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1989-11-16 第116回国会 参議院 社会労働委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年十一月十六日(木曜日)    午前十時五分開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         浜本 万三君     理 事                 小野 清子君                 佐々木 満君                 糸久八重子君                 高桑 栄松君     委 員                 尾辻 秀久君                 木暮 山人君                 清水嘉与子君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 前島英三郎君                 菅野  壽君                日下部禧代子君                 深田  肇君                 堀  利和君                 木庭健太郎君                 沓脱タケ子君                 乾  晴美君                 小西 博行君                 西川  潔君        発  議  者  糸久八重子君        発  議  者  木庭健太郎君        発  議  者  乾  晴美君    国務大臣        労 働 大 臣  福島 譲二君    政府委員        労働省労政局長  岡部 晃三君        労働省労働基準        局長       野崎 和昭君        労働省婦人局長  佐藤ギン子君        労働省職業安定        局長       清水 傳雄君        労働省職業安定        局高齢障害者        対策部長     七瀬 時雄君        労働省職業能力        開発局長     甘粕 啓介君    事務局側        常任委員会専門        員        此村 友一君    説明員        人事院事務総局        任用局企画課長  角野 敬明君        厚生省社会局更        生課長      福山 嘉照君        労働大臣官房審        議官       石岡慎太郎君        労働省労働基準        局安全衛生部長  草刈  隆君        労働省職業安定        局高齢障害者        対策部障害者雇        用対策課長    小泉 南男君        建設大臣官房技        術調査室長    佐藤 信彦君        建設省建設経済        局労働資材対策        室長       亀本 和彦君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○労働問題に関する調査  (男女雇用機会均等法及び労働者派遣法施行状況に関する件)  (労働災害及び安全対策に関する件)  (障害者雇用問題に関する件)  (建設関係労働者賃金問題等に関する件)  (労働時間問題に関する件)  (外国人労働者問題に関する件)  (女子パート労働者雇用環境問題に関する件)  (高齢者雇用対策に関する件)  (勤労者福祉向上策に関する件)  (介護休業制度普及等に関する件) ○育児休業法案糸久八重子君外七名発議)     ─────────────
  2. 浜本万三

    委員長浜本万三君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  労働問題に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 糸久八重子

    糸久八重子君 それでは、まず最初男女雇用機会均等法についてお伺いをいたします。  女性労働者が千六百万人を超えまして、働き続けたい女性増加している今日、雇用における男女平等の実現と女性の働き続けられる社会的環境の整備が緊急の課題となっております。    〔委員長退席理事佐々木満着席労働大臣雇用における男女平等のあり方についてどのような御見解をお持ちでしょうか、お伺いをさせていただきます。
  4. 福島譲二

    国務大臣福島譲二君) 男女平等は日本国憲法基本理念でございますし、今御指摘がございました男女雇用機会均等法の第一条におきましても男女平等の理念がうたわれておるところでございます。    〔理事佐々木満退席委員長着席女性経済社会の発展に大きく寄与しておる現在、女性が性により差別されることなく、その能力を有効に発揮しまして充実した職業生活家庭生活を送ることができるように努めることは大変大切なことだと思っておりますし、そういう意味で、労働省といたしましても重要な政策課題一つとして取り組んでおるところでございます。
  5. 糸久八重子

    糸久八重子君 法が施行されて丸三年を過ぎましたが、この三年間を労働省はどう分析しておられますか。
  6. 福島譲二

    国務大臣福島譲二君) 男女雇用機会均等法が施行されまして三年を経過いたしましたが、その間の変化と申しますと、一つ男女を問わない求人が増加をしたということが挙げられるかと思います。また、新入社員教育男女同一の形で行う、あるいは定年制におきましても、男女別定年制をしいておったところが逐次是正されるといったような形で、雇用管理均等法要請に沿ったものに改善した企業が多数見受けられる状態になっております。また、大学卒女子就職率も上昇いたしておりますし、また女子就業分野拡大等にも見られますように、女子を積極的に活用していこうとする機運が高まっており、雇用分野における男女の均等な機会、また待遇の確保の促進を初めとする均等法趣旨が着実に浸透してきているものと思われます。
  7. 糸久八重子

    糸久八重子君 おおむね良好という御見解のようですね。  多くの女性に働く機会が広がってきたことはこれは確かだと思います。しかし、総合職一般職に区分するコース別人事制度が広く導入をされ、新たな差別の固定化がなされたこと、それから家庭生活も顧みず働く男性の流儀に合わせなければ対等に処遇してもらえない。家庭生活との両立をうたう均等法精神は一体どこへ行ってしまったのか。また、残業がふえるなどして労働条件が非常に厳しくなり、仕事家庭を両立させるのが非常に難しい状況になってきているという、そういう声が女子労働者の中から寄せられております。  法の附則に、適当な時期に必要な措置を講ずるとされていますけれども、この点につきましては大臣はどうお考えでしょうか。
  8. 福島譲二

    国務大臣福島譲二君) 今委員指摘のように、一部において確かにまだ問題が残っておると申しますか、また新たなる問題が発生しておるということも事実かと思いますが、こうしたものにつきましては、今後ともさらに積極的な指導を続けることによりまして、均等法精神、これが定 着するように努力をいたしてまいりたいと思います。  なお、均等法施行後三年の現段階では、今のところこの法の趣旨精神を一層徹底し、その定着を図ることが最も重要な段階と考えております。  今後、法令等見直しにつきましては、法の施行状態などを的確に把握をいたしまして、必要に応じて検討してまいりたいと考えております。
  9. 糸久八重子

    糸久八重子君 次に、労働者派遣法についてなんですけれども、これも三年を経過しておるわけですが、基準法違反など多くの問題が指摘されております。一九八八年度の事業状況はいまだに発表されていないようですけれども見直しを含めてどうなっておるのか、お伺いをいたします。
  10. 福島譲二

    国務大臣福島譲二君) 労働者派遣事業制度見直しにつきましては、現在、公労使の三者により構成されております中央職業安定審議会労働者派遣事業等委員会におきまして御検討をいただいておるさなかでございます。その御検討がまとまり次第、その結果を踏まえまして、経済社会変化に対応して労働力需給の適正な調整を図ることができるとともに、派遣労働者雇用の安定あるいは福祉の増進がより進むように制度の改善に努めてまいりたいと考えております。
  11. 糸久八重子

    糸久八重子君 先日九日に労働行政現状をお伺いいたしましたけれども、その中で労働災害、特に死亡災害は一昨年以来増加傾向にあって、今年度も高水準にあるとお伺いしました。私は具体的事故の例から、原因徹底的な究明と再発防止のための対策の確立の立場に立って、以下お伺いをしたいと思います。  ことしの二月、日本鋼管鶴見製作所浅野ドックで発生いたしましたインド船籍爆発火災事故は、死傷者二十三名という大変重大な災害でありました。このような船舶修理作業中に発生した重大災害は、過去にも非常に数多くあるわけでございます。これら多発する事故に対しまして、労働省対応状況の概要を明らかにしていただきたいと存じます。
  12. 野崎和昭

    政府委員野崎和昭君) 御指摘のとおり、労働災害は昭和四十年代後半以降減少傾向を続けているところでございまして、死亡災害を除きますと現在でも減少しておりますけれども、残念ながら死亡災害につきましては御指摘のとおり一昨年増加し、昨年は実に八・八%というかつてない大幅増加になったところでございます。  したがいまして、二月に労働大臣本部長とする労働省関係団体で組織する緊急対策本部を設けまして鋭意死亡災害防止に努めているところでございまして、具体的な措置といたしましては、昨年死亡災害が著しく増加しました建設業等事業者団体に対する労働災害防止対策徹底要請労働大臣による現場視察、大規模労働災害を発生させた事業者等に対する指導死亡災害多発業種に対する全国一斉監督実施労働災害防止団体等における自主的労働災害防止活動促進等に努めているとろでございます。
  13. 糸久八重子

    糸久八重子君 九日にお伺いいたしました「現状」の中にも書かれておりましたけれども労働災害防止緊急対策本部というのはこの事故の起こりました三日前に設置されたもののようでございます。その中に主要な対策が列記されておりますけれども、その中で「再発防止のための指導」とか、それから「全国一斉監督指導実施」とかということが書かれておりますけれども、これらはどういうような形でなされておりますか。
  14. 野崎和昭

    政府委員野崎和昭君) 再発防止につきましては、重大災害を起こしました場合に、当該事業場はもちろんでございますけれども関係業種の他事業場におきまして同種の災害を起こさせることがあってはならないということで、当該団体関係団体の首脳の方を労働省にお呼びいたしまして、その災害状況に基づきまして必要な点検等をお願いしているところでございます。  これまでに行いましたのは、ただいま先生指摘NKK修繕船災害にかんがみまして、修繕船関係につきまして総点検業界にお願いしております。さらに、これも同じ神奈川県でございますが、建設現場土砂崩壊によりまして多数の死亡者を出しましたので、これは建設業界にお願いしまして類似事故再発防止に努めるところの総点検をお願いしたところでございます。  なお、全国一斉監督につきましては、死亡災害の多発しております業種、具体的には建設業土石採取業陸上貨物運送事業林業等につきまして全国一斉に監督を行っているところでございます。
  15. 糸久八重子

    糸久八重子君 これと同じような事故が過去三回造船所で発生しておるわけですけれども、その都度行政指導がなされております。今度の場合でも十月三日の日付で通達が出されておりますけれども、その都度その都度行政指導がなされていながら成果が上がらない。そういう根本の原因は一体どこにあるのでしょうか。
  16. 野崎和昭

    政府委員野崎和昭君) 御指摘のとおり、修繕船関係につきましては過去数年置きに重大災害が繰り返されるという大変残念な状況でございまして、もちろん私ども災害発生の都度必要な措置は十分とっているつもりでございますけれども、なぜそういう災害が続いて起こるのかと原因を考えてみますと、まず第一に、修繕船の場合、入出港の関係がございましてどうしても工期が限定される。さらに、修繕船でございますので船内の様子が必ずしも十分に把握できない。さらに、船体の構造上、一たん火災等が発生しますと、密閉されております等の関係でどうしても重大災害になる。そういうようなことが原因になっているというふうに考えております。
  17. 糸久八重子

    糸久八重子君 いろいろ今おっしゃられましたけれども、それらの状況によって再発防止は全く効果を上げていないわけです。私は法律的な対処を含めてこの際真剣に検討すべきではないかと思うわけですが、そこで幾つかの検討事項指摘しながら御見解をお伺いしたいと思っております。  まず、今度の事故につきましても、災害を拡大させた原因として幾つ調査団調査結果が挙げられておりますけれども、例えば避難経路作業者に周知されていなかった、外国船であったために船内に不案内な作業者が多かった、それから携帯用照明マスク等備えつけがなかった、それから災害発生を知らせる警報機もなく、避難誘導も十分行われなかったと調査団調査の結果がそのように挙げられてあるわけです。  私は、もう一つガス検知をしていなかったことも大きな要因ではなかったかと思うのですが、この辺についていかがでしょうか。
  18. 草刈隆

    説明員草刈隆君) 先生が例に挙げられました本年二月の貨物船修理の際の爆発火災事故に関する特別調査団調査結果に基づきまして、危険物等の存在するおそれのある場所及び火気使用予定場所においては工事着手前ガス検知等により危険物等の有無を確認すること、それから呼吸用保護具等避難用器具備えつけ日本造船工業会等関係団体に対して申し渡しているところでございます。今後ともこの対策徹底に努めてまいりますが、さらに有効な対策につきまして、現場実態等を勘案して検討してまいりたいと存じます。
  19. 糸久八重子

    糸久八重子君 船舶防火構造とか消火設備については消防法は適用してない。そしてSOLAS条約と呼ばれる国際条約とそれから船舶安全法で義務づけられているようでございます。これは船舶安全法それから国際条約運輸省関係なんですけれども、きょうは来ていただかなかったわけですが、本船の船籍国であるインドはこの国際条約には加盟国のようですけれども大変老朽船と聞いておりますから、決められたその防火基準どおりに整備されていたかどうかは大変疑問に思うところでございます。  船舶安全法というのは国内法なんですから外国船には適用していない。今造船不況がある中で修理部門というのは比較的好調と言われておりまして、外国船ドック入りも非常に多いわけです。ドックに入りますと、そこで働くのは日本人の労働者なわけですから、労働災害が生じないようにするのは当然労働省が考えていただかなければな らないわけですけれども、今のところその労働安全衛生法が頼りになるわけですね。そこをずっと見てみましても、きちんとした規定もないようでございます。  そこで、ガス検知器備えつけとかそれからガスマスクの設置など、必要な措置設備として義務づけてはどんなものなんだろうか。つまり、ガス検知器ガスマスク警報装置避難経路の表示について労働法令の中にきちんと例示をして規定する必要があるのではないかと思いますけれども、この辺についてはいかがでしょうか。
  20. 野崎和昭

    政府委員野崎和昭君) 先生指摘のとおり、外国船籍の船でございましても日本国内に停泊して修繕を受ける場合には当然労働安全衛生法が適用になるわけでございます。  多発いたしております爆発火災関係につきましては、爆発火災をまず未然に防止するために、危険物等がある場所における火気等使用を避けることが一番肝要でございますが、この点については労働安全衛生規則火気使用禁止等規定が設けられているわけでございます。しかしながら、今御指摘いただきましたようなガス検知器等につきましては、現在のところ規定を欠いておりますが、この法令化につきましては十分今後検討さしていただきたいというふうに考えます。
  21. 糸久八重子

    糸久八重子君 十分検討と、どの程度検討してくれるのか、ちょっとその辺はわかりませんけれどもね。  労働法令だけでは不十分ならば、大臣がイニシアチブをとりまして、ただいま私申しましたけれども運輸省とか消防庁とかも関係があるわけですから、そういう関係省庁と協議をして高い見地から総合的な法令改正検討すべきではないか、そう思いますけれども、この辺はいかがでしょうか。
  22. 福島譲二

    国務大臣福島譲二君) 御承知のように、航海中の外国船舶につきましては、それぞれ各国の法令に基づいて安全対策が講ぜられるわけでございますが、国内に停泊しております船舶につきましては、これはもう船籍のいかんを問わず日本国内法が適用されるわけでございまして、そういう意味では、今御質問の中にもありました労働安全衛生法はもとより、消防法もこれまた適用されるところでございます。  しかし、今御質問にもありましたような形におきまして外国船舶火災事故防止を図りますことはこれまた大変大切なことでございますので、私ども関係省庁と連携を密接にとりながら労働災害防止対策を今後とも一層留意して推進をしてまいりたいと思います。
  23. 糸久八重子

    糸久八重子君 消防法火災になったときに適用される。そうすると、船舶内の爆発火災があった場合にはもう大変密室ですから消防車が来て消火をするにしてもなかなかその実が上がらないわけですから、まずその船舶の中に消火設備その他はきちっとなければならない。そういうものがなければ、やっぱり働く人たちが非常に不安で働けないわけですね。  私、もう一つ提言をしたいことがあるのですが、それは現場作業安全管理者をはっきりさせて、そして船舶側責任者と合同でチェックリストをつくっておく。そして、そのチェックリストによって各項目の点検を行って、双方で確認署名をして、この点検報告書労働基準監督署へ報告させるというような、そういうシステム化したらどんなものなんだろうか。そうすれば、労働基準監督官事業場を検査する際に大いに効果が上がるのではないか、そう思うのですけれども、この辺はいかがでしょうか。
  24. 野崎和昭

    政府委員野崎和昭君) 先ほども申し上げましたが、二月のNKK災害にかんがみまして、私どもの方で造船関係団体に対しまして修繕船の総点検をお願いしたのでございますけれども、その際、日本造船工業会におかれましては自発的にチェックリストを作成されまして、そのチェックリストに基づいて総点検を行われたということで、これは大変有効な方法であったというふうに私どもも感じております。  したがいまして、これは業界が自主的にやられたことでございますが、私どもの編成しました調査団調査結果等の内容も加味していただきまして、より充実した内容チェックリストを作成してはどうかということで検討をしてまいりたいというふうに考えます。
  25. 糸久八重子

    糸久八重子君 それから、先ほど局長からお話があったのですけれども、この船の修繕工事について工期が適正なものであったかということもやっぱり一つ考えられるわけですね。実際に労使協定を上回る過密工程があったということは十分うかがえるわけですけれども、今回の通達では適正な工期の設定をうたっていますが、これも法令に格上げしまして、違反の場合の罰則も含めてこれは規定すべきではないか、そう思いますけれども、いかがでしょうか。
  26. 野崎和昭

    政府委員野崎和昭君) 御指摘工期の点につきましては、私ども特別調査団報告書に基づきまして、造船関係団体に対して安全面に配慮した適切な工期を設定するよう指導すると同時に、発注者でございます船主関係団体に対しましても発注に際して適正な工期を設定するよう要請を行っているところでございます。  これをさらに法令等規定するかどうか等につきましては、先ほどの問題とあわせまして今後検討さしていただきたいと考えます。
  27. 糸久八重子

    糸久八重子君 十分早期検討をお願い申し上げたいと思います。  それからもう一つ、「緊急対策本部」のところに「労働大臣等による現場視察」というのがありますけれども、これは行われたのですか。
  28. 野崎和昭

    政府委員野崎和昭君) 労働大臣による現場視察につきましては、これまでに三回実施されております。
  29. 糸久八重子

    糸久八重子君 具体的にはどういうところにおいでになりましたか。
  30. 草刈隆

    説明員草刈隆君) 東京都の体育館の建設現場、それから労働大臣の代理でございます政務次官による大阪のビジネスパーク、大きな規模でございますが、そこの御視察、それから都庁の建設現場の御視察、さらに最近では品川区の再開発車業に対する御視察をいただいております。
  31. 糸久八重子

    糸久八重子君 やはり重大災害が予想されるところということでこういう場所をとったのではないかと思いますけれども、特に重大災害が起こった箇所も労働大臣含めての視察等もこれからお願いを申し上げたいと思います。  それでは終わります。ありがとうございました。
  32. 堀利和

    堀利和君 初めてですので、大変緊張しております。ベテランの糸久先生のようにうまく質問ができますかどうか大変心配しておりますけれども、ひとつ御協力お願い申し上げます。  私は、さきの七月選挙におきまして、障害者である私を国民の皆さんからこのように国会に送らせていただきました。とりわけ、全国障害者皆さんからは大変な熱い御期待を受けまして、そういう意味でも私は全力を尽くして頑張りたいと思っておりますので、ひとつ今後ともよろしくお願い申し上げたいと思います。  最初でございますので、障害者として障害者雇用の問題について取り上げたいと思っております。ただ、今直面しております大きな問題もありませんし、また昨年から法律が改正され施行されたということもあり、ことしの障害者雇用状況の発表を見ましても若干改善されているということから、タイミングとしてはなかなか難しいわけですけれども労働省の基本的な姿勢を伺わせていただきたいということで取り上げさせていただくことにいたしました。  障害者雇用対策を進めるにつきましても、やはり基本的な理念がどうあるべきかということが重大な問題だと思います。我が国におきましては、国際障害者年に前後しましてノーマライゼーションという理念が紹介され、それに向けて行政なり私たち障害者含めて全力を尽くしているところでありますけれども、まだまだ障害者実態は大変厳しいものがあります。障害を持っておりま すと、一般の方々から気の毒だとか、かわいそうだというように思われているところもございます。しかし私たち障害者は、例えば目が見えないとか、耳が聞こえない、歩けないということで気の毒に思われたり、あるいは私たち自身が悲しいというようなことはほとんどないわけでございます。そうではなくて、目が見えない、耳が聞こえない、体が不自由であるという理由でもって、職業につけない、仕事がない、近所の子供たちと一緒に同じ学校に通えない、地域で当たり前に生活することができない、まさにこの社会的な問題を前にしたときにこそ私たち障害者は大変つらく悲しい思いをするわけでございます。その辺のところを十分やはり御理解していただきたいというふうに思っております。  そもそも、ノーマライゼーションというすばらしい理念はどういうところから出発したのかということを若干申し上げたいと思います。  ノーマライゼーション理念の原点といいますか源流を見ますと、デンマークのミッケルセンという人が、後に厚生省の役人として障害者対策に大変貢献するわけですけれども精神薄弱者の施設に働いていたわけです。それで、第二次大戦が勃発しましてレジスタンスに身を投じましたわけですけれども、それでナチスドイツ強制収容所に入れられてしまったわけです。そこでミッケルセンは極めて非人間的な、あるいは非常にひどい生活といいますか、御想像がつくと思いますけれども、そういう体験をするわけですね。それがそれまで自分が働いていた精神薄弱者の施設と全く同じだということを体験するわけです。これは非常に悲しい体験だったと私は思うわけです。あのようなナチスドイツの極めて残忍な強制収容所の体験が当時の精神薄弱者の施設の障害者の暮らしと同じということ、これは本当に私たち障害者にとっても悲しい歴史であるというふうに思っていいと思うんです。ミッケルセンはこの反省に立ちまして、障害者は施設で収容されて暮らすのではなくて、地域社会に出て当たり前の暮らし、ノーマルな市民として暮らすべきだということで、ミッケルセン厚生省の役人として非常に貢献をされたわけなんです。  この基本的な理念、考え方が一九六〇年代に北欧の福祉の基本的な考え方として受け入れられていきまして、そして世界的にもそれが承認されつつ、我が国に国際障害者年と前後して紹介されてきたという経緯があるわけでございます。  そういうことで、障害者に関する宣言、あるいはその他のいろいろな理念を示すところでもこういうことが紹介されているわけですけれども、一九七〇年の精神薄弱者の権利宣言、あるいは七五年の障害者の権利宣言等が国連で採択されております。その障害者の権利宣言の中におきまして、人間としての尊厳が尊重される生まれながらの権利を有するということがうたわれております。人権思想の観点から見ましても、障害者は生まれながらにして権利を有している、権利主体であるということが明確にうたわれたというふうに思います。  それをさらに、国際障害者年を迎えるに当たりまして、国際障害者年行動計画におきましては、しばしば引用されます文言がございます。ある社会が構成員の幾らかの人々を締め出すような場合、それは弱くもろい社会なのである。さらに、障害者というのは決して特別なニーズを持っている人間ではない。普通の市民と同じニーズを持っている。しかしながらそのニーズを実現するためには特別な困難を持つ市民なのであるということがうたわれております。  このように、障害者は決して特別な人間であったり特別なニーズを持っているわけではございません。むしろ健常者と同じ考えあるいはニーズを持っているわけです。  そういう意味で、本来普通の人間であり、当たり前の人間が社会から締め出されることというのは非常に残念なことでありますけれども、こういった基本的なノーマライゼーション理念について、大臣どのようにお考えかお聞かせ願いたいと思います。
  33. 福島譲二

    国務大臣福島譲二君) お答えを申し上げる前に、まず、堀委員障害を乗り越えて立派に参議院議員として御当選をされましたことを心からお祝い申し上げたいと思います。そして、委員が今後御自分の体験に基づいて障害者のために国会の場で御活躍をいただきますことは、全国多数の障害を持つ方々の幸せのために大変大きな力になるであろうと心から今後の御活躍をお祈り申し上げる一人でございます。  障害者の皆様方が、今委員がるる御指摘がありましたように、まさに普通の健常者と同じ人々であり同じニーズを持っておる、そういう方々であろうと私も思いますし、そして、しかしそれを実現するのに特別な大きな困難があるということも私自身よく承知をいたしております。私も、娘の一人が重度身障者でございまして、そういう意味で私自身、政治活動の一つの大きな重点としてこの問題に今後とも尽くしてまいりたいと思う一人として、今委員が御指摘になりましたこの基本的な問題については全く同感のところでございます。  障害者がまさに普通の元気な健常者の皆さん方と同じような形で一般企業において自然に働いていけるような社会を実現していくということは、障害者対策の最も基本とすべき問題だと考えております。これを実現していくためには、障害者の皆様方も自立の精神に基づいて、そして自分自身の困難を乗り越えていくというその気持ちも何よりも大切なことでございますが、しかし私ども政府といたしましても、そういった方々が自立に向けていろんな困難を乗り越えていかれるのに当たって大きな支えになるような政策を具体的に今後展開をしていくということにつきましては、政府全体としても、また今私は労働行政を担当しておる一人でございますが、格別労働省といたしましても今後全力を尽くしてまいりたいと考えておるところでございます。  委員の今後一層のひとつ御指導を心からお願いを申し上げたいと思います。
  34. 堀利和

    堀利和君 ただいま大臣から大変勇気の出るお言葉をいただきまして、恐らく私がこの六年間いる間に障害者雇用対策が一歩でも二歩でも前進するという期待を抱かせていただきまして、本当にありがとうございます。  健常者の場合ですと、いわゆる学校を卒業しましてから就職し、あるいは仕事につくということが当たり前のように思われているわけでございます。しかし、私たち障害者にとっては、働きたいと願っても働くところがなかなかないわけです。  これは厚生省の管轄になりますけれども全国に今およそ二千三百ないし四百ぐらいの小規模作業所と言われるところがあります。ここには一カ所大体障害者が十五名程度おりまして、朝から夕方までそこでいろいろな作業をしながら生活しているわけです。本来ですと、一般企業、一般雇用につきたいところですけれども、なかなかそれが困難だということで、障害児を持つ親たち、あるいは健常者、専門家たち、あるいは障害者自身がみずからの手で作業所を運営しながら働く機会をみずからつくり出しているという現状があるわけです。全国に二千三百ないしは四百カ所あるということからいいましても、三万から四万人の障害者がそういう場で働いているわけでございます。  あるいは視覚障害者の場合につきましても、はり、きゅう、あんまと仕事があります。決してこのはり、きゅう、あんまという仕事が悪いものだということではなくて、むしろ非常にすばらしい仕事だというふうに自負さえしているわけでございますけれども、ただ視覚障害者である、目が悪いというだけで、はり、きゅう、あんまの仕事しか、ほとんどそれしかないということは非常にやはり現実の厳しさを感じてしまうわけであります。  そういう点で、障害者にとってはやはり働くということが非常に大きな問題になっておると思います。特に、これまで残念ながら障害者は役立たずとか社会に貢献できないとか社会のお荷物だと いうように一般世間で認識され、あるいは障害者も自分たちはそうなのかなというように思わされてきたところもあると思うのです。しかし、失礼な言い方ですけれども、健常者でもこんな人かというような方がおられるわけです。そういう方であっても、健常者というだけでやはり社会の一構成員である、立派な人間であるというふうに見えてしまうわけですね。  それは裏返して言えば、私たち障害者が幾ら努力し頑張っても、しょせん障害者は社会に貢献できない、働くことすら十分できない役立たずなんだというような、まだまだ長い歴史の中でそういう差別観がございまして、そういうようなことからいえば、障害者が働くということは、健常者と違いまして、社会の一員であるという自信といいますか自覚、そして働くということにおいて健常者の皆さん、社会と自分はつながっているんだという自信にもなると思うんです。  そういう点で、私は決して働けない障害者が人間として失格だということでは毛頭ございません。ただ、一人の社会人として自立する上では、働く、労働するということが大きな位置を占めるということを強く訴えたいところでございまして、そういう意味で、労働省障害者に対する働く権利といいますか意味についてどのようにお考えなのか、もう一度大臣の御答弁をお願いしたいと思います。
  35. 福島譲二

    国務大臣福島譲二君) 御自分の御体験に基づいてのまさに切々たるお話を伺いながら、私も改めて障害者の皆様方が本当に働きたくてもなかなか働けない環境にあるということのつらさというものを感じながら、この問題にひとつ全力を尽くしていきたいと思っております。  先般、重度身障者のために労働省として一つの政策として打ち出しております重度身障者の方々のための第三セクターの会社を私も現地で見てまいりました。大変な体にハンディをお持ちのたくさんの方々が一般の元気な方々と一緒になって、負けないような気迫を持って働いておられる現状を目の当たりにいたしまして、全く目の見えない方が立派にコンピューターのプログラマーとして御活躍でございます。しかし、その御通勤等の状態などを聞きましても、全く目の見えないままに普通の地下鉄に乗り、またJRに乗り、大変長い時間を通勤に費やしておる。そういう状態も聞きながら、いろんなことでまだ国としてそういった方々のためにお手伝いをしなければならない、そのようなことが本当にたくさんあるということを改めて実感を持って受けとめたところでございます。  今後、堀委員のお気持ちを体して、さらに一層全力を尽くしてまいりたいと存じております。
  36. 堀利和

    堀利和君 それでは、障害者雇用対策について具体的にお聞きしたいと思っております。  労働省障害者の問題を軽んじているというふうには決して思いませんけれども、なお私としてはその辺もう少しお聞きしたいのですが、例えば健常者と障害者の働いている率といいますか、ということについてお聞きしたいのです。一般的に就業率が比較されますけれども、昭和六十二年の場合、健常者が五九%、障害者が二九%でございます。健常者の半分なんですね。つまり、障害者の就業率は健常者の半分しかないという、こういう実態であるわけです。  それで、一般労働者の失業率が毎年発表になりますけれども、昨年ですか、二・五%、ことしは好景気で若干下がったと思うんですけれども、あるいは高齢者の場合も五十五歳から六十歳前後の方々は四%前後、六十歳から六十四、五歳までが四・七%だったと思いますけれども、これに対して私が思うに障害者の失業率はかなり高いのじゃないかなというふうに思うのですね。  ただ、障害者の失業率がきちんとした統計ではじき出されてはいないようなんですけれども、できましたら失業率がどの程度なのか、統計上厳密でなくても仕方がない面があるとしましても、目安としてお聞きしたいのです。
  37. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) 障害者の失業の状況でございますけれども、失業率という形で全般の失業率と比較する統計はございません。  ただ、一般の失業の状況障害者の失業の状況ということで、雇用率の見直しに際しまして労働省実施した就業実態調査の結果などから推計いたしますと、障害者の失業状況一般の失業状況に比べて大変厳しい状況にあるということが言えようかと思います。  一つの試算をいたしてみますと、障害者につきまして、常用雇用障害者数が約三十万人で、これに対しまして失業しておられる障害者の方々が約七・八万人という一つの数字と、それから全体の数字としての常用雇用労働者数約三千万人に対しまして失業者数が百五十万人になっているという、その両方の数字の相関を調べてみますと、障害者の方々の雇用状況の厳しさというのは、一つの試算でございますが、四倍程度になるというようなことも言えようかと思います。
  38. 堀利和

    堀利和君 やはり就業率を見ましても失業率を見ましても、一般の健常者、労働者から比べてかなり高いということがおわかりいただけたと思うんですね。やはり基本的にこういった数字が示されるということは、何か現行の雇用促進法においてもまだまだ根本的な見直しといいますか、問題があるのではないかと思うんですけれども、その点はどうなんでしょうか。
  39. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) ただいま申し上げましたように、障害者の方々の雇用失業状況というのは大変厳しいものがございます。また、公共職業安定所に求職申し込みをされておられる障害者の方々は、六十三年度末で四万七千人にも上っております。私どもといたしましては、現行法に基づく雇用率の達成指導あるいは職業リハビリテーションの充実、安定所における相談あるいは援助、その他あらゆる施策を動員いたしまして、鋭意障害者の方々の雇用状況が全体の雇用状況に近づくように努力しているつもりでございますけれども、本日御審議に出ておりますように、さらに一層の努力をする必要があるということを痛感いたしている次第でございます。
  40. 堀利和

    堀利和君 それで、この失業率の高さ、雇用率が若干改善されたとはいえ、まだまだ低いわけですけれども、その大きなといいますか目立つところとして、中小の企業ではまずまず雇用率はそれなりの水準にあるのですけれども、やはり事業所の規模が大きくなればなるほど、大企業になればなるほど雇用率が低くなるわけですね。ことしの雇用状況を見ましても、昨年の一・一八%から一・一七%と〇・〇一ポイント下がっているわけです。しかも、未達成企業が若干改善されたとはいえ、千人規模以上のところでは大体八〇・四%ですか、つまり五社のうち四社が未達成企業なんですね。社会的に大きな責任を持っているはずの大企業が五社のうち四社未達成企業ということ、これは大変な問題だというふうに私は認識しているわけです。  この辺について、何ゆえ大企業でこれほど未達成企業が多く雇用率が低いのか、またそのためにどのような対策が講じられているのか、お聞きしたいと思います。
  41. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) 私どもといたしましては、特に大企業を重点指導対象といたしまして雇用率達成に努めてきたつもりでございますけれども、ただいま御指摘のとおり、平成元年調査によりますと、千人以上の規模において〇・〇一%数字が落ちているという大変残念な事態にあることは御指摘のとおりでございます。  これにつきましては、全体の雇用状況が非常にいい中で、いわば雇用率の分母になる雇用者数がふえた割には障害者の方々の雇用が進んでいないということが直接の原因になっておりまして、そのあたりは問題であろうかと思いますけれども、ただ実際の障害者の数から申しますと二千八百三十四人ということで、最近においてはかなり実数としてはふえている状況がございますが、繰り返すまでもなく雇用率が落ちているということは大変な残念な事態であるというふうに認識いたしております。  それで、私どもといたしましては、大企業にお きましてもこれまで長期的なタームで見てまいりますと企業自身としてはいろいろ御努力をいただいているわけでございますが、こういった数字的な背景もあり、なお一層の指導の強化を図る必要があるということで、昨年度から始めました大企業を対象としたブロック別の事業主懇談会、そういった場を積極的に活用いたしまして、雇用の進んでいる企業の好事例あるいは経験などもお示ししながら、さらに御努力を願うように強力な指導を展開してまいりたい、かように考えております。
  42. 堀利和

    堀利和君 大企業の責任というものを念頭に置きながら、精神薄弱者雇用率の問題について触れたいと思います。  現行法が改正された中で一つの大きな前進は精神薄弱者を実雇用率の中に入れたということで、確かにこれは一歩前進だというふうに思います。しかし、何ゆえ法定雇用率の中に入れなかったのか、つまり義務化しなかったのか、この点についてまずお聞きしたいと思います。
  43. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) 先般の法律改正で、ただいま御指摘のとおり、精神薄弱者につきましても雇用制度の適用に関しまして、雇用率の算定上精神薄弱者もカウントするという改正がなされたわけでございますが、義務化の対象とするかしないかにつきましては法の改正の段階でいろいろ御議論がございまして、その際の身体障害者雇用審議会での御議論におきましては、精神薄弱者の場合には身体障害者と異なりまして、精神薄弱者に対する職業前の教育、能力開発体制等の条件整備の進捗状況がいまだ十分ではないという状況にあること、あるいは精神薄弱者の就業が非常に困難な職種も多いこと、あるいは個々の精神薄弱者の把握確認にいろいろ難しい点があること、社会生活指導の面で特別な配慮を必要とする方々が多いといった、そういった問題が十分に解決されていない段階では、雇用義務とするということについてはその段階ではない、こういう議論がなされたというふうに承知しておりますし、私どもとしてもそういうことで義務化まではまいらなかった次第でございます。
  44. 堀利和

    堀利和君 確かに、精神薄弱者の方々の問題については大変厳しい現状があるということはわかっているつもりなんです。ただ、実雇用率の中に精神薄弱者雇用総数を入れているわけですから、だからといって法定雇用率に入れなくてもいいという論理はどうも私には納得できないところでございます。  それで、確かに身体障害者雇用審議会におかれまして精神薄弱者を法定雇用率に入れると身体障害者がその分締め出されるんじゃないかというような御意見があったというようなことも聞いておりますけれども、それはやはり一・六%に対して実雇用率が接近していったときに議論になることだというふうに私は理解していいと思うんですね。まだまだ残念ながら実雇用率は低いということからいえば、そういう議論はまだ時期尚早といいますか、そういうふうには思うんです。  そこで、やはり私は別な観点から考えているわけですけれども精神薄弱者雇用の総数のうち事業所規模別に見ていきますと、五人から二十九人の規模では五一・〇%、三十人から九十九人は二一・四%、百人から四百九十九人になりますと二四・四%、五百人から九百九十九人になりますと、ここでもう断トツに下がるんですけれども二・二%、さらに千人規模以上になりますと一・〇%。つまり、精神薄弱者の場合も、中小企業の方は高いんですけれども大企業になればなるほど雇用率が下がっていくんですね。ということから考えまして、実雇用率の中に入れました精神薄弱者雇用数を法定雇用率の方に入れますと、結果として恐らく一・六%にとどまらず一・七%になるんじゃないだろうかというふうに私は思うんですね。  そうしますと、精神薄弱者を余り雇用していない大企業にとっては、一・六%もつらいところだけれども、そこにさらに法定雇用率が一・七%になれば負担はさらに多くなる、大企業にとって非常に厳しいものになるということで法定雇用率の中に精神薄弱者雇用数を入れなかったんじゃないか。つまり一・七にせずに一・六%にしたんではないだろうかというふうに私は想像するわけですけれども、やはり労働省としては大企業に対してもっともっと厳しい態度で臨んでいただきたいというふうにお願いしたいところでございます。  少し話は変わりますけれども、大企業における社会的責任ということと同時に、やはり国においてもその辺のところはお考えいただきたいと思うわけであります。国の非現業が二・〇一%から二・〇四%と〇・〇三ポイント上がりまして、これは大変結構なことだと思うんです。ただ、国際障害者年十年の中間年に当たりまして、中央心身障害者対策協議会などが今後の重点施策ということで評価が出されておりまして、その中に、雇用のところで、視覚障害者、両上肢脳性麻痺者の雇用施策については一層の充実、推進が必要であるという評価をしているわけですね。そういう意味では、単に雇用率の数字を見るだけではなくて、障害の種類別によってかなり格差があると思うんです。  そういう意味では、私は、国家公務員試験において点字の試験が実施されていないということは重大な問題だと思っております。国が民間企業に行政指導する際に、そもそも国の方が公務員を採用する試験において点字試験をしていないということが大きな問題だと思うんですけれども、この辺についてなぜ点字試験を実施していないのか、お聞きしたいと思います。
  45. 角野敬明

    説明員(角野敬明君) お答え申し上げます。  現在のところ国家公務員採用試験におきまして点字による出題は行っておらないわけでございますけれども、これにつきましては、私どもが行っております試験の対象となります事務あるいは技術等の官職の職務について見ますと、これらは通常文書を媒介として行われるものでございまして、諸種の事務用機器が発達しつつあるという状況は私ども承知はいたしておりますが、そういう状況のもとにおきましても、なお現状では強度の障害をお持ちの方がこれらの機器を使用いたしまして申し上げましたような職務を遂行できる状況には至っていないのではないかと、こういうことでございます。  それで、少しつけ加えさせていただきますと、国家公務員の採用試験は各省庁にあります採用を前提とする試験でございます。私ども実際に採用に当たります各省庁における障害者、視覚障害者の方の職域の開発、それがまず先決ではないか、そういうふうな各省庁における職域開発の動向等を見ながら点字受験の問題については検討していきたいと、こういうふうに考えておるところでございます。
  46. 堀利和

    堀利和君 御検討いただけるという前向きの答弁をいただいたんですけれども、ただ、視覚障害者を事務職として採用する状況にまだ至っていないというふうに断言されたんですけれども、私は大変これ残念なんですね。全国の自治体の中でも、すべてではありませんけれども幾つかの自治体では既に点字試験を実施して、現実的には視覚障害者を採用しているわけです。  十一月十日の毎日新聞にも報道されましたけれども、これまで神奈川県の場合採用試験において点字を認めてきました。それで、このたび上級職試験で見事強度の弱視の者が合格したわけです。その新聞の中にも、まだ配属先といいますか具体的な働くところについては採用後に決めたいというふうに書かれておりまして、私は、数日前、神奈川県の人事部の方に電話でなんですけれどもお聞きしましたら、働くところがどこになるかまだ決まっていないというふうに言っておりました。  これは、やはり健常者も視覚障害者も平等に採用試験を受けて、合格しましたら、当然それはどこに働くか、どうやったら働きやすいかということは、そういう努力は当然その後でもやれると思うんですよ。働くところかないから、まだどういうような事務的な職場につけるかわからないから点字試験の採用が困難だというのは、私はちょっ とおかしいのではないだろうかなと思うわけです。神奈川県のように、点字で試験をやりまして合格した後、それでは働くところを探しましょう、やっぱりこういう形にならないと私は障害者雇用というのは進まないのではなかろうか、しかも国としての責任から見ても当然そのような考え方に立って進めていただきたいなというふうに思っております。  時間もそろそろないようなんですけれども、最後にもう一度大臣にお聞きしたいのでありますが、障害者雇用を進めるに当たっては、やはりどうしても障害者の意思と能力ということが問題になってしまいます。八二年に身体障害者雇用審議会が出された意見書の中にも、働く意思と能力ということが示されているわけです。これは私は意思と能力というものを並列で見るべきではないだろうと思います。まず働く意思、働きたいというこの意欲が第一にあって、その障害者能力に合わせて仕事を見つけていく。つまり、仕事障害者を合わせるのではなくて障害者仕事を合わせていく。やっぱりこういう視点が私は必要だと思うのです。  以前、私がシンポジウムを企画したときに、大手のコンピューター会社の総務部長にもいらしてもらいまして、いろいろ有意義なシンポジウムを行ったんですけれども、そのときに総務部長は、意欲によって能力というのはカバーできますと。数字で言うのもなになんですけれども、三分の一程度ですと保護雇用も考えなければなりませんけれども、いわば二分の一程度の能力があればあとはもう意欲なんだ、意思さえしっかりすれば障害者は十分働ける。しかも、一人欠員が出た場合にそこに機械的に障害者を当てはめるのではなくて、一人の障害者が採用されたときには、あっちからもこっちからもいろいろな仕事を持ってきて組み合わせて、その障害者が働きやすい方向に職場を変えていかなきゃいけない。またそれはやれるし、やるべきなんだという非常に前向きなお話を伺ったわけなんです。それは決して机上の話ではなくて、その総務部長の方がみずから体験されたことなんですね。そういう点で、私は障害者雇用については人と仕事という関係のやっぱり発想の転換が必要ではないだろうかと思います。  最後に、アメリカの状況を見ますと、一九七三年にリハビリテーション法が制定されまして、差別はしてはいけないということになりましたわけですけれども、それをさらに超えるものとして、ことし障害を持つアメリカ人法というのが出されておりまして、上院を通過したというふうに聞いております。ここでは、障害者であることをもって決して差別してはいけない、そういうことがあった場合には裁判で争って、仮にそれが明らかに障害者差別であるという場合には罰金を課すという厳しい法律が制定されるようなんです。ですから、やはり労働省としてもそういった発想の転換なり思い切った施策を打ち出していただきたいと思いまして、最後にもう一度大臣の御答弁をお聞きしたいと思います。
  47. 福島譲二

    国務大臣福島譲二君) 堀委員指摘のお気持ちは私も全く同感でございます。せっかく働く意欲のある障害者の方々にでぎるだけの施策をもってその気持ちをかなえてあげるということは、労働省といたしましても今後全力を尽くしてまいりたいと思っております。また、社会の人々の温かい目、温かい御協力もお願いをしなければなりませんし、また先ほども指摘がありましたような、大企業に障害者雇用率が低いという現状も、それはそれとして大企業から言わせると多少の理由もまた別個にあろうかと思いますが、しかしやはり大企業であればあるほど犠牲を負ってでもたくさんの障害者のために雇用の場を確保してさしあげるだけのまたゆとりもあるはずでありまして、私もこれから機会あるたびに大企業等につきましてこの問題についての社会的責任を注意を喚起いたしたいと思っております。  労働省として、障害を持たれる方々が働きやすいようないろんな施設改善、そういったものについての援助も今いたしておりますが、今後さらにそういう制度も充実をいたしまして、少しでも障害者雇用率が高まっていくように現実的に全力を尽くして頑張ってまいりたいと存じます。
  48. 深田肇

    ○深田肇君 質問をするに当たりまして、一つだけお願いをしておきたいというふうに思います。  実は、私も堀さんと同じようにことしの夏までは一市民でおりましたので、その当時の実感に基づいて率直なことを話してみたいと思いますので、ひとつ御了解をいただきたいというふうに思います。  率直に申しまして、国会外の市民から見ますと、今までの国会の問答ややりとりについて数多くの市民たちが感じていることは、国会のやりとりというのはどうも形式的であって、内容が抽象的で、もっとはっきり物事を率直に話してもらうことができないのだろうかということが大変強いだろうと思うんです。私は、そういうような状況が長く続いたりたび重なることが政治に対する不信や議会に対する不信、そして行政に対する不満につながるおそれもあると感じますので、私は新人であることを盾にとりまして、形が少し変わるかもしれませんけれども、大変率直にずばりと物事を聞いて、お答えの方もしたがって端的に、もう短くて結構ですから結論だけを聞かせていただくというふうに御協力のほどをお願い申し上げておきたいというふうに思います。傍聴席にいらっしゃる方々もなるほどなと、やりとりがすっきりしたと、そして討論の中で可能な限りお互いに結論を見出すことができるように努めたいと思いますので、よろしくまずはお願いをいたしておきたいというふうに思います。  そこで、実は余り時間がないのでどうしようかなと思っておりましたが、堀さんと大臣のやりとりを聞いておりまして、ぜひとも障害者の問題に対して、私たちいわゆる健常者の側からこの問題をどういうふうに考えるべきかについて一言申し上げておきたいというふうに思います。実は、今も話を聞いておりまして、私の反省も含めて若干の指摘をいたしたいと思いますので、御了解のほどをいただきたいと思います。  堀さんが当選をされてから、もっと言えば、今、前島さんはお留守のようでありますが、前島さんが当選されてから国会の中に車いすを使用して生活ができる新しい設備ができたことを知りました。同時にまた、そのときに機を合わせたように駅などでそういう設備が改善をされるのがどんどん目につくようになったと思います。  堀さんの方へ戻りますが、堀さんが参議院議員に当選されますと、いわゆる議員会館の通路のところに点字ブロックというのができたんです。それで私も堀さんと一緒に歩きますと、その点字ブロックというのは、入り口から入りまして議員専用のエレベーターの前まで行きまして、今度は二階で堀さんがおりると、堀さんの部屋までは行けるんですが、そこで点字ブロックは消えちゃう、大臣は御存じかどうかわかりませんが。そうすると、堀さんが私の部屋に来るときは点字ブロックがない。これは政策が足らない。金が足らない、予算が足らぬとおっしゃるかどうか知らぬけれども、これは労働省の問題じゃありませんよ。  私は、障害者全体をどういうふうに社会的に考えるのかということを言いたいのでありますが、そうすると、障害者の方が堀さん以外の部屋に行こうと思えば、議員専用のエレベーターに乗る。これはまあ法律違反じゃないから乗ってもいいでしょう。しかしそこに乗らざるを得ない。それから、障害者の方が堀さん以外の部屋に行こうと思ったら、もう点字ブロックはない、こういう状況。堀さんは地下二階の食堂に行くためにも点字ブロックはない。これが今現状なんですよ。今、堀さんと大臣が立派な話をされても、目の前の生活の裏にそれだけの差別があるんですということを、健常者の私たちは反省を含めて自覚しなきゃいかぬというふうに実は感じているわけであります。  時間の関係もありますから多くを語ることないと思うんですけれども、今手話の方がそこで話をされていますが、これも伺ったら、皆さんが自分 で仲間を連れてきてやっておられるんですね。  社労委員長、本当はこういうのもこちらでどんどん用意をして、それで耳の不自由な方もどんどん来てくれ、手話でやりましょうと、こういうふうにだれもが安心して来れるような開かれた国会にすることが必要なんじゃないかというふうにも今気がつきました。私、反省します。  それだけじゃないんです。決して嫌みじゃありません。この前この席上で、官房長が労働行政についてと、こんな分厚い資料を読み上げ、説明されました。二、三十分で見事な解説なんです。私などは一年生、初めてこの文書をここでもらって線を引いて、物事を理解するだけで精いっぱいですよ。ところが、隣にいらっしゃる堀さんは、点字がないんだから耳だけで聞くんです。いや、事前に労働省の方々が足を運ばれて趣旨説明されているという努力はあっただろうと思います。しかし、現実にこの場に点字がない。堀さんは自分のしゃべることは点字でつくってくる。これもちょっと民主国家として、世界の一、二の国としては、もう少し物事を考えたらどうかなというふうに、今の人事院の皆さんとのやりとりも含めて実は感ずるところであります。  言いたいことは、そういうふうな一、二の例を挙げましたが、やはり健常者が障害者と一緒になって、同じ人間として極めて自然に生活できるという思想の転換をしないと、私どもはこれを共生と呼ぶんですが、共に生きようというんです。大臣は盛んに何とかしようではないか、おまえたちが一生懸命――おまえたちという言葉は使われなかったな、取り消しますが、自立をして頑張ろうと言われていると。それについて大臣が御自身の経験を含めて、涙ぐんで物すごい熱意を込めて話をされましたが、そういう格好で救おうとか同情しようという構えが続く限り、この問題は本質的に解決できない。  この世の中、同じ人間としてお互いが生活しているんだから、自然の成り行きで物事をやれるというふうに、当たり前のような状況をどうつくるかということだと思うのです。したがって、目の悪い方のためには点字が必要だろうし、耳の御不自由な方には話がちゃんと伝わるような方法を考えなきゃいかぬだろうし、足場の悪い方々についてはそれをどういうふうにするかということが、もうすべての社会構成の中でできる。そして、そのことが当たり前だというふうに人間が考える、日本国民が考えるという状況をどうつくるかということを、ひとつ労働大臣は閣議の中でお話しいただいて、海部総理大臣からそういう積極的な提言を出してもらうことがなければ、本格的に障害者問題の解決はできないと私は思いますので、そのことをひとつお話として申し上げておいて、これも別に答弁をもらうことないと思いますから、私自身の反省を含めて申し上げておきたいというふうに思います。  そこで、実は大変恐縮でありますが、私は労働省の方を中心に、建設と建築に携わる勤労者の地位を高めるために若干の質問をさせていただきたいというふうに思います。  最近は好景気と言われているわけです。そこで、一方ではまた人手不足だということも大変聞くわけです。技能工は不足している。若い労働者のいわゆる入職、この仕事についていこうというような人が大変少ない。いわんや後継者の養成などは大変深刻な状況になっているということが言われているんですが、労働省のどなたでも結構、大臣から別にいただかなくても結構でありますが、このような認識を私は持っているんですが、これは共通の認識として今確認できますか。
  49. 清水傳雄

    政府委員(清水傳雄君) 現在、いわゆる求人倍率が一・三 これは恐らく昭和四十年代の後半期にほぼ匹敵するぐらいに高まりつつあるわけでございまして、景気の拡大に伴いまして雇用需要が相当な数でふえております。一方、労働力の供給ベースにおきましても、かなりここ数年の傾向を見ますと、各年の伸び率が六十一、二年、六十万人、八十万人、最近におきまして百万人を超える形で労働供給ふえておるわけでございますが、一方、雇用者、就業者の伸びが百二、三十万人というような状況でございます。  そういう中で、今御指摘のように、全体としての労働力不足というふうな形が生じつつあるわけでございまして、特にそういう中で若年勤労者職業意識、価値観の変容、そうしたところからいわゆる不人気職種と申しますか、そうしたものが拡大をいたしておりまして、そういった関係で、特に中小企業を中心といたしましての人手不足感の広がりというのが相当進んできている、このように考えております。
  50. 深田肇

    ○深田肇君 今好景気で仕事は私たちはあると思うんですけれども、人手不足だし、技能工の方々が不足したり、若い人のお話を聞いた限りにおきましては、職種の不人気ということまで出ちゃったんですけれども、そういうことが理由だというふうにおっしゃいましたけれども、それだけでしょうか。賃金問題などについての少し理由を聞かせてもらうとありがたいと思いますが、どんなものでしょうかね。いわゆるお話がありました職種の不人気問題だけだというふうなものではなくて、もっと若い人にとってみたらいわゆる賃金問題や労働条件等々について大変不満があるというふうに思いますが、いかがですか。
  51. 清水傳雄

    政府委員(清水傳雄君) これはもう申し上げましたように、中小企業を中心とする人手不足の広がりというもの、すべての中小企業というわけじゃなくて、十把一からげで見なくて、いろいろとその中を見きわめながら判断をしていかなきゃならないだろうと思うのでございますが、六十年の初めのいわゆる円高不況期におきましても、一部の中小企業におきましては人が来ない、こういうような訴えがあったわけでございまして、いわゆる不人気職種の広がりというふうに申し上げましたが、それはそういうふうに感じるだけの現実的な実態というふうなものも反映している。これはもちろん労働条件の問題も一つの大きな要素としてあるであろうというふうに考えております。
  52. 深田肇

    ○深田肇君 私は、今社会的に使われている言葉のようですけれども、余り使いたくない言葉なんですが、いわゆる三Kといわれます、危険だとか、汚いとか、きついとかというような理由で働く側についてのいろんな注文が出ているようでありますけれども、それはまた別に置いておきまして、日本には伝統的な言葉として衣食住が足りてというような言葉があるように、この住という問題は、言葉をかえて申しますと住むということですね。そういう問題は、単なる住宅の云々という問題だけではなくて、住環境を含めた人間文化の大きな部分を占めるものとして、この人間社会において生活面で大きな重要な柱の一つだというふうに考えたいというふうに思います。  そういうふうに考えますときに、この住の問題に携わる建設や建築の業務というものは、本来この社会でその仕事をすることに対しての評価がもっと高くなくちゃいけないと思うんですね。ところが不人気である。不人気の要素はこれから少し話を進めていきたいと思いますが、なぜそういうふうに高い評価を住の仕事に携わる者に対して与えることができないのだろうか。そういう高い評価を与えるということがないと、本当の意味における若い人たちがいわゆる後継者として今の住宅産業、建築、建設へと意欲を持って参加してこないんではないか。そのことは、ひいては我々の生活問題に響くし、日本の文化にまで影響するんではないかというふうに実は考えているわけでございます。  同時にまた、先ほど堀さんとのやりとりの中でも話が出ましたように、我々人間の側からいうと、働くということは我々の義務というよりは権利ですから、この権利が保障されるというようなことを行政としてどういうふうにつくってもらうかということが大事なことだというふうに考えているわけでございます。  そういうふうに考えた上で、いわゆる業務と一般的に言いますが、建設や建築にかかわる業務に若手の労働者がどんどんと入職をしてきて、そして後継者として育っていくというような状況をどういうふうにつくるかということについては徹底 的にお互いに調査をして、何としても何が原因かということをもっと煮詰めて、そのための対策をする必要があるだろうと実は日ごろから感じておりましたことを申し上げた上で、ちょっと建設省にお尋ねをいたしたいと思います。  労働省とのやりとりの中でも言いましたように、技能工の方が大変不足したり、若い労働者の入職が大変少ない、人気を含めて希望も大変少ないということがあるのであります。私が考えるには、この業務につく労働者の賃金が大変低いというふうに率直に思います。だから、低いか高いかと言ってもらえばいいんです。いや高いよ、おっしゃるようなことはない、心配ないというなら心配ないと言ってもらえばそれでいいんですが、実質賃金が低いと思います。労働条件はだれもが認めるように悪いだろうと思います。いわゆる休みの問題もありましょうし、暑いとき、寒いとき、そして雨の日、いろんな悪条件がありましょうし、そういうことを考えますと労働条件は悪い。しかも、いわゆる危険率というものが大変建設業界というのは高いということはだれもが認めますから、そういうふうに考えます。  同時にまた、建設業界全体のいろんなことがありましょうから、一言で言いますが、構造ですね。この構造のいわゆる近代化がないと、やはり若い人にとって魅力が出てこないんじゃないかというようなことも感じます。同時にまた、先ほどから申し上げましたように、我々一般の側から見た社会的な評価をもっと高めてあげる。その仕事は大事なことなんだということをお互いが認識し合うというような状況をつくらないといけないだろうというふうに思いますが、こういうふうなことが原因で申し上げたような若手労働者の入職が少ないんではないかと思いますが、ほかに何かありましたらつけ加えてください。これが違っておれば違うとおっしゃってください。もう端的に言ってもらって結構であります。お願いします。
  53. 亀本和彦

    説明員亀本和彦君) 先生指摘の点、ごもっともな点が非常に多いと考えております。
  54. 深田肇

    ○深田肇君 一定程度同一認識に立っただろうというふうに思います。  そこで私は、限られた時間でありますから、いろいろな条項を申し上げましたが、きょうは賃金問題だけに絞って少しお話を伺ってみたいというふうに思います。  賃金問題のことを考えれば考えるほど、他の業種とは違った意味で、この建設、建築の業種の中ではいわれるところの三省協定というのがあるんですね。建設省や運輸省や農水省と三省が協定をされてそして積算をされる、それで云々と、こうなるわけでありますが、その三省協定の及ぼす影響がこの賃金の低さと不安定さをつくり出している大きな要因だと思いますが、どう思いますか、一言で答えていただくとありがたいんですが。
  55. 亀本和彦

    説明員亀本和彦君) 現在政府では、その購入する物品ですとかサービス、こういったものにつきましては、法令によりまして取引の実例、実勢価格を考慮して予定価格を定め購入するというふうになっております。したがいまして、公共事業の予定価格についてもその原則にのっとって行っております。  そのために、予定価格の一つの要素でございます賃金につきましても、実勢を調査し、それをもとにいたしまして労務単価を設定しているということでございまして、労務単価というものは実勢をそのまま反映するよう努力しているところでございます。
  56. 深田肇

    ○深田肇君 私が今、賃金の低さと不安定さは三省協定に基づくいろんな調査活動が要因ではないかというふうに申し上げた上でのお答えなのでありますが、もう一遍聞きますけれども、現在賃金は低い。実勢に合わせるようにしているとおっしゃいますが、実勢に合わせると今のような低い賃金になる、こういうふうに私は理解しなきゃいかぬのですか。
  57. 亀本和彦

    説明員亀本和彦君) 三省協定で定めております労務単価というものは、実勢単価をそのまま反映するというものでございまして、実勢単価をどのように規定するかというものではございません。
  58. 深田肇

    ○深田肇君 そうすると、現在いわれるところの、もちろん短い時間でこういう話をするのは大変つらいんですけれども、私どもの側からいうと、働く側の賃金から物事を発想したいんです。ところが、おっしゃるとおりいわゆる積算をするために我々の労働力の評価をされるわけですから、そのときの基礎の中で、私どもが聞くところによると賃金台帳というものがあって、その賃金台帳の記帳に基づいてそれが集約されて云々という、そのことはそのとおりに考えていいんですね。
  59. 亀本和彦

    説明員亀本和彦君) そのとおりでございます。
  60. 深田肇

    ○深田肇君 そうすると、その賃金台帳に記載されているものと労働省が集約されたものとの間に、この実勢との関係について私は大変ずれがあったりアンバランスがあったり、実際と違うんじゃないかと思ったりしますが、そういう感じは全然あなた持ってないですか。
  61. 亀本和彦

    説明員亀本和彦君) 先生も御存じのように、賃金台帳につきましては、労働関係の安定を図るために労働基準法で正しく調製すべきものとして法定化されておるものでございますので、それをもとにしたものについては実勢を反映しているものというふうに考えております。
  62. 深田肇

    ○深田肇君 そこなんですよ。おっしゃるとおり、法律でそうなっている。賃金台帳は書かなければいかぬことになっている。それで書いてきて上がったものだから、労働省なり建設省としては、その数字をいただくのは当たり前といえばこれは建前として当たり前なんです。現実は世の中そうなってないことたくさんあるでしょう。日本国の憲法どおり世の中回っているわけでもなければ、そこにできた法律どおり全部やっているわけじゃないわけだから。そこのところを行政の方が現実的処理を認識してもらわないと、働いている人なり現場の人との間にギャップが出るということを私は言いたいんです。だから、今の答弁をしている限りこれは進まないんです。  私は、そういう意味ではその答弁を予想した上で、現実は賃金台帳の記載というものを建設省等々がきちんと押さえてみたらそれが不正確なものだということは御存じだろうと思うんですが、全く不正確でなくて、それはもう心配ないものだと、これは一歩も譲れない態度だというふうにおっしゃるんですか。そんなことはないんだと思いますね。やはり無理があることはわかっているんでしょう。
  63. 亀本和彦

    説明員亀本和彦君) 残念ながら、この台帳につきまして一部に不正確な内容記載というものが散見されることは事実でございます。したがいまして、そのようなものにつきましては、我々の調査におきましては不良な標本といたしまして排除する。そうして、実勢にそぐったような形での結果を求めるというふうな努力をいたしております。  また、御指摘のような御意見もございますので、本年、賃金台帳をちゃんとつけましょうという観点から、賃金台帳整備キャンペーンというものを行いまして、全国で百八十カ所にわたりまして賃金台帳の整備についての会議を持ったところでございます。
  64. 深田肇

    ○深田肇君 やっと認めていただいたんで、もう一歩前へ出ます。  賃金台帳の記載について、いわゆる不備が一部あるというところまでおっしゃったわけですから、そのために正確につけましょうと、こうおっしゃるんですね。そこまでは法律で決まっていますから認めた上で、なおかつ現場労働者の気持ちも酌みながら一言申し上げたいんだけれども、実際問題、法律で決まっているからつけなきゃならぬことだけれども、つける側にしても大変なことらしいね。私も賃金台帳を見てみたけれども、私なんかが今大工職に仮になったらできないというふうに思いますが、あなたはあれは現在の現場労働者は絶対つけられる、完全にできる、できぬや つは間違っているんだ、お粗末なんだ、こういうふうに断定しますか。
  65. 亀本和彦

    説明員亀本和彦君) 賃金台帳は使用者が調製する義務を負っておりますので、またその内容につきましては法律で定められております。したがいまして、それについてはおよそ人を使用する者としてやる義務があるというふうに考えております。
  66. 深田肇

    ○深田肇君 それはそれとしまして次に入ります、もう時間がないものですから。  いわゆる賃金台帳から上がってくるものと実勢とのずれがあることを認められた上で、どういうふうにその実勢に合わすようなことをされているんですか。わかりやすい具体的な例を一つぱっと挙げてもらうといい、こういうふうにやっていますと。できれば何年、どこの県でどこでというふうに言ってもらうと一番いい。
  67. 亀本和彦

    説明員亀本和彦君) 私どもは賃金台帳に書かれているものの内容に不正確なものが一部にあるということはお認めいたしますけれども、我々はそういうような不良な標本につきましては排除いたしまして、結果として出てまいりますものが実勢を反映するように努力いたしております。
  68. 深田肇

    ○深田肇君 ちょっともう一遍聞かしてください。そうすると、賃金台帳を皆さんが見てみて、だめなものは排除とおっしゃったの。排除、捨てるということですか。ということにするとなると、そういう根拠に基づかないものをどこかでだれか、建設省か労働省か第三者機関かだれかが決めるということになるんですか。わからぬね、私は。
  69. 亀本和彦

    説明員亀本和彦君) 工事件数にいたしまして約一万件の件数について調査し、また対象の労働者といたしましては十五万人を対象にして調査をいたしております。その中には不良のサンプルもございますので、約一万件につきましては不良のサンプルとして認めまして、それにつきましては集計データの中から排除しております。
  70. 深田肇

    ○深田肇君 印象として申し上げると、ますます不安定な資料で不安定な査定をされてしまったなというふうに印象を持ちましたことを申し上げておきたいというふうに思います。  そこで、ちょっと手元にあるデータによりますと、皆さんの方がいわゆる平均賃金表というのをつくられている中で、ちょっとこれ勉強したいんですけれども、例えば東京が一万四千五百二十円、大工さんの場合ね。山梨が一万七千八十七円、福岡へいくと一万三千百二十九円、千葉へいくとどっと高くなって一万八千五百四十七円、こういうふうに、ぱっと私どもが見ますとえらい波があるなと、差があるなと。東京が一万四千円で、千葉は東京と近いといえば近いけれども一万八千円で、近い山梨であるが、ちょっと都心から比べればいろんな意味でと感じるところが一万七千円と高く出る。東京とは違うかもしらぬが福岡で一万三千円ぐらいしか出ない。こういうことについては私はどういうふうに分析をして理解すればいいのかなというように思いますが、ちょっと説明してみてください。
  71. 亀本和彦

    説明員亀本和彦君) 今まで申したような手続で実勢の把握に努めておりますので、実勢が調査結果にあらわれたものと考えております。
  72. 深田肇

    ○深田肇君 事実はこういうことでしょう、それは公式に数字で発表されたものですから。それはそういうものの実勢が反映されたものだとおっしゃることは間違いないんですが、こういうことについて何かあなたは感想を持ちませんか。出た数字だからそのままで行くとおっしゃいますが、私はどうもアンバランスだなと感じますが、いかがですか。
  73. 亀本和彦

    説明員亀本和彦君) 各県の労働需要でございますとか、そういったもろもろの事情によって実勢に差があれば調査結果においてもこのような差が出てくるものというふうに考えております。
  74. 深田肇

    ○深田肇君 時間の関係がありますから、これ以上押してもしようがないのかもわかりませんが、私は出てきたものだからそうだというふうにおっしゃる立場を立場として理解しながらも、このいわゆるデータというのは大変アンバランスで不安定なものだというふうに直観的に感じているということを申し上げて、これから時間をかけて六年間しっかりあなたとの間でやりとりをして、そのためにやっていきたいということを申し上げておきたいと思います。  次に、実勢実勢とおっしゃるけれども、実勢というものを把握されるときに、例えば大工さんを中心とする職人の方々を組織している全建総連という労働組合との間での意見交換をされたり調査活動の話し合いをされたりというようなことはあるんですかないんですか。
  75. 亀本和彦

    説明員亀本和彦君) 労働団体を含めまして、各種団体と会合を持ったり意見交換をする機会はたくさんございます。
  76. 深田肇

    ○深田肇君 では、そういうものが随分保証されて、そういったものをあなたの側で受けとめられて反映をしているというふうに理解をしなければならないのかなという感じを持ちながら、それにしては余りにも理解できないことが多いなという印象を持ちましたことを率直に申し上げておきたいというふうに思います。  そして、次の問題も同じく建設省に伺っておきたいんですが、最近の我々の手に入る新聞によりますと、公共事業の入札が不調で、これがどんどんとふえているという見出しが大変出てきているんですが、どうしてこういうことが起きているんでしょうか、要因について御説明ください。
  77. 佐藤信彦

    説明員佐藤信彦君) 新聞等に出ております不調の理由の話でございますが、現在、公共の建築工事を主体としましてそういうことが起こっていることがございます。これは民間工事を中心としました建築需要の増大、それによります工事量の増加、それから型枠工等の技能労働者の不足といったものからではないかというふうに考えられます。
  78. 深田肇

    ○深田肇君 もう一遍伺いますが、技能労働者の不足の要因は何ですか。
  79. 佐藤信彦

    説明員佐藤信彦君) ただいま申し上げましたように、民間工事を中心とします建築需要の増大による工事量の増加、それが原因であるかと思っております。
  80. 深田肇

    ○深田肇君 技能労働者の側の不満や要求があってなかなかうまくかみ合わないんじゃないと、こういうことですか。そういう認識ですか。
  81. 佐藤信彦

    説明員佐藤信彦君) そこら辺の話はあれしまして、最近の不調といいますのはやはり民間工事の工事量が非常に増加しているといったことが原因かと思います。
  82. 深田肇

    ○深田肇君 民間の方が仕事がいいからそっちに行っちゃって、公共の方には仕事はあるけれども仕事内容がよくないから来ないと、こんなことですか。
  83. 佐藤信彦

    説明員佐藤信彦君) 今の型枠技能者の不足という話でございますが、民間工事量がふえたということと、民間の方に行っちゃってという話ではございませんが、全体量がふえておりますのでそういう技能工が不足してきているということをお話ししております。
  84. 深田肇

    ○深田肇君 これも時間を気にするものですから次に進まにゃしようがないことですが、六年間ありますから、項目だけ申し上げておきます。  要するところは、三省の方が努力されているんだけれども、いろんな意味での矛盾が重なってきているんじゃないかということを言いたいわけですから、三省の努力を多としながらも、何とかひとつ三省協定を寄り寄り見直しながら物事をやってもらったらどうかという印象を持っているからこういうことを申し上げているわけであります。  それに関連して、大企業の方はこのいわゆる三省協定の基準策定等々についてどんなことを言っているかについて、皆さんはどういうふうに把握されていますか。
  85. 亀本和彦

    説明員亀本和彦君) 大企業という形での御質問でございますが、一般的に建設業界においてもやはり賃金台帳の整備というものが必要であるというふうにキャンペーンを通じて認識していただけたものというふうに考えております。
  86. 深田肇

    ○深田肇君 これも時間がありません。  私どもの手元にある資料によると、この場で建 設会社の名前を言う必要ないでしょうから言いませんが、私たちが認識している大手建設業界、会社、企業、これは率直に言いますけれども、三省の協定の努力を多としながらも、そのいわゆる協定賃金と私たちが考えるものについては大変いろんな問題があるということを率直に我々に対して説明してくれるんですね、企業の側が。それはもう皆さん御存じだと思うんですよ。したがって、いわゆる私たちが一番気にしている現場労働者の賃金が安いとか不安定であるとかということについては、三省協定の調査に基づく云々が基礎になっているのでこうなっているんだということを素直に企業の方は認めてくれているんですね。  そうなってきますと、そういうことは我々建設省や労働省は聞いていないと言えばそれまでのことですが、私どもはそういうふうに聞いているんです。私ども質問するとそういうふうに教えてくれるんです、企業の側が。そうなりますと、やはり三省協定の実践過程と現実化の中でもっともっと工夫すべきことがあるんではないかということをまず申し上げて、時間の関係がありますから建設省は終わって、労働省の方にちょっとお話を最後の段階で伺っておきたいというふうに思います。  今、労働省皆さんの前で、本当に素人でありますが、ちょこちょこっと短い時間でやりとりさせてもらいましたけれども、私の側としては、今の建設省の説明についてはまだまだ理解できないことがたくさんある、納得できないことがたくさんあるというふうに思いますが、労働省としてその話のやりとりを聞いておられまして、それでいわゆる雇用の問題もあるだろうし、後継者づくりのこともあろうし、そして現在働いている労働者や技能工の方々の労働条件、賃金の保障をきちんとしていくことが労働省仕事だと思いますから、と考えたときに、いかがですか、三省協定そのものは決定事項ですから尊重するとしても、より見直しという言葉が適当であるかどうか別にしても、見直しというような言葉を含めた何か検討すべき課題があるというようなことを印象として労働省お持ちになりませんか。三省協定方程式は大変結構だと、これだけしかお答えいただけませんか。いかがですか。
  87. 清水傳雄

    政府委員(清水傳雄君) 私ども建設業雇用の改善、こういう立場から申し上げさしていただきますが、建設業における人手不足の原因、これはもう今いろいろおっしゃいましたさまざまな原因がございます。基本的には、建設業という業態が御承知のように受注生産であるということ、一般の工場生産のように一定の見込みを持って生産活動をやっていくということは非常に難しい。そういう意味で年によっての変動というものが相当ございます。それからまた屋外生産であるし、移動生産であるし、それから総合生産というふうな形によって非常に多くの職種が一つ現場に入ってこられる。そういった意味で、ある意味におきましての調整的な面が人員の面で必ず必要になってくる。そういうことから雇用そのものが、一定の常用を必ず確保して、それで生産活動を継続していくというふうなことが極めて困難な、そういう構造的なものが基本的にこれはある問題であろう。  そういうところからくる賃金形態の問題もございましょうし、さらに調整的な意味合いという意味の下請依存という問題もございましょうし、そうしたところからいろんな矛盾がこの建設業についてはあり、私ども雇用改善を進める上におきましては建設雇用改善法という法律がございまして、これは一つ業種だけを対象として総合的な施策を雇用改善の面で実施をするというのは余り例がないのでございますけれども、それでやってきてまいっております。特に最近のこうした状況の中ではより問題がいろんな形で顕在化してきている、こういうふうに考えておりまして、私ども建設省の方ともいろいろ御相談もしつつ、建設の雇用改善そのものをさらにもっと見直していくべく今研究会で研究を進めておるというところでございます。
  88. 深田肇

    ○深田肇君 どうもありがとうございました。いろんな矛盾があることを認めていただいたわけでありますから、ひとつ労働省が、大変重要な建設、建築の業務の問題でありますし、それに伴う労働者の問題でありますから、積極的なイニシアチブを発揮してもらって、若年労働者の入職がどんどんふえますように進めていただきたいということをお願いしておきたいと思います。  ちょっと時間がありますので、もう一言お願いしたいと思います。  いわゆる資料を拝見いたしますと、労働省におかれましては、若年労働者の不足をどういうふうに解決するかということを主な目的として若年の建設従事者の入職促進協議会というものをおつくりになって、今鋭意努力をされているようでありますが、時間の関係ありますから先に答え言っちゃいますが、いわゆる現場の事情がよくわかる労働者代表というものをこういうところに構成のメンバーとして入れることが必要ではないかと思うんですが、今入ってないんじゃないかと思うからそういうふうに言っているんですが、労働者代表というものを入れて大いにやられた方がいいと思いますが、入っているんなら私の勉強不足です。入ってないんならぜひ入れてそういったような会議が持たれることが必要だと、そういうのが今の世の中の常識じゃないかと思いますが、いかがですか。
  89. 清水傳雄

    政府委員(清水傳雄君) 少なくとも、先ほどし上げましたこれからの建設業雇用改善のあり方を今研究をいたしております研究会あるいは審議会におきましては、建設業に従事しておる方の代表の方も、長年の経験を持った方あるいは専門工事業者の方々も一緒になって参加していただきまして進めてきておるわけでございます。  ただいまのその入職促進協議会という形のもの、私どもとして現在進めようとしておりますのは、新規学卒を中心とした新規労働力の入職促進、それから定着促進、こういうことを事業主団体が取り組むためのさまざまな改善事業にいろいろ助成をしていこう、こういう新たな施策を来年度予算において要求をしていく、こういうことは考えているところでございます。
  90. 深田肇

    ○深田肇君 したがって、そのお話が出ました入職のための、入職懇と言われたり入職協と言われたり略称があるようですが、今お話しになったその協議会の構成メンバーに現場のわかる労働者の代表者というものをに入れて、一緒になって研究をされたり討論されるのがいいんではないかと思っているんですが、それはそれでよろしゅうございますな。もう入っているんですか。
  91. 清水傳雄

    政府委員(清水傳雄君) 現在、ちょっと私どもの施策分野でまだ協議会をつくっているというふうには私は承知してないんですけれども
  92. 深田肇

    ○深田肇君 そうですか。まあ厳密に言えば、建設省と労働省が各県につくれということをやっておられるんでしょうけれども、そういうことで労働省と建設省が各県につくらしているというんであれば、ぜひひとつ各県でできるそういうものに対して、私のデータでは十五県ほどできているというようなことがデータで挙がっていますから、それでその中に労働者代表が入るべきだという意見を申し上げているというふうに理解をしてもらって、そのような御指導をお願いしたいと思います。いいですか、それは答弁してください。  もう一遍言いますよ。建設省と労働省が直接じゃなくて各県につくらしているというのは、今まで十五県できているそうですから、その中にぜひひとつ労働者代表が入るように、建設省がいいのか労働省がいいのかわかりませんが、労働者代表を入れるのが僕は社会的常識だと思うから。いや入っているよとおっしゃればそれで終わり。入ってないんなら、ひとつ入れるようにしてくださいとお願いしているわけです。
  93. 清水傳雄

    政府委員(清水傳雄君) その協議会は現在までのところ労働省の主導でその設置を進めているというよりも、建設省なりあるいは建設業界でつくられてきているものだというふうに承知をいたしておりますが、いずれにいたしましても、現場実態というふうなものがよく反映をされつつ施策が進められていかなきゃならないということはそのとおりであろうと思いますので、そういうことがよくわかるような方々の御意見もちょうだいをするということへ向けての努力は当然必要になってくるだろうというふうに思います。
  94. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 建設省ありますか。
  95. 亀本和彦

    説明員亀本和彦君) 労働省と建設省とによって、現実には各県の建設業協会の中にそのような組織がつくられております。  私どもとしては、各県のそれぞれの事情によって構成メンバーが定められて入職促進が進められるべきものというふうに考えております。
  96. 深田肇

    ○深田肇君 各県がやるということはわかった上で申し上げているんですけれども、しかも建設業界がそういったものを組織されていることもわかっているんだけれども、建設省や労働省がノータッチでないことなんだから。だから、いわゆる行政機関としては、建設業界や各県の事情というものはあるだろうが、現場のことのわかる労働者代表を構成の中に入れて、意見を聴取したり意見交換をする場をつくってくださいというふうに申し上げているわけですから、その点は約束いただけるんですか。それとも今の答弁は、こういうやりとりの形式からすれば、それはだめですということをおっしゃっているのか、どっちかはっきりしてください。
  97. 亀本和彦

    説明員亀本和彦君) 各県の御事情によるというふうに考えております。
  98. 深田肇

    ○深田肇君 労働大臣、ひとつ最後にまとめをお願いします、もう時間がありませんので。  いろんなことを申し上げましたが、私は各県の事情だというようなことはわかっているわけですけれども、いわゆる中央の指導として、こういう場で話をしているんですから、ぜひそういうふうな行政指導を各県なり業界なりにお願いをしたいということを申し上げたわけです。  それをひとつ踏まえた上で、最後の段階になりましたけれども、いろんなことを申し上げましたけれども大臣どうでしょうか、これも私の勉強不足かもしれませんが、この私が取り上げているような課題について、政府側とあえて申し上げますが、企業側といいますか、それからまた労働者といいますか現場労働組合といいますか、そういう方々の代表みたいなものが、三者がいわゆる一つの機関として、すぐ機関が難しいんなら例えば定例でもいいですが、定例がだめなら随時でもいいけれども、何かそういうふうに三者協議みたいなものをどんどんやることが、今日の状況におけるいわゆる建設業界全体の発展のために、そしてそれの中心部隊になるであろう若年の労働者たちに夢を与えるというためには、そういうふうな三者構成みたいなものがあって、随時、よりいい政策やよりいい行政指導が行われていくというようなことのためにそういうものがある方がいいのではないかと思いますが、いかがなものでしょうか。ひとつぜひ大臣としての積極的な御発言をいただきたいと思います。
  99. 清水傳雄

    政府委員(清水傳雄君) 先に一言お答えさせていただきます。  私ども建設業雇用改善を進めるに当たりましては、審議会あるいは研究会、その他そのときどきに応じましてそういうものを組織してやってきておるわけでございますが、そこには必ず建設労働に従事をされる労働者の代表の方々も参加をしていただきまして、まさにおっしゃるとおり三者構成のような形でやってまいってきております。若い人たち建設業そのものに夢を持ってもらう、そういう意味合いにおきまして、建設業労働者職業生涯モデル、こうしたものも作成をいたして、これらを作成するに当たりましてもそうした方々の御意見も十分聞く、御参加いただいた形で作成をしてまいっておりまして、そうしたものを業界あるいは専門工事団体等にも御参考にしていただき、やはり何と申しましても自分の生涯をそこに託する産業というふうな形になるように、そういう形に持っていくことが極めて重要でございますので、そういう形のモデルを作成し、できるだけこれを活用していただくような啓発を今進めつつあるところでございます。  今御指摘の問題は、各都道府県段階、地域段階においてもと、こういうふうなお話のようにも受けとめさしていただいたわけでございますが、地域において私ども行政を展開するに当たりましては、審議会、これは三者構成として持っております。そうした場面を通じまして、あるいはまた、私どもそういう基本的な考え方でおりますので、そういうところから得られたものを含めた指導指針というふうなものを各地域で活用していただく、そういうふうな形で対応をしてまいりたいというふうに思っております。
  100. 深田肇

    ○深田肇君 大臣のお言葉をいただく前に、言いたいことは、その趣旨は賛成なんですが、三者が対等に集まってきちんと話をする場が僕は大変必要だと思うんです。個別に聞くんじゃなくてね、個別に聞くことも大事ですが。ぜひ三者が、今申し上げた政府側と企業側と現場で働く労働者側の三者が対等に集まっていろんな施策を討論して決めていく、こういった場が保証されることがより必要だということを申し上げておりますので、ひとつぜひ大臣の積極的な御発言をいただきたいと思います。
  101. 福島譲二

    国務大臣福島譲二君) にわかな御質問でございまして、なかなか的確にお答えにくいところでございますが、いずれにせよ建設業というものが我が国経済の中における大きな比重を占めておることは、これはもう現実でございますし、これが順調に発展をしていくということはこれからの国民経済の発展のために何よりも大切なことの一つであろうと思います。  そういう意味で、御指摘の点というのは基本的に気持ちの上で方向としては何よりも大切なことであると思いますが、ただ、今お話しのような形が果たしてとれるかどうか、その辺についてちょっと私も自信がございませんので、委員の御提案の方向についてもう少し考えさしていただきまして、いずれにしても形は別として、御意見のお気持ちは実現できるような方向で指導をしてまいりたいと思います。
  102. 深田肇

    ○深田肇君 どうもありがとうございました。
  103. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午後零時八分休憩      ─────・─────    午後一時五分開会
  104. 浜本万三

    委員長浜本万三君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、労働問題に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  105. 前島英三郎

    前島英三郎君 浜本委員長のもとに初めて質問させていただきますが、また、以前に国会の中に補聴器を使用しておられる方々のために磁気ループをつけていただきまして、きょうも午前中試聴していただいたそうで、まだいろいろ問題点もあるようですが、私も委員長時代に各会派の皆様の御協力をいただいて、議院運営委員会皆さんのお許しをいただいて、この委員会室に試験的につけたわけですが、これから高齢化時代を迎えますので、ぜひここを一つの発火点としてまた委員長よろしく御協力をお願いしたいと思います。
  106. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 承知いたしました。
  107. 前島英三郎

    前島英三郎君 さて、私は障害者雇用促進対策ということに絞りまして質問させていただきたいと思いますが、まずことし六月一日現在の障害者雇用状況が先月十月に発表されております。(図表掲示)  その現状認識を確認する意味で、ちょっとこのデータを私なりにまとめてみたのですが、このデータに基づいてちょっと伺いたいと思うんですけれども障害者雇用促進は私にとりましても非常に重要なテーマでありますので、これまでずっとその状況のデータの分析をしてまいりました。その一部をこのグラフにしてみたんですけれども最初のグラフは雇用率の推移であります。 雇用制度を導入して以来、国際障害者年を挟みまして、これが国際障害者年、昭和五十六年ですが、挟みまして上昇を続けた雇用率が、昭和六十一年、この部分です、昭和六十一年に前年に比べて横ばいになりまして、昭和六十二年には制度始まって以来初めて率がダウンする、こういう数字になるわけです。しかし、六十三年、そして今年度は持ち直しをいたしまして上昇に戻っているわけです。  次に、雇用されている障害者だけを引き出してみますと、この一番下が平成元年になるわけです。過去のデータに比べてみてもぐんと伸びておる。ただ、雇用率といった場合、分母となるのが常用労働者の全体の数でありまして、昨年からことしにかけて常用労働者数も大きく伸びました。そのために、障害者雇用率が伸びても雇用率の率としては余りこの数字は上がらない。ここがちょっとマジック的になっちゃいまして何かわかりにくいところがあるわけですけれども。つまり、数字だけ見ますといかにも頭打ちのような形にはなるんですけれども、それなりに伸びていることはデータを見ればこれは全体としては評価できると思うんです。しかし、昭和五十六年、一九八一年の国際障害者年の前後の勢いというもの、このあたりの勢いですね、このあたりの勢いというものから比べると、残念ながらそのころの勢いを取り戻すことはできていない、こういうことは言えると思うんですね。  今回の障害者雇用状況について労働大臣はどう受けとめ、どのような傾向があらわれていると理解しておられましょうか、まず承っておきたいと思うのであります。
  108. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) 本年度の障害者雇用状況調査の分析につきましては、ただいま先生から御指摘がございましたし、私どもも同様の考え方を持っておるわけでございます。  そこで、本年六月一日現在の一般の民間企業における雇用状況について見ますと、雇用障害者数は十九万五千二百七十五人で、前年より八千人以上の大幅な増加となっておりますが、一般労働者数も増加したため、実雇用率で見ると一・三二%と、前年に比べて〇・〇一ポイントの上昇にとどまっております。また、雇用率未達成企業の割合は四八・四%と前年よりも〇・一ポイント改善されております。  そこで、本年の分析でございますけれども、景気拡大に伴う旺盛な労働力需要に支えられまして全体の労働者数がふえる中で、障害者雇用数も近年になく大幅に増加したわけでございますけれども、相対的には若干全体の労働者数がふえているという状況があったわけでございます。また、従来実雇用率が低かった第三次産業、特に卸売、小売業、飲食店において〇・〇一ポイントでございますけれども上昇いたしておりますし、雇用率未達成企業の割合も一・一ポイント改善されております。ただ一方で、千人以上の企業におきましては、雇用率未達成企業の割合は〇・一ポイント改善されましたけれども、実雇用率が〇・〇一ポイント低下したという問題も残されているかと思います。いずれにいたしましても、実雇用率は一・三二%で、法定雇用率の一・六%とはいまだに大きく隔たっておりますし、また大企業につきまして若干ながら下がっているということもございますので、こういった点を念頭に置きながら障害者の雇い入れ促進に一層努力してまいりたいと思っております。  また、五十六年、一九八一年の国際障害者年のころということでございますが、障害の重度化とか高齢化を反映しているという問題はあろうかと思いますけれども、そういった点を克服しながらさらに雇用率の達成に目がけて努力すべきものと考えております。
  109. 前島英三郎

    前島英三郎君 この全体を見ますとS字型のカーブが出ておりまして、最初はゆっくりと上昇して、国際障害者年を契機としてぐんと障害者雇用が伸びて、その後だんだんと勢いがなくなって、六十二年に至っては雇用率がマイナスを記録してしまったと、こういうわけなんです。六十三年以後は精神薄弱者を含めた数字になっていますから、それ以前と単純に比較できなくはなっていると思うんですけれども、どうも国際障害者年当時のような勢いは取り房せていない、これは一つの壁に突き当たっているというような気もするわけであります。  その原因一つは、私は職業訓練のあり方にも問題があるのではないかという気持ちがするんです。時代のニーズに対応する職種の訓練を行うべきなのに、どうも訓練校では旧態依然の状況が続いているような気がするんですね。二万七千ぐらい職種があるというので、何ができないかではなくて何ができるかということを見つけていきますと、意外にこの障害だからこの仕事しかないだろうというような振り分け方はしなくてもいいんじゃないか。そういう意味では、やっぱりこれは早急に改善した方がいいような気がするんですけれども、その辺はいかがでしょうか。
  110. 甘粕啓介

    政府委員(甘粕啓介君) ただいま先生指摘ありました点につきましては、私ども大臣からも同じような指摘を受けておるところでございます。  言いわけじみるわけでございますが、私ども職業訓練の重要性につきましてはきちんとした認識を持っておりまして、現在、身体障害者の方はもとより、精神薄弱者の方も含めた実施体制をどうしていくのか、あるいは重度化に応じた訓練体制をどのように整備していくのか、あるいは今御指摘ございましたような訓練科目について、近年の技術革新なり産業構造の転換に合わした体制をどう組んでいくのかということにつきましては日夜努力しておりまして、ここ三、四年につきましては求職者のニーズあるいは地域の産業の状況、こういうものに合わせまして毎年十科目相当数につきまして見直し、転換を図っているところでございます。あるいは身体障害者の訓練校そのものの建てかえ、そういうこともしておりまして、今後とも実際の職業の転換あるいは発展職種、そういうものをにらみながら訓練科目の体制整備につきましては努力を続けていきたいというふうに思っておるところでございます。    〔委員長退席、理事糸久八重子着席
  111. 前島英三郎

    前島英三郎君 午前中私は税特委の関係で席を外しておりましたんですが、傍聴した人の話によりますと、堀委員質問に対しまして労働大臣はお子さんのことまで言及されて、さらに涙ぐんで答弁されたと伺いまして、大臣がいかに真剣に障害者問題に、政治全般に対してであると思うんですけれども、大変強い決意で取り組もうとされているか感動いたし、私もじんとした思いでございました。まさしく障害を持つということはだれしも自分で選んだものでもありませんし、またそういう子供を産みたいと思う親御さんはいないわけでありますし、しかもやっぱりだんだん成長していきますと、何かしらの自立、その自立の道さえしっかりつくっていけばすべての障害を持った人たちも堂々としたタックスペイヤーになれる。そういう思いを持ちますと、やっぱり職業をいかに開発していくか、考えていくか、そういう道づくりというのは大変重要であろうかと思います。  今までは割合身体障害者雇用促進法という点から身体という言葉の中で非常に対応されてきた職業訓練と申しますか、そういうニーズのこたえ方であったような気がするんですけれども、これからは障害も多様化してきますし、具体的には精神薄弱者とかあるいは精神障害者皆さん雇用ということも大変重要な雇用対策になってくるんじゃないかというような気がいたします。これもこれから労働省一つ障害者雇用の中でも重要な位置づけをしてもらいたいと思うんですけれども、長い間身体障害者を中心に施策を行ってきたわけですから、新しい展開は簡単なことではないと思うんです。  精神薄弱者の方々につきましては二年前から雇用制度の対象に含めることにしたわけでありますけれども、身体障害者の場合に比較して政策的に見てどのような難しさ、あるいはどういう点が課題としてあるか、お答えいただければと思うんですが。
  112. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) ただいまお話がございましたように、昭和六十二年の法改正で、身体障害者雇用促進法から障害者雇用促進に関する法律ということで法律の中身も精神薄弱者を対象とするように変わったわけでございます。そういったことで私どもとしても雇用促進に努力しておりますし、また事業主の方々の努力あるいは御本人の努力によりまして職場に定着しておられる方もあるわけでございますけれども、率直に申しまして、身体障害者と異なった解決しなければならない課題もあろうかと思っております。  そのあたりを若干申し上げますと、一つにはやはり基本的な労働習慣が十分確立されていない方、あるいは一日の作業に耐えられるような体力が十分でない方々がいらっしゃるというようなこと、あるいは精神薄弱者の就業が困難な職種が多いという現実もございます。また、個々の精神薄弱者の方々の把握確認に困難があること、あるいは社会生活指導の面で、特に通勤などを含めました職場の生活と個々人の生活と関連する接点のあたりでございますけれども生活指導の面で特別の配慮が必要となってくるというようなことなどの問題が指摘されておりまして、ここらあたりは解決されていかなければならない課題であろうかと思っております。
  113. 前島英三郎

    前島英三郎君 私の理解では、もし一口に言うとすれば、身体障害者の場合は物理的といいますか、どちらかといえばハード面での配慮が主要な問題としてあらわれるのに対しまして、精神薄弱者の方の場合には、指導に当たる人、仕事生活を適切に導くためのいわば人的な面、言いかえればソフトの面での配慮が主要な問題となると思うんです。  そういう意味では、実際これまで実施してきたことにもそういう特徴があらわれていると思うんですけれども精神薄弱の方々の雇用促進のためにこれまでどのような施策を講じてこられたのか、ちょっと伺っておきたいと思います。
  114. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) 精神薄弱者雇用の確保、安定を図るためには、ソフト面の対策が極めて重要であるという点は御指摘のとおりであろうかと思います。そういった意味で、生活習慣は確立しておりますけれども職場のルールに対する理解など基本的な労働習慣が未確立な方々もいらっしゃるということ、あるいは作業方法、作業手順などのきめ細かな、かつ粘り強い指導が必要であるというようなこと、また現場の人間関係、そういったことにも配慮しなければならないという、そういうことが極めて重要でございますので、私どもとしては職業安定機関あるいは障害者職業センター等の努力によりまして、そういった面でのきめ細かい指導、あるいは事業主に対する御努力をお願いしているところでございます。  このために、特に労働習慣が十分確立していない方々につきましては、昭和六十二年度から地域障害者職業センターで模擬的な作業場を設けまして、そういった模擬的就労を通じての基本的な労働習慣を習得していただく、そういうふうな準備訓練といったようなものをスタートさせておりますし、今後段階的に拡大してまいりたいと思っております。  また、作業遂行に当たっての指導、援助を必要といたします重度の精神薄弱者に対しましては、これらの業務を専門的に担当する職場の指導員を配置されました事業主に対して助成をするといったような形でやっておりますが、いずれにしても私ども現場の職員の粘り強い努力というものが一つの基本の対策としてやっているものであると申し上げられると思います。
  115. 前島英三郎

    前島英三郎君 精神薄弱者の育成会の皆さんを初め、強力な施策の推進を要望されておりますので、今後積極的な展開を要望しておきたいと思います。  さて次に、精神障害者の方々の雇用対策なんですけれども労働行政としては極めて新しい課題というのが実態であろうと思うんです。しかし、西欧などでは相当の経験があるようでございまして、労働省としてもやりがいのある仕事であろうと私は考えております。  そこで、まず労働大臣にこの問題についての現状認識を伺いたいと思うんですけれども、特に大臣は最近精神障害者の方々の関係団体皆さんにも面会されまして要望も聞いてくださったそうでありますから、十分に御理解をいただいていると思うんですが、御決意を含めまして今後の取り組み方を伺いたいと思います。いかがでしょうか。
  116. 福島譲二

    国務大臣福島譲二君) 私もかねてから全国精神障害者家族会連合会、全家連の熊本における顧問役を仰せつかっておりまして、機会あるたびに障害者の親御さんたちと会合を持たさしていただきまして、その方々の持てる苦しみ、悩み、そしてまた期待をされるところを常日ごろ伺っておるところでございます。労働省に参りましてからも、労働省関係関係の皆様方にお役に立つ分野がたくさんあると思っておりますし、前回全家連の代表者の皆様方ともお目にかかりまして、改めてそれらの要望について幾つかの点について伺ったところでございます。事務的に今それを詰め、御相談をしておるところでございますが、事柄の性格からして確かに難しいところがあることは否定できないところがございまして、私も思い切った前進的なお返事が今の段階でなかなかしにくいことは大変残念でございます。  しかし、全国百万にも及ぶところの障害者の皆様方がおられることでもございますし、今後できる限り全家連の御要望等も生かせるところは生かしながら、この問題に力を尽くしてまいりたいと思っております。
  117. 前島英三郎

    前島英三郎君 たまたまあしたは全家連の全国大会が私の郷土の山梨で開かれますし、来年は大臣の郷土の熊本でまた全国大会が開かれるということで、そのたびごとにやはり精神障害者の社会復帰とともに精神障害者雇用というものに、非常に日本では雇用の面では谷間に置かれている部分という声も強うございますので、ぜひひとつ積極的な取り組みを心からお願いをしておきたいと思います。  いろいろ姿勢とすればやらなければならないというお気持ちを伺ったわけでありますけれども、そこには裏づけのある手法とか技術などが確立されていかなければならないと思うんです。その意味では、精神障害者職業リハビリテーションはまだ発展途上にあり、調査研究を積み重ねる必要も大きくあると思うんですね。この辺の対策として労働省はどのような配慮をしてきたのでしょうか。また、これからどのような努力をするおつもりなのか、伺っておきたいと思います。
  118. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) 精神障害者職業リハビリテーションにつきましては、職場適応訓練あるいは職業準備訓練など既存の雇用促進施策を適用いたしまして、具体的な職業紹介、職業指導のノーハウの蓄積を図ってまいってきておりますし、今後その充実に努めていくことといたしております。  また、平成三年度に開所予定の障害者職業総合センターにおきまして、こういった精神障害者の方々の雇用促進のあり方、職業リハビリテーションのあり方につきまして実践的な調査研究を行いまして、そういったことを通じまして精神障害者のリハビリテーションのあり方について具体的施策に結びつけていけるようにいろいろと研究開発を進めてまいりたいと思っております。
  119. 前島英三郎

    前島英三郎君 障害者雇用審議会に精神障害者関係の方も今度加わっているんですよ。そういう意味では、例えば精神障害者を雇い入れた場合には助成金を支給できるようにするといったことから始めてはどうかというような気がするんですが、その辺はどうですか。
  120. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) ただいま申し上げましたように、例えば今後平成三年に開設されます障害者職業総合センターにおける実践的な調査研究を積み重ねながら、精神障害者雇用促進のあり方について検討を進めていくわけでございますが、助成金の問題につきましても、そういった点と並行しながらいろいろと考えていきたいと思っておりますが、今直ちに具体的にこうするということの答えを持ち合わせておりませんことを御了 承いただきたいと思います。
  121. 前島英三郎

    前島英三郎君 ぜひそう遠くはない形で実施していただきたいと思うんですね。  こうしてみますと、助成金制度全体のあり方が現状のままでいいのかという問題が出てくると思うんです。障害者の範囲を、身体障害者のみではなく、精神薄弱者あるいは精神障害者を含めてすべての障害者に拡大して雇用促進対策を考えるということは、とりもなおさず物理的な配慮だけではなく人的な配慮を中心に、もろもろのソフト面での対策の重要性が増すことを物語っていると思います。また、身体障害者の場合であっても、必ずしもハード面の配慮が決め手ではなくて、コミュニケーションなど総合的な配慮が必要である、このように思います。  助成金制度は、身体障害者雇用促進法時代にその骨格ができていたわけですが、どちらかといえばハード重視の考え方が主流になっていると思うんです。例えば車いすの人を雇い入れる、そこのスロープは助成しましょうよ、こういう形であったと思うんですが、ハード面とソフト面の区分が難しい面もあると思うんですけれども現状ではそういう比率みたいなものはどのようになっているでしょうか。
  122. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) 助成金の関係でハード面とソフト面、確かに先生おっしゃいましたように厳密に分けることはなかなか難しいかと思いますが、ごく大まかに申しますと、ハード面の支給額が約二十七億円に対しまして、ソフト面の支給は約三十五億円ということになっております。    〔理事糸久八重子退席委員長着席〕  そこで、重度の障害者雇用促進と職場への定着を図るために、ハード面だけでなくソフト面でも助成措置の充実が必要であろうかと思いますが、これまでも例えば例を挙げますと、聴覚障害者のために手話通訳担当者を委嘱する場合の助成金でありますとか、内部障害者の方々のための健康管理のために相談のお医者さんを委嘱した場合の助成金でありますとか、あるいは視覚障害者のために介助者を配置する場合でございますとか、さらには重度の精神薄弱者のために業務遂行援助者を配置する場合のそういったことにかかわる経費につきましてきめ細かに助成措置を講じてきているところでございますが、今後とも先生おっしゃいますようにソフト面を十分考えながらこの助成金制度のあり方について考えてまいりたいと思っております。
  123. 前島英三郎

    前島英三郎君 これも期待するといたしまして、障害者雇用対策でやはり重度障害者雇用というのがより大きな問題であり、また困難さがあることは否定できないと思うんですけれども、この部分はやっぱり労働省だけで考えるのではなくて、厚生行政福祉行政でいう重度障害者雇用という面からいうと、重度障害生活的な重度障害者、しかし雇用の場では軽度の障害にもなる。車いすなんかは、生活は重度でも雇用という場合ではかなり軽度になるんだろうと思いますね。しかし、生活は軽度かもしれないけれども、取り上げ方によって、雇用という面では脳性麻痺者のように非帯に難しいという問題点もある。  そういうことを考えていきますと、やっぱり厚生行政との連携というのが私は大変重要な時期に差しかかってくると思うんです。こういうことは僕も十年以上にわたって言い続けてきたわけですけれども、その結果、幾つか改善は見られますけれども、担当者がかわりますとまたもとに戻ってしまうみたいなことが続いているような部分もありまして、やっぱり重度障害者雇用対策の推進、そしてそのための厚生行政との連携というのはこれから大変重要だと思うんです。特に年金法、六十歳から六十五歳になる、ではその間の五年間をどういう形でするか、あるいはこれもやっぱり雇用の中で考えなきゃいけないと思いますし、そういった意味では必然的に厚生行政労働行政とは密なる関係になければいけないと思うんですけれども、その姿勢をちょっと伺っておきたいと思います。
  124. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) ただいまお話がございましたように、このノーマライゼーション理念に基づきまして障害者の方々に雇用という形で社会参加をしていただくに当たりまして、厚生行政との連携というのは極めて重要であろうと思っておりますし、ただいまの先生のお話を肝に銘じまして私も職務に当たってまいりたいと思っておりますが、障害者雇用対策につきまして、従来から重度障害者に重点を置きながら障害の特性に応じたきめ細かな施策を推進してきているところでございます。  特に、就職がなかなか難しい重度の障害の方々あるいは精神薄弱者の方々に対しまして、民間企業の活力とノーハウを生かしながら地方公共団体と民間企業との共同出資による第三セクター方式の重度障害者雇用企業等の育成などを行ってきているところでございますが、さらに障害の重度化という傾向の中で、そういうノーマライゼーション理念に立脚した福祉社会を構築していくためには、授産施設でございますとか小規模共同作業所などで福祉的に就労している方々でございまして一般就労を希望される方々について、こういう厚生省の諸機関とも連絡をとりながら、きめ細かな職業紹介、職業相談を通じて雇用の場を確保するためにできる限りの努力をしてまいりたいと思っておりますし、そういったことで重ねて申し上げますが、連携を密接にとってまいりたいと思っております。
  125. 前島英三郎

    前島英三郎君 そういう意味では、共同作業所とか小規模作業所とかというようなものもたくさんあります。昭和五十二年、私が初めて国会に来ましたときには、例えば小規模作業所などの公的な援助施設は十五カ所程度でありました、昭和五十二年当時。それから十二年たったわけですけれども、今年度は六百十五カ所になり、来年は八百三十カ所と一応私たちは政府にお願いをしているところですけれども、しかしこれは厚生行政の中でいくけれども、やっぱりそこと労働行政とのつながりが何かこう非常に乖離しているような部分がありまして、この部分はいわばもっと違う形の職業訓練的な立場で、実際の労働行政の中でそこから雇用されていくというような道もつくっていく中に私は連携の必要性というものを痛感しているわけですね。ぜひそういう意味でも取り組んでもらいたいと思うんです。    〔委員長退席、理事糸久八重子着席〕  それは幕張に近々できるという例の研究センターですね、その研究センターではそういうことも含めてこれからいろいろ障害者職業総合センターとして機能していくんだというようなことも伺っているわけであります。これもやっぱりソフトの面、ハードの面、こういうことを含めた障害者全般の雇用の中に科学的データを取り入れた中でこれからやっていかれるものだと思うんですが、大変それも期待されているんですが、それはいつごろ完成して、どのような形で転がっていくのか。また、あわせてそうした今後の重度障害者に対するお考えを大臣に総論的にお伺いをいたしまして、私の質問を尾辻委員の方にバトンタッチをしたいと思います。
  126. 福島譲二

    国務大臣福島譲二君) 今、鋭意障害者雇用センターを建設中でございまして、平成三年に完成をいたしたいと思っております。  なお、御承知と存じますが、このセンターにおきましては、職業リハビリテーションに関する技術の研究開発、さらに関係者の養成と研修、あるいは重度障害者皆さん方に対する職業リハビリテーションサービスのモデル的な提供などを重点として行ってまいりたい。それを予定した施設を建設いたしておるところでございます。  なお、ソフトの面について十分に留意せよというお話でございましたが、このセンターが円滑に運営できるように、その組織あるいはスタッフ等についても万全の体制を整えるべく、目下斯界の権威者によります設立準備委員会のメンバーによってその辺も十分に御検討いただいておるところでございまして、その御検討の結果は十分に生かしてまいりたいと考えております。
  127. 尾辻秀久

    ○尾辻秀久君 実は、私の本日の質問は急に決まったんです。そこで、けさほどは大臣のお人柄に 触れて大変感動する場面もございました。また、体験を通しての本当に胸を打つ御質問もございましたので、私のものはそんなものには遠く及ばないのでありますけれども、体験を通して日ごろ感じておりますことを率直にお尋ねをいたしたいと存じます。  まず、私のくだらない体験でありますけれども、若いころに随分外国をほっつき歩いておりまして、一番長いときは五年間日本に帰ってこなかったのであります。帰ってこなかったと言えば聞こえはいいんですが、正確には帰ってくる旅費がなくて帰ってこれなかったのであります。持って出たお金は当時の限度額五百ドルでございます。そうしますと、本当に隔世の感がございます。今日では日本が外貨を持ち過ぎてそれが国際問題になるわけでありますが、そのころは日本に外貨がなくて、外国へ行くというとやっと五百ドル渡された、そんな時代でございました。今のレートですと七万円ぐらいだと思いますが、当時は一ドル三百六十円でしたから十八万円になります。私にしてみれば大金でありましたけれども、まあしょせん五百ドルでございました。これで五年間帰ってこなかったわけでありますから、外国で随分働かせてもらいました。改めて私を働かせてくれた国々に感謝をしなきゃいかぬなと思っておりますし、また私の前にも後にも日本人などが働いたこともない職場で働いたわけでありますから、ヨーロッパの人やアメリカの人の仕事に対する取り組み方とか考え方はそれなりによく承知をしておるつもりであります。  そこでまずお尋ねをするわけでございますが、今も隔世の感あると申し上げました。今日、我が国は世界のGNPの約一割を占めておりますし、国民一人当たりのGNPは世界の最高水準に達して、それこそ経済大国としての地位を揺るぎないものにしております。これは、私たち国民一人一人が血のにじむような努力をして築き上げてきた成果である、私はこう思うわけでございますが、改めて大臣の御感想をお聞かせいただきたいと存じます。
  128. 福島譲二

    国務大臣福島譲二君) 私は昭和二年生まれでございまして、まさに終戦のときまで学生生活を送りましてから、その後働く世界に入ってきた一人でございますが、そういう意味で戦後の四十年間を思いますと、終戦当時まさに食べるのにもう精いっぱいであった当時のことを今御質問伺いながら思い浮かべております。  それで、委員は大変積極的な気概を持って裸一貫外遊をされながら、しかもその糧は外国で得ながらという今の御体験でございましたが、そういう意味ではワーキングホリデーというような新しい制度労働省として各国と、まだ多くの国ではございませんが、協定を結びながら、若い方々が外に行って、場合によっては働きながらその国々の状況などを勉強してくる、本当に立派な制度もできたことを思い浮かべますと、本当に隔世の感がございます。  この四十年間、まさにすばらしい経済発展を遂げてきたわけでございますが、その一番の基礎というのは、やはり私ども日本国民というものがまさに勤勉に誠実に汗をして働いてきた結果が、戦後の本当に飢餓のどん底のような状態から今日の日本を生んだ最大の力であっただろうと思っております。そういう意味でも働く方々の幸せを確保していくということは何よりも大切なことでございますし、そういう意味での労働行政としての展開を一つの中心として今後とも考えてまいりたいと思っております。
  129. 尾辻秀久

    ○尾辻秀久君 今まさしく大臣がお答えになったとおりだろうと思います。私たちが勤勉で、一生懸命頑張って、そしてこの豊かな国を築き上げた、そう思います。そして、今国全体は豊かになったわけでありますから、今度はこの国全体が持っている豊かさを国民一人一人が享受するというんでしょうか、実感をするときでなきゃならない、そのように思います。そうして思いますと、何となくまだゆとり不足だな、こう思うわけでございます。  これにはいろんな問題もあるだろうと思いますけれども、やはり先日発表されました国民生活白書において指摘されているように、労働時間の問題が大きな課題ではないかな、こう思います。日本人が働き過ぎだと言われて久しいものがございます。  ただ、先ほど申し上げましたように、外国で働いた私の率直な感じからいいますと、一日の仕事量や一日の仕事時間、それはそんなに大きな差はないんじゃないかな、こう思います。ただ、一番の問題は週休二日制が完全に普及してない、まずはここにあるんだろう、こういうふうに思うのでありますけれども、どのようにお考えでしょうか。  そしてまた、週休二日制を普及させるためにどういうふうな手だてをしておられるか、お聞かせをください。
  130. 野崎和昭

    政府委員野崎和昭君) 先生指摘のとおり、欧米諸国におきましては完全週休二日制が社会的な実態として定着しているわけでございますが、我が国では現在のところ完全週休二日制の適用を受ける労働者の割合は二九・五%でございます。完全週休二日制ではございませんが、月一回とか月二回とか、そういう週休二日制の適用を受ける労働者も含めますと七九・九%でございまして、日本全体を平均してみますと週休一・五日ぐらいかなというのが現在の実態でございます。    〔理事糸久八重子退席委員長着席〕  これを完全週休二日制にどうやって持っていくかということでございますけれども、先般改正をしていただきました労働基準法におきましては、できるだけ近い将来に週四十時間制、完全週休二日制にするということを既に法文に規定されておりまして、そこへ段階的に持っていくということで、六十三年の四月からは従来の四十八時間制から四十六時間制、要するに月一回週休二日制という体制になっております。これを平成三年の四月からは週四十四時間制、月二回週休二日制にいたしたい、そしてさらに新しい経済計画の計画期間中には完全週休二日制を実現できるようにしたい、そういうことで政府としては諸般の対策を進めているところでございます。
  131. 尾辻秀久

    ○尾辻秀久君 私がアメリカで働かしてもらったときには、今日も当然そうであるはずですけれども、土曜日に仕事をしますと日ごろの給料の一・五倍、日曜日に仕事をしますと日ごろの給料の二倍、これはもう常識でございました。あれは法律で定められていたのかな、何か協定みたいなものだったのかな、よくは知りませんけれども、とにかくそれはもう社会の常識でありました。今後そうしたことも御指導いただければと思います。  まず週休二日のことを申し上げましたけれども、私たちが働きすぎであることの第二の理由というのは、欧米諸国と比べまして年次有給休暇のとり方にあるんじゃないかなと思います。実際に年次有給休暇がとれるようにならないと私たちに真のゆとりというのは来ないんじゃないかなと思いますが、これに対して行政の取り組みというのをお聞かせください。
  132. 野崎和昭

    政府委員野崎和昭君) 御指摘のとおり、年次有給休暇にも大変問題がございまして、現在の実態は年間労働者一人平均十五日ないし十六日付与されているのでございますが、実際に使用しているのはちょうどその半分くらい、七日ないし八日でございます。何とかこれを、アメリカ、イギリス等では年間二十日の年次有給休暇を消化しているということでございますので、そういった線に持っていきたいということで考えているわけでございますが、年次有給休暇の取得率がなぜ低いかという原因を調べてみますと、一つは周りの方への気兼ねがある。それからもう一つは、欧米諸国では当然のことになっております長期の連続休暇の習慣がないという二点のように思います。  したがいまして、これに対する対策といたしましては、これまでは年末年始、ゴールデンウイーク、夏季休暇等の四季折々にまとまった休暇をとるということで進めてまいりましたけれども、来年度におきましては、さらにそういった企業全体 で休むあるいは国民一斉に休むということではなくて、個人個人が年に一回くらいは自由に一週間くらい休める時期があっていいんじゃないか、あるいは五年なら五年に一回くらいは一月くらいリフレッシュのために休むことがあってもいいんではないか。そういったいろいろなアイデアを出しまして、労使の御意見を聞きながら連続休暇取得促進要綱というものをガイドラインをつくりまして、その普及を図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。
  133. 尾辻秀久

    ○尾辻秀久君 このことも大切なことでありますから、どうぞよろしくお願いを申し上げます。  きょうはくだらぬお話しましたので、ついでにもう一つさせていただきたいと思うんですが、外国で働かしてもらったころに、デンマークの食品工場で働いたことがあるんです。十五人から二十人ぐらいの部署の責任者をしておりまして、ちょっと偉かったのであります。そのときにもう私が一番困っておりましたのは、何か悩みの種であったかといいますと、残業をしてくれる人がもう絶対にいないんです。もう残業してもらうのにひたすら、極端に言いますと土下座して頼み込まないとだれも残業してくれない、これが私の悩みの種でございました。これはちょっとデンマークの特殊事情もあったりして、税制の問題なんかもあるんですけれども、そのころを懐かしく思い出したりいたします。  それに比べると、ちょっと表現はよくないのかもしれないけれども、我々日本人というのは残業が好きだなとついつい思います。しかし、この問題をやっぱり何とかしないと全体の労働時間というのは絶対に短くならないと思うわけでございまして、これについてはどうお考えたのか、労働省としてどうしておられるのか、お尋ねをいたします。
  134. 野崎和昭

    政府委員野崎和昭君) 残業につきましては、御指摘のとおり欧米では、ヨーロッパではもう非常に厳しい制限がございますし、アメリカでは先生が御指摘のように残業をしますと五割増しということが法律で決まっております。それに比べまして、日本の場合には制度的にそれよりは緩やかになっているわけでございますが、これは一面では日本の場合終身雇用制でございますので、景気の変動に応じて労働者を解雇するということはできませんので、それを残業でカバーするということになっておりまして、そのためにある程度時間外労働時間が長くなるのはやむを得ないというふうに思います。  しかし、現在の残業時間は国民一人平均年間百八十八時間の残業を行っております。これを一応経済計画の目標では百五十時間程度に抑えたいということでございまして、残業につきましては労使で時間外労働協定を結んで行っていただくことになっております。その時間外労働の管理を労使で適切にやっていただきたいということをお願いすると同時に、私どもにおきましても、その届けられました時間外労働協定が月間で言いますと五十時間を超えるような長い時間外労働を認めるような協定につきましては、窓口で指導さしていただきまして受け付けないというようなこともさしていただいているわけでございます。
  135. 尾辻秀久

    ○尾辻秀久君 とにかく労働時間を短くするための今日日本が抱えておる課題と思われるものを三つ挙げてお尋ねをしたわけでございますけれども、政府は経済計画の中で年間総労働時間を計画期間中、これは昭和六十三年度から平成四年度にかけてでございますけれども、この間に千八百時間程度に向けてできる限り短縮するという目標を掲げております。いろいろ御努力いただいておるとは思いますけれども、これはなかなか容易なことではないんじゃないかと思います。大臣の御決意を伺いたいと存じます。
  136. 福島譲二

    国務大臣福島譲二君) 今御意見がありましたように、今の二千百時間を千八百時間に短縮すると申しますと、「できる限り」という頭がついてはおりますが、年々恐らく最低五十時間は短縮していかないとその目標に到達しない、お説のようになかなか大変なことだろうと思います。  しかし、国際的に見ますと、今日本の二千百時間は米英に比べますと約二百時間、フランス、西独に比べますと約五百時間も長いということでございまして、御承知のように、この問題そのものが国際的な摩擦の種になりかねない、そういう状況でもございます。  それはともかくとして、やはりこれからの長い人生をできるだけゆとりを持った生活をするということは、これは私どもこれまで繁栄した国の中における国民として当然の願いでもございます。また、最近のいろんな状態を伺っておりますと、新規就職等におきましても学生諸君が最初に何を言うかといいますと、賃金、給料の問題は第二の問題であって、どれだけ年間休暇がもらえるか、あるいは先ほども指摘がありました超過勤務がそんなになくて済むかどうか、こういうことにむしろ第一の関心があると言ってもいいようなさま変わりの状態になってきております。  当然のことながら、今、人手不足の中にそういう配慮をいたさなければ企業もまた人材の確保もできない、こういう状況にもなってきておりますし、諸般の状態を総合的に考えて、この労働時間の短縮の問題は、これはもう国として重点的に取り組んでいかなければならない大変大きな問題だ。しかし、それについては中小企業等に対する配慮がやはり必要でもございますし、国民的なコンセンサスを得なければ、また大企業あるいは官公庁ばかりそういう週休二日制ができるということになりましても、全体としては国民生活の公正さを欠くことにもなるものですから、大変困難な問題はあると思いますが、いろんなことを考えながら全力を尽くしてまいりたいと思っております。
  137. 尾辻秀久

    ○尾辻秀久君 私たちは学生のころに、よく学びよく遊べと教えられました。ヨーロッパやアメリカの人たちを見ておりますと、本当によく働きよく遊ぶ、こういうふうに思います。  私のくだらぬ体験をきょうは話をさせていただきましたので、もう一つ話をさせていただくんですが、彼らと一緒に働いたりつき合ったりしていますと、この連中の――連中という言葉はよくないのかもしれませんが、親しみを込めて連中と呼びますが、この連中の体力というのはどうなっているんだろうと思うことがよくあります。  夜中までがんがん飲んで、けろっとした顔で朝出てきますし、土日にめちゃくちゃ遊びまくって、また月曜日は本当に知らぬ顔をして出てくる。私が眠そうな顔をしていると、おまえは眠そうな顔をしている、こう言うものですから、言われると腹が立つので、いや日本人の目はそもそも細いんだ、こういうふうに言いますと、いやそもそも細いのはわかっておるけれども、おまえのけさの目はそれはそもそもじゃなくて眠い顔だと。よくこんなやりとりをしましたけれども、そんな思い出がございます。  やっぱり私たちが今しなきゃならないことというのは、この働くときと遊ぶときの切りかえのコツというんでしょうか、そんなものを身につけなきゃいかぬなと思いますし、やっぱり彼らに負けない体力だけはつけておかなきゃいかぬのじゃないかなと、こう思うんです。  労働時間は短くしなきゃいけませんし、それはもう重要な課題ですけれども、ただそのときに、労働時間を短くするということと仕事の密度を薄くするということとはこれは全然別なことで、そんなになっちゃいかぬわけでありますから、仕事はきっちり密度濃くやって、そして短くする、このことを忘れちゃ国がまた危うくなるんじゃないかと思うわけでございます。  したがって、よく働いてよく遊ばなきゃいかぬ、こう思っておるわけでございますが、大臣の御感想をお聞かせいただければと思います。
  138. 福島譲二

    国務大臣福島譲二君) 私も学生時代から、むしろよく遊びの方が先でございましたが、よく遊び、よく学んだと言えるかどうかわかりませんが、そういうモットーでおりました。  今お話がありましたように、私もいろんな機会に申しておりますが、よく働きよく遊ぼうではな いか。そして今まさに遊ぶ方も、私どもの若い時代はほとんど余り種が少なくて、外で遊ぶというと野球をやってみたり、家の中ではマージャンしかできないような、そういう環境でありましたが、そういう意味では今はレジャーというか趣味というのも本当にもう大変な数、大変な範囲、大変ないろんな方向に広がっていっております。この今の余暇というものを労働時間を短縮することによって生み出して、そして余暇を積極的に活用して、そしてリフレッシュして次のまた活動に備えるということはやはり大変な大きな活力になってくるだろうと思います。  そういう意味では、先ほどまだ話題には出ておりませんでしたが、リフレッシュ休暇という形で、長の職業生活の中の折々に十年とか十五年とかあるいは二十年とか、そういう節目節目に短くても一週間とか十日とか、今現実にある企業では三カ月リフレッシュ休暇を与えておるところがあるようでありますが、そういう制度どもこれからどしどしとひとつ普及をして、まさによく働きよく遊べる環境をつくっていきたいと思っております。
  139. 尾辻秀久

    ○尾辻秀久君 けさほど来、大臣のお人柄本当に感動を覚えておりますので、ぜひよろしくお願いを申し上げたいと存じます。  時間がもう少しありますので、かつて私がそういう立場でございましたので、外国人労働者問題をお尋ねしたいと思います。  今日、とにかく世界じゅうすべての国々ですべての分野で国際化が進んでおりますから、我が国においても外国人労働者の数は極めてふえております。そしてまた同時に、それが大きな社会問題にもなっております。この受け入れについては積極的受け入れ論や慎重論、あるいはまた条件つき受け入れ論などいろいろあるわけでございますけれども、まず労働省どういうふうにお考えか、お尋ねをいたします。
  140. 福島譲二

    国務大臣福島譲二君) 外国人労働者と一口に申し上げましてもいろいろあるわけでございますが、専門的な知識あるいは技術、あるいは外国人でなければできない仕事、語学の先生とか、先ほど申し上げた分野からすると、例えば中国料理のコックさんだとか、あるいは斯界の大変な音楽その他での権威者もこれ労働者という範疇に入ってちょっと変なんですけれども、そういうような方々が日本においでをいただくということはこれは一向に構わぬというか、積極的にむしろ歓迎すべきことでございますが、今格別問題になっておりますのは、いわゆる単純労働者と言われる方々についてどうするか、外国人の単純労働者、これが大きな問題だと思います。  格別、今人手不足という中で、一部業界等には積極的に外国人労働者を入れるという御意見も大変強いところでございますが、今までのところ政府といたしましては、そのいわゆる単純労働者についての国内に来ていただくことについては極めて慎重な態度をとっております。  これはいろんな理由があるわけでございますが、やはりヨーロッパ、西独とかフランスの経験に徴しましても、それらの国々はかつて労働力不足で外国人労働者を入れたことによって今大変な苦しみを後世に負っております。私どももやはり今当面苦しいからといって、そういう形で労働者不足を補うということが後世の日本にとって社会的な、経済的な、あるいは文化的な意味でも大変大きな影響をもたらすのではないか、そういうことを考えて、今慎重にこれは考えていくべきかと考えておりますが、大変大きな広範な問題でもございますので、近々関係閣僚会議が設置をされて、こういった問題もさらにより深く議論をしていきたいと考えております。
  141. 尾辻秀久

    ○尾辻秀久君 おっしゃるとおりだろうと思います。  いろいろ問題もあろうかと思いますが、さしあたって問題になりますのは不法就労者だと思います。この数、そしてまたどのようにとらえておられるか、またこうした人たちに限って労働災害というのも発生しやすいと思いますので、この状況、さらにまた万が一労働災害が発生いたしますと、外国人だから、あるいは不法就労者だからといってほうってもおけないわけでございまして、これに対してどのように措置するのか、労災保険の適用ほどうなるのか、時間がございませんので一括してお尋ねをしましたので、一括してお答えを下さい。
  142. 清水傳雄

    政府委員(清水傳雄君) 現在、不法就労者の数が急増いたしておりますことはもう御承知のとおりでございまして、六十三年に法務省で摘発された不法就労件数が約一万四千人、五年前の六倍以上というような状況でございますし、これはまことに氷山の一角とも言われておりまして、恐らく十万人以上、これは法務省の推計された数値をもとにしてそういう状況であろうというふうに推測をされるわけでございます。  こうした状況というのは、やはり法治国家としても憂慮すべき事態でもあるというふうに考えております。したがいまして、私ども労働行政の立場からも、これは労働市場、労働条件、そうした面は私どもの方で預かっておるわけでございまして、そうした立場からもこれに適切な対応をしていかなければならない、このように考えております。  この問題については、基本的な問題、あるいはこれからの態勢、そうしたことについていろいろ御議論もあり、またこれからの態勢につきましては、御承知のとおり入国管理法の改正法案が現在国会で御審議中でございます。そうした中におきましても現実の問題としての対応ということもやっていかなければならないわけでございまして、そういった中で特にやはり一般国民の方々、とりわけ雇用される立場に立たれる事業主の方々の外国人労働問題そのものに対する基本的な御理解というものが何よりも大切なことであるというふうに考えております。そうしたことを中心といたしまして、本年の七月、私どもの都道府県第一線機関に対処の考え方を通達いたしまして、現在、そうした面での対策を展開中でございます。  内容といたしましては、先ほど申しましたように、この問題についての事業主の方々の理解を基本的にしていただくための指導機会というものをできるだけ多くつくる、そうした啓発活動を展開する。それから、現実の不法就労の事案等に対処いたしました場合に、その是正についての対応を適切にとっていく。それからまた、今保護の問題も出ましたが、具体的に職を求めて窓口へおいでになるというケースもないわけではないわけでございまして、いわゆる不法就労的な形の紹介というのはこれは当然できないわけでございますが、適正な形で就労できる方々もおいでになるわけでございまして、そうしたものに適切に対応していく。そうした三点につきまして通達をいたしまして対応しているところでございますし、また近くこの十一月の下旬に外国人労働者問題啓発キャンペーン旬間というものを設定いたしまして、そうした運動を展開いたしていくことといたしております。
  143. 野崎和昭

    政府委員野崎和昭君) お尋ねの労働災害の点につきましては、不法就労者の増加に伴いまして労働災害増加が心配されるわけでございますが、六十二年におきましては四十件、六十三年におきましては七十一件の外国人労働者、特に不法就労者と思われる方の労災補償の申請が参っております。労災補償制度につきましては、不法就労者の場合でございましても、日本で働いてけがをした場合でございますので日本人と同じように補償を行うことになっておりまして、労災保険によって必要な給付を行っているところでございます。
  144. 尾辻秀久

    ○尾辻秀久君 時間来ましたので、最後に一言だけ言わせてください。  外国に住みますと、私の場合でもそうなんですが、非常にナショナリズムが強くなるわけであります。外国に住んでいますと、人を呼ぶときに私の固有名詞なんか向こうはいいわけでありますから、おい日本人としか呼ばないわけでありまして、毎日おい日本人と呼ばれていると、おれは日 本人日本人だと思って非常にナショナリズムが強くなる。これはだれしもであります。ですから、今どんな形であれ日本に来ている外国の人たちというのは、非常にやはりそれなりにナショナリズムが強くなって帰っていくというのは事実ですし、ただ困るのは、そうした中からやっぱり反日運動をあおる人や反日運動の極端に言うとリーダーまで出てくるというのは往々にしてあることでありますから、こうした人たちに私たちは慎重に対応していかなきゃいかぬなと思うわけでございまして、そんなことまで含めて大変難しい問題でありますけれども、よろしく対応してくださいますようにお願いして質問を終わります。
  145. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 私も障害者雇用の問題をお尋ねしようと思いますが、この問題、午前中からいろいろ論議もございました。堀委員もおっしゃったように、障害者雇用という問題は単に雇用だけの問題じゃなくて、社会の成熟度とか文化度、そんなものをはかる上でも重要な問題であるというふうに思います。ただ一方で、障害者雇用の問題というのは、やっぱりそういう人を身内に抱えるとかそういう人じゃない限り、またその厳しさもわからないというような側面もあるような気がします。私自身も身内に一人全く目の見えない人がおりまして、その人を通してこういう問題を考えるようになった一面もございます。  そんな意味で考えれば、午前中から論議見ておりまして、障害者のことを本当に真に理解できる大臣が今回登場したんじゃないかなと、そういう意味では障害者人たちもそれなりに本当に期待されているんじゃないかなということも一面思います。  ただ、雇用率の問題を見れば、先ほどお話あっているように、伸びたのが〇・〇一ポイントということで非常に厳しい状況でもございまして、今こんな調子じゃ目標率の達成は極めて厳しいとか、二十一世紀までかかってしまうんじゃないかという悲観論すら何か出されているような現状もございます。  今回ちょっと数字を追ってみたんですけど、例えば今回一・六%が達成できたらどうなったか。そうすると、大体四万一千人ぐらいのあと雇用ができるんですね。今の障害者の有効求職者はたしか四万七、八千だと思うんですけれども、そういう意味じゃ、それができれば本当は解消、全部は解消できるとは思いませんけれども、そういう一面を持っている意味でも本当に残念な面もあると思うんです。  ぜひ最初大臣に、雇用率達成への決意と、また具体的に少なくともこのくらいの時期までには達成率やり遂げたいなというようなことがございましたら、決意とそれをお伺いしたいと思うんですけれども、よろしくお願いいたします。
  146. 福島譲二

    国務大臣福島譲二君) 御指摘がありましたように、格別一般の民間企業における目標率と実際の雇用率にかなり差があることは事実でございます。国におきましても、現業的機関は目標率を若干オーバーいたすところまでまいりましたが、非現業的機関におきましては、これはわずかでございますが、まだ目標率を達成いたしておりません。しかし、大変いろんな意味で困難があると思います。けさほどもちょっと触れましたが、大企業が格別雇用率が低いというところが大変全体としての雇用率を下げておる大きな要因でもございます。  考えてみますと、いろんな理由があって、けさも御答弁を担当部長からいたしておりましたが、やはり中小企業のような環境の方が体の不自由な方自身にとってもなじみやすいといる点もあろうと思いますし、また私なりに考えますと、特に都会では都心に大企業が大体あるわけでありますが、そこまでかなりの時間、かなりの距離を通うことがなかなか困難で、どうしても居住しておるところの身近にしか勤務し得ないという状態も大企業の雇用率が低い原因になっておるのではないか。こういうようなことを考えてきますと、これは心構えももちろん大切でありますが、そのことが可能になるようないろんな施策というのはなかなか大変だろうと思います。  それだけに、率が〇・一%上がったことでもあるいは大変なことかもしれませんが、しかし、お話しのように、これではまだたくさんの方々が働きたくても働けない現状であることはこれも紛れもない事実でございますので、いつどのようにとしうことまでは残念ながら申し上げる自信がございませんけれども、これはいろんな施策を積み重ねながら少しでも前進するように、そしてまた、機会があるたびに経営者の皆様方にもこの障害者雇用の問題を念頭に置いていただくようにPRにも尽くしてまいりたいと思っております。
  147. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今も大企業のお話、なかなか難しいとされていましたけれども、産業別の例の未達成の企業数を見ていきますと、産業別に見ると大体同数になっているか、もしくは増加傾向にあるような気もするんですけれども、そういう意味では雇用率を達成できない企業というのはいつまでも同じようなところであって、なおかつそれがふえているのかというようなふうにも数字だけ見ると見えてしまうんですけれども、その辺どんな御認識を持っていらっしゃるか教えていただきたいと思います。
  148. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) 雇用率の産業別の状況につきましては、それぞれの産業事情ということも要因にあろうかと思いますが、特に雇用率が比較的低かった卸売、小売業、飲食店などについても若干ながら伸びてきているふうなこともございます。産業別の現状の認識を深めながら、いろいろ要因分析をしながら、産業別にも、またあるいは同種の企業でもうまくいった、雇用が進んでいる、そういった事例なども紹介しながら産業別の取り組みも進めてまいりたい、かように考えております。
  149. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 達成できないところに対するいろんな勧告なりそういうものがございますけれども、ちなみに昨年度の障害者受け入れ計画作成命令の件数と、それから適正実施勧告がございますね、これはそれぞれ何件あったか教えてください。
  150. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) 昭和六十三年度におきまして計画の作成命令を行った企業数は二百七企業でございます。また、その前に雇い入れ計画を作成しておりましたけれども、計画の実施状況が悪いということで適正に実施するよう勧告を行った企業数は六十三年度で三十七企業となっております。
  151. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今数をお聞きしましたけれども、ただ、未達成の企業数全体を見ますと、全企業の四八・四%で、これは企業数にしてみれば二万二千四百九十三社ですよね。そういうふうに上っているのと、計画作成命令を出すというこの数に物すごい何かある意味ではギャップも感じるんですけれども、表面上を見れば。もうちょっと計画作成なり勧告という部分でも厳しくやってもいいんじゃないかなということも思うんですけれども、その辺どうお考えですか。
  152. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) やはり私どもといたしましては、法律に規定されております制度一つとしての計画作成命令というのも活用してまいってきておりますが、その前段階において粘り強い指導あるいは説得をいたしまして、企業ができるだけ自発的に障害者の方々を雇っていただける、そういう方向に持っていきたいという気持ちが非常に強うございまして、そういった意味で計画作成命令の件数は相対的には御指摘のように低くなっております。  また、計画作成命令ということになりますと、やはり新たに雇用を受け入れることができる、そういった現実的な環境がないと、そこで計画をつくって障害者雇用率をふやすということができませんので、そういった企業の状況というのも勘案しながらやってきておりますので、数字としてはおっしゃるような数字になっている次第でございます。
  153. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 ぜひ、そういう意味でもいろんなものを強化しながら達成の努力をしていただきたいというふうに思うんです。  それに関連しまして、昭和五十九年、百一国会の当委員会だったと思うんですけれども、企業名の公表制度の活用でしたかね、この附帯決議を決めているんです、もちろん御存じのとおりだと思うんですけれども。そしてまた、この公表制度についてはたしか一回もやったことがないと思いますけれども、今のように低位に推移するときはそろそろそこまで思い切ったことにも踏み込むということも一面必要じゃないか。確かに指導を強化していく、その中で、自助努力の中でやれば一番いいんですけれども、なかなかそれも厳しい面もあると思うので、こういう思い切った措置も必要だと思うんですけれども、その辺はどんなふうにお考えになりますか。
  154. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) 雇用率未達成企業のうち、雇用率の特に低い企業に対しましては雇い入れ計画の作成を命じまして、計画的に障害者の方々を雇用するように指導しているわけでございますが、さらに計画の実施状況の悪い企業に対しては計画の適正実施を勧告いたしましたり、あるいは特別指導期間を設けて、都道府県あるいは本省を含めまして集中的に個別指導を行っているわけでございますが、こういった指導なりあるいは計画作成命令、あるいは適正実施勧告、こういうふうなことをいたしますと、その対象になったところでかなりの企業が障害者雇用に積極的に取り組んできているというその努力の現実はございます。結果的にやはりなかなか難しい問題もございまして、すぐ雇用率の達成というわけにはいきませんが、計画作成命令なり勧告が出る前に比べますと、総体的にかなり雇用状況の改善に対する努力の跡が見られる、こういうこともございます。  企業名の公表措置につきましては、確かに社会的制裁という意味、あるいは制度の担保ということもございますけれども、やはり公表を最終的な前提にいたしまして、それを背景とした指導によって企業において自主的に取り組んでいただく、こういうことがより現実的であるし、やはり着実に障害者雇用率を改善する手法ではないかというふうに私どもとしては考えているわけでございます。  ただ、何と申しますか、いろいろな手段をこちらの方で使いましてお願いいたしましても、努力ということすら見られないというような企業がありますとすれば、これはやはり公表制度の活用ということについても考えなければならない場合もあるいはあり得るのかと思っておりますが、ともかく自主的に何とか企業にやっていただく、その努力に向けての指導ということで、私どもとしてはそれを中心にやっていきたいと考えております。
  155. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 いろんな意味でいろんな形をとりながら自助努力というのを最大限生かしながら、とにかくちょっと横ばいというのが余りに気になるものですから。確かに〇・〇一ポイント上がるだけでも大変なことですけれども、その辺をぜひ努力していただきたいというふうに思っております。  そして、先ほど大臣の方から国の達成率の話が出ましたけれども、都道府県の側、これは一・五九%、教職員が含まれているということもよくわかっております。わかっているにしても、何とかならないかなという気もするし、特に民間企業と違って都道府県の場合は別に納付金もあるわけじゃないわけです。そういう意味では労働省の方から指導をもっともっとしていってもいい部分じゃないかなとも思うんです。事情があるにしても、せめて都道府県の雇用率ぐらい雇用してもらえないかなというような気持ちもあるんですけれども、その辺どんなふうにお考えでしょうか。
  156. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) 私どもといたしましては、この障害者雇用率を進めていくということにつきましては、地方公共団体につきましても法の主管省の立場として積極的に要請を重ねてまいりたいと思っております。  ただ、都道府県の機関、これも私ども制度からいえば一つの法の適用対象団体でございます。これにつきまして、やはり雇用率が達成されてない場合におきましてもあらゆる機会を通じて努力をしている、こういう跡が見られる状況にございますので、これについて個別の機関なりなんなりについて公表するという、そういう状況には現段階ではないのではなかろうか、かように考えております。
  157. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 ちょっと話を戻してしまって恐縮ですけれども、昭和六十年以降ぐらいの数字で結構なんですけれども、いわゆる企業に働いた障害者の方が年間どのくらい、離職を中心に、離職者数だけ出ないと思うんですけれども、いわゆる減っている数、この推移を少し教えていただければ幸いです。
  158. 小泉南男

    説明員(小泉南男君) 御説明いたします。  私ども雇用動向調査におきましては、直接離職した障害者の数を調べてはおりません。しかしながら、新規に雇い入れた身体障害者の数と各年度の純増の身体障害者の数がわかりますので、その差をもって一応離職した障害者の数とみなせるという考えで数字を申し上げますと、昭和五十五年から申し上げますと、昭和五十五年が四千六百三十一人、五十六年が四千百四十人、五十七年が六千二百五十八人、五十八年が八千七百五十八人、五十九年が七千九百六十八人、六十年が七千二十九人、六十一年が八千百九十四人、六十二年が八千六十七人、六十三年が四千九百五十八人、平成元年が五千百五十一人、こういう状況になっております。
  159. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 完全な離職者の数とは定まらないんですけれども、やはり五千人台から八千人台というかなりの数の方が何なかの形で職場を離れていらっしゃる。特に最近よく障害者の方たちが離れる原因みたいな一つに、今の産業構造変化とか技術の急速な発展の中で、非常に働く状況、環境自体が難しくなっているのじゃないかとか、事業主の無理解とか、いろいろな点が指摘はされておるんですけれども労働省の方ではこういうようないわゆる障害者が働いている実態調査をかつて一回なさっていますし、また最近やっていらっしゃって、十二月にもその結果を発表できるような状況まで来ているというふうにお伺いしております。その詳しい中身じゃなくて結構なんですけれども、いわゆる障害者の働く環境、そういう状況がどんなふうに推移しているのか、その辺ポイントでもわかるような点があれば教えていただければと思うんですけれども
  160. 小泉南男

    説明員(小泉南男君) 障害者雇用実態につきましては、おおむね五年ごとに調査実施しております。前回は昭和五十八年でございました。今回昭和六十三年に実施したわけでございますが、その調査内容は、雇用されている障害者障害状況であるとか、あるいは労働条件、賃金、労働時間あるいは休暇、こういったもの、その他雇用管理等にまつわる問題について調査をしているわけでございますが、いまだ現在のところ集計、分析中でございまして、今ここでその概要を申し上げるに至っておりませんので、御容赦いただければと思っております。
  161. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 それならまああきらめましょう。  次は、企業の納める納付金の問題でございます。この納付金、五十七年に一人三万円から現行の四万円に改正されておりますけれども、それから既に七年を経過しております。  最近、何かちょっと障害者雇用の問題で出てくる話の一つに、納付金が安いから、未達成でも金だけ払っておけば事足りるというような考えもあるというような批判も聞きます。単にこれは納付金の額を上げれば事足りるということじゃないと私自身思うんですけれども、そろそろ見直す時期に来ているんじゃないかなと思うんですが、その点についてどう考えていらっしゃるかということが一つと、またこれと絡めまして、納付金の計算方法等が今定められておられますけれども、そういう計算方法でなく、例えばいわゆる日額の最低賃金ですかね、こんな程度に引き上げた方が未達成の解消につながるというような見解を持っていらっしゃる方もいらっしゃいます。そういう問題 を含めて、この納付金の問題について御見解をお願いいたします。
  162. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) 納付金の額につきましては法の第二十七条に基づきまして、雇用率に達するまでの身体障害者雇用することとした場合の障害者一人につき必要とされる一月当たりの特別費用の額の平均額を基準として定めることとされているわけでございます。その額については、ただいまお話がございましたように、五年ごとに見直しが定められております雇用率の見直しのとときにあわせて見直しを行っておりますが、昭和六十一年に見直しを行った際に、額として据え置くこととされたところでございます。今後も雇用率の見直しの時期に、これにあわせて検討することといたしたいと考えております。  また、この額につきまして最低賃金をと、こういう目安にしてはどうかというお話でございますが、やはり最低賃金とこの雇用制度は、ただいま申し上げましたようにその趣旨とするところが違いますので、ちょっと先生の御見解による最低賃金を基準とするということはやはり適当ではないのかなと思っております。
  163. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 そうしますと、この納付金の収支状況ですけれども、六十一年度以降どんなふうに推移されているか、特に六十三年度末で積立金の累計はどのくらいになっておりますか。
  164. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) 納付金の収支実績でございますが、昭和六十二年度で収入が百八十六億円、支出百二十七億円ということでございます。昭和六十三年度につきましては、収入が百九十九億円、支出が百三十七億円となっております。それから累積額でございますが、昭和六十三年度末で二百八十二億円が積立額となっております。
  165. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 積立金というのがどういうふうに使われるのかは別といたしまして、例えばこれも多分そういう言い方でいけば、今度の雇用率改定期にやるという話になるんでしょうけれども、例の調整金の方の額についても、現在二万円だったと思うんですが、これもたしか納付金と同じように変わってないと思うんですけれども、この点については、例えばいわゆる促進するという意味で引き上げるということは、これは何か検討課題にはなりませんか。
  166. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) 調整金の額につきましては法律の十九条第二項で、雇用率を超えて新たに障害者雇用するものとした場合に、当該障害者一人について通常追加的に必要とされる一月当たりの特別費用の額の平均額を基準とすることとされておりまして、これも納付金と同様、六十一年に見直しを行った結果、据え置かれることとされたわけでございます。  この調整金の額等につきましては、次の雇用率の見直しの時期にあわせて見直すこととしたいと考えております。
  167. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 そういう法制度もわかった上で、ただ現状非常に厳しい中でそういうことまで含めてやっぱり考えないと、本当に達成できるのかなというような私は危惧を抱いている一人でもございます。そんな意味で、いろんな面で本当に検討していただきたいなという思いでおります。  ところで、ちょっとこれ厚生省の方にお尋ねなんですけれども、小規模作業所の件について、この三年間ぐらいで結構でございますけれども、急増していると聞いておるんですが、推移と、それからまた平成二年度の予算要求に当たってこれはどんなふうにふやされようとしているのかお聞かせください。
  168. 福山嘉照

    説明員(福山嘉照君) いわゆる障害者の小規模作業所につきましては、法定の要件を満たさない無認可の施設を総称するものでありますので、正確な数は厚生省として把握しておりません。  私ども関係団体調査等で見ました場合、過去三年の推移は、昭和六十一年が千二百八十五カ所、昭和六十二年が千六百七カ所、六十三年が千五百十五カ所となっております。それで、助成の対象にしている数でございますけれども平成元年度の厚生省予算におきます助成対象の箇所数は、身体障害者精神薄弱者等それぞれを対象とするものを合わせまして六百十七カ所でございます。  それと平成二年度の予算要求の関係でございますが、助成箇所数は先ほど申しましたように合計で六百十七カ所でございますのを平成二年度には八百四十九カ所にふやしまして、一カ所当たりの助成額を八十万円から九十万円に引き上げたいということを厚生省としては考えております。
  169. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 厚生省も今言われたように急増の実態は明らかになっておると思うんですけれども、どうしてこんな急増しているのか、その辺何か厚生省として御見解があれば簡潔に聞かしてください。
  170. 福山嘉照

    説明員(福山嘉照君) 先ほど申しましたとおり、いわゆる小規模作業所と申しますのは法定施設と違って設置に当たっての特段の要件はございません。したがいまして、養護学校卒業後の身体障害者精神薄弱者、また回復途上にあります精神障害者などを対象に、親の会やボランティアなど地域の中で自発的、草の根的と申しますか、そういう中でつくられてきているということを認識しております。  それで、このようにつくりやすい施設でございますので、昨今私どもは地域福祉ということを声を高く推進しているわけでございますので、その推進の流れと相まって箇所数の増加をもたらしているというふうに考えておる次第でございます。
  171. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 それだけじゃないと私自身思っているし、厚生省さんも本当はそうじゃないと思っているんだと思うのですけれども、なかなか本心を言ってくださらないような気もいたします。  この共同作業所、先ほど経過がありましたけれども、私も一番新しい数字調べてみましたら、共同作業所全国連絡会というところが調査いたしておりますけれども、これを見ますと、平成元年の十月現在ということで二千二百五十カ所というふうに聞いております。この作業所の問題というのは前から厚生省労働省のはざまみたいな問題で何回もこの委員会の中でも取り上げられているようですけれども、本当に何か福祉雇用という一つの隘路の中で職にもつけない、かといって法定施設も足りないし行けない。そんな中で十人から十五人の障害者の方たち、親たち、そしてそういう関係者の人たちが本当に必死に取り組んできたのが作業所だし、それがふえざるを得ないというのが今の雇用の難しさであり福祉の難しさでもあるんですけれども、それを象徴していると私自身は思っております。  労働省、もしこの作業所がふえるということについて見解があれば一言聞かせていただけますか。
  172. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) 私どもといたしましては、私ども行政の基本的な枠組みの中では、事業主の方々に指導あるいは援助をする形で雇用の場をふやしていくということが障害者の方々の社会的参加の基本的なあり方として私どもの責務でやっていくべき事項ではないかと思っております。
  173. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 そういうことだけでなかなかいかないから一つはこういう作業所が私自身はあると思っているんですけれども、その作業所の問題を言えば、例えば雇用関係の問題とかいろんな難しい問題確かにございます。  西ドイツに重度障害者法というのがございます。ある人はこれをモデルにしたのが日本障害者雇用促進法だと言うような方もいらっしゃいます。ただ、この重度障害者法と日本障害者雇用促進法の一番の違いは何かというと、重度障害者法の方は割り当て雇用と納付金制度、そしてもう一つワークショップ、いわゆる作業所に対する助成というようなこと、三項目から成っているんですけれども日本の場合はワークショップの部分が何か抜け落ちている。故意にやられたとは思いませんけれども、その辺もし何か御意見があれば教えてください。
  174. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) 我が国の障害者雇用促進に関する法律と西ドイツの法律との関係で見ますと、雇用義務あるいは納付金制度というこ とについて、特に納付金制度については西ドイツの制度も参考にしながら設けられたものと承知いたしておりますが、このワークショップ制につきましては、西ドイツにおきましては職業能力の開発、向上を目的として、かつ作業能力に応じた報酬を払う、そして障害者の通常の職場に結合するための職業リハビリテーションの施設としても位置づけられている、こういうふうに承知いたしておりまして、厚生省所管の障害者の方々の福祉工場などが類似の施設ではないかというふうに考えておるわけでございます。  他方、我が方におきましては、障害者の方々を雇用の場につけるためのリハビリテーションの仕組みといたしましては、基本的には障害者職業訓練校あるいは職場適応訓練制度ということで訓練手当を支給しながら障害者能力開発や職場適応の促進を図る制度がございますので、このあたりは西ドイツの場合と事情は異にしておりますけれども、やはり一定の手当を支給しながら雇用に向けてリハビリテーションを図る仕組みというものは設けられている。さらにこれを充実していくことが我々の課題ではないか、こういうふうに受けとめております。
  175. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 難しい問題だとは重々承知しておるんですけれども、この小規模作業所の問題、本当にまだまだ厚生省だけでは助成が少ないのも現実でもございますし、先ほど積立金で二百八十何億あるという話も聞いてくると、何かせめて納付金の一部なりを小規模作業所の建設とかそういった面に回せるようなことはないかなとも思うんです。そこまで行かなくても、そういった方向に少し、小規模作業所の福祉的目的というのを労働省いつも言われることなんですけれども、何とかその辺を検討する余地はございませんか。
  176. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) ただいまの納付金制度を小規模作業所の援助に結びつけていくということでございますが、やはり何と申しましてもこの納付金制度に基づく助成金というのは、事業主間の障害者雇用に要する費用のバランスを図る、こういう性格のものでございますので、この納付金制度の資金につきましても事業主が障害者の方々を雇用するための援助という形で基本的に使われていくべきものであろうかと思いますし、またその助成のあり方については、いろいろと具体的な障害者の置かれている状況とかそういったことを踏まえながら常に検討しなければならないというふうには考えております。この助成金という点に関して申し上げるならば、やはり事業主に対してという雇用関係を前提としていると申し上げざるを得ないわけでございます。
  177. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 これはなかなかいい答えは出てこないと思いましたけれども、伺ってみたわけです。  もう一つ、こういうやり方があるのかなということでお尋ねするんですけれども、企業が障害者施設に仕事発注すると、その場合は例えば発注額の三割程度を法定雇用率未達成企業が納める納付金の中から減額できるという、こういう発注奨励制度、これも西ドイツでやっている型なんですけれども、こんなことはでき得ますか、また検討の余地はございますか。
  178. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) 西ドイツの制度そのままの形というわけではございませんけれども、若干似たような面があるといたしますれば、現在、日本の我が方の法律におきましても子会社特例制度というのがございまして、つまり親会社が五〇%以上出資をして子会社をつくって、そこの子会社で障害者を雇っていただくという形になった場合に、そういう子会社で雇用をしている者も親会社の雇用率にカウントするというような制度がございますので、そういった意味で現在の第三セクター方式による重度障害者雇用、そういう企業につきましてもこの制度を活用しておりますので、考え方として似ている面はあるのではなかろうか。また、この第三セクター方式というのは、私どもが重点的に行政の目標として展開している中身でもございます。
  179. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もう時間があっという間になくなりました。あと二点聞きたいので、急いで聞かせていただきます。  大臣が、この前も私決算委員会に出ておりましてちょっと聞きましたんですけれども、また十月十五日のあれは「時の動き」でございましたか対談の中で、身体障害者雇用の問題についてはきめ細かいことが必要だというようなお話をされて、たしかこれはもう御自身の例で、障害者の通勤時の足である車の駐車場の問題ですね、期限がたしか五年間だと思うんですけれどもある、そういったことでやめざるを得ない、そういう人もいると、そういうこともおっしゃっていました。そのほか、この助成の中には結構期限があるものが多いわけでもございます。  そういった意味では、大臣みずから気づかれたそういう細かい面、期間を少し延ばすとか、なければ一番いいんですけれども、財政との関係もございますでしょうが、大臣御自身が気づいた点から少しでもそういう細かい配慮をしていただきたいと思うんですけれども、その点についてどうお考えになりますか。
  180. 福島譲二

    国務大臣福島譲二君) 今、労働省でも、体の不自由な方々六人ほどエレベーターのオペレーターとして勤務をしていただいております。私も大臣就任以降その姿を見ましてから、部屋に皆さん来ていただいて、それぞれの御苦労の話を聞かせていただいたわけであります。エレベーターの中で仕事をしながらもなかなか完全に満足にひとりで立って仕事ができない、いすに腰かけてとか非常に無理な形で仕事をしておられる方々が家からどうやって通っているのかと聞きますと、それらの方々は全員普通の交通機関を使って労働省まで来ておる。一時間、一時間半かかるそういう状態の中で、しかも満員電車、おしくらまんじゅうでやってくるのは普通の女性でもなかなかもう大変なことだと思うんですが、ああいう障害を持った方々が一般の交通機関で通うということは本当に大変だなと思って話を聞いたことでございました。  しかし、それでも自分で通える方はまだそういう意味ではいいわけでありますが、自分の足では到底離れたところへ通勤できないという障害を持った人たちがたくさんいるわけであります。足の不自由な方の場合には、手で動かす運転免許、そういう自動車が今ございまして、そういうものを使って通勤するということがあるわけでもあります。現実に私の娘も、そういうことで大変器用に車は普通の人と全く変わらない運転をいたすわけであります。大学を出てしばらくの間大きな会社に勤務しておったわけでありますが、結局駐車場がありませんで、路上駐車をいたしておりました。  身体障害者に路上駐車のステッカーが与えられておりまして、路上駐車が可能なんですが、これもある一定の短い時間に何かの必要性があって駐車するときには可能でありますけれども、娘はしばしばそういうことで道に置いておりましたら、近くの派出所にしょっちゅう呼ばれる羽目になりました。結局、毎日毎日通勤しておるのに、そういうステッカーで路上に駐車するわけにはいかない。これもまた当然のことであろうと思います。ごく一部の時間であればやむを得ぬとしても、一日ある一定の場所を占拠するわけにはこれまたいかぬわけでしょうから。そうしますと、どうしても駐車場に車を入れなきゃならない。  そのことについて、ここに労働省としてわずかではありますけれども助成の措置を講じておったことは大変救いではありましたけれども、今御指摘のように、一つは五年間という期限が切られておる。もう一つは、一応上限二万円となっておりまして、最近の都心の状態は、私もよく知りませんが、一時間駐車しても大変な値段になりますし、月決めで駐車をいたしましても大企業の存在する丸ノ内とか都心でございましたら恐らくどんなにしても月六万とか七万とか、そんな単位に多分なるんではないかなと。そういうことを現実に見聞きいたしておったものですから、私も労働省へ参りましてそういうことについて何とかならぬかというようなことも話したことでございます。  ただ、現実にそういう月決めの駐車場といえどもなかなか都心にはもう確保できないという状態であります。そうなると、理想的には大企業、特に大企業であればあらかじめ法定雇用率のうちの少なくとも相当部分そういう方々があるということを前提とした駐車場でも確保できればこれにこしたことはないわけでありますけれども、しかし確かにこれも大変な今の地価の中でそれだけのスペースを確保するということもなかなか難しいのかなと。  それにつけても、先ほどちょっとお話も申し上げました第三セクターで私が参りましたところは、あらかじめそういう方の駐車場をきちっと確保いたしております。遠くからそういう車で通勤をされる方々のスペースを確保しておる。大変すばらしいことだなと思ったことでございます。  今るる申し上げましたが、そういうみずからの経験も考えながら、今の制度も何らかの改善が加えられればこれも私も望外の喜びでございますし、またいろいろと御指摘をいただきながら、この期限をどうするか、あるいは頭打ち二万円がいいのかどうか。この期限の問題につきましても、一般の就職が困難な者に対するいろいろな助成措置がやはりすべて期限を切った形になされておりますので、単に駐車場の問題だけであるいは済まなくなるかもしれない。なかなか簡単ではないかもしれませんが、少しでも前進するように考えさしていただきたいと思っております。
  181. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 終わります。
  182. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは、短時間でございますので端的にお伺いをしたいと思います。  既に均等法実施をされまして三年余り。パートタイマーの女子労働者の激増の中で対策の強化が非常に強く要求をされているときであります。したがって、具体例を挙げまして労働省の施策の強化、改善を要請していきたいと思います。  それは、私が申し上げますのは弱電大手メーカーの幾つかが制度化をしております、松下電器では定時社員と言っております、それから三洋では準社員とか呼ばれております、こういう女子労働者の問題であります。  大阪府の門真市に本社があります、いわゆる国際的大企業であります松下電器産業株式会社、ここでは生産ラインの第一線で生産を担当している社員に定時社員という制度がありますが、これは労働省御存じでございますか。
  183. 野崎和昭

    政府委員野崎和昭君) 御指摘の定時社員と申しますのは、正社員の方よりも所定労働時間が一時間短い労働者で、労働契約期間は一年で、これを継続更新する方であるというふうにお聞きしております。
  184. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 松下電器産業では定時社員というのが制度的にも定着をさせられておりまして、「松下電器 激動の十年」という書類の中にも位置づけられておる制度のようでございます。  それで、お説のとおり勤務時間が朝の九時から四時四十五分、実労働時間七時間、正社員より一時間短いんですね。この方々は平均勤続年数が十年以上になっております。実際、生産ラインでは重要な役割を果たしているという存在でありました。  それで、ここで起こっている問題なんですが、松下電器の正社員というのは定年制は六十歳ですね。
  185. 野崎和昭

    政府委員野崎和昭君) 正確には存じませんが、そのようにお聞きしております。
  186. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私の調査では六十歳でございます。  そこで問題が起きたわけですが、昨年からいろいろ問題が起こっている。時間の都合がありますから、具体例を先に申し上げた方がわかりよいかと思うんですね。これは松下電器産業のAV本部というところで起こった実例を幾つか申し上げておきたい。  というのは、仮に名前はAさんにしておきますが、Aさんという方、四十九歳です。上司から毎日面接をされて、来年は再契約できない、一年更新ですからね、ということで詰められまして、毎日のようにそう言われる。もうあんた来年五十歳だから再契約できないよというふうに毎日やられて、我慢ができなくておやめになったと。これは昨年の十二月のことです。  それから、Bさんといってやはり四十九歳の方ですが、これはことしの二月ですが、ことしはやるけれども来年は再契約できないからやめてもらう、上司から毎日のようにそういうふうに言われるものだから御本人は心労で身も心もくたくたになった。もう我慢できないわということで、その方はおやめになったんですね。こういうのがずっと続いていたようです。  こういう中で、こんなやり方はおかしいんじゃないかということが職場の中でいろいろ御意見が出だして、反対をする人たちがぼつぼつ出てきているわけです。その反対をして頑張ったという事例も出ているんですね。  その一つ、これも仮にCさんといたしますが、五十歳を理由にして契約できないと言われた。それなら契約できないなら首にしてください、こう言ったというんですね。だが、それは首にはできないと上司は言う。それで、もう腹が立ってしようがないから年休をとって休んだというんですね。なかなか腹が据わっているんですね。そうしたら、契約日の前の日に呼び出しがありまして再契約をしてもらえたという方がいるわけです。  それからもう一例は、これはGさんと仮にしておきますが、この方は私直接お会いしましたけれども、五十歳で二十年勤続の方なんです。ことしは契約するけれども来年は契約できないことを認めよ、こう言われたんだけれども、来年は来年のことだと言って断った。そうすると一カ月の間に十四回面接して、いや来年はもうあきらめてもらいたい、こう言われた。大体普通なら身も心もくたくたになるんだけれども、この人なかなか頑張ったんですね。そうすると、あなたが認めようが認めまいが来年はだめ、人事へ行っても組合へ行ってもこれはだめと言われた。さすがに頭を抱えてどうしてよいかと思ったんだけれども、えいっと思って労基署へ申告に行ったというんですね。ところが、労基署へ申告に行った後、会社へ何らかの連絡があったのであろうか、会社は来年は契約するということで御本人に話があった。しかし、来年は契約するけれども再来年は契約しないというふうに言われた。しかし、来年は契約するが再来年の話まで今返事できないと言って頑張った。ということで、おおむね白紙撤回になって、今五十を過ぎたけれども働かしていただいておりますという人ですね。  もう一例は、まあ時間がないからたくさん紹介したいけれどもあれなんですが、もう一人の人の話ですが、一たんは退職を認めたんだけれども、来年はもう契約しないと言われたけれどもどうも我慢がならない。それで、ほかの人はちゃんと契約されているのに納得できないということで、知り合いの方をたどって弁護士に相談をして内容証明を送ってもらった。そうしたら、会社の方からこれは来年は契約をいたします、こういうふうな話になった。ということで、こんなことが起こっているわけですね。  私は、これは実態として、この定時社員というのは女性ばかりの職場ですから男女差別とは言いがたいけれども、しかし一年更新で十年以上、私の聞いた人なんか二十年勤務していて、正社員には六十歳定年という制度があって、それで定時社員だけは五十になったら――これは取り決めはないんですよね。しかし来年五十だから再契約しない、毎年そういうふうにやられるということになりますと、これは明らかに若年定年になりはしないかということを感じるわけですね。そういうふうに思うんですよ。  そこでお伺いをしたいのは、パートの問題については東芝の事件あるいは平安閣事件で最高裁で既に裁判も確定しているように、パートの労働者でも特段の事情がない限り再契約拒否はだめだということが確定をしておりますが、それによりましてもこれは事例に反するんじゃないかと言って頑張った人、あるいは労基署へ飛び込んだ人、あ るいは弁護士に訴えて内容証明送った人というのはもとへ戻って、そうでない人は泣く泣くやめなくちゃならない、こういう事態というのはどうでしょう。労働省どうお考えになりますか。
  187. 野崎和昭

    政府委員野崎和昭君) 御指摘の事案につきましては、他の問題とあわせまして本年二月に労働基準監督署に申告がございまして、その内容はただいま先生指摘のとおり、定時社員の契約期間は一年、更新を妨げない、定年制は適用しないという労使の協定はあるものの、五十歳になると退職させられ、事実上の定年制になっている部門がある、あるいは契約更新に当たって働き続ける意思を述べても退職に追い込まれているというような内容であったと承知をしております。  ただ、監督署におきまして調査を行いましたけれども、御指摘のような解雇に関する労働基準法の規定違反するとかというような事実は認められず、また、申告されておりますような事実上の五十歳定年制というような問題につきましては監督機関の所管外の事項でございますので、そういう申告があった旨を事業場に伝えまして処理を終わっているというふうに聞いております。
  188. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 しかし、男女別の定年制という点では、これは若年定年あるいは男女差別定年制などというものは裁判で既に何件も確定をしておりますね。そういう背景がある上に、均等法の第十一条の一項では、「事業主は、労働者の定年及び解雇について、労働者女子であることを理由として、男子と差別的取扱いをしてはならない。」という規定があるわけでございますが、これに抵触をしてきはしないですか。  もう一つあわせて申し上げておきますならば、パート労働者に対する解雇、雇用継続問題というのは既に最高裁で判決があって確定をしているでしょう。これはさっき申し上げた東京の東芝、それから平安閣の雇用契約上の地位等の最高裁判決はそういうふうになっておると思いますが、それとの関係ではこれは抵触しませんか。
  189. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 前の方の部分について申し上げますが、今先生のお話から判断いたしますと、当該企業ではいわゆる正社員という方たちについては六十歳の定年制という制度を持っておられる。それから定時社員につきましては定年制という制度というのとはちょっと違っておりまして、一年ごとに契約を反復更新しているけれども、事実上は五十歳ぐらいまで雇っておられて、あとは個別にいろいろな対応がされておるというふうに伺ったわけでございます。  いわゆるパートタイム労働者の方々とそれから正社員といったような労働者の種類別に区分をいたしまして違う雇用管理を行うこと、そのこと自体は一般的には雇用機会均等法に照らして問題であるということは言いがたいというふうに考えます。ただ、例えば一定の区分、正社員といったような区分に女性を、女性であるということを理由として入れない、排除というようなことがあれば、これは均等法上の問題となってまいりますので、そういう場合には適切な指導を行わなければならないというふうに考えておるわけでございます。
  190. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いや、制度としてあることについては私は今申し上げてないんです。これは昭和三十七年から松下電器産業ではそういう制度をつくっているそうですからね。この是非についてはまた別の問題なんですね。ただ、十年二十年とその制度の中で、しかも女子労働者だけの制度なんです。正社員は男女ともにおられますよ。その方々は六十歳なんです。明文化してないけれども五十になるから再契約しないというふうな言われ方というのは、これは客観的にはやはり定年差別になりはしないですか。そのことを申し上げたんです。  だから私は、均等法では「労働者女子であることを理由として」ということになっているんだけれども、それは全然女子ばかりでどこにも男性のいない職場なら別だけれども、正社員として男女ともにおって六十歳定年となっているわけなんです。それで労働組合員でもあるんですね。労働組合は協定で正社員の定年制には適用しないということの労働協約があるんですよ。こんなもの組合もちょっとどないかしておると私は思うけれども。しかし、労基法の建前からいえば、労基法というのは最低基準を決めているんで、それを踏み外すということは最低基準を踏み外すことで話は別なんですが、組合員でもあるわけですよ。だから、こういうことで都合のいいときは毎年毎年十年でも二十年でも働かせる、都合が悪くなると、来年五十歳ということになると再契約しない、そんなことを言われて、頑張ったら一年は再契約してくれる、そのかわり再来年はだめですよ、そのことを認めなさい、こうなってきたら働く人は安心して働けないと思う。こういう事態があるということを一つ申し上げておきます。  事情がまだよくおわかりでないとおっしゃっておるようですから、私はこの辺は均等法とか判例の理念、そういう点からいうて女性差別ではないのかと思いますので、これは一遍よく調査をしてほしいんです。よく調査をしていただいて、これは御報告もいただきたいなと思うわけです。  それから、こういう制度というのは、さっきもちょっと触れましたが、私はたまたま松下電器産業の問題を取り上げましたけれども、三洋では準社員、それからシャープでは準定時社員と言うんだそうですからね。こういった弱電メーカーでこの制度を適用しておられるようなので、これは調査をして、均等法や判例等に抵触をする場合にはそういう労働者に不安を与えないように対応を是正させるということをひとつ強く要望したいと思うんですが、いかがですか。
  191. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) それでは、まだ均等法関連ということで特に女子の方々から室の方に御相談があったわけではないのでございますが、企業の方から御事情は伺ってみたいと思います。
  192. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 まあしかし、労基署へは飛び込んでいっているわけなんです。さっき局長おっしゃいましたね、労基局でもそういう話は聞いておるということで御承知の模様でございましたが、一遍御調査をいただきたいと思いますが、いかがですか。
  193. 野崎和昭

    政府委員野崎和昭君) 先ほどお答え申し上げましたとおり、申告がございましたので調査いたしまして、ほかの件とあわせまして指導すべきものは指導し、本件につきましては労働基準法に違反する点はないということで処理を終わっているわけでございます。  なお、先生指摘の判例でございますが、期間の定めのある契約の場合でも、それが反復更新されて事実上期間の定めのないものと認められる場合には、解雇として解雇の予告等の手続をとる必要があるわけでございます。これは判例として確立しているわけでございます。そういった判例に照らしても、本件については特に違反という点はなかったというふうに聞いているところでございます。
  194. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 だけれども、本人が同意をしてないんですね。これはもう少し調査をしていただきたいと思います。よろしいですね。  それで、もう一つ調査をついでに頼みたいのは、これはことしの六月二十三日にパートタイム労働者に対する労働指針ですか、これが出されて、施策の推進に御努力を進めておられるようですね。これによりますと、パートタイム労働者というのは正社員と比べて働く時間が短いだけなんだ、だからできるだけ待遇でもその均等を欠かないようにという趣旨内容徹底されるようにということのようですが、「賃金、賞与及び退職金」というような項目では、「パートタイム労働者の賃金、賞与及び退職金については、労使において、その就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して定めるように努めるものとする。」というふうに六月のは出ておりますね。  昭和四十五年の、これは婦発の「女子パートタイム雇用に関する対策の推進について」の指導方針によると、これは「パートタイマーの賃金については、同種の労働者の賃金と均衡を保ったものであるよう、」「フルタイムの労働者に適用されている諸規定や職場の慣行その他の労働条件が、短時間就労という特性に基づくものを除き、パー トタイマーにも同機に確保されるよう努めるものとする。」というふうに、かなり具体的に指針をお出しになっておられるわけですが、私が調査をしたのでは、この松下電器では一般社員の九〇%掛ける労働時間数ということになっております。これはそういう趣旨からいうと、同じランクの正社員の九〇%というのが果たして均衡がとれるものなのかどうかという点が一つ問題ではないかと思うんです。  それからもう一つは、ベースアップでも、ことしの松下のベースアップは五・四%で一万二千四百八十六円のようですが、定時社員は、これは三回以上契約更新をした人ですから四年以上ですね、その四年以上の方々が二百円です、日給。こういうことになっております。  それで、時間がありませんから一遍にまとめて言いますが、退職金という制度がなくて慰労金ということになっておるんです。定時社員の慰労金の基準というのが設けられておりまして、契約更新回数によって、一回、二回、三回、五回、十回以上というふうになっておりまして、一回は七万円、二回十四万円、三回二十二万円、五回以上三十万円、十回以上五十万円で、これは二十年でも五十万円。これは正社員の退職金制度と違いますから退職金として比較はできないといたしましても、指導指針の精神と比較いたしますと大きくずれているんじゃないかなと。それから、これはもう七年ほど同じだというのだな。だから十年勤続の人も五十万やめたらもらえるんですが、二十年の人も五十万しかもらえない、ひどいんじゃないか、こういうふうに言われております。  こういうことも含めまして、先ほど御調査をいただきたいということを申し上げておきましたが、時間がありませんので、そういうことも含めまして御調査をいただき、そしてぐあいの悪いところは是正をさせていただきたいし、御調査の結果は私どもにも御報告をいただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  195. 野崎和昭

    政府委員野崎和昭君) 御指摘のパートタイム労働指針におきましては、「賃金、賞与及び退職金については、労使において、その就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して定めるように努めるものとする。」ということになっておりまして、この方針に基づいて指導しているところでございます。  御指摘のございましたベアとか退職金については承知しておりませんが、賃金の点につきましては事前に御通告いただきましたので若干調査いたしております。それによりますと、いわゆる定時社員につきましては、労働時間は先ほど申しましたように一時間短く、残業も定時社員の場合にはないということでございまして、賃金は日給制で、その金額は当初昭和四十五年の制度導入時点における当時の労働市場の状況を勘案して決められまして、その後組合との交渉によりベースアップが行われるとともに、一年ごとの契約更新に当たって勤続年数に応じて引き上げられていると。一方、正社員の方は月給制で、終身雇用等の雇用慣行を背景としたものとなっておりまして、仕事の格付に応じ、また年功的な要素を加味して決められているということでございます。  ただ、先生指摘のございました一割の差があるというのは、一割の差と申しますか、正社員の賃金に〇・九を掛けているということは私どもの現在までの調査では承知しておりませんが、いずれにせよ御指摘のございました点を含めまして会社から事情は聞いてみたいと思います。
  196. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 委員長、もう終わりますから。  せっかく労働大臣がおいでになりますので、パートタイム労働者に対する対策の強化というのが一つ労働行政の柱にもなっておりますので、大臣にその点をひとつ積極的に御推進をいただきたいということで、私の挙げた具体問題、まさに世界に冠たる大企業でこんなややこしいことが起こらないようにひとつ積極的な御指導をいただきたいと思いますが、その点、簡単に御意見を伺って終わりたいと思います。
  197. 福島譲二

    国務大臣福島譲二君) パートタイマーの問題につきましては、これは一般論として、今後の御婦人の職場への進出、家庭生活とできるだけ両立するように、そしてまたその勤務条件に差別が起きないように、そういう一般方針については仰せのとおり労働省としても深く関心を持って今後ともそのような方向で指導をいたしていきたいと思っております。  今御指摘の大阪の案件につきましては、るるお話がございましたが、いろいろ現地の実態を深く承知いたしておりませんですので、今局長からもお話がありましたように、具体的な調査をいたした上で、もし必要があれば関係方面に積極的な指導をいたしたいと思います。
  198. 乾晴美

    ○乾晴美君 私は今から質問させていただきますけれども、何しろ初めてでございますので、午前中の深田議員のように簡潔にとは申しませんので、どうぞ丁寧に具体的に、そして私にわかる言葉でお答えをいただきたいというふうに冒頭にお願いしておきたいと思います。  私は労働時間の短縮ということについてまずお伺いしていきたいと思うんですけれども、この労働時間の短縮というのは、人間が人間としてより人間らしく生きていく、そのためにはやはり家族との団らんであったり地域の方々との交流であったり、そしてまた文化的な生活を営むためのそれが第一歩になるんだというふうな認識のもとでこの問題を質問させていただきたいと思います。  この前に、労働行政現状ということで御説明いただきましたけれども、その中では、昭和六十三年度には年間の総実労働時間というのは二千百時間であった、これは前年度に比べて二十時間少ないというふうに御説明いただいたわけです。しかし、労働時間短縮の目標というのが平成四年度までには千八百時間にしたいということなんですけれども、年間二十時間ずつ減らしていくというようなことでは、とても平成四年までに千八百時間に間に合わぬのではないかというふうに非常に心配するわけなんですけれども、そこら辺のことを具体的に進捗状況とそして労働大臣労働時間短縮ということについての取り組みに対する決意などを聞かしていただけたら幸いと思います。よろしくお願いします。
  199. 福島譲二

    国務大臣福島譲二君) 確かに、平成四年度に千八百時間そのものにするということは大変困難があろうかと思います。もともと計画自身きちっと千八百時間ということではなくて、千八百時間にできるだけ近づける努力をするという形で書いておるところでございます。しかし、それは理想として目標として千八百時間になるべく近づけたいとは存じますが、おっしゃるとおり簡単なことではないと思います。  しかし、先ほどもお答えをいたしましたように、国際的に見ても、まだ米、英に対して二百時間、西独、フランスに対して五百時間、全体の水準として長いという状況でございます。これは国際的にも指摘をされているところでございますし、今お話しのように、そういうこととまた切り離して日本自身の問題として、我々国民生活少しでもゆとりを持つということのために大変大切なこととして、労働省といたしましては政策課題一つの中心としてこれからも取り組んでまいりたいと思います。
  200. 乾晴美

    ○乾晴美君 大変難しい、そして千八百時間に向けて努力をしていきたいというふうなお答えなんですけれども、それではもっと具体的に、なぜ時間短縮というのはなかなか実行されないのか、そこら辺の理由は何なんだというようなことで、その要因といいましょうか背景とかということはどのようにお考えでしょうか。
  201. 野崎和昭

    政府委員野崎和昭君) 我が国の労働時間と欧米とを比較してみますと、三つの面がございます。  まず一つは、完全週休二日制が欧米のように定着していないということでございます。先ほどもお答え申し上げましたように、日本現状を一口で言えば週休一日と二日のちょうど中間でございまして、週休一・五日でございます。これにつきましては、改正労働基準法に基づきまして段階的に四十時間制、すなわち完全週休二日制に法定労 働時間を持っていく、それによりまして完全週休二日制が定着することになる、そういうふうに考えております。  次の問題は年休でございまして、年休が日本の場合には付与日数十五・三日、取得日数七・六日ということでございまして、これがアメリカ、イギリスに比べますと二十日でございますので、この差が非常に大きいわけでございます。これを何とか年次有給休暇の完全取得に、二十日間取得されるように持っていきたい、それが二つ目の課題でございます。  それから三つ目は時間外労働が多いということで、現在は一人平均百八十時間から九十時間でございますけれども、これを百五十時間に持っていく、それを目標にしているわけでございます。
  202. 乾晴美

    ○乾晴美君 労働時間短縮の政策はわかりましたけれども、短縮の対策としてもう一つ労働省の方では年次有給休暇の完全取得、これを促進するというふうに挙げられておるんですけれども、現実には有給休暇をとるということでは、やっぱり会社の上司だとかまた同僚の方々に対する気兼ねがあるというようなことも先ほども出ましたけれども、そういうことで非常にとりにくい。そして、先ほどのお答えでは十五日から十六日ぐらいとれるんだというふうにおっしゃっていましたけれども、これは中小企業と大企業とではまたそこら辺にも格差があるのではないかというふうなことを思うんですけれども、そこら辺の実態把握といいましょうか、お願いいたします。
  203. 野崎和昭

    政府委員野崎和昭君) 年次有給休暇の取得状況は、平均的には十五、六日付与され、ちょうど半分の七、八日取得しているのでございますが、御指摘のように大企業と中小企業ではかなりの差がございまして、中小企業では法定の付与日数、最低の労働基準法ぎりぎりの線に近い場合が多いわけでございます。また、業種によってもいろいろ差がございます。そういうことで、確かは御指摘のとおり中小企業の年次有給休暇の消化をいかに促進するかということも大きな課題だと思います。
  204. 乾晴美

    ○乾晴美君 それも大きな課題だろうと思うんですけれども、私は、またもう一つ、有給休暇を何に使われたかという中身の問題だと思うんですね。  これは私が知る限りでは、御本人が病気になった場合、それからまた御家族が病気になった、それから子供さんがなった、両親がなるということもあると思います。また、子供さんをお持ちの方は学校の参観日だとかというふうなことで自分以外のことで、本人が休息するというか人間として豊かに生きるというようなところでとられているのは非常に理由の中では少ないわけなんですね。ですから、勤労者のゆとりあるライフスタイルの定着ということからいえば非常にほど遠いものでないか。ですから、もっと有給休暇というものが実効あるものとして取得できる、そういうようなことについて労働省ではどのような対策を講じておいででしょうか。
  205. 野崎和昭

    政府委員野崎和昭君) 御指摘のように、欧米では年次有給休暇はあくまでも休養あるいは体力の回復のためだということで、病気の場合に年次有給休暇を使うことは認められていないのが通常でございますが、我が国におきましては、制度創設以来、病気に使うことも認めているわけでございます。そういうことで、病気に使うということは年次有給休暇の本来の目的に照らすと問題はあろうかと思いますけれども、これは現実問題としてやむを得ないんではないかということで考えております。  いずれにしましても、全体の取得日数を現在の七日ないし八日から二十日を目標にふやす、そういう中で年次有給休暇の本来の目的に沿った使い方、特に連続して使うという方向に持っていくようにできるだけ努力してまいりたいと思います。
  206. 乾晴美

    ○乾晴美君 よくわかりましたけれども、結局、有給休暇が病気とかそういうことに使われてとりにくいということであれば、介護休暇制度とか看護休暇制度というようなことを創設していただきたいなと思うんですが、そういうことについてはいかがでしょうか。
  207. 石岡慎太郎

    説明員石岡慎太郎君) 介護休暇制度につきましては、いろいろ労働省といたしましても六十二年度から調査研究を進めてきておりまして、来年度の施策におきましても、いろいろ検討しましてこれの普及促進を図るような措置を講じたいと考えている次第でございます。
  208. 乾晴美

    ○乾晴美君 そういうことで、なかなか進まないのは残念だと思います。  次に、深夜労働それから徹夜の労働というのは、もう労働時間の短縮という、そういう量の問題じゃなくて私は労働時間の質の問題であるというふうに思っておるわけです。病院だとかまたは保安上の深夜労働は仕方がないというふうに思いますけれども、夜中にしなければならないわけでもないような労働を、資本の効率上といいましょうか、強制されて、人間の健康とか生活上大きな問題になっておると思うんです。こういうことも含めて、長時間労働というのがいわゆる国際的にも非常に非難をされているということが実態だと思うんですが、そこのところをどのように御認識いただいておりますでしょうか。
  209. 野崎和昭

    政府委員野崎和昭君) 御指摘の長時間労働というのは時間外労働の点を中心に御指摘いただいているかと思いますが、確かに時間外労働につきましては、欧米では厳しく規制されているのに対しまして、日本では比較的緩やかな制度になっているわけでございます。これは一つ理由がございまして、終身雇用制ということで、仕事が暇になりましても解雇はしない、しかし忙しいときに人を雇いますと暇なときにその方が余ってしまうということで、忙しいときでもそれほどでない場合には時間外労働でカバーするという産業全体の仕組みになっておりますので、ある程度はやむを得ないのではないかというふうに思います。  ただしかしながら、それにしましても現在の百九十時間という残業は我々の計画の目標に比べますと百五十時間に対して四十時間ほどオーバーしておりますので、これを計画期間中に計画の目標にできるだけ近づけたいというふうに思っているわけでございます。  深夜労働につきましては、御指摘のように健康上問題があるのではないかという御意見もある一方では、地球が非常に狭くなると申しますか、日本とアメリカが同じ時間に同じ仕事をしなきゃならないというようなこと等いろいろございまして、逆に深夜労働がふえる面も確かにございます。しかし、女子に関する点につきましては労働基準法で、先般男女雇用機会均等法を制定していただきます際に十分御審議いただきまして、現時点での一つの仕切りができているというふうに理解しております。
  210. 乾晴美

    ○乾晴美君 確かにそうなんだと思いますが、人間というのは大体お昼働いて夜寝るということが一つのサイクルになっておるように思いますので、企業の機械の都合だとかということだけでさせられるのが残念だなというふうなことで質問させていただいたんですけれども、とにかく労働時間というのが短くなって有給休暇も長くなって、いわゆるゆとりある労働条件ということが確立するということのためにも、千八百時間というのは絶対に平成四年までにやっていただきたい、祈るような気持ちでございます。  そういうことで、時間がございませんので次に問題を移らせていただきたいと思います。  次は高齢者雇用の問題でございます。  これは我が国の高年齢者の就労意欲といいましょうか、現役で働いていらっしゃる労働者もそうなんですが、高齢期における就労意欲というのは非常に高いわけでして、私の調べましたところでも欧米先進国の二倍になっておる。しかし、その就労のニーズの大きさにもかかわりませず、就労機会というのは非常に厳しい状況にあるわけです。また、それには原因はいろいろあると思います。しかし、主な原因一つに、年齢を理由とした強制解雇制度とも言うべき定年制によって、先ほど沓脱さんの方からも話がありましたけれども、 企業が六十歳にも満たない比較的低い年齢で退職させていかれるという、そういう仕組みになっているからだと思うわけです。年金が六十五歳支給なんということが論じられている今日でございますから、その六十歳定年もまだ制定されないというのは非常に問題だと思うわけです。  定年年齢を六十歳以上にする企業の実態と、その六十歳定年制の法制化についてお答えをお願いしたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  211. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) 人口構成が高齢化いたしまして労働力人口が高齢化していく、また人生八十年時代と言われているような中におきましては、高齢者の高い就業意欲を生かしながら社会の活力を維持していくということが極めて重要だろうと思います。そういった意味で、高齢者雇用対策について私どもとしては全力を傾注して取り組んでまいりたいと思っております。  定年制現状でございますが、昭和六十一年に高年齢者の雇用安定法が大改正されまして、六十歳定年の努力義務、また六十歳未満の定年を持っているところに対する行政側からの改善要請あるいはさらに改善命令というような段階的な手続を踏んだ、いわば六十歳定年の努力義務規定が設けられまして、それに基づきまして私どもとしては行政指導を進めてきているわけでございます。  現状を申し上げますれば、定年制を設けている企業の六一・九%が既に六十歳以上の定年になっている、また改定予定まで含めると約八〇%が六十歳以上になっておりますが、私どもといたしましては、この予定という企業でできるだけ早い時期に現実に改定が決定され、近い将来六十歳になるようにやっていただくように、法に基づく行政措置を最大限に活用しながら進めてまいるつもりでございます。
  212. 乾晴美

    ○乾晴美君 そのパーセントは定着しているというふうに見るわけでしょうか、それともまだ十分でないというふうにごらんになっているわけでしょうか。
  213. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) 定着しているかどうかということでございますけれども、現実に六十歳以上定年になっているのがまだ六一・九%と、かなり普及はしてきておりますけれども、六一・九%という現状では私どももさらに努力しなければならないと思っておりますし、また関係労使の御努力もお願いしたい、こういうふうに考えております。
  214. 乾晴美

    ○乾晴美君 ということなんでしょうけれども、私がお願いしたいのは、やはり六十歳定年制の法制化という、努力義務じゃなくてきちっと法制化していくということが私は望まれるというふうに思います。  今、紙が回ってまいりまして早くということでございますので、次に移らせていただきたいと思います。  次にパートタイム労働対策についてお伺いしたいと思うんですが、これは沓脱さんの方からも詳しくおっしゃっていましたけれども、現在パートタイマーというのは八百万人に達していると言われております。このパートタイマーというのは、昔は補助的なものだったと思うんですけれども、今は補助的なものじゃなくて、もう基幹労働力というふうになっているんだろうと思うわけです。しかし、先ほどからるる説明もありましたように、パートの人の労働条件が、一時金にしても退職金にしても労働時間にしても、教育の面にしても福祉の面にしても、また雇用保険だとか労働災害だとか、健康保険とか厚生年金の問題とかというふうなことでは非常にばらばらであるということで、非常に劣悪な条件下に置かれているということをはっきり私も横で聞かせていただいて思うわけでございます。  その指針というのがここでも出されておるそうでございますけれども、やはり努力義務というのでは非常に弱いだろうというふうに思うわけです。私はどうしても、このパートタイム労働指針ということじゃなくて、パートタイム労働法ということにして明確に法律として制定するように望みたいんですが、そういうお考えはおありでしょうか。
  215. 石岡慎太郎

    説明員石岡慎太郎君) 先生指摘のように、パートタイム労働者は今や企業の基幹労働力として働かれる労働者であると思っています。しかしながら、御指摘のようにいろいろ問題もございますので、労働省といたしましても、公労使三者構成から成る専門家会議を開きましてその対策検討してきたところでございます。その結果に基づきまして、本年の六月から御指摘のような大臣告示によりますパートタイム労働指針を出させていただきまして、努力義務ではありますけれども、企業の指導等を強力に行っているところでございます。  しかしながら、パートタイム労働者の就業条件の整備を図るための法的整備の問題につきましては、これは先ほどの専門家会議でも合意がなされたところでございますが、いろいろ労使間で合意がまだできない状況でございまして、今後労使の合意の形成を図りつつ関係法令についての検討も含めまして引き続き検討するということになっておりますので、その線に従って鋭意検討をしてまいりたいと考えております。
  216. 乾晴美

    ○乾晴美君 どうも時間が来たみたいなので、ありがとうございました。
  217. 小西博行

    ○小西博行君 それでは、私も時間が非常に少ないわけでありますが、数点について質問させていただきたいと思います。  先日、労働省のいろいろな業務内容についてお聞かせ願いました。初めてこの社労委員会に立っておりますので、なるほど大変なお仕事労働省皆さん方はやっておられるんだなというのが実は実感であります。従来、私は外務委員会とかあるいは文教委員会の方でずっとやっておりましたので、特に労働者皆さん方のいろいろな意味での施策は細かく大変な仕事だなと、つくづくそのように感じさせていただきましたと同時に、なおたくさんの問題がございますので、全力大臣以下頑張っていただきたい、そのようにまずお願いを申し上げたいと思います。  私がまず取り上げたいのは、先ほど同僚の皆さん方からも言われておりますが、勤労者のゆとりという問題をまず取り上げてみたいと思います。    〔委員長退席、理事糸久八重子着席〕  大臣も相当海外へ出る機会があろうかと思うんです。日本も戦後、とにかく欧米先進諸国に追いつけ追い越せということで頑張ってまいりました。大変勤労意欲の高い国民性でありますので、このような立派な国が形成できたというふうに私は思います。  ただ、私もたびたび海外へ行くチャンスがあるわけでありますが、どうも先進諸国へ行って帰ってまいりますと、そう日本は豊かでないなということをつくづく感じるわけです。御承知のように、GNPは世界の第二位、一〇%を占めております。アメリカに次いで第二位。それから、個人の所得はこれは世界第一位というふうに言われております。しかし、現実としてはそんなに金持ちではない、生活が精いっぱいだというのが実感であります。そういう意味で、購買力平価という数字がございますが、それで見ますと、世界に二十四カ国先進諸国がございますが、その中の第十四番目、したがって大変厳しい生活環境であるというふうに私は思います。  大臣にまずお伺いしたいのは、大臣がいろんな先進諸国へ行かれて、そして日本と比較した場合に、本当に日本人というのはゆとりがあって豊かな国であるというふうに実感を持っておられるのかどうか、その辺からまずお伺いをしたいと思います。
  218. 福島譲二

    国務大臣福島譲二君) 確かに、国全体としてはまさに経済大国になったわけでございますが、私ども国民一人一人という立場から見ますと、やはりそういう意味での実感が少ないというのがまさに実感であらうと思います。  つい先般発表されました国民生活白書におきましても、今回はその第二部が「人生七十万時間時代の自由時間」ということで大変広範な部分を割きまして、ちょうど私ども労働省の立場からいたしますと、半ばこれはもう労働白書そのものだな と思うような感じでございました。こういうことが今問題になっておるということも、まさに御指摘のように、国際的に見てまだまだ我が国は本当の意味での生活のゆとりを持つまでに至っていない。だからこそ今のような問題が提起されるんだと思います。    〔理事糸久八重子退席委員長着席〕  また、その背景を考えますと、確かにフローといいますか、年々の所得ではかなりの水準になったということであろうと思いますけれども、西欧の先進諸国に比べますと、残念ながらまだ社会資本の面におきましても、また個人家庭生活におきましても、ストックの面でまだ大分差があるんではないか。そういう意味で、年々のフローの所得というものから、あるいは国全体としても年々の国民の総生産の中から諸外国に比べて欠けておるストックにまだ埋めていかなければならない部分がかなりある。そういうことも、やはり本質的に我々の生活そのものが本当に豊かさの実感を持てない、その一つの背景にもあるのかなという感じがいたします。
  219. 小西博行

    ○小西博行君 先ほどからそういう意味で時間短縮という問題がいろいろ言われておりました。  ただ、私は思いますのに、この豊かさというものと時間短縮というのはもうすべて同じだというふうには考えないわけであります。つまり、時間短縮もその必要条件の一つであるけれども、しかしもっとほかにやるべきことがあるんじゃないか。  私は率直な感想をちょっと申し上げたいんですが、九月に各政党の皆さん方と、教育文化の調査のために北欧四カ国、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、この国々へ行っていろんな調査をさせてもらいました。確かにあの国々というのは、御承知のように面積が大体日本と同じぐらいであります。しかも、人口となりますと大体四、五百万人、ちょうど静岡県が日本全国に散らばったような感じになります。スウェーデンが八百万人ですから、一番大きいです。したがって、日本と同じ領土の中に大体五百万人ぐらいの方々が生活をして一つの国を形成している、そういうふうに考えてもいいんじゃないか。  したがって、私がちょっと感じた点だけ申し上げたいんですが、朝の出勤というのは割合早くて、八時ごろにはもうみんな出勤であります。恐らく今の時期ですと薄暗いでしょう。昼間が非常に短いわけです。しかし、そこでまず第一に発見したことは、ネクタイ族が非常に少ないですね。これは皆さん方もよく御承知だと思います。ネクタイをして通勤している人というのは恐らく百人に一人ぐらいでしょう。そこから帰ってまいりますと、この近辺見ますともうネクタイばかりであります。これはもうある意味では非常に奇異に感じます。それから道路事情はもうむちゃくちゃであります。とてもとても車で予定地までは到着できない、電車が一番だ、こうなります。恐らく十年後になったらもっとひどくなるんじゃないか、こういうことも一つの問題点だろうと思います。  それから、日本人の一人一人、東京に住んでいる方が特にひどいわけでありますが、目つきが非常に厳しいわけです。ある意味ではノイローゼにかかっているんじゃないかというようないらいらしたような目つきがある。向こうの方々は非常にのんびりして、ホテルでもどこでもあいさつが自然に交わされるような余裕があるわけです。これは時間が十分あるからそうなのか、あるいは生活環境全体がそうなのか、私は両面だろうというふうに思います。  ちなみに申し上げますと、小学校、中学校、これは義務教育です。これは日本と同じような形態をとっております。その義務教育で、日本の場合は四十人学級というのがいつも問題になっております。早く四十人学級にしなきゃいけない、これは文部省でも盛んにやります。ところがあの国々、スウェーデンの中の実績からいきますと、大体一人の先生が平均六名ぐらいの子供さんを見ることになります。だから、実習とかそういうものについてはもっと大勢の先生がおられる。そして一対一でいろんな話ができる。こういうようなのも一つの余裕でしょう。それからしつけが非常にいい。  きょうは傍聴の方も大勢いらっしゃいますけれども日本の子供さんのしつけはどうでしょうか。私は新幹線に乗って広島と大体月に七回往復しております。七十時間電車に乗っております。この十年の間に随分変わりました。子供さんのしつけが本当に悪い。お母ちやんもお父ちゃんも寝ております。どんどん走り回る。これが日本実態でしょう。ところが向こうの国々というのは、それだけ余裕があるのか、精神的に非常に豊かなのか、しつけが非常に厳しいですね。そして子供さんの顔をしておりますね。  こういう同じように人間として生まれ育っても、こんなに環境によって形が変わってくるのかなということを私はつくづく今感じているわけです。  大学進学率は日本の方がはるかに上です。しかし、大学へ入った以上は相当勉強します。受験競争は余りありません。というのは、大学を受験する資格検定をやっております。ですから、いつ入ってもいいんですね。競争率もほとんどないわけです。学校の格差も余りないです。日本の大学のようにもうピンからキリまでのような、そういうような格差も余りありません。特別競争のあるところは競争します。そういうような形態が北欧のああいう先進諸国の国々、あるいはヨーロッパでもそうだと思います。  そういう国々が大きく将来に向けて、日本日本一つの文化と伝統というのがあるわけですから全部まねせよというふうなことは言いませんが、しかしいいものはいいものとして私は取り入れて、そして長期ビジョンでそういう国をつくっていくんだという、これはむしろ総理に言わなければいけないような問題かもしれませんが、私は労働大臣としても、今申し上げたように勤労者というのはもう大多数でありますから、果たしてどのように労働省としてこれから考えていったらいいのかという問題は、これは単年度であるとか、あるいは大臣が就任中だけという問題ではなくて、長いビジョンの中で私はそれはちゃんとした方針を出していかないとなかなか先進諸国に追いつかないんじゃないか、そういう感じがしてならないわけであります。えてして内部だけの問題をいろいろやっておりますと、ほかに全然目が届きませんので、労働省皆さん方もどんどん海外へ行って勉強できるように今労働大臣にお願いしますので、大臣の方で答弁をひとつお願いしたいと思います。
  220. 福島譲二

    国務大臣福島譲二君) 長い豊かな経験を通しての御質問でございまして、御提起された幾多の問題点は私も全く同感のところ、共鳴するところが大変多いことでございます。  確かに、日本人はもう少しゆとりを持たなきゃならない。今回の国民生活白書でもそのゆとり、経済的なゆとり、精神的なゆとり、時間的なゆとり、空間的なゆとりというような、それぞれの角度から分析をいたしておるところでございますが、まさに今小西委員がお話になったようなことを念頭に置いての今回の国民生活白書の分析であっただろうと思います。  そして、海外に参りまして、確かに日本の置かれておる現状についてよい意味でも悪い意味でも大変勉強になる機会が多いわけでございまして、労働省といたしましても、でき得る限り広い視野を持ってこれからの労働行政を考えるという意味合いにおきましても大変得がたい機会でもございますので、できる限りそういう機会を持たさせていただきたいと思います。  また、政府全体といたしましても、海部内閣として、二十一世紀に向けての日本の将来はどうあるべきかを展望する懇談会も近々発足するようでございます。その中におきましても、一つ労働行政といいますか、あるいは高年齢者の雇用の確保の問題とか労働時間の短縮の問題とか、こういう問題が大変大きな柱になっていくだろうと思いますので、今御提言されましたいろいろな問題、 それぞれの角度について参考にさせていただきながら、なお今のような意味での労働行政の展開に努めさせていただきたいと思います。
  221. 小西博行

    ○小西博行君 それともう一点は、お役所の幹部の皆さん方がこうやって並んでおられるわけですね。私はこうありたいと自由に発言ができないというのが非常にお気の毒に思います。ここで発言いたしますと、この前言ったじゃないかというようなことで、議事録もちゃんと残っておりますので、なかなか発言ができないわけでありますけれども、もっとこれは自由濶達に自分のやるべき方向といいますか、こうありたいというような、そういうようなものも、内部ではどんどん出てきているのかもしれませんが、そういうものを若手の優秀な方々から意見を十分聴取してやられた方がいいのじゃないか。  私どもがそのようにお聞きしても、いや私ではとても言えません、局長に聞いてくださいなんという意見も非常に強いわけでありまして、それではなかなかその方々は成長しにくいだろうと思います。過去のことは非常に詳しいんだけれども、これから先は全然知らないという顔をしなきゃいけない。そこが私は省庁の大きな一番の問題点だと思いますので、まさにこれからの時代は大変な時代ですから、どんどんその辺の力を発揮してもらえるような内部でのひとつ検討をお願いしたい。  さて、時短の問題、さっき申し上げましたけれども、白書の中でもいろいろ統計の資料がたくさんございます。私も見せていただきました。時短というものを皆さんが願望しているんだけれども、現実になかなかならない。労働時間が少なくなればそれだけ余暇がふえるという、これはわかります。しかし、その分だけ例えば残業手当が入らないというような問題もまたございまして、その点が実は有給休暇なんかをとる場合でもいろんな問題もまた逆に出てくるのかな、そういうような感じがいたします。  その辺に対して、何とかして有給休暇を自由にとっていただくような、有給休暇のアップ率を上げるような、そういうような一つの方策であるとか、あるいは時間外労働の法定割増金、つまりもっと金額を上げる。これはヨーロッパあたりのデータを見ますと、どこの国もなかなか金額は高いですね。例えば残業手当なんかというのは、日本は二五%アップになっておりますが、ノルウェーが四〇%ですね。デンマーク、フィンランド、スウェーデンが五〇%。そのような一時間当たりの残業の手当にしても随分違うというようなことがあります。ましてや休日、深夜ということになりますと一〇〇%、日本が五〇%であります。そのようになっておりますので、そういう方向にどのようにして持っていくかということを、まず大臣の所信をお聞かせ願いたいと思うのです。
  222. 野崎和昭

    政府委員野崎和昭君) 大臣のお答えの前に、ちょっと事実関係を御説明申し上げたいと思いますが、時間短縮に伴いまして賃金が減るというのは時間短縮に対する大きな障害であることは事実でございます。  所定内労働時間の短縮の場合には、時間を短縮したことによって賃金を減収にさせないという暗黙の了解が現在労使でできておりまして、時短に伴って減収になるということは余りないと思いますが、時間外労働につきましては、時間外労働がなくなった以上は時間外労働賃金がなくなるというのはこれは基本的には避けがたいことでございまして、そういった問題について対応が必要であるならば、やはり労使間でよく話し合っていただく必要があるんではないだろうかと、そんなふうに思うわけでございます。
  223. 小西博行

    ○小西博行君 余り時間もないようですが、フレックスタイム、これは特に都会の通勤ラッシュ、これを解消するために時間を少しずらして勤務体制をとっていくという、これは私は非常に有効ではないか、そのように思います。  東京一極集中ということで、そういう問題はまず東京が第一だと思うんですが、大阪も相当混雑している。結構田舎の私が住んでいる広島なんかでも、道路事情なんかありまして相当やっぱりラッシュです。私が住んでいる呉から広島まで三十キロくらいしかないんですが、二時間ぐらいかかることがあります。恐らく日本全国でそういうような現象が起きておるので、フレックスタイムというものをもっと積極的に進めるような方向はないものかと、この点はどうですか。
  224. 野崎和昭

    政府委員野崎和昭君) 御指摘のように、フレックスタイムはこの前の労働基準法の改正で制度化されたのでございますが、非常にその後爆発的に普及が進んでいると思います。御指摘のような通勤の点もございますし、また労働者各人の生活の都合に合わせられる、あるいは必要な時間にだけ働くということで時間全体の短縮になるというようなことがいろいろあるようでございます。  これは労使で協定をした場合に導入できることになっておりまして、すべての場合にフレックスタイムが可能であるとは言えないと思いますが、導入可能な場合には労使で円満に話し合いが進むように、私どもの方でいろいろ事例を集めまして、必要に応じて情報を提供させていただいているところでございます。
  225. 小西博行

    ○小西博行君 次の問題に入らせていただきますが、労働組合がこの十一月二十一日に新連合という連合の結成をやるということはもう既に御承知だと思うんです。今までのいろんな資料を見てみましても、大体労働省としては最近の労使関係というのはおおむねうまくいっていると、こういう結論を出しているわけですね。  今度の新連合というのは、御承知のように民間にさらに官公労が加わって新しく新連合というものが結成される。この人数が約八百万人というふうに言われております。非常に大勢の勤労者が集まって一つの組合化ができるというようなことなんですが、こういう発足に対してどのように労働省はお考えになっておられるのか、その決意をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  226. 福島譲二

    国務大臣福島譲二君) この二十一日の午後に新しい連合が発足をする運びになりました。一つの戦後の労働史にとっての大きなエポックメーキングの出来事であろうと思います。  今お話がありましたように、まさに官民の主要組合を結集いたしまして、八百万の規模という大変なナショナルセンターの誕生でございまして、これまでの大変な関係者の御努力の結果だったと思います。  そういう意味で、この一大ナショナルセンターが誕生いたしましたことについては敬意を表しますと同時に、また、その基本的な運動方針が自由にして民主的な労働運動を展開するんだと、そういうことでまた国際自由労連にも参加をされる。そしてまた、運動の方針も賃上げそのものは一般単産の方の問題として、あるいはそれぞれの企業の問題として、連合におきましては制度、政策的な問題まで踏み込んでこれを取り上げていくということで、物価の問題からあるいは住宅の問題から、広範な政策的な分野まで踏み込んで、御自分でも研究機関をつくって立案をし、そしてそれをまた政治の面に生かすべく努力をされる、そういう心組みで発足をされるというように伺っております。  その方向としても、私ども国民生活を守るという立場からまことに結構な方向だと思いますし、私どももこれから新連合とは機会あるたびに胸襟を開いて、国民生活をいかにしてこれから発展させていくか、勤労者を守っていくかということについてのお話し合いを進めながらよりよき方向に持っていきたい。そういう意味で新連合にも大変大きな責任があるわけでございますから、その責任もまた自覚をしていただき、現実的な対応をしていただきますことを心から期待をいたしておるものでございます。
  227. 小西博行

    ○小西博行君 終わります。
  228. 西川潔

    ○西川潔君 私も社会労働委員会質問をさせていただくのは初めてでございますので、どうぞよろしくお願いいたします。  本日は、労働大臣の朝からの答弁で、本当に現在人情紙のごとしと言われるような時代でありま すが、堀先生質問におうちの子供さんのお話を出されて、涙ながらに御答弁されておられる大臣を僕はこちらの方からお伺いさしていただきまして、我々国会へ来るまでは、政治家というのは本当に地位や特権を利用して悪いことばっかりしているんではないかなというふうに思っておりました。国会へ来るともっとわかるだろうと思って参りましたのですが、ここへ来てわからないことが随分たくさんあります。なおかつわからなくなったような部分もたくさんあるんですが、きょうは本当に大臣には感動させられました。我々は全国の方々を代表してここへ送っていただきましたものですから一生懸命やりますので、ひとつ大臣も我々が夢を持てるような、三年後、五年後、十年後、毎日の生活で計画が立てられるようなひとつ御答弁を省庁の方にもお願いしたいと思います。  まずは、我が国の高齢化は世界に類を見ないほどのスピードでやってきております。私がまず最初にお伺いしたいのは、現在年金の問題もそうですが、単に何人の人で何人を支えるかということではなしに、支えるのは日本国民である以上お互いですから当たり前のことなんですが、問題はこれからの社会を支える若い人たちの勤労観だと思うんです。随分変わってきております。  我が国のこれまでの発展を支えてきたのは、勤勉さをとうとぶ勤労観だと思うんですが、経済が発展し豊かな社会と言われる今日、このような勤労観が失われて、額に汗して働くというのは、そういうことがダサいとよく言われるんです。こういう若い人は嫌われてしまうんです。朝から三Kという話も出ておりましたが、きついとか汚いとか危険とかというお話も出ておりますが、この問題は教育の問題とも関係があると思うんですけれども、情報化社会、国際化社会と言われている中で、新しい勤労観を養うために労働省が率先して取り組んでいただきたいんですが、今後どのように取り組まれるか、お年寄りのことも含めて、若者のことも含めてお願いします。
  229. 福島譲二

    国務大臣福島譲二君) 若者の教育という面からまいりますと、むしろ労働省というよりも文部省の所管にかかわる分野の方が多いかと思いますが、しかし今せっかくの御質問でございます。  今の三Kと言われましたようなことに、今の日本の若い人たちが大変豊かになり、ぜいたくになってしまったということの反面かと思いますが、そういうものにつきたくない、そしてそういうものは、今しばしば議論になっておりますが、外国人のいわゆる単純労働者を入れて、そういう分野はそういう人たちにやらしたらいいというような極端な議論まで今出ておることは、私も大変これはもう憂慮にたえないことであろうと思います。確かに気持ちの上でそういうふうになりがちかと思いますけれども、そういう気持ちになりましたのも、やはりそれは一つ家庭教育であり、また学校教育の責任でもあろうかと思います。  先ほど御質問の中にしつけという言葉が出てまいりました。しつけという言葉は身が美しいと書くわけでございますが、自分自身心の面で本当に美しさを持つようなそういう教育を受けておれば、やはり自分だけがいい子になりたい、自分たちがいい生活をしたいということでは済まないわけでありまして、格別日本人はいい仕事分野をやって、そしていわば汚いというのは余り表現は適切でないかもしれませんが、そういうものはもう外国人来てでもやってくれなんていうことになりますと、私はやはり国際的な中において日本人のあり方として大きな問題である。そういうことには決してなってはならない。そういう意味でも、今御指摘のような意味での教育というのが大変大切だなと今伺っておりながら感じたことでございました。
  230. 西川潔

    ○西川潔君 続いて、企業の人手不足ですね、鋳物業界建設業界。私は大阪選出でございまして、大阪には随分中小企業もございます。地場産業の方々も随分困っていらっしゃいます。いわゆる人手不足倒産、これが大変問題になっておりますが、高齢者雇用は、就業意欲が物すごく高いにもかかわらず本当に厳しい状況があります。  そこで、高齢者雇用対策についてお伺いいたします。本格的な高齢化社会を迎え、労働省としてはどのような考え方で高齢者雇用対策を進めようとしているのか、労働大臣にお伺いします。
  231. 福島譲二

    国務大臣福島譲二君) まず、人手不足のお話がございましたが、確かに地域的に人手不足の地域が大変広範に広がっているのも現実でございます。しかし、北海道あるいは九州等ではまだ有効求人倍率が一にも達していないところもあるわけでありますし、また地域の格差だけでなく、年齢的にもあるいは男女別という意味からしてもまだまだ人手不足を解消するのにいろんな政策手段が、努力をもって解決しなければならない分野があるのではないかなと今思っております。  格別いろんな職場を見ておりまして、少し人の使い方も日本はぜいたくになり過ぎているのではないか。あるいはこんなに若い人でなくても、もっとお年寄りでも、あるいは場合によっては御婦人でも勤まるような――今のところはちょっとおしかりをいただくかもしれませんが、そういう若い人でなくても済むようなところについてやはり考え直していくというようなことも考えていかなきゃならぬかなと思っております。  お年寄りの雇用の問題は、まさに大変な高齢化社会、すばらしい高齢化社会になってきているわけですから、働きたいと、また元気だと意欲を持った方々に元気で働いていただくというのは、そういう方々の生きがいの面でも大変大切なことでもございますし、単に労働力の需給の問題ということを離れて、そういう意味でも大切にしていきたい。  ついては、今六十歳定年というものが一つのめどとしてあるわけでありますが、これを平成六年度までには完全に定着をさせるということと同時に、当面、この数年間でその六十歳定年というものをできるだけ少しずつ引き上げていくということの努力を、これはもう具体的に労働省は特に平成二年度予算要求の段階でいろんな工夫を凝らしておるところでございますが、あらゆる努力を尽くして高年齢者の、お年寄りの皆さん方の雇用の安定を図っていきたいと思っております。
  232. 西川潔

    ○西川潔君 本当に大変細やかな御答弁ありがとうございます。  大臣は昭和二年生まれだということを午前中にお伺いしたんでありますが、まだあと一期やられるのか二期やられるのかわからないのですけれども、もしおやめになったときはどんな仕事につきたいとお思いですか。
  233. 福島譲二

    国務大臣福島譲二君) まさに今昭和二年生まれという御指摘のとおりでありますが、私どもは本当にゆとりのない今までの一生を過ごしてまいりました。格別、私は国会議員になるまでは大蔵省におりまして、予算編成の仕事を主として担当しておったものですから、それこそ土曜日曜もない、毎日夜一時二時、家に帰って雨戸のあいている我が家を見たことがないなんていう生活をずっと続けてまいりました。国会に参りましても、東京における国会議員の生活は皆様方同様でございますが、大変な厳しさでありますし、また私ども、いつあるかわからない選挙というものを控えて、やはり選挙区に帰って選挙区の有権者の皆様方の声を吸い上げるという意味でも、私ども土曜日曜が全くないという毎日毎日を過ごしております。  そんなことを考えますと、まだこれから先どうするかということをはっきり考えたわけではございませんけれども、もうこれから先元気で国家国民のためにお務めするだけの自信がなくなった段階におきましては、また新たなる仕事をするということではなくて、まさにこれから本当にすばらしい余暇を持つような形をあるいは期待するものかなと思います。
  234. 西川潔

    ○西川潔君 ありがとうございます。  大臣はそうして大蔵省でお仕事されて政治家になったわけですから、ある程度の蓄え、年金、そういうことは――いや、本当に我が家も八十一、七十六、七十一と、三人の親ともう二十三年ほど生活をともにしておるんですが、そういう話ばっかりです、帰りますと。本当に老人ホーム二十四 年間回らしていただきまして、外と我が家と差はありますが、うちもミニ老人ホームみたいなうちなんですけれども、ぜひ厚生省労働省の方に一カ月ほどうちで住み込んでいただきたいなと思うぐらいのうちなんですけれども。  大臣に今お伺いいたしまして、六十二歳にしてまだ将来のことを、老後のことを考えていらっしゃらないというのは、それは大臣はこれだけの要職にあるわけですからそんなことは考えないで済むわけですけれども、僕の周りにいる人たちは大変不安な方が多いわけです。リタイアしてからの年金のこと、六十五歳になること、それからまた老後の仕事のこと。  次にお伺いしたいのは、高齢者雇用機会の拡大を図っていただきたい。これは労使の努力はもとより、政府の助成金、大蔵省出身ということで数字にも強いと思われますが、政府の助成金などの援助の果たす役割もこれは本当に大きいということも聞いておりますが、さきの行政監察結果においては助成金が効果的に使われていないのと違うかというような指摘も受けております。助成金の援助策を効果的なものとするために制度見直しを含めて労働省は今後具体的にどのようにやっていかれるか、お伺いしておきたいと思います。
  235. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) ただいまお話がございましたように、高齢者雇用機会を確保するためには、企業あるいは労使に御努力をいただくとともに、国の助成金の果たす役割も大きいかと思います。  助成金につきましては、お金の支給でございますのでいろいろ支給要件というのがございまして、そういうことでわかりにくい面があったり、なかなか私どもの正直申しましてPR不足もあったかと思います。そういった意味で、助成金の使い方、そういったことについて十分啓発、広報をいたすとともに、より基本的には助成金のあり方をそれを受けられる方にわかりやすくする。そういう観点から、平成二年度の予算要求におきましても、高齢者雇用のために助成金を拡大するとともに、わかりやすくするという方向で大蔵省にも制度改正をお願いしているところでございます。
  236. 西川潔

    ○西川潔君 労働大臣は大蔵省にいらっしゃったということでございますので、高齢者雇用促進を図るためにどうぞよろしくお願いいたします。  先日、予算委員会で私お年寄りのシルバー一一〇番というのをお願いいたしまして、厚生大臣に何とか来年あたりでも統一してもらえないかと。全国電話番号がばらばらなんです。現場を本当に何十年歩かしていただきまして、一刻を争うようなことがたくさんあります。お年寄りの面倒を見ていらっしゃるのは妻であり、また嫁であり、娘であり、そういう方々は朝から本当に夜遅くまでお父さんやおじいちゃんやおばあちゃんの面倒を見ていらっしゃるわけですが、そういう方々がなかなか行政の広報なんかを細かく見るというような機会もございません。そういうことで、いよいよ十二月の中旬からあのシャープという一番右端の下ですが、#型を押して、八〇八〇という番号を押していただきますと、全国統一番号になりまして大変僕はうれしく思います。老後を晴れ晴れと生きようというふうに統一していただいたんです。  ひとつ労働省の方でもこの雇用促進を図るために、例えば公共職業安定所でのきめ細かい温かいサービスという意味で、現在ビデオで紹介したり、東京で押しても熊本県のこともわかれば北海道のこともわかるというようにサービスは行われていますが、今後こういうふうな高齢者のサービスにおいてはどのようなことを考えていらっしゃるんでしょうか。
  237. 清水傳雄

    政府委員(清水傳雄君) ただいま助成金の話も出ましたけれども、助成金というのはまさに有効な手段でありますが、あくまでも手段でございまして、基本はやっぱり職業紹介、これを中心に据えてやっていかなければならない、そういう意味の安定所の活動というのを私どもうんと強化をしていかなければならない、このように考えております。具体的に現在やっておりますのは、高齢者の専門のコーナーをどの安定所にも必ず設ける形で専門的に設置をし、そこでケースワーク方式で御相談に当たる、こういう形をとっております。  ただ、いろいろお話が出ましたように、五十五歳以上の求職者というのは全求職者の三割に当たるわけでございます。しかし、その求人倍率というのは御承知のとおり〇・三一とか〇・一六とかこういう状況にあり、非常に厳しい状況にございます。したがいまして、まず求人を各企業からいただきに上がる、こういう努力を積極的にやっていかなければならないわけでございます。またそのことのためにも、私ども職業紹介の業務というのを、単に安定所の中でじっとしているということだけじゃなしに、出張サービス、通信サービス、そういうふうな形で展開をすべく今努力中でございます。  お話しの自己紹介ビデオというのは、これは個々の求職者を紹介するために、その方のセールスポイントというのをビデオに自分自身で安定所の施設で収録をしていただきまして、それを幾つか持って事業所を訪問いたしまして、向こうのテレビにつけてごらんをいただいて、こういう人がおられるからひとつお願いしますと、こういうようなことを主要都市、相当の都市に安定所がもうすべてこれを行うような形をとっております。  さらに、求人の五歳アップ作戦と称しまして、全部の求人について五歳ずつ引き上げていただく、こういうような形を展開するとかいうようなことを全国的に展開をしつつございます。  そうしたことに必要な経費をやはりこれは確保していかなきゃなりません。そういうことをやりつつ、そうしたものを具体的に生かすのは、やはり個々の安定所のさまざまな地域に密着したいろんな創意工夫、きめ細かな工夫、こうしたものを随所に、好事例等もそれぞれ安定所に示しつつきめ細かなサービスを行っていく、こういう考え方でやってまいりたいと思っております。
  238. 西川潔

    ○西川潔君 お話をお伺いすると大変安心させていただけるわけですが、僕は余り攻撃的にああしろこうしろと言うような性格ではございませんので、本当に一生懸命お願いしてやっていただけるようなこちらでの働きを自分としては心がけているんですけれども労働省のこちらの本を読ませていただきましても、本当に細部にわたって細やかにいろんなことをしていただいているんですが、これから高齢者の方々の雇用ということを考えますと、やはり体だ、健康だと思うんです。  健康の増進について、元気で働いていただくために体力とか能力が必要だと思うんですが、このために、年をとってからではなく、若いころから心身ともに健康な体力づくりが必要だと思いますので、職場での何か健康増進などは労働省としてはお考えをいただいているんでしょうか。
  239. 野崎和昭

    政府委員野崎和昭君) 御指摘のとおり、高齢者がふえるに伴いまして成人病を持つ勤労者の方も非常にふえているわけでございますけれども、健康が何よりも重要だということで、基本的にはもちろん御本人の努力ということなんでございますけれども、企業がこれに協力すればなお効果が上がるということで、昨年、労働安全衛生法を改正いたしまして、企業にそういう労働者の心身両面にわたる健康づくりに協力していただくことを事業主の努力義務にさせていただいたわけでございます。そして、現実に人材の養成とかあるいはかかった費用等については国の方で助成を行うという制度をつくっております。  なお、成人病の問題につきましては、本年の十月から健康診断につきまして、成人病の増加に対応できますように内容を格段に充実いたしまして、肝機能検査とか心電図の検査とかそういうものを入れまして健康診断を企業でやっていただく、これによりまして早期発見と適切な健康管理に努めることにしていただきたい、そういうふうに考えているところでございます。
  240. 西川潔

    ○西川潔君 次に、新聞の報道で見せていただいたんですが、これたしか二月二十一日の新聞なんですけれども、ホームヘルパーなどの在宅介護の身分をめぐって労働省厚生省の間で意見の相違 があると伝えられております。これは労働省厚生省どちらになるんでしょうか、ホームヘルパーの問題ですが。
  241. 清水傳雄

    政府委員(清水傳雄君) ホームヘルパーは厚生省所轄で、地方公共団体等の事業を含めておやりになっている部分もございますし、それからいわゆる老人の方々をお世話する介護労働力というような問題につきましては、御承知のように家政婦さん、これが全国で十五、六万、やっぱりこれが一つの中心的な役割を現実に果たされておられるだろうと思うわけでございます。こうした介護労働力の適切な人材の養成確保ということが非常に重要な問題でございますし、いわゆる労働力の需給調整、円滑な確保を図っていく、こういう役回りを私どもといたしましても果たしていかなければならない、このように思っておりまして、そういう意味で私どもの方でも努力をしていかなければならないそういう分野であろうというふうに考えております。  お尋ねの新聞の問題というのは、かなり最近民間におきまして在宅介護の人を派遣する、そういう形態の業務分野がふえてまいってきたというふうにも伺っておるわけでございます。そうした形のものも含めました非常に多様化が進む老人介護のニーズにどんなふうな形で介護労働力の需給システムを整備していくか、こういうことがそういうふうな民間ベースの問題も含めまして重要なことであろうというふうに私どもとしても考えております。  そういった意味合いにおきまして、こういうシステムの一つといたしまして労働者派遣の対象業務に、労働者派遣法という法律がございますが、これは業種が限定をされておるわけでございまして、そうした対象業務の一つに在宅介護業務を加える、こういう問題が一つございます。そのことをめぐりまして、いろいろと厚生省の方とも意見調整を図らせていただいておる。  もちろん、こうした派遣法の適用対象にするということにつきましては、それだけじゃなしに、ほかの各方面ともさまざまな意見調整も必要でございますし、現在、中央職業安定審議会の小委員会におきまして、法律の見直しの時期に当たりますものでございますから、いろいろと御検討をいただいておりますし、そういうところの御議論も必要である。そういうふうな中での一つ検討課題として行っておる、こういうことでございます。
  242. 西川潔

    ○西川潔君 我々がうろうろしないように、ひとつよろしくお願いいたします。  最後の質問でございます。介護休暇の問題についてお伺いいたしますが、介護休暇制度については長期間休むということだけではなしに、仕事を継続させるために、例えば朝遅く出勤したり早退ができるようなきめ細かな制度づくりが僕は必要だと思うのですけれども労働省は来年度予算に介護休暇の奨励金の導入を要求されておられますが、こうした施策の必要性と導入に至る経緯と内容を最後にお伺いして終わりたいと思います。
  243. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 先ほどからるるお話ございましたように、人口が高齢化する、また介護を必要とする高齢者がふえておられる。そしてそういう介護をなさる方自身が男女を問わず仕事を持っておられる。そのために仕事をやめなければならないということも起こってくるというようなことから、私どもではまず実態や問題点を明らかにしたいということで専門家の先生方に御検討をいただいたわけでございますが、その結果、多くの方々が介護をすべき方を抱えておる、そして介護休業の必要性を訴えておられるということがわかりましたために、来年度そのような措置を要求しようということになったわけでございます。  ただ、御指摘ございましたように、休まなければならないというようなものもございますし、非常に介護の対応が多様でございますから、場合によっては遅刻あるいは早退というようなもので処理できるものもあるのではないかというふうに考えているわけでございます。  ただ、この問題につきましてはまだ調査研究が始まったばかりでございまして、どのようなものが最も有効なものであるか、またそうした対応についてどこまでを国、地方公共団体が見、企業が見、あるいは個人が負担するかということについてのコンセンサスの形成も必要であろうというようなことから、とりあえず比較的企業で行われております介護休業制度を奨励するというところから始めようということでございますので、そのほかもっときめ細かな対応につきましても今後さらに勉強はいたしてまいりたいと考えております。
  244. 西川潔

    ○西川潔君 どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
  245. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 本件に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。     ─────────────
  246. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 次に、育児休業法案を議題といたします。  それでは、発議者糸久八重子君から趣旨説明を聴取いたします。糸久八重子君。
  247. 糸久八重子

    糸久八重子君 ただいま議題となりました育児休業法案につきまして、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、連合参議院及び民社党・スポーツ・国民連合を代表いたしまして、提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  近年、女性の職場進出は目覚ましく、一九八八年には雇用されて働く女性の数は千六百七十万人に達し、そのうち有配偶者が約六割を占めるに至っており、今後も乳幼児を持ちながら働く女性増加が見込まれております。  しかし、働く女性の職場環境を見ますと、出産後も勤続する意思を持ちながら、育児のためにやむなく職場を離れなければならない例が多く見られ、一度離職すると再就職が難しく、また不利な労働条件を余儀なくされる場合が多い実態にあります。この職業家庭生活との調和の問題に対処するためには、延長保育、夜間保育、ゼロ歳児保育を行う保育施設の整備充実を図るとともに、育児休業制度を普及させることが不可欠となっております。  ヨーロッパ諸国では、多数の国において、早くから育児休業制度あるいは親休暇制度が立法化され、働く女性の人権と母子福祉、育児についての手厚い配慮がなされております。これに対し、我が国では、現在、公務員である女子教員、看護婦、保母等について無給の育児休業が制度化されているのみで、極めて対象範囲が限られております。労働省調査では、今年の二月時点で、三十人以上規模の事業所で育児休業を実施している事業所は、わずかに一九・二%にすぎません。しかも、この数字は現行法に基づく実施事業所を含んでいるものであり、その他の事業所ではさらに低いものとなっております。  一九八五年六月に、我が国が批准した国連の女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約は、「子の養育には男女及び社会全体がともに責任を負うことが必要であることを認識する」と述べております。  また、ILOも、一九八一年に、男女労働者特に家族的責任を有する労働者機会均等及び均等待遇に関する条約及び勧告を採択しており、その勧告では「両親のうちのいずれかは、出産休暇の直後の期間内に、雇用を放棄することなく、かつ、雇用から生ずる権利を保護された上、休暇(育児休暇)をとることができるべきである。」とうたっておりますが、現在、これらの理念が世界共通の認識となるに至っております。  しかるに、一九八五年六月、第百二回国会で成立したいわゆる男女雇用機会均等法は、その目的及び基本的理念において「職業生活家庭生活の調和を図る」ことをうたいつつも、育児休業については、旧法の勤労婦人福祉法と変わらず、「事業主は、育児休業の実施その他の育児に関する便宜の供与を行うように努めなければならない。」との単なる努力規定にとどまっております。  かかる実情の中で、我が国においても、雇用を継続しながら、一定期間休業し、育児に専念できるように、女子労働者のみならず男子労働者も含めすべての労働者を対象とする所得保障を伴う育 児休業制度を早急に法制化する必要があります。  これがここに育児休業法案を提出する理由であります。この際、私は特に、昨年五月に本院の国民生活に関する調査会が議長に提出した報告書においても、「女子労働者のみならず男子労働者を含めたすべての労働者を対象とする育児休業制度の法制化」の必要性が主張されていることに、委員各位の御注意を喚起しておきたいと思います。  次に、この法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。  まず第一に、この法律は、育児休業について最低の基準を定めて、子を養育する労働者に育児休業を保障するとともに、育児休業をする労働者に対して育児休業手当を支給することにより、その労働者の負担の軽減と継続的な雇用促進とを図り、もって労働者福祉の増進に資することを目的としております。  第二に、使用者は、父または母である労働者のいずれか一方が、その子が一歳に達するまで養育するための休業を請求したときは、その請求を拒むことができないこととしております。  第三に、育児休業をする労働者には、その期間中、賃金の六割相当額の育児休業手当を支給することとしております。育児休業手当の支給に必要な財源は、すべての労働者、事業主及び国が、それぞれ三分の一ずつ負担することとしております。  第四に、育児休業を理由とする不利益取り扱いの禁止を規定するとともに、使用者は、育児休業をした労働者には、休業終了後、原職または原職に相当する職に復帰させなければならないものとしております。  なお、この法律は、公務員を含めた全労働者に適用されるものであります。  また、この法律の施行期日は、啓蒙宣伝期間等を考慮して、一九九一年四月一日としておりますが、それまでには整備しておかなければならない特別会計法や、義務教育事業等の公共部門の事業遂行に支障を生じさせないようにするための関係法律の整備等についても、追ってできるだけ早く提案する予定であることを申し添えておきたいと思います。  以上が、この法律案の提案理由及び内容の概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  248. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十四分散会