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1990-09-07 第118回国会 衆議院 外務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年九月七日(金曜日)     午前十一時三十一分開議  出席委員    委員長 柿澤 弘治君    理事 浜田卓二郎君 理事 浜野  剛君    理事 牧野 隆守君 理事 高沢 寅男君    理事 山田 英介君       石原慎太郎君    小渕 恵三君       鯨岡 兵輔君    栗原 祐幸君       小杉  隆君    古賀  誠君       坂井 隆憲君    塩谷  立君       中村正三郎君    福田 康夫君       山口 敏夫君    五十嵐広三君       伊東 秀子君    岡田 利春君       松原 脩雄君    遠藤 乙彦君       神崎 武法君    三浦  久君       伊藤 英成君  出席国務大臣         外 務 大 臣 中山 太郎君  委員外出席者         内閣法制局第一         部長      大森 政輔君         防衛庁長官官房         長       日吉  章君         防衛庁防衛局運         用課長     宝槻 吉昭君         外務大臣官房審         議官      高島 有終君         外務省北米局長 松浦晃一郎君         外務省欧亜局長 兵藤 長雄君         外務省中近東ア         フリカ局長   渡辺  允君         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合         局長      赤尾 信敏君         外務委員会調査         室長      市岡 克博君     ───────────── 委員の異動 九月七日  辞任         補欠選任   伊東 正義君     古賀  誠君   福島 譲二君     中村正三郎君   岡田 利春君     伊東 秀子君   古堅 実吉君     三浦  久君   和田 一仁君     伊藤 英成君 同日  辞任         補欠選任   古賀  誠君     伊東 正義君   中村正三郎君     福島 譲二君   伊東 秀子君     岡田 利春君   三浦  久君     古堅 実吉君   伊藤 英成君     和田 一仁君     ───────────── 六月二十六日  一、国際情勢に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件  湾岸地域の平和と安全に関する件      ────◇─────
  2. 柿澤弘治

    柿澤委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。浜田卓二郎君。
  3. 浜田卓二郎

    浜田(卓)委員 中山外務大臣初め、きょう外務省主要スタッフも来ておられますが、外交当局が最近の情勢対応して大変な御苦労をしておられますことに心から敬意を表したいと思います。  また、イラククウェート紛争に対する対応のみならず、きょうまでソ連のシェワルナゼ外相もお見えになっているわけでありまして、まさに今、日本を含めた世界情勢そして日本外交関係は歴史的な転換点に差しかかっているというふうに私は認識をしております。そういうときに外務大臣の重責を担って活躍をされるということは御苦労ではありますけれども、これはまさに政治家として冥利に尽きるのではないか、そのようにも感じて拝見をしているわけでありますが、どうか今後とも御奮闘をまずお祈りをしたいと思います。実はそう申しながら、きょうの質問、若干辛口の面も入りますけれども、そこはお互い我が国の将来を考えてのことということでお許しをいただき、お答えを賜りたいと思います。  私は、イラククウェート紛争の問題に絞りまして四点ほど質問をさせていただきたいと思います。  まず私は、今回のことが我が国にとってどのような意味を持つかということ、そういう基本認識をしっかり踏まえて対応していくことが必要だというふうに思っております。一言で言うならば、いわゆる東西冷戦終結後の新たな世界秩序国連中心にしてどのように構築されるべきであるか、それが今問われていることの本質の一つだと私は思っております。そして、このイラク紛争処理を通じて国連中心の新たな秩序というものが構築をされていく、その中における日本国家としての位置づけもまた改めてなされていく、そういうことであると思いますので、よほどの決意を持って、と同時によほどの将来への展望を持ってこの件には対応していくことが必要だというふうに私は考えております。  そこで、この紛争勃発以来の我が国政府対応ぶりについて若干私は注文を申し上げたいわけでありますが、対応措置が、貢献措置と称しておりますけれども、一応策定をされました。しかし、私はこの措置策定までに余りに時間がかかり過ぎたということを一つ指摘せざるを得ません。さらに、その後の決定した内容の実行に当たっても十分まだ内容が詰め切れていない、そういう生煮えの感を持たざるを得ないわけであります。  なぜこういうことになったのか。私はやはり今度のことに対する事の重要性に関する我が国全体の受けとめ方の不足があったというふうに思わざるを得ないわけであります。今の状況は、日本人イラク政府によって拉致され、拘束され、そして攻撃への盾として使われている。さらにクウェートの大使館もイラク軍の包囲のもとで閉鎖のやむなきに追い込まれている。これはまさに我が国が、日本人生命財産、自由を守らなければならない責務また守るべき固有の権利が大きく侵害されている、そういう事態だと私は受けとめているわけであります。まさに国難でありまして、これに対応するのに、私はもっと迅速にかつ態勢を整えてやるべきであったというふうに思います。  まず私は、緊急対策本部というものがなぜ設置されなかったか。各省の、ばらばらとは言いませんけれども調整作業に基本的にはゆだねて、その結果が今日まで対応をおくらせ、かつ内容生煮えのものにしている、そういうことではないかと思うわけであります。私は、過ぎ去ったことばかりを言うわけではありませんで、これからも事態がどのように展開していくか予断を許さないわけであります。即時に新しい変化に対して対応していくためにも、私は今からでも遅くないから官邸中心にして緊急対策本部が設置されるべきである、そして縦割りの官庁間の調整作業という形ではなくて、まさに政治的なリーダーシップのもとにいち早い決断とそれに対する迅速な対応を可能とする体制、これをつくるべきであるというふうに私は考えておりますが、外務大臣の御所見、そして政治家としての御所見もあわせて承りたいと思います。
  4. 中山太郎

    中山国務大臣 このイラクの、クウェート武力による侵攻が起こったという事態につきまして、まず基本的に日本考え方、こういうものを申し上げておかなければならないと思います。  この武力による他国侵略するということは、平和国家を理念とする日本国としては許しがたい問題でございまして、この点につきましては国連制裁決議国連加盟国として多国間で協力をしていくということが原点にあると思います。今委員からの御指摘のように、日本対応が少し手ぬるかったのではないかという御指摘がございましたが、私はある意味で今日までの日本の国の安全、また在外邦人の問題も含めて、我々の国は極めて、戦後安全と平和が確保されてきたためにこのような新しい国際環境の中での平和国家としての対応をするべき準備がされていなかったと率直に申し上げなければならないと思います。  例えば自衛隊法がどういうふうな解釈になるのか、憲法日本はどこまでこの多国間の協力ができるかという問題も、現実問題として議論が行われてまいりました。また、自衛隊法のもとで、あるいは憲法の枠の中で軍事的な協力ができないという事態、それについてどのように我々の国家対応して国際社会で信頼を保持しなければならないか、こういう中でいろいろな法律論も踏まえて議論が行われましたが、さしあたり海部総理中心に、このような事態対応するためにいわゆる大蔵、外務、通産、運輸、厚生、文部、関係各省が集まって、この問題の対策に夜を日に徹してこれをやってきたというのが実態でございます。  そういう中で、官邸では官房長官中心にこの関係各省との調整をやりながら、外務省も今回の事態対応のために全面的な努力をしてまいったということでございますが、実際問題として対策本部を、看板を上げるかどうかということを議論したこともございますが、現実問題としてこの問題をいかに早く対処するかということで、一応対策本部というものは名称上存置をしておりませんけれども、内容は全く同じような内容対応しているということをこの機会に申し上げさせておいていただきたいと思います。
  5. 浜田卓二郎

    浜田(卓)委員 お話はわかりますけれども、しかし、では今対応措置として決定された事柄がどのような形で遂行されつつあるか。例えば、医師の派遣、これは私、後にまた意見を申し上げますけれども、百名ということがうたってあります。これはよく聞きますと、外務省民間のお医者さんにお願いをする、文部省は大学の附属病院お願いをする、そして厚生省は国立病院お願いをする、それぞれの分担でありますけれども、例えばそういうことは、この一つ対策本部から一つ指示系統で、そして計画的に迅速にいかなければあの対応措置ですら絵そらごとに終わりかねない、私はそういう心配もしているわけであります。形はともかくとして、その実施について、さらにまた今後考えられる変化に対する対応について、私は今までのような形ではなく、まさに政治的なリーダーシップのもとで行われるべきであるということを再度お願いをしておきたいと思います。  次に、冒頭申し上げましたけれども、今回のことは東西冷戦対決、そういう時代から、新しい国際秩序が構築される、まさにその出発点に立っていると私は思っております。  実は、我が国憲法の前文には、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」ということを高らかにうたっているわけであります。これは、我が国平和憲法が、国際連合中心とする安全保障体制を基本的に支持している、その精神の発露であるというふうに私は理解をいたしております。  さらに、昭和三十二年五月に、国防会議及び閣議で国防基本方針というものが決定されておりますが、その第一項で、「国際連合活動を支持し、国際間の協調をはかり、世界平和の実現を期する。」と国連中心主義が明示してあるわけであります。こういうことから考えますと、私は、我が国平和憲法体制というものは非常によく物を考えてつくってあるという気がするわけであります。つまり、我が国防衛については専守防衛、これは自衛隊中心にしてやっていこう、そして他国がかかわる国際紛争についてはこれは国連中心にやっていこう、国連中心主義であります。そして、我が国安保条約も、この国連機能が十分強化された暁には自動消滅をする、そういう仕組みになっているわけであります。  ですから、私は、この我が誇るべき平和憲法をよく生かし、今後も継続していくためには、まさにこの仕組み、想定されているフレームが全体として有効に機能していくことが必要であると考えております。特に、東西対決時代が終わり、ソビエトまで参加して安保理事会決議が行われる、そういう状況に今立ち至りつつある、確かに我々が想定して追求してきた国連中心主義というものが今まさに動き出そうとしている、そういうときに当たると私は考えているわけであります。ですから、我が国はまさに憲法のもとにあってこの国連機能をさらに強化し、そして強化した国連機能参加をしていく、そういうことが今後必要だと思うわけであります。  そこで、時間がありませんから、国連活動我が国法体系、これとの関連について、二、三伺いたいと思います。  第一点は、昨日の憲法調査会法制局から既に見解の表明があったというふうに報道されている点でありますが、今ペルシャ湾岸で起きている事態を分析いたしますと、まず国連憲章五十一条の集団自衛権枠組みの中で各国軍があそこに集結をした、その後国連憲章四十一条で経済封鎖というものが決議をされ、さらに追加の決議が行われてこの経済封鎖を実効あらしめるためにあそこに集結している各国軍がいわば国連によって認知をされたわけであります。そして、必要最小限武力行使を認められている。つまりこの一連の動きを総合して言うならば、まさに今イラク紛争対応して行われているのは国連中心紛争処理であるということであります。  そうであるならば、我が国憲法精神に照らしても、この国連中心主義で行われている紛争処理、それに対する平和的手段による後方からの支援というのは当然私は認められてしかるべきであるというふうに思っております。であるならば、この前の措置で決定されたお医者さんの派遣、それをさらに民間輸送手段に頼る、そういう措置は私はいかにも不十分であると思うわけであります。つまり今なぜ自衛隊医務官、さらには看護士、これを派遣することができないのか。それは憲法上の問題ではなく私は自衛隊法上の問題である、そのように考えますけれども、その点についての大臣の御認識をまず承りたいと思います。
  6. 中山太郎

    中山国務大臣 法律あるいは憲法に関連する問題でございまして、一応条約局長からまず御答弁をさせていただきたい。
  7. 柳井俊二

    柳井説明員 法的な問題もございますので、まず私の方から答弁させていただきます。  御承知のとおり多国籍軍活動への協力につきましては、これは国連を通じた国際の平和と安全の維持にかなうものでございまして、このような観点を踏まえまして我が国は具体的な貢献策を推進しているわけでございます。  御指摘輸送協力等憲法との関係につきましては、外務省として有権的に憲法解釈を行い得る立場にはございませんけれども、国際法上の問題とも密接に関連する問題という観点から申し上げますれば、輸送等行為は一般には実力行使に当たらない行為でございますので、極めて例外的な場合を除けば国家による実力行使にかかわる概念であるところの集団的自衛権行使に当たるというようなことはないと考えております。これらの協力具体的対応につきましては、なお肉づけを要する段階にございますが、我が国貢献策実施憲法の枠内で行われるよう確保することは当然の前提でございます。  いずれにいたしましても、貢献策の一環としての輸送協力等につきましては、これらの協力が特に急務とされていること及びその他の諸般の事情にかんがみまして、輸送協力につきましては政府民間航空機、船舶を借り上げまして、食糧、水、医薬品等の物資を対象輸送協力を行うことといたしまして、また医療協力につきましては、百名をめどに医療団を緊急に派遣し得る体制を整備するということにいたしております。
  8. 浜田卓二郎

    浜田(卓)委員 外務大臣、お聞きのように憲法解釈上は問題がない、つづめて言えばそういうことであろうと思います。つまり自衛隊法の不備である。ではなぜ自衛隊法の改正ということを政治家としてお考えにならなかったのか、そしてまた、政府対応としてまさにそういうことが妥当だと思わなかったのか。今ちまたには、なぜ国家公務員である医務官が行かないのか、なぜあのつらいところに民間のお医者さんに頼んで行ってもらうのか、それは責任逃れではないか、民間でやれることがなぜ国家公務員でやれないのか、そういう素朴な議論があるのですよ。その点について、短くお答えをいただきたいと思います。
  9. 中山太郎

    中山国務大臣 国民皆様方あるいは国会議員方々の中に、今委員指摘のような問題が指摘されていることは私もよく承知をいたしております。そのような問題は、やはりこの自衛隊法考え方、またそれが不備な場合にどのようなことにするかということは挙げて政府も現在考えておりますけれども、国会におきましても、各党におきましても御議論をちょうだいし、国民理解のもとにそのようなことが判断される必要が私は民主主義社会では必要であるという認識を持っております。
  10. 浜田卓二郎

    浜田(卓)委員 では、それに関連してもう一点憲法解釈を伺いたいと思いますが、今国連憲章四十一条の枠内での対応が行われているわけであります。(「五十一条だ」と呼ぶ者あり)いや、四十一条です。しかし、これが仮に国連憲章四十二条つまり国連軍の結成がなされた場合にはいかなる対応が可能なのか。過去の政府見解では、昭和三十六年衆議院予算委員会で当時の林内閣法制局長官がこのような答弁をしております。「将来理想的な国際連合ができて国家間のいろいろな紛争国内警察活動と同じような形で国連解決をつけていくというような形になった場合において、それに参加することを今の憲法が全く認めておらないかといえば、私は必ずしもそうは言えないと思います。この点は多少問題があると思いますけれども、その場合の国際警察軍ないし国際警察隊の組織、任務内容いかんによっては考える余地がある。」というふうに答弁をしておられます。  私は、かねてよりこの委員会において国連活動に実質的に参加していくために、さらにはまた安保理事会理事国としても活動していくために、その前提条件としてでも、私は、国連平和維持軍には自衛隊派遣してもいいのではないか、そのような提案をしてまいりました。今の質問は、さらに一歩踏み出すわけでありますけれども、この林法制局長官昭和三十六年当時の答弁の想定している事態が今やまさに近づきつつある、我々が国連中心主義をとって平和憲法のもとで世界紛争国連を通じてと言っている以上、その実質的内容は何かということを私は今詰めるべきであると思います。  実は、私はこういう質問方々で発してまいりました。しかし、まだ法制局との調整がつかないとかそういうお答えがあるわけです。しかし、私は今の事態解決のつかないもの、それが一体いつ解決がつくのだ、あえてそう申し上げたいわけであります。こういう紛争がしょっちゅうあっては困ります。しかし、これほど典型的に我が国主権の問題にかかわることが起きた、それはもう今後ずっとあるいはないかもしれない、このときに我が国平和憲法をどう生かしてどう行動したか、あるいはまたそれについてどういう考え方を固めたか、それは日本の今後の五十年の歩みあるいはもっと長い歩みに決定的な影響を与える、そのように私は考えているわけであります。その点について、ひとつ外務大臣お答えをいただきたいと思います。
  11. 柳井俊二

    柳井説明員 国連憲章の問題もございますので、簡単に私の方から……。  憲法につきましては、これはむしろ法制局の問題になると思いますが、従来よりいわゆる海外派兵集団的自衛権行使憲法上認められないという政府の一貫した立場がございます。他方、国連憲章の問題といたしましては、ただいま御指摘ございましたが、国連憲章第七章が本来想定しているいわゆる集団的安全保障は、侵略があった場合に国連自体判断のもとにおいて他の加盟諸国が力を合わせまして侵略を鎮圧し、除去するという制度でございます。これに対しまして憲章五十一条の集団的自衛権あるいは個別的自衛権は、侵略を受けた国またはその同盟国等当該国判断実力行使するという制度でございます。したがいまして、この集団的安全保障自衛権制度というのは異なる枠組み制度である、これは憲章上そのように言えると思います。  このような観点を踏まえまして、将来理想的な国連ができまして国家間のいろいろな紛争国内警察活動と同じような形で国連解決していくという場合において、それに自衛隊参加することを憲法が認めておらないとは必ずしも言えないという趣旨の答弁が、先ほど御紹介ございましたようにかつて政府からあったわけでございます。
  12. 浜田卓二郎

    浜田(卓)委員 外務大臣お答えをいただくわけでありますが、今の局長答弁は、憲章五十一条による集団自衛権の問題と四十二条で結成された国連軍への参加の問題は別に考え得るということであります。そして、まさに我が国がこれから国連中心主義でやっていこうという核心は、将来あるいはまた今回さらにこの紛争がエスカレートしていく時点の中で四十二条の決議が行われないとは限らない、私はそういうところまで今回考えていく必要があると思っております。ですから、その問題について大臣もう一度お答えお願いいたします。
  13. 中山太郎

    中山国務大臣 委員指摘のとおり、この米ソスーパーパワー対決協力体制に入ってきた中で、国際社会は多極化を起こし、地域紛争が将来起こり得ないという判断は持ち得ない、私は外務大臣としてそのように思っております。このような国際環境変化の中で我々は、今局長お答え申し上げましたように、この国連集団安全保障制度が現実に機能し得る日が早く訪れるということを心から期待しているものであります。また、そのために私どもも真剣に考えなければならないというふうに思っております。
  14. 浜田卓二郎

    浜田(卓)委員 そこはきちんと、解釈論は少なくとも固めていただきたい。つまり、我々が国連強化国連中心主義ということを言っても、それを絵そらごとに終わらせないように、まさに平和憲法が想定した枠組みを生かすためにもそこが一番のポイントであるということを私はあえて念を押しておきたいと思います。  最後に、時間がありませんから、邦人の救出問題についてお伺いをしたいと思います。  今何が起きているか。まさに日本人生命財産、自由が他国政府によって侵されているわけです。つまり、これは日本の、我が国主権の範囲に属する問題であります。それに対して我が国は本当に無力であるのか、救出はできないのか、そこは国家として考えていく必要があると私は思っております。  かつて、昭和四十八年の衆議院決算委員会において吉国一郎内閣法制局長官がこう答弁しております。他国領域内にある、その国では外国人である日本人生命身体財産保護は、当該領域に施政を行っている国の当然の責務として行われるべきことであろうと思う。したがって、我が国としてはまず外交交渉によってその保護を図るべきであって、これに対して自衛権発動要件がないわけであるから、武力行使等手段によって保護を図るということは憲法上許されないと答弁しております。これについて私、二点だけまとめて質問させていただきます。  まず第一点は、我が国としてはまず外交交渉によってその保護を図るべきである。しかし、今回は他国政府が直接日本人身体、自由、財産を侵害している、そういうケースであります。今外交交渉によって折衝が行われているという側面もあるでしょう。しかし同時に、既に戦争は始まっているという認識も必要であります。この吉国長官答弁はこういう場合を想定した答弁ではないと私は思っております。ですから、今回のように相手国が直接我が国民の身体、自由、財産を侵害しているときに、本当に無力であるのか、それに何らかの対応をとることは憲法違反なのであるか、そこのところが重大な問題だと私は思っております。この点について所見を伺いたいと思います。  それからもう一点ですが、この見解では、自衛権発動要件がないということを言っております。しかし、自衛権というのは、国が外国からの急迫不正の侵害に対して国を防衛するために他に手段がない場合において必要最小限度実力行使する権利であり、その場合には外国領土にある敵基地も我々の対象になり得る、それがまさに自衛権だと私は思うわけであります。今回、まさに日本主権が、外国にいる日本人の場合でありますけれども侵害されている。これがもし日本のごく近いところで起きたらどうなるのか。砂漠の果ての問題だから関係がない、そうではないと思うわけであります。事の本質は全く一緒であります。ですから、私はあえてこの点についても見解をお伺いしたいと思います。
  15. 柳井俊二

    柳井説明員 ただいま国際法憲法の大変難しい点の御質問がございました。憲法そのものの解釈につきましては、私、詳細に申し上げる立場にございませんけれども、国際法上の議論に限って一般論として申し上げますと、次のように言えると思います。  自国領域内にいる外国人保護することは所在地国の国際法上の義務でございます。しかし、その所在地国が外国人に対する侵害を排除する意思または能力を持たない、あるいは極端な場合には所在地国自身が外国人に侵害を加える、またさらに当該外国人生命身体に対する重大かつ急迫な侵害があって他に救済の手段がない場合、こういう場合におきましては、国際法議論に限って申し上げますれば、当該外国人保護救出するためにその本国が必要最小限度武力行使するということが自衛権行使として認められることもあるというふうに考えております。ただ、その場合にも、自国民に対する侵害は、これは所在地国に行って武力行使あるいは実力行使をするわけでございますから、その所在地国の領土主権の侵害をも正当化し得るほどの真に重大な場合に限られ、また自国民保護救出の目的に沿った必要最小限度武力行使でなければならないというのが一般の考え方でございます。
  16. 浜田卓二郎

    浜田(卓)委員 時間が参りましたから区切りをつけますが、今局長がおっしゃった、それほど重大なことであれば考え得る、しかし、今以上に重大なことがしょっちゅう起きますか。今まさに百四十一名の日本人、そして多くの外国人が盾にされているのですよ。何かの間違いでお互いに引き金を引いたら、真っ先に彼らが犠牲になるわけです。そして我が国クウェートの大使館はとうとう、軍の包囲のもとで閉鎖させられているわけであります。これ以上の重大な事態はない、そう考えて対応しなければ今回の対応は誤ると私は思います。  私は憲法の改正を議論している気持ちは毛頭ありません。まさによくできた憲法だと思ってやってきております。そして我が国会は四十数年にわたって解釈論を積み重ねてきた。まさに我が平和憲法の正念場だと思うのです。我々の憲法でもこういう対応を毅然としてやっていける、そしてそれがまさに平和的手段によっての解決につながる、そういう確信を我々は持ちたいわけであります。ですから、ここから憲法に対する無力感が広がって、そしてこんな憲法では役に立たない、そういう形での改憲論は私どもはとるところではありません。そういうことにならないためにも今正念場であって、この憲法九条を、さらに平和憲法全体のあり方というものを試すときである、まさに試金石であるということを私はあえて申し上げたいわけであります。  そして最後に、外務大臣に決意を伺いますが、私は日本の利益は日本の利益として、他国の利益とは違った点もあるというふうに思っております。アラブの国々には長い間の民族間の問題もあるでしょう。あるいはまたイスラエルとアラブの長い間の対立もあるわけであります。それはそれとしてあります。しかしこの際、あらゆるものに片をつける、そういう話であってはまた私は困るというふうに思っております。まさに紛争は一日も早く終結させなければいけない。イラクもいろいろなサインを送ってきている。それをきちんと受けとめて妥協の道を探るということも私は必要だと思う。まさにそういう紛争によって最も大きな影響をこうむるのは、石油を一滴も生産していない我が国日本であります。その立場は基本的に他国とは違う。そういう点も踏まえて我が国独自の利益というものもきちんと踏まえていただいて、同時に一日も早い紛争終結のために外務大臣として、日本として独自の努力もしていただきたい、それをお願いをして、御決意を伺って私の質問を終わらせていただきます。
  17. 中山太郎

    中山国務大臣 委員指摘のように、現在人質として抑留されている日本の在留の方々、この方方御自身を含め、家族の方々も大変な御心配をされているということを政府としては大変心痛をいたしております。  この我々の国の平和憲法のもとで、また現在の法制度のもとで、どのようなことがこの人たちの解放に役立つことができるのかということを真剣に考えて作業をしてまいりました。あるいは国際赤十字に小和田外務議官派遣して、国際赤十字社としての人道的な見地からの邦人あるいは日本人だけでなしに人質になっている人たち全部の釈放を要請しておりますし、国連事務総長に対して私みずからが書簡を送って協力を要請をいたしております。  私は、そのような努力の中で今回体験しました貴重な経験というものは、現地におられる在留邦人というものは情報を遮断されているという現実でございました。彼らが一番頼りにしているのはその国の情報ではなしに公正な情報、その情報を日本からどのように発信するかということも今回貴重な体験をいたしまして、ラジオ日本を通じて行われておった三時間の放送を現在十一時間半に延ばしていただいて、我々からの正しい情報を邦人たちが受け取れるようにやっておりますけれども、これから我々が考えなければならないことは、このような国際社会の変動の中でサダム・フセイン大統領のような人道を無視したやり方を行う指導者が出てきた場合、平和国家としてどのように国際社会に貢献できるかということをぜひ国民各位が真剣に御議論いただいて、我々がこれから国際社会の中に生きる国家として、多くの企業あるいは国民が海外で活動されます、そのような事態対応するあらゆる法律制度を整備しなければならない、このように考えております。
  18. 浜田卓二郎

    浜田(卓)委員 ありがとうございました。
  19. 柿澤弘治

    柿澤委員長 牧野隆守君。
  20. 牧野隆守

    ○牧野委員 まず最初に、今回の中近東問題、またきょうで終了いたしました日ソ交渉と、我が国の平和と繁栄のために大きな懸案事項でございまして、外務大臣大変御活躍、また御苦労でございまして、今日までの御活躍に対しまして心から敬意を表させていただくと同時に、さらに大きな問題に対して対処していただきたいと心からお願いをいたす次第でございます。  今回の中東問題に関しまして国連でも決議がなされ、我が国でも当面の対応策を御決定になりました。これらにつきまして、早い、遅い、あるいはこの点はどうだと、いろいろな意見がございます。我が自由民主党内におきましても右から左、積極、消極、意見がいっぱいございまして、これが集約するという方向にはいまだ行っておりません。しかし、イラクにおきましては多数の日本人が人質になっている、あるいは最悪の場合どういう事態が起きるか、こういうことを考えますと、国民の皆さんは非常に心配しておられるわけでございまして、政府の一挙手一投足について大変な関心を持っておられるわけでございまして、こういう重大な時期であればあるほどますます海部総理大臣中心とします政府リーダーシップを心からお願いし、こういう方向でやる、こういう方向でひとつ検討しよう、こういうことをぜひ国民の皆さんに一刻も早く、またできるだけ詳しく訴えていただきまして国民の皆さんを安心させていただきたい、まずこれを心からお願いをさせていただく次第でございます。  今回の措置につきましては、私ども情報ありませんし、恐らく時々刻々変化する情報は外務省だけでございましたでしょうし、これからもそうだろうと思いますが、そういう意味におきまして熟慮をされた結果、今回の決定がなされたものと考えており、私どもはこの決定に対しまして全面の信頼を置き、またその実行について力いっぱいの御支持、御協力をしなければならないと考えておりまして、どうか確信を持っていろいろな御決定をしていただきたい、こうお願いをいたす次第でございます。  したがいまして、例えばこれはここで論議すべききょうの段階ではございますが、憲法との関係をどうするとか、あるいは自衛隊法を改正するのかしないのか、現行憲法下において政府がなし得る全面的な措置について意思を明らかにして国民に訴えていただき、また国内で野党の皆さんとも十二分に協議していただいて方向を決定していただきたい。私がこいねがっておりますのは、もう何はともあれ、国民の皆さんに実情を訴えて考え方をお知らせし、そして国民的なコンセンサスが早くでき上がるようにしていただきたい、これに尽きるわけでございます。  そこで、大臣にお伺いしたいのです。現在のイラク情勢ですが、私が得ております情報によりますと、十日前、一週間前またきょうと非常に変化をいたしておりまして、特にエジプトあるいはサウジアラビア等からの情報は緊迫の度を伝えている。それぞれの国がいろいろな行動をいたしておりますが、一言で言いますと非常に困っておるという状況でございまして、現段階で大臣としては、どのように推移するのか、何か情報をもとにしての御所見がございましたら、お知らせをいただきたいと思います。
  21. 中山太郎

    中山国務大臣 事態は大変緊迫をしていると私は認識をいたしております。このような緊迫をした状況の中で、近く行われます、九日に予定されている米ソの首脳会談、ここのいわゆる会談というものは極めて大きな意味を持っていると思います。  一方、イラク政府も最近外交を活発にしてきておりますが、今サウジアラビア、エジプト等において事態は大変緊迫しているということは、昨日テレビでも、両国の国民に対するサダム・フセイン大統領の呼びかけ、こういうものが大きく刺激しているという認識を私は持っております。
  22. 牧野隆守

    ○牧野委員 こういう情勢下におきまして、国際的な地位を有しております日本としての行動は何かと当然のことながら全世界が大きな関心を持っているところでございます。  例えばこの間、貢献策内容といたしまして大変多額の金額の使用を御決定になりました。しかし、果たしてそれで足りるのかどうなのかという意見も各国からはや出てきているような状況でございまして、あの金額の五倍でいいのか、あるいは十倍も要るのじゃないかとか実は大変な意見が出てきておりまして、非常に心配をいたしているわけです。  何はともあれ、昨今決められました貢献策実施状況並びに各国がこれをどのように評価しておられるか、これについて御所見お願いいたしたいと思います。
  23. 渡辺允

    ○渡辺説明員 今回の事態に対しまして、政府が八月の二十九日に決定をいたしました貢献策は、大きく申しまして二つの分野にわたっておるわけでございます。  一つが、湾岸において平和と安定の回復のための活動に従事している各国に対する協力ということでございまして、この中には輸送協力、物資協力医療協力あるいは資金協力というものが含まれております。先ほど先生の御指摘のございました金額と申しますのはこの分野でのことでございます。  我が国といたしましては、もう一つの分野といたしまして、これに加えまして周辺の諸国、今回の事態によって特に非常に厳しい経済的影響を受けている国々に対する経済的支援を考えておりまして、これを現在どういう規模で、どういう方法で実施するかというのを検討しているところでございます。また、この一環といたしましては、やはり周辺諸国におります難民援助の問題がございまして、既にヨルダンにおります難民に対して一千万ドルの拠出を決定いたしましたけれども、昨日、この地域におります特にアジア系の難民の救済のために、これに追加をいたしまして一千二百万ドルの拠出を決定したところでございます。  私どもといたしましては、とにかく決定をいたしました貢献策を、このすべての分野について一日も早く実施をするということを現在最大限の目標として努力をいたしております。
  24. 牧野隆守

    ○牧野委員 難民の救済対策につきまして国連あるいは赤十字等を通じて関係者から非常に感謝されているということはお伺いいたしておりますが、決められました周辺三カ国に対する経済協力等につきましては何ら進展していない。エジプトにしろ、それからヨルダンにしろトルコにしろ、緊急事態として非常に強く要請しているわけですが、相変わらず進んでいない、日本政府からはノーアンサーだ、こういうことでございまして、確かに貢献策として発表されましたけれども、これが緊急の場合に実行されないということは、それは空手形でございまして、ぜひ早急に結論を出していただきたい、こうお願いいたしたいと思います。手続等いろいろ問題があろうかと思いますが、その辺の見通しについて関係者の意見を求めたいと思います。
  25. 渡辺允

    ○渡辺説明員 周辺諸国に対する援助の問題につきましては、実は関係する他の援助を供与することを考えている国あるいは関係国際機関等との調整の問題もございますので、その点も含めまして、私どもといたしましてはできるだけ早く、できるだけ思い切ったことをしたいという考え方で現在検討をしているところでございます。
  26. 中山太郎

    中山国務大臣 委員指摘の問題につきましては、私も各国を回って意見を聞いておりますけれども、現在橋本大蔵大臣がヨーロッパの各国の大蔵大臣と具体的な国際協調について、この協力の相談をいたしておりまして、近く帰国を待って我我としては決断をいたしたい、このように考えております。
  27. 牧野隆守

    ○牧野委員 次に、過日海部総理が記者会見におきまして国連平和協力法につきまして、その制定について検討していくということを発表されました。国連中心としてなす方法が我が国の今後のこういう国際事件にかかわる方法として一番ベターな方法であろう、こう考えておりますが、これにつきましても、国内のコンセンサスがぜひ必要でございますし、また、野党との協議も当然必要でございまして、この辺につきまして早急に進めていただきたい。事は急ぐわけでございますから、それにつきましての御所見をお伺いいたしたいと思います。
  28. 中山太郎

    中山国務大臣 委員指摘の問題につきましては、現在政府で鋭意検討いたしている最中でございまして、できるだけ早く結論を出すように努力をいたしたいと思っております。
  29. 牧野隆守

    ○牧野委員 中近東問題に関しまして最後の質問をさせていただきたいと思いますが、現在人質として抑留されております在留邦人に関してでございます。御家族、御親戚、その他関係者の皆様は大変御苦労、御心痛でございまして、我々としてはベストを尽くしてこの救済に当たらなければならない、こう考えるわけでございます。  そこでお伺いしたいのですが、新聞等によりますと、イラクのラマダン副首相が日本に来たいという非公式な要請があったと書いてございますが、これにつきましてどのように御処理なさったのでしょうか。また、私としましては、国際的に今大変非難されているイラクでございますが、今後どういうように進展するか、どういうような結論が出てくるか何とも言えませんが、何らかのイラクとのチャンネルというものが必要だと思います。今回のラマダン副首相の来日問題に関連いたしまして、これらの処理について大臣の御意見を賜りたいと思います。
  30. 渡辺允

    ○渡辺説明員 先生今御質問の問題につきましては、私どもといたしましてもイラク側にそのような希望があるということは承知をいたしております。私どもといたしましても、イラク側が今回の事態解決につきまして安保理の諸決議に従った解決を求める、あるいはすべての外国人の出国の問題につきまして真剣にその無条件出国の実現を図るということを前提に我々日本政府との間で真剣な対話を行う用意があるということでございますれば、我が方としてイラク側との対話を拒むというつもりは全くございません。
  31. 牧野隆守

    ○牧野委員 これは非常にデリケートな問題でございまして、あるいは詳細にわたって政府サイドから御返事をいただくことはなかなか難しいかもしれませんが、しかし、外交はいろいろな多方面にわたってやられることでございまして、ぜひチャンネルが消滅しないように万般の措置を、特に大臣お願いをいたしたいと思います。  次に、今回終わりました日ソ交渉につきまして、二、三大臣質問をさせていただきたいと思います。  今回の日ソ外相会議におきまして、その後共同声明あるいは記者会見あるいはソ連外相の講演等いろいろございまして、私ども感じますことは、ソ連のペレストロイカ政策の推進、中東問題に対する国連安全保障理事会におけるソ連の態度等々を考えると、日ソ両国間にも世界経済あるいは世界外交という面で共通の認識が実はでき上がってきつつあるのではないか、こう感ずるわけでございまして、そういう認識を共有することができれば今後日ソ両国間の信頼関係は外交のやり方によってますます確立されるのではないか、我々の望む平和の方向に日ソ間の問題が一つ一つ解決されるのではないか、こういう印象を実は強く受けたわけでございます。  懸案の四島返還問題、また平和条約の締結、今後大変大きな困難が予想されますものの、今回はいよいよその第一歩を踏み出した。非常に前途に明るさを感ずるわけでございますが、今回の外相交渉を通じまして感じられた外務大臣の御所感を賜りたいと思います。
  32. 中山太郎

    中山国務大臣 今回のシェワルナゼ外相と私との会談で双方が腹蔵なく意見の交換をすることができましたことを大変私は満足をいたしております。従来、日ソ間に大きな壁がございましたけれども、その壁をある程度取り外すことができた。そして、私どもは現在イラクにおける人質問題等につきまして日ソで共同声明を出すということができ得たことも、私ども大変うれしく思っておる次第でございます。  こういう日ソの共同作業、また国際平和に対する考え方一つの合意、こういうものの中から新しい日ソの国際社会に対する共同行動というものができていく、私はそういう意味でこの人質解放に関する日ソの共同声明の発出というものは極めて意味のあるものというふうに考えておりますが、双方話し合いをいたしまして、私どもは新しい国際社会の中でいかに我々が協力するかということについても意見の交換をすることができたと認識しております。
  33. 牧野隆守

    ○牧野委員 今回の外相会議におきまして、いろいろな個々のテーマごとに論議がなされたと聞いておりますが、この中で一番大きい問題は北方領土問題であろうかと思います。我々としては、四島一括返還によって解決しなければなりませんし、また、平和条約を締結することによって日ソ関係を真に抜本的に改善できる、こう考える次第でございますが、残念ながら、ソ連政府はこの問題については従来のかたい立場を変えていないのかあるいは何らかのニュアンスが感ぜられたのか、今後、外相会議を通じまして詰めていかなければならないわけであろう、こう思います。  ただ、私としましては、日ソ交渉、当然ソ連はソ連なりの国益をもって我が国に当たってくるわけでございまして、我が方も当然ながらなぜ日ソ関係の交渉をするのか、返還問題だけなのか、平和条約だけなのか、さらに根底にもっと大きな我が国の国是として日ソ関係はいかにあるべきか、その具体的な方向は何か、目標は何か、これが一番大切なことでございまして、これも先ほどと同じように、政府日本の国益は何かということを国民に十二分に知らせていただいて、国内一致して長年月にわたるこの日ソ関係解決に当たらなければならない、それによって初めて国民の全面的な支持をいただけるもの、こう考えるわけでございます。  日本の国益は何か、経済協力なのかあるいは日本海周辺を中心とする交流とか、もういっぱいあるわけですが、そういう日本の国益、ソ連に対して我が国として主張すべき国益は何かということをぜひ国民の前で明示していただき、国民の全幅の支持を得てこの難局に当たっていただきたい、心からお願いをいたす次第でございまして、この点につきましての大臣の御所見を賜りたいと思います。
  34. 中山太郎

    中山国務大臣 日ソは地理的に見ましても隣国でございますし、この隣国の間で平和条約が結ばれていないということは我々国民にとってもソ連の国民にとってもまことに悲しむべき現実であろうと思います。  このような中で、我々の政府間の協議というものは、なかなか今日までこの打開、領土問題を含めた平和条約の締結という問題については双方が努力をいたしましたけれども、双方それぞれの国益というものを踏まえて平行線をたどってきたことは委員承知のとおりでございます。こういう中で、国会におきましては、衆参両院において、我が国の古来の領土である四島の一括返還に関しまして御決議を数次にわたっていただいておりまして、政府はそのような国会決議、また五千万人に上る国民の領土返還要求に関する署名、このようなものを踏まえながら政府はこの領土返還を実現するべく今日まで努力をいたしてまいりましたが、幸い明年ゴルバチョフ大統領が四月に訪日をされるということで、ソ連におきましても、これからのアジア・太平洋における日ソ間の平和条約の締結というものがいかに大きな意義を持つものかということは、私は認識をし始めていただいていると思います。  このような中で、これから平和条約作業グループを通じ、それぞれの両国間にわたる問題点の解決のために努力をいたしますけれども、私どもはゴルバチョフ大統領の来年の訪日が本当に領土問題を含めて平和条約の締結に向かうことについて真剣に努力をソ連側もしていただきたい、このように念願をしておるものでございます。
  35. 牧野隆守

    ○牧野委員 今大臣から御所見を賜りまして、ぜひ今後の日ソ交渉成功のために頑張っていただきたいと心からお願いをさせていただきます。  今回の日ソ交渉におきまして、領土問題のほかアジア・太平洋における安全保障問題等々論議されたとお伺いいたしておりますが、実は、私は福井県選出の議員でございまして、日本海に面する日本国民の一人として日本海を中心とする平和の問題について大変大きな関心を有しております。明治、日本が近代化されて以来百年以上日本海というのは常に冷たい海であったわけです。日本海は冷たい、もちろん向こうは凍っている海。非常に厳しい、百年前後の念願でございましたが、ただいま北海道を初め、あるいは新潟あるいは北陸、山陰、それぞれ大きな日ソ間の平和な交流を実は強く念願いたしておりまして、そういうことを考えますと、アジア・太平洋全体の安全保障の前に、まず我々の地元であるこの日本海、オホーツク海における平和というものが確立されないだろうか。漁業問題もあります、地域間の交流もあります、航空路の新設の問題もあります。これらによって日本海並びにオホーツク海が平和になれば、日ソ間の交流というのはまだまださらに進むことは必定でございまして、このことはとりもなおさず韓半島の平和の問題にも大きな影響力を与える。こういうことを考えますと、日本海を中心とした平和宣言と申しますか、何らかの日ソ間における力強い合意をぜひ大臣の力で賜りたい。ここが安定して初めてアジア・太平洋の平和、また安全保障も確保される、こう考えておる次第でございます。特に日本海に面する地域住民、彼らの願っている平和な気持ち、これがぜひ実現できるように、これらも含めて日ソ交渉でさらに御活躍いただきますように心からお願いをさせていただきまして、私の本日の質問を終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
  36. 柿澤弘治

    柿澤委員長 午後二時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十三分休憩      ────◇─────     午後二時三十二分開議
  37. 柿澤弘治

    柿澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。高沢寅男君。
  38. 高沢寅男

    ○高沢委員 大臣、本当に御多用の中を、それこそ東奔西走しながら、また国内におられても、シェワルナゼ外相を迎えるなど大変御多忙の中できょうの外務委員会に御出席、まことに御苦労さまでございます。  今度の中東紛争は、まさに東西冷戦体制が終わった、そういう新しい枠組みの中で発生した紛争であります。したがって、この紛争解決の仕方、どういうふうにこの紛争を終息させるかということは、むしろこれからの国際情勢一つの路線を敷くということにもつながるんじゃないのか。そういう意味で、我が国政府がこの中東問題の解決のために大きな貢献をすべきである、こういう立場から、これから以下御質問をいたしたいと思います。  初めに、今回政府が決められた十億ドルの貢献の問題であります。  新聞報道によりますと、アメリカは初め我が国に対して一カ月六千万ドル、それで十二カ月で七億二千万ドル、こういう線で要求をしてきていたのに対して、七億二千万ドルをもっとわかりやすい十億ドルという線にしようというふうに我が方で決められたとお聞きするわけでありますが、そういうふうな経過であったのかどうか、あるいはまた十億ドルという線がどういう積み上げでそういう金額になったのか、この辺のところをまずお尋ねいたしたいと思います。
  39. 中山太郎

    中山国務大臣 委員お尋ねの多国籍軍への協力という問題につきまして、これは国連決議に従って加盟国としての応分の責任を果たすという考え方で拠出を決定したのでございますが、十億ドルというものは今年度十億ドルということでございます。
  40. 高沢寅男

    ○高沢委員 私のお尋ねにはやや足りなかったと思うのですが、十億ドルという額になったその積み上げの基礎はどういうことであったのかということをお尋ねしたわけであります。
  41. 中山太郎

    中山国務大臣 具体的な内容につきましては局長の方から答弁をさせていただきたいと思います。
  42. 渡辺允

    ○渡辺説明員 先生先ほど御指摘のございましたアメリカ側からの要請ということでございますけれども、私ども、経費の分担につきましてアメリカ側から具体的な要請を受けてはおりません。それで、十億ドルという数字は、財政事情それから我が国国際的な立場その他を勘案いたしまして、ぎりぎりのところで決定された数字でございます。
  43. 高沢寅男

    ○高沢委員 今大臣お答えで今年度、こういうことを言われたわけですが、そうすると、この十億ドルの次には、来年度はまた何億ドルというふうなことが、紛争がそれまでに終われば別ですけれども、紛争が継続しているとすればそういう性格のことである、こういうふうに理解してよろしいですか。
  44. 中山太郎

    中山国務大臣 お説のとおりであります。
  45. 高沢寅男

    ○高沢委員 次に、十億ドルを出す先、つまり受け皿の問題ですけれども、これは我が国立場からすれば、国連安保理事会がこの中東問題の解決のための決議をした、その決議の実現のために我が国も貢献をしなければいかぬという立場での拠出だ、私はこう思います。したがって、その受け皿は国連というものが本来のあるべき姿ではないのか、こう思いますが、どうも国連になっているようではないので、その辺の経過も含めてひとつお尋ねをいたしたいと思います。
  46. 渡辺允

    ○渡辺説明員 ただいまの受け皿の問題でございますが、私ども、各種の国際機関を含めまして実はいろいろな可能性を鋭意検討中でございまして、まだ結論を得るに至ってはおりません。ただ、国連につきましては、やはり国過における財政技術上の問題そのほかがございまして、若干難しいかという感じでございます。
  47. 高沢寅男

    ○高沢委員 すると局長国連の機関と国連がこの十億ドルの受け皿になるかどうかということを協議されたことはあるのですか。それに対して国連側の態度はどうだったのか、その辺をお聞きしたいと思います。
  48. 渡辺允

    ○渡辺説明員 国連とはその点について協議をいたしております。
  49. 高沢寅男

    ○高沢委員 そして国連の態度は。
  50. 渡辺允

    ○渡辺説明員 その結果は、先ほど申し上げましたように財政技術上等の問題がございまして、なかなか難しいところがあるということでございます。
  51. 高沢寅男

    ○高沢委員 そういたしますと、今度は受け皿がアメリカの信託基金というものがそうなるのじゃないのか、これは新聞報道ですが、それはそうなるというふうに理解してよろしいわけですか。
  52. 松浦晃一郎

    ○松浦説明員 受け皿などの全体の検討状況は先ほど中近東アフリカ局長から御説明したとおりで、いろいろな可能性を検討しております。  先生が言及されました新聞報道があることは承知しておりますけれども、先ほど申し上げましたようにいろいろな可能性を現在検討中というふうに御理解いただきたいと思います。
  53. 高沢寅男

    ○高沢委員 ということは、まだ現在受け皿については決定していない、いろいろな可能性を検討中、こういうふうに理解してよろしいですか。
  54. 松浦晃一郎

    ○松浦説明員 結構でございます。
  55. 高沢寅男

    ○高沢委員 今度はこの十億ドルの性格ということになるわけですが、これは受け皿がどうなるかは一応別として、実際上は中東地域に出ている多国籍軍、この多国籍軍に対する協力のお金、こういうふうな性格のものになるのじゃないかと思いますが、この点はいかがでしょうか。
  56. 渡辺允

    ○渡辺説明員 私どもが申し上げておりますのは、これは湾岸地域におきまして、地域の平和と安定の回復のために安保理の関連諸決議を受けて活動している各国に対するものということでございます。
  57. 高沢寅男

    ○高沢委員 その安保理の決議を受けて出動し活動している各国の軍隊、これを新聞では多国籍軍と呼んでいるのじゃないですか。どうですか。
  58. 渡辺允

    ○渡辺説明員 多国籍軍という言葉の定義は必ずしもはっきりいたしておりませんけれども、通常新聞等ではそういうふうに言われているということでございます。
  59. 高沢寅男

    ○高沢委員 国連決議に基づいて出動している各国の軍、多国籍軍、これはよく言われる国連軍とか国連平和維持軍とかこういうふうなものとの関係においては国連軍という見方をしていいのか、国連平和維持軍という見方をしていいのか、この辺はいかがですか。
  60. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 ただいまサウジアラビア等に展開しておりますいわゆる多国籍軍といいますのは、先生お尋ねの国連軍とか平和維持軍とはまた別の性格の軍だと思います。
  61. 高沢寅男

    ○高沢委員 そうすると、つまりもう一度さっきに戻って、国連決議を実現するために各国が派遣している軍、結局そこにもう一度定義は戻るわけですね。そうなりますと、私は、それと今度のこの国連決議との関係ということをここで問題にしたいわけですが、この各国軍の中では量的にも質的にも圧倒的に多いのはアメリカ軍であるということはもうはっきりしていますね。私の見方では、中東地域に出ているアメリカ軍は二つの目的を持っておる、実はこう思うのです。  一つは、国連安保理事会決議を実現しよう。つまりイラククウェートの侵攻をやめさせ、撤回させる、クウェートの原状を回復する、こういう国連の本来の目的、これを実現する。そのためにいろいろ経済制裁がある。その経済制裁の網をくぐって往来する船舶等を調べる等々ですね。これは国連決議に沿ったそういう目的をやるためにアメリカの軍隊が出ておる、私はこれが一つ言えると思う。  もう一つは、アメリカはそれと別な目的を持っている、これは私の考えですけれども、そう思います。というのは、この機会にサウジアラビアに出動したアメリカの軍隊は、こういう経済封鎖の効果を確保するという立場で見ればとてつもない大きな規模です。そのうちに二十万にもなる、二十五万にもなる、こう言われているサウジアラビアに出動した米軍の姿です。私は、この米軍の姿は国連決議を実現するという枠を超えて、フセインを打倒するというふうなことであるとか、あるいは中東地域における石油の資源をアメリカがしっかりと確保するということであるとか、あるいはイスラエルとアラブの、これは中東のもともとの一番根源的な対立ですが、その関係でイスラエルに優位性を持たせるとか、いろいろ複合的な目的を持ってこの際大軍を派遣したというのがアメリカ軍のもう一つの性格ではないか、こう思うのであります。  これは大臣、政治的な問題ですから、ほかの出ている多国籍軍はそこまでの目的を持っているとは思いません、ほかの国の軍隊は大体国連決議を実現しようということで出ていると私は思いますが、アメリカ軍の場合はそれと別の目的を持っているというふうに思います。この辺の大臣の御認識はいかがでしょうか。
  62. 中山太郎

    中山国務大臣 極めて重要なお尋ねではないかと思いますが、私が中東五カ国を総理の特命を受けて回りました現地の国王あるいは大統領からじきじきに聞いた話を総合的に判断をいたしますと、やはりイラン・イラク戦争で西側、アメリカも含めてイラクを支援している、そしてイラクはイランとの間に八年半に及ぶ戦争をやっておった、その間に石油の価格が高騰する、それによって国家の収入がふえる、そのふえた収入を国家の経済再建に使わないで軍事力の強化に狂奔した、その武器をイラクに対して輸出しておったのはソビエト連邦とフランスであります。そういう中で戦車五千両を擁する軍事大国になってきたイラクは、いわゆる経済的な逼迫というものを踏まえて、かねて国境の油田問題も含めていろいろと論争のあったクウェートに対して八月二日の払暁に突如大軍を投入した、こういう背景があったと私は認識をいたしておりました。  当時、サウジアラビアは、このクウェートへ侵入してきたイラクの大軍がさらにサウジアラビアに侵攻してくる可能性がある、こういう判断をして、政府としてはアメリカに軍隊の派遣を要請すると同時に、アラブ同盟軍のサウジアラビアへの派兵を要請した、こういう一応の国連決議が起こる前の緊急事態対応する姿がそこにあったと私は認識をして帰ってまいりました。  こういう中で、あのイラクの軍事力をもってすればサウジへの侵攻というものはさほど困難なことではなかったと思います。当時、湾岸におりました各国の海軍、特にアメリカ海軍などにおきましては、サウジに派兵をしたアメリカの地上軍の勢力をもってしてもとてもイラクの大軍、この近代化された武力には対抗できないという判断がございまして、一応いわゆる制空権、海上のいわゆる戦力といいますか、そういうもので補完をしておったというのが私の認識でございます。  こういう中で、米軍がそのように多数展開したというのはこの地域でのイスラエルの地位を強化するものではないかという御意見もございましたけれども、私はむしろイスラエルの動きというものを、現在静かにしておってもらわないと大変なことが起こってくるという十分な配慮が行われていると考えております。それは、サダム・フセインの考え方、つまりサウジアラビアはアラブ人の聖地でありますから、この聖地に異教徒が入っているということによって、この地域から、アラブの聖地から異教徒を追放する、即アメリカ軍を追放するという呼びかけをアラブ人にいたしております。しかし、エジプト軍初めシリア等中近東にあるアラブ軍はアラブ同盟軍としてサウジに来ておりますから、このサダム・フセインの大きな呼びかけには呼応していない。PLOも最初はイラクのサダム・フセインの行動を支持しておりましたけれども、途中で態度を変更いたしました。こういう中で、このサウジアラビアにイラクの大軍が侵攻した場合における影響は、ただ単なる中東の油田問題だけではなしに、国際社会全体に巨大なインパクトを与えることになりかねない、こういう配慮が働いておったと私は認識をいたしております。  今日、イラク軍のサウジ侵攻がとまっておりますけれども、私ども日本政府としてはそのような認識の中で、国連決議によってイラク軍が一日も早くクウェートから撤退をする、そしてかつて存在した政府が復活するということを国連決議に従って支持をいたしておるということでございます。
  63. 高沢寅男

    ○高沢委員 大臣から、イラン・イラク戦争の時代にまでさかのぼる歴史的な経過の御報告とそれに対する一つの見方を御説明いただきましたことに私はお礼申し上げます。しかし、今の大臣の御説明は、結局アメリカの出動した目的がただ単にイラククウェートからの撤退、クウェートの原状回復という国連決議の目的とイコールではとどまらない、もう少し別な、幅の広い目的を持っておるということは実際上大臣の御説明にあらわれた、こう私は思うわけであります。  さて、そのアメリカ軍を中心とする多国籍軍に対して日本が十億ドルで協力するというこのあり方が、日本憲法との関係とか等々で問題が起きやせぬかということを、私は実は大変憂慮するものであります。  これについてはだんだんまたお尋ねしていきたいと思いますが、もう一度この十億ドルに戻りまして、アメリカの信託基金ということが新聞で報道されて、まだそう決めていない、こういうさっきの御答弁でありましたが、もし信託基金が受け皿になるときは、日本とアメリカの間でこのための協定を結ぶ、その協定を国会の承認を受ける、こういう手続が必要になるのではないかと思いますが、この辺はいかがですか。
  64. 松浦晃一郎

    ○松浦説明員 先ほど来御説明しておりますように、受け皿に関しましては現段階ではいろいろな可能性を検討しておりますので、先生御指摘のアメリカの信託基金ということに焦点を絞って検討しているわけでございませんので、その場合にどうなるかということに関しましては答弁いたしますことは差し控えさせていただきたいと思います。
  65. 高沢寅男

    ○高沢委員 こういう答弁は、私は誠意がないと思うのですよ。例えば在日米軍の費用をもっと持て、思いやり予算でもっと持ちましょうというようなことに今現にさらになってきておる。そのときに、もしもっと持つならやはり日米地位協定をこうしなきゃいかぬとか、あるいは日米地位協定に基づく第三次の特別協定をまたつくらなきゃいかぬとかということは、これはだれが考えても外務省立場であれば当然です。したがって、この信託協定をもしやるとすればと私は言っておる。しかも、もしやるとすればというのは全く架空の議論ではなくて、現実にそうなる可能性が非常に大きい。そのときは協定が必要ではないか、そのときは国会承認が必要ではないか、こう聞いていることに、まだ決めてないからそんなことはお答えできません、私はこういう答弁は全然国会に対する誠意のない答弁だ、こう思います。  この点は、まあ局長がそういうことなら私は大臣にはっきりお答えいただきたい、こう思いますが、いかがですか。
  66. 中山太郎

    中山国務大臣 先生の御指摘の、いわゆる駐留米軍経費の思いやり予算の問題も含めて、私はこの機会に外務大臣としての考え方を申させていただきたいと思います。  それは、中東地域の不安定さ、日本の輸入原油の中で六四%がこの地域から来ております。フランスは総輸入量の三四%、それからイギリスが一四%です。それでアメリカは総輸入量の一一%をこの地域に依存いたしておりまして、西ドイツは九%。こういう中で、世界で一番この地域の原油に依存しておるのがこの日本、我々の国でございます。そのような国のあり方の中で、我々は苦い石油ショックの経験から百四十三日分の石油の備蓄を現在やっておりますが、それによって現実、過去のようなパニックが起こらない。しかし、中長期で見れば、日本の経済、これに与える影響ははかり知れないものがあると私は思います。また、国民生活にも大きな影響を与えてくる。  こういう中で我々は、率直に申し上げまして、サウジアラビアでは外務大臣から日本の軍隊を派遣してもらいたいという要請を受けました。私は、憲法を説明し、自衛隊法を説明して、直ちにこれはできないということを申し上げましたが、それでは最も大きく国の経済が依存をしている地域の不安定さに対して、ここに平和を回復し、そして我々の国民生活が安定をするというために一体この国家は何をするべきか。それはもちろんお説のように、現行の憲法の枠内で、法律の枠内で日本ができるだけのことをしなければならないということは、他国に対するよりも我々の国家国民のために政府はやらなければならない責任があると考えております。  そういう中で、このアラブに進駐している米軍が、膨大なアメリカの赤字財政にかかわらず出兵をするという事態を踏まえて、我々が安全保障を結んでいる同盟国として、日本は今まで駐留米軍経費の増額分については自主的にやってまいりましたし、これからも自主的にやっていかなければならない、このように考えております。
  67. 高沢寅男

    ○高沢委員 ここでもうちょっと十億ドルのことで、これは本当に部分的なお尋ねですが、多国籍軍に出すとした場合、ほとんどアメリカ軍でしょうが、多国籍軍はたしか二十六カ国と聞いております。その二十六カ国の中にはイギリスもあればフランスもあればあるいはソ連もあるということになりますが、この日本の出す十億ドルがイギリス軍のために使われる、ソ連軍のために使われる、こういうふうなケースもあるのかどうか、この辺はいかがかということをちょっとお尋ねしたいと思います。
  68. 渡辺允

    ○渡辺説明員 十億ドルの使い方でございますけれども、大きく申し上げれば、これはいわゆる輸送協力、物資協力医療協力それから資金協力というふうに私ども今考えております。ただ、このそれぞれの配分あるいは具体的な使途等については現在関係国等とも連絡をとりながら詰めておるところでございます。ただ、そういう前提で申し上げますと、多国籍軍の中で米軍以外のものであっても、例えば輸送でございますれば、それに対する我が方からの協力を必要としているような国があるとすれば、そういうところにも使うということは可能性として十分あり得ることだというふうに考えております。
  69. 高沢寅男

    ○高沢委員 今その使い方で関係国と協議している、こう言われましたが、その場合の関係国は当然アメリカもあると思いますが、アメリカ以外でそういう協議している関係国とはどんな国がありますか。
  70. 渡辺允

    ○渡辺説明員 国の名前を全部申し上げるのは、あるいは落ちるところもあるかもしれませんし差し控えさせていただきたいと思いますけれども、例えばサウジアラビア等とは何かと連絡がございます。
  71. 高沢寅男

    ○高沢委員 サウジアラビアも多国籍軍の中へ入るのですか。あれは守ってもらう方じゃないのですか。どうなんですか。
  72. 渡辺允

    ○渡辺説明員 サウジアラビアは基本的には守ってもらう方でございますけれども、多国籍軍とはいろいろな意味で非常に密接な関係があるわけでございます。
  73. 高沢寅男

    ○高沢委員 じゃ、サウジアラビアは二十六カ国の一つに入っているのですか。これはどうですか。
  74. 渡辺允

    ○渡辺説明員 先生がおっしゃっております二十六カ国という数字がどこから出てまいりましたのかよく存じませんけれども、いわゆる多国籍軍と申します場合には、サウジアラビア自身も自国の防衛のために当然軍を展開しておるわけでございますけれども、それが入るか入らないかということを必ずしも明確に今定義してはおらないと思います。
  75. 高沢寅男

    ○高沢委員 私が二十六と言ったのは、これは率直に言ってNHKの解説ですよ。NHKの解説で多国籍軍は二十六。これは国連軍でありませんとか、これは国連平和維持軍ではありませんとか、いろいろそういう解説がありまして、そのときに二十六カ国という数字があったので今そういうお尋ねをしたというわけです。いずれにしても、そうするとこれはアメリカだけに使うのじゃない、その関係国のそれぞれの必要があればそれにも使う、こういうふうに見ていいわけですか。  それから、もう時間がないからもう一つ続いて、同時にこの十億ドル、日本が出す金がアメリカの中東における戦闘の費用、戦争の費用というものに使われる可能性はあるのかないのか、これはいかがですか。
  76. 渡辺允

    ○渡辺説明員 この十億ドルの使い方につきましては、最初に申し上げましたように現在なお検討中でございますので、結論という形で申し上げるわけにはまいりませんけれども、そういう前提で考えました場合に、米国軍以外のものにも使う可能性があるということは先ほど申し上げたとおりでございます。  それから、この十億ドルの使途につきましては、先ほど申し上げたように輸送の面での協力あるいは医療の面での協力、それから、砂漠という状況対応いたしまして水の補給、その他の面での物資の供給、それから資金協力、この中には特に外国が行います輸送に対する協力等がございますけれども、とにかくそういうものに使うということにいたしております。
  77. 高沢寅男

    ○高沢委員 今、中東問題で臨時国会を開くように、そういう要求を私たちもしておりますが、それはそれとして、しかし今ここでこうやって外務委員会が閉会中審査で開かれている。私は、十億ドルという日本国民の莫大な税金を出そうというときに、仮にそれが予備費であったとしても、今の御説明のような、一体どうなるのかわからぬ、ああなるかもしらぬ、こうなるかもしらぬというような御説明で我々の国民の税金十億ドルが出されるというようなことは断じてあってはならぬ、こう思いますよ。もしまだ決まっていないというならば早急に確定して、そして、その支出をするための関係国との協定とかいうものはちゃんと国会へ出して国会の承認を得るという責任ある措置を必ずやってもらいたい。今これ以上局長相手にやりとりしてもどうも余りらちが明く様子がありませんから、私はそういう責任ある措置を近々臨時国会を開くとか等々できちんとやっていただくことを、これはひとつ大臣お答えをいただきたいと思います。
  78. 中山太郎

    中山国務大臣 今委員お尋ねの問題点につきまして、政府としては現在いろいろと検討しておりますけれども、必要なことがあれば国会にも御承認を得なければならない、そういう事態があればそのような手続を当然踏まなければならないと思っております。
  79. 高沢寅男

    ○高沢委員 中東問題に関連して、きょう午前中の自民党の浜田委員の御質問でも出ましたけれども、自衛隊法を改正してこの際自衛隊が海外へ出動できるようにしようじゃないか、こういう御意見があるわけですね。私は自衛隊の出動というものが、もちろん武装した自衛隊ということならばなおさら、そうでなくて仮にそれが丸腰の部隊であっても、自衛隊が出動するという方向で自衛隊法が改正されるということは、実際上我が国憲法の、集団自衛権を否定してきたそのことの原理を変えるということになるわけであって、単なる一つ法律を変えるということでは済まぬ、事実上憲法を変えるということにも匹敵する非常に重大な措置だと思いますが、これは大臣、おやりになるお考えかどうか。私は断じてそういうことはあってはならぬと思いますが、大臣の御所見はいかがでしょうか。
  80. 中山太郎

    中山国務大臣 憲法を改正するという考え方は、現在持っておりません。自衛隊法の改正につきましては、やはり委員指摘のように重大な国民の関心事項でございますから、これは開会の御論議あるいは国民の意見、いろいろなものを十分聞きながら国家として何をなすべきか、これを判断しなければならないと考えております。
  81. 高沢寅男

    ○高沢委員 憲法改正となれば、そこには国民投票という手続があるわけですが、自衛隊法を変えるということも、今大臣国民の意見、こう言われましたけれども、もしこういう法律改正をやるとすれば、私はまさにそのこと自体で国会を解散する、そのこと自体で国民の審判を受けるというほどの重みを持ったものだと思いますが、その点の大臣の御認識はいかがでしょうか。
  82. 中山太郎

    中山国務大臣 その問題につきましては、国会を解散するとかせぬとかということは総理の専権事項でございますから、私がそれに付言をするということは遠慮させていただきたいと思いますが、やはり大きな国民的な問題である、自衛隊を海外に派兵するということについて、それがたとえ丸腰の自衛官であっても、それはいいのかどうかということは法制局の意見も十分承らなければなりませんし、我々もそれを議論しなければならない、今このような考え方でおります。
  83. 高沢寅男

    ○高沢委員 大臣も御記憶だと思いますが、ことしの七月二十八日、ASEAN拡大外相会議がありましたですね。そこでASEANの諸国から日本の軍事大国化、日本の軍事力強化について非常な懸念が表明された。そのときに大臣は、我が国はもう専守防衛でいくんだ、また絶対に軍事大国にはならないということを強く表明されて、それでASEANの諸国の懸念を打ち消すという努力をされたというふうに新聞で報道しております。しかし、今の自衛隊を海外に出すというふうなことが本当に日本国会政府から提案されてくるというふうなことになってくると、そのASEANの拡大外相会議で専守防衛でいきますと大臣の言われたこととそのことは明らかに食い違ってくるということになるんじゃないかと思います。  大臣、私は、そういうことは非常に重大な問題であるという、その大臣の御認識はよくわかりますが、ASEANの拡大外相会議で専守防衛でいくということをはっきり言われたそのお立場からすれば、自衛隊が出動するというふうな法改正は、これはもう大臣がそれこそ政治家としての立場で、そういうことはやってはならぬ、やるべきではない、こういうお立場を堅持していただきたい、こう思うわけでありますが、いかがでしょうか。
  84. 中山太郎

    中山国務大臣 委員指摘のように、ASEAN外相会議ではマレーシアのアブハッサン外務大臣から、米ソの超大国の軍事力がアジア地域から引いていくという中で、日本が経済国家として軍事大国にならないかという意見があるというお話がございまして、それに対して、私は委員が御指摘のように、日本平和憲法として第九条で交戦権を放棄した国家だ、国民は平和でこの国を生きていくという国民的コンセンサスができている、また防衛力はGNPの一%以下にとどめながら専守防衛に徹している、二度と再び我々がアジアに迷惑をかけるような考え方を現在持っていないということを明確に申して、アジアの出席した関係各国の外相たちに日本考え方を明確に説明をいたしてきたことは事実でございます。  私はそういう観点に立って、アジアの各国の政治家あるいは国民日本のこれからの行動について大きな関心を持っていることは事実であろうと思いますが、我々が考えなければならないことは、我々が単独で派兵をするというような考え方ではあり得ないと思います。やはり国連の加盟国として、国連の平和維持にどのような貢献がこの憲法の枠内でできるのかというところに基点がなければならない、こういうように私は認識をいたしております。それが自衛隊の派兵とかそういうことでなしに、すべてをくるめて、国家が、国連がこれから地域の大きな戦乱、地域紛争について米ソを初めあらゆる国が協力するというときに、日本はどのような協力憲法のもとでできるのか。今までのように金だけ出すということではもう、国際社会日本は当てにならない国家という認識を持つ可能性があるというふうに私は最近の外交を通じて感じを受けております。
  85. 高沢寅男

    ○高沢委員 次に、私が今度の中東問題で実は一番心配していることを一つお尋ねしたいと思います。  さっき大臣は、イラン・イラク戦争の経過からずっと御説明されて、フセインが膨大な戦力を持って、そしてサウジアラビアまで攻め込むという危険性というふうなことについて御説明がありました。私は、その危険性ということは一面では認めつつ、逆に今度は今の情勢では、サウジに展開しているアメリカ軍が間もなく二十万とか二十五万という戦力の水準に達して、それは何か九月末ごろというふうなことを言う人がいますけれども、そのころになったらイラクに対して戦端を開く、アメリカは攻撃を開始するというふうな観測を述べる人がいるわけであります。このことについて、その危険性全くなしとは言えない、切迫した危険性というものを実は私も感じます。  もしそうなったときに考えられることは、当然アメリカ対アラブ、それからそこに必ずイスラエル対アラブ、それから今度は、アラブが分裂していると言われますが、場合によればアラブ対アラブというような三つどもえ四つどもえの戦争状態があの中東で起こるということは私は考えざるを得ない。また、そうなったらこれはとんでもないことである、大変なことである。特に中東に、さっき大臣の言われた石油を依存する日本の経済、あるいはその他世界各国の政治経済はもう想像もできない大損害を受ける。こういうふうに考えてみますと、そういう事態はどうしても防がなければいけないということではないかと思います。  そこで日本としては、フセインに対して、君たちはクウェートから引け、そしてクウェートの原状を回復しなさい、これを言う一方、アメリカに対しては、そういう戦闘開始はやらないでもらいたい、絶対にやってはいかぬということを言う。そしてその中で、非常に難しいけれども、フセインもブッシュ大統領も含めたような何か協議の場をつくって、そこで話し合いで解決というための道を日本が開くということができないのか、やるべきじゃないのか、そのために海部総理大臣も、また外務大臣も身を挺してひとつ頑張っていただきたい、私はこういう気持ちがしますし、のみならず、我々日本社会党も土井委員長を先頭にしてそのためには身を挺して努力をするということも申し上げたいと思います。  そういうアメリカがそのうちやるぞ、こう言われているこの危険性なり可能性、それを防ぐということについての大臣の御所見はぜひお聞きしたい、こう思います。
  86. 中山太郎

    中山国務大臣 まず最初に、私が率直に申し上げておきたいことは、今回のイラク武力によるクウェートへの侵攻、そして各国の大使館の閉鎖命令、あるいは大使館員のバグダッドへの移転、こういうものを軍事力を背景に国際社会の批判を受けながらやり通していくというイラク考え方、これは厳しく糾弾されるべきである。日本の平和を理想とする国家としてはこの点を強く主張しなければならない。そして国連決議に従って一日も早くクウェートからこの軍隊をイラク本国に撤兵するべきだ。この国連決議も我々は加盟国として尊重していかなければならないし、支持をしなければならない。そのようなことを国連の場で決議しただけで、イラクの大統領のサダム・フセインが命令を下したかというと下していないわけであります。それじゃどのようにしてこの我々が期待する結果がもたらされるかということについては、経済制裁を初めサウジにイラク軍に対抗するだけの兵力を展開しないと、このイラクの行動がみずから国際社会において孤立をするという自覚を引き起こすにはなかなかの大きな時間がかかるのじゃないか。  私はまず、アメリカ軍が攻撃するかせぬかというような問題に言葉を触れる前に、ここで戦争によらない、戦火を交えずに平和のうちに軍隊をイラク本国に撤兵させるということが一番の緊急課題であり、そのための努力をすべての国がしなければならない。私は、そういう意味で、きょうお帰りになったシェワルナゼ外相に対しても日ソの外相会談において強く要請をいたしましたし、またこのイラク軍に膨大な兵器を輸出してきたソビエトにも反省をしてもらう点があるということを指摘いたしました。シェワルナゼ外相は、ソ連としてもこのイラクに対していろいろと考えを今練っているところだ、こういうことでございますが、九日のヘルシンキにおける米ソ首脳会談というものは極めて注目すべき会議になる、このように私は期待をいたしております。
  87. 高沢寅男

    ○高沢委員 私がその中東地区における全面的なそういう戦争状態を憂慮するもう一つの理由は、もしそういう状態になったら、今イラクにいる日本人を初め欧米人や各国の人質はもう皆殺しにされる、これは私は間違いないと思います。それを避けるということもまた、そういう中東の戦闘状態はどうしても起こさせてはならぬということにつながるわけでありますが、そのために、私はこういう見方が一つできるんじゃないかと思うのです。このフセイン大統領、非常にこわもてでいろいろなことを言ってはいますが、実は彼も内心相当困ってきておる、何とかおさめたいと思っておるということは見ていいんじゃないのか。  具体的な事実で言いますと、八月二日にクウェートへ侵攻しましたね。そしてその十日後の八月十二日には、もうクウェートからの撤退の条件ということを出して一つの条件を出したということですね。その中には、イスラエルの占領地から引けとかいろいろなこともあって、アメリカは言下に問題にならぬ、こう言いましたけれども、イスラエルのヨルダン川西岸の占領地を押さえている、あれも国連からやめろ、撤退しろ、こう言われている。これはイラククウェートをやったのはけしからぬというのと全く同じ性格の問題ですね。ですから、こういうことも十分協議の対象になり得る、私はこう思います。  それから、続いて八月十九日に、今度はこのフセイン大統領は、西側の外国人の家族へのメッセージを出すということをやっておりますね。八月二十一日は、ブッシュ・アメリカ大統領あてに公開書簡を送るということもやっているわけですね。八月二十三日は、今度はムバラク・エジプト大統領に対して書簡を送るというようなことをやっておりますね。それから九月四日パリ発のロイター電によれば、PLOの実力者の人が、フセイン大統領はこういう気持ちでいる、つまり彼はクウェートの一部を手に入れることができれば、全部じゃない、一部を手に入れることができれば、そしてサウジアラビアにいるアメリカ軍が我々を攻撃しない、イラクを攻撃しないということがあれば、人質の解放、あるいはその他のクウェートの占領を解除するというようなことをやる用意がある、彼はそういう心境でいるということをPLOの幹部の人が語ったというのが日本の新聞に報道されたということを見ました。  こういうことから判断して、私は、フセイン大統領は大いに交渉の気持ちを持っておる、こう思いますが、さっき言いました、日本が、あのイラクに対して今まで決して武器を売っていないこの日本が、フセイン大統領とまず裸でぶつかって、そして一方はまた、アメリカに対してフセイン大統領とひとつ協議の場で解決したらどうかということをやられたらどうか、そのために総理なり外務大臣が直接バグダッドを訪問されるというようなことも私はあっていいんじゃないだろうか、こんなふうに思いますが、大臣いかがですか。
  88. 中山太郎

    中山国務大臣 現在のイラクのサダム・フセイン大統領の考え方、これが私はすべてを決すると思います。私が歩いた湾岸の政府首脳からは、極めて強力な独裁者である、人の言うこともなかなか聞く人ではない、反対する人には極めて厳しい弾圧を行ってきたという歴史的な事実がある。こういう中で、軍事大国でもない、平和を目的とした日本、この日本が、国連の場を通じて我々はデクエヤル事務総長に対して人質の解放も求め、また事務総長は、アンマンを訪問されてイラクのアジズ外相といろいろと協議をされておる、このような国際社会を代表する組織の代表者、あるいは国際赤十字の努力、こういうものにこたえられない状態において、日本の総理がバグダッドを訪問して交渉して、それで果たしてどのようなことが起こってくるかということは、私は余り大きな期待は持てないという認識を持っております。  ただし、その場合に、各国が共同しながらこのような平和解決への努力をしなければならないということもあわせて申し上げておきたいと思います。そのためには、日ソの共同声明もその一つの証明書であります。我々は、いかなる国とも協力をしながらこの地域の紛争を平和的に解決したい。そのような中で、もし必要とあらば総理が行けなければ私が出かけることも当然考えなければなりませんけれども、必要がないという状況下であえてこちらが火中のクリを拾って、そこへ出かけていって国際社会日本が切り回すような、日本には外交的な確立された立場というものは残念ながらまだこの地域においてはない。  ただ、今まで軍隊を派遣していない、兵器を送っていない、そのような日本国家のあり方というものにアラブの国々が大変深い関心を持っていることは私は肌に感じております。だから、必要とあらばどのようなこともいたさなければならない、それはあくまでも平和のためである、このように私は認識をいたしております。
  89. 高沢寅男

    ○高沢委員 もう一つで終わります。  今、フセイン大統領は独裁者であるという大臣の御説明があったし、私もそう思いますが、えてして独裁者の非常に悪い面はだれでも考えますが、しかし非常に大きな転換をするということはまた独裁者であればよりよくできるという面があります。かつてのスターリンとヒトラーが、それこそ今にも戦争するという独ソがある日独ソ不可侵条約を結んだというこういう大転換も、両者が独裁者であったということの中でできた離れわざであったということではないかと思いますが、フセイン大統領にそういう離れわざをやらせるということに向かって、今湾岸地区へ軍隊を出してイラク対決しているという国でない日本、この日本がアメリカを初め関係国に呼びかけて、それこそ国際合同交渉団というふうなものを持ってバグダッドへ行ってフセイン大統領と話し合いをする、平和解決というふうな道を開いていただくことができれば、今度の中東紛争の一番いい解決の道である、こんなふうに思いますが、そういう方向に向かっての御努力もお願いしながら私の質問を終わります。
  90. 中山太郎

    中山国務大臣 今委員指摘の御意見、大変貴重な御意見だと思いまして、私どもとしても委員の御意見を十分頭に入れてこれからの平和へのための努力をいたしたい、このように考えております。
  91. 高沢寅男

    ○高沢委員 終わります。
  92. 柿澤弘治

  93. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 中東問題は今大先輩の高沢先生からいろいろ、本当に私どもが言ってほしいと思うところを十分にお話をいただきましたので、私は大変御苦労いただいた日ソ外相会談を中心にお伺いをしたい、なお時間が許せば中東問題も少し御意見をいただきたい、こういうぐあいに思います。  率直に言って、今回の日ソ外相定期協議は大変高く評価したい、このように思っております。日本社会党としても、山口書記長の談話をきのう出しておりますが、ここでも日本社会党は日ソ外相会談の成果を歓迎する、こう述べて、その中身としても大変評価し期待をする中身になっているわけであります。これは野党第一党の我が党としてもまことに珍しいことでございまして、本当に私どもその労を多としたい、このように思うわけであります。  湾岸情勢に関する日ソ共同声明、それからゴルバチョフ訪日準備にかかわる覚書、信頼醸成措置を含む政策企画定期協議、それから本委員会でも私どももいろいろ要請し、殊に医師でもある外務大臣として強い関心を持って御努力をいただいたチェルノブイリの協力に関する覚書等々、大変実りのある成果を上げられたと思います。  しかし、もちろん何といっても大事なのは領土の問題でありますから、この問題に関してはやはりシェワルナゼ外相もわきがかたくて、どうも見通しのつけようもなかなかいかぬというものではありますが、しかしこれにしてみても、両国間における非常に難しい、最も困難な問題であると同時に最も重要な問題だという位置づけを初めてした、このことも私どもは来年の四月におけるゴルバチョフ大統領訪日を展望して大変意味のある成果であったというふうに思うわけであります。  それで、そういうさまざまな今回の協議の取り決めというものを踏まえながら、来年四月まで全力を挙げてその環境の整備と舞台づくりをして、それでゴルバチョフ大統領訪日時における両国間の歴史的な場が、それは絶対に成功させるということのために御努力をこれから続けていただかなくてはならないわけでありますが、この際、一連のシェワルナゼ外相との歴史的な定期協議を終えて、先ほどお見送りをした中山外務大臣の総括的な印象、それからこれから来年四月までの作業の展開のおおよその道筋と決意のようなものをまずお伺いしたいと思います。
  94. 中山太郎

    中山国務大臣 先ほど羽田空港にシェワルナゼ外相をお見送りしてまいりました。別れ際にお互いがあいさつを交わしましたが、シェワルナゼ外相からは、今回の日ソの外相会議は極めて満足すべき、高い評価をすべき内容のある会議であったというごあいさつをいただきました。私もまた、日ソの長年の懸案を解決して平和条約を締結するためにさらに一層両国が努力をしなければならない、こういうことで先ほどお別れしてきたところでありますけれども、率直に申し上げて、私はお互いが忌憚のない意見を交換できた三回にわたる協議であったと思います。  従来、ともすれば領土問題にこだわり過ぎて、国際的な政治情勢あるいはまた二国問の領土問題以外の問題について議論をする機会が少なかったというような経過が過去にございましたが、今回は十分な時間を費やして、中近東の情勢を初めあらゆる地域の政治情勢について外相がお互いに話し合いをすることができた。そういう中で私は、日本国家憲法または自衛隊法国民の意識あるいは言論の自由を約束された憲法のもとでの各党における国会議論あるいは完熟した日本のマスコミの力、こういうものが実は日本国家のあり方を大きく決めていくのである。我々は憲法第九条によって交戦権を放棄した国家であるということも改めて出し、防衛費はGNPの一%以内、さらに防衛費の四〇%を超える部分が人件費であり、ソ連と違って徴兵制度ではございませんから、我々の国の自衛官の給与は全部国家公務員の給与並みに毎年人事院勧告によってベースアップが行われている、こういう事態も十分御説明をする機会があったことを喜んでおります。それについて外相も、十分御認識をいただいたと考えております。  今御指摘のように、領土問題につきましても、先ほど御紹介のあったような言葉が聞かれました。私どもは、ここで改めて平和条約作業グループまた今回日本側が提案をいたしました政策企画協議というような協議の場も大変な、ソ連側にとっては評価すべき提案であったということも伺いました。私どもは、十二月に予定される日ソ外相会議、これに向かって平和条約作業グループ、このグループによる議論もさらに深めなければなりませんし、外相会談も通じて、来年のゴルバチョフ大統領が訪日される機会に、この日ソの関係が歴史的な転換期になることを期待して、全力を挙げて努力をしなければならないとみずからに言い聞かせております。
  95. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 まあそういう幾つかの評価の中でも、特に今回印象に強かったこと、これは国民がみんなそういうふうに感じたのではないかと思いますが、それはやはり湾岸に対する日ソ両国の平和を求める共同声明であった。これはやはり二国間の問題に関する二国の共同声明というのではなくて、日本とソ連が世界の平和に関して積極的に共同声明で歩調を合わせたということは、これは今までとは全然質の違う成果であったというふうに僕は思うのですね。これはやはり、今までの一つの、よく大臣が日ソ間の壁、ベルリンの壁じゃないが、その壁を取り除いて、あるいは今回は取り除いたという表現なんか使うのでありますが、私は本当にそういう実感がするし、そういう中で新しい世界に、隣国ソ連と日本が協調して役に立っていこう、こういう姿勢が示されたということにおいて、非常にこの面も私はうれしく実は思うし、まさにあれを見ると日ソ協調の時代に入ったという印象もするのでありますが、この点についてはいかがですか。
  96. 中山太郎

    中山国務大臣 私は、今委員指摘のように、今回の会談を通じて共同声明を発出するという、かつて見られなかったことができるようになった、しかも会談が始まったその日にこの共同声明が出せたことも、極めてこの中東地域の平和のために意味が大きかったと思っております。私は、そういう意味で、これからもこのような日ソの国際平和に対する共同の意見の交換、こういうものがこれから行われる端緒になればと期待をいたしております。
  97. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 そこで、二、三関連してお聞きしたいのですが、これはシェワルナゼ外相も言っていたようでありますし、また、かねがね我々の中でも議論のあるところなんでありますが、どうも両国間相互で従前は仮想敵国である、これはシェワルナゼさんはそういう表現を使ったようですね。あるいは潜在的脅威、これは我が国側では政府側でよく使われている言葉であります。しかし、そういうような表現というものはもう本当に過去の時代の表現であって、これからそういうような時代ではもうないという認識は、今回というよりはもう少し前からそういうものができてきていたが、今回の定期協議を通じて本当にすとんと実感できるような気がするのですね。どうですか、もうそういうような認識だとか表現はこの際昔のものとするお気持ちはありますか。
  98. 中山太郎

    中山国務大臣 ソビエトが日本の潜在的な脅威、こういう印象があったことは否定できないと思います。私は今回の日ソ外相会談においてシェワルナゼ外相に率直に申しました。それは、ゴルバチョフ大統領御自身も、ソ連のGNPの二〇%近いあるいは三〇%近い費用が防衛費に充てられてきた、シェワルナゼ大臣もそのような発言をされておられたことは、すなわち裏を返せばそれだけの膨大なソ連の軍事力というものは隣国の日本に滞在的な脅威感を与えたことは否めない。そうするとシェワルナゼ外相はこう言われました。それは言わなかった方がよかったのか、こういうお話もございましたが、それはおっしゃっていただいた方がよかった、今日の新思考外交を進めているゴルバチョフ大統領あるいはシェワルナゼ外相のいわゆる外交方針というものを支持しているから私はこのような発言をするのであって、これだけの率直な意見が交換できること自身、それは日ソ間の信頼の形成に大きく役立つ、このように私は会談の中で申したことを御紹介しておきたいと思います。
  99. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 つまり、例えば最近新聞にもちょっと出ていたけれども、潜在的脅威というような表現は防衛白書でも今度の平成二年度では使わないことにしよう、ああ、なるほどなと思って、僕は記事を読んだのであります。しかし、白書は出てみなければわからないわけですから、それはどういうことになっているかわからないが、少なくともそういう認識防衛庁でも出てきている。いわゆる信頼醸成措置と言われるわけですが、それはまさにそういうお互いの不信感というものを取り去っていくことが大事なわけであって、一つ一つの個々のことを具体的にどうするということも大事たけれども、しかし、そういう政府の姿勢あるいは責任者の姿勢、表現、こういうことも大変大事なことであって、ああいうような表現というのはこの際余り使わない方がやはり望ましいと私は思いますが、ちょっと今のお答えには抜けておりましたものですから。
  100. 中山太郎

    中山国務大臣 私どもは現実を直視して外交をやっていかなければならないと思います。そういう意味では北方領土に駐留しているソ連軍の存在、また極東地域の膨大なソ連軍の軍事力、これが日本と比べてはるかに大きいものだということは否定できないと思います。そういう中で潜在的な脅威を我々が感じないようにソ連が軍備の削減をするということが一番大切なこと、またソ連もそのような方向に向いていることは歓迎しなければならないと私は思います。そういうことが進むことによって潜在的な脅威感というものは我々の国民の気持ちから去っていくのではないか。  私は防衛白書をまだ見ておりませんので、白書の内容についてはコメントを差し控えさせていただきたいと思います。
  101. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 それじゃ、少なくとも仮想敵国という表現は適当じゃないのじゃないですか。大臣、これはあってはならない言葉でないですか。いかがですか。
  102. 中山太郎

    中山国務大臣 私は仮想敵国という言葉を一度も使ったこともございませんし、これからも使おうと考えてはおりません。
  103. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 ぜひ大臣だけでなくて政府全体がそうでありますように心から期待をしたいと思います。  そういう意味でも今度の協議で特に注目されたのは、アジア・太平洋の安全保障問題での日ソの対話で新たに事務レベルの政策企画協議というものを設けることに合意を見た。これも非常に画期的なことであって、いわゆる安全保障、政治、軍事等についても両国間でいろいろ話し合っていくということは大変好ましいことであるというふうに思うのですが、この政策企画協議の性格や考え方あるいはまた作業のこれからの展開等について少し御説明をいただきたいと思います。
  104. 中山太郎

    中山国務大臣 これから始まる外交当局の間の事務的なレベルの話でございますので、欧亜局長から答弁をさせていただきたいと思います。
  105. 兵藤長雄

    ○兵藤説明員 お答えいたします。  今回、中山外務大臣とシェワルナゼ外務大臣との間のアジア・太平洋地域におきます安全保障問題を討議いたしました中で、安全保障問題の基本的な考え方についてはなお日本とソ連との間にいろいろ基本的な差があるということもはっきりいたしました。そういう基本的な安全保障に対する考え方というものをさらに深く、詳しく、継続して議論をしようではないかということから、中山外務大臣とシェワルナゼ外務大臣との間で、お互いの外務省の中に総合安全保障問題を考える局がございますので、これは外務省では情報調査局でございますが、この両方の局がそういう観点から、あるいはもっと広く、安全保障政策というのは国の対外政策の基本でございますから、対外政策全般も含めて議論をする場を設けようではないかということでつくったものでございます。  なお、これをどういうふうに開催していくかということは、今後、外交経路を通じて決めようということで両大臣が合意してございます。
  106. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 今月の二十七日に、国連開会中にニューヨークでアジア・太平洋外相会議を開こう、こういう考えがあって、これにシェワルナゼ外相は、いや、それは大変結構だし、参加をしたいというような意欲の意思表示があったというふうにも伝えられているのでありますが、これはソ連は参加ということになるのか。あるいは聞くところによると、韓国は含めているようでありますが、北朝鮮は予定してないというようなことなども聞いているのでありますが、この辺のところについてお考えをちょっとお知らせいただきたいと思います。
  107. 中山太郎

    中山国務大臣 従来、国連が開会されている最中に日本外務大臣が出席する場合にはASEAN各国の外相とのランチあるいはディナー、あるいはアフリカ諸国の外相との協議、あるいはリオ・グループと言われるラテンアメリカの外相との協議を慣例としていたしてまいりましたが、アジア・太平洋地域というものはこれから極めて大きな変化に富む時期を迎えておりますので、私はかねて、国連総会の機会にアジアの外相と特定の議題を構えずに、この地域の経済問題を中心にいろいろと協議をする機会を持ちたいということを内内話をいたしておりました。こういう中で、現在どのような国々を御招待するかということについては協議の最中でございまして、まだこの概要が全部固まったわけではございません。
  108. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 せっかく出たいというのですから、殊に来年の四月まで展望してさまざまなことがあろうと思いますので、そうあってほしい、私はこういうぐあいに思うところであります。  ところで、日本に来る前にウラジオストクでシェワルナゼ外相は、九三年に全アジア外相会議に関する提案を行って、まあ三年先のことでありますから大分間のあることではありますが、しかし従前のソ連側の一つの脈絡の上での提案でもあろうと思います。今のような全体の国際状況、日ソ間の環境の中での提案でもありますので、これについての御見解もいただいておきたいと思います。
  109. 中山太郎

    中山国務大臣 シェワルナゼ外相のウラジオにおける演説は私も存じております。九三年あるいは九四年というお話でございますが、これから三年間国際社会あるいはアジア・太平洋がどのような変化を遂げるか、これは私自身がまだ十分な見通しを持っておらない段階でございまして、今回のシェワルナゼ外相の演説については、私はその演説を十分検討をしている最中であるというふうに申し上げておきたいと思います。
  110. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 日ソ間ではちょっと別な形で大変明るい話題がまたここ十日ほどあるわけですね。例のコースチャ君の問題ですね。  サハリンのコンスタンチン君が大やけどをして医療協力を求めてきた。これがまたよく迅速に協力関係が成立して、今健康の状況もなかなかいいようでありますが、シェワルナゼ外相からこの前感謝状なんかも中山外務大臣を通じていただいたようでありまして、これは何よりも信頼醸成にまた寄与するものであろうというふうにうれしく思うわけであります。これはやはり北海道の横路知事などの従前のいわゆる自治体外交の長い積極的な努力の成果であろうというふうに思いますし、また外務省なんかもその要請を受けて、ふだんの外務省ではとても考えられないようなことでありまして、よくまあやっていただいたというふうにその決断にも敬意を表したいと思うのです。  しかしこれでも我々は改めて認識したのですが、自治体外交というものの重要さ、殊に隣国の関係等については大変大事なことだ。どっちかというと従前硬直的であった日ソ関係の中でも、自治体は一生懸命な友好の努力を続けてきている。そんなものがああいう成果を生んでくるのだろうというふうに思います。そこで、横路知事が、来年四月にゴルバチョフ大統領が来るときにはそんな意味でもぜひ北海道に立ち寄ってほしいということで積極的な要請があるのでありますが、これは大臣、力になってほしいと思いますが、いかがですか。
  111. 中山太郎

    中山国務大臣 最初のコンスタンチン君の件で少し申し上げておきますと、委員からも過大なお褒めの言葉をいただいて外務省としては大変恐縮しております。なお、お父さんがついてこられておりますが、お母様もぜひ一日も早く一目でも子供さんを見たいというお気持ちがあろう、こういうことで、北海道の横路知事も大変御苦労をいただいておりますが、外務省としては今回ビザなしで子供の顔を見に日本に来るソ連の母親の入国を認めようということを決断いたしました。これはフェリーの関係で八日に北海道へ来られるということでありますが、このようなことが日ソ間で展開されていくこと自身が、ソ連の人たちにも日本の善意が伝わっていくだろうというふうに思っております。  なお、明年のゴルバチョフ大統領の訪日の際に北海道を訪れるかどうかということは、これは委員の御希望として聞いておきます。これはあくまでも、大変超過密な外交日程をゴルバチョフ大統領はこなしておられまして、まだ具体的に何日間日本におられるか、どのような予定であるかということも全然策定されていない状況でございます。
  112. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 何といったって隣同士の地域でありますし、特別な感情が北海道民にはまたあるわけですし、殊に北方領土を含めているということ等もありまして、ぜひひとつ御配慮方をよろしくお願い申し上げたいと思うのです。  そこで、今のような非常に画期的なこともあったわけでありますが、しかし一方でどうしてこうなのかなという事態なんかも残っておりまして、これは局長さんでも結構なんでありますが、例えば稚内とサハリンの間でフェリーの往復が既に去年来あるのですね。行き来もしているのですが、ソ連人がそのフェリーに乗ってきて稚内に上陸することは原則として従前認めなかった。今度一定の制約の中で認めようかということにもなってきているようでありますが、これはもうそろそろ取り払ってほしい、こう思うのですね。  あるいは北海道でいいますと、留萌、それから紋別、網走、根室なんというところに例えばソビエトから芸術家などが来ましても、そこで音楽会をやるとかなんだとかということはできないのですよ。町に行けないという状況がまだ残っている。外交上、双方の均衡ある何かこの種の制限への配慮というようなものがあるらしいわけでありますが、しかしもうそろそろ、殊に自治体外交、地域の外交、市民外交といいますか、こういうものの重要な折でありますから、ぜひこれらについても御決断をいただくべきではないかというふうに思います。あるいはまたサハリンと北海道の空港の航路の開設等につきましても、向こう側は積極的なんだけれどもやはりなかなかこちら側としてはそうもいかないということで、またちっとも前進してないですね。こういうことについても、この際ぜひひとつ個々の具体的な友好や信頼の醸成のために御協力お願い申し上げたいと思います。
  113. 兵藤長雄

    ○兵藤説明員 お答え申し上げます。  従来、委員指摘ごとく、ソビエト連邦におきましては膨大な地域が外国人立入禁止、あるいは極めて厳しい旅行規制措置というものが実行されておりました。例えばナホトカには私ども総領事館を置いているわけでございますけれども、ナホトカの市の中ですらここに入ってはいけないという箇所が三カ所もあるというような状況でございました。しかし御指摘ごとく、時代の変わりとともにソ連もそういう規制をかなり大幅に緩和しつつあるということは御承知のとおりでございます。私どもも相互主義という立場から、あるいは安全保障上という立場も加えまして、同様に、日本国内におきましてソビエトの方々の旅行に対してある程度の規制をとってきたということも事実でございます。御指摘の稚内におきましても、先生御案内のような我が国の安全保障上の問題もあるわけでございます。  私どもといたしましては、ソ連側のそういう緩和措置に合わせまして、しかし私どもも少しずつそれに見合った緩和措置を今までとってきております。先生の御指摘の点も踏まえまして私どもさらに検討を加えてまいりたいというふうに考えております。
  114. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 最近は、一定の条件つきではあるが、やや前向きの対応をしていただいているわけであります。しかし余りもうそういう、何となく非公式にどうだとかこうだとかいうことのないような状況にぜひしていってほしいと思います。大臣、個々の問題に入ってくると今のような問題がぞろぞろ出てくるのですよ。ですから、総論では大変いい感じになってきているのだけれども、しかし実際の問題になると壁はまだまだ残っているということでありますから、そういう点についての御配慮もお願い申し上げたいと思います。  外相会談に関する質問はあと一つで終わりたいと思います。  これはちょっとお話しいただけないのだろうとは思いますが、ただあったかないかということだけなんですけれども、来日なさる前にシェワルナゼさんは中国と北朝鮮にお寄りになっているわけですね。いわゆる日朝関係改善に関してシェワルナゼさんからアドバイスはあったのかないのか。我々実は期待して、また今御承知のように自民党、社会党の代表団が向こうへ行ったりして懸命な努力をしている折でありますから大変注目をしていたのでありますが、内容についてはお触れいただかなくても結構ですから、そういうことがあったかどうかちょっとお聞きしたい。
  115. 中山太郎

    中山国務大臣 北朝鮮の問題について意見の交換はございました。
  116. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 ぜひ、今回の定期協議で示された日ソ両国間の友好的前進というものを足場にしながら、日朝の関係改善あるいは南北の平和的な関係の醸成というようなことについて、一層の努力をお願い申し上げたいと思います。  少し時間を見て、中東情勢の問題で、もうほとんど高沢先生が御質問をなされて、落ちこぼれも余りないようなことであります。  ちょっと、これはかねがねお聞きしたいと思っていたところなんですが、安保理事会決議六六五についてなんであります。まあ、マスコミ等で国連安保理事会がいわゆる多国籍軍の軍事的な行動について容認をしたというように伝えられているこの六六五の決議について、要旨なんですが私はこの文章を外務省の方からいただいて、読んでみますとこうなっているわけですね。  クウェイト政府協力し、同地域に海上部隊を展開している全ての国連加盟国に対し、船舶の貨物と目的地の検査・確認、及び、安保理決議六六一に示されたそれら船舶に関する措置の厳格な実施を確保目的とし、全ての出入港する船舶を停止させるため、安保理の権威の下、特別な状況下に即した必要と思われる措置を取ることを要請する。 こうなっていますね。  これは、軍事的な行動というのはどこに出てくるわけですか。これは報道としては盛んにそう言われているのですが、しかし、実際にこの決議を見るとそうはなっていないですね。
  117. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 安保理決議六百六十五号の第一項につきまして、ただいま先生が読み上げられたとおりでございます。もともとこの項につきましては必要最小限武力行使してよいという項目がありましたけれども、これはアメリカの案でございましたが、その後安保理のメンバー国間で協議する過程、特にソ連の提案が入りまして、こういうふうに変わったわけです。  ただ、この採択に当たりまして、この決議は十三対ゼロ対二、二カ国が棄権したわけなんでございますけれども、採択されました際に、アメリカとイギリスとフランスはこの第一項のもとで必要最小限武力行使も可能であると解釈するというふうに解釈宣言をして採択に賛成しております。そのときソ連は武力行使を含まないとか、特にそういうコメントはいたしておりません。
  118. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 まあ、そういうことでしょう。つまり、安保理事会における最終的な決議というのは、当初の軍事的な行動というのは消されているわけですね。なくなっているわけだ。そして「特別な状況下に即した必要と思われる措置」という表現に変わっているわけです。ですから、それは反対ゼロということにもなっているわけですね。ここのところが、やや世上誤って伝えられていることが多い。三カ国が、アメリカほかがそういうようなことの宣言をしたとはいいましても、それは、そのうちの一定の国がそういうふうに述べたということであって、事務総長は、それは必ずしも軍事的な行動を言っているのではないんだよということはお話になっているわけです。ここのところを我が国としてもひとつ誤解のないように踏まえておいていただきたいというふうに思います。  それから、この第四項のところで、「関係する国家に対し、本件決議の前述の諸項を遂行するため、軍事参謀委員会を適切なメカニズムとして利用し行動を調整すること、」こういうことが出ているのでありますが、これは、国連として、多国籍軍が軍事行動を起こすときに国連の軍事参謀委員会と適切に連動、調整をするのだという意味なんですか、どうなんですか。
  119. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 国連憲章によって認められております軍事参謀委員会といいますものは、本来、憲章第四十二条に基づいて国連軍が設立された場合にこの軍事参謀委員会というのは活躍するわけでございますけれども、これまでのところ、そのような場面がなかったわけです。ただ、従来から、ソ連ができるだけこの軍事参謀委員会を活用しようということを主張しておりまして、今回も、アメリカの方もソ連の立場にある程度理解を示してこういう新しい項目が入ったというふうに私たちは理解しております。  ただ、この「軍事参謀委員会を適切なメカニズムとして利用し行動を調整する」という「調整」がどの程度多国籍軍の行動を調整するかという点につきましては、加盟国間で必ずしもまだ統一された解釈はなく、例えばアメリカなどは、主としてこの場を使って情報交換をしようというふうに考えているようです。ソ連の方は、もう少し調整機能を与えようというふうに考えているようで、私たちは必ずしもまだまとまった解釈承知しておりません。
  120. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 先ほど高沢委員の方からもお話がありましたが、私も、もしあそこに軍事的な行動、軍事的な衝突というようなことが起こったら、それはもう人質を初め多くの方々の犠牲や、あるいはあの地域にも大変な、はかり知れない損害を生ずるわけです。しかも、それは言うまでもなく全世界へ深刻な経済的な危機を及ぼすということがあって、もうどんなことがあったってあそこで軍事的な紛争にこの後展開させないように、多国籍軍に対しても強い制約をしてほしい、自制してほしいというふうに私は思う。もちろん、それは一方でフセインに対しても、あの不当な行為に対する要求は強くしていかなければいけないわけでありますが、しかしいかなる場合でも、やはり軍事的な衝突は避けてほしいというふうに思うわけです。  総理あてに、あそこの在留邦人からの要請書が出ていて、私もここに持っているわけですが、全く悲痛な叫びで大臣あてに要請書が出てきている。その最後のところでは、何とか特使を派遣してもらえぬかというようなことも出ているわけで、これらの人々のことを考えるとなおさらのことでありますが、どうかそういう意味で、最悪の状況にならないような外務大臣の最善を尽くした御努力を心から要請を申し上げて質問を終えたいというふうに思いますが、それに関する大臣の御意見をまたお伺いしたいと思います。
  121. 中山太郎

    中山国務大臣 今委員指摘のような平和的な事態の収拾に日本政府としてはできる限りの努力をしてまいりましたが、今後ともしてまいりたい、このように思っております。
  122. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 どうもありがとうございました。
  123. 柿澤弘治

    柿澤委員長 次に、山田英介君。
  124. 山田英介

    ○山田委員 私は、まず最初に、中東貢献策の第二段階と言われております国連平和協力法の制定についてお伺いをしたいと思います。  まず、外務大臣にお伺いをしたいのでございますが、海部総理は臨時国会が召集される前、できるだけ早い時期に中東五カ国を訪問したい、このように承知をしているわけでございますが、この時期に総理がこの湾岸諸国を歴訪されるという意味、ねらいといいますか、この辺につきまして明らかにしていただきたいと同時に、今人質とされている百四十一名の邦人を含めてまだ数百名の邦人が他の諸国の人質その他国民の人々とともに軟禁状態にある、こういう人道的にも大変憂慮すべき状況が一方にございます。この人質に与える影響につきましてもあわせて見解を明らかにしていただきたいと思います。
  125. 中山太郎

    中山国務大臣 総理の中東訪問は、実はもうここ数年来あの地域への日本の総理の訪問がございませんでして、一般のいわゆる親善を深めるという考え方の中で、相当前からこの八月十五日から総理が中東を公式に訪問されるという計画がございました。それはあくまでも平時状態の数カ国間との親善の増進のための計画でございましたが、御案内のように八月二日に突如としてイラクの侵攻が起こったわけでございまして、そういう事態の中で総理が出られるということについては、中東地域の平和のために日本政府としてどのようなことを決断しなければならないかというために総理は日本におられて、私が総理にかわって五カ国を訪問するということに急遽決定をいたしました。  私は五カ国の首脳にそれぞれ海部総理の親書をお渡しするとともに、総理がこの地域の平和の維持のために日本政府の政策を決定しなければならない、そういうことで現在日本におられるけれども、九月の末に予定される国連の子供サミットこ出られた直後、中東訪問を予定しておるということを先方に伝えております。先方も、これを歓迎するという意思を明確に私に示されました。  なお、今委員指摘のように、予定される総理の中東訪問が人質を握っているイラク政府に対してどのような影響を与えるかというお尋ねでございますが、私もそれについては大きな心配を実はいたしております。私自身の訪問の最中も実はそのようなことを十分心にとどめておりました。こういう中で事態が一刻も早く収拾されることが我我の国家にとっては当面最も望ましいことであり、そのためにあらゆる努力を外交的に現在やっている最中でございます。  これからまだ約二十日間以上の日数がございます。九日には米ソの首脳会談がヘルシンキで行われるわけでございまして、私どもとしましたら、事態はこの二週間ぐらいの間に一つの大きな局面を迎える可能性がある、そのようなことで平和が維持されれば総理の訪問は予定どおり行うべきである、このように認識をいたしておるということを申し上げておきたいと思います。
  126. 山田英介

    ○山田委員 大変重要な中身を含めた御答弁だと認識をいたします。  既に総理大臣特使として外務大臣は中東諸国を歴訪されてこられているわけでございます。総理が訪問可能なそういう状況維持、あるいは局面の展開というものがなされている状況においてはおいでになる。しかし、何も持たずに行くわけには当然いかないはずでございます。子供サミットの場をかりて日米の首脳会談もセットされているということです。ですから、湾岸に展開をする米軍を中心とした多国籍軍の軍事経費についての負担問題も恐らく日米首脳会談では改めて議題になるかもしれません。と同時に、いわゆる貢献、支援策の第二段階と言われる国連平和協力法の中身はどうなんですかという話にも当然なるのではないかと私は思います。  そうなりますと、それらは日にちがあるようでやはり余りありません。当然そこをきちっと煮詰めた上で子供サミットへ出発される、日米首脳会談に臨む、そしてその足で中東へ飛ぶということになろうかと思います。非常に難しいタイミングでの総理の歴訪というふうに言わざるを得ません。私もそういう角度から、この点につきましては注意深くまた可能な限りのというふうに考えておりますので、よろしくお願いを申し上げたい。したがいまして、国連平和協力法につきましては、タイムリミットから見てもある程度の取りまとめというもののめどはもうつけておられるはずだというふうに私は考えます。  そこでお伺いしたいのですが、具体的にこの国連平和協力法、仮称でございますが、この中身に非武装自衛官の派遣を盛り込んでおられるのかどうか、この点についてまず外務大臣からお答えをいただきたいと思います。
  127. 中山太郎

    中山国務大臣 自衛官をその中へ組み込むかどうかということについては何の決定もまだいたしておりません。
  128. 山田英介

    ○山田委員 外務大臣におかれましては、現時点において盛り込む方向がいいとお考えでございましょうか。  あわせてもう一点。この国連平和協力法の中に非武装自衛官の派遣の規定を盛り込もうというふうに仮に決まった場合、それだけで非武装の自衛官を外へ出すことができるのかどうか、必然的に自衛隊法などの改正も必要になるのかどうか、ここもあわせまして御見解を明らかにしていただきたいと思います。
  129. 中山太郎

    中山国務大臣 まだ政府として正式に、私も交わった会議で協議をいたしておるという状況ではございません。そのような状況の中で仮定にそういうことを考えた答弁は、この機会はひとつ遠慮をさせていただきたいと思っております。
  130. 山田英介

    ○山田委員 それではもう一つ、今日の国際情勢あるいは国際社会における我が国の占める位置などなどを考えた場合に、金、物だけでは済まないのかな、やはり人の派遣もこれは避けて通ることのできない、そういう局面を我が国も迎えておるという認識は私自身持っております。  そこで、例えば今回は船舶などをチャーターいたしまして、そして民間の船員がこの運航に携わる、あるいはまた医療分野といいますか、人道分野といいますか、医療の分野で民間のお医者さんあるいは看護婦さん等々医療関係者、従事者を派遣する、こういう支援、貢献策の中身になり、一部実施に移されているところでございます。  しかし御案内のとおり、民間方々がそういう紛争あるいは極度に緊張状態にある地域に出かけていく、あるいは行かざるを得ないといった場合に、その民間方々の法的地位があいまいであっては、あるいは安全保障上それがよくフォローされていなければ円滑に進めることができないし、それからトラブルや混乱もあり、結果的にそれが対応のおくれというような形で指摘されかねない。ということを考えますと、少なくともこのような船員とか医療関係者とかこういう民間方々が有事の際にその当該地域に出かけていくためには、やはり法律的な安全保障上の問題あるいはその地位ということについて裏打ちをしなければならないのではないかと考えるわけでございますが、これは国連平和協力法の制定を含めましてそのような必要性を外務大臣としてお感じになっておられるかどうか、この点については明確な御答弁をいただきたいと思います。
  131. 中山太郎

    中山国務大臣 委員指摘の点は、国際協力、平和協力をする上で最も基本的な問題であるという認識を私は持っております。私は中東から帰りまして成田からそのまま官邸へ行って深夜に至るまで協議をいたしましたけれども、問題は、飛行機は胴体がある、機体はある、船も金を出せば借りられる、しかしだれかそれを運航するのか。飛行機の場合はパイロットが要る、機関士が要る、あるいは整備員が要る。このような人たちが協力しなければ一機の飛行機も飛ぶことはできません。そういう中で船の場合はどうか。船はチャーターできても船員をどうするか、だれが責任者になるのか、この問題がついて回るわけであります。医療の問題でもそのようなことが言えると思います。  その場合に、一体だれがその協力をしてもらう人と契約を結ぶのか、いわゆる行政権限に基づく命令権というものは政府に、現行の状態では公務員以外はないわけでございますから、そういう場合にその方の身分をどのようにするのか、いわゆる外務省職員にするのかどうかという問題がまず一つ出てまいります。また、身分の扱いをどうするのか、つまり人事院規則で言うその方のあらゆる処遇面の問題がございます。また、事故が起こった場合に、危険な地域に行くわけでございますから、できるだけ安全を確保するといいましても万が一という場合も考えておかなければなりません。その場合に国家としてその方々にどのような公務災害補償をすることができるか、こういうことは法律を整備しないと実はなかなか難しい問題でございまして、私が一番頭を痛めておりますのは実はその問題でございます。  そういう面を十分議論をしないで、これから国連に金だけではなしに人が出ていって協力をするといった場合には、そういうふうな法律あるいは規則というものをこの機会に国会で御議論をいただいて、国民の納得いく形でのそういう制度、法制度を整備することがどうしてもこれからの日本には必要になっているという認識を私は持っております。
  132. 山田英介

    ○山田委員 一つだけ、憲法第九十八条のいわゆる条約遵守義務と言われる条文がございます。戦争放棄を規定をいたしました九条がございます。この関係につきまして、九十八条を根拠に現憲法枠組みのもとでも国連軍に、あるいは国連がかかわる紛争地域への自衛隊参加というものはできるのではないかという有力な与党の政治家の方の発言もこれありまして、改めて当委員会でお伺いをしたいわけでございますが、一体これは政府として現在どのような御認識をお持ちになっておられるのか。  条約遵守義務を優先させて、そして現時点では国連軍が結成されたということではないのですが、見方によればこの多国籍軍というのは国連軍に準じていると見ることもできるのではないかという、そういう考え方を踏まえて自衛隊派遣、派兵といいますか、可能であるというようなそういう議論に対しまして政府としてはどういう御見解をお持ちになっておるのか、この際改めて明確にしていただきたいと思います。
  133. 柳井俊二

    柳井説明員 まず、私の方から国連憲章関係についてお答え申し上げたいと思います。憲法関係につきましては法制局の方から答弁していただきます。  御案内のように、国連憲章第七章のもとで形成されることが想定されております国連軍に対する加盟国の協力でございますけれども、これは国連憲章によりますれば、憲章第四十三条に基づきまして安全保障理事会と加盟国ないし加盟国軍、複数の加盟国との間で締結される特別協定において規定されることになっております。国連軍を形成する憲章第四十二条に基づく決定によりまして直ちに各加盟国が何らかの具体的な内容協力をしなければならないという事態にはならないわけでございます。  なお、これまで前述の意味での国連軍国連創設以来成立しておりません。したがいまして、憲章第四十三条の特別協定もこれまで締結されたことはございませんので、どのような特別協定が具体的な場合に即してできるかということはこの時点では明らかではございません。いずれにいたしましても、憲章上の制度といたしましては以上申し上げたようなことでございます。
  134. 大森政輔

    ○大森説明員 それでは、私どもの方から、憲法九十八条二項と条約との関係憲法九条との関係について、すなわち条約と憲法との関係についてどのように考えているのかということにつきまして、一般的なお答えをさせていただきたいと思います。  ただいま御指摘ありましたように、憲法九十八条二項は、日本国が締結した条約はこれを誠実に履行しなければならないと規定しているわけでございますが、条約と憲法との関係につきましては、内閣は憲法の尊重、遵守義務を九十九条で負っております。したがいまして、憲法に違反する条約を締結する権限があるかということになりますと、それはないということになろうかと思います。そういうことと、条約締結手続と申しますのは憲法改正手続よりも下位な手続に憲法上なっているというようなことを総合いたしまして、私どもは、憲法が条約に優位し、条約が憲法に優位するものではない、このように考えている次第でございます。
  135. 山田英介

    ○山田委員 防衛庁に一点だけお伺いをいたしますが、御案内のとおり、限定的な武力行使容認決議国連安保理であったとはいえ、多国籍軍は多国籍軍でありまして、国連軍でもないし、国連平和維持軍でもない、午前中の答弁でも明らかになっているところでございます。しかし、現在の国際情勢あるいは将来の情勢というものを考えた場合に、国連中心国連主導で世界国際の平和、安全というものを維持しあるいは回復をしていこう、こういう流れは一層強まるであろう。私もそういう方向が望ましいという立場に立つわけでございますが、その中で、仮に将来国連軍憲章四十二条、四十三条に基づいて創設された場合、先ほどもお話ございましたとおり、この安保理事会と加盟国との間で特別協定を結び、それを各国憲法の手続に従って批准をして、そして国連安保理に、陸海空その戦力を含めて利用させることに同意する、こういうことになっているわけでございます。  そこで、防衛庁に御見解を伺いたいのですが、仮に将来国連軍が創設をされて、我が国に対する陸海空戦力についての、いわゆる実力と言った方がいいでしょうか、それについての分担要請というものが割り当てられてきた場合に、防衛庁としては、この国連の兵力のあるいは実力の出動要請に接したときにどのような対応がとれるのですか、簡潔にお答えをいただきたいと思います。
  136. 日吉章

    ○日吉説明員 ただいま委員の方から一つの仮定を置いての御質問でございまして、そもそもそういうような仮定のもとにおいてお答えを申すことが適当かどうかというふうに私どもは考えております。  まず、その仮定につきましては、自衛隊としてということ以前の問題といたしまして、日本国憲法上そのような仮定が妥当するのかどうかという大前提があるのだと思います。日本国憲法上それは憲法違反になりませんで妥当すると、そういうふうな協定が締結し得る、あるいは日本国としてそういう協力ができると言えるのかどうかという問題があろうと思います。それができるとした場合に、自衛隊はどうかということでございますが、これはまさにそのときの国家そのものの国民世論あるいは国会議論等を踏まえた総合的な判断ということになろうと思います。  極めて法技術的に申しますと、そもそもそういうようなことを現在の自衛隊法は予定しておりませんので、現在の法律上はそのようなことはでき得ない、かようにお答えするしかしようがないと思います。
  137. 山田英介

    ○山田委員 多国籍軍への資金提供に関連いたしまして、何点かお伺いをいたします。  まず、この多国籍軍という現在の軍事展開あるいは軍事行動というものでございますが、これは例えば国連憲章上あるいは国際法上この多国籍軍というのはどういう位置づけになりますのか、簡潔にお答えをいただければと思います。
  138. 渡辺允

    ○渡辺説明員 いわゆる多国籍軍でございますが、まず、国連の安保理が決議六六〇というものを採択いたしております。これは御承知のように、イラククウェート侵攻が国際の平和と安全の破壊であるということを認定いたしました上で、イラク軍が八月一日の駐留地点まで無条件に即時撤退することを求めたものでございます。それで、この決議イラクが受け入れないという状況前提といたしまして、六六一という憲章四十一条に基づいた強制的な経済制裁を決定した決議が採択されております。  いわゆる多国籍軍は、これらの国連決議を受けまして、その国連決議実施の確保と申しますか、イラクがその侵攻地帯から撤退すること、それから、経済制裁が実際に効果的に行われることを確保するためにこの地域に展開されているものというふうに理解をいたしております。
  139. 山田英介

    ○山田委員 ちょっと角度が違うのですが、それではこういう聞き方にしますが、多国籍軍の行動は国連憲章第五十一条の集団自衛権行使に基づくものであるということはお認めになりますか。
  140. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 先ほど言及されました国連決議六六一号におきまして、その前文で「イラクによるクウェイトに対する武力攻撃に対する憲章第五十一条の下での個別的又は集団的自衛の固有の権利を確認」するというふうに規定されております。
  141. 山田英介

    ○山田委員 今御答弁ございましたように、先ほど局長が四つないし五つの国連安保理の決議を挙げて答弁なさいましたけれども、その五つの決議があるなしにかかわらず、詰めて議論をすれば、詰めて申し上げれば、この経済封鎖四十一条、それからクウェート侵攻については撤退せよ、あるいは併合は無効だ、人質を早く解放せよ、それから、この経済封鎖をより完全ならしめるためにその範囲内でいわゆる武力行使の権限と規模というものを明らかにしたわけであります。だからといってこれらの五つの決議がなされた後においても、詰めた言い方をすればやはり現時点における多国籍軍の行動というのは引き続き国連憲章五十一条に基づく行動である、こういうことになるのではないでしょうか。
  142. 柳井俊二

    柳井説明員 ただいまの点につきましては、先ほど御答弁申し上げましたいわゆる国連軍、これは国連憲章が本来想定しておりましたところの国連軍ではございません。先ほど中近東アフリカ局長から答弁がございましたように、一連の決議に基づきまして創設されたいわゆる多国籍軍でございまして、いわゆる憲章第四十二条、四十三条のもとでつくられた国連軍ではございません。仮に武力紛争が生じまして武力行使をするという場合におきましては、憲章五十一条で認められた自衛権行使ということになろうかと思います。先ほど既に答弁ございましたように、一連の国連決議、安保理決議の一部におきましてこの憲章五十一条の固有の自衛権というのを確認している次第でございます。  ただ、経済制裁措置等につきましては、これは憲章七章のもとで国連自体としてとったものでございまして、この効果を厳格にするために決議六六五というものをつくりまして、これによって必要な措置も講じ得るという形になっておるわけでございます。
  143. 山田英介

    ○山田委員 非常にデリケートなところなのですよ、ここのところは。言い方を変えれば、グレーゾーンみたいなところがあるので私はあえて伺っているわけです。ですからはっきりお答えください。一言でいいのです。国連安保理の五つの決議がなされた現時点においても、米軍を中心とする多国籍軍の現在の行動、展開というものはなお引き続き国連憲章五十一条に基づくものであって、少なくとも四十二条、四十三条に基づくものではないということでございましょう。
  144. 柳井俊二

    柳井説明員 お答え申し上げます。  ただいま幸いにして武力紛争というものは起こっておりませんで、いわゆる多国籍能が当該地域に展開している状況でございます。この展開自体はいわゆる自衛権行使ではございません。
  145. 山田英介

    ○山田委員 展開自体は自衛権行使ではないと今おっしゃいました。これはちょっと違うのじゃないですか。要するに、国連安保理が平和の維持、安全回復のために必要な措置をとるまでの間「加盟国がそれぞれ固有に保有する個別的または集団的自衛権行使をすることは妨げない、こういう国連憲章第五十一条があるわけです。米軍の初動の展開というのはまさに五十一条に基礎を置いているのじゃないでしょうか。と同時に、その後十数カ国の多国籍軍と言われる形で各国の軍事力がそこに集結をされてきて、それがある一時期から多国籍軍という言われ方になっているわけです。しかし、今展開している行動自体は武力行使が起きていないから五十一条に基づくものではないという御答弁ですけれども、それはちょっと違うのじゃないでしょうか。ちょっと整理して御答弁お願いします。
  146. 柳井俊二

    柳井説明員 ただいま申し上げましたことは、多国籍軍が当該地域に移動しそこで展開しているということ自体は必ずしもそれ自体武力行使武力紛争ではございませんので、基本的には一連の国連決議に基づいて、国連の要請に基づいて展開しているということでございます。ただ、そこで現実に武力行使が起きればそれは五十一条の自衛権に基づくということに相なろうかと思います。
  147. 山田英介

    ○山田委員 ちょっと納得できないのですよ、ここのところが。  それではこういうふうに伺いましょうか。武力行使をしていないから、武力行使に至っていないので、それは五十一条に根拠を置いた出動でも展開でもないということですか。最初はそういう御答弁なのですよ。しかし、先ほど御答弁されたときには、非常にわかりにくいのですね。
  148. 柿澤弘治

    柿澤委員長 柳井条約局長、明快にお願いします。
  149. 柳井俊二

    柳井説明員 多少混乱があったかもしれませんので、もう一度整理させていただきます。  初め御答弁申し上げましたときには、五十一条ということを申し上げましたけれども、これは現実に武力闘争、武力紛争が起こりましたときにどのような根拠があるかという点に着目いたしまして五十一条と申し上げた次第でございます。ただ、多国籍軍イラク近傍への展開自体につきましては、自衛権によらなければできないというものでは必ずしもございませんで、これがいわゆる国連憲章第二条四項が禁ずるところの武力による威嚇というようなことに当たり得る行為であるといたしましても、五十一条の自衛権並びに国連安保理決議六百六十号、六百六十一号及び六百六十五号によるイラクに対する武力行使すら許容される多国籍軍の展開自体が武力行使あるいは威嚇ということではないということでございます。展開自体が武力行使ではないということでございます。
  150. 山田英介

    ○山田委員 まさに限定された時間内でのやりとりでございますから、一つの問題提起として実は私が懸念をいたしますことは、なぜこのようにこだわるかといいますと、結局この多国籍軍というのが五十一条の国連が必要な措置をとるまでの間、個別的、集団的自衛権行使を妨げないというところに根拠があるとすれば、まさに集団自衛権行使している、あるいは行使するおそれのあるその多国籍軍我が国のお金が、税金が、十億ドルとか何十億ドルとかというものが直接つぎ込まれるということは、これは憲法の禁ずる集団自衛権行使に限りなく疑義が出てくるのじゃないですかというところを私は申し上げたいわけでございます。とてもあと五分でどうこうという問題ではありませんけれども、この問題はぜひ今後の議論のたたき台の一つにしてまいりたい、いただきたい。政府においてもその点は、国民が安心する、また納得できる、そういう明確な解釈あるいは位置づけ、できるもの、できないものをできるだけグレーゾーンを残さないような形でお互いに努力したい。ぜひ政府もそういう角度からこの問題にアプローチしてもらいたいというふうに要望申し上げておきたいと思います。  それで、いま一つはちょっと時間がありませんので、またいずれかの機会にここでやらせてもらいます。  せっかくの機会でございますので外務大臣にお伺いをしたいわけですが、一つは、間もなく北京でアジア大会が開催されます。マスコミ報道などに接しておりますと、文部大臣派遣、出席を認めたらどうか、出したらどうか、こういうことでございます。確かに昨年のサミットで、例の天安門事件についての制裁措置の一環として各国の中国との高官交流というものは制限をしており、現在もその制限といいますか制約は生きておる、このように私は承知しております。しかし、スポーツの祭典ですから、スポーツ分野において、国境や人種や宗教的異なりやそういうものを全部乗り越えて、そうして本来開催される、そういうアジア大会ということでございますから、文部大臣の御出席は非常に結構なんじゃないかな、そこのところはサミット各国も、だから日本はどうこうということはないんじゃないかと私は思いますが、これは外務大臣立場でぜひひとつ御見解をお示しいただきたいと思います。
  151. 中山太郎

    中山国務大臣 今、委員から、アジア大会に日本の文部大臣を出席させるかどうかということで御意見がございました。まだ政府としては最終決定をいたしておりません。従来のァルシュ・サミットの申し合わせを尊重しながら今日までまいっておりますけれども、スポーツの大会ということでございますから、どういうふうな判断を下すか、しばらく時間をちょうだいいたしたい、このように私は思っておりますが、委員の御発言の御趣旨は十分理解をいたしております。
  152. 山田英介

    ○山田委員 もう一つ。ちょっと角度が違うのですが、私はさきの国会外務委員会の席上、大臣、そしてまた欧亜局長に御答弁をいただいた件でございます。  森鴎外記念館、東ドイツのフンボルト大学の附属機関として現在東ベルリンにございます。約六年間にわたりまして東独政府の好意と申しますか予算措置によって運営されて今日までまいりました。しかし、経済統合あるいはまた十月三日を期しての政治的な統合を目前にいたしまして、東独政府がこの予算を打ち切るということで、十一月いっぱいまでの大変なところに置かれているわけでございます。  日独関係は極めて重要です。しかも、統一ドイツと我が国との交流のきずなというのは極めて大事であります。と同時に、歴史的な、文化的な遺産というものを、海外のそういう、森鴎外、明治の大文豪の一つの記念碑として生前のその様子をそのまま伝えていけるような財産は非常に大事である。したがって、さきの外務委員会外務大臣は、外務省としても政府として全力を挙げてその保全に取り組みたい、そしてなお、調査派遣につきましては可能な限り速やかに現地に派遣をして両独政府我が国の関心を伝えたい、このような非常に前向きな御答弁をいただきまして感激をしていたわけでございますが、その後八月二日、電撃的なクウェートに対するイラクの侵攻がございまして、今日までの展開です。何か目が全部そっちに向いてしまって、伺いますとまだ調査団も出ていないということでございます。  確かに中東問題というのは大事です。これは最大級の課題でありますが、だからといってそのような、また一方における大事な森鴎外記念館の保存というようなものがどさくさに紛れて、そしてなくなっちゃったなんというようなことになれば、この責任というのはやはりあるのだろうと思わざるを得ないし、そんな責任などという言葉を使うまでもありません。それは非常に大事なことでありますので、ぜひひとつ調査団を出すなり出先の大使以下大使館をちゃんと督励して、ひとつその保全に十分な働きをまずやっておきなさいとか、ともかくそのように何らかの手を打っていただかないと非常に心配でございます。  大臣答弁以来、日本各地からいろいろな立場方々が、その後大丈夫か、どうなったか、こういう声が非常に大きいものがございます。ぜひひとつ、この際もう一度お約束をいただきたいと存じます。
  153. 高島有終

    ○高島説明員 お答え申し上げます。  御指摘の森鴎外記念館につきましては、委員指摘のとおり、日独文化交流の観点からも、あるいは歴史的な文化遺産という観点からも、政府として非常に重要視しているところでございまして、まさにこのような観点からも六月の当委員会におきまして、外務大臣から早急な調査ということで御答弁申し上げたところでございます。  しかし、その後、御承知のとおりドイツにおきましては急速な統一の動きがございまして、そのような動きの中でこの記念館が統一後どのような機関によってどのような形で扱われていくのかということについてはいまだ非常に不明な点が多うございます。したがいまして、我が国といたしましてこれに対してどのような対応が可能かということについて検討するための基礎的な情報がいまだ不足しているという状況でございます。例えば、現状で申し上げますと、仮に政府から人を派遣いたしましても、一体だれと話をしたらいいのかということすら明確にわかっていないという状況でございます。  このような状況で、現在、東独にございます我が方大使館、新井大使を中心にいたしまして、東独政府、ベルリン州政府、それからこの記念館の関係者とも緊密なコンタクトは保っておるところでございます。そのような中で、情報の収集、対応策の検討ということを現在行っているところでございまして、ドイツ側におきましてこの問題についての話し合いの相手方が決まりまして実質的な話し合いができる状況になり次第、早急に私どもは本省から人を派遣して話し合いたい、こういうふうに考えているところでございます。
  154. 中山太郎

    中山国務大臣 今御報告いたしましたけれども、先般の委員会でも私はお約束申し上げましたように、この問題は我が国の文豪の歴史的な遺産でございますから、政府といたしましてはお約束をしました方向に従って必ず結果を出せるように努力することを改めてお約束申し上げておきます。
  155. 柿澤弘治

    柿澤委員長 山田英介君、時間が来ております。
  156. 山田英介

    ○山田委員 もう終わりますけれども、条約局長、要するに五十一条に必ずしも基づいていない、今の多国籍軍の展開というのは。しかし、武力行使をするということになれば五十一条の集団的自衛権行使になるのだということなのですよ、御答弁の趣旨からいっても。そうなると、そういう武力行使の危険性が除去されるどころか非常にそれが心配されているという状況ですから、そこに集団的自衛椎、まさに行使するであろう、されるであろうところに十億ドルとか何十億ドルとかいう資金をその軍に出す、軍を援助するために出すということは憲法で禁止している集団的自衛権行使に抵触するのではないかという私の心配なのですよ。そこのところをまた次の機会にぜひ議論させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
  157. 柿澤弘治

    柿澤委員長 次に、三浦久君。
  158. 三浦久

    三浦委員 外務大臣にお尋ねをいたします。  イラククウェートに対する不法な侵略によって、中東情勢はまさに一触即発の状況にあると思います。極めて危険な状態であると思いますけれども、大臣は、今膠着状態になっているというふうにお考えなのか、それともいつ戦闘行動が始まってもおかしくないというような状況になっているのか、その辺の御認識をまず最初に承りたいと思います。
  159. 中山太郎

    中山国務大臣 極めてグレードの高い緊張状態にあると思います。昨日でございましたか、イラクのサダム・フセイン大統領はエジプトの国民またサウジアラビアの国民政府打倒の決起を呼びかけております。このようなことがどのような、いわゆるエジプト政府またサウジアラビア政府を刺激するのか、こういうこともかねての状況に、不安定要素にプラスするものである、こういうことで私は大変心配をしておるということであります。
  160. 三浦久

    三浦委員 非常に緊迫した状況にあるという御認識でございますけれども、しかし、こういう事態は一日も早く解決をして国際的な平和を回復していかなければならない、これは当然のことだと思います。その際、日本のとるべき態度、これはやはり何といっても国連中心主義だ、そしてまた憲法の平和的な原則、これに基づいて厳正に行われなければならないというふうに思っております。世論調査によりましても、今、全世界の人々はこの中東問題の平和的な解決を熱望しているというのが明らかにされております。  私、お尋ねいたしたいのですが、八月二十五日の国連安保理事会で採択された決議六六五、これは多国籍軍イラクに対してどのような武力行使を行ってもよいということを容認したものではなくて、イラクへの経済制裁実施に当たって必要となるかもしれない個別の状況にふさわしい措置、すなわち個々の船舶の臨検などに当たっての必要最小限度実力行使を容認したものであって、それ以上のものではないというふうに思いますが、いかがでございましょうか。
  161. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 ただいま先生の言われました安保理決議六六五号の第一項に関する限り、そのとおりでございます。私たちは、必要最小限武力行使という解釈につきましては加盟国により解釈が若干違いますけれども、安保理の権威のもとに特別な状況下に即して必要と思われる措置をとってよいということが規定されております。
  162. 三浦久

    三浦委員 ところで、こういう多国籍軍に対する協力として、今政府・自民党内で自衛隊海外派兵という問題が急浮上をいたしております。本日の自民党の委員の方の御意見もそうでございますし、また一昨日ですか、坂本官房長官自衛隊の海外派遣憲法の枠内で検討するというふうに記者会見で発表されておられます。きょうの高沢委員の御質問に対しても、どうも外務大臣見解ははっきりしてないのですね。海外派兵を検討するのかどうか、この点どうなのか、少しはっきりお尋ねいたしたいというふうに思います。
  163. 中山太郎

    中山国務大臣 現在政府におきましては、憲法の枠内また自衛隊法の許す範囲で私どもは問題の解決を考えなければならない。法律に違反したり、あるいは憲法に抵触するようなことはやるべきではないというのが私の基本的な考え方であります。
  164. 三浦久

    三浦委員 そうすると自衛隊法の改正、こういうものは考えてないということですか。
  165. 中山太郎

    中山国務大臣 自衛隊法の改正をするかどうかということをまだ私どもの立場議論をいたしておりません。
  166. 三浦久

    三浦委員 しかし、官房長官の発表によりますと、いわゆる国連協力法の中でやるのか自衛隊法の改正でやるのかは別として、もう自衛隊海外派兵、これは丸腰かどうかは別として検討するということをはっきり言われているのですね。私は、大臣がさまざまな外交的な考慮から今のような御発言をされているのじゃないかと思うのですけれどもね。まあ、この自衛隊海外派兵派遣ですね、派兵じゃなくて派遣、これは私はどんなことがあってもやってはならないし、また現在のいわゆる政府憲法解釈のもとにあっても行うことはできない問題だというふうに考えておるわけです。  それで、大変心配なものですから、ちょっとその点についてお尋ねをいたしたいと思います。  政府は、昭和五十五年の十月二十八日の答弁で、武力行使の目的を持たない部隊を他国派遣することは憲法上許されないわけではないと考えている、しかし、自衛隊法上の権限がないからできない、こういうように答弁されているわけですね。これは結局、武力行使を目的としない自衛隊の海外派遣自衛隊法を改正すれば現憲法の枠内でもできるかのような印象を与える答弁になっているわけなのです。  法制局に伺いますが、しかし一方では、昭和三十四年三月十九日の参議院予算委員会林法制局長官は、極東有事の際「米軍と一体をなすような行動をして補給業務をすることは、これは憲法上違法ではないかと思います。」と述べられています。そして、直接的な武力行使実力行使でなくても自衛隊の補給業務が集団自衛権行使に該当することがあることを認められておるわけであります。  そして昭和五十七年四月二十日の参議院外務委員会では、当時の角田法制局長官は、この林元法制局長官の答弁の範囲内のものは、「これは憲法違反になりますということを認めているわけでございます。」と、この林答弁を追認をいたしております。  また、先月三十一日に衆議院内閣委員会がありましたが、そのとき私の質問に対しまして内閣法制局の大森第一部長はこの林元法制局長官の答弁を追認し、さらに補給業務一般というものにつきまして、そもそも武力行使に当たらないというものでは必ずしもございませんが、今回の貢献策は、この武力行使またはこれと一体となったものではないので憲法違反ではない、こういう答弁をされているわけですね。このことは間違いございませんか。
  167. 大森政輔

    ○大森説明員 ただいまそれぞれ御指摘の各答弁がなされたという事実は全くそのとおりでございますし、私も御指摘のような答弁をしたことがございます。これは事実の確認だけでございますが、付加して申し上げたいことは、ただいま御指摘になりました昭和五十五年十月二十八日付の稲葉誠一議員に対する答弁書と、先ほど御指摘になりました昭和三十四年三月十九日の当時の林修三法制局長官及び五十七年四月二十日付の参議院外務委員会における当時の角田法制局長官のそれぞれの答弁は何ら矛盾するものではないというふうに考えている次第でございます。
  168. 三浦久

    三浦委員 いや、矛盾しなくて結構なんですよ。この憲法違反になることがあり得る自衛隊の補給業務は後方支援活動の一例にすぎません。  六十三年八月の防衛白書によりますと、後方支援とは整備、補給、輸送、衛生などを言い、「作戦実施のための基盤であり、これが戦闘部隊と均衡をもって維持され円滑に機能することが必要である。具体的にいえば、装備品の絶えざる整備が必要であり、整備用部品はとだえることなく輸送され、補給されなければならない。また、弾薬類、燃料、武器なども不足することかないよう継続して輸送され、補給されなければならない。さらに傷病者などに対しては、手厚い治療・看護や後方への安全な移送が必要となる。」と書いてその重要性を強調しておりますが、防衛庁、そのとおりですね。
  169. 宝槻吉昭

    宝槻説明員 ただいま昭和六十三年の防衛白書の百三十五ページの箇所についての御引用でございまして、今確認したところ、そのとおりでございます。
  170. 三浦久

    三浦委員 国防用語辞典というのにはもっと詳しくこの後方支援活動が書いてあります。要するに、後方支援活動は、戦闘に携わっている個人や部隊に対して食糧、燃料、弾薬、武器等の補給、故障車両や武器の修理、破壊された戦車の回収、道路、橋梁の補修、車両、鉄道による人員、物資の輸送、負傷者の治療、その他宿泊、洗濯、給食等に及ぶ広範な業務を含んでおるものだというふうに説明されておりますが、そのとおりですね。     〔委員長退席、浜田(卓)委員長代理着席〕
  171. 宝槻吉昭

    宝槻説明員 ただいま国防用語辞典を御引用なされましたけれども、ただいま国防用語辞典を持ち合わせていませんので、事実関係のその記述についての確認ということであればちょっと確認できないわけでございますけれども、ともかく後方支援ということにつきまして、それぞれの言葉については確たる定義といいますか、そういう厳密な意味での定義されたものは特にございません。一般的に戦闘部隊、例えば陸上自衛隊であれば普通料、特科、機甲科といったような戦闘部隊に対して物資、資機材その他の支援、役務提供等も含めましての支援活動をするという意味で私ども使っております。  以上でございます。
  172. 三浦久

    三浦委員 大臣、今お聞きのとおりだと思いますが、自衛隊武力行使を目的としないで海外に派遣するということは、紛争地帯で戦おうとしている、または戦っている他国武力行使に対する後方支援の全部または一部を分担させるためのものであることは間違いがないと思いますが、いかがでしょうか。
  173. 中山太郎

    中山国務大臣 先ほど法制局から御答弁を申し上げたとおりであります。
  174. 三浦久

    三浦委員 いや、その点についての答弁は別になかったのですけれどもね。自衛隊を海外派遣するということですね。そのことはいわゆる紛争地帯で、戦っているといってもいいでしょう、戦っているそういう他国武力行使に対する後方支援を分担させるために海外派遣をするのではありませんか。そうじゃないでしょうか。
  175. 中山太郎

    中山国務大臣 まだ自衛隊を海外に派遣するということを決定もしておりませんし、そのようなことを我々閣僚間で議論をし、あるいはそれを決定する段階にあるというふうに私は理解をしておりません。
  176. 三浦久

    三浦委員 これは決定されたら大変なんですよ。それは検討している、検討する、こういうふうに官房長官おっしゃっていますので、それで私、検討してもしか決定されたらそれは大変なことになりますよということを指摘するために今質問をさせていただいているわけです。  例えば自衛隊をいわゆる紛争地帯に派遣するということですね。それは、丸腰であろうと何であろうと、弾薬を輸送するとか、それからまた、医薬品を輸送するとか、食糧を輸送するとか、そういうことに従事させるということははっきりしていると思うのですね。そうすれば一体どういういうことになるでしょう。そういう部隊はどこかの指揮下に入らなければいけないでしょう。それはもう軍事上の常識だと思います。その戦闘を指揮している最高司令官の指揮下に入らなければ、どこに何を輸送していいかなどという判断が、いわゆる後方支援部隊だけの判断でできないということはもう当然過ぎるほど当然ですよね。そしてまた、弾薬を運搬するということは、戦闘行動と全くそれは一体不可分の行動だと私は思うのです。そうすれば、自衛隊を海外に派遣するということはまさに集団的自衛権行使に該当するのじゃないか。だれが考えてもそうとしか考えられない問題だと思うのですね。大臣、いかがお考えですか。
  177. 中山太郎

    中山国務大臣 そのようなことを官房長官が言われたとおっしゃっていますけれども、私自身は官房長官からそのような話をまだ聞いておりませんから、私は今ここでそれについてのコメントはいたすつもりはございません。     〔浜田(卓)委員長代理退席、委員長着席〕
  178. 三浦久

    三浦委員 しかし、新聞に大きく出ておりましたね、見ていませんか。シェワルナゼさんと忙しくて見ていませんでしたか。——そうですか。  私は、こういう自衛隊の海外派遣というのは憲法上許されないというだけではなくて、これは日本のかつての戦争によって大きな被害を受けましたアジア諸国民、この人たちにも非常に大きな不安を与えていると思うのです。何か今中東でああいう問題が起きているから、だから日本自衛隊派遣したら世界の人々は喜ぶだろう、歓迎してくれるだろうというようなことを考えたら大間違いだと思うのですね。歓迎しているのはほんのわずかの一部の国でありまして、世界の人々、特にアジアの諸国民の人々は新聞でも報道されておるとおり、日本自衛隊の海外派遣に対しては非常に大きな危惧の念を抱いておると思うのですよ。そうであれば、大臣自身が政府部内でそういう自衛隊の海外派遣の動きがあるならばそれを率先して抑える、そんなことはやめろ、そう言ってとめるのが、私は外務大臣としての責務ではないかというふうに思うのですが、いかがでございましょうか。
  179. 中山太郎

    中山国務大臣 私はASEAN拡大外相会議におきましても、先ほど高沢委員からもお尋ねがございましたけれども、私の考え方はアジア諸国の方々にも、私の基本的な考え方というよりも日本考え方というものを十分説明しておりますから、それでよく御理解をいただいているものと信じております。
  180. 三浦久

    三浦委員 自衛隊を丸腰で派遣するとか派遣しないとかいうことが一応いろいろ論議されているようですけれども、仮に丸腰で派遣をしたとしても、そういうことが長く続くかどうかということですね。丸腰で派遣をすれば、例えば紛争地帯で輸送業務に参加をする、そうした場合に、では攻撃を受けたらどうするのですか。丸腰だから何も抵抗できないということになりますでしょう。そんな不合理なことはないといって、ピストルとか機関銃とかそういうものを持たせるというようなことになることは、これは必然的な成り行きですね。ということは、結局は自衛隊の丸腰の派遣などといったってそんなことは不可能なんであって、武装した自衛隊派遣というものにしかならないと思うのですね。私は、そういう意味で海外派遣というものを許さないように、大臣が努力をしていただくように心から切望したいというふうに思います。  そして、今世界は東欧の激変を契機にいたしまして、軍事ブロックの対立という今までの国際政治の枠組みを大きく変えつつありますね。そういう中で、イラク問題では、国連安保理事会が一致して制裁決議を採択いたしました。これは全く画期的なことであります。そういう意味では、国連が集団安全保障機構としての機能を発揮し得る新しい、これは全く新しい可能性が出てきたというのが現在の状況だと思います。アメリカの圧力のもとで多国籍軍という特定の国家グループへの支援を強化するのではなくて、国連が設立本来の理念である集団安全保障機構として、その積極的な役割を果たすことを私は切望します。同時に、日本政府自身がそのために一層の努力をすることを心から要求して、時間ですので私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  181. 柿澤弘治

    柿澤委員長 次に、伊藤英成君。
  182. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 イラク問題についてお伺いいたします。  まず最初に、大臣を初めとして関係各位の皆さん方が本当に日夜にわたって御努力をされておりますことについて心から敬意を表したいと思いますし、そしてまた、今後一層の御努力をお願いしたい、このように思います。  まず、私は基本的にこの問題についての考え方をちょっと申し上げたい、こう思うのですけれども、私は、このイラク行為は、まずは言語道断のことである、そして、あくまでもこれは原状回復をすべきで、もとの姿に回復すべきものであるし、こういうことが再び起こってはならぬ、このように思います。そしてまた、人質の安全のために頑張っていただくことをまず強くお願いをしたい、このように思います。  この問題で問われていることは、まず私は二つあると思うのですね。まず第一は、ポスト冷戦の新しい世界秩序づくりが国連中心にして進むのかどうかという問題、それから二つ目には、この経済大国となった日本国際的責任を問われている、そういう中でさらに日本が、石油輸入のこの地域への依存度が最も高いということを認識しなければならぬ。そして、そういう点で日本のとるべき態度は、まずは国連による共同行動を成功させなければならぬし、また二つ目には、平和を金で買うというような姿勢ではなくて、日本として憲法の枠を守りながらも国連中心主義に立って汗を流さなければならぬ、こういうことだと思うのです。こういう基本的な視点に立って質問をしたい、こう思うのですが、時間の制約がありますので、私としては端的に質問をしたいと思いますので、どうか誠意を持ってお答えをいただきたい、このように思います。  まず初めに、日本の外交努力の面でありますが、これは何といっても外交面でこそ日本が全力で貢献をしなければならぬ話だ、こう思っております。そこでまず、九月九日に米ソの首脳会談がヘルシンキで行われます。そして、ソ連の今後の役割というのは非常に大きいと私は思うのですが、アメリカ並びにソ連に対して、この首脳会談を控えて具体的にどのようなアプローチをされたのか、まず伺います。
  183. 中山太郎

    中山国務大臣 現在のイラク政府機関あるいはいろいろな公共的な組織について、やはりソ連の立場というものは相当大きな影響力があることは委員も御存じのとおりであります。シェワルナゼ外務大臣との会談におきまして、ソビエト政府イラクに対して国連決議に従って積極的に行動するように私は要請をいたしましたし、また、九日に予定されている米ソの首脳会談の結果につきましてもソ連政府からいも早い連絡をちょうだいしたいということを申しております。いずれにいたしましても、御案内のように外交努力が当面最も緊要なことであらうと私は思います。
  184. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 では、次に伺いますけれども、総理が十月に中東を訪問されるというふうに聞いております。これは先ほどもちょっと話がありましたが、その前にはニューヨークで日米の首脳会談も行われる。そして、人質に与える影響も心配されているという大臣の話もありました。そこで、この十月、中東訪問はされるのか、そして、そのときにイラクにも行かれるのか、私はぜひイラクも含めて行った方がいい、こう思っているのですが、いかがですか。
  185. 中山太郎

    中山国務大臣 総理の中東訪問の予定は現時点でまだ変更しておりません。今委員からイラクも訪問したらどうか、イラクを訪問すべきだという御意見は、御意見として承らせていただきます。
  186. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 国連外交、国連外交、こう言いますけれども、一つだけ確認いたしますけれども、今回いわゆる多国籍軍なるものが構成されております。これは国連軍にせよという主張を日本からされましたか。あるいは、もしもされなかったら、なぜされなかったのですか。
  187. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 私たちは、まず国連におきまして決議六百六十、六百六十一号以降の決議の採択に向けて関係国に強く働きかけを行いました。特に六百六十一号の全面経済制裁につきましては、安全保障理事国すべてが賛成するようにということで関係国に強く働きかけましたし、六百六十五号の採択に当たりましても同様努力した次第でございます。ただ、残念ながら国連軍につきましては、国連創設以来四十二条に基づく国連軍というのは今まで実現しておりません。将来の課題として残っているかと存じます。
  188. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 私は、前にしたことがないから云々という話は余り意味がないと思うのですね。要するに、日本がお金を出してどういうふうにしようかということを考えたにしても、多国籍軍国連軍では意味が違うだろうと思いますよ。そういう意味で、なぜしなかったのだろうかということを質問したのですが、大臣、いかがですか。
  189. 中山太郎

    中山国務大臣 日本政府としては、国連軍が結成されることが一番好ましいと思いましたけれども、結局賛同者がなかなか多く出なかったということではないかと思います。
  190. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 働きかけたのですか。多国籍軍にせよというふうに日本は主張をされたのです
  191. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 日本政府といたしましては、多国籍軍派遣するということは一切働きかけておりません。  決議六百六十号、イラククウェートからの早期撤退が実現するように、その後六百六十一号、六百六十五号等の成立に向けて、日本は一生懸命側面的に努力をいたしたということでございます。
  192. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 私は、今の問題については、本当に国連でこれからの世界秩序を守っていこうというふうに考えた場合には、もっと考えていい話だろう、こう思います。  次に移りますけれども、今回の貢献策として決められた問題についてでありますが、まず第一番目に航空機、船舶等の問題が言われておりますが、これは大体いつから本格的に輸送等を行う予定ですか。
  193. 渡辺允

    ○渡辺説明員 先般発表いたしました貢献策につきましては、ただいま先生御指摘の航空機、船舶の借り上げも含めまして、その他、物資協力医療協力等あらゆる分野でとにかくできるものを一日も早く実施するということで鋭意今努力をしているところでございます。  船舶、航空機の問題につきましても同様、できるだけ早く実施することを目標に、現在……(伊藤(英)委員「いつごろ本格的に」と呼ぶ)現在のところ具体的にいつということを申し上げる段階ではないと思いますけれども、いずれにしても、できるだけ近い将来ということで考えております。
  194. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 それでは、例えば、米国からある積み荷を運ぶことを要請されて日本でその中身をチェックするというようなことがあり得ると思われますか。
  195. 渡辺允

    ○渡辺説明員 輸送を行います場合に、これは、政府我が国民間企業とのチャーター契約に基づいて政府の管理のもとで輸送を行うわけでございますが、その輸送の全体について、協力を行うこととなる相手国と十分協議をするということを考えております。個々の積み荷についてチェックをするということではなく、むしろそういう形で相手国との協議を通じてその点を明確にしていくという考え方でございます。
  196. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 中身はチェックすることはないということですか。
  197. 渡辺允

    ○渡辺説明員 この場合に、輸送に従事いたします航空機なり船舶は民間の航空機、船舶でございますので、通常の民間輸送において、安全基準等の遵守の観点からその積み荷の確認ということは行われると思いますが、それ以上のチェックを個個にするつもりはございません。
  198. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 次に、資金十億ドルの問題でありますけれども、これは具体的にどのように使うのか。それで、ひょっとしたら私の聞き間違いだったかもしれませんが、先ほど、この十億ドルを貢献策の最初の方の一項から三項、輸送協力、物資協力医療協力、この中にも使うような答弁をされたのではないかと思うのですが、これはそうですか。
  199. 渡辺允

    ○渡辺説明員 貢献策の中に「湾岸における平和回復活動に対する協力」という項がございまして、その中に「輸送協力」、「物資協力」、「医療協力」、「資金協力」という四つの分野がございます。それで、十億ドルにつきましては、この四つの分野を対象に考えておるわけでございます。ただ、その中でどのように配分をするか、あるいはどのように使用していくかについては、これについても現在鋭意詰めておるところでございます。
  200. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 政府の発表したこの第四項「資金協力」というところは「湾岸の平和と安定の回復のため、上記一〜三の措置に加え、」と書いてありますね、もしも今の説明ですと、上記一、二、三の措置実施するためにこの十億ドル、すべてかどうかは知りませんが、使うということになると私は思うのですが、ここに書いてあることと今の説明は違うのではないかと思うのですが、いかがですか。
  201. 渡辺允

    ○渡辺説明員 貢献策の四項にございますことは、上にございます、実際に政府が例えば民間航空機、船舶を借り上げて行う輸送その他の協力に加えまして、例えば日本以外の国が行う航空機、船舶の借り上げ経費等の一部に充てるために資金協力を行うということでございまして、それで十億ドルという金額は、この上の三つの分野についてそれぞれ必要といたします経費と、それから四番目にございます「資金協力」とをすべて含んだものでございます。
  202. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 大臣、これは今の答弁でよろしいのですか。
  203. 中山太郎

    中山国務大臣 さようでございます。  全体の金額のスケールとして十億ドル今年度拠出するということでございまして、その中で、例えば航空機のチャーター料あるいは船舶のチャーター料、あるいは防暑施設、いろいろなものを、経費を、物資で提供する場合ははそのもののいわゆる購買費、そういうものを全部その十億ドルの中から落としていくという考え方でございます。
  204. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 端的にお答えくださればいいのですが、四の「資金協力」のところに「各国が行う航空機」云々と書いてありますね、日本じゃない、ほかの国が。これは十億ドルのうちで大体どのくらいが「各国」、ほかの国へ充てるということを考えていらっしゃるのですか。
  205. 渡辺允

    ○渡辺説明員 この十億ドルの対象となります四分野のそれぞれについてどの程度の金額を割り当てるかという問題につきましては、まさに現在いろいろな角度から検討をしておるところでございまして、まだ結論を得るに至っておりません。
  206. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 私は、今回この措置が決められたこと自体が極めて遅過ぎた。これは外務省の方も遅過ぎる、あるいは一刻も早くというふうに言っておられましたけれども、それにしてはこの十億ドルの使い方もあるいはどのくらいになるかということについても、余りにも検討中、検討中ということで、本当にこんなことで大丈夫かなと思いますね。そして、今回のこの措置がアメリカを初めとしてほかの国から見ても極めて不十分だといろいろな指摘がされたりしておりますけれども、そういう意味でも私は本当に大変だと思います。ぜひよろしくお願いいたします。  そこで、今回この貢献策で、医療など要員派遣の問題について、いわば訓練もされている自衛隊ではなくて民間の人にお願いをしたというふうになっているのですが、戦後から今日まで世界情勢も大きく変わって、日本立場も、あるいは日本立場の現在並びに今後のあり方等を大臣が考えられて、今回の民間の人だけを使うというやり方はどういうことなのか、それをちょっとお伺いしたいのですが、これは端的にお伺いいたします。まず、これから日本はこういうことをやるのに本来的に民間人の方がよいというふうに考えていらっしゃるのか、あるいは現在の法規等、法制上等やむを得ずこういうふうにしたのか、大臣の意見をお伺いします。
  207. 中山太郎

    中山国務大臣 現在の法制度のもとで日本として何ができるかということを基準に考えたわけでございます。
  208. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今のお話は、大臣としては現在の法制度に乗っかればやむを得ずこういうふうにしなければならなかったという意味ですね。  それで法制局にお伺いいたしますけれども、そもそもというか、日本国連主義をとってあるいは国連の役割もどんどん大きくなっている。その日本が自分の国の利己的な目的ではなくて、国連軍あるいは国連維持活動という形で世界の平和のために自衛隊参加させるということは、自衛隊についてももちろん医務官とか非軍事的な部分もあるでしょうし、そういう人の派遣という問題もある。あるいは軍事的な、兵隊を派兵するという両方のケースそれぞれがあるわけですが、これは今日の世界情勢で見たときに憲法の枠をはみ出るというふうに解釈されるのか、法制局にお伺いします。
  209. 大森政輔

    ○大森説明員 いわゆる国連軍という言葉であらわされるものにつきましては、その性質とか目的・任務の観点から幾つかの形態が過去にもあったのではなかろうかと思います。先ほど外務省からも答弁ございましたが、国連憲章に基づくいわば純粋な国連軍というものはこれまで設けられたことはないということは委員承知のとおりでございます。  そこで、いわゆる国連軍への自衛隊参加の問題につきましては、昭和五十五年十月二十八日付の稲葉誠一議員に対する答弁書等において次のように内閣として答弁してまいっております。すなわち、当該国連軍の目的・任務が武力行使を伴うものであれば、自衛隊がこれに参加することは憲法上許されない。これに対し、当該国連軍の目的・任務が武力行使を伴わないものであれば、自衛隊がこれに参加することは憲法上許されないわけではないが、現行自衛隊法上は自衛隊にそのような任務を与えていないので、参加することはできない。現在におきましてもこのような考えをとっている次第でございます。
  210. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 私は、今回の問題もそうなんですが、これから日本が本当に世界の目から見て常識的な国としてなっていくかどうかということが実は問われているということだと思うのですね。ということであります。そしてまた、今日本が迎えておる危機、この問題を危機と考えたときに、日本にとっての危機は、中東との関係の危機もありますけれども、同時に、あるいはそれ以上にひょっとしたら他の欧米先進国の友好国と日本との関係の危機になるかもしれないというふうに認識をした方がいい問題だろうと思うのです。だから、そういう意味日本は何をしなければならぬのか、どういうふうに将来的に持っていかなければならぬかということが問われているのだと思うのですね。そういうことだと思うのです。  そういう意味でお伺いしますが、これは最後の質問にいたしますが、今回の貢献策はいずれにしてもまだまだ不十分、次の、第二弾の貢献策が必要だ、こういうことでありますが、じゃ第二弾の貢献策としていつごろまでにどういうようなものをつくられるのか。その中に新たに米国からの分担金の要求への対応は入るのか。  二番目には、国連平和協力法なるものは入れるのか。そしてその中に自衛隊派遣というものは入るのか。私は自衛隊の問題について全く除外するとしたときには大きくその意味を減少させることになってしまうのであろうと思いますが、それは入るのか。  もう一つ最後に、今回のイラク問題によって影響を受けているのは、実はアジアの国々にも受けているところがかなりありますけれども、そういうところについての援助も含むのか。  以上についてお伺いして、質問を終わります。
  211. 中山太郎

    中山国務大臣 何点かの御質問をいただきましたが、途中で少し欠落するところがあるかもわかりませんが、それはひとつお許しをいただきたいと思います。  私は、この国連中心地域紛争を調停していくというこの経験、これは今回のように、今まで米ソが対立しておった、片っ方が白であれば片っ方は黒い方を握るというような、碁のような形が戦後続いてきたと思う。ところが、冷戦の終わりということになりまして、米ソ協力した形で国連中心に地域の紛争を調停してあげる。その場合に日本としてどういうことができるかというと、先ほどから御答弁しましたように、この憲法法律の問題が一つの規制をしております。その許された範囲で我々がどうするか。自衛隊派遣の問題も、先ほどの法制局答弁昭和五十五年ですか、いわゆる答弁書にあるような考え方が現在もあるということも、これ今法制局答弁で明確に御理解をいただいたと思います。しかし、これから日本国際社会の中で今日のような立場で経済国家として生きていく場合にこれで許されるか、許されるというか信頼されるかという問題は、今委員指摘のとおりだと思います。  そこで私、今回の紛争を契機によく日本のことを考えてみました。日本は日米安保条約というものがあって、専守防衛の自衛力でやっていますけれども、もしこの安保条約というものがなかった場合に、あるいはあっても日本が将来多極化する社会の中で地域紛争に巻き込まれた場合に、日本にそれじゃお金だけ出したらいいじゃないか、今まで日本はお金だけ払ってきたから、あのような国には我々もお金だけやったらもうそれでいいじゃないのというような国際的な認識が固まってまいりますと、これは我々の国家にとっては極めて厳しい現実に当面する可能性を持っておると私は外務大臣として実は憂慮をいたしておりまして、我々の憲法は海外でも深く認識をされております。理解されております。また我々の考え方もよく理解されておると思います。  そのような考え方の中で国連中心に、国連が平和維持をやる場合に国家としてあるいは国民を代表する政府として何が可能かということについてこの議会を通じて御議論をいただき、そして国民の御理解のもとに新しい時代へ向かっての国のあり方というもの、これを考えなければならない時期に来たと認識をいたしております。
  212. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今、第二弾のあれをお伺いしようと思いましたけれども、大臣この後の予定がすぐ詰まっておるようでありますので結構であります。      ────◇─────
  213. 柿澤弘治

    柿澤委員長 この際、湾岸地域の平和と安全に関する件について決議をいたしたいと存じます。  本件に関しましては、各党間の協議が調い、お手元に配付いたしましたとおり案文がまとまりました。  便宜、委員長から案文を朗読いたし、その趣旨の説明にかえたいと存じます。     湾岸地域の平和と安全に関する件(案)   本委員会は、イラククウェートに対する侵略及びクウェートの併合が、国際の平和と安全の維持を危くするものであるとの認識にたち、次の意思を表明するものである。  一 イラク軍によるクウェート侵攻及びイラクによるクウェートの併合は、国際連合憲章及び国際法規に反する不法な行為であり、いかなる理由によっても容認でき得るものではない。    よって、イラク軍クウェートからの即時、かつ、無条件の撤退及びイラクによるクウェートの併合行為の撤回を要求する。  二 イラク及びクウェートに拘束されている在留邦人及び外国人の状態につき深刻な憂慮の念を表明するものであり、イラク政府に対し、速やかな、かつ、自由な本国への出国を認めるよう要求する。  三 湾岸地域の今日の事態を早期、かつ、平和裡に解決するため、国連の諸機能を十分に活用し、国際協調の観点から我が国は、必要、かつ、万全な対応をすべきである。  四 政府は、本委員会の意思を体し、さらなる外交努力を行うことを要求する。   右決議する。 以上でございます。  お諮りいたします。  ただいま読み上げました案文を本委員会決議とするに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  214. 柿澤弘治

    柿澤委員長 起立総員。よって、湾岸地域の平和と安全に関する件は、本委員会決議とすることに決しました。  この際、外務大臣より発言を求められておりますので、これを許します。外務大臣中山太郎君。
  215. 中山太郎

    中山国務大臣 ただいま御決議のありましたイラククウェート侵攻に関する我が国対応につきましては、御決議の趣旨に沿うよう、今後とも最大限の努力を続けてまいる所存でございます。
  216. 柿澤弘治

    柿澤委員長 お諮りいたします。  ただいまの決議について、議長に対する報告及び関係当局への参考送付につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  217. 柿澤弘治

    柿澤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十八分散会