運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1990-03-28 第118回国会 衆議院 大蔵委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年三月二十八日(水曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 衛藤征士郎君    理事 遠藤 武彦君 理事 高村 正彦君    理事 田中 秀征君 理事 平沼 赳夫君    理事 村井  仁君 理事 中村 正男君    理事 早川  勝君 理事 宮地 正介君       浅野 勝人君    井奥 貞雄君       石原 伸晃君    岩村卯一郎君       金子 一義君    河村 建夫君       久野統一郎君    中西 啓介君       野田  実君    萩山 教嚴君       原田 義昭君    松浦  昭君       御法川英文君    村上誠一郎君       柳本 卓治君    山下 元利君       上田 卓三君    大木 正吾君       佐藤 恒晴君    沢田  広君       関山 信之君    仙谷 由人君       富塚 三夫君    細谷 治通君       堀  昌雄君    渡辺 嘉藏君       井上 義久君    日笠 勝之君       正森 成二君    中井  洽君       菅  直人君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君  出席政府委員         大蔵政務次官  尾身 幸次君         大蔵大臣官房総         務審議官    篠沢 恭助君         大蔵省主計局次         長       藤井  威君         大蔵省主税局長 尾崎  護君         大蔵省関税局長 瀧島 義光君         大蔵省理財局長 大須 敏生君         大蔵省理財局次         長       松田 篤之君         大蔵省銀行局長 土田 正顕君         大蔵省国際金融         局長      千野 忠男君         大蔵省国際金融         局次長     江沢 雄一君         国税庁次長   岡本 吉司君  委員外出席者         総務庁行政管理         局管理官    東田 親司君         国土庁土地局土         地利用調整課長 大日向寛畝君         厚生大臣官房政         策課長     横尾 和子君         厚生省薬務局企         画課長     佐々木典夫君         林野庁林政部木         材流通課長   岸  廣昭君         通商産業大臣官         房審議官    庄野 敏臣君         通商産業大臣官         房調査統計部統         計解析課長   井上  毅君         通商産業省産業         政策局規模小         売店舗調整官  金子 和夫君         自治省税務局固         定資産税課長  成瀬 宣孝君         大蔵委員会調査         室長      兵藤 廣治君     ───────────── 本日の会議に付した案件  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第七号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出第八号)  国家公務員等旅費に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第三三号)  関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案内閣提出第三四号)      ────◇─────
  2. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 これより会議を開きます。  内閣提出所得税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案国家公務員等旅費に関する法律の一部を改正する法律案及び関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。富塚三夫君。
  3. 富塚三夫

    富塚委員 おはようございます。  きのう我が党の議員が、提案されている議題の法案についていろいろな角度から質問されましたけれども、若干重複する部分があるかもしれませんが、質問をさせていただきたい。  最初に、土地問題について。きのう大蔵省が各銀行に、土地融資の問題について抑制をしていこうという考え方協力を求めたいという通達を出したということが明らかにされていますが、それにかかわる問題で若干質問をさせていただきたいと思います。  御案内ように、このところ再び地価高騰いたしまして、国民のマイホームの夢は非常に遠くなりつつあるように思われます。きょうのある新聞調査では、海部内閣支持率が非常に上がっていますけれども、その中でも土地問題については、国民の不満が非常に大きいように実は結果が発表されています。大蔵省はきのう、不動産融資に総量規制する旨を金融機関通達したと伝えられておりまして、具体的には前年同期比の伸び率を総貸出残高伸び率以下に規制するというもので、総貸し出し伸び率が一〇%なら土地関連融資も一〇%以下に抑えるというもので、四月一日から実施してほしいという要請をしたと伝えられています。これは大蔵省もかなり思い切った決断をして、昭和四十八年の列島改造計画地価高騰以来十七年ぶりの強化策だ、こう言われているわけであります。本当にこの通達実効が出るのかどうか、実効性があるのかどうかということの問題についてお尋ねをいたしたいと思うのであります。この通達を出すに至った経緯、あるいはその実効性をどう考えていこうとしているのかについて、大蔵大臣質問をいたしたいと思います。
  4. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 金融機関土地関連融資につきましては、かねてから通達を発出し、特別ヒアリング実施等を通じまして、投機的な土地取引に対しては厳しく排除するよう指導を続けてまいりました。それなりにある程度の効果は出てきたと考えてはおりました。しかし同時に、最近の地価動向を見ますと、大阪圏で極めて著しい地価上昇が続いているほかに、名古屋圏その他の地方圏にもかなりの地価上昇が見られるという状況でありまして、地価上昇地方への波及がますます強まっているという状況であります。  私どもといたしましては、金融機関土地取引について、一方ではできるだけ厳しい姿勢をとり続けると同時に、しかし一方では宅地開発等、まじめなといいますか、本当に必要な開発まで資金がショートすることがあってはならないという点に相当気を配りながら仕事をしてまいりました。ところが、金融機関土地関連融資伸び自体チェックしてみますと、土地取引等に関連した根強い資金需要を反映しまして、総じて総貸し出し伸び土地関連融資が上回っております。こうしたところから、今委員からも御指摘ありましたように、非常に長い間使ってまいりませんでした土地関連融資に対する総貸し出し以下の伸びという強い方針を打ち出しまして、抑制に乗り出したわけであります。  私どもといたしましては、こうした考え方を打ち出し、同時に、その実効あらしめるためのヒアリングその他をきっちりと継続していくことによりまして効果が出てくると考えておりますし、この中におきましても、今申し上げましたような例えば第三セクターとか非常にまじめなものにつきまして、それが事業に影響の出ないような気配りもいたしておりますので、この措置における効果を期待をいたしております。
  5. 富塚三夫

    富塚委員 昭和六十一年に政府は、全国銀行不動産融資自粛通達をまず出された経緯がありますね。当初はこれが守られて実効が上がったかのように見られたのですけれども、だんだんなし崩しに不動産関係の売買に関連する融資土地に関する資金の流れが膨大になってきている。政府の発表でも、全国銀行不動産向け貸出残高は、一九八一年には九兆円程度だったものが昨年末には四十六兆円余にもなっている、こう言われているわけです。考えてみると、スタートはよかったような気がするのですけれども、どうも政府対応が甘いために融資行方についてチェックが不十分だったのではないか。これをお認めになるかどうか、私はそう思っていますが、いかがでしょうか。
  6. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 これは改めて申し上げるまでもないことでありますが、金融に対して政府が介入できるのは、その法的な権限の中で、それを越えるわけにはまいりません。そういう意味での一定限界というものがあることは、御理解がいただけると思います。しかしそうした中で、言いかえれば直接国の権限が法的に行使できないノンバンクに対しましても、今我々はできる限りの手法を講じ、その内容を抑さえる努力をしておるわけでありまして、私は最善の努力を尽くしてきたと信じております。しかし、今御指摘を受けるような点があるとすれば、今後なお一層の努力をしてまいりたい、そのように思います。
  7. 富塚三夫

    富塚委員 このところ、土地問題を取材したある新聞に、大蔵省の四階に銀行局銀行課があるのでしょうか、都市銀行の幹部が次々に出入りをして、どちらかというと不動産融資への陳情をしている姿が目立っているのじゃないかと出ていました。  大蔵省通達を出しても銀行がくぐり抜けることを考えると、ビル建設融資でも本当にその融資が行われているのかどうか、銀行をなかなか確認をされていないのじゃないか。大蔵省チェックは、不十分なのじゃないか。つまり、スタートのときにはそれなり大蔵省通達を守ってやろうという銀行側のそういった取り組みがあったけれども、だんだん銀行といわゆる業者のそういったくぐり抜けるようなことが相談されて進んでいっているのじゃないか、つまりある種の癒着構造が生まれているみたいな感じがしないでもないのではないかと思います。我々が聞く話でも、どうも銀行同士が顧客の、お客さんの奪い合いをして、土地さえあれば金を貸します、融資しますという傾向になっている。この新聞にも書かれてましたが、自分が死んだら土地の名義は銀行だと遺言を書くと、毎月多額の金を貸してくれるという食いつぶしローンが登場している。  こういうことが出てきている現状から考えると、これから先、どのようチェック監視をしようとしていこうとするのか。通達だけ出して実効性が十分上がらないとしたら、法律的な対応規制ども考えていこうとしているのか。その点は、いかがでしょうか。
  8. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 まず、委員に対して二点私は申し上げたいことがございます。  一点は、我々は自由経済体制の中に生きております。そして、企業はそれぞれの倫理を守りながらも、その企業としての方針においてそれぞれの経営がなされているわけであります。そして、国の権限一定以上企業の活動を制約することが、私は本質的にいいことだとは思いません。本来、それぞれの企業倫理の中において自由競争というものは行われるべきものだと思っております。  ただその中において、現在の地価高騰状況の中で、金融機関が行き過ぎた土地関連融資のために著しい地価上昇を助長するよう行動があれば、それは慎んでもらわなければならず、そしてその慎んでもらうべきルールというものは、本来は自主的にお考えになるべきことでありますし、またそういう方向で動いておりますけれでも、それが実際に行われているかどうかをヒアリングその他で指導を行い、その実効を担保する。私は、その手法が間違っておるとは考えておりません。むしろ、法的な規制強化し、法律、条文をもって企業経営に干渉する手法というものは、決していいことだとは私は思っておらない。企業倫理性の中で、それぞれがみずからの行動を律するように国としては指導していくのが本筋であると考えております。  二点目は、私は今委員が引用されました新聞を読んでおりませんので何とも申し上げようがありませんけれども、例えば土地信託というものが今着実に動いております。仮にその土地信託というものをもし悪意をもって文字にするとすれば、おのずからそれは自分が死んだら銀行よというような書き方になるのかもしれないな、そんな感じも今私はちらっと受けました。しかし、土地信託というものは、例えば国鉄清算事業団跡地処理におきましても、地価を顕在化させない売却の方法の一手段として検討されておりますように、私はそれなり意味を持つものだと考えております。  要は、土地というものがいたずらにつり上げの対象となり、そして転売転売を重ねる中で、いつの間にか一般庶民から手の届かないような状態になってしまった状況をどう直すかということでありまして、これは土地政策全体の中で考えなければなりません。今の委員の御指摘、御批判の中には当たるものが私は多々あると思いますけれども、同時に、金融というものもまた税制というものも、土地政策全体の中においては重要な役割を果たすものではありますが、わき役であるということでありまして、むしろ今まで土地政策全体に対しての国民的な哲学のない中で、わき役主役のかわりを演じさせられていたところに私は一つ悲劇があった、そのように考えております。金融税制も、その重要なわき役として今後ともその役割を果たすよう努力をしてまいりたい、そのように考えております。
  9. 富塚三夫

    富塚委員 リースとかファイナンス会社などのノンバンクに及んだ融資行方も十分にチェックされているとは思われないのですけれども、三十年まじめに働いても我が家を持つことができないというサラリーマンの人たちが今住宅を求めようとしても、億ションとかどうとかいって、とにかく大変な状況になっている土地住宅問題は、御案内ように政治の最大の解決しなければならない課題であると私は思うのです。ところが、六十一年度にそういう自粛指導をしてある程度おさまった。しかし、その後いろいろなやり方を考えて、いろいろなくぐり抜ける方法を考えて、相変わらず地価高騰が続いている。土地投機の問題が基本だと思うのです。  そうすると、それを抑制するために大臣は、市場経済を採用しているのだから余り政府銀行を拘束したりすることはできないとおっしゃるけれども、このままずるずる行ってしまったら、結局はまたもとのもくあみになってしまいはせぬかという懸念を持つ一人なんです。その点では、大蔵省チェックをする体制というものを明確に打ち出して、国民の前に明らかにすべきだと思うのですが、いかがでしょうか。
  10. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今銀行局長が参りましたので、そのチェックのシステムあるいは実効性の担保、こうしたことについては銀行局長から補足して説明させたいと思います。  ただ、今委員がお述べになりましたよう現象をそのまま私がそのとおりでございますと申し上げるわけにまいりませんのは、先ほど来、金融もまた税制土地政策全体の重要なわき役である、そのわき役主役を演じなければならなかったところに悲劇があったと私は申し上げました。そして、今委員がお述べになりましたよう現象を私 は否定をいたしません。  しかし同時に、それは一極集中という今の日本の事情、状況、こうしたものがその根底にあることもまたお認めをいただけると思います。そして、東京における一極集中というものをいかにして多極分散型の国土形成に移していくか。それが今、地価調査の結果からまいりますと、大阪圏の著しい高騰、また名古屋圏中心とした高騰三極構造になろうとしているかのよう状況がございます。むしろこうした状況を防いで、多極分散型の国土形成をしていくことにより、いかにしてそのバランスを回復していくかということが本来は基本でなければなりません。  また同時に、都市における住宅宅地問題を本格的に考えてまいります場合に、その都市適正人口というものもありましょう。適正居住圏というものもありましょう。あるいは通勤圏と言いかえた方がいいかもしれません。そのキャパシティーを超えた人口集中が結果として地価上昇を招いているとするならば、多極分散型の国土形成というものを志向する中でこの問題の本質的な解決が図られるべきではなかろうか、私はそう考えております。  銀行局長から事務的な補足をさせていただきます。
  11. 土田正顕

    土田政府委員 補足して御説明を申し上げます。  これまで銀行局中心にいたしまして、土地融資につきまして厳しい姿勢取り組みを続けてまいったわけでございます。それを具体的に一、二御説明を申し上げますと、例えば昭和六十二年十月ごろから土地関連融資厳正化について万全を期すよう要請した際に具体的に要望いたしましたのは、土地取引に係る国土利用計画法に基づく監視区域内の届け出対象取引につきましては、その不勧告通知確認、または勧告を受けることなく届け出から六週間を経過している旨の確認をした上で融資を行うこと、それからさらに、具体的に住宅ビルを建設するなどの利用計画内容について十分確認をした上で融資を行うこと、その他の注意点を具体的に指摘をしたわけでございます。これらはおおむね金融機関によって適正に守られていると了解しております。またそのほか、これらの措置実効を確保いたしますために、各営業店まで厳正な融資態度を徹底させる、それから本部による集中管理体制の確立、審査機能強化、その他具体的なフォローアップ体制についてもその充実強化に努める、このような要望もいたしまして、行政面それから金融検査面チェックをしておりますが、各金融機関はこれに対応した体制をとっておると了解しております。  ところで、このようなことでできる限りの措置をとってまいったわけでございますが、例えばノンバンクについて多少御懸念もあったかと思いますが、現在のノンバンクたる貸金業者一般に対しましては、現行の貸金業規制法は、目的といたしまして、資金需要者の利益の保護を図ることを目的とする、そういう建前の法律になっておりまして、例えば具体的には貸し付け条件の掲示を義務づけるとか誇大広告を禁止するとか、それから契約書面受取証書の交付を義務づけるとか、そのような方面に主眼を置いた法律でございます。したがいまして、貸金業者に対しまして銀行、信用金庫その他に対すると同じような立場から行政的に監督をするということは必ずしも期待できない、そういう制度になっているわけではございますが、しかしながら近年のノンバンクに対する銀行融資の急速な伸びに注目をいたしまして、このよう指導監督権限が若干制約は受けておりますけれども地価高騰問題の重要性にかんがみまして、思い切ってそれぞれの業界団体に対しまして投機的土地取引に係る融資抑制が図られるよう指導するなど、できる限り踏み込んだ対策を講じてきたわけでございます。  このようなことで、私ども金融面からできる限りの措置を講じておると考えておるわけでございますが、金融面措置だけではなくて、具体的に土地供給その他総合的ないろいろな対策が必要とされるであろうということは、ただいま大蔵大臣からも御説明を申し上げたとおりでございます。
  12. 富塚三夫

    富塚委員 政府が今回通達を出して、具体的な各論の御説明がいろいろあったけれども、どういうふうに守られているのか、実効性が上がっているのかという報告四半期ごとぐらいにされるようにお願いしたいと思うのですが、大臣、いかがでしょう。
  13. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 これはとっさの御指摘でありますので、事務方意見を徴することなしに私の感じお答えをさせていただきますが、四半期というとり方がいいのか、その辺については私は知識がありません。しかし、途中経過において、例えば大蔵委員会においてその報告を求められます場合に、公務員としての守秘義務に抵触しない範囲内でのその状況お答えは、当然させていただくべきであると私も思います。
  14. 富塚三夫

    富塚委員 必ずしも四半期と限らなくとも、それぞれ検討していただいて、指導が行き届いているかという点のチェックをぜひひとつお願いをしたいと思います。  それから同時に、国土庁監視区域制度緊急総点検ということで、きのう自治体を集めて規制区域指定とか、あるいは監視区域制度の総点検地方自治体協力要請をした、こう伝えられているわけであります。これも報道によると、地方自治体からはかなり注文が出て、なかなか難しいという意見が出たとも伝えられているのですが、これもかけ声だけで終わってはいけないと思うのですが、国土庁、どうでしょう。
  15. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 国土庁の答弁の前に、今銀行局長確認をいたしまして、四半期ごと状況報告をきちんと公表すると決めておるようでありますので、その方針でまいりたいと思います。
  16. 土田正顕

    土田政府委員 このたびの通達、きのう出させていただいたわけでございますが、それによりまして、当面、不動産業及び建設業ノンバンク、その三業種に対する融資実行状況を各金融機関から報告を求めることになっております。それの集計は四半期ごとにしたいと思っておりますので、最初のデータが出ますまでに数カ月を要すると思いますが、その結果の概要は公表をいたしたい、さように考えております。
  17. 大日向寛畝

    大日向説明員 お答えいたします。  適正な地価形成を図るためには、住宅供給推進等需給両面にわたる対策推進が重要でございまして、土地取引規制のみによる対処にはおのずから限界があると私どもは考えております。しかしながら、国土利用計画法による地価高騰への対応といたしましては、現在、一都二府三十三県、十一政令都市、七百四十市区町村において行われております監視区域制度の的確な運用により対処することが必要であると考えておりますが、今後はさらに地価の厳重な監視に努め、御指摘のとおり、この監視区域への取り組みが後手に回ることがないよう内閣総理大臣からも厳しい指示をいただいておるところであり、国土庁といたしましても、昨日、土地対策全国会議を急遽開催いたしまして、緊急に総点検をするよう指示したところでございます。関係地方公共団体相当気合いが入っておりまして、今後とも必ずやこの成果が上がってくるものと私は確信しておるわけでございます。  しかしながら、監視区域制度運用強化によってもなお地価の急激な上昇等抑制することが極めて困難な事態に立ち至った場合には、規制区域指定についても念頭に置いて対処してまいりたいと考えております。
  18. 富塚三夫

    富塚委員 地方自治体協力を得ることが非常に大事な問題だと私は思うのですよ。政府方針を出してこれだけ監視をして、あるいは総点検をしよう、こういうふうに提起をしておるのですから、やはり徹底して地方自治体協力を得るための努力をしていただきたい、こう私は望んでおきたいと思います。  またちょっと各論で、今回の議案の中で、住宅取得促進税制の拡充はいいと思うのですが、借家住まい世帯主への家賃控除とか住宅手当の非 課税措置などを少し検討して実施してもらいたい、こう要望しておきたいと思うのですが、この点どうでしょう。
  19. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 先日来、本委員会におきましてしばしばこの問題が論議対象となっております。そして、あえて富塚委員に私は税制基本論からの論議を申し上げようとは思いませんけれども、その家賃控除制度と申しますものが仮に創設をされました場合に、より高額の所得をお持ちの方あるいはより高い家賃のそれだけ良質なところにお住まいの方、そういう方ほど有利にこれは働く、しかし税を納めておられない方々にはその控除は全く効果を発揮しない。そうなりますと、むしろこれは逆に問題を生じるのではなかろうかということと同時に、その家賃控除といった考え方を打ち出しますことは、結果的に大都市における集中を強める結果になり、先ほど申し上げましたような多極分散型の国土形成を志向する場合には逆効果を生じるのではなかろうかという疑念を捨て切れずにおります。  今回、消費税の見直しの中で家賃に対して非課税という措置をとりましたのは、私どもなりに今委員がお述べになりましたよう考え方に対する一つの答えでもありまして、こうした点も御勘案いただければと考えております。
  20. 富塚三夫

    富塚委員 次に、国家公務員等旅費に関する法律の改正の問題について、きのう御質問があったかもしれませんが、日当、宿泊料、移転料などの支給額の大幅引き上げ要求が組合の方からも出されておって、ある程度の引き上げ案が出てきた。これはこれとして、中身の級制度の見直し、各支給区分の見直しの問題について、大蔵省政府制度の見直しは非常に難しいという考えを何か明らかにされたようなのですけれども、この級区分を見ますと、下に薄く上に厚くなっているし、常識的に現在の勤労者の生活様式から考えていくと、もうこれを改める時期に来ているのではないかと思うのですが、この点について、級区分の見直しを直ちに行っていただきたいということについて、ひとつ御回答いただきたい。
  21. 藤井威

    ○藤井(威)政府委員 御指摘のとおり、現在の国家公務員の公務出張の実態を調査いたしまして、宿泊料等につきまして約三〇%を超える定額のアップを御提案申し上げております。  その際に、現在の級別の区分につきましても実態と合わせて調査の検討を行いました。現在の級区分は、たびたび御説明申し上げておりますように、実は旅費法ができた当時の十一区分から六区分に圧縮しております。六区分と申しましても、総理大臣等を除きますと、いわゆる行政官の区分については四区分になっておるという現状がございます。旅費の実費弁償の代替措置として定額を定めるという旅費法の基本的な性格からいいますと、その職員の責務とか地位あるいは責任、そういうものにふさわしい旅行をしていただくことを前提にした定額ということを考えていく。一方では、委員が御指摘ような実態、級区分の格差がそういうものに見合っているかどうかということも考えながらではありますけれども、そういう級区分そのものをやめてしまうというようなところまではなかなかいかないというのが、実は現状でございます。  いろいろ実態を調査いたしまして、今回は級区分を改めるところまではいかないし、格差も現状を維持するという形で御提案申し上げておるわけでございますけれども、今後の問題といたしましても、級別の旅費がどれぐらいかかっておるかという実態を十分注視しながら、その実態に応じて適切な検討は続けていくということは当然必要であろうと考えております。
  22. 富塚三夫

    富塚委員 この問題はかなり働く人たちの関心の的であって、当該の組合から大蔵大臣にも要請書が何回も出されておるわけですから、余り制度をいじることにこだわるみたいなことではなくて、やはり現状に合った区分の改革をきちっとやっていただきたいということを強く要請しておきたいと思います。同時に、やはり十分な話し合いをして、働く人たちの代表の意見も聞いていただきたいと思います。  次に、きのう関山委員から質問があった関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案。中身の問題はもう既にいろいろお話しされているのですが、関税業務をつかさどっている人たちの労働条件の問題なのです。  これは大臣、見てもらいたいのですけれども、私は国会というところはちょっとおかしいところだなと時々思うのですが、附帯決議。五十八年三月三十日から参議院では七回、衆議院では六回附帯決議がつけられているのですね。恐らく今回もまたつけるような話になるのではないかと、理事の人が話されているかどうかわかりませんが。とにかくやはり労働条件の問題で、今日の輸入拡大の枠を広げていこうという国際化社会に対応するという変化の中で、さまざまな業務内容の変化も手伝っているわけですから、総枠をできるだけふやしたくないみたいな政府の考えはあるかもしれませんが、これだけ附帯決議がつけられておるにもかかわらず、何らの結果も出てこない。若干何か消費税導入で一部手直しした点はあるようですけれども、これは一体どういうふうに——附帯決議というのは、政府が実行するといつも、この前も大蔵大臣最後に、やりますと言われておりましたけれども、本当に実行しなければ、法案を処理するための便法としてこの附帯決議が毎回利用されるとしたら問題があるんじゃないかと私は思うのですよ。だからそういう点で、参議院で七回、衆議院で六回やって、今度またやると七回になるんですか、やりっ放しで青天井でいって、これは働く人たちの立場からすると、国会が取り上げてこのことを検討したいと明確に附帯決議をつけているのに、政府方針が一体なぜ出てこないのか、改革案が出てこないのかという問題について、政府は怠慢じゃないかと思うのです。どうですか。
  23. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 国会がおかしいと言われてしまいますと、私ども政府の立場として本当に困るのでありまして、私は国会がおかしいとは決して思っておりません。そして、同時に委員に御理解をいただきたいことは、私、スタートが何年からでありますか忘れましたけれども、総定員法が施行されましてから国家公務員の総定数を縮減するという努力は年々続けられてまいりました。そして、国民の世論の中にお役人さんが多過ぎるじゃないかという声が率直に出ていたことも、委員もお認めいただけると思います。そして、できるだけ簡素で効率的な政府をつくれという国民の世論があることも、お認めをいただけることだと思うのであります。そして、そうした中で、定員削減計画が何年次かにおいてつくられまして、現在もそれは進行中であります。そして本年度の予算編成時におきましても、たしか、私正確な数字は忘れましたけれども、総定員三千名を超える縮減を行ったはずであります。それは、国民の声にこたえ、簡素で効率的な政府を目指す政府努力であり、また姿勢として一方でお認めをいただかなければなりません。  そして、その定員削減計画と同時に、それぞれの省庁において必ず増員をしなければならない部署というものはあるわけでありまして、それにつきましてはその削減とは別に増員が行われております。これは私自身が実は大蔵大臣になりまして大蔵省の機構定員の状況を聞きましたときに、これは確かにしまったな、我々も配慮が足りなかったなと思った場所の一つが税関の定員問題でありましたし、それは私は率直に認めることでありますが、ことし、関税局長の昨日の答弁をそのままにかりれば十一人の削減で済みましたという答えがございまして、私も少々冷や汗をかきました。  しかし、一方で総定数の削減が計画的に行われている事実の上に立って、私どもなりに最善の努力を尽くしたつもりでありますし、むしろこれから先も、私自身が仮にこの職を離れましても、注意をしながら見守っていくべきポジションの一つ、そう思っております。国会の附帯決議に政府が重きを置かないわけでは決してありません。
  24. 富塚三夫

    富塚委員 税関職員の処遇の改善と要員の確保に努めますという毎回の附帯決議なんです。だか ら大蔵大臣、ぜひ積極的にこの問題の解決を図るために努力をしていただきたい、そういうふうに私はお願いをしておきたいと思います。  次に、租税特別措置法の一部改正、不公平税制の是正の進め方の問題について、どのようにやられようとしているのかについてお尋ねをいたしたいと思います。  私は本会議の際にも申し上げたのでありますけれども、昨年末の税制調査会の答申の中で、租税特別措置の創設後長期にわたるもの、あるいは政策目的を達成したものを徹底的に整理合理化を推進すべきであるということの問題で答申が出されておりますが、ことしは、今回の提案では四項目ということに実はなってきました。大蔵省の資料で、創設後長期にわたるもの、政策目的を達成したもの、これはそれなりに明らかに、まあ明確ではありませんが、大体の項目的に羅列をされている。やはり短期的に、中期的に整理合理化の目標というものをはっきりさせていくという努力をしないと、この秋に恐らく政府税調に政府が諮問をされ、そして答申案が出てくるとまた同じようなことを繰り返していく、そういうことになってしまうのじゃないかと思うのですが、ここらあたり政府として、大蔵大臣としてはどうお考えになるか。  私は、六年ぐらい税制調査会の委員をやらせてもらったことがあるのですが、いつも政府税調の答申が結果としてむなしいものに終わっていることに、委員はみんな慰め合って、がっかりしているわけですね。残念がっている。それはどういうことかというと、最後は自民党税調に押し切られてしまって、国民の側に立つ政府税調の答申がどんどんと後退をしていくという現実の問題があるわけです。だから、政府税調そのものが白けてしまう。答申が形骸化されてしまう。それでは、国民のための本当の不公平税制の是正に向けた一端でありますこの租税特別措置法の改廃の問題などは、これは国民の側からすると納得ができないんじゃないのか、こう思います。そういう点で、基本的に政府税調の答申をどう受けて立とうとしているのか、それをちょっとお尋ねしたいと思います。
  25. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 委員御自身が税制調査会の委員の御体験の上から述べられたことでありますから、それなりの重みを持って私は拝聴いたしますけれども、税調の委員の方々がむなしさを感じられると言われますと、私は大変心外であります。例えばこの四月から土地税制の総合的な見直しをお願いをするわけでありますけれども、関係の方々は非常に意欲を燃やして取り組もうとしてくださっております。私は、政府税制調査会がそんな軽いものではない、我々にとってそれだけの重みを持つものであるということはまず申し上げたいと思うのであります。     〔委員長退席、村井委員長代理着席〕 そして、個別の部分につきまして、私はあるいは御意見の異なる方がおありだったのかもしれないとは思いますけれども、租税特別措置という制度そのものにつきましても、税制調査会の御意見というものを我々は十分ちょうだいをしながら、それを実行に生かしてきたつもりであります。そして今回の税制改革の中におきましても、例えば社会保険診療報酬の特例の見直しが行われた、あるいは従来原則非課税でありました有価証券取引というものが原則課税になってきた。こうした国民から見ていわゆる不公平税制と言われましたような租税特別措置の見直しというものは、それなりにきっちりと行われているわけでありまして、むしろ租税特別措置全体がいわば不公平と言われるような見方をされること自体に対しましても、私は、それぞれの政策目的からして、その御批判が当たらないという気持ちを持つ場面が多々あるということも事実であります。
  26. 富塚三夫

    富塚委員 基本的に外国税額控除制度の抜本的な見直しなど、大企業中心の課税の優遇措置というものはやはり全廃していくという、つまり大企業の外国での投資などに対する税金がほとんどかけられてないといったような問題などについて、消費税をめぐる論議の中でさまざまな観点から問題を提起されていますけれども、利子配当、株式譲渡に対しての総合課税方式をとっていく問題とか、具体的に大企業の抜け道となっているようなものはやはり基本的に検討して廃止をしていく、そういう考え方をとってもらいたい、私はそう思っている一人です。  本当に現在の不公平税制の是正という問題は、国民の大きな関心でありますけれども国民の生存権的な財産は大事にして、非生存権的な財産に対して実勢に応じてどう課税をしていくのかというその問題ですね。やはり今日までとられてきた政策税制の問題をとると、ケース・バイ・ケースのそのときの政策上の問題の判断から政府対応になってくる。そして、片方をなくすと片方に問題が出てくるみたいなことになって、あるいはそれぞれの業界や産業の陳情にあって思うようにいかないということの問題があるわけですけれども、やはりもっとそういった問題点を基本的に整理できるようなことで、不公平税制の是正の観点から問題を提起することはできないのかということをお尋ねいたします。
  27. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 大変申しわけありませんけれども、私は今の御議論には必ずしも同意ができません。税が公平、公正を旨とすべきものである、この原則は当然のことであります。しかし、その原則の上に立って、それぞれの政策目的に公平、公正の原則を超えて必要な場合にそれぞれの租税特別措置というものが生まれてまいりました。そして、目的が終了したものは廃止をされ、そしてその目的に必要な時期はそれが存続をしておる、御承知のとおりの状況であります。そして、エネルギーにいたしましても、あるいは環境保全にいたしましても、こうしたものがその制度を活用する企業の大小にかかわらず国策的に必要なものであるということであれば、私はその存続が不公平と言われることはおかしいと思うのであります。  例えば平成二年度の新しい創設目標と言われるものの中には、新しい過疎地域対策立法が議員提案で行われますそれを待って措置するものもあるわけでありますが、こうしたものについても委員の御議論のようなものを延長していきますと、果たして必要か不必要かという議論も出るかもしれません。しかし、過疎地域の方々にとってはこの特別措置というものは本当に望まれているもの、政策目標として選択されるべきものでありまして、私は、租税特別措置——今なぜ過疎法を挙げましたかといいますと、大企業とかなんとかいう話では全くない、政策目標から出てくる租税特別措置というもの、その本質を改めて申し上げたかったからでありますが、私は、租税特別措置というものの性格はそのように理解をいたしております。
  28. 富塚三夫

    富塚委員 八十二の項目かな、まだ残っておるという話は、資料でもあるいは答弁でも拝見をさせていただきましたけれども、個別にどれとどれを来年度に向けて改廃を検討していくのかということの問題について政府ははっきりしてもらいたいし、もう一つ、今前提として基本的な政府の態度というものを明確に打ち出して、そしてプログラムをつくってもらうというか、そういうことを考えてもらいたい、私はこう思うのです。  我々がこの法律案に賛成するといっても、では具体的にどういうふうにこれからやろうとしているのかという大蔵省の態度が、今回の租税特別措置法の一部改正提案の中身だけで考えるというべき問題ではなくて、私も本会議で言ったのですけれども、税の改革、公平な負担、不公平税制の是正という観点に立って基本的にどうこの法律案を受けとめていくかというのが、我々の基本的な態度であるわけなんです。その基本的な態度があいまいなままに、来年に向けてまた検討を進めましょう、やってみたけれどもだめでした、また、その政治状況に合ったものではこういう新しいものを考えたいというだけのものでは、済まされない。そのことは政府税調の答申でも毎年口が酸っぱくなるほど議論されて出ているにもかかわらず、大蔵省の腰が重い、政府の腰が重いわけですね。  だから、やはり積極的に来年に向けて政府が、大蔵省がどのようにこの問題を考えていくのかに ついて、大臣、明確にしていただきたい、そう思うのです。そうしないと、我々もこの法律に賛成をするという意味でも、何となく野放しでずるずるあなたたちのやろうとしていることだけを見ておって、はいなんというわけにはいかない。やはり国民の側から見てどのように考えているのかという点についてお答えをいただきたい、こう思います。
  29. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 具体的な点につきましては、私も知識不足でありますので事務方から補足をさせますけれども基本と仰せられるなら、先ほどから申し上げておりますように、本来、税というものが公平、公正であるべきその原則の上に立ち、特定の政策目標に立って、その原則を超えて措置することが必要なものについて対応するのが租税特別措置の性質であり、その本質にのっとって現在も制度は運営をされておる。そしてその中において、目的を達成されたものについては廃止をされたものもあり、また、今過疎地立法に籍口して申し上げましたように、新たに生まれるものもあり、また、制度としては存続をしながら例えばその利率が引き下げられていくものもあり、それぞれの対応は適時適切になされておると私は思っておりますが、念のため、事務当局から補足をして答弁をさせたいと思います。
  30. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 税負担の公平確保という問題が、税制が納税者の信頼を得るために最も重要な理念の一つであると私ども考えておりまして、また、御指摘よう税制調査会の報告、答申等におきましても、常にその問題が強く挙げられているわけでございます。  他方、租税特別措置、これはそれぞれの政策目的のためにその公平を害するということは承知の上で特例を設けているものでございまして、御趣旨のとおり、できるだけそのようなものの数は減らしていった方がいいという点におきましても、私どもは全く同じ考えでございます。  そこで、例年どういうことをやっているかということを申し上げたいのでございますが、大体予算の要求の時期になりますと、税制の政策的な措置につきましての要求が各省庁から出てくるわけでございますが、その際に、私どもの方から常に例年、租税特別措置の整理合理化のために次のような点について配慮をいただきたいというようなお願いをしてきておりまして、その中には例えば創設後既に長期間を経過しているもの、それから政策目的という点から見て既に十分にその役割を果たしているのではないかと思われるようなもの、そのようなものは廃止をしていただきたい、廃止できない場合におきましても、できるだけその縮減を図っていただきたいというようなお願いをしてまいってきております。それから新設要求に対しましては、スクラップ・アンド・ビルドということをお願いいたしまして、全体として租税特別措置が膨らまないように配慮しながら、政策税制の問題について各省庁と検討を続けるということをやっているわけでございます。  全体的な方向につきましては、御趣旨のように公平を害することがないよう絶えず不断の見直しをしてまいるという姿勢のもとに、今後とも租税特別措置の問題に対処してまいりたいと存じます。
  31. 富塚三夫

    富塚委員 時間の関係がありますから、もう一つの観点から税制改革の問題について大臣の見解を求めておきたいと思うのですけれども、今政府・自民党は、政権政党として九〇年代を通じて日本をどういう経済社会に持っていこうとしていくのか、その道筋や政策手段をどう考えているかを、私は国民の前に明確にする必要があるだろうと思うのです。  あなたの所信表明を聞いておりましても、一つは内需中心のインフレなき持続的な成長、あるいは財政改革の推進、新税制の定着、調和ある対外経済関係の形成、そして金融・資本市場の自由化や国際化の推進などを挙げています。通産省なども、年間約百億近い貿易黒字削減のために輸入促進税制などで輸入の拡大を図りたい、あるいは米国との不公平貿易の課題などについて解決をしたい。農水省は、農産物の輸入の自由化などの対応をしたい、九〇年度後期からさらに減反政策を三年続けたい。建設省は、宅地の大量の供給をやりたい、地価高騰の鎮静化に努めたい、また社会資本の整備が欧米に比較をしておくれているから都市公園や高速道路、下水道づくりなどに力を入れたい。そして経企庁は、内外価格差の縮小、諸外国に比較して著しく高い物価水準を引き下げるため流通構造の改善、政府規制の緩和を進めたい、また年間総労働時間二千百時間を五カ年目標で千八百時間に近づけていくことにしたい、こう言っているわけです。  海部第二次内閣の中で提起されているそれぞれの政策そのものを見ると、今置かれている状況において解決しなければならない政策的な課題の問題について羅列をして、努力をしたいと言うだけで、しからばこれから九〇年代、二十一世紀に向けての経済社会がどういうふうになっていくのかということが見えてこないという問題が私はあると思います。  そして、私は本会議でも質問したのですけれども、高原前経済企画庁長官が、豊かさを感じさせない理由は、日本の物価が欧米に比較して高いからだ、地価高騰により住宅や社会資本の整備がおくれているからだ、労働時間が長くて自由時間が不十分なんだ。私は昔何回か高原さんとテレビ討論でやり合ったことがあるが、あの人はもし大臣をやっていなかったら、消費税の導入は間違いだと言ったと私は思うのです。これは私の感じですけれども。高原さんの告白は海部内閣の、しかもフレッシュな国民的な感覚を持った大臣としてそのことを実感として思っておられるということについて、海部さんの片腕として橋本さんも未来の総理大臣の有力候補なんだから、私はそれなりの所見を持っておられると思うのですが、三十年間まじめに働いても我が家を持てないというサラリーマンが物すごく多くいることをお認めになるでしょう。  そして、労働時間の短縮です。私も労働界の指導者をやってきましたが、本当に二十年来ですよ。諸外国に比較をして、これが日本の労働者の解決しなければならない問題だとして、労働時間短縮を訴えてきても遅々として進んでいないのです。なかなか進まないのです。年間総労働時間二千時間を割ってないのです。そして、大企業に働く人たちと中小企業に働くその企業の二重構造と労働条件の問題の格差などを見ても甚だしい。そして、減反政策と農産物の自由化などによって農民が本当に農業はどうなるのかと心配をしている。まさに経済大国から生活大国へ変わっていかなければならない時期なんですが、そのことが、政府の所信表明演説や各論の財政政策演説の中でも、あるいは各省の政策の問題提起でも、なかなか感じ取れない。部分的な政策課題のケース・バイ・ケースの解決だけに持っていこうとする、そういうことにとられてならないのですが、大臣、豊かさを感じられない国民の感覚のあることを十分お認めになりますか。
  32. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は高原前長官と富塚さんの討論は拝見しておりませんでしたが、海部総理と富塚委員の一騎打ちはテレビで本当に息をのむ思いで拝見をしておりました。そして今も、本来なら今の御質問に対してお答えするのは海部総理で、一番富塚委員のいい相手だろうと思いながら拝聴しておりました。同時に、これは一つ皮肉を言わせていただきたいことでありますが、私はかつてゼンセン同盟呉羽紡績労働組合の支部の役員でありました。当時、国鉄労働組合が私たちからすると羨望の的でありました。民間単産からすればいかに官公労の組合がうらやましかったかということも、この機会に申し上げたいと思います。  そして、その上で私は今の御意見に対してお答えを申し上げたいと思いますが、私は、高原前長官が提起をされました問題は、そのままに受けとめております。ただし、高原長官は消費税を見直しせずにそのまま継続すべきであるという御意見であったことも申し添えます。  そして私は、そういう意味でもし物を申し上げ るとするならば、二十一世紀に向かって我々が考えていかなければならないこと、そして二十一世紀において我々が心しなければならないこと、それは進展する高齢化社会、しかも地球上に人類が発生して以来だれも体験をしたことのなかった超高齢化社会というものにおいて、日本という国、日本民族という民族、この国土の上に存在する我々国民が、なお活力を持った社会を維持し続けるためにはどうすればいいかということが、我々の政策目標であると考えております。そして、そのためには、現実を離れて飛び越えた夢を語るのではなく、そこに向けての努力を続けていく、それが我々の本旨でありましょう。そして、そのためにこそ私たちは税制改革も必死で実行し、国民に御理解を願おうとし、同時に「高齢者保健福祉推進十か年戦略」によって、二十一世紀が到来するまでの間に最低限我々が備えなければならない、その備えに目標を数字として入れ、今取り組んでいるところであります。それぞれの分野における施策は、そうした基本的な、二十一世紀初頭における超高齢化社会において日本という国家がなお活力を持った存在であり続けるための、その補完的な役割をする施策であろう、私はそのように考えております。
  33. 富塚三夫

    富塚委員 橋本大蔵大臣は十分に実感として受けとめている、そう理解をさせていただきます。  しからば、赤字国債からの脱却とか経常収支里黒字の改善の問題とか、ある程度の問題は今解決する一つの流れにある。そして、九〇年代は割合高齢者が少ない。十五歳から六十四歳までの働く人口の割合は全体の七割だと見られている。そして、公共投資や政策的投資に回せる貯蓄の水準も割合高い。今こそ中長期の展望に立った生活重視の青写真、新しい経済計画の着手に取りかかるべき時期に来ていると思うのですね。そういう意味で、橋本さんは、新しい発想に立ってそういう問題に取り組んでいくという姿勢を明確にしていただきたいと思うのです。時間の関係がありますから、やや一方的に注文する、ここのところはそうさせていただきます。     〔村井委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、やはり消費税の問題がひっかかってくるのですけれども、この消費税の導入が拙速過ぎて、強引過ぎたということについて、国民の反発があのように出たことについて、大臣は個人的にお認めになっていると思うのですよね。あなたが幹事長で参議院選の演説のときに、そういう演説をされたということもちょっと私の選挙区でも聞きましたから、そう思っておられる。金丸さんなどは、消費税はリコールされたとあの人らしい発言をされている。今は、こうして衆議院選挙の結果を見て、自民党は見直し案が認められた、参議院の選挙では廃止案が認められた。では、これから先一体どういうふうに消費税の問題を取り扱って決めていこうとするのかが、この国会でも最大の課題として国民が注目しているし、私も消費税廃止を公約として選挙民には訴えてきた一人です。  そこで、総理大臣大蔵大臣も、国会で、与野党協議で、消費税の問題をひとつ結論を出していただきたい、こう盛んに言っておられるわけですよね。政府は国会の審議を見守っていくというだけで、この問題に対してイニシアチブをとっていく、この問題の結論を出すことについて、政府はどう考えていこうとするのか。見直し案をベターである、これを通すことが政府の任務だとだけ考えてこの国会に臨もうとするのか、そこのところが国民の側から見てわかりにくいのです。総理も大蔵大臣も、与野党の話し合いに任せます、国会に任せますと言っていたのでは、あれだけ問題になった消費税の問題で、そこのところが、一体どういうふうに大蔵大臣としては対処をされようとするのか、国会の話し合いの推移を見守ろうとするだけにとどめるのか、その点をひとつお願いしたいと思います。
  34. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、先ほど富塚委員から将来に対する考え方を述べると言われましたときにも、高齢化社会というものに対応する税制改革を行ったということも申し上げました。そして今、富塚委員、多少不正確に引用されましたが、参議院選における自由民主党の幹事長としての私の発言は、消費税の導入について確かに我々は配慮の足りないところがありましたということは認めつつ、消費税というものは必要であると御理解をいただきたい、しかし見直すべき点は見直します、そう申し上げております。そしてそれは、今回の衆議院選における私自身の姿勢とも何ら背馳をいたしておりません。  その上で、私は、政府が国会に対して、国会の御審議に介入するようなことは申すべきではないと思っておりますから、お任せをいたしますというのではありません、国会の御審議に対して我々は我々の見直し案が御理解がいただけるように全力を尽くしますと申し上げております。そして私どもは、国民に対する我々としてのそのお約束どおり、消費税というものの見直しについて全力を傾けてまいりました。ベターではなく、私は現状においてはベストの見直しをしたと考えております。国会の御審議が行われますときに、我々は自分たちの考えておりますことをその場でできるだけ申し上げ、また国民にも御理解をいただき、これがお認めいただけることを願っております。
  35. 富塚三夫

    富塚委員 なぜ大蔵省は間接税、この消費税、この制度を温存したいということに固執するのかということがよくわかりませんということと、やはり生活重視の経済政策に転換をしていくには、国民生活の格差を解消して生活の質を高めていかなければならぬ、そのための税負担をどうするかということになれば、やはり消費税を凍結して、ようやく税に対する国民の関心が高まったことは事実ですから、広範な意見を聞いて、時間をかけて、新しい税改革の問題を、公平な税負担の問題を考えていくべきではないのか。二十一世紀を展望して福祉政策をどう充実させるかということの問題が、基本的な問題であろうと私は思います。  この消費税の問題でも、庶民の間には、高齢化社会のために財源が欲しい、あるいは財政改善のために欲しいといって消費税を導入する。しかし一方では、厚生年金の支給時期をおくらせるんだ、個人の医療費の負担は多くするんだといったら、何が高齢化社会のために取るということになる。私は、行政のそういった矛盾という問題がやはり現状にあると思うのです。私は、消費税を一たん凍結して、福祉政策の基本的な理念というものをしっかりつくって、そして財源と社会保障の問題をどういうふうに考えるかということについて、消費税をいわゆる福祉目的税化する一つ考え方ども出ていますけれども、やはりじっくりと国民意見を聞いて話し合いを進めていけば、結論は出ていく問題になっていくんじゃないんでしょうか。消費税を一たん凍結して、そして話し合いを進めるということがなぜできないのか。ここのところの問題をお尋ねしたい思う。簡単に言ってください、私の時間は少ないのですから。
  36. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 しかし、これだけ大事な問題を簡単にと仰せられても、これはなかなか大変です。ですから要点だけを申し上げ、後日また補足の機会を与えていただきたいと思います。  ほかの長々とした理由は私は今申し上げるつもりはありませんけれども消費税の凍結という事態をお考えいただきますと、どういう混乱が生じるか。そして、野党四党が参議院に昨年提出をされました消費税廃止後の税制改革の姿というもの、とりあえずは個別物品税だけを起こす、そこで一つの混乱は生じます。そして、二年後に別な姿の間接税と言っておられる。しかも、それは資産、消費全部にかかるものだと言われる。そうすると、その税がスタートするときにもう一度混乱を生じるでありましょう。むしろそうしたことから考えますならば、私は現行税制を土台にして国会で十分な御論議をいただく中において、まさにいい方向が出るならそれに従っていくというのが、私自身の率直な気持ちであります。
  37. 富塚三夫

    富塚委員 現実に選挙の結果による参議院の構成やあるいは衆議院のこういった構成で、国会のいろいろルールの問題も与野党で話し合われていることも事実です。問題は衆議院は見直し案、 参議院は廃止案、だんごになっているのじゃ国民の審判を一票投票でやったらどうかという人もおりますけれども、なぜそんなにこの段階にして固執をしなくてはいけないのか。むしろ生活重視型へ転換をしていくという経済社会をつくっていくために、高齢化、長寿社会のビジョンを明確にして、これは時間がないので厚生省の質問はやめますけれども、そういうことをはっきりさせて議論をしていくということがなぜできないのかということについて、積極面を持ってもらいたい、私はそう思います。
  38. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 むしろ今御指摘になりましたような角度の議論は、私は決して否定をいたしておりません。しかし同時に、広く薄くお互いに支え合う仕組みが必要だということも、表現こそ異なれ、昨年の秋、四野党が消費税廃止後の二年後の姿を示す中において、その消費税、私どもの申し上げておるものと全く同じものではないとおっしゃりながら、そういう方向を示唆しておられたところであります。ならぱ、私は共通の論議のベースができないとは思いません。ただ、それが消費税の廃止あるいは凍結という現行制度否定からスタートをしろと言われますならば、現に税制改革全体ができ上がり、そして今動いておる状況の中で消費税のみを廃止する、あるいは凍結をするという気持ちはないと私は申し上げておるわけであります。むしろ、高齢化社会に対する福祉のあり方等そうした点についての御議論について、そうした点を掘り下げた御論議ができることは、私は非常に幸せなことだと思います。
  39. 富塚三夫

    富塚委員 国民の納得のいく税制改革、それはまさに消費税問題で国民の税に対する関心が高まったことは事実なんです。だから、これから先経済大国から生活大国になっていくといういわゆる政策を明確にして、そして税の負担を国民に求めていく、公平な負担を求める、それには不公平税制の是正も積極的に取り組んでいくという姿勢政府は大胆に踏み切るべきだと私は思います。これは答弁が要りません。橋本大蔵大臣も将来は総理大臣になれる有力な人なんですから、ぜひひとつ考えていただきたいと思います。  最後に、ちょっと日米構造協議の問題で、きのうも政府がいろいろ特別委員会ほかやって、かんかんがくがくやられたことが報道されています。自民党さんの中でさえ政府間協議の内容が知らされていないとか、あるいは構造協議の中の障壁となっている問題の解決に絞るべきだとか、拙速を避けなければいけない、急激にやると大変になるとか、どうも自民党さんの中ですらかんかんがくがくの議論をしているんだけれども、私は党内はいいです、党内の事情はもちろんいいと思うのですけれども政府がアメリカ側と話し合いをして、中間報告に向けて決断をしなければならない政府の態度について、その具体的な問題を国民の前になぜ明らかにできないのかということの問題について、ある大臣はその店舗法の問題は一年半にするとかこう言ったとかいろいろなことが言われておりますけれども、私はもっとアメリカ側の要求と日本側の対応する態度というものを明確にして、そして国民の前に明らかにしていく責任が政府にあると思うのですが、どうでしょうか。
  40. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 まず第一点は、今の委員のお話にもありましたように、アメリカ側の要求とそれに対する対応ということでありますが、この構造協議は日本側からもアメリカに対してアイデアを出し、アメリカ側からも日本側にアイデアを出し、双方が相手に対しての意見の述べ合いをいたしております。しかし、遺憾ながら日本国内に日本側からアメリカ側に提起をしている問題がなかなか伝わらない、これは私どもとしても非常に残念な部分があります。  そして、具体的な、今どういう点でということにつきましては、これは交渉事でありますから、事前に手札をさらすような結果になることはお許しをいただきたいと思うのでありますが、節目節目に向けて我々としては全力を尽くしてまいります。
  41. 富塚三夫

    富塚委員 終わりますけれども、これだけのいろいろな貿易摩擦のツケが回ってきて、小沢幹事長が自社連立大連合などと言っておられますけれども、何かこの問題の決着のツケがまた大きく国民の問題になる、そのことを我々にも責任を負わせようみたいな態度にとれてしようがないのです。もっと時間があればいろいろ質問をしたいと思いますが、ここでやめます。我々は一応基本的には了として対処したいと思いますが、この租税特別措置法の問題を初め、問題として質問したこと、提起をしたこと、約束したことは必ず守ってもらいたい。この場しのぎで終わるということのないようにしていただきたいということを要請いたしまして、私の質問を終わります。
  42. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 この際、大木正吾君 から関連質疑の申し出があります。富塚君の持ち時間の範囲内でこれを許します。大木正吾君。
  43. 大木正吾

    ○大木委員 今審議いたしている法案とは直接関係のない問題なのでございますけれども、一般質疑は年度内にできないということもございますし、同時に、緊急な三十一日に迫りました関係法律条項との関係もございますので、あえてここでちょっと関連いたしまして、中身は関連いたしませんけれども、電電関係の株式問題について少しく大臣の見解を承っておきたいと思います。  きのうでしたか、一時百十九万まで行ったのですが、百十六万に下がっております。一時は百六万にまで下がったこともございました。政府売り出し価格、第一回が百十九万七千円、二回目が二百五十五万円ですね。百六十万とも言われます個人株主あるいは大型の法人株主の方々、電話局まで苦情が入っていまして、大変な問題なんでありますが、どうもこれが最近新聞をにぎわしております、郵政省から出ています分割問題との関係が極めて深い、こういう感じがいたしますが、大臣の所見はいかがでしょうか。
  44. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 NTTの株価が、三月二日の電通審の最終答申発表以来、百二十九万円から最安値百七万円という大きな値幅で低落をいたしております状況を、私どもといたしましては非常に心配をいたしております。大蔵省としては、平成元年度、NTTのあり方等の論議をめぐる市場の不透明感から株式売却を断念をしたわけでありますが、それにもかかわりませず、昨年十月二日の中間答申発表時には百五十万円でありました株価が、今や四十万円近く低落をしている状況であります。そして、こうした株価の低落の主たる原因がNTTの分割論であるということは、市場関係者の一致した見方であります。  大蔵省の立場は、NTTの問題に対しまして、国民のためにNTT株式を管理する立場、また株式の売却当事者としての立場、こうした立場から重要な関心を持っておるわけであります。これまでにおきましても、こうした立場から意見を申し述べてまいりましたが、現段階におきましても、分割後の収支見通しなど判断の基本にかかわるような資料すら不明確であり、また株主保護の問題等につきましても、実効ある手順と方法が私どもにお知らせがいただけないという状況であります。そして、こうしたことがこれ以上百六十万に上る株主の方々の不安を増幅しないことを私は今心から願っております。
  45. 大木正吾

    ○大木委員 恐らく分割強行ということになりますれば、一般の、私も株のことは余り詳しくありませんが、雑誌やなんかに最近出始めていますから時々見るんですけれども、百万を割るんじゃないかという話もございまして、株主は恐慌状態に近いと考えていますね。同時に、この株式が売り出しされましてから、相当な額が国の赤字財政の解消あるいは国債の返還資金勘定等に入りまして、相当な国に対するいえば援護といいますか、そういったこともありましたし、同時にこの株式の動向によりましては、たばこ会社、あるいは国鉄は二十六兆の赤字を持っていますけれども、いえば東日本あるいは西日本等、こういった優良会社等の株式の放出もできませんから、財政的にも大変な問題がやはり将来に残る、こういった感じがしてなりませんが、その辺はどうですか。
  46. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、本来株式というものが市場原理の中で上下をする、これは株主となられる 方御自身の判断の中で行われることだと存じます。しかし、やはり例えば国の行政行為、判断というものが国民の財産に傷をつけることがあってはならない、私はそう思っております。  今、委員はJRの株式あるいはたばこ産業の株式等にもお触れになりましたけれども、確かにこのNTT株式の売却益というものは国の財政の中にも大きな役割を果たしてまいりました。そしてまた、今後ともに今保有をしております株式が円滑に売却のできる事態になることを私としては心から願っております。同時に、これが国の信用にかかわる状態を惹起した場合、JRの株式放出あるいはたばこ産業株式会社の株式放出ができる事態になりましたときに、その株価そのものに国民の不信が生ずるような事態だけは何としても避けなければならぬ、私は、その一点は本当に心配をいたしております。
  47. 大木正吾

    ○大木委員 私は最初質問をしました際に、きょうじゃありませんが、その際にも百六十四兆という膨大な赤字の話がございました。そういった面からも非常に心配しているわけでございますが、実はこれ、会社法によりまして結果的には本月の三十一日までに見直し、こうなっておりまして、その見直しの素案自身が、今大臣もおっしゃったのですが、市外と市内に分けましても四千億円ぐらいの黒字がどっちも出るなんて、全く根拠不明な数字が出てきているわけでございます。そこは深くは触れません。触れませんが、三日後に迫りました法律事項でございますから、大蔵省といたしまして、こういった事態を国全体の視野から考えた場合に、まあ郵政省管轄という問題もございましょうけれども、絶対に分割ということについてはさしちゃならぬ、国民の視野から物を見た場合にそういうふうに考えるし、同時に国家財政のあり方、将来方向ですね、国の信用問題、そういった諸点を並べましても、どうしても分割をさせてはならぬ、こうした感じがいたしますので、大臣のすっきりした御答弁、そういったものをお願いしたいのです。
  48. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 昨日、この問題につきまして私は閣議で私の見解を申し述べ、その後の記者会見におきまして、以下のように申し述べました。  現段階においても、分割後の収支見通しなど判断の基本にかかわる資料すら不明確であり、また株主保護の問題等についても、実効ある手順と方法が何ら提案されていないことは大変残念である。政府方針を決定する三月末という期限が迫っているが、私としては、こうした状況の中で、現時点においてもただいま指摘した問題について実効ある方針が示されないままに政府として分割の方向を決定することは、承服しがたい。  記者会見においても、私はこういう発言をいたし、その点についての取り扱いについて官房長官にも十分お考えいただきたいという要請を申したことを記者会見で申し述べた次第であります。
  49. 大木正吾

    ○大木委員 簡単に、これはお願いといいますか、確認的に申し上げておきますが、とにかく三日間残すだけでございますから、ぜひ国民的視野に立ちまして、この問題については一部の役人の方々の専行で内容が極めて不明確、同時に国家財政に大きな影響を与える、国民の不信を買う、株主は大損害、そういったことでどれを取り上げましても分割の理由はありません。そういったことで、ぜひ大蔵大臣の頑張りを期待いたしまして、終わります。
  50. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 正森成二君。
  51. 正森成二

    ○正森委員 四つの法案を一括して審議ということですが、私どもは、所得税法は、年金受給者の控除額の引き上げ等でございますし、国民に役立つもので、賛成の立場をとりたいと思います。また、旅費に関係する改正案につきましても、私どもは、基本となる宿泊料の実態調査等あるいは消費者物価指数、そういうものに基づいてはじき出されたもので、実態から比べますとまだ若干低い面はございますが、改善であり、賛成させていただきたいと思います。  それで、賛成法案についてですから余り聞く必要もないかと思いますが、一点だけ聞かしていただきます。  それは旅費に関係することですけれども、日当、食卓料の引き上げ幅が、三級以下の係員クラスの公務員についてだけは約二一%と非常に低くなっております。ほかの関係者は三十数%ですね。それで、直近の四から八級と比べると、三級以下は現行の定額で対課長補佐クラス八七・五%を維持しておりましたが、今回の改定で七七・三%と低くなっており、現行より級別格差が拡大するという問題が起こっております。これは必ずしも好ましくないと思いますが、事務当局はどう思っておりますか。
  52. 藤井威

    ○藤井(威)政府委員 正森委員の御指摘のとおり、今回の改正は、公務員が実際に出張したときに払っておる宿泊料等を等級ごとに調査いたしまして、それで三〇%を超えるアップ率ということで定額の改定をお願い申し上げております。その際、実際のことを申しますと、等級が上の方の格差、上の方の定額の格差ほど実は大きかったわけでございまして、そのまま実態調査を適用いたしますとむしろ格差は拡大してしまうという情勢がございました。それで、我々は実態調査に従いましてやるということではございますけれども、やはりそのほかにも民間との関係でありますとか、そういういろいろなことを総合勘案して、宿泊料等につきましては、実態調査は格差は拡大しているけれども、今回の改正案では格差は拡大させないという方針で定額の改定をお願いしたわけでございます。  他方、日当の問題でございますけれども、日当につきましては従来から宿泊料のおおむね二割ということで、宿泊料に二割を掛けたところを日当の額として計算する、ことしもそういうことで御提案しておるわけでございますが、たまたま四捨五入という関係がございまして、二割で四捨五入でまじめに計算した結果としてそうなったという、いわば結果みたいな問題でございます。そこら辺の微調整をやる余地はあったわけでございますけれども、本来の宿泊料のところでそういう措置をとりましたのでことしは微調整をやらないで済ませていただいたということでございますので、御了解をいただきたいと思います。
  53. 正森成二

    ○正森委員 一定の根拠、例えば日当は宿泊料のほぼ二割というようなことも承知しておりますが、そのために格差が若干広がっておりますので、改善は改善ですから賛成ですが、その点に今後とも配慮していただきたいと思います。  それでは、残る時間を私どもが反対させていただく二法について質問させていただきます。  まず第一に、関税定率法関係について伺いますが、この国際比較、鉱工業品の平均関税率は大体日本、アメリカ、ECと比較してどうなっておりますか。通産省。通産省、来てないのか。別に通産省に聞かなくてもわかっているから私が言いますけれども、きのうわざわざ私の部屋に通産省も含めて十五、六人来たじゃないか。そのときに質問するからと言うておいたのに、その関係者が来ないというのは一体どういうわけか。けしからぬじゃないか。そんなことを大蔵の関税局長に答えさせるつもりですか。それで、帰るときにわざわざ大蔵と通産で答弁者についてすり合わせすると言うて帰ったでしょうが。まあ、いいや。しかし、役人としてはすこぶるよろしくないよ。  私どもの手持ちの学者の書いた論文によりますと、東京ラウンド以後これの譲許税率について言いますと、日本が二・七%、米国が四・七、ECが四・六であります。しかしながら、アクションプログラムで譲許税率より以上に下げておりますから、実行税率でいうと日本は二・一になります。したがって、米国の四・七やECの四・六に比べるとほとんど二分の一以下というような低い税率で、この面から貿易障壁であるというようなことは絶対に言えないはずであります。  その次に、日本の市場が本当に閉鎖的なのかという点について考えますと、米国製品の輸入一年間の増は、フランス、イタリアの輸入額に比べてどうなっていますか。
  54. 庄野敏臣

    ○庄野説明員 八九暦年の私どもの国の米国から の製品輸入増加額は四十六億ドルでございますが、他方、同じ年の我が国のフランス及びイタリアからの製品輸入額は、それぞれ四十七億ドル、三十六億ドルと相なっております。
  55. 正森成二

    ○正森委員 年次が違いますので、私どもが持っている資料とは違いますけれども、しかし少なくとも言えることは、日本が一年間で買った米国製品の増加分がフランスやイタリアがアメリカから買っている全輸入額よりも多いということは、今通産省が答弁したとおりですね。それで、我々が新聞等資料を見ますと、日本の増加額は結局アメリカにとってフランス一国あるいはイタリア一国の市場を新たにつくり出したというのに匹敵するわけです。そして、日本へのアメリカの輸出総額は、西ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、スウェーデンへのアメリカの輸出額を合計したものにほぼ匹敵いたします。ですから、いかに日本が輸入の関係で努力しているかということを示しているので、とやかく文句を言われることはないのですね。  しかも、日本の市場については政策的な障害が少ないという資料があります。これは日本経済新聞社とウォール・ストリート・ジャーナル、それからアメリカのコンサルタント大手のブーズ・アレン・アンド・ハミルトン社が共同で、去年の四月から六月に世界で同時に各国に進出している主要企業を調べたものによりますと、政府の介入や国内での部品調達義務づけなど取引に対する政策的な障害があるとする回答は、先進国では欧州市場の三六%が最も多い。それで、日本は米国に次いで低い。また障害がないという回答は、これは米国の三五%を抜いて日本が三六%で、一番評価が高いということになっているわけであります。  逆に、アメリカがなっとらぬというのがアメリカ人の中から出ているのですね。これは日本経済新聞の五月二十九日に出ている報道の内容ですが、ビル・トッテンという、カリフォルニア生まれで日本に来日してから二十年の、コンピューターソフトを輸入して日本で販売している会社の社長がおります。これは年商百億円と言われている。この人が「米国製品を日本市場で販売するための最大の障壁は米国政府だ。その態度が改まらない限り、米国政府主催の公式の席には出ない」と言うて、アメリカ大使館のパーティーに出席を拒否したということが報道されている。彼はこう言っているのです。「ビジネスの世界で日米経済摩擦など存在しない。」米国の方に弊害が三つある。  この人が挙げているのは、まず第一に、海外で働く米国市民への二重課税だ。つまり、日本へ来ていったら、日本で税金を払うのはそれは当たり前だ。ところがアメリカの場合は、年収が七万ドルを超えると日本で課税された上に米国政府がまた課税してくる。これでは海外で米国製品を販売するために働こうというアメリカ人の意欲が阻害される、こう言っているのです。第二は、ワーキングビザといって、労働用の査証が取りにくい。日本市場でいろいろ改良するために米国のソフト会社に出向いて仕事をしようとすると、本国なのにビザを取るのに半年以上もかかる。これでは商売の機微に対応できない。第三に、情報機器への高率関税だ。例えばソフトのテストに日本語を扱う端末機を米国へ持っていっていろいろ調整しようとすると、アメリカで売るんじゃないのですよ、それでも販売するのと同様にみなして一〇〇%関税がかかる。これではたまったものじゃない。「こんなことだから米国製品の輸出がだめなんだ」、このアメリカ人はこう言っているのですよ。それについて日本政府にもっと言うたらどうだと言うても、日本政府はなぜか弱腰で言わない、この人はそう言っているのです。  だから、そういう点を見ますと、今度の関税を大幅に千四品目もゼロにする、しかも、それを輸入促進税制とリンクするなんということは世界にも例のない税制だということで、これは後で申し上げたいと思いますが、大蔵省も初めは反対だったのでしょう。これで輸入効果が上がるかどうかわからぬ、消費者への還元が少ない、企業がもうかるだけで、逆に輸出促進税制になりかねない。去年の十月くらいまでは大蔵省も反対していたと新聞に何回も出ています。そういうのをやろうとしておるということなんですね。  それで、いろいろございますが、これらについて大蔵省は問題点ありというように見ておられたようですが、関税の税率を引き下げることと輸入促進税制について、現在はどう思っておられるのですか。やはり前の意見で、大蔵省意見が相当通ったと思っておられるのですか。
  56. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 非常にお答えにくい質問でありますけれども、予算編成でありましても制度改革でありましても、そのプロセスにおきましては相互の意見を相当激しく闘わせる場面はしばしばございます。しかし、でき上がりましたもの、それは我々として最善を尽くしたものだ、そのように考えております。
  57. 正森成二

    ○正森委員 それは、そう答えないと閣内不統一になりますからね。私は少なくとも、大蔵省が初期に言うていた意見の方がまだしも合理性があって、妥当だったと思うということを指摘しておきたいと思います。  その次に申し上げておきたいのは、今大店法の改正が輸入促進のためだといって構造協議でも取り上げられております。通産省、来ていますか。通産省統計解析課というのがあるんですか。井上という人が課長ですか。あなたですか。それじゃ教えてください。  あなたが、日経新聞の十月二十八日に論文というか解説というか、お書きになっております。それを見ますと、国際産業連関表というのがあるそうですね。非常に便利なもので、日・米・欧・アジア主要十三カ国の地域を網羅しておる。その中で、特に日米国際産業連関表の八五年速報版というのが非常に便利だというようになっているようですが、あなたのその御研究によって、まず第一に、日米の小売のマージン率あるいは商業と運輸、それをまとめてもよろしいが、それは日米ではどうなっているかという点が第一点。  それから第二点に、日本はアメリカと比べて輸入品の中間部門投入あるいは最終部門投入の比率がどうなっておって、仮に最終部門でアメリカと同じくらい拡大したとして、一体貿易摩擦はどれくらい減少するのか、通産省の統計解析課長の見解を聞きたいと思います。
  58. 井上毅

    井上説明員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、通産省は昨年の九月、一九八五年時点におきます日米国際産業連関表を速報ということで取りまとめ、公表いたしました。これを利用いたしますと、日米の経済構造の比較が定量的にいろいろできるわけでございますが、その一つとして、ただいま御指摘の日米の流通コストの比較というものを行ったわけでございます。  これによりますと、まずサービス部門を除く財の部門の生産者価格を基準にいたしまして、これに対する商業及び運輸マージンの割合を計算いたしますと、原材料、部品等の取引を示します中間取引部門、中間需要部門におきましては、日本が一九・九%に対しましてアメリカは二一・七%、投資、消費等の最終需要部門におきましては、日本が四五・五%に対しましてアメリカは五一・七%ということで、いずれもアメリカよりも日本の方が商業及び運輸マージンの割合が低くなっているわけでございます。商業マージンだけを比較いたしましても、同様のことが言えるわけでございます。ただ、各国の流通の効率を総合的に国際比較するということは、統計の制約が各国にございましてなかなか難しいことでございますが、ただいま申し上げました数字から言えますことは、コストの面から見る限り、我が国の流通部門が非効率であるとは一概には決めつけられない、こういう事実でございます。  それから、第二の御質問の、日本及びアメリカがそれぞれ相手の国からどの程度の輸入品を輸入しているかということにつきまして、最終需要部門におきます輸入品の投入の割合で比較をいたしますと、工業製品に限って申しますと、日本は〇・四%に対してアメリカは一・一%ということにな りまして、アメリカの方が〇・七%ほど輸入の割合が高い、こういうことになるわけでございます。特に日本の場合には、今申しました最終部門においては輸入の割合が低いという事実がございますが、逆に中間部門といわれる原材料、部品等の部門では日本の方が高い、こういう関係になっているわけでございます。  第三点でございますが、日本が仮にアメリカ並みの最終需要におきます輸入の比率までその輸入の割合を引き上げてまいりますと、日本とアメリカの不均衡が約四百億ドル強ございますが、その二割相当分が改善されるというような試算結果が出ております。  以上でございます。
  59. 正森成二

    ○正森委員 通産省の統計解析課長が産業連関表という非常に信憑性の高いものを使ってやりましても、流通マージンというのは日本の方が低いのです。今言われませんでしたけれども、流通マージンの中には間接税が入りますから、日本は消費税が三%でアメリカの小売税はそれより高いですから、それを引いてもやはり日本の方が低いという数字が出ているのです。それで、大店法でこれをやらないと日本の流通機構が非常に複雑で、それで参入しにくいのだとか、いやマージンが高いのだとかいうのは、必ずしも理由にならないです。  今、通産省の課長の答弁には出てきませんでしたけれども、一方、消費者から見て、それでは小さい零細小売は品物は高いのかというと、そうでもないのです。ここに持ってまいりましたのは、東京都が毎月実施している調査なんです。それを調べますと、食料品などの価格を見るとスーパーより小売店の方が低い。これは東京都が調べているのです。「四十七品目のうち、価格がほとんど変わらないのが十二品目。スーパーの方が安いもの十三品目なのにたいし、一般小売店が安いものは二十二品目にのぼります。」こう言うているのです。念のために言うてみましょうか。一〇%ぐらい低いのが、みそ、かまぼこ、豆腐、イワシ、マグロ油漬け缶詰、牛肉、レモン、バナナ、一〇%から二〇%低いのが、キャベツ、レタス、ジャガイモ、大根、キュウリ、ミカン、二〇%以上小売店が安いのが、長ネギ、ピーマン、ニンジン、白菜、こうなっているのです。ですから、そんな大店舗が低いというようなことは一概に言えないのです。しかも、アメリカのウィスコンシン大学のマリオン教授は、アメリカの経験を踏まえて、「流通機構の高度の集中は通常、高い消費者価格をもたらす」、つまり、独占が進むと一たんは安くしておいて、周りに競争相手がいなくなると高く上げるということもあると言うているのです。  しかも、私は時間がありませんから申しませんが、大きな店舗がどれだけ輸入品を扱っているかという比率を見ますと、いろいろの計算の仕方がありますけれども、輸入全体の五・七%ぐらいで、九四%以上は圧倒的に中小零細企業がその輸入食料品等を扱っておるということも出ているのです。ここに資料があります。これは時間がありませんから申しません。  そういう点から見ますと、今度の輸入促進税制もそうですが、今度の構造改革というのはよほど考えなければならない点があるのじゃないか。ヒルズ氏の発言なども何か誤解に基づくものが多いという報道もありますし、それからヒルズ氏が米政府内で、日本の構造協議を一生懸命やっても日米貿易摩擦は二割ぐらいしか解決しないと言っているのは、産業連関表であの課長が言いました。完成品についても、全部アメリカ並みに買えたとしても二割ぐらいしか改善できない。残り八割はどうして改善できるかといえば、アメリカのマクロ経済を、つまり財政赤字の克服とか、あるいは貯蓄をふやして、そして貯蓄と投資の差額というのが結局貿易黒字になるという経済学もあるわけですから、そういう点を考えなければ改善できないのだと言っているのです。その点について、どうお考えになりますか。
  60. 金子和夫

    金子説明員 お答えいたします。  大店法の問題につきまして、日本の流通の効率性あるいは輸入の面でどうなるかという問題の御指摘でございますが、大店法について私ども取り組みの立場は、次のような立場でございます。  我が国の流通構造が今変化しつつある、例えばライフスタイルの変化あるいは業態の変化、そういうことで大店法をめぐる諸情勢が非常に変化しつつあるという考え方のもとに、そのような変化に対応して出店調整のあり方を検討すべしという立場から、昨年の六月に産業構造審議会それから中小企業政策審議会におきまして、「九〇年代流通ビジョン」という形で大店法のあり方という提言を受けたところでございます。その提言によりますと、大店法の運用実態という中に、いたずらに長期化する等の問題があり、そういう事例の是正、あるいはライフスタイルに合わせた規制のあり方、そういう運用適正化をすべしという提言をいただいたところでございます。したがいまして、通産省といたしましては、我が国の流通業の発展あるいは国民生活の向上という立場から、この運用適正化の提言を受けて、現在、それを踏まえて実施すべく作業をしておる段階でございます。
  61. 正森成二

    ○正森委員 そういうことは我々も知っておりますけれども、同じ通産省の中の統計解析課などが苦労して学問的に調べておることを、あなた方は省内の風通しをもっとよくして、そして参考にした上で政策を立てないと、せっかく国際産業連関表なんかをつくっても宝の持ちぐされになるということを私は言おうとしておるわけなんだ。今あなたが言うたことは、そういう点とは関係なくて、平たく言えば、統計解析課は統計解析課、我々は我々でそういう学問とは関係なしにやりますという答弁だ。それでは本当に国民の利益を守ることはできませんよということを指摘しておきたいと思います。  そこで、ここに去年十一月二十八日付の日本経済新聞があります。これは「日米摩擦の処方せん」ということで載せられた記事ですが、その中でマサチューセッツ工科大学教授のラディガー・ドーンブッシュという人が論文を書いておるのです。御参考になるかと思いますのでその要点だけを申し上げますと、こう言っておるのです。   構造協議で米側が提起している問題は日本の流通機構、排他的商慣行、土地問題、独占禁止法の運用、貯蓄・投資である。日本側は米国の財政赤字、短期的な経営、教育・訓練と生産性をあげている。   日本が提起した問題には米国の赤字を現実に削減させる可能性はあるが、米側があげている問題はとっかかりにもならない。 いいですか。これは正森成二が言っておるのではないのです。アメリカの大学教授がそう言っておるのです。そして、その理由としてこう言っておるのです。  米側の交渉担当者は二国間ないしは全体の貿易均衡といった観点で問題をとらえるという決定的な過ちを犯している。 こう言って、  財政赤字と低貯蓄率が続く限り、貿易赤字には外国の貿易制限ではなく、米国自身のマクロ経済の欠陥が色濃く影を落とす。 こう指摘いたしまして、ここまでは大蔵大臣も異論がないところだと思いますが、アメリカのゲッパート民主党下院議員の名前を挙げて、   ゲッパート民主党下院議員が主張する保護貿易主義でも二国間不均衡を中心に据えているが、これもまったく遺憾なことである。二国間均衡はヒトラー・ドイツの一九三〇年代に始まる概念である。その後、計画経済に用いられ、しばらくの間、東側ブロックのコメコン(共産圏経済相互援助会議)の原則であった。また大戦直後、マーシャルプランと欧州決済同盟が多国間の枠組みに戻る前の欧州でも用いられた。   二国間均衡は国際交易の仕組みとしてはあまりに原始的であり、 「原始的であり」と言っておるのですね。プリミティブ、原始的ですね。  物々交換とほとんど同じである。こうした焦点の当て方には何ら擁護する余地はない。 いいですか。これはアメリカ人の大学教授が言っ ているのですよ。そう言った上で、こういうぐあいに言っているのです。   具体的に、日本が明日、米国からの輸入を五百億ドル増やすと決定したとしよう。これは米国の製品・サービス需要の一%増にあたる。若干の乗数効果もいれると、実質需要の増加で失業率は一%低下する。   しかも、多くの産業では需要増に対応できるだけの余剰能力がなく、その結果として価格が直ちに上昇する。インフレとそれに対応した米連邦準備理事会(FRB)の引き締めによって、金利は上昇し、投資を減退させ、さらにドル高をもたらす。それでもなお貿易が改善するとは期待できない。   米国の貿易収支には、とりわけ国内の貯蓄・投資が大きくかかわっていることこそ、ポイントなのである。 こう言って、最後の結語部分でこう言っているのです。   単純化の危険をおかしていえば、貿易収支が改善するのは、海外市場開放の純効果が米国貯蓄の対投資比率を引き上げるか、財政赤字が改善するかのいずれかの場合に限られる。国民所得の恒等式(純輸出=貯蓄マイナス投資)がこの点を理解する助けとなる。   日本は投資する以上に貯蓄し、その結果として対外収支は黒字である。米国では貯蓄が低いばかりでなく、投資をも下回っており、対外収支はマイナスである。米国の赤字は民間貯蓄の低下と膨大な構造的財政赤字を反映している。 この米国の赤字というのは、貿易赤字という意味ですね。これはアメリカの教授の言っていることですけれども、まさに正論なのです。  だから関税を、ただでさえ引き下げているのにアメリカやECのさらに二分の一以下に下げる、そして関税ゼロのものをたくさん設けて、事もあろうに、それについて輸入促進税制認めるというようなことでは、与党の先生も聞いておいていただきたいのですが、本当の貿易摩擦には何ら役立たない。しかも、それだけでなしに、これは後で申し上げますが、輸出企業にさらなる政策減税への特典を与えるだけで逆に輸出ドライブを起こすおそれすらある。これは大蔵省が六カ月前には言っていたことなのですよ。どういうわけで変説なさったのか私にはわかりませんけれども、そういう点からいいますと、私は、皆さん方がおとりになっておられる政策には決して賛意を表することはできないというように思います。  それと同じことは、同じようにまたアメリカが言っているのです。御存じでしょう。アメリカではナウ・ナウイズムという言葉があるのです。ともかく当面の経営がよかったらいいというから、企業の買収やら合併やらMアンドAばかりに集中して、技術力を鍛えて生産性を上げるというようなことをやらないのです。それがアメリカでも非常に批判されております。  これは何も石原慎太郎氏のことを言うわけじゃありませんが、「メード・イン・アメリカ」という本が出ているのです。ここにその要約を持ってまいりました。そこでもこう言っているのです。   米国経済を活性化するには、技術力を蓄積し、モノづくりにおいて競争力を回復させることが何よりも必要である。この競争力強化の足を引っ張っているのが、企業をマネーゲームの対象としてしか考えなくなった最近の社会的風潮だと、リポートは手厳しく批判している。 これは東海大学の唐津さんという教授が、今言いました「メード・イン・アメリカ」などをお読みになって、日経新聞で言っておられることなのです。ですから、これは日本で言っているだけでなく、いわんや日本共産党が言っているだけでなくて、アメリカの識者が、アメリカのまじめな大学教授が、あるいは「メード・イン・アメリカ」などは非常によく調査をしてやったのですからね、そういうところが言っておられるのに、それに対して政府は、もっと正論でアメリカと真っ向からやり合わなければならないのに、それを十分にやらないで、通産省が指導性を持ったのか、大蔵省が屈服したのかよくわからないけれども、関税をむやみやたらと引き下げたり、輸入促進税制というかつて世界に例のないよう税制をつくり上げるというようなことは、我々としては賛成するわけにはまいらないということを申し上げたいのです。  演説が長くなりますが、五月二十七日の毎日新聞の社説で、こう言っているのですよ。   EC(欧州共同体)は、すでに四十二項目にのぼる米国の不公正貿易慣行をリストアップしている。また、ガットのパネル(紛争処理小委員会)は、このほど米国の砂糖の輸入制限をガット規約違反としてクロの裁定を下し、六月の理事会にかける予定だ。   さらに、伝えられるところでは、二十三日に行われた米経済政策閣僚会議でも、この問題が取り上げられ、ブッシュ大統領自身「これでは米国にもスーパー三〇一条を適用しなければならない」と冗談を飛ばさざるを得なかったほどだったという。 ブッシュ大統領が、自分の国がスーパー三〇一条を適用されなければいかぬくらい不公正な貿易慣行があると言って、認めているのです。   もともと、スーパー三〇一条は、米国は正しく、他の国は間違っているとの前提でつくられたといってよい。果たして、この前提が正しいのか。 そして、「ニューヨーク・タイムズ紙が指摘している」と言って、「ごう慢かつ無知の認識」だ、こう言っているのですよ。こういう状況のもとで、一方的な譲歩というようなことは非常に問題だ。  そこで、そろそろ時間が参りますから、橋本大蔵大臣がいいことを言っておられるので、御紹介をしたいと思います。これは九月五日の日経の夕刊であります。その中で、松永通産相が日米構造協議についてアメリカに協力する的な発言をされたときに、敢然と手を挙げられたのかどうか、そこは見ておりませんからわかりませんが、橋本大蔵大臣が「日本の国民感覚から受け入れられるものなら耳を傾けるが、米国の命令に従う会議ではない」と主張、これに対して高原企画庁長官、さっきも名前が出ましたが、「「日米の貿易不均衡是正は米国財政赤字などマクロ要因の改善の方が大きい」と語るなど、関係閣僚の間で構造協議のとらえ方や対応に食い違いが出た。」、日経にはこう書いているのです。私は、これは本当だろうと思いますね。だから、そういう点があるのではないですか。  いろいろ申しましたけれども、橋本大蔵大臣に、これらの問題についての大臣の哲学的見地をお聞きしたいと思います。細かい技術的なことは事務方で結構です。
  62. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 大変たくさん引用されまして、まず第一によく調べられたなと思って、実は感心して聞いておりました。  ただ、今構造協議について触れられました部分、私自身の率直な見解を申し述べますならば、一つ大変残念だと私が思っておりますものが、この構造協議というのは、実は双方が相手側にアイデアを出し合っております。ところが、日本側からアメリカ側に出しておるもの、すなわち双子の赤字を早く解消してもらいたい、あるいはアメリカ自身の貯蓄率を高める努力をしてもらいたい、実はこうしたものはなかなか世間に紹介されません。そして、構造協議におけるアメリカ側からのアイデアというものが非常に大きく取り上げられ、日本側がそれを受諾するかしないかといったような印象でとられております。この点は、私は大変残念でありまして、私はほかの場所でも、できること、できないことは分ける、あるいは玉石混交のアイデアの中から玉を拾い出す、いろいろな言い方をしてまいりました。いずれにしても、我々ができないことはできないのです。  ただ、それと同時に、私は逆に今回の交渉を通じまして一つアメリカ側の態度に敬意を表しておりますのは、どうも我々は何かアメリカ側から出てきますと被害者意識で身構えがちなのですが、彼らは日本側から相当強引な、例えばおまえの国 の役人の数は多過ぎるというようなことを言いました場合にも、その日本はどういう管理の仕方をしているんだ、ほう、それはおもしろいということで、すぐそれを受け入れる、非常にフランクなところがあります。そういう意味では、我々は逆に日本側として、相手から言われたことではなく、日本の国民生活の質の向上につながる提案というものは、むしろ素直に受けとめて、我々自身の施策として取り組む、そうした姿勢も必要だと考えております。  もとより日本の、例えば国家財政がアメリカ側の管理に置かれる危険性を冒するようなことは我々としては絶対にできません。そうした意味では、私はむしろアメリカ側のアイデアというものの中から日本の国民生活の質の向上につながるものは積極的に受け入れるべきであろう、そしてそれは我々自身のものとして取り組む姿勢が必要だ、そのように考えて今日までまいりました。
  63. 正森成二

    ○正森委員 国民生活の本当の質の向上につながるのかというような問題については、大店法のところでごく一部、東京都の調査の結果も申し上げましたが、よくよく考えなければならない問題もあるということを指摘して、次の問題に移らせていただきます。  そこで、輸入促進税制の関係について伺いますけれども、初めの通産省の案では、去年の十月ごろですが、対象品目は約千三百で、輸入拡大効果は三十億ドル、年間の減税規模は三百億というように十月四日の東京新聞などには出ております。ところがその後ちょっとふえまして、千四品目がさらに無税というようになったわけですが、この対象品目は政令で定めるとなっていますが、その政令の内容はどうなっていますか。
  64. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 輸入促進対象製品の範囲でございますけれども、政令上、関税が無税とされている機械類、電気機器、化学工業製品などの製品のうち、これから申し上げますようなものを除いた製品を通産大臣指定する、告示をするということで定めようというように考えておりまして、ただいま通産省と最終的な詰めを行っているところでございます。  例外とするものでございますが、原則として輸入が禁止されているようなものがございます。そういうものは外したい。それから輸入割り当て品目、例えば軍艦とか軍用機とか、何かワシントン条約の関係でクマの胆なんというのがあるようでございますが、そういうようなもの。または関税割り当て品目、靴とか皮革とか、そういうものに該当するもの。それから国内の生産量が極めて少ないものがございます。こういうものは当然輸入しなくてはいけないわけでございますから輸入対象品目から外す。それから、昨日も御議論がございましたが、国際市況商品などで価格変動の非常に著しいもの、銀でございますとかプラチナでございますとか、そういうようなものは外したらどうかということで議論をいたしております。もう一つ、例えば書画骨とう類のようなもので、わざわざ輸入の促進を図ることがどうかなと思われるようなものにつきましても、外すことで検討いたしたいというふうに考えております。
  65. 正森成二

    ○正森委員 一応のお答えがあったのですけれども、私どもは今度の関税ゼロにしたものの中には、非常に問題があり、それを輸入促進税制とリンクさせるときには一層問題だというように思っております。  通産省に伺うつもりでしたが、既に衆議院の大蔵委員会調査室が調べておるようですので、私は答弁を求めずに自分から申し上げたいと思います。  この無税化品目の六十三年度輸入総額、これによる無税化比率の変化という点ですが、これは衆議院調査室の調査によりますと、輸入額は一兆七千二百六十億円で鉱工業品輸入総額の一七%、鉱工業品無税化比率は、品目数のベースでいいますと、現行は二三%ですが改正後は四一%に上昇いたします。そして、うち機械類は、現行五二%ですが、改正後は実に九八%というように上昇するわけであります。これは非常に大きな比率であります。  そして、その千四品目が無税に新たになりますが、その分布率を見ますと、今まで二%未満だった品目が三十九、二%以上三%未満が百十二、三%以上三・五%未満が三百三十五、三・五%以上五%未満が四百九十五、五%以上が二十三、こういうことになっております。これも調査室の調査資料です。  これから見ますと、通産及び関税局、大体三・五%以上なんというのは、日本の平均が東京ラウンド以後非常に下がっているのが、その平均よりも高いわけで、中小企業などが多くて産業保護の必要があると思うから三・五以上になっているのです。その三・五以上五%のもの、あるいは五%以上のものもあるのですが、それを一挙に無税にして、しかもそれに輸入促進税制というものをさらに加えるということになれば、これら関連の中小企業に重大な影響を与えることは事実じゃないですか。その点はどう思っていますか。
  66. 庄野敏臣

    ○庄野説明員 お答え申し上げます。  今回の関税撤廃につきましては、我が国が一方的に行うという条件のもとで、国内産業が比較的弾力的に対応できるものに限って関税を撤廃することとしております。したがいまして、対象品目が低関税に集中した形となっております。これによって中小企業等の国内産業が大きな打撃を受けるということは、今のところはないのではないかと考えております。  なお、関税撤廃の対象品目の一部に中間財、使用する材料も入っておりますので、そういうことも考えると、そういう面については中小企業を利するというところもあろうかと思います。
  67. 正森成二

    ○正森委員 答弁には納得できませんけれども、次に移らせていただきます。  関税局が答えても主税局が答えてもどこでもいいのですが、この税制企業にとっては確かに減税になって、利益になりますね。それが消費者価格に反映されるという保証はどこにあるのですか。それは全くないのじゃないですか。
  68. 庄野敏臣

    ○庄野説明員 お答えいたします。  この税制につきましては、輸入をふやすということを直接の目的にいたしております。したがいまして、これを恒常的に扱うような事業者に恩典を与えるということになっております。これは、恩典という場合に、輸入品を取り扱うときにやはりアフターサービスとかスペックの手直しとかいろいろなコストがかかる、そういうリスク、コストというものを補てんするという考え方でございます。  ともあれ、対象製品というのは広くSITC五部から八部までを考えておりますが、そういう多様な商品の輸入が拡大するということ、それからニューカマー、新規に事業者の方々がこれに入ってくる、いわばそういう競争を通じまして、私どもの経済社会の中で価格引き下げなり流通合理化といったものが図られていく、それが消費者の利益につながっていくものと考えているわけです。  なお、一つお答えさせていただきたいのでございますけれども、別途、消費者にそういう還元のメリットをいかように与えるべきかについても私どもなりに腐心しておりますが、例えば推進本部をつくってそのPRを図るとか、国内のセンターを通じて情報を提供するなりして、目いっぱい消費者がそういうメリットに敏感に反応し得るよう体制づくりを考えていきたいと思っているわけでございます。
  69. 正森成二

    ○正森委員 一つ一つお役所に聞いて議論を進めたいと思いましたが、時間がなくなりましたので、私の方でつかんでいる資料はもう自分で申し上げてお話しいたしますけれども、例えば通産省は、輸出企業である自動車とか電機とかそういうところに輸入拡大の計画を出せ、こう言って要求しているのですね。各種の新聞に出ております。  その中でごく一例を報告しますと、自動車十社の輸入拡大計画というのがあります。これによりますと、九二年度には一兆円を超えるという輸入を行う、これは去年、八八年度の実績が三千六百億ぐらいでしたから、二・八倍にふえるのです。 これはどの点をふやすのかといいますと、ほかに資料はいっぱいありますが、時間がないから申しませんが、自動車会社が外国に展開している製造工場がありますね。そこからの逆輸入です。それから、部品を安く調達するために東南アジア等々に工場進出していますね。そこから関連会社の部品を安く輸入する。そういう計画を非常に増大させて、それで大体九二年には輸入を二・八倍にする。  そうすると、もちろん輸入促進税制の適用を受けることになるのですね、逆輸入だって適用されるのですから。そうしますと、輸出企業というのは日米貿易摩擦や日本の黒字を猛烈につくり出した元凶なんですよ。その元凶が自分の関連企業から輸入をふやして大もうけすると、それにまた減税してやる。これらの関係会社は、結局輸入品が安くなるのと同じ効果を持つと言っているのです。それを使って、部品などでまた生産するのですよ。逆に輸出ドライブがかかって輸出にとって有利だということがあるから、大蔵省は去年の夏までは反対しておったのです。それを今度は導入するということになれば、輸出について日米貿易摩擦をつくったその元凶に対してまた減税してやる、場合によったら輸出増勢になる。これを日本のことわざでは、言葉は悪いけれども、盗人に追い銭というのですよ。まさにそういう税制に、関税定率法の改正と一緒になって結果的にはそうなっておるというように言わざるを得ないと思うのです。  私、ちょうど時間が参りましたので終わらせていただきますが、多少失礼なことも申しましたので、大臣から御意見があれば承って、質問は終わります。——よろしゅうございますか。それでは終わらせていただきます。
  70. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十二分休憩      ────◇─────     午後一時二分開議
  71. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。宮地正介君。
  72. 宮地正介

    ○宮地委員 きょうは日切れに関係する四法案が一括審議ということで、限られた時間でございますので、まず法案について少し御説明をお伺いし、あと重要な当面する課題について順次お伺いしてまいりたい、こう思っております。  まず、関税定率法の関係でございますが、今回の関税定率法で相当多くの品目が引き下げあるいは撤廃をされております。  そういう中で、特に木材関係がHS条約に基づく関税分類表の四十四類になっておるわけでございます。当然、今回の関税率の見直しの検討対象になってもおかしくない。しかし今回これが外されておる。まさに日米経済構造協議の中でも、スーパー三〇一条の対象品目としてこの木材が今俎上に上がっているわけでございます。なぜこの木材が今回外されたのか。まず、この経緯について御説明いただきたいと思います。
  73. 岸廣昭

    ○岸説明員 お答えいたします。  今回の関税引き下げにつきましては、一層の市場アクセスの改善を図るという見地から実施するものでございます。それも、我が国が自主的かつ一方的に実施するということでございます。そのようなことから、対象品目の選定に当たりましては国内産業との調和等にも十分配慮することにしたと承知いたしております。  木材製品につきましては、八六年に米国との間にいわゆるMOSS協議が行われました。MOSS協議を踏まえまして八七年、八八年の二度にわたる大幅な関税引き下げを実施したところでございます。その結果、木材製品の輸入は大幅に増加いたしております。外国の供給シェアにつきましても七〇%を超える状況になっておるわけでございます。このようなことから、今回の関税引き下げの対象からは木材製品が除外されたと承知いたしております。
  74. 宮地正介

    ○宮地委員 一九八八年の四月現在で、特に合板について一〇%と一五%、こういうふうに現状なっているわけです。ウルグアイ・ラウンドにおけるガットの交渉で、本年末までに協定率の三三%に関税率を引き下げることになっているわけです。こういう一つ状況がある。もう一つは、この中間評価が四月に行われますけれども、ここでスーパー三〇一条の再評価が行われる。木材についても非常に厳しいアメリカからの要求があるわけです。  こういう点を考えたとき、確かにMOSS協議で一九八六年から八七年、八八年と毎年御努力されていることは私は評価したいと思いますが、今こうした国の非常に重要な時期に差しかかっているとき、この関税定率法の改正の中で、この木材がぽつんと、対象の分類の中にあるにもかかわらず抜けておる。これはやはりアメリカから見ますと日本の取り組み姿勢に非常に疑問を感じるのではないか、こう思うのです。  こういう点、大蔵大臣どうでしょうか。大臣としてその辺の所見を伺っておきたいと思います。
  75. 岸廣昭

    ○岸説明員 日米間の木材貿易問題につきましては、現在私ども日米貿易委員会の枠組みのもとで、JASだとか関税分類だとか、これは建設省の関係でございますけれども建築基準の問題につきまして、できるだけ輸入アクセスを良好にしようということで専門家レベルの会議が行われております。そういった場を通じまして日米両国の相互理解が現在進んでおるわけでございます。そういった会合を通じまして、できるだけお互いが納得できるような解決を図りたい、そういうような形で考えております。
  76. 宮地正介

    ○宮地委員 あなたは今、日米間でお互いの話し合いが非常にうまくいっているようなニュアンスの答弁をされましたが、今申し上げましたように、当面スーパー三〇一条の適用を受けているこの木材は、四月の上旬、四月の二日、三日までの中間評価に何らかの対処をしなくても大丈夫なんですか。
  77. 岸廣昭

    ○岸説明員 スーパー三〇一条の関係につきましては、これは米国の国内法ということでございまして、制裁措置がついておるわけでございます。私どもといたしましては、こういった貿易法のスーパー三〇一条の制裁措置のもとでの話し合いはちょっと難しかろうというふうなことで、先ほど申し上げましたような専門家レベルの技術的な話し合いを現在進めておるところでございます。
  78. 宮地正介

    ○宮地委員 いずれにしても、農林省の一つの大きな目玉が木材である。これが今回の関税定率法から除外されているということは、今の日米構造協議の状況から見て、アメリカが疑問を持たざるを得ない状況というのは強いと思うのですね。  また、農産物の自由化に対する関税率の引き上げ等も今回は対象の分類外ですけれども、アメリカから見ますと、自由化はしたけれども、実際は関税を引き上げることによって、国内の生産者保護と言っているけれども、関税障壁のためにこの自由化が非常に弱まっている。こういう点では、今回の関税定率法を見まして特に農林省所管の問題がやはり非常におくれている、こういう感じを受けることは否めないと思います。  もう一つ、厚生省関係の問題では、抗生物質のストレプトマイシン、これは関税率をゼロにいたしましたが、ペニシリンとヘパリンにつきましては三%どまりに途中下車させました。この点については厚生省、どういう考え方ですか。
  79. 佐々木典夫

    ○佐々木説明員 お答え申し上げます。  今御質問にございましたように、今回、ペニシリン等抗生物質関係の中で、セフェム系という、七割五分ぐらいを占めている部分につきましては関税率をゼロにいたしますけれども、ペニシリン系につきましては三%ということで御提案をしているわけであります。  このうちで、セフェム系の抗生物質につきましては昭和六十二年度から導入されております、製造過程で用います原料、粗糖でございますが、これにつきましての免税制度が活用されてまいりまして、原料コストがかなり低減を図られておりまして、外国製品とも十分対抗できるというふうな 判断をいたしておりますので、今回はペニシリン系以外の抗生物質は一括して関税を撤廃するということにいたしておるわけでございます。  それから、残っておりますペニシリン系抗生物質につきましては、平成二年度から中間工程で原料に使います粗糖につきまして免税の対象となるわけでございますが、なお、コスト上、外国製品の方が優位にあるというふうなことも考えられますので、三%にとどめておるということでございます。  それから、もう一点のヘパリンでございますが、これは血液凝固を阻止する薬に原料として使っていくものでございますが、基本的に動物に由来する原料でございまして、現在の関税番号でまいりますと、同じような動物由来のもの、例えば肝臓エキスだとか胆汁エキスといったような分泌物の抽出物がございますが、これは関税率が三%となってございますので、税率のバランスを確保するという観点から、今回、五・一から三%に引き下げる、こういう措置を講ずるという考え方でございます。
  80. 宮地正介

    ○宮地委員 国民から見ますと、同じ抗生物質でありながらペニシリンとヘパリンが途中下車、三%で終わった、同じ抗生物質であるストレプトマイシンはゼロまでいった、この辺はなかなかわかりにくいと思うのですね。恐らく、簡単に言えば業界の競争力が弱いのであろう、こう推測できますけれども、具体的に業界の製薬メーカー等を見てみますと、果たしてその辺のことがそのとおりなのかなと若干疑問を持たざるを得ません。  もう一点私がお伺いしたいのは、今回の関税定率法の改正に当たりまして、HS条約に基づく関税率分類表の九十三類「武器及び銃砲弾並びにこれらの部分品及び附属品」、今回これは見直しをしないことになっておりますけれども、そういう中で、特に戦車の一二・八%、これが据え置きになっておるわけですが、今はもう戦車を日本の国が輸入をするような環境にあるわけでもないし、これはまずゼロにして撤廃する、こういうような作業をなぜやらなかったのか。分類対象に外れているからここは今回やりませんでしたというのであれば、何のための見直しか、こういう国民の素朴な疑問も出てくるわけですね。この点についてはどうだったのか、これは関税局長でも結構です。
  81. 瀧島義光

    ○瀧島政府委員 お答えいたします。  機械類のうちほとんどのもの、九八%までは今回の措置がとられますと無税になりますが、例外として二十八品目ほど有税のまま残るわけでございます。そのうち戦車につきまして今回の関税引き下げを見送ることにいたしましたのは、一般の機械と性質が異なっている、これは当然でございますが、戦車につきましては輸入をしないという方針がとられております。逆に言えば、必要な場合には国でつくるという方針がとられておりますので、税率の引き下げの対象から外したということでございます。
  82. 宮地正介

    ○宮地委員 私がきょう申し上げたいのは、先ほどから申し上げておりますとおり、今回の関税定率法の改正につきましては、関税が撤廃をされ、あるいは引き下げられた、そういう中で特に日米構造協議の対象としている重要な木材、この取り扱いが非常に軽視されたというか非常に慎重であったというか、そういう点が一つ。それから、逆に、農林関係の農産物の自由化に伴うところの引き上げ、こういう点では農林水産省関係のものが非常に消極的である。もう一つは、今申し上げたように厚生省所管の関係でなかなか理解しがたい途中下車があった。通産省所管の機械物については一千四品目にわたりまして撤廃をするという、この努力については私は評価したい、こう思っておるわけでございます。  今後、この市場開放というものは日本における非常に重要な政策の一環であろうと思うのですね。そういう点で、確かに国内の生産者保護あるいは競争力の弱いものを関税によって保護していく、これはそれなり考え方があると私は思います。しかし、今日、日本の置かれた、先進国として世界に市場開放していくという重要な責任もあるわけでございまして、この辺のバランスと調和のとれた今後の関税定率法の改正、撤廃というものは、非常に大事な問題ではなかろうかと思うのですが、この点について大臣から一言お伺いしておきたいと思います。
  83. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 先ほどは失礼をいたしました。木材について私は知識を持ちませんので、大変申しわけありません。  今委員の御指摘を伺っておりまして、私は委員の御指摘にも理があるなと思いますけれども、同時に、日本国内のそれぞれのよって立つ基盤、その脆弱性、そうしたものはある程度考えざるを得ないという実態もあることを御理解をいただきたいと思うのであります。そうした中で私どもとしては今後も最善を尽くしていくつもりでありますが、委員におかれましても、その脆弱性を除去していくためにもさまざまな対応策を講じていく上での御協力もまたお願いを申し上げるときがあろうかと思います。そうした点についてもどうぞよろしくお願いをいたします。
  84. 宮地正介

    ○宮地委員 きょうは総務庁にも来ていただいておりますので、特にここで税関職員の問題について一、二点だけ確認をし、また、基本考え方を伺っておきたいと思うのです。  税関職員の最近の仕事の内容は、非常に危険を伴う仕事がだんだんふえてきているわけですね。水際で押さえるには、税関職員の知識だけでなく、身体にかかわる重要な問題も危険もある。麻薬の問題とか大麻の問題あるいは暴力団絡みの問題、こういう点では身に危険性のかかる問題が非常に多い。過去にも犠牲者になった方も何人かいるわけです。  そういう点で、私はまずそうした税関職員の処遇の問題あるいは定員の確保の問題、そしてさらにここで申し上げておきたいのは、確かに行政改革の中で国家公務員の定員を削減していかなければならないという大乗的立場もあるわけでございますが、特に成田の拡張あるいは新関西国際空港の建設、こういうものがいよいよ近づいてきているわけですね。そうしたものができ上がってから税関職員の採用をするというのではなくて、こうした専門的な知識が要求される特殊な仕事に携わっている職員については、少なくとも二年ないし三年ぐらいは早目に採用して、そして職員の勉強、訓練、知識、こういう専門的なものを早く身につけて、空港が拡張されたりあるいは新設された場合には即戦力になるように、やはりそうした配慮が必要ではなかろうか。今までのスタンスは、何かそういう成田なら成田の空港の拡張ができた、あるいは現実にできる見通しがもう間際に来るまでなかなか採用に踏み切らない。確かに先ほど申し上げたような定数という問題、行革という問題が根っこにあるにはせよ、こうした税関職員とか国税職員などについては、やはり思い切ってそうした先手先手の定員確保という問題に取り組むべきではなかろうか。  この点について、まず総務庁としてのその辺に対する基本的な考え方をお伺いしておきたいと思います。
  85. 東田親司

    ○東田説明員 お答え申し上げます。  先生御質問いただきました税関関係の業務でございますけれども、私どもの目から見ましても、輸入申告件数の増加、入国旅客数あるいは外国貿易船の増加等々の業務量がふえてきていることは御指摘のとおりでございます。これに対しまして総務庁といたしましては、これらの事務量増を背景とする要求に対して内容を精査いたしまして、これに必要な増員ということで、従来から、大変厳しい定員事情のもとではございますけれども相応の規模の増員を認めてきているところでございます。  御指摘のございました成田空港の二期工事の完成あるいは関西新空港の開設等が将来見込まれるわけでございますけれども、これらに伴う税関業務の増大につきましては、今後大蔵省の方でこれら業務にかかわる増員要求を出していただきましたならば、私どもの方としてはその内容を精査し、よく相談して適切に対処してまいりたい、こういう考え方でございます。
  86. 宮地正介

    ○宮地委員 総務庁は大変に謙虚な前向きの姿勢をいただきまして、敬意を表します。  大蔵省からそういう定員要求があれば前向きに検討する、関税局長国税庁次長、今の答弁に対しまして今後どういうふうに対応していくか、一言お伺いしておきたいと思います。
  87. 瀧島義光

    ○瀧島政府委員 お答えいたします。  率直に申し上げまして、国会で御答弁をするということを好む政府委員というのは余りいないと思いますが、きょうばかりは私は大変うれしく存じ上げます。  ことしは十一人の減員ということで終わりましたが、来年以降、きょうの御議論、特に今の総務庁の御答弁あるいは午前中の大臣の御答弁、これを胸にしっかりしまい込みましてお願いをしていきたいと思っております。ありがとうございました。
  88. 岡本吉司

    ○岡本政府委員 せっかくの機会でございますので、やや敷衍して御説明させていただきたいと思っております。  我々税務を取り巻きます環境は、年々非常に厳しくなっております。課税件数も増大しておりますし、取引も複雑化している、広域化している、あるいは国際化している、こういったことでございまして、我々の仕事といたしましては質、量ともに困難化しているということが言えようかと思っております。また同時に、最近の一般の方の税に対する関心が非常に高くなっております。そういった中で、我々公平な課税というものに向けまして最大限の努力をしなければいかぬと考えておるわけでございます。  こういった状況にかんがみまして、定員関係でございますが、従来から、我々といたしましてもやはり我々自身の事務運営の合理化あるいは効率化の施策は当然講じてはおりますが、他方、こういった我々の努力になお足らない部分、あるいは必要な要員につきましては、関係当局の御理解を得つつ、厳しい行財政事情のもとではありますが、その確保に努めてきたところであります。今後とも、こういった合理化、効率化の施策は引き続きやるつもりでございますが、さらに我々の税務の困難性であるとか歳入官庁としての特殊性を強く訴えまして、税務職員の増員につきましてはさらに一層の御理解が得られるよう最善の努力を尽くしてまいりたい、こう考えております。よろしくお願いいたします。
  89. 宮地正介

    ○宮地委員 そこで、国家公務員旅費の改正についても、今までもいろいろ議論されてまいりましたが、基本的には出張とか赴任という問題は直接経費でございますから、やはり等級や給料によって格差をつけるというのは問題が残ろう、私はこう思います。しかし、いろいろと社会情勢における社会常識的なものもありますので、一歩譲ったとしても、やはり実費の弁済に満たないそうした無理な費用の体系は改めなくてはいけない。  特に、今回十一年ぶりに改正した旅費の中におきまして、一級から三級の方々の宿泊料、これが三二%アップしたとはいえ、実勢にかなっているのかなと率直に私は疑わざるを得ません。六大都市中心とした甲地においても一級から三級が一泊八千七百円、果たして大阪や東京にこういうところがあるのかな。乙地にしては七千八百円。  今まで国家公務員の皆さんともいろいろな場で懇談をする機会がございましたが、大体まだ役職についていない皆さんの異口同音に返ってくる言葉は、出張しても持ち出しですよという言葉ですね。この持ち出しだという言葉が異口同音に返ってくるわけです。そこの持ち出しの一番のところは宿泊の費用がどうも足りない。ある国税職員の皆さん、特に東京国税局管内は山梨も担当しているわけですね。調査などに行かれて、民宿を探したり、いろいろな安い公共の宿舎はないか、国民宿舎はないか、いろいろ御苦労している中でどうにもならぬ。これは特別な例かもしれませんが、私が伺った範囲では、残念ながら六千円前後のモーテルに泊まって国税職員が調査に行っておる、こういう大変なお話も聞いたわけです。これで天下の国税職員に、本当にプライドを持って、使命感と責任感を持って国民の納税の公正な調査をせよ、これはちょっとひどいのではないかな。こういう実態、まず国税庁次長、承知していますか。
  90. 岡本吉司

    ○岡本政府委員 御指摘のモーテル云々のケースでございますけれども、大変申しわけございません、私ちょっとそのような事例があったかどうか具体的には承知しておりませんけれども、今ふっと頭の中で思いますのは、例えば旅館街を税務調査する、しかも数日かけて泊まりがけでそこを調査しなければいかぬ。その場合にその職員がどこに泊まるかといいますと、その調査している旅館街では泊まらないのが我々の原則でございます。そうしますと、その近くに適当な泊まるところがあればそれはそれで当然そこへ泊まるわけでございますが、不幸にして泊まる場所がないといった極めてレアケースのような場合には、今のようなお話は決して私は好ましいこととは思いませんが、ただ万やむを得ず緊急避難的にあり得るのかなというくらいをちょっと頭の中で思ったわけでございます。  ただ、今のは具体的な話でございますが、旅費全体の話でございますけれども、先生御指摘のとおり、五十四年の四月以降ずっと据え置かれております。この間、物価指数を見ましても三割程度上がっているわけでございますし、先ほどの御指摘ような金額でなかなか泊まる場所にも苦労しているということも十分承知しております。各自職員がいろいろ工夫をいたしまして賄ってきてくれているのではないかという気はいたしますが、同時に、ややきつい面があるというのも否めない事実であろうと考えております。  そういった意味から、やや先走ったお答えになるかもしれませんけれども、今回のよう旅費法の改正がこういった実情を踏まえたところで実現されますことを我々は強く願っているわけでございます。
  91. 宮地正介

    ○宮地委員 私は大蔵省にぜひ検討を、次の機会からでも結構ですがしてほしいのは、三二%の引き上げについてはそれなりの実態調査をされたと伺っていますが、三二%をそのまま一級—三級あるいは四級—八級、九級以上あるいは指定職、全部画一的に三二%スライドしていっているわけですね。やはり一番の大変な係員の一級から三級のところを逆に四〇%くらい上げて、上を少し滑らかにする、そういった工夫があっていいのじゃないか。  私が言いたいのは、一番大変な、所得の少ない、そしてそういう実勢価格から見るとなかなかギャップのあるところについては、実勢に思い切って近づける。皆さんからすれば、実態調査を見て平均値をとって実勢価格に近づけました、こういう論理の展開だと思いますが、もう一歩踏み込んで、係員のところの一級から三級については、せめて甲地においては一万円ぐらいに引き上げてもよかったのではないか、そのかわり上についてはもう少し滑らかにして、下に厚く上に薄くても構わなかったんじゃないか、それを三二%で画叫的に持っていった。それなり考え方があることは私もわかりますが、これは直接的な費用でございますので、法の精神からいっでもその点についての配慮がもう少しあってよかったのではないか、こう思いますが、この点についての所見を伺っておきたいと思います。
  92. 藤井威

    ○藤井(威)政府委員 今御提案申し上げております旅費の定額改正で、三〇%を超える定額の改正を御提案申し上げておるわけでございますが、委員指摘のとおり、この十一年間にわたる据え置きの中で、実際に出張した公務員が現実に利用しておる各宿泊施設における料金の状況を実態調査を行ったという、その実態調査の結果を見ましてこういう改定を提案しておるところでございます。おっしゃいますように確かに等級によって格差をつけておることも事実でございますし、現在提案しております定額が各段階ですべて三二%アップということで御提案申し上げておることも事実でございますが、実は実態調査の結果でも大体そんな姿が出てきておりますので、今回はそういう形で御提案したということでございます。  将来の問題といたしまして、旅費法の精神というものが基本的には実費弁償、コストを補償するということであることは我々も十分承知しております。旅費の定額が実情に合わなくなれば、実情に合わせるべく適正な額に改正していく、これは各階級別にきちんと適正な額にできるだけ早く改正していくという方針は今後とも貫いてまいりたいと思っております。
  93. 宮地正介

    ○宮地委員 もう一点だけ伺っておきたいのは、十一年間放置しておいたのは、理由のいかんを問わずまずいと思うのです。まして一級から三級の八千七百円という額を見ると、私は、そう遠くない時期にもう一回改正しないと実費弁償という法の精神も形骸化してしまうと思うのです。こういう点から見ますと、次の改定のときにはぜひもう少し直接費用に対する物の見方、確かに科学的なそういう実態調査をおつくりになっておりますが、画一的に上まで持っていくのではなく、やはり下に厚く——下に厚くということは実勢価格に基づいた費用にしてもらいたいということです。  今後この改正についても、十一年なんというこんなばかげた空間を置かないで、私は、場合によっては三年に一回ぐらい定期的に見直して、実勢に合わない場合には思い切って国会に提案してくるぐらいの責任ある対応をしていただきたい、こう思うわけでございますが、大臣、この点について、今までの論議を聞いて一言コメントをいただきたいと思います。
  94. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 先日も本委員会で申し上げましたが、実は私は、この法律案の原案となります予算査定の段階でこの数字を聞きまして仰天をいたしました。そして、本当にもう少し上げたらどうなんだということを私自身が申しました。しかし、むしろ事務方の諸君は非常にまじめに、実態調査の数字から出てきた引き上げ幅でこれをまとめてきたわけであります。むしろその姿勢は、私は公務員として国民に対しそうあるべきであろうとも思います。  しかし、現実の問題として私自身が非常に気になることでありますし、少なくともこんなに長い年数、是正をしないでためてしまうということ自身は、本当に考えなければならない。むしろ、もっとしばしば実勢に合わせた見直しが行われ、本院における御審議を受けるような慣行を定着させていきたい。その中において、今委員が御指摘になりましたような事実に対する配慮も加えられるだけの、むしろ全体のレベルを引き上げていきたいと思います。今のままの数字で委員の御指摘になりますような方向でまとめましたとしても余り効果はない、むしろ実質をもう少しかさ上げしていくことを考えていくべきではないのかな、率直に私はそんな印象を持っております。
  95. 宮地正介

    ○宮地委員 実質的にかさ上げしていくという方向でぜひ今後検討いただきたい。  そこで、法案についてはこの程度にいたしまして、当面する重要課題について大蔵大臣に何点か伺っていきたいと思います。  まず、日米構造協議の問題につきまして、大蔵大臣がブレイディ財務長官と会いまして、アメリカからは特に公共投資の問題について、GNPの一〇%ぐらいを目標にして今後三年なり五年の間に日本として社会資本の公共投資をやってもらいたい、こういう強い要望が今まで出されてまいりました。大蔵大臣が参りましてブレイディ財務長官にお会いしたとき、その辺のことについてはどういうよう対応をされたのか、まずこの点についてお伺いしたいと思います。
  96. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 先日も本委員会におきまして申し述べましたように、たまたまブレイディ財務長官との会談は予定の四時間を一時間ほどオーバーする非常に密度の濃いものになりました。  しかし、実は欧州情勢から始まりました一連の問題あるいは我が国の為替、株式、債券各市場についての問題、そして、その中から為替に対する共通の関心とそれに基づく共同声明の発出、こういった部分に非常に多くの時間をとられましたために、また、私たち自身の関心事項、それぞれ財務長官、大蔵大臣という立場ではそちらがまず中心でありましたために、この部分に相当数の時間をとられました。  そして、構造協議の問題につきましては、ちょうど事務方の非公式折衝が終わりました直後でありましたこともありまして、日本側の考え方というものはアメリカ側に伝わり、アメリカ側の考え方というものも日本側に伝わっていた状態の中で、財務長官としては原則論をまさに述べられたということであります。そして、その原則論の中に、委員が今御指摘になりましたような公共投資について、今後数年間の間にGNP対比一〇%ぐらいまで引き上げてはどうかといった御意見もございました。  私どもの方から申し述べましたこともその意味ではまさに原則論の応酬でありまして、我が国においては財政というものが景気に対して果たす役割が非常に大きい中で、公共事業、公共投資というものが長期にわたって数字的に固定されてしまうような状態は、財政の景気に対する調節機能を失わせしめるものとしてそういう手法は我々はとるわけにはいかないといった、むしろ基本論の応酬になりました。応酬というか、説明のし合いと申し上げた方がいいかもしれません。  そして、その上でなお私の方から申しましたことは、米国から指摘されるされないにかかわらず、我が国自身の国民生活の質を高めるという視点から社会資本の充実に努めるべきは当然である。並びに、今我が国の社会資本に対する投資というものは欧米に比べて非常に高い水準にある、しかし、それは逆に社会資本整備が我が国がそれだけおくれていたという例証でもある、整備が進めば進むほどその率は低くなっていく性格を持つものであって、そうした視点からも数字を固定するということは不適切なもの、そうした原則論を申し述べたということであります。  しかし、いずれにせよ、これは全くその構造協議を離れて考えましても、お互いの国民生活の中で、先般来も本委員会で御論議のありますように、豊かさを感じられる生活というものを考えます場合に、社会資本の充実というものは米国要求とは全く別の次元から我々自身も努めていかなければならないもの、そのように考えておるわけでありまして、構造協議の論議におきましては、ブレイディ長官との間はまさに原則論の応酬に終わったということであります。
  97. 宮地正介

    ○宮地委員 原則論の協議に終わった、こうおっしゃいましたが、時間もありませんので、この公共投資の問題については、確かに今お話しのようにGNPの一〇%という数字の枠だけでは対応は無理です。まずこの四月の中間評価までに公共投資に対する具体的な数字を示すということは非常に難しい感じがするわけですが、この中間評価について、大蔵省としては公共投資の問題について具体的に数字を示してアメリカに対応する考えなのか。それとも、構造協議の最終報告の七月、これを目途にしておられるのか、これが一点。  さらに具体的に、そうしたGNP比一〇%という考えでなくして、今住宅とか下水道とか空港整備など八つの計画が九〇年度で終わるわけですね。これを、何らかの形で今ある日本のそうした五カ年計画などの計画を九一年度以降見直しをして、さらに投資を拡大するなり、そういう形の個別によろいわゆる公共投資増というものを考えておられるのか。  この二点について、ブレイディ財務長官と話し合ったのか合わないのか、その点、お伺いしておきたいと思います。
  98. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 目下、交渉が極めて微妙な段階でありますだけに、個別の内容に立ち至ったお答えはお許しをいただきたいと思います。  ただ、四月二日、三日という時点は、委員がお考えをいただきましても御理解のいただけることであります。平成二年度本予算案の審議にまだ国会は入っていただけておらない状況であります。その段階において平成三年度以降を拘束する数字を政府が出せるわけはありません。
  99. 宮地正介

    ○宮地委員 そうなりますと、大体感触としては七月の最終報告を目途にしているな、内容的には やはり平成二年度の予算の審議に入った段階で具体的な答弁をしていただく、こんな感じようですが、時間も限られておりますので、もう一点大事な問題が残されております。  それは、この四月の八日にパリでG7が行われることになっております。このG7は、我が国にとってもまたアメリカにとっても非常に重要な会議になるのではないか。一つは、先ほど少しお触れになりましたが、東ヨーロッパにおける情勢の変化であります。特にドイツのいわゆる貨幣の統合問題、これが今後世界経済にどういう形で影響が出てくるか。その問題に絡んで日本の円安問題、これもやはり非常に重要な問題になるであろう。もう一つは、いわゆるEBRD、欧州復興開発銀行の設立のときに日本とアメリカがそれぞれ八・六%の対ソ融資を合意をしているわけですね。こうした問題等に触れざるを得ないと私は思うのです。  この点に対して、G7に臨む大蔵大臣としての一つ基本的なスタンスはどういうふうに今お考えになっておるのか。非常に難しい問題と思いますが、大蔵委員会は非常に大事な委員会でございますので、余りまだ固まっていないとか、重要案件だからまだ言えないとか、そういうことでなくして、現在置かれた立場もありますが、現在の基本的な姿勢、スタンス、このG7に臨む対応、御答弁できる範囲で結構ですからぜひ御報告いただきたいと思います。
  100. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今委員、八日と仰せられましたけれども、四月七日にパリでG7を開きたいという案内状が参っておりまして、この四月七日が土曜日でありますけれども、今、国会の御審議の日程によれば私はどうしても国会の委員会に出席をしなければならないことになる可能性がありまして、出欠を留保いたしております。その点で一点、これはごまかすのではなくて、まさに私自身が出席することになるかどうか、今確定したことは申し上げられません。  ただ、その点をお許しをいただいた上で申し上げるとするならば、まさにブレイディ財務長官との間でも、東欧問題、そしてそれに連動する欧州開銀の問題、さらに東西両ドイツの通貨統一、あるいはその後に続く社会保障関係の統一といったものが世界経済の中にどういう影響を持つかということは相当な議論になりました。そして、このG7におきましては当然こうした問題は相当真剣な議論の対象になろうかと思います。  殊に欧州開銀につきましては、アメリカ及び日本はいわば域外国としてこれに参加をするかしないかを迫られているわけでありまして、私は当然日本としては欧州の復興開発というものに対して協力をしていく姿勢からこの中に加わっていくべきものと思いますけれども、こうした点についてまだ欧州開銀自体細部が煮詰まっておりません。当初私どもがその関係の折衝の中から聞いておりましたのは、G7の予定時期と同じころには欧州開銀についての考え方も各国の中でそろって、その辺で結論が出せるというように聞いておりましたものが、欧州開銀の設立問題については、まださまざまな問題について煮詰まっておらないということから、時期的にはこの時期とは切り離されるようであります。  こうした状況の中で世界経済についての論議というものは相当真剣に行われるものでありましょうが、私の立場からいたしますと、それ以外に、例えばIMFにおける第九次増資の問題と連動し、日本のポジションを第二位に引き上げる問題とそれに連動する順位変更の問題、あるいは現在の為替相場についての現行の状況の中で、各国の為替問題に対する共通の認識の確認とそれに対する共同歩調の確認、こうしたことがその席上大きな問題として考えなければならないものではなかろうか、そのように考えておるところでありまして、出席できるできないは、むしろ国会でどういうふうに御判断いただくかということもございますけれども、今未定の状態の中で、とりあえずこうした感じでおることを御報告をいたします。
  101. 宮地正介

    ○宮地委員 終わります。
  102. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 中井洽君。
  103. 中井洽

    ○中井委員 橋本大蔵大臣にお尋ねをいたします。  先ほどからもたびたびと過般の日米蔵相会議のことについて御質疑がございました。たびたびで恐縮ですが、私も党の代表ということでございますので、簡単にお尋ねをいたします。  ブレイディ財務長官と長時間にわたって会談をされて、共同声明を発表されました。現在の日本の円安の状況というものを、この共同声明における両国の立場、そういったものから見てどのようにお考えになっていらっしゃるか、お尋ねをいたします。
  104. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 率直に申しまして、今私は為替の状態を非常に心配しながら注視しているという心境であります。先般のブレイディ財務長官との会談の際にも、現在の為替動向についてお互いの共通の関心というものは確認をいたすことになりました。そして、そうした中で、投機的な動きに対し、日米双方がそれぞれの国の経済のファンダメンタルズに照らして妥当な為替水準に落ちつかせるよう努力を今後とも払っていくという決意をしているところであります。  しかし同時に、例えばリトアニアにおけるソ連の行動といったものが非常に敏感に市場に反映して、それが思惑的な動きを誘発することによりなかなか市況が安定をしないということについては、私は非常に心配をしながら注視をいたしている、率直な心境を申し上げます。
  105. 中井洽

    ○中井委員 私どもも円安ということを大変心配をいたしておりまして、一刻も早い安定を望むものであります。しかし、市場等いろいろな動きがある中で、例えばうわさとして、日米会議でアメリカはもっと円安を考えておったのじゃないか、こういう話まで流れて円安がとまらない。対外的な、世界の激しい動きの中での読みもあろうかと思います。しかし、数年前の急激な円高、また今度の急激な円安、こういうことが続く限り、経済の将来に対する不安、また世界の経済の安定がなかなか望めない、このように考えるわけであります。  このままアメリカと日本、日本とアメリカ、こういうことだけで、円・ドルという関係で幾らやってもなかなか安定は望めないのじゃないか。一対一ですから、一遍にだっと上がったりだっと安くなったりという急激な変化を繰り返す。そういう中で、日本はもっともっとドイツ・マルクとの関係、あるいは円・ドル・マルク、クロスでの相場の安定、こういったものを考えた方がいいのではないか、より安定的になるのではないか、私は通貨や市場の問題は素人ですからわかりませんけれども、そのよう感じておりますけれども大臣、お考えはいかがですか。
  106. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、委員の御指摘のとおり、アメリカのみならずドイツあるいはその他の国々とも協調をとっていくことは極めて重要だと考えております。これまでにおきましても、G7等の場におきまして、アメリカ、ドイツあるいは英国、フランス等と協調体制を幾たびか確認をし、また共同歩調をとってまいりました。その政策の枠組みは今日も変わっておらないわけですけれども、ある意味では、その枠組みとは別に、大きく欧州情勢が変化をしていることを考えますと、委員指摘のとおりに今後なおさらそうした点について論議を深めていく必要はあろうかと思います。  ただ同時にお考えをいただきたいのは、例えば昨年の秋、その時期における我が国の経済の状況、それと今日における我が国の経済の状況、本質的な変化が生じたかといえば、私は生じておらないと思っております。日本経済の状況に変化は出ておりません。むしろ、多少労働力需給について注視を要する程度でありましょう。物価にも大きな変化が生じているわけではない。それだけに私は現在の為替の状況というものが我が国の経済と見合った水準にあるとは考えておりませんで、そこに私自身の心配の種もございます。
  107. 中井洽

    ○中井委員 四月七日からG7があって、それに大臣も行かれると思いますから、あえてこの時期にやかましく申しませんが、ドイツそのものは、 統一問題、またマルクの通貨の統一問題、同時にインフレに対して、第一次世界大戦後の経験を踏まえて非常に敏感に通貨政策をいじられる国でもあります。そういった意味で、円・ドルということだけではなしに、ぜひマルクを入れた三つの安定、こういったものにお考えを柔軟にいたされるように望みます。同時に、たびたび海外に行かれて、お体には十分気をつけて御活躍いただきますようにお祈りを申し上げます。  法案について審議をさせていただきますが、大体賛成なものですから、簡単に時間短くやらせていただきたいと考えております。  これもまた先ほどの質疑の中でも出てまいりましたが、きのうですか、不動産の融資総量規制通達という形で出されました。これを十数年ぶりに出されたということでありますが、出されたタイミングとして、今の土地の現状あるいは金融状況、どのように御判断をなさって踏み切られたのか、お答えいただきます。
  108. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 銀行局長からきちんとした御説明はいたさせますけれども、こうした通達を、方針を出すに至りましたのは、先日の地価調査結果というものが、大阪圏において極めて著しい地価の上昇を来しており、名古屋圏を初めとした他の地域にもそれが波及しつつあるという状況がまず第一の原因であります。  また、先年来しばしば通達を出し、金融機関に対して土地関連融資についての厳しい対応を求めてまいりました。それなり効果は出してまいりましたものの、総貸し出しに比しての土地関連融資の量がその伸びを上回っているという状況が現実のものとなりました。そうした事態を踏まえまして、地価を安定させるわき役一つとしての金融が今回どれだけの役割を果たせるか、そう考えながらこの措置に踏み切ったわけであります。
  109. 土田正顕

    土田政府委員 補足して御説明を申し上げます。  今回の措置をとるに至りました状況判断、それからこの対策のねらい、これはただいま大臣から御答弁を申し上げたとおりでございます。  そこで、私どもといたしましては、金融面でできることは限られたものがあるとは思いますけれども地価問題の重要性にかんがみまして、従来の措置からさらに一歩踏み込んだ措置をとる必要があると判断をいたしまして、土地関連融資抑制につきまして昨日通達を発出いたしたところであります。  その具体的な内容を申し上げますと、金融機関土地関連融資について、これは全体の基本的なスタンスでございますが、それにつきましては、最近の地価動向にかんがみまして、金融機関融資全体に対しまして均衡のとれた水準にすることが望ましいというのが私ども基本的な考え方でございます。また、当面の具体的な措置といたしましては、不動産業向けの貸し出しについては、金融機関の総貸し出しの増勢以下に抑制するよう金融機関に対して求めるというふうにいたしました。またあわせて、不動産業建設業及びノンバンクたる貸金業、それに対する融資実行状況報告するよう要請をいたしました。  このよう措置の趣旨を金融機関が十分に認識いたしまして、土地関連融資の適正化に努めるよう期待いたしたいと考えております。
  110. 中井洽

    ○中井委員 過去五年間、特別税制というような形で超短期土地所有の重課をしてまいりました。今回これの延長がかかるわけでありますが、延長するということは、過去五年間それなり効果があったと御判断をなさっていると私は理解をいたします。そういう意味で、この五年間、この税制でどういう効果というものがあらわれてきたとお考えになっていらっしゃいますか。
  111. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 超短期のお話でございますが、二年延長ということでございます。六十二年の税制改正で導入したものでございますけれども、短期間で転売する、いわゆる土地転がしの問題が当時非常に問題になっておりまして、この二年以下の保有期間で土地を譲渡するような、いわゆる土地転がしの可能性のあるようなものにつきまして重課する措置をとりました。それなり効果を上げてきていると私ども考えております。  したがいまして、今回もとりあえずこの措置を延長いたしまして、再々申し上げておりますように、この四月から土地税制につきまして税制調査会の小委員会で抜本的に御検討いただく予定にはなっておりますが、とりあえずこの期限が到来いたしますので延長させていただきたいということをお願いいたしている次第でございます。
  112. 中井洽

    ○中井委員 先ほどの大臣の御答弁それからたびたびの御答弁の中で、大蔵省土地政策税制というのはわき役だった、こういうことを盛んに言われる、私もそのとおりだろうと思います。  大臣個人として、主役というのはどういうものだろう、どういうことをやっていけばこの難しい土地対策というものが進んでいくとお考えでありましょうか。
  113. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、基本的には、やはり都市に対する、殊に東京という一地域に対する一極集中をいかに排除して全国が均等のある発展を遂げられる状態をつくり出すか、そのための対策というものに一番の基本はあると思います。  また、この大都市部における地価上昇というものに対応するために、いかにして宅地を創出するかという努力、これがもう一つのかぎであろうと思います。  これにはさまざまな考え方がありましょうけれども、今よく言われるものをそのままに申し上げますならば、国公有地の活用、未利用地の活用、こうしたものが市街化農地の問題等を含めて提起をされておるわけでありますが、もう一つは、市街地の再開発によって同じ面積の中における居住をより多くせしめることが可能かどうか、こうした都市計画の分野からのアプローチもあろうと思います。  こうしたものが基本にあるべきでありますけれども土地に対する基本的な哲学と申しますかベースになるものが、昨年土地基本法を御審議いただき成立させていただきますまでいわばなかった状態の中で、本来そうした目的を支える役割であるはずの税制あるいは金融というものが、しばしば主役の座の役割を果たさせられたところに悲劇があった、私はそのように思っております。
  114. 中井洽

    ○中井委員 自分自身でまだ十分まとめたりこなしたりした論議でありませんが、おっしゃるように、大阪圏それから名古屋圏で、東京あるいは首都圏の値上がりがある程度抑制されたその反発といいますか、その資金余りといいますか、あるいは逆に名古屋や大阪でようやく都市の再開発が始まったということもありますが、随分の土地価格の上昇でありまして、私の住まいのあります三重県は、名古屋への通勤圏、大阪への通勤圏と分かれておりまして、両方相まちまして大変な土地の価格の値上がりが続いているわけであります。  いい面もあれば悪い面もある。そして同時に、おかしな面の一つとして、土地の値上がりが続けば宅地開発が民間でどんどんされていく、また住宅もどんどんと建っていく、統計的に持っているわけではありませんが、土地の価格がとまると何か家が建たないという感じを強くいたしております。  おっしゃるように、金融面税制面で土地の値段を抑えるだけでなしに、どんどん供給を続けていく、供給しやすい状況をつくっていく、このことが一番肝心なことかなと私自身は考えておりますが、大臣いかがですか。
  115. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私も委員と同じよう感じを持ちます。  なおそれに敷衍いたすならば、都市の交通インフラの整備によりまして通勤圏を拡大することにより時間的に距離を短縮できればそれだけのゆとりも生ずる、こうした視点もまた必要ではなかろうか、そのようにも感じております。
  116. 中井洽

    ○中井委員 そういう観点でちょっと、法案とは関係ございませんが、国鉄清算事業団が保有いたしております土地の処理というものをいろいろと御苦労なさっておやりになっていると思うのでありますが、私個人としては、国鉄の莫大な赤字、 土地が足りない、しかも一等地にある、こういったことを考えれば、どんどん放出をしていく、そしていい土地を民間へ提供して民間の人たちで採算のとれる住宅建設あるいは宅地建設、こういったことに使っていただく、こういうことが一番望ましいと思うのであります。  これも余談でありますが、例えば東京都に安くでお売りになる。何か国が今大変な赤字を抱えて、しかも国鉄が大変な赤字を抱えておるときに、大金持ちの東京都さんに随分安く売られる。その結果、本当に優良で安い宅地がどんどんできていけばいいけれども、何か東京都の資産として残っちゃうみたいなところがある。  そういうことがあるようでは、かえって土地政策そのもの、あるいは国鉄の再建そのものも間があるよう感じもいたします。国鉄の土地の放出が地価高騰を招いたということも一つの原因かもしれませんけれども、宅地供給という意味でひとつお考えをいただきますようお答えをいただきます。
  117. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 ちょうど国鉄国会のとき私は運輸大臣として答弁に立ち、この問題についてもさまざまな御論議をちょうだいいたしました。そして、そのときにも実は地価についての懸念からの御指摘を受けた委員がこの席にもおられます。  ただ、当時私が一番頭の中にありましたことは、従来、国鉄の土地処分というものについてしばしば不明朗な話がまつわり、それが世間に御批判を浴びる一つの原因であったこと、また、随意契約で地方公共団体にお譲りをした土地が、一番ひどい例では登記完了後二日にして民間に転売をされたこと、そうした例が幾つかありましたために、地方自治体にお譲りをするについても非常に用途を限定をいたし、その他の場合についてはあくまでも公開入札というものを原則とするということで私は当時御答弁を申し上げてきたわけであります。そして同時に、その土地の売却収入というものは国鉄清算事業団に残ります長期債務の返済に充てるべきもの、そう位置づけてまいりました。その基本は私は今日も全く同様だと考えております。  しかし一方で、都市部を中心とする地価高騰というものを考えますときに、いたずらに公開入札という手法ばかりが望ましいことではございません。そうした中から、清算事業団が今運輸省とも御相談になりながら地価を顕在化させない土地処分の方法としてさまざまな手法を考案しておられますが、私はその手法が功を奏してくれることを願いますと同時に、かつて旧国鉄時代、その用地処分が往々にして世間から御批判を招いたこと等を想起いたしますと、そうした汚名は二度と着ないでこの問題を終止させたい、そういう気持ちを持っております。
  118. 中井洽

    ○中井委員 次に移ります。  長年アメリカとの間で、あるいはまたヨーロッパとの間で交渉の中心でもありました農産物十二品目、今回の法案でほぼ対策が完了するわけであります。しかし、自由化という形で踏み切ったものの、先ほどの宮地先生の御質疑にもありましたように、かなり関税等を上げる、またいろいろな関税障害的な対応もとられておる。そのとられる背景というのはわからないわけではありませんけれども、こういう状況で、再びこれらの問題がアメリカとの交渉の中で、日本のアンフェアなやり方だ、こういう形で再燃をするおそれがあるのではないかと私どもは心配をいたしておるわけでありますが、いかがですか。
  119. 瀧島義光

    ○瀧島政府委員 お答えいたします。  ただいま委員指摘になりました事項は、すべて六十三年七月の農産物十二品目に係る日米合意等を踏まえたものでございます。これはガットにも既に通報済みでございます。したがいまして、この措置が外国から問題として取り上げられることはないものと私どもは理解しております。
  120. 中井洽

    ○中井委員 私ども日米交渉のいろいろな話を聞かしていただく中で、当然もう過去に処理をした、合意に達した、こういう認識を持っている事柄が、アメリカの議会あるいはアメリカのマスコミ、こういった中で取り上げられて再び問題となってくる、こういう出来事が随分あったわけであります。  そういった意味で幾つかの問題でお尋ねを申し上げたい、このように思います。  農林省出てくれ、こう申し上げたのですが、何かきょうは畜産の振興会か何かあるのと農水があって出てこれないようでありまして、私、正森先生みたいに勇気があってどなりつけるというわけにはまいりませんので、出てないなりに勝手に言いながら、大蔵省の方で答えられる範囲でお答えを賜ればありがたい、このように思います。  パイナップルの調製品の自由化ということでありますが、この自由化に伴ってパイナップルを生産されている方々にどのぐらいの自由化対策費が出ることになっておりますか。
  121. 瀧島義光

    ○瀧島政府委員 農林省の代役が勤まるか自信がございませんけれども、できる限りお答えさせていただきます。  確かにパイナップルは日本では沖縄における主産物となっておりまして、そのパイナップルの大部分が缶詰用に使われております。しかも沖縄の栽培条件から他の作物への転換がなかなか難しいということで、この自由化に伴う対策が非常に重視されることになったわけでございます。  基本的にこれは生産、加工、価格対策等いろいろな国内措置がとられたわけでありますが、関税面におきましても、沖縄産品と輸入産品との抱き合わせを条件といたしました関税割り当て制度を導入するということにしたわけでございます。関税引き上げという措置は、これはガットで譲許という、ちょっと専門用語を使って申しわけありませんけれども、これ以上関税を引き上げないという約束をしておりますので、そういう措置がとれない。したがいまして、抱き合わせ措置ということで激変緩和を図ったということでございます。
  122. 中井洽

    ○中井委員 補助金は。
  123. 瀧島義光

    ○瀧島政府委員 税金以外の措置につきましては、生産流通基本対策といたしましてパイナップル生産体制整備事業、これは土地基盤整備それから生産近代化施設等の整備、このための施策を講じております。それから、生食用パイナップルハウス等導入事業ということで……(中井委員「トータルでいいですよ、金額の」と呼ぶ)金額ですか。金額は、私手元に持っておりませんので、主計局もおりますが、担当者でありませんので恐らくお答えできないと思います。
  124. 中井洽

    ○中井委員 ここに三十一億六千八百万円、こう書いてありますが、間違いありませんか。大体そんなところですか。そんなに多くないですか。
  125. 瀧島義光

    ○瀧島政府委員 主計局長の代役なのでございますが、自由化関連対策予算でございますけれども、六十三年度の補正予算におきましてパイナップル関係で三十二億円措置されております。
  126. 中井洽

    ○中井委員 例えば、それじゃ沖縄のパイナップルをおつくりになっている生産農家というのは何軒だとお尋ねしましたら、千三百軒なんですよね。この千三百軒の方の生活を守る、当然のことであります。しかし、そのためにアメリカや世界と本当にけんかするのか、私は時々そのことを思うわけであります。三十一億円のお金を出して、これからも抱き合わせで、輸入したのと沖縄のパイナップルとを一対一で買わすのだというようなこそくなことをやって、そして全部あげましたよというやり方。日本全体の農業で千三百軒のパイナップル生産農家を守るために、本当にここまで大きくやらなければいけないのか、こういう感じを強く持ちます。  もちろん、私は農業地帯に育っております。農業の大事さも知り、守るものは守ればいいと思いますけれども、世界の中でこういろいろ日本はたたかれる、そういうときに、消費者等がアメリカの言うこと、諸外国の言うことの方が理にかなっているじゃないかと思うのはこういうやり方を指すのではないか、こんなふうに感じております。本当はここで農林省を怒るところなのですけれども、おりませんので……。  それから、例えば肉であります。肉製品も来年自由化ということになってまいりまして、過去五年の間にわたって自由化対策のお金が使われてま いりました。これはトータルでどのくらいになるかおわかりですか。
  127. 瀧島義光

    ○瀧島政府委員 お答えいたします。  牛肉関係の自由化関連対策といたしまして、六十三年度の補正で、先ほどと同じでございますけれども、四百六億円措置されております。
  128. 中井洽

    ○中井委員 自由化対策、すなわち子牛の生産対策という形で大半が使われていると私は理解をいたしております。  大臣、問題は、それだけ自由化対策は私は大事なことだと思うのです。そして、一刻も早く国際競争力のある畜産あるいは国際競争力のある畜産農家、こういうのが育たなければならない、この点に関しては大賛成であります。ところが、自由化だ、安い肉が幾らでも入ってくる、それに打ちかつための経営をやらなければならない、こういってたくさんのお金を毎年出していく。ところが、現実に自由化対策をやり出してから子牛の値段というのは毎年上がっているのではないか、このことを御存じですか、大蔵大臣
  129. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 事柄は存じておりますし、委員のお気持ちが理解できないわけではありませんけれども、同時に、やはり急激な自由化の中でそれぞれの農家が対抗できるところまでその足腰を支えてあげる必要があることも御理解をいただきたいと思うのであります。  ただ、それがいたずらに長期にわたって、結果的に競争力を失わしめるようであってはなりません。
  130. 中井洽

    ○中井委員 私のところは肥育牛の産地であります。そして、みんな大変な努力をして世界一おいしい肉をつくっているわけであります。そして、専業農家が圧倒的になってまいりました。おかしなことに、そういう専業農家のところは嫁の来手があるのですね。米の兼業農家へはなかなか来ない。  私は、そういう人たちがこれからも努力して、国際競争力に勝てる、国際競争力のある肉牛、これをつくるために大いに援助をすればいいと考えております。しかし、彼らの気持ちは、せっかく自由化対策で国がお金を出してくれておるのに、昭和五十九年に二十二万円であった子牛が六十三年、去年ではもう四十一万円に上がっておる。二十万円上がっておる。何のために補助金が行っておるのだ。自由化対策というのは、農家の体質を強めて、そして国際競争力のある農家を育てるために使われるべきである。残念なことに、わけのわからない形になっておる。補助金をこれからそういう自由化対策で大いにお使いになる、結構であります。しかし、その中身が十分有効に使われるように、そして日本でも早く国際競争力のある専業農家、そういったものが大いに育っていくように、私はこのことを強く要望するものですが、大臣からもう一度お答えをちょうだいしましょう。
  131. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今、中井委員から御指摘のありました問題点につきましては、農水大臣にも私から伝えたいと思います。  お気持ちはよく理解できることでありますが、同時に、現実の個々の農家が対抗できる体質が既に育ったかどうか、私はその点について十分の知識を持っておりませんので、これ以上の御答弁は留保させていただきたいと思います。
  132. 中井洽

    ○中井委員 私、逓信委員会質問の時間が迫っておりますので、大変申しわけございませんが、私が長くやりますと採決のときに——逓信委員会質問がありますので、十分ほどございますが、早目にやめさせていただきます。  ただ、関税局長さんに農林水産省のかわりに文句を言いましたので、ごまをするわけではありませんが、私どもも税関の職員さん、それから税務署の職員の方々、大変御苦労なさっておられるのを承知いたしております。また、人手不足という問題もありますし、ハードな仕事あるいはちょっと何かつきにくい仕事には行きたくないという空気もございまして、なかなか人員確保等も難しいよう状況であります。対外的に日本がオープンになればなるほど、また税制改革をやればやるほど両方ともレベルの高い職員が要る、このことはもう公明党さんの宮地先生のお話のとおりであります。私どももこの二つの現業の御苦労いただいている人たちの定数増について格別配慮をされることを強く要望して、質問を終わらせていただきます。
  133. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 菅直人君。
  134. 菅直人

    ○菅委員 今回のこの日切れ法案の中に、租税特別措置法の中で超短期重課の土地税制が含まれております。また、昨日は大蔵省がいわゆる不動産に対する貸し出し抑制通達をする、そういう形で今の地価高騰対応されているという話は、同僚委員からもたくさん話がありました。私もこれらの政策が必要であるということは全く異存はないわけですけれども、どちらも本当の意味での根本的な政策になっているか、土地高騰に対するあるいは住宅供給に対する抜本的な政策になっているかというふうに考えてみますと、結局は、取引を抑制する、そういう意味での対症療法的な政策でしかないとあえて言わざるを得ないというように思うわけです。  そういった意味で、私はこの土地政策を考える上で、土地そのものが大変有利な資産となっている現状、一つの例を挙げて言えば、砂糖みたいなものですから、その砂糖にアリが群がろうとするわけですが、そのアリが群がろうとするのを何か塀をつくって超短期課税で抑えるとか、来たらお金が足らなくするために貸し出し抑制をするとか、しかし、アリそのものは砂糖が好きですから、そのうちいろいろと手を考えて塀を越えたり穴に潜ったりしてまた集まってくる、こういうことを繰り返しているように思うわけです。  そこで、本来やるべき土地政策というのは、土地を砂糖のような甘いものにするのではなくて、塩のように、塩がなければ人間生きていけないわけですけれども、しかし、そんなにたくさん塩をなめて喜んでいる人はいないわけですから、つまり、土地というものを、本当に利用する人にはちゃんと供給されるけれども、資産として、簡単に言えばお金もうけの材料としてそれを使うような形にはそれがうまくいかないようにする、そういうことが基本的に必要だと思うわけです。  そこで、大蔵大臣に特にお聞きしたいのですが、土地政策を考える上で、土地利用計画土地税制というのは二つの大きな柱であろう、これは土地基本法の考え方も、私も土地基本法の野党案をつくる責任者の一人でしたし、その土地基本法案が通過する委員会にもおりましたので議論に参加しましたけれども基本的には税制土地利用計画というのは二本の柱だという考え方になっていると私は思うわけです。  特に、先ほど来の議論の中で大蔵大臣は、税制わき役であるという表現をよくされておりました。しかし一方では、大変重要な役目であるとも言われておりました。私は、例えば土地利用計画に沿って税制を組む、今問題となっている宅地並み課税のあり方なんかも、利用計画はこうだから農地並みにするかあるいは宅地並みにするかという、そういう誘導的な使い方での税制というものも確かに一つの大きな要素としてあると思います。しかし、例えば今問題となっております資産格差を是正するというふうな問題を考えたときには、これは利用計画で、たくさん土地を持っている人に半分よこせ、持っていない人に渡すというわけにはいかないわけで、資産をたくさん持っている人からは、相続税でもそうですけれども、適正な課税で平等化を図っていく、つまり、そういう意味でも土地においての税制というのは二人の主役の一人であろう、こういうふうに私は思っております。  政府税調が従来から出している答申が、補完的であるという言葉をよく使うわけですけれども、私は率直に言って、この補完的という言葉がこれまで関係官庁の、いわば役所の言い逃れの材料に往々にしてなってきている。権限自分のところの権限だ、例えば法人税、所得税、相続税は大蔵省権限だ、あるいは保有税、固定資産税、特別土地保有税は自治省の権限だ、しかし、土地政策をやるのは建設省なり国土庁が考えてください、 それが考えれば我々も考えますけれども、我々の方に最初の責任があるわけじゃありませんという、いわば言い逃れの材料にもなっていると、私もこの数年間この議論をずっとやってきて、強くそれを感じているわけです。  そういった意味で、私は、補完的という言葉それ自体の見解をお伺いする気はありませんけれども大蔵大臣土地税制というものは土地政策において二人の主役の一人ではないかと私は考えておりますが、その税制土地政策における役割についてどうお考えか、私の質疑時間は割と短いので、できれば端的にお答えいただきたいと思います。
  135. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 委員の方が土地問題は私よりはるかにプロでおられますけれども、私は率直に申し上げて、二人の主役の一人という位置づけには土地税制というものを考えておりません。なぜなら、土地税制というものが本当に機能しますためには、まさに一つの哲学がベースにあった上での行動にならざるを得ないからであります。  非常に乱暴な言い方を例で引かせていただきたいと思うのでありますけれども、例えば東京の都心で平屋の建物に住んでおられる、あるいはそこで商売をしておられる、その方々を想定いたしました場合に、一体、そのまま居住や営業を続けられるようにしていくのが役割なんでありましょうか、それとも、そこが土地の高度利用の視点から建てかえられて、多くの方々の住宅になっていくプロセスで住みかえもやむなしと判断するのでありましょうか、これによっても税の対応は全く違うと私は思います。こういうケースは、首都圏の土地利用を考えます場合に、都心の再開発を進めていくことになるのか、あるいは多極分散を優先するのか、これはまさに国土計画であり土地政策でありますが、その方向によって土地税制の果たす役割は全く違ってくるわけであります。  私は土地に関して議論をして委員に勝つ自信はありませんけれども、その意味では、私は二人の主役の一人と言われる位置づけには必ずしも同意できません。私はやはりわき役の重要な一人であると思っております。
  136. 菅直人

    ○菅委員 大臣が今言われた、営業を守るべきか、あるいはある意味で再開発を促すべきか、これは先ほど言いました、一つ土地利用計画ができたときに、それを誘導する手法としての税制という面でどちらを選ぶかというのは、当然そういう場面があると思うのです。しかしt 先ほど申し上げたように、例えば資産格差ということを考えたときに、その資産格差を是正するのに強制的に土地を取り上げるということを考えればまた別でしょうけれども、そんなことはあり得ないわけでして、そうすれば、税制によってその資産格差が縮まるような方式をとっていく。  一つの例を取り上げますと、先ほど哲学と言われましたけれども、私が台湾税制を調べたときに、孫文の考えた平均地権という哲学、つまり土地はみんなが平均的に利用すべきだという基本的な哲学に沿って何が行われておるか。簡単に言えば、ある面積までは低い税率、それからだんだん所有面積が大きくなると高い税率。今回、韓国で通過した宅地所有上限法、ここにも法案がありますけれども、これなども、ソウル市内で二百坪までは持っていい、それ以上の土地を持った場合は罰則的課税、年率で六%とか八%という非常に高い税金をかけることによって、みんなが平均的に土地を利用しよう。つまり、そういった意味で、その哲学があった上ということを私は決して否定はしませんけれども、哲学があった上でやるべきことは、まさに利用計画税制という二つの主役をその哲学に応じて演じさせる必要があるのだろう。  これ以上あえて申しませんけれども、その二つの主役という考え方に立っていただかないと、これからの、現在政府税調が行おうとしておる小委員会の動きにしてもなかなか積極的なものにならないかもしれませんし、自民党税調も動くというふうにきょうの新聞に出ておりましたが、そういうことにも踏み込んだ議論ができないのじゃないか、それについての御見解をもう一度お伺いしておきたいと思います。
  137. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 ちょうど平成二年度予算編成の途中、各党の東京都議会議員の方々を各党の国会議員の方々が同道して私のところにおいでになりました。この中にもそのとき同道された方がおられます。  そしてそのとき、各党の都議会議員の方が共通して述べられたことは、国有地を東京都に払い下げ宅地開発をさせろということでありました。そのときに私が申し上げましたのは、私が知る限りにおいて、例えば二十三区内にそれほど大きな国有地で宅地開発に適したものはどれだけ残っておるだろう、同時に、その相当数がその地域の避難地指定を受けておる、仮にそこを宅地開発した場合に、そこを避難地としていた住民をどこに誘導するのか、むしろその国有地を地域の環境保全あるいは公園開発といった方向に使うことは考えられないのかという議論をしましたところ、結局、都議会の皆さん、これは党派を抜きにいたしまして意見が両論になりまして、結論としては、またやりましょうということで物別れになったことがございます。  私は、東京都という、今、日本一土地問題の厳しい状況の中におけるその都民の代表の方々の中にでも、相当数意見の方向に違いがあるということをそのとき如実に知りました。  私は、委員が今述べられましたように、台湾の状況をお調べになり、その結果を聞かせていただいた、あるいは今度の韓国の法制について国会から超党派で調査に赴かれようとしていること、こうしたことは非常に歓迎すべきことだと思っておりますし、その中でまさに土地についての一つの合意ができ上がることを期待をいたしております。その合意の上に立って税というものが働くべきものと私は考えておるということであります。
  138. 菅直人

    ○菅委員 せっかく自治省にも来ていただいたので、自治省の見解も、ごく簡単で結構ですから聞かせていただきたいと思います。
  139. 成瀬宣孝

    ○成瀬説明員 土地対策はすぐれて総合的な行政であらねばならないと思います。その一環といたしまして土地税制がその活用を求められているということは当然でありますけれども、やはり土地税制がうまく機能するためには、その前提となります土地政策でありますとかあるいは都市計画、そういった関連する諸制度、施策が整備されないと、なかなか土地税制としてはうまく機能しがたいという面があることは否定できないかと思います。
  140. 菅直人

    ○菅委員 それでは、きょうは短い時間ですのでやや一方的な提案で終わるかもしれませんが、申し上げたいと思います。  土地税制がどうあるべきかということを考えたときに、大体の学者や専門家が土地の保有税の適正化が必要であろう、こういうことを言っているわけです。しかし一方で、先ほど大臣も言われたように、それでは都心に小さな家を持って住んでいる人を住めないようにしていいのかという問題が当然出てくるわけです。  そこで私は、三大都市圏の中の市街化区域内部の土地について、例えば個人所有の土地については六百六十平米つまり二百坪を一つの境にして、それよりもたくさん持っている人には、その超えた面積部分だけについて土地資産平等化のための保有税というのをかけたらどうだろうか。あるいは法人の土地についても、かなり遊休地がたくさんありますから、例えばその法人が持っている同じく三大都市圏の市街化区域内部の土地について、工場とか商店とかの建坪の五倍を超えた部分について同じような資産平等化のための保有税をかけたらどうだろうか。  この保有税の税制として、固定資産税なり特別土地保有税の中で見るというやり方もあるわけですけれども、もう一方のやり方として、例えば相続税評価額を使って、その相続税評価額に対して例えば二%程度の課税をする、そして国税でそれを取るという考え方もあり得るのか、このように考えておりますけれども、そういった問題について大臣の見解を伺いたいと思います。
  141. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今委員から御提起をいただきました土地保有税、私は一つ考え方であることを決して否定をいたしません。  ただ同時に、現在、土地政策全体を踏まえた上で取得、保有、譲渡等についてそれぞれの税制が機能いたしております。しかし、それ自体に問題があることも事実でありまして、四月に入りまして税制調査会において本格的な土地の総合的な税制のあり方について御論議をいただく中で、私はこの土地保有税といった考え方もまた検討の対象一つであろう、そのように理解をいたしております。
  142. 菅直人

    ○菅委員 それからもう一つ、これも提案になるかと思いますけれども、今東京などでも郊外の自治体は必ずしも住宅がふえることを好まないのですね。これは市長さんも市議会も、場合によってはそこに住んでいる人も。つまり、新たに入ってくる人のための住宅になるわけですから、それよりは、先ほど大臣も言われたように、それが畑という形であろうがどういう形であろうが、空閑地の方がまだいいということの意見もかなりそれぞれの自治体では強いわけです。  三多摩に先ほど言われました国鉄清算事業団土地が一カ所、鉄道学園跡地というところで二十三ヘクタールまとまってありますが、これを東京都が一括で買い上げる方向でほぼ話がまとまったと聞いております。そのまとまった土地を東京都は、三分の一程度か半分近くは公園にしよう、ある割合は自治体の、例えば特別養護老人ホームの用地にしよう、ある割合は公共住宅にしよう。こういうようになれば、自治体はそれでなくても用地難で公共施設が建ちませんから、そういう形になれば非常に喜んで自治体も受け入れるし、あるいはそこに住んでいる住民もそれには賛成する。そういう形に現実になってきている事例を目の前で見ております。  私は、そういった意味で、先ほど申し上げたよう土地税制とか土地利用計画ときちんと連動した、宅地並み課税等の議論もきちんと連動させて、緑地で残すのであればそれは永久的に宅地転用を認めないで市街化調整区域に編入する、しかし市街化区域に残るところは当然のこととして宅地と同じ相続税、保有税をかけていくというやり方をとれば、かなり土地供給されると思うのです。  しかし、現在あります先買い権等のやり方では、自治体に金がなければ買えないし、とても区とか市とかそういった基礎自治体はそんな金はないわけです。そこで私は、この際思い切って国が土地国債とでも呼ぶべきものを考えて、そして、そういう大きな税制なり土地利用計画推進する中で大量に土地供給されてくる段階では、それを国が適正な値段で買い上げていく。そして買い上げたものを自治体に貸して、それをある割合は公園、ある割合は住宅、ある割合は各自治体の公共施設用地として提供する、こういうことを思い切って考えたらどうだろうか。  つまりは、税収をいわば資産格差是正、つまり住宅取得の非常に難しいところに充てていくという形で言えば、たくさん資産を持っている人には課税を若干強化するけれども、それが回り回って資産が少ない人にとっては住宅供給となり、あるいは都市環境をよくすることに使われれば、それはそれで大きな意味もあるし、財政的にも成り立つのではないか、こういうことを考えておりますけれども大臣はそれについていかがお考えでしょうか。
  143. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 確かに土地政策の上から考えますと一つの御提案であろうとは思います。ただ、とっさに私の頭に浮かびますことは、土地購入のための国債といいましても国債残高を累増させることには変わりがありません。そういたしますと、平成二年度末で百六十四兆と推算されておりますこの国債残高の累増をどうやって食いとめるかに今私どもは腐心しておるわけでありまして、私はここに一つの問題点があろうかと思います。  もう一つは、国が直接土地の需給関係に介在していくということが土地政策の中で望ましいことなのかどうかという視点であります。  もう一点は、今委員がお述べになりましたよう手法を採用いたしましたとき、東京一極集中という現実から多極分散型の国土形成に資する上においてその手法は果たしてどちら側に働くか、にわかに私としては判断のつきかねるところがある。率直な感想を申し上げて、一つの御提案であるということは私は認めます。
  144. 菅直人

    ○菅委員 この間の株の暴落などを含めて、日本はバブル経済だ、泡の経済だと言われております。私は、土地政策をきちんとやれば土地は値下がりをするであろうと思っております。ただ、そのときに、急激に値下がりをするということに対する恐怖感というのが企業中心にかなり強い、潜在的にそういう空気が強いことも大臣は御承知だと思います。  そういった意味を含めて、私は、確かに大変な大きな財政的な負担になるわけですけれども、日本の全体の経済の規模、あるいは今問題となっております日米構造協議の中で公共投資を毎年十兆円やれと言われても、九兆円が土地代金に要ったのでは実質的な公共投資は極めて少ないことになるわけですから、そういうトータルで考えたらそういった選択もあり得るのではないか、このことを申し上げ、またいずれかの機会にこの議論をぜひ煮詰めたいということの希望を申し上げて、質問を終わりたいと思います。
  145. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 これにて各案に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  146. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに各案について採決に入ります。  まず、所得税法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  147. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、租税特別措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  148. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ─────────────
  149. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 ただいま議決いたしました両案に対し、平沼赳夫君外四名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党及び進歩民主連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。宮地正介君。
  150. 宮地正介

    ○宮地委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。     所得税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。  一 公平・公正な税制を確立し、税に対する国民の信頼を確保するため、今後とも税制全般について不断の見直しを行うこととし、特に不公平税制の是正、資産に対する課税の適正化については格段の努力を行うこと。  一 土地税制については、最近の異常な地価高騰による住宅取得難等国民生活、国民経済上の諸問題の解決をめざし、税負担の公平を確保し、土地政策との整合性に配慮しつつ、土地供給促進策等ともあわせて、土地の取得、保有、譲渡等に対する課税のあり方に関し、さらに検討を進めること。  一 貸倒引当金、賞与引当金等のあり方について引き続き検討するとともに、準備金、特別償却等については、経済・産業構造の変化に即応して、既に政策目的を達成したもの及び 政策効果の縮小したもの等につき、今後とも整理合理化に努めるとともに、新たに政策税制を設けることは厳に抑制すること。  一 納税者番号制度については、プライバシー保護対策の確立を前提としつつ、キャピタル・ゲイン課税及び利子課税の総合課税への移行問題を十分勘案し、国民の合意形成の状況を見守りながら、引き続き検討を進めること。  一 変勤する納税環境、業務の一層の複雑化・国際化及び税務執行面における負担の公平確保の見地から、複雑、困難であり、かつ、高度の専門的知識を要する職務に従事する国税職員については、職員の年齢構成の特殊性等従来の経緯等に配慮し、今後とも処遇の改善、職場環境の充実及び定員の一層の確保等につき特段の努力を行うこと。 以上であります。  何とぞ御賛成を賜りますようによろしくお願い申し上げます。(拍手)
  151. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  152. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 起立多数。よって、両案に対し附帯決議を付することに決しました。  本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。橋本大蔵大臣
  153. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。     ─────────────
  154. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 次に、国家公務員等旅費に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  155. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ─────────────
  156. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、平沼赳夫君外五名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、日本共産党、民社党及び進歩民主連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。正森成二君。
  157. 正森成二

    ○正森委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。     国家公務員等旅費に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。  一 国家公務員等旅費の支給対象者の区分による定額については、出張等の実態を十分勘案し、今後ともその適正化に努めること。 以上であります。  何とぞ御賛成を賜りますようによろしくお願い申し上げます。(拍手)
  158. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  159. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。橋本大蔵大臣
  160. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましては、御趣旨を踏まえまして十分検討いたしたいと存じます。     ─────────────
  161. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 次に、関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  162. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ─────────────
  163. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、平沼赳夫君外四名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党及び進歩民主連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。中井洽君。
  164. 中井洽

    ○中井委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。     関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。  一 世界経済における我が国の立場を踏まえ、調和ある対外経済関係の形成に努め、ガット・ウルグアイ・ラウンド等を通じ、国際的協調に積極的に取り組むとともに、自由貿易体制の維持・強化、世界経済の安定的成長に引き続き貢献し得るよう努めること。  一 関税率の改正に当たっては、農産物輸入自由化、製品輸入の拡大等貿易をめぐる諸情勢に対処するとともに、国民経済的観点に立って、国内産業特に農林水産業及び中小企業への影響を十分考慮しつつ、国民生活の安定に寄与するよう努めること。  一 輸出入貿易量及び出入国者数の伸長等に伴う税関業務量の増大に加え、麻薬、覚せい剤、銃砲、不正商品、ワシントン条約物品等の水際における取締りの一層の強化が社会的要請になっていることにかんがみ、業務処理体制等の一層の見直しを行うことにより税関業務の効率的、重点的運用に努めるとともに、今後とも税関職員の特殊な職務を考慮して処遇改善はもとより、中長期的展望に基づく定員の確保等に格段の努力を行うこと。 以上であります。  何とぞ御賛同賜りますようよろしくお願い申し上げます。(拍手)
  165. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  166. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。橋本大蔵大臣
  167. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。     ─────────────
  168. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました各法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  169. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。     ─────────────    〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  170. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時一分散会