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1990-06-13 第118回国会 衆議院 決算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年六月十三日(水曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 渡辺 栄一君    理事 魚住 汎英君 理事 志賀  節君    理事 中尾 栄一君 理事 新村 勝雄君    理事 時崎 雄司君 理事 春田 重昭君       粕谷  茂君    阿部喜男君       小川 国彦君    田並 胤明君       長谷百合子君    玉城 栄一君       寺前  巖君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 石川 要三君  出席政府委員         内閣官房内閣安         全保障室長   依田 智治君         内閣法制局第一         部長      大森 政輔君         防衛庁参事官  内田 勝久君         防衛庁参事官  玉木  武君         防衛庁参事官  村田 直昭君         防衛庁参事官  鈴木 輝雄君         防衛庁長官官房         長       児玉 良雄君         防衛庁防衛局長 日吉  章君         防衛庁教育訓練         局長      米山 市郎君         防衛庁人事局長 畠山  蕃君         防衛庁経理局長 藤井 一夫君         防衛庁装備局長 植松  敏君         防衛施設庁長官 松本 宗和君         防衛施設庁総務         部長      吉住 愼吾君         防衛施設庁施設         部長      大原 重信君         防衛施設庁建設         部長      黒目 元雄君         防衛施設庁労務         部長      竹下  昭君  委員外出席者         外務省北米局安         全保障課長   重家 俊範君         大蔵省主計局司         計課長     設楽 岩久君         運輸省航空局技         術部乗員課長  松本  学君         会計検査院事務         総局第二局長  澤井  泰君     ───────────── 委員の異動 五月二十九日  辞任         補欠選任   長谷百合子君     五島 正規君 同日  辞任         補欠選任   五島 正規君     長谷百合子君 六月十二日  辞任         補欠選任  前田  正君     三ツ林弥太郎君   阿部喜男君     北川 昌典君   田並 胤明君     田中 恒利君 同日  辞任         補欠選任  三ツ林弥太郎君     前田  正君   北川 昌典君     阿部喜男君   田中 恒利君     田並 胤明君 同月十三日  辞任         補欠選任   東  祥三君     玉城 栄一君 同日  辞任         補欠選任   玉城 栄一君     東  祥三君     ───────────── 本日の会議に付した案件  昭和六十二年度一般会計歳入歳出決算  昭和六十二年度特別会計歳入歳出決算  昭和六十二年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和六十二年度政府関係機関決算書  昭和六十二年度国有財産増減及び現在額総計算書  昭和六十二年度国有財産無償貸付状況計算書  昭和六十三年度一般会計歳入歳出決算  昭和六十三年度特別会計歳入歳出決算  昭和六十三年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和六十三年度政府関係機関決算書  昭和六十三年度国有財産増減及び現在額総計算書  昭和六十三年度国有財産無償貸付状況計算書  〔総理府所管防衛庁)〕      ────◇─────
  2. 渡辺栄一

    渡辺委員長 これより会議を開きます。  昭和六十二年度決算外二件及び昭和六十三年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、総理府所管中、防衛庁について審査を行います。  この際、石川国務大臣概要説明会計検査院検査概要説明を求めるのでありますが、これを省略し、本日の委員会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 渡辺栄一

    渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────    昭和六十二年度防衛庁関係歳出決算に関する概要説明                   防衛庁  昭和六十二年度における防衛庁関係歳出決算につきましてその概要を御説明いたします。  まず(組織防衛本庁経費につきまして御説明申し上げます。  当初の歳出予算額は三兆一千五百八十三億九千七百万円余でありまして、これに政府職員昭和六十二年四月以降の給与改善するための予算補正追加額百七十五億三千二百万円余、高空における放射能塵調査研究等のため、科学技術庁から移替えを受けた額二千六百万円余、震災対策総合訓練調査のため、国土庁から移替えを受けた額五百万円余、南極地域観測事業のため、文部省所管文部本省から移替えを受けた額十六億七千五百万円余、前年度からの繰越額二十七億四百万円余を加え、既定予算不用等による予算補正修正減少額二百六十四億九千四百万円余を差し引きますと、歳出予算現額は三兆一千五百三十八億四千七百万円余となります。  この歳出予算現額に対して支出済歳出額は三兆一千四十一億百万円余、翌年度へ繰り越した額は五十二億五百万円余でありまして、差し引き不用額は四百四十五億四千万円余であります。  昭和六十二年度予算執行に当たっては、「防衛計画大綱」に定める防衛力水準達成を図ることを目標とする「中期防衛力整備計画」の第二年度として計上された予算を効率的に使用して計画を着実に実施し、実質的な防衛力整備を進めることを主眼といたしました。  以下陸・海・空各自衛隊別にその主な内容を申し上げます。 一 陸上自衛隊につきましては、七四式戦車五十六両、七三式装甲車二十三両を取得し、新たに昭和六十三年度以降取得予定の七四式戦車五十二両、七三式装甲車二十三両の購入契約をいたしました。   また、航空機は、対戦車ヘリコプター八機、観測ヘリコプター十二機、多用途ヘリコプター五機、輸送ヘリコプター三機合わせて二十八機を取得し、新たに昭和六十三年度以降取得予定の対戦車ヘリコプター八機、観測ヘリコプター十二機、多用途ヘリコプター八機、輸送ヘリコプター四機合わせて三十二機の購入契約をいたしました。 二 海上自衛隊につきましては、昭和五十八年度計画護衛艦二隻、昭和五十九年度計画潜水艦一隻、昭和六十年度計画中型掃海艇二隻、昭和六十一年度計画輸送艇一隻、支援船二隻、昭和六十二年度計画調達に係る支援船二隻合わせて十隻を取得し、新たに昭和六十三年度以降に竣工予定護衛艦二隻、潜水艦一隻、中型掃海艇二隻、補給艦二隻、支援船五隻合わせて十二隻の建造契約をいたしました。   また、航空機は、対潜哨戒機八機、訓練支援機一機、計器飛行練習機一機、対潜ヘリコプター十機、救難ヘリコプター一機合わせて二十一機を取得し、新たに昭和六十三年度以降取得予定の対潜哨戒機九機、電子戦データ収集機一機、訓練支援機一機、初級操縦練習機二機、連絡機一機、対潜ヘリコプター十七機、掃海ヘリコプター二機、初級操縦練習ヘリコプター二機合わせて三十五機の購入契約をいたしました。 三 航空自衛隊につきましては、要撃戦闘機十七機、輸送機二機、高等練習機四機、輸送ヘリコプター一機、救難ヘリコプター四機合わせて二十八機を取得し、新たに昭和六十三年度以降取得予定要撃戦闘機十二機、輸送機三機、中等練習機二十機、輸送ヘリコプター二機、救難ヘリコプター四機合わせて四十一機の購入契約をいたしました。   また、地対空誘導弾ペトリオット一個高射群分購入契約をいたしました。  昭和六十二年度防衛本庁職員定員は、自衛官二十七万三千二百七十八人、自衛官以外の職員二万三千四人でありまして、これを前年度定員に比べますと、自衛官については五百十人の増員であり、自衛官以外の職員について百六十五人の減員となっております。  また、予備自衛官員数は、四万六千四百人でありまして、これを前年度員数に比べますと一千五百人の増員となっております。  次に翌年度への繰越額五十二億五百万円余は、計画及び設計に関する諸条件等のため、工事等が遅延したことによるものであります。  また、不用額四百四十五億四千万円余は、外国為替相場変動があったこと等により、航空機購入費を要することが少なかったこと等のため生じたものであります。  続いて(組織防衛施設庁経費につきまして御説明申し上げます。  当初の歳出予算額は三千五百八十八億六千五百万円余でありまして、これに駐留軍等労務者労務管理事務委託職員昭和六十二年四月以降の給与改善するための予算補正追加額五千万円余、前年度からの繰越額百六十九億七千四百万円余を加え、既定予算不用等による予算補正修正減少額六億八千七百万円余、防衛施設周辺障害防止事業等に要する経費として移替えをした額、農林水産省所管農林水産本省へ十億九千五百万円余、建設省所管建設本省へ十七億五千四百万円余を差し引きますと、歳出予算現額は三千七百二十三億五千三百万円余となります。  この歳出予算現額に対して支出済歳出額は三千四百九十九億一千六百万円余、翌年度へ繰り越した額は百九十四億三千七百万円余でありまして、差し引き不用額は二十九億九千九百万円余であります。  支出済歳出額の主なものは、調達労務管理費につきましては、アメリカ合衆国軍隊等が使用する駐留軍等労務者労務管理離職者対策福祉対策等に要した経費三百八十二億円余、施設運営等関連諸費につきましては「防衛施設周辺生活環境整備等に関する法律」等に基づき、自衛隊施設及び「日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊地位に関する協定」等に基づく提供施設維持運営等に関連し必要な土地購入及び借上げ施設整備各種補償障害及び騒音防止措置飛行場等周辺移転措置民生安定施設助成措置等に要した経費二千八百四十九億一千五百万円余、提供施設移設整備費につきましては「日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊地位に関する協定」による日米間の合意に基づき、現在提供中の施設及び区域返還を受けるため、当該施設及び区域を集約移転するのに要した経費十四億四千四百万円余等であります。  昭和六十二年度防衛施設庁職員定員は、三千三百九十九人でありまして、これを前年度職員定員に比べますと、十人の減員となっております。  次に、翌年度への繰越額百九十四億三千七百万円余は、計画及び設計に関する諸条件用地関係アメリカ合衆国軍隊等事情等のため工事等が遅延したことによるものであります。  また、不用額二十九億九千九百万円余は、返還財産補償が少なかったこと等により、施設運営等関連補償費を要することが少なかったこと等のため生じたものであります。  以上をもって、昭和六十二年度における防衛庁関係歳出決算概要説明を終わります。  なお、昭和六十二年度決算検査報告におきまして(組織防衛本庁是正改善処置要求を受けた事項がありましたことは誠に遺憾であります。  処置要求を受けた事項につきましては、指摘趣旨を踏まえ、所要の改善を行う所存であります。  何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。    昭和六十三年度防衛庁関係歳出決算に関する概要説明                   防衛庁  昭和六十三年度における防衛庁関係歳出決算につきましてその概要を御説明いたします。  まず(組織防衛本庁経費につきまして御説明申し上げます。  当初の歳出予算額は三兆三千二百八十七億七千五百万円余でありまして、これに政府職員昭和六十三年四月以降の給与改善するため等の予算補正追加額五百二十三億六千五百万余、高空における放射能塵調査研究等のため、科学技術庁から移替えを受けた額二千六百万円余、震災対策総合訓練調査のため、国土庁から移替えを受けた額五百万円余、南極地域観測事業のため、文部省所管文部本省から移替えを受けた額十六億五千七百万円余、前年度からの繰越額五十二億五百万円余を加え、既定予算不用等による予算補正修正減少額二百四十四億五千万円余を差し引きますと、歳出予算現額は三兆三千六百三十五億八千五百万円余となります。  この歳出予算現額に対して支出済歳出額は三兆三千百七億八千八百万円余、翌年度へ繰り越した額は百四十三億四千六百万円余でありまして、差し引き不用額は三百八十四億四千九百万円余であります。  昭和六十三年度予算執行に当たっては、「防衛計画大綱」に定める防衛力水準達成を図ることを目標とする「中期防衛力整備計画」の第三年度として計上された予算を効率的に使用して計画を着実に実施し、実質的な防衛力整備を進めることを主眼といたしました。  以下陸・海・空各自衛隊別にその主な内容を申し上げます。 一 陸上自衛隊につきましては、七四式戦車五十二両、七三式装甲車二十三両を取得し、新たに平成年度以降取得予定の七四式戦車五十二両、七三式装甲車二十三両の購入契約をいたしました。   また、航空機は、対戦車ヘリコプター八機、観測ヘリコプター十二機、多用途ヘリコプター八機、輸送ヘリコプター四機合わせて三十二機を取得し、新たに平成年度以降取得予定の対戦車ヘリコプター八機、観測ヘリコプター十一機、多用途ヘリコプター八機、輸送ヘリコプター五機合わせて三十二機の購入契約をいたしました。 二 海上自衛隊につきましては、昭和五十九年度計画護衛艦三隻、昭和六十年度計画潜水艦一隻、昭和六十一年度計画中型掃海艇二隻、昭和六十一年度計画訓練支援艦一隻、昭和六十二年度計画支援船五隻合わせて十二隻を取得し、新たに平成年度以降に竣工予定護衛艦一隻、潜水艦一隻、中型掃海艇二隻、支援船四隻合わせて八隻の建造契約をいたしました。   また、航空機は、対潜哨戒機十機、救難飛行艇一機、初級操縦練習機三機、連絡機一機、対潜ヘリコプター十三機、初級操縦練習ヘリコプター二機合わせて三十機を取得し、新たに平成年度以降取得予定の対潜哨戒機九機、救難飛行艇一機、訓練支援機一機、電子戦データ収集機一機、初級操縦練習機三機、対潜ヘリコプター十二機合わせて二十七機の購入契約をいたしました。 三 航空自衛隊につきましては、要撃戦闘機十四機、輸送機二機、中等練習機十二機、輸送ヘリコプター三機合わせて三十一機を取得し、新たに平成年度以降取得予定要撃戦闘機十二機、輸送機二機、中等練習機二十機、輸送ヘリコプター三機、救難ヘリコプター三機合わせて四十機の購入契約をいたしました。   また、地対空誘導弾ペトリオットは、一FU(〇・二五個高射群相当)を取得し、新たに平成年度以降取得予定の一個高射群分購入契約をいたしました。  昭和六十三年度防衛本庁職員定員は、自衛官二十七万三千八百一人、自衛官以外の職員二万二千八百五十六人でありまして、これを前年度定員に比べますと、自衛官については五百二十三人の増員であり、自衛官以外の職員について百四十八人の減員となっております。  また、予備自衛官員数は、四万七千九百人でありまして、これを前年度員数に比べますと一千五百人の増員となっております。  次に翌年度への繰越額百四十三億四千六百万円余は、計画及び設計に関する諸条件等のため、工事等が遅延したことによるものであります。  また、不用額三百八十四億四千九百万円余は、外国為替相場変動があったこと等により、航空機購入費を要することが少なかったこと等のため生じたものであります。  続いて(組織防衛施設庁経費につきまして御説明申し上げます。  当初の歳出予算額は三千七百十三億七千六百万円余でありまして、これに「行革関連特例法」等に基づく国家公務員等共済組合に対する国の負担金を払い込むための予算補正追加額二億五千九百万円余、前年度からの繰越額百九十四億三千七百万円余を加え、既定予算の節約による予算補正修正減少額二億四千三百万円余、防衛施設周辺障害防止事業等に要する経費として移替えをした額、農林水産省所管農林水産本省へ九億五千六百万円余、建設省所管建設本省へ十六億八千二百万円余を差し引きますと、歳出予算現額は三千八百八十一億九千万円余となります。  この歳出予算現額に対して支出済歳出額は三千五百七十七億二千八百万円余、翌年度へ繰り越した額は二百六十七億一千百万円余でありまして、差し引き不用額は三十七億五千万円余であります。  支出済歳出額の主なものは、調達労務管理費につきましては、アメリカ合衆国軍隊等が使用する駐留軍等労務者離職者対策福祉対策従業員対策等に要した経費四百二十五億四千六百万円余、施設運営等関連諸費につきましては「防衛施設周辺生活環境整備等に関する法律」等に基づき、自衛隊施設及び「日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊地位に関する協定」等に基づく提供施設維持運営等に関連し必要な土地購入及び借上げ施設整備各種補償障害及び騒音防止措置飛行場等周辺移転措置民生安定施設助成措置等に要した経費二千八百八十四億六百万円余、提供施設移設整備費につきましては「日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊地位に関する協定」による日米間の合意に基づき、現在提供中の施設及び区域返還を受けるため、当該施設及び区域を集約移転するのに要した経費六億三千三百万円余等であります。  昭和六十三年度防衛施設庁職員定員は、三千三百八十九人でありまして、これを前年度職員定員に比べますと、十人の減員となっております。  次に、翌年度への繰越額二百六十七億一千百万円余は、計画及び設計に関する諸条件アメリカ合衆国軍隊等事情用地関係等のため工事等が遅延したことによるものであります。  また、不用額三十七億五千万円余は、事業計画変更等により、提供施設等整備費を要することが少なかったこと等のため生じたものであります。  以上をもって、昭和六十三年度における防衛庁関係歳出決算概要説明を終わります。  なお、昭和六十三年度決算検査報告におきまして(組織防衛本庁意見表示を受けた事項がありましたが、これにつきましては、その趣旨も踏まえ、直ちに処置を講じたところであります。  何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。     …………………………………    昭和六十二年度決算防衛庁についての検査概要に関する主管局長説明                 会計検査院  昭和六十二年度防衛庁決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、意見を表示し又は処置要求した事項一件及び本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項一件であります。  まず、意見を表示し又は処置要求した事項について御説明いたします。  これは、海上自衛隊艦船国有財産台帳価格に関するものであります。  防衛庁におきましては、アメリカ合衆国武器輸出管理法等に基づく対外軍事販売により、米国海軍省から艦船に搭載する装備品等物品として前金払購入しており、六十二年度に、三隻の艦船の新造及び改造工事に際して、これらの装備品等を、工事を請け負った各造船会社に官給するため払い出しており、これらの装備品等艦船に搭載されますと国有財産に編入されることになっております。  そして、国有財産に編入した装備品等価格についてみますと、国有財産に編入するに当たり適用すべき円貨換算レート、計上すべき役務範囲等に関する明確な基準等がなかったことなどのため、物品管理簿に記載する際には取得時の支出官レートで円貨換算した価格によっているのに、国有財産に編入する際には、前金払時支出官レートで円貨換算した価格によっていたり、国有財産価格に編入すべきではない役務費部品費等国有財産台帳価格に混入していたりなどして、原則として一致するものである物品管理簿価格国有財産に編入される物品価格とがかい離しており、国有財産台帳価格が正確なものとなっておりませんでした。  したがいまして、防衛庁に対し、物品管理及び国有財産管理整合性を図るため、これらの取扱いに関する基準等を設けさせるなどの措置を講ずることにより、艦船国有財産台帳価格適正化を図るよう是正改善処置要求いたしたものであります。  次に、本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項について御説明いたします。  これは、F15型要撃戦闘機用エンジン構成品運用に関するものであります。  航空自衛隊におきましては、F15型要撃戦闘機用エンジン構成品である主燃料ポンプ定期交換時間が延長されたのに、延長が決定される前に従前の定期交換時間に基づいて取り外し寄託保管中の主燃料ポンプについて、定期交換時間の延長を適用する旨の規定を明確に定めていなかったため、これらに延長後の定期交換時間を適用しないままこれらのオーバーホール等を実施する契約を締結しておりましたが、寄託保管中のものは良好な状態で保管されていて性能、信頼性等の面で何ら問題はないのでありますから、延長後の定期交換時間に達するまで使用し効率的な運用を図る要があると認められました。  この点について当局の見解をただしましたところ、航空自衛隊では、六十三年十一月、定期交換時間を延長した場合には寄託保管中のものにその延長を適用することを明確にする規定を設けるなどして、主燃料ポンプ等エンジン構成品の効率的な運用を図ることとする処置を講じたものであります。  以上をもって概要説明を終わります。    昭和六十三年度決算防衛庁についての検査概要に関する主管局長説明                 会計検査院  昭和六十三年度防衛庁決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、意見を表示し又は処置要求した事項一件であります。  これは、防衛大学校を卒業した幹部候補者に対する退職手当支給に関するものであります。  防衛庁では、防衛大学校を設置いたしまして将来の幹部自衛官となるべき者を教育訓練しており、防衛大学校を卒業した者は、卒業と同時に自衛官に任用され、さらに陸上海上及び航空自衛隊の幹部候補生学校において初級幹部としての教育訓練を受けることとされております。しかしながら、防衛大学校を卒業した者の中には、自衛官に任用されることを辞退する者等、いわゆる非任官者が多数おりまして、これらの者には退職手当支給されておりません。これに対しまして、自衛官に任用された者の中には、任用後六月未満の短期間のうちに退職した者がおりまして、これらの者には退職手当支給されることとなっておりました。しかるに、早期に退職した者は防衛大学校で修得した知識、技能等自衛官としての職務にほとんど生かしていないという点で非任官者と同様と認められますことから、早期に退職した者に対する退職手当支給合理性を欠くものと認められましたので、防衛庁において適切な処置を講ずるよう意見を表示いたしたものであります。  なお、本件につきましては、平成元年法律第七五号によりまして防衛庁職員給与法の一部が改正され、二年三月の卒業生からは早期に退職した者に対して退職手当支給されないこととなっております。  以上のほか、昭和六十二年度決算検査報告に掲記いたしましたように、海上自衛隊の船舶(艦船)の国有財産台帳価格について処置要求いたしましたが、これに対する防衛庁処置状況についても掲記いたしました。  以上、簡単でございますが説明を終わります。     ─────────────
  4. 渡辺栄一

    渡辺委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。新村勝雄君。
  5. 新村勝雄

    ○新村委員 防衛庁及び防衛施設庁に関する件について、順次御質問したいと思います。  まず最初に、米軍の駐留費の問題であります。  米軍駐留費、六十二年度は日本負担分が約三千百六十億、そのうち特別協定分が百六十五億、六十三年度は三千二百七十九億、そのうち特別協定分が二百八億ということでありますが、これは日本の負担分でありますけれども、両年度の米軍駐留費全体は幾らであるのか、そして、そのうちの日本負担分が何十%であるのかという点について、まずお伺いしたいと思います。
  6. 重家俊範

    重家説明員 お答えいたします。  在日米経費のうち日本側の負担額でございますが、昭和六十三年度につきましては約三千二百七十九億円でございます。それから米側の負担額でございますが、これは一九八八米会計年度の入手可能な最新の数字でございますけれども、約四十五億ドルということになっております。したがいまして、日米間で会計年度の差が若干あるわけでございますが、単純に昭和六十三年度と米国の八八会計年度を足しますと約六十九億ドルということになるわけでございます。それで、先ほど申し上げました六十三年度の我が国の負担額のドル換算額でございますが、約二十四億ドルでございますので、いろいろ注意する必要はございますけれども、単純に比較しますと約六十九億ドルのうち二十四億ドルを日本が負担している、昭和六十三年度につきましてはそういうことであろうというふうに考えております。
  7. 新村勝雄

    ○新村委員 決算書によりますと、総額しか示されていないわけでありまして、例えば六十二年度調達労務管理費駐留軍等労務者格差給等給与駐留軍等労務者特別協定給与、合計百六十五億四百万、こういう表示しかないわけでありますけれども、これが具体的にどういうことに使われたのかというようなことについては、資料は出していただけますか。
  8. 松本宗和

    松本(宗)政府委員 駐留経費でございますが、我が国政府が負担しております分につきましても、防衛庁が支出しておるもの、各省が支出しておるもの等がございます。また、防衛施設庁が支出しておるものにもいろいろな項目がございます。この内容につきましては、お求めがございましたら、資料として御提出させていただきます。
  9. 新村勝雄

    ○新村委員 それでは、資料として後でお願いしたいと思います。  そして、そのいわゆる思いやり予算でありますが、これについてはかなり多岐にわたっていろいろな施設ができておるというふうに聞いておりますけれども、主要なものにはどんなものがありますか。
  10. 松本宗和

    松本(宗)政府委員 駐留経費の負担でございますが、まず提供施設整備という項目がございます。提供施設整備につきましては、これは地位協定二十四条の二項に基づきまして米軍に提供しております施設について、私どもが自主的に判断しながら、その必要性を見て経費を負担しておるというものでございます。また労務費につきましては、駐留軍従業員の経費の一部を負担するという形で、給与の一部、それから福祉対策費、労務管理事務費等について経費を負担しております。
  11. 新村勝雄

    ○新村委員 労務関係についてはわかるわけでありますが、そのほかの施設等についてこれを負担するあるいは提供するというような場合には、あらかじめ向こうさんから要求があって、その要求に基づいてこっちが積算するあるいは支出するのか。大体そうだと思いますけれども、こういうことをやるのだという、それを決める経過について伺いたいと思います。
  12. 松本宗和

    松本(宗)政府委員 提供施設整備につきましては、先ほども申し上げましたように、地位協定二十四条の二項に基づきまして、基本的には我が国政府が負担するということで各種のものについて経費を負担しておるわけでございますけれども、これにつきましては、安保条約の有効性を確保するという目的から、米軍の要請を受けまして、安保条約の目的とのかかわり合い、財政状況、それに政治経済状況と申しますか、そういうような諸般のものを考慮いたしまして、我が国政府として自主的に個々の案件について決定しておるという状況でございます。
  13. 新村勝雄

    ○新村委員 そういたしますと、安保条約の目的を達成する、あるいは駐留を円滑にするためにやる、基本的にはそういう考えに基づいて具体的な施策を決めていく、あるいはまた向こうさんからの希望ももちろん考えるわけでしょうが、それで決めていくということですね。  そういたしますと、直接軍事的な施設あるいは軍事目的を達成するための必要な施設ということであろうと思いますが、思いやり予算の実施状況は、聞くところによりますと、必ずしも直接軍事的な要請でないものもかなり含まれておるというふうに聞いておりますけれども、それも間接的には必要だという理屈がつくかもしれませんけれども、直接軍事目的でない施設には例えばどういうものがありますか。
  14. 松本宗和

    松本(宗)政府委員 私どもが整備しております施設でございますが、どちらかといいますと、むしろ後方関係と申しますか、米軍が我が国に駐留する上で必要といたします、例えば隊舎でございますとか宿舎でございますとか、そういうような施設がむしろ中心になって大部分を占めておるという状況でございます。
  15. 新村勝雄

    ○新村委員 報道によりますと、沖縄基地のキャンプ・コートニー、それから牧港住宅地区、ここに米軍用の教会が日本の経費でつくられているということを聞いておるわけでありますけれども、それは事実ですか。これはいつ、経費はどのくらいでできておりますか。
  16. 松本宗和

    松本(宗)政府委員 キャンプ・コートニーで工事をいたしました教会でございますが、これは昭和五十八年度から五十九年度にかけまして実施しております。これに要しました経費は約三億六千六百万円でございます。
  17. 新村勝雄

    ○新村委員 牧港は幾らになりますか。
  18. 松本宗和

    松本(宗)政府委員 牧港につくりました施設、これは昭和六十二年度、六十三年度にわたりまして整備いたしましたが、直接教会という形ではございませんで、米軍関係者の情操教育を主目的といたしました教育施設ということになってございます。これに要しました経費は五億六千二百万円でございます。——年度は、昭和六十二年度から六十三年度にかけてでございます。
  19. 新村勝雄

    ○新村委員 そうしますと、キャンプ・コートニーの分は最初から教会ということですね。それで、牧港は教会の目的ではないけれども、後で教会に転用したということですか。
  20. 松本宗和

    松本(宗)政府委員 お答えいたします。  この牧港の施設は、主たる目的が情操教育の施設ということでございますが、この教育施設の中に教会が含まれておるというものでございます。
  21. 新村勝雄

    ○新村委員 キャンプ・コートニーは純粋に最初から教会、牧港については教育施設というお話でありますけれども、写真で見ますと内部の構造は完全に教会の構造になっておるわけですね。正面にアルコーブというのですか引っ込みがあって、そこに十字架が安置してあって、手前に座る席があるわけでありますから、完全に教会のレイアウトということでありますから、これは教会として使われているということだと思います。  そうしますと、この教会、あるいは牧港は教会ではないとおっしゃいますが、この建設は施設庁でつくって米軍に貸与というか与えた、こういうことになりますか。
  22. 松本宗和

    松本(宗)政府委員 御指摘のとおりでございます。
  23. 新村勝雄

    ○新村委員 そうしますと、これは日本国内であれば当然憲法八十九条に抵触すると思いますけれども、このケースはどうなりますか。
  24. 松本宗和

    松本(宗)政府委員 先ほども御答弁申し上げましたように、提供施設整備につきましては、地位協定二十四条の第二項の規定によりまして、すべての施設区域をこの協定の存続期間中、合衆国に負担をかけないで提供するということとされておりまして、安保条約の目的を達成いたしますために必要な米軍の施設につきましては、我が国がその経費を負担して整備するというものでございます。  個々の整備につきましては、先ほど申しましたように、条約の目的の達成との関係でございますとか、我が国の財政負担との関係、社会経済的な影響を考慮いたしまして自主的に決定しておりますが、当該施設につきましては、米軍に対する施設提供の一環といたしまして米軍人、米軍属及びその家族の日常生活に必要不可欠とされる施設であるというぐあいに判断いたしまして提供したものでございます。したがいまして、宗教に対する援助、助長等を目的といたしますものではございません。また、この施設整備のために国費を当然支出いたしておりますけれども、これは米軍への提供ということで支出いたしておりまして、宗教上の組織または団体に対する財政援助的な支出とは言えないというぐあいに判断しております。
  25. 新村勝雄

    ○新村委員 地位協定二十四条では「日本国は、第二条及び第三条に定めるすべての施設及び区域並びに路線権をこの協定の存続期間中合衆国に負担をかけないで提供」するとありますが、これは安保条約の是非とは別に、駐留米軍が日本で目的を達成するために必要な協力をする、その経費を負担する、こういう趣旨だと思うのです、二十四条は。ですから、そこから考えた場合に、教会が安保条約に基づく米軍駐留のための必須の施設であるというふうには考えられないと思うことが一つです。  それから、米軍に提供したのであって宗教活動に提供したのではないという論旨でありますけれども、教会の目的というのはキリスト教の信仰のための施設でありますから、明らかに宗教施設ということが言えると思いますし、この点についても実は争う余地はないのじゃないかと思うのですが、その点はいかがですか。
  26. 松本宗和

    松本(宗)政府委員 この施設提供するに当たりまして私どもいろいろ検討しておるわけでございますが、最終的には、先ほども申しましたように米軍人、米軍属及びその家族の日常生活、これは米軍が我が国に駐留するために当然伴ってくるさまざまな施設がございますが、その家族の日常生活に必要不可欠な施設として通常設置されておるというものでございまして、私どももその必要性からこの施設整備提供することが適当であろうということで、経費を支出し、建設し、提供したものでございます。
  27. 新村勝雄

    ○新村委員 そうしますと、教会の持つ宗教性、宗教性というか教会は宗教そのものでありますから、その点からの解釈はどうなるのですか。
  28. 松本宗和

    松本(宗)政府委員 私ども、この施設につきましては、その目的が、先ほども申しましたように米軍に提供するということを第一義的に考えておりまして、しかも米軍の日常生活には必要不可欠なものであるというような判断の上に立っておりますので、その目的において宗教的な意義を有さず、また、このような側面にかかわりを持って、その側面から特定の宗教を援助、助長するような効果を生ずるものというようには解釈しないということで、この施設提供したということでございます。
  29. 新村勝雄

    ○新村委員 宗教施設とは考えないということでありますけれども、教会が宗教施設でないという論旨はどうも理解できないのですよ。それと、これが安保条約を円滑に遂行するために必須な、不可欠なものであるということについても理解できないわけです。もしもこれが国内の要請として、例えば自衛隊の周辺の対策として神社をつくったということであれば、これは当然問題になるし、違憲の議論が必ず出ると思います。しかし、米軍に貸与する、あるいは贈与するということであればそれは違憲性を免れるということについては理解できないわけであります。  それで長官、いかがでしょうか、長官にこの御相談ありましたか。この件について、教会を建ててやるということについての御相談がありましたか。
  30. 石川要三

    石川国務大臣 私が就任したのがまだ三月ばかり前でございまして、本件についてはまだ相談されるべき対象ではございませんでしたから、相談はございません。
  31. 新村勝雄

    ○新村委員 こういった問題です。宗教施設等について日本がやることについて、長官に対する御相談があったということの引き継ぎもなかったですか。
  32. 石川要三

    石川国務大臣 事実関係だけ申し上げますと、教会を建設する、こういう費用の援助といいますかそういうことについては、私、まだ一度もそういう具体的な面の相談は受けたことはございません。
  33. 新村勝雄

    ○新村委員 前任者からもなかったわけですね。——そうしますと、この教会の所有権はどうなるのですか。
  34. 松本宗和

    松本(宗)政府委員 所有権という形では日本政府でございます。
  35. 新村勝雄

    ○新村委員 会計検査院にお伺いしますけれども、この費用の性質あるいは違憲性というようなことについては検討されますか。
  36. 澤井泰

    ○澤井会計検査院説明員 突然の御質問なので用意しておりませんでしたけれども、そうしたような問題も含めて検査をしてまいりたいと私どもは思っております。
  37. 新村勝雄

    ○新村委員 この件については、検査の際の印象、それから検討した内容はどうですか。
  38. 澤井泰

    ○澤井会計検査院説明員 突然の問題でありますので、今回の、ただいまお尋ねのものについて特に具体的に検討した覚えはございません。
  39. 新村勝雄

    ○新村委員 この件について法制局の御見解を伺いたいと思います。
  40. 大森政輔

    ○大森政府委員 お尋ねの教会用建物、これは先ほども防衛施設庁の方からるる説明がございましたように、安保条約の効果的運用のたの米軍の駐留を円滑ならしめることを目的としている、そして米軍に対する施設提供の一環として米軍人、米軍属及びその家族の日常生活に不可欠とされる施設、そういう観点に着目してこれを建設し、提供したものであると、私どもも従前からそのように伺っております。  そういう事実関係を前提といたしますと、こういう教会用建物の建設、提供といいますものは、その目的において宗教的意義を有しない、そしてまた、このような側面でかかわりを持っても、その効果におきまして特定の宗教を援助、助長するという効果があるとは考えられませんので、私どもの検討の結果におきましても、お尋ねの建物の提供は、日本国憲法第二十条三項及び第八十九条、いずれの規定との関係でも問題はないと考えている次第でございます。  なお、若干敷衍して申し上げますと、先ほどのお尋ねで、教会というのは宗教施設じゃないかというお尋ねがございました。これは私はそのとおりだと思います。したがいまして、国がそれを建設して米軍に提供するということは、宗教とのかかわりを持つ行為であることは否定できないと思います。それは否定できないのでございますが、現行日本国憲法は宗教に対して国はどのような態度をとるべきであるかということを要求しているかという問題にかかわるわけでございまして、委員御承知のとおり、最高裁判所の昭和五十二年七月十三日の有名な津地鎮祭判決というものがございます。そこにおきまして最高裁判所は、憲法が国及びその機関が行うことを禁止している宗教的活動とはどのようなものであるかということに関しまして、この規定は国及びその機関の活動で宗教とのかかわり合いを持つすべての行為を禁止しているものではないのだということをまず言いまして「当該行為の目的が宗教的意義をもち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるような行為をいう」のである。もう一度敷衍しますと、宗教とのかかわり合いを持つすべての行為を禁止しているのではない、こういう目的、効果を有する行為を禁止しているのである、このように判示しております。  したがいまして、先ほどお尋ねの教会用建物、これは米軍人、米軍属及びその家族の日常生活に必要不可欠とされる施設、そういう点に着目して、そういう日常生活に必要不可欠とされる施設提供するのだという趣旨提供されるならば、これは最高裁判所の判示に照らしましてもいまだ憲法に違反するものではないというのが私どもの判断でございます。
  41. 新村勝雄

    ○新村委員 憲法の禁止規定は、国の公金あるいは公の財産、これを宗教上の施設に支出をしてはいけないということですよね。今の御説明ですと、教会は宗教施設ではないというお話であったと思いますが、これは了解できないわけですよね。  それから、米軍人軍属、家族の日常欠くべからざる施設であるといっても、それはまさに拡大する解釈であって、安保条約の円滑なる運営機能ということからしても、これはまさに拡大解釈そのものだと思うのですね。  それと、宗教施設、宗教活動を助長する、あるいはそれを積極的に援助をするという意思ではないということを言われましたけれども、この憲法八十九条というのは、国が特定の宗教にかかわることを禁止しているわけでありますから、宗教の布教あるいは拡大、そういうことを目的とするのではないとしても、宗教とかかわり合いをすることをこれは明らかに禁止をしているというふうに考えられるわけです。そういった場合に、宗教施設提供することがこの条文に違反しないというのは、まさに詭弁というふうに思われるわけですよ。国が宗教にかかわることをこれは禁止していると思うのです。  その点はいかがでしょうか。
  42. 大森政輔

    ○大森政府委員 先ほどのお答えと重複して恐縮でございますが、私どもの考え方によりますと、憲法二十条あるいは八十九条というものは、国が宗教といかなるかかわり合いを持ってもいけないという趣旨ではないというふうに理解しております。これは先ほど紹介いたしました最高裁判所の津地鎮祭判決で明確に判示しているところでございまして、そのかかわり合いがその目的及び効果において最高裁判所の判示するような基準を超えた場合に、それが憲法によって禁止されるのだということでございます。  したがいまして、先ほどもお答えいたしましたように、こういう教会施設を建設いたしまして米軍に提供するということが、ある一定の範囲内で宗教とかかわり合いを持つ行為であるということ自体を否定しているものではございません。ただ、そのかかわり合いの程度が最高裁判所の判決の基準に従いますとそれは許容範囲内の問題であるという、そういう私どもの意見でございます。  なお、若干敷衍いたしますと、憲法八十九条、これはまさに「宗教上の組織若しくは団体」に公金を支出してはいけないというふうに端的に書いているわけでございます。この八十九条との関係をもう少し詳しく御説明いたしますと、この八十九条の「宗教上の組織若しくは団体」というものは一体いかなるものを意味しているのかということがまず問題になるわけでございまして、これにつきましては学説上は広狭両説があるようでございます。すなわち、文字どおり組織または団体に限るというそういう説と、それから事業または活動に着目いたしまして、宗教上の信仰、礼拝ないし普及を目的とする事業ないし活動を広く意味するのだという、両方の説がございます。  まず、狭い方の宗教上の組織もしくは団体に文字どおり限るのだということになりますと、米軍自体は、これは戦闘集団ではございますけれども、その宗教上の組織もしくは団体というものに当たらないことは明白でございますので、したがいまして、米軍に提供する教会施設を建設してそれを使用に供しましても、これは憲法八十九条が禁止する宗教上の組織もしくは団体に当たらないということは、一義的に明白ではなかろうかと思います。  ただ、先ほど紹介いたしましたように、そういう組織、団体ということで形式的に区切るのではなくて、そういう宗教上の信仰、礼拝ないし普及を目的とする事業ないし活動というものに実質的に公金を供するということ自体をやはり禁止しているのであると解すべきだという立場に立った場合にどうなのかということも、私どもとしては念のためもちろん検討しております。この点に関しましては、最高裁判所の明確な判例がございませんが、やはり広い立場に立ってもセーフかどうか、そういう観点から検討いたしましても、なお先ほど申しましたように憲法八十九条に違反するものではないという結論に達したわけでございます。その要点は、先ほどお答えいたしましたように、こういう施設提供趣旨が特定の宗教を援助、助長するという趣旨ではなくて、米軍人、米軍属及びその家族の日常生活に必要不可欠とされる施設提供して、その家族生活が平穏に行われることを確保するという趣旨ならば、決して憲法が禁止しているところではないのだということでございます。
  43. 新村勝雄

    ○新村委員 その交付する対象の問題ということがありましたけれども、この対象は、米軍は宗教団体ではありませんからそれはいいと思うのですけれども、ただ、教会というのは宗教活動を行う場所ですから、それをつくって貸与するということ自体は国が宗教に深くかかわるわけですよね、深くかかわって、しかもそこへ金を出すわけですから。援助、助長ではないと言っても、もちろんそれは米軍あるいはアメリカでは宗教が日常化していますから生活と関係はあるでしょうけれども、宗教と国とのかかわりを禁止するということはこの八十九条は明らかなわけです。それを果たして今の論理でクリアすることができるかどうかということは極めて疑問だと思うのですよ。援助、助長ではなくとも、宗教とかかわり合うこと自体を禁止していると思うのです。  それともう一つは、これは米軍相手であるから、安保条約あるいは国防というそういう機構と政策の中でやっているのだからいいというのか。同じケースが国内であったらどうかということになりますと、これは最高裁といえども、国内でこういうことがあった場合はセーフとは言えないと思いますよ。国内で国費で神社をつくって、あるいは貸すのだか交付するのだかわかりませんけれども、そういうことを仮にした場合、これは絶対にセーフとは言えないと思います。そういう点で今の論理には承服できないわけです。  別の観点から伺いますけれども、日本の各基地の中に米軍のチャペルは全国では幾つありますか。それで、そのうち日本が貸与した、建てて貸したのは二ヵ所というふうに伺っておりますけれども、いかがですか。
  44. 松本宗和

    松本(宗)政府委員 全体の米軍の施設区域の中に何件あるかということにつきましては、ちょっと突然の御質問でございますので、今教会という施設に限りましてその数字を正確に把握しておりませんが、私どもが提供施設整備という関係提供いたしました教会ないしは、先ほど牧港補給地区ですか、それで申しましたようないわゆる教育施設と教会とが併設されたようなものを数えますと、現在までに五件でございます。そのほかにいわゆるリロケーションと申しておりますが、提供施設の移設でございます。これは例えば施設返還とかに伴いましてそこにある施設を別の場所に移すというようなことで建設した実績がございますが、これは八棟でございます。
  45. 新村勝雄

    ○新村委員 法制局にもう一回伺いますが、国と宗教とのかかわりをすべて禁止してはいないということは、それはそのとおりだと思います。公務員が宗教と全く関係を持ってはいけない、あるいは国が全然関係を持ってはいけないということはこれはあるいは言えないかもしれませんが、国がその宗教のために国費を出すという問題をクリアできるかどうかということが疑問なわけですよ。明らかに国が宗教団体のために国費を出してはいけないという趣旨が八十九条でありますから、今回のケースがそれを完全にクリアできるかどうか、これについての先ほどの御説明は大変不明確だと思います。もう一回お願いします。
  46. 大森政輔

    ○大森政府委員 お尋ねの趣旨はよくわかるのでございますが、憲法八十九条と申しますのは、結局、二十条三項で国及びその機関がいかなる宗教的活動も行ってはならないと定め、いわゆる政教分離の原則を二十条全体として規定しているわけでございますが、それを財政的な観点から担保を裏打ちする規定であるという趣旨でございます。そのように理解されるわけでございます。したがいまして、結局、国及びその機関が許容される限度を超えて宗教とかかわり合いを持つということになるような財政支出、財政的な援助を八十九条は禁止しているというふうに解されるわけでございます。  委員御疑問の点についてあるいは御理解の一助になろうかと思いますが、御承知のとおり、我が国におきましても、神社、仏閣に対する重要文化財の観点からの補助というものは、相当な金額が国から、すなわち公金が支出されているのが現状でございます。これは文化財保護法第三十五条で法律にその規定がある補助でございます。これも見方によりましたら宗教上の施設あるいは物品に対する公金の支出という観点があるわけでございますが、これについては国民の中でも、それがけしからぬ、宗教と過度のかかわり合いを持つからやめるべきであるという意見は余りないんじゃなかろうかと思います。  それはなぜかということを考えてみますと、結局、相手は一定の宗教法人、お寺とか神社に対して公金が渡るわけではございますけれども、それが決してその特定の宗教に対する援助、助長という目的ではないんだ。すなわち重要文化財、そういう側面に着目しまして、これらに認められる歴史上または芸術上の価値に着目している、それを保存、修理するための金だから問題ないんじゃないかというのが社会通念上の、社会一般の受け取り方ではなかろうかと思います。そういう考え方と今回の考え方は同じ次元でのものであるというふうに御理解いただければ、あるいは私どもの考え方も御賛同いただけるのではなかろうかと思うわけでございます。
  47. 新村勝雄

    ○新村委員 今、部長の御説明を伺いまして、これはますます疑問を深くしたわけですよ。というのは、文化財に対する保護のための補助、これは説明によっては宗教活動ではないと言えると思いますよ。神社、仏閣あるいはお寺の文化財としての価値を保存するための補助だということであれば、これはクリアできる部分があるかもしれませんけれども、今お伺いしているのは、キャンプ・コートニーにしても牧港にしても、日本がそれをつくって米軍がキリスト教を信仰するために使うわけでしょう。キリスト教を信仰するために使うのですから、まさにこれは宗教活動なわけですよ。アメリカの人たちは宗教が日常化しているといいましても、やはりキリスト教はこれはれっきとした宗教ですから、その宗教活動をするための施設ですから、津の地鎮祭訴訟とか今御引用になったそのケースとこのケースを比較した場合には、量的にも質的にもまるっきり違うと思うのですよ。これは三億あるいは五億という国費を出して施設をそっくりつくってアメリカさんに使ってもらうということですから、これは宗教との関係を禁止した、特に財政面から規制をした規定に真っ向から違反する、真っ向からぶつかると思うわけですよ。その事態を御説明になるために文化財補助を御引用になったとすれば、これは全く御説明にはならない。いかにこのことが違法性がはっきりしているかということをあなたがみずからお認めになったようなものでしょう。だって、文化財に対する補助はこれは宗教活動ではないと思いますよ。宗教活動そのものではないと思いますよ。宗教活動に関する施設に対する補助ですから、宗教活動ではないということは言えると思います。ところが、これは宗教活動そのものをそこで行うために国費を使って、三億、五億という国費を使ってつくるわけですから、これは全く理解に苦しむわけで、今部長がおっしゃったその諭旨ではこれはとてもクリアできない。だから、完全にクリアできる別の論旨があるんだったら別の論旨を出していただきたいと思います。
  48. 大森政輔

    ○大森政府委員 別の論旨、理由づけを考えろ、こういう話でございますが、私どもといたしましては、最高裁判所の判決の示している基準に従うというのが行政の場にあるもののあるべき態度であろうと思いますし、今までるる御説明いたしましたことによって理由づけは十分であると私どもは考えております。  ただ、この問題は人によって本当にいろいろな考え方が成り立とうかと思いますけれども、私どもとしては、最高裁判所が示している判断基準に従えば、本件については憲法二十条三項との関係でもまた八十九条との関係でも問題はないんではなかろうか、御理解いただけるんではなかろうかと考えている次第でございます。
  49. 新村勝雄

    ○新村委員 先ほど津地鎮祭訴訟を引用されましたけれども、これもまた全くケースが違うと思うのですね。これは、地鎮祭訴訟というのは幣帛料というのですかそれを出したということですから、宗教施設を全部国費でつくってそれを提供したということと、それから神社に対してのおさい銭をあげた、あるいは幣帛を供えたということとは、これは質的にも量的にもまるきり違いますよ。質量ともにまるきり違います。ですから、最高裁の判例とこの件とでは質量ともに違う、次元が違うと思うのですよ。ですから全く納得ができませんけれども、これ以上やりとりしてもしようがありませんから、これで打ち切ります。  施設庁にお伺いしますが、施設庁は、米軍が駐留してその本来の目的を達成するために、それを円滑にするために出すんだということでありますけれども、その駐留の目的を達成するためということ、仮にその観点から考えた場合にもそれはおのずから限度があると思いますよ。アメリカが要求するものは何でも出すということではないでしょう。  しかも私は憲法違反だと思うのですけれども、この憲法はアメリカさんが起案したのですよ。アメリカさんが起案して日本がそれを承認したわけですけれども、アメリカさんが起案した憲法に国家権力と宗教とは完全に分離しなさいということで、それも結構だろうということで日本がこれを承認したわけですから、そういう点から、宗教と国家権力とは憲法の規定に従って厳しく峻別していかなければいけないと思うのです。ところが今のような御議論、これは御議論にはならないと私は思いますけれども、全く納得できませんけれども、そういう極めて薄弱な論旨でそれを正当化するということは大変残念だと思います。  そこで、施設庁にお伺いしますけれども、安保条約の目的を達成するために、円滑にこれを実施するための施設を日本が協力するんだということであれば、それはその施設一つ一つについてこれが果たして安保条約の目的のために必要不可欠であるかどうかということを検討しなきゃいかぬと思いますね。この教会なんかは必要不可欠とは思えませんよ。これはアメリカさんがみずからの努力で、あるいは本国政府から金を出してもらう、本国政府が金を出さないのだったら国内で寄附を集めればいいんですよ、それでつくるべきものであって、日本の費用で、日本の国費で出すべきものではないというふうに、これは法律論は別としても、政治論としてだと思いますが、その観点から施設庁の長官から伺いたいと思います。
  50. 松本宗和

    松本(宗)政府委員 先生御指摘のとおり、安全保障条約の目的を達成するために必要という観点を念頭に置きまして、個々の施設につきまして自主的に判断しておる次第でございます。  地位協定の二十四条二項をとりますと、これは非常に広い範囲で提供施設につきまして、我が国政府の負担において、つまり文言では米軍に負担をかけないで提供するということになっておりますが、これを受けまして、私どもは、安保条約の目的を達成するために必要であるかどうかということを念頭に置きながら、米軍の要望を個々に厳密に審査をいたしまして自主的に決定しておる次第でございます。  したがいまして、この施設につきましても、米軍が我が国に駐留する、その家族を我が国に駐留させる上で真に必須の施設であるかどうかということをよく念頭に置いて検討した上で、必要であると判断して採択したものでございます。
  51. 新村勝雄

    ○新村委員 この問題についてはまだ引き続き御検討をいただきたいと思いますし、私の方も勉強したいと思いますから、保留にしたいと思います。  次に、防衛庁長官にお伺いいたしますが、長官は先般東南アジア各国を訪問されまして、いろいろと各国首脳と意見交換をされたということでありますが、特に東南アジアをお選びになったその意図、目的をまず伺いたいと思います。
  52. 石川要三

    石川国務大臣 今回、私が連休を利用いたしまして東南アジアを訪問したわけでありますが、なぜ東南アジアを選び、いかなる目的かということを申し上げたいと思います。  一つには、私も就任前から、我が国の防衛費の、要するに規模、予算額の面から見ればかなり大きいわけでありますが、そういうようなことから近隣諸国、特に東南アジアの地区におきまして軍事大国化の懸念がある、こういうことを私も耳にしておりました。したがいまして、そういうことの実態をまずみずから知りたいという気持ちが一つでございます。  なおかつ、やはり防衛というものは、国民の理解はもとより外国にも理解してもらう、特に近隣のアジア諸国の国々には、私どもの防衛政策というものがしっかりと理解をされる必要がある、かように考えまして、東南アジアの三国へ行ったわけでございます。  目的と、なぜ東南アジアを選んだかということにつきましては以上でございます。
  53. 新村勝雄

    ○新村委員 今世界情勢が非常に激動というか大きく変わっておるわけでありまして、特にヨーロッパから発した情勢の変化の大波が今世界じゅうを覆おうとしているわけですが、そういう状況の中で、まずヨーロッパの緊張緩和というか、両勢力の対決の状況が大きく緩和をされたということに関連して、アジアにおいてもやはり世界情勢の流れの影響を大きく受ける、あるいはやがて受けるだろうと思いますけれども、そういう中でアジアの中における日本、特にアジアの中における日本の軍事力というようなものが今アジアから注目をされている、あるいは関心を持って見られているというふうに考えるわけでありますが、東南アジアの諸国が、今の世界情勢あるいはそれから関連をしてアジアの情勢、特にアジアの軍事情勢、そういったものに対してどういう認識を持っておられますか、長官の印象として伺いたいと思います。
  54. 石川要三

    石川国務大臣 先ほどお答えいたしましたように、特に私は、東南アジアの諸国が我が国の防衛政策にいかなる認識をされているかそういう点をみずから確かめたいというふうなことで出かけたわけでありますが、たまたま時期が、今、先生が御指摘のような世界じゅうが非常にデタントに向かっての大きな変動をしている中でございます。そういう中で、これらの国がまたどういうふうな認識をしているかということも大きな関心事でございました。したがいまして、オーストラリア、タイ及びマレーシアの、特にオーストラリアにおきましてはホーク首相、レイ国防大臣、タイにおきましてはチャチャイ首相、チャワリット副首相兼国防相、さらにマレーシアにおきましてはガハール・ババ副首相、リタウディン国防相などと国際軍事情勢、防衛政策につきまして率直な意見交換をしたわけでございます。  そして、その中から感じられましたことを申し上げますと、まず今回の私の訪問でございますが、これらの各国へ訪問したのは現職の日本の防衛庁長官としては初めてでございまして、そのこと自体にも意義深いものがあった、かように思っておりますし、加えて、我が国の防衛政策についてより一層の理解を各関係国との間に深めることができたと確信をしております。今後、防衛分野における人的交流なども促進していくことの重要性についても意見の一致を見るなど、極めて有意義なものがあった、こういうように認識をしたわけでございます。さらに、今回の訪問を通じまして、この地域における米軍の存在というものがやはり平和と安定に大きく貢献しているということの基本的な認識では一致をいたしました。また、我が国が防衛計画大綱に従って防衛努力を行っていることも賢明な選択であったというような言葉もちょうだいしたわけでございまして、私は、出かける前に想像していた以上に実は非常にそういう国々の御理解を得た、こういうふうに確信を得たわけでございます。  しかし、御承知のとおり今日のような国際情勢の変化には、おのずから各自が、各国とも真剣に 大きな関心を持って注目をされていることも事実であります。立地的な違いもあるせいか、特に豪州などにおきましてはどちらかというとインド洋などにもかなり関心が示されていたように感じられます。それからタイにおきましては、何といってもカンボジアのあの状況につきましては大きな不安要因であるというふうに認識をされましたし、またマレーシアにおきましては、二国とややスタンスが違っているなという感じもいたしました。それは申し上げるまでもなく非同盟・中立政策をとっておりますので、どちらかというとアメリカの強力な基地化にはやや懸念を示されておった、こんなような若干の相違点がうかがわれたわけでございます。  いずれにしましてもそういうようなことで、私どもはこれからも太平洋の平和のためにはそれぞれの立場でひとつお互いに協力しよう、こういうような意見の交換もあったわけでございまして、私は極めて有意義であった、かように考えているわけでございます。
  55. 新村勝雄

    ○新村委員 東南アジア諸国から日本を見た場合、特に日本の軍事力が現在ではかなり大きくなっていることに対する懸念があるというようなことも言われていたわけであります。長官が今おっしゃった、理解を深めたというのはどういう意味があるのか、もう少し詳しく伺いたいわけでありますけれども、日本の軍事力に対して東南アジア諸国がどういう印象を持っているのか、そこらを中心にして、理解を深めたという内容をもう一回伺いたいと思います。
  56. 石川要三

    石川国務大臣 冒頭で申し上げましたように、よく先生方も言われることでありますけれども、我が国の軍事費というものが東南アジアの軍事費から比べれば非常に大きいわけであります。これは事実でありますが、そういうようなことから、どうも日本が昔のような軍事大国になりはしないか、軍国主義になりはしないかと言わんばかりの、ことが言われている。こういうことを私も耳にしていたわけでありますから、特に大臣になったら早々に、まず第一にこの真実を確かめたいというのが実は私の旅行した一番大きな目的でありました。そういう意味からいって、我が国の基本政策、そのよって立つ理由、こういうことをいろいろとお話をいたしますと、非常によく理解をされたという意味で私は申し上げたわけでございます。  特に豪州などにおきましては、ある意味においては我が国と防衛政策が非常に似通っております。先生御承知のとおり、豪州の防衛政策というものはいわゆるセルフディフェンスというものが大きな前提であります。そういう点では専守防衛と相通ずるものがある。レイ国防大臣なども、日本の防衛政策というのはグッドポリシーだ、こういう言葉も吐かれた。こういうようなことから、今私がここで申し上げましたように、私が想像していた以上に成功したな、自画自賛かもしれませんが、そんな感じを持った、こういうことでございます。  ただ、確かに実際問題としてそういう声は絶対ないとは言ってないようであります。それはいわゆる民間の一部、あるいはまたマスコミなどの一部にはそういう懸念の声というものはかなりあるよという御指摘もあったことも事実であります。  以上、御参考までに内容について御説明いたしました。
  57. 新村勝雄

    ○新村委員 最近アメリカの国防総省が出しているアジア・太平洋周辺における戦略的枠組みですか、その中にはかなりアメリカのアジア政策の変更を示唆する記載があるようですね。一口に言うと、アジアからはある程度漸進的にアメリカの兵力を引き揚げていって、日本、韓国にそのかわりをしてもらうのだというようなことが書いてあるわけでありますが、そういったアメリカの新しいアジア政策というか、アジアの戦略の変更、そういったことに対してアジア諸国はどういう印象を持っているでしょうか。
  58. 石川要三

    石川国務大臣 先般発表されたアメリカの例の再編成の内容でございますけれども、その中で十年計画、十年間をもちまして三段階で、特に最初の三年の間には一割程度の削減という案を発表されました。そういうようなことで、今後はそれは国際情勢の推移によってもかなりまた変化もあろうかと思いますけれども、そういう発表があったわけですが、その内容につきまして、直ちにこれが、日本に肩がわりしてもらうというような意思は私にはあの中では読み取れない、そういうことが指摘されているというふうには私は理解をしておりませんので、その点はちょっと認識があるいは先生と違うかもしれませんが、そういうことで私は受けとめております。  ただ、その問題について、じゃアジア諸国はどういうふうにこれを受けとめているだろうかということでございますが、少なくとも私が歴訪いたしました三国につきましては、まだ発表された直後でございましたし、具体的なものを示されたわけでもございませんし、一つの方向というかそういう見解を示されたわけでございますから、極めて慎重に注意深くこれを見守っているというのが共通的なことではなかろうかな、こういうふうに思って伺っております。  ただ、強いて言わせていただければ、先ほど申し上げましたように、マレーシアの見解が若干ニュアンスが違っていたというふうに認識をいたしました。それは何かというと、やはり基本的に、アメリカの強力な基地化といいますか、そういう前方展開のこれ以上の増大というものについてはむしろ余り賛意を示されておらなかったように私には理解がされたわけでございます。
  59. 新村勝雄

    ○新村委員 あの中を流れる一貫した考え方は、これはやはり、直ちにではないでしょうけれども、漸進的にではありましょうけれども、アジアに展開している米軍、特に陸上兵力を徐々に減らしていくということが随所に出ているわけですね。数カ所にそういうことが書いてある。それから、沖縄基地にしても横田にしても横須賀の使命にしても、これは再検討というようなことの意味があると思うのですね。  そういったことで、大きな流れとしては、アメリカにかわる日本の役割を期待するということが書いてあるし、特に日本、そしてまた韓国も経済的にかなり強力になっているのだから、バードンシェアリングを当然すべきだということがあるわけです。そういったアメリカの一方の考えと、それからまたアメリカとしても日本にバードンシェアリングをさせようという一つの考えと、それから日本が軍事大国化あるいはアメリカと競争するような軍事力を持つようになることについての懸念はもちろんあると思うのですが、そういったアメリカとしても二律背反というのですか矛盾に悩んでいるという面が実はあると思うのです。しかし、当面のアメリカの考えとしては、できるだけ日本に負担を肩がわりさせていこう、この方向は動かしがたいと思うのですよ。こういうことに対する日本の短中期的な対応をどうするかということが大きな問題だと思うのですね。  これは長官、恐らく近い将来、長官の頭を悩ます大きな問題になってくると思うのですけれども、こういったことについて基本的には日本はこうするのだというお考えがあればお伺いしたいと思います。
  60. 石川要三

    石川国務大臣 この問題は大変重要な問題でございますから、まず二十一世紀に向かってのアメリカのいわゆる再編成といいますか、先般発表されましたその具体的な内容について、防衛局長から詳しく一度説明、回答をさせていただきたい、かように思います。  ただ、私の認識としては、そういう慎重なアメリカの一つの削減計画、こういうふうに私は総体的には受けとめているわけでありますが、だからといってこれにかわることを我が国に求めているというふうに私は思わないし、また現実に憲法の上からいってもアメリカの削減を穴埋めをすることは不可能でありますから、禁止されておるわけですから、それはいたしかねるわけであります。  そういう認識を持っているわけでございますが、せっかくの機会でございますから、二十一世紀のことにつきましてもう一度ちょっと防衛局長の方から内容について答弁させたい、かように思います。
  61. 日吉章

    ○日吉政府委員 先般、アメリカ政府が米議会に対しまして報告いたしました「アジア太平洋地域の戦略的枠組み」副題としまして「二十一世紀に向けて」と書かれております報告書の概要でございますが、基本的にはただいま防衛庁長官からお話し申し上げましたことに尽きているかと思います。そういう意味で重複をいたすかと思いますけれども、若干敷衍して御説明をさせていただきます。  この基本的な考え方は、米国はグローバルな役割と同盟国に対するコミットメントというものは今後とも果たしていくのだということで、そういうことのために引き続き前方展開戦略を維持する、こういう基本的な考え方は一貫して貫かれていると思います。  ただ、米国は委員御案内のように財政状況等の制約等にも見舞われておりますものですから、その中にありましても、できるだけ前方展開戦略の合理化といいますか、その中に含まれております兵力の再編成というようなものをしていかないといけないということは出ているわけでございます。そういう意味で、十年間・三段階に分けまして再編合理化を図るということが書かれているわけでございます。しかし、その手法は、東アジアにおきます情勢が非常に不透明でございますから、その情勢を十分に見きわめながら、かつ、この地域の安定に配慮しながら、非常に慎重に段階的にその再編合理化を進めていくということであろうかと思います。  したがいまして、再編合理化を進めていく過程におきまして、日本に対して何を求めているかということでございます。その点は、ただいま大臣からもお話を申し上げましたように、引き続いて日本の役割としての日本独自の固有の防衛努力の向上を奨励、期待をいたしておりますけれども、これまで米側がグローバルな観点から果たしていたロールズ・アンド・ミッションズといいますか、役割を日本にかわってほしいというふうな考えは全くございません。兵力投入能力といいますか、進攻能力の発展等はディスカリジすべきである、むしろ抑制すべきであるというような指摘もあるわけでございます。  なお、米側は財政的な困難等にも見舞われておりますので、バードンシェアリングといいますか、駐留米軍経費等に対しまして日本側のさらなる努力を期待いたしていることは事実でございますが、それも、米側がグローバルな安全保障努力をしている中で日本側が絶大な利益を享受していると思われるので、そういうことを勘案してさらなる経費負担についてのバードンシェアリングといいますか、リスポンスビリティーシェアリングといいますか、それの努力を日本側に期待するというようなことが書かれているかと思います。  基本的な考え方と日本に対します部分は、今私が述べましたようなところが根幹になっていようかと考えます。
  62. 新村勝雄

    ○新村委員 あの文書はかなり矛盾が多いのです。明らかに、日本あるいは韓国も経済力がもう大きくなったからバードンをシェアリングしてもらいたいということを一方で言っているわけです。同時にまた、日本の軍事力についてはそんなに多くを期待しないというような意味のことがある。要するにリーディングルールからサポーティングルールになるのだ、アジアの軍事力をアメリカが指導的に維持していくということから、これをサポートする立場に変わっていくんだということをはっきり言っているわけです。そうなってくると、アメリカのアジア戦略というものは質的にあるいは量的に一つの転換期に来ているのではないかという印象をあの文書は与えるわけですけれども、一方また、日本に対する一定の抑制というようなことも配慮しながら、できる限り日本にバードンを渡していこうという意図がはっきりあるわけです。  そういうことからすると、例えば先ほどいろいろお伺いしたような問題についても、駐留経費についても、軍事的なものではなくて宗教的なもの、あるいは日常的なものまで日本に負担をさせるという傾向があるわけですから、そういった点からしても、アメリカの戦略というよりはむしろ費用の面での戦略に大きな転換期を迎えているということが言えると思うのです。そういうことが教会をつくるなんということにあらわれているのではないかと私は思うのです。  そういった点で、日本の政策は一つの一定の基準と毅然とした基本的な方針、これがないといつの間にか流されていくという危険があると思うのです。そういった面で、基本的なお考えはどうであるかということをもう一回伺いたいと思います。
  63. 石川要三

    石川国務大臣 私も、今回のあの米軍の報告に対しては、先ほど申し上げましたような認識を持っておるわけであります。したがって、繰り返すようでございますけれども、米軍がある程度の削減をしても、それの穴埋めはない、そういう要請もないし、それはできるものでもない。しかし、今先生御指摘のような、今回のあの削減計画というもの、そういうものの再編成という案も枠組みも、根本の一つの大きな原因はやはり財政的な面があると思うのですね。そういう面から見ても、要するに、当面我が国に対しての駐留軍経費の分担などのいわゆるバードンシェアリングといいますか、そういう面の要請が強くなる、また強くなっていくということが書かれておるわけでありますから、そういう認識を持っているわけであります。  しからば、そういうものに対してどういうふうな基本的な姿勢なり考えを持っているか、こういうことでございますけれども、これも抽象論ではございますけれども、我が国の平和と安全は、基本的な防衛政策というものは何といっても一つには日米の安保体制、こういうことがあるわけであります。したがいまして、この日米安保体制のもとの日米安保条約のさらなる効果的な運用というものは当然考えていく必要があるわけでありますから、そういう範囲内で自主的な判断をしていく。しかし、何でもかんでも言いなりというようなことはあってはならない、かように思いますが、ますます中身をよく検討し、できるだけの自主的な範囲内で努力すべきものはするという基本姿勢は堅持していきたい、かように考えておるわけでございます。
  64. 新村勝雄

    ○新村委員 東南アジアの御視察に関連をして、東南アジアの諸国が今おっしゃったようないろいろなお話があったということでありますけれども、基本的に日米安保条約をどう見ているのか、またその将来に対してどう展望を持っているのか、あるいはそれに対してプラスの印象を持っているのかマイナスの印象を持っているのか、そこらの点はいかがですか。
  65. 石川要三

    石川国務大臣 間もなく安保条約締結三十周年の日を迎えるわけでありますが、今マスコミなどでも、安保条約の効果などについては、各界の名士が、今までの三十年を振り返っての特集番組でいろいろと論じられていることも報道されております。  私の見解でございますが、簡単に申し上げますならば、今日の日米安保体制、そして日米安保条約による日本の平和と安定の上においての効果というものは大変大きい、かような基本的な認識を私は持っておるわけであります。ただし、三十年もたち今日のような世界情勢の大きな目まぐるしい変化の中におきましては、十年は昔の百年に当たるような社会変化のある中でございますので、当然こういったようなものでも大きな意味においては質的にも変化をしてくるであろうし、安保条約というものを一層有効ならしめるにはどうあるべきかということがこれからの大きな政治課題であろう、このように思って、いろいろと真剣に勉強もしていきたい、かように考えておるわけでございます。
  66. 新村勝雄

    ○新村委員 それは長官のお考えですけれども、そうじゃなくて、それと同時に、東南アジアの諸 国が日米安保条約についてどう考えているか、その評価ですね。
  67. 石川要三

    石川国務大臣 この点について特にテーマとして話し合ったことはございませんから憶測に過ぎぬわけでございますが、いわゆる我が国の安保条約の評価は、今、これは東南アジアももちろんでありますが、むしろ日米安保条約の体制の中に日本が置かれた方がいい、一般的に何かそういうような評価をされているというふうな理解を私は持っているわけでございます。ただし、これはいろいろな情報による私だけの一つの判断でありますから、特別にそういったテーマによって話し合ったわけではございません。
  68. 新村勝雄

    ○新村委員 今のお話は長官のお考えでしょうから、この点については、東南アジアの各国の真意を外交ルートを通ずるなりあるいは政府のあらゆるルートを通じて始終キャッチをしていく必要があるのではないかと思いますね。そういった御努力もぜひお願いしたいと思います。  次に、いわゆる文民統制についてお伺いをしたいと思います。  この問題は、日本の近代史といいますか、明治以来の日本の歴史の中で一番大きなテーマであったと思うのです。明治維新以来、これは学者の言うことによりますと、明治の初期においては政治家が軍事を完全に支配していた時代がある、日露戦争までは大体文民が軍人を抑えていた、その時代には国全体としてうまくいっていたのですが、太平洋戦争になって、その直前から、昭和に入ってから文民統制というか政治が軍事を統制する力が全くなくなって、そのかわり軍人が第一線に出てきた、それが失敗のもとであったということが言われております。そういったこともあるし、敗戦ということもあって、現在の日本の体制は文民統制ということになっております。  文民統制というのは、軍事に対する政治の優先、軍事力に対する民主主義的な統制だということ、これは議論の余地はないと思うのですが、現在、自衛隊の運営が果たしてシビリアンコントロールが完全に効いているのかどうかという問題については、いろいろな点で不十分な点あるいは疑問な点があると思うのです。もともと日本の憲法には軍事力を規定しておりませんので、軍事力に対する統制をどうするかということについては当然憲法に規定されるべきものでありますけれども、日本には軍事力がないということで憲法には文民統制の規定はありません。ないと思います。ただ、総理大臣以下大臣は文民でなければならないという規定がありますけれども、それ以外には軍事に対する統制の規定は憲法にはない。軍事力がないということになっているのですから当然そういうことになると思うのですけれども、そういった点で国会の軍事力に対するコントロールが弱いということが言えると思うのです。  国会は防衛出動等について承認を与えるということがありますけれども、そのほかには予算で統制をする、あるいは諸法案で統制をする、それから自衛隊定員組織等についても国会の統制がありますけれども、具体的な軍事力についての国会の統制ということになりますと極めて弱い。弱いということの一つの原因は憲法の規定がないということ。と同時に、国会に対して防衛関係の資料がほとんど提供をされない、防衛に関する秘密はすべて政府が一手に握っておって国会が関与できないというのが実態だと思います。そういった中から国会の文民統制が極めて弱いということが言えると思います。  これを救うためには、何といっても国会に対して、防衛関係のすべての資料とは言わないにしても、最大限の資料を提供していただいて、国会が本当の意味で防衛についての議論ができる、あるいは軍事力を統制できる体制が必要だと思うのですけれども、そういう点が非常に弱いわけですね。  こういった点について、それを救うには何といっても資料の提供と秘密を最小限にしていくという運営が必要だと思うのですけれども、大臣はそこの点について、現在の日本の文民統制が完全に機能しているかどうかということについてはどうお考えですか。
  69. 石川要三

    石川国務大臣 民主主義政治といいますか、民主主義の今日の日本の中においては、文民統制というのはもう確立されている、このようにまず私は認識をしているわけでございます。  今、先生が、国会のコントロールが弱い、その証拠としてどうも防衛庁は秘密主義だ、余り資料も提供されていないというお話でございますが、私は、出して差し支えない資料というものは十二分に提出をしているというふうに思っているわけであります。具体的にまた御指摘をいただければ十二分にひとつ御意見は承りたいわけでありますが、しかし全体的に、出すべき資料、必要とするものは隠す必要もないし、また提出されている、このように私は認識をしております。  ただ、言いわけをするわけではありませんけれども、何といっても防衛庁という防衛を所管する役所でございまして、そういうことから見て当然これはある程度の機密があるわけでありますから、それは御要請があってもどうしても守らなければならないわけであります。ただ、それが、国会という立場とまた防衛をつかさどっている役所という立場でスタンスが違いますから、ある一定のところでは交わるわけでありますけれども、その交わる交差点が低いか高いかという問題は当然いつまでも続く問題ではないか、かように思いますけれども、できるだけ十二分に国会の機能を高めていただくためにもできるだけの資料の提出は決して拒否すべきものではない、私はこういう見解を持っております。  ただ、では我が国はこんなにシビリアンコントロール、国会コントロールというものが弱いかといえば、実は私はそうは思わないのですね。例えばいろんな法案でもなかなか一遍には通りませんし、いろんな角度から見ても、諸外国を見ても、日本の国会が、どうも防衛庁の力が強過ぎてどんどん先へ進んでしまって心配だというふうな状況では少なくともないんじゃないかな、私はこんなふうな感じがするわけでございます。  むしろ、例えば安保条約の問題をとってみても、あるいは自衛隊の憲法との関係などをとってみても、最近は野党の先生方も正直なところ言ってかなりスタンスというものは変わってきているのではないかな、私はこのように思うのです。  しかし、いろんな外国の国会の実態を見ても、防衛と外交との問題については与野党というものはほとんどすき間がない。この間三国を訪問いたしましたが、どの国におきましても防衛に関しては与党も野党も全く意見が一致している、こういう姿を見たとき、今先生の御発言でございますが、我が国と随分違うものだな、むしろ私は逆に国会の方のシビリアンコントロールの方が少し強過ぎるのかなというふうな感もしたわけでございますので、その点は先生と私は見解を多少異にしているような感じがいたします。
  70. 新村勝雄

    ○新村委員 日本の場合に与野党の差があり過ぎるというようなことがありますけれども、これは日本の歴史、特に戦後の、一九四五年以降の歴史が特殊なものでありますから、それからその前の、昭和に入ってからの一九三〇年ごろからの歴史がこれまた外国と違うわけでありますから、これは特殊な歴史の中で形成された一つの状況でありますから、それを一概に与野党が一致しなければいけないということは論理の飛躍だと思います。そういう状況の中でどうするかということを考えなければいけないわけでありますね。  そこで、シビリアンコントロールに関してでありますが、いわゆる統帥機構、今は統帥機構という言葉は使いませんか。昔は統帥機構という言葉を使いましたね、天皇から参謀総長。現在は、防衛庁の機構としては総理大臣が最高の責任者、次に防衛庁長官、それから内部部局、部局の局長さんがいらっしゃいますね。これは参事官、参事官が局長を務めるということで、その下に統幕議長あるいは各三軍というか陸海空の幕僚長がいる、その下に軍事部門がある、こういうことになっていると思います。ですから、その場合に、内部部局の方々、参事官の方々、こういう方々が軍の首脳部と接触をするわけですね。軍の首脳部は軍人としての専門的な知識から防衛政策なり戦術上の要求をいろいろ出していく、これに対して内部部局がそれを文民という形で統制していく、こういうことになっていると思うのですが、それでよろしいわけですか。
  71. 児玉良雄

    ○児玉政府委員 防衛庁の中におきますシビリアンコントロールを確保するための機構として、まず長官の政策統制を確保する仕組みとして、政務次官、事務次官が長官を補佐することを初めとして、防衛庁の基本的な方針の策定については、今先生が言われましたいわゆる文官である参事官が政策面から補佐をするということにしております。内部部局には官房そのほか各局がございますけれども、この官房、各局が自衛隊の業務全般をカバーしておりまして、自衛隊の業務の基本的な事項につきましてはそれぞれの所管に応じて担当することとしております。そして、この官房、各局の長である局長等は参事官が充てられるという仕組みになっております。
  72. 新村勝雄

    ○新村委員 その場合に、軍人の立場からの要求あるいは戦術上の意見あるいは防衛政策を軍人の立場から組み立てていくわけでしょう、それを文官が調整をし統制をする、こういう機構になっていると思うのですが、その場合に、軍人の場合には、今の幹部の方々もそうでしょうけれども、防衛大学に入るのは二十歳前、十八歳ぐらいで、後はずっと専門の領域で知識を磨き、あるいはみずから訓練をし行動をしていく、そういう軍人としてのキャリア、軍人としての経歴・経験を積んで、五十歳を超えることになりますか、自衛隊の最高幹部になるには。そういう知識と経験の両方を軍事の専門の中で鍛えられていくわけですね、三十年を超えて。そういうことで、軍事に関してはまさにエキスパート、専門家ということになります。内局の方々は、これは失礼な言いようでありますけれども、ほかの省庁から来られる方が多いのですね。防衛庁のいわゆるプロパーという方は極めて少ない。特に政務次官は政治家ですけれども、次官、参事官、局長という方々も、防衛については専門家ではありましょうけれども、制服の皆さんとでは軍事の面では対抗できないでしょう。例えば大蔵から参事官になって来られる、あるいは事務次官になって来られるということですかも、軍事の面については最初は素人です。それで勉強されるわけでしょうけれども、そしてまた、参事官あるいは次官になる方々はこれは国民のうちでもすぐれた頭脳の皆さんが集まるわけですから、そういう能力の点ではこれは十分でありましょうが、軍事の面については最初は素人である。それで、その任についてから数年間一生懸命勉強されるわけでしょうけれども、三十年以上も軍事の世界にあって心身ともに鍛錬をした人と半年か一年勉強した人とでは、軍事に関してはとても対抗できないと思うのですね。  そういった意味での防衛庁の人事あるいはそういう人の面からの統制、制服に対する統制というと制服を無理に抑えてしまうということではないのですけれども、制服の方の観点あるいは制服の方のスタンス、それから文官のお考え、文官の防衛に対する構想という点ではこれは当然違わなければいけないし、そういう違うものがぶつかり合ってそこで初めて統制ができるわけですから、そういうことを考える場合に、現在の防衛庁の人事で本当の意味でのシビリアンコントロールが機能するのかどうかという点で、我々外部から見てみますとそういう懸念もないわけではないわけです。  そういった点についてまず長官はいかにお考えですか。
  73. 石川要三

    石川国務大臣 まだ就任して日も浅いわけですから、事細かなことまで熟知しておりませんからなかなか正確なこともわかりませんけれども、ただ、私は今いろいろと先生の御質問を聞きながら思いますことは、軍事的な狭い意味の軍事知識とか軍事技能とか、そういった狭い軍事的なこととか知識については、これは確かにシビリアンよりもユニホームの方がまさっていることも事実だと思うのです。しかしやはり、防衛政策というものはそれだけでは成り立つものではないし、世界情勢の分析あるいはまた我が国の経済事情、社会事情、そういう総合的な問題の中で確立されなければならないものでありますから、部門的には確かにそういう比較をすれば決して当たらないこともないと私は思いますが、最終的には総理大臣が総責任者であり、その下に私がおり、その下に私をサポートする事務次官そして参事官、こういう制度がありますから、その中で、確かにユニホーム組とシビリアン、背広組とのいろいろな葛藤もあるでしょう、当然あると私は思うのですね、そういう議論を物すごく闘わせることもあると思いますが、それが最終的には、いわゆる防衛政策の確立という中におきましてはやはり防衛庁長官の判断、そして最終的には安保会議を通じ、そしてまた総理の意見、そういうものが固まり、さらにそれを成案化したものが国会で提案されて議論される、こういう幾重にも網を通るわけでありますから、そういう点では、文民統制といいますかシビリアンコントロールというものは現時点におきましては十分に機能を果たしている、このような私は認識を持っているわけであります。  しかし、世の中の変わりようによっては、かなりこちらが強くなったりあちらが強くなったり、そういうことも現実に過去の歴史を見ればあるわけでありますから、そういう中では、一応今の先生のような御意見も頭に置いてよく注意をしなければならないと思いますが、何といっても、シビリアンコントロールでなければやはり民主主義の政治でもないし、また、そういうことの機能がはっきりしていれば絶対に戦争は起こらないと言っても過言ではないことだと私は思っているわけでありますから、私どもの日本のこれからの政治の上からいっても、こういう文民統制というものをしっかりと根づけていくように私どもは努力をしていかなければいけない、かように思います。
  74. 新村勝雄

    ○新村委員 理屈から言えば、これは内局の皆さんはコントロールする立場ではないのですね。コントロールする立場ではなくて、むしろコントロールされる、統制をされる立場にいらっしゃると思うのですよ、内局の皆さんは。その内局の皆さんと制服全体を統制するのが大臣であり総理であるわけですから、政治家ですから、失礼ですけれども内局の皆さんは政治家ではありませんから、あくまでこれは内局ですね、内局ですから、もちろんその内局の文官のグループと第一線から上がってくる制服組の意見あるいは要求、それとがぶつかり合うと思うのです。これはぶつかり合わなければおかしいです。ぶつかり合わなければこれは統制はないわけですから、ぶつかり合って、そこで最も合理的な政策が——我々は防衛力を基本的に否定している立場ではありますけれども、現に自衛隊がありますから、その現にある自衛隊をいかに統制するかということでありますと、やはり内局の方がしっかりして制服の方と対等の議論ができなければいけないし、対等の知識がなければいけない。対等の立場で、そこでぶつかり合って、内局の立場から制服の要求なり制服の考えなりをそこで消化をしていただく。消化をしていただいて、防衛庁の事務部局としての意見をそこで決めていただくわけですが、それをさらに基本的に統制するのが大臣であり総理であるわけですね。その体制をさらに統制するのが国会だと思うのです。ですから、第一次的に統制するのが政治家である長官あるいは総理ということになるわけですが、そういった点からしても、やはり文官の防衛庁の中における地位は非常に重いし、任務も重いし、文民統制という体制の中における任務、責任が極めて重いと思うのですね。  そういった意味から防衛庁の人事について実はさっき疑問を呈したわけでありますけれども、防衛庁の制服でない専門家、制服でない軍事の専門家あるいは戦略専門の文官、こういったものの養成、これが現在の体制を現にあるものとして考えた場合には必要じゃないかということなんです ね。  それから例えば、後でお伺いしたいと思いますが、次期防衛力整備計画整備構想、これが日程に上ると思いますけれども、その日程に上る場合に、果たして次にどういう兵器を整備するのか。例えば空中給油機をどうするのかとかあるいはAWACSをどうするのか、そういったことについての戦術的な、戦略ではなくて戦術的な専門家、専門知識、そう言っては悪いのでしょうけれども、内局にこれを完全に消化をし、その構想についての検討をするだけの知識が蓄積されているかどうかということになりますと、確かに内局の皆さんは非常に頭はいいですよ。それは最高の教育を受けておられるし最高学府を出ておられる、国民の中の優秀な方の集まりですけれども、それでもやはり三十年間苦労した人、三十年間制服で飯を食った人と、ほかから来て三ヵ月か半年のレクチャーを受けた人とでは全く質的に違うと思うのです。そういった点での防衛庁内部における文民統制が果たして、それは機能しているとは思いますけれども、これは現に自衛隊があるわけですから、その自衛隊を本当に統制していくにはどうすればいいかということも考えなければいけないわけで、そういった意味から申し上げるわけですけれども、現在の内局体制がこれでいいのかどうなのかということについて、もう一回伺います。
  75. 児玉良雄

    ○児玉政府委員 今、自衛官は三十年間軍事を勉強してきておるとおっしゃっておりましたが、自衛官が戦術・戦法あるいは部隊の指揮・訓練とかいうことに詳しく通暁していることは当然でございます。この意味で、幕僚長は長官に対する専門的事項についての、隊務の専門的な事項についての助言者ということになっておりまして、ここが文官である参事官等と違うところでございます。しかし参事官なども、戦術・戦法などは直接的には必ずしも自衛官と同じようにはわかりませんけれども、日常の業務を通じて軍事的な事項についても基本的な問題については把握しておりますし、また行政経験も相当に積んでいる者が当たっておりますので、私どもとしては長官の補佐には遺漏がないと思っております。
  76. 新村勝雄

    ○新村委員 大丈夫であることを期待するわけですが、例えば空中給油機を導入しようというお考えが今あるやに聞いておりますけれども、この空中給油機を導入することによって戦闘機の行動半径が飛躍的に広がるわけです。そうしますと、その場合に、そのことが専守防衛の基本的な自衛隊の方針に反するのか反しないのかということについての部内の検討なり文民統制なりというものが本当に効くためには、軍事の専門家でないとこれはなかなかできない、そうでないと制服に押し切られてしまうわけです。これはどうしても必要なんだ、これがなければ専守防衛できませんよと言われれば、そうかなということになったのではまずいわけです。そうかなと言う前に、専門的な知識、軍事技術あるいは戦術の面から制服と十分対抗できる体制あるいは知識、力量がなければいけないと思うのです。そういう中で制服と文官とが十分ぶつかり合って、そこで徹底的に議論して、それでこの兵器は採用しましょうということになればいいのですけれども、なればまだいいのですけれども、そうではなくて、制服の要求がそのままストレートに通ってしまうというようなことでは、文民統制が機能しないということになるわけです。  それから、最近は日米の軍事協力がかなり進んでいるようでありまして、共同作戦研究とか共同演習というようなものが行われている。それから制服同士の接触もあるでしょう。そこで、制服同士の日米の接触に対してこれを文民の立場からどうコントロールしていくのかということになった場合に、アメリカに対する統制はもちろんできませんからこれまた甚だ心もとないということが言えます。そうしますと、日米共同作戦という一つの行動がある、こういったことに対する文民統制はどうするのか。  それから、共同作戦等について日本がどういう立場で、どういうふうにかかわり合っていくのか。よく言われるように、自衛隊がアメリカの世界戦略の一環に完全に組み込まれたというようなことが言われておりますけれども、それではまずいわけですから、完全に一環になったのだとは思いませんが、そういう意味も大いにあるわけです。例えばP3Cを百機配備する、これが日本の専守防衛についてどういう意味があるのか、日本の専守防衛というスタンスからした場合にこのP3Cの百機態勢が果たして合理的かということになりますと、これは議論百出だと思います。そういったことについての内部の体制、結論を出していく内部の体制が、どうしても日米の軍人、日米の共同作戦あるいは制服組の考え方がストレートに表面に出ていくのではないかという心配が国民には確かにあるわけです。そこのところを内局で十分にチェックして、さらに長官あるいは総理がまさに文官の統制という立場からこれを統制していく、必要なものは必要でしょうし、必要でないものはそこでろ過していく、そういう体制が必要だと思うのです。  そういった点で二つの疑問があるわけです。制服組が強過ぎるのではないかという心配が一つあります。それから、日米共同ですからアメリカに対しては文句を一言えないということになりますと、日米共同でやったことについてはそれがそのままそっくり日本の国策あるいは防衛政策に入っていくのではないか、採用されていくのではないかそういう点から日本の文民統制にはしり抜けの点があるのではないかという感じがするのですけれども、長官いかがでしょうか。
  77. 石川要三

    石川国務大臣 大変核心を突かれておる質問でございます。  確かに今、私も先ほど申し上げましたように、文民統制、シビリアンコントロールには段階的に幾つかの網があるわけでございますから、そういう網の組織的なことがまずきちんとしてなければいけない。またその網も、今言った制服組と内局とが対等の、イコールの力がなければこれは網に穴があいておるようなものでありまして、ノーチェックで通ってしまいますから、そういう意味で網が穴があいていないようにしっかりとなっておるかどうかということ。その点については、私から言うのもおこがましいわけでありますが、現在の我が自衛隊の内局も相当優秀な人材と相当の行政的なキャリアが備えられた方々でありますから非常にしっかりしたチェックが効いておる、このように私は信頼しておるわけであります。しかし、先生の御心配も当然だと思いますので、今後そういう点でお互い努力していかなければいけない問題ではないか、かように思います。  それからもう一つの点は、今言った日米関係の問題もあろうかと思います。これは極めて高度な政治的な問題であろうと思いますので、当然、防衛庁長官あるいは総理といった者の政治的な判断力と勇気、決断というものが要請されるわけでありますから、この点についても、私どもは大いに反省もしながら、国民にその懸念を持たれないように政治的にも自分自身をしっかりと鍛え、磨いていかなければいけない、かように思うわけでございます。  そういう所見を申し上げまして、回答にかえるわけでございます。
  78. 新村勝雄

    ○新村委員 「日本の防衛」、いわゆる防衛白書には、シビリアンコントロールの内容として、文官が統制しておるからいいのだ、これでコントロールができておるのだというような書き方でありますけれども、実際に正確には間違いだと思うのです。文官は、文官といえども統制するのではなくて統制される方ですから、制服組と調整するわけでしょうけれども、しかし文民統制ということになれば、文官であっても局長さんとか参事官さんとかいう立場の方は統制する方ではなくて統制される方なんですから、これを統制するのが長官あるいは総理ということですから、そこらについては防衛白書の記載はちょっと見当違いだと思います。これは長官なり総理が統制する、それをさらに統制するのが国会であり、それをさらに統制するのが国民だということに理論的にはなります。  そういう点で、なお一層内局の皆さんに、私は防衛体制を強化しろという立場ではありませんけれども、現に自衛隊があるわけですから、その自衛隊が間違いを起こさないようにするためには、内局の皆さんにしっかりしていただくし、同時にまた、これを統制する政治家である長官あるいは総理にしっかりしていただかなければいけない、こういうことをお願いしたいと思います。  それから次に、次期防衛力整備計画、これは三年度から新しい年度になりますね。それで、次期防についての新しい構想を固めなければいけない時期だと思うのですけれども、これについての基本的な考え方を伺いたいと思うのです。これは申し上げるまでもなく、世界情勢の非常な変化の中で、日本の防衛を短中期的にどう考えるかということが非常に難しい問題として今浮上してきていると思います。  それからもう一つは、それに関連をして、さっきのあれとも関係がありますけれども、新鋭兵器を幾つか導入するというような話もあります。早期警戒機AWACS、あるいはOTHレーダー、空中給油機というようなものが新たに導入されるようなことも言われておりますが、それらについての構想はどうなっておりますか。
  79. 日吉章

    ○日吉政府委員 お答え申し上げます。  次期防衛力整備計画につきましては、一昨年十二月の安全保障会議におきます討議を踏まえまして、国際情勢なり軍事技術の動向、あるいは経済財政事情等を勘案しながら、安全保障会議を中心に政府全体として逐次総合的な検討が進められるということになっております。防衛庁も、防衛庁長官が安全保障会議のメンバーであります。そういう意味で、防衛庁といたしましても、現在政府計画の策定の参考に資するための作業を実施しておるところでございます。  現在の状況を申し上げますと、中期防によりまして防衛計画大綱目標としております防衛力整備水準がおおむね達成されることになっておりますことと、それから国際情勢の現在の流動的な状況、そういうようなことを考えてみますと、総じて言いますと、防衛力の量的拡大を図るというよりも、後方分野を含めまして全体として、中期防期間中までに整備をいたしました主要正面装備等を中心とした防衛力を効率的で均衡のとれたものにしていくということが基本的な方向としては適切ではないか、かように考えているところでございます。まだ具体的に個々の装備の内容等につきまして詳細に検討が進んでいるわけではございません。したがいまして、今委員から御指摘になられましたようなAWACSとか空中給油機とかあるいはOTHレーダーの次期防におきます取り扱いにつきましては、定かな方針が決まっているわけではございません。  ただ、空中給油機につきましては、中期防計画におきましても、空中給油機の性能、運用構想を含めまして空中給油機能に関する研究を推進することとされておりますので、そういう観点からの検討結果を踏まえまして、どのようにするか、今後も検討を続けていく必要があろうかと考えております。  それからOTHレーダーにつきましては、中期防におきまして既に調査費等をお認めいただいておりまして、米側が既に運用実験を開始いたしておりますものの性能なり運用状況等の調査を始めておりますし、もし設置をするといたしました場合に、どこに設置をするのが適当であるか、あるいはまたそのためにはどのような事柄を検討する必要があるかというような調査は既に進めているところでございますが、具体的に次期防期間中にこれを設置するのかしないのか、あるいはどのように設置をするのかというような点につきましては、今私が申しました中期防期間中からの検討経緯等も踏まえましてこれから判断を下していくということになろうかと思います。  いずれにいたしましても、まだ防衛庁内部の検討過程でございますし、具体的に今委員が御指摘になられましたような装備等につきまして、これを次期防期間中に整備する、あるいは整備しないというような結論を出しているわけではございません。
  80. 新村勝雄

    ○新村委員 防衛計画大綱、これが日本の防衛の基本になっていると思います。ただし、これも未来永劫に変わらないものではなくて、世界情勢の変化によっては当然変わるわけでしょうけれども、それからまた別表についても同じでありますが、このいわゆる大綱について、短中期的に現在及び近い将来における大綱に対する考え方はいかがですか。今世界情勢が非常に変わりつつある中で、大綱のレベルを下げるとか、そういったことについての検討はなされておりますか。
  81. 日吉章

    ○日吉政府委員 ただいまも御答弁申し上げましたように、次期防計画そのものは政府レベルで政府全体として検討をし判断をしなければならないことでございます。したがいまして、大綱の取り扱いにつきましても当然安保会議を中心としました政府レベルとして判断、検討がなされることになるわけでございますが、現時点におきます防衛庁としての考え方を御参考までに申し上げたいと思います。  大綱は、委員既に御案内のように、昭和五十一年、すなわちデタントと一般に言われた時期に策定されたものでございまして、その大綱が前提としております国際情勢につきましては、現象面におきましては現時点と非常に違っております。非常に違っておりますけれども、その大綱が前提としました国際情勢の物の考え方といいますものは今も適応するのではないかというふうに考えます。  と申しますのは、国際情勢につきまして大綱が総括して書いておりますことは、核相互抑止を含みます軍事均衡や各般の国際関係安定化の努力によりまして、全面的な軍事衝突とか大規模な武力紛争が生起する可能性は少ないんだという国際認識に立っております。これは今私はグローバルな観点から申し上げました。また大綱は、我が国周辺につきまして、今申しましたような大国間の均衡的な関係、それから日米安全保障体制の存在というものが我が国に対する本格的な侵略の防止に大きな役割を果たしているということで、大規模な武力紛争あるいは我が国に対する本格的な侵略がない、非常に可能性が少ない、こういう認識に立っております。  したがいまして、我が国が防衛力整備する際にも、一次防から四次防までにおいて、我が国は局地戦においてそれに効果的に対処し得るような防衛力を持ちたいということで防衛力整備してきたわけでございますけれども、その考え方を改めまして、憲法が認めております自衛権の範囲内で、なおかつ、平時から我が国が独立主権国家として保有すべき基盤的な防衛力、そういうふうな平和の国際情勢を前提にしてもなお国家として基盤的に持っておるべき防衛力というものを整備することを目標にすべきである、こういう考え方に立っております。したがいまして、この考え方は、当時防衛庁長官は坂田長官であられたわけでございますが、冷戦または冷戦的な発想からの脱却を意味したものだというようなことを当時発表をされておられます。  そういうようなことでございまして、今考えますと非常に先見性があったといいますか、ある意味では、今日の国際社会を先取りしたような物の考え方で大綱というものはできているのではないか、かように考えております。したがいまして、次期防を策定するに当たりましても、私どもはこの大綱の基本的な考え方、基本的な国際情勢の認識というものを前提といたしまして防衛力整備計画を進めていってもよろしいのではないか、こういうふうに考えておりますけれども、この点は、冒頭にも申し上げましたように、最終的には安保会議を中心としました政府全体で御判断をお願いすることだ、かように考えております。
  82. 新村勝雄

    ○新村委員 この大綱及び別表ができた当時と現在とでは世界情勢がかなり変わっておりますよね。これはデタントの時代だとはいいますけれども、当時のデタントの状況と現在の世界状況は大変に違うと思います。それから、将来の見通し、展望においてもかなり違うと思います。そういったことを考えた場合に、世界情勢を考慮に入れながら、大綱そのものあるいは別表そのものについても検討するというようなお考えはありますか。
  83. 石川要三

    石川国務大臣 今防衛局長から内容につきまして説明させたとおり、同じデタントでも十五年前と今日のデタントの状況、ボリューム、スピード、いろいろな面で非常に大きな差があるわけであります。それはもう委員に申し上げる必要のないことでございまして、その傾向はまだまだこれからもさらに前進をしていく、私はこのように期待もするし、思っております。  そういうことでございますけれども、しかし、くどいようでございますが、そういう中におきまして、基本的な情勢分析、国際情勢の分析をした結果は、一つには、要するに全面戦争はないだろうということがまず一つですね。それからもう一つは、何といっても三十年たった日米安保条約の効果というものは今後も必要性がある、私どもはこういう考えに立っているわけでありますから、そういうことから見て、大綱というものはそういう前提のもとにどの程度の水準でやっていくか、こういうことです。そういう前提のもとに、しかも憲法の精神を酌み、そして国の基本政策である専守防衛という政策から見てどの程度やるべきか。全く真っ裸でいいのか、いや、それはかえって危険だということで、平時においての必要最小限度のレベルにしよう、これが大綱水準ですから、私は、先ほど言ったように基本的にはこの考えというものは堅持してもいいのじゃないか、こういうふうに思うわけです。  そういうことで、当然これから開かれる安保会議の中で私が特に強調したいのは、やはり今これだけの情勢の変化ですから、最初に何を買うとか買わないとかそんなことよりも、精力的に時間を費やして検討すべきことは、今日の国際情勢、軍事情勢、そして将来の展望、ここらが一番大きな問題であるし、その中で今までのような基本的なものを堅持していくとするならばどうしたらいいかそしてまたそれがどういうふうに変化があるべきか、こういうことになっていくのではなかろうかな、私はこんなふうに思うわけであります。
  84. 新村勝雄

    ○新村委員 これは、長官の政治的な政治家としての御判断にまつわけでありますけれども……。  それで、大綱にしても別表にしても、これは防衛力の縛りという点からすると必ずしも縛りになっていないわけですよね。この実質的な、質をどうするかということが非常に問題なわけでありますから、例えば別表にしても、十八万人体制、十二師団、二混成団、ずっとありますけれども、その枠も単なる数字的な枠を決めてあるだけであって、質的な縛りにはなっていないということですね。  海上自衛隊の対潜水上艦艇が六十隻、潜水艦が十六隻とあります。この潜水艦は全部シュノーケルでしょうが、これを原子力に変えることについての縛りはこれにありますか。それからほかの機甲師団についても、戦車の性能を飛躍的に増大する、あるいはまた火砲の性能を飛躍的に増大する、あるいは航空機の性能というようなことになった場合に、性能という面からするとこれは縛りになっていないわけですよ。そうでしょう。ですから、そこのところが、さっき申し上げた文民統制がここで働いていないと、この別表の範囲の中であっても戦力は飛躍的に拡大するという可能性もあるわけですから、そういった点についての縛りはどうなりますか。
  85. 日吉章

    ○日吉政府委員 お答え申し上げます。  まず基盤的な防衛力整備でございますが、これはあくまでも国家として平時から保有すべき基盤的な防衛力ということでございまして、周辺諸国の軍事力に対しまして直接対抗し得る能力を持つというようなものではない。大臣が今申されましたように、とにかく我が国が防衛力整備を怠ったがために力の空白が生じて、この地域におきます不安定要因となるようなことを避けよう、こういうふうな考え方で基盤的な防衛力が考えられているということをまず御理解を賜りたいと思います。  それの一つの枠組みといたしまして、大綱が策定されましたときに、現に保有しておる、あるいはそのときに保有することを予定しております装備を念頭に置きましてつくりましたのがその別表でございます。しかし、国際軍事技術というものは日進月歩でございますので、その過程で我が国もその国際軍事技術の動向に対応したような形で近代化を図っていくのは当然でございまして、これが縛りになっていないのではないかという委員の御指摘でございますけれども、これはそのときそのときの国際軍事技術というものの水準がそういう水準を示しているわけでございますから、別表の量的あるいは編成の枠の中で、自衛権の範囲内において認められ得るそのときにおきます国際軍事技術を十分勘案したようなものを装備するということは当然のことではなかろうか、また許されることではないか、かように考えております。
  86. 新村勝雄

    ○新村委員 大綱及び別表の運営については、すべて文民統制と大臣の政治家としての最終的な判断にまつ、こういうことでございますので、ぜひ適正なというか、常に賢明な御判断をいただきたいと思います。  あと一、二のことについて伺いますが、核の持ち込みであります。米軍に対しては核の持ち込みは事前協議の対象になっているわけでありまして、事前協議がなければ核は持ち込まない、こういうふうに政府は説明しておられるわけでありますが、米軍以外の核搭載可能艦船が入ろうとする場合、これはどういうことになりますか。
  87. 重家俊範

    重家説明員 先ほど先生御指摘になりましたように、アメリカとの間では事前協議という制度がございまして、それによりまして、艦船によるものも含め、核兵器の持ち込みが行われる場合はすべて事前協議の対象になるということになっておるわけでございます。他方、米国以外の国々とはこのような事前協議の制度はございません。これは先生御指摘のとおりであります。  したがいまして、我が国としましては、非核三原則に基づきまして、外国の艦船によるものも含めてでございますが、我が国への核兵器の持ち込みが行われる場合にはこれを拒否する所存であるというのが基本的立場でございます。これらのアメリカ以外の国々につきましては、いずれにしましても我が国の非核三原則は既に内外に周知徹底されているところでありまして、先ほど御指摘のありましたイギリスの艦船の場合もそうでありますが、友好親善の目的で日本に参っておるわけであります。そういう意味で、我が国の基本的な政策を尊重する立場で行動しているというのが当然前提となっていると考えておるわけでありまして、これらの軍艦が核兵器を持ち込むことはそもそも想定されていないというふうに考えておるわけであります。そういう立場に立ちまして、イギリス等の艦船については対処しておるということでございます。
  88. 新村勝雄

    ○新村委員 対処といいますと、何か事前に問い合わせをするとかそういう手続をするのかどうか、それとも何にもやらないで相手の公正な判断にすべて任せるということであるのか。
  89. 重家俊範

    重家説明員 先ほど申しましたように、イギリスの場合も含めまして友好国の関係にあるわけであります。したがって、お互いに信頼関係に立って行動することを期待されている。したがって、先ほど申し上げましたように、日本の基本的な政策を尊重した上で行動しているというのが当然の前提でありまして、事前に特別の手続をとっておるということではございません。
  90. 新村勝雄

    ○新村委員 それからもう一つ、NLP、いわゆる夜間離発着訓練ですか、この点については実は私の近所にもそれを心配している飛行場があるのでございますが、その後の状況はどうなっておりますか。
  91. 松本宗和

    松本(宗)政府委員 米軍の艦載機の夜間離着艦訓練でございますけれども、これは当初、先生御案内のとおり、三宅島が適地であるということで三宅島に設置することで努力をしておったわけでございますが、これにつきましてはなお地元の情熱もございましてかなり長期間を要するということで、現在、昨年の一月でございますが、米軍との合意に達しまして、暫定措置といたしまして硫黄島に艦載機着陸訓練に必要な施設整備するということで、現在その整備を進めておるところでございます。  なお、この整備でございますけれども、完了は平成四年末というぐあいに大体見込んでおりまして、この時点で、現在厚木の飛行場で行っております艦載機着陸訓練、つまりNLPでございますけれども、これの相当程度が硫黄島で実施し得るようになるのではないか。またさらに、米軍の方では、硫黄島の施設が完全に完成しなくても、使える状況になった段階で部分的にでも使用を開始したいというぐあいに言っております。  以上でございます。
  92. 新村勝雄

    ○新村委員 硫黄島は暫定使用というふうに聞いておりますが、最終的に長期にわたって使うところは三宅ということになるのですか。それとも、三宅については非常に難しい状況もあると思いますが、三宅がだめな場合には首都圏のほかへ行く可能性もありますか。
  93. 松本宗和

    松本(宗)政府委員 ただいま御指摘のように、硫黄島につきましてはあくまでも暫定ということで施設整備しております。と申しますのは、地理的に非常に遠うございますのでいろいろな点で十分な訓練には適当でないという点もございます。  三宅の件でございますが、これは過去いろいろ検討いたしまして、地理的に申しましても地形的に申しましても最適の場所であるという考えについては現在も変わっておりませんで、何とか地元の御理解を得られるように努力をしながら、三宅島につきましてNLPの施設を設置すべく努力を続けてまいりたいというぐあいに考えております。
  94. 新村勝雄

    ○新村委員 首都圏の中には単に使用するというだけであれば最適のところがほかにもあると思いますが、少なくとも首都圏あるいは内陸の飛行場を使うことについては非常な困難があると思いますよ。ですから、三宅を一応指向しているということでありますが、それ以外の首都圏については全く考えていないということでよろしいですか。
  95. 松本宗和

    松本(宗)政府委員 現在私どもが考えておりますのは、三宅が最適であるということで、三宅について何とか実現したいということでやっておるということでございます。
  96. 新村勝雄

    ○新村委員 終わります。
  97. 渡辺栄一

    渡辺委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十七分休憩      ────◇─────     午後一時三十一分開議
  98. 渡辺栄一

    渡辺委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小川国彦君。
  99. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私は、我が国の防衛政策のあり方につきまして、防衛庁長官あるいはまた防衛庁当局に御質問したいと思います。  日本の安全保障体制、安全保障政策、それを取り巻く状況というのは大変変化してまいりまして、特に冷戦の終えん、終わりというような状況を迎えつつある現今の中で、防衛庁長官に大局的見地から、今の基本的な国際情勢をどう見ているか、また日本周辺の東アジアにおける国際情勢をどう見ているか、この辺の御判断を最初に伺いたいと思うわけです。  それは、さきの米ソ・サミットで、米ソ冷戦態勢は終わった、また、昨年末のマルタの会談あるいはまた先日のワシントンの会談等を見てまいりまして、米ソの超大国としての地位の下落というものが一つ見えるのではないか、そういうふうな感がするわけであります。日本の安全保障も、冷戦構造の変化なり米ソ二極構造の変化に対応して大きく変えなければならないときに来ているのではないか。現に、米ソの諸協定を見ますと、米ソ間の紛争の可能性はさらに少なくなった。政府は東アジアにおいて不安定要因が多いというふうに言っているわけでありますが、サンフランシスコにおける韓ソ会談というものを見ますと、実質的な国交回復とも見られる会談がなされたわけでありまして、朝鮮半島にも大きな変化が起こってきているのではないかというふうに見られるわけです。  こういう状況を見ますと、米ソというものは軍事力の経済的負担に耐えられなくなってきている、同時にアメリカの世界戦略の大きな変化というものが起こってきている、そういう状況を踏まえますと、日本の安全保障なり防衛力のあり方というものについて基本的に考え直す、組み直す、その枠組みのあり方を考え直すときが来ているのではないかというふうに思うわけでございますが、この点、防衛庁長官なり防衛庁当局の御見解をまず伺いたいと思います。
  100. 石川要三

    石川国務大臣 最近の国際情勢、あわせてアジア太平洋地域における国際情勢、軍事情勢等の大きな変化の中で、我が国の防衛政策について見直したらいかがか、こういうような御質問でございますが、こういう大同小異の御質問につきましては、もう再三、衆議院の予算委員会、参議院の予算委員会、あるいは内閣委員会等におきましてもいろいろと承りまして、その都度、私の方からもその見解につきましてはお答えを申し上げてきたわけでございますので、あるいは重複する点も多々あろうかと思います。  先生も御承知のとおり、最近、ソ連の変化あるいはまた東欧諸国における民主化への動きというものは、第二次世界大戦以後、かつてない好ましい変化であるわけでありまして、このような中で、東西間におきましては、STARTあるいはCFEの進展に見られますように、かねてから続けられたこういった対話、協調への努力というものが実りつつあるように見受けられるわけでございます。  米ソ間におきましても、昨年末のマルタ会談に引き続きまして、先般ワシントンにおいて米ソ首服会議が行われ、新しい協力関係の成立に向けて、米ソ間の対話、協調という路線が一層定着をした、世界の平和と安定にとって非常に意義深いことである、かように私は評価をするわけでございます。  しかしながら、アジア太平洋地域の情勢というものにつきましては、ゴルバチョフ大統領自身が記者会見の席におきまして述べられてもおりますように、複雑かつ多様であって、欧州におけるような変化はいまだ生じていない、また、この地域においては膨大な軍事力の蓄積を有する極東ソ連軍というものが現在依然として存在をしている、そして質的な強化も継続をしている、このようなことから、この地域の安定化を図り信頼を醸成するためには、まずソ連がその膨大な極東のソ連軍について早急に質的に、かつ、大幅な削減というものを実施してしかるべきである、かように考えているわけでございます。  また、朝鮮半島におきましては、今先生も御指摘されましたように、緊張状態は続いておりますけれども、先般サンフランシスコにおいて初めて韓ソ首脳会談が行われたなど注意すべき動きも生じているわけでございまして、このような動きを通じまして朝鮮半島の緊張度が緩和の方向へ向かうことを期待をしているわけでございます。  いずれにしましても、このようなグローバルな、そしてまた、特にアジア太平洋地域におきましてもこれからますますデタントに向かっての動きというものは進展するであろう、私はこのような認識は持っております。  しかしながら、他方、我が国の基本的な防衛政策につきましては、もう先生も十二分に御承知のとおり、私どもは今日までいわゆる防衛大綱というものを掲げ、その水準達成に努力をしてまいったわけでございます。この大綱水準というものは、これも繰り返すようでございますが、いわゆる大綱の前提条件としての世界情勢の認識でございますが、それは一つには、いわゆる核抑止によっての今後の東西関係というものの全面的な戦争は起こり得ないだろうという前提、もう一つは、我が国の防衛政策としての日米安保体制というものによって今日まで平和も続けられてきたし、今後もまたその平和の構築は可能である、こういうふうな認識のもとに、いわゆる平時においても最低限の防衛をすることの方が、要するに地域の安定の上からもそれが正しいあり方だ、こういうようなことで、大綱水準に向かって今日まで努力をしてきたわけでございます。そういうようなことから見て、確かに、前段るる申し上げましたような国際情勢の変化というものは当然今大きく揺れ動いているわけでありますけれども、我が国の防衛政策の性格から、これが直ちに変更を来すというふうな必要性というものは、当面、今現在におきましてはうかがわれないわけでございます。  しかし、何といっても世界じゅうが今そういう大きなデタントに向かって動いているわけでありますから、そういう情勢は当然将来においては日本の防衛にもやはり非常に大きく影響されることもあろうと思いますが、当面の今の時点におきまして直ちに大幅な影響を受けるというふうな性格のものではない、こういう認識に立っているわけでございます。
  101. 小川国彦

    ○小川(国)委員 米ソがワシントン会談の中で大幅な軍備削減についてのさまざまな協定を結んだ、そういう背景には、やはりそれぞれの国情の中で経済政策の上での大きな行き詰まりということが考えられるのじゃないか、そういうふうに思うわけです。  アメリカの貿易収支の赤字を見ましても、一九八九年で千八十九億ドルの赤字がある。財政赤字はまた二兆八千六百六十二億ドルという多額なものに上っている。そういう中で、大体二八%前後の軍事費というものが国の予算の中で組まれてきている、こういうふうに見られるわけです。同じふうにソビエトも、国の予算の中で、予算書で見られますものではやはり一五%ぐらいの軍事費が組まれてきている。これは、アメリカにおいてもソ連においてもこの軍事費の財政負担というものが国の経済全体を圧迫してきている。これがやはりデタントに向かわざるを得ない大きな要因になっている。こういうふうに考えるわけでありまして、そういう中で軍事費の削減ということも当然両国において方向として出てきているわけであります。  そういう中で、我が国のみがひとり防衛費の増額の方向を進んでいくというのはいかがなものかこういうふうに考えるわけですが、そういう財政的な経済政策上の御判断はどういうふうにお考えになっておりますか。
  102. 石川要三

    石川国務大臣 今小川先生が御指摘されましたように、今日の米ソの大幅な軍備削減といいますか軍縮に向かっての方向というものは、一番根本的な原因、理由というものは、今先生も御指摘されたような経済的な事由による、私はかように認識をしておるわけであります。  特に米ソは、要するにグローバルな立場で、自由主義陣営あるいはまた社会主義陣営のリーダーとして今日までお互いにやってきたわけでありますから、そういう対峙の中で、一時的にはかなり軍拡競争というものも行われたわけであります。その結果が、今御指摘のような国民経済を非常に圧迫した。これは事実の現象であるわけでありまして、これ以上はもうとてもではないけれどもこのままでは経済も維持できない、そういう中からお互いにやはり見直すというか、今まで歩いてきた道を振り返り、そして軍縮というものにお互いがコンセンサスができ上がり、そして着々として軍縮の道を今日までたどってきた。それが最近の、特に米ソの首脳会談においての一つのあらわれではないかな、このような認識に立っているわけであります。  そういうようなことでありますけれども、先ほど来、くどいようでございますが、我が国は実は逆といいますか、憲法の精神にのっとっていわゆる専守防衛という性格、そして、その方向に基づいての適正な規模の防衛力を今日まで努力をしてきたわけであります。したがいまして、私どもに言わせれば、むしろ私どもの選択は間違っていなかった、こういうことも逆説ではございますが指摘はできるのではなかろうかな、私はこんなふうに考えるわけでございます。  もっとくだけて言わせていただければ、米ソ両国は要するに今まである意味においては軍拡競争をしてきた、その結果が見直されて今日のような行動に移っているわけでありますが、よく考えてみれば、国民の税金によってお互いに軍拡をやって、またそれが今度は軍縮に向かっては、さらには核兵器を中心とするいろいろな化学兵器においてもそれを削減するのにまた税金を使って削減する。考えてみれば、我が国にとってはそういうことはないわけでありまして、彼我を比較するならば、私たちの選択というものも間違っていない一つのよき選択ではなかったかな、私はかように思うわけでございます。  そういう意味で、性格的にも質的にもかなり違う防衛政策でありますので、直ちに米ソのそういう削減というものがダイレクトに私どもの政策を転換するような、そういうものとはいささか違うものではなかろうかな。今後も軍縮に向かって努力することは当然でありますけれども、しかし米ソのそういったものと比べては同一に論じられない面もあろうか、私はかように思うわけでございます。
  103. 小川国彦

    ○小川(国)委員 防衛庁当局は、米ソのそれぞれの財政負担は国の財政の中でどのくらいのウエートを占めている、数字の上でそれぞれ何%程度というふうに把握されておりますか。
  104. 日吉章

    ○日吉政府委員 大ざっぱな数字でございますが、予算全体に占めます国防費のシェアにつきましてはただいま委員の方からお話がございましたので、GNPに対しますシェアという形でお答え申し上げるとよろしいかと思います。  そういたしますと、アメリカの場合は、漸次下がってはきておりますけれども六%程度ではないかと思います。それからNATO諸国の主要な英、独、仏というような国は三%前後ではないかと思います。御案内のように日本の場合はおおむね一%ということでございます。ソビエトの場合につきましては、GNPそのもの、それから国防費そのものがどういうものであるのかなかなか正確にはわかりませんが、自由主義諸国の中では一般に一六、七%、一五%から二〇%以内の間ぐらいに相当しているのではないかというふうに言われております。
  105. 小川国彦

    ○小川(国)委員 そういった財政負担がいずれの国をもして軍縮に向かわざるを得ないという状況の中に、先ほどの防衛庁長官の見解はいささか——そういう中で毎年五%、六%と年々増大の一途をたどっている日本の防衛費のあり方というものは、そうした米ソ二大国の軍事費の増大による国の財政的な行き詰まり、これは長官もお認めになったわけですが、そういうことをお考えになれば、日本の今の防衛費の枠組みの進み方はやはりこの辺で歯どめをしっかり考えなければいけないのではないか、こういうふうに思うわけです。  今アメリカが今までの前方展開戦略というものを大きく変えようとしている。四月に公表されたアメリカ国防総省の報告、東アジア太平洋地域の枠組みにおいてというのにも変化があらわれてきているわけです。アメリカが米軍削減のための経済的な肩がわりを日本に求めてきている、またその反面で、日本がこれ以上軍事的に大きくなることも懸念している、こういう状況なんです。そういう中で、沖縄の在日米軍司令官がワシントン・ポスト記者に話しましたように、在日米軍は日本の軍事大国化防止への措置であるというような発言もあったりしておりますし、また石川長官自身が東南アジア訪問の際には、タイ紙の報道などでは非常に日本の軍事大国化が懸念されている。日本の防衛力、軍事力の肩がわり増大ということに対しては、一様に東南アジア諸国からの警戒を持たれておるわけです。  そういう中で、アメリカが防衛費、軍事費を削減していく中で、アメリカがそれだけ減らしてき たならば、それだけ日米安保の体制における軍事費を削減していっているわけですから、米軍が削減したものはそのまま削減していけばいいものを、日本がこれを肩がわりして引き継いでいくというのは、こういうデタントの大きな流れから見ていかがなものであろうか、こういうふうに考えるわけです。  そういう中で、日米安保及び協定に基づくところの日本側負担というものがあるわけでありますが、今日までその経費の全額、全貌というものが明らかにされてきたことが一度もないというふうに伺っているわけです。これは米側の負担、日本側の負担いずれも国民の税負担によるものでありまして、特に予算の支出でございますから、これについては支出の全額がやはり報告されるべきだ、こういうふうに思うのでございますが、この点はどういうふうに対処されてきておりますか。
  106. 日吉章

    ○日吉政府委員 委員お尋ねの点でございますけれども、四月に米国は議会に対しまして、アジア太平洋地域の戦略的枠組みという報告書を出したわけでございますが、それによりますと、米国は財政的ないろいろな制約があるにもかかわらず前方展附戦略は基本的に維持する、こういうふうな考え方に立っていると思います。そうしてその際に、日本側に対しまして米側の役割の肩がわりを迫っているということはございませんで、これまで日本が独自に日本の防衛のために努力をしてきたと同様の努力はこれからも続けていくことを要請いたしておりますけれども、日本側に対しまして米側が、グローバルな観点からの役割を担っている部分につきましての日本への肩がわりというようなものは求めていない、かように理解をいたしております。  なお、ただいまお尋ねのこの経費でございますが、それが、日本に駐留いたします米軍の経費のうち日本側がどれだけ負担をしているのかというお尋ねであるといたしますれば、約四千四百億円程度日本側が負担をいたしておりまして、八八年で申し上げますと、米国が駐留米軍に支出いたしております経費の約三五%程度が日本側の負担になっている、かように理解をいたしております。
  107. 小川国彦

    ○小川(国)委員 この八八年の三五%と言われる日本側の負担は、金額的に各費目、項目、款項目になりますか、費目別にすべての金額が、日本側の負担の支出はこれだけである、こういうことは全部明白になっているのでございますか。
  108. 松本宗和

    松本(宗)政府委員 日本側が負担しております金額でございますが、昭和六十三年度で三千二百七十九億円ということになっております。これはトータルでございますが、このうち、防衛施設庁の方で提供施設整備あるいは労務費の一部負担等として支出いたしておりますのが二千三百五十八億円。そのほかに他省庁分が若干ございます。そして、提供しております国有財産がございます。これを一応借り上げ資産という形で試算をいたしましたものを加算いたしまして、ただいま申し上げましたような数字になっておるということでございます。
  109. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私の方の、ちょっと観点が違うかと思うのですが、昨年の八月、アメリカの会計検査院の報告では、駐留米軍の費用負担について国防省のまとめたものが発表されているわけです。これによりますと、八七年は二千三百四十億円というふうになっているわけですね。八八年も同程度になっている。この駐留経費の支出額と負担割合は明確になっているのでしょうか。アメリカ側の負担は金額でこれだけ、日本側の負担は金額でこれだけ、そして項目的にはこういう項目での支出である、これは全部明らかになっているのでございますか。
  110. 重家俊範

    重家説明員 まず私の方から、アメリカが負担している額について御説明させていただきたいと思います。  アメリカが公表しております最新の数字は、一九八八会計年度の在日米経費の額は、トータルで約四十五億ドルということになっております。  内訳でございますが、軍人軍属等関係人件費が約二十三億ドル、運用維持費が約二十億ドル、軍事建設費が約〇・二億ドル、燃料油脂費が約二億ドルというふうに承知しております。
  111. 小川国彦

    ○小川(国)委員 今アメリカ側から聞いた数字を述べられているのですが、これは本来総体的な経費の支出がありまして、例えば主たるものでは思いやり予算とか在日米軍の労務費であるとか、その他もろもろの項目の支出があって、総トータルが幾らになる、その中で米側の支出がこれだけ、日本側の支出がこれだけということを、アメリカ側から聞いたのではなくて、日本側としてそれの全体を掌握されてはいないのですか。こういうことを伺っているのです。
  112. 重家俊範

    重家説明員 アメリカと日本側とそれぞれなかなか難しくございまして、会計年度がいずれにしても違うわけでございます。また、そのときの為替レートの問題もございまして、ぴったり同じ時期にどういう数字がバランスするのかということがわからないわけであります。  手元にちょっと資料をあれしていないのですが、けさほど御説明させていただきましたように、八八会計年度でいえば、アメリカが負担している部分が約四十五億ドル、日本の部分が約二十四億ドルだったと思いますが、合わせてその時点でいえば六十九億ドルくらいが全体の数字である。日米の割合は三割五分と六割五分というような割合ではなかろうかということでございます。
  113. 小川国彦

    ○小川(国)委員 非常にアバウトな数字で答えられているのですが、国会の決算委員会なんかで御説明願うには、約、約ということではなくて、しかも会計年度が違うとか為替レートが違うとか言いましても、そういうことで数字のつじつまが合わないというのでは困るわけです。そこはどういう形であれ、適合性ある計算方法によって、それぞれの分担がどうなっているという明確な数字が示されるべきだと思うのです。そういうことはできないのですか。
  114. 重家俊範

    重家説明員 繰り返しの答弁になって恐縮でございますけれども、先ほど申し上げましたように数字自体はアメリカの数字でございまして、どういう作業でどこまで出せる数字がというのは一義的にはアメリカの判断であろうと思います。また同時に、先ほども申し上げましたように、為替レートとか時期の問題もございますので、そういう意味で、何%、何%ということを非常に先生が言われる意味でしっかりした数字を出すということは技術的に甚だ難しいということではないかと思いますので、その点御理解いただきたいと存じます。
  115. 小川国彦

    ○小川(国)委員 そういたしますと、これは、日本側としてはアメリカ側から、総額でこれこれのものがかかった、したがってこのうちのこれこれの金額を負担してもらいたい、そういう話があって、そしてそれが結果的に日本側三五%という数字になってくるのか。総額の把握検討というものは、日米間が共同の協議の中で全体像を決めて、そしてその負担割合を決めていく、そういうことではなくて、アメリカ側から負担すべき内容を示されてそれを日本側が負担して、それが結果的に三五%になる、こういうことになるのでございますか。
  116. 日吉章

    ○日吉政府委員 お答えを申し上げます。  あるいは外務省の方からお答えいただいた方が適当なのかとも思いますが、現在、駐留米軍経費につきまして日本が負担をいたしておりますのは、駐留米軍経費全体としてどれだけ必要である、そのうちのどれだけの割合、どれだけの金額を日本側が負担する、こういうふうな考え方で負担をいたしておりません。したがいまして、今外務省の政府委員から御答弁いただきましたものも、米側が米側の会計年度において支出したもの、日本側が日本の会計年度において支出したものを単純に足しまして、そしてそのときの為替レート、例えば支出官レートを適用するとか、そういうふうな形によりまして数字を出せば、結果的に今申し上げましたような六五対三五というような数字になるということでございます。  しからば、日本側はどういう考え方で負担をしているかという点でございますが、それにつきましては、基本的には地位協定の二十四条によりまして施設提供につきましては原則的に日本側が負担をしているわけでございますが、その中におきましてもすべての施設提供につきまして日本側が負担をしているわけではございませんで、日本の予算制度に照らしまして、日本の防衛関係予算の中で妥当といいますかバランスのとれた金額ということで、国会でもお認めいただいている金額を出しているということでございます。それ以外に特別協定を締結いたしておりまして、その特別協定によりまして駐留米軍に勤務いたしております日本人労務者の特別の手当、八手当であったかと思いますが、八手当等を負担している、その結果が今申し上げましたような数字になるということでございます。
  117. 小川国彦

    ○小川(国)委員 協定に基づくものであるということは理解されるわけでありますが、その中の日本側負担の数字というものは、外務省、防衛庁がそれぞれ米側との交渉の中で示された金額を現実に日本側支出として行っていく、こういうことでございますか。
  118. 松本宗和

    松本(宗)政府委員 ただいま防衛局長の方から御説明いたしましたけれども、提供施設整備に関しましては、地位協定の二十四条の二項、これに基づきまして、すべての施設について提供するものについては米軍に負担をかけないで提供し得るということになっておりますが、実際問題といたしましては、安保条約の観点からその目的に合致し得るかどうか等々もろもろの問題を検討し、また財政的にも検討いたしまして、自主的に判断して毎年毎年一件ずつ決めていって、結果的にあのような数字になっておるということでございます。  また、駐留軍従業員の労務費でございますけれども、これは例えて言いますと、いわゆる本俸と申しますか基本的な経費を除きまして日本側が負担しておるというような形で現在まで参っておるわけでございますが、一部、特別協定によりまして、本来米側が負担するのが適当であると思われるものにつきまして負担しておる、これを積み上げまして先ほど申し上げましたような形になっておるものでございます。
  119. 小川国彦

    ○小川(国)委員 そうすると、日本側の負担分については明確な数字が全部出てくる、こういうふうに理解してよろしいですか。
  120. 松本宗和

    松本(宗)政府委員 仰せのとおり、明確な数字をお出しすることができると思います。
  121. 小川国彦

    ○小川(国)委員 それをひとつ数字でお出しいただければと思いますが、よろしゅうございますか。
  122. 松本宗和

    松本(宗)政府委員 これは、決算書にも出しております数字でございますので、お出しすることができると思います。
  123. 小川国彦

    ○小川(国)委員 米側のその六五%の負担の内容については、外務、防衛両省庁はどの程度これを把握されているのですか。
  124. 松本宗和

    松本(宗)政府委員 この問題につきましては、先ほどから外務省の方から答弁していただいておりますが、私どもといたしましては直接把握する手段を持っておりません。外務省を通じまして先ほどのような内容を承知しておるということでございます。
  125. 小川国彦

    ○小川(国)委員 もう一度外務省に伺いますが、そうすると、米側の六五%の負担については、米側から示される数字、これは概要的なものでございますか。詳細な項目に従ってその費用といいますか金額が示されているわけでございますか。
  126. 重家俊範

    重家説明員 先ほども申し上げましたように、米側の数字は米側が自分の判断でどこまで公表できるかということを判断しておるわけでございまして、最も最近に入手できる数字は先ほど申し上げたとおりでございます。またその内訳につきましても、先ほど四項目にわたって申し上げましたが、それが私どもが米側から聞いておるところでございまして、そういう意味では概数ということでございます。
  127. 小川国彦

    ○小川(国)委員 これに対しては、日本側から、この数字を明らかにしてほしい、そしてお互いの納得のいく負担割合というものをやっていこうではないか、こういうお話し合いはなすったことはあるのでございますか。
  128. 重家俊範

    重家説明員 先ほど防衛局長の方から御答弁ありましたように、私どもといたしまして、基本的に、全体が幾らでそのうち何%を持つとか持たないとかいう考え方に立って進めているわけではございません。したがいまして、私どもといたしましては、もちろん全体を考えるに当たっておおよそどのぐらいアメリカが出しているのかということは知っておきたい事項ではありますけれども、そういう正確な数字ということについては入手していないし、また必ずしも正確な数字を入手する必要があるようにも思っておらないわけでございます。
  129. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私は、米軍駐留経費の米日間の負担の割合がずっとそれぞれの割合で示されてきている、そして、日米安保体制の中では共同の負担の中でその防衛体制を維持していこうということでやってきているのであれば、やはりその米側の数字についても日本の政府としてしっかり把握しておく必要があるのではないか、こういうふうに思うわけです。それは同時に、三五%を負担している日本国民に対しても日本国政府としてやるべきことではないのかと思いますが、防衛庁長官いかがでございますか。
  130. 日吉章

    ○日吉政府委員 委員ただいま御指摘のように、駐留米軍といいますものは極東とともに我が国の安全と平和のために寄与しているわけでございまして、その意味で私どもはその駐留米軍から利益を得るところが大きいわけでございます。  しかしながら、これまでのところは、これまで私どもが御答弁申し上げましたように、その中でどの程度日本側が受益をしている、あるいはどの程度負担をするのがしかるべきであるというような物の発想で負担をしておりませんで、どのような性格の費目は日本側、ホストネーションとして持つことの方が妥当であるかというような観点から負担をしてきたということでございます。  ただ、委員がただいまおっしゃられましたような物の考え方ということもあろうかと、その点は理解ができますけれども、少なくともこれまでは、各費目につきまして日本側が、受け入れ国が持つことが適当だと思われる費目を拾いまして、それを負担しているというような方針でやってまいったわけでございます。
  131. 小川国彦

    ○小川(国)委員 その点は、時間の関係でまた次に譲らせていただきたいと思います。  次に、中期防衛計画と次期防衛計画の総額明示方式の問題でございますが、八六年に一%枠が取りざたされたときに、八六年の中期防では総額明示方式というものが取り入れられまして、これによって中期防では五カ年で十八兆四千億程度がめどと言われて、これが歯どめになると言われてきたわけでございます。ところが、昭和六十一年から平成二年までのこの五年間で、当初予算五年分で見ましても十八兆六千四百三億円と、当初予算だけで約二千億円も上回ってしまっているわけですね。そうすると、歯どめになると言っていた総額明示方式では歯どめにならなかったのではないか、こういうふうに理解するものでありますが、この点はいかがでございましょうか、簡潔に御答弁をいただきたいと思います。
  132. 日吉章

    ○日吉政府委員 簡潔に御答弁申し上げたいと思います。  十八兆四千億円という価格でございますが、これは六十年度価格、六十年度を基準といたしました実質価格で十八兆四千億ということでございます。ただいま委員が御指摘になられましたのは、六十一年から六十五年までの各年の名目の予算額を合算された数字なのではないかと思います。したがいまして、六十年度価格に換算し直しますとこれは十八兆四千億を下回っております。
  133. 小川国彦

    ○小川(国)委員 これに補正予算も加えるとどのぐらいになってまいりますか。
  134. 日吉章

    ○日吉政府委員 ただいまその資料を手元に持っておりませんので正確に申し上げられませんが、その間におきましてはかなり減額補正の年度が多かったのではないかと思いますし、それから補正の主たる要因は給与改定であったと思います。そういう意味で、給与改定はこれは名目価格の上昇ということに観念されると思いますので、そういう意味で、補正の価格を合算いたしまして六十年度実質価格に換算いたしましてもこれは決して十八兆四千億をオーバーしていない、かように考えております。
  135. 小川国彦

    ○小川(国)委員 そうすると、平成三年からの次期防衛計画では総額で二十三兆五千億になると言われているわけでありますが、果たしてこれを総額明示方式にしましてこれは守られるのかどうか、歯どめになるのかどうかですね、この点はいかがでございますか。
  136. 日吉章

    ○日吉政府委員 次期防の価格が幾らになるか、総額が幾らになるかという点は、これから政府全体で検討すべき問題でございますが、それは別といたしまして、ただいま中期防の実績見込みを御披露申し上げましたのでもおわかりのように、総額明示方式といいますものは十分歯どめになり得る方式である、私はかように考えております。
  137. 小川国彦

    ○小川(国)委員 次に装備の問題で伺いたいと思います。  空中警戒管制機、AWACS、この導入とあわせて空中給油機の導入も固まった、こういうふうに伝えられているわけですが、これは戦闘機の足の長さを幾らでも伸ばせるということを意味するのではないか。すなわち攻撃的な戦闘機になるおそれはないのか。足の長さが短かったF15戦闘機がより足の長いものにかわっていく、こういうことは周辺諸国の脅威になるのではないか。早期発見で防空能力を高めると言っているわけですが、戦闘機を領海ぎりぎりまで飛ばして空中給油機で補給する、こういうことになりますと、日本の航空戦力に攻撃的な性格を持たせることになるのではないか。こういうふうな懸念がされるわけですが、この点はいかがでございますか。
  138. 日吉章

    ○日吉政府委員 まず最初にお断りを申し上げておかないといけないと思いますが、一部に報道されておりますように、次期防におきましてAWACSあるいは空中給油機の導入を決めた、こういうようなことはまだ事実でもございませんで、私どもは各般の検討を進めておりますけれども、いまだこれの導入あるいは導入しないというようなことを決めたということではない点を、最初にお断りを申し上げさせていただきたいと思います。  それでAWACSでございますけれども、AWACSにつきましては、ただいま委員も御指摘になられましたように、これは現在、私どもが持っておりますE2Cと同じように、低空侵入目標等をできるだけ早期に探知するという目的の早期警戒機でございます。したがいまして、まさに防御的な、我が国といたしまして防御的装備しか持たない、あるいは防御的な、自衛的な運用しかしない我が国としましては、できるだけ早期に相手の低空侵入等の目標を探知するということは非常に重要なことではなかろうか、一般的にはそのように考えております。  空中給油機でございますけれども、これにつきましても、既に中期防の中に「空中給油機の性能、運用構想等空中給油機能に関する研究を推進する。」ということになっておりまして、研究を続けているところでございます。  これも一般論として申し上げますと、足を伸ばしまして相手の領海、領空、領土近くまで攻撃的に展開するというようなことではありませんで、要撃戦闘機が事前に空中で哨戒待機するような場合に、空中給油機を使いますれば要撃戦闘機の待機時間を延ばすことができる、こういうようなことから当然私どもは、これを導入するのが有用であるか、あるいはそれまでする必要はないのかというような形で必要性等を検討しているところでございまして、空中給油機そのものが攻撃的運用を伴うものである、あるいは攻撃的な装備であるというようなことは言えないのではないか、かように考えております。
  139. 小川国彦

    ○小川(国)委員 もう一つ、次期防ではFSXですね、これの本格的な開発がなされているわけですが、今なぜFSXなのか、こういう疑問もあるわけです。  青森県の三沢と福岡県の築城にあるジェット戦闘爆撃機の次期支援機に、結果的にF16を改造しFSXとなったわけでありますが、防衛庁がこれを導入しますと、対艦ミサイルを四発搭載、八百三十キロ内外という極めて足の長い戦闘機で、攻撃的な性格のものになってしまうのではないか、こういう懸念を持たれるわけであります。  私ども、防衛力のあり方の問題として、デタントが定着した国際情勢の中で、今日の防衛というものは非攻撃的な、防御的な性格を基本とすべきだ、こういう一つの考え方を持っているわけですが、この観点に立ったならば、兵器のあり方も攻撃兵器から防御兵器に全体を変えていく努力が必要なのではないかというふうに思うわけなのですが、防衛庁は、攻撃的兵器、防御的兵器、こういうふうに分けまして、現状の防衛庁の装備している兵器というものは一体どういう性格づけでこれを考えておられるか、その分類というものはまたどういうふうにお考えになっているか、あわせて御答弁をいただきたいと思います。
  140. 日吉章

    ○日吉政府委員 幾つかの御質問をいただきましたが、御質問の順番に従いまして、まずFSXの必要性につきまして御説明を申し上げたいと思います。  FSXは、現在自衛隊は十三飛行隊を持っておりますが、そのうちの十飛行隊は主として要撃、三飛行隊は主として支援戦闘機として利用するということを考えております。その支援戦闘機部隊の三飛行隊に運用いたしております我が国で国産開発いたしましたF1という支援戦闘機が、九〇年代の中ごろ以降耐用命数が来てまいりまして減勢してまいります。したがいまして、それの代替機といたしまして、二十一世紀初頭を通じまして、諸外国の航空機と伍して対等にやっていけるような航空機を開発しておく必要があるということから、FSXの開発を進めているところでございます。  その際に、FSXの足の長さにつきまして御指摘がございましたけれども、今攻撃的なというふうにおっしゃられましたが、今おっしゃられました航続距離は、対艦装備をいたしました場合の航続距離を委員は御指摘になられたと思います。攻撃的な武器といたしましてこれを運用するといたしますと、それは当然相手領土を攻撃するということになると思いますが、その場合には対地装備をする必要がございますが、対地装備をいたしましたときには、委員ただいま御指摘のような航続距離は到底保持し得ないというような点がございます。  ただ、現在のF1に比べますと若干航続距離を延ばすことになっておりますけれども、これにつきましては、支援戦闘機といいますものは、我が国がそもそも東西南北に長い領土でございまして、その中で飛行場の数も限られているということになりますと、支援戦闘機の性格から考えまして、戦闘場面より若干遠い距離に待機いたしましてそちらから展開するというような運用が考えられます。したがいまして、そういう点を考えますと、私どもが今考えております程度の航続距離は持っていなければ十分な効果が果たせない、こういうような観点から航続距離を予定しているわけでございまして、決して相手領土等を攻撃するような攻撃的な装備として性能を考えているということではございません点をまず御理解いただきたいと思います。  それから、攻撃的兵器と防御的兵器という言葉の意味でございますが、必ずしも私は正確に御質問の意味を理解しているかどうか自信がないわけでございますが、現在自衛隊が保有しております個々の兵器につきましては、これを保有することによりまして、我が国の保持する実力の全体が自衛のための必要最小限度の実力を超えることとなるか否かによって、これが憲法上許される自衛のための防衛力の範囲内であるかどうか、あるいは許される兵器であるかどうかというようなことが判断されるわけだと思います。しかしながら、全 体で判断すべき問題でございますけれども、その個々の兵器の中でも、そもそも性能上、専ら相手国の国土の壊滅的な破壊のためにのみ用いられるいわゆる攻撃的兵器、例えばICBMというようなもの、長距離攻撃爆撃機というようなものもあるいはそういうようなものになり得るかと思いますが、こういうようなものは攻撃的兵器というごとで、我が国が自衛のための必要最小限度の範囲内として持つということは認められないのではないか、かように考えております。したがいまして、このような意味での攻撃的兵器というものは現在自衛隊は保有していないということでございます。  御質問の趣旨に合っているのかどうかいささか自信がございませんが、とりあえずお答え申し上げました。
  141. 小川国彦

    ○小川(国)委員 もう一つ装備で、戦車の問題で伺いたいのでありますが、九〇式戦車導入ということが伝えられているわけであります。九〇式戦車はハイテクの固まりとも言える装備で、重さ五十トンというふうに言われているわけです。現在の車両の制限令によりますと、一般の車両というのは二十トンぐらいというふうに言われていますが、自衛隊は適用除外になっていると伝えられているわけであります。それにしましても、こうした車両が一般道路を走るということが果たして適切なのかどうなのか。北海道重視の戦略で、この九〇式戦車は、北海道に組み立て工場をつくって、内地から運んで戦車として動かす。しかし、こうした重量級戦車の通行に我が国の道路とか橋梁が果たして適しているのかどうか、この点はどういうふうに研究なさっていらっしゃるのか。北海道の方々に聞きますと、演習のためということで戦車が一般道路を通るということが一般交通にいろいろな支障を与えていると言われるのですが、そういう点の配慮は一体どうなっているのか。  それから、大陸に攻撃をするというならいざ知らず、専守防衛の日本に最新鋭のこの重量級戦車が果たして必要なのかどうか。一両当たり十五億円もの戦車が果たして有力な戦力になり得るのかどうかですね。こういうのを見ると、これは国産で全部おやりになるということを八九年五月十六日に経団連が次期防衛力整備計画に対する要望として出しているが、財界の要望というのがこの九〇式戦車導入の主因になっているのではないか、こういうふうにも思われますし、七三年の中東戦争の際の戦車の役割等を考えてみると、果たして戦車が兵器としての有効な力を持つかどうかということも疑問に思われる。そういうふうに考えてまいりますと、この九〇式戦車の持つ意味というものは、考え方としては非常に不十分な観点に立ったものではないのだろうか。しかも、先ほどおっしゃられた攻撃兵器の中にこの戦車は入ってくるということからいうと、この九〇式戦車の導入というものは一体いかがなものか、こういうふうに思うわけです。  時間が参りましたので、最後に、米ソのデタント時代を迎えて、日本は、今までの防衛政策や安保体制に対しての考え方だけではなくて、もうそれを乗り越えて、東アジア太平洋地域の軍縮政策というものを積極的に進める、そういうところに来ているのではないだろうか。日本の防衛の概念といいますか哲学といいますか、やはりそういうものをこの辺でしっかり確立していく必要があるのではないか、こういうふうに思うわけでありますが、装備の戦車の問題とあわせて御答弁をお願いしたいと思います。
  142. 日吉章

    ○日吉政府委員 まず戦車につきましては、委員も御案内のように、戦車といいますものは陸上自衛隊、国際的には地上軍の中の中核的な装備でございまして、火力、機動力、防護力にバランスのとれた装備でございまして、我が国の運用構想といたしましても、万が一といいますか、不幸にして着上陸侵攻が行われました場合に、陸上自衛隊がその相手を排除するために、水際あるいは沿岸地域あるいは内陸に侵攻された場合には、内陸におきまして各種作戦を遂行するに当たっての装甲機動打撃力の骨幹としてなくてはならないものである、かように考えております。  確かに我が国には欧州や中近東におきますような大平原等は存在しないわけでございますけれども、狭隘で山岳の多い我が国の地勢に応じた形で戦車の利用というものも可能性は十分あり得るわけでございますし、過去の戦史によりましても、島嶼、島の作戦におきまして大量の戦車が用いられたというようなことで、我が国の地理的条件を考えましても、戦車の意味というものは決して失われるものではない、かように考えております。私が今申しましたようなそういう運用構想から申しましても、決してこれを外国の領土に持っていって運用するというような攻撃的な兵器でないことは十分御理解いただけるかと思います。  なお、日本の道路におきまして新戦車運用できるのかということでございますけれども、一般道路や橋で輸送いたします場合には、砲塔部と車体部に分割いたしまして、大型トレーラー等により道路輸送すること、あるいはフェリー等によります海上輸送をすることが考えられております。実際の作戦に当たりましては、路面の補強、これは鉄板等の敷設などの方法によるほか、路外機動とか渡河用の資機材の活用等によりまして十分活用できる、かように考えております。  なお、総括的な御質問がございましたけれども、私どもは、先ほど大臣の方から御答弁申し上げましたように、我が国が整備をいたしております防衛力といいますものは、国家といたしまして平時から保有すべき基盤的な防衛力ということでございますので、これは、現在グローバルな観点から、あるいは攻撃的なあるいはそれに対処するための軍事力をできるだけ低いレベルに削減していこうというふうにしておりますそれらの種類のものとは、それはただいま委員がおっしゃられました攻撃的兵器にあるいは相当するのかと思いますが、それらの装備とは基本的に性格を異にするものではないか、かように考えております。
  143. 小川国彦

    ○小川(国)委員 時間が参りましたので、戦車の問題また装備の問題でもう少し議論したいところもございますが、次の機会に譲りまして、質問を終わりたいと思います。
  144. 渡辺栄一

    渡辺委員長 春田重昭君。
  145. 春田重昭

    ○春田委員 限られた時間でございますので、防衛庁、簡潔に御答弁いただきたいと思います。  まず最初に、自衛隊の定数の問題について御質問したいと思います。  陸海空の自衛隊の定数に対しまして、現員数はここ五年間の推移を見ても横ばいでございますし、減少しております。一番新しい元年度の充足率を見ましても、陸上が八六・七%、海上が九五・四%、航空で九七・四%となっております。したがって、三自衛隊の中でも陸上自衛隊が充足率が極端に悪いとなっております。  そこで提案するわけでございますが、陸上自衛隊の定数は現在十八万人、これを十五万人体制に減少すべきではないか、このように思っておりますけれども、どうでしょうか。  その理由といたしましては、三点申し上げたいと思いますが、まず第一点は、世界の軍事態勢が軍備増強から軍縮へと変化してきております。二点として、自衛隊の募集を毎年やっておりますが、非常に厳しくなってきつつございます。ことしから年齢を十八歳から二十五歳の募集人員から二十七歳まで緩和されたようでございますが、若者の職業の意識の中に、ぜひとも自衛隊に行きたいという考え方は残念ながら今はないわけでございまして、そういった面ではやはり今後非常に厳しくなってくるのではないか。三点目としまして、将来の若者の人口減が確実になっております。  こういった理由でございまして、我が党の市川書記長もこういった提言をしておりますけれども、まずこの問題についてお答えをいただきたいと思います。
  146. 日吉章

    ○日吉政府委員 ただいま委員が御指摘になられましたように、陸海空自衛隊の現在の定員に対します現員の充足率というものが一〇〇%でないのは事実でございます。なお、その中にありまして、陸上自衛隊の充足率が低いというのも事実でございます。ただこれは、特に陸上自衛隊の場合におきましては、平時におきましては、訓練の観点あるいは日常の警備活動等の観点から考えまして、この程度の充足率でも十分訓練の練度等を上げ、かつ、警備活動等ができるというような観点から、こういう充足率で運用を進めているわけでございます。この点は、諸外国におきます地上軍の充足率というものをごらんいただきましても、地上軍の充足率というものは必ずしも高いものとはなっておりません。したがいまして、定員といたしまして、有事におきます場合に効率的に部隊展開ができます部隊編成及びそれを一〇〇%充足いたしますことを前提とした定数の概念と充足率の概念とはおのずから違うわけでございまして、現在充足率が低いから定員をそれに合わせればいいではないかというようなことではない。充足率の概念と定員の概念とはいささかその意味するところ、ディメンションが違う、かように考えております。  しかしながら、委員ただいま御指摘のように、社会環境全般から考えまして自衛隊員の募集環境というものが非常に厳しいことは事実でございます。今後を展望いたしましても決してそれは楽観できない状況にあると思います。そういうことを考えますと、私どもとしましては、中長期的な視点に立って防衛力全般にわたる効率化、合理化の一環としまして省力化施策を考えていく必要はあろう、かように考えておりまして、鋭意検討はいたしているところでございます。  重ねて申し上げますけれども、定員と充足率の概念はディメンションが違う面があるという点は御理解を賜りたいと思います。
  147. 春田重昭

    ○春田委員 私は、ただやみくもに定数、定員を減らせと言っているわけでもないのです。やはり定数を削減するとともに現員の隊員の充実を図っていく必要があるのではないか。待遇改善の面、地位向上の面で、今の自衛隊員に本当に自衛隊に入ってよかった、また本当に自衛隊に入ることに誇りを持っている、こういったいわゆる一騎当千の自衛隊員をやはりつくっていくことが大事ではないか、少数精鋭でもそういった隊員をつくっていくことが大事じゃないか、こういった思いもあるわけでございます。  長官からこの点御答弁いただきたいと思います。
  148. 石川要三

    石川国務大臣 現在の自衛隊の処遇というものは決してよくない、私もそのような認識に立っております。したがいまして、今後の次期防の中におきましては、後方部隊の拡充整備というものを重点的にやっていきたい、こういう考えに立っているわけであります。  それからもう一つは、今の若い人たちが自衛隊員になる気持ちが今先生からも言われましたが、そこいらは、処遇の改善も当然あると思いますが、それだけではない、いろいろと社会的な問題もあろう、私はかように思います。  実は、昨日の参議院の内閣委員会の中でもこの問題が述べられましたけれども、その際に申し上げましたが、例えば募集の実態を見ると、私は非常に嘆かわしい、寒々しいようなこともございます。そういったようなことを私どもは改善していかないと、ただ処遇がよくなったから、じゃ行こうという気にはならないのではないか、私はこんな心配もしているわけであります。
  149. 春田重昭

    ○春田委員 次に、防衛大学卒業者の任官拒否の問題についてお伺いしたいと思います。 まず、ここ数年の任官拒否者数をお示しいただきたいと思うのです。
  150. 米山市郎

    ○米山政府委員 防衛大学校の任官辞退者の数でございますが、五年間について申し上げますと、昭和六十一年三月卒業生につきましては、任官辞退者十五名でございます。それから六十二年三十三名、六十三年三十二名、平成元年五十一名、平成二年五十九名ということで、年々、特にこの二年間かなり数がふえてきているということにつきましては、私どもは大変残念に思っております。
  151. 春田重昭

    ○春田委員 ただいま御説明があったように、昭和六十一年が十五名であったのが平成二年は五十九名となっております。卒業者が四百二十四名でございますめで、平成元年は約一割強の方が拒否しております。  そこで、この防大生につきましては、手当やボーナス等が支払われておりますけれども、この一人当たりの養成費は大体どれくらいかかると計算されているのですか。
  152. 米山市郎

    ○米山政府委員 これは一年間でございますが、平成元年、大体四百六十八万四千円という計算をはじいております。したがいまして、四年間で一千八百万円ぐらいになろうかと思います。
  153. 春田重昭

    ○春田委員 仮に、平成二年で五十九名ですから、単純に一千八百万を掛けますと十億六千二百万という形になるのです。これだけの投資が結局むだになるわけです。防大生の職業選択の自由は保障されるべきであろうと私は思います。しかし、防大生はこの自衛隊の中でも将来の幹部候補生でございますし、そういった意味で考えれば、幹部候補生は一般の自衛隊の見本でなければならないと思うのです。そういった意味で、年々増加していっている、これを今のまま野放しでほっておいていいということはないと私は思うのです。そこで、防衛医大生につきましては、いろいろ国会でも論議されまして、その結果、一定年数までの任官拒否者については、かかった費用、養成費用の返還制度があるわけでございますけれども、この防大生に関しても同じような制度を適用してもいいのではないかと私は思っておりますが、この点はどうでしょうか。
  154. 米山市郎

    ○米山政府委員 防衛大学校の卒業生の任官辞退者の問題に関しましては、原因はどんなところにあるかという点を考えてみますと、最近景気が非常に好調だったというのも一つの要因だろうと思いますし、また、自衛隊について国民の評価に関する不安と申しますか、自衛官という職業としての地位の位置づけといったものに対する不安感のようなものもあるのではないかということを考えております。  防衛庁といたしましては、これらの原因を踏まえて、大学校におきまして学生に幹部自衛官になる自覚を持たせるなどの努力を引き続き行ってきております。また、自衛隊がより魅力のある職場になるように、先ほど大臣の方からも御答弁がございましたが、魅力化を進めることも重要なことではないかと思っております。  今御指摘の償還金制度、これは防衛医科大学校については採用いたしておりますが、防衛大学校については、特別な公的資格が付与されていないこと、また、償還金を払いさえすれば安易に退職できるといりたような風潮が出て会社からの引き抜きに乗りやすいということもあるいは考えられないだろうか、また、何といいましても優秀な学生を集めるためには門戸を広くあけておくことが必要なことではないかというようなことを考えますと、将来の検討課題となり得るものだというふうに私どもも考えておりますが、現段階ではそういった制度をとるというところまで至っていないわけでございます。
  155. 春田重昭

    ○春田委員 学校の中でそういった指導・訓練をしていくのは当然でございます。  私は、門戸は開放すべきであると思うのです。入口は狭くしてはいけません。しかし出口はある程度狭くしていく必要があるのではないか、ある程度の歯どめが必要ではないのか。そういった意味では、要するに資格という問題が今出ましたけれども、一般大学の場合は博士号、学士号がとれるわけですが、この防大生についてはそういった資格制度がございませんので、こういったものも与えていく、厳しい規制ばかりでなくして、そういった希望といいますか、やる気を与えることも大事なのではないかと思います。こういった点も、例えば博士号、学士号なんかは文部省が所管ですから、こういったところにも働きかける必要があるのではないかと思いますが、その辺はいかがですか。
  156. 米山市郎

    ○米山政府委員 今先生御指摘の博士号、あるいは学士号自体も与えてございません。そういった点の取得の問題につきましては、おっしゃるように文部省の所管でございます。私ども、文部省と連絡をとりながら、現在この実現に向けて文部省の方で検討をいただいておるところでございます。
  157. 春田重昭

    ○春田委員 要するに、防大生に対して希望を与えるとともに一定の歯どめも必要ではないかと思っておりますので、今後よく検討していただきたいと思っております。  同じような事例として、自衛隊のパイロットの民間企業への転出問題がございます。  まず、最近の依願退職者数と、協議されて退職される割愛といいますか、この割愛数について、ここ数年の数を述べていただきたいと思うのです。
  158. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 パイロットの退職者数でございますが、これは割愛者数も含めた合計でございますけれども、六十一年度から申し上げますと、六十一年度四十九名、六十二年度六十一名、六十三年度八十五名、元年度九十八名でございます。そのうち割愛によっておる者が、六十一年度六名、六十二年度十二名、六十三年度二十五名、元年度三十五名となっております。
  159. 春田重昭

    ○春田委員 一人前のパイロット、操縦資格を取得する人は一年間で大体何名くらい出てくるのですか。
  160. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 御質問の趣旨は、パイロットの養成する人数として一年間に大体どのくらい必要かということとお受け取りしまして、パイロットの養成課程に入る者の数で申し上げますと、おおむね年々二百四十名程度という規模でございます。
  161. 春田重昭

    ○春田委員 それは養成課程に入った人でしょう。取得した人、操縦資格を取得した人です。
  162. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 失礼をいたしました。  操縦資格を取得した者は、元年度ベースでいいますと百七十名でございます。おおむね各年ともそれほど大きな差はございませんが、六十三年度は若干多くて百九十名でございました。
  163. 春田重昭

    ○春田委員 そこで、一人前のパイロットになるまでの養成期間はどれくらいなのか。それから養成費用はどれくらいなのか。
  164. 米山市郎

    ○米山政府委員 養成は学校の方で担当いたしておりますので、私の方で御答弁させていただきますが、航空自衛隊の操縦者一人当たりの養成費につきまして、今御質問の点について御答弁申し上げます。  F1の操縦者養成の場合には四年と六・七五カ月、所要経費といたしまして、人件費、生活経費その他訓練にかかわるもろもろの経費合わせまして、約三億九千九百万という数字でございます。F15について同じようにとりますと、五年と一・五カ月、所要経費が五億五千九百万でございます。それからF4EJについて申し上げますと、四年と九・七五カ月、四億五千八百万でございます。
  165. 春田重昭

    ○春田委員 ただいま御説明があったように、一年間で大体一人前のパイロットになる人員が百七十名前後、一年間で退職する人が百名前後、ここ数年の数字を見る限り、養成された人員は年々減少していっていますよ。反対に退職者数は年々増加していっているわけですね。国から支出したといいますか、これは全部税金ですから、要するに四億ないし五億六千万という莫大な金が投じられております。こういった国から支出した資本投下を考えた場合に、大変な損失でございます。  そこで同じような事例として、一人前のパイロットではないけれども、なる前の航空学生がいますね。この途中退職者も今問題となっておりますが、最近の例で大体どれくらいあるのですか。     〔委員長退席、志賀(節)委員長代理着席〕
  166. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 課程の途中で退職した者の数でございますが、六十一年度に二十一名、六十二年度十八名、六十三年度二十五名、元年度に三十八名とふえております。
  167. 春田重昭

    ○春田委員 元年度の合計人員が三十八名でございますが、その中で航空学生だけをとってみれば十九名ですね。この航空大の航空学生につきましては毎年六十名が入ってくるわけでございまして、元年度は六十一名ですか、その中で十九名が元年度ではやめちゃっておるわけですね。実に三分の一が退職しているわけです。私は大変な問題じゃないかと思うのです。  先ほど、一人前のパイロットの費用が約四億から五億六千万という数字を出していただきましたけれども、航空学生の養成費用というのは平均どれくらいかかっているのですか。
  168. 米山市郎

    ○米山政府委員 先ほど申し上げました数字が航空学生を例にとってはじいた数字でございます。
  169. 春田重昭

    ○春田委員 となれば、これまた大変な国家にとって大きな損失であろう、こう思います。  ところで、きょうは運輸省の方においでいただいておりますけれども、防衛庁との間で毎年協議して、年齢三十五歳以上を大体条件として防衛庁を退職する方が何名か民間企業へ転出されているわけでございますが、ここ二、三年の数と、その方たちは一体どういうところに転出しているのか、これをお述べいただきたいと思うのです。
  170. 松本学

    松本説明員 御説明申し上げます。  運輸省としましては防衛庁から操縦士の割愛をいただいておりますけれども、運輸省が直接担当しておりますのはエアラインに対しての操縦士でございます。その他の航空事業者につきましては防衛庁の方で直接当該事業者と調整しておられます。  エアラインに割愛をしていただきました操縦士は、六十三年度十六名、平成年度十九名、二年度は現在のところ一名でございます。
  171. 春田重昭

    ○春田委員 協議された人員以外で一人前のパイロットないし航空学生を裏で引き抜いたといいますか、それに近いことをやった、そういう事実はあるかどうか、御存じですか。     〔志賀(節)委員長代理退席、委員長着席〕
  172. 松本学

    松本説明員 御説明申し上げます。  エアラインに対しましては、昭和六十三年度、元年度では現職自衛官を引き抜いたものはございません。そのように確信をしております。ただし、地上職として採用された人があるやに聞いておりますが、これも現職の自衛官から直接エアラインが地上職として採用したものではございませんで、そのほかの職業についていた人がどうしても航空関係の仕事をしたいということで、地上職として採用しているというふうに聞いております。  ただ、このことに関しましても、我々としては、防衛庁との話し合いで操縦要員として採用されているものではございませんので、これについて強制的に禁止をするような行政指導を行うことは非常に困難であります。しかし、そのような場合でも、今後ある場合は無用の誤解を招かないように、採用に当たって防衛庁側と事前に十分調整をするように指導しております。
  173. 春田重昭

    ○春田委員 そういった引き抜き等がないように、事前に防衛庁と話し合いをして割愛数を出していっているわけでしょう。今の話は何か、確信しておりますと言っているけれども、頼りない。  調査したことがありますか。定期航空、全日空や日航に対して調査したことがあるのか、聴取したことがあるのか、その点もう一回お尋ねします。
  174. 松本学

    松本説明員 御説明申し上げます。  定期エアラインに対しましては調べております。六十三年度平成年度につきましては、パイロット要員として採用し、訓練し、あるいは乗務させている例はございません。
  175. 春田重昭

    ○春田委員 防衛庁の方にお伺いしますけれども、先ほどのお話でも元年度で依頼退職された方が九十八名ですね。割愛者が三十五名なんですけれども、この割愛者以外の、九十八名から三十五名を引いた六十三名の方がおやめになっているわけですが、この六十三名の方たちはどういった事情で、また転出した場合どういった企業に転出されているのか、調査されたことはございますか。
  176. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 今御指摘の六十三名の者がどういう理由でどういうところに就職しているか ということでございますが、理由といたしましては、極めて一般的な家事部合とか一身上の理由というようなことが表面上の理由になっておりまして、詳しい内容については追跡調査をいたしておりません。それから、どういうところに就職しているかということにつきましては、直接的にやめてすぐパイロットとして就職しているかどうかということになりますとわかりますけれども、そうじゃない場合については、追跡調査をしてない関係で、必ずしも十分に把握していないというのが実情でございます。  そこで私どもといたしましても、御指摘のような趣旨もございますので、ここで一遍詳しく追跡調査をしてみたいというふうに考えているところでございます。
  177. 春田重昭

    ○春田委員 自衛隊にはOBの名簿、隊友名簿があるのですから、調べようと思ったらできると思うのですよね。そういった点で、こういうことがやはり大きな問題となってきていますので、ここで明確にひとつ御調査をこの時点でやるべきじゃないか。この点そちらの方にお願いしておきます。  時間がございませんので長官の方にお伺いしたいと思うのですが、今、いずれにいたしましても一人前のパイロット、またパイロットになる直前の航空学生の退職者が年々ふえていっている。一人前のパイロットになるためには相当な期間が必要だし、また四億ないし五億六千万の養成費がかかっている。防大生のそういったいわゆる中途退学も問題ですけれども、金額からすればはるかに大きいわけですね。そういった面で、民間企業にとってみればこういった方たちを引き抜くことは大変魅力といいますかプラスになるわけですね。自前で費用を出す必要はないし、自前でそういった養成機関が必要ないわけですからね。でき上がったパイロットを引き抜いていくわけですから。また一面では、聞くところによると、待遇面で給料は三倍くらいになるし、肉体的な面においても大変楽であるという点で、自衛隊員にとってみてもプラスの面があると思うのです。しかし、やはりこれだけの費用がかかっているわけですから、ある程度の歯どめが必要じゃないかと思うのです。それだけに割愛して人数も出しているわけです。それが、それ以外にも公然とささやかれているのは、そういった引き抜きや引き抜きに近いことが行われている。自衛隊の、防衛庁としての姿勢をそこでやはりきちっとすべきではないか。  きのうの新聞でも載っておりましたけれども、米軍のIDカードですか、偽造いたしまして大きな問題になったんだけれども、防衛庁側では本人を依頼退職させて済ませている。そして本人は民間の航空関係の企業に就職している。この辺もやはり防衛庁の甘えがあるんじゃないかと思うのですね。  確かに厳しくすれば入ってこないという面もあるかもしれませんけれども、こういった防大生や防衛医大生、またパイロット等については一定の歯どめが必要じゃないかと思うのですよ。そういった点でまず防衛庁がしっかりすることですよ。その点、長官の御所見をいただきたいと思うのです。
  178. 石川要三

    石川国務大臣 実は私も、今特訓を受けているのですけれども、なかなか全部にまだ行き渡りません。そういう中で、今の、特に自衛隊パイロットの引き抜きの件の質疑応答を聞いておりまして、初めて知ったことも多々あるわけでございます。割愛なんてどういう言葉かなと思って一生懸命見たら、なるほど割愛はこういう字かと思ってびっくりしたのです。なるほどそういうこともやっていたのかと、今ごろになってからですけれども、大変びっくりしたわけであります。  そこで、確かに内容を考えますとこれは重大な問題です。一人前のパイロットを養成するのに三億から五億くらいの金がかかる。これは税金でございますから、そういう者がぽんぽん民間航空会社の方に引き抜かれたら、火事場泥棒という言葉がありますが、これはまさにそれに匹敵するような状況ではないか。じゃあ一体これをどうしたら解決できるか、この問題であります。  私はいろいろな点を考えなければならぬと思うのです。職業の自由というものはあるわけですから、そういう中において、厳しい募集状況の中で募集した者に対して、厳しくすれば逃げるということもあり得る。となると、じゃ処遇でどの程度カバーできるかということも一つの大きな考慮すべき問題。それから、何といってもみずからの姿勢を正さなければならないことは重々そのとおりでありますけれども、私は民間航空会社をコントロールしているのは運輸省だと思うのです。運輸省さんの力を大いにかりて、そういうところには相当のペナルティーをぴしっと当てはめるようなことも必要じゃないか。そういう具体的なものが幾つか寄せ合わさってこの問題が少しでも前進できるのかな、こんな感じがいたしたわけでございますので、先生の御意見、私も全く同感でございますから、今後もひとつ大いに関心を持ち、また関係者によく指示もしてまいりたい、こんな気持ちでございます。  せっかくでございますから防衛大学の件につきまして、これも確かに私が心配しているのは年々非常に上がっていくということです。今回は今までの記録をつくったわけでありますが、この点についても大変な一つの問題ではあろうと思います。ただ問題は、今資格を与えられるかどうかということを文部省と研究しているようですから、その問題も一つあろうと思います。ただ、見方によればこちらの方は、太っ腹で考えれば、それだけ規律正しい訓練を受けた若者が民間企業の中に行って指導者として育てられると見れば、大きく考えればこれはまた損をして得をしているような面もあるのじゃないか、私はこんなように思います。そういう点でパイロットとは随分違うわけであります。  いずれにしましても、この二者の問題については、時代がますますそういう時代になりますので、これからも大きな関心を持って善処していきたい、このように思っております。
  179. 春田重昭

    ○春田委員 もう時間がございませんので、意見だけ述べておきますが、会計検査院としてもこういった引き抜きの実態等がないかどうか調査すべきじゃないかと思っておりますので、意見として述べておきます。  さらに運輸省の方にもお願いしておきます。日本航空とか全日空は自前の養成機関を持っているみたいですが、日本エアシステムとか南西航空とかエアーニッポン等は持っていないみたいでございますから、こういったところも自前で養成機関を持つべきである。引き抜いた場合には、今長官もおっしゃいましたけれども、ペナルティーも考える、私はこういったこともしていくべきじゃないかと思っておりますので、意見として述べておきます。  時間があと三分になりましたので、最後になりますが、くしくも今長官がおっしゃったように、厳しくすれば果たして優秀な若者が飛び込んでくるかどうか心配な面もあるということでございますので、私は、そういった待遇改善とか処遇改善、こういったものを考える必要があるのじゃないかと思います。  例えば処遇面でございますが、自衛隊とよく比較されます警察や消防隊、これは地方公務員になるわけでありますが、公務中の死亡の場合、自衛隊の場合は、賞じゅつ金といいますかこれが九百万、特に功労があった人で最高千七百万です。ところが、地方公務員の警察官や消防隊員はいろいろなものが付加されまして、最高額で四千五百万、そういった賞じゅつ金が支払われている。また、日当においても相当大きな差があるというのですね。同じような仕事といいますか同じような内容でありながら、こういった面でもこれだけの差があるということは、自衛隊の方としてもやる気がなくなる。端的な例としては、日航の墜落事故のときでも、警察官は来ている、自衛隊は来ている、ところが日当が格段の差がある、こういったこともあると思うのですよね。  そういった点で私は、自衛隊の隊員の向上を図っていくといいますか、そのためにもやはりこういった処遇改善が必要じゃないか、こう思っておりますので、この点どうお考えになっているのかお尋ねして、終わりたいと思っております。
  180. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 賞じゅつ金の問題と災害派遣に伴う日当の問題の二点について、警察官との比較においての御議論をいただきました。  まず賞じゅつ金でございますけれども、御指摘のように結果として差が出ておりますが、実を申しますと、国家公務員たる自衛官に対して行われます賞じゅつ金の支払いと警察官に対する制度とは、国家の制度としては全く同じでございまして、そこに差はございません。ただ、地方公務員たる警察官につきましては、そのほかに地方公共団体で独自に設けている賞じゅつ金的な制度、いろいろな名前になっておりますけれども、それの方から同額程度が出されるので、結果としてトータルでは警察官の受取額が大きくなるということでございます。したがいまして、国家公務員のみを対象としている私ども責任者といたしましては、そこのところはいわばいかんともしがたい面がございまして、国家公務員として支出している部分について、他の公務員とのバランスの中で数年に一度ぐらいずつ単価の改定なども行われておりますので、できれば今後ともそういったことで充実を図ってまいりたいと思います。  それから日当の点でございますけれども、これは支給されます日当額自体はそれほど大きな差はございませんが、警察官との給与体系の差によるところがございまして、例えば糧食費、食料費は自衛官の場合には俸給の中に入ってございまして現物支給がされるということでございまして、それに対して警察官の方はそれを旅費として支給されるということでございますので、現金ベースといいましょうか、当該災害派遣に伴って直接支給される金額は自衛官に比べて警察官が多いわけでございますけれども、実質的な意味ではそれほどの差はない。超勤手当も同様でございまして、そういうことから考えますと、実質的な意味ではそれほどの差はない、こういうふうに考えるところでございます。
  181. 石川要三

    石川国務大臣 今の局長からの答弁で尽きるわけでありますけれども、ただ、再三この問題は出たわけでありますが、余りにも違い過ぎるということについては、これは何とかしなければいけないのじゃないかと思うのですね。国家公務員であろうが地方公務員であろうが、国のために大変危険な仕事で、しかもそのために命を落としたというようなことがあったとき、ただそこの組織が地方だとか国だとかいうだけで倍も違うなんということは、理解しろといったってできないことではないかと思うのです。しかし、そこいらは大変難しい問題だと思います。  いずれにしましても、少なからざるを憂えず等しからざるを憂うというのがありますけれども、まさにそのことじゃないかと思いますので、検討してみたいと考えております。
  182. 春田重昭

    ○春田委員 終わります。
  183. 渡辺栄一

  184. 玉城栄一

    玉城委員 最近、防衛庁首脳の方が在沖米海兵隊の削減の可能性について公式の場で言及をしていらっしゃいますが、長官の御所見をお伺いいたします。
  185. 石川要三

    石川国務大臣 先生御承知のとおり、十年間にわたって三段階、当面の三年間において約五千人なり六千人なりの削減計画が発表されたわけでありますが、それに対して先般西廣次官がいろいろと言及されまして、新聞に報道されたと思います。その件についても、沖縄の海兵隊の人数というものがおおむね半分と聞いておりますが、そういうようなことから見て、沖縄の海兵隊員に対する削減というものが全く考えられないということも難しいのじゃないか、こういうような表現をしたと思いますが、考えられ得る可能性がある、こういうふうに私も認識しているわけでございます。
  186. 玉城栄一

    玉城委員 そこで沖縄のアメリカ海兵隊、これは過日の委員会でも、外務大臣のお答えで前方展開戦略の一環であるということをおっしゃっているわけですね。長官のお考えはどうですか。
  187. 石川要三

    石川国務大臣 もちろん米軍の前方展開の海兵隊、こういうふうに理解しております。
  188. 玉城栄一

    玉城委員 長官もチェイニー国防長官にお会いになっていらっしゃるわけですね。その前の長官でしょうかね。いずれにしましても、おっしゃいましたように、三年以内に五千ないし六千人の在沖も含む在日米軍の削減ということを発表しているわけです。それについて従来防衛庁、政府側のお答えは、これは後方部門の削減だから我が国の安全保障上別に支障はない、防衛政策にも影響はないというようなお答えをしてこられたわけですが、そのとおりですか。
  189. 石川要三

    石川国務大臣 前々から防衛庁の方からの見解を披瀝しておりますが、私もそのとおりだと思います。
  190. 玉城栄一

    玉城委員 そうしますと、在沖米海兵隊の削減の可能性があるとおっしゃいましたが、これは米国の前方展開戦略であるわけですから、これの削減ということになりますと、我が国の防衛政策あるいは東アジア全体の安全保障上全く影響がない、支障がない、このように考えていいわけですね。
  191. 石川要三

    石川国務大臣 全体が五千ないし六千という数字がはじかれているわけでありますから、その中で沖縄の海兵隊の数からいいますと、ちょうど半分、二分の一ぐらいに当たる数字になるわけでありますから、非常に大きいわけですね。ですから、そういう大きい数字の中で全くこれが対象外ということはあり得ないだろう、対象になり得るだろうということを私も肯定しているわけでございます。したがって、それは全体の中の量的な問題があろうかと私は思いますが、直ちにアメリカ軍の前方展開の軍事力の削減が大きな影響力を与えるものでない、こういうふうに思うわけであります。
  192. 玉城栄一

    玉城委員 大きな影響力ということになるとなんですが、影響はある。削減されますといわゆる穴があくわけですね。前方展開戦略の削減も含まれるということになりますと、その分だけ穴があきますね。ですからこれは肩がわりでもされるつもりですか。それとも、いなくなるのは我々としては非常に歓迎することなんですが、防衛庁としては、前方展開戦略が削減されていくことについての穴部分について肩がわりか何か考えていらっしゃるのですか。
  193. 石川要三

    石川国務大臣 これは午前中からの質問にもあったと思いますが、先生も御承知かと思いますけれども、米軍の削減に対して穴埋めをするということは憲法上から私どもには不可能である、このように私は思っているわけでございます。ただし、全体の日米の安保体制のさらなる効果的な運用のためには、いろいろと私どものできる自主的な立場で協力をすることは可能でありますが、軍事的な面の穴があいたからすぐにそこを埋めるというふうな方程式は全く成り立たない、かように思います。
  194. 玉城栄一

    玉城委員 そこで、削減されますと、沖縄の場合、基地がその分だけ返還されるわけですけれども、何か防衛庁のお話では、これも記者会見か何か知りませんが、三年ですか、今進めていらっしゃる日米間の詰めの返還のことと別枠で、大きな基地も返ってくるんだということも話しておられるのです。そのとおりだとすれば歓迎するわけですが、その点いかがですか。
  195. 松本宗和

    松本(宗)政府委員 お答えいたします。  沖縄の地元の新聞であったかと思いますが、そのような記事が載ったことは私も承知しております。これは記者会見というぐあいに書いてございますけれども、そういう事実はございませんし、本人もそういうことは発言したことはないということを申しておりますので、まずそのことを申し上げます。  いずれにいたしましても、米軍の削減計画そのものは太平洋軍司令部の方で扱っておるということで、具体的には我々は知る立場にはございません。特に沖縄にございます施設区域につきまして、それに関連してどうなるかということについては申し上げられる立場にはございません。
  196. 玉城栄一

    玉城委員 米軍基地が返還される場合の一般的な手続といいますか、これを一通り御説明していただきたいのです。
  197. 松本宗和

    松本(宗)政府委員 通常、基地が返還されます場合には、米軍の方から当然返還の意思表示があるわけでございますけれども、これは施設特別委員会におきまして提案がありまして、同意され、日米合同委員会において承認された後、閣議決定を得まして、所要の手続を経て、民有地の場合には所有者の方にお引き渡しするという形をとります。
  198. 玉城栄一

    玉城委員 その閣議決定後、政府間協定か何かもやるわけですか。——まあそれはいいです。  今の安保協で合意された部分について一日も早く返還をするという交渉中だと思いますが、月に二回ですか日米合同委員会が開かれるというふうに伺っておりますが、今回は二十一日ですね。合同委員会が開かれて、今私が申し上げました返還について合意をする、これが一点ですね。返還合意して、これを発表する、その仕方、内容についても合意をするというふうに承っておりますが、いかがでしょうか。
  199. 松本宗和

    松本(宗)政府委員 私、先ほど申し上げましたのは、個々の施設が具体的に返還されてくる場合の手続について申し上げたわけでございます。今先生が御指摘になりましたのは、現在私どもが外務省と一緒になりまして米軍と交渉して進めております沖縄にございます基地の整理統合、特に安保協事案と申しておりますが、これにつきましては、現在鋭意、それの残された事案についての整理統合につきまして作業を進めておりまして、この作業をやっておりますのは、合同委員会の下部機関でございます施設調整部会というものがございます。ここで具体的な作業をやっておるわけですが、ここである程度煮詰まった段階で合同委員会に上げまして報告いたしまして、合同委員会が何らかの形で、中間報告にしろ公表しようということで作業を進めておるということでございまして、先ほど申し上げましたいわゆる返還手続とは別のものでございます。
  200. 玉城栄一

    玉城委員 ですから、二十一日の日米合同委員会で今下部機関でやっているものを手続としてする、そのときに公表の仕方についても、その日米合同委員会で双方合意をしてやるということですね。
  201. 松本宗和

    松本(宗)政府委員 当然日米間で合意をした上で、どういう形で公表するかということを決めてやるということになると思います。
  202. 玉城栄一

    玉城委員 先ほどもおっしゃいましたが、一般的な個々の基地の返還については合同委員会で決めて閣議にも持っていくし、いろいろな手続があるわけですが、今回はそれではなくて、ちょっと変わったケースといいますか、異例といいますか、特殊なケースでの公表の仕方ということになりますか。
  203. 松本宗和

    松本(宗)政府委員 先ほどからも申し上げておりますように、個々の施設について具体的に返還を決定するという行為ではございませんで、安保協議委員会の場で決定されております整理統合の計画で残された分につきまして今後どうしていくかということについての方向づけでございますね、これについて現在作業しておるわけでございますが、それについての公表をするということでございまして、具体的にその中のどれを、いつ返還するということを決定するという行為ではないということでございます。
  204. 玉城栄一

    玉城委員 一日も早く公表するという話ですね、今のことは。そうしますと、今度の場合は、閣議にかけたりそういうことはしないままに、これ、これ、これについてどういう方向でなにするということを公表する、こういうことですね。
  205. 松本宗和

    松本(宗)政府委員 たびたび申し上げておりますように、日米協議委員会でもって合意されました内容についてまだ整理されないで残されておるものが非常にたくさんあるということで、これの整理統合を一刻も早くやらなければならないということで作業を進めておるわけでございますが、その実態を一日も早く公表するようにという声がございます。そういう声を受けまして現在の作業内容を中間的に公表するというものでございまして、これは閣議にかけて公表するというような性質のものではないかと存じます。
  206. 玉城栄一

    玉城委員 さらにちょっと確認しておきますが、二十一日の、さっきの日米合同委員会でこれは決まるわけですから、日にちを置いて公表するのですか。
  207. 松本宗和

    松本(宗)政府委員 二十一日であるかどうかということについてはこれはまだ最終的に詰まっておりませんので、私ども正確に申し上げるわけにはまいりませんが、いずれにいたしましても、日米間で合意が調いまして、合同委員会の場で合意ができますれば公表するということになろうかと存じます。
  208. 玉城栄一

    玉城委員 六月二十三日、海部総理も沖縄に慰霊の日には参列にいらっしゃるということもありまして、やはりタイミング的に二十一日あたりということではないかと私たちは考えているわけであります。  そこで、これは数字的なことになりますが、今平成二年六月の時点で、沖縄県が本土復帰、返還されたのは昭和四十七年五月十五日ですから、その五月十五日の時点で沖縄において米軍基地がどれくらいの面積であり、現時点ではどれくらい返されたか、そして今交渉しているものはどれくらいか。大体の面積でよろしいですから、その率、割合も入れてちょっと御説明いただきたいのです。
  209. 大原重信

    ○大原政府委員 お答え申し上げます。  まず面積の推移でございますが、沖縄の本土復帰時、昭和四十七年五月十五日におきます地位協定第二条第一項(a)、いわゆる専用の米軍基地に基づく提供施設区域の面積は約二百七十八平方キロでございます。ところで、平成二年一月一日現在の同種提供施設区域の面積は約二百四十二平方キロメートルでございます。返還面積は約三十六平方キロメートル、返還割合にいたしまして約一三%ということになります。  それから、お尋ねの第二点でございますが、整理統合の対象面積といたしまして日米安全保障協議委員会において了承されました施設区域のうちに、いまだ実施されていないものが、基地全体の面積に占める割合として計算いたしますと一三%でございます。これは安保協の事案でございます。しかしながら、先生既に御案内のとおりと存じますが、知事が六十年及び六十三年にアメリカに行かれまして御要望されましたいわゆる知事要望事案、こういったものも検討の中心に据えてございますので、そういったものをあわせました数字というのは、ただいまのところ検討中でございますので答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  210. 玉城栄一

    玉城委員 今の数字からしますと、四十七年から現在まで返還されたのは一三%、あと八七%はそのまま残っているわけです。とにかく沖縄の場合は余りにも米軍基地が大き過ぎるのですよね。  それで返還されたのは一三%、この米軍基地が返還されますね。地主に返ったもの、あるいは自衛隊さんが引き続いて使用しているもの、あるいは地主に返ってもそうでしょうけれども、遊休化といいますか使えないままそのままにしているもの、こういう返還された後のケース、大体どういうふうなケースになっているかということをちょっと御説明いただけますか。
  211. 大原重信

    ○大原政府委員 お答え申し上げます。  沖縄に所在いたします施設区域返還に当たりましては、当庁といたしましては、関係機関及び土地所有者の方々と十分に協議の上、円滑に処理させていただいているところでございまして、返還に当たりましての、トラブルといいますと言葉は適当じゃないかとは存じますが、いろいろな問題ということは特に起こっておらないわけでございます。  それで、お尋ねの返還されました跡地の問題、これは非常に大きな問題でございますが、賃借人 としての当庁の立場としてその行方を正確にしかと把握してございません。
  212. 玉城栄一

    玉城委員 例えば自衛隊が使っているとかそういうのもわからないのですか。あるいは返したけれどもまたアメリカさんに貸したとか、いろいろなケースがあると思うのですが、全然把握していないというわけですか。
  213. 松本宗和

    松本(宗)政府委員 今までに返りました施設につきまして、一部自衛隊が使っているものもあるいはそのまま遊休地という形で存在するものもあろうかと存じますが、ちょっと今手元にそのデータを持っておりませんので、正確なことを申し上げられないことを御了解いただきたいと思います。
  214. 玉城栄一

    玉城委員 長官、基地が返還される、非常に歓迎すべきことなんですが、この前も委員会で長官にも申し上げましたけれども、いろいろな沖縄の議員の方も質問されておりますけれども、これは政府がちゃんと条約に基づいて借りて提供しているわけです。そして米軍が基地機能はもういいですと返された。これからが問題なんです、地主とか関係者にとっては経済的な問題が切れることになりますから。だから、この跡地がきちっと利用されて果実を生むまでの間をどうするかというのは非常に大きな問題なんです。  何か私は新聞で読みますと、高度な政治的な判断が必要だということを長官がおっしゃったように新聞にありましたけれども、まさにそれで、返還された基地の跡地の問題を含めて、防衛施設庁はもう終わりで知らないというのじゃ困りますので、防衛施設庁あるいは沖縄開発庁あるいは沖縄県あるいは地主、そういう方の協議機関か何かを持ちまして、今後どうするのかというアフターケアをきちっとしないと大問題になるわけです。長官のお考えはどうなんでしょうか。
  215. 石川要三

    石川国務大臣 きのうも参議院の内閣委員会でこの問題がいろいろと議論されたわけでありますが、これはいわゆる制度といいますか、規則の上では、返還されて返されれば、原状復帰の期間までのことは当然でありますけれども、返されれば、後は契約の上では賃貸借の契約もなくなるわけですからこれでおしまいということになるわけでありますが、そういう中で、今先生も、後の問題がある、非常に大きな問題があると指摘をされたわけであります。  この問題は、今の施設庁の立場ではこれ以上は論じられないと私は思います。でありますから、それをさらにどうするかということにつきましては、私は、政治的ないろいろな立場で、高度の政治的な判断を必要とするのではなかろうか、こういうふうに思います。そのために、今の提言でございますが、政府やあるいは地主さんやそういう関係者との一つの協議機関を設置したらどうかということでございますが、私は今ここで質問を受けただけでありますから、その是非論については今直ちに判断はできかねます。できかねますけれども、いずれにしましても、そういうことがもしどうしても今後、沖縄の県民のいろいろな今までの過去の、戦後の問題、特に安全保障上のいろいろな苦悩、そういった問題の解決のためにどうしてもやるということであるならば、私はそういう機関を設置することが必要かどうかはわかりませんけれども、少なくとも高度の政治的な判断を要しますので、ただ単に施設庁の問題だけではなくして、外務省もあるいはまた沖縄開発庁も、ときには総理もぐらいの方々が知恵を出し合い協議して、何らかの対策を立てることもあるいは必要になるのではなかろうかな、こういうふうに私はお答えをしたわけでございます。
  216. 玉城栄一

    玉城委員 ぜひこれはやっていただかなくちゃいけません。例えば、長官も御存じのように、那覇空港に降りまして、そこから自動車で左手の方に大きな港があります。那覇軍港です。これは米軍に提供されたままですね。これもほとんど使われてないのですが、もし仮にあの軍港の部分が軍に提供されなくて、最初から民間に使用されている状態であったら、どれだけ沖縄の経済に貢献したかわからないわけですよ。軍が占有しているために非常なマイナスになるわけです。ですからもし仮に軍港が返還された場合に、返還された、はい、じゃこれから民が使いなさいと言っても、今までのロスが大きいわけですから、これは那覇市にしても、県にしましてもそう言える。ですから、今長官がおっしゃいましたように、返還後のこの利用計画というのは、沖縄の場合は第三次沖縄振興開発計画というものを再来年つくろうと今一生懸命なんですが、それに大きく関連してきますので、そこに今までなにしていた防衛施設庁が一枚かんで、沖縄開発庁もかんでいただいて、そして沖縄県は当然として、そのほか地主の何かで協議機関を持って、どういうふうに今後するか、そういうことを協議する場をぜひ設定をしていただきたいわけですね。ぜひひとつよろしくお願いします。  以上です。
  217. 渡辺栄一

    渡辺委員長 寺前巖君。
  218. 寺前巖

    ○寺前委員 お世話になります。  きょうは、新しく防衛庁長官におなりになっていることでもございますので、よく言われるようにシビリアンコントロール、本当にそういう役割を十分に果たしていただいておるかどうかという意味において、三軍のそれぞれの最近起こっている事態に対してそれぞれ処理していることを一体長官としてどういうふうに認識されるか、対応されるのかむしろ長官の姿勢を私はお聞きしたいと思うのです。お聞きするに当たって、陸自、海自、空自、それぞれの最近の事象について幾つか事務的に先に聞きますので、総合的に、個別に長官の見解をお聞きしたいというのが私のきょうの願いであります。  そこでまず、最近、新聞紙上で感じました一つに、陸上自衛隊のトラックが五月二十二日の十時四十五分ごろ、浜松市内の国道一号線、ここは随分トラックや自動車が走っている国道ですが、第三五普通科連隊重道中隊所属の七三式中型トラックの荷台より出火をして、荷台乗車中の隊員六名がやけどをする、後日二名がお亡くなりになる、隊に入っておられる皆さんには非常にお気の毒な事件が起こるし、またちょうど斜め前にガソリンスタンドもあったりして、その周辺の人についてもびっくりするなど、東富士演習場へ二百キロもあるところを走って演習に行った過程で起こった事故であるわけです。  さて、私は、この事件が発生して新聞を読んでみますと、中部方面隊第一〇師団第三五普通輸送隊長の話が気になるのですね。何が原因なのかまだ見当がつかない。走っている過程、ともかく火薬を持って演習に行って、長距離を非常に混雑しているところを走っているのに、何が原因か見当がつかないというようなことで、これでよかったんだろうか。詳細は警察の捜査にということで、それは捜査権はちゃんと警察が持ってやるにしても、これはここの特殊な例なんだろうかあるいは全国的にこれが重大な問題だというふうになぜすぐに認識をしないのだろうか。私は、そういうことになると物騒でしょうがないわけですね。  それで、私は所管の人に、正直なところここの特殊な、そのトラックだけの特殊な事故だったんだろうか。それともここの火薬の、装薬の取扱上、従来から問題があったんだ、それに気がつかなかったのか。それとも全国的に装薬の取り扱いについて問題があるのか。それは内部の規則自身にもあり方を検討しなければならない問題があったというふうに見られるのか。私は、これはここだけの問題で済ますわけにはいかないと思うのです。  これについてどういうふうに見ておられるのか、全国的にどういう対処をされたのか、お聞きしたいと思うのです。
  219. 米山市郎

    ○米山政府委員 先生お尋ねの、平成二年五月二十二日のトラックからの出火事故でございます。  概要については、先ほど一応先生の方からお話ございましたとおりでございます。この事故の原因につきましては、現在警察において捜査中でございます。防衛庁といたしましても、警察の捜査に協力をいたしますとともに、事故の原因の徹底的な究明を行っているという段階でございます。  自衛隊といたしましては、とりあえずの措置といたしまして、五月末、最近の事故にかんがみまして、全部隊に対して事故防止の各種施策を引き続き講ずるとともに、関係法規等の徹底、基礎的事項の確実な実施等を図り、事故の再発防止に努めるよう通知をしたところでございますが、いずれにいたしましても事故原因が明らかになった段階で、さらに具体的な再発防止対策を確立し、国民に不安を与えないよう再発防止に万全を期してまいりたいと思っております。
  220. 寺前巖

    ○寺前委員 ところが警察が言っている内容を見ると、こういうことを言っていますね。「装薬は陸上自衛隊の「小火器射撃管理教範」によって、本来は訓練現場の射場で焼却処分することになっている。しかし、この処分し残した装薬を、いったん中隊にトラックで持ち帰り、中隊の中で砲弾から装薬をはがす訓練のために利用。」「訓練のために利用」しているということを言っていますね。「次の演習の際、再び演習場に持って行き再利用したり、処分したりしていたという。 使い残した装薬のこうした運搬は、少なくとも数年前から行われ、隊員たちは装薬が危険である意識もないほどだったという。この教範に反した運搬は普通、鉄製の」云々というふうに書いてあるわけなんですよ。  そうすると、部隊管理というのは毎日のことですよ。毎日のことが、細部の問題点はわからぬにしたって、こんな装薬を持って演習をやっているのが警察の調べによってわかってくる。みずからの調べによって何でわからないんだろうか。物騒な話じゃないか。これはみずから問題だといってすぐにメスを入れて、全国的にそこのところに着目した指導をするということをやらないで、そこらじゅう走られたらたまったものじゃない。全然それはわからなかったのか、警察に調べてもらう以外は。どうだったんですか。
  221. 米山市郎

    ○米山政府委員 今、先生お読みになりましたような報道を私も承知をいたしております。  原因につきましては、先ほど申し上げましたように警察の捜査と並行いたしまして、自衛隊といたしましても責任を持ってこの原因を徹底的に究明をするという立場で、現在調査をいたしております。全国的なものであるか、あるいはこの部隊だけに限るものであるのか、その辺、徹底的に調査をするということで今やっております。したがいまして、警察の捜査もまだ完了しない段階で、一々の報道についてのコメントは差し控えさしていただきたいと思いますが、御心配いただくような点、私どもも同じような気持ちで陸上自衛隊に対して厳しい調査を今指示をしたところでございます。
  222. 寺前巖

    ○寺前委員 それで、その師団の部長さんがこう言っている。「一般論として、装薬がトラックに積み込まれることはあり得ない。」あり得ないことが数年前からずっと続いておるとすれば、そんなこともわからぬままにやっておったというのはえらいことですよ。「今回の事故は例外的に積み込まれたものだろう」、全然違う態度です。それと、実態すら知らぬようなことが公然と行われておる。このような事態に対して長官どうお思いになりますか。このままで調査調査で済む話でしょうか。認識が全然違うじゃありませんか。師団の一部、ちゃんと新聞に名前も出てます。特殊な例だろう、そんなことはなかっただろう。なかっただろうって言って、片っ方では、警察で調べられたら、数年前からこんなものは当たり前で、危険の意識もなくなったとまで言われておるのですよ。全然そういう自覚がないということになったら恐るべきことで、これは幹部がそういうことを言っているような事態で、野放しで今の指揮系統そのままでよろしいというわけにはいかぬだろう。私は不安ですよ。長官いかがでしょう。
  223. 石川要三

    石川国務大臣 この事件が起こったのは、私の記憶が間違いなければ多分五月二十二日ですね。既に一カ月になんなんとするわけでありますが、中間報告が私にございました。そのときにも、私も今の委員の感じ方と同じ感じで強い忠告をしておいたわけであります。  いずれにしましても、中間だということでありますからやがて最終報告が私のところに来ると思うわけでありますが、私は、中間の段階ですから細かいことの内容についての是非はさておきまして、ただ、そのとき忠告をしておいたのは、要するに人間というものは誤りがあるものだ、完璧ではないんだから誤りがあることも私は決して認めないわけではない、しかし、その誤りがあった場合には潔くその非を認める勇気を持ちなさい、何が原因でどうなったとか、そしてその結果がどうだとか、どうすればどうなるかとか、そういうことを特に幹部としてはよく分析をして対処をする必要があるんじゃなかろうか、いたずらに警察に事件をゆだねて捜査云々ということについてはなかなか理解に苦しむよ、こういうような趣旨の強い忠告はしておいたわけであります。  問題は、人間は非があった場合にどう非を認めていくか、そういうことが特に管理者としては必要なことではないかな、こんな感じがいたします。
  224. 寺前巖

    ○寺前委員 時間の都合がありますから、次の問題を提起してみたいと思います。  T4ジェット機のエンジントラブルの問題について聞きたいと思います。これは昨年の二月九日、七月の五日、十月の二十一日、浜松基地に配置されているT4ジェット機のエンジントラブルが起こっているわけです。マスコミの諸君たちがこれに気づいてずっと調査を始めたところから、十一月十四日に初めて記者会見がなされてそういう事実があったということがわかってきた。ところが、そのマスコミの記者会見の十一月十四日の前に、十一月の十二日に浜松基地航空祭というのがあって、T4ジェット機四機のチームによる展示飛行が行われておる。  さて、私は、この浜松のT4ジェット機の航空祭といえば、思い起こすのはブルーインパルスのT2機の高等曲技飛行というのですか、それで亡くなられるという事故が浜松で起こった、これは八年ほど前じゃないかと思います。ああいう事故が起こったところ、エンジントラブルが四回も起こっているT4ジェット機をよく黙って基地航空祭に引っ張り出したな、これが私には解せないのです。  そして、これは量産体制のエンジンのトラブルであったわけですけれども、その後の十一月三十日になると、これは試作機を大丈夫かなといってわざわざメーカーのところへ戻して、そこで調査・点検をして、使ってみたらそのT4機自身がまたエンジントラブルを起こすという事件が起こっているわけです。そこで、その後に十二月になって一斉に総点検、全部飛行停止をやって、そして問題をえぐって一定の措置をして、一月になってからT4ジェット機を動かすというような経過が去年一年間に起こっているわけです。  私は、この一連の経過から考えて、このトラブルがずっと続いてこういうふうに起こってきている、量産体制に入った段階からこのT4機がこういうことが起こってくるという段階で、一回のトラブルでも重視しなければならないものが二回、三回と続き、よくぞ人さんの前に航空祭だといって出してきたな、私はこれもまた不安ですよ。こんなあり方でいいのか。しかも、国産としての初めての練習機というんですか、ジェット練習機を国産でやってきている以上は、余計慎重に考えなければならない性格のものだった。これは私は、第一線の担当している技術者とか関係者は、国産だということで一生懸命だと思うのですよ。それだけに幹部の皆さんが、やはり社会的に見てこれを今飛ばしていいのかどうかという判断をしなかったら、第一線の諸君たちだけを気楽に使って、おい、もっと見ばえようやれよ、そんなことをやっておつたら、私は大変だと思う。幹部の皆さんというのは、私はもっと総合的に、慎重に取り扱ってもらう必要があるのじゃないだろうか、そう思うのですが、このT4機を航空祭に引っ張り出したことに対して、後の話か知りませんけれども、あれだけトラブルが起こっていながらああいうことをやった甘さというのを私は感ずるんですが、いかがですか。
  225. 鈴木輝雄

    ○鈴木(輝)政府委員 防衛庁といたしましては、T4のエンジンにつきまして、御指摘のように昨年十月、三回目のふぐあいが発生いたしました後、その原因がタービンのブレード自身の過大な振動によるということが判明いたしましたので、そのエンジンの安全性の確認を目的といたします徹底した点検等を行いました。  若干技術上の専門的な事項になって恐縮でございますが、一般に金属と申しますのは疲労強度というものがございまして、一定の回数、一千万回とか一億回とか繰り返し同じ加重をかけましても壊れません。それ以上何回かけましても壊れない、そういう性質がございます。そのような観点から、航空機のエンジンが一定の時間使い込みましたものは、その疲労強度の限度内で繰り返されるということから安全であろうという考えから、一定の運転実績を有するエンジンを選びまして、さらに入念に、そのエンジンにつきまして内視鏡によりまして微細なクラック等があるかどうか厳重にチェックいたしましたり、エンジン内の潤滑油につきまして金属の微細な破片等が発見できるかどうか分光分析等をやりましたり、さらに外観上からも入念な異常の有無の確認をいたしましたり、そのような入念な点検をいたしました。  さらに、そのようなエンジンにつきまして地上運転を繰り返しまして、その試験において異常がないというようなことを確認いたしまして、極めて厳密、厳重なチェックによりまして技術的に評価いたしまして、十分に安全であるというものを確認いたしまして、T4機に搭載いたしまして飛行の再開を行ったものでございます。  いずれにいたしましても、防衛庁といたしましては、その後振動が発生いたしましても、その振動をあるレベル以下に抑え込みます振動低減機構というようなものを採用いたしまして、このようなふぐあいの再発防止が十分になされていると判断しているところでございます。  先生もおっしゃられましたとおり、その後、ことしの一月九日から、約四十機でございますが飛んでおりまして、事故も出ておりませんし、十分に対策はとり得たと考えております。今後とも、T4機及びそのエンジンの安全の運用につきまして万全を期してやっていきたいと考えております。
  226. 寺前巖

    ○寺前委員 私の質問の答弁にはなっていないということを長官はお聞きになったと思います。三回目のトラブルが十月二十一日なんです。ショーが行われたのは十一月十二日なんです。自衛隊の中でエンジントラブルが起こっているなということを気づいて、マスコミの皆さんが走り回って会見を求めたのが十四日なんです。その後なんです。そして、その月の十一月三十日に試作機のエンジントラブルがまた起こっているわけです。わざわざ会社まで持っていって調査・点検しているものがまたトラブル。そうすると、エンジンの中の振動が非常に問題だった、振動が問題になっていながら、それに対する対応措置もしないままに結局ここまで、十二月まで来てしまうのです。トラブルが次々に起こっていながらよくそれを人さんの前にショーだと言って見せたな、私が問題にしているのはそこなんです。だから、一つのことであってももっと慎重に対応すべきだ。そういうときに、ショーで見せたいのはやまやまだろう、特に第一線の諸君たちはそうだろうと私は思うけれども、上の方で、こういうことに対する対応については慎重でなければならない。結果論かもしれませんけれども、これからもあることだから、慎重さを欠いていたのではないかということを私はあえて指摘したい。  また、ことしの予算の中にT4の予算もちゃんと入っています。それだけに、初めて国産で取り組んだものだから、よりよいものに、ちょっとしたことでもよりよい方向に発展させる技術者みんなの気持ちはあるのだろうと私は思うのです。また、第一線でこれをこなしておられる諸君たちの苦労もあるだろうと思うのです。それだけに、指揮官に甘い判断をさせてはならないということを感ずるのですが、長官いかがですか。
  227. 石川要三

    石川国務大臣 正直のところ、私は、先ほどのトラックの件は中間報告も受けましたし、私自身もそれなりに検討を加えたわけでありますが、今のT4型のエンジンの故障につきましては、今初めて聞きましたので、何ともコメントいたしかねます。  ただただ言えることは、たとえ飛行機であれ自動車であれ何であれ、再三起こったものについては重々慎重を期さなければいけないし、また、いたずらにただ単に気負った気持ちで、ショーがそういうものかどうかよく知りませんが、もしもそういうことでやったとしたら、これはゆゆしき問題であるし、とにかく一回事故を起こすことは自衛隊全体に対する物すごい不信が起こるわけでありますから、信頼がなければ防衛は成り立たないということを再三繰り返して申し上げているとおりでありますから、一つの小さな事故でも万全を期して、一〇〇%事故がないように最善の努力をしなければならない、このような見解だけは持っております。
  228. 寺前巖

    ○寺前委員 最後に、海自の問題について、これは私の選挙区の話でございますので、海自の具体例でお聞きしたいと思います。  二つあるのです。一つは、日本海側の舞鶴のすぐ近所に栗田湾というところがあります。ここに六月一日、六日、きのう十二日、自衛隊の舞鶴地方隊というのでしょうか、あそこから艦船がやってきた。輸送艦がやってきて、そして、昼間ですが、一日は一隻、昨日のごときは二隻ですが、沖へとまる。そして今度は揚陸訓練をする。こちらの方にカッターで先に上がってきて、ここに着けろというきれを張る、そうしたら猛スピードで海岸に上がってくる、そして船のハッチがあく、そこからばっと出てくる、こういう訓練をやられたわけです。  問題は、聞きたいのは、こういう訓練をやる場合に、漁協の諸君は聞いておったようですが、ここは漁港区域管理者は宮津市長ですけれども、自衛隊からは何の連絡もありませんと担当の総務課長は言っておる。それから、ここは海岸保全地域なんですが、海岸保全地域だったら京都府の所管ですから、ここのところで水産課長に聞いたら、全然何の連絡もありませんがということです。  海上自衛隊はこういう訓練をするときに、そういう港湾の責任者とか保全地域の責任者に許可を得ることなく勝手にどこでも演習をやっておるのかいな、これは一体どういうことだったろうかと、私には解せない話なんで、ひとつ聞きたい。  もう一つは、同じ舞鶴で、あそこの海上自衛隊舞鶴地方総監部総監あてに、京都大学農学部附属水産実験所の所長さんの名前で、雁又地区に対潜ヘリコプターの基地をつくることについて困るという文書をお出しになっておるようです。  この実験所は大小約九十個の水槽などを備え、種苗生産や若狭湾の底生魚類の生態などの研究に取り組み、ヒラメ、マダイなどの稚魚を中心に飼育している、その東約五百メートルのところにつくろうというのだ。ヘリコプターの離発着やエンジンの調整に伴う騒音、振動で、ふ化したばかりの稚魚が驚き、遊泳やえさを食べる行動、成長過程に変化を与えることが十分考えられる。日本海にただ一つのこのような大学の研究施設であるだけに、何とかならないのだろうか。  さて、私はここで聞きたいのです。こういう国の大学の研究所が前から存在しておる。今までは隣の海上自衛隊の基地との間は非常にいい関係で、研究施設としての研究がやるれておった。そこへ突如としてこういう五百メートルという範囲内に持ち込まれたときに、これでは困るではないかということを当該の研究施設の方から問題提起しておる。これに対して聞く耳なしで進めていかれるのか、そんなものは知ったことではないと。あなたのところの土地の中につくるのではない、おれは勝手なところに別につくるのだということでいかれるのか。それとも、それは十分に検討させてもらいましょうということになるのか。そこはどっちなんです。  この二点について聞きたいと思います。
  229. 米山市郎

    ○米山政府委員 私の方からは、まず第一点の栗田湾での離着岸訓練の問題について御答弁申し上げたいと思います。  これは、舞鶴地方隊の輸送艦「のと」が、岸壁のない場合での離着岸の技量の維持向上を図るために行ったものでございます。戦闘のための訓練と申しますよりは、災害派遣等で、岸壁のない場所等へ物資を陸揚げすること等に備えての訓練ということでございます。  そこで、法的な問題でございますが、許可を得ないでできるのかということでございます。海岸法の規定によりますと、第七条で「海岸管理者以外の者が海岸保全区域内において、海岸保全施設以外の施設又は工作物を設けて当該海岸保全区域を占用しようとするときは、」海岸管理者の許可を得なければならない。そして第十条では、国または地方公共団体が占用する場合には、占用の許可でなしに協議で足りるという規定がございます。  この舞鶴の場合におきましては、まず第七条では、水面及びいわゆる民有地につきましてはまた適用の除外の規定もございます、したがいまして、この当該海岸が民有地であると私どもは聞いているわけでございますが、仮に民有地でない場合でありましても、海岸法第十条に基づく協議を要する海岸の占用という事態に当たらないものだということで、管理者である地方公共団体に協議を行う必要はないというふうに考えております。  なお、先生の御質問の中にもございましたように、本訓練を実施するに当たりましては、海岸所有者、漁業組合及び海上保安庁と事前に調整を行い、了解を得ているわけでございます。  御参考までに、私どもこうした訓練、一切許可を得ないでやっているわけではございませんで、例えば、北海道の浜大樹等で約一週間にわたりまして工作物等を設けて訓練を行うような場合には、地元、地方公共団体への協議を経た上で行っているところでございます。
  230. 村田直昭

    ○村田政府委員 第二点目についてお答えいたします。  平成二年六月八日付で、先生御指摘のとおりの要望書をいただいておることは承知しております。防衛庁としましては、舞鶴地区には逐次ヘリコプター搭載護衛艦を配備しており、既に二隻を配備しているところでございますが、その整備支援施設としての飛行場を建設することとしておりまして、平成年度には適地調査を実施し、その結果、御指摘の雁又地区が有力な候補地であるということで選定したわけでございます。その際、雁又地区における環境への影響については調査いたしまして、周囲は工業地で民家が少なく、かつ、海側に突出しているという地形上の問題、それから離発着時における飛行経路が海上面に設定できるという利点、それから飛行経路を陸地から離れた湾内中央部分に設定することができ、それによる騒音等の影響が少ないというような点を判断して、これを有力候補地としたわけでございます。  今後とも、地元、舞鶴市等々の理解を得て所要の手続を進めてまいりたいと考えておりますが、また、せっかくの申し入れもあったことでもありますので、水産実験所長の方からも十分その間の事情を伺ってまいりたいと考えております。
  231. 寺前巖

    ○寺前委員 今海自の問題について聞いたのですが、私は納得できないのです。やはりそこらの小さいカッターがやってくるというのと違って、大きな船が海岸へばっと上がってくるんでしょう、ちょっと離れたところから見ると、本当に砂浜のそこのところまでがっと来ると、何事だろうと思いますよ。それが一日は一隻でしたけれども、きのうの場合は二隻だというんでしょう。そんなものを、そこの関係しているところの自治体は知らぬわというようなことで済むのかいな。ちょっと協力してくれよとか何か言って当たり前だろう。私は常識的に考えてそう思うんだけれども、これが常時行われておったというんだったら、一定期間占用するんだから、私はこれはちょっと困った話だなというふうに思いますけれどもね。  私は極めて常識的に聞いておるんですけれども、大臣の御見解を聞いて終わります。
  232. 石川要三

    石川国務大臣 海自の訓練というのは必要でありますから、私はこれはもう絶対やらなければいけないことだと思うのですけれども、法的なことはちゃんと手続を踏んでいる、ただ問題は、やり方が、常識的なことでもう少しよくPRをすべきことがあったのかなということについては、一つの問題点が残っているのじゃなかろうかと思いますけれども、いずれにしましても、できるだけ理解を求めながら訓練はしっかりやるというのが必要ではないか、こんなふうに私は思います。  それから後段の、これはヘリコプターの騒音ではなかろうかと思いますが、これにつきましては、何といっても今私はトラック以外のことを初めて聞いたんですから、いいとも悪いとも言えないことでございますが、これもやはり十二分に理解を求めながらやるべきことではなかろうかと思います。  ただ、先生が前段で、大上段にシビリアンコントロールなんて言っているものですから、何が出てくるかなと思ってびくびくしたんですけれども、やはりこういうことはシビリアンコントロールというよりも、むしろ現場のつかさ、つかさのしっかりした管理、監督、指導というものにまつべきもの、かように私は思うわけでございます。
  233. 寺前巖

    ○寺前委員 どうもありがとうございました。
  234. 渡辺栄一

    渡辺委員長 次回は、明十四日木曜日午前九時五十分理事会、午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時十六分散会