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1989-12-12 第116回国会 参議院 社会労働委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年十二月十二日(火曜日)    午前十時三分開会     ─────────────    委員異動  十二月十一日     辞任         補欠選任      西田 吉宏君     初村滝一郎君  十二月十二日     辞任         補欠選任      初村滝一郎君     西田 吉宏君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         浜本 万三君     理 事                 小野 清子君                 佐々木 満君                 糸久八重子君                 高桑 栄松君     委 員                 尾辻 秀久君                 木暮 山人君                 清水嘉与子君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 初村滝一郎君                 前島英三郎君                 菅野  壽君                日下部禧代子君                 深田  肇君                 堀  利和君                 木庭健太郎君                 沓脱タケ子君                 乾  晴美君                 小西 博行君                 西川  潔君        発  議  者  深田  肇君        発  議  者  高桑 栄松君        発  議  者  沓脱タケ子君        発  議  者  乾  晴美君        発  議  者  小西 博行君    委員以外の議員        発  議  者  山本 正和君        発  議  者  山田 健一君        発  議  者  塩出 啓典君        発  議  者  下村  泰君    国務大臣        厚 生 大 臣  戸井田三郎君    政府委員        厚生大臣官房総        務審議官     加藤 栄一君        厚生大臣官房老        人保健福祉部長  岡光 序治君        厚生省保健医療        局長       長谷川慧重君        厚生省児童家庭        局長       古川貞二郎君        厚生省年金局長  水田  努君        社会保険庁運営        部長        兼内閣審議官   土井  豊君        労働省職業安定        局高齢障害者        対策部長     七瀬 時雄君    事務局側        常任委員会専門        員        此村 友一君    説明員        大蔵省主計局共        済課長      乾  文男君        大蔵省理財局資        金第一課長    佐藤  謙君        労働大臣官房国        際労働課長    松原 亘子君        労働省労働基準        局安全衛生部安        全課長      梅井  勲君        労働省婦人局婦        人政策課長    太田 芳枝君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○原子爆弾被爆者等援護法案山本正和君外九名発議) ○国民年金法等の一部を改正する法律案(第百十四回国会内閣提出、第百十六回国会衆議院送付) ○被用者年金制度間の費用負担の調整に関する特別措置法案(第百十四回国会内閣提出、第百十六回国会衆議院送付)     ─────────────
  2. 浜本万三

    委員長浜本万三君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨十一日、西田吉宏君が委員辞任され、その補欠として初村滝一郎君が選任されました。     ─────────────
  3. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 原子爆弾被爆者等援護法案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 前島英三郎

    前島英三郎君 発議者皆さん、早朝から御苦労さまでございます。私は、自民党立場から、原子爆弾被爆者等援護法案につきまして提案者に対して幾つ質問をさせていただきます。  今日までの原爆被爆者皆さんへの政策を振り返ってみますと、原爆被爆者方々原爆放射線を浴び今なお健康障害に苦しんでおられるなど、健康上特別の配慮を必要とするという特殊事情に着目いたしまして、昭和三十二年に原爆医療法、続いて昭和四十三年には原爆特別措置法制定され、健康診断あるいは医療給付が行われるとともに、医療特別手当特別手当原爆小頭症手当あるいは健康管理手当保健手当介護手当葬祭料支給等対策が講じられてきておるところであります。また、近年は被爆者が年々高齢化している実態に対応いたしまして、原爆養護ホームの整備あるいはホームヘルパーの派遣、相談事業充実各種手当の引き上げ、健康診断強化等保健医療福祉の全体にわたりましてかなりきめ細かく施策の展開が図られていると私は感じております。  予算面におきましても、厳しい財政事情のもとではありますが、このような施策充実のために年々着実に増額されてきておりまして、平成元年度では千二百十九億円を確保されております。三十五万六千人の被爆者一人一人の方々が安心して療養を受け、健康管理に万全を期し、あるいは生活の必要に対応していくのにそれ相応の配慮がされてきておりまして、被爆者福祉の向上に大きな役割を果たしていると私は思っております。このように原爆放射線による健康障害という他の戦争犠牲者には見られない特別な犠牲に着目した施策としてはかなりのことを行ってきていると思いますし、今なお原爆後遺症で苦しんでいる被爆者皆さんに対して今後ともできる限りの施策充実努力していかなければならないと考えております。  一方、我が国は、核兵器による惨禍をこうむった世界で唯一の国でありますし、私たち自民党といたしましても、政権を担当する与党といたしまして政府一体となって、広島長崎の悲劇を再び繰り返さないというかたい決意のもとに、平和憲法の遵守、国是である非核三原則の堅持というのを政策基本にいたしまして、究極の目標であ ります核兵器廃絶と恒久平和の確立を全世界に粘り強く訴え続けてまいりました。  近年の世界平和のための貢献の例を幾つか挙げましても、昨年六月の第三回国連軍縮特別総会では、当時の竹下内閣総理大臣が核軍縮の実現を強く訴え、軍縮問題についての基本的考え方及び具体的な貢献策を示すとともに、国際協力構想一つの柱であります平和のための協力の具体的な進め方を明らかにするなど、大きな貢献をいたしてまいりました。その際の我が国提案に基づきまして、本年の四月に京都において我が国初国連軍縮京都会議も開催されました。また、本年一月パリで開催されました化学兵器禁止国際会議では、当時の宇野外務大臣化学兵器使用、開発、製造、保有のすべてを包括的に禁止する条約の早期締結を訴えました。さらに七月、パリで開催されました先進国首脳会議では、米ソ両国戦略核の削減、化学兵器世界規模での禁止等を盛り込んだ政治宣言の採択に大きな役割を果たしてまいりました。このように我が国は、戦後一貫して究極的核廃絶世界恒久平和の確立に向けまして努力を傾注してまいりましたし、また着実にその成果を上げてきているところであります。  去る五日の本委員会におきまして、提案者は、被爆者援護法制定非核政策一体のものであると答弁されておるわけでありますが、私は被爆者対策究極的核廃絶への努力とは別な手段で進めていくものと思いますが、そのいずれにいたしましても、私たちは最大限の努力を行い、政府も大きな成果を上げてきたと思っております。また、今後ともこれは努力を傾注していかなければならないという決意をまず申し上げておきたいと思うのであります。  そこで、質問に入ってまいりますが、被爆者援護法基本的な考え方について御質問をしたいと思うんですが、私は本法案には幾つかの重要な問題があると考えております。  そのまず第一は、国家補償のあり方、考え方についてであります。  本法案の第一条に言う「国家補償精神」につきまして、提案理由説明では、国際法違反原爆を投下した米国に対する請求権を放棄した責任戦争を開始し遂行した責任に基づく補償であると説明されております。原爆投下はまさに非人道的な行為でありますし、世界のいかなる地域におきましても、どのような理由があろうとも今後二度と繰り返してはならないものであると私も強く思っております。しかし、それが今定められている国際法上違法と言えるかという法的な問題につきましては議論の余地のあるところであります。政府の見解では、国際法根底にある人道主義精神には反するが、しかし国連憲章を含む今定められている国際法核兵器使用を禁じているかと言えば、そこまでは言えないとのことであります。しかし、そのような議論をするまでもなく、仮に国際法上違法であったといたしましても、日本国民がアメリカに対する請求権を放棄した日本政府に対して損害賠償を求める権利はないということは、提案者が引用されています昭和三十八年十二月七日のいわゆる下田訴訟の判決でも言っておるところであります。  一方、戦争の遂行の責任を言われておるわけでありますが、政治論として国の戦争責任というのはともかくといたしまして、法律論といたしますと、戦争の開始及び終結というようないわゆる統治行為について、国の不法行為責任など法律上の責任を追及し、その法律的救済を求める道は開かれていないと承知いたしております。国の戦争責任ということを言われるならば、当時の国民はすべて何らかの形で戦争にかかわり合いを持ったと言えましょうし、あるいは戦争犠牲になっているわけでもあります。これを国家補償の名において補償していくとするならば、その補償は他のもろもろの戦争犠牲者へと際限なく行われなければならないということになると思うんです。  そこで、私は被爆者対策というものは国の不法行為責任に基づく補償というような性格のものではなくて、原爆放射能による後遺症という特別の健康障害に苦しんでおられる被爆者皆さんに対し、国が政策的見地に立って国民的合意の得られる公正、妥当な対策を講じていくべきものであると考えておるわけであります。その意味では、現行制度充実こそが被爆者皆さん福祉充実につながるものと考えますが、提案者がなぜに現実に即した対策ではなくて国家補償ということにこだわられるのか、被爆者対策についてのみ国の不法行為責任を問おうとされておられるのか、その理由をまずお示しいただきたいと思うのであります。
  5. 山本正和

    委員以外の議員山本正和君) 前島先生はかねてから社会保障問題については一家言をお持ちでございまして、私どもかねがね尊敬しているところでございますけれども、それだけに被爆者皆さんの置かれている状況、こういうものについてはとりわけ御理解も深いかと思うわけでございます。  ただ、先生が今御質問いただきました中身は、なぜ被爆者あるいは原子爆弾の洗礼によって今もさまざまな問題が残っている人たちに対して、国家補償という概念を持ってくるかと、その御質問だろうというふうに思うわけでございます。  先生おっしゃいましたように、国家補償という概念については確かにいろんな法律上の問題点がございます。例えば国家賠償あるいは損失補償あるいはこの二つのどららにも当てはまらない場合の谷間に対してなおかつ国家補償をする、こういうさまざまな問題がございます。そして、現行法律の中でもこのいわゆる国家賠償とかあるいは国の適法な措置によってもなおかつ補償するという損失補償、こういうもの以外のものとして既にあります原爆法案のうちの一つは、国家補償精神ということを片方は言っているわけでございます。ですから、国家補償というものについてさまざまな議論があるということは私どもよく承知しておるのでありますけれども、ここで我が国民の感情日本民族としての感情ですね、日本国民としての。それを本当に具体的に言ってきました。  この前、本委員会で問題提起されたことについて、ある県の被爆者団体の会長の方からお手紙をいただいております。そこで、国家補償についてこういう陳情があったわけであります。  被爆者は、あのときの生き地獄を体験した者として再び被爆者をつくらない。その国のあかしとして、特に人間らしく死ぬこともできなかった原爆死没者に対する国としての弔意を実施するためにも国家補償による被爆者援護法制定を強く政府に求めてまいりました。 と、以下、この方は今もなおかつ大変な状況をお持ちでございますけれども、要するに私たちがこういう悲惨な目に遭ったということに対して、二度と日本の国がこういう戦争ということに行ってはいけないと、そういう趣旨も含めて、国家補償ということによってきちんと位置づけをしてほしい、こういう強い意図がおありでございます。  そして法律的な問題いろいろございますけれども法律的な問題というのは私は憲法範囲内で制定されていく法律、いわゆる立法政策上の問題として国家補償の問題を位置づけるか位置づけないかの問題だろうと思うんです。要するに基本懇における論議の中にありました受忍論の問題も、これは要するにそのときの政府、そのときの国民主権下にある政府立法政策上どう位置づけるかという問題だろうというふうに思うわけでございます。そういう意味で、先生の御指摘法律上の問題を超えて何とか全会派一致でもって国家補償というところに持っていっていただけないだろうかというのが私ども提案趣旨でございます。
  6. 前島英三郎

    前島英三郎君 精神論はよくわかりました。  次に、そのほかの戦争犠牲者との均衡の問題についてでありますけれどもさき大戦我が国にとって未曾有の事態でありまして、当時の国民すべてが戦争による何らかの犠牲を受けております。しかしながら、このような戦争被害につきましては仮に生命、身体障害に限定したといたしましても、これを完全に償うということは到底不可能であろうと私は思うんです。私の友人にも焼 夷弾で、あるいは艦砲射撃でという、そういう生活をしている方もおります。戦後四十四年以上経過した現在、一般戦争被害については、欧米先進諸国に比較しても遜色のない程度にまで整備された我が国社会保障制度で広く対応して、これを今後とも発展させていくということが私たちの務めではないかというふうに思ってもおります。  このような中で、政府といたしましてといいますか、私たちも一緒になって自民党として考えているわけでありますが、原爆放射能による健康障害のような特別の犠牲に対してはその障害実態に即した対策をずっと講じてきているわけです。しかし、そのような特別の事情にない人にまで、例えば死没者遺族とか被爆者というだけで何ら健康障害がないという方々まで給付を行うということになりますと、ほかの戦争犠牲者との間に著しい不均衡が生ずるのではないかと私は思うわけです。  先日の委員会では、一般戦災者に対する補償も行わなければならないが、原爆被爆者については原爆は極めて悲惨であったという点で一般戦災者に優先して補償を行う必要がある。今もそのようなことを含めた御答弁があったわけでありますが、確かに現在も原爆放射線による健康障害に苦しんでおられる被爆者方々につきましては他の戦争犠牲者とは違う点があることは事実でありますし、肉親を失った遺族方々につきましてはその心情に、他の戦災被災者とこれは遺族という立場におきましては、肉親を失ったその心情というものはこれは変わりはない、このようにも私は思うわけであります。  東京大空襲では十万人近くの人が、またほかの都市でも空襲艦砲射撃により多くの人々が亡くなりました。きょうおいでの方々は戦後生まれの方は少ないわけでありますから、私も山梨の甲府が昭和二十年の四月の六日に焼夷弾の一斉爆撃を受けました。多くの人が亡くなりました。これら多くの戦災者肉親を失った遺族の悲しみやあるいは心情被爆者遺族との間に一体どれほどの違いがあるだろうかと思いますと、これはそう違いを私はとうとうと述べられるものではないというふうにも思うわけです。そして、被爆者対策が結局は国民租税負担によって賄われていることを考慮するならば、被爆者遺族皆さんにのみ特別の個人的な給付を行うということは国民的合意が到底得られないのではないかという気もするわけであります。  提案者は、国が原爆死没者やその遺族に対して何ら弔意をあらわしていないと言っておられるわけでありますが、幾つかの方法で弔意は表明いたしております。すなわち、毎年行われる広島市、長崎市の原爆死没者慰霊式に対して総理大臣厚生大臣が出席するとともに、その式典開催費に対して補助金を支出しているほか、八月十五日の戦没者追悼式には原爆死没者遺族皆さんが参列する費用を予算化するなどの措置が講じられていることは御存じだろうと思います。このように、個人に対して特別な給付をするのではなく、死没者及びその遺族全体に対して弔意を表明することが国民感情にも沿うものではないかというふうに思うわけであります。  原爆は確かに特別な爆弾ではあります。しかし、特別な爆弾だからといって他の戦争犠牲者との不均衡が生じてもいいということにはならないと思うのでありますが、この点についていかがお考えでございましょうか。
  7. 山本正和

    委員以外の議員山本正和君) 実は我が国の四十年前のあの戦争惨禍というのは確かに多くの国民がこれを受けている、恐らく日本国民のほとんどの方が受けていると言ってもいいんじゃないか、これは確かにそのとおりだと私も思うわけであります。旧満州における開拓団方々あるいは少年義勇軍人たち含めてこれは大変な数でございます。また、ソ連における抑留の惨苦、そういうものに耐えられた方も随分たくさんお見えでございます。しかし、そういう中で私どもが今回この原爆被爆者の問題に対して、これを特に取り上げて出してきているというその意味を何としても御理解いただきたいのでございます。  それは、私どもこの原爆被爆者対策と同時に、いわゆる戦争犠牲者に対しても国は何とかして何らかの対策を講ずるべきであるという考え方根底に持っておるわけでありますけれども、特にまた外国等の例を見ますと、西ドイツあるいはイタリア、フランス、イギリス等では一般戦争被害者に対してもこれは国の施策として明確にその対策を講じているわけであります。我が国はこれをやらないと言っているんですね。ですから、これは一つは国の政策の問題です。本来から言えば、私どもはやるべきだと。しかし、今日直ちにこれを行うには余りにもいろんな意味での調査なりあるいは立法上のバランスの問題なり、さまざまな問題が出てまいりますから、十分にこれは検討していきながらやっていきたい、こういう法案を当然つくっていきたいと思っているわけであります。  しかし、我が日本国民世界の中で平和憲法を樹立して、世界平和の先頭に立とうという中で、世界じゅうの国際的に通じる日本戦争犠牲者、特に厳しいこれは人類の考え出した悪魔の知恵とも言える原子爆弾による被害者に対しては、せめてまずこれだけは何としてもやっていこうじゃないか。このことがまず突破口といいましょうか、このことでもって戦争というものは二度と起こしてはならないという決意、さらに大変な惨苦を帯びている一般被災者方々を含めて戦争による災害被害というものは国全体で考えていこう、そのことのまずあかしとしてこの法案を提出している。したがいまして、今後さらに国民皆さん方合意を得ながら、一般戦争災害被害者に対しても何らかの対策法案提案していきたい、こういうふうに考えているところでございます。
  8. 前島英三郎

    前島英三郎君 今、一般戦災者に対しても補償をすべきだというふうなお答えもいただき、いわばこの法案はその突破口である、そういう御答弁でございましたけれども、しかし本当にすべての戦争犠牲者への補償ということが可能と考えられるかという点に立つと、私はなかなか難しいだろうと思うんです。仮に可能として、どの範囲にどのような補償内容考え、あるいはそのためにはどれだけの費用がかかるとお考えになっておられるのか。まして、その負担に対して国民は耐え得るとお考えになっておられるのか。  今、給付負担の問題が消費税にまつわりましていろいろと私ども税制特別委員会議論をさせていただいてまいりました。そして、これからの高齢化社会ということを考えて、みんながお互いに給付、そしてその背景の負担というものを分かち合っていくために、年金法案もこの委員会に付託されておりますけれども、この問題も負担する側はなるべく負担を軽く、そして受け取る部分はなるべく多くというのが私は今率直な日本人の感情のようにも思うわけであります。  そういう意味におきまして、戦争犠牲者すべての人への補償ということの可能性ということを前提に置いて、皆さんはどのくらいその費用が償うという形で必要とされるか、その辺はいかがでございましょうか。
  9. 下村泰

    委員以外の議員下村泰君) これは大変な問題だと思いますけれども戦争犠牲者救済についての我々の基本的な立場は、先ほど来申し上げているとおりで、国家との身分関係において援護措置に差を設けないということであります。こうした立場から、さき大戦空襲その他の戦時災害により身体に傷害を受けた者及び死亡した者の遺族に対しても、基本的には戦傷病者特別援護法及び戦傷病者戦没者遺族等援護法に規定する軍人軍属等に対する措置と同様に、国家補償精神による援護を行うべきであると考えております。戦時災害援護法案については、七十一回国会提案させていただいて以来の経緯があるわけでありますが、補償内容やその対策所要経費等についてはもう一度その内容を精査して、国民合意、納得が得られるような形でできるだけ早い時期に再提案させていただきたいと考えております。  そして、今御指摘の現段階での費用でございま すけれども、これについて申し上げることはちょっと差し控えさせていただきたいと思います。と申しますのは、精査してその結果が出ておりませんから思い切って詰めができません。それで今は差し控えさせていただきたいと思います。これが私の答えでございます。  それから、発議者を離れて言わせてください。発議者としての言葉ではないというふうに認識していただきたいと思います。  もう戦後四十数年たっております。私も東南アジアを歴戦して帰ってまいりました。この四十数年の間になぜこのような論議が今ここでなおなされているのか、いかに怠慢であったかということを一言申し上げたいと思います。私の発議者外としての意見はこの一つでございます。
  10. 前島英三郎

    前島英三郎君 わかりました。  恐らくその数字は大変な数字であろうと思うんです。何千億という単位のものではなくて、その上の兆という数字がやっぱりそのあたりにはひらめくだろうというふうに思うんです。  次に、被爆者年金の問題についてお伺いしたいんですが、被爆者援護法案におきましては、すべての被爆者に対し年金を支給することとされております。そもそも年金は、多分に生活保障的な性格を有するものであります。高齢障害で働くことができない、あるいは生活に必要な収入がない、そのような場合に年金が支給されるものであります。そして、今日、一般国民に対しましては公的年金制度が既に確立しておりまして、一定の年齢に達するなどの場合にはすべての人に年金が支給されることになっております。  被爆者皆さんに対してのみ一般社会保障に加えてさらに特別に年金を支給するというのは、どういうお考えに基づくものであろうかということであります。被爆者であれば障害の有無や稼得能力にかかわらず年金を支給するというのは、どうも説得力がないように思うのであります。  提案者が類似制度として挙げられる戦傷病者戦没者遺族等援護法、すなわち雇用関係というまさに特別な関係にあった人々に対する施策である戦傷病者戦没者遺族等援護法においてさえ、現状では障害のない人に対しては何らの施策も行われていないのであります。被爆者皆さんであれば、健康障害があってもなくても年金を支給するという画一的な平等主義は、援護対策の必要度の高い被爆者皆さんに対する適切妥当な対策を行うことへ困難をもたらすだけでなく、他の戦争犠牲者はもとより一般国民との間に著しい不均衡を来し、社会的公正が確保できなくなるおそれがあるのではないかと私は思っておるわけであります。  そこで、年金被爆者皆さん全員に支給するのはどういう理由によるものか。これは生活の保障なのか、放射線による健康障害に対する給付なのか、その性格が極めてこの法案ではあいまいだと思うのであります。国家補償の名のもとにただ給付ということであるとするならば、これはいかがなものであろうかということを感ぜずにはいられません。その辺はいかがでございましょうか。
  11. 塩出啓典

    委員以外の議員(塩出啓典君) ただいま前島先生から、今回の被爆者年金福祉のばらまきになるのではないか、またほかの戦争被害者との不均衡があるのではないか、こういう御質問でございます。  私も広島におりまして、被爆者の方にもたくさんお会いするわけでございますが、なかなか被爆者の方が自分が被爆者であるということを余り言われない場合もある。今日まで四十数年の間にいろいろな、結婚に対する障害、あるいはまた子供さんたちは被爆二世と言われる。そういうような点で、必ずしも被爆者実態というものが国民的に理解をされていない、そういう点はいろいろあったろうかと思います。  先般、昭和六十二年六月に厚生省が昭和六十年度原子爆弾被爆者実態調査の報告、さらには六十一年十二月に日本被団協が原爆被害者調査第一次報告、さらには六十三年の三月に原爆被害者調査第二次報告、原爆死没者に関する中間報告、その他のことをいろいろ発表いたしまして、被爆者の戦後四十年にわたる実態というものがいろいろ明らかにされてきておるわけでありますが、先ほど前島先生も御指摘になりました昭和五十五年の基本懇の答申においても、もちろん被爆者の方が見れば不十分な認識とはいえ、やっぱり晩発障害を持つ原子爆弾被害者の特殊性を認めておるわけであります。いろいろの調査では、四人に一人がこんな苦しみを受けるぐらいなら死んだ方がましだと、そういうような意見もあるわけでございます。  そういう点で、この法案におきましては、一つには原子爆弾の傷害作用による後遺症のため、稼得能力や生活能力が劣っている。二番目には、原爆に起因する痛苦から解放されないばかりか、健康管理、栄養補給、再発の防止など、傷病に伴う出費を要するものが多い。三番目には、いつ発病するかもしれないという生活不安、さらには二世、三世に関する遺伝的不安を常に持たざるを得ない等の状況下にあることに着目をいたしまして、国家保障の精神に基づき支給するものでありまして、こうした被爆者の特殊な状況考えるならば、私たち給付のばらまきとは考えませんし、社会的公平が保たれていないということはない、こういう点は十分国民皆さんの御理解は得られるものであると、このように考えておるわけでございます。
  12. 前島英三郎

    前島英三郎君 私もその心という問題につきましては理解を非常に持っている一人でもあるわけでありますが、しかし、国民全体のいわば感情のコンセンサスが、その土台がありませんと、やっぱりなかなか難しい問題も多々あるということを申し上げているわけであります。  そこで、援護法案の施行に伴う経費についてお伺いするわけでありますが、本法案の施行には二千三百七十億円必要であるとのことであります。現在の政府原爆対策予算額というのが千二百十九億円でございますから、その約二倍になります。現在より千百億円余りの予算が新たに必要になるということになるわけであります。厳しい財政事情のもとで二千四百億円もの財源をどのように確保されるのか。あるいは国民負担をお願いするのか、それとも他の歳出を削るのか。具体的な考えをお聞かせいただけたらと思うのでございます。  被爆者対策の財源は、もちろんこれも国民租税負担であります。他の戦争犠牲者に比べて著しい不均衡が生じるような形で、やはり租税負担につきましては国民合意が果たして得られるかどうかということになりますと、甚だ私は先に不安を感ぜずにはいられません。そういう一つの財政面の、どのような形でそれは歳出すべきかということもあわせてお伺いできればと思うのであります。
  13. 塩出啓典

    委員以外の議員(塩出啓典君) ただいま前島先生から御指摘になりましたように、本援護法の施行に伴う経費は二千三百七十億でございまして、御指摘のように現在の額からは千百五十億程度の増加ということになるわけでございます。  今回の提案は、前回の委員会等でもいろいろ論議ありましたように、国民皆さんの御理解、また国会における与野党の合意形成を念頭に置いて、与党の先生方にも御理解いただけるように、そういう内容のものになっておるわけでございます。そういうわけで、国家財政大変厳しい状況ではございますが、決して捻出不可能な額ではないのではないか。これは十分国民皆さんの御理解はいただけるものと私たち考えておるわけでございます。  先ほど前島先生もおっしゃいましたように、いずれにいたしましてもこの被爆者援護法制定のためには国民皆さんの広い御理解と御協力が必要であり、私たちもさらにそのような御理解をいただけるように努力をしてまいりたい。必ず御理解はいただけるものであると、このように考えておる次第でございます。
  14. 前島英三郎

    前島英三郎君 これまでいろいろ質問してまいりましたけれども、その基本となる考え方をお尋ねしたわけでありますが、いろいろ問題があると いうことは発議者皆さんも御承知だろうと思いますし、私たちもそう思っております。  私は、被爆者対策というのは政策論として議論すべきであり、仮に現行施策で不十分な点があるとするならば、できるものなら改善をしていくということが本来の姿であると思うのであります。何が何でも国家補償を前提とした援護法をつくらなければならないということでは、本当に必要な施策を着実に実施していくということにはならないのではないかというふうに思うのであります。ほかの戦災によるいろんな被害方々の心をも考えつつこうしたものはやはり議論すべきではないかというふうにも思います。  本日は質問という形でありますから、どうしても見解の違う部分に焦点を当てざるを得ませんでした。しかし、世界で唯一の原爆被爆国の一員として、私はできることならば見解の一致する部分に光を当てて、それを土台にして少しでも施策を前進させたいと願うものであります。なるべく早い機会にそういう日がやってくることを祈りまして私の質問を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  15. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 私は、被爆県長崎県選出の国会議員として、山本正和議員他九名の発議による被爆者援護法の提出の趣旨に理解を示さないわけではありませんけれども、現在の政権を支えておる与党の一員として、昭和三十二年制定医療法、昭和四十三年制定を見た特別措置法のいわゆる被爆二法、これでこれまで行われてまいった被爆者対策についてはそれなりの評価をしておるものと私は思います。それゆえに、参議院において与野党の勢力分野が変わったからといって直ちに援護法というわけにはまいらないのではないか、かように思います。  援護法は施行経費として平年度二千三百七十億円が見込まれており、現行予算と比較をいたしますと二倍近い額を要するのであります。したがって、当然従来の施策との間には大きな乖離を生ずるものであり、従来施策の行政の公平性とか検討すべき課題が多く、十分な時間をかけて慎重な審議を行うとともに、例えば参考人の招致、公聴会開催の機会を設けるなどの必要があると考えます。したがって、委員長を初め各党理事の皆様には本案のこれからの取り扱いについて十分に慎重であっていただぎたいと思う次第であります。  そこで、政府にお尋ねをしますが、本案と被爆者対策二法とは整合性を持ってつながっていくものでしょうか。つながらないとすればどのような点にそれが見られるのか、この際明らかにしてもらいたい。また、それは行政の公平といったところからどのように考えていくべきかなどをまず説明願いたいと思います。
  16. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答えいたします。  お尋ねの現行の原爆二法との関連でございますが、先生御存じのとおり、現在の原爆二法につきましては他の戦争犠牲者には見られない特別な犠牲、すなわち被爆者の受けた放射線によります健康障害という特別の犠牲に着目いたしまして、健康被害実態に即しまして医療給付、手当の支給等内容とするものでございます。  これに対しまして御提案被爆者援護法案は、国の戦争責任に基づく国家補償考え方に立ちまして、放射線による健康障害という特別の事情にない死没者遺族に対する特別給付金を支給することや、健康障害の有無にかかわらず被爆者全員に年金を支給すること等を内容とするものでございます。したがいまして、理念なり内容とも基本的なところで異なるものというぐあいに考えております。  それから、二番目の行政の公平性という観点でございますが、これにつきましては、原爆放射能によります健康障害という特別な事情にない被爆者遺族等に対する給付等を内容とするこの援護法案は、一般戦災者等、他の戦争犠牲者との均衡上に問題があるというぐあいに考えているところでございます。  以上でございます。
  17. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 次に、発議者から、私が慎重な審議をすべきだということと、行政の公平といったところからの施策のつながり、こういった点についてどのように考えておるのか、この際御説明を願いたいと思います。
  18. 小西博行

    小西博行君 初村先生長崎県出身ということで、常日ごろから被爆者問題については大変御造詣の深い先生でございまして、大変その点で敬意を表しているところでありますが、私自身も広島出身でございますので、ともに被爆者皆さん方の苦悩というものは十分理解しているつもりでございます。そういった意味で今の御質問にお答えをしたいと思います。  現在の被爆者対策は、御存じのとおり、いわば社会保障制度の上乗せ措置として広い意味国家補償的制度として原爆二法による施策がなされているわけでございます。我々が御提案申し上げているこの援護法案は、被爆者及びその遺族が置かれております特別な状況にかんがみまして、国家補償精神に基づきこうした方々援護するものでありまして、政府の行っている現行施策とは基本的に思想が異なっているものと理解しております。  しかし、我々は可能な限り現行施策との継続性を考慮いたしまして、医療関係は基本的には現行施策と同じものとしております。本来遺族に支給すべき遺族年金あるいは弔慰金につきまして、とりあえずの措置として百二十万円、十年償還の国債とするなど国民の幅広い御指示、国会での合意形成などを主として考えまして、極めて現実的な提案とさせていただいております。ぜひとも御理解をお願いをしたいと思う次第であります。  また、被爆者一般戦災者援護とのバランス、行政としての公平性の確保につきましては、両者とも速やかに措置をすべきであるというのが我々の基本的な立場でありまして、今回はわけても特殊性の極めて強い原爆被害援護を優先させる形で原子爆弾被爆者等援護法案を提出させていただいたわけであります。  今、慎重に審議すべきではないかと先生おっしゃっておりますけれども被爆者に対する一刻も早い援護が必要ではないかというふうに考えておりまして、審議を尽くした後は当然のことながら速やかに採決をすべきじゃないか、そういうふうに私は考えておるところであります。以上です。
  19. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 一応発議者考え方を聞いたわけでありますが、私は、こういう法律を通過させるにはやはり慎重な国民全般がわかるような審議のやり方をした方が通過するのにしやすいのではないかというような考え方のもとにあなたの考え方を聞いたわけでありますが、やはり国の財政が豊かであれば、一般戦災者にも何らかの手当てをすべきではないかなとは思いますけれども、それだけの力がまだありませんものですから、今日までほったらかしておるようでありますから、今後私どももこの法案には十分関心を寄せていきたい、かように考える次第であります。  そこで、きょうはせっかく時間をいただきましたので、厚生省側に基本的な問題は別として、多くの被爆者の今日まだ納得できない点がたくさんある中で、被爆地域是正の問題に絞って若干の質問をしてみたいと思います。  昨年も私はこの問題をただしました。その際、一つの例として間ノ瀬地区の具体例を挙げて、その地区住民の死亡原因が、がん、白血病、原爆症あるいは病名不明で亡くなっている方が非常に多いということを私は申し上げておるのであります。そのときの厚生省の局長さんは、私の質問を聞いた上で次のような答弁をいたしております。「先生が御指摘の、そういう地域の健康状態をつぶさに調べていく、これは非常に大事なことであると思うわけでございますけれども、」「いろいろ統計的な手法で、そういうことの特殊性ということは明らかにする努力をする必要があると思うわけでございます。」すなわち、統計的な手法でそういうことの特殊性ということを明らかにする努力が必要である、こう答弁をしておるわけであります。  その努力は、住民がするのではなくして国と厚 生省がするのではないかと私は思うのだが、私どもはどうしても国あるいは厚生省がしなければ、とても被爆者を納得させるわけにはまいりません。これについてどういうふうな考え方を持っておるのか、お尋ねをしたいと思います。
  20. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 小さな地域におきます放射能の影響をいろんな疫学調査で調べるということにつきましては、その地域地域におきます食生活なりいろんな習慣等が大きな影響を及ぼしますので、そういう面で、疫学調査によります地域特性というのを見出すというのは非常に難しいといいますか、いろいろ考えなきゃならない問題はあるわけでございます。そういう面で、そういう小さな地域におきます特性といいますのをいろんな調査で明らかにする手法についての勉強といいますか検討というのは今後とも続けていかなきゃならない課題であるというぐあいに認識いたしております。  しかしながら、原爆の放射能という問題に関して申し上げますれば、やはりその地域にどの程度の放射能が降ったか、落ちたかということが非常に基本的に大事な問題であろうというぐあいに考えておりまして、先生お尋ねございましたように、厚生省といたしましては、五十一年、五十三年、厚生省が行いました調査もございますし、それからそれ以外にいろんなデータ等もあるわけでございまして、先生がかねて以来いろいろ御質問、御要望ございました地域と周辺地域の間におきまして有意な差は認められないということで、なかなか地域見直しを行うべき科学的あるいは合理的な根拠を認めることは非常に難しい状況にあるわけでございます。  したがいまして、厚生省において、そういう地域におきます住民の健康調査、疫学調査等を行うことについては、現在のところ考えていない状況にございます。
  21. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 私は、この問題で歴代の厚生大臣質問をしておるんです。橋本厚生大臣、斎藤十朗厚生大臣、最近は藤本厚生大臣にしたわけですね。そのときに、去年の話ですが、私の質問をじっと聞いておって、最後に藤本厚生大臣は次のように答えたんです。「そこで、間ノ瀬地区の問題につきましては、先ほどからいろいろ具体的な根拠といいますかデータといいますか資料をお持ちのようでございますので、それにつきましては、厚生省としても専門家の方々先生持ちの資料をもとにしまして十分に研究検討をしてもらうというようなことをひとつ考えてみたらどうか」というふうに答弁をしておるんです。  それから、被爆地域の是正のためには、やはりあなた方は科学的、合理的な根拠が必要と必ず答弁をするに違いないんだ。放射能被爆がどの程度であったかを被爆住民に提出せよというのは、これは無理なんですよ。だから、当該地区の今日までの死亡者の死亡原因を調べると、学者の発表等によるほかに道はない。そこで私は、近く長崎県と長崎市で合同の科学的、合理的な根拠を見出すための検討会が開催されるということを紹介したわけなんです。当時の厚生大臣は、結論が出れば、必要な御協力、御相談ということについて十分配慮してまいりたいという答弁があったんです。検討会について今日まで厚生省はどのような協力をされたのか、簡単に御答弁を願いたい。
  22. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答えいたします。  第一番目の間ノ瀬地区の住民の健康調査、死亡原因調査のデータを専門家に検討してもらうということに対するお尋ねでございますが、先ほど先生からお話しございましたように、藤本大臣時代にそういうやりとりがございまして、私どもその資料を専門家にいろいろ御検討をしていただきました。  専門家の御意見といたしましては、この対象地区の住民の年齢構成が過去四十年間の長い期にわたりますので非常に年齢構成が明らかにできない、あるいは聞き取り調査でございますので死亡の事由なり疾病名、症状等の確認が困難である、あるいはこの周辺地区の住民との比較はできないというようなことなどから、この調査結果をもちまして放射線の健康影響についての科学的な結論を導くことは困難であるというような御返答をいただいているところでございます。  それから、被爆地域是正のために何が必要かというお尋ねでございますが、これにつきましては、先生御案内のとおり、五十五年十二月に出されました原爆被爆者対策基本問題懇談会報告にございますように、「これまでの被爆地域との均衡を保つためという理由で被爆地域を拡大することは、新たに不公平感を生み出す原因となり、ただ徒らに地域の拡大を続ける結果を招来するおそれがある。被爆地域の指定は、科学的・合理的な根拠のある場合に限定して行うべきである。」というような御報告をいただいているわけでございますので、私どもといたしましては、そういう面で科学的、合理的な根拠が必要であるというぐあいに考えているところでございます。  それから、県、市におきまして科学的、合理的な根拠を求めるために検討会を開催し、種々検討を行っているということでございますので、私どもはその内容を見守ってまいりたいというぐあいに考えております。  そういう面での協力はどんなことをやっているかというお尋ねでございますが、検討会の委員の選定に当たりましては、専門家としてどのような先生がおられるかということについての紹介、あるいは検討を進めるに当たって県、市から相談を受けまして、必要な指導、助言を行っておる、あるいは長崎広島両市におきまして同様な検討会が設けられているわけでございますので、広島長崎が互いに連携をとり合いまして、整合のとれた形で検討が円滑に進められるよう情報の提供なり連絡調整等を行っているところでございます。  以上、先生のお尋ねにお答えしたところでございます。
  23. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 広島に落とした原爆長崎に落とした原爆は質が違うんだよ。質が違うんだよ、それは。この点は私も近々検討会の御報告を聞いてわかったわけでありまして、びっくりするんだよな。  そこで、大臣、せっかくでございますが、もう時間がないから縮めますが、この検討会が近く結論を出した場合には国も厚生省も全面的に協力する必要が私はあると思う、結論が出た場合ですよ。ところが、これを調査するのに五十カ所です、今から五十カ所。そのときに必ず長崎に落とした原爆は記録が残るということを言いよるんですよね、今、検討会が。それが出たら、大臣にひとつぜひ協力してもらいたい。  またあわせて、五十カ所に一千万の経費がかかるんですよ。その経費等についてもやっぱり国は考えてもらわなければいかぬと思うが、この二点について大臣の考え方を聞いて、私の質問を終わります。
  24. 戸井田三郎

    ○国務大臣(戸井田三郎君) 県と長崎市において今検討をしている検討会の結果が出て、そしてその結果に基づいてさらに我々は検討をすることは当然でありますけれども、ただ一つ原爆被爆者に対する問題は、やはり放射能による被害がどういう結果になっているかの証明ができるかできないかということが一つの物差しだろうと思うんです。もう一つは、いろいろ爆心地から何キロとか線がずっと引いてありますね。それで間ノ瀬地区の問題は、その隣の行政地区というのはもっとずっと遠く爆心地から離れているけれども、その地区は該当されているのに、やはりそれよりも爆心地に距離からいったら近い間ノ瀬地区は除かれているということがいろいろ誤解のもとになっている、誤解といいますか、そういった意味での権利関係に影響していくものの判断の物差しになってきているような感じも私はいたすわけなのです。  そこらあたりに私はやはり一つ問題点があるような感じがいたすのです。それは、中心地から落とされた爆弾が、やはりこれは行政区画に関係なく、風や何か自然現象で飛んでいく。そうすると、その自然現象の及ぶ範囲というものと行政区画はおのずから、行政区画は後で人がつくったものであり自然にあるものではなくて、自然にある そういったものがどういう影響の及ぼしがあるか。さらに、そういった地域的な問題のほかに、その地域で中心地よりは近いけれども、あるいは遠いけれども、そこに放射能の被害が確実に科学的な根拠で認められるものがあるかないか。あれば当然これは距離が遠くても私はそういった取り扱いをしなければならないと思いますから、この線引きについてやはりいろいろの基準はありますけれども、決めた基準でありますから守らなきゃいけないけれども、現実に間ノ瀬地区の中にあるかないかという、放射能の被害が厳存して認められたかどうかということは当然この調査の結果を十分検討していくべきことであると私は思います。
  25. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 ただいま政府の御見解がございましたけれども発議者立場で一言見解を申し上げたいと思うところでございます。  いわゆる黒い雨地域に関する地域拡大の問題でございますが、黒い雨地域という問題というのは、もう御案内のように原爆が爆発した際に爆風がちりを吹き上げて、そのちりが雨にまざって黒い雨となったというのが事実でございます。こういう黒い雨地域等についての地域拡大の問題について、科学的、合理的根拠のある場合に限定して行うべきというのがいわゆる基本懇の意見報告でございますが、政府はこの意見報告を受ける形で大体すべて事足れりとするような大変消極的な態度をおとりになってきておられることをまず大変遺憾だと私は思っているところでございます。  初村先生はたびたび本院におきましても御指摘はなっておられますし、長崎地域におきましては具体的なデータをたびたび御提示になっておられるところでございますし、また長崎市からも地域拡大についての御要請も出されておるところでございます。広島におきましても、同じように黒い雨地域についての自治体からの陳情書等も出されておるところでございます。  私は、世界で唯一の被爆国である我が国におきまして、その被害の実相というのが、これは今なお未解明の部分が残っていて当然だと思うわけでございます。したがって、新しい知見や研究というふうなものが提示されていくという場合には、これはすぐに厚生大臣としてはお取り上げになって、科学的な調査をやって、そして実態を把握するということが何よりも大事だと思いますし、私ども発議者立場としてはこれを直ちにやらなければならないという態度をとっておるところでございます。  従来からの問題におきましても、例えば広島の気象研究所の予報研究室長でありました増田氏が学会で報告をされたという気象学者の立場からの御研究の中でも、広島の黒い雨地域は二倍以上に上ると、その後の調査においては四倍にもなるのではないか等が言われているというふうなこと。あるいは長崎におきましても、例えば住民の健診結果等については、十分これは精査をしなければならないという実態が提示されてきておるところでございます。  したがって、私は今まで見捨てられていた被害者が被爆影響によって本当に未知の不安にさらされ、とりわけ健康上の不安を抱えているという多くのいわゆる被害者皆さん方が一人残らず援護措置をされるためにも、ぜひこれは新しい知見が出れば、厚生大臣が直ちにこれは科学的調査を行い、そして実態把握をして見直していくというふうな態度をとるべきであるというのが私ども考えであるということを申し上げておきたいと思います。
  26. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。     ─────────────
  27. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 次に、国民年金法等の一部を改正する法律案及び被用者年金制度間の費用負担の調整に関する特別措置法案を便宜一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  28. 深田肇

    深田肇君 初めての質問でございますから、的が外れれば笑ってください。失礼な質問がありましたら怒っていただいて結構であります。よろしくどうぞお願いいたしたいと思います。  質問に入る前に、実は十二月五日の本委員会で、その際に堀議員厚生大臣年金局長との間の討議を聞いておりまして感じましたことを率直に申し上げておきたいというふうに思います。  日本社会党は、みずからが護憲の党だと言ってまいりましたし、人権擁護、反差別の党であるということで今日まで頑張ってまいりました。そのようなことを含めて、実は参議院の比例区に私たちは堀さんに立候補を何度かお願いいたしまして、このたび見事に当選をすることができたわけでございます。国会の中には先輩である前島議員がいらっしゃるように、障害をお持ち方々がこうやって登場することによって、障害を持っている方と健常者との間の共生という社会思想というものがだんだんできつつあるし、国民に対しての思想啓蒙や啓発にはよい刺激を与えているというふうに実は考えているわけでありますし、そのことがなされなきゃならないというふうに考えている者の一人であります。  それだけに、実は信頼をしておりました厚生大臣答弁の中で、障害をお持ち方々のことを特殊な人たちだという言葉を使われてみたり、また、これまた信頼申し上げておりました水田局長が、障害者の現行法によって年金生活が困難だという堀議員質問に対して、同時にこれはまた訴えでもあったわけでありますけれども、これに対していろいろと前置きはありましたけれども、施設への収容をする、その方法しかないと、こういう収容という言葉が出たことはついても、いわゆる福祉の源であるこの年金、そして厚生省の総責任者の皆様方が、働く意思があっても現社会で完全雇用はまだ保障されていないときでありますから、それだけに頑張っておられ、その自立に対しておほめの言葉もありながら、一方ではそういうふうな発言をされるということについて、私はやはり前段申し上げたような共生という思想がお互いまだまだ、私も含めてしっかりでき上がっていないんではないかという反省を含めておるものでございます。  そういう観点からいたしますと、収容するという言葉は、どこかの用語としてあるのかもしれませんけれども、お互いが使うべき言葉ではなくて、全く非人間的であって、人間が人間を収容するということを厚生省が言われたことについては残念だし、さみしいしということを率直に申し上げておきたいと思います。  実は、その後のやはり本委員会に参考人の方をお迎えしたときに今岡さんは、障害をお持ちの方がそのマイクを通じて、厚生省がそう言ったと言っていたことがこの耳から消えないと怒りを込めておっしゃったこともこの場でまた聞いて大変責任を感じていることを申し上げながら、ひとつお互いの問題として、障害をお持ちの方と、そして健常者とがともにこの人間社会で共生をしていくんだという思想確立のために厚生省のお力添えを賜っておきたいということを申し上げておきたいと思いますが、いかがなものでございましょうか。
  29. 戸井田三郎

    ○国務大臣(戸井田三郎君) 御指摘の点は、私どもも常に心がけている問題の一つでありますが、やはり答弁の中に不注意にもそういった言葉が出ることに我々は深く反省をしなければいけない、私はそう率直に感じます。  しかしながら、同時に、障害者方々に対する我々の基本的な考え方は、障害を持つ方々にはいろんなハンディキャップを克服して自立した社会人として健常者と平等に社会参加をすることを容易にしていくことに常に努力を積み重ねていく、そういった基本的な精神は私どもは毛頭変わっておりません。そういう意味で、これからはいろいろな意味でちょっとした不注意な言葉がいろいろな影響を及ぼして御迷惑をかけるということに対しては、常に心していかなければならないと思っております。
  30. 深田肇

    深田肇君 では、本論である年金改革の問題に つい入っていきたいというふうに思います。先輩議員とも相談いたしまして、前段申し上げたように一年生議員ですからどうしたものかなと思いますけれども、率直にこれまたやりますので御了解いただきたいと思います。  いわゆる衆議院段階において与野党が合意によって一定の修正をされて可決されてここへ回ってきているんですけれども、私は、十二月五日の本委員会での討議、そして十二月八日のやはり本委員会で参考人の方々の発言を慎重に聞いた上で、どうしても与野党合意によって衆議院で修正可決された年金改革関連法案について納得できない点が幾つかあると思うんです。その意味合いで、手続の問題はひとつこちらへ置いておきまして、内容について率直な意見を申し上げながら質問をいたしたいと思いますので、よろしくお願いいたしたいと思います。  まず、局長の方にお尋ねいたしますが、連合という労働組合が発行している「二十一世紀高齢社会への総合福祉ビジョン」という立派なものがあるんですが、これはもう十分御存じと思いますけれども、読んでおられると思いますので感想を伺いたいんですが、間違っている点がありますか、同時にこの点はいただけないという見解の違いがあれば、まず聞かせてもらいたいと思います。
  31. 水田努

    政府委員(水田努君) 連合の試算については、専門家であるところの数理課の方で分析をしていただいていると、こういうことでございます。    〔委員長退席、理事糸久八重子君着席〕 私どもの試算につきましては、約二年強、年金数理課という専門家が十分なデータをそろえ、コンピューターを使い、また、中間過程においては年金審議会の先生方の御意見も承りながらつくったものであるし、その間のデータについては、私ども法案成立後速やかに公表するようにいたしておりますし、また、できるだけ一般国民の方に今回の再計算の主要点についてわかっていただくということで、余り予算がありませんので配付部数というのは極めて限られておりますが、「年金制度の課題と改正の視点」という中でバックグラウンドなり計算の基礎的な要素、こういうものは私ども公表をいたしているつもりでございます。  なお、連合のものについては、やはり私どもの専門家である数理課の話によりますと、計算のプロセスがわからないので評価しにくいと、こういうのが私どもの数理課の専門家の意見でございます。
  32. 深田肇

    深田肇君 どうもこれは私が前島さんの顔を見て聞くのもどうかと思うんだけれども、こういうやりとりになるんですね。ですから、素人から出てまいりました者からすると、どうもかみ合わないというのを率直に感ずるんですよ。  私は、何も現在の厚生省が出された数字やそれに基づく手続などについてまだ聞いていないんであって、私が拝読した限りにおいて、連合の福祉ビジョンというのは大変なるほどなと思うから、それについて皆さんが、もっといえば専門家の分析とかいう言葉の前に、あなたが見られてそしてこれについては間違いがあるなら間違いがある、使い物にならないなら使い物にならないと言われればそれをひとつ参考にしていきたいんでありますけれども、それについては現在では、質問しますとうなずいておられますから御存じのようですけれども、中身については答えてもらえない。そうでなくて答えてもらいたいんですよ、この点は違うよと。私どもは勉強不足ですから、教えてもらえればそれを参考にしたいんでありますけれども。  もう一遍聞きますけれども、連合の出しているあのものは専門家が数字で計算するということじゃなくて、あの発想やあのことに基づいてこういうことができるということを考えたことについては意見が違うとおっしゃるのですか、それともあれはあれでまだ分析をしてないからわからないとおっしゃっているのですか。その点、いかがですか。
  33. 水田努

    政府委員(水田努君) やはり私ども、連合の結論と私どもの結論は違うということで、なぜ違うかというプロセスについては私ども、連合がそういう結論を導かれたプロセスがわからないので、それについては評価することは差し控えたいと、こういうことを申し上げているわけでございます。
  34. 深田肇

    深田肇君 では、このことについては最後に一つだけ聞いておきますが、わからないあれだけのものが日本の労働者を代表する連合が出しているわけですから、それについて今まで、わからないものを連合を呼んで聞いてみようとか、連合が説明に来たいとか、そういうことは全くなかったということですか。これまた僕は不思議だなと思うんだけれどもね。
  35. 水田努

    政府委員(水田努君) 私ども、現在出しております法案の審議に対応することで精いっぱいでございまして、率直に申し上げまして、お呼びしてお聞きするだけのゆとりがなかったというのが実際のところでございます。
  36. 深田肇

    深田肇君 そういうことなんでしょう、時間的なこともありましょうけれども、これでこの問題やめますが、私は後々でお話も伺っていきたいと思いますけれども、連合という労働者の圧倒的多数を代表するメンバーがあれだけのものを提案すれば、みずからが提案したものに対して、もし対案としてのものであったり違いがあるとするなら、それはお忙しくてもそこをやってもらわないと、やらずに、時間がなかったからできないんだと。我々は、率直に言って社会党は連合と連帯をして福祉の問題について意見を持っているわけですから、それは社会党の議員とやればいいというお話かもわからぬけれども、そうはいかないでしょう、この市民社会というものを考えるときに。そういうやり方が今までの経過かもわからぬけれども、改めた方がいいんじゃないかということを私は感想で申し上げて、次に入りたいと思います。  そこで、具体的な中身に入っていきますが、先ほど申し上げましたように、修正可決された法案について、もちろんいいこともあるし、納得できるものもあるわけでありまして、このことを一言申し上げないと誤解を生ずると思いますから申し上げますが、厚生年金の支給開始を六十五歳に引き上げるということが今回撤回されたとか、それから給付改善が幾つかできたとかなどなど、評価することがあることを踏まえた上で、次の三つの問題についてどうも納得できないとか疑問がありますので、これから質問を進めていきたいと思います。  その三つは、保険料というのは大幅な値上げに衆議院段階では落ちついた、もちろん最初の提案から比べれば修正されたわけでありますけれども、やはり大幅な値上げだと。なぜこういうことで納得をしなきゃならぬのか、できるのかというふうに率直に感じていることが第一点。  それから第二点は、支給開始の年齢六十五歳の繰り延べというのが残っている。これは後で労働省の方とも討論してみたいと思いますが、今日の日本社会における六十歳未満や六十五歳に向かっての定年の問題や雇用の完全保障の問題が不安定であるという状況の中で、この問題についてはもっとすっきりしてもらわないと働く側にとっては不安でしようがないという感じを率直に持つものですから、このことを集中的にひとつお尋ねしてみたい。  三番目は、制度間の財政調整というのがあって、衆議院の議事録を読ましてもらうと一元化に向かっての地ならしだというお話があるわけだけれども、鉄道共済に対して他の制度からいわゆる拠出方式をとったということについて、国の責任の問題はどうなるんだろうかというふうに、ついせんだってまで一市民でおった側からしますと率直に感じます。もっとはっきり申し上げれば、厚生年金をつい七月まで納めていた側からすると率直にそういう感じを持つから、数多い仲間がそう思うだろう。これについては政治は政治、政策政策、いろんなことがあろうけれども、納得できるところまできちんとお互いが理解をしないと、国民の側にとっての不信や不安、政治不信やそしてまた年金制度に対する不信が出てくるのではな いかというふうに思いますので、そんなことについて御質問をしてまいりたいというふうに思います。そういうふうに申し上げた上で具体的に入ります。  最初でありますが、この法案を作成するに当たって私どもも関係の方から伺っておるんですけれども年金の審議会があって、そこへ労働者代表というのが三人いて、その方が意見開陳をし、そしてその意見の中で一定の集約ができない段階で労働者代表の三人が退場する、しかも抗議の意味を含めて退場したと聞いているんですが、退場したということについて事実とすれば、なぜ退場したというふうに厚生省はとっていますか。退場したかどうかを聞くんじゃない、退場したとするならばなぜ退場したというふうに、彼らの言い分じゃないです、厚生省はどうとっていますか。これを聞きたいんです。
  37. 水田努

    政府委員(水田努君) 六十五歳の支給開始年齢が時期尚早であるという点について退場されたものと受けとめております。
  38. 深田肇

    深田肇君 それは厚生省としては、全く相入れない意見だというので、退場したけれどもやらざるを得ない、こういうふうに物事を考えていいんですか、私が今理解する場合。
  39. 水田努

    政府委員(水田努君) 私どもは厚生年金給付水準を維持しながら、一方、後代の方の保険料の負担を適正なものに抑えるという相矛盾した要素になるわけです。給付水準を維持するということは、今後受給者がふえていきますから、非常に給付費が増大していきます。保険料も上がっていきます。しかし、その保険料というのが後代の方が負担し切れない保険料額になってしまうと制度が崩壊するおそれがあるものですから、それを適正なものに抑える必要がある。  私ども給付水準を維持しながら保険料を適正なものに抑える、今のまま放置すると三一・五になるものを二六%程度まで抑制する。    〔理事糸久八重子君退席、委員長着席〕 その抑制策としては、高齢者雇用の進捗に見合って開始年齢を段階的に引き上げていくという解決方法が一番現実的な方法であるし、また年金審議会の多数の御意見もそういう意見を開陳されたので、それに従って改正法案を作成さしていただいた。  なお、党に御相談した段階で、雇用の進捗状況その他をやはりチェックする必要があるので、施行については別の法律で再度慎重を期し得るように、いわゆる将来計画の明示にとどめて、高齢者雇用の進捗状況その他もう一度十分国民のコンセンサスを得る慎重な手続をとるようにという党と御相談した段階の意見を入れて、そういう形に政府の案を変えて国会に提出した、こういう経過になっております。
  40. 深田肇

    深田肇君 お話が先に出ましたけれども、そういうふうな相談をされていろいろと修正されたりしているようですけれども、衆議院議事録を拝見さしてもらう限りにおいて言えば、提案するまでにいろんなことがあったんでしょうけれども、かたいですね。提案する側はそこまで信念を持ってやらにゃいかぬのでしょうけれども年金審議会において意見の違いがあり、やってはならないと思われるような退場という行為までとっていることに対して、それを無視したわけでも何でもないんだろうけれども、それで既成事実はどんどん進行する、その間で若干の配慮はされただろうけれども、それを出してくる。  そのことについて問題があるじゃないかといって衆議院の側で野党がこぞって言うということについて、これまたいろんな御答弁をなさっているけれども答弁を読ましてもらう限りにおいては原案固執という感じを持つものですから、私はやはりどうもそこに流れているのは、労働者代表三名がいなくてもやり切るという厚生省の姿勢と体質があるんじゃないかというふうに率直に思います。  こういったようなことでは、我々の持っている常識からすると、市民が持っている常識からすると、そういうところででき上がったものは、労働者の代表三人といえども、これは何千万の労働者の声を代表しているということになるわけですから、しかもそれを日ごろ認められて団体としてのおつき合いもされているわけだし、そのことをまた社会党を初めとする野党も知っているわけですから、承認しているわけですから、そうなるとそういう方々がいないところで物を決めたものは大変常識的に考えて納得できないし、機能そのものを喪失しているんじゃないかと思うし、でき上がったそのものについても完全なものではないと言わざるを得ない。だからこそ、そこのボタンのかけ違いが今日のこういう状況をつくっているんじゃないか。それで衆議院の追い込みの段階でああいう格好で与野党合意をつくり上げた。市民から見たら納得できるようで納得できないということになるんじゃなかろうかと思います。  すべての責任は私は厚生省にあると思いますよ。この厚生省のやり方についてはどうも不信を持つ。それが日本のお役所全体がそうだとするなら、日本政府責任は重いというふうに、私はまだ厚生省とは初めてやりとりするわけですから、そういうふうに感じていることを申し上げておきたいと思います。  そこで、これに関連して、この機会ですからもう一つ強調しておきたいんですが、夏の参議院選挙では、御承知のとおり消費税問題がポイントだとお互いに言ったんです。しかし、厚生省の方々は十分御存じだと思うけれども、そのときに、高齢化社会を目の前にした福祉の問題のためにも消費税導入は必要なんだという自民党側の説明もこれあり、有権者や国民福祉問題に物すごい関心を持ってくる。こういう状況の中で、必要に迫られて福祉問題を考えた。  そのときに日本社会党は、六十五歳の支給開始についてはだめなんだ、これは改悪だ、しかも掛金を値上げすることも認めません、これはもちろん小さくしなければいけませんということを言い、そのことについての国民の審判は我々の主張を支持してくれた。単なる消費税問題だけではない、いわゆる福祉問題や年金問題、もっとあえて言えば年金改悪反対だというスローガンを国民は支持したと、こういうふうに考えますから、この年金審議会の状況や選挙の結果を見たときに、私はこれは厚生大臣にはよくよくお考えの上でいろんな意味での配慮をされたものが提案されるべきであったし、時間の関係でもう提案しちゃったというんなら、提案後もっと柔軟にいろんなことを配慮されるべきじゃないのかということを印象として持っております。  そういう意味からすると、ここに書いてあるんだけれども、厚生省というのは厚かましいなという感じを市民の一人としても持つし、同時にこれでは有権者や国民に対して礼を失しているんじゃないだろうか。選挙の後の国会ですから、それまではいろいろ考えておったんだろうけれども、選挙の結果が出たんだからなおのこと、もう一遍再考してもらう。  しかも、いわゆる連合という組織があれだけのビジョンを出している。こうなると時間があってもなくても夜を徹してでも討論してもらって、その声をどう集約するか。いわんや三名が退場しているんだから、なおのことそういったことが必要なんではないかというふうに、提案する側に強い不満を持っていることを前段で申し上げておきたいというふうに思います。  そういうふうな物の考え方は、大臣、違うんですかね。間違っているんですかね。どうですか。
  41. 戸井田三郎

    ○国務大臣(戸井田三郎君) 私は、御承知のとおり、先ほど連合の福祉ビジョンの問題もありましたが、私は連合ができて政策発表の詳しい問題は知っておりませんでしたけれども生活重視でいくという姿勢が強く打ち出されたことは大変すばらしいことだし、これで国会の中でもいろいろ話し合いができるなというような感じさえ心に持ちました。  でありますから、私どもは常に国民のために、今聞いていると厚生省は反国民的な役所のように言われますけれども、私どもはやはり年金問題一 つとっても現在の働く人がいろいろな負担になる、その立場になると負担のことが非常に大きく出てくるし、また受給者の立場になってくると受給者の立場で物を見るし、それぞれ物の見方というものは百人いれば百様の物の見方が出てくるわけです。  そんな中で、制度として将来どういうふうにしたら安定して、つぶれてしまったということがないように安定した制度ができるかということに焦点を置いて出しておるわけでありますが、それは政府としてはあくまでもそういった国全体の国民へのサービスという観点からやって出しておりますけれども、やはり国会というところは何といっても国権の最高機関で審議する場所であります。そこでは各界各層を代表した人たちが来て、そこでもう一度練る。そして、その練った結果が先ほど来御指摘のとおりの修正という形になってきておるわけであります。  そういうような過程でありまして、決して厚生省が反国民的な考え方で退場者があっても、何でもかんでもやってくれというような立場ではありませんので、この点だけはひとつ御了解をいただきたいと、かように思います。
  42. 深田肇

    深田肇君 その言葉を聞かされますと、逆に社会党はじゃ制度を何でもかんでも壊せと言っているように聞き取られるのかなと思って、社会党は制度を壊せなどと言っていないわけで、どういう制度をつくればいいかということで今意見交換をしているわけですから、日本社会党の委員長や書記長に対してそういう今の言葉の返し方は大変挑発的だし挑戦的だし、大変困っちゃうなという感じを率直に持ちましたことを申し上げておきたいというふうに思います。    〔委員長退席、理事糸久八重子君着席〕  そこで次の問題に入りたいと思いますが、衆議院の過程をずっと伺いますと、財政の再計算を五年後に、いわゆる九四年にやると、こういうことになるのでありますけれども、いわゆる厚生省の原案があって、与野党がああいう形で財政計算をやるというふうに変わっていくわけでして、その中で一つの今申し上げたいわゆる掛金、保険料の値上げが決まっていく。  それで、もう時間の関係もありますし、お互いにわかっていることだから省略いたしますが、いわゆる平均の二・〇六というところで落ちつくにせよ、こうなりますと、厚生省原案との間ではずれができることはお互いわかっているわけですから、そうすると厚生大臣が日ごろおっしゃるように、いわゆる立法のところで物事を決めてもらうんだから我々はそれを受けるんだと、こうおっしゃいますが、あれだけ立派なものをつくられたと自負されている厚生省からすると、年金局長からすると、そのずれは深刻なものと受けとめざるを得ない。立場を変えて考えますと同情を申し上げるんだけれども、深刻ですね。その深刻な問題を受けとめられてどうされるんですか。ちょっと伺っておきたいと思います。
  43. 水田努

    政府委員(水田努君) 年金の改正というのは、やはり大臣が申し上げましたように、給付についてはより多く保険料負担はできるだけ低く、こういう矛盾した意見というのは必ず出てまいるわけでございまして、それについての十分なコンセンサスを得ながら法案という形に結実していくわけでございまして、再計算をするということは大変データの整備その他で事務的にも時間がかかりますし、コンセンサスを得るのにも相当時間がかかるわけでございます。  過去においても年金改正の都度いろんな面での修正を受けていっていることは事実でございますが、それはすべて次期の再計算期において処理をする、こういうことに相なっております。今回、我々の原案のとおりでなかったことは御指摘のとおり私ども大変残念であるとは思っておりますが、それについては次期の再計算で調整をさせていただくと、こういうことに相なるものと考えております。
  44. 深田肇

    深田肇君 この委員会局長が同じようなことを同僚が質問したことに対して答えられまして、私の印象としては、ここに書いてあるんですが、大変大胆な発言をされたと思うんです。今は中身をおっしゃらずに次回の再計算の時期に処理をすると、こうおっしゃったんだが、私の聞き違いでなければ大変大胆な発言の内容は、ここで私どもの言う大幅値上げが中幅値上げでとまったと仮にしても、このしわ寄せは五年後は大幅値上げで来てみたり、いわゆる支給開始の六十五歳により早めなければならぬ問題だとかという、いろんな条件が悪くなる側の方についてそうせざるを得ないという大変積極的な予告をされたようにこの前ここの場で聞いたんですが、いかがですか、その辺は。
  45. 水田努

    政府委員(水田努君) 前回、糸久先生からの御質問で、衆議院の修正で後代の保険料の影響はどうなるか、こういうふうに御質問があったものと私は受けとめました。今回の再計算のデータを前提に申し上げれば、二・二引き上げると予定しているものが二・二九にならざるを得ないものと、概算ですがそういう試算をさせていただいておりますと、こういうお答えをしたわけでございます。
  46. 深田肇

    深田肇君 私は、まさに計数上の話になりますと勉強不足ですから多くを言えないんですけれども、せっかくここでとめて理解をお互いにしたものが五年後にぐんと大幅に上がるよということを予告されて、そういうものですねというふうにはなかなかならぬだろう。したがって、施策上の改善やいろんなやりくりがあるだろうと思いますから、せっかく大幅値上げをせずに済む方法はないかというところで与野党が合意をしたことですから、それだけは最小限度その精神は生きるということを前提で進めてもらいたいということをここの段階では指摘をし、お願いをしておく以外にないんだろうと思いますけれども、申し上げておきたいというふうに思います。    〔理事糸久八重子君退席、委員長着席〕  次は、六十五歳にいわゆる支給開始を繰り延べる、引き上げるということの関連でありますけれども、これについてはちょっと勉強しておきたいんですが、いわゆるその附則にあるところの問題について、財政の再計算の際、ここでやろうというのが五年先の再計算のところまで延びたと。その際、もう一遍六十五歳問題はやるんだよというふうに理解をするべきなんですか、いかがですか。
  47. 水田努

    政府委員(水田努君) 私どもは衆議院で修正されました附則の条項を文字どおりに受けとめておりまして、読まさしていただきますと、  附則第八条の規定に基づく老齢厚生年金の特例については、平成二年以降において初めて行われる財政再計算の際において、厚生年金保険事業の財政の将来の見通し、高年齢者に対する就業の機会の確保等の措置状況、基礎年金給付水準及びその費用負担の在り方等を総合的に勘案して見直しを行うものとし、これに基づく所要の措置は、別に法律をもつて定めるものとする。 こういう附則の規定をいただいておりますので、この附則の規定の趣旨に沿って慎重に検討さしていただきたい、このように考えております。
  48. 深田肇

    深田肇君 それのいわゆる精神といいますか、背景なり状況確認というのは、いわゆる我々の言う雇用の問題と年金の支給問題というのは接続しているものだというふうに考えてよろしゅうございますか。
  49. 水田努

    政府委員(水田努君) 私どもは、ここの中で幾つかの検討すべき要素というのを御指摘を受けている、その中の重要な事項の一つだ、そのように受けとめております。
  50. 深田肇

    深田肇君 もう一遍聞きます。その中の重要な要項の一つであって、それは基本ではあるとはおっしゃっていないわけですか、接続は。
  51. 水田努

    政府委員(水田努君) 私どもは、附則の精神では、今読み上げましたように、厚生年金の財政の将来の見通し、それから高齢者雇用の確保の状況、基礎年金給付水準及びその費用負担のあり方等を総合的に勘案して見直す、本則はもう既に 六十五歳になっていて、経過的に六十歳から支給でいく、これは暫定措置になっているので、いずれは見直さなきゃならぬ、こういう法の構成になっていて、その見直しについては、次回再計算のときにここに述べられたことを総合勘案して見直しを行いなさい、こういう附則の規定をいただいているわけでございまして、御指摘高齢者雇用の問題は重要なモメントの一つであるというふうに私どもは率直に受けとめております。
  52. 深田肇

    深田肇君 一年生議員ということで甘えてはいけないんだと思いますけれども、本則六十五歳が決まっていることは知っているんです。それも、こういう日本における雇用状況の中では見直すことはできないかというふうに夏までは思っていたんです。ここへ来ますと、本則の拘束力がありますからなるほどなと思って聞いていますが、意外に多数の国民は、そのアンバランスのままじゃ困るという声が強いということを申し上げて、局長の頭の中に入れておいてもらいたい。本則はあることはあるんだとおっしゃればそれまでのことですけれども、それを見直せぬかなという気持ちが大変強いということを申し上げておきたいというふうに思います。  そこで、どうしてもやっぱり衆議院の議事録と同じような関係になりますけれども、私どもは接続することが絶対的条件だと思うのだけれども、そこは絶対的条件だとはお言葉をいただけないわけですか。もう一遍聞きます。
  53. 水田努

    政府委員(水田努君) 私どもは、稼得能力の喪失と年金の支給開始年齢が非常に密接な関連がある、それはそういう認識を持っております。
  54. 深田肇

    深田肇君 もう一遍聞きます。  密接な関係があるということと、それが原則だということは違うとおっしゃっているんですか。力関係、それのいわゆる表現が違うとおっしゃっているんですか。私はそれを一緒のものにしてもらいたいと思うんですが、いかがですか。
  55. 水田努

    政府委員(水田努君) 私どもは、今回の原案を設定した場合には、衆議院の段階でも再三申し上げておりますが、六十歳定年が完全に定着し、六十歳台前半層の雇用の継続の確保が図られる、そういう状況で、できるだけ国民皆さんに開始年齢の引き上げについて理解していただけるような状況をつくることが、やはりこの開始年齢の引き上げを実際に現実の法案として成立させるために必要な環境であろうというふうに認識しておりますし、また人によっては六十五歳まで働きたくないという方も当然おありになろうかと思いますので、そういう方については繰り上げ減額年金制度を導入する等の措置もあわせて講ずる、こういうような法の構成にいたしていたところでございます。
  56. 深田肇

    深田肇君 後段の繰り上げの問題につきましては、そういう意思のある方との関係ですからそれは一つおいておきまして、御説明がありましたように、絶対的な条件じゃなくてそういったことを国民の理解を求めるとおっしゃいましたけれども、やはり不安定だという感覚を持つ国民から見ると、そこに対する条件が整わないと国民の理解は得られないと思うんですよ。その方法以外で国民の理解を得られるというなら、どういう施策考えますか。接続以外の方法で国民の理解を得るんだというふうな、どういう方法を考えますか。ちょっと説明してください。
  57. 水田努

    政府委員(水田努君) やはり要は、私どもは開始年齢の引き上げが主たる目的ではないんで、さっきから申し上げておりますように、厚生年金制度という被用者保険の八三%、いわゆる被用者年金の大宗をなす制度を長期的にどう安定させるかということが基本にあるということをひとつ御理解を願いたいと思うんです。  その長期的安定を図るための方法として、幾つかの私どもは選択肢があると思います。一つは、給付水準を現行の水準よりもダウンさして、後代の人の負担を軽くするというやり方もありましょうし、それから保険料の引き上げを大幅にやって、後代の人の負担の迷惑のかからないように今から準備をしておくというやり方もありましょうし、あるいは今回衆議院では国庫負担率を見直すという方法論も検討の要素の中の一つに加えてもいいんではないかという御指摘もございました。それも方法の一つであろうかと思います。  いずれにいたしましても、やはり私どもは客観的に見て、今後の高齢者雇用の確保の場がつくっていかれる客観的情勢というのが非常にできつつあるわけでございまして、それはもう平成七年で、後で専門家の労働省の方からお話があるかもしれませんが、若年労働力が急速に減っていく、それから労働時間を短縮しなきゃならぬという国際的な問題もある、そういう中で高齢者に対する適切なワークシェアリングというものができていくんではなかろうか。そういうことで生きがいある社会をつくっていくためには、やはり六十歳台前半層ぐらいまでは生き生きとして働けるという活力ある社会をつくるというビジョンの中で、それにマッチングしながら高齢者の雇用の場の確保が図っていかれることと相まちながら、開始年齢を段階的に引き上げていくということが厚生年金制度の長期安定のために最も現実的な解決策ではないかというのが私どもがとった選択でございます。  開始年齢を引き上げることが主たる目的じゃなくて、制度をどう長期安定させるかということが主たる目的であり、それを達成するために最も現実的な選択肢というのは、私どもは開始年齢の引き上げではなかろうか、こういうことで政府原案をつくらさしていただいた、こういうことでございますので、ひとつ何とぞ御理解を賜りたいと思います。
  58. 深田肇

    深田肇君 すべてのお話を伺った上で、主たる目的ではない、六十五歳に上げることが、というところが大変印象に残りました。主たる目的にしないでください。それをくれぐれもお願いしておきたいと思います。  その次に、ちょっと労働省の皆さんに一、二伺っておきたいんですが、今、やはり厚生省の側の説明をお互いに聞いておられましても、雇用問題が大変重要な課題であるし、私どもにとっては絶対的条件だと思っているんです、接続という観点からして。そのような状況の中で、俗に言う六十歳定年問題についての定着化の状況などについて伺いたいのであります。  まずは、私どもの先輩も伺っているようでありますけれども、ILOの百六十二号の勧告について、内容は知っていますから、時間がありませんからそこはお互いに触れないことにして、いわゆるその中の高齢の労働者に対する年齢に基づいての差別があってはいけないというふうなことに関するところを中心でいいんでありますけれども、その勧告を受けて今日まで約七、八年たっているんじゃないかと思うんですが、私どもの感じで言えば、その中の項目によってILOに報告する義務があるように思うんですけれども、報告をされていますか、されていませんか。されていないんであれば、なぜされないんですか。されないんであれば、時間がありませんから先に言っておきますけれども、そうは言いましても八年間のこの勧告の精神に基づいてどういう成果が今上がってきているか、ちょっとかいつまんで教えてもらうとありがたいと思います。
  59. 松原亘子

    説明員(松原亘子君) お答え申し上げます。  今先生指摘のILOへの報告の件でございますけれども、これは必ずしもこの勧告のみにかかわりませず、ILOで採択されました条約、勧告について、ILO憲章に基づいて報告するという、こういう仕組みの中でなされるものでございます。  ところで、ILO憲章は何を加盟国に要請しているかということでございますが、これも先生先刻御存じと思いますけれども、もう一度念のために憲章の要請を御説明させていただきますと、「加盟国は、勧告で取り扱われている事項に関する自国の法律及び慣行の現況を、理事会が要請する適当な間隔をおいて、国際労働事務局長に報告する以外には、いかなる義務も負わない。」という、こういう規定になっております。つまり、こ の報告は理事会の要請に基づきまして加盟国が提出を求められるというものでございます。  この勧告につきましては、先生もおっしゃいましたように一九八〇年に採択されまして九年たっておりますものでございますが、九年もということはございますが、勧告といたしましてはまだ過去にも採択され報告を求められていないもの等もございます。相対的な問題でございますけれども、比較的新しい勧告でもございますことから、理事会ではまだこの勧告についての各国の状況の報告を求めるという要請をいたしていないわけでございます。そういうことから、我が国政府も本憲章に基づきます報告というのは出していないというのが状況でございます。
  60. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) この勧告がILOで採択された以降、労働省としてどういうことをしてきたのかということでございますが、この勧告の趣旨は、もとより高齢者を念頭に置きながら、世代間における雇用のアンバランスというようなものを解消していこうという趣旨でございまして、その根幹はやはり御指摘のとおり、政府がその目的に向かって政策努力を傾注するということにあろうかと思います。  そういった観点から、昭和五十五年に採択されて以降、私どもとしては定年の引き上げによる雇用の安定を図るという観点からの行政指導を進めてまいっておりますし、また昭和六十一年には高年齢者雇用安定法を改正し、高年齢者の雇用のためにさらに努力するという形での法律国会で御審議いただいて成立していただいたわけでございます。  さらに、各種助成金を通じての雇用の促進という観点からも、幾つかの助成金制度を創設するなり、あるいは引退過程にある方々のためにシルバー人材センターを充実するなど、この間におきましても高年齢者の雇用の促進のために、いろいろな形で政策努力を続けてきているところでございます。     ─────────────
  61. 浜本万三

    委員長浜本万三君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、初村滝一郎君が委員辞任され、その補欠として西田吉宏君が選任されました。     ─────────────
  62. 深田肇

    深田肇君 今の御答弁は、この社労の場でも質問された同僚の議員に対しての答弁として私ども聞いておりますから、本当はもう少し具体的な内容について時間があれば伺いたいと思います。そうしないとお互いに中身が理解できたり進まないんではないかと思いますから、そういう印象をちょっと申し上げて、次に入りたいと思います。  私の今手元に、労働省さんがやられた調査の中でいわゆる労働者が六十歳以降も若干の配慮があれば働けるんだというようなことに関する調査資料があるんですが、昭和五十六年の十一月に調査されて、その以降はどうも調査がないように思いますけれども、調査内容は実に興味の持てるものですね。この調査に基づいて五十六年から今日まで行政指導というんですか、いろんなことをやってこられたんだろうと思いますけれども、その後調査はされていますか。それでまた、この調査に基づいて具体的にどういうことを推し進めておられますか。それをちょっと聞いておきたいと思います。
  63. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) 先生指摘のように、昭和五十六年十一月に加齢と職業能力に関する調査を行っておりますが、その後、これと同じ方式による調査は実施いたしておりません。これはつきましては、加齢による職業能力の変化などにつきましては、高年齢者の就業の実態といったようなものと異なりまして、短期的にその傾向がそう変わるものでないということで、中長期的なテーマであるために頻繁な調査を行っていないわけでございます。  ただ、私どもとしては、現在、長寿社会雇用ビジョン研究会におきましてもいろいろ御議論をいただいておりますし、その中で加齢と職業能力、これはなかなか難しい問題でございますけれども、いろんな形で、実態調査を踏まえながら、検討してまいりたいと思っております。  この調査をもとに私どもがどういうふうに進めてきたかということでございますが、定年延長の問題でありますとか、あるいは六十歳台前半層の雇用に関して行政指導をする際にいろいろな形で参考にさせていただいております。例えば、高年齢者の労働能力に対する過小評価といったようなものが残念ながらないわけではございませんので、こういった調査をそういった形でいろいろの方に行政指導を進めたり御説得をする際に活用させていただいております。
  64. 深田肇

    深田肇君 中期、長期にわたる問題であるからというお話ですけれども、今の課題として言えば、六十蔵前後の我々の仲間に対する雇用問題、そのためにどういうふうに対策をすれば今思っている気持ちとの間でずれができずに安定的な心境のもとで働けるかということは大変重要な課題ですから、五十六年からことしまではやらなくていいというんではなくて、予算がないからできないと言われればそれまでのことだけれども、大いにやってもらって、そこで現場の意向をデータで上げてもらって施策の中に生かしてもらうということ、これはいいことだと思うんですよ。こういうことをどんどんやってもらったらいいんじゃないかということを積極的な支持の立場で申し上げておきたいと思います。  そこで、ちょっと変な聞き方しますけれども、労働省の人の前で私は厚生省とやりとりをしましたが、労働省として、働く勤労国民を見ている側として、やはり相手から見ると厚生省だ労働省だというのはわからぬわけだから、労働省に対して、年金の問題が六十五歳とか六十歳とかいろいろあるが、私たちの仕事がちゃんと続けられるんでしょうかと、元気で働く意思があるときに、言うなら定年の問題という言葉でもいいですが、そこがはっきりしてなくて、うちの会社は五十五だ五十七だと、もう定年なんか何もない、いつ言われるかわからないというように思っている労働者が、勤労国民が労働省に対して、年金をもらうまでは仕事が欲しいんだよな、それがないと先に年金だけが六十五になっちゃうと困るんですよねという労働者の相談はたくさんあるだろうと思うんです。  それは厚生省へ行きなさい、うちは知らぬことだというふうにお役所は言うのかもわからぬけれども、きょうは逆に労働省に聞きたいんですが、私はそこはやっぱり接続した方がいいと思うんですが、接続した方がいいと労働省もお考えになるでしょう。そういうことは労働省は答えちゃいけないんですか。いかがですか。
  65. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) ただいまの御質問でございますが、私どもも雇用と年金の関係というのは密接な連携が図られるべきであるという基本的な立場に立っておりますが、労働省といたしましては、ともかく人生八十年時代、また若年労働力が減少していく中での高年齢者の活用という観点から高年齢者の雇用に一生懸命取り組んでまいりたいと、こういう気持ちを持っております。  したがいまして、先生の御質問につきましては、私どもも雇用と年金との関係というのは密接な連携をとるべきだと思っておりますし、そういう御意見は私どもとしても十分承知いたしております。
  66. 深田肇

    深田肇君 どうもありがとうございます。ぜひひとつ厚生大臣いらっしゃいますし、内閣の国務大臣としてよろしくお願いしておきたいと思います。  そこで、もう時間がありませんからちょっとはしょりますけれども、きょうは本当に鉄道共済の年金の問題を中心的にやりたかったんです。時間がありませんので後でまた糸久理事にお願いして時間をいただければ集中的にやりたいと思いますが、私の勉強不足で本当に恥ずかしい思いをいた しましたけれども、鉄道共済年金というのは厚生省ではなくて大蔵省の所管だというようなことを聞かされまして、ちょっと勉強不足で驚いたんですが、そうなりますといわゆるデータに出てきている単年度の三千億円の赤字が出ます、不足が出ますということについては、大蔵省なり鉄道共済年金から持ってくるデータを厚生省はうのみにすると言っては失礼かもわからぬけれども、なぜこういうふうになったか、現在なぜ三千億円が足らなくなったかという細かい分析、これはいわゆる鉄道共済年金と厚生省の間ではきちんとやられて、きょうは時間がないけれども、改めてこういう場で討論するなり事前に資料をもらうなりということは可能なんですか、どうですか。
  67. 水田努

    政府委員(水田努君) 三千億の赤字につきましては、当然この制度間調整法というのは厚生省だけではございませんで、今大蔵委員会、地行、農水、それから文教の各委員会で共済法の御審議をいただいているわけでございますが、この関係各省が全部担当レベルの課長がつぶさに大蔵省から説明も聞き、検討をし、それで妥当だと、こう認めた数字でございます。
  68. 深田肇

    深田肇君 そうしますと、もしよろしければ私のところに鉄道共済の現状のデータをいただければありがたいというのが第一点。  それから、手元に国民年金やいわゆる厚生年金については二〇二〇年までの展望があるんですが、鉄道共済については厚生省の所管でないからないのかどうかわかりませんけれども、こういうものがあるのかどうか。なければつくらないかぬと思うんだけれども、よくなるか悪くなるか別にして、少なくとも十年か十五年ぐらい先までのを読んだ、そういう推移に対する計算があってしかるべきだと思いますが、あればそれも資料としてもらいたい。そうしないと本当の意味で真剣な討論には参加しにくいと思いますので、いただけますか、それは。
  69. 水田努

    政府委員(水田努君) 三千億のデータにつきましては、私どもの承知している範囲で、本来なら大蔵省から直接お届けし、先生に御説明を大蔵省からした方が間違いがないかと思いますが、とりあえずデータのお届けを私の方からさせていただきたいと思います。  それから、財政方式の統一ということは公的年金一元化平成七年に向けての大きな課題でございまして、このことについては社会保障制度審議会から既に指摘を受けているところでございまして、各省ともその方向に向かって努力をいたしているところでございます。それぞれの制度がそれぞれの歴史を持って財政再計算をしておりますので現在やり方の違いは多少ございますが、できるだけ厚生省のように長期展望のもとで全体の姿が、行く先が国民皆さんにわかっていただけるという形をとるのが本来の姿であろうかと思います。  なお、今回の制度間調整というのは五年間の暫定措置であり、なおかつ衆議院の修正で三年でさらに見直すという修正も加えられておりますので、その時点でさらに将来の展望等について論議がされるものと、こう考えております。
  70. 深田肇

    深田肇君 もう一遍聞きますけれども、鉄道共済のこれからの推移に対するそういうものはあるんですかないんですか、大蔵省は知らないのかどうかわかりませんけれども
  71. 水田努

    政府委員(水田努君) 直接的には大蔵省の国鉄共済の財政の長期展望をチェックする権能も立場もございませんので私は直接には知りませんが、ある程度の長期展望について衆議院の段階でも平成七年以降も三千億の赤字は継続するという大蔵省からの答弁がなされたことは承知をいたしております。
  72. 深田肇

    深田肇君 大蔵省と厚生省の、どうも一般市民にとってはわかりがたい、俗に言われる縦割りというのがあるのかもしれませんけれども、三千億の不足は大体わかる。これがどういうふうに将来大きくなるのか小さくなるのか、何とかなるのかということについての計算をみずからやったり、そしてまた大蔵省や厚生年金から金を出さなきゃならない厚生省としてみれば、しっかりしたものを持たずにそのときそのとき金の問題だけを、横に渡す金のことだけをやるということは、厚生省としてはちょっと軽いんじゃないかなという感じが率直に言ってするんですけれども、これは時間がありませんから印象だけ申し上げて、次の機会にでも鉄道共済の三千億の不足のデー夕と、そしてそれに基づいてこれからどういうふうに見通しを立てるのかについての資料をいただければ、双方を材料にしながら討論に参加していきたいと思います。  そこで、もう時間がありませんから最後の一言になっちゃいますが、昭和六十年の十一月二十八日の衆議院の連合審査の際に、国鉄の共済年金に関する政府統一見解というのが手元にあるんですが、これは国鉄がJR、民営になる前のときでありますけれども、「昭和六十四年度までは、」云々と書いて、最後のくだりに「昭和六十五年度以降分につきましては、その後速やかに対策を講じ、支払いの維持ができるよう措置いたします。」という見解があるんですが、この見解と今回、どうも私が納得できないことなんでありますが、他の制度から拠出金を出すということとは関連があるんですか、ないんですか。
  73. 水田努

    政府委員(水田努君) 前段はいわゆる平成元年度までの支払いについてきちんと対応します、それから平成二年度以降については支払いが維持できるように措置をします、その措置内容が制度間調整法と国鉄共済法の改正に基づくところの自助努力、この二つによって対応する、こういう内容であると私どもは受けとめております。
  74. 深田肇

    深田肇君 もう一遍聞きます。  そうすると、今日行われた制度間調整、他の制度からの拠出というのはこの見解に入っているとおっしゃったけれども、それはどこで確認できますか、この文章だけ読んだら。何か裏協定なんかありますか。
  75. 水田努

    政府委員(水田努君) 裏協定はございません。支払いが維持できるように措置する、これに該当するというふうに理解しております。
  76. 深田肇

    深田肇君 そうすると、それは政府が一方的にそう判断をした、議会側はだれも知らぬ、こういうふうに言い切っていいですか、そういう認識は。
  77. 水田努

    政府委員(水田努君) これは政府の統一見解で、平成元年度までの支払いはわかった、その後はどうするんですか、こういうことについて、支払いの遅延を来さないように政府としては措置を講じますと、その措置を講じますということにこたえるために今回法案を出させていただいていると、こういうことでございます。
  78. 深田肇

    深田肇君 時間がありませんからやめますが、大変これは拡大解釈で、恐らく私よりも先輩たちがどうお考えになっているのかと思いますが、私はいろいろと内部で勉強させてもらったら、これでやっているんだと思うと。私が一年生で聞かせてもらいますと、こういう制度間拠出方式をことし初めてやることについて、先輩たちは衆議院段階で基本的に了承されたのか。率の方へ入っちゃったから率の方へ入っちゃっているわけで、それで話がまとまったわけですから。そうなりますと、こういう新しい、わかりやすく言えば厚生年金の金が向こうに回ります、鉄道共済を救うためにということは何によってやれるんですかと言ったら、はっきりしなくなった、この文章をずっと聞いてきて。  この文章の中できょうどうしても確かめたいんだけれども提案した厚生省はこの文章の中にそのことが含まれていると、だからやれるんだと、これは大臣、今答弁もらえますか。
  79. 戸井田三郎

    ○国務大臣(戸井田三郎君) 今局長から答弁をいたしましたように、私は遅延を来さないということにこたえるために本法案を出したものと思います。
  80. 深田肇

    深田肇君 これはちょっとそれ以上のことは私はわかりませんから調べさしてもらいますけれども、私はそういうふうな拡大解釈によっていわゆる鉄道共済の根本的な問題である国の責任や、も っと言えば、もう時間がありませんから多くは話しませんけれども、国鉄で働いていた労働者が中曽根内閣時代に、いわゆる民営という私どもの言葉で言えば大合理化があって、それはいろいろ赤字であったり理由がありますけれども、そこで働いている人が半分に減る、掛金掛ける方が半分に減ってもらう側が倍になるんだから赤字になるのは当たり前のことなんで、そのことを承知の上であえてやっていて、もちろん若干国の方としては手助けはしているんだろうけれども、この段階になって三千億円についてのパーセントは、いろいろな前後はありますけれども、おおよそ半分近いものを外から持ってくる。持ってくるということに対して納得できないじゃないかと厚生年金を掛けている一般市民や中小企業の労働者が言えば、それについて根拠は何ですかといったらここへ持ってきて、ここにはそういうことは書いてない。これはあなたたちは認識できるが、いわゆる我々議会筋ではわからない。そういうことは裏協定もなけりゃ話し合いもない。こうなると、やっていること自体根本的にどうも無理があるという印象をどうしてもぬぐえない。  したがって、最初に申し上げた年金審議会において労働者の代表が抗議の意味で退場したのにもかかわらず独走する。しかも、これをまた自分で拡大解釈してそれを出す。反国民的なことをやっているんじゃないと大臣はまた言いたいかもわからぬけれども、また同時に国民の声を聞く側から言わしてもらうとどうしてもやっていることに無理がある。ボタンのかけ違いから始まったことかもしらぬけれども、無理があるという感じを印象としてぬぐえない。  時間がないようですから終わりますが、以上申し上げて、何とか善処方をよろしくお願いをいたしておきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  81. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 両案に対する午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時十分まで休憩いたします。    午後零時十三分休憩      ─────・─────    午後一時十二分開会
  82. 浜本万三

    委員長浜本万三君) ただいまから社会労働委員会を再会いたします。  休憩前に引き続き、国民年金法等の一部を改正する法律案及び被用者年金制度間の費用負担の調整に関する特別措置法案を便宜一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  83. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 まず最初に、基本的な問題についてお尋ねさせていただきたいと思います。  最初から統計で申しわけございませんが、一九八七年の総務庁統計局の家計調査年報によりますと、老後を豊かに暮らすのに必要なものとして、六十歳以上の方は公的年金制度の拡充というのを、これは複数回答ではございますが七七%の方が挙げていらっしゃいます。また、実際に高齢者の収入のうち公的年金への依存度というのは年々高まっております。これは厚生省の国民生活基礎調査、一九八八年でございますが、公的年金に収入の一〇〇%を依存している世帯というのは一九八一年の三二・八%から一九八七年は四一%というふうになっておりますが、ちょっと確認させていただきますが、これでよろしゅうございましょうか。
  84. 加藤栄一

    政府委員(加藤栄一君) 手元にそのものずばりの数字がございませんけれども高齢者世帯の中で年金が所得の八割以上を占める世帯が昭和五十六年で三一・三%でございますが、六十二年に四九・九%になっております。手元にあります数字は以上でございますが、おおむねそういう傾向にあると思います。
  85. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 今おっしゃいましたように、私の持っておりますこれは国民生活基礎調査、厚生省で出していらっしゃるんだと思いますが、今お答えいただきましたのによりましてもやはり公的年金に依存度がだんだん高まっているということは事実だというふうに申し上げてよろしいと思います。  しかしながら、年金への依存度というのは次第に高まっているにもかかわらず、実際にはなかなか年金を頼りにすることができないという事実もあるように見受けられます。  先ほど引用させていただきました総務庁の家計調査年報によりますと、公的年金だけに頼っていられないので老後に備えて貯蓄をふやす必要があるという設問に対して、大体そう思うと大部分の方が答えていらっしゃいます。事実、貯蓄率の国際比較を見ますと、これは総貯蓄率と家計貯蓄率、両方いずれにいたしましても日本は先進国で一番高いということはもう御承知のとおりだと思います。  また、貯蓄の目的というものを見ますと、これは貯蓄広報中央委員会の貯蓄に関する世論調査、一九八八年によりますと、貯蓄の目的の第一位というのが病気、災害への備えということであります。二番目に老後の生活のためであると。それから三番目に教育費というのが挙がっております。特に二番目の老後の生活に対する備えのための貯蓄というのを見ますと、これは複数回答でございますが、一九八一年には六・四%であったものが一九八八年には五〇・二%に上昇しております。また、単数回答によりましても、一九八一年に一三・四%であったものが八八年には二一・三%と二倍近くに上っております。  それからまた、労働省の高年齢者就業実態調査、ことしの六月に発表になったものでございますが、それを見ましても、六十五歳から六十九歳までの方の就業者のうち九二・二%が年金受給者でいらっしゃいます。これは男性でございます。その就業の理由というのが、年金だけで生活できないからというお答えが男性の五五・九%、女性の場合でも四九・八%に上っております。  また、高齢者の労働力率を見ましても、日本が先進国の中で最も高いということはよく知られていることでございます。そして、なぜ働くかということを見ますと、これは労働省のお出しになりました労働白書によりますと、自分と家族の生活を維持するためという理由を挙げたものが五十五歳から六十九歳のうち約八割を占めているというふうに出ております。  このように見てまいりますと、今これは老齢年金の場合を特に挙げてみたわけでございますが、老後の不安というのは、年金はもとより、自分が病気になったらどうしようか、あるいは寝たきりになったらどうしようか、そういうふうな老後の不安というのはどんどん募っていくということが推測できます。そしてまた同時に、社会的な支えというものに対して、つまり社会保障に対して余り信頼ができないということも、今わずかでございますが挙げさせていただいた数字の中から推測ができるように思うわけでございます。また、そういう中で、社会保障制度に関するさまざまな改定、今回の年金制度の改定もそうでございますが、改定のたびごとに個人負担のみが上がっていくというふうな印象を一般方々が持っているのはこれは否定できないように思うわけでございます。  ところで、一九八八年十月、厚生省、労働省から出されました「長寿・福祉社会を実現するための施策基本的考え方と目標について」、つまりこれはいわゆる福祉ビジョンと言われているものでございますが、その中で、国民の基礎的ニーズについては公的施策をもって対応すると記されておりますけれども、この国民の基礎的ニーズとはどのようにお受け取りになっていらっしゃるのか、これがまず第一の質問でございます。そして二番目には、いわゆる公的施策が今果たして国民の基礎的ニーズに対して対応できているというふうにお受け取りでいらっしゃいましょうか。この二つの質問をまずさせていただきたいと思います。厚生大臣にもお伺いさせていただきたいと思います。
  86. 加藤栄一

    政府委員(加藤栄一君) 昨年の十月二十五日の「長寿・福祉社会を実現するための施策基本考え方と目標について」といういわゆる福祉ビジョンでございます。ここで、国民の基礎的ニーズについては公的施策をもって対応する、多様かつ高度なニーズについては個人及び民間の活力の活用を図る、こういうふうに三つの基本的な考え方の中で示しております。  基礎的なニーズというものでございますが、これはやはり国民の意識でありますとか生活水準等によって相対的に変わってくるものではありますが、現在、公的な社会保障制度によってカバーしていくということで、年金で申しますれば現在給付しております公的年金の部分と、それから公的扶助でありますれば生活保護の基準等において、個々それぞれに検討されて設定されるものであるというふうに考えております。それぞれの基礎的ニーズにつきましては、厚生省におきまして関係の審議会等で十分に御審議もいただき、また、それぞれの指標に応じましてカバーするように努力し、またカバーしているというふうに言えると思います。
  87. 戸井田三郎

    ○国務大臣(戸井田三郎君) 今政府委員からお答えいたしましたが、先ほど先生が御指摘のいわゆる制度に対して国民が不安を持っておられる、まだ頼り切れない、こういう感覚が統計の数字の上にも出ているということでございますが、私はやはり社会保障の役割は、そういった国民すべてに共通した、例えばお年寄りであるとか、あるいは障害を持っておられる方であるとか、あるいは不幸にして主人を亡くしてお母さんが子供を支えているとか、こういうような弱い立場方々に国が制度の上で安心した生活ができるような保障をしていくということだろうと思うのです。  その中で今一番基本的な大きな問題になっているのは、今日のように長寿社会になってまいりますというと、今もお話がありましたように、年金等でお年寄りの生活が保障される。ただこの問題について、今御指摘がありましたように不安を持っておられるのは、やはりヨーロッパ諸国に比べて日本社会保障制度の歴史というものが、特に世代間で扶養をしていくという社会の仕組みとしてスタートしてから非常に年が浅い、そういった関係の中でいろいろな不安を持っておられる方も多い。そのために、将来に向かって公的年金に頼るという経験よりも、自分たちで蓄えをしたりして自分のことをやっていかなきゃいけないというような今までの一つ考え方というようなものがやはり一方にある。制度は制度で安定してもらいたいという期待もある。そういうことのはざまで、いろいろな統計の中にあらわれてきているのではないかなということは考えられるわけであります。  貯蓄というものを見てみても、どちらかというとお年寄りの世代の方が若い世代よりも多い。それは長い間働いてきたことと、そういった不安を持ちながら蓄えてきたこと、こういったことによってそういうようなものがあらわれているのだろうと思いますけれども、六十歳以上のお年寄りは平均千七百万円貯金を持っているのに若い人の方は大体一千万前後であるということを見ても、やはり将来に対する期待と同時に自分自身の蓄えをやっておこうという自助努力、こういったものがうまくいろんな統計の中に出てきているのではないか、こういうふうに考えるわけであります。  そういう観点から、私どもは社会保障は国民生活の中にあって、老齢、失業対策、あるいは所得の減少に対する所得保障なり病気などに対する医療あるいは生活保障といった機能、そしてさらに所得再配分の機能を果たしているというのが基本的には社会保障の役割である。その役割が信頼されるようになってきて、本当にこれで長い間給付が続いてくるというと安心をして消費も自分自身でどんどんするようになる。そうなれば年金というものが消費に回ることによって、お年寄りの社会における活力ある生活が本当に保障されてくる。そういうふうに私ども考えておるわけで、そのためにはまず第一に安定した年金制度をつくり上げていかなければならない、かように思っている次第であります。
  88. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 お話はわかるのでございますが、私が申し上げました統計の中で、特に労働省の統計がございます。それもお聞き及びと思うんですけれども、もう一度申し上げますと、高年齢者の就業実態調査、労働省の六十三年によりますと、男子の高年齢者の就業の理由、自分と家族の生活を維持するためという理由を挙げた者が五十五歳から六十九歳で約八割を占めているということ、そしてもう一つは、高年齢者就業実態調査ということしの六月に発表されたものでございますが、それも、年金はもらっているけれども年金だけでは生活できないから働いている、そういう現実がはっきりと出ているわけでございますが、その点に関してはどのように考えていらっしゃいますでしょうか。
  89. 加藤栄一

    政府委員(加藤栄一君) まず、先ほど引用いたしましたように、国民の基礎的なニーズについては公的施策でカバーしていく、こういうことでございますので、自分の労働によりましてさらにその上の収入を得るという方向が一つあると思います。  またもう一つは、年金制度について申しますと、まだ現在年金は成熟の過程にございますので、完全にフルペンションといいますか、規定の年数を加入いたしまして想定されます年金をもらうという状況に至っていない方もおられるわけでございます。そういう方々の存在もこれは否定できないところだと思っております。
  90. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 それでは、安心できるような年金制度、年金給付額ではないということはお認めになりますか。
  91. 加藤栄一

    政府委員(加藤栄一君) 年金水準として設定されておりますものにつきましては、国民の基礎的なニーズを満たすという前提のもとに算定しておるわけでございます。ただその場合に、年金制度に十分にまだ加入していない方、年金制度が想定している所定の期間だけお入りになっていない方、社会保険でありますから掛金に応じて給付を受けるわけでございますから、そういう方々が未成熟の過程においては存在する、そういうことでございます。
  92. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 この問題をやっておりますとまた随分かかりそうなので、次の問題に移らせていただきたいと思います。  次にお伺いしたいのは、またやはり基本的なことでございますが、社会保障と経済成長との関係についてでございます。  短いのでございますが、ひとつ文章を読ませていただきます。   もともと福祉国家における社会保障の実施は、基本的には、社会連帯と生存権尊重の思想から要請されるのであり、その要請は、いわば実利的判断を超越した絶対的なものに基づいているからである。   「まず経済成長を、しかる後に、社会保障の拡充を」というような見解は、福祉国家において安易に述べられる余地がないといわなければならない。社会保障政策と経済成長政策を同じ秤にかけて、その優先度を見いだすことは、しよせん困難といわなければなるまい。  これは北欧の文章でもなければイギリスの文章でもなく、我が厚生省の厚生白書三十五年版に書かれている文章でございます。そういうふうな御見解が三十五年版の厚生白書には述べられております。  ところで、一九六六年の「将来の国民生活像」と題しました国民生活審議会の答申を拝見いたしますと、   これまで、社会保障は単に個人の所得保障というもので、経済的にも多少の所得再分配機能をもつにすぎなかったが、こんご社会保障水準が高まると、景気安定対策、社会連関施設への投資対策として役立つばかりでなく、住宅や交通機関の整備などとあわせて労働力の流動性を高めるという意味で構造対策としても積極的に活用できることになろう。   社会保障や最低賃金制のための支出は経済成長のための経費という性格をもつ。 というふうにも書かれております。  また「経済社会発展計画」、これは経済企画庁が一九六七年に出されたものですが、それによりますと、「経済の効率化に伴う構造改善を円滑に推進し、もしくはこれに伴う摩擦を予防・軽減するためにも社会保障の充実は急務」であらねばならないとしております。  三つの文章を今読ませていただきましたけれども、一言で申しますと、最初は、経済成長というものと社会保障というものは切り離さなければならない、どちらが先かなんということは議論できる筋のものではないという、そういう論調が、次第に経済成長優先、財政優先という方向に動いてきているということが読み取れるわけでございますが、この国としての社会保障に対する姿勢の変化というものを私どもはどのように解釈すればよろしいのでございましょうか。その点の御見解を承りたいと思います。
  93. 加藤栄一

    政府委員(加藤栄一君) 三十五年の厚生白書におきまして、社会保障制度の必要性といいますか意義について申し述べているわけでございます。やはり憲法二十五条を具現化するために社会保障制度というものはあるわけでございますから、そういう意味では国民生活の安定を支えるという意味社会保障制度の必要性というものはぎりぎりのところでは、やはりそういう経済等々の配慮、経済上の効率化というものを超えたものがあるという側面があると思います。  ただし、やはり国民の経済生活を支えるという意味で各種の給付も行うわけでございますから、これはそのときそのときの経済成長の状況でありますとか国民所得の伸びなどになりまして、経済条件の変化によりまして、国民がその社会保障に期待するもの、あるいは社会保障に対する国民のニードというものがやはり変わってまいると思います。さらに、財源の面でも当然ながら社会保障というのは制約が出てくるということもあるわけでございます。  また一方、社会保障が経済に対してどういうふうに作用するかというのは、国民生活白書、経済白書等で今先生がお話しになりましたような面というものは、これはあるわけでございます。  したがいまして、そういう相互作用というものがあるわけでございますが、社会保障制度審議会等でも、社会保障は国民生活を安定させる機能を持つ、同時に一方、所得再分配作用を持ち消費需要を喚起する、あるいは景気を調節する、そういうような経済的な効果を持つということを答申の中でもおっしゃっております。  こういう需要喚起等経済に寄与する面があるということは事実でありますが、三十五年以降の高度の経済成長、それから国民生活水準の向上、こういうものに対応いたしまして、それぞれそのとらえる一つの側面を強調してこういう説明をしているというふうに理解しております。
  94. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 国の姿勢というものがそのときどきによってくるくる変わられるのでは、これはやはり国民として不安が増すばかりではないかというふうに思うわけであります。やはり一貫した一つの哲学というものが必要になってくるのではないかなというふうに思うのでございますが、その点に関しまして厚生大臣いかがでいらっしゃいましょうか。
  95. 戸井田三郎

    ○国務大臣(戸井田三郎君) 非常に難しい問題でありますが、私は今のお話を聞いて感じたことは、私たちの社会はいわば自由経済社会を基本にして立っている。そうすると、やはり自由経済社会の中で人はそれぞれすべて平等に働く権利を有しますし、またその権利は与えられていても、体の不自由な人であるとか、あるいは年をとってくるとか、だんだん弱い立場になってきたときには、その自由という土俵の上で競争がしにくくなってまいります。そういうような方々に対して、この社会を維持していくためには、当然社会の責任において保障をしていかなければならない、助けていかなければならない、これが前提にあるわけでありますから、この社会を維持するためには経済よりも社会保障が先にある、優先して私はあるんだと思います。  しかしながら、いずれにしてもその経済の中から働いて得た所得でもって税金を納めたり、そしてあるいは世代間扶養である年金の保険料を納めている。そういうような国民の働きの成果の中から納めていく金でありますから、当然その国民合意を得ながら実施をしていくという意味では経済の制約を受ける。経済の制約を受けるというよりも国民すべての人が負担する、そういう中で合意を得て進めていくということが当然基本的に出てくるんだと、私はこのように考えます。
  96. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 そうしますと、国民合意ということが大変に重要だというふうな御指摘でございますが、これまでのさまざまな一九八〇年以降の社会保障制度に関する改定は、国民合意が得られているというふうにお受け取りでいらっしゃいましょうか。
  97. 戸井田三郎

    ○国務大臣(戸井田三郎君) すべて国会の議決を経て行っているわけで、国民合意は、国会が最高の議決機関であるというふうになっておるわけでありますから、政府が独断でやるのではなくして、やはり政府政府として法案提案し、そして国会に御審議を願い、その結果法律となって実施をしている。その間にはやはりそれぞれいろんな考え方が戦わされて、必ずしも一本になり得ない場合もありますし、幸いにして合意を得て大方の御賛同をいただいて結論を得る場合もある。  今回の年金法についても、衆議院段階では審議の過程を経て修正をされ、そして私どもはその線に沿ってこれから一生懸命に有効な運営ができるように努力をしていく、こういうふうに私ども考えております。
  98. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 どうもありがとうございました。  ところで、時間がございませんので次の問題に移らせていただきます。  昭和六十一年度の厚生白書を拝見しておりますと、「社会保障制度を支える経済的基盤を維持・強化し、社会保障の充実に資するもの」として経済成長が挙げられておりますが、その経済成長のことはさておきまして、その次に「社会保障制度が安定し有効に機能していくことは、活力ある長寿社会の前提となるものであるが、過剰な給付や過大なサービスはかえって経済社会の活力をそぐことにもなりかねない」というふうな記述がございますが、この過剰な給付や過大なサービスというのはどのようなことをおっしゃっているのでございましょうか。
  99. 加藤栄一

    政府委員(加藤栄一君) 現実に過剰な給付があるというようなことは、一般的には現実に起きているわけではございません。ただ、外国の例等々あるいは関係の学説等々におきまして、社会保障給付が過剰になるというようなことになりますと社会保障負担の方の水準も高くなる、こういう場合にはやはり経済の発展や社会の活力を損なうおそれがあるという、そういうことが一般的に言われているわけでございます。そういうことをそこで申し述べているということでございます。
  100. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 そういう説があるというふうにおっしゃいましたけれども、やはり厚生省としては、どなたかがそう言ったからというふうなことでこういう厚生白書などにそういうことを軽々しくお書きになるものではないというふうに思います。やはり、きちんとした根拠をお持ちになってお書きになるべきだと思うんですけれども、いかがでございますか。
  101. 加藤栄一

    政府委員(加藤栄一君) 全体に水準としてということではなくて、やはり個々のケースを見ますと、不必要なそういう長期の入院をするとか、ただ私はこの厚生白書を書いたわけではないわけで、突然の御質問でございますので、そういうものが考えられるわけでございます。  また、やはり将来に向けてこのままの傾向で進むとすれば、そういう過剰な給付でありますとかあるいは地方公共団体等々の場合もございます、一時はばらまき福祉というようなことも言われたわけでございますが、そういうようなものも萌芽としては言えるわけでございます。そういうむだ のないような効率的な社会保障を構築していく、さらにその財源についてはより必要性の高いところへ回していく、こういうことであろうと思います。
  102. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 ばらまき福祉というふうなこともおっしゃいましたけれども、現状でやはりまだ社会保障の充実ということは、実感として皆さん充実しているというふうにお感じになっていらっしゃる方というのは、傍聴席にもいらっしゃいますけれども、どなたもやはり充実しているという実感をお持ちの方はいらっしゃらないんじゃないかなという気がするわけでございます。そのような状況の中において、過剰サービスというふうな言葉が国が責任を持ってお出しになる厚生白書にきちんと記載されているということは、私は余り納得がいかないわけでございます。  先ほどおっしゃいました、そういう国がある、活力がなくなってしまっているような国があるというふうなお言葉があったように見受けますが、それはどのような国々を指していらっしゃるんでございましょうか。
  103. 加藤栄一

    政府委員(加藤栄一君) 勤労意欲がなくなるというふうに具体的に検証するというのはなかなか難しいとは思いますけれども一般的にそういうことが言われているということを申し上げたわけでございます。
  104. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 大変それはちょっとお答えになっていないというふうに思うんですけれども、余りに素朴過ぎるお答えでございますが、もう少しきちんとしたお答えいただけますか。
  105. 加藤栄一

    政府委員(加藤栄一君) 当時の一般的に言いますのは、やはり我が国に比べましては、今先生おっしゃられていました、当時言われておりましたことはやはりイギリス病でありますとか、それは御専門でございますので私もあれなんでございますが、一般的にはそういうことが言われておったわけでございます。そういうことを恐らく当時言われておりましたことと、さらに将来においてやはり一般的な形としては、もし過剰な給付というようなものがあるとすれば、それはやはり負担との関係では、負担もふやすわけでございますので、後代の背負い切れないような負担というものも避けるという意味で、余りに国民負担が高まるというようなことを通じて国民の勤労意欲というものがやはり失われていくのではなかろうか。やはり、そういう国民負担率の向上というようなものも念頭に置いて書かれたものでございます。そういう意味では、今イギリスと申しましたけれども、北欧諸国でありますとか、そういうところで国民負担率が余りに高いというようなことはやはり勤労意欲の面で影響があるのではないか、こういうことにもつながってくるんではないかというふうに思っております。
  106. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 イギリス病とおっしゃいましたけれども、英国病は社会保障をやり過ぎたからという単純なものではないことは皆さん御存じのとおりでございます。また、イギリスにおける社会保障費の対GNP比を見ましても、そんなに高くはないのも御承知のとおりだと思います。したがいまして、英国病というのは社会保障をやり過ぎたからということはどこからも余り出てこないと思います。スウェーデンやデンマークなんかの方が対GNPの社会保障費というのは非常に高うございます。しかしながら、スウェーデンでは失業率は日本国よりも低いわけです。そういう事実がございますことを御存じないはずはないというふうに思っております。したがいまして、やはり私としてはもう少しきちんとしたお答えをいただきたく思いました。しかし、一応この問題はこの辺で終わらせていただきまして、次の問題に移らせていただきたいと思います。  さて、年金制度を改定するには、さまざまな年金財政などに関する再計算に伴う基礎的な指標というものが必要になってくるわけでございますけれども、例えば人口推計におきましても、これは厚生省の人口問題研究所が出されました中位推計でございますが、例えば六十歳以上の推計を見ましても非常に変化が多いんですね。例えば一九六九年の推計によりますと、六十歳以上が二千九百九十三万人、ところが一九七六年の推計を見ますと三千二百四十五万人、一九八一年推計によりますと三千四百四十二万人、一九八六年推計ですと三千八百九十六万人となっております。  この数はよろしゅうございましょうか、これは人口問題研究所の中位推計でございますが。
  107. 加藤栄一

    政府委員(加藤栄一君) ちょっとそれぞれの推計、過去の推計を私手元に持っておりませんので、六一年の十二月推計では、六十歳以上でございますと、一九六五年現在で実数で九百六十万四千人、こういうことになっております。それから、平成二年で六十歳以上人口が二千九十七万人ということでございます。
  108. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 いつの推計ですか、今おっしゃったのは。
  109. 加藤栄一

    政府委員(加藤栄一君) これは六十一年の推計でございます。
  110. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 そういたしますと、私、今のこの推計の実際の数字を後ほど出していただきたいんですけれども、よろしゅうございますか。その推計の実際のきちんとした数字を出していただきたいということをお願いしておきたいんですけれども、私が申し上げたかったのは、やはりこのように推計が随分変わっていくということを申し上げたかったわけでございます。そうしますと、非常にデータをどのように扱うかということによりて随分さまざまな結果というものが変わってくるんじゃないかということを申し上げたかったわけでございます。  その中に、例えば一番わかりやすい例を申し上げますと、合計特殊出生率でございます。二〇二五年に合計特殊出生率が二・〇程度ということで推計をなさっていらっしゃると思いますが、現在一・六六ということでございますが、この二〇二五年までには二・〇になるというふうに今でも推測していらっしゃいますでしょうか。
  111. 加藤栄一

    政府委員(加藤栄一君) 合計特殊出生率でございますが、推計では今おっしゃられましたように二・〇まで回復するという推計をしている。これは六十年の人口研の人口の将来推計でございますが、現在でもその前提に立っております。
  112. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 わかりました。どのような根拠でそうなるかということもお聞きしたかったんですけれども、だんだん時間が過ぎてしまいます。  あと二つほどデータを出していただきたいことをお願いしておきたいんですけれども一つは、今回の改定のために出された基礎データの中に拠出金算定対象者のデータは出ていなかったように思います。それからまた、被保険者の男女別、年齢別分布の将来推計値というのが出ていなかったように思いますが、この二つと、それから先ほどの人口問題研究所の推計と、三つをデータとして出していただきたいと思います。
  113. 水田努

    政府委員(水田努君) 私どもは、再計算いたします場合には人口問題研究所の直近の将来人口推計、これを用いているわけでございますが、この人口問題研究所の将来人口推計というのはその前年に行われた国勢調査の結果をもとに推計を行っているものでございまして、前回の再計算のときの将来人口推計というのは五十六年のものを用いました。今回のものは六十一年の将来人口推計を用いているわけでございます。  一番この間で顕著に違った点は、男女とも平均寿命が三年延びている、そのことが平成三十二年における老齢年金の受給者の数が前回の再計算時に比べて二百五十三万人ふえた、このことが最終保険料率が前回二八・九%と予定していたものが三一・五%に拡大した、これが最大の理由でございます。  今先生から要求のございました三点の資料についてはお出しをいたします。  なお、今回の再計算に当たりましては、合計特殊出生率は二・〇で、六十一年度の将来人口推計をそのまま用いさしていただいております。  蛇足になりますが、平均寿命につきましては男女とももう既に世界のトップに来ておりまして、 これについては今後そう大きな変化はないだろうというのが人口問題の専門家の中の御意見でございますが、合計特殊出生率につきましては、なかなかこれは予測のしにくい、非常に個人の恣意総意にかかわる、子供を生むというのは非常に統計になじみにくい不安定な要素があるわけでございまして、私どもが今回推計いたしました再計算においては二・〇と。それから、そこに向かう回復基調が正しいかどうか、こういうことについては若干の懸念がございますが、今回私どもが再計算に使いましたタームにおいてはそう深刻な影響はないと思いますが、超長期的に見ると、この合計特殊出生率が年金財政に与える影響というのは二・〇に回復しない場合は生じてまいろうか、こう思います。  それで、先生の御指摘のあとの二点の点は、後刻資料を先生にお出しをさせていただきたいと思います。
  114. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 ありがとうございました。  一応基本的な問題についての質問はこの程度にさせていただきまして、次は各論的な問題についての質問をさせていただきたいと思います。  今回の改定におきまして、厚生年金給付額というのは標準的なケースで十九万七千四百円、これでよろしゅうございますか。
  115. 水田努

    政府委員(水田努君) 制度成熟時においてはそのように私どもは計算をいたしております。
  116. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 では、夫婦ともに四十年加入した場合には月二十八万八千円、これは標準報酬の六九%に当たる、これでよろしゅうございましょうか。
  117. 水田努

    政府委員(水田努君) そのとおりでございます。
  118. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 ところが、これは実際には二十八万八千円、標準報酬のこれは六九%でよろしいのかしら。私が計算いたしますと六八・五四%になるんですけれども、いかがでございますか。
  119. 水田努

    政府委員(水田努君) 丸めさしていただいて六九%、こうさしていただいております。
  120. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 これはやはり四捨五入ということではなく、相当大きな、お金にいたしましても何にしても大きいわけでございますので、やはり四捨五入を簡単にしてもらっては困るように思います。  さて、次に基礎年金についての質問をさせていただきたいと思いますが、四十年加入の場合のモデルが出されておりますけれども、この金額は、一人当たり国民所得の何%を維持するのかというふうなことに対して、給付額というのが今の例えば厚生年金の標準報酬の六九%というふうに定めてあるようには定めてないように思いますけれども、いかがでございますか。
  121. 水田努

    政府委員(水田努君) 基礎年金は前回の年金改革で導入されたものでございまして、前回の導入に当たりましては、六十五歳以上の無業の方の基礎的な消費支出に見合う金額として基礎年金の水準が設定されておりまして、今回敢正に当たりまして昨年の末、一年半にわたる御審議をいただいた年金審議会から一致して前回設定された給付水準を維持すべきであるという御答申をいただきましたところから、私どもその基礎的消費支出の伸びに見合った額の設定をするということで、いろいろと政府部内で私ども各種の交渉をして、この水準を確定して法案として出ささしていただいた、こういう経過に相なっております。
  122. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 一九八四年度に基礎年金が導入されましたときは月平均五万円ということになっておりましたが、これは同年度の一人当たりの国民所得の約三〇%、もっと厳密に言いますと三八%に当たるというふうにとらえてよろしゅうございますか。あるいはまた、平均賃金の現金給与総額の一九・三%になるというふうにとらえてよろしゅうございましょうか。
  123. 水田努

    政府委員(水田努君) 国民所得あるいは平均賃金との相関関係において基礎年金を設定するという考え方はとっていないわけでございますが、あえてその点はどうだという御質問でございますので、前回の設定されました五万円という基礎年金の水準というのは、その当時におきます一人当たりの国民所得に対する比率は三〇%であると私どもは見ております。それから、毎月決まって支出をされる給与、その当時二十一万二千円でございますが、これに対する五万円の占めるシェアは私どもは二三%台である、このように見ているところでございます。
  124. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 そうしますと、一九八九年の改定、この基礎年金の額五万五千五百円というのは、一九八八年度の一人当たり国民所得の何%に当たりますでしょうか。
  125. 水田努

    政府委員(水田努君) 一人当たり国民所得に対するのが、前回三〇%だったものが二七%になります。それから毎月決まって支給される給与、前回二三%であったものが今回も同じく二三%でございます。
  126. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 そういたしますと、いわゆる対賃金比ということで見ますと次第に割合は下がっていっているというふうなことがわかるわけでございます。私たちが実際に生活レベルで年金ということを考えましたときには、自分の生活レベルは実質的にレベルアップされているというのが実感だろうと思うんですね。そういたしますと、いわゆるそういう算定方式をとっていらっしゃらないということを前提にはして考えましても、やはり我々の感覚としては次第に目減りされていくということが今お答えいただいた数字の中で出てきたというふうに思うわけでございます。この辺の問題も、やはり我々の生活レベルにおける実感と、それから数字合わせという机上のプランとの違いということから出てくるというだけではなく、やはり年金というものが我々の生活というものを支えるということになりますと、小さな問題ではないような気がいたします。  さて、次の問題に移らせていただきたいと思います。  老齢基礎年金についてでございますが、これは四十年加入して五万五千五百円ということでございます。年金額というのは、これは絶対額ではなくて保険料を払った期間、つまり加入期間に比例するというわけでございます。しかも四十年間ということでございますから、まず四十年間無事に生活をするということもなかなかこれは、人生というのはいろんな起伏がございます。四十年というのは相当長い期間だというふうに思います。したがいまして、これは私たち生活実感からいくと、モデル年金等が出ると本当にそのまま満額自分がもらえるんじゃないかなという錯覚を起こしてしまいがちなんですけれども、厳密に考えてみると必ずしも五万五千五百円が手に入るということではないわけです。  ところで、この老齢基礎年金額、実際の受給額というのは幾らぐらいになっておりますでしょうか。
  127. 土井豊

    政府委員(土井豊君) 昭和六十二年度末現在での国民年金の老齢年金の平均支給額でございますが、月額二万九千円と相なっております。
  128. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 やはりこれはモデル年金の半額というふうに言ってもいいと思います。  さて次に、この老齢基礎年金の場合には保険料の免除制度というものがございますが、その免除制度の適用を受けている方は何人ぐらいでございましょうか。
  129. 土井豊

    政府委員(土井豊君) 昭和六十三年度でございますが、一号被保険者一千八百三十九万七千人中免除者数は二百二十三万六千人、一二・二%という状況でございます。
  130. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 滞納者あるいは不払い者というのはどのようになっておりますか。
  131. 土井豊

    政府委員(土井豊君) 保険料を納めるべき月数に対する収納率というのを出しておりますけれども、検認率と申しておりますが、それを一〇〇から差し引いた未納率でございますが、これで申し上げますと一五・七%という状況でございます。昭和六十三年度の実績でございます。
  132. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 何人ぐらいになりますか。
  133. 土井豊

    政府委員(土井豊君) 人数につきましては、今言った計算の仕組み上正確には出ないわけでござ いますが、単純に先ほど言いました一号被保険者の人数に今の率を掛けますと、推計でございますが、約二百八十八万人という状況でございます。
  134. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 そういたしますと、この保険料の免除の方と合わせて約五百万を超えていらっしゃるというふうに考えてよろしゅうございますか。
  135. 土井豊

    政府委員(土井豊君) 今の二つの数字を合計いたしますと、五百万強という数字に相なります。
  136. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 五百方という数は、これは必ずしも少ないというよりは多いというふうに見ていい数だというふうに思います。  さらに、保険料がこれからふえていくということが予想されますが、そうなってきますとこの数というのはどんどんふえていくというふうにとらえてもよろしゅうございましょうか。
  137. 水田努

    政府委員(水田努君) その御質問にお答えします前に、先ほどのお尋ねの基礎年金の水準の設定について若干補足をさせていただきたいと思いますが、毎月決まって支給する給与というのは、この五年間というのは大変物価が安定していたために賃金の出ぶりというのはそう高くなかった。そういうことで、五十九年のときは決まって支給される給与に占める割合は五万円というのは二三%で、今回も毎月決まって支給される給与に対する五万五千五百円は二三%で、比率的には変わっていない。一人当たり国民所得で見ますと確かに若干落ちているけれども、物価が安定していたために、消費支出の拡大に見合って支給するということですから、消費支出の拡大というのが実態的に物価が安定していたために大きくなかったと、こういうふうに見るべきではないかと私どもは見ておりますので、その点は若干先生と見解を異にするということを補足させていただきたいと思います。  それで、今確かに私ども免除者あるいは滞納者が出ないようにするということは国民年金制度を運営する場合の基本的な方策であると、こう思っております。そういうことを十分念頭に置きながら私ども国民年金の保険料を設定させていただいておるつもりでございますし、できるだけそういうことを起こさないように引き上げ幅を小さくし、しかも毎年段階的に引き上げるというきめの細かい配慮を加えて引き上げをさせていただいているということでございます。  一方、どうしてもこれに経済的に大変な人には免除という制度が用意してございますし、また免除を受けられました方については、経済状態が回復した場合に自分の低年金を防ぐために十年間さかのぼって追納できるという道や、あるいは本来六十歳で国民年金制度からリタイヤするんですが、六十歳から六十五歳までに任意加入という形で保険料を補完するという道も制度的につくられているわけでございます。  それから滞納の問題については、これはやはり国民皆さんに理解を求めてやっていく以外にないわけで、これは残念ながら大都市部の人口の流入の激しいところにどうしても滞納率が高く出ておりますので、納めやすい環境づくりということで、前回の改正で三月に一回ずつ納める保険料を毎月払いに切りかえ、しかも自動振り込みその他によって納めやすい環境づくりをつくったところで、私どもは滞納の防止については全力を挙げて今後とも一生懸命取り組んでまいりたい、このように思っておる次第でございます。
  138. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 今局長が補足なさいました平均賃金との割合でございますけれども、先ほど私が申し上げたかったことは、実際に目減りをしているということと同時に、決まった基準というもの、賃金あるいは国民所得の何%を維持するかという、そういう基準が定められていないことに対する不安定ということを申し上げたかったわけでございます。
  139. 水田努

    政府委員(水田努君) これは前回の導入した考え方を我々踏襲をしているということで、老人の必要な基礎的な消費支出のニーズにこたえるという形で、いわゆる賃金なりあるいは国民所得にリンクするという設定方法は残念ながらとってない、こういうことでございますので、よろしく御理解を願いたいと思います。
  140. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 確かに局長がこれを導入なさったわけではないというのはわかりますけれども、やはり国民といたしましてはどなたが導入なさったかということは余り関係ないことでございまして、たまたま今回は物価が安定していたという、たまたまという要因でもって公的年金の実際の額というものの賃金へのパーセンテージというのがたまたま余り変わってないということでは非常に困るわけでございます。やはり、余りそういうたまたまということがないようにしなければならないということは、これはちゃんとおわかりのことでいらっしゃると思います。  それで、また基礎年金のところに戻りますけれども、先ほどお答えいただきましたように、いわゆる保険料の免除者とかあるいは未納の方たちというのは五百万を超えているということ、そしてまた実際の受給額が三万円足らずということになりますと、これは基礎年金というふうになっております、いわゆる最低の生活保障ということになっているこの基礎年金が基礎年金足り得る意味をこれで持っているというふうにお思いでいらっしゃいましょうか。
  141. 水田努

    政府委員(水田努君) 先ほど加藤審議官も申し上げておりましたが、我が国は社会保険方式をとっておりますので、所定の拠出を満たしてフルペンションをもらう、こういう仕掛けになっております。  三十六年にスタートしたために、我が国では制度発足前の期間について保険料を納めるという仕掛けはとっていないわけでございまして、そのために五年年金、十年年金という短縮措置を講じた経過年金というものを出して、この額についてはできるだけ過去努力をして引き上げてまいってきたわけでございます。その年金についてかつ繰り上げ減額をされるということが非常に多いために、結果的に部長が申し上げましたように一件当たりの平均支給額は二万九千円台に残念ながらなっているということで、これ以上全体の給付水準を五万五千五百円のレベルに上げるということになりますと、膨大な費用を要することになって、到底これは保険料負担という観点において、現在でも高過ぎるという御批判のあるところにこれ以上の給付の改善というのはなかなか私ども困難ではないかと、こういうふうに考えている次第でございます。
  142. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 例えば、またスウェーデンと言うと活力がないということになるというふうに言われてしまいますけれども、失業率は日本よりも低いということで活力がないとは言えないと思うんですけれども、そのスウェーデンですと、一定期間居住して一定の年齢になった者にはもういわゆる日本の基礎年金に当たる国民年金というのが支給されることになっております。やはりこういう安定した基礎的な年金というものがもらえるということになりますと、これは非常に年金に対する不安というものが少なくなるんじゃないかというふうに思いますけれども、そういうことに関してはやはりお金が要るということで考えられないということになるわけでございましょうか。
  143. 水田努

    政府委員(水田努君) それも一つ考え方であろうかと思いますが、仮に今の基礎年金をスウェーデン型、いわゆる居住要件と年齢要件で支給をするということになりますとどれくらい費用がかかるかということを申し上げますと、平成二年度で十一・一兆で、これは全額国庫補助という前提で考えますと、現在の三分の一の国庫補助の約四倍近くかかります。それから平成十二年度になりますと二十三・四兆ということで、三分の一の国庫補助の三・四倍、それから平成二十二年度になりますと四十三・二兆ということで、現行の三分の一の国庫補助に比べて三・二倍ということで、この財源をどう調達するかというのは大変これは深刻な問題であり、どうやって国民合意形成をとっていくかという、これは大きな問題ではないかというふうに考えておる次第でございます。
  144. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 例えば国庫補助あるいは税方 式という形にした場合には、その他の制度の保険料というものの負担というのは相当少なくなると思うんですけれども、そういった計算というのはなさったことはおありでしょうか。
  145. 水田努

    政府委員(水田努君) 確かに被用者年金から拠出金として国民年金に拠出している保険料が不要になるので、その意味においては被用者年金の保険料を軽減させるという要素は持つと思いますが、このように四倍から三倍強の国庫負担ということが我が国の今後の経済成長の中で税として確保していけるかどうか。その調達方式その他については、今回の消費税の導入をもってすらあれだけの国論を二分するという形をとっておりますので、これは大変大きな問題ではないか、こう思う次第でございます。
  146. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 これは税特のところで、たしか中村紀伊さんが参考人としていらしたときに、国民は税負担を全く嫌だと言っているのではない、納得のいく税負担であったらば必ずしもそうではないというふうなことを参考人として述べていらっしゃいましたけれども、やはり今まで余りにも税金というものに対して取られてしまうという感覚があるということは、これは行方がどうなったのかが余り国民に見えてこなかったという、そういうタックスペイヤーということから考えますと、日本の場合には相当これはいわゆるお上意識ということにもつながって他の先進国とは違った感覚を持っているだろうというふうに思うんですけれども、そういった国民の不信感というものに対して、その不信感を解消していくためにはやはり非常にガラス張りの、さまざまな細かいデータも情報公開するというふうなことがまず先決なんじゃないかというふうに思いますが、いかがでございましょうか。
  147. 水田努

    政府委員(水田努君) 私、自分の守備範囲年金だけで情報公開についてお答えをさせていただきたいと思いますが、厚生年金国民年金につきましては、私ども情報公開に精いっぱい努めてまいったつもりでございますし、余り長期の展望をし過ぎて、余計な開始年齢の引き上げなんか考えなくてよろしいとおしかりを受けるぐらい長期展望をきっちりさせていただいているつもりでございます。その点が、例を引いてはよくないのかもしれませんが、やはり旧国鉄共済年金なんかも、もうちょっと長期展望に立った財政計算等、その公開が行われていたらこれほど深刻な事態にならなくても済んだのかもしれない、こう思うわけでございます。
  148. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 その情報公開は、これからも本当にお言葉どおりにやっていただきたいというふうに思います。  次に、国民年金基金について御質問させていただきたいと思います。  これはいわゆる国民年金における二階建ての部分というふうにとらえていいというふうに思いますが、いわゆる職能型と地域型というふうに分かれておりまして、一口五千円以上の掛金を約二十五年間掛けて六十五歳から支給開始というようなことでよろしゅうございますか、受けとめ方は。
  149. 水田努

    政府委員(水田努君) この国民年金基金というのは、一号被保険者に付加年金制度というのがございます。その付加年金を代行する制度として設定されるわけでございます。その点は、厚生年金基金が報酬比例部分を代行してそれにプラスアルファを乗っけるという仕掛けと基本的に同じ仕掛けになっているわけでございまして、社会保険料控除につきましては最高限六万八千円、これは厚生年金基金加入者とのバランスをとってそういうふうに設定させていただいたわけでございます。  何年加入でどういうふうに設定するかはすべて個々の基金の団体自身に任せるという考え方をとっておりますので、今私がどうあるべきだということを法律成立前に申し上げるのはいかがかと思いますが、行政指導としては、やはり加入しやすい形をとるべきであるということが衆議院段階から言われておりますので、私どもは一口五千円程度というものを指導の目安に置きたいな、こういうふうには思っております。
  150. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 一人月額六万八千円まで所得控除の対象となるといいますと、夫婦単位になりますと年に百六十三万二千円までの掛金が所得控除の対象になるということでございますか。
  151. 水田努

    政府委員(水田努君) 夫婦御加入になり、最高限を一年間続けて加入されるとそのとおりになります。
  152. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 加入者の見込みというのはどのくらいに見積もっていらっしゃいますでしょうか。
  153. 水田努

    政府委員(水田努君) この見込みというのはどういうふうに見るか大変難しい問題でございますが、一つの目安は、付加年金を代行するということで、付加年金の加入者というのは現在二百万人おられます。その二百万人のうち、七十万人は農業者年金基金に入っておられます。農業者年金基金に入るのは付加年金に入るということが前提でございますので、その七十万人を引いた百三十万人がおられるわけですが、今回上乗せができるということから見て、私どもはその百三十万の方が倍以上ふえるのではなかろうかと見ております。  それから、六十二年に意識調査をいたしました。その場合に、所得階層二百万の階層でもこういう国民年金基金制度、上乗せ制度ができたら入りたいという方が四人に一人おられる。そういうこと等から勘案しますと、とりあえずは三百万人はカバーできるんではなかろうか。この制度が国民の中になじみ、定着していけばさらに拡大していくんではなかろうか、私どもはこう考えておる次第でございます。
  154. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 約三百万人ということでございますが、二百万円という階層の方も四人に一人というお答えが今ございましたけれども一般的には、無税で老後のための貯蓄ができてマル優の復活だというお声もありますし、また、これまで自営業者のみなし法人税とかあるいは医師の優遇税制というふうに富裕な階層への税の優遇ということを考えますと、これは金持ち優遇策ではないか、また不公平感が募るではないかというふうな声がちまたに聞こえておりますけれども、その辺についてはどのようにお考えでいらっしゃいましょうか。
  155. 水田努

    政府委員(水田努君) 確かに村上清さんという日本団体生命の方が言っておられることは事実でございますが、マル優というのは貯蓄でございまして、納めていつでも任意に引き出せるというものでございますが、この国民年金基金制度は、入るのは任意でございますが、入った以上は年金に結びつくまで脱退というのが認められないという点で貯蓄とは基本的に違うわけで、必ず年金という形でしかお支払いしないという法律の構成になっているわけでございます。それがゆえにこれだけの税制上の恩典が与えられているということでございますので、必ず年金として終身渡す、こういう法律上の担保があってこれだけの税制上の優遇措置が認められたわけでございまして、マル優の復活とは基本的に違うと私ども考えております。
  156. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 今、いわゆる年金というふうにおっしゃいましたけれども、加入は任意で、そして給付というのは掛金建て、積立方式というこになりますと、そしてまた事務運用というのは生命保険会社などに委託なさるということでございますが、そういった観点で見ますと公的年金制度に余りなじまないような気もいたしますけれども、その点はいかがでございますか。
  157. 水田努

    政府委員(水田努君) これは、もう既に厚生年金基金というのは民間サラリーマンの三〇%をカバーするということで大変普及の一途をたどっているわけでございますが、これも全部、能率的な運営を図るという一〇〇%民活方式ということで生保、信託に業務を委託するということでこの制度はでき上がっておるわけで、先輩であるところの民間サラリーマンの厚生年金基金制度に見習っているということで、決して私どもは、生保、信託に委託することがいわゆる公的年金に準ずるこの制度の性格をゆがめるとかあるいは私保険化するものであるというふうには認識はいたしており ません。
  158. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 その点はそれではそのように承っておきますが、厚生年金基金は、もちろんこれは個人でどうこうすることはできないわけですし、また給付が一定額を超えますと運用益に対して特別法人税が課税されるわけでございます。所得控除の効果はなくなるという点もこれは厚生年金基金と今回のいわゆる国民年金基金とは少し違っているように思います。  さて、次の質問に入らせていただきますけれども、職能型と地域型でありまして、なぜ地域型というのが県ごとに必要とされるのでございましょうか。
  159. 水田努

    政府委員(水田努君) 現行の制度に職能型基金というのが全国で同一職種一本ということで、しかも三分の二以上の同意と、日本憲法の改正手続と全く同じ厳しい要件でございまして、現実には一つも動いていない。これは実態的には私どもは厚生年金基金の例から見て全国の職能型のものは三千人あれば保険集団として安泰であるから、我々はそこは大幅に緩和を図って現実につくれるものに変えるというのが一つと、それから職能型に属さない町の八百屋さんとか魚屋さんとか肉屋さんとか、そういう方が気軽に入れるようにするためには都道府県を単位につくる必要があるということで地域型の基金をつくった。  地域型の基金をつくる単位としてはいろんな単位が考え得るわけですが、私どもはやはり適用関係、保険料の徴収関係、本体が全部都道府県を単位に事業が行われておりますので、これと密接な関係を持つためには都道府県の単位にすることが望ましいというのが第一、それから保険集団としても安定するということが第二、それから地域の実情に応じたそれぞれの工夫した給付の設計ができるようにしたい、こういう三つの理由から地域型の基金を創設した、こういうことでございます。
  160. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 そういたしますと、これは幾ら民間に委託するということになりましても人件費その他費用というのはナッシングというわけにはいかないと思いますが、その点に関します御予算あるいはどのくらいの費用を見積もっていらっしゃるでしょうか。
  161. 水田努

    政府委員(水田努君) この制度は平成三年度からスタートすることになっておりますので、私どもこの間十分準備をしまして、よく業界とも詰め、またそれぞれの基金における事務費用というのはどの程度かかるかということも十分検討しまして、必要があれば平成三年度の事務費補助の要求等もあわせて今後検討していかなきゃならぬかと、こう思っておりますが、現在のところどうするということは決めておりません。
  162. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 先ほどから財政問題が非常に重要だというふうに御答弁の中にございましたが、このような大きな改革をなさいますのにその肝心な財政の計画がなくてこのような計画をお始めになるのでございましょうか。
  163. 水田努

    政府委員(水田努君) 私は厚生年金基金制度の創設にも創設時に関係したものでございますが、やはり法律というのは骨格を決めるのが先でございまして、その後やはり法律上委託先として決められております生保、信託、それから衆議院の修正で農協、漁協というのが入ってまいりましたが、こういうところとどういうふうな給付を設計し、また事務手数料としてどの程度のものを必要とされるのか、そういうことを十分詰めた上で、さらに個別の基金に補完的に行う事務費はどの程度かということは、そこを先に詰めないと私の厚生年金基金創設時に携わった経験からいっても無理ではないか、こう思っている次第でございます。
  164. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 どうも今までの御発言と逆さまのような感じがいたします。公的年金においてもお金が足りないというふうなことが非常に前面に出たんですけれども、こういう制度を新しくおつくりになりますときに、やっぱりそれに対する人件費というふうなものを含めた費用というものはきちんと算定をなさってから新しいことに着手なさるというのが私は今までおっしゃっていましたことと同じ方向ということになるんじゃないかなというふうに思います。  そのことはさておきまして、あと何分かございますので、私自身女性でございますので女性の年金について少し触れさせていただきたいと思います。  前回の改定におきましていわゆる女性の無年金者というのがなくなったというふうに解釈がされておりますけれども、実際には、例えば離婚ということを考えますと、高齢になりまして自分の年金権を取得するのに遅過ぎる年齢で離婚した場合には無年金になるという、こういう場合もあり得ると思うんですが、いかがでございますか。
  165. 水田努

    政府委員(水田努君) 前回の改正で、基本的に五十九歳以下の方については基礎年金にサラリーマンの妻も全部強制的に加入するということで年金額の保障というものがあるわけでございますし、また一方、旧国民年金の時代でもサラリーマンの奥さんの七割は実際は国民年金に加入しておられた、こういうことでございますので、その点かなり今の日本の女性の方は年金についての自覚というのは私は非常に高いんではないか、こう見ているわけでございますが、問題は、よく指摘されるのは、厚生年金の報酬比例部分についてももらう権利があるんではないかと。外国においては制度的に、離婚した場合にはその比例部分も分割するというカナダなんかあるではないか、こういう指摘がよくなされるわけでございます。  私ども、その夫婦生活が厚生年金の報酬比例分を形成するのにどの程度寄与しているのかというのを年金制度で一義的に判断するのは難しいので、むしろ離婚の際の財産分与の中で、家庭裁判所における調停なり裁判で的確に判断してもらって、そこは夫がもらう厚生年金の中の報酬比例部分の財産分与分は確定していただく方が実情に合うんではないかなと、こう思っている次第でございます。
  166. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 そうしますと、女性の年金の受給額でございますが、男性と比べてどのようになっておりますか。モデル年金ではなくて、実際に受給されている平均受給額を男女別にお示しいただければと思います。
  167. 土井豊

    政府委員(土井豊君) 昭和六十二年度の数字で申し上げます。  新規裁定者についての数字でございますが、まず厚生年金につきましては、二十年以上の退職者の数字でございますが、男子は十七万八千円に対しまして女子は十万八千円という状況でございます。国民年金の老齢年金でございますが、男子は三万六千円に対しまして女子は三万三千円という状況でございます。
  168. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 今お答えいただきましたように、特に厚生年金、働いている女性の場合には半額と言ってもいいくらいに女性の支給額が少のうございますが、これは女性のみにさまざまなハンディがあるということにつながっていることだというふうに思うんですけれども、例えば賃金、勤続年数といったことでの男女格差について、今の状況を教えていただければと思います。
  169. 太田芳枝

    説明員(太田芳枝君) お答えいたします。  女子労働者の賃金、男子との比較でございますが、これは昭和六十三年六月の賃金構造基本統計調査によりますと、所定内給与でございますが、男子が二十六万四千四百円、女子は十六万円ということで、男子を一〇〇といたしますと女子は六〇・五ということでございます。それから勤続年数の違いもございまして、男子十二・二年に対しまして女子は七・一年というふうになっております。
  170. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 どうもありがとうございました。  そのほかに、女性の場合ですと、出産、育児、介護といったさまざまなハンディがあるわけでございまして、そういうことも含めてこういう非常に大きな男女格差が出ておりますが、この男女格差をどのようにして縮めていこうというふうに考えていらっしゃいますでしょうか。この男女格差 にどのように取り組んでいらっしゃいますでしょうか。
  171. 水田努

    政府委員(水田努君) これは、やはりよって立つ社会の基盤を改革していく必要が基本ではないかと思います。男女雇用均等法が制定されましたし、私どもの職場その他を見ておりましても、堂堂と女性の方、男子にまさるとも劣らない働き、勤続をやっておられるわけでございまして、今後は勤続年数の上でも賃金の上でも男女の格差がなくなっていく、当然それをベースにして年金も設定されるわけでございますので、格差は縮小していくものと考えております。  それから育児休業につきましては、残念ながら普及率は低いわけでございますが、採用されているところにおきましてはほとんどが労使の話し合いによって厚生年金が適用されているということが実態でございますので、この育児休業制度が普及されれば当然に私どもはその育児休業期間中の厚生年金の適用問題については労使の間で解決がなされるものだと、このように考えている次第でございます。
  172. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 今おっしゃったように、簡単にこの差が縮まるということは局長もお考えにはなっていらっしゃらないというふうに思いますけれども、介護の問題などもこれは大変大きな問題だと思います。  先ほど一番最初に申し上げましたように、さまざまな社会的不安、老後に対する不安の中で、やはり寝たきりになったらどうしようということがございます。特に女性の場合には寿命が長いわけでございます。そしてまた、介護というのはほとんどが女性でございます。そうした場合に、最近では自分の夫の両親あるいは自分の両親、またその祖父母を介護するというために長年勤めたお勤めをやめなければならないという女性たちも大変ふえております。また、私の持っているある調査によりますと、ぼけ老人の介護家庭の調査でございますが、勤めを持っていた女性の十人のうち四人から五人、半数が介護のために職場を去っていくという事実も出ております。  そういうことを考えますと、今局長がおっしゃったのは余りにもバラ色の未来が手近にあり過ぎるというふうに思うわけでございますが、その点も含めまして労働省のお考えはいかがでございますか。
  173. 太田芳枝

    説明員(太田芳枝君) 先生おっしゃいましたように、まだまだ日本の雇用の分野における男女平等は、六十一年に男女雇用機会均等法ができましてかなり進んだというふうに私ども考えておりますけれども、先ほどの勤続年数等にしましてもまだ格差があるというのが事実でございます。  ただ、男女雇用機会均等法の施行を契機にいたしまして、企業においては男と女を均等に扱う、それぞれの意欲、能力に応じて扱うという雇用管理を進めているところが非常にふえてまいりましたので、今後とも私どもはそういう形で企業における雇用管理がそれぞれ意欲、能力に応じた形で行われていくように進めていきたいと思いますし、また男女雇用機会均等法は職業生活と家庭生活の両立ということも言っておりますので、その辺につきましてもいろいろな施策を進めていきたいと思っておるところでございます。
  174. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 最後に、今の男女の格差の問題も含めまして、厚生大臣に私の今までの質問全体に対する御見解を承らせていただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  175. 戸井田三郎

    ○国務大臣(戸井田三郎君) いろいろな角度から年金の公平の観点について御指摘をいただきまして、特に女性と男性の格差というものを年金という社会の仕組み、公正な仕組みの中でどうそういった格差というものを縮めて不公平感を払拭するかということについては、私どもも常に関心を持っていかなければならないわけでありますが、やはり社会の仕組みの中で、制度そのものは公正であっても、その置かれている環境の格差というものが、その運用される制度の中で格差がまた生まれてくるというこの環境というものを改めていかなければなりませんけれども、まさに今はそういった方向に一歩一歩前進してきているのではないかと思います。  冒頭に私お答えいたしましたけれども、まだ日本社会保障制度の仕組みの歴史というものが非常に浅い中で、いろいろなひずみがありますけれども、一歩一歩そういったひずみを改めていきたい。今の男女雇用の問題も、制度施行以来着々と成果を上げてきております。結局、この道が歴史を重ねていけば、この格差というものが自然に解消されてくるだろうというふうに思います。しかしながら、あくまでもそれは座して待つべきものではなくして、常にそういったことに心を配って政治もやっていかなければならない、かように思います。
  176. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 どうもありがとうございました。
  177. 糸久八重子

    糸久八重子君 それでは、私は最初に学生の国民年金強制加入問題について、そこから質問させていただきます。  今回の改正で、従来任意適用とされておりました二十歳以上の学生を適用対象としたことについて、八六年の改正時点で積み残された課題の一つではあったわけですけれども、今度の改正について政府の御見解をお聞かせください。
  178. 加藤栄一

    政府委員(加藤栄一君) 学生の適用でございますが、従来学生につきましては任意適用になっていたわけでございます。任意適用になっていたことによりまして、在学中に障害を起こすというようなことになりますと、そのまま無年金かつ障害年金ももらえない。そのまま労働不能というような方もおられるわけでございます。また、将来におきまして年金額全体の見地から見ましても、場合によっては十分な年金加入年齢が得られないというようなこともございまして、これにつきましては、今回の改正におきましてこういう方々の出現を防ぐということを考えました。  また、非常に学生の大学等におきます進学率も高くなってきておりますので、そういう状況も勘案いたしまして今回学生の適用を法定適用にするということにしたわけでございます。  また、学生におきましては十分な稼得能力がない、こういうこともございますので、そういう学生ないしは学生を持っておられます世帯の方の収入等に十分勘案いたしまして、必要な場合には保険料の免除制度等も十分活用する、こういう趣旨で今回学生の適用を導入するという御提案をしたわけでございます。
  179. 糸久八重子

    糸久八重子君 幾つかの問題があるわけですが、確かに学生が障害者になった場合というのは大変深刻な問題でありまして、私も一昨年だったと思いますが、私の身近な友人の子供が短大に通っておりまして、たまたま二十歳一カ月だったと思います、スクーターで道路を走っておりまして、道路とそれから歩道の間のコンクリートブロックとそれからダンプカーに挟まれてしまったわけですね。そして障害者になってしまった。それで、障害年金がもらえないだろうかということで大変奔走したわけですが、二十歳を超えてしまったのでどうにもならないという状況になったわけでございます。現在、その方は障害者雇用という形で大変不自由な体を押して就職はしているけれども、大変疲れる毎日であるというような話も聞いておるわけでございますから、いつごろまで就職活動ができるかどうかということも大変心配になるわけであります。  そういう方たち救済するという意味では今度の例は、早くからこういう制度は導入すべきだと私ども社会党も言っておったわけでありますけれども、しかしここで問題になりますのは、学生自体に負担能力がない場合が多いわけですね、勤労学生というのは一部でありますけれども。厚生省案によりますと、世帯の構成によって新たな格差が生じてしまうのではないかということを指摘せざるを得ないわけです。  そこで、現在任意加入の道は開かれておるわけですが、福祉を専門とする大学の学生でさえ保険料を支払わない場合不利益になるということを知らない人たちが非常に多いわけなんです。  そこで、今二十歳以上の学生で任意で国民年金に加入している者はどのくらいの数と把握をしていらっしゃいますか。
  180. 水田努

    政府委員(水田努君) 約二万人ぐらいではないかと推定をいたしております。
  181. 糸久八重子

    糸久八重子君 二十歳以上の学生の数は文部省で言いますと百六十万というわけですから、本当に少ない数だと言わなければならないわけです。  年金未加入だったために障害年金を受け取れないで苦しい生活を余儀なくされているという学生は、少なくとも毎年二、三百人ぐらいは出るのじゃないかということも言われているわけですが、厚生省はどのぐらいと把握していらっしゃいますか。
  182. 水田努

    政府委員(水田努君) 学生について今回初めて当然加入といいますか強制加入をさせるわけでございまして、学生自体の障害の発生の状況というのは把握しておりませんので学生固有の障害の発生率というのはわかりませんが、国民年金全体の集団としての発生率は千人に一・一人が発生の状況、こういうことになっております。
  183. 糸久八重子

    糸久八重子君 今ちまたでは、学費ですねをかじられている上に毎月八千円も取られてはとてもたまらない、そしてそれも子の老後のためにそんなにまで親が負担しなければならないのかというような意見とか、それからその反面、同い年で中卒、高卒で働いているようなそういう若者は安い月給の中で、半額は雇用主負担ではありますけれども、掛金を払っている。大学生だからということで掛金を免除するなんというのは不公平になるのじゃないかとか、いろんな意見が今あるわけですけれども、しかし厚生省案によりますと、親元から離れていれば多額の仕送りを受けている者でも免除になる。そして、逆に勤労学生には納付の義務が生じる。そして、負担能力のある親と同居しているとその親が保険料を払わなければならないというのは、やっぱりどうもおかしいと思うんですね。  家から離れて下宿住まい、マンション住まいをしているという、そういう学生は金持ちの学生なんですね。それで、生活にゆとりのない学生というのは多少通学には時間がかかっても家から通えというような、そういう学生があることはもうこれは現実なんですね。古い昔、私もそうでしたけれども。そういう生活の内実に着眼すると、厚生省のお考えですと多くのアンバランスや不均衡が出てきてしまうのではないか、そう思うんです。  先ほどの御説明のように、老齢年金のフルペンション対策という意味はあるとしても、収入のない学生に月額八千円以上の保険料というのは家族としても家庭としても非常に大変だ、そう思うのですけれども、この点について率直な御意見を聞かせていただきたいと思います。
  184. 水田努

    政府委員(水田努君) 先生の御指摘はいずれも私どももっともであると考えております。学生の生活形態の違いによって負担が生ずるというのは不公平であるというのはもっともの指摘でありますし、また親が過大な負担にならないように配慮しようということについては、これを諮問しました年金審議会の答申の際にも意見としてちょうだいしておりますので、私ども現在、全国で国民年金の保険料の実態調査をやらさせていただいておりますので、その調査の中にそういう要素も加味して調査をいたしておりますので、その調査結果を待って、そういう先生の御指摘のような問題が起きないように合理的にやはり免除基準というものを設定してまいらなければならぬ、こう思っております。  そのためにまた衆議院の段階の修正で平成三年度からという十分検討するだけの時間の余裕もいただいておりますので、そういう問題が生じないようにやらさせていただきたい、このように思っている次第でございます。
  185. 糸久八重子

    糸久八重子君 先ほどちょっと私も申し上げましたが、老齢年金のフルペンション部分については、これはいずれ職場の年金に入るわけですから、時期は多少おくれたとしても老齢年金は受けられる。そして、これは雇用と年金支給の問題にもかかわりますけれども、いずれ六十五歳の定年に延長されるんでしょうから、そういう意味からいうと四十年の加入というのは心配ないわけですね。  そうすると、問題はやっぱり障害者になった場合ということが考えられるわけですけれども、そこで無収入の学生が年金に加入する場合にいろんな援助制度というのは考えられないのかなと思うのですけれども、厚生省としては、原案としては大幅な免除措置等々言っておるわけですが、あと学者の方たちがいろんなことをおっしゃっているんですね。  例えば奨学金のような制度にして、そして一時貸し付けにしておいたらどうなんだろうかとか、それから就職するまで免除しておいて、そして就職したらそのかわりに割り増しの保険料を払ったらどうなんだろうとか、いろんな意見があるわけですけれども、その中で障害になった場合だけに障害年金を掛けるのはどうなんだろうかというような、そういう貴重な御意見もあるようです。  せんだっての衆議院の公述人の上智大の山崎先生もこの問題にお触れになって、そういう部分にしたら大体千円程度の掛金で済むのではないかというような御意見もおっしゃっておられるようです。  私、これは学者の先生にお伺いしたんですが、いやそうでなくてもっと安い掛金でできるんだというふうな御意見も聞いているんですけれども、そういう場合に基礎数値といたしまして厚生省側ではどういう数値をお持ちなのか、ちょっと数値だけお伺いしたいと思うんですけれども、例えば一級障害年金の現在の受給者、それから二級の障害年金の現在の受給者はどのくらいの数になっておりますか、お教えいただきたい。
  186. 土井豊

    政府委員(土井豊君) 国民年金で申し上げますと、総数百八万五千人のうち、一級障害は六十七万七千人、二級は四十万八千人、これは六十二年度末現在の数字でございます。
  187. 糸久八重子

    糸久八重子君 一級と二級の障害者の出現率というのは大体どのぐらいと押さえていらっしゃいますか。
  188. 水田努

    政府委員(水田努君) これは年金局の方で試算をするわけでございますが、障害年金全体の出現率は、先ほど申し上げましたように千人に一・一人ということで、一級と二級の割合でございますが、一級が大体三分の二、二級が三分の一、そういうシェアで考えております。
  189. 糸久八重子

    糸久八重子君 それでは、これは社会保障研究所の試算なんですが、参考までに申し上げたいと思います。  学生の数が百六十万人、そして厚生年金の場合ですけれども被保険者総数が二千七百六十七万五千五百二十四人、そして一級障害年金の受給者が三万四千五百八十三人、二級が九万七千七百八十九人なんですね。そして一級の出現率を〇・〇〇一二四九、二級の出現率が〇・〇〇三五三三四ということで推計の計算をしてみたと。  そうすると、学生の障害年金の受給者数というのは、一級の場合には百六十万人に〇・〇〇一二四九を掛けますと千九百九十九人。二級の場合ですと、百六十万人に〇・〇〇三五三三四を掛けますと五千六百五十三人。そして障害基礎年金の月額が、一級六万九千三百七十五円、二級が五万五千五百円。そうしますと、年金給付費の総額としては、一級の障害年金の月額に先ほどの千九百九十九人の一級障害者数を掛けたものと、それから二級の障害年金受給者総数に五万五千五百円を掛けたその数字を足してみますと四億五千二百四十二万円になる。保険料の総額というのがその四億五千二百四十二万円で、百六十万人で割ってみると二百八十三円という数字が出るという、これは学者の先生のデータなんですけれども、それをいただいたわけですね。国庫負担を三分の一とすると、大体百八十九円におさまるだろうというような試算も出ているわけなんですね。  ですから、そういうことでいろんな意見があろうかと思うんですけれども障害部分にかかわる分だけを選択でと、そういう年金制度というもの はできないものなんだろうか。その辺はいかがなんでしょうか。
  190. 水田努

    政府委員(水田努君) この問題、学生をどういうふうに適用していくか、これは残された大きな課題であったわけで、私ども局内でも大いに論議もしましたし、年金審議会の中でも十分この問題議論をしていただきました。もちろん、私らの議論の過程でも障害年金だけを適用したらどうだろうかという意見も我々検討しました。それから、年金審議会の中においてもそういう意見も出されましたが、最終的にはやはり全面的に適用することが望ましいという結論に達したわけでございます。  その理由というのは、一つはサラリーマンの場合も基礎年金に加入できるのは二十から五十九歳まででございますので、やはり免除を受けても追納という形がとれるような形をしておかなきゃならぬ。障害年金のみにしておきますと、これについては学生の期間中は完全に基礎年金部分、老齢については欠落をする、こういう問題がございまして、これについては現行制度の上では回復の道がないということが一つです。  それから、大学院なんかに行くことでかなり長期な学生生活を送る人がいるということと、それからこの学生の範囲の中には学校法人に基づく学校以外に、各種の法律で資格を受けるための法律上所定の養成施設として指定されておりますあんま、マッサージ、はり、きゅう、鍼灸師、理容師、美容師、補助看婦、その他柔道整復師とか、いろんな養成所に通われる方も学生として扱われておりますので、こういう方は社会生活を送って、転職のためにこういう学校に行かれるというケースもあるわけでございまして、やはり遺族年金という問題も当然考えておかなきゃならぬじゃないかということで、結論的には全部を適用しておくことが正しいし、むしろ学生については親の負担が過大にならないように適切な免除基準をつくるという方向で運営していた方が望ましい、こういうのが年金審議会の結論でございます。  私どもはそういう結論に従って今回の法律をつくらきせていただいたということで、障害年金のみということも十分検討しましたが、それはやはり実態にそぐわないんではないか、こういうことで見送った、こういうことに相なっているわけでございます。
  191. 糸久八重子

    糸久八重子君 今、学校法人に入らない学校、技術取得のために通学している、その方たちはやっぱり自分で働いていないわけで、技術取得のために学業に専念しているわけですから、やはり学生なんですね。だから、その人たちが別個になるからという、そういう御意見はちょっと私はいただけないと思うんですけれども。  いずれにいたしましても、国民年金の保険料というのは非常に多額なものでありますし、これから政府の原案によりますとどんどんふえていくというような状況の中で、親の負担は莫大になるわけですね。ですから、どうしても私が提言したようなことをぜひともこれからも考えていっていただきたい、そのように思うところでございます。施行が再来年になるということでございますから、その間いろんなお知恵をお絞りになられるだろうと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  それから、今までの制度の谷間で無年金になってしまった障害者の方たち、その方たち障害年金給付する道が開かれないものなんだろうか。老齢年金については特別納付制度を実施した前例が三回もございますね。無年金の不幸な障害者をなくすのが年金審議会や厚生省の法改正の目的であろうとするならば、これは当然の措置であらうと思うわけですが、この辺のところの御見解はいかがでしょうか。
  192. 水田努

    政府委員(水田努君) 過去三回、老齢年金については権利発生前に保険料の追納という道を開いたことは事実でございますが、社会保険方式をとっておりますので、やはり事故発生後の保険料の追納というのは逆選択という問題に帰着してしまうわけでございます。何かどうも障害の問題になると途端に年金局長は冷たいことばかり言っているじゃないかというんで私も大変気にしながら答えているわけでございますが、建前が社会保険の方式をとっておりますので、残念ながら事後的に事故が発生した後に救済するということは、事故が発生してから保険料を納めようか、こういうことになっても困るわけでございますので、大変冷たいことを言うようで恐縮でございますが、結論的には困難かと、こう思っているわけでございます。
  193. 糸久八重子

    糸久八重子君 大変冷たいお返事で本当に納得できないんですけれども、この問題については次回、同僚の堀議員の方からもまた追及してもらいたいと思っています。  いずれにしましても、学生の強制加入問題については大きな問題があることは厚生省としてもお認めのようですから、だれでもが負担可能な額で、しかも最重要な課題に対応できるように、私が提言申しましたそれも含めまして厚生省として検討の余地があるのかどうか。大臣、いかがでございましょうか。
  194. 戸井田三郎

    ○国務大臣(戸井田三郎君) 制度が、加入することによって権利が発生する仕組みになっておりますので、今局長がお答えしたとおりでありますが、よくまた御指摘の問題を含めて検討をしたいと考えます。
  195. 糸久八重子

    糸久八重子君 それでは続きまして、沖縄の厚生年金格差の問題に若干触れていきたいと思います。  沖縄における厚生年金格差の根本原因というのは、私が申し上げるまでもないことですけれども、戦後二十七年間にわたって本土と行政分離されて米国の支配下に置かれたために、沖縄県民の年金加入期間が短い。そして、同一条件のもとでの年金額に多大な格差が生じてしまっておるわけでございます。  大臣もこのことはよく御存じでございまして、衆議院での答弁でも、本土におくれて年金に加入せざるを得なかったのは、県民の責任ではなく、格差処理に積極的に対応していくと、そういう御発言をなさいました。また、衆議院の社会労働委員会で、格差是正のための特別措置を講ずるとの、その確認を受ける形で御努力をいただいたわけですが、その後、政府としての救済措置を決定されたと伝えられているのでございますけれども、今回の措置によって本土との格差が完全に解消されることとなるのかどうか、その内容をまずお伺いしたいと存じます。
  196. 水田努

    政府委員(水田努君) 復帰時に私ども、大変沖縄の制度のおくれたことに伴いまして、事務的には可能な範囲の特例措置を講じたつもりでいたわけでございますが、強い要請がございましたので、厚生大臣と大蔵大臣がいわゆるトップレベルの政治的な交渉によってここまで政治的に踏み切っていただいたというのが実態でございます。  踏み切っていただいた内容というのは、いわゆる復帰時に一定年齢、本土であれば中高年齢特例に相当する方、この方々については定額部分は二十年分、いわゆるフルペンション、それから報酬比例部分は、十五年加入することによって十五年分をやる、こういう形のものを復帰時の特例で年齢によって四年から十四年まで短縮した。報酬比例部分は、当然保険料を納めた期間に対応して給付をするというものでございますので、中高年齢特例を受けておられる本土の人との格差をなくするために、十五年に到達するまでの保険料の追納を認めるという形をとって中高年齢特例を受ける本土の方との給付の格差をなくす、こういう形をとらせていただいたわけでございます。  その場合に、保険料を納めやすくしてほしいという強い要請がございましたので、それも受け入れまして、四十五年一月の古い標準報酬を使ってよろしい。それから、本来ならば追納するのは第四種被保険者と基本的には同じ措置を講ずるべきで、労使分を本人が負担する、こういうのが第四種特例の本来のあるべき姿でございまして、本土の方で第四種を十五年満たすためには労使の分を自分で全部納められているわけでございますが、四 十五年一月の標準報酬にその当時の保険料六・二%の本人負担分だけ、すなわち三・一%でよろしいということに踏み切っていただいたわけでございます。もちろんこれは五分五厘の利息は納めるまでの間つけていただく、こういうことに相なるわけですが、保険料は非常に納めやすい形をとったということでございます。  増額される金額は、いただく保険料の方は四十五年一月の生の標準報酬でございますが、年金額の計算をするのは今日の価格で再評価した高い金額に納付した期間の月数を掛けた金額で年金額を改定するという、大変有利な額の計算面での措置を講じている、こういうことでございます。
  197. 糸久八重子

    糸久八重子君 ただいまの御答弁では、その対象を狭く限定しているばかりか、特例給付の対象者においてさえも極めて不十分な救済内容となっておるわけです。こうしたやり方ですと、沖縄の皆さん方が要求される現行の厚生年金が発足した時点までの遡及給付というのは全く認められないこととなりまして、沖縄の年金格差が完全に解消することにはならないわけです。本土との格差をなくすという復帰特別措置法の精神からいえば、当然本土の厚生年金制度が発足した一九五四年五月一日までのさかのぼりが必要であると思うのですけれども、その辺はいかがでございましょうか。
  198. 水田努

    政府委員(水田努君) いずれの制度も、制度スタート前にさかのぼるという形はとらないかわりに、資格期間の短縮措置を講ずることによって不利益の解消を講ずるという形をとっているわけでございまして、二十年がフルペンションでございますが、四十歳以降の加入の方は、本土の場合は、この二十年を満たすということは厳しいので十五年に短縮する、十五年に満たない方は第四種被保険者になって十五年に満つるまでの保険料の追納をするという道を開く。第四種の保険料を追納するというのは、やめた時点の標準報酬に事業主分を含めて自分が全額納めるという形で本土の方は対応していただいているわけでございますが、沖縄の復帰特例措置では、十五年というところを、さっき申し上げましたように、年齢によって四年から十四年までに短縮して年金を差し上げる。ただし報酬比例部分については、第四種の道を選択されない方については確かに十五年分ないのでアンバラがあるので、今回は、本土の人は事業主負担分を含めてやめた時点の標準報酬なのに、四十五年という創設時の低い賃金にリンクした形で、本人負担分で保険料を十五年に満つるまでの間の納めやすい形で設定したということでございますので、そこはどうしても御理解をいただきたいところでございます。  なお、二十九年までさかのぼりという問題は、例えば厚生年金で申しますと、適用業種の拡大とか、それから五年未満の拡大をやる場合には、絶対に過去の期間については何らの措置も講じていないわけで、こういう人たちとのバランスからいっても私どもはもう到底それは二十九年までさかのぼるということは困難でございますし、また二十九年までさかのぼるというのは、厚生年金の場合は雇用関係があるということが大前提になるわけでございまして、雇用関係の記録なり賃金台帳なりが整備されている人だけが救済され、その他の方は救済されないということになっても私は問題があると思いますので、いずれの観点から見ましても今回の措置以上に踏み切るということは全くできないと、私どもこのように考えている次第でございます。
  199. 糸久八重子

    糸久八重子君 そのときどきで本土と同じ適用状態とする、本土ならば当然適用となる事業所に勤めていた者については、本土との格差を埋めるためにその分についての遡及適用を認めると。こうした方法が、せんだっての衆議院で大臣が、格差処理に積極的に対応することが県民の長い間の御苦労に報いることとなると、そう御答弁なされた趣旨とか、それから先ほども申し上げましたが、沖縄復帰特別措置法の趣旨にも合致するのではないかと思いますけれども、大臣いかがでしょうか。
  200. 戸井田三郎

    ○国務大臣(戸井田三郎君) この件につきましては、今言われた私の答弁もそのとおりお答えしたわけでありますが、長い間各党間で熱心なお取り組みがありまして、衆議院におきましても二度請願を採用いたし、また社会労働委員会でも沖縄を視察し、県民の皆さんからいろいろな御意見等もあり、なお今回、この改正の機会にぜひという各党の非常に強い要請もあり、当院の社労の委員長も御存じのとおり長い間の懸案でいろいろと御心労いただいたわけでありますが、何といっても制度の中でできるだけの不利益を解消する最大限の方法をとろうということで、先ほど局長が御説明申し上げましたとおり決定したわけでございまして、何とぞ御理解のほどお願いをいたします。
  201. 糸久八重子

    糸久八重子君 大臣も御承知のように、共済年金についてはもともと空白がない。国民年金も、特例納付によりまして完全に本土との差は埋まっているわけでございます。  また、どうしても一九五四年までの遡及適用が不可能であるならば、一九八六年四月から施行されました新年金法の施行に伴って、沖縄の厚生年金加入者の国民年金加入日については、沖縄復帰特別措置法の政令改正によって一九七〇年の一月から一九六一年の四月までの国民年金保険料の追納が認められたわけでございますから、この時点についてまでの厚生年金の二階部分についての特例納付は認められてもよいのではないかと思いますが、大臣に再検討のお約束をいただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  202. 水田努

    政府委員(水田努君) 国民年金につきまして、政令で措置を講じさしていただきました。これは実は、基礎年金が導入されまして、旧法国民年金では二十五年加入で五万円がもらえるものが四十年で五万円という形にフルペンションの受給資格期間が変わった、こういうことでございまして、沖縄が復帰した時点では二十五年で五万円のフルペンションがもらえるための措置が講じられていたんですが、新法に切りかわった際の四十年に延長したことに伴う措置が欠落をしていたためにいわゆる五万円年金がもらえないためのいわば補完をするためにやらさしていただいたことでございまして、そういう意味では今回の厚生年金措置というのはこれよりも実態的にはるかに有利な扱いになっている、こういうことでございます。  しかも、今回の対象になられる方は厚生年金の部分というのは定額部分で二十年分もらう。この二十年分というのは国民年金の旧法時代の二十五年分に相当するわけで、いわばフルペンション部分は既にこの沖縄復帰時の最初の特例でもう満たされているわけでございまして、私ども、三十六年まで上る必要性はないものと、このように考えている次第でございます。
  203. 糸久八重子

    糸久八重子君 復帰特別法の精神にのっとって、今後とも引き続き御努力をいただきたいことを強く要望させていただきたいと思います。  私の持ち時間がなくなってしまいました。実はきょう通告いたしましたものが半分以上残ってしまったんですけれども、まだ十四日がございますからそのときにさせていただきまして、私はこれで終わります。ありがとうございました。
  204. 高桑栄松

    高桑栄松君 それでは、私の質疑をさせていただきたいと存じます。    〔委員長退席、理事糸久八重子君着席〕  老齢年金というと老化現象というのをイメージしちゃうわけでございますが、老化現象というのは年とともにだんだん機能が低下してくる、私たちは一応六十歳を過ぎるとだんだん機能が低下するというふうに考えているわけでございます。  そこで、労働省に伺いたいんですけれども、年齢階層別の災害者数あるいは死傷千人率、こういったものをちょっと伺いたいと思います。
  205. 梅井勲

    説明員(梅井勲君) 労働災害状況について御説明いたします。  昭和六十三年の分でございますけれども、休業四日以上の高齢者の労働災害被災者数は、五十歳から五十九歳で六万四千三百十七名、全体に対しまして二八・八%、六十歳以上になりますとこれが二万五千百三十八名、一一・二%、こういうことになっております。  なお、これを労働者総数に対する発生割合、千人率でございますけれども、これで見ますと、全産業合計で三・七人でございますが、五十歳から五十九歳では五・六人、六十歳以上では三・九人、このようになっております。
  206. 高桑栄松

    高桑栄松君 死傷者千人率というのは持っていますか。
  207. 梅井勲

    説明員(梅井勲君) 先ほど後段の方で申し上げましたように、千人率が全産業合計で三・七人、それからこれが五十歳から五十九歳までが五・六人、六十歳以上が三・九人、このようになっておるわけでございます。
  208. 高桑栄松

    高桑栄松君 若い方は。
  209. 梅井勲

    説明員(梅井勲君) 若い方でございますが、同じく六十三年でございますけれども、十九歳以下で五・一人でございます。二十歳から二十九歳が二・六人、三十歳から三十九歳が二・八人、四十歳から四十九歳が三・八人、このようになっております。
  210. 高桑栄松

    高桑栄松君 今伺いましたとおり、五十歳以上あるいは六十歳以上になりますと十九歳以下と同じようだということで、これは若い方はやはり未熟練ということもございましょうし、年をとってまいりますと機能低下ということで死傷者千人率が非常に急に上がってくるということがあるわけです。  私がこれをお伺いしましたのは、定年制が六十歳というところへいっていないところがまだかなりある。六十一歳以上になるともっとふえるということもございますし、しかるに六十五歳年金支給ということになりますとそのギャップが出てくるわけで、その間スウェーデンとかカナダとかのように、部分就労・部分年金という考え方はいかがなものであろうか。  これは、労働に従事したいと思っても職があるかないかが問題ですし、あっても今度は自分の機能的な点で就労できない。つまり、老化現象というのは個人差が非常に大きくて、肉体的、精神的、それから機能的にも非常に差が大きいので、これはある程度やっぱり個人の選択ということも必要になってくるかなと思うんです。  そういう意味で、例えば六十歳から六十九歳までを賃金それから年金併用期間にするというような考え方、つまり、六十五歳年金支給というのがあっても、労働のチャンスがあり収入がある人にはそれを部分年金としていくという形がとれた方が非常に個人の選択の幅も広くなっていいのではないか、こういった気がするわけですが、これについてどんなお考えをお持ちでしょうか。    〔理事糸久八重子君退席、委員長着席〕
  211. 水田努

    政府委員(水田努君) スウェーデンの部分年金・部分就労というのはもう既に十年を越える歴史を持っておりまして、一つの評価が下されているものと私は考えております。スウェーデンの部分年金・部分就労というのは、若年失業率が高いために高齢者がフルペンションからパートに移行して職場を若い人の失業救済に明け渡す、こういうワークシェアリングの立場から導入されたわけでございますが、十年たった実績としては、ワークシェアリングは必ずしも成功はしていない。  むしろ実際に活用されているのは、スウェーデンの場合大変累進課税になっているものですから、高額所得者がフルペンションからパート労働に切りかえる。切りかえますと、減収部分の六五%が年金として支給されますので、年金とパートの全体の賃金はかえってフルペンションしている場合の可処分所得よりもふえるということで、実態的にこれを活用なさる方は非常に累進課税を受けている高額者が積極的に利用する、こういう形で、所期の目的は必ずしも達成していないという点が一つと、それから、パートのかけ持ちをして、パートで総体的に全部荒稼ぎをするという新手の脱法組が出ているという指摘もなされているところで、必ずしもこれは成功はしているんではないんじゃないかという評価が専門家の間でなされているようでございます。  私どもとしましては、厚生年金の在職老齢年金というのがやはり日本型の部分年金・部分就労として六十歳前半層の雇用を促進する意味において大変寄与するんじゃないか、こう見ているわけでございまして、そういう意味合いで現在三段階の刻みのものを五段階の刻みにしたわけですが、さらに衆議院で七段階ときめの細かい配慮が加えられ、私ども、今二十万円以下の人が恩恵を浴するように現行法なっておるのを、三十二万円というふうに改正では考えていたものを、さらに二十四万円まで引き上げるという措置が講ぜられたわけでございまして、私どもとしては、日本型としてはこの在職老齢年金制度を有効に活用するのがむしろ有効でいいんではないかというふうに考えている次第でございます。
  212. 高桑栄松

    高桑栄松君 そうすると、それはあくまでも六十歳定年制がまだ完全でない段階で、なおかつ六十五ですからどうしてもその間ギャップが出てくるわけで、そうすると、今もお話がありましたように、六十歳台前半の雇用を確保するという意味、雇用というか所得の保障ですね、それで年金プラスアルファという形があるというのが部分年金・部分就労のつもりで申し上げたんですが、いずれにしてもそういうことでは高齢者がパートタイマーで今度は労働参加をしてくる形がふえるだろう。それから、もう現実にそうでありますが、婦人層がパートタイム労働に参入してきておられるわけでありますが、今申し上げた老齢者の雇用条件というのは、死傷者千人率でも四十歳台ぐらいの人の倍以上の死傷者が出ているということになっておりますから、雇用条件の整備というのが一方では六十歳台前半の雇用を確保するという意味でも、あるいはパートタイムでも同じですが、必要ではないかと思うんです。  このことについては労働省にお願いしたんだったか厚生省だったか、どっちだったか忘れましたが、お願いします。
  213. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) 先生から御指摘がございましたように、六十歳を超える高齢者につきましては、健康状態あるいは生活状態がさまざまとなってきておりまして、短時間労働あるいは隔日勤務などを希望する方もふえてきている状況でございます。したがいまして、六十歳台前半層の方方につきましては、そういう多様な手段を考えなければならないと思っておりますし、また賃金その他の労働条件については労使間で十分話し合いを行いながら進めるべきだと思います。  また、加齢と申しますか高齢化に伴って生じてくるさまざまな問題を解決しながら、ただいま問題になりました災害の発生を少なくするようないろんな工夫とかそういうものを考えながら進めていく必要があろうかと考えております。
  214. 高桑栄松

    高桑栄松君 今御答弁承りましたが、そういう意味で労働環境条件の整備をどうぞひとつ十分に留意していただきたい、こういうことを希望いたします。  次は、公的年金の一元化ということで少しお話を承りたいと思いますけれども、公的年金一元化、この制度の改革は一九九五年一元化に向かってというふうになっているようでありますけれども、今回のは何か中間地点での地ならしというふうな意味合いがあるように見受けられるわけです。  ところで、衆議院では附帯決議で一元化の全体像を速やかに明らかにすべきであるというようなことが附帯決議についておりますが、一元化のビジョンについて大臣にこれを承りたいと存じます。
  215. 戸井田三郎

    ○国務大臣(戸井田三郎君) 一元化のビジョンにつきましては、御承知のとおり、被用者年金の一元化について基本的には年金審議会の意見書に示されているとおり、同一給付・同一保険料率による新たな単一の制度を創設すべきものと考えております。そして六十年の改正のときにも、給付の官民格差の是正をいたしたわけでありますが、今回は同時に負担面の調整をしたわけでありますが、今後この考え方基本に置きまして、今回の制度間調整事業の運営の推移を見ながら、さらに被用者年金制度間に残されている支給要件の差異等の調整を図ること等を含めて、関係審議会で具 体的な検討をお願いしてまいる所存であります。
  216. 高桑栄松

    高桑栄松君 今お話がございましたが、制度間調整ということは、さっきちょっと触れましたけれども、中間地点で単に地ならしをするというようないわゆる単なる財政調整ではないのかというふうにも見えるのでありますが、いかがでしょうか。
  217. 戸井田三郎

    ○国務大臣(戸井田三郎君) 単なる地ならしというよりも、さらに進んで将来年金の安定を求めるために、平成七年を目途に一元化の方向を閣議決定もいたしておりますし、その道に向かって前進をし、今度は次の五年の見直しのときまでの中間の地点での地ならしという言葉を言いましたけれども、その方向に向かって進んでいることは間違いありません。
  218. 高桑栄松

    高桑栄松君 次は、一番今目下の急務である鉄道共済のことをちょっと伺いたいと思いますので、これは大蔵省にお願いしたいと思います。  今も大臣のお言葉にもありましたが、負担給付の公平をということでありますが、素人が見ますと、鉄道共済の件につきましては負担給付の不均衡によって膨大な赤字が出たのではないか。この鉄道共済の破綻ということについて国は、国というのは大蔵省ですね、認識が少し足りないのではないか、これに対する責任ということがあいまいではないのかというふうに思われるわけです。これは本来一元化とは別物のはずであるというふうに思われるのでありますが、大蔵省の方の見解を承りたい。
  219. 乾文男

    説明員(乾文男君) お答えいたします。  鉄道共済年金が財政的に破綻いたしました原因といたしましては、鉄道共済年金問題懇談会の報告書にも述べられておりますとおり、旧国鉄共済時代の年金制度の制度運営等に起因する側面と、それからここ数十年にわたります産業構造の急激な変化、これはモータリゼーションの進行等によりまして、鉄道産業というものに対する国民経済の需要が減少したということでございますけれども、そうした産業構造の変化、また我が国社会の人口の急速な高齢化等に起因いたしまして、鉄道共済が単一の年金制度として分立していたところからそういう今申し上げましたような要因のインパクトが非常に大きく、そのためにこの鉄道共済年金が今日のような状況に至ったというふうに述べられているところでございまして、私どももさように認識しております。
  220. 高桑栄松

    高桑栄松君 今モータリゼーションというようなことが出てまいりましたが、幾つかの要因が挙げられましたが、例えばモータリゼーションは直接国鉄と関連があっての話だと思いますけれども、アメリカなんかの鉄道の推移を見てみますと、もうこれはアメリカ的方向をたどる限りは当然予測できたわけで、私は政治にはやっぱり未来予測ということが非常に大事だと思うんです。それが国の責任ではないかというふうに私は申し上げたわけです。  そこでもう一度考えてみますと、それぞれの制度間調整ということなんですが、それぞれの制度というのは自分の方の年金のために積み立ててきたというのが本来の姿ではないかと思うんです。それが、隣の家が赤字だからそっちを助けてやるという形を今とろうとしている。言うなれば給付負担の不均衡是正という一元化のキャッチフレーズは大変いいことだろうと思うし、相互扶助の精神ということなんでしょうが、鉄道共済の赤字に関しては、言うなれば黒字の厚生年金の御厄介になりながら、そして制度間調整というのはやっぱり低いレベルの方に平準化するというのか、ならしていこう、そういうふうに見られまして、制度そのものを充実していくという視点が欠けているのではないか。つまり、安易に平準化、低い方へならすという形をとっているように見受けられるんですが、いかがでしょうか。
  221. 水田努

    政府委員(水田努君) まず一元化は、大臣がその理念、思想を述べられましたように、制度を長期的安定にするというためには一元化をしなきゃならぬ。一元化の場合には、その絶対の条件として給付負担が公平であるという前提条件がなければ一元化というのは成立しないと思います。給付の公平を図るという場合には、官民格差というのが言われて久しかったわけでございますが、前回の六十年の改正で、先ほど大臣もお答えになられましたように、共済の側が民である厚生年金の水準に整合性を合わせるという形になったわけでございます。厚生年金の水準が高いか低いか、これは論議があるところであろうかと思いますが、被用者年金の大宗をなす、八三%を占める厚生年金の現行の給付水準を将来とも維持していくというのは容易ならざる事態であるわけでございまして、この厚生年金よりもほとんど成熟度が高い共済組合がこの水準にならざるを得ないというのは、これはもう当然制度を維持していく上においてはやむを得ない措置ではないかと私どもは思っているわけでございます。  それからなお、安易に黒字だから赤字に応援しているのではないか、こういう御指摘でございますが、よくそういう御指摘も受けるわけでございますが、一元化した段階においては、やはり単一の制度で単一の会計、こういうことになります。そのためには、先ほど大臣がお答えしましたように、同一の保険料率で同一の保険給付水準というのを維持するという形になる。そうすると、どうしても被保険者の集団の分母が、被保険者集団がふえていくという宿命を持っている厚生年金の方が、現時点においては担ぐ被保険者の数が少ないわけですから、どうしても形の上では拠出者という形をとらざるを得ない。これは就業構造、産業構造の変化に耐え得る安定した制度に基盤を持っていくという形をとる以上は、やはり被保険者の集団の分母が大きいところの方が財政的に楽ですから、それはどうしても逆転しているような国鉄を、いわゆる給付水準について公平なカウントの仕方をしたその範囲の中において負担の調整をするということでございまして、私ども決して国鉄の赤字部分のしりぬぐいをするという意味じゃなく、一元化の姿を十分整合性をとるという前提で、しかも一元化の姿というのは基礎年金との整合性をとって二階部分を構築するという発想に立っていますから、三十六年以降の期間で、開始年齢が六十歳以降で給付水準は厚生年金給付水準でカウントした給付費の範囲の中で負担の調整を図るということを今回いたしているわけでございまして、決して国鉄の赤字のしりぬぐいということを目的にしたものではないことはひとつ御理解をいただきたいと思います。
  222. 高桑栄松

    高桑栄松君 午前中の委員からの質問にもこれはありましたけれども、年間三千億ですか、それはいつごろ解消されるという考えでおられるのでしょうか。
  223. 乾文男

    説明員(乾文男君) 来年度、平成二年度から六年度におきましては、年間平均三千億円程度の赤字が発生する見込みでございますけれども、この三千億円の赤字といいますのは、その平成七年度以降もある程度の期間続く見込みでございます。
  224. 高桑栄松

    高桑栄松君 ある程度というのがわからないんですが、未来予測ですから何年ぐらいというのはないんですかね、いかがでしょう。
  225. 乾文男

    説明員(乾文男君) いろいろな要因がありまして確たることを申し上げるところまでいっておりませんけれども平成七年度以降五年間ないし十年間は、三千億円、いわば現在のこの赤字額というのはピーク状態だろうと思うわけでございますけれども、この状態が続くと見込んでおります。
  226. 高桑栄松

    高桑栄松君 お金の件になると余り私何か提案をするのが強くないものですから、大変なことだなと今思いながら伺いました。  それでは次の質問に移らしていただきますが、学生の強制加入についての質問がやはり前の委員からございましたが、私が伺いたいと思いましたのは、親と同居と別居しているので免除になるとかならぬとかというのが議論になっていたわけですが、親と別居していて本人に所得がない場合に免除というんでしたね。学生の場合の本人の所得というのは、アルバイトが入るのか、それから定時制だけを言っているのか、その辺伺いたいと思います。
  227. 水田努

    政府委員(水田努君) いわゆる現在適用除外を受けている学生は、夜間の学生は適用除外の対象にはなっておりません。強制加入の対象に既になっております。それから、学生のアルバイトで得た金は収入に認定されるのかと、それは当然認定されると思います。
  228. 高桑栄松

    高桑栄松君 そうすると、働いている学生が働いた分はまた免除にならないという感じになってくるわけですね。そういうことでいいわけですか。
  229. 水田努

    政府委員(水田努君) 今の御質問でございますが、私どもそういういろんなケースでアンバラが生じないようにということが一番大事なことではないか。親と別居している場合、親と同居している場合、アルバイトして収入があった場合、なかった場合、いろんな形で保険料の負担あるいは免除の仕方に不公平ができるだけ生じなくて、かつ市町村が事務的にもわかりやすく対応できるような形にしてあげなきゃならぬ。その兼ね合いが大変難しいわけですが、どういう設定の仕方をしたらいいかということで、今大がかりに全国的に負担能力の実態調査をいろんなケースを想定してやらさせていただいておりますので、その結果を踏まえて、今回衆参を通じていろいろ学生問題について御指摘受けましたことを頭に置いて、私どもはできるだけ実情に合うような形で学生の適用について運用を図る最大限の努力をしていきたい、こういう気持ちでおりますので、どうかよろしくその点はお酌み取りをいただきたいと、このように思う次第でございます。
  230. 高桑栄松

    高桑栄松君 新たな不公平が生じないように、ひとつ十分検討していただきたいと思います。  そこで、その次の私の質問に入らせていただきますが、国民年金で無年金及び低額年金者をなくするというのが基礎年金精神だろうと思うんですが、先ほどやはり実態についてのお答えをいただきましたけれども、もう一度伺いたいんですが、納付状況ですね、免除者だとかということ、それから自営業者の場合に納付がどういう予測になるのか。もう一つは、六十五歳以上で現時点で推定すれば無年金者というのは何%ぐらい、実数で何十万人ぐらいを想定しておられるのか、その辺承りたいと思います。
  231. 土井豊

    政府委員(土井豊君) まず保険料の納付、免除等の関係でございますが、先ほどもお答え申しましたとおり、昭和六十三年度の数字で見てみますと、免除者の数は二百二十三万六千人、一二・二%という状況でございます。それからまた保険料未納率でございますが、同じく六十三年度で約一五・七%という率でございまして、これは単純に人数に掛けるわけにはまいりませんけれども、先ほど申しましたとおり推計で申しますと両方合計して五百万強の人数になるという状態でございます。  一方、無年金者の推計の問題でございますが、私ども年金者につきましては正確な統計は持っておりません。したがいまして、他の統計で推計をするという手法でございますのでおおよその数字でございますけれども国民生活基礎調査の年金をもらってない人の割合というものを六十五歳以上の人数に適用しまして推計をすると、七十万人台というのが私どもの大体の推計の数字でございます。
  232. 高桑栄松

    高桑栄松君 六十五歳以上で七十万人ぐらい。大体人口がどれくらいですか、千三百万人ぐらいでしたかね。そうするとやっぱり五、六%ぐらいの割合になりますかね。
  233. 土井豊

    政府委員(土井豊君) ただいま申しました推計の中身でございますけれども昭和六十三年の六十五歳以上人口千三百四十九万人、これに対しまして先ほどの実態調査の年金をもらってない者の割合が五・九%ということでございまして、その両方の数字を掛けますと七十九万という数字が出てまいりますが、前後の年と比べまして多少出入りが年によってございますもので、大体七十万人台ではないかというふうに見ているということを申し上げた次第でございます。
  234. 高桑栄松

    高桑栄松君 それから自営業の方の納入額ですね、納入割合というかな、何か新聞で見たんですけれども、自営業者二五%が満額年金にはならないという推定であると新聞に載っておりましたが、それでいいんですか。
  235. 土井豊

    政府委員(土井豊君) 自営業者についての数字は私ども持ち合わせておりませんが、先ほど申しました免除率が一二・二%、それから未納率が一五%程度ということでございますので、両方合わせて二七、八%になりますけれども、あるいはその数字が二五%という形で伝えられたのかとも拝察されます。
  236. 高桑栄松

    高桑栄松君 そこで、今のお話伺いますと、なかなかその五万五千五百円という基礎年金でも、満額であってフルタイムに納入していた人たちということの一番上限なわけで、自営業者の場合、御主人が月八千円ですか、夫婦ですと一万六千円ということで、これやっぱり負担可能な状況でないということを今の統計は示しているのではないだろうかと思うわけですが、これを負担可能だと見て五万五千五百円の線を出しておられるわけでしょうか。
  237. 水田努

    政府委員(水田努君) 五万五千五百円というのは、やはり前回導入したときの基礎年金額の水準、これを年金審議会でぜひとも維持すべきであるということで、五万円から五万五千五百円という設定をさせていただいたと。それで、これの水準を維持していくためにはどうしても当然保険料の額もふえますし、受給者もふえてまいりますので保険料の引き上げを行わざるを得ないと。しかし一方、なかなか低所得者も多いということにかんがみまして、厚生年金の場合は五年に一回ぼんと上げちゃうわけですが、国民年金の場合は四百円ずつ毎年小幅の引き上げを段階的に行うという形で、御負担しやすい形で私ども工夫をさしていただいたつもりでおります。  最終保険料は平成元年度価格で一万六千円になりますけれども、私ども六十二年に、今度の改正を控えまして約全国六千人の方を無作為抽出で意識調査をいたしたわけでございますが、やはり七割の方が現在の給付水準を維持していくためには保険料の引き上げはやむを得ないという御回答をいただいておりますし、また前回の水準を設定する際の二十一世紀の年金についての有識者の調査でも、平成元年度価格で最終保険料は一万四千円から一万九千円の間が妥当だろうという方が五割を超えていたと。それから、今回設定されます厚生年金の保険料、平均的なサラリーマンの大体八〇%台が夫婦の負担でございますので、平均的な厚生年金のサラリーマンの方とのバランスから見てもこれはおおむね妥当な水準ではないかと思っています。  もちろん、これについて経済的に御負担ができない方は免除という道をとっていただいて、経済力が回復したときに追納していただくことによって、先生御心配のような満額年金に限ることのないようなできるだけの努力をしていただく、こういうことに相なろうかと思います。
  238. 高桑栄松

    高桑栄松君 そこで、健康保険のことを思い出すんですけれども、健康保険ですと所得に応じて国保なんかたくさん納付するということになっているわけですが、この年金の方も、もらう方はたくさんもらいたいし負担は少ない方がいいという、さっきそんなお話も出ておりましたが、みんなそう思っているだろうと思うんです。  そこで、一律であることがいい場合と、それから相互扶助の精神でそこに重みづけをするというのも一つあろうかと思うんですが、この健康保険の考え方のように所得に応じてウエートをかけていくというそういうことは考えられないのかどうか。そういう負担能力に応じた保険料体系ということは、その方法はどうなのかということをちょっと伺いたいと思います。
  239. 水田努

    政府委員(水田努君) 同じ自営業者に適用されている医療保険である国民健康保険、これは先生御案内のとおり、市町村が保険者、経営主体で運営しているわけですが、全国三千三百の市町村がそれぞれ保険料を取ったり保険税を取ったりまちまちで、それの積算もいろんな工夫をしているわ けです。所得割、資産割、均等割、均等割も世帯割均等それから被保険者数割均等という、各市町村で全部ばらばらになっているわけです。私も千葉県で国保課長をやりましたが、隣のうちはあんなに立派で車も二台あるのに保険料が低いのはなぜだというような抗議なんかは私もよく受けたわけでございますが、大変市町村いろいろ所得の把握には苦労をしているのが実態でございます。  国民年金の場合は全国一本の制度でございますので、応能割を入れるとすれば所得税に準拠せざるを得ないと思います。自営業者の中で所得税が課税されている方は一七%しかないわけでございまして、一七%の人にだけ応能割をかけるということが財政効果上どういうことになるかという問題が一つあろうかと思います。  それからもう一つ問題点は、やはり給付はみんなフラットで同じで掛金だけは応能主義ということ、掛金だけ高く取られて年金額に反映しないということはなかなか国民の理解が得られるかどうか。いろいろやはり検討すべき課題がこの応能主義を導入することについては、国民年金については古くて常に新しい問題でございますから、なかなか業態が多様で、所得税に準拠する場合にやはりトーゴーサンあるいはクロヨンという実態があって、公平な所得の把握ということはなかなか難しいという面があることがやはり私どもは踏み切れない大きな理由一つであることについて御理解を賜りたいと思います。
  240. 高桑栄松

    高桑栄松君 今お話を承りながら突然思いついたわけですけれども、地域型年金というのも何か提案としてはあるようでありますが、国保の場合は企業別、団体別でなくて自治体だと、そうすると地域型年金がそれに近いのかなと今思ったんですが、そうだとすると、応能割等々の一つの基準があるからそれはやりやすいような形になるのかなと今考えたんです。今いろいろお話を承ると難しいんだというお話でございますが、地域型年金となるとこれはやや可能になるんですか、どうでしょうね。
  241. 水田努

    政府委員(水田努君) 地域型の国民年金基金というのは加入の口数が任意になっているということで、いわゆる所得を把握して、あなたは幾ら納めなさいという強制ではなくて、これは公明党なんかの御提案にもありますように選択型の多重式の加入方式ということを素直に受けて設定をしている方式でございますので、これは所得の把握とは直接関連がない、こういうふうに御理解を賜りたいと思います。
  242. 高桑栄松

    高桑栄松君 それではここで大臣に承りたいと思いますけれども、やはり六十五歳以上でも無年金者が七十数万人になるということで、低額年金者が相当いることもこれで類推できるわけでありますが、やはり一元化の基本精神に従えば、無年金や低額年金者をなくするということが非常に大きな目標だと思うんですが、大臣これについてどのようにお考えか、方策があるか、あるいはそっちへ努力なさるのか、どんなふうなお考えか承りたいと思います。
  243. 戸井田三郎

    ○国務大臣(戸井田三郎君) 年金制度が老後の所得を保障するという観点からすれば、やはり無年金という状態はどんなことがあってもないように努めていかなければなりません。この国民年金制度が導入されてからも、何回も特例納付制度をして、そして多くの人にPRをして無年金者がないように、欠けないようにいろいろな努力をしてまいりましたが、やはりどうしても一部にはそういう方がおられるのは現在の現実であります。  そして、やはり加入ということが前提になっているわけでありますから、加入漏れのないようにするためには、本人の意思があるのに加入漏れになってしまったということはどんなことがあっても防がなければいけないわけでありますから、これは常にPR、広報等を通じてそういうことはないようにいろんな意味努力をし、また年金の納付のしやすいようにしたり、あるいはいろいろな機会を通じて督促をしたり努力をしていくことをこれからも継続していかなければならないと思います。  また同時に、納められないという、いろいろな家庭の状況でそういう状態の人がおられることも事実であります。そういうときには、やはり免除制度もありますし、また任意加入制度もありますし、いろいろな制度と機会を通じて無年金のないような努力を重ねていくことだろうと私は思っております。非常にこれは今でも相当の数が、先ほど言いましたように推計だけれども七十万人というような数は決して少ない数ではありません。しかも、みんなが今のように生活が非常に豊かになってきた時代の中でそういった方がおられるということは、できるだけ努力をしてそういうことのないようなことをしていかなければならない、かように思います。
  244. 高桑栄松

    高桑栄松君 それではあとちょっと、各論でございますけれども、主として女性に関する部分を伺いたいと思うのです。  まず、当社労委員会でも育児休業の小委員会ができて、いろいろと検討しておられるわけでございますけれども、出産、育児というのはこれはもう非常に女性にとって大事なことでございますが、この期間を厚生年金の納入期間にカウントするということはできないのかと。つまり、その納入金は納入していないけれども、生まれた子供はこの次の時代の生産人口でございまして、これを育てているのだから自分の身がわりの保険納入者ではないのかというふうに思うわけです。したがいまして、出産、育児期間を厚生年金の納入期間にカウントすることはできないかということを伺いたいと思います。
  245. 水田努

    政府委員(水田努君) まず、育児期間、育児休業でございますが、これにつきましては、やはり育児休業制度というのは公私含めてまだ全国で二〇%程度の普及しかなってないんですが、この制度を普及させるということがまず基本的にある問題じゃないかと思います。現在、二〇%程度普及しております育児休業制度をとっておる企業においては、そのほとんどが労使の話し合いによりまして厚生年金が適用されているという実態がございますので、当然これが普及されていけば労使の話し合いによって厚生年金の継続ということがなされる、ほとんどが労使の話し合いで事業主が負担しているケースが圧倒的に多いわけでございまして、これは実態が解決する問題じゃないかというふうに考えております。  また、出産期間中につきましても、当然労働基準法で一定期間が産前産後保障されておりまして、その期間については当然賃金も支払われるわけでございますので、これについても厚生年金が適用されているのが常態であろうと私どもは見ておる次第でございます。
  246. 高桑栄松

    高桑栄松君 次は、サラリーマンの奥さんです。専業主婦の話でございますけれども、専業主婦の場合、保険料は負担をしてないけれども基礎年金はちゃんと出る。自営業の奥さんは月八千円を納めることになっている。これは同じ女性でも不公平ではないのかと、あるいはサラリーマンの方は奥さんの八千円分をちゃんとプラスアルファで納めているのだろうかということなんですが、ちょっと伺いたいと思います。
  247. 水田努

    政府委員(水田努君) 自営業者の方はもともと個人単位の加入ということになっておりますが、世帯主または配偶者が連帯して納付義務を負うということになっておりますので、実態的には自営業者は御主人が保険料を負担し納付しておられるというのが通常の形ではないかと思います。  サラリーマンの場合は拠出金という形をとりますが、その中には当然サラリーマンの奥さんも拠出金の積算基礎の中にカウントされておりますので、当然それはだんなさんの払う保険料の中に化体されている、こういうことでございますので、両者の間には余り実態的な差はないんではないか、こう思っております。
  248. 高桑栄松

    高桑栄松君 次に、先ほども質問がありましたけれども、専業主婦が離婚をした場合二階部分がもらえなくなるというお話があったわけで、御答弁承っていたら、それは離婚のときの慰謝料の中に含まれているということでございますが、含ま れていると言ったってそんなの知らないから、今度は慰謝料は年金分を含むように交渉しなさいというアドバイスをしなければいけないのではないかと今思いながら聞いておったわけです。やはり払い込んだのだから、妻であったときの相当部分はやはり既得権があるのではなかろうかというふうに思いながら聞いたのですが、いかがでしょうか。
  249. 水田努

    政府委員(水田努君) 慰謝料の中に当然に含まれているということを申し上げたわけではございませんで、年金制度として離婚したときに二階部分をどういうふうに配分するかということについて、なかなか夫婦の生活の中における妻の貢献度合いというのを年金制度の中で測定していくというのは非常に難しい側面がありはしないかと。それを制度としてよその国で採用している国もあるわけでございますが、そこまで持っていくためにはやはり相当実態として、先に離婚の際の財産分与という形の中で年金についても当然対象としてどうなっていくかという判例法的な積み重ねの実態があって、そういうことを踏まえながら日本の場合にも年金制度として分離をつくるならつくるという、まず離婚の際の年金についての財産分与のあり方について、判例法主義じゃございませんけれども、やはりそういう積み重ねの実績がないと、一挙に年金制度だけで先行して決めていくというのはなかなか困難ではなかろうか、こういう意味のことを申し上げたわけでございますので、今後の研究課題にさせていただきたいと思っております。
  250. 高桑栄松

    高桑栄松君 やっぱり二階の部分が無年金になれば無念の思いをするかなと思ったわけでございます。  もう一つは、いつも女性は弱き者という感じで先ほど来言っておられるようでありますが、このごろの女性は大変強くなってきておるわけで、私は今度男性が不利な場合をちょっと一言聞きたいと思います。  それは働く妻で夫が無職の場合、これは妻が死亡すると夫には一定の条件下では遺族年金が出るけれども、一定の条件を満たしていないと無職の夫には遺族年金が出ない。しかるに、その反対はもう間違いなく奥さんの方には出る。これは男性にとって甚だ条件の悪いことではなかろうかなと、これは男女平等の意味で男性にも待遇をよくすべきではないかということで申し上げたわけですが、いかがでしょうか。
  251. 水田努

    政府委員(水田努君) 質問通告を受けて、どうお答えしたらいいのか、大変きのうから今まで頭を痛めていた問題でございますが、女性の方も遺族年金を無条件に出しているわけではございませんで、基礎年金の場合は、子があるという場合にはなかなか育児に手がかかって働けないだろうからということで遺族基礎年金というのは子のある妻という形に限定されているのは御承知のとおりだと思います。厚生年金の場合は、一応三十五歳を超えて未亡人になられた方に、四十歳から遺族厚生年金が出る、こういう形になっておりまして、若妻には出ない。これは再就職なり再婚なりいろんな可能性を秘めている、こういうことでそういう整理がなされているんではないかと思います。  男の場合は、通常、生計維持関係にあることは当然前提になるわけで、奥さんに扶養されている男性というのは、社会通念的に見れば男一匹ちゃんと働かにゃいかぬ、こういうことがあるんではなかろうかと思いますので、恐らく病弱なだんなさんの場合だろうと思いますが、若くて病弱になられた場合には、通常奥さんに扶養されるという場合は障害年金がもらえるんではなかろうか。障害年金がもらえない程度の方であれば、やはり奥さんに扶養されなくてもちゃんと自分で就職して働かれるんじゃなかろうか。厚生年金の場合は五十五歳以上で扶養されておられる方については、女性の場合は二十歳高いわけでございますが、その時点で扶養されているということはかなり病弱でかつ再就職その他の機会も乏しい、こういうことでこういう年齢制限がついているんではないかと思います。  これが真の男女平等に反するかどうかは、公的年金一元化の際のやはり支給要件の整備の問題の一つとしてぜひ今後検討させていただき宿題にさせていただきたい、このように思います。
  252. 高桑栄松

    高桑栄松君 どうもつまらない話で局長に大変頭を悩ませまして申しわけないと思っております。よろしくお願いします。  それでは、最後になりましたが、私は去る二月の本会議の代表質問のときに私の質問の中に入れたことなんですけれども高齢者を年金でということはこれ一つあるわけで、そのほかに高齢者に対する優遇策を考える必要があるのではないか。  つまり、我が国の今日の経済発展を本当に支えてきた世代の人たちに対して、もちろん十分な年金を保障するということはもう大前提でございますから、それ以外にというか、それとは別にと申し上げた方がいいかと思うんですが、豊かな老後生活を送ってもらう、それに次の世代はやっぱり恩返しをするというようなことで、年金のことじゃありませんが、私が申し上げているのはその別なことなんですが、そういう意味高齢者が文化教養の催しに積極的に参加してもらえるように、例えば文化教養の催し物の入場料等はシルバー割引、五割引きなら五割引きとする。  もっとも自治体ではいろんなことをやっておられますけれども、輸送機関がそうであります。スカイメイトというのが若い人にありますが、シルバースカイメイトがあってもいいのではないか。きのうだったか、飛行機の方でやっぱりそういうことをいろいろ今考えているというのが出ておりましたが、私は、年金をもらっているような方々が最低の衣食住だけで小さくちまちまと過ごすんじゃなくて、やっぱりシルバー割引、シルバースカイメイトというふうなことで積極的に老後生活を豊かにできる、それはひいては内需拡大に貢献をすることになるだろうと思うんです。  そういう意味で、私はそれはもう運輸省だとか文部省だとかいろんな壁があるでしょうから一概には言われないと思うんですけれども、私は原則的には自治体はやれる、やれる部分はやれると。しかし、民活をこの際やっぱり奨励をして積極的に高齢者の内需拡大に役立ててもらう方法が考えられるんではないか。  私はこれは大臣に、これは大臣としてというと大変ですから政治家として、こういうことについてどのようにお考えであるかということを承って私の質問を終わらせていただきます。
  253. 戸井田三郎

    ○国務大臣(戸井田三郎君) 高齢者が、人生八十年というけれども実際には百歳以上の人もたくさんいるわけですが、一般に言う定年退職をしてからでも二十年以上も元気でこの社会で生活をしていかなければならない。長い間の経験による高齢者としてのすばらしい体験を後世の人たちにも、若い者にも申し送って教えていかなければならない。そういうような生きがいの活動もあるであろうし、そういう中で、いろいろな文化的な面でも、長い経験で特殊な技能を持った人たちも、やはり社会の中で自分自身がその文化的なものを、身につけたものを若い世代の人に教えていくということも生きがいの一つであろうと、かように思います。  それで、厚生省としては、やはり長生きをし、しかも元気老人で過ごしていきながら社会の中に生きがいを感じていけるようなことをしていただくために、平成元年から三年計画でいろいろなことを実施しようとして、明るい長寿社会づくり推進機構というようなものも今考えておるわけであります。この委員会には西川先生のような体験者もおりますし、いろいろな方面でお年寄りの人たちに楽しみと希望を与えておられる人たちがおるわけですけれども、そこへ行こうとしたら今先生がおっしゃったように入場料が要りますからね。そういうようなところへやはり積極的に参加できるようなことはいろんな形で考えにゃいけないけれども、やはり劇場経営とかそういったものも一つの事業でやっておるわけですから、制度としてそういうようなものをやるということは困難だと思いますけれども、自治体等では今お話がありま したようにその地域で行っているそういう文化的な催し物等には積極的に参加していただくようにやってくださっている県も幾つかあるようですね。それから、厚生省でも今やっております御承知の長寿社会におけるねんりんピック、ことしは大分でやりましたが、そういったところに参加するのも、やはりテニスをやって参加したりあるいはゴルフをやって参加したりした人たちもおりますし、いろんな芸能で、特殊な技能、芸能で参加している人もいますし、先生のおっしゃるような意味で高い文化とは言えなくても、要するに今日の日本の文化水準の中でお年寄りが楽しんでいくいろいろな催し物というものは積極的に進めていくべきであろうと思います。  大変ユニークな、そして思いやりのある御提言をいただきましたので、十分に考えさせていただきたい、かように思います。
  254. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 きょうは私が最後であります。あとしばらくおつき合いをお願いしたいと思います。  朝からずっと論議がありまして、その中で、この法案の中身に入る前に、午前中から指摘もあっておりましたけれども、何か今回の改正の場合は非常にやはり国民の側から反発が強かったというか、理解してもらえなかったというか、そんな部分が非常に強かったと思うんです。  前回、六十年改正の際には随分その前に、それこそ十年間ぐらいかけた論議が続いた上に、学識経験者との交換会、政党との意見交換とかいろんなことがあった上で大改革の法案が提出された。ところが、今回の場合そういった手続が少し不足していたんじゃないかなということも感じます。午前中指摘あったみたいに、審議会の中で三人の労働側の方が抜けられるというような形でのこともあった。さまざまな面でその辺が少し足りなかったんじゃないかなということを私思っておるわけです。    〔委員長退席、理事糸久八重子君着席〕  しかも、もう一つ、これも論議になっていましたけれども、非常に年金論議に関しての資料という面でも少なかったんじゃないかなと思います。これは、きちんとまとまった段階のときには分厚いこういう資料を出せますということを年金局長おっしゃったんですけれども、今後のことになってきますけれども、結局そういう資料というのは早目の段階できちんと出された上で、いろんな年金に対する考え方があるわけですから、そういう論議の場にそういう資料をもっと公開してやるべきじゃないかということを思っておるんです。  今回のこういう一連の法案提出に至るまでの、私は少し不備があったんじゃないかなと思うんですけれども、そのことについてどう感じていらっしゃるかをお話ししていただきたいと思います。
  255. 戸井田三郎

    ○国務大臣(戸井田三郎君) 先生指摘の点は、私たちこういう民主主義社会の中において事を進めていく上におきましては、非常に基本的に大切なことだと思います。そして、そういう過程の中で合意形成をしていくということが、まず第一にとられなきゃならない原則的な姿勢であると私は思います。そして、審議会での退場その他のお話もありましたけれども、やはり合意を重ねていく上においてもそれぞれ意見が対立していろんな経過をたどることはあると思いますけれども、粘り強く、そして国民の多くの人たちにその過程における経過等も、それから大改革をするためにはいろんな意味での資料も、あるいはPRも宣伝も、いろんな意味で大切なことであろうと思います。  今回の場合は、年金の改正案策定に先立ちましては、国民各層を代表する有識者で構成されております年金審議会において、一年半近く慎重に精力的に御審議をいただいたわけであります。その間の中に、今言った問題も起こったりもしたこともあります。そして、昨年十一月に結果として意見書を取りまとめていただいたわけで、この意見書に則して政府案を取りまとめ、さらに改正案の国会提出に先立って年金審議会及び社会保障制度審議会に諮問し、了承をいただいたところであります。私どもの党内におきましても、部会の手続をするのにも、やはりいろんな意味の御意見、批判もあり、御協力をいただきながら法案提出という形になってきたわけであります。  このように、国民各層の御意見を反映させるということは、これからも非常に大事な基本的な姿勢であると私どもは深く心を新たにしているところであります。
  256. 水田努

    政府委員(水田努君) 資料公開の点についてでございますが、これも衆議院段階から、数字をぽんと出すだけじゃなく、国民にわかるように十分な解説を加え、わかりやすくして出すべきだ、こういう御注文も受けておりますので、私どもできるだけ早い機会にそういうものをつくって、今後のいろんな意味での、今大臣の言われました国民の幅広い理解を平素から得ていく、そういうためのデータとしても必ず私ども御期待に沿えるような資料を作成して公表していくつもりでございますので、どうか御理解を賜りたいと思います。
  257. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 本当に、そういう意味でこれからもぜひ努力をしていただきたいと思います。  特に、今回の問題をよく探っていきましたら、負担の問題とか支給の問題で一番影響を受けるのはだれかといいましたら、いわゆる団塊の世代以降の私たちの世代の問題でございまして、ところが実際に論議しているその中身を見ていると、どうしても上の世代の人たちでやっている。これからそういうものを受ける若い人たちの意見が本当に反映されたんだろうかというのは物すごく疑問だし、実際に私たちの仲間で話し合っていけば、やっぱり一番損するのはおれたちじゃないかというような論議になりがちなわけですね。    〔理事糸久八重子君退席、委員長着席〕 そういう意味では、特にそういう若い人たちにはわからないまま進められたような面も私は正直に言ってあると思います。  そういった意味では、こういう若い世代に対しどんなふうにして本当に知らせていこうとしているのか。若いやつはわからないから知らないうちに決めちゃおうというようなことじゃいけないと思うんですけれども、特にその点をもう少し私はやっていくべきだろうと思うし、それも正直言って今度なかったなと私は思っているんですけれども、その点もあわせてお願いいたします。
  258. 戸井田三郎

    ○国務大臣(戸井田三郎君) 若い世代の人たちの理解を得るということは、世代間の扶養という仕組みの中において若い世代の人たちは支えていく側であり、そして、今先生指摘のとおりに、団塊の世代という人はちょうどおれたちのときから六十五歳になるのかなというような不安もあります。そういう意味で特に理解を求めていかなければならないわけでありますが、私どもは、やはり制度全体を見て、年金法が実施をされて、そして年金受給者の世代、そしてそれを支える世代、それが同じ時代に生活をして、一方は働いている、一方は働き終わって年金をいただく、こういう関係でありますから、その年金をいただくお年寄りの世代、すなわち支えられる世代の人たちの姿を一方に見る。すばらしい年金をいただいているんだな、八十歳になっても九十歳になってもこんな年金をいただいているんだな、百歳になってもあの人は寝たきりで働いていないんだけれども年金もっているんだな、しかも同じだなというようなことは、やはり支える世代の人たちに希望を与えていくと思います。  そして、御承知のとおり、私たちの国ではまだ年金制度というものがまさにそういう意味では歴史が浅いですから、そういった意味での認識が、国民のすべての人に共通の一つの世代間扶養に対する認識というものが十分にまだ行き渡っておりません。それだけに世代間の支える側の人たちのことも十分に考えていかなければいけないし、そうでないと、やはり支える人たちにずっと先の三十年先、四十年先のことを考えろと言っても、やはり現実の月給袋から見るというと毎月毎月ごそっと引かれていっているじゃないかというような観点にどうしても引きずられがちでありますから、やはり私は、世代間扶養の大きな枠で、その仕組みの中で年金に対する多くの若い世代の人たち に理解を求めるということは、それはOBの人たち以上にもっともっと積極的にその仕組みからあるいは現状等を御説明申し上げながら、理解を深めていく努力をしていかなければいけない、そういったことを痛切にこの年金法の改正を通じて、御質問等を通じながら痛感をいたしております。
  259. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今言われたように、やはり今の年金の現実の姿が本当に安心して任せられるものなら、そういう若い世代も納得できると思うんですけれども、またそこがいつも出る給付負担の関係で、現実の姿を見ちゃったら、例えば国民年金どうなのか、いや五万円だった、今度五万五千五百円に上がる、しかし本当にこれで老後暮らせるのかなというようなのを見てしまったときに、また難しさもあると思うんです。そういう意味では、負担給付の関係もありながら、そういったものもどういった水準なのかという理解をやっぱり求めるだけのことをしなくては私はいけないと思うんです。  基礎年金の問題に入りますけれども、結局、基礎年金は四十年間、四百八十カ月間一カ月も滞納せずにやっと最高額が今度五万五千五百円になるわけですね。五十九年度の五万円から五万五千五百円となった根拠を一応明らかにしていただきたいと思います。
  260. 水田努

    政府委員(水田努君) 前回の五万円を設定いたしましたときは、総理府の全国消費実態調査、これは五年ごとに行われておりますが、五十四年の調査の六十五歳以上単身無業の方の基礎的な消費支出、食料費、住居費、光熱費、被服費、これが五十四年調査では四万六百八十五円でございます。再計算は五十九年に行われておりますので、この間の物価の上昇率で補正をいたしますと、これは四万七千六百円でございます。それに雑費部分の一部を付加するということで二千四百円を乗せまして五万円、こういたしたわけでございます。  今回、いろいろこの基礎年金の水準のあり方については、年金審議会では低過ぎる、もう少し高めるべきだという意見もありましたし、それから国民負担考えるともうちょっと低くてもいいんじゃないかというような議論があったんですが、最終的には前回設定された水準を守ろうじゃないかということで全会一致した御意見をいただいておりますので、前回の水準を維持するということで我々は五万五千五百円を設定さしていただいたわけでございます。  その根拠は、五十九年の、今度は総理府から総務庁に変わっておりますが、総務庁の全国消費実態調査の、同じ六十五歳以上の単身無業の方の基礎的消費支出、衣、食、住、光熱費、これが五十九年調査では五万七百二十六円になっております。前回は物価の上昇で補正しましたが、物価の上昇が非常に低いものですから、この間物価の上昇率は〇・九%にすぎませんでしたので、むしろ基礎的消費支出の年率上昇率が一・二%でございますので、その高い方の指数をとって五万三千百円にし、これに前回と同様、諸雑費分の二千四百円をオンいたしまして五万五千五百円と設定をさしていただいた次第でございます。
  261. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今言われたような形なんですけれども、内訳をいただきましたら、これでいくとその当時の五十九年度の額というのは、食料費が二万二千九百七十七円、住居費が一万六千八百三十一円、光熱費が七千四十四円、被服費が三千八百七十四円、これに先ほど言われた分を上げたんだということですね。ただ、単身世帯の一カ月当たりの支出というのを見ましたら、例えばこれ以外にもどんなものがあるか。保険医療費というのはこれとまた別にあるわけですね。それから交通通信費というのもまた別枠あるわけですね。  そうすると、基本的考え方は基礎的支出と言うけれども、この発想でいけば、食べて、家にどうにか住んでいて、電気と水ぐらい出ればいい。体を悪くしても医療機関に行ったらだめだよと。交通といっても足代は全然ないよ、一歩も家から出ずに暮らせというような、何かそういう見方になってしまうのじゃないかなというような気もするんですね、こういう数字で出してこられたら。  それともう一つ感じますのは、今度本当に御努力いただきまして、物価上昇率が低いということで基礎的消費支出の上昇率で推計された。そういう意味では、これを少しでも変えようという努力をなさっていることもわかるし、それならば考え方をもう少し変える必要があるんじゃないかなということも、どれだけ上げるかという問題がまたかかってきますけれども、せめて交通とか医療とか、そんな考え方ぐらいは入れるべきじゃないのかというのがまず一点目なんです。  それと、もう一つ考えなくちゃいけないのは、先ほど午前中も論議が出たんですけれども、この五万円から五万五千五百円というのは、もう一つの場合は六九%とすぐ数字が出てくるからはっきりわかるわけですよ。それと比べて、私は逆に言えば非常にこれはわかりにくい基準じゃないかなということも思うわけです。そういう意味では、きちんとした何かほかの基準を設けなくちゃいけないような気すらするわけでございます。その辺について検討の余地はないのかどうかということなんですね。このままでいいのかどうかということじゃなくて、やはり正直言って住居費が一万六千円と、今こんな家どこにあるのかなとも思うし、正直言って自分で考えてみて、一カ月間単身で二万二千円の食費、一日千円以下ですね、これで本当にできるのかなということすら思うわけです。  そんな問題含めて、もう少し検討の必要があるのじゃないか。私たち野党の方はナショナルミニマムという言い方をしますけれども、それで言えばもっともっと高い額ですよね。そこまで言わないにしても、せめてそういった、動いて医療ぐらいは受けられる部分、最低限それくらいは必要なんじゃないかなというふうに私自身この数字を見せていただいて思ったんですけれども、その点検討の余地はないのかどうかということをお願いします。
  262. 水田努

    政府委員(水田努君) 今回の設定に当たりましては、るる申し上げておりますが、将来の保険料負担とのバランスから見て、前回設定した水準のとり方、これが妥当だということで設定させていただいておりますが、衆議院で修正を受けました際の次期再計算期における総合的な検討項目の中に、基礎年金の水準及びその費用負担のあり方ということも入っておりますので、その段階で今御指摘の事項も含めて総合的に検討をさせていただくことになるんではなかろうか、このように考えている次第でございます。
  263. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 正直言って余り納得はできませんけれども、やはりそういういろんな考え方というのをもう少し考えていく。先に何か入ってくるお金がある、そして人数がいる、そうすると額が出てくる、それに合わせて何か無理やり基準をくっつけてきたんだというようなとられ方をされるような一面も僕はあると思うんです、こういうやり方をしていたら。その面でも十分これについては審議していただきたいというような気がいたします。  その問題に絡めて国民年金の問題ですけれども、結局これは全国民年金制度に加入するような制度に改めてから三十年ぐらいですか、ということで保険料を納める期間が短いためということもあるんですけれども、六十五歳で支給される国民年金を、減額率が四二%ですか、大きいにもかかわらず六十歳から減額支給を受けていらっしゃる方が全体の三割いらっしゃる。六割の方が六十五歳前の繰り上げ支給をされている。  これについては、何でこんなふうに物すごくある意味じゃ低い額なのに受ける人たちがこんなに人数が多いのかということに対して、まずどういう御認識を持っていらっしゃいますか。
  264. 水田努

    政府委員(水田努君) 減額年金を請求しておられる方の意識調査をまだいたしておりませんので的確なお答えはできませんが、分布を見ますと、やはり農村圏に非常に繰り上げ請求をしておられる率が高いように見受けられます。これは、一つは、農家であるために生活は家族同居でできてい るが、やはりいろんなおつき合いで現金が欲しいということで、お隣のおじいちゃんおばあちゃんがもらっているんで自分ももらおうか、こういうケースが多いんではなかろうかと。これは実態調査したわけじゃございませんが、分布が農村圏に非常に高いということから見てそういうことがありはしなかろうか、こういうふうに私どもは見ているわけでございます。
  265. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 しかし、そういう形にされれば、結局最低保障をしようといっている額に届かないわけですよね、受け取る額が。それならば当然こういう人たちに対しては、そういう今言われた形だけだったらこれは無認識でやっているんだと。お隣がやるから私もやるんだということであれば無認識でやっていらっしゃるということですよね。それじゃ厚生省が目指している方針とは私は随分違うと思うんですけれども、こういう減額になっている人たちがこれだけ多いということに対して、ではもとに戻してそういう大きな額をもらえるような形にしようということで、何か厚生省としてこれは対策はなさっているんですか。
  266. 水田努

    政府委員(水田努君) 社会保険庁の方で、減額年金の請求をなさる場合にはやはり減額をすると将来とも同じ減額率がかかってくるので、できることならやはり満額の年金を選択なさる方がよろしいんじゃないかという意味の一応の御説明はしている、こういうふうに聞いているわけでございますが、私どもはやはり本来、先生の御指摘のように満額年金をもらうような方向に今後PR、指導をしていく必要があるのではないかと考えておる次第でございます。
  267. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 それと減額率のことなんですけれども、私も少し不勉強でよくわからないんですが、学者さんの間では減額率の四二%というのは非常に大きくて、例えば年金を繰り上げて六十歳からもらい始めて受け取る額と、六十五歳できちんと受け取った額を比べると、減額率で引かれた方がかなり少ないというような論議をする方もいらっしゃるんですけれども、この四二%というのを縮小するなり、そんな考えというのはございますか。
  268. 水田努

    政府委員(水田努君) 私ども、六十五歳の本来の支給開始年齢からもらわれる方と減額請求をされた方のもらわれる年金額ができるだけ不公平がないように減額率を基本的には決めるべきものであると考えておりますが、平均余命が若干延びてきたことによって減額率が厳しくなっているんではないか、こういう学者の指摘があるわけでございますが、私ども今直ちに減額率を手直ししなきゃならぬほどの大きな開きは生じていないと考えております。  また、減額率を緩和しますと、さらに先生の御指摘と逆の繰り上げ請求の奨励につながるということになって、結果的に保険料の増大にもつながってまいりますので、やはり将来は、よその国では減額年金というのは六十二歳とか六十三歳から選択させるという場合が多いようでございますので、減額年金率を緩和する場合には減額請求できる年齢についても再検討を総合的に勘案してやるべきものではないかと思っております。これはひとつ今後の検討課題ということにさしていただきたいと思います。
  269. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 それと、先ほども少し話が出ていたんですけれども、免除者の一二・二%、支払い不能が一五・七%で、今二七・九%の人が保険料を支払うことができないような現状になっている。そうすると、国民年金の場合は保険料の毎年四百円ずつについては今回修正せずに、本当は下げた方がいいなと思いながら下げないまま来てしまいましたけれども、そうなると一万六千百円という平成二十二年度の額、先ほど何とか理解を得られる額だと言われたんですけれども、私は決してそう安い額とは思わない、かなり負担になる額だと思うんです。現在でも四人に一人が保険料を納めていない、改正案のようにずっと上げていく。そうすると、結局免除世帯とか不払いというのがもっとふえていくということは必然だろうと思うし、逆に言うと、健全な年金財政運営という意味でいけば本当に危惧するような部分もございます。  先ほど午前中の質問のときにはお答えが余りきちんと出ていなかったんですけれども、実際今後こういうふうに保険料を上げていった場合、免除者、未払い者の推定数というのは出されていないんでしょうか。一応支給額等を比べていけば必ずそういう推定は出されていると思うんですけれども、免除者自身はふえていくのか、上げていっても努力していけば減っていくのか、それと未払い者というのも努力していけば減っていくんだから大丈夫だというふうに考えていらっしゃるのか、もしそういう数字があるならば示していただきたいのですが。
  270. 水田努

    政府委員(水田努君) 私ども、免除者につきましては法定免除と申請免除があるわけでございますが、再計算に当たっては過去の動向、それから今後の行政努力、総合勘案いたしまして免除率は一二%程度、こういうふうに見込んでいるところでございます。  それから、滞納率というよりは保険料を納めていただける収納率、これは厚生年金も租税も一〇〇%ではないわけですが、私どもは一応手がたく収納率は八五%と見込んでいるところでございます。
  271. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 無年金の問題は先ほども論議されたんですけれども、ひとつ確認のためにお聞きしておきたいんですが、前回の六十年の附帯決議の中でこの無年金対策については、「制度・運用の両面において検討を加え、無年金者が生ずることのないよう努力すること。」というのをたしかつけていたと思いますけれども、その後どのような措置をとって、その結果こういう成果があったということがあれば教えていただきたいんですけれども
  272. 水田努

    政府委員(水田努君) 六十年の附帯決議の趣旨を踏まえまして、無年金者をなくすためにはまず保険料を納めやすい環境をつくるということで、三月払いであった保険料が毎月払いに本年度から完全になっております。それから、印紙納付というよりはむしろ積極的に銀行口座や郵便口座から自動振り込みをしていただくというようなこと、それからPRを徹底していくという、社会保険庁には大変な御努力を願っておりまして、滞納率についてはこれが拡大していくということを私ども現状においては防ぎとめ得ているわけでございますので、今回の保険料引き上げを契機にさらにこれが拡大しないように、庁の方と一体になって、私どもは今挙げました地道な方策でございますが、これを懸命に続けてまいりたい、このように思っておる次第でございます。
  273. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 次は国民年金基金制度のことで何点かお伺いしたいんですけれども、これは昭和四十五年十月一日に法律上は制度が一応あるわけです。ただ、先ほども言われましたけれども、現実に一件もないわけです。そして、今回つくるということになって随分緩和したんですけれども、この場合、例えば一つお聞きしたかったのは今やっている付加年金です。これは、国民年金基金制度が今回緩和されてできますよね、それとの関係はどうなっていくわけですか、付加年金というのは。
  274. 水田努

    政府委員(水田努君) 本体の付加年金に加入していただくことを前提にこの基金に加入する、こういう関係に相なります。
  275. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 そして、国民年金基金というのは公明党が提唱した部分が地域型には特にあるというんで、ありがたいことなんですけれども、実際に今批判が出ているのは、金持ち優遇だということが一生懸命言われるわけです。  ただ、私思うのは、そういうものを排除するためには、例えば二階部分の場合でも所得再配分機能が何らかの形で働くような体制はできないのかなというようなことを思うんです。少しでもそういう所得の再配分ということがあれば、決して金持ち優遇じゃないんだよというふうにも言えると思うんですけれども、その辺についてのお考えはどうでしょうか。
  276. 水田努

    政府委員(水田努君) 私どもも、金持ちのための制度ではないかと言われれば大変心外なわけでございます。所得再配分機能を直接的に導入するためには強制加入にしないと基本的には無理だと思っておりますが、先生指摘のように、国民年金基金と個人年金とどこがどう違うんだと、こういう端的な非難があってはならない、こう私どもも認識をいたしております。  それで、私ども地域型基金、これは加入する都道府県の年齢構成によって収益率がかなり違ってまいると思います。若い人がたくさん加入している都道府県というのは納めた保険料が生み出す収益率は極めて高いわけですが、高齢者が多い都道府県の場合はそこで生み出す収益率というのはどうしても期間が短いので少なということで、給付の格差が生じてくる可能性が十分あり得るわけでございます。  したがいまして、私ども国民年金基金連合会というものをつくりまして、そこから生ずる年齢格差を調整するための共同事業が行えるようにいたしておりまして、できるだけ年齢差からくる収益率の差を克服して給付格差がないような、公的機能を持つような運営を図る仕掛けをつくっておりますので、その点について直接的には再配分という意味ではございませんが、そういう公的役割を果たすという機能を持っているという点について御理解をいただきたいと思っております。
  277. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 ぜひそういう形で、金持ち優遇じゃないんだというならば、それなりのきちんと方策をとっていただきたい。そうしなければ、今の感じでいくと、数理計算だけというふうなとらえ方をされちゃうと、それはもう個人年金と何ら変わらないわけですから、それで税制では優遇されると、何だこれは何のためのと、いまだに基礎部分が弱いと、実際弱いわけですから。そういった意味では本当は任意で所得再配分できるといいんですけれども、正直言ってなかなか難しい面もあるでしょうし、これが人数が本当にふえるようなことがあった場合、何百万人か入っていく、そんな大きな制度に変わっていった場合は、そういうことも含めてぜひやっていただきたいというように思います。  それから、今度は年金積立金の問題でお尋ねしますけれども昭和六十二年度保険給付額八兆二千三百億円の四六%に当たる三兆七千八百七十七億円をたしか利子収入で賄っているというようなことからもわかりますように、積立金をより有利に運用していくことが今後の年金運営でも大事なことだし、厚生省に一番これは求められていることだと思うんですけれども、大臣、こういう年金積立金を有利に運用することに対してどのように評価されているか、まずお願いいたします。
  278. 戸井田三郎

    ○国務大臣(戸井田三郎君) 御指摘の積立金の利子運用というものは、給付費に対して見ても相当大きな割合を占めておることは先生御存じのとおりであります。積立金のより一層の効率的な運用を図るということは、年金運用の上で非常に大事な要素の一つである、まさにそのことによって事業運営に対する影響が非常に高いということでございます。そして自主運用の面でも六・七兆円という多額のものに今なっておりますけれども、今後ともこの運用の拡大を図っていって、年金財政が少しでも好転するように折衝をして努力していきたい、かように思っております。
  279. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今言われたように、自主運用額は平成元年度で六兆七千億円、積立金総額の一〇%ですね。そしてこれも資金運用部の利率よりはたしか二%近く高く運用されているというようなことなんですけれども、これはより一層広げる必要があると思うんですけれども平成二年度には一応厚生省としてはどのくらいの利子運用額を要求していかれるのか。また、私たちが言っているのは、積立金総額の三分の一ぐらいは自主有利運用していくべきだと考えていますけれども、この点についてどうお考えですか。
  280. 水田努

    政府委員(水田努君) 平成二年度の自主運用の要求額は、平成二年度の年金積立金の新規運用対象資金が十六兆でございますので、その三分の一に相当いたします五・三兆円の要求をいたしておるところでございます。
  281. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 大蔵省にちょっとお尋ねしたいんですけれども、今までは年金保険料として納められた資金が、大蔵省の資金運用部でございますね、ここに集められて、そこから一応財政投融資資金として、産業育成という名目で、そういう形で活用されてきたわけですけれども、六十三年度の財政投融資計画の実行状況を見ましたら、繰越額と不用額両方合計しましたら四兆七千億円になっております。そういう意味では、厚生省から要望があった場合は、年金の自主運用額の拡大についてぜひ御理解を得たいと思っているんですけれども、大蔵省としてこの年金の自主運用ということにどういう御認識を持っていらっしゃるか、お聞きしたいんですけれども
  282. 佐藤謙

    説明員(佐藤謙君) お答えいたします。  年金資金につきましては、財政投融資の重要な原資といたしまして、社会資本整備であるとか、住宅対策であるとか、あるいは中小企業対策、こういう施策のために有効に役割を果たしているわけでございます。例えば平成元年度におきまして、一般財投におきます住宅関係に資金配分している割合は二八・三%ということになっているわけでございます。あるいは下水等の生活環境整備には一六・六%、あるいは国民公庫だとか中小公庫等の中小企業対策というようなことでは一五・九%ということで、この財政投融資の中身につきましても国民生活に密着するようなものに重点的に運用しているところでございます。  ただいまの不用、繰り越しというお話でございますが、六十三年度につきまして数字を若干御説明させていただきますと、この不用、繰り越しの問題につきましては、六十三年度は三兆九千九百九十七億円というのが実は繰り越しとして整理されているわけでございます。これはどういうものかといいますと、そのうちの三兆四千四百八十八億円、これは地方公共団体のものでございまして、これは地方公共団体が当該年度に事業をするわけで、それのための地方債、資金手当てを運用部からの融資でしているわけでございますけれども、地方公共団体は年度内に仕事をいたしまして、その起債所要額が年度末にならないと決まらないというようなことで、どうしても借り入れの実行が出納整理期間にずれ込んでしまうというようなことで整理の上で繰り越しとなっているわけでございまして、出納整理期間中にこれは地方公共団体に融資をされるべき性格のものでございます。繰り越しについては、その他につきましても同様に各事業に結びついて翌年度に執行を予定されている分でございます。  それから不用の分の六千七百五十八億円でございますと、これは財投計画編成時に予測できなかった、あるいはこういった経済協力なんかで相手国の事情等で当初考えたとおりに執行されないとか、あるいはいろんな金融財政事情の変化から執行が行えない、こういうようなものが多いわけでございますけれども、六十三年度のこの六千七百五十八億円のうち、例えばでございますけれども、千九百八十九億円というのは、地方の税収が六十三年度は好調でございまして、当初借り入れを予定していたものが借り入れをしなくて済んだ、こんなふうな状況のものでございます。この不用につきましては、こういった事情でその年に使わなかったものですから、翌年度の財政投融資の原資として活用して、先ほど申しましたいろんな施策に活用させていく、こういうことになってございます。  なお、最後につけ加えさせていただきますが、この年金財政の強化の問題につきましては、私どもとしても十分認識をしているところでございますけれども、片方にやはりこういった住宅だとか社会資本だとか中小企業とか、施策国民的ニーズがございますので、そういうところのバランスも考えながらこれから厚生御当局とも十分御相談をさせていただきたい、かように思っている次第でございます。
  283. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 せめて厚生省が要求した額ぐら いは、たしか平成元年度は少しこれを削られたんですよね、別にすぐ三分の一と無理なことを言っているわけじゃございませんし、その辺本当に大蔵省の方も、これだけ年金が今ここで論議されているわけです、そういうことも配慮していただいてぜひともこれはやっていただきたいという思いでわざわざきょうは来ていただきましたので、それをよろしくお願いいたします。  それともう一つ財政的問題で言うと、国庫負担の繰り延べですね。これは五十七年度から六十年度まで行革関連特例法によって国庫負担の四分の一がたしか減額が行われて、六十一年度から六十三年度まではたしか特例分の二分の一ということで減額繰り入れがやられていました。一応六十三年度の補正で一兆三千六百二十五億円返済されましたけれども、まだ残っている分一兆三千四百八十億円が返済されておりません。  国会での答弁とか、大蔵大臣とか厚生大臣の覚書の中では、財政再建後に返済に着手することというふうなのがたしかあったと思うんですけれども、もうぜひとも残った分も今こそ戻す時期だというふうに認識しておるんですけれども、この点はどうでしょうか。
  284. 戸井田三郎

    ○国務大臣(戸井田三郎君) 御指摘の点は、できるだけ早く返済をしていただくように財政当局とも折衝を重ねてまいりたいと思っております。
  285. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 本当にぜひとも、全体から考えれば確かに少ないお金なんですけれども、そういうところから国はそんなことすらしていないじゃないか、そして結局みんなに負担をかけるのかということを言われるやっぱり原因だとも思うんです。細かい数字のようなんですけれども、赤字国債がたしかそろそろなくなるというお話もありましたし、この時期にぜひ大臣に、大蔵省もきちんと対応していただけると思いますし、よろしくお願いしたいと思います。  もう時間があと少しになりましたので、一つだけお聞きしたかったのは、労働省の方来られているんですけれども、雇用と年金との空白の問題なんです。  いつも七瀬さん来ていただいていろいろ説明していただいているんですけれども、私が聞いていてよくわからないのは、六十歳以降というのは雇用の継続をしていくんだと。六十五歳定年というところまで本当に労働省が目指していらっしゃるのかな、結局定年制というのは六十歳ぐらいまででいいんであって、後については形は何であれ何とか継続すればいいんじゃないかなというふうに、いつも聞いていて継続という言葉がよくわからないのですけれども、一応労働省としては六十五歳の定年に向かって努力していこうとしているのかどうか、それをぜひ聞きたいと思うんですけれども、よろしくお願いします。
  286. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) 六十歳以降六十五歳までの雇用が極めて重要な問題であるということは御指摘のとおりでございますが、六十五歳まで雇用を進めるに当たりまして一律に定年延長という形をとることは適当ではなく、多様な手段を活用しながら着実に計画的に六十五歳までの雇用が達成されるように我々も努力いたしますし、企業も努力していただきたいということで、一律に定年を六十五歳まで引き上げるということは現実的な手段ではなかろうと思っております。
  287. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 では、もう最後になります。  私は厚生省に対してもぜひひとつ言っておきたかったのは、数字の問題なんですけれども、六十五歳まで空白をつくらないという問題なんですが、実際に「年金制度の課題と改正の視点」というパンフレットを見せていただきましたけれども、これを見ると、平成三十二年度に支給開始年齢を六十五歳に引き上げた場合と現行どおり六十歳に据え置いた場合について、老齢年金の受給者数と被保険者数の比較をやっておりました。  これを見ると、六十五歳に引き上げた場合は老齢年金受給者は百七十万人減少する。ところが、被保険者は五十七万しか増加しない。つまり、受給者は減るけれども、その相当数の雇用の場は確保されてないという、私は何かこんな数字は、雇用の継続ということを訴えていながら、みずから空白を認めているような数字だと思いました。  それともう一つ、推定で出された数字、これはちょっと言ってなかったから申しわけなかったんですけれども、今後高齢者の雇用がどうなるか。私が聞いた年が間違いなければ、一九八七年の時点では六十歳から六十四歳の雇用というのは一五%であるけれども、二〇一〇年では二二%になる、そして二〇二〇年の段階では二四%になる、たしかそうおっしゃったと思うんです。  そうすると、雇用の継続とか六十五歳支給までに雇用の場を確保すると言いながら、実際挙げてきた数字でいくと、一五%から二四%であれば何%上がっているのか、本当に雇用という問題を真剣に考えていらっしゃるのかなというような気すらする部分がございます。もう原則は、先ほど言われたように空白をつくらない、年金をもらうときは仕事が終わったとき以降の年金をもらう、それが大原則ですから、それからいくと、こういう数字を挙げられると、非常にある意味では不信感を抱かれるのじゃないかと思いました。そういった意味でももちろん努力されていくんでしょうけれども、この数字について最後に説明をいただきまして、私の質問を終わります。
  288. 水田努

    政府委員(水田努君) 後段の割合の点は、御指摘数字のとおりでございます。そのときにおける六十歳から六十四歳までの人口に対する割合ということは御指摘のとおりの推移になります。  それで、若干、お配りしております資料は簡潔にするということによって舌足らずの面があって、誤解を招いている面があると思いますので、釈明をさせていただきたいと思いますが、六十歳支給の場合の受給者数が千三百四十八万人、こういうことになっておりますが、この中には在職老齢年金の三十三万人がカウントされておるわけでございます。この在職老齢年金というのは六十五歳の雇用の確保に寄与するという経過的な制度というふうに私ども認識いたしておりますので、六十五歳に到達をすればこの在職老齢年金制度は廃止をすることに、もう修正でなくなりましたが、そうなっていたわけでございまして、六十五歳になる場合と比較するには、この千三百四十八万人から三十三万人を引いた千三百十五万人と上の千百七十八万人を比較していただかなければならない。そうすると、差し引き百三十七万人の差が生じます。一方、被保険者の方は五十七万人ふえるようになっております。それで、この百三十七万人と五十七万人の差し引きをしますと、八十万人が空白となるのは御指摘のとおりでございます。  この八十万人の問題は、一つは、厚生年金は常雇を対象に適用をするという問題がございます。パートがこの八十万人の中に化体していくんじゃないか。したがいまして、高齢者のパートに今後厚生年金を適用していくかいかないかという問題が、被保険者としてカウントするか外枠で見るのか、こういう問題になるのではないか、このように考えている次第でございます。
  289. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 両案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十分散会