○須藤
政府委員 先生御
指摘のとおり、アメリカと
日本との赤字は一番新しい数字で四百八十億ドルあるいは四百九十億ドル、両国の統計で若干の違いがありますが、
日本の赤字がアメリカの全体の赤字の中に占める割合も四〇%を超えて四五%になったというようなことを背景といたしまして、アメリカ側のいら立ちが非常に高まっているわけでございます。アメリカ側にとりましては輸入超過になるわけでございますが、これは
基本的にはアメリカの輸入業者あるいはアメリカの消費者が、
日本製品が安くて優秀であるということで買うものですから、アメリカの輸入がふえるという面がございます。その点は
基本的には競争力の問題だと思いますが、アメリカの消費者といたしましては、アメリカの国産品を買う自由はもちろんあるわけでございます。それから、
ヨーロッパから輸入した製品を買う自由もありますし、
日本からの製品を買う自由もあるわけでございますが、消費者はそういうものを平等に比較して、比較的に安くていいものを買うという消費行動をとるわけでございまして、
基本的には競争力の差がこの赤字の原因になっているのではないかと思います。もちろん、先ほど御
指摘のダンピングのような不正な競争は別といたしまして、公正な競争が行われている限り、競争力の問題というのがその
基本にあると思います。さらにその背景には、アメリカの構造問題、先ほど御
説明いたしましたような、消費と生産、投資と貯蓄のギャップというような構造問題もマクロの問題としてはあるわけでございますが、直接には商品の競争力ということがあらうかと思います。
その競争力に大きな
影響を与える
可能性のある要因の
一つとしまして、円とドルの為替レートの問題があるわけでございます。数年前に、円高・ドル安ということがございまして、貿易不均衡の
改善につながることが期待されたわけでございますが、この点につきましては、
日本の企業が生産性
向上あるいは製品
改善の
努力をした結果、それほど輸出に
影響が出ないままにかえって競争力が
強化されたという面もございまして、
基本的には貿易不均衡の
改善には今のところつながってきていないということがございます。
したがいまして、
日本政府といたしましても、
基本的には企業の競争力の問題ではございますが、貿易摩擦を避けながら中長期的に
改善していくためには、やはり構造問題に取り組んでいかなければいけないんじゃないかという
認識もありまして、構造問題に対する取り組み、並びに、逆に今度はアメリカの
日本に対する輸出を伸ばしてもらわないと困りますので、この点につきましては、アメリカ側の
努力を一層期待したいということで、従前からアメリカ側に対してもその点を
指摘しているわけでございますが、構造
協議の中におきましても、アメリカ側の企業の競争力の
強化、それから
日本への輸出
努力を一層進めてほしいということも言っておりまして、この貿易赤字の問題は、
基本的には黒字国だけの責任ではなくて、赤字国と黒字国と両方の
努力によって解決する問題ではないかということを申しているわけでございます。