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1990-05-16 第118回国会 衆議院 大蔵委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年五月十六日(水曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 衛藤征士郎君    理事 遠藤 武彦君 理事 高村 正彦君    理事 田中 秀征君 理事 平沼 赳夫君    理事 村井  仁君 理事 中村 正男君    理事 早川  勝君 理事 宮地 正介君       浅野 勝人君    井奥 貞雄君       石原 伸晃君    岩村卯一郎君       河村 建夫君    久野統一郎君       野田  実君    萩山 教巖君       松浦  昭君    御法川英文君       村上誠一郎君    柳本 卓治君       山下 元利君    上田 卓三君       大木 正吾君    佐藤 恒晴君       沢田  広君    関山 信之君       仙谷 由人君    富塚 三夫君       細谷 治通君    堀  昌雄君       渡辺 嘉藏君    井上 義久君       日笠 勝之君    正森 成二君       中井  洽君    菅  直人君  出席政府委員         大蔵大臣官房審         議官      石坂 匡身君  委員外出席者         参  考  人         (日本公認会計         士協会租税調査         会副会長)   後藤 喜一君         参  考  人         (評 論 家) 田中 直毅君         参  考  人         (ソフト化経済         センター専務理         事)      日下 公人君         参  考  人         (日本税理士会         連合会常務理         事・調査研究部         長)      佐藤 豊夫君         参  考  人         (作   家) 堺屋 太一君         大蔵委員会調査         室長      兵藤 廣治君     ───────────── 委員の異動 五月九日  辞任         補欠選任  金子 一義君     小此木彦三郎君   渡辺 嘉藏君     武藤 山治君 同日  辞任         補欠選任  小此木彦三郎君     金子 一義君   武藤 山治君     渡辺 嘉藏君     ───────────── 五月九日  建設省国土地理院職員旅費改善に関する請願(辻第一君紹介)(第七一四号)  同(藤田スミ紹介)(第七一五号) 同月十六日  建設省国土地理院職員旅費改善に関する請願正森成二君紹介)(第九五二号)  同(三浦久紹介)(第九五三号) は本委員会に付託された。     ───────────── 五月七日  日本鉄道共済年金財源確保に関する陳情書(第二三号)  日本たばこ産業株式会社合理化案に関する陳情書(第二四号)  相続税納税猶予制度の堅持に関する陳情書外二十二件(第二五号)  大企業に対する税務調査強化等に関する陳情書(第二六号)  納税者番号制度に関する陳情書(第二七号)  企業文化振興活動促進に資するための税制上の措置に関する陳情書(第二八号)  公共事業用地取得促進のための税制改正に関する陳情書(第二九号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  税制に関する件      ────◇─────
  2. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 これより会議を開きます。  税制に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として日本公認会計士協会租税調査会会長後藤喜一君、評論家田中直毅君、ソフト化経済センター専務理事日下公人君、日本税理士会連合会常務理事調査研究部長佐藤豊夫君及び作家堺屋太一君の御出席を求め、御意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。     ─────────────
  4. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 この際、一言申し上げます。  税制問題につきまして国民各界各層から強い関心が寄せられております今日、税制を所管する当委員会といたしまして、さまざまな分野の方々から参考人として税制問題全般について意見を聴取し、自由濶達な論議を行うことは、極めて有意義なことと存ずる次第であります。  本日は、かかる趣旨を踏まえた委員会の第二回目といたしまして、オピニオンリーダー等方々から御意見を聴取することといたしております。  ここに委員各位の御理解と御協力を賜りますよう、よろしくお願いを申し上げます。  まず、午前中に御出席をいただいております参考人は、日本公認会計士協会租税調査会会長後藤喜一君及び評論家田中直毅君の両君であります。  この際、両参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。両参考人には、税制問題全般につきましてそれぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、議事の順序についてでありますが、まず、両参考人にそれぞれ十五分から二十分間御意見をお述べいただき、次に、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  それでは、後藤参考人からお願いいたします。
  5. 後藤喜一

    後藤参考人 ただいま紹介を受けました日本公認会計士協会租税調査会会長をしております後藤でございます。本日は、短い時間でお話をしたいと思うわけでございます。  私の所属しております会計士協会は、御存じのように企業財務監査といいますか、そういったものを中心にして行っておるわけでございますので、きょうはその企業財務監査という立場から企業経営そのもの中心として話すことと、それからあとは私なりに個人的にいろいろ税に関しまして考えておりますことをあわせお話ししたい、こういうように思っておるわけでございます。  まず、現在の租税でございますけれども、もう皆さん御存じのように直接税、間接税とございますが、国民所得に対して三割ないし四割、将来は四割程度まで上げるというようなお話もございます。したがって、租税国民所得に対してどの程度がいいのかというのはいろいろございますけれども、やはり社会福祉との絡みにおいて租税負担というのは五割を超えるのは困るでしょう。私の意見としては、四割程度あるいは高くて四五%程度がマキシマムではないかと思うわけでございます。これは租税負担率をどの程度に抑えるかということでございます。  それから、その次は直間の税のあり方、これはよく直税が七割がいいのだとか九割がいいのだ、いろいろございます。これは結果論でございまして、課税といいますか納税者負担感から見れば、間接税にある程度ウエートがあってもやむを得ないのではないかと思うわけでございます。特に間接税というのは、社会の機構から考えてみますと、物品の消費、流通、そういったものに課税するわけでございますので、もちろん税率としては高いのは困りますけれども、低い税率である程度税負担を望むのはやむを得ないのではないだろうかと思うわけでございます。  もちろん、そういたしますと、消費税でよく問題になっておりますように逆進性があるとかという話がございますけれども、逆進性の問題につきましては、やはり社会保障という形で賄えばいい話でございまして、ある程度のそういった間接税についての必要性というものはどうしても出てくるのではないか、こういうように思うわけでございます。七割がいいとか九割がいいという話は、私なりにはやはり間接税は四割程度がいいのではないかな、こういうように考えておるわけでございます。  その次は、各税目ごとの話になるわけでございますが、所得税の方は会計士協会余り関係ございませんが、私なりに考えておりますことを述べさせていただきます。  所得税は、御存じのように法人税と異なりまして、どちらかといえば個人生活重視、こういう観点が非常にあるというように考えるわけでございます。したがって、所得への基礎控除というのはある意味では高い方が望ましいのはよくわかるわけでございます。しかし一面、基礎控除を余りにも上げますと、生活保護といいますか生活保障との間差額が出てまいりますと、その階層の方は税を軽減しても軽減恩典に浴さないといったような問題が出てくるわけでございます。そういったところを見ますと、やはり社会保障最低を超える、そこらで基礎控除をむしろ固定化して、もちろん社会保障費が上がってくればそれにスライドして上げていくというのが望ましいのではないか。従来から最低生活費ということで議論されておりますけれども、生活保障費最低生活費と同じであればそういう議論はイコールで結構でございます。しかし、保障費を上げてもそういう恩典に浴さない、減税してもその恩典に浴さないという階層が非常にたくさんいらっしゃるわけです。こういう方を考えますと、基礎控除というのは余り上げても問題はあるのではないか、こういうように思っておるところでございます。それが基礎控除関係でございます。  それから、次は税負担でございますが、やはり個人生活という基本的なものがあります。しかも、片方では法人税というのがございます。現在、個人税率は、事業者の場合、事業所得を含めますと六五%という非常に高い税率になっております。これを法人税で見ますと、法人税表面税率は五五・九九、まあ五六%になっております。そうすると、個人の方が企業よりも高い負担になっておる、これはいかがなものかということでございます。このために、御存じのように個人の場合にはみなし法人制度といったものも導入しなければならない。もちろん、税負担だけでなしに、給与所得控除その他の利用、そういったものも関係してくるわけでございますが、税率だけ見た場合には、個人所得税法人負担率とほぼ横並びでいいのではないか、こういうことが言えるのではないかと思います。  それはなぜかと申しますと、先ほど来言っておりますように、個人事業をする、法人事業をする。事業以外の者は、生活重視ということから見れば基礎控除で賄っておる。しかも、低い階層御存じのように一〇%であるとか二〇%というように税負担が低くなっております。最高税率は、今申しましょうに法人に並ぶ必要があるのではないかというように考えるわけでございます。特に先ほど表面税率だけ申し上げましたが、これを実効税率と言っておりますけれども、事業税経費になるわけでございますので、それを還元しますと、法人の場合には五〇%弱になる。それから個人の場合、先ほど六五と申しましたのは非事業で六五でございますが、事業税が五かかりますので、表面税率では七〇になる、実効税率では六六・七%になる。こういったように非常に格差があるというところが一番問題があろうかと思います。  以上が所得税でございます。  その次は法人税関係でございますけれども、法人税関係も、やはり今一番私が問題にしたいのは、法人税御存じのようにかつては個人集合体である、いわゆる擬制説といいますかそういったものの立場制度がつくられております。したがって、配当に対しましては法人間では無税になっておる。もちろん先般の改正で、特定株主、二五%以上の株主でなければ二割を課税するという改正が行われたところでございますが、こういったものは、現状を見ますと法人株主というのはほとんどが会社でございます。法人でございます。個人株主というのは極めて少ない。しかも、将来個人に買えるであろうという考え方で、御存じのようにシャウプ勧告ではそういう形で行われたわけでございますけれども、現段階では違うのじゃないか。早い話が、ある某大法人でございますけれども、お互いに会社をつくりまして株を持ち合いする、主要な株主は一人もいないという現実の姿があるわけでございます。そういったものを見ますと、果たして法人税がこの配当非課税のままでいいのかどうかという、非常に私なりに疑問を感じております。  特に個人の場合には、配当を受けますと配当税額控除というのがあるわけでございます。千万以上の方になりますと五%の配当税額控除があるわけでございますね。そうすると、先ほど言いましたように所得税だけ見ますと最高税率は五〇%になっておりますね。一〇〇配当をもらいますと五〇税額がかかるわけですね。配当税額控除では五%しか見ないわけですね。そうすると、配当をもらうと個人の場合は四五%の課税がある。シャウプ勧告のときには、配当をすれば個人で完全に前取りで引きますよ。これは国会等でも、そういう控除が多いと、配当だけで生活しておると、御存じのように二百何万まで課税がないということで、これはけしからぬじゃないか、こういうおしかりが一部出たことがありますけれども、それにしてもちょっと法人と比べてひどいではないか。こういう点がやはり将来問題が起きるところではないかな、こういうように思うわけでございます。  したがって、配当に対する課税というのをもう少し緻密に考えていただきたい。この際、配当をむしろ損金算入にして、個人の方で一〇〇%課税するといった方式の方が望ましいのではないかな。これは極端な例でございますけれども、そういった方向へだんだんと近づけた方がいいのではなかろうかなという考えがするわけでございます。そういった意味で、先般国会におきまして、軽減税率廃止するということでは非常にいい制度ではないかな、こういうように思うわけでございます。  それからもう一つは、小規模事業者法人につきましては、御存じのように年間八百万円以下は低い税率となっております。これも非常に中小企業対策としては好ましい制度でございますけれども、最近は御存じのように大法人が子会社をつくりまして非常に活動をやっておる。そういう方まで軽減税率が働くのはいかがなものかなという感じがするわけでございます。例えば幾ら大きな法人でも、一億の会社を各部門別につくれば、そこでそれぞれ年間七百万円までは低い税率がかかっておるわけですね。そしてそれが配当されますと、益金に入らないということで非課税で留保される。そうなりますと、たくさんの法人をつくればつくるほど有利になってくる。これはいかがなものかな。税率としてはそういった問題があるのではないか、こういうふうに思うわけでございます。  以上が、私なりに基本的な問題についての税の考え方でございます。  その次は、どちらかといえば監査から見た法人税企業課税についての問題点を一、二申し上げたいと思うわけでございます。  御存じのように、法人税法の中には引当金、それから租税特別措置法の中には準備金がございます。引当金御存じのように、赤字法人であっても引当金をつくらなければならない。これは商法でも同じ考え方でございますけれども、そういう企業会計損金経理でちゃんと経理をするということが前提になっておるわけでございます。そして現在では、法人税法で認められておりますのは、そういう慣習が一つ行われる。そのほか、その金額が確実に近い時期に費用化されるということ。それから三番目には、その所得に対しある程度ウエートがあるということ。そういうものを対象として引当金が設けられております。したがって、この引当金は非常に企業会計上も必要だし、先ほど言いました商法上も必要だ。仮に設けないことになりますと、監査立場からは限定意見がつく、こういうことになるわけでございます。したがって、これについてはかって廃止議論があったり、あるいは縮小という議論がございますけれども、やはりこれは当を得ないのではないか。  しかし、個々の引当金を見てまいりますと、繰入額については非常にやはり問題があるところがあろうかと思います。例えば貸倒引当金の場合は、系列会社の場合にはそれぞれの段階で貸倒引当金を設けております。こういったものはやはりどこかで整理しなければおかしいわけですね。大会社で、親会社がとるのか、最後の末端の販売会社がとるのか、それぞれの段階で現在はとっておるわけですね。それはやはり積み過ぎじゃないか、こういった批判がやはりあろうかと思います。そういった意味で、繰入額の問題としてはいろいろあろうかと思いますけれども、これを廃止するということは非常に問題がある。  特に消費税法で、革新の方から御存じのように廃止案に伴いまして賞与引当金廃止がうわさされたわけでございます。これにつきましては、やはり労働者の方もちゃんと従事したその期間に対応して賞与を受け取るというのが前提でございます。したがって、その期間に対応して事業年度末までのものを引当金、これはどちらかといえば未払い金と言った方がいいのかもわかりませんけれども、企業会計上としては確定してないということで引当金になっておりますので、そういったものを廃止するというのはいかがなものかな、こういうように考えておるわけでございます。  それから、準備金の方は御存じのように租税特別措置法でございますので、これは政策目的ということで政府が必要に応じてやる問題でございますので、監査という立場からは無関係だという問題じゃないかというように考えるわけでございます。  それから、今度は償却関係でございますけれども、御存じのように経済構造というのはだんだん変わってきております。しかも、新たな事業も行われておりますので、政府においては常にこれは内容を見直して、この改定をしていただきたいということでございます。特に、最近オートメ化されました事務機械、コンピューター、こういったものの耐用年数が非常に短くなっておりますので、やはり実情に合わせた年数に変える必要があるのではないかというように思うわけでございます。しかし一方、今度は逆にリース取引などが出てまいりまして、この耐用年数定率法御存じのように定率法というのは初めに多く、だんだん年がたつに従って低くなるような償却方法でございますけれども、これを利用しまして非常に有利に取り扱う、節税に利用するという問題が出てまいっております。したがって、こういうリース取引については、例えばリース期間法定耐用年数のいずれか長い方をもって償却期間にするとか、あるいは、御存じのようにリース料定額で決められておりますので、リース取引のそういう機械、装置、そういったものについては定額法しか認めないとか、やはりそういったことで手を打つ必要があるのではないかな、こういうように考えております。  そのほか、最近、償却可能限度額というのがございまして、御存じのように建物でも九五%まで償却できるようになっております。五%だけは残しなさい、こうなっておりますけれども、やはり機械等除却する際には相当な費用が要るわけでございますので、やはり一円に達するまで償却を認めてもいいんじゃないかな。なぜならば、除却のための費用というのは引き当てはできない、そうかといって償却でも見ていただけない。もちろん、撤去した段階で損になるからいいじゃないかといえばそういうものでございますけれども、帳簿価額を一円まで償却すればいいんじゃないかなということでございます。  そういたしますと、反論として、残存価額が五%になりますと償却率が非常に高くなるわけですね。しかし、それは現在の償却率を使って一%に達するまで行わせる。そして定額法の場合には年、例えば十年の資産ですと一割ずつ償却していくわけですね。もちろん残存価額が一割でございますと、〇・九%ずつで十年で九〇%まで償却していきます。その率でいきますと十一年目で次の〇・九いきますので、それはおかしいので、その場合は考え方としては、耐用年数が達した場合には再びその段階で新たなものを取得したものと見て、定率法あるいは定額法償却を続けていけばそう不相当はないんじゃないかということで、これはぜひやっていただきたいという話でございます。  それから最後は、償却関係繰り延べ資産償却でございますが、先ほど来、固定資産その他につきましては定額法定率法ということを認めております。しかし、繰り延べ資産になりますと定額法に限って認められております。定率法は認められておりません。したがって、例えば一番問題になりますのは、社債を発行しまして、発行差金というのが出るわけでございます。発行価格と額面との差額発行差金になる。この償却は、現在の法律では定額でしか償却できないわけでございます。しかし、その内容をよくよく見ますと、実はそれは利息調整なんですね。発行差金というのは利息調整金なんです。したがって、利息償却といいますか、利息に見合った償却方法が一番適切な場合があるわけでございます。したがって、そういう方法の採用を認められるように改正する必要があるのではないか。  これは現在、固定資産についても、承認を受ければ定額法定率法のほか、例えば算術級数法であるとか、あるいは自動車の場合には走行キロ数法とか、船の場合には運航距離法とか、いろいろな合理的な償却方法がございますので、そういったものを承認で認めておりますので、繰り延べ資産についても同じようにそういう承認を認めるのがいいのではなかろうかな、こういうことを考えておるわけでございます。  そのほか、政策目的措置として、現在いろいろ法人税法で行われている点について一、二申し上げたいと思いますが、まず、御存じのように政策目的のもので圧縮記帳というのがあるわけですね。土地を買いかえた場合あるいは収用等で取られた場合に、それに伴って購入した資産を古い、もとの帳簿価額まで引き下げてよろしい、俗に圧縮記帳と呼んでおりますけれども、これにつきましては商法改正もございまして、現在では準備金といったものでとれる、直接損金経理をしないで利益処分方式でもいいというようにしております。  しかし、よくよく考えれば、そういう政策目的のものは、何も法人経理を通じなくても、申告調整といいますか申告書段階で行ってもいいんじゃなかろうかな。ただ、申告書段階ではどうも会社帳簿に記載されないから心配だ、こういうお話が一部にあるわけでございますけれども、しかし法人税は、申告書を出さなければ、出さなかった時点で過去の課税されなかった部分を課税してしまえばいいわけでございますので、そういった意味申告調整によってもいいんじゃないか。  これを余り突き詰めますと、アメリカの税法のように、法人税申告会社決算とは別々でもいいのじゃないかという話になるわけでございますけれども、そこまではちょっとまだやる必要はないのじゃないかな。しかし、少なくとも企業会計に合致しないような、先ほど言いましたように利益処分方式などによるよりもやはり申告調整方式でいいのじゃないかな。特になぜそうなるかと申しますと、これは技術的な話になるわけでございますけれども、赤字法人でも利益処分特別準備金を設けておる。赤字であるのに、なぜ利益処分でその準備金があるのですかなんていうおかしな制度になっておるわけですね。そういったことから見ても、申告調整方式でいいのじゃないかな、こういうふうに思うわけでございます。  それから、その次は交際費課税でございますけれども、御存じのように交際費は一〇〇%課税になっております。これはやむを得ないと思います。しかしある意味では、寄附金は一定の限度まで、御存じのように資本金の千分の二・五、それからその事業年度所得の百分の二・五、これの平均額まではどの法人でも経費になるわけですね。そういったことから見ますと、交際費もそれぐらいまでは、寄附金と同じではどうかとは思いますが、せめて多少の線はあってもいいのじゃなかろうかな。もちろん、これは売り上げにスライドするやり方あるいは法人の規模、資本金にスライドするやり方、いろいろあろうかと思いますけれども、どうも一〇〇%というのは寄附金と比べても余りにもひどいのじゃないかというのが一つ。  それからもう一つは、使途不明金というのがあるわけですね。これは企業にとれば使途不明金じゃないと思うのですね。ちゃんとわかっております。税務署に対して使途不明金なんですね。目的をはっきりしない。そうなりますと使途不明金を、経費の存在がはっきりしないから課税しますよとなっておるわけですね。そうすると、交際費で出しても同じ、使途不明金でも同じ課税。これはやはり違うのじゃないか。やはり使途不明金の方がどちらかといえば課税負担というのはもう少し取ってもいいのじゃないか。こう見ますと交際費は、なるほど飲み食いはあるけれども、会社経費としてやはり多少は認めてもいいのじゃないかな、こういうふうに考えるわけでございます。  以上、要点だけ申し上げましたが、そういったことでお話し申し上げたわけでございます。また後ほどいろいろ御質問にお答えいたしたいと思うわけでございます。
  6. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 ありがとうございました。  次に、田中参考人にお願い申し上げます。
  7. 田中直毅

    田中参考人 与えられました時間で、資産再評価の問題を取り上げてみたいと思います。  現在、土地税制が大きな焦点となり、政府税調でも土地税制についての審議が始まっておるわけですが、私は、資産再評価が我々がとり得る手段として一番望ましいのではないかというふうに思っております。  それでは、どういうことかということなんですが、企業固定資産帳簿価額でつけておるわけですが、これを時価に直すということでございまして、法律でいいますと、資産再評価の実施をすべての企業に義務づけるということになろうと思います。  手続としては、簿価と時価との差を特別評価益として計上させるということが第一でございます。二番目には、実施期間を設けまして、五年とか十年とかという実施期間、これは企業にとって任意、選択可能な幅を与えまして、その期間にこの評価を行うという期間を設けることが第二でございます。三番目には、確定した評価益については国家に対して納税義務が生ずるわけですが、この納税義務については例えば五年というような分割納税、均等分割で納税を可能にする、こういう手続になろうと思います。四番目に、それでは時価というのは何だということになるわけですが、これは基本には企業が独自に計算していい。ただし、公示価格等を基準として、そしてどういう価格で評価したかということはだれの前にも明らかになる、そういう手続が必要かというふうに思います。  これが手続でございますが、では、これをやったときに何が期待できるのかという効果についてでございます。  第一に、企業の保有する未利用、非効率利用の土地は吐き出されることは間違いないと思います。したがって、地価は次第に使用価値に基づいたものに、その土地を使ってどの程度の収益を上げられるのか、この計算を前提とした価格に近づいていくだろうと思います。現在、資産格差は拡大して、国民の間に大きな不満、あるいは長い目で見ますと社会の亀裂につながる可能性さえ出てきているわけですが、法人部門が今まで思惑的な土地保有ということが許されることによって地価形成をゆがめてきたわけでして、これが思惑的な土地保有というものが全く意味がなくなる、あるいは現在既に保有している土地を土地市場に売りに出すということになるわけですから、当然のことながら地価全体は水準を下げていく。一挙にある日やれということになりますと問題がありますので、先ほど申し上げましたような、例えば十年の幅で選ぶということになりますと、地価が下がりますと一方で信用不安等々の問題がありますので、これは少しならしていくということになろうと思います。  効果として考えられる二番目は、企業経理情報というものが極めて透明になって、株価の形成が現在のものとは変わってくるということが考えられます。要するに、将来にわたる企業の収益見通しを基準にして株価形成が行われるわけです。したがって、資本市場における資金の配分は、日本の経済力が今後長期にもつといいますか持続する、そういう好ましいものになることが期待できるだろうと思います。現在では、株式市場では解散価値に近いものを前提とした値づけが行われております。Qレシオという、アメリカの学者が始めた株価理論というものが日本に一挙に入りまして、これは企業の評価を、企業が保有している諸資産を再取得可能価格を前提にはじき出し、これをもとに株価の見通しをつけるというやり方でございますが、日本では、会社は生き物ではなくて解散価値というもので値づけになっている。この問題点は、株式市場、資本市場を通じた資源配分というものに、我々現在の資本主義メカニズムではこれに動学的な、要するに現在と将来という動学的な資源配分のかなり多くを任せておるわけでございますが、このゆがみが目に余る状態になっている、これを正すことができる。これが効果の二番目でございます。  三番目には、我々の資本主義社会における競争条件の均等化に資すだろうということでございます。資産再評価が行われますと、新規の企業設立は現在よりより容易になりますし、競争条件においても極めて活発といいますか、競争条件が整備されますので、企業間の競争が活発になるということが言えると思います。市場への新規参入が容易になるという面がございます。この資産再評価が行われれば、恐らく我々は第二のソニー、ホンダ、パナソニックを持つことができる。決して「日はまた沈む」ではなくて、日はまだしばらく上り続ける条件を用意することができるだろう。しかし、現在のまま置いておきますと、新規企業設立は容易なことではありませんし、海外に対しても実質上障壁を形成し始めているという問題があるわけでございます。  効果の四番目は、税収増が考えられるわけです。我々の社会は、二十一世紀を目指したインフラストラクチャーの整備に本格的に取り組む時期でございまして、これがなかなか簡単ではないというのが現実でございます。その大きな要因が土地問題だったわけですが、もし我々がこの地価という問題に資産再評価を通じてメスを加え、地価の水準に大きな変更を加えることができるならば、インフラストラクチャーの整備そのものも可能になります。税収は上がるし、その税収を使って我々が望ましい国土の形成を行うに当たって極めて望ましい条件ができるということでございます。  もちろん、これは資産再評価が行われて土地の価格に変更が起きますと、現在起きております、例えば東京圏とその他の地域との地域間格差が一気に是正されるわけでございます。我々の勤労所得については地域間の格差、もちろんなくはありません、ございますが、それほど大きなものではございません。所有しております土地、株式に伴うこの数年のキャピタルゲイン、別にまだ売り切ってはいないですから未実現のものももちろんあるわけですが、これは極めて多額に上っておりまして、専ら首都圏に在住する人たちにこの恩恵が回っている、その他の地域にはキャピタルゲインが極めて薄くなっているという統計は、既に、例えば日本銀行さんも出しておられます。そういう状態になっておるわけですが、それにメスを加えることができるのではないか、こう思うわけです。  それでは、現在議論されております土地保有税と言われるものと、この資産再評価の実施とどういう違いがあるのかということでございます。利害得失に絡む問題でございますが、私は、この資産再評価の方が政策として望ましいと思っております。  第一に、もし土地保有税を高めるということになりますと、これは固定資産税というケースもあるでしょうし、市街化区域農地の宅地並み課税というような手段もあるでしょうし、いろいろあるわけですが、目的は今の地価水準にメスを加えるということではないかと思うのですが、地価の水準に影響を与えるほど保有税を高くできるのかという問題がございます。これを国会議論されましても、恐らくなかなか——もちろん保有税の是正、現在よりもっと高い保有税を課すことは可能だと私は思うのですが、地価の水準に目に見えた影響を与えるほどの保有税の引き上げが可能だろうかと考えますと、これは相当に難しい議論になろうかと思います。  企業に対して健全経理を要求するということは、これよりももっと筋が通って反対が出にくいと思います。このプラスは、企業制度の健全化につながるということでございまして、言うならば筋論というか、今総資本というような物の言い方は多分社会から消えたのじゃないかと思いますが、昔流の言葉で総資本という言葉を使わせていただければ、総資本にとってもこの資産再評価は望ましい。ただし、個別資本にとりますといろいろ思惑はあるということは当然でございますが、私はそのように感じております。企業経営者でも、いろいろ先行きを展望する力量と見識を持った方は、こういうことを早い時点で既に言っておられました。  昭和二十三年の七月に、関西経済同友会がこの資産再評価についての決議を行っております。当時、大原総一郎さんがリーダーだったというふうに言われておりますが、関西経済同友会が、周辺の京都、奈良、和歌山、神戸、岡山、こういうところの経済同友会の人々と相諮りまして関西大会を開き、企業の生産力を確保するためと、こう最初に言葉があるわけですが、企業の生産力を確保するために資産の再評価を行うべし、その研究会を設置して議論をする、こういう決議をされております。戦後、インフレがひとまずめどがつき、そして簿価と時価との間に大きなギャップが生まれ、あるべき企業制度を考えた場合に、資産の再評価はやるべし、それによって企業経理を健全化し、透明なものとし、それを前提とした企業活動を我々は目的とすべきだ、こういう決議が行われたわけでございます。しかし、実際にはこれが大きな流れとはならなかったのは、御存じのような状態でございます。  それで、なぜそうなのかということでございますが、これは恐らく我々がたどってきた歴史というものと関係があるように私は思います。戦争が終わりました直後、我々の先輩たちはデモクラシーというものを青空のもとでのデモクラシーというふうに受けとめたようでございます。やみ市、焼け跡的な民主主義といってもいいかと思います。確かに空は抜けるように青かったわけでございますし、我々を覆っていたうっとうしいものが取れたという意味で青空だったのでしょう。それは戦前戦中の抑圧的な軍事体制に対する我々の拒否反応と結びついていたと思います。しかし、問題はやはり焼け跡、やみ市の欲望民主主義というものだけで我々の社会の規律ができるわけはなかったわけでございまして、我々は集合的な意思決定といいますか、社会におけるルールづくりということを本格的に論議する必要が時々の情勢においてあったと思います。  しかし、実際にはそれを行わなかった怠りが我々の側にあったと思います。とりわけ資産の形成の問題、例えば土地の問題というのは我々が公共的に多く、集合的にといいますか、本来集まって論じ、いろいろな意見が出、それがまた国会にも反映されるというのが当然のことだったろうと私は思いますが、これが本格的に議論されなかった。当時の事情を少し土壌的に申し上げますと、我々一人一人には資産と呼べるものはほとんどのケースにおいてなかったわけでございます。そのときに、資産形成の原理を議論しておく、土地を議論するに当たって、土地税制というものを社会的な枠組みで論じておくという発想が我々の側になかったのは、やむを得なかったのかなというふうに思います。  国富調査というのがございまして、我々が富としていかなるものを保有しているかについて調査した上で、国富統計というものが発表されるわけです。ごく最初のころの国富統計では、調査員が家庭を訪れて、あなたにとっての富、資産とはと言いますと、多くの人は布団やたんすを挙げたと言われております。ですから、国富統計の戦後ごく早い時期のものは、つましい家庭では、つましくなくてもそうだったのだろうと思うのですが、富として布団やたんすを挙げている時代があった。その時代に我々が資産形成の原理を論ずるに怠りがあったことはやむを得なかったのかなと思います。しかし今日になりますと、このことは極めて重要であります。  ところが、土地の問題は非常に難しゅうございまして、現在首都圏でも六割以上の方が実際に土地保有者でございます。国会の先生方も小さな親切運動をされているのではないかと私はいつも思っておるのですが、固定資産税が上がっては困る、生活が苦しくなるということで、それにこたえるのが国会議員の役割であるということで小さな親切を行われ、ただし大きな迷惑が社会全体には及んでいる。土地の非効率な保有が続いているというのは、別に国会の先生方のことだけではなくて、我々全体の発想が小さな親切に傾き、大きな迷惑については論ずることに目をつぶってきたという事情がある。しかし、我々はどうしてもこの大きな仕組みのところを論じなければいけないところにきてしまったわけでございます。資産格差の拡大も一つでございますが、現在では国際社会との関係でもこれが当然の課題になっております。  我々は、例えばアメリカにおけるMアンドA、合併、吸収という運動、資本主義におけるある種の盛り上がりというものを見ておりまして、それがレバレッジド・バイアウト、買い取る相手方の企業を担保として金を借りるというやり方でございますが、こういうものが出てきたときに、我々はアメリカの資本主義について極めて厳しい評価をしたわけです。生き物である企業を解体して、MアンドAで取得した後は切り売りをするわけですから、解散価値に沿って買いを入れまして切り売りをする、生体解剖をするようなあんなやり方を許容したのでは、アメリカの資本主義はきっと内部から空洞化するだろうと我々の多くはせせら笑ったわけでございます。  しかし考えてみますと、一方で企業が思惑的な土地保有をふやし、節税動機で幾つかのことを行う。地価の水準が異常な高さになる。我々の生活自体は改善できない。町づくりのための公共投資もできなくなるということでございまして、我々は乏しいインフラストラクチャーしか持てない。しかし、企業部門だけには異常な富が集積する。高い地価を前提とした高株価、高株価を前提とした新株発行に伴うファイナンス。このお金で海外に出かけるということになりましたし、超短期、二年以下の保有しかない土地については重課税がつけられましたが、これが起きますと、これは一九八七年十月以降でございますが、今度はそういう人たちは海外に出かけていったわけです。国内の土地を処分いたしますと、この超短期重課制度によってほとんど一〇〇%近い、九十数%というのが取られてしまうということになりましたから、それは凍結して、それを担保にしてお金を借りて、海外の不動産を買いあさる。国内の仕組みに我々が怠りをしていたばかりに、海外からも我々は批判されるという形態になったわけです。  我々は、どうしてもこの時点において土地問題に何かメスを加え、社会的な仕組みをつくらざるを得ない。国会でも大きなテーマになると思いますが、そのときに私は、今申し上げました手続と効果を前提にしますと、要するに資産再評価というもので法人部門からこの問題にアプローチするのが一番望ましいのではないか。また、それが一番可能ではないか。唯一問題があるとすると、金融秩序に影響が出る可能性でございます。  この春先、日経ダウは一万円下げました。どの株が下がったのかということを検証してみますと、主に不動産関連でございます。電鉄株、不動産株、金融機関株というのが、このダウ一万円下がった中で最も値下がり率の大きいものでございます。これはいずれも不動産でございます。金融機関は企業に対する株式保有もしております。金融機関自体も土地保有をしておりますが、この含み益を持っている。要するに株価の含み益というのは、さっきも言いましたように株式が解散価値を前提についていますから、株価が下がるということは土地の問題につながる。土地についてのある種の先見性というものを今回の株式市場は見せたのかなというふうに思っています。  この金融秩序が崩れないという前提、その条件をどうつけていくのかという非常に難しい問題がありますが、私は、資産再評価が一番望ましいし、また、現実的ではないかと考えているわけでございます。  以上です。
  8. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     ─────────────
  9. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  この際、委員各位に申し上げます。  質疑につきましては、時間が限られておりますので、各位の特段の御協力をお願いいたします。  なお、質疑のある委員は、挙手の上、委員長の許可を得て発言するようお願いいたします。また、発言の際は、所属会派及び氏名並びに質疑する参考人のお名前をあらかじめお告げいただきたいと存じます。  それでは、質疑のある委員は挙手をお願いします。
  10. 沢田広

    ○沢田委員 社会党の沢田広です。  最初に、後藤先生の方に一言お伺いしますが、いわゆる可処分所得の割合を、大体間接税の割合というような言い方でしましたが、四割ぐらいを可処分所得の割合というふうにおっしゃられました。今、日本の可処分所得の割合でいけば、税金、社会保険料、貯金それぞれで大体三〇何%になっておりますが、日本の預貯金率の高いのは社会制度の欠陥でしょうけれども、一五%ぐらいはこれはやむない状況に今日あります。この四割で抑えるとすると、どこをどういうふうに考えるのか。もし考え方があったら、どういう割合でこの可処分所得の引かれる部分を充当するというものなのか。  もう一つは、田中先生の方にお伺いしますが、資産再評価税は我々も財源の一つとして考えたことがあるわけですが、簡単に二つばかり聞きます。  借地権はどうなるのか。将来得べかりし利益というものを考えた場合は、借地権も四・六なり二・八なりということでそれぞれもらうわけですから、そのときの資産の再評価に当たっては、得べかりし利益というものは将来にわたってどう考えるのか。あるいは相続の場合はどうあるのか。それから美術品、骨とう品、ゴルフの会員権等の資産について、それはどういうふうにするのか。  もう一つあえて言えば、駅ができた、駅前が開発された。その時点で再評価をするのか、しないのか。一たんしたらそのまま据え置くのか、また変動要素は何によって変えるのか。この二点、ひとつお答えいただきたいと思います。
  11. 後藤喜一

    後藤参考人 お答えいたします。  ただいま四〇%というのが可処分所得というように誤解、私の発言が悪かったのかもわかりませんけれども、こういうことでございます。  今所得に対して税負担が、まず大体三割、現在二八・三ですか、ことしの予算ではなっておるわけですね。その二八・三は、それぞれが所得に対して納める税金です。その税金の内訳が間接税が四割、それから直接税が六割ということでございまして、可処分所得ではないわけでございます。だから国民所得は全部消費に回されるとするならば、今申しましたように税負担が二八、大体三割としますと三〇、そのうち税金が四〇%ですから一二ぐらいになる、こういう話でございます。
  12. 田中直毅

    田中参考人 私が申し上げました資産再評価は、法人企業に対してでございまして、個人の例えば富裕税というような種類のこととはここでは切り離して議論しております。ですから、法人が保有しております土地について、帳簿価格と現在の値段というものとの差を評価益として計上させる。結果として地価の水準に変更が、要するに地価が下がりますと、これはもちろん個々人にも影響があります。あるいは株式価格に変動が起きますと、株主としての個人資産にも影響が及びます。しかし、形は法人の持つ固定資産、要するに土地についての評価益を計上させることを通じてでございます。
  13. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 社会党の渡辺嘉藏です。  まず、田中先生。資産再評価税の話が出ましたが、私も非常に有効な一つの手段として傾聴していたわけです。ただ、ここで今公示価格を一つの基準にというようなことをちょっと聞いたような記憶があったのですが、私、この時価の置き方というのは非常に難しいと思うのですよ。需給の関係もありますし、それから将来の見通しの関係あるいはまた公共施設が来るかどうか、簡単に言えば道路がつくかどうか、いろいろなことがあるのですね。  そういうようなことから今ちょっと聞きたいと思っておったのは、今土地の評価に公的には三つありますね。公示価格、路線価格、それから固定資産税評価額。僕は、これは一本化しないといけないと思っているのです。一本化して、そうして後税率は、その都度固定資産税をどうするか、それで直さなければならぬのじゃないか。この点については先生方どう思っているのか。それからまた、それをするなら公示価格なのか、路線価格なのか。公示価格はどちらかというと点でございますし、路線価格は文字どおり路線でございますし、固定資産税はもう全的でございますから、どの方式をどういう手段で設けるのがいいと先生は考えていらっしゃるのか。  それから、これは私この前もちょっと申し上げたんですけれども、固定資産税も私は段別をつけた方がいいと思っております。居住用の資産事業用に使っておる資産と、それから保有用の資産、こういうふうに考えておるわけです。これについて……。  それからいま一つは、簡単に言うと、紡績なんかでも、調子がよかったときどんと取る、それであかんようになったらもうやめて、売ったときにはその土地の利益によって今までの赤字は消える、こういうことができたのですね。今企業をずっと見ておりますと、簡単に言うと、十万坪買っておる、そのうちで本当に動いておるのは五千坪とか一万坪だ、こういう実態がたくさんあるわけですね。しかし、事業を拡張する目的なんだ。拡張するたびに、私は、それを税率を下げてやってもいいのですけれども、そうでなければやはり遊休のそういう事業資産というものを保有税対象にしておかないといけないのじゃないか、このようなことを思っておるのですけれども、ちょっと御意見をお聞かせいただきたい。  それからいま一つ、後藤先生。今専門的ないろいろなお話を傾聴しておったわけですが、圧縮記帳についても申告段階でやったらどうか。私も、これ同感なんです。そうすると帳簿価格にきちっと出ますから、そうして決算上明らかにしておいて、そして申告でこうするのですから、私もその方が妥当だ、こう思っておるわけなんですが、これなんかについては将来どんなふうにしていくのがいいのか。実際問題として、どういうふうにお考えか。  それから、買いかえについて。今八〇%は認めますが、二〇%は課税になるわけです。私は、これも段別をつけた方がいいと思っているのです。要するに、仮に一千万円程度までなら全額認めますよとか五千万円までなら二〇%、それ以上なら四〇%ぐらい課税しますよ、こういうふうな、買いかえについても差をつけるべきじゃないか。そうでないと、本当に庶民の小さな中小企業までが、買いかえが全部一律に大企業と一緒に二〇%課税になっておりますので、こういうものを私は変えた方がいいのじゃないか。  それからいま一つは、資産所得で、創業者利益がありますね。これも無税に近いような状態なのですが、これも私は何らかの捕捉をしておいた方が——ああいうリクルートの事件なんかでもそうですが、株式に上場されるときには、一定の目的の中には創業者利益を当てにしていらっしゃる方もかなりあると思うのです。いろいろな意味合いで、私は、創業者利益というものを何かの課税対象で拾うべきじゃないか、このように思っておりますが、この点についてはどう思われるかということ。  それから最後に一つ、直間比率の問題。私の考え方とちょっと違うもので聞きたいのですが、間接税というものは間接なんですから、だからこれは一つの納税手段であって、課税対象は所得なのかあるいはまた資産なのか。間接税といいましてもいろいろあるわけなんですから、だからそういう間接税という納税手段の相違をもって四分六だとか七、三だとか五分五分だという、こういうとらえ方は私は好ましくないのじゃないか、このように思っておるわけですが、先生が四〇パーとおっしゃったのは、所得課税等を中心としたそういうような意味をおっしゃったのかどうか。それから私は、そういうように間接税というのは、納税の一つの手段が直接なのか間接なのかという違いなのであって、それを一つの枠をもって四分六だとかなんとかというようなことは妥当ではないというふうに思っておるのですが、いかがですか。  以上です。
  14. 田中直毅

    田中参考人 おっしゃいましたように、政府部門が発表する土地価格が幾つもあるというのは、混乱に輪をかける状態になっていると思います。思いつくだけでも土地にかかわる役所は、大蔵省、建設省、国土庁、農水省、自治省等々ございまして、それぞれに土地にかかわる部局あるいは政策も持っておられる。これが恐らく混乱の大きな要因になっている。もし我々が、公共的な意思決定というものが土地の利用とかあるいは土地に絡まる税制に大きく規定されているというふうに考えますと、これはやはり早く一本化をしていく。国会を通じてこれはぜひ実現していただかなければならないことでございまして、そうした個々の行政の見解の違いというものが、政府部門が発表します価格にもあるいは納税の基本となっている価格にも影響が出てきているというふうに思いまして、先生おっしゃいますように、私は、地価については一本化されるべきだ、早急に一本化されることが建設的な政策論議が起きる前提ではないかというふうに思います。  それから、個々の企業調整をしていく、例えば成長する場合に、何も思惑的に持つというのでなくても、多少多目に土地を保有するとかいうことはあるだろう。あるいは企業が撤退する場合に、評価益が生まれたことが円滑な調整につながったとおっしゃいました。おっしゃるとおりだと思います。しかし、もしここで申し上げたような資産再評価が実現いたしますと、企業はその都度必要があれば、使用価値に基づいた地価形成になっているわけですから、その都度今のようになぜ早目に手当てしなければいけないか。あす買うよりはきょう買っておいた方が安い。土地が下がるというのはよほど異常なことだと思うからこそ早目早目の手当てをしたわけでございまして、そうしたことが全体としての地価形成を大きくゆがめたわけでございます。資産再評価が実施されて使用価値に基づく地価に近づいてきますならば、企業は何も生まない土地を早目に手当てするということは行わないだろうというふうに思います。  企業の内部における調整を何を通じて行うのかという問題はもちろん残りますが、私は、そのことよりも競争条件を整備して、新しい企業者がどんどんこの日本のマーケットで、日本を通じてもうけ仕事を企画し、雇用をふやし、そして我々の生活を安定させるような企業活動をすることが重要であって、もしその個々の企業活動に支障を来した場合は、これはもう我々の社会ではやむを得ないこと、それはその範囲内で処理していただくということで、そこを前提にして含みを企業部門にずっと残しておいた方がいいというふうには思わないのでございます。
  15. 後藤喜一

    後藤参考人 先ほどまず圧縮記帳の話が出てまいりましたですけれども、これは御存じのように今、先回ですか、四年ほどたちますけれども、確かに二〇%は課税になって八割だけが認められておるわけでございます。この買いがえというのは、御存じのように政府の政策に対応してやっておるわけでございまして、収用とかそういったやむを得ない事情の場合には、現在でも買いがえが無制限に認められております。しかも、東京都内ほか大阪ですか近畿圏、それから中部圏においては、御存じのように通常そこの場所にげたばきの住宅ですね、高層を建てる場合にも、現在一〇〇%買いがえが認められておるわけでございます。いずれにしても、この二〇%をもっと取るべきじゃないかという議論、確かにあろうかと思います。これは金額でいくのがいいのか。それからもう一つは、土地税制から見ますと、逆に所有期間に応じてその割合を変えてもいいんじゃないか。例えば五年の場合は二割、六年の場合には一割というようにだんだん下げていくとか、そういったように長短によっても差をつけてもいいんじゃないかなというように私なりには考えております。  ただ、金額についてどうかなとなりますと、やはり事業資産でございますので事業規模、そういったものを見ますと、せっかく大きな工場を持っておって同じ金額で買いかえていくというのは、事業縮小ということから見ますと、本来一〇〇%認めてあげていいんじゃないかな。それを二割取っておるわけですから、これをさらにちょっと強めるというのはいかがなものかなという感じはしております。しかし、これも政策でございますので、一応理由がある程度あればやむを得ないのじゃないか。でございますが、今申しましたように二割はやむを得ないのじゃないかな。だから、むしろやるなら所有期間に応じて差を設けるべきかな、そういう感じでございます。  なお、申告調整につきましては、一つ問題がありますのは、土地の場合の圧縮記帳については、圧縮しますと、土地を売ればその段階課税になりますけれども、永久に残るわけですね。これは土地税制で私は話をしませんでしたが、これは課税の延期ですから、土地の場合もある程度年数をかけて取り戻したらいかがなものかなというふうに考えております。これはなぜかと申しますと、事業の買いがえというのは同じ事業を継続するという前提ですね。したがって、一時に取りますと事業が縮小するからだめよ、だから納税を延期するのですよ。納税を延期するなら、あとその税額を何年かに分けて取ればいいのじゃないか。例えば土地の場合でも、四十年がいいか五十年がいいかはわかりませんが、そういう段階で取り戻してきてもいいのじゃないか、こういうように私なりには考えておりまして、申告調整はいいのじゃなかろうかということでございます。  それからもう一つ、間接税の話でございますが、これは直間の考え方で大蔵大臣ですか、かつて言われたように、直接身から出るから直接税じゃないかという話もあったのですけれども、今の考え方は、直接個人が財産の増加の起因となるような状況を、すなわち所得で生むとか、あるいは贈与によって取得するとか、あるいは相続によって個人が取得する、個人の財産の増加に直接つながるものを直接税にしておるわけですね。それ以外は間接税になっております。したがって、これは私も申しましたが、四割がいいか六割がいいかというのは、率直に言って納得できる解答はないのですね。  ただ、最初にも申し上げましたように負担感という面から見ると、せっかく汗水働いたものに対してそう高い税率ではいかがなものかな。したがって、先ほど言ったように、法人のように実効税率を五〇%ぐらいにしていただければ、おのずから直接税の税負担が六割ぐらいまで下がるのじゃなかろうかな、こういう話でございます。そして間接税は、現在では消費税あるいは個別間接税御存じのように酒税があるように、あるいは有価証券取引税だとか、そういったものによって四割程度は賄えばいい。むしろこれは、負担感個人から見た場合の負担感という意味から見て、四割程度がいいのじゃなかろうかな、こういう話でございます。
  16. 浅野勝人

    ○浅野委員 自民党の浅野勝人です。  後藤先生に総論で伺いたいのですけれども、今のお二人の委員の質問と関連してくるわけですが、租税負担率を引き上げない範囲内で直間比率を見直そうという土光臨調の基本的な考え方から今日のような姿になってきているわけですが、その背景には、給与生活者の重税感が極めてきつい、外国と比べて法人税も高いじゃないか、これらの問題は何とかならないか、それにこたえていかなければならぬという状況の中で、後藤先生も、間接税にある程度ウエートがかかっていくのはやむを得ないという考え方が出てくるのだと思われます。  そこで、今直間比率は六対四が適当だろう、今後藤先生の説明のような、直接税というのはお金が入ってきたとき取られるもので、間接税というのはお金を使うときに取られるものなのだという区分けで私もいいと思いますけれども、六対四というのが適当ではないかという漠然とした考え方の背景には、やはり消費税税率とどうしてもつながりが出てくるわけですね。そこで先ほど先生は、低い税率なら許容できる。私も同感なのですが、その低い税率というのは、現行税率あたりを想定しておっしゃっているのか、もうちょっと一般的な物の考え方があるのか、ちょっと伺っておきたいのです。
  17. 後藤喜一

    後藤参考人 私個人意見としては、消費税としては五%程度が一番いい税率じゃないかというふうに考えております。ただし、これは一般の税率として五%でございまして、現在改正が出ておりますように、食料品であるとかあるいは例えば公共料金、こういったものも一・五にした方がいいんじゃないかな。一・五の方は改正でいいと思いますが、その他のものは、むしろ三よりは五%程度の方がいいのじゃないかなという感じがしております。
  18. 細谷治通

    ○細谷委員 社会党の細谷でございます。  両先生にお伺いいたしますけれども、お触れになりませんでしたが、消費税の問題について、この局面で一体どういうふうにしたらいいとお考えになっておられるか、それについて両先生にお尋ねをしたいと思います。  それから田中先生、保有税、土地の問題、資産課税の問題についてお述べになりましたけれども、取得、保有、譲渡というのがあって、今保有のところだけが盛んに議論されているわけであります。例えば譲渡課税というのは一体どういうふうに考えたらいいのか。いろいろの対策があると思うのですね。土地転がしをどうしていくか、片一方で土地の供給をどうしていくかというような問題、今議論されていないところは、取得の場面でどうするかという問題があるのですね。土地を持てるという人は、ある意味では大変幸せな人なわけですから、その取得の場面でもう少し課税負担を大きくする。もし居住用であるならば、それについては後からその税金を返してやってもいいという、土地転がしを防ぐという観点から見れば取得の場面で課税を強化するという面があると思うのですね。その取得と譲渡のところ、その辺の課税、土地資産課税についてどういうふうにお考えになっておるかということを一つ。  それから後藤先生に。さっきちょっと基礎控除の問題についてお触れになりましたけれども、人的控除一般について、社会保障的な線で、最低生活費というようなことで適正に設定し、常に見直しをというようなお話をされたのですが、それはそれとして一つあるのですけれども、お尋ねしたいのは、今所得控除になっておるわけですが、これを税額控除にするというような考え方が成り立ち得るのかどうか。というのは、要するに基礎控除それから配偶者控除、特別配偶者控除等については、高額所得者ほど減税額が大きくなっているという問題があるわけですね。妻の働きが一定であるとするならば、これは税額控除控除するというやり方が当然あってしかるべきじゃないか。給与控除についてちょっと違うと思うのですけれども、私たちは、給与控除についても所得制限を設けるようなことを考えてもいいんじゃないかと実は考えておるのです。その辺の人的控除のあり方について、特に税率との関係でどういうふうにお考えになっているのか、それについてお伺いをしたいと思います。
  19. 田中直毅

    田中参考人 土地税制についてでございますが、今おっしゃいますように取得、保有、譲渡、相続、いろいろな段階での税金というのはあるのだろうと思います。ただ、一番重要なことは、土地取引あるいは土地の問題について余りにも煩瑣な介入を、政府部門が介入をして、自由な経済活動が妨げられるということは趣旨に合わないだろう。問題は、現在のような思惑的な土地保有を許すことによって地価水準が異常な高さに来てしまったということが問題ですから、それが是正されさえすれば、多段階にわたるような煩瑣な制度は設けない方がいい。一番効果的なものを入れることによって、あとはそこで決まる地価に基づいて適正な保有税なり固定資産税というものが取れる。これはもう当たり前のことでございますが、地価の水準が、今の地価の水準と土地保有動機というところに社会公共のルールに合わないと思われることを結果として許してきた。これをつぶすことが重要なので、諸取引形態の、土地の移転が行われる、あるいは取得、あらゆる段階で何かやらなければいけないということではなくて、どこかで最も効果的なものを行う、あとはそこで決まった価格で普通の、一律に行うことができる簡潔な税制がいいだろう、こう感じております。  消費税についてでございますが、消費税国会での論議それから国民的な論議の中で、消費税導入の果たした役割は極めて大きいというふうに私は思っております。  現行消費税をではどうするのかということでございますが、当初この消費税を自民党さんが提起されましたときに、高齢化社会との関係を言われました。私も、高齢化社会との関係をもう一度はっきり規定し直して消費税を定着させるのが、現在一番望ましい、妥当な方法だというふうに思っています。それは、現在の我々の年金のありようと関係させることだと常々思っております。  今働いている国民が将来給付されるであろう年金について大変不安を持っているのは、団塊の世代を初めとして、現在働いて年金として納めているといいますか、本来積み立てているものが、自分たちが受給年齢に達したときにはどこかに消えてしまっていて、次の世代は人の数も少なくなる、これでは不安だということだと思います。我々が今働いて積み立てているものは、我々がある年齢、受給年齢に達したときに、それがちゃんと資産運用がされていて、それを取り崩して我々が年金を受けられるという仕組みに変える、要するに積み立て方式に変えることが重要だろう。現在の年金は、基本が賦課方式になっておりまして、働いている者でリタイアした方に移転をする、こういう形になっているわけですが、これを早急に、我々が積み立てたものをちゃんと育てておいてそれを後で受け取る、こういう形に変えれば、高齢化社会に伴う不安の多くは消えるわけでございます。  それでは、現在の年金を受けておられる方は制度上積み立て分が極めて少なかったわけですから、その部分をこの現行消費税は埋めることにする。我々が今働いて年金を積み立てた分は、現在年金を受けておられる方に回るのではなくて積み立てておく、原資にする。今年金を受けておられる方は、消費税で一定期間それに対応させますと、ある時点からは全部積み立て型に年金は変わるわけでして、積み立て型にすれば、人口構成にでこぼこがあってもそのままそれが持ち上がっていくわけでして、不安はない。いわゆる高齢化社会が二十一世紀初頭にやってくることについての国民負担のかなり多くは消えるのじゃないか。そういう形で消費税の定着を図るべきではないかというのが、私の見解でございます。
  20. 後藤喜一

    後藤参考人 今の基礎控除について、現在、所得控除税額控除にできるかどうかというお話でございますが、まさにおっしゃるように、現行ですと最低が一割、最高五〇%でございますので、高い階層は五〇がまかっておるということは言えるわけでございます。しかし、税額控除にしたらすぐに同じになるかというと、そうじゃないわけです。負担率というようになりまして、五〇でなしに負担率、うんと金持ちになれば負担率は五〇に近づくわけですね。というのは、負担率というのは総合的に所得に対して一〇%、二〇%、三〇、四〇、こうやりますが、合計したものの所得に対する税額というのは、それぞれの人によって変わってくるわけです。うんと高い人は五〇近くになるわけです。したがって、税額控除にしても五〇の部分がまかることになるということで、確かに多少は違うと思いますけれども、そういう意味で諸外国においても税額控除は採用されていない。しかも、税額控除にしますと、やはり一たんちゃんと税額控除まで計算しないといけませんから、そういった意味でも事務上の手数もかかるということから、諸外国でも取り入れられていない。だから、お話のようにすることは可能である、こういうように思います。
  21. 宮地正介

    ○宮地委員 公明党の宮地正介でございます。  最初に、田中参考人に伺いたいと思います。  資産の再評価、特に法人企業に対しての土地の再評価、私たち公明党も、実は含み益に対して、特に法人を対象とした土地の問題につきまして、土地増価税というのを前々から提言さしていただいているわけです。先生のお話を伺っていまして、非常によく似通った考え方だなと。ただ、この問題については大蔵省当局は、御存じのように未実現のものに課税をする、これはいかがなものかと非常にちゅうちょしているわけですね。しかし、諸外国にはこうした例もありますし、先日も勉強会をやりましたら、我が国でも明治時代にこの土地増価税を提言した方も専門家の中にはいらっしゃるのですね。その点の、まず未実現に対する課税というものに対してどういうふうに先生はお考えになっているか。また、具体的に実施期間も五年から十年をかけてとか、あるいは納税の仕方も均等分割で五年、ここまで具体的におっしゃっておりますので、税率なんかはどの程度を先生は頭の中に描いておられるのか。また、非常に税収増が期待できる、こういうことで、税収増ももし試算があれば、どの程度の税収増を検討されておるのか。この辺、ちょっと具体的な問題になりますが、もしお教えいただければお願いしたいと思います。  それから後藤先生には、実は私ども、最近の地価の高騰、これがやはり持ち家の皆さんにはもちろんでございますが、家賃を払っている方にも大変に家賃の高騰、こういうことで、最近東京を中心に家賃の家計に占める負担割合が非常に大きい。こういうことで私ども公明党は、給与収入で年収約一千万ぐらいの所得制限を置きまして、所得税控除によって家賃控除制度、これを創設したらどうかという一つの案。私はさらに、特に持ち家の場合には、住宅ローンの特別控除税額控除方式でやっておりますから、持ち家にはいろいろ税制上の特典がありますので、この際一歩譲って政策減税として、租税特別措置法によって税額控除方式年間所得八百万円以下、給与収入にしますと大体一千万ですが、この辺に所得制限をして政策減税の控除をしたらどうか。建設省や労働省も非常に前向きに取り組んできたのですが、これもかたくなに大蔵省が今反対をしている。こういう状況でございまして、後藤先生、もし御意見があればお聞かせいただきたい。  この二点について、両参考人にお伺いしたいと思います。
  22. 田中直毅

    田中参考人 含み益の推計は非常に難しい問題だと思いますが、国土庁でまとめられた統計によりますと、帳簿価額について大蔵省の法人企業統計を参考とする、それから現在の土地資産額については経済企画庁の国民経済計算のストック編であわせて見ますと、昭和六十三年の時点でこれはそれぞれそういう計算をしたということでございますが、四百三十三兆円の含み益があるという推計が行われております。これは、もちろんやり出しますといろいろ難しいけれども、大ざっぱにはそういうところで一応のめどをつければいいのかなというふうに思います。  税金を取る側からいきますと、法人税率が適用されるということになろうと思いますが、そうしますと十年をかけてやる場合に、恐らく地価は徐々に下がっていくと思われますので、企業に十年をかけてやるということは、売りたい方は早く売った方がいいよ。要するに、今まで思惑的に持っていた人は早く出した方が、法人税率等々を考えて半分は例えば残るというふうに考えますと、早く出そうという人が出てくる。それで地価は早目に落ちるとか、いろいろあります。ですから、四百兆円を超えるものがずっとあるというふうには私は思っておりません。  そこで、下がってくるとは思いますが、それでも税収としては十年間に四百兆円の半分近くは出る。そうすると、一年間でいうと十兆円を超える税収というものが十年間にわたってあるのではないか。これをインフラストラクチャーを整備するための財源として本格的に使うことができる。日が上っているのか沈み始めているのか、難しいところですが、ともかく二十一世紀に至るまでにかなりのことをやるべきだろうということからいきますと、年間十兆円を超える税収、ざっとの話でございますが、これは大変魅力的なものになる。しかも、地価が上がらない、あるいは下がってくるということからいきますと、インフラを整備するための実質的な効果というものは十分期待できるものだと私は思っております。
  23. 後藤喜一

    後藤参考人 先ほどの家賃の税額控除お話でございますけれども、これは非常に難しい問題が一つあるのじゃないかと私なりには考えるわけでございます。  それはなぜかと申しますと、現在実は持ち家対策、あるいは会社としては会社自身が持っております社宅あるいは借り上げ社宅についての貸し付けにつきましては、御存じのように低い価格で既に従業員に貸しておるわけですね。したがって、普通の家賃も、そういう経由といいますか企業経由という形にしまして現実には補助しておるのが現状ですね。だから、それ以外の家賃となりますとではどういったものがあるのか、ほとんどが労働者のためのものじゃないのじゃないかな、こういうように思うわけですね。現在、企業所得の計算上そういった安い家賃を認めておるわけです。したがって、仮に税額控除を認めますと、そういう制度を一挙にやめないといけないという話になってしまう。それもまたいかがなものかな。  この問題は、そういった社宅、いわゆる企業が持っておる社宅、それから借り上げ社宅、そういった民間から借りたもの、その三つをバランスをとりながら、やはりもう少し研究しないといかぬのじゃないかなというように考えます。現在でも、今申しましたように、企業を通じて社宅という形で、社宅に準ずるものとして企業は安い価格といいますか差額補てん、そういうことをやっておりますので、そういった問題も含めて見直さないといけないのじゃないか。したがって、現在でもそれ相当の手当てはされておるわけでございますので、新たな制度の導入についてはもっと慎重に対処しないといけないのじゃないかな、こういうように思います。
  24. 早川勝

    ○早川委員 社会党の早川勝です。  お二人の参考人方々にそれぞれ一問ずつお尋ねいたします。  最初に田中先生にお尋ねしますけれども、実は十四、五年前ですが、社会党として土地増価税法案という法律を国会に出したことがございます。そのときにはいろいろ議論になったわけですけれども、一つの問題は、未実現の利益をどうするかという問題ですね。というのは、御存じのように戦後行われました資産再評価法、あれは土地が省かれておるわけです。そのときはなぜ土地が省かれたかといいますと、これは御存じだと思いますけれども、減価償却資産ではないのだということで土地だけ除かれたわけです。そういったことと、十四、五年前ですから列島改造論で地価が非常に上がったときがございましたけれども、そういったことで今で言う含み利益を吸収しなければいけないということをやったわけです。そのときにもいろいろ試算したわけですけれども、では地価というのをどうとらえるかといった場合に、先ほども指摘がありましたように、日本の土地は固定資産評価は全部入っているわけです。全部評価額がついているということで、それを基準にして一・七五倍、たしかそういう額を設定しまして、その中での含み利益を対象にしようじゃないか、こういう議論をして法案をつくったことがあります。  そういうことを考えますと、今回の再評価といった場合、機械等の減価償却資産ではないという問題をどういうふうに考えられるのかということを伺いたいと思います。  それから後藤先生には、たしか昭和四十一年か二年ぐらいだと思うのですけれども、あるいは記憶違いがあるかもしれませんけれども、日本は税務会計と企業会計を一緒にしてしまったと思います。最初の御意見の中でも触れられましたけれども、アメリカのやっているような税務申告と税務会計と企業財務会計との違いがあってもいいのではないかという感じがするわけです。つまり、税務は税務でほかの基準があってもいいのではないか。企業会計でありますと、企業は永遠に存続するものだ。継続性の原則等いろいろあるわけですけれども、個人の場合には、再配分のために相続税が一時点で資産に対してかかってくる、こう入るわけですけれども、企業にはそういうものが入ってこない。そういうことを考えますと、必ずしも企業会計と税務会計は一緒でなくてもいいのではないか、新しい発想をこれからしていった方がいいのではないか、そんな感じを持つわけですけれども、お答えをいただきたいと思います。
  25. 田中直毅

    田中参考人 資産再評価が入れられているというのは、資本主義的経済システムが健全に持続することを前提として入れられているというふうに私は了解しているわけですが、普通の場合はそこに土地は入れない、償却を立てるような資産ではない。おっしゃるとおりだと思います。  ただし、全体として現在の状況が、企業活力といいますか経済活力を妨げるほどに問題が起きている。ましてこれは、ただ単に企業活力の問題ではなくて、我々国民一人一人の望ましい生活環境整備にもはや支障になり始めている。ここにメスを加えるというときに、資産再評価で土地を特別にそういう立法を行うということに問題はないだろうと私は見ます。もちろん、説得といいますか、納得がいくという前提でいいのではないか。  先ほど早川先生そして宮地先生から、連続的にやるのかとか、これは一体特別に入れることの意味はどうだという御質問がございましたけれども、一度こういう形で土地神話といいますか思惑的な土地保有というものに対して、それが経済行為として見合わないものだという前提が入りますと、恐らく地価形成の原理は変わると思いますし、一度行われた資産再評価は、五年なり十年なりたったところでもう一度また見直してみようという、そういう声が起きるのは当たり前でございますから、最初の時点で何年ごとにやるというふうに入れなくても、以後必要がある場合には再び見直すものとするという一項目があれば、思惑的土地保有というものは完全に消滅させることができるのではないかというふうに私は思っておるのですが……
  26. 後藤喜一

    後藤参考人 先ほど企業会計と税務会計との関係でございますけれども、やはり基本としては、企業会計というのも商法の規定に従い、あるいは会計原則に従って所得を計算する、そういう立場から見れば、税法も全く同じだと思うわけでございます。しかし、政策目的として採用されておる租税特別措置、これについては全く企業会計とは別個のものじゃないか。こう見ますと、やはり会社の計算と税務計算は、原則として一緒の方が望ましいのではないか。  特に、投資者から見た場合あるいは債権者から見た場合も、税と一般の企業会計と全く違うというのは、これはおかしな話じゃないかということでございまして、やはりその間は同じ方が望ましい。しかし、先ほど申しました租税特別措置は、政府のいわゆる考えによって、政策目的の遂行のためにそういう企業会計にとらわれないでやる話でございますので、そういった意味申告調整といいますか、申告書で加算なり減算するということでいいんじゃなかろうか、こういうことでございます。
  27. 仙谷由人

    仙谷委員 社会党の仙谷由人でございます。  一年ぐらい前になりましょうか、テレビを見ておりましたら、田中直毅参考人税制論議の中で、法人税課税について、課税ベースをうんと広げなければいけない、そして税率の問題は別途考えなければならないんだ。つまり、日本で今法人税について言われておりますのは、税率が非常に高いということが割と企業関係者の方から言われておるようでありますけれども、ただ実効税率は、それほど日本の法人税というのは高くないというふうにも私どもは聞いておるのですね。大ざっぱな話でございますけれども、課税ベースを広げることについてどういうふうにお考えなのかという点が一点です。  それから後藤参考人は、むしろその課税ベースの問題につきましては、いわば配当課税以外はほとんど今の法人税課税について課税ベースを広げなくていい、引当金というのはやはり必要なんだ、こういうふうにおっしゃったわけなんでございますが、ただ退職給与引当金等について考えてみましても、それを退職給与引当金としてどこか特別に積み立てたりファンドしたりひもをつけたりしておるわけではなくて、企業会計上そういう計算書になっておるということだけで、実はそのほかにも非常に大きなフローとしてどこか土地投機とか外国に行っておるんじゃないか、こんな議論もされておるわけですね。私どもは、やはり基本的にこの引当金というものは整理をして、課税ベースを広げて、むしろ法人税率を下げるというふうな方向に行くべきじゃないか、そんなことを考えておるのでございますけれども、そういう考え方についての御意見を賜りたいと思います。  それから三点目は、法人税について累進税率先ほどおっしゃいましたように小企業については優遇税率が適用されておるわけでございますが、法人税についても累進税率のようなものが考えられないんだろうか。日本の企業社会を見ていますと、大、中、小というのはどうもはっきりしてきたようでございまして、今商法改正論議の中でも、大、中、小の株式会社すべてを一律にひっくるめて何らかの制度、例えば計算書類の公開という問題が今出ておるわけでございますけれども、そういうことを適用してうまくいくのかどうなのか。絶えず企業間格差に伴って制度を個別化しなければうまくいかないんじゃないかという議論もあるわけでございますけれども、法人税の累進税率という問題についていかがお考えなのか、その点をお伺いいたしたいと思います。
  28. 田中直毅

    田中参考人 おっしゃいました課税ベースの侵食の問題は、我々がどういう社会に住みたいかということと大きく関係してくると思います。普通我々が一人一人に聞いて回れば、それはもうできるだけ透明な社会がいい、あまねく負担する、ただし税率は低い、そういうものが実現できればこれが一番いいと皆言うんだろうと思うのです。  戦後、例えば産業振興のために租税特別措置法というものをつくって、いろいろ課税ベースの侵食というものが行われてきたわけですが、今日の時点に立ってみますと、その効果があいまいなものあるいは全く関係ないと思われるものも既にふえております。したがいまして、そういうものをどんどん整とんして、課税ベースを広げた上で税率を下げる。要するに、それが大前提であって、むしろそうした目的に対する効果が定かでないものを整とんするのは、失礼ながら国会のお仕事ではないかという気がいたします。国会の場で一つ一つ、目的が定かでない、あるいはそれを行うならば、我々は課税ベースの侵食を防ぐことができるし税率は下げることができるというふうに思っておりまして、国政調査権に基づいて幾つかの調査が行われますならば、私どものような民間の立場でも、もしお手伝いできることがあればやれる、そういうことではないかというふうに思っております。
  29. 後藤喜一

    後藤参考人 課税ベースの拡大の一つとして退職給与引当金の話が出たわけでございますが、御存じのように退職給与引当金というのは、もともと従業員の退職に充てるためのものでございます。現在、制度としては内部留保型、これが引当金になっておるわけですね。で、外部拠出型というのがあるわけでございます。御存じのように外部拠出型は、掛金という形で外部で留保されていく。早い話が厚生年金基金であるとか、あるいは適格退職年金であるとか、あるいは中小企業退職金共済事業団といったものが既に行われておりまして、随分そちらの方へ移行しております。  したがって、今残っておりますのは、いわゆるそれ以外の、内部で積み立てていこうという方々でございます。これは御存じのように現在、実際の要支給額に対して四〇%が頭打ちになっておる。これを先ほどの対象となる特定預金化にしたらいかがかというお話がありますが、実はかつて税制でそういった時代があったのですね、相当以前でございますけれども。しかし、預金としてもそれをまた担保に金を借りてくる。もちろん、当時歩積みがあるとかいったことで、特定預金とはいうものの、やはりそれが単独のものとして保有されるということにはなかなかならないわけなのですね。だからそうなれば、企業としてどんな資産を持ってもいいのじゃないかということで、特定預金制度廃止されたという考え方がございます。  また一方、四〇%の点でございますが、これもすぐにやめるのでないから、やめるまでの期間を今の複利原価で換算したものが、かつては五割、定年が延びたために現在は四〇%、さらに課税当局は、何か聞くところによれば、それをもう少し引き下げたいというような話があるようでございますけれども、これはやはり外部で拠出してそういうようにやった方がいいのか、内部で留保した方がいいのかというお話になりますと、なかなか一律には決めがたい。しかしながら、先ほど言いましたように、外部拠出方式は、御存じのように国も一枚かんでおりますので、そういう方向にむしろだんだんと行って、そういう方向へ一〇〇%行くならば、退職給与引当金制度はもはや不必要ではないか、こういうふうに考えるわけですね。それまではやはり特定預金と言うけれども、企業全体から見ればそういう一つの優先順位といいますか、そういうようなものはつけにくい、そこが一番難点じゃないかな、こういうように思っております。  それから、法人税の累進税率でございますが、これはやはり個人と分かれて事業主体でやりますので、私は、企業活動、利益を目的としておりますので、基本的には一本税率でいいと思います。しかし先ほど中小企業対策、そういった意味からは、ある程度低い税率はやむを得ないのじゃないか。なお、それじゃ余りもうけ過ぎたやつはどうするのだと、そういう方はまさに配当していただいて個人に還元すべきじゃないか、こういうふうに考えるわけでございます。
  30. 堀昌雄

    ○堀委員 社会党の堀昌雄でございます。  きょう、大変重要な御提案をしていたただいているのですが、私どもは資産再評価の問題はもう約二十年くらい前から問題を提起してまいりまして、私の同僚の武藤山治君は、三菱地所が持っておるあの丸の内の土地が簿価で坪一円だという問題を提起しながら、私ども随分やってまいりましたけれども、なかなか壁が厚くて、今日まで問題は発展をしてこなかったという経緯が一つございます。  それからもう一つ。実は先ほど後藤参考人が、法人実在説と擬制説についてお触れになりました。私は初めから法人実在説をとっておりまして、今衆議院議員になっております塩崎さんが割に私に近い実在説論者でございましたけれども、彼が主税局長のときに、これをもうちょっとまとめたいと思ったらいきなり議員に出てしまうものですから、結局それが中途半端になったのですが、私は当時から申しておりますのは、同族法人と言われるものはまさに法人擬制説でいいと思うのですけれども、当時の八幡製鉄とか富士製鉄とかというものが擬制説というのはおかしいのじゃないか。同時に、この問題の中で非常に問題になりますのが、今アメリカが言っております株の持ち合い問題なのですね。この株の持ち合い問題も、もう二十年ぐらい前から私がやっているのですけれども、法人が今の擬制説になっているものですから、株を持っても、要するに配当は受け取るけれども非課税になる。両方が同じ額の株を持てば、これは架空資本でして資本じゃないのですね。だからそういうことはやめるべきだ、そのためにはどうしても法人実在説にして税を取るべきだという議論をやってきましたけれども、大蔵省はそういう私どもの提案をなかなか認めようとしなかった。  それで私は、今アメリカが言っておりますいろいろな問題を見ておりまして、そういう点で過去に主張してきたことが今構造協議の中で随分出ているわけです。昨年の九月六日にジョン・テーラーという、アメリカの大統領諮問委員であって構造協議の委員が日本へ参りまして、アメリカンセンターで論議したのですけれども、私が彼と違うのは、要するに貯蓄投資バランスの問題をアメリカが言っておりますが、これはあなた方の言っていることについては私は認めませんということをはっきり申しました。あとは、大店法であれ土地税制であれ独禁法であれ、非常に問題はある。第一、日本では鉄鋼、一番と二番の企業の合併が認められるような独禁法なのだから、日本の独禁法というのは形式的にあるけれども、実質的に効果をもたらしていない。おまけに談合が日常に行われていても、これがほとんど摘発されていないという問題で、残念ながら日本でできていないことをアメリカが言っていることは、大変結構だ。大賛成だ。独禁法もいきましょう。大店法もいきましょう。大店法は、中小企業のために守らなければいかぬと言われているようですけれども、中小企業じゃないのですよ。進出をした大型店が後発が出てくることをあれで防いでもらっていますからね。  要するに、最初にできた大型店舗を守るために今や大店法というものが機能していて、それは消費者にとって一つもプラスでない。だから、どうも中小企業対策で自民党は抵抗しているようだけれども、中小企業対策は大店法を緩めた後で、出てきた現象は地域で全部違うのです。要するに、大きなものが来たために周辺で非常に収益の上がっている商店街もあるわけだし、それによって非常な打撃を受けるところもある。そんなものを一律に考えるのではなくて、大店法をやった上で、結果として出てきたことに対して処置をするのが当然だ、こういうのが私の発想で、そういうことも随分やってきましたけれども、これもなかなかいかない。結局、構造協議でアメリカが言ってくれればできるなどということは、私は、日本の政治の貧困がはっきりあらわれているのじゃないか、こんなふうに思っているわけであります。  そこで、これはそこまでにいたしまして、今の法人実在説、擬制説、こういう問題については、きょうたまたま私どもの手元に昭和六十三年分の法人企業統計の実態というのが配布されておりまして、それで見ますと、昭和六十三年に日本の法人は百八十五万一千六百七十三あるわけですね。少なくとも経済規模その他にも関連してですが、こんなに法人がある国というのは実は先進国どこにもないのですね。どうしてこういうことが起こるのか。これは法人税個人所得税とが余りにもかけ離れて法人が有利になっているために、いわゆる同族法人という形でどんどん法人ができてくる。今の資料を見ますと、昭和六十三年分の法人数は百八十五万一千六百七十三社で、前年より六万八千二百三十九社、三・八%増加しておる。まだまだこうやって六万も七万も毎年法人が出てくる。こういう実態ですね。  それはどこに問題があるかというと、個人に対する税と法人に対する税というものが著しく格差がある。今問題になっている相続税の問題、土地にも関係ありますけれども、個人の場合には相続税というのは大変な相続税を払う。法人は確かに株式の問題としては出てきますけれども、法人企業そのものは何ら相続はないわけですから、経費のあり方からすべての点で、余りにも今日本の個人に対する所得税法人税に格差があり過ぎる。だから、これが少なくとも土地と同じように、これは減らす必要はないのですけれども、ふえないようにするための税制改革というものは当面必要なんじゃないか。  そして同時に、さっきの擬制説と実在説の問題ももっときちんとするということで、少なくとも税の理論としてもっと筋が通った税制にしなければいけない、こう思っておりますが、この点について田中参考人後藤参考人からお答えをいただきたいと思います。
  31. 田中直毅

    田中参考人 堀先生の言われたことは、確かに現実になっているというふうに思います。  例えば香港に行ったりして本社を移す企業が、企業の中においてオーナーの役割が非常に大きいところではすぐ移せるわけですが、目的の多くがやはり税金の問題になっている。それは皆が言うかどうかはともかくとして、現実にそういう状態になっている。その理由は、もし相続等を国内で行うと大変なことになるので、法人化した上でなおそれを海外に持っていく、こういうことが起きているわけです。  ですから、現在の税制というのは表とそれから裏があって、裏をうまく使えば利が得られるという仕組みが現に存在しているわけですから、これは表裏一つのものにする努力というのは、社会の公正を維持するために非常に大きな役割だろうと私は思います。形としては、恐らく個人の相続にしろ所得税にしろ非常に重くて、そのことが便法として法人を使う、あるいは昨今は海外に、タックスヘーブンにそれを設置するというところまで来ておりまして、個人法人もやはり足がついている、必要とあらば動くというところまで来ているのが現実だというふうに認識いたしております。
  32. 後藤喜一

    後藤参考人 確かに堀先生がおっしゃいますように、我が国の所得税というのは法人と比べては非常に高い。最初に申し上げたとおりでございます。したがって、新聞などでも見られますように、個人でも最近外国へ住所を変えていくという例も見られるのもその一例じゃないかと思います。したがって、私は、最初に申し上げましたように、実効税率は大体五割、これがもう最高の水準じゃないかな、所得税も。ただ、相続税に触れませんでしたけれども、相続税はやはりそういう残された財産が次の世代に行くわけでございますので、ここは五割でなくても現行でやむを得ないのじゃないか。もっと高くという案もありますけれども、まあ七割ぐらいがいいところじゃないかなと思っております。  配当に対する課税の問題につきましては、最初に申し上げましたように、今すぐに大変革をするというのもいかがかと思いますので、私の考えとしては、将来配当損金算入、いわゆる利子と同じように扱うのか、あるいは配当というのは五割取ったのだから配当のうち五割だけを損金で見てあげるというようにやるのか、そういった形でもう少し研究すべきじゃないかな、その上で結論を出すべきじゃないかなというように思います。
  33. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 これにて午前の参考人に対する質疑は終了いたしました。  両参考人には、御多用中のところ御出席の上、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。(拍手)  午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十五分休憩      ────◇─────     午後一時二分開議
  34. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前に引き続き、税制に関する件について参考人から意見を聴取いたします。  御出席をいただいております参考人は、ソフト化経済センター専務理事日下公人君、日本税理士会連合会常務理事調査研究部長佐藤豊夫君及び作家堺屋太一君、以上三名の方々であります。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。参考人各位には、税制問題全般につきましてそれぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、議事の順序についてでありますが、まず、各参考人にそれぞれ十五分から二十分間御意見をお述べいただき、次に、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  それでは、日下参考人からお願いいたします。
  35. 日下公人

    日下参考人 日下でございます。  税金のことは素人でございますし、特に論文を書いたこともないのですが、お招きいただきましたので、日ごろ考えていることをお話しさせていただきます。  まず第一に申し上げたいのは、所得税は悪税である、できれば全部廃止するとよいという気持ちです。  それから二番目は、保有税はもっともっと引き上げるべきであると思います。  それから三番目には、保有税の範囲を広げまして、例えば海面保有税とか、あるいは水利権を主張なさるならば水の保有税とか、こういった資産国民全体の資産ですから、その上に何かの権利を主張なさるのなら、あるいはその権利を認めるのなら、保有税を納めていただきたい。あるいは空気でも、空中利用権でも、権があるなら税はつけてもいいんじゃないかなと思ったりしています。  それから四番目には、少し小さくなりますが、建物とか機械償却税というのがございます。あれは非常に悪い税金だと思いますので、あれは廃止いたしまして、その分だけは下の土地の面積の方へ移していただきたい。つまり、土地税だけを取って償却資産税は廃止すると非常にすっきりするんじゃないかなと思っています。  それから、国民負担率でありますけれども、年々一%ずつふえて、今や四〇%になって、またもとへ減らしてくれるとありがたいのですが、何か四五にはなるとか五〇ぐらいは仕方がないとか、そういう報告のようでございますが、私はそれはとんでもないことである、それこそ亡国であると思っております。絶対に四〇を死守していただきたい。何なら三〇%に戻してくださればすばらしい日本になるだろうと思っています。  次に、一つ一つについて申し上げますと、所得税が悪税だというのは、何が利益かを言うためには経費を言わないといけないわけで、売り上げははっきりしますが、何が経費かは、これは経済学的に言っても認定が不可能であります。それをちゃんと認定してくれる学者には会ったことがございません。
  36. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 発言中ですが、参考人日下公人君、ちょっと聞き取りにくいようでございますので、語尾を強く発声をお願いいたします。
  37. 日下公人

    日下参考人 はい、わかりました。  所得を認定するには経費を認定しないといけない。何が経費であるか、これは主観的または客観的、二つの決め方があるわけですが、主観的に決めると、本人がこれが経費であると申告をする、これが現在の法律だと思いますが、そうしますとだれでも一〇〇%経費だと言い張ることになりますから、税務署は基準をつくります。これは税務署が、恣意的な基準ではなくて社会常識だということにいたしまして基準化いたしますが、基準化してしまえば、これは売上高税と同じものになります。そういうようなことで今所得税が行われております。しかし、またそこに裁量が入ってきますので、国民が感情的に国家と対立するもとになります。  それからもう一つは、社会常識が入ってきますと、新しいビジネスの場合の新しい種類の経費が人にはわかってもらえない、その申告が否認されるということでは日本経済が新しくならないという弊害が起こります。  それからさらに、所得税全体が高いということも非常によくないことでありまして、節税のためにいろんなコストを払うようになります。これはレーガン大統領も言ったことであります。  もう一つは、世界全体の所得税水準が下がってきているときは、それに合わせておかないと税金亡命が起こります。特に若い人は私たちほど愛国心がありませんから、所得税の安い国へどんどん逃げます。事業を移します。税収が減ってまいります。これはもう世界経済が単一化しつつあるということですから、今アメリカから構造協議でやられているのは規制の面ですけれども、税率ももう世界じゅう押しなべて一緒にしないといけない、そういう時代が来ていると思います。  それからもう一つは、これは日本国民が意地汚いのですけれども、税金で経費と認められたものは、そればかり使う。具体的にはバー、キャバレー、自動車、ゴルフ、マンション、それはむちゃくちゃに使います。しかし楽しくない。本当に楽しいことでも、そっちは使っていない。これが豊かになったが幸せでない大きな原因であると思います。ですから、日本の消費は税上の楼閣である。これは意地汚いのが悪いのですけれども、所得税廃止し、経費の問題を廃止して、全部消費税で取るとか、固定資産税で取るとか、そちらの方へ移すことが本当に豊かさを幸せに使う国になるゆえんであろうと思います。  二番目に、保有税の引き上げはこのごろ言われておりますから余りもう言わなくてもいいのですが、二十年前から言っておりますが、土地保有税は日本でも以前は大体三%であった。昭和六年以降は三・八%を取っていた。その三・八%を決めたとき、その前の大正時代からどういう税制であったかといいますと、何と宅地は二・五%、田畑は四・五%、ですから農民は農地を持ちたくなかったのです。土地を愛するのは日本人の心だといいますが、大正、昭和へかけて農民は、相続のとき、おやじが死んだとき、田畑は要らない、四・五%も取られるから、自分は農業をする能力がないと言って逃げたというのが当時の社会常識でありまして、税金の税率の威力は大変なものがございます。それが現在は〇・二%とかそのくらいしか負担せずに、国土の一角を地主は所有し、かつ、これを有効利用しないわがままが通るという、こんなおかしな国は世界じゅうにございません。ぜひとも、三%と言いたいが、一%くらいは取っていただきたい。  具体的に言いますと、これによって土地保有税の税収は十倍になるであろう。十倍になって何のおかしいこともない、昔に戻ることであると思っております。その分だけ住民税の方を減税いたしまして、例えばですが、年収が六百万円で三十坪の土地でマッチ箱のような家に住んでいる人が、両方がとんとんになる。この人は賛成するわけですね、両方がとんとんですから。さらにそれ以上土地を持っている人は少しは損をする。それから収入の多い人は得をする。これは何だといいますと、要するに働く人を優遇して、働かない地主にはもう少し税金を負担してもらおうという意味でございまして、日本経済を活性化するためにぜひこういうことが必要であろうと思います。  それから、相続税の前払いと考えれば、土地保有税を高率で取ったら相続税は甘くてもいいだろうという気もいたします。  それから、土地は国家のものであるということで、いろいろ権力的な土地収用法とか届け出制とか売買の許認可とか、権力によって土地の有効利用を実現しようという方法がありますが、それよりもっとソフトに、土地保有税を上げていけば、それは知らず知らずのうちに実現するであろうと思っております。  それから、償却資産廃止でございますが、これは非常にコストが高いわけですね。例えば、東京都の例でございますが、土地と家屋、償却、三つからざっと四千億円の収入を上げておりますが、これはちょっと古い統計ですけれども、二千億円は土地から取っておりまして、しかも職員は、千四百人のうち土地係は三百五十人、大変簡単に済むわけです。それは当たり前ですね、地図を見れば取れるわけですから。しかし、家屋税とか機械償却は一々現場へ立ち入らないと……。ですから、そこに非常にさじかげんが入るし、立ち入られる人も立ち会うコストがかかるというわけで、こういうことは廃止して、この分も含めて、全部土地の面積から取ればいい。そうしますと、これは休閑地、遊休地税と同じ働きをするわけで、現在、建物を建てて利用している人は平気である、利用していない人は負担が重くなるという効果があろうかと思います。  それからそのほかに、今度は支払いの方で、税収の運用の方でございますが、私は、税金を納める人が、例えば国税三税の一定割合が地方交付税になるわけですが、そのときに、自分の納める所得税の一割は岐阜県にとか、自分のふるさとの山形県にとか、本人に指定権を与えてはどうか、あるいは文部省にとか、与えてはどうかと思います。これはアメリカでは一部やっていることのようでございます。  結局、税金を納めることに伴う楽しみが全然ないのがよくない。多額納税者には勲章をくれとか言っておりますが、こういうことも一つの方法だと思うのです。そうしますと、地方も出身者に対していろいろなサービスをするであろう、PRをするであろう。払う楽しみが納税者にできてくる。行く先指定制ですね。特に、相続税なんかの場合には有効でありまして、百人くらい集めて大きな美術館が建ったというとき、百人の名前を門のところに書いておけばいいわけですね。小さくても何でもいいのです。そうすると使う楽しみができる、相続税を納める張り合いができる。この楽しみを今は大蔵省と国会議員の皆様で独占しているのが、国民としては寂しいと申し上げたいと思います。  それから、配付した資料にも書いたことですが、行政は国民を信用しておりませんから、教育を充実させたいと思うと、教育予算は学校に与えて本人に与えません。あるいは、保育に欠ける子供に与えるのではなくて保育所に与えます。そういうことでなく、本人に与えるというルートをつくりますと非常にいいことがたくさんございますが、時間がないので省略いたします。  最後に、消費税を一四%くらい取っていただきたいと思います。これは、しないでいますと、もうじきECから構造協議をかけられます。ECが九二年に統合しまして、難しくなったともいいますが、むしろそれを越えて、ゴルバチョフの言う欧州共同の家として、ドイツ、ソ連、東欧を含めた恐るべき強大な大陸国家連合が出現する、アメリカはそれを見て日本たたきをやめたのだ、その強大なる大陸連合とアメリカが対抗するために、パートナーとなる国は日本しかないのだということに気がついたのだ、これは私一人の仮説でございますが、そういう見方ができると思っておりまして、その強大な大陸連合を妨害するというのがアメリカの外交であろう、ドイツとソ連を具体的に言えば分断していく、そのときスポンサーになるのは日本であろうなどと思っております。  ともかく、その大陸連合に日本がつき合っていくに当たっては、消費税一四%、体質を同じにしろ、構造を同じにしろという要求が来ると思います。ですから、そういたしておきまして、ほかの方で減税をするという今大きなチャンスではないかなと思っております。  最後にまとめて言いますと、所得税はゼロか三%、そして行く先指定ができるようにしてほしい、土地保有税は一か三%、それから消費税は一四%、それから相続税はこれが実現すれば今のように穏やかでもいいだろう、たくさん取るならば行く先指定を入れると納税の楽しみができてよいのではないかと思っております。  以上でございます。
  38. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 どうもありがとうございました。  次に、佐藤参考人にお願いいたします。
  39. 佐藤豊夫

    佐藤参考人 税理士の佐藤でございます。  私は、税務を扱う職業人としての立場から意見を申し述べさせていただきます。  私ども税理士会では、例年、税理士法に定める建議権に基づきまして、税制等につきましていろいろ各方面に建議を行ってまいっております。その基本的な考え方は、課税の公平とか税制の中立性あるいは簡素合理化、それから行政手続の整備というようなことが基本理念になっております。  六十三年の税制改革法では、所得消費資産等に対する課税を適切に組み合わせることによりまして均衡がとれた税体系を構築することとしまして、その中心的課題として、将来における安定財源の確保の要請とあわせ消費税が新しく導入されました。今後も消費税を含む間接税の割合は高まっていくことが予想されますが、しかし、我が国の所得課税を主にしました直接税中心租税体系と、応能負担を原則とする所得再分配機能によりまして実質的な公平を確保するという基本的理念は変えてはならないものだと考えております。  課税の公平に関しましては、国民の中に潜在するクロヨン論議等による不公平感の実態というものについて少し考えてみたいと思います。  ちなみに、平均家族構成によります平均的年間所得が六百万の場合をとってみますと、事業者は、一部事業税負担したといたしまして、事業者負担する税率が約二〇%で百二十万円となります。給与所得者の場合は、同じ収入の場合約九%でございますから五十四万円、その差額は六十六万円でありまして、約倍近い差が生ずることになります。事業者は、例えば課税上優遇されております退職金制度もございませんし、老後の年金等につきましても大きな格差があります。さらに、みずからの納税額を確定するための日夜の努力も必要でございます。これらを考えてまいりますと、給与所得者に比べて事業者が恵まれているというような不公平感は当たらないと私は考えております。例えば、一部所得の隠ぺいとか調整等が行われる余地が事業者にあるといたしましても、それは全体のほんの一部でございまして、税制上のこのような不平等を埋めるものではありません。  いずれの場合でも、税の公平を考える場合には、税制上に依存する問題と税務行政の執行上生じてくる問題を明確に区別しまして、公平のあり方が検討されなければならないと考えております。  行政手続法の整備につきましては、時間がありましたら最後に申し上げます。  さて、私ども毎年税制全般に関しまして七、八十項目の建議をいたしておりますが、ちょうだいした時間もわずかしかありませんので、本日は四点ほどに絞って意見を述べさせていただきます。  第一は、当面の課題である消費税についてであります。  本法が施行されまして一年経過し、国民の間に定着しつつあるという実感も確かにございます。しかし、なお、この創設の可否、すなわち存続か廃止かにつきましては、私ども会内でもさまざまな意見がございまして、必ずしも統一した意見がまとまっておるわけではございません。しかし、私ども税理士は、多くの納税者の適正申告を援助するという立場から、現に既に施行されておる本税についての是正策を実務家の立場から申し述べさせていただきます。  本税の仕組み上の見直しというのは、この税金が本質的に逆進的性格を持っているということに加えまして、事業者の事務負担軽減措置と、それから消費者の負担したであろう消費税の一部が国庫に納まらないというような疑問を具体的にどのように縮めるかにかかっていると思うのであります。  現実に、食料品を初めとする生活必需品関係の小売業者は、粗利益率で約二〇%前後でございます。その他諸経費等の課税仕入れを控除しますと一〇%を切っているのが現実でございます。したがって、全課税仕入れの残りを二〇%と想定した現行の売り上げに対する〇・六%のいわゆる簡易課税制度は、これら多くの事業者はこれによる恩恵はほとんど受けておりません。  しかし、その他の一部の事業者におきまして、この二〇%を上回る事業者があることもまた事実でございまして、今回提案されております見直し案では、このみなし仕入れ率について、現行の法律規定から政令委任事項への改正を提起しておりますけれども、政令委任の可否は別にいたしましても、よりきめ細かな実態に近い仕入れ率の見直しは、さきの消費者の疑問と不満解消のために必要でありましょう。  本税が必然的に内在する逆進性の緩和のためと家計に及ぼす影響に配慮いたしまして、全食料品の小売段階の譲渡、その他教育費を含みます一部資産の譲渡の非課税及び全食料品の事業者間譲渡の特別税率、いわゆる一・五%でございますが、これらを設定するという見直し案の果たす効果については、私は大変疑問でございます。  今、仮に平均的家族構成、すなわち妻と子供二人の平均的年収六百万円の家庭におきまして、食費の占める割合を三〇%といたしますと百八十万円でございます。見直しによって受ける恩恵は、計算どおり小売業者が仕入れに係る一・五%の価格を転嫁しただけとしてその他包装費のことは除いても、年間二万七千円にしかすぎません。しかし、これでもないよりはいいわけでありますけれども、そのために生ずる今度は事業者の側の、区別、仕分け等にかかる事務負担は予想外に大きなものとなってまいります。消費者、事業者の両者の立場に立ちましたより効果的な逆進性の緩和策が研究されるべきだと私は考えております。  この消費税も一種の企業課税である面を持っていることは確かでありまして、仮にそうだとするならば、競争力の弱い中小零細業者に対する負担軽減措置として施行されました免税制度とか限界控除制度、簡易課税制度帳簿方式制度は、その内容の改善を図った上で存続させるべきだと考えております。また、簡易課税選択届け出を初めとする各種の届け出につきましては、その提出期限が当該年度の前日となっておりますために、その選択の仕方によりましては負担額が大きく変わってくるというような矛盾もございますので、これらも十分検討の上見直しがされるべきだと思っております。  先ほど日下先生のお話もありましたように、EC諸国では既に付加価値税の税率が一四%から二〇%に達しております。将来、我が国におきましても税率の引き上げは必至だと私は思っておりますけれども、間接税主導型の諸国におきましては資産格差が増大しているというような事実も考え合わせまして、この税率の引き上げにつきましては、あらゆる角度から検討を行って国民の合意を得た上で慎重でなければならないと私は考えております。  次に、土地税制について少し申し上げます。  近時の異常な地価の高騰は、国民の間に資産格差の増大をもたらしております。土地政策は、税制も含めまして国土計画の総合的検討が必要であることは申すまでもありません。税制というのは、土地問題の根本的かつまた最終的な解決策にはしょせんなり得ません。しかし、税制の果たす役割もまた非常に大きなものがあることも事実でございます。  そこで、税制上の措置について、私としましては、次のようなことを注意する必要があるだろうと思います。  通常の場合の土地の譲渡による軽減税率の適用を制限いたしまして、原則としては総合課税とすべきである。それから、事業資産の買いかえ制度事業資産の再生産に有効であります。それから、法人、特に大企業に対する土地税制は保有税の強化で対応すべきであります。また、非生産財たる土地については、一部私的所有の制限も必要でありますけれども、反面、自由な経済活動そのものを制約すべきではありません。遊休土地等については保有税の強化、それから譲渡益については利益に対する法人税率で対応すればよろしいかと思います。  なお、法人所有の資産再評価に対する再評価税につきましては、一部その意義は考えられますけれども、これは未実現利益に対する課税の問題がございます。また、時価の認識、土地譲渡時の原価性をどうするかというような問題、これら多くの疑問がございまして、むしろ新たな不公平を生ずる可能性もございますので、実施については私は現時点では疑問であります。  なお、中小事業者事業承継が可能であるための措置とか、非生産的な居住用土地の保有税の軽減等について十分検討されるべきではないかと考えております。  なお、土地の評価の問題でありますけれども、各税法間における時価の概念を統一しなければなりません。また、評価の問題は、基本的には法律に定めて評価の手続等の改善を図るべきであります。地域の違いによりまして評価額が非常にアンバランスになっておる面もございますので、これらの是正を提言いたすわけでございます。  評価の問題は我々実務家といたしましては一番苦労する点でございまして、例えば税理士の考え方とか計算の仕方によりましていわゆる評価額が大きく変わることがございます。したがいまして、納税者負担する税額もそれによって非常に不公平な面も生じてくるというような現実も考えなければならないのではないかというふうに考えております。  それから三番目に、納税者番号制度につきまして述べさせていただきます。  有価証券譲渡益課税等のいわゆる強化策といたしまして、総合課税の推進の立場から、先般、政府税制調査会等で納税者番号制度の導入論が提起されております。  この案によりますと、すべての行政機関の管理システムとして統一的番号付与制度、いわゆる国民総背番号制度、こういうものとして構築されるものと考えられるわけでありますけれども、統一的番号付与制度となりますと、国民社会的、経済的あるいは歴史的な情報が大がかりな電算機で管理されるということになりまして、情報の収集とかその管理及び利用のあり方、さらにそれらが乱用された場合の問題等につきまして十分に検討される必要があろうかと思います。  適正課税のための制度は、いわゆる納税者番号制度とは別に構築することが必ずしも不可能ではありません。将来その必要性は認められるわけですけれども、統一的番号付与制度が構築される場合は、先ほど申し上げましたようなことに関する周辺の法制度の整備がなされることが条件とならなければなりません。また、国民の理解と合意を得るための期間も必要であります。したがって、周辺の法制度の整備がなされていない現段階では、いわゆる納税者番号制度の導入は時期尚早であると私は考えております。  最後になりましたけれども、行政手続規定の整備ということに関しまして一言申し上げさせていただきます。  我が国では、御承知のように、現在、行政の統一的手続規定を定めた行政手続法というものは存在いたしておりません。今回、総務庁の行政手続法研究会で発表されました行政手続法要綱案では、租税の賦課徴収に関する手続は除外されております。我が国の税務調査を初めといたします税務行政の事前手続は、個別法たる国税通則法等にもその規定はほとんどございません。  税務行政も行政の一環でありまして、その国民に及ぼす影響は他の行政分野に比して非常に大であります。租税の賦課徴収も、総則規定としては一般行政手続法に含めまして、具体的手続規定は個別法である租税法の中に明確に規定するということが、税務行政の民主化と同時にまた行政の能率化を期することができるわけでありまして、この問題について要望いたしたいと思うわけでございます。  以上、ここまで申し述べましたことは、私はきょう税理士会連合会から参っておりますけれども、あくまでも私個人の私見でございまして、現時点におきましては税理士会として決定したものではないということを申し添えます。また、本日は私にこのような発表の機会をお与えいただきまして、大変感謝しております。厚く御礼を申し上げます。  以上をもちまして私の意見表明を終わらせていただきます。
  40. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 どうもありがとうございました。  次に、堺屋参考人にお願いいたします。
  41. 堺屋太一

    堺屋参考人 この数年間、税金に関する、税制に関する議論が大変盛んでございました。私も一年半前まで政府税制調査会の特別委員をしておりましたが、そこで論じられる議論は、どうしても現体制、現制度前提といたしまして、非常に限られた小さな問題を繰り返し議論しているような気がいたします。木を見て山を見ずということわざがございますけれども、最近の税制議論は、木も見ないで、一枚ずつの葉っぱを調べて、これは虫食いだ、これはどうだという議論をしているような感じがいたします。そこで本日は、大所高所から、税金の考え方全体についていささか意見を述べたいと思います。  まず、税制の基本的な問題は何かといいますと、五つぐらいに分けられると思います。  第一は、幾ら取るか、どれくらいの税金を取るかという問題であります。第二番目は、だれが取るか、取る人がだれであるかという問題であります。これは、国税か地方税かという問題であります。第三番目には、だれから取るかという問題であります。これは、今よく議論されます保有、所得消費のだれから取るかということと同時に、受益者から取るか、能力者——応能で取るか受益で取るかという問題もございます。第四番目は、どうやって取るかという問題であります。これは消費税がいかがかというような取り万の問題でも大いに議論されたわけでありますが、一応、簡素、公正、中立の原則で取るということが言われております。第五番目は、何のために取るかということであります。これは、財政資金を賄うために取るということのほかに、いろんな目的、産業的、政治的目的を持って税が取られることがあります。この五つについて、それぞれまず意見を述べたいと思います。  まず、幾ら取るか。これがやはり国民の最大の関心事だろうと思うのです。  今までの政府の審議会その他では、二十世紀中は欧米の水準よりもかなり低い水準にとどめる。国民負担率を、欧米の水準、大体五〇%前後でございますけれども、それよりもかなり低い水準にとどめる。また、一番高齢化のピークになる二〇二〇年でも五〇%を下回る四〇%台にする、その種の答申が出ております。  ところが現実に見ますと、八〇年代に国民負担率は三一・三%から四〇・四%に何と九%増加しているわけです。もちろんこの間には財政再建がございましたので、国債で賄っていた分を租税にしたという点もありますけれども、この国民負担率の増加の現状を見ておりますと、果たして今世紀中にあと四%程度の増加でとどまるのかどうか、かなり不安を感じます。したがいまして、この国民負担率を上げないような強力な政策をとる必要があるのではないかと思います。  現在、日本は高齢者比率が欧米、ヨーロッパ諸国よりは低いわけでございまして、これが上がってくるとだんだん高くなるといっているわけですが、ほかに失業率も非常に低くなっておりまして、そのための財政負担が少ない、防衛費も一%前後でございまして、ヨーロッパ諸国よりも低い。そういうことを考えますと、現在の日本の状況、この高齢者の比率が一一%ぐらいであり、失業者が二%台であるという状況に比べると、決して日本の税負担は低いとは言えない状況にあろうかと思います。したがって、今後増加する要素が多いわけですから、強力にこれを抑える政治が必要ではないかと思います。  次に、第二の問題として、だれが取るかの問題であります。  国税と地方税の問題でありますが、これはシャウプ勧告以来全くと言っていいほど変わっておりません。地方と国の税目が変わっておりません。これもやはり、産業が高度化し人口移動が激しくなりました現状に合わせた税の見直し、税項目の見直し、税体系の見直しがそろそろ必要になっているのではないかと思います。  具体的に言いますと、まず、全国機能が存在するがゆえに固定資産が非常に高価になり、あるいは高密度になっている、そういう固定資産に対する課税について、固定資産税としての地方税のほかに一定の国税を課する必要があるのではないか。現在、東京に全国機能が集中いたしますので、東京に非常に税収が集中する、地方には余り税収が入らないというような形になっておりますが、この点はいかがなものであろうかと思われます。例えば、一定以上の階数を利用しているところには別途国税をかけるとか、そういうような方法があっていいのではないか、あるいは、坪当たり幾ら以上のものについては別途国税をかけるというような制度があっていいのではないかと思います。  第二番目に、地方税であります事業税法人税等は大体従業員割で考えられておりますけれども、現在、従業員がその市町村に住む、都道府県に住むとは限りません。また、地域サービスの負担といたしましても、従業員数が最も適切なものであるとも言えません。例えば、東京にありますオフィスの従業員と地方の工場の従業員といたしますと、地方の工場の方が道路負担にいたしましても廃棄物処理にいたしましても非常に大きな負担を地方自治体にかけることになります。そういうような意味で、これに例えば土地使用面積、廃棄物量、水使用量等を勘案した一定の数値をつくる方がいいのではないか、各全国企業の配分の問題も考えるべきだと思います。  第三番目に、極めて重要な問題は過去からの補助金をどう考えるかであります。  物価が上昇してきますと、早くできた施設は非常に安価につくられております。それを前提にして原価主義でコストを計算いたしますと、先に公共施設をつくった、公営企業を始めたところが料金が非常に安くなります。例えば、現在水道代などを見ますと、東京は全国から見てもかなり安い方でございます。そのために、埼玉県に工場があるけれども瓶洗いだけは東京へ持ってきているという会社もあるわけでございます。あるいは高速道路などにいたしましても、早くつくられたところは非常に安い、今つくっているところは非常に高くなります。地下鉄などは極端な差が出てまいります。こういうのは要するにインフレ利得でありますが、これは本来全国民に帰属するものではないか。  従来、地方自治体の住民というのは、それを開発した、例えば大正時代に東京の水道を開発いたしました人々の正当な権利継承人が現在の東京都民である、こういう想定でできているわけです。だから、東京が大正時代に努力をしたから今水道代が安いのは当然だと考えられたのでありますが、この人口移動と産業変化の激しい中で、果たしてそうであろうかというのは改めて問い直すべきところがあると思います。  したがいまして、最初に公共事業が行われました東京は過去から大変大きな補助金がある、大都市ほど多い補助金がある、したがってそこにどんどんと産業と人口が集中する。その都市コストを払わなくていいという形になっております。これをある程度、急激にはできないにしても、漸次縮小し、再現価格、それぞれのものを今つくったらどれぐらいになるかということを前提とした料金に近づけていきます。そうしますと、当然そこに黒字が発生いたしますが、それをある程度、例えば半分はその自治体の再開発、半分は、法人税を課して国税にして全国配分というようなことを考えるべきではないか、それで地域の先行投資に充てるような方法を考えるべきではないかということも考えます。  ちなみに申しますと、だれが取るかという問題と関連いたしまして、地方税と国税の徴税一本化もそろそろ検討に値する時期に来ているのではないかと思います。  第三の問題は、だれから取るかであります。  受益者から取るか応能者、納税能力のある人から取るか、これは古来何度も繰り返された問題でありますが、課税の中立性から見ると受益者負担が重要だと思いますが、所得再配分という意味では応能負担もまた必要であります。  この福祉が進む世の中で、福祉について、あるいは福祉社会について考え方が二つあります。  今恐らく福祉を充実することに強く反対される方は少ないと思いますけれども、この福祉をどういう形で実現するか、これは税制とも非常に関係のあることでありますが、一つは、所得は限りなく平等であるのが理想だという意見があります。限りなく平等にするためには所得税の累進率を物すごく上げればいいのですが、余りそれを上げると労働意欲、勤労意欲がなくなって悪いからほどほどにしなければいけない、こういう考え方を主張する人がいます。これは、本来理想としては所得は無限に平均的である、平準的であるべきだけれども、人間のさがとしてそれでは働かなくなるから、極端な言い方をすれば必要悪として差を認めているのだという発想であります。  もう一つは、人間が人間の尊厳を持って生きられる程度所得を保障する必要がある、したがって、福祉は必要だけれども、その水準を超えた分については格差があってもいいではないかという考え方があります。自由経済はもともと後者の考え方をとっているのでありまして、例えば月何万円までないと今日の日本では人間として尊厳を保てる生活ができない、これまでは国が保障するけれども、そこから上になりますと、物すごく努力と才能と幸運に恵まれて所得の高い人がいてもいいではないか、そういう発想もあります。  私はそういう意味で、所得が完全に平準化するのが理想だとは考えておりません。やはり人間の能力と努力と幸運の差があっていいのではないかと思います。そういう意味でいいますと、累進税率は、国税、地方税を含めて、所得税の場合でございますが、最高がやはり五〇%を超えないのがいいのではないかと思います。  また、受益と応能の問題で、社会保険等の掛金の方をこれからふやしていくのか、国民負担率を今世紀中は四〇%の前半ぐらい、ピークのときで五〇%ぐらいという目標がありますが、これは税金の方をふやしていく方がいいのか、それとも社会保険料のような掛金の方をふやしていくのかという問題があります。過去におきましては大体税金の伸び率が二に対して年金掛金等の伸び率が一ぐらいの割合でありましたが、これからは大体一対一ぐらいでふやしていく方がいいのではないかと考えております。  四番目は、どうやって取るかであります。  これは簡素、公正、中立と言われておりますが、その中で今まで一番考えられなかったのは、実は簡素ということであります。  私たちが三十年前に大学で財政学を習いましたときには、大学派財政学という十九世紀の末から二十世紀にかけてドイツではやりました財政学が幅をきかせておりました。それは取る側の論理でございまして、したがいましてここでは徴税費最低という、徴税費が安いということが書かれておりまして、これをいかにも簡素であるもののごとく書いてありました。しかし、重要な問題は納める側の論理、税金を払う側の論理でございまして、したがいまして納税費の負担のできるだけ低い税金をつくらなければならないと思います。  その意味で、現在問題になっております消費税の内税化、さらに買い物のたびの合計の一円以下の切り捨て等が税制で認められる必要があるのじゃないかと思います。私は、基本的に消費税は悪い税金だとは思っておりません。ただ、納税のたびに非常に手間がかかる、一円玉のおつりにいたしましても非常に手間がかかる点がありますので、これを簡素化すべきだと思います。その方法として、内税化を進めるとともに、十の品目を買いまして累計で最後に出てくる数字の一円未満は切り捨てをいたしまして、その切り捨てたものを費用として商店側、企業側、売り手の側に認めるような通達を出すべきではないかと思います。  先ほども話のありました簡易課税でございますが、これについていろいろ不公平だという話がございますけれども、納税費を引き下げる、納める側の論理として簡素ということは大事でございますので、簡易課税につきましても私は評価するものでございます。  それによって、仕入れが少ないのに八割の仕入れ率が認められているというような話がございますが、逆に言いますと、そういうサービス業というのは今一番転嫁の難しい業種でございます。講演会の謝礼なんかでもなかなか端数をくれないものですから余り転嫁しておりませんけれども、そういうことを考えますと、必ずしも新聞紙上で言われているような特定業者が利益を得ているということはありません。また、小規模事業者につきまして免除がありますけれども、町の商店などでも転嫁率を考えると決してそんなに得をするばかりでもないと思います。したがいまして、多少見直すべき点はあろうかと思いますが、この簡素という意味で簡易課税というのは非常に効果があるのじゃないかと思います。  なお、ヨーロッパあたりで私二カ月ほどとどまってそればかり取材したことがあるのですが、外形標準等の課税が実はかなり広範に行われております。日本ほどまじめにやってない、まじめと言うと語弊がありますが、日本ほど綿密にやっているとは限らない点がございます。そういうことも御考慮いただきたいと思います。  それから、第二番目の公正でありますが、これにつきましては動態的な経済に対応した、動態的な財政に対応した公正が必要だと思います。  生涯所得の観点を入れること、それから先ほど申しましたような地域住民の移動を考慮に入れること、そういう意味からいいまして、特に累進税率につきましては、中高年になったときに高くなるとか、あるいはこれから増加するでありましょうデザイナーとかコンピューター技師とかいうのは若いときしか所得が高くない、逆の人も出てくるわけでありますが、そういう場合も考慮いたしまして、累進税率の最高は地方税、国税を含めて五〇%以下ぐらいにすべきではないかと思います。  また、地方問題につきましては、過去からの補助金について前述のとおりであります。  五番目に、何のために取るかであります。  これはやはり原則として税は中立であるべきだ、特定の商品もしくは特定の産業を振興するような税制をつくるというのは非常に困難でありまして、必ずよからぬ結果が出ております。その意味で、消費税は個別物品税よりもよい税金になったのではないかと考えております。  この点に関連いたしまして土地の問題があります。  十九世紀の初めにへンリー・ジョージが土地増価税を主張しまして以来、これは何度も試みがありますけれども、土地増価税に関係するようなものがうまくいったためしがございません。それは、一時的あるいは一地域的な問題を恒久的な制度であるべき税制に持ち込むのには非常に疑問を感じるからであります。  今、土地高騰につきましていろいろと新聞でも書かれておりますけれども、逆に、では土地政策は何を目的としているのかと考えますと、新聞紙上等にあらわれている点だけでも甚だ矛盾しております。土地の利用を促進しようとしているのか、あるいは土地財産の公正化、公平化が目的なのか、あるいは現在住んでいる高齢者や未亡人のような人が地上げ屋さんに追い出されないように現状維持をするのが目的なのか、あるいは土地でもうける者がいるからけしからぬ、もうけられないようにするのが目的なのか、四つぐらい書いてあるのでございますが、この目的は相互に矛盾しております。  例えば、利用を促進するのであれば、もうかるようにして事業促進しないと利用は促進されません。それから、現状を維持する、長らく住んでおられた方々あるいは中小商店をやっておられた方々が維持できるようにしよう、あるいは都市近郊の農業を維持するようにしようという目的であれば、利用は促進されません。これはお互いに矛盾していることであります。したがって、税制でこれを云々することは極めて困難であり、悪影響の方が結果として多いと思います。  法律を立案する人は、これをやったらこうなるだろう、人々がこう対応するだろうと想像でやるわけですが、法律ができてから抜け穴を探す人は、現実で探しますから、将棋を指すときに一方は読みだけで指し、一方は幾ら待ったをしてもいいという形でありますから、必ず悪影響があります。  私は、土地の問題を考えるなら、むしろ土地の担保の制限、土地に担保をつけるときに、例えば公示価格とかなんとか以上は裁判で保証しないという制度をつくる方が有効ではないかと思います。  なお、国公有地の活用を促進するために、国公有地に固定資産税をかけまして、むだな国公有地を行政財産として抱えないようにする、そして、土地を有効に利用いたしますと、その固定資産税分の予算が新規事業に各省が使える、だから土地を節約した官庁は非常に有利になるというインセンチブをつけるような方法を考えるべきではないかと思います。  それから、寄附の問題であります。  これは、善意を福祉と開発に使うべきだと思います。外国に比べて日本は寄附が非常に厳しくなっています。もちろん寄附者がいろいろと間違いを犯すということがありますが、官僚の判断が寄附者の判断より正しいという根拠はございません。お役人が配分しているのでもむだがございますので、少なくとも地方公共団体、特定団体に対する寄附は無税、所得控除にいたしまして、そして地方団体が寄附集めの競争をすることで福祉と文化事業を盛んにする、そういうような、地方の公務員にも非常に働きがいのあるような方法をつくるべきではないかと思います。  もう一つ、納税名誉感を生むべきだと思います。現在は納税は罰則のような感じがしておりますが、やはり多額納税者は顕彰するような、名誉と考えるような方法にしないといけないと思います。  最後に申し上げたいことは、裁判では「疑わしきは罰せず」という原則が近代において成立いたしました。ところが、徴税におきましては、税を取り過ぎることは国民の財産権を侵すことでございまして取り足りないよりもずっと悪いことだ、そういう倫理観が必要であります。だから、税金が予想したよりもたくさん入ったということは、やはり徴税当局といたしましては恥ずべきことであって、自慢すべきことではないのだろうと思います。  このことと取り方の問題とは全然別でありまして、だから新税を入れることはない、旧税のままでいいということにはなりません。旧税の減税廃止という方法もありますから、別でありますが、やはり国民の財産を納税してもらう以上は、取り過ぎないこと、これが全体といたしましても個々の対象といたしましても重要なことだ。この倫理をもっていただかないことには国民の法を守っていただく行政が行われない、非常な不信感を呼ぶのではないかという気がいたします。  以上でございます。
  42. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 どうもありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     ─────────────
  43. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  この際、委員各位に申し上げます。  質疑につきましては、時間が限られておりますので、各位の特段の御協力をお願いいたします。  なお、質疑のある委員は、挙手の上、委員長の許可を得て発言するようお願いいたします。また、発言の際は、所属会派及び氏名並びに質疑する参考人のお名前をあらかじめ告げていただきたいと存じます。  なお、参考人に申し上げますが、質疑者の質疑についてその内容等に疑義のある場合、また、十分に聞き取れなかった場合には、遠慮なく質疑者に問いただしても結構でございます。  それでは、質疑のある方は挙手を願います。
  44. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 社会党の渡辺嘉藏です。余り聞くのでちょっと小恥ずかしいのですけれども、お許しをいただきたいと思うのです。  まず冒頭に、これで午前二人、午後三人の方、前回四人、以上で九人の方の御意見を聞いたわけですが、どうも全部消費税賛成、促進の御意見ばかりであったという、何か意図的に選ばれたかなという疑問を持ったぐらいなんです。それから、それぞれの方がそれぞれ相当の所得者であるということも私は感じたのです。ここにも出ておりますけれども、一般的な給与所得者の標準は、国税庁の調べでも三千七百万人で平均三百八十万円と出ておる、これは国税庁からけさいただいたのです。  こういうところから見て、私は今度の消費税のことについて質問をそれぞれ申し上げたいのですが、ます冒頭に、日下先生も消費税は一四%ぐらいがいいと言っていらっしやるのですが、一四%ですと約二十数兆円入るわけですね。そうすると、その場合の直接税はどういうふうにお考えになるか。所得税はどのぐらい、法人税はどのぐらい、どういうふうな財政構造をお考えになって一四%とおっしゃったか。このことに私は非常に疑問を持ちました。時間がありませんので、これはそのほかの方は省きます。  それから、佐藤先生も、これは実務の立場で御意見を述べられて、ECが一四から二〇ぐらいである、ですから国民合意の上である程度の引き上げを慎重にしながらやるべきだ、こういう御意見でしたが、当然三%の現状を容認されておるとは思わない、これはもう収支赤字になっておりますから、そして、見直し案を入れましても四兆円ぐらいの赤字になりますから、だからそういうことは考えていらっしゃらぬはずですから、五%ぐらいがまあちょんちょんか。そうすると、佐藤先生の場合も消費税税率は、ECが、繰り返しませんが、大体イギリス一五、西ドイツ一四、フランス一八・六ですから、ですからそういうことを想定していらっしゃるのかどうか。  それから、ついでに、これは皆さんに全部聞きますが、堺屋先生、私も尊敬して本を読ませていただいておるわけですが、消費税賛成で政府税調で御活躍になった。そうすると、税率はどのくらいを想定していらっしゃるか。それによって何をするかということを聞まして、私もそのとおりだと思っておりましたが、どのくらいの税率を理想としてお考えになっていらっしゃるのか、このことをお三人の方に聞きたいと思うのです。  いま一つは、三点セットについてはそれぞれ御意見がありましたが、私はまさに新しい不公平をつくった。先日もある会合で、これは労働者の会合ですが、五億円以下のところで、ここで一時金の要求が出たのです。四月に決算を組んでみたら、ここは八百万円の企業収益があったのです、消費税差額が。それを全部計算しても約四百五十万円残ったのです。だから、その四百五十万円を六十人の従業員に分けてくれ、こういう要求が出てきたのです。これを、いや会社も半分よこせなんというようなことで、それの取り合いの交渉をやっておるのですね。これはもう現実に先生方、みんな体験されたことなんです。事実、私もいろいろなことで体験しました。八十万円懐へ入った人、五百万円入った人、いろいろあるのです。だから、私はこの三点セット、これは世界にも例がないのですから、当然見直すべきだと思っておるのです。これについての御所見を承りたい。  先ほど佐藤先生もおっしゃったいわゆる八〇%、九〇%の仕入れ率を政令化しようという動きは、当然これの見直しだと私は見ておるのです。そうすると、弁護士の先生は二〇%の仕入れ率だ、加工業は三〇%だ、当然これは政令でなぶりますから法律は一切関係ない、国会関係なくなる、こういうことはいいのかどうか。法律事項でやってくれるのがいいのか、それとも政令がいいのか、私は私の考え方を持っておりますが、先生の御意見もひとつ聞かせていただきたい。  それから、そのときに簡易課税制度は残した方がいいとおっしゃいますが、私は五億円で線を引いておる今の制度、これは好ましくない。もともと私は、消費税はない、廃止という前提で物を見ておりますから。これは私の考え方です。だからその点は別ですが、この三点セットは、私はどう見てもこれは新しい不公平をつくった、不公平というか不公正ですね、一種の不正だ、こう見ておるわけです。  それから、税務調査のクロヨンの問題ですけれども、これはしょっちゅう言われることですが、これは佐藤先生なんか特に専門家ですが、日本の税務署の調査件数を調べますと、税務調査員一人当たり大体年間四十件ぐらいなんですね。私は先日も専門に調べに行ったときに、フランスは大体年間四件から五件なんです。だから約三十年かかっても全部調査し切れない、時効は五年、六年で終わるのです。だから約四分の三は調査対象にもう頭から入ってない。フランスの大蔵省の役人に聞いたら、フランスの最高のスポーツは、スリルもあっておもしろいのは脱税だというのです。これは大蔵省の中ではっきりおっしゃった。そのくらいんなんです。だから、私は日本の税務調査機構はかなりすばらしいと見ておるのですけれどもね。そういうような意味で、これに対してどういう見解を持っていらっしゃるか。  最後に、堺屋先生。高額所得者、これはもう応能負担である程度やむを得ない、だけれども、五〇%ぐらいにしたらどうか。これに対しては、所得の再配分という側面もあるので私はもっと上げた方がいいと思っておる。なぜかというと、非常に有能な方が二億もうけるよりも、先ほど申し上げたように、標準所得者は大体四、五百万円の人が多いのです。三千七百万の給与所得者は、大体四百七、八十万円なんです。男女平均すると三百七十万円なんです。一人の能力のある人が一億もうけてもらうよりも、こういう人々が百人もうけた方が四億、五億と全体の活力は浮くのです。私は経済というものはそういうものでなければならぬと思うのです。だから、有能な人がうんともうける、これもいいのですけれども、やはり標準的な人がうんともうける、こういう社会システムに持っていった方がいいのだ。だから、ある程度の高額所得者は五〇%を超えたっていい、こういう考え方を私は持っておるのですけれども、御意見を承りたいと思います。  そういうようないろいろな意味合いから、私は、消費税はどう考えても悪税だという考え方で、廃止以外にないと思っておるのですけれども、それぞれ御所見ありましたら、承ります。
  45. 日下公人

    日下参考人 消費税一四%のときの財政はどうなるかですが、お話ししましたけれども、所得税を無税にする、それから、取り過ぎになっているときのお金は本人に渡す、つまり高齢者が逆進性のために非常に苦しんでいるとすれば、それは生活保護とか高齢者年金とか、本人にお金を渡す形で救済可能であろうと思っています。一四というのはEC並みという意味ですから、将来ECが下げれば一四でなくてもよろしいわけでございます。  私の考えは、過去よりも未来を大事にしたい、それから資産の上に眠っている人よりも働く人を大事にしたい、この二つをやらなければ日本経済は今のような繁栄は続かないということなんですね。ですから、その辺は渡辺委員と同じだと思いますが、その未来を重視するところで、やはり今、日本経済は先端産業を開発していく時代になっておりまして、経済全体が、中進国ではありませんで未来産業を勇敢にやっていく人が必要であるという段階でございますから、そういう人を罰するようでは将来が危ないなというところを重視しております。  以上です。
  46. 佐藤豊夫

    佐藤参考人 最初に、一体消費税はいいのか悪いのか、廃止なのかどうなのかという意見について、先生は何か皆さんみんな賛成論者だというようなこともおっしゃいましたけれども、先ほど私は、実はきょうは税理士会連合会という肩書をしょって参っておりますので、個人的にどうこうということはちょっと御免こうむりたいのですが、しかしそこでも、この問題については我々の会としても存続とか廃止とかということは固まっておりませんよ、私は冒頭にこういうふうに申し上げたわけです。必ずしも賛成とか見直しがいいのだとかということは申しておりません。ただ、私どもはやはり実務家でございますから、現実に施行されている税金で、いろいろ申告費用もかかりますし手続が要りますから、それは援助せざるを得ない、そういう立場で私は申し上げた、こういうことでございます。  したがって、先ほど私はEC諸国の例を申し上げまして、一四%から二〇%だ、それじゃ一四%から二〇%に持っていくべきだというふうにおとりになったかもしれませんけれども、それも私はそうすべきだということは申しておりません。冒頭に申し上げましたように、堺屋先生のお話にありましたように、いわゆる応能負担と応益負担を比べますと、私は応益負担は必要ではないとは申しませんけれども、応能負担をやはり中心にすべきだという考え方を持っております。そういう理屈からまいりますと、やはり極力消費税は低く抑えられるのならば抑えていくべきだ。  したがって、私は一四%から二〇%に持っていこうというふうに申し上げたのじゃなくて、また、上げるべきだということも私は申しておりません。これはやはりいろいろな情勢がございますから、そういうようないろいろな組み合わせの問題あるいはこれからの福祉国家のあり方の中でどうしても上げなくちゃならないという場合が生じた場合には、十分に国民意見を聞いてやるべきですよ、こういうふうに申し上げたはずでございます。  それから消費税の問題で、いわゆる先生がおっしゃいました三点セットでございます。非常にこれはけしからぬというようなお考えでございますけれども、私は必ずしも——現実にそういう小さなところを相手にしておりますと、確かに、いや少しもうかったよという業者もおります。だけれども、先ほど申し上げましたように一般小売店はほとんど恩恵を受けてないのですね。しかし、サービス業でありますとか製造業、それから業者間取引業者等にはさっき先生がおっしゃったように何百万もうかったという例もないではございません。現実に私も見ております。ですから、これについてはやはり是正すべきだ。  今回のは何かはっきりしておりませんけれども、見直し案では政令委任だと。政令委任が先生はいいか悪いか。私は余りこういうものは、まあ政令だからまだいいのですけれども、例えば通達あたりでやりますとどんどんどんどん変えます。そういうように行政当局が任意にやる形は余り好ましくないのじゃないかと私は考えておりますが、この三点セットは、私らの実務家の実感といたしましては、確かに五億が高いかどうかは別といたしましても、それほどこれによって恩恵を受けているとは私は思いません。  ただ、いわゆる例の簡易課税制度、売り上げに〇・六%もしくは〇・一二%をかけるということについて、懐へ入ったということはございます。これはやはり是正すべきだろう。今回何か、今二段階、卸と小売があるのを役務の提供を入れまして三段階ぐらいという、これではちょっと私は是正策にならないのじゃないか、もう少しきめ細かくやりませんとやはり国民の不満は残るのじゃないか、こういうふうに考えております。
  47. 堺屋太一

    堺屋参考人 まず、消費税の水準でございますが、私はこれはできるだけ低く抑えなければいけない。間接税制の一番問題は、安易に税率が上げられることであります。したがいまして、先ほど申しました国民負担率の抑制の中で、これはできることなら今世紀中は五%以下で抑えるべきであると考えております。ヨーロッパは高過ぎると思います。  第二番目に、簡易課税等の三点セットの話でございますが、確かに御指摘のようなことがございます。それは、税金すべてについて完全な公正ということはできないだろうと思うのですね。どんな税制をつくりましても、やはり幾らかの損得、不公正は出るものだ。それをなくしようと思いますと、猛烈な徴税費と納税費がかかります。それの方が国民経済全体にも負担でございますから、ある程度の思い切りというのは必要なんです。マスコミが発達した世の中では、事実よりも印象で事が決定されます。その印象というのは極端な例で決まるのでありまして、幾つかの極端な例を出して全体を変えると、ますます費用のかかるややこしいことになると思います。  先ほど先生からも御指摘ございましたように、フランスあたりは非常に官僚が有能だと言われながら、税金に関しましては随分外形標準とかいろいろなことをやっております。私の知っております映画プロデューサーの会社なんというのは、ばっと付加価値税、消費税に当たるものですが、どういう形でやっているんだと言いますと、従業員の数で割り出すんだと。従業員の数というのはどれではかるんだと言うと、出たり入ったりがそういう会社は多いものですから、机の数だというので、丸テーブルにして減らしているんだというようなところもございます。また、日本から観光旅行などに行きまして、空港で慌てて郵便局へ入れたら返ってくるというのでありますが、あれも返ってくる率はそんなに高くございません。土産物屋みたいに日本人を対象としたところはほとんど返ってきますけれども、向こうの一般商店で返ってくるのはございません。私も、向こうの調査会社に委託費を払ってそれの追跡調査を九十七件してもらったのですが、そのほとんどは、うちは外形標準だからどこへいったかわからないという返事のものがたくさん返っております。  だから、きめ細かな政令、省令等をつくりますと、ますます実行の面でこぼれていく。ちょうど今の駐車違反みたいなものでございまして、余り厳しくすると、事実上はまあいいやということになって、かえって不公平を呼ぶのじゃないかと思います。その意味で私は、現在の簡易課税、もう一段ぐらいつくるのはいいかもしれませんけれども、余りその点にこだわるべきではないのじゃないか、むしろ損する人、得する人両方あっても、全体としての標準を考えるべきではないかというように思っております。  それから、私は、最初に一回政府が出されました今の消費税の前の売上税のときには大反対をいたしまして、そういうキャンペーンも出したのでございますけれども、その理由も、ああいうぐあいに例外をつくれば納税コストがかかり過ぎる。例えば、私どもの小さな事務所でございますけれども、そこでさえもコンピューターで納税事務をいたしますのに、前回の売上税の場合には五千二百ドットに変えなければなりませんでしたが、今度の消費税の場合には千九百ドットで済むのですね。これがもしいろいろな段階ができまして、これが小売、これは卸売、さらにサービス業をいろいろなことに分けられまして、原稿はどうだ、講演料はどうだ、テレビ出演はどうだ、全部これは仕入れ価格が違うということになりますと、もう大変な手間になるのですね。だから、いろいろな業種をやっている企業が多いときに、余り細かく分けるのはいかがなものかという感じがいたします。その意味では、政令ではなしに、私はこれは法律で決める方がいいのではないかと思います。  最後に、低所得者でございますが、私が申しておりますのは、累進課税廃止しろと言っているわけではございません。したがいまして、低所得者の方には免税点がありますし、まだ税率も低い、やはり累進税ではありますけれども、最高税率の方は五〇%ぐらいに抑えるべきではないか。  特に、最近だんだんと知恵を売る産業がふえてまいりまして、本当に活躍できる期間の短い人が多いわけです。例えば、デザイナーさんにしましても、コンピュータープログラマーにいたしましても、あるいは芸能人にいたしましても、本当に高額所得の間が短い人が多いのですね、そういう人。あるいはサラリーマンでございますと、今度は中高年の四十代だけ高い。そういう生涯的な動態所得の形を考えますと、そのときにやはり一定の蓄えを持って、生活ができるようにすべきである。所得が上がったときに税金をうんと取って、あとは全部福祉で面倒を見てやろうというのも考え方としてありますけれども、本来、やはり自助の精神でそういうところにみずからの蓄えを持つべきではないかと考えております。
  48. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 どうもありがとうございました。
  49. 仙谷由人

    仙谷委員 社会党の仙谷由人でございます。  さっき日下参考人から、固定資産税といいますか、土地、固定資産に対する税制として、土地に税金をかけて建物にかけるのをやめようというお話が一つございました。もう一方では、今度は例えば漁業権あるいは水利権あるいは空中権、そういう権利を保有する方にはそういう税制をつくったらどうかというお話があったわけでございます。  今、空中権というような格好で多少私どもが聞いておりますのは、新宿の副都心なんかでは、特に空中権の買い取りと称して、いわばその場合の空中権というのは、何か容積率を買い取って、そのためにそのビルのフロアが非常に拡大したフロアを持てることになる、それがビルの賃貸しで利益を生むんだ、あるいはその利用で利益を生むんだということになっておるわけでございますけれども、そうなりますと、そのビルを建てたときに、それに対する固定資産税は全然かからないのだけれども、空中権に税金をかけるというのはどういう構造になるのか、それをちょっと、僕はイメージがわかなかったものですから、何か矛盾した議論じゃないかということを感じたものですから、ちょっとお教えをいただきたいと思うのです。  それからもう一つ。堺屋参考人の地方税、国税の徴税の一本化をしたらどうかというお話がございまして、私ども地方出身の議員としましては、ますます地方の自主財源というものがなくなってくる、もう過疎の町や村では三割自治をはるかに超えて、超えてというのは悪い方に超えて、一割にも満たない財源で行政が行われているという実態もあるのですね。地方の自主財源がほとんどないといいますか、非常に乏しいような今の徴税といいますか、これは制度の方と徴税の手続の両方でしょうけれども、この仕組みを何とか打ち破らないと今の東京一極集中というのはおさまらないんじゃないかという、そんなことを漠然と考えておるのですけれども、その地方と国の財源の問題ですね。  東京都だけが肥え太って、あるいは大都市だけが財源が余り過ぎるほどあって、例えば固定資産税の見直しをすると大都市だけにその固定資産税が集中して、地方はますますひどくなるというふうな、こういう実態の中で、先ほどおっしゃられようとしたことはもう少し敷衍していただくと何なのかという、それをちょっとお教えいただきたいと思うのです。
  50. 日下公人

    日下参考人 今の御質問をもとの方から申しますと、都市計画としまして容積を一種、二種、三種、四種、五種と与えます。そうしますと、例えば九倍に利用できる地域は時価が高くなります。これは地主にとっては棚ぼたでございまして、五倍のところより九倍のところは得してしまうわけです。そのとき、本来ならば時価に比例して固定資産税がかかってくれば特にありがたいということもなくなるわけですが、現在その評価が甘いし、それから税率が甘いわけですから、八倍、九倍の容積をもらった地主はもう本当に棚ぼたでございます。  それがもとになって空中権売買が出てくるわけで、ですから、空中権課税をしろというのは、もししないのならば、もとへ戻って、時価評価と、それから固定資産税率三%やらをきちっとかければこういうことはなくなるんじゃないかな、そうお答えしたいと思います。
  51. 堺屋太一

    堺屋参考人 地方と国との財源配分につきまして、私は、現在の配分はシャウプ税制以来ほとんど変わっていないと認識しております。シャウプ税制のころは非常に貧しい時代でありましたし、日本の産業がこんなにダイナミックに動くと思っていなかったので、固定資産税と住民税を主として運営するような市町村税をつくったわけでありますが、現在はこれは抜本的に見直すべきときに来ているんじゃないか。だから、これだけで大きな問題だと思います。  一つは、御説のとおり、東京に全国機能が集中いたしまして、それのための固定資産税が全部東京へ入るのはいかがなものかという気がいたします。したがいまして、今、日下参考人の御意見をそのまま引かせていただきますと、例えば容積率三〇%以上の部分については国が取ってもいいんじゃないか、あるいは地方自治体連合体みたいなものが取るような方法があるんじゃないかというようなことも考えます。  それから、法人にかかっております地方事業税でしょうか、これも、従業員別配分というのが行われておりますが、抜本的に考える数値、数式ができないか。従業員はやはりビルのあるところが多いのでございますが、工場の方はどんどん減っていきます。そうすると、余り地方に配分されないで大都市に集中するという傾向があります。だから、その地方のサービスに依存するのは何であるかを研究いたしまして、例えば土地面積の使用量であるとか水の使用量であるとかあるいは廃棄物の出す量であるとか、従業員だけではなしに幾つかの関数を入れた数値で配分するような方法がないだろうかと思います。  さらにもっと申しますと、税項目そのものを、大体いいところは国が全部押さえる形になっておりますが、これについても抜本的な再検討をする必要があるのではないか、そういう形で地方の財源を大いに強化すべきだと思います。  そのことと徴税の方法とは、これは全く別の話でございまして、徴税は税務署と県税事務所と二つ持っていく、申告する、まあ申告は一つでありますが、両方から来るというようなことなしに一本化できないか。  この場合、じや国税で国が全部取って地方に任すのか、地方が取って国に上納するのか、そういう問題がありますけれども、これは国によって二つあります。例えばイギリスなんかは国が取っておるようですけれども、カナダとかは地方が取って国にというふうに地方が徴税事務をやっておりまして、これはどちらがいいのか、あるいは地方公務員と国家公務員との中間の公務員を税務公務員に認めるという方法もあろうかと思いますが、この徴税の方法はできるだけ簡素化していただきたいと考えております。
  52. 仙谷由人

    仙谷委員 どうもありがとうございました。
  53. 沢田広

    ○沢田委員 社会党の沢田広です。貴重な時間ですから簡潔に。  次元がちょっと違うかもしれませんが、非常にユニークな御発言、我々から見ますと非常にユニークな御発言だったと思うのです。果たしてこれは現実にできるのかなとまず第一に驚いたのですが、自民党さんもいますけれども、今先生方がおっしゃったような発想の転換が果たしてできるのかなという気がしたのです。  一つは、先生方が今言われた内容というものが、ECの諸国、アメリカとの日米構造協議等々を含めまして、これからの世界の大きな産業構造の転換などとなって、それに対して日本が順応して、順応するか押しつけられるか、表現は別でありますが、そういう体制になっていくのかどうか、あるいはならざるを得ないのではないかというふうにも思えるわけです。そのときに、この一四%とか二〇%というようなものが果たして——向こうは、イタリアでもうけた国民は翌日スイスへ行って貯金してしまうということができるわけですが、日本はその辺、島国ですからちょっとよそへ行くというわけにはいかないですけれども、そういうようなことの、EC諸国の特徴と日本の特徴とは異なるものがあるのじゃないのか、これが第一点です。  それから二番目には、日本の今の産業構造は大体第一次産業が四百三十万ぐらい、第二次産業が千三百三十万ぐらい、第三次産業が三千三百万ぐらいです。だから日本は、私から言うとサービス産業国家にもうなりつつある。いわゆる生産国家から消費国家にどんどん変わってきておる。こういう体系の中での税制というものは、確かに議論としてあるわけであります。どうやったら税がまともの——クロヨン、トーゴーサンと言われるものを直すのにはまたそういう税が必要だと、これは消費税という意味ではないですよ、そういう第三次産業から取っていく税金というものが何かなければならぬということは我々は納得できるのでありますが、しかし、今後これはさらに進んでいくのではないか、第二次産業はどんどん停滞してくる、第一次産業ももちろん停滞してくる、第三次産業だけが肥大化する、そういう国になっていった場合に、その税制というもの——税制が先にあるのではなくて、そういう体質を変えていくことが先にあるのではなかろうかというのが私の質問なんです。  言っている意味を御理解いただけましょうか。言うならば、下水道ができたり土地資本が整備されたり、教育がもっと充実されたり、そして産業がもっと発展したり、そういうところに税というものの議論が発生しなければいかぬのではなかろうか。税が先にあって投資が後にあるというものではないのではないか。今度四百兆出すそうですけれども、果たしてどれだけの効果を示すかわかりませんが、今の税の論議というのは、もう少し日本の体制をきちんとしてからの形になるのではなかろうか、こういう疑問があるのですが、これは専門家でない堺屋先生、専門家でないと言うと悪いですけれども、そういう意味ではなくて、特別、別な見地からお話しをいただいた堺屋先生と日下先生に御回答をいただければ幸いです。
  54. 堺屋太一

    堺屋参考人 大変根本的な御質問でございまして難しい話でございますけれども、基本的にこれからの社会がどうなっていくかということを見定めないと正しい税制ができないというのは、そのとおりだと思います。  そこで、それじゃ基本的にこれからの社会のどの点に着目すべきか、どのことが確実な変化かという問題があるわけですが、日本にとって今必要なのは、これだけ豊かになった日本のあり方というのが第一だと思います。  この終戦直後にできました税制というのは、国民の大部分が非常に貧しい状態で、国家財政をどうして賄うべきかというところから発想しておるわけでありますけれども、今や国民の大部分が豊かというか生存には困らないということになっておりまして、それ以上の消費ができる。そうなりますと何が一番違うかといいますと、人間が生きるための消費というのは客観的にわかるわけですね。例えば、カロリーはこれぐらいとらなければならない、そのうちの何%は動物性たん白質が適当だとわかるわけですが、豊かになりまして、旅行がいいのか、ファッション衣料を着ているのがいいのか、オーディオファンなのがいいのかというのはわからないわけです。したがいまして、私は、税制が中立的であるというのは、産業に対して中立的であると同時に消費に対して中立的でなければいけない。例えば、ファッション衣料が趣味の人は税金が軽くてグルメファンの人は高いとか、その逆であるとかということはあってはならないのじゃないかという気がいたします。  第二番目には、社会がどんどん流動的になってまいります。だから、今予想いたしまして、こういう社会、こういう産業に課税するのがいいと思っても、その次には変わっておる可能性がございます。ついこの間までは製造業一点張りであったのが、今は変わってきた。これが先ほど御質問のありました地方財政にも非常に関係しておるだろうと思うのです。したがいまして、産業の変化にかかわらず税が中立的なものでなければならない。  そういうような点を抜本的に考えるべきだと思います。  なお、つけ加えますと、税金をできるだけ高く取って国がいろいろなことをするのがいいのか、あるいは税金はできるだけ低くして、個人あるいは民間の手元にお金を残してその人たちの判断によって投資なり消費なりが十分できるように、あるいは貯蓄ができるようにするのがいいのか、これは意見の分かれるところでございますけれども、私は、現在の日本は官僚的な干渉が多過ぎる国だ、だからむしろ税金はできるだけ低く抑えて、人々がそれぞれの好みに応じて貯蓄なり投資なり消費ができるような、そういう人々がみずから自分の好みに応じて幸福を追求できる社会、そういった方針で基本税制はつくるべきじゃないかと考えております。
  55. 日下公人

    日下参考人 消費税についておもしろい説明がございます。昔は、貴族と農民の社会でございまして、貴族は消費をするが働かない、働くのは農民ばかり。そのときは所得税であって、消費税はなかったわけです。つまり、貴族は自分は消費税を払うのは嫌ですから働いている農民から税金を取る、それが所得税中心の世の中であったわけです。  ですから、私は社会党の方はぜひ——そういうことを考えますと、今は国民がみんな貴族になってきて消費をするようになってきておりまして、だから、貴族だから消費税を払うのだ、こう考えればよろしいのじゃないか。そして、所得税を取られるということは昔の農民扱いされているわけですから、所得税をゼロにするというのでいいと思っております。そして、その消費税が中立であればいいという、堺屋さんのおっしゃるとおりだと思います。  それで、鎖国制の差について最初に御質問なされたかと思いますが、ECでは国境を越えて動けるが日本はそこに差があるということ、まさに差はあります。ですけれども、どんどん解消するだろうと思います。これはアメリカの圧力ですけれども、ともかく資本の自由化をいたしまして、いろいろなことの自由化をこれからもしていきます、残っているのは国籍くらいなんですけれども。それで、民間サービス産業が発達いたしまして、お金を動かしてあげますとかいろいろなことを動かしてあげますというサービス産業が出てきておりますから、島国ではありますけれども、ECと結局同じになっていくと思います。  したがって、日本だけ独自の制度を持つと、国民は、いいときだけ日本にいて、悪いときは向こうへ行ってしまうという、日本にいることが得な人だけ日本国内に残るということになってしまいます。これはイギリスでもスウェーデンでもそうですが、福祉国家を余りやりますと、福祉にあずかる人だけイギリス国内に残って、働く人はみんなアメリカへ行ってしまいましたから。なぜイギリスがあんなに沈滞したかというと、やる気のある人はアメリカへ行ってしまった。国民性が変化したわけではないのですね、移動なんです。ですから、イギリスのある学者が私に言いましたけれども、日本は幸せだ、アメリカへ行くと人種差別をしてもらえるから、働く人でも日本国内に残っている、だからアメリカの人種差別を攻撃するなんてとんでもない、日本の政治家と官僚はそのおかげで特殊な政治ができるのであると言っておりましたので、そういう差はなくなっていると思ってやっていただきたいと思います。  それから、消費にどんどん課税をしていくわけですが、堺屋さんと同じです。日本は自由化がおくれていると思うのです。民主化はソ連も舌を巻くほどできていると思うのですが、自由化がおくれておりまして、国民が求めるような教育、運輸、通信、医療、金融、証券のサービスが実は存在してないわけです。存在してくると、これをサラ金だとかなんとか、悪い商売のように言ってしまうわけです。でも、国民の支持はある程度はあるわけですね。全部にならなくてもよろしいわけで、ある程度国民の支持があるものはある程度認めていくというのは、結局、多様化社会をつくるということで、国民の好みが非常に多様化しておりますから……。  国民の平均はここだと言いたがるのは大新聞なんです。マスコミというのは、まとめて七百万、八百万売らないといけませんから、国民中心はここだと言って、それ以外はあたかも存在しないかのようにいつも解説いたします。さらに言うと、少し貧乏臭くやります。本当の日本人より少し貧乏臭いことを言っていた方が、みんながにっこり笑って読んでくださるわけです。ですから、新聞、テレビを情報源としていると、自分の考えが貧乏臭くなってしまうのです。あるときどんでん返しを食いますから、もう少し、多様化しつつある本当の国民を統計やマスコミを離れて自分で見ますと、私のような考えになるんじゃないかなと思っております。
  56. 細谷治通

    ○細谷委員 社会党の細谷でございます。  ちょっと発想がユニークでなかなか切り口がわからないのでありますけれども、日下先生にちょっとお尋ねいたします。  先ほど、土地保有税についてもっと強化すべきだというお話がありました。住民税の減税と裏腹、セットでというようなお話がありましたが、これは国税としてお考えになっているのか、それとも現在ある固定資産税の強化というような形でお考えになっているのか、そんな議論になるのかどうかわかりませんけれども、とりあえずお答えいただければ、それをひとつ。  それからもう一つ、同じく日下先生に、所得税はゼロというのは、悪税だからすべてのどんな高額所得者でもゼロという意味なのか、それとも、例えば中堅といいましょうか平均的な所得の人の所得税をゼロとしろという意味なのか。要するに、どんな高額者についても所得に対する課税はゼロだということになりますと、またそれなりに大変な逆進性というものがあるわけであります。  その関連でもう一つ申し上げれば、ではキャピタルゲイン課税についてどういうふうにお考えになっているのか、うんと高額所得者が稼いだ所得というのは一体どこにいくのか、使い切れないような所得は一体どこにいくのかという問題があるわけです。土地は、先生のお説では大変高くなるわけですから持っていたら損だということになれば、一体何で持つのか。株で持つのか、貯蓄で持つのか、いろいろあると思う。その場合のキャピタルゲイン課税というものをどういうふうにお考えになっているのか。  その二点についてお伺いしたいと思います。
  57. 日下公人

    日下参考人 お答えします。  最初のは、住民税も土地保有税も両方地方税でございますから、まずそのままでなさってもいいことだから、ぜひやっていただきたいと思うのです。これはこの二十年間の東京近郊の地方自治体の歳入状況を見ればわかることですけれども、昔は土地保有税が主要な財源で住民税はつけたりでしたが、今は住民税が主要な財源になっておりまして、土地保有税はつけたりになっております。大逆転が生じております。これは地価が上がっても、地主が地方議会を押さえておりますし、地価の認定権は首長にありますから、地主には負担をかけない、新しく入ってくるサラリーマンから住民税を取って、それで社会資本整備をして、その結果、道路、上下水道が整備されて土地の値段が上がっても、税金は取らない、サラリーマンは引っ越せば丸損という大変不公平なことになっておりまして、私はこれは地方自治の本旨に反することであると思っております。  これはアメリカではかなり明瞭、顕著な事実なのですが、こういう地方税制のもとには工場が来なくなるわけです。工場勤労者が来なくなるわけで、ピッツバーグでもどこでもそうですが、来なくなったとき慌てて地主が決議をして、土地税をこれから払います、建物税はまけますといって工場勤労者誘致をするわけでございます。  アメリカでは地方自治体間にそういう競争がありますが、日本は、自治省の御指導にすがって全部一律でほとんど競争がないからこれでよいと思っておりますけれども、本来もっと競争すべきであろう、競争すればどうしても未来を優遇し働く人を優遇するようになるというのは当然のことではないかなと思っています。  国税に移管することも検討されてよいと思いますが、詳しいことは存じません。  それから、所得税ゼロのことですが、確かに逆進性もあります、あぶく銭のもうけもございますが、それは相続税の方でうんと取ったらどうかというふうに思います。そうすると自分が生きている間だけは働く楽しみがある。全く楽しみがない状態をつくったのでは日本経済は成長しないだろうと思います。  ですから、私のいろいろ申し上げたことの根本にあるのは、未来を重視する、それから労働を重視する、それから心の楽しさを重視するということでございまして、働く楽しさ、それから税金を納める楽しさの道をもっとつくったらどうかなということでございます。  所得税ゼロは一般国民から見れば腹が立つことですけれども、私はそこで性善説なのですが、たくさんもうけた人は死ぬとき大抵たくさん寄附をする、昔から大体人間はみんなそうしている。その寄附の喜びは、みんな名前を残すことだ。ですから、カーネギー・メロン大学とか、そういうことをもっと自由にさせてあげれば、相続税を強化しなくても、結局、冥途へ持っていけないお金は公共財産にしてくれるのじゃないかな、私はそう期待しております。
  58. 村井仁

    ○村井委員 自由民主党の村井仁でございます。  きょうは大変啓発的なと申しましょうか、刺激的なと申しましょうか、お話をいろいろ聞かせていただきまして、三参考人に大変感謝する次第でございますが、三参考人にそれぞれお伺いさせていただきたいと思います。  先ほど渡辺委員からもちょっと御指摘のあった消費税をめぐるいわゆる三点セットに絡む問題でございますけれども、確かに消費税につきまして、先ほど堺屋参考人でしたか御指摘になられましたように、非常に枝葉といいますか、非常に小さな問題が大変大きな障害のごとくに言われているというような御指摘がございましたが、果たしてそこがそうであるのかどうかは別にいたしまして、物に一体定価というものがあるのだろうかということをちょっと振り返って考えてみますと、いわゆる再販価格維持契約がきちんと認められているような商品を別にいたしますと、酒ですらあれはメーカー希望小売価格にすぎない、たばこだけは価格が法定されている、それにもかかわらず、平成元年の四月一日を期して物皆三%値段が上がった、こういう現象が起きたわけでございますけれども、よく考えてみると、何でもとの値段がそうでなければならなかったのかというのはとんと腑に落ちない。早い話が、デパートで一万円で売っていましたお仕立て券つきワイシャツが何で一万三百円にならなきゃならないのか。私も昔いささか繊維をのぞいてみたことがございますので、このあたりとんとわからぬというのが率直な実感でございます。  実際見ておりますと、例えば朝一把百円で売っていましたホウレンソウが夕方三把百円で売られるというような商売のやり方の場面では、初めのうちこそ百三円取っていましたけども、そのうちに、もういいですよお客さんというような話で、表現によっては泣きましたという話にもなるのかもしれませんが、しかし実際は、利益というのが結局売れた総額と仕入れの総額との差、それが利益であって、そこから税金をしかるべく出すという形態で行われている。実はあの三%乗せているというのは消費税でも何でもなくて、要するに、消費税というものを新たに課されることによって生ずる負担を自分がしょい込まないようにするためにいただく仕掛けとしてできたものである。  さらに、例えばサービスの分野などで粗利が現実には二〇%よりもはるかに大きいから、三点セットの一つの簡易課税なりなんなりを適用された場合、非常に膨大な利益がそこに滞留するというような議論がございますが、このあたりは競争が本当にしっかり行われることになればいずれ消えていくようなものなのではなかろうかというような気が私はしているのでございますけれども、そのあたりのところをそれぞれ参考人から御見解をお伺いできればありがたいと思う次第でございます。
  59. 佐藤豊夫

    佐藤参考人 基本的には私は今先生のおっしゃったとおりだと思います。  確かに消費者が消費税を納めているのじゃないのですね。消費者が納めていると思っているのは、いわゆる事業者が転嫁した消費税の相当分なんです。税金はあくまでも事業者が納税義務者でございまして、事業者が納める段階で初めて税金でございまして、そういう意味からいけば、先生がおっしゃるようにあれは全く価格の一部なんです、消費者の負担する分というのは。そういうことになりますと、おっしゃるように価格をどのように設定するかという問題は全く事業者の任意のはずでございます。  ただ、今まで我が国で経験してなかった消費税を導入したために、事業者の反発を抑えるために、この税金は消費者が本来負担すべきですよという、こういうような考え方は、本当はそうじゃなかったのですね。本当は、消費者はそれによる消費税の分は値段が上がりますよ、これはやむを得ませんよ、こういうことであったはずでございます。したがいまして、三%であろうが五%であろうが、本来的にはどのように転嫁するかは事業者の自分の経営努力の中で消化すべきものでありますし、最終的にはいわゆる需要と供給の関係の中で解消されるべき問題だ、この点も先生のお考えと私は同じでございます。  そういう意味からいけば、正確に申し上げますと、事業者が懐に入れたというのは本当は当たらないのかもしれません。しかし、この制度をとれることによってもうかったということは、国民立場からすれば税金でもうけたということになりますから、そういう意味では私はやはり何らかの措置をとるべきじゃないかと考えております。  先ほど私が最初にお話ししたときに、消費税もやはり企業課税の一種だということを申し上げましたけれども、これは消費税だから転嫁するということが一般的に言われますけれども、消費税だけじゃないのですね。あらゆる税金は転嫁をしているかもしれません。例えば法人税であっても、法人そのものにかかる直接税である法人税さえ、競争力の強い企業は価格の中に上乗せすることはできるのです。そしてさらにもうけることはできるわけですね。そうなりますと、先ほど私が申し上げましたように、小さな競争力の弱いところにつきましてはなかなかそういうことは困難になってくるでしょう。したがって、私は三点セットの中の少なくとも二点はある程度やむを得ない、いわゆる簡易課税については見直すべきだ、こういうふうなことを申し上げたわけでございます。
  60. 堺屋太一

    堺屋参考人 御指摘のとおりでございまして、平成元年の三月三十一日の小売価格が公正適切な価格であるという根拠は全くないのですね。それを公正として全部三%上乗せしろというのはまことに変わった行政指導でございまして、価格統制的なことを引き起こしたのですね。だから、あの行政指導は非常によくなかったと私は思います。むしろ自由競争にすることによって日本の比較的高い流通コストの引き下げの方向に持っていくべきだったと思うのです。ところがあれはそういう効果を発揮いたしませんでした。みんな価格を固定して三%上乗せする、したがって値引きをしたいところもできないというような状態を起こしたのは、まことに奇妙なことであったと思います。  ただ私は、現実問題は別として、消費税は理論的にはやはり消費者が負担している税金だろうと思うのですね。現実には納税義務者が払うわけですから、そこにかなりギャップがあるのでこういう議論が非常に複雑になってくるのだろうと思います。同じことは、別に消費税に限りません、例えば固定資産税が上がると家賃を上げてくるというのは当たり前の話でございまして、それは競争原理でございます。したがって、競争が適切に行われるか否かということが一番問題でありまして、自由経済を前提といたしますれば、競争が適切に行われれば、消費税を転嫁できるところもできないところもあって結局価格の問題で調整されているんだ、こう考えるべきだと思うのです。  ちょっと付言いたしますと、サービス産業は非常に仕入れ率が低いのに有利であるということが言われておるわけですが、このサービス産業が今非常に大きくなってまいりました。今まで余り行政統計等で調べられていない分野が多いのですね。士族と言われる税理士さんとか弁護士さんとかというような族につきましては資格制度等がございますけれども、今非常にふえております情報産業などになりますと、非常に特異な産業形態がございます。  大体製造業を前提として考えますと、もとの素材をつくっている川上の方が大企業が多いのですね。ところがサービス産業になりますと、最終消費者、例えば広告なんというのをとりますと、広告出稿元から受けてくるのが一番の大企業でございまして、そこからどんどん川上へ上るほど小さくなります。それがさらに次のところへ行き、デザイナー事務所に行き、コピーライターに行きまするとだんだん小さくなるのですね。だから、現実問題としては極めて転嫁が難しくなっているのが現実でございまして、消費税が非常に会社に滞留している幸せな会社もあるでしょうけれども、逆のケースも非常に多いということですね。  そういうところをじゃどういうぐあいに分類していくのかということになると、極めて複雑な結果が出ます。そうしたらどの業種になったら一番得だというようなことが、右往左往が起こりまして、また簡易課税を引き下げたら、幾らでも会社が割れるような実態でございますから、私は余りその点にこだわって複雑な税制をつくるべきではないと思っております。
  61. 村井仁

    ○村井委員 今の点をちょっと敷衍させていただきますと、これは佐藤参考人にもしコメントしていただければと存じますけれども、例えば、簡易課税ですとか今の税制前提にして逆に各業者の価格決定が行われていく、そういうような企業行動になっていき得るのではないだろうか。例えば三点セットなりなんなりというものを前提にして、それで、うちは簡易課税を適用されているから、あるいはうちは免税業者だからこの値段でいきましょうというようなことで値決めをする企業行動になるのではなかろうかと思うのでございますが、その辺のところを確認できますか。
  62. 佐藤豊夫

    佐藤参考人 私は、職業柄いろいろな業種に実は関与しております。それで、今の消費税税制で価格形成がされているのじゃないかということはないと思いますね。もとの価格、いわゆる三%を除きましたもとの価格というのは、やはり今までどおりの慣習による需要供給の関係でほとんど決まっています。ただ、その価格の中の三%の分については、確かに消費税のために価格が上乗せになっていることは事実だと私は思います、全部が全部とは申しませんけれども。  私はこういう実務家で、あらゆる職業に関与していまして、実はこの転嫁というのが意外に実行されているのですね。その一つの原因はいわゆる外税万式にあることも事実です。それから小売の場合も、簡易課税の場合は本当は三%要らない業者もおるわけです。まして三千万円以下の免税業者は三%要らない、かと申しますと、これは恐らく三%ぐらい乗せなくちゃだめなんですね、仕入れのところに三%かかっていますから。あとの一割か二割ぐらいの分については価格転嫁しなくてもいいだろうということはありますけれども、それを一々計算して現実にやるということはあり得ません。ですから、免税業者であろうが簡易課税業者であろうが、現在は意外と転嫁しているはずでございます。したがって、恐らく三%は価格の上に上乗せしてあるだろうというのが私の実感でございます。  ただ問題は、スーパーとかデパートとかという小売業者でない非常に弱い業者の中には、仕入れにかかっている三%さえ売り上げに乗せられないという業者もあることもまた事実でございます。私はそういうところも知っておりますけれども、しかし大方は意外と転嫁をしている、しかもそれは免税業者であろうが五億円以下の簡易課税業者であろうが関係なく転嫁をしているというのが私の実感でございます。
  63. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、御多用中のところ御出席の上、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。(拍手)  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四分散会