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1989-10-27 第116回国会 参議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年十月二十七日(金曜日)    午前十時六分開会     ─────────────    委員の異動  十月二十六日     辞任         補欠選任      三石 久江君     村沢  牧君      吉川 春子君     近藤 忠孝君  十月二十七日     辞任         補欠選任      木暮 山人君     中曽根弘文君      永野 茂門君     遠藤  要君      二木 秀夫君     田村 秀昭君      秋山  肇君     野末 陳平君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         林田悠紀夫君     理 事                 伊江 朝雄君                 石井 一二君                 下稲葉耕吉君                 平井 卓志君                 穐山  篤君                 矢田部 理君                 安恒 良一君                 太田 淳夫君                 吉岡 吉典君     委 員                 青木 幹雄君                 井上 章平君                 遠藤  要君                 合馬  敬君                 片山虎之助君                 北  修二君                 久世 公堯君                 清水嘉与子君                 田中 正巳君                 田村 秀昭君                 谷川 寛三君                 中曽根弘文君                 永田 良雄君                 二木 秀夫君                 前島英三郎君                 山岡 賢次君                 稲村 稔夫君                 梶原 敬義君                 久保  亘君                 國弘 正雄君                 竹村 泰子君                 田  英夫君                 堂本 暁子君                 村沢  牧君                 本岡 昭次君                 山本 正和君                 猪熊 重二君                 白浜 一良君                 和田 教美君                 近藤 忠孝君                 粟森  喬君                 池田  治君                 足立 良平君                 井上  計君                 西川  潔君                 野末 陳平君    国務大臣        内閣総理大臣   海部 俊樹君        法 務 大 臣  後藤 正夫君        外 務 大 臣  中山 太郎君        大 蔵 大 臣  橋本龍太郎君        文 部 大 臣  石橋 一弥君        厚 生 大 臣  戸井田三郎君        農林水産大臣   鹿野 道彦君        通商産業大臣   松永  光君        運 輸 大 臣  江藤 隆美君        郵 政 大 臣  大石 千八君        労 働 大 臣  福島 譲二君        建 設 大 臣  原田昇左右君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    渡部 恒三君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 森山 眞弓君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  水野  清君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (沖縄開発庁長        官)       阿部 文男君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  松本 十郎君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       高原須美子君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       斎藤栄三郎君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  志賀  節君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  石井  一君    政府委員        内閣官房内閣広        報官室内閣広報        官        兼内閣総理大臣        官房広報室長   岡村  健君        内閣法制局長官  工藤 敦夫君        内閣法制局第一        部長       大森 政輔君        警察庁警備局長  城内 康光君        総務庁人事局次        長        兼内閣審議官   服藤  収君        青少年対策本部        次長       福田 昭昌君        北方対策本部審        議官       鈴木  榮君        北海道開発庁総        務監理官     松野 一博君        防衛庁参事官   小野寺龍二君        防衛庁参事官   玉木  武君        防衛庁長官官房        長        児玉 良雄君        防衛庁防衛局長  日吉  章君        防衛庁教育訓練        局長       米山 市郎君        防衛庁人事局長  畠山  蕃君        防衛庁経理局長  藤井 一夫君        防衛施設庁長官  松本 宗和君        防衛施設庁総務        部長       吉住 愼吾君        防衛施設庁施設        部長       大原 重信君        防衛施設庁建設        部長       黒目 元雄君        防衛施設庁労務        部長       竹下  昭君        経済企画庁調整        局長       勝村 坦郎君        経済企画庁物価        局長       栗林  世君        経済企画庁調査        局長       田中  努君        沖縄開発庁総務        局長       藤田 康夫君        国土庁長官官房        長        北村廣太郎君        国土庁計画・調        整局長      長瀬 要石君        国土庁土地局長  藤原 良一君        国土庁防災局長  市川 一朗君        法務省民事局長  藤井 正雄君        法務省刑事局長  根來 泰周君        法務省入国管理        局長       股野 景親君        外務大臣官房領        事移住部長    久米 邦貞君        外務省アジア局        長        谷野作太郎君        外務省北米局長  有馬 龍夫君        外務省条約局長  福田  博君        外務省情報調査        局長       山下新太郎君        大蔵大臣官房審        議官       松野 允彦君        大蔵省主計局長  小粥 正巳君        大蔵省主税局長  尾崎  護君        大蔵省銀行局長  土田 正顕君        国税庁次長    岡本 吉司君        文部大臣官房長  國分 正明君        厚生大臣官房総        務審議官     加藤 栄一君        厚生大臣官房老        人保健福祉部長  岡光 序治君        厚生省健康政策        局長       仲村 英一君        厚生省薬務局長  北郷 勲夫君        厚生省年金局長  水田  努君        農林水産大臣官        房長       鶴岡 俊彦君        通商産業大臣官        房審議官     横田 捷宏君        中小企業庁長官  見学 信敬君        運輸大臣官房審        議官        兼内閣審議官   井上徹太郎君        運輸省運輸政策        局長       中村  徹君        運輸省地域交通        局長       早川  章君        郵政省放送行政        局長       大瀧 泰郎君        労働大臣官房長  若林 之矩君        労働省婦人局長  佐藤ギン子君        建設大臣官房長  牧野  徹君        建設大臣官房総        務審議官     木内 啓介君        建設省建設経済        局長       望月 薫雄君        建設省都市局長  真嶋 一男君        建設省河川局長  近藤  徹君        建設省道路局長  三谷  浩君        建設省住宅局長  伊藤 茂史君        自治省行政局選        挙部長      浅野大三郎君        自治省財政局長  持永 堯民君        自治省税務局長  湯浅 利夫君        消防庁長官    木村  仁君    事務局側        常任委員会専門        員        宮下 忠安君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○予算執行状況に関する調査     ─────────────
  2. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 予算委員会を開会いたします。  予算執行状況に関する調査を議題といたします。  それでは、これより安恒良一君の質疑を行います。安恒君。
  3. 安恒良一

    安恒良一君 私は一年前の予算委員会で税の適正見積もりについていろいろ議論しました。その当時私は、六十二年度の税は補正見積もり一兆八千九百三十億の追加でしたが、これで大丈夫なのかということを何回も念を押しました。それからまた、六十三年度は間違いないかということも念を押したんですが、現実は大きく食い違ってきているのであります。  そこで、まず大蔵省から六十二年度、六十三年度について当初、補正決算額及び当初と決算補正決算誤差並びに誤差率総額主要税目について説明してもらいたい。
  4. 尾崎護

    政府委員尾崎護君) お答え申し上げます。  六十二年度でございますが、お尋ねの当初予算額は四十一兆一千九百四十億円でございました。補正予算は四十三兆八百七十億円でございました。決算額は四十六兆七千九百七十九億円でございます。増減額でございますが、当初予算に対しまして五兆六千三十九億円、増減割合は一三・六%ということになります。補正予算に対しましては、決算増加額が三兆七千百九億円、誤差率増減割合は八・六%でございます。  総額についてまず申し上げますと、六十三年度は当初予算が四十五兆九百億円でございまして、補正予算が四十八兆一千六十億円、決算額が五十兆八千二百六十五億円でございます。当初予算に対します決算増減額五兆七千三百六十五億円でございまして、誤差率は一二・七%でございます。それから、補正予算に対します決算増加額でございますが、二兆七千二百五億円でございまして、誤差率五・七%でございます。  主要税目というお尋ねでございましたが……
  5. 安恒良一

    安恒良一君 所得税法人税だけで結構です。
  6. 尾崎護

    政府委員尾崎護君) 所得税、六十二年度で申し上げますと、当初予算が十六兆四千八百二十億円、補正予算が十六兆一千八百八十億円、決算が十七兆四千三百七十一億円でございます。誤差額でございますが、決算に対します当初予算誤差額が九千五百五十一億円、それから補正予算誤差額が一兆二千四百九十一億円でございまして、それぞれ誤差率が五・八%と七・七%でございます。  同じく六十二年度法人税について申し上げますと、当初予算額が十一兆八千二百四十億円、それから補正予算が十三兆七千二百二十億円、決算額が十五兆八千百八億円でございます。  それからその誤差額は当初に対しまして五千九十八億円、補正予算に対しまして一兆二百五十八億円、誤差率はそれぞれ二・九%と六・一%ということになっております。——失礼いたしました。今のは六十三年度所得税数字でございます。ちょっと混乱いたしました。申しわけございません。  六十二年度法人税についての誤差額でございますけれども、当初予算決算額に対します誤差額が三兆九千八百六十八億円、補正予算決算額との誤差額が二兆八百八十八億円でございまして、それぞれ三三・七%、一五・二%が誤差率でございます。大変失礼いたしました。  六十三年度数字を申し上げますと、所得税でございますが、当初予算が十七兆四千四百四十億円、それから補正予算が十六兆九千二百八十億円、それから決算額が十七兆九千五百三十八億円でございます。六十三年度所得税誤差額が、当初に対しまして五千九十八億円、それから補正後に対しまして一兆二百五十八億円ということになっております。誤差率は二・九%と六・一%でございます。  六十三年度法人税を申し上げます。当初予算が十三兆九千三百十億円、補正予算が十七兆七千百二十億円、それから決算額が十八兆四千三百八十一億円でございまして、誤差額が当初に対しまして四兆五千七十一億円、補正後に対しまして七千二百六十一億円、誤差率がそれぞれ三二・四%と四・一%でございます。
  7. 安恒良一

    安恒良一君 総理大蔵大臣に聞きます。  今数字を読み上げていただいたから数字が頭に入ったと思いますが、六十二年度は実はそのほかに一兆八千三百億を減税していますから、見込み違いが七兆四千億ですね。それから同じく六十三年度も一兆九千億の減税をしていますから、これまた七兆六千億も見込み違いですよ。でありますから、誤差率で見ましても当初に比べると一〇から一二〇法人税なんか、驚くなかれ三〇%以上も誤差があるんですからね。補正後でも六、八となる。  そこで、私は竹下総理誤差論争をやったことを思い起こしますが、海部総理大蔵大臣、これが誤差の範囲と言えるでしょうか。
  8. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今の数字委員から御指摘を受けまして、また、さきの国会等におけ る政府委員との議事録を読みました私としては、これについてはおわびを申し上げるべき事項であろうと思います。  ただ、強いて申し上げますならば、何といいましても一年先以上の経済情勢まで見通して積算をしていきますために、経済動向のいかんによりましては見積もり決算額の間にある程度誤差が生じることはやむを得ない面があることも御理解いただきたいと思いますけれども、今御指摘になりました数字をある程度誤差と言い切るつもりは私にはありません。
  9. 安恒良一

    安恒良一君 私がこの問題をさらに議論しようと思うのは、税財源自然増収についていろんなことをあなたたちは言っておられるわけですね。言っておられるんですが、現実はこんなに大きな見込み違いばかりしておる人が、自然増収財源に充てることがいいとか悪いとか議論されるのは実は本当に心外だと思うから、もう少しこの中身をはっきりさせたいと思います。  そこで私は、こんなに大きな——一年前からできないと橋本さんはおっしゃいました、非常に難しいと。それじゃ六十二年、六十三年度のそれぞれにおいて、補正後にも大きな誤りをしているんですから、だから補正後、見積もりをさらに上回ると認識したのはいつなんでしょうか。  それからいま一つ、なぜこんなに大幅な見込み違いがあるかということの納得のできる説明をしてください。
  10. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) これは委員におしかりを受けるかもしれませんけれども、六十二年度、六十三年度におきまして多額の増収額が生じましたことにつきまして、私は、六十一年度補正予算の際に円高不況による税収の落ち込みを予測いたしまして一兆一千億円の減額補正を行いましたところに一つの原因があったように思います。六十二年度当初予算は六十一年度補正予算をベースにして、円高影響等を考え比較的低い伸び見積もりをいたしておりました。その結果、六十二年度の当初予算税収見積もりは、先ほど政府委員から申しましたように四十一兆二千億円と、六十一年度当初予算に比べて六千億円の増加と見積もっていたわけでございます。  ところがこれは、おしかりを受けるかもしれないと申し上げたのはこの点にもあるわけでありますけれども、この六十一年度補正の際、また当初予算見積もりの際には、本院におきましてもむしろ少し強気に過ぎないかという御指摘を受け、むしろ円高不況影響はもっと深刻であるという認識国会の御審議でも示されておりました。ところが結果といたしましては、実は日本経済は六十一年秋から非常に力強い回復に向かいまして、その上にいわゆる三高二安と言われるような好条件に支えられました結果、予想を上回る増収が生じてきたわけでございます。  ここのところの、いわば円高による不況を予測し六十一年度補正予算におきまして減額をいたしましたものが、結果としては増収でありましたという見通し誤りがその尾を今日にも引いておる、これは率直に私は認めます。
  11. 安恒良一

    安恒良一君 聞いたことに的確にお答えになっていません。六十二年、六十三年度補正後、見積もりをさらに上回る認識をしたのはあなたはいつですかと、こう第一問は聞いている。——主税局長には聞いておりません。
  12. 尾崎護

    政府委員尾崎護君) 非常に大きな見積もり誤りを出しましたことは大変申しわけなく存じておりますけれども、先ほどの数字にもございましたように、その大きな要因はやはり法人税にあるわけでございます。  御承知のとおり、三月決算法人分、これは五月に申告納付になるわけでございますけれども、それが法人税収全体に占めるウエートが約四割ございまして、六十三年度法人税収でいいますと、十八兆四千億のうち七兆一千億が実は五月末に入ってくるというような状況でございます。年末の状況でございますと、年末現在におきましてわかっております税収というのは実は十一月末の税収がわかっているわけでございますけれども、その段階では、大体全体で収納が五〇%程度、それから法人税でいきますと四割程度というような状況でございまして、その段階法人税について見積もりを立てたところが非常に低かったと、その結果がわかったのは年度末を越えまして五月になってからというような状況でございます。大変遅い段階でようやく認識できるというような、そういうことに現在なっているわけでございます。
  13. 安恒良一

    安恒良一君 大臣、御答弁願いたいんで、宮澤さんは全部答えられましたから。主税局長じゃなかった。  それで大臣、今あんな言いわけをしているけれども、毎月税収の実績は翌々月の三日ないし五日に発表しているんですよ。毎月の動きを知っているんですよね。ですから、法人税だけを言われましたが、見込み違い法人税だけじゃないんですよ。しかもそれは補正後ですよ、補正後にこんなにたくさん見込み違いがあるんだから。それを大体いつの時期にあなたはお気づきになったのですか、大蔵大臣としてと、そういうことをお聞きしているんです。
  14. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 六十二年度並びに六十三年度、私はまだ大蔵大臣ではありませんでしたのでその当時の実務を知る者からお答えをさせたわけでありますが、私は委員がおっしゃりたいその税収見積もりについての責任を認めないわけではございません。
  15. 安恒良一

    安恒良一君 おれは大臣じゃなかったと言われても、大臣というのはお互い引き継ぎでありましてね、前の大臣のときのことを知らぬよと、これを言い出したら大変な話になりますね。これは大変な話になりますから、私はやはり、数字が細かいから事務当局に答えさせたというなら納得しますが、おれは大臣じゃなかったと言われると、ちょっと海部さん、そこのところを聞かなきゃならぬ。これから大臣をかえるときよっぽど注意してもらわないと、前のことは知らなかったと言われたんじゃどうしようもありません。いいですかそこ、どうですか、どうしますか。
  16. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 大蔵省としてその認識をいつ持ったかということであれば、これは継続してその責任を負わなければなりませんが、属人的にお聞きをいただきますと、私はちょっと認識を欠いておるということしかないんです、その時点におきましては。ただ、ですから前任閣僚答弁責任を負わないとは私は申しておりません。
  17. 安恒良一

    安恒良一君 もうこれ以上こんなことをやっても本論が遅くなりますから、継続、引き継ぎですから、その点はやはりそういうふうに御理解いただきたい。  そこで、いわゆる大蔵省というのは税の専門家が集まっておるのに今の話を聞いておると決算の直前までわからない、こういうことなんですよね。これじゃ困るんです。むしろ私は、歳出に対する圧力がかかってくるからそれをかわす意味でわからないと言っているのかという疑いを実は持ちたくなるわけです。  それはなぜかというと、六十三年の二月十九日に本委員会の席上で宮澤さんとやりとりしているんですよ。私は五千億増収があるよと、減税したあのとき。そのとき宮澤さんや水野さんは、その時点では全くまだ判断ができないとこう言ったんだ。これはもうあと数カ月後ですからすぐわかりますよというやりとりをしたんですが、現実は私が言ったとおりになったわけですね。そうすると、安恒一個人能力よりも大蔵省の方がこういうものについて能力が劣るのかなと。それじゃもうたくさんの役人は要らないということになるんですが、どうなんでしょうか、そこは。
  18. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今、委員からおしかりを受けましたが、そのやりとりがありました議事録を私も拝見いたしました。税収見積もりに必要な資料の収集あるいは推計方法につきまして絶えず工夫を凝らすのは当然でありますし、さらに今のような御指摘を受けておれば、一層今後とも税収見積もり精度向上努力をいたさなければなりません。それなりの工夫努力をしてま いりました点につきましては、事務当局からの答弁をお聞きいただきたいと思います。
  19. 尾崎護

    政府委員尾崎護君) 安恒委員から御指摘をいただいておりました税収見積もりについての改善策といたしまして、平成年度予算税収見積もりに当たりまして、六十二年度税収というのはその段階で完全にわかっていたわけでございますけれども、その異常に高い六十二年度税収弾性値を一体どういう要因に基づいているのだろうかというように分析をいたしまして、その結果、法人税推計に当たりまして、売上高伸び推計方法を変えたわけでございます。見直し前には主として鉱工業生産指数物価伸びに基づきまして推計を行っていたわけでございますけれども、それを改めまして、製造業につきましては鉱工業生産指数伸び物価伸びとを勘案して見通しを立てる。それから非製造業につきましては消費の伸びというものを検討対象に入れまして、それによりまして製造業と非製造業ウエートによりまして加重平均をいたしました。そういう方法平成元年度の法人税見通しをいたしております。  なお、大蔵省に景気予測調査というのがございまして、これは割合にカバレージが広うございまして、非製造業のサンプル数もほかの調査に比べて多いという特徴を有しているものでございますが、この調査を始めて割合に日が新しいわけでございますけれども、そのような大蔵省の景気予測調査の収益見通しなども積極的に活用するようにいたしております。
  20. 安恒良一

    安恒良一君 今のは、私が後の方で聞くやつを先にもう答えてしまっていますから、これはひとつ後で文書でもらうことにいたします。  まず、今、見積もり違いがどこにあったかというのは大臣は二つ挙げられて、三高二低の理由も挙げられましたね。しかし、それだけなんでしょうかということをもう一遍、大臣、あなたが挙げられた理由だけでこんな大きな見積もり、二つ挙げられましたからこれはもうわかっていますが、それだけでこんな大きな見積もり違いが出るんだろうかと、このことを聞きたい。
  21. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) いかにおしかりを受けましても、現実にそれだけの見積もり違いが出たわけでありますからその御批判は甘受いたしますが、要因として私は今のように考えております。
  22. 安恒良一

    安恒良一君 それじゃもう少し大蔵省、よく御勉強願わなきゃいけませんね。  それはなぜかというと、私は、皆さんが一番大きく見落とされているのは、我が国の経済構造の変化を見落とされているんじゃないかと。いわゆる従来型構造が大きく異なりまして、かつての製造工業中心の経済からサービス化、金融化が進んでいます。すなわち、サービス部門、金融部門からの税収が大幅にふえているんですよ。ですから、そういうふうになりますと、四ないし五%の成長率を見ますと毎年税収が五兆円ずつぐらい増加してくる。どうもあなたたちの税収見積もりの中の一番大きな見落としは、経済構造の変化ということをお考えにならないで、今答弁をされたとおりだと思いますが、大蔵大臣それから総理、そこをどうお思いになりますか。
  23. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、それなりに産業構造の変化というものに対しての目配りはしつつ税制というものは運営されておると心得ておりますけれども、御指摘でありますので、より十分にその辺は勉強してみたいと思います。
  24. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 御指摘をいただきましたことを私なりに考えますと、結局産業構造がいろいろ変化しておるとか、あるいは三高二安と言われるような現象が起こってくる。そういったものについて、日本の経済規模が大きくなればなるほど、ちょっと異動しましても大きな結果が出てくるのはこれはよく起こることだと思います。  そこで、最低言わなきゃならぬことは、見積もりするときの資料の収集とか、その資料の集計方法とか、そういったことに絶えず工夫を凝らして、世の中の変化にふさわしいようなそういった対応をしていかなければならぬだろうと私は今考えさしていただきました。
  25. 安恒良一

    安恒良一君 今私が手元にいただいています資料、昭和六十一年、六十二年の業種別、資本金階級別法人数云々の資料の中で、法人税額をひとつ製造業と非製造業で、これは実金額でいただいていますから、これはパーセントが載っておりませんから、これが五十年、五十五年、六十一年、六十二年、どのように負担割合が変わっているか、ちょっと言ってみてください。そうするとわかると思います。百分比で。
  26. 尾崎護

    政府委員尾崎護君) 法人税収の割合でお答えをさせていただきたいと存ずるのでございますが、製造業が大体四割、非製造業が六割というような比率になっております。
  27. 安恒良一

    安恒良一君 主税局長、そんなこと聞いてないんだよ。あなたもお粗末だね、本当に。私から言いましょう、時間がないから。  五十年は製造業は四四・三、五十五年が四七・七、それが六十二年には製造業の占める割合は三〇・三。非製造業は五十年は五五・七、五十五年は五二・三、それが六十二年になると六九・七。大臣、このように変わっているんですよね。そのことでも今、大ざっぱに大体六対四ぐらいでしょうと、こんなことを言っている。こんなことで見積もるから大間違いをする。私がそれなりにおたくからいただいた数字を精査するとこうなるんです。こういうふうに変わっているという認識を持たないでやると問題がある。その点どうですか、大臣。あんな大ざっぱな答弁ばっかりしている。
  28. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 産業構造の変化が進行しつつあることは私どもも承知をいたしております。そして、その中において当然業種別の態様も変わりましょうし、雇用その他から見てもその状況の変化は委員が御指摘になるとおりでありまして、その認識は持っておりましたが、数字的には私は把握をいたしておりませんでした。
  29. 安恒良一

    安恒良一君 それじゃ大蔵省は、租税の見積もりの中に、経済のサービス化や金融化をどの程度のデータでこの中に取り込んでいるんでしょうか。大蔵大臣、説明してください。というのは、私は税収の七割強を占める法人税所得税見積もりさえしっかりやればこんな間違いはないと思います。これをいただいていますから、この中にいわゆる経済のサービス化や金融化をどの程度のデータとして盛り込んでこれを毎年おつくりになっているのか、説明してください。
  30. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 基礎計数の問題でありますので、事務方から答弁をさせます。
  31. 尾崎護

    政府委員尾崎護君) 先ほども御答弁申し上げましたとおり、従来鉱工業生産指数とそれから物価伸びをもとに推計をしておりましたものを、非製造業状況を勘案しますために消費の伸びというものを計算上ウエートづけて入れてきておりまして、そういう形で非製造業伸びを反映するように工夫を凝らしてきております。  それからもう一つ、これも先ほど申しましたが、景気予測調査のうちできるだけ非製造業のサンプル数の多いものを参考にするというようなことをいたしております。
  32. 安恒良一

    安恒良一君 それじゃ大蔵大臣にお聞きします、あなたの手元にこれがあると思いますから。今言われたような税収見積もりを変えたということが、この十ページを開いていただきたいんですが、平成元年度租税及び印紙収入予算の十ページの法人税の説明を読んで、これでわかるでしょうか。これは私たちが読んで審議するんですから。これを読んで私は、どうも大蔵省税収見積もりは全くワンパターンだと、何度注意しても。これを見て、これでいわゆる法人税見積もりがこういうことできれいになったということが説明できるでしょうか。大蔵大臣、これで法人税見積もりは適正にやったと私たちがこれを見て読み取れるように書いてありますか。
  33. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 非常に難しく書いてあると思います。
  34. 安恒良一

    安恒良一君 大蔵大臣が見てもこれはおわかりになりませんね。  私は、経企庁長官は民間の時代に経済専門家でございましたから、経企庁長官のところにもこれが行っていると思います。あなたはこれをお読みになって、いわゆる法人税の動向なりいろんなこと、今私どもが問答していることが全部これでおわかりになるでしょうか。経企庁長官お答えください。
  35. 高原須美子

    国務大臣高原須美子君) 今突然に渡されまして……。専門家でもあるとは思うんですけれども、もうちょっと十分読ませていただいてから理解をしたいと思います。
  36. 安恒良一

    安恒良一君 それでは、私は大蔵大臣にもぜひお聞きしたいんですが、六十三年度補正予算の説明、これを見ますと——実は私は六十三年二月十九日にこのずさんさを指摘しました。それで宮澤さんは、これじゃ議員にわからぬから、わかるようなものを今度つくって出しますと、こう言って約束されたんですよ、私に。議事録を読んでもらった。ところが、今出ているこれを見まして、六十三年度補正後に二兆七千億の見込み違いを起こしています。これ、説明のどこを見れば見込み違いの原因がわかるように書いてありますか。これを見てください。私と約束した後に出されたやつについて、どこを見れば見込み違いがわかるように書いてあるでしょうか、ひとつ言ってみてください。
  37. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 申しわけありませんが、ちょっと私もとっさに判断しかねますので、主税局長から答弁させます。
  38. 尾崎護

    政府委員尾崎護君) 補正予算の説明の……
  39. 安恒良一

    安恒良一君 どこを見ればわかるの。
  40. 尾崎護

    政府委員尾崎護君) 補正予算段階での資料でございますので、その後の見込み違いというものについてはそれではわかりません。
  41. 安恒良一

    安恒良一君 例えばことしの平成元年度にも出されているわけですよね、これ。私はこれをずっと一貫して見ていますから、やはり宮澤さんが約束をされましたように、補正予算の租税及び云々では御指摘のとおり十分でないと存じますので概要をさらに詳しく説明をつけて提出をしますという約束をされているのが、変わってないんだよ、これ全然。それで聞いているわけだ。ですから、ひとつどうですか、そこのところ。どこをどう変えたんですか、私が言ったので。これの中身を、どこをどう変えたんですか、具体的に。
  42. 尾崎護

    政府委員尾崎護君) 補正予算の場合に、補正予算の説明の中で、従来、税収見積もりにつきましては極めて簡単でございまして、年度当初に出します資料とやや食い違いがございました。そこで、安恒先生から当初予算の説明と同じようにきちんと補正予算についても説明文を書くべきであるという御指摘を受けました。その御指示に従いまして修正をいたしたわけでございます。
  43. 安恒良一

    安恒良一君 そのとおりになってないじゃないですか。私は大蔵省法人税税収見積もりを全部洗ってみましたら、何年も全く同じなんですよ、見積もり、私たちにくれるやつは。ですから、ちょこっと変えればもうこれをすぐ使えるようになっています。六十三年度見積もり段階になって初めて一つつきました。それは「消費」という言葉がこの中に一つ入っているだけです。これで大臣、私が言ったことにこたえたということになりますか。大臣自身がこれを見て、こんなことを言って失礼ですが、大蔵大臣であろうとどの大臣であろうと、これを見て説明ができる方があったら私お目にかかりたいと思う、本当に、これを見て。消費というのが一つ新しく加わっただけでそれでどうしておわかり——私は一生懸命勉強してもわからぬわけです、それだけでは。その点どうですか。
  44. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今、大変申しわけありませんが、実は委員とのやりとりの中で、宮澤大臣がもっとわかりやすくするという答弁をされたということについては私は存じませんでした。ただ、その点はお許しをいただくとして、比べてみまして、「消費」という言葉が入っている、それだけだと言われれば確かにそのとおりであります。しかし、消費というものを取り入れて御説明をするということで、少しでもわかりやすくする努力をしたのではないかと、今私はそう思います。
  45. 安恒良一

    安恒良一君 大臣、これを見て我々は議論するんですから、私たちがこれを読んだらわかるように書いてもらわないといかぬわけですね。その点は、消費という言葉が入っただけでわかるということは絶対ないと思いますよ。どうですか。
  46. 尾崎護

    政府委員尾崎護君) 租税及び印紙収入予算の説明は従来から慣行となっておりますパターンがございまして、それに従いましてその説明を書いているわけでございます。消費について新しい要素として取り入れましたことをそこに新たに入れたわけでございますが、全体の形は従来のものを踏襲しているということは御指摘のとおりでございます。  それから補正予算、「昭和六十二年度補正予算の租税及び印紙収入見積概要」というのは、実はこういうガリ版刷りのものでございまして、これが非常に簡単に過ぎるということで安恒先生の御指摘を受けまして、これが六十三年度の分でございますが、当初予算と同じような形に詳しく直して、なぜ補正をしたかというのがよりよく理解いただけるように修正をしたところでございます。
  47. 安恒良一

    安恒良一君 「消費」というのを一つ加えただけで補正後の見積もり——その後でも補正後の見積もり誤りが二兆七千億も出ているんですから、私は、やっぱりこの際、根本的な欠陥があるということだから、これから適正見積もりを行ったり、さらに我々が提起する資料についてはわかりやすくするという改善の約束をぜひしてもらいたいと思うんですよ。大蔵大臣、これは政策的なことですからお答えください。
  48. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は宮澤大臣がお約束になりましたときの議事録を後で改めて読み返してみたいと思いますけれども、確かにわかりにくいという御指摘は私も否定をいたしません。ただ、税収見積もりを御説明申し上げ、資料として作成いたします場合にどの程度までのことができるのか。私自身十分な知識がありませんので、改めてよく勉強させていただきたいと思います。
  49. 安恒良一

    安恒良一君 結局、これはあなただけじゃなくてどの大臣がお読みになったってわからないんですよ、これだけでは。じゃどういうものが必要なのかというのを私が例を一つ挙げましょう。  例えば法人税の場合には、法人の数は幾つあるのか、赤字法人はどのくらいになっているのか、さらに企業規模別はどうなっているのか、あるいは業種別にどのくらいの収益が見込まれるのか、そういう資料もつけて、そしてこういうものをひとつお出しになるということであって初めて議員はこれは議論ができるんですよ。  そういうことを、私は決して無理なことを言っているんではない、我々議員がこれを見てわかるようにおつくりになるためには、法人税で言うと少なくともそういう資料が要ると思いますが、大臣どうですか。あった方がよくわかるんじゃないですか。
  50. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 確かに、今の委員の御指摘と主税局の説明を聞いております限り、私も委員の御指摘に耳を傾けたい部分がございます。  ただ、この要綱のいわば一つのルールのような形で各税についてまとめておりますもの、その本体に今のような資料を全部添付することの方がわかりやすいのか、あるいは御要求の資料として必要なものを御提出させていただく方がより把握しやすいのか、この辺については私は検討の余地があろうかと思いますので、少し本当に勉強させていただきたいと思います。
  51. 安恒良一

    安恒良一君 この中に書くのか附属資料で書くのかは別にして、要求があれば出すということでは困るんですよ。それは国会議員の軽視。国会議員はみんな平等にこういうものをもらったら勉強するわけですから、これを見てわかるように私は書いてもらいたいと思うんですよ。  例えば配当所得に対する課税や退職所得の課税についても、これを見ただけでは全然わからない んです。それから、上場された株式等の譲渡利益に対する税額、特に今度はキャピタルゲイン課税は原則非課税から課税に大改正が行われていますね。ところが、そんなことも何にもこの中には載っていないんです。これではわかりません。  そこで、こんなことで時間をとりたくありませんから、じゃ私の方からひとつこういうふうにしてもらいたいという提案をしておきますから御検討ください。  税収見積もり及び関連データのすべての数字については、過去二年度分の実績あるいは実績見込み数、見積もりと対比して載せること。例えば利子課税のような見積もりについては課税利子総額や金利のような関連指標。配当所得課税では配当所得総額。退職所得課税については見込み人員や所得総額。キャピタルゲイン課税については取引回数や平均利回り等、見込みと過去二年度分の推移を示す、こういうふうに考えている。  でないと、五十兆にも及ぶ税金の中身を議論するんですから、少なくとも私が言っているような資料を附属資料としてつけて国会議員が十分議論ができるように改善をしてもらいたいと思いますが、どうですか。
  52. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今委員の御指摘になりましたそのすべてを網羅するというお約束は今の時点で私はいたしかねますが、勉強をさせていただきたい。そしてそれには、今先ほど申し上げましたような本体に取り込む方法、あるいは附属資料として提出をする方法、あるいは、委員は否定をされましたけれども、御関心がある部分についての問い合わせに対する資料提供、さまざまな形態もあろうと思いますので、これは勉強をさせていただきたいと思います。
  53. 安恒良一

    安恒良一君 大蔵大臣は勉強だと言うからやむを得ません。  総理国会議員というのは、国会議員が見たら、要求があろうとなかろうと、ああこれはこういうことになっているなとわからなきゃだめなんですよ。それがあなたが言われる開かれた政治、対話の政治なんです。これを見ただけではわからないんですから。ですから私は、私の提言を真剣に受けとめて、やはり改善すべきものは改善してもらいたい。総理、どうですか、そこの点。
  54. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 大蔵大臣もできるだけ勉強をして改善に向けて努力をされると思いますけれども、私としてもできるだけ精度を高めるような努力を、最初に申し上げましたように資料を集めるときとか、考えるときとか、なるべくそちらの方に向かって努力をすべきだと、このように受けとめさせていただきます。
  55. 安恒良一

    安恒良一君 次は、物品税に行きます。  私は物品税について総理橋本大蔵大臣に伺いたいんですが、確かに物品税は是正しなきゃならない点がたくさんあることは我々も十分認識いたしています。しかし、いろんな多くの長所もあるんですが、本当にあなたたちは物品税は頭からだめな税金と思っておられるんですか。先日、NHKの討論会中の世論調査その他新聞の調査の中でも、ぜいたく品の課税等物品税的税制へ国民の賛成が非常に多かったんです。  この点、大蔵大臣総理、どうお考えですか。
  56. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、旧物品税に代表されますような個別間接税というものは、国民の所得水準が一般に低く、一般の国民が使われるものと金持ちが使うものがある程度区分できるような、いわば消費者の所得階層と物品やサービスの消費の関係が非常にはっきりしていた時代には、非常に公平感のある税制としてむしろ役立ってきたと思っております。  しかし、今日所得水準が国民全体に向上し、国民の大多数がいわゆる中流意識と言われるものを持たれるようになり、また、私どもが子供の時代にありましたようないわゆる三種の神器に代表される白黒テレビ、電気洗濯機、電気冷蔵庫は持ちたいといったような時代、あるいはカラーテレビ、クーラー、自動車といったように大体の消費者が求めたがる商品というものがある程度特定できたような時代というものでは、私は個別物品税というものは非常に生きたと思うんですけれども、今現代のようにみんなの好みが多様化してくる、そして趣味あるいは生活信条によってお金の使い道に非常に違いの出てくるような時代になりますと、私はどうしても個別の物品税では対応できない問題というのは出てくると思います。先日私は、たまたま自分が山登りが好きでスキーをいたしますので、その陸上のスキーの板は非課税であるが水上スキーは課税であるという一つの例を挙げて、そうした問題点があるのではなかろうかというようなことを申し上げてまいりました。また、従来でありますと、いわゆる高級品と言われるようなものも国民生活の中にどんどん取り込まれてまいりますと、やはり価値観の多様化、また新たな商品開発というものに個別物品税で対応していくことには、私はどうしても追い切れない限界があると思います。  殊に、従来の個別間接税の枠組みの中ではサービスについての課税というものは、もう委員がよく御承知のとおりでありますけれども、国としては入場税及び通行税でありました。また、地方税として娯楽施設利用税、料理飲食等消費税、入湯税。五種類の課税だけであったわけでありますけれども、物品に対する課税とサービスに対する課税というものを適正化していこうといたしますと、やはり私は個別の間接税対応ではどうしてもアンバランスの拡大という側面が否定できないと思っております。  また、もう一点補足をさせていただきたいと思いますけれども、経済摩擦の中で特定の商品をねらい撃ちするということから海外から批判を浴びたことも委員御承知のとおりでありまして、私どもとしては現在には合わなくなった税制という気持ちは率直に持っております。
  57. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 大蔵大臣の説明に重複しないように別の角度から申し上げますけれども、個別の物品税というものは長い歴史がありまして、そのときどきの社会の要請とか、そのときどきの政策目標として入ったり出たりしたものがあったことは過日来の御議論で御指摘のとおりでございます。けれども、どんないい制度でも、そのときよかれと思ってやったことでも長い間たちますと社会の進歩の方が先行したり、あるいは時代に合わなくなってくる面が確かに出てくると思うんです。ですから、同じ御家庭でお使いになるものでも、例えば電気掃除機と電気炊飯器なんというものにかかるものとかからないものがあるということになれば、確かにゆがみひずみでございましょう。  それから、先生もよく御存じのように、西側の先進国のOECDというところの加盟国を全部見ますと、個別の物品税をやっておるという国は残念ながらなくなってまいりました。日本だけがおくれておるようなことも、国際化時代というのはやっぱりしてはいけないんだな、広く薄くきちっと負担するようにするためには物品税は変えていった方がいいのではないか、私はそんな感じを待っております。
  58. 安恒良一

    安恒良一君 今言われたこと、これから私が質問を全部すると、全部ああそうかなとお思いになることがありますからよくお聞きください。  というのは、なるほど価値観の変化とかいろんなことを言われますが、私は、税というのは国民の信頼を得ることだと。だから、あなたたちが幾ら一律三%消費税だから公平だと言っても、国民の信頼を得ないんですよ。その信頼を得なかったことが過ぐる参議院選挙において大きく出ているわけですね。  そこで、私は、税を考えるときに、担税力ということをやはり大きく考えなきゃならぬ。そうすると、例えばよく例に引かれるんですが、何もそれだけがいいと思いませんが、ダイヤモンドとか毛皮とか、その他高級品、ぜいたく品、これと生活必需品と分けて税負担を求める、これが物品税的税制なんですからね。私はその方が国民に信頼を得る。それと同時に、国民のニーズについては普及率というのがありますからそういうものを考えればいいと思いますが、重ねてお聞きしますが、 そこの点はどうですか。
  59. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 委員に御質問を申し上げるのは恐縮でありますけれども、委員が今使われましたその普及率という意味をどう理解したらよろしいか。恐縮です。
  60. 安恒良一

    安恒良一君 それはお手元に資料がありますから……。  それじゃひとつ、私は経企庁に資料を要求しておきました。経企庁、その資料に基づいて説明してください。
  61. 田中努

    政府委員田中努君) お答え申し上げます。  私どもが実施をいたしております消費動向調査におきまして、耐久消費財につきまして三十八品目ほどを取り上げまして、その普及率につきまして調査をしておるわけでございますけれども、その最新のデータでございますが、本年の三月末におきます耐久消費財の普及率について御説明申し上げたいと思います。  普及率の高い方から申し上げますと、電気洗濯機が九九・三%、カラーテレビが九九・三%、電気冷蔵庫が九八・六%、電気掃除機が九八・五%、カメラが八六・九%、ミシンが八一・九%、自転車が八〇・九%、石油ストーブが七八・六%、乗用車が七六・〇%、ラジオカセットが七五・四%、食堂セットが六八・四%、ガス瞬間湯沸かし器が六五・七%、じゅうたんが六五・五%、電子レンジが六四・三%、VTRが六三・七%、ルームエアコン六三・三%、ステレオ六一・二%、オーブン五八・七%、温風ヒーター五四・六%、飾り棚五一・二%、ベッド四九・六%、電気カーペット四〇・〇%、応接セット三七・二%、オートバイ、スクーター三五・一%、プッシュホン三四・五%、温水器三三・四%、ゴルフセット三一・七%、CDプレーヤー二六・八%、書斎机二四・六%、布団乾燥機二四・三%、ピアノ二一・九%、ワープロ一九・八%、電子オルガン一四・九%、撮影機・映写機セット一四・九%、衣類乾燥機一四・四%、ユニット家具一四・一%、パソコン一一・六%、会員権六・七%。  以上、三十八品目でございます。
  62. 安恒良一

    安恒良一君 そこで、申し上げたいんですが、物品税にさまざまなゆがみができたのは何だろうかというと、私は、過去に政権担当されたあなた方の政治的配慮とか人為的要因、そういうもので当然見直すべきものを見直さないできたところに物品税の大きなゆがみができたと思います。  そこで、いま一つお聞きをしておきたいんですが、国民は消費税について、食料品や生活必需品は課税しないでくれと、こう訴えている。三塚さんがきのう談話されていますね。そうすると、あなたたちはこれ、現在非課税品目の見直しを進められていると聞いていますが、総理、その内容はどんなものでしょうか。  さらに、非課税品目の線引きは具体的にどんな基準でやられるつもりですか。総理、そのことをお答えください。
  63. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 総理の御答弁の前に、今その普及率についての御意見について私から少し申し上げてみたいと思います。  私、今仮に委員の御指摘になりましたような普及率を一つの目安として個別物品税を考えました場合には、一つの問題点としては、例えば五〇%で線を引いたといたします。耐久消費財の相当部分は課税されないものになると思われますし、自動車と家電製品の課税が税収の八割を占めておりました旧物品税、また現在各党から御提案になっておられます物品税の復活案よりも課税ベースは相当低くなるのではないかという感じがいたします。また、個別に名前を掲げる方式で参りました場合には、やっぱりサービスに対する課税の問題と、新製品への課税が機動的に対応できないという旧物品税が抱えていた問題点がそのまま生じてくるのではないかという感じがいたします。また、仮にこの線引きを五〇%ととらえてみまして、普及をしていないものについての購入意欲がある方に負担能力ありと仮定をするといたしますと、これもまた現実には必ずしもそう割り切れるケースばかりではございません。  そうなりますと、委員が御指摘になりました普及率という基準で実質的な負担の公平という問題を判断するのには少々無理があるという感じがいたします。
  64. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 私については見直しの問題についてのお尋ねでございましたけれども、御承知のように、報道のように、昨日は地方に出ていった自民党の税制調査会関係の地方の声を聞くというところで議論が出ておりましたこともよく承知しておりますし、また党の税制調査会で幅広いいろいろな御議論が続いておることもよく承知いたしております。また、政府の税制調査会にもいろいろ御議論を願っておるさなかであります。私は、見直すべき点は思い切って見直しながらこれを定着させていかなきゃならぬ、御理解をいただくためにはどのような見直しをしたらいいのかということを今いろいろ聞いておる最中でございますから、その結果を十分に把握してからきちっと判断をしてお示ししなければならぬ、こう思っております。
  65. 安恒良一

    安恒良一君 橋本大蔵大臣が言われたことは、後から私が質問をすることの中の問題ですから。質問通告をやっているものですから先へ先へと答弁されますが、後で反論をします。  私が海部さんに、総理に聞いているのは、そんなテープレコーダーのような話をここで聞きたくないんですよ。私は見直すところは思い切って見直すと言われますから、あなたは何をそうお考えですかと。あなた自身が信念、哲学があっていいはずなんです。橋本大蔵大臣自身がおれはこういうところを見直したいと思うんだと、しかし今税制調査会でこういう議論をしているからというのならわかるんだが、ところが我々が聞くと税制調査会、調査会と逃げるのみで、それではいけない。それでは税制論議というのはかみ合わないんですよ。幸い、きのうの三塚さんの非課税枠の拡大が、おたくの党の政調会長ですが、全食料品、出産費、入学金と、これだけきょう大見出しで出ている。それにもかかわらず、まだ世間の声を聞いている最中ですからと。これでは予算委員会の論議がかみ合いません。  だから、私が聞いていることは、あなたは総理として、もしくは大蔵大臣として、実は自分はここを見直したいと思っているんだぐらいのことは言わなけりゃあ。六日間もこれ予算委員会をやっているんですよ。各党が聞くたびに同じことで、いやこれは税制調査会でやっています、やっています、それではかみ合わぬじゃないですか。それと同時に、例えば全食料品を見直すというときには、その見直すための基準を何で行うつもりなんですかと、これを聞いているんです。どうですか。
  66. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 私も、私なりにいろいろなことを考えて、聞いたりしておりますけれども、それはここで予断と憶測で私の意見を具体的に個々を述べてしまうということは、それは安恒先生の御質問にはかみ合っているかもしれませんが、自民党とか政府税調の方にお願いしながら私がここで言ってしまうとそちらの方がかみ合わなくなっちゃいまして、せっかく何か思い切って直しをするときにはどうしたらいいかということを真剣に今考え、御議論を承っておる最中でございますから、時期が来ましたら具体的に申し上げさせていただきますが、それまでにはやはりいろいろな手続もありますし、それからまだ出先で聞かれた話を私も新聞で見た程度でありますから、全国のいろいろな声や全体のものの中でどうなっておるかということをやっぱりきちっと考えさせていただきたい、こう思います。
  67. 安恒良一

    安恒良一君 これで時間をとりたくないんですが、そんなことではあなたが言われている対話の政治にはならない、このことだけは申し上げておきたいと思います。  そこで、いろいろ橋本さんはヨーロッパの付加価値税のことやなんかも言われましたから、まずヨーロッパの付加価値税を見て、非課税それから標準課税率、ゼロ税率、軽減税率、割り増し税率、フランス、西ドイツ、イギリス、資料を要求して おきましたから、それにおいてちょっと説明してみてください、現状がどうなっておるか。
  68. 尾崎護

    政府委員尾崎護君) フランスから申し上げます。非課税となっておりますものは、どこの国もそうでございますが、課税対象としてなじまない種類のもの、土地とか有価証券、金融、保険等でございます。それから政策的配慮に基づく非課税のものといたしましては、医療、教育、不動産賃貸、郵便、それから公的養護施設、障害者施設、スポーツ大会などが非課税となっております。  フランスは標準税率が一八・六%でございまして、ゼロ税率のようなものはございません。それから軽減税率といたしましては、雑誌、書籍のようなものが七%、食料品、水道水等が五・五%、新聞に二・一%というものがございます。割り増し税率といたしまして、宝石、カメラ、ラジオ、ステレオ、毛皮、たばこなどが三三カ三分の一%でございまして、乗用車などが二八%となっております。——失礼いたしました。それがちょっと最近改正になりまして、新しい数字を申し上げます。  新しい数字は、食料品、水道水等五・五、新聞等二・一というのが軽減税率でございますけれども、割り増し税率が変わりまして、宝石、カメラ、ラジオ、ステレオ、毛皮、乗用車、香水等が最近二五%に下がりました。それからたばこが二八%ということになっております。  それから西ドイツを申し上げますと、課税対象としてなじまないものはフランスと同じようなものでございます。それから政策的配慮に基づくもの、これもほとんどフランスと同じでございます。標準税率一四%でございまして、ゼロ税率はございません。軽減税率は、食料品、水道水、新聞、雑誌、書籍、国内近距離旅客輸送等が七%でございます。割り増し税率は、西ドイツの場合ございません。  イギリスを申し上げます。イギリスも、課税対象としてなじまないものは同じでございます。政策的配慮に基づきます非課税は、医療、教育、不動産賃貸、郵便、それから公的養護施設、障害者施設等でございます。標準税率一五%とございまして、イギリスにはゼロ税率がございます。対象として、国内旅客輸送、食料品、水道水、新聞、雑誌、書籍、それから電力、燃料、医薬品等が対象となっております。それから軽減税率、割り増し税率はイギリスにはございません。
  69. 安恒良一

    安恒良一君 橋本大蔵大臣、今現状を言われたとおりに、あなたは付加価値税が非常にいい、ヨーロッパは非常にいい、我が国のような物品税的なものはやってないんだということを盛んに言われましたが、この付加価値税の中でも、今申し上げたようにゼロ税率あり、割り増し税率あり、それから軽減税率があるんですよ。これはやっぱり物品税的な発想がないとこういうことはできないんです。だから、ヨーロッパの先進諸国でも物品税的な発想に頼らざるを得ない。これがあなたたちがヨーロッパがこうなっているこうなっていると言われる中でなっているんですが、この点はどうお考えですか。
  70. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今政府委員から御説明を申し上げたとおりでありますが、同時に、ECの第六次指令におきましては、ゼロ税率についてはEC統合、すなわち一九九二年でありますが、までに廃止というものが出ております。そして、確かにそれぞれの国の政策的配慮に基づく非課税対象案件はそれぞれの国でいろいろなものがございますけれども、同時に、その非課税対象を除く全部に対して課税という姿勢はこれは変わっておりません。これはたまたま北欧諸国等はございませんけれども、私の手元に今資料を持っておりませんけれども、広く薄く課税ベースをとる間接税というものは定着をいたしておると思っております。
  71. 安恒良一

    安恒良一君 僕はやっぱり一番議論をしたいところは、すべてのものに無条件で課税をした方がいいのか、それともいわゆる担税力、それから基準を設けて法律によってこの品物とこの品物は課税する、こういうやり方がどちらが民主的なのか非権力的なのかと、こういうことなんです。ですから私は、すべて三%ということになると、これは今までたくさん議論がありましたように弱い者いじめの税制が出てくるわけです。ですから、従来の物品税を見直し、改善を行うことによって国民の信頼を大きく得ることができると私は思います。  私が普及率を示しましたのは、これは念のため断っておきますが、きのう私たちが提案をいたしました、当面二年間の問題でこれを適用しようということで五〇ということを言っているわけではありません。これは違います。これは、私たちは二年後にもこの物品税のあり方について議論をしなきゃなりませんから、そのときに一つの基準として持ち出しているということを私はまず断っておかないといけません、誤解を与えてはいけませんので。  今経企庁から説明をしてもらったように、私は率直に言いまして、普及率五〇%という線をなぜ引きたいか、引いたらいいかというのは、電気冷蔵庫とか電気掃除機とかもう九九%普及しているようなものは、全部これは生活必需品ですから課税の対象から外せばいいと言うんです。しかし、例えば応接セットであるとかピアノ、ゴルフセット、これはいずれも普及率が五〇%を非常に下回っているわけですね。しかも、急速に普及率の拡大が進んでいないんです。年次別にこれは表がありますから見てください。年次別にあります。でありますから、こうしたものについて、いわゆるぜいたく品とか高級品、これと、それから日常生活に利便性が低い、こういうものについてはまず当面税を負担する。そして、普及率が五〇を超えたらそれは外していけばいいんです。それから、新しいものが出てくれば、税制は毎年見直しているんですから、追加できるわけですね。そういうようなやり方を考えたらどうかということ。  そこで、皆さんのお手元に、私は整理してみたんです、これは全部配ってあります。配付資料で、いわゆる非課税ということで普及率が五〇以上超したものが、こういうものが今あるじゃないですか。これは経企庁の資料ですよ。それから片っ方は、同じく経企庁の資料で、まだ普及率がこんなに低いのがあるじゃないですか。そうすると、この普及率の低いものについてはひとつぜひ物品税で取るというやり方で——それはなぜかというと、今までの物品税をおつくりになるときに、基準というものが明確でないまま人為的、政治的にやるから、コーヒーにかかって紅茶とかいわゆるテニスのラケットにはかからぬでと、こういう論争が出るのは、政府みずからがそういう基準というものをお持ちにならないからそういうことになるんじゃないでしょうか。  ですから、その点について、少なくとも今私が申し上げたようなことでいけば、国民の生活の実態を判断する基準のベースにこれはなっているし、また国民の感覚としても、普及率が高いものはこれは生活必需品とみなして課税をしない、そして普及率が低いものについては課税をする、こういうことで、これは私の、安恒の個人の私案としてたまたまそれを五〇と引いたんですが、そういう問題について総理並びに大蔵大臣、どうお感じでしょうか。
  72. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) その以前に一点申し上げたいと思いますのは、委員が公平性の問題を御論議になりましたけれども、今我が国で採用されております消費税は税率三%であります。申し上げるまでもないことでありますが。そして、先ほど御説明をいたしましたように、フランスは軽減税率を持っておりますけれども、例えば今論議のよくあります食料品につきまして軽減税率を適用しておりますけれども、五・五%であります。また西独の場合も、軽減税率を食料品に適用しておりますけれども、その税率は七%であります。そして、イギリスの場合には標準税率一五%でありまして、食料品についてはゼロ税率を適用している。やはりそれぞれの国の状況による変化というものはございますし、そのゼロ税率につい てはEC六次指令は廃止を求めておるという状況でございます。  そこで、今委員がこれは私の案であるという御説明において御提出をいただきました「主要耐久消費財等の普及率」を見て線引きをするというお考えについては、先ほど一部私は意見を申し上げました。しかし同時に、やはりこういう対応でまいりました場合に、なるほど個別商品のリストアップという意味では新たな商品が開発をされましたたびに追加をしていくという手法はあり得ると存じますが、しかし、普及率が五〇%を超えたものすなわち物品税の対象から外す、それだけ大衆性ありという割り切りがかけられるものかどうか。例えば私自身写真気違いでしてカメラに原稿料やなんかみんな投じていますけれども、随分高い投資につきます。しかし、確かにこれはぜいたくなものであります。普及率はカメラは八六・九%。非課税。個人とすれば私は大変幸せでありますけれども、果たしてそれは正しい税のあり方か。こうなりますと、私はやはり普及率という基準から実質的な負担の公平というものを論議することには無理があると、先ほど申し上げた主張を繰り返さざるを得ません。
  73. 安恒良一

    安恒良一君 経企庁の資料を大蔵大臣見ていただきたいんですがね。これは普及率と収入、所得というのが非常にリンクをしていくわけですよね。というのは、例えば新製品が出ましても、この階層別を見ていただきますと——それじゃ経企庁、ちょっとここを説明してください、大蔵大臣お持ちでないようでありますから。私が要求しました「耐久消費財の普及状況」とそれから年間所得の割合で、これを全部やったら時間がかかりますから、今問題になっている応接セット、電子レンジ、電気冷蔵庫、電気掃除機、洗濯機、それからピアノ、私が名前を挙げたところで所得階層と普及率がどういう年次変化をしているか、ちょっと説明してください。
  74. 田中努

    政府委員田中努君) お答え申し上げます。  応接セットにつきましては、二百五十万円以下の世帯におきましては二〇・七%でございますが、二百五十一万から三百五十万円までの世帯では二七%、三百五十一万円から四百五十万円までの世帯では三一%、四百五十一万円から六百五十万円の世帯では四二・八%ですか。それから六百五十一万円以上五八・七%。  電子レンジにつきましては、ただいまの所得階層別に下の方から数字を申し上げますが、四三・五%、六〇・一%、六二・〇%、六九・四%、七九・〇%となっております。  それからピアノでございますが、同じく所得階層別で下から申し上げますと、八%、一〇・六%、一八・二%、二七・二%、四〇・七%となっております。
  75. 安恒良一

    安恒良一君 所得階層別についてもいわゆる普及率が非常に違うんですよね。所得の高い人は、やはりまだ五〇%を割っているような品物でもたくさんお持ちになっています。その意味からいうと、私は、この普及率というものは単なる五〇を境に上下だけじゃなくして所得に応じてこういうものはやはり買っているということでありまして、その点も大蔵大臣、この資料がそのことをきちっと物語っていますから、あなたは首をかしげているけれども、現実にこういう資料があるわけですから、十分ひとつ御検討を願ってお考えを聞かせてもらいます。  すなわち、私はこの非課税の概念をはっきりしないとだめなんだと。基準なしに消費税を持ち込むところに問題があるんですから、私は、今言ったようにこれを私の一つの改善案として、物品税についてだけだめだと決めつけるんじゃなくして、こういうふうにやれば今申し上げた所得の水準に応じてまた国民のニーズに応じてそういうことできちっとできるではないかと、こういうことを私は提案し、そのことによって国民の税に対する信頼を得る必要があるだろう、こういうふうに言っているんですが、総理、今までの議論を、私と大蔵大臣やりとりを聞いてどういうお感じをお待ちですか。
  76. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) この提案は、私が一つだけ申し上げさせていただきますと、非常に新しい視点に立って新しい角度からの御提案でございますから、しかも今お話を聞いておりますと今度の二年間の税制改革のあれではなくて、その後の本格的改正のときの基準ということで本格的に検討もしたんだよと、こうおっしゃいます。その御努力には率直に敬意を表しますが、私は、その五〇%を超えるか超えないかということだけで議論いたしますと、普及率が五〇%ちょうどを超えるときにはどういうことになるのだろうかということもひとつ考えさせていただきますし、あとのことは大蔵大臣が申し上げましたこととほとんど同じでございます。  同時にまた、サービスというものにはこれでは全然関係がなくなってまいりますので、当然サービスのこともまた別途御考慮に入っておるのではなかろうかと、このように推測させていただきます。
  77. 安恒良一

    安恒良一君 時間がありませんから、いずれ税特が設置をされ本格論争をするときにさらに議論したいと思います。  ただ、一言だけこの際大蔵大臣に申し上げて所見を聞いておきますが、国際性がないないとあなたはおっしゃいますが、例えば輸入自動車で言うと排気量の高い大型自動車に物品税を課す、輸入ウイスキーに不利な酒税を設ける、そして国内産業の保護から物品税を設定していったのですから、これは政府のやり方が悪いので、物品税は国際性がないものではないんです。この点について、その点はあなたは国際性がないないと言われますが、どうですか。
  78. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 政府というお話でありますが、政府が今までに税制、物品税につきましても本院、国会に法案として提出をする以前にもさまざまな角度から御意見を伺い、そして国民の声にこたえながら運営をしてまいりました物品税というものが、今委員の御指摘になりましたような角度で幾つかの問題が国際的に起こっておったという事実は御承知のとおりであります。そしてそれぞれの国がやはり同じような基本的考え方の制度で動いております中に、個別物品税という対応で国際社会の中にありますことは決して日本に有利なことではございません。個別例示を一々申し上げるつもりもございませんけれども、従来からの委員の御経験から御判断をいただけると思います。
  79. 安恒良一

    安恒良一君 時間がありませんから、私は、この問題についてもさらに、日本の産業政策保護上された税制といわゆる物品税を混同することは間違いであるということを申し上げて、私の質問を終わります。
  80. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 以上で安恒良一君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  81. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 次に、清水嘉与子君の質疑を行います。清水君。
  82. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 思いがけなく早く初舞台を踏む機会をいただきまして、先輩議員、同輩議員の皆様方に御礼申し上げます。しかし、まあ本当のところやや戸惑っているというのが今の心境でございます。よろしくお願いいたします。  まず、私は輸血血液の問題についてお伺いしたいと思います。  月曜日の朝日並びに読売新聞に、日赤が血液製剤を薬価の八割も割り引いて医療機関に売り渡しているという報道がなされました。また、一昨日には毎日新聞に、茨城の日赤血液センターで集めた献血の処理がずさんであったというような問題が報道されました。  血液はそのほとんどが日赤の献血によりまして需給を賄っているわけでございまして、今約八百万人いらっしゃる献血者の方々がどんな思いでこれをごらんになったかというふうに思うわけでございます。早速きょうの新聞にも献血をされた方々が善意を裏切った血液製剤差益に対して非常にショックだったというようなことを訴えておられます。しかも、売って差益を受けた病院の中に は国公立病院あるいは日赤病院もあったというようなことでございまして、非常に遺憾に思うわけでございます。逆に、これだけ安く売ることができたということは薬価基準が高過ぎたのではないか、あるいは日赤が独占でこの業務をやっているために民間に比べて高くしているんじゃないだろうかという疑問も出てくるわけでございまして、その事実関係、そしてまたその血液製剤に薬価差があるということに対しましてどう厚生省は対応していくのか、その辺についてお伺いしたいと思います。
  83. 北郷勲夫

    政府委員(北郷勲夫君) 御質問のありました日赤の販売の問題でございますが、報道されておりましたようなことは日赤の、報告によりますと大体事実であったと、こういうことのようでございます。  この背景でありますが、原料血漿のメーンの供給国でございますアメリカで需給が緩んでおるというようなことがあるようでありますが、それにまた我が国でもアルブミンなんかの使用の適正化を図っております。こういったことの影響を受けまして日赤も一部の製品につきまして割引販売をしたと、こういうことのようでございます。  私どもは血液製剤で大きな薬価差が出るということはこれは当然いけないことだと思っておりますので、現在やっております薬価調査の結果に基づきまして、きちっとした価格に直したいと考えております。
  84. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 また、その後の報道によりますと、日赤の血液製剤が非常に売れ残って在庫が多過ぎるというようなことを伺いますけれども、なぜ血液製剤が売れないのか。まあ売れないということはそれだけ需要がなければ大変いいという面もあるわけでございますけれども、せっかくの献血者の善意を無にすることにならないのかどうかということにつきまして、今後どうしていくのか、その辺についてお伺いしたいと思います。
  85. 北郷勲夫

    政府委員(北郷勲夫君) 日赤の製品の中で一部売れにくいものがあるのも事実でございまして、アルブミン製剤約八万本について問題が生じておるわけであります。薬価ベースで約四億円ぐらいのものでございます。市場が先ほど申しましたように緩んでおるという関係もありますのと、日本赤十字社というのはいわば、そう言ってはなんですが、こういったものの売り方になれていないという面もあるわけであります。しかしながら、こういった献血を材料とするものが売れないというのは非常に献血者の善意を無にすることでございますので、できるだけ献血によるものを優先的に使用していただくということで、日本赤十字病院あるいは国立病院、こういうところに使用をお願いいたしておりますし、それからまた病院団体にも協力を依頼しております。幸い、各医療機関とも協力していただけるような意向でございますので、売れ残るというようなことはない、善意の献血が有効に使用できるというように考えております。  なお、その際の値段につきましても、適正な価格で購入していただくようお願いしておるところであります。
  86. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 血液製剤は非常に医療上不可欠なものでございます。こういう安売りの問題でございますとか処理がずさんであるとか、こういった問題を起こしまして善意の献血者に非常に不信を抱かせるというようなことについてはこれはもう大変なことだというふうに思いますが、大臣、これをどういうふうにお考えになりますでしょうか。
  87. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) お説のとおり、今般報道されましたような安売りの問題やずさんな管理の問題は、血液を提供してくださっている善意の献血者の気持ちを損なうものであり、大変遺憾なことだと思っております。  厚生省といたしましては、今回の問題について日赤等関係団体を十分指導するとともに、採血から製造、供給のすべての過程において適正な運営を確保し、献血される方々の理解と協力を得られるように姿勢を正していかなければいけない、かように思っております。
  88. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 さきのエイズ法案の審議の際に、衆参社労委員会におきましても附帯決議がございます。自国に必要な血液製剤の自給を目指して国民への協力を求めるということでございますので、そのために、今日赤が中心になりましてほとんど独占企業でやっているわけでございますので、これだけ信頼されている日赤がやはりその責任を本当に重く感じていただきたい、そして価格におきましても十分たえ得るような、民間と本当に争うのであれば、それだけの価格にしていただくように努力をしていただきたいというふうに思っております。  次に、私は昨日野党四党から出されました代替財源関連法案につきましてお尋ねを申し上げたいというふうに思います。  同じ日の読売の朝刊に、海部内閣の支持率が四二・六%に上がったというふうに書いてあります。それは恐らく消費税の見直しへの意欲だとか好調な景気のせいであろうというふうに書いてあります。逆に、どういうことでしょうか、社会党が二二・七%に下降してきたということでございまして、その理由として、消費税廃止に伴う代替財源案の説得力の乏しさ、野党連合政権構想の基本政策をめぐっての他の野党からの厳しい批判、パチンコ問題なども影響したのではないかというふうに書いてございます。この新聞報道につきまして、総理大蔵大臣の御感想をちょっとお伺いしたいと思います。
  89. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 一生懸命毎日毎日努力をしておりますけれども、お認めをいただきましてありがとうございましたというのが私の率直な気持ちでございますけれども、なお謙虚に政策努力を続けてまいりたい、こう思っております。  また、野党から出ております代替財源法案につきましては、私も今細部にわたっていろいろ検討させていただいております。
  90. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今、野党各党がおまとめになり提出をされました代替財源案というものに言及をされましたが、従来から、例えば物品税の復活等、私どもとしては問題点があるということを申し上げてまいりました。そして、これから国会で御論議が始まりますれば、政府として恐らく意見を申し上げる場もあろうと存じます。  ただ、私どもは消費税というものが将来にとって必要な税制であると信じておりますし、税制改革全体の中の柱として定着をさせていきたいと、そのための努力を今いたしておるところでありますので、基本的に廃止を前提とされる野党とは考え方の違いがあるということは当然であります。
  91. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 この新聞の記事は実はもう少しあるわけでございまして、海部内閣の不支持率、支持をしないという方も四〇%いらっしゃるということでございます。しかし、その支持をしないという理由の多くは税制改革の問題でございまして、消費税への反発だとか、あるいはその見直しの内容がまだ不明だということに対する不満があるんじゃないだろうかということでございます。そして、この国会で最大の焦点となっております消費税問題への対応が今後内閣の評価を大きく左右するんじゃないだろうかというふうなまとめがしてございます。これからの税制の見直しによりまして海部内閣の支持率の上昇も十分可能だということでございますので、頑張っていただきたいというふうに思います。  次に、消費税につきましては、導入前には、国民生活に非常に大混乱を起こすのではないかというふうな指摘がなされました。時間がたつにつれまして私も、実感として、日常生活の中でまた商取引の中で次第に定着してきているのではないかというふうに思います。こういう問題につきまして、各省庁でありますとかあるいは企業の方々あるいは主婦の方々、いろんな方々の御意見を伺いましても、いろいろ御意見はもちろんございますけれどもやはり次第に定着してきているのかなというような気持ちを持ちますけれども、大蔵大臣、どうお思いでございましょうか。また、消費税の定着というものについてぜひ御決意をお伺いした いというふうに思います。
  92. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 確かに、消費税が発足をいたします前、竹下総理が九つの懸念というものを表明されました。しかしその後の状況の中で、例えば物価あるいは転嫁の懸念につきましては、最近における物価の動きというものが極めて安定的なものとなっておりまして、転嫁も適正に行われております。  また、逆進性というものがもう一つの問題になったわけであります。これは消費税という税の持つ問題点、確かにそのとおりでありますけれども、歳出面の配慮など可能な限り対応をしてまいりました。また、所得税、住民税の減税の中で課税最低限が大幅に上昇いたしましたこと等、中・低所得者対策という意味での対応もなされております。そしてまた、社会的に弱い立場の方々に対する対応というものはこれからももちろん十分努力をしてまいらなければなりません。  税率の引き上げというものについての懸念がこれもございました。海部内閣において税率の引き上げは行わないという旨を既に総理は国民に対して約束をしておられるわけであります。  また、事業者の事務負担というものにつきましても、その仕組みについて中小企業者の納税事務負担に配慮してそれぞれの措置を講じてまいりました結果、今、半年間の弾力運営の期間が経過をいたしまして本格的な申告納付の開始を迎えたわけでありますけれども、各種の届け出あるいは申告が順調に提出をされておりますことを考えてみますと、むしろ私どもとしては納税者を含め関係者に御協力に対してお礼を申し上げたい心境であります。  また、納税した、納付した消費税が国庫に入らないのではないかという懸念がよく当時述べられました。しかし、これは通産省に御調査をいただきますと、売上高三千万円以下の小売業のうち約四割の方々がほとんど転嫁をしておられない。また、サービス業にあっては七割の方々が転嫁をしておられない状況でありまして、事業者免税点制度等によって生じ得る減収の多くの部分というものは、消費者がそれだけ安い価格で物を購入することができるということを意味しておるわけでございます。  また、地方団体の財政運営に対する懸念というものもございましたが、これは地方に対する財源配分など必要な措置を講じてまいっておりまして、自治体からも異論が出ておる状況ではございません。  こうして、一つずつ対応策を講じ努力を続けてまいりましたし、これからもそうした努力は継続していかなければなりませんけれども、私どもとしては今後とも今回の税制改革全体、殊に消費税の定着について全力を挙げてまいりたい、そのように考えております。
  93. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 代替財源関連法案についてでございますけれども、その中身は、主にキャピタルゲインに対する課税の強化でありますとか、法人課税の強化、あるいは相続税課税の強化、そしてまた、先ほど御議論もございましたけれども、せっかく廃止されました物品税等個別間接税の復活などとなっておりまして、これは復活といいましても今ないわけでございますから、やはり新たな税制をつくることになるのではないかというふうな感じがいたします。そしてまた、この消費税を導入するために事業者の方がどれだけ準備をしたか、それが相当なものだというふうに伺っております。例えばレジスターの購入でありますとか改造、あるいはコンピューターソフトの改変など、直接の経費だけでも約三千五百億円というような経費がかかったというふうにも伺っておりますし、またそのほかカタログでありますとかあるいは値札の改変あるいは販売員の教育、いろんなことがあったと思いますけれども、相当準備をしてやってくだすったわけでございますが、野党の皆様方がお出しくださいました代替財源法案は、暫定期間の二年のためということでございますと、これらの準備したものをまた改変する、非常に経済社会に混乱を起こすのではないかというふうに私は思えてなりません。  また、今の消費税法でございますけれども、これはいろいろ十数年にわたります御議論を通して最後に消費税案になり、そして七月に出され、審議がとまって、十二月に法案が可決され、そして四月から施行されたわけでございますけれども、そういうことでは周知のゆとりもあって、成立後三カ月、非常に短い期間で何とか実施できたわけでございますけれども、野党がこれから消費税を廃止する、そして物品税などももとに戻すという大変革、今法案を出してそして来年四月から、非常に準備期間は大丈夫なんだろうかということをやはり心配するところでございます。  さらに、消費者の立場から考えまして果たして四月から消費税廃止、そして物品が消費税がかからないコストで前のコストに戻って買えるかというと、決してそういうことはないんじゃないだろうかというふうに私思うのです。そのためにどのような施策をとるのだろうかということも疑問でございます。これはやがて明らかにしていただく機会があるのではないかというふうに思いますけれども、消費者にとっては消費税の廃止が本当に意味を持つまでに随分これ時間がかかるのではないかなというふうなのが私の率直な疑問でございます。  そう考えますと、二年後に今これから野党の皆様方が一生懸命いい研究をされまして、今の税制よりもすぐれた税制をつくろうとおっしゃっているわけでございますので、むしろ本当にいい税制がつくられて国民の皆様方も本当に喜んで税金を払いたいというような税制ができますれば、そのときに国民の賛否を問えばいいのではないかと、これが私の疑問なんでございます。  もうこの野党案の中身については今回触れませんけれども、以上のように考えますと、野党のお出しになりました代替財源関連法案というのはちよっと問題があり過ぎるのではないかというふうに思えてなりません。この案につきまして大蔵大臣の御見解をお伺いしたいというふうに思います。
  94. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 委員が御指摘になりましたように、広く薄い御負担を求める間接税というものは、昭和五十二年十月の政府税制調査会の中期答申以来長い論議を踏まえて今日に至りました。そして、いろいろ御批判はございますし、その御批判には我々は謙虚に耳を傾けなければなりませんけれども、消費税というものは現に施行され国民に御協力をいただいております。税制というものが経済社会の枠組みの一つであり、当然のことながら安定性、連続性というものが必要なものであることは委員指摘のとおりでございます。そして今回、いわば二年後の本格的な野党のお立場からの税制改革案が提出されますまでの間、現行の消費税を廃止し他の税制を採用いたすとするならば、少なくとも消費税導入の際に起こりましたとは逆の混乱を生ずることはまず第一の問題として考えなければなりません。そして三千五百億円と言われております投資というものは、一回その場でむだになるわけであります。そして、二年後いかなる御案が提示をされるのか私には全くわかりませんけれども、その時点でもう一度同じような投資が必要であるということになれば、これは物価へのはね返りだけを考えましても決して穏やかなものではない。我々としては懸念を持たざるを得ない、この一点についても、と考えております。
  95. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 それでは、質問の都合でこれで打ち切らしていただきたいと思います。
  96. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 清水嘉与子君の残余の質疑は午後に譲ることとし、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時四十九分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  97. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 予算委員会を再開いたします。  予算執行状況に関する調査を議題といたしま す。  休憩前に引き続き、清水嘉与子君の質疑を行います。清水君。
  98. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 私は残された時間を高齢者の問題について御質問したいというふうに思います。  まず総理にお願いをしたいと思います。  今回の税制改革の必要性につきまして、先般の所信表明演説の中で、来るべき高齢化社会を展望し、すべての人々が社会共通の費用を公平に分かち合い、そしてまた、サラリーマンの重税感、不公平感をなくすことにある、こういうふうにおっしゃいました。高齢化社会の到来を踏まえた税制改革であるというふうに指摘されたと思います。ところが野党の皆様方は、高齢化社会は確かに来るんだけれどもその到来にはまだ間があるんじゃないだろうか、対応にはまだ十分検討する時間があるということを御指摘でございます。そしてさらに、この二年間をかけて検討しようというふうなことでございまして、そこに少しずれがあるのではないかというふうに考えます。確かに平成元年、今、総人口に占めます六十五歳以上の人口の比率を見ますと、日本が一一・六%。もう既に一五%、一六%、一七%と高い率に達しておりますヨーロッパの国々から比べますとまだ日本は若い国だというふうに言えるようにも思うのでございますけれども、そこで、今なぜ急いで税制改革をしなければならないのかという点につきまして重ねて御質問したいというふうに思います。お願いいたします。
  99. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 日本に高齢化社会が来るということは言われて久しいわけでありますが、一つ特異なことはそのスピードが物すごく速いということでございます。私自身もこの間調べてみて驚きましたが、今百歳以上の方が三千人以上になった、三千七十八人。私どもが議員に当選したころ、百歳以上の方百五十三人から敬老の日が始まったということを考えますとすごいスピードでございます。六十五歳以上の方のことについては今委員指摘のとおりのスピードで伸びております。  そうしますと、もしこのまま何もしないで二〇一〇年になったとしたときに、その二〇一〇年には年金とか医療とかいろいろなものでどれぐらいお金が要るのか。厚生省の試算、大蔵省の試算その他みんな突き合わせてみましても、大体そのころになると二百兆から二百四十五兆程度のお金が要るようになる。今のままで参りますと中堅サラリーマンの方の税負担率は、負担率でいくと率が倍になる。そうすると、このときになって慌ててもいけない、今からきちっとそのような対応をして、そして社会共通の費用を広く薄く国民みんなでそれぞれ負担するような仕組みに変えていかなければいけないのではないか。ですから、助走期間というのはそんなに長くないというように受け取らしていただいて今からそれに備えていかなければならない、こう考えております。
  100. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 私も看護婦として現場で働きましたし、また厚生省におきまして看護行政に携わってまいりましたけれども、そういう点から見ますと、世の中で高齢化が来ると言うより以前に、医療機関の中では既にもう高齢化現象が始まっておりました。今入院患者さんの中で六十五歳以上の方が約四三%、七十歳以上の方はもう三五%に達しております。そして八十歳、九十歳になりましても昔は考えられなかったような手術ができるというような時代でございます。来るべき高齢化社会の準備というよりも、既にもう高齢化してしまっている分野への対応が本当に急がれるということにつきましては私も本当に同じ思いでおります。  とはいいますけれども、お年寄りになりますと病気にかかりやすい、そして医療費もかかる、寝たきり率も高くなる、ぼけ率も高くなる、そして仕事もなくなって年金が頼り、そして配偶者とも別れる、何かこうイメージが暗いですね。老人を総称して社会的弱者なんていうふうに言われる。これはいかがなものだろうかと私も本当に思っているわけです。そういう方ももちろんいますけれども、元気で生き生きしていらっしゃるお年寄りが実は多いわけでございます。私たちも医療の現場で、やはり病気を治し早く社会復帰していただくことが幸せにつながると思って一生懸命努力をしてまいりました。本当に国民の皆さんの努力によりましてやっと人生八十年社会を達成したわけでございますが、それがみんなの幸せだとか豊かな社会づくりにつながらないということは大変問題ではないかというふうに思っているわけでございます。  厚生省では最近しきりに高齢化社会の暗いイメージを一掃しようということでいろいろ努力をされておるようでございますけれども、よく長寿を喜ぶことのできる社会にするんだというようなことをおっしゃっておられます。厚生大臣にお伺いしたいんですが、長寿を喜ぶことのできる社会というのはイメージとしてどんなイメージになるんでしょうか。そしてそのときにいる高齢者の像、それをちょっと御説明いただきたいというふうに思います。
  101. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 長寿を喜ぶ社会、まさにこれからの社会はその方向を求めていかなければならないと思います。  暗いイメージというのは、一つには、人生八十年になりまして、今総理からも言われたように百歳の人が三千人を超す。こういうすばらしい、実際は喜ぶべきことであるけれども暗いイメージをもって迎えられるというのは、やはり何といっても働き盛りに子育てをしてそして定年になった。まだ体からいうと元気で生涯もっともっと働きたいというときに働くというところからもう卒業してしまったといったときに、いろんな意味で将来について不安が出てくるだろう、私はこれは当然だろうと思うんです。でありますから、いわゆる喜ぶべき高齢化社会、喜ぶべき人生八十年、二十年以上も自由時間、働きから解放されて、子育てから解放されて、その二十年間をどう楽しんでいくのかということを真剣に考えていかないとやはり高齢化社会というものは暗いものになってくるだろう。どうしてもそうなってくるだろう。  この間武蔵野のある施設へちょっと行ったときに、お年寄りの方がこういうことを言っておったんです。家内が死んだんだと。そして、食事をつくることもできないし何をすることもできないで、やはり家内がいたときは本当によかった。しかし、だんだんなれてきて、そして食事もつくれるようになった。しかしそれでも何となく寂しい。そして、ある施設ですけれども、通ってくる人なんですね、みんなで通ってきてそこで楽しんでいる。そこへ来たときに、今まではお金はありがたいものだということはわかっていたけれども、お金よりも友だちがありがたいということがわかった。そして、同じお年寄り同士が楽しく遊んでいる、そういう中で本当に生きがいを感じて喜びを感じたということを言っておりました。  そういうことから考えると、長寿社会を喜ぶためには社会参加が必要である、やはり障害者と同じように社会参加が必要だと。家にずっといるんでなくして、大勢の人と知り合う、そして語り合う、そういう機会が必要だということを言っておりました。  そういったことも大事であるけれども、しかし、やはりまず第一には健康であるということが非常に大事だと思います。健康をまた同時に守っていく。お年寄りになればどうしても病気になる率も多い。しかし、今九十歳でも手術をしてまたもとの元気な体になるというお話がありましたけれども、そのような医療というものをどうやって受けられるんだろうかということも必要である。  そしてまた、所得、年金、福祉、こういったものが十分に整う時代。それで昨年は福祉ビジョンというものも提案いたしましたが、そういう意味でこれからの社会を築き上げていきたい、かように思います。
  102. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 今の健やかでそして社会参加のできる老人でなきゃいけないというお話でございますが、そのためには何といいましても老後の生活の経済的な安定ということが必要になってまい ります。そして、その基盤を支えるのは何といいましても公的年金でございまして、これに大変みんな期待をしているわけでございます。将来にわたりましてこの年金の給付水準をやはり維持しなければならないというふうに思います。  しかし、公的年金というのはやはり世代間の扶養し合う仕組みでございますので、これからの高齢化社会を踏まえて年金を受給する世代とそれから保険料を負担する世代の推移を考えますと、年金の給付水準をもし一定のレベルに確保するためには、負担をする方の保険料のアップをするか、あるいは年金を受給する方の支給年齢を少しおくらせるかしかないわけでございまして、今回の年金法の改正案の中では段階的にこの支給開始年齢を引き上げるということで後の世代の負担を適正なレベルにしよう、こういうことを考えていらっしゃるのでしょうか。その辺お伺いしたいと思います。
  103. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 委員今御指摘のとおり、私どもはそういう方向でこのたびの年金改正を提案しているわけであります。その内容は、生活水準を今おっしゃったように維持し、賃金の上昇に見合って年金額を改善する、そして給付改善や受給者の増加に応じた保険料の引き上げなど年金財政の安定を期するための措置を講じているわけであります。そして、四月からの消費税の導入もありまして、今二千五百万人に上る年金受給者はこの改定を心待ちにしているわけであります。一日も早い御審議によってこの法案の成立を図らなけりゃいけない、こういうふうに私どもは心配をいたしております。  法案の内容はもとより、今御提言がありましたように、世代間扶養の仕組みをとっております公的年金制度の役割そして機能などについても広く国民に理解していただけるように積極的な啓蒙活動をしなけりゃいけないということは御説のとおりで、努力をしてまいりたいと思っております。
  104. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 今回の年金改正につきまして、は、支給開始年齢の引き上げあるいは保険料の引き上げといったような点で非常に問題があるというふうに思います。そして、多くの国民に不安をただいたずらに与えているのではないかということが大変心配されます。年金法の改正は、これは時間がたてばたつほど受給者の方には厳しい選択が迫られることは必至でございますので、どんなに厳しい状況にありましても、やはり高齢化社会を考えますとどうしても進むべき方向、どちらを選択するかをはっきり国会の場で審議しなければならないんじゃないかと私は本当に思っております。そこで、早急にこの年金法の審議に入って、そして具体的な内容をもう少し国民の方々に明らかにするべきではないだろうかというふうに思います。  確かに支給開始年齢の引き上げ、あるいは保険料の引き上げといった面もございますけれども、片一方で年金額の改善の問題でありますとか、あるいは完全自動物価スライド制の問題、あるいは国民年金基金の制度の創設といろんな面があるわけでございますので、そういう面についてもう少しはっきり国民に知らせていただきたいというふうに思うわけでございます。  昨日も、大蔵大臣が消費税について広報活動をしているということにつきましていろいろ御批判のお声もございましたけれども、私は、あれは本当に思い切ったことをなさいまして、そして国民と政府の距離を非常に縮めたという意味では非常に効果があったんではないか、あの期間に一万四千も直接お手紙を出してくださった方があるということも承りまして、そういう意味では非常に効果があったというふうに思うんです。  この同じような方式を年金の改正につきましてもぜひおとりいただいた方がいいんじゃないだろうか。つまり、国民にどういう負担をこれからいただくのか、お願いをするのか、そしてそのかわりどういう保障を国がするのかといったようなことにつきまして、もうちょっとわかりやすくしていただきたいというふうに思うわけでございます。そういうことにつきましてぜひ厚生大臣の御決意を伺いたいというふうに思います。
  105. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 今御提案の、大蔵大臣のPRが大変効果があったということでございまして、やはり年金というのは、今申し上げましたように国民すべての人にとって必要なことでございます。そのために、この提案している法案というものを国民の一人一人の方々にやはり十分理解していただくように、いろんな努力をしておるわけであります。  政府広報といってもいろいろありますけれども、私は、年金などというものは、むしろ国民のお一人お一人がよく知っていただくということが世代間の合意を得る大事なことだと思います。特に六十五歳の問題なんかでも、今多くのいろんな御意見があったのは、大部分の人はもうすぐにでも六十五歳になるんじゃないかというような不安を持っておられた方々が非常に多いわけであります。  しかし実際には、雇用の状況というものを勘案しながら、そして将来に向かって負担の公平というものを、子や孫の時代に負担しやすいような状況にしようとすれば、給付の改善をしてそして料率を上げていくか、あるいは今日のように急速な高齢化社会を迎えるという場合には、しかも元気で働きたいという方々が非常に多いわけでありますから、そういう意味では年齢の面でも調整していったらよかろうと。そして、平成二十二年に向かって、平成十年から三年ごとに一歳ずつ、そして二十二年に上げるという、非常に長期の時間をかけて上げていく、同時に雇用も進めていくという考え方に立っておるわけでありますから、やはりこれ一つとっても、すぐになるんじゃないかという誤解を招いたことについても、これはPRがむしろ足りないんじゃないかと。  そういう意味で、国民の理解を得て成立していくためにはある程度の広報活動というのは必要だろうと思います。特に、知らなければ年金そのものに対して疎遠になり、そして期待をしなくなるわけでありますから、そういう意味で努力をしていこうという御提言に対しては本当にありがたい理解だと思っております。
  106. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 高齢者対策の中で最も大きな課題、非常に充足しなければならないという課題はやはり介護対策であろうというふうに思います。この方針等につきましては福祉ビジョン等にも述べられていますし、また、この委員会におきましても他の委員指摘されたところでございますので、ぜひこれは充実に向けてお願いしたいと思います。  その中で一点、在宅というか福祉政策が一方では進む、そして既に医療政策がある、保健がある。これがばらばらにされていたのでは余り効果がないというふうに思います。いつも保健、医療、福祉の連携が大事だと言われながら実はなかなかこれが進められないというのが大きな問題でございますけれども、特に、伺いますと、在宅福祉サービスが非常に拡充されてまいりますけれども、高齢者のお世話の場合にはどこが福祉でどこが医療でというようなことは実は分けられないわけでございます。いつどういうふうに急変してくるかもわからないというような状態がたくさんあるわけでございますので、なおのことその面での連携が必要だと思います。この保健、医療、福祉の連携ということにつきまして具体的にどのような連携方策が今厚生省でとられておりますか、その辺について伺いたいと思います。
  107. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 医療と福祉との連携はこれからの高齢化社会には非常に大事なことだと思います。  例えば入院をして寝たきりでずっと治療を受けている、家へ帰る、家ではどうしても病院にいたときの延長線上になる。そうすると、せっかくこれからリハビリをしたり、あるいはそういう介護の中でいろんな常識、知識、こういったもので勉強をしながら一日も早く立って元気な生活に戻りたい、そういったときにやはり在宅の介護というものが非常に重要だろう、入院しているときと同じように重要だろう。特に立ち直る機会を与える ためにはむしろそれの方が大事なんだ。そこで、やはり病院と地域との連帯、こういったものをもっともっと深めるためには、今までのようなものではなくして、地域にセンターというものを設けてこれから取り組んでいこう。そして、この具体的な問題については政府委員から細かく説明させていただきます。
  108. 岡光序治

    政府委員岡光序治君) 各都道府県に高齢者のサービス総合調整推進会議というのを設けておりますし、また、市町村にも高齢者のサービス調整チームというのを設けております。要するに、総合的なサービスが提供できるように関係者で協議をしまして、調整をした上でそのサービスを適切に実施したいという考え方でございます。  それから、全都道府県に高齢者総合相談センター、いわゆるシルバー一一〇番というのを設けておりまして、各種の相談に迅速にかつ総合的に対応できるようなシステムをつくっているところでございます。  大臣もただいまお話をなさいましたが、来年度予算要求におきましては、身近なところで介護に関する各種の相談ができるように、そして家庭と市町村との間でサービスが適切に行われるように仲介役の機能を果たすようなセンターの整備を考えたいと思っております。
  109. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 昨年ことしと訪問看護等在宅ケア総合推進モデル事業というのが行われました。これは、保健、医療、福祉の連携を目指してある一定の地域におきましてそのサービスを実践してみて、そして普及させようというこういうモデル事業だというふうに聞いております。これがもしうまくいけば、今後の在宅のケアに非常に有効に働くのではないかと期待しているわけでございますけれども、この推進状況、そしてまたこれからの取り組みをちょっとお伺いしたいと思います。
  110. 岡光序治

    政府委員岡光序治君) 御指摘のモデル事業でございますが、在宅の要介護のお年寄りとか、病院を退院して在宅で療養をされているお年寄りを対象にいたしまして、全国で十一の市町を選び上げてモデル事業をやっております。  お話にありましたように、まず訪問看護婦を確保いたしまして訪問看護サービスを行う。あわせまして、介護等の在宅福祉サービスであるとかあるいは訪問指導をして、ヘルスの保健サービスを行う、こういうふうなことを総合的にやってみたいと思っております。都市型と農村型というふうに分けて行っておりますし、また、市町村で直接やるという直営の方式とか、あるいは第三セクターなどを使うような民活型であるとか、あるいは病院に中心の役割を果たしてもらうようなタイプとか、いろいろタイプを分けて実施することにしておりまして、各地域の実情に応じて創意工夫をいただいているところでございます。  私ども、こういうモデル事業を行いまして、総合的なサービスを行う場合の連携の仕方であるとか、各機関の間の提携のあり方とか問題点なんかをいろいろと探って、今後の施策の参考にいたしたいと考えております。
  111. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 よくヨーロッパなどへ参りますと、看護婦さんたちがユニホームを着て、車に乗ってお年寄りのところを訪問して、そしてまたヘルパーさんたちと協力してという姿が見られます。日本では保健婦さんが訪問をして、ユニホームを着てという姿は実は余り見られません。それは数の圧倒的な差もございます。しかしまた、余りにサービスが少ないということもありますけれども、日本人の習性かもしれませんけれども病人を余りみんなに見せたくない、あるいは他人が家庭に入ってきて看護してくれることに対する抵抗ということもございます。そういうこともありますのでなおのこと、こういう面の充足をしていただきまして、そしてみんなが抵抗なく本当に自由に使えるというようなくらいになってほしいものだというふうに思っております。  特に、この訪問看護婦の問題につきましては、これからいろんな医療器械をつけながら病院から退院してくるような方がたくさん出てまいります。酸素療法あるいは透析あるいは自己注射あるいは経管栄養、いろんな形で今までは病院の中で治療を受けていたその一環の方々が家庭に帰ってきて、そういうケアを受けるというような方が出てまいります。そしてまた、中には末期の医療、本当にもう数日でもいいから家庭で最期を終えたいというような方の、つまりターミナルケアと言っておりますけれども、こういう面もやはり充足していかなければいけない大きな問題ではないかというふうに考えるわけでございます。  そういう意味で、このモデル事業を今後また進めますときに、そういう面の配慮もぜひしていただきまして、今、実施に当たりましては、市町村以外にも第三セクターあるいは看護協会あるいは病院団体というようなこともございましたけれども、地域の実情に応じてこの在宅ケアを、やはり日本では一番これが少ないと思いますので、ぜひよろしくお願いをしたいというふうに思います。  次に、今日女性が非常に社会進出をしております。形の上では家族と同居している、日本では非常に同居率が高いということが言われておりますけれども、同居はしているけれども、実際には昼間は御夫婦ともお勤めに行ってしまって、昼間は全くお年寄り一人というようなおうちもたくさんございます。そういうときに、そのお年寄りがもし病気になって寝込んでしまったというふうになりますと、一般的には奥様が仕事を休んで看病に当たる、そして長くなれば、これは仕事もできなくなるというようなことでやめなきゃならない、収入がなくなって出費がふえるということになるわけでございます。こういう状態を救うために、お年寄りや病人を抱えた場合の介護のための休暇制度といったようなものがだんだん考えられているようでございまして、我が国の企業においても既にこれを取り入れているところがあるというふうに伺っておりますけれども、その実施状況について御説明いただきたいというように思います。
  112. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 労働省の調査によりますと、介護休業制度を導入しております事業所は、徐々にではございますけれども増加しておりまして、現在、従業員三十人以上の事業所で一一・四%となっております。  この事例をいろいろ見てみますと、制度の対象者である労働省につきましては、男女を問わずどちらでもとれるという制度になっているものがほとんどでございます。それから、対象となります範囲は、御本人と配偶者の親御さん、それから配偶者、さらに子供も含まれているところが多くなっております。また、休業の期間につきましては、一カ月から一年に至るまでさまざまになっております。
  113. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 今伺いますと、まだ一一・四%ということではございますけれども、しかし着実にこういう制度が広げられつつある。これは別にお年寄りが病気になったからといって女性が看病するだけではございませんで、御主人様が看病してくだすってももちろんいいわけでございますし、男女を問わずという、当然のことだというふうに思います。この問題につきましては、労働省でもう既に大分研究しておられるようでございまして、今後どのように取り組んでいかれるのか、労働大臣の御所見を伺いたいと思います。
  114. 福島譲二

    国務大臣(福島譲二君) お答えを申し上げます。  御提起のような勤労者家庭にとって、年とった親御さんを介護するということがこれからの大変大きな問題であろうと思っております。この問題に、御指摘がありましたような介護休暇制度と申しますか、介護休業制度と申しますか、この制度が大変大きく働いてくるだろうと思っておりますが、今婦人局長からお答えを申し上げましたように、まだ残念ながら普及率は一割そこそこでございます。  そこで、私どもといたしましては、これが今各企業でどのような形で行われておるか、あるいはその効果がどのような形になっておるか、あるいはその制度にいろんな問題点があろうと思いますが、そういったことを今比較検討、勉強をいたし ております。さらによりよき制度として実らせるべく前向きに勉強し、取り組んでまいりたいと思っております。
  115. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 次に、ねたきり老人ゼロ作戦について少しお伺いしたいと思います。  この問題につきましては、この委員会でも何度か取り上げられまして、内容につきましては承知しているところでございますけれども、実際に寝たきり老人をなくそう、日本は非常に寝たきりが多いというふうに言われておりますが、このなくそうということは大変いいことだというふうに思いますが、何というんでしょうか、その最も効果的な戦略は何だというふうに大臣お思いでございましょうか。
  116. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) よく北欧の国では寝たきり老人が非常に少ないと。しかし私は、寝たきり老人をつくるのは日本の家族社会の中にも一因があるのではないかというふうに考えます。それは、お年寄りに余り厳しくするというとやはりかわいそうなような気がする、しかし甘えさせるというとどうしてもそのまま寝たきりになってしまう。こういったことを考えるというと、やはり家庭でお年寄りの面倒を見ていくということも非常に大切なことだけれども、そういったスキンシップが家族社会の中にあるということが非常にお年寄りに励みにもなるかもしれないけれども、一方、ある意味では社会的な介護、そういうような意味で家族以外の人たちの手によって寝たきりを防ぐように努力していく。  我々の社会では寝たきりというものは防げないものだろうと思っておりましたけれども、現実にそういうものが防がれている。ヨーロッパのデンマークや日本との違いは、日本の場合には六割は家族同居である、片一方はほとんどそういう同居はない、そこらあたりがやはり一つの大きなポイントではないかというような点え方をいたしております。  そしてそういう意味で、脳卒中等が寝たきりの原因とならない意味で、病気の予防というものも同時にまた必要である。同時にリハビリも今必要である。しかしそれも、家族よりもそういった他人によってやっていただくことによって寝たきりを防ぐことができるのではないか。すなわち家庭と社会の共同作戦で寝たきり老人をなくすように防いでいくべきだろう、かように思います。
  117. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 私の友人で特別養護老人ホームの園長をしている保健婦がいます。大変人格者なんですけれども、その方が就任をするときに、自分の施設へ行ってみたら大変に寝たきりの方が多い、おむつをしている人が多いということでございまして、ぜひ自分はここに就任したらこの方々のおむつを取り、そして何とか起こしてみたい、こういうことをおっしゃいました。しばらくたってお会いしましたら、実はああいう約束はしたんだけれども、これは大変なことだ、しかしやればできる、おむつを取ることもある程度できる、起こすこともできる。しかし今の職員の人手の中でそれをやったらかえって大変なことになる、むしろおむつをして寝ていてもらった方が楽なんだ、こういうふうなことをおっしゃいました。  大変この方は人格者なものですから、私も大変ショックを受けたわけでございますけれども、確かに厚生省の研究班も日本の寝たきりは相当起こすことができるということを指摘されております。しかし、その寝たきりを起こすためにはやはり相当な人手と熱意と、そしてやっぱり思いやりの気持ちがなければできないということを私は考えます。  また、もう一つこの寝たきりに関して申し上げたいことがあるのですけれども、私は今東京の練馬区に住んでいるんです。そうすると練馬区で大変いろんな、何というんでしょうか、いわゆる社会的弱者に対して温かい思いやりをたくさんしてくだすっています。  私が仮に六十五歳以上でここで六カ月以上の寝たきりになったときにどんなサービスが受けられるかと見てみますと、例えば老人福祉手当というのを一月三万九千円、これは入院していても何でもちょうだいできます。それから特殊ベッド等、日常生活用具の給付をいただける。そして巡回入浴サービスをしてくださる。あるいは出張で調髪サービスをしてくださる。あるいは寝具のクリーニングもしてくださる。あるいは布団の乾燥、消毒、丸洗い。あるいは紙おむつも下さる。そして介護をしていらっしゃる方々には、寝たきり老人の介護者の慰労金をこれは年に一万円下さる。あるいは介護者の講習会をしてくださる。いろいろなことがございます。大変これはありがたいことでございますけれども、これを受給するためには六カ月以上寝たきりでいるというような条件がついてございます。  そうすると、寝たきりをゼロにしようという厚生省の作戦に対しまして、どうもこれは、これでいいんだろうかという疑問を大変持つわけでございます。別にこの方々にそういう援助をやめろと言うのではございません。むしろ、先ほど申しましたように、その方々を起こしてそして社会参加していただく、起こすことにこそ大変な人手もかかりお金もかかるということを私は申し上げたいわけでございまして、このねたきり老人ゼロ作戦、大変ネーミングはよろしいんですけれども、こういう作戦を進めるために地方公共団体でいろんなことをやっていらっしゃると思いますけれども、こういう政策との整合性、そして努力した方が報われないで負担が大きくなるようなことはないようにぜひしていただきたいわけでございますが、この辺についてはいかがでございましょうか、厚生省。
  118. 岡光序治

    政府委員岡光序治君) 今お話がありましたように、介護を要するお年寄りとかその家族に対しまして県や市町村が独自の支援方策を展開しておいでのことは、私どもも承知をしております。そういう援護方策の組み立て方であるとか、あるいは運用に当たって、今御指摘がありましたように寝たきりは防止ができるんだという認識のもとに、より人間味のある生活を続けることを支援するという考え方でそういう施策の運用に臨んでいただくように私どももお願いをしてまいりたいと考えております。
  119. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 最後に、厚生大臣にお伺いしたいと思います。  私たちはよく福祉という言葉を簡単に使っております。しかし、この福祉というのは一体どういうこと、福祉とは何だろうかということにつきましてお教えいただきたいというふうに思います。
  120. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 私はその御質問を受けて、まず最初に言葉の上で福祉というのはどういうふうに説明してあるかなと思って広辞苑で見てみたら、福祉の祉というものも幸いということで、これは幸福を意味して、公的扶助による生活の安定、充足だということが書いてありました。  私は、厚生大臣に就任した一番最初に、私たちの自由経済社会、自由社会は、それ自体法律に触れない限り何をしても自由で、そして活発な経済活動もできる、そのための制約というものを受けないで。そのかわり社会というものは競争の原理でもって発展をしていく。しかし競争する社会というのはどうしても、不幸にして不幸な環境に落ちてくる人もいる。しかし、そういった者をもしだれも救う者がいなかったならば、それは自由経済社会、自由社会ではなくして弱肉強食になる。だから福祉というのはそういうものだろうということを私は記者の方に説明をしましたが、広辞苑を見たらこういうことが書いてあるんです。  福祉国家というのは「資本主義国家で、完全雇用と社会保障政策によって全国民の最低生活の保障と物的福祉の増大とを計ることを目的にした経済体制」だということが書いてありましたが、まさに私はそう思っておりますが、そのほかに私は、福祉でということの裏には思いやりがなければこの福祉というものは本当に生きてこない、そういうふうに思います。そういうふうに私は福祉というものをとっております。
  121. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 今厚生大臣から福祉のことにつきましてお話を伺いまして、私も同じように思うわけでございますけれども、消費税の使い道につ いて福祉目的税にするというようなことが一時問題になりまして、今も問題になっていると思いますけれども、耳ざわりのいい言葉で非常に歓迎ムードだったのですが、これが一体今厚生大臣が言われたようなところに使われるものを福祉目的税というふうな枠をはめてやることが本当にいいのかどうかということに対して私、非常に疑問を感じているわけでございます。国のやるすべてのことがこれは福祉ではないか、福祉の予算に使われていいんじゃないだろうかというふうに思いますが、大蔵大臣、最後にお願いします。
  122. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) まず第一に、私は実は福祉目的税というものをつくると申し上げたことは一度もございません。そして当初から、実は売上税のときに福祉目的にという意見があり、ひそかに努力をしてみたときの印象を皆さんに申し上げてまいりました。それは、肝心の福祉関係の方々の中に、福祉目的税というものが創設されたためにかえってその枠内でしか自分たちの仕事ができなくなるのではないかという不安感があったこと。同時に、仮にそういう税目ができ、そこですべてを賄うとなったときには非常に税率が引き上げられる可能性が大きくなるのではないかという不安があったことでありました。  大蔵大臣に就任いたしましてから改めて福祉関係の方々にお目にかかって御意見を伺いましたときに同様な御意見が提出をされましたのとあわせて、むしろ自分たちとしては国民一般からの税によりさまざまな施策を受けているということで心の中に負担の重みがあるということをわかっていただきたい。それが目的税としての福祉目的税、そしてその福祉目的税から自分たちの施策がすべて行われるとなったときに、他の方々に対する自分たちの心理負担というものを理解してほしい、そういう声がございました。  そうした言葉も私は重く受けとめながら、ただいま税制調査会の方の御論議を見守らせていただいております。
  123. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 ありがとうございました。
  124. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 以上で清水嘉与子君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  125. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 次に、和田教美君の質疑を行います。和田君。
  126. 和田教美

    ○和田教美君 私は、まず最近の新聞のニュースの分析から始めたいと思います。消費税関連の問題について集中して質問をいたしたいと思います。  二十六日付の朝日新聞によりますと、自民党は、消費税の見直し問題で焦点となってきた非課税範囲の拡大について、「「すべての食料品を流通の全段階で非課税とする」との案を軸に党内調整を進める方針を固めた。」と伝えております。その他の新聞でも、全段階であるかどうかは別として、全食料品を対象とする非課税範囲ということでやるんだという報道が盛んに出ております。  それからまた、海部総理は二十六日、記者団に対して、党と相談する、私の考えは党幹部に伝えてある、ぱちっと決めなきゃならぬときもあると言ったというふうに伝えております。それから、東京新聞ですけれども、この総理の発言を受けた観測だと思いますけれども、総理はすべての食料品の非課税を検討するということで党側に指示をしたというふうにトップで報道いたしております。これらの報道それから私の得た情報を総合しますと、自民党の税調は全食料品の非課税、こういう線でこれから動き出すのは確実だろうと思います。  そこで総理お尋ねしたいんですけれども、総理はこの自民党税調の動きを了承されておるのか、あるいはゴーサインを出しておられるのか、また、党幹部に伝えてあるという私の考えというのは一体どういうことなのか、その点をまずお答え願いたいと思います。
  127. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 御承知のように私は最近は予算委員会へ一生懸命出ておりますので、党の税調でどんな議論が行われたか、どういうことになっておるのかということは、むしろ新聞報道を読んで逆に理解をする場面が多いわけでございますが、廊下で、ここまで来る間に、その報道のなされておるような党の税調の議論を知っておるかと言われましたので、新聞報道を通じて報じられておるところは知っておりますと。それから、見直しの作業を一生懸命やっておりますが、私は見直すべき点は思い切って見直すということは自分の決意でもありますし、その時期が来たらきちっとそれは言うということは党幹部にも伝えてございます。  ただ、党幹部にお願いしてあることは、どこをどう見直すかということについては党内にも御議論がたくさんございましょうから、すべての議員の皆さんの意見を聞くような努力を税調を中心にやってもらいたいということを伝えてございます。その作業が行われておるということは十分承知しておりますが、内容についてどうこうしろと指示をしたり、内容について、私と党幹部の間でこうしようああしようというような話をしたということはまだございません。ここで一生懸命皆様方の御議論に答えておるのが私の最近の毎日でございます。
  128. 和田教美

    ○和田教美君 先ほどの答弁でも、予断を与えるようなことはしゃべらないということでしたけれども、今の、全食料品を対象とするということ自体については、総理は全く考えを表明していないということですか。
  129. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 予断と憶測でもって物を言うことはいけないと思っておりますから、党の御議論がどこまで進んでいくのか、それを今はじっと注視させていただいております。
  130. 和田教美

    ○和田教美君 次に、大蔵大臣お尋ねしたいんですけれども、私はマスコミ出身者でもあるから新聞の記事を信用するわけですけれども、自民党税調は今言ったような方向で動くことは私は確実だというふうに思います。  そこで、食料品の非課税について今まで大体やり方として三つあるというふうに言われておった。これは自民党税調の中でもそういう論議が出ておりました。一つは食料品全体を流通の全段階で非課税にするという案、それから第二は生鮮食料品に限って非課税にするという案、第三は流通の各段階のうち小売段階のみで実施をするという案、この三つの案が大体税調の論議でも出ておったわけですけれども、大蔵大臣にひとつこの三案の利害得失、これをお聞きしたい。  それから大蔵大臣としてはどれがいい、ベターだというふうにお考えか。
  131. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今総理からもお答えがありましたけれども、私も毎日本委員会に出席をいたしており、税制調査会の論議そのものを聞いておるわけではございません。ただ、私が税制調査会の方から伺っておりますのは、自由民主党所属の衆参両院議員すべての方々から意見をお述べいただいた段階であり、そのお述べいただいた意見をもとに議論が始まるのは今後のことと伺っております。それだけに新聞報道、私も手元に幾つか持っておりますが、こうした記事が出ましたこと、ほほうという感じで拝見をいたしました。  今この消費税を御論議いただきます以前、御承知のように売上税法案がかつて大変論議を呼び、結果として廃案になったわけでありますが、あのとき御承知のように五十一項目にわたる非課税品目がつくられまして、これが大変強い批判を呼んで混乱を生じたこともございまして、売上税の反省の上に立った消費税としては非課税品目を非常に限定して発足させたわけであります。  そうした経緯から考えてみますと、私は、すべての分野で国民の御意見をちょうだいし、その上に立って見直してまいります中には非課税品目の拡大の問題も当然出てまいりますし、委員指摘のような項目が出てくることも当然御議論の対象としてあると思いますけれども、今例示をされましたような形で個人的な意見をとお問いをいただきましても、私は政府税制調査会に審議をお願いしておる責任者でありますから、私見を申し述べることはお許しをいただきたいと思います。
  132. 和田教美

    ○和田教美君 我々野党側が出している案に対し ては政府・自民党は盛んに批判をされる、自分の方でやっていることについてはすべて政府税調を隠れみのにして答えないというふうな態度は、今までは通用したかもしれないけれども、この与野党逆転の参議院ではこれからは私は通用しないと思います。もう少し態度を改めていただきたいと思いますが、私の今述べたのは三つの案を比較してどれがいいと思うかということを聞いているだけでございます。一般論で結構でございます。
  133. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) しかし、一般論と言われましても、具体的な消費税の見直しというものに即してのお尋ねであります以上、やはり見直しの作業を現にお願いしております責任者として、その方向に向けての予断を与えるような行動は慎むべきであると私は思います。
  134. 和田教美

    ○和田教美君 それじゃ次に、大蔵事務当局お尋ねしますけれども、仮に流通の全段階で非課税方式をとった場合、税収減はどれくらいになりますか。報道によりますと、大蔵省が試算をしている。そしてその場合の税収減は九千億円、また生鮮食料品に絞った場合は三千億円前後、ただし運送費など仕入れ段階で負担した消費税を還付する方式を食料品に適用すると二兆円に膨らむというような試算をしているというふうに報道されておりますが、大体その程度ですか。
  135. 尾崎護

    政府委員尾崎護君) 先ほど来大蔵大臣から御答弁申し上げておりますとおり、まだ検討の途中でございます。御指摘のような新聞報道がございましたことは私ども承知いたしておりますが、私どもの方でこうした計算をしてそれを明らかにしたということはございません。この計算は実はいろいろと前提要件が絡んでまいりまして、全体としてどういうことになるのかというのがわかりませんとそう簡単に計算できるものではないわけであります。  先生御指摘の中の数字で、運送費等いろいろしょっております仕入れ段階の税をすべて落とした場合二兆円というお話がございましたけれども、これは、思い当たりますのは、消費者物価ウエートづけがございまして、食料品とそれから外食分を加えまして消費者物価指数を算定するときのウエートというのが定められておりますのは、大体全体の三分の一ぐらいになるわけでございます。消費税は御承知のように平年度で六兆円、大体それぐらいでございますから、消費者物価指数のウエートづけからいきますと、全部税負担を落とした場合には大体三分の一ぐらいが落ちるんじゃないかという、そういう目見当の話というのは耳にしたことはございます。
  136. 和田教美

    ○和田教美君 しかし新聞に、あちこちに出ているわけですね、一つの新聞だけではなくて。九千億、三千億、もうあちこちに書いてあります。そういうことさえ言えないというのは、これまた私は甚だ理解できない。  実はこの問題は、もう前に私が大体どれくらいになるかという資料要求をいたしましたけれども、大蔵省は断ってきました。その後新聞にそういう数字が出たわけでございまして、やっているのかやっていないのか、試算をしているのかしていないのか、それすらも言えないというふうなことでは私は困ると思うので、委員長、ひとつ注意していただきたいと思います。
  137. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 後刻理事会で御論議した上で善処します。
  138. 和田教美

    ○和田教美君 後刻理事会では困るので、今やってください。
  139. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  140. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 速記を起こして。
  141. 和田教美

    ○和田教美君 それでは、今の問題について大蔵省から早急に資料を提出していただくように委員長で取り計らっていただきたいと思います。
  142. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 後刻理事会で協議いたします。
  143. 和田教美

    ○和田教美君 これに関連する問題ですけれども、大蔵大臣は、仮に見直しによる減収が起こってもそれは歳出カットで埋めるということを、前にたしかテレビ討論だったと思いますがおっしゃっておりましたけれども、今言ったように、九千億とか三千億とかあるいは二兆円とかというふうな、三千億なら埋められると思いますけれども、九千億とか二兆円とかというような数字が出てきた場合にもその方針は変わりませんか。
  144. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 委員が御指摘になりましたのは、多分NHKにおきまして視聴者の代表の方、また各党の代表者が入りましたテレビのことであろうと存じます。  私が申しましたのは、要するに非課税品目の拡大の財源はどこに求めるのか、税率を引き上げるのか、その歯どめはあるのかという御質問がありましたので、税率を引き上げるという考えがないということを申し上げております。そして、確かにそういう意味におきまして私は、消費税の見直しに伴いまして税収減が生じましたとしても、消費税の税率引き上げによって対応するつもりはございません。これは総理からも、消費税の税率は動かさないということは申し上げております。  そして平成年度予算編成におきましては、ただでさえ財政事情が厳しいわけでありますし、歳入歳出両面を一体として踏まえた努力をいたさなければなりませんが、その努力の中におきましては、まず我々は特例公債依存体質脱却という目標も掲げておるわけでありますし、その上にただいま委員が御指摘のように消費税の減収ということになりました場合には、歳出面での財政改革の努力、その他行財政全般の努力の中で解決するための努力をしていかなければならぬと考えております。少なくとも消費税の税率を上げるつもりはありません。
  145. 和田教美

    ○和田教美君 歳出の削減その他と言って、この間の発言とちょっとニュアンスが違いますね。その他も入ってきたわけですね。
  146. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 御質問が違いますので正確に申しましたが。
  147. 和田教美

    ○和田教美君 いや、私は聞いていましたよ、あのテレビ。
  148. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) ですから今申し上げましたように、あのときの御質問は、今私が申しましたように、税率を引き上げるのか、その歯どめはあるのかという御質問でありました。ですから、税率を引き上げるのではない、税率を引き上げるつもりはないということをお答え申し上げ、歳出削減等の努力ということを申し上げております。
  149. 和田教美

    ○和田教美君 また、大蔵大臣は先日の予算委員会答弁で、一般に非課税品目があったとしてその仕入れコストなどは価格に転嫁されるべきものだというふうに考えているという答弁をされました。このことは、例えば生鮮食料品の場合、農家の農機具、農薬など関連諸経費に含まれる消費税分、これまでを非課税にするということではなくて、そのままコストに転嫁をする、その結果、生鮮食料品を非課税にしても店頭で消費者に渡るときには、消費税率三%分が全部安くなるというわけではなくて価格の引き下げ幅はかなり小幅になる、こういうことを意味するのだと思いますが、そう理解していいですか。
  150. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 本院におきましてただいまの御議論がありましたとき、私は、具体的な項目を設けてのお尋ねに対しまして、具体的な項目に対しては税制調査会にお願いをしておりますのでというお断りを申し上げました上で、一般論として、現在の消費税の中におきまして非課税とされております品目について同様の措置をとっておりますことから、今委員が申されましたようなことを申し上げております。すなわち社会保険医療サービスなどにおきましても、その途中における例えば医療器械でありますとかあるいはその病院の建設コストそのものでありますとか、こうした部分に対しては消費税は当然かかっておるわけであります。そしてそれは社会保険診療報酬の積算の上に反映をされておるわけでありますから、同様の趣旨でお答えをいたしました。
  151. 和田教美

    ○和田教美君 海部総理はこの消費税の見直し問題については、思い切って、あるいは思い切った見直しをやるということをおっしゃっておるわけ ですが、思い切って見直すという以上は、単に行政指導だとかあるいは行政措置などでやれるというものはこれは思い切った見直しということには入らないと私は思うんですね。少なくとも思い切った見直しという以上は、税制の改正案、消費税法を中心とする税制の改正案を必ず伴うというものでなければ思い切った見直しにはならないというふうに私は思う。今、食料品の非課税というふうなものを大幅にやるということになればこれは当然消費税法の改正を必要とするわけで、その幅によっては思い切った見直しということを認めてもいいかもしれぬと思うんですけれども、少なくとも必ず税法の改正を伴う見直しをやるというふうに今ここで断言できますか。
  152. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 先ほどから申し上げておりますように、私は、見直すべき点は思い切って見直す。それは国民の皆さんに御理解を願い定着するような消費税にならなければならぬ、こう思っておりますから、租税法定主義をとっております我が国のことでございますから、その見直しの結果において法律改正を伴うようになることだって十分それは想像されることでありますが、今はどうなるかという具体的な取りまとめの最中でございますので、その結果を見ての御質問、そこだけ答えると言われる御質問はどうぞ御勘弁いただきたいと思います。私は、そうなる、ならないということ以前の問題で、定着させるために見直し点を今いろいろなところから鋭意意見を聞いて取りまとめの作業をしておるところである、こう申し上げておるわけであります。
  153. 和田教美

    ○和田教美君 それはおかしいので、大体行政措置、行政指導でやれるというのは、今論議されている中では、例えば福祉目的税的なものにするというふうなことは政府の宣言だけでできると思うんですね。それから外税、内税の問題です。これは要するに今までも行政指導でやったことですから行政指導でできると思うんですね。それ以外は、租税法定主義ですから全部これは法律に関係してくる問題だと思うんです。だから、思い切ったと言う以上は、それは当然のことだという前提がなければそんな発言はできないと思うんです。その点さえ言えないというのは、もうこれは全く論議のしようがないと思うんですね。
  154. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) それは言える時期に来ておりませんのでまだそこは言えないわけで、結果として、租税法定主義でありますからそれに従ってやらなきゃならぬというときにはそうなるでしょう。それはそのとおりでございます。
  155. 和田教美

    ○和田教美君 いろいろ論議しても時間もありませんのでやむを得ませんが、大蔵大臣答弁で、見直し案については遅くとも十二月二十日ごろまでには政府税調の結論を得て、その見直し案を来年度予算編成に組み入れて歳入を確定して、年内に予算編成を終えたいというふうに答えられておりましたね。そうすると、これは例年と同じ予算編成スケジュールを考えているということになると思うんですが、そのとおりですか。  つまり、予算案の決定前にあらかじめ来年度の税制改革大綱に基づく税制改正案を、法律案を国会に出すというふうなことではなくて、まず予算が決まってこれを国会に提出して、そして、来年の恐らく一月の末か二月ごろになるでしょうね、法律案が出てくる、こういうことになるんですか。今までのやり方と全く変わらないということですか。
  156. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 繰り返して申し上げておりますように、年内の予算編成を私は行いたい。そのためには、確かに今委員が御指摘になりましたように、十二月の中旬と申し上げるのが正確か、あるいは二十日ごろと申し上げるのが正確か、年によって多少の変動はありますけれども、少なくともそのころまでに次年度の税制改革の内容は確定をいたさなければなりません。それによって歳入を確定させるということであります。その時点には、消費税として見直すべき点のうち次年度の税制改正に盛り込むべき事項も当然確定をしなければならないわけでありますから、政府の税制調査会の御意見もそれに間に合うように私はちょうだいをいたさなければなりません。  しかし、その結果として法律案ということでありますならば、その後、法制局の審査等を考えますと、例年と大体同じようなスケジュールを頭に描くことになります。
  157. 和田教美

    ○和田教美君 そうすると、少なくともこの臨時国会には政府のつまり見直し法案というのは出てこないことは確実だということですね。  今のことを確認したいのと、さらに自民党の小沢幹事長が先日京都での近畿ブロック懇談会で、消費税見直し法案について、参議院で与野党逆転をしている状況では成立がなかなか困難だ、そういう認識を示して、そうした点を考え、消費税の要綱を掲げてそのまま選挙を戦うこともあるというふうに述べたと。つまり、法案化しないまま解散総選挙を迎える可能性があるということを示唆したという報道がございましたけれども、総理は今は解散は全く頭に考えていないということをおっしゃっておるわけですけれども、客観情勢から見てこういう可能性は非常にあると思うんですね。これが恐らく政府の本心じゃないかというふうにも思うんだけれども、その点は総理いかがですか。つまり、改正案を出さずに要綱だけで選挙をやるということですね。
  158. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 両方絡めての御質問でありますが、片方の選挙のことは全く考えておりませんので、絡めるも絡めぬもなく一生懸命年度内編成を、見直しのあれがきちっと決まったらそれはどのようになっていくかということを進めていこうと、こう思っております。別個の問題だと思って考えております。
  159. 和田教美

    ○和田教美君 大蔵大臣、臨時国会には出さないということは確実ですね。
  160. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私自身今までに臨時国会に法案を提出すると申し上げたことは一度もございません。むしろ我々としては、この月が変わります以前、すなわち九月中には私は、要するに納税義務者の方々の十月二日以降の状況がどうなるか、これも十分見せていただかなければならないと申し上げてまいりました。そして今、その進捗状況を見つつ税制調査会は消費者の方々と納税義務者の声、双方を聞いて今作業をしておられるわけでありますから、それを十分に踏まえた意見をちょうだいできると思っております。
  161. 和田教美

    ○和田教美君 さっき私が従来の方式どおり予算編成をやるのかというのを聞いたわけですけれども、今までの方式どおりということになりますと、当然予算案の国会提出よりも予算法律案の提出がおくれるということになりますが、これは自民党が衆参両院で絶対多数をとっていた時代には通用したと思うんです。しかし、この条件は参議院の与野党逆転で一変した、こういう状況の中では小沢幹事長の言うとおり通用しない。つまり、税法の改正案は衆議院は通っても参議院では否決または大修正となる事態が十分予想されるわけですね。そして、結果として予算と法律案の乖離が生ずるという重大な問題が出てくる可能性がある。  殊に、今回は今の総理答弁のように解散の問題も絡んで見合いの問題だということで、一層状況は不安定だということが言えるわけですね。そういう情勢にもかかわらず、従来と同じやり方で、つまり税法改正案は政府の原案どおり成立するという単なる仮定のもとに、予算編成にそれを組み込んで見切り発車をするというふうな行き方が政治的に民主的であるかどうかという点について私は疑問だと思うんですが、その点についての御見解をいただきたいと思います。
  162. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) しかし、予算編成のためには次年度の歳入を確定いたさなければなりません。その場合、次年度に改正を予定する事項は歳入を確定する時点では当然決めなければなりませんが、その後、確定後に今度は法制局が法律案を作成する作業をチェックする作業が入ってくるわけでありますから、その時間差はこれはどうしても生じます。それがどの程度短縮できるかは、これはむしろ長官の方にお尋ねをいたさなければならないことでありますけれども、同時に、次年度予算歳出を確定いたすための作業に入りま すそのぎりぎりまで次年度の歳入についてのチェックを行うというのは、政府として当然の責務であろうと存じます。
  163. 和田教美

    ○和田教美君 私は、毎年の税制改正案は必ず予算と一体で同時に提出をされなければならないというふうには限らないというふうに思うんです。特に、今申しましたように、与野党逆転というもとで歳入予算と税制改正案の乖離が起こり得るというふうな状況を考えると、最も望ましい方法は、あらかじめ税法を早く国会に出して、そしてそれを確定した上で予算編成をするというのが一番民主的な行き方だと思う。今回はそれが間に合わないということであっても、少なくとも一日も早く、せっかく臨時国会も開いているんですからそれに出して、皆の議論を聞いた上で、それを踏まえて予算編成をやるというのが正しい行き方ではないかというふうに思うんですが、いかがでございますか。
  164. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 決して委員に私は反論をいたそうとは思いませんけれども、政府といたしましては、やはり歳出を正確に予算編成として組み上げてまいりますその直前まで、歳入の見積もりについて正確を期す努力をするというのは当然の責務であろうと存じます。そうなりますと、今までの時間的な流れというものとそう大きく逸脱した方法というものは私はとれないと思います。
  165. 和田教美

    ○和田教美君 それは、税収見積もりなどが十一月とか十二月の時期でなければつかめないから歳入歳出の予算が組めないと、そういう従来の慣行という意味でございますか。
  166. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 先ほど私は過去の歳入見積もり誤りにつき、その反省の弁を本院でも申し上げたところでありますが、歳入の見積もりぎりぎりまでやはり努力をしていこうとすれば従来とそう変えられないと申し上げたのは、委員がまさに御指摘になりましたように、税収見通し、そのぎりぎりまで見せていただきたいという、財政当局としてその率直な気持ちを申し上げております。
  167. 和田教美

    ○和田教美君 この点は、我々としては、この際、参議院逆転という新しい情勢のもとで少し考え直すべき問題ではないかと私は考えるわけですが、それは論争になりますから次に移ります。  さっきから私は与野党逆転の参議院ということを強調してまいりました。そこで総理にお伺いしたいんですけれども、参議院選挙で与野党逆転したということによる日本政治の構造的変化とでも申すべきものをどういうふうに認識されておるかという点をお聞きしたいわけでございます。私は、一言で言えば今までのような自民党の力による政治というものは、数による政治というのはもう通用しない。いい意味での話し合いによる妥協、合意、それを目指す政治というものが政府・自民党にも求められるんではないかというふうに思うんですけれども、その点についての御認識をお伺いしたいと思います。
  168. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 御指摘のように、参議院における与野党の数が逆転したということ、それは事実で率直に認めます。ですから、何でも最後の採決になればいいんだという路線は確かに御指摘のように当てはまりません。けれども、一たんそうなっちゃったから、何でも参議院に来たら全部だめになっちゃうんだと初めから決めてしまうのも、これは議会政治、参議院の存在意義とかいろんなものからいって、そうも言い切れないだろうと思います。お話し合いをいただいて、歩み寄るところは歩み寄っていただいて、そして運営されていきますことを心から御期待させていただきます。
  169. 和田教美

    ○和田教美君 私がなぜこういうことを持ち出すかというと、どうも参議院選挙後に自民党の衆議院の幹部の人たち、議員の人たちの間に依然として、とにかく力によって押し切れば大したことはないんだ、政治は変わらないんだと、どうもこういう思想が抜け切らないように思うんですね。大の遠ぼえ発言、その辺にいらっしゃる方の大の遠ぼえ発言もその一つだと私は思いますけれども、それよりもきょう私が取り上げたいと思うのは、衆議院の自民党幹部の中に、とにかく野党が参議院に消費税廃止法案を提出したのは憲法違反だとか、あるいは憲法上疑義があるというふうな議論を展開されておるということであります。例えば三塚自民党政調会長、去る四日の衆議院の代表質問で、参議院に提出された野党の消費税廃止法案は重要な予算関連法案であり、たとえ参議院議員提案とはいえ、憲法に定める予算の衆議院先議の精神に反するというような発言を代表質問でされておる。また自民党の森清さんは、十三日ですか、衆議院の予算委員会で、野党の廃止法案提出について、税法は憲法で衆院先議を義務づけられている予算と不離一体のものだから、参議院先議は結局憲法違反だというふうに述べておられる。  そこでお聞きしたいんですが、総理はこういう考え方、つまり憲法違反あるいは憲法上疑義があるという考え方に同意されますか。
  170. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 人それぞれ受けとめ方とか考え方とかいろいろあるでしょうけれども、私は予算が衆議院に先議されるべきものであるということは、これ憲法上規定がございますからそう思いますけれども、法律案についてはいろいろな規定がほかのところにあって憲法にはございません。憲法違反かどうかということを認定するのは憲法の八十一条に決められておるわけでありますから、私どもがそれをとやかく憲法違反だとかなんとか言うこともまたちょっと憲法八十一条からいったらずれるんじゃないかという気もいたしますし、現に御提出になった案を参議院の議長さんが公権的にお受け取りになっているわけでありますから、それは憲法違反ではないと、私はそう思っております。
  171. 和田教美

    ○和田教美君 明快に総理は憲法違反ではないということを確認された。そうすると、ひとつそういうことをいろいろ演説で言う人に少し注意をしていただきたいというふうに参議院の立場から申し上げますが、いかがですか。
  172. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 最初に申し上げましたように、人いろいろそれぞれ考え方やとり方がございますから物をおっしゃる、こう前提で申しました。それで私は、私の考えとしてそう申し上げたわけでございます。
  173. 和田教美

    ○和田教美君 しかし、参議院の立場から見るとこの問題は非常に重要な問題で、場合によっては二院制の根幹につながる問題だというふうに私は思うので、そこでそういう声が少なくとも衆議院の与党の方から起こるということ自体も非常に我々としては不愉快きわまることでありますから、もうそういうことは絶対ないということを確認する意味で以下二、三点内閣法制局長官にお伺いしたいと思います。  まず第一に、予算は確かに衆議院に提出しなければならないということは憲法に書いてあります。しかし、法律を先に衆議院に提出しなければならないとは憲法のどの条文を見ても見当たらないと私は思う。それからまた、税法など重要な予算関連法案、これは三塚さんがおっしゃっていることですが、この関連法案は先に衆議院に提出しなければならないという条項も見当たりません。この点は同意していただけますか。
  174. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) お答え申し上げます。  憲法六十条におきまして「予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。」という規定はございます。ただ、今委員指摘のように、法律案につきましては、予算に関係するか否かを問わず、衆議院と参議院のどちらの議院に先に提出すべきかということについては、憲法、法律のいずれにおいても明文の規定はないものと承知しております。  なお、若干つけ加えさせていただきますと、私も衆議院の代表質問の際に拝聴しておりましたが、憲法の規定に違反するとまではおっしゃっていらっしゃらない。憲法の精神に反するというふうなことをおっしゃっていたかと思います。
  175. 和田教美

    ○和田教美君 精神に反するという点は、そういう問題、精神に反する可能性はあるというふうにお考えなんですか、法制局長官は。
  176. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) 私、その論拠について伺ったわけでございませんので、どういう意味でおっしゃられたのかはっきりいたしませんが、少なくともいわゆる憲法で予算が衆議院先議である、それと予算と重要な関連を有するものという意味でおっしゃられたのではないかと推察しております。
  177. 和田教美

    ○和田教美君 それなら、むしろやはり精神から見て衆議院に出すべきだ、先議すべきだというふうにお考えなんですか。
  178. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) 私は決してそういう意味で申し上げているつもりはございません。
  179. 和田教美

    ○和田教美君 大体、憲法上、予算関係法律案というのと予算無関係法律案というこの二種類の区別、こういうものはあるんですか。
  180. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) これはいわば定義の問題でございまして、内閣におきましては一応予算関係法案とするかしないか、例えば法律案が通過いたしまして法律を施行する段階になりますと、その法律の施行費といったようなものが問題になることは当然考えられるわけでございます。極めて予算額の小さい施行費、こういうものを伴うものにつきましては、内閣におきましては予算関係法律案とはしていないところでございます。
  181. 和田教美

    ○和田教美君 次に国会法ですが、国会法五十六条第一項ただし書きに、議案の発議と委員会付託の問題のところで、「但し、予算を伴う法律案を発議するには、衆議院においては議員五十人以上、参議院においては議員二十人以上の賛成を要する。」という規定がございます。これは明らかに予算関連法案の参議院先議を認めた規定だというふうに私は思うのです。そして、予算関係法案は衆議院先議という規定は今もお話しのとおり全然ありません。もし、税法のような予算と一体不離の重要な予算関係法律案が衆議院先議でなければならないというふうな議論に従いますと、議員立法による重要な予算関係法律案の提出は衆議院議員のみしかできないということになります。ところが、憲法四十一条は国会は国の唯一の立法機関と規定をいたしておりますし、憲法四十二条は「国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。」と規定をいたしております。すなわち、参議院も衆議院と同様、憲法上国家の立法機関であります。それにもかかわらず、重要な予算関係法律案は衆議院先議、議員立法について言えば衆議院議員のみしか提出できないというふうなことになると、この解釈は明らかに憲法四十一条、四十二条に反するということになると思うのですが、いかがですか。
  182. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) ただいまのお尋ねは、議員提出法律案につきましての先議議院についてのお尋ねかと思いますが、この点は実は国会の運営にかかわる問題でございますので、国会において御判断なさるのが適当であり、行政府にある者としてお答えするのは余り適当ではないかと思いますが、ただ一般論としてあえて申し上げれば、ただいま御指摘のように、国会法の五十六条一項ただし書きの規定は、ちょっと飛ばして読みますが、「予算を伴う法律案を発議するには、」「参議院においては議員二十人以上の賛成を要する。」こういうことがございます。そういう意味で、今の規定は、予算を伴う法律案について参議院においても議員提案を行えることを前提としているものではないか、かようには考えております。
  183. 和田教美

    ○和田教美君 参議院においてもですか。
  184. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) はい。
  185. 和田教美

    ○和田教美君 参議院においてもという言い方がひっかかりますね。参議院においても当然ということだと思うんですね。  それから次に、予算に関係する法律案は予算と表裏一体、セットになったものだから、衆議院に先に提出しなければならない、さもなければ国民が困るというふうな議論の展開をする人があります。ところが、もしセットでなければ国民が困るというのであれば、旧憲法七十一条のような前年度予算執行確というふうなものでも認めるべきであったと思うんですけれども、国民主権、国会中心主義をとる憲法はそのような方法をとっていないわけです。ですから、現行憲法は明確に予算と法律とはその成立の手続を区別いたしております。ですから、憲法解釈、合憲か違憲かというふうな問題については、参議院先議の予算関係法律案提出は、重要であるかないかの区別なく、すべて合憲であるというふうに断言できますか。それをお答え願いたいと思います。
  186. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) お答え申し上げます。  少なくとも、私冒頭に申し上げましたように、法律案につきまして、予算に関係するか否かを問わず、衆議院と参議院のどちらの議院に先に提出すべきか、こういったことは憲法、法律のいずれにおいても明文の規定はない、こういうことでございますから。
  187. 和田教美

    ○和田教美君 次に移ります。  野党四派はきのう、消費税廃止に伴う代替財源の関連法案五法案を参議院に提出いたしました。ところが、政府・自民党はその前からこの代替財源案というものについて、裏づけに乏しいとか、あるいは非現実的だとか、さまざまの批判、非難を投げかけております。  その一つは、この財源案が税収見積もりの是正ということで、いわゆる税の自然増収のうち約一兆四千億円を消費税廃止の代替財源に充てるとしている点を、不確実な自然増収財源に充てるのは無責任だ、あるいは税の制度上の手当てができていないなどと批判をしているものです。しかし、私は毎年の予算編成に当たって税の自然増収を歳入の財源に充てていることは、現に政府が今まで行ってきたことであって、自分でやっていることは正しいといって野党がやるとけちをつけるというのはどうしてもこれは了解できないわけですが、その点について、大蔵大臣の見解を求めます。
  188. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 政府は、御承知のように、予算編成に先立ちまして、当初からあらかじめ自然増収というものを見込んでおるということではございません。予算編成の一環としてその時点までの課税実績、政府経済見通しの諸指標を基礎として個別税目ごとに積み上げを行いながら税収見積もりを行い、その結果としての年度増収なりあるいは年度間減収を見込んでおります。昭和五十一年度あるいは昭和五十八年度のように減収を見込んだ年もございます。これは個別項目の積み上げの結果としての税収見積もりから出てくるものでありまして、当初からあらかじめ一定の計数を自然増収として当てにして予算編成を行っているものではないということでございます。予算の編成過程において、まず歳出面においての特例公債依存体質の脱却に向けて歳出の節減合理化を徹底して取り組んでいくなど、そのときそのときの経済情勢、財政事情を踏まえて、歳入歳出全体を一体として展望しながら責任を持って予算編成を行っておるわけでございます。  今回、私どもの方から異論を唱えておるわけではございません。本院におきましても御質問があり感想を聞かれまして確かに私どもが申し上げてきておりますのは、制度廃止に伴う代替財源であるならば制度で対応すべきではなかろうかと。そういう視点から、あらかじめ求められましたときにそうした意見を申し上げたことはございます。
  189. 和田教美

    ○和田教美君 今大蔵大臣答弁で、制度廃止に伴う手当てであればそれは制度で行うべきだということをお答えになりました。原則論としてはまさにそのとおりです。野党案も制度廃止、つまり消費税の廃止という制度廃止に伴って制度上の手当てをしているわけです。物品税の復活だとかその他いろいろな制度上の手当てをしている。しかし、それは必ずしも増減税同時同額でなければならないという原則が鉄則があると私には思えない。増減税があるいは食い違っておっても、新しい制度を取り入れる、制度を廃止する、その間に多少の落差があってもそれは一向に私は構わない。もし穴といえば、穴を財政全般の中で埋めるということがこれは財政当局の責務である。しかし我々は政権を持っておるわけではないから、そこまで容喙することができないから自然増収で埋められるということを言っているにすぎない、こ ういうふうに思うんですね。  例えばここに大蔵省のこの前の制度改革、税制改革をやったときのPRがありますけれども、この表を見てもこれは「増減税差し引きで二兆六千億円の減税です。」と。一般に大蔵省の人たちは減税先行型あるいは減税超過型だというふうにおっしゃったわけです。この紫色の部分は制度改正と制度廃止ですね、制度の改廃、この部分、差し引き減税二兆六千億というのが、つまり僕は自然増収でほとんど埋めたと思うんですけれども、そういういわゆる差し引き減税になっているわけです。そうすると、野党案も形として私は同じだと思うんですね。ここに来るのが消費税の廃止による減税五兆九千億円、そしてこの新しい制度を取り入れることによる例えば間接税、物品税の復活、あるいはまた法人課税の強化、キャピタルゲインの強化というふうなものを入れても結局四兆五千三百億円しか増収がない。そこで一兆四千億円ちょっとの結果的に減税になる、こういう基本的な構造は一向に変わりないと私は思うんですけれども、どこが違うというんですか。
  190. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) これは委員におしかりを受けるかもしれませんが、多少論議をさせていただきたいと存じます。  私どもは、代替財源という以上、当然やはり制度上の手当てによる増収でなければならぬと考えておるわけでありますが、野党案におきましては制度上の手当てという、今委員がそうおっしゃいますけれども、私どもはそうとは思えない税収見積もりの是正という項目をお立てになったわけであります。  一方、改革前の税制は、昭和五十年代以降の本格的な所得減税が行われてこなかった間に、税体系全体に税負担が直接税、とりわけ給与所得を初めとする個々の稼得所得に偏ってまいりました結果、消費税のウエートが逆に低下をする。そうした中における納税者の重税感あるいは不公平感といったものに対しまして、直接税の分野での四兆六千億の減税と間接税の分野における二兆円の増税を行ったことにより、差し引き確かに二兆六千億円の減税を行ってまいりました。これは、こうした基本的なルールに基づいて行ったことでありまして、いわば消費税廃止というその項目に対する代替財源ができなかったために、結果的に、失礼でありますが、ネット減税となったという形では我々とは全く性質を異にするものだと考えておるわけであります。  そしてその二兆六千億のネット減税分につきましては、予算編成の中におきまして歳出削減の努力でありますとか租税特別措置の見直しなど、歳出歳入両面におけるできる限りの努力をして手当てをしてまいったところであります。
  191. 和田教美

    ○和田教美君 今の話を聞いても、いろいろの難しいことを言うけれども結局同じことじゃないですか。つまりへこんだ分だけは自然増収その他で埋めている。自然増収で全く埋めてないということであればこれは一つの考え方ですよ。しかし、そういうことは証明できますか。確かに、自然増収だけで埋めたわけではないでしょう、歳出カットとかあるいは国有財産の売り払いとか、いろんな要するにやりくりをしてその二兆何千億は埋めたわけでしょう。しかし、自然増収がもとにあるからそういうことができたわけですね。だから、基本的に全く私は同じだと思うんですが。いろいろの理屈を言うけれども、例えば税法の運営の理念に反するなんということで大蔵省は批判しているということも新聞に書いてありましたけれども、その理念といえば理念の違いだと言う以外にしようがないと思うんですね。その点いかがですか。
  192. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) そこまでお話しをいただきますと、本当に委員におしかりを受けるかもしれませんけれども、お許しをいただいて一つ申し上げさせていただきたい。  公明党が七月十一日に発表されました「消費税廃止・税制再改革大綱」、この中には、消費税廃止の代替財源としていわゆる自然増収というものについては三千億円しか見込んでおられませんでした。そして、いたずらに自然増収には頼らないということを言っておられた。私はこれは一つの見識として敬意を表しておりました。  しかし、今回野党の代替財源案として御発表になっておりますものでは、平成年度に一兆五千億円の自然増収を見込んでおられるわけであり、失礼でありますが公明党も……
  193. 和田教美

    ○和田教美君 一兆四千億。
  194. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 一兆四千億、失礼いたしました。公明党もこの案に合意をされたわけであります。自然増収という数字がこれほど大きく動く、それほど見込みが動くものでありましょうか。これは私本当に問題だと思うんです。やはり歳入歳出は予算編成時において整合性を持って組み立てられるべきものではなかろうか、私はそう思います。
  195. 和田教美

    ○和田教美君 その点は明確に違いますね。とにかく我々は、自然増収が大体今までのここ数年の傾向から見ると、二年間ぐらいは四兆、五兆ぐらい出るというふうに見ておるわけですね。その一部を使うというわけですから、一兆四千億に変わったから自然増収を膨らましたということではありません。自然増収見積もりは変わりません。その中の一部を使うということで、これは大蔵省が密室の予算編成でやっているやりくりと一向に変わらない。我々はオープンでやっているから全部わかるけれども、大蔵省だって初めからとにかく自然増収を幾ら充てるなんということを言わないものだから、結局どんどんどんどん変わっていっているというのが予算編成の作業だと。私も長年財政記者をやっていたからその点ぐらいのことは知っておりますけれども、それと同じことで、ただ密室でやっていることとオープンでやっていることとの違いだというふうに思います。  それで論争してもしようがないですから、もう一つ大蔵大臣にお聞きしたいのは、三塚さんがこの野党案は増税だと言っているんですね。どこが増税ですか。一つの税制改革の構造として見れば、明らかに今言ったように結果的には一兆四千億円の減税になっているわけです。どこを取り上げて増税案だというふうな攻撃をされるのか。森山官房長官もそんなことをおっしゃったそうですけれども、その点をお聞かせ願いたい。
  196. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 政調会長の御発言、私もちょっとわかりませんけれども、あるいは野党の代替財源案の中における物品税の復活とか法人税、有価証券取引税の増税等をその増税という言葉で表現されたのかもしれません。正直私はわかりません。
  197. 和田教美

    ○和田教美君 それはしかし、この図によれば上の方の、つまり消費税廃止というのは大減税なんですよね。それに見合って増税案を、増税案といえば増税をやっているけれども、なおかつ減税分が一兆四千億あるわけで、大きな構図として見れば明らかに減税なんですね。
  198. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) その前に一つおわびを申し上げます。  先ほどの自然増収についての公明党の七月十一日の意見、私が申し上げましたのは事実に誤認がありましたようでありますから、この点はおわびを申し上げます。  ただ、政調会長の御発言は、率直に申して、私、聞かれましてもわかりませんので、あるいは感じでこうかなと申し上げたのでありまして、私自身が申し上げたことではございませんからちょっとお答えのしようがありません。
  199. 和田教美

    ○和田教美君 まだまだ論争したいんですけれども、時間が大分たってまいりましたので、個別の問題について一、二お聞きしたいんですが、その点については関連質問に白浜委員の発言をひとつお願いしたいと思います。
  200. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 関連質疑を許します。白浜一良君。
  201. 白浜一良

    ○白浜一良君 私はこの七月の選挙におきまして消費税撤廃を公約に掲げまして本院に初めて議席を得た者でございますが、その意味ではこの臨時国会、私も何としても消費税は撤廃したいという強い決意で臨んでおるわけでございますが、本委 員会でずっと政府答弁を聞いておりまして全くわからない、私自身納得できないことが多いわけでございまして、きょうは時間がございません、いわゆる税率一点に関しましてお伺いをしたいと思います。  政府は、消費税導入の理由としていわゆる高齢化社会への対応ということを挙げられておりますが、また大蔵省と厚生省でその根拠として展望を示されております。六十三年度平成二十二年度だけで結構ですから、国庫負担の伸びと国民所得の伸びをお示しください。
  202. 小粥正巳

    政府委員(小粥正巳君) ただいまのお尋ねの点でございますが、昨年三月に当予算委員会に厚生省と大蔵省から「二十一世紀初頭における高齢化状況等及び社会保障の給付と負担の展望」という資料を提出してございます。この資料によりますと、現行制度を前提といたしまして将来にこれを延長しているわけでございますが、平成元年度以降の国民所得が一つの仮定を置きまして年平均四%から五・五%、その範囲で伸びていくもの、そういう仮定を置きまして、社会保障に係る給付費及び負担を試算しているわけでございますが、ただいまお尋ね平成二十二年度における国民所得を今の仮定によりますと六百八十兆円程度から九百四十兆円程度、国庫負担額を四十五兆円程度から五十五兆円程度、その際の国庫負担の対国民所得比は六%程度から七%程度と試算をしております。
  203. 白浜一良

    ○白浜一良君 この政府の展望を仮に前提といたしましても、今示された数値で考えましたら、いわゆる六十三年度平成二十二年を比較いたしまして、国民所得が最も大きく伸びても三・三倍であります。それに比べまして、国庫負担というのは最低の伸びでも三・八倍というそういうデータになっているわけです。それを賄うためには当然極めて大きな税収がなければならない。それでなければこれだけの国庫負担は賄えないわけでございますが、そうしたら政府平成二十二年、一体どのくらいの財政規模を考えていらっしゃるのか、推計されていらっしゃるのか。また、その段階でも消費税の税率は三%でしょうね。その点をお伺いしたいと思います。
  204. 尾崎護

    政府委員尾崎護君) ただいまの一連の資料の中で租税負担率について推計をしているわけでございますが、六十三年度の租税負担率は二五・五%、それに対しまして平成二十二年にはそれが二八から二九%ぐらいに上がるであろう、その間二・五%から三・五%くらい租税負担率の上昇があるものと見込んでおります。
  205. 白浜一良

    ○白浜一良君 要するに、財政の推計はいいですが、消費税は三%ですね、この段階で。
  206. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 衆議院ではちょうどその逆さの御質問がありまして、平成二十二年度には消費税の税率はどうなるかという御指摘がございました。そのときにもお答えを申し上げたことでありますけれども、臨時行政調査会の答申によりましても、これから高齢化の進展に伴って租税、社会保険料を統合した国民の負担というものはふえていく傾向にある。しかし、少なくとも現在のヨーロッパの水準よりできるだけ低い水準で抑え込むべきであるということを言われ、そして私どもはその目標に向けて努力をしているわけであります。個別の項目については、それぞれその時期の国民の選択によることでありますから、保険料による、あるいは税によるとすればどの項目による、これを今の時点で固定をすることはできません。
  207. 白浜一良

    ○白浜一良君 そういう答えは聞いていないわけでございまして、先ほど総理が言っておりましたが、二〇一〇年のいわゆる国庫負担の社会保障費の規模をおっしゃっておりましたが、それだけデータを出していらっしゃって、高齢化社会のためとおっしゃっているわけですから、当然その段階におけるいわゆる消費税に対する税率の考え方というものが前提になければならないわけでございまして、私は三%か、上がるのかということだけを聞きたいわけであります。もう一度お願いします。
  208. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) ですから、その時点における国民の選択によると申し上げておりまして、今委員は二つの年次を聞かれましたけれども、六十三年度における例えば国民所得約二百八十八兆円に対しまして、社会保障給付費は四十四兆円であり、社会保障負担は三十二兆円であります。これを単純に制度が全く変わらないとして推計をして伸ばしてまいりました場合には、これが率として二六から二九%程度、現在は一五・四%でありますけれども、百九十五兆から二百四十兆円程度の社会保障給付費になるという積算がされております。また、社会保障負担として申し上げますならば、現在一一・一%でございますけれども、平成二十二年度には百二十五兆円程度から百五十五兆円程度、一六・五ポイントから一八・五ポイントぐらいに上昇するということは、単純にこの制度を伸ばした場合の推計であります。ですから、その中で保険料に国民がその負担を求めることを望まれるのか税によることを望まれるのかは、その時代における国民の選択と申し上げる以外にありません。
  209. 白浜一良

    ○白浜一良君 そんなことはわかっているわけでございまして、ただ、政府の方が消費税導入の一つの理由としてそういうことをおっしゃっているから私は確認しているわけであります。  話を変えます。  直間比率の見直しという観点からもおっしゃっているわけでございますが、実際どのぐらい消費税導入でこの比率が変わりましたか。
  210. 尾崎護

    政府委員尾崎護君) 税制改革の効果がまだ完全に出切っているわけではございませんけれども、完全に税制改革が平年度化した場合の直間比率は、直接税六九、間接税等三一程度になるというように私どもは見込んでおります。
  211. 白浜一良

    ○白浜一良君 直間比率の見直しということ、そういうことなんですが、その直間比率が今後どのようになるかということを私なりに推計いたしました。いわゆる税収伸びというのは、過去十年間の税収弾性値をとりましたら平均が一・五五でございまして、消費税は弾性値が限りなく一に近い、そのように言われております。そういう観点で、経済成長率を五・五%と仮定いたしましたら、税収全体に対する消費税の比率というのは平成元年度は九・三%でございます。しかし平成二十二年、これは推計でございますが五・三%に落ち込むわけであります。  間接税の主力として導入されたこの消費税、実際問題この間接税の比率も落ちちゃう、消費税が落ちてしまうわけですから。だったら、そういった意味からも、消費税の直間比率見直しという観点での導入が納得できない。政府がおっしゃっている考え方の中には、当然でございますが、将来大幅に消費税の税率を上げなきゃならない、そういうことがもう前提でなければ考えられないわけでございまして、この点大蔵大臣、どうですか。
  212. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は今委員が述べられました数字の算定がどういう方式をとられたのか存じませんけれども、少なくとも消費とそして所得、資産というもののバランスのとれた税制を構築していく方向で今後を考えます場合に、私は、どういう仮定値を置きますとそういうふうになるのか、ちょっと今想像がつきません。
  213. 白浜一良

    ○白浜一良君 傾向だけでいいですから、総理、お願いします。
  214. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 将来の先の長いことは、どなたが政権担当者になられるのか、どの政党がどういう状況で政権を担当されるのか、二十年先のことを今から予測、断言する能力は私にありませんけれども、私の内閣の間は三%の税率を変える気はございません。
  215. 白浜一良

    ○白浜一良君 政府がおっしゃっているから、私は根拠を問うただけでございます。  時間がございませんので、次の質問に変えます。  沖縄の在日米軍基地についてお伺いをしたいと思います。沖縄返還協定がございまして、基地というのは将来整理縮小していくという、これが基本方針でございますが、米軍施設が沖縄返還後どのように縮小されたか、本土と沖縄県に分けてお 答えをいただきたいと思います。
  216. 松本宗和

    政府委員松本宗和君) お答えいたします。  沖縄所在の米軍占用施設が返還後どのように解除されたかという問題でございます。平成元年三月三十一日までに、全部返還となりました施設が四十施設、一部返還が百十五件でございます。面積で申しますと、返還面積の合計は約三十七平方キロメートルでございます。
  217. 白浜一良

    ○白浜一良君 本土と沖縄に分けて聞きたかったんですが、もう結構でございます。こちらでデータをとりました。本土内の施設面積は六〇%を超えて縮小されているわけでございますが、実際沖縄県に関しましては六%しか縮小されていない。こういう現実があるわけでございまして、沖縄では本土全体の三倍の土地面積が米軍に提供されているわけでございます。  このような現状を見ますときに、沖縄県の皆さんの感情はいかばかりかと思うわけでございますが、総理はどう思われますか。
  218. 松本十郎

    国務大臣松本十郎君) 沖縄県に所在する施設、区域は、安保条約の目的達成のために必要でございますが、その密度が高く、整理統合の要望が強いことも十分承知をいたしております。防衛庁といたしましては従来から、安保条約の目的達成と地元の整理統合の要望を踏まえながら施設、区域の整理統合に努めてきたところでございますが、今後ともその推進に当たりたいと考えております。
  219. 白浜一良

    ○白浜一良君 次に、いわゆるキャンプ・ハンセン基地内に、主に恩納村でございますが、建設が現在進められております都市型戦闘訓練施設、今非常に問題になっているわけでございまして、地元県民も非常に反対をされております。  そこで、一つは基地建設の経過、二つ目は県及び村の要請並びに状況、三つ目は工事強行のためいわゆる機動隊を導入された経過、四つ目はその際の負傷者等について御説明をいただきたいと思います。
  220. 松本宗和

    政府委員松本宗和君) キャンプ・ハンセンの都市型戦闘訓練施設でございますが、まず、設置の経緯でございます。これは米軍海兵隊でございますが、市街戦を想定いたしまして、敵に占領されました建物等を小火器でもって奪還するという訓練のために、これ昨年の九月からと記憶しておりますが、木造の建物三棟、それから主として監視用に使います建物一棟、それからタイヤハウスと申しまして古いタイヤを箱状に積み上げました迷路状の施設でございますがこれを二カ所、それから小銃射場一カ所、これを場内の恩納地区、レンジで申しますと二十一レンジ、従来から射場として使っておるところでございますが、ここに建設を計画いたしました。    〔委員長退席、理事平井卓志君着席〕  これに対しまして、地元の方ではこれは非常に危険である、実弾を使うので危険であるということが一つ。それから山火事の危険があるのではないかということが一つ。それと近くに貯水池がございますが、これに対する出入りが制約されるということ。それからこの地域、リゾート地域として開発しようというお考えでございますけれども、このリゾート地域というものとこのゲリラ戦用の施設とはなじまないということで強い反対が行われました。  一時地元の反対、座り込み等で工事が中断いたしましたけれども、米軍は自力で工事をこの七月再開いたしました。この際、警官が導入されておりますが、これは米軍の要請によりまして地元県警が警備に出たものと伺っております。  現在、この建物は既に完成しておりまして、工事は完了しております。  以上でございます。
  221. 白浜一良

    ○白浜一良君 今御説明でもございましたが、周辺はリゾート地でございます。また、自然環境保全という面もざいますし、実際実弾の訓練場、この一番近いところでは住宅地から百メートルしか離れていないという、こういう現況もあるわけでございまして、地元恩納村初め県の皆様は非常に反対されているわけでございますが、その声を無視してなぜ建設を進めなければならなかったのか、お伺いをしたいと思います。
  222. 松本宗和

    政府委員松本宗和君) 米軍といたしましては、安保条約の義務といいますか、目的を達成するために所要の訓練を実施しておるわけでございますけれども、この地域は従来から訓練施設として使用しておりまして、ここに訓練の施設を建設することはこれは安保条約上認められておるところでございます。  ただ、私どもといたしましても、また米軍といたしましても、安全については十分の配慮はしなければならないということでございまして、先ほどいろいろ地元の御心配の点を申し上げましたけれども、これにつきましては防衛施設庁も加わりまして、例えば射撃の方向を全部山の方に向けるとか、あるいは場内の立ち入り、こういうものについて便宜を図るとか、また周りの景観を害しないように建物の色彩、そういうものに注意を払う、あるいは植樹をする等々行いまして、できるだけ地元に御迷惑をかけないようにこれを建設し訓練を実施するというように運んでおるというように伺っております。  そういうことでございまして、我々も今後とも事故の発生につきまして十分監視してまいりたいと思いますが、この点について十分御理解賜りたいと思います。
  223. 白浜一良

    ○白浜一良君 沖縄県では大問題でございまして、総理みずからが乗り出していただきたい。このことを訴えまして、質問を終わります。
  224. 和田教美

    ○和田教美君 もう時間もございませんので、きのうも問題になりました消費税の必要性をPRする政府のニュー・タックス・キャンペーン、これについて二、三お尋ねしたい。  この間の政府答弁では、この新聞の広告、これに載ったのが橋本大蔵大臣の顔写真のでっかく載っているやつです。これは四回というお話でしたけれども、私のここに集めただけでも五回あります。それ以外にテレビのコマーシャル、これも十月一日からやっておられる。また、雑誌ですね。これもやっておられる、雑誌広告も。それで、きのうの大蔵省答弁では、予算大蔵省関係だけで広報予算、税制関係だけで二十三億あるということでしたけれども、総理府関係の予算は別にあるということでございまして、一体このキャンペーン計画全体としては政府としては幾らかけておるのか。また、現在までにどれだけ使っておるのか。その辺の詳細をひとつ御報告願いたいと思います。
  225. 岡村健

    政府委員(岡村健君) 総理府では税制改革に関する政府広報に重点的に取り組んでいるところでございますが、このために要する経費につきましては、広報媒体によりましては広報の内容が入り組んでいる場合もございまして、所要経費だけを抽出することはなかなか難しい面もございますが、あえてこれを計算いたしますと、総理府関係で今年度に入りまして約十一億円でございます。それから大蔵省もこの種広報を行っておりますが、総理府と同様の理由でなかなか抽出が難しいのでございますが、これにつきましてもあえて算出いたしますと約十一億円。合計いたしますと二十二億円ということでございます。
  226. 和田教美

    ○和田教美君 それで、今まで幾ら使っているかということ。    〔理事平井卓志君退席、委員長着席〕
  227. 岡村健

    政府委員(岡村健君) 総理府関係では約五億円でございます。
  228. 和田教美

    ○和田教美君 大蔵省はどうですか。
  229. 尾崎護

    政府委員尾崎護君) 大蔵省におきまして本年四月以降現在までに実施した税制改革広報の経費をあえて区分いたしますと、大体十一億円ぐらいであろうかと思います。
  230. 和田教美

    ○和田教美君 きのうの答弁では二十三億円予算があるというお話でしたけれども、それを年度内に全部使っちゃうつもりですか。
  231. 尾崎護

    政府委員尾崎護君) お答え申し上げます。  全体として二十一億円大蔵省予算がございますが、そのうち現在十一億円使っております。今後、それをどの程度この広報のために使うかとい うのはまだ計画が立っておりません。
  232. 和田教美

    ○和田教美君 いずれにしても、予算というのは膨大な税金ですね、税金を一番大切にする大蔵省がこういう調子で一方的なPRをやられるということは我々としては納得できない。大蔵大臣はこの間の答弁では、いや、政府の宣伝をやっておるばかりじゃない、例えば投書ですか、お手紙ですね、お手紙の中で政府に厳しいのも二通ある、政府を支持するのは一通だというようなことを言っておられましたけれども、五回を通しますと、確かに最後のやつはそうですけれども前の方は一方的な政府の宣伝ですね。  それからここにテレビのコマーシャルのビデオを持ってきましたけれども、これをお見せできないのは残念だけれども、これなんかは全く反論もなくて一方的な宣伝ですね。こういうことをやるのは、やっぱりもう既に国会で消費税の問題が最大の論点になっているという状況の中では、私は法律がどうとかこうとかというんではなくて、自粛すべきだと思うんですけれども、大蔵大臣の御見解をお聞きしたい。
  233. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今まで税制について周知徹底が足りなかったとしばしばおしかりを受けてまいりました。そして、その徹底を図るということは、やはり努力の当然のことと思います。
  234. 和田教美

    ○和田教美君 とにかく明らかに行き過ぎだというふうに思うんで、そういう外でのPRなどに力を入れずに、国会に早く案を出して、そしてお互いに論議するということが絶対に必要だと思います。そのことを申し上げまして、私の質問を終わります。
  235. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 以上で和田教美君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  236. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 次に、矢田部理君の質疑を行います。矢田部君。
  237. 矢田部理

    ○矢田部理君 衆参両院にわたって二週間に及ぶ予算委員会でありますから、少しくお疲れのようであり、おねむの方も多いようでありますが、私は過日の参議院選挙で重要な争点の一つでありましたリクルートと政治改革問題について質疑を交わしたいと考えております。  まず、総理に伺いますが、日本の政治にとってリクルート疑獄とはそも何であったか、総理認識を伺いたいと思います。
  238. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) リクルート事件は、政治不信を巻き起こすという大変な結果を生みました。それは、政治資金と政治の間の許されるもの許されないもののけじめ、あるいは政治とお金に関する問題においてお金がかかり過ぎるという現状に何か厳しさが欠けておったのではないかという反省、そういったことがいろいろと象徴的に出てきた事件であったと、私はそのように受けとめております。
  239. 矢田部理

    ○矢田部理君 リクルート事件については、全容解明が極めて政治にとって大事だと思いますが、解明は尽くされたと思っておられますか。何が明らかにされ、何が残されているか、その認識を聞きたいと思います。
  240. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 大変残念なことでしたけれども、これは司法当局の捜査を受け、そして起訴をされたこともございました。そして、どのような範囲がまず法律的に許されないことであったかという点について明らかにされたと思います。同時に、法律的に明らかになったことのほかにいろいろな問題がそれぞれ起こったんですけれども、自由民主党は自由民主党としてこれを厳しく受けとめて、これを二度と繰り返さないようにするにはどうしなければならぬかということに思いをいたし、けじめ案をつくり、同時にまた、党の政治改革推進本部をつくって政治改革大綱もつくり、それを実現することによって政治改革を行っていくことによって、このリクルート事件によって失われた政治の国民からの信頼を取り戻すようにまず自由民主党として前進をしていこう、このように反省を込めて行動しております。
  241. 矢田部理

    ○矢田部理君 今度の疑獄の特徴は未公開株の譲渡をめぐる問題でありました。しかし問題は株だけではありません。株についても、刑事捜査で明らかにされた部分を除いては、いかなる趣旨、目的、何のために株の動きがあったのか、その結果何が動いたのかなどはいまだにほとんど解明をされていないのであります。さらには、就職情報誌や各種委員の任命の問題、スーパーコンピューターの課題や安比高原の問題など多くの課題がいまだ解明されないまま、言うならば政治改革という名でふたを閉められようとしているのが今日の状況だと私は思う。この点、総理はいかがでしょうか。  同時にまた、我々はロッキード疑獄という空前の大疑獄をかつて経験しましたが、そこからほとんど学ぶところがなく、またまたそれを上回る空前の疑獄事件を発生させてしまった。その原因をどう受けとめておられるか、以上二点について伺っておきたいと思います。
  242. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 先ほども申し上げましたように、残念ながら二人の国会議員が起訴をされるという厳しい現実がございました。おっしゃるように、許されないことがもしたくさんあるとするなればもっと捜査の段階で明らかにされたろうと私は思います。日本の司法当局を私はその意味で信頼をいたしております。  それから政治家として政治的な責任、道義的な責任をどうとるかということは、先ほども申し上げましたように、私ども自身で党としてはいろいろと努力をしていき、その原因は何だと思うかという後半の御指摘でございますけれども、お金がかかり過ぎるという現実が一方にあることも確かでございます。そしてそのお金を得るために甘えが出てきたり、心の緩みが出てきたりしたのではなかろうかということも率直に反省もいたしております。そういったことを制度的にもあるいは仕組みの上でもなくしていくような努力もやはりしなければなりません。  そういった意味で、政治資金の入りの方の関係、出の方の関係を明らかにするということも大切ですが、同時に、根源にさかのぼって、お金に頼らなくてもいいような、政策論争本位の選挙のできるような、そんな選挙の仕組みができないものだろうかというのを私は心から願っておるわけでございます。  そういったことを実現していきながら、さあこうしたからみんなで守ろう、一人一人の議員がみずからの心の中に政治倫理をしっかりと打ち立てようという、そういったことができるような環境の整備もまた御指摘の後半の問題としてはあわせてやっていかなきゃならぬことだと、このように受けとめております。
  243. 矢田部理

    ○矢田部理君 さらに、けじめの問題もありますが、国民はいまだリクルート問題はけじめ、決着がついていない、国民だけではなくて、自民党の中にさえそういう声があることは御承知のとおりだと思いますが、私から言わせれば、いまだに解明が道半ばであると言わざるを得ないのであります。解明なくして改革なしと私はずっと叫んできたのでありますが、その立場から、海部総理御自身にとってリクルートとは何であったのか、いろいろのかかわりが報道されてきましたが、そのことを少しく突っ込んで承っていきたいと思いますが、まず総理からお答えください。
  244. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 私自身の政治家としての政治資金の中にリクルートからのものがあったことは、これは私が公表したとおりでございます。私は、リクルート社がこのような社会的な問題を起こす企業であるということを知らなくて、通常の政治資金として受け取っておったものでありますけれども、しかしこれだけ御批判が大きくなったということに省みて、今後十分注意をしていかなければならぬと思いますし、私自身にとっては、そのようなことを通じてみずからに対して政治資金の集め方に関する今後の厳しい戒めになったと受けとめております。
  245. 矢田部理

    ○矢田部理君 総理としてというか、海部さん個人としてリクルート社及び江副とはいつごろからどんなつき合いだったんでしょう。
  246. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 政治資金に関する、あ るいはパーティー券の購入等に関するそういったリクルート社との関連は、私の事務所で調査いたしましたが、昭和五十八年のときからであったと、こう覚えております。
  247. 矢田部理

    ○矢田部理君 政治資金だけでなくて、いろんな接触なりおつき合いなりかかわりがあったと思うのですが、その時期と内容についてお話しできませんか。
  248. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 私の事務所が政治資金とかパーティー券のことについていろいろ接触があったということは公表したとおりでございますけれども、私自身がかかわったとか、私自身がそういったことを依頼したとか受け取ったとか、そういうようなことに関しては特にございません。
  249. 矢田部理

    ○矢田部理君 お金のことだけに少し頭がいっているようでありますが、そうではなくて、個人的なつき合いとかあるいはいろんなかかわりとか仕事上のつながりとかということがあって、パーティー券を買ってもらったり献金を受けたりということが多いと思うんです。政治的な利権かどうかはまた別の問題でありますが、そういう時期や経過というのはないんですか、いきなりお金から始まったんですか。
  250. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 今いろいろと私も個人的におつき合いをしたとか個人的にいろいろなところでかかわり合いをしてきたということはこれはございませんけれども、たしか国会の御議論の中でも、昭和五十一年、最初の私の文部大臣のときに頼まれて講演に行ったではないかということを御指摘になりました。私も事務所へ帰っていろいろ調べてみたんですけれども、あの当時も教育のことに関すれば頼まれればすぐ講演に飛んで行っておりますし、あるいはそういうことも全部含めてかかわり合いとおっしゃるなれば、頼まれて講演に行ったことはあったのかもしれない。いろいろ調べてみましてもそれはわからないわけでございます。正直に申し上げておきます。
  251. 矢田部理

    ○矢田部理君 そうしますと、余りここは大事ではありませんから経過だけ聞いているんですが、文部大臣になられてからのおつき合いですか。
  252. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) それ以前にいろいろあったことはないと思いますし、それから個人的に出会ったりなんかしたことも、私は大勢のパーティーなんかで会って紹介されたことはありますけれども、それ以外のことはちょっと思い出せません。
  253. 矢田部理

    ○矢田部理君 そこで、総理が今指摘をされた、五十一年に大臣になられて五十二年の七月五日、第二十九回リクルートシンポジウムというのが名古屋国際ホテルで開かれた、これに出席をされて今後の教育行政について文部大臣として講演をされている記録があるのですが、これは月刊リクルートという雑誌に載っているわけでありますが、これが海部さんの講演のときの写真じゃないかと思うのですが、思い出しませんか。(資料を示す)  ここでは、わざわざ記憶を喚起するために言っているんですが、「前文部大臣の永井道雄先生の講演記録が」月刊リクルートに「掲載されております。」、「永井文部大臣時代の文部行政についての取り組み方、姿勢、実践などが触れられています。」。この基本姿勢を踏襲して、「永井先生のご講演と重複しない形でお話をさせていただきたい」と、かなり準備をされていった経緯もあるようでありますが、思い出しませんか。
  254. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 私はあのころ、永井路線を継承すると言って、永井文部大臣の文教行政を受け継ぐという趣旨で本当に方々で演説をいたしましたので、特にここと固定されても思い出せませんし、いろんなところでお話はいたしました。  ただ、その時期は参議院選挙の真っ最中でありましたので、参議院選挙中は私はまた朝から晩まで方々飛び回っておりましたので、まことに恐縮でありますけれども、その今お示しいただいた写真もよくわかりません。判別不能でございますが、あるいはそういうことを細かく言っておるんですから、お話をしておった中の一つであるかもしれないとは思います。
  255. 矢田部理

    ○矢田部理君 余りしつこくなってもいけないですが、また総理が言うからですね。  あるマスコミの記事によりますと、その日はちょうど名古屋へ参議院選の応援に行っており、スケジュール上講演出席はあり得ないということを言っておられるわけです、名古屋に行っておるからと。ところが、この記録は名古屋のホテルの記事なんですね、月刊リクルートに載ったのは。ちょうど場所は合うんですよ、逆に日にちと場所は。そういう意味では、私は行ったと見るのが当然だし、思い出せないというのもちょっと不思議に思うのでありますが、もう一度、さらに同じ時期に東京のパレスホテルで「高学歴社会における大卒者雇用」という題名らしいのですが、あなたが演説をされておる。これはどうですか。
  256. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 正直申し上げて、そのころ教育関係の講演は何回も何回も行きましたから、そして一々記録がとってございませんし、十二年前のことでございますので、幾ら調べてみてもよくわかりませんでした。ですから私は、今後は十分注意をして、いつ幾日どこでどういう演題で何の演説をやってきたかということも本当に記録にとどめておくぐらい注意をしてやらなきゃならぬと、こうみずからを戒めております。
  257. 矢田部理

    ○矢田部理君 私どもが伺いたいのは、人間だからだれでも忘れることはあります、不正確なことがありますが、要するに千四百四十万円以外には全くないというふうに強弁をされるものだから、本当にそうだろうか、それ以前のおつき合いは全くなかったんだろうかということになりますと、講演などにも行っておられる、後の講演料は百万円いただき——三十三万円の方もあったわけでありますが。ということになると、ある時期の献金はこの程度なのかもしれませんが、それ以外にもあったのではないかという疑問を持っておるものですから伺っておるのですが、全くありませんか。
  258. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 調べてわかる限りのものは全部公表しておりますので、政治資金とかパーティー券という形ではあれがすべてだと思っております。
  259. 矢田部理

    ○矢田部理君 この一覧表、千四百四十万の一覧表を見ますと、五十八年以降毎年のようにパーティー券、献金等が行われているのでありますが、五十九年だけが欠落をしておりますが、これは何か理由があったのでしょうか。
  260. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 理由はよくわかりませんが、五十九年はパーティーは開催いたしておりません。それから五十九年は一度も政治献金を受けたことはなかったと事務所の者が言いますから、念を入れて調べろと言いましたけれども、そうですと言いますから、私はそのとおり、わかった限りを公表させた次第であります。
  261. 矢田部理

    ○矢田部理君 講演のほかに、例えば原稿ですね、寄稿をするとか、あるいは祝辞を述べるとか、新聞広告に載るとか、そんなおつき合いがずっとあったのではありませんか。
  262. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) いろいろな各界の知名人が出られる「新就職者を激励する」という広告に出たことがありました。
  263. 矢田部理

    ○矢田部理君 リクルートの広告が各紙に一斉に載るわけでありますが、毎日新聞に「就職おめでとう」と言って大臣が寄せられている。さらには、地元の中日新聞にも同様な記事が載るわけですが、こういうことはあったんですね。
  264. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) あったと思います。
  265. 矢田部理

    ○矢田部理君 そこで、二回目の文部大臣のときを中心に伺っていきたいと思うのでありますが、二回目は大臣になられたのはいつからいつまでの間でしょうか。
  266. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 昭和六十年の十二月二十八日に就任いたしました。終わりましたのが、昭和六十一年の七月二十二日であったと記憶しております。
  267. 矢田部理

    ○矢田部理君 文部省に伺った方がいいと思いますが、この間に就職協定問題というのが文部省を中心にかなり問題になった時期でありますが、その概況について御説明ください。
  268. 國分正明

    政府委員(國分正明君) ただいま御指摘の就職 協定の問題でございますが、昭和六十一年度の就職協定につきましては、それまでの就職協定が必ずしも十分に守られていない、何とか守れるようにしたらどうかというような考えもあり、また六十年の六月に臨教審の一次答申におきましてもこの点についての改善の指摘がなされました。こういうような背景のもとで、大学側、企業側で相談いたしまして、従来の就職協定におきますと十月一日に企業との接触、それから十一月一日にいろいろな内定等のことを行う、こういう取り扱いでございましたのを、現実に合わせるというような意味合いにおきまして、企業側と大学側との接触を八月二十日に繰り上げる、こういうような取り決めが行われた、そういう時期でございます。
  269. 矢田部理

    ○矢田部理君 大分前から就職協定の訪問の時期や実際の試験の時期をいつにするかということはしばしば問題になっておったのでありますが、協定締結の時期の内容とあわせて、協定をつくっても守られないという問題がしばしば問題になり、かつその前年には日経連の松崎専務理事から廃止論が出るというような非常に慌ただしい空気の中で、リクルート側は大変慌てておった、何とか協定を早期に決着をつけてほしいと、五十九年には官邸にわざわざ藤波さんを訪ねて協定実施問題について請託をしている。これが今度の事件になっているわけでありますが、そういう状況があった時期ではありませんか。
  270. 國分正明

    政府委員(國分正明君) 先ほど御答弁を申し上げましたように、またただいま委員から御指摘がございましたように、できるだけ遵守できる協定にしようというようなことから、企業側と学生側との接触というものを十月一日から夏休み中でございます八月二十日に繰り上げる、こういうような変更が行われたわけでございます。  その際、松崎専務理事についてのお話がございましたけれども、確かに一時期協定は不要ではないかというような意見が出されたこともございますが、企業側にアンケートをとりましたところ、ほとんどの企業が就職協定の存続を希望する、こういうような背景もございますし、また大学側もぜひ存続してほしい、ただ実態に合うように改めてほしい、こういうようなことでの議論がなされ、先ほど御説明申し上げましたような期日の変更が行われた、こういうように承知しております。
  271. 矢田部理

    ○矢田部理君 その期日の変更を行うに当たって、原案は文部省がつくり、そのまとめに文部省が奔走したことは事実ですね。
  272. 國分正明

    政府委員(國分正明君) 当時、企業側あるいは大学側でいろいろな議論がございまして、企業側の一つの団体でございます中央雇用対策協議会の方から、文部省においてひとつたたき台をつくってくれないか、こういう要請があったことは事実でございます。
  273. 矢田部理

    ○矢田部理君 そういう時期の文部大臣でありますが、文部大臣としてこの協定締結にどのような役割を果たされましたか。
  274. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 私は、就職協定というものは大学生の青田刈りを防ぐために行われておるものだということは前から認識をいたしておりました。しかし、私が積極的に右せよとか左せよとかどうこう言うようなことを行った覚えはございません。
  275. 矢田部理

    ○矢田部理君 江副氏ないしリクルート側から藤波さんは既に請託を受けているわけでありますが、あるいは藤波官房長官などからあなたに全く接触も働きかけもありませんでしたか。
  276. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) このことに関しての働きかけは全くございませんでした。
  277. 矢田部理

    ○矢田部理君 同時に、もう一つの疑獄事件の柱でありました進学情報誌問題がありましたが、この時期であります。これはどういうことだったんでしょうか。
  278. 國分正明

    政府委員(國分正明君) 進学情報誌についてということでございまして、御質問の趣旨、必ずしもよくわかりませんけれども、最近新聞等でいろいろ報じられました中のことといたしますと、あるいは専修学校の協力者会議のことかと思いますが、専修学校の協力者会議につきましては、六十一年の初めごろに、専修学校が創設されましてから十年経過する——当時、量的に社会のニーズにこたえまして非常に専修学校の数がふえてまいりました。十年の節目ということで、これからは専修学校の質的な向上を図る、そういう時期に来ているというようなことから協力者会議を設け意見の取りまとめをいただいた、こういう経緯がございます。
  279. 矢田部理

    ○矢田部理君 どうも中立的な物の言い方をするんですが、この専修学校に対する進学に当たって情報誌を発行するわけですが、非常に誇大広告が多い、どこどこの学校に行けば資格が取れるなどと言って、行ってみたらそうにもならぬということが問題になりまして、そのような業者による生徒名簿の提供要求には学校側として応じることは好ましくない、こういう考え方が協力者会議などでも出たのでありますが、高石次官——総理、あのときの文部大臣が当時任命した次官でありますが、その高石次官がそういうときに業者側に立って便宜な取り計らいをしたということ、これが実は今度の疑獄事件のもう一つの柱だったのであります。その年の九月に株をもらうことになりました。これについて当時文部大臣、何らかのかかわりはなかったんでしょうか、また報告や相談はなかったのでしょうか。
  280. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 申し上げますが、何のかかわりもございませんし、私は請託を受けたこともございません。文教行政は公正に行ってきたつもりでおります。
  281. 矢田部理

    ○矢田部理君 一千四百四十万の献金のうち、この文部大臣の時期の献金が急速にはね上がります。年間五百万になり、パーティー券の量も従来の三倍増になるということなどを勘案して考えますと、何か文部大臣になり、最も重要な当時の文部省におけるポイントの二つ、これが大変騒がれておったし、そのことが後刻疑獄事件の二つの柱になって噴出をするわけでありますが、これに全く関係がなかったというのは、大臣としてはいかがなものでしょうか。こういう情勢の動きに対して何も報告も、受けとめ方もなかったんでしょうか。
  282. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 私は文部大臣に就任しまして、大学の入学試験の問題に一生懸命取り組んでおりました。そして、あのころはそのようなことについて一々私に報告はなかったと思いますし、それ以外の働きかけも意思の表示も私はした記憶は全くございません。
  283. 矢田部理

    ○矢田部理君 大臣としては少しく無責任のそしりを免れがたいと思うのでありますが、この時期に高石ら幹部はリクルート側との瘉着を急速に深めて、そのゆえにまた起訴をされ、文部省の局長以下幹部三人が辞職をするということにまで至ったわけでありますが、少なくともそれらの瘉着についてそれを許容した、あるいは促進する役割すら果たしたのではないか。その責任はやっぱり大きいと思うのでありますが、全く責任は感じませんか。
  284. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 瘉着を許容したとか瘉着を促進したとかいうおっしゃり方には、私はいささか納得できません。そのような役割は全く果たしておりません。
  285. 矢田部理

    ○矢田部理君 あなたが文部大臣の時期に全部かかわって発生したのがこの疑獄事件なんですよ。それを大臣として責任がなしというわけにはいかぬのじゃありませんか。知らなかったとしたらより問題だし、少なくとも監督責任はあったのではありませんか。
  286. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 一々大臣まで上がってきてその決裁を求めなければ前進しないとかいうようなことじゃなくて、その局なりいろいろなところで片づけることも事実あったと思いますし、また私自身は、申し上げたように、大学の入学試験の改革の問題に全力を挙げて取り組んでおった時期でもございます。そのようなことは、一切不公正なことはした記憶はございません。
  287. 矢田部理

    ○矢田部理君 大学入試も大事かもしれませんが、大臣ですから一点にだけかかわっていればいいんじゃありませんで、企業側と大学側が就職の 時期、協定をめぐってどうするかという激しいせめぎ合いがあり、かつリクルートはそれによって自分の仕事が左右されるものだから物すごい関心を示して、いろんな工作も行った。官房長官のところまで出向いていっているという状況を考えれば、今の答弁は無責任のそしりを免れないと思いますが、次の質問に入ります。  リクルート事件で政治資金の問題が出ました。その結果、宮澤さん、安倍さん、それから加藤六月さんの関係の秘書が政治資金規正法違反で起訴をされ有罪となったのでありますが、法務省、公訴事実の要旨を説明ください。
  288. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) お尋ねの点につきましては略式請求をいたしまして、既に略式命令が発付されております。  まず一つでございますが、安倍晋太郎衆議院議員の秘書をしておりました清水二三夫という方が、昭和六十二年の十月八日ごろに江副から政治活動に関する寄附といたしまして小切手五十通、額面金額合計五千万円を受領した。これは政治資金規正法で、同一人から百五十万円を超える政治活動に関する寄附を受けてはならないという規定がございますので、その違反ということで略式請求をしたわけでございます。  もう一つは、宮澤喜一衆議院議員の秘書をしておりました服部恒雄という方が、六十二年の三月二十六日ごろにやはり江副浩正から政治活動に関する寄附ということで五千万円の振り込み送金を受けてこれを受領した。これも同様に、同一人から百五十万を超える政治活動に関する寄附を受けてはならないという、いわゆる寄附の量的制限違反ということで起訴されて略式命令が発付されたものでございます。  それからもう一つのグループでございますけれども、坂巻正芳という方ですけれども、この方は加藤六月衆議院議員を支持する政治団体の城山会の会計責任者であります。もう一人の方は片山紀久郎という方で、この方は加藤議員の公設の秘書でありますけれども、この両名が共謀いたしまして、六十二年の三月三十日ごろに城山会の昭和六十一年度の収支報告書を自治大臣に提出するに当たり、同会が四月八日に行ったパーティーで四億四千百万円の収入を得たのに、その報告書にその旨の記載をしないで提出したということでございまして、これは収支報告の不記載ということでございます。  最後の一つでございますが、六十三年の三月二十九日に城山会の昭和六十二年度の収支報告書を自治大臣に提出するに当たり、同会が六月五日に行ったパーティーで三億四千百万円の収入を得たのに、報告書に三千八百六十五万四千円の収入ということで虚偽の記載をしてこれを提出したということでございまして、報告書の虚偽記入ということでございます。  いずれも罰金二十万円に処せられております。
  289. 矢田部理

    ○矢田部理君 この六十二年、同じ年に竹下氏も江副から五千万円受領している。名目はいろいろ変わるのでありますが、最終的には青木元秘書の借金ということであります。江副さんは金貸しではありませんが、これについては調べましたでしょうか。
  290. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 最終報告書に申し上げましたとおり、そういう件についてはすべて捜査いたしましたが、犯罪の嫌疑がなかったということでございます。
  291. 矢田部理

    ○矢田部理君 加藤六月氏の場合は少しく別建てでありますからここに置いておきまして、六十二年に宮澤さん、安倍さん、竹下さん、いずれも江副氏から五千万円ずつ来た。この六十二年というのは、総理、どんな年だったですか。自民党にとってどんな年だったですか。
  292. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 六十一年に衆参同時選挙が終わって、本来ならばそこで総裁の任期が来たんですけれども、話し合いが行われて一年間任期が延長しましたので、六十二年という年は自由民主党の総裁選挙の年であった、こう思います。
  293. 矢田部理

    ○矢田部理君 正しい答えでありますが、十月の総裁選挙、中曽根さんの跡目相続で宮澤さん、安倍さん、竹下さん、激しい競り合いをしました。新聞によれば一人三千万円のうわさが飛ぶなどの多数派工作も行われたという報道でありますが、御紹介をしておきますが、この五千万円は、法務省、いかなる趣旨でそれぞれのところに行ったのかおわかりでしょうか。
  294. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 先ほど申し上げましたように、政治活動に関する寄附でございますから、宮澤議員あるいは安倍議員の政治活動に関する寄附ということで受領がなされたわけでございます。
  295. 矢田部理

    ○矢田部理君 いずれも自民党総裁選にかかわる資金の提供ということで渡されたのではありませんか。
  296. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) そういうこともあるいは政治活動に関する資金ということになればそういうことでありましょうし、いずれにせよ、趣旨としましては両議員の政治活動に関する資金の提供ということでなされたわけですから、そういう場合もあり得ると思います。
  297. 矢田部理

    ○矢田部理君 ここに服部関係の捜査の記録があります。松本という秘書が同じく被疑者として調べられているのでありますが、その調書によりますと、「この数日前」、つまり五千万円をもらった「数日前に派閥の政治団体である宏池会主催の「宏池会三〇周年記念の会」というパーティのパーティ券代としてリクルート側から五、〇〇〇万円も出してもらったばっかりでしたから、それから何日も経たないうちにまたリクルートの社長の江副から五、〇〇〇万円もの金が来て本当に驚いてしまったのです」、このパーティーは、三月二十三日、東京プリンスホテルで行われ、小野敏廣、リクルート社の社員でありますが、が五千万円の小切手を私のところに持ってきていた。数日前に五千万円もらったばっかりなのに、またまた五千万円もらって驚いてしまった。  これに見合った江副の五月十二日の東京拘置所における調書があります。服部から総裁選の資金不足ということで協力要請をされて、個人資産から五千万円を渡したと。どうでしょうか、法務省。
  298. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 先ほど申しましたように、この事件は既に略式命令を請求いたしまして確定しているわけでございます。確定した記録は何人も閲覧ができるわけでございます。したがいまして、議員の方でそれを閲覧されてそういうふうに記載があるというならば、それでそうだろうと思います。  ただ、一言申し上げますけれども、こういう証拠というのは、すべて内容が正しいかどうかということはまた別の観点で検証されるべきことでございます。要するに、その五千万円の寄附が行ったということはもうこれは裁判で確定しているはずですけれども、その他の付随の事情については、私どもがそれが正確であったか不正確であったかということは申し上げる立場でございませんので、その辺について一言申し上げておきます。
  299. 矢田部理

    ○矢田部理君 今度は安倍さんの方、清水二三夫秘書の関係でありますが、総裁選が公示された日に五千万円来ているんですね。これもこの江副氏の調書がありますから読んでみますと、「この五、〇〇〇万円を寄付したときの経緯ですが、ちょうどこの時期に中曽根さんの後継の自民党総裁として、安倍、竹下宮澤の各代議士が候補に上がっており、総裁選挙が予想され、安倍代議士においても総裁選にむけての政治活動をしており、この頃に安倍代議士側から総裁選に向けての政治活動に関して資金面での協力をして欲しい旨の要請があり、私がこれを了承して合計五、〇〇〇万円の寄付をしたのです」、こうあるわけです。  そして、その五千万円の寄附の中身は、江副自身から一千百万円、ファーストファイナンスから一千三百万円、リクルート、リクルートコスモスからそれぞれ一千三百万円、計五千万円が全部百万円ずつの小切手で送られたというのであります。  こういう事実を見ますと、竹下さんの方は、これは大変知恵があるのかどうか知りませんが、借金という形でしましたから届け出なくともまだ政治資金規正法違反にならないという趣旨だったと 思いますけれども、膨大な金が自民党の総裁選挙で一企業、一個人からだけでも、わかっただけでも一億五千万円動いている。こういう状況総理・総裁としてどんなふうに受け取られますか。
  300. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 最初に申し上げましたように、自由民主党の政治活動に伴う資金の集め方、それに対して厳しさが足りなかったというように私は受けとめております。
  301. 矢田部理

    ○矢田部理君 全部政治資金規正法違反で、多少人間だから間違いもあれば事務上のミスもありますが、公然と受け入れて処罰されるようなお金で総裁選挙が行われる。これだけで一億五千万ということになれば、これはもう巨額の金が動いたと推定されてもいたし方ない。一言で説明できるようなことじゃないんじゃありませんか。
  302. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) そういった厳しい反省に立って党はいろいろな改革をしようというので、政治改革推進本部をつくりました。そして、直近の総裁公選は三人で立候補いたしましたが、お金はもらわず、使わず、一生懸命演説で三人とも訴えて、党の改革脱皮のためにこういう姿、形でいこうということを全党員が認めてくれたと思います。同時に、派閥というものがその背景にあって、いろいろ総裁選挙のとき、選挙のときあるいは日常の政治活動にたくさんのお金が要るという現実もございます。  他党のことを云々するのは大変失礼ですけれども、昭和六十三年の政治資金の届け出を見ても、ある野党が四百九十一億円、これは悪いと言っておるのじゃありません、お届け出になっておるということは、それだけお金を使わなきゃならぬという現状もあるわけでありますから、私どもは政治全体の問題としてお金のかからないような選挙制度をつくっていくとともに、自由民主党としては派閥解消のためにどのような努力を重ねていったらいいかというので、政治改革大綱をつくって、今一歩前進、二歩改革ということでみんながこの政治不信を乗り切っていこうという努力をしておるところでございます。
  303. 矢田部理

    ○矢田部理君 いずれにしましても、リクルート疑獄は、一部だけ紹介をしましたが、いまだ未解明の部分、こうして我々も記録を見たり、調査をして初めてわかる部分が非常に多いのであります。その点では既に法務省、政府等に要請をしているわけでありますが、やっぱり株の全体的な動きや趣旨、目的、何のためにそう動いたのか、最終的な帰属はだれだったのか、政治献金も含めて全体像を明らかにすることが私は政治改革の最も大きな一歩だと。それを明確にせずして、ふたを閉めるような形で、言うならば政治改革を押しつける、これはやっぱりあってはならない。  疑獄事件が起きますと、イギリスの議会政治に学ぶべきだと。総理も引用をされておりますが、一八八三年の腐敗防止法、あれができた経過などは、結局疑獄事件を一つの糧にして議会制民主主義の土台を固めていった。そういう点で言いますと、日本の疑獄史はそのときどきだけで終わってしまって、中途半端な解決で、そこからほとんど教訓を引き出していないということが次のリクルート事件を噴出させてきているのでありまして、その点で私は政治改革が大事であります。追及と暴露だけが問題ではありません。どうやって改善、改革をしていくのかが政治の基本的なテーマでなければなりません。もっともっと全体像を明らかにして、とりわけ株式取引、未公開株だけではありません、そのダーティーな部分が相当程度今度出てきたわけでありますから、本格的な証券行政に対する改善、改革策なども明らかにしていかなければなりません。  それらを全部言ういとまはありませんが、一、二点当面の政治改革のポイントになっております政治資金規正法問題について、総理も政治改革が最大の課題だと言っておられるのでありますが、自民党としてはどんなふうにお考えなんでしょうか。
  304. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) さきに申しましたように、自民党としてはもうお金のかからないような制度、仕組みに変えていくという環境整備が大切だというので、その入り口、第一歩として政治資金規正法の改正案を党の改革本部でまとめて国会にこの前提出済みでございます。これは国会でお決め願うことでございますから、各党各会派の御議論によって適切な結論を得られ成立していきますことを期待させていただいております。
  305. 矢田部理

    ○矢田部理君 何点かの政治資金規制にかかわる改正点が出ておりますが、ポイントになりましたのは、たしか従前ですと百万円超は公開しなきゃならぬ、公にしなきゃならぬ、これを六十万円超に下げたということがポイントの一つになっておるようでありますが、そうでしょうか。
  306. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 自民党の提案しました法案の内容はそうなっておると承知しております。
  307. 矢田部理

    ○矢田部理君 そこで、問題になるんですね。竹下さんが二億数千万の膨大な政治資金の全体像を前の国会で明らかにしました。リクルートからあれだけお金が動いておりながら、ただの一行も政治資金の収支報告書には出ていない。今度の安倍さんの場合もそうです。五十枚の小切手をもらっていながら全然出てこない。全部小分けにして五十の政治団体に入れれば、どこから来たのかも幾らもらったのかも全く明らかにしないで済む。この脱法の手口を教えてくれたのは竹下さんだ。どうしても届け出をしていないのは、岩手の政経パーティーはお金をもらったがあれは預かり金だと言っている。リクルートから来た五千万円は、これも届け出をしていないので説明がつかないで借金だと説明した。借金だと説明をしなかった安倍さんと宮澤さんはつかまりました。竹下さんは逃げおおせた。こういう巧妙な手口で全部脱法ができたのが今までの政治資金規正法だった。三木さんの手元でロッキード事件の経験を生かしてつくったはずの政治資金規正法が実はざる法だったんです。  六十万円超は出すべしとしたからといって、それを防ぐことができるでしょうか。六百万円献金を受けた。今までは百万円を六つの団体に分割すれば全部潜ることができた。今度六十万円超ということになると、それを十の団体、政治団体をつくれば全部これまた潜らせることができる。こんなインチキな改革はないじゃありませんか。
  308. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) その法案の議論をしておりますときに党内で現実的な一歩改革、前進を図ろうということで全員の合意でそれを決めたものと思います。そうしてまたもう一つ、そのような批判を受けないように、すべての政治団体というものはどの議員に所属しておるのかも明らかに届け出るようにしようということに決めたと思います。そうして、問題はお金のかからないような背景その他の整備もしなければならぬというので選挙法の改正案も同じく出して、出の方の規制も考えたり、あるいはさっきも申し上げましたようにお金がかかる根源になっておる、自由民主党としては結果として派閥の弊害をなくするような努力をしていかなければならぬ、そのための政治改革であるというふうに私は理解をしております。御理解をいただきたいと思います。
  309. 矢田部理

    ○矢田部理君 精神論も大事だし、一人一人の気持ち、倫理観の問題だと私は思いますが、同時にやっぱり制度上も大事なんですね、制度も。大事なのは、公表基準を下げるという、私ども野党四党はたしか三十万円ということにしております。下げるだけではなくて、一政治家の資金受け入れ団体は一団体にする、このことを基本的につくらなければ政治資金規正法はどうにもなりません。それをどうしますか。
  310. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) まさに議員立法として提案をされ、立法府の議員の皆さんの現実的な改革の問題になるわけでございますから、私がここで申し上げるよりも適切な結論が出るように御議論を各党各会派で重ねていただくことが、最初も申し上げたようにあるべき姿だと思います。
  311. 矢田部理

    ○矢田部理君 もうだれが見ても同じなんですよ。低めただけでは透明度は鮮度を増さない、明るくならない。あなた自身それじゃまず自分は一団体にしますとここで約束できませんか。
  312. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) いろいろ御指摘をいただいておりますので、私はまず指定団体は一つだけにいたしました。そして、自治省に届け出てある団体がまだあとございますから、疑いを持たれないようにでき得る限り適切に処分をいたしますと、私自身に関してはそう申しました。
  313. 矢田部理

    ○矢田部理君 大蔵大臣、どうですか。
  314. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) まだ総理ほど私は整理ができておりません。
  315. 矢田部理

    ○矢田部理君 これは、やっぱり大蔵大臣だって将来をいろいろ展望しているわけでしょうから、だとすれば、なおさらのこと政治にかかわる基本姿勢をここできちっと定めなきゃならぬ。やはり一団体に絞る、そして透明度を明らかにする、我々も含めてでありますが、そういうことにみんなで本格的に取り組むことが政治改革の全部ではありませんが、私は大きな一歩だと思う。その点で、総理・総裁として、今自民党の出した改革案ではなくて、見せかけや中途半端じゃだめです、そこをきちっとしようじゃありませんか。もちろん企業献金なども廃止しようじゃありませんか。このことについて、これからの本当の政治改革をどうやっていくのか。日本では三木さんのいろんな示唆に富む遺産があります。遺言と言っていいのかもしれません、政治改革についての考え方の。イギリスの議会制度についての貴重な教訓も歴史的に学ばなきゃならぬと思いますが、それらを踏まえて私なりに意見があります。  しかし、時間がないから言いませんが、総理としての決意を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  316. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 今政治資金の問題についてこれほど御議論が高まっておるのでありますから、せっかく前国会に出ております我が党の政治資金規正法、各党各会派の方が適切に御議論願って御結論をお出し願うことを期待すると申しましたし、また私自身はみずからを顧みてでき得る限りのけじめをつけていきたいと思っております。
  317. 矢田部理

    ○矢田部理君 終わります。
  318. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 以上で矢田部理君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  319. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 次に、永田良雄君の質疑を行います。永田君。
  320. 永田良雄

    ○永田良雄君 私は、土地問題、住宅問題について、総理及び関係大臣に質問を申し上げたいと思います。  昭和六十年代に入って東京を中心に商業地あるいは事務所用地を中心に地価の大変な暴騰がございました。三、四年の間に地価が四、五倍になるというような大変異常な事態でございます。大都市の地価の高騰は、その地域に土地を持っている者と持っていない者との資産の格差を非常に増大いたしまして、不公平感を招来いたしますし、また地方と大都市の国民の間にも不公平感が大変高まっておるわけであります。大都会に住む中堅サラリーマンはいつになったらこの地域で住宅が取得できるかと、こういうような状況になっておるわけであります。最近も横浜周辺で、あるデベロッパーがマンションを売り出しましたところ、倍率が百数十倍になっているというような状況であります。大都会のサラリーマンにとっては、自分の住宅を取得するということは大変な夢であります。それを何としてでも政府は与えてやっていただきたいという願いを持っておるわけであります。国民にそういう夢を与えることが政治の、内政の最も重大な課題と思うからであります。  そこで、最近のこの土地の値上がり傾向というのは東京ばかりじゃなくて大阪、名古屋にも波及しておりますし、さらに地方の県庁所在都市なんかにも波及しているというふうに聞いておるわけでありますが、国土庁長官、最近の全国の土地の状況はどうなっておりますか。それから、今後どのように動いていくと考えておられるかお教えをいただきたいと思うわけであります。
  321. 石井一

    国務大臣石井一君) 永田委員専門家でございますので私からくどくどと申し上げることもないかと思うのでございますが、残念なことに、六十一年ごろから東京での土地の高騰がスタートいたしまして、六十二年また六十三年という段階で著しい暴騰を示したことは御案内のとおりでございます。また、一番最初に都心の中心の商業地と申しますか、ビル、事務所用地が高騰し、それが業務用に必要な住宅地に波及し、それからその近郊に広がっていく。それで、一年おくれぐらいの状況で今度はその状況が大阪なり名古屋圏あるいはそのほかの地方の各都市に広がり、その地域におきましてもその後徐々にその周辺部へ広がっていく、こういうふうな傾向がここ数年大変著しい状況を起こしたことは事実でございます。  また、国土庁といたしましても監視区域等を強化いたしましたり、そのほか大蔵省にも御要請をいたしまして、いわゆる金余り現象から金融の問題等々につきましても相当の手を打ちまして、そういうのもやや効果を示したと申しますか、最近は東京では頭打ちというふうな状況から、高値安定などと言いますとどうかと思うのでありますけれども、その後土地の高騰というのはとまっております。しかしながら、先ほど申しましたような状況で、地方に割安感があると申しますか、そういう形の中から日本列島に対しましてそういう波及的な効果が起こったことは確かでございます。  今後もあらゆる施策を通じまして厳しく監視をしていきたいと思っておりますし、土地関係閣僚会議等を招集いたしまして、各省との協力のもとに海部内閣としましては政府一体となってこれに、経済問題といいますよりも深刻なる社会問題である、そういう認識のもとに取り組んでまいるつもりでございますが、ただ、客観的な情勢は今も存在しておりますだけに予断を許さぬ情勢であると、このように申し上げても過言ではないと認識いたしております。
  322. 永田良雄

    ○永田良雄君 そこで、総理にお伺いするわけでありますが、六十年代へ入ってからの土地の高騰はいろいろ原因があるのでございますが、総理はこの土地高騰の現象を、さらに原因というものをどのように受けとめておられるかということをお伺いしたいわけであります。
  323. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 長い間その方面の専門家として経験を持っていらっしゃる永田委員にはいささかお答えしにくい問題でありますけれども、私の考え方を率直に申し上げますと、土地が高騰してきたということは、一つにはやはり過剰流動性と申しますか、資金面のだぶつきの問題もあるのではないでしょうか。あるいはまた、東京というのが世界の金融の中心地、情報の中心地、新しい国際的な脚光を浴びる役割を持ってきた。そうしますと、世界的に東京にはいろいろな要求が出てまいります。それにこたえるため地価というものが暴騰していったという面もあろうかと思います。その他、私が知りません問題等も重なり合って異常な高騰が出ておるのではないだろうかと思います。
  324. 永田良雄

    ○永田良雄君 今総理から金融の資金の過剰流動性という発言があったわけでありますが、まあいろいろ需要がありますから土地が値上がりするという面もありますが、もう一つ忘れてならないのは私は金余り現象ということだろうと思うわけであります。  考えてみますと、六十年代からは財政再建というのをやりました。それから日本経済は、構造調整ということでハードからソフトへの転換がございました。そういう意味で、それらの経済政策は非常にうまくいったと思っておるわけであります。したがって、その難しい問題を乗り越えて財政再建の見通しが出てまいりましたし、経済も今大変な繁栄を来しておるわけでありますが、ただ、その過程でできました金融の過剰性が行き場を失って、土地とそして株の方へ行ったというふうに理解しておるわけであります。したがって、これはまあ政府がいろいろおやりになった土地対策がまずいという面はあるかもしれませんが、そればかりでなくて、そういう経済構造の面もあるということを御理解いただきたいわけであります。したがって、土地対策を言う場合に、ただ小 手先の話だけではなくて、経済政策が大いにあずかって力があるということを御理解いただきたいと思うわけであります。  いずれにしましても、最近の東京の土地は鎮静化しましたが、これは一つには私は国土庁の国土利用計画法による監視区域の指定とそれによる規制、それから大蔵省と国土庁が協力していただいて金融機関に対する指導によって不動産融資に対する指導をやったことが、その鎮静化の最も大きな原因だと思っておるわけであります。今国土庁長官のお話を聞きますと、大阪、名古屋の現象は、一昨年あたりから上昇の傾向を見せてはおったけれども、去年はまたかなり値上がりをいたしましたような状況であります。この大阪、名古屋の現象に対して、国土庁あるいは大蔵省の指導が適切に行われたのかどうかというのを大変私は心配しておるわけであります。と申しますのは、お聞きしますと、大阪と名古屋の自治体は国土法の規制の強化が多少おくれまして、ことしの七月になってようやく監視区域の範囲の拡大をやったというふうにお伺いしておるんですが、そのように理解しておられるかどうか、国土庁長官にお伺いしたい。
  325. 石井一

    国務大臣石井一君) 先日、全国の知事会議がございましたときに、特に大阪、京都その他大変危険地域と申しますか、そういう状況の原因が確かに存在しておるという各知事さんに対しまして特に強い要請をいたしたところでございます。また、東京の例もございまして、監視地域に対する評価もそれなりにちょうだいをいたしましたと申しますか、関係自治体もそういう方向で協力をさらに以前より積極的に続けていただいておるところでございます。ただ、冒頭におきましては事務の手続もございますし、その他のいろいろの問題で多少地方自治体におきましても消極的な一面があったのではないかと思いますが、最近は大阪圏及び名古屋圏におきましても地価の動向に応じて適宜区域の拡大をし、また届け出対象の面積の引き下げ等についても措置が講じられております。  なお、本日も実は監視区域制度のより一層的確な運用に努めるよう各都道府県知事及び政令指定都市長に対して通達をいたしたところでございますが、具体的に大阪市では、本年七月に届け出対象面積を最小の地域にまで引き下げをいたしました。兵庫県で九月に、神戸市も九月にいたしました。愛知県では十月に監視区域を拡大したというふうなことでございますので、委員指摘のように、ややおくれた感もございますけれども、最近は順調な方向でこの問題が処理されておる、そのように認識いたしております。
  326. 永田良雄

    ○永田良雄君 多少おくれたような気もするが、最近は的確に行われておるし、国土庁もきょう通達を出して一層その規制の強化を指示したというお話であります。大いに頑張っていただきたいと思うわけであります。  それからもう一点大蔵大臣にお伺いするわけでありますが、東京の地価鎮静化については、大蔵省から不動産融資についての大変厳しい指導をやっていただいて地価が鎮静化したわけでありますが、もう一つ問題がありますのは、大蔵省が直接指導、監督できるのはバンク系統でございまして、いわゆる貸金業者と言われるノンバンクについてはどうも余り手が出ないのではなかろうかというふうに言われておるわけであります。ノンバンクと言われる貸金業者の資金量も決してばかにできない話だろうと思うわけでございますので、何らかの手段を考えていただいて、ノンバンクに対しても同様に指導できるような体制をおつくりいただきたいと思うんですが、いかがでございましょうか。
  327. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 国土政策のプロ中のプロであります委員に決して私は反論をいたすつもりはありませんけれども、先ほど経済政策が土地高を誘導したという趣旨の御発言がありましたが、私はそれ以前の問題として土地というもの、また土地利用というものについての国民的な合意ができておらず、基本理念が確立していなかったところに今日の問題の原因がある、そのように心得ております。  そして、御指摘のように、大阪、名古屋における地価上昇につきましても、従来から特別ヒアリング対象地域を国土利用計画法に基づく監視区域の指定の拡大の動きに合わせて拡大するなどの対応策を適宜とってまいりました。  そして、今御指摘がありましたけれども、確かに従来なかなかノンバンクに対しての手が出しづらかったということはそのとおりであります。なぜなら、これは直接対処のできる体系にはなっておりません。しかし、先日国土庁長官から御要請を受けましていろいろな工夫を事務方の諸君に苦労してもらいました結果、本日正式に、最近の地価動向等にかんがみてこれまでの指導の趣旨をさらに徹底させるために、これから申し上げるような一連の措置を講ずることとし、公表をいたしました。  まず第一は、通達を発出いたしまして、投機的土地取引などにかかる融資を厳に排除するという従来の通達の趣旨をさらに徹底させることと同時に、いわゆるノンバンクである貸金業者一般を対象にする金融機関の融資に対し、その資金が投機的な土地取引等に利用されることのないように、資金使途につき十分な審査を行うような指導を行うことといたしております。  また、地価の高騰地域などを主たる対象とした特別ヒアリングの実施を行うと同時に、金融機関によるノンバンク融資の実態把握を目的とした事務連絡の発出、さらに金融機関のノンバンク融資の実態についてのヒアリングの実施、同時に金融検査を活用し、こうした点に対してのチェック機能を増加させる。また、ノンバンクの不動産融資の適正化に関する自主的な措置について当局からの、以前もいたしましたけれども、再度要請を行うという措置をとりました。ノンバンクという文字が大蔵省の発出するこの種の文書に載りましたことは多分初めてであろうと存じます。  国土庁長官から御依頼を受け、本日私どもとしてはこのような回答をしたわけでありますが、これから先も投機的な土地取引などに係る融資が厳に排除されるように強力な指導をしてまいるつもりであります。しかし、やはり基本的には、土地に対する国民的な基本理念の確立という点が何よりも求められるところであることは今後も変わらないと思います。
  328. 永田良雄

    ○永田良雄君 ノンバンクへの指導も含めた大変適切な処置、まことにありがとうございました。今後とも関係省庁協調し合って土地の高騰に対処をしていただきたい、かように思うわけであります。  総理は所信表明演説の中で、今大蔵大臣からもお話がございましたが、土地に対する国民の基本認識の変更も必要だというお話がございましたが、そのためにも土地基本法を一日も早く成立させたいという所信を述べておられます。私も同感であります。  土地基本法はそもそも土地対策の基本ではありますが、さらにその上にいろいろな具体的な施策を網羅しないとなかなか結果としてはうまくいかないというふうに思うわけであります。ところが、土地対策というのはいろんな省庁に、大蔵省、国土庁、建設省、農林省、自治省、いろんなところに大変深く関係しておりますので、それらの関係省庁が一致協力して強力に施策を実行しないとなかなかできないと思うわけであります。そのためには総理の強力な指導が必要だと思うわけでありますが、土地問題にお取り組みになる総理の決意をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  329. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 土地問題が極めて重要な課題であることは、委員ただいまいろいろな角度から御指摘のとおりでございます。私もまた土地の公共性というもの、土地の持つ社会性というもの、これを国民共通の認識として、遊休地を許さずとか、あるいは土地投機による、いろいろな投機対象として土地を利用することを許さない、いろいろなことを共通の認識として確立していかなければなりません。そのためにも、具体的に今御指摘になったような土地基本法をまず成立させ ていただくとともに、その上に立って各省庁の関連する問題について総合的に力を合わせて地価の対策に取り組んでいかなければならない、このことを強く感じております。
  330. 永田良雄

    ○永田良雄君 よろしくお願いいたします。  その次に国土庁長官にお伺いしますが、土地基本法のねらいというのを端的に教えていただきたいわけであります。できるだけ簡潔に、土地基本法というのはこういうことをねらってやるんだ、こういう答弁をお願いいたします。
  331. 石井一

    国務大臣石井一君) 憲法第二十九条には土地の所有権が明確に規定されておりますが、その第二項、第三項では、しかしながら土地は公共性のあるものであり、またある場合には収用をも辞さないと言っておりますけれども、どちらかといいますと第一項が先行いたしまして、二項、三項が必ずしも国民の中にコンセンサスとして定着しておるとは言えないのではないかという感じがいたします。個人のものでございましても、公共性、社会性、経済性の強さを考えまして、また日本の狭い国土、それを利用することがいかに重要かということを考えました場合には、今後、土地は共有のものだ、みんなのものだ、個人のものではない、私権を制限するという言葉ではございませんが、そういう共通認識のもとに土地に対する意識革命をねらいたい、それが基本だと思います。
  332. 永田良雄

    ○永田良雄君 確かに土地に対する国民の意識を変革してかからなきゃいかぬと思うわけでありますが、これはまた大変難しい話であります。現実に、抽象論の場合は皆さん国民全部が賛成賛成と言うわけでありますが、いざ一たん自分の土地の話になりましたときのその大変さについては、私も地方自治体へ五年も行っておりましていろいろ苦労しておりますからよくわかるわけであります。もうあらゆる手段を講じて反対されますし、周りからは公共のために使うという土地を買うのに悪者にされるような状況であります。例えば成田空港がいまだに二期工事ができないような状況なのであります。大変な問題であります。したがって、この問題は、法律で土地収用法があるわけでありますがなかなかそれが使えないという話であります。  建設大臣にお伺いするんですが、土地収用法というのが、今土地基本法の理念で公共のためには皆さん協力するようにせにゃいかぬという法律まで出そうとしておるわけでありますが、うまくいかないのは運用がだめなのか、法律の制度に欠陥があるのか、そこら辺はどう考えておられるかお伺いいたします。
  333. 原田昇左右

    国務大臣原田昇左右君) お答え申し上げます。  御承知のように、公共用地の取得に際しまして、地権者が非常に細分化されておるとか、あるいは土地が将来値上がりするとかいう思惑のために土地にしがみつくとか、あるいは先祖から譲られた土地についての執着があるとか、いろんな絡みがありまして、いかに公共性があるから協力してくれと言ってもそう一概においそれというわけにはまいらないというのは、永田さん十分御承知のとおりでございます。  そこで、私は、土地収用をする場合には、この人たちに本当に納得いただくように関係自治体の積極的な協力を得ながらできるだけ早い時期から地域の住民に理解をしていただくような努力をしなければならないことはもちろんでございますけれども、同時に、公共用地の収用に際しましての税制の面でも支援が大事でございますし、また土地を提供する者の生活再建措置を的確に実施することが必要だと思うわけであります。  この一環として、最近の地価の上昇を踏まえまして、公共事業に土地を提供する場合の譲渡所得の特別控除額を本年一年限りの措置として三千万円から五千万円に引き上げていただいたわけでありますが、その結果、本年一月から三月の建設省直轄事業で申しますと、前年同期に比べて大変取得が円滑にいっております。また、我々としては、この特別措置を引き続いて継続していただいて、ぜひとも公共用地の取得を円滑にさせていただきたい。さらに、代替地の提供の場合の特別控除についてもこれから強く要望してまいりたいと考えておる次第であります。  同時に、今お話しの土地収用法につきましての問題でございますが、私は、土地収用というのが、土地収用法の運用が確かに今まで非常に手続が煩雑であるとか、あるいは何か土地収用はお上が土地を召し上げるというようなちょっと暗いイメージがあったような点もあるのではないかと思いまして、もう少し簡単に裁定をしていただいて、そして紛争がどうしても解決しない場合はみんなで裁定に従うというような、土地収用法についてもう少し一般が理解をしていただくことが必要ではないか。  そこで、まず昨年六月の政府の総合土地対策要綱を受けまして、用地取得率が八〇%に至ったとき、あるいは用地幅のくい打ちをやりますが、くい打ちから三年までのいずれか早い時期までに収用手続に移行するということなど、適切な時期に土地収用手続をとるように収用事業者を指導する、あわせて手続の簡素化とか迅速化を進めるように通達を出しておりまして、これによって今各事業者、事業主体を指導しておるところでございます。
  334. 永田良雄

    ○永田良雄君 今建設大臣からいろいろ改善をしておる、あるいは税制の優遇措置をやっているというお話がございました。大変結構なことでありまして、ぜひやっていただきたいわけでありますが、私が一つお話し申し上げたいのは、やはり土地収用法は運用だけではなくて制度そのものについてももうちょっと考えなきゃいかぬところがあるのではなかろうかという感じを持っておるわけであります。その例は、多数の人が集団でやり出したらてこでも動かないような制度であります。しかも、相手はあらゆる手段を使って合法的な土地収用を阻害することになるわけであります。場合によれば、違法手段に訴えてでもやろうというやり方をやるわけであります。ところが、収用する側はすべて百点満点でやらなければ、手続を全部やらなければ収用へ持っていけないというような感じがするわけであります。  土地の問題は最終的には土地の価格の問題になるわけでありますから、そういった特殊な場合には、土地の価格調整だけを客観的に公平などこかへ任せることにして、公共の使用目的を優先させられるような手続を考える必要があるのではないかと思いますが、ぜひそれを検討していただきたいと思うわけであります。もちろん、そういうことを申し上げるからといって問答無用に何でもかんでも強権発動するというわけでもありませんが、逆に一人でも反対があったら一切ものをやらないというやり方では、大変迷惑を受け損失をこうむるのは大多数の国民、声なき国民であるということをよく御理解いただきたいわけであります。そういう意味で、勇断を持って土地収用法の問題に検討、メスを入れていただきたいと思うわけであります。
  335. 原田昇左右

    国務大臣原田昇左右君) この方面で非常に知識経験を有される永田委員のお話でございますし、土地収用法の運用だけでなくて制度面においても、今後土地基本法が成立いたしますればその新しい事態を受けて私どもも委員のお助けもかりてぜひ検討をさせていただきたいと思っております。
  336. 永田良雄

    ○永田良雄君 ぜひ勇断を持って検討し、新しい方向を出していただきたいと思うわけであります。  時間も大分ないわけでありますが、もう一つ住宅対策について建設大臣にお伺いいたします。  地価を鎮静化させる、それから公共的な利用を進めるということも大変大事でありますが、要はやはり土地の問題は需要と供給の問題であります、基本は。したがって、一方では安い宅地、しかも庶民が通勤できるような安い宅地をいかに大量に供給するかということを一番やはり恒久対策として考えていただかなきゃいかぬわけでありますが、その点について建設大臣はどのような考えを持っておられるか。そして有効手段としてどう いう具体的政策を持っておられるか、お聞かせいただきたいと思います。
  337. 原田昇左右

    国務大臣原田昇左右君) 最近の土地高騰によりましてまじめに働く者のマイホームの夢が遠ざかりつつあるということはまことに憂慮にたえない次第でありまして、まさに今住宅宅地対策を早急に樹立してこれらの人たちに適切な住宅を与えることが非常に大事なことだと考えておりまして、目下全力を挙げて取り組んでおるところでございますが、特に大都市地域におきましては市街化区域内にまだまだ遊休地があるわけでございます。これらの遊休地をうまく活用していく、そして地権者にぜひとも住宅宅地を供給していただくということがまず大事ではないか。それから国公有地もございます。例えば東京都の所有しておる埋立地とかいろいろありますから、こういったところもひとつぜひ活用していただくとか、あるいは調整区域の方で、常磐新線なんかも計画されておりますが、新しい市街地を開発するということも大事ではないかと思いますが、いずれにいたしましても税制面もあわせて総合的な供給対策を樹立してまいらなければならないということで、私ども審議会の答申も踏まえまして目下取り組んでおるところでございます。
  338. 永田良雄

    ○永田良雄君 その中で、今市街化区域内の農地をうまく利用したいというお話もございましたが、これについてどのように考えておられるか、どういうスケジュールでどういう手法でやろうとしておられるのかということをお聞かせ願いたいと思います。
  339. 原田昇左右

    国務大臣原田昇左右君) 市街化区域内に存在します農地というのは都市にとって貴重な空間でございますし、この有効利用は宅地供給に非常に重要な課題だと認識いたしております。  そこで、政府で決めました総合土地対策要綱によりますと、まず農地を宅地化すべきものと保全すべきものに区分するということが非常に大事だと思うんです。そして、宅地化すべきものについては区画整理事業をやるとか、あるいは地区計画等の都市計画によりまして宅地化を計画的に推進していくということが必要でございますし、あわせて税制面とのかかわりも出てくる、そうして総合的に供給しようということでございます。  もしスケジュール等について必要でございましたら、事務当局から答えさせます。
  340. 永田良雄

    ○永田良雄君 市街化区域内農地の対応について、緑地として保存すべきところと宅地化すべきところとを峻別して促進していくという話でございます。大変結構であります。私も賛成であります。  ただ、その際に、これが宅地供給に大変連なるというお話もあるわけでありますが、大変な問題も抱えておるということを指摘しておきたいと思うわけであります。市街化区域内を宅地化すべきところに指定して、そこへ市街化区域内の宅地並みの課税をやるということになりますと、これは譲渡をせざるを得なくなる格好になろうと思います。そうしますと、うまい誘導の方法がないと、小規模宅地にどんどん分割して売っていかれるという状況が出てくるのを気にしなきゃいかぬという問題。それから今市街化区域内農地があるところは必ずしもいわゆる公共施設環境が適切にあるわけではありません。そこを宅地にするためには、やはり同じぐらい高い宅地を買収して道路をつけ下水をつけてやっていかなきゃいかぬわけでありますから、かなり高いものにつくというわけであります。かつ、その地域はやはり坪数百万円するような農地であろうかと思います。一体そういう高いところにどういう人が住宅として住めるのかなという疑問も出かねないわけでございますので、ただ単に私は市街化区域内農地は課税の公平云々だけの問題ではなくて、宅地に転換していく場合に本当に一体その効果があるのかどうかということも十分検討しながら進めていただきたいということを要望いたしておきたいと思います。  それからもう一点建設大臣にお伺いいたしますが、今まではどちらかというと国民の選好も持ち家が主体でありましたし、政府もできるだけ持ち家を進めるという方向でやってまいったわけでありますが、これほど土地の価格が高くなりますと、これまでどおり持ち家一辺倒の政策で進んでいいのかどうなのかということは根本的に考えなきゃいかぬ問題だろうと思うわけであります。そこの点について建設大臣はどのように考えておられるか、お教え賜りたいと思います。
  341. 原田昇左右

    国務大臣原田昇左右君) お答えします。  先ほどの御要望、まことにごもっともでございまして、私どももその点を一番心配しておるわけでありまして、地区計画をしっかり立ててそして計画的に宅地化を図っていかなければならないと思っておりますし、同時にインセンティブを積極的に与えるということも大事だと思います。地権者の方が宅地化していただくのに十分魅力を感ずるような制度を考えなきゃいかぬのじゃないか、例えば容積率等についてはかなりのインセンティブを考えていかなきゃならぬのじゃないか、こういうところを私どもも議論しておるところでございます。ぜひとも御指導を賜りたいと思うわけであります。  それから次に、今おっしゃった賃貸の住宅を相当重視しなきゃならないじゃないか、まさにそのとおりだと思います。便利なところでの住宅供給、低廉な住宅、良質な住宅供給というと、地価が非常に上がりましたので、なかなか大変なことになります。そこで、容積率等もいろいろボーナスを出すとかいうことも考えながら、賃貸について相当私どもとしても指導をし、重視をしていかなければ実際的でないというように考えております。
  342. 永田良雄

    ○永田良雄君 賃貸を重視していかなきゃいかぬというお話でございますが、これを阻害している一番大きな原因は現行の借地借家法の存在だと私は理解しております。  借地借家法というのは、大正年間の家屋の地震売買を防止するためにできた法律であります。ところが、最近は住宅もかなり数が進んでまいりまして、むしろ現在では貸借人の方の権利が極めて強くなってきております。したがって、一たん貸したらもう返ってこないというような状況であります。したがって貸し家をつくって商売をやろうという人はほとんどありません。わずかに最近出てきているのはワンルームマンション、それから会社の社宅、そういったものは常にその回転が速いですし、自由に返還してもらえるからできるわけでありますが、基本的に借地借家の問題を考え直さないと、私は国民に低廉な住宅を供給するという方向は今までのままの持ち家だけではなかなか大変だと思うわけであります。  現在法務省の方では借地借家法の改正試案というのを出しておられて、法制審議会で鋭意検討中というふうにお伺いしておるわけでありますが、その改正試案の主な改正の主眼点、それから今後のスケジュール等について、法務大臣からお聞かせいただきたいと思うわけであります。
  343. 後藤正夫

    国務大臣(後藤正夫君) お答えいたします。  借地借家法の見直しにつきましては、ただいま御指摘のように、法務省において昭和六十年以来法制審議会の民法部会におきまして審議をいたしてまいりました。そして本年の三月に借地借家法改正要綱試案をまとめまして、これを発表いたしております。そしてこの試案につきまして各界からの御意見を寄せていただいております。その締め切りは一応九月の末ということになっておりましたので、今までいただいておりました御意見を今事務当局におきまして整理して分析をいたしております。  今後の見通しでございますが、十一月に法制審議会のこの部会をまた開きまして、これからさらに、今までお寄せいただいた御意見を踏まえまして具体的な借地借家法の改正の案をつくるわけでございますけれども、どれぐらいの期限内にまとまるかということの見通しについては今はっきり申し上げられませんけれども、大体一年少しは要するんじゃないだろうかというように考えております。これがまとまりまして答申が出次第に、法務省といたしましては借地借家法の改正法案を提 出する予定でおります。
  344. 永田良雄

    ○永田良雄君 借地借家法は民法典にも比すべき基本的な法典であるから、慎重を要する点はわかるわけでありますが、現下の状況は、大法典だからといって余り慎重にばかりやられても困る面があると思うわけであります。場合によれば、地域を例えば大都市地域に限る、あるいは臨時暫定的にここ五年間はこういう格好でやってみる、そのやってみた経験に照らしてまたそっちの方を変えるという手法もあるのではないかと思うわけであります。そうしないと現下の住宅宅地事情に的確に対処できないと思いますので、大変難しいことだと思いますが、そういう点も含めて、法務大臣、積極的に検討をしていただきたいと思います。いかがでございましょうか。
  345. 後藤正夫

    国務大臣(後藤正夫君) お答えいたします。  ただいまの永田委員の御意見、まことにそのとおりだと思いますので、法制審議会におきましても恐らくそういう点を十分考慮に入れて答申をされるものと期待いたしております。
  346. 永田良雄

    ○永田良雄君 よろしくお願いいたしたいと思うわけであります。  それから、ちょっと前へさかのぼるわけでありますが、市街化区域内農地の宅地への転用の問題と絡んで、私は今後の土地の税制の問題としてひとつ御検討いただきたいなと思っておる面があります。それは、個人の土地の所有の問題は相続等という格好で取得がありました場合には相続税で取られていきますが、法人の場合は相続という問題がないので、法人が利用目的がないのに安易に土地を取得するという現象が極めて多いというふうに思うわけであります。これはもちろん必要な法人の土地をどうこうしようとするつもりは全くありませんが、大都会では、大都会に限っての話でありますが、法人が土地を取得し、それが低利用地あるいは未利用地である場合は、在来の土地特別保有税とは別に新しい保有の税を課してはどうだろうか、しかもその財源を勤労者の住宅建設のためのいろんな財源の一部に充てたらどうかな、こういう考えを持っておるんですが、建設大臣の御意見を賜りたいと思う。
  347. 原田昇左右

    国務大臣原田昇左右君) 御指摘のように、土地保有に対する課税を強化しましてその税収を住宅建設の一部に充てることに関しましては、例えば昭和五十六年十二月の政府の税制調査会答申におきまして、土地保有課税の一つである特別土地保有税について「住宅の建設等の促進に資するよう、その活用を図るべきであるとの意見があつた。」旨述べられているところでもございます。今後の検討課題の一つであると考えております。
  348. 永田良雄

    ○永田良雄君 建設大臣、よろしくお願いいたします。  それから大蔵大臣に、なかなか答えにくい質問かもしれませんが、土地基本法が制定された後、土地税制は基本的に抜本的に見直す、あるいは見直すべきであるという意見がございますが、大蔵大臣は土地基本法を制定した後の土地の税制について、基本的にはこういう方向で変えようというふうに考えているというお考えがありましたら、お聞かせいただきたいと思います。
  349. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今委員が建設大臣に御提起になりましたような問題も含めまして、土地税制というものを活用して、特定の政策目的に沿って個人あるいは法人の持つ土地そのもの、あるいは個人あるいは法人を望ましい方向に誘導しようとする場合に、やはり望ましい土地利用のあり方等についての基本理念、それに即して講じられる関連の諸制度、国土庁で委員自身も経験をされてこられたような諸制度の運用、施策の整備というものがどうしても前提になってまいります。  現在でも取得と保有、譲渡というそれぞれの時点において土地には相当な課税をいたしておるわけでありますが、我々所得、消費、資産という三つの公平な課税の中で土地というものについての概念を欠いているつもりはございません。しかし、そうした前提を置きましても、なおかつ基本理念の確立していない今日、税の果たし得る役割に限界があることは委員御承知のとおりであります。そして、その基本理念が確立をいたしましたなら、今委員が御指摘になりましたようなケースをも含め、さまざまなケースが考えられるであろうということは申し上げていいかと思います。
  350. 永田良雄

    ○永田良雄君 それでは、外国人労働者問題について外務大臣にお伺いをいたします。  最近は、ボートピープルの問題も含めて、日本の労働界の事情と日本を取り巻く東南アジア諸国の労働状況の差から、東南アジアの人たちが日本へやってきて働くということが大変多くなっておるように思います。NHKでも二日間これを取り上げて、いわゆる外国人労働者の問題を、開国派、鎖国派と分かれて大議論をやったこともあります。この問題は大変難しい問題でありますし、一つ間違うと大変な問題であることはよくわかっておりますし、政府が今とっておられる、技術者、特殊な技術を持っている者については広く門戸をあけるけれども、単純労働者等についてはこれは受け入れをしないという政府の方針も私はよく理解しておるわけでありますが、日本の若い青少年が外で働くことを余り好まない、それから汚い職場で働くのを好まないというふうになってきていることはこれもまた事実でありますし、そういう職場が日本で必要だということも事実であります。したがって、安易にこれに道を開くことは私は大変問題であることは重々承知するわけであります。西ドイツが大変失敗したという話も聞いております。問題は、その失敗の教訓をうまく生かしてスムーズにその問題を解決する手法を研究、長期的に検討すべきであると思うわけであります。  その一つが、外国人の研修制度の問題がそこにあるんだろうと思うのでありますが、現在の研修制度ではなかなかうまくいかぬ面がたくさんあるのだろうと思うんです。したがって、何か統一的な機構かなんかをつくって責任を持って対処していけるような方向を考えられたらどうかなと思うんですが、外務大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  351. 中山太郎

    国務大臣(中山太郎君) 委員指摘のとおり、外国人の日本における不法就労、この問題は非常に現在大きな国民の関心の的になっております。国家といたしましてもこの問題をこれからどのように考えて対処していくかということは、極めて重要な政策の課題ではなかろうかというふうに基本的に考えております。  御案内のように、日本は経済大国ということになりまして、委員指摘のように、日本の若い人たちが汚い職場を好まない、あるいは外の激しい労働を好まないという一つの風潮が生まれつつあることも事実でございます。こういう中で、海外から日本の高賃金の中で就労をして所得を得たい、こういう形で日本に入ってこられて、観光ビザとかいろんな形であるいは研修生の資格を取りながら労働に従事するという事実がございます。しかも、その数が私どもの推定では約十万人近くあるのではないかというふうにも言われておりますが、入国管理局を初め関係各省庁でこれを取り締まるというにつけては、現実の問題としてはなかなかこれは難しい問題。こういう問題をこれからどのように取り扱っていくかということにつきましては、委員指摘のように、西ドイツのかつての経験を私どもは十分検討し、国際国家としての日本がこれからどのように外国人の国内における研修及び労働について一つの考え方を立てるかということは極めて重要な課題であろうと思います。  最後に一言付言をさしていただきますと、研修生で入れてくると、入れた人が労働に実際問題としては就労する。ここにおきまして、私どもが外務省として、外務大臣として今一つ頭にありますことは、一たんこの制度をつくりましたときに、日本に入国をされた方々の社会保障の問題を一体どうするのか。また、期限を切って母国にお帰りをいただく、例えば三年間の相手国とのきちっとした国家間の協定というものをつくってお帰りをいただく場合に、その三年間に日本において結婚 をされるとか、あるいはまたその方の子供ができるという事態も想定しておかなければならないと思いますし、また日本における何といいますか、労働の中での障害問題、研修中の事故、こういう問題における労災保険の適用を一体どのように考えていったらいいのか。今までいわゆるその保険制度に対する保険金を掛けておられない方々がそういう受給者の対象になられるわけでありますから、これはやはり現在日本においていろんな保険制度が確立しておりますけれども、そのどのような適用をやっていくかということは十分検討をし、十分協議をした上できちっとした基準を政府としても決めまして、それをいわゆる国民の皆様方に御理解をいただいた上で決断をしなければならない重大な問題であろうと考えております。
  352. 永田良雄

    ○永田良雄君 よろしくお願いいたします。  それと関連して一つ要望を申し上げたいわけでありますが、公共事業の執行に関する問題であります。外国人労働者がたくさん入ってくることと関連するわけでありますが、最近、建設、公共事業の単価が大変上がっております。それは一月から三月に仕事が集中するわけであります。四月から六月までというのはいつも暇であります。仕事はほとんど出ません。それは十二月から三月に集中しますから、もうすべての業者が人手を欲しがる、人手はない、賃金は上がる、単価は上がる、公共事業の単価も上がるという悪循環を繰り返すわけであります。これはできれば何とか仕事が平準化して発注されれば一番いいわけでありますが、今も大蔵省の方でゼロ国債というのを考えていただいてやっておるわけでありますが、さらにこういうのを拡充するなりまた新しい方法を考えるなりして、ぜひぜひ発注の平準化をしていただきたいと思うわけであります。これは大蔵大臣と建設大臣に要望を申し上げておきます。  それでは最後に、多極分散型の国土をつくらなきゃいかぬという四全総が出ましたが、これも言うのは易しいんですが、いざ実行するとなると大変な問題があります。特に北海道みたいなところは東京から遠隔地でありますし、産業も不況産業が多いというような問題もございます。北海道開発庁長官、この北海道を振興するために、ひとつ決意のほどをお聞かせいただきたいわけであります。
  353. 阿部文男

    国務大臣(阿部文男君) 北海道の問題について御質問いただきまして感謝いたします。  委員御承知のように、北海道は我が国の五分の一を占める広い地域であります。これから我が国において最も開発の可能性に富んだ地域として、多極分散型の国土づくりに大きな役割を担うことが期待されておるのであります。現在、第五期北海道総合開発計画に基づきまして御指摘のような産業振興を初め諸施策を推進しておりますが、これらの施策を強力に展開するためには、特に北海道内外、さらに北海道内の各地を結ぶネットワークを強化することによりまして、国際化時代を迎えた我が国の北の拠点として、人的な交流や物的な交流の拡大を図っていくことが極めて重要と考えております。  そこで、私といたしましては、第一に欧米に近いという北海道の地理的特性を生かしまして、新千歳空港の整備を促進いたしまして国際空港網の充実を図り、国際的な貨物輸送の基地となるエアカーゴ基地構想を推進してまいりたいと考えております。また、磁気浮上式鉄道を含めたアクセスの強化についてさらに検討を進めてまいる考えであります。  第二に、昨年三月に開通いたしました青函トンネルを今後本州と北海道を結ぶ大動脈として有効に活用するために、輸送上隘路となっております単線区間の改善を図り、青函トンネルを利用する旅客や貨物の輸送能力の増強を図ってまいることが必要と考えております。また、懸案でございました新幹線問題についてもさらに一層努力してまいりたいと考えております。  第三に、北海道のような広い地域において人や物の交流を活発にするためには、何といいましても北海道内の各地を結ぶ高度な交通ネットワークを整えていくことが重要な課題であります。このため、全国に比べ整備水準が低い状態にあります高規格幹線道路の整備を促進いたしますとともに、北海道内の拠点となる空港整備をしてまいる考えでございます。  私といたしましては、以上のような考え方に立って、今後とも我が国の発展に貢献する力強い、活力のある北海道づくりに努力してまいりたいと考えております。
  354. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 以上で永田良雄君の質疑は終了いたしました。(拍手)  次回は来る三十日午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時十五分散会