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1990-10-05 第118回国会 衆議院 安全保障特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年十月五日(金曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 瓦   力君    理事 鈴木 宗男君 理事 中川 昭一君    理事 三原 朝彦君 理事 宮下 創平君    理事 上田 卓三君 理事 和田 静夫君    理事 冬柴 鐵三君       愛知 和男君    伊藤宗一郎君       高村 正彦君    自見庄三郎君       中谷  元君    増岡 博之君       山崎  拓君    山下 元利君       小澤 克介君    大出  俊君       小松 定男君    輿石  東君       嶋崎  譲君    関  晴正君       山口那津男君    東中 光雄君       神田  厚君  出席国務大臣         外 務 大 臣 中山 太郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 石川 要三君  委員外出席者         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         防衛庁参事官  内田 勝久君         防衛庁参事官  玉木  武君         防衛庁参事官  宝珠山 昇君         防衛庁参事官  鈴木 輝雄君         防衛庁長官官房         長       日吉  章君         防衛庁防衛局長 藤井 一夫君         防衛庁教育訓練         局長      坪井 龍文君         防衛庁人事局長 村田 直昭君         防衛庁経理局長 畠山  蕃君         防衛庁装備局長 関   収君         防衛施設庁総務         部長      箭内慶次郎君         防衛施設庁建設         部長      黒目 元雄君         防衛施設庁労務         部長      竹下  昭君         外務大臣官房審         議官      川島  裕君         外務大臣官房審         議官      茂田  宏君         外務大臣官房外         務参事官    内田 富夫君         外務大臣官房領         事移住部長   久米 邦貞君         外務省北米局長 松浦晃一郎君         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合         局長      赤尾 信敏君         外務省情報調査         局長      佐藤 行雄君         大蔵大臣官房審         議官      五十嵐貞一君         大蔵省主計局次         長       田波 耕治君         通商産業省貿易         局長      堤  富男君         特別委員会第三         調査室長    下野 一則君     ───────────── 委員の異動 十月五日  辞任         補欠選任   中山 正暉君     自見庄三郎君   大出  俊君     小松 定男君   吉田 正雄君     輿石  東君 同日  辞任         補欠選任   自見庄三郎君     中山 正暉君   小松 定男君     大出  俊君   輿石  東君     吉田 正雄君     ───────────── 本日の会議に付した案件  国の安全保障に関する件(最近の中東情勢わが国安全保障問題)      ────◇─────
  2. 瓦力

    瓦委員長 これより会議を開きます。  国の安全保障に関する件について調査を進めます。  本日は、特に、最近の中東情勢わが国安全保障問題について質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山崎拓君。
  3. 山崎拓

    山崎委員 一昨日、東西ドイツ統一をなし遂げました。現下の国際情勢を象徴的に物語る感動的な歴史的事件であったと私は思います。  一九六二年に私も、ベルリンの壁ができましてほどないころでございましたが、ベルリンを訪れたことがございまして、そのときは冷戦が深刻化する国際情勢でございましたので、そのことを思い起こしますとまさに隔世の感、時代の大変化を感ずる次第でございます。  そこで、ソ連ゴルバチョフ大統領は、自国経済の行き詰まりもあってペレストロイカあるいは新思考外交を展開しつつあるわけでございますが、そのことによりまして今はポスト冷戦時代始まりだと位置づけられているのでございます。我が国におきましても、昨年以来、我が国安全保障のあり方につきましてさまざまな議論がなされるようになってまいったわけでございます。その議論の一部を聞いておりますと、私に言わせますとやや情緒的に過ぎるのではないかという議論もございまして、人類の理性が一遍に目覚めて、もはやこの地上には戦火が起こることはあり得ない、でありますから、日米安全保障体制も必要なければ自衛隊も必要ない、あるいはそこまでの極論は少なかったと思いますけれども自衛隊を思い切って削減すべきではないかという議論が、これはかなり広く出てきたと思うのでございます。  しかし、去る八月二日、突如としてイラククウェート侵攻するという事態発生をいたしました。思いがけない出来事でございましたし、かつまた、軍事力を持つ国が軍事力の乏しい国を武力をもって併合してしまう、あるいは私は併呑という表現がぴったりだと思います、のみ込んでしまった。国際秩序軍事力によって公然と侵してしまう、そういう事態が今日発生をいたしておるわけでございまして、ポスト冷戦期を迎えながら地域的あるいは局地的にはそういう許すべからざる蛮行が公然と行われた。こういう現在の国際情勢につきまして中山外務大臣一体どのようにお考えでありますか、まずお伺いしたいと思います。
  4. 中山太郎

    中山国務大臣 委員のお尋ねの、最近の国際情勢変化というものとイラククウェート侵攻という点についてどのような認識を持っておるかということでございますが、私は、一九七〇年代の米ソ関係から一九八〇年代の米ソ関係へのこの新しい大きな変化、そして昨年の十二月の三日にマルタで行われました米ソ首脳会談によって、冷戦の終わりの始まりという言葉世界に流れたわけでございます。  そのような中で、かねて緊張を続けておった国際社会は、平和がやってくるということで、この米ソ冷戦終結を大いに歓迎したわけでございますけれども、一方におきまして、長い間堅持されてきた二つのスーパーパワーによる対決構図が解消いたしますと、新たに多極化の国際社会が現出してくる、そういう中で今回のイラクによるクウェートへの武力侵攻、これを併呑するという形になってまいった。こういう新しい事態はこれからも地球の各地で地域紛争の形で起こる可能性はあるという認識を持ちながら、我が国安全保障政策をこれから検討していかなければならない、このように考えております。
  5. 山崎拓

    山崎委員 イギリスのサッチャー首相は、氷が解け始めるときが一番危ないという名言を吐かれたのでありますが、まさにそういう事態が今発生したと私は思うのです。確かに中山外務大臣が言われましたとおり、米ソの二極構造が崩壊していく過程の中で新たに地域紛争発生した。これが最初の出来事最後出来事になればいいのでございますが、このような事態が民族や宗教やあるいは文化や経済の相克によりまして、クラウゼビッツではないが、戦争は他の手段による政治の継続であるという形で解決されていくということになればゆゆしきことでございますから、ここでこの事態を何としても解決をしなければならぬ。つまり、イラククウェートから撤退してもらって、クウェートの主権を回復して国際秩序を再建するということが急務であると考えているわけであります。  この具体的な直面する事態を目前にいたしまして、これから多発する可能性のある地域紛争をどうやっておさめていくのか。今まではいわゆる恐怖の均衡とも言われましたけれども、あるいは力の均衡とも言われたが、均衡と抑止の理論で米ソの超軍事大国軍事的バランスによって保たれていた平和が、その軍事バランスが今なくなりましたときに、あるいはなくなりつつありますときに、これから新しい平和の枠組みをどうやってつくっていくのか、外務大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  6. 中山太郎

    中山国務大臣 米ソ対立が解消していく、こういう過程は、戦後の国際社会では、期待はされましたけれども想像するようなことはなかなか難しかった。これが実現をするという現段階に参りまして、これからの国際社会の平和の維持確保という問題につきましては、やはり国連中心のいわゆる平和の確保ということがこれから重要なポイントになってくると私は認識をいたしております。  委員も御指摘のように、米ソ対決時代には安全保障理事会常任理事国が五大国によってこのポストを持たれている。そうすると、対決時代には、ソ連が提案すれば米国がそれに拒否権を発動するといったような、安保理事会の中にいわゆる対決構図が持ち込まれておりました。そのために、国連安保理中心に一致して国際地域紛争解決のために協力し合うということは実現しなかったのでございます。しかし、今回の国連総会にも見られますように、また、安保理における各種の決議の採択に見られますように、このP5と言われる五大国が、イラククウェート侵攻というものに対して制裁措置あるいは軍事行動も含めたいわゆる制裁強化措置等に関する決議を行います場合にも、すべてが一致してこの採決に当たっている、こういうことでございますから、これからの国際的な地域紛争解決あるいは平和の維持のためには国連中心となって、各国国連加盟国として国連決議に従って国連の要請にこたえるような形で、各国がそれぞれ憲法の定めるところによってこの国連行動協力をしなければならない。そうしなければ国際社会では恐らく孤立をする道を選ぶ時代がやってくる、私はこのように認識をいたしております。
  7. 山崎拓

    山崎委員 ただいま中山外務大臣の御認識は、たまたまブッシュ大統領国連演説をされました中で同じ理想を、あるいは現実認識を強く訴えられたと私は報道で見ましたわけでございます。この点は国民皆様方にもよく私は御理解と御認識をいただきたいと思うのですが、ブッシュ大統領が言いました演説は「国連の創設は、平和な世界への強い希望を具現するものだった。我々は今、これまでになくその理想に近づいている。」「一九四五年以来初めて国連を当初の計画通り国際的集団安全保障のセンターとして使うことができる可能性を、我々は目にしている。」そして、大臣が言われましたとおり、「ソ連が、国連のこの場に集う我々の多くと同調してイラク侵略を非難する列に加わったことは、我々が四十年の歴史を過去に葬り去ったことを疑いえなくさせるものだ。」つまり、五大国が協調して一連の対イラク決議を行ってきたことを指していると思いますが、そういう国連役割がこれから世界の平和と安全を保っていく上におきまして重視されかつ現実化される時代がやってきた、このように思うのです。  そこで、中山外務大臣国連一般演説をなさいました。我々は新聞でそのことを知っておりますが、中山外務大臣国連演説の趣旨を、この際改めて簡潔に国民にお聞かせをいただきたいと思います。
  8. 中山太郎

    中山国務大臣 今回の私の国連演説の要点だけ申し上げますと、米ソ対立が解消する、そして新しい時代に向かってそれぞれの国が協力をする時代が始まろうとしている。こういう中で、従来国連中心に平和を理想とする国家日本が努力してきたこの憲法精神というものは、私は高く評価されるべき問題であろうと思います。また一方では、武器輸出の三原則を堅持して、国際紛争地点に対する武器輸出を一切やってこなかったというような日本考え方というものも、国際社会に強く訴えてまいった。これから新しいこの国連中心とする国際平和の管理維持のためには、国連がむしろ予防的な措置をこれから事務総長中心にやるべきではないか、あるいは発生しようとしているいわゆる地域紛争危機への警告あるいは調査調停、そういったようなことが国連中心に行われることが必要であるという日本政府考え方を述べてまいったわけであります。
  9. 山崎拓

    山崎委員 中山外務大臣我が国の基本的な安全保障考え方についても国連で述べたというお話でございましたが、国連憲章の第一条には、国際の平和及び安全を維持するための集団的措置をとると書いてあるわけです。これが国連の基本的な目標であり目的であると私は思いますが、その本来の機能国連がこれから発揮していかなければならないということなんでありまして、国連中心主義ということになれば、国連中心主義ということを大臣も力説されたと思いますが、そうなればこの第一条の精神国際の平和及び安全を維持するために集団的措置をとるんだということに我が国がいかなる貢献をしていくかということが大切なポイントではないかと私は思うのです。その点について大臣の御意見をお伺いしたいと思います。
  10. 中山太郎

    中山国務大臣 国連憲章が確立せんといたしました集団的安全保障制度は、加盟国国際紛争を話し合いで平和的に解決することを誓い合い、ある国が侵略等を行った場合には、国連自身の判断のもとですべての加盟国が結束をしてこれに立ち向かうというシステムであると認識をいたしております。冷戦が終わりつつある中で、今やかかるシステムが現実的なものとなり得る可能性を秘めた新たな状況が到来したものとの認識をいたしております。
  11. 山崎拓

    山崎委員 そこで防衛庁長官にお伺いしますが、国連中心主義という考え方というか方針は、これは我が国外交のみならず防衛の面においても明確ではないかと思うのですが、大臣の見解を聞きたいと思います。
  12. 石川要三

    石川国務大臣 委員の御意見のごとく、国連役割というものはますます大きく増大をしていく、こういう時代が今まさに当面にある、私はこのような認識をしておるわけでありまして、従来から国際社会発展、平和のために幅広い国連活動については私自身も評価をしているわけでありますが、これからの時代というものはますますそういう国連役割に対して大きな期待をするような時代が今来たということは、先ほど来外務大臣の答弁にもございましたとおりで、全く同感でございます。  そういう中におきまして、防衛面についてどんなふうなことが書かれているかということでございます。これは委員十二分に御承知のことだと思いますけれども、例えば我が国国防基本方針の中に、一、二、三、四点触れておりますが、一番最後の四点には「外部からの侵略に対しては、将来国際連合が有効にこれを阻止する機能を果し得るに至るまでは、米国との安全保障体制」云々、こういうふうに書いてあるわけでありまして、そういう理想的な状態といいますか、国連機能が発揮できるような状態に至るまでは我が国防衛政策としては日米安保体制を堅持していく、こういうことになるわけでありまして、これは我が国国防方針の中にしたためられております。また、日米安保条約の第五条の中にもいろいろと書いてございますが、特に「武力攻撃及びその結果として執つたすべての措置」「その措置は、安全保障理事会国際の平和及び安全を回復し及び維持するために必要な措置を執ったときは、終止しなければならない。」要するに、そういうふうな国連機能が働き、そしてそういう措置につきましては報告をし、それが結果として国連が適当な措置をとったときにはこれを終止する。こういうことを見ても、いかに国連の中におきましての我が国防衛政策についても非常に大きなかかわりがあるか、こういうことがはっきり述べられている、かように解釈しております。
  13. 山崎拓

    山崎委員 ただいま石川防衛庁長官が紹介されましたように、国防基本方針、これは昭和三十二年の五月に閣議決定されたものでありますが、その中で四点あるんだということを御指摘されたのですが、一点目に「国際連合活動を支持し、国際間の協調をはかり、世界平和の実現を期する。」そして第四項で「外部からの侵略に対しては、将来国際連合が有効にこれを阻止する機能を果し得るに至るまでは、米国との安全保障体制を基調としてこれに対処する。」こう書いてあるのですね。これは安保条約にも同様のことが書いてあるということは防衛庁長官がおっしゃったとおりでありますが、まさにそういう時代が到来しつつあるのではないか、またそれが到来するように我々努力すべきではないか、かように考えるわけでございまして、その中で外交防衛一体となってその努力をする、これは当然のことであると思うのです。防衛庁自衛隊においても新時代に当たって果たすべき新しい役割があると私は考えるのでございまして、そういう認識で取り組んでいただきたいと思うのです。  そこで、一昨日平和統一をなし遂げましたドイツ初代首相コール首相、この方は私も会ったことがありますが、大変背の高い、温厚な感じの、大臣もしょっちゅう会われていると思いますが、首相でございますが、今や世界的に著名かつ有力な大政治家として再出発をなさったと思うのです。そのコール首相が全世界統一ドイツの誕生に当たってメッセージを送った。そのメッセージの中でどう言っているかというと、国連紛争調停機能重要性を強調し、国連が平和の維持と回復のためにとる措置のために自国軍を派遣し、参加する用意があると表明したわけですね。そのための必要な国内的条件を創設するという方針を明確にした。これはもう新聞で報道されているとおりでございまして、つまり、わかりやすく言えば憲法を改正して、ドイツの場合は基本法と言っておりますが、ドイツ憲法を改正をして国連自国軍を派遣するという決意を表明した。そういう時代になっている。  日本と西ドイツ立場は極めて第二次大戦後におきまして共通した点があると思いますが、そのような決意コール首相が示しておるということを考えますときに、我々は新しい時代に当たって、我々もまた新しい国家を守り、かつ国際社会国際国家日本としていかなる貢献をなしていくべきであるか。ただみずからの平和の中におぼれていていいのか、みずからの安全だけを考えていていいのか。国連中心に我々は世界の平和と安全を保つことを決意いたします以上は、その中で積極的な役割を果たしていく。ただ金を出すだけでいい、そういう考えでいいのかどうか、その点について外務大臣の御意見をお伺いしたいと思います。
  14. 中山太郎

    中山国務大臣 従来、日本国際の平和の定安のために資金を提供する、あるいはナミビアとかニカラグアにおける国連監視下の選挙において人員を派遣するといったような協力をいたしてまいりました。しかし、このような新しい国際社会が現出をし、米ソ協力をしながら、国連中心となって平和を回復させるために各国協力するという新しい事態になってまいりますと、日本もその新しい国際社会環境に合うような国民考え方、また国家考え方をこれから議論を通じて形成をしていく必要がある時代が到来したと私は認識をいたしております。  私は、我が国国連加盟国として、また国連に拠出する金額も国連加盟国では第二位でございます、しかし、そのような我が国国連に対してどのような責任義務を持っているかということを、我々は改めて今回真剣に考える必要があると思います。それには、国連憲章の第四十一条から四十九条に至る各条項につきましては、国連加盟国に対して協力を要請する権限が認められています。そして、これはいわゆる条約として、我が国国連との間に条約を批准をしているわけでありますから、日本国家国民国連のこの条約を遵守していく義務を持っているということをこの機会に私は外務大臣として明確に申し上げておかなければならないと思っております。
  15. 山崎拓

    山崎委員 大臣が言われましたように、我々は憲法条約遵守義務を明確にしておるわけでありまして、その条約の中で国連憲章は最も重要なものであると私ども考えているわけであります。  私はたまたま九月の半ばに国防三部会、ここにもそのうちのメンバーがいらっしゃいますが、とともに訪米をいたしまして、米国政府や議会の要人と一連会談をやってまいったわけであります。その中で私どもアメリカ側から言われましたことを紹介いたします。我々唯々諾々として聞いておったわけではありませんが、米国世論世論として、私は我が国国民に正確に伝える必要がある、そういうふうに考えるからこの際御紹介いたします。  日本石油輸入量の三分の二を中東石油に負っておる。しかし、わずか十億ドルを出資するだけで、その時点ではですよ、その後三十億ドル追加されまして四十億ドルになったのですが、その時点で言われておりましたことは、そういう費用負担を言っておるが、それは応分の負担だとは決して言えない。一方米国は、若い生命を灼熱の危険な湾岸地域に送り込んで平和の維持のために果敢に取り組んでおる。そして米国日本に対して派兵を求める立場になくて、ただ日本に援助、協力を嘆願するのみだ、こういう世論が、一口にして言えばアメリカ世論であったと私は思うのです。  これはさまざまな表現で、そこには貿易インバランスの問題も出てきたし、あるいは戦後我々はGNPの一%しか防衛費を使わずに経済発展に専ら資源を特化してきた。アメリカは六%も使って世界じゅうの安全保障のために貢献し、多大の財政赤字を生ずるに至った、そういうさまざまな指摘があったわけでございますが、我々といたしましては、この米国世論だけが国際世論ではありませんけれども、しかし日米同盟関係であり、かつ、今日の日本のこの平和と繁栄は米国との関係によってもたらされた面が非常に大きいということを率直に認めつつ、これら国際世論に対処していかなければならぬ、そう思うのです。  その意味におきまして、このたびの湾岸危機に当たって我々は一体、ただ四十億ドルを出すということだけではなくてやはり、英語で言うとフィジカルプレゼンスという言葉がよく米国側から出てまいりますが、いわゆる物や人が現地に赴いて、世界の二十六カ国によって構成される多国籍軍若者たちがいわゆる前線で生命の危険にさらされているときに、せめて後方だけでも我々はやるべきことがあるのではないか、そのように考えるわけですね。  そういう見地から、私は国連平和協力法案なるものが今策定されつつあると思うのですが、この法案目的についてひとつ明確にこの機会国民の前にお示しをいただきたいと思います。
  16. 中山太郎

    中山国務大臣 我が国国際協力の一環として国際の平和と安定に積極的に貢献していく必要があると考えておりまして、国連活動が活発化する中で、国連平和維持活動等に対し要員派遣面協力を強化拡充していくことが重要と思われます。しかし、かかる協力を実施するための国内体制は未整備でありまして、国際的責任に見合った貢献を行う上での障害になっておることは事実でございます。このような環境というもの、今回、中東危機に際して政府がとった措置が極めて実効性が遅かったという御批判が随分ございますけれども、実際この国はいわゆる有事立法もなければまたこのような新しい国際環境に対応するだけの法律、制度というものを完備しておりませんでした。そのために要請された航空機の提供もできず、船舶の提供も極めておくれた状況になり、国際社会から批判を受けたのも事実でございます。  こういう中で、新しいこの状況の反省に立って制度を整備することは緊急な課題でありまして、国連平和協力法はまさにかかるような課題に対応しようとする政府考え方でございます。
  17. 山崎拓

    山崎委員 そうしますと、国連平和協力法案目的を今概略、危機管理がないんだ、そこで、危機管理体制を整える。例えば有事立法もないんだと。憲法の制約ということをおっしゃらなかったが、憲法の制約、これは憲法解釈論の問題があって、後で申し上げますけれども、さまざまな制約があって、今日かかる事態に有効に対処し得ない事態を招いておる。そこで国連平和協力法案をもって対処するんだ、こういう論旨であったと思うのですけれども、この国連平和協力法目的をもう少しわかりやすくかみ砕いて話していただきたいのですが、今回の多国籍軍への後方支援ということを念頭に置いてこの法案はつくられようとしているのかどうか、その点をまず明らかにしてもらいたいと思います。
  18. 中山太郎

    中山国務大臣 今回の国連平和協力隊というものが法案として国会で御審議をいただき、そしてこれが制度として国に定着をしました暁には、いわゆる国連決議に基づく各種の平和活動に従事をするということでございますが、問題はこの平和の確保のため、また地域の平和の回復のために協力をするということでございまして、あくまで我が国考え方としては、国連考え方の中で非戦闘部隊というものを中心に構成した部隊であることが近隣諸国に対する外交上の配慮からも極めて好ましい、このように考えております。
  19. 山崎拓

    山崎委員 そうしますと、今の大臣の御答弁の中で二つのポイントがあったと思うのですが、一つは国連決議に関連した平和維持活動を行うということが一つだと思うのですね。もう一つは近隣諸国への配慮ということもあって、あるいは憲法の制約ということもあってということかもしれませんが、いずれにいたしましても非戦闘員を送るんだ、武力行使を伴わない要員を派遣するんだ、こういう御趣旨であったと思います。  そこで、そうだといたしますと、この法案の対象に、いわゆる国連憲章四十二条ケースは含まれませんね。これはちょっと国民にわかりにくいと思いますので申し上げますが、これは国連において正規の国連軍が形成された場合ですね。これは四十二条で安保理事会が「国際の平和及び安全の維持又は回復に必要な空軍、海軍又は陸軍の行動をとることができる。」と書いてありますが、四十三条にそれを受けてさらにその実効措置が書いてあるわけでございますけれども、いわゆる国連軍が形成されましたときに、それに対して今つくろうとなさっておる国連平和協力隊なるものは、これは送ることを前提としていない、対象としていない、そう考えられますね。大臣の御答弁をお聞きします。
  20. 柳井俊二

    ○柳井説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘になりましたとおり、国連憲章第四十二条で、安全保障理事会は、非軍事的行動が不十分であるという場合に、軍事的行動をとることが決定できるわけでございます。これを受けまして、四十三条で必要な措置について規定しているわけでございますが、四十三条におきましては、国連加盟国は、憲章に基づいて安全保障理事会加盟国または複数の加盟国との間で特別協定を締結する、これに従って国連協力する義務を負うということになっているわけでございます。このような協力の具体的内容につきましては、四十三条にございますように、いわゆる兵力の提供には限られませんで、そのほかの援助または便益の提供というものも想定されているわけでございます。したがいまして、このような協力の態様が具体的にどのようなものになるかということは、この特別協定の内容がどのようなものになるかによって決まるわけでございます。  ただいま検討しております国連平和協力法は、先ほど大臣から御答弁ございましたように、国連決議に関連した平和維持活動協力するための体制を整備するということを目的としておりますが、具体的にどのような場合を協力の対象とするかということについては、現在法案の形で検討しております。したがいまして、将来国連におきまして本来の意味での国連軍が形成されました場合に、加盟国がどのような協力をするかということは、先ほど申し上げましたように国連加盟国が締結する特別協定に従いまして具体的に決めるということでございますので、また御承知のとおり今までこのような国連軍がつくられたことはございません、また今までこのような特別協定が締結されたこともございませんけれども、将来このようなものができる場合には、その時点におきまして、その時点国際紛争の態様でございますとかあるいは国連が必要とする援助の内容でございますとか、そういうものを踏まえまして、その時点で適用されます我が国の法令、もちろん憲法の規定というものがございますが、そのようなものに照らして何ができるかということを決定する、そういう関係になると思います。
  21. 山崎拓

    山崎委員 そうしますと、今の条約局長の御答弁を聞いておりますと、国連の平和維持活動国連平和協力隊は参加することになるが、しかしそれは国連の平和維持活動の態様いかんによるのだ、ケース・バイ・ケースだというふうに私は感じたのでございますが、そこで法制局長官、出席しておられますね。ただいま私が申し上げました正規の国連軍に自衛隊を直接派遣するということにいたしました場合に、集団的自衛権の発動に当たりますか。
  22. 工藤敦夫

    ○工藤説明員 ただいま外務大臣あるいは条約局長から種々お答えがございました。いわゆる国連軍と言われますものについてこれまで種々の形態がございまして、これにつきましては政府といたしまして、その種々の国連軍につきましての自衛隊の参加につきましては、その国連軍の目的、任務が武力行使を伴う、そういうものであれば自衛隊はこれに参加することはできない。しかし、さまざまな国連軍のうちでも、その目的、任務が武力行使を伴わないものであれば自衛隊が参加することは憲法上許されないわけではない。しかし、自衛隊の任務等を定めております法律にそのような規定がございませんので、そういう意味で参加することができない、これが従来申し上げてきたところでございます。  なお、今特にいわゆる国連憲章の四十二条、四十三条のお話をされました。先ほど条約局長からも答弁がありましたように、その四十二条、四十三条という形での国連軍というのは、これはこれまで設けられた例はないわけでございます。この国連憲章に基づく国連軍と憲法との関係ということについては、むしろ集団的自衛権というよりも、我が国国連に加盟いたします際に種々の議論が行われておりまして、その際にまず、今条約局長から答弁ございましたように、国連憲章の四十三条というのは、兵力、援助及び便益を利用させることを特別協定に基づいて約束する、こういうことでございまして、兵力の提供義務、これを確定的に負わせるものではない。したがって、特別協定の締結に際しまして兵力の提供をするかしないか。もし兵力の提供をそこで行うこととすれば憲法九条との問題は生じ得る。あるいは逆に、兵力の提供を行わないこととすれば憲法九条との関係は、問題は生じ得ないんではないか。これが国連加盟の際のいろいろ申請書につけました書類等に記載されてございます。また、これは憲法調査会の資料等にも書かれているところでございます。
  23. 山崎拓

    山崎委員 今の法制局長官の見解は、当時としましてはこれは我が国国際社会に置かれた立場国際情勢等々から私はやむを得ないものであったと考えるわけでございますが、既に戦後四十五年を経過し、新しい時代を迎えており、日本国際社会における立場も大きく変わってきておる、そのように考えるわけです。  それから、この議論をいたしますときに必ず戦前のことをおっしゃるのでございまして、戦前に軍部が独走した、したがって憲法の解釈を緩めていくとこれは再び、日本に軍隊というのはありませんが、自衛隊の独走ということにつながっていくんではないかという懸念が示されるわけであります。しかし、戦前と戦後は明確に違うわけでありまして、天皇主権と国民主権の違いがございますから、その点はきょうは時間がありませんから一方的に申し上げておくわけでございますが、天皇主権の時代には統帥権干犯を持ち出して軍部が独走したという事態発生いたしましたけれども、戦後は我々は民主主義の中でシビリアンコントロールを厳正にとり行っている。そのことについて私どもはもっと自信と誇りを持って国際社会に物を言うべきである、私はそのように考えております。シビリアンコントロールに自信が持てない、つまり、それは日本の民主主義に自信が持てないということと同じことなのであって、じゃ、アメリカやイギリスやその他の西欧先進諸国において軍部をシビリアンコントロールで完全に信頼置ける軍隊として今日位置づけておるということを考えますときに、日本はそれはできないのであるかということを問いたいのでございまして、我々はもっと我が国の民主主義、シビリアンコントロールに自信を持っていいということをこの機会に、ちょっと話は発展しましたけれども、申し上げておきたいと思うのです。  そこで、非常にあいまいになっておる。今回の国連平和協力法一体どういうケースの際にこれが適用されるかどうかということはこれからの話だ。これは当然でしょう。法律が誕生する過程でございますから当然だと思うのですけれども、私はこの際、自衛隊直接派遣をもっと真剣に議論すべきであったと思うのです。ただ、現状はどんどん進行しておりますから、現状この事態に、湾岸危機事態にどうやって早く備えるかということになれば、憲法紛争をやっているいとまもございませんし、自衛隊派遣のいかんについて議論をしている余裕というのは、そう時間的余裕というのはないと考えます。これは現実の問題としてやむを得ないことだと思いますが、これからしっかりこういう議論をやってまいりたい、そう思っているんです。  そこで、現実の対処の方針として、国連平和協力隊について少し具体的にお伺いしたいと思うのですが、この協力隊は輸送、通信、医療、資機材の維持または補修等の業務を行うというふうに漏れ伝え聞いていますが、我々はこの法案の骨子を実はもらっていない。わずかに考え方を整理した五、六点のメモをもらっただけでございまして、内容はさっぱりわからないのですが、そういう業務、つまり後方支援活動を行う、そのように考えていいですか、外務大臣
  24. 中山太郎

    中山国務大臣 お説のとおりであります。
  25. 山崎拓

    山崎委員 そうしますと、これらの業務を効果的に行いますためには、組織として訓練されたチームが行くということが、ばらばらにいろんなところから人を集めて、例えば自衛隊からも警察からも消防からもあるいは海上保安庁からも民間からも人を集めて、ただいま例示いたしました輸送や通信やあるいは医療等の活動を行わせるということは、私は実効が上がらないと考えますが、どうですか。
  26. 中山太郎

    中山国務大臣 政府は今回のいわゆる中東に対する国連への協力について大変大きな経験をいたしたと思います。それは、航空輸送の協力にいたしましても、飛行機の機体はあっても乗員組合、整備員組合の同意がなければ飛行機は飛ばない、これは難民輸送についても同じことでございます。また船舶についても、なかなか乗組員の方々の意見というものは大きな影響を与えました。そういう中で民間から例えば医療問題についてボランタリーを募集するといいましても、極めて限られた少数の方々しかこの問題に取り組もうというう姿勢は見られなかったのであります。  そういうふうな中で、我々の国がどのような形で国際社会協力ができるのかということを考えますと、今委員指摘のように、民間からボランタリーとして出てこられた方が御参加をいただいても、訓練をされた経験がございません。そのような中で、現在政府考え得る訓練をされた組織というものを考えると、委員指摘のように自衛隊あるいは海上保安庁、警察あるいは消防、こういったような組織的な、いわゆる国家のあるいは地方自治体の組織というものが一応考慮の対象になるということであろうと考えております。
  27. 山崎拓

    山崎委員 防衛庁長官、ただいま輸送、通信、医療、資機材の維持補修という例示を挙げましたけれども自衛隊にこれらの業務を担当する部隊があると思いますが、具体的に説明してもらいたいと思います。
  28. 藤井一夫

    ○藤井説明員 具体的に御説明申し上げます。  例えば陸上自衛隊の輸送部隊でございますが、各師団には輸送隊というのがございます。師団の輸送隊の規模でございますが、人員は約百名程度、大型トラックは五十両程度保有しております。一度に約二百トン強の物資を輸送することが可能でございます。同部隊の人員のうち、車両の操縦に直接従事する者は約半数の五十名程度でございまして、残りの半分は食糧、燃料の補給あるいは車両の簡単な整備等の支援業務に従事しております。また、こういう部隊を長期的に使おうといたしますと、さらに百名程度の支援要員が必要だというふうに考えております。  もう一例申し上げますと、例えば通信の例でございますが、陸上自衛隊の師団には通信大隊というのがございますが、その概要は人員約三百五十名でございまして、最大七カ所の通信所の開設が可能でございます。直接通信業務に従事する者は約二百五十名程度、その他百名程度が食糧、機材の整備等の支援業務に従事する者でございます。こういう部隊をさらに長期的に使おうといたしますと、さらに百五十名程度の支援要員が見積もられる、こういった状況にございます。
  29. 山崎拓

    山崎委員 ただいま藤井防衛局長のお話のとおり、私も防衛政務次官や防衛庁長官をしましたのである程度承知しておりますが、自衛隊には輸送隊もあれば通信隊もあれば衛生隊もあればあるいは施設隊もある。それぞれ専門集団として訓練されておる。これを組織として、これをばらばらに引き抜いて送ったって役に立たないのであって、日ごろ訓練されてチームを形成しておるわけでございますから、それをそのまま組織として国連平和協力隊の中で私は活用してもらいたい。さもなければ効果を発揮しないというふうに考える次第でございますが、この一部組織の参加という形で自衛隊国連平和協力隊に協力することについて法的には問題ありませんね、法制局長官。
  30. 工藤敦夫

    ○工藤説明員 ただいまの御質問でございますが、まず自衛隊が法的に組織として、こういうことでございますが、先ほど申し上げましたように、まず武力行使云々というところが一つございます。それから、任務、権限というところが一つございます。それからさらに、何らかの手当てをいたします場合に、法的な全体の整合性という点もございます。そういった点は十分検討いたさなければなりませんが、そういう意味で検討の全く対象外とかいうことではございません。
  31. 山崎拓

    山崎委員 法制局長官は法の番人として従来の解釈に非常にこだわった物の言い方をされたのでございますが、私どもに言わせますと、これは、自衛隊国連平和協力隊の中に一部組織として参加、協力するということ以前に、こういう緊急事態でございますから、現行自衛隊法によって派遣できるものは派遣した方がいいという考え方を我々は主張してきたものなんですよ。例えば、ただいま私がお話し申し上げた輸送の中で、C130Hという航空機もある、あるいは補給艦もある。補給艦にたくさん食糧やあるいはアラブでございますから水も必要でしょう、あるいは薬品も必要でしょう、そういうものを積んで運んだらどうか。八千百トンクラスのとわだ型という補給艦が三隻、四隻とありますから、こういうものを現行自衛隊法の解釈で私は直接送れるので送ったらどうかという提案を今日までやってきた。そういう経緯もございますので、先ほど法制局長官の御答弁の中にも、武力行使を伴わないものであれば自衛隊の海外派遣は可能であるということを言われたと思いますが、そのとおりだと思いますね。どうですか、その点は。もう一度お答え願いたいと思います。
  32. 工藤敦夫

    ○工藤説明員 先ほども申し上げましたように、武力行使を伴わないものであれば憲法上これが許されないものではないということでございます。ただ、武力行使を伴わないものにつきましても、例えば南極観測等海外に出てまいります派遣、武力行使をこれは当然伴わないと思いますが、そのようなものにつきまして自衛隊法上任務を与えております。そういう意味で、別途の何らかの考慮から全くそういうものがあり得ないというふうには私先ほど申し上げなかった、そういうことが全くあり得ないということではない。こういうことでございますが、全体の、もちろんこれは立法政策その他の問題もございましょうから、私の方から一律にそれが適当であるとか適当でないとかいうふうなことを申し上げる立場にはございませんが、そういう意味の法律的な建前、仕組みになっている、かように申し上げる次第でございます。
  33. 山崎拓

    山崎委員 最近、新聞世論調査が出まして、二つあるのですが、明確に申し上げますが、朝日と読売なんですね。読売を見ますと、これは「自衛隊の海外派遣「容認」が五二%」ということになっておる。一方、朝日を見ますと、「自衛隊派遣せず」というのが六七%だ、こうなっているんですね。これをごらんになった国民は、両方の新聞を読む方は少ないかもわかりませんが、少なければ少ないほど一層誤解が生ずると思います。一方では、自衛隊海外派遣は半分以上いいと考えている。一方は、大多数が、三分の二はだめだと考えている、こういうふうになるわけですから非常に世論の動向がつかみにくいし、読んだ人は誤解するということになる。  そこで、この際明確にしておきたいのですが、朝日新聞世論調査の設問ですね、これを見ますと、「日本憲法で集団的自衛権の行使を禁止し、」設問ですよ、これはいろいろ議論のあるところでありますが、集団的自衛権を本当に禁止しているかどうか、日本憲法の中にはそれは一言も出てこないわけでありますけれども、その議論はきょうはいたしません。これを是といたしましょう。  さらに、その次に「自衛隊法で自衛隊の海外派遣をしないことにしています。今回のような国際紛争が起きたとき、日本はこれまでどおり自衛隊を派遣せず、非軍事的な面で貢献するのがよいと思いますか。それとも、憲法自衛隊法を改正して、自衛隊を派遣する方がよいと思いますか。」という質問に対して、「憲法など改正して自衛隊を派遣」というのが一九%になっている。これは設問が間違っておるのです。自衛隊法で自衛隊の海外派遣をしないことになってないでしょう、これは。今法制局長官もそういうふうに言われたのでありますが、自衛隊法の中に任務規定があれば、南極観測ということを今例示として挙げられたけれども、任務規定があればできることになっている。今の任務規定を読んでも、先ほど私が申し上げたように、輸送面を我々は非軍事面として担当することができると自衛隊法の中で解釈で出てくるわけでございますから、こういう憲法自衛隊法を改正しなければ自衛隊の海外派遣ができないという先入観をまず国民に与える設問をするということ自体は、天下随一のジャーナリズムとしておかしいじゃないかと私は考えるのでありますけれども、そこで、この点について、防衛庁長官どうですか。
  34. 石川要三

    石川国務大臣 大変難しい問題でございますが、ただ私は今の先生のここで言われた内容だけを、今私、ちょっと新聞をはっきり読んでいませんでしたので、それだけのことで感想を申し上げれば、いささか設問が粗っぽいな、こういうふうなことで、こういう国連関係するような問題はもっと明確な設問と答えでなければなかなかこれはいかぬのではないかな、そういう感想だけは持ちました。
  35. 山崎拓

    山崎委員 ちょっと長官、この前、話がずれますけれども新聞で読むと、在日米軍駐留経費の問題で長官が発言をされて、全額持てというのであればお帰りくださいということだという御発言をされたとき、まさか長官がそういう御発言をなさるとは私はよく、親友でございますから信じがたいことでございますけれども、この際、国民の皆さんの前に対して、どういう真意であったか、ちょっとおっしゃっていただいた方がよかろうと思います。
  36. 石川要三

    石川国務大臣 先般の朝日新聞に掲載されました米軍お帰りなさいという見出しの私の発言内容でございます。  この点につきましてせっかくの機会でございますから、私がその真意をここで披瀝させていただきたいと思うわけでありますが、委員、前長官でございますからもう十二分に御理解いただけると思います。いわゆる記者会見というものと記者懇談会というのがありますね。記者懇というのは、どちらかというと大体夕方ごろ開かれて、多少、ビールの一本ぐらいは並びながら和気あいあいの中で語り合うわけであります。私はこの記者懇をむしろ、自分の政治家としての私の考え、それから長官としての私の考え、そういうことを特に私は知っていただきたいというそういう気持ちでその会議にいろいろと対応しているわけであります。そんなわけですから、極端に言えばもう中学校時代の思い出話やら、それこそ国際情勢の話やらいろんなことが取りまぜて交わされるわけでありますが、そういう中でたまたま、どこかはっきりした一つ二つという質問でない形でやるわけでありますから、そういう中での一つの表現としてそういうことを私が申し上げたことは事実であります。  ただ、今考えてみると、大変舌足らずだったな、こういうふうに思うし、特に私が憂える点は、最近非常にアメリカの議会等の議決等の内容が、新聞によって国民にこれが伝わり、国民が非常にその点に対して感情的な気持ちでこれを読んでいる、こういうことによってだんだんだんだん、私は日米の間がそういう非常にまずい方向にいくことを大変心配している、そういう意味で申し上げたわけでございます。
  37. 瓦力

    瓦委員長 時間が参りましたので、簡潔に願います。
  38. 山崎拓

    山崎委員 時間が参りましたので私の質問は終わらなければなりませんが、私のきょう申し上げたかったことは、こういう国際情勢下にありまして、我々は中東貢献策を早く実行に移す必要があるので、国連平和協力法案を何としても国会で早く通しまして、その中に自衛隊の一部組織をぜひ活用してもらって後方支援の面においてお役に立たしていただきたい、それが国民の負託にこたえるゆえんである、かように考えているということを申し上げたかったわけでございます。もしその国連平和協力法案なるものが成立しないということであれば、事態はどんどん進行しているわけでございますから、現行自衛隊法に基づいてできることはやったがいいということも私はあわせてお訴えをしたかった次第でございます。  最後に、外務大臣にお伺いいたしますが、けさの新聞に報道されておりましたように、海部総理とイラクのラマダン副首相会談をいたしております。その中で、ラマダン副首相はいわゆるミッテラン提案なるものを評価したということが伝えられております。海部総理も人質の解放やクウェートからの即時撤退についても主張いたしましたが、対話の続行を望んだということが出ておるわけですね。我が国の今日までの立場大臣も先ほど力説されましたような国防の国是と申しますか、そういう平和国家としてのあり方、あるいは今日までのアラブとの関係等を考えますと、ブッシュの国連演説の中にも出てまいりますが、私はその中で共通して、フセインも言っている、ラマダンも言っている、ブッシュも言っている、あるいはミッテランも言っている共通点があると思います。
  39. 瓦力

    瓦委員長 山崎委員に申し上げます……
  40. 山崎拓

    山崎委員 わかりました。  それはパレスチナ問題だと思うのです。だから、我が国の置かれた立場から、ひとつ平和的解決へ向けて具体的な提案を、ひとつ積極的な行動を、多国籍軍への貢献あるいは周辺諸国への支援とともにやっていくべきではないかと思いますが、いかがですか。最後にこれだけお答えいただきたい。
  41. 瓦力

    瓦委員長 答弁は簡潔に、よろしいですか、願います。
  42. 中山太郎

    中山国務大臣 昨日、海部総理とラマダン第一副首相との間の会談が行われました。双方はそれぞれ考え方を述べ合ったということでございますが、政治対話を継続するということでは双方一致をいたしております。日本政府としては、この中東地域の平和的な解決のために、今後とも政治対話を続けて、イラク政府考え方がどのように変化をしていくか、また、我々日本国あるいは国連加盟国がどのような考え方でこの地域紛争に平和を復元させていくかということについての意見の交換は引き続き行うべきであると考えております。
  43. 山崎拓

    山崎委員 終わります。
  44. 瓦力

    瓦委員長 和田静夫君。
  45. 和田静夫

    ○和田(静)委員 私はまず、湾岸危機情勢あるいは解決への外交努力、それを第一にやりたいと思いますが、理事会で決定したことを与党の側が守らないというのは非常に困ることでありますから、委員長、十分に委員会運営を考えてもらいたいと思います。
  46. 瓦力

    瓦委員長 承知しました。
  47. 和田静夫

    ○和田(静)委員 イラクによるクウェート侵攻以来二カ月が経過をいたして、事態は相変わらず解決に向かわない。国連が八件の決議を採択をしてイラクに対する経済制裁を強化している。それでもイラクに軟化の兆しは見られない。他方、米軍を中心とするいわゆる多国籍軍は兵力、装備ともに増強をされている。イラク軍もまた兵力増強を図って、湾岸情勢というのは一触即発の状態にあるだろう。  そこで政府は、双方の軍事力配備を含めて湾岸情勢をどう理解しているのか。特に私は、非常に気にかかるのは、十月の十日から十五日ぐらい、あるいは十一月のアメリカの中間選挙の終了からクリスマスまで、非常に衝突が危惧されるのではないかということがいろいろニュースとして伝わるわけであります。この辺の認識をどうされていますか。
  48. 中山太郎

    中山国務大臣 それでは、現地の事情を専門に担当いたしております内田参事官から現在の状況を御説明さしていただきます。
  49. 内田富夫

    内田(富)説明員 御説明申し上げます。  イラククウェート侵攻に関しましては、国連の累次の決議に基づきまして国際社会が一致してイラクを非難しており、他方で多国籍軍がその地域に展開しておるということでございますけれどもイラクの側におきましては、安保理決議の受諾について、その受け入れの姿勢を示していないという状況でございますので、事態は膠着状態にあるという認識をいたしております。
  50. 和田静夫

    ○和田(静)委員 イラクの外務省が国連のこの対イラク空域制裁に反発する形で九月の二十六日に、イラク国内クウェート内のすべての外国人への食糧配給を十月一日から中止すると通告をした。既にイラクは、経済封鎖が実施されて以来、国民に対して砂糖や米や小麦粉、食用油、あるいは紅茶、乳幼児ミルクなど食品七品目の配給制をとって、九月に入ってからこれを外国人にも適用している。現在イラククウェートには外国人が一万二千、ほかに日本人三百人余が在留しているわけですが、これら外国人の多くは食糧の備えが不足ぎみとも言われています。配給停止によって大きな打撃が予想される。特に、弱い立場にある移民労働者や難民は深刻な立場に置かれている。飢餓の事態も予想される。こういう状況は何としてでも回避されなければならない。政府としても国際赤十字などに働きかけて最大の努力をすべきであると私は思うが、この食料品配給停止後の状況政府の対応を伺いたい。
  51. 久米邦貞

    ○久米説明員 お答えいたします。  ただいま委員から御指摘がありました九月二十七日のアジズ外相の発言でございますけれども、これは現地の新聞報道が、アジズ外相の発言ということで言及した報道は確かになされたわけでございますけれども、その後二十九日にイラクのサレハ貿易大臣が、イラクのアジズ外相が言ったとされております十月一日以降外国人に食糧を配給しないという点については、そういう事実はない、外国人もイラク人と同等の食糧配給を受けることができるという発言を、訂正をいたしておりまして、現に私どもが得ております情報でも、外国人に対する配給が停止されたということはまだ聞いておりません。  他方、国連安保理決議六百六十六というのが決議されまして、そのもとで人道的見地からの食糧の輸入ということの手続が決められているわけでございますけれども、この決議が採択されました際の安保理制裁監視委員会の議長声明におきまして、「外国人への食糧供給及び救援に関する個々の提案に対しては、委員会が適切かつ早急な考慮を払う。」というくだりがございまして、したがって、万一在イラク日本人につきましても食糧事情が極めて深刻な事態に将来至るようなことがあった場合には、この委員会に提案することも可能でございます。  ただ、当面のところは、我々の承知しております限りでは、現地の邦人、各企業とも、これは企業によってばらつきはございますけれども、各社ともかなりの期間対応ができる食糧の備蓄を持っておるようでございまして、当面直ちに食糧問題が深刻な事態に至るという状況ではないと承知しております。また、現実に邦人の食糧が不足するという事態が出てきた場合には、先ほど申し上げました国連の手続によるほか、大使館にも相当量の緊急食糧の備蓄がございますので、それを使って邦人保護活動の一環として邦人に食糧を供給するということも可能でございます。
  52. 和田静夫

    ○和田(静)委員 私はあえて十月一日の問題に触れたのは、そこのところを明らかにしてもらいたい意図もありましたが、一昨日、日本社会党の五名のイラク入りをした国会議員団が帰ってまいりました。昨日私はつぶさにこれらからの報告を聴取いたしました。そうすると、今外務省が御答弁になることと、現地の苦労されている日本の大使が苦衷を訴えられていること、また、我が調査団が調査をしたこととやはりかなりの食い違いがあるわけであります。敷衍をしておけば、瓦委員長中心としながら我々は八月三十日から、院を代表してこの委員会がイラクを含む中近東に行きましょうということを決定して、今議運その他、院の手続をやっている最中でありますが、やはり私たちは現地に院として入ってつぶさに見ないと、今までの国会論議や報道だけではしっかり把握することができないのだなということを昨日も痛感いたしました。  恐縮ですが、具体的なことを一、二指摘をして見解を承りたいのです。  まず、日本からの物資なんですが、これは商社が備蓄している、いろいろなお話が今ありましたけれども、問題は本社が物資を送ろうとしても、横浜の税関であるとか、成田の税関でチェックをされる、そしてイラク向けである場合には通産に問い合わしてみる、通産は日本政府としてどうもぐあいが悪いからこれらの発送はとめる、こういう状態になっていると言われています。これは現地の抑留をされている邦人の言い方であります。アンマンまででも物資を送ってもらえるならば、アンマンからイラクへのいわゆる移送について、これは社内の問題として解決することができるのだが、そのことが不可能になっているがゆえに食糧不安その他が、例えば冬が近づいている、冬の衣服類を求めているのだがそれらも途絶えがちである、こういう状態が今現実であります。在留邦人の皆さん方は真剣にその道の解決を求めている。これらについては一体どういうことになっているのですか。また、日本の赤十字がある意味では、この辺は信憑性を伺いたいのでありますけれども、必ずしも協力的ではないという、そういう邦人の訴えが我々の代表団にもたらされています。いかがでしょう。
  53. 堤富男

    ○堤説明員 御質問の前半の点についてお答えをさせていただきたいと思いますが、イラク向けの貿易手続関係を申し上げたいと思います。  安全保障理事会決議を受けまして、イラク及びクウェート向けの貨物はすべて通産大臣の許可が、承認が必要という制度になっております。したがいまして、直接イラククウェートに送るものは当然承認の対象になるということでございますが、今先生御指摘のヨルダンとか、例えばアンマン向けのものが、真にアンマンでとまるものであればこれは許可は不要でございます。ただ、アンマンなどを経由いたしまして最終的にイラクないしはクウェートに行くというものは許可の対象になるということでございまして、これは最終仕向け地がイラククウェートであった場合には許可が必要ということになります。これにつきましては、先進国の状況を見ましても、現在までのところこれに対する許可を与えた例はないと我々の知っている限りでは聞いております。したがいまして、お話を逆にさせていただきますと、真にヨルダンでお使いになるものであれば、これは許可がなく輸出ができるという状況にあるわけでございます。  ただ、最後一つだけつけ加えさせていただきますのは、たとえ輸出者が認識しない場合でもその先に回っていってイラクに行ってしまうというようなケースがないように、俗に言います迂回輸出にならないように十分の注意をしてくださいということは注意事項として申し上げている次第でございます。
  54. 和田静夫

    ○和田(静)委員 バグダッドの大学附属病院を我々の代表団が視察をいたしました。そうすると、まあ外務大臣はお医者さんですが、麻酔薬や注射の針や、あるいは縫合糸や包帯、こういう医薬品が決定的に不足しているという状態にあるようであります。医薬品が手に入らないのはイラクの人たちだけではないわけでありまして、抑留をされているところといいますか、クウェートから行った百四十一人を含んでの話でありますが、これらの邦人も同様であります。そういう結果もこれあり、いわゆるお客さんと言われている百四十一人の中に十八人から二十人ぐらい大変体の状態が悪くなっている、またホテルには一人の日本人の重病人がいると言われているのですが、こういう医薬品対策について一体具体的な方策をお持ちですか。
  55. 中山太郎

    中山国務大臣 国連決議によっても、人道上、医薬品等のいわゆるイラク向けの提供というものは当然許されている範囲のものでございまして、私は、この人道上の立場から、イラクの人であろうとあるいは人質として抑留されている多くの国の人たちの医療のためにも、必要とあるならば医療器材の提供日本政府としては行うべきであるという考え方を持っております。
  56. 久米邦貞

    ○久米説明員 現地におります百四十一人、これはイラク側に身体を拘束されている百四十一人の邦人の方、あるいはバグダッドに滞在して出国ができない状況になっております百六十八人の日本人の方々の医薬品の供給につきましては、現在のところはかなり、現地の大使館に医務官がおりまして医薬品のストックを持っておりまして、そこから百四十一人については差し入れという形でやっておりますし、それからバグダッドにおられる百六十八人については御希望に応じて適宜医薬品の供給をしているということでございますけれども、今大臣から申し上げましたとおり、医薬品はこの制裁決議の対象とはなっておりませんので日本から送ることも可能でございまして、現に留守家族の何人かの方々から特に拘束されている方々への医薬品の供給について御希望のあったものについては、外務省が中継をいたしまして現地に送ったケースもございます。
  57. 和田静夫

    ○和田(静)委員 それは、先ほどの堤局長の答弁との兼ね合いででありますが、バグダッド向けのもののすべてがとまっているということになっていませんか。
  58. 堤富男

    ○堤説明員 通産省でやっております輸出手続につきましては、基本的にはすべて安全保障理事会のものをベースにやっております。したがいまして、安全保障理事会決議の中で二つの例外がございまして、一つは医薬品、それから一つは人道上特に必要と認められる食糧、この二つが例外になっておりますので、この二つにつきましては実際上必要があった場合で、国連等で国連安保理決議及びその下にございます制裁監視委員会というのがございますが、そこでいろいろ手続を決めておりますが、その手続に従って出てきたものであれば我々としては許可をするという体制になろうかと思います。したがいまして、その許可のするものとしないものという範囲内でこれの調節を国連決議に従ってやっていくというふうに考えております。
  59. 和田静夫

    ○和田(静)委員 もう一つ大きな問題は、七十人内外の人たちが仕事の終了証明書をもらった、イラクから日本への帰国が可能であった、それにもかかわらず現地の状況判断を日本政府が見間違って、アメリカの要請に従い過ぎて、あの支援策、十億ドルを最初に決めた。その段階で、当然イラクから帰国できるところの、六十九人と言われ、七十一人と言われているのですが、我が代表団によれば六十九人、この人たちが結局帰国できなくなって残留邦人と今なっているというのが、これはどうも事実のようであります。  私は、イラク日本人大使館員が九月二十八日の午前に三人あるいは夕方四人のゲスト、昨日の報道によりますと合計十人ぐらいの方々に、マンスール・メリア・ホテルで日本の大使館員が、偶然であるというふうに表現をされていますが、会って、いろいろの話し合いをした、事情について聞いたということになっているのでありますが、そういう現状認識というのはちゃんと報告を受けていらっしゃいますか。そして私は、前段の問題は非常に重要なので、この辺のところはどういうふうに認識をされていますか。
  60. 久米邦貞

    ○久米説明員 御指摘のありましたイラク在住の邦人の出国につきましては、イラククウェート侵攻が行われました八月二日の一週間後の八月九日に正式の退避勧告を出しまして、ただそれ以前に、八月四日の時点から既に現地の大使館で、バグダッドにおられた短期滞在者、それから旅行者、それから出国ビザを既に取得していた長期滞在者につきましては出国を促す勧告をやっておりまして、八月九日に正式の政府からの勧告として、出国ビザを取得している方については速やかに出国をするようにという勧告をいたしております。  それから、出国ビザを取得されていない方については可及的速やかに出国ビザをとるようにという勧告も出しておりまして、それに従いまして、実際に国境が、日本人にとっても国境が閉鎖されましたのは八月十四日でございますけれども、八月十四日以前に三百二十六人の方がイラクから出国をしております。
  61. 和田静夫

    ○和田(静)委員 私が述べているのは、六十九人ないし七十一人の諸君がイラクから当然帰国できる状態にあったにもかかわらず、その現地状態日本政府が把握をすることに誤りを犯して、そしてアメリカの言うとおりに支援策を決めたがゆえにこれらの諸君は足どめを食って、そして今イラクに残留をせざるを得ない事態になっている。このことについて、私はずっと論議の中で、政治は人権である、人命の尊厳を日本政治がどう考えるかという視点が余りにも失われていることに危惧をするがゆえにきょうの論議を実はしているのでありますが、平和維持軍、協力軍の問題等については後ほど我が党の上田議員がしっかり触れますけれども、その前段的な問題として、ここの判断というのは私は海部内閣に誤りがあったのではないだろうか、そういうふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  62. 中山太郎

    中山国務大臣 私ども、いわゆる国際社会の常識といたしまして、いわゆる人質をとる、また、人質をとってそれを盾に使うというようなことは、国際法上も人道上も許されない問題でございます。そのような観点で、私ども国連決議による、いわゆる出国の自由を認めよという決議国連で採択をされているわけでありまして、むしろ私どもイラク政府に反省を求めるという考えであります。
  63. 和田静夫

    ○和田(静)委員 それは当然のことでありまして、私たちもその意味においては同じ立場に立って、しかし、それでもなお百四十一、三百余の日本の人たちが大変な苦悩の中に置かれている。この人たちをどういう形でもって最も早く我が国に帰国をしてもらうか。それがやはり政治の視点としては大切なことでしょう。そのことのためにどういう努力をするか、そのことが求められているのだと私は思っているのです。  ところで、先ほど申しました、七人であるか十人であるかは別として、百四十一人の中のそれらの方々に現地の大使館の方々がホテルで面談をされたと言われているのですが、それらの人たちの訴えというのは具体的にどんなことだったのですか。
  64. 中山太郎

    中山国務大臣 委員長、ちょっとその前に一言。  日本政府といたしまして、この抑留されている人たちの解放につきましては、私が直接外務大臣として国連のデクエヤル事務総長に対して、この解放に対する国連事務総長協力を要請いたしました。その結果を受けまして、八月三十日にデクエヤル事務総長は、アンマンにおいてイラク側と交渉をいたしましたが、不調に終わったわけであります。  また一方、中東五カ国を訪問しておりました私は、途中で、この人質問題の重要性は等閑視することはできないという判断に立ちまして、同行いたしておりました小和田外務省審議官をストックホルムから直ちにジュネーブに派遣をいたし、国際赤十字を通じて、この各国の人質の解放に国際赤十字が積極的にイラク政府と交渉するように日本政府として要請をいたしたということをこの機会に申し上げさせておいていただきたいと思います。
  65. 久米邦貞

    ○久米説明員 百四十一人の自由を拘束されておられる邦人の方々からの訴えにつきましては、ただいま委員から御指摘のありました七人との面会のほかに、大使あてにも幾つかの書簡が来ておりまして、いろいろな御意見、御注文ございますけれども、大きなポイントを申し上げれば、やはり一刻も早く解放にこぎつけてほしいということ、それから解放が実現するまでの期間、いろいろな差し入れについての注文、それから国際放送をもう少し日本からの情報提供考えてほしいとか、いろいろ多岐にわたる御要請、御注文ございます。
  66. 和田静夫

    ○和田(静)委員 御存じのとおり、参議院議員の方々や、あるいは我が党の正式な代表団は今入っていますが、代表団や、日本の国会からの現地入りを含んだいろいろの働きかけが今行われているわけでありますけれども、現地の人たちが求めている中に、もっともっと政府を代表する人たちが入ってきて我々と接触をしてくれぬか、いわゆる人質以外の方々ですね、というような強い意見があります。それは結果的に、そういう接触が継続をしている、その間に戦争が起こるというような危険性は遠のくのではないだろうか、そういう意見が非常に強く述べられたと報告を受けたのでありますが、既に日本国内においても、海部さん自身が行ってもらいたい、今中近東をお歩きになっているんだが、むしろ周辺国を歩くよりも直接イラクに入ってフセイン大統領としっかりとした話し合いをしてもらいたい、あるいはそれが一国の総理という立場で今できないというのならば、特使を派遣してもらいたいというような強い要望や意見がございますね。これらについて外務大臣はどういうふうに対応されようとしていますか。
  67. 中山太郎

    中山国務大臣 先般、九月二十五日、ニューヨークでイラクのアジズ外務大臣と私との間で外相会談を持ちたいというイラク政府の要請がございまして、私はその外相会談を行うつもりでニューヨークにおりましたが、あいにくアジズ外相がアメリカ入りができないという事態になりまして、この外相会談は延期されたわけであります。  そういう中で昨日、海部総理はジョルダンのアンマンにおいてイラクの第一副首相会談をいたし、そして日本側の代表者として国際社会におけるイラク政府に対する要請をいたしました。クウェートからの軍隊の即時撤退と人質の全面解放、こういうことを要請したわけであります。  日本政府の意思は既に昨日公式に伝わったわけでございますが、特使を派遣してはどうかということでございますけれども、私どもは、人質解放を強く求めていくということについては国際機関が最も公正な立場にある交渉ができるものではないか、こういうことで、先日デクエヤル事務総長には改めて海部総理から国連の積極的な協力を要請しておる次第でございます。  ニュージーランドは先日、二十名の人たちの国外出国についていろいろと条件をつけられましたが、ニュージーランド政府はこれを拒絶いたしました。私どもは、国際社会の連帯の中でイラク政府に反省を求めるという強い団結が必要ではなかろうか。そういう中で、人質としてとられている方々には、まことに御迷惑なことでございますけれども国際社会の団結によってイラク政府が一日も早く理性を取り戻すことを私どもは心から念願をするものでございます。
  68. 和田静夫

    ○和田(静)委員 ブッシュ大統領が去る八月二十日のボルチモア演説で、アメリカはおどしに屈することはないと強調しましたね。イラクの人質作戦を非難するとともに国益優先論、国益優先の姿勢を示唆したわけであります。それゆえに私は、戦略的拠点に分散拘束されているいわゆる人質は一刻も早く救出されなければならないと考えていますがゆえに、今、現地からの報告を含んで二、三の点について触れさせていただきました。  そこで、湾岸危機は外相も述べられるように何としてでも平和的に粘り強い外交努力によって解決をされなければならないのですが、去る九月二十五日に、先ほども触れられましたが、ミッテラン・フランス大統領が国連演説で示した中東和平構想、これをイラクはある一定の前向きの姿勢で評価をした。これまで西側の提案の一切を拒否するという強硬な態度であった、そこに若干の変化を見ることができると思われますが、こうした機会を敏感にとらえて、政府国連や諸外国と協力をして平和的解決のための外交努力を当然重ねるべきでありましょうし、努力をされているでしょう。私は、その一環としてイラクにこの機会に特使を派遣することも十分に考えるということがあってしかるべきではないだろうか、そういうふうに思っているのですが、もう一度、ここのところはいかがですか。
  69. 中山太郎

    中山国務大臣 今先生から重ねて政府特使を派遣したらどうかというような御意見でございます。今日まで、猪木参議院議員を初め社会党の先生方、わざわざイラクを訪問されていろいろと現地の状況も御視察いただいておりますし、昨日海部総理もせっかく会談をやって二時間余りにわたる意見の交換を行っております。こういう中でミッテラン大統領の提案に対するサダム・フセイン大統領側の評価もあるというふうに聞いておりますが、まず海部総理の帰国を待ちまして、政府としてはイラク側との交渉の経過を十分聴取した上で意見を整理しなければならない、このように考えております。
  70. 和田静夫

    ○和田(静)委員 次に、中東貢献策に入ります。  政府は、これまで第一弾、第二弾といわゆる中東貢献策を決定した。アメリカ中心とする多国籍軍の支援それから周辺諸国の経済支援、そういうものを目的に四十億ドルの支出を決定しましたが、この貢献策、現在までどの程度行ったわけですか。
  71. 内田富夫

    内田(富)説明員 お答え申し上げます。  政府といたしましては、先般発表いたしました中東貢献策につきまして可能なものから実施に努力している最中でございますが、若干詳しく御説明いたします。  この貢献策のうちのIの湾岸における平和回復活動に対する協力につきましては、輸送協力のもとで、九月二十一日の交換公文署名以来、エアリフトが四便運航されておりまして、さらに十月三十一日までに十四便飛ばす予定でございます。また、シーリフトにつきまして、米国に向けまして一隻が航海中でございます。  物資協力の枠組みでは、既に4WD車両等約八百台がサウジに到着いたしましたほか、今後も各種物資につきまして搬出準備を進めております。  それから、第三の協力分野でございます医療協力でございますが、この一環といたしまして、御案内のように九月十八日に医療団の先遣隊十七名がサウジに向かっております。  第四の資金協力につきましては、九月二十一日の交換公文を受けまして、同二十五日に湾岸平和基金に拠出を行っております。  以上のほか、二番目の大きな柱でございます中東関係国に対する支援につきまして、エジプト、トルコ、ジョルダンといった周辺諸国に対して二十億ドルの経済協力を検討しておるわけでございますが、まずその枠内として六億ドルの緊急商品借款を、これら今申し上げました三カ国に対して供与すべく、所定の準備を進めております。このほか、避難民援助につきましては、総額二千二百万ドル強の協力を既に実施済みでございます。
  72. 和田静夫

    ○和田(静)委員 このいわば事態即応的に短期的観点からとられた中東貢献策というのは、明らかにアメリカの要請にこたえたものでありましょう。エジプト、トルコ、ヨルダンに対する二十億ドルの経済協力は、これらの国々が湾岸危機に伴って深刻な経済的な損失をこうむっていることに対するものである。そうすると、これはいわゆる戦略的援助そのものに私はほかならないと思うのです。今回の措置イラクのあの暴挙に対する国際的共同行動としてとられているために、こうした戦略的援助といった側面はいわば免罪符が与えられたような様子になっていますが、我が国経済協力は第一義的には民生の安定、福祉の向上をねらいとしている以上、今回のこの経済協力を、非常事態に対する例外的措置としての超低利の緊急商品借款を供与するというようなものではなくて、国際機関を通じた援助とするなど、より国際協力行動にふさわしい協力形態というものが追求されてしかるべきではなかったかと私は思うのですが、いかがでしょう。
  73. 内田富夫

    内田(富)説明員 御説明申し上げます。  周辺諸国に対する援助がいわゆる戦略援助ではないかという先生の御指摘でございますけれども、私どもといたしましては、この援助につきましては、従来の開発途上国の経済、社会困難を和らげるという、このいわゆる経済協力の伝統的な理念に基づく援助として位置づけておるものでございまして、その実施に当たりましても、そのような観点から、経済的、社会的な実害を見きわめつつ、それらを補てんするという観点から分析し、かつ適切な対処をしたいというふうに考えておるわけでございます。  それからもう一つ、国際機関の利用でございますけれども、この点は私どもも常に念頭に置いておることでございまして、国際機関をできる限りたくさん使っていくという方向で、そうした原則的なアプローチをしておりますほか、援助の重複とか援助の有効的な利用のために援助機関として定評のございます世界銀行、そのほか各国とも横並びの調整をしながら、なるべく国際的な枠組みの中で実施していきたいという姿勢をとっている次第でございます。
  74. 和田静夫

    ○和田(静)委員 現実はそういうふうになっていないから指摘をしたのですが、このいわゆる多国籍軍に対する二十億ドルの支援というのはもう実質的にはアメリカ軍に対する支援となるだけに、私たちは非常に大きな問題を含んでいると考えています。支援は、輸送協力、物資の協力、それから医療の協力、資金協力、そういう四分野を対象に行われるわけでありますが、資金の支援配分、あるいは具体的な供与物資、あるいは供与の形態、そういうものなどはどうなっているのですか。
  75. 内田富夫

    内田(富)説明員 御説明申し上げます。  ただいま先生お尋ねの物資協力、資金協力につきましては、湾岸諸国六カ国でつくっておりますGCCという機関がございますが、そこにございます湾岸平和基金への拠出を通じて行う形をとっておるわけでございます。実際には、湾岸平和基金の運営につきまして、日本側及び関係国が協議いたしまして決定していくという仕組みをとることになっておりまして、これらの使途について、受益国側の要請が満たされるのみならず、我が方の建前、どういったことに使われていくかということにつきまする我が方の方針の枠内での使用及びその確保につきまして遺漏なきを期しておる次第でございます。
  76. 和田静夫

    ○和田(静)委員 例えばアメリカ軍に対する物資輸送のために、民間航空機だとか船舶の借り上げ費用などはこの資金が使われる建前になっていると言われますが、その輸送物資が今言われた非軍事的物資であるかどうかのチェックというのはどういうふうに行われるのですか。一たび資金が拠出されてしまえば、それが兵器購入などに流用されていないことを確認するのは、これは非常に難しいことでしょう。資金の使途も非軍事的物資に限る手だて、そういうことは外務大臣、ありますか。
  77. 内田富夫

    内田(富)説明員 ただいま御説明申し上げましたように、この拠出されました資金は、適切かつ専ら湾岸の平和と安定の回復のために国連安保理決議に従って活動している各国を支援するための一定の目的、特にこの資金協力につきましては、般空機及び船舶の借り上げ経費、それから資機材の調達、輸送及び据えつけにかかる協力につきましては防暑機材、水関連機材、それぞれ対象としておるわけでございまして、御心配のように、軍事目的にこういった資金が使用されることはないように確保されておるわけでございます。
  78. 和田静夫

    ○和田(静)委員 それはそういうふうに、もう期待をしておると言われるだけに、現実の問題としては処理されていく、そこに危惧があるから私たちとしては非常な関心を持っていると申し上げたところです。  そこで、政府は、この多国籍軍支援の二十億ドルのうち、第一弾の十億ドルは全額予備費から支出をする、第二弾の十億ドルは、これは決めたか決めないか知りませんが、年末に補正予算を編成をして税の自然増収などで財源を捻出する方針だと報ぜられている。そう簡単ではないのだと私は思うのですが。ところが他方では、景気の動向から従来のような税の自然増収は期待できないという見方は、これは厳然としてありますね。それで、こういうような対米大盤振る舞いとでもいうものが今後の財政運営に悪い影響を与えませんか。大蔵、どうです。
  79. 田波耕治

    ○田波説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、最近の我が国の財政事情を見てみますと、歳入面におきましては、まず元年度の決算剰余金というものが従前に比べましてかなり大幅に減少しております。それから、先生御指摘のように、これまで大変好調な税収をもたらしてまいりましたいろいろな経済的な諸要因というものが流れを変えてきておりまして、従前のような大幅な税収増はなかなか期待しがたい状態にあることは事実のように思います。また歳出面におきましても、いろいろな義務的経費でございますとか、あるいは災害復旧事業といったような追加的な財政需要も考えられるわけでございます。これに加えまして、今度の中東貢献策の一環といたしまして、今後の中東情勢等の推移を見守りつつ新たに十億ドルを限度として追加的に協力を行う用意があるという表明を政府として行ったわけでございますので、このような状況のもとで、今後とも私どもとしては歳入歳出両面におきましていろいろな努力をしていかなければいけないと考えております。そこで、このような状況を踏まえまして、九月十四日の閣議におきまして、大蔵大臣の方から、各省庁において既定経費の一層の節減合理化もお願いをしておるところでございます。
  80. 和田静夫

    ○和田(静)委員 大蔵大臣並びに主計局長が各省に向かって既定経費の節減などについての要請を行った。それで、具体的にはそれはどういうふうに運んでいるわけですか。
  81. 田波耕治

    ○田波説明員 先ほど申しましたように、九月十四日の閣議において大臣からお願いをすると同時に、九月の二十六日に各省庁の官房長会議というものを招集いたしまして、主計局長の方から具体的にお願いをしてございまして、現在、その方向で各省庁においていろいろな面から検討が行われているというふうに承知をしているところでございます。
  82. 和田静夫

    ○和田(静)委員 先ほどちょっと触れましたように、そうすると、年末の補正予算というようなことは考えていらっしゃらぬということですな。
  83. 田波耕治

    ○田波説明員 この点につきましては、今まだ歳入歳出両面にわたっていろいろな面で不透明なところでございまして、今年度の予算につきましては、既定予算の適切な執行ということに努めている段階でございまして、現在の段階で補正を組むとか組まないとかいうことを申し上げられる段階ではないと考えております。
  84. 和田静夫

    ○和田(静)委員 この二十億ドルの支援金拠出の受け皿として、政府は湾岸協力会議に特別基金、湾岸平和基金を設置するという方針で、そしてこれはもう既にそういう方針を決められたのだと思うのですが、もともとこういうような基金を国連に設置してもらえぬかという交渉を公式、非公式は問わずされたように思いますが、調停者の立場にある国連にこれは拒否された、やむなくGCCにこれを設置することにした、こういうことでしょうか。
  85. 内田富夫

    内田(富)説明員 湾岸の平和回復に関する資金の拠出先につきましては、この貢献策の目的に最もよく沿う形での拠出というものを政府といたしまして政府部内及び各方面と検討してきたことは事実でございますけれども、今御指摘のございましたような検討の過程につきまして、この場で公の御説明を行うことは必ずしも適当でないというふうに考えておりますので、詳細にわたる御答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  86. 和田静夫

    ○和田(静)委員 ここのところは非常に実は重要なところです。ところが、きょうは、理事会の取り決めがありまして、この委員会を度を超してここをもっと詳細にというわけにはなかなかいかぬ仕組みになっていますから、これは次の予算委員会で……。今これだけ重要なものを、こういう場所でと言って、あなた国会の場所で述べずに一体どこでやろうというのか。それはとても許せない発言なのですが、ともあれきょうはここのところは問題を後に残します。  いずれにしても、湾岸平和基金なるものは、アメリカ軍に対する直接支援になることを形の上で少し薄めよう、そうしたものにほかならないという認識を私はしております、これは私の認識ですが。しかも、当初政府国連を経由しようとして意図したことは、これは国連協力を前面に出すことによって米軍の行動国連行動の一環であるというふうに位置づけたかっただろう、我が国の支援を国連というにしきの御旗によって合目的化しようとしたとどうも思われる節があります。つまり、軍事力行使を最終目的とするアメリカ軍への資金協力を、国連の枠組みを利用することによって我が国憲法上の制約をどうもクリアしようとした、しかし政府はこれに失敗をしたわけであります。  そこで、GCCの枠組みを利用する、GCCもアラブ合同軍を湾岸地域に派遣しています。これはサウジアラビアなどの要請に基づくものであって、集団的自衛権の一環となる行動であることは、これはもう明らかであります。だからこうした行動をとっているGCCを相手にして、たとえ米軍への資金経由のためとはいえ、基金を設置するということは大変な問題があります。政府はこの基金設置のためにGCCとの間に交換公文を締結をしたようでありますけれども、この交換公文はその重要性にかんがみて国会に提出をされる、承認を求められるべきである、私はこの内容と重要性に関してそう指摘をするところですが、先ほどの答弁のような形でこの場を逃れようとされても、これは臨時国会における大きな問題になるであろうことを私は申し上げておきますから、そういう意味で大臣の答弁を求めたい。
  87. 柳井俊二

    ○柳井説明員 交換公文あるいはその他の形の国際約束の締結につきまして、どのようなものについて国会の御承認をいただくかということでございますけれども、これは従来から政府が答弁しておりますように、現行法令の範囲内あるいは予算の範囲内、そういうもので締結し得るものにつきましては、行政府の、政府の権限の範囲内で締結するということでございます。
  88. 内田富夫

    内田(富)説明員 御設問の、なぜ湾岸平和基金に拠出したのかという点でございますけれども、この湾岸の平和と安定の回復のための関連諸決議に従って活動している各国を支援するという今回の貢献策の目的のために、この拠出先につき鋭意いろいろ検討してきたことは事実でございまして、そうした各種の検討を経ました結果、この湾岸のアラブ六カ国から構成され、かつ当事者でもあるわけでございますが、地域の問題の解決のために、まさに当事者として積極的役割を果たしてきている湾岸アラブ諸国協力理事会に設けられる湾岸平和基金への拠出をすることが、最もその目的のためにふさわしくかつ効果的な資金使用が行われるということでございまして、先方との協議が調ったのを受けまして拠出したような次第でございます。
  89. 中山太郎

    中山国務大臣 今お尋ねのGCCに日本政府が拠出をしたということにつきまして、私先般のニューヨークの国連総会におきましてGCCの外相と一堂に会していろいろと意見交換をいたしましたが、このGCCの加盟国はすべて日本の拠出について大きな評価をいたしておったということもこの際申し上げておきたいと思います。
  90. 和田静夫

    ○和田(静)委員 さらに基本的に重要なことは、我が国の米軍に対する資金協力そのものについてでありますが、憲法第九条を中核とする我が国憲法の趣旨からいって、一般的に我が国が第三国に軍事援助をすることは許されない、これは明らかであります。これは軍事行動のみならず資金面における軍事援助についても同様であります。事実、我が国はそういうような援助を行っていないはずであります。唯一の例外は日米安保条約の枠組みの中に限定された米軍への援助であります。つまり、在日米軍駐留経費の日本負担が、この当否は別にしまして、条約に言うところの日本の安全並びに極東における国際の平和及び安全の維持、そのために限定的に行われている。軍事援助禁止の唯一の例外である対米協力にも以上のような制限が明確に付されています。  およそ、この米軍一般に対する軍事資金の協力は否定をされています。湾岸駐留米軍への資金援助は非軍事物資に充てられるというふうに言ってみたところで、それが軍用であることに変わりはない、軍事資金援助であることはもう明らかであります。したがって、こういうような形態の資金援助というものは私は許されないと思う。大臣いかがです。
  91. 中山太郎

    中山国務大臣 今回の中東紛争に対して日本政府が拠出をした、これは日本の従来の考え方からおかしいのではないかというお考えでございますが、私は、外務大臣として率直に申し上げまして、この国際法を無視したクウェートへのイラク侵攻というものに対していかにして中東地域を安定させるかということは、国際社会が強者が弱者をのみ込むということを許さないという一つの考え方とともに、我々の一億二千万の国民の生活が実はこの地方にかかっているということも、私は外務大臣として率直に申し上げなければならないと思います。もう各国とも、日本が一番のこの地域の受益者である、その日本がなぜ金だけしか出さないのかと、今これだけの拠出をやってもそれだけの批判を受けておりますけれども、私どもは、この冬場に向かって、イラククウェート侵攻というものが終結を見ない場合に、我々の国民生活がどのような影響をイラクのこの侵略によって受けるかということについては、我が国安全保障の上からも極めて重要でございまして、私は、我が国の国益のためにもこれはやらなければならないという決断をいたしたわけであります。
  92. 和田静夫

    ○和田(静)委員 ここの部分で私は結論を申し上げておきますが、今回政府が打ち出した中東貢献策、第一弾、第二弾のうち、特に多国籍軍に対する支援というのは、指摘したように非常に重要な問題を内包しております。私たちは直ちにこれを認めるわけにはまいりません。我が国も、今日の状況に対して、特に財政面での国際貢献の必要性、そのことを何も私たちはすべて認めないとは言っていませんが、国連憲章安保理決議によらないアメリカ軍を中心とする多国籍軍に対するものとしてではなくて、国連憲章安保理決議、または日本憲法の枠内での平和国家のそれとしてに限るべきでありますよ、これは。こういうような見地から、多国籍軍への支援策というものは全面的に見直されるべきであるし、見直すことを要求しておきます。  午前中は終わります。
  93. 瓦力

    瓦委員長 和田静夫君の質疑は午後に譲ることとし、この際、防衛庁長官より発言を求められておりますので、これを許します。石川防衛庁長官
  94. 石川要三

    石川国務大臣 先ほど山崎委員の記者懇に対する質問の中で、重ねて明確に私は申し上げておきたいことがございます。  それは、私の発言の中で、私の意見というふうにとられる、誤解しやすい点がございますが、そうではなくて、そういう駐留経費にまつわる日米両国間の感情的な対応そのものが大変私は憂慮にたえない、こういう観点から申し上げたわけでございまして、私自身は、駐留経費を否定したり、あるいは米軍の存在を否定する、そういう考えでないことを明確に申し上げておきたいと思います。
  95. 瓦力

    瓦委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ────◇─────     午後一時一分開議
  96. 瓦力

    瓦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。和田静夫君。
  97. 和田静夫

    ○和田(静)委員 国連平和協力隊の構想の問題について、若干私の方からも触れておきます。  海部政権は、どうも湾岸危機に乗じて国際貢献の名のもとに、悲惨な経験の中から我が国が学び、世界に誓ってきた国の基本方針をどうも変更しようと懸命に努力をしているように思われる。我が国はいかなる状況のもとにおいても自衛隊、自衛官を海外に出すべきではありません。事の本質は、ただ憲法を法律解釈によって私は云々されるべき問題ではないと考えています。我が国が営々と築き上げ、世界に誇ることができる、また世界に認められてきた重要な基本的なことを、海部内閣は十分な国民的な議論や合意もないままに、いとも簡単に、ある意味では泥縄的に拙速に片づけようとしている感があります。政府は、自衛隊の海外派兵を強行しようとするのなら、私は国民に信を問うべきそういう問題であると実は考えています。総理大臣時代理に解散権があるのかないのかということについては、昨日事務当局などと随分私は検討を深めましたが、きょうはそれ以上触れることは一応おくといたしましても、政府が構想する国連平和協力隊なるものは、自衛隊もその一翼を担うといった重大問題のほかに、私は多くの問題を含んでいると思います。協力隊は、国際紛争解決目的として国連が行う決議に基づき、またはその実効性確保するために行われる活動、つまり国際の平和、安全維持のための活動に対処することを目的とするようでありますが、そもそもこのような新たな組織をつくることは、たとえ活動分野を非軍事的領域に限るとはいえ、輸送、通信など軍事部門を補完することとなれば、客観的には軍組織とみなされざるを得ません。結果的に憲法第九条に抵触することになる。  協力隊の任務は、具体的には停戦監視、選挙の監視など管理、輸送、資機材の維持補修、通信、医療・衛生、被災民の救援、戦災復興などとされて、いわば後方支援活動という非軍事面に限るとされています。しかし、石川長官も触れましたように、どこまでが軍事でどこまでが非軍事なのかという境界は、これは一番難しい問題であることは同感であります。ケース・バイ・ケースで厳密に見ないと、現実には判断が難しいのであります。こうした実態のもとで、非軍事面に限ると言ってみたところで、実際には実効性はないに等しいでしょう。結局は軍事行動に従事しているとみなされ、相手からは敵軍とみなされ、それだけの危険を伴うことになります。もともと輸送や補給など後方支援は一番襲われやすい、戦闘に巻き込まれる危険が大きい、これは常識でしょう。そうすると、政府は非軍事的協力をどのように確保して、また隊員の安全をどのように確保しようとお考えになっているのか、ここのところを明確にしてもらいたいのであります。
  98. 柳井俊二

    ○柳井説明員 ただいま政府が検討しております国連平和協力法につきましては、九月二十七日に総理大臣からその考え方というのが六項目ほど示されております。御指摘のとおり、これは国連決議に関連した平和維持活動協力するための体制の整備というものを目的としておるわけでございます。  この考え方にも示されておりますとおり、先ほど先生が御指摘になったようないろいろな活動考えられているわけでございますが、この考え方でも明らかにされておりますとおり、この法案は現憲法の枠組みの中で立法するというものでございます。したがいまして、武力による威嚇とかあるいは武力の行使を伴わない協力隊の派遣というようなものになるわけでございます。当然のことながら、この法案我が国憲法の枠組みの中での立法であるということでございます。
  99. 和田静夫

    ○和田(静)委員 今も述べられましたように、この協力隊の任務、武力による威嚇や武力の行使に当たる行動は行わないとされているのですが、第一義的には戦闘の行動目的としていなくても、結果的には戦闘に巻き込まれる。海部総理は、危険なところへ行かせない方針だ、九月二十七日の記者会見で述べられたのですが、例えばイラクもかなりの射程を持つミサイルを保有していること一つを見ても、危険でない場所などあろうはずがありません。政府考え方を忠実に守ろうとすれば、協力隊の任務は座して死を持つことに私はなりかねないんだ、こう思っておったところが、けさの報道によれば、現在サウジアラビアに派遣されている医療先遣隊が、軍施設での治療をめぐって多国籍軍対立している、そういう事実がある、報道があります。これは一体事実なのかどうか。  「外務省は「多国籍軍への協力のなかに軍関係施設での治療も含まれていることは了解済みのはず」」こう主張していますね。これが事実なら初めから前線に派遣することも認めていったということになります。先遣隊の任務というのは現地調査が主ではなかったのですか。そういうような外務省のやり方というのは、私は決して容認できるものではない。そして、この事実関係が明らかにしているように、けさ来指摘をしている私の危惧というのは、もう現実化をしていると言って過言ではないのではないでしょうか。
  100. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 本日の毎日新聞に出ましたサウジアラビアに派遣されました医療先遣隊の記事につきましては、内容が非常にミスリーデイングな箇所がたくさんございまして、必ずしも正確な状況を伝えてはおりません。  確かに先遣隊が現地に行きました際、いろいろなサウジアラビアの医療施設を視察、見学いたしまして、日本としてどういう形で医療協力を行うのがいいかということを調査しているわけですけれども、その幾つかの病院の中で、最近リヤドにできましたいわゆる陸軍病院があるという話も出てまいりましたし、最近できたから医療施設とかお医者さん、看護婦さん等も足らないので日本から協力していただけたらありがたいという関心も示された、それは事実でございます。ですけれども日本政府が当初からそういう陸軍病院等に医療チームを派遣するという予定があったということは事実ではございません。  私たちは、まずこの十七名の先遣隊の方にサウジアラビアのリヤドのみならず東部の主要都市にある病院施設等も見学していただいて、視察していただいて、一部の方はジョルダンの難民キャンプも今視察に行っておりますけれども、その結果を踏まえて、団長あるいは医療チームのリーダーの意見も聞いた上で、どういう医療協力の仕方が望ましいかということを判断しようということで今検討している段階でございます。
  101. 和田静夫

    ○和田(静)委員 協力隊の派遣対象は、国連憲章第四十二条に基づく国連軍、それから国連決議に基づく平和維持活動、すなわち平和維持軍、停戦監視団への協力、三つ目に国連決議を担保するための国連加盟国の自主的行動、すなわち今回のような多国籍軍への協力考えられているようですが、この多国籍軍協力対象に含めるということは、けさ来指摘をしますように特に問題であります。  つまり、多国籍軍は、国連決議担保のためという理由をつけたといたしましても、その行動国連によってオーソライズされたものではありません。あくまでも当該国家の自由的行動でありまして、その意味で、戦闘が発生すればそれは集団的自衛権の行使としか言いようが私はないだろうと思うのであります。こういうような協力をすることは、たとえ非軍事面といっても憲法第九条に抵触をすることとなります。また、そのような多国籍軍への協力というのは、実態的には指揮系統面でも協力隊が多国籍軍の傘下に入ることを意味するでしょう。ますます集団的自衛権行使の形態を私は濃厚にすることにつながっていると考えていますが、大臣いかがでしょう。
  102. 柳井俊二

    ○柳井説明員 国連平和協力隊につきましては、御案内のとおり、現在政府でその案文を練っているところでございます。したがいまして、詳細につきましては現在お示しできませんけれども、近く条文が固まりましたところでお示しいたしまして、御議論いただきたいと思います。  いずれにいたしましても、私どもは、今度の法律によってできます平和協力隊が多国籍軍の指揮下に入るというようなことは想定しておりません。これはあくまでも我が国が自主的に判断いたしまして、国連決議に関連してとられます国連の平和維持活動に参加する、これを支援する、協力するということでございまして、いずれかの軍隊の指揮下に入るというようなことは想定しておりません。
  103. 和田静夫

    ○和田(静)委員 総理がニューヨークの講演で武器輸出規制を訴えられたと言われています。日本政府として、そうすれば外務大臣、どういうような武器輸出規制を世界に働きかけていかれるのですか。
  104. 中山太郎

    中山国務大臣 平和国家として日本が今日まで武器輸出三原則というものを守ってきた、これは与野党を通じての一つの大きなコンセンサスであったと思います。しかし、このような武器輸出三原則、これは我が国だけが維持している一つの理想に近いものであろうと思いますが、国際社会においてはこの武器輸出を盛んにやっている国が実に多くある。米ソのみならず、平和中立を叫ぶ国も武器輸出をやっている現実がございます。また発展途上国等においても武器を製造して輸出して、輸出産業としている国家もございます。  こういう中で、私ども理想を掲げている日本としては、武器のいわゆる輸出国際的に低めていくことに強い主張をしなければならない。私ども、やはり紛争をいかにとめるかということが最大の目的でございまして、この武器輸出がとまれば国際的な平和と安全がより確保される。一方、この武器輸出の規制に関する問題については、非同盟諸国を初めとして多くの国が自分の国の安全保障のために武器を輸入する、輸入しているという現実もございまして、ここいらのところが、これから国連中心国際社会武器輸出というものを規制する方向を強く打ち出していくことが必要ではないか、このような観点で私は国連でも意見を申し上げたわけであります。
  105. 和田静夫

    ○和田(静)委員 私も今の答弁の最後の結論的なくだりを非常に考えたがゆえにこの問題提起をしたのですが、特に総理は、技術革新の結果として大量破壊兵器が出現をし、武器輸出規制の道義的責任をより大きなものとしたと述べられていますが、その一方で防衛庁が、大量破壊兵器の一部分を構成をすることになるであろうミサイル用のロケットエンジンのアメリカとの共同研究に合意をしたということがある。これでは、せっかくの海部総理の発言の信用度は決して増すことにはならぬだろうというふうに考えます。武器輸出規制を提唱はしたが、今もお触れになりましたように、自分では大量の武器を輸入しているというのでは、これは武器輸出国や第三世界などの武器輸入国にも理解されるわけがないということも一面では考えなければなりません。武器輸出規制の意思を示す意味からも、私はまず日本武器の輸入を取りやめるべきではないだろうか、このことを一つ提言をします。  今回のイラククウェートへの暴挙も、その根底には、イギリスが国益のために無責任に国境線を過去において引いたことが遠因であることもありますが、イラクがこれほどの軍事大国になったのは、これは私は過日中国に行って中国の指導部の皆さんにも率直に言いましたが、中国をも含んでの話であったのですが、アメリカや英国やフランスやソビエト、中国などが武器供与をしてきた結果でありますよ。そうすると、アメリカは現在イラク周辺国に武器供与を行っていますが、このことは中東地域におけるさらなる軍拡及び紛争の火種となる危険性を後に残すといいますか、そういうことが十分に考えられます。そういうような悪循環を断ち切るためにも、この紛争当事国のみならず全世界における武器禁輸を行う時期に来ているのではないかと実は私は思います。  目前の中東問題で国際的に貢献することも当然大切ではありますが、紛争の根源的芽を摘むという意味からも、国連等に対して一切の武器の供与を禁止することを中山外交の一つの旗印としてしっかりと働きかけること、平和憲法に生きる日本が今最もやらなければならない国際貢献の一つであると実は私は考えているのですが、いかがでしょう。
  106. 中山太郎

    中山国務大臣 我々は国際社会の平和と信頼の中に生き続けたいというのが、日本の大きな理想でございます。そういう中で、武力による侵害がないという社会を構築することも我々の国民の大きな願いであるわけでありますけれども、残念ながら現実の社会は、我々が車守防衛に徹してこの国を守っていくという今日までの姿勢、しかしそれだけでは守り切れないということで、アメリカとの安全保障条約によって過去のいわゆる米ソ対決時代の中に私どもは平和を維持し続けてきた。  こういう一つの経過の中で私どもは、今回米ソ対立が、いわゆる冷戦が終わりを告げるという時代の中で、安保理中心にいろいろな五大国が、実際五大国は強大な武力を持っているわけでありますから、この五大国自身国際社会安全保障をどうするかということをこの安全保障理事会という名のもとに議論をすることが極めて必要ではないか、私はそのように考えております。
  107. 和田静夫

    ○和田(静)委員 今まで指摘しただけでも、今回の国連平和協力隊構想が抱える問題点が多くあります。かつ、私は深刻で重大な問題ばかりであると思います。しかも、中国を初めアジアの諸国は、今回の我が国考え方に強い懸念を表明していることも忘れるわけにはいきません。海部政権は拙速に事を運ぼうとする姿勢を改められて、むしろアジア諸国民に目を向け、十年後あるいは五十年後をにらんだ明確な外交哲学を構築して、その上で本問題を考えていくべきではないだろうかと思います。  言うまでもなく、戦後の冷戦構造が崩壊をして、国際社会が新たな安全保障秩序を求めつつある、そういう状況の中で、今回のイラクの暴挙を契機に、集団安全保障機構としての国連が見直されています。それを中心とした安全保障秩序の枠組みをつくらなければなりませんし、つくられようとしています。従来から国連中心主義を掲げる我が国国連に積極的に協力すべきであることは、これは言うまでもありませんし、大臣の大変な努力を多とするものでありますが、しかし、私はその場合にも踏み外してならないことは厳然としてあると思うのです。  それは、過去の歴史への反省から、平和憲法のもとで、国際紛争解決武力を使わないという平和政策の国是であります。これなくして世界における日本の存在価値は、ある意味ではないと言っても過言ではないほどのものだろうと思うのですね。今我が国が最も必要なことは、国際的な責任を果たす上で平和憲法日本憲法を最大限に生かす道を探ることであります。そういうような趣旨から、現段階で私は次のような暫定的な考え方を述べておきたいと思います。引き続いて、予算委員会等で私はいろいろの論議をさせてもらうつもりでおります。  つまり、日本憲法国連憲章の枠組みの中で我が国国連協力隊的な組織を持つ、ただし、それにはいかなる形態であろうと自衛隊の参加は認めない、それ以外の公務員、民間人で構成をして、国連の要請に基づく平和維持活動として、あくまでも民生、行政上必要な業務に限定した活動分野に従事するということ、そういうものであります。これは極めて制限的な人的協力でありますが、これに加えて国連の諸行動に広く積極的な財政的協力を行う。こうしたことを国連加盟諸国の理解を十分に得る、そういう努力が続けられるべきだろうと思います。大臣の所見を承っておきます。
  108. 中山太郎

    中山国務大臣 去る七月二十八、二十九日にインドネシアのジャカルタで開かれましたASEAN拡大外相会議で、実はマレーシアのアブハッサン外相から、このアジア・太平洋地域において米ソスーパーパワーが引いていく、そういう中で、経済大国になり技術大国になった日本軍事大国になるのではないかという心配をアジアの人々は持っているというお話がございました。  私はそのときに、日本には国民のコンセンサスとして、我々は再び侵略をしない、そして平和憲法のもとで我々はアジアの一員として、アジアの人たちとともに手をとりながらアジアの繁栄のために努力をしていく、こういう考え方で専守防衛自衛隊維持し、そしてそれを補完する機能として日米安保条約を堅持してきて平和が保たれているということを申し上げ、このアジア・太平洋地域の代表者に理解を求めたわけであります。委員指摘のように、我々の平和憲法というものに対する理解は、先般の中東五カ国を訪問いたしました際にも各国に私は説明をし、各国の首脳はこれに理解を示しております。  私は、外務大臣として一番これから注意をしなければならないことは、アジア・太平洋のかつての戦火によって日本から被害を受けた人たちがまだたくさんおられます、あるいは子供たちは語りぐさにそのことを聞いているわけでありまして、日本の、この国際連合決議によって、そうして我々が平和協力隊をつくっていくという考え方の中に厳しい制限を付しておく必要がある、それによってアジアの人たちが日本国際的な平和協力に対する信頼を持っていただける可能性がそこに出てくるのであろう、このように思っておりますし、またこの平和協力が非武装、非戦闘集団であるということを原則に考えておりますから、私どもとしては、アジアの近隣諸国の平和維持活動のグループがあるならばそれらのグループと協力をしながら、例えば北欧国連待機軍が各国と一緒に平和維持活動協力をするように、相互の信頼関係維持しながら、国連の新しい世界平和への管理機構に参加する考え方を堅持しなければならない、このように考えております。
  109. 和田静夫

    ○和田(静)委員 あと三分ぐらいになってしまいまして、防衛庁長官、恐縮ですが、白書問題に触れる時間がなくなりました。  最後に、日朝関係についてちょっと伺っておきますが、朝鮮民主主義人民共和国との関係の、国交正常化のための政府間交渉、これは十一月一日から始めたいという要望があって、金丸・田邊代表団、これを受けたように私たちは認識をしていますが、そういうようなことで始まりますか。  二つ目には、その政府間交渉の中で何を協議をするかということでありますが、最も早い時期的に設定できるものは、例えば相互の事務所の設置問題、直行航空路の開設問題、在日朝鮮人の法的地位の保証問題、パスポートの北朝鮮除外条項の削除問題などの解決は、一定の日時を将来に外務省、見ることができるのではないだろうか。  それ以外に謝罪と償いという非常に大きな問題がありますね。経済協力問題、あるいは大蔵省の関係でいえば関税の平等化の問題あるいは過去の債務の取り扱いの問題、通信衛星の利用問題などというようなものがありますが、これらの問題について既に何かの構想をお持ちでしょうか。政府からも随行があったわけでありますから、その辺のことをどうお考えになっていますか。  それからもう一つは、総理がアメリカ大統領に対して、日朝関係の改善に韓国との関係を配慮しながらバランスのとれた進め方をしたいと伝えたと言われるのでありますが、バランスのとれた進め方というのは何を大臣、意味していましょうか。
  110. 川島裕

    ○川島説明員 御説明申し上げます。  三党で採択されましたいわゆる共同宣言におきましては、「国交樹立の実現と懸案の諸問題を解決するための政府間交渉が、本年十一月中に開始されるよう政府に強く働きかける」こういうふうになっております。それを受けまして私どもとしては、具体的な時期、それからどういう問題を取り上げるかということは今鋭意検討しております。日韓の場合は大変多岐にわたった交渉でございまして時間もかかりましたけれども、当然のことながら日朝国交正常化、大変大きな問題だろうと思っております。  ただ、先生が御指摘になりました航空路とか通信衛星とかあるいはパスポートとか、その辺の話は、国交正常化交渉を待つことなく、これはこれで速やかに動かせるのではないかというふうに考えております。事実航空路、これは直行チャーター便でございますけれども、この間も飛びましたし今度もまた飛ぶというようなことで事実上動き出しているし、衛星通信も、この間実務者が同行いたしましてかなり話をしたということでございます。
  111. 中山太郎

    中山国務大臣 これからの政府間交渉につきまして海部総理が発言されたというふうに御指摘でございますが、私は外務大臣として、やはり日本が従来途絶えていた北朝鮮との間に国交が開かれるということは好ましいことであり、大変評価をいたしておりますし、この政府間交渉というものは、あくまでも朝鮮半島の緊張緩和と、それから南北の対話、このようなものがうまく進みますように私どもは努力しなければならない。そういう意味で、私ども各国とも十分連絡をしながら、この新しいアジアの時代に向けて朝鮮半島の平和が真に築かれるように日本政府としては努力をしていきたい、このように考えております。
  112. 和田静夫

    ○和田(静)委員 終わります。
  113. 瓦力

    瓦委員長 上田卓三君。
  114. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 私は、今度のイラククウェート侵攻に絶対反対でありまして、ああいう暴挙が二度と起こってはならぬ、こういう立場でございます。とりわけ、東西の対立が解け、また米ソ関係も緊張緩和、こういうことで非常に喜んでおるわけでございまして、その直後だけに非常に残念なことだというように思っておるわけでございまして、何とかこの問題を早期に解決しなきゃならない。人質の問題も非常に大事な問題でございます。  ただ、今アメリカ中心に、国連決議にもあるわけですけれども、何か相撲の世界でいえば押してだめなら引いてみろという言葉がありますし、イソップ物語じゃございませんけれども、北風と太陽みたいなことで、北風で押しまくるとかえってフセイン大統領の人気が上がって膠着状態になる。それから、アメリカももっと早く解決するんじゃないかと思っておったのじゃないかというように思うのですけれども、人質作戦、我々欧米、日本人の感覚でいうとひきょうだということになりますけれども、アラブの世界ではやはり力の弱い人間はそういうような手段をとるわけでありまして、それはそれの一つの理屈もあるんじゃなかろうかなというように思っておるわけでございまして、その点について、力一辺倒のそういう今のやり方についてどのように外務大臣思っておられますか。
  115. 中山太郎

    中山国務大臣 今回のイラククウェート侵攻に対する考え方、これは国連安保理決議に従って各国がそれぞれ、さらにサウジアラビアまでイラク軍が侵攻するおそれがある、クウェートぐらいの小さな国を占拠するだけの必要な軍事力をはるかに超えた軍事力が展開されておりましたから、まずサウジアラビア自身自国への侵略を極めて警戒して米軍への出動を要請したということは、委員もよく御承知をいただいていると思います。こういう中で、米国だけではなしに、アラブ同盟軍、また日本ソ連が共同で声明を発してイラクに対する厳しい批判を行うというようなことで、国際社会は一致してこのイラククウェートに対するいわゆる侵略を非難し、一日も早い撤退を要請している。これに対して、経済封鎖をやることが好ましいということで、四十一条を使って経済封鎖をやった。しかし、それにもなかなか効果が出ない可能性があるということで、今度は四十二条の決議をやってくるというようなことで、現在この状態で膠着状態が続いているということは委員の御指摘のとおりであります。これがよかったか悪かったかということになれば、国際社会ではこれ以外に方法がなかった、私はそのような選択であったと思います。
  116. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 今の大臣の話では国連決議もあり、こういうことで、経済封鎖は僕は当然だろうというふうに思うのですけれども、このままいくと、雨季が差し迫っているとか、あるいは冬に入るというようなことで、それまでに軍事的な云々というようなことも出てきておるわけで、そうすればやはりイラクはイスラエルに対して攻撃をかけたり、あるいは湾岸諸国、特に油田に対してやけになって暴れるというのですか、そういうようなことにもなりかねないし、それがひいては第三次の世界大戦にも発展しかねない。非常に危険な状況にあると思うのですね。  だから、あくまでもこれは平和的に解決するということが大事だし、特にイラク・イラン戦争のときには日本は非常に賢明な、いろいろ批判はありましたけれども、私はああいう態度が大事ではないかというように思っておるわけでありまして、そういう意味で、やはりもっと慎重に日本政治外交というのですか、そういうものが展開されることが大事ではないかなと。アメリカ中心とする多国籍軍の後ろ押しというような形でもみっともないですよね。実際、武器も持たないで足手まといというようなことにもなりかねないわけですし、いわんやそういう通信部門でも、こういうことは非常に大事ですから、そこがまた攻撃を受けるということになればさらに一歩進むということにもなりかねないわけで、そういう点非常に憂えておるわけであります。  例えば、それは米ソが非常に新たな関係になっておるからまた別だということになるのかもわかりませんけれども、アフガンに対するソ連侵攻のとき、あれからかれこれ十年たつわけですよね、まあ撤兵ということになって、あるいはカンボジアからベトナム兵が撤兵する、これも十年かかっているわけですね。クウェートからのイラク軍の撤兵について、それじゃ十年待てないじゃないか、もっと早くということは、それは当然我々も一日も早い方がいいと思っているわけですけれども、あのときはさほどこういうような事態になってないのですよね。  聞きますれば、ソ連軍がアフガンに入ったときに、ひょっとしたらサウジまで入ってくるんじゃないかというようなことで、アメリカの方で米軍がサウジへ進駐するというような計画もあったように聞いているのですね。だから、何かちょっとうがった見方なんですけれども、私はイラクアメリカ、なれ合いしているんじゃないか。イラククウェート侵攻する、そうしたらサウジにアメリカが入る、そしてアラブに米軍の一大拠点ができる。私は恐らく、この問題が解決しても、まだまだ脅威があるという形で米軍は撤退しないのじゃないかなというような感じすらしているわけでありまして、それはよくわかりませんけれども石油が上がってアラブ諸国も産油国は非常に喜んでおるようでございますし、アメリカソ連も非常に石油の値段が上がってそれなりに、ブッシュさんのバックボーンの産油業者は、採算に合う、今まで石油が安ければ採算に乗らないのですけれども、四十ドルほどというようなことになれば十分採算に乗るわけでありますから、そんなことも悪う考えるわけでございます。  それはちょっと考え過ぎじゃないかと思うのですけれども、いずれにしても、イラクとイランの戦争のときにもアメリカは、イラン憎しの余りイラクのああいうような侵攻に対して武器輸出をしたり、寄ってたかってみんながイラクを応援するというようなこともありましたね。だからそういう点で、何か今回のああいう国連決議というのですか、やはり国連の合意に基づいてやるべきであって、アメリカが何か国連軍の創設にも反対だし、国連の分担金も出さぬ、延納ですか、金がないと言えばそれまででしょうけれども、ユネスコに対しても援助しないというようなことも聞いておりますし、国連中心になるべきであって、何か国連みたいなのは当てにならないんだ、要するにアメリカの言うことを聞かぬような国連はだめなんだ、こういうデタントの時代でありながら、いつまでもかえってソ連・東欧を力で抑えつけたような感じがして、そんな甘く見るべきじゃないと思うのですね。やはりお互いに緊張緩和は大事だということであってね。  だから、いわんやそういう中近東などその他の、独立国家でありながらパナマのノリエガ将軍を、それはいろいろ問題があるにしても、逮捕しに行くとか、進攻があったような、そういうようなことでやはりイラクイラクなりの、おまえらどうなんだ、我々のときはこれだけ非難してというような考え方があるのじゃないかと思うのですけれども、その点についてどのようにお考えでしょうか。
  117. 中山太郎

    中山国務大臣 イラン・イラク戦争のときに、イランを批判しながらイラクを支援したというのは歴史の記述にこれは全く相違はない、私はそう思います。ただ、この地域というのは、委員も御案内のように、長い長い歴史の中でアラブ対イスラエルの対決、いろんな問題がございました。  しかし、今回の事件で、今十年ほどたって平和のうちに解決したらいいじゃないかという委員のお話がございましたけれども、十年待たずに、十年待っておったら我々の国家経済は崩壊するのです。この冬をどうするかということを私は外務大臣として非常に心配しております。御案内のように、一バレル十五ドルだった七月十五日の油の値段が今日四十ドル、今委員おっしゃったように。四十ドルになりますと、冬場になってきたらさらに上がる可能性がある。我々百四十二日分の備蓄を持っておりますけれども、これをどういうふうにいつ取り崩すかということも国民の生活にとっては重大な問題でありますし、今農家で石油を使わない農家はありません。耕運機、自動車、ビニールハウスの暖房、みんなイラククウェート侵攻による影響が響いてくるわけでありまして、我々はこの問題の解決が一日も早く行われる最善の手段を国際社会と一緒になってやらなければ、我々の国民生活自身がこの冬場に極めて大きな影響を受けますし、生産に関係している企業も、電力料金がこれからどうなってくるのか、都市ガスの値段がどうなるかということを真剣にこの国家政治を預かる者としては考えていかなければならないし、国会においても、そういう観点からこのイラククウェート侵攻に御議論をぜひひとつお願いをいたしたい、このように考えております。
  118. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 私は冒頭にイラククウェート侵攻は絶対許さない、こういうことでありますけれども、今大臣がおっしゃったように、石油の高騰、さらに上がるじゃないか、これは経済封鎖から出てきているのです。何もイラククウェートに入ったから値段が上がったというよりも、それを経済封鎖して、そういう状況の中で私は上がってきていると思うのです。だから下げる方法というのはあると思うのです。  僕は先ほど冒頭に北風と太陽の話をしましたけれども、私もこの九月にソ連・東欧をずっと見てきたのですけれども、やはりあれは緊張状況であればああいうような自由化、民主化は起こってないと思うのです、それはいずれ起こる問題であろうと思いますけれども。ああいう緊張緩和の中で、百家争鳴じゃないですけれども、ああいう自由化が起こってきているのです。フセインが悪いとするなら、ある程度時間を置いて、攻めればますます彼は英雄化されるわけで、ちょっと引くことによってかえって議会も開くだろうし、いろいろな形でみずから墓穴を掘る。暖かな太陽が照らせばそういうことも可能ではないのかな。またいろいろな意味の、そういう石油の高騰などについても解決するのじゃないか。  確かに力の論理というのはよくわかるのですけれどもね。私も大体そっちの方が好きな方なんですよ。好きな方なんだけれども、必ずしもそれだけでうまく成果が上がらない場合はまたいろいろ考えなければ、大アメリカイラクと、もう何かみっともないですよね。やはりわかる方からその点は賢い戦略、戦術を練るべきであって、どっちも手を挙げるということになれば、どうもアメリカも困っているのじゃなかろうか。それを日本が後ろへ行ってごちゃごちゃしたって余り成果も上がらぬのじゃないか。もっといい方法を考えてあげるべきじゃないかなというふうに思うのですけれども、どうですか。
  119. 中山太郎

    中山国務大臣 私ども外交チャネルで聞いております情報によると、サダム・フセイン大統領は、考え方に反対した人たちはいわゆる政治的に抹殺しているという事実があります。こういうふうな指導者のもとで、もし委員の御指摘のように、それじゃクウェートイラクによる武力の制圧、そしてそれを併合するというようなことをじっと見ておれば、なるほど対決はなかったと思います、しかし、国際法上許されない平和への挑戦を、我々平和を理想とする国家としては、やはり国際社会として国連安保理決議によってこれに協力していくということがソ連も入れての合意でございますから、その点はひとつ委員にも、我々が手を緩めればサダム・フセイン大統領はクウェートからじっと兵を引いてくるのかなというような考え方はちょっと政府としては持ち得ない。  今、この影響が我々の国にも及ぶことを申しておりますけれども、私どもの国だけではございませんで、先般日本に参りましたチェコの大蔵大臣言葉をかりれば、ソ連からの石油のいわゆる売買は一五%カットされた、そのカットされた分をイラクに求めていた、それが今度経済封鎖によってだめになったということで、東ヨーロッパはこの冬場に、このイラククウェート侵攻によってもたらされる経済的な打撃は極めて大きい。またバングラデシュ、パキスタンあるいはフィリピン、いろいろな国から日本はただいま、このイラククウェート侵攻による経済影響で支援を求められております。我々は実際、外務大臣としてどこまで、この国際的ないわゆる経済不況による経済協力各国から求められたときにどのように応じていくのかということは、日本国民にとっても政府にとっても極めて大きな問題、そういうことで一日も早い問題の解決によって平和が回復するということに各国とも協力していくことが私は最善の道であろう、このように考えているわけでございます。
  120. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 大臣、先ほどイラク・イラン戦争のことについては一定の見解が出ておるわけですけれども、ノリエガの問題どうですか、パナマ進攻について。あれどう思っていますか。
  121. 中山太郎

    中山国務大臣 パナマの進攻については、問題は、麻薬の問題が一番大きな背景にございました。私ども国連理事会においても、国際社会から麻薬をいかになくするかということで必死になって日本協力しているわけでありますけれども、そういう意味でアメリカの社会は今日麻薬で汚染されているグループが非常に多い、こういうことから、いわゆる国の全体の安全ということを考えブッシュ大統領は決断した、私どもはそのように理解をいたしております。
  122. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 だけれども大臣、これは独立国家ですよ。隣の国の将軍を、悪いことしているからといってそういうことしていいのですか。それだったら、イラクのフセイン大統領が、クウェートはいわゆる王制である、議会も開いてない、あるいは同じアラブ人じゃないか、そういう形でこれを併合するというのと余り変わらないのじゃないですか。理屈が立たぬですよ。——いやいや、そんな、正しいと言っているのじゃないですよ。フセインがやっていることを正しいと言っているのじゃないですよ。だからアメリカにも相当問題があるのじゃないですか。日本人でもそう思っていますよ。アラブ人であるならなおさらそう思っているのじゃないですか。それから、日本みたいなこういう島国だったら別ですけれども、あの国は地続きですよね。幾ら空とか海とか陸上で封鎖してもそれはなかなか難しいんじゃないですか。人質をとられているんでしょう。人質を殺されてもええというなら別ですよ。向こうはもうやけ暴れなんですからね。攻撃されたら何をするかわからないということなんだから、死ぬ気なんだから。だから、もっと知恵を絞る必要があるんじゃないですか。アメリカの論理、今アメリカも困っていると思うんですよ。だから、ヨイショヨイショするんじゃなしにもっと日本の出番があるんじゃないですか。同じ大阪の人間ですから余りいじめたくないと思うんですけれども、ちょっとおかしいことを言う国会議員だなと思っておられるかもわかりませんけれども、時間がたてばたつほどやはりそういう意見もふえてくるんじゃないですか。どうですか。
  123. 中山太郎

    中山国務大臣 委員のお話を聞いておりますと、アメリカイラクという一つの図式で私に質問をされていると思います。私は、アメリカイラクという図式、これじゃないということをはっきり申し上げたいと思うのです。その場合だったらソ連イラク批判しないし、厳しいいわゆる制裁に参加をしません。また、中国も経済制裁に参加をしなかったと思います。こういう中で、アメリカイラクの図式だけでこの問題を論ずるわけには私は日本政府としてはできない。私自身エジプトのムバラク大統領やらいろいろな国のリーダーと会ってみて、彼らがアラブ人でありながらイラクのサダム・フセイン大統領にだまされたということをはっきり私は聞いておりますから、そのために彼らはアラブ同盟軍としてみずからの軍隊をサウジアラビアに送っているわけでございますから、ひとつどうか、アメリカイラク対決というものは、軍事力ではアメリカのサウジに派遣軍の数が多いからそういう図式になるかもわかりませんけれども、シリアすらも、今日いわゆるイラクに対する厳しい批判のもとに軍隊を出していることもよく御理解をいただきたいと思います。
  124. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 やはりアラブの人は、僕から言うと、言葉もアラビア語ですよね、それから宗教もそうだし、習慣もある程度、ちょっと方言もあるかもわかりませんけれども、遊牧民でもあるわけです。それを欧米の列強がそういう線引きをしたというような歴史の中で各国ができているわけですけれども、みんなずっと稼ぎに行っているわけですね、前から。そういう点でアラブは一つであるという考え方は強いし、それだけにまたいろいろの利害対立もあるわけで、やはり敵の敵は味方であるというような論理もありますから、日本人感覚ではちょっとはかり知れぬものがあるわけです。だから、国連に、そういう経済制裁とかいろいろ加わっていても裏で何をしているかわからぬというような面も、イランとイラクのああいうような状況を見てもやはり推しはかれぬものがあるんじゃないかというように思っておるわけです。  それで大臣、多国籍軍、特にサウジアラビアをイラク侵攻する、クウェートの次は。どうもそれは可能性ですからね、そういう可能性もあったかもわからぬし、なかったかもわからぬ。だから過剰反応じゃないのかな。やはり、サウジアラビアだけを守るんだったら三万か五万ぐらいの軍隊でいいんで、二十万も二十五万もせないかぬかったかな、というように思うのですけれども、どうですか。
  125. 中山太郎

    中山国務大臣 私は、先般のアラブ諸国訪問の最中に、サウジアラビアのファハド国王と直接一時間半いろいろと話をさせていただきました。そして、八月の一日夜中に突如として侵攻してきた。そういうふうな中で、このクウェートに当時十万を超えるイラク軍がおったわけであります。サウジアラビアにいる軍隊というものはごくわずか。そういう中でこの地域の油田がいわゆるイラクの手に落ちれば国際経済社会は大混乱に入るということで、サウジアラビアの国王自身国家の危険をまず優先に考えていわゆる外国軍の援助というものを求めたということを私は国王から直接聞いてまいりましたから、私はきょうは率直にどのようなことであったかということを申し上げておかなければならないと思います。
  126. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 それはサウジがそう言うたんでしょうけれども、何か待ってましたとばかり、サウジの油田というのですか石油アメリカに握られてしまって、値段を日本輸出する場合はつり上げて、アメリカに頼まないかぬというような場合もあって、それではちょっと言うてあげましょうというようなことで、そこらあたりの一つの切り札に使われる可能性もありますからね、そういうアメリカ自身世界戦略というんですかそういうものがあるのではないか。アメリカもやはり困っていますけれども、特に統一ドイツとか日本とかそういう経済大国石油の高騰で非常に困るというような状況があるわけで、そういう点でやはりあそこの問題が解決してもさらに私は問題が残るんじゃないか。  そういう意味では、不幸中の幸いというわけではないですけれども、やはりユダヤによるパレスチナの、そういう地域に対するイスラエルの建国、私も二年前行ってきたんですけれども、ガザ地区とかヨルダン川の西岸、私も行ってきました。やはりパレスチナ人としては、もう仕方ない、だからそういう点で、共存共栄というんですかそういうものを考えておるようですね。何かそういう点で、後からつけた理屈もわかりませんよ、フセイン大統領は。しかし、やはりイスラエル問題はどうするんだ。パレスチナ問題はどうするんだというふうに言うているわけですから、米ソ、東西がこういうふうに雪解けになっているわけですから、やはりそういう火種をこの際なくするということは私は非常に大事ではないかというふうに思うのです。  その点について、ただイラククウェート侵攻、この問題というのじゃなしにもう少し大きな目で、アラブ世界をまとめるという言い方はちょっと思い上がっているかもわかりませんけれども、そういうものに貢献するようなことでないと、どうも今の日本政府のやり方というものは泥縄式で、何かその貢献策が解決したとしても、中国とか韓国とかあるいは朝鮮民主主義人民共和国とかそういう東アジアの人々に対して、かつてのそういう嫌な思い出がありますから、だからそこらあたりはやはりじっくりと考えなければならぬのではないか。そういう意味で、中東情勢についてだけ申し上げると、やはりそういうイスラエルの問題も同時に解決していくというような考え方がありますか。
  127. 中山太郎

    中山国務大臣 このイスラエルとパレスチナの問題は、日本政府としては、昨年日本を訪問されましたPLOのアラファト議長と私、一時間半懇談をいたしまして、やはりテロをまずやめること、そしてパレスチナ人によって民族の自決ということを日本政府としては考えているということも申しましたし、また、イスラエルの外務大臣も前後して来られまして、私は率直にイスラエルの占領地域からの撤退を日本政府としては要請するということを申しました。そして、この地域に平和が来た場合には、日本政府はこの地域の経済と民生のために応分の協力をすることも当時申しております。  こういうことで、今委員指摘のように、アラブの世界におけるイスラエルとアラブの対決というものは極めて長い歴史がありますから、この問題を無視してアラブ全体の平和というものはなかなか考えることが難しい。しかし、この地域が抱えている民族問題、宗教の問題、一方ではまた抱えている膨大な負債、これは大体千六百五十億ドルぐらいに上ると言われております。これはヨルダンの皇太子から私は直接聞いた話です。だから、それをどういうふうに返済していくのかというこのアラブ地域全体の問題、こういうものを十分考えながらこの地域の安定のために私ども協力をしていかなければならないと考えておりますけれども、当面、イラククウェートからの即時撤退を私どもは強く要請をするということが目下の急務であると考えております。
  128. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 それは目下の急務であることは事実だと思うのですけれども、しかし、例えばこれも国連安保理事会決議で二百四十二号、二百五十二号、三百三十八号、要するにガザ地域に対する、あるいはヨルダン川西岸に対するそういうイスラエル軍の侵攻に対してやはり撤退すべきだということについて、何もしていないですよね。イラクのときだけは非常に熱心ですよね。熱心なのはいいのですけれども、やはりその点についてどうも我々の感覚とまたアラブの世界では、日本が北方領土と言うように、どないなっているねんイスラエル、これなんですよね。何もそれでフセイン大統領のイラククウェート侵攻したことを正当化できるわけじゃないのですよ。わけじゃないんだけれども、やはりそれはそれの理屈が通るのですよ、その世界では。全部が賛成しているわけじゃないのですよ。だから、そこらあたりをやはり考えなきゃならぬのじゃないか。その点どうですか、しつこいようですけれども
  129. 中山太郎

    中山国務大臣 十九世紀後半、ユダヤ人がいろいろな国で大変大きな弾圧を受けていますね。先生もよく御存じだと思います。この弾圧を受けた中で、ユダヤ人の人たちの中にシオンの丘に戻ろうという考え方がシオニズムとして出てきたことも歴史が物語っています。こういう中で、一九三〇年代でしたか、第一次世界大戦の前にユダヤ人が大変な圧迫をドイツからも受けている。  こういう中で戦後どういうことになったかというと、一九四七年にいわゆるイスラエルとパレスチナ分割の決議国連で行われて、一九四八年にイスラエルが独立をする、それを認めないシリアとかエジプトが中東戦争に入る。こういう一つの大きな歴史の流れの中に中東は生きているわけでありますから、我々が北方領土と言うようなこととまたおよそ考え方の違う、西暦紀元、二千年前からの一つの大きな争いが続いているわけでありまして、こういう中東地域の特色というものは、なかなか日本から見ると理解しにくい問題が極めて多い。特に我々とは宗教が全然違う。また、国家のいわゆる民間資本、これが地域へ投下している資本率も極めて低い。また、この今申し上げたような歴史の中におけるイギリスとかフランスとかいろんな国の権益、政治支配力、こういうものと日本との政治力はおよそけた外れな違いがあります。  そういうことから考えると、この地域というものは、我々にとっては原油を供給している大きな地域であると同時に、彼らにとっては、これからの新しいアラブづくりに日本のぜひ協力を求めたいという気持ちもあることは事実であります。こういうことで、私どもはこの地域の平和を一日も早く回復をするということに努力をしなければならない、私はそのように考えております。
  130. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 まあいろいろ理屈はあると思いますよね。二千年ほど前に、昔我々の先祖が住んでおったんだ、宗教的なそういうことで帰ってきたんだと、これも一つの理屈ですよね。だが果たしてそれが正しいか。既にその地にはパレスチナ人が住んでいるわけですからね。だからそういう点で、——大陸の場合はいろいろありますよね。ルーマニアだって、何か彼らはローマ人であるということを言うているが、それじゃイタリアへ帰るのかというわけにもいかぬわけでしょう、まあ言うたら。だからそういう、かつて我々の先祖があっちにおったんだから、あるいは宗教的にはどうだというのは、そんな理屈をこねていたらやはりイラクだって、いや、クウェートはもともと我々のものだというような理屈にもなりかねないわけですからね。  だから、まあいずれにしても主権国家を侵すということはいかぬわけで、その点について、何を言うても日本は手を汚すのか汚さないのかということが大事ですから、やはり経済大国軍事力を背景にしないで、世界平和のために、あるいは国連決議に基づいて行動する、国連決議に基づいてとかあるいは関してとか、あるいは実効あらしめるためにということで拡大解釈して変な形で——まあアメリカとも仲よくせないかぬこともよくわかっているのですよ。しかし、それに対して追随するんじゃなしに、やはりノーと言うときはちゃんと言うということが私は大事ではないかという意味で申し上げているのでね。さりとて、大臣立場ですから、やはりもう既存の方針がずっと進んでいるわけだから、私の一発言でそれで変わるとは思っていませんよ。しかしやはり言うておくことはちゃんと言うておかぬと私はだめだというふうに思うのですね。  それから、時間の関係もありますけれども、どうですか、ちょっと立場を変えて、防衛庁長官もお見えでございますけれども防衛白書からソ連の脅威という言葉がなくなりましたね。それで、朝鮮民主主義人民共和国との関係も、金丸元副総理、田邊副委員長等が参りまして、まだ国交を正式な回復はしていませんけれども、もう大体仮想敵国はなくなったんじゃないですか。まだありますか。ちょっと聞かせていただきたい。
  131. 石川要三

    石川国務大臣 今、ソ連が非常に大きな民主化の方向に向かって激変していることは御承知のとおりでございまして、そういう中で、デタントというようなこういうことから、昔と違った軍事力の行使というものは非常に難しくなっていると思うのです。それに加えて、経済的な面から見てもさらにそれが非常に難しくなっていることは、これはもう今さらここでちょうちょうするまでもない。  しかしそうかといって、反面、現実に極東ソ連軍の軍事力の存在というものはどうかということを眺めますと、これは、確かに量的な面の減少というものは多少は行われていることは事実でありますけれども、しかしむしろ、近代化、四世代のものから近代的な装備へのそういう移行というものが一方にはかなり進んでいることも事実であります。ですから、そういう軍事的なプレゼンスということから見ると、かなり私どもはまだその存在というものについては注目しなくてはいけない、こういうふうに思っております。  ただし、委員も御承知のとおり、今申し上げましたように、ソ連の最新の、特に新思考外交、こういう展開というものは、これはヨーロッパだけではなくてアジアの中にもこれが私は展開されつつあると思うのです。そういうものを期待して、そして今回の白書の中には、従来使っておりました「潜在的脅威」という言葉はむしろ国際的ないろいろな情勢の変化の中でこれは削除してもよかろう、こういうことでこの削除をしたわけでございまして、軍事的なプレゼンスというものはかなりまだある、そのような認識を持っているわけでございます。
  132. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 防衛予算はどういう状況になったら削減するのですか。ふやす一方ですね。世界情勢が変わってもまだまだ、脅威はなくなったけれども現実にあるんだということで、どうなれば削減するのですか。
  133. 石川要三

    石川国務大臣 これは単なる理論的なことだけで言えば、世界じゅうがますますデタントに向かって、そして理想的な、私ども考えているようなそういう理想郷がもし実現するならば、当然これは私どもも大いに防衛費というものは削減して結構ではないか、こういうふうに思うのです。  ただ、委員も御承知のとおり、今日の我が国防衛政策というものは、これは大綱に基づいて行っているわけでありまして、その大綱の性格というものは、言うまでもなく、いわゆる国際情勢変化、特に脅威論によって成り立っているわけじゃないわけでありまして、むしろ独立国家としての防衛力のいわゆる完全な空白というもの自体が周囲から新たなる不安を起こす、こういうような認識のもとにやっているわけでありますから、したがって、独立国としての持つべきいわゆる平和時における最低の防衛力ということで行っているわけでありますから、どういうときに削減するかといっても、私どもはそういう一つの、決して周囲の諸国の脅威によってこれが成り立っているものでもないし、また国際情勢が急に緊迫したからふやすとか、あるいは急にこれが緩和されたから減らすというような、ダイレクトにそういうものを受けるものではないということから見てひとつ御理解もいただきたい、かように思います。
  134. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 ですから、日本は一番最後に軍縮するわけですか。日本は、世界各国がみんな軍備を廃止するのを見きわめて、ああこれは大丈夫だというたときするのですか。そんなものじゃないでしょう。やはり軍縮交渉というのも大事ですよね。だから、日本自衛隊もこれだけ削減するからソ連も極東にあるやつをこういうように削減してほしいとか、それは北に対しても当然中国に対しても、お互いそういう努力が大事じゃないですか。どうですか。
  135. 石川要三

    石川国務大臣 我が国が一番最後に軍縮するとかそういうことは、私は余りにも単なる論理の問題ではないかと思うのです。むしろそれよりも、現実的に私どもは特定の国の脅威によって我が国防衛政策というものを打ち立てているわけではない、むしろ平和時における独立国家として持つべきものは持つ、こういう憲法と専守防衛の国是に従って成り立っているわけでありますから、そういう点で御理解もいただきたい。
  136. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 まあ平和協力隊ですか、協力法というのを提案されようとしておるわけですけれども、こういう社会ですからやはり国際紛争というのはあるわけですから、だからそういう意味で将来国連軍とか——大体アメリカは反対なんですよね、国連軍の創設は。世界憲法アメリカにありということで、彼らのイニシアチブが貫徹しない限りはだめなんですよね。おかしな国ですよね。ちょっと注意せないかぬですよ、これは、実際問題として。それから、国際平和維持軍というのですか、そういうものもこれは強化せないかぬとは思いますよね。日本だってそれに対して参加せないかぬだろうというふうに思うのですけれどもね。  こういう、ソ連との関係あるいは北との関係も道を開いてきているわけですから、自衛隊を増強しながらそれに参加するというのじゃなしに、大幅に削減して、特に陸上自衛隊なんか、それは失業問題なんかも起きますので問題あるかもわかりませんけれども、五万や十万ぐらい割いて平和維持軍にくらがえというのですか、一たん自衛隊員をやめてもらって再就職ということになるのでしょうか、やはりそういうようなことも考えていかなければならぬのではないかなというふうに思うのですが、どうですか。
  137. 石川要三

    石川国務大臣 我が国自衛隊の数が、定数では三十万、実態は二十五万ぐらい、特に陸が一番多いといっても、十八万に対して今現実は十五万人ぐらいでございますが、そういうような現実から見て、決して私はこれは軍事大国とは思っておりません。そういう中で、さらにこれを十万人ぐらい削減したらどうだという、そういう御意見については私は少なくとも賛同はいたしかねることでございます。
  138. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 いずれにしても、やっぱり海外派兵ということになるわけですから、自衛隊員を出すとね。だから、そういう点で世間が納得するというのですか、アジア諸国がなるほど日本自衛隊を縮小しよったな、防衛予算も減らしよったなと、確かにそういっていろいろ高度化というのですか、技術、兵器も進歩しておりますから、必ずしも人数が多ければいいというようなものではなかろう。やっぱりペレストロイカじゃないですけれども自衛隊を見直す時期に来ているんじゃなかろうかというように思うので、今すぐ廃止とかいうたって、それは社会党も非常に柔軟になってきておりますから、その点は漸次削減ということじゃないかと思うのですけれどもね。やっぱりその努力を私はぜひともしなければならぬ。  だから、今政府考えている平和協力隊というものと平和維持軍というのですか、というものは全然違いますよね。どっちなんですか。国連の平和維持軍により近い、大臣、先ほどの先輩の発言で何か北欧諸国のようなと、あれは僕は非常にいいと思うのですけれども、ああいうものになるのですか、実際に。それともやはり多国籍軍とかアメリカのちょうちん持ちみたいになるのですか。
  139. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 私たちがただいま検討しております国連平和協力法のもとでの日本協力の態様といたしましては、いろいろな形が考えられるわけでありますけれども、一義的には国連の平和維持活動、先生の言われました国連の平和維持軍の範囲が今どこまで念頭に置いて言っておられるかちょっと存じませんけれども国連の平和維持活動につきましては、平和維持軍の派遣ですとか監視団、停戦監視団の派遣ですとか選挙監視団、あるいは輸送、通信、医療、その他いろいろとございますけれども、今念頭に置いておりますのは、停戦監視ですとか選挙監視、医療、輸送、戦災復旧とかいろいろな分野での協力考えております。  ただ、国連の平和維持活動への協力だけでなく、さらに国連決議があるような場合に、その実効性確保の観点から、日本として独自に協力し得る分野についても検討中でございます。
  140. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 まあ自衛隊員でなくてもいいんじゃないですか、ずばり言うて。私は、やっぱり憲法上の問題もありますから、集団自衛権の問題にも発展しかねないし、いつ行き過ぎるやわからぬというようなものじゃなしに、国民の皆さんが、世界の皆さん方が安心できるようなものにきっちりしていかなければいかぬのじゃないか。  特に、私もパレスチナ、ガザ地区、二年前に行きまして、UNRWAというのがありますね、難民救済機関、あれは非常に立派な活動をしていますよね。日本は援助していますか。それとか、あるいは国連開発計画、そういうものに対してもっともっと、多国籍軍に二十億ドルを援助するというんじゃなしに、国連に、あるいは難民救済というんですか、そういうものにもっとお金を出すべきではないかと思うのですけれども、どうですか。
  141. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 日本政府といたしましては、ただいま先生から御指摘のUNRWAにつきましては、毎年約一千万ドルの拠出を行っておりまして、特にパレスチナの人たちの教育ですとかいろんな分野で大いに役に立てていただいております。  また、国連のUNDPにつきましては、最近の為替レートの変動等もございまして、日本は今三位にちょっと下がっておりますけれども、従来からアメリカが一位、日本が二位の大口拠出国として大いに貢献をしております。  あと難民援助につきましては、同じくアメリカに次ぎまして二番目の拠出国でありますし、特にアフガニスタンの難民援助につきましては、日本は大幅に一位の地位を維持しております。日本のアフガニスタン難民に対する援助につきましては、一億ドル以上の拠出を行っております。
  142. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 四十億ドルというのですから、やはりそういうUNRWAとかあるいはUNDPですか、そういう組織、それからもう一つ、今問題はヨルダンですよね。だから海部総理が行って、経済封鎖というのですか、イラクと手を切れと、そうしたら援助してやる、そういうふうな——あの国も困っているのですね。かわいそうですよ、実際。イスラエルとイラクに挟まれて、そこに難民が集中しているわけですから。テレビで放映されていますから、そういうところにもっと資金を投入して援助するということの方が、四十億全部そこへつぎ込んでもいいぐらいじゃないかというように私思うのですけれども、どうなんですか。
  143. 内田富夫

    内田(富)説明員 御説明申し上げます。  この湾岸情勢及び中東和平の問題につきましてのジョルダンの重要性ということにつきましては、私ども外務省の事務方といたしましても非常に注目しているわけでございます。ここは、一つには御指摘のようにイラクと隣接しておるということ、それからイスラエルとも隣接しておるという非常に難しい立場の国でございます。こうした中でフセイン国王が苦労されて国の運営に当たっておるわけでございますから、そのいろいろな政治的、経済的な困難がありまして、それについては、例えばアメリカ等におきましても実はジョルダンについて批判的な評価ということも一部にはあるわけでございますけれども、しかし我が国といたしましては、こういったジョルダンの難しさというものを理解しながらこれをやはり支援していくということでございますので、今般の海部総理の中東歴訪におきましても、ジョルダンを重視し、合計二億五千万ドルの緊急援助、それからIOM、UNDRO等を通じる難民援助、これらを率先して大量の支援をしていくという方向でございます。
  144. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 イラクそれからクウェートクウェートにはいないんじゃないかと思いますけれども、人質もたくさんおるし、特にアジア人が多いですよね。そういう点でどういう方法がいいのかわかりませんけれども、人質の解放とか難民の救済とか、そういうものに日本がどんどんお金を使うということにしていただきたいというように思います。  アメリカ、それはわかりますけれども、余りヨイショせぬ方が僕はいいんじゃないかな。アメリカの中でも自尊心というのですかね、何か我々は雇われ兵か、日本が四十億ドル出して、ドイツが二十億ドルですか、サウジアラビアが五十億ドルですか、そういう形でよその国から援助してもらって自分らが雇われて戦場に行くというような形で、何かそういうような意見も割とあるようですね。そういう点で余り無理なことをするんじゃなしに、やはり国連という組織があるわけですから、じっくりと、フランスとかソ連ども若干違うようですから、そういう点で日本も独自の外交というものもぜひとも大事じゃないかというふうに私は思います。  時間もございませんので、あと、和田先生から武器輸出の問題があったんですけれども、これは海部総理も言うている、外務大臣もおっしゃっておるようですので。確かに武器を輸入するところがあるんですよね。あるから輸出するという面もあるんですよね。日本は先進国で第一位ですね、武器輸入は。世界で四番目ですね。先進国では我が国が一番武器輸入しているんですよね。来年から減らしたらどうですか。やはり減らすということでないと、輸出を禁止するというような形だけではだめじゃないですか。そういう思い切ったことをしなければだめじゃないか。どうですか。
  145. 藤井一夫

    ○藤井説明員 先ほど私ども大臣から申し上げましたように、私ども防衛力といいますのは専守防衛に徹しておりまして、自国防衛に必要最小限のものを整備さしていただいておるわけでございます。その中には我が国みずからが国産しているものもございますけれども我が国自身武器輸出三原則ということで輸出を慎んでおるというような状況がございまして、すべてのものを国産するというのは非常に割高になってまいるというような事情もございます。そのような事情から、かなりの部分を同盟国、特に日米安保条約を結んでおります米国からの輸入に頼っておるというのが現状でございまして、これを一挙に減らすということは事実上困難であろうか、かように心得ております。
  146. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 減らそうと思ったら減らせるんですからね。減らす気がないから減らせないだけのことですから。そんな、輸出したらいかぬと言うんじゃなしに、私のところも輸入しません、逆にそういうような、一遍にとめるというんじゃない、減らしていくという、国産はだめですよ、要するにやはり軍縮という方向を私はとるべきだというように思うのですね。イラク中東の第一の軍事大国にしたのは、やはりソ連責任ありますし、フランス、それからイギリスですね、アメリカ、中国も、これは国連の安保常任理事国責任ありますよ、はっきり言って。だから、そういう点で手を汚していないのは日本ですから、その点ちゃんとしていただきたい。  半までに終わってくれということですから、もう最後になりますけれども、梶山法務大臣、参議院の方でも一定の見解を出されて、それはそれでいいと思うのですけれども、やはり中曽根元首相の差別発言とか、渡辺先生の発言とか、たまっているんですよね。私はやはり言いわけとかその場で謝るというんじゃなしに、この際どうですか大臣、人種差別撤廃条約、これは百九十何カ国のうち百三十ぐらいの国が批准しているんですよね。我が国だけまだおくれているんですよね。だからそういうものを直ちに批准するという考えはないのですか。そういうことで人種問題、差別問題、人権問題について日本は取り組んだんだと。人権外交ですね、見解をお聞きして終わりたいと思います。
  147. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 日本政府といたしましては、人権問題の重要性、特に人権問題、人権分野で国際連合が果たしております役割重要性というのは非常に評価しております。  そのような観点から、多くの人権関係条約、例えば国際人権規約でありますとか、女子差別撤廃条約等多くの条約を既に批准しておりますし、今児童権利条約等の批准について検討しておりますが、ただいま先生から御指摘を受けました人種差別撤廃条約につきましては、日本憲法との関係、特に団結、結社の自由あるいは表現の自由を定めた日本憲法とこの人種差別撤廃条約が定めております人種的差別の扇動その他を刑罰として処罰するようにという規定との整合性につきまして、日本政府部内で、関係省庁間で検討している状況でございます。
  148. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 差別は犯罪ですから、どの程度罰するかという問題はあると思うのですよ。いずれにしても、世界各国が皆批准しているのに日本国内法との関係でどうのこうのというふうに、格好悪いですよ。私は早くすべきだと思うのですよ。だから、その点は関係省庁とも、法務省あたりとも十分相談して、大臣、ぜひともひとつこの問題について前向きに努力していただきたい、そのことを申し上げまして、私の質問を終わります。
  149. 瓦力

    瓦委員長 次に、冬柴鐵三君。
  150. 冬柴鐵三

    冬柴委員 公明党の冬柴です。  サダム・フセイン、イラクというよりは私はサダム・フセインと言いたいんですが、このクウェートに対する侵攻というものは許しがたいものである、まずこのように私は思っております。国連安全保障理事会でもこれを有権的に侵略というふうに決定をいたしました。これは最終判断で、何人も争うことができない決定である、このように思っております。しかし、このようないわば最近では極限事例といいますか、何人も許すことができないというようなこのような事例に籍口してということは言い過ぎかもわかりませんけれども——戦後四十五年間、我が国はさきの大戦を引き起こしたというそのような責任を自覚し、憲法では恒久平和を誓いました。そしてまた政府も、また国民も、この四十五年間本当になだらかに不戦のための誓い、我が国軍事大国にならないというそのような定性的な歯どめというものを構築をしてまいりました。例えば、先ほども法制局長官もいろいろ述べられましたけれども政府統一見解というものもすばらしい歯どめになって今日に至っていると思うわけであります。集団的自衛権行使の禁止、あるいは自衛隊の海外派兵の禁止及び派遣の自制、このようなすばらしい我々の定性的な歯どめをしてきたわけでありまして、これは我々の日本人の英知だというふうに思うわけでございます。そのようなことから、周辺国家我が国に対する信頼厚いものがあると自負いたしておりますけれども、そのようなものが、今回のこのサダム・フセインの侵攻によって何かこう危うくなりかけているのではないかという危惧を私は覚えるわけでございます。  そのような意味から、きょうはわずかな時間でありますけれども、現在政府が立法準備を進めていられる国連平和協力法というものに関しまして、現在立法準備中ですから最終的な答弁は大臣といえどもできない面もありましょうけれども、私の所感を交えてお尋ねをしてまいりたい、このように思います。  まず、外務大臣にお尋ねしたいわけですけれども、今回会期三十日ほどの臨時国会を召集されるやに伺っておりますし、そこで協力法の成立を期していられると思うのですけれども、もしこれが成立いたしましたときには、物、金、人といいますか、そういうふうに言われているこの人を、この協力法に基づいて中東湾岸地帯に派遣される方針であられるのかどうか、そのような考えをお持ちなのかどうか、その点をまずお伺いしたい、このように思います。
  151. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 ただいま国連平和協力法のもとで、いかに日本といたしましては従来の金銭的な、金の面での協力に加えて要員の派遣、人の派遣の面で国際の平和及び安全のために協力ができるかという見地から検討しているわけでございます。  それで、この新しい法律のもとで湾岸地域に人を派遣するのか、できるのかという御質問でございますが、この法律ができて公布された時点における湾岸情勢等にもよりますけれども、例えば今、現状におきまして医療チームの派遣等を行っておりますが、そのような形での派遣というのは引き続き可能であるというように考えております。
  152. 冬柴鐵三

    冬柴委員 外務大臣、いかがですか。
  153. 中山太郎

    中山国務大臣 法案がただいま準備中でございますから、まだ最終的な法文ができ上がっているわけでもございません。また、国会に提出をさしていただいて、この新しい国際社会の中で日本が新しい形での協力の一つの体制を整えるということでございますので、国民の御理解が得られなければこの法律は成立さしても意味がない。だから、御議論を十分いただいて、そして最終的には議会での採決によって御決定をいただく、こういうことに相なろうかと思いますけれども、この法律ができ上がりましてもその部隊を派遣するということについてはしかるべき準備が必要ではないか、私はこのように考えておりますし、まず第一に、その協力隊に参加をいただく方々、この方々を募集をしなければならない。これは応募していただくことがなければできないわけでございますので、そういうことで国民の御理解をいただくことが第一でございます。そして御議論をいただくことも大事であります。こういう中でこの法案を成立さした暁に、参加していただく方々に十分御理解と御協力をいただくような形で政府は準備をせなければならない、このように考えております。
  154. 冬柴鐵三

    冬柴委員 外務省としては、いろいろな前提はありますけれども、派遣をするという、そのような意図、目的を持って今回の立法作業を進めていられるのかどうか、その点だけです、お伺いします。
  155. 中山太郎

    中山国務大臣 外務省といたしましては、法案が成立をし、いわゆる平和協力隊が編成をされるということが可能になりますれば、できる限りの範囲で国際的な協力をせなければならないと考えております。
  156. 冬柴鐵三

    冬柴委員 これも前提、いろいろな制約があることはよくわかりますけれども、その派遣する人の中にやはり自衛官も入ってもらった方がいい、こういうお考えなのかどうか。その場合に、その自衛官というのは個々の人というよりもやはり一部の組織、例えば部隊なら部隊、あるいは我が国はC130Hという輸送機がありますね、こういうものは乗員五名ほどで動かすようですけれども、その五名にそろって協力隊に入ってもらって、そして国がその協力隊にその機材を無償貸与をして、その五人に操縦をしてもらって、こういう協力貢献策をとる、こういうようなことを希望していられるのかどうか、考えていられるのかどうか。そういう点について、難しいかもわかりませんけれども、外務省あるいは外務大臣としてのお考えで結構ですが、御答弁をいただきたいと思います。
  157. 柳井俊二

    ○柳井説明員 御案内のとおり、九月二十七日に総理大臣国連平和協力法考え方という六項目のものを発表されたわけでございます。その中にもございますように、自衛隊につきましても、その一部の組織または職員が平和協力隊に参加しその指揮下に入るという考え方が示されております。現在私どもこの総理の示されました六項目の考え方に沿って法文化を進めているところでございます。  自衛隊の方々にどういう形で参加していただくかという点は、現在条文化の作業の中で関係省庁の間で詰めているところでございます。近く固まりますればお示しできるようになると思います。
  158. 冬柴鐵三

    冬柴委員 我々は、兵力の海外派兵ということ、こういうことにつきましては、後でまた法制局長官にも伺いますけれども憲法に反するんだ、憲法を改正しない限りそういうことはできないのだ、海外派兵というのは武力行使の目的を持って武装をした自衛官が他国の領土、領空、領海へ至ることだ、そういうことはできない。こういうことですから、それ以外の方法ということは、自衛官が外へ出る場合にはそれじゃ無条件でいいのかということになりますと、いろいろの制限が私は過去の国会答弁とかあるいは国会決議とかの中にあったと思うわけですね。  その点について一つ内閣法制局長官に伺いたいのですけれども、もし自衛官が海外派遣、派兵じゃなしに派遣ですね、として行くということについて、参議院の本会議における自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議というのがありますね。昭和二十九年六月二日、随分古いものですけれども、ここには「本院は、自衛隊の創設に際し、現行憲法の条章と、わが国民の熾烈なる平和愛好精神に照し、海外出動はこれを行わないことを、茲に更めて確認する。」という決議が存在するわけですけれども、今のような総理の指示及び外務省等において立法準備がされているこの協力法、これは、この決議はクリアできるんですか。その点についてお伺いいたします。
  159. 工藤敦夫

    ○工藤説明員 ただいま委員指摘の参議院の本会議におきます昭和二十九年六月二日の自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議、こういうことでございますが、これはやはり従来から私ども申し上げておりますが、参議院におきます決議の問題でございますので、その有権的な解釈、これは参議院においてしていただく、こういうことだろうと考えます。  ただ、その決議がなされた際の趣旨説明、これは当時の鶴見祐輔議員がされているところでございますが、その趣旨説明から見れば、今お尋ねの非武装自衛官の海外派遣、ここまでも想定していたものではないんではなかろうか、かように理解しております。
  160. 冬柴鐵三

    冬柴委員 これは参議院の決議でありますから、最終的な有権判断は参議院がされることであろうと思いますけれども、そういう面があるということも事実ですね。  それから、この派遣先ですけれども外務大臣あるいは総理もそうだと思うんですけれども、許されるならばこの中東湾岸紛争に対して協力隊を派遣したい、このようなお考えを先ほども披瀝されたわけですが、この派遣先が問題だと思うのです。  それで、現在中東湾岸地帯に駐留している軍隊というものは、先ほどから同僚議員からもるる述べられたとおり、憲章四十二条による正規の国連軍でないことはもうはっきりしているわけでありまして、いわゆる多国籍軍であります。その多国籍軍の、例えばアメリカ軍、陸、海、空、海兵隊が行っているようですけれども、どこへ、どんな仕事をさせるために派遣するつもりなのか、そのような点についてもまだ相当いろいろな前提問題ありますけれども、お考えの骨子を伺っておきたい、このように思います。
  161. 柳井俊二

    ○柳井説明員 この国連平和協力法目的でございますけれども、これも先ほどちょっと触れました国連平和協力法考え方の冒頭にございますとおり、国連決議に関連した平和維持活動協力するための体制の整備ということでございます。したがいまして、このような平和維持活動協力するというのがこの法律の目的でございまして、先ほど先生がお触れになりましたような多国籍軍の一部としてそこに入っていくというようなことは全く想定しておりません。
  162. 冬柴鐵三

    冬柴委員 今もこう言われたのですが、憲章三十九条とか四十二条には、国連活動として、国際の平和と安定の維持に関する活動という言葉と、それから国際の平和と安定の回復に関する活動、こういう言葉が厳密に使い分けられて規定されているということは周知のとおりでありますけれども、今政府委員の答弁によりますと、今回の協力法というのは、そのうち国際の平和と安定の維持に関する部分についてのみ協力をするという趣旨なのか、そこら辺のことも非常に大事なことだと思うので明らかにしていただきたいと思います。     〔委員長退席、宮下委員長代理着席〕
  163. 柳井俊二

    ○柳井説明員 ただいま国連憲章をお引きになって御指摘がございましたけれども、これは御承知のとおり、現在存在いたします多国籍軍あるいは過去に存在いたしました国連の平和維持軍というようなものは、この憲章が本来想定しておりました国連軍ではないわけでございます。いずれにいたしましても、御指摘のように、平和のための活動の中には平和維持と言われるものあるいは平和の回復のための活動というものがあるわけでございます。  平和の維持というのは、例えば国際紛争がございまして休戦が成立する、この休戦を維持していく、これに国連が関与いたしましてこの休戦の監視を行うというような活動と言えると思います。それから国際平和の回復と申しますのは、まさに紛争がございまして、これをとめて回復するということでございまして、現在多国籍軍が展開しておりますけれども、これはむしろこのような活動になろうかと思います。  そこで、現在私どもが検討しております国連平和協力法の任務としては、いろいろ考えておりますが、例えば停戦の監視でございますとか、あるいは紛争が終わりましてそこで新しい国の選挙が行われるという選挙の管理、監視、そのような平和維持活動というものも入ってくると思います。また、平和回復のための国際的な協力に対して支援を与えるという活動も入ってくると思います。例えば輸送でございますとか通信でございますとか、いろいろ武力の行使にならないような活動考えているわけでございます。  これもまた先ほど触れました国連平和協力法考え方の中にも入っておるわけでございますが、その基本原則の一つに、現憲法の枠組みの中で立法を行う、これは当然の前提でございますけれども、したがいまして、武力による威嚇あるいは武力の行使を伴わない派遣とするという基本原則がございまして、この中で私ども立法作業を行っております。
  164. 冬柴鐵三

    冬柴委員 外務大臣、平成二年八月二十九日に閣議了解ということで中東貢献策を発表されましたけれども、これの表題は、「中東における平和回復活動に係る我が国貢献策について」と書いてあります。ですからこっちは回復。それから、いろいろ新聞等で発表されている今度の平和協力法については維持と言う。  今説明があったように維持であれば、例えば休戦の監視とか選挙の管理とか、武力の行使を伴わないという意味で、これからもちろん国民の御同意を得なければ進めませんけれども、非常にわかりやすいといいますか、平和国家日本貢献できるような、そのような場面が予想されるわけなんですが、回復となりますと、侵略された土地を相手の意思にかかわらず武力でこれを回復するわけですから、これはその存在、その国連軍あるいはそれに準ずるような兵力が駐留する目的は、ひっきょう回復という言葉は占領地域の奪還であり、現状変更を目的とするわけですね。こういうところへ我々の協力隊が踏み込むことがいいのかどうか。たとえ後方における通信あるいは運輸というものであったとしても、これは四十五年間我々が積み上げてきた国民防衛に関するコンセンサスとはちょっと異質なものだ、このように感じるのですが、いかがですか。
  165. 中山太郎

    中山国務大臣 委員指摘のように、この戦後四十五年間我々が積み上げてきた考え方と違うのではないかという御指摘でございます。  私は、率直に申し上げて、四十五年前の国際環境と今日の国際政治環境とはもう比較にならないほどの変化を起こしておると思います。そして、その新しい、国連中心にした、米ソも一緒になって協力をするという平和維持活動へこの国がどのような形で参加をし、協力をするかということにつきましては、大きく考え方を変えるわけでございますから、国会での慎重な御議論国民の御理解がなければこれはできないという認識を私は持っております。
  166. 冬柴鐵三

    冬柴委員 今、国連軍について述べましたけれども、多国籍軍国連とのかかわり合いがなければ我々は援助をしたりするわけにいきませんけれども国連軍といいましても、個々の事例によっていろいろな任務、目的が違うということがあるわけです。  例えば、今の平和維持軍であれば、兵力の引き離しあるいは休戦の監視、そういうようなことを目的にされて、携行する武器についても、監視軍についてはもう何も持たず丸腰で双眼鏡だけで弾の飛び交う中で大きな役割を果たしている。また、兵力の引き離しその他についても、もう持つのは本当に小火器だけというようなことを聞いております。しかし、回復となりますと、四十二条にも書かれているように、陸海空軍が、敵対する侵略者に対して国連が一方の当事者となって攻撃するというわけですから、四十二条のものでなくて多国籍軍であっても、これに手をかすというのは相当異質だなというふうに思うわけです。  そこで、そういう前提に立ちまして、法制局長官に伺いますけれども、先ほども同僚議員の問いに答えられて読まれた、たしか昭和五十五年十月二十八日の政府答弁書だと思いますが、自衛隊国連警察軍への派遣の問題についての政府統一見解というのをもう一度お示しいただけますか。
  167. 工藤敦夫

    ○工藤説明員 委員ただいま御指摘の昭和五十五年の質問主意書に対する答弁書でございますけれども、これは国連軍への参加ということについて述べておりまして、いわゆる国連軍への参加の問題、これは「個々の事例によりその目的・任務が異なるので、」「一律に論ずることはできない」、こういうことを前提に置きました上で、「当該「国連軍」の目的・任務が武力行使を伴うものであれば、自衛隊がこれに参加することは憲法上許されないと考えている。これに対し、当該「国連軍」の目的・任務が武力行使を伴わないものであれば、自衛隊がこれに参加することは憲法上許されないわけではないが、現行自衛隊法上は自衛隊にそのような任務を与えていないので、これに参加することは許されないと考えている。」前後かなりございますが、当該部分はそういうことでございます。
  168. 冬柴鐵三

    冬柴委員 これは非常に重大なことを意味するわけでありまして、例えば多国籍軍安保理等でこれがオーソライズドされたとしても、これがもし武力行使を目的としてそこに進駐しているということになりますと、これに対して我が自衛隊が、後方支援であっても、単に物を輸送する、航空機あるいは艦船によって物を運ぶという行為だけであったとしても憲法違反だと書いていますよ、憲法違反。これは自衛官が丸腰かどうかということじゃないのです。自衛官が行こうとしているその先の国連軍の目的、任務が武力行使を当然前提としているかどうか。そこがもし監視団のようなものであれば、それが武力行使を目的としていないということであれば、それでも憲法問題じゃないけれども法律は許していない、こういうことを言っているわけですから、私はそういうふうに理解するのですが、法制局長官、その理解で誤りはありませんか。
  169. 工藤敦夫

    ○工藤説明員 ただいまお答え申し上げましたように、この政府統一見解におきましては、自衛隊がこれに参加する、さまざまな形態の国連軍があるけれどもこれに参加するという形でございまして、こういう場合の参加というのはいわばそういう司令官の指揮のもとに入る、こういうふうなことを考えております。いわゆる協力をする、こういうこととはまたおのずから別の問題であろうかと思います。
  170. 冬柴鐵三

    冬柴委員 では最後に、この自衛官は、防衛庁長官に来ていただきながらお答えいただく機会がなくて申しわけなかったのですが、もし自衛官が行かれる場合、協力隊に一部の組織として参加されるという場合、これはきちっと退職をしてからそこへ行かれるのか、どうなるのですか。そこら辺を防衛庁長官として、もし参加するとするならばどういう形態であるべきだ。その場合にやはり組織として参加しなければ個々が参加したって意味がないという考え方だってあると思うのですね。それからもっと、防衛庁長官も、それは制限されたものであるかもしれないけれどもやはり指揮命令系統が一貫していないと困るとか、いろいろな議論新聞紙上あるようですけれども、また小火器、いわゆるピストルとかそういうものも持っていかしてもらわなければ困るとか、いろいろな意見があるようですけれども、まさか地対空ミサイルまで持っていく、これは考えているのですか。そこら辺あわせて、この法律によって、防衛庁の方でもし参加するとするならばどうあるべきなのか、その点について。
  171. 石川要三

    石川国務大臣 今お尋ねの具体的な例については、まさに今いろいろと協議、煮詰めをしているわけでございますから、今の時点で私からこうだというようなことは言明はいたしかねるわけであります。  ただ、いずれにしましてもどういう形で、ユニットとかいろいろと言葉が出ましたけれども、どういう形にするにしても憲法の枠内でということが前提でありまして、したがって武力行使はしない、こういうかたい一つの枠組みがあるわけですから、それは変えない、絶対守る、これだけは間違いない、かように思います。
  172. 冬柴鐵三

    冬柴委員 法制局長官、自衛隊が参加する場合は憲法違反だ、こういうふうにおっしゃいましたね。自衛隊が例えば資格を併任して、自衛隊員としての資格も保ちながら一つの部隊単位が協力隊に参加する場合は、この今までの先ほど読まれた行政解釈というものは、政府統一見解というのは変更しなくていいのですか、バッティングしませんか。その点だけをお伺いして、私の質疑を終わりたいと思います。
  173. 工藤敦夫

    ○工藤説明員 従来この問題は自衛隊の問題として問題提起がしばしばされてまいりました。そういう意味で、いわゆる自衛隊についてお答えしてきたことでございます。ただ、根底にございますのは憲法九条の話でございまして、憲法九条は我が国はということでございますから、そこからすべて問題は考えなければならない、かように思っております。
  174. 冬柴鐵三

    冬柴委員 終わります。
  175. 宮下創平

    ○宮下委員長代理 次に、山口那津男君。
  176. 山口那津男

    ○山口(那)委員 ただいまの冬柴委員の質問に関連して、まず法制局長官にお伺いいたします。  我が国憲法においては集団的自衛権の行使が禁じられているということは従来の解釈どおりでありますけれども、この行使というのは、実際には武力を行使する、あるいはその行使する意図が明確になったときというふうに理解すべきであろう、このように思いますが、その点いかがですか。
  177. 工藤敦夫

    ○工藤説明員 あるいは私の質問の受けとめ方が間違えておりますかどうか、若干恐縮でございますが、武力の行使というふうなことは現実のその事態事態に起きましたケースによりまして判断されるべきことであろうと思いますが、そういう観念で、実力の行使という観念で考えられている、かように思っております。
  178. 山口那津男

    ○山口(那)委員 その実力の行使そのものは禁じられることは当然でありますけれども、その準備の段階、予備的な行為あるいはそれに密接に関連するような行為も一定の限度で憲法上禁じられている、このように思うのですが、その点の御見解をお願いいたします。
  179. 工藤敦夫

    ○工藤説明員 ただいまのお話でございますが、武力の行使、これは実力の概念でございまして、そういう意味で範疇を、非常にいろいろな広がりの中でどこをということはただいま申し上げましたようにケース・バイ・ケースで考えるべきことと思いますけれども、ただ従来私どもの方が申し上げておりますのは、武力の行使と密着した、あるいは武力の行使と一体と見られるようなそういうことまでは、やはり武力の行使そのもの、それからそれと密接にくっついている、かようなところまでは問題であろう、かようにお答えしているところでございます。
  180. 山口那津男

    ○山口(那)委員 今の見解を前提にしますと、我が国政府の行為として行う場合に、これがたとえ自衛隊であろうと、あるいはその他の公務員であろうと、あるいは協力の名のもとであろうと、あるいは参加の名のもとであろうと、外国軍隊が武力の行使を前提として活動しているところに我が国が何らかのかかわりを持った場合には、今の解釈に従って憲法違反の事態があり得るということになるでしょうか。
  181. 工藤敦夫

    ○工藤説明員 ただいまもお答え申し上げましたように、武力の行使あるいはこれと密着した、それと一体視されるような行為はという形でたしか今申し上げたと思います。  そういう意味で、仮に例えば補給なら補給を取り上げました場合にも、この補給それ自身がすべてそれではいけないのか、決してそういうことではなくて、むしろ武力の行使という側面から見てそれともう全く同一視されるようなものだ、かようなものを申し上げるのであって、およそ今の先生のことであれば、これにかかわりがある、あるいはこれと関連する、そのようなところまで広く私の方は申し上げているつもりはございません。
  182. 山口那津男

    ○山口(那)委員 国内法の一般的な理解としては、実力を行使するグループに資金を提供する、あるいは物を運ぶ、あるいは見張り行為を行う等は共犯として法的には同様の評価を受けるというのが常識だろうと思いますが、この国際的な武力の行使に関しては、その点、法制局長官どのようにお考えになりますか。
  183. 工藤敦夫

    ○工藤説明員 ただいまのその共犯といったようなことと全く同一の次元で考えていいものかどうか、私もちょっと今直ちにお答えする自信はございませんが、例えば、これとかかわりがある、協力している限度においてかかわりがある、この程度のことは、従来からそれは武力行使と一体と見られる、およそ憲法で禁じております武力の行使、これは行ってはならないということとそことは当然のことながら区別されるものだ、かように考え、またはお答えしているところでございます。
  184. 山口那津男

    ○山口(那)委員 外務大臣にお伺いいたしますけれども、今協力法が検討されておりますが、自衛隊の参加が云々をされておる状況であります。これを恒久立法としてお考えになるのであれば、仮に中東の問題が何らかの解決を見たとしても、制度自体は残ることとなるわけです。その点に関してアジアの周辺諸国からの懸念というものが強いわけでありますけれども、これに関して、まずアジアの戦後処理を日本がきちんと行った上で自衛隊の海外出動を検討すべきである、こういう意見もあるわけであります。  そこで、先ごろ北朝鮮に対して一定の国際的な進展が見られる兆しがあったわけでありますけれども、自民党の実力者と言われる金丸信議員が行かれたわけですね。その政党間の共同宣言の中で、戦後四十五年間の償いにおいても明文が盛られたわけでありますけれども、この点に関して外務大臣としての御認識をお伺いいたします。
  185. 中山太郎

    中山国務大臣 先般、金丸あるいは田邊両先生を中心とする自社の訪朝団、北朝鮮政府との話し合いの中で、今委員指摘のように四十五年という問題が言われたというふうに聞いております。  しかし政府といたしましては、日本が第二次世界大戦でいわゆるポツダム宣言を無条件で受諾をして降伏をした、こういう時点で、朝鮮半島に対する日本政府の公的指揮権といいますか支配権というものはそこで消滅をしたという認識を私は持っております。その後日本は、委員も御案内のように連合軍によって占領される、こういうことですべて占領軍の支配下に入ったわけでございまして、いわゆる戦後日本の国というものの立場と朝鮮半島の方々の関係は一応、植民地時代大変な苦痛と、何といいますか苦しみを与えたということは我々は謙虚に反省をし、それに対する国家としてのこれから政府間交渉をやらなければならないと考えておりますが、四十五年の問題は、私はこれは国際的な常識としてはこの償いの中に入らないという認識を持っております。  ただし、韓国と日本との間の国交回復後のいわゆる請求権の問題につきまして、相当時間をかけて両国間で合意に達した歴史がございます。そういう中で、本来ならば朝鮮半島が一つの国家という形であればその当時にすべてが終わっておったということから考えまして、私どもはこれからの政府間交渉において双方がいろいろと検討しなければならない事項が多い、このように考えております。
  186. 山口那津男

    ○山口(那)委員 昨日、我が公明党・国民会議の議員であります広中和歌子参議院議員が帰国したわけでありますが、イラクを訪問してまいりました。そこで、イラク在住の邦人からいろいろな要求が出てきたわけでありますが、ここにその切々たる訴えをつづった文章があるわけですけれども、その中で重要と思われるもの、先ほど和田委員の方から質問がありました、出国の可能性があったにもかかわらず日本政府の行為によってそれが妨げられた、これは人災とも言うべきものであって、厳重に抗議したい、そういう訴えも一つあるわけであります。それからもう一点大事な点として、現在食料の供給が拒否される、また送金、お金ですね、預金の引き出し及び日本からの送金がとめられている状況である。ですから、いわゆる人質以外の邦人にあっても日に日に生活の困難が高まっている、こういう実情なんであります。こういう点に対する政府としての対策があればお答えいただきます。
  187. 中山太郎

    中山国務大臣 政府といたしましては、人道上の問題として、国際赤十字並びに国連を通じましてこれらの方々の食糧が確保されるように格別協力を願いたいということを申し入れております。
  188. 山口那津男

    ○山口(那)委員 その預金の引き出し及び送金に対してはどうですか。具体的な対処はありますか。
  189. 中山太郎

    中山国務大臣 具体的な問題につきましては、政府委員から御答弁をさせていただきます。
  190. 内田富夫

    内田(富)説明員 この経済制裁の厳格な実施との関連におきまして企業に対する送金の問題が生じていることは先生御指摘のとおりでございまして、広中先生からのお話を伺ってもおりますし、それ以前からも、私どもとしても注意深くフォローしている点でございます。この点につきましては、個々の企業のいろいろな事情等もございますので、そうした問題につきましてきめ細かく対処していくということでございまして、外務省の領事移住部がきめ細かい企業別の聞き込み、対策を図っているという実情でございます。今後ともそうした点につきまして十分な配慮をし、できるだけの御協力をしていきたいというふうに考えております。
  191. 山口那津男

    ○山口(那)委員 ヨルダンの難民について、広中議員の報告ですと、日本のヨルダン大使である野々山大使以下、公館八名の方々、大変な日夜を徹しての活躍をされている。先ごろ難民をフィリピンに輸送するという際に、フィリピンの難民の方々をわざわざ飛行機の前で一人一人握手をして送られた、そのありさまをフィリピンの大使も見ていたわけでありますけれども、本当に深い感謝の念を抱いている、こういうことでありまして、その御苦労に対して改めて敬意を表するものであります。  そこで、この難民に対する援助ということで、我が国のJICA、国際協力事業団というものがありますが、成田あるいはイタリアのピサにありますUNDROという国連の施設の備蓄基地、これらから物資の緊急援助をしているということであります。この根拠法は、事業団法の二十一条の四の二のハという項目に「その他の緊急援助」という文言でなされているということでありますけれども、この点間違いないでしょうか。
  192. 茂田宏

    ○茂田説明員 お答えいたします。  間違いございません。
  193. 山口那津男

    ○山口(那)委員 この法律は、本来は自然災害に対する援助を予定したものでありますが、今回のヨルダンの難民は、必ずしも自然災害に当てはまらない、したがって国際緊急援助隊法による救助チーム、医療チーム等の派遣の対象にはならないということになっているわけですね。しかし、物資の援助だけではなくて、やはり人の援助というものは、実際問題要請されているわけでありまして、これに対する我が政府の法制上の備えがないということもまた事実であります。こうした問題の対応も、このたびの協力法において解決しようとされておられるのかどうか、この点を伺います。
  194. 中山太郎

    中山国務大臣 委員指摘のように、従来の日本の法律、制度の中では、今回のような事態に対応することができないような法制度になっておりまして、今回法案を御提出させていただく過程におきまして、そのようなことも踏まえまして御議論をいただくために国会で御審議をお願いしたい、このように考えております。
  195. 山口那津男

    ○山口(那)委員 このJICAの活動に関連して、UNDROという国連の災害救済調整官事務所というものがあるわけですが、我が国も大変な高い貢献をして評価も得ておるわけであります。過去の実績としてイランの地震あるいはフィリピンの地震について活躍したわけでありますが、この救助チーム、医療チームを派遣することは大いに結構なんですが、欠点といたしまして輸送、通信に迅速な対応ができない、こういう問題があります。この点もやはり制度の不備でありまして、自然災害の場合であっても、これら輸送、通信についてもう少し補充をする必要があるのではないか、このように思いますが、政府として対応をいかがなされますでしょうか。
  196. 茂田宏

    ○茂田説明員 お答えいたします。  災害緊急援助に際しまして輸送の問題それから通信の問題が非常に重要であるという先生の御指摘は全くそのとおりで、我々も同感でございます。  従来どういう輸送手段をとっているかといいますと、一つは商業機を利用する、もう一つはチャーター便を利用するということをやっております。こういう輸送面に関してはこれ以外の手段というのはなかなか考えにくいわけですけれども、これらの手段を使いまして今後ともより迅速な輸送というものに努めていきたいというように考えております。  通信に関しましては、最近技術の発展が非常に行われておりますので、新しい技術を通じて通信面の改善を図っていきたいというように考えております。
  197. 山口那津男

    ○山口(那)委員 フィリピンの地震の例でいえば、直行便がありましたからこの輸送については効を奏したわけでありますが、イランの場合は直行便がないためにヨーロッパ経由で入っていった、そのためにおくれて救助の実がやや減殺されたという経過があるようです。それから、このたびのヨルダンの難民救済にしても、チャーター便を送ることを決定して、実際に送られるまで二十日余り時間がかかるわけですね。ですから、この点についてやはりもっと迅速に対応できるような体制をつくる必要があります。  この点に関して、自衛隊が参加をするという議論もないではないようでありますが、その点について外務大臣の所見をもう一度お伺いいたします。
  198. 中山太郎

    中山国務大臣 今回の航空機の輸送について、私どもは本当に政府としては早い時期に決断をしたのでありますが、具体的に飛行機が飛ぶまでには御指摘のように二十日間の日数を要したわけであります。  このようなことが政府としては貴重な経験となりまして、いわゆる災害救助に対する輸送の問題、こういう問題も含めてこれからどのようなことが最も可能かということを現在検討中でございます。いずれ国会におきましても御審議をお願いして、こういう緊急事態に備える輸送機関の確立というものをしなければならない、このように考えております。
  199. 山口那津男

    ○山口(那)委員 これから国連中心主義というものがますます要請される時代になろうかと思いますが、この国連のUNDROの関係で申し上げますと、ピサに備蓄基地が一つありまして、これはイタリアが提供して日本もそこに備蓄しているという状況です。日本としては国際協力事業団が成田、シンガポール、メキシコシティー、ワシントンDC、これらに独自の基地を持っているようでありますが、日本独自の基地を日本提供をしてUNDROの施設とする、そして日本が主たる備蓄をなし、国連加盟国の参加も促す、こういう国連中心国際貢献ということもぜひ考えるべきであろう、このように思うわけです。  またもう一点、UNDROに対する日本の資金援助ですが、信託基金に対して毎年十万ドルを拠出している。これは高い評価を得ているわけですが、年々他国の拠出金がふえていますので、相対的には順位がどんどん低下をしているという状況であります。したがいまして、このUNDROに対する日本政府のもっと強力な支援というものが期待されるわけでありますが、外務大臣の御所見を伺います。
  200. 中山太郎

    中山国務大臣 これから国連に対する日本政府協力というものが一層求められる時代に入ってくると思いますが、問題は、国民の税金を拠出するわけでございますから、新しい国連中心とした国際社会に我々の国の国民が税金としてどれだけの分を御負担いただけるかということも、十分これから国会でも御審議をいただかなければならない問題だ。しかし、私どもといたしましては、国連中心とした国際社会に一層貢献をしていくということがこの国の信頼ある国家への道であると私は考えております。
  201. 山口那津男

    ○山口(那)委員 時間が来ましたので、これで終わります。
  202. 宮下創平

    ○宮下委員長代理 次に、東中光雄君。
  203. 東中光雄

    ○東中委員 日本共産党の東中光雄です。  中東問題について、国連安保理事会一連決議イラク侵略を非難をし、侵略軍の撤退とクウェートの主権回復、人質解放を求めて数次の決議を行っております。これを拒否するイラクに対する厳格な経済制裁を決めて全加盟国にその実施を求めています。しかし、国連憲章四十二条による武力制裁は一切決めていない。事態解決のためには経済制裁で平和的に解決をする、これが国連方針であるし、どうしてもやらなきゃいけないことだと思うのです。  それに対しまして、今アメリカ中心とする多国籍軍による武力行使、軍事制裁可能性がいろいろ取りざたされている。まかり間違って軍事制裁武力衝突、そしてやれば、これは大戦争になって大変な混乱を起こすことになります。だから何としても経済制裁の段階で主権回復、侵略の撤退ということをなし遂げなきゃいかぬ、そういう意味で経済制裁を十分にやっていくということが非常に重要であります。  ところが、経済制裁を決めた六百六十一号決議についての報告は、国連加盟国百五十九カ国と非加盟国を含めましても、全世界から九月六日現在でまだ百カ国余りという段階であります。この経済制裁が必ずしも徹底していない。企業が抜け道、抜け穴をつくってイラク経済援助をやっている国が現にあります。フランスのミッテラン大統領は、今経済制裁に賛成している国においてすら十分に経済制裁は履行されているとは言えないということを、九月十六日ですか、発言をしているぐらいであります。ソ連は百五十人近い軍事顧問団をまだイラクにとどめさしているということが言われておりますし、十月二日のソ連外務省情報局が明らかにしたところでは、技術者、建設専門家など含めて五千百七十四人がいまだにイラクに残っているということであります。イギリスの工場がイラクで堂々と経営をしておるということについて、イギリスの新聞がつい最近も報道している状態であります。フランスでもついこの間までイラク軍の訓練をやっておる、こういう事態ですね。私たちは、何としても軍事的な問題ではなくて経済制裁を徹底する、そして、経済制裁の段階で侵略を包囲し、そしてこの問題を解決する、このことが非常に重要だと考えます。  その点について日本政府としては一体どういうふうにやっているのか、お伺いをしたいと思います。
  204. 中山太郎

    中山国務大臣 政府といたしましては、経済制裁を強化することにより、イラク政府、指導者がこの経済制裁によって受ける経済的な打撃によって、国際社会がどのような考え方イラクに対応しているのか、こういうことで、武力によるクウェート制圧から軍を即時撤退することに考え方を転換させるというために私ども経済制裁を強化する。今御指摘のように、そういう形で日本政府としては努力をしておりまして、外交的にも昨日海部総理がラマダン第一副首相会談をして、外交のチャネルを日本との間にも開いた、こういうことも御理解をいただきたいと思います。
  205. 東中光雄

    ○東中委員 私たちは、多国籍軍への援助、協力というふうなものではなくて、今やらなきゃいけないのはあくまでも国際的な世論と運動をうんと高めて侵略イラクを包囲する、そういうことと、先ほど言ったような抜け穴をふさぐ、そういうことについての具体的な行動日本としてもやるべきではないかということも思いますし、それから多国籍軍への援助というのはやめて、むしろ経済制裁によって影響を受けて非常な混乱を来している周辺諸国に対する援助をもっと本当にそれこそやらなきゃいかぬではないか。今は多国籍軍の支援のわずか百分の一にしかすぎない難民救済の額ですね。こういうようなもう全く消極的な姿勢ではないか。経済制裁によって戦争の段階に行かないで何としても解決をするということで努力されることを強く要求するわけであります。  ところで、問題は、中東貢献策として四十億ドルの支出を決められました。その中心は多国籍軍への援助二十億ドルということになっています。問題は、多国籍軍というのは一体何なのだ、どういうふうに政府は見ているのか。今までの政府の答弁でも、これは国連軍ではない。国連平和維持軍でもない。国連の部隊ではないことは、これは確認されておるとおりですね。それでは、二十億もの資金を出すということについては、この部隊をどういうふうに見ているのかということ。あの中東貢献策によりますと、湾岸地域における平和と安定の回復のための各国の努力だから日本も積極的に出すのだ、こういうふうに言っているわけですね。これは国連関係のない各国の努力に対して、日本軍事行動ですね、平和の回復のための軍事行動ですから。それに積極的に援助することになる。これは理由にも何にもならないと思うのですが、多国籍軍をどういうふうに見ているのかということを伺いたい。     〔宮下委員長代理退席、委員長着席〕
  206. 柳井俊二

    ○柳井説明員 ただいま多国籍軍の性格についてのお尋ねがございました。  国連安保理は、決議六百六十号によりまして、憲章第三十九条に基づいてイラククウェート侵攻国際の平和と安全の破壊であると認定いたしました。イラク軍の八月一日の駐留地点までの無条件撤退を求め、さらに決議六百六十一号において、決議六百六十号のイラクによる遵守確保、それからクウェートの正統政府の権威回復を目的とする経済制裁措置を憲章第四十一条に基づく非軍事的強制措置として決定したわけでございます。  いわゆる多国籍軍は、これらの決議を受けまして、各国イラクによる軍事行動の拡大の抑止及び対イラク経済制裁措置実効性確保のために兵員、艦船等を湾岸地域に展開したものでございまして、湾岸地域、ひいては国際社会全体の平和と安全の維持に積極的に貢献するものであるというふうに政府考えております。
  207. 東中光雄

    ○東中委員 国連決議に関連をした平和維持活動というふうに見ているということですか。
  208. 柳井俊二

    ○柳井説明員 ただいまお答え申し上げましたとおり、この一連決議を受けまして、各国イラク軍事行動の拡大の抑止及び対イラク経済制裁措置実効性確保のために展開したものでございます。
  209. 東中光雄

    ○東中委員 国連平和協力法案考え方というものを政府が発表しました。それでは国連決議に関連した平和維持活動協力をするんだ、参加していくんだ、こういうことが基本に書いてあるのです。今中東でやっておるいわゆる多国籍軍ですね、日本政府は多国籍軍という言葉を使っています。それに対して貢献するんだ、協力するんだと言っている。あのアメリカ中心とした多国籍軍は、国連平和協力法案考え方の骨子になっておる国連決議に関連した平和維持活動という一つの概念があるわけですが、その中に入るんですか、入らないんですか。
  210. 柳井俊二

    ○柳井説明員 ただいま御指摘のとおり、九月の二十七日に総理が国連平和協力法考え方というものをお示しになったわけでございます。その冒頭に、国連決議に関連した平和維持活動協力するための体制の整備というものをこの法案目的として掲げておるわけでございます。現在、この法案の具体的な条文を作成しておりまして、具体的にどのような規定を置くかということは、近く法案が固まったところでお示しできることになるわけでございます。私どもといたしましては、現在展開しておりますいわゆる多国籍軍、これには相当多くの国が参加しているわけでございます。アメリカのみならず、英、仏、伊、西独、ソ連等、またそのほかの中近東の国々も参加しているわけでございますが、このようなものも国連決議に関連したものというふうに考えております。
  211. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると、現在の多国籍軍自衛隊を含めて参加していく、そういうための協力法の対象になるんだという考えのように私聞きましたけれども、現実の多国籍軍国連軍ではない。国連平和維持軍でもない。ではどこが違うのかという点を私申し上げたいのですが、まず何といいましてもデクエヤル国連事務総長自身が、国連の四十一条の国連決議しかやっていないんだから、一連国連決議内の行動ではない、だから国連決議外の、米英等の決議外の行動だということをはっきりと言っておるところであります。  そして、アメリカ側からいえば国連軍にする、四十二条以下の国連軍にすることをブッシュ・アメリカ大統領自身が拒否していますね。それはなぜかといえば、指揮権がアメリカからなくなるというところが非常に重要なんであります。ブッシュ大統領の八月十一日の会見では、米国の計画は、例えば朝鮮戦争のように国連の旗のもとに存在するとは、旗に依存するということは思わない、国連の旗の中に入らないんだということを言っています。それから九月十七日の会見では、兵力を展開する上で派遣米軍を指揮するシュワルツコップ米中央軍司令官ですか、その重要な地位を低下させるようなことはしないということをわざわざ言っています。要するに、アメリカ中心になっている多国籍軍アメリカの指揮のもとに動くんだということであります。だから、アメリカの腹一つでいわゆる集団的自衛権の行使ということで活動するかもしれない、しないかもしれない。全部アメリカの腹一つということになっておるわけです。しかも、あの多国籍軍について、アメリカの死活的利益を守るための展開だということをブッシュ大統領はテレビで演説をしています。だから、アメリカの利益で、そしてアメリカの指揮のもとで行動するんだということであります。ベーカー長官が九月の四日、五日、上院、下院の外交委員会で、イラン紛争が解決しても中東地域にアメリカ軍を置いておく、そして安保機構をつくるということ、そういうことも考えておるということを言っています。だから、中東問題の解決のためじゃないんです。米軍というのはそういうことなんです。  そして、ワシントン・ポストで暴露して米空軍参謀総長デューガンが、もし戦争が起こればとにかくサダム・フセインを標的としてバグダッドの中枢部を空襲するんだ、これが唯一の効果的方法だ、イラククウェートから撤退に追いやる唯一の効果的方法として結論づけられているという趣旨のことを言いましたね。そして解任された。あれはでたらめを言うたからといって解任されたんじゃなくて、言うちゃいかぬことを発表したからけしからぬといって参謀総長がかつてないように解任された。だから、そういうことをアメリカ側考えている。  現に、空母インディペンデンスがこの一日からペルシャ湾に入りました。そして報道によれば、上陸強襲演習に参加している。だから、クウェートへ上陸強襲するんだという演習を現にやっているわけでしょう。そしてそれを実際やるかどうかというのは、集団的自衛権の行使だということでアメリカが一方的に指揮権を持ってやっていけるんだということであります。その部隊に日本協力をする、加担をする。そして国連とは全然関係なしに、指揮権を持っているのはアメリカなんですから、それに協力していく、あるいは資金を出していく、これは断じて許せない。日本憲法自衛隊派遣が許されない、外国における外国の軍隊の戦争に日本が支援をする、貢献をする、これは許されないことだと思うのです。平和的に解決つけなければいかぬのです。経済制裁解決つけなければいかぬというのは国連の一貫した立場じゃありませんか。そういう点で、こういう多国籍軍への協力、加担はやめるべきだということを強く要求しますが、外務大臣、どうでしょう。
  212. 中山太郎

    中山国務大臣 日本という国にとってこの湾岸の危機というものがどういう問題であるかという認識を率直に申し上げれば、今委員から御指摘のように、アメリカが死活的な問題だと言っていることとは別に、我々の国にとっても中東に原油を七〇%依存しているわけでありますから、この地域が大変動を起こすということは我々にとっても死活的な問題であるという認識に立ちまして政府は今回の決断をしたということでございます。
  213. 東中光雄

    ○東中委員 だからこそ平和的な方法で、経済制裁という方法で全世界が一致協力してやらなければいかぬのだ。武力を派遣してそれで戦争になったら、これこそ大戦争になりますよ。百万のあのイラク軍をつくったのはアメリカソ連の軍事援助から起こっているわけじゃありませんか。そして、戦争が起こってごらんなさい、油田を爆破してごらんなさい、世界は大混乱でしょう。何としてもそれは避けなければいかぬのです。その国へ軍隊を持っていく、しかもアメリカの指揮権を保持したままで持っていく、こういうことは許せない。これはやめるべきだ。日本は平和憲法のもとで、二十億の貢献なんというのは直ちに中止して、経済的な先ほど言ったような措置をとられることを要求して、私は質問を終わります。
  214. 瓦力

    瓦委員長 神田厚君。
  215. 神田厚

    ○神田委員 きょうは朝から中東問題で論議をして、各党の湾岸情勢に対する考え方や、あるいは今度用意されている国連平和協力法案の内容についての問題や、それぞれ各党の特徴が出されております。私はそれをずっと聞いておりまして、やはりイラククウェート侵攻クウェートを占拠している状況を踏まえた論議にしてはいささか平和なれした論議に終わっているのじゃないかというふうにちょっと心配をしております。  そこで、まず私どもといたしましては、イラククウェートを占拠したときに党の方で基本的な考え方をまとめました。これは、イラククウェート侵攻国際法上全く不当である、我々はあくまで原状回復を要求をしていく。それからもう一つは、米ソのデタントのもとで、国連が初めて平和維持活動の成果を上げることができるかどうか、こういうことが問われている。我が国としてはこの国連による共同行動を成功させなければならない。三つ目には、平和を金で買うといった姿勢は国際国家としてはとってはならない。我が国としても、金を出すだけではなく汗を流さなければならない。したがって、憲法の枠を踏まえつつ、国連中心主義を推進するため努力をしなければならない。そこで、我が国といたしましては、第一に現行法の枠内でできることを早くやれ、第二はいろんな要員の派遣について考えをまとめよ、こういうようなことを提案をしているわけであります。  先ほど外務大臣の答弁などを聞いておりましても、なかなか要員派遣の問題等あるいは資金の問題等についても円滑に進んでないという状況でありますが、私はやはり日本が四十億ドル、六千五百億円のお金を出した割には各国から余り高い評価を受けてない、もう少し、もっと出したらどうだというような声が聞こえてくるような状況の中で、やはりこれは非常に問題が多いというふうに考えております。したがって、我が国といたしまして、貢献策と言っておりますけれども、これは国連活動における役割分担のことだと思うのであります。我が国としまして、第一、第二の貢献策については話をしましたが、第三の貢献策等についての考え方があるのかどうか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。
  216. 中山太郎

    中山国務大臣 委員から御指摘日本貢献策について外国から批判を受けているのではないかというお尋ねでございますが、私が先般来各国の外相とニューヨークで、六十カ国余りの外相と会談をいたしましたが、各国とも日本貢献策を極めて高く評価をいたしておったということをこの機会に申し上げておきたいと思います。  なお、第三弾をやるかどうかということにつきましては、これから御審議をいただく国連平和協力隊法、これで汗をかくことを我々は考えなければならない。また、これからの事態の推移を見て政府は、必要であれば、日本国連の中の加盟国として当然やらなければならないことは国民の御理解をいただいた上で政府はやらなければならないと考えております。
  217. 神田厚

    ○神田委員 日本にとりましてはこれは非常に、中東危機ということで大事な問題であります。先ほど答弁がありましたように七〇%の原油を依存している、そこの混乱でありますから、それについて我が国は積極的に役割を果たしていかなければならないと思っております。  そこで、我々としましては、こういう大事な時期に国論が二つに割れている、つまり協力法案の問題につきましてもそういうことにどういう性格を持たせるのか、いろんな判断がございます。私は、やはりここは政治家政治的な決断をする時期だ、こういうふうに思っております。そこで言われておりますのが憲法の問題と国連憲章の問題であります。この辺の論議を少し詰めなければどうにもならないのではないか、こういうふうなことを言われておりますが、憲法問題につきまして、この国連平和協力法案におきましては、大臣といたしましてはどういうふうな考え方でつまり憲法問題はクリアできる、こういうふうな考え方でおつくりになるおつもりでありますか。
  218. 中山太郎

    中山国務大臣 この法律を御審議いただくために現在政府はいろいろと法案の整備をいたしておりますけれども、もちろん日本国の憲法の枠内でこれからの法案をつくっていかなければならないと考えております。  しかし、問題は極めて国民にとりましては重大な問題を含んでおりますので、私は、この際政治家がやはり新しい歴史を開いていくという立場に立って、国連中心国際の平和維持管理のために日本がどうあるべきかということで政治家が決断せなければならない重大な時期に来ていると考えております。
  219. 神田厚

    ○神田委員 政治家が決断をしなければならない重要な時期に来ている、そのことは、大臣としましてはどういうふうな決断を求めておりますか。
  220. 中山太郎

    中山国務大臣 私は率直に申し上げて、この平和協力隊に法律が成立をして御参加をいただく世代というものは、戦後の日本の国で生まれた方々で日本国の憲法世界で一番いい憲法だという教育を受けた方々、また、自衛隊は専守防衛であるということで教育を受けられた方々が戦後の世代であります。そして、平和協力隊に御参加をいただく方々は、恐らく四十歳以下の方でなければなるまいと考えております。そういうことになりますと、この方々がこれからの新しい国際社会日本国民として参加をしていくということに対する一つの信念というものを持っていただくような議論が国会で展開され、それを国民皆様方が御判断をいただいてこの法律案に初めて魂が入る、私はこのように考えております。
  221. 神田厚

    ○神田委員 法律案の問題でございますが、今大臣がおっしゃられましたように極めて重要な内容を含んでおります。過日、海部総理がこの法案の骨子の内容を発表いたしました。二十七日でありました。そのときに、危険なところには行かせないということを言明しております。そのことで私は、そういうふうなことで果たしてこの法案をつくって貢献をするといっても世界的な評価を受けることができるんだろうか。その日にこういう問題についてまたいろんな閣僚の方の御意見もあったようでありますけれども外務大臣としては、そういう形での法案による派遣が、もしも生命にかかわるようなところには行かせないというようなことであったらば、それでいいというふうに思っているのですか。
  222. 中山太郎

    中山国務大臣 平和協力隊が実際に活動をして海外に派遣されるということになりました場合に、参加される隊員の安全をどうするかということももちろん考えなければなりません。これは国家責任であろうと思います。そういう場合の対応というものはこれまで考えられなかったことでありまして、これの議論をこれからやらなければならない。  また、これから現地に行って、いわゆる非戦闘要員で構成する平和協力隊が現地へ出向いた場合に、後方支援ということで国際社会で評価されるかどうかという御意見でございますけれども、いろいろな国の中にはそのようないわゆる非軍事的な協力をやる国も現にございます。そういうことで私どもは、今回の国際平和協力隊に関しましては、まず、いわゆる後方支援で非戦闘部隊でなければならない、こういうことを基本的に考えておりますが、国連決議をして国連軍が編成をされる、このような事態が将来発生をいたしました場合には、国連から加盟国に対して、いわゆる特別協定をその国の憲法によって批准をするということが要求されることが起こってくる可能性国連憲章には記載されております。こういうことも含めて、これからの国連中心国際社会日本国家はどのような形で生きていくかということも、今回の法案審議に当たっては十分御議論を願わなければならないと考えております。
  223. 神田厚

    ○神田委員 また、この問題について防衛庁長官は二十四日の夜の、多分これは先ほど話のありました記者懇でありましょうけれども、危ないところと言うが、どこがそうだかちょっとわからない、そういう判断をするのがどうかというようなことを言っておりました。これは一言言いますと、やはり総理のコメントに対する批判的な言葉でもあるし、また防衛庁長官としてはその派遣先がそういう安全なところだけではやはりいろいろな国際的な評価も得られないだろうという心配も持っているのだと思うのでありますが、その辺はいかがでありますか。
  224. 石川要三

    石川国務大臣 過日の記者懇の中ではいろいろと意見交換をしたわけでありますから、その中でそういうことが、私が適切に表現したかどうかということを今覚えておりませんけれども、まあいろいろと平和協力隊法というもの、これについての全般的な意見というものの確かにいろいろとやりとりがあったことは事実であります。その中に、長官としてもいろいろと今後の自衛隊参加についてのいろいろな心配点とか、あるいはまたどういうことで協力できるとか、そういうことが常時私も頭の中にありまして、その中のあるいは一端がそういうふうな表現になったか、こういうふうに思うわけであります。
  225. 神田厚

    ○神田委員 ここのところは非常に正直でよかったと思うのですね、確かに長官が心配するようなことはたくさんあるのですから。  それからもう一つの、先ほど釈明なさいましたが、米軍駐留費の問題について、結局アメリカ駐留米軍は去ってもらってもいい、あれは一国の防衛責任者としては少し発言が軽率であり、やはり相当問題があるというふうに思っております。その辺のところはひとつ今後ともよく御注意をいただきたい、こういうように思っております。  それから、協力法の問題で自衛隊員の参加問題につきまして、外務、防衛両省で相当意見の開きがある、こういうふうに聞いておりまして、深夜まで調整を図ったようでありますが、この点につきまして、自衛隊員の参加問題について外務大臣は基本的にどんなようにお考えになりますか。
  226. 柳井俊二

    ○柳井説明員 御案内のとおり、九月二十七日に総理が国連平和協力法考え方というのを発表をされまして、その中で広く官公民の各界各層から協力を求めると言われた上で、自衛隊につきましてもその一部の組織または職員が平和協力隊に参加し、その指揮下に入るという項目が入っております。現在、私どもはこのような考え方に立ちまして細部を詰めているわけでございますが、自衛隊の方々がどういう形で参加してくださることになるか、その辺の細かい詰めを現在やっているところでございます。  きょう現在、案文をお示しできないのは残念でございますけれども防衛庁とも十分に協議して、目下その案が固まりつつあるという段階でございます。
  227. 神田厚

    ○神田委員 防衛庁
  228. 藤井一夫

    ○藤井説明員 ただいま外務省条約局長から御答弁がありましたとおり、自衛隊の組織の一部または個人が協力隊に参加するという方針はお示しいただいておりますが、どういうような形でかかわり合うかにつきましては、ただいま外務省との間で調整中でございます。
  229. 神田厚

    ○神田委員 兼任という案が出ているようでありますが、防衛庁の職員の身分で平和協力隊員になる、これはやはり私は避けられないことじゃないかと思っております。誇りを持ってそれにやっていくという方法も一つあるわけであります。ですからこの参加問題について、今事務当局の方から答弁がありましたが、大臣の方からひとつ答弁をしていただきたいと思います。
  230. 石川要三

    石川国務大臣 平和協力隊に自衛隊としてどのようにかかわっていくか、参加していくかということは、これは大変難しい問題がたくさんあると私も思っております。  ただ、私は一言申し上げたいのは、やはり自衛官としてその協力隊に参加をし、そして国のために大いに活躍するということであるならば、やはり自衛官としての十二分に働けるような環境整備というものは当然これは必要ではなかろうか、こういうことを常に思っているわけでありまして、そういうことから、先ほども一部答弁の中に申し上げましたが、いろいろと私は日ごろからそういう点で苦慮しているというのが実態であります。どういう形で行くことが、そしてまたどういうことをするということか、そしてまた、それが自衛隊としての誇りを持って国のためにやっていけるという、そういう自信のもとに行ける環境づくり、そういうものはこれから大いにこの協力隊法の中で煮詰めていかなければいけない問題ではなかろうか、かように思っております。
  231. 中山太郎

    中山国務大臣 外務大臣といたしましては、この新しい国連平和協力隊というものが現実に海外に派遣されるという場合に、自衛隊の方々も資格問題について、今具体的に議論の結果が出ているわけではございませんのでその点は現在触れるわけにはまいりませんが、どのような形であれ、近隣諸国の方々が不安を感じないような歯どめを法律的にかけておくことが極めて外交上重要であるという認識を私は持っております。
  232. 神田厚

    ○神田委員 かなり発言の内容に違いがあるように感じましたが、これは協力法案が出た段階で私ども考え方も出していきたいと思っております。  過日、我が党と自民党との党首会談におきまして、我が党の大内委員長は、この協力法案等々の問題につきましてこれは待機軍的な性格を持たせるべきだ、中山大臣も同じように自民党の部会で説明をした折に、やはりスウェーデンやその他の待機軍のことについて頭の中にあるという考え方がありました。ですからこれは、一つは政治判断でどっちにするのか、国連軍からの参加を求められたときに軍隊として自衛官を派遣できるのかどうかということを含めてやはりしっかりした考え方を示していかなければならない、そういう政府政治判断を示す時期だというように思っております。この点についてどうでありますか。
  233. 中山太郎

    中山国務大臣 今委員指摘の点は、極めて重要な点であろうと思います。法案を御審議いただく際にも、いわゆる平和維持のために例えば停戦管理あるいは選挙管理、いろいろないわゆる平和活動協力をする場合が一つございます。この場合は、現在の国連平和協力隊法で私は対応ができるという認識を持っております。一方、この北欧型の国連待機軍、このようなものをつくるとすれば、それはそれなりに法律というものを制定しなければならない必要性があると外務大臣としては認織をいたしております。
  234. 石川要三

    石川国務大臣 先ほどの答弁の中で、いわゆる危険地区の云々の件でございますが、これは海部総理に対する批判というふうに何か委員はおとりのようなことでございますが、そういう意味で私は申し上げたことでは毛頭ございませんので、誤解をしないようにお願いしたいと思います。
  235. 神田厚

    ○神田委員 この国連協力法案法案が成立してから実際に活動できるめどというのはいつごろになりますか。
  236. 中山太郎

    中山国務大臣 法案が成立してから、実際に国連平和協力隊本部というものがまず法律に基づいて設置される可能性がございます。また、このいわゆる国連平和協力隊が現実問題として海外に出るといった場合には、外務大臣が、国際環境また国連のいろんな機関との協議の上で、この派遣の必要性について内閣総理大臣なりあるいは国連平和協力隊の本部長に対してこの要請をするということが一つ必要になろうかと考えております。  このような手続をとりながらいわゆる協力隊を構成するわけでございますが、果たしてこれがどのような形で構成されるかということは、現段階で私は責任を持って申し上げる状況にございません。というのは、自衛隊の方がどのような形で参加をされるか、あるいは海上保安庁の方がどのような形で参加をされるのか、一般のボランタリーがどのような形で参加されるかということは、今定かにわからないというのが現状でございます。  そのような中でこの部隊を構成し、そして派遣地域が決まればそれを閣議でかける、こういうようないわゆるシビリアンコントロールをきちっとかけた上で、この法律にのっとってこの部隊を派遣するということが一応考えられる段階ではないか、このように考えております。
  237. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  238. 瓦力

    瓦委員長 神田厚君の質疑は終了いたしました。  本日は、これにて散会いたします。     午後四時一分散会