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1989-12-14 第116回国会 参議院 商工委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年十二月十四日(木曜日)    午前十時三分開会     ─────────────    委員の異動  十二月四日     辞任         補欠選任      池田  治君     笹野 貞子君  十二月五日     辞任         補欠選任      前田 勲男君     田代由紀男君  十二月六日     辞任         補欠選任      田代由紀男君     前田 勲男君  十二月十二日     辞任         補欠選任      笹野 貞子君     池田  治君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         倉田 寛之君     理 事                 岩本 政光君                 中曽根弘文君                 井上  計君     委 員                 大木  浩君                 合馬  敬君                 下条進一郎君                 前田 勲男君                 松浦 孝治君                 向山 一人君                 大渕 絹子君                 梶原 敬義君                 庄司  中君                 谷畑  孝君                 福間 知之君                 吉田 達男君                 広中和歌子君                 市川 正一君                 池田  治君                 今泉 隆雄君    国務大臣        通商産業大臣   松永  光君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       高原須美子君    政府委員        経済企画庁調整        局長       勝村 坦郎君        経済企画庁物価        局長       栗林  世君        通商産業大臣官        房総務審議官   関   収君        通商産業大臣官        房商務流通審議        官        山本 貞一君        通商産業省通商        政策局長     畠山  襄君        通商産業省通商        政策局次長    堤  富男君        通商産業省貿易        局長       内藤 正久君        通商産業省産業        政策局長     棚橋 祐治君        通商産業省立地        公害局長     岡松壯三郎君        通商産業省機械        情報産業局長   山本 幸助君        通商産業省生活        産業局長     南学 政明君        工業技術院長   杉浦  賢君        資源エネルギー        庁長官      山本 雅司君        資源エネルギー        庁長官官房審議        官        向 準一郎君        中小企業庁長官  見学 信敬君        中小企業庁計画        部長       高島  章君    事務局側        常任委員会専門        員        野村 静二君    説明員        科学技術庁原子        力局動力炉開発        課長       加藤 康宏君        科学技術庁原子        力安全局原子力        安全調査室長   鈴木 治夫君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○産業貿易及び経済計画等に関する調査  (日米構造協議に関する件)  (今後の国内景気見通しに関する件)  (中小企業財務内容健全化労働力確保に関する件)  (地域産業活性化に関する件)  (内外価格差是正に関する件)  (輸入促進流通機構改革に関する件)  (浜岡原子力発電所安全性に関する件)  (地球環境と新エネルギー開発に関する件)  (紙の需要増古紙利用に関する件)  (文化芸術産業振興に関する件) ○石炭合理化に関する請願(第三一七号) ○産炭地域振興対策炭鉱離職者対策の充実に関する請願(第一七五九号) ○継続調査要求に関する件 ○委員派遣に関する件     ─────────────
  2. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題といたします。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 庄司中

    庄司中君 日本社会党護憲共同庄司でございます。  本日の質問テーマは、日米構造協議問題、時間の制約がございますから総論部分ということになるだろうというふうに思いますけれども、その点を質問させていただきます。  初めに若干申し上げておきたいことがございますけれども、御承知のように、日米構造協議問題は内外の非常に注目を浴びております。もはや政府間レベルの枠を超えまして国民的な反響国民的な影響、そういうものを持ってきているというふうに思います。そういう点では、この処理を誤りますと非常な事態が予想できる、こういう段階に来ているのだろうというふうに思います。  とりわけ強調いたしたいのは、米ソ軍事対決が、御承知のように、今月初めの米ソ首脳会談、つまりはっきりわかってまいりましたのは、マルタ以後そういう緊張の枠組みというのが非常に薄くなった、あるいはなくなってきた。そうなってまいりますと、国際間の問題というのは経済問題がクローズアップされるということであります。しかも、それも単なる経済問題ではなくて、いわば政治化しやすい状態が出てきているということであります。政治化しやすい状態というのは、一つの問題の背後にそれぞれの国民を抱えている、そこでいろんな反響が出てくるということだろうというふうに思います。  そういう意味では、日米構造協議の問題といいますのは、日米政府間の枠を超えて国民的な関心の的になっている、あるいは国際的な注目の的になっている。そういう意味では、この問題は非常に重要ではないだろうかと、こんなふうに考えております。  質問の第一は、こういうことでございます。  本年七月、宇野前総理ブッシュ大統領協議で、協議開始決定をいたしました。既に二回、九月と十一月に協議が行われております。来月には第三回の予定があるようでありますけれども、特にそれぞれの、つまりアメリカ側問題意識日本側問題意識がかなりずれている。個々の要請項目指摘項目には触れませんけれども、全体として言えることは、アメリカ側指摘構造是正というもの、いわば消費重点にして問題を立てている、日本側指摘供給サイドの問題を重点に取り上げているということであろうというふうに思います。  つけ加えて申し上げますと、経済国際化が非常に進みまして、そして単なる経済政策範囲を超えまして、企業行動というのは実際的にはもう既に国境を越えているわけでありますけれども、そういった経済問題の範囲を超えまして、一つの慣習の問題あるいは文化の問題に来ている、それ自身が問題になっているということがあるだろうというふうに思います。  既にいろんな議論が展開をされておりまして、例えば日本封じ込め論というのが大変な反響を呼んでおります。そして、管理貿易必至論というやつもアメリカ側では次第に力を得てまいっているように思います。  こういう状況の中で、来月、第三回の協議が行われるわけでありますけれども、この春には中間評価といいますか、中間報告が作成をされるというふうなことでございますけれども、この重要な問題について、政府としてこれからの日程、そして取り組みの姿勢あるいはその目標、こういうことをまずお伺いしたいというふうに思います。
  4. 畠山襄

    政府委員畠山襄君) 今委員指摘のとおりのようなスケジュールでございまして、過去九月と十一月に二回、日米構造協議実施をいたしたわけでございます。それで、来年冒頭一月十六日、十七日に三回目を行うという手はずになっておりまして、春までに中間評価、夏までに、一年後に最終報告という段取りになっているわけでございます。  そこで、過去一、二回は双方ただいま御指摘いただきましたような問題点日本側は七項目アメリカ側は六項目につきまして指摘をし合ったということでございまして、率直に申し上げまして、例えばアメリカ側の方では若干の不満が残ったとか、そういう意見の表明もあった状況でございます。今度三回目、四回目といくわけでございますので、そういう段階におきましては、もう少しお互い意見を親切なアドバイスというふうに受けとめて、お互いに建設的に歩み寄っていくという態度で応対してはどうかというふうに考えているところでございます。  指摘のございました点は、委員案内だと思いますけれども米側からは貯蓄消費土地利用流通価格メカニズム排他的取引慣行系列関係ということでございますし、私ども米側指摘しましたのは、貯蓄投資パターン企業投資活動生産力企業ビヘービア政府規制、それからRアンドD関連輸出振興労働者の訓練と教育、以上七項目でございまして、こういう問題につきまして今後いろいろな進展が行われますように、実際上の予算その他でもいろいろ配慮しながら、日本側指摘を受けました点は、正しい指摘もあれば正しくない指摘もあるわけでございますけれども、正しい指摘につきましては、むしろ日本側の本来とるべき問題として受けとめて対処してまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  5. 庄司中

    庄司中君 むしろ双方取り上げ方態度かなり違いがあるんじゃないかというふうにうかがわれます。  アメリカ側取り上げ方態度は、一言で言いますと、要求をする、そして具体的な成果を生む、こういうふうな姿勢が見えているわけであります。アメリカ政府代表によりますと、我々は今回の協議では日本の豊かさの配分を変えるんだ、こういうことを言っておりますね。それから日本側態度といいますのは、問題の所在を確認し合う、そしてその解決は長期的に行う、こういうふうな態度が見えるわけでありますけれども、問題はこの態度の違い、つまり両方が話し合うその場所、位置というものが非常に揺れ動いていく、こういうふうなことだろうというふうに思います。  日本側政府代表によりますと、先ほどお話がありましたように、日本政府の問題であるからアメリカ側おせっかいはよしてくれ、こういうふうな発言があるわけであります。ところが、経済問題といいますのは、国際化が非常に進みまして相互依存関係というのが非常に強まってきている。相互依存関係が強まるという裏側には、相互衝突可能性が大きくなってきているということにもなるわけでありまして、国際経済関係というのは一種の玉突き状態にあるということが言えるだろうというふうに思います。既に企業構造といいますのは、さっきも申し上げましたように、国境の枠を超えているということであります。そういう中で、つまりおせっかいとは一体何だろう、おせっかいにならない範囲というのは一体何だろう、これ以上はおせっかいだというものは一体何だろう、そういう一つ枠組みを決めておきませんと、力関係によってずるずる下がる、ずるずる下がったことによって国民反発が強まっていく、こういうふうな事態が想像できるわけでありまして、つまりおせっかいになる範囲あるいはならない範囲、この辺をきちんと整理をしておきませんと、やはり冷静な協議ができなくなってくる、こういうふうに考えますが、その点について御見解を伺いたい。
  6. 畠山襄

    政府委員畠山襄君) 御指摘のとおり、お互い内部構造の問題について指摘をし合うわけでございますので、ちょっと行き過ぎますと内政干渉的なことになるわけでございます。そこで、委員指摘のように、言葉がどうかあれでございますけれどもおせっかいであるかどうかのその基準を決めておくということは大事なことであろうかと思いますが、私どもといたしましては、例えば日本の問題について米側指摘いたしますときに、貴重なアドバイスとして受けとめるという態度で臨むわけでございますので、アドバイスとして日本が今まで気がつかなかったようなことで、かつ意味のあること、貿易収支の改善にも回り回って役に立ちそうなこと、そういうアドバイスを受けました場合には、それはそれとして謙虚に受けとめて実施をするように努力をしていくということでござますが、もうわかり切っているようなことについてくどくどと内部の事情も考えずに強要してくるということになってまいりますると、それはぐあいが悪いわけでございます。ですから、逆のこともまた日本側の向こうへの指摘にも当てはまるわけでございまして、要するにアドバイスをするのはいいんだけれども、それを超えて余り自分の意見を押しつけるというようなことがございますると、それは今委員指摘おせっかいというようなことに当てはまることになると思いますので、そういうことがないようにお互いに気をつけていくべきだと考えております。
  7. 庄司中

    庄司中君 そのことと関係をしておりますけれども、一九八五年、中曽根総理とレーガン前大統領、両首脳による市場分野別協議開始決定をされまして、いわゆるMOSS協議というふうに呼んでおりますけれども、そして現在は例の一番大きな問題、非常に先鋭に問題が出てまいりました例のアメリカ包括通商法、とりわけスーパー三〇一条の問題、そして今経済構造協議というふうに、二国間の問題が一九八五年以降ずっとつながってきているということがあるわけであります。一つの問題で二国間協議をやりましても、それで解決できない。だから、もう一つアメリカから押しがくる。それでも解決できないから今度のように構造協議に向かっていく、こういうふうな状態が出てきているだろうというふうに思います。  先ほどの問題と関連をいたしますけれども、つまり二国間でやった問題がいわばほかにはね返 る。つまり玉突き状態経済国際関係というのはそういうふうになっているわけでありまして、これを何とか二国間だけじゃなくて、国際関係の上でもっと広い合意をつくる方向に問題を提起していく必要があるんじゃないだろうかというふうに思います。  例えばスーパー三〇一条問題につきまして、ECアメリカ協議を、御承知のように、拒否をいたしました。アメリカ自身貿易障壁というのは四十二項目あるじゃないか、四十二項目あるのにそれに目をつぶって二国間交渉はできない、二つのブロックの交渉はできない、こういうふうに拒否したわけであります。確かにプラザ合意以後、為替調整によりましてECアメリカ、つまりEC対外貿易黒字というのはかなり調整をされました。こういう背景はあることはあるわけでありますけれども、つまり経済関係国際的な公正さを保つ上におきましては、二国間協議というのは限界があるんじゃないだろうか、こんなふうに思います。  先ほども言いましたように、二国間協議にはその背後国民的な反応という大きな問題を抱えているわけでありますから、むしろ経済関係の問題を改善していく、調整していくためには、二国間協議ではなくて国際機関による協議、つまりOECDの場であるとか、そういうものを活用していく、国際的な協議機関、そういうものを活用し、そういうものを強化していく必要がどうしてもあるんじゃないだろうか。そういう点でどういうふうにお考えか、その点をお聞きしたいというふうに思います。
  8. 畠山襄

    政府委員畠山襄君) 委員指摘のとおり、貿易問題は本来多国間で論議をすべきでございまして、貿易収支の問題にいたしましても、二国間の貿易収支のみのアンバランスを問題にするというのは、本来余り正しい態度ではないというふうに私どもも考えているところでございます。そこで、構造問題のような国民的な関心を呼び起こし、また影響もするところ大である協議につきましては、その客観的な結論を得るように努力しますためにも、多国間で協議をするということを考えてはどうかということはまことに仰せのとおりの御意見だと思うわけでございます。現に例えば流通問題などにつきまして経済協力開発機構OECDでございますけれども、そういう場でワーキンググループ等で検討をしようという動きが出ております。また、もっと次元の高いところで申し上げれば、サミット先進国首脳会議、ああいった場でもお互い構造問題についてどういうアクションをとったらいいかという議論は、経済調整の問題として議論をされてきたところでございまして、例えば八九年のOECD閣僚会議理事会等でもそういう各国別の何をやったらいいのかということについての指摘お互い合意されておりますし、また、それを受けて今申し上げたサミットにおきましても、日本は何をしなくちゃいけない、米国はどういうことをしなくちゃいけないということについての言及があるわけでございます。ただ、この日米構造協議につきましては、御案内のような経緯で始まったものでございまして、この議論の始まった経緯を振り返ってみますと、米国議会の一部に流通問題等構造問題を新たな、さっき御指摘の新通商法スーパー三〇一条の対象にすべきじゃないかという声もあったというふうな、そういう情報が伝えられる中で、こういう問題を取り扱うにふさわしい場として両国首脳のイニシアチブで始めてはどうかということで枠組みが決まったという、そういう経緯があるわけでございます。かつまた、これは先ほど来御説明申し上げておりますように、我が国構造問題だけを協議する場ではございませんで、米国輸出がなぜ伸びないのかという米国構造問題につきましても議論をするという双方向議論の場でございます。本来、多国間で議論をすることが望ましいには望ましいわけでございますが、しかし、問題を余り抱えていない国についてまでその国の構造問題を協議する、双方向でやっていくということについて多国間の合意を取りつけるというのはなかなか難しいという問題もありますし、それからまた、内容的にも多国間になりますると、最大公約数的なそういう合意にならざるを得ない、あるいは問題設定もそういうものにならざるを得ないというようなことで、いずれにしても時間がかかるわけでございます。  そういうこともございまして、この日米間の構造問題協議につきましては、お互いお互い構造指摘しようという前提で、比較的時間を急いで結論を出していこうということからこういう協議になったわけでございまして、ただ、こういう協議があるからといってこれだけでいくということではいけませんので、委員指摘のように、多国間の場でもできるだけ客観的かつ公平な結論が出ますようなことをまとめましていろいろ議論に積極的に参加していったらいいというふうに私ども考えているところでございます。  なお、今御指摘の中にECスーパー三〇一交渉を拒否したという御指摘がございましたが、これはECアメリカ貿易障壁指摘したことは委員仰せのとおりでございますけれどもスーパー三〇一につきましては、アメリカは今回はECに対しては優先国指定といいますか、優先的に交渉するという、そういう指定を行いませんでしたものですから、EC自体が拒否するとか拒否しないとかいう場面は出てこなかったわけでございます。
  9. 庄司中

    庄司中君 今、いろんなお話を聞いたわけでありますけれども通産大臣にひとつ答えていただきたいわけでありますけれども、例えばことし二月の例のワシントン・ポスト世論調査がございまして、その中にはかなり重要な一つ結論が出てまいった。つまり、アメリカにとって敵性国家というのはソ連ではもうない。いわば日本が敵性的な性格を持っているというふうな世論調査が掲載をされましたけれども事態はやっぱりそこまで来ているんだろうというふうに思います。私が指摘をしましたように、交渉の場合にはおせっかいじゃない範囲、そしておせっかい部分とをきちんと決めて、一つの認識の枠組みの中で問題を処理していく。振れるのを防いで、そして冷静にやっていく。今のお話ですと、必ずしも十分にそういう問題意識を持っていらっしゃらない。それから国際関係というのは玉突き状態にある。相互依存関係相互反発の条件を裏側に持っているということでございます。そういう意味では、この構造協議の問題といいますのは、担当官の話し合いでは済まないだろう。もっと政治の舞台できちんと枠組みを決めないと、これは大変なことになるんじゃないだろうか。  そういう意味で、今まで私が申し上げました危惧あるいは疑念、そういうことにつきまして通産大臣見解をぜひ聞きたいというふうに思います。
  10. 松永光

    国務大臣松永光君) ワシントン・ポスト世論調査についてのお話がございましたが、なるほど現状においては日本アメリカとの間においては、貿易の面で見れば、日本が圧倒的な黒字でございます。米ソ関係で言えば、貿易はほとんどないわけでありまして、両方の間に競争があるとすれば軍事力競争であったと思うんです。その面では今やソ連アメリカにとってそれほどの脅威じゃない。しかし経済競争という面になれば、貿易の面で見る限り日本が圧倒的な黒字国ということがあるものですから、そこで一番強いというか、競争の相手は日本と、こういったことが世論調査の結果にあらわれておるんじゃなかろうかと思います。  実際、日本アメリカ貿易構造を見ますというと、アメリカは、先生御存じのとおり、もう六年連続一千億ドルを超す赤字であります。他方、日本の方は三年連続九百ドルを超す黒字。ことしも恐らく八百億ドル台のなるだけ低いところでおさまればいいわけでありますけれども、いずれにせよ八百億ドルを超す黒字であります。しかもアメリカの千億ドルを超す赤字の中の半分近くが日米貿易、対日貿易で起こっているというところにアメリカのいら立ちがあるわけであります。  そもそも日本という国は、貿易は自由にやりましょう、それぞれの国が輸入制限は設けずに、障壁は設けずにできる限り貿易を拡大していこう、そういうガットの枠組みがありまして、その枠組みを最大限に活用して今日の日本の大きな経済ができ上がってきた。こういったことを考えますというと、日本だけが九百億ドルあるいは千億ドルに近い黒字を持ち続けるということは、世界自由貿易体制そのものに大変大きな影響を及ぼすという面が確かにあるわけです。そういう意味では、日本は国を挙げてこの貿易黒字を縮小するような、そういう努力をしていかなきゃならぬわけだと思います。  それはもはや単なる通産省だけの力ではいかんともしがたい面もあるわけでありまして、国を挙げて輸入拡大をし、それによって黒字を縮小していく、そういう努力をしていかなければ、下手をすれば経済の面で世界の中から孤立していくおそれすら出てきておる、こういう状況が現在日本の置かれておる状況ではないか、こういうふうに思うわけであります。しかも、輸入を拡大することによって輸入品が広く国民に行き渡ることになってくれば、それは国民生活の質の向上にもつながるわけでありますから、ひいては日本国民のためでもある。そういう考え方でこの問題には政治家として真剣に取り組んでいきたい、こう考えておるところでございます。
  11. 庄司中

    庄司中君 まだ食い足りないところもございますけれども、時間が残されておりませんので、次の問題に入りたいというふうに思います。  大臣がおっしゃいましたように、外国から何か言われるだけじゃなくて、我が国自身日本経済のこれからの方向というものを決めていきたい、こういうことだろうというふうに思いますけれども、それにつきまして一つやっぱり大きな問題があるだろうというふうに思います。  例えば我が国経済政策あるいは産業政策を考えてみますと、通産省はまさしくそうであったわけでありますけれども、いわば物とサービスのあり方というところに政策の中心が今までずっと置かれてきたんだろうというふうに思います。  後から御指摘があると思いますけれども、つまり土地の値上がり一つをとってみますと、土地が猛烈に上がりました。そうしますと、こういう現象が出てまいります。例えば八六年、八七年で東京都の地価というのは二年間で二・五倍になったわけであります。ところが、労働者の賃金といいますのは、この二年間で一〇%であります。そうしますと、土地に対する労働の評価、これは経済評価になりますけれども、いわば半分ということになるわけであります。つまり、すべての評価が変わってくる、変化してくるということになるわけであります。つまり、労働の評価というものが土地に比べると半分以下になってくる、こういうふうになっているだろうというふうに思います。  そうしますと、いろんな問題が生じてまいります。例えば大都市では勤労者はもう家が持てない、こういうふうな問題が出てまいります。家が持てないから、今度は大企業はどうするかといいますと、都市の中に宿舎を建てなきゃいけない。そうしないと人材を確保できない、こういうふうな事態になります。大企業だからこれができるということもあるとは思いますけれども中小企業はこれはできないわけであります。  また、こういう事態も生じてまいります。理工系の学生が製造業に行かない、大学では理工科でありますが、仕事はサービスへ行く、こういうふうな事態が出てまいりました。かつてイギリス病ということが言われてまいりましたけれども、そのときにもやっぱりそういう事態が出てまいりました。優秀な学生が製造業に行かない。製造業の沈滞がそれで起こってくるという問題がかつて指摘されたことがありますけれども、既にそういう問題が生じているということは、かなり重要な変化だろうというふうに思います。  それからもう一つ、こういう問題もございます。例えば中小企業が後継者難に陥っている。これはかなり前からあったわけでありますけれども、やはりこういう状態も、いわば経済のそれぞれの変化、評価がえということの中から恐らくこれから急速に出てくるだろうと思う。  一般的に言えることは、額に汗して働くことはばかばかしい、投機で金をもうける、あるいは悪いことをしていく、こういうふうな状態が恐らく出てくるんじゃないだろうか。いわばそれだけの大きな変化が今起こりつつあるし、まだ続いている。  こういうふうになってきますと、やはり経済政策なり、それから産業政策の視点をまたもう一つ大きく転換をしていかなきゃならないだろうというふうに思います。冒頭に申し上げましたように、今までの我が国の政策の基調といいますのは、物、サービスのところに重点を置いておりました。ところが、これからは恐らくもう一つの柱として、経済を支える担い手、産業を支える担い手、こういうところに一つの大きな目標を新しく置きかえていかなきゃならぬだろうというふうに思います。  日米協議の問題に触れておきますと、我が国民の中には、これはマスコミもそうでありますけれども、よくぞアメリカ政府は言ってくれたというふうな評価があるわけであります。一方では、「「NO」と言える日本」というふうな発想も実はあるわけでありまして、今までの経済政策あるいは産業政策をいわば物、サービスだけにとどまらないで、担い手、人間対策の方に大きく踏み出していく必要があるのじゃないだろうか。大きな政策の目標として、その点についてお伺いしたいというふうに思います。
  12. 松永光

    国務大臣松永光君) 先生御指摘のように、せっかく理工系大学の卒業予定者が、三割以上も自分が学んだ専門的分野を生かす製造業に行かずに、金融、証券――こっちの方がうんと待遇がいいようでありますが、そっちの方に行く、そういう傾向が非常に強くなってきているということは、日本の将来を考えるとゆゆしいことだ、私はそう認識しております。日本の今日までの発展、これからの安定した国の繁栄のためにも、製造業は最も大事な産業であると私は思うのでありまして、その分野にせっかく専門的な勉強をした若者が集まってこない、そして、金融、証券、保険といった分野にせっかくの専門家が行ってしまうというのは、これは何とかならぬものかというふうに率直に私は思っております。もちろん金融、証券、保険が要らぬ分野とは言いませんけれども、専門的な知識は生かさずに、そっちの方に行ってしまうという学生が多いということは大きな問題ではないか、そういうふうに認識しております。  そこで、その点を言えば、製造業というものを若者にとってもっと魅力のある、そういう労働環境の職場にする必要が一つはある。そしてもう一つは、これは精神的な問題でありますけれども、やはり汗を流しあるいは手に油して物をつくり上げる。物をつくり上げることが私は最終的に世の中に価値を生み出すことであると思っておりますので、その大事な労働というものをもっと高く評価するという、そういう物の考え方というものが定着していかなきゃならぬのじゃなかろうか。ただ、目先の月給が高い、ボーナスがうんと多い――実際聞けば、この年末のボーナスも今申した金融、保険、証券の方が製造業よりも圧倒的に多いようでありますが、そうはいうものの、価値のある仕事はやはり製造業だという考え方がもっと世の中に広まっていくような、そういうことが必要ではないか、こういうふうに思うわけであります。  今までの日本の産業政策、通産省の産業政策は概してうまくやってこれたんじゃなかろうか。その結果として、先ほども申し上げましたけれども貿易黒字を九百億ドルもずっと出し続けるような、そういう日本経済ができ上がったということは、やはり産業政策というものがおおよその面においては成功してきた、こう言えると思うのでありますが、これからは国民生活の質の向上という観点に大いに力を入れて、そうして行政を進めていくということが大事ではないかと、こういうふうに私は考えておるわけであります。
  13. 吉田達男

    ○吉田達男君 吉田でございますが、初めに高原経済企画庁長官にお尋ねいたします。  景気についてお尋ねをするということが趣旨でございますが、高原長官がこうしていそいそと答弁においでいただきますと、意気軒高たる高原経済を言っていらっしゃるところに私も意を強くしながら、この間から消費税の問題について議論のありました中で若干気になっておりますことを一言お尋ねしたいと思うんです。  構造的な税制改革をやると、こういうことの中で消費税が導入をされたり、そして先立ってマル優が廃止されたりしたわけですが、これが入りの方でいくと、消費税が五兆九千億で、マル優が一兆二千億、七兆一千億の入りの増加になっております。出の方を見ると、所得税の減税の三兆三千億や法人税の一兆八千億、相続税の七千億、それから間接税廃止ということで出の方で三兆四千億ということになると、足し算をすると九兆二千億ぐらいになりますから、差し引きすると、どちらかというと二兆一千億出の方が多いということになるのに、長官は消費税は高齢化社会の福祉のために必要だということを、特に海部内閣の閣僚としてか消費税の定着に精を出していらっしゃる。しかし、聞いていると、ここのところは数字の中で見て、どこが税制改革の中で高齢化社会の財源になっているのかということを、おかしいなと思うんですね。これはどうなんですか。
  14. 高原須美子

    国務大臣高原須美子君) 今回の税制改革は、所得税、住民税の方を大幅に減税いたしております。そこで、今後の高齢化社会を考えた場合には、直接税の負担が非常に重くなってサラリーマンに重税感がくるという中で、そちらの方を減税いたしまして、一方で消費という場で負担する。これを将来の高齢化社会に備えての福祉の安定財源にしていく、そういう考えで私は今回の税制改革を全体として受けとめております。
  15. 吉田達男

    ○吉田達男君 その趣旨はわかるんですが、今の数字合わせの中で高齢化社会の福祉の財源として消費税が必要だと、こうおっしゃるから数字が合わないんじゃないか。これを突き詰めて言えば、これは三%を上げなければ高齢化社会の福祉の財源に足りませんね。どうなんですか、その点。そういう考えがあるんですか。
  16. 高原須美子

    国務大臣高原須美子君) ちょっと御趣旨。
  17. 吉田達男

    ○吉田達男君 わかりませんか。  先ほど言いましたように、税制改革は、減税もあったけれども、財源として消費税導入その他があったわけですね。その結果として、足し算、引き算したら出の方が多かったというのにかかわらず、消費税は福祉の財源にするんだ、必要だ、こう格別におっしゃっていらっしゃったんでしょう。それは事実でしょう。だけれども、数字からいうと合わないじゃありませんか。だから、その数字が合うようにどういうふうにしていくかというと、やっぱり三%じゃ足りないんじゃないですか、消費税は。
  18. 高原須美子

    国務大臣高原須美子君) 将来を考えていきますと、三%の維持という線は今の海部内閣でははっきり宣言しておりまして、そういう上昇ということを考えてはおりません。私自身といたしましても、一方で減税を行い、消費も今後伸びていきますにつれまして三%でも消費税の収入というのはふえてまいりますので、それを安定財源といたしまして高齢化社会を乗り切るという方向でやっていけると思っております。
  19. 吉田達男

    ○吉田達男君 今の数字では、長官がおっしゃいましても、足し算をすれば、コンピューターにかけなくても簡単な計算でございまして、足りないんです。今の内閣としては上げないと、こういうことをおっしゃいましたけれども、長官は八月のときには、例えば米の輸入の自由化は検討すべしというような積極的な発言なんかもなさって、海部内閣の中においても異色の発言をなさったりしていらっしゃいましたから、海部内閣がそうだと言っても、個人的にはまたそういう積極的な消費税のパーセントを上げようというようなお考えでもあるのでございますか。
  20. 高原須美子

    国務大臣高原須美子君) 個人的にも現在のところでは持っておりません。三%という消費税で安定財源、これで福祉が全部賄えるとは思いませんけれども、これを福祉の財源の一部に充てていくという形で賄っていけるというふうに考えております。
  21. 吉田達男

    ○吉田達男君 この問題について余り時間をとってもいけませんが、今議院内閣制の中で政治が展開されていますが、三日前、十一日に消費税を廃止すべしという議決が参議院でなされました。海部内閣とされては残念な心境もあるんでしょうけれども、こういう二院のうちの一院で消費税を廃止すべしということが議決されたということの重みは、先ほど御答弁がありましたけれども消費税廃止という内容以外に、また院としての決議の重さをどう受けとめておられるかということについてもう一度お伺いいたしておきたいと思います。
  22. 高原須美子

    国務大臣高原須美子君) 今おっしゃいましたように、先ごろ野党四会派の提案されました消費税廃止関連法案が参議院を通過したという事実につきましては、私も内閣の一員でございますので、これを大変厳粛に受けとめております。しかしながら、私としては、税制改革の一環として導入されました消費税は、先ほどから申し上げておりますように、税負担の公平とか、今後の将来のために必要なものであると思っておりまして、政府が先ごろ行いました税制改革は基本的に正しい方向だというふうに考えております。
  23. 吉田達男

    ○吉田達男君 これは見解が違う政党同士ですから、それはそれで承っておきます。  景気の見通しについて伺いたいと思います。  去る十二月六日に経済企画庁は、ことしの七―九月、第二・四半期といいますかの国民所得統計を発表されまして、それによりますと、前期比実質成長率二・九%ということなので、年換算をいたしますと瞬間風速では一二・二%になる、こういうことに相なっておりますね。平成元年の一月八日でございましたか、経済の見通しについて年間の実質成長率を四%にしようということを閣議決定なさって、これをもとに政策を立て、遂行していらっしゃったという経過に比して、この一二・二%という数値はまさに大きい指標の差と言わざるを得ないんですね。この理由は一体何だろうかということでございます。年度の途中でありますから、年度後半の経済の趨勢の変動推移、あるいは来年の見通し、あるいはさらには岩戸からイザナギに向かって高原景気がいくということになれば、いつまで景気がいくのか、この辺について御見解を伺いたいと思います。
  24. 高原須美子

    国務大臣高原須美子君) まず最初に、今御質問がございました七―九月期の国民所得統計で大変高い実質経済成長率が出たということについてちょっと御説明申し上げます。  この国民所得統計速報で見ますと、実質成長率は季節調整済み前期比で四―六月期はマイナス〇・八%を記録しております。その後七―九月期に今おっしゃったように二・九%、年率に直しますと一二・二%という高い伸びになったわけです。  そこで、この七―九月期がなぜこのような高い伸びになったのかということを申し上げますと、まず第一に、一―三月期に消費税導入前の駆け込み需要がございまして、その反動から四―六月期に一時的に消費が落ち込みました。それがその後順調な回復を示したために七―九月期が高くなりました。それからもう一つは、設備投資の増勢が強まったということです。こうしたことによりまして七―九月期の伸びは内需が高い伸びを示したことが主な原因でございます。  また、七―九月期には外需の寄与度が〇・四%とプラスに転じたことも成長率を押し上げる結果となりました。これは投資収益の受取超過によるものが主な原因と考えられます。したがいまして、元年度上期をならしてみますと、前期比で実質成長率は一・六%、うち外需寄与度はマイナス〇・七%ということになっておりまして、日本経済は内需主導型の着実な成長を続けていると考えられます。四―六月、七―九月をならしますと堅実な成長を続けていると思います。  そこで、本年度の経済成長率の見通しでございますが、これは実績見通しにつきましては現在作業を続けておりますけれども先ほどおっしゃいました四%程度の成長というのは十分達成が可能だというふうに考えております。これは個人消費が堅調に伸びる、あるいは設備投資も着実に増加するということで、内需中心で四%成長が十分できるということでございます。  それから、その後、それではこれがいつまで続くのかという御質問でございますけれども、この景気の拡大基調がいつまで続くかということははっきり申し上げることは難しいわけでございますけれども、現在の内外経済情勢を考えますと、来年度にかけても現在のこの堅調な基調は持続するものというふうに考えております。  まず第一に、景気拡大の基礎条件である物価の安定が今後とも持続するということです。それから第二に、在庫投資、設備投資という企業関係の投資行動が慎重であり、今後ともこれが期待できるということです。それから第三に、個人消費が堅調でございまして、これが来年度にかけても持続するであろう。それから第四に、世界経済に目を向けますと、ある程度の減速はあるもののインフレの加速化が避けられておりますので、いわゆる軟着陸が可能であるといったことで、来年度にかけても景気の基調は堅調であるというふうに考えております。
  25. 吉田達男

    ○吉田達男君 概括伺いましたが、細かいことについては後ほど伺いたいんですが、通産省の方では七日に平成元年度の実績の見込み、来年の平成二年度の経済見通しの基本的な見方を明らかにされましたですね。今長官の御判断があったんですが、通産省としてはやがてこれは大蔵、通産等と調整なさって次年度に向かって作業が進むと思うんですが、通産省としてのお考えは、今の長官のお話しを聞かれてどうなんですか、見解を聞きたい。
  26. 関収

    政府委員(関収君) 先ほど経済企画庁長官から御指摘のような方向にあると私どもも考えておるところでございます。なお、具体的に来年度の成長率をいかに決めるかといったことにつきましては、今後政府部内でもいろいろ議論がなされるものと理解をいたしております。
  27. 吉田達男

    ○吉田達男君 大体両省とも基調は同様なもののように御判断がありましたが、仄聞する数値については、四%は十分達せられる、こういう長官の御表現でございますが、なお積極的な数字がいろんな統計で、銀行等もございますし、いろいろ出ています。十分達せられるということと来年度伸びるということとは若干ニュアンスにおいても違いますし、また詰め合わせでは違います。通産省の方でもある程度予想的な数字を推定されるもののごとく伺っておりました。四%は十分にということよりももうちょっと突っ込んでお答えをいただきたいと思うんですが、企画庁長官
  28. 勝村坦郎

    政府委員(勝村坦郎君) もうちょっと突っ込んでという御意見でございますが、まことに恐縮でありますが、私どもといたしましても数字としてどれぐらいになるという内容はまだ固めておりませんので、私個人の意見を申し上げるのはもちろん、政府としての見解をただいま明確にお答えできません。そういうことで恐縮でございますが、差し控えさせていただきたいと思います。
  29. 吉田達男

    ○吉田達男君 それでは、押し問答してもしようがないですから、お尋ねをもうちょっと突っ込んでさせていただきますと、景気がいいという両省の御見解でございまして、ということは、自然増収はあるのじゃないか。担当の人には、大蔵省に行って自然増収がどれぐらいあるか試算をもらってきてもらいたいと言っておいたのですが、どうなんですか。ありませんか。――なければ、省が違うということであればしようがないが。
  30. 勝村坦郎

    政府委員(勝村坦郎君) 自然増収がどれぐらいあるかということは、新聞紙上等ではいろいろ言われておりますが、現在の段階でお答えできる数字はございません。  ただ、ごく一般的な傾向として申し上げますと、六十一年度から過去三年度間は税収の伸びが弾性値として見ますと非常に高うございました。六十一年度が二・二ぐらいだったと思いますが、六十二年度が三・二、六十三年度もたしか二・三ぐらいだったと思いますが、そういうふうに三年度間にわたりまして非常に弾性値の高い伸びの税収というのが続きました。これは非常に異常な事態でございまして、過去にさかのぼって見ましても、四十八、九年のインフレのときに弾性値が二に近づいたことはございますが、それ以外こういうような特異な現象は起きたことはございません。  それで、特に六十一年度、六十二年度の税収の内容を見ますと、どういうものでふえたかということを見ますと、御承知のとおり、有価証券取引税でございますとか、あるいは所得税の中でも譲渡所得税あるいは相続税、そういう資産関連のもので非常に税収が伸びた、その結果が予想を超える弾性値の上昇になったということであろうと思います。  また、六十三年になりますと、法人所得の急速な上昇あるいは賃金所得の回復といったことから景気拡大期におきます正常な形での税収の伸びというのがこれに加わってきたと思います。  ただ、自然増収は今年度どれぐらいかということはわかりませんけれども、今年度につきましては、そういう異常な弾性値というのはほぼもとに戻りまして、一に近いところまで戻っているだろう。そういうことで、今後は正常な税収の弾性値という前提で考えていくことが可能になってきているのではないか、かように考えるところであります。
  31. 吉田達男

    ○吉田達男君 土地とかキャピタルゲインの特別な事情で税収が伸びた時期もあったし、中身もことしはもうないのじゃないですか。先ほどの景気のことを聞くと、景気はいいと。したがって、法人税も入る、こういうことでありますが、景気がいいということの裏について心配するものが若干ある。それは、景気がいいというが、それじゃ全部いいのか、景気のよくないところがあるのじゃないか。そのひずみを食っておる部分があるのじゃないか、人手不足があるのじゃないか、インフレ懸念があるのじゃないかというようなことを聞かれる。在庫投資は鎮静というか、産業形態が変わってきたから昔と違いますが、設備投資の方は非常に伸びておるが、こういうことがやがて生産力をフルに展開した場合におけるまた不景気原因をつくり、償却を困難にさせるというようなことの心配を取り越してする場合もある。こういうことの中で、そういうひずみに対してどういうふうに心配をし、あらかじめ注意しながら行政を進めるかということは、担当の方としては大変重要な任務であるわけであります。  そこで、若干見通しとあわせてその辺の手当てを聞きたいんでありますが、景気が動く場合に為替変動、円が高くなるか安くなるか、このことは極めて大きい要素になるわけですね。これからも伸びるだろう、続くだろうと、こういうことになるについてはどういうふうに見ているのか。個人消費については堅調な伸びをしているけれども国民経済の中における個人消費の持つ役割は六〇%に及ぼうとするところですから寄与率も高いわけでございますね。今堅調にいっていると言うけれども、これを持続しようとすると、今日本の景気は安定しているというものの、御案内のとおり、高値安定でありますから、だから、そういうことになると、これを持続しようあるいは個人消費を伸ばすということが果たしてアンファクターでできるかということになると作為をしなきゃならぬ。それは減税するか、賃上げするか、あるいは物価を下げるか、いろいろ手を打たなければならない。そういうふうなことについては企画庁としてはどういうふうに指導をなさるか、目を配っていらっしゃるか、その辺の見解等あわせて伺いたい。  先ほど庄司委員の方で日米構造協議にかかわっておっしゃっていましたが、内外価格差の問題もある。これらが解消されるスピードというものが日本経済の体制を改革するほどのところに及ぶについてはそう急なことにならない。こういうようなものは一体どう改善されることに努力していらっしゃるのか。所管が通産省に及ぶ部分もあれば、その内容によって、大臣でなくても、担当の方でもお答えをいただきたい。企画庁の部分は企画庁でお答えいただきたい。
  32. 松永光

    国務大臣松永光君) 今、先生は設備投資が行き過ぎはせぬかというふうな御懸念のようでございましたが、先生も御承知と思いますけれども、設備投資をどうするかというのは、これが社会主義体制と自由主義体制の大きな違いの一つでありまして、社会主義体制の国は国が計画を立てて、そして設備投資をしていく、その失敗がしばしば多いと、そこに不合理さが出てくるわけです。しかし、自由主義体制のもとにおいては、それぞれの企業が将来を予測して、あるいはまた自分の企業競争力を強化することを考えて、自己判断によって設備投資をしていく、これが自由主義と社会主義の大きな違いの一つであると思います。  ところで、我が国企業家は、過去に景気変動に遭いまして相当な苦い経験をしておりますから非常に賢明です。したがって、最近なされている設備投資の多くは合理化投資、省力化投資が大部分であるというふうに私は見ております。能力増強投資はそれほどない。行き過ぎがあるような場合におきましては、通産省が命令したりすることはできませんけれども、正確な情報、予測等をお見せして、そしていい方向に行くように誘導していきたいと、こう考えておるところでございます。
  33. 勝村坦郎

    政府委員(勝村坦郎君) 長官からもお答えをしていただこうと思っておりますが、前置きといたしまして今いろいろファクターを挙げて御質問になりました。その辺の問題点をどう考えているかというところをごく要点だけを申し上げます。  まず、人手不足の問題を御指摘になりました。現在、労働需給は非常に引き締まった状態になっております。これは御承知のとおりでございます。ただ、現在、それが賃金上昇に直にはね返るという状況には幸いにしてまだなっておりません。したがいまして、景気の過熱を招くというような状況では必ずしもないわけですけれども、いろいろなところで採用難あるいは部分的には建設工事のおくれといったようなことが出ていることは事実でございます。こういう非常に緊張度の高い労働需給というものをこれ以上高めていくということにはやはり問題があろうというふうに考えております。そこら辺は十分判断しながら今後の経済運営をやっていく必要があろうかというふうに考えているところでございます。  それから、物価と為替レートの御質問がございました。  為替レートの今後をどう判断するかということは、これはちょっと政府としては申し上げるわけにまいりませんので御勘弁いただきたいのでありますが、一般的な問題として申しますと、本日も朝の寄りつきは百四十四円ぐらいだったんですけれども、このところ春以来円安になりまして、いわゆるボックス圏百四十円から百四十五円の範囲内というところで動いております。  一般的に申しますと、このやや円安に振れている状況は、国際収支の状況から申しましても、あるいは国内物価への影響ということから申しましても、必ずしも好ましいことではないというふうに言うことができるわけでありますが、これまでのところ心配されたほど国内物価への波及効果というのは出ていないというふうに思います。もちろん春から卸売物価、消費者物価にある程度のインパクトを与えておりますが、さらにそれが上昇の度を加えるというような要因では現在のところなくなってきております。  また、石油価格につきましても、バレル十八ドルを超えまして上昇するという状況ではなくなってきておりまして、そういう意味から、為替レートを含めまして海外からの物価の上昇要因というのは、むしろ来年度にかけましては上昇要因としては弱まっていくというふうに予想することができようかというふうに考えるわけでございまして、もちろん来年度は消費税の影響、プラスの影響ということもないわけでございますから、そういう意味では、最初に大臣が述べられましたように、今後にかけて物価の安定を期待していくことは十分できるであろう。  ただ、内外価格差の問題はいま一つ違った次元の問題でございまして、これは長官から御説明いただいた方がよろしいかというふうに考えております。  設備投資につきましては、先ほど通産大臣がお答えになったことと基本的に同じ考え方を持っております。また、現在非常に設備投資の伸び並びに水準が高いわけでございますが、少なくとも現在まで行われてきた設備投資は、それが過剰能力を生み出していわゆるストック調整というような反動を引き起こすようなものではない。少なくともこれまでの設備投資は健全な水準の範囲内で行われてきたというふうに判断をいたしております。  それと、一つだけつけ加えさしていただきますと、いろいろお挙げになりました問題は相当構造的な問題を含んでおりまして、単なるマクロ、いわゆるマクロの経済政策だけで解決できる問題ではございません。で、内需の長期的な拡大ということをおっしゃいましたが、そのためには設備投資だけじゃなくて、ほかの内需項目がいずれもバランスのとれた形で伸びていくことが必要でございます。そのためにはマクロの経済政策だけじゃなくて、構造調整政策というものを同時にあわせて行っていくことが今後肝要ではないだろうか、かように考えているところでございます。
  34. 高原須美子

    国務大臣高原須美子君) まず最初に、個人消費がどうなるかというお尋ねでございましたけれども、やはり個人消費の堅調な拡大のためには物価安定というものが前提であると思います。  この物価につきましては、例えば十一月の東京都区部の数字を見ますと、消費者物価は前月比〇・九%の下落、前年同月比で二・五%の上昇ということで、今のところ安定をいたしております。今局長から説明申し上げましたように、人手不足あるいは円安が即物価にはね返るという心配もございません。  それから、景気の持続が直ちにインフレにつながるかといいますと、海外からの安い製品の輸入などが国内の市況を鎮静化するというメリットも出ておりまして、そういう懸念も今のところございませんので、まあ物価は、消費税の上昇もおおむね出尽くしておりますので、基本的には安定を続けていくというふうに思っております。これが消費にいい影響を与えていくと思います。したがいまして、政府としては今後為替レートあるいは原油価格などの動向を引き続き見守りながら物価安定に努めていかなければならないと思っております。  そういうことで、物価は安定基調ではございますが、内外価格差ということで海外と比較いたしますと、水準が高いという問題は残っております。この物価水準の国際比較を厳密に行うということは、生活習慣や制度に違いがあり、また為替レートも変動しますので難しいとは思いますけれども我が国の物価水準は諸外国に比べて高いという数字はございます。現に物価レポートを企画庁が発表いたしましたけれども、東京はニューヨーク、ハンブルクに比べて生計費が約一・四倍ということになっております。  そこで、政府・与党が挙げてこれに取り組むということで推進本部をつくりまして、この内外価格差是正にこれから取り組んでまいりたいと思います。
  35. 吉田達男

    ○吉田達男君 いろいろお答えいただきまして、まだ聞きたいこともありますが、時間が迫ってきました。今、一番ひずみを受けているのは本当は中小企業なんです。中小企業は大変えらいんで、私も質問したいと思っておりましたが、谷畑委員が続いてやっていただきますから、私は通産大臣に原子力エネルギー政策についてお尋ねをいたしたいと思います。  通産省の方では、平成二年度の通産事業の重点施策として、エネルギーについては地球環境問題に対応すべく新しい技術の開発、導入とか、あるいはまた環境に負荷しないような施策の開発をする、こういう柱を立てていらっしゃるところでございます。期待をしておるところでございますが、その中で原子力発電所等々の原子力行政をどう位置づけるかということでございます。  この新しい柱を見ると、クリーンエネルギーを求めて既存のエネルギーを置換する将来をうかがわせる私なりの期待があるのでございますが、どうなのか。折しも十二月十日には原子力事業の大きいローテーションになっております青森県六ケ所村の首長の選挙がありまして、核燃科サイクルの再処理工場、あるいは低レベル放射能の処理施設、あるいは濃縮ウランの施設等々についてこれを凍結するという方が当選をなさったわけです。それほど関心が高い中で原子力について民意を得ていないという事実が明らかになって、そのような放射能汚染の危険性を秘めておるものの行政については、そこの箇所はノー、こういう返事であった、民意であったと。首長がそこで公約をして当選された以上、凍結という方針でいくならば、これをどう評価されるのか、あわせて通産大臣にお尋ねをする次第です。
  36. 松永光

    国務大臣松永光君) まず六ケ所村の村長選挙の関係でございますが、当選をされました土田さん、大変立派な方だと私は聞いております。この村長さんが村民の負託にこたえて六ケ所村の発展に尽力されることを希望しておるわけであります。  土田さんの核燃サイクルに関するお考えでございますが、核燃サイクル事業の進め方についてはいろいろ批判的な御意見をお持ちのようでありますけれども、核燃サイクル事業そのものの意義については相応の御理解をお持ちの方だと聞いておりますので、これからいろいろ御意見も聞き、また我が方としてはPA対策や核燃サイクル施設立地を通じた地域振興策等を講じてまいることによって地元の理解を得てまいりたい、こういうふうに考えておるところであります。  なお、地球環境の問題についての御発言があり、それとエネルギー安定供給との問題についても御指摘がありました。御存じのとおり、最近の地球温暖化問題などを中心とした地球環境問題というのは、よく考えてみますというと、要するにCO2の発生による地球温暖化というふうに言われておるわけであります。正確な科学的知見は私も持ち合わせてはおりませんけれども、そうすると、そのCO2の発生はどこから起こるか。石油、石炭等のいわゆる化石燃料の燃焼によって起こるわけですね。  一方、経済が繁栄をする。国民生活の水準が向上をすれば、必然的にエネルギーの需要は大きくなります。特に電力需要は大きくなってまいります。だとすれば、国民に対してエネルギーの安定供給、電力の安定供給をしていかなきゃならぬわけでありまして、それをしていく場合にはCO2の発生しない、地球環境に対して負荷を及ぼさない、そういうエネルギーあるいは電力の開発をしていかにゃならぬ、こういうことになってくるわけでありまして、ぜひひとつ先生にも御理解を願いたいと、こういうふうに思っているところでございます。
  37. 吉田達男

    ○吉田達男君 松永大臣のおっしゃる来年度の地球環境問題についての対応について私も同感でございます。私はあえて質問したのは、その中でCO2は時事的な問題で出てきて大賛成なんです、それに対応するのは。ただ、原子力を取り出すときに放射性物質がたくさん出て、それが拡散したり、いろんな将来にわたる半減期の長いもの、危険性を秘めたものの中で原子力行政が行われておるが、将来にわたってこういう環境負荷のない、低減化されるエネルギーを開発、導入するんだという考え方の中には、原子力行政について見直すということは入るのか入らないのか、こういうことであります。
  38. 山本雅司

    政府委員山本雅司君) 将来のエネルギーをどう持っていくかというのは大変重要な問題でございまして、最近エネルギー需要がこの二、三年急速に増大してまいっております。したがいまして、現在十四年ぶりに総合エネルギー調査会という調査会を開催していただいておりまして、今鋭意各部面について検討しておる段階でございます。したがいまして、この結論が多分来年の五月か六月にはいただけるのではないかと思います。その中で、この原子力は今まで石油の代替エネルギーとして現在我が国のエネルギー需要の約一割、電力需要の中では約三割弱の比率を占めております。したがいまして、一つの大きな柱として現在まで石油代替エネルギーということでやってまいりましたが、今後ともこれをどう位置づけるか、基本的にはこれを相当重要な柱としてやっていかなければならないと考えておりますが、具体的な数字はこの総合エネルギー調査会の結論の中で出てくるというように考えております。
  39. 吉田達男

    ○吉田達男君 私の期待するところのものでないようでがっかりしております。私は今の通産大臣のおっしゃったことについては大賛成ですが、やっぱり原子力についての安全ということをいろいろ考えて、またクリーンなエネルギーを開発して、その化石燃料にかわる原子力、それを超す次のエネルギーの中でそれにかわるものを求めておるんじゃないかという期待であったんですよ。まあわかりました。  時間がありませんので、端的に二、三お尋ねします。  六ケ所村の原子力処理施設が、核物質の処理施設が当面ちょっと進みにくい状況ではありますが、濃縮技術については東海村と岡山、鳥取県境にあります人形峠のプラントが稼働しております。このプラントをそれじゃ将来どうするのか。初めはウラン鉱石の製錬所であったのを実験プラントとしてやり直して、今濃縮をやる。そして原型プラントに切りかえてきておる。そこの場所に低レベルの放射性物質を置いたりするんじゃないか、あるいはほかにまた原子力行政の中で拡幅するんじゃないかと、こういうことを懸念するところもあるので、今の人形峠の計画は次にはどうなるのか。  それからもう一つ、その人形峠のウランを掘った鉱山の跡について、鉱石がたまっておるわけです。この鉱石は、去年の法改正によって鉱山保安基準に抵触する放射能のレベルがあるわけです。三十ミリレムというものが管理区域の辺でもあるわけですから問題があるわけです。そこのところが三十年来放置されておる。この制度が導入されて、危険なものについてより厳しくしようという趣旨から制定されたのだが、経過規定が一年あって、この三月三十一日までにそのことをクリアしなきゃならぬ。しかし放置されたままになっている。これはいかぬ。これは撤去を含む適切な処理をしなければならぬが、現地ではもう雪が降るのです。もうそれを措置する時間がない。措置するについて雪の方の時間も、物理的な三月三十一日までの時間もない。これをどうするのか。これは喫緊の急務でありまして、そういうことを放置しておると、やっぱり原子力は危ないんだと、誠意がないんだと、こういうことになってしまうと原子力行政も進まぬので、この辺についてどうするのか、きちっと御返事願いたい。
  40. 加藤康宏

    説明員(加藤康宏君) 最初に人形峠の将来計画につきまして御質問がございました。御指摘のとおり、人形峠の事業所におきましては、昔はウランの製錬をやっておりましたが、現在ではウランを濃縮に使えるように転換をするとか、濃縮施設を置いて、そこで濃縮をやっておるわけでございますが、これは国の原子力開発上極めて重要な施設でございまして、国の方針に基づきましてそれらの技術の確立、さらには六ケ所村等のウラン濃縮の事業化、そういうものの支援を行ってきているところでございます。先ほど指摘のウラン濃縮の原型プラントは、ことし完成いたしまして、これから十年間その操業を続けることになっておりますし、その原型プラントの濃縮の装置よりもっと進んだ最新型の遠心機のテストをもそこでしようということでございます。  今後とも人形峠事業所におきましては信頼される技術の確立、そういうことに向けまして業務の展開を図っていくよう、動燃事業団を指導してまいりたいと思います。  それから第二点目の捨て石堆積場の問題でございます。  これは、ことしの四月一日に基準が少し変わりまして厳しくなったわけでございまして、決して今まで放置しておいたとか、違法なものがあったということではございません。新しいことし四月の基準に対応いたしまして措置をとろうというわけでございますけれども、動燃事業団におきましては、通産省の指導を受けまして、また岡山県、鳥取県、両県とも相談しながらその新しい基準を満足するようにすべく、また地元の方々の御心配や不満を取り除くために、それぞれの堆積場の現状に応じました対策をとろうということで、地元の方々には十分御説明し、御理解と協力を得べく努力してきているところでございます。大半の堆積場につきましては、既に地元の方々の御理解をいただき工事を進めているところでございまして、一部は既に終了しております。  なお、現在話し合いを続けております堆積場もございますが、動燃事業団が早急に措置を実施すべく鋭意努力をしているところでございまして、科学技術庁からもそのように指導してまいる所存でございます。
  41. 吉田達男

    ○吉田達男君 時間が過ぎて恐縮ですが、要望を一つだけ。  そういうようなことで、三十ミリレムのところに百四十ミリレムの場所もあるんです。だから、周辺町村では心配して、県が後見をして、そこの地区の健康調査を市町村がやっているんですよ。そこに働いていた鉱山の職員というものは、千人にはならぬと思うが、今はいませんが、相当数まだ生きている。バッジをつけていたのは二百何人いるんですよ、フィルムバッジをつけていたのが。そういう人の健康調査はきちっとされて、その者についてはまた心配なのか安心なのか、その辺もちゃんと指導し明らかに願いたい、これは要望であります。  終わります。
  42. 谷畑孝

    ○谷畑孝君 私は昭和二十二年の一月十日に生まれまして、大阪では、日本どこでもそうだろうと思いますけれども、十日といいますとえびすさんということで、とりわけ商売繁盛と、こういうことであります。私の顔も取り柄がないわけですけれども、耳だけがえびすさんによう似ていると、こういうことで、私は中小企業の問題、とりわけ中小企業の親方は、皆一月十日になりますとえびすさんに頼んで、商売繁盛何とかお願いしますと、こういうふうにお願いをするわけであります。私もその立場で、中小企業対策について日本政府としてどのように考えておられるか、そういうことに絞って質問をしてまいりたい、このように思います。  私は、今日、日本経済世界に誇り得る経済大国になってきた、その中において中小企業が果たした役割、これは大変なものがあると思います。中小企業のおやじさんと話をしておりますと、時間はもう十二時間はざらで、家族が本当に一生懸命に手を真っ黒にして実は働いておる。そういうことがやはり今日の日本経済を支えてきたのではないか、このように私は思っておるわけであります。  今日は相当好景気が続いておると、こういうことでありますけれども、その中で平成二年度の通商産業政策の重点を見ても、国際化の進展の中で中小企業構造転換の必要性が強く言われておりますし、そのための政策として融合化の問題、それから高度化の提案を実はされております。  それと同時に、中小企業白書を見ておりますと、それとはまた裏腹に、実は中小企業の持っている弱さ、とりわけ資金力が弱い、あるいは経営資源という問題については行き詰まる、あるいは販路にしても規模が小さいがためになかなかうまくいかない、こういうことが指摘されています。好況時でも圧倒的多くの中小企業ではそういう改善が進んでいない、むしろ借り入れの増大のために、景気が鈍化するとすぐ倒産が激増すると、こういうような状況がある。今から振り返ってみますと、あの一九七〇年の前段から非常に景気がよかったわけですけれども、しかし、あのオイルショックからどんと落ち込んだことを見ましても、景気がいいと、必ず後はまた倒産件数がふえる傾向がある。  今日のそういう好況の中で、私は次のようなことを質問したいと思います。  今日、中小企業が発展をしていくためには、財務内容がようなきゃならない。何といったって資金力がなきゃならぬというように思います。それに当たって、今日中小企業における財務内容にかかわって中小企業における民間金融機関からの借入比率、そういうものが今どう推移しておるのか。とりわけ大企業は株の増資だとかあるいは転換社債だとか、そういうことで資金をたくさん低利で集めることができる。中小企業はそこにおいて大きなハンディがある。そういうことにかかわって、民間金融機関からの借入比率はどういう推移をしているかということを、まず中小企業庁の担当部長にお伺いしたいと、このように思います。
  43. 高島章

    政府委員(高島章君) 御指摘のとおりでございまして、数字を申し上げさせていただきたいと思います。  大企業の借入比率はこのところずっと低下をしております。御指摘のとおりでございまして、昭和五十七年度末で四一%でございましたものが、六十三年度末で三八・四%へと低下をしております。直接金融等でいろいろ資金調達が可能になってきている、幅広くなってきていることの証左でございます。  一方、中小企業の借入比率でございますが、これは最近上昇してきておりまして、同じような五十七年度と六十三年度で比較いたしますと、四六・三%から五一・七%へ高まっている現状にございます。
  44. 谷畑孝

    ○谷畑孝君 今、大企業においては株式等すべてが大きく発展をしておるんだけれども中小企業においてはやっぱり金融の問題が大きくなっている、そういうことが今指摘されたわけです。  そこで私はこのように思います。中小企業の財務内容を充実させていくためには、今景気がいいから民間銀行からも借り入れが容易にできるという面もありますけれども、やっぱり公的な融資制度というものが、中小企業にとってみたら一番安心できる財務内容の健全化をしていく道であると思います。これはまた後ほどに質問をしてまいりたいと思います。  次に、今、中小企業庁で行われております中小企業投資育成株式会社について少し質問したいと思います。  中小企業も、将来は上場するんだ、社員よ頑張れよと、こういうように親方も従業員も一つの理念といいましょうか、我々の会社はこう行くんだという、こういう理念が励みになって、ひとつ頑張っていこうと、こういう意欲も実はわいてくる。そういう意味においては、この中小企業投資育成株式会社というのは非常にいい制度だと思います。  そこで、現在、中小企業が全国で六百四十万、そういう状況の中で中小企業投資育成株式会社の資金を百二十一社が利用されている。資料を見るとそういうふうに書かれておるわけですけれども、そこで投資育成株式会社の実績、昨年度の受け入れ企業数、業種あるいは引受株式の総額、そういうことについてお伺いをしたいと思います。
  45. 高島章

    政府委員(高島章君) 投資育成会社政策につきまして大変御支援を賜っておりまして本当にありがとう存じます。  最近の状況を簡単に御説明申し上げたいと思いますが、投資育成会社は、御案内のように、中小企業が発行いたします増資新株の引き受けの事業を中心に行っているわけでございますが、昭和三十八年に設立されましてもう相当長い実績を有しておりまして、その間に千七百五十八社、金額にいたしまして七百四十三億円に達しているわけでございます。こういう企業数、こういう規模で投資をしてきたわけでございます。  そのうち、実際に上場いたしました企業が二十一社でございますし、店頭登録を行いました企業が九社でございます。全体の数から申しますと少ないわけでございますけれども、それだけ中小企業が上場を目指すといえども、環境は大変難しいということは言えるであろうかと思いますけれども先ほど質問ございました、借り入れのみならず、自己資本の充実が中小企業にとっても非常に重要でございますので、今後ともこの投資活動を積極的に推し進めたいと思っているわけでございます。  ただ、それ以外に本年六月には投資育成会社法の一部改正をお願いいたしまして、既存の企業の増資新株引き受けだけでなくて、新たに会社を起こしました場合、創業の場合にも株が持てるようにお願いをいたしまして、今後とも中小企業の資本の充実にこの投資育成会社が大いに力を果たせるように鋭意努力しているところでございます。
  46. 谷畑孝

    ○谷畑孝君 全国の中小企業の数からいいますと、せっかくいい制度であるにもかかわらず、今聞きますと千七百五十八社、上場が二十一社、こういうことですので、私はやっぱり現実に即してもう少し中小企業投資育成株式会社自身が余り中小企業にいわゆる金は出すけれども口は出さないという、いわゆる中小企業さんの持っているリズムといいましょうか、そういうようなものもよく考慮をしながらもっと使いやすいようなものにしていく、そういう努力が必要じゃないかということを指摘しておきたい、こういうように思います。  次に、先ほどお話にかかわるわけですが、中小企業が資金あるいは財務内容をよくしていこう、そういうときにおいては、私先ほど申しましたように、公的融資というものがやっぱり中小企業の味方である、しかも借りやすい、そういうもので実はなければならぬと思います。今日は好況でありますから、どうしても金融資本の方からどんどんと中小企業分野にも金を貸し付ける、そういうことが多くなっております。そういうことから見ますと、公的融資の地位が若干低下をしてきておるのじゃないか。むしろ言うならば好況であればこそまた公的融資制度も民間の金融資本に負けないぐらいに、横ばいじゃなくてもっと大きく進まなければならぬ、このように私は実は思っておるわけでありますけれども中小企業庁の担当部長の方から公的融資の地位が今どうなっておるのか、公的融資がふえているのかふえていないのか、そういう点も含めてひとつお聞きをしたい、こういうふうに思います。
  47. 高島章

    政府委員(高島章君) ことしの三月末の数字でございますが、中小企業向け事業用資金の金融機関別貸出残高を見ますと、全機関で二百四十五兆二千億でございます。それで、御指摘ございました公的融資を担っております中小企業金融公庫、国民金融公庫、そして商工組合中央金庫という三つの政府系の中小企業金融機関機関の合計はそのうち二十兆四千億でございまして、全体では八・三%を占めているわけでございます。  御指摘ございました最近の状況はどう推移しているかということでございますけれども、五十九年三月末から今申し上げましたことしの三月まで最近五年間におきましては、この三つの政府系の中小企業金融機関の貸出残高は年々三・八%ずつ増加をしているわけでございます。ただ、全体に占める割合がどうなっているかということもあわせて御説明申し上げたいと思いますけれども、五年前は一一%程度でございましたけれども先ほど指摘ございましたいろんな金融機関の活発な動静、それから金融緩和といった基調を背景にいたしましてその比率は八・四%へと下がってはきております。ただ、絶対量では先ほど触れましたように三・八%ずつ着実に公的融資がふえておりまして、中小企業者のための金融の役割を増加しつつあるということでございます。
  48. 谷畑孝

    ○谷畑孝君 先ほど言いましたように、好況の中で民間の金融資本の貸し付けの伸び率から見ると、私はまだまだ公的融資がさらに飛躍的に好況に応じた中で発展をする必要がある、こういうことであります。  そこで、それと関連をするわけでありますが、私は、もっと飛躍的に発展させるためには、さらにそれに応じた対策が必要じゃないか、こういうふうに実は考えているわけであります。例えば返済の据え置き期間を三年というのを五年にしてみたらどうか、あるいは十年に延長する必要があるのではないか。また、私どももお世話活動しておりますと、国金というのが非常に身近で、無担保で、手続も簡単、しかも急いでおる人がおったら任せておけと、こういうことで、我々も一緒にお世話活動するんですけれども、そういうようなマル経融資の借りられる額も今日の経済情勢に応じた中でもう少しふやしていくことはできないか、そんなことを実は考えておるわけです。それと同時に、そういうものがあるんだという宣伝ですね、そんなことも非常に大事じゃないかと思いますので、その点の改善についてひとつ御意見をお伺いしたい、このように思います。
  49. 見学信敬

    政府委員(見学信敬君) 御指摘のように、政府中小企業金融機関の果たす役割というのは極めて大きいものがございます。そういう観点から、政府は従来から中小企業金融公庫、国民金融公庫並びに商工組合中央金庫等からの融資を通じまして、中小企業に対する資金供給をなるべく潤沢に、円滑に供給できるように努力してきたところでございます。  御指摘のように、その条件の緩和という観点から、平成元年度におきましても、まずマル経制度の金利を引き下げるということで、いわゆる基準金利よりもより低い金利を出すということで、実質〇・二%引き下げを図る等の措置をとったところでございます。また、国民金融公庫の特別貸し付けの限度額につきましても、四千五百万円から五千二百万円へとその額の引き上げを行うなど、融資制度の充実を図ってきたところでございます。  今後、平成二年度に向けましても、特に特別貸し付けの限度額の引き上げでございますとか、また、よく指摘されます労働不足問題に対応したいろいろな省力化投資が進められているというようなことについての特別貸し付け制度の創設を考えるとか、あるいは据置期間の延長等についても議論をしているところでございます。また、マル経制度についてもより一層の拡充を図るというようなことを考えておりまして、中小企業者の資金のニーズに十分こたえられるように努力をしてまいりたいと思っておりますし、また御指摘のように、PRと申しますか、中小企業者の方々がよくその制度を熟知できるように、そういったPR体制の充実も図ってまいりたい、このように考えております。
  50. 谷畑孝

    ○谷畑孝君 中小企業の皆さん方にとっては公的融資というのは非常に大きな、常に頼りになる、こういうことでありますので、ぜひひとつ手続は簡素、そして条件は民間の金融から見たら非常に有利、こういうことでさらなる努力をお願いして、次の問題に行きたいと思います。  私は、一九七三年、四年、五年というときに春闘の激励を兼ねて大阪府下を駆けずり回ったことがあるんですが、そのときに感じたことで、中小企業も伸線業も本当に食堂に人がいっぱいで、ある企業においてはもう本当に活気があっていっぱいだったわけですけれども、オイルショックからまた再び訪ねてみますと、今度は食堂はもう閉鎖になってしまったり、あるいは工場がつぶれて閉鎖になったり、労使問題で激突したり、そういうふうな場面をずっと見てまいりまして、私はそこで感じたことは、やっぱり工場というものは稼働してこそ労働者の顔も明るいし生きがいがある、そういうことをずっと見てきたわけであります。  そこで、今このところ好況であるがゆえに私はあえて質問をしていきたいなと思いますけれども、今日の特定不況業種における政策というものがどのように行われているか、少し意見をお伺いしたい、このように思います。
  51. 見学信敬

    政府委員(見学信敬君) 先ほど議論がございますように、この景気の好況というのは経済白書でもうたわれておりますが、いわゆる全員参加型という特色がうたわれております。地域によらず業種によらず、あるいは規模によらずということで、中小企業も総じて言いますと非常に好況であるということは言えると思います。  ただ、先生御指摘のとおり、例えば一部の輸出産地等につきましては、円高のショック以来、非常に内需転換に血のにじむような努力をされて、成功されている産地も相当ございますが、まだやはり円高の構造的な変化に対応を完全にし切れていないというような輸出産地もございます。また、特に企業城下町と呼ばれるような構造不況業種を中心とした地域の方々、この人たちに関してもいろいろな業種転換の努力がされておりますが、なお一部に陰りが残ったままの地域もございます。また、業種的に申しましても、繊維の一部等についてやはり構造的な問題を抱えておるというような業種もございます。そういった状況にございますが、総じて申しますと、全体的に底上げというか、業種的には全体的には好調であるということも言えようかと思っております。
  52. 谷畑孝

    ○谷畑孝君 私は、もう少し不況業種についての政策というのか、例えば不況業種地域を指定すると、まず融資を受けることが容易で、そういう政策を打っているんだとか、あるいは職種転換することについてのこういう指導をしているんだとか、そういうことを聞きたかったわけです。
  53. 見学信敬

    政府委員(見学信敬君) 国際化の急激な進展でございますとか、NIES製品の輸入の増大でございますとか、あるいは技術革新、情報化等の著しく変化する経済環境のもとで、やはり中小企業が一部といえども地域によっては非常に構造的な不況にあえいでいるような場所もございます。中小企業がそれに積極的に活路を開いていくためには、御指摘のように、事業転換というものが非常に重要な局面になる場合もございます。  そういった観点から、当庁におきましては、特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法の活用によりまして、貿易構造の変化によります輸出の減少であるとか、輸入の増加等の構造的な要因によって影響を受けている中小企業者が行う事業の転換に対して各種の助成措置を講じているところでございます。また、中小企業近代化資金等助成法に基づきまして構造改善事業計画を作成される、そういった計画に対して承認を受けました商工組合などに対しましては、当該計画に従って行います共同事業あるいは事業転換促進事業等につきまして、必要な資金につきまして構造改善準備金制度の適用が認められているところでございます。特に事業者の事業転換等を促進する事業に関しましては、組合員に支給します例えば転換交付金のようなものを交付するといったような計画がある場合に、その資金を構造改善準備金として積み立てることが可能となっておりまして、今後ともこういった制度の活用を図っていくべきであると考えております。
  54. 谷畑孝

    ○谷畑孝君 私、不況業種の指定地域だとか、そういうことで私自身がかかわってきた中で感じることは、融資というものについてもそれなりに大きなメリットがあるしいいんですけれども、結局、融資を受けても、やっぱりそういう不況業種であるしなかなか販路がない、あるいは焼け石に水、あるいはまた逆にそれがまた一つの麻薬になってしまって、むしろそれがかえって倒産を早めてしまう、こういうようなケースもよくあるわけです。僕も企業融資を一生懸命にあっせんして頑張って、そしていいものが建ちまして、私もそこでバラをつけていただいて、おめでとうということを言ったんですけれども、次に行くと、いや、そこはもうつぶれてしまったということが実際にこれあった話でありまして、やっぱりその点はなかなか難しい問題だなと思うんです。  そこで、私が常々考えていることは、あの撚糸工連じゃないんですけれども、やっぱりあれも転換させるための機械の買い取りという一つの制度だったと思うんですけれども、不況業種等を含めて、もちろん業種転換も必要でありますけれども、私は、できたら早目にこの仕事をやめていこうという思い切りがつくためにも、ぜひひとつ税制度からも見直ししていく必要があるんじゃないかと。例えば、今日土地売買においても、人の借金の保証人になった場合は税のいわゆる軽減措置があるわけですけれども、不況で借金を抱えてしまってどうしても自分の土地を売らなきゃならぬと、ところが、売ってしまったら普通の売買のようになって、そこには何の恩恵もないわけでありまして、むしろ不況業種というものにこういう業種が指定されたところにおいては、やはり職種転換しやすいために、その土地もあるいは機械も含めて早いこと見切りがつけられるような税制度があればもう少し進むんじゃないのか。だから、言いかえれば、不況業種の対策というのは総合的にやらないと、ただ単に融資あるいは販路といっても非常に抽象的なことになりますので、そこらを僕はかねがね疑問に思っていたところでありまして、ぜひその点ひとつ参考にしていただきながら、前向きの方向でさらに検討していただいたらどうかなと思っています。  次に、これも同じく特別税制というか、とりわけ中小企業が資本を蓄積したり、あるいは将来高度化、近代化をしていくために、例えば近代化資金準備金だとか、あるいは高度化資金準備金だとか、あるいは融合化ということで異業種の交流のための準備金だとか、そういうものを設けて、それを損金扱いにするとか、あるいは何らかの形で税制的なものはないか。大蔵省がここにいないので、あくまでも私の意見ということで、きょうはそういうことで触れさせていただきたいと思います。  次に、時間がないので二つの問題を質問いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。  それは労働市場、労働力の問題です。  私は、あるガソリンスタンドのおやじさんとお話ししていますと、いやもうガソリンスタンドやめたいと思いますねんと、二つ三つ企業を持ってはる方ですけれども、なぜですかと言うたら、いや、もう人が来やへんのだと。ともかくガソリンスタンドというのは、企業主からいったら若い人が欲しいし、朝から晩まで働いてほしいし、競争が激しいということで時には日曜日まで働かぬとならぬ。人が来ないのでリースかなんかを考えてはるという、そういう話が最近多いんです、どこへ行っても、中小企業のおやじさんと話していると。  ここで私は思うんですが、今まで質問をしてきた中で、中小企業が発展するためには資金力が必要である。そして、市場をもっと拡大していくための販路を含めての情報が必要である。三つ目になくてはならぬのは、やっぱりいい労働者がそこに魅力ある職場として働くということが僕は非常に大事だと思うんですよ。中小企業でもまるっきりの零細もありますし、あるいは大企業に手の届く中小企業もあります。ところが、この大企業に手の届く中小企業ですら最近は人が集まらないというんです。私も職安などで、これ何とかしてやってよということで言ったりする場合もあるんですけれども、本当にそういうことで深刻な状況に実はなっていると思うんです。そこらの点について、中小企業に労働力が集まるための総合施策はどうすべきなのかということについて、できたらこれは通産大臣にひとつお聞きをしたい、このように思います。
  55. 松永光

    国務大臣松永光君) 委員指摘のとおりでありまして、大企業であろうと中小企業であろうと零細企業であろうと、結局企業が発展するかどうかというのは人にある。なかんずくよく働く勤勉な人がおるところが発展するものだ、こういうふうに思っておりますが、最近は従業員の質を通り越して、もうとにかくいないんだと、それが中小企業の経営難の一番の要因だ、こういう状況になっているというふうに私も承知しております。  どうすればいいのかという問題でありますが、それならば発展途上国にはうんと人がいるじゃないか、あれを連れてこようなどということを言う人もいないわけではありません。いや、相当おりますね。しかし、そういう考え方で果たしていいんだろうか。すなわち、人手がないからたくさんある安い労働力を日本で使う、人手が足りてくればお引き取り願う、ある意味では身勝手と言われてもいたし方ありませんが、そういう考え方でいいんだろうか、私は非常に疑問に思います。もっとも発展途上国には人が多いことは事実でありますので、その国の人たちが自分の国の発展のために日本に来て技術を習得したい、日本に来ていろんな経営のノーハウを学びたいと、そして自分の国に帰って自分の国の経済の発展を図りたいというのであるならば、先進国である我が国はそういう発展途上国の努力に対して十分こたえていかなければならぬ、こういうふうに思いますが、日本の人手不足解消のために発展途上国の人を使うんだという考え方には私は賛成できない。  そうすればどうするか、こうなってくるわけでありますが、結局中小企業において人手を機械に取りかえる。すなわち省力化投資を積極的にやっていただく。それに対して低利資金の融資の仕組みをぜひつくりたい。あるいはまた、中小企業の方は大企業に比べまして働く環境が劣悪な場合が多うございますから、その劣悪な労働環境が少しでもよくなるような、そういう投資もしていただきたい。その方にも金融の制度を設けて、そういう面で中小企業の人手不足対策が進むように平成元年度の補正予算あるいは二年度の予算等でぜひ実現したいということで、関係方面と今折衝中であります。そういう努力で問題解決に努めたいと、こう思っておるところでございます。
  56. 谷畑孝

    ○谷畑孝君 私も子供を持っておるものですから、たくさんの中小企業や大企業とおつき合いをしながら見てきますと、子供には、いや、どうせ行くんだったらそれは大企業へ行った方が長い目ではやっぱりええぜという、これは人間だれしもそういう気持ちになると思うんです、これははっきり言って。そして、私ども就職のお世話でも、谷畑さん、公務員ええとこおませんかと、大体公務員かあるいは大企業、とりわけ非常にかたい電鉄とか、大きな松下さんだとか、そういうところに入りたい、こうなるわけです。  そこで、大臣、なぜそういう気持ちになってくるのか。やっぱり大企業には福利、例えば退職金であっても、あるいは年金であっても、あるいは病気をしても、働く人々のさまざまな福利厚生がいいと思うんです。中小企業というのは、確かにそのときは給料はええかもわからぬけれども、しかし、いつつぶれるかわからぬし、かなわぬと、こういうことに僕は大きな問題があると思う。  そこで、私は思うんですが、一人一人の親方にそれをせいと言ってみてもなかなか――これは確かに制度としては一人親方の退職金制度とか、そんな制度はあるわけですけれども、私はできたら中小企業庁として、その中小企業の労働政策――これは労働省ということになるが、そういうことじゃなくて、中小企業を守る立場から、ぜひ中小企業に働く労働者を確保するための共済制度、そういうものをもっと充実していけないものだろうか。例えば、今六百四十万の中小企業の親方たちがそういうところに任意加盟をする。そして、そこの従業員については資金をためながら福利厚生とか、いろんなものが支給されていくんだと、こういう抜本的に魅力ある形をとらないとなかなか集まってこないんじゃないか、ここをひとつ私の意見として言っておきたい。これはもう時間がありませんので答えをいただくということじゃなくて、そういう気持ちを持っておると。  それと関連して、今大臣もおっしゃいました、そしたら安い労働者はたくさんおるじゃないかと、東南アジアを含めて。これは不法就労者の場合が多いものですから、賃金も下手すれば最低賃金をもっと下回って安い賃金で使うことができる、文句を言うんだったら入管に密告するとか、こういうことに実はなってくる。  私も本当にびっくりしたんです。私は大阪で二年間で三回参議院選挙をやったものですから、二年間で三回大阪府下を駆けずり回ってびっくりしたのは、あるところをずっと回っていますと、シャッターがどんとおろされておりまして、そこをこうぐるぐる回ってあげて入りますと、そこにはたくさんの外国人労働者が働いておるということで、ああ、なるほどこういう状況なんだな。また次の町へ行きますと、今度は歴然と肌の色が違うインド人やパキスタン人を含めていわゆる外国人労働者が働いている。非常に小さな零細企業の中で、これはもう私にとってみてもこの二、三年の間における大きな変化だな、こういうようなことを思ったんです。  そこで、私は大臣一つお伺いしたいんですが、過日、新聞を見ておりますと、関係閣僚会議でとりわけこの外国人労働者の問題が議論になった、こう言っておるんですけれども、その中身を少し、あるいは同時に、松永さん、大臣としてその辺についてはどう考えておられるのか、ちょっと時間の関係もありますので短くひとつお願いしたいと思います。
  57. 松永光

    国務大臣松永光君) 外国人労働者の問題については、六十三年に内閣の方針は閣議で決まっておるわけです。専門的な技術者についてはこれを受け入れるが、一般労働者については受け入れないという方針が決まっておるわけでありますけれども、さはさりながら、今委員指摘のような状況でもあるし、このままでいいんだろうかということでありますので、各方面の意見も聞き、調査もし、また閣僚会議の閣僚が十分議論をして、そしてこれからの対応策を検討してまいりたい、こういう趣旨の会議であったわけであります。  これは委員も御承知のことと思いますけれども、一般の労働者は受け入れないとなっておりながら、言われるところによると、不法就労者が十万人を超しているなどという実は話もあるわけであります。これはこのままに放置しておくというとますますふえる一方じゃないかということでもありますので、これは大きな問題だなと思います。  そこで、先ほどもちょっと言いましたけれども、発展途上国はたくさん人がいる。その人たちを日本のために使うという考え方はいかがなものか。むしろその人たちに技術や経営のノーハウを授けることによって、それぞれの国の経済の発展を図っていただくというのが方向としては正しいのじゃないかというふうに私は考えます。  同時にまた、国内の人手不足、なかんずく中小企業の人手不足につきましては、先ほども言いました労働環境の改善あるいは労働時間の短縮あるいは福利厚生施設の整備等々について応援をして、そして大企業に比肩し得る労働環境、福利厚生施設、それが整備されるような方向に持っていくことがこれからの中小企業を中心にした人手不足対策のポイントではないか、こう考えるわけでありまして、そういう方向で努力をしていきたいと考えております。
  58. 谷畑孝

    ○谷畑孝君 最後の発言にしておきたいと思います。  私はこう思うんです。やっぱり経済の豊かな国のところに人が集まってくる、これはもう歴史が示しているところだと思います。アメリカにおいても、リオグランデ川を隔ててメキシコからたくさんの人がアメリカにやってくる。だから、日本だってこういう問題はまだ遅いぐらいだと思うので、本来ならもっと早くこれは起こってくる問題である。しかしこの問題のとらえ方も、いや困ったな、自分たちはもうそんなのは困るんだという、こういうことだけでは僕はこの問題は処理できないと思うんです。なぜかといいますと、私ども日本だってこれはもう長い間加工貿易をして、輸出ということによって成り立っておる。もう東南アジアに行ったつてどこだって日本製品があふれ出ておるわけでして、そういうことによって我々が利益を得てこういう生活ができておる。だから、そういうことから考えると、まずアジアは友である、世界は友であるという、こういう親善あるいは交流、こういう観点が僕は非常に大事だと思うんです。そうなってくると、日本のまず社会の中を見てみたらどうだろう。余りにも島国の中で排他的意識も強い。住宅一つ借りるのでも、外国人お断りというプラカードが書かれてあったり、特にアジア人に対する差別意識が非常に強い。こういうような問題も僕はあると思うんです。  そこで、私が考えることは、まずアジアは友であるという問題、そして具体的に交流というのは自分が外国へ行くことだけが交流ではないと僕は思うんです。最近は我々も外国へ行く機会が多いんですけれども、ややもすると自分が外国へ行ったら交流をしているような感じ、錯覚が起きるけれども、そんなものは僕は交流でも何でもないと思う。むしろやっぱり具体的にいわゆる外国人の皆さんと一緒に生活をする場がある、そのことが私は大事だと思います。そういう意味では、通産大臣から見れば、それはもう外務省の問題であり、法務省の問題だと、こう思うかわかりませんけれども、ぜひ積極的にアジアは友であるという観点から、受け入れも含めて僕はしていく必要があるんじゃないか。その受け入れるに当たって、これは私見ですけれども、こんなことを私は思っているんです。不法就労がどんどんいや応なしにこれはふえていくわけですから、ふえていきますと、賃金はもう最低賃金以下になっておるというので、これは非常に社会問題が起こるようになってくる。そういうことじゃなくて、できたら第三セクター的な、アジアは友である、あるいは交流は友であるという観点、あるいは人権という観点、そういう観点でやっていくことが必要じゃないか。日本人学校もきちっと大学との協定の中でそういう形を仕上げて、そして何年間かたったらきちっと本国へ帰っていただく。帰っていただいて、ああ日本というのはこうだったなということで、日本で学んだ技術が自分たちの国でそれがまた発展をしていく。そうすることによって南北問題というものにも大きな役に立っていくんじゃないか。ODAのまた形の違った一つのあり方じゃないんだろうか。ぜひこれは外務大臣に任すんじゃなくて、法務大臣に任すんじゃなくて、むしろそういう積極的に受け入れることをしながら交流を図っていくという観点で大臣にひとつお願いをしておきたい、こういうふうに思います。  時間がもうオーバーしましたけれども、お答えお願いします。
  59. 松永光

    国務大臣松永光君) お答えいたします。  私の考え方と委員の考え方とはスタートの時点でちょっと方向が違うような感じがいたします。私は、日本という国はなるほどアジアの一国でありますから、東南アジアの発展には積極的に貢献するというのが我々の責務だと思っております。しかし、だからといって日本という国を東南アジアの国々の人たちの出稼ぎの場所にするという考え方は私はとりません。アメリカの場合はあんなに広い国だが、日本の場合には極めて国土が狭い。今でも過密状態である。そういうところに、しかもアメリカほどいろんな国の人が一緒に仲よく暮らすという習慣もありません。そういう国でたくさんの人を入れて出稼ぎの場に提供するというのは、私はいかがなものか。もちろん日本としては東南アジアの国々の発展のために積極的に貢献していかなければなりません。そのためには、私は二つあると思うんです。  一つは、先ほども申し上げましたけれども、はなから出稼ぎの場としてじゃなくして、東南アジアの国々の経済発展、国づくりの担い手になるような若者を日本に研修生として受け入れて、十分研修をして、そしてその人たちが本国に帰って国づくりにいそしむ、こういう仕組みなら私は大賛成であります。  それともう一つは、日本が積極的に東南アジアの国々に投資をして現地に企業立地をする。そこで日本からの技術移転も行われる、こういった形での協力の方向が真っ当な方向じゃないかなというふうに私は考えているわけであります。
  60. 谷畑孝

    ○谷畑孝君 どうもありがとうございました。  終わります。
  61. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午後零時八分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  62. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  63. 松浦孝治

    ○松浦孝治君 私は自由民主党として政府の皆さん方に、最近の経済動向等をとらえまして、現在の日本の産業界のことにつきまして若干質問をさせていただきたいと思います。  現在、世界経済は、東西関係の新しい動きや地域紛争の解決が見られる中、好調な先進国経済に牽引され、全体としては拡大の方向にあります。しかしながら、同時に幾つかの大きな課題にも直面しているのでありまして、主要国間の貿易の不均衡とか、あるいはまた欧米諸国の保護主義的な動きも根強いわけでございます。一方、発展途上国における累積債務も依然として増加傾向にあると考えております。こうした中、アメリカ経済の相対的な地位の低下を背景として、戦後の自由主義経済の発展を支えてきた世界経済のシステムは現在大きな転換期を迎えておりまして、ウルグアイ・ラウンドの進展や、EC諸国、アジア・太平洋地域などにおける地域協力の動きなど、世界貿易秩序の新たな枠組み形成に向けての試みが見られるところでございます。  このような世界経済の動向に我が国としていかに対処すべきかについて、若干の視点から質問をいたしたいわけでございますが、午前中に庄司委員の方から日米構造協議については御質問がありまして、政府よりいろいろと答弁がございましたので、これにつきましては時間がありましたらもう少し詳しく御質問いたすといたしまして、私はまず国際ルールづくりのウルグアイ・ラウンドについてお聞きをいたしたいと思います。  アメリカは、ウルグアイ・ラウンドの推進を唱える一方で、スーパー三〇一条のように、アメリカが不公正と考える貿易相手国の慣行についてガットの外で一方的に解決を図ろうとされておるわけでございます。一方、近年ガットのルールでは律し切れない国際通商面における問題も生じているのでありまして、広範な分野で交渉を推進しておる通産省としてはいかなる点を重視してウルグアイ・ラウンドの推進を図ろうとされておるのか、御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  64. 松永光

    国務大臣松永光君) 今先生もおっしゃいましたように、世界経済、なかんずく日本経済を発展させてきた世界の基本的なルールは自由貿易体制、ガットルールであったと思います。しかも、この自由貿易体制の恩恵を最大限に活用して発展を遂げてきたのが我が日本であるというふうに私は認識しております。これからの世界の発展にとっても、特に日本の発展にとっても大事なのはこの自由貿易体制の維持強化である、そういうふうに私は考えるわけであります。  ウルグアイ・ラウンドは、このガットルールをさらに強固なものに、さらに広範なものにしていこう、そのための言うなれば世界貿易ルールの改定作業、これがウルグアイ・ラウンドであると思っておるわけでありまして、私としては世界貿易のルールを定めておるガットの中でいまひとつ強化していきたいというのがあるわけでありまして、その一つ貿易に関する紛争を処理する規定、これが現行のガットルールは弱いあるいは不十分であるというふうに考えます。したがって、紛争処理規定の整備強化、これが一つであります。  もう一つは、日本アメリカも外国に対して投資をするわけでありますが、貿易関連投資の措置についてガットのルールが必ずしも明確でありません。そのために日本その他、アメリカもそうでありますが、外国に投資する場合にいろんな条件をつけられます。最も代表的な条件は、投資をしたならば部品はその国で調達すべしと、すなわちローカルコンテント要求、こういったものが恣意的になされれば、投資の促進を阻害いたします。したがって、そういう貿易制限的なローカルコンテント要求は禁止さるべきである、そういったようなガットのルールを整備してもらいたい。  あるいはまた、商品の原産地ですね、その商品はどこでできたものであるかという原産地ルール、これは客観的なルールで決めらるべきものなのでありますけれども、場合によっては原産地の決め方が恣意的に運用されて、日本企業が外国に投資をして、そこで生産されたものが、その国の製品じゃなくして、日本製品などという認定を受け、その結果としていろんな不利益をこうむるという例もしばしば見受けられます。したがいまして、そういう原産地を定めるルールなどもガットの中できちっと整備することが望ましい等々、今後とも世界の自由な貿易がより一層推進されるような、そういうガットのルールの整備強化、これを図っていくことがこれからの日本経済の繁栄、したがって国民生活の安定向上にとって不可欠のことであるという認識のもとに、懸命にガット・ウルグアイ・ラウンドと取り組んでおるところでございます。
  65. 松浦孝治

    ○松浦孝治君 松永通商産業大臣よりウルグアイ・ラウンドに取り組む日本側としての姿勢をお聞きをいたしまして、私もぜひそういう姿勢でやっていただきたいと思うわけでございます。  ところで、先般箱根で開催されました四極貿易大臣会合においては、ただいまお話がございましたようなウルグアイ・ラウンドが中心の話題になったと聞いておるわけでございますが、世界貿易の大きな部分を占めております日本アメリカ、カナダ、ECの担当大臣がルールづくりについて話し合われたことは、今後ウルグアイ・ラウンドの進展に重要な影響を与えると考えるわけでございますが、どのようなことが、先ほど言われたようなことを中心に話されたのかどうか、協議がされたのか、どういうような状況であったかお尋ねをいたしたいと思います。
  66. 松永光

    国務大臣松永光君) 四極貿易大臣会議というのは、これはウルグアイ・ラウンドの始まる数年前から日本アメリカ、カナダ、ECの四極間の通商貿易にかかわる事柄についてネクタイを外して、胸襟を開いて率直な意見を交換しましょうということで、毎年一回ないし二回開催されておる会議でありますが、先般の場合はガット・ウルグアイ・ラウンドの非公式閣僚会議の数日前であるということもありましたので、先般の四極貿易大臣会合の主たる議題はウルグアイ・ラウンドの事柄でございました。その中で私どもが、これ私が議長の立場でありましたが、特に議論を深めていった事柄は主として先ほど申し上げましたような事柄でございます。  その中で紛争処理規定の整備強化というのは、先ほど先生も御指摘になりましたように、貿易に関する紛争は、二国間であるいは一方的な措置で決めるのではなくして、すべてガットの場において多国間で決めらるべきことである、そして、ガットの裁定にはすべての加盟国が服すると、こういうことにすることが望ましいわけでありまして、そういった一方的な措置はやめることにすべきではないのか。そうして紛争はガットの場で十分な議論をして、そして最終的にはガットの裁定に服する、こういうことにすべきではないのかというガットの紛争処理規定の整備、強化の問題、あるいは先ほど申し上げましたけれども貿易投資関連措置の問題、あるいはまた補助金の問題、それから現産地ルールの問題、こういった事柄を主として議論をしたわけてありますが、最終的には四極の貿易大臣がそれぞれ明年末のウルグアイ・ラウンドの終局に向けて、これが成功裏に終わるように、終わらせるようにお互いに協力していきましょうと、こういう意思の確認ができたわけでございます。
  67. 松浦孝治

    ○松浦孝治君 四極貿易大臣会議についてもお話がございましたが、自由主義経済体制を守っていくには、やはりウルグアイ・ラウンドを成功させるのが、これがもう大きな命題であるという認識を持たれてやられておることに敬意を表したいわけでございますが、ぜひ活躍を期待いたしておるわけでございます。  ところで、これも閣僚会議でございますが、去る十一月六日、七日にオーストラリアのキャンベラにおいて開催された第一回アジア・太平洋経済協力閣僚会議は、歴史上初めてのアジア・太平洋協力にかかわる政府間の会合であったと聞いておるわけでございますが、この会合の評価についてお聞かせをいただきたいと思います。
  68. 松永光

    国務大臣松永光君) 先生御指摘のように、十一月六日、七日、豪州キャンベラでアジア・太平洋経済協力閣僚会議が開かれ、率直に言って大成功裏に第一回目が終了したというふうに思います。  成功したといいますのは、二、三あるわけでありますが、一つは、この閣僚会議を継続的な閣僚会議にしていこうということが合意されまして、第二回目は明年シンガポールで、第三回目は、これは確定的じゃありませんけれども、ほぼ韓国のソウルでというふうなことが申し合わせられまして、継続的にアジア・太平洋の経済協力についてアジア・太平洋諸国が協力していきましょうということが合意された点、それが第一点。  第二点といたしましては、そのアジア・太平洋地域の経済協力がほかの地域に閉ざされた、いわゆる地域主義じゃなくして、ほかの国に対しても開かれた、そういう形での協力関係にしていきましょう。地域間の協力は、ややともすれば他の地域に対して閉ざされた形になりがちでありますが、しかしそういう他の地域に閉ざされた経済協力というものは、ややともすればブロック主義に陥りがち、そのことは世界経済の発展にとって極めて有害、そういうことにならぬように外にも開かれた形での経済協力、こういったことが合意されたのであります。  さらにまた、アジア・太平洋地域は実は大変大きな経済規模を持つ地域でありまして、現在でも世界のGDPの五二%ないし五三%がアジア・太平洋地域によって占められておる。さらにまた、それぞれの国の貿易依存度も平均すれば六十数%に達している。これほど大きな経済になっておるのがアジア・太平洋地域であります。しかも極めて成長率の高い国々がアジア・太平洋地域であるわけでありまして、文字どおり世界の成長センターと言われておるわけであります。現在のレべルの成長が続いていけば、二十一世紀においては、アジア・太平洋地域の経済の規模は、その時期におけるEC経済の規模の二倍に達するであろうという実は予測もあるぐらいにアジア・太平洋地域の経済規模は大きくかつ発展性に富んでおる、こういうことなんであります。  しかしながら、いろいろな弱点も実はあるわけでありまして、その弱点といえば、過度の輸出依存度があるということ、あるいは発展途上国の場合にまだまだ技術力が極めて弱いということ、人材が不足であるということ等々の弱点があるわけでありますが、そういう弱点は日本が主導的立場に立って技術協力をいたしましょう、人材教育も日本が積極的に協力しましょう等々のことを提案いたしましたところ、アジア・太平洋経済協力閣僚会議に参加しているすべての国から大変高い評価を受けたわけてありまして、さような点からいって、第一回の会合は極めて有効であり、かつ成功であったというふうに私は思っておるところでございます。
  69. 松浦孝治

    ○松浦孝治君 アジア・太平洋経済協力閣僚会議でのいろいろな合意、確認事項についてお話があったわけでございますが、やはり開かれた経済体制を守っていこうということが確認できたということは非常に有意義だと思うわけでございまして、これからのこのアジア・太平洋経済ブロックにおける我が国の役割というものは非常に大きなものがあると思うわけでございます。しかし、それはあくまでも開放的で自由な新協力体制の中で行っていかなければならないと私は考えるわけでありますとともに、そのようなことが確認をされて、今後毎年会議を開催していこうということを申し合わせられたようでございまして、大いに期待をいたしておきたいと思うわけでございます。  ところでもう一点、世界経済の中で大きなウエートがございますのがEC統合と最近起こっております東欧諸国の自由経済、市場経済への志向ということがあるわけでございます。  そういう中で、ECは九二年の市場統合に向けて順調に進んでおる。また先般、ECと欧州自由貿易連合ですか、EFTAというんですか、ここで共同の大経済圏、欧州経済空間をつくろうという動きが表面化しておりまして、今月十九日に何か合同会議が持たれるというような、そういう情報があるわけでございますが、こういう欧州の大きなうねりに対して我が国としてはどのような取り組みを考えておられるのか、お聞かせをいただけたらと思うわけでございます。
  70. 松永光

    国務大臣松永光君) 御指摘のとおり、九二年統合を目指してECのいわゆる統合というものは着実に進んでおります。このECの統合がなされれば、大変大きなまた活発なEC地域になるわけでありますが、そのECというものが、実は域内だけの自由化じゃなくして、域外に対しても自由なものでなきゃならぬ、表面的にはEC各国いずれもそう言っておるわけでありますが、日本としてはECというものが外にも開かれた経済圏であるべきだということをしばしば指摘をし、そして英国その他の最高首脳と会った場合でも、その点は何回となく申しておるところでありますけれども、例えばサッチャーさんなどももちろん外にも開かれたECの統合でなきゃならぬというふうに申しておられたわけでありますが、私は将来の見通しとしても、EC統合がなされた場合においても、ECは現在より以上に開かれた経済圏域になるものだというふうに私は理解をいたしております。  一方、東欧でございますが、御指摘のとおり、経済の自由化を目指して大変な力強いといいましょうか、動きを始めたわけてあります。この東欧諸国が経済の自由化が進めば、当然のことながら東欧諸国民の生活水準の向上がなされるでありましょう。また、現在は社会主義国家経済の国でありますから、外との間の貿易も当然のことながら国家貿易管理貿易であります。それが自由化されてくれば、いわゆる自由貿易体制の中に入ってくるであろう、こういうふうに思うわけでありまして、そういたしますと、それぞれの国の生活水準の向上、そして貿易の自由化等々の影響我が国にも極めていい影響があるのみならず、世界全体の経済の発展にとって極めて有益であるというふうに私は思います。そうしたことが実現するように、我が国としても必要に応じ、また、日本の立場に従って応分の応援をしていかにゃならぬ、こういうふうに思っておるところでございます。
  71. 松浦孝治

    ○松浦孝治君 ECあるいは東欧、いろいろな経済の動向が見えるわけでございまして、やはり世界の潮流は自由貿易を志向しなければいけないわけでございますが、そういう中でブロック化ということが起こらないように、やはり開放的な自由経済を保つことが世界経済の安定に結びついていくだろうと、このように考えますので、やはり欧州全体との関係をやはり日本の国としても十分密にしていく、情報を密にしていく、そういう取り組み方をお願いいたしたいところでございます。  それでは、日米構造協議の中でちょっと指摘されたと聞いておりますものを二点ほど質問いたしたいと思います。  日米構造協議において、日本の物価が諸外国に比べて高いと指摘をされ、日米両国間で調査を行ったようでございますが、このような内外価格差問題に対して適切に対応していくことが、午前中にもお話がございましたように、日本消費自身のためにも重要であると考えるわけでございますが、通産省としてはどのような取り組みをなさっておられるのかお聞きをいたしたいと思います。
  72. 棚橋祐治

    政府委員(棚橋祐治君) 本問題につきましては、各種の調査結果や日米構造協議での議論等を踏まえ、国民の認識が急速に高まってきておることは御指摘のとおりでございます。不合理な価格差が長期にわたって存在することは、豊かな国民生活の実現、国際協調型の産業活動の実現という観点から望ましいことではありません。  政府・与党では、関係省庁等が幅広い観点に立ちましてこの問題に協力して取り組む必要があると判断をいたしまして、十二月四日に内閣総理大臣を本部長とする政府・与党内外価格差対策推進本部の設置が決定をされました。通商産業大臣経済企画庁長官と並びまして副本部長でこの問題に取り組んでまいることになっております。  当省といたしましては、この問題の改善に向けまして同本部の重要な一員として力を入れて取り組んでいく考え方であります。既にこれまで通産省といたしましては、我が国輸入されますあるいは我が国から輸出されます工業製品につきまして、日米共同価格調査を初めとする累次の価格比較調査を行ってまいっておりまして、価格差の実態について多くのデータを収集いたしております。  総じて申し上げますと、これまでのところ我が国からの輸出品につきましては海外の方が割高な事例が、相当部分高いわけでございますが、我が国への輸入品につきましては、多くの場合我が国で、幅はいろいろございますけれども、割高な品物が多いわけでございます。これらの調査で価格差が見られました事例については、今後その要因を分析して、かつその上で必要な対応策を検討してまいりたいと思います。  なお、本問題につきましては、各国での規格とか仕様の違いとか消費者の好みの違い等、あるいはレートの換算によって相当値幅が違う、価格差が違う、こういう問題もございましていろいろ複雑な要因がありますが、十分に検討し、できるだけ早い段階で所要の対策に取り組んでまいりたい、このように考えております。
  73. 松浦孝治

    ○松浦孝治君 もう一点でございますが、アメリカから日本の労働時間が諸外国に比べて長いことの指摘がされたとも聞くわけでございますが、この労働時間の短縮推進について通産省としてはどのような取り組み方をされておられるのかお聞きをいたしたいと思います。
  74. 棚橋祐治

    政府委員(棚橋祐治君) 日米構造協議の場におきまして米国より、日本の労働時間が諸外国に比べて長いという指摘があったのは事実でございます。  現在、我が国では所定外、所定内労働時間を含めまして、ごく最近時点では二千百十時間程度でございました。フランスとか西ドイツは千六百五十時間前後、これは非常に低いわけでございまして、それに比べますと五百時間という極めて大きな差があるわけでございます。アメリカ、イギリスも千九百数十時間ということでございまして、そういう欧米の諸国と比べますと、我が国の二千百十時間というのは非常に高いわけでございます。  労働時間の短縮、いわゆる時短問題につきましては、真に豊かな社会を建設していく上で重要な課題の一つであると当省も認識をいたしておりますが、昭和六十三年五月に経済運営五カ年計画が閣議決定されておりまして、この中で「おおむね計画期間」、といいますのは昭和六十三年度から平成四年度までの五カ年間でございますが、その間に「週四十時間労働制の実現を期し、年間総労働時間を計画期間中に、千八百時間程度に向けできる限り短縮する。」、こういうふうに提言をされております。  政府全体として完全週休二日制の普及促進を基本に労使の自主的な努力に対する指導、援助、あるいは国民的なコンセンサスを形成するというような形で努力をいたしておるところでございますが、通産省としましても、最近、時短経営問題懇談会を開催し、各界の権威者の意見等も十分承りながら、経営の側から時短推進のための具体的方策の検討を進めるなど、時短に関する啓蒙普及、必要な環境整備に努めているところでございます。  特に、昨今の好況ということもございますけれども中小企業におきます時短問題が人手不足の問題もありまして非常に大きな課題になっておりますが、私どもも労働省とも緊密な連携を保ちながら、ぜひ効果のある時短対策をできるだけ早い段階で打ち出していきたい、このように考えておる次第でございます。
  75. 松浦孝治

    ○松浦孝治君 日米構造協議につきましては、現在まで二回開かれたようでございますし、また来月三回目の協議がなされるようでございますが、午前中にもお話がございましたが、やはりお互いに対等の立場で、そしてやはりそれぞれの国々には構造問題、いろいろな問題を抱えておるわけでございますから、そういう点を謙虚にやはり受けとめて、そしてこれからお互い両国がますます経済交流を盛んにできるような、そういう体制をつくっていただきたいとお願いをいたしておく次第でございます。  それでは、午前中にもお話がございましたが、中小企業の問題についてお尋ねをいたしたいわけでございます。  ただいまもお話がございましたし、また午前中の谷畑委員からも御指摘がございましたが、中小企業の人手不足、それによる人手不足倒産ということも出てきておることを考えますと、これに対する政府としての対応策というものもきちっとやっていただかなければならないわけでございますが、これについては午前中にもお話がございましたので、取り組みをいただいておるという理解のもとにお願いをしておきたいと思います。  ところで、今我が国中小企業、その中でも小売商業、商店街の問題でございます。  今、地域の商店街は町づくりやふるさとづくりを進めていこうということで一生懸命頑張っておるわけでございます。しかし、都市構造の変化とか情報化の進展などによって商店数が減ってきておる状態も実は見受けられるわけでございまして、今こそ地元の商店街の方々の創意と工夫を引き出すための対策の充実が期待をされておるところでございます。そういう点で、通産省としては商店街対策をどのように考えておられるのか、また具体的にどのような施策を講じられようとしておられるのかお聞かせをいただきたいと思います。
  76. 見学信敬

    政府委員(見学信敬君) 御指摘のように、商店数の減少というのは最近数年間で十万店舗ほどというようなことになっております。  本年六月に取りまとめられました「九〇年代流通ビジョン」というものがございますが、そこにおきましても、意欲ある中小小売業の活力を十分に引き出して体質の強化を図るためには、「その自立的発展のための環境を整備するとともに、その経営努力に対して積極的な措置を講じることが必要」だと提言がされているところでございます。このため通産省としましては、平成元年度に新たにイベントホールなどの商店街のいわゆる公共的共同施設の整備に対します補助制度を設けたところでございますが、今後におきましても、まずは商店街の活性化に寄与する例えば計画策定でありますとか、諸般の共同事業などのソフトな事業活動に対する支援も充実を図っていきたいと思っております。  また商店街のコミュニティー施設の整備を行うためにつくられております市町村と中小企業者が一緒になってつくるような街づくり会社構想というものがございます。こういったものについて積極的にその推進を図ってまいりたい。また、中小小売商業者の海外製品の調達力をふやすためにも、またその調達の簡易化のためにも国際総合流通センター構想というものがございます。諸外国からの輸入品に対して卸売市場を設けるような構想でございますが、こういったものの推進を図るなど、一層の中小小売商業振興対策を推進していく所存でございます。  いずれにしましても、先生御指摘のように、商店街はまさに地域の顔でございます。商店街の活性化が地域経済の健全な発展に不可欠との認識のもとに施策の充実に最大限の努力を払ってまいりたいと思っておるところでございます。
  77. 松浦孝治

    ○松浦孝治君 いろいろ施策を考えられておるようでございますが、先ほどお話がございましたように、地域の商店街は地域の顔である、そういうことでこの活性化こそ地域を活性化する最大の方策だと考えますので、積極的なお取り組みをしていただきたいと思うわけでございます。  それに若干関連することもあるわけでございますが、地域には特産物とかあるいは伝統、文化に根差した技術等があるわけでございまして、それを産業の村おこしと申しますか、そういう形で芽を育てなければいけないと私は思うわけでございます。しかし、このためにはやはり人材の確保とかあるいはまた中小企業の商品開発能力、販路開拓能力、あるいはデザイン開発力等、ソフトな経営資源の強化が必要であると考えるわけでございます。こういう産業おこし、村おこしの中小企業に対する施策としてどういうことを政府としては考えておられるのか、お聞かせいただければありがたいと思います。
  78. 見学信敬

    政府委員(見学信敬君) 日本経済の内需の振興の定着を図ったり、あるいは国土の均衡ある発展をまさに確実なものにしていくためには、地域の活性化が喫緊の課題だと存じております。特に地域活性化のかぎはまさに地域産業振興にあると思われます。地域産業の担い手たる中小企業による地域特性を生かした産業の創造を積極的に支援することが極めて重要と考えております。御指摘のような村おこし事業でございますとか、中小企業庁で進めてまいりました融合化施策においていろいろな商品開発がされつつございますが、御指摘のようなソフト面の経営資源の強化をさらに充実させる必要があると思っております。  中小企業庁といたしましては、従来から特定地域対策でございますとかあるいは特定産業振興対策を積極的に推進してきたところでございますが、つとに六十三年度におきましては、中小企業の円滑な新事業展開を支援するための新事業開拓保険制度を創設いたしましたし、また本年度につきましては、地域経済の牽引力となる中小企業の育成のために、地域中小企業の研究開発などのための施設の整備を行ういわゆる第三セクターに対しまして、中小企業事業団の出資を含む出融資制度を創設していただいたところでございます。また、地域経済活性化に資する新しい事業を行う者に対して特に当初の三年間などを特別な低利融資をするような制度も新たに設けたところでございます。  今後におきましても、各地域におきます産業おこしの芽を本格的な事業化に結びつけるために、中小企業者等によります商品開発でございますとかデザイン開発、あるいは市場開拓等のソフトな事業に対する積極的な支援を講じていきたいと思っておるところでございます。
  79. 松浦孝治

    ○松浦孝治君 午前中にもいろいろお話がございましたが、現在の日本経済は非常に好況であると言われておるわけでございます。しかし、地方においては人口の減少している県が実は急増をいたしておるのでございまして、一方、東京へは人口なり情報が一極集中しておる状態でございます。特に地方では、午前中にもお話がございましたが、若者の流出が将来の不安を駆り立てておるわけでございまして、国土の均衡ある発展を実現する点からも事態はますます悪化しているのではないかという感じを私は持っておるわけでございます。地域の発展なくして我が国全体の発展はないと私は考えておるわけでございまして、こういう今の東京一極集中状況をやはり多極分散型への方向に早急に持っていかなければならないと私は思うわけでございますが、こういう点に対して通産省としてはどういうような方策を考えておられるのか、通産大臣にお聞かせいただければ幸いだと思うわけでございます。
  80. 松永光

    国務大臣松永光君) 現在の景気の状況、そして現在における東京と地方との格差の拡大傾向の問題、これは先生御指摘のとおりであると思います。しかし、東京にのみ産業が集中し、人口が集中し、東京だけが活性化をして、そして地方は少しも活性化しないということでは、国土の均衡ある発展になりません。したがって、通産政策の国内政策として最重点事項は、この東京一極集中を是正する、産業を地方に積極的に移転して地方の活性化を図る、同時にまた、先ほど中小企業庁長官も申しました地方に芽生えてきた産業の芽を大事にしてそれを育てていく、そういったこと等を通じて地方の産業、地方の経済、これを活性化させるということが大事であると思っておるわけであります。そのために、産業の地方分散の一層の促進を図るための税制、予算、そういったものをぜひ確保したいということで、目下各方面と精力的に折衝しているところであります。ぜひこれをなし遂げたい、こう思っておるところでございます。
  81. 松浦孝治

    ○松浦孝治君 通産大臣より地方に対するいろいろ強力な活性化対策を考えておられるということで、積極的なお取り組みをお聞きいたしまして非常に意を強くしたわけでございます。どうか好況の中の日の当たらない地方に対しても積極的な施策を講じていただきますように心からお願い、期待をいたしておるところでございます。  通産省への質問はこれで終わります。ありがとうございました。  それでは、経済企画庁にお尋ねをいたしたいわけでございます。  経済動向なり今後の経済運営につきましては、お話が午前中にございましていろいろお聞かせをいただいたところでございます。そういう点で、私は物価の動向と内外価格差問題について企画庁にお尋ねをいたしたいわけでございます。  本年、消費税の導入もありまして、物価について実は注目されていたところでございます。一部には消費税の導入が引き金になってインフレが起こるのではないかという意見もございましたが、午前中の御答弁でもそういうことは起こっていないと、こういうような御答弁でございますが、再度、消費税導入によって日本の国内物価にどのような影響があったのか、また物価動向がどうであったのかをお聞かせ願いたいわけでございます。  また、本年に入りまして石油価格の上昇などがございまして、アメリカECにおいてもインフレ懸念がなされていたところでございますが、諸外国の物価の動向はどのような推移をしておるのか、あわせて物価の問題をお尋ねいたしたいと思います。
  82. 栗林世

    政府委員(栗林世君) まず、先生のお尋ねの消費税の導入が物価にどういう影響を与えたかということでございますが、私どもの方では、消費税は最終的には消費者に負担を求めることを予定している税でございますので、確かに導入時には物価が上昇するということでございました。しかし、物価上昇率というのは、これまでも御説明申し上げておりますように、いわゆるインフレ的な物価上昇率ではないということでございまして、一回限りのいわゆる物価水準を引き上げる効果ということだというふうに理解しております。  そこで、経済企画庁といたしましては、消費税の導入に際しまして物価モニターや地方公共団体を通じた価格の調査、監視体制というものの強化を図るとともに、物価ダイヤル等による相談窓口の拡充を行いまして対策をとっておったところでございます。  このような施策の効果もありまして、便乗値上げ的な動きというのは特定業種に限定されておりまして、その業種の中でもまた一部の事業者に限定されていたというふうに理解しております。さらに、その品目の上昇率も最近のところではほとんどもう落ちついた形になってきておりまして、物価水準全体には大きな影響を与えていないというふうに考えております。  それで、消費税の影響は、総合的に見ますと、私どもの方では一・二%程度の物価引き上げ効果というふうに試算しておったわけでございますが、おおむねその線で落ちついたというふうに考えておりまして、時期的にも大体四月に大部分あらわれまして、それから五月に若干見られて、六月にはおおむね出尽くしたというふうに考えております。  そこで、最近の消費者物価の動向を見ますと、東京都区部の速報で、午前中に長官の方から申し上げましたように、前月比でマイナス〇・九%の下落、それから前年同期比で十月三・一%のところが十一月では二・五%へというふうに落ちてきているのでございまして、消費税の導入によってインフレ的な物価は生じていないというふうに考えております。  次にお尋ねの各国との比較でございますが、一時世界的にも若干インフレ傾向になるのではないかということが心配されておりましたが、最近のところでは各国とも物価上昇率は非常に落ちついてきておりまして、例えば七―九月期で若干の国を見てみますと、アメリカ消費者物価四・七%、イギリスが七・七%、西ドイツが二・九%、フランスが三・四%、イタリアは六・八%、お隣の韓国では五・八%、大体こんな動きになっておりまして、その時期日本では二・七%でございますので、世界的に見ていただいても、日本の上昇率は一番低い形で物価は非常に安定しているということでございます。
  83. 松浦孝治

    ○松浦孝治君 今のお話では、消費税の影響は一回限りで、消費税がインフレを起こすであろうという一部の方々の御意見も結局は杞憂に終わったように思いますし、またお話にもございましたように、諸外国の物価と比べても日本の物価上昇は低い状態で安定をしておるということでございます。このように物価が安定しておることは国民生活の安定の点で非常に結構なことだと思いますが、最近では国民関心は、こういう物価上昇率の問題もさることながら、物価水準そのものへ向かっておると思うわけでございます。すなわち、我が国の物価は安定しているとはいえ、物価水準としては外国よりも高いんではないかという、こういう指摘でございます。  去る九月二十五日でございましたか、経済企画庁が発表した物価レポート’89においても、我が国の物価水準は高いという調査結果が発表されておるわけでございますが、こういう内外価格差が生じた原因はどういうところにあるのか、また、これの是正策はいかに考えておられるのか。そういうことで、先ほどお話がございましたが、政府・自民党においてはこの内外価格差是正策を検討するべく既に対策推進本部を設置しており、昨日は長官が御司会役で初会合が持たれ、そして内外価格差是正のために具体的な検討項目を申し合わせられて強力に推進をしていく、こういう会議が持たれたと聞いておるわけでございますが、こういう問題についての長官の御所見なり御方針なりお聞かせいただければ幸いだと思います。
  84. 高原須美子

    国務大臣高原須美子君) この内外価格差の問題につきましては、先ほど委員質問日米構造協議においても取り上げられておりますけれども、私の認識といたしましては、この内外価格差というのは、日本国民生活を豊かにするためになくしていくということだと思うんです。経済運営五カ年計画には、豊かさの実感できる国民生活の実現をということをうたっておりまして、その一つとして内外価格差是正というものを挙げております。したがいまして、海外との不均衡の是正のためというよりは、むしろ国民生活を豊かにしていくために内外価格差是正していく、その結果として国際的にもうまくいくのではないかというふうに私は考えて、この内外価格差是正に取り組んでおります。  ところで、この内外価格差でございますけれども、物価水準の国際比較を厳密に行うということは、習慣とか制度が違ったり為替レートが変動したりいたしまして困難でございますけれども、いろいろな数字をとってみますと、我が国の生活関連の物価水準は、ここ数年の急速な円高に伴いまして国際的に見て割高になっていることは否定できないと思います。御質問のありました物価レポートにおきましても、ニューヨーク、ハンブルク等との比較をいたしまして一・四倍ぐらいの高さが東京の物価水準ではないかというふうにそこでは報告しているわけでございます。  ところで、内外価格差の中身でございますけれども先ほど通産省の方から御説明がありましたのは輸出品の内外価格差あるいは輸入品内外価格差でございますけれども経済企画庁が発表いたしましたものは、いわゆる生計費といいますか生活水準といいますか、そういうものの内外価格差で、生計費で見て一・四倍ぐらい東京は高いのではないかということでございます。  そこで、生計費がそれだけ高いのは原因は何かという御質問だと思いますけれども、これはマクロとミクロと両側に原因があると思います。  マクロ的要因といたしましては、昭和六十年以降、御承知のように、円高が大変急速に進展いたしましたのに対して国内の価格体系が十分に円高を反映してついていけなかった面があったということです。それから第二に、国際的に見ますと、一人当たりの国民所得が高くなるほど国内の物価水準が高くなるという傾向がありまして、日本についてもこの傾向が妥当する面があるのではないか。特にその背景といたしましては、製造業に比べまして卸・小売業あるいは農業の生産性が低いということが挙げられると思います。  次に、ミクロ的な側の原因といたしましては、公的規制がある分野につきまして円高に伴う輸入価格の下落が国内価格の下落に結びつきにくいという傾向があることです。それから第二に、ブランド品につきましては、海外企業の高価格戦略に加えて、消費者の側にも高い価格に対して寛大であるというような傾向が見られること、それからミクロの第三の要因といたしましては、特に大都市圏での高い地価が家賃や土地利用型のサービス価格を押し上げて高くなる要因になっているということ、こんなことが挙げられるのではないかと思います。  そこで、こうした内外価格差国民生活を豊かにするためにもできるだけ縮小していかなくてはいけないということで、政府・与党が一体となりまして、先ほど質問のように、政府・与党内外価格差対策推進本部というものが設置されましてこの是正に取り組んでいくことになりました。そこで、昨日の第一回の会合で対策の基本的な方向づけを行う意味で次の六項目から成る申し合わせが行われました。  まず第一に、「関係省庁は、物資・役務に係る内外価格差調査等によりその実態把握に努め、その是正、縮小を図るため、必要に応じ、所管業界に対し価格情報の提供その他所要の措置を講ずる。」、第二に、「関係省庁は、流通について規制緩和、独占禁止法の厳正な運用等による競争条件の整備を図る。」、第三に、「関係省庁は、内外価格差是正、縮小に資するため、より一層の輸入促進や生産性の向上に努める。」、第四に、「公共料金については、国際的な観点からコスト構成等の検討をも行いつつ、一層の生産性向上に努めることによって、料金の適正化を図る。」、第五に、「地価については、土地対策関係閣僚会議における検討を踏まえて、関係省庁の連携を密にして、大都市を中心とした適正な地価の形成に努める。」、第六に、「その他規制緩和、独占禁止法の厳正な運用、消費者への情報提供等内外価格差是正に資する施策を推進する。」、これを申し合わせまして、今後、この申し合わせに沿いまして関係省庁一体となって是正に努めていく所存でございます。  既に航空運賃、郵便料金などもそういう問題に取り組んでいるという報告も昨日ございまして、各省庁これに真剣に取り組んでおりまして、物価担当官庁であります企画庁といたしましても、その具体化にできるだけ連携して協力していきたいと思っております。
  85. 松浦孝治

    ○松浦孝治君 ただいま長官より物価水準については、単に内外の単純な価格差ということじゃなしに、国民生活を豊かにしていくためにやはり物価水準を低く抑えていきたい、それに対して推進本部の中でもいろいろな検討項目を掲げて強力に推進をしていかれる御答弁がございまして安心をいたしました。  どうもありがとうございました。
  86. 広中和歌子

    広中和歌子君 御質問させていただきます。  日本経済競争力はすばらしいものがございます。日本人といたしましては当然誇り高く思うことでございますし、外国人さえそれを驚異の目で見ているわけでございます。特にプラザ合意以降の日本経済のパフォーマンスは、外国人であれば尊敬の念を通り越してフラストレーションを起こしてしまう、そういう人もいるわけでございます。  つまり、円高になりドル安になれば、当然のこととして日本輸出は先細り、アメリカ初め各国からの輸入がふえて、アメリカにとっては対日赤字解消につながるでしょうし、日本にとっては黒字の解消、そういうふうにいくだろうとだれもが予想していたわけでございますけれども、しかし、その単純な経済原則が日本には当てはまらなかった、通用しなかった。そういうことで、議会筋またアメリカの行政府スーパー三〇一条適用を決めたり、それから構造協議に入ったりと、そういうふうになっているわけでございますし一万ジャーナリズムでは、アメリカ人とか、それからオランダのウォルフレンなどは日本特殊論などを声高々に言っているわけでございます。このあたりを通産大臣、少し大きなマクロの視点からお考えをお聞かせいただけませんでしょうか。
  87. 松永光

    国務大臣松永光君) 先生御指摘のように、プラザ合意によって日本の為替が大きく円高に振れた。その結果として日本輸出競争力が弱まり、そして日本貿易収支黒字が大幅に減少するというふうに予想されたところでありますけれども、結果は必ずしもそうならなかったということなんでありますが、円高になった当初は、日本の産業も相当苦境に陥ったわけであります。日本側は、それを徹底した合理化、生産性の向上、これで実は乗り越えたんじゃなかろうか。その間、例えばアメリカの産業界はどうなったんであろうか。日本と同じ程度の努力をしておれば、あるいは日本アメリカに対する自動車とか家庭電気製品とか、そういったものの競争力は相当弱まり、アメリカ競争力が相当あったんじゃなかろうかと思うのでありますが、アメリカの方は日本ほど生産性向上への努力が必ずしも十分ではなかったのだろうか。その結果として、円高になったけれども、なお日本競争力を回復して、そして強い状況にある、こういうことになっているのじゃなかろうかと思います。  しかし、経済競争力というものは、その結果として貿易収支黒字を大きく出しておるわけでありますが、それでよろしいとするわけにはいかぬわけなのでありまして、それだけの黒字があるならば、むしろ国内の国民生活の真の豊かさ、国民生活の質の向上、そちらの方に日本経済力をより重点的に振り向けていくという努力をすることによって国全体の生活水準の向上を図る、こういった方に意を用いるべきときに来ているというふうに私は認識しているわけであります。
  88. 広中和歌子

    広中和歌子君 日本側としては座して何もしなかったわけではなくて、前川リポートなどもございますように、そしてまた今大臣もおっしゃられましたように、さまざまな努力もされたわけでございますけれども、具体的に今度は行政の側に伺いますけれども、今までは経済振興、そして輸出をふやしていく、そういうことでのリード役を果たしてきた通産省でございますけれども、今日本経済というのはある意味では転機に立っている。この転機をどういうふうに受けとめて具体的に対処されるのかということを伺いたいわけでございます。
  89. 内藤正久

    政府委員(内藤正久君) 先生御指摘のとおり、過去三年間を見ましても、九百億ドルを超える黒字が続いておりますし、今後もかなり高い水準の黒字が続く。この九百億ドルというのは、御案内のとおり、パリ・クラブというところで発展途上国に対する国の債権の繰り延べ、向こうから見れば債務の繰り延べをやっておりますが、三十カ国に対する総額で約千百億ドルでございますので、この九百億ドルというものがいかに大きいかということを我々も認識をしておるわけでございます。  したがいまして、まずその黒字を縮小していく、世界に貢献するような形でそれを還流していく、あるいはその前に黒字を減らすためにマクロ、ミクロでいろいろな努力をするということが基本だと思っております。  それで、まずマクロ面では内需中心の経済運営を図っていくとか、あるいはファンダメンタルズに適応した形での為替レートの安定を図っていくというふうなことが基本でございますし、ミクロ面ではいろいろの構造調整を図って、先ほど議論に上がっておりましたような内外価格差の縮小も含めて構造調整を進める、あるいは輸入拡大努力をするというふうなことが必要であると思っておりまして、そういう前提のもとに、とりあえず我々としては輸入促進のためのあらゆる努力をしたいということで、予算、税制等につきましても財政当局と議論をしておるということで、ひとつの黒字ということを前提にした政策展開、それが国民の豊かさにつながる経済展開というその二つの軸の中で施策をいろいろ考えておるというのが実態でございます。
  90. 広中和歌子

    広中和歌子君 アメリカのすべての議員じゃございませんけれども、一部の議員の中には、アメリカにとっては対日赤字でございますけれども、それに対して非常にいら立ちを持っているわけですが、彼らがいろんなことを日本側要求してくる。農業の開放であるとか、さまざまなことを言ってくるわけですけれども、ある一人の方の意見ですからすべてとは言いませんけれども、要するに黒字を減らしてほしいんだということ、それからアメリカが強いものを買ってくれればいいのだということなんですね。  それで、こんなことを申し上げても非常に難しい質問だとは思いますけれども黒字減らしのタイムテーブルですね、特にアメリカに対して。またはアメリカに対してできないのであれば、発展途上国からたくさん買ってあげるということでグローバルな経済のバランスを図るというようなこともあると思うんですが、どのようなお考えでいらっしゃるのか。  それから、それじゃアメリカは何を買ってほしいのかといったらば、スーパー三〇一条に出ているように、サテライト、スーパーコンピューターだと、そこのところはアメリカとしては自信を持っているところだというわけでございますけれども、サテライトとスーパーコンピューター、この二つの分野においてアメリカと比べた場合の日本競争力についてお伺いいたします。
  91. 山本幸助

    政府委員山本幸助君) それでは今おっしゃいましたスーパーコンピューター、人工衛星について簡単にお答えします。  まず、スーパーコンピューターはアメリカが大変強い分野でございます。最近、スーパーコンピューターは非常に利用分野がふえまして、自動車、エレクトロニクス、建築と非常に幅広いわけです。そういうことで、民間部門で言いますと、最近アメリカから非常に多くのスーパーコンピューターが輸入されております。数十台の規模で輸入されております。それから政府機関におきましても既に七台買っておりますけれども、今後も内外無差別、公平な導入ということで進めていきたいと思っております。  それから、人工衛星でございますが、日本で現在稼働中あるいは近々稼働予定のものが全部で八つございます。これは五基はアメリカから輸入いたしております。今後ももちろんこういう衛星というものは技術開発ということで、国内的な技術開発が必要なものもございますけれども、部品を含めてできるだけ海外からも輸入するという方針でございます。
  92. 内藤正久

    政府委員(内藤正久君) 先生御質問の初めの方の黒字減らしのタイムスケジュールいかんという点でございますけれども、御案内のとおり、日本国の経済運営の問題もございますが、相手国における経済運営の態度、あるいは世界全体の経済成長の度合いというふうなものがございますし、それの反映としての為替レートの動き、あるいは個別の品目ごとに言いますと、例えば原油の価格がどうなるかということで非常に不確定要因が多いものでございますから、黒字をこういうタイムスケジュールでこう設定するというのは、日本の支配ができる要素ではございませんので、そういうタイムスケジュールは持っておりませんが、方向としては、先ほど申し上げましたように、黒字を縮小していくということに最大の努力をするということでございます。  それで、その内容は、先ほども申し上げましたように、マクロ、ミクロいろいろ努力はございますけれども、その中で対策の緊急の必要性も考えまして各種の施策をぜひ講じていきたいということでございます。
  93. 広中和歌子

    広中和歌子君 そうした中で、何というんでしょうか、保護主義的といった傾向とか、それから国際分業というんでしょうか、そういう考え方なんかもあるんじゃないかと思いますけれども日本は、きのう、おとといの新聞を見ていましても、コンピューターの分野ですごい何か発見というのか、研究開発なんかもどんどん行われておりますし、このままほうっておくと何だか日本世界経済を席巻してしまうんではないかなというような、いいことなんですけれども、同時に恐ろしいような、つまりバランスある世界ということを考えるとちょっと恐ろしくなるような気がするんですが、そういうところで管理貿易などというふうなことが言われている、そういうことへの誘惑がかなりあると思うんですが、通産省としてはお考えはいかがなんでしょうか。
  94. 内藤正久

    政府委員(内藤正久君) まず分業論でございますけれども、方向としてはいわゆる水平分業のような形で世界との連携関係をより深めていくということが一つの方向だと思っております。したがいまして、例えば耐久消費財でございますと、自動車等でございますと、その部品をさらに輸入するとか、あるいは電気製品でございますと、半導体をさらに輸入するとか、そういうもち合いの形で水平的な分業関係が進んでいくというのが自然の方向でございますし、そういう方向に現在動いておると思います。  それから、二点目の管理貿易についての誘惑はないかという点でございますけれども、御案内のとおり、通産省は自由貿易を標榜いたしておりますし、それが経済運営のみならず、平和の維持のためにも不可欠な方針であると確信をいたしておりますので、人為的に輸出を抑えるというふうな形の管理貿易という考え方は一切持っておりませんし、それを行うことによって世界的に保護貿易主義の引き金を引くということは好ましくない。ただ、外国の要請の中で、特定の品目について集中豪雨的な輸出はとめてほしいというふうな要請がありました場合には、そういう国際的な議論のもとに特定のものについて調整をするということはありますが、それ以外に日本側からイニシアチブを持って管理貿易をするという考え方はとっておりません。
  95. 広中和歌子

    広中和歌子君 先ほど経済企画庁長官のお話を伺っていましても、ここ数年の経済成長率は多分高いだろう、四%の成長率なんて言っていらっしゃいまして、ともかく日本世界の中で経済大国であるということは紛れもない事実でございます。そういう中で、日本国際的な経済力にふさわしい評価を得るためにさまざまな形で貢献していこうという御発言が総理とか政府の中からあるわけでございますけれども、通産省としてはどのようなアイデアをお持ちなのか。環境問題などでリーダーシップをとるという政府のお考えですね、何人かの総理が発言されていますけれども通産大臣といたしましては、この分野におけるリーダーシップをとることについてどのようなお考えでございましょうか。
  96. 松永光

    国務大臣松永光君) 日本が研究開発を進めて、そして高い技術力を持つということは、これは日本のためであるのみならず、世界全体の発展にも貢献するものだと、こういうふうに思うわけでありまして、日本輸出競争力が強いからといって研究開発や技術の一層の発展を遠慮する必要は全くない、むしろ積極的にこれを進めて、そして日本の発展と同時に、世界の発展、繁栄に貢献するというのが望ましい姿勢ではなかろうか、こういうように思っております。  今の環境問題でございますが、この問題は文字どおり地球的規模の問題でありますし、世界全体が協力し合って解決をしていかなきゃならぬ問題であります。ただ、日本という国は国土が非常に狭い、その中でこれほどの大きな経済の国になりましたので、それだけにかつては環境問題で大変な苦労をしたわけであります。その苦労の中から日本は省エネルギー、あるいは大気を汚染しないようにCO2をできるだけ排出しないような化石燃料の燃焼技術、あるいは脱硫脱硝等々の技術、これも大変すばらしいものを持っております。さらに、この技術に加えて、地球環境を保全しながら、同時に経済成長を図っていくための新たな技術を開発していくということを通産省としては検討しておるわけでありまして、地球環境産業技術研究所などというものをつくりまして、そして世界の健全な経済成長と地球環境保全を技術力をもって解決していく、こういった方向で我々は進もうとしておるわけであります。  したがって、発展途上国を中心にその他の国々に対しましても、日本の持っておるすぐれた技術を積極的に活用して、その技術をもってそれぞれの国のCO2の排出が多くならぬように化石燃料の燃焼技術の改善措置その他について協力をしていきたい、こう考えておるところでございます。
  97. 広中和歌子

    広中和歌子君 私も、環境問題の外国人の専門家から、日本にそうしたリーダーシップをとってほしいという要望を聞きました。日本は、今おっしゃいましたように、そういった意味のテクノロジーもあるし経済力もある、そしてアジアにおいて非常に大きな力を持っているのであるから、そういうところで省エネの技術を発揮してほしいと。しかし、何か日本に関しては、一方ではそのように高い技術を持ちながら、意外と環境問題に関してはイメージが悪いというんですね。そのイメージはもしかしたら事実に基づいていないものなのかもしれませんけれども、例えば試験捕鯨であるとか、それから流し網であるとか、それから割りばしであるとかということで、非常に重なり合ったイメージがあるのだそうでございます。  そういう中で、日本がリーダーシップを発揮していこうと思ったらば二つの要件があるというんですね。これはオランダの元環境大臣をしていた方でございますが、おっしゃるには、まず国内の事業者の間でそうした環境問題を前面に押し立てていくといったコンセンサスが必要だし、もう一つはイメージを高める必要がある、そういうことを言われるわけです。  そこで、国内産業におきましては、日本は非常に高い環境基準を持っているわけでございますけれども、それはそれといたしまして、日本のそういう高い基準を海外においても守ろうと、そういった種類のコンセンサスは企業の中で得られるのかどうかということが一点。  それからOECF等、海外援助の資金をお持ちでございますけれども、融資の際に環境アセスメントというんでしょうか、そういうものを行った上で融資をしていらっしゃるか、そういうことの有無によりまして日本の環境問題におけるリーダーシップのイメージというんでしょうか、それが変わってくるんじゃないかと思うんですが、その点についてお答えいただきたい。
  98. 堤富男

    政府委員(堤富男君) お答えをさせていただきます。  この問題は大変重要な問題でございまして、日本の海外におけるイメージという点から非常に重要だと思っております。民間の方での工場づくりの場合も最近かなり環境に注意をするという形でいろいろやっておりますが、確かにおっしゃるような意味で、日本の環境基準の厳しさそのものかというと、必ずしもそうでない点はあろうかと思います。ただ、これはなかなか難しい点がございまして、一方で日本の環境基準を押しつけたりあるいはそれを守るように現地でするということはかなりコストがかかるということもありまして、実は発展途上国側からも高いレベルでの基準を適用した場合のコストというのを考えておりまして、衣食足りて環境を知るというような感じのところもなかなかあるわけでございます。  それからもう一つ日本政府として経済協力をやる場合にも、なるべく環境を害さないようにということで、海外経済協力基金なんかでは最近はアセスメントをしながらやるということを導入しつつあります。世界各国でも始めておりますが、日本もおくれないようにということで、このイメージづくりということも関連しまして一生懸命やるような方向で現に検討を始めておる段階でありまして、まとめて申し上げますと、環境を守るということのコストをだれが負担するかということがなかなかイメージづくりの観点からも難しい点ではありますけれども、今後我々はできる限り努力をしていくということでないといけないと思っております。
  99. 広中和歌子

    広中和歌子君 小さなことが大きなイメージダウンにつながるということがあるわけで、例えば三百頭の試験捕鯨でございますけれども、あれなんかも日本が与えている環境に対するイメージダウンには非常にコストが大きいというようなことを指摘されたことがございます。そういうことで、今後ともぜひ環境問題には十二分の御注意を払われますように私の方からお願いしたい次第でございます。  次に、具体的なプラザ以降の円高への対応として経済の動きがどうなっているかちょっとお伺いしたいわけでございます。  産業界としては内需振興、それから生産拠点を移す、その二つをなさったと思うんですけれども、生産拠点を外に移した企業、金額においてでも件数においてでも、数字がわかれば教えていただきたいのですが、その結果として空洞化といったような問題が円高初期の時期にはよく言われておりましたが、実際には空洞化というのは起こったのでしょうか、そして今後起こり得るのかどうか、そういう問題についてお答えいただければありがたいと思います。
  100. 内藤正久

    政府委員(内藤正久君) 先生御指摘のとおり、海外へ生産拠点を移すという動きが急速に高まっておりますけれども、最近時点の数字で見ますと、日本企業が国内で生産しておりますものと海外で生産しておりますものとの比率が約四・八でございます。それで、西ドイツの場合で一七%強、アメリカの場合で二二%強でございます。したがいまして、アメリカのような水準までいきますと、空洞化ということを心配せざるを得ないという状況もあるかと思いますが、日本の現在の水準の四・八程度でございますと、やはり世界的な貢献あるいは企業国際的な展開の中でなお海外投資等は十分に評価し得るという実態でございますし、国内もむしろ労働需給が逼迫するというような状況の中で、空洞化ということは今のところ心配ない状況だと思っております。
  101. 広中和歌子

    広中和歌子君 個々の産業を例に挙げてはちょっとぐあいが悪いかもしれませんけれども、たまたま自動車産業について数字を見ておりましたらば、かなり生産拠点を海外に移していらっしゃるわけです。だから、つまりだんだん現地生産がふえていくわけですね。それに対して、今度は日本の方でどのような生産調整をしているのかなと思って見ましたら、余り日本の方で生産調整していらっしゃらないんですね。  日本で今どんどん自動車が売れているようでございまして、しかも高級車が売れている。それは結構なんですが、ともかくこういう消費税導入、税制改革で物品税がなくなりましたから、追い風の中で輸出できなくなる分日本の中で売れれば、それはそれでバランスして結構なんですが、日本はこのように狭い国でございますし、道路問題なんかもございますから、そういうことで、どういうふうにバランスをとっていらっしゃるのか。このまま輸出台数も減らず、そして向こうで現地生産をどんどん上げていけば、またすごい大きな経済摩擦になるんじゃないかなと、自動車は何しろアメリカ人にとっては日本人にとっての米みたいなものでございますから、ちょっとそこのところのセンシティビティーが必要なんじゃないかと思うんですが、どなたかお答えいただけませんか。
  102. 山本幸助

    政府委員山本幸助君) 一般論はございますでしょうけれども、一応自動車ということでお答えさせていただきます。  自動車につきましては、対米ということでいきますと、このところ自主規制をしているということもございまして減っております。一九八六年が二百三十万台でございましたけれども、八七年が二百二十一万台、八八年が二百十七万台ということで減っております。恐らく今年度ももう少し減るんではないかということでございます。  その大きな原因というのは、今先生御指摘のように、現地で日本の自動車がいわゆる日本ブランドということでできております。この数字を申し上げますと、八六年が六十二万台、八七年が七十四万台、八八年が八十九万台ということで徐々にふえてきております。そういうことで、現在アメリカでの立ち上がりに応じて日本側輸出が減っているというのが現状でございます。  それから、余りそういうことを考えずにどんどん自動車を生産しているんじゃないかという御指摘あるいは御懸念でございますけれども、現在、自動車の国内設備投資というのは、去年おととしに比べまして若干ことし高うございますけれども、その中身を見ますと、やはりここのところおくれていましたいわゆる人手不足に対する合理化投資、あるいは設備を新しくする、あるいは消費者ニーズに合わせたモデルチェンジのための投資というのが多うございまして、いわゆる能力増強投資というのは全体の投資の一割ぐらいということで、先生御懸念のような、そういう世界の情勢を考えずにどんどん設備をふやしているというようなことはないというふうに考えております。
  103. 広中和歌子

    広中和歌子君 いずれにしましても、二百万台以上プラス、八八年ですか、八十九万台足すと三百万台近い車がアメリカで売られているわけですけれども、一方、輸入の方はどうなのか。二年前に私予算委員会で質問したことがあるんですけれども、あのときには六千台だったのですが、少しはふえているんでしょうか。  それからアメリカ輸出する場合ですと、バルクというんですか、数のメリットがございますから運賃などが安くなるというふうに伺っておりますけれども、ともかく港から消費者の手にまたはディーラーの手に渡る期間が非常に短いんですね。個人輸入の場合でしたらその日のうちに持って帰れるというようなこともございますんですが、日本の場合、少しは港から消費者に渡るまでの時間は短縮されたんでしょうか。
  104. 山本幸助

    政府委員山本幸助君) 先生御指摘のように、日本のいわゆる乗用車の輸入というのは従来非常に低うございました。一九八五年で見ますと五万台ぐらいでございましたけれども、これが実は最近非常な伸びになっております。八七年にはこれが九万七千と約十万になりましたが、去年は十三万台、ことしは十月まででもって既に十四万台と大変な伸びでございます。この中で特に西ドイツの車が売れていまして、これにつきましては、何と日本から西ドイツに出す車よりも輸入する車の方が多くなったということで逆転の現象も起こっております。そういうことで、輸入車はここのところ大変好調でございます。  先生おっしゃった時間がかかるということは、日本に入りますときに排気ガス等の公害規制その他でもってどうしても直さなきゃならない部分があるということで、そういうものを直すのに若干時間がかかるということ、それからもう一つは、必ずしもユーザーのニーズに合ったものがすぐには調達できないというふうなことがありまして若干遅くなるというふうな傾向はございますけれども、それも徐々に日本での体制、そういう輸入車の体制ができるに従いましてその日数は縮まっているというふうに心得ております。
  105. 広中和歌子

    広中和歌子君 輸出がふえましても輸入がふえればバランスとして大変結構なわけで、今度は輸入の方について一般的な質問をしたいと思うんですけれども、これは同時に、構造協議の中で流通機構の改革ということが一つの大きなテーマになっているわけでございます。流通機構の合理化に対する投資はどのくらいでございましょうか。
  106. 山本貞一

    政府委員山本貞一君) お答えいたします。  流通につきましては、実は非常におくれた部門と従来から言われておるわけでございますが、一つの指標を申し上げますと、昭和五十三年に大規模店、五百平方メートル以上の売り場面積を持つものでございますが、その数が二千五百程度でございましたが、六十二年の統計ではそれが一万六千程度、売り場面積で申し上げますと四千万平方メートルぐらいということになっておりまして、設備投資額については今厳密な数字を持ち合わせておりませんので、後で御連絡申し上げたいと思います。
  107. 広中和歌子

    広中和歌子君 輸入が過去数年の間にどのくらいふえて、その中に製品輸入の割合がどうであるかお伺いしたいと思います。
  108. 内藤正久

    政府委員(内藤正久君) 一昨年から昨年の一年間で約三百八十億ドルの輸入がふえております。それで、その中で製品輸入が非常に伸びておりますので、最近ほぼ製品輸入比率は全輸入の五割程度という状況になっております。
  109. 広中和歌子

    広中和歌子君 さらに輸入を促進するためには輸入促進税というのを考えていらっしゃると伺ったんですけれども、それは実現するんでございましょうか。
  110. 内藤正久

    政府委員(内藤正久君) 輸入促進税制につきまして今政府部内でいろいろ議論をし、調整中でございます。したがいまして、その結論は多分来週中にも出ると思っておりますが、今のところは部内調整中でございます。
  111. 広中和歌子

    広中和歌子君 私としては、賛成、反対、意見は差し控えたいわけですが、輸入促進税は、つまり輸入元がたくさん輸入すれば何か税制面で優遇措置が受けられるということですよね。それは円高になりましたときに、差益還元が消費者の手元になかなか届かなかったいきさつがあるんですね。それで、幾ら港のところで安く入りましても、結果として消費者が得をしないんであれば意味がないんじゃないかなというような懸念もあるんでございますが、そこのところで流通機構そのものをもっと簡素化するというのでしょうか、何とかしなきゃいけないんじゃないか、それと一緒にやっていっていただかなければといった気持ちもあるんですが、別に反対するつもりはないんですよ、お伺いいたします。
  112. 内藤正久

    政府委員(内藤正久君) 輸入促進税制そのものについては、先ほど申し上げましたように調整中でございますが、基本的考え方は、国内で既に国産品が販売されておる、そういう状況の中で輸入品はいわば後から参入してくる商品という形になるものが多いわけでございますが、その場合には日本のユーザーに合ったように商品を改良するとか、あるいは流通経路を新たに設定するとか、アフターサービスのためのコストをかけるとか、とりわけ輸入品でかつ安定供給ということになりますと、在庫を多目に持たなければならないというふうなことで非常にコストがかかる。したがって、コストがかかるということで輸入品を取り扱わない。要するに輸入が伸びないということになってまいります。したがいまして、むしろ輸入を促進すれば、そこのところの不利益を補正することになって、輸入品がより取り扱われるようになれば競争がむしろ促進をされるということで、その競争の結果、価格が下がり、その段階でエンドユーザーが直接輸入することもございますので、おのずから流通機構の合理化にもつながっていくということで効果があると期待いたしております。  それで、輸入について物価レポートで見ますと、輸入拡大がコストの引き下げというものと競争を促進するという両面から物価の引き下げに非常に効果があるということを企画庁の方で分析をしておられまして、耐久消費財を例にとりまして、耐久消費財の輸入が一〇%伸びますと、過去の実績で卸売物価で〇・七%、消費者物価で〇・一%下がっておるわけでございます。そういうことで、輸入そのものがやはり価格引き下げ効果がある、競争促進効果がある、そして流通機構の改善効果もあるということで、過去の分析によれば、非常に消費者にも利益が均てんするような形になっておりますので、そういう動きをさらに加速させたいというのが現在の考え方でございます。
  113. 広中和歌子

    広中和歌子君 余り長期にわたらない方がいいと思っているんですけれども、私はむしろ流通機 構の改革への投資に減税が行われたらどうかなと。中小企業などの設備投資には、生産部門ですけれども、設備投資には減税措置があったと伺いますけれども流通機構の改革においては余りそのようなことを聞かないわけですが、いかがなものでしょうか。今、それだけじゃなくて、どんどん我々が知らないうちに流通機構の改革が行われている、そちらの部門に民間の投資が非常に盛んだというふうにも伺ったんですが、現実はどうなんでしょうか。
  114. 山本貞一

    政府委員山本貞一君) 流通部門の投資というか近代化投資につきましては、大企業、いわゆる大店舗につきましては非常に従来から積極的でございます。ただ、情報化投資、例えばPOSのための投資とかあるいは物流のための投資とか、このあたりについてはより推進すべきだということで、開銀の融資なりあるいは税制上の一部措置を講じております。  問題の中小企業でございますが、中小商店につきましては、今申し上げました税制の中でも特に中小企業技術基盤強化税制というのがございまして、卸売業、小売業につきまして情報近代化あるいはその他関係の近代化投資を行う場合の税制上の措置を講じております。その他一般的な中小企業全般の大きな促進策というのは税制上はございません。  そのほか中小企業対策として、例えば中小商店の構造改善、それから中小商店の育成、振興という立場から、中小企業庁におきまして、中小企業事業団等を通じまして融資なり出資なり助成措置を行っておるところでございます。
  115. 広中和歌子

    広中和歌子君 先ほど谷畑委員質問を聞いておりまして、ガソリンスタンドに人手がないというふうに言っていらっしゃいましたけれどもアメリカなんかもう半分ぐらいがセルフサービスになっちゃって、そういうのも、だから、これから合理化していこうと思えばいろいろまだできるんじゃないか、そういうときに資金が要るんではなかろうかなとちょっと思ったわけでございます。  長期的に見て、流通機構がどんどん簡素化されていくというふうになりますと、余剰人員というのが当然出るわけでございますけれども、どういう部門に吸収されていくというふうに予想していらっしゃいますでしょうか。
  116. 棚橋祐治

    政府委員(棚橋祐治君) プラザ合意、六十年九月以降の急激な円高の進展、定着ということで構造調整が進んでまいったわけでございますが、昭和六十年から六十二年前半にかけまして、輸出型産業を中心とした合理化等により確かに製造業の就業者がかなり減少いたしております。例えば昭和六十年に製造業は千四百五十三万人でありましたが、昭和六十二年には約三十万人減の千四百二十五万人に減少をいたしました。その間、第三次産業は、昭和六十年三千二百八十三万人が、約百五十万人二年の間にふえまして、昭和六十二年には三千四百三十二万人ということでございます。さらに昭和六十三年には三千四百八十六万人、すなわち昭和六十年に比べますと約二百万人この分野で雇用がふえております。産業全体の労働力もふえておりますので、製造業の中の目減りは今申し上げましたように三十万人ぐらいでありますが、そのほかに増加分もサービス業等を中心とする三次産業で吸収をいたしておるわけでございます。このサービス業等の三次産業の分野でも、特に情報関係の対事業者サービス、これが非常にふえてきておるわけでございまして、そういうことでございます。  ただ、製造業におきましては昨今非常に好調でございまして、昭和六十三年には再び千四百五十四万人ということで昭和六十年の水準に一応戻っております。そういう状況でございます。
  117. 広中和歌子

    広中和歌子君 戦後農業人口が五〇%ぐらいであった時期がございましたね。それで、産業の振興とともに農業人口がどんどん生産部門の方に吸収されていった。今度流通機構の改革ということでさまざまな不安もあるわけでございますけれども、同時に新たな分野があるというふうに、そして流通部門の合理化が同時に他の必要な部分の産業に貢献する、そういうふうに受け取ってよろしいでしょうか。
  118. 棚橋祐治

    政府委員(棚橋祐治君) 先生御指摘のようなことになると思います。ただいまも申し上げましたように、特に三次産業の中でも情報関係のいろいろの新しい業務、それからなかんずくソフトウエアの開発などに従事するシステムエンジニアとか上級プログラマーとか、そういう方々の需要が今後急増してまいりまして、むしろ我々の見通しでは、このまま放置しますと、二〇〇〇年にはSEあるいは上級プログラマーが百万人前後も不足する、こういう事態にもなるわけで、これはまた別途いろいろの対策を講じつつあるわけでございますが、そういう意味で、新しいサービス分野が出てまいりまして、その分野で流通の合理化あるいは製造業の合理化で人員が余剰人員になった場合に十分吸収が可能である、このように考えておるわけでございます。
  119. 広中和歌子

    広中和歌子君 それに伴いまして教育体制などの整備が行われ、スムーズに行くことを望んでいるわけでございます。  さて、具体的な消費者の立場から見た今度は買い物の方を伺います。  何か伺いますと、先ほどもおっしゃいましたね、インポートセンターというのでしょうか、大阪の港ですか、大阪サウスポートに大きな流通センターみたいなのができて、小売の方が直接そこで物を見て買えるといったようなことが計画されていると聞きましたけれども、通産省でも何かワールド・ショッピング・システム構想というのをお持ちだとかおっしゃいましたけれども、具体的にちょっと教えてください。
  120. 山本貞一

    政府委員山本貞一君) ワールド・ショッピング・システム構想について申し上げます。  私どもは平成二年度の予算要求調査費を要求しておりますが、日本消費者個人が外国の物を直接輸入できる、個人輸入でございますが、個人輸入という仕掛けと宅配便、宅急便等を組み合わせまして、それからあと情報機器、その三つ、三種の神器というか、それを組み合わせて個人が外国の物を速やかに、しかも見本を見ながら買えると、そういう仕掛けというか、システムを構築したい、そういうことによりましていろんな流通の新しいルートを開拓できると思っておるわけでございます。
  121. 広中和歌子

    広中和歌子君 日本人はサービスを非常に大切にする、だから値段には余りこだわらないというふうに思っていらっしゃる方があるようでございますけれども、決してそんなことはないのじゃないか。そういう人もいるでしょうし、やっぱり安ければうれしいという人も多いのじゃないかと思うので、消費者はどういうものがどのくらいの値段で外国では買えるのか、そういう商品知識がぜひ必要なんですね。そういう意味でも、そういう情報を与え得るような場所ですね、単に業者だけじゃなくて一般の人たちも入って見られるような、または買えるような、それからまた、通販とかカタログ販売というのでしょうか、そういうものが非常にいい消費者教育になると思うのでございますけれども、そちらの方についてもっとお力を入れていただくお考えはございますか。
  122. 内藤正久

    政府委員(内藤正久君) 輸入との関係でお答え申し上げますと、今おっしゃった内外価格差のある品目、そういうものを通信販売あるいはパンフレットでの販売あるいは情報機器を通じての販売というふうなことはぜひ前向きに考えていきたいということで、これはまだ検討中でございますけれども、コンピューターネットワークを全国に形成いたしまして、地元で国際的な経済センターというふうなものを例えば府県に置きまして、それと商工会議所等が結びついた形で、そこへ消費者が相談をすればそういう情報が提供できるようなシステムというふうなもの、あるいは一度買った後で問題が起こりました場合のアフターサービスについての、どこに問い合わせればいいかというふうなシステムもぜひ考えていきたいということで、輸入促進の一環としても現在検討中でございます。
  123. 広中和歌子

    広中和歌子君 ともかく輸入品というのが非常に高いことは事実だろうと思います。ですから、ぜひこの点において通産省の方からも輸入に、そしてできるだけ安い値段で消費者に届くようなシステムに配慮していただきたいとお願いします。  ちょっと話題を変えましてココムについて伺います。時間が足りなくなりましたので、多分これが最後の質問になると思います。  東西ドイツの壁が取り払われて東ヨーロッパに民主化の風が吹いているわけでございます。そして米ソ首脳会談、非常にうまくいっておりまして回を重ねるごとにいい雰囲気が出ている。そういう中で、アメリカ自身も対共産圏輸出一つの足かせであったところのココムを見直そうといった動きが出ているようでございますけれども日本の対共産圏貿易はどのような状況なんでしょうか。どちらかというと、アメリカに足を引っ張られる形も一方ではあり、一方では特にソ連に関しましては政経分離は不可ということで余り積極的ではなかった部分があったのじゃないかと思うのでございますけれども、これから対共産圏貿易について、また援助も含めましてどのように積極的に取り組んでいかれるおつもりなのか、お伺いいたします。
  124. 内藤正久

    政府委員(内藤正久君) 今御指摘の中のココムに関連した部分についてお答え申し上げますが、先生御指摘のとおり、東西関係の変化、とりわけ最近の東欧諸国の民主化、自由化の動きというものに我々も非常に注目をしておるわけでございます。  それとの関係で、ココムについてどう考えるかということでございますが、ワルソー条約が厳然として存在をし、その体制自身は今は変わっていないという状況の中では、西側自由諸国の安全保障確保という観点からできておりますココム、その中での共産圏に対する高度技術の無制限な流出防止という考え方は現状では引き続き重要であると考えております。したがいまして、それをより効果的な運営をいたしますために、規制対象品目を合理化して見直していくというふうなことは常時行っておりますけれども、ココムの枠組みそのものについては維持していく必要があるというふうな考え方でおります。  したがいまして、東欧問題との関係では、このような立場に立ちましてココム十七カ国全体の議論の中で参加国と協調しながら国際情勢の動きを踏まえて検討していきたいということで、御案内のとおり、ココムは十七カ国全体の合意になっておりますので、一国が反対すると全体としてまとまらないという状況はございますけれども、それは何も対米依存、重視ということではなくて、それぞれの国がそれぞれの判断で議論をしておる。ただ、そこで決まったことは実行をしていくということでございます。
  125. 堤富男

    政府委員(堤富男君) 一般論の部分をやや補完させていただきますが、日本は、先生御案内のとおり、貿易立国ということでございまして、どの国とも均衡ある発展、健全な貿易ということを常に考えておる立場でございますが、ただ最近の経済改革、技術改革というのを見ておりますと、やはり先方の方にもいろいろまた問題はあるようでございまして、外貨不足ということに非常に悩んでいるということがございます。一部の国は日本との貿易でお金が来ないとか、あるいはお貸ししたものがなかなか返ってこないとかという難しい事情もございますし、今内藤局長の方からございました西側全体としての一つの制約というものもあろうかと思いますが、そういう点の一定の制約があることは私はやはりやむを得ないと思っております。  ただ、基本的な考え方としては、最近日本政府全体としての東欧への援助、ポーランド、ハンガリーへの援助というようなことも考え始めておりまして、いわゆる共産圏という言葉が少しいろいろにじんできているような感じもしておりますので、我々としてもこの辺を十分今後考えていきたいというふうに思います。
  126. 広中和歌子

    広中和歌子君 通産大臣、もしコメントがございましたら……。なければ結構です。
  127. 松永光

    国務大臣松永光君) ございません。もう局長の言ったとおりです。
  128. 広中和歌子

    広中和歌子君 はい。どうもありがとうございました。  質問を終わります。
  129. 市川正一

    ○市川正一君 今回、この一般質疑の機会に政府にたださなければならない問題は山積いたしております。特に日米構造協議をめぐる問題など重大でありますけれども、本日は極めて限られた時間なので、私は原発問題に絞って質問を行いたいと存じます。  最近原発の事故が多発し、国民の間に原発の安全性に対する不安が広がっております。例えばことしの初めに福島第二原発三号機の再循環ポンプの破損事故に始まりまして、四月には島根二号機、大飯一号機、玄海一号機、六月には福島第二の二号機、九月には島根一号機、東海原発浜岡三号等々、枚挙にいとまがありません。  そこで、私はきょうは中部電力浜岡原発の敷地地盤、一、二号炉の耐震性についてただしたいのであります。と申しますのは、八四年四月の百一国会において私はこの問題を取り上げて以降、系統的に追跡してまいったからであります。  浜岡一、二号機は、東海大地震の危険性が指摘される前に設置が許可されたものであります。したがって、東海大地震を想定した耐震性の審査がなされていないと思うんでありますが、いかがでしょう。
  130. 向準一郎

    政府委員(向準一郎君) お答え申し上げます。  浜岡原子力発電所の一、二号機につきましては、おっしゃるとおり、東海大地震ということが今先生御指摘あったわけでございますが、原子力発電所の耐震設計を考えます場合には、過去のいろいろな地震歴を集めまして、それを評価して耐震の設計震度というのを決めているわけでございます。それで、浜岡一、二号機につきまして、当時ありました審査指針ということで審査されたわけでございますが、昭和五十三年に耐震設計の審査指針が新たに策定されたということで、三、四号機の耐震設計はそれによってなされているということでございます。  それで、この安全性という観点で今のお話があるんだと思いますが、当省といたしましては、その新しく策定され三、四号機で使われました設計地震動というのを用いまして一、二号機につきましても耐震設計をもう一度検討し、問題のないことを確認したというのが現状でございます。
  131. 市川正一

    ○市川正一君 今の御答弁を確認いたしたいんですが、要するに八〇年十二月だと存じますが、再チェックしたと。それは一、二号機の機器冷却系導水管を支えている砂地盤に関するデータも改めて中部電力に提出させ、それに基づいて通産省が液状化の有無を審査したということとして理解してよろしゅうございますか。
  132. 向準一郎

    政府委員(向準一郎君) お答え申し上げます。  五十五年にいろいろ検討をし、レビューをしたわけでございますが、このレビューをいたしました対象といいますのは、原子炉で一番重要な原子炉圧力容器、内部構造物あるいは制御棒の挿入性、原子炉格納容器あるいは原子炉圧力容器に直接接続されております配管、それから緊急炉心冷却系等主要機器について検討して問題ないことを確認したものでございます。
  133. 市川正一

    ○市川正一君 私が今お聞きしたのは、東海大地震の話から入りまして、そして液状化の有無を審査したのかどうかということをお聞きしたんですが、そのことについてお答えがなかったので、改めて私は原子力安全委員会に確認をいたしたい。  東海大地震が指摘された当時、審査中であった浜岡三号炉の審査に当たって安全委員会が独自に敷地地盤の液状化の評価を行い、そのおそれはないと、こうされております。ところが、一方では浜岡原発の敷地地盤の液状化の可能性指摘する有力な意見もあります。私も同様重大な疑惑を持っております。だから、こうして伺っているんです。  そこで、本当に液状化のおそれはないのかどうか、その判断を下す基礎になったデータがあると思うんですが、これを公表していただきたい。客観的なデータに基づいて論議を煮詰めていけば、これははっきりするわけでありますが、原子力委員会、どうですか。
  134. 鈴木治夫

    説明員(鈴木治夫君) 浜岡三号炉増設にかかわる原子力安全委員会の安全審査結果報告におきましては、先生御指摘のように、地震時における敷地前面砂丘の液状化については、最近の知見等に基づいて検討した結果、液状化が発生する可能性のある範囲は一部であり、これによる原子炉施設への影響はないものと判断しているという結果報告が出ております。これにつきましては、このような審査結果報告に至りました経緯は、通産省からの説明等をもとにいたしまして、原子力安全委員会の下に設置されております原子炉安全専門審査会の専門家の知見により総合的に判断されたものでございます。  それで、先生御指摘の生データといった話につきましては、まとまった形で御提示できるような資料はないということで、今まで出してない。その辺のことは御了解いただきたいというふうに考えております。
  135. 市川正一

    ○市川正一君 要するに一部に液状化のおそれあり、そしてまとまったデータがございませんのでお見せできませんと。こんなつじつまの合わぬことないですよ。そうでしょう。だから、データに基づいて論議しようじゃないかと、こうフェアに言うているんですよ。  大臣、お聞きしたいんですが、私はこういう態度というのは自主、民主、公開の原則に照らしてやはり至当なものとは言えないと思うんですが、指導監督に当たられる大臣いかがでしょうか。データを公表すべきじゃありませんか、いかがですか。大臣ずっと聞いておられたから大体わかっていますでしょうから、ひとつ。
  136. 向準一郎

    政府委員(向準一郎君) 今先生お話のございました液状化の問題でございますが、安全委員会でいろいろ御議論いただいたというのは、そのとき我々いろいろ御説明を申し、先生方の知見で判断されたということでございますが、我々、浜岡一、二号機の今の原子炉機器冷却系につきましての支持します地盤につきまして、現地の砂の地盤の性状、それから想定されます最大限の地震との関係を検討して、地震時においても液状化するおそれはない、安全上問題がないということを確認して御説明あるいは御理解を得ているわけでございますが、先生御承知のとおり、液状化に対する検討につきましてはいろいろな方法があるわけでございます。そんないろいろな方法で我々総合的に判断して液状化の有無というのを検討したわけでございます。  そういうことで、今お示しできる資料として整理はされてないわけでございますが、時間をいただきまして別途資料で我々の考え方を御説明するということは、必要あればさせていただきたいと思います。
  137. 市川正一

    ○市川正一君 知見というのは、何かいわば勘で見て言うているという意味なんですか。我々がデータよこせ言うているのに出さぬで、それでおまえの見とるの、言うとるのは知見やないかと、知見というのは何ですねん。
  138. 向準一郎

    政府委員(向準一郎君) 先生御承知のとおり、原子力というのは大変科学的で技術的でございますので……
  139. 市川正一

    ○市川正一君 だから、日本語で知見と言うたら何ですねん。
  140. 向準一郎

    政府委員(向準一郎君) やはり我々学識経験を持っておられる先生方の頭脳、御意見を聞いていろいろ技術的な判断をさせていただいているわけでございます。
  141. 市川正一

    ○市川正一君 私は頭脳ないけれども、もうええわ。  だから、大臣、データも出さずに、それでおまえのは知見やというふうなことを言うから話はおかしいと言うんですよ。それで、時間をかしてもらえばデータを整理して渡すというのやから、よろしい、それいただきます。その上で、知見でなしに事実に基づいてきっちりやろうじゃないですか。こういうふうにひた隠しに隠すんで、ますます疑惑が深まるばっかりです、大臣。  それでは伺いたいんですけれども、一九八五年の半ばから新設の三号機用の沈砂池と一、二号機の原子炉建屋の間の岩盤をくりぬいて新しいトンネルを掘って、一、二号機の機器冷却系導水管というのは要するにパイプです、これとつないでいく機器冷却水・海水連携設備という名の設置工事を行っているんでありますが、その工事の内容、目的を簡潔に説明していただきたい。
  142. 向準一郎

    政府委員(向準一郎君) お答え申し上げます。  御承知のとおり、浜岡原子力発電所では外洋から長大な海底トンネルで取水槽を経由して取水をしているわけでございます。そういうことで他に例を見ない取水方式ということで、砂の流入も多いということでございます。  それで、取水開始後一号機では十三年、十年以上一、二号機はたっているわけでございます。そういうことで、海底トンネルあるいは取水槽の詳細点検が必要となったとき、速やかにこれらが開放してできるようにということで海水の連携設備を設けたというふうに我々は承知しております。
  143. 市川正一

    ○市川正一君 要するに、あらかじめ伺ったところによると、保守点検用の、今のお話は砂が多いのでということですが、この沈砂池にたまった砂を冷却用の海水の流れをとめないで排除するためと、こう伺っておる。  しかし、ずばりお聞きしたい。本当のねらいは、一、二号炉の敷地の砂地盤に液状化のおそれがあるので、もしパイプが破断した際、その対策としてのバイパスをつくったんではないですか、そうでは絶対にないですか、お聞きしたい。
  144. 向準一郎

    政府委員(向準一郎君) お答え申し上げます。  先ほども申し上げましたが、現地の砂地盤の性状、それから想定されます最大限の地震との関係で詳細な検討をしたわけでございます。それで、地震時におきましても液状化することがないという確認を我々はして、安全上問題ないという判断をしているものでございます。
  145. 市川正一

    ○市川正一君 その答弁は全く納得できません。  もし液状化の危険がないというんだったら、現存の導水管と同じように砂浜の表面にそれを設置した方がいいんじゃないですか。その方が経費もかかりません、安う上がるんです。それにもかかわらず、あえて莫大な費用をかけてまでして岩盤をくりぬきトンネルを掘る必要がどこにあるんですか。それは結局液状化の危険に対応したものとしか考えようがないんです。  保守点検のためというのやったら、大臣、ここに図面があります、見てください。(資料を示す)遠くからでなんでしょうけれども、ここに一号、二号機があります。ここへつくっているんですが、後で詳しい写真もお見せしますが、そしたら同じ条件の三、四号機にも点検用の予備の導入管が必要やということになってくるんです。一、二号機はやって、三、四号機はやっているんですか。中部電力に対して設置せいという御指導なさったんですか。そこはどうです。
  146. 向準一郎

    政府委員(向準一郎君) この連携をやりましたのは、先ほど申し上げましたように、一号機、二号機が十年以上たっておりまして、大気に開放して当該部分を点検する必要が早急に出てくる可能性があるということでやったものでございまして、三号機につきましては、一、二号機の点検状況とかいろんなのを見て、また今後判断するマターだろうというふうに考えております。
  147. 市川正一

    ○市川正一君 聞けば聞くほどつじつまが合わぬのです。あなた、状況は一緒やというのです。  それで、一部液状化のところがあるということはさっき原子力委員会が報告して確認したんです。そうすると、その一部というのは一体どこなんです。この一号機、二号機のところだけそういう地下をくりぬいて岩盤をくりぬいて建屋の基礎もぶちぬいて、そして地下トンネルをつくっているんです。三号、四号はこれは新しいからまあもうちょっと様子を見てからやというのです。  そんなら聞きますけれども、そういう言うならば沈砂池の保守点検のためやというのやったら、そのために予備の導水管が必要やというのやったら、ほかの原発も設置を義務づける必要があるということになってくるんですが、そういう御指導はよそはしてはりますのですか。どうです。
  148. 向準一郎

    政府委員(向準一郎君) 本系統を設けましたのは、今申し上げましたように、一、二号機を点検する場合に、現在ロボットを入れたりあるいは潜水夫が内部を海水中に入ったまま点検をするということでございますが、将来大気に開放して点検するという場合も出てきた場合にやろうということでございまして、これは電気事業の安全という観点よりも、経営的といいますか、いかにその点検を早くやるかという観点から設けられたというふうに我々理解をしておりまして、例えば大気開放が必要となった点検ですと、恐らく数カ月オーダーぐらいかかるだろうというようなことでございますので、そういう数カ月かかる工事についてどういうふうに経営的に判断するか、あるいは前面海域の砂の状況がどうかと、いろんなことでそういうような系統を設けるか設けないかが決められていくんじゃないかというふうに感じております。
  149. 市川正一

    ○市川正一君 ますますわからぬ。さっぱりわからぬ。あんたそれはつらい立場やと思います。中部電力の人がここに傍聴に見えてはるから、それはまあ聞いていただいて結構です。正々堂々とやります。それはね、本当のことを国民のために言うてほしいんです。何も中部電力のそんな、あんた、援護射撃せぬでもよろしいがな。  それで、政府の事前の説明でも、浜岡は砂がたまりやすいので、それを除去するためや、こう言われる。今もあなたは、安全ということよりも経営的見地だと、こうおっしゃった。しかし、沈砂池の砂を排除するのやったら、普通の河川のしゅんせつと同じことです。変わらぬのです。今日では排砂ロボットというのもあるんです。あえて現存の導水管を閉鎖しなくてもできる作業と違いますか。どうですか。
  150. 向準一郎

    政府委員(向準一郎君) お答え申し上げます。  今先生お話しのように、通常点検ということですと、ロボット等水中作業でできるわけでございますが、やはりひび割れとか段違いとか、いろいろもう少し詳しく外観を見たいとか、あるいはコンクリートの調査あるいは鉄筋の状況調査というようなことを考えますと、やはり大気中に開放して点検する必要があろうということでございまして、その点検の内容によりましてロボットでいいかダイバーでいいか、あるいは開放してやるかということが決まってくるんじゃないかと思っております。
  151. 市川正一

    ○市川正一君 そんな無理な答えをすればするほど墓穴を掘るんですよ。いいですか。あなた、今、安全性やなしに経営性やというふうに言われたけれども、そんなあんた、あってもいい、なくてもいいというふうな程度のもののところに何で莫大な資金をつぎ込むんですか。これはまことに不可解、奇怪ですよ。  大臣にお伺いしたいんですけれども、ずっとお聞きになって、そういうところへ金つぎ込むと、電気事業は公益事業ですから、料金の算出の根拠にはこういう投資もコストとして含まれることになります。そうすると、結果として電気料金を押し上げることになってくるわけでありますが、安全にとって絶対不可欠でないところに、今もお答えは安全性の問題やないと、こうおっしゃった。そういうところにコストをかけて料金を引き上げるというんでは、消費者は納得できぬのです。大臣、そうではございませんでしょうか。いかがでしょうか。――大臣、熱心に聞いていただいているんだから、あなた邪魔せぬでもいいがな。
  152. 山本雅司

    政府委員山本雅司君) ちょっと大臣のお答えになる前に一言私の方からお答えいたしますと、電気料金の算定とか基本的な電力会社の経営はまさに委員指摘のとおりでございます。ただ、原子力発電につきましては、私どもといたしましては、我が国の場合、安全に少しでも関係するもの、あるいはこのような二次冷却的なものであってもできるだけ完全な形でやっておきたいということで、ある意味では非常にコストの関係ではむだではないかというような議論のある場合でも、安全サイドにできるだけ力点を置いて万全の対策をとっていってほしいというのが基本的な考え方でございまして、これにつきましてはいろいろの見方があるかと思いますが、基本的にはそういうことで今まで対処してきたというように私どもは考えております。
  153. 市川正一

    ○市川正一君 大臣には最後の方でまとめてひとつお願いすることにいたしまして進めますが、私、ここに工事当時に空から写した写真を持ってきましたんです。二つあるんですが、こっちの方が全景ですね、浜岡原発の、それから、これがその該当する第一、第二の炉の拡大図であります。これは地震の危険性との関連で御前崎の周辺の地形を見るために飛行機で空から写したんですが、たまたま浜岡の原子炉一帯も写っておりまして、これで見ますと、一号、二号の原子炉の建屋のところで、ここに紙張って矢印つけておりますが、クレーンを使った大規模な工事が行われておるんですよ。これがそのクレーンです。物すごいものです。それで、通産省に、これ何してんのやと聞きました。そうしたら、初めはいや知らぬ存ぜぬで隠してはりましたけれども、とうとうそれが今、私が取り上げているところの連携施設の工事であるということをお認めになりました。これを見ましても、原子炉建屋がここにありまして、そこの基礎をぶち抜いて、地下のトンネルから立ち上がって炉の導水管につなぐ、そういう大工事なんです。こういう工事であったということは間違いございませんですね。
  154. 向準一郎

    政府委員(向準一郎君) 今、先生写真でお示しになりましたので、そういう工事が行われたと思っております。
  155. 市川正一

    ○市川正一君 先刻御承知だと思いますが、そこで、この一号、二号機関係の施設や設備は安全審査を受けて建設されたものであると承知しております。その安全審査の済んでいる施設、これがそうです、そこへこんな大きな手を加える工事に対しては、当然再審査をしていると思いますが、それはなすっているわけですね。
  156. 向準一郎

    政府委員(向準一郎君) ちょっと今の御質問でございますが、三号機の安全審査ということであれば……
  157. 市川正一

    ○市川正一君 いや、そうじゃなしに、一号、二号のこの工事、立ち上がりの。
  158. 向準一郎

    政府委員(向準一郎君) 当該冷却系を一、二号と、それから三号のそれから持ってくるという工事におきましての手続ということでございますと、安全審査ということより電気事業法の届け出ということである部分はなされております。
  159. 市川正一

    ○市川正一君 それが危ないんですがな。それが問題なんですよ。だから、炉の方は安全審査やってて、そして水道管みたいに簡単に言うと立ち上がって、そしてそれが炉のところへつながるんです。それは軽微な電気事業の方のなにやから、そやから安全審査しておらぬというんですよ。そこに私はずさんさがまさにあると思うんです。  先ほどエネルギー庁長官が安全サイドのことだと、こうおっしゃった。しかし、これだけの工事をやって安全審査をしてなければ安全かどうかはわかりません。私も一般的に言えば、この工事は安全サイドの対策や、そう思います。しかし、その意味は、この工事が敷地地盤の液状化対策であると、そういう安全サイドの対策だと、私はこう思います。政府もまた、これが安全サイドの対策であるというふうにおっしゃるのは、この工事が液状化対策の一環をなすものだということを本当はよく御承知だからじゃないんですか、いかがでしょう。
  160. 向準一郎

    政府委員(向準一郎君) お答え申し上げます。  先ほども申し上げましたが、浜岡一、二号機の今の原子炉機器冷却系配管につきましての液状化の問題につきましては、いろんな方式で我々は総合的に検討して問題ないということをお話しいたしましたが、その件につきましては、先ほどお話しいたしましたように、時間をいただきまして、別途資料で御説明さしていただきたいと思います。
  161. 市川正一

    ○市川正一君 またその時間と言ったってもう……、まあよろしいわ、後で聞きますわ。  何でそんなにお隠しになるのか。今まで私指摘してきた事柄というのは、外に向かっては液状化の危険性はないと言いながら、本当はその危険性があるので、ひそかに対策をとっているというのが事の真相と私は断ぜざるを得ぬのです。ずばり、政府の液状化の危険性なしという言明が虚構であったということを、ほかならぬ中部電力の行ったこの工事がいわば裏打ちしているということに論理的になるんです。  私は、最近の一連の事故、トラブル、その頻発から見ても、浜岡はもとよりのことでありますが、この際、原発について総点検をして、厳格に審査をやり直す必要があると思うんですが、いかがでしょうか。
  162. 向準一郎

    政府委員(向準一郎君) 原子力発電所の安全性につきましては、先生御承知のとおり、設計の段階、建設の段階、運転管理の段階等で万全を期しているわけでございまして、現在運転しておる発電所につきましては、毎年一回、定期検査というのを原子力発電所をとめてやっております。それで各炉を点検し、次の一年問題ないことを確認して次のスタートをするということで、毎年安全という観点から確認をしているということでございますので、安全性は確認されておるというふうに我々は考えております。
  163. 市川正一

    ○市川正一君 冒頭に申しましたように、これ頻発しているんです。大臣に率直にお伺いいたしたい。浜岡原発についてあくまでも安全だと、こう言うのであれば、安全性を客観的に証明するデータを明らかにして、これは時間をいただいて提出するとこうおっしゃっているんですが、広く国民合意を図るべきだと思うんです。それを拒否されるとするならば、実は浜岡の敷地地盤は液状化するというデータがあるので、それを公表できないという疑いをますます濃厚にせざるを得ぬのであります。先日もこの浜岡で、インコアモニターのハウジングに割れ目が生じて、御承知のとおり、炉水漏れの事故が起こりました。相次いでおります。  私は、この浜岡一、二号機は運用を停止し、再点検をすることを要求いたしたいんですが、大臣、いかがでございましょう。大臣の決意をこの際一遍ぐらい言うてくださいよ。
  164. 松永光

    国務大臣松永光君) 今、担当者が申し上げましたように、我が国の原子力発電所については、設計の段階から、工事の段階から、運行の段階から、厳密に安全をチェックして、確認をして、その上で設計をし、工事をし、そして運転をしておる。その上で、毎年運行中の原子力発電については定期検査をして安全を確認し、そして運転しているのであるから安全は大丈夫と、こう言っておるわけでありますから、私はそれでよろしかろうと、こう思っておるわけであります。
  165. 市川正一

    ○市川正一君 そうなっておらぬということをずっと言うたので……。  もう時間がないから最後に一問だけ、別件でありますが緊急にお伺いしたいのは、昨日、日立製作所の武蔵工場の半導体をつくるクリーンルームでガス爆発が起こりました。一名が死亡、三人が負傷、うち一人は重傷と伝えられております。実はこの日立武蔵には本委員会が視察調査に参った思い出のところでもあります、御存じの方もいらっしゃると思いますが。  私は、百二国会の本委員会でIC工場における有害ガスや物質の取り扱いについて環境汚染、労働者の安全問題をただしてまいりました。  大臣にお伺いしますが、今回の事故についての原因、わかっている範囲で結構です、政府としての今日までの指導と今後の対策についてお伺いをして、質問を終わりたいと思います。
  166. 岡松壯三郎

    政府委員岡松壯三郎君) 先生御指摘の事故につきましては、昨日三時十五分というふうに聞いておりますが、日立製作所の武蔵工場で起こった事故でございまして、死傷者を出すに至ったということはまことに遺憾に存ずる次第でございます。事故発生後、通産局、東京都の担当官が現地に急行いたしておりまして、被害の状況、事故の詳細について鋭意調査を行っておる段階でございます。  当省といたしましては、今後東京都庁等と緊密に連絡をとりまして、事故原因の究明に努めてまいりたいというふうに考えております。そして、これは高圧ガスによる事故であるということが明らかになりました場合には、このような事故の再発のないように必要な措置をとるべく努力してまいりたいというふうに考えております。
  167. 市川正一

    ○市川正一君 終わります。
  168. 池田治

    池田治君 ことしの九月にスウェーデンに行く機会に恵まれまして行ってまいりましたが、その際、スウェーデンでは酸性雨によって森林が被害を受けたり河川の魚が死んだり、そういう被害を受けてその対策に苦慮しておられるようでございました。他方、二〇一〇年までに原発を、市川先生が心配されている原発は中止するということを国会で決議しておりますので、この代替エネルギーについても果たして間に合うのかどうかという対策に苦慮しておられるようでございました。  我が国でも地球環境問題並びにエネルギー問題はかなり問題化されておりますが、通産省でもこの問題と取り組んでおられるとのことでございますが、それらの内容ないし概要とその対策についてお伺いしたいと思います。科学技術庁並びに環境庁に聞くべきかもしれませんが、その中で通産省の役割はどういうことをやっておられるのか、お教え願いたいと思います。
  169. 岡松壯三郎

    政府委員岡松壯三郎君) 地球環境問題の御質問でございますが、地球環境問題といいますのは、従来取り組んでまいりました産業公害問題と比べますと、原因物質が出てから被害が出てくるまでの時間的な大きなギャップがあるということ、また、空間的にも地域から出たものが一国を超えて地球大で影響を及ぼすというところが従来の公害問題と違うという意味国際的な取り組みを必要とするわけでございます。  そのようなものといたしましては、地球の温暖化問題でございますとか、御指摘の酸性雨の問題でございますとか、あるいはフロンによるオゾン層の破壊の問題でございますとか、あるいは砂漠化の問題、熱帯雨林の問題等々、広く議論が進んでおるところでございまして、これらの問題につきまして、特に温暖化の問題というのが一番大きな問題ではないかというふうに思っておるわけでございまして、この原因は非常に多岐にわたるだけに対応も非常に難しいわけでございますけれども、また、国際的な取り組みが必要な問題でございますが、政府といたしまして、関係省庁とよく連絡をとりながら一体となって対策を進めてまいりたいというふうに思っているわけでございます。  特に当省といたしましてはエネルギー政策と大いに絡む問題でございますので、先ほど来出ております新エネルギーの開発利用の問題でございますとか、さらに基本的には省エネルギーを進めなければならない問題、その他産業公害対策の推進等を通じて地球環境問題について多角的に取り組んでいく必要があるというふうに考えている次第でございます。
  170. 池田治

    池田治君 先ほど地球温暖化問題も出ましたが、これについてはCO2が大気中に増加すると温暖化してくる、こう一般に言われておりますが、通産省も科学的な根拠は十分持っておられるわけでしょうか。科学的な根拠があるとすれば、これをどういう方法で解決されるおつもりですか、お教え願いたい。
  171. 岡松壯三郎

    政府委員岡松壯三郎君) 科学的知見の点につきましては、多くの学者がさまざまな論文を発表しておるわけでございますが、それの根拠になっておりますのは、既存のデータをもとにシミュレーションをやっているという状況でございます。何しろ地球大の話でございますので、学者によって説が分かれるのでございますが、炭酸ガスがふえた場合に温度が上昇するというところについては学者間の意見は一致している。しかし、炭酸ガスがふえるとどれだけ温度が上昇するか、また地球のどの部分でどういうふうに温度が上昇するか、また温度が上昇した場合にどういう影響があらわれてくるかという点につきましては学説が分かれているという状況にございます。  特に議論がございますのは、温度が上昇すると雲が発生する、この雲が発生するのが温度上昇にどういう影響を持つのか。学者の説によりますと、薄い雲が発生すると温暖化効果が出てくる、厚い雲が発生すると太陽光が届かなくなるのでかえって冷えるという効果がある、これは割にわかりやすい話のように思うのでございます。  もう一つは、海洋と炭酸ガスの関係、海洋が炭酸ガスを吸収する効果があるということはわかっておるのでございますが、どれだけ濃度がふえるとどういうふうに吸収効果が進むのか、この辺も大きな疑問点、今後解明していくべき点でございまして、その意味では、科学的知見を今後さらに高めていく必要があるということでございます。  しかしながら、そういう不確実性がある中でこれを放置しておくというわけにはいかないというふうに考えておりまして、この炭酸ガス等の温暖化効果を持つガスについて、通産省として技術をもってこれを解決していく方向で対応していく必要があるというふうに考えておるわけでございますが、先ほど触れましたエネルギー政策に加えまして、これらは産業技術体系全般に絡む問題でございますので、これらの産業技術体系を基本的には見直すぐらいの勢いで技術開発に取り組んでまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  172. 池田治

    池田治君 大変心強い御意見のようでございますが、しかしCO2を技術でもって解決するといいましても、大気全体、地球は広いですから、なかなか大変な技術力と応用能力が必要だろうと思いますが、どういう技術を用いられるか、そして予算措置を講じて技術力発揮のための着手をしておられるかどうか、この点をお尋ねします。
  173. 岡松壯三郎

    政府委員岡松壯三郎君) 炭酸ガス対策は確かに非常に大きな課題であろうというふうに思っておりますが、技術の体系といたしましては三つのアプローチの方法があるというふうに考えております。  一つは、まず炭酸ガスの発生量の少ないエネルギーないしは炭酸ガスの発生量のないエネルギーに切りかえていくというのが方策でございまして、炭酸ガスの発生量のない、ないしは少ないと申しましたのは、ないものとして例えば太陽光を利用したもの、あるいは水力、波力、風力を利用したもの、地熱を利用したものというふうなことが考えられますし、安全性を確認しつつ原子力を導入していくというのも炭酸ガスの発生量のないエネルギーであるという理解でございます。  また、炭酸ガスの少ないエネルギーということになりますと、石炭をたくよりは石油をたいた方が炭酸ガスの発生量は単位カロリー当たりは少ない。また、石油をたくよりは天然ガスをたいた方が単位カロリー当たりの炭酸ガスの発生量は少ない、これは分子の構成から明らかでございますけれども、そのようなカテゴリーのものが第一カテゴリーでございます。  第二のカテゴリーのものは、GNP当たりのエネルギーの使用量を減らすというのが第二のカテゴリーの技術だと思うのでございますが、これは一口で言いますと省エネルギー、エネルギーの効率的使用の問題でございます。この点につきましては、従来からムーンライト計画ということで通産省は取り組んでおりますが、さらにこれを進めてまいりたいというふうに思っております。  第三の技術カテゴリーといたしまして、それでも出てくる炭酸ガスを何とかできないものかということでございまして、これは新たな挑戦になるわけでございますが、発生する炭酸ガスを固定化し、さらに利用するということを考えておるわけでございます。具体的には、もう既に実験室ではあるのでございますが、炭酸ガスに水素をくっつけますとメタノールになる、化学反応としてできるわけでございますが、これをプラント規模でやることによって炭酸ガスのクローズドサーキットみたいなものができ上がるということになりますと、外には炭酸ガスが出ていかないということが可能になるわけでございます。そのほか炭酸ガスをバイオによって、ちょうど植物が行っているのと同じように固定化してまた利用していくというシステムを考えたいと思っております。この第三のカテゴリーのものにつきましては、来年度以降予算を計上し、取り組んでまいりたいと考えている技術分野でございます。  これらの技術分野を我が国として進めますと同時に、やはり途上国ばかりでなく、他の先進国にもこの技術の移転を図っていくというのも、地球大で取り組む問題でございますので、大事な政策分野ではないかというふうに考えている次第でございます。
  174. 池田治

    池田治君 炭酸ガスの固定化ということは今どの程度まで進んでいるわけですか。そして、予算はどれだけつけられているか、概算要求はされているんですか。これによって規模の問題がわかると思うんです。そして実用化のあれは何年後ぐらいの見通しでございますか。
  175. 岡松壯三郎

    政府委員岡松壯三郎君) 現在、来年度から着手すべき研究開発予算は要求しておるわけでございまして、炭酸ガスの固定化有効利用のためには予算要求段階で約二十二億の資金の要求をいたしております。  これの実現性ということでございますが、五年ないし十年の時間を要するものではないかというふうに思っております。それだけに早急に着手しておくということが必要な技術開発ではないかというふうに考えている次第でございます。
  176. 池田治

    池田治君 五年も十年も先のことを今考えてもなかなか大変なことでございますが、その間の我が国におけるエネルギーの需要、この上昇傾向は産業が発達したり国民文化的な生活を行って生活が豊かになるとどんどん需要はふえてくると思いますが、この需要率といいますか、需要上昇の見通しはどんなものでしょうか。
  177. 山本雅司

    政府委員山本雅司君) エネルギーの需要につきましては、御指摘のように、最近非常に大きな伸びを示しております。過去二回の石油危機がございまして、非常にエネルギーの需要が停滞したといいますか、安定していた時期がございますが、一九八七年、八八年、二年続きましてほぼ五%前後の伸びになっております。それからまた、ことしも、経済の活況もありますけれども、五%を超えるエネルギーの需要の伸びが予想されております。  こういう状況になりますと、将来の見通しでございますが、実は二年前につくりました長期需給見通しによりますと、エネルギーの需要は二〇〇〇年まで約一・三%ぐらいの伸びではないかという計算をして需給見通しをつくっておりましたけれども、どうもこの二年あるいは二年半の状況を見ますと、スタートから非常に大きく狂っているというのが最近の状況でございまして、先ほども別途お答え申し上げましたけれども、現在、総合エネルギー調査会をお願いいたしまして、二〇〇〇年、さらにはエネルギー問題は非常に長期を要するものですから、二〇一〇年を目標にいたしまして、どのようなエネルギー需給見通しになるかというのを関係学界、産業界あるいは一部労働界の方々にも御参加願いまして、今総合的な見直し作業をしている段階でございます。  ただ、大変ここで注目しなければなりませんことは、ただエネルギーの需給見通しだけではございませんで、まさに御指摘のように、経済の成長がございまして、それに伴ってどうしてもエネルギーが増加してまいります。経済成長とエネルギーの成長というか増加の相関関係をあらわしますいわゆるエネルギーのGNP弾性値というものも非常に大きく変わってきておりまして、現在の長期需給見通しですと、これがほぼ〇・三ぐらいの小さな数字を予定しておりましたけれども、現在は約一、昨年あたりは一を超して一・一ぐらいの数字になっておりますけれども、このように単なるエネルギーだけの見通しではなくて、経済との関連におきましてもエネルギー需要というのはやや上向きになっておるというのが最近の実情でございます。
  178. 池田治

    池田治君 そうしますと、エネルギーの需要はますます増加する。したがって、産業も向上すると思いますが、しかし、CO2を解消する方法の固定化というのは五年から十年先でなければ実現できない、こういうことになってきますと、どうしてもCO2を出さないエネルギー源を求める以外にないと思うんですが、これについては通産省はどうお考えでございますか。
  179. 山本雅司

    政府委員山本雅司君) まさに地球環境問題、特に温暖化問題を解決するために、先ほど立地公害局長からもお答え申し上げましたように、できるだけ炭酸ガスを出さないエネルギー源の開発というのはまさに焦眉の急になっております。通産省といたしましては、今までもサンシャイン計画という計画をつくりまして、新しいエネルギーの開発をいろいろやってまいりました。これらの中には、例えば燃料電池など相当研究開発が進みまして、将来有望ではないかと言われるものも出てきております。しかし、残念ながらまだ具体的にエネルギー需給見通しの中で大きな地位を占めるというところまではいっていないわけでございまして、現在のところ全体の中の一%とかあるいは一・三%とかいう非常に小さな割合でございますが、いかに小さくてもこれからはぜひそういうものを鋭意育てまして、何とか全体としてのエネルギーの需要を賄うように懸命に努力をしたいということでやっておる段階でございます。
  180. 池田治

    池田治君 そうしますと、エネルギーは新エネルギーの開発によって賄っていけるとお考えですか。
  181. 山本雅司

    政府委員山本雅司君) 今も申し上げましたように、新エネルギーあるいはそういう新しい分野につきましては開発を進めてはおりますけれども、全体の水準はどうしても一%とか一・三%の水準でございます。したがいまして、エネルギーの大宗はやはり今までのような既存の化石燃料、さらには安全性に十分配慮しながら原子力をやるというように、総合的なエネルギーのベストミックスを見ながら何とかして需要にこたえるという方策を考えていくしかないというのが現在の状況でございます。
  182. 池田治

    池田治君 なかなかお言葉ではございますが、そのいろいろなエネルギー源のパーセンテージは、どの割合ずつのミックスしたエネルギー源を想定されておりますか。
  183. 山本雅司

    政府委員山本雅司君) これは大変難しい御質問でございまして、これから半年かけまして本当に日本の英知を集めていろいろ御検討願うことになっておるわけでございます。  ただ、現在のところの実情だけ申し上げますと、我が国の過去のエネルギー政策は、第一次石油危機以来、何とかして石油依存度を減らしてエネルギー供給の安全保障と申しますか、エネルギーのセキュリティーを何とか確保したいということで鋭意やってきた歴史でございます。現在のところ石油への依存度は一九七三年、第一次石油危機のときには約七七%の依存度でございましたが、昨年あたりでそれが五七%と約二〇%ポイント減少しております。その減少したのを何で埋めてきたか、あるいは何でそれが可能になったかというと、実は原子力でおよそ一割、LNGでおよそ一割、石炭等も多少ふえておりますけれども、石油の割合を減らした大宗はLNGと原子力の二つに依存しているというのが現在の姿でございます。したがいまして、これをどういう形で将来持っていくかなかなか難しいところではございますけれども、やはりこれから十年、二十年考えてみましても、エネルギーの大宗は石油が大宗でございますが、そのほかには石炭、原子力、LNG、それからその他の例えば水力とか地熱とか新規エネルギー、こういうような形で全体をまとめていくしかないというのが現状ではないかと考えております。
  184. 池田治

    池田治君 私は、石炭や石油のような化石燃料は余り使うとまた酸性雨が降ったり地球温暖化の問題に通じますので、それ以外のエネルギーを開発する必要があると思うんでございますが、その第一に原子力発電に頼りますと、市川議員のような方がおられましてなかなか厳しい見方をされますので、なかなかそれも不可能ではなかろうかと、こう思います。それで、ほかのエネルギーを何か通産省ないしは科学技術庁等で研究開発をされておる事実はないかと、これが一番聞きたいところでございますが、どうですか。
  185. 山本雅司

    政府委員山本雅司君) これも先ほど一部お答え申し上げましたけれども、燃料電池の開発、それからあとは新エネルギーといたしまして風力とか波力とか、そういうようなエネルギーそのものとしては昔からあったものですが、それを新たな観点から再度見直しをしたい。それから、さらに一番無尽蔵にあると言われております太陽エネルギーにつきましても、今まではどちらかといいますと、太陽熱の方のエネルギー利用が多かったわけでございますが、何とか太陽の光を利用したエネルギーの取り出しを利用できないかということで、こういうのを含めまして全体としてサンシャイン計画と名づけましてやっているわけでございまして、できればこれを単なる研究開発ではなくて、実用化の段階まで具体的に持っていこうということで、現在、新政策では沖縄の方にエネトピアという新しい言葉をつくりまして、そこへ行けば新しいエネルギーが何でも見れるというすばらしいところを何とかしてつくれないかということで構想を練っている段階でございます。
  186. 池田治

    池田治君 ありがとうございました。ただいまの市川議員も、原発には反対はしませんということでございますので、私の発言は取り消しさせていただきます。  そこで、どうしても地球環境を守るという意味からは、エネトピアかハナトピアか知りませんが、こういうことを頑張っていただきたいと、かように念願しております。  最後に、地球環境問題というのは、現在及び将来の人類にとって非常に重大な問題でございますので、この問題に向けての大臣の決意のほどを一言お聞かせいただいて質問を終わりたいと思います。
  187. 松永光

    国務大臣松永光君) 今エネ庁長官からもお答えがありましたように、地球環境問題はある意味ではエネルギー問題と裏腹のような関係が大部分じゃなかろうかと、こう思います。  で、地球環境に負荷を与えないそういうエネルギーの開発も研究開発をやっておるわけでありますけれども、まだまだ五年とか十年とかというそういう時間帯で見れば、それほどの供給は難しい。風力、太陽エネルギー、地熱、波力等々ある程度の進みはありますけれども、石油や石炭に相当程度かわるほどの量になることは想定できません。とすれば、先ほどの話がありましたように、CO2を出さない、あるいは硫黄や窒素分を出さない、そういうエネルギーとしての原子力エネルギー、これは相当重要なものとして安全性の確保に最大限注意を払いながら供給をふやしていくということはやらざるを得ないわけであります。  さようなわけで、地球の環境保全の問題につきましては、温暖化の問題あるいは酸性雨の問題、これらにつきましては、CO2にしてもあるいは空気中にある硫黄酸化物、窒素酸化物等にいたしましても国境がないものですから、先ほど池田先生はスウェーデンの酸性雨の被害の話をしておられましたが、その酸性雨の原因となる窒素酸化物は恐らくスウェーデンで発生したものじゃないんじゃなかろうかと私は推測するくらいなんでありますが、すなわちあの国はそれほど石炭を使っているとは思えませんので、ある程度は使っているんでしょうけれども。  要するに、CO2にしてもさようなものにしても、みんな国境がないものですから、その意味では世界的な規模で、地球的な規模で取り扱わなきゃならぬ問題だと、人類全体の問題として各国が力を合わせて対応していかなきゃならぬ問題だと、こういうふうに思います。  そういう中で、我が国は、先ほども申し上げましたけれども、CO2を余り排出しないような形でエネルギーを使っていくというそういう省エネルギー技術、あるいは脱硫、脱硝装置等々につきましても他国よりも進んで研究をし、また実用化しているものもあるわけでありまして、そうした日本の進んだ産業技術等を十分活用して、そうして地球全体のCO2にしろNOx、SOxにしろ、この問題の解決のために積極的な貢献を我々はしていかなきゃならぬ、こう思っておるわけであります。  そういう施策の推進に向けて今後とも一生懸命努力をしていきたいと、こう考えているところでございます。
  188. 池田治

    池田治君 ひとつ頑張ってください。
  189. 井上計

    ○井上計君 時間の関係で経企庁に先にお伺いいたしますので、通産大臣、少しお休みください。  高原長官、大変御奮闘で御苦労さまです。長官に初めてお伺いするわけでありますが、民間の金融調査機関の来年度の見通しがほぼ出そろったようであります。昨日の新聞にちょっと出ております。それを見ますと、来年度も内需を中心に好況が続いて四%半ばということに成長率がほぼ一致しているようでありますが、その中では下は三菱総研の三・六%、それから国民経済研究協会が五%と、若干開きはありますけれども、ほとんど四・五%程度の見通しを立てておるようであります。大変結構だなというふうに感じておるわけでありますが、今回の好景気は、昭和六十一年の十一月から今月で三十七カ月目でありますから、間もなく岩戸景気の四十二カ月を追い越すことはまず間違いなかろうと、こう思います。さらに四十年―四十五年の五十七カ月続いたイザナギ景気に追いつくのかどうか。ぜひそのようなさらに好景気が続いてほしいなという願望を多くの産業人は持っておるわけでありますが、そうなりますと、先般若干長官の御発言で物議を醸しておったようですが、文字どおり高原景気が来ることを期待をしておる。しかし、現実にはかなり不安要因がたくさんあると思うんですね。特に来年度も果たしてこのようないわば四・五%程度の成長率は続くのかどうか、やや疑問視される傾向も最近出ておると思うんです。  そこで、いろいろな要因がありますが、その一つは、けさほどからもいろいろ質問の中にありましたが、人手不足の問題、労働力不足によってかなりの企業が相当深刻な事態に陥っていますね。労働力不足倒産あるいは労働力不足のための転廃業というふうなことも最近相当やはり声が大きくなっています。同時に、大企業もそうでありますが、中小企業、特に中堅企業の中には、今幾らでも注文はあるんだ、受注はあるんだ、しかし実際には人手がないので設備投資を来年度差し控えようと、かなりそういう声を私どもは耳にするわけでありますけれども、それらについて経企庁としてはどういうふうな受けとめ、認識をしておられるのか。同時に、経企庁は近く発表されるようでありますけれども、経企庁として来年度の景気見通し等についてはどうお考えであるのか、質問はこの一点でありますけれども、ひとつお答えをいただきたい、こう思います。
  190. 高原須美子

    国務大臣高原須美子君) 見通しにつきましては後ほど担当局長の方から現在の段階について御説明いたしますが、最初の御質問にありました人手不足でございます。  私も、この景気は個人消費、民間設備投資といった内需を中心に当分堅調に続いていくというふうに見ております。その中で、おっしゃるように、確かに労働力不足といいますか、人手不足が問題になってきているということは事実でございます。有効求人倍率が非常に高くなってきておりまして、労働力需給は引き締まり基調でして、企業の雇用人員判断を見ましても、不足という企業が割合を高めております。こうした中で、一部の業種、企業あるいは地域において労働力不足が深刻な問題になっているということは事実だと思います。経済企画庁といたしましても、地域景気懇談会というのをやりまして各地でそういう景気の現状について聞いてまいりました中で、やはり人手不足という声が聞かれたことも事実です。しかし、現在では賃金の動向は基本的に落ちついておりまして、物価への影響も少ないというところから判断いたしまして、現在のところこの人手不足が景気拡大の阻害要因になる、あるいは制約要因になるというふうには見ておりません。  ただ、今後それでは人手不足についてどうするのかといいますと、企業は設備投資による省力化を行ったり、あるいは五十歳以上あるいは五十五歳以上の方々の有効求人倍率は大変低いところなどから見まして、そういった人たちを積極的に活用するといった手段をとるなど、労働力不足に適切に対応していきまして、当面は景気には大きな影響はないのではないかというふうに見ております。
  191. 勝村坦郎

    政府委員(勝村坦郎君) 来年度の見通しをどういうふうに判断しているかという御質問でございましたが、現在、我々はどういう形の見通しを立てるか作業中でございまして、現在の段階で数字を申し上げるわけにはまいりませんので、その点は御容赦いただきたいのでありますが、大体どういう問題意識で、定性的にどういう感じで見ているかということについて要点だけ申し上げさせていただきたいと思います。  今年度の上半期の数字が出ておりますが、これは七―九月期に限って申しますと、けさも御指摘ありましたように、非常に高い伸びでございますが、上半期をまとめてみますと、長官がけさ答えられましたように、前期比では一・六%、前年同期比では四・九%という数字でございます。  あと下半期をどういうふうに見るかということも作業の一でございますが、例えば最近発表されました日本銀行の短期経済観測などを見ますと、依然として全体として好況感というのは続いておりますし、企業収益が、伸びは横ばいになっておりますが、非常な高水準を維持している。その一方で、ただいま長官触れられましたように、人手不足感がほとんどの産業に広がっておりまして、特に中小企業分野では人手不足感が強まっている、こういう結果が出ているわけでございます。    〔委員長退席、理事岩本政光君着席〕  現在のところは個人消費、設備投資その他非常に堅調な基調を維持しておりまして、来年度にかけまして、需要面から申しますと、こういう各需要部門の好調さというのは基調としては維持されるであろうというふうに考えているところでございます。  それから物価面につきましては、今年度は一つ消費税の導入という一時的要因がございました。それから春先からの円安、それから石油価格の上昇ということがございまして、三%弱のやや最近としては高目の物価上昇ということになっておりますが、来年度につきましては、今申し上げましたような要因がさらに物価上昇要因として加わるというふうには考えにくい状況にございますので、物価の上昇率はむしろことしよりも安定するのではないか。そういたしますと、個人消費ども、ことしは確かに物価上昇でやや食われた面があったかと思いますけれども、来年はそういうことはないだろう。ただ、設備投資の今後の強さを、今のような伸びが今後とも続くというふうに見るかどうか、ここは非常に問題でありましょうし、我々の政策的判断といたしましては、やはり過剰な設備投資をやってしまって後で調整をするというようなことが万が一にも起こるとまずいわけでございます。そこら辺はよく注意を払いながら考えてまいりたいということでございます。  それから、今需要面から申し上げましたが、もう一つ供給面から申しますと、まさに御指摘の労働力需給というものが来年もかなり雇用はふえるという形で続き得るかどうかという問題がございます。ことしは大体雇用としては三%ぐらいの増加が続いているわけでございますが、そもそも日本の生産年齢人口、つまり労働力の対象となります人口の伸びというのは一・一%か一・二%であります。したがって、全体としては専門用語では労働力率と申しておりますが、就業率でございますね、この就業率がかなり高まったということで三%の雇用者の伸びということが実現されているわけでありますが、その内容を見ますと、その労働力率の、就業率の増加のほとんどは女子労働力でございます。男子の労働力率はむしろ傾向的にいまだにやや低下ぎみという状況が続いておりまして、女子労働力率の高まりによって三%という高い雇用の伸びが達成された。それで恐らく新しい供給のかなりの部分はパートタイマーとして吸収されているんではないか、こういう状況でございますので、そういう状況を来年度にかけてなお続けていくのか、いき得るのかということになりますと、いろいろ問題が、一つは限界が出てくるんじゃないかということと、もう一つはもしかすると賃金の方に相当インパクトが強まってくる可能性もあるんではないか。諸般の事情から考えまして、労働力供給にやはり頭打ち感というのは、もちろん伸びるわけでありますが、伸び方として頭打ち感が出てくるんではないか。  先ほど設備投資との関連で御質問がございましたが、最近の設備投資は、先ほど大臣言われましたように、相当程度省力化投資という部分がございます。あるいは研究開発投資とか多様化投資とかいろいろございますけれども、生産性の伸びは堅調に続くと思いますが、一年で急に生産性が上がるというのもちょっと考えにくいものですから、労働力供給にある程度頭打ち感が出るんじゃないか、それから生産性の伸びは好調ながら今年とそう変わりはないだろうと考えますと、それほど高い成長率を期待できるかどうかという問題も供給面から見るとございます。  そういう諸般の事情を考えまして、今関係省庁とも御相談をしながら数字としてどういうものを固めるか検討中でございます。  私の答弁はそういうことで御了解いただきたいと思います。
  192. 井上計

    ○井上計君 今、長官とまた局長にお答えいただきました。私もそれほど勉強したわけじゃありませんけれども、考え方、見通し等についてはほぼ一致でありますから、また大いにひとつ経企庁のこれからの活躍についても期待をしております。  ただ、今お二方がお話しになった中で、省力化投資がふえるであろう、労働力不足に対応するために。したがって、民間の設備投資はそれほど減らぬというふうな、そういう意味のお答えがありましたが、確かに私どももそれを期待をし、またそういうふうないろんな相談がありますと、あるいはまた方々の団体でそういうことを話をしていますけれども、ただ、長官おっしゃったように、五十歳以上のいわば高年齢層の確かに雇用倍率は低いですね。ところが、現在省力化のために必要な設備、大体もうほとんどハイテク設備ですね、五十歳以上の者ではとても使いこなせないというふうなことが現実に出ています。ですから、そのために設備投資を抑制しようという動きが事実企業の中で話をされている。その点もひとつ大いに御参考にしていただいて、これからの指導あるいは景気見通し、特に設備投資等についてのいろんな調査をぜひお願いをいたしたい、要望をしておきます。  どうぞ長官、もうお答え結構です。  通産省にお伺いします。  今も申し上げ、また経企庁長官からもお答えありましたように、御承知のように、大変結構なことでありますけれども、好景気が続いております。これからさらに続いていくことを多くの人が期待をしているわけでありますけれども、しかし今後の見通し等の中で、いろんな暗いといいますか、不安要因もやはり多くあるわけです。  私はその一つに、特に最近急速に大きく問題になっておりますけれども先ほど池田委員質問にもお答えがありましたけれども、地球温暖化あるいは自然保護、環境保全等々の問題が言われておりますが、公害の問題、特にその中で紙公害が非常にこのところ強く叫ばれるようになりました。  ただ、その紙の需要は、もう古くから言われておりますけれども文化発展のバロメーターだと、こう言われておるのですね。確かに戦後我が国経済の復興、産業の発展と全く比例して紙の需要が伸びてきました。特にこの十年ほど前から情報化社会によってますます紙の需要がふえておるわけでありますけれども、さてその紙の需要の問題についていろんな最近の傾向は、これについての誤解等々の報道もあって抑制されるというふうな、そういう傾向が実は起きつつあるのではなかろうかと、こういう実は私心配をしておるわけであります。  ある新聞が「使い捨て大国」というふうなタイトルで「足元の地球環境報告」という連載を始めました。昨日であったかと思いますけれども、「紙の反乱」ということでいろんなことが出ておりますが、その中に東京二十三区の昨年度出された紙ごみが百七十万トン、これを立ち木に計算をすると三千四百万本だという記事が出ているのです。知らない人が見たら、こんなむだな紙を使うから、こんなに立ち木を伐採して地球温暖化の原因になるんだ、けしからぬという、実は第三者、知らぬ人が見たら大体そう思うと思うんです。かなり大きな誤解があるんではなかろうかと、こう思います。  そこで、端的に局長にお伺いしますけれども、アマゾンやインドネシアの熱帯雨林の減少が大きく問題になっていますけれども、それが実際日本の紙の消費の増に直接関係があるのかどうか、熱帯雨林をどの程度日本の紙資源として使っておるのか、これらのことについてひとつお伺いをいたしたいと、こう思います。
  193. 南学政明

    政府委員南学政明君) 先生御指摘のとおり、世界の熱帯雨林は残念ながら減少傾向にありまして、毎年我が国の本州の面積の半分に相当する一千万ヘクタール以上が減少していると言われております。特にアマゾン等中南米の減少が著しいというふうに聞いておりますが、このような熱帯雨林の減少の最大の原因というのは、現地住民による焼き畑農業あるいは燃料としての木材の伐採であると承知をいたしております。  ところで、我が国の製紙産業の原料構成を見てみますと、古紙が実に約五割を占めております。このほか国産の木材が二割強、輸入パルプが一割、そして輸入木材が二割弱でございます。この原料として二割弱を占めます輸入木材の六十三年における輸入量は千六百十万立米でございまして、このうち熱帯雨林の輸入は五十七万立米、すなわち全体の輸入木材の三・五%を占めるにすぎないわけでございます。したがいまして、我が国の製紙原料全体に占める熱帯雨林の割合は一%未満、正確に言いますと〇・七%程度と極めてわずかでございます。  しかしながら、我が国の製紙業界におきましては、環境保全あるいは資源保護の観点等から、例えばブラジルにおきましてユーカリの植林を大々的に実施するなど、育てる原料を目指しまして森林の育成、再生に努力をしているところでございます。
  194. 井上計

    ○井上計君 今お答えのように、私個人も、それほど紙の原料として熱帯雨林を乱伐していないと、こういうふうな認識を持っていましたが、今のお答えで改めて確認をいたしました。  ところが、それが一般にほとんど知れてないんですね。新聞等でもインドネシアやアマゾンのあの熱帯雨林がどんどんなくなっていって、それが地球温暖化の大きな原因である、その原因は紙である、しかもその紙を一番むだに消費しているのは日本であるというふうな、そういう記事が最近目につくようになりましたね。したがって、そういう誤解を与えないように、これはただ単に紙だとか何かというふうな小さな問題じゃなくて、全体的なやはり大きな社会問題として必要であろうと思いますから、今後大いにひとつ通産省としても啓蒙していただく、PRをしていただくという必要があるんではなかろうかと、こう思います。  それから、今お答えの中に、古紙の回収率五〇%というお話がありました。これも余り多く知られていないですね。そこで、我が国の古紙の回収率が五〇%であるが、同時に、欧米先進国の回収率と比較してどうなのか、我が国はどのような古紙の再生をしておるのか、これもひとつお答えをいただきたいと思います。
  195. 南学政明

    政府委員南学政明君) 古紙の回収、再利用につきましては、極めて重要な課題と認識しておりまして、通産省といたしましては従来から大いに努力をしてきておりまして、回収利用量は年々着実に増大をしてきております。  まず、古紙の回収状況でございますが、昭和六十三年度の回収率は四八%という水準でございまして、十年前にこの回収率が四三%でありましたので、十年間で五%ポイント上昇をいたしております。この四八%という回収率は、アメリカの二九%、フランスの三五%等に比しまして著しく高い水準になっております。  次に、古紙の利用状況でございますが、昭和六十三年度の古紙利用量は千二百五十万トンに達しておりまして、十年前に比べまして約一・八倍に達しております。この結果、先ほども申しましたが、我が国の製紙原料に占める古紙の割合が今五〇%に達しているということでございますが、この古紙の我が国の利用率は、アメリカの二六%あるいはフランス、西ドイツ、イタリアの四〇%強の比率に比べましても、世界的に見て極めて高い水準にあるかと思います。  このように、一応我が国の古紙の回収利用状況というのは国際的に見て極めて高いのが現状でありますが、なお現状に満足することなく、大いにこれを高めるべく努力してまいりたいと思います。
  196. 井上計

    ○井上計君 時間がありませんから、細部はまた改めてお伺いするとして、今もお答えのように、我が国は先進国の中でも群を抜いて古紙の回収率、さらに利用率がいいということ、これも余り国民に知られていないのですね。この点もぜひこれから大いに啓蒙をしていただきたい。  時間がありませんので、最後に大臣に提言をし、またお答えをお願いしたいのですけれども、さらに古紙の回収率が欧米先進国に比べてはるかにいいということ、しかし、だからといって、我が国状況からすると、もっと回収率を高めて、そして利用をしていかなくちゃいかぬ。これについて、既に通産省としてもいろいろと業界指導あるいは対策も検討しておられると伺っておりますけれども、具体的にどのようなことをお考えなのか、さらに促進策として何をお考えいただくのかというふうなことをひとつお伺いいたします。  それから、もう一つついでに申し上げておきますが、確かに企業やあるいは家庭から出る紙ごみといいますか、古紙は確かに多いですね、目立ちます。    〔理事岩本政光君退席、委員長着席〕  そこで、ごみ焼却等で問題になっておりますけれども、私感じるんですが、そのような紙ごみが家庭から出る場合にはほとんど生ごみと一緒に出ているんですね。だから、ごみ焼却の問題になり、また各方面で非常に大きな関心を持たれておると思うんですけれども、例えば不燃ごみと生ごみとは区分して日を別にして回収していますね。そのように紙ごみの日というものを地方自治体等々をひとつ指導して、あるいは要請をしてつくってもらって、紙ごみの日はもう紙だけ出してもらうということになれば、非常に回収にもいいだろうと思うんです。ところが、地方自治体でそのようなことがやっぱり人手不足その他で無理だとするなら、現在コストが高いので、例の古紙回収、ちり紙交換なんてほとんど見られませんが、そのような古紙の回収はやっぱり回収業者にある程度任すというふうなことも回収率を高める一つの方法ではなかろうか、こう思っておるんですが、通産大臣、それらについては自治省等とも協議をしていただいて、ぜひそういうふうな回収率をさらに高める、それで利用率をさらに高めるということを積極的にひとつおやりをいただきたい、要望とあわせてお尋ねをしておきます。
  197. 松永光

    国務大臣松永光君) まず最初の、局長からも話をしましたけれども我が国の古紙の利用率、先進国の中でずば抜けていい状況であるわけでありまして、そういったものが一般の人に知られていない、あるいはまた熱帯雨林を減らしていっていることについては、日本の製紙業はほとんどと言っていいぐらい関係していないということなども一般には知られてない。どうも時には日本の中には、日本のいい点は少しも宣伝しようとしない、悪い点については誤解に基づいてでも悪いということで宣伝しがちなような、そういうムードがどうもあるような感じがしてならぬわけでありまして、愚痴を言ってもしようがありませんので、日本のすばらしい点、また業界がよくやっている点、正しい理解をして認識を持っていただくように今後ともそういう点はしっかりひとつPRもしていきたいし、またそういうことが日本世界における信用を高める道でもありますし、逆のことは日本の信用を害することにもなりますので、大いに大事なことだと、努力をしていきたいと考えております。  なお、古紙利用の促進対策の点でございますが、先生よく御存じのとおり、やはり古紙利用の促進というものが森林資源の保護、あるいはまたごみというのがどれだけ地方自治体の処理のための負担増になっているか、大変なものでありまして、それを減らすという意味からも、古紙利用の促進、これは大事なことだと思います。  その場合に、先生も御指摘になりましたが、問題が幾つかあろうかと思いますが、一つはコピー用紙、これをどうするかという問題があります。もう一つは、家庭でも企業でもそうでありますが、ごみを分別して出す。そういったことをすれば、より回収がうまくいくわけでありまして、そういった点は、先生御指摘のとおり、自治省とも連絡をとりながら分別排出、したがってその回収が非常にうまくいく、こういう状態をつくり上げるということも大事なことではなかろうか、こう思っておるわけであります。  なお、コピー用紙の点につきましては、通産省みずから試験的に再生紙を導入するなど古紙利用の促進について積極的に取り組んでおるわけでありますが、今後とも努力をしていきたい、こう考えておるところでございます。
  198. 井上計

    ○井上計君 じゃ終わります。
  199. 今泉隆雄

    ○今泉隆雄君 参院クラブの今泉です。私は、御存じのように河原こじきの出身なものですから、ちょっと違う視点からいろいろお尋ねしたいというふうに思っています。  通産省というのは、いろいろ話を聞きますと、非常に広い範囲で仕事をしていらっしゃるので、私も二年に一度ぐらい、一カ月ぐらいアメリカで公演をしたり何なりしますが、外国の役所とか広報の関係が非常に協力的であるし、そしてやはり向こうのお役所はすべてに生活の文化というとらえ方をしてくれているので非常に仕事がしやすいので、ぜひやはり通産という仕事も終局的にはそういうふうなとらえ方をすべきじゃないかというふうに考えております。  そこで、ちょっと大臣にお聞きしたいんですけれども大臣は前に文部大臣もおやりになっていますが、日本文化産業、そして芸術産業というものに対してどういうふうにお考えになっているか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。産業としてどうお考えになりますか、文化及び芸術というものを。
  200. 松永光

    国務大臣松永光君) 文化とかそうなってきますというと、ややともすればそれは文部省だと、文化庁だという考え方がよく述べられるわけでありますけれども文化庁あるいは文部省の所管に属することもありましょうけれども、通産省は産業省でありますから、他省庁の専管事項は別といたしまして、民間でいろんな産業活動をしていらっしゃる、その産業活動については通産省は今までも積極的にその健全な発展のために努力をしてきておるわけでありますけれども、これからそうしていかなきゃならぬ、こう思っております。  今の演劇とかそういった面につきましても、他省庁の専管でないならば、産業としてそれが健全に発展するように取り組んでいきたい、こう思う次第でございます。
  201. 今泉隆雄

    ○今泉隆雄君 今まで映画関係、それからレコード産業その他には随分お力を入れられているという話はよく聞いておりますが、最近音楽会とかコンサート、そういう客が非常にふえまして、最近では一〇%以上もふえてきている、そういうデータが具体的に出ておりますが、そういうものは今後やっぱり産業としてとらえようとなさっていらっしゃいますでしょうか。
  202. 関収

    政府委員(関収君) お答え申し上げます。  先生御案内のとおり、最近の消費動向などを見てまいりますと、ひところは一定のお金がございますれば物を買う、例えば家電製品でありますとか自動車を買う、こういったような御要望が強かったわけでございます。最近におきましては、心の豊かさを求めるような方向に消費者の方がいろいろ支出する傾向が強まっております。例えば文化的なものへもっと参加をしたい、あるいはもっと学習をしたい、あるいは健康的なものにお金を使いたいといったような傾向がございます。そういったようなマーケットの変化に応じまして、当然のことでございますが、そういったニーズにこたえるべきいわばそういうサービスあるいはそれに関連いたします物品等を提供する産業に対するニーズというものも出てくることは当然でございまして、御案内のとおり、最近この分野の産業の成長は目覚ましいものがございます。恐らく今後もこの傾向はなお続くものと考えておりますが、私どもサービス産業を所管する官庁といたしまして、必要に応じましてその産業の振興に必要な施策を講じていきたいと考えておるところでございます。
  203. 今泉隆雄

    ○今泉隆雄君 最近のデータによりますと、レコードだけ取り上げまして、CDの時代になってから二億九千万枚ぐらい売れまして二三%以上伸びているということをこの間NHKのテレビでもやっておりました。これは物品税がなくなったり、それから商品の単価が全部崩れて安売りが始まったというような状態でそうなったらしいんですが、それでも残念ながら世界の市場に日本はなかなか入れません。これは作品の芸術性の問題とか歌手の問題とかいろいろあるんでしょう。ところが、レコードはそれだけ売れているのに演奏家の単価が非常に安い。歌手の単価が非常に安い。しかしスタジオなんかは非常に高い。逆に言いますと、おかしな現象ですけれども、外国でレコーディングした方が非常に安い。プレーヤーも安いしスタジオも安い。だから、みんな外国でレコーディングするなんという現象が起きたりするわけです。  またそれから、今はやりのミュージカルなんかでも、外国に一五%、一八%という高いロイヤリティーを払って向こうから買ってきてやるんですけれども日本の俳優、演奏家は本当にもうただ同様の安さでしか出演できないというようなのが我々の内部事情なんですけれども、そういうような日本の惨めさがあるんですが、そういうことに対してどういうふうにお感じになりますか。
  204. 南学政明

    政府委員南学政明君) 先生御指摘の点は、レコード制作者から演奏家あるいは歌手等が受け取る対価の問題が中心であろうかと思いますが、この種の対価の問題というのは、基本的にその歌手なり演奏家の技能、技量等に応じて決定されるべき問題でありまして、私契約の問題に属するものと認識をいたしております。また、この問題は本来文化庁の所掌に属するものでありますので、通産省としてのコメントはできる立場にはないのでありますが、あえて所見を申し述べれば、演奏家あるいは歌手等とレコード制作者というのは、レコードを制作する上でよきパートナー、協力者であるべきであり、両者間で十分な話し合いが行われて円満な解決が図られることを私どもとしては期待いたしたいと思います。
  205. 今泉隆雄

    ○今泉隆雄君 おっしゃることは非常によくわかります。  ちょっと話は変わりまして、冠という言葉を最近よくお聞きになると思いますし、最近朝日新聞にもしょっちゅう冠という言葉が出てまいります。冠のイベント、冠の音楽会、冠のミュージカルという言葉が出てまいりまして、当然御存じだと思いますけれども日本のお客さんは非常に冠というものに反対で、このイベントに対してのアンケートでは、これはメーカーのただの宣伝である、それから企業のPR、それから芸術、文化まで金で買う、しかも音楽会からミュージカルまで冠がついているにもかかわらず、安くならずにかえって料金が上がる、これは非常に不思議な現象なんですが、冠がついているとかえって高くなるという現象があるわけです。普通の人はそれで怒ってしまうという現象まであるみたいです。しかもその上に、これも通産省さんの範疇になると思いますけれども、広告代理店さんが必ずこれにかんでいて大体一五%から二〇%のマージンを取っていく。それを取らないと冠がまたできないというのが私どもの現状なわけなんですけれども、こういう冠に対してどういうふうにお考えになりますでしょうか。
  206. 山本貞一

    政府委員山本貞一君) 私ども大変残念ながら文化、芸術あるいは演劇、音楽の公演等につきまして、その仕掛けについてつまびらかではないんでございますが、今御指摘の私どもサービス産業一般を所管する立場から申し上げまして、文化、芸術あるいは音楽等が振興される上で企業が貢献をしていただくということ自体は、私どもは大変望ましいことだと一般的には思っております。  ただ、企業は基本的には、今先生も御指摘ございましたけれども、営利を主たる目的とするものでございまして、どうしても冠興行の際にPR的要素が出てくるとか、あるいはその間広告代理店にお願いして広告代理店が取り仕切ってマージンが高いとか、いろんな問題があることは私どもも報道あるいはその他を通じて認識はしております。私どもとしましては、できたら、企業の社会的貢献という意味から、今申し上げましたような文化、芸術の振興というために、理想的な形としてはいわゆる欧米でパトロンというか、パトロネージと言われている形にいけば理想的だなと、今のスポンサーシップで企業色あるいはPR色の強いものからできるだけ豊かな社会ではそちらの方向へ行くのが望ましいことだと考えております。私どもとしてできることがあればお手伝い申し上げたいと考えている次第でございます。
  207. 今泉隆雄

    ○今泉隆雄君 私の考えていることと全く同じで、なぜ申し上げたかというと、私の息子が二人代理店におりましてそういうことをやっておりまして、たくさんスポンサーを持っていれば持っているほど出世が早いというので、一生懸命そればっかりやっているものでよく怒っているんですけれども、外国なんかの場合、特にアメリカなんかの場合は一つのクレジットとして、お金を出した場合でもほんのこのくらいの一行の名前が載って、うちはこれに協賛したという名前だけ載るんですね。その名前が、ですから、十社か二十社載るということで非常に控え目なクレジットが載る、これが普通アメリカなりフランスのやり方で、芸術家なり作品を援助しているんだという形からこれはもともと始まっているので、日本みたいな誇大広告は余りないわけなんで、これは非常に日本だけの現象なものですから、やはり何とかそういういい形にならないかと思うので、私と同じ考えなので非常に助かりました。  それで、もうあと簡単な質問二つだけなんですけれども一つは、先ほど申し上げたように、映画産業なんかにも非常に力を入れてくださっていますし、演劇産業なんかにも力を入れていただきたいんですが、今映画産業、演劇産業というのが、これも通産省のお仕事じゃないと思うんですけれども、何らかの形でお手伝いいただきたいのは、消費税のためにみんなぶっつぶれようとしているわけです。といいますのは、美術、照明、道具、衣装、かつら、弁当代、それから宿代、もうすべてにかかるということで、ちょっと動くと三十人、四十人の人間にすべてにかかっていくということで、もう映画つくるのやめよう、芝居つくるのやめよう、もう全部ができない。それで、とにかく文化、芸術にこうやって税金がかかっているのは世界じゅう本当に日本だけなんで、何とか僕も陳情に行きたいというふうに思っているので、どういうふうに陳情したらいいか、またその方法も教えていただきたいし、何かいい方法があったらまたぜひ教えていただきたいと思います。今のままだと本当に映画がまずぶっつぶれます。それから芝居も全部ぶっつぶれるのが現状だというふうに思っておりますので、よろしくお願いします。  最後の質問なんですけれども、これも何か非常に単純な疑問で、私は子供の教育に非常に関心を持っていまして、私自身も子供のための音楽学校というのをもう十何年もやっておりまして、子供の歌ももう約二百曲ばかり作曲して音楽の教科書にも十曲ぐらい載っかっておりますが、最近ちょっとした本で読んだんですけれども、通産省で何か学習塾のために社団法人をおつくりになったという記事を読ましていただいたんですけれども、何か通産省が学習塾というのが非常におもしろいという、おもしろいと言うと失礼なんですけれども、何か結びつかない感じがちょっとしたので、その理由をお聞かせ願えればと思います。
  208. 松永光

    国務大臣松永光君) 一見、学習塾は文部省が所管すべきだという考え方もあるかもしれません。実は私は昭和五十九年の十一月から六十年いっぱい文部大臣をいたしておりまして、その当時も、全国にこんなにたくさんの学習塾があって、希望者に対して相当な教育活動をしてくれておる。これを何らかの形でより健全な形で発展するように面倒見てはどうかという考え方を私は持っておりまして、そういう意見を述べたこともあったわけであります。しかし、文部省という役所は非常にかたい役所でございまして、学校教育法に掲げられておる教育機関を我々は所管してやっていく、学校教育法に記載していない教育機関について支援をするような形をとりますというと、今でも幼稚園、小中高等学校のほかに学習塾に行くということでダブルスクールのような形になっておるが、さらにそれが促進されることになることは必ずしも適当ではないという考え方のようでございました。そのために、残念ながら私の文部大臣在任中には学習塾について文部省が健全な発展のためのお世話ができなかったわけであります。  そうこうしているうちに通産省の方で、これが野放しにされておるのはいかがなものか、学習塾も民間に対して、希望者に対して教育サービスを提供するサービス産業である。これが健全に発展するように環境整備をしていくことは大事だ、そういう立場から所管することになったわけであります。そして、学習塾の経営基盤の強化、それから消費者といいましょうか、学習塾で学びたいという希望者との間のトラブルの防止等のための施策を実施しているところでありまして、今後ともそういう施策によって、学習塾で学びたい、自分の学力を向上させたいという希望がより望ましい形でかなえられる、また学習塾の内容がさらによいものになって、全体として教育サービスを提供する産業として立派に発展するように尽くしてまいりたい、こう考えておるわけであります。
  209. 今泉隆雄

    ○今泉隆雄君 何か十月九日におつくりになって塾の日とおっしゃるそうですね。  どうもいろいろありがとうございました。質問終わります。
  210. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 本日の調査はこの程度にとどめます。     ─────────────
  211. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) これより請願の審査を行います。  第三一七号石炭合理化に関する請願及び第一七五九号産炭地域振興対策炭鉱離職者対策の充実に関する請願を議題といたします。  両請願につきましては、理事会において協議の結果、いずれも保留とすることに意見が一致しました。  以上、理事会の申し合わせのとおり決定することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  212. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 御異議ないと認めます。よって、さよう決定いたしました。     ─────────────
  213. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、継続調査要求に関する件についてお諮りいたします。  産業貿易及び経済計画等に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、本件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  214. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  215. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  216. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、委員派遣に関する件についてお諮りいたします。  閉会中の委員派遣につきましては、その取り扱いを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  217. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  これにて散会いたします。    午後四時三十六分散会