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1990-04-03 第118回国会 衆議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年四月三日(火曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 越智 伊平君    理事 近藤 鉄雄君 理事 佐藤 信二君    理事 野田  毅君 理事 原田昇左右君    理事 宮下 創平君 理事 加藤 万吉君    理事 佐藤 敬治君 理事 村山 富市君    理事 神崎 武法君       粟屋 敏信君    池田 行彦君       石井  一君    稲村 利幸君       内海 英男君    越智 通雄君       工藤  巌君    倉成  正君       古賀  誠君    後藤田正晴君       左藤  恵君    自見庄三郎君       田澤 吉郎君    戸井田三郎君       葉梨 信行君    長谷川 峻君       浜田 幸一君    林  義郎君       原田  憲君    松本 十郎君       村田敬次郎君    村山 達雄君       井上 普方君    川崎 寛治君       北川 昌典君    串原 義直君       渋谷  修君    嶋崎  譲君       新村 勝雄君    新盛 辰雄君       戸田 菊雄君    藤田 高敏君       武藤 山治君    和田 静夫君       日笠 勝之君    二見 伸明君       冬柴 鐵三君    児玉 健次君       三浦  久君    大内 啓伍君       高木 義明君    楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣  海部 俊樹君         法 務 大 臣 長谷川 信君         外 務 大 臣 中山 太郎君         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君         文 部 大 臣 保利 耕輔君         厚 生 大 臣 津島 雄二君         農林水産大臣  山本 富雄君         通商産業大臣  武藤 嘉文君         運 輸 大 臣 大野  明君         郵 政 大 臣 深谷 隆司君         労 働 大 臣 塚原 俊平君         建 設 大 臣 綿貫 民輔君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     奥田 敬和君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 坂本三十次君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 塩崎  潤君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      砂田 重民君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 石川 要三君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      相沢 英之君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      大島 友治君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 北川 石松君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 佐藤 守良君  出席政府委員         内閣官房長官 大島 理森君         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         内閣法制局第一         部長      大森 政輔君         公正取引委員会         委員長     梅澤 節男君         公正取引委員会         事務局官房審議         官       矢部丈太郎君         公正取引委員会         事務局審査部長 柴田 章平君         警察庁刑事局長 中門  弘君         総務庁長官官房         審議官         兼内閣審議官  増島 俊之君         総務庁人事局次         長         兼内閣審議官  服藤  收君         総務庁統計局長 井出  満君         北方対策本部審         議官      鈴木  榮君         防衛庁参事官  内田 勝久君         防衛庁長官官房         長       児玉 良雄君         防衛庁防衛局長 日吉  章君         防衛庁教育訓練         局長      米山 市郎君         防衛庁経理局長 藤井 一夫君         防衛施設庁総務         部長      吉住 愼吾君         防衛施設庁施設         部長      大原 重信君         防衛施設庁建設         部長      黒目 元雄君         防衛施設庁労務         部長      竹下  昭君         経済企画庁調整         局長      勝村 坦郎君         経済企画庁物価         局長      田中  努君         経済企画庁総合         計画局長    冨金原俊二君         環境庁長官官房         長       渡辺  修君         環境庁企画調整         局長      安原  正君         国土庁長官官房         長       北村廣太郎君         国土庁長官官房         会計課長    森   悠君         国土庁土地局長 藤原 良一君         法務省刑事局長 根來 泰周君         法務省矯正局長 今岡 一容君         法務省入国管理         局長      股野 景親君         外務大臣官房領         事移住部長   久米 邦貞君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省北米局長 松浦晃一郎君         外務省欧亜局長 都甲 岳洋君         外務省経済局長 林  貞行君         外務省経済協力         局長      木幡 昭七君         外務省条約局長 福田  博君         外務省国際連合         局長      赤尾 信敏君         外務省情報調査         局長      佐藤 行雄君         大蔵省主計局長 小粥 正巳君         大蔵省主税局長 尾崎  護君         大蔵省関税局長 瀧島 義光君         大蔵省理財局長 大須 敏生君         大蔵省証券局長 角谷 正彦君         大蔵省銀行局長 土田 正顕君         大蔵省国際金融         局次長     江沢 雄一君         厚生大臣官房総         務審議官    加藤 栄一君         農林水産大臣官         房長      鶴岡 俊彦君         農林水産大臣官         房予算課長   山本  徹君         農林水産省農蚕         園芸局長    松山 光治君         通商産業大臣官         房商務流通審議         官       山本 貞一君         通商産業省通商         政策局長    畠山  襄君         通商産業省通商         政策局次長   堤  富男君         通商産業省貿易         局長      内藤 正久君         運輸大臣官房長 松尾 道彦君         運輸大臣官房会         計課長     岩田 貞男君         運輸大臣官房国         有鉄道改革推進         総括審議官   大塚 秀夫君         郵政大臣官房経         理部長     木下 昌浩君         郵政省電気通信         局長      森本 哲夫君         労働大臣官房長 若林 之矩君         労働省職業安定         局長      清水 傳雄君         建設大臣官房長 牧野  徹君         建設大臣官房会         計課長     小野 邦久君         建設省建設経済         局長      望月 薫雄君         建設省都市局長 真嶋 一男君         建設省住宅局長 伊藤 茂史君         自治大臣官房長 小林  実君         自治省行政局長 森  繁一君         自治省行政局公         務員部長    滝   実君         自治省行政局選         挙部長     浅野大三郎君         自治省財政局長 持永 堯民君         自治省税務局長 湯浅 利夫君  委員外出席者         参  考  人        (日本銀行総裁) 三重野 康君         参  考  人         (日本銀行発券         局長)     吉澤 利夫君         参  考  人         (税制調査会会         長)      小倉 武一君         予算委員会調査         室長      多田 俊幸君     ───────────── 委員の異動 四月三日  辞任         補欠選任  小此木彦三郎君     自見庄三郎君   村岡 兼造君     古賀  誠君   川崎 寛治君     渋谷  修君   松浦 利尚君     北川 昌典君   市川 雄一君     二見 伸明君   小沢 和秋君     児玉 健次君   大内 啓伍君     高木 義明君 同日  辞任         補欠選任   古賀  誠君     村岡 兼造君  自見庄三郎君     小此木彦三郎君   渋谷  修君     川崎 寛治君   二見 伸明君     市川 雄一君   高木 義明君     大内 啓伍君     ───────────── 三月二十八日  平成二年度一般会計暫定予算  平成二年度特別会計暫定予算  平成二年度政府関係機関暫定予算 は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  公聴会開会承認要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  平成二年度一般会計暫定予算  平成二年度特別会計暫定予算  平成二年度政府関係機関暫定予算      ────◇─────
  2. 越智伊平

    越智委員長 これより会議を開きます。  平成二年度一般会計暫定予算平成二年度特別会計暫定予算平成二年度政府関係機関暫定予算、以上三案を一括して議題といたします。  まず、三案について政府より趣旨説明を求めます。橋本大蔵大臣。     ─────────────  平成二年度一般会計暫定予算  平成二年度特別会計暫定予算  平成二年度政府関係機関暫定予算     〔本号(その二)に掲載〕     ─────────────
  3. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 このたび、平成二年四月一日から五月二十日までの期間について暫定予算を編成することといたしましたが、その概要について御説明申し上げます。  まず、一般会計について申し上げます。  暫定予算が本予算成立までの応急的な措置であることにかんがみ、今回の暫定予算におきましても、暫定予算期間中における人件費事務費等経常的経費のほか、既定の施策に係る経費について行政運営上必要な最小限度のものを計上することとしております。  新規の施策に係る経費につきましては、原則として計上しないこととしておりますが、生活扶助基準等の引き上げ、国立大学の学生の増募等教育及び社会政策等への配慮から特に措置することが適当と認められるものにつきましては、所要経費を計上することとしております。  また、公共事業関係費につきましては、暫定予算期間中における事業継続的執行を図るため、一般公共事業につきましては、平成二年度予算額のおおむね四分の一を目途に計上することとし、その枠内において、積雪寒冷地事業については、特別の配慮を加える等所要額を計上することとしております。  地方財政につきましては、四月に交付する地方交付税交付金に係る所要額を計上することとしております。  歳入につきましては、税収及びその他収入についての暫定予算期間中の収入見込み額を計上するほか、公債金について、暫定予算期間中において財政法の規定により発行を予定する公債に係る収入見込み額一兆五千四百億円を計上することとしております。  以上の結果、今回の一般会計暫定予算歳入総額は二兆九千五百三十六億円、歳出総額は十兆二千億円となります。  なお、七兆二千四百六十四億円の歳出超過となりますが、国庫の資金繰りにつきましては、十四兆二千億円を限度として、必要に応じ大蔵省証券を発行することができることとしております。  特別会計及び政府関係機関暫定予算につきましても、一般会計の例に準じて編成いたしております。  なお、財政投融資につきましては、住宅金融公庫、日本道路公団等三十機関に対し、総額四兆七千九百二十億円を計上し、一般会計に準じて暫定予算期間中の事業が行われるよう措置することとしております。  以上、平成二年度暫定予算につきまして、その概要を御説明いたしました。何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださるようお願い申し上げます。
  4. 越智伊平

    越智委員長 これにて大蔵大臣説明は終了いたしました。     ─────────────
  5. 越智伊平

    越智委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。池田行彦君。
  6. 池田行彦

    池田(行)委員 私は、ただいま議題となりました平成二年度暫定予算案初め当面する重要課題につきまして、自民党の立場から、総理初め内閣の見解をお伺いしてまいりたいと存じます。  まず最初に、日米間の構造協議、昨日、日本時間で十一時からでございましょうか、始まったとのことでございます。総理も、この協議を控えまして、本当に休みも返上して政府内の取りまとめに御苦労なされ、また、ブッシュ大統領ともいろいろ電話を通じて御協議なさったとのことでございます。御苦労さまでございます。  さて、今回の協議に際しましての米側主張につきましては、いろいろな見方がございます。こういった米側主張をいろいろ受け入れても、果たしていわゆる両国間のインバランス是正につながるのだろうかとか、あるいは、まず米側努力してもらう点が多いのじゃないか、こんな声もあるところでございますし、中には内政干渉ではないか、こういった声もあるのも事実でございます。しかしながら、日本アメリカとの間に良好な関係を維持するということは、日米関係はもとよりのこと、世界全体にとっても大切な課題だと思いますし、また、現に両国の間に五百億ドルに上る国際収支インバランスがあるという現実もこれは無視することができない。さらに申しますと、米側から提起されております問題の数多くのものが、米側に言われるまでもなく、我が国独自の立場からしてもこれは考えなくてはいかぬ、そういう点が少なくないのもまた事実でございます。  そういったことをあれこれ考えますと、この構造協議、いろいろな問題がありましても精力的に取り組み、何としても合意を成立させることが必要ではないかと存じますし、また、今回は中間評価ということではございますが、これからの両国政治スケジュールその他を考えてまいりますと、七月の最終評価に先送りすることなく、でき得る限り今の段階で詰めをすることが大切ではないか、こんな考えを持つものでございます。  この問題、事は外交にかかわる問題でございますし、また、現在、文字どおりワシントン両国間の協議のさなかでございますので、余り詳細にわたってお伺いすることは避けたいとは存じますけれども、この第四回の構造協議がどのように進んでおるか、また、これに対して我が方としてどのように対応していくのか、お話しいただける範囲内で結構でございますから、それをお伺いしたい。  それから、それを踏まえて総理から、この構造協議に臨まれる御決意というものをお伺いしたい、このように存じます。
  7. 中山太郎

    中山国務大臣 池田委員指摘のとおり、昨晩十時から、日米構造調整協議が開催をされております。昨晩始まりました会議におきましては、まず日本側から、先般、協議の積み残し事項でございました米側問題点について意見を申し述べている段階であろうと考えておりますが、現在のところ、それ以上の情報に接しておりません。  しかし、政府といたしましては、今回の四月二日、三日の日米構造協議というものは、七月の最終報告を待たずに、でき得る限り政府全力を尽くして日米間の貿易均衡の改正を図るとともに、この両国関係拡大均衡、さらに友好の一層の深まりを目して全力を挙げてただいま対処しておるということでございまして、御了解を願いたいと考えております。
  8. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御承知のように、日本が数年来非常に貿易黒字が大きくなりまして、それが日米関係において顕著に目立つようになってまいりました。  五百億ドルというのが一つマジック数字のような位置になりまして、こんなにあるではないかという指摘が随分あって、たしか昨年のサミットのときの同時に行われた日米首脳会談で、この貿易均衡是正する、そのために日米双方から構造上の問題を提起し合って、お互いに提起し合った問題について努力をし合って、そして世界経済に大きな責任を有する一番と二番の国でありますから、世界経済両国合わせると四割近い生産性を持つわけでありますから、その国がお互いに話し合って共通認識を得るようにしていこう、こういう立場で始まった経済構造協議でありますから、これはお互いに率直に意見の言い合いをし、日本側からは大きくまとめますと七つの項目にして、何十項目かのことをアメリカ側指摘もした。アメリカも、数え方によるのでしょうけれども、大きく絞れば六つですが、数によると二百を超えるような数でいろいろな要請があった。  中にはできることもできないこともございます。できないことは、きょうまでの三回にわたる両者の実務者限りの話し合いでこれはできない。それから、努力するべきことは、これはお互い努力をしていこう。同時に、私たちはこの数年来、日本黒字が一方的にたまっておるということから判断をして、先生御承知のように前川レポートというのもきちっと決めまして、内需を拡大しながら輸入をさらに広げていって、そして世界経済の中で世界じゅうの安定と繁栄のために役立とうという努力もしてきましたが、それも過去二年間だけを例にとってみましても、日本経済活動をだんだん質を変えてきましたので、経常黒字も三百億ドル、二年間で減らしておりますし、また輸入だけ見ましても、世界じゅうから二年間で六百十億ドル輸入増をいたしました。ただ、アメリカからの輸入増は百七十億ドルということになっております。ですから、そこはお互い管理貿易じゃありませんから、日本からは輸入もしますが、輸出もありますのでまだ際立った顕著な改善は出ておりませんが、アメリカ側統計によっても四百九十億ドルというところまで、五百億ドルという線はとにかく下回る傾向になってきた。  こういう努力背景にしながらさらに、アメリカ側から指摘されたこと、日本側から指摘したこと、同時にきょうまで前川レポート趣旨にも沿って国民生活の質の向上をしていく、消費者立場に立って物を考える、例えば土地問題にしましても内外価格差是正の問題にしましてもいろいろ取り組んできたというようなこと等をいろいろ説明をして、そしてこの協議というもので日米双方共通理解認識を得られるように歩み寄っていこう、こう思っておるわけでございます。  ただ、具体的な個々の内容につきましては、まさにきょうあすと、今行われておるさなかでありまして、そこで両方の意見を交換しながら中間的評価にそれをまとめていくという作業を行っておるさなかでございますので、ここでは差し控えさせていただきますが、いずれにしましても、せっかく大きく変わりつつある世界の安定と繁栄秩序づくりのために我が国も積極的に参加をしていきたいという立場で臨んでおりますので、どうぞ御理解を賜りたいと思います。
  9. 池田行彦

    池田(行)委員 総理の御決意のほどはよくわかりました。そしてまた、文字どおり交渉のさなかでございますので余りお伺いするわけにもまいらないわけでございますが、この本当に幅の広い日米協議の中で幾つかの問題に国民関心が集中しております。  その中でも、通産大臣にお伺いしたいのでございますけれども、いわゆる大店法の問題でございますね。これは日本国内におきましても、消費者あるいは生活者立場から進めるべしという意見、他方では日本の今日までを支えてまいりました中小企業の、これからどうなるんだ、いろいろな意見国内でもあるわけでございます。この問題について具体的な対処方針をお聞きするわけにはまいらぬとは思いますけれども、そういった日米間の問題あるいは日本国内の抱える問題、そういったものを背景にして、基本的に通産大臣としてどういうふうに考えていかなくちゃいけないのか、その基本的な御認識と、それから特に配慮をしていかなくちゃならぬ点、そういった点について若干御所見をお伺いしたいと存じます。
  10. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 今御指摘のございました大店法の問題が大変シンボライズされましたので、国民皆様方関心も非常に強いというのはよく承知をいたしております。  そこで私といたしましては、今池田先生おっしゃるとおりで、一つは、やはり我々通商産業政策をこれから進めていく上に当たりましては、従来どちらかといえば、まあ企業側に近いような考え方でやってきたという点は私は否めないと思います。しかし、これからはやはり消費者を重視した政策通商産業政策の中に取り入れていかなければならない、そういう考え方から消費者をより重視した観点というのが一つございます。  それからいま一つは、また一方、それぞれの地域社会においては、とにかく中小小売商皆さん方が非常にその発展のために御努力をなさってきていただいたことも事実でございまして、全国で百六十万軒あると言われておる中小小売商皆様方のことも全く無視するわけにはいかないわけでございます。やはりその方々も御努力なさればしっかり御商売をやっていっていただける、こういうことを考えていかなければならない。  それからいま一つは、今総理からもお話がございましたけれども、日本世界の中で孤立していくわけにはいかない。特に日米関係というのは非常にそういう点では重要でございます。この日米関係をより有効な方向に持っていくためにはどうしたらいいんだろうか。  この三つの観点からいろいろと検討させていただきまして、私どもとしてはベストな案をつくったつもりでございますけれども、今総理のおっしゃったように、中身のことについてはきょうの時点ではお許しをいただきたいと思うわけでございます。
  11. 池田行彦

    池田(行)委員 いま一つ大きな争点になっております公共投資の問題でございますが、これにつきましてはいろいろな考え方があると思います。  現在でも我が国公共投資の水準というのは欧米先進諸国に比べても格段に高いレベルであるわけでございますし、おくれておると言われておりました住宅とかあるいは生活関連社会資本も含めて、このところかなり社会資本の整備も進んでまいった、こういう見方もあるわけでございます。それからまた、我が国財政の現状を考えましても、ようやく赤字国債からは脱却したと申しましても、百六十兆円を超える国債の残高もある。それからまたさらに、財政の景気調整機能を考えますと、そう簡単に進めるわけにはいかぬというお気持ちもよくわかるところでございます。とりわけ、目下のところは民間も含めまして建設投資が非常に活発でございまして、むしろこれ以上のことをやりましても消化不良を起こすのじゃないか、こんなこともございますので、米側主張していると伝えられますように三年とか五年のうちにGNP比で一〇%というようなことをやるというのは、これは妥当でもないし、また可能でもないんじゃないかというふうに考えるわけでございます。  しかしながら、我が国自身の立場からいいましても、整備は進んできたといっても、なお今住宅そうして下水道とか公園とかいうような、生活にかかわりの深い社会資本の整備がまだまだおくれているというのは、これは否定できない事実だと思います。そういったことから考えまして、特にこれから高齢化社会が本格化するとか考えますと、二十世紀の残された十年間に思い切ってそういったところのいわばストックの蓄積を図る、そのためにフローの面でも公共投資を進めていくということが我が国独自の立場から、アメリカから言われるまでもなく必要じゃないか、このように考えるわけでございます。  そういったことで二、三点お伺いしたいのでございますが、まず、現在の社会資本の整備の水準、もう大分いいぞという御意見もあるのでございますけれども、しかしこれ見ますと、道路なんかについても、舗装率は進んでいるという言い方で、それで十分なんだろうかという感じがある。それから下水道なども随分問題があると思うのでございます。そういった点について建設大臣、いわゆる社会資本の整備の現状、現在の水準なりあるいはこれからの整備の進んでいく見通し、そういったものを満足すべきものと考えておられるのかどうか、ちょっとお伺いしたいと存じます。  それから二つ目に、今年度、平成二年度に五カ年計画のうち八本が終期を迎えるということになっておりますけれども、大体八本のうち七本までは超過達成されておるようでございます。これを思い切ってこの際さらに上方に修正すると申しましょうか、増額していくということを考える必要があるのじゃないかという点について御見解をお伺いしたい。  それからさらに申しますと、来年度以降終期の到来する七本の五カ年計画について、例えば繰り上げてこれを上方に改定してくれなんということを検討する必要があるのかないのか、そういった点についてお伺いしたいと存じます。
  12. 綿貫民輔

    ○綿貫国務大臣 社会資本整備のおくれておる面につきましては、池田先生よく御存じのとおりでございます。今の一番代表で言われます下水道は、今普及率が四〇%でありますが、英国は九五%、西ドイツは九〇%、アメリカが七三%、特に日本は、人口五万人以下のところでは七%ということで大変に大きなおくれを来しております。また、公園しかりでございます。いろいろな面でこれを取り返していかなければならぬというのが国の大きな方向ではないかと思っております。  なお、ただいま改定になります五カ年計画等々についての御質問でございますが、前向きに今審議会等々でも御審議いただいておりますので、前広に検討させていただきたいと考えております。
  13. 池田行彦

    池田(行)委員 ぜひそういうことで前向きにお進めいただきたいと存ずるのでございますが、しかし大蔵大臣、そうは言われても、財政の現状を考えるとなかなか簡単に対応できないよというお考えもあろうかと存ずる次第でございます。現在のところは財政の状態も税収もよろしゅうございますし、それから財投の方にもゆとりと申しましょうか、そんなに危惧するような状態じゃないということもございますけれども、これから中長期的に考えてまいりますと、やはり必要な社会資本の整備を進めていく、それから一方で財政に余り大きな支障を来してもいけない、こんなことを考えてまいりますと、こういった公共投資を進めていく原資の面についても多方面にわたっていろいろ御検討される必要があるんじゃないかという気がするわけでございます。  そういった意味では、一般会計の方も、建設公債ならばどんどん出していいという状態じゃございませんし、例えば財投の実施機関の方の独自の資本市場等からの資金調達、まあ内外の資本市場を含めてそういったことをさらに拡大していくとか、あるいは資金運用部というか、あるいは財投というのか、いわば財投債なんということも将来の課題としては検討しておく必要があるんじゃないか、こんな気もするわけでございますが、その辺について御見解をお伺いしたいと思います。
  14. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今建設大臣からお述べになりましたように、私どもとして、社会資本整備の重要性というものは十分認識をしておるつもりであります。と同時に、委員が御指摘になりましたような、赤字公債依存体質脱却という以上、平成元年度末百六十四兆円という国債残高を考えますときに、我々としてはこの国債の累増にどこで歯どめをかけられるかということは非常に大きな問題でありますし、建設国債といいましても安易に発行のできる情勢ではございません。言いかえれば、一般税収として国民からお預かりをいたしました資金を今後社会資本整備の中にも相当程度投入する決意を私どもとしては考えていかなければならないと思います。と同時に、景気に与える影響等を十分に考え、年々の対応をしていくことも必要でありましょう。そうした中から、今委員が御指摘になりましたような視点というものは我々も大切な視点だと思います。そして、従来からも社会資本整備の着実な推進を図りますためにも財政投融資を活用してまいったわけでありますし、これから先もこうした問題について我々は十分な検討をしていく必要は当然のこととして、これはアメリカからの話に云々ということではなく、国民生活の質の向上を図るという視点から我々が努めていかなければならないと思います。  ただ、今委員からお触れになりました財投債といったようなものは、確かに行革審の方からも御提案がありましたし、一つ考え方であるとは私どもも思います。しかし、現時点においてそのような手段を講ずる状況にはありませんし、具体的な検討は今行っている状況ではございません。
  15. 池田行彦

    池田(行)委員 現時点でそういう状態でないというのはそのとおりだと思いますけれども、やはり中長期的に社会資本整備の原資という観点から御検討をいただく必要があるんじゃないかと存じます。  さて、時間もございませんのでこの問題はこのぐらいにいたしまして、次にお伺いいたしたいのは、いわゆる衆参ねじれ現象と言われる国会の状況の中で、さて、これからどういうふうに国会審議を進め、そして与野党通じて国民の負託にこたえていく、そういったルールをつくり上げていくかという点について、総理の御所見というか御感想をお伺いできればと思う次第でございます。  かねてから我が国の有権者はすばらしいバランス感覚を持っているということが言われておりましたけれども、昨年からことしにかけての国政選挙の結果がそれをまた証明したと言うべきなのかどうなのか。昨年の参議院選挙の結果は我々にとってはありがたくないわけでございますけれども、しかしまた、そういうふうに揺れた振り子がやはりこれだけでもいけないぞというので今回の衆議院総選挙の結果になったのだと存じます。  しかしながら、その結果もたらされたねじれ現象という中でいろいろ難しい問題が出ております。既にこの特別国会におきましても、補正予算の成立が非常におくれて年度末ぎりぎりになったというようなこと、あるいは、地方税法の関係でせっかく予定しました五百億円の減税が吹っ飛んでしまったとか、いろいろな問題があるわけでございますし、これからもいろいろ出てくると思うのでございます。そういったことで、これからは、野党がどうこうというだけじゃなくて、私ども自民党のサイドでも、あるいは政府の側でも、従来の慣行やルールにとらわれずに新しい状況の中でどうやって国民の負託にこたえるようなことができるかというその道を模索していくというようなことが必要じゃないか、このように考えるわけでございます。  そのためには、例えば国会の側でも、私どもの方から先般お願いしましたように、野党の方々の内部でいろいろな御事情はおありだろう、それをこちらがそんたくいたしまして、本音の部分には余り触れずに、建前を大切にしながら、しかし結果的に支障のないようにやっていくといったこともできたわけでございますけれども、現在では私どもはそれだけのことをやっていく雅量というよりもその力を与えられていないということでございますので、どうか各党を通じてあくまで本音の部分を出して、場合によっては、国民皆様方に一時的に評判を下げることであっても、よしとするものはよしということを鮮明にしていただくということが必要じゃないか、こういう感じがいたします。  また、国会の審議におきましても、前々から言われております国会の改革の問題、例えば定例日が週二日か三日しかないとか、あるいはいわゆる縛りということで本会議での趣旨説明質疑があるまでは委員会での審議ができない、さらには、きょうもそうでございますが、予算委員会審議の間は閣僚の方々皆さんがこちらに縛られてしまう。こういった点にも大胆にメスを入れていく必要があるんじゃないかと思いますし、さらに申しますと、政府の側も、いろいろ御提案なさるときに、それはベストと思って提案はされるのでございましょうけれども、やはり審議の過程でいろいろな意見を聞きながら柔軟に対応していかれるということも必要じゃないか、こんな感じもいたしますけれども、そういった点について総理の御感想をお伺いしたいと存じます。
  16. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 選挙の結果国民の皆さんの厳粛な審判をいただき、その結果が、今申されたように衆議院と参議院と議席数において与野党の違いが出てきておりますから、その数字だけで事が決まってしまうと初めから決めてかかりますと、今おっしゃるように両院で同じものが成立するということは極めて難しい状況に相なるわけです。けれども、初めからすべてそうだと決めてしまってかかりますと、何のために議会政治があり、何のための二院制かという根本的な問題になるわけでありますから、議会というところは議論を尽くしていただいて、そして国と国民生活のためにさらに前進し向上させていくために御議論を願い、努力をしていくのが議会政治の本質だと私は考えておりますので、これは衆参両院で各党各会派の皆さんが十分御議論をいただいて前進をさせていただきたいということを心から御期待しておるわけでございます。  去る国会におきましても、極めて重要な意味を持つ土地基本法なんかにおいてもそのような決着を各党各会派の話し合いでつけていただいたわけでありますから、私は、そうなっていくことが極めて望ましいことだ、それには政府といたしましても、今委員指摘のように、国会の運営の問題については、これは議会で、あるいは衆議院、参議院それぞれで各党がお話を願ってお決め願うことでありますから、そのことについて意見を述べることは控えさせていただきますけれども、全体の心構えとしてはそのように十分御議論を願いながら解決をしていきたい。ただ単に数の結果が違うから初めからだめなんだという結論を出さないで話を進めていくようにしていただきたい、こう考えます。
  17. 池田行彦

    池田(行)委員 我々も何とか新しい状況の中での国民の負託にこたえる道を模索してまいりたいと存ずるのでございますけれども、しかし、なかなか難しい点もございます。今審議が始まりました暫定予算につきましても、もう既に空白ができているわけでございますね。珍しいことではないとおっしゃるかもしれませんが、余り予算の空白が恒常化するのも問題ではないかと存じます。この暫定予算は五十日間ということになっておりますけれども、既にきょうはもう四月三日でございまして、さあ、こういった状況の中で、本予算の審議も含めてちゃんと対応できるのかどうか。これは御質問しても、ぜひそうしてほしい、こういうお答えに決まっておりますから御質問申し上げませんけれども、そういったことも考えながら、何とかこういった状況下でも国民皆様方に支障を来さないような新しい道をお互いに探してまいりたい、このように考える次第でございます。  もう時間もございませんので暫定予算の中身は触れませんけれども、もう一点お伺いしたい点は、総理が施政方針演説の中で、現在本当にいわば歴史的転換のさなかにあるこの世界の中で新しい世界の秩序、国際的な秩序を構築するために日本として積極的な役割を果たしてまいりたいと、「志ある外交」ということを御提案になりました。これは、現下の世界情勢から考えましても、日本のこれから進むべき道から考えましてもまことに至当な御提言である、このように考えるわけでございます。そういった面でいろいろお伺いしたいのでございますが、時間がございませんのでなんでございますが、新しい秩序のための日本の役割というのはいろいろな面に、多方面に関係すると思うのでございますが、その中で二つの側面についてちょっと具体的な問題をお伺いしたいと思うのです。  一つは、国際金融なり為替の関係あるいは通貨の問題でございますね。これも非常に大切な問題だと思うのでございます。こう言いますと、現在フロートの世の中にいるのは好んでおるわけではなく、やむを得ずおるわけでございますけれども、現実にそういった状況の中で大変な波乱があり、苦労しておるのは御承知のとおりでございます。何とか中長期的にもう少し安定的な通貨あるいは為替の状況をつくるような工夫はないものかということも本当はお伺いしたいのでございます。秩序の関係というのはそれなのでございますけれども、そんなことは言っておれないほどここのところの為替の変動は厳しゅうございまして、海部内閣も世論調査はどんどんウナギ登りでよくなってまいるのでございますけれども、どうも為替マーケットあるいは株式市場の評価だけはいま一つではないかなという声もございますし、そういった意味で、大蔵大臣も先般来日米蔵相協議に臨まれたり、また近々G7に臨まれるのではないかと考える次第でございますけれども、現在の実態というのはどう見てもファンダメンタルズと離れていると言わざるを得ないと思うのでございますけれども、外国の投資家を中心として、どうもマーケットの反応はそうでもないようでございます。最近は、単に政治状況云々というだけではなくて、日本の経済の先行きに対してまでいろいろな見方が出ているようでございます。こういうときだけに、為替面での協調はもとよりでございますけれども、さらに幅広く主要国間の経済協調を進めていかれて、しっかりとそういった面を守っていくというのが、我が国だけではなくて世界の経済全体の安定のためにも必要だと考えますが、蔵相の御見解をお伺いしたいと存じます。
  18. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 もう長い答弁は差し控えますけれども、基本的に、今委員が御指摘になりましたような問題意識を私どもも持ちながら現状を苦慮しておるところであります。ただ、その中で私ども非常に考えさせられますのは、本当に少し市場に投機的な動きが多過ぎる。そして、それによる振れが非常に大きな影響を各分野に与えている状況の中で、果たして一体どういう対応策があり得るのか、これは私ばかりではなく、各国の通貨当局すべてに関連する問題であろうと思います。  ただ、そうかといって、それでは固定相場制に戻れるか、あるいはターゲットゾーンをある程度設定してというような考え方がとれるかといいますならば、これもまた現実に合いませんし、むしろターゲットゾーンを設定すること自体が投機的な行動を誘発する危険性もある。そうなりますと、やはり各国の政策協調とそれに連動しての協調介入といったものを中心にして地道な努力を積み重ねていくのが今日我々のとるべき態度ではなかろうか、今、私はそのような考え方を持っております。
  19. 池田行彦

    池田(行)委員 まだ質問を申し上げたいこともあるのでございますけれども、時間が参ったようでございますので、ちょっとしり切れトンボになりましたが、これで私の質疑を終わらせていただきます。
  20. 越智伊平

    越智委員長 これにて池田君の質疑は終了いたしました。  次に、武藤山治君。
  21. 武藤山治

    武藤(山)委員 きょうは外交問題、大きな総理の理念、哲学、そんなことを中心に聞こうと思っておりますが、大蔵大臣、昨日株が千七百二十円も下落をした。また円もどんどん円安になって百五十九円台になってしまっている。こういう激変が起こって、一層経済観に混迷が起こっていると思うのですね。これは今池田さんに答弁をされたことで大臣の見解は大体わかるのでありますが、素人でもわかるように、どういうところがどういうふうに変化しない限りなかなかこれは回復が難しいなあ、それとも市場経済に放任しておいても自然とやがては調整つくものだ、それが自由経済だ、そういう感覚で眺めている方がいいのか。もし、この今の事態が緩和されるという方法を幾つか挙げるとしたらどういうことが構想されるのか。その辺を含めて大臣の、きのうの状況を踏まえた見解をちょっと聞かせてください。
  22. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 昨日の株式市場、またその株式市場にいわば引っ張られた形での為替の状況、私は大変遺憾な状態であった、そのように認識をいたしております。これはもう委員が既に御承知のとおりでありますが、特定の報道機関から昨日、機関投資家が抱えております相当量の株式が一斉に放出されるのではないかといった感じの記事が流れ、これが市場に非常に大きな影響を与えました。これ自体につきましては、いわば放出をうわさされた関係者自身が記者会見等を正式に開かれ、正式にそれを打ち消されたわけでありますけれども、市場に流れた嫌気というものは、商いが薄かっただけに非常に大きなダメージを与えております。あえてダメージという言葉を使わせていただきたいと思いますが、その影響は為替にも反応し御承知のような状況を来しました。これは本当に私としては残念なことでありますし、こうしたいわば事実と反する風評等で市場が踊るということ自体、私どもとしては大変残念なことだと考えております。そして私は、いろいろな御議論がありますけれども、日本経済のファンダメンタルズというものについて今変化が生じておる状況にあるとは考えておりません。それだけに、その実績を公正に評価をしていただける雰囲気がどうすれば市場につくれるのか、むしろその点に苦慮いたしております。  先日も私は本院におきまして、たしか大蔵委員会の席上、ブレイディ財務長官との論議の際に、ブレイディさんが大変日本の市場について不思議がった、そしてそれは、ブレイディさん自身のブラックマンデーの後処理の体験から、御理解をいただくのに非常に骨が折れたという話を申し上げました、結果的には理解をいただいたわけでありますけれども。非常に株の動きは少ない、しかし、今ちょうど決算時期において新たな資金投入にためらいの見られるところで、薄商いといいながら売りが出る、そうするとそれに対する買いがなかなか入らない、ずるずるずるずる相場を下げている、しかもそれに思惑的なものが入ってくる、一体どういう形でこれに歯どめをかければいいのか、いわば心理的なものでありますだけに、非常に今対応に苦慮いたしております。  そして、自由経済の中で、私は、市場介入というものは、これは為替市場でありましても証券市場でありましても、度を超した介入というものは本来慎むべきものであろうと思いますが、やはり心理的な安定を取り戻すための努力は当然のことながら我々の責務、そのように認識をいたしております。
  23. 武藤山治

    武藤(山)委員 専門家の東京銀行の見解がけさの新聞に出ていますが、ドル不足の解消がかぎだ。では、ドル不足をどうしたら解消できるのか。日本側立場に立った場合、三つのシナリオが考えられると言っていますね。  一つは、貿易黒字を拡大することだ。しかし、これはアメリカからまた貿易摩擦でやられる。しかし、方法としては日本の取り前をふやすという以外にない。もう一つは資本流出の減少だ。どんどんドルにかえて海外投資するものですから、この資本の流出をどう減らすか、これが一つある。もう一つは資本の流入をふやす、アメリカのドルが日本にどんどん投資で入ってくることが望ましい。この三つぐらいのことを目先の焦点として考えない限り、やはりなかなかこの不安は解消しないだろう。興業銀行も大体そんな見解ですね。  だから、為替を取り扱う専門銀行のスタッフがそういう見解を述べているのを見ると、どれを見てもこれはなかなか難しいのですね。人為的にやるのはなかなか難しい。黒字を拡大するなんというのは、またアメリカとの摩擦問題がかなり深刻になってくる。  そこで、日本の円とドルの歴史をちょっと振り返ってみると、明治四年が一ドル一円、大正十三年が二円六十三銭、昭和十六年が四円二十五銭、そして戦後、二十四年四月から三百六十円、それでずっと推移してきて二十年ぐらいたって、プラザ合意で大体百二十円ぐらいを好ましい水準にしようということで、しばらく百二十円がターゲットになっていたんですね。それが、平成元年は百二十円だったのですが、まだ一年しかたっていないのですが、現在百五十九円ということは、一年間で三十円、すなわち二五%も円安になってしまっているわけですね。したがって、海外から輸入する品物は二五%高くなるということでありますから、これは物価上昇、インフレにかなり悪い影響を持っていることは間違いない。しかし、輸出側から見れば、これだけ輸出品が今度は出やすいわけでありますから、輸出産業にとってはプラスの面があるけれども、輸出産業の場合、このレートで取引というのは起こりませんから、直ちにこれは効果があらわれるということにはならない。  そういうような点から考えていくと、プラザ合意の百二十円前後から今百五十九円になっているのを、一体どの程度が一応日本政府としては好ましい水準と考えるべきなのか。もちろん、人為的にそれはできませんよ。できないけれども、好ましい目標値というのはやはりあるわけですね。私の見解によれば、政府の経済見通しはレート百四十二円で見ているのですか、百四十二円だと記憶しておりますが、政府が二年度の予算編成に際して百四十二円に見積もったとなると、百五十九円はちょっと円安過ぎますね。経済見通しそのものを変えなければいかぬ事態に追い込まれる可能性が為替の面からも出てくるような気がするのですね。その辺を総合して、大臣どうでしょうか、どんな見解でございましょうか。
  24. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 大変お答えしにくい御質問でありますけれども、先ほど引用されました考え方の中で、少なくとも我が国が全くとるべきでない手法、それは貿易収支の黒字幅を拡大するという方向でありましょう。これは世界経済の中における日本立場として全くそのシナリオに登場させるわけにはまいらない、率直にそういう感じがいたします。  そしてまた、日本の経済自身が、今委員が御指摘になりましたような視点も当然あるわけでありますけれども、同時に、内需を中心とし、輸入を拡大させる努力をしながら着実な発展を続けておるという状況にあることも、委員が御承知のとおりであります。そして確かに、為替の変動、殊にそれが円安に振れました場合、物価への影響というものは当然心配されるべきことでありますが、幸いに、現時点において物価の上昇というものは非常に心配を要する状況にはございません。これはある意味では、先般行いました日銀の、いわば物価上昇に対する未然の防止措置としての公定歩合の引き上げ等もそれなりの効果を発揮しておると言うことができるのかもしれません。  そして、そういう中で、今一方では構造協議というものがアメリカとの間に続いております。こうした構造協議の方向というものは、もちろん日本国内国民生活の質の向上を確保していく上で必要な方途を当然考えていくべきことでありますけれども、同時に、委員が示唆されましたうちの幾つかの考え方については、その進行方向の中からおのずから答えの出てくる部分もあるのではなかろうか。具体的な為替の水準というものについて私どもの立場として言及すべきではないと思いますので、総論的なお答えになって恐縮でありますけれども、以上、率直に感じておることを申し述べます。
  25. 武藤山治

    武藤(山)委員 実は、通告では総理と政治観、哲学論争をやるつもりだったのですが、急にこういう状況だったものですから……。午後一時から日銀総裁を呼んでもう一回大蔵大臣とは論争したいと思っております。たまには早慶戦もやらぬといかぬから、やはりあなたから少し聞いた次第でございます。  いずれにいたしましても、大蔵大臣は四月初旬、G7に出かけていくわけですね。この会議は大変重要なものですから、他人事でない大変重大なかかわり合いを持っている、日本全体の国民が注視をいたしておる、そういう意味でひとつ喚起しておきたいという気持ちもあって冒頭に取り上げた。本来なら偉い順に総理から聞くのが順序なんですけれども、そういうことでありますので、しっかりひとつG7でも発言をしていただきたい、こう思っております。  さてそこで、海部さん、安定多数を確保して、民意が一応自由民主党に有利に働いたのが過般の総選挙であります。これは事実でありますから、率直に評価し、海部総理努力は評価してもいいのじゃないかと私は思うのであります。ただ問題は、総理大臣になるのが意味があるのじゃない、総理になって何をなしたか、後世の人たちに語られる海部総理大臣の像というものはどんなものになるのだろうか、興味津々なるものを覚えるのであります。  そこで、海部さんと私は昭和三十五年、一緒に議会に出していただいた同期生であります。池田内閣佐藤内閣、歴代の内閣、十人の総理大臣にずっと接してまいりました。私も十人の総理大臣のうち質問しなかったのは宇野さんだけ、あと歴代総理と全部質問戦をやらせていただいてまいりましたから、私なりに総理大臣というのはいかなるものであるか、大変重い、大変忙しい、あれもこれもみんな心配しなければならない大変な立場のお仕事だということは、よく重々承知をいたしております。  しかし、歴代総理で長くやれた人と二年で大体終わってしまった人とさまざまでありますが、二年で終わってしまった大臣が多いんですね。田中さんも、福田さんも、三木さんも、大平さんも、鈴木善幸さんも、みんな二年。竹下先輩は一年半。そうすると、海部内閣もそういつまでやれるわけじゃないんですね、こういう過去のケースをずっと見ると。そこで、その短い期間で何をなすかというのは、大変厳しい問題なんですね。  さてそこで、海部総理は自分の任期中にこれとこれとこれだけは是が非でもやり遂げたい、そういう重要課題は何と何と何かをひとつちょっと御発表いただきたいと思うのでございます。
  26. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今御指摘をいただきましたように、私と武藤委員とは同じ昭和三十五年の総選挙で当選した同期でございましたが、武藤委員は大学の先輩であるということで、その意味では日ごろ大変御尊敬を申し上げてきたつもりでございます。また、いろいろと教えていただいたり、御指導願ったりもいたしました。  さて、今総理大臣というものになって、私、やっぱり何をやるかということになりますと、政治というものは国の平和と国民生活の安定、向上のためにあるわけでありますから、それに向かって全力を挙げて取り組まなきゃなりませんし、責任の大きさ、重さということは、御指摘を受けるまでもなく私自身が一番ひしひしと感じております。  そして対外的には、日本はきょうまで先輩や国民の皆さんの御努力によって、国際社会の中で、特に今移り変わりつつある世界の流れの中で、大きな地位と責任を持たなきゃならぬ立場にもなっておるわけでありますから、この日本の置かれておる地位を自覚しながら、世界が今、対決、対立から平和と繁栄の方向に大きく歴史の流れも変わりつつあるときでありますから、日本はその立場を十分自覚しながら、世界の平和のために、安定、繁栄のために努力をしていかなきゃならぬわけであります。  そういう大前提に立って物を言いますと、今、日本の国は豊かになった、幸せになったといっても、国民の皆さんがそれを実感するまでに至っていないという声も随分出てきております。したがいまして、対外的には、当面の日米経済問題の協議を乗り越えるのは当然のことでありますが、世界の経済の、両国合わせると四〇%近い規模に達しておる自覚と責任に立って、積極的に対外的には協力をしていく、世界の新しい秩序づくり、枠組みづくりの中にできるだけ参加をしていくという、きょうまでの殻を一歩乗り越えて日本は外交を展開していかなきゃならぬ、それが日本の平和と安定にもつながることだと思います。  国内的には、これは一つは公正で豊かな社会をつくりたいということを願いとして言ってまいりました。中にはいろいろあります。豊かさを実感できるためには、内外価格差是正の問題とか、土地基本法によって示された土地理念に従って土地政策を進めていくとか、住宅問題を片づけるとか、労働時間の問題を解決するとかいろいろありますけれども、そういったものにきちっと取り組んでいかなきゃならぬのが内政面の大きな目指すべき目標であると私は考えておりますが、しかし、それよりも何よりも、私は、この間の選挙を通じて国民の皆さんからいろいろな御指摘、御指示をいただいた、その立場に立って、また今、国会は開設百周年記念をことし迎えるわけでありますから、政治改革にしっかりと取り組んで努力を続けていきたい、こう考えております。
  27. 武藤山治

    武藤(山)委員 抽象的で本当にわからぬのでありますが、今土地問題とか住宅とか庶民の豊かさとかいろいろ申しましたけれども、総理の施政方針演説の中でみんな先送りしているのですね、土地の問題にしても平成二年度中に成案を得てまいります、それから総合土地対策は平成四年度からの円滑な実施を図ることとしますと。一体、総理大臣、平成四年度まで総理やっていられるかどうかだってわからないのに、これはみんな先送りですよね。  だから、私が今聞いているのは、自分の任期中、大体このくらい自分はなれると思うが、この任期中にこれとこれだけは片づけたいという大問題があるんじゃないですか、こういう細かい政策の問題よりも。それを聞いているのですよ。
  28. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 細かい政策の問題を抜いてとおっしゃれば、私はまず当面は、日米間にある構造問題についてお互い共通認識を得ながらこれを解決していかなければならない、これが一つです。  それから、国内の問題については、具体的な個々の政策をのけますと、政治改革を行って、そして当面いろいろな一連の事件の反省に立って、政治と政治資金の関係から、問題になっておる定数の問題から、選挙の制度、仕組みの問題から、政策中心の選挙はどうやってできるかという問題から、いろいろきょうまで御議論を願ってきたテーマや国会の決議をいただいたテーマ等がございます。今政府は、選挙制度審議会の答申も近くいただくわけでありますから、それを受けて最大限に尊重をしながら、皆さんの御議論をいただきながら政治改革を進めていきたい。国会の開設百周年記念がまさにことしでありますから、それが極めて大切なことである、こう理解しております。
  29. 武藤山治

    武藤(山)委員 そこが聞きたかったのですよ。やはり師匠の三木先生も、政治改革ということについて非常な熱心さを示されたのですね。  私は、日本の政治全体をよくするためには、やはり今の制度そのものが、選挙法にしても中選挙区制ではもうだめだ、あるいは金のかかる制度も中選挙区制だから金がかかるんだ、派閥の弊害も中選挙区制で五人も候補者を立てるから五つの派閥ができるんだとか、いろいろな弊害があるわけですね。だから、そういう問題を根本からひとつ改めようという不退転の、総理の座を引きずりおろされるかもしらぬというくらいの不退転な決意がこれは必要ですね。  今度の構造協議の問題でも、大店法、将来法律を廃止しようという総理決意のようでしたけれども、武藤通産大臣に泣かれてとうとうだめになってしまったなんというのがけさの新聞に出ているのですよね、私の意見じゃなくて。通産大臣の方が中小商店の意向を酌んで直訴されたような記事がきょうおもしろおかしく出ていますが、いずれにしても一国の総理大臣が決断をするときには、やはり毅然とした、本当の消費者本位の立場を貫くなら貫く、少々選挙で中小商店の反撃を食っても、総理が一たびほのめかしたらそれの実行をさせる、そういう大臣でないといけませんね。余り利害に絡んだ政策というものはもうこの辺でおさらばにしなければいけないのじゃないか、こんな感じがするものですから、一言苦言を呈したようなわけであります。  いずれにいたしましても、日本の産業構造日本の生産体制、こういうものは、これからちょっとタームを長くして二十一世紀の踊り場、九〇年代ということに話を移したいのでありますが、二十一世紀への踊り場であるこの十年間、日本という国はどういう姿になるんだろうか、しなければいけないんだろうか。だとしたら、目標値を一応置いて、それに向かって努力をしていく、そういう青写真をひとつそろそろ示さねばいけませんね。ところが、海部総理の施政方針演説の中では、「九〇年代は、新しい時代の始まりでありますが、その進む方向の青写真は未完成で、希望と不安が混在する時代であります。」希望と不安が混在する時代だ、この九〇年代は。  さてそこで、総理の考える希望の持てる希望とはどういうこと、不安に思っている不安とは何か、この中身を示してないんですよ、施政方針演説では。こういう不安、こういう希望、この十年間の展望に立ったこの二つをちょっと示してみてください。どんな希望、どんな不安がつきまとうだろうか。
  30. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 九〇年代という十年間をとって何が希望かと言われれば、歴史の流れが平和と繁栄の方向に向かって大きく劇的に動き始めつつある、これがただ単に東ヨーロッパのみにとどまらず、アジア・太平洋にも、地球全体にも広がっていくように、そういったことの希望が持てる好ましい変化が起こりつつあるという認識を私は演説でも述べたつもりでおりますし、同時に、それに対して、きょうまで力の対決の時代には、鉄のカーテンの向こう側の問題とか、あるいは力による対決の場へ日本もお役に立ちましょうなんて出ていくことは、これはできないことでありますし、許されないことでもありましたけれども、世界の流れ、世界の情勢が大きく変わっていく、しかも、戦後きょうまで日本がその中で歩んできた市場経済、自由経済、そういったものの仕組みが平和で豊かさを生み出してきたんだ、その価値に向かってみんなが動こうとしているという大きな流れが出てきておること、これが率直に言って地球的規模の希望でありますから、その希望については日本はできるだけ参画をし、努力をし、それが定着するようにしていくべきだということを私は考えておるわけでございます。端的に言えば、そういったこと。  それから、不安というのは何かといえば、そういうことを見ましても、では現実に動きの中に、そのように十年間ずっと進んでいくという確実な見通しがバラ色でついておるかどうか。例えば欧州の東西の統合の問題一つとらえましても、ドイツの統一問題をめぐる周辺各国のいろいろな懸念といいますか、あるいはまたアジア・太平洋地域に問題を持ってきても、今なお戦争の続いている地域がまだあるということやら、こういったことを考えますと、一つ一つどのようにしてこれを解決して、どのようにして世界の希望の方向に持っていけるか、いまだ不透明な部分も多いわけでありますから、そういったことに対しては不安がありますけれども、その不安はお互い努力によっていい方に定着をさせていかなければならない。  しかし反面、翻ってみますと、今まで、この数年前までは余り大きな問題になっていなかった開発途上国の累積債務の解決の問題とか、地球環境の問題とか、麻薬の問題とか、テロの問題とか、これは地球的規模で考えなきゃならぬこともたくさんございます。そういったこと全体を含めて、私は、希望と不安の混在しておる九〇年代の国際情勢というような問題、あるいは地球の動き、あるいは見通しの立っておらない諸問題をどうやって解決していくか、起こってきた新しい問題、解決しなきゃならぬ問題もあるんですということも率直に埋め込んだつもりでございます。  また、国内の問題で見ましても、二十一世紀は、日本の経済はということになりますと、今も御議論がありましたように、きょうまで内需を拡大しながら何とかそこで成長してという線で努力をしてまいりました。国の経済の基礎的条件はいいというふうに皆さんもお認めをいただいておる。けれども、人口構造の急激な変化というのは、今までヨーロッパで経験したことのないような速いスピードで、もうここまで高齢化社会は来ておるわけであります。そういった中にあって、今度は高齢化時代というのは、御年配の皆さんのことだけ大切に大切にと言っておればいいかというと、そうだけではなくて、反面、生まれてくる赤ちゃんの数が最近は気になり出した。去年はたしか百二十四万人しか生まれなかった。おととしは百三十一万人であった。この差がそのまま続くとは私は断言しませんけれども、やはり出生率、生まれてくる子供さんが健全に育っていただくような環境をつくっていくためには、この問題はこのままのような傾向が十年続いていいのかなという懸念も私には率直に言って今ございます。  ですから、そういったようなことを全部あわせて考えますと、九〇年代というのは二十一世紀へ向かっていくための助走路でありますし、私は二十一世紀はすばらしい世紀にしていかなければならぬという希望を持って取り組んで頑張るわけでありますけれども、そういった希望もありますが懸念もいろいろ残っておるということを取りまとめてそこで申し上げたつもりでございます。
  31. 武藤山治

    武藤(山)委員 企画庁長官、十年間の日本のGNPは大体平均してどの程度の成長率が維持できるという見通しを持っておりますか。これは企画庁ですね、相沢さん。
  32. 相沢英之

    ○相沢国務大臣 大体最近の実績等を見ますと平均して四%程度というふうに思っております。  申し上げますと、平成二年の見込みは御案内のように四%、それから平成元年は、これはまだ実績見込みでありますけれども四・六%、それから昭和六十三年が五・三%ということで、最近の二年をとってみるとやや下降状況にあります。「世界とともに生きる日本」で、これは昭和六十三年でございましたか、見込んだ五カ年間の推定値では、計画値と申しますか、御案内のように三・七五ということでありますが、大体その程度のところは、今までもそれを上回るペースで来ておりますけれども、今後ともその程度の成長は続けるもの、このように見ております。
  33. 武藤山治

    武藤(山)委員 約四%、十年間成長可能と基礎を置いてちょっと計算してみますと、日本のGNPが十年後に五百四十一兆円、そのころ為替レートがどうなるかわかりませんが、私は将来円高になると見ているのであります。私は十年後には一ドル百円ぐらいになるのじゃないかという予想をしているのでありますが、いずれにしても、長期的に見ると日本が約五兆ドル経済になるんですね。そのときのアメリカが、今の成長率でずっと考えていくと七兆ドルぐらいですか。アメリカの経済と日本の経済がごくごくスケールが接近しますね。日本アメリカの七〇%ぐらいの規模になるんですね。これは大変なスケールなんですね、四%成長が実現をした場合。  いろいろ状況をこう見ますと、大体予想が、アメリカが七兆四千億ドルくらいですね。西ドイツが二兆ドル、フランス一兆四千億ドル、イギリス、イタリア合わせて一兆ドル、ソ連が一兆二千億ドル。これから見ますと日本の五兆ドルというのは、これは大変な規模であることは間違いない。その規模の大きさからくる責任という問題がまた大きいのですね。きょうはそこを論じたいわけなんでありますが、主として外務大臣の問題になるんだと思います。  それで地域別に、これはおもしろい計算を私の知り合いの学者から拝借をしたのでありますが、そういう場合、それを日本の地域別のGNPにブレークダウンして出してみますと、北海道経済がちょうどベルギー一カ国と匹敵しますね。北海道だけでベルギー。それから東北がオーストラリアと大体同規模。九州がスペイン。中国地方がスイスのGNPとやや同じ。中京都市圏では二千九百六十五億ドル、これは中華人民共和国とやや匹敵するGNPですね、中京圏だけで。それから京阪神都市圏で四千五百九十二億ドルというのは、カナダの四千百九億ドルとやや匹敵する大きさ。東京都市圏に至っては、九千三百六億ドルということはソ連一カ国全体よりも大きいのですね、東京都市圏だけで。いかに日本のGNPが大きいかということを例示の意味で地域別に私は分けてみたわけなんでありますが、そういうスケールの日本が、これから日本一カ国の経済という見地で物を見られない、これが一つですね。それから、世界経済を大きく左右する日本経済という位置づけになることはもう間違いない。したがって世界は、アメリカ日本、ヨーロッパという三極構造が顕著になって、一九九二年のEC統合による彼らの焦りというのも、こういう試算から、これは大変だ、このままではとても競争にならない、結局三極構造世界全体が大きく転換をする兆しが明らかのような気がいたします。  私のこういう見解、見通しについて、総理大臣はどう感じますか。
  34. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 いろいろ数字を挙げての御説明がございました。  私は、結論的な方向性として、日本の経済力というものが無視できないような存在に既になりつつあるということと、それからEC統合の動きというのはまさに、ECの首脳と話をしてまいりましたけれども、EC自体が強くなること、私は強いECというものは基本的に賛成でありますが、ただそれが開かれたECであってもらわなきゃならぬということを強く念を押してまいりました。そして、アメリカとECと日本とが三極構造をさらに強めて、そこの政策協調、共同作業によって世界の経済と安定に責任を持とうという考え方が既に出てきておりますから、特に最近の欧州復興開発銀行構想なんかにも、日本アメリカやECの主要国とともに積極的に参加をして、そういった世界の安定的な枠組みづくりにも初めから参加をして協力しなければならぬ。そういうような面は今後も出てこようと思います。したがいまして、経済的な責任とか経済的な立場世界経済に果たさなきゃならぬ役割は御指摘のように大きくなってくる。方向性は全く同じように受けとめております。
  35. 武藤山治

    武藤(山)委員 そこで、そういう規模の日本になる、そういう形成をしていく上で、産業政策として何がポイントになるのか。日本をリードしていく、そういう産業セクターというのは一体どういうものがそういう位置につくだろうか。それをどう通産省は見ているか。その要因ですね、四%成長を実現していくための要因、あなたの見解ではどんなものを予想していますか。
  36. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私ども今進めておりますのは、御承知のとおり、内需中心の、内需主導型の経済政策を進めておるわけでございますし、今たまたま、先ほど多少皮肉ったお話がございましたけれども、私は、日米構造協議の問題はそのような私の立場とかそういうものではなくて、とにかく先ほど申し上げたように、世界の中における日本という立場から考えていろいろ進めているつもりでございます。そういう意味で、この日米構造協議だけではなくて、世界の、今総理からもお話のございましたように三極を中心として経済政策を、常に連絡を密にしながら協調体制をとっていくということがこれからは大変必要だ、こういうふうに考えております。
  37. 武藤山治

    武藤(山)委員 私が聞いているのはそうではなくて、ごくごく国内の産業構造のことを言っているわけですね、今の質問は。  四%成長をずっと持続をして、分配もふえ、豊かさとゆとりの社会をつくるということは、そこは社会党も皆さんと考えは同じなんですよ。それには、分配をふやしていくためには生産が常に維持されるという、その保証を我々はきちっとつくらなきゃいけない。ややともすると今まで野党の論理というのは、分配論があっても生産論がない、こういう批判をいつも自民党から受けていたわけですよね。だから私は、我々はそうじゃないんだ、時間がないものだから短絡的に常に追及型になってしまって、ゆっくりと議員同士の議論ができない議会の仕組みがそうさせているのであって、野党の皆さんだってやはりみんな日本全体の経済をどう運営すべきかということについては関心を持っているのであります。  私は国会のあり方まできょうは議論できないので、実は国会のあり方からしてもアメリカ日本では比較にならない。だから構造協議だって、アメリカが納得すると簡単に言うけれども、アメリカの何が、だれが納得するのか、議会なのか行政府なのか。それ一つとらえたって、アメリカは国会へどんどん法案を、年間八千本も多いときは出るのでしょう、議員立法で。日本は立法府でない行政府が法律を出しているんだよ。おかしいのです、そもそもそこらも。本当は内閣に法律を出す権限はないんだよ、憲法では。憲法の中に書いてないのですよ、内閣の任務の中に法律を提案するということは。予算は提案できるけれども。だから、日本のそういう議会政治のあり方そのものの根本まで本当は議論をしなきゃいかぬのですが、きょうは時間ないのです。きょうは限られた二時間ですから、時間がないのでやめますが、私は、この四%成長を維持するために幾つかの要因をきちっと今我々は踏まえておく必要がある、こう考えるのですよ。  NIESの国々からもいろいろ追い上げを食う、またアメリカやヨーロッパからも日本バッシングでたたかれる。さて日本の産業は一体何が生き残って、どうやっていったらいいのかという不安を、一般の国民は、日本滅亡論に通じるのか、日本はまだまだ活力があって二十一世紀いっぱい、百年大丈夫なんだ、そういうきちっとした確信というものを持てるのか持てないのか、これは政治をやる上においては大変重要なことなんですね。政治とは国民を統合する力なんですから、国民統合のための一つの大きな目標値というようなものは常に示していくというのが為政者の任務なんだ、私はそう考える。特に、海部さんも五十を過ぎて、孔子の言葉で言えば天命を知る年でありますから、天命をいかにみずからが駆使をするか、今そういう重要な地位にあると私は思いますのでこういうことをしゃべっているわけなんであります。  一つは、やはり何といっても日本の四%成長を持続させる最大の産業は、先端技術革新による設備投資でしょうね。それはやはり新技術、新製品の開発を他国に先んじてやる、日本のノーハウを常に生かしていくということ、これが私は大前提になると思うのです。これからは通信、情報、そういう産業がどんどん発展をする、その設備投資によってGNPが引き上がっていく、これがかなりの部分を占める社会になってきたな、この十年間がその基礎固めの年だろう、私はこう見ているわけであります。  それから、フローとストックの効果が出てきた。それはやはり五兆ドル経済になり、個人所得二万ドルが現在でしょうが、これは三万五千ドルぐらいになるのでしょうね、十年後には。個人所得三万ドル経済になると思うのですよ、この成長でいくと。もちろん賃上げを財界側が極端に抑え、消費を抑えれば別でありますが、いよいよあしたまた大手の回答が出る日でありますが、ちょっと値切り過ぎていますね。六%台にいかないというのは、これは政府の見通しから見ても好ましくない。政府の経済見通しでは、雇用者所得が六・四伸びると書いてあるのだから、経済見通しの中に。これはちょうど、今のこの経済の変動が、あれもこれもいろいろ株だ円だと出るものだから、やはり経営者側の言い分がかなりストレートに強く抑え込んだ、こんな感じがきのうの自動車や今出た回答、六%届かなかった。政府の六・四の経済見通し、これは達成できないよ、これでは。やはり六%ちょっと乗らないと、政府見通しはちょっと困難になると私は見ている。それは余談でありますが、いずれにしても、フローとストックの効果が消費の旺盛という形に出ていくわけですから、これは消費景気というようなものはまだかなり持続する。  それから、高齢化社会へ移行する前夜です、この十年間は。完全な高齢化に達するのは二〇一五年から二〇年、それの前段のこの十年間で何をなすべきか。そこが今アメリカの言う構造障壁排除ですか、あれは日本では構造協議なんと言っているけれども、協議じゃないんですよ、アメリカは。障壁排除なんですよ、アメリカの翻訳の言葉は。だから日本は、協議と言わないと日本が一方的に障壁排除でアメリカからやられっ放しだという印象を受けるものだから、どこの役人がああいう翻訳をしたのか知らぬが、協議になっている。あれは障壁排除なんだ、アメリカから言わせると。だから、日本に対してこれとこれとこれの障壁は取っ払えという強い姿勢なんですよ。協議というのは、両方一致しなければいいんですから、調停と同じなんだから、話が合わなければいいんですけれども、これは障壁排除というアメリカの姿勢ですから、なかなか厳しいのです。そういう高齢化社会になって、社会資本の整備をしろ、アメリカはこう言っておるのですね。今のうちにどんどんやれ。多元的環境の創造投資をやれ、こういう要望なんですね。それでいろいろ自民党内は、三役も、政府と自民党もごちゃごちゃもめているのは、社会資本、GNPの一〇%という数字をアメリカ側が示してきた。大蔵大臣の対応と答弁は私はやや正しいと思うのですよ。というのは、これから私は言いますから。  大蔵大臣、それでは今、国、地方、財投で公共事業公共投資という金額は総合計幾らになって、GNPの何%になりますか。
  38. 小粥正巳

    ○小粥政府委員 数字の問題でございますので、私からお答え申し上げます。  今お尋ねの、国、地方公共団体、それから財投資金が主でございますが、公的企業による公共投資の合計額というお尋ねでございます。これは、国民経済計算上、公的固定資本形成という数字がございます。実績が今出ておりますのは六十三年度でございますが、これによりますと二十四兆八千億円、同年度のGNPとの対比では六・七%になっておると承知しております。
  39. 武藤山治

    武藤(山)委員 大蔵大臣、今アメリカが言っているGNP一〇%というあれは、一般会計だけで物を言ってはいかぬと私は思うのです。やはり公共投資というのは、地方自治体も、財投資金の中からも空港だとか港湾だとかかなりやっておるわけですから、アメリカの言う一般会計からだけ一〇%出せという意味じゃないと思うのですよ、国の単位の話だから。だとすれば、六十三年度は既に六・七%公共事業に使っているのですよ。それから、平成元年度を見ると二十五兆九千億円、六・五%。平成二年度、今の予算、これで見ると二十六兆三千億円、六・三%。だから、金丸先生が八%ぐらいはいいじゃないかとアバウトに物を言った。だから、事数字だけに限っては、数字だけならいいと私は思うのですよ。ただ、財政を編成する権限を持つ大蔵省としたら、GNPを目安にして何%なんというのは絶対受け入れちゃいけない。いけないけれども、GNPの中でかなりの部分を占めているんだよ、二十六兆三千億円も使っているんだよということをアメリカ側に言うべきだという提言なんですよ、今私がここで言いたいのは。  それは、財政というのは景気のいいとき悪いときの変動のときに機動的に常に出られるようにしなければいけない、余裕を持たなければいけない。百六十四兆円の借金と国債残高と、利息だけで十一兆も払う国の財政、そういうときに、みだりに公共事業をとにかくふやせばいいやという論理に私はくみしない。それはやはり整合性ある日本財政運営というものをきちっとやれる余裕は常に持つように心がけなければいけない。しかも財政審は、五年間、とにかくこれからの見通しとして、もう累積残がふえないようにしろと言っておるわけでしょう。そして、建設国債も徐々に減らしていこう、一年に四千億円ぐらいずつ減らしていこうじゃないか。そして、全体の累積残高を、六十年ひ孫の代までこの借金を背負わせるわけですから、現代を生きる者はこれを縮小していく責任がある。そういう財政観からいうならば、アメリカの言う一〇%というGNPを基準にすることに私は反対です。ただ、今六・七、六・三というかなりのウエートが公共事業に使われているんだということはアメリカ側にどうしても知ってもらいたい。大蔵大臣はどう思いますか。
  40. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 もちろん知ってもらいたいことでありますし、また現にその数字を挙げての論議は何回か既にいたしております。そして、その上で日本公共投資が、言いかえれば社会資本整備が非常に速いピッチで進んでいることはアメリカ側としても認めつつも、それだけのピッチで社会資本整備が行えるということは、逆に過去の社会資本整備のおくれということを証明する部分でもありまして、伸び率の高いことも彼らは認識をいたしております。そして、その上でなおかつGNP対比という論議をいわばアイデアとして構造協議の中でアメリカ側が打ち出されたわけであります。  今委員から部分的にお褒めをいただきましたけれども、私は、その一〇%でありましても、それが八%でありましても、現在の水準の六%台ということでありましても、こうした形で数字を明示してしまいますことは、景気の動向に対する財政の影響力というものを固定してしまい、我々が武器を一つ失うことになるという意味において了承できないと言い続けてまいりました。今それにかわる我々の考え方を持って構造協議に臨んでくれておりますので、それが我々の考え方として納得が得られることを期待いたしております。
  41. 武藤山治

    武藤(山)委員 先ほど例示をしましたように、いずれにしても日本の経済スケールがこれだけ大きくなったのですから、日本一国だけの繁栄や存立を考えることはできない時代である。したがって、巨象であるアメリカとその巨象よりちょっと小さい象が、お互いが競争をし、巨象の方が少々試合は負けぎみである、そこでちょっとかちっと頭にきている点がかなりアメリカにあるように私は見受けているわけであります。しかし、アメリカに言わせると、世界全体をリードし、世界の保護者はアメリカだ、彼らにはそういう自意識があるでしょうから、グローバルな見地から我々はその構造障壁排除を要求しているんだ、これはアメリカの利益だけじゃないんだ、これをやることによってアジア全体の国々、ヨーロッパの国々もみんな日本とのおつき合いがしやすくなるんだ、そういう大きな見地でアメリカは物を考えているのかもしれないが、しかしやり方がちょっと強引過ぎるところがある、私はそう感じる。少し強引過ぎる。  というのは、この日米協議というのは、ブッシュ大統領が昨年の五月声明したのが始まりで、そしてこの構造協議に入ってきた。その場合に、アメリカの過去をずっと見ますと、経済摩擦というものが出てくるのは日米繊維交渉のときですね。衆議院本会議で我々は決議いたしまして、武藤山治、鐘紡の元社長を商工委員会に参考人として呼んでいろいろ議論をしたのを今思い出すわけでありますが、その当時から……(発言する者あり)ああ、武藤絲治さん、せがれですね。武藤山治は昭和八年に死んじゃったのです。あのころからが始まりですが、だんだんそれが鉄鋼、自動車、家電、半導体、皮革、履物、牛肉・オレンジ、工作機械などなどと次から次へ拡大をされてきて、交渉事が何かもうアメリカの威圧、そういうものにだんだん変わってきたような気がいたします。その変わってきている根本的な違いは、アメリカはどっちかというと消費者本位社会なんですね。日本はどっちかというと企業優先社会。それはもう貧乏な国だったから、立派な生産をどんどんふやして貿易立国でもうけなければ国民が豊かにならぬと一心不乱にそういう方向の指導で通産省も各省ともやってきたから、どうしても企業本位の社会、行政、そういうものになっちゃったのですね。だから、消費者本位と企業本位の社会体質ががちっと今ぶつかり合っている。  だから、アメリカの要求の中にも私は三分の一ぐらいは賛成なんですよ、あの二百項目をずっと読んでいくと。三分の一ぐらい私は賛成。ちょっとこれは徐々に時間をかけてやらなきゃいかぬなという問題が三分の二ぐらいある。全く拒否というのはほんのわずかですね、私の範囲では。だけれども、やり方がちょっと問題だ。三〇一条をちゃんと備えておいて、これがアメリカの気に入らなければ、おまえら次は三〇一条を持ってくるぞとか、こういうのは強制外交、昔の砲艦外交ほどじゃないけれども、どうも強制外交というレッテルを張られる感じがしてならない。  外務大臣はどうですか。外交の衝に当たる本人として、当事者として、アメリカの今のこういう一連の推移を見ると、強制外交だ、砲艦外交にかわる一つの強力な背景を持った押しつけ的な外交がある、私のこの認識は間違いですか。
  42. 中山太郎

    中山国務大臣 今の委員指摘アメリカの強制外交ではないかというお話でございますが、私は、二国間の貿易というものは拡大均衡で双方が繁栄するということが原則でなければならない、そういう中で、一方的に日本が四百九十億ドルに近い貿易黒字をずっと維持し続けているという中で、この十一月の選挙を控えたアメリカの国会では、やはり地域の産業の振興とか住民の利益というものを考えていくならば、アメリカの国益というものを考えてアメリカの国会議員が議会で議論をし決議をすることは、アメリカのいわゆる民主主義社会においてはあり得べきことであると考えております。一方、日本も民主主義社会で議会制度を持っておりまして、農業の保護ということについては、米は一粒たりとも入れないという与野党を通じての御決議が行われている。それに対してはアメリカはけしからぬ、こういうふうな印象を持っている。これは双方民主主義でございますから、どちらも強権外交というふうなことは当たらない、民主主義の社会では当然のことではなかろうかと考えております。
  43. 武藤山治

    武藤(山)委員 アメリカの言い分にもそれ相応の妥当性のあるものはたくさんありますからね。外務大臣として、それは強制外交の片りんがありますなんて言ったら大変なことになりますから、あしたの新聞で大騒ぎになってしまうから言えないのはわかりますが、いずれにいたしましてもちょっとやり方が強硬的な姿勢が見られる。  それと、これは外務大臣がいいのでしょうか、総理大臣がいいのでしょうか。米側がこの協議の中で納得するような結論が出ないとだめじゃないかという意見、特に金丸さんも、一〇%じゃなくて、アメリカが納得するなら別だっていいよ、こういうようなことが新聞に出ておりますが、アメリカ側が納得するというのは一体アメリカ側のだれのことを指すのですか。大統領なんですか、議会なんですか、それとも行政府なんですか。そこなんです、問題は。議会のああいう自由な、民主的な国で、自由に発言ができ、自由に法律の出せる国の議員を納得させるなんてことはできないと私は思うのですよ。私は不可能だと見ているのですよ。そこらは一体、障壁排除協議の中で納得をさせようという気分でやっているのか、そんなことは関係なしだ、日本のやれる範囲はこれだけだ、気に入ろうが気に入るまいがおまえらあとは勝手だ、そういう姿勢で臨んでいるのですか、どうなんですか。
  44. 中山太郎

    中山国務大臣 御案内のように、この構造調整の協議というものは、両国政府間において昨年のアルシュ・サミットの申し合わせにより昨年の九月から行われているものでございまして、あくまでも政府協議でございます。私どもは、この政府協議の合意がなされて、それに対して議会というものがアメリカ政府努力並びに日本政府の問題に対する努力を評価されることを心から期待をしておるものでございます。
  45. 武藤山治

    武藤(山)委員 アメリカが二百項目を超す提案を一応日本に文書で渡したのか、海部さんは受け取らずに帰ってきたと新聞報道しておりますが、いずれにしても、まだまだアメリカ側から見る障壁排除はあるのですね。こういう二百項目ある。実際に、商工委員会からもらった協議事項の書類を見ると十八項目くらいが今現にある。当面詰めなければならぬのが七項目ばかりある。こういうようなことが今度の協議で、この中間評価で今議題になっている、きのう日本側が提示したことが一応片づく、それで七月の本評価で一幕おりると、その後はもう障壁排除の話し合いというのはなくなるのか、まだまだこの二百項目の中、次から次へまた並べて出てくるのか、その辺の見通しはどうなんですか。
  46. 中山太郎

    中山国務大臣 先生御指摘のように、米側からの申し入れの項目というのは二百項目にわたっているものでございますが、この日米間の構造調整協議というものが今回の両国協議によって一応合意に達するというような形になりましても、問題は日本国内消費者の問題、あるいはまた、国民生活の豊かさを実現するためには日本国自身が今後ともこの問題点の解決のために努力をしていかなければならない、そういう意味では今後とも日本国内においてもこれを引き続き努力していかなければならないものだと私は考えております。
  47. 武藤山治

    武藤(山)委員 海部総理大臣、総理の全権松永前大使がブッシュ大統領にきょう会うようでありますが、今回の事項の中で法律改正事項も幾つかあるのですね。そういう場合に、手続的にどうなんでしょうか。自民党と役所と相談をして、決断を総理大臣がやれば事足りる、そういう手続でいいのでしょうか。やはりこれだけの、将来法律も直さなければならぬというような、立法にもかかわるような問題が幾らか含まれておるわけですから、こういう重大な交渉のときには野党の党首なり野党の書記長なり呼んで、実は総理として、国益にいろいろかかわりもあると思うが、こういうことで私は決断をし、アメリカとの交渉の一幕を終わりたいと思っておるが、諸君ひとつ了解してほしい、そういう手続を踏んでいくことが重要じゃないのかな、こういう国を挙げての関心の大きな問題は。さもなければ、国会に特別に二時間なら二時間、一応それじゃお諮りするから皆さんの意見を聞かしてくれと、いずれかをとることが本当の民主的な処理のような気がするのですね。そこらはいかがでしょうか、総理
  48. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 この日米協議は、私どもが率直にそれぞれの国の抱いておる経済問題あるいは流通の問題、いろいろございますけれども、日本側からもアメリカ意見を述べ、アメリカからもいろいろな意見を受け、それについて納得をするとかしないとか、交渉じゃありませんから決裂をするとか妥結するとかいうことよりも、むしろどこにどういう問題があって、どんな努力お互い政府がするかということを政府のレベルで協議を続けていくものでございます。  そうしてまた、アメリカ側アメリカ側で、ブッシュ大統領アメリカの議会に起こっておる保護主義というものに対して、これは闘っていかなければならぬ、保護主義というものはアメリカの考えておる世界の現状からいって、日本立場からいっても保護主義というものを台頭させることはいけないだろうから、これにともに闘っていくために、ひとつ日本政府の方もできるだけの協力をしてほしい、こういうことがそもそものこの協議の発端でございました。  議論を重ねていきますと、日本の場合は、さきにも申し上げましたように、消費者立場に立って物を考える。すべての国民は、視点を変えて考えれば全部消費者でありますから、そういった意味で生活の質を本当に国民のために高めていくための努力をしようというので、いろいろなことを、テーマを考え、それに合致することならば自主的な努力もしていこうという基本的な気持ちできょうまで対応をしてまいりました。その結果、今まさに協議が行われておる最中でございますけれども、この中間評価、夏の最終報告をめぐって、将来、法改正にも影響の及んでくるような問題が出てくる可能性はたくさんございます。そのときには、まさに立法府の皆さんに、この問題は政府としては率直に提起をして、その交渉その他の背景やあるいはその内容や目指すところを率直に申し上げて、国会の御議論、御検討をいただくことが当然の条件となってまいります。  ただ、今の場合は、それのやる前に、そのことを国内で話してしまう、そしてそこの合意を得てから交渉に臨む、交渉じゃございません、協議に臨むということになるのは、やはり事外交に関する問題でありますし、協議によって共通理解を、共通認識を持つべく話を進めておるプロセスのまだ一環でございましたので、そのようなことにつきましては、これは与党にも大変申しわけなかったのですけれども、全部与党にも詳しく御報告をしないで、政府考え方政府の決断というもので、これは外交交渉はさせていただかなければならない。そのかわり、最終段階で決めましたときには、法改正を伴う問題等も出てくるときは国会にまた御理解と御協力をお願いすることになる、こういうふうに考えております。よろしくお願いします。
  49. 武藤山治

    武藤(山)委員 いずれにしても時間に限りがあるものですから、あれもこれも議論を広げることができないのは大変残念でございます。  梅澤公取委員長おいででございますから、独禁法の改正、今回の改定に絡んで、また絡まない立場からも抜本的な独禁法のあり方、そういう問題も少し議論をする必要があるな。  独占禁止法というのは、いずれにしてもアメリカ型法律で、戦争中は日本になかった法律で、戦後の財閥解体以降、消費者保護、公正取引、不公正な取引は禁止する、そして消費者立場というものを守る、そういうねらいがありますから、これはどうも企業側からは余り好ましい制度ではないし、好ましくない法律なんですね。ですから、どうも公取の位置づけや公取というものに対する権限行使をだんだん狭めてきてしまっているといううらみがあります。アメリカはそれを、消費者本位にもっと独禁法がきちっと発動できるようにせい、こういう当然の要求なんですね。  そこで、これは公取委員長に聞くのがいいのか、総理大臣に聞くのがいいか、法を直したりなんかするのだから、これはやはり政府・与党総裁の総理の見解でなければいかぬかなと思いますが、梅澤さんも来ているから、どっちからでもひとつお答えをまずしてもらいたいと思います。  今の制度で警告を正式な法の適用に変えるべきだ、警告ということじゃなくて法できちっと制裁を加えるようにすべきだ、こうアメリカは要求していますね。それで、八二年度からは警告という以外に注意なんという項目を公取は設けちゃって、準司法機関であるべき公取の機能というものが警告とか注意とかという形にだんだんダウンしちゃって、本当の不公正取引を禁止するという強い姿勢がだんだんなくなっちゃったような気がするのですが、それは公取委員長どうですか、当事者として。
  50. 梅澤節男

    ○梅澤(節)政府委員 公正取引委員会が独禁法違反に対します措置につきまして、最近の措置件数を見ますると、今おっしゃいましたように、勧告等の法的措置よりもむしろ警告という行政措置の件数が多いということは事実でございます。  これについて私が考えておりますのは、やはり証拠収集能力という基本的な問題がございまして、証拠が固まらないのに疑わしい段階で法的措置を発動するわけにはまいりません。そのために非常に警告が多いということは事実でございます。そのほかに、競争の状況から見まして、早く手を打って、違反状況といいますか、秩序を回復するというふうな手法をとる意味で警告をやっている場合もございますけれども、やはり基本的には証拠収集能力の問題があるということでございます。  この点につきましては、政府でも御理解を賜りまして、平成三年度の予算では、その違反事件の処理を行います部門についてかなりの程度の増強を立法府にお願いするということになっておりまして、今後ともこの体制を整備いたしますとともに、我々の行政の質的水準も高めていく努力をしなければならないというふうに考えております。
  51. 武藤山治

    武藤(山)委員 何人ふえるのですか。
  52. 梅澤節男

    ○梅澤(節)政府委員 審査部門が現在約百二十名強でございますけれども、平成二年度の政府予算案では、これを二十五名増員するということでございますから、約二割ほど人間をふやしていただくということでございます。
  53. 武藤山治

    武藤(山)委員 それから、禁止規定でありますが、法第八条の問題で、事業者団体に対し禁止規定がありますが、この八条を適用する場合に、構成する事業者にも法三条を適用すべきだ、事業者団体だけがちょっとお小言を食って、構成員は構わない、これでは制裁が効き目がない。これがやはりアメリカ側指摘の中に入っていますね。だから、法第八条を適用する場合には、事業者団体だけじゃなくて、その事業者団体を構成する会社、これまで及ぶようにしなければだめじゃないか、こういうアメリカ指摘については、公取はどういう考えですか。
  54. 梅澤節男

    ○梅澤(節)政府委員 八条違反、つまり典型的な例で申し上げますと、団体でカルテルをやったという場合でございます。この場合には、もちろん団体に対して排除命令を行いますとともに、構成員に対しまして課徴金の納付を現実に命じております。今委員がおっしゃいましたのは、団体に八条を適用すると同時に、三条カルテルで個々の構成員に対しても排除措置を講ずべきであるという御意見でございます。法理論的には重複適用は十分従来も可能とされております。ただ、現実問題といたしまして、例えば談合等の措置が行われます場合に、その措置をとります機関、先ほど申しました証拠収集という点からいいますと、むしろ団体としてはっきりしている場合には団体に対して排除措置を講じ、かつ構成員に対して課徴金を命ずるということで十分な抑止効果を発揮し得るということで、従来も運用しているわけでございます。
  55. 武藤山治

    武藤(山)委員 アメリカ側からの指摘の中であと二つばかりありますが、今の罰則の定めが、現行法は罰則の定めはあるが、例として石油カルテル事件を除いてはほとんど適用がなかったですね。なぜか。それは今の法の仕組みが、公正取引委員会の告発がなければ処罰できない、いわゆる専属告発という構造になっているわけですね。これは改正した方がいい。専属告発というものを廃止して、一般から告発ができるようにすべきだ、そして検察権を独自に発動できる原則に立ち戻る必要がある、こういうアメリカ側指摘について、私も同感。あの石油のときも、消費者がいろいろ公取に申し入れていっても、みんな立証責任があるものですから物にならぬわけですね。告発まで及ぶにはなかなかこれはもう大変な今の仕組みになっているので、アメリカのように一般からの告発がどんどんできる、それで消費者保護を貫徹していく、そういう仕組みに直す必要がある。しかし、これは公取委員長には答弁できない。これはやはり総理大臣として、そういう点はこれから消費者保護に徹するならば少し検討をしてみよう、そういう気持ちになってもらいたいわけであります。被害者の挙証責任をできるだけ軽減するように、軽くするように法改正が必要ではないか、こういう点については総理大臣はどう思いますか。
  56. 梅澤節男

    ○梅澤(節)政府委員 制度の説明だけ私から申し上げておきます。  今委員がおっしゃいましたのは、刑事告発の問題と損害賠償によるプライベートアクション、つまり私人が私法上の救済を求める制度と、議論が二つ重なっておりまして、むしろおっしゃるのは後者の方の御議論かと思いますけれども、これについて我々が主張しております点は、現在の独占禁止法二十五条なり民法七百九条で十分損害賠償の請求できる制度はあるわけでございます。  それで、過去いろいろな事件につきまして判例もございますけれども、私ども行政府といたしまして最高裁の判例にコメントする立場にはございません。ございませんが、本来被害者の損害を実質的に救済するとするなれば、制度の議論というよりも、今後学説なり判例の発展に期待すべきものが非常に多いのではないかというふうに私は考えております。
  57. 武藤山治

    武藤(山)委員 いずれにしても独占禁止法を消費者本位に、消費者がもっとなるほどと納得できる法整備が必要だ。社会党はけさ、土井委員長の写真入りで日経に構造協議の問題について党の方針を発表しておるのでありますが、その中の一つにもこの独禁法を消費者本位にとにかく法改正が必要だということを提言をいたしているわけなんでありますが、総理大臣はそういう見地から、これから内閣でも少し検討してみよう、そういう約束できますか。
  58. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 公正な取引をきちっとして、これは消費者保護の強い側面を持った法でありますから、法の趣旨が実現するようにいろいろ今努力をしておるさなかでありますし、また公取委員長がそれらの問題について詳しく申し上げましたように、これは消費者保護という立場に立ってのいろいろな議論、検討を既に始めておってもらう、私はこう受けとめておりますから、その方向で努力をさせていただきます。
  59. 武藤山治

    武藤(山)委員 時間が半端になったものですから、個別問題を何か一つお尋ねをして昼食になるようにしたいと思うのでありますが、大蔵大臣、四月、G7ですか、出かけますね。ここで主として議論になる問題というのは、今想定されている課題は何ですか。
  60. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 まだ現時点におきましてセブンの議題等煮詰まっておりません。  ただ、想定されますのは、やはり東欧情勢の変化に対応した欧州の問題を中心にしながら世界経済全体の問題が論議をされるであろうということ、また、しばらく前から懸案になっておりますIMFの第九次増資に関連いたしまして、日本の順位の変更の問題をこれは私の方から何とか狭み込みたいと考えておるポイントの一つであります。
  61. 武藤山治

    武藤(山)委員 回転が速いね。私が聞こうと思ったことを先にもう答えてくれちゃったので、質問がなくなっちゃったのですが、実はそのIDAとIFCの増資の問題は今大蔵委員会にかかっているのだろうと思うのですが、私はこれと同時に、IMFというグローバルな世界金融秩序を維持する根幹をなすこの機関日本はやはり積極的に投資をして、アメリカに次ぐ第二位の出資国になることについて、いろいろフランスやイギリス、おもしろからざる気分は私はわかるのでありますが、しかし、やはり日本はこれだけの経済力の国ですから、その辺を十分ひとつ大蔵大臣、議論していただいて、ぜひ早急にIMF増資の方に協力できる体制をこの四月に行ったら頑張ってきてもらいたい。それはもう約束と受けとめていいですね。
  62. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 第九次増資につきまして、何とか六月末には決着をつけたいということで精力的に検討が行われております。その機会に日本の出資順位の変更、具体的には日本が第二位にという問題につきまして、ようやく各国の承認といいますか、そこまではこぎつけましたが、それに伴って順位の下がる国の間の問題がなかなかうまくまいりません。全力を尽くして決着をつけたい、そのように考えております。
  63. 武藤山治

    武藤(山)委員 あと六分ですから、もう一問、個別問題で。  竹下内閣が中国と約束をいたしました八千百億円の円借款の問題でありますが、これは天安門事件以来、アメリカを中心にしたヨーロッパ側が人権問題という形でかなり厳しい姿勢をとってきたために、約束が履行されないでいるわけですね。しかしこれは、天安門は天安門、約束は約束、やはり信義の問題が一つありますから、しかも隣国だし、いろいろと日本とは別な意味で深いかかわり合いと特殊な関係があった中国ですから、これは何はさておいて私は国際関係においては最優先に処理をすべき案件ではないか、こう考えているのでありますが、総理大臣、この中国借款問題の本年度分についてどういう手順で、いつごろ、どういう金額になりそうだ、できるだけ早目に実行せよというのが私の要望でありますが、お答えは外務大臣ですか、ひとつ詳細にちょっと答えてみてください。
  64. 中山太郎

    中山国務大臣 お尋ねの第三次円借款の取り扱いにつきましては、本年一月に鄒家華国務委員が来訪されまして私といろいろ協議をいたしましたが、両国間の意見は一致を見ました。現在、九〇年度新規の案件に関する予備的準備行為、すなわち先方との話し合いの情報収集、事前の調査等を具体的に進めているところでございます。  最終的なコミットメントにつきましては、今後の情勢を総合的に勘案しつつ決定をしてまいることでございますが、我が国といたしましては、今後日中双方の努力によりまして日中関係改善のプロセスに弾みがつき、第三次円借款を実施するための環境が整ってくることを期待いたしております。  なお、九〇年度分につきましては本年初め中国側から正式要請を受けておりますが、詳細につきましては、先方政府との関係等もあり、コメントを今のところ差し控えたいと考えておりますが、近く小和田外務審議官を派遣をいたして日中間の事務次官協議、次官レベルの協議を実施いたしたい、このように考えております。
  65. 武藤山治

    武藤(山)委員 その次官レベルの協議をやるのは何月ごろになるの。これは私は急ぐべきだという立場から言っておるので、後で、中国と日本関係はいかにあるべきかはまた午後の質問にしようと思っていて、時間が五分しかなかったものだから個別問題に入ったのですが、いつごろその次官会議をやるのですか。  それから、中国側の九〇年にやりたいというプロジェクトの金額は、どのくらいが一応提示されているのですか。
  66. 中山太郎

    中山国務大臣 具体的な数字につきましては、政府委員から答弁をさせていただきます。
  67. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 事実関係についてお答え申し上げます。  本年初めに中国側より要請を受けております案件につきましては、現在いろいろ詰めをやっている段階でございまして、金額につきましても、この段階で幾らということを実は申し上げる段階にいかない次第でございますことを御理解を賜りたいと存じます。
  68. 武藤山治

    武藤(山)委員 いつごろになるの。次官会議はいつごろ。
  69. 中山太郎

    中山国務大臣 できるだけ早い機会と考えておりまして、この事務次官レベルの協議は、政治レベル協議、このような立場協議をいたしますが、その中にもちろん経済問題も含まれてくる、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  70. 武藤山治

    武藤(山)委員 まだ時期は示せないと。とにかく外務大臣、中国問題はなるべく急いでやるべきだと強い要望を申し上げておく次第でございます。  あと通告の外国人労働者問題やら、個別問題をいっぱい通告してありますが、午後一時からの質問に譲りたいと思います。ありがとうございました。
  71. 越智伊平

    越智委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四分休憩      ────◇─────     午後一時一分開議
  72. 越智伊平

    越智委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  三案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁三重野康君、日本銀行発券局長吉澤利夫君及び税制調査会会長小倉武一君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  73. 越智伊平

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────
  74. 越智伊平

    越智委員長 質疑を続行いたします。武藤山治君。
  75. 武藤山治

    武藤(山)委員 日銀の三重野総裁、御苦労さまでございます。  日銀は先月二十日、公定歩合を引き上げし、いろいろ予防的措置を講じた。そして二十八日の記者会見で総裁は、円の自律反転が起こるだろう、そう会見で述べられた後、「円安の進行を「理解できない動き」と指摘した。」その理由として、「日本経済は先進国のなかで一番良い状態だ」、二番目、「日米の長期金利の差は名目では一%ぐらいで、実質では日本の方が高い」、三、「経常黒字は縮小しているといってもまだ五百億ドル以上ある」、四、「「有事のドル買い」以外に米国にドルが強くなる材料はない——などの要因を挙げた。」この二十八日の記者会見当時の情勢見通し、分析は誤っていなかったか、やがて自律反転するとすればいつごろ大体反転すると見込むか、初めにこの辺の御意見をちょっと承りたいと思います。
  76. 三重野康

    ○三重野参考人 委員指摘のとおり、公定歩合引き上げ後も円安傾向というのは改まっておりません。今委員が読み上げられたのは、私の答弁を先取りされたような形でございますが、今でも私は、その三つの条件というのは存在しておりますので、少なくとも経済的理由から円がさらに円安に進む筋合いにはないと思っています。したがって、現在の経済外的のさまざまな情勢、思惑によって円安ができているわけでございますが、これについては、いつも申していることではございますが、引き続き各国と協調して介入を続けていきたい、かように考えております。  反転する時期はいつかという御質問でございますが、そのときの記者会見では、反転することもあり得ると申し上げたつもりでございます。いずれにしろ、その時期までははっきり申し上げられませんが、経済的には円安が進む理由はないということは、今でもそういうふうに考えております。
  77. 武藤山治

    武藤(山)委員 去年の四月ごろから日銀が介入をした介入総額はどのくらいになりますか。
  78. 三重野康

    ○三重野参考人 申しわけありませんが、介入額については公表できないことになっておりますが、委員御察しのとおり、外貨準備その他でおおむね御察しのとおりでございます。
  79. 武藤山治

    武藤(山)委員 けさの日本経済新聞を読んでも、外貨準備ががくっと減りましたね。そして、あの新聞によると約一千億ドルぐらい、ここ一年間ぐらいの間に動いたのではないかという予想記事も載っていますね。外貨準備がこう減ってきますが、日本貿易量から見て、どの程度までの外貨準備量があれば外国から見て日本は経済的に健全だ、そういう指標というのはどのくらいのベースなんでしょうか。これは大蔵大臣ですか、日銀ですか。
  80. 江沢雄一

    ○江沢政府委員 委員指摘のとおり、外貨準備は三月中かなり減りまして月末の数字、七百三十五億ドルでございます。適正な外貨準備というのはそのときどきの経済情勢等によりまして変わっておりまして、各国とも確たる基準というのは設けていないというふうに存じます。
  81. 武藤山治

    武藤(山)委員 確たる基準はないにしても、昔はやはり日本貿易量というものの三分の一以下になると危険信号だとか、いや半分ぐらいは常になければいかぬとか、いろいろな議論がありましたが、それはさておいて、アメリカやドイツとの協調というのが大変重要だ、こう言われておりますが、この経済外的要因というのはどんなものが大体考えられますか。要因として、経済外的な要因で今円安になっているというその中身はどういうことですか。
  82. 三重野康

    ○三重野参考人 市場で言われておりますことは、一つはやはり政治情勢の、これは内外でございますが、不安定なことを下敷きにいたしまして、その日その日のいろいろな思惑材料を円が弱い方へ弱い方へとっているというふうに思います。
  83. 武藤山治

    武藤(山)委員 円が弱い方へ弱い方へとっておるということと、ドルが強いぞ強いぞという方へとっておるのと両面ありますね。一つの要因で、今、東ヨーロッパの激動で、特に東ドイツと西ドイツの統一問題が一対一のレートで決まりそうだ。この間コールの方の与党は、いや、あれは預金の一定限度までが一対一で、あとは二対一にすると言ったら東ドイツから総スカンを食って、結局は日銀の見通しとしてはどういうことになりますか、一対一のレートで決まるという見通しですか。その場合に、西ドイツが東ドイツに持ち出す金は莫大な金になりますね、援助が。これが西ドイツのインフレなり物価上昇なりに火がついては大変だという心配も西ドイツ連銀あたりでは考えているのでしょうか、中央銀行では。それらが今度のG7で、あなたも出席していろいろ議論されるのですが、そういう動きが円安にやはりかなり関係があるような気がしますね。ドルの強さの方にこれが影響して円安に来ている、そういう要素というのはどのように日銀では見ているのですか。
  84. 三重野康

    ○三重野参考人 東独マルクと西独マルクの交換の比率がどうなるかは私はよくわかりませんが、先日発表になりましたブンデスバンクが一対二ということを提案した理由の一つとしては、一対一では西独に対してインフレが起きる、そういうことを指摘しておりました。現在は西独と東独の統合がどういうふうになるのか、非常に事態の展開が速くて私どもには予測がつきませんが、少なくとも長い目で見れば、ドイツにとっては非常にプラスであるというのがマーケットの共通の見解でございまして、それがマルクを強くしておりますが、短期的には、何かトラブルが起きるたびに若干マルクが弱くなるということはございます。しかし、それは直接円安とは関係ございませんが、やはり円とマルクとの比較においてマルクが強くなる。そういう意味で円安になっていると思います。
  85. 武藤山治

    武藤(山)委員 先ほど経済外的要因、そういう政治的な要因、それはいろいろ国内にもあるが、ドイツの方にも東ヨーロッパにもかなり要因がある、そう私も見ておりますが、いずれにいたしましても、通貨の価値の安定を図るのが日銀の使命ですから、通貨の番人としての総裁として一番気がかりなのはやはりインフレなんでしょうね。物価上昇なんでしょうね。  物価上昇という問題で、最近の新聞を見ますと「値上げラッシュ」ということで「公共料金は地方に波及」「値上げ品目・サービス一覧」、こういうのが出ておりまして、乳酸菌飲料は一六・七%値上げ、ビールが大瓶で二十円、六・七%、乗用車・ベンツ三・一%、ガソリンが一リッター当たり二円五十銭、ポリ袋が一五%、ピアノ一〇%、自転車四、五%、こうやってずうっと出ておりまして、資本財でもH形鋼が一トン三千円、四・五%値上げ、山形鋼一トン四千円、七・四%、エチレン一キロ当たり四・二円などなど大変値上げ品目が目立って、だあっと広がってきておりますね。  こういう状況から過日、二十日の日に公定歩合を値上げをした。あのときの値上げのときに総裁は、インフレ予防的措置として公定歩合を引き上げた、こういう説明をしていたのでありますが、この効き目は、こういうような値上げラッシュ等を勘案したときにおさまりますか、どうでしょう。
  86. 三重野康

    ○三重野参考人 先生御案内のとおり、日本の物価は今のところ落ちついた動きを示しておりまして、これが直ちに大きな基調の変化が起きるとも思っておりません。しかし、今先生が御指摘されたような値上がりの動きがあることは事実でございます。そういうことも含めて、潜在的なインフレプレッシャーをあらかじめ抑え込みたいというのが前回の公定歩合を上げた一つの理由でございます。これはやはりこれからそういったものに対して効いてくる、効くべき筋合いだ、かように考えております。
  87. 武藤山治

    武藤(山)委員 自由主義経済で景気の波動というのはもうやむを得ない。周期的に経済が常に変動していく。そういう中で、今インフレを全く回避しながら上手に自由経済というのを運営していけるのかどうか。昔だったら、不況になる局面には戦争という事態で物事を処理したのですが、今や戦争はできない。そうなった場合に、インフレにならないで経済規模を拡大する、すなわち安定的、持続的成長という言葉がありますが、そういうことが長期的な目で見た場合に可能なのかどうか。私はやはり自由経済というのは、結局インフレあるいはインフレ的、そういう経済情勢で推移しない限り、需給アンバランスというようなものの調整はなかなかできないのじゃないか。さもなければ、技術革新が徹底的に行われて、常に新製品なり新しい趣向のものがどんどんつくられていくという体制が維持される、このどちらかだ、この二つしか手法はないのじゃないかな。だから、どうしてもインフレは避けられないのじゃないか、こんな感じがしてならぬのでありますが、うまい処方せんはありますか。
  88. 三重野康

    ○三重野参考人 先生御指摘のとおり、景気には循環がございます。しかして、今の日本の経済が比較的バランスのとれた発展をいたしておりますのは、いろいろございますが、一番大きいのは、物価が安定しているということと、技術革新を背景にしました設備投資が非常に強いということだと思います。この設備投資は本年度についてもまだ強うございますので、日本経済はまだまだバランスのとれた発展を続けると思います。  その場合に、どうしてもインフレは避けられないのではないかと先生おっしゃいましたが、例えば金利を上げて、ある程度景気のスピードを巡航速度に戻すということによって物価の安定を保ち得ると思いますので、私は、物価安定ということを維持することはできる、また、そういうふうにしなければならないというふうに考えております。
  89. 武藤山治

    武藤(山)委員 今、為替が百五十九円、ひょっとすると百六十円台を超える、そういう状況のときに日銀が介入をする。それには一定の目安があるから介入をする。だとすれば、一ドルどのくらいの水準が総裁として、今の日本の経済、アメリカの経済をお互い比較して、この程度で円の相場が落ちつくことが望ましいな、あるべき望ましい姿はどのくらいでしょう。
  90. 三重野康

    ○三重野参考人 ただいま私どもが介入をいたしておりますのは、どこかの水準に為替レートをとめたいというわけではなくて、やはりそういうマーケットが大きな変動を示す場合に、それをならしていく、あるいは思惑があったときにそれに対して警戒感を起こさせるという意味でやっているわけでございまして、具体的な水準を思い浮かべているわけではございません。  それから、中央銀行の首脳が為替レートの具体的なことを申しますと、マーケットに不測の予測を与えますので、それは申し上げませんが、現在の円安傾向は、先ほども申し上げましたように、やや行き過ぎであるというふうに考えております。
  91. 武藤山治

    武藤(山)委員 海部総理大臣、二年度の予算編成の際の基本になる経済見通しでは、一ドル百四十二円と踏んで計算しておるのですよね。そうすると、政府努力目標としては、百四十二円という予算編成の土台である経済見通しの為替レート、ここを実現するのが望ましいと思いませんか。どうでしょうか。
  92. 勝村坦郎

    ○勝村政府委員 ただいま御指摘のとおり、平成二年度につきましての経済見通しの前提といたしましては、見通しを作成いたしました前月、十一月の平均値をとっておりますので、百四十二円五十銭でございましたか、その程度の水準を前提にして計算をしてございます。  我々は、現在かなり円安に振れておりますが、これが平成二年度中ずっと続くというふうには現在全く考えておりません。ですから、政府見通しを作成いたしました前提に近い水準に今後円レートが戻ってくることを期待しているわけでございますが、もし想定よりもある程度円安の方で推移をするということになりますと、これはある程度物価、国際収支その他影響が出てくることは避けがたいと思いますが、現在のところは、現在の円安がやや異常なものであるという判断のもとに今後の推移を見守ってまいりたい、かように考えております。
  93. 武藤山治

    武藤(山)委員 海部総理、いずれにしても百四十二円あるいは百四十二円五十銭、そういう政府の見通しの根拠になっている為替レートでありますから、あらゆる努力を傾注して円安の好ましい姿に総理としてもやはり督励、注意、最善の努力を傾ける必要があると思いますが、いかがでしょうか。
  94. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 それは御指摘のとおりだと思います。ですから、今日ほどこういった問題に国際協調が大切なこともないわけでございますので、引き続きこれから例えばG7の会議などでも、各国が協調して安定のために努力をしていくということに日本も積極的に参加をしていかなければならぬ、こう考えます。
  95. 武藤山治

    武藤(山)委員 日銀総裁、日銀の資金循環勘定を見てみると、今、個人の預貯金、法人の預貯金、そういう金融資産の合計がどのぐらいあるかと思ってちょっと大蔵省に調べてもらったのですが、個人のお金が七百九十二兆円、大変な金額ですね。法人が企業間信用ベースを除くと約四百兆。したがって一千百兆円、これは大変な金ですね。一ドル百五十円にしても大変な金額。百円に見ると十兆ドル、それだけの金融資産があるわけですね。この金融資産がアメリカのゴルフ場を買ったり、ビルを買ったりあるいは債券を買ったり、全く規制がなくて自由にこの資金が動き回るわけですね。国内では、土地取得の金に回ったりあるいは財テクブームの債券や株の売買にこの金が流れる。そういうような金の量をもっと上手に、世界の国々の開発や世界に多くの友をつくるためにこの金を有効に使う、そういう視点で考えなければ、幾ら海部総理が各国を回って、いや援助します、はい協力します、はいこの国にも十億ドルなんということでやって歩きますが、財政に余裕があるわけじゃないんですね。財政はとにかくもう窮屈で、さっき言ったように百六十四兆円の年度末累積借金なんですから。この民間資金をどう上手に活用するか、世界に貢献する日本としての金の使い方が問われる。これは財政でやれる限度というのは本当に限られているわけですね。ですから、そこらを工夫しなければいけないと思うのでありますが、お金を管理する日銀としては、こういう民間と企業の膨大なお金をインフレにならぬように上手に、しかも世界に役に立つように、そして日本の国益にかなうようにどんな方法があるとお考えでしょうか。ちょっと知恵があったら私、教えてもらいたいのですが、お願いします。
  96. 三重野康

    ○三重野参考人 先生の今おっしゃったことを私どもの守備範囲に戻しますと、結局はマネーサプライのコントロールということだと思います。マネーサプライのとり方もいろいろございますが、現在のM2プラスCDの平残、これは昨年やや落ちつきかけたところが、昨年末からこれはいろいろな理由がございます、上がってまいりました。しかもこの一〇%という前年比は、現在の成長率が四、五%、名目成長率が五、六%ということに対比しますとやはりやや高過ぎる。したがいまして、私たちのできることは、マネーサプライをなるべく妥当な水準へ落ちつかせるということでございまして、先生のおっしゃったような意味の工夫は、私どもの守備範囲ではマネーサプライのコントロールということに尽きるかと思います。
  97. 武藤山治

    武藤(山)委員 それはこちら、大臣だ、大臣だ。民活、民営の資金をいかに上手に活用するかという知恵、どの大臣でもいいよ、我がと思う者、手を挙げて答えてください。総理か。大蔵大臣だろうね、やっぱりね。
  98. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私ども、公共投資の分野におきまして、地方財政ももちろんありますし、民間資金の活用も従来も図ってまいりましたし、これからも効率的に一番有効な方法を探しながら使ってまいりたい、そう思っております。
  99. 武藤山治

    武藤(山)委員 いや橋本さん、そういう話じゃなかったんだ、今のは。財政は限りがあるよ、税収でいくわけですから。そこで、世界に貢献する日本という場合に、お金をあちこちばらまいて歩く約束をするにもこれは限度がある。というのは、民間の金だから。日本が経済大国だの、資金国家だの、預金国家だのというのは、これは政府、国家の財政に余裕があるわけじゃないんですね。民間のお金、さっき言ったように民間だけで七百九十二兆円、これは大変なお金であります。七百九十二兆円というのは、アメリカの地価表示でいくとアメリカの国土を二回買うぐらいのお金ですね。そのくらいの膨大なお金なんですよ。これを上手にうまく使うような方法をこれからの経済運営や政治では考えなきゃだめなんですよということを言っておるわけですね。  外務大臣、中国への八千百億円の円借款の方法はどういうことだか承知していますか。どういう方法でやることになっているか、それをちょっと言ってみてください。
  100. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 お答え申し上げます。  円借款のプロジェクトの選定等につきまして十分協議いたしまして、その上で所要資金の積み上げをやりまして、我が方としてどういうソースからの資金を供与した方がいいか、円借款ということで決めました場合にはOECFからの資金供与ということで、手順を踏んでやっていくということでございます。
  101. 武藤山治

    武藤(山)委員 私の聞いている話と違うね、大分。竹下総理はやはり大蔵大臣の経験者でしたから、いろいろそのファイナンスの仕方を考え、研究して約束をしてきたと思うんですよ。その場合、恐らく民間資金を活用する方法が頭にあってやってきたと思うんですよ。それは、海外経済協力基金に一たん民間資金を借りて入れて、そこで利子補給か何かをしてある程度安い金利にして海外へ投資していく、そういうことでやりたいという意見を竹下さんから聞いたことがあるんだ。前に、ちょうど中国へ行く直前に。だから、そういう方法になっているんだろうと私は今思っていたんですが、まだそこまでは方法は詰めてないのかね。プロジェクトの詰めだけこれからやる、金はどこからどう出すかという見通しはついてないの。見通しがついてないのにこれから次官会議をやって、ことし出せないじゃないですか、予算議決してなきゃ。何かそこらをうまい方法を考えているんじゃないですか、方法は。
  102. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 お答えを申し上げます。  コミットメントの段階とそれから実際の支出の段階等の差もございまして、私ども今いかにしてそのコミットメントの段階を整理するかということをいろいろ詰めているところでございます。そういうことでございまして、次官級の会議と申しますのは、実は政治レベルの協議をする中で当然バイラテラルな問題も出てくるであろうという予測で申し上げたわけでございます。
  103. 武藤山治

    武藤(山)委員 だから、あなたでは答えられないんだよ。金の出る方法を聞いているんだよ。だれもわからないのかね、これ。わからなければ後でひとつ文書で教えてもらえればよろしいから、時間がないから次へ進みます。  日銀総裁、せっかくおいでいただいたから、直接日銀総裁の管轄じゃないんですが、日本という国を考えたときの、感じでいいですからちょっと意見を聞かしてもらいたい。  私、この間、大企業の土地の簿価とそれから含み利益、いわゆる現実価格との乖離、差ですね、これが余り大きいのに驚いたんですよ。これは東洋経済がこれをシリーズ物で追いかけて、東洋経済に出ましたね、会社別の名前まで出してね。私は前に証券報告書を自分で買ってきて、大きい会社の証券報告書の土地と価格を割って坪幾らかを自分で計算して質問したことがあるのでありますが、便宜上この東洋経済をちょっと引用して聞いてみますと、簿価二億円の土地が、今でも簿価二億円、それが時価三千三百二十六億円。これ、簿価と現在の国土庁表示価格の差が千六百六十三倍。それから簿価四億円の某企業の時価が五千六百九十一億円、千四百二十二倍。百倍以上のはざらですね。このように、日本の企業会計上、簿価を昔のまま安い値段の簿価で、そして銀行から借りるときには時価近い七割ぐらいの、時価七割ぐらいの評価で金を借りられるわけですね。金を引き出すためのこれは一つの大きな要因にもなっていますね。これは税金を取る取らないの議論はきょうはいたしませんが、土地再評価税を取る取らないの問題じゃなくて、こういう企業が実態から離れた経理体系、こういう原則で一体本当に健全な企業というものの中身を知ることができるのかどうか。こういう点で私は、今の簿価と時価の差というものについて日銀総裁はどんな御見識を持っているのか、これは金融にもかなり絡んでくる問題なんですよね。金融の源泉にもなるんですからね、これが。そういう点どうですか、ちょっと学者、専門家としての見解を聞いておきたいのですよ。
  104. 三重野康

    ○三重野参考人 先生の御質問に直接お答えはできませんのですが、土地の値段が上がっているということに今おっしゃった問題の根底があると思いますが、土地の値段が上がっているということで、したがってそれを担保にして金融機関から金が出やすいということも事実だと思います。  しかし、私どもはいつも金融機関に要請をしているところでありますが、一つは金融機関の公共的性格にかんがみまして、とにかく土地投機に金は出すなということ、もう一つは金融機関の健全性にかんがみまして、幾ら担保の土地の値段があるからといって、どんどん貸すということは、例えばアメリカのSLが非常に危機に陥っていることもあるわけでございますから、そういう点をよく考えるという要請はいたしておりますが、どうも先生の直接お答えにならなくて申しわけありません。
  105. 武藤山治

    武藤(山)委員 だから、私がさっき質問したのは、民間のとにかく一千兆という膨大なお金を野放しで、自由経済だから自由なら何でもいいんだ、こういうことでいいのかどうかということを私はさっきから聞いているのですよね、だれも大臣答えなかったのですが。それと今の話が裏表でいろいろ関係があるのですよ。ですからこの問題は、再評価税を取る取らないの問題とは別に、企業の会計上にも大問題がそろそろ出てきている、そういう認識をぜひ各大臣にも承知しておいていただきたいのであります。  日銀総裁ありがとうございました。これで私の日銀の質問は終わります。  こういう地価の乖離というのを、含み利益だけでこれはもう膨大な金額ですね。ある会社は含み利益だけで二兆九千四百二十七億円、新日鉄が二兆三百十九億円。こういうように全部数字がぱあっと表へ出ているのですが、こういう状態をいつまでもこのまま放置しておくのは政治家の目から見ても好ましくない。これは一回この辺できちっと整理をさせる必要がある。その場合の税金を取るか取らぬかはまた別問題ですね。税金を取るとなると、これは含み益に一%掛けても何兆円という金になるので、大変いろいろまた議論は出るのでありますが、私は、含み益に対してごくごく低い税金を一回限りですから納めさせていい、企業の内部留保も大変膨らんで、大変な金額になっているわけでありますから。私は、そういう点で今の土地の問題というのは大変な問題だ。土地の値上がりというのは何ぼ上がっても消費者物価指数に出ないのですからね、消費者物価じゃないから。だから物価一般としてこの土地問題が入ってこないものですから、物価は安くて安定しておる、安定しておると言うけれども、土地の値段がどんどんどんどん上がっていることが全然統計上は出てこない。こういう問題も、ひとつこれから少し物価指数を考える際に土地の値段の変動というようなものもどう加味するか、一つの行政府としては考えねばならぬ問題点ではないか。  きょうは外務大臣に外国人労働者問題も聞こうと思って用意をしたのですが、あと五分ですが、法務省、外務省に今外人がどのくらい日本に来ているのかと聞いてみましたら、大変なものですね。これじゃ法務省も外務省も担当窓口は対応し切れない。だから、僕らが頼まれて電話をすると、いやあ代議士、四カ月かかりますよ、六カ月かかりますよと言われちゃうのですね。おまけに三カ月の旅行ビザで入ってきてそれぞれ働いちゃうわけですね。みんな幾らか小銭をためて国へ帰る、こういう不法就労がもう公公然としているわけですね。  だから法律に反するそういう行為がどんどん広がっちゃっているということをきちっとするという意味が一つあるのと、それから今、日本の労働力不足で各地の商工会議所が人手不足解消のために外人労働者を使えるようにしてくれ、ワークビザをもっと発行できるようにしてくれ、単純労務であってもきちっと身元が保証され、やがて本国へきちっと帰るという約束がきちっとできていれば、三カ月、四カ月いたって仕事にならぬ。私の意見では、最低三年のビザぐらい出していいんじゃないか。そして問題は、無制限に入れたら、これ雇用問題がまた大変ですから、年間どの程度までの労働者をワークビザとして発行してやる。そして三年間、三年たったら完全に全部一たん本国へ帰す。それで新たにまた再契約を、雇用をする。そういう区切りさえきちっとすれば、これ何らかの法制度をつくってきちっとする段階が来たような気がするのですね。  特に、日本アメリカばかり向いていないで、やっぱりアジアの国々全体を見渡したときに、この外人労働者問題というのは非常に大きい国際問題なんですよ。特にアジア問題なんですよ、多くは。ですから、このアジアの中の日本として、僕は世界に貢献するという場合に、アジアに貢献するという一つの手段がこの外国人労働者問題にもかかわっている、こう見ているのですよ。ですから外務大臣、あなたの任期中に早く法案要綱を社会党と出しっこをして、こんなところでひとつ一致で行こうじゃないか、こんなものを提示する作業に取りかかるようにひとつ約束してもらえないかな。同時に、今私が申し上げた、質問ではないが所々に申し上げたことについての関連で、まとめて最後に外務大臣の答弁を聞いて終わりたいと思います。
  106. 中山太郎

    中山国務大臣 外国人の国内における就労状態につきましては、私どもとしては極めて重大な問題と認識をいたしておりまして、委員指摘のとおりでございます。  現在、不法に就労している外国人労働者の数は約十万人という推定をいたしておりますが、その人たちがどこに行っているかというと、専門技能職以外には、危険であり、きつい、あるいはまた厳しいような労働条件のところに集まってきているというのも現実の問題でございます。  ただ、この人たちを正式に国家として受け入れるという場合には、入国をし就労をされるそれらの国々との間にきちっとした協定をつくる必要がございまして、そのためにはまず国内法の整備が必要ではなかろうか。また、それにあわせて就労期間中の社会保険をいかに扱うか、こういう問題もございますので、政府におきましては、ただいま官房長官を座長とする外国人労働者問題に関する閣僚懇談会が設置されておりまして、早急に先生の御指示のような問題を解決するために政府としては前向きにこの問題を取り扱ってまいりたい、このように考えております。
  107. 武藤山治

    武藤(山)委員 最後に注文を、深谷郵政大臣、後でまたいろいろ別な質問でやられるようでありますが、私は、郵政省の態度はまことにけしからぬと思うのは、過般NTT問題について、おたくの方は羽田委員会、さらに党の役員会議などで原案ができて郵政省と合意ができた、朝の五時までかかったそうでありますが。その中には一言も書いてないことを郵政省の見解として出したこの文書の方、「NTTの巨大・独占性の弊害についても、」、何事ですか、弊害とは。大きいことが悪いのですか。じゃ、郵便局だって日本じゅうのネットワークで、大きい銀行だからけしからぬという財界の一部で言う意見と同じじゃないですか。こういうこそくなことを、郵政省は郵政省で後で出すなんてけしからぬ。これは与党と郵政省の間できちっと決まったこの文章の範囲内のことにとどめるべきであります。こういう突っ走った単独の勝手な見解をばらまくなんということは許せない。これはあなたの責任問題にまで発展する、我々が本当に怒ったら。こういう態度はいかぬと思うのであります。賛成といったって、自民党内の——君の意見おかしいよ。党の決定でもってちゃんと合意書ができているんだよ、朝の五時までかかって。そういう中でできたものを、今度は郵政省が勝手に巨大企業の弊害なんという言葉を出すのはけしからぬ。弊害があるかないかはあなたが決めるんじゃないんだ。公正取引委員会が独占の弊害ありやなしやを決める問題であって、郵政省が自分のことを自分で判断してこういう文字を使うのはいかぬ。強く注文、警告をして、質問ではない、意見を申し上げておきたいと思います。
  108. 越智伊平

    越智委員長 この際、和田静夫君から関連質疑の申し出があります。武藤君の持ち時間の範囲内でこれを許します。和田静夫君。
  109. 和田静夫

    ○和田(静)委員 暫定予算の論議でありますので、財政法の三十条を中心として若干政府側の見解をただしたいと思うのであります。  財政法の三十条で暫定予算を規定をいたしています。これは、旧憲法の七十一条が前年度予算施行主義をとっていたことに伴う弊害を除去する。現実の問題として、昭和三年、五年、七年、十一年、新年度予算が成立をしなかった、したがって前年度の予算が執行された、これを除去するんだ。暫定予算というのは、新会計年度の開始時点には予算がない状態を生じさせない、したがって、現憲法に言う、八十三条に言う財政民主主義をそれで完結をさせる、こういうことででき上がったと思うのですが、総理、私の見解についていかがですか。
  110. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 旧大日本帝国憲法下における状況は私はつまびらかにいたしませんけれども、その歴史的経緯は、委員が御指摘になりましたようなものと心得ております。
  111. 和田静夫

    ○和田(静)委員 そこで、きょう論議をしていますこの平成二年度の暫定予算でありますが、三月二十八日に提出をされました。審議はきょう、すなわち新年度に入ってからということになりました。これはもう、今回のこの論議というのは、審議は国会の責任が半分以上ありますから、したがって事情について私はわきまえないわけではありません。ただ、申し上げておきたいことは、総選挙があった、そして暫定はあの総選挙の日時から見てみれば必至である、こういう状態の中で、暫定予算政府は国会に提出することを急ぐ、年度内に暫定予算を上げるというお考えがあるのならば、当然そうでなければならなかっただろうと私は思う。実際問題として、本予算の論議というのは今日の時点でも行われていないわけでありますから、年度内の本予算成立ということは当初からあるはずがないのであります。したがって私は、暫定予算がこういう形で延びて提出をされたということに対しての政府の怠慢といいますか責任というのはやはり見逃すわけにはいかないのだろう、与野党のいろいろの折衝があったにしても、これはこれで法律上ちゃんとしっかりしておかなきゃならぬ問題である、そういうふうに考えるのであります。  私は、参議院議員時代から暫定予算については何回も何回も予算委員会でもって取り上げてまいりました。そのたび、そのときどきの総理やあるいは大蔵大臣からは明快な将来にわたっての約束がなされました。にもかかわらず、こういう形でやはり予算の空白が起きるということは、総理、十分にお考えにならなきゃならぬことだろうと思うのですが、いかがでしょう。
  112. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘のように、政府といたしましては、五十日を期間として暫定予算を編成の上、三月二十八日に国会に提出して、年度内に成立させていただくことを強く期待をしていたわけでありますが、しかしながら、現実に御指摘のように空白が生ずるに至っております。かかる状況は現行財政制度の想定するところではなく、国政の円滑な運営を行い得るように暫定予算を一日も早く成立させていただくことを政府としては心から期待をしておるところであります。
  113. 和田静夫

    ○和田(静)委員 今回も残念ながら予算の空白が起こっておるわけであります。四月の四日でなければ暫定予算はでき上がらない。この状態というものを私は過去何回も指摘したことではありますが、ぜひもう一遍お互い認識をし合いたいのは、例えば刑務所の被収容者作業賞与金、きょうも払われている、郵政省、郵便貯金の利子の支払い、あるいは失業の給付金、労働大臣、これはあなた方、どこからどういう理由で払っているか、御認識がありますか。もしあるとするならば、各大臣聞かせてください。
  114. 長谷川信

    長谷川国務大臣 ただいまの和田先生の御質問にお答え申し上げます。  法務関係でございますが、被収容者の釈放の日が予算の空白期間に当たった場合においては、過去に各施設の職員会が第三者弁済ということで支弁をしてきたことがありますが、昭和六十年度以降は、職員会に比し公益性の高い公益法人である財団法人矯正協会においてこれを支弁いたしております。  以上であります。
  115. 和田静夫

    ○和田(静)委員 あとの大臣、よろしい。  言ってみれば、昭和六十年、私の参議院におけるところの強い指摘を受けて任意団体から若干法人格を持ったような団体に支払わせるようにしていますが、しかし、これはどれを見ても、財政法、会計法はもちろん、各省設置法にも何ら規定がないのであります。そうしますと、法律に基づかない行政をやっているということになります。さらに、本来国庫が支払うべき金を今言ったような形の団体が支払う、こういう状態、いわゆる立てかえ払いが起こっているということであります。私は、五十九年三月に参議院予算委員会でこの実態を「脱法行為である。あるいは潜法行為である」、こう指摘をしましたところが、時の法務大臣並びに法制局長官は、言う言葉を持ちませんとその非を認められました。  総理は先ほど謙虚に、予算の空白について起こってはいけないことであるという認識を示されましたが、私は、やはり予算の空白というのは起こさないんだという強い考え方があるのならば、こういう状態というものは、特に今回の場合はもう見えていたわけでありますから、起こらなかっただろう。昭和五十九年四月九日に私と当時の竹下大蔵大臣との約束、ここに速記録を持っています。また、六十一年三月二十八日、参議院予算委員会で決議を上げました。その内容は、一日たりとも予算の空白を生じさせない、そのために政府財政法三十条の規定に基づいて対処をする、こういうことであります。財政法上あってならない予算の空白を今後はつくらない。再確認でありますが、総理の見解を求めておきます。
  116. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今、委員が参議院当時の御論議を踏まえてお述べになりましたように、確かに昭和五十三年度から五十八年度まで及び昭和六十年度、六十一年度の各年度につきまして、いずれも本予算が三月上旬に衆議院で可決をされました。年度内に成立し得るという期待から、政府暫定予算を国会に提出せず、結果として予算の空白が生じました。そうした経緯を踏まえて、五十九年度における国会論議あるいは六十一年三月二十八日の参議院の予算委員会の決議がなされた、私はそう承知をいたしております。  平成二年度におきまして、本予算の年度内成立が期待し得ないという判断の中で、予算の空白といった事態を避けるべく、年度開始前の三月二十八日に暫定予算を私どもは国会に提出をさせていただきました。しかし、結果としてこういう状況が生じたわけであります。これは、年度開始前に暫定予算を国会に提出をしなかった、その結果として予算の空白を生じたという事態とは、私は質的に問題の所在は違うような気持ちもいたします。しかし、私どもとして、委員が御指摘になりました財政法三十条というものについて認識を持たないわけではございませんし、今後におきましてもこういう事態を回避すべく私どもとしては努力をいたすことは当然でありまして、期間内に成立の見通しが立たないと判断をいたしました場合には、当然暫定予算の準備にかかるべきもの、私はそう考えております。
  117. 和田静夫

    ○和田(静)委員 これはかつて我が国がGHQの占領下にあった昭和二十五年、当時の池田大蔵大臣は三日間の暫定予算を編成されました。ところが、GHQはこれを首を縦に振らなかった。したがって、日本政府の意思に大変背いた結果になったのでありますが、三日間の予算の空白が生まれた。こういう予算の空白という屈辱的な戦後財政史の汚点というものを私たちは知っていますがゆえに、そういう道を歩まないという賢明さをお互いが持ちたい、そういう視点からきょうはあえて取り上げさせていただきました。  さて、この暫定予算でありますが、平成二年度のこの暫定予算は十兆二千億円という非常に大きな規模であります。原因は、政策経費の計上が当然視をされている。財政当局のこういう姿勢というのが大変大きな規模の暫定予算を生んでいるのではないだろうかということを考えざるを得ません。政策的な経費というのは計上しないというのが、やはり私は財政法三十条の趣旨だろうというふうに考えています。政府は、五十日間の長期暫定であるから、総予算の六分の一相当程度の暫定予算という枠を設定をしてもよいのだろうというような安易な考え方というのは、どうも間違っているのではないだろうか。もちろん、社会保障関係費などで給付改善等の措置が講じられているなどということを私は否定はいたしません。しかし、リムパックまでこういう暫定予算の中で多額に組むなどということを許容することを実は意味していないのではなかろうか。  私はこの際、衆参両院の現状というものを考えた場合、一つの提起をしたいのは、政策経費部分の計上について、どうでしょう総理、事前に各党の予算委員会理事会あるいは政策担当責任者の会議などというようなもので、例外部分の経費を計上する、そういうことのための協議というようなものを行ってみたらどうだろう。そうすることによって今日の両院の国会事情というものを円滑に運ぶことができるのではなかろうかということを考えるわけでありまして、政府の独断専行でもって暫定予算政策経費部分を含んで膨大に組まれる、そういうことは避けられたらいかがでしょう。
  118. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、委員の御提案を全く論外のものというような決めつけ方をいたすつもりはございません。しかし、基本的な問題として御認識をいただかなければなりませんことは、予算編成権は政府に与えられた権限であります。そして同時に、仮に今委員が御提起になりましたような仕組みがありました場合に、それが逆に空白を生じせしめる原因をつくることにならないかどうかを私は瞬間的に今恐れました。  そして今委員も、例えば一部の社会保障系統の費用を例示に挙げられ、そうしたものまでむげに計上すべきでないというものではないという御認識をお示しをいただきましたけれども、私どもは、経常的な経費のほかに、既定の施策というものに係る経費につきましては、暫定予算期間中の行政運営上必要最小限のものを計上しておるわけでありまして、新規の施策に係る経費というものは原則としては計上をいたしておりません。  たまたま今委員はリムパックを例示に挙げられたわけでありますが、ちょうど暫定期間中に入るものであり、また二年に一度というルールが固定しておりますものでありましたためにこれを計上したわけでありまして、基本的な視点においては私は委員が御指摘になりました原則を崩しておるものではない、そのように認識をいたしております。
  119. 和田静夫

    ○和田(静)委員 答弁、大変納得できない部分が多いのでありますが、しかし、きょうは私は歳入を中心に論議を予定いたしておりますので、先に進みます。  この暫定予算を見てみますと、歳入と歳出の差というのは七兆二千五百億円になっているわけですね。税収は九千三百億円しか入らない。これはどうしてでしょう。
  120. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 暫定予算の税収でございますが、元年度の実績、それから二年度の税収予算の伸び率、暫定期間の日数等を勘案いたしまして、暫定期間中に収納が見込まれる額だけを計上したものでございます。したがいまして、おっしゃいますように歳出に比べましてかなり少なくなっております。
  121. 和田静夫

    ○和田(静)委員 そこで、私のきょうの論点が実はあるわけでありますが、五十三年度に政府が行ったあの税収の年度所属区分の変更が、結果的には非常に響いているということになっていますね。特に法人税収の入りというものの影響が非常に大きいのだと思うのです。法人決算は三月と九月に行われる、それから二カ月間後に入ってくるということになるわけでありますが、五十二年度まではこの税収がその年度の歳入になりました。ところが、年度所属区分変更で先食いをしてしまった。あのときの五十三年の財政事情というのは、私も今よく頭の中に描くことができますが、そういう結果、五十三年度以降は四、五月分の法人税収は前年度の歳入になった。そうすると、極論をしますと、税金は年度所属区分変更で四、五月はほとんど入ってこない。しかしながら、出る方は地方交付税があったり社会保障関係費があったり国債費があったりする。非常なアンバランスが出ているわけであります。法人税収のほぼ四〇%が四、五月に納付されている、これはもう税務統計が明らかにしているところであります。平成二年度の法人税収の見込みが十九兆七千百億円。そうしますと、この四〇%としますと七兆八千八百四十四億円ということになりますね。約八兆円の税収が見込めるわけであります。そうなると、建設国債で賄う公共事業費分を除いた歳出八兆五千百億円、その財源は蔵券に頼らなくたって出るんじゃないですか。いかがでしょう、大蔵大臣
  122. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今委員がたまたま蔵券の発行に関連し前段に述べられました問題点は、私どもの認識にも問題意識としてないことではございません。ただ同時に、ようやく赤字公債依存体質というものから脱却いたしました今の時点でこれをもとに戻すということになりますと、非常に大きな財政上の困難を生じせしめる状態にあることも委員がよく御理解いただけるところだと存じます。  ですから私は、仮に今委員が御指摘になりましたような時期の変更等をいたしたと仮定し、今の御論議が成立をしないとは申し上げるつもりはございません。しかし同時に、御理解をいただきたいことは、予算というものは年度全体として見れば収支が均衡しているものでありますけれども、年度の途中におきましては収入と支出というものの時期的なずれを生じることはございます。暫定予算につきましては、期間を年度の特定期間に区切りますため、適正に見積もりを行いましても歳入が歳出に比べて少ない、言いかえれば歳出が歳入を超過することは当然起こり得るわけでありまして、こうしたような場合の資金繰りに従来から大蔵省証券の発行を行っておるところでありますが、この大蔵省証券というものが最終的には当該年度の歳入によって償還されるものでありますから、後年度に負担を残す公債とはその性格を異にするという意味において、私はこうした対応が間違っておるとは考えておりません。
  123. 和田静夫

    ○和田(静)委員 私は、ちょっと違うのは、財政の真実の健全化のためにもこの辺で五十三年の措置というのを一遍考え直してみる必要があるだろうというふうに思いながら述べているのであります。若干後ほど触れたいと思うのですが。  もう一つは、税金の適正見積もりのためにも、今の状態というのはやはり今の経済財政事情の動きの中では大変不適切なのではないだろうか。例えば、予算編成が十二月なら十二月と考えてみますと、十二月の時点で一年半後をこの激しい時代の中で見通さなければならない。それは大変頭のいい人たちがたくさんそろっている大蔵省であったって、七兆円や八兆円のいわゆる見誤りというのは今現実に出てきていますね。一年半後を見通してみなさいといったら、これぐらいのものは出るんだと思うのですよ。それよりも半年ぐらいの見通しの中で予算を編成すれば、あなた方故意にやったのじゃないかというような指摘をされなくても済むもっと合理的な数字というのは出てくるんじゃないだろうか。そういう意味でも一遍見直す時期に差しかかっているんじゃないだろうか。
  124. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 ですから、私は委員の論点を全く否定をするつもりはないわけであります。ただ、あえてへ理屈をこねるといたしますと、今の区切りに変わりましてからある程度の年月がたちました。それなりに定着をし、確かに今委員が述べられましたように、先の見通し等においてより困難性を増すことは事実でありますが、その中において事務方の諸君、最善を尽くしております。私は、将来の問題として委員が御指摘になりました点を否定するつもりは全くありません。
  125. 和田静夫

    ○和田(静)委員 税収の年度所属区分の復元というのは国債費を削減する効果が実は大きいと、先ほどちょっと大蔵大臣違った答弁をされましたが、私はそう思っているのですが、そこのところはきょうはもう時間がありません。  そこで、暫定予算案に国債費が一兆一千百八億円計上されているのですが、定率繰り入れ分は幾ら、それから四、五の二カ月分の国債の利払い分は幾ら、それから蔵券利払い分は幾ら、それぞれちょっと答えてください。
  126. 小粥正巳

    ○小粥政府委員 数字の問題でございますので、お答え申し上げます。  まず暫定予算の国債費、御指摘のように一兆一千百八億円を計上しておりますが、そのうちに占めております定率繰り入れ分は六千四十九億円でございます。それから利子及び割引料でございますが、これが四千八百八十二億円。なお、蔵券の割引料八百三十一億円を計上しております。
  127. 和田静夫

    ○和田(静)委員 私は、この蔵券の利払いの分というのは、実は先ほど来申しております税収の年度所属区分を変えた方がいいのではないかということを頭に描く負担増の部分として非常に絡むのであります。ぜひその辺のところを、先ほど大臣、考えてみることにやぶさかでないという御返事がありましたから、十分にお考えを願っておきたい、こういうふうに思います。  先ほど来、武藤議員から日米構造障壁問題についての御論議がありました。私は、総論的な部分を述べる時間的余裕がもうなくなりましたので、土地問題に限って一、二ちょっと質問をしておきたいのですが、最近再び地価が高騰して地方に波及をしています。そこで、土地税制を含んでどういう対策を総理はお考えになるのか、見解を承りたいと思います。
  128. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 土地の問題につきましては、御指摘のとおりに上昇が東京圏から地方圏に目立つようになっておるということも私どもはよく承知をいたしております。そういった角度から考えますと、これを平成二年度中に土地税制の総合的な見直しをいたしまして、でき得ればこの春から税制調査会にもお願いをして、法案の形にして国会に提出することができるところまで平成二年度中に仕上げたい、こう考えて鋭意取り組んでおるところでございますし、同時にまた、きょうまでいろいろ国会の御議論があったりあるいは昨年通していただいた土地基本法の掲げておる理念からいいましても、今のままの税制の仕組みは改善していかなければならぬ点がたくさん目についておりますので、そのようなことについては前向きに、真剣に取り組んでいるところでございます。
  129. 和田静夫

    ○和田(静)委員 日銀総裁、ちょっと伺いますが、「金融だけで地価上昇を防ぐことはできないが、地価上昇という事実自体は我々も見逃せない。政策運営に当たって地価も当然視野に入れて臨んでいく。」こういう日銀理事のインタビューがあることは御存じのとおりであります、答えがあることは。「金融緩和が地価上昇の一因となったことも否めない。」また、仄聞するところによると、地価高騰の責任の半分は日銀にあったとする土地無策への反省の論文といいますか、反省の意見が日銀内部の若手専門家調査グループの結論として出ている。これを四、五月の調査月報に日銀が出されるか出されないかはまだ結論を得ていないことのようでありますが、これらについて総裁の御見解を承りたい。
  130. 三重野康

    ○三重野参考人 土地の値上がりにつきましては、もちろん先生御案内のとおりでございまして、土地の需給、法制、税制その他の複合的要因によるものではございますが、長年続いた金融緩和がそれを助長したことは否定できないと思います。  ただ、御理解いただきたいのは、五年前のプラザ合意のとき以来急速な円高をしております。かつまた、黒字国として日本はインフレなき内需中心の景気拡大をすることを課題としております。そのためにはあの節、どうしても最初に円高はデフレショックが出ますものですから、それからまた内需中心の発展といっても時間がかかる、そういったことから金融を緩和してきたわけでございまして、これはその当時としては一つの正しい選択であったと思います。ただ、その副作用としてマネーサプライがふえ、それが土地にも回ったということは否めないというふうに考えております。  それで現在、何も私どもは金融政策を土地の値段を抑えるためにのみ、あるいは抑えるために使うことは考えておりませんが、ただその金融が片棒を担いだということは、やはり超金融緩和であったことは事実でございますから、ほかの事情が許すような状態になりましたので昨年五月以来公定歩合を上げ、超金融緩和の是正を図っております。これがそういう意味では、土地の値段が上がることに対して、限界的ではありますが効果があると思います。かつまた、これはかねてからでございますが、金融機関に対して土地融資の自粛を求めております。これもその一つでございます。  それから、先生が今おっしゃいました何か巻頭論文というのは、私どもはやはり土地問題は国民生活をゆがめるだけではなく、一般物価を通じて日本銀行にも関係があると思いまして、いろいろと勉強はさせております。ただ、近い将来において巻頭論文を出すようなことにはならない、こういうふうに考えております。
  131. 和田静夫

    ○和田(静)委員 税調の会長来ていただいていたのですが、この土地対策に金融機関の行動を抑制する措置が必要である、これは国民の常識だろう、こう私は思っているのですが、それと同時に、資産課税の強化というのは、これはもう消費税導入以前にちゃんとやらなければならない問題だったはずなのですね。一定の生活資産を除いて、先ほども武藤委員が述べましたように、土地保有課税を強化するという抜本的な改革がやはり私は必要だろう、こう考えています。今の土地税制というのは細かい特例を実はつくり過ぎているのだろうと思うのですね。税調も四月にそのための小委員会を発足されるという。総理もまた先ほど述べられましたように税調に諮問されるという。  そこで、小倉会長自身とされましては、現行のこの土地の取得、保有、譲渡の各段階でどんな構想をお持ちで土地税制の検討をされるのでしょうか。
  132. 小倉武一

    ○小倉参考人 せっかくのお尋ねでございますけれども、税制調査会としましては、土地税制につきましての根本的といいますか、抜本的なあり方についての審議はまだ始めておりません。御承知のことかと思いますが、この四月、もうすぐでありますが六日に総会を開きまして土地税制の小委員会を設けるということになっておりますので、そこから具体的な論議が発足するというふうに思いますので、今私からここでその内容、これからあり得べきようなことについて想像を交えてお話しすることはできませんけれども、しかし、せっかくのお尋ねでございますので、当然考えなければならぬことは、今もお話しのように非常に土地の価格が高騰してきた。無論、全国下がったところもないことはないわけですけれども、問題の住宅地あるいは住居等を中心として考えれば、非常に高騰してきておる。これを税制上どう対処し得るだろうかということは、これはもう当然考えなければならぬことかと思います。  もう一つは、それと裏腹になりますけれども、資産所得あるいは土地について言えば、持てる者と持たない者との間に非常な社会的なあるいは経済的なギャップが生じてきておる。これがやはり税制プロパーとしての考えなければならぬ問題かもしれません。そういうことも当然問題となるかと思います。それは今お話しの中で言えば、どちらかというと土地保有の関係になると思いますけれども、取得の点につきましては、これは相続税も入ると思いますが、これについても問題がなくはありません。それから譲渡につきましてもまた問題がなくはないと思います。御承知のような、また御指摘のように大変いろいろの特別措置がございまして相当に複雑になっておる、これをもう少し透明にするという必要、同時に公正も確保する、税制上の公正を確保するというにはどうしたらいいかというようなことが今後の論議の対象になるのじゃなかろうかというように存じております。
  133. 和田静夫

    ○和田(静)委員 税調会長、ありがとうございました。  そこで、官房長官にちょっと伺いたいのですが、先ほど武藤委員も述べたところですが、アメリカ側がリークしたと言われるあの二百項目余の構造障壁の協議に当たってのアメリカ側日本への改善策なるものですね、これは報道のとおり確認をしていいのだろうか。ということは、私は総括のときに若干の論議をしたいと思っているのですが、幾つの分野で何項目指摘されているのですか。
  134. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 先ほど総理の方から、アメリカ日本に対して六項目指摘事項があるということを申されました。それで会議の席上におきまして、アメリカの方からその六項目をさらにブレークダウンして、こういうアイデアもあるじゃないか、こういうアイデアもあるじゃないか、こういうふうにアメリカ側の考えということで言った項目は実に多くございます。私どもそういうことが幾つかというのは勘定したことはございませんが、細目にわたりましてはたくさんの項目があることは事実でございます。
  135. 和田静夫

    ○和田(静)委員 それじゃ委員長、これは今のような答弁では納得するわけにはいきませんので、たくさんの報道が出ているところですから、政府がしっかり把握をされているところのアメリカ側が求める改善策を分野、項目別に資料として提出をしていただきたい。よろしいでしょうか。
  136. 越智伊平

    越智委員長 理事会で協議をして提出するようにいたします。
  137. 和田静夫

    ○和田(静)委員 それとの関連で自治大臣、アメリカ側指摘する項目の多くというのは自治体政策に非常に関連をする部分が多いわけです。報道によると、あなた自身は例えば大店法なら大店法は、こんなものは完全になくした方がいいという主張者であるようでありますが、それはそれとして、政府は自治体に対して一体今後どういうような指導や要請を行っていくか、何か描かれているのでしょうか。まさか自治分権というその基本がゆがめられるような形でもって強行的な指導が行われるというようなことはないでしょうね。
  138. 奥田敬和

    ○奥田国務大臣 先生御指摘のように、国の法令に違反しない限りにおいて自治体は自主的にこういったいろいろな規制をするということは、一般論としては可能だと思います。ですけれども、いろいろな経緯を踏まえて国の法令、法律で一たん、どういう形に決まるかは別として決まれば、その趣旨徹底に努めることは当然でございますし、また私自身、行政が余り介入するという形はできるだけ控えるべきだという姿勢をできるだけ伝えるようにして、適切な処理をしていただくようにお願いしてまいりたいと思っております。
  139. 和田静夫

    ○和田(静)委員 日銀総裁、先ほど武藤委員が触れられたところと全く関連するのですが、この公定歩合の引き上げを三月二十日に行ったときに、総裁は先ほど武藤さん言われたとおり、予防的措置の総仕上げとして実施したと語られたわけですね。ところが、地価は一向に安定をしない、安定をしないどころじゃない、値上がりを続けていると言ってよいと思うのです。また、この公定歩合の引き上げの真のねらいは、円安の是正ないしは円安にストップをかけるというようなところ、そこにてこ入れしたいということであったのでしょうが、その効果もどうも今のところは疑問であるというふうになってきていますね。さらに株安、債券安と為替安が加わったトリプル安が起こっているという状態であります。金利上昇と金融資本市場の混乱から資金調達をあきらめるというような企業も出てきているように思われますね。こういう状態で大変困難な情勢下に私は今あると思うのですが、金利と金融政策のかじ取りをどういうふうにされるのですか。そこのところを端的にお答え願えませんか。
  140. 三重野康

    ○三重野参考人 先生御指摘のとおり、三月二十日の公定歩合引き上げは、物価に対する予防措置を万全ならしめることと市場の金利に対する調整、安定をねらって行ったものであります。その後の情勢は、金融市場、長期、短期ともに期末要因がございましたが、ほぼ落ちつきを取り戻しておりますが、これまた今御指摘のように、株安と円安は相互に関連し合いながらいまだにまだ不安定な動きを続けております。  これは、先ほども武藤委員にお答え申し上げましたが、円安については、少なくとも日本が先進国中最もバランスのいい経済発展を続けていること、金利差がほとんど、ほとんどじゃなくて一%ちょっとまで締まってきて、実質金利は日本の方が高いこと、経常収支の何か黒字縮小をいろいろ言われますが、それでもまだ五百億ドル以上の大幅な黒字が残っていること等を考えますと、少なくとも経済的な理由から円安がさらに進む筋道にはないと思いますが、やはりマーケットはそれ以外のいろいろの状況でも動きますが、これに対しては先ほども申し上げましたが、世界各国と協調して介入を行って市場の落ちつくのを待ちたいと思っております。  株につきましても、これはやはり昨年の行き過ぎの反動ということで下落してまいりましたが、ここに来てまだ落ちつきを取り戻しません。これは私に言わせますと、さっき申し上げましたように経済拡大がまだ続いていること、企業の収益もいいことを考えますと、現在のこの株下落はやや行き過ぎではないかというふうに考えております。  いずれにしましても、先日公定歩合を上げたばかりでございますから、その効果を注意深く見守っていきたい、かように考えております。
  141. 和田静夫

    ○和田(静)委員 端的に、一言ですが、公定歩合を引き上げたばかりだから見守っていく、それはそうでしょう。お答えになるかならないかは別でありますが、非常に近い時点で公定歩合があなたの口を通じて変化を見るというようなことはあるのですか。
  142. 三重野康

    ○三重野参考人 今お答えしたことをもう一度申し上げて恐縮でございますが、今は公定歩合引き上げのその後の効果がどう出てくるかとじっと見守っている段階でございます。
  143. 和田静夫

    ○和田(静)委員 昭和天皇在位六十年記念金貨で若干の質問をいたしたいのでありますが、どうも史上空前の偽造が海外から持ち込まれ換金をされたようであります。これは、国民の負担は大変なところに私はなるのだろうと思って、その観点から若干の論議をいたしますが、まず持ち込まれた偽造金貨は何枚でしたか。流入ルートは解明できましたか。さらに捜査状況と今後の見通しを国家公安委員長説明をしてください。
  144. 中門弘

    ○中門政府委員 お答えいたします。  お尋ねの件につきましては、警視庁の現在までの捜査によりまして、偽造金貨との疑いがあるもの約十万五千枚が国内に持ち込まれたものというふうになっております。これらの金貨につきましては、現在警視庁の科学捜査研究所におきまして鑑定を行っているところでありまして、これまでに約一万三千枚については偽造であるという結論に達しております。残りのものにつきましても鋭意鑑定中でございますが、持ち込まれました経緯等から見まして偽造のものである疑いが濃いものというふうに考えております。  この偽造金貨の流入のルートについてでございますが、これも現在捜査中でございますが、これまで関係者等からの事情聴取等を行いました結果、昭和六十三年の三月ごろから本年の一月ごろまでの間に国内の三つのコイン業者がイギリス人及びスイス人の外国人コイン業者から合わせて七十数回にわたりまして輸入いたしまして、この品物はスイスから持ち出されたものであるということが判明をいたしております。  したがいまして、警察といたしましては、国内の捜査とあわせまして海外での捜査を行う必要があるということで、捜査員を海外に派遣するとともに、スイスの連邦司法・警察省等関係の外国捜査機関にも捜査協力の要請を行って事案の解明に努めているところでございます。
  145. 和田静夫

    ○和田(静)委員 今十万と言われましたか。九万、十万五千……。
  146. 中門弘

    ○中門政府委員 十万でございます。
  147. 和田静夫

    ○和田(静)委員 この偽造金貨が、金の地金にフォーナインのものが本物と同じ量を含有していたと言われて報道されているのですが、これは本当でしょうか。  それと、この偽造を見分けたポイントというのは何ですか。
  148. 中門弘

    ○中門政府委員 地金の成分については現在鑑定中でございますので詳細はまだわかっておりませんが、偽造金貨の外観あるいは形状的な面からの特徴と申しますのは、金貨の表面に「御在位六十年」という文字、それから「昭和六十一年」という文字がございますが、この文字のところに線状の傷がございます。また、偽造金貨は真貨に比べまして彫りが浅く、表面の輝きが鈍い等の特徴がございます。
  149. 和田静夫

    ○和田(静)委員 六十三年の三月からほとんど二年近くにわたって日銀は偽造金貨に気がつかずに受け入れていたわけですね。その数が、先ほど警察が言われたような形になってきています。  そうすると大蔵大臣、今大阪の造幣局にこれを持ち込まれているという説明を大蔵省側からも受けましたし、日銀からも受けたのですが、運んだのはいつで、にせ金貨は何枚見つかったわけですか。
  150. 大須敏生

    ○大須政府委員 お答え申し上げます。  日本銀行の本店がとりあえず保有しているものにつきまして大阪の造幣局に持ち込んだ日付は三月十九日でございますが、現在その調査が進行中でございますし、かつまた警察庁の方の捜査ともかかわることでございますので、すべて完了した時点でこの関係、どの部分が偽貨であったか、どの部分が真貨であったかということについては御報告申し上げたいと思います。
  151. 和田静夫

    ○和田(静)委員 じゃ委員長、これは私は数字を明確にすべきだと思いますから、これまたひとつ理事会で諮って全員に資料としていただきたいと思います。よろしいですか。
  152. 越智伊平

    越智委員長 理事会で協議をいたします。
  153. 和田静夫

    ○和田(静)委員 そこで、私は、どうしてこの大量の偽造金貨が約二年間にわたって銀行の窓口でも日銀でも発見できなかったのかが問題なんですね。日銀よりも前に富士銀行の一人の女子行員が訴え出てだんだん明るみに出てきたということを聞いているわけでありますが、発行時点では、特別な細工がしてあると当時の榊原大蔵省理財局国庫課長日本貨幣商協同組合の二十四人の方々を前に説明しているわけです。特別な細工はしたけれども、日銀にはこれを教えなかった。教えなかったから日銀はわからなかったと言ってしまえばそれまでなのですが、大蔵大臣、この辺のことはおわかりですか。
  154. 大須敏生

    ○大須政府委員 ただいま問題の偽造の対象となった六十年御在位記念金貨でございますが、これにつきましては、特に純正、画一を期して表裏の模様を鮮明かつ精緻に圧印するとか貨幣の周辺には精巧なぎざを施す等、偽造防止の観点から種々の工夫を施しているところでございまして、これを一見して判別することが困難な程度に偽造するということは難しいというふうに思っているわけでございます。  それから、ただいまのポイントについて日本銀行に知らせなかったのかという点でございますけれども、これは確かに私どもこれから反省を要する点でございますけれども、要するに、造幣局の専門家が見ればただいまの問題のにせ金貨、これは比較的はっきりと判別できるものでございますが、金融機関の窓口においてそれを、ただ本物と見比べた場合は別でございますけれども、にせ通貨だけが大量に入ってきたときになかなかそれを見分ける手段が不十分であったかという点は、今後の反省材料として教訓とさせていただきたいと思っております。
  155. 和田静夫

    ○和田(静)委員 このにせ金貨は額面で約八十億円。大蔵省の貨幣回収準備金を充てることになるわけでしょう。この分というのは欠損になる。金の地金を溶かせば一個について約四万円は取り戻せると言われているわけですね。しかし、それでも一個について六万円の損です。理論的に考えてみますと国民の損害、つまりこれは結局税金で埋め合わせをするということになってしまいますよ。裁判の結果によるというお話もないわけではないのでありますが、裁判をだれに対してやるのか。警察が述べられていることあるいはお話を聞いてみますと、これは犯人が検挙できない可能性が非常に強いというふうに考えざるを得ません。この損害、大蔵大臣どういうふうに補てんされますか。
  156. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今偽造の疑いのあります金貨そのものにつきまして、日銀等からの鑑定依頼を受け、現在造幣局が鑑定作業を継続しておる状況でありまして、偽造貨幣による損害というものがどの程度あるか、現時点ではまだ明確ではございません。  また、委員はその後について大変悲観的に述べられましたけれども、鑑定の結果として偽造ということが確定をいたしました段階で、それがだれの所有なのか、まただれから購入したものなのか、購入先ですね、あるいは刑事訴訟法上の位置づけがどうなるかということを勘案しながら、最終的にだれがどう損失を負担するかについては関係者の中で検討が進められるものと考えておりまして、現時点においてその点についてはまだ確定をいたしておりません状況でありますので、この程度で御了承をいただきたいと思います。
  157. 和田静夫

    ○和田(静)委員 私の調査によれば、十万円金貨の日銀への還流が三月二十九日現在で二百五十八万一千枚、きょうはもっとふえているのかもしれません。これは貨幣回収準備金で補てんするわけです。そうすると、日銀への無利子の融資ということになりましょう。有価証券での運用との差が、この得べかりし利益を放棄するという格好で年間百億円以上の財政的損失になると私は計算をしました。そうすると、これは未曾有の不祥事ですよ。総理大蔵大臣もやはり率直に国民の前に今謝罪すべきだろうと私は思うのです、これだけの不祥事が起こっているのですから。いまだに日本政府として、海部内閣として国民に謝罪がないというのはどうも解せないのであります。史上空前の通貨偽造事件を引き起こした通貨の発行当時の当局者あるいは大蔵省の責任、関係者の責任、この辺は総理、やはり明確にすべきだと思いますが、いかがでしょう。
  158. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、この事態を決して軽視しておるわけでもありませんし、また遺憾に思っておらないわけでもございません。今委員からはおわびをしておらないような御表現で御発言がございましたが、この事件が発覚いたしました直後の記者会見から私は何回かおわびの言葉を申し述べ、遺憾の意を表しながら、その後の事態の推移の御報告をしてまいりました。今現に捜査が一方で進行中であり、また一方におきましては造幣局における鑑定が進行いたしております状況の中で、私どもは、この結論が最終的にどう出るか、これを待っております。
  159. 和田静夫

    ○和田(静)委員 新天皇即位記念金貨、大蔵省の平成二年度予算案の説明を受けた際にも既に見積もられているわけでありますが、大蔵省の中では検討が進んでいるようであります。しかし、先ほど来指摘をいたしましたように、この昭和天皇在位記念金貨が、初めから偽造をしてくれと言わんばかりだと言われるほど、偽造した諸君のあれによれば、諸君というか、国際的なディーラーから見てみればそういう感じのものであると言われたり、あるいは、考えてみれば記念金貨が二割以上も還流するというのは、これはもう金貨そのものに人気がなかったからではないだろうか。それは、考えてみれば四万円の値打ちしかないものを十万円で買うというようなことで人気が出るはずがないし、偽造品は出回る、回収の経費がかかる、さや稼ぎをやってもこれは信用が落ちるばかりだ。そうすると、新しい金貨については偽造されないという保証が担保される必要があるのではなかろうか。再び国民が多額の税で負担をしなければならないというようなことが起こらないことがちゃんと保証されるべきだろう、私はそういうふうに考えるのです。その意味で私は、検討を見直す必要があるだろうというふうに思いますが、大臣いかがでしょう。
  160. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 具体的な偽造防止策というものにつきまして、現在造幣局などにおきまして部内の検討を進めておりますのと同時に、金融機関、日銀、警察及び税関関係者あるいは造幣局及び印刷局の技術責任者などによりまして、偽造防止についての専門家による検討会を設置して検討をいただいております。三月十六日、二十三日、三十日と、これまで三回会議を開いていただきまして、近く都内でその報告を取りまとめていただくことになっております。したがって、現時点におきまして具体的な偽造防止策というものが確定をしておるわけではございませんけれども、今回の事件に対し私どもも反省の上に立ちながら、偽造防止というものに一生懸命に取り組んで、今その検討を進めていただいておるところでございます。
  161. 和田静夫

    ○和田(静)委員 新しい金貨の発行は法律的にはどういう根拠法でお出しになるのでしょうか。
  162. 大須敏生

    ○大須政府委員 新しい御即位記念貨幣につきましては、ちょうど旧臨時通貨法下においてオリンピック東京大会記念の千円銀貨幣を発行した場合、それから、ただいま問題となっております昭和天皇御在位六十年記念十万円金貨幣及び一万円銀貨幣、この発行に際しまして特別法を制定したその前例に従いまして、今国会に通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律の特別法として天皇陛下御即位記念のための十万円の貨幣の発行に関する法律、これは仮称でございますが、これを提出させていただき、御審議いただく予定でございます。
  163. 越智伊平

    越智委員長 これにて武藤君、和田君の質疑は終了いたしました。  次に、二見伸明君。
  164. 二見伸明

    二見委員 最初に、日米構造問題協議について若干伺いたいと思います。  私は、現在きょうあす行われておりますこの協議が成功裏に終わることが、日本アメリカとの関係のみならず、世界の経済にとっても大変重要なことだと思っておりますので、お互いに満足いく形での成功を心から期待をいたしております。  それで、冒頭、最初に総理大臣にお尋ねしますけれども、政府の最終案について総理ブッシュ大統領ときのう電話で話をされて、そして松永前大使を特使として派遣された、こう報道されているわけでありますけれども、その最終的な政府案というのは、私は中身は具体的にはわかりませんけれども、きょうあす提示する最終案でもってこの件は成功裏に決着するという自信はおありなのでしょうか。
  165. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これは交渉ではございませんから、決着するとかあるいは決裂するとかいうことではないと思っておりまして、協議でありますから、しかも中間評価でありますけれども、しかしそうはいうものの、両方からいろいろ指摘し合って歩み寄って努力をしておる、項目も非常にいろいろ多岐にわたる問題でございます。双方が共通認識を得るところまでいくのが望ましい姿だと私は思っておりますので、そのような方に向けてまさに最後の努力を、話し合いを続けておってくれる、このように強く期待をいたしております。     〔委員長退席、原田(昇)委員長代理着席〕
  166. 二見伸明

    二見委員 ネゴシエーションではないとおっしゃるけれども、現実にはネゴシエーションでしょう、今行われていることは。サゼスチョンやアドバイスではない。現実はネゴシエーションと私は理解をいたしております。  それで、決着が延びると、決着というか中間的評価、中間報告の取りまとめができなかったということになると、かなりアメリカ側日本に対してさらに厳しい条件なり要求をしてくるのではないかという憶測もあるわけですけれども、それについては総理はどう認識されていますか。
  167. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 お互いに評価のできる中間評価がまとまることが最も望ましいわけでありますし、また、そういったことも共通認識に至ることすらもできないということになりますと、日米の間にありますいろいろな問題について好ましくない影響が起こってくることは事実でございます。それは、この協議が始まってからきょうまで何回か実務者レベルの話し合いをいたしまして、日本側からもアメリカに、アメリカ側からも日本側に言い、それらの問題点お互い努力し合いながらこのようなことでこのような歩み寄りをしておるということを示し合ってきたわけであります。そして、まさにその最後の段階でありますから、私は評価がきちっとまとまることが最も大切だ、こう思っております。
  168. 二見伸明

    二見委員 細かいことは後ほどお尋ねしますけれども、それでは、非常に形式的なことになるのだけれども、きょうあす協議が行われて、中間的評価というのは四日、協議が終わった後直ちに公表されるものなのか、あるいは文書作成ということもあるので、一週間とか十日とかという時間的な差があって発表されるものなのか、そこら辺はどうですか。
  169. 海部俊樹

  170. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 発表ぶりにつきましては、これから米側と打ち合わせることになります。
  171. 二見伸明

    二見委員 そうすると、あした必ずしも発表されるかどうかは、これは限らぬわけですな。
  172. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 できるだけ早い決着が望ましい、それに従って発表することが望ましいと思っておりますが、あす発表ということが決まっておるわけではございません。
  173. 二見伸明

    二見委員 三、四の協議が五日、六日にさらに日にちが延長されることもあり得るわけですね、これは。
  174. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 先ほど総理が申し上げましたように、共通認識に達するべく現地の代表団は全力努力を傾けておるわけでございまして、二日、三日で決着がつくよう心から願っております。
  175. 二見伸明

    二見委員 それでは、共通認識に立ちたい、三、四で成ると言うのだけれども、共通認識というのはかなり具体的な数字なりなんなりを織り込まなければ共通認識にはなりませんか。例えば社会資本については、GNP比一〇%というアメリカ側主張がある。大蔵当局は、そんなことをしたら財政の機動的運営ができないから数値の明示は無理だという日本財政当局の意見がある。大店法についても、アメリカは廃止と言っている。日本としてはそこまでは言い切れないから、報道によると、大都市圏は適用除外にしようという案をアメリカ側に持っていっておる。そうしたことがどちらかで決着がつかなければ、この評価というものはできないのか。まだ決着のつかないものは最終報告まで、七月まで時間があるから、決着のつかないものは、さらに最終報告に向けて努力をしようということでペンディングにすることもあり得るのか、その点はどうですか。
  176. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 例えば大蔵省が議長省として抱えております中に社会資本整備の項目がございます。これにつきまして、具体的に今アメリカにおいてどの程度まで作業が進捗しておりますかわかりませんので、細部にわたって御報告をすることは避けさせていただきますけれども、私どもは、基本的に社会資本整備というものが日本国民生活の質の向上につながるという観点から、我々として最大限責任の持てる案を日本側考え方としてお示しをいたしております。私どもとしては、アメリカ側との話し合いの中においてそれを誠意を持って説明することにより納得を得たいと考えて全力を尽くしておるところであります。
  177. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 確かに大店法につきましては、今御指摘のとおり、アメリカからは廃止というお話が出てきたことは事実でございます。同時に、運用改善も直ちにやれ、また地方のいろいろの規制についても、これも廃止の方向でやれと、大体三つの要望が出ておったわけでございますが、私といたしましては、けさほどもお話を申し上げましたように、日本消費者皆様方の質の向上あるいは利便、こういうことを考えなきゃいけない。同時に、全国の地域の経済社会で一生懸命それぞれの発展に御努力なさっていただいた百六十万の中小小売商のこともやはり考えなければいけない。同時に、アメリカとの関係というのは確かに今御指摘のとおりでありまして、この日米関係というものは日本の外交にとって一番大切なことでございます。いわんや今、日米間だけではなくて、世界の中で日本がやはりどう貢献をしていかなければならないのか、皆さんが、世界が注目をされておられますので、そういう三つの観点から、とにかくベストな案をつくろうということでつくったつもりでございまして、今いろいろ御心配いただいておりますけれども、私としては少なくともそれでうまく話がつく、こういう信念を持ってやったということだけを申し上げておきます。
  178. 二見伸明

    二見委員 今中間報告、中間的評価がすべてみたいな議論になっているのだけれども、要するにこの作業の手順からいきますと、七月のヒューストン・サミットまでに最終的な共同報告ができればいいわけですね。まさに、きょうあすというのはその中間の段階ですね。そうなれば、きょうあすの議論の中でお互い共通認識をしたところはそれで評価し合う。どうしてもまだ意見の分かれる問題がある。例えば一つ大店法の問題というのは、かなり向こうでも政治的な意識を持っているようだから、日本でも政治問題、向こうでも政治問題、日本の案にアメリカがオーケーと言えばそれで済んでしまう話だけれども、そうならない場合には、あるいは社会資本のGNP一〇%というアメリカ側主張に対して、大蔵省としては数値は明示しないでこれから社会資本、下水道や何かに力を入れていきますよ、そういう言葉だけでもって対処しようとしている。それはきょうあすの議論で決着がつかない。どちらかが折れる以外にないのだから、幾らネゴシエーションじゃないと言っても、私はネゴシエーションだと思う。そうなれば、どうしても折り合いがつかない。お互い国内政治に絡むことだから、国内意見も調整しなければならぬということで先送りする。七月までには、例えば大店法の問題はもっと詰めますよとか社会資本の問題をもっと詰めますよということもこの中間的評価の中にあり得るのか。今国内で一番議論になっていることが三、四の協議の中で結論が出てしまえば、もうそれが事実上の最終報告じゃないかなという感じもするのだけれども、総理、これはどういうことですかね。どういうふうになりますか、これは。
  179. 中山太郎

    中山国務大臣 ただいま日米間で鋭意交渉の過程にございまして、どちらが折れるとか向こうの言うことにすべてこちらが同調するとかいったような観点ではなしに、双方が意見を述べ合って双方が納得のいくような話し合いを現在継続中でございますので、この点でひとつ御理解を願いたいと思っております。
  180. 二見伸明

    二見委員 両方が納得したものは中間的評価に書けるけれども、なかなか折り合いのつかないものはさらに先送りにならざるを得ないでしょうというふうに聞いているのです。どうなんですか。そうなんでしょう。
  181. 中山太郎

    中山国務大臣 先生重ねてのお尋ねでございますが、まだ現在交渉最中でございますから、どうぞ今日のところはひとつ、外交交渉でございますので、この点は御理解をいただきたいと思います。
  182. 二見伸明

    二見委員 大蔵大臣、きょう午前中の武藤委員の質問の中で、いわゆる円安、株安、債券安、このトリプル安について、日本経済のファンダメンタルズについては変化はない、これは心理的なものだという御答弁がありました。ところが、心理的な問題として、日米構造問題協議がうまく進まないというようなことが心理的な影響があってこのトリプル安、きのうの大幅な株安につながっているのだという解説、見方もあるわけですけれども、この日米構造問題協議が成功裏に終わるとどうですかね、円安、株安、債券安にある程度歯どめがかかりますかね。
  183. 中山太郎

    中山国務大臣 ちょっと修正をさせていただきます。先生のお言葉で、つい交渉と申し上げましたが、協議でございますので修正をさせていただきます。
  184. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今回行われております構造協議というものが最終ではない。これが最終ではない。この構造協議は七月があくまでも最終の時期である、そう考えております。  同時に、よくお考えをいただきたいことは、現在、平成二年度の予算をまだ御審議をいただけておらない状況において、将来にわたっての数字をお示しすることがいかに困難なことであるかも御理解をいただけると思うのであります。その限りにおきましては、最終報告までに中間報告とは異なった姿に移行する可能性を例えば予算に関連いたします項目につきましては持っております。これは事実私は否定をいたしません。  そうした問題点がありますけれども、それと、例えば現在の株式相場あるいは為替の市況において影響ありやなしやということでありますならば、私から予断を持ってあるいは具体的にお答えをすべきことでは多分ないと思いますが、一般的にこの構造協議等を含めて、先行きに市場関係者が自信を持ち得ないでいる状況というものがあるとすれば、こうした点についての影響は出てくる可能性は否定できません。
  185. 二見伸明

    二見委員 通産大臣、個別の問題でお尋ねしますけれども、現在の協議で一番やり玉というか目玉商品というか、これは大店法ですね。  私は国内での大店法の議論を見聞きしておりまして、どうも業界の利害を中心に議論が展開されて、消費者立場からの議論というか意見というのが余り用いられていないのではないかという感じがします。実は、私もたくさんの消費者とこの問題について議論をしましたけれども、基本的にあるいは原則的に消費者は大型店の出店は歓迎しております。ただし、歓迎はしているけれども、どこか郊外に大型店ができた、そのために自分の住んでいる、長年住みなれた町の駅前の商店街がその結果寂れてしまったのではこれは困るなという気遣いも消費者は持っているというのが現実です。  私は、一つ大店法の問題というのは、大型店の出店が既存の商店街の活性化、地域の活性化につながるようなゾーニングという立場からこれは検討し直す、検討してもいいのじゃないか。ただ、だめとかいいとかというだけではなくて、大型店の出店が自分の住んでいる町に、商店街もその結果活性化する、当然消費者は大喜びする、そうした発想の展開があっていいのではないかと思いますけれども、通産相、何か御感想はございますか。     〔原田(昇)委員長代理退席、委員長着席〕
  186. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 これはいろいろの考え方があると思います。一つは今、御承知のように先ほどアメリカからも言われておりますように大店法がある。地方自治体ではいろいろの条例をおつくりになっていろいろの規制をおやりになっている。もし万が一、この大店法アメリカの言うようになくなってしまったと仮定をいたしますと、そのときにこの条例というものがどういう形でいくのか。それが条例の方もなくなれば、今おっしゃるとおり消費者のためにある程度プラスになるかと思いますが、万が一にも条例の方だけは、地方自治の建前ですから、これは残っていっていろいろと規制が強化されますと、決して消費者のためにならないと私は思います。あるいはもう一つは、どんどん今度は全く自由になってしまって、地方の中小小売商はどんどんつぶれていったといたしますと、いわゆる大型店だけが、そんなことはないかと思いますけれども、万が一大型店だけが残ってしまったといたしますと、今度は寡占状態が起きるという可能性もこれは十分考えられるわけでございまして、いろいろな観点からいくと、消費者の皆さんのためにもアメリカのおっしゃるように大店法を廃止するだけが決してプラスではない、私はこういう考え方を持っているわけでございます。
  187. 二見伸明

    二見委員 我が党内にも今通産大臣と同じようにいろいろな意見があります。大店法を撤廃すればそこでこの問題が解決だ。日米の間は解決かもしれないけれども、日本国内でそれですべてがハッピーかというと決してそうではないという議論があります。  それで、自治大臣にお尋ねしますけれども、今通産大臣指摘されたように、大店法がもし完全になくなったとした場合に、自治省の通達だけでもって出店規制をするような条例をやめろということはできますか。
  188. 奥田敬和

    ○奥田国務大臣 先ほども和田委員から同趣旨の御質問があったわけですけれども、今運用改善と法改正という形で協議に臨んでおる立場であろうと思いますので、廃止とかいう仮定の質問に答えるのはいかがかと思いますけれども、仮に一般論でお答えさせていただきますが、これは自治体の意思は尊重しなければいかぬ。そして違法でない範囲内においては、これは地方自治団体が自主規制をするということは法的には可能であろうと思います。しかし先生も先ほどから御主張なさいましたように、消費者保護の立場に立ってできるだけ行政の介入は抑えるというのが、これは別に法律のあれではない、私の方針で自治体に訴えかけたいと思っておりますし、またそういった形に立って、経緯を踏まえて行政、自治体がやはり慎重に配意していただけるであろうという期待感は持っております。
  189. 二見伸明

    二見委員 通産大臣にお尋ねしますけれども、アメリカ側に提示した案の中には大都市圏を適用除外にするということがきょうは各紙大々的に報道されております。大都市圏というのは具体的にどことどことどこを想定されているのですか。
  190. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 そこまでになりますとこれは中身の問題になりますので、今ちょうどいわゆる協議が行われている最中のときに私が中身のことを申し上げることは少しこれは、まことに申しわけございませんが今の場合には差し控えさせていただきたいと思います。
  191. 二見伸明

    二見委員 大都市圏がどことどことどこがというのは中身じゃない。大都市圏を適用除外するということ自体が中身なので、具体的に例えば東京とか大阪とか名古屋とか、こういうことが中身じゃないと思いますよ、そんなことは。言ってくださいよ。
  192. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 大都市圏の適用除外ということを私は一回も申し上げたことはございませんので、そういう意味において大都市圏がどこかということを私は申し上げるわけにはいかない、こういうことを申し上げたわけであります。
  193. 二見伸明

    二見委員 けさの報道、大都市圏を適用除外するということは、あなた言っていないということになるとだれが言ったのですか、これは。新聞で勝手に報道しているわけですか。そんなばかなことはないでしょうが。
  194. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私は新聞の報道に責任を持つわけにはまいりません。
  195. 二見伸明

    二見委員 それでは、どうもあなたは余り答えたくなさそうなのでお尋ねしますけれども、もし大都市圏を適用除外するということでアメリカがオーケーしたとしますと、これは当然法改正になります。そうすると法改正したときに、例えば東京都なんというのは都議会では、私の記憶に間違いがなければ自民党から共産党まで全部そろって大店法適用撤廃反対という決議をやっている。全部、超党派でやっている。すると、大都市圏はここですよと決めた、法律改正でここは適用除外しますよと決めたけれども、自治体がここで規制をするための条例をつくってしまったのではこれは意味をなしませんね。その場合には条例がつくれないような法改正というのはできるのですか、これは。
  196. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 大変恐縮でございますけれども、私の口から大都市圏を適用除外をするとは一度も言っておりませんので、仮定の問題に対して私がお答えするということだけは差し控えさせていただきたいと思います。
  197. 二見伸明

    二見委員 この問題で議論しても余りそれ以上答えが出てきそうもありませんので、そうですね、これは総理にお尋ねしましょう。この案はどうなのですか。通産大臣は知らないと言っているのです。
  198. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 いろいろな経緯がありまして、ただいま日本側の中間報告へ向けての最終案を提出をして、そして協議をしておる最中でありますので、個々の問題についての具体的な答弁は今の段階では控えさせていただきたいと思います。
  199. 二見伸明

    二見委員 やはり、例えば大都市圏を適用除外するというような案はアメリカ側に言ったことは事実なんでしょう、これは。じゃなかったら、通産大臣知らないと言っている、知らないというものが勝手にこう新聞に出ているというのは、これはおかしな話なんでね。いや、それを認めていい、それならそれでいいと思うのです。これは国内でもそれぞれ利害関係もあるし、いろいろな意見があるから、国内でも議論しなければならぬことなんです。だから、アメリカにこういう案を提示しましたよと言えばそれでいいわけですよ、これは。むしろここで隠さないで、アメリカ側にはこういう案を最終案として提示してあります、これでまとまるかどうかわかりませんということで私はいいんだと思うよ。どうなんですか、それは。
  200. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私が所管大臣でございますから、私がそういうことを一切申し上げていないわけでございますから、そういうことで御理解いただきたいと思います。
  201. 二見伸明

    二見委員 通産大臣の、所管大臣の知らないところでこういう案がアメリカに提示されたんだというふうに理解をいたしておきます、そういうふうに。  それで、大店法にしろ何にしろ、日米構造問題協議の中で大きなネックとなっているのはやはり土地だという感じがします。土地問題が解決しないと、例えばアメリカ日本に大型店舗を幾ら自由に出店できるようになったって、土地が高ければだめなんだから。ネックにあるのは、公共投資を例えばアメリカが一〇%やってくれと言ったって、一〇%ほとんど土地代に食われてしまったんじゃ実需につながらないわけだから、やはり土地問題というのは日米構造問題協議のネックにある大きな課題だと思います。  それで、先ほどもいろいろ議論がありましたけれども、これは建設大臣かな、お尋ねします。  昨年十二月二十一日の土地対策関係閣僚会議で、例えば「低・未利用の特定とその利用を促進する制度を整備する。」こう定めましたね。これは平成二年度中にやると決めた。具体的にどうするのか。建設省では低・未利用地に対して課税を強化しようという案があるやに伺っておりますけれども、その点についてはどう考えているのか。また、市街化区域内の農地については、宅地並み課税も含めてこれはどう考えていくのか。これは四月からの税調に任せるなんということじゃなくて、建設大臣としてきちんと答えてください。  それから、市街化区域内の農地の宅地並み課税は、これは固定資産税だから自治大臣になるのかな、この点についてきちんとお答えをいただきたいと思うし、税の問題だけじゃなくて、低・未利用地についてはどうやってこれを有効利用するような手だてを考えていくのか。それもあわせて御説明いただきたいと思います。
  202. 綿貫民輔

    ○綿貫国務大臣 御指摘の昨年の十二月の閣僚会議で決められました方向につきまして、建設省はこの国会に大都市法の改正という法律を出させていただきたいと思っております。なお、建築基準法や都市計画法の改正案とともに、大都市におきます低・未利用地、工場跡地等のですね、その供給促進、また住宅宅地の広域的な供給計画を立てる等の中身でございますが、これらの問題を織り込んだ法律を出させていただきたいと思っております。なお、これを裏打ちするための税制もなるべく早く出していただきまして、両々相まって宅地等々が供給できるように、また農地等も、本当に農業をお続けになる方とあるいは宅地に転換する方と、その意思がはっきりできるような方向づけも促進できるような中身の法律も考えていきたいと思っております。
  203. 奥田敬和

    ○奥田国務大臣 宅地並み課税の件に関してお答えいたしますけれども、大都市内にある農地に関しまして、これを明確に宅地化すべきもの、あるいは緑地として残すべきものと区分して、そして平成二年度内に成案を得るという形が土地対策閣僚会議の申し合わせになっておりますし、また、それを得て四年度に実施するという形に持っていきたいと思っております。  なお、遊休地に対する課税強化の件に関して、これは今建設省が遊休地とは何ぞやという定義の問題を詰めておる段階でございますので、この形を待って特別保有税をいかなる形で持っていくか、強化の方向でこういった未利用地対策に対しての対策を急ぎたいということでございます。
  204. 二見伸明

    二見委員 大蔵大臣、大蔵省は土地への融資について総量規制を決めたのですね。私はこれは評価したいと思います。四半期ごとに調査するということなんだけれども、もしこの総量規制を守らない金融機関、これは金融機関名を公表してはいかがですか。
  205. 土田正顕

    ○土田政府委員 お答えを申し上げます。  大蔵省、具体的には私ども銀行局でございますが、最近の地価動向などにかんがみまして、金融面でも従来の措置からさらに一歩踏み込んだ措置をとる必要があると判断いたしまして、この三月二十七日に「土地関連融資の抑制について」の通達を発出いたしましたところであります。  その中で、ただいま委員指摘のような金融機関に対する要請を行っておりますのは、一つは不動産業向けの融資の伸び率について、これは「公的な宅地開発機関等に対する貸出を除き、」ということで穴をあけてございますが、そういう宅地の供給関係から必要な貸し出しを除いて、「その増勢を総貸出の増勢以下に抑制することを目途として各金融機関においてその調整を図る」ように要請をしてございます。  したがいまして、私どもは、まずこのような各金融機関ごとの個別の事情ないし地方公共団体その他との関係もあるわけでございますから、まず第一次的には各金融機関においてこの私どもが与えた指標をめどとして自主的に調整を図るように要請をしておる、その実行を見守りたいと考えておるわけでございます。  さらにもう一つは、金融機関に対しまして、「当面、不動産業及び建設業、ノンバンクの三業種に対する融資の実行状況を報告する」ことを要請しております。この報告の集計は、これは四半期ごとにしたいと思っておりますので、実は最初のデータが出るまでにはなお数カ月を要すると思われるのでございますが、その結果の概要は公表をしたいと考えております。
  206. 二見伸明

    二見委員 私は、地価が下がらない元凶の一つは金融機関だと思っている。地価が下がって、絶対的な地価の価格が下がって困るのは金融機関なんだ、それを担保にして金を貸しているのだから。  私は、総体での報告ではなくて、この大蔵省の総量規制を守らない銀行名、金融機関、これは公表してもらいたい。そのぐらいやらなかったらば、私は地価の安定というか土地の価格を下げるところまでいかないと思う。私は個別の守らない金融機関の名前を明らかにしろと言っているのです。その公表をしてもらいたい。
  207. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、委員が御指摘になるお気持ちがわからないわけではありません。ただ同時に、その氏名の公表ということになりますと、他の融資を受けておられる方々もたくさんおられる。また、そこに資産の運用を任せておられる国民もたくさんおられる。氏名の公表という結果、その信頼性等に影響を及ぼす危険性があると考えられるときには、私はこうした問題は慎重に考えるべきことだと思います。  そしてむしろ、私の立場を率直に言わせていただきますなら、先ほど委員に御評価をいただきましたけれども、その総貸し出しの伸び以下にこの融資を抑えていくことを今局長から申しましたような形で要請し、その報告を聴取する中で、もし本当に効果が出ず、その局長説明したようなものが無視されるような状態が続くようであれば、これはまた私は考えなければならないと思います。しかし、その効果を見せていただきたい、私はそう思います。
  208. 二見伸明

    二見委員 私は、守らない金融機関は公表するよという強い姿勢を示すことが、金融機関がおのずから自粛する方向だと思っているのです。  総理大臣、ちょっとやはり土地問題でお尋ねしますけれども、先般、総理は地価を凍結させるために必要に応じて国土利用計画法に基づく規制区域の指定も行うべきだという御見解を示されたという報道がありますけれども、その決意のほどは変わらないのかどうか。  そして、国土利用計画法によりますと、これは規制区域というのは知事が指定することになっているのですけれども、必要に応じて総理大臣が指定を知事に指示することもできるとなっている。知事は、なかなか自分が選挙があるものだから、来年統一選挙ですから、知事選なんか抱えているところは知事なんかこんなことできるかどうかわからぬ。そうなれば、むしろこの規制区域の指定というのは総理大臣が知事に指示しなければ実効は薄いのではないかと思いますけれども、総理の御見解はいかがですか。
  209. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 土地対策関係閣僚会議の席でいろいろ土地問題を議論をしておるわけでありますけれども、私は、最近の土地の異常な値上がりが東京圏では頭打ちになりつつある、まだ幾らか上がっておりますが。それが地方へ波及をして、地方都市にもそういった傾向が非常に目立つということを知りました。しかし、監視区域の制度というものがあるわけですが、その監視区域の指定が後手後手に回っておるとか、いろいろ十分な効力を上げておらないのではないかという御批判があることもよく承知しております。  そして最も大切なことは、今私は、土地のこれ以上異常な騰貴を防ぐことだ、こう考えておりましたので、この間の会議のときに関係閣僚に、特に関係する国土庁長官や自治大臣に対して、規制区域のことも念頭に置いて厳しく対処してほしいということを言いました。その考えは今も変わっておりません。しかしそれは、その地方の実情を十分知っておる知事に、その適切な対応をとることによって土地の騰貴を防ぐという最大の目標をきちっと達成するように努力をしてもらうことが大切でありますから、そのような考え方を示し、そのように取り組んでいきたいと思っておるところであります。
  210. 二見伸明

    二見委員 第一義的には知事が指定することになっているのです。しかし、知事だってなかなかそこまでやれるかどうかわからぬ、これはかなりのきついことですからね。そうなれば総理がみずから乗り出して知事に指示する以外にないのじゃないかと思う。それだけの決断、そこまでの決断はされておりますかということなんです。第一義的には知事ですよ。しかし、知事がどうもやり切らぬ場合、その場合には総理が乗り出すだけの御決意がありますか、全部知事任せなんですか、そういうことなんです。法律では、必要に応じて総理大臣が指定を知事に指示することができるとなっているのですから、この最後の伝家の宝刀を総理はお抜きになるまでの覚悟をした上での御発言なんですかということなんです。
  211. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 先ほども申しましたように、まず第一義的に、監視区域の問題を徹底的に後手後手にならないようにやってもらうこと、同時にまた、地域の事情を十分掌握しておる知事にそのことについてはよく通知をして、考えてもらう。監視区域のことでどうしても抑えることができないというときには、規制区域のことも念頭に置いて対処してほしいということを私は土地対策の会議で申し上げたわけで、その考えは変わっておりません。
  212. 二見伸明

    二見委員 日米構造協議の問題、あと独禁法の問題があるのですけれども、公取委員長せっかくお見えだから、一、二問お尋ねいたしましょうか。  私は、最近の公取には怖さがなくなっているんじゃないか。だから、かみつかない番犬、きばを抜かれた番犬と言われているんじゃないか。私は、公取は何か独禁政策の予防行政官庁に安住しているような気がいたします。事実、消費者等に多大な損害を与える悪質な経済犯罪であるカルテルの刑事告発は、これまで石油カルテル事件が一件だけなんです。あとは全く行われておりません。独禁法には刑事告発の規定があるにもかかわらず、なぜ行われないのか。これでは公取なんか怖くない、こう言われてもやむを得ないと私は思います。公取委員長、どう思いますか、これは。
  213. 梅澤節男

    ○梅澤(節)政府委員 刑事告発がこの十数年に一件というのは御指摘のとおりであります。ただ、その経緯を若干御説明いたしますと、昭和五十二年に独占禁止法の改正がございまして現在の課徴金の制度が導入されました。告発をいたしましたのはその以前でございます。  五十二年の改正というのは、カルテルのやり得を抑止するという点でこの制度が導入をされまして、現在まで公正取引委員会はこの制度の定着のために全力を尽くしてきたということでございます。その期間、告発に値するような事件も見当たらなかったということもございますけれども、今日の時点におきまして、この五十二年の改正をますます法律の力を発揮させるために、今後悪質な事件についての告発ということについてはきちんと手順を踏んで積極的な活用を図るという段階にきておると考えております。
  214. 二見伸明

    二見委員 独禁法違反に対する損害賠償請求訴訟は無過失責任制をとっているにもかかわらず、損害額の立証を原告がしなければならない。そのために事実上訴訟の道が閉ざされているという批判があります。消費者重視の政策推進という立場からいきますと、訴訟者の立証負担の軽減というのは図るべきではないかと思いますけれども、公取はこの点については法改正をするお考えはございますか。
  215. 梅澤節男

    ○梅澤(節)政府委員 被害者の訴訟負担の軽減ということを制度論として論じますと、一独禁法に係る問題にとどまらず、訴訟法体系全体の問題もございますので、制度論全般について私たちの立場からお答えする範囲を超えている点もございます。  ただ、現行の制度において損害額の立証の責任が被害者に課せられておる、これは我が国の民事訴訟法においての基本的な法理でございまして、アメリカにおきましても三倍額賠償制度というのが活発に行われておりますけれども、やはり被害者が立証を行う責任を課せられております。いろいろ議論はございますけれども、私どもはやはりこれは学説なり判例の発展に期待する部分が非常に大きい問題ではないかと考えております。
  216. 二見伸明

    二見委員 この問題、また後ほど他の委員会で議論をしたいと思いますけれども、独禁法について最後にもう一点お尋ねをしたいと思います。  三月初めにビールの一斉値上げがありましたね。二十円上がった。決算内容も違う企業が一律二十円の値上げで、しかも二十円の配分については卸も小売もメーカーも取り分が全く同じだ。どう考えてもこれはカルテルじゃないかというふうに見られる。公取は独禁法違反でビールを調査していますか。
  217. 梅澤節男

    ○梅澤(節)政府委員 二月の末から三月の初めにかけまして、御指摘のようにビール四社それぞれ小売の希望小売価格、それから卸売の希望価格等々の引き上げが相次いで行われたわけであります。本件につきましては、ただいま独占禁止法十八条の二による価格の同調的引き上げに該当することとして、既に調査を開始いたしております。
  218. 二見伸明

    二見委員 この概要は国会の年次報告で報告するようになっていますね。早ければことしの暮れ、遅ければ来年になりますね。三月に値上げされたのが、早くてことしの暮れ、遅ければ来年の暮れというのじゃ、こういうのを気の抜けたビールというのです。調査した段階で国会に報告してもらいたい。
  219. 梅澤節男

    ○梅澤(節)政府委員 価格の同調的引き上げの報告聴取の結果につきましては、独占禁止法の四十四条に、公正取引委員会が年次報告を提出するときに立法府に報告しなさいという規定になっておりまして、その規定を今まで守っておるわけでございます。ただ、早く立法府として内容を聴取したい、これは立法府の国政調査権の問題でございますので、そういう御要求がありまして、そのときに私どもの報告の内容が固まっておりますれば当然国会で御報告を申し上げます。
  220. 二見伸明

    二見委員 総理大臣、防衛問題について若干議論をしたいと思います。  昨年の防衛白書では、東西が軍事的に対峙しているとの実態に基本的変化が生じたとは言えない、そういう断定をしました。しかし、その後ヨーロッパの激動は物すごいですね。ベルリンの壁がこれほど早く崩壊するなんてあの当時だれも予想しなかった。しかも、今はドイツの統一問題がヨーロッパでは最大の焦点で、これが統一された場合にはヨーロッパでナンバーワンの経済大国である、ナンバーワンの軍事大国になるんだということで各方面の関心が集まっている。そういう世界の激変を目の前にして、どうですか、東西が軍事的に対峙しているとの実態に基本的変化が生じたとは言えないというこの認識は、もう改めてもよろしいんじゃないですか。
  221. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 基本的なことをお触れになりましたけれども、私は、いわゆるアメリカを頂点とし、ソ連を頂点とする東西の力の対決というものが、対決から対話の方向に冷戦の発想を乗り越えて変わりつつあるということは、これは率直にそうだと思います。ただ、それは方向性としてそうなっておるということで、その動きが出てきたからそれじゃ直ちにワルシャワ条約軍はなくなったか、NATOはなくなったかというとそうじゃなくて、ワルシャワ条約軍もNATOもそれぞれの集団安全保障の仕組みというものが、軍事的な意味を持ちながらそこに政治的な面をプラスをして、ヨーロッパの安定と繁栄のためにこれからそれがどう作用していくのか、私は先のことは断言できませんけれども、きょう現在はそういった大きな流れに変化が出始めておるということはよくわかりますが、それが直ちに軍事力の軍備管理とか軍縮の方へ目につくような大きな動きに移っていっているわけではないんだろうと見ておりますから、まだ不透明な不安定なところがたくさん残っておる、もう少しそれは慎重に見きわめさせていただきたいという感じがいたします。
  222. 二見伸明

    二見委員 NATOもワルシャワ軍も、確かに今NATOがありワルシャワはある。しかし、それは今までのNATO対ワルシャワの対立関係ではなくなりつつある。なくなったとは言わない。なくなる方向にある。この認識だけはしてもらわなければ困る。と同時に、そうした動きは遠からずこのアジアにも必ず及んでくるものだと私は思うのです。また、及ぼさなければならないと私は思うのです。その点については総理どうですか。もう一度。
  223. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 お答えの冒頭で申し上げましたように、私はそのような御指摘と同じ認識を持って、対決の冷戦時代の発想を乗り越えた方向性に動いておるということと、同時に今までの軍事的な、ただ軍事的な防衛のためというのみならず、政治的な役割も入って変質しつつあるということも率直にここで申し上げたことでありますから、その方向性についてはお考えと同じであります。  なお、それがヨーロッパでだけ起こる。アジア・太平洋地域には、これは残念ながら今現在もアジア・太平洋地域ではまだ戦火が続いておる内乱状態のところもありますし、それから軍事力をもって対峙しておるところもあるわけですから、それはいい影響、方向性はアジア・太平洋にも及ばさなきゃならぬし、また及ぶように我々も積極的に努力をしていきたいということは、御意見と私の考えと全く同じ方向性を向いておるということでございます。
  224. 二見伸明

    二見委員 これは外務大臣にお尋ねした方がいいのかな、防衛庁長官、両方にお尋ねしましょうか。  日本の防衛政策というのはソ連の潜在的脅威をずっと強調してきましたね。昨年の防衛白書でも、「わが国周辺においては、全般的に演習・行動は依然として活発であり、特に艦艇や軍用機の活動が実戦的になっている。」だからソ連の軍事的、潜在的な脅威というのは増しているんだという認識を、去年の防衛白書ではそういう認識をしておりました。  私は、ソ連が依然として超核大国であり、日本の周辺に強大な軍事力が存在することは否定しませんけれども、ソ連の日本に対する脅威というのは、日本対ソ連とかソ連対日米ということではなくて、むしろ第一次的には東西なんでしょう、ヨーロッパの。その結果として日本にソ連の脅威があるとかないとかという議論になってくる。ヨーロッパにあれだけの激変が起こったということは、去年まではソ連潜在的脅威論でそれは防衛政策はよかったかもしれないけれども、私はもう現実的にはソ連の脅威というのはないんだと思います。アメリカはソ連を脅威者と見るのじゃなくて、むしろこれから話し合いにしていこう、ソ連を封じ込めるのじゃなくて、お互いにむしろゴルバチョフ政権を支えよう、物質的にも精神的にも支えようという、アメリカ自体の対ソ戦略も変わっているでしょう。それならば、私は日本周辺におけるソ連の脅威というのはもうないと断定してもいいんではないかと思うけれども、外務大臣、防衛庁長官、これはどう思いますか。
  225. 中山太郎

    中山国務大臣 米ソ間の緊張が緩和してきたということで、ヨーロッパにおける共通の屋根の家というような感覚で、米ソ間では、六月における米ソの首脳会談までにこの両国の当事者間で軍縮交渉が盛んに行われていることは私もよく存じております。しかし、アジアにおける情勢は、北朝鮮を初め中国、ベトナム、カンボジア等、地理的あるいは歴史的にヨーロッパとは全く違う環境にございまして、しかも、日本海を初め日本周辺におけるソ連の軍事勢力というものは、ある程度数が減ってきたとはいえ、その戦闘能力は向上しておるという認識を持っておりまして、依然として東南アジアにおけるソ連の脅威は現存しているという認識を持っております。
  226. 石川要三

    ○石川国務大臣 ソ連の脅威の認識でありますけれども、委員がソ連の脅威はないと断定されるような御質問でございますけれども、私は著しく見解をまず異にするものでございます。  その理由としては、一つには、今外務大臣も述べられましたように、特に一九六〇年代から今日までのソ連のいわゆる軍事蓄積といいますか、そういうストックというものは相当莫大であるということが一つ。確かにゴルバチョフはその削減については言及されておるようでございますけれども、見方によれば、今外務大臣も触れられましたように、量的には減っても、では果たして質的にはどうかといえば、私は、近代化の整備によってかなりむしろそういう点では威力が向上している、こういうことは間違いないというふうに認識をしているわけであります。したがいまして、依然としてソ連の脅威はある。  ただし、お触れになりましたようないわゆるヨーロッパとアジア・太平洋とはかなり違いまして、ヨーロッパにおいては確かに相対的にはそういう傾向があるかと思いますが、アジア・太平洋におきましては非常に異質であるということと、さらに私見で申し上げますならば、非常に今ソビエトの状況、民族的な問題とかそういったようなことを見ますると、私はむしろアジア・太平洋については手が差し伸べられないというような状況もあるのじゃなかろうかな、かような認識を持っているわけであります。
  227. 二見伸明

    二見委員 外務大臣、ソ連のいわゆる脅威ですね、じゃ全然変わらず依然として強いというふうに——減少したという認識もありませんか。
  228. 中山太郎

    中山国務大臣 ソ連の外交政策の基本が従来からの政策と変わって、新思考による外交が始まっているという認識は持っております。
  229. 二見伸明

    二見委員 私は、防衛庁がソ連の潜在的脅威を依然として強いという認識をしなければ、平成三年度から政府が考えている次期防が進められないからだろうと思います。ソ連の潜在的脅威は減少した、あるいはないというふうに断定すれば、それで次期防は変わってしまうのだから、依然として今までと同じだ、今まで以上だという認識をせざるを得ないのだと思う。しかし私は、ヨーロッパでの変化、この世界的な変化が、これは一時的なものじゃなくて、やはりとどまるところを知らない一つの変化だと思います。しかも、ヨーロッパでの変化というのはきのうきょう突然出てきたものじゃなくて、長い間東西間の信頼醸成措置というのがあって、いろいろなことが行われてきた結果、私は今、今日の情勢になってきているのだと思う。アジアではそうした信頼醸成措置というか、それはヨーロッパほど活発に行われていなかったことも事実だし、ないことも事実です。ですから、外務大臣が不安があると言うことは理解できるのだけれども、むしろこれから考えた場合には、アジアでの日ソ間の信頼醸成措置ということをつくり上げていくことが、このアジア・太平洋での緊張緩和、デタントへの大きな流れになっていくのじゃないかと思います。  で、日ソ間の信頼醸成措置というのを具体的にどう考えているのか、それが一つと、日ソ間で事務レベルで平和条約の交渉をしておりますね。たしか六〇年安保のときには、ソ連は日米安保をかなり敵対視したというか、きつい態度だった。私は最近どうもソ連は日米安保に対する評価が以前とは変わってきているというふうに認識をしている。日ソ間の平和条約交渉の中で日米安保の存在というのがこの条約締結の阻害要因、障害要因になっているのかどうか。あることはある、だけれども、それは日ソ間の平和条約締結には大きな障害でありませんというふうにソ連はもう認識をしているのかどうか、その点についてもお尋ねをしたいし、今東西間でオープンスカイズというのがありますね、お互いに空中査察しようじゃないかという。これも私は信頼醸成措置の大きな方法だと思います。日本も日ソ間でオープンスカイズをやったって別に悪くはない。日本も向こうへ行ってウラジオを見せてくれ、ウラジオストクを見せろ、おまえも見たかったら三沢を見に来い。どうせ偵察衛星でお互いにわかっているのだから、肉眼で確認するだけの話だ。そのぐらいのことをやったって、日ソ間の信頼醸成措置には貢献していくのじゃないか。そうしたことがひいてはアジア・太平洋のデタントにつながっていくのじゃないかと思うし、信頼醸成措置があってそこから軍備管理・軍縮という段階に進んでいくのだと私は思う。その点について外務大臣の御見解を承りたいと思います。
  230. 中山太郎

    中山国務大臣 先生お尋ねの問題は極めて重要な問題であろうと思います。日本の外交にとりまして、日ソ間における平和条約の締結というものは長い間の願望でありますけれども、問題は、御案内のように北方領土がソビエト軍によって不法に占拠されている。これを四島一括返還をして平和条約を締結するということは、日本国民の統一された願望でございますから、この問題の解決を早急に図って日ソ間に平和条約をつくっていくことが、アジア・太平洋地域における二十一世紀への平和の構築には不可欠な問題であろうと考えております。そういう意味で、昨年来、日ソ間には平和条約作業グループが設置されまして、それぞれの国からの担当官が出ていろいろと協議が続けられております。しかも、人的な交流も含めて、ソビエトのオピニオンリーダーも日本にも何人か既にお越しになっておりますし、私もお目にかかって意見を交換いたしております。こういう中で、本年の一月十五日に安倍元自民党幹事長の訪ソによってゴルバチョフ議長との間に八項目の提案が行われ、ソ連側もこれを高く評価をしておる。こういう中で、明年ゴルバチョフ大統領の訪日が既に先方から約束をされているという時代でございます。  こういう観点に立ちますと、これからどのように日ソ間の問題を解決していくのか、これは極めて重要な問題でございますが、これからの外交のあり方として、我々の国は、日米安保条約が日本の外交の基軸でございます。そういう中で、このアジア・太平洋における軍事情勢に関する一つの大きな変化を起こす可能性のある問題につきましては、日米間に十分な協議を行うことが日本の安全にとりましても極めて必要であろうと外務大臣としては考えておりまして、このオープンスカイ問題につきましても、現在のところ日本はこれに応ずるという気持ちは持っておりません。しかし、日ソの間での平和条約の締結に向けて今後とも引き続きひたむきな努力をしてまいらなければならない、こういう考え方を持っております。
  231. 二見伸明

    二見委員 安保は日ソ間では障害要因になっておりますか。
  232. 中山太郎

    中山国務大臣 日米安保条約が日ソの交渉について、これが障害となるかという問題につきましては、障害にならないという認識を持っておりますし、ソビエト政府におきましても障害にならないということを明確に申しております。
  233. 二見伸明

    二見委員 時間がありませんのでまとめてお尋ねをいたします。  これは防衛庁長官かな。次期防ですけれども、これは平成三年度から次期中期防衛計画を始めたいという意向のようですが、私は、一つには、いわゆる年次防方式というのはこの際やめた方がいいんではないか。というのは、国際情勢がかなり激変しておりますから、緊張緩和の方向に激変しているときに、三年とか五年とかいう年次防方式というのはやめた方がいいんじゃないかというのが私の一つの考えです。ただ、防衛庁としては年次防方式でいきたいという考えのようですけれども、その点についての御見解を承りたい。また、どうしても年次防方式だということになれば、それはやはり今までの中期防と同じように総額明示方式でいくのか、その点はどういうふうに考えているか。  それから額ですけれども、二十三兆円とか二十五兆円とかいろいろな報道があるわけだ。過去五年間、ことしで終わる五年間の防衛力整備計面では十八兆四千億円、それを上回るような次期防というのは果たしてこの際許されるんだろうかという気持ちがいたします。額の歯どめが過去五年間、今までの五年間よりもこれから大幅に上回るような次期防というのは、この国際情勢の変化を見通した上で果たしていかがなものかという率直な疑問を持っておりますけれども、それについての防衛庁のお考えと、最後に、正面装備と後方支援とどちらに重点を置くのかお尋ねをいたしまして、質問を終わりたいと思います。
  234. 越智伊平

    越智委員長 石川防衛庁長官。時間が参っておりますので簡明にお願いをいたします。
  235. 石川要三

    ○石川国務大臣 簡明に申し上げたいと思いますが、五年がいいか三年がいいかというような見解については、それぞれ長所、欠点があると思うのですね。今の国際情勢の中でどちらが優先するべきかということにつきましては、三年がいいかということにも断言できないと思います。いずれにしましても、今作業中でございますのでその結論は出ておりません。十二分に御意見は御意見として拝聴させていただきたい。  次の正面あるいは後備という問題でございますが、まあ正面を拡大するということよりも、むしろどちらかといえば、私は、後方の整備ということに重点を置くことの方がこれからの次期防にはふさわしいんではないかな、こういう見解を持っております。  額については今まだ未定でございます。(二見委員「要するに十八兆四千億円を超えるようなのはまずいと私は言っているんだが」と呼ぶ)そういう点につきましても今検討中であります。
  236. 二見伸明

    二見委員 終わります。
  237. 越智伊平

    越智委員長 これにて二見君の質疑は終了いたしました。  次に、児玉健次君。
  238. 児玉健次

    児玉委員 私は、まず海部内閣の政治姿勢との関連で、深谷郵政大臣に対するリクルート社の政治献金について質問いたします。  この三月三十日に行われたリクルート裁判、いわゆる労働省ルートの公判でリクルート社の元専務大沢武志氏が証言の中で、深谷先生とは以前から面識があった、知り合ったのは昭和五十年代の前半から、このような証言をされております。そこで深谷郵政大臣にお伺いするわけですが、あなたは大沢氏と長年の交際、例えばゴルフだとか飲食を一緒にするだとか、そういったことを含めた長年の交際があって、数字の一に木と書く、イチモク会とでも読むんでしょうか、勉強会といいますか後援会といいますか、大沢さんが中心になって準備されていた、そこを通してずっとリクルート社を中心としてつながりを持っていらっしゃったのではないか、そのことについてお答えいただきたいと思います。
  239. 深谷隆司

    ○深谷国務大臣 お答えいたします。  大沢さんとは友人でありました。もう長年になります。  それから、今の一木会というのは私の後援会でも何でもございません。いろいろな会社の仲間たちが集まって勉強会をするという、みんなで一本の木になろうという趣旨でございまして、私の後援会組織では全くありません。私も何回か参加したことはございます。
  240. 児玉健次

    児玉委員 私どもが調べているところによると、この一木会は、昭和五十八年と六十一年の総選挙において、この会を通じてリクルート社その他からかなりの選挙資金や運動員があなたの選挙に提供されている、そのように私たちは承知しております。  次の御質問ですが、深谷郵政大臣の後援会である南陽会、これとリクルート社の関連についてですが、あなたは三月二十三日の参議院の予算委員会で、同社には七月限りで退会していただきました、なお、先方の手違いで十一月分までの会費の振り込みがされていた云々、こういうふうにお答えです。そこで私たちさまざま手を尽くして調査したわけですが、南陽会は昭和六十三年十二月十二日と、昨年ですが昭和六十四年十二月十九日にニューオータニでパーティーをやっている。六十三年の十二月十二日は昼間なさったようです。その六十三年十二月十二日のパーティーに関連してですが、当時リクルート疑惑が国会内外で大問題になっていた。そこであなたは、十二月十二日のパーティーをスムーズに行うために、その直前にあなたの方からリクルート社に対して、七月にさかのぼって退会をさせた、これが事実の経過ではないかと思うんですが、いかがですか。
  241. 深谷隆司

    ○深谷国務大臣 そういうような事実はありません。
  242. 児玉健次

    児玉委員 六十三年十二月十二日にニューオータニであなたがパーティーをなさった、ないしは南陽会が主催してパーティーをした、この事実はお認めになりますか。
  243. 深谷隆司

    ○深谷国務大臣 今資料を持っておりませんが、私の記憶では、当時パーティーの自粛の傾向があったものでありますから、今までの形を変えて、講師を呼んで勉強会と、その後で宴席になる、そういう形に切りかえたと記憶しております。
  244. 児玉健次

    児玉委員 今の点は非常に重要であるということを私は強調しておきたいのです。リクルート社が手違いで七月分以降の会費を払っていた、そしてそれが十一月分も十二月に振り込まれた、それを返却したとおっしゃっているのですが、私たちの調べによればそうではない。先ほど言いましたように、十二月十二日のパーティーの直前にあなたの方からリクルート社に申し出て退会させた、これがどうも経過のようです。この点は、さらに私たちは明らかにしていきたいと思います。  そこで次の問題です。今大きな問題になっている、数年前から深谷事務所の仕事を手伝ってきたリクルート社から派遣された嘱託員、このことについてですが、大臣は我が党の吉岡吉典議員の質問に対して、これは三月二十六日の参議院の予算委員会ですが、リクルート社から派遣されていた嘱託社員は一人とお絞りになった。そして、六十三年七月リクルート社を退社してもらい、現在秘書として採用しているとお答えになりました。  そこでお聞きしたいのですが、六十三年七月でリクルート社を退社してもらったというのは事実と違うのではないか。実際は、この人物はずっと以前からあなたの秘書をしていた方で、リクルート社が給与という名目で長期にわたり総計一千万円を超す金額を振り込んでいた。それを、これも六十三年七月、あなたの方で打ち切らせたというのではありませんか。
  245. 深谷隆司

    ○深谷国務大臣 当人は数年前から私の事務所に出入りするようになり、自発的に折々に活動を手伝ってくれるようになったとのことです。事務所の人間との関係もよくて、本人も希望したので、六十三年夏以降に秘書として採用したというふうに報告を受けています。
  246. 児玉健次

    児玉委員 これが問題の核心だと私たちは考えております。  私たちの調査によれば、その人物は石塚猛さんである。現在あなたの公設秘書をなさっています。この方について私たちとやかく言おうというつもりは毛頭ありません。政治献金のルートがどのように行われたのか、そのことを国民に明らかにする必要がある、そういう観点からこの質問を私はしたい。  石塚さんは昭和五十三年ごろあなたの事務所に入って、やがて秘書となられた。リクルート社から派遣された嘱託職員というのは事実と違う。なぜかといえば、それは、衆議院自由民主党秘書会名簿、昭和五十五年のものを私はここに持っております。これによれば、会則の第三条に「本会の会員は、衆議院自由民主党所属議員の秘書をもって構成する。」このように書かれております。それの二十三ページに、深谷隆司、東京八区、秘書の名前が列挙されていて、四番目に石塚猛と書かれております。リクルート社から派遣された嘱託職員ではないじゃないですか。少なくとも昭和五十五年の段階であなたの秘書であったということは明らかです。  私たちが承知しているところによれば、本来あなたが負担すべき石塚氏に対する給与をリクルート社が肩がわりをして、そして都市銀行、埼玉県にある口座、都市銀行の名前は我々の承知しているところでは住友銀行である、その支店の口座に月々十九万円前後が振り込まれていた、そして給与の不足分数万円をあなたの事務所が石塚さんに払っていた、これが真実ではないかと私たちは確信しますが、はっきりお答えいただきたいと思います。
  247. 深谷隆司

    ○深谷国務大臣 事務所の報告とは違うようであります。
  248. 児玉健次

    児玉委員 深谷代議士はこの石塚さんについてよく御存じですよ。我が党の菅野議員に対する先日の衆議院逓信委員会のお答えの中で、非常に優秀な人物だから秘書として採用した。あなたの第二秘書になったのは多分昭和六十三年の十一月二十五日だと思います。そういう人物で、雇用主であるあなたが事務所の調べと違うと言うのは答えになりませんよ。雇用者としてはっきりお答えいただきたい。
  249. 深谷隆司

    ○深谷国務大臣 先ほど申したように、何年か前から自主的に一生懸命応援してくれた一人であります。
  250. 児玉健次

    児玉委員 何年か前から一生懸命応援してくれたと。そこで、その方がリクルート社から派遣された嘱託職員として一生懸命応援したのではない、昭和五十五年の段階であなたの秘書であったという事実についてお認めになりますか。
  251. 深谷隆司

    ○深谷国務大臣 その間のいきさつはよく存じません。ただ、国会等に出入りするためにはそのような名前を書くことはあったかもしれません。しかし私はちょっと存じません。
  252. 児玉健次

    児玉委員 大臣、ちょっと私は事柄の重要性について大臣によく認識していただきたいのですよ。リクルート社の嘱託社員——自治省はさまざまな見解を出しています。それを今私は聞こうとは思わないけれども、例えば自治省は、ある政治家の事務所に、ある経営から研修として人物を受け入れて、その人物がある経営から給与をもらうことについては、一概に政治献金とはみなしがたいというふうなことを述べております。  このケースは違いますよ。昭和四十四年にある大学を御卒業になって、そして民間の企業にお勤めになって、そして昭和五十三年ごろあなたの事務所に勤めた。昭和五十五年には、遅くも昭和五十五年には明白にあなたの秘書をなさっている。リクルート社から派遣された嘱託職員と言えますか。そこのところが明らかにならないと、あなたがこの前から言っている千二百三十六万円の政治献金の信憑性が根底から疑われます。明らかにしていただきたい。
  253. 深谷隆司

    ○深谷国務大臣 事実をしっかり確認してみたいと思います。
  254. 児玉健次

    児玉委員 一人の代議士がそれこそ一緒に仕事をする秘書について、あなたはいろいろと情景描写をなさっているのですよ、吉岡議員に対しても菅野議員に対しても。その人物は朝から晩まで勤めてもらったというわけではない、こう吉岡議員に述べ、菅野議員に対してはボランティア的な仕事をしてもらったとも述べていらっしゃる。それほどあなたはその人物についてよく御承知なんですよ。御承知というか、そのようにあなたはその人物についてあるイメージをつくり上げて国会で明らかにされている。ところが実際はそれと違う。明白にあなたの秘書であった。調べるも何もないと思うのですが、どうですか。
  255. 深谷隆司

    ○深谷国務大臣 きちんと調査をいたします。
  256. 児玉健次

    児玉委員 調査をするで済まされることではないと思うのですが……。  そこで、海部首相に私は述べたいのです。深谷郵政大臣がこれまで述べてこられたリクルート社からの献金千二百三十六万円、そのほかに秘書に対する給与という名目で一千万円を超す献金が行われている。これらの事実が私たちの調査で明らかになりました。これはもう明白な政治献金です。私たちは、政治に対する国民の信頼を回復するためにも、深谷郵政相の辞職を既に求めております。内閣の責任者として総理が厳正に措置をされるように私は厳しく求めるものですが、いかがですか。
  257. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 企業と政治の関係の中で、例えば今具体的になっておりますように、リクルート社が社会的に批判を受ける、そのような前の通常の政治献金あるいは通常の政治行動支援というものについては、これは私は分けて考えなければならぬ、こう思っております。  それから、この問題になりましてからは、官房長官のところで自主的ないろいろな問題についての照合といいますか、本人との調査を聞いてもらっておりまして、私もそれを今晩詳しく聞いてみようとちょうど思っておったところでありますから、よく調べてみます。
  258. 児玉健次

    児玉委員 この点については、事実を徹底的に明らかにすることが国民に対する信頼を取り戻す道でもありますし、そして、今あなたは六十三年の七月以降とおっしゃったけれども、その前の政治献金についても大いに問題があり、その後のことについては何人かの閣僚がおやめになっています。私たちは、この点について引き続き事実を明らかにしていくということを述べて、次の問題に移ります。  国鉄清算事業団職員に対する解雇の強行についてですが、中曽根元首相は、国鉄分割・民営化に対する国会審議の際に、一人の職員も路頭に迷わせることがないようにと約束されました。その後、十七の都道府県の地方労働委員会が、地元JRに採用せよ、こういう救済命令を出しています。ところが、この四月一日付で千四十七名の方々に対して解雇通知が強行されました。現実に多くの方が今路頭に迷わされている。  そこでまず、この点は自治省に伺いたいのですが、昨年十一月二十一日、海部総理を本部長とする国鉄清算事業団職員雇用対策本部が各方面に雇用対策の強化を要請されました。それ以後、全国の地方公共団体が何名を受け入れたか、内定者も含めてまず明らかにしていただきたい。
  259. 滝実

    ○滝政府委員 昨年の十一月の雇用対策本部の決定以来、各地方公共団体が採用いたしました数でございますけれども、ことしの四月一日現在で六十六人、さらにこれに一般公募分がございますので、これを含めますと九十人、こういう予定でございます。
  260. 児玉健次

    児玉委員 私のおります北海道について言えば、これまで旧国鉄職員を受け入れた数は、北海道が四百八名、札幌が八十七名、市町村百十七名、事務組合六名です。ここまでで六百十八名、去年の十一月二十一日以降で五十二名を受け入れております。これらの採用は、いわば特例的な措置として、地方公共団体が多くの職員を、何とかして職を確保させたい、そういう熱意から採用したのではないかと思いますが、自治大臣、いかがでしょうか。
  261. 奥田敬和

    ○奥田国務大臣 地方自治体が職員数を抑制していかなければならぬ大事な時期にありまして、それだけ旧国鉄職員を採用したということは、大変立派なことであると思います。
  262. 児玉健次

    児玉委員 自治大臣の言葉としてはちょっと客観的ですが、私は、地方公共団体の御努力、これはやはりあったと思うのです。  そこで運輸大臣にお伺いしたいのですが、この四月一日付で、年金制度の改悪に伴う繰り上げ退職も含めて、JR北海道、JR九州で退職された職員の数をお答えいただきたいと思います。
  263. 大塚秀夫

    ○大塚(秀)政府委員 数字でございますので私から答えさせていただきます。  JR北海道及びJR九州におきまして平成元年度末で退職いたします者は、それぞれ約五百名でございます。
  264. 児玉健次

    児玉委員 私は海部首相に求めたいのですが、今全国のJR、例えば北海道のJRでいえば、三つの無人ということが問題になるのです。一つは無人駅です。北海道の駅の約八割が無人です。無人ホームです。そして無人踏切です。一番多かったとき、北海道の国鉄には五万名おりました。旧国鉄の終わりごろ二万八千、二万七千人になって、今基本計画による数は一万三千名です。その一万三千名を二月一日現在で約二百九十名割っています。それに五百名退職した。約八百名ですよ。解雇通知が強行された清算事業団の職員をとりあえず直ちに採用する。この人たちは熟達した国鉄労働者です。そのことについて総理として緊急に手を打つべきではないか、お伺いいたします。
  265. 大塚秀夫

    ○大塚(秀)政府委員 JR北海道、JR九州とも、六十二年四月一日に、発足のときに約二割の余剰人員を抱えて発足したわけでございまして、今申し上げましたように、元年度末で五百名ずつ退職してもなお相当数の余剰人員を抱えているという現状でございます。
  266. 児玉健次

    児玉委員 基本計画の問題はあのとき大いに議論したことですよ。やはり私は海部首相にお伺いしたいのですが、民間の会社であったら、例えば御主人が急に亡くなって奥さんが残っている、そういうときに奥さんに対して特段の配慮をいたしますよ。例えば福岡県の武富ヒロ子さんというケースがある。それから北海道の斉木禎一さんという方は、お子さんが難しい病気で、釧路から札幌にかわってきて、そこの地元の病院で数年間療養すれば治るというので、公的部門にも受けたし、民間にも受けたけれども、結局採用されなかった。その方に対しても今度解雇が強行されています。  あなたの前の総理大臣であった中曽根さんが何とおっしゃったか。実際その人をその場に適応させる場合には、子供の教育だとか住居の問題だとかいろいろな問題が出てまいります、最終的に見届けるまで我々は努力するつもりです、こう明言しているのです。最終的に見届けたらどうですか。首相いかがですか。首相の言葉ですよ。
  267. 大塚秀夫

    ○大塚(秀)政府委員 この三年間、地元の民間企業の再就職あっせんを含めて十分な再就職対策を行ってきたと考えております。
  268. 児玉健次

    児玉委員 時間のようですから、首相、この点は国民の強い関心でもあり、労働者、家族の文字どおり生活がかかっているのですから。あなたは参議院の委員会では、まだ少し時間があるので努力をすると言われた。その努力は全然進んでいませんよ。強力な政府の、抜本的な努力を求めて、私の質問を終わります。
  269. 越智伊平

    越智委員長 これにて児玉君の質疑は終了いたしました。  次に、高木義明君。
  270. 高木義明

    高木委員 私は、日米構造協議をめぐる問題につきまして質問をいたします。  ただいま中間評価の真っ最中でございますが、まず総理にお伺いをいたします。  私は、今回の構造協議が、アメリカから本来我が国自身がやるべきことをいろいろ指摘をされ、要求をされておること、これまでのいきさつから見ますと大変異常な協議だと思っております。しかし、事態がここまで来た以上、これを契機にお互いに痛みを分かち合う、そして必要な改革は推進をしていくべきである、このように考えるわけであります。その基本は、何といっても消費者の利益と中小企業の近代化、流通の合理化、こういったことを促進することであろうと思っております。  総理もこれまで、生活の質の向上やあるいは消費者の利益を守るために必要なことは我が国の独自の判断でやっていきたい、こういう決意を述べておりますけれども、この決意はいささかも変わっていないのかどうか、まずお尋ねをいたします。
  271. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘になりました日米の経済協議の問題については、日本側からもアメリカに対して言うべきこともたくさん言い、アメリカ側からも日本側に言うべきことをいろいろ示唆されております。けれども、それはきょうまで私どもが、まさにおっしゃるように気づいて、改めてやっていこうと思って取り組んでおる問題についてずばりと言われたものもあれば、あるいはそうでないものもまざっておるわけでありますけれども、前川レポートなんかをつくり、この数年間一生懸命に我々が、内需を振興していこう、輸入を拡大していこう、そして自由貿易体制というものの中で伸びてきた日本でありますから、管理主義とか保護主義は抑えていこうということで取り組んできた対外姿勢と、それから国内生活にあっては、豊かになったのは何か言葉だけで、実感として消費者自身が生活しておる豊かさというものを体験できないではないかという角度の御意見や御指摘も随分ございました。  私は、一人一人の国民の生活の質を高める努力は、当然、だれに言われなくても日本自身の政治としてやらなくてはならぬことだと受けとめておりますし、そのような努力もきょうまで続けてきたことは事実だと思います。  そしてその中にあって、それらの改善は消費者立場に立って物を考えていく、すべての国民の皆さんは、視点を変えて見れば皆消費者でもあるわけでありますから。そしてそれには、最近調査で明らかになっておる内外価格差是正していくことや、あるいは昨年来の、土地基本法成立を待たずして、その前から土地の問題を何とかしろという御議論があった。住宅問題を片づけるにもこれがネックだということでそれに取り組んできたり、あるいは労働時間をもう少し短くするようなことを考えたらどうだという週休二日制の御議論等についても、全部これは、一人一人の生活の質を高める問題として、日米構造協議、去年の五月からでありますが、そのもっと以前から取り組みかけてきておる問題であり、さらにこれを一層進めていくことが大事だという視点もございます。  たまたまそれが日米構造協議のテーマに入ってまいります。そうすると、日米というのは、この自由社会、自由世界において二国間で四割近い経済力を持っておる責任の大きい国でありますから、その両国がいろいろと保護主義を抑えたり自由経済を守っていくためにこれをやろう、あれをやろうという示唆をし合って協議をしておるときには、別の角度からもこの協議は定着させ成功させないと、日本は国際社会から孤立して生きていくことはできませんし、日本だけが小ぢんまりとつじつまを合わせて国境を閉めようなんということは、もう夢にも考えることのできない今日の状況でございますから、その両面からのいろいろな問題点を踏まえて、ぜひこれは成功させなければならぬし、そのときには御指摘のように消費者立場に立っていろいろな問題には取り組んでいかなければならない、こう思っておるわけでございます。
  272. 高木義明

    高木委員 では、今申されましたこれまでの決意が今回の中間報告に十分に反映されたのか。どのように総理としてお考えでしょうか。
  273. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これは、各省の担当の皆さんも皆そういったことを基盤に考えて、中間報告に示す日本側の最終案を皆がそれぞれ決めておるわけでありますから、項目、テーマは非常にございますけれども、それぞれに関して消費者の視点、日本国民生活の質を高めるためにということを常に頭の中で考えながら作業をいたしてきた、私はこのように思っております。
  274. 高木義明

    高木委員 大店法の問題につきましては、消費者の利益あるいはまた地域経済の担い手である中小企業、そういったところのバランスが大変大切でありますし、そういうものを連携をとりながら決着をさせる必要があろうと私は思います。  そこで政府は、今回、二年後に法改正で三大都市圏は大店法の適用除外とする、こういうことで伝えられておるわけでありますけれども、これでどの程度の効果が出てくるのか。どのようにお考えでしょうか。また、廃止の検討を打ち出すということに対しまして、総理は最後までこれにこだわったと伺っておりますが、将来廃止すべきものとお考えなのかどうか。また、そうしなければ日米の合意ができないと思っておられるのかどうか。その辺についてお考えをお聞かせください。
  275. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 お言葉を返すようで大変申しわけありませんけれども、今委員が具体的にお述べになりましたことは、私はちょっと違うんじゃないか。私が最後まで廃止にこだわったとか、大都市圏だけをあれでどうかとか、そういう報道がなされたということは知っておりますけれども、今まさに協議しておる、協議のさなかのことでございますから、それが正しいとか正しくないとかいうことをここで申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、考え方としては、私は、今その前にお答えしましたように、各界の皆さんのいろいろな御意見を聞いてまいりましたが、こうすべきだとか、こうしろとか、これにこだわるとか、そんなことじゃなくて、どうしたら消費者の利益を守りながら、しかも流通の秩序というものもあるわけでありますから、そういったことを考えていろいろ議論は重ねてまいりましたけれども、まさにそれが今大詰めの段階に来ておりますので、そのようなことで提示をしておるとか、そのような話で進めておるとかいうことは、これは答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  276. 高木義明

    高木委員 私の申し上げたいのは、まあ話し合いですから、検討ですから、結果は別にしても、総理としてしかるべき方針がまずあって、そして皆さん方にいろいろな理解を求める、こういうことが私は総理のリーダーシップではないかと思っておりますが、そういう意味で述べたわけでございます。いかがでしょうか。
  277. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 いろいろ私の考えは述べましたし、私の意見も述べました。また、事実世の中の方々も、昨年、九〇年代の流通ビジョンというものを議論するときに大勢集まって御議論願った一定の方向が出ておることも私は念頭にきちっと置いておりますし、そういった中で、消費者立場に立ってどのように国民生活の質を高めていくか、同時にまた、きょうまでの日本のいろいろな流通の経済構造をどうしていくのか、今までのように固定的にただ守る守るというだけじゃなくて、前向きにどうしたらいいかという、九〇年代の流通ビジョン等も念頭に置きながらいろいろ意見を述べてきましたが、何しろ今協議しておる最中でありますので、これ以上のことはお許しをいただきたいと思います。
  278. 高木義明

    高木委員 さて、公共投資の拡充についてでありますけれども、これはアメリカから言われるまでもなく、我が国が最も重要な課題一つとして推進しなければならないことでございます。  アメリカは、公共事業につきましてはGNPの六%から一〇%にせよ、こういうことを言っておりますし、自民党内にも、金丸元副総理がGNPの八%と言っているようでもございました。しかし、橋本大蔵大臣はGNP比の数字を示すなら閣僚辞任もあり得ると非常に抵抗したと伝えられておりますが、大蔵大臣、そのとおりでしょうか。いかが主張されたのでしょうか。
  279. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、従来からも何回か本院におきまして考え方を申し述べております。確かに社会資本の整備は、我が国の現状から考えましたときに、将来に向かって国民生活の質の向上という視点から欠くことのできないものであります。しかし同時に、GNP対比何%といった形で将来に向かっての財政の手足を縛ることは、これは我が国の経済運営の中で景気に対して財政が果たす役割から見て容認のできることではございません。そうした考え方は今も私は変わっておりません。
  280. 高木義明

    高木委員 この点につきまして、総理はいかがお考えでしょうか。
  281. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 大蔵大臣意見も聞き、それから直接実務者として協議に参加をしておった人の報告もいろいろ聞きながら、そして私自身としては、日本公共投資というものは諸外国、特に先進工業国と比べておくれている面があるということを率直に認めておりますから、そういったものはでき得る限り充実をして、社会資本の整備をしていくことが日本の将来に向かって必要なことである、私個人はそのように考えております。
  282. 高木義明

    高木委員 今鋭意協議中でございますので大変恐縮でありますが、しかし、今後の対応につきましても大切な課題でございます。今回中間報告が出され、そしてさらに七月に最終報告という日程となっております。しかし、アメリカから要求を、要望された事項は二百四十項目という膨大な事項と言われておりますし、必ずしもアメリカ側に十分満足される結果に終わるとは思えないと私ははっきり思うのであります。その際、米国議会の一部には新たな対日制裁、その措置をとるべきだという声がございますけれども、そうした事態になることは我が日本としても避けなければならないと思っております。  政府としては、今回の中間報告あるいは今後の最終報告で、アメリカ、とりわけ議会の納得が得られない場合、どのような対日制裁が出てくるだろうか、それについてはどのようなことをお考えでしょうか。総理のお考えをお聞きしたいと思います。
  283. 中山太郎

    中山国務大臣 政府は、今この協議が百点満点とまでいかなくとも、日米双方お互い構造の問題で協議をしている最中でございまして、現在協議中でこれを何とか成功裏におさめたいと考えておりますので、現在の時点で、この協議が不調に終わる、その場合にどのような制裁が起こるかということについての考えを述べるわけにはまいらない状態でございます。お許しをいただきたいと思います。
  284. 高木義明

    高木委員 政府として今回の中間報告が、まあ私は円満に進められることを期待をいたしておりますが、もしまだ不十分で打開を要することが必要になった場合、アメリカに対して今後どのような姿勢で臨んでいこうとしておるのか。例えば海部総理自身の訪米はあり得るのかどうか、あるいはまた、一部新聞報道では、安倍元幹事長が訪米するということも伝えられておるようでございますけれども、その辺の可能性につきましていかがお考えでしょうか。
  285. 中山太郎

    中山国務大臣 日米双方協議の結果、双方が了解できるような時点でこの協議が、中間報告のまとめが終わる、そういう状況の中で日米が新しい問題の協議をさらにいろいろなことをやると思いますけれども、海部総理あるいは安倍元外務大臣がアメリカに行かれるということを現時点では考えておりません。
  286. 高木義明

    高木委員 この日米構造協議の問題は、単なる米国の圧力、そう受け取るのではなくて、我が国の真に豊かな生活を求めるために、諸外国からとやかく言われるまでもなくて、より公正で、より自由で、そのような政策、制度を追求していくことが我が国の国政の役割であり、私は使命だろうと思っております。そのきっかけをアメリカが与えてくれていると受けとめて、これはむしろ私は国会挙げて、世界の中で我が国が孤立しないような、そのような役割を踏まえて対応しなければならないと思っております。そのためには、まず総理のリーダーシップと実行力が私は今求められておるというふうに考えております。ましてや国会空転などの政治空白は許されないと私は思っておりますし、この問題につきましても国会の中で十分な論議をし、国民にそれぞれの理解と協力を求めることもまた必要ではないかと思っております。  今回の構造協議におきまして、当面急を要する問題、例えば大店法の問題やあるいは公共事業の拡充の問題等につきましても、その具体化については今後国内でどのような段取り、どのような手続が行われるのか、その辺につきまして私は明確な御答弁をいただきたいと思っております。
  287. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私の方の大店法につきましては、先ほどから申し上げておりますとおり、内容もまだ今のところ申し上げられませんし、どういう形に決着がつくかあれでございますが、その決着がついた段階で、また国会でお願いをするときにはお願いをし、御議論いただくときには御議論をお願いしたい、こう思っておるわけでございます。
  288. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 公共事業関係に関しましては、その折その折の経済情勢、財政状況を勘案しながら、毎年の予算編成の中で適切に対応してまいります。
  289. 高木義明

    高木委員 時間も参りましたので最後になろうかと思いますが、今回問題になっております大店法につきましても、公共事業の投資の拡大につきましても、日本の改善努力のみでアメリカ貿易収支が大きく改善をしたり、あるいはまた対日市場の参入ができたりするものでは必ずしもないと私は考えております。こういう議論がある中で、なぜゆえにアメリカが今回の構造協議に見られる異常な、執拗な要求、これは一体どこにあるのか、アメリカの意図はどこなのか、私はここが最も大事なポイントではないかと思っております。これらに至った元凶は一体どう考えておるのか。これが今後私たちが日米関係をうまくリードし、そしてまた外交、平和と安全の面におきましてもすべからく大切なポイントではないかと思っておりますので、最後に、今回このような異常な事態を迎えたそのアメリカの意図と、そしてまた原因は何であるのか、この点をお聞かせをいただきたいと思います。
  290. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 一つは、日米貿易インバランスが、八〇年過ぎ、レーガン政権になってから大変目立つようになって、五百億ドルというのが数年間続いた一つの壁のような数字になっておったことは、御承知のとおりでございます。こういったものを踏まえて、なぜ日本アメリカの間にこんなにインバランスがあるのか。そして、日本輸入努力もしました。過去二年間だけでも、先ほども申し上げたように、日本世界じゅうから輸入努力もどんどんした。アメリカ一国からでも二年間で百七十億ドルも輸入はしたのですけれども、アメリカへも物が輸出されるものですから、やっぱり四百九十億ドルというのは残っておったわけです。そこで、これを解消するためには、そういうことだけではいけないから、別の協議機関をつくって経済構造問題を話し合おう、お互いに言うべきことを言い合おうというのが日米両国間で起こった今度の協議であった、私はこう思っております。  ただ、ほっておきますとアメリカ政府と議会の間で起こってきつつある保護貿易主義というような物の考え方に対して、政府はそれに反対だから何とかそれを抑えていかなきゃならぬ。大統領は、率直に、議会の保護貿易主義と私は闘わなきゃならぬ、日本アメリカ共通の利益というのは世界の平和と繁栄に尽くすということだから、保護貿易主義を抑えて自由貿易主義を守っていくということは日米共通の利益ではないか、そのために自分は頑張るんだから日本も協力をしろというような、極めて率直な、極めて真摯な意見の交換もなされたのです。  あのときのことなどを考えますと、これはやはり世界の自由貿易体制を守っていくために、世界の自由貿易の中で今大きく重い地位を持っておる責任ある国はそれぞれ果たすべき役割があるんだということがこの協議の始まった大きな原因であり背景ではないか、私はそのように受けとめておるわけであります。
  291. 越智伊平

    越智委員長 これにて高木君の質疑は終了いたしました。  次に、楢崎弥之助君。
  292. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 先ほど、深谷郵政大臣とリクルート社との関係について、共産党の児玉委員がいろいろ事実を指摘されました。大体私が調査しているところと一致しておりますから重複を避けますが、官房長官、お聞きになっておったと思うのですが、児玉委員が出されたことは事実かどうか、その点をお伺いをします。  と同時に、この問題が非常に重大であるのは、かつてイギリスでプロヒューモという陸軍大臣の事件がありました。これは、あるダーティーな事件です。このためにやめさせられたのじゃないのです。国会で、そんなものはないと言ってうそをついた、そのことが罷免の理由になっているのです。  それと関連して、私は、三月の八日、補正予算の審議中、それから三月二十二日、補正予算の討論において、深谷大臣とリクルート社の問題について触れました。一番問題なのは、三月八日の私の質問に対しても、あなたは六十三年以降完全に関係ない、問題ない、完全という言葉を使った。  それから、あれは三月十四日だと思う。東京地裁の労働省ルート公判、そのときに問題の元リクルート社の専務の大沢氏の調書が出てきた。その中であなたの関係が出てきた。しかも、その調書によれば、五十九年二月、当時の位田専務、それからこれは刑事責任を問われておるリクルート社の社長室長の辰巳雅朗さん、この人と一緒に飲んでいるでしょう、あなた。そのとき野見山という労働省の審議官も一緒だ。これは浅草の料亭だ。六十一年九月、これも調書によれば、平河町のスナック「ラテン」、これは知っていますよ、私は、調べに行って。このときには労働省の加藤元事務次官と飲んでいるでしょうが。あなたは私の質問に対して、何らの関係もない、特別の関係はないと言い切っておるが、世の中ではこういうことをするのを特別の関係があると言うのだ。いいですか。それで、しかも六十三年夏以降は完全に関係ない、私の質問に対しても、先ほど言ったとおり、三月十四日のこの調書が明らかになった後のあなたの記者会見、このときも完全に関係ないと言っておる。うそでしょうがな。うそという言葉が悪いなら、事実に反することを言っている。  もう一つ、あなたは、この六十三年夏以降ずっと会費が払われておった、それを気づいたのが六十三年十一月だったと記者会見で言っている。それは三月二十三日の参議院の審議の終わった後の記者会見であなたはそう言っておる。それだってあなた知っていたんじゃないですか。あなたは、返したから総理に自主申告しなかったのですか。返したなら返したと事実をなぜ総理に自主申告しなかったのですか。私は、その辺があなたは事実と反することを言っておる、それで故意に隠そうとしておる、そういうことは許されない、はっきり言っておきます。  それで、あなたは態度がよくない、さっきも聞いておったら。全然反省の色がない。  まず官房長官に、先ほど申し上げたとおり、児玉委員指摘された事実があなたの調査と合致しているかどうかはっきりしてください、私の方が参議院よりも先に質問しているのだから。  それで、その点について、いいですか総理、私お願いしたいのは、名前を言って恐縮ですけれども、事実ですから。竹下さんの改造内閣のときに、長谷川さんですね、法務大臣、それから原田経済企画庁長官、ともにおやめになったのです。だから、この問題とどこが違うかというのですよ、深谷さんの問題と。深谷さんは、最初はないと言っていた。それで、結局出てきたのですね。だから、余り違う取り扱いをされない方がいいと、特に総理にその点をお伺いしておきます。
  293. 深谷隆司

    ○深谷国務大臣 楢崎委員の御質問の折に、政治献金などについては、担当のスタッフがかわったこともあり、必ずしも正確ではないが、少なくとも自分としては同社から特別何か頼まれるとかあるいは同社のために何かするということがなかったことから、あのような答弁になったわけであります。  自主申告の時期がおくれて、二十三日に行い、参議院の委員会で報告をいたしましたが、その間に自主申告がおくれたことは、総理並びに関係者にも申しわけないことをしたと思っております。  なお、調書に出て、私がどこでだれと飲んだかということについては、私ども下町の議員というのは会合が非常に多うございます。いろいろな方々と会食会を多いときには一晩何カ所もやったりいたします。そういう意味で明確に接待を受けたという記憶はないということを申し上げているのであります。  また南陽会の会費の問題については、十一月分が十二月の頭で振り込まれているということでありまして、十二月まで会費が払われているということではないのであります。
  294. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 深谷郵政大臣からは、三月二十三日、私のところにリクルート社からこれまでに政治献金があったことが判明した旨の自主申告がなされ、その後、二十六日に同大臣から直接説明を聞いてまいりました。私といたしましては、その内容一つ一つについて同大臣から確認するとともに、現在、中身の事実関係をよく詰めた上で、自民党のリクルート問題における政治献金等に関する見解に照らして判断して、総理に報告すべく準備を進めておるところであります。ただいま最後の詰めの作業を行っておるところでありまして、もう少し時間をいただきたいと思います。
  295. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 官房長官にいろいろな問題を詰めて照合して、その結果を私は後ほど聞こうと思います。
  296. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これで終わります。
  297. 越智伊平

    越智委員長 これにて楢崎君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして平成二年度暫定予算三案に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  298. 越智伊平

    越智委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。  平成二年度一般会計暫定予算平成二年度特別会計暫定予算平成二年度政府関係機関暫定予算、以上三案を一括して採決いたします。  三案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  299. 越智伊平

    越智委員長 起立多数。よって、平成二年度暫定予算三案は、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。  この際、お諮りいたします。  ただいま議決いたしました三案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  300. 越智伊平

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕      ────◇─────
  301. 越智伊平

    越智委員長 この際、公聴会の件についてお諮りいたします。  平成二年度総予算について、議長に対し、公聴会開会の承認要求をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  302. 越智伊平

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  なお、公聴会の開会日時及び公述人の選定等諸般の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  303. 越智伊平

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次回は、来る六日午前十時より委員会を開会し、平成二年度総予算について総括質疑に入ります。  本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十二分散会