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1990-05-24 第118回国会 衆議院 内閣委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年五月二十四日(木曜日)     午前十時十九分開議  出席委員    委員長 岸田 文武君    理事 植竹 繁雄君 理事 斉藤斗志二君    理事 鈴木 宗男君 理事 林  大幹君    理事 志賀 一夫君 理事 田口 健二君    理事 竹内 勝彦君       今津  寛君    岩屋  毅君       衛藤 晟一君    高鳥  修君       近岡理一郎君    細田 博之君       増子 輝彦君    光武  顕君       渡辺 省一君    池田 元久君       上原 康助君    北川 昌典君       細川 律夫君    山中 邦紀君       山元  勉君    玉城 栄一君       山口那津男君    三浦  久君       和田 一仁君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 石川 要三君  出席政府委員         内閣官房内閣安         全保障室長   依田 智治君         防衛庁参事官  内田 勝久君         防衛庁参事官  玉木  武君         防衛庁参事官  村田 直昭君         防衛庁参事官  鈴木 輝雄君         防衛庁長官官房         長       児玉 良雄君         防衛庁防衛局長 日吉  章君         防衛庁教育訓練         局長      米山 市郎君         防衛庁人事局長 畠山  蕃君         防衛庁経理局長 藤井 一夫君         防衛庁装備局長 植松  敏君         防衛施設庁長官 松本 宗和君         防衛施設庁総務         部長      吉住 愼吾君         防衛施設庁施設         部長      大原 重信君         防衛施設庁建設         部長      黒目 元雄君         防衛施設庁労務         部長      竹下  昭君  委員外出席者         外務省北米局地         位協定課長   森  敏光君         外務省国際連合         局軍縮課長   神余 隆博君         内閣委員会調査         室長      林  昌茂君     ───────────── 委員の異動 四月二十七日  辞任         補欠選任   上原 康肋君     井上 普方君 同日  辞任         補欠選任   井上 普方君     上原 康助君     ───────────── 五月十七日  防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案内閣提出第一九号) 同月九日  旧軍人恩給改定に関する請願村山達雄紹介)(第六三〇号) 同月十六日  元日赤救護看護婦に対する慰労給付金に関する請願奥野誠亮紹介)(第八一七号)  同(竹内勝彦紹介)(第八一八号)  同(細田博之紹介)(第八一九号)  同(山崎拓紹介)(第八二〇号)  同(三浦久紹介)(第九一九号)  同(植竹繁雄紹介)(第九三七号)  同(岸田文武紹介)(第九三八号)  同(渡辺省一紹介)(第九三九号)  即位の礼及び大嘗祭に関する請願村山富市紹介)(第九一〇号)  傷病恩給等改善に関する請願大野功統紹介)(第九三五号)  旧軍人恩給改定に関する請願村山達雄紹介)(第九三六号) 同月二十一日  旧軍人恩給改定に関する請願奥野誠亮紹介)(第一〇一六号)  同外一件(竹内勝彦紹介)(第一〇一七号)  同(村山達雄紹介)(第一一六五号)  同(山口那津男紹介)(第一一六六号)  元日赤救護看護婦に対する慰労給付金に関する請願山口那津男紹介)(第一〇一八号)  同(山中邦紀紹介)(第一〇一九号)  同(山元勉紹介)(第一〇二〇号)  傷病恩給等改善に関する請願稲村利幸紹介)(第一〇二一号)  同(江崎真澄紹介)(第一〇二二号)  同(越智伊平紹介)(第一〇二三号)  同(大野功統紹介)(第一〇二四号)  同(熊谷弘紹介)(第一〇二五号)  同(戸井田三郎紹介)(第一〇二六号)  同(中山成彬紹介)(第一〇二七号)  同(中山正暉紹介)(第一〇二八号)  同(持永和見紹介)(第一〇二九号)  同(中村正三郎紹介)(第一一六七号)  同(三ツ林弥太郎紹介)(第一一六八号)  同(森喜朗紹介)(第一一六九号) 同月二十三日  旧軍人恩給改定に関する請願鈴木宗男紹介)(第一一九九号)  傷病恩給等改善に関する請願稲村利幸紹介)(第一二〇〇号)  同(今井勇紹介)(第一二〇一号)  同(越智伊平紹介)(第一二〇二号)  同(戸井田三郎紹介)(第一二〇三号)  同(中西啓介紹介)(第一二〇四号)  同外一件(葉梨信行紹介)(第一二〇五号)  同(新井将敬紹介)(第一二九六号)  同(亀井久興紹介)(第一二九七号) は本委員会に付託された。     ───────────── 五月七日  国の行政情報の公開に関する陳情書外四件(第一号)  非核三原則の立法化に関する陳情書(第二号)  人事院勧告に関する陳情書(第三号)  青少年健全育成対策の強化に関する陳情書外二件(第四号)  大嘗祭に関する陳情書(第五号)  低空飛行訓練に関する陳情書(第六号)  米軍基地対策に関する陳情書(第七号)  公的機関における点字による文書の受け入れに関する陳情書(第八号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案内閣提出第一九号)      ────◇─────
  2. 岸田文武

    岸田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案議題といたします。  趣旨説明を求めます。石川防衛庁長官。     ─────────────  防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  3. 石川要三

    石川国務大臣 ただいま議題となりました防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明いたします。  この法律案は、若年定年により退職した自衛官に対し若年定年退職者給付金支給するため、その支給要件支給時期及び額その他若年定年退職者給付金支給に関し所要の事項を定めることをその内容といたしております。  自衛官については、職務の性格から若年定年制をとっていますが、若年定年制から生ずる退職後の生活の問題への対応策につきましては、現在、一般公務員と同じ共済年金制度の中で、自衛官に対しては五十五歳から年金支給する特例等を設けることにより措置しているところでありますが、この特例を維持し続けていくと自衛官掛金負担が一層過大なものとなることが予測されております。  政府は、この問題についてこれまで慎重に検討してまいりましたが、若年定年制から生ずる問題への対応策としては、共済年金制度を離れ、若年定年により退職した自衛官に対し若年定年退職者給付金支給する制度を新たに設けることが適当であると考え、ここにこの法律案を提出した次第であります。  次に、この法律案内容についてその概要を御説明申し上げます。  第一は、若年定年退職者給付金支給対象についてであります。  自衛官としての引き続いた在職期間が二十年以上である者で定年により退職した者ないし定年以前一年内にその者の事情によらないで引き続いて勤務することを困難とする理由により退職した者等支給対象とすることといたしております。  第二は、若年定年退職者給付金支払い方法及び額についてであります。  若年定年退職者給付金は、一時金とし、退職後の所得に応じて額を調整する必要から二回に分割し、第一回目は総理府令で定める月で退職した月後最初に到来する月に、第二回目は退職の翌々年の総理府令で定める月に支給することといたしております。  また、その額は、退職の日の俸給月額にその者の定年年齢から六十歳までの期間の年数を乗じて得た額に、第一回目の給付金にあっては一・七一四を、第二回目の給付金にあっては四・二八六をそれぞれ乗じて得た額に、一を超えない範囲内でそれぞれ政令で定める率を乗じて得た額とすることといたしております。  第三は、若年定年退職者給付金の額の調整についてであります。  若年定年退職者退職の翌年の所得金額一定額を超える場合には、第二回目の給付金支給額調整することとし、また、既に支給した第一回目の給付金についても返納させることができることといたしております。  第四は、若年定年退職者給付金の追給についてであります。  若年定年退職者退職の翌年の所得金額一定額を超え、かつ、給付金支給額調整を受けた受給者退職の翌年から六十歳までの平均所得金額退職の翌年の所得金額を下回ることとなった場合には、その者の申請に基づき、その者の平均所得金額をもとに計算した給付金の額と既に支給を受けた給付金の額との差額に相当する額の給付金を追給することといたしております。  第五は、題名等改正についてであります。  若年定年退職者給付金制度整備に伴い、法律題名防衛庁職員給与法から防衛庁職員給与等に関する法律に改めるとともに、目的の規定を改めるなど所要整備を行うことといたしております。  そのほか、若年定年退職者給付金支給時期の特例に関する規定所得届け出及び所得届け出をしない場合の措置に関する規定、起訴された場合の給付金取り扱いに関する規定若年定年退職者が死亡した場合の給付金取り扱いに関する規定その他所要規定整備を行うこととしております。  最後に、この法律は、平成二年十月一日から施行し、施行後に定年等により退職した者について適用することといたしております。  なお、以上のほか、附則において、平成七年六月三十日以前に退職した者に係る給付金支給に関し経過措置を設けるとともに、これに伴い、現在の若年定年対策である自衛官退職共済年金支給開始年齢特例については経過措置を設けて逐次廃止することとし、関係法律について所要改正を行うことといたしております。  以上が、防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案提案理由及びその内容概要であります。何とぞ慎重御審議の上、速やかに御賛同くださるようお願いいたします。
  4. 岸田文武

    岸田委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     ─────────────
  5. 岸田文武

    岸田委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木宗男君。
  6. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 私は、今議案となりました防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案に関連して若干の質問をさせてもらいます。  御承知のように、自衛隊は、我が国の独立とか平和を守るために存在し、特に自衛官は日夜を分かたずその訓練をしているわけであります。そのようなことから、体力だとか精神力は極めて旺盛といいますか、そしてまた必要であります。そんなわけで若年定年制がとられているわけでありますけれども、一部には、この若年定年制から生じる退職後の生活の問題を解決するためには、自衛官についても六十歳定年とすべきであるという意見があります。しかし私は、昨年防衛政務次官として陸海空の各部隊等を回ってその現場を見たり、つぶさに第一線の隊員の声を聞くときに、これ以上の定年延長任務遂行のためにも不可能だ、現在の定年でもぎりぎりの線ではないかということを聞いたわけでありますけれども、この点について防衛庁の見解を明確にお聞きしたい、こう思います。
  7. 石川要三

    石川国務大臣 今御質問実態等につきまして最初人事局長の方から御答弁させていただきたいと思いますが、御趣旨につきましては私も考えを同じくする立場でございます。
  8. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 お答えをいたします。  ただいま委員指摘のとおり、自衛官定年年齢につきましては、自衛隊精強性という点を中心といたしまして階級ごとに定まっているものでございます。全体として若年定年制がとられているわけであります。  御指摘のとおり、今般この自衛官若年定年退職者給付金制度検討を契機といたしまして、現在の定年年齢についてどうあるべきかということを再検討いたしました結果、全階級の一律延長精強性観点からどうしても無理だ、適当でないという判断をしたところでございます。しかしながら、知的能力あるいは経験といったようなことをより要求される将、将補、それから比較的体力を要求されない種類の職務、それらの六十歳への定年延長並びに装備近代化等を踏まえた曹の一律五十三歳への定年延長という一部の定年延長を決定いたしまして、これを十月から同じように実施するということを決定いたしまして、人材の有効活用等を同時に図っていこう、こういうことでございまして、基本的には御指摘のとおりでございます。
  9. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 わかりました。今答弁があったように、自衛隊においてはこの若年定年制をとらざるを得ない以上、そのためにはまた何らかの若年定年対策が必要であることは論をまたない話であります。今まで共済年金制度の中でこの若年定年制に対する対応策をとってきたのでありますけれども、今回、若年定年者対策として給付金制度を設けたわけでありますが、この給付金制度によって自衛官退職後の生活が一体どのようになるのか、この点を説明をいただきたいと思います。
  10. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 この給付金は、定年等により退職した者に対しまして、若年定年年齢一般公務員定年六十歳との差一年につきまして退職本俸の六カ月分を支給するということを基本として計算された一時金を二回に分けて支給することとしているわけであります。そういたしますと、退職本俸の六カ月分は退職時の所得のおおむね三割強に相当することになりますので、この給付金支給することによって、退職時のおおむね四割強の再就職賃金と合わせますと、平均的には退職時の所得の約七五%の水準が維持されるというふうに考えております。
  11. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 この給付金制度自体はもうぜひとも実施をしてほしい、こう私は思っています。  同時に、自衛官定年退職後の生活考える場合、給付金制度をつくればいい、これで自衛官処遇の問題はなくなった、こう考えるのはまた短絡的であるし、十分でない、私は、こう思っております。自衛隊の高い士気、あるいはすぐれた隊員をとるためにも、どうしても処遇改善ということはこれからももっともっとやっていかなくてはいけないと思っているのでありますけれども、処遇全般について防衛庁はどう考えておるか、お尋ねをしたいと思います。
  12. 石川要三

    石川国務大臣 若年退職者退職していった状態というものは、子供育ち盛りといいますか、あるいはローンで家を買った方々についてはその支払い、いろいろと経済的には非常に苦しい時期に退職するわけでありますから、この制度を御理解のもとにどうしても制定したい、こういうことでございます。しかし、それをやったからすべてが解決することでないことは委員の御指摘のとおりでございます。特に、装備が幾ら近代化されてもそれを扱う者はこれは隊員であるわけでありますから、そういう意味からいっても隊員処遇というものをしっかりとして、しかも、隊員国家のために自分はこの仕事を本分とするというそういう生きがいといいますかそういうものを感じるようなことをしていかなければだめだ、私はかように思います。特にそういうような観点から見ますると、まだまだ後方整備の問題、内容的には、例えば隊舎その他いろいろとまだ非常に未整備な点が多々ございます。ついこの間私も陳情を受けたのですけれども、例えば陸上だけで体育館なんかもまだ八十も足らない、これは現在小中学校、幼稚園でさえ全部そろっているような状態でありますから、心身ともに強靭さを必要とする自衛官部隊の中にまだこういう未整備があるということを一つとってみても大変なことでもあるし、また、現在生活をしている隊舎の中の状況を見ても、暑くてもクーラーもない、窓をあけて寝る、これでは私は現在の国民生活のレベル以下ではないか、こんなふうに思います。したがって、そういうところを今後は整備をしていかなければならない、かように思っております。
  13. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 今大臣がいみじくも隊舎関係だとか厚生センター関係だとか体育館整備の問題、いわゆる後方の面を言ってくれましたけれども、平成三年が日本では募集人口のピークになります。そこで、魅力ある自衛隊、これをきちっとイメージづけないと募集なんかも大変だし、また、士気旺盛な隊員の確保は難しい、こう私は思っているのです。そういった意味では、何といっても生活環境整備だとか処遇改善が私は一番必要でないかと思うのです。  そこで大臣、今自衛官の中に三Kという言葉があるのを御存じでしょうか。昔三Kといえば米、健保、国鉄でしたね。今ここらの問題は相当解決されてきましたけれども、今自衛官の間では昔の三Kをもじって三Kという言葉があるのです。
  14. 石川要三

    石川国務大臣 突然でございますからあるいは違っているかもしれませんが、自衛官だけではなくして一般的には三Kというのは危険だとか汚いとかあるいは何だったか、そういうことは存じておりますが、自衛官についてのみ何か三Kがあるとなると私はよくわかりません。
  15. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 僕がたまたま防衛政務次官をやったときに、現場を歩きながら若い隊員と話をしたとき聞こえてきた言葉なんですけれども、きつい、汚い、給与が低いということなんです。そこで特に一番大事なことは、今各御家庭でも子供は少なくなって、大体一人一部屋当たるぐらいの生活環境なんです。ところが、自衛隊に入ってしまいますと四十平米に七人も入れられてしまうのですね。これが若い人たちにするならば一番苦痛だそうです。そこで二段ベッド解消なんかは相当前から言われてきましたけれども、平成二年度の予算もついております。予定ではことしじゅうに二段ベッド解消、こうなっておりますけれども、これはきちっと実現できるかどうか、お尋ねしたいと思います。
  16. 村田直昭

    村田政府委員 お尋ねの二段ベッド解消の件でございますが、平成二年度の予算案では六万平米を増設する予定でありまして、二段ベッド解消が図られる予定でございます。  ただ、部隊駐屯地ごとの出入りもありまして、若干の駐屯地におきましては先生御指摘のように完全に解消するというような事態には至らない、一時的にはそういう二段ベッドがまだ残るという事態も生じると思いますが、これについては早期解消を図るべく三年度以降さらに整備をするという考えでおります。
  17. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 とにかく隊舎整備等、こういった面にはもっともっと力を入れていただきたい、こう思います。  同時に、私は自衛隊のイメージというものもまたこれから大事でないかと思うのです。そのためには婦人自衛官登用をするということも私は大事でないかと思っているのです。そのためには私は防衛大学女子入学を認めるということを明確にした方がいいし、これは早期に実現した方がいいのでないかと思うのですけれども、この点大臣いかがでしょうか。
  18. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 御指摘女子防衛大学採用の問題でございますけれども、我が国におきまして女子があらゆる分野へ参加が進んでおる、あるいは女子積極的登用を図るということなど、そういった観点から現在積極的にこの問題についても検討を進めているところでございます。この問題につきましては、平成二年度内に結論を得るということで進めております。ただ、この問題につきましては、自衛隊精強性に与える影響であるとか、防衛大学校の訓練課程内容教育投資効率といったような問題等検討すべき問題もなおございますので、早急に結論を得て具体的な成案を得たいと考えております。
  19. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 平成二年度じゅうに結論を出すということは、平成三年度から入学は可能である、あるいは募集できるということなんですか。
  20. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 具体的に言いますとその決定の時期にもよりますけれども、防大受け入れ寮等施設が必要になりますので、それの予算の間に合う時期ということを考えますと、平成四年度からの入学受け入れということが一番早い時期ではなかろうかというふうに思っております。
  21. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 今人事局長自衛隊精強性だとかいろいろなトータルで見てこの入学考えるという話でありましたけれども、私は、男の立場からして、女子学生が入ってきたら逆に自衛隊を見る目が変わってくるし、逆にまた防大に行ってしっかり国の安全を守ろう、そうすればいい嫁さんももらえるかもしれぬとか、いい方向に考えていった方がいいと思うのです。そういった意味でも今局長が言った平成四年度の入学、ぜひともこれを目指して進めていってほしいな、こんなふうに思います。なお、予算の面につきましては我々も最善を尽くしてバックアップをしたいと思いますから、この点も共同歩調をとっていきたい、こんなふうに思っております。  もう一つ、私はさっき三Kの中で一つ言いましたけれども、給与の問題です。今、自衛隊給与体系警察官ベースにしている。警察官は大体地方公務員です。国家公務員は皇居の皇宮警察だけですか、それ以外は全部地方公務員です。国家公務員地方公務員ベースにすること自体が私はちょっと不自然だなと思うのです。特に自衛隊の場合は、超過勤務二十時間は本俸に加算されて、本俸の中に入っておりますけれども、地方公務員の場合は超過勤務時間というのは実質的には全部そのままいただけるような今の仕組みですね、地方自治体の状況を見ますと。そういった面でも自衛隊員は何かしら我々は不遇といいますか給料が安いという気持ちを持っているのです。ですから、私は、特に国の防衛だとか国の安全だとか平和とか、あるときはまさに体を張るわけでありますから、そういった立場にある人に対する給与というものはまたきちっと補てんしてやることが大事でないかと思っているのです。この点大臣どうお考えでしょうか。
  22. 石川要三

    石川国務大臣 内容については人事局長からもう少し詳しく回答させたいと思いますが、基本的には鈴木委員と私は全く同感であります。少なくとも我が国民の生命を守るそういう任務があるわけでありますから、当然適正な処遇というものはしていかなければいけない、私はこういうふうに思っております。
  23. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 今の御指摘の中にもございましたように、自衛官給与体系につきましては、主として一般職の中の公安職というのが類似の職務ということで、この俸給表にリンクした形で定められております。これは地方公務員ということではなしに、国家公務員公安職にリンクした形で一応の基準として定められているということでございます。諸手当につきましては一般職国家公務員とおおむね同様の体系によって支給されるわけでありますけれども、自衛官勤務特殊性に応じた特別の手当、例えば航空手当とか乗組手当、そういったものもございますので、そういった形で支給されております。したがって、基本的には自衛官給与一般職公安関係職員給与に比べて低いというようなことはないわけでございますし、いわば一定基準に従っているわけで、それなりの公正性が担保されているというふうに私は理解しております。ただ、自衛官職務一般職職員に比べて非常に特殊な面がございますので、その適切な処遇について今大臣からもありましたように今後とも努力をしてまいりたい、かように考える次第であります。
  24. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 警察官給料が一緒でも、例えば訓練が夜のときもあるし雨のときもある、そういったものを考えると、同じ給料でも何となくこっちの仕事がハードだと思ったならば何となくこっちは割を食っているなとだれしもイメージを持つ、感じを持つと思うのです。この点、私は現場の声というものは大事にしなくてはいけないと思うからあえて質問したのでありますけれども、これからも大臣、こういった給与の問題だとか処遇の問題につきましてはぜひとも一生懸命やっていただきたいと思います。  特にここで要望しておきますけれども、第一線部隊では中隊長がおられますけれども、中隊長というと大体二百人くらいの隊員を統括しているのです。この中隊長には管理職手当というのがないのです。例えばどこの役所でも何十人か部下がおったら必ず管理職手当がつくのですけれども、この中隊長には管理職手当がないのです。この点なんか私は改善してしかるべきでないかと思うのですけれども、この点私は質問要求しておりませんから具体的な答えはないと思いますが、要望だけしておきますので頭に入れておいてほしいと思います。  なお、細かいことでちょっと恐縮ですけれども、これは人事局長お尋ねしたいのです。私は第一線部隊を回って、隊員防衛記念章を胸につけておりますけれども、この防衛記念章くらいは国で与えてほしい、こういう強い要望がよくあるのです。もちろん平成二年度の予算ではこれは要求されておりませんでした。平成三年度、来年度の予算ではこの防衛記念章を絶対実現すべきだと私は思っているのですけれども、要求する意思があるかどうかお尋ねしたいと思います。
  25. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 御指摘防衛記念章でありますけれども、お話のように現在つけることを許されているということで、これを一々買ってつけているわけでございます。それを国が支給すべきだという御意見もただいまの御意見のように多々あることは承知いたしております。しかしながら、現在それをどうするかということは検討中でございますので、お話の中にもございましたが、二年度予算には計上されておりません。平成三年度の要求についてどう対処するかということでございますが、まだ作業が概算要求の具体的な段階に至っておりませんけれども、私といたしましては、ただいまの先生の強い御指摘を踏まえまして前向きに対処したいと思います。
  26. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 ぜひともこの防衛記念章につきましては平成三年度で実現をしていただきたいといま一度お願いをしておきます。  時間がありませんので、次に次期防についてお尋ねをいたします。  次期防については具体的にどのような方針で作成していくか、そして安保会議等はいつ開かれてどのくらいのタイムスケジュールを考えているかお尋ねしたいと思います。
  27. 依田智治

    ○依田政府委員 安保会議のスケジュール等につきまして、事務局を担当しております安全保障室の方からお答えさせていただきます。  現在、昭和六十二年一月の閣議決定、安保会議の方針に基づきまして、平成三年三月の中期防終了までにつくるという方針になっているわけでございますが、これでは間に合いませんので、私どもとしては少なくとも平成三年度の予算の編成までにはつくらなければいかぬということで今準備を進めておりまして、防衛庁の作業等盛んに進められ、あるいは我々の方も調整をしております。本格的に検討に入るのは恐らく九月ころからになるのじゃないか。検討すべき項目としては、国際情勢、国際軍事情勢、さらにこれを踏まえた大綱等の取り扱い、さらに陸海空の防衛力のあり方、経済財政事情はどうか、それからどういう方式でいくのか、額はどのくらいが適当か、こういうような問題で最終的に諮問案をつくるということになりますので、会議としては従来どおり十回ないしそれ以上くらいやらなければいかぬのじゃないか。近く米ソ首脳会談も行われるということでございますので、私どもはこれらの情勢を踏まえまして、国会等の状況もありますので今日程を調整しておりますが、できるだけ早い機会に安全保障会議としても情勢の検討から早速始めたい、こんなことで今検討を進めておるところでございます。
  28. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 今の安保室長のお話を聞きますと、平成二年度末までに決めたいということですか。
  29. 依田智治

    ○依田政府委員 正式には昭和六十二年一月の安保会議、閣議決定によりまして、中期防終了までに経済財政事情、国際情勢等を勘案して決めるということになっております。ただ、それでは間に合いませんので、やはり予算編成までには遅くも決めなければいかぬということで考えております。
  30. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 予算編成というと、十二月内示でありますから、それまでには決めるということですね。
  31. 依田智治

    ○依田政府委員 はい。
  32. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 このスタートはいつでしょうか、安保室長。一部には安保会議は六月だとか、中旬だ、初旬だ、末だとかいろいろな議論がありますけれども、もうこの時期になったら、平成二年度の予算が今のところ間違いなく六月八日までには成立する、きょうあたりの報道を見ると七日には成立するのではないかという流れでありますから、しからばその予算が成立したらすぐ安保会議を開くのかどうか、これを具体的に明確にしてほしいと私は思います。
  33. 依田智治

    ○依田政府委員 実は、次期の防衛関係費のあり方につきましては、既に六十三年十二月に安全保障会議を開いて、私どもはこれがもう既に検討のスタートであると考えております。その後、今連絡をとりつつ詰めておりますが、先ほど申しましたように、米ソ首脳会談等を踏まえまして、私どもは国会の審議状況等を踏まえながらできるだけ早く、今先生が言われたような時期には安保会議としても会議を開きたいということであります。ただ、国会が、予算成立しても今度は税特とかいろいろな行事がまだ詰んでおりますので、我々はできるだけその間隙を縫ってやらしていただこうということで現在検討しておるところでございます。
  34. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 そうすると、平成二年度の予算が成立したら速やかにこの会議を開きたいという認識ですね。
  35. 依田智治

    ○依田政府委員 そういう方向で現在努力しておるところでございます。
  36. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 大臣お尋ねいたしますけれども、次期防の経費は防衛庁としてはどのくらいを考えているのか。そして、よく総額明示方式と言われておりますけれども、それは五年なのか三年なのか、これをはっきりとお答えをいただきたいと思います。
  37. 石川要三

    石川国務大臣 先生御承知のとおり、次期防は今もお話がございましたように最終的には安全保障会議の場におきまして政府全体としての立場から決定されるわけでありますが、今私どもはそのメンバーの一人という立場で、特に防衛を所管する立場からして、その会議に臨む、提案する土台となるべきものをいろいろと今検討しておるわけであります。したがいまして、今の段階では一体五年にするのか三年にするのか、あるいは全体の額をどの程度にするとかということは全くまだ作業の段階で、私の手元までは来ておりません。そんなわけで、ひとつ御理解をいただきたいと思います。
  38. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 私は、防衛庁長官としてのお答えをいただきたいのです。安保会議の答弁はこれはまた別のところでいただけばいいのですけれども、防衛庁長官としてはおれはこう考えているのだ、私は防衛の責任者としてこのぐらいは必要で、こんな考えを持っているのだということを、少なくともこの委員会では明確に答えていいのじゃないかと私は思うのです。
  39. 石川要三

    石川国務大臣 先生御承知のとおり、一昨年の十二月に安保会議の中で、次期防につきましては一定の、今のような中期計画というものを持って整備されることが望ましいという一つの結論が出ております。そういうものを踏まえてこれからやるわけでありますが、いわゆる一般論として申し上げるならば、私は、総額明示方式は、まず第一は防衛力の整備計画の内容とその裏づけとなる経費を一体として明示すべきものである。防衛力の整備に当たっては、具体的、合理的な指針となること。そして、昭和六十二年一月の閣議決定において、中期防の期間中の防衛関係経費のあり方として採用した経緯もあること等から見て、その総額明示方式が望ましい。このように考えているわけでございますが、いずれにしましても今後の安保会議を中心にして決められるわけでございます。
  40. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 時間がありませんからこれ以上突っ込みませんけれども、大臣、この次期防を考えるときに、アメリカとの連携といいますか、連絡を密にするのは当然だと思うのです。しかも、先ほど安保室長から、米ソ首脳会談も踏まえてという話がありました。そこで私は、大臣が訪米して日米の防衛首脳会談も開かなければいけないと思うのですけれども、具体的に、大臣はいつごろ訪米してどう協議する予定でおるか、お答えをいただきたいと思います。
  41. 石川要三

    石川国務大臣 もちろん、現下の国際情勢というものを分析して対処しなければならないことは当然であります。そういう中におきまして、我が国防衛基本政策でございます日米安保体制というものがあるわけでありますので、やはりアメリカとの十分な協議が必要であろう、かように考えております。  したがいまして、そういう角度から訪米も考慮しているわけでありますが、今いつということはちょっとわかりかねるわけでございます。先ほど言ったように、国会の運営あるいはまた安保会議等の開催等もにらみながら、余り遠からずのうちに訪米したいという考えでございます。
  42. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 これは次期防に関連するわけでありますけれども、最近、一部報道に「陸上自衛隊の定員 一―二万人削減へ 石川長官「大綱」修正を指示」とか「十―二十駐屯地閉鎖」なんという記事がありましたね。しかも、この駐屯地閉鎖には、具体的に釧路、名寄、滝川、岩手、北富士、日本原、小倉、都城とかいう名前が挙がっているのです。実際こういう指示を長官はしたのかどうか、あるいは内局から陸幕にそういった相談をしたのかどうか、これは明確にしてほしいと思います。
  43. 石川要三

    石川国務大臣 まず私の方から報道関係について申し上げますが、それは、そういう事実は全くございません。そこだけははっきりお答えをいたします。  さらに、部隊のあり方とか、十八万のいわゆるそういう定員等の内容、あるべき姿につきましては、政府委員の方から答弁をさせたいと思います。
  44. 日吉章

    ○日吉政府委員 ただいま大臣からお答え申し上げましたように、一部の報道がございますような指示を大臣の方からいただいたという事実は全くございません。  私どもの作業でございますけれども、私どもといたしましても、御案内のように陸上自衛官の十八万人という定数は、我が国が平時から保有すべき防衛力の水準を定めた防衛計画の大綱において陸上防衛力の基本的な枠組みとして定めているものでございますし、また、御引用になられました駐屯地も陸上自衛隊の活動の拠点となる重要なものでございまして、その効果的な活動を期すためには必要不可欠なものとして駐屯地を開設しているわけでございます。  他方、新聞等の報道の問題意識は、最近におきます自衛官募集環境は極めて厳しい状況にあるので、そういうような観点、さらにまた、将来、採用人員の大部分を占めます二士男子の募集適齢人口が減少していくことが見込まれるというようなことから、今後自衛官募集環境をより厳しくさせていくような大きな要因にどう対応すべきかという問題意識で新聞が書かれていたと思います。そういう問題意識は私どもはございますけれども、これにつきましては、冒頭に申し上げましたようなことを念頭に置いて、防衛庁としては中長期的な視点に立って、防衛力全般にわたる効率化、合理化の徹底による省力化、人的枠組みのあり方をどうしたらいいかというようなことを議論しているわけでございまして、重ねて申し上げますが、一部報道がございましたようなそういうふうな具体的な指示をいただいているわけでも、またそういう決定がなされているわけでもございません。
  45. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 そうすると、十八万定員は、これはもう守っていくということでよろしいですね、防衛局長。時間がないから、その部分だけはっきり言ってください。
  46. 日吉章

    ○日吉政府委員 定員、駐屯地等の問題につきましては、今後各般のことを念頭に置きながら検討を進めていきたい、かように考えております。
  47. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 各般の検討を加えてなんと言うから、これまたとり方によってはどうにもとれるからおかしくなっちゃうのです。定員を守るのなら守るだとか、いや、これからはこういう情勢だからこうだというならわかるけれども、各般の情勢なんと言うからややこしくなるのですよ。要は十八万を守るかどうか、これだけをきちっと言ってください。
  48. 日吉章

    ○日吉政府委員 現在陸上自衛隊十八万人の定数を変更するという考えはございません。
  49. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 時間ですから終わりますけれども、どうか大臣、平和時における自衛隊あるいは戦後四十五年平和に寄与してきた自衛隊の使命というものを十分評価していただきまして、自衛隊員がより国家国民のために頑張っていけるような環境づくりをしてもらうよういま一度お願いをいたしまして、質問を終わります。
  50. 岸田文武

    岸田委員長 続いて、田口健二君。
  51. 田口健二

    ○田口委員 私はまず、石川防衛庁長官が御就任になりましてきょうが最初委員会における質疑ということになりますが、かつて長官は本委員会委員長を務めておられまして、当時私も本委員会に所属をいたしておりました者の一人としまして、今回の長官の御就任を心からお祝いを申し上げたいと思います。同時にまた、私はそういう意味では長官のお人柄も存じ上げておりますので、率直な、そしてまたわかりやすい御答弁を期待しておることも申し上げておきたいと思います。  防衛庁お尋ねをする前に一点だけ、私の地元であります長崎県の佐世保港で今起きておる問題について外務省の方にちょっとお尋ねをしたいと思っております。  佐世保港のほぼ中央部でありますが、崎辺地区というところから南側に向けて約一キロに六十一番ブイというのが設置をされております。そこに先月の二十八日ごろからアメリカの弾薬を積載しておると思われるコンテナが十五個実は係留をされておるのが発見をされました。常時二名の武装したアメリカ兵によって警戒をされております。この水域はもちろんアメリカの提供水域であります。B制限水域でありますから、艦船係留の場合を除いてその付近を一般の船が自由に航行しておるわけであります。とりわけ漁船にとっては、毎日漁場に往復をするときにその付近を航行しておるわけでありまして、例えば発砲される、周辺に近づくと銃を向けて威嚇をするようなことも実は起きておるようでありまして、地元の皆さん方は大変不安に思っておるわけですね。幾つかの団体も既に佐世保市長に対してどういう状況になっておるかということをいろいろ要望、申し入れなどを行っておるわけであります。新聞報道によれば、佐世保市長は外務省を通じてアメリカにその状況なりを問い合わせておるけれども、何ららちが明かない、こういうことも報道されておるわけです。一体外務省はこういう事実というのを確認をしておるのでしょうか。それからまた、佐世保の市長の方からこういうことについて問い合わせがあっておるとか、あったとすればそれを受けて実はどのような措置をなさっておるのか、アメリカとの折衝の経過、状況などがわかっておればまずお尋ねをいたしたいと思います。
  52. 森敏光

    ○森説明員 本件につきましては、地元の状況につきまして地元における報道あるいは佐世保市からの連絡あるいは照会等を通じまして承知しております。私どもといたしましては、このような報道あるいは市側からの連絡、照会に基づきまして米側に照会しているところでございます。  これに対しまして、在日米軍は四月十九日より弾薬の積みおろし作業等の一環として佐世保の米軍の提供水域に一時的に弾薬を係留しているという回答を米側より得ております。他方、我々といたしましては、その具体的な作業内容の詳細につきましては、米軍の運用にかかわる問題でありますので承知しておりません。  また私どもは、市側からの連絡の中にも、地元の皆さん方が安全に懸念を抱いておられる、こういう連絡を受けておりますので、米側に対しましては、我が国の公共の安全に妥当な考慮を払って活動してほしいということを申し入れております。これに対しまして米側は、従来より米軍の活動につきましては、船舶の航行あるいは漁船の操業等を含みます我が国の公共の安全に妥当な考慮を払って活動してきておる、今回の作業に当たっても、地元住民の方々が懸念を抱くことのないように安全面には最大限の配慮を払っていきたい、かように言っております。
  53. 田口健二

    ○田口委員 今のお答えだと、一時的に係留をしておるという米側からの回答があったようなお答えですが、もう既に一カ月近くなろうとしているのですね。今池元で言われておるのは、当初考えておったのは、確かに弾薬集積所のスペースの問題などがあって、いわばあき待ちのための一時係留ではなかろうか、こう考えておったのですが、既に一カ月近く経過しているわけですね。このコンテナというのは、外務省も御存じだと思いますが、オーストラル・レインボーという運搬船がインド洋の島から弾薬を積載をして四月十九日に佐世保に入港しておるわけですね。その後呉に入っている。呉でも同じようなそういう海上係留がやられている。これは何かアメリカの戦略に大きな転換があって、新しい考え方に基づいてこういう措置が行われつつあるのではなかろうか。ということになると、今地元でも言っているのですが、これは安保条約に関係してくるのじゃないか、事前協議の対象になってくるのじゃないか、こういう問題まで出ているのですよ。その辺はどうなんでしょうか。あくまでも一時的な係留なんでしょうか。一時的な係留だとすれば、ではいつごろにはこれが撤去されるのか、その辺はどうでしょうか。
  54. 森敏光

    ○森説明員 私ども、これまでの米側とのやりとりを通じまして、米側が特にこれまでの運用の基本的な考え方を変更したというような話は全く聞いておりません。  さらに、これがどれだけ続くのかという御質問でございますが、この点につきましては、まさに米軍の現在行っておる作業の運用の詳細にかかわることでございますので、私どもその具体的な期間等については承知しておりませんが、いずれにいたしましても、これは恒常的なものではなく、一時的なものであると米側は言っております。
  55. 田口健二

    ○田口委員 恒常的ではない、一時的なものだというふうに米側も言っておるということですが、確かにこのような状況というのは異例な状況なんですね。佐世保の場合には、これまでも弾薬運搬船がたびたび入ってきて弾薬の積みおろしということはやっておりましたけれども、海上にコンテナが一カ月近くも係留されておる、これは大変異常な状況なんです。一日も早くこれが解消するように、外務省としても十分米側に申し入れをし、そういう要請をしていただきたい、このことを特にこの機会に申し上げておきたいと思います。外務省の方は、今の点は一応これで終わります。  そこで、防衛庁お尋ねしますけれども、本特別国会でも、防衛論議というのは、特に先ほどまでの予算委員会の中でもかなり時間をかけて重点的に論議をされてまいりました。私も、予算委員会の審議の状況を聞き、あるいは会議録を丹念に読ましていただきました。その中で、どうしても納得できない、これはおかしいのではないか、こういう点が幾つかございますので、私は、この機会にそのことを少し防衛庁の見解を伺いながら明らかにしていきたいと思っています。  その第一は、四月十日の予算委員会で海部総理がこう答弁されておるわけですね。正確を期するために、短いですからちょっと会議録を読んでみますけれども、「平和時に、まことにつつましやかにみずからの国の平和と安全を守るためのもの、それは専守防衛であり、正面装備を見ていただいても、これは全部明らかにされておりますが、相手国に脅威を与えるような攻撃的な、長距離を攻撃できるような航空母艦とかそんなものはないわけですから、」こういう答弁の一節があるわけですね。  私は、国会の中で、防衛整備について政府考え方も随分聞いてまいりました。本委員会の中でも何回かそういうやりとりをやってきたわけでありますが、竹下元総理はよく節度ある防衛力の整備という言葉を使っておりましたことを覚えております。私はこの答弁についても率直に言って首をかしげる点があるのですけれども、これは中期防が決定されたときに、あの官房長官談話の中にもそういう節度ある云々という言葉が出てきておりますから、政府もそういうことで使っておるのかなと思っておったのですが、今度海部さんは初めてつつましやかと言っているのですよ。これは私は大分認識が違うと思いますね。総理大臣の発言でありますから、国会における答弁でありますから、素直に国民の皆さんが聞いておったときに、今の日本の防衛力の整備状況というのは、総理が言われておるようなつつましやかな防衛力の整備が行われている、これはこう考えますよ。この発言について、長官、どのようにお考えでしょうか。
  56. 石川要三

    石川国務大臣 まず、御答弁申し上げる前に、先ほど田口委員から私の就任を心からお祝いを申し上げるという御発言がございました。まことにありがとうございます。私も、くしくもかつてこの委員会委員長もしたことでございまして、個人的には大変親しくおつき合いをさせていただいておりますので、どうぞひとつこれからも公私ともに大いに御交誼をいただきたいし、また、私の欠点、長所もよくおわかりでございましょうから、私も極力長所を生かしてできるだけの答弁をさせていただきたいと思います。いずれにいたしましても、そういうことでよろしくお願いします。  今の、総理に対する所見でございますが、総理の一つの表現でございますから、どうもこれを私がいろいろとコメントするのはいかがかと思います。ただ、私は推測を申し上げますが、確かに節度ある防衛力とか、あるいはまたつつましい防衛力とか、総理の個性によって多少ニュアンスが違うと思いますが、結論的には、我が国防衛の性格というものは、いわゆる先進諸国と比べてみれば本質的に大変違う、専守防衛といいますか、そういう性格のものでございますから、そういう意味を強調された、こういうふうに私は理解をするわけでございます。ただ、それが少し行き過ぎだとか、あるいは国民に誤解を与えるとか、いろいろと見方があると思いますが、その点については、私はこの席ではあえていかんとも申しあげかねるわけでございます。
  57. 田口健二

    ○田口委員 長官も閣僚の一人ですから、総理の発言について云々することはもちろんできないと私も思っております。海部総理が、表現といえば表現なんですけれども、そういう認識で今の防衛力、日本の防衛力というものを考えておるということであれば、いささか私は問題だというふうに思っています。そこで、この機会に日本の防衛力の現状を幾つか明らかにさせていただきたいと思うのです。  一つは、さっきも話がありましたが、中期防は今年度が最終年度になるわけですね。これまでの政府答弁によりますと、中期防が終了する段階で言うなればほぼ大綱水準に到達をするんだ、こういうことをしばしば政府の方からも答弁がありました。もう今年度終了をするわけですから、中期防の達成状況というのはどういう状況になっているのか。まだ期間は来年の三月まであるのですけれども、一応それが達成をされたとすれば中期防全体としてその達成状況はどういうことになるのか。それは大綱で考えた水準に到達をするということになるのか、まずその点をお伺いしたい。
  58. 日吉章

    ○日吉政府委員 お答え申し上げます。  委員ただいま御指摘のように、中期防は大綱水準をおおむね達成することを目標といたしまして策定いたしております。そのおおむねと申しますものにつきましては、例えば正面装備等で申し上げますと、支援戦闘機の新しいタイプの整備等につきましては、必ずしも中期防におきまして完全に大綱が予定しているようなものが達成できることにはならないのではないかというような前提がそもそも中期防の中にあったかと思います。  そういう性格の中期防でございますが、その中期防の主要装備につきましては、おおむね計画いたしましたものが調達できることになってございます。その中でも若干のものにつきましては、必要とありますれば後ほど数字を申し上げますが、例えば調達数量を次期防期間もにらんだところで平準化を図るという意味では、何も中期防計画で何機となっているから最終年度で何機調達しなくてもいいのではないかとか、あるいは予定しておりました価格に比べて非常に価格騰貴が著しいようなものにつきましては、もう少し価格の推移を見守るということにして次期防に送っていいのではないだろうかとか、そういうような形で若干見送ったものがございますけれども、基本的にはおおむね中期防の水準を達成しているということでございます。
  59. 田口健二

    ○田口委員 まあ大体中期防で計画をしたことが主要装備についてもおおむね達成をされたというふうな認識だろうと思うのですね。  そこで、少し具体的な主要装備について、この際、お聞きをしておきたいと思います。  一つは、F15要撃戦闘機、これの購入価格、最終年度で言えば見積もりになるのかもわかりませんが、これが一体幾らなのか。現在、F15を何機保有しているのか、発注済みのものもあろうかと思いますから、発注済みを含めて結構です。同じくP3C対潜哨戒機ですね、これの価格並びに保有機数、発注済みを含めて。同じくE2Cですね。それからイージス、これらについて今私がお尋ねをした価格並びに保有機数、隻数、わかっておれば教えていただきたい。
  60. 植松敏

    ○植松政府委員 お答え申し上げます。  平成二年三月末、つまり平成元年度末の保有数及び現在調達中の数量及び価格について申し上げます。  まず、数量の方について申し上げますと、F15戦闘機につきましては百三十二機保有いたしておりまして、現在調達中のものが三十五機でございます。したがいまして、合計百六十七機ということになります。  それからP3Cにつきましては、現在保有数が六十機、調達中のものが二十八機、合計八十八機でございます。  それからE2C早期警戒機につきましては、現在保有しておりますのが八機、調達中のものが三機、計十一機。  それからイージス艦につきましては、六十三年度予算でお認めいただきまして、現在一隻調達中でございます。  単価につきましては、平成二年度、現在御審議いただいております予算の額で一機当たりの平均単価を申し上げさせていただきたいと存じますが、F15につきましては一機約八十六億円、P3Cにつきましては百六億円、E2Cは九十九億円、イージス艦につきましては千二百九十二億円でございます。
  61. 田口健二

    ○田口委員 今主要装備の中で幾つか特徴的なものをお尋ねをしたのですが、これらのF15にしてもP3CにしてもE2Cにしても、これは一体アメリカと日本を除いてほかの国でこれらをどのぐらい持っているのですか、世界各国の中で。わかっておったら教えていただきたい。
  62. 日吉章

    ○日吉政府委員 米国で申し上げますと、F15は約千機保有していると思います。それから、E2型航空機は約百機ではないかと思います。それから、哨戒機はP3型が約四百機、こういうような保有数量であろうと理解をいたしております。
  63. 田口健二

    ○田口委員 今のは英国ですか。
  64. 日吉章

    ○日吉政府委員 米国でございます。
  65. 田口健二

    ○田口委員 いや、私が聞いておるのはアメリカと日本以外の国で、はっきり言えばイギリスなりフランスなり西ドイツなり、こういう国々でF15だとかP3CだとかE2Cだとか、こういう飛行機は一体何機持っているのですかと聞いているのですよ。
  66. 日吉章

    ○日吉政府委員 失礼いたしました。  要撃戦闘機F15でございますが、これにつきましては、実はヨーロッパにおきましてはこれに相当する別の機種を持ってございますので、F15という形で申し上げるわけにはまいりませんが、別の機種でF15に相当するものということで申し上げますと、イギリスはトーネードが約二百数十機、フランスの場合ですとミラージュF1Cが百数十機、西独はF4が二百数十機、イタリアではF104が百機余、こういうふうな機数を持ってございます。そういうような状況でございます。
  67. 田口健二

    ○田口委員 今防衛局長の方からF15に相当するような機種の保有状況というのがちょっと出ましたけれども、私はF15というのは、かつてこの内閣委員会の視察の中でも千歳の基地でスクランブル訓練を実は拝見をしたことがあります。これは確かに優秀な飛行機ですね。ところが、非常に値段が高いからほかの国では買えない。それで、今もお話がありましたように、イギリスのトーネードだとかなんとか、いろいろな各国の配備状況も出てきている。  私は、先ほどそれぞれ主要装備についてその価格あるいは保有機数なりについてお話を伺ったのですが、この実態というのは決してつつましやかな防衛力だという段階じゃないと思いますよ。節度あるという言葉も私はちょっと首をかしげたくなるのですけれども、これはやはり今日の日本の防衛力というのはどういう水準にあるかということを正確に国民の前に明らかにしておかないと、言葉の上ではいわゆる日本の専守防衛であるとか平和時における防衛力のあり方だとかいって、この防衛力の実態というのがなかなか国民の前に明らかになっていないところにひとつ今日の防衛論議の中でも問題があると私は思うのですね。  もう一点、角度を変えて聞きますけれども、今の日本の防衛力の水準というものは国際的に比較をしてみたらどうなんでしょうか。よく「ミリタリー・バランス」あたりが日本は何番目だとかなんとかというふうに発表していますが、防衛庁の見解としてはどうなんでしようか。
  68. 内田勝久

    ○内田政府委員 お答え申し上げます。  委員ただいま御指摘の「ミリタリー・バランス」におきましては、特に各国の防衛力についてランクをつけて、それで比較をしているというようなことはしておりません。したがいまして、「ミリタリー・バランス」で日本の防衛力が世界で何位であるかということについては特に記述がないわけでございます。  いずれにいたしましても、各国の防衛力といいますものは、それぞれの国の地理的な特性ですとかその安全保障の環境といったものを踏まえましてその中で決定されてきているものでございまして、各国の防衛力につきまして、例えば特定の装備の数が幾つと幾つであるといったことを数量的、機械的に比較いたしましてその順位を云々するということは必ずしも適当ではないのではないか、私どもこのように考えている次第でございます。
  69. 日吉章

    ○日吉政府委員 具体的な御指摘もございましたので、御指摘の点につきましてお答え申し上げたいと思います。  例えばF15について御例示をなさいましたけれども、F15、すなわち戦闘機部隊考え方でございますが、これはF15ばかりではございませんで、現在まだファントムも残っておりますし、それからF1という支援戦闘機もあるわけでございます。そういう機種が混在しているわけでございますが、私どもの防空の物の考え方といいますのは、大綱に示されておりますように、平時におきましては領空侵犯等に適切に対処し得るようにする、それから有事におきましては航空侵攻に対しまして限定、小規模な侵攻にとにかく原則的に初動において対応できるようなものというようなことで考えているわけでございます。  そんな考え方で、日本の地理的な特性それから現実に使えます航空基地、これは現在七つあるわけでございますが、こういうことを考えまして、主として平時において考えた場合に、五分待機、十五分待機というような形で航空機を待機させまして平時において二十四時間領空侵犯等に適切に対処し得るようにするというような形で機数をはじきます。その場合にも、航空機そのものの物理的な機数からだけではありませんで、これには熟練したパイロットが搭乗しないといけませんので、その疲労とか技能保持のための所要、こういうような線を合算いたしまして、私三機種の名前を申し上げましたけれども、現在ございますようにF15を含めまして、これらの機種で全体的に三百五十機程度が要るのではないかというのが大綱の考え方でございまして、そういうふうな考え方に基づいて整備をいたしているわけでございます。あくまでも平時から警戒態勢に重点を置いた形で我が国の地理的な特性を勘案して計算いたしました機数がそういう機数になっており、その中の一部分をF15が占めているというような状況にある点を御理解を賜りたいと思います。  それから防衛費につきましての御指摘がございまして、国際参事官の方からお答えがありましたけれども、兵力を比較いたしましたときには、金額の防衛費というようなことよりもむしろストックの概念として兵力をどれだけ保有しているかというような観点から御検討いただくのが適切ではないかと思います。  そういうことを考えますと、我が国は陸上自衛隊では十六万人足らずというのが現実の数字でございますし、陸海空合わせましても定数では二十七万程度というような状況でございます。これに対しまして、日本の周辺諸国ではそれよりさらに大きな、けたの違うような数字があるという点はもう御存じのとおりだと思います。  ヨーロッパに目を移しましても、地上軍といたしましては西独では三十万を超しておりますし、フランスも三十万程度はございます。それから海上兵力で申しましても、ヨーロッパ諸国と比較するのがある意味では適当かと思いますのでそういう点で申し上げますと、日本の場合にはトン数では三十万トン弱、百五十隻程度でございますけれども、英国では百万トンを超しておりまして、五百隻になんなんといたしておりますし、フランス等も我が国よりトン数、隻数、いずれも上回っているというような状況でございます。  それから、F15に関連いたします作戦用航空機でございますけれども、これはただいま私、戦闘機を中心にいたしまして約三百五十機と申しましたが、それ以外の作戦機的なものも加えたといたしましても我が国は約四百機程度でございます。英国、西独、フランスはいずれも七百機程度、我が国の倍近い数量を持っているというような状況でございまして、兵力の中身を子細にごらんいただきますと、決して我が国防衛力というものが大きなものであるというふうには言い得ないのではないか、かように考えております。
  70. 田口健二

    ○田口委員 今の参事官の答えと防衛局長の答え、全然違うのですよ。さっきの参事官の答えはなってないですよ、そんな言い方は。各国はそれぞれの特性に応じて防衛力を整備していくのだから、それと比較をして何番だとかそんなのは関係ないという言い方をあなたはしているけれども、じゃ、よその国の兵力とかなんとかと全然無関係に日本の防衛力というのは整備しているのですか。そうじゃないでしょう。無関係ですか。それと逆のことを今度は防衛局長は言っているんですよ、兵力で見てくださいと。ところが、兵力を見ろといったって、アメリカとソビエトと日本では違うでしょう。アメリカは世界じゅうに前方展開をやって、本土以外でも世界の各国に基地を持って兵力を置いているのでしょう。日本はそんなことやりますか。やれないでしょう。それを一律に比較することは間違いなんですよ。だから、そういう各国の特殊事情というのはそれぞれあると思いますが、そういうものを見ながら、一体日本の今日の防衛力の現状はどの程度の水準にあるかということはやはり防衛庁だって考えているんじゃないですか。そういう点から見れば、私は、決して今日の日本の防衛力というのはそんなつつましやかなどという表現ができる問題じゃないというふうに言っているのですよ。その辺どうですか、防衛局長、もう一度。
  71. 日吉章

    ○日吉政府委員 総括的な判断としてのお答えは長官からしていただきたいと思いますが、国際参事官と私の答弁が違っているというふうにおとりいただいたとしますと、私の答弁が若干正確でなかったのだと思います。いずれにいたしましても、それぞれの国の地域特性あるいは予算の性格というようなものがございますので、一義的に単純に比較するということが非常に難しいのは事実でございますし、私も全く国際参事官と同じ考え方でございます。ただし、そういうようなことを若干捨象いたしまして、横においておきまして単純に兵力のストックを比較いたしましたときには、私が申し上げましたような数字になります。即それでもって一義的にすべてが割り切れ、判断できるわけではございませんが、ある一つの判断の参考になり得るのではないか、こういう点で参考までに補足説明をさせていただいた次第でございます。
  72. 石川要三

    石川国務大臣 今田口委員の御指摘でございますけれども、総理は、日本はつつましやかに防衛力を整備してきた、こういうふうな答弁があったわけでありまして、そういうつつましやかという表現の適否は別にいたしまして、私は、総理がそういう表現になったのは、やはり米ソの今言われたような核兵器を中心とする、しかもその役割はグローバルなパワーとしての性格を有する、そういう軍事力に比べまして、我が国防衛というものは憲法及び専守防衛等の基本的防衛政策のもとに平時から保有する云々、こういう大綱に基づいているものだという性格的なことから見て、決してそれが不適な言葉であるというふうには私は思っておりません。  したがいまして、必ずしもそれが間違っておるとは思いませんが、ただ、私も防衛庁長官になりまして、いろいろと検討して、いろいろと勉強しながら率直に感じますことは、庶民の防衛力の感じ方というものはなかなか理解に難しい点がある、こういう点は私も正直なところ肌身に感じます。幾ら大綱の内容説明し、憲法の制約等を説明しても、なかなかその点が素直に理解されない面もございます。これは防衛の一つの難しさだと私は思っているのですが、先ほど内田参事官あるいは防衛局長が言ったように、これは検討してみると「ミリタリー・バランス」の中から我が国防衛力をどの程度かと位置づけるのは難しいし、分析によっては非常に内容が多々複雑でありますから、物差しの当て方によっては変化もあると思うのです。  そういう面から見ても、言われるような大きなものではないというのもわからないでもないのですが、庶民感覚からいうとなかなかわからない点もあることも事実だと思いますので、何といっても防衛力は国民に理解されなければいけないわけでありますから、こういう点は、私ども極力今後もその理解に努力をしていきたい、かように思うわけでございます。
  73. 田口健二

    ○田口委員 今長官からお答えをいただきましたのでこの問題についてはとめておきますが、普通の我々の感覚からいったら、ミリバラの問題もありますけれども、今の日本の防衛力は、少なくとも核兵器を除いたらイギリス、フランスに匹敵するところにあるというのが一般的な、専門家という人たちの見方ではなかろうかと思うのです。これは予算の額だけで比較しますと、NATO方式だとかいろいろ今まで問題があってなかなか比較しにくいという政府の答弁もありましたけれども、そういうものを除いて、兵力だとか装備だとかいうものから判断をしていってそう言われるのが妥当な線だろうなという、一般国民も大体そういう認識ではなかろうかと私は思うのです。ですから、何回も繰り返して申しわけないのですが、先ほどの海部総理のような表現になると、これは少し納得いかないという気持ちになるわけです。  そこで二点目の、これもまた海部総理の話で申しわけないと思いますが、四月九日の予算委員会で、一口で言ったらこう言っているのです。次期防の問題で「六十三年十二月の」これはたしか二十二日でしたか、「安全保障会議における討議も踏まえて、そして大綱の取り扱いを含め検討をしていく」ということを二回も言っているのです。長官は、ずっと見ていると余りこのことを言っていないような感じがするのですが、これは長官、どうでしょうか。大綱の取り扱いを含めて次期防を検討すると総理は二回も言っているのですよ。これは本当ですか。
  74. 石川要三

    石川国務大臣 あのときの総理の答弁と私の答弁とが少し食い違うとか、ニュアンスが違うとかいうことを新聞で取り上げられたことを私も記憶しております。ただ私は、ここで振り返って考えてみますると、基本的には違いはない、こういう見解なんです。確かに総理も今田口委員が言われたような表現でお答えしていることも事実でありますけれども、安保会議を開くしかも責任者、座長という立場、それから私の方はワン・オブ・ゼムで、その中のメンバーの一人でありますが、特に防衛というものを所管している責任者という立場からの表現が少し違ったととられたことは事実だと思うのです。しかし、私は一つも違ってなくて、何回も委員会の中で説明いたしましたように、要するに大綱のつくられたいきさつ、特に昭和五十一年のあのデタントの中での国際情勢の分析、そのときには結論的には大きな大戦はないであろうという前提、そしてまた二番目には日米安保体制の中で今後も日本の平和は続けられていくだろう、こういう枠組みを前提として大綱というものはできているわけでありますから、そういう点を考えると確かに十五年たった今日の国際情勢、軍事情勢というものの目に映る現象的な面では大変大きな違いがあることも事実でありますけれども、ずっとそのもとをたどっていく一つの枠組みといいますか、そのことから見ると、そのフレームというものは違っていない。ですからそういう中で大綱ができている、今後もこれにのっとっていくことは基本的に決して間違った考えではないだろう、こういうことでありまして、実は極端に言えばこれでもって安保会議等のメンバーの中の一人として臨む、また、総理は総理として、全体を指揮する立場でありますから、仮にそういう一つの素材が出されたとしても、やはり今の世界情勢というものを十二分に踏まえながらすべてを一回検討するんだ、そういう立場の極めて微妙なニュアンス、感じ方は国民にそういうふうに受け取られたかもしれませんが、私は基本的には違っていない、このように思うわけでございます。
  75. 田口健二

    ○田口委員 長官の今の御意見は予算委員会の答弁の中にもそういう考え方がずっと出てきているのですよ。いわば大綱の枠組みを守っていっていいんじゃないか、そんなに変える必要はないんじゃないかという考え方の方がずっとわかるのですね。ところが、今の総理の大綱の扱いを含めて検討するという答弁が出てきたその前の流れというのは、ちょっと時間がないからそこまでやれるかどうかわかりませんが、御存じのように大綱本文の中に書かれておる国際情勢の認識と今日の国際情勢というのはまさに大変な差があるのですね。変わっているのです。だから当然この大綱は見直すべきではないかということを質問者は一貫してお尋ねしているわけですね、若干の認識の差というのはそこで食い違っていますけれども。そういうやりとりの中で、最終的な締めくくりとして総理は大綱の扱いを含めて検討いたしますと言っているのですからね。これは私ども素直に受け取りますと、次期防の策定がまだ二年先だ、三年先だという段階であればこれからいろいろな問題を含めて検討しましょうという一般論として受け取ることはできますけれども、先ほど来の質問の中にありましたように、中期防は今年度で終わるわけですよ。八月にはもう概算要求を出さなければならぬわけでしょう。次期防の方針が決まらずに大綱の方針そのままでいくのか、いや、やはり国際情勢が随分変化をしているからもう一度大綱を見直して防衛計画を策定をしていくことにするのか、その方針の決定というのは時間的余裕はないと私は思いますよ。だから、この段階に来て大綱の扱いを含めて検討いたしますと言えば、ああこれは大綱を見直すことだなというふうに我々は理解するのですよ。もう一度、そこのところはどうでしょうか、そういう気持ちじゃないのですか。
  76. 石川要三

    石川国務大臣 防衛庁長官としては、今申し上げましたように確かに昭和五十一年と今日の世界の動き方、スピード、量、質、いろいろと比較すれば今日のデタントの方向というものは非常に大きいということは認識しております。けれども、やはり静かにデタントに向かってきた理由といいますか、そういうものは一体どこにあったかというと、やはりヨーロッパにおきましての二つの軍事グループといいますか、NATOとWPOの対峙、一時的には均衡の状態にあったこともあるけれども、それがむしろ今日においてはお互いの努力の結果、非常に緊張が下がってきた、こういう状態。したがって、そういう全体のもとから考えるともう東西全く真正面からぶつかるということはない。五十一年も世界情勢の分析からそういう一つの前提条件が出されたわけでありますから、その点は今も変わっていないと私は思うのです。むしろそれよりも今の方がもっと大きな意味では好ましい状況の方にどんどん進んでいる、こういうような状況もあるわけであります。  それからもう一つは、我が国自体の問題をとらえてみれば、日本とアメリカとの安全保障体制というものが、今日いろいろと議論がありました。見方によればいろいろと議論がありましたけれども、結果的にはそういうものが今日の日本の平和を構築した大きな起因をなしている、こういう見方もあの五十一年の策定のときの一つの前提条件だったと思うのです。これも今日私は変わってないと思うのです。  こういう二つの柱を前提に考えた場合に、要するにそのもとで大綱というものができているのですから、大綱の基本的な考え方については堅持してもよろしかろう、こういうのが私の見解でございまして、そういうふうに御理解をいただきたい、かように思うわけであります。
  77. 田口健二

    ○田口委員 今の長官の御意見は御意見として、また後からもう少しお尋ねをしたいと思います。  それで防衛庁、端的に言って次期防で何をやろうとしているのですか。この十四年間、大綱に基づいてあなた方は防衛力を整備してきた。言うならば、中期防が終了する段階で大綱が示している水準にほぼ到達をする、こう言ってきて、先ほど防衛局長も全部が全部とは言いませんが、おおむねそういう状況だ、こう答弁いただいているのですね。そうすると、次期防で今の水準をしばらく維持していきます、そういう計画を立てるんだという考え方なんですか、それとも何か新しいことをやろうとしているのですか。総理の答弁もあるのでわからないのですよ。その次期防の概念はどうでしょうか。
  78. 石川要三

    石川国務大臣 次期防というものは、平成二年度において大綱の水準はおおむね達成されたわけであります。その大綱というのは何かというと、再三くどいようでございますが、いろいろと憲法の精神とかそういったものの中から、いわゆる我が国を守る平時においてのあるべき最低の防衛力の整備ということが基本でございます。そういうものに到達したのですから、やはりこれからも独立国家としてはこういう状態を継続させていくことが日本のこれからの平和のために必要だ、私どもは国防の立場からはこういう基本的な考えでございます。  しかし、それはそうといたしましても、いろいろとさらに今後のことを展望した場合には、これももう十二分に御認識だと思いますが、どちらかというと、基本的な整備構想ということから言うと、一つには、正面装備というものの量的な拡大を図るよりも、むしろ将来方向を展望してみた場合に質的な向上を図ることを基本的に考えていきたいとか、二点目には、むしろ正面装備よりはその能力を有効に発揮するために情報、指揮・通信等の各種支援能力の充実を図っていくとか、あるいは先ほど来いろいろと問題になっております人的資源の制約等を考慮して隊員施策の充実を図る、こういうところに力を入れて省力化を図っていく、こういう三点ばかりに絞って、これからさらにそういう方向にポイントを置いてやっていきたい、こういう考えであります。
  79. 田口健二

    ○田口委員 長官の御意見はこのように私も理解をしたのですが、中期防が終了した段階でおおむね大綱が示した水準に到達をした、したがって、これからは防衛の基本方針からいけばそれを継続させていけばいいんだ、ただ、そうなった場合に、次期防の中で重点的に考えられるのが、言うならば後方重視ですね、そこに力点を置いて次期防というのを考えていきたい、このようなお考えだろうと思うのですね。  そこで、今長官の基本的なお考えは承ったのですが、まだ次期防の枠組みなりいろいろなものが決まっていない段階で、これは恐らく五年計画だろうと思うのですが、例えば二十三兆五千億などという数字がぽんと飛び出てひとり歩きしているのですね。そうすると、仮に五年計画にしても、二十三兆五千億という金額を五年で割ったら一体幾らなのか。平成二年度が四兆一千六百億、あなた方は今予算を出しているわけでしょう。今の長官のようなお考えならなぜ二十三兆五千億の金が要るのか、これは我々納得できないですね。この辺との関係はどうでしょうか。
  80. 日吉章

    ○日吉政府委員 委員ただいま御指摘になられました五カ年間で二十三兆五千億という報道が一部にありましたことは私どもも承知いたしておりますけれども、予算委員会でも再三にわたりまして御答弁申し上げましたように、私どもはまず次期防期間中にどういうふうな事業を行うべきかということを検討することから作業を始めまして、その結果それの裏づけとなる金額が幾らになるか、その金額が、次期防期間中の経済財政事情とかあるいは国の他の諸施策との間で調整がとれている、均衡のとれたものであるかどうかという御判断をいただいて決められるべき話だと思っておりまして、私どもは二十三兆五千億というような数字も出しておりませんし、防衛庁限りの作業においてすら事業の内容につきましてまだいろいろの議論をしているところでございまして、総経費枠についての検討というところにまでは至っていないというのが実情でございますことを御理解賜りたいと思います。
  81. 田口健二

    ○田口委員 金額については決めてないと言うのですから、それ以上やってもむだだと思いますが、そこで、先ほど長官の方から大綱の問題と幾つか基本的な立場といいますか見解を伺ったのですが、やはり国際情勢に絡んできて疑問点が残るのですね。  そこで一、二お尋ねをしたいと思いますが、多くはもう申しません。東ヨーロッパで始まった激動と改革、これは戦後の世界の枠組みを変えていっている。現実に変わりつつある。変わったと言ってもいいかもわかりません。その大きな転換点とは、やはり米ソ首脳によるいわゆるマルタ会談であった。そこから大きく、まあ人によれば、東西対立の崩壊であるとか、あるいは冷戦構造の終えんであるとか、いろいろな言い方をしておると思いますが、それはある意味では私は事実だろうと思うのですね。特に今日のデタントというのがかつて七〇年代のデタントと一番私が違うと思うのは、対決から対話、それが今回のデタントでは協力というところまで踏み込んできているところに同じデタントでもやはり大きな違いがあるのではないかと私は思います。非常に大ざっぱな、大まかなことを言いましたけれども、この辺の認識というのは、長官、どうでしょうか、どういうふうに御認識なさっていらっしゃいますか。
  82. 石川要三

    石川国務大臣 今日の国際情勢、なかんずくヨーロッパにおける大きな地殻変動というものは、これはもう本当に今委員がおっしゃったとおりだと私も認識しております。これはむしろ、まだまだこれからも変化があると思うのですね。アイ・エヌ・ジーだと思うのです。逆に今度は、どこまで行くのかというもう先がわからないほどの大きな不安もそれだけ起きていると言ってもこれもまた言い過ぎではないと私は思うのです。特に東西ドイツが統一された後にではどうなるのか、これはこれから非常に大きな問題があるわけでありますから、どれをとってみても大変大きな、想像できないほどの大きな変化がある。  これもこういう例を挙げて的確に答弁の中の一つになるかどうかわかりませんが、例えばこの間新聞を見ましたら、ソビエトの中にも北方四島を返還すべきだなんという市民運動も起こっている、これなんというのも本当に想像を超えたような一つの変化ですね。それから、ソビエトも複数政党制になるあるいはまた民族問題もある、ゴルバチョフさん、どうするんだろう、うまくいくのかしら、成功するのかしらという心配も実はある。そういうふうに今大変大きな、想像できないような変化、こういうことであります。  ただ、こうなると言いわけ的になるのですけれども、そういうヨーロッパ、ソ連や東欧諸国の状況から比べると、アジアというものはちょっと違っている、こういう現実もまた私どもは認識せざるを得ないのじゃないかな、こういうふうに私は思うわけでございます。
  83. 田口健二

    ○田口委員 国際情勢の認識について長官が今言われたことも、私どもが考えておることも、そう差異はないと思うのですね。  そこで、防衛庁でも外務省でもいいのですが、先ほど私が申し上げました米ソ首脳によるマルタ会談、これを契機として今のデタントと言われる時代の中で着実に新しいことが起こってきつつあるのですね。それは米ソ両国による軍拡から軍縮ということです。具体的にそういうものがあらわれてきつつある。例えば戦略核全廃条約ですか、こういうものの基本的な合意に達したとか、兵力の削減、国防費の削減も含めていろいろなことが出てきておると思うのですね。それをどういうふうに具体的に認識しておるか、わかっておれば説明してもらいたいと思う。
  84. 神余隆博

    ○神余説明員 お答えさせていただきます。  先般行われました米ソの外相会談におきまして、米ソ間のSTART交渉、戦略核の削減交渉でございますけれども、これが大きな進展を見せたことは委員指摘のとおりでございます。さらに、我々といたしましても、START交渉、これを通じまして、米ソ関係はもとより東西関係が一層安定化いたしまして、我が国を含みます西側の安全が高められることを期待しておるところでございます。  さらに、欧州におきましては、ソ連及びワルシャワ条約の間で奇襲攻撃能力あるいは大規模侵攻能力といったものの除去を目指して交渉が行われておることも委員指摘のとおりでございます。  これに対しまして、アジアにおきましては、欧州のようにNATOとワルシャワ条約といった陸上戦力が対峙する状況にはございません。また、いろいろな地政学的あるいは戦略的な環境が極めて複雑に絡み合っておるということでございますし、さらに加えまして、北方領土を初めとしまして、あるいは朝鮮半島の緊張、カンボジアの問題等々種々の政治対立、紛争がなお未解決であるということでございますし、また、これらの問題の背景にある政治、軍事情勢、さらには歴史的な要因もあるいは諸条件も欧州とは基本的に異なっておるというのが事実だというふうに認識しております。したがいまして、仮に米ソ間あるいは欧州における東西間の緊張が低下をするというような場合であっても、アジア地域の抱える緊張や対立がこれによって直ちに変化するということでは必ずしもないわけでございます。  また、アジアにおきましては、東西関係の枠組みだけでは解決し切れない地域の複雑な要因が存在しているのも厳然たる事実でございます。したがいまして、この地域におきましてはこの地域独自の問題の解決といったものが必要なゆえんであろうというふうに思っております。  確かに、欧州あるいは米ソ間の軍備管理・軍縮交渉というものは、アジア・太平洋においても何らかの影響を及ぼし得るものではあるというふうには思っておりますけれども、しかしながら、米ソ両国ともこの地域の軍事バランスを基本的に変化させるというほどの軍備削減をとることは表明しておりません。いずれにいたしましても、長期的にはアジアにおいても実効性のある軍備管理・軍縮を進めることが望ましいというふうには考えておりますけれども、現状ではその条件は整っておりません。したがいまして、このような地域の国際状況改善して、情勢の安定を図りながら関係国間の政治的な信頼関係を醸成するあるいは構築する、それが一番重要なことではないのかと思っておりまして、そのための努力を継続しておるところでございます。
  85. 田口健二

    ○田口委員 私も予算委員会会議録をずっと読んでみて一番感じるのですが、素直な意見を申し上げますと、先ほど長官もお答えになりましたように、これだけ国際情勢というものが本当に我々が予測をする以上のスピードで、内容においても変化をしてきつつある、これはもう否定できないですね。そして、私が今申し上げましたように、このニューデタントの中で、マルタ会談以降あるいはその前からももちろん流れはあったのですけれども、具体的に米ソ両国が軍拡から軍縮の方向にはっきりと歩み出してきている、こういう状況もだれも否定できないんですよ。ですから、そういう状況に立ってこの防衛大綱というものを見たら、ここに書いてある国際情勢の認識というのは現状とは違うんですよ。基本的な認識は、東西対立を前提にして、もちろん大規模な武力による紛争は起こらないだろうという見通し、前提はありますよ。しかし、背景に米ソのさまざまの対立があるとか、やはり東西対立という大きな枠組みの中でこの防衛計画大綱というのが策定をされているわけですから、これは矛盾をするのではないかということを皆さんも言っているわけですよ。そうすると、今答弁があったように、ヨーロッパでは変わってきているけれどもアジアは違う。さっき長官も言われたのですよ。アジアが違うというのは、私は、素直に聞いておりましたら、この防衛大綱をいじらないためにそういう理屈をつけているだけだ、やはりこう受け取らざるを得ないのですが、アジアの違う原因は何ですか。どこがどう違うのですか。     〔委員長退席、林(大)委員長代理着席〕
  86. 内田勝久

    ○内田政府委員 お答え申し上げます。  ただいま外務省の方からも答弁ございましたとおり、アジアの情勢といいますのは、基本的に、この地域の安全保障の特性を反映いたしまして、現在ヨーロッパで起こっているような事象が将来起こってくる可能性というものを否定するものではございませんですけれども、そういうものが起こりにくいような環境になっているということが第一点でございます。  具体的には、この地域での各国の対峙の状況一つ見ましても、ソ連と米国が対峙していると同時に、ソ連はあわせて中国との関係でも備えているわけでございますし、アジアにおける米軍と申しますのは、ソ連との関係のみならず、かつ、広くアジアの平和と安定、さらにはインド洋の方にまで展開いたしましてこの地域の安定に資するというような形での対峙がございます。また、朝鮮半島は朝鮮半島で別の対峙をつくっておりますし、中国というものもある。カンボジアも別途の戦域といたしまして一つの紛争地域になっているという、こういう大きな戦略的な環境というものが違っているということであろうかと思います。  第二に私申し上げたいと思いますのは、ヨーロッパでの最近の大きな変革というものは、基本的にヨーロッパの変革を通じまして今日軍縮・軍備管理の交渉がヨーロッパ地域ではああいう形で進んでおりますけれども、アジアにおきましては、そういうような政治的な民主化の動きというものが、少なくともアジア諸国においてはなかなか見られていない。中国、北鮮等の国におきましても、基本的に今回の変革を受けて自分の国の体制というものをどのようにして死守していくか、あるいは守っていくか、今回のそういう変化に対応する仕方はどちらかというと極めて保守的でございます。そういう状況もあろうかと思いまして、そういう中で政治的な信頼関係というものがアジア諸国の間ではまだなお生まれていないという状況にあろうかと思います。  ヨーロッパの場合には一九七五年のCSCEを経まして、十五年たって現在ようやく軍事的な一つの新しい動きというものに到達しつつあるやに見えるわけでございますが、アジアの状況ではそういった政治的な信頼関係というものがまだなかなか生まれてきていない。そういうことでございますので、むしろその政治的な懸案の解決あるいはそれを通じての政治的信頼関係の醸成というものがアジアにおける軍備管理あるいはアジアにおける軍縮といったものに先行して起こってくるというのが一つの歴史的な流れとしても想定できるのではないか。まずそういう点についての一つの大きな進展というものがアジアに起こるべきではなかろうか、このように考えている次第でございます。
  87. 石川要三

    石川国務大臣 先ほど外務省の方からの答弁あるいはまた今の内田参事官の答弁、あるいは聞いておりまして恐らく田口委員は満足をされてはないと思いますけれども、ただ、今委員質問の中に何か大綱を変えないためにこういう一つの情勢分析を樹立しているんじゃなかろうかというふうな意見の御質問がございましたのですが、そういうことは私はない。少なくとも私に関しては、何となくそれを固めるためにそういうふうにあえて曲げて情勢分析をしているんじゃない、これだけは申し上げたいと思うのです。
  88. 田口健二

    ○田口委員 今長官の方からわざわざまたそういう御意見がございました。いや、そうなんですよ。というのは、防衛局長、あなたは予算委員会の答弁の中で、「脅威の中には顕在的脅威と潜在的脅威がございますが、私どもはソ連が顕在的脅威であると今まで申し上げたこともございません」。これはそうですね。ところが、「現在もソ連は潜在的脅威であり得る」、あなた、はっきり言っているんですよ。そのことを中心に置いて今日まで防衛力の整備を進めてきたと言うのでしょう。どうなんですか。私はわからないですよ、頭が悪いせいか知りませんが。大綱の考え方をはっきり言ってくださいよ。大綱というものはソ連の潜在的脅威に着目をして今日まで軍備を進めてきたのですか。これはどうなんですか。こういうのがあるから私もちょっとひねって考えざるを得ないんですよ。
  89. 日吉章

    ○日吉政府委員 お答え申し上げます。  予算委員会におきまして私が極東ソ連軍は潜在的脅威であると言わざるを得ない、認識せざるを得ない、こういうふうにお答え申し上げたのは事実でございますが、それに対処するために我が国防衛力を整備しているのである、あるいはする必要があるのだというふうに申し上げてはおりません。ソ連は脅威か、潜在的脅威かというふうなお尋ねをいただきましたので、それに対しましては、極東ソ連軍はその能力に着目して潜在的脅威と考えざるを得ませんと申し上げたわけでございます。我が国防衛整備の基本的な考え方は、周辺諸国の脅威に対して直接対処するということを目的としたものではございませんで、国際社会が安定化の方向に国際協力によりまして移行していっている、なおかつ日本におきましては、日米安保体制によって日本に対する本格的侵攻が防除されている、こういうふうな認識に立って、憲法が認めております自衛権の範囲内で我が国が平時から保有すべき防衛力というものを整備していくということでございます。これは決して周辺諸国の脅威に対して直接対処するということを目的としたものではありませんで、むしろ世界各国におきましてそれぞれの国がそれぞれの果たすべき役割を果たさないでいますと、かえってその地域が力の空白となって不安定要因になるおそれがありますので、そういうことにならない責めを果たす必要最小限度の防衛整備を図っていこう、こういうことをしているのだと申し上げたわけでございます。  それから、先ほど極東及びヨーロッパにおきます情勢の違いにつきまして、外務省及び国際参事官の方から答えをいたしていただきました。委員の御質問の中で、極東がそういうふうに違っているから、防衛整備を、大綱に基づいて、大綱を変えないでそのまま進めないといけないと考えているのではないか、こういうふうな御指摘がございましたけれども、そうでは全くありませんで、ヨーロッパにおきましても確かに軍備管理・軍縮は顕著に進んでおりますが、それはあくまでもNATOとワルシャワ条約機構、ワルシャワ条約機構は今や空洞化しつつあると言われておりますけれども、少なくともソ連を中心としたグループとNATOという形でその力と力とのバランスをとる、そのバランスをできるだけ低いレベルでとるという形で話し合いが進んでおる。そこには依然としてやはり力の均衡とその抑止という論理が働いているということは事実だと思うわけでございます。しかしながら、そういうふうな先鋭な東西間の対峙関係が極東においてはございませんので、そういう関係で直接的にヨーロッパにおきますような事象が極東においては発生してきていないということでございます。  それとも関連するわけでございますが、したがいまして、大綱は決して脅威に対処するものではございませんで、そういうふうな国際関係安定化のための国際関係を前提として、それから日米安保体制を前提として、平時から保有すべき防衛力を整備しているわけでございますから、こういう物の考え方がまさに大綱の基本でございますので、この基本的な考え方というものは今も十分妥当する、ある意味では五十一年当時よりも現在の方がより妥当すると言い得るのではないだろうか、こういうふうに申し上げているわけでございます。  五十一年に大綱が決定されましたときに、当時の防衛庁長官であられました坂田防衛庁長官は、これは従来のような東西対立といった冷戦時代の考え方から脱却すべきという考え方に立っているというような趣旨の御発言もされていらっしゃるということをこの際つけ加えさせていただきたいと思います。
  90. 田口健二

    ○田口委員 今防衛局長は、周辺諸国の脅威というものを念頭に置いて防衛力を整備しているのじゃないのだ、こういうふうな言い方をちょっとされたようですが、あなたは予算委員会でこうも言っているのですよ。能力と意図がある、意図というのは非常に変化しやすいが、意図と能力が結びついたらこれは脅威が顕在化をするんだ、こう言っているのですよ。周辺諸国の脅威というものが全部念頭にないということだったら、ここの中に出てくる限定的で小規模の侵略に対応するという大綱の考え方はどこから出てくるのですか。この周辺諸国の脅威なんというのはあるいは潜在的であってもそんなことは全然関係ない、こう言っているのですか。
  91. 日吉章

    ○日吉政府委員 私が御答弁申し上げておりますのは、我が国防衛整備考え方は周辺諸国の脅威に直接対処することを目的として整備をしているものではないと申し上げているわけでございます。しかしながら、今委員が御指摘のように、私どもといたしましては、防衛力を整備する場合には周辺諸国の能力等を念頭に置くことは必要でございますけれども、念頭に置きましてもそれに直接対処するということを目的として整備水準を定めているわけではないということでございます。  非常に極端なことを申し上げますと、世界各国の状態、特に我が国周辺の状態におきましてどう考えましても他国を侵略し得る能力がないというような軍備の状況になりましたときには、その基盤的防衛整備の具体的な内容というものは今私どもが考えておりますものとは違ったものになってくるのは事実だと思いますけれども、現在進められております軍備管理・軍縮交渉というようなものの現在の状況におきましてはまだまだそういうふうなところまで軍備管理・軍縮交渉が進んでいるというふうには私どもは認識していないわけでございます。
  92. 田口健二

    ○田口委員 今言われたように、周辺諸国の脅威に対して直接対処する考えはない、これはもう当たり前ですね。大綱ができたときにはそういう考え方を、いわゆる基盤的防衛力という形に変更していったわけですからね。ただ、今私は防衛局長の答弁を聞いておりますと、かつてこの委員会の中でも私自身も何回か御質問いたしましたが、洋上防空の問題だとかシーレーン防衛の問題だとかOTHレーダーの問題だとか、これはやはり大綱の精神から逸脱をしておるのではないかという立場で随分何回も御質問をしたのですが、防衛庁の答弁は一貫してソ連脅威論なんですね。ソ連極東軍が兵力が拡大しつつある、そういうことをずっと今まで言い続けてきたのですよ。最近の防衛庁、今の御答弁も含めてそういう考え方はもう変わったのですね。これはどうでしょうか、確認しておきます。
  93. 日吉章

    ○日吉政府委員 防衛計画の大綱に従いまして、特にその基本的精神、考え方に従って防衛力を整備するという防衛政策の考え方は変わっておりません。これまで大綱策定後、大綱が考えておりました国際情勢の認識とは別といたしまして、緊張が高まる中におきましていろいろ国際情勢につきまして国会等で御議論をいただきましたときに、私どもはこの極東におきます緊張関係も高まっているということを申し上げたことはあろうかと思いますが、それによって我が国防衛整備の水準を引き上げないといけないというような観点で申し上げたことはございませんで、むしろ平時から保有すべき基盤的な防衛力というものを五十一年に目標設定しておきながら、十年さらに十年以上も経過しているにもかかわらずそれに到達していない、ところがそういう状況の中におきましても国際関係は残念ながら緊張を強めているということであるならば、ぜひ防衛計画の大綱のその基盤的な防衛整備の水準にできるだけ早く到達すべく努力をする必要があるのではないか、こういう観点から国際情勢につきまして言及をしたことはあろうかと思いますけれども、それに直接対処するために防衛整備の水準を動かさないといけないというような形で申し上げたことはないと考えております。
  94. 田口健二

    ○田口委員 余り時間がなくなりましたので、最後に一、二点長官にもお尋ねをしておきたいと思うのです。  先ほど参事官の方から、あるいは外務省の方から、アジアにおける問題あるいは軍備管理から軍縮への方向に向けての説明があったのですが、確かにヨーロッパ地域と違ってアジアの場合に、地域的なあるいは歴史的な、文化的な、また地政学的と言ってもいいかもわかりませんが、そういう差があるのは当然の話です。具体的に今問題になっておる、例えばアジアの場合には、ヨーロッパのような全欧安保会議などという組織も率直に言って存在しない。しかし世界の流れが、言うならば東西対立の時代がもう終わって、新しいデタント、協力の時代に入っていく、まさに軍備管理から軍縮の方向へ動いていきつつあることは事実ですから、アジアだけは違うということではなくて、仮にあなた方が違うと言うならばアジアでもヨーロッパと同じような情勢をどう及ぼしていくのか、それは日本にとっても重大な使命だろうと私は思っているのです。それは長官としては、日本としてはアジアにおける軍縮のためにどういう方向をとっていくべきなのか、もし御見解があれば伺っておきたいと思います。     〔林(大)委員長代理退席、委員長着席〕
  95. 石川要三

    石川国務大臣 外務大臣ではありませんので、私の所管外でありますから、こうしたい、ああするなんということは申し上げられませんけれども、確かに世界じゅうが今御指摘のような方向に大きく進んでいる。アジアが全く絶縁状態だとは言っていないのです。やはりアジアも世界の一角でありますから、当然そういう影響を受ける、いい方向で進んでいるということはあると私は思うし、またぜひそうあってほしい、こういう期待はあるわけであります。  当然我が国も、これは予算委員会の中でも中山外務大臣がいろいろと答弁申し上げておりましたけれども、事実その外交努力を相当払っているわけです。卑近な例が、どの程度まで成功するかちょっと私には予測できませんが、何か六月にフン・センさんとシアヌークさんが東京で会談するのもまさに大きなその一環だと思うのです。そういういろいろな外交努力をやっていくことも当然だし、その結果はだんだんいい方向にさらに拍車がかかってくるであろうと私は大きな期待を持っております。  しかし、それはそれとしても、委員みずからも同感されておりましたが、要するに軍事対峙というNATOとワルシャワの一つのあのような対峙の仕方、これはアジアには残念ながらないわけです。米ソそれぞれのマン・ツー・マンといいますか二国間の関係で結ばれているというヨーロッパから比べると、非常に枠組みが違う。それから不安定要因もある。それからもう一つ、ソビエトの現在の軍事力、ミリタリーパワーというものは残念ながら低下しているとは私は思っておらないのです。いろいろと分析した内容、報告を受けますと、数は減っても近代化が進んでいるとか、あるいは確かにゴルバチョフの各所における軍縮の演説は聞いておりますけれども、まだ目に見えるものでもないというようなことから見ると、相当の、しかもかなり膨大なものであるということは事実である。そういうものが存在している限り、意図と能力じゃありませんが、私どもには、残念ながら、私個人としては余り好きな言葉じゃないのですけれども、潜在的脅威というものがあるということもまた事実だと思うのです。そういう中から私どもはどういうふうに防衛を確立していくか、こういうことではないかと思うわけであります。
  96. 田口健二

    ○田口委員 時間がなくなりましたから最後に、意見になると思うのですが、今までの質疑を通じて、率直に言って、長官の方から次期防に対する長官としてのお考え方ははっきりさしていただくことができたなと思っているのです。今でも私疑問に思うのは、いろいろな言い方を防衛庁はされていますけれども、素直にこの大綱を読んでみれば、この大綱が成り立っている国際情勢の認識と現状の認識は違うのですね。だから、これをそのままにしておいていいのか。枠組みは別に変える必要はないというように主張されておりますけれども、現実にここに書いてある国際情勢は違うのですから、これはなかなか国民に理解できないと私は思います。私は、あえて総理が大綱の扱いも含めて検討しますと言っているのですから、その結果を私も見守っていきたいと思いますけれども、その辺の疑問がどうしても残る。  それから、論議の中でいろいろありましたけれども、国際情勢ははっきりニューデタントの中で軍縮の方向へ向かって、それは内容的にヨーロッパあるいはアジアといろいろな見方もありましょうけれども、動いていっていることは事実ですから、ここらで日本の防衛政策を根本的に見直す必要があるのではないか。それは大綱が五十一年十月に策定をされたときに、それまでの四次防の考え方である所要防衛力構想から、百八十度とは言いませんけれども、基盤的防衛力構想というふうに展開をして、あの大綱ができて十四年間、今ここで大きく国際情勢はまた新たな方向に変わりつつあるわけですから、日本の防衛政策もそういった世界の流れであります軍縮という方向へ向けて転換をしていくべきではないか、そのことを私の主張として最後に申し上げまして、質問を終わります。どうもありがとうございました。
  97. 岸田文武

    岸田委員長 続いて、池田元久君。
  98. 池田元久

    ○池田(元)委員 神奈川四区から出てまいりました池田元久でございます。よろしくお願いいたします。普通であればちょうど昼の休憩時間でございまして、これも日本人の働き過ぎの一つのあらわれではないかと思いますが、長官、しばし食事は延ばして、申しわけないのですが、おつき合いを願いたいと思います。  安全保障問題というのは国家の根幹にかかわる大変重要な問題でありまして、この内閣委員会の審議の重要性も非常にあると私は思っております。委員会はごらんのように報道関係、すべて公開でございますので、わかりやすい論議をしたいと私も考えております。どうかよろしくお願いいたします。  私は、国際情勢の認識、そして我が国の軍備のあり方等についてお尋ねしたいと思います。  まず、我が国の安全保障に絡みまして国際情勢をどう見るかについてであります。確固とした政策を立てるためにもまず情勢分析、そして認識をしっかり持つ必要があると思います。我が国の安全保障とのかかわりで国際情勢をどのように認識しているか、防衛庁長官考えをまずお伺いしたいと思います。
  99. 石川要三

    石川国務大臣 池田委員の御質問でございます。失礼でございますが、今ちょっと委員の経歴を拝見させていただきましたら、早稲田大学の同窓の方だそうでございますし、大変懐かしく思いますが、できるだけ誠意を持って答弁をさせていただきたいと思います。  今お尋ねの国際情勢の認識でございますが、先ほど田口委員質疑の中におきましてもかなりその点につきましては触れてございますので、あるいは重複になるかもしれません。できるだけわかりやすく明快に私の考えを申し上げます。  委員も十二分に御承知のとおり、マルタ会談以後急激な地殻変動が起こっておる。そして、それは特にソ連、東欧諸国に目まぐるしい大きな激変が起こっておるというふうに認識をしております。そういうことでございますが、これは偶然にある日突然こうなったわけじゃありませんで、今日のようなこういう大きな変動になったということは大変好ましい方向でありますが、それはやはり労せずしてなったわけではなくして、今までのいわゆる西側陣営の団結、そしてNATO、ワルシャワの要するに二つの軍事グループの対峙、こういう中においてのいろいろと軍備管理・軍縮の交渉、こういうものの涙ぐましい努力が今日を招来した、こういうふうに認識しております。  それで、この先、これはアイ・エヌ・ジーでございまして、これから一体どこまで進むかは本当に予測できないほどの変化が今後もまだあるのではなかろうかと私は思います。と同時に、その中で一つの現象として東西ドイツが統一される、これはもう時間的な問題になってまいりました。この問題がまたさらに欧州全体の中の新しい、安全保障という立場からの大きな問題になりつつあるわけでありまして、それには当然希望とまた不安も伴っております。そういうようなことで大変大きく、第二次世界大戦以後初めての好ましい状況にはございますが、そういうことと同時に、不安を反面生じていることも事実である、そういうことがヨーロッパの全体の状況ではなかろうかな。それに比べますと、先ほど田口委員とのいろいろとやりとりがございましたが、私は、これは決して絶縁状態ではございませんけれども、アジアもそういう影響は出てくると思いますが、しかしそれがスピードの点においても量的にも質的にもかなりヨーロッパとは違う現実がある。それに加えてさらに一層不安要因がある。それは中国の状態、朝鮮半島の状態、カンボジアの問題、こういうようなことから見てもそれが言えるのではなかろうかな、こういうふうに認識をしているわけでございます。
  100. 池田元久

    ○池田(元)委員 ただいまの長官の御答弁で、地殻変動が起きている、好ましい方向であるという答弁はしっかりと受けとめたいと思います。  その後のなぜこうなったかについては、いろいろ御意見もあろうと思うのですが、私は、一つにはやはり膨大な軍事費を投入している超大国のそういった自覚がここへ来て一挙に出てきたのじゃないかという考えもあるということをここで述べたいと思います。  さて、今長官も申されましたが、国際情勢は劇的に変化しております。今出てきましたように東ヨーロッパの民主化、それからマルタ会談、さらには最近では統一ドイツへの加速度的な動き。ヨーロッパではNATO軍とワルシャワ条約軍の対峙するという状況が一変したわけです。そして、ヨーロッパだけではありません、アジアでも、ゴルバチョフ書記長、現在大統領ですが、去年の五月、三十年ぶりに中国を訪問いたしまして中ソ関係改善されました。ブッシュ大統領は連休の五月四日、オクラホマ州立大学で、世界は今、言葉や壁を使った冷たい戦争から抜け出したという趣旨の演説もしております。冷戦の構造は解消したのではないかと言われておりますが、冷戦の構造の解消についてもう一度長官のお考えを伺いたいと思います。
  101. 石川要三

    石川国務大臣 確かにNATO、ワルシャワの今までのはっきりした対峙から見れば、最近のワルシャワ機構の中におきましてのいろいろな変化が非常に顕著であるということは、私もそれなりに認識しているつもりでございます。しかし、では対峙関係、冷戦というものの構造がすっかり完全にもうなくなったかといえば、私はやはり進行形ではないかな、こういうふうな認識を持っているわけでございます。そういうことはアジアでは残念ながら二極構造ではない、こういう認識もしているわけでございます。
  102. 池田元久

    ○池田(元)委員 申すまでもなく、スーパーパワーのソ連は、ヨーロッパだけではございません、ユーラシア大陸にまたがるグローバルパワーですから、それが当然アジアの情勢に大きな存在としてかかわってくるわけでありますから、関係なしといたしません。むしろ大いに関係ある、アジアについても緊張緩和の流れは当然起きてくるというのが私の認識であります。ただ、直ちにそれが及ぶとかなんとか、現状ではどうかという議論は別といたしまして、トレンドとしては当然ではないかと私は考える次第です。  さて、国際情勢の認識についてさらに議論をしてみたいと思います。  東西関係ということで見てまいりますと、アメリカのチェイニー国防長官は昨年十一月、ABCテレビとのインタビューで、米ソ、またNATOとワルシャワ条約機構間の全面戦争の危険性は戦後最も低くなったと言明いたしました。また、これより先、国防総省が昨年九月に発表いたしました「ソ連の軍事力」の中では、戦後の歴史の中で恐らく今ほど米ソ対決の可能性が低下したことはなかったと強調しております。東西関係の変化をどのようにごらんになるか、お尋ねしたいと思います。
  103. 内田勝久

    ○内田政府委員 ただいま委員指摘のとおり、チェイニー国防長官の発言あるいはその他の発言にもございますけれども、最近の米ソ間、あるいは欧州における東西間の対話の進展といった好ましい変化を背景といたしまして、米ソ間の紛争あるいはヨーロッパにおけるワルシャワ条約機構からNATOへの襲撃の可能性が大きく低下しているという認識は示されている、その事実については私どももよく承知しております。しかし同時に、チェイニー長官は、ソ連の軍事的な能力を警戒することには今なお十分な理由があるということも述べておりますし、あるいは「ソ連の軍事力」、米国の国防総省の報告書でございますが、それを引用させていただきますと、「米国は、現実のソ連の軍事力に対処していかなければならず、依然としてソ連の軍事的な脅威に直面している」といったような指摘も行っている次第でございます。  私どもは、最近のソ連の変化に伴う積極的なあるいは肯定的な側面は大変好ましいものであり、これを評価しているわけでございますが、ソ連が依然として大変大きな軍事力を持っていること、それに対して警戒を怠るべきではないといったアメリカの姿勢は適切なものである、私どもも同じように考えている、こういうことでございます。
  104. 池田元久

    ○池田(元)委員 ただいまの答弁ですが、明らかに答弁者もおわかりでしょう。一つの発言、枝葉末節をとらえればいろいろあるでしょうが、大局としてとらえれば、私が申したように、チェイニー国防長官の発言も、まさに米ソの全面戦争の危険性は戦後最も低くなったというところが中心部分でありまして、今のようなところは、枝葉末節とは言いませんが、重要度の低いところでございます。そこを取り上げて云々しても話は進みませんので、その点よろしくお願いします。  さて、アメリカの国防の責任者であるチェイニーさんが、先ほどのように全面戦争の危険性は最も低くなったと言っておりますが、我が国防衛庁長官といたしまして、現在の東西関係について総括的にどうごらんになるか、一言で結構ですからお願いいたします。
  105. 石川要三

    石川国務大臣 先ほどの田口委員の中におきましてもその点があったと思いますが、一口で言えということでございますから申し上げたいと思いますけれども、チェイニー国防長官も言っているように、まさに全面正面衝突というようなものはあり得ないという認識は、私もそういうふうな認識をしているわけでございます。ただ、それと我が国のいわゆる大綱に基づく防衛政策との関連ということは、また見解がいろいろと――その次元が違った立場防衛政策を事実しているわけでございますが、世界情勢の分析を一口で言えと言えば、今このデタントの中で大戦争が起こるというようなことはどなたも想定し得ない、そういう認識ではなかろうか、かように思います。
  106. 池田元久

    ○池田(元)委員 非常に簡潔な表現でおっしゃられましたので、状況認識については私とそう隔たりはないということを申し上げたいと思います。  さて、防衛白書の問題をちょっと取り上げてみたいと思います。  防衛白書の中の脅威の認識、ソ連軍に対する評価についてであります。防衛白書では、ソ連は、「アジア・太平洋への影響力の拡大のため主として海・空戦力の顕著な増強を行うなど、一貫して質量両面にわたり軍事力を増強してきた。」と述べております。そして、ソ連を潜在的脅威であるとしておりますが、こうした見解は現在も変わらないかどうか、お伺いしたいと思います。
  107. 内田勝久

    ○内田政府委員 委員ただいま御指摘のとおり、極東ソ連軍、ソ連の特に極東における軍事力につきましては、最近一部量的にはいろいろ削減の方向への動きもあるように理解しておりますけれども、基本的には質の近代化という観点、そういう軍の近代化を通じまして、ソ連極東軍の戦闘能力という観点から見ますると、これは依然としてむしろ増強されているというように考えているのが私どもの認識でございます。
  108. 池田元久

    ○池田(元)委員 一例として中距離ミサイルSS20を取り上げてみたいと思います。  二年前まで防衛白書で、「発射後十数分以内にわが国などに到達できる」と脅威をうたっておりますが、そういったことを記されていたかどうか、担当の方にお伺いしたいと思います。
  109. 内田勝久

    ○内田政府委員 申しわけございません、SS20が十数分で我が国本土に到達するといった記述が防衛白書にあっただろうという委員の御指摘でございますが、突然でございますので、ちょっとその点チェックさせていただきたいと思います。
  110. 池田元久

    ○池田(元)委員 優秀な防衛官僚の方ですからこの程度のことは当然御存じかと思ってお伺いしたのですが、とにかくそういった脅威をうたっておりました。  そして、このSS20はその後どうなったか、お伺いしたいと思います。
  111. 内田勝久

    ○内田政府委員 SS20につきましては、委員御案内のとおり、INF条約に基づきまして撤廃されることになっている次第でございます。現在その実施状況がどうなっているかという御質問かと理解いたしますが、一部削減が行われつつあるということは事実でございます。残念ながら極東部分についての廃棄がどの程度になっているかということにつきましては数字を持ち合わせておりませんが、ソ連全体につきましてSS20の廃棄状況は、これは米国の現地査察エージェンシーOSIAのファクトシートによる数字でございますが、廃棄予定数六百五十四機のうち三百三十九機、約五二%を一九九〇年、ことしの一月一日現在で実施している、このように理解しております。
  112. 池田元久

    ○池田(元)委員 今の答弁にありましたように、SS20の例をとってもソ連の軍備、これは全体ではございませんが、その部分について少なくとも削減されているわけです。ソ連軍が増強されているという説はありますけれども、やはりこの一つの例をとっても疑問があるのではないかと私は考えます。  そして私は、この地域で大きな問題といいますか、注目されております海軍力の問題を取り上げてみたいと思います。  防衛白書では、「今日では、主要水上艦艇約百隻、潜水艦約百四十隻(うち原子力潜水艦約七十五隻)の約百万トンを擁するソ連最大の太平洋艦隊が展開している。」と強調しているわけですが、こういう認識でよろしいかどうかお伺いしたいと思います。
  113. 内田勝久

    ○内田政府委員 私どもも、委員指摘のように認識しております。
  114. 池田元久

    ○池田(元)委員 今、極東ソ連軍の海軍力についての防衛白書の数字について確認をいたしましたが、ちょっと私調べてみたのです。問題がないかどうか検証してみました。アメリカ国防総省発表の「ソ連の軍事力」、そしてまたよく引用されますイギリス国際戦略研究所の「ミリタリー・バランス」、そしてイギリスのジェーン海軍年鑑、いずれも最新版と比較いたしますと数字が異なります。  まず、主要水上艦艇については、防衛白書は百隻と言っていますが、「ソ連の軍事力」では六十九隻、「ミリタリー・バランス」で七十七隻、ジェーン海軍年鑑では八十九隻となっています。白書が著しく多くなっていますが、これはどんな理由によるものか、答弁をお願いします。
  115. 内田勝久

    ○内田政府委員 私どもの白書の数値につきましては、私どもが収集し得る各種の情報に基づきまして確認した事実を総合的に取りまとめ、かつ分析いたしまして、その結果を一定基準に基づいて取りまとめて公表しておるというものでございます。委員指摘のように、「ソ連の軍事力」あるいは「ミリタリー・バランス」あるいはジェーン海軍年鑑には若干違った数字が記載されておりますが、これはそれぞれの機関の独自の基準、手法あるいは算定の時点等々に基づきましてその隻数を算定しているものであって、また、私どもの理解するところでは、これらの機関におきましても過去においてその算定の基準を変更したということも聞いております。こういった数字を横に並べて時系列的に比較いたしまして白書の数値と単純に比較し得るという性格のものではないのではなかろうか、そういうことは適当ではないのではなかろうか、このように考えている次第でございます。
  116. 池田元久

    ○池田(元)委員 まだ時系列的なことは聞いていないのですが、既にお答えになったようでありまして、まずその前に最新の一九八九年段階での数字を比較したわけであります。  先ほど申し上げましたように、極東ソ連軍の海軍力の主要水上艦艇の隻数については白書が余りにも多いということを指摘しました。次に潜水艦で比べますと、防衛白書は百四十隻ということを記しております。ところが「ソ連の軍事力」は百十八隻、「ミリタリー・バランス」では百二十隻、そしてジェーン海軍年鑑では百十三隻となっております。これもまた白書が一番多いわけです。大体二十隻から二十七隻多くなっております。これは主要水上艦艇と同じように偶然ではないと思います。いずれも白書が一番多いわけでありまして、この点再度答弁をお願いします。
  117. 内田勝久

    ○内田政府委員 潜水艦の数についての数値の違いにつきましても、先ほど私から御説明申し上げましたと同様の理由から、必ずしも横並びで比較するということは適当ではないのではないか。私どもといたしましては私どもなりに諸情報を総合してその結果を分析し、公表させていただいているものでございます。
  118. 池田元久

    ○池田(元)委員 単に比較するのはおかしいのではないかという、これは論理も何もない結論だけの答弁でありまして、こういう答弁はいかがかと思います。  さらにこの防衛白書の問題、今の海軍力の問題について質問を続けたいと思います。  過去十年間、時系列的にこの四つの公刊資料を比較したわけです。防衛白書以外の三つのソースでは、極東ソ連軍の海軍力のピークは一九八三年から八六年にかけてということになっております。その後はむしろ減少に転じております。ところが、防衛白書では、むしろ減少どころか横ばいないし若干強含みといった記入がこれまでされております。この点いかがですか。
  119. 内田勝久

    ○内田政府委員 私のお答え、また同じことになるわけでございますが、例えば「ソ連の軍事力」について具体的に申し上げますと、艦艇については本年に基準の変更をしておりますし、御指摘がございませんでしたけれども、例えば航空機につきましては八七年に基準の変更をしていると言っております。ただ、その細部の内訳については明らかにされていないわけであります。他方、「ミリタリー・バランス」につきましても毎年データが見直されていて、各年版に示された情報から根拠ある時系列的な比較ができるとは限らないという注釈が「ミリタリー・バランス」にもついている次第でございます。またさらに、ジェーン海軍年鑑につきましても、これはソ連の太平洋艦隊の所属隻数全体については概数を示すにとどまるという形で記載しているということを御指摘申し上げたいと思います。
  120. 池田元久

    ○池田(元)委員 もちろん基準の変更等については私も調べました。しかし、全体の隻数、それからトレンドを申し上げているわけです。そういう意味で、当然それを考えた上での質問をしているわけでございまして、今の答えはちょっといただけないと私は思います。  これは、ここでやっても、自分たちが調べたのだから間違いないという答えであれば議論は進みませんので、これ以上この問題については深くは防衛当局には質問はいたしません。  軍事専門家の間で、軍備増強のために防衛白書はソ連の海軍力について過大評価をしているのではないか、こういう疑問も出されております。いわゆる「ソ連の軍事力」、「ミリタリー・バランス」、特に「ミリタリー・バランス」とジェーン海軍年鑑は関係者の間では非常に権威のあるもの、世界に通用するものであります。そういったものと比べて非常に多いということは問題があるのではないか。今の答弁が非常に明快であれば私も納得いたしますが、この辺はそういった疑問を払拭できないのではないかと考える次第です。この点について、防衛庁長官、答弁をよろしくお願いいたします。
  121. 内田勝久

    ○内田政府委員 ただいま委員の方から、我が方の防衛白書に記載されている数字は、その他いろいろの刊行物あるいは公表数字に比べていずれも高過ぎるのではないかという一般的な御意見がございました。たまたま私、手元にございます資料で一つだけ事例を申し上げますと、例えばソ連太平洋艦隊の艦艇の総隻数でございますが、これは平成元年の白書では八百四十隻と記載しております。これに対しまして、残念ながら「ミリタリー・バランス」は何も記載しておりませんが、チェイニーが九〇年、ことしの四月十九日に議会に報告した数字を申し上げますと、これは八百七十五隻ということになっておりまして、一つの事例ではありますけれども、必ずしも常に我が方の数字が高いということではないということで申し上げさせていただきたいと思います。
  122. 池田元久

    ○池田(元)委員 ちょっとそこまでおっしゃると、何というか、説得力が落ちます。とにかく私は権威ある三つの公刊資料と我が国防衛白書を比較しているわけでありますから、もうちょっと正確な答弁が返ってくるのではないかと思ったのですが、案の定、案の定といいますか案外、私の期待に反して、要するに私たちが調べた、そしてまた結論はこうだという答弁でありました。この点はもっと深くその辺の事情をこれからも私調べたいと思うのですが、とにかく大きな疑問があるということを指摘したいと思います。石川防衛庁長官、この点について御答弁をお願いします。
  123. 石川要三

    石川国務大臣 今質疑を拝聴しておりまして、統計というものがとり方によってはいろいろと出てくるものだなというそんな感じがまずしたわけでございます。いずれにしましても、私は日本の防衛庁長官でありまして、防衛庁が出しております白書、これをもし疑うようなことであるならば、これはもうとてもじゃありませんけれども職責が全うできないわけでありますから、我が国防衛白書というものが完璧である、こういうふうに感じております。  しかし、今委員も、いろいろと疑問がある、ただ、本日のこの質疑だけじゃなくして、これからも大いにひとつ勉強していきたいということでございますから、どうぞ大いにひとつそういう勉強をされまして、また公式的なこういう場でなくとも結構でございますから、大いにひとついろいろと調べました結果につきましてもお知らせをいただければありがたい、こんなふうに思います。
  124. 池田元久

    ○池田(元)委員 せっかくいろいろ励ましの言葉もいただきましたけれども、逆に、防衛庁長官として、やはり国会は議員同士の議論が本来中心でありまして、国務大臣として防衛庁を所管しておられるわけでありますから、私たちは政府側に質問するというよりも、本来は国会議員である、衆議院議員である、国務大臣である石川さんと話すというのが本来のルールであります。これは私みたいな新人がこんなことを言って申しわけないのですが、そういった意味から、国務大臣として、防衛白書は当然防衛庁の所管事項でありますから、誤りがあったら直すようにしていただきたいと私は考える次第であります。  さて次に、ソ連の脅威論について少し検証してみたいと思います。昨年の九月末、ソビエトは一九九〇年の実質国防費を八・数%減らしまして七百九億ルーブルということにしました。前年には、国連演説でゴルバチョフ氏は二年間に五十万人の兵力削減の方針を明らかにしました。こういったソ連側の軍備削減の方針に対しまして防衛庁はどう考えるか、その辺の考えをお伺いしたいと思います。
  125. 内田勝久

    ○内田政府委員 最近ソ連の軍の首脳部あるいはゴルバチョフ氏自身を含めまして、彼らのソ連の軍備の削減についていろいろ公表しております。一方的削減を実施するということも言っております。私ども、このような一方的削減についてはそれ自体大変好ましいことで、ぜひ実効ある実施を期待したいと思っております。ただし、現時点におきまして申し上げれば、そのような公表された部分についてであれ、どの程度実行されているのか必ずしも十分私どもとして実態を把握し切れていないという状況にございます。  また、さらに申し上げれば、ゴルバチョフ氏が例えば北京での演説で極東ソ連軍の十二万人の削減ということを公表しておりますけれども、それがよしんば完全に実施されたといたしましても、なお私どもといたしましては、極東にあるソ連の軍事力の蓄積には大変膨大なものがある、この蓄積というのはなおかつこの地域での安全保障にとっての最大の不安定要因であるというように認識している次第でございます。
  126. 池田元久

    ○池田(元)委員 ストックを言うならフローも問題にしなければならないと思いますが、次に、ソ連の中でも我が国とかかわりのある極東ソ連軍について、去年ゴルバチョフ書記長は中国を訪問した際、極東ソ連軍と太平洋艦隊の一方的な削減計画を発表しました。また、ソ連の軍縮担当者は、昨年の六月、日本の新聞のインタビューに答えて、太平洋艦隊については艦隊の行動半径を縮小して外洋への進出回数を減らす、また、軍事演習を減らすなどの措置がとられているということを言明いたしました。こういった点からいって、ソ連の脅威は減少したのではないかと思われますが、その点いかがでしようか。
  127. 内田勝久

    ○内田政府委員 ただいま委員指摘のような先方ソ連側からの発表あるいは一方的な提案と申しますか、一方的削減の意思表示というものを私どもも聞いておりますけれども、基本的に、先ほど申し上げましたとおり極東ソ連軍の軍事力の蓄積には相当なものがあるということ、さらに、一部の量的な削減が行われましてもそれは質的な強化によって補って余りあるものがございまして、極東ソ連軍の戦闘能力という点に着目いたしますとむしろ強化されているのではないかというのが私どもの認識でございます。
  128. 池田元久

    ○池田(元)委員 次に、長官にお尋ねしたいと思います。  アメリカのチェイニー国防長官が、先月、米議会に報告しました「アジア・太平洋地域の戦略的枠組み」という文書があります。その冒頭で、「ソ連の脅威は一九七〇年代や八〇年代ほど強く認識されていない」と明確に述べていますが、この点、長官はどのようにお考えになりますか。
  129. 石川要三

    石川国務大臣 チェイニー国防相がそのようなことを発表したことは認識しております。ただ、チェイニーさんもそういう見解を述べると同時に、依然としてソ連は、今日におきましても、米国を初め同盟国諸国にとりまして、特にアジアにおきましては非常に大きな潜在的脅威だというようなこともきちんと言っているわけであります。その視点の置きどころによっては、今いわゆる米ソのグローバル的な役割から見て特にその攻撃的な面からだけの視点を置けば、確かにその脅威論というものが低下しているということは、これはアメリカの一つの見解ではないかな、かように思っているわけでありまして、必ずしも我が国もそれと異なった見解を持っているわけではございません。
  130. 池田元久

    ○池田(元)委員 同じような発言でございますが、パウエル統合参謀本部議長は、五月七日のワシントン・ポスト紙のインタビューでちょっとおもしろいことを言っているわけです。国防力見直しの背景といたしまして、ソ連の軍事的脅威に本物の変化が出ていることをペンタゴンの人間にも知ってもらおうと努めている、このようなことを言っているわけです。ソ連の軍事的脅威に本物の変化が出ていることをペンタゴンの人間にも知ってもらおう、頭のかたい人間にも知ってもらおうという意味だと思うのですが、こうした発言が出るような状況ではないかと私は考えます。この辺、今、防衛庁長官お尋ねしましたので、事務当局、もう一度答弁をお願いします。
  131. 内田勝久

    ○内田政府委員 お答え申し上げます。  パウエル米統合参謀本部議長がワシントン・ポストでのインタビューでいろいろ言っているというただいまの御指摘、あるいはその他の場所でも、パウエル統合参謀本部議長がアジアにおけるソ連の脅威が低下しているという趣旨の発言をしていることは、私どもも承知しているところでございます。  ただ、どういう根拠に基づいてパウエルがこのような発言をしておるかということについて私どもは必ずしもその根拠を承知しているわけでございませんが、私どもなりの解釈で申し上げますと、現在、ソ連は、委員御案内のとおり新思考外交というスローガンのもとで、より敵対的でない対外関係を展開しております。ソ連自身にとっても、ペレストロイカを進めていく上では平和で安定した国際環境というものが必要であるということかとも思います。  また、そういう対外的側面に加えまして、国内的には極度の経済不振にありますし、あるいは民族問題、バルト三国の問題等々の激化、そういった国内的な事情も抱えていることもありまして、アジア・太平洋地域におきましても、ソ連が従来に比べてその軍事力を行使して侵略的な、あるいは対外膨張的な政策をとるということは、そういう軍事力をむしろ行使しにくいような状況になってきている、そのようにアメリカが受けとめまして、その結果がパウエルの発言になっているのではないかと考えている次第でございます。  ただ、一点補足して申し上げさせていただきたいと思いますことは、アメリカは、極東ソ連軍の軍事能力につきましては、これは引用でございますが、「我が国の位置する北東アジアにおけるソ連の軍事能力は、自国防衛に必要な能力をはるかに超えており、米国と同盟国に対する軍事的脅威である」といった認識もあわせて述べているということも指摘させていただきたいと思う次第でございます。  以上でございます。
  132. 池田元久

    ○池田(元)委員 非常に長い答弁でありましたが、要するに私の聞きたいことは、ソ連の軍事的脅威に本物の変化が起きている、こういった認識についてどうかということを端的に答えていただければ済む話であります。  さて次に、こうした国際情勢の緩和を受けて軍備の削減、軍縮問題が焦点として大きく浮かび上がってまいりました。アメリカの軍備削減計画がいろいろありますが、一月末発表の一九九一会計年度国防予算では、支出権限ベースで二千九百五十一億ドル、対前年度比実質二・六%の減、これは皆さんも御存じだと思うのです。そして陸軍現役二個師団の廃止、海軍艦艇の大幅削減を打ち出しております。さらに九二年度以降の四年間も実質年二%を減とするという方針を出しております。議会側はこれに対して不満でありまして、二百から百億ドル以上の削減案を打ち出しております。下院では五月一日、約八十億ドルの削減をするという予算決議案を可決しております。こうした状況です。こうしたアメリカの軍備削減計画について、我が国防衛庁当局の見解を聞きたいと思います。
  133. 日吉章

    ○日吉政府委員 お答え申し上げます。  米国の国防政策といいますものは、米国の置かれている地位から考えまして、グローバルな観点から防衛力の整備というものを行っているわけでございます。したがいまして、その中には戦略的なものも含めまして自由主義諸国をグローバルに前方展開するというようなことで防衛力の整備を図って、国防の整備を図っております。  したがいまして、そういう観点から考えますと、ただいまも委員からいろいろ御議論がございましたように、米ソの間におきまして軍備管理・軍縮交渉が進んでおりますし、なおかつ、ソ連におきます自由主義諸国とのイデオロギーにおける面での違いが希薄化してきているというような状況もあり、また、米国自身が財政的に双子の赤字を抱えているというような事情等もありますれば、米国のグローバルな観点から果たすべきそういうふうな防衛の役割は維持しながらも、前方展開戦略を初めとしてそれらの国防の枠組みを合理化、スリム化できるものはできるだけしていきたいというような考え方に立つことはある意味では当然ではないか、かように考えておりますけれども、基本的には依然として米国はグローバルな観点から自由主義諸国あるいは世界全体の平和と安定を維持するための役割は担うという考え方はそのまま堅持しているものだ、かように考えております。
  134. 池田元久

    ○池田(元)委員 また、先ほど申し上げましたパウエル統合参謀本部議長は、五月七日のワシントン・ポストでございますが、東西関係の変化に伴い、今後四、五年間に米国防費の二五%を削減するという構想を明らかにしております。制服組からこういった、制服組といいますか、これはまさに統合参謀本部議長の発言でありますから非常に重いものでありまして、今や軍備削減、軍縮の時代に入ったのではないかという考えにたどり着きますが、その点石川長官はどのようにお考えになるか、お願いいたします。
  135. 石川要三

    石川国務大臣 何年間にでしたか、ちょっと記憶はございませんが、四分の一減らす、二五%削減するというような記事は私も拝見いたしました。ただ、そのときその記事を見て感じましたことは、少なくとも、細かいことは抜きにして、とにかく先ほど防衛局長からも申し上げましたように、米軍あるいはソ連、こういうものと我が国防衛の役割とか目的とか一切違うわけですね。根本的に違っていると思うのですね。したがって、米軍あるいはソ連も含めて両国の軍事力というものは、内容的にも性質も違うし、量的にも問題にならぬほどの物すごい格差があるわけてありますから、米ソがこれからお互いに軍縮をやるという中で努力すればそういうことも可能かな、私はこういうふうに感じたわけであります。  大いにそれをやってもらいたいと思うわけでありますが、じゃ一体そういうことが我が国にできるかとなれば、これはもうほとんど不可能と言っても差し支えないと私は断言できると思うのです。なぜかなれば、先ほど来るる申し上げましたような性格の大綱に基づく防衛力の整備でありまして、委員も御存じだと思いますが、例えば今日の約四兆一千五百億の内容を見ても、今まで年賦といいますか、五年計画くらいで年々支払って、いろいろと自衛艦なりあるいは飛行機なり買うわけであります。そういう義務的な歳出経費だけでももう四〇%、そして人件費、糧食費合わせて四〇%、これだけで八〇%あるわけですね。残りが二〇%。その二〇%の中をさらに分析すれば訓練費がある、油がある、兵舎の改築がある、修理がある、いろいろとあって、これまた何割かよく計算してございませんが、半分以上の固定的な支出になっているわけですね。ですから、来年から何年間かかって、五年間かかってアメリカと同じようにやれといったって、これはとてもじゃないけれどもできる問題ではない、こういうふうに思うのですね。ただ、くどいようでございますが、世の中が今軍縮に進んでいることは事実でありますから、私どももやはり軍縮に協力するような防衛考えていくべきことは当然だ、こんなふうに思っているわけでございます。
  136. 池田元久

    ○池田(元)委員 確かに防衛費の内訳、シェア別では長官のおっしゃるとおりかもしれませんが、とにかく我が国のGNPは大きいですね。防衛費の絶対水準も大きいですから、これは絶対水準で比べれば相当なものなんです。そしてやはり六・六%以上という、これは先進国の中では突出しているわけです。飛び抜けた伸び率をしているということは事実なんです。私は、その点について、これから国際情勢を十分認識されて、当然改めなければならないと考える次第でございます。  話を先に進めまして、今も長官ちょっとおっしゃいましたが、緊張緩和の努力をすべきである。海部総理大臣も欧州の劇的変化をアジアに定着させたい、こう述べております。米ソに軍縮を急ぐように日本政府としても大いに働きかけるべきではないかと思います。いろいろ検討した上、北東アジアに信頼醸成措置をとりまして、そういった軍縮、軍備削減へのイニシアチブを日本がとるべきだと思うのですが、その点石川長官のお考えを承りたいと思います。
  137. 内田勝久

    ○内田政府委員 委員指摘のとおり、一般論として申し上げますとアジア・太平洋地域における軍備管理・軍縮の実現ということは好ましいことでございますし、長期的に追求すべき目標であると考えている次第でございます。  ただ、先ほどの田口委員からの質問にもございましたとおり、アジアの地域といいますと、政治的、経済的あるいは地政学的に見ても、やはりヨーロッパとは大変異なった状況にございます。一つには、NATOとWPOといったような明確な対峙あるいは対決の図式というものはございませんですし、政治的にも、例えば日ソ間で申しますと北方領土の問題、朝鮮半島の問題あるいはカンボジアの問題といったいろいろ未解決な問題がございます。そういう状況のもとで、この地域で軍備管理・軍縮交渉を進めていくことはなかなか難しい。それで、今必要なことは、我々もやらなければいけないことは、ただいま申し上げましたようないろいろな政治的な諸問題を解決して、この地域にいわゆる政治的な信頼関係と申しますか信頼醸成的な雰囲気というものをつくっていくことがまず先決であろうかと思っている次第でございます。
  138. 池田元久

    ○池田(元)委員 ぜひ信頼醸成措置を積極的に検討して、実現するようによろしくお願いしたいと思います。  こういった国際情勢の激変を受けまして、外務省には安保検討チームといったような部内の検討チームができました。これだけの情勢の変化ですから防衛庁もお考えになっていると思うのですが、長官、そのあたりはいかがでしょうか。
  139. 日吉章

    ○日吉政府委員 お答え申し上げます。  ただいま委員から御指摘がございましたように、外務省におきまして国際情勢の変化に対応するためのプロジェクトチームがつくられたというような報道がなされたことは承知いたしておりますけれども、外務省の方で果たしてそういうふうなチームがつくられているかどうかという事実関係は私ども確認いたしておりません。  それはそれといたしまして、防衛庁といたしましては、日ごろから国際情勢の変化につきまして、私が所属しております防衛局を中心といたしまして恒常的に分析検討を行っているつもりでございまして、現在、特に御指摘のような問題に絞りましてそれに対する特別のプロジェクトチームをつくるということをする必要はないのではないかと考えておりますし、かつ、そのような考え方もございません。ただ、いずれにいたしましても、国際情勢は極めて流動的でございますので、これまで以上に私どもはその分析検討等に十分配意する必要があるし、鋭意努力を重ねていく必要があろうか、かように考えております。
  140. 池田元久

    ○池田(元)委員 そうした検討チームという必要性は私は大いにあると思います。そればかりではなく、これは総理大臣に聞くべき問題かもしれませんが、政府全体で、アメリカに軍備管理軍縮局というのがありますが、要するに各省庁から離れて、大統領や国家安全保障会議そして国務省に助言する、そしてまた軍縮交渉の主役として出てくるといった機構も将来的には日本に必要ではないかなという感じがいたします。これはまた質問の場を変えて改めて取り上げてみたいと思います。  もう一つ、日本の軍事力に対する各国の警戒感について取り上げてみたいと思います。  先ほどから申し上げておりますチェイニー国防長官は二月九日にワシントンで日本人記者団と会見したのですが、自衛隊は増強をされるべきかという質問に対して、必ずしもそうは思わない、日本は歴史的にも、憲法上の考慮からも、軍事力の規模について自分なりの懸念を持っていると思うと明確に述べております。東西の緊張緩和の中で日本の軍事力に対する見方が変わりつつあることを浮き彫りにしたと言えるのじゃないかと思います。  また、先ほど僕が取り上げました二十一世紀に臨む「アジア・太平洋地域の戦略的枠組み」の中で、不安定要因となる戦力投入能力の向上は思いとどまらせる、こういう方針を示しております。アメリカは明らかに日本が軍事大国になることに懸念を表明しているわけであります。さらには、最大限米国から兵器を調達させる、世界の重要地域の安定に向けた米国と西側同盟の政治努力に日本を組み込む、これは明らかに日本のひとり歩きを警戒しているわけでございます。同盟国と言われますアメリカからこうした見解が出てくるわけでありまして、日本の軍事力に対する警戒は非常に強いのではないかと思いますが、この辺について長官の見解を承りたいと思います。
  141. 石川要三

    石川国務大臣 いつの日かわかりませんけれども、私もやがて訪米する機会があると思いますが、そういう時期にはぜひ今池田委員が御発言されましたようなことも実際自分の目で確かめてみたい、こんな気持ちもございます。ただ、私はまだ浅学でよくわかりませんが、アメリカ自身も日本が軍事大国になるということは絶対反対であります。また、憲法上からもそういうことが構造的に不可能であることもよく御存じだと思います。まずアメリカ自身だって決して日本が大きくなることは歓迎していない、こういうことは随所でうかがわれるわけでございます。  余計なことかもしれませんが、私過般、東南アジア三国を歩いてみたときにも、やはり行ってみると、我が国防衛政策というものにつきましてはかなり御理解いただけました。正直のところ私はその点については大変うれしく思ったわけでございますが、しかしなかなか、一部にはそれがしつこくあることも事実ですね。そういう中で私も自問自答しながら、なぜそういうものがあるのだろうということを考えてみたこともございます。  いずれにしましても、私どもは決して軍事大国を志向している国じゃありませんから、アメリカがその報告の中でそういうことを随分言われたことにつきまして、私自身何かちょっと理解できない面もございます、正直のところ。しかし、いずれにしましても、繰り返すようでございますが、私どもはできるだけそういう不安を解消するように努力をしていきたい、かように思います。
  142. 池田元久

    ○池田(元)委員 長官がASEANといいますかアジアを訪問されたことについてお尋ねしようと思ったのですが、先回りされて答弁されましたのでその点はあえて多くは触れませんが、東アジアから米軍兵力が段階的に削減されますと日本の軍事大国化が進むのではないか、アメリカのプレゼンスが引くと日本が出てくるんじゃないか、こういった懸念はあると思いますので、そういう点大いに留意する必要があると思います。また、中国の最高実力者鄧小平氏も、さきに西独のシュミット前首相に対しまして、日本の強力な経済力が軍事力に転化するかもしれない、こう述べておりまして、周辺国の目は厳しいものがあります。やはり日本は自粛自戒すべきではないかと考える次第でございます。  時間がありませんので、少し残り時間をいわゆる「平和の配当」といった問題について触れてみたいと思います。  私も連休を利用しまして、超党派の議員団の一員としてアメリカへ行ってまいりました。アメリカの国防総省、国務省にも行ったのですが、そういったアメリカの政府や議会ではピースディビデンド、「平和の配当」という言葉がよく聞かれました。盛んに論議されております。「平和の配当」の意味についてどのように理解されているか、お伺いしたいと思います。
  143. 日吉章

    ○日吉政府委員 言葉をどのように理解しているかということでございましたので、まず事務的にお答えをさしていただきたいと思います。  いわゆる「平和の配当」という言葉が何を意味するかが必ずしも明確ではございませんけれども、主に米国内の一部の論議において、最近のソ連、東欧の変化とか軍備管理・軍縮交渉の進展を背景として、米国の国防予算を削減しその削減額をどの分野にどれだけ配当するか、こういうような意味で用いられているのではないか、かように考えております。  なお、米国政府は国防予算に関しまして、削減するに当たってはいかなる場合も用心に用心を重ねた上で事を運ばなければならないとの考え方を表明しているというふうに承知いたしております。
  144. 池田元久

    ○池田(元)委員 軍縮は貴重な資源を平和利用に解き放つ。これは日常の生活物資さえ不足している今のソビエトはもちろん、財政赤字に悩んでおりますアメリカにとっても大きな福音であることは事実です。軍縮が解き放つ資源、「平和の配当」というのはどう活用すべきか、前向きにとらえて国際的な議論が巻き起こる必要があると思います。我が国は平和国家として国際的にも「平和の配当」づくりに努力すべきであるということを強調したいと思います。「平和の配当」につきましてもうちょっと議論したいのですが、これはまた別の機会に譲りたいと思います。  それから、いわゆる防衛計画の大綱について一言触れたいと思います。  去年の暮れ、外務省が、外交青書というものがありますが、その後新しい事態がいろいろありまして、それを踏まえて「過渡期の世界―日本はどうする―」といった文章をまとめたのですが、その中では「世界は、今、大きな変化の中にある。ソ連・東欧の動きにより東西関係は、対決から対話と協調へと変化しつつある。」こう一番最初の文章で述べております。政府部内でも、対決から対話と協調へ東西関係が変わりつつあるということを認めたわけでありまして、この点について石川長官の見解を改めて伺いたいと思います。
  145. 石川要三

    石川国務大臣 大変失礼しました。今ちょっと質問趣旨がつかめなかったものでございますが、私なりに解釈いたしますと、今池田委員が御発言されました今日の東西間の緊張緩和、これについてどういう認識を持っているかという御質問というふうに受け取ったわけでございますが、私も今委員が御発言されましたように、今日の東西関係というものは極めて良好な方向に進行中である、このように認識をしているわけでございます。
  146. 池田元久

    ○池田(元)委員 もう一度そのさわりだけ言いますけれども、「過渡期の世界」という文章で、一番冒頭に「ソ連・東欧の動きにより東西関係は、対決から対話と協調へと変化しつつある。」という文章があるわけです。それで、先ほどから防衛計画の大綱の話が田口議員からも出ましたが、防衛計画の大綱の「国際情勢」の認識の部分では、「米ソ両国を中心とする東西関係においては、各種の対立要因が根強く存在」している、こうなっているわけです。この点を改める必要があるのではないかと思いますが、長官、どのようにお考えですか。
  147. 日吉章

    ○日吉政府委員 大綱の作文といいますか、文章についての御指摘でございましたので、まず私の方からお答え申し上げたいと思います。  委員ただいま御指摘になられました文章が大綱の「国際情勢」のくだりの前段の方にあることは事実でございますが、そういうふうな状況を踏まえまして、大綱が総括的に「国際情勢」につきましての結語として結んでおりますところは、一つは、「核相互抑止を含む軍事均衡や各般の国際関係安定化の努力により、東西間の全面的軍事衝突又はこれを引き起こすおそれのある大規模な武力紛争が生起する可能性は少ない。」それからもう一つは我が国周辺のことを言っておりまして、今言いましたような、「大国間の均衡的関係及び日米安全保障体制の存在が国際関係の安定維持及びわが国に対する本格的侵略の防止に大きな役割を果たし続けるものと考えられる。」こういうふうに締めくくっておりまして、この締めくくりの基本的な認識は今も十分適用し得るのではないか、当時よりもより一層こういう状況が妥当するような時代になってきているのではないか、かように私どもは考えている次第でございます。
  148. 池田元久

    ○池田(元)委員 後のくだりのことは私聞いておりませんで、要するに一番根幹部分の「東西関係においては、」というところを聞いておるわけでありますから、常識的な論議、わかりやすい論議を僕はしたいと思うから、時間がないのですがあえて聞いたわけです。  「米ソ両国を中心とする東西関係においては、各種の対立要因が根強く存在」している、これは今の国際状況、先ほどから長官に伺っている認識とは明らかに違うと思います。これは小学生でも明らかです。この部分をどうするのかということをお伺いしているわけです。長官、お願いします。
  149. 石川要三

    石川国務大臣 大綱見直し論については、今国会の中でも、予算委員会の中でもいろいろと議論が闘わされたわけでありますが、どうも私なりに見ますると、かなりの部分では、ある点ではコンセンサスがありながら最終的なところでちょっと分かれてしまうような感じが実は率直に感じられるわけでございます。今委員も言われたように大綱を見直すこと、基本的には私は必要ないんじゃないかというのは、くどいようでございますが、要するに大綱をつくる前提条件ですね、その国際情勢の分析の条件の、今防衛局長も言われましたように、そういう国際情勢の認識の中から二つの点が一つの前提条件としてファクターになっているわけです。この中から要するに、ではどういう程度のものをやったらいいかという大綱ができているわけですから、その前提条件としては、東西の対峙の中からやはり正面衝突はないだろう、大規模的なものはないだろうというのと、それから日米安保体制、こういう二つの柱が枠組みとして出され、それによってその水準が決められたということでございますから、前提条件についてはフレームは違っていないのではないかというのが私の考えなんでございますが、確かに現象面では、今の東西関係の対峙が依然として残っているというこの表現一つをとってみても、十五年もたっているわけですから、てにをは全部、内容全部が全く変わっていないなんということは言っていないわけでありますから、多少そういう御理解もいただきたいな、こういうふうに思うわけでございます。
  150. 池田元久

    ○池田(元)委員 長官はよく御存じのように、この部分は根幹部分でありまして、国の安全保障でも何でもやはり情勢認識がまず前提でございますから、大変重要な問題だと思います。まあ、てにをはと申されましたが、今すぐここで全面的に書き直しということは、そうおっしゃれば一番いいんですけれども、それも無理でしょうから、大いに指導力を発揮されていずれ今後こうした条項は適正な形に表現を変えられるようにされたらいかがかと私は考える次第でございます。  とにかく時間が余りなかったのですが、一時間にわたり国際情勢の認識、軍備削減の方向などについて質問をいたしたわけであります。言ってみれば、日本は極東の、そしてまた憲法の規定する国家として、やはり周辺の各国に対しまして、先ほども出ました信頼醸成措置その他各種の努力をされ、また、米ソに対しても軍縮の努力を促すように努力する必要があると思います。これからも実りのある安全保障の論議をしてまいりたいと思いますので、よろしくお願いします。どうもありがとうございました。
  151. 岸田文武

    岸田委員長 続いて、北川昌典君。
  152. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 私は、提案されております法案を中心にいたしまして、いろいろとお尋ね申し上げたいと思います。  最初に、法案の中でいろいろと出てまいります問題点に関連して聞きたいと思うのですが、自衛官で、十八歳で入隊する、そして五十三歳、若年定年でございますね、退職された人の通算所得といいますか、十八歳から五十三歳までの期間に受ける給与はどのぐらいになるのか。それとあわせて、五十三歳で退職させられる、五十三歳若年停止の自衛官の平均的退職金はどのくらいになるのか、ちょっとお尋ねをいたします。
  153. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 お尋ねは十八歳から五十三歳までの自衛官の平均の生涯所得というようなことだと思いますが、高校を卒業しまして二士で採用されました自衛官の、階級准尉で定年退職するとしたモデルにより仮定計算をいたしました場合、在職間の給与の合計額は昭和六十三年度価格で約一億五千八百万円ということでございます。  それから、そのときの退職手当は大体二千二百万程度ということでございます。
  154. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 今それぞれ金額が答弁されたわけですけれども、この金額が一般職の公務員、初級で入られた公務員と比較した場合の状況はどうなのか。今お聞きしました生涯所得退職金のそれぞれの比較がわかれば出していただきたいと思います。
  155. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 私ども、一般職について正確な責任ある計算をする立場にはございませんが、物の書類に出ていましたものでいたしますと、高卒III種でモデルでの計算をいたしますと、一億八千五百万円ということでございます。これは昭和六十年度価格でそういう形になります。  そういうことで、一般職での計算を人事院でしたということを今申し上げたような数字で聞いたことがございますけれども、一般的に言って違う職種、違う職責のものについては給与体系も違いまして、それを単純に比較することは適当でないということでございますので、御質問趣旨に必ずしも合うかどうかわかりませんけれども、自衛官と特に一般職の中の公安職の(一)というものとを比較をいたしますと、先ほどの自衛官につきましては給与が一億四千八百万円といたしますと、公安職(一)では二億ちょっと、二億五百万程度というようなことになっておりまして、退職手当はおおむね同額というようなことでございます。
  156. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 今回出されております法案は、先ほどからもお話がございますように、自衛隊員の特殊的な勤務の中で五十三歳を基準とした若年定年制がしかれておる、適用を受けておる。また同時に、公的年金の一元化によって支給開始が六十歳に繰り下がっていくということでございますから、当然退職から年金受給までの期間が七年間、こういうことになるわけで、そういう面で確かに退職自衛官所得の激減、生活費にかなり無理がくるといいますか苦しくなる、こういうことについては、私どもも十分認識するのであります。しかし、出されておりますこの法案の内容、性格には若干疑義を持つものでございますので、この点について具体的に御答弁なりいただきたいと思うのです。  まず、給付金の性格でございますけれども、年金の性格を帯びたものか、いわゆる年金につなぐ性格としての給付金であるのか、あるいは給与の後払いか、給与というのは当然のことながら勤労の対価として与えられるものでありますから、退職した以降は給与ということにならないので、後払い的な性格を持つものか、あるいはまた、退職手当ですかの上積みの後払い、こういう性格なのか。いろいろ考えられると思うのですけれども、これはどれに当てはまっていくのか、お尋ねしたいと思います。
  157. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 今回御提案申し上げております若年定年給付金は、若年定年から生じます不利益を補うということを目的といたしまして行います政策的な給付でございます。したがいまして、既存の給与あるいは退職手当あるいは年金といったようなものの体系では説明のできない、いわば早期退職の代償的性格を有する政策的給付というふうに考えております。  今具体的にお挙げになりました例えば給与、まさに御指摘の中でもお話がございましたように、給与そのものは在職者に対する労働の対価ということでございますので、それではない。それから、それの後払いという解釈になりますと、これはなぜ後払いということになるのかというような性格づけとして、給与の後払いというものが本来存在するものかどうか、その辺のことを考えますと、そういう整理をするのも若干無理があるのではないか。  それから、退職手当との関係で申しますと、退職手当は御承知のとおり勤続報償的な性格を持っております。本給付金の場合には、勤続が長ければ長いほど、つまり退職が遅ければ遅いほど薄くなる。退職手当とはその意味で逆の関係に立っております。退職手当は勤続報償的な性格でありますから勤続期間が長ければ厚くなる、それに対して本給付金の場合は、勤続期間が長くなればしたがって六十歳までの期間が短くなる関係上、薄くなるというようなことでございますので、この給付金については勤続報償的な考え方では説明ができないということでもございます。  それから、御承知のとおり、年金は社会保障として老後の生活保障というようなことで理解されておるということだとしますと、これも若年定年という五十三歳から六十歳に至るまでの間の対応ということからいたしますとやはりそういう説明もできないのではないか。実はこれは今非常にいい御質問をいただいたわけでありますが、部外の研究会の中でもこの点についての性格をどう考えるべきかということについてざっくばらんに申し上げて非常に議論があったところでございます。これについてはやはり既存のそういった各種手当年金等といったことでは割り切ることのできない一種独特の新たな政策的給付であるということで整理をいたさせていただいたわけでございます。
  158. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 大体日本のといいますか、全国共通かもしれませんけれども、サラリーマンの給与所得といいましょうか、サラリーマンが生活していく上においての通念的な一つの方式としては、給与があり、退職手当があり、年金でということが今まで一つの賃金体系をつくってきたと思うのです。しかし、今答弁がありましたように、これはまさに独特な政策的なものであるという御答弁でございました。とするならば、新しい生活保障体系が今までの通念的な給与体系の中に組み込まれた、このように理解をしていいのか、そこあたりはどのようにお考えになっているのか。自衛隊独自の将来永遠に続く政策的制度とお考えなのかどうなのか。新しく日本の賃金体系の中に仕組まれてきた制度であるが、将来もあくまでも自衛隊独自の制度である、どちらの方に認識されておるのかお尋ねしたいと思います。
  159. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 一般公務員定年が六十歳であるのに対しまして自衛官だけが唯一の例外として若年定年である、例えば五十三歳ということでございますので、本制度はその若年定年退職せざるを得ない自衛官についての不利を補うということから考えたものでございます。その若年定年自衛官だけであるということからいたしますと、私はこの制度は専ら自衛官についてのみ考え得る制度であるというふうに思っております。
  160. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 といいますことは、定年年齢年金開始年限が接続しない限り、また自衛隊がある限り、永遠に独特な制度としてつくられたもの、自衛隊職員に限って七年間は、最高七年間はこれによって保障されていく、こういう性格のものであって、一般に広がっていくものではない、このように理解されておるのかどうか。
  161. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 ただいま御質問の中に、年金支給開始年齢定年との差が存する限りという御指摘がございましたが、私どもの趣旨は、一般公務員定年六十歳と自衛官若年定年とのその差の不利益、つまり一般公務員定年自衛官若年定年というその差の不利益を埋めるために設けた制度でございまして、直接的に年金支給開始年齢との関係はございません。ただ結果的に、事実上そういう制度に仕組んであるということではございますけれども、したがって、将来に支給開始年齢がどういうふうに発展していくかということとは直接の関係を持たないものでございます。現在において、自衛官だけが一般公務員の唯一の例外として若年定年をしている。繰り返しになりますけれども、その定年一般職定年六十歳とのその差の不利益に着目した制度でございます。
  162. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 諸外国における軍隊ですね、これらについては若年定年制があるのかどうか、実施されているのかどうか。そしてまた、あるとするならばそれらについての後の保障等はどうなっておるのか。実情がおわかりなら教えていただきたいと思うのです。
  163. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 諸外国につきまして、まず定年について申し上げますが、ほとんどの国は我が国若年定年ないしそれ以下というところが実情でございます。  例えば、フランスで大尉以下が五十二歳以下になっております。西ドイツが大尉以下五十三歳以下。それからカナダは、これはずっと若くて少佐以下で四十七歳以下。その他韓国は非常に若くて少佐以下が四十三歳以下というようなことになっております。アメリカの場合は、形の上ではかなり高い年齢、六十歳というような定年になっておりますけれども、在級年数との関係で上位の階級に行かない場合には直ちにやめるというようなことで、運用上は四十歳代で若年定年退職をしているというような実情でございます。  次に、これらを踏まえてどういう若年定年対策がとられているかという御質問でございますけれども、ほとんどの国において、国家の政策によります恩給という制度でもって対応しているというふうに聞いております。
  164. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 今お話がございましたけれども、私もまさにこのいわゆる特権的な制度という立場からいきますならば部分的には恩給制度の性格を持ったもの、このように理解しておりますけれども、そのように防衛庁でも理解をして提案されているわけですか。旧恩給ですね。
  165. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 恩給といいますのは、公務員が長年忠実に公務に従事して退職した場合等において、国が退職後の生活の支えとして行う年功的な終身の年金給付である、長年公務に従事した者に厚い給付を行う、こういうことでございますので、本給付金は、先ほど来御説明しておりますような制度及び趣旨からいたしますと、形式上ないし実態上もこれには該当しないというふうに考えております。
  166. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 実質的に該当しないとおっしゃいますけれども、旧恩給法の概念としては、天皇制国家のもとでの軍人、官吏の永年勤続に対する慈恵的、特権的待遇として本人またはその遺族に年金または一時金が支給され、その反面で国に対する無定量の服従義務の精神を培養する役割を果たしてきた、こういう定義づけがあるわけですけれども、これと同じように、この前検討された中での文章の中にも「自衛隊は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略からわが国を防衛することを主たる任務としており、自衛官はこの戦闘集団の構成員として、有事、武力侵略を阻止するため、自らの身体生命が危険な状況下で、上官の命令に服従し、勇気と忍耐をもって部隊行動を行うことを使命としている。」こういう特殊性についてうたわれておるわけです。先ほど私が申し上げましたいわゆる旧恩給法の概念と、言葉は違いますけれども、大体通ずるところがあるわけであります。ただ旧恩給法と違うのは、七年間にわたるという限定がある支給ですね。そういう中で、私はどうしても旧恩給法と期間を除けば同じ性格のものではないかというふうに理解するけれども、そうじゃないのでしょうか。
  167. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 繰り返しになりますけれども、私どもの提案申し上げておりますこの若年定年対策特別給付金は、これは性格、趣旨からいたしまして、一般公務員が六十歳まで定年で働けるのに対して、若年で定年退職をせざるを得ないことから生ずるその間の不利益を埋めるということでございますので、恩給というのとは性格が違うというふうに理解いたしております。  なお、ただいまの御指摘でございますが、今おっしゃったような趣旨から恩給に類似するということでありますると、例えば一つの例でございますけれども、自衛官の中にも定年が六十歳でやめたという場合にはなぜ適用にならないのかという問題にもなるわけでございます。およそ退職自衛官すべてについてずっとこの給付金をということであればそのようなことになるかとも思いますけれども、その意味からも、今ちょっと御質問の中にも七年を対象とするから若干違うがという断り書きがございましたが、私はその点がまさに大きな違いではなかろうかというふうに思っております。
  168. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 まあ見解の相違でありますが、言いますならばやはり国のためにいろいろと献身的な活躍をしたということでの一つの報償的な意味も含まれておるかもしれませんけれども、年限を除きさえすればやはり旧恩給制度の性格に大変似ておる。しかも、先ほどからお話がありますように、特定の一つの政策的な性格を持った制度だとおっしゃるわけでございますから、私はどうしてもそのように思えてならないわけであります。言うならば一般人とは違う特権的な制度だという印象を非常に強く私は受ける、このことを申し上げておきたいと思うところであります。  さらにこの中で二、三お聞きしておきたいのですけれども、先ほどもお話がありましたが、給付金については二回に分けて支払う。例えば定年の年と翌々年ですか、そういう二回分割払いになっておりますけれども、先ほどのような趣旨であるとするならば、何も二回に分けなくても一回で支給された方が趣旨に沿ってくるのじゃないか。若年でやめられる隊員生活給与の激変緩和といいますか、それを緩和するためには一遍で支払った方がいいんじゃないかと思うのですけれども、二回に分けてやる根拠は何でございましょう。
  169. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 確かに私どもの考え方の理想からいいますと、一回で一時金として払った方が御指摘のとおりより趣旨にかなうということはあろうかと思います。しかしながら、その中で私どもといたしましては、退職後の所得が平均的には四割程度ということを申し上げておりますけれども、平均で四割ということは、中には在職時の給与を上回るような再就職賃金を得ている者もいるかもしれない。そういう者にまでこの給付金を給付する必要はないであろう。そういたしますと、これは退職後の一年間の所得をチェックしなければいけない。それが明らかになりますのが翌々年の八月ごろが最も早い時期ということになりますので、全体を計算いたしましたうち七分の二を退職直後に払いまして、残り七分の五の中で調整を施したいということでございまして、所得を勘案して所得の高い者に支給を避けるという目的から便宜二回に分けたということでございます。
  170. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 やはり中には退職時の所得を上回る人も出てくるかもしれませんけれども、退職後一年、二年では、仮に商売を始める、事業を始める中ではそう所得は上がっていくとは思わないわけですね。したがって、二年後に支払われた後、例えば退職後四年か五年後かなりの所得を取るようになった場合、これはどういうことになるわけですか。一年だけをその対象にされるのか、あとの部分はもう対象にされないのか。
  171. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 この最大七年間の期間、基礎算定期間のうち一年間の所得を見て給付金を決めるということの問題点の一つであろうかと思いますが、それには二つありまして、一つは翌年の再就職賃金所得をチェックした結果、高いということで制限にひっかかったケース、それがその後所得が減少したというケースについてはどうするかという問題がございます。それについては規定を設けておりまして、六十歳の時点で振り返って平均所得、賃金を出した上で差額について追給をする。それは若年定年の不利益を補てんしたということになりませんのでそういう制度にいたしております。  他方、ただいま御質問趣旨はそうであろうかと思いますが、逆のケース、つまり翌年の所得は低くて給付制限にひっかからなかった、したがって、給付金をフルにもらったけれども、翌々年以降の所得が非常に高くなったというケースも全く想定できないわけではございません。ただ、我々、まずその結論から申しますと、私どもの御提案申し上げております制度では、そういうケースについては給付したままという形になります。といいますのは、一つには私ども実態を見てまいりますと、大体において自衛官の場合に、私どもの関係します自衛隊の再就職の協議会がございますが、そこを通じて再就職するようなことでございまして、その実態をつぶさに見てまいりますと、翌々年から急速に所得が上昇するというような実態はまずほとんど見当たらないという実態が一つございます。それからまた、ボーダーライン的なことはあろうかと思いますけれども、仮にそういう場合には、やはりそれは自衛官の自己努力ということで理解したいということでございます。そういたしませんと、その自衛官退職後のそういった面における自己努力を否定するような結果につながってもいけないし、あるいはまた、企業が所得制限にひっかかることを回避することを口実として賃金を低く抑えるというようなことになってもいけないというようなことから、やはりその翌年の所得をさらに上回るというような、余りそう例はないであろうケースについては、これは自己努力の範囲内ということでそのままにするというふうに考えております。
  172. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 いろいろと矛盾の面が出てくると思うのですけれども、そうなりますとやはり報償的な性格が非常に強くなると思うのですね。いわゆる自衛隊退職者の生活を保障するという意味、それから若年定年でやるということの不利益のカバーという意味よりも、むしろ報償的な色彩がかなり強いというふうにも私は受け取るわけですけれども、どうなんでしょうか。
  173. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 報償という意味をどういうふうな意味でお使いになっていらっしゃるか、必ずしも明らかでございませんけれども、報償というよりは制度的な不利益に伴ういわば代償的な給付を政策的に決めたということであろうかと思います。
  174. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 これはあり得るかないかはわかりません。しかし、あり得ることでもあると思うのですね。二年後に何かの事業を始められてかなりの所得がふえてきた、しかしその人にはもう二回目の支給をしておるのだから還付はしないのだという今の御説明なんですね。そうなりますと生活の保障というよりもむしろ報償的な色合いも強いのじゃないか、こうお聞きしたわけですけれども、まあそれはそれで見解の相違がありましょうからいいと思います。  であるとするならば、必ずしも一回、二回じゃなくて毎年支給されるべき筋合いでもあるのじゃないかと思います。一回でやるか、七年間にわたって毎年支給されるべきものではないかと思うのですが、そこらあたりはどう検討されたのですか。
  175. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 まずこの給付金を一回で支払うことにした理由でありますけれども、一回といいますか、要するに一時金として観念して、二回分割支払いとした構成をとった理由であります。すなわち、毎年の年払いにしないこととした理由でありますけれども、第一に、この自衛官のライフサイクルというのは、ある程度平均的なところはあるにいたしましても、個々人によってやはり異なるであろうということから、その異なる個々人の自衛官のライフサイクルに応じた使用方法を選ばせる方がいい、そのためには、やはり年々に幾らということではなしに、一時金的に給付をしてそれで使用を任せるという方がいいのではないかという点が一点であります。  それから第二点は、仮に年々の支払いといたしますと、これは行政的な立場からいいますと経費それから人員が非常にかさむといいましょうか、そういうことになるわけでございまして、手間暇がかかるというようなことになります。そういった意味でも、行政の簡素化という意味からも適当でないというようなことでございます。  また、七年という短い期間でもございますので、それを年々の給付という形でなくて一括して支給をして個人のライフサイクルに合わせた形で使用を選択をさせるということの方がベターであろうということから、一時金的な二回に分けた支給という道を選んだ次第であります。
  176. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 この場合、所得税法上はどういう扱いになるのでしょうか。
  177. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 ただいま関係当局と調整中でございまして、結論は出ておりませんが、いずれにしても何らかの適切な課税がなされるというふうに理解をいたしております。
  178. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 建前上は本人に二回にわたって支給するということになっておりますけれども、やはり退職後も生活の管理という面で支給される金を、自衛隊なのか別な組織があるのかわかりませんけれども、そういったところで預かって果実を生んでいく、それをやるというような形も考えておられるわけですか。そこらあたりどうなんでしょう。
  179. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 その点はこの法律制度の範疇ではございませんけれども、一つの運用の問題として、例えば共済組合でそれを預かるというようなことは個々人対共済組合の契約の関係で自由にできるわけでございますし、あるいはそれが望ましい姿かもしれないというふうに考えております。いずれにしても、これは法令の範囲内の制度的な仕組みの範疇ではございません。
  180. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 先ほどからお話を聞いておりますと自衛隊独特の制度だ、こういうことでございますけれども、自衛隊以外の職場におきましても、肉体的には一つの限界がくる、そして若年で仕事にたえられないということで退職していく、そういう職場がかなりあるわけです。この制度導入をすることによって、先ほどもお聞きしましたけれども、独自のとおっしゃいますが、退職金とか年金それから給与、こういった賃金体系に今後大きな影響を及ぼしてくると私は思うのです。そういう危惧は全くない、こうおっしゃるのでしょうか。賃金体系そのものが全く壊れませんよとおっしゃるのでしょうか。
  181. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 この制度は、先ほど来申し上げておりますように、一般公務員の中で、ほかの者がすべて六十歳定年であるのにかかわらず自衛官だけが唯一の例外として若年定年であるという不利益があります。そこに着目して、現行の六十歳定年一般対若年定年との差の不利益を給付金という形で埋めるという制度でございますので、他の地方公務員なりあるいは民間人について同様の適用がなされようということは、私どもは関係がないと思っております。  なお申し上げれば、確かに御指摘のとおり、ある職場で非常に体がきつくて六十歳まで勤められないというようなこともあろうかと思いますし、それから、現在民間でも六十歳定年まで決めていないところが二割弱あるということは承知いたしておりますが、結局、一々の職場において一々の個々人がそういった何がしかの理由によって六十歳まで勤められないといったことは、いわば自己都合退職の範疇に属するケースが多いのではなかろうか。私どもが考えておりますのは、全員が若年定年でその意思にかかわりなく強制的にやめさせられるケースについて問題にしているわけでございまして、その他の場合について、六十歳定年下で個々にそれよりも前にやめるというケースについては、本制度趣旨とは直接的にはつながらないのではなかろうかというふうに思っております。
  182. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 制度そのものは皆さん方も十分まだ知られていないわけですね、こういう法案が出ているということも。ただ、こういった新しい制度が導入されてまいりますと、自衛隊とは違いますが、かつて令状一本で召集されました軍人さんたち、しかも、恩給が支給年限に達しない、二カ月か一年か、家庭も捨ててといいますか、家庭を犠牲にし、仕事を犠牲にし、弾をくぐって戦争に従事した人たち、恩給の適用も受けていないということで軍人恩給欠格者、こういった人たちがこれをどう受けとめられるのか。あるいはまた、国鉄の分割・民営化によって清算事業団に追いやられて職を取り上げられた人もかなり出てきておるわけなんですけれども、こういった人たちがこのことについて羨望的な目で見るのか、白い目で見るのか。こういう点が私の危惧するところでありますけれども、言いますならば国民の納得と理解というものがないと、自衛隊だけの特権だということでやられていきますと、やられていくといいますかそういうような印象を受けますと、国民から非常に批判を受ける制度ではないかと思うのです。そこらあたりをどのように判断をされておるのか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  183. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 この制度について国民の理解を得なければいけないという点については、まさにおっしゃるとおりでございます。ただ私は、みずから提案しておいて非常に言いにくいところでありますけれども、この制度について国民が非常に問題視しているということは、今までのところ、かなり幅広くいろいろと御意見を伺っておる限りでは、そういうニュアンスは全然感じられないということでございます。これからもなお制度の理解を深めてまいるためにいろいろと御説明も申し上げたいと思いますけれども、この若年定年対策制度が、自衛官処遇改善としていわば人道的な問題として対応するこの制度が、国民から理解が得られないわけはないであろうというふうに期待をいたしておるところでございます。  なお、御質問の中にございました国鉄の問題あるいは恩欠の問題等につきましては、私どもからとやかく申し上げるような立場にはございませんが、いずれにいたしましても、繰り返しになりますけれども、私どもの制度若年定年一般公務員定年のこの七年間についての不利分を給付金という形で支給するということでございますので、恩給とは直接つながりもございませんし、国鉄問題とも違うのではなかろうかというふうに思います。
  184. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 言われることもわからぬでもないのですけれども、ただ、やはり自衛隊の場合は最初応募するときに、定年は何歳、賃金はどれほど、退職金がこれ、年金は五十五歳でしたけれどもそのかわり減額退職金はあります、こういう形で条件を十分知って採用されたわけなんですね。そういうことを考えるならば、私はこの不利益をそのままにしておけということを申し上げているのではなくて、やはり国民の皆さん方のこの制度についての納得、理解というものがないと、せっかく防衛庁が温情をもってした制度が地域では自衛官退職者の皆さん方が白い目で見られる、こういうことになりますと、せっかくの温情があだになるということにもなりかねない一つの問題があるということを申し上げておるわけです。したがって、まだ国民の皆さんからいろいろな批判は出てこないでしょうけれども、そういった点については十分な配慮、あるいはまたこういうやり方ではなくて別な方法があるとするならば、国民の皆さんがすとんと納得できるような方法があるとするならば、これを金科玉条とするのでなくてそういったものも考えるべき性格のものではないかということを申し上げておるわけなんです。そこらあたりを、後からも出てまいるでしょうからあれいたしますけれども、私はそういう気持ちでそのことを申し上げたということでございます。  次に移りたいと思います。  私は宮崎の出身でございまして、宮崎県には新田原航空自衛隊の基地、都城駐屯地、えびのの駐屯地、VLFと、基地が非常に多いところでございますけれども、その中でも新田原基地では航空機の墜落事故が非常に多いわけでございます。昭和三十二年に開設をいたしまして以来今日まで三十四機の航空機が墜落事故に遭っております。大体一年に一機ずつということになるわけですけれども、その主な航空機を見てみますと、T2型が三機、T33Aですか、七機、F86Fが三機、F104が十五機、その他が六機、こういう状況になっております。もちろん乗員、自衛官も三十二名の方がとうとい命を失っているわけなんですけれども、幸いなことといいますか、海上が大半でございましたので、大きな事故にはつながっておりません。しかし、民家が二回にわたって被害を受けております。また、山林、水田にも墜落をいたしまして、民間の人が二人重傷、こういう事故が再々あるわけでございまして、これに対して、この地域周辺の人たちは戦々恐々としているのが現実でございます。  そういう中でお尋ねしますけれども、航空自衛隊が発足いたしましてから今日まで、全体的に自衛隊機の墜落事故件数はどのようになっているのか、お尋ねをしておきたいと思います。
  185. 米山市郎

    ○米山政府委員 突然のお尋ねでございますので、今調べて、後ほどお答えをさせていただきます。
  186. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 事故があるたびに、やはり原因究明と安全対策というのを地元の皆さん挙げて防衛庁の方にも要求をしてまいっておりますけれども、なかなか原因が明らかにされていないというのが現実の姿であります。したがって、非常に不安がぬぐい去れない、対策もわからないということで、自衛隊に対する批判も強まってきておるのも事実であります。  ここで、地方新聞に載っておりました社説をちょっと読み上げてみますけれども、「航空自衛隊で事故が続発している。一つ間違えば多くの犠牲を出しかねない重大事故である。軽率に人為的ミスと決めつける態度は慎みたいが、防衛のあり方が国民の関心の的になっているだけに、人命や貴重な機材の喪失に無関心でいるわけにはいかない。」こういうくだりがございまして、その後、「一連の航空自衛隊の事故について、機材の設計、製造上の欠陥はなかったかどうか。現場部隊に作業上の慣れからくる手抜きや見過ごしはなかったか。初心にかえって問い直し洗い直してもらいたいと思う。」事故のたびにこういう内容のものが社説に載るわけです。昨年も三月にございました。地元の人たちはもうそろそろまた事故があるんじゃないかという冗談的な不安も言っておりますけれども、そういう状況にあるわけです。この新田原基地における事故の原因あるいは事後の安全対策、こういったものはすべて明確になっておるのか、そしてそれが地元の市町村に対して協定どおり行われておるのか、一遍お聞きしておきたいと思います。
  187. 米山市郎

    ○米山政府委員 ただいまの御質問の前に、先ほどの御質問にお答えを申し上げたいと思いますが、自衛隊発足以来航空機の大事故、航空機の破壊及び人身の死亡事故につながるそういう大事故は、合計いたしまして四百六十二件ということになっております。  それから、ただいまお尋ねの航空自衛隊新田原基地所属の航空機の墜落事故に関連をして、地元への事故原因あるいは事故防止対策の御説明の件でございます。確かに、御指摘ございましたように、ここ十年間をとりましても数回の事故が起き、お話の中にもございましたように、地元の民家あるいは田畑に御迷惑をおかけし、また、人身に傷を負わせたこともあるわけでございまして、大変申しわけなく思っております。  そうした墜落事故につきましては、その事故が発生をした都度調査を行いまして事故原因の究明をいたしているわけでございますが、中には、航空機が海中に没しておりまして、機体の回収が不可能という状況で、原因がなかなか特定をできないというケースもございます。私ども、わかります範囲で精いっぱい原因の究明に当たりまして、地元の宮崎県あるいは関係市町村にも赴きまして御説明をするようにいたしております。ここ最近はそういう形で地元の御理解を得られるように努力をいたしている次第でございます。  例えば、平成元年三月二十二日に発生をいたしましたT2型の事故につきましては、同年九月一日に事故調査結果等を公表いたしました。また、地元の新聞にもこの問題が大きく取り上げられて、今のような社説等があるいは出ているのではないかと思いますが、そういう形で今後とも地元の皆さん方の御理解が得られるようにしてまいりたいと思っております。また、不安をなくすような形で、再発防止対策につきましても精いっぱいの努力をしてまいるつもりでございます。
  188. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 先ほど数も申し上げましたけれども、F104でございますかね、非常に事故が多いのですけれども、こういった機種の機体の欠陥といいますか、機種の欠陥といいますか、そういったものは今までなかったのか、どうなんでしょうか。それとも、人為的なミスなのか。そしてまた、これらについては十分な調査がされたのかどうか、お聞きしておきたいと思います。
  189. 植松敏

    ○植松政府委員 今御指摘いただきました各種の事故の中で原因が必ずしも究明できないものもございますが、それなりに得られた情報でいろいろな原因の究明あるいは想定をいたしますと、中には、エンジンのトラブル等が原因ではなかったかとかいろいろございまして、それぞれそういったものにつきましては同様の運用過程を経ておるもの、あるいは同型機、そういうものにつきましては徹底的にその点について、例えば分解検査を行いますとか、非破壊検査で徹底して調査をするとか、トラブルの原因となるような欠陥があるかどうかというものをチェックをいたします。その上で、安全であるということを確認をした上で飛行させるということをやっておりますが、中には御指摘のような機器の問題がございまして、そういう点については是正措置を講ずるということをやってきております。
  190. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 特に三十四機墜落しておるうちにF104が十五機と、非常に多いのですね。これらは何か地元では欠陥機だけが新田原の方に配置されておるのではないか、こういう疑いといいますか、それが出てきておるわけなんですね。そういった面で、墜落する機体については十分に精査、検査をしてもらわないと、地元の人たちは安心して農作業もできないし生活もできない、こういう実態でございますので、今後事故のないように、ことしはまたそろそろという話も地元では出ておりますので、そういった声が出ないように、ひとつ航空自衛隊の方で、防衛庁の方で万全を期していただきたい、こういうことをお願い申し上げたいと思います。  続きまして、自衛隊駐屯地を利用しての自治体職員の研修の件でございますが、自衛隊が自治体職員等を研修する場合にはどのような研修を行っておるのか、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  191. 児玉良雄

    ○児玉政府委員 お答えいたします。  各駐屯地におきましては、希望する団体あるいはグループの希望に応じまして自衛隊の隊内生活を体験していただくという意味でいわゆる体験入隊を実施しております。その体験入隊の内容は、その団体やグループのいかんにかかわらず、それを計画された方々の御希望に合わせて御協力のできることをしておりまして、基本的な動作であるとか体育であるとかあるいは防衛に関する講話であるとか、そのような幾つかのメニューで三ないし四日間実施しているのが通例でございます。
  192. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 この場合、やはり先ほど申しましたように、地元ではいろいろ事故等がありますと、自衛隊アレルギーもございますが、とりわけ自治体の初任者研修、入ったばかりの職員自衛隊の方に預けて研修してもらおう、こういう状態が起きたわけです。町民の皆さん方の一部あるいは職員の組合の皆さん方がこれに対してやはり問題がある、こういうことで、町を二分しての騒動があったわけですけれども、こういった地域での騒動、トラブルがあってもやはり申し入れを拒否といいますか断るということはできない、言うならば申し込みによって無差別に、条件がどうであろうと受け入れていく、こういう態度をとっておられるのかどうか、これまた現場の方にお任せしてあるのか、どうなんでしょうか。
  193. 児玉良雄

    ○児玉政府委員 お答えいたします。  体験入隊は、自衛隊の業務などにつきまして国民の御理解をいただき、その支持、協力が必要であるというような観点から広報活動の一環として実施しているものでございます。したがいまして、先ほども申し上げましたように、体験入隊を希望される団体やグループの申し入れに応じて、それにおこたえできるものについて御協力をするということを原則にしております。今御指摘のようなケースにつきましては、研修が必要であるという判断をされるのは自治体の首長の方であろうかと思いますけれども、これを受け入れて協力する、あるいは協力できないというような判断をするに当たりましては、周辺の状況などにも十分配慮いたしまして慎重に対応するようにしております。実際に申し入れを受けた場合に、それをどのようにするかということは、それぞれの部隊駐屯地司令が判断をし、その計画を実施するという仕組みになっております。
  194. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 自衛隊の理解を求めるという話ですけれども、逆にその地域にトラブルがあるにもかかわらず受け入れるということは、むしろ批判が高まってくる、逆効果になってくる、こういうことにもなりかねないと思うのですよ、現になっているわけですから。そういった点については今後十分留意をされていかないと、自衛隊に対する反感情というものが出てくるということを申し上げておきたいと思います。そういった問題も、これは申し込む側の責任ですから受け入れ側の責任ではないかもしれませんけれども、慎重に、そういう住民のトラブルの中ではそういったものは受け入れるべきではないと私は考えますが、そこらあたりどうなんですか。  それからもう一つは、もう時間がございませんので申し上げますけれども、教育の内容につきましても、自治体職員等については県あるいは自治体が共同して研修所を持ち、研修をしているわけですね。一等最初身につけなければならないものは何か、こういうことで一定期間置いて研修をしているわけです。それをあえて自衛隊に持っていくところの首長さんの感覚はわかりませんけれども、この教育内容を見てみましても、ほとんどが訓練だ。自衛隊の軍事訓練とまではいきませんけれども、そういったものに含まれているような割合になっておるように見受けられます。したがって、そういった点も、自衛隊としてはやはり公務員の不偏不党の行政的立場というものを踏まえて、研修受け入れに当たっては慎重を期してもらいたいということを私はお願いいたしまして、先ほどの御答弁があればお伺いしたいと思います。
  195. 児玉良雄

    ○児玉政府委員 この体験入隊といいますのは、自衛隊の隊内生活を一般の方々に体験をしていただくという趣旨から設けられている制度でございますので、内容的には先ほど申し上げましたような防衛に関することであるとか、あるいは規律だとか、動作だとか、装備品の見学であるとか、体験搭乗、こういうものにならざるを得ないのでございます。そういう内容のものについて、申し込まれる方が、これが何かの目的のために有用であるというふうに御判断になって申し込んでこられると思いますし、また、私どもとしては、そういうふうなことで広く体験していただくのがいいと思っております。したがいまして、その内容については申し込まれた方との御相談の上で決まるわけでございますが、その受け入れに当たりましては、部隊訓練だとかそのほかの都合等のことも考えますけれども、今の御指摘のようなこともございますので、部隊の都合だけではなくて周辺の状況にも十分配慮して慎重に対応し、一層理解が深まるように努力をするようにいたしたいと思っております。
  196. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 では、終わります。
  197. 岸田文武

    岸田委員長 続いて玉城栄一君。
  198. 玉城栄一

    ○玉城委員 防衛庁職員給与の一部を改正する法律案の審議でありますが、法案とともに、また関連しまして、若干質疑をさせていただきたいと思います。  まずこの法案ですが、簡単に言いまして、自衛官という特殊な職務からしまして若年定年制、おおよその方は五十三歳で退職される、したがってその退職後の処遇改善という立場から、一般公務員であれば定年は六十歳ですから、五十三で若年退職、それをカバーしようということで、若年定年退職者給付金、いわゆる一時金を支給しよう。この五十三から六十歳の七年間、二回に分けて一時金を支給してあげよう、大体こういう考え方の制度だと思うのです。  この制度は、先ほどもいろいろ御質問ございましたとおり、新しい制度でありますが、私は、たとえ自衛官といえども、これは憲法の精神といいますか趣旨といいますか理念に照らして、自衛隊自衛官一般公務員と横並びでなくてはならないというのは当然だと思うのです。いささかたりともそこに特例という形で自衛隊だけ優遇されるという制度を創設されては重大な問題がある、私はこう思うわけです。  それで、今回の若年定職に伴う一時金を上積みして支給しようというこの制度が、本質的には違うのでしょうけれども、自衛隊職務が似ていると思われる、体に非常に危険を及ぼす海上保安庁とか警察とか、あるいは消防署員といいますか、そういう一般公務員の方々と比べて自衛隊が特別のものではないんだ、この制度の創設によっていわゆる特別に優遇されているものではないんだ、基本的に横並びであるんだということをきちっと御説明をいただかないと、自衛隊だけ特例という形で優遇されてあるいは旧軍の方に近づいていくのかなという感じを与えたら、これまた非常に問題が大きいと思うわけでありますので、その点きちっとわかるように御説明いただきたいのですが、お願いします。
  199. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 ただいまの御質問の中にもございましたように、提案申し上げております本給付金制度は、一般公務員定年が六十歳であるのに対して、自衛官だけ唯-の例外として五十三歳を中心とする若年定年制をしいていることに伴う不利を救おうということから設けさせていただいた制度でございます。  その給付金制度は、ほかの公務員にはない特別の制度ということになるわけでございます。今御指摘公安職の他の公務員との比較においてどうかということでございますけれども、仮に自衛官が六十歳を定年としてそれまで働くことができたとしたならばという給与計算をいたしますと、この給付金を給付したとしても、横並びどころかなおかなりそれよりは厳しい内容になっておる。といいますのは、例えば五十三歳で退職いたします自衛官がこの給付金をもらっても、再就職賃金と合わせてなおその給与の七五%相当額を得られるにすぎなくて、二五%というものは退職時の生活水準がダウンするという形になっておりますので、それをさらにそのような水準でずっと六十歳まで率いていきますと、その間といいますのはそういう状態が続いていくというふうに御理解いただければよろしいかと思います。しかも、六十歳までずっと勤められる人というのは、スローダウンをするとはいえ、ある程度昇給等もいたしますし、それとの比較でいいますと、この給付金及び再就職賃金を合わせた七五%程度の水準がずっとそれでいくということになりますと、均衡がとれるというところまでいきませんで、むしろより厳しい状態のままであることには変わりがないという実情であることを御理解賜りたいと思います。
  200. 玉城栄一

    ○玉城委員 この新しい制度の発足に当たりましては、非常に抵抗なく創設されて、しかし、途中からこの制度がひとり歩きといいますかそういうことで、さっき私が申し上げましたような状態になってはいけない。それを危惧するために、今後とも今おっしゃるような線で行くんだということはちゃんと保証されるわけですね。
  201. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 今回提案している趣旨を変えるつもりはございませんで、この制度趣旨としてこのままずっと参りたいというふうに思っております。
  202. 玉城栄一

    ○玉城委員 今度は石川防衛庁長官にお伺いいたしますが、こういう問題と関連しまして、防衛問題あるいは米軍の基地問題、これは我が国の安全保障ともいろいろかかわりもある問題でありますので、お伺いしておきたいのです。  今月、総理府が「沖縄県民の意識に関する世論調査」というのを発表してあるわけですね。その世論調査の米軍基地に関する――沖縄は御存じのとおり米軍基地がやたらと多いところでありますので、ちょっとお伺いしておきたいのですが、「米軍基地の必要性」という項目を見ますと、沖縄の米軍基地についてどう思うか聞いたところ、「日本の安全にとって必要である」と答えた者は五・九%、「日本の安全のためにやむをえない」と答えた者が二三・六%、両者合わせると二九・五%、いわゆる三〇%を切っているわけですね。これが六十年六月の同じ総理府の沖縄県民の世論調査では三四%ですから、それから四・五%いわゆる米軍基地は必要という数字は減っているわけです。少なくなっているわけです。一方、「日本の安全に必要でない」と答えた者が二五・六%、「日本の安全にとってかえって危険である」と答えた者が三五・一%で、両者を合わせると六〇・七%となっている。必要ない、むしろ危険であるが六〇・七%、約六一%ですね。これは昭和六十年六月の総理府の調査は五三・九%ですから、約六・八%多くなっているわけです。必要ない、危険であるという、これは沖縄県民の世論調査ということで総理府がこういう発表をしているわけです。  それで、御存じのとおり沖縄県は昭和四十七年五月十五日に本土に返還され復帰しまして、きょうは五月二十四日ですが、去る十五日に復帰して満十八年、十九年目に入っているわけです。約二十年近い状態で、沖縄県民は米軍基地についてはこういう考え方を持っている。ある意味で米軍基地は沖縄県民は否決といいますか、可決でなく否決、議会で言う否決ですね、そういう傾向をたどっているわけです。そのことについて長官はどう思われますか。
  203. 石川要三

    石川国務大臣 そのアンケートについては私も存じております。今委員が御指摘のように、前回と比べると基地の存在に対しては非常に厳しい結果が出ておる、こういうわけでございます。  これについてどういうふうに感ずるかということでございますが、率直に言いまして、やはり米軍基地が必要だということは、私は少なくとも防衛庁長官としてはこれは日本の安全と平和を守るために必要だ、このように認識をするわけでございますが、しかし、現実に沖縄の中にあれだけいわゆる集中的に存在をしているという現実から、県民の方々が大変複雑な、本土人にはなかなかわからない非常に神経的な、いろいろと意識を持たれるのは当然ではないか、私はそういう感じもするのです。実は私が内閣委員長をしていたとき、上原先生にも大分勧められまして、ぜひ沖縄に視察に行けというような御意見もございまして、私は実は初めて沖縄県へ行ったわけでございますが、行って現実に見ると、沖縄の県人の意識というものは行かなければなかなかわからない。内地にいて幾ら新聞を読んでも、幾ら何を聞いても、県民の米軍施設に対する感情といいますかそういうものは、なるほど実際にそこへ行ってみなければなかなかわからないなということを肌身に感じました。  したがって、今のパーセンテージは、確かに六〇・七%というのは大変な数になっているのですね。六〇・七%の者が必要でない、かえって危険であると言うことは、これはゆゆしき一つのバロメーターだと私は思っておりますが、しかしこれはあれだけのところにあれだけの量のものがあれば、我々にはとても考えられない一つの感情があらわれているな、こういうふうに認識をするわけであります。特にその中を見ると、委員は沖縄の方ですからもちろん言うまでもないと思いますが、例えばいろいろな事件が起こりますね。その数たるものも非常に多い。内容においてもかなりいろいろと問題がある。それだけに、正直なところを言って、私は特にアメリカ軍のマナーのこともかなりあると思うのです。そういうことから見ると、私は県民の感情というのはよくわかるのですけれども、しかし、さりとて六〇・七%あるから、ではこれは県民の意思に従ってこれをどうということは不可能なわけでございますから、やはりそういう厳しい一つの県民感情というものを私どもは十二分に頭に入れて、そして少なくとも米軍に対してはそういうアクシデントの少しでも減るように大いに注意を喚起するとか、あるいはまたその他の県民のいろいろな御意見について、日本を守り平和のために必要なんだという、では我々が犠牲かということになると思うのですね、結局県民としては。そういう角度の考えを私どもは十二分に理解してやりながらやはり防衛政策というものもやっていかなければいけない、こんなふうに、極めて抽象論でございますが、私のこの数字を見ての実は所感でございます。
  204. 玉城栄一

    ○玉城委員 とにかく我が国の安全というのは防衛庁と、いわゆる自衛力ですね、アメリカさんの両輪のごとくということなんですが、私はそれはそれなりにわかりはしますが、防衛庁にしても外務省にしても、いわゆるこれだけ地域住民が拒否反応を示しているものに対する政府の努力が非常に不足している、もちろんアメリカに対して言うべきことも言われてない、こういう考えがするわけでありますね。  そこで、お伺いをいたしたいわけでありますが、さっき申し上げました本土復帰して十九年目に入るというこの五月十五日に、例の読谷村、都市型ゲリラ訓練施設もそうなんですが、沖縄の読谷村の補助飛行場、これは米軍がパラシュート降下訓練をするところなんです。ここでわざわざ五月十五日に、アメリカさんも無神経といいますか演習をしまして、これが何と復帰後二百十四回目、これは防衛施設庁から数字をいただきましたが、これをわざわざやるのですね。これは米軍の特殊部隊、いわゆるグリーンベレーという部隊なんですけれども、この五月十五日にやる。  また、その翌日の十六日は、県道一〇四号線を越えて、それを挟んで実弾演習をやったのですよ、山に向かって。これが復帰後九十八回目ですからね、十六日に行ったのは。これは三日間、十六、十七、十八。自然破壊もいいところ、とにかくはげ山になります。実弾でやりますから、いろいろな問題があります。  また、それと同じ十六日に恩納村の例の、さっき申し上げました都市型ゲリラ訓練施設、ここでまた実弾演習をやるわけですね。これもまたグリーンベレー。御存じのとおり、都市型ゲリラ訓練施設は物すごく反対があるわけです。その施設のある地域住民は、とにかくここはリゾート地域としてこれが沖縄の大事なところなんだ、もうやめてくれと言って座り込みまでずっとして反対するわけです。しかも、この基地の中にいわゆる地域住民の方々の水源地があるのですね、それが十日ほど前の集中豪雨で水道管が破裂して断水しているわけです。その日は、それを修理しようとして、二百八十世帯の方々の代表が入って修理しようという状況の中で実弾を伴ってぱんぱんぱんぱんと練習するわけですが、これはまさにその地域にとりましては生活権あるいは生存権の侵害、あるいはまた、赤土が集中豪雨でどうっと流れていますから環境破壊、こういう状況なんですね。  ですから私は、地元の防衛施設局の方にも抗議しましたけれども、わざわざ五月十五日を挟んでそういう実弾でもってばんばんやるということは何事か。だから、さっき申し上げたように、数字が下がるのも、いわゆる拒否反応を示すのも当然だ。この一連の基地のアメリカ側の実弾を伴う演習についてどのようにお考えですか。
  205. 松本宗和

    ○松本(宗)政府委員 事実関係を中心にしてまず御説明いたします。  ただいま先生の方から、わざわざ復帰の記念日を挟んで訓練を集中させたというような御指摘がございました。米軍の訓練につきましては米軍の運用にかかわる問題でございまして、私ども事前に知る立場にはございません。ただ、通報してまいりますので、その限りにおいては地元に御連絡申し上げておるということでございますが、少なくともその日を挟んでわざわざ選んだというようには前後の事情からとってないわけでございます。  特に、キャンプ・ハンセンでの都市型訓練施設、これにつきましては、従来から地元の皆様方に大変な反対があるということは私ども十分承知しております。ただ、一方におきまして、米軍は当該演習場の中で、訓練施設の中で、必要な施設をつくり、自分たちのミッションとしての訓練を実施しなければならないということも事実でございます。そういうようなことから、私どもといたしましては、鋭意地元の御理解が得られるように安全措置その他について努めてまいったわけでございますが、特に地元との関係につきましては、最近地元県、村、それから米軍、施設局、この四者でもちましていろいろ話し合いを重ねてきた上での演習の実施というぐあいに判断しておりまして、これにつきましては、わざわざその日を選んで実施したというぐあいには考えておりません。  この演習につきましては、今後とも地元の方々に御迷惑のかからないように実施され得るように私どもも十分のことをやってまいりたいというぐあいに考えております。
  206. 玉城栄一

    ○玉城委員 松本さん、何をおっしゃっているかよくわかりませんが、その演習を実施したのは四者で決めたことであって、そして今後もどうだこうだ、全然あなたの言っていることの意味が理解できないのですけれども、どういうことですか。
  207. 松本宗和

    ○松本(宗)政府委員 米軍が一方的に十六日を選んで実施した、まあ確かに米軍の計画に従って実施したことは間違いありませんが、十六日に実施したということの判断につきましては、米軍自体、それまで続けてまいりました地元での施設局、県、村を交えての協議を踏まえて実施したものと理解しておるということを申し上げたわけでございます。
  208. 玉城栄一

    ○玉城委員 長官、いわゆる都市型ゲリラ訓練施設についてはそういう地元の反対も強い、それはよく御存じですね。強いからこれはどこかへ移そうというようなお考えもあるのですか、ないのですか、どうなんですか。
  209. 松本宗和

    ○松本(宗)政府委員 地元での話し合いの中に、そういう問題、つまり移設につきましてどうか、つまりあの場所はリゾート施設に非常に近い、リゾート地域として開発される場所に非常に近いということ、それから安全性、そういう点から見てふぐあいであるというような意見も非常に強いということから、移設してはどうかという強い御希望もございます。米軍のサイドとしても、移設自体についてその機能が維持できるならば、機能が果たせるならばと申し上げた方がいいかと思いますが、必ずしも移設に反対しているというぐあいには受けとめてはおりません。ただ、移設をするか否かということについて私ども最終的に、具体的には決めておるわけではございませんけれども、演習がスムーズに行い得るように、地元の御理解が得られるように、今後全般的な問題を頭に入れながら努力してまいるというのが私たちのスタンスでございます。
  210. 玉城栄一

    ○玉城委員 今の移設の問題ですけれども、さっきおっしゃいましたようにリゾート地に極めて近い、その辺には大きなホテルがたくさん並んでいますからね。そこで実弾を伴う演習というのは極めて危険ですね。長官はそう思いませんか、思いますか。
  211. 松本宗和

    ○松本(宗)政府委員 危険性につきましては、当初実弾を使う射撃であるということで非常に御心配がありました。この件につきましては、小銃あるいはけん銃の射撃で、しかも射撃の方向を限定しておるということとか、さまざまな安全措置を講じておるということで、危険はないということにつきましては地元にも十分御説明しておりますし、また、私どももこれは危険性がないということは確信しております。  ただ、場所といたしまして、先ほどから出ておりますリゾートを中心として開発される地域に適しておる、適しておるというと変ですけれども、そういう位置に設けるのはいかがなものかという点に関しては、地元の御意見ももっともなところがあるというぐあいに私どもも判断いたします。したがいまして、そういう点も含めて検討の対象としていき得るというぐあいに考えておるところでございます。
  212. 玉城栄一

    ○玉城委員 移設についての地元の意見も検討していき得るということで今おっしゃっております。これは移設する、アメリカさんがつくった施設ですから撤去してどこかに移設する、そういう意味だと思うのです。それを検討し得るということは、そうおっしゃったのですから、いろいろ予算も伴いますね。お金も必要でしょう。これは防衛施設庁がやるのですか、どちらがやりますか。
  213. 松本宗和

    ○松本(宗)政府委員 私は、ただいまそういう方向になれば検討の対象としてできるだけの努力をするということで、すべての検討事項の中に含めて地元の御理解を得られるように努力をしてまいりたいということを申し上げたわけでございまして、まだ具体的に移設をするということについての最終的な結論を申し上げておるわけでございません。したがいまして、その経費の問題でございますとか、また、その経費をどこでだれが持つかというような問題につきまして、今まだ申し上げられる段階ではないということでございます。
  214. 玉城栄一

    ○玉城委員 防衛庁長官、昨年の十一月に我が党の石田委員長が沖縄に行かれまして視察しました。私も同行しました。その結果、今、都市型訓練施設として、向こうさんも丁寧に説明しましたが、これは非常に不適当であるという判断のもとに、すぐその足でアメリカの海兵隊の司令官のところに行きまして、沖縄というこんなに小さなところで代替地を求めて移設だ何だ、これはできません、基地をかえるなんということは不可能だ、こういうことを話しましたら、アメリカさんは、向こうの司令官は、いや代替地なしでも返すことも自分らは検討しているという話もあったわけです。  それで、今のお話なんですけれども、これは基地の中、アメリカの都市型訓練施設ですから、それを移設、これは運用上の問題とおっしゃいましたが、これはアメリカさんがつくったのです。これを今度は日本政府の例の思いやり予算でまたどこかに移す。これは基地ですからね。これが実際に理論的に可能かどうか、この辺は勉強してみる必要があると思いますが、こういうことができると、本当にいろいろなもの、何事も日本政府が全部やってしまう、こういうことにもつながってくるわけですね。そのようにアメリカですら代替地を求めて返還ということを要求はしないことも考えているということですから、今長官にお伺いしたいのですけれども、どうかそういう点を踏まえて、別に移設とかそういうところはやめてくれ、どこか移すまでは我慢してくれ、こういう論理でなくて、その辺長官のお考えをお伺いできないですか。
  215. 石川要三

    石川国務大臣 先ほど施設庁長官からの答弁の中にございましたように、安保条約の提供施設の中の運用でございますから、私は、今委員のようなことを要求することはなかなか難しい、このように思うのです。しかし、今現実に地元でいろいろとトラブルが起こっているわけでありまして、その解決に、今施設庁長官がお話をしたように、移設をするとは言っていませんけれども、アメリカ側の見解もちょびっと今ここで申されました。そういうようなことで、具体的なことは今ここで私もはっきり申し上げられませんけれども、とにかく何とか県民が少なくとも不安をしないような解決をやるように私は施設当局によく指示をしていきたい、かように思います。  それから、もう一つは、この施設でございますけれども、私も最初にこのトラブルを知ったときに何でもっともう少し米軍も配慮がなかったのかな、結局つくる前に何かもう少し配慮してうまい方法がなかったのかという感じもしたわけでございますが、いずれにしましてもこういう小さいトラブルがいろいろと重なっていることがさきのようなパーセンテージに出てくると思うのですね。それはばかにならないと思うのです。わずかな、例えば住宅地の方へ弾が飛んでいったというような事実もあるわけですが、そういうのも恐らく間違ったというよりも、何かちょっとしたはずみのマナーの悪さから、そういう事件も、過去に起こった事実はそういう理由でなったこともあるのじゃないかと私は思う、想像ですけれども。そういうようなことから見て、もう少しよく住民の感情というものを考えながらいろいろとやることによって、私は米軍と沖縄県民、我々日本人との間の人間関係というものはかなり改善される余地がまだあると思うのですが、その点が非常に大陸型というか、我々から見た神経とは随分違うな、そんな感じも実はするわけであります。  長くなりましたが、いずれにしましても施設庁長官今努力しておりますが、何とか県民の不安を解消するような方途を見出すように一段と努力をしてもらうように指示もしていきたい、かように思います。
  216. 玉城栄一

    ○玉城委員 一事が万事そういう無神経な、とにかく復帰の日をわざわざ選んでやってみたり、水が断水している、そこにヘリコプターから来てやってみたり、またそれを容認する施設庁、防衛庁政府、これは本当に同責任だと思うのです。だから、さっき申し上げました、長官もおっしゃいましたが、いわゆる県民の非常に危険であるという数字にあらわれてくる、このように思うわけであります。  そこで、次に、これも沖縄が返還されて、昭和四十七年五月十五日ですから、その翌年、四十八年――沖縄が返還されるときに佐藤・ニクソン共同声明がありました。基本的な沖縄返還の方針は、日米合意した共同声明のいわゆる核抜き本土並み、沖縄は返還される、基地の態様については本土並み、そういうことに基づいたと思います。沖縄が四十七年に復帰する前の四十六年には国会決議もされています。いわゆる非核三原則、沖縄の基地の整理縮小。決議もされて、そしてそれを受けたと思いますが、四十八年には日米合同委員会の安保協議会で、第十四回、十五回、十六回、沖縄の米軍基地の整理統合について日米間で合意した。中には移設を条件のものもありますが、それを今もって――確かにその中にあります四六%は返りました。しかし、半分を超える五四・七%、まだまだ解決していないのです。二十年近くなろうとするのに。それを今日米間で詰めてやろう、それを近々発表する、その対象は二十三カ所、これも報道されております。松本長官、二十三カ所、そうですね。
  217. 松本宗和

    ○松本(宗)政府委員 お答えいたします。  現在検討しておりますのは、ただいま先生がおっしゃいましたいわゆる安保協での合意事項、合意事案と申しますか、これが十八件現在残っております。それに、最近県知事がアメリカに行かれまして要請されました七施設、七件、この二つを合わせまして検討の対象としておりまして、この二つ合わせますと二十五件ということになりますが、完全にダブっているものが二つございますので、延べ二十三件ということになると思います。
  218. 玉城栄一

    ○玉城委員 それでは施設庁長官に重ねてお伺いしますが、今日米間で協議、交渉といいますか、二十三カ所を実質対象にしている。本来ならば、二十年近くも来たのだから二十三カ所みんな返してもらいたい、こう我々は望むのです。しかし、これまでずっと新聞とか皆さんの国会での答弁等じっと見ていますと、一挙に二十三カ所返還はこれはちょっとどうかなという感じもします。大体考えられることは、すぐ返せるというようなもの、あるいは移転先が見つかってからでないと中期的に無理だというもの、あるいはここ当分無理だなというもの。二十三カ所のうち、すぐあるいは移転先あるいはしばらく無理だな、こう大体三つぐらいに分けられるのかなと思いますが、いかがですか。
  219. 松本宗和

    ○松本(宗)政府委員 現在日米間でその二十三件につきまして個別に詰めておる段階でございます。結果としまして、先生ただいま御指摘のような形になるということも考えられますが、私どもといたしましては現在一件ずつつぶしておるという段階でございます。     〔委員長退席、林(大)委員長代理着席〕
  220. 玉城栄一

    ○玉城委員 それは個別に今ここで発表はもちろんされないし、外務省もやっていないのに我々できるわけないという論理なのでしょう。  そこで、これは防衛庁長官にお伺いしたいのですが、今交渉しているのは日米合同委員会、その下のまた下部機関がありまして、その下部機関でお互いに実務者同士盛んにやっているわけです。アメリカさんの方は、これは次の司令官にかわったときにやってくれ、自分の代にこんなことをやられたら自分は非常にまずいというような論理なのです。だから、そういう次元で物事をやっていますと余り期待できるような返還は私は無理じゃないかという感じもするのです。それで、やはりこの辺で、日米合同委員会があります。キャップはどなたか知りません。チェイニー国防長官が二月に沖縄に来ました、東京に来ました。長官に防衛庁長官もお会いになっていると思いますが、向こうさんもアメリカ議会でとにかく削減しよう、沖縄についても削減しよう、上の方では大分そういう認識を持ってやるのに、下の方では一向にらちが明かないという状況なんです。ですから、近々中間的にでも公表はしますと言いますけれども、その中間的に公表されるものはそんなに我々が期待しているようなものじゃないなという感じがしないでもないのです。ですから、ここは政治家である、また日本の国務大臣である防衛庁長官あたりが、何らかの機会に沖縄についてはそういう懸案のものであるし復帰後二十年近くなってまだそういう未解決の状態である、せめてこれだけは、二十三カ所、多く返還をお互いに合意しようじゃないかということをやはり政治家がやっていただかないと、事務屋さんだけでは無理ですね、いかがですか。
  221. 石川要三

    石川国務大臣 施設庁長官からも、今努力をしているその過程につきましてはいろいろとお話は聞いております。ただ、そういうことを聞きながら、今先生の御質問を聞いておりまして、そう簡単に、仮にチェイニーさんと私の間でいわゆるそういうものがどんどん進むかどうかということについて、そういうふうに今委員のような政治的な問題で事がどんどん進展できるというふうには私はちょっと理解ができないわけであります。いずれにしましても、そういうことに少しでも役立つことであるならばこれは労はいといませんけれども、今そういうことではない。今、委員は実務段階だからなかなか大変なんだと言うけれども、そうではないことで今かなり精力的に努力をしているのじゃなかろうか、かように思うのです。ですから中間報告も間近だと言われておりますが、それがどの程度になるか、まだ今発表段階ではありませんけれども、実際基地返還というものは実態が建前論とか本音とか、聞くといろいろなものがあります。米軍は米軍の立場、県民は県民の立場、中においてもいろいろな複雑な難しい問題があるように私も聞いておりますが、いずれにしましても何か少し県民の立場から見てああ今回は幾らかその効果があらわれたというような解決になってもらいたい、このようなことで今一生懸命松本施設庁長官も頑張っておりますが、そういう点を私は期待をしているわけでございます。
  222. 玉城栄一

    ○玉城委員 確かにいろいろな問題点があることは当然考えられますが、今申し上げているのは沖縄が返還されて日米安保協で十四、十五、十六で合意されたものですら今もって解決しない、これは一つですね。これは国会決議とか佐藤・ニクソン会談とかそういう方針に基づいて作業を進めてきて、これが一向に解決しない。さらに今度はチェイニーさんもアメリカの議会で報告しましたように、今後三年間で一〇%から一五%削減しようという新しい状況もある。これは全然手つかずですね。そういうことでせっかく決められたものですら進まないということについていら立つとともに、一体何を政府はやっているのかという感じを持つわけです。  それで今度は松本長官にお伺いしますが、移設を条件に合意したと言いますね。この移設ということはそれにかわるべきどこか基地があってそこに移してもらえれば、そこの部分は、もとの分は返してもいいですよ、そういう意味だと思うのですが、これは私は沖縄県に限るものじゃないと思うのです。これは地位協定に基づく日米合同委員会で決められているわけですから、県外も含まれるわけでしょう。
  223. 松本宗和

    ○松本(宗)政府委員 確かに安保協議委員会での結論の中にはどこにということは指定されておりません。したがいまして、そういう意味でとらえますと、文言上は沖縄に限定したものではないということは言えるかもしれませんが、私どもが検討しておる段階でいろいろぶつかりますのは、結局は沖縄に駐留しておる米軍が主として使う施設である、あるいは機能であるということになりますと、どうしても現実の問題として沖縄に代替施設を求めるということになるであろう、またならざるを得ないというぐあいに考えております。
  224. 玉城栄一

    ○玉城委員 別に代替地はどこにしなくちゃならぬということはないということでありますが、県内だろうが県外だろうがこれは指定できるわけないです。ただ一つ申し上げたいのは、例えば那覇軍港です、那覇港湾施設、これは非常に前から、ここの半分、全部米軍が使っています。この那覇軍港は今ほとんど使われていないですね。これはチェイニーさんがこの前来たときにずっとヘリで回ったときに、アメリカさんの兵隊さんをわざわざトラックでそこにたくさん持ってきて、いかにも使っているのだぞと見せるためにやった。帰ったらさっともういなくなった。それくらいで、とにかく行かれたらよくわかりますが、少なくとも三分の二常時あいています。これを移設する、だれも受け入れません。米軍の軍港が来るなんということはなかなか難しいですよ。一向にらちが明かない。沖縄には天願桟橋、ホワイトビーチ、アメリカさんが使っているところがあります。その機能で十分じゃないですか。別にこれは沖縄で必ずしもその移設先を見つけなくてはならぬという論理は成り立ちませんよ。もし必要ならどこか、どこかというか県外に、そういう交渉をしないと一向に返りません、那覇軍港というのは永久に返還されませんよ。移設先がなければ返りません、あんな小さなところでかわりを探してこないと我々は返さない、こういうことでは、永久に返りませんよ。どうですか、松本長官。
  225. 松本宗和

    ○松本(宗)政府委員 確かに代替地あるいは代替施設を探すというのは非常に困難なことでございます。しかし、ただいま例に挙げられました那覇港湾施設にいたしましても、沖縄に駐留する米軍に対して物資を補給するための港湾でございます。そういう意味からいたしますとほかの地域に、いわゆる沖縄県以外に代替施設を求めるということは全く無意味になるということでございます。すべてそういうものがついて回りますので、やはりどうしても沖縄の中に現実として求めざるを得ないということになるのではなかろうかと思います。
  226. 玉城栄一

    ○玉城委員 ちょっと私はそれに反論したいのです。御存じのとおり在日米軍基地の占用しているのは七五%ですよ、沖縄県に集中しています。七五%というのは本土の三倍ですよね、一県に集中しているわけですから。しかも沖縄返還のときに佐藤・ニクソン会談でも核抜き本土並み、核抜きは当然として、そういうものがあっていろいろやっているにもかかわらず、実質的には、現実的には沖縄で代替地を見つける以外にないのだという論法ならいつまでたっても沖縄の基地返還というのは無理だと思うのです。これは私、申し上げておきます。  そこで一つ、これは防衛庁長官にお伺いしたいのですが、いずれにしても早晩大詰めに来て返還される、そういうムードですが、返ってきた基地、これは防衛庁が使うということはないのでしょうね。
  227. 松本宗和

    ○松本(宗)政府委員 現在進めております返還作業といいますか整理統合作業は、整理統合して返還されることになった施設につきましては自衛隊が使うという計画では進めておりません。
  228. 玉城栄一

    ○玉城委員 基地の整理縮小、整理統合縮小ですか、返還、これは何せ沖縄は防衛庁長官も御存じのとおりやたらと多い。それはトラブルのもとですから、そこを、返ってきた、はい待ってましたとばかりに、待ってましたかどうかはわかりませんが、自衛隊が今度は使うとなりますと、これは何のために返還要求もしてやっているのか問題ですから、こういうことがないように、長官、ひとつ後々のためにも一言おっしゃってください。
  229. 石川要三

    石川国務大臣 そういう前提で返還交渉をしているわけではない、自衛隊が使うという前提で交渉しているのではないということで御回答とさせていただきます。     〔林(大)委員長代理退席、委員長着席〕
  230. 玉城栄一

    ○玉城委員 前提ということで、ちょっと危惧が残ります。  あと四分くらいしかありませんので、一つこれだけちょっと確認しておきます。今私が米軍基地の返還返還と盛んに申し上げています。返ってくると今度は地主さん、いわゆる地権者、これが返ってくると困るんだ、我々の生活どうしてくれるかという論理が働きまして、その辺がまた難しいところなのです。それはアメリカさんは、いやもういいですよ、これは返します、それで終わりです。ここは使ったのだからコンクリートもあれば何かいろいろある。それはしばらくの間、防衛施設庁がちゃんと借りて提供したのですから、引き取った防衛施設庁は、そのままほったらかすわけにいかぬ。多少原状回復するような形にはなっていますが、これとてもずっといつまでもというふうには今のシステムはなっていない。ですから、あるいは二カ月なのか三カ月、それとも自分らでやってくださいよ、それ相当分の地料額を出しますからとかいうことで、必ず防衛施設庁の責任でこれをちゃんとするというふうには制度はなっていないのです。これが今大きな問題になっているわけです。この跡地利用についてどういう計画をするのだということでこれから自治体と地主さんの間でいろいろな検討が始まるが、これは時間もかかるわけです。その時間がかかる間、防衛施設庁はちゃんと地料相当分の肩がわりというか、これまでは大変迷惑をかけた、長い間本当にありがとうございましたという形でその地料を継続して支払うということは当然考えていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  231. 松本宗和

    ○松本(宗)政府委員 国といたしましては、駐留軍の用に供する目的を持って土地等の賃貸借契約を締結しておるわけでございまして、この契約に基づいて賃借料をお支払いするという形をとっております。駐留軍から返還される土地につきましては、私どもの方から地主さんに対しまして解約を申し入れた後三十日、つまり三十日の余裕を持った上で契約を終了させるということに現実にはなっております。それから返還された土地につきましては、私どもの方では原状回復のために土地所有者が使用できない期間につきまして賃借料相当額を補償するという形をとってございます。ただ、その補償の期間につきましては、たしか三カ月でございますか限定がございまして、ただいま先生が御指摘になりましたような利用計画、あるいは利用できるようになるまでどれくらいの期間かわかりませんが、ずっと借料を支払い続けるという形にはなっておりませんし、またそれはどうかということでございますが、私ども国は現在借り主という立場でおりますので、今直ちにその問題につきまして国の方からお支払いするということをお答えするのは困難かと思います。
  232. 玉城栄一

    ○玉城委員 この問題はまたいろいろ論議したいと思います。  時間がありません。最後に一点。これは二月十七日だったと思いますが、沖縄県で自衛隊さんが災害救助のために宮古島へ行って救助しようとしたら、その寸前に墜落して、自衛隊の三名、医者も入れて四名亡くなったのです。だから、救助のための自衛隊機というのはそんなにもろいものなのかと我々素人考えで思うのですが、その事実関係、その原因はどういうことでこうなったのか、それをお伺いして質問を終わります。
  233. 米山市郎

    ○米山政府委員 ただいまお尋ねの事故は、沖縄県知事から救急患者輸送のための災害派遣要請があったことから、第一混成団所属のLR1型機が、今お話しのように、本年二月十七日午前一時二十分医者を同乗させ、那覇基地を離陸して宮古島に向かい飛行中、午前一時五十分ごろ、宮古島の北東約五十二キロ付近で行方不明になったというものでございます。  防衛庁といたしましては、この事故発生以来、事故原因究明のために運用状況あるいは操縦の状況、通信の状況、機体の整備状況、さらには気象の状況といったような総合的な調査を実施いたしますとともに、事故原因の究明にとって最も重要な資料となり得る事故機の機体回収に努力をいたしました。ただ、この機体回収につきまして、事故機の水没地点の特定に手間取ったため日時を要したわけでございますが、幸い四月十八日から二十五日にかけましてエンジン等の事故機の一部がようやく回収できたという状況でございます。  先ほど申し上げましたような総合的な調査とあわせまして、この回収した機体の一部について技術的な調査を現在実施をしている段階でございまして、最終的な事故原因の究明というところまでいま少しの時間をおかりしたいと思います。
  234. 玉城栄一

    ○玉城委員 質問を終わります。
  235. 岸田文武

    岸田委員長 続いて、山元勉君。
  236. 山元勉

    山元委員 私は最初にリムパックについてお尋ねをしたいと思いますが、ついせんだって、一部の報道で、実質的訓練はリムパック90について終わったということがございました。その規模あるいは演習の内容等について概要説明をしていただきたいと思います。
  237. 米山市郎

    ○米山政府委員 リムパック90につきましてのお尋ねでございますが、これは現地時間で四月九日から六月一日までの間、ハワイ及びサンジエゴ並びに中部太平洋において、通常兵器による海上作戦について演練するものでございます。今先生お話しの、終わったというような報道もございます。これはいわゆる洋上訓練部分が終了をしたということでございまして、六月一日まで我が国といたしましてはこれに参加をしているというものでございます。  その内容でございますが、対潜戦、対水上戦、防空戦等の洋上訓練及び誘導武器評価施設を利用する訓練等でございます。
  238. 山元勉

    山元委員 いや、ですからもう少し詳しく、演習の中身、参加の規模等について説明をしていただきたいわけです。
  239. 米山市郎

    ○米山政府委員 まず、時期は先ほど申し上げました。目的でございますが、これは参加艦艇等の能力評価を行い、戦術技量の向上を図ることでございます。それから参加国でございますが、米国、カナダ、オーストラリア、韓国及び日本でございます。参加部隊、これは艦艇五十五隻超、航空機約二百機、人員百五万名超というところでございます。  我が国から参加をいたしました海上自衛隊の参加部隊でございますが、護衛艦八隻、潜水艦一隻、補給艦一隻、航空機八機という内容でございます。
  240. 山元勉

    山元委員 今、規模の中で人数は抜けていたのですが、その人数の規模の問題と、そしてこれは十年前、80リムパックに最初に参加されたと思っているのですけれども、その第一回の参加と今の90の参加規模との比較についてお知らせをいただきたい。
  241. 米山市郎

    ○米山政府委員 昭和五十四年にリムパック80に我が国が初めて参加をいたしたわけでございますが、このときの参加、全体では参加艦艇が四十隻、航空機が約二百機でございまして、うち海上自衛隊は参加艦艇二隻、航空機八機でございました。  人数につきましては今手元にございません。大変申しわけございませんが、後ほど調べて先生のもとへ御報告申し上げたいと思います。
  242. 山元勉

    山元委員 私の手元にある資料では、第一回目が七百五十で、ことし二千三百という数字を持っているのですが、間違いがないかどうか確認したいと思います。
  243. 米山市郎

    ○米山政府委員 今回参加の二千三百名につきましては、そのとおりでございます。
  244. 山元勉

    山元委員 今伺いましたように、十年前になりますけれども、最初艦艇二隻、それが十隻になっているわけですね。あるいは人数にしても、二千三百名というふうにおよそ三倍になっている。参加の規模といいますか、それが大変大きくなっているわけです。単なる教育訓練の域を出て、多国間の共同訓練という域に入っているのではないかと思いますけれども、そういうふうに規模が飛躍的に拡大したことについてどういう認識を持っていらっしゃるのか、お尋ねをします。
  245. 米山市郎

    ○米山政府委員 リムパックの目的につきましては、先ほども御答弁申し上げましたように、戦術技量の向上を図るということが目的でございます。参加規模につきましては、確かに第一回に比べますと今回の参加はかなり大規模なものになってきてはおりますが、これは前回と同規模でございます。リムパックと申しますのは、特に洋上訓練におきましては実戦環境下におきます長期間にわたる洋上の訓練が可能であるということで、海上自衛隊の技量の向上の上でも大きな効果があるということで、このような形で参加をいたしているわけでございます。
  246. 山元勉

    山元委員 長官にお尋ねをしたいわけですけれども、こういうふうに国民の目が届かないところで飛躍的に拡大をしているわけです。先ほど我が党の田口委員からも話がありましたけれども、総理が口癖のようにこの間からおっしゃっているまことにつつましやかな平和のための軍備ということからおよそかけ離れている。後ほど申し上げますけれども、十隻、その内容で見ると、潜水艦もあるいは補給艦も一緒に行ってやっていることについて、いわば平たい言葉で言いますと、つつましやかにと言っていることとしていることとが違うと思うのです。どうでしょうか。
  247. 石川要三

    石川国務大臣 何か遠くの方で国民の目を隠れてというようなそういうことは、私はそういうふうな見解を持ってないわけでありますが、ただ、確かに最初から比べれば規模が大きくなったということは事実であります。しかし、それだけにまた、いわゆる自衛艦にしてもあるいはまた飛行機にしても、すべてそうでございましょうが、年々歳々いわゆる兵器というものの性能も高まるし、それのまた運用というものも非常に技術的には向上しなければならない、こういうことから、私は、そのように規模的にも拡大してきたのじゃなかろうかな、こういうふうに思います。しかし、これはやはり総理のつつましやかな云々というのとは別に、少なくとも防衛をする限りはそういう技術も能力も増していかなければならないわけでありますので、当然な、必要な共同訓練ではなかろうかな、私はこういうふうに見解を持っているわけであります。
  248. 山元勉

    山元委員 能力や技術というのは確かに進歩していますから、私はそのことについては否定はしていないわけですけれども、例えば規模だけではなしに質的に大きな変化をしているわけです。今申し上げましたように、例えば補給艦の参加について、前回から行われているという話がありました。しかし、例えば、新聞によりますと、前回の訓練の終了後、自衛艦がアメリカの艦隊に給油をしたのは明らかに次官通達を逸脱している、こういうことがございました。  質的に前回から変わったという気がするわけですけれども、最初確かめたいのは、今回の訓練で日本の補給艦からアメリカの艦船に対する給油というものが行われたのかどうか確かめたいと思います。
  249. 米山市郎

    ○米山政府委員 先生今お話しのように、リムパック88で初めて補給艦が参加をいたしまして、米艦に対する洋上給油を実施いたしました。  今回は、米側との調整の過程でその必要はないということで実施はいたしておりません。
  250. 山元勉

    山元委員 今回行われていないようですけれども、前回のことを少し。これは訓練が終わってからマスコミに一部報道されただけで、私は論議を調べてみたのですけれども、その後このことについて明らかにされてないわけで、少しお尋ねをしたいわけです。  次官通達を逸脱をして給油を行ったことについては、その直前にでも防衛庁に対して現地から了解が求められたのかどうか、そのことについてお伺いしたいと思います。
  251. 米山市郎

    ○米山政府委員 艦艇部隊が継続的に防衛行動を実施する上で、洋上補給ということはどうしても必要なわけでございます。特にリムパックにおきましては、先ほども申し上げましたように長期間にわたる実戦的な環境のもとでの訓練ということで、我が国といたしましても洋上補給艦を派遣をいたしまして訓練に参加をさしたわけでございます。  そういう中で、米艦に対する補給につきましても、私どもといたしましては必要があれば機会をとらえてやるべきだというような認識を持っておりまして、現地に行っての最終的な調整で実施をすることになったわけでございますが、防衛庁、特に内局といたしましてもそういう点については十分承知はいたしておりました。
  252. 山元勉

    山元委員 そうすると、この新聞の報道は誤りなんですか。日米共同訓練に限って、また必要かつやむを得ない場合にだけ可能だというふうに次官通達が出ていて、この新聞記事を見ますと、明らかに逸脱をしている、こういうように報じているわけですね。私が心配するのは、そういうふうに次官通達で規制をされている理由というのは拡大していってはならないということ、集団的自衛権のところに踏み込んでいってはならないという論議がこのとき随分ありましたから、そういうものについての一つの歯どめだというふうに次官通達を考えると、事前に了解をしていたような今の答弁でいいますと、これは表と裏とは違う、あるいは少なくともシビリアンコントロールが空洞化されてきている事実だというふうに受け取るわけですが、いかがですか。
  253. 米山市郎

    ○米山政府委員 再々御答弁申し上げておりますように、前回実施をいたしました洋上の補給訓練と申しますのは、複合脅威下の実戦的な環境下における洋上補給に関する戦術技量の向上を図るという観点から実施をしたものでございまして、これは米国の油を使うというものでございます。我が国の所有に属さない米軍の油でございます。そういう意味で次官通達の対象とはならないというふうに私どもは解しております。
  254. 山元勉

    山元委員 どうも二年前の事実が既成事実化されていて、このことについてまともに処理がされていない感がしてならないわけです。これは印象的にですけれども、やはり訓練の質が変わってきているというふうに受け取らざるを得ないと思うのです。  もう一つ、潜水艦が参加をしていることについてお尋ねをしたいのですが、これも88でカナダの船と衝突事故があった。このことについては二年間触れられなくて、つい先週の新聞の一部で報じられているわけです。私どもは今までリムパックの問題については、アメリカと日本との単なる共同訓練なんだ、集団的自衛権に踏み込んで多くの国と訓練をしているのではない、こういう説明を聞いていたわけですけれども、どっこいそうではなしに、つい目と鼻の先にカナダの船があって、それと自衛艦が衝突事故を起こすということについては驚きを持っているわけです。その点で一体状況はどうであったのか、説明をしていただきたい。
  255. 米山市郎

    ○米山政府委員 ただいまお尋ねの事故は、前回のリムパック88実施中の昭和六十三年七月の中旬、ハワイ島周辺において洋上訓練を実施しておりました海上自衛隊潜水艦「たけしお」がカナダ駆逐艦の曳航していたソーナーと接触したというものでございます。  被害の状況は、「たけしお」側がペイントが若干剥離をしたという程度、それからカナダ艦の方は可変深度ソーナーのスタビライザー付近が脱落をしたというような軽微な事故でございました。
  256. 山元勉

    山元委員 事故の状況はわかりました。  もう一つお尋ねをしたいのは、そういうふうにカナダの船もオーストラリアの船も入り乱れてといいますか訓練を共同してやっているのではないかという印象があるわけです。広い広い太平洋上でカナダの船と衝突をする事態というのは私どもでは考えられぬわけですけれども、そういう共同といいますか連携といいますか、演習が行われていたのかそうでないのか、お尋ねをしておきたいと思います。
  257. 米山市郎

    ○米山政府委員 リムパックにおきまして従来から対抗形式による洋上訓練といった形で行われているということは、この国会でも再々御説明をしてまいっております。その際、我が国はアメリカとのみ直接連携をする、チームを組んで直接連携をするという形で共同訓練を実施しているわけでございます。  この事故は、たまたま接近をしなければないわけでございます。潜水艦は潜っていて攻撃をするというのが本来の機能でございます。何が原因かということについては、双方の不注意といいますか、やはり訓練でございますので、事故が起こらないように事前に注意がなされているはずなのでございますが、その注意を双方とも必ずしも十分に守っていなかったためにこういった接触事故が起こったというふうに私どもは承知をいたしております。
  258. 山元勉

    山元委員 補給艦の参加にしても、潜水艦の参加にしても、質的に大きな変化を来しているというふうに私どもは理解をします。  もう一つ、ことし初めて韓国が参加をした、こういうふうになっておりますけれども、その韓国の参加の意図といいますか、そのことについてどういうふうに防衛庁として理解をしていらっしゃるか、お聞かせをいただきたいと思うのです。
  259. 米山市郎

    ○米山政府委員 韓国がどのような意図で参加をしたかということについては私どもが申し上げる立場ではございませんが、少なくともリムパックの目的を十分認識して参加をされたものというふうに理解をいたしております。
  260. 山元勉

    山元委員 少なくとも日米だけではなしに他の四カ国共同して訓練を行うわけです。平たく言えば、今までやっていた、前回までのメンバーでなかった韓国の皆さんが参加をしてくるということについては、作戦というか演習の計画等にも変化が出てくるだろうと思うのですね。そういう新しいメンバーの参加について、ただ単にリムパックについて値打ちがあると考えて参加されたのであろうということではないだろうと思うのです。心配するのは、長官もこの間の本会議でもおっしゃっていましたが、我々は特定の相手に対して自衛隊を持つのではなしに、アジアの中での戦力的空白地域をつくって不安定をつくってはならない、そういう意味でも保持するんだということですけれども、こういう新たなメンバー、例えば今まで私どもが口にしてきました日米韓というような共同の軍事力というもの、そのことについて危機感を持っているわけです。新たにアジアの緊張感をつくり出す一つにならないか、そういう心配があるわけですけれども、ただ単に参加されたのだというふうに人ごとでは済まされない、ああそうかということにならないわけですが、韓国の参加の意図あるいはその影響について重ねてお答えをいただきたい。
  261. 米山市郎

    ○米山政府委員 これまでもリムパックには、先ほども申し上げましたように、アメリカが主催をするわけでございますが、それ以外にカナダ、オーストラリアが参加をいたしておりまして、また、かつてはニュージーランドあるいは英国といったような国々の参加もございました。韓国もそういう国の一つというふうに私どもは理解をいたしております。
  262. 山元勉

    山元委員 時間も不足していますからどうももう少し物足りませんけれども、今申し上げましただけで規模の問題あるいは質の問題で参加の形態等についても大きな変化があるわけです。  そこでもう一遍、自衛隊のリムパックへの参加の法的な根拠についてどういうふうに考えていらっしゃるか、改めてお尋ねをします。
  263. 米山市郎

    ○米山政府委員 防衛庁設置法の六条十二号に「所掌事務の遂行に必要な教育訓練を行うこと。」というような規定がございます。それに基づいてリムパックに参加をいたしております。これはあくまでも訓練の一つということでございます。
  264. 山元勉

    山元委員 乱暴な言い方をしますと教育訓練という名がつけばどこの国とどのような高い次元の演習をしようともいいということにはならないと私は思うのです。そういう意味で、私は、六条の十二号の「教育訓練」というものの歯どめについてどういうふうに考えていらっしゃるのか、今申し上げましたようにどこの国とどんな高次の訓練をやっても教育訓練ということにならないという前提で、歯どめをお尋ねをします。
  265. 米山市郎

    ○米山政府委員 訓練の根拠については先ほど申し上げたとおりでございます。一般論として申し上げますと、自衛隊と外国との歯どめと申しますと、先生お尋ねは特に外国の軍隊との共同訓練を指しておられるのかとも思いますが、そういった外国の軍隊との共同訓練につきましては、それが所掌事務の遂行に必要な範囲内のものであれば法律的には可能であるというふうに考えております。  ただ、具体的にいかなる共同訓練を行うかは、教育訓練上の効果あるいは政策的妥当性、政治的判断といったようなものがそこに加わって総合的に訓練を実施するかどうかという最終的な判断をすることになると思います。
  266. 山元勉

    山元委員 その歯どめの判断、個々の判断と言ってもいいかもしれませんけれども、例えば今度は十隻だ、あるいは細かく言えば、先ほどもあったように洋上でアメリカの船に給油をしてもよろしいか、よろしくないということについての判断はだれが行うのです。
  267. 米山市郎

    ○米山政府委員 最終的には、庁内といたしましては防衛庁長官の判断、そして総理まで御相談申し上げてということになろうかと思います。
  268. 山元勉

    山元委員 これはよく言われるように国の安全、平和の問題です。そういう意味でいいますと、このリムパックに参加をする規模なりあるいはそのあり方については国会での論議というのがぜひ必要だろうと思うのです。後ほども申し上げますけれども、給与改定にしても、国民の理解なり支持というものがなければ目的としていらっしゃることにならないと思うのですね。そういう意味では、今までそういう事故等が起きているあるいは規模がどんどんと拡大していっているということについて、先ほどからの質問に対しても積極的に答弁をされようとしない、説明をされようとしないことは大変不満ですし、これは誤りだと私は思います。そして、現在の訓練、リムパックの規模等については、今説明があるような六条の十二号「所掌事務の遂行」だという。「所掌事務の遂行」といって潜水艦や補給艦が出ていくということは普通の感覚からいってなかなかわかりにくいわけです。私は明らかに超えているような気がします。いわゆる集団的自衛権の行使を前提にする、少なくともそれを成果として期待するような訓練が行われているというふうに危惧を持たざるを得ません。  そういう訓練ですけれども、もう一つだけですが、訓練ですから、そして戦争の訓練といいますか軍事的な訓練ですから、少なくとも相手というものが想定されなければならぬだろうと思うのです。どこから来る敵かわからぬ、どれだけの敵かわからぬ、全くわからないで訓練というのは成り立たぬだろうと思うのですけれども、その相手というのをどのように今想定しての訓練であったのか、お尋ねをしたいと思います。
  269. 米山市郎

    ○米山政府委員 お答えをいたします。  その点につきましては、公表文の中にもはっきり書いてございますが、「本訓練においては、上記訓練を円滑に実施し、参加艦艇等の能力評価を効果的に行うために必要な範囲で訓練想定が策定されています。この想定は、特定の国を共同して防衛するといったものではなく、また、特定の地域または海域を共同して防衛するといったような地政学的又は地理的意味を持つものでもありません。」こういう形でリムパックにおきましても訓練が実施されているわけでございます。
  270. 山元勉

    山元委員 長官に最後にお尋ねをしたいのですが、先ほどからソ連の軍事的な脅威というのは認識をしているというふうにもおっしゃっているわけです。そういう中でこういう訓練がどんどんと大規模に高度に行われているということについて、私は、そのソ連の軍事力を脅威と認識しているということと無縁ではないというのが一般的に考えられることだと思うのです。そういうことで、先ほども申し上げましたように、日本がいたずらにアジアでの緊張関係をつくり出して増幅することをしていることにならないか、そういうことについてお伺いをしたいと思うのです。
  271. 石川要三

    石川国務大臣 残念ながら、私は先生とは若干見解を異にしていると思います。  と申しますのは、今回のリムパック、確かに規模は拡大している、この事実はそのとおりだと私は思います。しかし、再三政府委員からも答弁されましたように、要はある地域、ある国、これを防衛するための、そのための行動ではないわけでありまして、したがって、集団自衛権の行使を前提としたものではない、私はこういう解釈をしているわけでございます。  今、それと要するにソ連の潜在的脅威との関係ということでございますが、そう結びつける人は、それはその解釈は自由でありますけれども、私は、そういうふうに結びつけるのはいささかどういうものかなというふうに思うのです。やはり私が再三申し上げましたように、現在のソ連の極東軍の実際に存在する軍事力、こういうものを見た場合に、それは潜在的な脅威と言わざるを得ない。これは一つの国際的な用語でありますから、あえてそういうふうに使わせてもらうわけでございますが、そういうふうに規定せざるを得ない。こういうわけでございまして、今回のこのリムパックはあくまでもパシフィックエクサイズですから、これは私どもが税金で買った一つの兵器というもの、護衛艦なら護衛艦というもの、そういうものの性能をチェックしたり、あるいはその運用によってのいわゆる戦術の技術を向上させる、こういうものでございますから、私はあえてそれを結びつけては考えられないのじゃないかな、こういうふうに思うのでございます。
  272. 山元勉

    山元委員 見解が違うと言われてしまえば終わりですけれども、私は最後に、世界の趨勢といいますか、平和軍縮へ向けての大きな流れができてきている、そのことについて、日本もとりわけアジアの平和安定のために努力をするんだ、重ねてこれは総理も外相もおっしゃっているわけです。そのことを実質的に努力をしなければならないというふうに思うわけです。先ほどの答弁の中にも政治的信頼関係が前提だという話がありましたけれども、そういうものをつくっていくことについて日本が努力をしなければならないという立場でこの問題についても私どもも関心を持ちたいと思いますし、努力を要請をしておきたいというふうに思います。  次に、提案されています法案について幾つかの御質問を申し上げたいと思います。  最初に、若年定年制のゆえに一般公務員との不利益の部分を埋めるための施策、こうおっしゃっているわけです。これが大前提になっているわけです。精強な軍隊、自衛隊をつくるために若年定年制がやむを得ないのだ、極端に言えばそのことが第一の前提条件になっているわけですけれども、私は、その若い人、五十三歳までの人で自衛隊をつくることによって資質や士気が高まるものではない、こういうふうに思うのです。やはり日本の国の安全、平和を守るということについての政策あるいは理論で国民が合意をしていることが大前提であるはずだと思うのです。そういう力がなければ自衛隊の皆さんも精強であり得ないし、士気も高まらないだろうと思うのですね。  そこで、第一に若年定年制というのを持ってこられるわけですけれども、私はそうではないという立場で申し上げるのですが、他の公務員や民間の皆さんが今努力をしているように、六十歳定年制を長期にわたって自衛隊の中で目指すという努力が全く不可能なのかどうかということをまずお尋ねをしたいと思うのです。
  273. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 定年の問題につきましてはこれまでも何回か議論が行われておりまして、過去に既に定年を現行のとおりにむしろ延長したという歴史を持っております。したがいまして、およそ自衛官定年は何歳でなければいけないと一義的に定まるものでないことは確か御指摘のとおりでございます。しかし、その結果として現在我々が定めております五十三歳を主とする定年制というものは、我々今度の給付金制度を御提案申し上げるに際しましても十分に検討させていただきましたけれども、一律にこれを六十歳というような形に引き上げることにはどうしても自衛隊精強性の保持の観点から無理があるという判断をいたした次第でございます。それは日ごろ自衛官が非常に激しい訓練を行っておる、体力を求められるということもそうでありますし、それからまた、長い間そういうことを継続する精神力を求められるということにおいてもそうでございますので、組織全体としてより若く保持しなければならないという判断をしたわけでございます。  その反面において、ちょっと御質問趣旨に外れるかもしれませんけれども、検討の一環といたしまして、できると判断したところは定年延長することといたしておりまして、その残りの中枢部分につきましては一律延長することは不可能であるという判断をした次第でございます。
  274. 山元勉

    山元委員 定年延長すべきだという立場で申し上げているわけですけれども、例えばアメリカの軍隊はほとんどが六十歳以上が定年じゃないのですか。例えばほかの国で、極端なところでは三十歳代の定年というのが設けられている国もありますけれども、アメリカでいいますと、大半が六十歳以上の定年というふうになっているわけです。外国の例からいってもそうですし、先ほども少し出ましたけれども、国内でも消防隊員だとか警察官、消防署員、六十歳の定年について努力をしているわけですね。そのことについてはどういうふうにお考えになりますか。
  275. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 二点の御指摘があったかと思いますが、まず外国におきます定年制度でございます。先ほども御質問にお答えしてそれぞれ申し上げたところでございますが、少佐、大尉以下のところでは、アメリカを除くところは皆我が国よりも低い定年年齢を設定しているところでございます。  御指摘のアメリカは確かに形式上このように六十歳という形に設定された形になっておりますけれども、実際の運用といたしましては、その一つの階級にいる在位年数というのが定められておりまして、その上に出世をしなければ直ちに退役という形になる関係上、実際上運用としては四十歳代で下の方は定年を迎えているというのが事実上の運用でございます。  それから次に、消防職員、警察職員等の地方公務員につきましては、これは御承知のとおり国に準ずるという形になっておりまして、ほとんどが六十歳定年でございます。しかしながら、これは我が国自衛官の場合と職務内容において顕著な差があるということで、自衛官の場合には若年定年をとらざるを得ないが、警察官あるいは消防職員の場合には、それらの判断において六十歳でもたえ得るということでそういうふうな形になされているものと承知いたしております。
  276. 山元勉

    山元委員 資料の中にもあります研究会の報告の中に、自衛官には「危険等回避の禁止」とか「上官の命令に服従する義務」、こういうものがあって、若年の定年というふうに引っ張っていっているわけですけれども、例えば危険回避の禁止というのは、消防士にしても警察官にしてもそのことは言えると思うのです。怖いから逃げていくとか、危ないからやめたということには消防にしろ警察にしろならないわけですね。消防でも例えば一九八八年から九二年までにかけて六十歳定年延長していく努力を今されている。警察でも、これは長期にわたって、八四年から九七年まで、十年以上かかって段階的に定年を六十歳にしていこう、そういうような努力がされているわけです。自衛隊はそういう努力の全くらち外であるということに私はならないと思う。雇用の安定の意味からも、何としてでも六十歳定年へ持っていくという努力がされるべきではないかと思うのです。  もう一つ例を挙げますと、私は民間の運転作業の会社にお尋ねをしました。行政指導もあって六十歳定年にした。しかし実際に大型車を動かすのは、とてもじゃないが六十歳までは無理です。ですから、五十七歳で定年の扱いをします。五十七歳以降は、働きたいといえば賃金は八五%にダウン、そこで退職すれば優遇として五十七歳で三百万円がオンされる。一般退職金に対してプラスアルファが三百万円、そういう努力を民間の場合はしているわけです。  ですから、精強な自衛隊員が要るから定年五十三、そこを動かないものとして、一般公務員との不利を埋めるために特別な新しい制度をつくるのだということについては、私はまだまだ納得がいかないわけですが、そういう民間の努力あるいは消防署、警察の定年延長について理解をどのようにしていらっしゃるか、お尋ねをしたいと思うのです。
  277. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 確かに、警察官、消防の場合に、職務内容がある意味体力を求められるケースもあり、非常に厳しいことも事実御指摘のとおりであると思います。しかしながら、その密度といいましょうか、要するに自衛官の場合には、一たん災害救助とかそういう実任務以外に、それがないときは日常いつでも訓練という形で非常に体力を要する訓練を行っているわけでございまして、その訓練それ自体が現在自衛隊員に課せられた職務の本務でございますから、それを遂行するためにはどうしても体力が求められ、かつ、その程度は警察官あるいは消防士の場合とは異なって、より厳しいものであるというふうに考えている次第であります。  それから、ただいま民間についての御指摘がございました。これは民間については定年延長することを決めたところまで含めますと、現段階で八割方六十歳ということで、なお一方において二割のものが六十歳定年を決めてもいないということがあることは承知いたしております。しかしながら、いずれにいたしましても私どもの御提案申し上げております制度は、一般公務員の中にあってほかの公務員が皆六十歳まで勤務できるけれども、今申し上げたようなことから自衛官についてはどうしても六十歳定年をとれないという前提を判断いたしました結果として、その間の不利を補うための給付金制度として設けたものでございまして、民間の場合の状況というよりは、一般公務員の中におけるバランスというふうに御理解賜りたいと思います。
  278. 山元勉

    山元委員 先ほども言いましたように、新しい制度をつくっていく場合に、やはり国民の支持なりあるいは世論の支持というものがなければならぬと思うのです。そういう点で、私が今例を挙げました消防だとかあるいは民間、そしてほかに今おっしゃった一般公務員についても、一般公務員も確かに定年制は六十歳までとなっている。けれども、そこまで及ばない、体力的にも及ばない、こういう人はたくさんおるわけですね。これは、先ほどの答えでは任意の退職だとされる。けれども、一般公務員あるいは教員等についても、いうところの精強性といいますか、そういうものが要求されるわけですよ。これは、例えば現場にいて現業の公務員、あるいは体育を担当している教員等は非常に体がきつくなってくるわけですね。けれども六十歳までの定年があるから、六十歳までにやめる場合には極めて不利な形になるわけです。そういう天井があるか、下限があるか、ここからは、下の五十三歳から後は保障しますというのと、六十歳までいけば満額保障しますというのと、上下が、線の引き方が違うわけです、ちょっと説明がわかりにくいかもしれませんけれども。そういう点で、私は一般公務員もこの制度についてはまだ疑問を持つだろうと思うのです。  そこで、その中身についても少しお伺いをしたいのですけれども、こういうふうにして支給をされると、標準的な金額、例えば五十三で退職する、そのときの平均的な支給額はどれほどになるのか。  そしてもう一つは、ことしの三月に退職をされた方に支給するとすれば、最高の受給者はどれだけ受けることになるのか、計算があったら知らせてほしい。
  279. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 この制度は、平成二年十月一日から実施をさせていただきたいということでお願い申し上げているわけでありますけれども、一気に、当初の例えば五十三歳なら五十三歳からその七年間分を計算して一時金で支給するという形になっておりませんで、徐々に移行する形をとっておりますので、完成時点での平均額を申し上げますと、おおむね平成七年ごろに完成時点を迎えるわけでありますが、平均で千五百七十六万円というものを一時金としてもらうことになろうかと思います。  それから、後の方の御質問の最高額ということになりますと、その完成時点でいいまして、位によって差がございますが、その中で一尉のクラスが七年の中の上位にございますので、千七百四万円ということになろうかと思います。
  280. 山元勉

    山元委員 そうすると、現在ある退職金の制度についてお伺いしたいわけですが、五十三歳で退職する場合に、自衛官が五十三歳で定年として受け取る退職金は、今おっしゃいました千五百七十六万円のほかにあるわけですね。その金額はおよそどれぐらいになります。
  281. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 ちょっとベースが違うといいましょうか、千五百七十六万に見合う総平均の退職手当ではございませんけれども、昭和六十三年度の曹長の退職手当平均額は二千百万円ということで、それほど各階級で大きな差はなかろうかと思います。
  282. 山元勉

    山元委員 そうすると、足しますと、五十三歳でやめる場合に二千百万円の定年退職退職金と千五百七十六万円、これは二回に分けて支給されることですけれども、合わせて三千六百万円余り。退職金と言うとまたさっき違うとおっしゃっておりましたけれども、いずれにしても退職に伴うて収入を受け取る、こういうことで理解してよろしいですね。
  283. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 おっしゃるとおりでございます。ただ、これはちょっと断らしていただきますが、確かにそういうふうに考えると、大きな金額という印象をお持ちになると思いますけれども、先ほど申し上げました一時金としての千五百七十六万円という総平均額は、これは七年分に見合うものでございますので一年分に見合う額はこれに対しておおむね二百五十万円程度でございます。そういたしますと、先ほど来御答弁申し上げておるとおり、これを一年当たりの再就職賃金と加えても、これが退職時の給与の三三%程度にしか該当しませんので、再就職賃金と合わせても退職時の給与の七五%にしかならない。つまり、やめたときの給与水準から二五%ダウンするという状況にしかならないという点を御理解賜りたいと思います。
  284. 山元勉

    山元委員 私は、先ほども申し上げましたように、新しい制度をつくる上での国民的な理解でいいまして、民間で五十三にしろ五十五にしろ大型車の運転がきついということで退職する者の感覚といいますか、そういうことからいえば、この三千六百万円余という金額が保証されるということについてはやはり理解がしにくいということを申し上げているわけです。  そこで、これはまた平行線になるだろうと思いますから、少しほかのことをお尋ねしたいのですが、その上限額あるいは下限額というのを設定していらっしゃいます。それの基礎になる給与年額相当額というのがあるわけですけれども、そこのところの額の基礎が、説明では俸給、扶養手当、期末・勤勉手当、営外手当等が書いてあるのですね。それで奇異に感じるのは、俸給というのは超勤手当、先ほどもあったように二〇%を含んでいる、一般公務員よりも高くしてある超勤手当分まで含んである本俸だというふうに考える。それから営外手当というのは一つの特殊手当ですから、そのことも組み込んで、あるいは扶養手当についても、この七年間扶養家族が継続するかどうかわからないけれども、そういうもの、超勤手当二〇%分、扶養手当あるいは営外手当というものを所得の中に組み込んで、それの何%か保証するんだという基礎の額にしていることについてどういうお考えなのか、御説明をいただきたいと思います。
  285. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 今御指摘の中の問題点として挙げられましたのは営外手当と超勤手当の含み分だということでございますが、まず営外手当でございます。営外手当と申しますのは、その名から若干特殊勤務手当的な印象を与えるかと思いますけれども、これは非常に特殊な性格の手当でございまして、曹士は原則としては営内に居住することになっております。その場合には営内に居住する関係で食費等はただで支給されますけれども、その義務を課されない部分については三一%自己負担をしております。それを、その他の部分については食費をただで支給されることになっておるので、例えば曹士のうちでも外に出る人、あるいは幹部自衛官でも外に出ておりますが、それらの者については営外手当として給与を立てるときから差っ引かれている分を本来の形に返してもらうというだけの意味でございまして、これは特段の意味を持つものではなくて、本俸そのものを構成するものと御理解いただいてよろしいかと思います。  それからもう一点の、超勤手当が中に含まれているのはおかしいというお話でございます。確かにほかの公務員との比較をする場合にその点は考慮をしなければならない点だと思いますけれども、今は自衛官全体のやめたときの給与をどの程度確保したら生活の維持が可能かということでございますので、退職時の自衛官も当然ながらその本俸の中に超勤手当分も含まれておりますので、その含まれた本俸としての額を基準の一部に入れても、自衛官自衛官の比較としては当然いいのではなかろうか。なお、超勤手当分について二〇%というお話だったと思いますけれども、これは平均的に一〇%程度でございます。念のため、申し上げておきます。
  286. 山元勉

    山元委員 もう一つだけお尋ねしますが、二十七条の五に「支給時期の特例」というのがあります。所得をチェックするために二回に分けて七分の二、七分の五というふうに支給するというのが一方にあって、そして特例という形で一括受給ができるということになっています。そのことについては翌々年ですか、チェックを受けてから七分の五というふうになっているのだけれども、一括支給を受けられる条件、資格というのはどういうふうになっているのですか。
  287. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 原則的には二つに分けまして七分の二と七分の五を支給するという形になると思いますけれども、そもそもその前に、二回に分けましたのは、今の御指摘の中にもございましたように、退職翌年の所得をチェックするために翌々年の八月に二回目を七分の五支払う、こういうことでございます。ところが中には、自分でわかっているわけでございますから、自分は退職後の一年の所得が非常に高いとあらかじめわかっていて二回目で調整を受けて戻さなければならぬ、あるいは一回目を戻さなければいかぬ、二回目ももらえるはずがないというふうなことがわかっているような者が、一回目について形式的に七分の二をもらう必然性はなかろう。ただ、その者の選択によって、自分としては一たんもらった一回目の七分の二相当分の給付金について返還をしなければならないことが推定されるならば、それは二回目に同時にチェックを受けて精算した方がよかろう、そういう程度の意味合いでございます。
  288. 山元勉

    山元委員 もう一つ、その届け出ですけれども、例えば一回七分の二受け取って、翌々年第二回目の支給を受ける前に届け出をしなければ七分の五はもらえぬということですね。けれども、その場合に捕捉できるのですか。翌々年になってきて七分の二受け取った者が所得がどうなっているかということについては極めて不確実にしか捕捉できないのではないかと心配なんですが、それはどうですか。
  289. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 これは税務署に提出いたします確定申告書の控え、あるいはさらに例えば市町村で発行いたします所得証明、こういったものを提出させることを考えておりまして、それらの所定の書類の提出がなければ支払いを差しとめるということでございます。したがって、公のところの証明書をもってチェックするということでございます。
  290. 山元勉

    山元委員 時間が来たので終わりますけれども、新しい制度ですから、十分な論議が必要だろうと思うのです。そういう意味ではこの制度について国民的に理解がたとえ一部でも――先ほどちょっと話がありまして、どこへ行っても反対はないという言葉がありましたけれども、私はやはりこのことについては理解をしていないし、そしてふたをあけたらこれがひとり歩きをしていくことについて国民はかえって驚くのではないか。基本的にはもう一度、これは私の気持ちとして申し上げておきますけれども、やはり雇用の安定のためにも六十歳定年へ向けて努力をする、そういう方向をぜひ今後も検討をしていただきたい。今の状況の中で定年制五十三が何としてでも最大の前提だということで制度をいじられることについては大きな疑問を持っているということを申し上げまして、質問を終わります。
  291. 岸田文武

    岸田委員長 続いて山中邦紀君。
  292. 山中邦紀

    山中(邦)委員 私も法案を中心に質疑をしたいと思いますが、この法律案の作成に先行して出されております「若年定年制の下にある自衛官定年退職後の処遇に関する検討について」、平成元年十二月十八日付文書、この構想に基づいて、審議されている法律案がつくられている、このように承知をしておりますが、そのとおりですか。
  293. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 その研究会の研究結果に基づきまして、それを踏まえて我々の方で制度設計をいたしまして、各省庁と調整を図った上、制度化したものでございます。
  294. 山中邦紀

    山中(邦)委員 この処遇に関する研究会というのは、いつ、だれが、どういう権限に基づいて設置をしたものか、また研究会に対しては何らかの課題を与えて研究の結果の答申を求めたと思いますが、この点について明らかにしていただきたいと思います。
  295. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 有識者によりますこの研究会は、昭和六十一年八月に自衛官年金問題研究会という形で発足をいたしまして、それでその検討の結果、この問題は年金問題としてではなくて若年定年による早期退職対策の問題として位置づけまして、ただいまお話にございましたような名前の研究会にして昨年十二月に意見を取りまとめたものでございます。  この研究会につきまして、だれがというよりも防衛庁としてこういった問題について研究をお願いして、正式の諮問、答申という形をとっているものではございませんし、国家行政組織法等の規定に基づくものではなくて、防衛庁の所管の範囲内の事柄につきまして防衛庁として審議、研究をお願いしたという性格のものでございます。
  296. 山中邦紀

    山中(邦)委員 それにしても、防衛庁の長官が研究会のメンバーを委嘱して一定の研究をお願いした、こういうことになろうかと思いますが、どういう問題意識を持って研究をしていただくようにお願いをしたのか、この点をお尋ねしたいと思います。
  297. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 問題意識といたしましては、先ほどの名前からもわかりますとおり、当初は自衛官年金の問題について研究をしてもらいたいということであったかと思いますが、その後やはり若年定年対策の問題は年金の問題ではない、研究の課程でそういうことになりまして、先ほどのような名前のものとなったわけでございます。それを通じて申し上げれば、要するに自衛官若年定年対策について何らかの案をということでお願いをした次第であります。
  298. 山中邦紀

    山中(邦)委員 当初のネーミングが自衛官年金問題研究会、こういうことであったということから察せられますことは、先ほどから問題になっております若年定年制、これによる自衛官の掛金の増大、その他の問題であったろうというふうに思います。当初、年金問題としてどういう観点からこの問題の解決について検討され、そして年金制度内の解決が難しいというふうになっていったのか、その経緯、研究会の問題でもありますし、法案を主管し、提出している防衛庁の問題でもあろうと思います。年金制度内で対応するについてはどういう方策があり、なぜ制度内で解決がつかないのか、この点をお尋ねしたいと思います。
  299. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 今の御質問は、年金制度の中でなぜ対応ができないのかという点かと思いますが、自衛官の場合、御承知のとおり五十五歳から支給開始を認められた特例があります。しかし、五十三歳が対象でございますので、五十三歳までの繰り上げ減額支給が認められておるという形で運用されておるわけでございます。  まず、五十五歳で早期支給開始の形になっておる関係で、掛金負担率が一般公務員に比べて非常に過大なものになって、今後このまま推移するとさらに大きな格差ができ上がるということに問題点がございました。それから給付水準の問題もございまして、それらを踏まえてこの年金体系の中で若年定年対策といういわば国策である制度の費用を自衛官個人に負担させていくのは問題があるということに結論が至ったわけでございます。  なお、公的年金一元化の流れというのがございまして、平成七年をめどに公的年金が一元化されるということになりますと、給付と負担の両面におきましてこれが同じ形のものでなければならないということもございまして、年金の中でこの自衛官の問題を対応するのは困難であるという結論になったわけでございます。
  300. 山中邦紀

    山中(邦)委員 例えば掛金率が非常に高くなるということであれば、一定水準に掛金率を抑えて、その不足分をそれこそ政策的に国庫が支弁をするとか、あるいは現に基礎年金については厚生年金が持ち出しをいたしております。あるいは鉄道共済年金などにつきましては他の共済組合が支援をしているわけであります。こういうことについての検討はなされなかったのか、もしなされたとすればそれが進行しなかった理由、どうでしょうか。
  301. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 研究会の中でそういったことも含めましていろいろ議論はなされたことは事実でございます。しかしながら、結局そこのところが基本的な考え方の問題になるわけでございますけれども、自衛官若年定年対策というのは国策として精強な自衛隊を維持しなければならないということでありますから、それを社会保障たる年金という形で負担することが論理の問題としても制度の問題としても適当でないということがございました。それから、先ほど申し上げましたような公的年金一元化の流れということに照らしても、そういう制度的な違いというのを残したままというのはまずいだろうということもございまして、そういう年金の中での解決というのは困難だということになったわけでございます。
  302. 山中邦紀

    山中(邦)委員 ただいまのお話はちょっと理解がいきかねるのであります。さきの質問をした委員の皆さんは、新しい制度として十分検討を加え、公務員制度の中であるいは国民全体の中で理解を得られるかという観点質問をしてきて、なかなか納得を得られていないというのが質疑の経過であったろうと思います。むしろこれまであった共済年金制度の中で解決する、これが筋であって、そうであれば新制度内容についての議論は回避をされたのではないかと思いますが、それはそれといたしまして、それ以外に退職手当の増額という形の検討はなされなかったのでしょうか。
  303. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 それも検討の対象の一つでございました。
  304. 山中邦紀

    山中(邦)委員 どのように検討し、どういう経過でこの方法をとるということが実行されなかったのでしょうか。
  305. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 これも考え方の問題でありますけれども、退職手当として対応するためには、若年定年のため勤続期間の短い者への対策というのは、長く勤務した者に厚い給付が行われるという性格を持つ勤続報償的な考え方を基調とした退職手当制度の中では無理があるということでございまして、それで退職手当制度にはなじまないということになった次第であります。
  306. 山中邦紀

    山中(邦)委員 防衛庁職員給与法という一般の国家公務員給与法と別の法律があるわけではありますけれども、やはり公務員の中の特性にかんがみて特別法がある。国家公務員の全体の一部であるという点は変わらないと思うのです。防衛庁給与法が他の国家公務員給与とどこが違うかというさきの質問者の質問に対しては、超過勤務手当本俸に繰り入れられている、こういうやりとりがあったかと思います。これ以外に自衛官あるいは防衛庁職員の特別な国家公務員給与体系の中の扱いというのがあるでしょうか、これが一点。  それからもう一つ、防衛庁職員の皆さんは皆防衛庁給与法、この適用を受ける特別職の公務員でしょうか、一般職の方もおられるのでしょうか。
  307. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 自衛官給与につきまして一般の公務員との違いというのは、原則的に自衛官給与につきましては職務の類似する他の国家公務員給与と相互に均衡がとれる形に設定されておりまして、対応号俸等も定められておりますので、基本的には給与としては差がないというふうにお考えいただいて結構だと思います。ただ、同じ給与全体の中での所属区分といいましょうか運用の仕方が先ほど申し上げた超勤手当本俸に繰り入れられているというのは、給与全体としては同じことでございますけれども本俸の中に入っているという意味で、退職手当に反映される部分に関する限り異なってくるという意味で申し上げた次第であります。  それから最後の質問は、ちょっと私聞き漏らしたのでございますが、一般職防衛庁職員がいるかということだと思いますけれども、施設庁の労務部の職員一般職職員でございまして、これも防衛庁職員給与法の適用を受けるということでございます。
  308. 山中邦紀

    山中(邦)委員 今のお話ですと、防衛庁職員給与体系も、給与表の作成については問題が別かもしれませんけれども、一般国家公務員に従ったものだ、こう承りました。  若年定年制にかんがみた給与関係規定はございませんか。退職手当について、手当法四条に若年定年制に照らした優遇措置はあるようにも思いますが、この点はいかがでしょうか。
  309. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 その前にちょっと先ほどの件で、労務部の職員一般職でございまして、防衛庁職員給与法の適用はございませんので、訂正いたします。  ただいまの若年定年制を採用していることによる退職者の優遇措置はないのかというお尋ねでありますが、自衛官に対する退職手当については、原則として一般の公務員と同様に国家公務員退職手当法が適用されているわけでございますが、自衛官にはいわゆる若年定年制がとられるというゆえに、その特殊性を考慮して勤続期間の計算上若干の特例が定められているということがございます。その他、給与については先ほど申し上げたように他の国家公務員給与と相互に均衡がとれるように定められておりますので差はないというふうにお考えいただいていいと思います。
  310. 山中邦紀

    山中(邦)委員 任期の定めのない自衛官の場合に、若年定年制規定があるために、退職手当法の四条の適用に関しましては、一般公務員よりも勤続年数が少なくて、四条の普通退職の二割五分増しの退職手当支給されているのではないでしょうか。
  311. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 今私が退職手当の勤続計算について若干の特例が認められるという形で申し上げたのは、今御指摘のまさにその点でございます。ただ、その点について申し上げますと、政令第二十五条の二の適用者は合計で六十三年度四名、二十五条の三の適用者、これはそれぞれ年数が違うわけでありますが、ゼロでございまして、実態としてはその適用を受ける者が少なくなってきているということでございます。
  312. 山中邦紀

    山中(邦)委員 退職手当の性格については生活保障的な意味のあることも指摘をされているところでありまして、退職手当法四条の適用の人数が少ないという今の御説明ではありましたけれども、一般公務員に準じた退職手当法はもう区別をしないで防衛庁職員にも適用されているわけでありますが、若年定年制がその中で考慮をされているわけなんですね。ですから、既存の給与体系を動かすことなしに、この退職手当法四条を用いながらこの精神において今回提案の法案の趣旨を生かすということは十分考えられたはずだというふうに思うわけです。この点の検討が十分なされたのか、どうしてこういう点の着目がなかったのか、いかがですか。
  313. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 先ほど申し上げましたように、退職手当一般の問題としては検討がなされたわけでございますが、私の記憶するところでは、今御指摘の四条についての適用の特例というものにつきましての検討は、具体的にそこまでの検討はなかったかと思います。  ただ、この四条の問題は、勤続期間が二十五年のところを短縮して適用するということでございまして、そのメリットを受けるべき者といいますのは、途中採用等で勤続期間が特に短い場合にそうでございまして、今問題となっております五十三歳で若年で定年退職で問題だと称しておりますのは、それでも三十四年ぐらいの勤続の者を念頭に置いて考えているわけでございますので、直ちにこの四条の特例との結びつきというのは出てこないのではないかというふうに思います。
  314. 山中邦紀

    山中(邦)委員 今度の法案の構想は、退職時の給与の七五%、そのうち四〇%は再就職をした後の収入を前提としたもののようでありますけれども、七五%を維持することを構想しておる、このように伺いました。  これにかかわる立法事実としていろいろな調査をなされたと思います。個々のケースではなしに平均的な収入その他の数字を把握しておられると思いますが、どういう方法で調査をしてどういう結果を得ておられるか、お答えいただきます。
  315. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 防衛庁で実施いたしました再就職賃金に関する調査は二度行っております。六十一年と六十三年に行って、その再就職賃金退職時の給与に対する割合がおおむね四割という点において変わりがなかったという結果が出ております。  なお、数字で申し上げますと、六十三年について申し上げますと、退職時の給与が月額で四十一万八千円程度で、それで再就職賃金が二十万七千八百円程度、年額で申しますと退職給与が七百三十四万円程度、それから再就職賃金が三百二十一万円程度ということで、この給与対再就職賃金の比率が四三・七%、こういうことになったものであります。
  316. 山中邦紀

    山中(邦)委員 この調査は今後も継続してお続けになるものでしょうか。と申しますのは、もう一つの質問と絡みますけれども、退職時の収入の七五%を保障したい。この七五というのはどういう観点で選ばれた数字であるのか。また、再就職の収入のパーセントによって、もしこの法案が通過をした場合には将来改定の問題が出てくるだろうというふうに思うわけです。これらの関連があると思いますので、この点をお聞かせ願いたいと思います。
  317. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 当然に毎年とか定期的に何年に一回ということを今決めているわけではございませんけれども、特に経済状況が変動したときなどはこの種の調査を行うことが必要であると私は思っております。それを踏まえて、再就職賃金が大幅に変動した場合にはこの制度自体を見直すということもあり得る話であるというふうに思います。当面そこまでの大きな変動はないというふうに私どもは見込んでおりますが、それは経済事情の変動いかんでございますから、今後の問題として、その場合には変更することあり得べしということでございます。  それから、なぜ七五%としたのかというお話でございますが、これはなぜ七五%としたのかということよりもむしろ本俸給与給付金の額の算定の基礎を退職本俸の六カ月分という形にしたわけでございまして、それはすなわち一年で見れば半分ということでございますが、それは給与に直しますと三三%程度になりますので、再就職賃金と合わせて結果的に七五%になるということでございます。しからば、本俸の半分といいますか六カ月分としたのはなぜか、こういうことでございましょうが、これは四九%じゃなくてどうしても五〇%じゃなければいかぬとか、そういうぎりぎりした議論ではございませんけれども、民間を調査した結果を防衛庁職員に適用した場合におおむねそうであるとか、あるいはこれまでの年金制度の、六十一年の制度改正のときに問題意識が出てきてこの研究会を持ったわけでございますが、そのときの年金として、若年定年対策をとっていたときのその年金の水準が年額的にいっておおむね二百四十万円程度であったものですから、その水準と見合う程度のものを給付金として給付すれば結果として七五%の給付水準になるであろう。そのようなことを総合的に勘案して二分の一という形にしたわけでございます。
  318. 山中邦紀

    山中(邦)委員 公的年金制度一元化の方向が政府考えだと承知をいたしております。実際は共済年金の各制度間の調整もいろいろな問題があるとは思われますけれども、公的年金制度が一元化した場合に、防衛庁職員の共済関係掛金や給付や生活保障の点ではどういうことが構想されておりますか。
  319. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 公的年金が一元化されるといいますか、この給付金制度の創設に伴いまして、防衛庁自衛官共済年金制度一般公務員と同じ支給開始年齢ということに、たまたま公的年金一元化のめどであります平成七年ごろを完成時点としてそういう形になるわけでございます。そういたしますと、掛金負担も近い将来、平成七年まで待つのかその前かそこはわかりませんけれども、いずれにいたしましても近い将来掛金負担率も一般公務員と同様のものになるということでございまして、給付と負担の両面において一元化されるという形でございます。そのときにこの自衛官年金制度がどういう形で――今までは一般の公務員の共済年金制度とは別経理でございましたけれども、そういうことになりますと恐らく一体として経理されるということになろうかと思います。
  320. 山中邦紀

    山中(邦)委員 一体として経理をされるという段階になれば、今回の提案の給付金意味合いというのが変わってくるのではないかという気がいたしますけれども、どうでしょうか。あえて給与の六カ月分を若年退職後の収入、退職時点の四〇%に加算をして考えていく意味はその際には薄れていくということはないのでしょうか。
  321. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 一元化されるということは、当面自衛官年金の受け取りも六十歳からということでございます。今お願いしております給付金は、御案内のとおり五十三歳の若年定年から六十歳の一般公務員定年年齢との差のところの不利性について補おうということでございますので、その際に意味が薄れるということは全くないと思います。
  322. 山中邦紀

    山中(邦)委員 そうしますと、この給付金というのは若年定年制のある限り特段の事情がなければ生きていくということを構想した制度のように承りました。これまでの公務員の給与体系の中の給与退職手当、これと異質のものが入ってきたということになるわけであります。重複した質問になるかもしれませんが、その意味合いをどのようにとらえておられるのか。政策的なものだというお話がありますけれども、生活保障的な意味合いを込めて給付金額が決まっている。前提の立法事実についても、四割の収入ということが前提になっているということになれば、もう少し内容を性格づけをなさって提案をされるべきものと思います。単に政策的なものだけということになりますと同種の問題がほかにもあるわけでありますから、同じような要求が出てくるはずだと思いますが、いかがでしょう。
  323. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 確かにこの問題を研究会で議論しましたときも、この性格論ということについては大分議論がなされたわけでございます。しかしながら、先ほども御説明申し上げましたけれども、給与というのは現実の勤務に対する対価ということですから、給与ではない。それから、退職手当というのは勤続報償的なもので長く勤めれば多く給与されるということに対して、この若年定年対策給付金はその逆であるということで、これでもない。それから、年金というのは老後の生活保障という社会保障の一環ということで考えますと、それとも違う。そういうことで、既存の体系では、概念では割り切れない特殊なものであるということで整理せざるを得ないというのが実情でございました。  そこで、今最後におっしゃいました類似の他のものへの波及という問題があるではないかということでございますが、そこは他の分野のものがどういうふうにするかについて私の方でとやかく申し上げる立場にはございませんけれども、しかし、いずれにいたしましても私どもの制度は、現在の他の一般の公務員全体が六十歳の定年をとっている中で唯一の例外として自衛官だけが若年定年をとっている、その不利益を補うという意味において他に類例がないものではなかろうかというふうに理解をいたしております。
  324. 山中邦紀

    山中(邦)委員 新しい制度を導入するに当たりまして他に類例がない、したがって他の方がどう考えるかわからない、波及の点は所管の問題でない、そういうようなことではないのではないかというふうに私は思います。防衛庁職員自衛官について、若年定年制制度としてあるがためのいろいろな不利益がある、これはそれなりに理解ができます。しかし、それに対処する手法として、調査を行い、六十歳に至るまでの生活状況あるいは収入状況を前提として支給の金額が決まっていくということになりますと、雇用形態が非常に多様化しつつある、これからいろいろな雇用形態の中で若年定年という問題が出てくる可能性もある。また、制度としてなくても、実際問題として職種によっては早くやめざるを得ないというものも出てくるのではないのか。精強性を保つという意味では、警察職員、消防職員、そういう立場の方々の要求もあるはずであります。また、女性の公務員の方々につきましても、これは退職定年前になされる方が多いのではないかという実態もあるかというふうに思うわけであります。  雇用と年金が接続して健康で文化的な生活を営めるようにというのが社会保障の理想だと思うわけでありまして、こういう生活水準に即した手法で政策的な給付をする、これはこれなりに大いに理解ができますけれども、防衛庁自衛官の非任期制の職員だけに限った要求ではないと私は考えます。もし、そうでないとするならば、この政策的な給付金というのは、もっと内容を詰めないと国民の理解が得られないのではないか。また、他の公務員、特に体力を要する仕事をされる方の理解を得にくいのではないのかという気がいたします。意見として申し上げておきます。  それで、この法案を施行した場合に、給付金予算額として、経過規定もあることだと思いますけれども、どれぐらいが見積もられているのか、明らかにしていただきたいと思います。
  325. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 平成二年度の予算額としては十三億五千万円程度を計上させていただいております。経過措置を経ながらだんだんとふえてまいりまして、平成三年度八十億、四年度百五十億、五年度三百五十億、六年度四百五十億、七年度五百五十億円というような推移になると見積もっております。
  326. 山中邦紀

    山中(邦)委員 経過措置の終わった後は、ただいまお述べになった最後の金額が、今の状況のままであれば毎年必要とされる、こういうことになりますか。
  327. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 退職人員の見積もりいかんにもよりますが、おおむねそれが平準化しているといたしますと、この金額が横ばいで必要とされる金額だということでございます。
  328. 山中邦紀

    山中(邦)委員 そういうこともありまして、将来ともに一定の金額が予定されるということであれば、この給付金の性格論というものはもっともっと詰めなければいけないのではないのか。おっしゃるとおり給与ではないわけであります。在職中に支給される給与ではないのですから、この点は明確であろうと思います。また、退職手当と見るわけにもいかないというお話であります。退職手当は過去の勤労に対する報償の意味退職後の生活の保障の意味があるという観点から考えますと、もし必要であれば退職手当の増額という手法によるということもあり得たのではないのかと私は思っております。しかし、退職手当は過去の勤続年数と給与、大体これによって算定をされておりますから、今回の給付金の算定方法はこれと違う。したがって、退職手当でもないようであります。どうも自衛官退職後の生活保障を重視したものである。ただ、在職二十年以上という枠がかぶせられておりますので、過去の勤労に対する報償という性格もあるようにも思われます。  この生活保障というのをどういう水準に維持していつまで保障するかということになりますと、生活保障という観点からいいますと、必ずしも六十歳までという議論にはならないのではないのか。この法案のつくり方はそうでありますけれども、基本思想におきまして、公的一元化の行き着くところ、六十五歳年金支給開始年齢という問題が表に浮かんでくるでありましょうから、六十歳定年という定年制との接続が断たれるわけであります。政策的といいますが、この給付金がどういう意味合いを持つかということはもっともっと詰めていかないと、他の公務員一般のみならず、厚生年金受給者に対する関係でも年金制度との兼ね合いが出てくるのではないかと私は思っているわけです。今のままではまだ性格の追求は足りないと思っております。これは意見であります。  なお、給付金につきましては追給がある、あるいは返納があるようであります。この調整の上限、下限、計算方法はわかりましたけれども、どういう観点で、どういう考え方でこれが設けられているのか。その幅については、この間にあるのは問題にしないということでありましょうけれども、どういう考え方に立っているのか、明らかにしていただきたいと思います。
  329. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 この制度若年定年から来る不利益を補うという趣旨でございますので、仮に若年で定年退職した者が再就職で高い水準の給与を得た場合にまでこれを支給する必要はないという観点から調整制度を設けたわけであります。その場合に、まず上限、下限という形になっておりますが、平たく申しますと、退職の翌年一年間の再就職賃金給付金との合計額が、その翌年までその自衛官が在職したと仮定した場合に得られるであろう給与年額と比較いたしましてその年額を超える場合には、超える部分についてカットするということでございまして、もちろん極端なケース、再就職賃金基準給与年額をそれだけでオーバーしてしまえば給付金支給はゼロになる。したがって、第一回目の給付金も返納する、こういう形になるわけでございます。
  330. 山中邦紀

    山中(邦)委員 本案についてはこの程度にさせていただきまして、私、岩手の選出なものでありますので、米軍機における被害問題の再発防止の観点でお伺いをさせていただきます。  岩手県下閉伊郡川井村で米軍機が墜落をしまして、地元に大きな不安を与えた事件が一九八八年にございました。社会的に大きな問題になりまして、しかるべき官公庁にも陳情があったはずでございます。その後再発はしておりませんけれども、なお不安が残っておりますので、この点についてはどういう処置をしていただいたか、将来の再発防止のために米軍側とどういう了解が成立をしているのか、この点をお尋ねいたします。
  331. 松本宗和

    ○松本(宗)政府委員 昭和六十三年九月二日に岩手県で発生いたしました三沢基地所属米軍機の墜落事故についての問題でございます。  事故が発生いたしまして、地元の皆様方に大変御心配をおかけしたわけでございますが、その墜落事故につきまして防衛施設庁としてとりました措置につきまして御説明させていただきます。  私どもの方からも米側に対しまして遺憾の意を表明いたしますとともに、事故原因の究明、安全確保の徹底、再発防止策について申し入れを行ったところでございます。これに対しまして米側から回答がございましたが、その内容を御紹介させていただきます。  まず事故原因につきましては、調査の結果、エンジンに送り込まれております燃料の量が自力飛行に必要なエンジンの最小回転数所要量以下となりましてエンジンが作動しなかったということが判明したということでございます。  事故の再発防止についての措置でございますが、米軍といたしましては、まず事故後約十日間訓練を停止いたしまして、三沢飛行場のF16機すべてを点検いたしまして安全の確認をするという措置をとりました。また、事故の調査を踏まえまして、改めて機体整備の徹底等安全性向上のための措置をとったとしております。  なお、本件事故によりまして立木等に被害を与えたわけでございますが、この被害につきましては、平成元年三月九日に賠償金をお支払いして一応解決を済ませておるところでございます。  いずれにいたしましても、当庁といたしまして、今後とも事故の防止につきましては機会あるごとに米側に注意を喚起してまいりたいと考えておるところでございます。
  332. 山中邦紀

    山中(邦)委員 ただいまの措置については承りました。  地元の不安がまだ完全に解消されたものではないのでありまして、今後とも、今おっしゃった線が維持されるように御努力をお願いしたいと存じます。  私の質問はこれで終わらせていただきます。
  333. 岸田文武

    岸田委員長 次回は、来る二十九日火曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十四分散会