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1990-04-17 第118回国会 衆議院 大蔵委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年四月十七日(火曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 衛藤征士郎君    理事 遠藤 武彦君 理事 高村 正彦君    理事 田中 秀征君 理事 平沼 赳夫君    理事 村井  仁君 理事 中村 正男君    理事 早川  勝君 理事 宮地 正介君       浅野 勝人君    井奥 貞雄君       石原 伸晃君    今津  寛君       岩村卯一郎君    狩野  勝君       金子 一義君    河村 建夫君       久野統一郎君    中西 啓介君       萩山 教嚴君    原田 義昭君       松浦  昭君    御法川英文君       柳本 卓治君    山下 元利君       上田 卓三君    小澤 克介君       大木 正吾君    佐藤 恒晴君       沢田  広君    関山 信之君       仙谷 由人君    竹村 幸雄君       富塚 三夫君    細谷 治通君       堀  昌雄君    井上 義久君       日笠 勝之君    正森 成二君       中井  洽君    菅  直人君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君  出席政府委員         経済企画庁調整         局長      勝村 坦郎君         大蔵大臣官房総         務審議官    篠沢 恭助君         大蔵省主計局次         長       寺村 信行君         大蔵省主税局長 尾崎  護君         大蔵省関税局長 瀧島 義光君         大蔵省理財局長 大須 敏生君         大蔵省証券局長 角谷 正彦君         大蔵省銀行局長 土田 正顕君         大蔵省国際金融         局長      千野 忠男君         国税庁直税部長 福井 博夫君  委員外出席者         厚生省保険局医         療課長     小林 秀資君         参  考  人         (日本銀行副総         裁)      吉本  宏君         参  考  人        (日本銀行理事) 福井 俊彦君         大蔵委員会調査         室長      兵藤 廣治君     ───────────── 委員の異動 四月十七日  辞任         補欠選任   野田  実君     狩野  勝君   村上誠一郎君     今津  寛君   関山 信之君     小澤 克介君   渡辺 嘉藏君     竹村 幸雄君 同日  辞任         補欠選任   今津  寛君     村上誠一郎君   狩野  勝君     野田  実君   小澤 克介君     関山 信之君   竹村 幸雄君     渡辺 嘉藏君     ───────────── 四月十七日  天皇陛下御即位記念のための十万円の貨幣の発行に関する法律案内閣提出第四七号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  取引所税法案内閣提出第九号)  国の会計、税制及び金融に関する件(財政金融基本施策)      ────◇─────
  2. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 これより会議を開きます。  内閣提出取引所税法案議題といたします。  趣旨説明を求めます。橋本大蔵大臣。     ─────────────  取引所税法案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  3. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 ただいま議題となりました取引所税法案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  政府は、最近における先物取引等実情にかんがみ、取引所税課税対象及び税率を見直すとともに、納税方法特別徴収方式に改める等所要の規定の整備合理化を図るため、取引所税法を改正することとし、本法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、取引所税課税対象は、取引所市場における先物取引及びオプション取引とし、その税率は、先物取引については万分の〇・一とし、オプション取引については万分の一としております。  第二に、取引所税納税義務者は、取引所会員とし、その納税方法は、取引所取引の際に、取引所会員から徴収し納付する、いわゆる特別徴収によることとしております。  なお、この法律の施行に当たり、いわゆる日本円米ドル通貨先物取引及び日本円短期金利先物取引等については所要経過措置を設けております。  以上が、取引所税法案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  4. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     ─────────────
  5. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。早川勝君。
  6. 早川勝

    早川委員 取引所税法案内容につきまして質問させていただきます前に、当面の関心事である問題点について二点ばかり質問させていただきます。  最初に、為替相場の問題なのですけれども、連日レートがどんな動き方をしているかということが関心を持たれており、また報道されているわけですが、こういった状況を踏まえてお聞きいたします。  ことしの一月四日に再開されてから、一ドル百四十五円五十銭くらいから、今月初め、三月末の百六十円くらいにまで円が低下した、下落した。今日、今月に入って大体百五十五円から百六十円くらいの間で推移をしているわけです。そういうことと、御存じのように四月七日、大臣G7に参加されまして、その中で為替レートの安定の必要性だとか、あるいは円の下落について協調して調整をしていく、こういった合意があったと言われているわけですが、この一月から三月が大体百四十五円から百五十円の幅で動いてきた。で、今日百六十円近いところで動いているわけですが、今現在の状況——為替レートを安定させなければいけないと言われているわけですが、一部には、今のレート円レートの今までの水膨れと言われている部分調整されているのだという見方もあるわけです。そういったことを考えますと、今現在の状況は、安定という事態から見た場合どういう位置づけにとらえればよろしいかということなのですが、どういうふうに見られておりますか。
  7. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今委員がお述べになりましたように、市場において現在の為替水準につきましてさまざまな論議があることは、私自身承知をいたしております。  そして、具体的な水準につきまして私どもが言及をすることは避けなければならないわけでありますけれども、今委員がお触れになりました、去る七日にパリで開かれましたG7におきましてその声明に記されましたように、世界金融市場展開、特に円の他の通貨に対する下落と、その世界的調整過程に対する望ましからざる結果というものが議論をされ、今後常時その展開について検討していくということで合意をされ、また為替市場における協力を含めた経済政策協調についてのコミットメントの再確認が行われたわけでございます。こうした声明の中で円だけが取り上げられたということ自体が初めてでありまして、私どもとしては、その意味するところは非常に大きい、市場がこうした雰囲気というものを的確に受けとめてくれることを期待いたしております。  また、今度の東欧情勢の変化に伴いまして、欧州開銀がつくられる相談が進んでおるわけでありますけれども、その払い込み通貨が御承知のようにECUとドルと円、その三つに限定をされました。世銀あるいはアジ銀が創設されますときには、交換性を持つ通貨皆がその対象になっておったことから考えますと、円の役割というものがさまざまな角度で変質し、より重くなってきているということは実感せざるを得ないと考えております。  そうした状況でありますだけに、声明でも再確認をいたしましたように、各国の協調体制というものはしっかりしておるわけでありますし、今後ともその協調体制の枠組みを崩さないように私どもとしては対応していかなければならない、そのように考えております。
  8. 早川勝

    早川委員 協調の問題については、諸外国はそれほど重視してないというようなことも伝えられているわけですが、それはおきまして、安定の問題を考えるときに、日本はいわゆるファンダメンタルズが非常にいいのだ、したがって、そういう状況からすれば今は円安なんだという把握がされるわけですけれども、最近の傾向を見ていますと、経常収支黒字幅減少傾向に変わってきている。それから貿易収支縮小傾向にある。それから日本の企業の海外直接投資が逆にふえてきているとか、確かに実質金利日本の方が高いとかあるいは物価は安定しているとか、あるいは日本世界最大債権国だとか、こう言われているわけですけれども、先ほど言いましたように経常収支貿易収支あるいは直接投資動向等を見ますと減少。そして一方、資本投資外国増加傾向をたどっているし、この傾向は続くのじゃないかなという感じがするわけですね。また一方、レートは必ずしも購買力平価で決まるわけではないのですが、購買力平価でいろいろ計算されると、二百円台だとか百六十五円だとか百六十円、こういう数字も出されているわけです。  そういったことを考えますと、今は余り安いとも言えないのじゃないか、円安だ、円安だとも言えないのじゃないかということを考えるわけですね。そういうふうに考えてみますと、先ほど大臣答弁されましたように、幾らが適正かとは言えないと思いますけれども、対応の問題として余り一喜一憂するような状況で考え、対応されないのがいいのではないかなというのが、今のファンダメンタルズ状況からしてそう思うわけですけれども、その点について認識を伺いたいのです。
  9. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 これはまさに釈迦に説法でありますけれども、今委員が例として挙げられました幾つかの指標の中で、例えば対外投資というものを考えます場合に、長期資本収支赤字になるということは、その資本の逃避だという見方をなさる方があり得ます。しかし実際上、対外収支を私は考えてみますと、我が国の良好なファンダメンタルズというものを背景にして行われているのではないのか。また、むしろその良好なファンダメンタルズの反映だというとらえ方もできようかと思います。そして、その赤字幅は前年に比べて縮小しておることも申し上げなければなりません。と同時に、経常収支黒字というものが減少してきておりますことは、確かにそのとおりでありますが、これは対外均衡是正という目標をかざし、ここ何年間か日本世界経済の中で輸入を拡大しながら持続的な内需拡大を図るという経済運営を続けてきたわけでありますし、また、その黒字幅減少させるための構造調整にも努めてまいったわけでありまして、世界経済の中においてむしろ日本経済が国際的に調和のとれた方向に進んでいる、私はそう理解をいたしております。  ファンダメンタルズそのものにつきましては、確かに、為替でありますとか株式でありますとか債券市場でありますとか個別の市場を見ますとき、時に不安定な様相を呈するときはございますけれども物価は安定いたしており、内需を中心とした力強い景気拡大というものは依然として健在でありまして、私は心配はないもの、そのように受けとめております。
  10. 早川勝

    早川委員 そうしますと、若干推移を見ていけば、やがて安定するだろう、そのレートの基準ほどこまでということはともかくとして、そういう状況にあるというふうに理解させていただきます。  そこで、もう一つの問題は、いわゆる環境森林の問題で大臣の率直な意見を聞かせていただきたいのですが、この十三日に林業白書が閣議決定されたわけですね。それから同時に、十五日ですから一昨日、総理府が「森林と生活に関する世論調査」の報告書を公表しております。そこで言われていることは、地球的な観点からも森林、緑の問題については整備していかなければいけないし、そういった観点で見ると、日本の山は大変に荒れている、こういう指摘がされているわけです。この林業白書等大臣も概要は聞かれていると思いますが、今の日本森林の現状、そしてこれからの重要性について、忌憚のない御意見を伺いたいと思います。
  11. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 これにつきましては、私は多少の私見を交えながらお答えすることをお許しをいただきたいと思います。  確かに現在、国有林の問題を含め我が国林業全体が一つの大きな壁にぶつかっている状況にあることは、御指摘のとおりだと私も思います。そして同時に、林政審で御審議をいただいている中、国有林につきましては、現在の構造改善計画に基づきまして、財政当局としてもできる限りのお手伝いを申し上げている状況にあるということも申さなければなりません。  しかし、根本的に私は今後林業というものを考えますときに、緑の資源をいかに後代に伝えるかという視点で、もう一度基本的な部分から見直す必要があるような気持ちがいたします。この中には、当時その論議に参画された方も一、二おられますけれども、今振り返ってみまして、私は、特に国有林野事業というものが今日の状況になった一つの原因は、昭和四十年代半ばの環境問題について公害という視点から我が国論議が非常に高まりました時期に、国有林労使双方がその問題に関与することを避け、国有林事業というものの独立を維持するためにエネルギーを費やしたところに一つの原点があろうかと思います。  当時、国有林野事業というものは、経営は非常に安定した状況であり、その限りにおいて問題を抱えている状況ではありませんでした。むしろ国有林労働者方々白ろう病問題等が非常に真剣な議論になり、労働安全衛生視点からの論議が盛んだった時期であります。しかし、そのころ、御承知のように本院におきましても、昭和四十五年の秋の公害国会を契機に、環境問題というものに対する意識が大きく変わり、その中から四十六年の七月には環境庁が発足することになりました。そして、当時御党の、例えば島本虎三先生でありますとか、あるいは公明党の岡本富夫先生ですとか、こうした問題に非常に関心を持たれる方々からは、環境庁創設の時点において、自然保護という視点から国有林の見直しについて積極的な御意見が出ておりました。しかし、当時、結局環境庁の介入を国有林野事業というものは最小限度に食いとめることに成功をされ、鳥獣保護林に関する行政以外については自然公園法適用すら最大限排除されたわけであります。そして、その結果として今日我が国の山は非常に大きく荒れました。  仮にあの当時、例えば水源涵養林でありますとか、幾つかの保安林の種類によりまして、自然保護局の力が加わり、伐採のできない、また伐採をしてはならない国有林というものを保全することに意識を変えておったとするならば、私は林野行政というものは大きく変わっていたであろうと思います。国有林が切りたいだけ切れる状況であり、それが事業として成立をする幅が大きければ大きいほど一般会計からの助成が少なくなるのは当然でありまして、これは言いかえれば、国有林というものが営利事業の性格からむしろ緑の資源を維持保全するという視点に変わり、営利対象から外れた国有林というものがふえればふえるだけ、財政当局の立場としては一般会計負担はふえるでありましょうけれども、同時に我が国の将来に対する森林資源保全は十分なものになるであろうと思います。  目下、ワシントンにおいて、地球環境についての会議が開かれております。その大きな要素はC02であります。このC02の問題一つを本気で取り組もうとする場合におきまして、この緑の資源というものに国がいかなる視点を持って臨むのか、国民がいかなる視点を持って臨むのか、それは今後世界に対して問われる我々の一つの責任でありまして、願わくは国有林野事業というものを今後検討されるその視点の中に、いかにして後代に自然を残し、そしてその自然を残していくための要員を確保することを考えるべきであるのか、こうした視点からの御検討もいただけるならば幸いである、そのように考えております。
  12. 早川勝

    早川委員 大臣私見部分大変参考になるわけでして、これからの国有林独算制の問題だとか、あるいは林業白書を見ても問題点があるのですけれども、もう一つ歯切れが悪いというのは、今大臣が言われたように、一般会計からやはり入れないことにはこれからの日本森林、そしてその三割を占める国有林の問題というのは解決しないだろうというふうに考えるわけですが、結局は、大臣今言われたことを言いますと、大蔵省独算制で、事業会計でずっとやっていたわけですから、そこにそもそもこれから考えるときのポイントがあるんじゃないかと思います。  それから、国民考え方ということを言われたのですが、世論調査結果の中に非常におもしろいし有益な結果が出ているわけでして、例えば山や森などに行ったことのある人の八三・三%の人が、「森林はたとえ経済効率に合わなくても、国土保全災害防止などの役割を重視して整備すべき」だというふうに回答しているわけですね。必ずしも経済活動を重視しなくてもいいというのがトータルで見ても約八割、八〇%の人はそういう発想で森をとらえているわけです。  そういうことを考えますと、これからの国有林の問題を含めまして緑と資源の問題、そういったことでぜひ思い切った発想の転換と、そして一般会計からの繰り入れはどうしても必要だということを大臣認識されておりますので、来年度予算以降具体的に対応していただきたいと思います。
  13. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 別にお言葉を返すわけではありませんけれども、先ほど財政当局の方から特別会計を押しつけたように言われましたが、私の記憶では、たしか林野の方が特別会計を当初主張されたように思います。いずれがどちらであっても、今の時期になりましてそれをこだわる必要はないと私は思いますけれども、やはり林野庁、労使ともに従来の発想は変えていただかなければなりません。そして同時に、自助努力というもので御自身努力は当然行っていただかなければなりません。ただ、私が申し上げておりますのは、例えば自然公園法適用により、これは切ってはならないという面積が国有林の中に大きくなっていけば、当然それだけ一般会計負担するものはふえていかなければならないであろう。むしろ、来年度の予算と仰せられましたけれども、その来年度予算の時期までに考え方そのものを本当に国有林野労使が変えていただけるかどうか、緑の資源保護というものに対して着目し、それに立脚した姿勢をおとりいただけるかどうか、私はかぎはその辺にあろうかと思います。
  14. 早川勝

    早川委員 国有林独算制というのは、そもそもあの四十六年、二十年もっと前の段階からスタートしているという意味でありまして、そういった意味で、独算制あり方そのものももうちょっと視点を変えていかなければいけないんじゃないかなというふうに考えております。  そこで、取引所税法案の問題について質問させていただきますが、先ほど提案理由ございましたけれども、もう少し中身について御説明いただきたいと思います。今回課税されたわけですけれども、いわゆる対象を広げたわけですけれども、そのあたり等を含めて御説明いただきたいと思います。
  15. 尾崎護

    尾崎政府委員 お答え申し上げます。  現行取引所税法は大正三年にできました法律でございまして、大変古い法律でございます。この取引所我が国は大変長い沿革を持っておりまして、江戸時代米相場から起因した独特の伝統を持っているわけでございます。  取引所取引されますものの対象といたしまして、商品証券があるわけでございますけれども我が国の場合には商品相場の方が先に発達をしている、諸外国の場合にはむしろ証券相場の方が先に発達をしているというところに非常に特殊なところがございます。したがいまして、明治の世になりまして現代的な法律をつくるというようなことになりましたときも、堂島の帳合い米市場以来の長い伝統の影響を受けておりまして、実は取引所において取引をする会社でありますとかあるいはいわば会員のようなものでありますが、それ自身取引をして利益を上げるというところがございました。現行法律には取引所特別税という部分がございまして、その手数料収入に対しまして百分の十二で課税をするという、いわば営業税的な要素一つ入っているわけでございます。それ以外には、通常の取引、我々が一般に考えます先物取引に対する課税取引税という要素がございまして、その両方の要素法律の中に盛り込まれております。  ところが、戦後、非営利会員組織だけしか認められておりませんので、法律上残っております手数料収入にかけるという特別税、営業税的なものは空振りになってきている状況でございました。加えまして、先物取引の分野におきましても最近非常に各種のものに広がってまいりまして、現在の法律課税対象といたしましては、東京証券取引所国債証券先物取引でございますとか、商品取引所におきます商品先物取引に限られているわけでございますけれども、それ以外にいろいろと新しいものが出てきている、そういうようなことを考えまして、古い伝統のある法律でございますが、現在の実情に合わせていわば衣がえをしたいということで、全文の改正をお願いしているわけでございます。  内容を簡単に申し上げますと、取引所税課税範囲といたしまして、取引所税取引所における先物取引全般課税対象とする税であることや、既に取引所税が現在課税されております国債証券先物取引などとの間の負担バランスを図る必要がございますので、新しいものであります有価証券指数等先物取引、それから金融先物取引を含めまして、取引所における先物取引はすべて課税対象にするというのが一つポイントでございます。それから、先物取引と同じような意味価格変動リスクをヘッジする経済的機能を持っておりますオプション取引という新しいものができておりますが、これも先物取引課税とのバランス上、取引所におけるオプション取引課税対象にするということにいたしました。これも新しい点でございます。  一方、今度は税率水準について申し上げますと、先ほど申しましたように、先物取引価格変動リスクをヘッジするという共通の経済的機能を持っておりますこと、それから取引所税が、特定の法律に基づいて公の場で開設された取引所を利用して先物取引を約定する行為をとらえまして、その背後に担税力を推定して課税するという、いわゆる流通税でございます。そういう点を配慮いたしまして、取引約定金額課税標準といたしまして一律に課税をしようということでございます。旧来の取引所税は、どちらかといいますといわば価格差の大きいものに、投機的な要素、それにやや抑制的な意味合いも加えたのだと思いますが、そういう点を勘案して税率に差を設けていたわけでございますけれども、それをだんだん直してまいりまして、今回では、現在国債証券先物取引適用しております万分の〇・一という税率に統一をしようということにいたしております。もっとも、オプション取引につきましては、その性質上、オプション課税対象取引額というわけにいきませんので、オプション料課税標準といたしますので、これは税率を万分の一ということにいたしております。  なお、経過措置を設けておりまして、金融先物取引のうち、米ドル短期金利先物取引日本円米ドル通貨先物取引、それから日本円短期金利先物取引、この三つにつきましては、取引市場が開設されたばかりであるということ、それから海外取引所等との競合関係を考えまして、二年間課税延期をしたり、またあるいは軽減税率を設ける等の経過措置を置いているところでございます。
  16. 早川勝

    早川委員 この取引所税というのは、今江戸時代からということを含めまして、また明治の始めからという歴史を持つわけですけれども日本商品取引から始まって、外国証券取引ということでスタートに違いがあるんだ、こう言われたわけです。この取引所税というのは歴史的には古いのですけれども、またこういう証券取引等に先物取引というように課税対象に組み込んでいったという意味では新しいのですけれども、税収から見て四百七十億ですか、余り大きい税収を上げるような税金でもない。一体古い税金なのか新しい税金なのかというふうに考えた場合、対象を広げたから新しいというだけじゃなくて、この税の性格として新しい税金と言っていいのかどうか、そのあたりを聞かせていただきたいと思います。
  17. 尾崎護

    尾崎政府委員 御指摘のとおり、その沿革等を考えてみますと、大変古い税でありますし、また今回課税対象を広げた分野などというのは、まさにその時代の先端、ある意味ではコンピューターが発達したためにこのような取引ができるという分野もあるわけでございまして、古くて新しい税という御指摘はまさにそのとおりだと思います。  先ほど申しましたように、これは流通税でございますが、一般的にOECDの分類などにおきましても、流通税は資産税の仲間というように考えられているところがございます。有価証券取引税でございますとか印紙税でございますとか登録免許税等とあわせまして、取引所税もOECDの国際的分類では資産税等という中に含めている税でございます。  こういうように、流通に課税するということについては二つの考え方がありまして、一つは、できるだけそういうものはない方がいい、取引に影響を与えるものはない方がいいという考え方も成り立ち得ると思います。それからもう一つ考え方といたしまして、我が国において行われておりますように薄く流通にかけていくということは、新しい大量取引の時代において、あるいは税の負担のあり方として、合理的な面も備えているのだと思います。この辺は議論が分かれるところであろうかと思いますが、我が国の場合、先ほど申しましたように古い伝統に基づきまして非常に早くから相場の取引が行われてきたという伝統がございますし、またそれの持つ経済的作用と同時に、江戸時代から実はいろいろと議論がございまして、特に儒学者の間で、この持つ意味というのは賭博的行為の奨励ではないかというような意見もあったりいたしまして、何となく現行取引所税にそれが影を落としているというようなところもあろうかと思います。  いろいろな面もあわせて考えまして、しかしこの新しい取引実情を考えてみました場合に、今回のように広く取引所における取引対象といたしまして、そしてそれに薄く課税をするというような考え方、それが現状に即した、新しい状況に即した課税のあり方ではないかというように考えているわけでございます。
  18. 早川勝

    早川委員 昭和六十三年の五月十二日、金融先物取引法案が審議された際、先輩委員が参考人を呼ばれて、東京証券取引所の竹内理事長、それから日本証券業協会の田渕会長、また銀行協会の伊夫伎会長を呼ばれて質問されているわけですけれども、こういった取引、その場合は有価証券取引税も好ましくない、外してほしいという意見が述べられましたし、また証券団体協議会の本年度の税制改正に対する要望書を拝見しても、取引所税はなくしてほしいという要望があるわけですね。二年前のときにもそういう意見が関係者から出され、また今回も出されているわけですが、消費税じゃないですけれども、税金をかけるのはすべてだめだというのが一般的にあるわけですけれども、こういった要望、そしてまたこういった税金は世界にないんだということもそこで披瀝されているわけです。  確かに、ことしの一月のブッシュ大統領の予算教書の中には、十月から新しい先物取引手数料、あるいはこれは税と言いかえてもいいかと思いますけれども、こういうのを入れたいんだという発表がされているわけです。いずれにしろ、今現在はどこにもないわけですけれども、あえてこれを入れていくことが新しい時代の税制として望ましいのだと言われる背景等、もう少し聞かせていただきたいと思います。
  19. 尾崎護

    尾崎政府委員 税制は確かに国際的な面も考えていかなくてはいけないと同時に、また各国それぞれの国情に合った税金というものもあるわけでございまして、我が国におきまして取引所税というものが非常に長い伝統を持っている。そういうものを我が国の社会が持ってきたということもまた非常に大切な一面であろうというように思うわけであります。  ただ、非常に相場というものを重視して、先ほど申しましたように、税率ども相場の価格変動等に合わせて抑制的に働くということを考えたのではないかと思いますが、税率に差を設けるとかそういうような点を考えてみますと、最近の相場というよりはむしろリスクをヘッジするというような新しい機能の面に着目してまいりますと、従来のようなやり方では確かに問題もあるように思うわけでございます。そこで、そこはリスクヘッジという機能を重視いたしまして、いろいろある先物取引につきましてすべてを課税対象としてとらえ、そして一律に万分の〇・一というような薄い税率課税をしていくというやり方に改めたわけでございまして、発展してまいりました各金融、それから商品すべてを通じましてのリスクヘッジの機能、その辺に着目して課税体系を変えているということでございます。  よその国では現在例がないという御指摘でございましたが、確かにそのとおりでありますけれども委員のお挙げになりましたとおり、アメリカなどでも現在議論をされているというような点もございますし、我が国で育ってまいりました伝統的な税であり、またその性質としては資産課税というとらえ方でございますので、その点もあわせまして今回のような改正をお願いし、新しく衣がえをして取引所税を維持していきたいということをお願い申し上げている次第でございます。
  20. 早川勝

    早川委員 そこで、先ほど金融先物取引経過措置あるいは軽減税率、それぞれ二年間軽減税率を設けたり課税の延期をされているわけですけれども、その原因というのは、やはり取引がそれほど軌道に乗っていない、取引量も少ないということもあると思うのですけれども、また、二年間の期間置けば課税を大体万分の〇・一に戻して大丈夫だというふうな見方をされているのか、取引実情等を踏まえまして答弁いただきたいと思います。
  21. 土田正顕

    ○土田政府委員 まず、金融先物取引の現状につきまして御説明を申し上げます。  昨年の六月三十日から東京金融先物取引所におきまして、三商品でございますが、具体的には日本円短期金利先物、米ドル短期金利先物及び日本円・米ドル通貨先物の三商品取引が開始されております。本年三月までの総取引量は、片道計算七百二十四万契約となっておりまして、これを一日平均で見ますと約三万九千契約とたっております。取引内容は、実態としましては、総取引壁の大半といいますかほとんどをこの三商品の中の一つ、具体的には日本円短期金利先物が占めておりまして、他の二商品取引が低迷しているという状況でございます。
  22. 早川勝

    早川委員 低迷している原因というのは、どこにあるのでしょうか。
  23. 土田正顕

    ○土田政府委員 この日本円の短期金利先物は何とか成り立っておるわけでございます。これは、いわば先物取引としては世界で最初に円を扱うという意味で最初に上場された商品であるということでございます。  しかしながら、他の二つにつきましては、米ドル短期金利先物は、既にシカゴなど海外の主な市場の主力商品でございまして、各市場で既に柏当厚みのある市場が形成されておりますのと、それから何分にもドルは米国がいわば母国のマーケットであり、東京での取引は、例えば夜間の価格変動リスクが伴うことなどによって取引が低迷しているのではないかと考えられます。それから、日本円・米ドル通貨先物につきましては、これもシカゴにおいて厚みのある市場が形成されておりますのと、それから我が国におきましても従来から外国為替のフォワード取引、先渡し予約取引が活発に行われているということによりまして、この金融先物取引所での取引は低迷しているのではないかと考えられます。
  24. 早川勝

    早川委員 課税延期される、要するに二年後に課税されるわけですから、さらにそういう低迷して——既にあるシカゴ等、そこが中心になっているわけでして、今は課税されないということで条件は同じなわけですけれども、二年後に課税されるとさらに伸びないのじゃないかなという感じを持つのですけれども、その点はいかがですか。
  25. 尾崎護

    尾崎政府委員 ただいま銀行局長から申し上げましたような状況を勘案いたしまして、課税延期あるいは軽減税率ということをやっております。二年間ということでお願いしているわけでございますが、その間におきまして、市場発達してくることが期待されますし、取引所におきましても各種の新しいシステムを入れるなどいたしまして、この二年間で振興策を図るというように承っております。二年後には課税が始まりましても大丈夫のような状況になっているのではないかと期待いたしているところでございます。
  26. 早川勝

    早川委員 先ほど、この取引所税は、まあ賭博的な性格もスタートからあったかもしれないけれどもと言われる中で、新しいヘッジ取引拡大していくからそれを課税対象にしていくということで、確かに税金はそれぞれの国の特性、歴史性があるわけですけれども、一方、税制を含めまして国際的な要素が、あるいは国際的な観点からの税制というのが非常に必要になるわけでして、そういうことを考えますと、一体これを今回設けて、税金が古くして新しいという、本当に古いというふうにウエートがかかればやめていく方向に動いていくのが当然ですし、新しい税金だ、新しい資産課税のあり方だというふうに認識すれば、これはこれからの、いわゆるそういう意味でも国際性も持つだろうし、二十一世紀に向かっての税制のあり方として望ましいというふうになるわけですけれども、その点について再度伺いたいと思います。
  27. 尾崎護

    尾崎政府委員 先ほど申し上げましたとおり、これは流通税一つでございます。この種の税が経済取引、特に国際的な分野におきまして経済の中立性を大きく害しまして、そして例えばお金の流れ、物の流れを変えてしまうというようなことが生じると経済取引上よろしくないということで時々議論対象になるわけでございます。この各種の取引に薄くかけるという流通税、特にこれはOECDの分類ですと資産税の分野に分けられるようなものでございまして、そういうものがこれからどのように発展していくのかという点ではいろいろな考え方があらうかと思いますが、確かに御指摘のように、国際的な面からの検討というのも必要なことだろうと私どもも考えております。  しかし、例えば国債の先物取引課税対象に取り入れましたときに一つ議論がございまして、それによって市場の発展が阻害されるのではないかという心配があったわけでございますが、万分の〇・一という税率で行った結果は、どうやらそのような心配もなく順調に発展をしてきているという状況でございますし、国際的に変な乱れをもたらすということにもなっていないわけでございまして、御心配のような見地からの検討を加えましても、今回の改正をお願いしておりますような低い税率のもとでは悪い影響は山てこないのではないかというように考えております。  他方におきまして、流通税が、消費税のようなもの、それからほかの各種間接税もございますけれども、その中にあってやはり一つの地位を占めていくということは税体系として大切なことではないかというように考えておりますし、御指摘にございましたような悪い影響が出ない範囲内で、この流通税というものも税体系の中で今後も立派に地位を占めていくべきものであろうというように考えております。
  28. 早川勝

    早川委員 主税局長だから当然答弁いただけるということでお聞きするわけですけれども、アメリカのロス内国歳入庁首席補佐官が会見をワシントンでしておりまして、いわゆる移転価格税制等の問題が伝えられているわけですが、どうもアメリカは、企業のいわゆる親会社、子会社との取引等の問題で、開示義務も強化する方向で取り組んでいるということですね。そういうことで、日本政府との対立が深まる可能性もあるんじゃないかというような見方がされているわけですが、アメリカの日本系企業、まあ外国系企業一般になるわけですけれども、この課税強化に対するアメリカの動き、そしてその方向について今どういうふうに把握されているか、またどういう対応を考えられているか伺いたいと思います。
  29. 尾崎護

    尾崎政府委員 昨年来、アメリカにおきまして、外国企業に対する課税の問題あるいは課税資料の問題でいろいろの議論がございました。私自身も財務省に手紙を送ってその内容について意見を申し述べたりしているわけでございますが、日米間の租税条約の趣旨に反するような行動がないように、そこは注意をし、また意見を申してきているところでございます。  最近におきまして議論されておりますのは、やはり課税資料等に関することで、また新しい提案が行われつつありまして注目をしているところでございますけれども、基本的にそのデータというのに私ども問題があるように思っております。それはアメリカは、アメリカの法人の税負担外国の企業の税負担とを比較してみた場合に、アメリカの企業の税負担の方が高くなっている、外国の方が低いということで、そこで何か問題があるのではないか、課税資料をどうするかあるいは移転価格をどうするかというような話が出てくるわけでございますけれども、そういう数字の扱いにそもそも問題があると私ども思っております。外国企業というのを一まとめにして計算いたしますと、確かにアメリカの言うように外国企業の方が低いということになるわけでございますが、それを分類して日本企業について算出いたしますと、これはアメリカの内国歳入庁が出している資料を使っても——資料を使ってもというか、むしろ資料にはっきり出ているのでございますが、日本企業のアメリカにおける税負担というのは必ずしも低くないわけでございます。他の外国企業に比べますと高いわけでございます。そこを十把一からげにいたしまして外国の企業が全部おかしいというような議論が今行われているように思いますので、そういうような点も含めまして、それから日米間の租税条約に違背することがないようにこれからも注意をし、また意見を申していきたいというように考えております。
  30. 早川勝

    早川委員 新聞の会見でですが、先ほど言ったロス内国歳入庁補佐官が質問に答えているわけですが、例えば「日本の法人実効税率は米国より高いので、移転価格を操作してまで米国子会社の利益を少なくする理由はない」のではないかという質問が記者から出て、それに答えて「税率日本の方が高いが各種控除制度を適用した場合の課税ベース(課税対象所得)はどうか一概には言えない」と言う。これは事実誤認というふうに言わなきゃいけないと思うわけです。ただ、こういう議論、各種控除制度、租税特別措置等を含めて言っているわけですけれども、こういった認識が間違っているということであれば、それだけのことを説得できなければいけないし、また、いろいろな税制議論の中でいつも言われるのですけれども、とにかく日本の特殊性、独自性も含めての引当金だとか特別措置を入れますと、こういう誤解も、まあ誤解と言えるかどうか答弁いただきたいと思うのですけれども、こういう問題が起きるわけですね。こういった今の会見の質問と答弁を聞かれまして、主税局長のこれからの対応を含めましてちょっと決意のほどを聞かせていただきまして、質問を終わります。
  31. 尾崎護

    尾崎政府委員 日米の法人の実効税率を考えますと、我が国の方が税が高いというように一般に考えられますから、今のような議論が出てくるわけでございます。しかし、移転価格の問題は、アメリカ側の問題であると同時に、日本にとりましても一つの問題であろうかということも考えます。したがいまして、日米間の企業の税負担の差だけで結論が出るということではないとは思いますが、それ以外の要素でやはり基本となりますのは、租税条約上の規定であろうかと思います。そういうようなことも考えまして、私ども意見はよく申し述べていきますし、また課税の面で協力ができることがあれば、お互いに協力し合っていくという面もあるわけでございますから、そのような点もあわせまして、よくアメリカ側と意見の交換をしてまいりたいと考えております。
  32. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 この際、沢田広君から関連質疑の申し出があります。早川君の持ち時間の範囲内でこれを許します。沢田広君。
  33. 沢田広

    ○沢田委員 委員長に、貴重な時間でありましたが、こういう会場を利用して審議をする機会をいただきまして、心から敬意を表します。今後も、詰め込みの教室ではなくてゆとりのあるところで我々も伸び伸びとやりたい、こう思っておりますので、よろしくお願いいたします。  それから、今早川同僚議員からも質問がありましたから、重複するところは避けて若干の質疑をしてまいりたいと思います。  まず、今回提案されたこの取引所の税の発想をしたところの原因、なぜこの法案を出すに至ったのか。私、言うならば寝耳に水のような感なきにしもあらず。どこかの税調でこういうふうなことがいいとか悪いとか言ったという話も聞かない。言うならばやや突然としてあらわれたような感もあるわけでありますが、その点はどういうことで、これは理由をたくさん言わないでいいですから、箇条書きにして三つぐらい何と何とどういう理由で今度発議するに至ったか、ちょっと述べていただきます。
  34. 尾崎護

    尾崎政府委員 この取引所税法という法律は、先ほど申しましたように大正三年にできたという古い法律でございます。片仮名で書かれている法律でございます。それを全文の見直しをしたいということでかねて検討を続けてまいりました。それがまず第一点でございます。  それから第二点といたしましては、同じ取引所において行われております先物取引に、最近金融関係、証券関係、大変新しい先物取引が出てまいりました。それと、既往の課税対象となっております先物取引等バランスを考えまして、課税対象にしたいというのがもう一つの点でございます。  それからもう一つの点は、オプション取引のような新しいものが出てまいりまして、これはややその形態を異にしているわけでございますけれども、現在の先物取引と同じように取引のリスクをヘッジするという機能を持っているわけでございます。したがいまして、オプション取引等も対象といたしますとともに、最近のリスクヘッジの機能という点に着目いたしまして、課税対象全体の税率を引き下げ、一律の税率にするというようなことをまた一つの目的といたしました。  一、二、三と申しますと、その三点であろうと存じます。
  35. 沢田広

    ○沢田委員 前回までの税法で得た税収と今回の改正によって得る税収は、幾らと幾らですか。
  36. 尾崎護

    尾崎政府委員 平成二年度で税制改正前の税収の見込みが四百六十億円でございまして、それで改正の増減収を差し引きいたしまして、改正の見込みといたしまして四百七十億円を見込んでおります。
  37. 沢田広

    ○沢田委員 現在の堂島からスタートをしたと言われております取引内容で、私の限られた時間の中で申し上げますが、先ほども早川議員の方からも言われておりましたが、一つは、今言ったように、税を同じにしたという理由。どうせこういう税ならばもっと上げていいんじゃないのか。  ほかの税に比べて、言うなら大当たりをすればえらいもうけをする、こういうことになるわけでありますし、そのかわり、さいころみたいなものですから下手をやると大損をする、これは承知の上でやるわけでありますから、そういうものはやはり好奇心を満足させ、自分の射幸心を満足させ、自分の投機欲を満足させる、国民の中でもそれだけ豊かな人たちに応分の負担をしてもらって国民に還元してもらう、これは極めて有意義なことじゃないか。そのためには、この倍ぐらいに上げて、せめてそういう喜びを知っている人と喜びを感じ得ない人とのバランスをとることが必要なことではなかろうか、そういうふうに思いますが、いかがですか。
  38. 尾崎護

    尾崎政府委員 この税、流通税でございまして、取引が行われますとそこで課税が発生する、もうかった、もうからないと関係のない税でございます。したがいまして、取引に対する中立性といいますか、例えば外国へ流れていってしまうとかあるいは取引が成り立たないとか、そういうようなことになってはいけないわけでございまして、取引に悪い影響を与えない範囲で税を薄くかけていくのがしかるべきであろうかと思います。  先生御指摘のような議論というのは、特に商品取引に対しまして実は長い間行われてきている議論でございまして、御指摘の堂島の帳合い米市場をつくりましたときにもその議論があるようでございます。御承知のとおり、この制度をつくりましたのは大岡越前守でございまして、享保年間のことでございます。それまで伝統的な米相場、例の蔵屋敷を中心に大阪であったわけでございますが、公設の先物取引という形で堂島帳合い米市場ができましたのは、その裁断を下しましたのは大岡越前守だと言われております。  それからずっと江戸時代幕末に至るまで行われてきたわけでございますが、その間に絶えず、いわばばくちの奨励のようなことにならないかという議論と、それから、このような取引によって米の相場が安定するんだという議論と両方ございました。何か明治の時代の取引所税に関するいろいろな議論を見ましてもそのような議論がございまして、我々の社会といいますか、物の考え方に大変長く根差してきている議論であろうかと思いますが、現在におきましては、やはり取引を害さない範囲ということが大切ではないかと思いまして、万分の〇・一、これは国債の先物取引適用いたしまして問題がなかった税率でございますので、そこにそろえたということでございます。
  39. 沢田広

    ○沢田委員 我々の庶民ではパチンコぐらいが大体ばくちみたいなものに該当するものでしょう、あるいは公営としては競輪ぐらいでしょう。当時、大岡越前守の時分はさいころがありましたから、結構さいころで楽しんだり花札で楽しんだりということもあったんだと思うのですが、やはりそういう種類のものですから、世の中で何件か私のところにこういうものの相談に来た例があります。  非常にまじめな学校の先生であるとか公務員であるとかという人が、たかが、たかがと言っては悪いが、六百万円でべらぼうな金額の相場ができるわけですから、それも本人が好きでやったわけではなく、どうも証券会社なり株式会社、いろいろなところからの勧誘で、これは大変もうかりますよなんていうことで手を出した。あと百万円ぐらいなければだめですなんて言われて、追加していって一千万円ぐらいになってしまった、サラ金まで借りるようになってしまったという実害があって、先生何とかなりませんかなんて来ましたけれども、どうにもなりようがない。  そういう、事によれば、きのうの新聞あたりにも出ておりましたが、命まで失いかねない、こういうばくちを、しかも膨大な金額で、今の税収から逆算をしていけば、総体的にはこれは四百兆ぐらいになるでしょう、総額の動きというのはそのくらいの金になるのかもしれない。そういう金を動かす人と千円の金を動かす人と、それは価値観が違うと思うのですよ、同じ満足感でも、損しようが得しようが。  だから、そういうところからもっと社会的に還元できることを、答弁は同じだと思いますが、やはりもう少し還元率を高めて、満足感がそれだけ多いのですから、そういうものを社会に還元するようにひとつ対応してほしい。これは時間の関係で私は意見だけ述べて、御検討をお願いします。  それでは、手数料はなぜこう高いのだろうかというところをちょっとお聞かせいただきたいのであります。プレミアのうち委託手数料、これはなぜこういう税法の改正と関連して必要であるのか。今大体百五十七くらいの会社が会員になっているそうでありますけれども、新規の売りつけ、買い付け及び転売、買い戻しの利率と、それから受け渡しの受託手数料というものはべらぼうに違う。これは、例えば同じ一千万円で計算をしましても、大体七万円か八万円くらいの手数料が取られる。片っ方は十億の売りつけ、買い付けをしても、大体これも十倍になるんでしょうが、としてもそんなにはならないですね。これは〇・〇五%ですから、〇・〇〇五ですから万分の五、それに二十六万円取られる、こういうことで、片っ方は二万五千円取られる、こういうことになっておりますから、これは十億と一千万円を対比したわけでありますが、手数料が非常に高過ぎる。これがどういう効果があるのか、これだけの手数料を払ってやらなければならない理由はあるのかというところを聞かせてほしいと思うのです。
  40. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 証券会社の先物取引に係る手数料でございますけれども、これは現在のところ、先物取引に係りますところのいわゆる場口銭、これは具体的には取引所における定率会費でございますとかあるいは才取り会員に払います手数料、それに先物取引業者が扱います人件費その他の事務費、そういったものを勘案の上決めているものでございます。  この手数料水準が高いかどうかといったことでございますけれども、例えば国債先物取引外国のアメリカにおきますTボンド取引の手数料、あるいは株価指数先物取引とアメリカにおきますS&P五〇〇の手数料、こういったものを国際的に比較してみますと、これについては、ある程度でこぼこはもちろんございますけれども、大体似たような水準でございまして、私どもは特に高いというふうに認識はいたしておりません。
  41. 沢田広

    ○沢田委員 だから、特に高いとは言わないけれども、特に安いとも言ってないのですから、結果的には妥当性を求めてもらいたいのですよ。六百万円置いて買い物をするというそういうやり方の中でこれだけの手数料は、確かに六千億なりの金額にはなっていきますから、そういうような金額の中でその手数料を取られるという、手数料を取るというその業が、手数料というものが何の手数になっているのかということの客体をはっきりしてもらいたいのですよ。手数料ということは何らかに要した経費の弁済に充てるということだと思うのですね。これはスライド制を取り扱っている銀行の例えば振り込み手数料は四百円なり五百円なり六百円なり、これもけしからぬ話なんです。同じ銀行でも手数料取っているんですからけしからぬと思うのですが、これはその根拠を明確にしていますね。  だから、そういうことで、手数料を取るなら取るに当た客体は何なのか、これこれの業務に充当してこれだけかかるんだから手数料です。それ以外だったらそれはペナルティーみたいなものですよ、それ以上取るとしたら。だから、手数料で取るということならば、それは何が客体なのか、ちょっとはっきり答えてください。
  42. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 先ほどお答え申しましたように、手数料はコストに見合って決められるべきものでございます。そういった意味では、先物手数料のコストの中身は、まず先物取引に係るところの場口銭、具体的には、取引所を利用するときに払いますところの定率会費、それから才取り会員に対して払いますところの仲介手数料、それから、証券会社自身がその業務を執行するわけでございますから、そのために要する人件費あるいは事務費がその内訳でございます。  その場合におきまして、例えば場口銭、これは大体取引に比例して払っておりますけれども、例えば人件費とかあるいは証券会社の手数料、事務費、こういったものにつきましては、取引が大口になろうと小口になろうとコストとしてはそんなに違わないといった問題がございます。そういった意味では、比例的に申しますと比較的小口には高く大口には安い、こういう手数料体系になっているわけでございます。
  43. 沢田広

    ○沢田委員 それでもこれは、私は、この提案のときにはこの部分は検討しないでそのまま出したものなんだろうと思うのです。だから、税法が改正されるに当たってもう一回今の時代に合った対応の仕方というものを、手数料というもののあり方を一回見直してみる必要があったのではないか。今さらここへ来て、いやその点は見直さないでそのまま従来のままにしましたとも言い切れないでしょうから今のような返事が戻ったのだと思うのですね。ですから、もう一回ひとつ手数料の根拠を明らかにしてもらえるような方策をとってもらって、後で結構ですから、こういうことで手数料の根拠は生まれていますということを、私か委員長委員会かわかりませんけれども、とにかく私の方にいただきたいと思うのですが、それはいかがでしょうか。
  44. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 お言葉を返すようでございますが、この税金がかかった場合には、手数料のほかにこれは課税されるわけでございまして、それによって手数料の水準が変わるとか変わらないとか、こういう性格のものではございません。  ただ私ども、これは先物手数料に限ったわけではございませんが、現物に係る株式委託手数料につきましても、これはコストに見合って、なおかつ国際水準と相応のものでなければ、これは先ほど主税局長からもお話がありましたように、こういう国際化の時代におきましては同種の商品を上場しております外国市場取引が流れるということになりかねません。そういった意味では、常に国際水準に見合うような水準を頭に置きながら、これに対応して必要な手数料の引き下げ等を行っていく必要があると考えているわけでございます。  そういった意味では、現在、株式の委託手数料につきましても、東京証券取引所におきまして実態を調査の上、今後どういうふうにやっていくかといったことを検討しております。先物手数料につきましても同様に対応してまいりたいと考えております。
  45. 沢田広

    ○沢田委員 別にこの分が、税法が変わったからそれと因果関係を持っていると一言も私は言っていないのです。問題は、この税法に関連をして、手数料が、いわゆる投機ということあるいは悪い言葉で言えばばくちということ、そういうことに見合ったテラ銭みたいな形になっているから、そのあり方が近代的なものとして果たして妥当なのかどうか、その客体を明らかにしてほしい、こういうことを言っているわけであります。これは私がもらってきた資料の中にもたくさんあるわけですが、もう時間の関係で省略するので、その点は、これが妥当なものと言えるかどうか、客体は何なのか、その辺は明らかにして後で報告をしてほしい、こういうお願いをしているわけです。  恐らく今のあなたの説明でわかった人は一人もいないですよ、何がその客体なのかということが。これだけの手数料を取った客体は何なのか、証券会社がそれを取らなければならない理由は何なのか。損をするわけでも何でもない。まあ夜逃げする場合がありますけれどもね。夜逃げしなければいけなくなっていく場合がありますが、それは現物が今度は残るわけですから。その辺のさやの損失というものが存在することは否定しませんけれども、だから、それを取るなら取るというその理由をやはり明らかにしてもらわなければいけないと思います。  あと五分です。最後になりましたが、千代田証券、またきょうも何か報道されておりますが、いろいろ証券会社で、短期のものなどについてはそのまま逃げられてしまうなんという場合もあるし、千代田の場合は明確に表にあらわれている事件ですから、まず概要を御報告いただいて、その責任体制というものはどうなっているのか、その点お答えいただきたいと思います。
  46. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 千代田証券の不祥事でございますけれども、千代田証券から報告を受けたところによりますと、同社のある社員、具体的には支店の次長でございますが、最初はお客の損失を補てんするという目的でいわゆる手張り行為を行った。その資金としまして顧客の有価証券を担保にいたしましてほかからお金を借りるということで株式売買を行ったわけでございますけれども、損失を生じたということでございまして、そういう意味でお客に被害を与えることになりました。また、この不祥事に関連いたしまして顧客の一人が自殺をした、こういった報告を受けておるわけでございます。我々といたしましても、証券会社職員のこういった不祥事に関連いたしまして、こういった事態になったということはまことに遺憾であるというふうに考えておるわけでございます。  私どもといたしましては、この問題について、千代田証券に対しまして、実態関係の事実を把握の上、そのほかのお客につきましても、もちろん亡くなられた方は当然でございますけれども、お客の損失についてはきちんとこれを埋めるようにこれをやれということを指導しておりまして、話がつきました半分の者については既に弁済を行っているというふうに聞いております。ほかの者につきましてもその処理を急がせたいというふうに考えております。  それから、この職員の行為といったものにつきましては、当然のことでございますけれども、法令違反といった疑いがございますので、こういったものにつきましても、事実関係を把握した上、法令に照らしまして適正に処分してまいりたいと考えております。
  47. 沢田広

    ○沢田委員 私が申し上げたいのは、これは保険業の方もそうですが、外交員の場合、勧誘員といいますか、そういう人の個人の責任で処理されるケースの方が極めて多い。会社とのいわゆる連帯責任というものが明らかにされていかない。この辺が、持ち逃げをした事件などにおいても、その者が首になって、会社の方は私は関知しませんということになる。一週間以内に名義書きかえしないで預かり証で操作をしているといった場合に、本人が損をすれば逃げてしまう。そういうような場合には本人の首を切ってそのままで済ましてしまう。そういう例は我々もちまたでたくさん聞く話であります。  今回も同じようなことですね。しかも、客を死に至らしめたなんていった場合に、それは弁済して済むという問題ではなくて、これは会社それ自身の責任体制というものが欠くべからざる要件だと思うのです。だから、その損害を補ったとかなんとかということで済むものではない。要すれば組織運営にチェック機能がなかった、そういう意味に解釈すべきだと思うのです。ですから、そういう場合の責任体制というものは、やはり会社で損失補償をもちろんする。今のは個人の退職金か何かで払ったのじゃないのか。一億だから払うわけにもいかないかな。とすると、会社で払ったというならば今後の一つの前例となるわけですから、会社の連帯責任はやはり明らかにする、こういう監督行政を進めてもらいたい、こう思いますが、いかがですか。
  48. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 証券会社の外務員が特定の行為を行いまして、それによってお客に損害を与えた場合におきましては、証券取引法の六十四条でございますけれども、「外務員は、その所属する証券会社に代わって、その有価証券の売買等に関し、一切の裁判外の行為を行う権限を有するものとみなす。」という規定がございます。したがいまして、この行為というのは証券会社にかわって行う代理権というものとみなしているわけでございますから、証券会社の外務員の行為によりましてお客が損失を受けた場合におきまして、それが証券会社の代理行為とみなされる場合におきましては、当然のことながら証券会社が投資家に弁済する責任を負うということになっております。したがいまして、今回のケースも千代田証券自身負担におきましてお客の弁済を進めている、こういったことでございます。  なお、今御指摘のように、証券会社の外務員の行為によりましてお客さんが損失を受けることがあってはならないということは当然でございます。そういった意味では、今後とも証券会社の営業姿勢や規則の適正化を図る、あるいは証券事故を未然防止するといったことで、役職員教育の徹底とか内部管理体制の確立、こういったものについて十分指導する必要があると考えております。そういった意味で、そういった趣旨についても今後とも十分徹底を図ってまいりたいと考えております。
  49. 沢田広

    ○沢田委員 大臣が残りましたけれども、時間ですから終わります。
  50. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 井上義久君。
  51. 井上義久

    ○井上(義)委員 まず、取引所税法につきまして、この取引所税議論をずっとさかのぼっていろいろ調べてみたわけですけれども、六十三年五月十三日の大蔵委員会で、金融先物取引法案また証券取引法の一部を改正する法律案に対する附帯決議で、「金融証券先物取引等の導入に当たっては、我が国が国際的な金融証券市場としての役割を果たしていくことを踏まえ、適切な条件のもとに取引が行われるようその国際性に十分配意するとともに、取引が公正かつ円滑に行われるよう配意すること。」こういう一文がございます。この「国際性に十分配意する」ということは、海外の先物市場においてはこういう取引所税に類するような流通税は一切課税されていない、そういうことを前提にしているのではないかというふうに考えられるわけです。  それから、平成二年度の税制改正に関する証券団体協議会、業界の要望でも、「株価指数等の先物取引金融先物取引及び各種オプション取引については、取引所税を課さないこととするとともに、国債先物取引及び株式先物取引に対する取引所税課税を撤廃すること。」こういう要望がなされておりまして、その理由一つとして「取引コストの上昇を招き、ヘッジ機能が損なわれる」、それからもう一つは「国内先物市場の国際競争力を著しく減殺する」というような理由が挙げられているわけでございます。また、国会の議論等もいろいろ調べてみますと、どうもこの国際性にかんがみて課税しないというような議論の方が強かったように思われるわけですけれども、そういうことを踏まえて、今回課税するようになった経緯、それからまたこうした税というものに対する基本的な考え方を、まずお聞かせいただきたいと思います。
  52. 尾崎護

    尾崎政府委員 お答え申し上げます。  現行取引所税は、先ほど来申し上げておりますとおり、大正三年の法律という大変古い税でございまして、その内容をただいま御指摘のございましたようないろいろ新しい情勢に合わせるべく改正をお願いいたしている次第でございます。  その課税の根拠といたしましては、公設の取引市場におきまして先物取引が行われる、その取引の背後に担税力を求めるいわゆる流通税という考え方でございまして、このような課税、特に差金決済を伴う先物取引に対しまして課税を行うというのは、明治以来の我が国における長い伝統でございますし、いわばそれは社会の先物取引に対する考え方というようなものを一つバックにしているのだろうというように私どもは考えております。  その先物取引につきましては、先ほど来申し上げておりますように、徳川時代以来の長い伝統、しかもこれは諸外国と比べまして大変発達した制度でございまして、山本七平さんに言わせますと、徳川時代にヨーロッパと比べて我が国が負けていない、進んだものといたしまして、先物市場といいますかいわゆる取引市場の問題と貨幣制度と数学を挙げておられたと思いますが、そういう非常に進んでいた面があって、しかるがゆえにまたいろいろ議論があって、それが明治に持ち越されて、そこでこういう制度ができた、そういう伝統をバックにしているということでございます。  確かにほかの国と比べてュニークな面があろうかと思いますが、各国の税制はそれぞれの国情をバックにしているわけでございまして、我が国においてもこの税の制度というのは維持していくことが適切であるというように私ども考えておりますと同時に、御指摘の国際性の問題その他を考えまして、今回の改正に当たりましては万分の〇・一というような低い税率で全般に課税をするというような考え方を取り入れたわけでございます。
  53. 井上義久

    ○井上(義)委員 今回の税率に決まった根拠というのを少しお聞かせいただきたいと思うのです。要するに、なぜ万分の一で、なぜ〇・一なのかという、この辺をちょっと詳しくお聞かせいただきたい。
  54. 尾崎護

    尾崎政府委員 取引所税税率はいろいろ推移をしてきておりまして、現行取引所税税率の設定の基本的な考え方は、やはり価格のフラクチュエーションの大きいもの、投機性の強いものについては高い税率をかけるというような思想になっていたわけでございますが、今回万分の〇・一というようなことにいたしましたのは、一つは、国際的な面その他を考えまして取引を阻害しないような税率であると同時に、税の性格そのものも、投機性の排除というような見地からではなくて先物取引の持っているリスクヘッジという機能を考えまして、そこで、それぞれいろいろな市場がございますが、リスクヘッジ機能を果たすという点では同じだということで均一税率にいたしました。  なぜ万分の〇・一という税率かと申しますと、実は国債の先物取引を始めますときに、先物取引課税対象に取り込みますときに、大変いろいろな面から検討が加えられまして万分の〇・一という税率適用されました。それが国債の先物市場を阻害することなしに、その税率のもとで国債先物取引市場が順調に発展をしたという経験を持っておりますので、この税率に従ってほかのものにも課税をするということにいたしたわけでございます。
  55. 井上義久

    ○井上(義)委員 そうしますと、これまで商品先物あるいは株式先物については、これは六十三年の改正で万分の一ということになったわけです。それで今回、二年を経ずしてまた万分の〇・一というふうに引き下げられたわけでございまして、一つは、本来取引の背景に担税力がある、そういうことで課税対象になっており、またその税率も決められてきたのではないかな、こう思うわけです。  そういう意味からいいますと、取れるところから取るという考え方になりますと何もこれは一律にする必要はなかったのではないかというのが一つ、それから、この税率それ自体は、今経験上〇・一になったというお話なんですけれども、例えば将来取引拡大をしていく、さらに担税力があるようだということになれば税率の改正というのはあるのかどうか、この辺のことについてちょっと……。
  56. 尾崎護

    尾崎政府委員 先物取引市場におきまして税率の影響ということが一つ考えられましたのは、大阪におきます株先五〇の問題などがあろうかと思います。したがいまして、税率に格差を設けますとそれが先物取引市場に中立的でないことになる可能性はやはり秘めているのだろうというように考えておりまして、リスクヘッジという機能に着目すれば、皆同じような機能を果たしているので均一の税率の方がいいのではないかというように考えたわけでございます。そこは現行取引所税の思想とやや違う点であるかもしれません。それは新しい見地から、あるいは国際的見地からそのように合わせていったということでございます。  それから、万分の〇・一という税率が今後どうなるかということでございますが、これはいろいろの考え方があろうかと思います。税の問題でございますから、時代時代に合わせた見直しというものはあってしかるべきだと思いますが、現行の〇・一、私どもは適切な水準だと考えておりまして、これで制度としてかなり長いこと定着してくれるのではないかというように考えております。
  57. 井上義久

    ○井上(義)委員 今回、先ほども出ましたけれども幾つかの経過措置がとられております。ユーロドルの金利先物取引、また日本円通貨先物取引については二年間の課税延期、それからユーロ円金利先物取引については一万分の〇・〇一の軽減税率適用するということでありますけれども、こうした取引市場発展の見通し、この二年間で本当に課税できるような見通しがあるのかどうかということと、それから、逆に言いますと、こういう取引については海外との関係で軽減税率あるいは課税延期をしなければいけないということになりますと、今回新しく課税するようになった対象についても若干そういう心配があるんじゃないかというのが一つでございます。  そういう意味で、今後のこういった先物市場の発展の見通しと、それからさらに取引全般について、例えば新商品導入は今後どういう見通しがあるのか、この辺のことがわかればよろしくお願いしたいと思います。
  58. 土田正顕

    ○土田政府委員 銀行局で所管しております金融先物取引につきまして、御質問に即しまして御説明を申し上げます。  この金融先物取引所、東京で昨年六月三十日から取引を開始いたしたわけでございますが、これまでのところ、この日本円短期金利先物が総取引量のほとんどを占めておりまして、他の二つは、すなわち米ドル短期金利先物、それから日本円・米ドル通貨先物、この二つの取引は概して低調でございます。この取引低迷の理由は、やはり海外の先物市場との競合ということも非常に大きな原因となっているのではないかと思います。  そこで、この取引所では、今後金融先物市場が健全に発展していくためにどうしたらいいかということで、いろいろ取引の活性策を議論をいたしております。  詳細御説明いたしますとなんでございますので、そのテーマだけ申しますと、例えばシステム取引への移行、これはちょっと御説明いたしますと、現在は電話でこの取引所のオペレーターに注文を出すシステムになっておりますが、それを一歩進めまして、会員が自己の端末機から直接取引所のコンピューターシステムに注文を出せる、そういうシステムに移行したらどうかとか、それからさらには、取引時間の拡大によりまして、例えばアメリカの市場が開いている時間帯に一部ひっかけるというような工夫はできないかとか、新商品の上場とかマーケットメーカーの導入とかいろいろ考えているようでございます。  私どもとしては、これらの施策のうち実現可能なものが実施されまして、それで金融先物市場が今後順調に発展していくことを期待しているわけでございますが、それには相当なノーハウを取得しなければならず、また、基本的には海外の先物市場との競合の状況は依然たるものがあると見込まれますので、前途は決して楽観できないのではないかと思っております。
  59. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 証券先物取引について御説明いたします。  証券先物取引につきましても、やはりリスクヘッジのニーズにこたえるということと、我が国資本市場海外の主要国と同様な立派な品ぞろえのできる市場としたい、こういうこつの要請から順次先物取引を導入しております。既に導入したものは八つ、これから導入しようとするものは一つでございます。  具体的に申しますと、昭和六十年十月に東証におきまして国債先物取引を導入いたしました。昭和六十二年六月には、大阪証券取引所におきまして株式先物取引、いわゆる株先五〇というものを導入いたしました。それから、昭和六十三年九月におきましては、大証におきまして日経平均株価先物取引、それから東証におきまして東証株価指数先物取引を導入いたしました。平成元年六月には、大証におきまして日経平均株価オプション取引を導入いたしました。平成元年十月には、東証におきまして東証株価指数オプション取引を導入いたしました。名証、名古屋証券取引所におきましてもオプション二五、株価指数オプション取引を導入いたしました。平成元年十二月には、米国国債の先物取引を東証において導入いたしました。以上が導入が済んでいるものでございます。  今後の予定といたしましては、本年の五月でございますが、東証におきまして国債先物オプション取引を導入する予定でございます。  これまで導入いたしました取引につきましては、取引高はおおむね順調に推移いたしております。例えば株価指数先物取引について申しますと、平成元年における取引高は、片道でございますが、一日平均一兆一千三百八十二億円、これは東証が三千八百八億円、大証が七千五百七十五億円でございますが、これは東証、大証の規模一兆五千三十二億円の大体八割弱といったことでございまして、現物市場のリスクヘッジ機能を果たすには十分な規模のものになっているわけでございます。  こういったことによりまして、我が国におきましても一通りの証券先物取引がそろうということになりますので、今後は、先物市場がその所期の目的を達成するに十分なように、その機能を発揮していくことを期待しているところでございます。
  60. 井上義久

    ○井上(義)委員 質問を変えまして、私は工学部の出身でございますが、先般同窓会がございまして先輩の先生方といろいろ懇談する機会があったわけですけれども、そのときに話題になりましたのが、要するに、最近工学部の学生がいわゆる金融証券あるいはサービス業に多く流れて、日本の将来が心配である、こういったことが随分議論になりまして、金融証券あるいは保険業は給与が高過ぎるんじゃないか、こういう議論になったわけでございます。  このことに関連いたしまして、金融保険業あるいは製造業の賃金格差の問題、それから人材確保という問題について、大臣の所見をお伺いしておきたいと思います。  九〇年の春闘をめぐって、金融保険業と製造業の賃金格差が大変話題になりました。実際調べてみますと、これは労働省の賃金構造基本統計調査でございますけれども、千人以上のいわゆる大企業でございますが、大体三十歳から三十四歳の大卒で、六十一年度が、製造業が四百三十二万五千円、それに対して金融業は五百九十四万五千六百円。さらに六十三年度の調査を見ますと、製造業が四百三十六万七千三百円、金融保険業が六百二十四万四千九百円と、六十一年度で大体三七%ぐらい、六十三年度で四二%ぐらいの差があって拡大しつつある。  この格差は、例えば製造業が年一〇%ずつ四年間連続して賃上げをして、この間は金融保険業が一回も賃上げをしない、それでも埋まらないんじゃないか、こういうふうに言われているわけでございまして、こうしたことから、経済界の間には、大蔵省の過保護行政のもとで多額の利益を上げているんじゃないかとか、あるいは経済構造が変わっているにもかかわらず手数料が変わっていないという、この利益構造にもっと大蔵省はメスを入れるべきだ、こういうようないわゆるもうけ過ぎ批判というものがあるわけでございます。  賃金が高いことは、これは大いに結構なことで、逆に、製造業の賃金がそれだけ低過ぎるというふうにも言えるかと思うわけでございますが、このもうけ過ぎあるいは賃金が高過ぎるというようなことについて、大蔵省当局はどのようにお考えになっているか、これが第一点。  時間が余りありませんので、それに関連して、いわゆる高賃金ということがすべての原因ではないと思いますけれども、やはり最近、工学系の学生の就職が金融保険関係に流れている傾向はかなりあるんじゃないかと思います。これはデータが余りありませんので、国立大学の工学部出身者、まあ私もその一人でございますけれども、比べますと、六十二年度に比べて六十三年、平成元年度は、大体二倍ぐらい金融保険関係に流れているのですね。  それから、金融保険業はこれからますます発展していくと思いますし、就業者数の割合も、全産業の就業者数の中で年々拡大する傾向にあると思うのですけれども、余りこういう傾向が続きますと、いわゆる技術の空洞化が進んで、技術立国としての日本の将来というのは非常に危ぶまれるんじゃないか、アメリカの二の舞を踏むんじゃないか、こういうことを非常に私どもも心配をしているわけでございます。この点、あわせて所見を承れれば、このように思います。
  61. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 委員の御指摘があるということで、主要業種の現金給与額を調べてみました。確かに、他業種に比して金融保険業は、電気・ガス・熱供給・水道業と並んで相対的に高い水準にあるという御指摘は、私もそのとおりであろうと思います。  ただ同時に一つ申し上げなければなりませんのは、銀行・証券業界に対するもうけ過ぎ批判というものがしばしば出てまいります一つ理由としては、これらの業界が免許業種である、そして大蔵省の保護のもとに置かれているためであるという御議論があるわけでありますが、私どもの立場から申しますと、今日こそ銀行・証券業界の決算というものがおおむね順調に続いていると申すことができると思いますが、これらの業界の収益というものはそのときどきの金融資本市場推移によりまして大きく変動するものでありまして、ある程度長期的な収支を見る必要があるという考え方を基本的には持っております。  同時に、大蔵省の監督下にあるこれらの業種、当然その職責上国民の資産を保全するという役割を担うわけでありますから、企業としての経営の健全性の維持については十分我々は配慮する必要があると考えておりますが、やはりその一方では、預金金利の自由化を初めとした金融の自由化や株式委託手数料の改定などについてもきちんと取り組んでいく責任が我々にあるとも考えております。  ただ、理工系学生の就職の問題につきましては、ちょうど私は昭和三十五年の法学部卒でありますが、私どものころには理工系学生の商社に対する流出ということが非常によく議論をされました。逆に、こちらにおられます平沼筆頭理事とか私どもは、文科系の卒業でありながら紡績の現場の生活を、その当時技術者不足のおかげである程度エンジョイすることができた経験も持っております。私はそういう意味では、それぞれの産業界におきましてニーズの変化に対応しながら技術系の学生の採用がふえていくこと、必ずしも悪いことだとは考えておりません。と同時に、文科系の出身者がまた技術の世界に入っていくことも決して間違ったことではないと考えております。  むしろ問題は、このごろ文科系も理科系も含めまして手を汚す仕事を嫌う風潮がふえたということ、これ自身が私は問題だと思います。これは実は事務方の模範解答とは違うのですけれども、私自身が、学生の世話をし、あるいは自分の卒業いたしました部の後輩たちを世話をし、またボーイスカウトその他の活動を通じて若い諸君を見ておりまして、汚れる仕事を嫌うという風潮が文科系、理科系を通じてこのごろ次第に強くなっているということに対しては懸念を持たずにおれません。むしろ、働いて汗を流すことに対して若い人人がその汗を卑しみ、みずからの手を汚して働くことに対しての誇りを持てなくなっているような状況がもし我が国の教育の中にあるとすれば、これは恐ろしいことだ、むしろ私はこの問題はそんな視点からとらえております。  理工系の学生が金融あるいは証券に流れることが問題なのではない、むしろみずから手を汚して働くことに嫌悪感を持つ若い人々がふえているとすれば、そしてその原因が教育の中にあるのかあるいは社会的風潮の中にあるのかわかりませんけれども、この風潮は恐ろしい、私はそう感じております。
  62. 井上義久

    ○井上(義)委員 終わります。
  63. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 正森成二君。
  64. 正森成二

    ○正森委員 まず私から伺いたいと思いますが「八七年の六月に大阪で株先五〇というのが出発しました。そのときには万分の二十でスタートした後、九月に万分の一・二五、さらに八八年十二月から万分の一に引き下げられて今日に至りました。この取引は、八八年に株価指数先物というのができまして影響を受けるまでは順調に推移したと思いますが、その取引推移説明してくださ
  65. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 株先五〇の取引高でございますが、取引を開始いたしました昭和六十二年、年間全体でございますが、片道計算で十二兆六千億円でございます。六十三年は三十六兆一千億円でございましたが、平成元年に入りまして二百七十四億円、本年は、一月から三月までの間が五十七億円というふうになっております。  この原因は、御指摘のように、日経二二五の株価指数先物取引昭和六十三年九月に導入されました。これは非課税になっております。それに対しまして株先五〇は課税でございまして、万分の一が課税されております。そういったことで、取引コストが違うということからこういったことになったのではないかと言われておるわけでございまして、現に五十七億円という最近の数字でございますが、これは、この取引を維持するためにかなり無理して毎日一単位ぐらいずつはつくっている、こういったことによって形成されているものでございます。
  66. 正森成二

    ○正森委員 ということは、逆に言いますと、そういう国内での競争商品がないときには、方分の一・二五あるいは一であっても十三兆円弱から三十六兆円に伸びたというように、課税そのものは大きな影響がなかったということも言えると思うわけであります。ところが、今度のこの法律を見ますと、課税対象に先物を取り入れたという点では積極面があるのですが、それを非常に低い税率に、万分の〇・一、しかもそれは例外をつくって、二年間は方分の〇・〇一というようにもしているという点で問題があると思います。  今同僚の沢田委員からもお話がありましたが、これだけ多くの先物取引について課税しても、増収見込み額がたった十億円であるというように主税局長が答弁されました。時間の関係で私の方から申しますが、内訳を見ますと、国債先物が四百億円、商品先物三十億円、金融先物四十億円で、合計四百七十億円が平成二年度は見込まれる、これは平成元年に比べて十億円の増収、これは主税局長が答弁したとおりであります。ところが、六十三年度実績ではどうなっているかといえば、国債は四百三億円、商品は百五十九億円、株先五〇が七十二億円で、合計六百三十四億円でございました。したがって、商品では五分の一以下に激減するということですし、年間取引総額が何千兆円にも上る金融先物取引に対する課税額が、年間取引三、四十兆円だった株先五〇からの税収にも及ばないということになるわけですね。これは非常にアンバランスだというように言わなければならないと思うのです。  そのやりとりを聞いておりますと、答弁の中で外国での市場との関係で国際競争力が低下するということを一つ理由に挙げられましたが、我が国の先物市場は国際競争力から見て非常に強いのではないですか。例えば株価指数先物の八九年度の取引金額は、東京、大阪合わせて幾らですか。
  67. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 株価指数先物取引の東京、大阪合わせての八九年全体の年間の数字は二百八十六兆円でございます。
  68. 正森成二

    ○正森委員 もっと多いんじゃないですか。
  69. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 今申し上げましたのは暦年で申したのですが、今のお話、年度ですか。——年度ですと三百三十九兆円だと思います。
  70. 正森成二

    ○正森委員 そうしますと、先物最大の王国であると言われたアメリカのS&P五〇〇を見ますと二百六十八兆円、ニューヨーク先物取引所のNYSE総合株価指数先物は二十一兆円、合わせて二百八十九兆円ですね。ですから、世界最大のアメリカに比べても、わずか一年半でこれを追い抜いて、我が国が文字どおり世界最大になったわけであります。しかもこれは現物の株式取引を上回るというようになっております。  次に聞きますが、国債の先物取引は、八九年で、往復計算で幾らになっていますか。
  71. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 ちょっと今手元に片道の数字しか持っておりませんが、東証におきます国債先物取引は、八九年暦年でございますが千八百九十七兆円でございます。
  72. 正森成二

    ○正森委員 これは片道ですね。ですから往復計算しますと三千八百兆円で、これらに取引所の税がかかってくることになりますが、国債の現物取引は私どもの資料では二千四百七十一兆円で、先物は既に現物のもう一・五倍になっております。これを国際的に比較しますと、同種の先物として世界最大規模の取引を誇るのが、アメリカのCBTと言われているシカゴ商品取引所ですね。ここの財務省証券、Tボンドと呼ばれておりますが、このTボンド先物取引は八八年度で幾らかわかりますか。
  73. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 シカゴの取引所におきますTボンド取引、八八年でございますか。——八八年、これは片道計算でございますが、一定の前提のもとに為替計算いたしまして九百一兆円でございます。なお、その間における国債の先物取引は千八百七十六兆円でございます。
  74. 正森成二

    ○正森委員 今言われたように、円に換算して約九百兆で、ドルで言いますと七兆ドルですね。これも片道ですから、片道と片道を比較すると九古兆と千八百兆ということになって、我が国の国債の先物取引課税されているのですが、それでも既にアメリカ最大規模と言われているところの二倍の規模に達しているわけです。ですから、課税の有無によって我が国先物取引が非常に大きく制約されているとか競争力を失っているというようなことは必ずしも言えないと思うのですね。  そこで伺いますが、全銀協などが、先物取引に対して課税するのは取引に影響があるということで八八年の十月ごろに大蔵省に陳情を繰り返したと思いますが、そのときに、大蔵省が当時言っておりました課税の数字だととてもやっていけないということで、仮にアメリカでこういう税が課されたら利益に対するどれくらいの税負担になるかということを計算しているはずであります。その資料を持っておりますか。持っていたら報告してください。
  75. 土田正顕

    ○土田政府委員 昭和六十三年十一月の全銀協からの税制改正に関する要望の説明資料は所持しております。  その中の「上場商品別税負担率試算」というところを見ますと、例えば私どもの短期金利先物では八八・九%という数字が載っているようでございます。
  76. 正森成二

    ○正森委員 銀行局長、それはあなた、非常に不正確な数字じゃないですか。私はここに日本経済新聞社編の「東京金融先物市場」という本を持っております。その本の中の百七十七ページから百七十八ページにかけてそのときの記録が載っておりますが、そういう数字にはなっておりませんよ。あなたのはちょうど向こうの言っている倍くらいになりますが、往復で二倍にして答えているんじゃないのですか。
  77. 土田正顕

    ○土田政府委員 この数字の算出根拠について私どもみずからつまびらかにしているわけではございません。この説明によりますと、仮に米国の先物取引取引所取引税が課されたものとして、この税額を売買益で割ったものの試算であるという説明がついてございます。
  78. 正森成二

    ○正森委員 この本にはまさにそういう説明で数字が載っているのですが、それは、仮に短期金利について一万分の〇・五、それだけ課税されたとすると税負担率は四四・四七%であるというように載っております。ちょうど銀行局長が言われた二分の一ですね。それから、長期国債について仮に一万分の〇・一課税されたとすると、利益に対する脱負担率は〇・〇六%である、こうなっております。また、株価指数について一万分の一課税されたとすると、税負担率は五・八三%である、金先物取引について一万分の一の場合は〇・一八%である、こういう数字を並べて、短期金利が非常に高いからこれを下げてほしい、こういう陳情なんですね。だから、短期金利以外は物すごく利益に対する負担率が少ないのですね。  現物の有価証券取引ではどうですか。五%の利益と見てその二〇%税を課するということで、取引に対して一%かけているのでしょう。有価証券取引税じゃないですよ。キャピタルゲインについてですよ。この場合は物すごく低い利益率になっているわけであります。ところが、それについて短期金利は一万分の〇・五どころか一万分の〇・一で、経過措置で〇・〇一ということになるわけですから、実に五十分の一ということになれば、この全銀協の試算が正しいとしても、利益に対して一%も課税されないということになるのですよ。  私は何もスペキュレーションが全部いかぬとは言いませんよ。スペキュレーションがあるからヘッジの効果も上がってくるというような面も一部にはありますからね。しかし、とにもかくにも物すごく金を持っている者が、それなりにもうけのことも考えあるいは自分のヘッジのことも考えてやる場合に、かくも取引所税が低いなんて、そんなことがありますか。全銀協のこの試算から見ても非常に低いじゃないですか。一%にもならないなんて、庶民の感覚からいってどう思いますか。消費税は赤ちゃんのおむつにまで三%かかっているのですよ。それなのに、何億、何十億といって余資を動かしている者が幾ら取引したってこれだけしかかからない。  どうして一万分の〇・一で、経過措置の中ではさらに〇・〇一にするというようなことをしたのですか。それから、商品取引については長らく一万分の二・五だったでしょう。それをこの間の税制改革で一万分の一に便乗値下げして、今度さらにほかの先物取引に統一するということで一万分の〇・一にしたでしょう。実に二十五分の一にここ二、三年のうちに下げているじゃないですか。そういうことをやって大体庶民が納得すると思いますか。
  79. 尾崎護

    尾崎政府委員 今回の取引所税税率でございますが、取引所税の性格が、取引所において行われます取引の背後に担税力を見出すということでその税負担を求めます流通税でございます。そこで、取引が行われますと課税が行われるということでございまして、所得に対して課税しているものではございません。先ほど御指摘のキャピタルゲイン課税の方は、所得に対する、キャピタルゲインに対する課税というのがあくまで前提でございまして、そこは流通税と違うわけでございます。  なお、商品取引等に係ります税率につきまして引き下げてきた理由でございますが、最近におきます先物取引の性格がリスクヘッジという面が非常に強く出ておりますので、リスクヘッジという機能に着目いたしますと、すべての先物取引に同じ税率適用することがよいのではないかということで〇・一にそろえたわけでございます。
  80. 正森成二

    ○正森委員 いろいろ言われましたが、現物の有価証券については、私はキャピタルゲイン課税について言いましたが、有価証券取引税だって先物よりずっと高いじゃないですか。だからこそ税収も、この間の税制改革で税率をあれだけ下げて、なおかつ一兆二千億円あるじゃないですか。それに対して先物は、今私が説明したように、文字どおりそれの百分の一ぐらいじゃないですか。いかに低いかということがわかります。  それから、時間が参りましたからやめさせていただきますが、もう言う時間がなくなりましたが、例えば金利先物でも、先物取引には最小変動値幅というのがあるでしょう。その最小変動値幅から見たって、英語ではテックというそうですが、非常に低いですね。だから最小の変動値幅で、例えば金利先物だったら一%の百分の一、〇・〇一%を最小変動値幅というのです。そうすると取引が動くのですね。その最小の変動値幅でいったって、この取引所税を払ってもなおおつりが来るというぐらいもうかるようになっているのですよ。だからいかに低いかということがわかるのです。  これは、時間が参りましたので多くは言いませんけれども、私どもは、今回のこの税率のあり方については、取引拡大させるという観点から見ても非常に低過ぎるということを指摘して、質問を終わらせていただきます。
  81. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 中井洽君。
  82. 中井洽

    ○中井委員 私どもの党はこの法案に対して賛成でありますし、時間も十分ということですので、極めて簡単に二、三の観点から方向等をお尋ね申し上げたいと思います。  最初に、先物取引というのが世界のどういう国国でやられておるのか、その取引所日本のような税金をかけておるところはあるのかないのか、この点について再度お答えをいただきます。
  83. 土田正顕

    ○土田政府委員 金融証券先物取引を行っている国でございますが、米国を初めといたしまして、西欧主要国、イギリス、フランス、西ドイツ、スイス、さらにカナダ、豪州、ニュージーランド・シンガポールなど世界のほとんどの主要金融先進国において先物市場が設置せられまして、金融証券の先物市場取引を行っている現状でございます。  その中の世界の主導的な立場にある主な市場としましては、米国のシカゴマーカンタイル取引所、シカゴ商品取引所、フィラデルフィア株式取引所、また英国のロンドン金融先物取引所、フランスのフランス金融先物取引所などがあると聞いております。
  84. 尾崎護

    尾崎政府委員 諸外国におきまして、我が国取引所税のような税はございません。
  85. 中井洽

    ○中井委員 すべての問題で国際性がやかましいとき、しかも金融先進国だけにこういうのが成熟して取引所としてある。しかも、それぞれの国の取引が非常に競争をし、またもたれ合っている。こういう今日の中で、日本の先物市場も当然国際性を持たなければならない、同時に、共通の倫理概念も持っていかなければならないと考えるわけであります。  そういうときに、日本だけがいつまでこういう税金をかけ続けておるのか。四百七十億円という金額にこだわって、あるいは税収を取れるところから取るということにこだわってこういうことをやっておって、本当に金融あるいはこういう市場の国際性というのが諸外国からやかましく言われないのか、その点について大臣どのようにお考えですか。
  86. 尾崎護

    尾崎政府委員 先ほど来るる申し上げておりますとおり、この取引所税は大変古い歴史を持っております。我が国の社会において一つの物の考え方我が国社会の物の考え方を背景にしている税であると考えております。  御指摘のとおり、非常に国際化が進んでおりますし、他国の先物取引とのバランスから考えてどうかという点は、確かに一つ問題点であると考えております。したがいまして、この古い伝統と新しい物の見方の間に立ってどのように税制を考えたらいいのかということで今回の改正をお願いしているわけでございます。  税率といたしましては万分の〇・一というような大変低い税率を用いまして、これは国債先物取引の経験からいって取引にまず影響はないということが言えるかと思いますので、そういう点で税率をそろえたというのも御指摘のような視点に立ってのことでございます。
  87. 中井洽

    ○中井委員 大蔵省の税制の改廃やら新設というのは、見ておりますと、私は素人ですからわかりませんけれども、どこかを減らせばどこかでふやす。減らすということだけではもう絶対おさまらない。これはいい意味でいえばスクラップ・アンド・ビルドでありましょうが、今回の改正でも万分の一にしておるのと万分の〇・一にしておるのがある、どうしてそういうふうになっておるのかというのは私どもなかなかわからない。要は、トータルで去年四百六十億円の税収があったから、ことし四百七十億くらいの同じような税収を確保しよう、こういうとごろにあるんじゃないか、こんな気がいたします。そういうことをいつまでもやっておると、世界的な国際性の中、あるいは逆にまたそういう中での国際競争力、そういったものにおくれていくんじゃないか、このように考えるわけであります。  そういう意味で、経過措置二つがございますが、この経過措置二つは、国際競争力、他の市場との、あるいは日本市場との競争力を考えて経過措置をとられた、このように判断してよろしいのですか。
  88. 尾崎護

    尾崎政府委員 取引所税税率を考えますときに、御指摘のような見地で万分の〇・一と万分の一という税率を設けたということはございません。万分の一はオプション取引についてでございまして、それは課税対象が手数料で違うからでございます。むしろ万分の〇・一とバランスがとれていると私どもは考えております。  それから、国際的な視点ということは、先ほど申しましたように万分の〇・一というような低い税率にその考えがあらわれているわけでございますが、あわせまして金融先物取引につきまして特別の配慮をいたしておりますのは、国際的な観点もございますし、また、その発足当初でございまして、その市場状況等を勘案したものでございます。
  89. 中井洽

    ○中井委員 印紙税ですとかこういう取引所税とか、世界の中でこれから本当にいろいろな会社やら企業がグローバルに活躍をしようとするときに、あるいはまた諸外国からどんどんと日本へ御進出をいただこうというときに、そういう古い歴史的経過がある日本独自の税制だ、こういう形でいつまでもこだわっておったのでは、日本世界じゅうからおくれていくし、非難を受ける原因になると考えております。税収を確保するということも一つ大事なことでありますが、思い切って世界の大勢あるいは先進国のいろいろな制度に合わせていく、そういう柔軟性も必要である、このように考えております。  そういった意味で、余り数字合わせ、あるいは先ほどは江戸時代からの話も出てまいりまして、江戸時代から成熟しておったということでありますが、官僚機構も江戸時代から成熟をされて今日までお続きでありますからわからないことはないわけでありますが、いつまでもそういう発想ではいけない、私はこのようなことを痛感をいたします。そういった意味で、素人っぽい私の意見でありますが、大臣のお考えをひとつ聞いて質問を終わります。
  90. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今委員が述べられたような視点、私も決してそれを否定するものではありません。しかし同時に、やはり税制というものは、どれだけそれぞれの国が成熟してまいりましても、その国の歴史と現状というものに着目したものであり続ける性格を持つであろうと思います。  そうした中で、国際社会の中において果たしてこの税制が今委員が御心配になるような懸念を生むものなのかどうか、必ずしも私にも確信があるわけではありません。こうした御注意がありましたことも脳裏にとどめながら、今後眺めてまいりたい、そのように思います。
  91. 中井洽

    ○中井委員 終わります。
  92. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  93. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  取引所税法案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  94. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  95. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕      ────◇─────
  96. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  税制に関する件調査のため、来る二十七日金曜日、参考人として読売新聞社論説委員川岸近衛君、朝日新聞社論説委員高橋文利君、毎日新聞社論説委員玉置和宏君及び日本経済新聞社論説委員小島明君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  97. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十五分休憩      ────◇─────     午後一時一分開議
  98. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国の会計、税制及び金融に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出顕要求に関する件についてお諮りいたします。  各件調査のため、本日、参考人として日本銀行副総裁吉本宏君及び日本銀行理事福井俊彦君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  99. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。     ─────────────
  100. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 財政金融基本施策について、質疑の申し出がありますので、順次これを許します。堀昌雄君。
  101. 堀昌雄

    ○堀委員 新しい、選挙後の初めての大蔵委員会における一般質問、きょうは主として、この間大変皆さん御苦労されましたG7の関係の問題や、その他為替市場というものについてのいろいろな基本的な認識の問題、さらにそれに対する対応の問題、こういう問題を最初にやらしていただきたいと思います。  二番目は、御承知のストラクチュラル・インペディメンッ・イニシアチブ、私は構造障壁協議だとこう思っておりますけれども、この構造障壁協議、だんだん進行しておるようでありますが、この次に来るのは、どうも金融に関するこれらの問題がその次の主要な課題になるだろう、こう考えておりますものですから、後半の方ではこの問題に関連しての大蔵省及び日本銀行の御見解を少し承っておきたい、こう考えるわけであります。  要するに、今私ども日本経済にとって一番重要な問題というのは、何といいましても国際的な経済の中で日本が非常に大きな力を持っているのでありますから、それなりにそれにふさわしい役割を果たすような処理ができなければならない、こう考えるわけでございます。  そこで、その点について、私はどうも国際的に日本の現在のパフォーマンスというものが世界の人に十分理解されていないというふうに感じるわけであります。このことをひとつきょうは私の立場から、日本の現在の経済におけるパフォーマンスというのは非常に力があるんだということを、実はこの委員会で、私からも申し上げ、また政府の側からも、あるいは日本銀行からもお答えをいただきながら明らかにしたいと思います。  そこで、私は今から三年前、「開かれた東京金融資本市場をめざして」、こういう形で、当時の竹下自民党幹事長それから伊東正義自民党政調会長、公明党の正木良明さん及び坂口力当時政審会長、民社党の永末副委員長、米沢政審会長、私どもは私と武藤山治君が発起人となりまして、実は社団法人国際金融経済研究所というものをつくって、これをつくりましたのは、何としても日本市場が開放的になって、世界で非常に力のある日本世界の中でそれなりの什事をすることが大変重要だ、こう考えて実はやってまいったわけでございます。  その最初の設立総会における発起人代表でございます自由民主党幹事長の竹下登さんのあいさつの中をちょっと引用させていただきますが、   昨年行われました前川報告にもありますように、我が国金融資本市場の自由化と、円の国際化はすみやかに行わなければなりません。このことは国際的な我が国の公務でもありますが、一方国内的には制約もあります。私たちはこの点に着目し、報告にも述べておりますように、「金融資本取引の自由化に伴い取引が国際的規模で行われており、我が国経済的規模にふさわしい、金融資本市場を確立すべきである。これが円の国際化の実現につながることとなる。   このため、金融資本取引の自由化を更に推進し、非居住者による資本の調達、運用の両面での取引拡大を図るべきである。   従来から、資本調達面に比し運用面の国際化が立ち遅れており、今後、資金運用市場機能の整備を進め、調達、運用両面のバランスが確保されることが不可欠である。   資金運用市場強化のためには、(1)投資資産の多様化。特に短期金融市場の整備が喫緊の課題である。(2)流通市場拡大強化。取引の国際化に伴う制度及び取引面の国際的な整合化、なかんずく税制面での国際化が必要である。」 これを当時の自由民主党幹事長の竹下登さんが設立総会におけるあいさつの中で述べていただいているのであります。  私どもの研究所、その後だんだんと陣容客を整えまして、現在、星野大造さん、今度日本銀行貯蓄広報中央委員会の会長に御就任になりましたし、その他自由民主党からは、この研究会に大変よく御出席をいただいておりました海部俊樹さん、野田毅さん、池田行彦さん、中村正三郎さん、中西啓介さん、こういう方も昨年の二月に理事になっていただきまして私どもと御一緒に勉強していただいておるところでありますが、理事になっていただいてすぐ野田さん、池田さんが閣僚におなりになって、社団法人は大臣理事を兼ねられませんので、理事を辞職をしていただきまして、そしてまた今お返りいただいて理事になっていただいておりますが、今度は理事の海部さんが総理になられるということで、また理事をおやめいただいておるわけであります。  そういうふうに与野党挙げて、あるいは専門家を挙げてやっておるわけでありますけれども、今のこの前川報告の問題を私どもは三年前にここでやっているんですけれども、余り進捗していないというのが率直な現状でございます。ですから、これを後段の方でひとつやらせていただきたい、こう思っておるわけでございます。  そこで、G7、この前、大臣もアメリカからお帰りになってまたパリへと、大変なハードスケジュールで御苦労さまでございました。大変タフネゴシェーターだと私が思っております内海財務官が、聞くところによりますと、この作業の中で四キロ体重が減ってワイシャツががたがたになった、こう言っておるのでありますから、大蔵省の千野国際金融局長を含めて皆さん、大変な努力をされたことを私は高く評価したいと思います。  ついては、ひとつ国際金融局長の方から、七カ国蔵相・中央銀行総裁会議説明の中のポイントのところだけをちょっとお答えをいただきたいと思います。
  102. 千野忠男

    ○千野政府委員 先般のG7におきましては、各国の代表が忌憚のない意見の交換をいたしたわけでございますが、その中から結果として七カ国蔵相・中央銀行総裁会議声明というもの、コミュニケというものが発表されたわけでございます。  第一点は、各国の経済政策や見通しについての検討の結果、経済成長は世界的に見ていわば持続的な水準に減速をしてきたというふうに見られた。これは結構なことである。そういう減速した成長のもとでも、力強い投資がこの経済に刺激を与えておって、今後も成長の見通しは良好であるということを第一点として言っております。  それから第二点として、物価の上昇を低水準にとどめ、為替レートをより安定させるために、マクロ経済政策それから構造政策について引き続き緊密な協調が必要であるということを表明をいたしております。そういう中で、経済協調としては、財政や経常収支赤字である国は、財政赤字を削減をし、民間貯蓄を増加させるべきであるということが合意されております。また逆に、対外黒字を有する国は、適切なマクロ経済政策や構造政策を通じてインフレなき内需の成長を促進をし、引き続き対外調整に貢献すべきであるということについて合意をいたしております。それから、そういう中ですべての国において貯蓄が促進されるべきであるということも言われております。  それから大きな第三点といたしまして、世界金融市場展開金融市場の動き、特に円の他の通貨に対する下落について、また、それが世界的な調整過程に及ぼす望ましからざる結果について議論をし、今後その動きをみんなで検討していこうということになりました。なお、為替市場における協力を含めて経済政策の協調についてのコミットメントを再確認をしたのでございます。  第四点は、東欧における動き、市場指向型経済に対する動きというものを歓迎をするということであります。そのためにもろもろの協力をすることが必要であるということで意図表明がされたのでございます。  ポイントは以上のとおりでございます。
  103. 堀昌雄

    ○堀委員 どうもありがとうございました。  そこで、一番近い時間の現在の為替状況をちょっと御報告をいただきたいと思います。
  104. 千野忠男

    ○千野政府委員 東京市場における為替のごく最近の動向ございますが、昨日の終わり値が百五十九円四十二銭でございました。けさの寄りつきは百五十九円七十五銭、前場の終わり値が百五十九円七十六銭でございます。
  105. 堀昌雄

    ○堀委員 皆さんがいろいろと御努力をされておるのでありますけれども、実は為替の問題というのはそんなに急に上がったりというようなことになるわけではございませんから、しばらく時間をかけて問題の処理をしなければならない、こう思うのであります。  私は、ちょっとさっきもお話しを申し上げましたけれども、実は二年ばかり前にフランスの財務省というのですか、大蔵省でありますか、次官の仕事をしておりますトリシェという人と何回か会っているのです。トリシェさんと話をしておりまして、その当時日本の個人貯蓄は六百兆円ある、年率で大体一〇%程度毎年ふえているので、私は、欧州大陸の中ではパリを一番中心の金融市場に発展させるために日本の非常に大きな個人貯蓄を活用したいと思うという話をいたしました。そうしたらトリシェ氏が、私はフランス語ができませんので近藤さんが通訳をしてくれていたのでありますけれども、堀さんの言うのは一けた位が違うのではないか、こう近藤さんに尋ねたようであります。そこで近藤さんが、いやそうではありません、堀さんの言われたとおりです、こう言いましたら、途端にトシェ氏の態度が変わってさまして、日本はそんなに資金があって、その巨額な資金が毎年一〇%ずつ伸びている、堀さんがパリの金融市場日本金融機関ができるだけ協力するようにやりたいから日本金融機関を大事にしろ、こういう提案については全く同感だ、こういうふうな話をした経緯が実はあるのであります。  ですから、フランスのそういう大蔵省の次官ですら、日本の個人貯蓄というものがどのくらいの大きさがあってどのくらい伸びているかということを全然知らないで、一けた小さい、要するに六百兆ではなくて六十兆ではないかなどという認識は、私は今、世界の中で日本がいろいろと重要な位置を占めておりながら、正確に認識をされていない一つの例だと思います。後でまたこの問題にも触れますけれども、要するにこの問題の一つの大きな問題は、どうしても日本の現状をこの場所で少し明らかにしておきたい、こういうふうに思うことであります。  同時に、今御承知のように円安がずっと続いておるのでありまして、実は「現在と一九七八年ピーク時との実質為替レート(WPIベース)比較」という資料を見てみますと、一九七八年の十月、これが一八四でございました。そうしてそれがずっと実は変わってまいりまして、低いところが八二年、八五年とあるようでございますが、またずっと今度は上がっていきまして、そして結果的に三月の直近の状態というのは実質レートが大体百五十円、指数が二一四とこうなっているのでありますけれども、要するに一回こう下がって、こう上がって、またこう下がっているわけでありますね。  結局、最初の一九七八年から八二年くらいまでの間に起こってきたことは何かというと、アメリカの場合にはハイテクの産業と工作機械というものが大変なダメージを受けてきた。そうして、今度また今御承知のように円安になってきますと次はアメリカで何がダメージを受けるかといえば、もう残っておるのは自動車産業しかない、こういうことになるのでありますから、私は、アメリカは今自分の国の政策として必ずしもドル安になることを望んでいないようにいろんな情報で見受けるのでありますが、もしこのような状態がずっと続いていくと、日本は国内的に問題がありますけれども、今せっかくアメリカが貿易調整の問題をいろいろ言っておりながら、結果的に我々の手の届かない形で貿易調整が逆の方向に動いていくということが起こりかねないと思うのであります。  そこで関税局長にお答えいただきたいのでありますけれども、昨年の七—九からことしの一—三までの季節調整済みの通関ベースにおける輸出入の状態を、価格の問題と数量の問題でちょっとお答えをいただきたいと思います。
  106. 瀧島義光

    ○瀧島政府委員 お答えいたします。  まず、昨年の第一・四半期、四月から六月でございますが、輸出入の差額だけでよろしゅうございますか。
  107. 堀昌雄

    ○堀委員 いや、やはり入った方と出た方、トレンドを見なければなりませんから差額ではわかりません。
  108. 瀧島義光

    ○瀧島政府委員 はい。四—六は、輸出が六百六十七億ドル、輸入が五百五億ドル、出超幅が百六十二億ドルでございます。それから、七—九を申し上げますと、輸出が六百九十四億ドル、輸入が五百三十九億ドル、出超幅が百五十五億ドルでございます。それから第三・四半期は、輸出が六百七十二億ドル、輸入が五百四十九億ドル、出超幅が百二十二億ドル。端数、若干違いますが、四捨五入の関係です。それから第四・四半期、ことしの一—三が、三月は速報値でありますけれども、輸出が七百四億ドル、輸入が五百四十九億ドル、出超幅百五十六億ドルでございます。  それから、数量につきましては、金額と同じような意味での季節調整済みの計数というのはありませんので、原指数で申し上げます。八九年の四—六から申し上げますと、伸び率で申し上げます、前年同期比で輸出は三・三%の伸び、輸入が四・一%の伸びでございます。それから第二・四半期、輸出は七・六%の伸び、輸入は四・七%の伸び。それから第三・四半期、輸出が九・〇%の伸び、輸入はマイナス〇・一%。それから第四・四半期、つまりことしの一—三でありますが、輸出が二・八%、輸入が四・二%の伸びでございます。——大変恐縮でございますが、今、資料作成者がここへ飛んできまして、輸出と輸入と今逆に申し上げましたので、輸出のところは輸入と置きかえていただきたいと思います。
  109. 堀昌雄

    ○堀委員 一番肝心なのは実はこの第四・四半期、一—三月ですね。そこで、この一—三月はどうやら為替が非常に円安に振れているものですから、一、二、三月の今の関連の部分における計数をちょっとお答えいただきたいのです。
  110. 瀧島義光

    ○瀧島政府委員 数量指数が一月、二月、三月と分けてございませんので、季節調整の金額の数字だけ申し上げます。一月の分でございますが、輸出が二百二十六億ドル、輸入が百八十六億ドル、差額が四十億ドル。それから二月、輸出が二百三十一億ドル、輸入が百七十四億ドル、差額が五十七億ドル。三月、輸出が二百四十六億ドル、輸入が百八十七億ドル、差額が五十九億ドル。  以上でございます。
  111. 堀昌雄

    ○堀委員 今皆さんお聞きのように、この一—三月の、特に月別の一、二、三のデータをごらんになれば、明らかに輸出は二百二十六、二百三十一、二百四十六とふえてきつつあるわけでありまして、恐らく今のままなら四月、五月、どんどんふえていくのだろう、こう思うわけであります。ですから私は、この為替の問題などということを短期にどうこう考える必要はないのであって、ある一定のタームで物を考えれば十分だ、こう考えているのであります。  そこで、この為替というのも実は市場でございますね、為替市場、非常にたくさんの取引がここで行われた結果が一つ為替の価格として出てくるわけであります。  ちょっとその問題について、何か講義めいた話をして大変恐縮なんでありますけれども、私は、祖父も父も医者の家に育って、大学は大阪大学医学部を卒業した医師でありますけれども、実はいろいろな経過がございまして、昭和三十三年五月の社会党が左右両派統一をいたしましたときの統一候補として選挙に当選をいたしまして、そのときは、実は社会党は百六十六名当選をいたしました。そのときの議員定数は四百七十八名で現在より大幅に少ないわけでありますから、四百七十八名の中の百六十六名、パーセントにしてたしか三四%余りでございまして、社会党と自民党以外には共産党の志賀義雄さんが一人という、まさにこれが五五年体制と言われる形でございまして、あの議場の中で、私や、ここに写真が出ておりますけれども、今度やめていった角屋君だとか安井君だとか、彼らと一番前列に並んで実は当選をした経緯がございます。  私は、その医者の立場として、経済の勉強をするのに非常に役立ったという問題が一つございますのは、実は我々の体は、自分で動かそうとする、例えば手は動かせる、目もぱちぱちできる、こういろいろ自分で動かせる部分があるのですが、自分では動かせないものが動いているのがたくさんあるわけです。例えば心臓などというのはちょっととめようといったってとまらないし、これはコントロールは意思ではできないのですね。それから消化管、要するに胃や腸も皆オートマチックに全部動いておる。血液も全部です。呼吸も、我々寝ていてもちゃんと呼吸できるというのは、そういう自律神経というシステムによって実は我々の体は機能しているわけです。  ですから、例えば大変暑いときは御承知のように汗が出ます。汗が出るということはどういうことかといいますと、表面がぬれてくると、この水分が蒸発するときに気化熱を奪うということで、体温をここから放散するというふうに物理的にちゃんとなっているのですね。寒いところへ行きますと、顔面蒼白といいますか、そこらじゅうが白くなります。それは、体温を保持するためにはオートマチックに、温度がある程度下がったところへ行けば、血を一番脂肪の多いおなかのところに全部やっている、末端血管が自動的に縮小して、血液を一番温度が下がらない脂肪の多い腹部に集める、こういうふうに自律神経系統というものが私どもの生存の最も重要な働きを実はしているわけであります。この自律神経というものは、交感神経というのと副交感神経という相互に括抗した神経の作用がオートマチックに外の状態に応じて対応できる、こうなっておりまして、その交感神経という方は心臓をしっかり動かす方、そして副交感神経というのは逆に心臓をゆっくり動かす方、交感神経というのは要するに血圧をぐっと上げる、そして副交感神経というのは血管を拡張して血圧を下げる、そういうふうなオートマチックな仕組みがあるのです。  それで、私は大蔵委員会昭和三十五年の一月に参りまして、旧制高等学校以来のマルクスの信奉者でございましたけれども、大蔵委員会へ来ていろいろ勉強をしておりまして、ははあ、経済の中における市場、要するにプライスメカニズムという機構が人間の自律神経と非常に共通しているところがあるなということに気がついたわけであります。これはアダム・スミスが言う「見えざる手」ということで、市場の中で、いろいろな出合いの中で、要するに物が非常に生産量が減ってくれば、買い手の方が高くても買いたいということで価格は上がる。生産がたくさんできて過剰になれば値段が下がる。それが行き過ぎたときに過剰生産恐慌というのが、実はマルクスやエンゲルスが生活していたロンドンで起きているわけであります。  そういう過剰生産が起きるというのは、大体一つの工場の中では分業は極めて適切に行われるけれども、会社が幾つもあると分業はそういうふうにならないので、もうかるとなるとみんながその商品をつくる、そうすると生産が過剰になる、過剰になると売れなくなる、売れなくなると自分の会社から労働者を首を切って外へ追い出す、ますます消費が落ちて、やがて恐慌が来る。エンゲルスは「反デューリング論」という論議の中で、これはまさにフーリエが言っておるような過剰生産恐慌なんだ、十年に一遍ずつやってきて、今五回目の恐慌が起きておるということを言っているのであります。  そういうものをずっと勉強してきて私が感じましたことは、どうもソ連のやっておりますあのやり方、ノルマを決めて、そしてノルマを達成したらそれに見合う賃金だけを渡しているということでは生産は伸びないのじゃないか、生産性は上がらないのじゃないか。人間は人よりもいい暮らしをしたいという欲望がある。しっかり働いたら働いただけの収入がもらえるのならば、それはみんながやる気になりますけれども、決まった仕事で決まった賃金で、それ以上やっても別にどうもないということならば、できるだけ楽をしてそのノルマを果たせばいい、こういうことになる、こういうふうに気がついたものですから、昭和三十六年ぐらいから、どうもソ連の社会主義というのは問題がある、こう考えたわけであります。  そこでマルクスをもう一回ひっくり返してみますと、マルクスは「ゴータ綱領批判」という中で、第一段階の社会主義、いわゆる我々がこれまでの言葉で言っておる社会主義の段階は、資本主義のいろいろなものを引き継いでおる、モンゴリアン・フレッケンのような、母斑という言葉を使っていますけれども、そういうものを引き継いでいるから、この段階は能力に応じて働き、能力に応じて取るということが必要なんだ。しかし、これが一定段階へ行くと第二段階の社会主義で、我々は旗の上に、要するに能力に応じて働き、必要に応じて取れるようになる、大変楽観的な話でありますけれども、そういうことを書いているわけですね。  社会党の中で私が市場経済だ競争原理だなんて言ったって通るわけはありませんが、マルクスがこう言っているというのは、これは私の党の中ではすぱっと通るわけでして、これはちょうど水戸黄門の葵の紋章みたいなものですから。そこで私は、競争原理、市場経済というのは、資本主義、社会主義を分ける基準ではないんだ、経済の基本的なファンダメンタルズなんだということを党内でやり始めたわけであります。  ですから、そういう意味では——私ちょっとここで古い会議録を、簡単にポイントだけを読みますけれども、これは昭和四十年十二月二十三日、佐藤総理との間の論議でございますけれども、  ○堀委員 最後に、今度の公債の利回りが六分五厘ということで、発行価格によって応募者利回りは変わりますけれども、利子は六分五血ときまりましたようですね。このことは、やはり私は日本の今後の金利政策を含めての問題に、公債の表面金利の問題はかかわりがあると思っておるのです。ここで、公債問題について私どもが非常に考えておかなければならぬのは、公社債市場がない形であれば強制割り当て方式のようなものはどうしても続くのではないか、どうしてもこれは公社債市場を——私は大蔵委員会予算委員会、いろいろなところを通じて過去四年にわたってこの問題を論じてきたけれども、いつまでたってもできないのですよ。なぜできないのか、金利が自由化してないからできないのですよ。現在は何だかんだといいながら、金利が固定化しているために、固定化している限りでは私は公社債市場というのはできないと思うのです。資本主義というのはどこにメリットがあるかといえば、需要供給によって価格がきまるというところに、メリットがあって、需要供給で価格がきまるところから、全体が自律的に働かない限り、金利が固定しておる限り、いまの日本金融の不正常は直らないと思うのです。何か国債を発行したら金融が正常化するようなことの手始めだなんという経済評論の人もありますが、私はそれは逆ではないかと思う。もうちょっとすみやかに公社債市場ができておるならば、国債発行というものは非常にスムーズにいくけれども、公社債市場のないところで年間七千億くらいの公債を発行する、あるいは一兆二千億から三千億の政保債、地方債を含めて発行するなんということは、ほんとうは常識では考えられないことなんですね。総理、これは大蔵大臣からもお聞きいただいて、総理からも伺いますが、あなたも資本主義の政府を代表しておるならば、資本主義は資本主義らしくやるということに踏み切ったらどうですか、その点は。資本主義の一番肝心な金利が、ともかく統制的に戦後のまま置かれて、自由化してないようなそんなところがいま世界資本主義国のどこにありますか。日本だけじゃないですか。要するに、金利が自由化をしたときに、私はプライスメカニズムが働いて、これこそほんとうの歯どめになるのではないか、こう思っておるのです。それでなければ、これはほんとうの歯どめにならないのです。私は、きょうはこの時間を通じて歯どめについての言質を総理からだいぶいただきました。しかし、ほんとうの歯どめは、金利が自由化をして、プライスメカニズムが働いて、公社債市場ができたときに、金利の情勢に応じて発行できる限度がおのずからきまるということになる。これがほんとうのオーソドックスな歯どめですよ。この点について、ひとつ大蔵大臣、総理大臣から明確なお答えをいただきたいと思います。  ○福田(赳)国務大臣 お考えは全く同感です。しかしその手順は、そう簡単にはなかなか取り運ばない。そこで私は、まず公社債市場というものをつくるほうから手がけてみたい、こういうふうに考えています。ぽつぽつ政保債の値つけ市場というものをつくる、これが完熟した時期にこれを市場に上場する、そうすると、大体国債への地ならしができるわけでありまして、その時期を見まして、国債の値つけ市場、次いでこれを上場する、こういうような手順を踏みながら、お話のような国債消化の正道をつくっていきたい、かように考えるわけです。  ○佐藤内閣総理大臣 ただいまの大蔵大臣のお答えでおわかりだと思いますが、私は大蔵大臣時分から公社債市場の育成強化というようなこともいろいろ論議してまいりましたが、なかなかできない。このもとが、ただいま御指摘になりました金利が自由化されない、そういうところにあるのだ、かようなことでございます。あらゆる面において統制がはずされてきておるが、金利については依然としてこれが続いておる、こういうことについてどうしてもメスを入れなければならない。そういう時期にくるのだ。しかし、いま大蔵大臣が申しますように、どういう道をとるか、どういう手段をとるかということが一つの問題なんだ、かように申しておりますが、これで私どももまず公債を発行する、また、今日の状態のもとにおいては、金利の自由化は完全ではございませんが、そういう方向に向かうものだ、かように私どもは思っております。  ○堀委員 私は、この金利の問題というのは、事務当局の皆さんは非常に慎重だと思うのです。しかし、これは実はきわめて政治的な問題なんですね。勇気を持ってどこかで環を切らない限りは、この環は続いているわけです。どうしても切れないのです。私はもうほんとうに、大蔵委員会会議録をごらんいただけば、この問題について大半を費やすくらいやってきて、なおかつ今日だめだというのはふしぎでならないのです。はたして日本資本主義の国家なのかどうか、(中略)資本主義である限りは、資本主義がうまくメカニズムが相互に働いて、自律的にいってもらわなければ国民は迷惑するんですよ。私はさっきこうこうこうなったと経済成長のクオーター別の伸び率を申し上げたのは、金利が固定化しているからああいうことが起きるのです。 ああいうことというのは異常な高度成長です。  諸外国でなぜ起きないのか。金利が自由化されているから、当然そこで歯どめがかかって、そうならない仕組みがある。日本はそうなっていない。私は佐藤さんが安定成長をおっしゃるなら、安定成長のきめ手は金利の自由化以外にないですよ。私はあなたが少なくとも在職中に金利の自由化をなされなければ、あなたのおっしゃった安定成長というのは、あれはにせものだ、こういうふうに理解せざるを得ないと思います。ひとつあなた、在職中やるということを御確認願って、私は質問を終わります。  ○佐藤内閣総理大臣 私は、社会党の堀議員からこの話を伺うことを非常に愉快に思っております。私もそういう状態をぜひともつくりたい、かように考えておりますので、御協力を願いたいと思います。ありがとうございました。 これが実は昭和四十年十二月ですからね。今は昭和で言えば六十五年ですから、実は二十五年前から、池田さんの管理低金利政策というもので日本は異常な高度成長ができた、それはそれなりの功罪がありますけれども、これは、まさに私が二十五年かかってやっている経済の自由化、これがいかに時間がかかっているかということをちょっと御紹介したのであります。  そこで、角谷さんは証券局長市場というのは、これはどういうものなんでしょうかね。あなたは証券市場を管理していらっしゃるから、市場というものについての皆さん方の認識をちょっとお答えいただきたいと思います。
  112. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 市場一般について申し上げるのはちょっとおこがましゅうございますので、私が担当しております証券市場について申し上げますと、まず流通市場でございますけれども、できるだけ多数の投資家が参加しまして、それぞれの価値観とかあるいは相場観とか、そういったものによりまして有価証券等の売買を行うということによりまして、全体としての需給が統合され、いわば自律的な形で適正な価格が形成される、こういうものであろうかと思います。また、このような価格が発行市場で適切に反映されるということによりまして、効率的な資金配分が行われ、そういう意味で、何といいますか、国民経済的に機能し得る発行市場が形成される、こういうふうに考えているわけでございます。  一方、証券市場につきましては、不特定多数の一般投資家が参加する市場でございますから、投資家保護のための枠組みは設定される必要がある。それの枠内ではできるだけ自由な取引が行われる必要があるということでございまして、今証券取引所におきましては投資家保護のためのディスクロージャーとかクロスするときの規制とか、あるいは業者の効率規制等を行っているわけでございますが、その枠内ではできるだけ自由な取引が行われることが望ましいと考えておるわけでございます。
  113. 堀昌雄

    ○堀委員 私がきょう今の市場の問題を取り上げておりますのは、為替もやはり市場なんですね。国際金融局長、例えば、東京市場だけではありませんけれども、仮に東京市場で今どのぐらいのロットの取引が行われておるのかをちょっとお答えいただきたいと思います。
  114. 千野忠男

    ○千野政府委員 これはいろいろなとり方がございますけれども、例えば銀行間取引それから対顧客取引、それから、現物だけじゃなくて先物、オプション、いろいろなものを含めた総体の為替取引というのは、これは一番広くとった場合でございますが、一日当たり一千億ドルぐらいになっておるかと思います。
  115. 堀昌雄

    ○堀委員 今お聞きのように、市場の規模は一千億ドルです。  そこで、実は国際金融局にはディーリングルームですか、小さいようですがディーリングルームがあって、そのディーリングルームには日銀の担当者と直通電話があって、そして世界のあれを見ながらいろいろなあれが処理をされているというふうに、物の本で読んでいるので、私は長年大蔵委員会におりますけれどもまだその部屋を見せてもらったことがないのですが、刻々とその情勢を見ておられるように思うのですね。しかし、昨年の三月にたしか日本の外貨準備は一千億ドルぐらいあったように思うのでありますが、最近は、これは日本銀行の方ですかな、大蔵省ですかな、どこでもいいです、そんなに正確な必要はないので、最近わかっているところでは一体これは幾らになったのでしょうか。
  116. 千野忠男

    ○千野政府委員 平成元年の四月末が一千三億ドルでございますが、一番最近の時点ではっきりしておりますのは、本年の三月末でございますが、七百三十四億ドルでございます。
  117. 堀昌雄

    ○堀委員 そうしますと、外貨準備が昨年からことし一年間で約三百億ドル弱減ったわけですね。為替の介入をやられる場合には、これは貿易収支やいろいろなものがありますから私どもは必ずしも差額が為替の介入の原資になったと思うわけではありませんけれども、我々がそういうものを判断する場合には、ほかにはデータがありませんから一応こういうので見て、約一年間に三百億ドル近い外貨準備が減った、貿易その他の観点からすると、ちょっと経常収支赤字になったのは最近のことですけれども、そんなことはほとんどないわけですから、まあ大体これが介入に使われたものではないのかなというふうに思うのですが、どうでしょうか。
  118. 千野忠男

    ○千野政府委員 介入の具体的額は性格上申し上げるわけにいきませんけれども、おっしゃるとおり、外貨準備の減少のかなりの部分が介入によるものというふうに言ってよろしいかと思います。
  119. 堀昌雄

    ○堀委員 そうしますと、一千億ドルの規模の中でそんな三百億ドルも一遍に使うわけはないですから、新聞で見ているとまあ三十とか五十とかというのは大変大きな方のロットになっているように思うので、一体、一千億ドルの市場にブレーキをかける、それは、私は介入そのものを否定しているわけではないのです。要するに、為替が乱高下することは取引をする人たちに対しては大変な負担になることでありますから、できるだけ為替は安定的な状態が望ましいと思うのですが、ここのところずっと逆ですね。円安になってくるというのに歯どめをかけるというのはなかなか無理な力関係ではないのだろうかということが一つ。  それから、フリードマンにしてもハイエクにしても、市場の問題とあわせてこういう関係の問題については、特にハイエクの考えというのは私は大変すばらしいと思っているのですが、ちょっとそういう意味で、これまでに非常に皆さん御努力されたことを私高く評価するのですが、少し、私が最初に申し上げた自律神経がオートマチックに働くように、これから私がお尋ねするいろいろな問題を通じて世界の皆さんが日本経済というものの実力を知って、その知った人たちがその認識の上で市場に参加してくれば、要するに今の株式でもそうだと思うのですけれども、下がるときに一定の底まで行かないとなかなか反発しない、途中でいろいろな手を講じるよりも市場に任せて、どうんと下がったら、一遍下がったらどこまでも底なしに下がることはないですから、必ずどこかで反発をしてくるということになるので、少しそういう自然の市場の自律性というものを、片方では、政府なり日銀は我々はこれだけ力があるぞということを世界にアナウンスしながら、一遍様子を見たらどうだろうかというのが実は私のきょうの一つの問題提起でございます。  だから、これは皆さんにどうしろとかこうしろとかということではなくて、私が私の認識を言っているわけですから、皆さんはその認識を受けとめて、どういうふうにされるかは皆さんの主体的なやり方に任せるわけでありまして、決してこうしなさい、ああしなさいということを言うわけではない。それはフリードマンの学説にしてもハイェクの学説にしても一つの学説、これに対する反対の学説もあるわけですから、それは政策当局の判断に任せますが、私は、外貨準備を三百億ドル使ってきた割にはどうも余り成果が上がっていないということならば、外貨準備は多いほどいいのですから、要するにそうしたらどうだろうか、こういうふうな気がしてなりません。  そこで、皆さんの方にお話ししていませんから確認だけしていただいたらいいのですけれども、米国と日本の資産、負債の状態について私が述べますから、もし違いがあったら訂正をしてください。  一九八八年ですけれども、アメリカは、速報値になっておりますけれども、一兆二千五百三十六億ドルというのが資産、一兆七千八百六十二億ドルというのが負債で、純資産がマイナスの五千三百二十五億ドル、そして日本の場合は、同じ一九八八年で、資産が一兆四千六百九十三億ドルで負債が一兆一千七百七十六億ドル、純資産二千九百十七億ドル、こういうデータを私は持っているのですが、これは大体間違いないでしょうか。
  120. 千野忠男

    ○千野政府委員 私の記憶では大体そんなところかと思います。
  121. 堀昌雄

    ○堀委員 要するにアメリカと日本の関係は、御承知のようにアメリカは依然として財政赤字の国であります。日本は本年度からいよいょ財政赤字からテークオフするという形でありますから、まず財政赤字の面から見ても日本とアメリカのパフォーマンスというのは基本的に大きな差が一つある。おまけに、今の資産、負債の問題で、要するに純資産がアメリカは五千三百二十五億ドルの赤字ですけれども日本は二千九百十七億ドルの黒字だ。まだどんどん今の状態は続いていくわけでありますから、やがては——アメリカはこれに対する金利の支払いがまたさらに財政赤字に乗っかる、こういうことになるのですから、アメリカと日本経済関係というのは、貿易問題だけではなくて、こういうストックの面においてもかなり大きな問題が既に起きている、私はこう思うのであります。  それから、これは日本銀行の貯蓄情報室からいただいた資料でありますけれども、先ほど申し上げました個人貯蓄の速報を申し上げますと、個人貯蓄という中には「個人事業主の事業性預金を含む。」こうなっておりますから、全部がいわゆる個人だけの貯蓄ではなくて、個人事業主の事業性のものも入っておりますけれども、それによりますと、昨年の十二月末残高は七百兆八百七十三億円、前年比一一・二%増、こういうふうに伸びを高めておりまして、それを過去の四半期別の伸び率、六十三年、平成元年というところをずっと見ますと、期中増加額というのが六十三年十日から十二月が二三・三%、平成元年一—三月が三五・五%、四—六が一八・五%、七—九が三三%、十—十二で一六・五%と、これは大変な伸び率を示しておるわけであります。  これだけの個人貯蓄があり、これだけのスピードで伸びている国は世界日本以外にあるでしょうか。どなたか、銀行局長でも日本銀行総裁でもお答えいただきたいと思います。どなたでも結構です。
  122. 篠沢恭助

    ○篠沢政府委員 日本の家計貯蓄が六百兆、七百兆あるいは現在八百兆というGNPの内訳として出てきつつあるということは事実でございます。  そのようなスピードに対抗するような外国の事例があるかどうかということを具体的に検証する材料は今持っておりませんので大変申しわけございませんが、日本の姿というのが一流のものであるということ自体は事実であろうかと思います。
  123. 堀昌雄

    ○堀委員 予告してなかったから準備がなかったんだと思うのですけれども、実はこれは個人貯蓄の比率で——この前ブラックマンデーがニューヨークで起きました。このブラックマンデーの起きた日に私はちょうどニューヨークにおりまして、チェース・マンハッタン銀行のハイスチェアマンと会っていろいろ話をしたのでありますが、その翌日にニューヨーク連銀のコリガン総裁に会うのがセットされておりまして、大変な時期でありましたけれども三十分間会ってくれました。そのときに私は、やはりコリガンさん、個人貯蓄がかってはアメリカでも七%ぐらいあったのが今は二・五%ぐらいになっている、これではアメリカ経済の将来は問題があるのじゃないですかという話をしましたら、いや、あなたの言うとおりだけれども、我々の手ではなかなか届かない、これはもう今のブラックマンデーにも大いに関係がある、こういう話をコリガン総裁がしておられたことでもわかるように、大体今言われている率では一五%くらいじゃないのですかね。今アメリカも大分ふえてきて、五%近くになったようでありますけれども。  ですから、そういうような貯蓄、金があるということ、資産があるということは、単にそれだけが物を言うのではなくて、それが活用される中で大きな経済行動ができるわけでありますし、同時に、今の日本経済の中で、さっきもちょっと申し上げましたように、少し円安になれば必ず輸出がどんといくようになるというのは、製品の問題だと思うのであります。  私は、かつて昭和五十九年の十一月にワシントンへ参りまして、当時USTRのヤイターさんに会ったことがございます。そのときに私がヤイターさんに言ったのは、我々日本資源がないから、資源を買って加工して輸出をする、そのためにはどうしても日本は輸出がなければ生きていけない国なんだ。そこで、世界の国のマーケットサーベイをしっかりやって、こういう国にはこういう商品を売れば買ってくれる、そういう自信を持った商品をつくって皆さんの国に持ってきているから皆さんの国の国民が買ってくださるので、我我は押し売りをしたことはありませんよ。  要するに、貿易であなたの方に非常にたくさん日本が輸出しているということは、アメリカ国民の選択ですから、あなたの国の政治の基本である民主主義の原則からいえば、このことについて私どもは皆さんからいろいろなことを言われる覚えはないと言ったら、彼は、もうそのとおりだ、しかし日本市場は物が売れないから、こう言いますから、それは皆さん、アメリカは二億以上の人口があるために、アメリカの市場だけで商売をしようといって物をつくっている人ばかりじゃないのですか。日本は輸出をしようと思って、初めからそのつもりでつくっている商品と、アメリカ人だけが使えばいいという商品をいきなり日本に持って買えと言われても、そう簡単にいきませんよ。日本は御承知のように狭い。平地は非常に少ない。そこに一億以上の人間がいて、都市は人口集中して、道路などというものは狭い道路しかないんだ。その狭い道路にアメリカの大きな車を持ってきて買えなんて言われても使えるわけがないじゃないですかと、ヤイターさんと大分いろいろとやりました。  そして、最後に私はこう言ったのです。ヤイターさん、市場に売ろうとするのはなかなか無理だから、市場でないもので売るものをひとつ皆さん積極的にやった方がいいですよ。それは、宇宙衛星のようなものはアメリカがやるから日本は少しやめておいてくれ、すみ分けをしましょう。それからもう一つは、軍需品ももう日本でつくるな、皆アメリカのものを買ってくれ、それから飛行機、これもアメリカのものを買ってくれ、こういうふうにすれば、これは市場の競争じゃないんだ。要するに、国が買うか大きな飛行機会社が買うかその他のものが買うので、市場の問題に関係がない。市場の問題で日本にアクセスを求めようというのは、あなた方自身が自分たちの対応を変えてくれなければ、日本国民がそれを選択するのだから、それは無理があるからそういうふうにしたらどうですかという話をしましたが、必ずしもヤイターはそれに賛意は表しておりませんでしたけれども、最近のいろいろな経過を見ておりますと、宇宙衛星についてはどうやら少しすみ分けの問題ができてきそうだし、日本で何も私は飛行機をつくらぬでもいいと思うのです。この前の戦闘機の話でも、アメリカの飛行機を買えばいいと思うのです。少しすみ分けをしなければこの日米間の問題というのは簡単にいかないのではないかというのが率直な私の気持ちでございます。  それは別として、ひとつそういう意味で、私どもは今の市場というものに対する信頼というものをもう少し持っていいのではないだろうか、市場に任せるということ。それは乱高下を調整するのは問題ありませんが、トレンドに歯どめをかけるというのは余り適切ではないのではないかというふうな気がいたします。  そこでいよいよ最後の、今の金融問題に入るのでありますが、国際金融局長、今当面問題になっておる日本・アメリカ、日本・EC間における金融摩擦についての問題点をちょっとお答えをいただきたいと思います。
  124. 千野忠男

    ○千野政府委員 我が国は従来からアメリカやECなどとの間で定期的に金融協議というものを行ってきております。そこでの意見交換を通じまして指摘されてきた金融上の諸問題につきましては、これまでも解決に向けて積極的に対応をしてきたところでございます。  これまでの米国やECなどとの金融協議を通じまして残された課題として指摘されたものを例示的に挙げますと、例えば次のようなものでございます。一つは、預金金利自由化の早期実施、もっと早く進めてほしいということ。それから、短期金融市場の一層の拡充、これは具体的には短期金融主力商品の充実でありますとか、あるいはインターバンク市場の一層の自由化の推進といったようなことでございます。さらに、海外金融商品の国内持ち込みの自由化、それから十年国債の発行の完全競争入札への移行といったようなものが例示として挙げられると思います。
  125. 堀昌雄

    ○堀委員 今話がございましたものについて担当局長の方で、これから日米協議はまだずっとあるのだと思うのですが、どういうふうな対応をやっておられるか、銀行局長からひとつ順次お答えいただきたいと思います。
  126. 土田正顕

    ○土田政府委員 今紹介されました項目の中の預金金利の自由化は、私どもの局の所管であろうと存じます。  この預金金利の自由化につきましては、御案内のとおり、大口預金金利を皮切りに、昭和六十年以来着実に進めてきておりまして、殊に昨年十月には、この大口定期預金、これは完全に自由な金利でございますが、それの最低預入額が一千万円に引き下げられたわけであります。それから、この一千万円未満のところの定期性につきましては、現在小口MMCという商品を導入しておりまして、ことしの四月から最低預入単位が百万円に引き下げられております。  今後も順次段階的に、預金者の利益それから金融機関の経営への影響、そういうものに配意しながら自由化を進めていきたいという考えでございますが、具体的な段取りその他につきましては、金融関係の学者から成る金融問題研究会という研究会でいろいろ御議論を願っておりまして、そのときそのときの金融情勢も踏まえながら順次検討を進めてまいりたい。  その点につきましてアメリカ側の要望は大体想像できるわけでございますが、それにも留意いたしますが、同時に、やはり根本的には日本の預金者の利益それから日本金融機関の経営への影響、そういうものも考えて自主的に取り組んでまいりたいと思っております。
  127. 堀昌雄

    ○堀委員 アメリカが一〇〇%自由化と言っているのですが、アメリカは今どんなふうになっているんですかね。日本とアメリカの差というのは、どこが差があるでしょうか。
  128. 土田正顕

    ○土田政府委員 日本とアメリカと商品体系その他違いますので単純な比較はできないわけでございますが、一つ二つ代表的なメルクマールを申しますと、日本では、現在預金金利につきまして、部分的には大口のものから外してはおりますけれども、根本的には臨時金利調整法という法律が裏づけになり、それに日銀のガイドライン、それから当局の通達、そのようなものでいわば行動範囲にある程度枠をはめた、そういうような預金ということで各種の預金金利を定めておるわけでございます。  その点は、アメリカはかなり長い間かかりましたけれども、逐次そういう預金金利規制を緩和してまいりまして、現在では預金金利規制ということで目ぼしいものはない。その点、定期性預金もさることながら、流動性預金につきましても、アメリカの場合、例えば当座預金、殊に法人系統の当座預金、これは無利子というようなことは何らか決まっておるようでありますけれども、それ以外の例えば流動性預金、これは日本の普通預金と全く同じような預金をお考えいただきますとやや物が違うようでございますが、流動性預金につきましても規制がないということで、いろいろなサービスを組み合わせた、まだ日本では同じものが出ていないような、そういう商品を開発して売っておるというようなことであると承知しております。
  129. 堀昌雄

    ○堀委員 国のあり方が違いますし、金融機関の数も違いますし、いろいろな点で違うわけでして、アメリカでは今、貯蓄組合でありますか、大変な実は赤字問題を起こして、国が五百億ドルもの負担をしなければいかぬというような情勢になっているわけでありますから、私は何もアメリカのとおりにする必要はないと思うのですが、ちょっと銀行局長が触れられた臨時金利調整法、これはどうですかね、私はこれは非常に気になるところなんですが、これは適当なところでもうやめてしまってもいいんじゃないかと思うのですけれども、それはどうですかな。
  130. 土田正顕

    ○土田政府委員 お答えいたします。  確かに法律の名前からしますと、これは臨時という名前がついておりますので、恒久立法であるかどうかというその性格論は問題もございますが、ともあれ、現実問題といたしまして、戦後長らく一貫して預金金利は多かれ少なかれ規制のもとに置かれてまいったわけでございます。  それで、そのようなものを逐次規制を解除しながら進んでいくということでございますが、その行く行くの果てに、そういう有事規制の点をも含めて、全く何らの規制の法的根拠も要らないのかどうか、そこのところは、大変実は問題をいろいろ考えていかなければならないと思っておりますので、さしあたり、先ほど御紹介いたしました金融問題研究会でございますが、現在はこの定期性預金の金利自由化について御検討願っております。  それがしかるべき段階で結論が出ました後には、流動性預金をどう考えるかという問題も考えていただき、それが終わりまして卒業した段階になれば、その臨時金利調整法のあり方を含む究極的な預金金利規制の根拠をどういうふうに残すか、ないしはやめるか、その辺についても掘り下げた議論をしていただく機会はいつかは来ると思っております。ただ、現在のところ、やがては臨時金利調整法というものがなくなるというふうにすぱっと申し上げるほどの研究はまだ進んではおりません。
  131. 堀昌雄

    ○堀委員 次に、短期市場の問題というのはどなたが答弁していただけるのかな。——それでは、日銀でお願いいたします。
  132. 吉本宏

    ○吉本参考人 短期資金市場につきまして御説明を申し上げます。  私どもといたしましては、従来とも、インターバンク市場の自由化という問題につきまして積極的に対応をしているつもりでございます。例えば、昭和六十年の七月に無担保のコール制度を導入しております。そのときまでは、コールをとるときには必ず担保を差し入れなければならない、こういうことであったわけでありますが、六十年の七月から無担保のコールを導入いたしまして、現在、例えば、インターバンク市場の規模は三十六兆円ということでございますが、その中で有担のコールが十四兆四千億に対しまして無担保のコールが十兆円ということで、これがかなり市場に定着をしているわけであります。あと手形が十一兆五千億ありますが。  そういうことで、外銀等が従来必ずしもコール市場を活用しにくい、こういう問題もあったわけでありますが、この無担保のコール制度を導入することによりましてその辺の問題もかなり解決をしてきておる、このように考えておるわけであります。  その他、手形の期間の短縮とかもろもろの問題につきまして積極的に対応をしてきております。  また、現在大蔵省と共同で短期金融市場研究会をやっておりまして、その研究会の検討の結果等も待ってさらにこの問題に取り組んでまいりたい、このように考えております。
  133. 堀昌雄

    ○堀委員 この前、ECの副委員長経済金融担当のブリテンさんという方と私どもの研究所のメンバーとお会いをする機会がございまして、そのときにやはり問題になったのは、この有担コールというのは、要するによそにはないんだ、日本だけなんだから、これはひとつ早くやめてくれ、こういう話が実はございました。  今から十年ぐらい前になるのですけれども、私、大蔵部会に、当時の日本銀行の青木総務局長と、金融経済研究所の、恐らく鈴木さんが次長だったと思うのですが、お越しをいただきましたときに、いわゆるこの有担コールの問題、要するに短資業者とのいろいろな問題に触れて、これはもうちょっと今の無担のようにフリーにできないのですか、要するにこれは、我々コールというものは自由なものだと思っているけれども、実はいろいろ勉強してみると、後ろに日本銀行がいて、短資会社を使って金融調節の手段に使っているように思うが、コールというものはそういうやり方に使うべきものじゃないんじゃないですかといって青木さんや鈴木さんに申し上げたら、そのときお二人とも大変これに反対をされまして、先生これはともかく日本銀行の持っている非常に強力な金融調節の手段ですから、その我々の手段は取り上げないでください、こういうお話が十年前にありました。  今度は、最近はアメリカや欧州の方からおかしいのじゃないかと。私は、よその国になくて日本の国にだけあるというものは、やはりこちら側がよその国の方に合わせる必要があるのじゃないかという気持ちがあるものですから、このブリテンさんのお話を聞きながら、今お話を聞きますと十四兆対十兆ですから大分それは改善されていることはよくわかるのですが、これは青木さんが十年前に言われたように、日本銀行というのはどうしても短資会社を使って今のコールをコントロールしなければ金融政策がやれないということなんですか。結構よその中央銀行はこんなことやってないで金融政策をやっているわけですから、そこは今の短期金融市場の問題その他に関連がございますけれども、まあどちらに答弁していただいても結構ですが。
  134. 吉本宏

    ○吉本参考人 ただいま委員の御指摘の点は、コール市場にダイレクトディールと申しますか直接取引を導入できないのか、こういうお話ではないかと思います。  現在コール市場は短資業者が仲介をしておりまして、それによって市場の形成が行われているわけでありますが、私どもとしては、やはりインターバンク市場というのは金融調節にとって非常に重要な場であるというふうに考えておりまして、そこにコールの集中、いわゆる市場集中が行われるということが金融調節の立場からすれば望ましい、このように考えておるわけであります。ただこれは、直接取引は絶対いかぬ、こういうふうに考えているわけではございませんで、今後そういう要望があり、こういった取引、直接取引拡大してくるのであればこれを容認するにやぶさかではない、このように考えております。
  135. 堀昌雄

    ○堀委員 ここのところはもうさっき千野同長の言われたインターバンクの自由化の問題と重なっているわけですよね。  ですから、それじゃそれは除いて、その次に、十年国債のシンジケートが今あるわけですけれども、聞くところによると、この十月に国債のうちの六〇%はもう市場で処理する、あと四〇%がシンジケート、こういうことになるようですね。私は、こういうのは半分超えてしまえばもうあんまりシンジケートというものが必要がなくなって、みんな市場で参加して処理をされたらいいのじゃないか。アメリカもそれを要望しているわけですし、私も、素人ですけれども、六〇%までやるのなら、もういっそのこと少し時間が延びてもいいから一〇〇%やりますという話にならないのかなというのが率直な感じです。別にそれはアメリカの代弁をするわけじゃなくて、日本市場、私は、最初申し上げたように、「開かれた東京金融資本市場をめざして」という仕事をやっているわけですから、そういうふうになってほしいなと思うのですが、どうでしょうか、理財局長
  136. 大須敏生

    ○大須政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘の十年物国債の価格競争入札の割合でございますが、これは昨年四月以降発行額の四〇%を価格競争入札としておりますけれども、この割合を御指摘のとおりことしの十月から六〇%に増加させることにしております。  そのねらいでございますけれども、四〇%の価格競争入札の経験に照らしまして、若干相場の実勢に比べまして入札結果が過熱するような傾向がないわけでもなかった、こういうことから、入札割合がやや過小ではないかというような認識が一つあったわけでございます。それと、先生御指摘のような競争性の確保あるいは透明性の確保という観点からして、半分より多い割合を価格競争入札の割合として採用した方が望ましい、こういうふうに考えたところでございます。そういうことで、市場を重視する資金調達の方式へのさらに一歩前進であると考えております。  しかしながら、他方、それではシ団形式というのを全く改めて一〇〇%入札にしたらよろしいかどうかという点でございます。その点は私どもも率直に申し上げまして今後の検討課題として受け取っているところでございますが、他方、シ団引き受け制度にも非常に長所がございます。  それは、大量の国債を安定的に消化することを目的としているという点でございまして、完全競争入札にした場合に、発行環境のいかんにかかわらず安定的に消化できるかどうか、そういう点を慎重に見定めなければならないという点が一つございます。それといま一つは、国債シ団は、我が国の場合でございますが、これは我が国にある金融機関、証券会社等八百三十九社を網羅する他に例のない存在でございまして、その改廃ということになりますと、いろいろ業態間で意見調整を行うような必要もある、そういうようなこともございますので、その取り進めには慎重を期する必要がございます。  そんなこともございまして、現時点、ただいま現在の判断として申し上げますと、完全競争入札という御意見、内外の意見は確かにあるわけでございますけれども、その完全競争入札へ直ちに移行するという道筋をお示しする時期には来ていない、このように考えている次第でございます。
  137. 堀昌雄

    ○堀委員 今あなたの御答弁の中で安定的消化という言葉が出てきたのですけれども、要するに、今の市場が決める金利やその他の問題があるべきで、安定的消化というのは今の市場という問題から見ると私はどうもよく理解できない。肩たたきで、これだけ頼むぞという話になるのは、そういうことは市場を中心として物を処理する上では適切でないと向こうの人たちが思うのは当然だろう、私はこう思うのですね。  だから要するに、そもそもの始まりが、私は佐藤さんに昭和四十年に、公社債市場をちゃんとしなければ公債を発行すると言ったってだめですよと言った。率直に言って、まだまだこれが本物の公社債市場になっていないのじゃないだろうか。  それで、さっきの短期金融市場の問題でも、私は五十六年二月の大蔵委員会で国債資金特別会計という問題を提起して、あわせて、これから国債の大量償還が来ますよ、この大量償還が来るときに今のままでどうやって償還に対応できるのですか、アメリカのTBのような短期国債を発行して、その短期国債で事前に資金を持っておいて処理するということが必要だし、これをひとつ短期金融市場商品にするようにして短期金融市場というものをつくらなければだめですよという問題提起を五十六年二月にしているのです。五十六年の六月に銀行法改正が行われました。当時、土田銀行局長は銀行局調査課長でしたけれども、その銀行法改正の中に、要するに、CPの法的整備を進めて、速やかにこれを短期金融市場商品にすべきであるという提案をいたしました。幸いにして大蔵省の皆さんが前向きにやっていただいたので、今短期国債が六兆ですか、大須さん、幾らですか、ちょっと答えてください。
  138. 大須敏生

    ○大須政府委員 お尋ねの短期国債の発行残でございますが、この四月末で約六兆五千億円程度でございます。
  139. 堀昌雄

    ○堀委員 銀行局長、CPの方はどのぐらいですか。十四兆ぐらいかな。
  140. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 国内CPにつきましては、直近時点で約十三兆程度だと思っております。発行残高でございます。
  141. 土田正顕

    ○土田政府委員 CDの方でございますが、手元に持っております数字では、元年十一月末で二十兆六千億円となっております。
  142. 堀昌雄

    ○堀委員 今お聞きをいただいたように、短期金融市場は、五十六年二月に問題提起をして、大変大きくなってまいりました。まあ私は、いろいろな問題の中で、今どうしても円が国際取引に使われるようにしないと、何しろドルに振り回されているのではどうにもならぬ、こう思っておるわけでございまして、そういう点でもいろいろお願いしたいと思うのです。  その次に問題は、主税局の問題なのです。  実はこの研究所、どうして私はつくるようになったかといいますと、これはアメリカで今度財務省の次官になりましたマルフォードという財務次官補がおりまして、ちょうど私が今提案したものが六十一年に法律化したのかな。要するに、彼のところに行ったときに、この二月に発行されたアメリカのTBと同じ短期国債にどうして堀さん源泉徴収をするのですかと、実は向こうからこういう質問がございました。私は委員会提案したときにはアメリカのTBのように、こう言ってあるので、実はアメリカのTBというのは源泉徴収を一九六四年からやってないのでありますから、そういう意味で源泉徴収はしないものだ、こう思っていたら、実は源泉徴収をするというふうになっている。これは日本銀行にブックエントリーされているということが一つきちんとしておるし、主税局の話では、証券会社が取り扱うときに、これは法人にしか所有させないというルールになっておるのですが、個人に売買する場合に問題がある、こういう言い分なのですが、理財局に聞いてみたら、証券会社と念書を取り交わしています、もしこの短期国債を個人に売り渡すような事実がわかったら国際取引は認めないという念書をとっている、だからそんなことは起きません、こう言っているのですけれども、なかなかうまくいかない。  私は、当時山口次官にその話をしまして、山口さん、これ何とかならないのかという話をしました。そうしたら山口さんがいわく、いや堀さん、この税の問題というのはなかなか難しくて、私が今ちょっとお答えできるような状態ではございませんと言うから、私は、大蔵省の事務次官というのは大蔵省を統括していて、それが正しいと思ったら何でもやれるんだろう、こう思っていたのです。山口次官というのは、私長年一緒にやった経験があるのですが、非常に発想が私と一致しておりまして、国債資金特別会計というのを五十六年二月に大蔵委員会提案をいたしました。  そうしたら、そのとき理財局長だった渡辺喜一さんが、委員会で私が質問を終わったら私の席に来られて、先生、一日も早くこの国債資金特別会計をやってください、理財局にとっては願ってもないいい提案でございます、こういう話でしたから、渡辺さん、問題提起して十年かかるんじゃないか、相手は大蔵省だから、まあその渡辺さんも大蔵省ですが、という話をしたのです。一週間ほどしたら、当時官房長の山口さんが私の部屋に来られまして、私がやった国債資金特別会計というのは大賛成です、先生ひとつしっかりやりましょうという話でしたから、それはありがたい、しかしあなたが次官になってからぐらいじゃないかな、こう言ったのですが、さに今の国債資金特別会計という本体の方は、まだ実は法律提案できてないのですね。私も業を煮やして、この国会に出されなかったら議員立法で自民党の皆さんとも相談してやりたい、こう言っているのですけれども。そういういろいろな問題があるのですが、その中で、この源泉徴収というのはどうも得心がいかないのですね。  ちょっと橋本大蔵大臣、退屈そうにたばこを吸ってらっしゃるから、大蔵大臣の感想だけ言ってください。
  143. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 退屈をしているのではありませんで、学位論文審査会の議論についていき切れなくなって、たばこを吸っておりました。  先ほどから伺っておりまして、何となく私は、堀先生が社会党におられるのは何かの間違いではないか、むしろ我が党の中においても市場経済原理の信奉者としては私どもよりむしろ右翼におられるのではないか、率直にそんな感じがいたします。  と同時に、先ほどからの御論議を伺っておりまして一つ私なりに感じますことは、なるほど、例えば介入の御論議を例にとらせていただきますと、私は、必要以上の介入というものがむしろ投機を誘発する危険性もあり、問題であるという御指摘は認めます。ただ、これはまさにお医者様として非常にュニークな例を引かれてその議論展開されましたが、堀委員の御指摘になりますような形、いわば化学的に合成されましてつくり上げられた西洋医学の薬は、確かに効果も大きゅうございますけれども、副作用も大きゅうございます。いわば漢方薬のような形ならば、問題はないし、むしろ総体的な健康を保持する役に立つのではないかな、そんな感じで先ほど来の御議論を拝聴しておりました。
  144. 堀昌雄

    ○堀委員 私が社会党にいるのはおかしいと言われるのはおかしいのでして、私ども社会党はこの間の大会で政権を担える党へ、こういってあなた、ちゃんとやっているのですから、社会党が私の方に変わるのであって、私が自民党へ行く話ではないということをちょっとここでひとつ明確にさせていただきましょう。  それからもう一つ、今の漢方と西洋医学の話でありますけれども、私のところはさっき申し上げたように祖父以来代々医者でございまして、私の祖父は浅野藩の、いわゆる広島でありますけれども、浅野藩の侍医をしていて、それから今度は、当時大阪まで広島から歩いてきて、大阪から船に乗って東京へ出て、そうしていわゆる東京大学医学部の前身の昌平黌で勉強をした医者でございます。ですから、私の祖父の家は実は漢方と洋医を併用してやっておりまして、だからその点では橋本さんのおっしゃるように、漢方薬というものが実にマイルドに、しかし体質の改善を含めて役に立つということは我々十分承知しております。私の祖父の家には、おがくずのかまどが四つありまして、そのおがくずのかまどのところに大きななべがあって、四つのなべでせんじ薬を毎日つくっいる。自家製のせんじ薬、自分の調合したせんじ薬をつくっているというような時代を、私は子供のときに祖父の家で暮らしておりましたから、父は海軍の軍医で、船に乗っている間は母は私と姉を連れて里へ帰っているものですから、そういうのを見ておりますので、いいのです、そこは。  そこで、ただ私が言いたいのは、今の日本の中では、漢方あるいは東洋医学というのは非常に比重が高くなってきているのです。それはどうしてかというと、はりだとかきゅうだとかというのは、こ千年もの歴史を持ってきておるものが効かなければだれもやらないのですよ。効いているから皆さんがやられるので、それは要するに日本、まあ中国を含めて東洋医学というものは非常にいいのですけれども、やはりローカルなんですね。これをインターナショナルにするためには、彼らにも漢方を教える必要があると思うのですよ。要するに洋式医学だけではだめだ、漢方を教える必要がある。  時間がちょっとありますからあれしますけれども、武見太郎さんが私にこういう話をされました。堀君、この間一つ頼まれて往診に行った。そうするとネフローゼといって、腎臓障害で小便が出ないものですから体にいっぱい浮腫ができていた。そしていろいろ診察してみたけれども、ちょっとこれは簡単でないな、こう思った。そうしたらその家族から、先生、何かはりでこういうのに非常に効くというのを聞いているのですが、はりをやってもいいでしょうか、こう聞かれた。そこで私は、それははりをすることは害はないから一遍やってごらんなさいと勧めた。そうして、その二日後に行ってみたら浮腫は全部とれていた。堀君、我々のいわゆる洋式医学というものは」すべてではなくて、わているのはごく部分だよ、全体というものを診なければ医者としてまともでないよというのが、武見さんのお話でございました。  私は診療していませんから、国を診察しているわけですから、そういう意味では余り漢方とか洋医とは関係ないのですが、しかし私は、今のいろいろな問題を含めて、ここで私が問題提起をしたことが余りにも時間がかかり過ぎですね。金利自由化を佐藤さんに言ったのが昭和四十年、今まだ、もちろんこのくらいになれば一般市民十分だと思うくらいになっているのですが、必ずしもアメリカどおりにやれと言っているんじゃないのですが、向こうが文句をつけるので、それはできなければできないということで向こうを説得しなければいかぬと思うのですね、これはこの方がいいんだと。それは今の金融機関の問題にしても、アメリカの銀行や証券会社はもう随分負債がたくさんあって、体質は必ずしも十分でない。アメリカの企業全体がそういう借金体質になっている。国も借金体質、企業も借金体質では、これは競争力の上で日本の現状と比べると随分差があると思うのですね。そういうところは、言うべきはきちんと言うことによって、これらの問題を向こうの言いなりになるのではなくて、やはり正しい方向に誘導していただくということが私は非常に重要だと思うのです。  そこで、最後にちょっと。今、多数国間投資保証機関、MIGAの長官をしておる寺澤芳男さん、彼はニューヨークにおりまして、私よく取引所だとかいろいろな関係でお世話をいただいているのですが、「ワシントンから日本への20の警告」という本が時事通信社から出されて、それを紹介して本を送っていただきました。ジョージタウン大学客員研究員樋口美智子さんというのがアメリカの二十人の有力者たちに会って、インタビューの記事が出ているわけです。その中にはリチャード・ゲッパート、ジョン・ロックフェラー、ジョン・ハインツ。その中で私がこれを全部読んで一番感銘したのはクライド・プレストウィッツという経済戦略研究所所長、このごろはリビジョニストという、日本見直し論者と言われているのですが、非常にまともな日本の認識を実は彼は言ってくれているわけです。その部分だけをちょっと御紹介をしたいと思うのです。  ——では、もし貿易不均衡がアメリカにとって問題だとしたら、あなたはどのような点をアメリカにアドバイスされますか。  プレストウィッツ まず、何が何でも競争力をつけることです。アリメカにはそれが欠如している。われわれは貯蓄率を上げ、投資を増やし、消費を控えることに集中しなければなりません。アリメカは日本同様、産業政策を必要としているんです。消費に税金をかけ、貯蓄と投資に補助金をつけるべきです。それにアリメカは、貿易が国家安全保障にとって重要だということを認識すべきでしょうね。日本にはその認識があります。むしろ、アリメカはもっと日本のようになるべきです。 こういう率直な問題を提起しておられるわけです。そうして最後に、  日米関係は心情的に言えば、一九五〇年代から大して変わっていないと思われます。先生—生徒、先輩—後輩といった感じです。これを変えるため、たとえば政治家、ビジネスマン、労働者すべてを含んだタスクフォースをつくってはどうかと思います。ここでは貿易、投資、軍事支出、防衛、途上国債務問題、金融など広範囲な問題を扱います。調和と相互理解を目指した日米関係の新しいガイドライン、メンタリティー、枠組みを模索していくのです。二国間でどうやって協調的な産業構造をつくっていくかということも話し合われるべきでしょう。日米の政治的リーダーは、産業、技術でたとえ摩擦が生じようと、調和のとれた関係を維持していかねばなりません。これをぜひ実現させたいですね。  大蔵大臣、一回この本をお読みいただいて、我我が今日米関係でいろいろなものを知る非常にいい本だと思っています。この中にはデセー・アンダーソンのような、以前日本にいた人、いろいろな人が出ておりますので、大臣及び関係の皆さんがひとつこの「ワシントンから日本への20の警告」、時事通信社の本に目を通していただいて、これからの日米協議について、やはり私は何としても重要だと思うのです。  最後に、ここに外務省がいないのですけれども、実は最近、宮澤さんが小沢幹事長のソ連との話し合い問題というのについて何か賛成でないようなお話をなさったというのが新聞に出ているわ けですね。  一九八五年、当時私は副委員長でございましたが、石橋ミッションで、ゴルバチョフが就任して六カ月目の九月十五日にクレムリンで会談いたしました。そうして、そのときに石橋さんがコワレンコという極東の担当者に、一体書記長との会談というのはどのぐらいの時間になるのだろうかと言いましたら、そのコワレンコが、それは書記長がこれは興味がある、大事だと思ったら長くなるでしょう、余り興味がないと思ったら短い時間に終わるでしょう、こういう話でした。そこで、十一時からの会談でしたから、彼らも昼飯を食うから大体二時間くらいかなと思っておりましたら、実は四時間の会談でございました。私どもの石橋ミッションとゴルバチョフとの四時間の会談というのは、その前にもないし、どうも後にもないようであります。それは、いかにゴルバチョフというのが日本に対する認識を当初から非常に重要視していたかということが一つですね。  もう一つは、ソ連経済は大変産業がおくれている。その産業がおくれているというのは、機械工業がおくれている。機械工業を立て直すためには工作機械をしっかりやらなければいかぬ。これから我々は一生懸命工作機械を強化し、機械産業を強化してソ連経済を高めたいと思う、こういう話でした。そこで私が、それには資金が要りますよ、どこから資金を持ってくるのですかと、こういうふうに聞きましたら、国民生活にとって現在すぐ必要でないところから資金をしっかりそこへ入れてソ連経済を活性化したい、こういうことを答えたわけです。まさにそれは軍縮をやって、その費用で経済を活性化したいということを彼は既に八五年九月の私どもとの会談で話をしておりました。  その後、大磯で下田会議がありまして、ちょうど座長が大河原さんとピーター・G・ピーターソンで、今外務審議官になっている小和田さんが官房長だったのですが、それに私も出ておりました。そうしてアメリカの人がいろいろ言うものですから、そこで大河原さんが座長席からおりてきて、堀さん、あなたもひとつ何かやってくださいと言うので、実は今の話をして、ソ連の軍縮というのは本物なんだ、ソ連経済を活性化しなければ彼らとしてはもうやっていけないというところに来ているからやっているのだ、アメリカもどうかそれにこたえて軍縮をしてください、アメリカとソ連とが軍縮をすれば世界が平和になるし、もっとソ連を信頼していいのではないですかという問題提起をしました。そうしたらピーター・G・ピーターソンが、いきなりそれを受けて、私も堀さんの認識と全く同じだ、その方向でアメリカも努力しなければいかぬと思うという話があったのですが、そういうことがようやくここへきて非常に具体的になってきました。  どうかひとつソ連との関係を——何か北方領土が先にあってその他が後にあるなんてばかな話はないのでして、この前ヤコブレフが来たときに私三十分くらいかけて話したのですけれども、要するに、話し合いをしてお互いが協力するところは協力し合い、譲れるところは譲るという経済関係をまず先にやらずに、北方領土だけにこだわっていたのではソ連との関係もうまくいかないが、アメリカに対してもソ連と我々がちゃんとやるということは、余りプレッシャーをかければそっちの方へ拡大するというのはまずいなあということにもなるので、やはり日本が自立をした国として外交政策をきちんとやるということでなければならぬという点では、私は宮澤さんと大変親しくしてきたけれども、今度のあの問題提起については大変残念だと思っているのです。  だから、自民党の小沢幹事長あるいは安倍晋太郎さん、我々同期ですが、ソ連と一緒にやろうという話、どうかひとつソ連の経済協力をもう少ししっかりやって、ソ連経済を活性化するように努力することは、アジアの平和のためにも世界の平和のためにもやはり大変大きな問題だ、私はこう考えておりますので、その点を申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  145. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 日笠勝之君
  146. 日笠勝之

    ○日笠委員 当大蔵委員会の横綱格の堀先生の、グローバルで経験豊富な御見地からの御質問の後、前相撲格の、重箱の隅をつまようじでつつくような質問になりますけれども、しばらくおつき合いいただきたいと思います。  端的に申し上げますと日米構造問題協議の件でございますが、予算委員会で集中審議という話もありますので、その前哨戦として、特に気になる一つ二つの点について、大蔵省関係のものでございますのでお聞きをしたいと思います。  いわゆる対日改善要求といいますか、対日指摘というものがありまして、それに対して中間報告をまとめられた御苦労は評価をいたします。その中に、こういうところが出てまいります。はしょってそこだけ読みますけれども、御当局の皆さんはお詳しいと思いますので、よく内容はおわかりだと思います。  これはいわゆる公共投資の件でございまして、「憲法の規定する単年度予算制度の下で、公共投資の執行の円滑化を最大限確保するため、国庫債務行為を有効に活用していく。」こうございます。この「国庫債務負担行為を有効に活用」ということなのでございますが、いろいろ考えられるわけです。私は私なりに考えてみました。その一つは、いわゆる支出すべき年限は原則五年となっておりますけれども、これを七年とか十年にするという意味なのかな。また、財政法上いわゆる予備費の管理及び使用に準拠するようになっておりますが、例えばこれを、予備費ですといわゆる国会の事後承認を求める必要はないわけです。それと同じ準拠でございますから、不承認ということが起こってもいいように後で国会への報告だけで済む、そういうふうに逃げ込むのかなとか。また、一般会計はそれなりに予算委員会で相当論議しますけれども特別会計というのは私余り議論をしたような覚えがないのです。そういう特別会計、すなわち港湾とか空港とか道路とか治水特会というのがありまして、そちらの方でしっかりと有効に活用する、余り議論されないところでしっかり活用して、まあちょっと目を覆い隠すのかなとか、いろいろ悪く考えれば考えられるわけですが、一体この国庫債務負担行為の有効な活用というのはどういう意味なんでしょうか、まずお伺いしたいと思います。
  147. 寺村信行

    ○寺村政府委員 お答え申し上げます。  これはまさに公共事業の円滑な執行を確保するために、「国庫債務負担行為を有効に活用していく。」という字義どおり、書いてあるとおりでございまして、「憲法の規定する単年度予算制度の下で」と特にうたっておりますのは、先ほど委員指摘のとおり、まさに単年度予算主義でございますし、それによって後年度の財政の手足を縛ることになってはいけないということから、財政法で年限は五カ年度以内、それから国会に議決を求める場合には必要な理由を明らかにするという、そこまでの縛りがございます。そういう前提のもとで、有効に活用して公共事業の円滑な執行を図ろう、こういう趣旨から書かれたものでございます。
  148. 日笠勝之

    ○日笠委員 そうすると、一挙に公共投資を増額するというのは難しい、だから国庫債務負担行為で少しずつ階段を上るように上げていく、こういうことも考えられるわけですか。平成三年度から一遍に予算額を増額するのはいろいろな観点から難しいので、階段を少しずつ上るように後年度負担、すなわち国庫債務負担行為の方で担保する、そして結果的に見れば少しずつ階段を上がるように公共投資が増額をしていく、こういうふうにもとれるわけですか。
  149. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 大変恐縮でありますけれども、この構造協議における中間報告というものの性格は、アメリカ側からアメリカ側としてのアイデアが提供されましたものに対し、我々としての答えでありますから、いわばその前段の、アメリカ側のアイデアというものについてまず申し上げたいと思うのであります。  アメリカ側は、公共投資につきましては非常にさまざまなアイデアを提供してまいりました。GNP対比一〇%という要求もその一つでありますし、公共投資に必要な財源というものを一元的にプールし、弾力的に運用するという名のもとに、彼らとしては関心の強い都市部への投資拡大する等、さまざまなアイデアがあったわけであります。それに対して日本側が答えたのがこの中間報告でありまして、まさに今次長から御説明をいたしましたように文字どおりの中身でありますが、アメリカ側が非常に懸念を示しました単年度主義という我が国予算の手法に対する懸念に対し、そういう懸念はありませんよ、我々の制度の中においても、一定期間継続する事業に対し、こうした対応の手法がありますという意思を表明した。素直におとりをいただいた方が間違いがないと思います。
  150. 日笠勝之

    ○日笠委員 将来の財政の機動的運営を阻害するというこも考え得るわけでございますから、これはやはりある程度慎重に対応していかなければいかぬと思います。  それで、予算委員会の方にも毎年度各省庁から各目明細書というのが提出されていますね、参考書ということで。私は各省庁の国庫債務負担行為のところをつまびらかに見ましたら、積算内訳のところに記載をされておるわけでございますけれども、表現の仕方、記載の仕方が四通りくらいありますね。各省庁によって記入の仕方がばらばらなんですね。ぜひひとつこの辺は、大蔵省さんの方でこういう書き方で統一してくれと、国庫債務負担行為というのは非常に目をつけていかなければならない大切なところでございますので、この点はひとつ御要望しておきたいと思うのですが、いかがですか。
  151. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 実は大変不勉強で、そんなに何通りもの書き方になっておるというのは私は存じませんでした。一度ちょっと調べてみます。
  152. 日笠勝之

    ○日笠委員 それからもう一点。いわゆるCD、現金支払い機でございますけれども、これも二十四時間に延長しろ、こういうふうになっておりますね。それに対して大蔵省さんの、日本国の一つの提示は「銀行のCDの営業時間については、現在、何らの規制も加えられていないが、銀行等の自主的な営業判断によりその営業時間が延長される場合には、これを歓迎する。」ということです。この文章をいろいろ読んでみますと、ここだけが非常に飛び抜けた表現になっておるのですが、歓迎をするということでございます。これは結局規制をしていないから、後は銀行が自主的にやるのは結構ですよ、このようにもとれると思うのですね。  ところが、手数料の問題でございます。いわゆる時間外延長の場合の手数料は、例えば平日の場合でございますれば、八時四十五分から十八時までは、自行内の本店・支店間の引き出しであれば無料でございます。しかし他行の場合は、百円と消費税が三円つきます。そして十八時から十九時までは、同じ自分の銀行の本支店内でも百三円という手数料を取られるわけですね。そして土曜日、今銀行は土曜日は休んでおります。しかしながら、八時四十五分から十二時までは手数料が無料なんです。そして十二時から十四時までは百三円取るわけですね。このように各銀行の引き出しの手数料も、いわゆる時間外の場合は同じ銀行内の取引であっても、本店・支店間の取引であっても手数料を取られる。しかし、土曜日は時間外であると思うのですけれども無料の時間内もあるという、非常に整合性がない、バランスが悪い。そしてなおかつ二十四時間となれば、結局二十四時間のサービスをいただくのですけれども、これは時間外営業というようなことでしょうか、取引ということでしょうか、ということで手数料をしっかり取られるのなら、余り消費者にとってはメリットはないわけですね。この辺のところはどうお考えなんでしょうか。
  153. 土田正顕

    ○土田政府委員 まずCD、キャッシュディスペンサーなどの稼働時間の話では、これはやはり自主的な判断に基づいて決定すべきことである。その場合に、構造協議の中間報告にございますが、「銀行等の自主的な営業判断によりその営業時間が延長される場合には、」それは歓迎ですよ、こう申し上げておるわけでございまして、いろいろな預金者のニーズとかシステム対応それからコスト、セキュリティー、そういうものを考えながら、私はやりたいという銀行もありましたら、それは歓迎します、こういうことでございます。  その場合の手数料についてのお尋ねでございますが、この手数料は基本的には各銀行が自主的に決定しておりますものであり、またそうあるべきものであると考えております。  それから実例を見ますと、今まだごく初歩的な段階でございますが、ただいま委員がお話しになりましたようなパターンが一般的であるかと思いますけれども、中には時間外であっても無料にしたり、それからごく限られてはおりますが、日曜日にそういう機械を動かしたりという例もあらわれておるわけでございます。そこで、そのときの手数料は、サービスの提供とその受益、その関係が比較的明確な分野でございますので、やはり費用に見合った収入を確保していくことが原則であろうと思います。そのような分野、例えば時間外であればそれなりの余計なコストもかかるわけでございましょうが、そのような分野で適正な手数料を受け入れるということでなければ、その不足分というのはやはりその他の為替取引や何かと、預金取引と関係のない他の一般利用者の負担に帰するということにもなると考えられるわけでございます。  ただ、他面、手数料の定め方は、やはり納得性がなければならぬということも事実でございまして、この点は金融機関もいわば客商売でありますから、コストも考え、それから客のニーズも考えて、自分の計算、自分の判断でこの手数料を決めていく。その結果各銀行ごとに手数料がばらばらになるということは、これは必ずしも拒否すべきことではない。むしろきちんとまとまっている方がだんだん例外的な現象になる、そういうふうに考えてもいい時代になったのではないだろうかということで、私どもはこの手数料の具体的な定め方につきましては、特に当局が関与するという形によらず、各銀行間の自由競争にゆだねてまいりたいと考えております。
  154. 日笠勝之

    ○日笠委員 それは市場メカニズムに任せなければいけなわけですけれども、例えば日曜日に稼働ができるようになった。それが二百円も三百円もするというようなことになれば、せっかくの消費者のための対日改善要求だ何だということで大義名分があるわけですので、この点はひとつまたそれなりの観点で頭に入れておいていただきたいと思います。  それから、消費税の関係に参ります。  これもいよいよ野党も廃止法案をそろそろ出すそうでございまして、本格的な論戦は舞台を移すわけでございますけれども、その序盤戦の前哨戦で一つ二つお聞きをしておきたいと思います。  これは大臣にお聞きしますけれども、これはテレホンカードでございます。これはマドンナのテレホンカードでございまして、これは五千円するのですね。買ってきたのです、きょうのためにわざわざ。これは経費です。調査費ですよ。これは後藤久美子さんので、千円なのですね。これは五十通話ですから、原価をいえば五百円、印刷費を入れて五、六百円かなと思うのです。しかし、このテレホンカードに消費税がつくかどうか。デパートのコインだとか切手とかテレホンカードを売っているコーナーがありますが、そこでテレホンカードを買い求めますね。五千円です、これは。消費税がつくと思いますか、つかないと思いますか。いかがですか。
  155. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 テレホンカードに消費税が一義的にかかっていないことは、委員よく御承知のはずであります。ただ、先ほどの御主張の中で、きょうのために買ってきたと言われましたのが、御自身の好みでお買いになったのかなという感じがしないではありません。
  156. 日笠勝之

    ○日笠委員 きょうの質問のためということに訂正します。  これは消費税法の六条に出てくるのですね。これは非課税、別表であらわす物品切手。これは政令ですか。テレホンカードはいわゆる非課税ということになっておるのですが、主税局長、それでいいのですか。
  157. 尾崎護

    尾崎政府委員 政令でございます。
  158. 日笠勝之

    ○日笠委員 恐らく大蔵委員の皆さんに、そういう初めから意図的じゃなくてぱっと聞いたら、十人のうち何人かは、それは課税されるでしょう、こう言いますね。付加価値があるのですよ、これは五千円ですから。高いのは二万円、三万円というのがありますね。この辺がどうも何か政令で、テレホンカードは確かに二重課税となりますので、収集用ということは恐らく頭になかったと私は思うのですね。しかし、これが今趣味で集められておるわけです。ちゃんとテレホンカードを入れるケースもありますし デパートへ行きますといっぱい並んでいますね。いろいろな珍しいテレホンカードを高く売っていますね。付加価値なんです。この消費税というのは、日本型付加価値税と私は理解しておるのです。となれば、付加価値に対して当然これは課税すべきじゃないかな。原資発行というのでしょうか、NTTから出るときはこれは切手と一緒で課税はしなくてもいいと思うのですが、そこから先は課税していかないとバランス上おかしいのじゃないか、かように思うのですが、局長はどうですか、お考えは。
  159. 尾崎護

    尾崎政府委員 テレホンカード、使用済みのものを収集用に売買する例がございますが、そういうものは課税対象に当然なってくるわけでございます。しかしながら、使用する前のテレホンカードはやはり物品切手と同じようなものでございまして、それを用いてサービスを買う。そのサービスを買う際に消費税がかかる。したがって、そこで二重課税排除のために課税をしないということになっているわけでございます。切手とかコイン、同じような考え方でございますが、明らかに収集用というものがございます。記念コインでございますとか、あるいは特別に本の形になっているものでございますとかいろいろございますから、そういうものは課税をするということになっております。  御指摘のテレホンカード、確かに微妙なところがございまして、使用前でも本来の価値よりか非常に高い値段で売られているという例についてはどうするのかということでございますけれども、それはどこまでが収集目的なのかどうかということが、区分けする、特定することが非常に困難でございまして、切手のようにはっきりと示すことができないものですから、収集品に関する特例措置をテレホンカードには適用しなかったということでございます。しかし、御指摘趣旨はよく理解できますので、今後ともこの種のものについて勉強をしてまいりたいと存じます。
  160. 日笠勝之

    ○日笠委員 特定するかしないかというのは、例えばこれは発行したのはNTTだけですね。今のところテレホンカードのあれは。そこから出るときは非課税とする。そこから先の流通段階は、付加価値がついていくのです。印刷しただけで、四百七十円か五十円のが五百円になったり七百円になりますね。付加価値がつくわけです、印刷して売り渡すときには。そういうところからの課税ということもできるわけですね。精密な大蔵省さんですから、できぬことはない。私が言うのは、そういう矛盾があるよということを言っておるわけです。こういうものが非課税であるということはある程度矛盾しているのじゃないかなということを申し上げておるわけで、一遍それは研究していただきたいと思いますね。  それからもう一つは、私は新聞の投書欄はよく読むのです。なぜかと言うと、まさに国民の生の声がよく反映されている、こう思いますので、よく投書欄は読みます。これは朝日新聞の投書でございます。「声」の欄に出ております。ちょっと長いかもしれませんが、読んでみましょうか。これは自家営業六十一歳の方の投書でございます。「税納めて増収 不合理を体験」という投書でございます。   零細な自営業者ですが、消費税を国に代わって徴収しなければならない程度の売り上げがあるので、消費者の皆様から消費税を頂いている者です。   四月から八月までの五カ月間に頂いた消費税は四十七万円余りですが、実際に納税するのは売上総額(消費税を含む)の〇・六%なので、九万七千円でよいそうです。あまりに差がありすぎるので税理士に相談したら、税法の条文をいろいろ調べながら「もっと安くなりますよ」と言います。二万八千五百円でよいというのです。「限界控除」というのがあるのだそうです。   不安に思いながらも言われるままに用紙に記入して税務署に持参しましたが、これでよいと言われ、しかも経費として落としてよいと言われました。   消費者の皆様から、四十七万円の消費税を頂きながら、実際の納税額は二万八千五百円、その差の四十四万円は今さら皆様にお返しする方法もなく、結局私のもうけとなったわけです。五カ月間のもうけですから一年間では百万円以上の収入増となります。   長年、自民党を支持してきた私としては、自民党がわれわれ零細業者に不利なことをするはずはないと信じてきましたが、やはり裏道をつくってくれていました。半面、こんな不合理なことでよいものか、社会の不公平がますます増大するばかりではないか、といささか良心の苛責にせめられた納税日でした。 こうあります。これは、五月末までにいわゆる納税期間が一巡をしてから限界控除、もちろん免税点、簡易課税、いろいろ再見直しというのですか、やるということですが、そういう方向ですか。
  161. 尾崎護

    尾崎政府委員 ただいまの御質問にお答えいたします前に、テレホンカードの話でございますが、委員のお言葉を承っておりましてふと気になったものでございますので、ちょっと追加させていただきたいのでございますが、テレホンカートをつくりますときの特別の印刷加工賃のようなものは、その段階で課税になっているわけでございます。その点だけちょっと補足させていただきます。  それから、ただいまのお話でございますが、その投書をなさった方はちょっと誤解をなさっているのではないかと思います。なぜかといいますと、消費者の方から四十七万円受け取られた、しかし御自分はいろいろな仕入れで消費税を乗っけて買っておるはずでございます。ですから、その四十七万円と簡易課税で計算した額とを比較するということは過ちであろうと思います。確かに、限界控除が適用される額でございますから計算額が減ぜられるということは法の規定どおりのことでございますが、基本的に仕入れ控除の問題を忘れておられるのではないかと存じます。  それから、この種の中小企業者に対する特例の問題につきましては、見直しを行う、五月三十一日になりますと一応すべての事業者が納税を行う、消費税を一回は納税するということになるわけでございますので、その結果を見まして検討をするという予定になっております。
  162. 日笠勝之

    ○日笠委員 時間がないので、きょうは厚生省さんに来ていただいておりますので、次へ移りたいと思います。  過去、私も大蔵委員会で、眼鏡のことで医療費控除の適用にならないかということで質問をしたことがございます。そこで、眼鏡のことにつきまして諸外国、特に先進国は一体どういうふうな対処をしておりますか。例えば医療費控除をやっているとか健康保険の一部適用をしているとか、こういうことで、どちらかわかるところがあればお答えいただきたいと思います。
  163. 小林秀資

    ○小林説明員 お答えいたします。  大体先進国を申し上げたいと思います。イギリスでは国民保健サービスという保健サービスをしていらっしゃいますが、そのもとで以前は現物給付をされていましたが、しかし国民に人気がなくなりましたために、一九八五年四月から低所得者、児童等を除いて眼鏡の給付は廃止をいたしております。やっておりませんということです。それからフランスについては、保険給付の対象といたしております。それから西ドイツでございますが、外来療養給付の一つとして支給をいたしております。ただし、原則として保険医による処方が必要ということになっております。イタリアは当方の調査ではわかりませんでした。それからアメリカでは、メディケアでは給付の対象となっておりません。ただ、アメリカは全国民をカバーするような保険がありませんので、メディケアで御理解いただくより方法がないかと思っております。それからカナダについては、福祉対象者及び六十五歳以上の者について自己負担なしでやっているところもありますが、あと多くの州はわかりません。  以上のような状況でございます。
  164. 日笠勝之

    ○日笠委員 アメリカは、医療費控除の対象になっているという調査を立法考査局の方からいただいておりますが……。  そういうことで、健康保険の適用か医療費控除の対象ということに先進国は大体なっておるようでございます。一部例えば児童とか低所得者を除いて負担、本人負担ですから、裏を返せば児童とか低所得者にはちゃんと補助をしておる、こういうことだと思うのです。  そこで、これは厚生行政に大変明るい橋本大蔵大臣にお願いを申し上げるのですが、この眼鏡については、実はきょうはもう時間がありませんから読みませんが、これも朝日新聞の三月二日の投書欄に「医療費控除対象になぜ眼鏡を認めぬ」かという方の投書が出ております。これは非常に多うございますね。そこで、ここはやはり一つの政治判断だと思うのですけれども大臣どうでしょうか、眼鏡を先進国並みに医療費控除の対象にするか健康保険の適用にするか、これは健康保険の適用となれば厚生省さんになるのですけれども、もちろんいろいろな条件が要りますよ。児童はよろしいとかやりましょうとか、低所得者はやりましょうとか、頭打ちで二万円までしか医療費控除は認めませんとか、いろいろな条件をつければいいと思うのですよ。要は、眼鏡は生活必需品でございまして、これなくしては生活できないわけです。運転免許も眼鏡がなければできませんし、そういう意味では眼鏡は医療費控除の対象にするか健康保険の適用を一部受けさせるとか、ぜひこういう英断をそろそろお願いしなければならないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  165. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 眼鏡の場合に、疾病あるいは負傷に関しては給付の対象になっておるのは御承知のとおりであります。そしてまた、委員は年齢あるいは所得あるいはそれ自体の費用という点から議論を組み立てられましたけれども、そのお気持ちが私はわからないわけではありません。ただ、眼鏡の問題を考えます場合に、全く異質に日本として問題があることを御承知おきいただきたいと思うのであります。  と申しますのは、日本における眼科医と眼鏡製作者との関係、そして眼鏡店と眼科医の関係、ここに一つ問題があることは御承知のとおりであります。また同時に、先ほどアメリカが多少例に引かれておりましたけれども、アメリカの場合に州法によって相当これに差異があり、オプト何とかという特殊な制度がありましたね、ああいう制度の中で、我々とすると眼科系の疾患から考えて非常に危険度が高いと思われるようなものまで、眼科医の守備範囲から外しておる部分もありまして、制度的に必ずしも一概ではありません。そして私は、眼鏡あるいはコンタクトレンズというものをどう健康保険の上に位置づけるか、これにつきましてはむしろ眼科医自身、眼科医会、眼科学会、これらの専門団体と眼鏡店における検眼技術者との間に、税法以前の問題として、あるいは健康保険法以前の問題として解決していただかなければならない問題点が別途あろう、そのような感じがいたしております。
  166. 日笠勝之

    ○日笠委員 おっしゃるとおりですね。さすがはよく、もちろん専門でございましてお詳しいのですが、そこで私が思うのは、例えば子供が学校で学校保健法によりまして健康診断というのですか、やりますね。そのときに視力測定というのをやります。これはお医者さんじゃなくて学校の先生がやるわけですね。そのときに、目の悪い子は眼鏡店に行くなり眼科医に行って眼鏡を買いなさい、買って眼鏡をしなければ保健体育の成績は単位を上げません、こう言うのですね。そういうところもあるのです。  ということは、子供ですよ、児童には、せめて健康保険の適用か医療費控除の対象かということで何とかこれはクリアできないのかな。全員じゃなくてもいいです、児童生徒、こういうふうにも思うのです。それはいろいろクリアしなければいけない問題が山ほどありますけれども、そういう児童生徒、二十一世紀、これから出生率がどんどん減っていくというわけですし、そういう子供を大切にしなければいかぬわけですから。高齢者用には割といろいろな施策があるのですが、子供というのは余りないのですね。そういうことで、せめて児童生徒の眼鏡については何とか、一部負担でも結構ですし、もちろん頭打ち、いろいろなことを考えて結構ですので、やはりやるべきではないかな、そろそろそういう時期が来たのではないかな。この問題は長年の懸案なんですね。私もずっと取り上げてまいりましたけれども、ぜひひとつこれは大臣、子供さんに限ってはどうですか、児童生徒。
  167. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 仮に子供と限定をしました場合、あるいは義務教育課程における児童と限定をいたしました場合、学校保健との関係はどういうふうに整理されるおつもりでしょう。学校保健との関係も別途考慮する必要がありはしないでしょうか。と申しますのは、私の記憶で、委員のお名前は控えさせていただきますけれども、視力矯正を学校保健に取り入れろという御趣旨が御党から提起をされたことが一時期ありまして、学校保健と健康保険との問における問題として一時期私ども議論をした記憶を持っております。その辺につきましては、私は委員の御主張を理解しつつも、検討すべき制度的な問題は他に幾つかありそうな感じがする。これは実は全く別ですけれども、齲蝕防止の場合にも同じような問題がありまして、学校保健と厚生省の主管する健康保険制度の合間、さらにはその他の制度との間の整合性、バランス、こうしたものが必要になろうか、そのような印象を今持っております。
  168. 日笠勝之

    ○日笠委員 時間になりました。終わります。
  169. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 正森成二君。
  170. 正森成二

    ○正森委員 為替金融の問題について、初めに若干聞かせていただきます。  先般パリで開かれた主要七カ国蔵相・中央銀行総裁会議、いわゆるG7の共同声明日本はベルシー合意などと名づける向きもあり、円安の是正効果を期待しましたが、外国為替市場は一向に反応する気配がございません。先ほど同僚委員が質問しましたが、本日も百五十九円台ということであります。  これに対しまして、ワシントンからの報道によりますと、アメリカ政府経済政策にかかわる高官の一人が匿名を条件で話したと言われる内容がある新聞に載っておりますが、こう言っているのですね。  「米国が円安を懸念しているのは、国際収支の不均衡是正が遅れるのを心配しているためで、為替の安定を第一に考えているわけではない」と述べ、米国にとっては円安よりも、国際収支の不均衡是正の方が優先度が高い、との認識を示した。 また、   この高官は「マクロ経済政策で各国が第一に考えるのは、自国の経済を強めることであり、国際協調はその次である」としたうえで、現在の米国にとって重要なのは、「インフレの抑制と成長の持続である」と述べ、為替市場のドル高が輸入物価の安定を通じて米国内のインフレ抑制につながっていることを背景に、ドル高円安が必ずしも米国にとって不利益ではないことを示唆した。 こういうように言われております。また、  為替安定のための市場介入についても「有効な手だてだが、経済の基礎的な条件(ファンダメンタルズ)を変えることはできない」と述べ、米国が介入の効果にそれほどの期待を持っていないことを示した。 こう言われております。  そこで伺いたいのですが、十二日、十三日の新聞に、このたびの介入は日銀の資金で委託によって行われたということが出ております。もちろん、予算委員会でございましたか大臣が答弁されましたように、介入には自国通貨によるもの、それから委託介入によるもの、いろいろ種類がございますから、一概に委託介入が全部悪いとは言えないと思いますけれども、総じてアメリカあるいは西ドイツ等が現在の円の状況についてよりも自国のことを優先的に考えておるというのは、否定することのできないことだと思うのですね。  そして第二番目に、私の記憶では予算委員会あるいは当大蔵委員会でも、各大臣橋本大蔵大臣もそうですが、為替の動向というのは経済ファンダメンタルズを反映するもので、それは日本はいいのだということを常々言われておるのですが、この米国の高官の考え方などを見ますと、あるいはある銀行等の調査月報などを見ましても、ファンダメンタルズそのものに今円安を誘引するような条件が発生しているのではないかというように考えられる向きもあるわけであります。  この問題について、大臣からでも、あるいは日銀からもおいで願っているようですが、福井さんからでも結構でございますが、簡潔に御見解を承ることができれば幸せであります。
  171. 福井俊彦

    福井参考人 お答えを申し上げます。  つい先般のG7の会合、大蔵大臣が御世席あそばされまして、私どもからも総裁が出席をいたしました。  私どもがそのお話を承っております限りでは、為替相場の流れと申しますものは、やはり各国間の経済調整過程というものを今後とも円滑に運んで、一国の経済だけでなくて、世界経済全体のでき上がり、パフォーマンスがよくなる方向に、そういう方向に沿って為替相場が動くように、十分今後とも協調精神を保ちながら市場運営を図っていく必要があるということが改めて強く確認されたというふうに私ども伺っております。そういう協調精神の確認はいささかも揺るぎはないものというふうに受けとめまして、引き続き市場の動向を、これは微妙な変化も含まれておりますが、適時適切に判断しながら機動的な介入政策等を施しているというところでございます。  なお、介入資金がどういう割り振りで行われているかというふうなことにつきましては、先生のせっかくのお尋ねではございますけれども、事柄の性格上これは市場に不測の影側日も与えるということもございますので、大変申しわけございませんが、その点についてはお答えできないということでございます。
  172. 正森成二

    ○正森委員 今のお答えで、私が後段で伺いましたファンダメンタルズの関係についてはお答えがなかったように私は伺いましたが、その点に関連してさらに伺いたいと思います。  多くの資料を見ますと、現在の状況は金余り現象ですね。それが非常に大きな影響を持っておるというように言われております。例えばプラザ合意以後我が国のマネーサプライは非常に上昇しまして、月ごとの資料がございますが、年で見ますと、八六年度は前年比八・七%増、八七年度は一〇・四%、八八年度は一一・二%というようにマネーサプライが上昇しているのですね。それで、御承知のようによく使われますマーシャルのkという指標がありますね。それはM2プラスCDと名目GNPとの対比で考えるということですが、マーシャルのkの一九七〇年から八八年のトレンド、その線から一九八六年以降の約二、三年は大きく乖離しているということが言われておりまして、これが経済にさまざまな影響を与えているという見解がありますが、それについては通貨当局としてどう思いますか。
  173. 福井俊彦

    福井参考人 ファンダメンタルズとの関係が答えがなかったという御指摘でございます。  先生のただいまの質問にお答えいたします前に一言だけお許しいただきますと、経済の実態の動きという意味でのファンダメンタルズの動きということ……(正森委員「それだけをファンダメンタルズとは言っていないのです、私は。」と呼ぶ)はい、それはよく承知しておりますが、国際収支は、ごく最近はかなり目立った改善を示しておりますけれども、なお引き続き不均衡が大きい。そういう状況との対比で為替相場の動きを評価しなければいけないというのが一つございます。  それからもう一つ、ただいま先生お尋ねの金融面の動きでございますけれども、御指摘のとおり、これまでのかなり長期間にわたりました金融緩和のプロセスの中で、マネーサプライの伸び率が相当高いところに上りました。実体経済活動水準に比べて、マネーサプライの伸び率が高い状況がかなり長い期間続いた。現在もその尾を引いているという状況にあることは事実でございます。
  174. 正森成二

    ○正森委員 そのマネーサプライが経済の成長よりも高い状況が八六年から大体二、三年続いているというのがなぜであるかということが、また問われなければならないと思うのです。  これは、私が今から二年前に予算委員会でも質問したことですけれども、私の見解に符合するようなのが最近の毎日新聞あるいは「エコノミスト」に出ております。それを一つ紹介しますと、「エコノミスト」の二月二十日付でありますが、井上という経済評論家ですかが書いているのですが、「私は」というのはその人ですね。   私は、八五年秋のドル高是正の合意(プラザ合意)が、世界的な「カネ余り」と財テク「ブーム」の根源だ、と考えている。 こう言うた上で、中間は大分省略しますが、二ページほど後でこう言っているのです。アメリカがずっと貿易赤字で、四年間ほどに五千億ドル近いものが出たということを前提にして、   ドルの純流出は、経常黒字国(日本や西ドイツ等)へ入り、それぞれの通貨に換えられる。その過程で、それぞれの通貨の対ドル為替が上昇する。 当然のことですね。  資本の流出もあり、一様ではないが、その上昇が急速かつ大幅であれば、黒字国の経済は順応できず、マヒ(不況化)する。やむなく、通貨当局は市場に介入してドルを買い、自国の通貨を売る。 これを六十一年、六十二年とやったわけですね、我が国は。  結果は、外貨準備の増大と国内流動性(カネ余り)原資の発生である。   このカネ、つまりドル買いの代わりとして供給された国内通貨は、銀行の信用創造機能を通じて増幅され、膨大なカネ余りを生みだす。日本の場合、八六年三月から八九年三月までに増えた外貨準備は七一四億ドル、この関係の現金が八兆円強でた。 これは調べてここに数字を持っておりますが、符合しております。  この現金の供給と日銀の”金融超緩和策”で、 この間まで公定歩合、二・五だったんですからね。  八六年から八八年までに、日本の株式を除く負債は一〇六九兆円増え、これで二〇〇〇兆円を超す資産増(うち財テク関係は九四%)がっくり出された。 こう書いてあります。そして、  このカネ余りの行きつく先はインフレと、そこに至る過程での為替証券相場の乱高下である。 こういうように言われております。つまり、この膨大な金が結局土地投機だとかあるいは株式に向かうというところから、実態以上のバブルなんて言われる株の上昇を生む、それが実態に合わせてすとんと落ちるということがあったんじゃないですか。  それからまた為替の問題についても、これは私や共産党だけが言っているじゃないのですよ。ここに持ってきた資料は、ことしの二月の三菱銀行の調査ですね。三菱銀行がこう言っているのですよ。そのマーシャルのkとの関係で、  過去五年間の量的緩和の進展度合(マーシャルのkのトレンド線からの乖離率)と金利水準(コールレート)について、西ドイツのそれと比べてみたものである。 これは第五図というのを出しているのですが、図は省略しますが、  これにみる通り、両国とも金利水準は八五年前半の六%程度から八八年前半には三%強へと同様の低下をみせていた。しかしながら、マーシャルのkのトレンド線からの乖離率は、わが国が八六〜八九年平均で三・一%であるのに対し、西ドイツはいち早く引締めに転じたこともあって同一・八%にとどまっている。こうした量的緩和度合の違いもまた、両国の資本流出規模に少なからず影響しているように思われる。 つまり、資本流出が結果としてドルを安くするということをずっと述べた後で、その原因の一つにこういうことを言うているのです。  日銀としては、やはり八五年のプラザ合意の後の八八年ぐらいまでの猛烈なドル買い円売り、それで非常な過剰流動性が起こった、それが増幅されていろいろな悪影響を及ぼしているということは、本当は内心は非常に憂慮されていたんでしょう。いろいろな新聞をここに持ってきていますけれども、評論にも書いてありますよ。しかし、大蔵当局に対して大分遠慮して、ここで金利を上げるなんと言うたらだれの御機嫌を損じないかとか、そういうようなこともあって、後手後手に回ったということも一つあるんじゃないですか。  しかし、今の状況を見ますと、ただ単にインフレが土地やら株にあらわれているだけでなしに、一般物価にも広がりかねないという状況で、日銀のかじ取りというのは非常に難しくなり、かつ求められているんじゃないですか。どういうぐあいに対応されるつもりですか。それを伺って、もう時間になりましたから、終わらせていただきます。
  175. 福井俊彦

    福井参考人 プラザ合意の後、急激に為替相場水準が変動いたします過程、つまり日本で申し上げますれば、円高の方向に為替相場水準が大きく調整される過程におきまして、金融政策のみならず、日本経済政策全般に与えられました重大な使命というのは、為替相場の変動がもたらすマイナスの影響を早く消す。まず、相当深刻になりかねない状況に至りました円高不況を克服するだけではなくて、その後、世界経済の発展に日本経済がしっかり寄与していくために、いわゆる内需主導型の経済成長パターンというものを定着させていく重大な課題がございました。そうした目的に沿いまして、先生御指摘金融緩和政策というものがとられてきたわけでございます。  マネーサプライの伸び率が、金融緩和政策が遂行されていきます過程で高くなっていったということは事実でございます。マネーサプライの伸び率が高くなりましたからには、その後、経済の諸情勢の変化いかんによっては潜在的なインフレ圧力が強まるおそれがある。さらには、それが顕在化するおそれがある。そうしたことは十分日本銀行としても常々念頭に置きまして、金融政策の運営上、経済の諸情勢を総合的に判断いたしていきます場合に、その中心部分の判断材料として常にこれを念願に置きながら金融政策を進めてきております。したがいまして、昨年の春以降、いわゆる予防的利上げというのを四次にわたり実行してきておりますが、その過程におきましても、マネーサプライの伸び率の高さということが非常に重要なウエートを持って総合判断の中に加えられているということでございます。  なお、一言つけ加えさせていただきますれば、為替市場への介入とマネーサプライの伸び率とが直結した関係にあるかどうかという先生の御指摘でございますが、大変技術的な点にわたって恐縮でございますけれども、私どもの理解では、為替市場へのいわゆるドル買い介入がマネーサプライの増加に直結はしていないという判断に立っております。  技術的と申しました理由は、短期の金融市場には、私ども為替市場為替のドル買い介入を行いましたときには、その瞬間円資金が追加供給されることは確かでございます。別の言い方をすれば、銀行の手元にその瞬間円資金が供給されることは確かでございます。しかし、金融市場なり銀行の手元なりに一時的に円資金が供給されるルートはそれだけに限りませんで、例えば皆さんがお使いになっている銀行券が銀行に預金されて戻ってきた瞬間にも円は余ります。あるいは政府が公共事業のために資金を支払われたり、あるいは福祉関係の支払いをなさったときにも同じように金融市場には資金が供給されるわけでありまして、そうしたいろいろなルートで供給される資金の余りというものを全部足しまして、私どもは毎日金融市場の調節に当たっている。つまり、一日一日の金融調節の結果をごらんいただきますれば、為替市場の介入に伴って出ました円資金についてもきちんと調節は終わっているということでありまして、結局マネーサプライの伸び率に影響いたしますのは、全体としての金融緩和度合いそのものでございまして、平衡操作そのものが直結しているということではない。  大変技術的なお答えで申しわけございませんが、技術的なお答えしかしようのない事実でございます。
  176. 正森成二

    ○正森委員 時間がないからやめようと思いましたが、今の見解には賛成できません。私はドルを買って円を売るということだけでマネーサプライがふえたなどと言っていませんよ。しかし、それが直結しないという名のもとに影響が全くないかのように言うあなたの見解は、今から二年前に日銀の関係者が出てきて当委員会で言った見解とも違っているのですよ。そんな大胆な見解というか、そのようなことを言うてもらったら困るな。大体、ここにも資料を持っているけれども、外為市場への市場介入資金限度額というのが国の予算では決められているのですよ。それが長い間十一兆から十三兆円ぐらいでとまっていたのが、プラザ合意の後、六十二年に十三兆円から予算で十六兆円になり、補正予算で十九兆円からもう一遍ふやして二十一兆円になったのです。その翌年には二十八兆円になって現在に至っているのです。これによって猛烈なマネーサプライの増加が起こって、そしてそれが狂乱土地やら、あるいは株の売買の方にも信用増幅効果と一緒になって使われていったというのは、多くの学者が認めているのですよ。それを日銀がそんなものは何ら原因に関係がないというような見解に対しては、それで日本通貨のかじ取りができるのかということを問わざるを得ないと思うのですね。  そういうことを申し上げておいて、時間が参りましたから、私の質問は終わります。
  177. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 次回は、来る二十七日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時三十二分散会