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1990-06-18 第118回国会 衆議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年六月十八日(月曜日)     午後二時二分開議  出席委員    委員長 上田  哲君    理事 北村 直人君 理事 鈴木 宗男君    理事 中川 昭一君 理事 中村正三郎君    理事 仲村 正治君 理事 沢田  広君    理事 玉城 栄一君       今津  寛君    小林 興起君       鳩山由紀夫君    町村 信孝君       五十嵐広三君    伊東 秀子君       藤原 房雄君    古堅 実吉君       小平 忠正君  出席国務大臣         外 務 大 臣 中山 太郎君         国 務 大 臣          (総務庁長官) 塩崎  潤君  出席政府委員         北方対策本部審         議官      鈴木  榮君         外務大臣官房長 佐藤 嘉恭君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省北米局長 松浦晃一郎君         外務省欧亜局長 都甲 岳洋君         外務省条約局長 福田  博君  委員外出席者         水産庁海洋漁業         部国際課長   田家 邦明君         運輸省航空局監         理部航空事業課         長       荒井 正吾君         海上保安庁警備         救難部警備第一         課長      大森 寿明君         特別委員会第一         調査室長    寺田 晃夫君     ───────────── 五月七日  北方領土返還促進等に関する請願(中川昭一君外一名紹介)(第五〇八号) は本委員会に付託された。     ───────────── 五月七日  嘉手納基地からの米空軍機による爆音被害除去対策に関する陳情書(第一一二号)  核戦略爆撃機嘉手納基地即時退去に関する陳情書(第一一三号)  北方領土返還促進に関する陳情書外六件(第一一四号)  千島列島返還に関する陳情書(第一一五号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  沖縄及び北方問題に関する件      ────◇─────
  2. 上田哲

    上田委員長 これより会議を開きます。  沖縄及び北方問題に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。北村直人君。
  3. 北村直人

    北村委員 まだ外務大臣そして総務庁長官おいででございませんけれども所信に対して質疑を行いたいと思います。  まず第一に、限られた時間でございますので、端的にお答えをいただきたいと思いますけれども北方地域の旧漁業権者等に対する特別融資対象者拡大する必要があると私は考えておりますが、これはどうかということでございます。  これは、戦後北方領土の島々を追われた人方は、この間生活事業の再建に血のにじむような努力を重ねてまいりました。国はこれら元居住者に対する援護事業として、昭和三十七年以来事業及び生活の安定に資することを目的として、年々貸付条件の緩和などが図られて、経済的にも精神的にも大きな支えをしてまいりました。しかし、戦後四十五年を経た現在、元居住者の三分の一の人方が他界をする、あるいは減少の一途をたどっていると同時に、高齢化を迎えております。このことは、全国的に高まりを見せている北方領土返還運動にとって憂慮すべき状況でありますし、早急に後継者を育成して、中核となる人材を確保して粘り強い運動の展開を引き継いでいく施策が必要だと思います。  それで、特に元島民人方の家族が多く生活している根室地方は、その生業の中心となる漁業が、大変厳しい国際環境から生産が制限され、生活内容も十分と言える状況にありません。こうした観点から、北方地域の旧漁業権者等に対する特別措置に関する法律に基づく融資対象を、いわゆる一世人方から二世、三世の人方にも拡大をする必要があると私は思いますけれども、ここら辺のお答えをいただきながら、実際には一世人方の名前で二世の方々が使わせていただいている、そして二世の人方がその融資の返済をしているという事実を見ながら、二世、三世の方々にぜひ拡大をしていただきたい。  これについて総務庁の御見解を聞きたいと思います。
  4. 鈴木榮

    鈴木(榮)政府委員 お答申し上げます。  この融資対象北方領土の元居住者、もともとは一万七千人くらいいたのですが、現在は一万一千人くらいになりまして、それと同時に対象者高齢化しているということで、先生指摘のようにこの融資対象を二世、三世にも広げてほしいという要望がございます。現在の法律で申しますと、この融資制度趣旨でございますが、終戦当時北方領土に住んでいたとか漁業権を持っていたとかいうふうに、北方領土に何らかの生活の基盤を持っていた人たち対象に行われている事業でございますので、この対象を二世、三世まで広げることについては、この制度趣旨に合っているかどうかという検討が必要かと思います。ここに一つの大きな問題があるわけでございますが、この融資拡大については、地元の強い要望もございますし、先生指摘のように返還運動を二世、三世に引き継ぐという観点からも考慮してほしいというお考えもございますので、御要望に沿う何らかの道がないかということを検討するために、現在は関係団体を通しましていろいろ資料を集めているところでございます。
  5. 北村直人

    北村委員 ということは、前向きに検討していただいて関係者方々の御要望をお聞きいただけるというふうに理解をしてよろしいのでしょうか。
  6. 鈴木榮

    鈴木(榮)政府委員 具体的に申しますと、今集めている資料と申しますと二世、三世を含めました人たち実態ということ、それから現在の融資制度利用状況、それからまたこの実際の対象者、現在は対象者がどういう点で困っているか、そういうような具体的な事例といいますかそういうものを集めまして何とか問題点を整理いたしまして、どことどこを結びつけたら御要望にかなうかということを検討したいと思っておるところでございます。
  7. 北村直人

    北村委員 ぜひその検討を詰めていただいて、二世、三世の方々融資を受けられるようにぜひ御検討をいただきたいと思います。  次に、北方領土には五十二か所の墓地に四千三百十人の人方が埋葬されております。領土問題が未解決のために遺族方々が自由に墓参ができ得ないという状況にあり、遺族の切なる願いと人道的な観点から、政府の力強い外交交渉によって昭和三十九年からこの墓参が実施されてまいりました。この間、ソ連側都合や旅券のビザ等関係で十年ほど墓参が中断をされてまいりましたけれども、これまで十二回の墓参遺族方々、極めて少ない数でありますが五百二十三名が墓参をさせていただいております。しかしこのままでは多くの元居住者人方が一度も墓参できないまま亡くなってしまうということも懸念されてしまいます。最近は墓参に対してソ連側が柔軟な姿勢を見せて、昨年は十九年ぶりに国後島に、さらに本年は遺族方々が強く望んでいる択捉島を初めとする北方四島全島の墓参が認められております。このように墓参地拡大されたことにより、全国各地関係遺族から多くの参加希望が出されていることや、年々高齢化している元居住者への考慮などを含めると、早急にできるだけ多くの遺族墓参できるよう、これはぜひ国の事業として実施する必要があると私は考えております。  それから、多くの遺族方々墓参に参加できるように、できれば大型の船を利用することも必要なのでしょうけれども、これは接岸の不可能な島がたくさんあります。私は国後択捉両島には飛行場もあると聞いております。このたび中標津飛行場ジェット化されて滑走路が大きくなりました。そうなりますと、中標津飛行場を使って国後択捉両島飛行機チャーターをして墓参ということも考えられるのではないか。そうなりますと、外務省のいろいろな御見解もあろうと思いますので、そこら辺もぜひお答えをいただければと思います。
  8. 鈴木榮

    鈴木(榮)政府委員 私の方から北方領土墓参が国の事業として実施できないかという部分についてはお答えしたいと思います。  現在の北方墓参は、参加希望者の多くが北海道の道民ということで北海道事業主体として実施しておりまして、総務庁がその実施に伴う必要な事項につきましては各省との調整に当たっているわけでございます。この墓参自体につきましては個人的な行為ということでございますが、この北方領土墓参につきましては、北方領土問題が存在するために通常の形で墓参ができないという事情がございます。こういうふうな特殊な事情にかんがみまして、国としてはどういうことができるかということを今後検討してまいりたいと思います。
  9. 都甲岳洋

    都甲政府委員 北方墓参につきましてできるだけ多くの方々に参加していただくということは必要だと私ども考えておりますけれども大型船利用につきましては、北方四島周辺というのは正確な海図もなく、また水深も浅く、整備された港湾もないという先生指摘のような問題がございますので、大型船運航が可能かどうかにつきましては技術的な面からいろいろな問題がございます。そういうことで、政府部内におきましても関係方面と協議しながら検討していく課題にさせていただきたいというふうに思っております。航空機を利用する墓参につきましても種々の問題があるというふうに承知しておりますので、それも勘案しながら今後の課題として検討していきたい、そういうふうに思っております。
  10. 北村直人

    北村委員 外務省さんには、四島が返ってくるまでの間飛行機チャーターをして行けるような対応策をぜひ来年から実施できるよう前向きな検討をひとつお願いをしたい、こう申し上げると同時に、大臣にもひとつぜひ御検討をよろしくお願いをしたいと思います。  それでは、三番目でございますけれども、もう一つ先ほど国事業として墓参がなかなかという総務庁からもお話がございましたけれども、今まで遺族方々には、墓参については国からあるいは道から援助をしていただいておりますが、その墓参出発地であります根室までの旅費というのは全部遺族方々の負担でございます。高齢者あるいは北海道内でも遠くの方あるいは北海道外本州方面方々もたくさんいて、墓参したくてもそこまで行く旅費もなかなかでき得ないというような問題もございます。それで、墓参参加遺族に対する根室までの旅費について援護ができるかどうか、これをぜひお答えをいただきたいと思います。
  11. 鈴木榮

    鈴木(榮)政府委員 先ほどお答えいたしましたように、墓参ということ自体は個人的な行為でございますが、こういう北方領土が抱える特殊な事情にかんがみまして、国がどの程度お助けできるかということを検討しているわけでございますが、現在北海道が実施しておりますので、この点、仮に国がやるとしても、いずれ北海道とも協力して行われないといけないことになります。  いずれにいたしましても、北海道初め関係団体と十分御相談いたしまして、できる限り墓参希望者の御要望に合うように検討していきたいと思っているわけでございます。
  12. 北村直人

    北村委員 墓参遺族方々の経費につきまして、国としてできるだけの援護措置をぜひとっていただきたい、こうお願いを申しあげます。ことしの四月三十日と五月一日両日、塩崎総務庁長官には北方領土視察していただき、地元が抱えている深刻な問題に対して熱心に耳を傾けていただきました。大変感謝申し上げる次第でございます。さらに、領土問題を解決するために、改めて四島一括返還決意を示されたことは国民にとって大変力強い限りであります。ことしの墓参についても八月二十四日から行われるわけでありますが、お聞きいたしますと、塩崎長官におかれましては、先日の北方領土視察の折、その墓参結団式が前日に行われるわけでありますが、そのときぜひ長官みずから赴いて、何とか墓参方々決意をあるいは感謝の意を表したいというふうに聞き及んでおります。それが実現でき得るように、そしてまた、そういうお心がおありとすれば、ことしの八月二十三日だと思いますが、結団式にぜひ塩崎総務長官の御出席をいただきたい。きょう長官おられませんが、多分長官のコメントがいただけるのではないかと思いますので、そこを総務庁の御検討お願いいたします。
  13. 鈴木榮

    鈴木(榮)政府委員 北方領土墓参、ことしで十三回目を迎えまして、今回初めて択捉島墓参が実施されることになりまして、元島民の強い願いでありました四島の墓参が実施されることになったわけでございます。長官は、この四島の墓参を機にいたしまして、日程の都合がつく限り出席したい、このように私伺っている次第でございます。
  14. 北村直人

    北村委員 ぜひ長官審議官の方からも強く、この八月の結団式に御出席をいただきたいと、これは四月のときにお約束をしたようでございますので、ゆめゆめこの約束を破らないように長官にお伝えをいただきたいと思います。  時間でございますので、最後に、外務大臣にお越しをいただきましたので、テレビ、新聞等で、どうもこのごろ二島であるとかというようないろいろな問題がありますし、また経済的にというようないろいろな問題が取りざたされておりますが、この北方領土返還に向けての外務大臣としての所信をいま一度お聞きして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  15. 中山太郎

    中山国務大臣 我々の古来の領土である四島の一括返還を実現して、日ソ間に平和条約を締結するという政府姿勢は何ら変わるものではございません。この平和条約締結に向けて、日ソ間には一昨年、双方で合意されました日ソ平和条約作業グループ、これによりまして五項目にわたっていろいろと事務レベルで協議が行われておりまして、私どもは、九月上旬に予定されるシェワルナゼ外相の来日を機に行われる日ソ外相会談において、いろいろと各般の問題について議論をいたしたい、このように考えております。
  16. 北村直人

    北村委員 ありがとうございます。  最後に御要望だけ申しておきたいと思いますが、北方領土視察について、総理大臣にぜひ北方の地に足を入れていただき、視察をしていただきますよう、総理大臣外務大臣から御要望をしていただきますよう心からお願いを申し上げまして、質疑を終わらさせていただきます。
  17. 中山太郎

    中山国務大臣 委員からの、総理に対してこの北方四島の視察をぜひひとつやってもらいたいという御期待がございますが、私から委員の御発言の御趣旨総理に十分伝えさせていただきたいと思います。
  18. 北村直人

    北村委員 ありがとうございます。
  19. 上田哲

  20. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 北方地域振興策一つとして、中標津空港ジェット化が言われておりますけれども、お聞きしますと七月末供用開始である、こう承っていますけれども、きょう運輸省からは、具体的に何月何日にジェット機を飛ばすのか、これをお聞きしたい、こう思います。
  21. 荒井正吾

    荒井説明員 お答え申し上げます。  中標津空港につきましては、現在滑走路を千二百メートルから千八百メートルに……(鈴木(宗)委員「時間がないから結論だけ」と呼ぶ)はい、わかりました。現在聞いておりますと、会社などでは七月二十八日の初便就航考えておられるようでございます。運輸省といたしましても、特段の問題はないと考えておりますので、当日の運航開始に向けまして諸手続を進めてまいりたいと考えております。
  22. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 それでは、七月二十八日に東京-中標津直行便の第一便が飛ぶ、こういう理解をしていいのですね。
  23. 荒井正吾

    荒井説明員 役所内の諸手続を申し上げまして恐縮でございますが、免許に至るまで運輸審議会審議がございまして、明日審議がございます。それが通りますと答申をいただきまして、免許ということになりますので、順調にいきますと十分間に合うものと考えております。
  24. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 この中標津ジェット化に伴って、また北方領土返還運動の啓蒙、啓発運動にも相当拍車がかかると思いますので、今後ともこの空港を運輸省としては大事にしてもらいたいし、また、拡大等にも努めていってほしいな、こう思います。  四月三十日に塩崎総務庁長官北方領土現地視察していただきました。先ほど同僚議員からも、その際のいわゆる北方墓参に対する助成措置についての話がありましたけれども、そのとき私は塩崎長官現地視察に立ち会った一人であります。関係者国費での助成でありますしからば、概算要求等が八月までにとり行われるわけでありますけれども平成三年度の予算総務庁はこのいわゆる北方墓参についての助成国費で何がしか負担するんだ、あるいは助成してあげるんだという姿勢をもって概算要求に間に合うべく今審議をしているかどうか簡潔にお答えをいただきたい、こう思います。
  25. 鈴木榮

    鈴木(榮)政府委員 北方墓参について国でどの程度、どういう部分について出せるかということにつきましては、大臣から検討を命ぜられまして、来年度の予算要求に向けてよく検討しておる次第でございます。
  26. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 検討しているということは概算要求に出したい、要求したいという受けとめ方でよろしいですか。
  27. 鈴木榮

    鈴木(榮)政府委員 先ほど申しましたように、北方領土問題という特殊な事情を踏まえまして、国がどの程度、どの部分について出せるかということ、これはいろいろ各方面意見も聞かないといけませんので、総務庁といたしましては、なるべく御要望に沿うという方向検討しております。
  28. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 なぜ私がしつこく言うかといいますと、例えばことし初めて択捉墓参が決まりましたけれども択捉島引揚者のうち四割は北海道外なんです。そして大方は、択捉の場合は函館が多いのであります。ですから非常に根室と離れている、根室まで行くのが大変だというのが実態なんですね。そこで私どもはしつこくお願いをしているわけでありますけれども、これからも墓参の場所が拡大されていくと、やはり東京からもあるいは大阪からも行く人があるでしょう。そういったことを考えますと、やはり国で何がしかしてやるべきだと思っているのです。そういう意味で、間違いなく平成三年度の予算では日の目を見るように私は再度お願いをしておきたい、こう思っていますが、いかがでしょうか。
  29. 鈴木榮

    鈴木(榮)政府委員 現在、来年度の予算要求検討に入ったところでございますので、どういう結論になるかということは今の段階で申し上げられませんが、議員の御希望方向総務庁としてはそのような方向でいきたいということで関係者といろいろ相談しているところでございます。
  30. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 その点、くれぐれもよろしくお願いしたいと思います。  次に、領土返還運動では何といってもやはり世論喚起が一番じゃないかと思っているのです。その世論喚起というのは、国内はもとより国際世論がこれから大事であると思いますけれども、ことしの予算でも、例えば総務庁はふれあい広場の開催等やってきてくれました。また今までも、青年フォーラムだとか漫画読本だとかビデオ制作とかやってきてくれましたけれども、来年度予算で、総務庁としては新しくいわゆる啓発運動としてこれを考えているという何か具体的なメニューはございますか。
  31. 鈴木榮

    鈴木(榮)政府委員 北方領土返還運動は非常に大切な時期に来たと思っております。現在の姿勢といたしましては、委員指摘のように青少年を対象にした啓発、それに加えまして、ゴルバチョフ大統領の訪日も決まった折でございますので、四島一括返還への世論の結集、それが非常に大切であろうということで、今年度におきましても、ふれあい広場等の新しい事業考えたところでございます。  来年度の要求につきましても同じような基本的な考え方で行おうと思っておりますが、何しろ現在、ちょうど来年度の予算要求検討に入ったところでございまして、これは関係団体等のお知恵を拝借しながら固めていきたいと思っております。
  32. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 審議官、今の話は極めて事務的な話で、どう考えたって予算にタッチしたり何がしか予算のわかっている者は、この六月の半ば過ぎの段階で、来年何をやるか、そのフレームも決まっていなければ考えてもいないとうことはないということなんですよ。まさか私はそのくらい総務庁は怠慢だとは思っていませんよ。恐らく何がしかのこれとこれはやりたいとかという総務庁希望があるのじゃないですか。それをバックアップして予算をつけるのが、我々のまた仕事なんですよ。要求がないならばないで結構ですよ。それならば予算がつかないということですから。私は、今この大事な時期とあなたがいみじくも言いながら、何も考えていませんみたいな話というのはちょっと納得できないのです。もう一回答弁してください。
  33. 鈴木榮

    鈴木(榮)政府委員 御指摘のように、今予算重点事項につきましていろいろ議論を進めてきているところでございますが、現在出ているものは、あくまでまず個人的な意見がたくさん出ているのでございまして、この中でどれに絞るかということにつきましては、もう少し検討してみないとその行き先がわからないという状態でございます。
  34. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 時間がありませんからこれ以上言いませんけれども、とにかく総務庁、私がお願いしたいのは、この北方領土返還というのは単に総務庁仕事じゃないのです。一億国民の悲願として今取り組んでいる問題なんです。わざわざ北方領土の日まで決めているのです。しからば総務庁はもっと熱心に、あれもやりたいこれもやりたいという注文をつけてきて当然ではないかと私は思っているのです。特に平成三年度の概算要求ではシーリングも取っ払う、こういう動きもありますから、シーリングにこだわらないで思い切った予算づけをする、あるいは啓発運動予算を獲得する、この姿勢だけはきちっと持ってもらうよう要望しておきたいと思います。  同じく外務省にもお尋ねしますけれども外務省の場合は北方同盟に毎年一〇%くらいの予算の上積みをしてくれておりますから、大変感謝しております。外務省では特別、来年こういったことをやりたいという希望がありますか。
  35. 都甲岳洋

    都甲政府委員 北方領土問題についての返還運動が一層盛り上がるということはこの大事な日ソ関係の節目に非常に重要だと私ども思っております。そういうことで、外務省としても、今後ますます国内啓発観点からいろいろの措置をとるべく今考えをまとめているところでございますので、そういうことで、その方向で努力していきたいというのが現在の外務省姿勢でございます。
  36. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 ちょっとお尋ねするのですが、都甲さん、何か外務省としてはカレンダーみたいなものをつくってそれをきちっと普及させていきたいなという話がありますけれども、それは事実ですか。もしやるならば、斬新な、やはり人の目を引くというような仕事をしてもらいたいなと思うのですけれども
  37. 都甲岳洋

    都甲政府委員 全国的に国内啓発観点から最も効果的なものということでそうなっておる段階でございますので、先生の今のような御指摘の点も私ども十分に心に入れながら、最も効果的な方法を考えていきたいと思っております。
  38. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 外務大臣にお尋ねしますけれども、さきの日米外相会談、御苦労さまでございました。この日米外相会談では北方領土の問題については出たのでしょうか。
  39. 中山太郎

    中山国務大臣 今回の日米外相会談では、先般の米ソ首脳会談におきまして、ブッシュ大統領から北方領土問題をいろいろと話をしていただいたことに対して、私から日本国民を代表してお礼を申し上げてまいったということでございます。
  40. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 外務大臣米ソ首脳会談ブッシュ大統領からゴルバチョフ大統領に対して北方領土の問題を提起してくれた、これは極めて大きな意味を持つと私は思うのであります。  七月九、十、十一日とヒューストンでサミットが開かれますけれども、私はぜひともこのサミットでもこの北方領土問題には言及をしていただきたいし、できれば政治宣言に盛り込んでほしいと思うのです。  私の勉強している範囲では、サミットで初めてこの北方領土問題が触れられたのは昭和六十三年のあれは六月二十一日、トロント・サミットでの竹下総理の発言でなかったかと思うのでありますけれども、それ以来米ソ首脳会談では何回となく北方領土問題も取り上げられてきました。そこで、やはり西側陣営が一致結束してソ連に対しこの北方領土問題、まだ未解決の問題であるということをアピールしてくれたならば、国内世論はもとより国際世論の喚起にもつながっていくし、大きな政治的なインパクトになると私は思っているのです。そういった意味で、サミットにおいてぜひともこれは触れていただきたい、こう私は期待もしますし、お願いをしたいのでありますけれども、いかがでしょうか。
  41. 中山太郎

    中山国務大臣 今各国間で事務レベルにおいて、サミットにおける議案の調整をしている最中でございまして、貴重な御意見を十分踏まえて、政府としても各国との折衝に当たってまいりたいと考えております。
  42. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 外務大臣としてサミットで触れるべきなのかというのを、私の今言ったことについて、今調整中はわかりますけれども、日本としてはでは提起しているのかどうかを答えていただきたいのですけれども
  43. 都甲岳洋

    都甲政府委員 お答え申し上げます。  サミットの場で具体的な政治問題、どのように取り上げられるかということはかなり直前になりまして政治的な議題が調整されるわけでございますので、その中においてどのように対応するかということを考えていきたいというのが私どもの気持ちでございますので、大臣もその線に沿ってお答えになられたと私は思っております。
  44. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 外務大臣、ぜひともこの問題は、時期も時期であります。九月にはシェワルナゼ外務大臣も来られる。そして、来年にはゴルバチョフ大統領も訪日されるという一つのスケジュールであるし、また領土返還運動の大きな節目でありますので、そういった意味でもヒューストン・サミットの場でこの問題については外務大臣からも強く各国首脳に働きかけをしていただきたいし、また海部総理からもきちっとした場で発言をしていただきたい。再度お願いをしたいのですけれども、どうでしょうか。
  45. 中山太郎

    中山国務大臣 ヒューストン・サミットにおきましては、ソ連に関する西側のG7の首脳の間であるいは外務大臣の間でいろいろと問題が議論されると存じます。日本政府としては、そのような機会に北方領土問題を提起するという考え方でおります。
  46. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 その点、ぜひともお願いしたい、こう思います。  さて、大臣、きょうの新聞等を見ますと、例えばソ連のヤコブレフ政治局員が北方領土は多段階で解決すべきだとか、あるいはいろいろな道を考えなくてはいけないとか、相当な話が来ております。さらに向こうの、ソ連の研究所のチタレンコ所長はこのヤコブレフ発言を受けて、これは多段階の解決策を示したのだみたいな話も出ています。日本は四島一括返還、これは基本的姿勢として今外交案件の解決に向かって当たっているわけですけれども、日本の外交姿勢として余り硬直的になってもいかがかなという声も一方にありますね。いろいろな考えを持って、幅を持って交渉した方がいいのではないかという声も一部にはありますけれども、この点、外務省姿勢としてどう取り組んだ方が一番ベターよりもベストなのかと考えておられるのか教えていただきたい、こう思います。
  47. 中山太郎

    中山国務大臣 日ソの長い懸案問題でございますから、基本的な政府の交渉方針というものは、既に申し上げているとおり、四島一括返還ということは不変であります。また、国会でのたび重なる御決議が政府姿勢の支えにも大きくなっておりますし、国民の皆様方の御要望もそのようなことであると私は考えております。  ただ、ソ連におきまして、領土問題はないという発言をされておられることもございます。あるいはヤコブレフさんのように第三の道という言葉を使われた方もいらっしゃいますし、先般来られたエリツィンさんと私との話では、二十一世紀にかけて段階的に領土問題を解決したらどうかという話もございます。日本にもいろいろな意見がございます。これは私は、日ソ外相会談、つまり九月にシェワルナゼ外務大臣が日本に来られますが、その際での日ソ外相会談というものが一つのソ連の政府考え方を示すものではないか、ただいまのソ連に行われているいろいろな御発言は、いわゆる政府としての見解ではないわけであります。そういう意味シェワルナゼ外相との会談は、私も重大な関心を持ちながら臨みたいと考えております。
  48. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 今の外務大臣の非常な心意気といいますか、基本的な姿勢を伺って私もぜひともその線でやっていただきたい、こう思うのでありますけれども、特にソ連はいろいろな打診といったらいいのでしょうか、いろいろなボールの投げ方をしてきておりますから、日本としても、ただひたむきな姿勢で取り組むのはわかりますけれども、ある程度の幅というのは持っておった方が、逆に一歩でも二歩でも前進するのかなという私は気持ちがあります。しかし、基本は四島一括返還、これは国会決議でもそうなっているわけでありますから、このことをおろそかにすることは許されませんから、今外務大臣がおっしゃったような姿勢で、九月のシェワルナゼ大臣との会談では乾坤一てきの会談をしていただきたいな、こんなふうに私は思っております。  時間ですから最後に、昨日の総理大臣の講演で、何か来年早々にもソ連大統領は日本に来るのではないかという報道がされておりますけれども、これは外交ルート等でも確認できているのか、あるいは総理大臣が期待感を込めての発言なのか、この点正確なお示しをいただきたい、こう思うのです。
  49. 都甲岳洋

    都甲政府委員 お答え申し上げます。  三月に海部総理のところに、ソ連側からゴルバチョフ大統領の親書が参りまして、その中では、一九九一年に予定されている日ソ首脳会談が、日ソ関係における重要な道標となり、この関係に新たな質をもたらすものと確信しているということで、来年の訪日を確認しております。ただ、できるだけ早く、先方の都合がつけば来年の早い時期にも実現したいというのは、海部総理のお気持ちが諸般の事情を考慮に入れてそのようなお気持ちと期待を表明されたというふうに私ども理解しております。
  50. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 といいますのは、来年早々に来るということはない、いわゆる外交ルートでの確認によると。
  51. 都甲岳洋

    都甲政府委員 確認をしてきておりますのは一九九一年における来日、そういうことでございます。
  52. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 今の都甲局長さんの説明を聞いてもわかるとおり、やはり一番大事になってくるのは九月の日ソ外相会談でないかと私は思っているのですね。ですから、この日ソ会談では、先ほども言いましたけれども、強い姿勢で、そして日本の国益あるいは日本の国民の悲願というものを受けて外務大臣が堂々の交渉をしてくれますように、そしてゴルバチョフ大統領の訪日の日程もきちっと示されるように私は強く要望して質問を終えたいと思いますが、最後外務大臣のいま一度の決意をお伺いしたいと思います。
  53. 中山太郎

    中山国務大臣 九月のシェワルナゼ外相の来日、またその後に予定されております私の訪ソによる日ソ外相会談、そのような一連の会談を通じてゴルバチョフ大統領の来日の日程が確定するものと私は考えておりまして、この日程の確定が早急に行われることを心から期待をし、その機会に日ソ平和条約締結への一つの大きな扉が開かれることを心から期待しておるものであります。
  54. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 終わります。
  55. 上田哲

    上田委員長 次に、中川昭一君。
  56. 中川昭一

    中川委員 私も、北方領土問題並びに北方隣接地域にかかわる問題につきましてお伺いいたしたいと思います。  まず最初に、墓参につきましては、六十一年に当時の安倍外務大臣が訪ソされまして十年ぶりで復活をした、その後ビザを持ってくるか持ってこないかというような問題もありましたけれども、ことしになりまして一月十六日、自由民主党代表安倍晋太郎氏とソビエトのゴルバチョフ当時の書記長との話し合いの中で、墓参、特に択捉について会談があって、二週間もたたないうちにオーケーという返事が来たわけでありまして、しかも今回の墓参につきましては、日本側の要望がほとんど認められておるということは非常に評価できるわけでありまして、これはまさに国民の悲願であります北方領土問題に対して人道的な立場から大きな前進であろうというふうに思うわけであります。  しかし、現在の外交的な固定した状況の中におきましても、墓参に関しましてはまだまだしたい要望がいっぱいあるわけでありまして、例えば、日本の固有の領土であります北方領土に対する墓参と、それからそれ以外の地域に住んでいた日本人に対する墓参と、それからソ連に戦後抑留された人たちに対する墓参と、区別する意味があるかどうかは別にいたしまして、残された問題といたしましては、ソ連に抑留されておる多くの人々、何万人、五万人とも言われておる人々に対しての墓参がまだまだ不十分であり、我々の要望ソ連側にうまく伝わっていないというか、かなりかけ離れているようですけれども、その実態についてお聞かせ願いたいと思います。
  57. 都甲岳洋

    都甲政府委員 ソ連のシベリアにおきまして抑留、死亡された日本人の方々の墓地の所在を明らかにするように、日本政府としては機会あるごとに従来から申し入れてまいっております。しかし、ソ連側は一九七四年に最後に新しい情報を伝えてきて以来、新しい情報は伝わってきておりません。従来ソ連側が通報してきた墓参は二十六ヵ所、三千九百五十七柱ということでございますが、この墓地への墓参は現在実現しておりますけれどもしかし、これはソ連側に私どもが提出しておりますリスト、三百二十四ヵ所の墓地のリスト、それから、四万一千九百八十四柱の遺体が埋葬されているという事実を私ども把握しておりますので、その十分の一にも満たないという状況でございます。  そういうことでございますので、政府といたしましては、来年のゴルバチョフ大統領の訪日等いろいろな機会をつかまえまして、人道的な問題であるこの問題になお一層取り組んでいきたい、そういうふうに考えております。
  58. 中川昭一

    中川委員 引き続き、九月のソ連外相の訪日並びに中山外務大臣の訪ソ、そして来年のゴルバチョフ大統領の訪日、あらゆるレベルを通じて、人道上の問題ということでソビエトも理解を示しているわけでありますから、さらにこれは強力に推し進めていただきたいというふうに思います。  北方隣接地域の振興基金についてお伺いをいたしたいと思います。  私は毎回質問をしておるのですけれども、これは、北方領土にかかわることでハンディキャップを負っておる地域を振興するために百億円の基金を積もうということで、いよいよ来年が一つの区切りになるかどうかのこれからの大事な時期になってくるわけでありますけれども、私は、百億を積むことが最終目標ではない、百億を積んでその基金をどうやって運用し、より効率的に地域の人に役立ててもらえるかがより先の大きな目標であろうということで、過去数回にわたりましてこの運用益をどういうふうに利用するんだということを聞いてまいりました。  当初は、これは元本確実な国債並びに定期預金に積んでということでありますけれども、今金融自由化の波の中で金利というものの重要性というのは大きい。百億で一%違えば一億円、しかも十年間で考えれば十億違ってくるということになれば、十億その地方に投入できるかできないのかということの意味は大きいわけでありまして、これは道庁が主管というお言葉でありますけれども、その後対応していただいていると思いますけれども、現状についてお伺いしたいと思います。
  59. 鈴木榮

    鈴木(榮)政府委員 北方基金の運用につきましては北海道の方が主管でございますので、今までの先生のいろいろの御質問を体しまして北海道の方といろいろ相談してきたわけでございます。  従来、政府の補助分につきましては国債に充てておりまして、北海道の分につきましては定期預金ということできていたと思いますが、最近国債の利率が非常に下がったという事情がございますので、ちょっと正確なものが手元にございませんが、最近のものについては、国の分につきましても高額定期預金といいますか、あの方が利率が高うございますので、そちらの方に振りかえているというふうに伺っているわけでございます。
  60. 中川昭一

    中川委員 今御答弁のとおり、今、普通の定期預金と現在一番高いCDとか大口定期とでは二%以上違うのですね。この金利差というのは今申し上げたように非常に大きいということで、いろいろな事情があると思います、もちろん元本確実ということは私は毎回申し上げておりますけれども、できるだけの運用益を生むような、適切な言葉かどうかわかりませんが、いい意味で財テクといいましょうか、ひとつ地域の人に活用できてもらえるような、できるだけ一円でも多い果実を生むような方にやってもらいたい。  そのためには、道庁なり総務庁なりいわゆるお役所の方の感覚で、果たして今のように大きく変動する金融情勢の中で、その時点その時点でどんどん何億円ずつ入ってくるものをどうやって運用していったらいいかというのは限界があるんじゃないか。ちなみに、JR北海道なんというのは国から来た基金なんかを投資信託にして、これは民間企業ですけれども、かなりシビアにやっておる。また、厚生年金基金なんかも最近は自主運用ということで非常に柔軟にやっておるということもあるわけでありまして、私はその辺もこれからひとつ大いに、一円でも多く地域の人に使ってもらいたい、役立ててもらいたいという観点から、ぜひとも柔軟に考えていただきたい。  それからもう一点、これは確認でありますけれども、預金をすると当然税金を取られます。利子所得で二〇%の源泉分離課税が取られるわけですけれども、国や公共団体については申請をすれば取られないという特別措置があるんですけれども、これは当然源泉分離課税は非課税ということで、利息は丸々運用益として使えるわけですね。
  61. 鈴木榮

    鈴木(榮)政府委員 先生指摘のとおり取られないということでございます。
  62. 中川昭一

    中川委員 わかりました。  それでは、外務大臣にお伺いをいたしたいと思います。  昨日遅くにお帰りになって早々で本当にお疲れのところ申しわけございませんけれども同僚議員からもいろいろとお話ありましたように、まさに今、領土問題について、だれがどう発言をした、ソ連の人あるいはブッシュ大統領、そしてもちろん日本人に限らず、領土問題についての言及が新聞に載らない日はないぐらいにいろいろな議論がされておるわけであります。そういう一連の動きは、ゴルバチョフ書記長が八五年に就任してからの一つの流れであろうというふうに思い、また我々はますます、外交の面でもまた国内世論啓発の面でも、今まで以上に頑張っていかなければならないというふうに思うわけであります。  そういう中で、先ほどお話ありましたが、とにかく我が国の基本姿勢は、四島を一括して返還をして、そして平和条約を締結するというのが基本姿勢であり、私もその方向でこれからも努力すべきであるというふうに思っておるわけでありますけれども、一方、日ソ関係というのは政経不可分であるという大原則があるというふうに言われております。政経不可分というのは一体どういう意味なのだろうか。  例えばこの前、ゴルバチョフ・ブッシュ米ソ首脳会談のときに、米ソが最恵国待遇を与える与えないでかなり議論になりました。一方、米ソの間にはもう既に平和条約が何十年も前からある。日本は日ソ平和条約はない。しかし、日ソの間にはもう既に最恵国待遇はあるということでありまして、政経不可分というもの、一般的にはわかるのですけれども、この日ソ関係における政経不可分というのは一体どういうふうに考えたらいいのだろうか。政治的にうまくいってない、あるいは障害があるから、経済的にも政治の方に同じ歩調を合わせて、場合によってはほかの国よりも優遇を与えない場合もあるのですよ、あるいはまた経済活動についても若干特別な場合があるのですよという意味に私は解釈するわけでありますけれども、調べてみますと、租税条約もある、最恵国待遇も結んであるということで、基本的には、政府レベルでは、政経不可分というもの、我々が平和条約を締結するまでの政経不可分という意味が一体どういう意味を今持っているのだろうかということについて、政府見解をお伺いいたしたいと思います。     〔委員長退席、沢田委員長代理着席〕
  63. 都甲岳洋

    都甲政府委員 政府といたしましては、北方領土問題が解決されて平和条約が締結され、完全に関係が正常化されるまでの間、国民感情の手前もございますし、日本としての重大な国益でございますので、全面的な経済協力関係というのは持ち得ないということで、領土問題をわきに置いてといいますか、取り残した形で経済関係のみが進むという状況は避けなければならないというふうに考えております。そういうことで、無原則な政経分離はとらないということを従来主張してきているわけでございます。  しかしその間に、通常の貿易関係におきましては、かなりこれは進んできておりまして、そのための必要な法的な枠組みもいろいろと出てきております。しかし、政経不可分という名のもとに従来ともソ連側からの要請にこたえてきてない問題が、例えば長期経済協力協定のような、政府として長期的な日ソ間の経済協力関係を法的に確保するための措置というものは避けてきているというのが従来でございます。ですから、例えばアメリカとソ連の間で今回最恵国待遇を与えるという原則的な合意が出ておりますけれども、こういうものは日本政府としては、従来、先生指摘のように日ソ間では実現を見ているという状況でございます。
  64. 中川昭一

    中川委員 この件についてもう少しお伺いしたいのですけれども、時間の関係で次に進ませていただきます。  先ほどもお話がありましたように、ソ連極東研究所の所長が、ヤコブレフさんという実質的なソ連ナンバーツーの方の言葉を解説した記事が各紙に載っております。一九五六年に日ソ共同宣言が締結されまして、その後に日米安保条約が締結されまして、それによって日ソ共同宣言の中の第九項のいわゆる二島の合意について一方的に破棄をするということを言ってきたわけでありますけれども、これを共同宣言の時点に戻すというふうに言っておりますが、仮に、さっき大臣がおっしゃったようにいろんな人が勝手に言っている部分が大いにあると思いますけれども、我々は、少なくとも三十数年前に日ソ共同宣言を受諾したということの時点に戻るということは、とりあえず二島返還を認めましょうというふうにこの共同宣言からは読めるわけでありますが、さっきの質問、答弁もそうですけれども、あくまでも四島一括返還であるという大前提があって、たまたま九項については向こうが一方的に破棄をしてきたから、だからそれについてはお互いすれ違いで済んだのですが、じゃ共同宣言の時点に戻っちゃったらまた二島返還というものが大前提になって日ソ関係が出てくるのではないか。その辺はいかがなものでしょう。
  65. 都甲岳洋

    都甲政府委員 御案内のように、一九五六年の共同宣言におきましては、平和条約が締結された後に歯舞、色丹を日本側に引き渡すということが合意されているわけでございます。そういうことで、私どもとしては二島の問題はもう解決済みというふうに考えております。ただ、この二島だけでは領土問題の処理に日本側としては最終的に同意するわけにいかないので、やはりあとの二島についてこれを返還してもらうという交渉を今後続ける。それが実現したときに平和条約を締結して四島を返してもらい、国交を完全に正常化するということになっておるわけでございますので、いわば未解決の問題というのは日本側の立場に立ちますれば国後択捉の二島でございます。  ということで、一九五六年の立場に返るということは、二島は平和条約が締結されれば当然のこととして返してもらうという合意がある、その上であとの二島について交渉を続ける、そういうことになるということだと思います。
  66. 中川昭一

    中川委員 四島を一括返還させて平和条約を締結するというのが日本側の立場ではないのですか。
  67. 都甲岳洋

    都甲政府委員 ですから、平和条約の締結の前提といたしましては四島の返還について合意が成り立つということだろうと思います。そういうことで、平和条約締結をして筋道を立てた上で領土問題が解決される。そういうことで、解決されるというめどがつくことが平和条約締結の前提条件だろう、そういうふうに思います。
  68. 中川昭一

    中川委員 来年のゴルバチョフ大統領の訪日はいつになるか、私が聞いている話では、安倍自民党代表は桜の咲くころにというふうにおっしゃったそうでありまして、桜の咲くころといいましても日本は南北に長いですから、沖縄は一月ですし、私の北海道は六月になりますから、一体その間のいつの時期なのかな、できれば沖縄なり九州の桜の咲くころくらいに来ていただきたいと思っておるわけでありますけれども、やはりいろんなレベルでいろんな人が、北方領土問題について、日ソの交渉の場で一番大きな問題であると言っておる。今までは全く領土問題はないんだと。昔、田中・ブレジネフ会談のときに、問題ありますねと言ったら、向こうが、うんと返事をした。後になってみたらそれはブレジネフのせきだった。そんなことは言っていないんだ、ゴホンとせきをしただけだというようなことを後で言ったとか言わないとかいう話もあるそうでありますけれども、現在、各レベルでいろんな人が言っておる。  我々は、四島一括返還という大前提のもとに日ソ領土問題を含めた真の平和条約を結ぶ。そのためにはやはり我々は、四島一括返還という大前提はもちろん守りながらですけれども、いろんなレベルでこれからまた活動をしていく必要があるのではないか。例えば私はよく考えるのですけれども、ソビエトの大使を一度北方領土に連れていって見せたいと実は個人的にいつも思っているのです。ただ、それについては、いろんな外交上の問題があるとか、果たして向こうがイエスと言うかノーと言うかという問題もあるでしょうけれども、限定的にソビエトの大使にぜひ一度北方領土を見せて、ここが固有の領土なんだと、言う言わないは別にして、そういうことをやるとか、あるいはまた、今までもやっておりますけれども、国連であるいはサミットでこれからぜひやっていただきたいと私は思います。各国の大使を呼んで、日本の中でいろいろな情報について日本の立場をより深く理解してもらうとか、あらゆるレベルでやってもらいたい。  そしてもう一つは、北海道には北海道大使という大使がいらっしゃるわけでありまして、たまたま現在空席中でありますけれども北海道大使は歴代大変御活躍をされておるということで私は高く評価をいたしますけれども、さらに北海道大使を大いに活用してもらって、むしろ北海道大使がもっともっと北海道じゅうあるいは全国あるいは場合によっては世界じゅうに行って北方領土の問題について啓蒙をする、あるいは訴えるというようなことも必要ではないか。つまり国論の統一というのは、政府見解がこうであってだれが何を言っても、いわゆる金太郎あめのように同じことを言うだけではなくて、それぞれの立場でやはり固有の領土である北方四島についてひとつ主張をするということで、もちろん専門家の学者の先生方、大学の先生方、そして民間の方々、一般国民方々、あらゆるレベル、あらゆる地域でこの北方領土の問題、まさにスタートを、テーブルに着くことを向こうも了承してきたわけでありますから、まさにだんだん熱くなっている時期、来年のゴルバチョフ大統領の訪日に向けて、これから事務的にあるいは外相レベルであるいは平和条約作業グループで、いろいろなレベルで政府もやっていくわけでありますし、我々も頑張っていかなければいけないと思いますけれども、その辺を含めて自民党三人の質問が今まで私を含めてありましたが、北方領土返還、新たな時期に来たという意味で、大臣の御決意をひとつお伺いして質問を結ばせていただきたいと思います。
  69. 中山太郎

    中山国務大臣 日ソ関係は戦後長い間いろいろな曲折をたどってまいりましたけれども、シェワルナゼ外務大臣の今回の訪日、また私の訪ソというものをくるんで、やがて明年のゴルバチョフ大統領の来日につながっていくと私は思います。私どもは、過去の長い歴史の中でこの領土が古来の日本の領土であるということについてはだれ一人として一点の疑いも持っておりません。また侵略して得た領土でもございません。既に百三十数年前に結ばれた日露通商友好条約でウルップ島から以南は日本の領土であるということを日露間で話し合いができた、つまり公認の古来の領土であります。そういうことから考えますと、これを当然返還を要求するのは日本の権利である、私はそのように認識をしております。  そういう観点に立ちまして各界の人たちがそれぞれの場で御苦労いだたき、また、安倍元幹事長は今年一月に訪ソをされました際にも安倍八提案、八項目の提案をされまして、ゴルバチョフ大統領にいろいろと日本とソ連の関係の改善のために提言され、今回の択捉墓参もそれによって実現が行われてきた。また、最近ソ連からはたくさんオピニオンリーダーの方も日本に来られて、私も随分お目にかかりました。短い在任期間でありますけれども、多くのソ連のジャーナリストあるいはまたヤコブレフさんあるいはまたエリツィンさんと、いろいろな方にもお目にかかりました。私は、やはりこのソ連の民主化が進むという過程の中でいろいろな各界各層の人に多く日本に来てもらって、そして日本の考え方というものを、平和憲法を持っているとかあるいは交戦権、宣戦布告権はもう既に放棄している、そういうような考え方というものをよく理解していただいた上で、この日ソの平和をつくるためには領土の返還ということがいかにその閉ざした扉をあけるものかということをソ連の方に御理解をいただくことが大変大事である、私はそのように認識をいたしております。  委員先ほどから大変熱心にこの政経不可分の問題についてお尋ねになりました。私は、貿易量からいいましても、アメリカが最近米ソの間で非常に関係がよくなったとか言っておりますが、西側の貿易ではフィンランド、西ドイツ、日本と、上位三位の中に日本が入っているわけでありますから、民間貿易は非常な高水準にあるとはっきり申し上げて間違いない。ただ長期の、例えば国家の金融関係機関が金融をするとか、そういうことは今日の状態ではできないということでございます。  私は先日も衆議院、参議院で申しておりますけれども、野党の方の質問に答えて、チェルノブイリの原子力発電所の爆発事故の被曝者に対する医療の救済協力というものは、積極的にこれから日本としては応ずる用意があるということも申しておりまして、WHOの事務総長は現在モスクワに行ってこの日本の気持ちも伝えていただいているわけでありますから、こういう観点から私どもは、日ソ拡大均衡、人的協力、その人的交流というものを通じて、外相の来日あるいはゴルバチョフ大統領の訪日の機会に新しい日ソ間の外交が展開することを心から期待をいたすものでございます。
  70. 中川昭一

    中川委員 終わります。
  71. 沢田広

    ○沢田委員長代理 上田哲君。
  72. 上田哲

    上田(哲)委員 外務大臣にお伺いをいたします。  一九六〇年の安保改定期に当時のアメリカ駐日大使でありましたダグラス・マッカーサー二世の発言が注目をされます。それはいわゆる核搭載艦船の寄港については事前協議の対象ではない、その対象たるべきものは陸揚げ、貯蔵を指すのである、このことが日米間で合意されていて、当時の藤山外相も確認をしていた、こういうことでありまして、この点は確認されておりますか。
  73. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 先生が今御指摘になりましたような報道があることは承知しておりますけれども、何分にもマッカーサー元大使、現時点では一私人でございまして、それも三十年前のことを記憶に基づいていろいろおっしゃっているわけでございまして、現時点で私どもはそのマッカーサー元大使の発言についてコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。  いずれにいたしましても、これはもう国会の場で何度も申し上げていることでございますが、事前協議の対象でございます核持ち込の中に、寄港、領海通過が含まれていることにつきましては、合衆国軍隊の装備における重要な変更を事前協議の対象とする交換公文の規定、それからいわゆる藤山・マッカーサー口頭了解から十分に明らかでございまして、この点に関しまして日米間に了解の違いはないと考えております。
  74. 上田哲

    上田(哲)委員 交渉当事者が健在で発言をしているのに一私人の発言だからどうでもいいなんていうことは、これはまことに当を得ない発言でありまして、時間の関係議論はしませんが、それは困ります。  大臣、確認すべきだと思いませんか。
  75. 中山太郎

    中山国務大臣 いろいろとそのような報道があったことを私も聞き及んでおります。私は不幸にしてそのテレビを拝見しておりません。今北米局長が御答弁申し上げたとおりでございますが、後ほど倉成外務大臣に時代に当時の米国大使に対してこの核の問題について確認をいたしたことがございまして、そのときにこの米国大使からは、日本とアメリカとの話し合いの、核を持ち込まない、持ち込む場合には事前協議の対象であるということが確認されたということを私は役所から報告を聞いております。
  76. 上田哲

    上田(哲)委員 いや、大臣、確認する必要があるとは思われませんか。ダグラス・マッカーサー二世は健在なわけです。
  77. 中山太郎

    中山国務大臣 現在の時点では確認をいたす気持ちはございません。
  78. 上田哲

    上田(哲)委員 では、大臣に確認しておきます。  ただいま御答弁もありましたけれども、日本政府としてはアメリカ側との合意として、事前協議の対象には当然核搭載艦船の入港、寄港を含むということでよろしいのですね。これは大臣に。今あなたが言ったことだから、大臣が確認しなければこれはむだなことだ。イエスかノーだから。あなたは二回要らないの。大臣にきかなければ意味がありません。どうぞ。
  79. 中山太郎

    中山国務大臣 艦船あるいは航空機のいずれにしろ、日本に核を持ち込む場合には事前協議をしなければならないということは当然安保条約の中で決められている合意事項でございます。そのようなことで、もし事前通告がある場合には政府はこれを拒否するという姿勢を堅持しております。
  80. 上田哲

    上田(哲)委員 確認しておきます。  ダグラス・マッカーサー二世の言われたことは今日の日米合意ではない、確認しようとは思わないとおっしゃるほどに。ただいま局長答弁にもありましたように事前協議の中には核搭載艦船の寄港、入港を含むのであるということでいいのですね。よければいいのです。違うのですか。
  81. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 先生申しわけございませんけれども、ダグラス元大使の発言に関しましては、報道はございますけれども、ダグラス元大使がどういうことを言われたのか、私どもは正確に承知していないわけでございまして、それを踏まえて先生からダグラス元大使の了解と私どもの了解と違うという御質問でございますけれども、肝心のダグラス元大使の発言が私ども確認できませんから、そういう御答弁はちょっとできないので、むしろ私が先ほど申し上げたように事前協議の対象である核持ち込みの中に寄港と領海通過が含まれている、こういうことで……
  82. 上田哲

    上田(哲)委員 不必要な答弁は要らないです。ちょっといいです。時間を大事にしていただきたい。  私は向こうともう確認し合わないとおっしゃるから、しろと言っているのではないのです、日本政府の今日の見解を聞いているのですから、日本政府見解はこれまでどおり核搭載艦船の入港、寄港は事前協議の対象になるのだということでいいのですねと聞いているので、ダグラス・マッカーサー二世のことは言ってないですよ。
  83. 中山太郎

    中山国務大臣 いかなる場合でも核の持ち込みに関しては、政府としてはこれを常に事前協議の対象としてとらえておりますし、協議の申し込みがありました場合には常にこれを拒否するという姿勢でございます。
  84. 上田哲

    上田(哲)委員 確認しておきます。  次に、先ほどの日米外相会談、お帰りになったばかりですが、ここで中山大臣の方からこの際日米安保改定三十年を記念して日米安保閣僚会議を開きたい、この御提案があった、これについては、伝聞するところでは向こうが拒否したというふうに聞くのですが、その辺はいかがなんでしょうか。また拒否したとすれば今後ともその提案を続けられるのでしょうか。いかがでしょう。
  85. 中山太郎

    中山国務大臣 お尋ねの点でございますが、確かに私からそのような提案をいたしました。それはどういうことであるかといえば、この安保が締結された三十年前には日米間の防衛問題に対する協議機関として構成されておりますものは日本は外務大臣と防衛庁長官、アメリカは駐日アメリカ大使と太平洋軍司令官ということになっておりまして、三十年たった今日、これからやがてアジア・太平洋地域における平和及び軍縮問題が大きな国際的な課題になって登場してくる、そういう際に私どもは日本政府として、安全保障締結国であるアメリカの国務長官、国防長官と日本の外務大臣と防衛庁長官との四者による会議が必要であると考えておるが、米国としてどのようにお考えかということを申し上げたわけであります。それに対して国務長官は、早急にチェイニー長官と相談をいたしたい、こういうことでございまして、報道の状況とは少しニュアンスが違っていると私は報道を読みながら感じております。
  86. 上田哲

    上田(哲)委員 そうしますと、日本側としてはこうした会議をぜひつくりたい、そしてそのことは今後とも継続をするし、相手方も今ノーではない、こういうふうに理解していいですね。
  87. 中山太郎

    中山国務大臣 さようでございます
  88. 上田哲

    上田(哲)委員 端的に言うと、これは日米安保関係の格上げ強化である、こういうことになりますか。
  89. 中山太郎

    中山国務大臣 格上げ強化ということではございませんで、私ども考えておりますことは、恐らくこれから二十一世紀に向けて、米ソの首脳会議を踏まえて、米ソ双方がいわゆる核戦力の削減等を踏まえていろいろと軍縮の問題が協議される歴史が始まるのではないか、そのような中でアジア・太平洋地域における軍備の問題あるいは安全保障の問題につきまして、我々国家としても安全保障の条約を結んでいるアメリカ政府の責任者との間に突っ込んだ話し合いをする必要性がある、この軍縮時代に備えた格上げというものも、強化するという意味ではなしに、この軍縮の方向へ向かう中で、むしろ我々の国の安全というものがどのような形で確保できるか、そういう考え方からこのような協議機関を持ちたい、こう考えておるわけであります。
  90. 上田哲

    上田(哲)委員 議論は後日に譲ります。時間の制約がありまして、どうも雑音が多かったのでちょっと予定が狂ってきましたので、急いで質問しますからなるべく簡単に御答弁をいただきたいと思うのです。  北方領土問題についていろいろ議論をしたいのですが、つまり一般認識として御確認をしておきたいことは、例えば先日の韓ソ首脳会談に関する日本政府の官房長官談話でも、今こそチャンスだ、来年のゴルバチョフ大統領訪日を日ソ関係正常化の契機となり得る歴史的意義のあるものにしよう、こういう言葉もあります。結構だと思います。海部総理は二回にわたりソビエト紙に論文を寄稿されたかあるいはインタビューに応じられたか、経緯はともかくですが、今世紀中に解決しようと言われる。この発言も結構であります。つまり私は、まさにチャンス到来という意気込みで取り組まれている、今こそ大事なときである、チャンスである、こういうふうに御認識になっておるだろうということを基本の認識にしたいのであります。これは繰り返すまでもないことですが、そのことと総理もそこまで言われるなどなどいうことになると、具体的な例えば今世紀中に解決しようというプログラム、構想、こうしたものをもうお持ちになろうとする段階なのか、いかがですか。
  91. 中山太郎

    中山国務大臣 今の今世紀中にこの問題を解決したいという総理の論文の御引用でございましたが、残る世紀、次の世紀まで十年、その十年の始まりにソ連の外相が九月にやってこられる、そこでいろいろと問題の提示がある可能性が極めて高い、今までの姿勢等は、よく委員も御存じのとおり一貫して領土問題がないというソ連の考え方でございました。それに対して日本は領土問題を解決してということで、双方意見対立のままでございましたが、私は、この交渉でどのようなソ連側の御意見が出てくるのか、それを外相会談を機会によく話し合ってみたい、このように考えておる次第であります。
  92. 上田哲

    上田(哲)委員 意気込みを受けとめて具体的にお伺いしたいのですが、シェワルナゼという言葉が大変出ます。結構だと思います。シェワルナゼ外相来日の機会に具体的に日ソ平和条約作業部会を開くということになりますか。
  93. 中山太郎

    中山国務大臣 局長から事務的なことを御報告させていただきます。
  94. 都甲岳洋

    都甲政府委員 現在ソ連側と折衡中でございますけれども、私ども考えといたしましては、事務的レベル協議というような形でシェワルナゼ外務大臣の訪日のためのいろいろの準備をいたし、それからできればシェワルナゼ外務大臣訪日の直前にでも平和条約作業グループの第五回目の会合を開いて領土問題についてさらに掘り下げた議論をしてみたい、このように考えております。
  95. 上田哲

    上田(哲)委員 そこで、政経不可分かあるいは可分か、その半分か、いろいろなニュアンスの問題があります。政府は次のサミットに対ソ経済協力はしないということを打ち出す、欧米その他はぜひ対ソ協力ということも考えようと言う風潮の中で、日本としては、これはされる方ではなくてする方ではないかというような認識の中で、対ソ経済協力をすべきでないという発言をするというふうに伺っておりますが、いかがですか。
  96. 都甲岳洋

    都甲政府委員 先ほどから御答弁申し上げておりますように、サミットの場におきまして、これは政治問題として取り上げる中の対ソ認識の一つとして議論されることだと思いますけれども、どのような議題が取り上げられるかというのは今後の、直前になって決まる問題でございます。  対ソ協力につきまして今の全般的な雰囲気を申し上げますと、ソ連が今市場経済に向けての改革を進めようとしておりますので、その市場経済の何であるかということ、例えば品質管理であるとか銀行制度、株式制度、そのようなものについての知識を深めることによって市場経済移行を容易にするという観点からの協力を行っていこうというのが大体西側を通じての態勢であるというふうに考えております。現在、アメリカが行おうとしているのもそのような知的協力の範囲でございますし、この分野につきましては、日本政府といたしましても昨年の秋、ことしの春、二回調査団を迎え入れてソ連側に協力をしてきているところでございます。  大筋においてそのような話し合いが行われるだろうということは私どもとしても予想されるわけでございますけれども、具体的にどういうふうになるかは今後のサミットの議題が決まる段階において決まって行く問題だろうと思います。
  97. 上田哲

    上田(哲)委員 大臣、ヒューストン・サミットでの一つの流れというのは今言われるとおりですよ。そういう各国が考えているような流れの経済協力をしたら日本外交における政経不可分に触れるのですか。
  98. 中山太郎

    中山国務大臣 経済協力と申します中に、私どもは知的協力という言葉をよく使っておりますが、昨年も日本は受け入れて、政府、経団連、あらゆる経営者団体も協力して非常に成功裏にソ連に帰られた。その報告書が最近政府部内に上がって、大変高い評価を受けていると先日ソ連の大使から承っております。  ソ連に対しての協力は、いわゆる自由主義経済市場のメカニズムを彼らが習得するための協力をするということでございまして、それがうまくいかないソビエトについていかなる援助をしても、なかなか経済のペレストロイカの成功につながっていかないという認識を実は私どもは深く持っているものでございます。
  99. 上田哲

    上田(哲)委員 まあかみ合わないところもあるのですけれども一つの世界の潮流の中で政経不可分という言い方はもう通用しないといいましょうか、自然に氷が解けるということになってくるのだろうというふうに私は認識をいたします。大臣の認識もそういうところだろうというふうに理解をし、先に行きましょう。  先ほど来都甲局長等々の御答弁を聞いていて、北方領土問題というのが非常にニュアンスが変わってきていると思います。一九五六年の共同宣言の線で言うならばというところで、問題は国後択捉の問題なのだ、こういう明言がございました。つまり、歯舞、色丹はもうわかっているのだ、そして平和条約との関係でいくとこの二つだけが問題なのだということは、一括でなくてもいいのだというニュアンスがここにはっきりしているわけですね。
  100. 都甲岳洋

    都甲政府委員 私が申し上げましたのは、二島については既に合意済であるので、四島全体について合意をして、解決を見て、平和条約を締結するというのが政府の原則的な立場でございますので、それを四島一括返還についての合意が必要であるということで申し上げてきているわけでございます。
  101. 上田哲

    上田(哲)委員 四島一括という合意なのだが、それは段階的に二島ずつということであるという意味になりますね。
  102. 都甲岳洋

    都甲政府委員 そういうことではございませんで、二島についてはもう既に合意があるということで、これはいわば日本側の立場から見れば解決済みなのでございますので、あと二島につきまして解決を見て、四島全体について解決を見た上で平和条約を締結する、そういうことでございます。
  103. 上田哲

    上田(哲)委員 時間が足りない。行ったり来たりすることを、残念だが時間がないからやりませんが、少なくとも私は、やはり何かこれまでの言い方との変化があるということを感じます。  私は、しょせん、北方領土問題は、日ソ問題だけではなくて米ソ問題であるという、これは例えばベーカーの見解というものもある意味で合意するところがあります。つまり、グローバルだということでなければならない、東西緊張の緩和ということの一部でなければならない、こういうふうに感ずるのは当然のことですから、その意味では日本列島の平和保障というものの領域が広がるということであるべきだ。戦後半世紀に及ぶ状態の東西関係というのは、一口で言うのなら軍事関係でありますから、そうした軍事関係が緊張緩和をするということでなければならないとすると、日本列島の側から注目すると、私は、持論として、日本列島から六千キロです、いろいろな兵器の航続距離などを考えまして。ソビエトの場合はウラル山脈の西側まで六千キロ、アメリカの場合はハワイの東側まで六千キロ、こういう兵力引き離しということができ得るならば大きな前進であり、その前進の中に北方領土問題の解決ということも具体化してくるだろう、こういうふうに考えているのですが、この考えはいかがですか。
  104. 都甲岳洋

    都甲政府委員 先生指摘の点は、一つのアイデアとしては承っておきたいと思いますけれども、現実のアジア・太平洋地域におきます状況は極めて力関係が複雑であるということは、ゴルバチョフ大統領自体が認めていることでございます。そういうことでございまして、まだアジア・太平洋地域におきましては、領土問題も存在いたしますし、朝鮮半島の緊張、カンボジア問題、政治的対立等がございますので、そのような形で実現し得る状況が整っているかといいますと、私どもとしましてはなかなか難しいのではないか、そういうふうに感じております。
  105. 上田哲

    上田(哲)委員 大臣、それは一つの前進ではないかという理解はいかがですか。
  106. 中山太郎

    中山国務大臣 これからアジア・太平洋地域に平和を構築するためにいろいろな関係国が努力をしていかなければならないという考え方が基盤にあって今委員からの壮大な御意見が出たわけでありますから、一度、委員の御発言を十分勉強をさせていただきたいと思っております。
  107. 上田哲

    上田(哲)委員 外務当局の御努力もさることながら、議会同士の努力ということもあるべきだと思いますが、いかがですか。
  108. 中山太郎

    中山国務大臣 仰せのとおりであります。
  109. 上田哲

    上田(哲)委員 時間がなくなったので急いでいきますからひとつお答えをいただきたいのでありますが、在日米軍駐留費の負担の問題であります。  これは長い経過の中で一口で言うにはまことに時間がありませんけれども、一九八九年十一月二十九日の九〇年、九一年会計年度国防予算授権法の成立及び大統領の賛意以来、チェイニーの来日あるいは海部総理の訪米、さらには米行政府の議会提出文書、特にことしの五月のアラン・ホームズの来日というところで、いよいよ分担問題にいついて話し合いをする段階に来たということでよろしいですね。
  110. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 先生指摘のような場で、米側より今後とも在日米軍経費に関します日本側の努力に一般的な形で期待が表明されましたことは事実でございますけれども、日本側といたしましては、これから引き続き自主的に努力していくという姿勢を示しておりまして、米側からも具体的な要求が出ておりませんし、私どももまだ具体的な話し合いに入っておりません。
  111. 上田哲

    上田(哲)委員 昨年の十月三十一日に質疑を申し上げたときには、当時の有馬局長から、まだ何にも聞いておらぬ、こういう話でありました。これはいかにも国会無視の答弁でありましたけれども、早口で申し上げたが、今やこのような段取りで、具体的にこういう防衛分担担当大使がやってきて具体的な話をした。その内容も明らかになっている段階では、公式だの非公式だのという言い方になるともう議論はしていられませんから、ずばり日本語でわかりやすく言うのだが、前回の答弁の段階とは違って話し合いをする段階に来ているということだけは間違いないということはいいですね。よければもう先に進みます。問題は、どこまで負担できるか、どうすれば負担できるかというところが私どもにはわからない。  そこで、具体的に伺いたいが、在日米軍の総経費というのは幾らですか。
  112. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 在日米軍の全体の総経費というのは私どももなかなか算出しにくいのでございますが、八八会計年度をとってみますと、米側が負担しておりますのが全部で約四十五億ドル、それから会計年度はずれますけれども昭和六十三年度で日本側が負担しておりますのが二十四億ドル、したがいまして、合わせて約六十九億ドルということになります。
  113. 上田哲

    上田(哲)委員 この六十九億ドルを算出するのでも大変だったのですが、お認めになったから細かくは言いません。その六十九億ドル、これは支出官レートその他の問題がありますから単組な足し算はできないと思うが、ざっと六十九億ドルということの中で一体どこまで日本が負担できるかということです。例えばチェイニーは、非公式なことですけれども、全米放送の中でも円建て分については全額やると言っている。円建て分というのは幾らですか。
  114. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 今、私が申し上げました日本側の負担はドルで約二十四億ドルと申し上げましたが、これは当然円建てでございますけれども、アメリカの負担の約四十五億ドルのうちどれが円建てであるか、私どもは承知しておりません。
  115. 上田哲

    上田(哲)委員 随分頼りない話なんですね。そうすると、一体何と何の項目は負担できるのか。もう時間がないからずばりいきましょう。安倍さんは、元大臣の安倍さんは、少なくとも本給や光熱費なら特別協定でできるかもしれないけれども艦船の修理費というのは無理だろうというようなことを言っておられますね。つまり、今このままいくと、六十九億ドルから米軍の軍人の本給を除いた分、これを全部持てということになりますね。まあ念のために、ちょっと私も急ぎ過ぎているから聞きましょう。米軍の本給をこの六十九億ドルの中から除いたら幾らになりますか。
  116. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 先ほど申し上げましたが、四十五億ドルのうち、米軍人それから軍属等関係人件費という項目がございまして、これが二十三億ドルでございますので、それを引きますと、今米側が負担している四十五億ドルのうち残りが二十二億ドルということになります。
  117. 上田哲

    上田(哲)委員 私の計算と合います。つまり特別協定の分を合わせると四十六億ドルですよ。四十六億ドルを全部持つ気ですか。
  118. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 具体的に日本がこれからどういう形で努力をしていくかということはまさにこれから検討していくことでございまして、私どもまだ検討を具体的に行っておりませんので、今先生の御質問には残念ながらお答えがでぎません。
  119. 上田哲

    上田(哲)委員 話にならないですよ。  それじゃ具体的に聞きますよ。駐留軍に雇われている日本人労務者の本給は払うのですか、払わないのですか。
  120. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 今申し上げたことの繰り返しになりますけれども、現段階で仮定の御質問にはちょっとお答えしかねるということで御了解いただきたいと思います。これから私どもとしては具体的にどういう形で日本が努力していくか検討していきたいと考えております。
  121. 上田哲

    上田(哲)委員 これはどういったって無理なんですよ。日本人の労務者の本給を払えば、これは日本公務員になっちゃうのです。そんなことは当然できないのです。艦船修理費というのは安倍さんだって無理だろうと言っているのです。できないのですよ。やるには方法が一つしかないのです。地位協定の改定なんだ。昨年十月三十一日の私と大臣との討議では、有馬局長は、できるものもできないものもあると言ったのです。できないものを省くというのなら話は別なんです。今、アメリカが要求している円建て全部という言い方もあるだろうし、米軍の本給を除けば残りを全部という、具体的に言えば四十六億ドルということにもなるのです。これはもうはっきりしているのです。今さら交渉してないなんてことはもはや言えないのです。そういう中でそれをやろうとすれば、地位協定の改定をせざるを得ないことになるのです。大臣、地位協定の改定をするのですか。
  122. 中山太郎

    中山国務大臣 現時点では、まだ考え方を決めておりません。
  123. 上田哲

    上田(哲)委員 現時点というのはいつまでいくのかわからないのですが、私も長い時間かけてどうしても今度は聞けると思って、きょうこの席に立っておるのですよ。いつまでになるのかわかりません、いつになったらそれがはっきりするのですか。会計年度の関係があります。
  124. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 先ほど来申し上げておりますが、これから検討していくということでございまして、具体的にいついつまでということは、残念ながら申し上げかねます。
  125. 上田哲

    上田(哲)委員 時間が参りましたから最後の質問をしますので、大臣、ひとつしっかり誠実にお答えをいただきたい。  ダグラス・マッカーサーが何を言ったかということを、我々大きな疑問でもっていろいろ言いますよ。その一番近時点の問題としての米軍駐留費を全部持ちなさいという話は、やはり国民の最大課題でありまして、私もこれについては何遍かずっと議論をしてきているわけですから、ここまで来てもはや日程に上っていない、テーブルの上か下がは別にしてそういうことは言えないわけですよ。この段階でいつまでということも言えないとおっしゃるなら別な観点で聞いておきますが、どうしたって、日本人の労務者の本給まで払うとかあるいは艦船修理費までやるということになれば、これは二十四条に明記されているものを外れるわけでありますから、現在の日米間の条約認識の中で言えば、これは到底全額は払えないわけです。払おうとすれば地位協定の改定以外はないわけです。その認識はそれでいいのかどうか。それだけきちっと、もしするなら、その段階で地位協定の改定までしてやるとおっしゃればそれはそれでいいですが、これだけは明確に答えてください。繰り返しますが、二十四条の上ではどうしたって払えないのです。払えないのを特別協定ではできないのですから、地位協定を改定しなければならないだろうという認識をお持ちかお持ちでないか、これはこれから先検討するということでは許されない解釈の問題ですから、明確に御答弁いただきます。
  126. 中山太郎

    中山国務大臣 駐留米軍経費の問題も含めて、これから年末にかけて安全保障会議を開いて、次期防をどう扱うのか、日本の防衛問題をどうするのかということの議論が実はあすの朝から始まるわけでございまして、そのような議論を通じて政府考え方をこれからまとめていかなければならない、このように考えております。
  127. 上田哲

    上田(哲)委員 お答え不満足ですが、そうしますと、政府部内でも次期防の中ではなくて外だという見解も表明されています。これは払うとすれば、全額払うか何分の一か払うかということは別にしても増額することだけは間違いないのですからね。増額することが間違いなければ、増額分は次期防の中なのか外なのかということだけはしっかりひとつ外務大臣見解をお聞かせいただきたい。
  128. 沢田広

    ○沢田委員長代理 簡潔にお願いします。
  129. 中山太郎

    中山国務大臣 それも含めてこれから検討するわけであります。
  130. 上田哲

    上田(哲)委員 終わります。
  131. 沢田広

    ○沢田委員長代理 伊東秀子君。
  132. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 ソ連による北朝鮮の国旗を掲げた漁船十二隻の拿捕事件について伺います。  報道されたところによりますと、拿捕された十二隻は日本人所有の日本の船舶国籍証明書交付済みの日本船であったということで、海上保安庁では海上運送法違反事件として強制捜査を開始した、そして捜査を進めているということが報道されております。この事実に間違いないかどうか、日本船であると認めている根拠、さらに他の容疑事件の捜査の可能性等についてお答え願います。
  133. 大森寿明

    ○大森説明員 お答え申し上げます。  海上保安庁では、五月の末でございますけれども、ソ連が拿捕した日本の漁船、北朝鮮籍ということでございますけれども、その十二隻につきまして、海上運送法の違反容疑であるということで、家宅捜索あるいは関係者事情聴取ということを現在続けているところでございます。それで、ほかの容疑につきましては、現在のところは海上運送法の容疑で捜査を続けているということだけで御勘弁いただきたいというふうに思います。
  134. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 答弁漏れがございます。とすると、日本人所有の日本の船籍を有する船であるというこは前提だということですね。それを認めている根拠についてもお伺いいたします。
  135. 大森寿明

    ○大森説明員 海上保安庁はいろいろなところから事情を調べまして、この船は日本の船であるという疑いが非常に濃いということで現在捜査をしているところでございます。それで、今後もその方針で捜査を続けていきたいということでございます。
  136. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 出港届が出されているということで、その出港届の記載には出港目的とか出港場所について、あるいはまた乗組員の氏名が書いてあると思うのですが、その船長が届け出てある出港届での出港目的、場所についての記載はどのようになっていたのか、さらに、乗組員の氏名はソ連側が先日発表した日本人百六十九名と一致しているのかどうか、その点についてはいかがでしょうか。
  137. 大森寿明

    ○大森説明員 お答えいたします。  ただいま御指摘の出港届でございますけれども、これは港則法という法律がございまして、それに基づきまして、特定港、日本の港すべてじゃございませんで約八十ぐらいあるのですが、その特定港を出る場合あるいは入る場合は、出港届、入港届を出すことになっております。それに具体的に届け出る事項につきましては、省令に基づいていろいろなことが書いてあるわけでございますけれども、御指摘のような内容、船舶の名称、種類、国籍あるいは船籍の港でございますね、それから船舶の総トン数、長さ、喫水あるいは航行速力、船舶所有者の氏名、名称、住所、それから出港の日時、それから次の仕向け港及び最終仕向け港、こういったのがおもな内容として届け出ることになっているところでございます。  それで、この具体的な中身が、現在ソ連に拿捕されている十二隻がきちんと出しているかどうかというものにつきましては、現在ソ連に船が拿捕されている状況でございますので、今後捜査を続けていって照合しなければならないということでございますので、現在の段階では、詳細については答弁を差し控えさせていただきたいと思います。  それから乗組員の人数でございますけれども、私どもの調べました限りにおきましては、百七十名が出港しているということで調べているところでございます。ただし、ソビエト側からの連絡によりますと百六十九名ということになっておりまして、一名の差があるということでございます。  以上でございます。
  138. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 一名の差があるということですが、そのソ連側発表の百六十九名の乗組員については一致したというふうに考えられるというふうに受けとめていいということなのかどうかと、それから、百六十九名の乗組員の雇い入れ契約の相手方は日本の船主なのか、北朝鮮の朝鮮遠洋漁業会社なのか、その点についてはどのように海上保安庁では認めておられるのでしょうか。     〔沢田委員長代理退席、委員長着席〕
  139. 大森寿明

    ○大森説明員 お答えいたします。  百六十九名につきましては、ソ連側から氏名等について報告がありまして、それは私どもの方も当然承知しております。それが日本側の百七十名と合うのか合わないのかということに関しては、今現在捜査中でございますので、詳細につきましては答弁は控えさせていただきたいと思います。  それから契約関係でございますけれども、これにつきましても今の段階で、捜査中でございますので、答弁を控えさせていただきたいと思います。
  140. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 船主についてはそれぞれ十二隻について確認しているのかどうか、それについてはどうでしょうか。
  141. 大森寿明

    ○大森説明員 お答えいたします。  確認とおっしゃる意味は、十二隻が所有者がだれかということでございますれば、それは確認いたしております。
  142. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 その船主からの事情聴取、もうこの事件以降約二十五、六日間が経過しているわけですが、その船主の捜査の結果だけで結構でございますが、雇い入れ関係については、新聞報道では契約書等も存在しているということのようなので、その契約書及び船主の事情聴取の結果はどのようなのか、お答えいただきたいと思います。
  143. 大森寿明

    ○大森説明員 お答えいたします。  今御指摘のように、五月の二十八日からだったと思いますけれども、約二十名につきまして関係者方々事情聴取を行っているところでございます。これにつきましては、まさにその事情聴取の中身を現在調べているということでございますので、詳細については控えさせていただきたいと思います。
  144. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 次に、水産庁にお伺いいたします。  ソ連では、公海上におけるサケ・マス漁を不法に操業していたということで拿捕したということのようですけれども、本来、このような漁業を行うのであれば漁業法五十二条に基づく許可が必要であると言われているわけですが、この十二隻については許可を得ていたのかどうかについてお答え願います。
  145. 田家邦明

    ○田家説明員 お答えいたします。  ただいま、ソ連によって拿捕された十二隻との関連で、海上保安庁が海上運送法との関係で捜査の対象としている漁船十二隻については、漁業法に基づくサケ・マス漁についての許可をした事実がございません。
  146. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 本件に関連してソ連側の発表では、日本漁船の違反体質は改めて浮き彫りになったというふうに表明し、今後一層の規制強化をするおそれがあるというふうに考えられるわけですが、これまで余りに北太平洋でのサケ・マス漁の不法操業について水産庁で指導監督に手抜かりがあったのではないか、そういうふうにも考えられるわけですが、その点について御答弁をお願いいたします。
  147. 田家邦明

    ○田家説明員 サケ・マス漁業につきましては、日米加漁業条約あるいは日ソ漁業協力協定等の国際的な取り決めのもとで操業条件が決まっております。したがいまして、国内的な規則はもちろんのこと、そういうような環境のもとで、従来から水産庁といたしましては、関係漁業者に対する法令遵守についての指導の徹底、さらには、洋上における監視船を派遣しましての指導監督、さらに違反が見つかった場合には適切な処分を行ないまして、指導監督に最大限努力をしているところでございます。
  148. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 それが十分でなかったために、あの水産庁と漁業関係者のなれ合いみたいな形でこれがどんどんどんどん違反操業が行われていたんじゃないかという一部報道等もあるわけですが、それについて水産庁は、全くそのようなことはなかったという御答弁なのか、もう少し明確に御答弁をお願いいたします。
  149. 田家邦明

    ○田家説明員 ソ連に拿捕されました北鮮の旗を掲げている漁船との関係で、一部、水産庁があらかじめ黙認していたというような報道がなされたわけでございますが、実は、今回の事件に関連して申し上げれば、昨年、漁船登録の関係で契約書等につきまして北海道庁から資料として提出されたのは事実でございます。もうその際にも、あの契約書で想定しているような操業形態は国内法上の問題がある、したがってこういう形態ではできないということについても、関係者について明確に答えております。  いずれにいたしましても、仮に、現段階においては我々としては、手落ちなく十分な問題の指摘をして、こういうことのないように指導監督したつもりでございますが、事実の解明をまって反省すべき点があれば反省してまいりたいと考えております。
  150. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 次に、外務省に伺います。  本件に関連して外務省でもソビエト側との交渉をやっておられるかと思いますか、まず、ソビエト側の見解といいましょうか、当該十二隻の漁船が北朝鮮、日本、いずれの船舶であるというふうに認定しているのか。さらに、操業の利益の帰属する主体がどこであるというふうにソ連側は認定しているか、つまり密漁の主導者はだれであったというふうに認定しているのか、この点についてソ連側からどのような報告を受けているのかについて明確にお答えお願いいたします。
  151. 都甲岳洋

    都甲政府委員 お答え申し上げます。  ソ連側といたしましては、船長が北朝鮮人であること、それから船籍が北朝鮮で船籍港は興南港であること、それから北朝鮮の旗を掲げていることの三点を挙げて、この拿捕漁船は北朝鮮の漁船と認識しているという旨、一貫して述べております。そういうことで、ソ連側としては一般的にこれを北朝鮮の漁船という前提で扱っているということでございます。
  152. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 とすると、本件操業は北朝鮮が行って、その操業の利益は北朝鮮に帰属するというふうにソ連で考えていたのかどうかについてもう一回明確にお答え願います。  さらにつけ加えて、日本人の百六十九名の乗組員は北朝鮮の会社とどのような関係のもとに操業に加わっていたというふうに認定しているかについてもお答え願います。
  153. 都甲岳洋

    都甲政府委員 ソ連側は、本件の漁船が北朝鮮の旗のもとで操業していたということから、北朝鮮の漁業利益のために操業を行っていたと認定しているというふうに思います。  それから日本人漁船員につきましては、具体的にどのようにしてこれを日本人漁船員としてソ連側が認定しているかということでございますけれどもソ連側としては百六十九名の名簿を日本側に通報してきておりますし、そういう認定を何らかの形でやっていると思いますが、私どもとしてその具体的な根拠を承知しているわけではございません。
  154. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 つまり、操業の主体、利益の帰属者は北朝鮮側の会社であるというふうなソ連側の認定であるということであれば、当然百六十九名は北朝鮮の会社に雇われていたというふうに考えられるわけですが、外務省の方では、この船はどこの船であり日本人はどのような立場で乗船していたと、操業していたとお考えか、外務省の御判断をお願いいたします。
  155. 都甲岳洋

    都甲政府委員 私どもといたしましては、直接に漁船員にまだ面会もできておりませんし、直接にこれを確認する方法はございません。そういうことで、ソ連側から受けている情報に基づいて、北朝鮮側に雇用された形で操業していたものと推測をしておりますけれども、具体的な契約関係その他について、私どもとしてこれを断定し得る材料を有していないというのが現状でございます。それで船につきましては、先ほどから御答弁申し上げておりますように、これが北朝鮮の船籍を有し、そして船籍港も興南港であるということで、ソ連側としては北朝鮮の船としてこれを扱っているという事実を私どもソ連側から通報を受けている次第でございまして、これが日本漁船として確認し得る状況がどうかということについては、私どもとしては具体的なそういう材料を持ち合わせていないということでございます。
  156. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 先ほどの海上保安庁の見解では、この船は日本人所有の日本籍を有する日本の船であるという容疑のもとに捜査を進めているということであれば、当然日本の船であるということを前提にしているわけですけれども外務省はソビエトに対して、本件船舶は日本の船であるという主張を行ったのかどうか、この点についてお答え願います。
  157. 都甲岳洋

    都甲政府委員 ソ連側から通報を受けている限りにおきましては、ソ連側としてはこれを北朝鮮の船という前提で事件を処理しておりますので、私どもとしては、漁船員が日本人であるという観点から日ソ領事条約に基づく保護を主張いたしておりまして、早急の面会と日本側への引き渡しを求めているという状況でございます。ですから、日本船としてこれをソ連側に主張したということは現在までのところございません。
  158. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 新聞報道でも、先ほど海上保安庁のお答えでも、船主が日本人であることが一応確認されている。船の名前も確認されている。さらに、日本人が百六十九名という大量に乗船しているという状況であれば、海上保安庁での捜査の資料等を提供して、当然外務省としては本件船舶は日本籍を有する日本の船であるということを主張すべきであるというふうに私は考えますけれども、それを行っていない理由は、単にソ連側の主張が北朝鮮の船であるといっているからなのか、その辺の根拠についてお伺いいたします。
  159. 福田博

    ○福田(博)政府委員 本件につきましてはいろいろまだ実態がよくわからないところがありますので、余り法的にかっちりしたことを申し上げるのはいかがかと思いますが、今の先生の御質問につきまして、関係すると思われる国際法が一つございます。それは公海条約の第六条というのでございまして、「船舶は、一国のみの旗を掲げて航行する」ということが書いてあります。その第二項に「二以上の国の旗を適宜に使用して航行する船舶は、そのいずれの国の国籍をも第三国に対して主張することができない」と書いてございます。
  160. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 海上保安庁では、日本船を外国の会社に対して無許可で貸与したという容疑のもとに捜査を進め、かつ強制捜査まで行っているということ、つまり日本船を北朝鮮の会社に貸与したということを前提にしているわけでございますが、貸与というのであれば、当然日本籍であるということになるわけですね。それで、日本籍であれば、日ソ漁業協定に基づいて拿捕した場所で日本人について、日本船については返せという請求ができますし、さらに裁判の管轄権等も日本にあるというふうになっております。このような立場を主張することが日本人乗組員の利益にとっては最も迅速な解決になるというふうに考えられるわけですけれども、このような主張は全く行っていないのかどうか、それが第一点。さらに、海上保安庁の捜査資料の提供をなしたかどうか。この二つについて具体的にお答え願います。
  161. 都甲岳洋

    都甲政府委員 お答え申し上げます。  先ほどからお答弁申し上げておりますように、本件漁船が北朝鮮の旗を掲げて操業していたということから、これを私どもとしては日本国の漁船ということで、日ソ漁業協力協定のもとでの案件ということでソ連側と折衝しているということではございません。そういうことで、事実において断定できない状況はございますけれども、基本的には北朝鮮の旗を掲げて操業していたということになりますので、日ソ漁業協定のもとでの処理は困難であろうというふうに考えております。
  162. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 日本人の乗組員の利益のためにあらゆることを迅速に行うのが外務省仕事ではなかろうかと思う者としては、大変手ぬるいという感じがいたします。  それは別といたしまして、本日の新聞報道によりますと、十七日のソ連筋の発表で、ソ連と北朝鮮との漁業協定の附属規則によって民事裁判権はソ連にあり刑事裁判権は北朝鮮にあるということになっているので、本件に関する日本人乗組員全員は北朝鮮へ送られる可能性が強いという発表を行ったというふうに報道されております。この真偽について外務省はどのように確認しておられるのか、お答え願います。
  163. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 北朝鮮というお名前が出ましたので、私の方から御答弁いたします。  けさほど来、先生がお示しのような報道が流れておることは私ども承知いたしております。他方、たった先ほどナホトカから入電しました報告電によりますと、この十二隻の裁判がソ連でなくて北朝鮮で行われることになったということについては、そのような決定がなされたことは承知していないというふうにナホトカのソ連側の係官は申しております。したがいまして、冒頭のお話の北朝鮮云々という話については、私どもは有権的に確認はいたしておりません。
  164. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 当初ソ連側の発表では、日本人を北朝鮮に引き渡すつもりはないというふうに漁業省等は発表しているということを再三再四報道等で見てきたわけですが、このようなソ連漁業省の発表はこれまで行われていたのかどうか。さらに、それが急に変更したとすれば、それはどのように考えるべきかについて、外務省の御意見をお伺いいたします。
  165. 都甲岳洋

    都甲政府委員 私どもといたしましては、本件漁船員が日本人であるという前提で、領事条約に基づきまして面会及び日本側への引き渡しを強く申し入れてきている次第でございますけれども、いまだこれが実現していないというのが現状でございますが、先生指摘のような、これらの乗組員を北朝鮮側に引き渡すということについて、引き渡すことはないということをソ連側から日本側に申し入れてきたという事実はございません。
  166. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 としますと、ソ連側外務省に対して正式には、どちらに引き渡す等については今まで現在全く意思表示がないということでしょうか。それと、時間がありませんのでもう一点ついでに、日本人乗組員と総領事館との面会ができないという報道がなされておりますし、今もお答えがございましたが、その障害の大きなものは何なのか、それについてもお答え願います。
  167. 都甲岳洋

    都甲政府委員 日本人漁船員の引き渡しについて、ソ連側から今までどちらに引き渡すということについての態度表明があったことはございません。それから、面会ができない主たる原因といいますか、ソ連側が主張しておりますのは、これらの漁船員がこれらの関係漁船の中におり、そして、その漁船の側において日本領事館との面会を非常に強く拒んでいるという状況があるというふうに一般的にはソ連側から説明を受けております。
  168. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 先ほどの御答弁によりますと、本件船十二隻は北朝鮮の船であり、かつ操業の主体は北朝鮮の会社であったというふうに、外務省でもソ連側の発表を受けてそのような取り扱いをしているということでしたが、とすれば、本件百六十九名の日本人は全員、その雇用契約なり何らかの形で操業主であったところの北朝鮮に連行される可能性が強いというふうに現段階で見られるのじゃないかと思うのですが、その点についてはどうでしょうか。
  169. 都甲岳洋

    都甲政府委員 先ほどから繰り返し御答弁申し上げておりますように、私どもとしてはあくまでも日本人であるという前提でございますので、邦人保護の見地から、領事条約に基づく面会及び引き渡しを強く要請してきているということでございます。そういうことで、ソ連側には一貫してこのような主張を続け、努力をしてまいるわけでございますけれどもソ連側として今どのような処理方針を立てているのかということについては私どもは承知いたしておりません。
  170. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 百六十九名の家族は、この問題については毎日毎日大変な思いで外務省の態度その他を見守っておると思うのですが、日本に釈放せよと言うからには、そちらとしては当然何らかの根拠を持って強くプッシュしなければいけないであろう。しかし、ただ日本人であるから帰せと言っているような状況では、大変心もとない感じがするわけです。  それで、外務省に伺いたいのですが、今後ソ連のナホトカで行われる裁判の見通し及び裁判を受けることになる日本人、全員なのか、あるいは漁労長が十一名日本人であるということのようですが、そういった責任者のみなのか。裁判の行われる時期、そのほかの入手している情報についてお答え願います。
  171. 都甲岳洋

    都甲政府委員 本件漁船員につきましての引き渡しを求める根拠は、当然のことながら日ソ間の領事条約でございますので、これは領事条約に基づく権限として当初より強く主張してきているところでございます、  今後裁判がどういう形になるかということにつきましては、本件の複雑な性格からして、私どもとしては、今後の見通し等につきましてソ連側から情報を得ておりません。
  172. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 本件について、北朝鮮側との接触の有無及び北朝鮮の態度等についてと、さらに、もし大変ラッキーなことに即時日本に帰されるというふうになった場合の即応態勢はどうなっているのか、その辺についてもあわせてお答え願います。
  173. 都甲岳洋

    都甲政府委員 本件につきましては、日本政府といたしましても、我が方の在ソ連大使館及び在ナホトカ総領事館から、それぞれ北朝鮮側の在ソ連北朝鮮大使館及び在ナホトカ北朝鮮総領事館に対していろいろと接触を試みておりますけれども、先方から面会を拒絶されております。そういうことで、私どもの努力というのは今まで実っておりません。そういうことから、詳細な情報を得るに至っていないということでございますので、今後ともそのような接触を試みよう、試みは続ける所存でございますけれども、現在までのところ、残念ながら北朝鮮側はこれに応じていないというのが実情でございます。  もちろん、本件が釈放ということになりますれば、海上保安庁と御相談しながら早急に必要な措置をとることにいたしたいと思います。
  174. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 最後外務大臣お答え願います。  この百六十九名がもしや不幸なことに北朝鮮に連行されるというようなことになれば、大変な人権問題にも発展する可能性があり、最大級の拿捕事件ということになる可能性もはらんでいると思われるわけですが、今後どのような具体的な対応をしていくのか。先ほどから日ソ領事条約に基づく返還要求のみを繰り返しておられますが、領事条約では面会の請求はできても、何らかの根拠を示せないことには帰せと言えないのではないか、その辺も含めてお答え願います。
  175. 中山太郎

    中山国務大臣 本件は、発生当時から私に外務省の方から直ちに連絡がございまして、この拿捕された日本の船員たちが国交のない北朝鮮に引き渡されるということがあれば、交渉は一段と難しい状態を迎えるに違いない。既に第十八富士山丸の乗組員二人が六年間帰ってこないわけですから、非常に面倒なことになるので、私どもとしては鋭意、政府としては日ソ間で話をして、この引き渡しをソ連側に要請するという姿勢で今日までやってきているわけであります。現時点で、今も局長が答弁いたしましたように、まだ北朝鮮に引き渡すということは決まったわけではございませんので、現在政府としては、とり得るあらゆる手段を行ってソ連との交渉に臨んでいるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  176. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 終わります。
  177. 上田哲

    上田委員長 次に、玉城栄一君。
  178. 玉城栄一

    ○玉城委員 私は持ち時間が十五分でございますので、中山外務大臣には日米外相会談、大変御苦労さまでございました。先ほども上田委員長の御質疑がございましたが、今回大臣は、安保条約に関係しまして安保閣僚会議創設ということを提案されたということ、先ほども御答弁がありました。その理由もおっしゃいました。現在日米間にある安保協議委員会、この構成についてもおっしゃいました。我が国は外務大臣であり、防衛庁長官である。向こうさん、アメリカ側の方は駐日大使であり、また太平洋司令官ということですが、そういう形で安保条約、日米間のいろいろな協議が行われてきたわけでありますが、この構成をみまして、何といいますか、格が違うといいますか、こちらは大臣、閣僚で向こうさんは大使でありまた一人は軍人さんです。だから安保条約というものはそこに一つの本質的に不平等なものがあるのかな、その一つのあらわれではないかと思うわけでありますが、現在の安保協のあり方について、私はこれは対等ではないという感じがするのですが、大臣もそのようなお考えに立っておられますか。
  179. 中山太郎

    中山国務大臣 締結当時の経緯等につきましては北米局長からお話をさせていただきたいと思っております。
  180. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 先生も御案内のように、三十年前の日米の関係状況を反映しまして、先生まさに御指摘のような形で日米安全保障協議委員会ができたわけでございますけれども先生御案内のように、第十八回の会合が昭和五十七年に開かれて、それ以来開かれてないわけでございましてまさに先生指摘のように、私どもとしてはこの安保協議委員会を日米平等な形で格上げしたいというふうに考え、それも一つの理由で、先ほど外務大臣が御説明されましたようなことで、日米平等な形での閣僚レベルの会合を持つことを今回外務大臣が提案された次第でございます。
  181. 玉城栄一

    ○玉城委員 今局長さん、第十八回の安保協は昭和五十七年に開かれて、以後、今平成二年ですから、大分開かれてないわけですね。  実は十八回のその前、十六回が昭和五十一年で、今外務省の皆さん方やっていらっしゃる、いわゆる米軍基地の整理統合という問題も最後の詰めだということでやっていらっしゃるわけですが、十六回、昭和五十一年に今の安保協、そこで合意を見たものすら、それから相当の年数がたっているわけですね。せっかく沖縄の返還時における国会で決議されたようなこともありながら、なおまた合意もされていながら、引き延ばされてきた理由はそこにも一つあるのではないか、こう思うわけであります。  これは非常に納得し得ないことなんですけれども、安保条約がそういう、要するに不平等な形で結ばれて、そして沖縄昭和四十七年に返還された。安保条約に基づいて、ほとんどの米軍基地というのは沖縄に集中的に存在している。専用施設においては七五%といいますから、在日米軍基地全体の四分の三になりますか、そこにいろいろな形のものがさらにかぶさって、そしてせっかく合意されていながら今もってこれが返還もされない。近いうち返還をということで期待をしているわけですが、これは今週中に公表されますか。
  182. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 沖縄の基地の整理統合問題は、先生指摘のようにまさに沖縄の返還時点からの懸案でございまして、この一年半私どもも鋭意米側と日米合同委員会の場を中心に協議してまいりまして、いよいよ大詰めでございまして、近日中に結果を発表させていただきたいと思っております。これはあくまでも中間的な成果を盛ったという形になると思っておりますけれども先生指摘の安保協議の懸案さらには知事が米側に要請されました具体的な事案等を中心に検討しました結果、具体的な成果を盛り込んだものを近日中に発表させていただきたいと考えております。
  183. 玉城栄一

    ○玉城委員 先ほども申し上げましたように、これは防衛施設庁も含めてなんですが、相手が、安保協そのものが、トップの方がそういう状態ですから、現実に皆さんが交渉しているのは実務レベルなんですね。相手は米軍さん、軍人さんですから、軍人さんのトップの方は、こういうのは自分らが転勤した後からやってくれ、自分の経歴に傷のつくようなことはしてくれるな。沖縄の米軍基地が返ろうが返るまいが、そのままでいても地代、地料は全部日本政府が払っているわけです。ですからそういう人を相手にした交渉というものはなかなか進みませんよ。そういう相手であれば、十のうち最後にまとまるのは二つか三つくらいです。トップできちっと決めて、そしてこうやるんだというふうにおろしていかないことにはこれは一向に進まないし、今おっしゃいました近日中に発表されるというものの実態についても、どれほど期待していいのか非常に疑問に思うわけであります。  そこで、松永前駐米日本大使がつい先日沖縄にいらっしゃいまして、記者会見のときに沖縄の印象を語られました。我が国が戦後発展した歴史の中で沖縄が払った犠牲、またその負担についてよく理解をして、これからも支援をしていかなければいかぬというような話がありました。また、つい先日、十三日、決算委員会で石川防衛長官も、返ってくる土地、これの補償問題も含めて、利用問題も含めてさまざまの問題が今出ているわけで、それについてやはり政府が責任を持ってやるべきではないかという私の質問に対して、沖縄の戦後の苦悩を解決するためにそういうものが必要であれば総理府あるいは外務省沖縄開発庁も含めて知恵を出し合ってやらなければいかぬという話があったわけです。大臣、石川防衛長官外務省ということもおっしゃっておりますが、いかがでございますか。今基地が返還されるという状況ですから、いかがお考えでしょうか。
  184. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 先生指摘の跡地利用問題が非常に重要な問題であることは私ども十分認識しておりまして、今先生指摘趣旨も踏まえまして関係省庁と協議して適切に対処してまいりたい、こう考えております。
  185. 玉城栄一

    ○玉城委員 今局長さんは、関係省庁と相談して対処していきたいという話ですが、これは大臣もよく御認識だと思いますが、返ってきた土地に、地主や地権者の問題も含めまして、住宅をつくる、産業用地ををつくるとか自由貿易地域にするとかいろいろな考え方があるわけです。ある意味では秘められた可能性のある空間として、第三次沖縄振興開発計画の大きな問題を含んでいるわけです。外務省も当然、今までアメリカさんに提供していたわけですから、返ったら知らないじゃ済まされないと思うのです。先ほど申し上げました安保条約のいろいろな問題もありますし、防衛施設庁も沖縄開発庁も、沖縄県も、そういう関係機関がこれをどうするか。近日中に公表されるといいますから、公表された後この問題をどうするかということは重大な問題ですから、大臣はどのようにお考えですか。
  186. 中山太郎

    中山国務大臣 私も沖縄開発庁長官を一年半やらせていただいて、沖縄方々が基地の返還、整理統合に期待されることは大変大きかったということをよく認識をいたしております。ごく近日中に発表されます返還される基地につきましても、地元方々がいろいろとこれの利用をめぐって議論がたくさんあるということも伺っております。  問題は、それが個人に返還されるのかあるいは公共団体に返還されるのか。そこらも踏まえて、地域の活性化のためにどのような計画を立てるべきかということにつきましては、返還後の主体は、私は地方自治体と沖縄開発庁にその権限が集約されるのではなかろうか、このように存じておりまして、交渉担当者として私は、返還されるまでが外務省の守備範囲というか責任の範囲であって、返還後はその受けられる側の考え方、それから沖縄県庁、それからさらにその地域の地方自治体、また沖縄開発庁、いわゆる関係者がこの返還後の地域についての都市計画なりあるいは利用問題についての御協議をいただく場を早急につくられることも極めて好ましいことだと考えております。
  187. 玉城栄一

    ○玉城委員 大臣のおっしゃる意味はよくわかりますし、実際問題としましては、これは非常に年月もかかります。というのは、これは旧日本軍用地跡地についての返還後の利用計画を策定する。十数年かかってもこれは合意が得られないという問題があるわけですね。ですから、そうなった場合に、その地権者に対する従来入ってきた軍用地料というものももうなくなるわけですから、こういう問題をどうするか。とにかくいろいろな、そういう今おっしゃるようなしゃくし定規ではできないものがあるわけです。ですから、安保条約に基づいてそれだけの負担をかけてきた、申しわけない、返ってきたならこれをどうするかというのを我々も責任を持ってやろうという、いわゆる条件整備を政府関係省庁が集まってやっていかないと、この問題は一向に進まないと思うのです。ですから、どうでしょうか。
  188. 中山太郎

    中山国務大臣 一応、発表いたします時点で、私は外務省を代表する者の立場として、直ちに沖縄開発庁長官にその旨を念達をいたしたい。そして、委員指摘のように大変いろいろな複雑な問題がこれに絡まっているという状況の中で返還がされるので、早急にこの所管官庁である沖縄開発庁を中心に関係省庁の協議体制をつくるように意見があったということを、私からかたがた念達をいたしたいと思っております。
  189. 玉城栄一

    ○玉城委員 以上です。
  190. 上田哲

    上田委員長 次に、藤原房雄君。
  191. 藤原房雄

    ○藤原委員 時間が短時間でございまして、また同僚委員からも先ほど来いろいろ議論ございましたが、私は北方領土を中心とします諸問題についてお伺いをしたいと思います。  米ソ首脳会談におきまして、アメリカの大統領から北方領土の問題についてお話があったということが報じられておりますが、国際世論ということをもっと喚起をしなければならないということをここ数年一生懸命やってまいりました。そういうことがいろいろな形で議論になるようになり、また国連等におきましても、外務大臣を初めとしまして事あるごとに北方領土の問題が取り上げられる。こういうことで、だんだんそういうものが国際世論の喚起の意味一つの大きな波動になってきたのだという、こんな感じがするわけでございます。  ゴルバチョフ大統領もホワイトハウスの記者会見のときにも、次は日本の問題であって、精力的に日本への訪問を準備しておる。日本とは徹底的に話し合いを行いたいという意味のことを述べられたようであります。この米ソ首脳会談の後に引き続きまして韓ソとか米韓首脳会談、こういうことを考えますと、東欧諸国の一つの大きな変化ということとともに、アジアにおきましてもやはり米ソのアジア・太平洋外交の変化という、こんなものを感じてならないわけであります。  私どもは新聞に報じられる部面しか見えることはできませんが、実際こういう大きな変化の中で、一つ米ソ首脳会談を初めとしますこういうところで北方領土一つの話題になったという、首脳会談そのもののあれではないかもしれませんが、いろいろなお話が出るということや、それから韓ソ、米韓といったところの首脳会談が行われて、米ソのアジア・太平洋の外交というものに一つの大きな変化が見られる。  こういう中で、首脳会談後に、シェワルナゼ外相が七月に日本にやってくるということは、いろいろな方々がいろいろなことを言っておるのですけれども、事実として、そしてまた特にソ連の外相という主要な立場にある方が日本にいらっしゃるという、これは当初の発言からすると半月ほどおくれたのかもしれませんけれども、首脳会談後いらっしゃるということ等を考えますと、私どもに非常に大きな希望といいますか、また新しい局面が展開されるのではないかというふうに私ども受けとめておるわけであります。大臣といたしましては、これらの一連の動きに対してどのようなお考えを持っていらっしゃるのか、また今後の外交日程等にどのようにお取り組みになっていくお考えなのか。その辺のことをお伺いしておきたいと重います。
  192. 中山太郎

    中山国務大臣 長い日ソ間の懸案問題が、今まで我が方の領土権の主張とソ連側の、領土問題はない、既に解決済みだというお互いに非常に対立した意見のままで経過をしてまいりまして、一昨年やっと日ソ間に平和条約作業グループというものをつくるということで合意が見られて、そして、五つの項目に分けて専門家が協議をしながら今日までやってまいったわけであります。  そういう中で、ソ連のヤコブレフさんが来られたりエリツィンさんが来られたり報道関係の経営者が来られたりして、私どもといろいろ話し合いをいたしておりますし、日本からは安倍自民党元幹事長がソ連に行かれてゴルバチョフ大統領といろいろ直接会談をされて、日ソ間の懸案の問題の解決に提案をされたこともご案内のとおりでございます。  そういう背景を受けながら、米ソの首脳会談においては北方領土問題が話の中に出てくる。こういう中でシェワルナゼ外相の来日が決まったわけでございまして、私どもといたしましては、ソ連も新思考という外交の中で新しい日ソ関係改善のために強い姿勢で臨んでこられるものと私は思っておりまして、この外相会談に一つの大きな機会を見出して、日ソ間の問題解決の扉を開きたいと考えております。
  193. 藤原房雄

    ○藤原委員 こういう政府の首脳の方々の大きな今までとは変わった一つの動きというものも、私どもは十分に受けとめられると思いますが、それとともに最近は、学者グループの方々それからまたいろいろな立場の方々北方領土のことについても認識をし、そしてまた討議をしようという機運がソ連の中に非常にあるようでございます。  こういうことは、土台としてやはりソ連も一つの大きな新思考のもとに、新しい国づくりを今急いでおるわけでありますが、民主的なそういう形にだんだん進んでいくのだろうと思います。国のトップの方々に対する話し合いということ、あるいは日本の立場をどう国民人たちにアピールするといいますか、認識をしてもらうかという、こんなこと等も考え合わせていかなければならない時代が来たような感じがしてならないわけであります。今大臣からお話ございましたが、過日はカンボジアの会談等におきましては大変な精力的なお取り組みもいただきました。アジアにおける一つの大きな取り組みとしまして、それらの諸国に対するいろいろなまとめ役といいますか、日本のなすべき役割というのは非常に大きいと思いますが、何といいましてもソ連の問題というのは日本にとりまして戦後以来四十五年の懸案事項でありますし、最大の課題である。こういうことで、大所高所、そしてまた首脳陣に対すること、それからまた国民方々の意識も今大きく変わりつつある、そういうこと等も踏まえて、外務省としてとるべき手段というのはいろいろあるのだろうと思いますが、それらのこと等もあわせて今後のお取り組み、シェワルナゼ外相がいらっしゃるというのは定期協議ということなのだろうと思いますけれども、これとはまた別なことなのか。シェワルナゼ外相が日本に来るということは、今作業部会等でいろいろ協議をしておることとか、それから外相の定期協議とかいろいろなことがございますが、そういうものとの関連はどうなのか、その辺のことについてお伺いしておきたいと思います。
  194. 都甲岳洋

    都甲政府委員 お答え申し上げます。  シェワルナゼ外務大臣の訪日につきましては、従来から定期協議及び平和条約交渉ということで性格づけがなされておりますけれども、それに加えまして、一昨年の十二月に合意いたしましたところにより、両大臣の間で首脳間の訪問を準備するということが合意をされております。そういうことで、来日のゴルバチョフ大統領の訪日に向けての準備をするための会談という意味も非常に大きなものとなっております。
  195. 藤原房雄

    ○藤原委員 外交上のことについてはいろいろお聞きしたいことがございますが、時間もございませんので、外務大臣、精力的にお取り組みになっていらっしゃいますけれども、非常に重要なときに来たと思いますので、また一層御活躍いただきたいものと心から思います。  さらに総務庁にお伺いするのでありますが、先ほど同僚委員からもお話ございましたが、今度は択捉墓参が決まったわけであります。これも先ほどお話ししておりましたのと同じように、事業主体といいますか、いらっしゃる方々に対する経費を国が負担する、これは塩崎長官地元でお話しなさったように報じられておりますけれども、そういう方向考えようということがちょっとちらっと出ておりました。全国に散っております方々墓参にいらっしゃるということや高齢化の現状とか、いろいろなことからいたしまして、また、今サハリンにいらっしゃる方や中国にいらっしゃる方々、こういう方々との兼ね合いとかいろいろなことからしまして、国内的なことであるかもしれませんが、北方領土墓参の経費というものについては総務庁もぜひこれはお取り組みをいただきたい。今度の予算づけができれば幸いだなと思います。  それからもう一つは、いろいろな方々にお会いしますと、青少年への啓蒙事業というのを非常に重視しなければならぬ。もちろん四十五年の今日でありますから当然のことだと思うのでありますし、いろいろなことはしておりますけれども、特に予算編成の直前ということで、青少年啓蒙事業の強化、こういうことにぜひ心を砕いていただきたいものたと思います、昨年は北海道ではまなす国体があったのですが、根室管内で一つでも二つでも会場がつくられればそこに全国の方々がいらっしゃる、こんなことを申し上げたのでありますが、それはもう相当前に会場を決定するようでございますからできませんでしたけれども、いろいろなことで青少年への啓蒙とか意識とか、こういうものが実現できるような方途というものをおつくりいただきたいものだと思います。  それから三つ目に、私、申し上げているのですが、元居住者への融資の次世代への拡大、これは大蔵省との折衝というのは大変なのかもしれませんけれども塩崎長官はそちらの方のベテランでもございますし、また閣僚としましても大蔵には強い方でございますから、これは長い目で見ていくということが大事なことだろうと思います。いろいろ調査をしたり、実態把握、こういうことで、私どももいろいろ壁のあるのはわかりますが、その実態の中から一歩でもに二歩でも解決の方途を見出していただきたいものだ。いつも同じことを申し上げておるわけでありますが、これらのことを着実に一歩一歩、関係する方々希望を持っていけるような、外交的なこととともに国内的な施策につきましてもぜひお取り組みをいただきたい、この三点、お伺いしておきたいと思います。
  196. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 私の名前が引用されましたのでお答え申し上げたいと思います。三点ばかりお話がございました。  まず最初は墓参に対する援助の問題でございます。私も北海道へ参りましてこの問題について言及したことがございまするけれども総務庁の最も大きな責任のある仕事北方領土問題だと考えております。そして基金が、今百億を目指して私どもも努力しているところでございます。まず墓参の費用については、なかなか難しい問題もありましょうけれども、これは慎重に検討してまいりたいと思っているところでございます。  それから第二は、今申されました青少年の啓発の問題でございます。全国的にいろいろの副読本と申しますか、教科書的なものまで含めて啓発運動をやっておりますが、まだまだ私ども啓発に力を入れていって、国民世論をバックに何としてもこの返還の実現を図りたいと考えているところでございます。  三点は、旧漁業者の補償金の承継という問題でございますが、この問題はなかなか難しい問題があろうかと思いますが、これもまた、漁業をやっておるかどうか、その他を含めて検討方向で私どもは努力していきたいと思っております。
  197. 藤原房雄

    ○藤原委員 もう時間もございませんので最後になりますが、今大臣から非常に一生懸命取り組んでいこうというお話がございました。旧島民の問題ということになりますと、元居住者援護のこととかそれから墓参の問題、こういうことが非常に大きな課題となるわけでございます。四十五年たちまして、確かに当時島にいた方とその後の方等、二世、三世の方々をどう見るかということは難しいことかもしれませんが、御存じのとおり、先ほども同僚委員からもお話がございましたように、北方海域の漁業というのは、ソ連とのいろいろなことについて、九二年沖取り禁止ということが言われておりますし、漁獲量がだんだん削られて、漁業に生きる根室を初めといたしますあの周辺地域、隣接地域というのは、今非常に停滞ぎみでございます。私ども行くたびに、大臣はこの前いらっしゃったようでございますが、前にいらっしゃったことがあるかどうか、比較しますと、人口もだんだん減って若い人がだんだんいなくなる。漁業しかないところでありますからほかの産業はなかなか定着し得ない、こういうこと等を考えますと、二世代、三世代というのは何も根室の方だけでは決してないのですけれども、まずそういうことで、四十五年もたってという、机の上ではそうなのかもしれませんが、実態的にはそういう非常に特殊な問題が絡んでおるということを現地にいらっしゃってよく御存じだと思いますが、その点についてぜひひとつ積極的にお取り組みをいただきたい。  それから、私、申し上げておきたいのは、北方領土隣接地域振興の法律のもとに各省庁の連絡会議を設けていろいろ協議をやっておるのですが、かさ上げしていろいろ面倒を見ようということになっておるのです。これは、この地域が漁業を中心としまして、どこかにつながっておるというところではございませんので、最近は漁業衰退ということから、加工からいろいろな問題について、仕事、町全体の活気が非常に停滞ぎみで、地元方々も何とかこれをはねのけて新しい道をということでいらっしゃるわけであります。これは年次計画といいますか、五年ごとの計画を立てて進めることになっておるのですが、隣接地域の振興策につきましても、漁業がこういう現状であるということ等をあわせて、これは開発庁、道、こういうところが主体になるかもしれませんが、総務庁もぜひひとつこの地域の振興策、特に漁業ということにつきましてはひとつ御配慮をいただきたい。今日までいろいろなかさ上げしたりなんかしましてやってきたことが本当に効果があったのかどうか。打ち続く割り当て量の削減、水域が狭められる、こういう中で、今までやってきたことがなかなか、それと裏腹な現況にあるという非常に厳しい現実をひとつぜひ直視していただきたいものだと思うのであります。  以上、簡単にひとつ。
  198. 鈴木榮

    鈴木(榮)政府委員 私ども根室をたびたび訪れて感じておりますが、遠洋漁業が狭まったということで、人口から見て非常に活気が衰えているという印象を受けまして、これが北方領土返還運動に悪い影響を及ぼさないかという懸念を非常に持っておるわけでございます。そういう意味で、元北方領土居住者、住んでいた方の二世、三世まで融資対象を広げてほしいという委員の御趣旨はよく理解できるわけでございますが、一番大きな問題は、やはりこの法律趣旨からいって妥当かどうかということでございます。しかし、今までお答えしたように、何らか御要望が実現される方法はないか、こういうことを模索するために関係団体からいろいろ資料を取り寄せているところでございます。  それから、いろいろ地域の振興につきましては、私ども北方基金の造成に協力しているわけでございますが、この運用益をどう使うかにつきましては、地元等の要望を受けまして道の方が審査して、我々の方に協議しているわけでございますが、この段階におきまして地元の振興ということにも十分留意して協議に当たりたいと思っております。
  199. 藤原房雄

    ○藤原委員 では、終わります。
  200. 上田哲

    上田委員長 次に、古堅実吉君。
  201. 古堅実吉

    ○古堅委員 千島問題について質問いたします。  日本共産党の千島返還問題については、既に態度、主張ともに明白でありますが、本日の質問の前提となりますので、最初にその基本問題について述べておきたいと思います。  一つは、もともと北海道の一部である歯舞、色丹については、日ソ間の平和条約を待たずに直ちに返還を要求すること。二つには、千島列島については、サンフフンシスコ条約第二条(C)項の千島列島放棄条項を、領土拡大という第二次世界大戦処理の国際的原則に反するものとして無効を宣言し、強力な対ソ交渉を行える立場を確立すること。三つ目には、その上で全千島返還を内容とする日ソ平和条約を締結し、日ソ領土問題の公正な解決を図るというものであります。  そこで、質問に入らせていただきますが、来年のゴルバチョフ大統領の来日に当たって千島問題は日ソ首脳会談の重要な議題となると思いますが、領土問題交渉についての進展が見通されるかどうか、最初に基本点についてお伺いしたい。
  202. 都甲岳洋

    都甲政府委員 お答え申し上げます。  一昨年の十二月以来、ソ連側平和条約作業グループをつくりまして領土問題について鋭意意見交換をし、議論をしてきているところでございますが、残念ながら、現在までのところ、ソ連政府領土問題に対する立場につきましては事実的な変化は見られておらず、極めてかたいものがございます。しかし、他方、先般の米ソ首脳会談において見られましたような東西関係の構造的な変化の中で、日ソ関係の抜本的改善、正常化の可能性というものは一層現実的なものになってきているという認識をまた私どもとしては強めております。  そういう中でございますので、我が国といたしましては、今後とも北方四島の一括返還に向けて、九月のシェワルナゼ外務大臣の訪日あるいは今年末または来年初めの中山外務大臣の訪ソあるいは来年のゴルバチョフ大統領の訪日というような機会をとらえまして、日ソ関係の対話を深化、拡大することによって、粘り強くこの四島一括返還の目的を達成するために努力をしてまいりたい、このように考えております。
  203. 古堅実吉

    ○古堅委員 大変基礎的、基本的な問題になりますが、今さらそんなことをという受けとめもあるいはあられるかもしれませんが、大事なことだと思いますのでお尋ねするのです。サンフランシスコ平和条約の締結に至る前に、日本がアメリカに対して歯舞、色丹、南千島、北千島、いわゆる千島列島ですが、それらの返還について努力をした、そういう経緯がございますか。
  204. 都甲岳洋

    都甲政府委員 サンフランシスコ平和条約の締結に至る段階におきまして、日本政府といたしましては、領土問題につきましての我が方の詳細な立場をまとめて、これを連合国側に提出し、理解を求めたという努力はいろいろと行ってきております。そういう形で領土問題についての日本政府考え方というのを事前にこれをまとめた形で提出し、そのための努力を払ったという事実はございます。
  205. 古堅実吉

    ○古堅委員 先ほど申し上げたのですが、歯舞、色丹、南千島、北千島を含めて、個々の問題について、これ全体について同じ立場を踏まえてやっておるのですか。例えば最初からいわゆる北千島はそういう返還してほしいという日本側の努力からも除外されるとかいうふうな経緯もあるのかどうか、そこらあたりをよく知りたいわけです。
  206. 都甲岳洋

    都甲政府委員 この件につきましては、詳細に個々の島々についてどのような主張をしたかということについてはただいま手元に資料は持っておりませんが、日本政府といたしましては、領土問題について連合国側の理解を得るためにさまざまな資料を作成し、そしてこれを提出することによってサンフランシスコ平和条約締結に至る前の段階においてさまざまな努力を行ったということは事実でございます。
  207. 古堅実吉

    ○古堅委員 そういう具体的な内容については、今資料をお持ちでなければ、後ほど何らかの形で、私が訪ねていくとか、あるいはそういうことなども通じて知らせてもらえる、そういう範囲にはございますか。
  208. 都甲岳洋

    都甲政府委員 日本政府といたしまして当時準備をいたしました資料に基づいての御説明は可能かと存じます。そのように御説明に係官を参上させたいと思っております。
  209. 古堅実吉

    ○古堅委員 さきの米ソ首脳会談ブッシュ大統領が千島問題を話題にされた、このように報道がされております。これは、日本政府の側から何らかの働きかけがあってそういうことがなされたのかどうか。
  210. 都甲岳洋

    都甲政府委員 先般の米ソ首脳会談におきましてブッシュ大統領の方から、北方領土問題を解決して日ソ間を正常にするということが東西関係全体の枠組みの中で重要であるという認識を示され、ゴルバチョフ大統領にその解決を求めたという事実がございます。私どもとしては、このことは日ソ間の基本的な問題についてアメリカがこのような支持の態度を示してくれたということで高く評価いたしております。  日本政府といたしましては、日米間のさまざまな対話におきましてこのような日本側の立場についての理解を常々求めてきているところでございまして、こういうことから、アメリカ側がこれを一貫して支持をするという態度を表明してきておりまして、今回具体的にゴルバチョフ大統領との会談でこれを取り上げることになった、そのように理解しております。
  211. 古堅実吉

    ○古堅委員 御説明から受ける感じは、特に今回の米ソ首脳会談に当たって日本の側から話し合いとして持ち込んでほしいという要望をしてないのだが、ブッシュ大統領がなさったのだろうということとうけとめておるのですが、もし、間違いであれば訂正してください。その話し合いの内容についての報告を受けておりますか。
  212. 都甲岳洋

    都甲政府委員 本件につきましては、ブッシュ大統領から海部総理への電話によっての連絡もございまして、それから、アメリカ側からブリーフも受けております。
  213. 古堅実吉

    ○古堅委員 ヤルタ協定で、スターリンが重大な誤った立場から千島列島の引き渡しを要求し、米英が同じ誤った立場からそれを容認するという内容になってしまいました。これは連合国側の領土拡大の原則に重大に反する内容の協定になってしまったわけです。それが今日まで、戦後四十五年たつというのに、千島問題についての国民願いにこたえた解決に至らぬという根本的なものになっています。サンフランシスコ平和条約第二条(C)項では、ヤルタ協定の線で日本国は千島列島を放棄しています。北海道の一部をなし千島列島には入らない歯舞、色丹は別として、南千島の国後択捉については何を根拠にして要求をされるのですか。
  214. 福田博

    ○福田(博)政府委員 御質問にお答えする前にひとつ、先生のおっしゃっている千島というのは私どもが答えております千島とちょっと違うんじゃないかと思いますので、念のため申し上げておきます。  北方四島というのはいわゆるサンフランシスコ平和条約二条(C)項に言う千島列島には入っていないわけでございます。先ほど共産党のお考え一つとしてサンフランシスコ条約についていろいろ申されましたが、要するに、サンフランシスコ条約の二条(C)項によって千島列島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄しておりますが、これには北方四島は入っていない。北方四島は法的にも歴史的にも一貫して我が国の固有の領土であり、その不法占拠というものを排除して我が方が平和裏に返還を求めることについては何らの支障もないわけでございます。
  215. 古堅実吉

    ○古堅委員 日本政府がサンフランシスコ平和条約を締結するに当たっての吉田全権大使、そこでの演説やそれからアメリカ全権のダレス氏その他の演説内容などにも見られるように、締結のあの時点では、千島列島というものに択捉国後などが除外されておるなどという考えでやられておるのじゃ全然ないのです。すべての経緯を見れば、素直に読めば、はっきりしておる。それが、日ソ共同宣言に当たっての一九五五年ごろからのいろいろないきさつがあって、国会におけるそれまでの答弁も覆して態度を変えるといういきさつになっておるだけのことであって、最初から入ってないなどと言うのは解釈を変えたということでの全くのごまかしにすぎないのです。  時間がないからそれについての具体的なものを持ち出しての論議はそれ以上は避けますが、日本政府以外に、サンフランシスコ平和条約批准国で、二条(C)項の千島列島の概念に国後択捉が最初から含まれてないという立場をとっておる国がありますか。
  216. 福田博

    ○福田(博)政府委員 例えばアメリカにつきましては常日ごろそういうことを言っておるわけです。ここに一九五七年五月二十三日付のアメリカ政府の書簡がございますが、「日本に関するヤルタ協定も一九五一年九月八日サン・フランシスコで調印された対日平和条約も」云々とありまして、「これらの文書における「千島列島」という辞句は、従来常に日本本土の一部であったものであり従って正義上日本の主権下にあるものと認められるべき歯舞群島、色丹島又は国後島、択捉島を含んでもいなければ含む様に意図されもしなかったとういうことを繰り返えし言明する。」と述べております。
  217. 古堅実吉

    ○古堅委員 アメリカのそういう文書というのも、あのサンフランシスコ平和条約を締結した時点におけるアメリカの考えではなかったのですよ。その後のいろいろないきさつで、日米間で話し合いをしてそういう文書を出してもらおうということになったいきさつがあって、そういう文書が出てきたというだけのことでしょう。アメリカ以外にそれを納得しているところはどこにありますか。
  218. 都甲岳洋

    都甲政府委員 例えばイギリス政府におきましても、四島につきましては、これは正当に日本側に返還されるべきであるという立場を明確にしております。
  219. 古堅実吉

    ○古堅委員 それは文書か何かで確認されておりますか。
  220. 都甲岳洋

    都甲政府委員 これはイギリス政府側の公的な、政府の立場においての表明を私どもは確認をいたしております。
  221. 古堅実吉

    ○古堅委員 それは、いつ、どういう場で、だれが日本政府に伝えておるのですか。
  222. 福田博

    ○福田(博)政府委員 ちょっとうろ覚えでございますが、一番最近は、たしか一九八八年、自由民主党の地図ミッションというのがイギリスに参りまして先方の大臣と会談したときに、先方がそういうことを申したということを承知しております。
  223. 古堅実吉

    ○古堅委員 それは、日本政府に対する正式な話ということではないんじゃないですか。
  224. 福田博

    ○福田(博)政府委員 ちょっと正確な日にちを忘れているので確定的なことを申し上げることは避けますが、日本政府に対して先方が言ってきたことも過去何度かございます。いずれにいたしましても、サンフランシスコ平和条約についてはソ連は当事国ではございませんので、条約上の権利を主張する根拠はございません。
  225. 古堅実吉

    ○古堅委員 そういうことを聞いておるんじゃないですよ。政府は、一九五五年に開始された日ソ共同宣言、それに向けての交渉の中途で態度を変えました、先ほど申し上げたように。一九五六年八月十九日、ロンドンでモスクワ交渉の全権重光外相がダレス米国務長官と会談しています。その際にダレス氏は、もし日本が歯舞、色丹の返還のみで日ソ平和条約を結ぶならば択捉国後の放棄につながる、こうした事態が起これば米国としては沖縄の併合を主張することになるだろう、そういう趣旨のことを述べて、重光外相に対してのおどしをかけた。日本に対するおどしを、日ソ平和条約の早期実現に強硬な反対を唱える立場でそういうことまで含めて言ったというのです。その時点で千島問題での日米間の特別の合意が改めてできたということではありませんか。
  226. 都甲岳洋

    都甲政府委員 今の経緯は、アメリカ側が日本側の交渉の立場を支持するという見地からそのような発言があったということは承知しておりますけれども、その際に改めて合意をしたというような事実はございません。
  227. 古堅実吉

    ○古堅委員 時間が来ましたから。サンフランシスコ平和条約の締結に当たっては、その二条(C)項で、北千島、南千島全体を含め千島列島として放棄しておきながら、解釈でそれをごまかして、国後択捉は放棄してないかのように装おうとしている。しかし、こんなごまかしの態度では、北千島については永久に返還の主張ができなくなります。国際的な共通の道理ある原則、すなわち領土拡大の原則に照らして関係国との交渉を展開していく、その方途を求めることこそ千島列島、全領土問題の正しい解決策であるというふうに考えます。今の日本政府の態度では、返すべき北千島については要求をしないということになるではありませんか。
  228. 福田博

    ○福田(博)政府委員 先ほどからの先生の御発言を聞いておりますと、要するにサンフランシスコ平和条約二条(C)項に掲げる規定を日本が応じたのはけしからぬ話であるから、それを廃棄するというようなことをしてやらなければ本当の領土問題は解決しないのだというようなお話ではないかと思います。前にもほかのところでお答えしたことがございますが、我が国が千島列島、これは先ほど申し上げましたように北方四島を含みませんが、その千島列島というものについてすべての権利、権原及び請求権というものを放棄したことは、当時の状況からしてやむを得なかった措置であると考えております。  御承知のとおり、日本はそういうような代償を払って、ようやく我が国の完全な主権と国際社会の一員としての地位を回復することができ、今日の繁栄と平和国家としての名誉ある地位を築くことができたということを十分認識する必要があると思います。
  229. 古堅実吉

    ○古堅委員 それではまるで誤った、連合国側の基本的な態度であった領土拡大の原則となった、それを踏みにじって出したヤルタ協定を認めるということになるではありませんか。やはり領土拡大の原則に立って日本のとるべき立場を展開してこそ、しっかりした国民願いに完全にこたえられる道は開けるのだということを厳しく指摘して、終わります。
  230. 上田哲

    上田委員長 次に、小平忠正君。
  231. 小平忠正

    ○小平委員 質問に入ります前に、私の質問の終了が十七時二分ということで、この時間から始めるということで、大変長くなっておるようであります。そこで、私は事務局の方から塩崎大臣が何か別な委員会があってそちらの方で答弁を求められているというので、質問したいこともあるのですが、また次の機会に譲りますので、委員長、私は大臣が退室されても結構ですので……。
  232. 上田哲

    上田委員長 長官、どこかへ行くわけですか。
  233. 小平忠正

    ○小平委員 よろしいんですか。よろしかったらいていただいて――事務局から何度も言われているものですから、次の機会によろしく。
  234. 上田哲

    上田委員長 質問者には大変申しわけありませんが、では大臣、質問者の意向ですから、必ず次の機会にしっかり答えてください。  では、大臣の退席を許します。
  235. 小平忠正

    ○小平委員 中山大臣、本当に外交という外務大臣のお立場は、特に海外への日本のいわゆるPRといいますか、本当に大変なお仕事で、ある意味においては首相以上に八面六臂というか、いろいろな国々との接触なりそれから日本の姿勢なりを、本当に御苦労さまでございます。きょうはそんな意味で、質問できますことを私も光栄に存じます。  まず最初に私は、北方領土というものを中心にして質問させていただきますが、戦後四十五年という年数がたちました。私も北海道の人間なものですから、北方領土というものについてのいわゆる世論というものが大分変化しているということも肌で感じております。そういう中で、一世、二世、三世というか、かつて北方四島に居住された方々高齢化されて既に大分亡くなってきている。それから、その息子さんどころか最近ではお孫さんの時代まで来ている、そういう中では、帰属意識といいますか北方四島に対する望郷の念も大分薄らいでいるのが実態でございます。  そういう中で、今回のソ連とのこういう動きは、ある意味では千載一遇のチャンスのような気がするのですね。そんな中で、今まで、戦後から今日まで多くの皆さんが苦労されて対ソ交渉を続けてこられた中で、最近、外交日程の中でソ連のシェワルナゼ外相もこの秋、九月ですか訪日される、その後大臣も訪ソされる予定のようですね。そして、きのうのニュースではゴルバチョフ大統領が来年早々に訪日の予定だ、こういう政治日程のようであります。こういう時期に、日本としては北方領土というものをもっと前面に出して、返還解決のために頑張っていただきたいと思うわけであります。  特に私は、今冒頭申し上げましたように、領土問題もさることながらこの問題が解決されますと、日本とソ連との経済交流というかこれがますます深まっていきます。例えばシベリアの開発を初め、あるいは経済援助を初め日本にとって経済発展、特に北海道においては経済の活性化の大きなカンフル剤になる、こんなふうに考える次第であります。  今回こういう状況の中で、ペレストロイカを推進しておりますゴルバチョフ大統領が在任中に解決することが特に求められている、こう思うわけでありますけれども、こういう中で取り組んでいかれる大臣の基本的な見解をまずお伺いしたいと思います。
  236. 中山太郎

    中山国務大臣 日ソ間の平和条約を締結するということは両国にとって非常に大事な問題だということは、それぞれが認識をいたしておると思います。残念ながらこの二つの国の願い、その願いの中に大きく門戸を閉ざしているものが領土問題、これが解決されれば委員が御指摘のように平和条約が締結できて、日ソ間の経済交流が相当な勢いで拡大していくという可能性は大きいというふうに私は認識いたしておりまして、この領土問題解決に今、日ソ双方がこれから努力をして頑張っていかなければならない。ただし、その日が来るためには拡大均衡と申しますか、平和条約作業グループを中心にやっております事務レベル協議の話し合いのほかに、安倍元幹事長が訪ソされたときに、とにかく一年間に千人ぐらいソ連の人を日本に呼ぼうという呼びかけが行われておりますが、だんだんソ連は民主化の勢いが出てまいりましたから、やはり世論というものがソ連の政治に大きな影響を与えることは非常に意味がある、そういう意味では世論指導者といいますかオピニオンリーダーをできるだけ日本にお招きして、日本というものの考え方を理解してもらうということが問題解決の一つの大きな柱であるという認識に立って、私は日ソ間の人事交流というものを進めていかなければならないと考えております。
  237. 小平忠正

    ○小平委員 大臣がおっしゃるとおり、いわゆる日本側のリーダーは今度は大臣なものですから、ひとつ精力的に今後ともよろしく御健闘を祈ります。  それで、今大臣のお話があったのですが、拡大均衡ということを言われましたけれども、ここのところ、政府は従来から領土問題の解決なくして平和条約の締結はない、こういうふうに言われておりますが、先般、宇野前総理ですか今の拡大均衡ということで言われました。そういう提案があり、それ以降、海部首相を初め当局が日ソ関係全体を拡大均衡の方向で進めるが、政経不可分の原則は堅持するという従来からのあれを繰り返しているのが一つのパターンですね。そうなると、拡大均衡という意味が私としてはちょっとよくわからない面があるわけですよ。小沢幹事長の発言、あるいは前にも北海道開発庁長官の砂田大臣からも政経不可分の方針はかた苦しい、そういう発言もなされましたね。それと海部総理もあわせて、北方四島、平和条約の締結という問題を置き去りにしないけれども拡大均衡の方向でソ連が経済の体質改善、底板を厚くすることには積極的に協力したい、こんなような発言もされておる。こういう一連の政府・与党の発言は、今までの日本の四島一括返還、そして政経不可分という従来の対ソ基本方針が、ある意味ではここで変更したとソ連に受け取られるような微妙な面もあると思うのです。それで私は、拡大均衡というものについて大臣から明確な見解をお聞きしたい。  それと、つい昨日ですか、北海道知事の横路さんが今訪ソされているわけです。そういう中でニュースとして伝わってくるのですが、ソ連サイドから聞こえてくる考え方として、かつてヤコブレフ政治局員が第三の道という解決に向けての考え方の提示がありました。また、今回横路知事に対して、ソ連科学アカデミー極東研究所のチタレンコ所長が四段階の解決方法というものを示しております。ということは、ソ連がこの問題について考え方あるいは取り組み方がだんだんと変化してきているわけですね。そういう中で、今後日本政府として今までの基本方針に変更はあるのかどうか、またはする必要があるのかどうか、それについての見解をお伺いいたします。
  238. 都甲岳洋

    都甲政府委員 日本政府としては、基本原則といたしましては、やはり四島の一括返還を実現して平和条約を締結することによって関係を正常化する、その間無原則な政経分離の方向はとらないということで一貫してきております。こういう一貫した姿勢ではございますけれども、一昨年の十二月に平和条約作業グループが設けられまして、具体的に平和条約を締結して関係を改善しようという方向に向かっての努力が始められました。その経緯を踏まえまして、昨年の五月に当時の宇野外務大臣がシェワルナゼと会談いたしましたときに、日本側から拡大均衡の形による関係改善の中で問題を解決していこうということを提案したわけでございます。  その考え方は、基本にあります北方四島を解決して平和条約を締結するという問題を第一に置きまして、それを進めながらあと四つの分野におきまして関係を同時に拡大していこう。第二の分野といたしましては、実務的な関係。これは例えば通常の相互利益になる貿易であるとか科学技術、あるいは文化交流等従来から行ってきておりましたものを今後も一層拡大していく。第三番目に、相互信頼の強化。これは漁業問題であるとか人道問題、墓参等も含まれております。それから第四番目に、人的交流の拡大。これは議会交流、党間の交流等も含めて人的交流を拡大していこう。そして第五番目に、それらのものを総合とするものとして首脳会談を実現しよう。そういうことによって、北方領土問題を含む平和条約解決への方向を進めながら、全般的な関係拡大することによって全部を実現しようということでやってきているものでございます。しかし、基本的な問題である北方領土問題の解決に至るまでは、やはり基本的な政経不可分というものは維持していく必要があるということでございます。若干御理解しにくい点もあるかとは思いますけれども、基本的には政経不可分の基本原則は守りつつ、北方四島の解決を実現する中において全般的な関係を、その原則に反しない範囲で関係拡大していこうというのが昨年の五月以来の日本政府姿勢でございます。
  239. 小平忠正

    ○小平委員 局長、確認いたしますが、まず政経不可分の解釈が変わってきたということですね。昔はまず領土返還ありき、そういうことだったようですけれども、今はさっきおっしゃった同時進行ということで、政経不可分の微妙なニュアンスが変わった、そうとればいいですか。私はそこで言質をとろうということじゃないのです。要は返還がされて、そして日ソ間のもっと正式な密度の高い交流が深まっていくことが日本の将来に大事ですから、そんな意味で、政経不可分ということに解釈をもっと広くとっていかれることがいいと思うのですよ。そんな意味で確認をしたいと思っております。
  240. 都甲岳洋

    都甲政府委員 無原則な政経分離は行わないという見地からの政経不可分の原則は、やはり基本的な日本側の利益である北方四島問題が解決を見るまでこれを変えるべきではないという基本的な姿勢を持っております。それから、今までも四島問題が解決しなければ一切関係を持たないというわけではなくて、実務的な貿易関係はかなり進んできておりますし、それから科学技術協力、文化交流の分野においてもかなりのことをやってきております。それから人事交流もかなり進んできております。そういう中で、今まで進めてきているこのような政経不可分には抵触しない範囲での交流というものをより一層進めることによって、平和条約締結への機運をさらに強めていこうというのが今の政府姿勢でございます。
  241. 小平忠正

    ○小平委員 時間も余りないものですから、次に鈴木審議官に質問させていただきます。  今お話したようなことで、対ソ交渉、特に外交の中でも対ソ交渉は大変な外交交渉です。そういう中で、今北方領土の返還ということについては国内世論の盛り上げ、統一というものが特に求められていると思います。それがばらばらだったり、あるいはあるのかないのかわからないという状況では、ソ連に対しての日本の姿勢も弱くなる。そういう意味世論の喚起、統一というものが特に今必要なわけです。  そういうところで、先ほどもお話ししましたように、ゴルバチョフ大統領は、ペレストロイカという国内的な政策、それから国際的にも西側との関係改善を求めて今大きく一歩を踏み出してきております。そういう絶好のチャンスなわけです。それで、私が言ったのは国内世論の形成が今特に必要である。そういう意味で、北方領土隣接地域振興等基金というのが五十八年に北方特別措置法に基づいて創設されて、国の補助と道の支出によってきておりますが、何か予定では平成三年度で目標の百億円が達成されるということだそうですが、また事業につきましても、運用益から出る事業についても隣接地域の振興ですとか世論啓発、それから元居住者援護を三本柱にして事業を進めてきておられるわけですけれども、これについては、このような形でいいのか、マンネリ化はないのか、もっと新しい工夫をしてこれからに向かって、特に今大事な時期にこの基金を利用して取り組んでいかれるということはどうなのか、そこのところを御担当の審議官からちょっと御意見をお伺いしたいと思います。
  242. 鈴木榮

    鈴木(榮)政府委員 北方基金の運用益の活用につきましては、今先生指摘のように、隣接地域、これは根室を中心とした一市四町でございますが、隣接地域の振興、それから世論啓発、元居住者援護、こういう事業に使われているわけでございますが、具体的には、地元の一市四町あるいは北海道の区域内の公共的団体等から計画案を提出いたしまして、北海道庁がこれを審査して、国と協議をした上で決定されているものでございます。御指摘のように、もしマンネリ化するというようなおそれがある場合には、北海道等を適切に指導したいと思っております。
  243. 上田哲

    上田委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  244. 上田哲

    上田委員長 速記を起こして。
  245. 小平忠正

    ○小平委員 最後に一点だけ。  大臣、本当にお忙しいところ、時間も超過していますが、前の方も質問されましたことなんですけれども、北朝鮮船籍を標榜した、例の拿捕事件ですね。このことについて、特に北朝鮮というのは今日本とは外交ルートがないわけですよ、そういう中で、ソ連も含めて我が国との三国間で非常に大変な作業だと私は思うのです。  そこで、この問題、大きく分けて三つあると私は思うのです。  一つは、百六十九人の日本人乗組員の裁判をめぐる、いわゆる釈放の問題ですね。それからもう一点は、密漁の事実関係というか、どこに原因があったか、やはり罰すべきものは罰するという国内的な処理の問題。それと三つ目は、今のこの北方領土返還という機運の中で、いわゆる日本漁業という中に国際信用の失墜という問題が起きてくれば、これからの大事な、特にソ連との交渉において支障を来すような気がするのですよ。  そういうことで、大臣とされて、大変御苦労さまですけれども、このことについてどのようにお考えになられて、この問題の解決に当たられていくのか、そのお立場でのお考えをお聞かせいただきたいと思います。最後の質問です。
  246. 中山太郎

    中山国務大臣 お尋ねの問題は、大きく分けまして、現在は、日本政府と朝鮮民主主義人民共和国との間での外交交渉をするべき条件はまだ何もないということでございます。それで、現在は、ソ連に抑留されている北朝鮮船籍の船に乗った日本人が抑留されている、船は拿捕されている、こういう状況でないか。私どもは日本の漁船員たちを一日も早く日本に送還させたいということで、現地のナホトカの総領事あるいはモスクワの大使が、それぞれソ連の政府あるいは地元の勾留をしている責任者に対して、まず釈放方の面会の申し入れをしているという段階でございまして、この問題は、結局、日ソ間の公式ルートを通してやれる外交交渉の唯一の方法だと私は考えております。この結論がどう出るか、つまり、そのいわゆる違反漁船というものの審判について、ソ連の国内法あるいは国際法でどういうふうな判断をしてくるかということで、この結果を待たないと、我々としては、釈放を早急にするように求める以外に日本政府としての手だてはないということをこの機会に明確に申し上げておきたいと思います。  次の段階として、このいわゆるソ連側の判断の結果、乗組員を北朝鮮に引き渡すということになった場合に最も複雑な政治問題が登場してくる、そうならないように日本政府は正常な外交ルートのあるソ連との間に日本人船員の釈放と早期返還を要請している、しかしそれはまだ面会すら認められない状況である、こういうことでございまして、問題がまだ複雑になる前の段階にあるということを御理解をいただきたいと思います。  このような観点から考えますと、日本政府といたしましては、できるだけ早く釈放をされて、ソ連政府からこの拿捕された船に乗った日本人の船員たちが一日も早く日本に帰れることを期待するものであります。
  247. 小平忠正

    ○小平委員 ありがとうございました。終わります。
  248. 上田哲

    上田委員長 次回は、来る二十日水曜日午前九時四十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十六分散会