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1990-04-27 第118回国会 衆議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年四月二十七日(金曜日)     午前九時三十一分開議  出席委員    委員長 柿澤 弘治君    理事 愛知 和男君 理事 園田 博之君    理事 浜田卓二郎君 理事 浜野  剛君    理事 牧野 隆守君 理事 上原 康助君    理事 高沢 寅男君 理事 山田 英介君       伊東 正義君    小渕 恵三君       鯨岡 兵輔君    小杉  隆君       坂井 隆憲君    塩谷  立君       福島 譲二君    福田 康夫君       五十嵐広三君    井上 一成君       岡田 利春君    渋沢 利久君       土肥 隆一君    松原 脩雄君       遠藤 乙彦君    神崎 武法君       平田 米男君    古堅 実吉君       伊藤 英成君  出席国務大臣         外 務 大 臣 中山 太郎君  出席政府委員         法務省刑事局長 根來 泰周君         外務大臣官房外         務報道官    渡邊 泰造君         外務大臣官房審         議官      川島  裕君         外務省北米局長 松浦晃一郎君         外務省経済局次         長       須藤 隆也君         外務省経済協力         局長      木幡 昭七君         外務省国際連合         局長      赤尾 信敏君  委員外出席者         外務大臣官房審         議官      丹波  實君         外務省アジア局         南東アジア第一         課長      河野 雅治君         大蔵省主税局国         際租税課長   黒田 東彦君         大蔵省国際金融         局調査課長   水盛 五実君         通商産業省機械         情報産業局電子         機器課長    吹訳 正憲君         外務委員会調査         室長      藪  忠綱君     ───────────── 委員の異動 四月二十四日  辞任         補欠選任   伊藤 英成君     大内 啓伍君 同月二十五日  辞任         補欠選任   古堅 実吉君     不破 哲三君   大内 啓伍君     伊藤 英成君 同日  辞任         補欠選任   不破 哲三君     古堅 実吉君 同月二十七日  辞任         補欠選任   井上 一成君     土肥 隆一君   市川 雄一君     神崎 武法君   遠藤 乙彦君     平田 米男君 同日  辞任         補欠選任   土肥 隆一君     井上 一成君   神崎 武法君     市川 雄一君   平田 米男君     遠藤 乙彦君     ───────────── 四月二十五日  千九百八十九年七月三日に国際コーヒー理事会決議によって承認された千九百八十三年の国際コーヒー協定有効期間の延長の受諾について承認を求めるの件(条約第六号)(参議院送付)  千九百八十九年のジュート及びジュート製品に関する国際協定締結について承認を求めるの件(条約第七号)(参議院送付) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国タイとの間の条約締結について承認を求めるの件(条約第三号)  向精神薬に関する条約締結について承認を求めるの件(条約第五号)      ────◇─────
  2. 柿澤弘治

    柿澤委員長 これより会議を開きます。  所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国タイとの間の条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高沢寅男君。
  3. 高沢寅男

    高沢委員 まず私は、事務当局から質問をしながら、順次また大臣お尋ねするというふうに入りたいと思います。  初めに、今回の日タイ租税条約でありますが、この改正によって従来とどういう違いが出るか、まず総論的にお尋ねをいたします。
  4. 丹波實

    丹波説明員 お答え申し上げます。  この改正条約を現在の条約と比較した場合におきますところの主な相違点を簡単に申し上げますと、まず、条約対象となります人的な範囲、用語の定義を基本的に一九七七年のOECDモデル条約案に則して整備いたしまして、かつ不動産所得譲渡収益等につきまして新たに独立の条項を設けました。  そのほか、租税条約上の基本的な概念の一つであります恒久的施設範囲につきましては、現在の条約では存続要件のない建設工事現場建設組み立て工事等に三カ月の存続要件が付されました。そのほか、新たに建築工事現場等関連します監督活動で、三カ月を超えて存続するもの及び役務提供活動で六カ月を超えて存続するものが恒久的施設とみなされることとなった次第です。  また、いわゆる投資所得のうち、配当及び利子につきましては、一般親子会社間配当に対する源泉地国、この場合、日本から見た場合タイでございますけれども、そこでの限度税率が現行の条約では二五%でございましたのが二〇%に引き下げられ、また一般法人が受け取る利子につきましては、二五%の限度税率が新たに設けられることになったというのが相違点概要でございます。
  5. 高沢寅男

    高沢委員 日本タイの二重課税の排除については、ともに外国税額控除方式をとるということでよろしいですか。
  6. 丹波實

    丹波説明員 お答え申し上げます。  これは条約の二十一条一項で先生がおっしゃるとおりの規定になっております。
  7. 高沢寅男

    高沢委員 その外国税額控除制度の問題ですが、我が国は諸外国に比べてこの外国税額控除制度が非常に優遇され過ぎているのじゃないか、こういう声があるわけであります。例えば、一昨年十月十三日、衆議院の税制問題特別委員会で、当時の宮澤大蔵大臣が次のような答弁をされておるわけです。  一般的に外国課税控除海外課税控除の問題は、我が国が、先ほどから申しましたが、ちょっとずつ甘目なところが私はやはりありますと思いますから、ここでいろいろ御議論にもなっておりますので、まあ国際並み国際水準並みということにだんだんやはりしていかなければならないなというふうに考えております。 つまり当時の宮津大蔵大臣は、我が国外国税額控除制度他国に比べてやや甘い、これを少なくも他国並みにしていくべきではないか、こういうお考えをここでは述べられているわけでありますが、この国際並みに見直すということをその後おやりになっているのかどうか、あるいは今後の対応としてどういうことをお考えか、大蔵省からひとつお願いします。
  8. 黒田東彦

    黒田説明員 お答えいたします。  御承知のとおり、我が国税額控除制度はいわゆる一括控除制度という方式をとっているわけでございます。これを主要な諸外国制度と比較してみますと、まずイギリスとフランス所得項目別限度額方式という方式をとっております。また西ドイツの場合には国別限度額方式を採用いたしております。その意味でこれらの国は我が国一括控除方式よりも厳しいものになっておるわけでございます。また、アメリカの場合は我が国と同様な一括限度方式をとっておりますけれども、軽課税あるいは免税とされる可能性が高いといった投資所得、あるいは高率課税を受けることが多い石油業所得等それぞれ別枠で管理するという形をとりまして、一括限度額方式における控除額彼此流用の問題に対処しているわけでございます。  したがいまして、これらの国との比較で見ますと、我が国は純粋の一括限度額方式で、しかも別枠管理もないということでございますので、先ほど御指摘ございましたとおり、従来の我が国外国税額控除方式は諸外国に比してやや寛大であったということは言えようかと思います。  ただ、二つ申し上げたいことがございます。  一つは、実はドイツやフランスの場合には国外所得免除方式というものも採用いたしておりまして、この場合には国外所得はすべて免除ということで課税権を放棄しております結果、その部分について見ますと、実は我が国よりももっと寛大になっているという面がございます。  第二番目は、先ほど御指摘ございましたとおりのやりとりの後、一昨年の十二月の末に、一括限度額方式の簡便さを維持しながら、次のような改正を行っております。  まず第一に、五〇%を超える率で課される税につきましては、控除対象となる外国法人税から除外する。二番目には、控除限度額の計算の基礎となる国外所得から外国非課税となっております所得の二分の一を除外する。三番目には、控除余裕額及び控除限度超過額繰り越し期間を、従来五年ございましたが、これを三年に短縮するといったことをとりますほか、内外所得区分につきまして全所得に占める国外所得割合は原則として九〇%を限度とするというような改正を行ったわけでございます。  この意味でかなり従来の問題は是正されたと考えております。ただ、今後ともこういった是正策実施状況を見守るとともに、必要に応じて検討してまいりたいと考えております。
  9. 高沢寅男

    高沢委員 この問題にも結局は関連をするわけですが、昨年十二月のアメリカの議会で、外国企業への課税強化をねらった二つの国際課税条項が一九九〇年度包括予算調整法案に盛り込まれて成立した、こう言われております。これはアメリカにある子会社が本国の親会社に支払う非課税利子損金算入制限するとともに、課税資料提出義務を大幅に強化する、こういう内容と聞いておりますが、その経過概要をお聞きしたいと思います。
  10. 須藤隆也

    須藤政府委員 お答え申し上げます。  先生指摘の、昨年十二月にアメリカで成立いたしました包括予算調整法というものがございますが、この法律そのものは、昨年十月の上下両院の本会議において可決された法案両院協議会を経て十二月十九日に成立したものでございますが、同法本来の目的は、アメリカの一九九〇年度の財政赤字を、いわゆるグラム・ラドマン法と言われております財政収支均衡法に定められている目標範囲内におさめるために、予算を削減したり税収をふやしたりというような予算調整を行うために定められた法律でございまして、その結果、アメリカの九〇年度予算は当初予算より実質で百四十七億ドル削減されて、グラム・ラドマン法財政赤字目標額である千億ドルの範囲内におさまることになったわけでございますが、ただいま先生指摘のとおり、その予算調整法の中に外国企業に対する課税強化をするという条項が含まれておりまして、これも先生指摘のとおり、外国法人関連企業に対して支払う利子損金算入の一部制限とか外国系企業に対する情報提出義務強化というような条項が入っております。  したがいまして、我が国を初め、幾つかの外国政府は、この法案成立過程におきましても、この法案が対米投資に対して制限的効果を及ぼすおそれがあるということで、アメリカ政府に対して懸念表明を行ってきておりますが、我が国政府といたしましても、米側に対し再三にわたって懸念表明してきておりまして、同法案が成立したことは残念でありますけれども、自由な相互の投資流れを維持していくことが重要であるというような認識に立ちまして、アメリカの行政府がその法案関係条項を運用するに当たりましては、自由な資本の流れを阻害することがないように、慎重に行ってほしいということを強く期待し、その旨の申し入れも行ってきております。
  11. 高沢寅男

    高沢委員 いろいろ御説明がありましたが、要するに、これはアメリカ進出している日本系企業から見れば、結果においてその企業自体税負担を増加させる、あるいはさもなければ、その企業から本来日本政府へ入るべき税収を減少させる、そして結果においてはアメリカ政府に入る税収をふやす、それで赤字を減らす、こういうふうになるわけですが、こういったやり方日米租税条約の、お互いのちゃんとした、こういう仕組みで課税をしましょうという枠組み、約束から見れば、一方的にアメリカはそれに違うことをやってきたことになるんじゃないかと思います。今、アメリカに対して日本政府懸念表明している、こう言われましたが、もっと強い立場でそういうやり方はやめるべきだということを要求すべきじゃないのか。例の日米構造協議で、我々から見れば、まるで日本はやられっ放しという感じになっていますが、こういう問題などは、具体的に対アメリカの我々の主張として強力にやるべきではないか、こう私は思いますが、いかがです
  12. 須藤隆也

    須藤政府委員 先生指摘のとおり、日米間には日米租税条約というのがございまして、課税に対する内国民待遇内外無差別という基本的な方針が規定されておりまして、ただいま申し上げましたアメリカ関係条項は、その運用いかんによっては外資系企業と非外資系企業の間で差別的な取り扱いを行うことになるおそれがある、外資系企業が不利な立場に置かれたり過重な負担を強いられることとなるおそれがあるということで、我が国政府としてもアメリカ側懸念表明を行っておりますが、この問題につきましては、日米構造協議でも日本側から指摘しておりまして、日本側コメントの中にも、不公正な形で外国企業対象とした課税強化するような措置を回避することを求めたいというような形で入っておりますし、アメリカ側問題点承知しているはずでございますので、引き続きアメリカ側に対しては必要な申し入れを行っていきたいと考えております。
  13. 高沢寅男

    高沢委員 日米構造協議は、結局七月に最終的な結論を出す段階になりますけれども、その間なおこの問題は、我が国政府としてはアメリカに強く要求していく、こう理解してよろしいですか。
  14. 須藤隆也

    須藤政府委員 中間報告日本側コメントの中でも指摘していることでありますので、引き続きアメリカ側と話し合う対象となるものと考えております。
  15. 高沢寅男

    高沢委員 日本企業海外進出ですが、これまでも非常に広範多岐にわたって進出が行われてまいりましたし、これからさらにそうなることはもう間違いない。その日本企業のビヘービアのいかんによって国際国家としての日本の評価が定まるということになるのではないかと思います。そういう立場からして外務省は、そういう海外進出企業に対して、まず総枠としてどういう指導をされているか、そのことをお尋ねをしたいと思うのです。  例えば、進出していく相手国発展途上国の場合などは、特に相手国で取得した利益、その全額を持ち帰るというようなことではなくて、その利益一定割合を寄附をするとか、その他の形で現地社会なり現地国民に貢献するというようなやり方が必要ではないのか。そういうことがあれば、我が国企業海外進出というものは、相手国利益にもなる、こちらの利益にもなるという形の国際間の友好を進める大きな手段になる。それがそうでない場合は、みんな持っていってしまう、そして我々の国に残るのは公害だけだというようなことになると、相手国から見れば、このこと自体が非常な非友好のもとになる、こういうようなことになるんじゃないかと思いますが、こういう点を外務省としてどういう立場で御指導をされておるか、そのことをひとつこの際お聞きしたいと思います。
  16. 渡邊泰造

    渡邊(泰)政府委員 お答えを申し上げます。  外国投資を行う企業が、投資先地域社会においてよき企業市民として活動して、海外現地社会に融和貢献していくことは非常に重要であると外務省考えております。このような海外における貢献活動は、基本的には企業自主的判断責任において行われるべきであると考えておりますけれども、外務省としても、従来からアメリカのみならず東南アジア、六十三年には二カ所、平成元年には三カ所におきまして、各地において現地進出企業関係者話し合いを行っております。また、東京においても、本社関係者との間で意見交換を行って、外務省側から見たこの問題点についての考え方説明して理解を求めるとともに、企業海外貢献活動外務省としてどのようなことが支援できるか、そのようなことを議論しております。
  17. 高沢寅男

    高沢委員 そういう御指導の中で、進出した企業がその相手国利益を還元するということで、例えばこんなことをやっておる、このことで相手国から非常に評価されているというような何か実例があれば一つ二つ聞かせてもらいたいと思います。
  18. 渡邊泰造

    渡邊(泰)政府委員 タイにおきましては、特定の名前を出すのはあれですが、銀行が現地学生奨学金現地タイ学生タイの高校及び大学に行くのに必要な奨学金を提示している、こういう貢献活動をしているのを承知しております。そのほかにもいろいろございますが、一つの例を申し上げました。
  19. 高沢寅男

    高沢委員 私が次に申し上げたいのは、それと全く逆の、相手国進出をして、その相手国に対して非常な迷惑をかけ、相手国に非常な反日感情を呼び起こしているというような一つケースを申し上げて、その対応をひとつお願いしたい、こう思うわけです。  通産省、おいでですね。これは東京本社のあるスミダ電機という会社、その会社が一〇〇%出資の韓国スミダという企業韓国の馬山につくった、そして現地の住民を雇用して今まで経済活動をやってきたわけですが、現地における賃金水準が次第に上がってくる、そうすると、その利益が当初期待したよりも非常に減ってくるという状態になったときに、このスミダ電機という本社が出先の会社企業を一方的に閉鎖して、そして四百名を超える労働者を一方的に解雇して、現地にいた日本責任者日本へ逃げ帰ってしまうというような事件が起きて、この件についてはいまだに解決されていない。解雇された側の韓国スミダ組合代表が昨年の十一月から日本へ来て、そしてスミダ電機本社に対して交渉を求める、事態解決を求めるということをやっていますが、もう今は四月ですが、十一月から四月といえばもう五カ月、この間全く誠意ある交渉も行われない、何らの解決もなされないという状態で来ているわけですが、これなどは最も相手国に対して被害を与え、そして相手国反日感情を巻き起こすという一番悪いケースではないか、こんなふうに私は思うわけですが、この向こうからやってきた組合代表は、結局ほかに方法はないから、スミダ電機本社の前で座り込みをやるとかあるいはハンストをやる、そのハンストが非常に長期にわたって、もう健康上危ないということでもって入院しなければいかぬとかいうふうな事態まで起きている。  こうなってくると、これはもう労働問題の枠を超えて明らかに人権問題ということにもなってくるわけでありますが、この件について通産省は当然その事態を御承知と思うわけでありますが、この事態解決のために通産省当局の最善の努力をお願いしたい、こう私は思うわけでありますが、現状がどうなっているかということとあわせて、その努力経過をひとつお聞きをしたいと思います。
  20. 吹訳正憲

    吹訳説明員 お答えいたします。  韓国スミダ電機の撤退に関しまして、先生がおっしゃったような紛争を生じているという事実は、私ども承知しております。本件につきましてもスミダ電機等から事情を聞いているところでありますけれども、基本的には日本民間企業が出資している現地企業における労使紛争の問題でございまして、日本政府が直接関与すべき立場にございません。そういうことで事態の推移を見守ってまいりたいというふうに思っているところでございます。  本件につきましては、昨日、労使の間で打ち合わせが持たれまして、きょうから話し合いが再開されるというふうに聞いております。通産省としましても、本件当事者の間で話し合いが行われ、それが進展しまして早急に円満に解決されることを期待しておるところでございます。
  21. 高沢寅男

    高沢委員 きょうから話し合いが始まるということは一歩の前進だと私は思いますが、その話し合い解決につながるようにひとつ通産省としては、それぞれ確かに今言われたお立場がありましょうが、最大の影響力を発揮するという方向で努力をしてもらいたい、これは御要望として申し上げておきます。  次に、今度はこれは外務大臣にひとつお願いをしたいと思うわけですが、先般タイチャチャイ首相が来日されまして、そして首相は、カンボジア当事者会談を望むならば、タイ政府はその仲介をやる用意があるということを日本における記者会見で述べられました。これがきっかけとなって、何か六月にカンボジアシアヌーク殿下、それからへン・サムリン政権フンセン首相東京へ来て会談をやるというふうなことになったというふうにお聞きするわけですが、この経過あるいはまたこれに対する日本政府のかかわり方、あるいはタイ政府のかかわり方はどういうことになるのか、そのことをまずお尋ねをいたしたいと思います。
  22. 中山太郎

    中山国務大臣 委員お尋ねシアヌークフンセン会談日本開催の予定があると聞くがというお尋ねでございますが、私は、アジア紛争地点幾つかございますけれども、やはり現在内戦が最も活発に行われているカンボジア和平を構築するために、昨年の八月にパリでカンボジア和平会議という国際会議が開かれまして出席をいたしましたが、周辺の関係国以外にカンボジア四派の話し合いというものが成立しなければ、外から幾ら和平構築をしようと思ってもなかなか難しいということを現地で確認をいたしました。それに同席をされたインドネシアのアラタス外相とかあるいはオーストラリアのエバンス外相とかいろい ろの方々から御意見を聞いておりますけれども、やはり日本が、和平が構築された後のいわゆる選挙管理あるいは経済復興に協力するという姿勢ではなしに、積極的に今後カンボジア和平へ向けてのプロセスに協力するべきであるという考え方を立てまして、実は今年の二月に外務省河野課長をへン・サムリン政権支配下のプノンペンに出張させたわけであります。また一方、同時期に谷野アジア局長ベトナムに派遣をいたしまして、ベトナム政府ともいろいろと意見交換をさせておりましたが、先日来日されましたタイチャチャイ首相から海部総理に対し、東京でこのシアヌークフンセンの両首脳会談の場所を用意したらどうか、これに日本も協力されたらどうかという御意見がございまして、海部総理と私ども相談をいたし、この首相考えを受け入れる方針外交手続を実はいたしましたところ、本月二十四日、タイの首都のバンコクでシアヌーク殿下が六月の初めに東京会談をする用意があるという御発言があったりという報道を聞いておりますが、私ども政府としては、積極的にアジア紛争解決に今後とも努力をしていきたいし、このような会談が実現することに努力を続けたいと考えております。
  23. 高沢寅男

    高沢委員 今の御説明経過はよくわかりましたが、では、その六月東京会談フンセン首相の方はどういう反応を示しているか、おわかりでしょうか。
  24. 中山太郎

    中山国務大臣 まだ正式に外交ルートを通じて御返事はございません。
  25. 高沢寅男

    高沢委員 それは日本政府としても外交ルートを通じて何か相手に意の届くような御努力はされているのですか。
  26. 中山太郎

    中山国務大臣 お説のとおりでございます。
  27. 高沢寅男

    高沢委員 こういう動きに対して、私は、関係国としてまずアメリカがどういうふうな考え方を持って受けとめているのか、あるいはまた中国がどういう立場で受けとめているのか、それからベトナム、これがこの問題をどういう立場で受けとめているのか、さらには、タイチャチャイ首相が既にそこまで言っておられるわけですが、タイ以外の他のASEAN諸国はこの問題をどういうふうに受けとめているのか、この辺がそれぞれおわかりならばひとつ説明願いたいと思います。
  28. 中山太郎

    中山国務大臣 私の承知しているところでは、タイ国は非常に隣接の国家でございますし、しかも国境地帯には、シアヌーク、ソン・サンあるいはポル・ポト三派の軍隊が密林地帯、ジャングル地帯にいるということ、さらに難民が三十万人ぐらい来ているわけでありますから、大変大きな和平構築への努力をされていると私は認識をいたしております。  またベトナムは、たしか昨年の九月一日ではなかったかと思いますが、日にちははっきり記憶しておりませんけれども、パリにおけるカンボジア和平会議の直後に撤退を開始したという報告を受けておりますけれども、国際機関で撤退の現実が監視されていない、こういうことが確認されていないという一つの問題がございます。  中国につきましては、私どもの得ている情報では、ポル・ポトに対する軍事援助が行われているという認識を持っておりまして、この春東京に来られました中国の鄒家華国務委員に対して、第三次円借款等のお話をいたしましたときに、カンボジア和平が実現するためにも中国政府のクメール・ルージュに対する積極的な働きかけを期待したいということを私は直接お話を申しております。  アメリカ政府も大変大きな関心を持っておりますし、アメリカ政府のみならずASEAN諸国、オーストラリアあるいはフランス、このような国国が非常に大きな関心を持っております。ただし、現在はまだ乾季が続いておりまして、三派のグループとへン・サムリン政権の間にまだ散発的にいろいろな地域で戦闘が続いているという状況ではないか。各国はこの和平実現に重大な関心を持っているということでございます。
  29. 高沢寅男

    高沢委員 カンボジアの軍事紛争は、今言われた四派の間でまとまらなければ、幾ら周りから言っても、それは最終的な結論にならぬということはよくわかりますが、その四派の間のまとまり方が、ベトナムは昨年九月で完全に撤退した、こう言っております。このことは、いや、実はまだいるんだという見方をする人もあるけれども、状況の判断としては、実際に撤退していることは間違いないだろうと私は思います。そう見ると、今度はその三派の側に、例えば今まではアメリカの援助がありました。それから中国の援助がありました。これは今でも続いているでしょう。しかし、その援助は同時に、タイがその援助を受けて、このカンボジアタイの国境の部隊に対してタイの方がバックアップする役割を現実にしてきたわけですね。しかし、今度のこのチャチャイ首相立場なり方針から見れば、タイもその点については次第に中立的な立場をとるという方向へ動きつつあると思うわけですが、そうなってくると、アメリカや中国が今まで与えていた援助も、これをやめてもらう。一方、ベトナムのへン・サムリン政権に対する援助は、既に完全に撤退したということを文字どおり間違いないとするということをお互いに確認し合うという中で初めてこの四派の自主的な解決の道が開けるということになるんじゃないかと思いますが、その辺のところを日本としては、アメリカに対しても中国に対してもベトナムに対しても、説得と言っては言葉が過ぎるかもしれませんが、一つのアプローチを日本政府としても大いにやるべきではないのか、こう思いますが、いかがでしょうか。
  30. 中山太郎

    中山国務大臣 カンボジア和平に関心を持ち、また従来援助をしているような国々がそれぞれございますし、日本政府といたしましては、もしシアヌークフンセンの両首脳会談が六月初旬に東京で開催できる——ただし、その前に五月には事務局レベルの協議が持たれるということをシアヌーク殿下記者会見で言っておられると聞いております。こういう中で、私どもとしましては、この会談が実現をすれば、その会議の舞台を東京なら東京で持つとなりますと、当然日本政府も、このカンボジア和平へのプロセスについて、両首脳の会談に対して、それが成功裏に終わるようにできるだけの協力をしなければならない、実はこのような気持ちでこの東京会談実現に期待をいたしておるという状況でございます。
  31. 高沢寅男

    高沢委員 これに関連しますが、ベトナムの問題です。  さきに述べたチャチャイ首相東京における記者会見の中で、日本ベトナムに対して援助の凍結をしてきておりますが、もはやこの凍結は解除すべきではないのかということもその談話の中にあるわけです。私たちの理解では、カンボジアベトナム軍が出たときに、これは撤退すべきである、撤退すればベトナムに対し約束されておる日本の援助は凍結解除というふうに、私は日本べトナム友好議員連盟の代表幹事をしておりますが、そういうふうに受けとめてきたし、ベトナム側もそういうふうに受けとめている。そして、撤退しましたとなったときに、さあ日本はどうしてくれるというときに、対ベトナム援助の凍結解除がいまだにされていないという状況にあります。御承知のとおり、外務省の元幹部であった三宅和助さんも、もはやベトナム援助は再開すべきではないかということを朝日新聞の紙上に見解を発表されておる。こういう中で、この問題はむしろ日本政府が一歩前向きに出ることがカンボジア問題の解決にも大きなプラスの影響を与える、私はこう思うのですが、いかがでしょうか。
  32. 中山太郎

    中山国務大臣 率直に申し上げて、撤退をしたという中立機関の確認がまだ行われていない、ここに一つ問題点が存在することは、先生もよく御理解いただけるところだと思います。しかし、この地域に和平を構築するために、今後日本がいかなる協力を行うことができるか。特にベトナムとは既に国交も成立しておりますし、今年谷野アジア局長をわざわざベトナムに派遣いたしまして、ベトナムの経済状態あるいはベトナム政府の高官の考え方、あるいは撤退等の問題についてい ろいろと意見交換してまいっておるところでございまして、御指摘のように、私どもは、この撤退がいずれかの国際機関で確認された場合には、日本政府としてはベトナムとの関係を、何と申しますか、前向きに検討していかなければならない、このように考えております。
  33. 高沢寅男

    高沢委員 最後に、全く私の見解を申し上げて、そして大臣の御所見もお聞きしたいと思います。  カンボジア問題は、いろいろ曲折はありましょうが、いずれにせよ、解決はもう時間の問題だと私は思うわけです。かつてベトナムのグエン・コ・タク外相が、これが解決されたら我々ベトナムはASEANに加入したいと思うということを言ったことがあるのですが、インドシナ三国の一番中心であるベトナムがASEANに加入したいという言い方は、これはインドシナ三国とASEANとの間の経済協力を全面的に進めて、その中でベトナムの経済的な復興、回復の大きなチャンスを得たいという気持ちの表明ではないかと思います。  例えば欧州共同市場、そういう共同市場的動きがいろいろありますが、いずれ東南アジアのこういう形のインドシナ、ASEANを含めた共同市場ができてくる可能性が非常に大きいと私は思いますし、そういうものができれば、その真ん中を流れているメコンの開発という大きなプロジェクトも具体的日程に上る。そうなったときに、これに対する日本のかかわり方というものは決定的な役割を果たすことになるんじゃないのか。そして、それが今の国際情勢が非常に流動化している中で日本アジアにしっかりとした足場を持つことができる、アジア日本友好的な大きな足場を持つことができるということにつながると思うのです。  こういう私なりの見通しですが、大臣の御所見はいかがでしょうか。
  34. 中山太郎

    中山国務大臣 委員指摘のように、カンボジア和平が構築される、またベトナム国際機関によって撤退されたことが確認されるという経過が出てまいりますと、おのずからアジアの最大の問題の一つであったインドシナ半島における経済の再建問題が出てくるであろうと思います。既に日本政府といたしましては、カンボジアの内戦中の四派が合意に達して暫定政権をつくり、国連監視下の選挙ができるようになれば、それに対する人員及び機材を提供する用意も約束しておりますし、その選挙の終了後、民主的政府のもとでカンボジア経済復興に経済協力をするということも既に日本は意思を表明しております。その目的のために今日までソ連あるいは中国、アメリカフランス、オーストラリアとかいろいろなASEANの国々も含めてこの和平構築に協力をしておりますから、日本もこの構築の過程に積極的に協力をすることによってアジア・太平洋地域の新しい時代のための平和をつくるという考え方で、もちろん経済圏もそこに繁栄をしてまいりましょうし、委員指摘のような一つの大きな新しい時代が出てくるのではないか、また出てきてもらいたいものだと私は期待をいたしておる一人であります。
  35. 高沢寅男

    高沢委員 この問題については、先ほど申しましたように、中国の関連が非常に重大な意味を持ちますので、ここで松原委員の中国問題を若干御質問する関連質問に交代したいと思います。
  36. 柿澤弘治

    柿澤委員長 松原脩雄君。
  37. 松原脩雄

    ○松原委員 いわゆるハイジャック事件の張振海の問題につきましてお伺いをしたいと思います。  昨年十二月十六日の午後三時に張振海がハイジャックをして福岡にあらわれた、そして逮捕された後、その日の夜、およそ七時間後ですけれども、乗客と機体を中国側に引き渡す、容疑者は捜査終了後中国に引き渡すという決定をしたこと自身の中に、日本における張容疑者の裁判権を放棄するという、私はこれはいまだに誤った措置であったと考えております。その点に関しまして、まず法務省の方にお聞きしたいのですが、張容疑者がなぜハイジャックをしたかということについて、天安門事件で中国が嫌になった、ソウルを経て台湾に亡命をしたかった、こういう供述をしておるということのようですが、これは十六日、ハイジャックの日の夜の政府の決定、返還するという決定の前に既に得られていた供述であったのかどうか。この点をまずお伺いしたいと思います。
  38. 根來泰周

    根來政府委員 問題のハイジャックが起こりまして警察当局が捜査を開始したわけでございまして、私どもは警察の情報を知る立場では当時はなかったわけでございます。したがいまして、内閣の方では警察の方の情報その他いろいろの考え方を基礎にいたしまして、この張容疑者といいますか張振海を引き渡すということではなくて、引き渡す手続にのせるという決定をしたということだと私どもは理解をしておるわけでございます。私どもにお話があったのは、日本で裁判権を行使できるかどうか、あるいは行使することが適当であるかどうかということについて御照会があって、私どもの方は、やはり日本よりも中国で裁判権を行使する方がよかろうという意見にまとめまして、内閣の方に申し上げたわけでございます。
  39. 松原脩雄

    ○松原委員 既に張振海の身柄については、現実に中国側に引き渡すというのが非常に差し迫っておる。報道によれば一両日中ではないかという報道さえありますが、具体的にいつ身柄が引き渡される見通しになっておりましょうか。
  40. 根來泰周

    根來政府委員 私の方がお答えすることが適当かどうかわかりませんけれども、既に法務大臣が引き渡し命令を発しまして、外務大臣を通じて引き渡し受領書を中国政府に伝達しているわけでございますし、また東京高検検事長に対しては引渡状を渡しているわけでございます。したがいまして、中国政府がその引き渡し受領書をもって現実に拘束されている東京拘置所に身柄の引き渡しを求めたときには、これは引き渡さざるを得ない法律環境にあるわけでございます。  一方、張振海の方は執行停止の申し立てをしておりましたけれども、御承知のように、執行停止は棄却されたわけでございますので、そういう法律的な障害ということはございませんので、これは中国政府がいつ引き渡しを求めるかという一点にかかっているものと思っております。
  41. 松原脩雄

    ○松原委員 今の質問ですけれども、それじゃ外務省外務省が答えたらいいと思うのですが、どうですか。
  42. 川島裕

    ○川島政府委員 今後の見通しということでございますけれども、具体的な段取りについては申し上げられる状況にないということでございます。
  43. 松原脩雄

    ○松原委員 申し上げられないとおっしゃっていますけれども、その理由を言ってくださいよ。
  44. 川島裕

    ○川島政府委員 まさにいつごろ中国側が身柄を引き取りに来るかということでございまして、中国側の出方にかかわるところ大なものでございますから、そういう段階に至っているということでございます。
  45. 松原脩雄

    ○松原委員 次に進めます。  これは法務省にお聞きしますが、現在張振海、張容疑者については難民認定をしない、不認定決定ですね。それについて四月十六日にその不認定処分に対する取り消しの訴えが東京地裁に係属中のはずです。それから、私もこの間法務省の方にもお届けをしましたけれども、ジュネーブの国連難民高等弁務官事務所の方から難民認定に対するファイナルデシジョン、最終決定が出るまでの間は、その難民とされておる者を送還してはならないという意思が表明されておる。国際的な面からも、あるいは国内的にはこれから東京地裁を経て裁判手続に入るという、その二つが今係っておるはずです。それから報道によれば、人身保護請求も出される段取りになっています。要するに、法的な手続はまだ今進んでおるわけですが、そういったものについてと張を中国へ戻すということの関係については、法務省はどうお考えですか。
  46. 根來泰周

    根來政府委員 難民条約の関係でございますが、この間の東京高裁での決定の中でも、詳細決定の中で申しておりますけれども、この条約の中に「難民として避難国に入国することが許可される前に避難国の外で重大な犯罪(政治犯罪を除く。)を行つたこと。」ということで「この条約は、 次のいずれかに該当すると考えられる相当な理由がある者については、適用しない。」と明確に言っているわけであります。これは決定の中でも申しております。一方、決定の中で政治犯罪かどうかということについては相当の枚数を使って詳しく述べているわけでございまして、本人がいろいろ供述していること、天安門事件に参加したとか昔から中国の民主化運動に関与しているということについては否定的な考え方を申しておるわけでございますから、難民条約の適用を受けないものと考えているわけでございます。
  47. 松原脩雄

    ○松原委員 いや、私が聞いているのは、難民の不認定決定について、既に東京地裁で取り消しの訴訟が行われているでしょう。これについてはどう対応するのですかと聞いているのですよ。
  48. 根來泰周

    根來政府委員 これは私どもの所管ではございませんので、何とも申し上げかねますけれども、いずれにせよ、今法的な障害、張振海を中国へ引き渡すについての法的な障害は全くないものと私どもは理解しております。  問題の訴訟については、私どもの所管でございませんので、何とも申し上げかねます。
  49. 松原脩雄

    ○松原委員 先ほどの、ジュネーブの国連難民高等弁務官事務所から来ておるその意思表明については、どう対応されますでしょうか。
  50. 根來泰周

    根來政府委員 この問題は一つの勧告というふうに受け取っておりますので、そういうものも当然念頭に置いて処置しているわけでございます。
  51. 松原脩雄

    ○松原委員 いずれにしても、国連から言ってくる、あるいは日本の裁判手続はまだ進行中である、にもかかわらず、いつ中国が取り戻しに来ても出してよろしいのです、そういうお立場をとっておられるということは、大変矛盾もしておるし、日本における適正な手続問題を考慮していないと私は思います。  時間がありませんので、次に移っていきたいと思うのですが、今あなたがおっしゃった四月二十日付のいわゆる東京高裁決定、その中では裁判所の方もはっきりと法務省の方に球を投げ返しているわけです。張容疑者が政治犯罪人ではないということについては高裁の方の決定が出ました。しかし、現実に張容疑者を中国に返すかどうか、これはまさに法務省の返していいかどうかという相当性の判断というものにいわばボールが投げ返されたわけです。そして、その相当性判断について、実際裁判所の決定理由によると、こうなっております。引き渡し後の中国において、日本も七九年に批准をしております市民的及び政治的権利に関する国際規約第七条、この中に相手国の拷問または非人間的な取り扱いを禁止する条項があるのですが、これに違反することを危惧して、「中国では捜査官憲による行き過ぎた取調べがおこなわれ、刑事裁判手続においても「公正な裁判を求める国際的な準則」が保障されておらず、その傾向は天安門事件以後顕著」、そういう認定をして、その上でなおかつこの裁判において、中国側の資料では、「そのような事態が生じるおそれがないことを保証するに足りるだけの明確な資料は見あたらない。」こういう判断さえ今出しておるわけです。  したがって、裁判所当局も、法務省が相当性判断をするときには、国際人権規約のB規約第七条に反する疑いが中国側にはある、しかも裁判ではそれを覆すに足りるようなものがない、むしろ危惧される、この点について法務省はしっかりと判断をしてくれよというふうに、いわばボールを投げたはずですね。この点についての判断はどうされましたですか。
  52. 根來泰周

    根來政府委員 通常ならば、裁判所の決定がございましたら翌日にも引き渡し命令を発するところでございます。しかしながら、今御指摘のように、裁判所の決定の中で、これは裁判所が危惧しているわけではなくて、裁判所に提出された資料の中にそういうものがあるから、法務省で法務大臣が決定するときに十分審査しろ、こういう理解だと思いますけれども、そういう御指摘がございましたので、これは外務省を煩わして、あるいはこれは外務省からお答えいただくのが相当かもわかりませんけれども、中国に対しまして外務省から適正手続による処罰ということについて繰り返し要請し、中国の方がそれについては趣旨を了解し、口上書をもって適正手続、これは中国憲法あるいは中国刑事訴訟法にはそういう適正手続の規定がございますが、その規定にのっとって張振海も審査するといいますか、訴訟手続にのせるということを表明しているわけでございまして、我が国と国交のある中国が、あるいは世界でそういう国としての存在を認めている中国が、そういうふうに口上書等をもって明確に申しているわけでございますから、それ以上私どもが中国についていろいろの危惧を抱くということは、むしろ国際信義上問題があろう。そういう口上書ということを信用して、そして法務大臣が慎重に検討して引き渡し命令を発したというふうに私どもは理解しているわけでございます。
  53. 松原脩雄

    ○松原委員 今の答弁は、要するに外務省が中国当局との間でいわば一定の保証を求めた、それによったという趣旨だというふうに聞いておきますが、この点について川島さんにお伺いしますけれども、亜中第百四十七号、あなたが中国当局との間で取り交わした会見になるのかな、発言ですね。これは実際法務省に到達をしたのが四月二十四日ですね。その内容はどういうものであったのでしょうか。
  54. 川島裕

    ○川島政府委員 お答えいたします。  私は、二十三日に在京中国大使館の公使を呼びまして、それで中国が引き渡し後に張を航空機不法奪取罪以外の罪で捜査を行い刑罰を科すことはないという点、それから同人に対して中国憲法及び刑事訴訟法の規定に基づいて適正な刑事手続を進めるということの二点について強く再確認した次第でございます。その結果の再確認を得ましたものですから、それを文書にいたしまして、外務省から法務省に対する正式の文書ということで、今の二点の確認を得ました、こういうふうにお伝えした次第でございます。
  55. 松原脩雄

    ○松原委員 その文書が届いたのは四月二十四日ですね。今度は法務省に聞きますが、今川島さんがおっしゃった中国との間の約束事をもとにして、逃亡犯罪人引渡法の相当性判断を法務省としてはされたのでしょうか。
  56. 根來泰周

    根來政府委員 これは今の二十四日の口上書が最終でございますけれども、これはしばしば外務省を煩わしてお願いしたわけでございますし、私ども直接関与した点もございますけれども、その点についての危惧が世上言われておりますので、中国と何遍もやったわけでございます。一番初めは、まだ引き渡しの要求のない一月十九日、二十日に中国政府代表団が日本に来まして事務的な連絡をしたわけでございますけれども、その際にもいわゆるハイジャック罪、三年以上十年以下という犯罪、それ以外で処罰しないかどうかということについても口頭で何遍も念を押して、そういうことはないという了承を得ております。また、一月十三日の口上書あるいは四月三日の口上書、四月二十日の口頭による申し入れ、四月二十一日の口上書、四月二十三日のただいまの川島審議官からの口頭の申し入れ、これに対する中国の、そういうことは一切ありませんという話を総合して、法務大臣の決定が行われたわけでございます。
  57. 松原脩雄

    ○松原委員 先ほど川島さんがおっしゃった四月二十三日の話し合いについては、四月二十四日付で法務省の方に文書として報告をされておるわけですね。今おっしゃった口上書のたぐいは、今まで裁判関係で出てきたのは四月三日の分と四月二十四日、その二つぐらいだったと思うのですが、それ以外にも今根來さんがおっしゃったような口上書があるわけですね。この種の文書で確認された中国当局との口上書ですね、一体何通ほどあるのでしょうか。
  58. 川島裕

    ○川島政府委員 最初に、今法務省の方から申されたのは、これは口頭でございまして、一月十九、二十日に日中間で本件について最初にやりとりを行いましたときに、ハイジャック以外の罪で捜査を行い、刑罰を科すことはないということを向こうが明言したわけでございます。それは口 上書ではなくて口頭で確認したということでございます。口上書につきましては、先生指摘の、まず四月三日、その趣旨を確認した口上書が一点。それからその次は、四月二十四日に、中国は、引き渡し後、張振海に対し、中国憲法、刑事訴訟法の規定に基づいて、適正な刑事手続を進めるという口上書の二つでございます。
  59. 松原脩雄

    ○松原委員 そうしますと、口上書というものは二通しかつくられていないのですね。四月三日の最初の口上書は、これは実際、東京高裁の決定の前に、資料として裁判所の目にもう既に届いているじゃありませんか。その四月三日の口上書では、いわゆる中国における適正手続については、中国の保証とみなされないという判断が実は先ほどの決定でなされているわけですよね。事実関係としては、その四月三日の口上書は東京高裁に提出をしたものである、裁判所の判断を経たものである、これは間違いありませんか。
  60. 根來泰周

    根來政府委員 その口上書の内容でございますけれども、要するに、ハイジャック罪以外で処罰しないという保証をしているということは裁判所も認めているわけでございます。ただ、手続的な問題という非常に観念的な問題でございますが、実体的に三年以上十年以下のハイジャック罪以外で処罰しないという保証がすなわち手続的な保証になるかというふうな問題に帰着するわけでございます。非常に観念的に考えますと、その辺が分かれて考えられるわけでございますが、最初の四月三日の口上書にはこういうふうに書いているわけでございます。張振海引き渡し後、中国側は、張振海が引き渡される前に犯したハイジャック罪以外の罪については、その刑事責任を追及しないことを重ねて表明する、こういうことで、前文としていろいろ書いてあるわけでございますが、これも見ようによっては手続を十分行って、それ以外の罪について処罰しないという保証というふうにも考えられるわけです。  ただ、これはそういう意味で手続と実体面を両方正確に分けていないものですから、だから、裁判所の審査決定があった後に、その点について念を押して、外務省を煩わして、手続面はどうでしょうかという点をお尋ねして、口上書をもらった、こういう理解でございます。だから、手続面と実体面を非常に観念的に分けますと、決定までには、手続面については保証がなかったのじゃないかという見方も一面ではあると考えます。
  61. 松原脩雄

    ○松原委員 ちょっと時間がありません。最後です。  今いろいろおっしゃっているけれども、四月二十三日に既に引き渡し命令を出している、四月二十四日に今の外務省からの口上書が来ている、事態は逆転していますよ。あなたが今いろいろおっしゃったのは、そういう事実を踏まえないで、先に引き渡し命令を出してしまったということにまさに問題があると思います。  最後に、大臣の方にお聞きをいたしますが、張振海が中国へ戻された後、この張に対する適正なる手続による処罰、こういった面について、外務省としては今後どういう立場でもってフォローをしていくのか、そこだけ最後にお聞きしたいと思います。
  62. 中山太郎

    中山国務大臣 本件に関しまして、中国政府は口上書にて、張振海に対する裁判の結果を日本政府に対し通報する旨約束をいたしております。
  63. 松原脩雄

    ○松原委員 終わります。
  64. 柿澤弘治

    柿澤委員長 山田英介君。
  65. 山田英介

    ○山田委員 まず、日タイ租税条約でございますが、一点お伺いをしたいと思います。  タイ王国から要請がありまして、現行租税条約改正をする、これに署名をなさったということで、この条約の改定によりましてタイ側が受けるいろいろなメリットがあると思うわけでございますけれども、その点につきまして簡潔な御答弁をいただければと思います。
  66. 丹波實

    丹波説明員 簡単にお答え申し上げます。  先生おっしゃるとおり、三年前にタイ側から、昭和三十八年の条約が古くなったということで改正交渉申し入れがございまして、今日まで交渉いたしましてできましたのがお手元の条約でございますが、この租税条約におきましては、恒久的施設範囲、それから国際運輸業のうちの船舶の運用による所得に対する課税の原則、それからいわゆる投資所得に対します限度税率等につきまして、源泉地国、この場合タイですけれども、比較的広い課税権を認める規定ぶりとなっています。これらはタイ側の主張を日本側として相当程度受け入れた結果そういう規定になったものでございまして、現在の日本タイとの経済関係の実情にかんがみますと、源泉地国としての立場に立つことの多いと考えられるタイ側にとってやはりメリットの多い条約となっているのではないかと考えております。
  67. 山田英介

    ○山田委員 では、もう一点お伺いいたしますが、今の我が国は三十六カ国とこの租税条約締結しておる、こう承知しております。特にこの日タイ租税条約につきましては二十七年ぶりの改定ということ。この三十六カ国の中で、特に後発開発途上国が幾つかあると思うのです。それで、それぞれの租税条約が古くなっている、改定を希望しているようなところが幾つかあるかと思いますが、その点を御説明いただきたいと同時に、できるだけ早く我が国としてこの条約の改定に応じてあげるべきではないか、こう考えますが、審議官、いかがでしょうか。
  68. 丹波實

    丹波説明員 お答え申し上げます。  現在、先生おっしゃるとおり、日本政府は三十六カ国とこの種条約を持っておりますが、このうち、定義の問題もございますけれども、開発途上国と称される国は、東欧の五カ国、それからアジアの十カ国、アフリカの二カ国がこれに該当するかと思います。  今後の問題といたしましては、新規の条約締結交渉を現在行っている国、四カ国ございますけれども、例えばトルコとかブルガリア、ユーゴ、そういった国はやはり開発途上国の中に入るんじゃないかと考えております。それから、現在条約がございまして、それを改正するための交渉中の国が三カ国ございます。その中では、例えばマレーシアなんかは開発途上国に当たるのだろうと考えております。それから、現在交渉中ではございませんけれども、交渉したいという申し入れのある国が十四カ国ぐらいございますけれども、その中にも幾つかの開発途上国がございます。先生がおっしゃいますとおり、これらの国の要望が来ておりますので、私たちできるだけ努力いたしまして、早い段階で条約をまとめ上げたいというふうに考えております。
  69. 山田英介

    ○山田委員 次に、タイに対する経済援助についてお伺いをいたします。  実は、御案内のとおりかと思いますが、元海外協力隊員の方が非常に熱心に取り組みまして、バンコクから北へ二十キロ、パサムサニ県サンヤブリ町というところに三万三千平方メートルの土地がございまして、実はタイ政府がここを総合運動施設建設を計画をしていたそうでございますが、予算不足で未整備の陸上競技場ができただけ、こういう状況にあるようでございます。  昨年六月、日タイ両国政府間での年次協議、経済援助等どうするかということを中心課題としたこの年次協議におきまして、タイが望む援助リストの優先順位二番目として、この総合運動施設建設につきまして日本側に提示をされた、こういう流れがあるようでございます。額において世界一の援助国日本ということを踏まえて、またとかくODAの経済援助の質の問題が指摘をされるようなことも踏まえまして、特にこの総合運動施設の建設に対する援助というのは、日本国政府としてぜひ応援をしてあげてほしいなと私は思うわけでございます。モデルケースとなり得るプロジェクトかとも思いますし、日本政府としてどのような対応をなされているのか、伺いたいと思います。
  70. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 ただいま先生指摘の件につきましては、タイ政府より無償資金協力によってやってほしいという要請を受けているわけでございます。ただし、先方におきましての優先度でございますが、これはただいま先生、優先度が二番目で あるというお話でございましたが、私ども聞いておりますところでは、先方の優先度は必ずしもそう高くはないという印象を受けている次第でございます。私ども、我が国の開発援助につきましては、特に無償資金協力について申し上げますと、相手国の基礎生活分野に直接役立つようなプロジェクトを優先的に行うということでこれまで臨んでいるわけでございます。この御指摘の総合スポーツ技術センターというものは、そういう観点から見ますと、直ちにはなじみにくい案件でございまして、私ども慎重にこれは検討はさしていただきましたが、無償資金協力の対象として取り上げるということにはやはり大変なじみにくいという面で、難しさも我が方にあるわけでございます。
  71. 山田英介

    ○山田委員 それでは、例えば有償資金援助という枠の中で前向きに検討をしていただきたいと思いますけれども、この点はいかがでございましょうか。
  72. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 これはまた、タイ政府側がそのような形での要請を出してこられるのかどうか、そういう問題にも帰着すると思います。御指摘の点は、私ども十分念頭に置かしていただきます。
  73. 山田英介

    ○山田委員 ぜひ積極的な御検討、お取り組みを要望したいと存じます。  次に、先ほど高沢委員外務大臣とやりとりがございましたカンボジア和平について、私の方からも包括的に、先ほどの質疑応答を踏まえまして、重ねてお伺いをしたいと思います。  外務大臣の、このカンボジア和平実現へのプロセスに積極的に我が国政府としても関与してまいりたいあるいは貢献をしてまいりたい、このような熱意は非常に受けとめられるところでございます。  それでまず、かつて福田ドクトリンというものが出されましたけれども、このセントラルデタントといいますか、やがて必ずこのアジア地域にも波及してくるだろう、また波及しつつあるというふうに見ることも当然できるわけでございますが、このアジアにおけるデタントを進める上からも極めて大事な問題ではないかなと私は思います。  昨年の三十年ぶりの中ソ首脳会談、ここでも合意は得られなかったと聞いておりますけれども、三十年ぶりにカンボジア和平問題に大きなかかわりを持つ中ソの両首脳がこのカンボジア和平の問題について話し合ったというようなこともこれあり、大きく和平へ向けての動きが出てきているように思うわけでございます。中山大臣のこのカンボジア問題に対する基本的な御認識を改めて御披瀝をお願いをしたいと思います。
  74. 中山太郎

    中山国務大臣 委員指摘のように、このアジアに平和をつくっていくというアジアのみんなの共通の願いがあろうかと思いますが、この国会でも数次にわたる御審議で、ヨーロッパの平和へのプロセスとアジアにおけるプロセスは、地政学的にもあるいは歴史的にもそれぞれ違う経過があるということは政府として申し上げておりましたが、インドシナ半島の中で、特にカンボジア紛争というものにつきましては、昨年の八月の二十六日からパリで開かれましたカンボジア和平会議において、日本も参加をして、これらの四派の代表者も出席をしていろいろ討議が行われておりました。  なお、その後引き続き、エバンスというオーストラリアの外務大臣の提案によるカンボジア和平の構想、あるいは先般ジャカルタで行われましたカンボジア和平へのASEAN諸国を中心とした動き、こういう中で、やはり日本政府として、このような地理的に近いところにある、そのような中で日本は経済的にも技術的にも、また戦後の復興についても経験を持った国家でございますから、この地域のいわゆる平和と繁栄のために、日本が持てる経験と経済力と技術力でいかに貢献していくかということを確実にするためには、和平が完了した後でなしに、その和平をつくる段階から日本というものは積極的に協力をしていくことが好ましいという判断を私はいたしまして、この和平構築のためにはできるだけの努力政府としては今後ともしなければならないという方針を持って行っております。
  75. 山田英介

    ○山田委員 限られた時間の中でございますので、今日まで我が国外務省政府カンボジア和平を目指していろいろ御努力をなさってきておるということは、私も理解いたしております。昨年の関係諸国によるパリ会談、ここでは四つの委員会があって、第三委員会というところで我が国政府が共同議長となりまして、ただいま大臣もお触れになりました和平後の経済援助等について基本的な枠組みを合意させることができた、これも大きな成果だろうと存じます。また、国連安保理五カ国の会議に、初回はどういうわけでしょうか日本は参加してなかったようでございますが、二回目からその安保理五カ国会談に臨むようになった、あるいは河野南東アジア第一課長をプノンペンに派遣をする、それからベトナムには谷野局長、そういう形で非常に努力をなさってこられておる。  そこで、ベトナムが軍事介入をしてから十二年経過しているわけです。ヘン・サムリン政権が樹立されて十一年、ベトナム国際的な監視がなされていない中での一方的な完全撤退ということですから、これは本当に撤退したのかどうかという真偽のほどは不透明と言わざるを得ないと思います。そういう大きな時代の流れを踏まえ、また必ずしも政府も議会も国民カンボジアの本当の状況というのが、余りにも情報が少なくてよくつかめていないのではないか、そういうふうに私は思うわけです。特に、河野課長を派遣されて、大臣カンボジアの特にヘン・サムリン政権の実態といいますか、どういうことになっているのかということについて当然御報告を受けられていると思いますけれども、どんな御印象を持たれたか、そして、我が国として、では何ができるのかという点につきまして、率直な御認識を伺いたいと思います。
  76. 中山太郎

    中山国務大臣 私が御答弁申し上げるよりも本人がここへ参っておりますので、本人から直接お答えをさせていただくのがよかろうかと思います。
  77. 河野雅治

    河野説明員 かいつまんで申し上げますと、二、三の印象を持って戻ったわけでございます。  一週間の滞在でございましたけれども、まず第一点は、カンボジア国民の間にポル・ポトに対する大変強い嫌悪感と恐怖感ということが相変わらず感じられた。これは知識人のみならず一般大衆もそういう感を非常に強くしている。したがって、つかの間なりとも平和を守ってくれているヘン・サムリン政権に対する信頼というものはある程度厚いという印象を持ちました。  それから第二点目には、そのヘン・サムリン政権というものが、今先生指摘のとおり十一年間続いていたわけでございますけれども、その中で十一年間曲がりなりにも政権を維持したということで、今後引き続き政権の維持に自信を強めているという感じがいたしました。  それから三番目は、これは必ずしも実態を十分に把握できる問題ではございませんが、少なくとも意識の面ではカンボジアという弱小国が存立していくためには中立政策をとらざるを得ない、ベトナムからなるべく自立して中立政策をとろう、そういうことが、特に指導者の間からそういう声が何度も聞かれた、これが私の印象でございました。どうも失礼しました。
  78. 山田英介

    ○山田委員 ヘン・サムリン政権我が国政府承認していない、認めていないわけです。カンボジア国民政府ですか、抗ベトナム三派による国民政府、こちらを認めている。今課長の御報告を伺いまして、ベトナムのかいらい政権というような印象を薄めたいというふうな希望も、希望といいますか熱意というものをヘン・サムリン政権が持っているのではないか、そのこととヘン・サムリン政権を認めませんという我が国の従来からの方針との関係はいかがでしょうか。
  79. 川島裕

    ○川島政府委員 お答えいたします。  今課長から申しましたとおり、だんだんそういう確立の方向にあるのかなということはあるのでございますけれども、ただ、その承認とかいうこ とになりますと、まさに今包括的和平を探していろいろ動きがある中で、我が国自身がどういう行動をするかというのは、それ自体非常に全体のプロセスに影響があるものですから、その意味で今慎重な対応が必要なのだろうと思います。まずは、特にこれから動きがいろいろ出てきております当事者間の話し合い、そこから出てくるものを見守った上で、我が国としての対応考えるということではないかと思っております。
  80. 山田英介

    ○山田委員 先ほど高沢委員も御質問なさっておられましたが、この東京会議シアヌーク殿下フンセンとの東京会談、この実現の見通し、それからその時期、六月の上旬あたりと理解をしてよろしいかどうか、大臣、いかがでございましょうか。
  81. 中山太郎

    中山国務大臣 委員お尋ねの両派の首脳会談というものがいつ開かれるかということは、まだシアヌーク殿下からの記者会見だけの情報しか得ておりません。まだフンセン首相からのメッセージは参っておりませんので、確たることは申し上げかねておりますけれども、もしシアヌーク殿下の提案をフンセン首相が受け入れられるとすれば、六月の早い時期に持たれるものと考えてもいいのではないかと思います。
  82. 山田英介

    ○山田委員 今御答弁でございますが、招待状なり御招待しますということが我が国政府から伝わって初めてお返事が来るわけでございます。先ほどのやりとりの中でいろいろと努力しているということでございますが、具体的にへン・サムリン政権を認めてないわけですから、中山外務大臣名で文書で差し上げるとか総理大臣の親書をお届けするとかという形はなかなかとりにくいのかな。そうすると、提唱されたお一人といっていいのでしょうかチャチャイ首相、こちらの方あたりにお願いする、あるいは今しているのだということなのでございましょうか。
  83. 中山太郎

    中山国務大臣 シアヌーク殿下に対しては親書を既に伝達済みでございます。フンセン首相に対しては外交ルートを通じて御案内を差し上げておる、こちらの方の意思を伝えております。
  84. 山田英介

    ○山田委員 意思は届いたと理解をさせていただいていいのでしょうか。
  85. 中山太郎

    中山国務大臣 そのとおりでございます。
  86. 山田英介

    ○山田委員 ぜひ東京会談実現を期待するものでございます。と同時に、これが実現をした場合に和平への展望がどう開けるのか。その辺の外務大臣の確信と申しますか、実現をしてお二人が会った、ホスト国として外務大臣や総理が頑張られる、その結果、和平への展望を開くためにやるわけでございます、努力なさるわけでございますが、開けるのかどうか、一言。
  87. 中山太郎

    中山国務大臣 和平へのこれからの展望がどういうふうに動いていくかということは、現時点で責任のある立場でどういう展開ができるかということを申し上げる状況ではないかと思いますけれども、昨年の八月の末パリで開かれましたカンボジア和平会議以降次期の会議をいつ招集するかということについてはできるだけ早い時期ということでございましたけれども、まだ今日まで第二回の正式会合が開かれるという招待は来ておりません。そういう中で先般ジャカルタで四派の首脳が出た会議がございました。いろいろとそれぞれの関係者努力をいたしておりますし、私はさきの日米外相会談においても、このカンボジア和平というものについての日本側の関心をベーカー長官にもお話をしておりますし、私どもはそのときの印象で、米ソ外相会談でもアジア・太平洋地域の問題の一つとしてカンボジア和平の問題が議論をされているのではなかろうかと推測をいたしております。  いずれにいたしましても、中国に対しては、御案内のようにカンボジア、ポル・ポトとの関係がございますが、私は外務大臣として鄒家華国務委員に対して、先日東京カンボジア和平に対する、中国がアジア人同士としてやはり積極的に協力すべきであるということを強く要請をいたしておりまして、私どもとしては日本政府としての努力をさらに続けていく。そして、この東京での会談が実現されることを期待いたしますとともに、それがまた一つの契機になって、次のステップが踏み出すことができるような環境をぜひつくらなければならない。  なお、今年予定されておりますASEAN拡大外相会議というものは七月二十八日ごろにインドネシアのジャカルタで開催される予定になっておりますが、いずれ関係国外務大臣が会合する場合もございますので、六月初頭の米ソ首脳会談でございますとかあるいは日米首脳会談あるいはASEAN拡大外相会議等も通じて、やはり一つアジアの問題として、日本政府としてはこの和平をどういうふうに構築していくかということについて、日本のこれからの努力とさらに関係国との協議を続けていかなければならないと考えております。
  88. 山田英介

    ○山田委員 今後の問題として今お触れになりましたが、一つは二月にバンコクで二者会談がなされているわけです。和平への包括的な方針について合意を見た。しかし、直後に行われましたジャカルタでの関係諸国も含めた会談をやりましたらだめになってしまった、こういう経緯がございます。ですから、東京会談をぜひ実現させていただきたいと大臣の特段の御活躍を一層期待するものですが、また二人が会えば、これは恐らく和平への包括的な合意というものは出てくるだろうと思われます。ただ、関係諸国が集まって、その後やったらまた失敗したということにならないように、今御答弁がございましたが、いろいろと目配り、それからまた基本的な方針をさらに点検をされて、積極的なお取り組みを願いたいと存じます。  それから、今大変重要な御答弁かと思うのですが、抗ベトナム三派といっても、実際にはクメール・ルージュ軍が中心となってへン・サムリン政権軍と戦闘激化、こういう状況でございますね。そのクメール・ルージュがどこから武器をもらっているかというと、これは中国から武器が入っている。先ほど中山外務大臣は、中国の外務大臣に対してベトナム和平について発言をなされている。その中で例えばこのクメール・ルージュに対する武器の供給問題などについてもお触れになっておられるのでしょうか。私は、中国との外交チャネルの大きさというものを考えれば、今天安門事件、あるいはまた対中円借款の凍結解除をどうするかという、そういう問題はありますけれども、そこのところは、武器の供給がとまれば、内戦激化、激闘というようなことはなくなるのではないか、こう思われますので、もし触れておられるのでしたら、そのことを御確認させていただきたいし、触れてないのでしたら、日本はもうちょっと申し上げてもいいのではないか、また、言える立場にあるのではないか。中国も国際的な孤立化というものは避けたいと思われているわけでしょうから、その点を伺いたいと思います。
  89. 中山太郎

    中山国務大臣 具体的に中国のポル・ポトに対する援助の内容にまでは踏み込んだ話は私はいたしておりませんが、中国が大きな影響力を持っていることだけは国際社会が認識をしている。そういう中でカンボジア和平を実現するためには、中国がポル・ポトのグループに対して政治的な影響力を行使するような強い姿勢を望みたいということを申しております。
  90. 山田英介

    ○山田委員 時間が参りましたので、最後の一問にしたいと思います。  ベネチア・サミット議長声明にもございますように、麻薬撲滅ということは、今日非常にグローバルな大きな課題であると思います。そして、この日タイ租税条約の一方の当事国であるタイランドにおいては、有名なゴールデントライアングル、ここでケシを栽培しておる、大変な量がいろいろなルートを使ってアメリカ初め各国へ流れているという実態がございます。それで、外務大臣がバンコクへ行かれましたときに、麻薬撲滅を一つの目的としたミッションを出したい、先日チャチャイ首相が訪日をされた折に、そのことを再びお伝えをし、チャチャイ首相もありがたいことですという御返事があったやに伺っております。差 しさわりは特段にないんだろうと思いますが、このミッションはいつ出されるのか、出せる状況にあるのか。できましたら、国民的な大きな関心事でもありますので、麻薬撲滅のためのいろいろな情報収集、調査、この日本からのミッションというのは非常に大きな意味があると思いますので、お差しさわりがなければ、何月のいつごろ、上中下旬あたりには出せそうかな、このあたりでも結構ですからお示しをいただければと思います。
  91. 中山太郎

    中山国務大臣 私が一月にタイを訪問した際の首脳会談におきまして、麻薬問題は国際的な大きな問題である、この解決を図るためには各国間の協力が必要ということで、日本政府からこの問題に関する調査団を送るという話をいたしてまいりました。時期はいつかというお尋ねでございますが、五月の下旬に派遣をいたしたい、このように考えております。
  92. 山田英介

    ○山田委員 終わります。ありがとうございました。
  93. 柿澤弘治

  94. 古堅実吉

    古堅委員 タイに対する日本投資は三百十億バーツ、一九八五年に比べて十六倍に及ぶ大変な拡大です。そこで、この投資に対する収益、投資収益はどれくらいになっているかについて伺いたい。
  95. 水盛五実

    ○水盛説明員 お答えをいたします。  ただいま先生お尋ね国別投資収益の件でございますが、日本タイ間につきましては把握していないというのが実情でございます。国別投資収益につきましては、現在、アメリカ、イギリス、フランス、西ドイツ、イタリア、ソ連、中国といった幾つかの国につきまして把握しているというのが現状でございます。
  96. 古堅実吉

    古堅委員 これから把握の準備はございますか。
  97. 水盛五実

    ○水盛説明員 どの国について国別投資収益を把握するかという点につきましては、考慮すべき要因が幾つかあるかと存じます。例えば統計の精度を上げるということについての要請でございます。二つ目としては、統計の精度を上げるのはいいのですが、例えば届け出をしていただかなければならないわけですが、それの簡素化といった要請もございます。ですから、統計の精度を上げることと届け出の簡素化、この矛盾する要請をどこで接点をとっていくかということが考慮要因かと存じます。その上で、例えば、日本との経済関係その他を考慮しまして、国別投資収益、どこをとるかを決めていくわけでございます。現在、例えば今申し上げましたアメリカとかイギリスがあるわけでございますが、この点は昭和六十二年から国別の数をふやして統計の精度を上げたところでございます。したがいまして、現在のところは、それの状況を少し見守っていきたいというところでございます。
  98. 古堅実吉

    古堅委員 いずれにしても、把握し国民が知ることができるような状況をつくることは好ましいことだと思います。要望を申し上げておきます。  日本企業投資活動を税制面で保護するのが、今挙げられております租税条約だと考えております。みなし外国税額控除もそうですし、間接税額控除の規定もまたそうです。ところで、日本では大企業優遇税制として間接税額控除を行っておりますが、それをわざわざこの租税条約に明記した理由は何ですか。日本側から要求されたのですか。
  99. 黒田東彦

    黒田説明員 間接外国税額控除と申しますのは、日本の親会社海外に子会社をつくりまして、その海外の子会社から配当を受けた場合に認められるものでございます。これは、企業海外に支店形態で進出した場合には、当然直接の外国税額控除が認められるわけでございますので、それとのバランスをとるという観点から設けられたものでございます。したがいまして、これは国際的な二重課税を排除するために必要な制度でございまして、大企業優遇の制度ではないと考えております。こうした制度は、実はほかの主要先進国もすべてとっておりまして、例えばイギリス、アメリカ我が国と同様な間接外国税額控除制度を採用しておりますし、フランスやドイツはむしろ原則として海外の子会社からの配当非課税とする、こういうふうにしておるわけでございます。  なお、日本タイとの租税条約につきましては、現行の租税条約におきましても、この間接外国税額控除を認めておりますけれども、今回の改定条約におきましても同様に規定することにいたしたわけでございます。
  100. 古堅実吉

    古堅委員 これは日本側から要求したのですか。
  101. 黒田東彦

    黒田説明員 我が国制度といたしまして、そもそも国内法にも間接外国税額控除制度がございまして、諸外国租税条約を結ぶ場合には常に同様な規定を置くことにいたしております。
  102. 古堅実吉

    古堅委員 二重課税防止という点に関連して、在日米軍に対して税が免除されている問題について伺います。  米軍人家族、米軍に対する免除総額を予算委員会で資料要求いたしましたら、承知してない、そういう回答でありました。米軍地位協定で免除しておるのですから、当然その額はどのくらいになるか、推計の数字ぐらいは出すべきだというふうに考えます。いかがですか。
  103. 黒田東彦

    黒田説明員 ただいま御指摘の地位協定で免税とされております税には、所得税、法人税あるいは相続税といったいわば軍人軍属に関するものもございますし、また消費税、関税等主として米国の軍隊自体が公用のために使用するものにつきまして免税とされているものもございます。いずれにいたしましても、申告、申請等の手続を必要としないで免税とされておりまして、推計の基礎となる計数が把握できないということで、免税額の推計は困難であるという実情でございます。
  104. 古堅実吉

    古堅委員 日米関係においてこれほどに手厚く税を免除するなどという関係をつくっているのですから、課税したらどの程度のことになるか、免税することによってどういうことになるかぐらいは、これは推計の程度にしろわかるのが日本側としての当然の立場だろうと思います。  日本の在日米軍経費の負担は四千四百億円という膨大なものになっております。しかし、米国防総省は、四月十八日に議会に出したアジア環太平洋戦略構想の中でこう言っております。「米側からは、日本が米軍駐留資金を最大限適切な程度に負担しない限り、米軍のプレゼンスを削減すべきだとの相当強い国内的圧力がかかるだろう」、このように述べています。これはあからさまな脅迫のようなものです。しかも「米国が日本の追加的負担を求めることは妥当であろう」、こういうことまで言っております。  大臣、これを受けとめられることは許されないことだと考えておりますが、どう受けとめておられますか。
  105. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 先生が御指摘になりました今回の米国防総省の議会に対する報告は、アメリカの膨大な財政赤字を背景といたしまして、アメリカの議会から見直し要求が出ておりまして、それに基づいて報告が出されておりますが、基本は、アメリカが引き続き太平洋国家としてアジア・太平洋における前方展開戦略、二国間の安全保障取り決めを引き続き基本的に維持していくことを明らかにしながら、先生指摘のように、段階的に米軍の調整を進めていくということでございまして、私どもは、米軍がこのような膨大な財政赤字を抱えながらも、グローバルな役割と同盟国に対するコミットメントを果たしていくために大きな費用を支出していくという姿勢をとっていることは評価しなければいけないと考えております。  それから、先生が具体的に御指摘になりました経費の問題でございますが、先生が御指摘のような表現が確かに今回の報告書に入っております。私どもといたしましては、日本の安全保障にとり不可欠な日米安保体制の効果的な運用を確保していくことは極めて重要であると考えておりますので、このような観点から従来より自主的にできる限りの努力を払ってきておりますが、今後とも自主的にこのような努力を続けていきたいと考えております。
  106. 古堅実吉

    古堅委員 読めば脅迫に相当する言葉だなというふうに思うのが国民一般ではなかろうかと思うのですが、そういうことさえも、脅迫どころか進んでそういう方向に政治を進めようというところに今の政府の重大な問題があろうかと思います。  米議会は国防予算授権法で、米軍要員の給与以外の在日米軍経費の日本負担を求めています。四月十八日の国防総省の報告もこれに沿った内容になっているように思われます。外務省は米軍要員の給与以外の在日米軍経費までも負担する必要があるというふうに考えておりますか。
  107. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 先生指摘の昨年成立いたしましたアメリカの国防予算授権法の中には、九百十三条に直接経費、ダイレクトコストについての言及はございますけれども、これが具体的に何を意味しているのかはっきりいたしませんが、いずれにいたしましても、これはアメリカ法律でございますので、私ども憶測に基づいてとやかく申し上げるのは差し控えたいと思っておりますが、先生が今具体的に御質問の今後の問題に関しましては、日本人従業員の本俸などの負担につきまして、今回の報告にも具体的に言及があるわけでございませんですし、従来から米側からそのような具体的な要求を私どもは受けておりません。したがいまして、仮定の問題につきましてこの場で立ち入って議論することは控えさせていただきたいと思います。基本的な姿勢は、先ほど申し上げたようなことで、今後とも自主的に努力していくということでございます。
  108. 古堅実吉

    古堅委員 念を押してお尋ねするようになりますが、米側に要求されておる日本人基地労働者の本給までも特別協定で負担するということがあってはならないと考えますが、大臣のお考えを伺いたいと思います。
  109. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 先ほど来申し上げていることの繰り返しになって恐縮でございますけれども、先生指摘のような具体的な経費負担について米側より要求が出されているわけではございませんので、仮定の問題については深入りを避けたいと思っております。いずれにいたしましても、今申し上げたような基本姿勢で今後とも自主的に努力を続けていきたい、こういうふうに考えております。
  110. 古堅実吉

    古堅委員 報道によりますと、三月一日、西廣防衛事務次官が記者会見されて、日米間で懸案となっている在日米軍駐留経費の日本側負担拡大について政府の検討している問題に触れて、今すぐには結論が出そうにないというかかわりの表明がございます。今質問いたしました基本給にかかわるようなことをも検討の内容になって今進められておるのかどうか、念を押してお聞きしたいと思います。
  111. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 先生が言及されました西廣次官の記者会見での発言の詳細は、私ども承知しておりませんが、先生指摘の具体的な点に関しましては、先ほど来御説明しておりますような現状でございまして、私どもは、今後のことにつきましてはまだ考えが固まっておりませんので、一般論で申しわけございませんけれども、自主的にさらに努力をしていくということを申し上げさせていただきたいと思います。
  112. 古堅実吉

    古堅委員 我が党はこの問題について終始一貫態度は明らかです。今政府考えている方向と思われる、アメリカから要求されて駐留軍労働者の基本給までも負担するとか、米軍要員の負担について国防省の今回の発表にかかわるような方向での拡大を検討するなどということは、これは国民立場から許されるものではないということを強く指摘して質問を終わります。
  113. 柿澤弘治

  114. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 まず最初に、このタイとの租税条約改定について伺いますけれども、この問題はタイ側から要求してきたようでありますが、その理由と今回の主な改正点を御説明ください。
  115. 丹波實

    丹波説明員 お答え申し上げます。  先生おっしゃいますとおり、本件改定条約交渉タイ側から三年前ぐらいに申し入れがあって行われてきたものでございますが、昭和三十八年に締結されたということで、非常に古くなったということが基本的な理由でございます。  タイ側から見て特にその理由として幾つかありますが、一つだけ典型的な例を挙げておきますと、現行の条約では第十四条におきまして一九六二年のタイの産業投資奨励法に基づきます租税の減免につきまして、いわゆるみなし外国税額控除というものを適用することを規定しているのですけれども、一九七二年になりまして、実はこの法律が廃止されたままになっておるわけです。その後、一九七七年に新しい法律タイで制定されたわけですが、それが当然現行の条約に入っておりません。したがって、こういう国内法をこの協定に入れたいというようなことが一番大きな理由の一つであったのではないかと考えております。現に、そういうわけで、この条約タイの新しく制定された国内法を反映した規定が入っております。  その他、定義条項ですとか利子配当の税率の問題とかいうものを現在の要請に合わせて改定したというのが大体のことでございます。
  116. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 ところで、タイ日本の援助の中では大変大きな位置づけを示しているわけですね。今インドネシア、中国、フィリピン、その次にタイが位置づけられる、このように思いますけれども、そういう状況にあるわけであります。しかも、今日本の援助というのは文字どおり世界一、百億ドルになんなんとするという状況であります。そういう意味でいわゆるODAの問題について伺いますけれども、去年の九月にODAの行政監察の結果が報告されております。その中にまず出てくるのが、審査基準あるいは省庁の役割分担があいまいだ、したがって、進行管理の責任省庁の不明確さなどが指摘されているわけでありますけれども、外務省としては、これをどのように受けとめて、それに対処しようとしているのか、伺います。
  117. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 昨年の行政監察におきまして、ただいま御指摘のような報告が出されていることはそのとおりでございまして、私ども外務省といたしましては、円借款供与について申し上げますと、引き続き相手国との関係での円借款供与について外務省としてできるだけリーダーシップを発揮して、四省庁内で意見の取りまとめを効率的に行うように一層努力をしなければならないというふうに強く感じているところでございます。  御案内のとおり、四省庁体制についていろいろ御批判、御指摘もございますけれども、私どもとしては、四省庁が持っておりますそれぞれの役割、それを十分発揮していただきまして、我が方の円借款供与について総合的な観点から結論を出してまいるということで努力しているところでございますし、この体制はこれまでのところ全体としてまず順調に機能しているのではないかと思っております。ただし、御批判もございますから、先ほど申し上げましたように、私どもとして一層自戒して努力してまいらなければならないと思っております。
  118. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今言われましたように、いわゆる四省庁体制という形で進められているわけですが、私は、いろいろ問題があるな、こういう認識でいるのですね。例えばアメリカ国際開発協力局だとかドイツの経済協力省、そういうのがあったりいたします。日本の状況はやはりもう少し考えなければならぬ、こういうふうに私は思っているわけでありまして、そういう意味でもこの援助を効率化しなければならぬ、あるいは一元化をしなければならぬ、こういうふうに今までもたびたび指摘されてきたりしているわけですが、今局長はそのようには話されましたけれども、いわゆる一元化という問題についてどのように考えられますか。
  119. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 援助につきましては、国会でもしばしば御指摘いただいておりますとおり、国民の税金に基づいてやっているところでございます。私ども、その原点に立ちまして、できるだけ効果的、効率的、本当に先方、相手国のニーズに マッチしたものをやるということで、適正な使用に心がけなければならないというふうに考えておるところでございます。  この援助につきましては、さまざまな省庁が国内で関与はしていただいておりますけれども、相手国との関係では、やはり外務省が窓口になりまして、一元的に日本政府の意思を統一的にお伝えし、やっていくということが非常に大事である、この点は日ごろから私ども確信しているところでございます。ただし、国内的にいろいろ経験、知識を持っておられる諸官庁、役割もそれぞれ多岐でございます。その多岐な役割を動員して、それで相手国の要請にマッチするような形でつないでいく、その一元的な窓口として外務省が取りまとめ役を鋭意やっていく、この体制が一番大事であろうと存じます。したがいまして、私ども現行組織のもとで一層努力して、そのまとめ役をやっていくということでいくのが一番現実的なやり方ではないか、今のところはそのように感じております。
  120. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 外務大臣に伺いますけれども、私は、いわゆるこうしたODA援助の問題というのは、ただ相手から要請されてやるとかということだけじゃないと思うのですね。これは、私は日本の外交を推進する意味で、このODAは非常に大きな外交手段として考えていいのではないかと思うのですね。そういう意味考えたときに、今局長がいろいろお話もされましたけれども、いわゆる外交手段としてのODAという意味でもっと重視すべき点、そういう位置づけで考えるべきではないかと思うのですが、外務大臣ほどのように考えられますか。
  121. 中山太郎

    中山国務大臣 委員お説のとおりでございます。ただ、日本の援助額が急成長をいたしておりますのに対しまして、職員の処理能力というものが限度を超えつつございます。ここをきちっと整備をいたしませんと、金額だけ膨張させましても、内容をさらに充実をさせて、国民の御期待に沿うような形でこの援助を実現していくということは非常に難しい、私は率直にそのように感じております。  東ヨーロッパにおける日本からの技術援助等につきましても、結局技術協力をやる館員の配備が少ない。特に、この外務省の定員は全体で四千三百人でございますが、国内の官庁で見ますと、予算書で見ると、北海道開発庁あたりは八千人からの公務員を抱えているわけでありますから、そういうことを考えていくと、これから外交が日本の国連を決する大きな一つの力になる。さらにそれを裏づけていくのにODAが必要である、必要な外交手段であるという御指摘によれば、私どもとしては、ひとつ委員先生方の御支援をいただいて、ぜひともこのODAが国民の納得できるような、また信頼されるようにODA実現のための外務省の人員の確保にも御支援をちょうだいいたしたい、心からお願いを申し上げておきます。
  122. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 私どもは、今大臣がおっしゃったような意味では大応援団のつもりでありますけれども、そういう意味で(発言する者あり)必要なものはやる、不要なものは削除する、これが姿勢であります。  今、その陣容の話もちょっと出ましたけれども、外務省がこういうような意味で援助、もっと効率的にあるいは意味のあるものにするためにということで、いわゆる国際開発大学の構想を持たれて進めていると思うのでありますけれども、この現在の進捗状況、私はこういうものに非常に期待をするわけでありますけれども、どういう状況になっているかを御説明ください。
  123. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 国際開発大学の構想は、我が国が今後開発援助を一層拡充していく段階で最も必要とされる人材の育成という観点から進めているところでございます。  この構想は、直ちに大学を一挙につくるということではございませんで、当面は国内の各大学、あるいは海外の大学等で開発関係の研究をしているところのいわゆるネットワークづくりにまず重点を置きまして、その上で経験を踏まえまして、将来例えば大学院大学のような実態を持ったものをつくった方がいいというような結論が出ますれば、また将来の課題としては、そういうことも研究課題といいますか、一つの理想として持っているというところでございます。  現状におきましては、ようやくそのネットワークのもう一つさきの段階で財団が先般発足いたしまして、経団連その他民間企業の方々の御協力もいただきまして、また今度の平成二年度の政府予算におきましても若干の予算措置をお願いして、まずその母体となる財団の発足がようやく実現を見たというところでございます。
  124. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今のお話は、もう少しタイムスケジュール的にいつごろまでにどういうふうにしようとかいうようなことは、まだ考えていないということでありますか。
  125. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 具体的な年数を切ってどうということまでは詰めておりませんですが、第一段階のネットワークづくり、それを当面鋭意やっていこうということで努力しているところでございます。
  126. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 時間が参りましたので、これだけで終わりますけれども、私はこの援助の問題は今までも実は国会の場で何度も取り上げてまいりました。そして、この実施のされ方等、これまた非常に問題があることもまた事実でありますし、いわばタックスベイヤーにちゃんと説明できるような格好にしなければならないし、本当に意味のあるものにしなければならないし、そしてまた、先ほど申し上げたように、いわば外交の手段としての役割も、これまたますます大きくなっていると私は思うのですね。そういう意味で、これからもこの問題について大いなる関心を持って取り組んでまいりたいし、そのためにまた外務省にもよろしく御努力をお願いして、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
  127. 柿澤弘治

    柿澤委員長 これにて本件に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  128. 柿澤弘治

    柿澤委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。古堅実吉君。
  129. 古堅実吉

    古堅委員 日本共産党を代表して、日タイ租税条約承認に反対する討論を行います。  本条約は、そのねらいが主として企業、とりわけ大企業利益を税制上保護し、独占資本の海外進出を税の面で保障するものであるとともに、国の課税権を一部制限するという問題などがあるため、反対するものであります。  今回の改定は、タイに有利な石油所得税を新設したりするなどの新たな規定があるにもかかわらず、大企業優遇税制の典型である間接税額控除や、みなし外国税額控除の規定が残されていることに問題があります。タイの子会社から日本の親会社に対して支払われる配当利子について、日本での外国税額控除の際、タイの子会社が納付するタイ租税を、日本の親会社が払ったものとして考慮されるという間接税額控除の存置、及びタイ進出した我が国企業への租税が、相手国によって特別に減免されている場合であっても、その国での本来の課税が課されたとみなして、実際に支払っていないものにまで日本での税額控除を認めるという、みなし外国税額控除がそれであります。  次に問題なのは、親子会社の産業的事業以外の事業、サービス業などにおける配当を、現行の二五%以下から二〇%以下へと引き下げたり、金融機関以外が受け取る利子について、現行では制限がなかったのを二五%以下との新たな制限を定めて、課税権制限を拡大するものとなっております。  以上反対の趣旨を述べて、討論を終わります。
  130. 柿澤弘治

    柿澤委員長 これにて討論は終局いたしました。     ─────────────
  131. 柿澤弘治

    柿澤委員長 採決いたします。  本件承認すべきものと決するに賛成の諸君の 起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  132. 柿澤弘治

    柿澤委員長 起立多数。よって、本件承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  133. 柿澤弘治

    柿澤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕      ────◇─────
  134. 柿澤弘治

    柿澤委員長 次に、向精神薬に関する条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。  これより政府より提案理由の説明を聴取いたします。中山外務大臣。     ─────────────  向精神薬に関する条約締結について承認を求めるの件     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  135. 中山太郎

    中山国務大臣 ただいま議題となりました向精神薬に関する条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  この条約は、昭和四十六年二月二十一日に国連加盟国等の参加によりウィーンで開催された条約採択会議にて採択されたものであります。  この条約は、向精神薬の乱用及び不正取引の防止を目的としており、向精神薬の製造、取引(輸出入を含む。)、使用等の規制について国際的な枠組みを定めております。  我が国がこの条約締結することは、我が国における向精神薬の乱用及び不正取引の防止の一層の強化並びに薬物問題についての国際協力の一層の推進の見地から有意義であると認められます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  136. 柿澤弘治

    柿澤委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。  本件に対する質疑は後日に譲ることといたします。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午前十一時四十四分散会