすることになった歴史的な経緯があることは言うまでもございません。韓国側は現在、永住権あるいは退去強制、再入国許可制度、外人登録あるいは地方公務員の採用の国籍条項の撤廃、公立高校の教員採用時の国籍条項の撤廃あるいは民間企業への就職差別、民族教育、地方自治体レベルでの選挙権、被選挙権、あるいは日本側との話し合いでは国籍条項というようなものに対する話し合いが行われているわけであります。  在日韓国・朝鮮人の方々は、九割以上が日本生まれであり、日本以外に生活の場がない定住外国人だと言われているわけでありますが、この際、両国の間にあって十分顧みられることのなかった在日韓国・朝鮮人に対する日本の歴史的な責任というのを明確にする必要がある、そして日韓友好の揺るぎない基盤をつくって国際社会における信頼を築こう、こういうことを私どもは言っているわけでございますが、まず、大統領が近くお見えになるわけでございますが、特に三世問題は当然のことながら議論の対象になると私は思います。  そこで、これはまず外務大臣に、現在の日韓間の最大の懸案とも認識をしなければいけない今の問題について、どのような解決へ向けての進展をさせることがあるのか、あるいはまた、率直に今はうまく国内で調整がいっているのかいっていないのかお答え願いたい、こう思います。
  322. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先生指摘の在日朝鮮・韓国人の三世問題というものは、私どもは誠意を持って、一九九一年一月を目指して双方が満足できる 結論が出るように現在政府間でいろいろと協議を進めているところでございまして、この解決のために誠意を持って努力をいたしてまいりたい、このように考えております。
  323. 草川昭三

    草川委員 今外務大臣は誠意を持ってとおっしゃっていますが、私どももいろいろと今から各省庁の考え方を聞きますが、決してうまく解決をするというような現状にはないというように聞いておるわけですが、ここで総理の決断というのが物すごく重要なことになってくると私は思うのです。  総理は、この問題について本委員会でもあるいは本会議でもいろいろと御答弁をなすっておみえになりますが、非常に失礼ですけれども一般論ですね。本当に熱意が答弁の中から見出せない、こういう不満があるのでございますが、また後ほども聞きますが、まず総理から答弁を願いたい、こう思います。
  324. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 日韓両政府間でただいま協議を実施しておりますが、政府といたしましては、今後とも協定の前文に示されている精神及び目的を十分に尊重しつつ、両政府間の協議を通じて速やかに双方の満足し得る結論を見出すべく努力を続けていく所存でございます。
  325. 草川昭三

    草川委員 そこで、満足する結論が出れば私もきょうはこんな質問をしないのですが、満足する結論がなかなか出ない大きいのは、やはり何といっても法務省、警察庁あるいは文部省、自治省といったところになってくると思うのですが、順次御意見を聞きたいわけでございます。  まず最初に、法務省の方から、ただいまのところどうなっているのか、経過はいいですから、煮詰まったところからどこまでいくんだ、こういう経過をお願いしたいと思います。
  326. 長谷川信

    長谷川国務大臣 経過はよろしいということでございますが、先ほど総理からもお話ございましたように、両国でいろいろすり合わせをやっております。やっておりますが、今先生指摘のようにもう全部ぱっぱっとうまくすり合わせができ上がったという状況ではございません。  そこで、韓国の大統領も日本においでになるということでございますし、日本も要人が韓国まで出向いて、この問題等を含めまして真剣なすり合わせをやろうということも聞いておりますので、一衣帯水の隣国であり、歴史的にもいろいろありましたし、またこれはもう切っても切れない関係を構築しなければなりませんので、万難を排してこの問題の処理に法務省も当たるつもりでございます。  以上でございます。
  327. 草川昭三

    草川委員 もう一回ちょっと聞きますが、再入国問題についての何年後というようなことについては、ある程度相手側にもう申し入れられているのですか。相手側に伝えられておるのかどうか、お伺いします。
  328. 長谷川信

    長谷川国務大臣 幾つかの問題についていろいろ先ほど申し上げましたようにすり合わせをやっております。今先生の御指摘の問題等についても恐らく話は両国からいろいろ出ているのではないかと思いますが、まだ結論に至ってはおらないようであります。私ども何とか結論まで到達するように頑張るつもりでおります。  以上であります。
  329. 草川昭三

    草川委員 じゃ、今度は警察庁にお伺いをいたしますが、いわゆるこの指紋押捺問題というのは象徴的な問題になっておりますね。六十二年の外登法改正時のときにも附帯決議があるわけでありますが、例えば指紋押捺の代替制度についての研究だとか開発を本当にやっているのかどうか。あるいは三世代以上にさかのぼったら、もう指紋がなくても同一性の確認は私はできると思うのです。だからもういいかげんに割り切ったらどうなんだろう、こういうのが私の考えですが、その点はどのようにお答えになられるのですか、お伺いをします。
  330. 股野景親

    股野政府委員 ただいま先生から指紋の問題について御質問がございまして、これは法務省が現在所掌しておりますので、私からまずお答え申し上げたいと思います。  委員の御指摘の指紋につきましては、昭和六十二年の外国人登録法の改正に際しまして、国会での指紋にかわる制度についての研究開発を行うということについての附帯決議をちょうだいいたしておりますので、それに基づきまして、法務省当局といたしましては、この指紋にかわるべき制度についての資料収集ということを鋭意これまで行ってきておりまして、研究、検討を行ってきているところでございますが、まだ、それではこれが指紋にかわり得る制度であるということについての結論を得るには至っていないという状況がございます。しかし、この問題は、ただいまの国会での附帯決議の趣旨も踏まえまして、引き続き今この検討を進めることに努力中でございます。
  331. 草川昭三

    草川委員 じゃ、今度は公務員の採用と教員採用について、自治省と文部省からお伺いをしたい、こう思います。
  332. 奥田敬和

    ○奥田国務大臣 地方公務員の関係についてお答え申し上げます。  公務員任用については当然決められた法律があるわけでございますが、公権力の行使、警察とか税金徴収に当たる税務職員等々、そういったことに携わる形の方についてはやはり外国人じゃ困る、日本国籍は必要であるという考え方でございます。したがって、在日韓国人につきましてもこの基本原則を前提として任用を考えざるを得ないという形でございます。しかし、現実においては、医療技術の職員とか技能労務職員などについては、地方公共団体においてはこういった枠外で韓国人の任用が行われておることでございます。  今後とも、こういった法理は法理としても、任用の道を開いていくべきものであろうということでできるだけ枠を広げるように努力してまいりたいと思っております。
  333. 草川昭三

    草川委員 自治大臣は今、というけれどもと言って、任用の道を広げるという大変示唆に富んだ答弁があるのですが、文部省に、今のように公権力の問題ということもありますけれども、特に外国人を公立学校の教諭に採用するということに対して、文部省は今までだめだ、こう言っておるわけですね、今の公権力の行使や公の意思形成の参画に該当するから。しかし、常識的に小学校、中学校あるいは高校の先生がそういう条件ではないというのが私の考え方であります。特に小中の場合では実際の採用事例があるわけでありますから問題は生じないのではないか、こういう考えを持っておるのですが、それを踏まえて文部大臣から答弁を願いたい、こう思います。
  334. 保利耕輔

    ○保利国務大臣 在日韓国人の教員への採用につきましては、今自治大臣が前段で御答弁されましたいわゆる公務員に関する当然の法理ということで、採用をいたすことは原則的には困難かと思っております。  以上でございます。
  335. 草川昭三

    草川委員 今の文部省の考え方というのは、今のお話を聞いていただいておわかりのとおり、一番かたいでしょう、考え方が。これは大臣、私、別にあなたを攻撃するとか個人的にどうのこうのという気は全然ありませんが、文部省の態度というのはもう私、一番最初に申し上げましたように、日本の歴史的な経緯というものを本当にどの程度把握しておみえになるのか、あるいはまた今日の国際社会というものをどのように認識してみえるのか、全く私これは理解に苦しむわけですよ。  それで、どうなんでしょうね。今度は私、これは総理にもう一回振り向けますが、総理も文部行政、大変お詳しいわけですよ。それで、総理のいろいろな地元にも在日韓国人の方がたくさんおみえになりますよね。彼らが一体今どういう経過でおみえになるかというのはみんな知っておみえになると思うのです。ところが、今の文部省なり自治省の考え方でもそうですけれども、外国人として認識するわけですよね。だから、在日韓国人の三世問題というのはあくまでも外国人という意識で物を見るとするならば、外国人登録法要るよ、外人じゃないか、なぜこの人たちだけを特別扱い にするんだ、こういうのが役人からの、役所の考え方になると思うのです。我々は、そうじゃないじゃないか、過去の歴史の反省をすべきだ、こういうことを言っておるわけですよ。  私、大変総理に恐縮でございますが、去年の十月の本会議で、公明党の石田委員長がこの在日韓国人問題を質問しているわけです。そのときに、これは揚げ足取りではありませんけれども、総理の答弁では、歴史的な経験及び日韓友好条約を踏まえてという答弁があった。私はそのときに、これは総理、読み違えたな、歴史的な経緯を経験と言っちゃったな、こう思ったんです。それで、石田さんのところへ総理から訂正の言葉があったんですかとこう聞いたら、ないという、こういう話だった。  それで、私は後に衆議院の決算委員会で当時の森山官房長官に、総理の原稿は、たしかあれは新聞の予告原稿等では歴史的な経緯、こういうことになっておる。私も原稿の原文を見さしていただいたら、歴史的な経緯になっておる。ところが御発言は歴史的な経験ということになっている。言葉の一字だけれども重みが違うよ、これは歴史的な評価の違いになるからおかしいじゃないですかと森山官房長官に申し上げたら、森山官房長官はその場で訂正をされました、それは。だから私は言葉じりをつかまえるわけではありませんけれども、事は一字でも非常に慎重なんです。  なぜ、そういうことを申し上げるかというと、もう時間があと少しですからはしょりますが、例えばカナダの動きですね。カナダは戦前の、当時の日系カナダ人を強制収容所に入れた。だから大変悪かったと言って謝っているんですね、大統領が。そして、わざわざ日本に対して、在日の当時の抑留された方々に対しておわびをしよう、補償しようと言っていろんなことをやっておみえになります。総額三億カナダ・ドルで補償しよう、カナダの首相がわざわざ、マルルーニーさんですね、謝罪をされました、日本人の代表に対して。そしてまた、日本に対しても代表がお見えになって、これはわざわざ新聞に広告を出して、日系カナダ人への補償についてのお知らせ、東京は八月五日にニューオータニで説明会をしますよ、仙台でも鹿児島でも福岡でも広島でもと言って、カナダ政府は戦争中の当時の日系の方々を抑留したことは悪かったと言って、こういうおわび行脚をやっておみえになりますね。二万一千人の方々にそういう努力をされる。  あるいはまたこれは、ドイツでは、西ドイツのベンツ、有名な会社でありますけれども、強制労働させたユダヤ人に対して二千万マルクお金を払おう、おわびをします。それはなぜかというと、このベンツでユダヤ人を強制労働させた、それを会社の社史の編さんをやろうということをきっかけに申しわけないと言って、強制労働させたュダヤ人に二千万マルクの支払いをする。これは、その当時のュダャ人の方々は、金は問題ではない、我々のことを忘れずに一生懸命こういうことをやってくれるそういう歴史的な反省を我々は大切にしたいというようなことを言っているわけですね。あるいは西ドイツの有名な大統領ですが、ワイツゼッカーというんですか、敗戦四十年を記念して、過去を偽るものは未来に進歩はない、こういうことを言っておみえになりますね。  今の文部省の答弁と比べてみると、こんなに差がある。彼らには一つの哲学があるわけでしょう。一体、日本の役所というものは、在日韓国・朝鮮人の三世の方々を単なる外国人の延長としか見てないわけですよ。本来ならば、日本政府でプロジェクトチームをつくって、この三世問題をどうしましょう、教育の問題どうしよう、就職差別の問題どうしよう、こういうことを議論しなきゃいかぬわけです。  だから、頭のいい三世、四世がどんどん出てくる。彼らは頭がいい人もたくさんお見えになりますから、一流大学を出る。三井、三菱に現実に入れぬでしょう。役所にも入れぬでしょう。何をやるんですか。だから、おのずと日本人と違う経済ができてしまうんですよ。新宿に行ってごらんなさいよ。ゲットーというべき新しい経済地域ができちゃうじゃないですか。そして、頭のいい人ばかりではありませんから、スピンアウトした連中だって出てくるでしょう、生まれながらにして差別を受けるわけですから。差別を受けた人間は何をやるかといえば、それはアウトローになる場合だってあるでしょう。そこだけ新聞は大きく拡大をするわけでしょう。日本人の中に新たなべっ視が生まれるわけですよ。大変な今時期に来ておるわけです。そこへ大統領がお見えになるわけでしょう。  だから、私どもは長い間サハリン残留韓国・朝鮮人問題もやっております。あるいは在韓被爆者の問題もやっております。こういうことについても何らかの基金をつくって、もう向こうへある程度差し上げようじゃないか。そして、事前に事前に手を打っていかないと、この隣の韓国、一番近い国だけれども、一番遠い国になりますよ、これは。これを私は声を大にして申し上げておるわけですが、ひとつこれは総理大臣から一回基本的に本当の、お役所がつくった原稿ではなくて、あなたの真情を吐露した指導性を発揮してもらいたい。その指導性を発揮しないとこの問題は結論つきませんよ、法務省は法務省、警察庁は警察庁の延長線ですから。絶対これは結論つきません。  だから、韓国側の方も、大統領がお見えになる前までにはこれは多分だめだろうというので、今、来年の一月までというようなお話になっておるのですが、大統領がお見えになるというチャンスを逃がして来年の一月に解決するわけがないじゃないですか。中途半端な妥協になりますよ。私は、その中途半端の妥協は絶対だめだ。思い切って日本人の哲学を、カナダの総理ではありません、あるいはまた西ドイツの首相ではありませんけれども、ひとつ高邁な日本の歴史的な反省をしながら、割り切った指導をしていただかないと、日本は国際社会の中に取り残されることになる。新たな日韓構造問題というのが出てきますよ、これは。そして、どうしようもない溝がいつまでも残る。海部総理が、この今のチャンスに思い切って総理の指導性を発揮していただきたいということを強く申し上げるわけです。総理の答弁をお願いします。     〔宮下委員長代理退席、委員長着席〕
  336. 工藤敦夫

    工藤政府委員 総理がお答えになります前に、私の方から一言申し上げたいと思います。  これはもう先生十分御承知のことと存じますが、私ども前々から国会でも御答弁申し上げているところでございますが、いわゆる公務員、公務員全体ではございませんで、公務員のうちの公権力の行使あるいは公の意思の形成への参画、こういうことに携わる職務、これの公務員となるためには、外国人と先生おっしゃいましたけれども、いわゆる日本国籍を必要とする、こういうふうなことでございます。これを従来から私どもは公務員に関する当然の法理、こういうふうに申し上げているところでございます。先ほど文部大臣あるいは自治大臣の方からお答え申し上げました点も、この点をおっしゃっているものと考えるわけです。  したがいまして、日本国籍を有しない方について、いわば今の公権力の行使あるいは公の意思の形成への参画という見地以外のところでその他の公務員となるためには、必ずしも日本国籍を必要としない、こういうふうに考えているところでございます。
  337. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 三世問題をどのように対応していくかということは、今御指摘のように、日韓両国の将来の友好にとって今後ずっと出てくる問題でありますから、今の機会にきちっと解決ができるだけ努力をしろとおっしゃることはよくわかります。そして、そのつもりで、今度も廬泰愚大統領がおいでになる、それが目の前にあるわけですから、我が方としても今可及的速やかに双方の満足し得るようなそういった解決をしたいということで鋭意努力を積み重ねておるところでございます。
  338. 草川昭三

    草川委員 もうあと一分しかありませんからこれで終わりますが、総理、今の御答弁はもう我々は十分何回か聞いているわけですよ。問題は、それをどのように踏み越すかというのは、もうこれは非常に高いレベルで総理が割り切って、今私が言ったように一般の外国人という意識をのけて、そして、この戦前からの過去の歴史的な経緯ということを踏まえてもう考えなさいということを指導性を持って言うか言わぬかなんです。そのことを総理が強いリーダーシップを持って省庁に言わない限りは、もうそれは何回言ったってだめなんですよ。我々は承知せぬですよ、それは。  それぞれの理屈があるんです。警察庁は警察庁、法務省は法務省、そして、多少言っても今法制局長官が言われたように、範囲はこうなんだけれども、その範囲以外はいいよということなんです。我々が言っているのはそういうことじゃないんですよ。そういうことではなくて、過去の歴史的な反省をきちっとしながら、もういつまでも在日韓国・朝鮮人問題の三世だ四世だという議論をやめよう、それこそ我々の子孫の段階では。この機会に一気にやるべきなのが私は政治家ではないのですか、こういうことを言っているわけですよ。これほどわかりやすい、これほどまた総理大臣としてやりがいのある仕事はないと思うんです。どうですか、この私の意見について、もう一度総理がどのように受けとめるかということを答弁をしていただくとちょうど私の時間が終わると思うんで、御答弁願いたい、こう思います。
  339. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 個別の問題について具体的にここで申し上げるのは差し控えさせていただきますが、その問題には真剣に取り組んで、いろんな角度の議論をしております。
  340. 草川昭三

    草川委員 以上で終わります。
  341. 越智伊平

    越智委員長 これにて草川君の質疑は終了いたしました。  次に、武藤山治君。
  342. 武藤山治

    武藤(山)委員 三日の日には、主として九〇年代という比較的長いタームで日本の経済がどうなるかという見通しについていろいろ議論をさせていただいたわけですが、きょうは当面の経済、国民の生活に一番関心の深い当面の問題についてできるだけ絞って質問をしてみたいのであります。私の持ち時間は七時半まであるのでありますが、七時にやめたいと思いますから、その分、各答弁の大臣もひとつきちっとした答弁をしていただきたい。当初にお願いを申し上げておく次第でございます。  日本経済が過去三年間ばかり金利安、円高、そして株の好況、そういう状態で国民は大変安心をし、日本の経済規模も大きくなり、そう生活に不安を持っていなかったと思うのでありますが、この景気も、最近の九〇年に入ってからの動向を見ると、かなり国民の多くの人がいろいろな角度からいろいろな心配を今しているような気がするのでありますが、大ざっぱに今の経済を達観して、総理大臣としてどんなお感じで受けとめていますか。最近の動向をどのように感じていらっしゃいますか。感じで結構ですから……。
  343. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 最初に、大ざっぱな感じでいいから言えということでありますから。  昭和六十一年十一月に底を打った我が国経済が既に四十一カ月の長期にわたって内需主導型の景気拡大を持続してまいりました。そうしてまた、輸入拡大になるようにいろいろ体質改善の努力等もしてきました。現在、我が国経済の基礎的諸条件は、私は良好である、こう見ております。したがって、適切、機動的な経済運営を図っていくことによって、今後とも内需中心の着実な成長を持続させていくことが可能であるものと思っております。  なお、物価についても現在安定的に推移しており、今後とも物価の安定基調に変化はなく、インフレ懸念はないものと認識しながら、しかし、機動的によくこれらのことは注視をしながら政策を続けていかなければならない、大ざっぱに言うとこういうことでございます。
  344. 武藤山治

    武藤(山)委員 中身については後でいろいろ聞いていきますから、次に武藤通産大臣に見解を伺いたいと思いますが、生産活動を反映するものの一番いいデータは、何といってもまだ鉱工業生産指数ですね。最近は流通産業もふえたから、これだけで経済の動向というものを占うのはちょっと早計だとは思いますが、しかし、これからの経済の動向、見通しを見る上で一番我々が目をつけやすい重要な課題はやはり生産指数の動向だと思うんですね。この先行き一体どういう状況に経済がなっていくだろうか。一九八八年度は前年比で八・八%伸びましたね。八九年の十—十二月期の前年比を数字で見ますと四・一%ですから、半分に伸び率が落ちていますね、半分に。さらにことしの一月は、これが前年比で一・九になったわけです。かなり生産指数がずっと落ちていますね。前年のとにかく半分の伸び率、さらにそれの半分の伸び率ですから、これは生産状況というのはかなりスローダウンしていることだけはこの数字から見る限り間違いない。これを一体先行きどう見通すか、この数字を基礎にして通産大臣としてどういう感じで受けとめていますか。
  345. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 確かに御指摘のとおり、前年対比で見てまいりますと、そういう数字のとおりであります。ただ、私もこれを見ておりまして、私もこれを見ているんですけれども、いわゆる前期比対比というのもあるわけですね。あるいは前月対比、こういうのを見ていると、今のところこの二月だけが少しマイナスになっておりますけれども、それまでは大体前月対比が鉱工業生産はふえているわけでございますから、そういう点では減少していない、こういう見方も私は一面成り立つのではないかな。今後の見通しとしてはどうかということでございますが、私の承知しておるのでは、三月はどうも二月に比べてプラスに転じているようでございます。まだ最終的な数字は出てきておりませんけれども、私の大体見方としてはプラスに転じているんではないか、こういうふうに見ております。
  346. 武藤山治

    武藤(山)委員 大臣、あなた前年比月別に見ても、平成元年とその前の年とずっとこう比較してみて、また最近と比較すると、昨年の三月は特に一〇・一ですから、前の月が悪かったからばんとふえているのでありますが、四月が六・一、五月が七・四、六月が七・八という伸びでどんどん伸びているわけでしょう。それが最近は一月が一・九、二月が三・二とこうなっているんですから、かなりのスローダウンの傾向になっていることは間違いないんですね、去年から比較すると。これは、いやそう心配することない程度で済む数字でしょうかね。
  347. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 正直、景気の見方というのは、それは非常に今御指摘のように八・八%、一昨年というのは非常に伸びた年でございますね。それから比べれば確かに、私は今のペースの方が落ちていると思いますけれども、マイナスにはなっていないということだけは私は先ほどから申し上げているわけであります。(武藤(山)委員「そんなこと聞いていないんだよ、マイナスになるかならぬかなんということは」と呼ぶ)いや、見通しということだったから、私は今のところの見通しでいけば、そういう前月比マイナスになっていないということもあるから、何も見通しとして景気がどんどんどんどん落ちていくということにはならないんじゃないか、こういうことです。
  348. 武藤山治

    武藤(山)委員 私は、マイナスになるとかどんどん落ちていくとかと言っていないんですね。スローダウンをしてきているこの指数を見てどう思うかということを言っているわけなんですね。そんな極論で、マイナスになるなんという、そんな簡単に考えていませんよ。私はこの間、九〇年代は四%経済成長して、日本の全体のパイがどうなるかまで私なりの見解で議論をさせてもらっているんですから、私は日本の経済が窒息をしちゃうとかゼロになっちゃうとか、そういう暗い悲観論に立っていないんですよ、私自身は。だからちゃんと、私のそういう今までの議論をあなたは知っているんだし、名字も同じなんだから、武藤の言っていることをもうちょっと真剣に聞いて答えなければ先祖に申しわけないんじゃないですか。もう一回きちっと答えてみてください。
  349. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 たまたま姓が同じで、大変親しくさせていただいているから、ついどうも勝手な ことを言いましたかもしれませんが、私はそういう面では、まあイザナギ景気が非常に長く続いた、それに今近づいているわけでございますけれども、これはあのころと比べると日本経済、例えば相当今いわゆる海外投資といいますか、現地生産といいますか、そういう面も一つあると思いますね。あるいは一方からいけば、先ほど御指摘のようにサービス産業、第三次産業が非常にふえてきているということもあると思います。いま一つは、やはり国の政策として輸入促進、内需拡大という形で来ておるわけでございまして、内需拡大のためには当然輸入が多くなってきておりますし、その辺の貿易インバランスが、以前と比べればいわゆる黒字が減ってきている、こういうこともいろいろ数字にはこれは影響してくるわけでございますから、そういういろいろの面から私は考えていかなければならないけれども、今御指摘のように、先生と同じで、何とかこの景気を持続をさせていくにはどうしたらいいか、こういうことで私も努力をいたしておりますし、その面では、先生と同じように、景気がある程度スピードがスローになってきたということは言えると思うのですけれども、ダウンではない、こういうことを私は申し上げているわけです。
  350. 武藤山治

    武藤(山)委員 後で、通告しておりますように、輸出入の状況あるいは外国投資金額の動き、そういうようなものを総合的に、金利の上昇、そういうことまで通産大臣については全部織り込んで、日本の経済がこういう姿になる——それでは成長率はこの一年間政府が当初見積もったものを修正しなくとも心配なくいけると確信持てますか。
  351. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 これはもう本来ならば経済企画庁長官が答弁をしていただく問題だと思いますけれども、御指名でございますから私から答弁させていただきますが、私としては、今の経済見通しは達成できる、また達成しなきゃいけない、こう思っているわけであります。
  352. 武藤山治

    武藤(山)委員 企画庁長官、ことしの経済見通しの当初の見積もり、大体GNPはこの数字でいける、そういう確信を持った答えができますか。
  353. 相沢英之

    ○相沢国務大臣 昨年のGNPは、当初見通し四%は実績見込みで四・六%になっておると思いますが、平成二年のことしのGNPの見通しも四%になっております。  いろいろと今円安あるいは債券安、株安等々、経済に対する、現象面で見ますといろいろ攪乱的に見えるような要素がございますけれども、先ほど通産大臣からお話ございましたように、経済の基調においては依然として成長過程をたどっておりますから、実質四%の経済成長は、まず今の状態が続く限り間違いない、このように思っております。
  354. 武藤山治

    武藤(山)委員 そこで、個々の問題について一つずつ尋ねていきますが、金利の情勢も大分過去と比較いたしますと変化をいたしておりますね。もちろん、昨年三回公定歩合を上げ、ことしまた上げましたから上がるのは当然でありますが、短期プライムレートでも最近では七%を超えておる。コールの無条件物も七%、手形二カ月物でも七・二五、長プラはもっと上がって七・五という状況ですね。成長が非常に高かった当時は短プラ四・二五、長プラでも五・五、表面利率をずっと見ても、あの当時と現在では、三年前、二年前あたりと比較しても金利はもうかなり高くなっている。こういう状態は景気に影響するほどの金利の上昇ではない、企業のまた設備投資が控え目になるような金利の水準ではない、したがって、全くこれは心配する範囲の金利上昇ではない、こう見ているのでしょうか。企画庁はどう見て、通産省はどう見ているのですか。
  355. 相沢英之

    ○相沢国務大臣 金利が、ただいまお話ございましたように、各般にわたって上昇を続けております。無論公定歩合も引き上げられておりますから、これが経済に対しまして全く影響がないということはないと思います。そういう目的でまた公定歩合の引き上げ等も行われていると思いますので、全く影響かないということはないと思いますが、ただ、先ほども申し上げましたように、経済の基調が大きく変化をするという状態ではございませんから、今言いましたようなGNPの伸び率におきましては、それが大きく変わるということはないのじゃないか。  ただ、企画庁がつくっておりますところの各種の指標がございますが、その中で先行指標を見ますと、この三月の間にどちらかと申しますとやや黄色い信号が点滅しているということがございます。それが将来の景気を占うものになるかということについてはいろいろ議論が分かれるところでありますけれども、ただ赤信号ではない。でございますし、三カ月程度そういう黄色い信号が続きましても、直ちにそれが景気の下降を示すものではないということは、過去の実績を見ましても明らかでございますので、まず私は今の情勢はそれほど心配はないというふうに考えています。
  356. 武藤山治

    武藤(山)委員 昭和六十二年、三年、このころと今とを比較していきますと、物価の水準はかなり高くなっておりますね。例えば六十二年度は卸売物価はマイナス二%、六十三年はマイナス〇・七、平成元年の一月は〇・一のマイナスがここまで続いたのですが、その後は前年比ずっとふえてまいりまして、去年の五月ごろから三・四%、六月が三・七、七月が三・一、九月が三・三、十一月になると三・八、十二月が三・九、そしてことしの一月が三・七、二月が三・五という状況ですね。これは卸売物価の方。それから消費者物価の方も、六十二年は〇・五、六十三年は〇・八が最近は前年比で三%ですね。こういうように、好況期がずっと続いた当時の物価の水準と今の物価の上昇水準というのは、率でいったらとにかく三倍も高い上昇になっておるわけですね。ですから、こういうことを総合していくと、設備投資や消費やいろいろな面に影響が出てくると私は思うのですけれども、その出る範囲というか、それが経済成長を落とすほどの要素にはならない、しかしこのままずっといくことはないという先ほどの長官や大臣の答弁ですが、しからば、こういうマイナス面の今の要因は一過性のもので、じゃ、いつになったらそういう傾向はストップして、そしてまた正常な上昇の状況に戻る。それはいつごろ、どう想定しているのですか、企画庁と通産省。
  357. 相沢英之

    ○相沢国務大臣 確かに、今物価について御指摘がございましたが、卸売物価につきましても消費者物価につきましても、先ほど挙げられました六十一年、二年、三年というような年度の実績に比べれば、割合としましては卸売物価で三%台、それから消費者物価でも同じく三%台という数字が続きますから、確かに過去の数年に比べれば高くなっていると思います。  ただ、これには御承知のように、昨年四月導入された消費税の影響というものがございます。これは平成元年について言えばその影響は約一・二%でありますので、平成二年の上昇率二・六%の中で、その消費税の影響を除けば一%程度ということであります。平成二年の物価の上昇も、今のところは約一・六%と見ております。これは消費税の見直し、その見直し法案が通ればということになりますが、見直しの影響によるものが約〇・四%、半年分として〇・二%、これを控除してございますから、大体一・八%と見ているわけであります。  いずれにいたしましても二%以内の上昇でありまして、これは欧米の諸外国に比べましても物価水準としては決して大きな上昇率ではない。ただ、二月、三月には若干高い数値が出ておりますのは、特に消費者物価につきましては、天候不順等による生鮮食料品を中心とした食品の値上がり等もございまして、それを除いて見ますと、例えば総合指数では二月が三%の上昇、季調済みで前月比が〇・二%ということになっております。  これからの問題につきましては、金利の問題もございます、それから為替相場の動きもございますし、それからまた原油価格がどうなるか、ただいまのところは、まず原油価格も大体落ちついた動きになっておりますので、それほどの心配はないのかと思いますけれども、それらを今後見通して、その先の先までどうなるかということになりますと、確信を持ってのお答えがしにくい点もご ざいますが、やはりひところに比べれば、無論申し上げるまでもなく円は非常に高くなっているわけでございます。そういうことの影響も依然として継続いたしておりますし、それから経済の基調においての変わりは余りないのでありますから、まあそれは私も先の先までをどう予言するかということになると難しい点がありますけれども、まず先ほど申し上げましたような四%程度の経済成長はいけるんじゃないか。で、少し落ちるじゃないかとおっしゃれば、それは昨年の実績が四・六%、その前が五・三%でありますから、この一、二年をつかまえてみれば経済の成長の率は若干落ちているということは言えると思います。
  358. 武藤山治

    武藤(山)委員 物価はやはり企画庁ですね。卸売物価が〇・六%でおさまりますか。今の円安、これを積算をしたときは一ドル百四十二円ぐらいで積算しているんでしょう、大臣。それが現在百五十円を超えている水準で、この円安のときには輸入決済しないなんということはできないんでしょうね、これだけの大規模の輸入ですからね、日本は。その場合に、卸売物価〇・六%というほんの上昇でおさまるんでしょうか。
  359. 相沢英之

    ○相沢国務大臣 無論、為替相場の動きというものの物価に対する影響は、当然これはございます。したがいまして、現在のような円安と申しますか、百五十七円、八円というような為替レートが続くということになりますと、当初、平成二年の経済の見積もりをいたしましたときにはたしか百四十二円だったと思いますけれども、それに比べれば確かにその分だけ円安になっていることの影響はあろうかと思います。ただ、輸入物資の値上がりの国内の卸売物価に響くところの影響は、輸入物資の割合が千分の九十八であったと思います。したがいまして、一〇%の円安は卸売物価に対しては約一%の影響、消費者物価については約〇・五%の影響というふうに見ておりますので、仮に二〇%の円安ということになりましても、それの物価に対する影響は卸売物価で二%、消費者物価で一%ということになるわけであります。  ただ、御承知のように為替の相場が継続してその程度の水準になるのではない、やはり変動がいろいろございますから、ただ現在の状況をもって直ちにそれだけの影響が出る、こういうふうに見るのはいかがかというふうに思っています。
  360. 武藤山治

    武藤(山)委員 だから企画庁長官、私先ほど、じゃ一過性のものなのか、今の円安は。やがて戻る、円高になる。そのやがては、企画庁としてはどのくらいの期間を予想しておるのか。企画庁は経済のこういう計算をする専門官庁として。ずっと下がることはない、ずっと下がることはないと。じゃ、これはほんの一過性で、ほんの短い期間だとどのくらいなのか、大ざっぱに言って。あなたの見通しでいいんですよ。
  361. 相沢英之

    ○相沢国務大臣 為替の相場につきましては、これの現在の状態は確かにいささか円が安過ぎるではないか、これは日本だけではございません、この間G7におきまして大蔵大臣も御苦労いただいたわけでありますけれども、各国が言うなれば協調してこの状態に対する是正を図ろうということを、そういう趣旨の声明をつくられたことにも明らかであるように、各国ともその今の円安についての関心は深いわけでありますから、まあ私は、こういう状態が今後いつまでも続くというふうには考えていません。  ただ、おまえは一体これをどう思うかということになりますと、これはなかなか、確信を持ってこういうことになるだろうという予測を申し上げるのは、差し控えさせていただきたいと思うのであります。
  362. 武藤山治

    武藤(山)委員 大蔵大臣は今の円の水準、これはもう何かのほかの原因があって一過性で、やがては日本の経済の実勢を反映する正当な評価になる、そのためには今の水準よりも円高になるはずだ、そういう見通しに立った場合に、ごくごく短期間でそうなるか、ややこれは時間がかかるなと見ているか、その辺の見解はどうなんでしょうか。
  363. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 プロ中のプロにお答えをするんですから非常に答えにくいんですが、私は、今経済企画庁長官が述べられましたように、また先般来何回か御答弁を申し上げておりますように、現在の為替の水準というものが日本経済のファンダメンタルズをそのままに反映したものだとは考えておりません。そして、その中にはさまざまな要因が当然あろうと思いますし、余り私どもが立ち入って申し上げてはいけないのかもしれませんけれども、市場の思惑でありますとかその他の心理的な要因が随分これに影響を与えているということについては非常に残念な思いをしております。  先般来G7の中における合意についても御説明を申し上げてきたわけでありますが、この中でやはり円が、他の通貨に対する下落とその世界的調整過程に対する望ましからざる結果についての議論、そして今後常時その展開に対して検討していくということで合意をいたしましたのは、例えば二日、三日でぽんと変わるというほど楽観はしていませんけれども、同時に、そんなに深刻にこれがいつまでも回復をしないというようなことも想定はしていない。  率直に申し上げると事務方からしかられますので、この程度にとどめたいと思いますけれども、ただ一つ私は申し上げたいのは、今度の欧州開銀の払込通貨、御承知のようにECUとドルと円ということになりました。例えば世銀、アジ銀の折には交換性のある通貨はすべて対象でありましたものが、特にこの三つに絞られたという意味等は、やはり円というものの価値の安定をさせなければ非常に世界的に影響の及ぶという、その実態を如実に示しておると私は考えております。
  364. 武藤山治

    武藤(山)委員 今、橋本大蔵大臣、世界の国々が円の水準にかなり配慮をし協力をしてくれる、そういう期待のもとにお話をしたようでありますが、きょうの夕刊を見ますと、欧州各国の中央銀行が市場に注文を出したのは、日本から日銀が為替水準、介入額などを注文をしたんだ、日銀が注文した、そして資金決済は大蔵省の外国為替特別会計から支出された、そういう記事がでかでかときょうの夕刊に出ているんですね。それで、ドイツの方やイギリスの方の言い分は、自分の国の通貨で円を支える必要は毛頭ない、我々は円を外貨準備に持っても大した意味がない、そういうような談話を出しているんですね。  ですから、G7で協力を橋本大臣が提唱してみんな協力してくれたという上辺の協力は合意の文書の中にあるんですけれども、本当に日本の友人になってくれようという気持ちがドイツの方もイギリスの方も、この報道を見る限り感じられないんですね。どうも日本には本当の意味の友達というのはいないのかなとこの新聞を読んで大変残念に感じている一人なんでありますが、こういうのを見ると、これからさらに介入を、買い支えをするというようなことは難しいなあという感じを受けるんですが、まだ大臣これをお読みになっていないでお答えを聞くのはちょっと失礼ですが、どう感じますか。
  365. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は率直に申し上げたいと思いますけれども、出発前、本院におきましてもまたマスコミの方々も、コミュニケそのものができないのではないかという心配を大変してくださいました。また、コミュニケができてもその中には為替について触れられないのではないかという心配もしてくださいました。また、為替に触れられても円の問題は全く触れられないのではないかという心配もしてくださいました。コミュニケの内容は御承知のとおりであります。そして、介入にはいろいろなやり方がありますし、またその手のうちを一々お知らせをして介入をすべきものでもないでありましょう。ですから、その報道がどうこうと私は申し上げるつもりはありませんけれども、現に協調体制は動いているという証明ではないでしょうか。
  366. 武藤山治

    武藤(山)委員 今まで日銀がこういう買い支えをする場合は、すべて外国為替特別会計から出しているんですか。
  367. 江沢雄一

    ○江沢政府委員 お答えいたします。  為替市場への介入資金は外貨準備を使って従来からやっております。それは委員おっしゃるとお りでございます。介入は常に外貨準備を使ってやっておるわけでございまして、今回だけ外準を使ったということではございません。
  368. 武藤山治

    武藤(山)委員 その場合、日銀がヨーロッパの中央銀行にこの水準で支えてくれという場合、日本の金を向こうへ送るんですか。それをドルにかえて向こうの中央銀行へ送金するんですか、局長
  369. 江沢雄一

    ○江沢政府委員 先ほど大臣から答弁がありましたように、介入のやり方についてはいろいろな影響がありまして具体的なことは申し上げられない点、御了承をいただきたいと思いますが、一般論として申し上げれば、介入の方法につきましては、通貨当局が自分の資金を用いて行うものや、あるいは他国の通貨当局の委託を受けて行うもの、その他いろいろございます。そういう意味でいろいろなやり方があるということだけを申し上げておきたいと思います。
  370. 武藤山治

    武藤(山)委員 いずれにしても、こういう報道が国民にどう受けとめられるか、国民の心理に与える影響というのは非常に大きいですね。ですから、そういう意味で特に株式だとかあるいは円取引とかなんというものは、そういうちょっとした報道というものがかなりのインパクトになって変動をいろいろ起こす可能性が十分ある。どうもこれを見ると、西ドイツは通貨統合を控えマルク価値の維持を必要とするから自国通貨なんかでは買い支えない、それからイギリス、フランス、イタリーは、外国からの投資を呼び込むためにも自国通貨が安くなることに懸念を示した、こう書いてあると、一体国際協調って何だったんだろうか、何なんだろうか、こういう疑問をこういう記事を読む限り感じますね。  ですから、私は大変残念なことだな、こう思うのですが、どうも円安はこのまま、この辺がちょうどゾーンでおさまりつくのか、あるいは百六十五円までぐらいの幅で行ったり来たりをここ一年ぐらい続けるのか、それとも夏口から円高に逆に転ずるのか、そこらのことを国民は知りたいんでしょうね。何か不安なんですよ。後で株のことをやりますが、いずれにしても、今の動きというものが国民にとっては大変な不安なわけですよ。政治は、総理、経世済民ですからね。まず経済の問題を、平和のこと防衛のこと援助のことも大切ですが、もう庶民大衆は今の円の問題、金利の問題、株式の問題が不安で心配でしょうがないわけですよ。これに歯どめをかけないと正常な状態の心理にならないと思うのです。そのために私は今質問しているのですよ。  ですから、できるだけ、ある程度、神様じゃないのだから、三カ月後、五カ月後を予想してきちっとした答えが出るとは私も思っていません。いませんけれども、国民の多くの皆さんが不安に思っていることを少しでも解消できるのなら、私はここでひとつ大臣とやり合って、なるほどこれならそう心配せぬでもいいのだな、そういう答えが出ることを期待しながらやっているわけなんですよ、今ここで私がやっているのは。これをやることによって特定の人が利益したり、だれが損したりなんということを意識しているわけじゃないんですよ。ですから私は、率直にやはり大臣の皆さんにはお答えをしていただきたい、こう思っているのです。  そこで、今途中まで物価のことをちょっと触れたものですから、物価の問題をちょっと取り上げてみたいのですが、これも新聞報道によると、値上げ品目が一覧表にあるのですが、消費財、これはもうマクドナルドのハンバーガーから始まって乳酸菌飲料、乗用車・ベンツ、ガソリン、ポリ袋、ピアノ、自転車、これも上げ率が七・七、ひどいのは一六・七、六・七、一〇%、大体そういう値上げを消費財は既にこの三月から四月初旬にかけてやった。それからサービスもかなり、クリーニングからホテル料金から宅急便、それから四月にこれから、今検討しているというのがトラック運賃、タクシー料金、そういうふうなものがずっと並べてあるんですね。それから資本財も、工作機械が五%以上、今材料費が上昇したからというので値上げしようとしている。セメントは既に四・三%。それから、H形鋼は四・五、山形鋼は七・四%、エチレンが四・四、米材丸太が七・九、合板が一・九。いろんな資本財、生産財までかなり値上げの動向が新聞報道されているわけですね。これは国民みんな読んでいるのですよ。それから公共料金も、東京のタクシーが一三・四一%値上げをしようと、連休明け上げようとしているようですが、これは運輸大臣、許可するのかどうか、許可せざるを得ない状況なのかどうか、タクシー料金ですね。都立高校の授業料も上がった、運転免許手数料も五・九%上がった。それが今度は地方公共団体に公共料金の値上げがあちこちでかなりある、こういうようなことがだあっと報道されているわけなんですよ。  まず自由経済ですから、上げようが下げようが、もうけようが損しようが、これは業者の問題であって内閣の責任じゃない、そんなことは百も承知しているのでありますが、物価がじりじりととにかく上がる傾向にあることは間違いない。だから先ほどの、物価があの程度で、卸が〇・六ぐらいで済むのかねと、こう言っているのも、こういう傾向から見ていって、これはちょっと火がつく可能性もあるな、物価を引き上げる傾向に火がつく可能性があるな、こう私は感じているものですから今質問をしているわけですが、具体的にはこの東京のタクシー料金一三・四一%は運輸省にもう申請してあるのですか。これはこれから申請がありそうだということなんでしょうか。
  371. 井上徹太郎

    井上政府委員 東京地区のタクシー運賃につきましては申請が出ております。
  372. 武藤山治

    武藤(山)委員 何%ぐらいの値上げですか。
  373. 井上徹太郎

    井上政府委員 突然の御質問でございまして、ただいまちょっと数字を持ち合わせておりませんので、調べまして申し上げたいと存じます。
  374. 武藤山治

    武藤(山)委員 運輸省はそれを許可する気持ちでおるのですか。それとも申し入れの何%ぐらい減らして許可しようとしているのですか。申請のとおり認めようとしているのですか。
  375. 井上徹太郎

    井上政府委員 先ほどの数字でございますが、東京地区につきましては、平均改定率を申しますと一一%から一六・九%という申請になってございます。これは個々の事業者によって値上げ申請が違うからでございます。  タクシー運賃の申請につきましては、現在審査中でございますので、今の段階でどうするかということを申し上げる状況にはございません。ただ、一般的に申しますと、タクシーにつきましては極めて労働力が不足しております。一般産業に比べますと労働条件も悪いという実態の中での労働力不足ということもありますので、その辺は十分勘案しながら対応していかなければならない、かように考えております。
  376. 武藤山治

    武藤(山)委員 大臣、事務方がやっているようですが、どうですか大臣の見解は。
  377. 大野明

    ○大野国務大臣 ただいま政府委員からその経緯等については答弁申し上げましたけれども、私、まだその内容を聞いておりませんので、精査中ということでございます。しかし、最後に政府委員から答弁したように、本当にこれほどの業界もそうですが、タクシー業界は特に運転手が不足しておるというようなこともございますので、そこら辺を勘案して考えたい、こう思っております。
  378. 武藤山治

    武藤(山)委員 国民は、国内物価が全然上昇しなくとも、円安になって外国から来るものが上がってくると自分たちの生活まで高いものをだんだん買わされるんだと、本能的に、今は情報化の時代ですからわかっていますね、国民の大部分が。物価というのは、やはり理想はあくまでゼロを目指すべきですね、総理。物価上昇というのは常にゼロを目指すのが理想であります。しかし、ゼロを目指してもゼロにならないわけですから、経済の今のこういう状況を見ると。特に国民から見て腹立たしいのは、消費者物価であらわす卸売〇・六だとか小売一・何%なんていっても実感として受けとめない。というのは、消費者物価の指数に入っていない地価だの、ほかのものはどんどん上がってしまうわけですね。ですから、消費者物価 指数なんか当てにしていたって実感は全然別だ、そういう感覚が今あるわけですから、物価問題についてはやはり政府は相当きちっとした指導と対策を常に怠ってはならない、私はそう思うのであります。ですから、今のような申請や地方公共団体のこれからの値上げラッシュにならないように、それぞれの担当大臣は情勢をきちっと把握をしておいて指導しなければいけない、こう思うのでありますが、総理いかがですか、感じは。
  379. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 物価の問題は御指摘のようにゼロが非常に望ましいわけでありますし、もっと欲を言えば下がることがあるなればそれがなお望ましい。私がいろいろ資料を調べました乏しい経験からいきましても、昭和六十年、輸入の牛肉の肩肉の中が百グラム百六十円前後だったのが今百十八円前後に下がっておるということは、これは非常に顕著な例ですけれども約三〇%近く下がっておるし、同じ統計で思い出しますと、エビは二三%下がった、インスタントコーヒーは一〇%下がっておるはずでございます。こういったことは非常に目立ちます。ですから、できればそういった物価に対する取り組む姿勢も、八〇年代をずっとならして一・二の倍率で上がったから日本は優等生だということもよく言いましたが、それだけではなくて、内外価格差というものがまだあるわけでありますから、この内外価格差是正のためにいろいろ政策努力をしていくということは、これは物価のその部面に関する引き下げにも役立つわけでありますので、五十二項目、政府はその内外価格差是正のためのいろいろな問題点を指摘をして一生懸命に努力を続けていこう、こう思っておるところでございます。御説のとおりだと思います。
  380. 武藤山治

    武藤(山)委員 先ほど橋本大臣は、ファンダメンタルズがいいから心配ないというような意味のことを言ったのですが、このファンダメンタルズが何を意味するのか、ここが問題なんですね。日銀総裁もこの前ここへ来てああいう答弁をしているけれども、過去と今とを比較してどうなのかという視点で外国は見ているのですよ。過去は非常によかったのですよ。物価も、卸売物価がマイナス、そして貿易収支も非常にいい、経常収支も非常にいい。そういう貿易の黒字と物価安定ということが、特に日本の経済がいいということで信頼性があった。そこに、日本の株価の上昇や円高やいろいろな現象が出てくるわけでしょう。  私は、今、日本の経済はファンダメンタルズが悪くなった。よ過ぎるぐらいいいときと比較をしてみなきゃいかぬということなんですよ。悪くなったところで、今は円安になったり外国投資家が日本の優良株にまで警戒をするとか、いろいろな日本の経済の先行きについて今までと比較すると悪い方向に向かっているという認識があるから、いろいろな問題や現象が私は出てきていると思うのです。そうして日銀総裁は、そういう経済のあれは均衡がとれて非常にいいのだからこんな円安になるはずがない、なっているのは投機筋のしわざだと言って責任を回避しているわけでしょう。私はちょっとそこらはおかしいと思うのですよ。  だから、このファンダメンタルズとは何を指し、外国からは何と何を均衡として考えて日本の経済を信頼するか、ここのところをもう一回私はきちっと内閣も各大臣も検討し直す必要があるのではないかな、そう思えてならないのですが、これはだれかな、企画庁長官かな。大蔵大臣か。
  381. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 先日ある方が、日本経済を自分なりに形容すれば千代の富士の相撲だという言い方を私にされました。どういうことなんだと、非常にいいんだ、間違いなくいいんだ、だけどその全盛時代の強さはなくなったんだと。なるほどうまい言い方があるという感じを実はそのとき私は受けました。そういう考え方からいくなら、今委員が述べられましたような視点から、私ども自身がもう一度足元を見直してみる必要は私も否定をいたしません。  ただ、同時に、ここで私は声を大にして申し上げたいことは、今世界経済の中において日本経済が受け持たなければならない役割というものがどのようなものであり、世界の資金の流れの中で円が受け持っている役割がどんなものかということであります。  先般も申し上げましたように、私どもとして、今依然として輸入を拡大させながら内需中心の経済運営をしていかなければならない。そしてまた、現実にそれに成功し、その足並みは着実に続いている。そして、公定歩合が三回昨年から引き上げられてきたといいながら、依然として我が国の公定歩合は他国に比して低水準を保っている。そうした中で、なおかつ我々は安定した経済成長を続けているというその底強さというものは、私はやはり評価すべきものだと思っております。  ただ、今委員が御指摘になりましたような視点から、私どもも足元を見直してみる努力、これは払うべきものと思います。
  382. 武藤山治

    武藤(山)委員 投資家や外国がこの日本という国をどう見てきたかという、過去と現時点で大分私は転換の時期だと見ているのですよ。それは、今まで日本という国は何といったって債権大国で、これはもう世界一だ、アメリカを抜いたと。それが昨年十月—十二月ごろから貿易黒字が減ってきた、経常黒字も減ってきた、そして第一位の座を外貨準備高でも西ドイツに明け渡した。ことし一月には一時的にせよ経常収支が赤字となった。ということは、日本のあのすばらしい黒字の国がここでちょっとこれはとどまってきたぞ、投資家はそう見ると思うのです。鮮明に映っていると思うのですね。三月の外貨準備高もついに準備高ナンバーワンをアメリカに譲る。こういうような数々の現象から、トータルした日本というものに対する信頼感、こういうものが少し希薄になってきたところに、円安の問題や株の問題というようなものは私はすべてリンクして物を見なきゃいかぬじゃないのかな、こう見ているわけなんですよ。  ですから、私の結論から言うと、資本主義、自由経済の周波がちょうど頂点から下り坂に今かかっているぞということ。それを下り坂にしないで、このままインフレなき持続的成長が続けられるのか、イザナギ景気よりもっと長い五十カ月景気拡大が続けられるのか、四十カ月でその周期の下方に向かうのか、私は今そのちょうど転換点にいるような気がするのですよ。  その点についてひとつ大蔵大臣、通産大臣、企画庁長官、三人の意見を聞かせてください。
  383. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は、今委員が仰せられたことを逆に裏返して申すなら、ここ数年間の国際経済の中における日本の役割というものを日本は忠実に果たしてきたということであろうと思います。言いかえれば、貿易収支の黒字が我が国だけ非常に顕著に目立った時代、まさに、輸入を拡大し内需中心の経済運営を図ってほしいというのは世界からの日本に対する要請でありました。そして、我が国はそれを忠実に果たしてきたわけであります。  昭和三十年代の半ばにサラリーマンをし貿易に携わっていた私どもからいたしますと、その輸入を拡大しなければならない、輸出が問題になるというのは本当に考えられないような時代でありますけれども、我々はまさにそういう時代の中で、輸入を拡大しつつ、内需を中心にし、黒字幅を減少させる努力を続けてきたわけであります。そして今、委員のお言葉をそのままに裏返せばその役割を我々は忠実に果たしてきた。問題は、その役割をあとどれだけ世界経済の中で我々は負うていくべきなのか、そうした視点からもう一度問題を見直してみる必要があろうか、先ほど来の御論議の中でそのような感じを受けております。
  384. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほどもお答えをいたしましたように、私は、ダウンはしない、しかしテンポはスローというか、いわゆるハイスピードで来たものがスロースピードになっていくということはやはり避けられないことだろうと思います。  ただ、この数字は先ほど先生からまだおっしゃってないのですけれども、やはりことしの経済成長率の見方ですね。例えば民間設備が元年度は一四・五、それがことしは、ことしといいますかこ の平成二年度の見通しは七・三、こうなっているわけですね。これはやはり民間の設備は相当昨年度と比べれば落ちていくだろう、しかしながら、今の技術革新、あるいは人が足りませんから効率化、省力化、こんなような形での民間設備はふえていくだろう、私はこういう見方から、これは経済企画庁がつくったのでございますが、多分そういうことじゃないかと思いますし、やはり民間の最終消費支出も、三・二に対して四・六とありますけれども、最近の消費動向から見れば、自動車の売れ行きその他消費は相当伸びてきているわけでございますから、そういう意味において私は経済のこの見通しは達成できる、しかし、おととしあたりと比べればある程度スピードが落ちているということもこれは事実だろうと思います。
  385. 相沢英之

    ○相沢国務大臣 ただいま通産大臣から経済の成長のスピードは落ちるかもしれないというのは、先ほど私が御答弁申し上げましたように、平成元年は当初四%の経済成長のGNPの見込みが実績四・六%になると見込まれる、それがことし平成二年は目下のところ四%ということでありますから、もしそのとおりになるとすれば若干そこにダウンは予想されるということなのであります。  ただ私、両大臣の答弁に尽きるわけでありますけれども、一言つけ加えて申し上げますと、御案内のように、かつての外需主導型の経済成長ではなくて、平成元年におきましても経済成長実質四・六%の見込みの中は内需が五・二%、外需は逆にマイナスの〇・七%、また平成二年につきましても経済成長四%の見込みの中身は内需の寄与度が四・六%そして外需が〇・五%のマイナスということでもおわかりいただけますように、まさに内需主導型になっております。そしてまた、GNPの中に占める一番大きな項目は、申し上げるまでもなく民間の消費でありまして、これが五七%前後だと思います。それで、その民間の消費は、ことしの春闘相場は六%にはなりませんでしたが、五・八%というような実績にも見られますように、決して平成元年に対して平成二年の一般の民間の所得というものも落ちるような状態ではない、まあ貯蓄性向に変わりがなければ民間の消費もそれほど落ちるということはない、むしろ若干プラスになるのではないか。  そういうことがございますから、今の株安というものが、いわゆる逆資産効果で金利の上昇等と相まって設備投資等に影響を及ぼすということもないわけではないと思います。確かに、平成元年の経済成長の大きな要因の一つとして、民間の設備投資が当初見込みをはるかに上回って一四%という実績を示したことも大きな力になっておりますから、そういった点におきましては、通産大臣が言われましたように、設備投資の上昇率が下がるというようなこともこれは影響がないわけではないと思いますが、しかし、やはり一番大きな要因は民間の消費ということでもございますから、私は、まあまあいろいろな要素の異動があるにいたしましても、スピードは若干鈍るにいたしましても、繰り返しますけれども、まず四%程度の経済成長は達成されるのではないかというふうに考えています。
  386. 武藤山治

    武藤(山)委員 先端技術を駆使したいい企業と没落する企業と、そういうものの明暗はかなり鮮明になる時代がやってきた、そういうことが言えると思うのですね。  それから、私ちょっと心配しているのは、証券、株価の今の大暴落の状況で、安い資金を集めようとする企業がなかなか思うように集められない。この三月だけでちょっと調べてみると、公募増資、転換社債、ワラント債、みんなできるだけ安い金利で調達しようとした企業は軒並み中止していますね。これは三月だけでざっとはじいてみたら四兆円規模になりますね、中止しただけで。それだけ低利の資金調達が難しくなってきた。そういう状況が設備投資に悪い影響を与えなければいいのですが、そういう低利の資金の調達が難しいという状況がいつごろまで続くかというのは、今度は株の問題を議論しないと、またどのくらいこれが解除をされてどんどんできるようになるのか。これは国際金融局かね、それとも銀行局かね、この見通し。ああそうか、社債のあれだから証券局長だね。ちょっと高邁な理論を展開してみてくださいよ。
  387. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 確かに、御指摘のようにこの数年間非常に株価が上昇した後、本年に入りましてからかなり下落いたしております。本日現在で申しますと、本日は大引けの段階で日経ダウというのは二万九千六百二十三円でございまして、昨年の末の最高値三万八千九百十五円から比べますと九千二百九十二円安と、大体二三・九%安くなっておる、こういう状況でございます。ただ、今月に入りましてからは一時変なうわさとか報道がありまして株価が下落したわけでございますけれども、最近におきましては、金利とかあるいは円相場がやや落ちつきを示してきたということに加えましてやや値ごろ感が出てきたといったこともありまして、一進一退ながらこのところやや持ち直しているといった状況でございます。  そこで、エクイティーファイナンスの中止でございますけれども、こういった状況のもとで、先生四兆円とおっしゃいましたけれども、実は私どもとして把握できている数字といいますのは、発行決議をした上で取りやめたものしか把握できませんが、したいと思っていたけれども表へ出ないまま消えてしまったというのは数字として把握のしようがありませんが、三月以降の数字といたしまして見ますと、転換社債、それから時価発行等を含めまして全体で三十社、五千九百億円といったものが発行を取りやめているといった状況にございます。  いつごろこれが再開されるかということについては確たることは申し上げられません。やはり企業といたしましても、株価が安定し、必要な資金調達ができるような状況になった段階で、引き受け証券会社と相談した上でこれは決めることになると思いますけれども、現在の状況ではなおなかなかそういう状況になっていないといったことでございまして、私どもといたしましても、株価が安定いたしまして発行市場が一日も早くその機能が回復できるようになることを期待している、こういう状況でございます。
  388. 武藤山治

    武藤(山)委員 私が今申し上げている資料は、日経が大手証券各社等いろいろ当たって調べた数字ですね。だから、やりたいと思ったところで中止しちゃった、証券会社と相談をしていたが、これではちょっともう無理、こういうことで中止した金額、これが四兆円。会社名も全部ここに出ておるわけですね。  そして、その発行計画を見送るように指導している証券会社は、この発行市場の混乱は六月まで続くだろうと、こう言っているのですが、証券局長、どうですかこれ、いつごろまで続きそうかね。
  389. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 増資とか転換社債を中止しました経緯といいますのは、株価が非常に不安定な状況にございますと、仮に所要の資金を調達した後におきまして株価が下落するということになりますと、やはり投資家に迷惑をかけるといった状況がございます。あるいは場合におきましては引き受け証券会社の引き受けリスク等が非常に過大になる、こういったふうなこともありまして、いわば自発的に中止しているわけでございます。そういった意味で、その結果、ある意味では、昨年におきましては過剰発行ぎみであった発行市場といったものがやや安定を取り戻す一つのきっかけにもなっているわけでございます。そういう意味で、株価がいつ安定するかという問題について私どもなかなか申し上げる状況にはございませんけれども、現実問題としまして、これから会社というのは三月決算を迎え、いろいろ総会を開くといったふうな状況もございますので、新聞記事にありますように、六月ごろまではなかなかそういった状況にいろいろ発行体の事情としてもなりにくいような状況にあるということは一般的に言われているところでございます。
  390. 武藤山治

    武藤(山)委員 結局、過去と比較して金利が異常に上がってきた、そのために債券が下落する、債券が下落するから株価も下がる、株価が低迷す るから円安になる、こういう循環だと私は思うんですね。だから、一番元凶はやっぱり金利にあるのかなと。鶏が先か卵が先か、これはなかなか難しい理屈になると思うのでありますが、これはやっぱり銀行局長がいいのかね、だれがいいのかね、証券局長かね。金利が上がるから債券が下落する、債券が下落するから株価が下がる、株価が下がるようだから円安になって日本の信認度が落ちる。どんな見解かね、専門家は。
  391. 土田正顕

    ○土田政府委員 金利のお話がございましたので、金利の動向その他について御披露するだけでございますが、長短金利とも、ここ一年間、概して内外の経済情勢を反映して上昇をしてきてはおりました。それから、殊に長期金利につきましては、割合、昨年にありましても、一時夏ごろにはちょっと下がったことがありますが、それだけいわば発射台が低くなったということもございますので、それから後、短期金利とのすり合わせによりまして、長期金利の上昇は非常に急速であったということはあると思います。大体、最近、この三月に公定歩合が改定されますまで、どちらかといえば上昇をたどってまいったわけでございますが、ただ、直近を申しますと、例えば、ターム物と申しますが、CDの三カ月物ないしは手形の二カ月物、これは四月に入りましてから若干下がりぎみで落ちついております。それからまた債券の方も、四月に入りまして、長期国債の利回りなどを見ますと、これも若干下がりぎみで落ちついております。  したがいまして、ここのところは一言で申せばおおむね落ちついた動きとなっておるということが申せるのでございまして、今後その動向をさらに慎重に見守っていくべきところであろうと思っております。
  392. 武藤山治

    武藤(山)委員 かつて、銀行ょさようなら、証券よこんにちはという流行語が出ましたね。今は、証券よさようなら、銀行ょこんにちは、こういう状態が現出しつつあるような昨今の状況ですが、六月ごろの時点になると、いや、そういう状態ではないということが証明されてくるよ、こう受けとめていいでしょうかね、橋本大臣。
  393. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私からしますと、両方ともこんにちはというのが一番望ましいのでありますが、そうはなかなかうまくいかないとすれば、むしろこれからの市場関係者がどういう方向に関心を持たれるか、また逆に国民がどういう方向に自己の財産保全を考えていかれるかによって大きくこの流れは変わるもの、そう感じております。
  394. 武藤山治

    武藤(山)委員 株のことでちょっと調べてみましたら、財テク人口約二千万人、そして株をこの十年間、長期の十年タームで見ると、一九八〇年一月四日の日経平均が六千五百六十円、日経ダウが。時価総額で八十兆円だったというのですね、当時、十年前。それが、昨年十二月二十九日の三万八千九百十五円の最高のとき、時価五百九十兆円というのですね。そうすると、十年間で株の総資産の評価が七・四倍というふえ方であります。そして、ダウ平均の倍率が五・九倍、ダウの上がりぐあいが約六倍ですね。この間の消費者物価は一・二八倍、土地の上昇は一・八一倍ですね。  こういう状態で、実は株を買ってえらい損をしちゃった人もいるわけでありますが、日経平均ダウではこの三カ月間で一万円損ということになるわけですね。  特に、株など全然関係のない、いじらない人たちが、株の恐ろしさと申しますか、今回の大暴落でびっくりいたしましたのは、NTTの昨年高値と最近の安値を比較してみますと、NTT株百九十三万円が百六万円、この間の安くなったときね、東京電力が七千八百七十円だったのが三千八百九十円、野村証券が四千百二十円だったのが二千十円、興銀が六千七百四十円が三千百二十円、東急が三千六十円が千五百九十円、三菱地所が二千九百五十円が千五百九十円。そうすると、一般の国民から見たら、これらはもう立派な企業で、こういうかたいところを買っておけば絶対失敗はない、損はない、保有株、資産株として買っておいて心配ない、こう勧められて買った人が相当いると思うのですよね。それが半値なんですよ、半分に減価しちゃったのです。これはどう見ても異常の異常ですね。  ですから、これがいつごろどうなるかということをみんな期待をしているし、不安も持っているし、このままずるずると、このままで、成長はしないが、働かないで、大体ここらが、今までが行き過ぎたんだ、今までがどうも急カーブで行き過ぎたんだから、この辺で落ちついて当然だと見るべきなのか、いや、これはこの状況では、これからいよいよ消費を減らそう、十買うものは六個で我慢しよう、そういう欲望がだんだん縮小する心理になっていっちゃうのではないのかな。経済というのは国民の心理の総和ですからね。総理大臣が何と言おうが、大蔵大臣が何と言おうが、経済なんか自由になるものじゃないのですね。個人個人の人間の、購買をしようとする、発動しようとする行動の心理ですからね。それの総和がいろいろ数字で出ているだけであって、一人一人の人間がこの状態をどう認識するかということが大変重要なんですね。だから、そういう見地からいくと、この優秀な企業がみんな半値になりっ放しで、今まで株は行き過ぎたから今の水準が至当だと言えるような気もしないのですね。  これはどうですか、大蔵大臣、こういう状況は。これは大蔵大臣が答えると影響があるものだから非常に質問しにくいんですよ。大蔵大臣も答えにくいから、もし答えにくければもっと下っ端の局長でいいけれど、ちょっと答えてちょうだいよ。
  395. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 下っ端ではなくて、プロ中のプロの局長から御答弁をさせます。
  396. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 株価の見通しにつきましては、いろいろ私どもが何か物を言いますとあらぬ憶測を呼ぶことがありますので、避けさせていただきたいと思います。  ただ、御参考までにちょっと申し上げますと、実は、アメリカあたりで、昨年末からことしの一、二月にかけまして、日本のダウ平均が、株価が下がりますともうかるという一種のプットワラントというのがかなり売られておりました。ただ、それに対しまして、最近でございますが、三月から四月にかけまして、逆に今度は、株価が上がるともうかるというコールワラントというのがアメリカあたりで売られているという状況にあるということだけ間接的な情況証拠として申し上げたいと思います。
  397. 武藤山治

    武藤(山)委員 私もそういう話を聞いたので、きょうは質問しようかな、しまいかなと思って実は迷っていたのですが、今のプットワラント債なるものは——私もよくわからないのですよ、これは兄貴分の堀先輩にでも聞かないと株のことはよくわからないのですが、私がいろいろ聞き、調べた話では、先物売買ですね、先物のときに、日本の株はまだ下がるよ、まだ下がるよ、今買いだよ、今安く安くと売りつけて、量を売ればもうかるわけですから、そういうことを商売にしてべらぼうにもうけているといううわさを聞いたの。そうすると、この間、日銀総裁が私の質問に、経済外的な要因でという大変意味深長な答えをここでしているのですよ。もちろん、そのときの日銀総裁の頭の中は、東ドイツ、西ドイツの統一でドイツの通貨がたくさん必要になってくる、そしてマルクはインフレぎみになるだろう、そういうことの予防的措置も一つ含まれているんだ、そういう意味も言いたかったのだろうと思いますが、いずれにしても、経済外的要因で株がこうなっている、円がこうなっているということを言ったわけですよ。どうも今の局長答弁の先物取引のやり方に一つ大きな原因があるような気がしてならないのですよ。しかし、これは何とも取り締まる方法がない、自由経済で、法律で先物を認めているんですから。そういう知恵を編み出して金もうけをするやつが立派だということになっちゃうんですね、自由経済なんだから。しかし、被害を受けるのは日本なんですよ。これはどうにもならぬのだと思いますが、証券局長、どうなんでしょうか。何かうまい名案があるのかね、これ。
  398. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 先物取引につきましては、これは現物取引を持っていることに伴ういろいろな価格変動等のリスクをヘッジする手段ということで編み出されたわけでございまして、これ自体は合理的な手法でございます。諸外国でも広く行われておりますし、それに対応いたしまして、日本でもこの一、二年間、いろいろな意味での先物取引を導入しているということでございます。そういった意味で、先物と現物の間の価格差を利用したいわば裁定取引というのも順次日本等にも普友してきておるといったことになっているわけでございまして、この動きというものが現物市場に影響を与えているということはあり得ると思います。ただ、そうはいいましても、それはある意味では基本的にヘッジということを目的としているわけでございますし、同時に、株価の上げ局面、下げ局面におきまして、それぞれがそれを利用しているということでございますので、私どもは、その裁定取引によりまして一方的に個人投資家のみが被害を受け、機関投資家のみが利益を得ている、こういうことでは必ずしもないのではないかというふうに認識しております。  ただ、そうはいいましても、最近の三月時点における株価の動きを見てみますと、いわゆる先物取引といいますか裁定取引の状況というものがはっきりディスクローズされていないことによりまして、市場に対しまして無用の不安感、心配を与えるということがいろいろな意味で相場に悪影響を与えたということもあり得ようかと思いますので、こういった問題につきましては、先物取引の状況等を必要に応じましてディスクローズするといった方向を現在検討しているところでございます。
  399. 武藤山治

    武藤(山)委員 大臣、このプットワラントというのは、日本の株が将来にわたって暴落するから先物で売っておきなさい、そういう権利を売っているわけですね。そういう商品。だから、どんどんお客が寄りついて、それが現物に反映をしてくる。このことはちょっとお互いが商業道徳として少し慎まないといかぬな。アダム・スミスは、自由経済というのは、目に見えない、手につかむことのできない神の手によって導かれる経済と教えているわけですから、そういう倫理性、道徳性というものが根底になければ自由経済というのは成り立たないわけなんですね。しかし、こういう競争になってくると、もうなりふり構わずやるとなったら、やはり混乱がどこかへ出てくる。こういうことを私も大変不思議に思い、心配をしている一人なんであります。  そこで、もう時間、七時にやめると約束してしまったものですからやめますが、大蔵大臣、NTT株、これは何とかしてもらわぬとという陳情がいっぱい来るんですよ、労働組合の人からも。というのは、あの当時大変もったいつけて、抽せんで決めたでしょう。だから我も我もとみんな家族の名前で抽せんを申し込んだら当たっちゃった。労働金庫から借金して百十九万円で買いました。それが、元金減らしちゃったものだから、金利は毎月払わなければならぬ、労金に。先生、国が責任持って売った株がこんなことでいいんですか、政治家は一体何ぼやぼやしているんですかと言って苦情の電話や手紙が私のところにも大分来ているんですよ。ですから、私は、これは大変なことだな、こう思うのです。  そこで、まだ、全体の株は千五百六十万株のうち五年以内に売ろうというのは七百八十万株だ。そのうち既に放出したのが五百四十万株ですね、売り出したのが。あと二百四十万株をとにかくこの五年以内に売ろう、こういうわけなんですが、去年はどうも株価の動向から売らなかったわけですね。ことしもこんな状態じゃ売れないよね、普通の株がみんな半値なんですから。ですから、一回NTT株をもうちょっと信認をさせる意味で、これはいろいろ検討は必要だろうし、なかなか難しいと思うんですけれども、どうでしょうか、この二百四十万株はもう放出しない。いいじゃないですか、国庫が今まで売った株は平均して百八十万ぐらいになるわけですから、政府は十兆円もうかった、NTTのおかげで十兆円。だから、ここで二百四十万株ぐらいはひとつもう減資しよう、資本金を減らそう、NTTの。一千二百万株は売り出さない。それは減資に使う。回しちゃう。これをやったら信頼が大変回復するような気がするんです。これは素人ですよ、私は全然株のことを知らない素人ですが、そんなことでもしてもらわないと、国民は国の財産だと思って当時買ったわけですよ、信頼して。それが今の値段でいくと五兆円損しているんですよ、五兆円。国は十兆円もうかったけれども、買った人は五兆円損しているんですよ、五兆円。だからひとつどうですか、そのくらいのことを思い切って、海部内閣、国民に平和の配当をひとつ配ったらどうですか。そういうことでひとつ検討していただければ、橋本大蔵大臣の株は上がるし、将来歴史に残る大蔵大臣になるような気がするんですが、どうでしょうか。
  400. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 先日、委員からお話がありましたときにも、私は首をかしげながら、一つの御提案だとは思うし、NTT株式の問題については私どもにもお手紙が来たり、お電話を深夜にかけてこられる方があったりということで、国民のお気持ちはよくわかるし、また委員が主張されるお気持ちもよくわかります、ただ、ちょっとこれは調べてみないと何とも言えませんねと申し上げたんですが、その後調べてみますと、一つは、売却可能なNTT株式というものは法律の規定によりまして国債の償還財源に充てるために国債整理基金特別会計に帰属をさせている、その趣旨に照らして問題が生ずる。そのほかにも、財政法第九条で、国の財産は、法律に基づく場合を除くほか、適正な対価なくしてこれを譲渡してはならないという規定にも抵触するのではないかというおそれがあります。  同時に、政府保有株式についての無償減資というものは、確かにそういうふうにしますと株価は上昇をもたらすだろうという点についてはよく理解ができるのですけれども、国民共通の負債である国債償還の財源に充てるべき財源、これを今度は逆に特定の民間株主の利益のために使うという結果になるわけでありまして、これは非常に大きな問題を生ずるのではないかというのが、今検討している状況であります。  しかし、いずれにいたしましても、今後のNTTの株式というものにつきましては、証券・金融市場等々の動向を見きわめながら、国民共有の財産であるという視点を踏まえて慎重な判断をしていかなければならないということを考えておりまして、委員の御提案もなお勉強させていただきます。
  401. 武藤山治

    武藤(山)委員 あと郵政大臣や、通告をしておいた項目幾つもあるのですが、最初七時という約束をしたので、武士に二言はないを守らぬといかぬと思いますので、以上をもって私の質問を終わります。ありがとうございました。
  402. 越智伊平

    越智委員長 これにて武藤君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  403. 越智伊平

    越智委員長 この際、平成二年度総予算の公聴会の件について申し上げます。  公述人の選定につきましては、さきに委員長に御一任いただいておりましたが、本日の理事会において協議いたしました結果、お手元に配付しました名簿のとおり決定いたしましたので、御報告、いたします。     ─────────────    予算委員会公述人名簿 一、意見を聞く問題 平成二年度総予算について  ○四月十七日(火)     全国法人会総連合顧問     経 済 評 論 家  立山 武司君     日本労働組合総連合会     副事務局長      坂本哲之助君     経済団体連合会常務理     事          糠沢 和夫君     筑波大学助教授    進藤 榮一君     全国農業協同組合中央     会常務理事      石倉 皓哉君     東洋大学経済学部教授 八巻 節夫君  ○四月十八日(水)     全国国民健康保険診療     施設協議会副会長   山口  昇君     明治大学教授     吉田 忠雄君     明海大学教授     石原 舜介君     立教大学教授     和田 八束君     東京女子大学教授   本間 長世君     全国商工団体連合会副     会長         伊藤 国男君     ─────────────
  404. 越智伊平

    越智委員長 次回は、明十三日午前九時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時二分散会