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1989-12-13 第116回国会 参議院 国民生活に関する調査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年十二月十三日(水曜日)    午後二時十分開会     ─────────────   委員氏名     会 長         遠藤  要君     理 事         小野 清子君     理 事         佐々木 満君     理 事         山本 正和君     理 事         高木健太郎君     理 事         近藤 忠孝君     理 事         乾  晴美君     理 事         寺崎 昭久君                 井上  裕君                 石渡 清元君                 大島 友治君                 大塚清次郎君                 長田 裕二君                 鎌田 要人君                 木宮 和彦君                 清水嘉与子君                 高橋 清孝君                 吉川  博君                 青木 薪次君                 糸久八重子君                日下部禧代子君                 小林  正君                 谷畑  孝君                 渕上 貞雄君                 前畑 幸子君                 三石 久江君                 刈田 貞子君                 広中和歌子君                 池田  治君                 西川  潔君     ─────────────    委員異動  十月二十四日     辞任         補欠選任     小野 清子君     大河原太一郎君  十月二十五日     辞任         補欠選任     大河原太一郎君     小野 清子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         遠藤  要君     理 事                 木宮 和彦君                 佐々木 満君                 山本 正和君                 高木健太郎君                 近藤 忠孝君                 乾  晴美君                 寺崎 昭久君     委 員                 石渡 清元君                 大塚清次郎君                 長田 裕二君                 高橋 清孝君                 吉川  博君                 青木 薪次君                 糸久八重子君                日下部禧代子君                 小林  正君                 谷畑  孝君                 渕上 貞雄君                 前畑 幸子君                 三石 久江君                 刈田 貞子君                 西川  潔君    政府委員        公正取引委員会        事務局経済部長  柴田 章平君        経済企画庁国民        生活局長     末木凰太郎君        経済企画庁物価        局長       栗林  世君        通商産業大臣官        房審議官     横田 捷宏君    事務局側        第二特別調査室        長        宅間 圭輔君    説明員        公正取引委員会        事務局官房審議        官        佐藤 一雄君        通商産業省産業        政策局商政課長  中名生 隆君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○国民生活に関する調査  (内外価格差問題に関する件) ○継続調査要求に関する件     ─────────────
  2. 遠藤要

    会長遠藤要君) ただいまから国民生活に関する調査会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る八月十一日、斎藤栄三郎君が委員辞任され、その補欠として井上裕君が選ばれました。     ─────────────
  3. 遠藤要

    会長遠藤要君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、会長に指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 遠藤要

    会長遠藤要君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事木宮和彦君を指名いたします。     ─────────────
  5. 遠藤要

    会長遠藤要君) 国民生活に関する調査を議題といたします。  本調査の具体的な調査項目選定につきましては、理事会の協議によることとなっておりまするが、これまでに数回の理事懇談会を持ちまして協議いたしました結果、当面内外価格差問題について調査を進めることに意見が一致いたしました。  この問題は、皆さんも御承知のとおり、日本経済大国だというような、各国から日本に対してそういうふうな見方をされておりますけれども国民一人一人は果たして経済大国という認識を持っておるかどうか、そういうふうな点をかんがみて、それからまた価格差の問題についてもしかりでございます。働く人たちが何十年間働いても一戸の住宅も持てないというような時代に、これで経済大国だということで果たしてどうかなと、そういうふうな点もございますし、価格差の問題においても全く同じでございます。  さような点を本件につきまして関係省庁から事情を聴取いたして審議をしてまいりたいと思いますので、御了承をちょうだいいたしておきたいと思います。  なおまた、皆さんに一言申し上げておきたいんですが、政府もまた調査会の各委員方々も、時節柄大変多忙をきわめております。さような点で、きょうは経済企画庁通商産業省公正取引委員会とそれぞれの方々から事情を聴取いたしますけれども、きょうは聴取しただけで、後日それに対する質疑を行うということであらかじめ御了承をちょうだいいたしておき、また各省庁から説明のためにおいでを願った方々は、その説明が終わった後には御退席願って結構でございますので、その点あらかじめ御理解をちょうだいいたしたいと思います。  それでは、経済企画庁から説明を聴取いたします。栗林物価局長
  6. 栗林世

    政府委員(栗林世君) 物価局長の栗林でございます。  お手元に「物価レポート'89」の説明資料をお配りしてございますので、それに従いまして御説明させていただきます。  お手元の資料の七ページをお開きいただきたいと思います。  本年度の物価レポートにおきましては、主として第一部のところで物価動向、特に消費税が物価にどういう影響を与えたかということを中心にいたしました物価動向を解説してございますが、本日はそれを省きまして、第二部のところで「内外価格差の実態と縮小のための方策」ということでやっておりますので、そこを中心にいたしまして御説明させていただきたいと思います。  そこの七ページの上のところにも書いてございますように、まず私どもの方でやりましたのは、内外価格差をめぐる問題点ということで、いろいろな立場の人がいろいろな指摘をしてございますので、これから内外価格差の問題を考えていく上で、今までいろいろ言われていたことをまず整理してみようということから始めております。そこで、それを整理しました上で、その整理しましたものにのっとりまして現在どういう実態になっているのかということを考えてみまして、それにつきまして若干の縮小のための方策についても考えてみたということでございます。  そこで、第二部の第一章のところで「内外価格差の実態」ということをやっておりますが、七ページのところに「内外価格差をめぐる意見の整理」ということで、私どもの方では五つのカテゴリーに分けまして整理いたしております。  第一番目にございますのが生計費、これは生計費全体をとる場合、あるいは食料費をとる場合、住居費をとる場合と、いろいろなグループ分けが可能かと思いますが、その生計費の価格が他の国と比べて高いか低いかということがまず一点いろいろと問題にされることではないかというふうに考えております。また後ほど詳しく御説明いたしますが、本年度の物価レポートで特に私どもの方で力を入れましたのはこの第一の点でございます。  次に、二番目のところに輸入できる特定の個別商品国内価格が外国の価格と比べて高いのではないかあるいは安いのではないか、こういういろんな御意見がございます。これは主として、そこに例示がありますように、特定の品物について言われるわけでございまして、これは後ほど通産省の方から御説明があると思いますが、日米共同調査でもこの点が一つ争点になっているところでございます。  それから三番目には、逆に今度は日本から輸出されている特定の個別品目についての価格が輸出先国の価格と比べて高い。例えば日本ですと、日本の国内の価格よりは外国で売られている輸出品の価格の方が安いのではないかというふうなことがしばしば言われておりますけれども、その点についてはどうなっているのか。これが内外価格差という言葉で語られている一つのカテゴリーでございます。この点も後ほど通産省の方から日米構造協議の価格調査ということで御説明がおありかと思います。  それから四番目としましては、これは三と四と両方をミックスしたようなサービスでございますが、特定の国際間のサービス、例えば国際航空運賃ですとか、国際郵便国際電話などのような料金につきまして方向別格差があるのではないか。例えば航空運賃ですと日本発の場合とニューヨーク発の場合では価格が違うのではないかということがよく言われるわけでございまして、これが通常方向別格差というふうに呼ばれているものでございます。  それから最後に、五番目のところで、これは結局輸入できないようなサービス、例えばそこにありますような電気、ガスというような公共料金ですとか、家賃ですとか、こういうふうないわゆる貿易ができないようなサービスにつきまして日本は外国に比べて高いのではないか、こういうふうな御意見もしばしば聞かれるわけでございます。  これが大体現在内外価格差という言葉で言われております意見の集約ではないかというふうに考えております。  そこで、そういったカテゴリーごとに少しどういうふうになっているのかということを見てみようということでございますが、ただこの内外価格差の問題につきましては、内外価格差があること自身はある意味では当然の場合もあるわけでございまして、内外価格差があることがある意味では貿易を興すわけでございますから、そのこと自体がいいとか悪いとかということにはならないかと思いますけれども、ただ、何かの原因でそれが縮まる方向に動かない、価格の決定がそう動かないということがもしあるとすれば、これはやはり何か問題ではないか、こういう意識でございます。  八ページのところに、ここは例示みたいなものなんですが、毎年、物価レポートで例示的にサンプル的な品物につきましてどの程度の価格差があるかということを調べたものでございます。これはそこにありますように備考のところに、ちょっと細かい字で恐縮ですが、日本の場合には小売物価統計からとっておりますし、ニューヨークハンブルグの場合には経済企画庁現地調査あるいは日本貿易振興会にお願いしまして調べていただいたというふうな価格がそこに載っております。  ただ、これを見ていただいたときに御注意いただきたいのは、私どもの方の調査というのはどちらかといいますと、先ほども御説明しましたように、生計費調査というのが主体になっておりますので、例えばカラーテレビといいましても、そのカラーテレビが必ずしも同一規格の製品で、同じ国でつくられて、同じ性質のものであるというきちんとしたスペシフィケーションが行われているものではございませんで、生活していく上で大体それと同じ程度のカラーテレビはどのくらいで買えるかというふうな観点から調査しておりますので、その辺は後ほど通産省の方から御説明があると思いますけれども、先ほどのカテゴリーの②と③のところで問題にしておりますような価格調査とは少し性格を異にしますので、その点はこの表をごらんになったときに注意していただきたいというふうに思います。  この表については見ていただくとわかりますので省かしていただきまして、次に九ページの方をお開きいただきたいと思います。  九ページのところにございますのが、私どもの方が特に今年度調査しましたものの主体でございまして、「生計費についての内外価格差の実態」ということになっております。これは昭和六十三年十一月にニューヨークと西ドイツのハンブルグ価格調査を実施しまして比較したものでございまして、調査の対象といたしましては、そこにも書いてございますように、我が国消費者物価指数で採用されておる品目、これが約五百四十品目あるわけでございますが、その中の約四百品目を選定してございます。この選定につきましては、特に余りにも日本的な品目とかそういうものについては落としまして、大体共通にとれる品目につきまして調査をしているということでございます。  その結果が十ページにございますような「物価水準国際比較」、第2の2表でございますが、こういう結果になっておりまして、「総合」のところで見ていただきますと、東京を一〇〇といたしましたときに、ニューヨーク相対価格が七二、ハンブルグ相対価格が六八、こういうふうな形になっておるわけでございます。ただし、また後ほど御説明しますが、生計費内外価格差の実態を見ていきますときは為替レートを幾らで考えるかというのが非常に大きな影響を持ちます。ここのところでは、六十三年の調査ですので、一応六十三年平均の為替レート、備考の4のところに書いてございますが、ドルですと百二十八円十五銭という為替レートで比較しておるわけでございます。  表の2の2をごらんいただきますと、一応どういうふうに品目を分類するかというのが一つの見方としては重要になってくるわけでございますが、私どもの方では、先ほど御説明しましたように、基本的には物価問題を考えて、特に為替レートが変動しますときの物価問題を考えていきますときには貿易が中心的な考え方になりますので、その貿易できる財とそうでないものについてまず基本的に分けていくのがいいんじゃないかという考え方を持っております。  というのは、もし外国から安いものが買えるということですと、それを輸入することによって国内物価を引き下げていくという効果が働くわけでございまして、そこの経済のメカニズムを通しまして物価が国際的な物価に近づいていくという働きを持ちますので、一応そこのところではそういうことを前提に置きまして、一番左のところの分類を見ていただくとわかりますように、「商品」というのがございまして、そこが大体そういう貿易できる財を集めてきているという考え方をとっております。  それから、それ以下のところは二つに分けてございまして、「制度的要因の大きい品目」というのと「一般のサービス」という分け方をしてございます。これは、「制度的要因の大きい品目」ということは、結局財政制度ですとか、特に補助金を出すか出さないかとか、あるいは公共料金のように政府がある程度価格決定に関与するかどうか、こういうふうな制度的にある程度価格決定に関与しているものについては制度の要因というのは大きいものですから、そういうものを一つのグループとしてまとめてあるということでございます。  それから最後に「一般のサービス」ということになっておりますが、「一般のサービス」のところは三つに分けてございますけれども、基本的には土地の価格がどの程度サービスに影響を与えているのかということから、土地を多く使うようなサービスとそうでないサービスの場合について価格差がどの程度出てくるかということを見ております。  まず「商品」のところをごらんいただきますと、「商品」は基本的にそこに分けてありますように食料品耐久財と被服・履物、その他商品というふうに分けてございまして、食料品の中は特に規制のある品目とない品目という分け方をしてございます。この食料品につきましてはその国の固有の商習慣等がありまして、それが価格に反映されるものですから、なかなか比較するときには注意しなければならないわけでございますが、一応そこで、我が国の場合に、ですから絶対水準そのものというよりは相対的に見ていただいた方がいいかと思いますが、規制してあるものと非規制品目とを比較していただきますと、どうしても規制してある品目についてはそうでない品目に比べて価格が相対的に高くなっている。これは当然、規制するのには価格以外のほかの目的があってやっているわけでございますから、その目的との関連性で考えなければならないわけでございますが、価格形成という面から見るとこういう結果が出てくるということでございます。  それから耐久消費財につきましては、そこにございますように、結果的に見まして割に価格差が大きいのは家事用耐久財、これは電気冷蔵庫ですとか電気洗濯機あるいは電子レンジとか、そういったものが入るわけでございますが、そこで割合にニューヨークと比べた場合に価格差がほかのものに比べて高いという結果が出ております。  次に、「制度的要因の大きい品目」というのがございますが、ここのところでは、エネルギー・水道のところが非常に大きな、ほかに比べますと比較的価格差があるということになっております。ここのところには、ガソリンですとか灯油、ガスあるいは上水道、下水道なんかも入っておりまして、これも例えばガソリンなんかの場合ですと税金の問題も絡んでくるということが当然そこにあります。  そのほか、これを見ていただいて注意していただきたいのは、特に保健・医療のところをハンブルグと比較していただきますと、ハンブルグの場合には、東京を一〇〇とした場合に二四と非常に低く出ております。これは先ほど申し上げましたように、ハンブルグの場合には保健・医療の関係でほとんどが公費的な負担で、自己負担分が非常に少ないということがございましてこういう結果が出ておるわけでございます。したがいまして、先ほど申し上げましたように、ここのこういった「制度的要因の大きい品目」の場合には、どういう制度を選択するかということが価格差として出てきているということもございますので、その点は御注意していただきたいというふうに思います。  それから最後に、「一般のサービス」につきましては、やはり日本の土地の高さというのは、ほかの国と比べますと家賃ですとか土地利用型サービスの相対的に価格を高めているという結果がそこに出ているということでございます。  以上が生計費をめぐります内外価格差の問題でございます。  次に十一ページをお開きいただきますと、「輸入品内外価格差」でございます。これにつきましては、私どもの独自の調査ではございませんが、通産省の方で輸入ブランド品内外価格比較調査というものを実施しておりまして、その調査結果を引用させていただいておるものでございますが、そこで見ていただくとおわかりのように、一般の輸入ブランド品につきましては、日本では非常にブランド品が高くなる傾向があるということがこの調査結果からも出ておるわけでございます。  それから次に、十二ページに参りまして、「輸出品についての内外価格差」はどうかということでございますが、この輸出品につきましては、特別にこの時点で私どもの方で調査しました結果というのはございませんので、輸出品についての内外価格差がどれだけあるかということについてはここでは述べてございません。この点につきましては、むしろ後ほど通産省の方から説明があると思います日米共同調査の結果を見ていただく方が適切かというふうに思います。  そこに一つ図をつけてございますが、これはよく言われますように、急激な円高が起きましたときには、輸出品につきましては日本の場合にドル建ての価格になっている場合が多いわけでございまして、そうしますと、円高になったからといって輸出品ドル価格をすぐそれと同じだけ上げるということはこれはなかなかできないわけでございます。ですから、そういう調整というのは、一年とか二年とかをかけて調整が行われていくわけでございまして、その辺のところを見ましたのがそのグラフでございます。  ですから、国内卸売物価指数に比較しまして輸出物価指数がどういうふうに動いているかということをそこに掲げてございまして、円高が急激に進みました六十一年ごろは非常にそこが開いたわけでございますが、それ以降は順に縮まってまいりまして、平成元年に入りましてはその差が大分縮まってきているということで、よく追随率ということが言われますけれども、為替レート輸出価格に反映されていく追随率というのも最近のところでは非常に高くなっているだろうというふうに考えております。  それから、次に十三ページをお開きいただきますと、そこに「方向別価格差」というのがございます。これも特に国際航空運賃につきましてそこに例が掲げてございますが、急激な円高が起きたときには、例えば固定費になっておりますような減価償却費ですとか賃金ですとか、そういったところは円高になったからといってすぐにそれを円高と同じだけ縮めることはなかなかできないわけでございますので、そこのところもそういったことを考慮して調整するのに時間が必要になってくるということでございます。  そこの方向別国際航空運賃を見ていただいてもおわかりになりますように、これは御案内のように、IATAの国際ルールに従いまして発地国通貨建てということが決められておりますので、円高になりますと、円高になったときには瞬間的には方向別格差がすぐどうしても生じてしまうわけです。ですからそれを順に調整していくということが行われるわけでございますが、現在では、為替レートの変動とそれから航空運賃の線とを比較していただくとわかりますように、レートの変動を追いかけまして方向別の格差が修正されていっておるわけでございまして、現時点では、先進国間ではほとんど正規運賃に関しましては方向別格差はなくなっている。ただ、発展途上国との間にはまだそういう格差がなかなか縮まらないところが、これはいろいろ賃金水準とかありますので、縮めることは非常に困難な面がございますから、ある程度七〇%とか八〇%にならざるを得ないと思いますけれども、その辺のところまでは今いきつつあるというところでございます。  それから次に、十四ページのところで「内外価格差公共料金」ということで、先ほど制度的なものの格差ということで申し上げましたが、公共料金について比較してみますと、十四ページにありますような格差が生じております。例えば電気、ガス等を見ていただきますと、アメリカとの比較で見ていただきますと差があるわけでございますが、これは例えば電気とかガスの場合に、特に日本の場合には資本費の比率がどちらかといいますと格差を生む一つの要因になっているということでございます。あるいはガスですと、これは日本のガス使用の特殊性というのが出ておりまして、需要量が少ないとか、あるいは供給方法の問題とか、そういう点からやむを得ない格差というのが生じている面もあるかというふうに思います。  それから、郵便につきましては、ほかの国とはそれほど大きな格差はありませんが、アメリカとの格差が大きいんです。これはアメリカの場合には非常に郵便の需要量が多いというのがございまして、需要が多いとこれはコストを下げられるわけでございます。大体四倍くらい日本に比べますと需要量が多いというのがございまして、それが一つの大きな格差を生んでいる要因ではないかというふうに言われております。  そのほか電話につきましては、よく言われておりますように、日本の場合には遠近格差の問題がございまして、近いところではほとんど格差はございませんが、遠くなりますとほかの国に比べると高くなるというふうな結果が出ておるわけでございます。  そこで、十五ページ、十六ページをお開きいただきたいんですが、今度は今申し上げましたような内外価格差が生じてくるときにどういう原因で生じてくるかということでございますが、一つは、先ほど言いましたように、我々の方ではマクロ的要因というふうに呼んでいますが、マクロ的要因の一つは為替レートの問題でございます。  ちょっと専門的になってしまって恐縮なんですが、内外価格差はどういうふうにはかっているかと申しますと、購買力平価というのがございまして、その購買力平価を為替レートで割ったものがこれが内外価格差という定義になっております。  購買力平価というのは、御存じかもしれませんが簡単に申し上げますと、例えば食料で言いますとパンと卵と、朝食べるものですといろいろあると思いますけれども、そういったものが五品目なら五品目あるとします。そうしますと、それを日本で買って食べると何円かかるか、例えばこれが日本で買うと仮に二百円で朝食ができた、こうします。それと同じものを今度はアメリカで買った場合には、仮に買ったときが一ドルだった。こうしますと、二百円のものがアメリカでは一ドルになるということですから、これは購買力平価で見たときは円は一ドル二百円に相当する、こういうことになるわけです。ところが、現実の為替レートというのは、そういうことでは決まっておりませんで、いろんな要因によって決まる。特に最近では資本移動、いわゆる金融市場で、国際資本市場で決まってきますので、現在ですと百四十四円ですと百四十四円ということになりますから、そうしますと二百円と百四十四円を比較したのが内外価格差の比率になってくるという考え方になっておりますので、分母に持ってきます為替レートの換算レートに何を持ってくるかということが内外価格差を見るときの一つのポイントになってくるわけでございます。  それを図にしましたのが2の7図と2の8図でございまして、2の7図のところにCという為替レートというのがございます。これが現実の為替レートの動いた軌跡でございます。年々こう動いているということでございます。したがいまして、仮にそのCという為替レートを使って今申し上げましたような内外価格差というのを定義しますと、その下の2の8図にありますように、Cという為替レート分の消費の購買力平価というふうに書いたのがございますが、この線が出てくるわけでございます。そうしますと、円安であった五十七年から六十年までをごらんいただきますと、これはむしろその期間は日本の物価の方が安かったという結果になりまして、円高時期の昭和五十三年とか六十一年以降ですと今度は日本の物価が非常に高い、こういう結果になってくるわけでございます。ですから、一つの政策的な目標として物価政策を考えていきますときに、私どもの方では、こういう為替レートが急激に変動することであれば、余り現実の為替レートをもとにして物価水準、いわゆる内外価格差というのを論ずるのには非常に危険があるということでございます。  そこで、そういうことを念頭に置きましてもう少し違う方向でいろいろ考えてみましたのがそこの2の7図のAとBというふうに書いてあるものでございまして、Aという貿易財の購買力平価と書いてありますが、これは実際に貿易をやった輸入品ですとか輸出品ですとか、そういうものを比較した上で価格を仮に決めたらどの程度の為替レートになるのか、こういうことでやりましたのがAの線になります。それに対してBの方では、現実には貿易されていないんだけれども、やろうと思うと可能な財というのがあるわけでございまして、そういうものまで含めて考えるとBという線になるわけでございます。  そうしますと、最近の六十一年以降のところを見ていただきますと、大体そういうふうないろいろ貿易面から考えたAとBというのと、それから現実の為替レートのCの動きが三本とも同じ範囲内に入ってきておりますので、そういうことも考えて現在の為替レートがそれほどこれから円安は大きく振れないということを仮に前提にすれば、この現時点での為替レートをもとにした内外価格差をある程度、これを完全に縮めるというのではなくて、それはまた後ほど申し上げますが、所得水準とかそういうものがあって全部埋められるという性格のものではないんですけれども、政策的に物を考えていくときにこの辺の水準を一応頭に置いていろんな物を考えていけるのではないかというのが我々の現在の考え方でございます。  それから、次の十七ページをお開きいただきますと、これは内外価格差に直接関連をするものではございませんが、私どもの方で東京とか日本の大都市をとっておりますので、日本国内で価格差がどの程度地域ごとにあるのかということをひとつ見ておく必要があるだろうということで見ましたのがこの2の9図でございます。2の9図をごらんいただきますと、東京が点線の外に出ておりますのは、大体東京はほとんどの物価がほかの地域に比べますと高いものですから全部外に出ている、こういう姿でございます。それに対しまして、内側にございますのは、例えば住居とか食料というのがありますが、その各カテゴリーごとに一番物価水準の低い県をそこに名前を一応掲げてございます。  これをごらんいただきますと、特に大都市問題というふうに言われております住居の価格ですとかそれから教育ですとか、そういうところでは地域間格差が大きい、こういうことになっております。それに対しまして、制度的にきちんと全国同一制度でやっておりますような保健医療とかそういうものになりますと、ほとんど地域間の格差はなくなってくるということがそこに出ておるわけでございます。ですから、こういうことも頭に置いて比較しますと、対象になっておりますニューヨークも同様にアメリカでは大都市でございますからこういう傾向があるのかもしれませんけれども、土地問題となりますと、日本全国の問題でもありますけれども特に東京の問題であるということも言えてくるかというふうに思っております。これは一応そういう内外価格差をやりましたときの一つの問題として国内の地域間格差を見てみたということでございます。  そこで次に、それではこういった内外価格差がどういう要因によって生じてくるのかということでございますが、一つは、先ほど言いましたように、急速な円高の進展というのがその一つの原因でございまして、それが十八ページのところに書いてございますように、急速な円高が生じたときには、実物経済の方ではそれで輸入物価が下がって、国内の原料が下がって国内の製品にまで波及していくのになかなかいろんな時間がかかりますので、そういった時間的なタイムラグというのがあるということもございますし、それから先ほど言いましたように、賃金ですとか減価償却費ですとか、そういう固定費的なものについてはその円高に調整していくのには非常にまた長い時間がかかるということをここでは申し述べております。  それから次に、十九ページ、二十ページをお開きいただきたいんですが、もう一つ、マクロ的な要因といたしまして内外価格差が生じております原因としては、これは一人当たり所得水準の上昇ということがございます。これはそこの十九ページの最初のパラグラフに書いてございますように、よく日本でも高度成長期に言われました「生産性格差インフレ説」というのがございますが、これにのっとって考えていただくとわかるわけですが、右側の2の10図をごらんいただくとわかりますように、一人当たり所得が高い国というのは、やはり先ほど申し上げましたようなはかり方での物価水準というのも当然高くなってくるという傾向が国際的にうかがわれるわけでございます。ですから、これを見ていただきますと、大体右上がりの線が描かれております。例えばスイスなんかでも非常に所得は高いんですが、物価水準も高いという結果が出ておるわけでございます。  これはなぜこういう結果が生じるかというのは、今申し上げました生産性格差インフレということで一応説明できるのではないか。ですから、これはいわゆる製造業のような貿易をしておりますところの生産性というのが高いわけでして、結局それのところで賃金が仮に決定されたとしますと、労働市場というのはある意味では一律でございますから、各産業ともそれほど賃金に格差が生じないということになってきまして、どうしても生産性の低い部門での価格が高くなってくるという結果がほとんどの国で起きておるわけでございます。したがいまして、所得が上がるにつれてそういう形でどうしても物価水準が上がってしまうというのがそこに出てくるわけでございます。  しかしながら、同じような所得のグループである先進国間を比較してみますと、そこの図でもわかりますように、日本はどららかといえば高い方の部類に属しているという感じが見られますので、やはり少しそういった内外価格差の縮小に努める必要があるのではないかということでございます。  その下の2の11図をごらんいただきますと、産業別に日本とアメリカを比較したときにどういう産業分野で生産性が日本の場合に低いかといいますと、実線と点線を比較していただきますとそれほどの差があるわけではございませんが、傾斜が日本の方が急になっているということが一つございます。傾斜が急になっているということは、結局生産性の間に格差があるということですから、先ほど言いましたようなことが起きますと、日本の場合に急激に所得水準が上がるとどうしても物価水準が上がりやすいということを意味してくるわけでございます。ですから、そういう面で農林水産業あるいは卸・小売業でアメリカなんかに比べますと少し生産性が低いというところがうかがわれるわけでございます。  次に、二十一ページ、二十二ページをごらんいただきたいと思います。今、マクロ的に物価をつかまえてみたわけでございますが、今度はもう少しミクロの観点からどうして物価が上がるかということを見てみますと、そこの一番最初の二行に書いてございますように、公的規制とか流通段階での競争阻害要因あるいは消費者行動、高い地価、制度的側面などが考えられるわけでございます。これは先ほどの一番最初の生計費のところで御説明しましたように、そこで生計費的観点から見て割合に物価が高いと出てくるところがそういうようなものとつながっているということも先ほどの説明でおわかりいただけたかと思いますが、そこで、まず規制のある場合とない場合でどの程度の差が出てくるのかということを見てみましたのがこの2の12図のところで、これは卸売物価の段階で見たものでございます。  その2の12図のところを見ていただきますと、規制されている品目と非規制品目とを比較していただきますと、輸入物価が下がったときに、非規制品目ですと、下の図にありますように日本の国内での卸売物価も競争を通じまして下がるという現象が起きるわけでございますが、規制品目の方ではそこのところが起きにくいということが一つうかがわれます。これは、先ほど言いましたように、規制にはそれなりの規制を置くだけのいろいろなほかの目的があるわけでございますけれども、物価という面から見ますとこういうふうな現象が起きやすいということをここでは述べておるわけでございます。  そのほかにつきましてはまた後ほどにしまして、次に二十三ページ、二十四ページのところで、ここでは、所得水準が上がった割には豊かさが感じられないという言葉がよく言われるわけでございます。そこで、そういう現象というのを今まで御説明してきましたような道具を使って説明した場合にどういうふうになるのかということを少しやってみたのがそれでございます。  2の13図を見ていただきますと、これは先ほど言いましたように、購買力平価という考え方を使って考えてみると、アメリカと日本を比べた場合に、日本の場合にはそういう形ではかった場合にはアメリカに比べて非常にまだ所得水準は低い、こういうことになるわけです。それに対しまして為替レートではかった場合には、最近のところではアメリカよりも高くなっている。これがいわゆる一つの豊かさを感じられないと言われるところの統計的な見方になってくるわけでございます。ですから、購買力平価と為替レートの間に非常に大きな乖離が生じてきていることが一つの実感できない原因であるということが一つあります。  それから、2の14図のところにございますように、ここのところは今の購買力平価とさらに労働時間というものも一つ考えてみた場合にどうなるかということでございます。一番左端のところが為替レートではかった一人当たり国民所得になりますが、これはアメリカを一〇〇とした場合を比較しておりますけれども、そうしますと、それを今申し上げましたように、今度は一時間当たりの国民所得に変換するとどうなるかというのが真ん中の黒い線でございますが、一時間当たりに変換しますと日本はさらに低くなってしまう、労働時間が長いために低くなってくる。それを購買力平価で換算するとさらに低くなってしまう、こういうことでございます。したがいまして、豊かさの実感のためには労働時間の問題ということと、この購買力平価と為替レートの乖離の問題ということが大きな要因として働いているということでございます。  それから、対策といたしましては、先ほど申し上げましたようなことで、二十五ページのところにございますように、まず「規制の緩和」ということで、それぞれの今まで他の目的を持って設けられております規制について、もう少し物価という観点から見直す必要があるかどうかということがこの規制の緩和の問題でございます。  それから、二十六ページのところにございますように、「流通分野での競争促進」ということも、これは先ほど申し上げましたようなことで、内外価格差の縮小という観点からもう少し流通業での効率を高める方法はないだろうか。最近の研究ですと、アメリカ、ヨーロッパに比べて日本の流通そのもののマージンの大きさとかいうことから比較しますとそれほど大きな差があるわけではないのでございますけれども、何かもう少しその辺で見直す点があるのかどうかということが一つの問題になってくるかというふうに思います。  それから最後に、二十七ページのところでは、「内外価格差と消費者行動」ということで、やはり日本の消費者の場合は、非常に日本の消費者は厳しいということがよく言われるわけでございますが、どうしても厳しいサービスを要求するというようなことがございます。ですから、もし物とサービスが分離できるのであれば、それを付随したパッケージにしないで、分離した形で供給して価格を下げるとか、あるいはそれをそういう形で購入するとか、そういうことができるようになればいいんじゃないかというのが一つございます。  それから、ブランド品に対する消費者の態度というふうなことがもう一つありますし、それから、いわばよく言われますのが真っすぐなキュウリと曲がったキュウリの問題で象徴されるような消費者行動というのも問題ではないかというのが一つございます。そのほか、本年度の物価レポートでは企業の交際費というのが膨大なものがございますが、これが物価を上げている一つの要因ではないかというふうな分析もしておるわけでございます。  あと個人輸入ということも一つ書いてございますけれども、一応本年度の物価レポートで扱いました内外価格差の問題というのは以上でございます。
  7. 遠藤要

    会長遠藤要君) どうも御苦労さんでございます。  企画庁並びに通産省皆さんに申し上げておきたいと思うんですが、この調査会は御承知のとおり議案ではございませんので、ひとつ気分を緩やかにしてお話しを願って結構です。  皆さんの御意見を聞いて、後日それぞれ御質疑を願って、当調査会として政府なり国会に、提言なりまた法案の作成を要請するというようなこともあり得るかどうかということはまだその結論には達しておりませんが、次もひとつぜひ物価局長国民生活局長に御出席をちょうだいいたして各委員の質疑に対してひとつ親切なお答えをちょうだいいただければ幸いだと思います。きょうは御苦労さんでございました。  それでは、通産省からおいでを願っている横田官房審議官、並びにきょうは中名生商政課長とお二人御出席をちょうだいいたしております。御苦労さんでございます。  それでは、横田官房審議官から御説明を聴取いたします。
  8. 横田捷宏

    政府委員(横田捷宏君) ただいま御指名賜りました通産省産業政策局、その中で物価問題を担当いたしておりますが、その担当審議官の横田でございます。私と中名生商政課長は流通を総括いたしておりますが、二人三脚で説明をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  お手元資料が四種類あると思いますが、一つが「内外価格差問題について」といいます総括的な説明資料、それからもう一つが「日米共同価格調査結果」で、中に数字が指数的に入っておりますもの、それから「流通について」及び「九〇年代における流通の基本方向について」、この四種類でございます。  「内外価格差問題について」という紙の方から説明をさせていただきたいと存じますが、まず入り口に、通産省は、いわゆる物価問題につきましては、組織といたしましてもまた予算面でもいろいろ御高配賜りまして、重点政策の一つでこれまでも取り組んでまいっております。例えば価格情報のネットワークをつくっておりますし、また特に地方公共団体の大変な協力をいただきまして物価安定対策事業を補助金等を活用してやっておるわけでございます。また消費者のモニター制度も、例えば灯油とかLPG等につきまして、七百人以上の全国の消費者モニターの方々の御協力をいただきまして、基礎的な政策の推進に当たっておるところでございます。  その中で本日与えられました内外価格差問題でございますが、本日は三つの要領で一応御説明申し上げたい。まずは内外価格差問題に取り組みます通産省の基本的な考え方を御説明申し上げまして、二番目に通産省がこれまで実施してまいりました幾つかの調査結果、その中には先ほど来御紹介もありました日米共同での価格調査の結果もあるわけでございますが、その御披露を若干申し上げたいと思っております。それから三番目が、流通関係の問題及び諸対策ということで進めさせていただきたいと思います。  まず、このペーパーの一ページは、ざっとごらんいただければと思いますが、今物価局長の方からお話ございましたように、一般的な物価水準の問題もございますが、通産省におきましては、特に個別物品、サービスごとの内外価格差ということをこれまで重点を置いて調査をいたしてまいっております。その場合、先ほどいろいろな物品、サービスの分類がございましたけれども、私どもが所管しておりますものではいわゆる貿易になじむ貿易財というのが中心でありますし、これは主として工業品でございまして、その意味でもろもろの規制が余り行われていない、大変自由な市場におきます競争で価格がつくられているという面がございますので、もろもろの物品、サービスの中では必ずしも全般を代表することにはならないかもしれない、こう思っております。そういう中で予備的なあれでございますけれども、まず輸入ブランド品等々についても今までいろいろ調べてまいりましたが、ここでありますようないろんな要因価格差要因として挙げられておりまして、この辺はむしろ後で御説明申し上げます。  それから日本輸出品日本でカメラをつくって輸出をするのに、なぜ日本で売っているカメラとアメリカで買うカメラとでは値段が違うのか、アメリカに旅行してむしろお土産で買ってこられるという話もあったりいたしまして、国民感情の点からは一番、これは私どもとしても仮にそういうことがあれば問題であるという点は感じておるわけでございますが、先ほど来のお話にもありましたように、大変急速な円高の過程で、ここに「かつて逆輸入がみられたカメラ、フィルム等」と書かれております。そういう摩擦的な事象は確かにあったようでございますが、最近におきましては、後で申し述べますように、そういう遺憾な事態というものは解消されておるということでございます。  ちなみに、こういう為替レート等の経済的な要因が大きく動きますと、例えばアメリカの方々もかつて日本に来られてアメリカ製の例えばカラーフィルムを日本で大量に買って帰ると、これは円安の時代の話でございます。そういう一時的な現象というのは避けられない場面もあるようでございます。  二ページ目になるわけでございますが、そこで「内外価格差問題に関する基本認識」。ここで十分に書き込めておりませんけれども、実は本日、政府内外価格差対策推進本部の第一回の会合がございましたけれども、そこで大臣が申し上げた考え方中心にちょっと整理させていただきたいと思います。  内外価格差問題、最近では、何と申しますか、日米構造協議のような対外問題という形でクローズアップされてまいりましたけれども、私ども通産省といたしましては、むしろ豊かな国民生活の実現に向けて今後全力を挙げて取り組むべき重要課題の一つであると、こう考えておるわけでございます。対外問題もさることながら、やはり国民生活、消費者対策という基本的な位置づけを考えております。その場合、それでは価格政府との関係をどう考えるかという問題が実はございます。もとより、私ども日本経済の基本は自由主義経済ということでございまして、そういう中で民間企業が物なりサービスを提供する、その価格設定といいますものはやはり原則として企業の自主的な判断にゆだねられるべきものであると、これが考えの基本でございます。  そういう意味では、政府価格に関しまして直接どういう措置を講じ得るかという点については限界があるわけでございます。しかしながら、そういう限界の中でも、内外の市場に通じました価格メカニズム、この市場原理が非常に有効に働いていけば当然適正な価格は形成されてまいるということでございますので、その市場メカニズムが有効に機能するように全力を挙げて努めてまいりたいと考えております。  そういうことに伴います幾つかの措置でございますが、まず私どもこれまでも所管物資に対します内外価格差調査を実施してまいっております。一ページ目にありましたようにいろいろな要素がございまして、いろいろな内外での仕様とか好み、品質の差、あるいは地価とか人件費等の基礎的なコストの差、さらには消費者の好みでございますとか、あるいは公的な制度、あるいは為替レートの変化もございます。正確な比較はなかなか容易ではないわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、輸出品につきましては最近ではその価格差は解消しておるという判断ができる状況でございます。引き続きこういう調査をできる限り定期的に実施いたしまして実態の把握は努めてまいりたいと考えております。  それから、輸入品国内価格が高いという問題がございます。この辺は、消費者のブランド品志向とか価格情報の不足等々も言われておりますけれども、私どもといたしましては、これまで以上に消費者に対します価格情報の提供等々によります普及、啓発も含めて対策の充実を図ってまいりたいと思っておる次第でございます。  それから次に、輸入拡大を通じます内外価格差の是正というものが大変重要であると考えてございまして、この点は特に対外不均衡の是正という観点からも大きな意味を持っているということでございます。当省といたしましても製品輸入促進税制の創設でございますとか、あるいは草の根輸入振興対策等々の実現に向けて取り組んでいるところでございまして、本院の御理解もぜひ賜りたいと存じております。  それから、流通面の規制緩和等の問題でございます。これにつきましては、通産大臣の諮問機関でございます産業構造審議会等の答申を踏まえまして、「九〇年代流通ビジョン」を受けまして所要の対策を進めてまいります。これは後で詳しく御説明申し上げたいと存ずるわけでございます。  そこで、三ページ目の方に移っていただきまして、幾つかの調査について申し上げてみたいと存じます。こういう調査等は省内で内外価格差問題の検討委員会をつくって実施してまいっておりますが、まず次の四ページ目をごらんいただきますと、これが輸入ブランド品内外価格比較調査の例でございます。昨年の十一月に日本貿易振興会、ジェトロに委託しまして世界各地で調査をいたしましたが、日本を一〇〇といたしますと、残念ながら、一部ジュッセルドルフとかシドニー、ソウル等で日本より高い、つまり一〇〇を超えるところがございますけれども日本がおおむねこういう輸入ブランド品につきましては割高であると。この段階の為替レートは百二十四・二五円と下の注にございますけれども、その段階の為替レート、現在百四十四円ばかりで推移いたしておりますけれども、それを考えましてもブランド品内外価格差問題というのは今後の大きな政策課題、こう考える次第でございます。  それから、次の五ページでございますが、実はこの五ページの調査は、八月に通産省の職員がニューヨーク東京で緊急に価格調査をいたしましたそれの結果でございまして、これが実は日米の構造協議の論争の対象になりまして、両国で一緒になって調査をしようといった結論になりました経緯のある数字でございます。  ここにありますように、例えば日本からの輸出品、これは日本の値段を一〇〇といたしておりまして、カメラならばあるメーカーのどういう性能、品質のものという正確な比較をいたしまして、またニューヨークの店に行きまして、予算の制約がございますので必ずしも全部買い上げたわけではありませんけれども、値引き交渉なども積極的にいたしまして比較した数字であります。実は昨年の初めあるいは一昨年あたり、カメラはニューヨークの方がはるかに安いではないかといったような議論がこの段階では解消いたしておったというようなものでございまして、それに引きかえ輸入品はなお日本が高い、こういうことでございます。日米の構造協議の中でアメリカ側が驚きまして、そんなはずはない、一緒に調査をしようではないかということになったわけでございます。  そこで六ページでございますが、マスコミ等々も相当大きく報道いたしましたので、やや詳し目に別の価格調査の結果表も使いながら簡単に御説明をいたしたいと存じます。  実は、日米構造協議第一回がこの九月の初めにございまして、御承知のとおりでありますけれども、アメリカ側も日本側もそれぞれの国の、内政干渉では必ずしもないわけでございますけれども、従来であれば内政に属する諸問題につきまして、これが貿易不均衡の是正に資するということならばということでいろいろな助言をし合っておるわけでございます。アメリカ側からは、例えば日本人は貯蓄をし過ぎる、あるいはそういうものの投資が十分例えば公共資本の方に向いてないではないかという議論から始まりまして、土地問題あるいは流通問題あるいは日本のもろもろの商慣行、これは排他的ではないか、あるいは系列というものがあって非常にグループ化しておるんではないかといった議論があるのは御承知だと思います。  そういった日本のもろもろの問題点の一番の典型的な指標として、アメリカの方々日本内外価格差の問題を指摘されたわけでございます。要するに、日本の企業あるいは経済といいますものは、日本で物を高く売って、それで利益を上げて海外のマーケットへの進出の財源にしておるのではないかといったような議論が実はございまして、いまだにその大きな論争は続いております。その意味でこの共同の調査といいますものは、単に物と物の値段を調べるだけでなくて、日本経済構造、いろんな商慣行、流通システム、あるいは場合によりましては土地問題等々に至る議論の共通の指標という格好で利用されてくる可能性があるわけでございます。  この調査の実施に当たりましては、双方が提案いたしまして、ここで約四十品目とありますけれども四十四品目を選びまして、できる限り同一の品質、それをいろいろな、デパートで買った場合、専門店で買った場合あるいはそれを量販店で買った場合、実際は見取り調査で両国の代表選手方が五つのチームに分かれましていろいろな秘術も駆使しながら価格の交渉をいたしたわけでございます。それを細かな表に書き込みまして、アメリカ流に調査の責任者がお互いにサインをし合って確認したというこういう調査でございました。  その一覧が七ページの方にございます。調査対象品目数四十四、銘柄数百二十九ということでございます。これをある程度機械的に分類いたしまして、日本からの輸出品あるいはアメリカの対日輸出品、ヨーロッパの輸出品、いろんな格好で分けまして、例えば日本からの輸出品は二十一品目、四十五銘柄調査いたしたわけでございます。このうち日本が安かった物、アメリカでの値段が高かった物、これが二十四銘柄ある、こういったような総括的な整理でございますが、これの細目が実はもう一つの方の資料でございます。と申しますのは、この今の七ページの一枚紙は例えば同じカメラでございましても結果的には仕様とか機能が違うものを、たまたま同じ名前のカメラでございましたので調べてみたら、日付がついていたとか、ついていないとかいうのがございましたものですから、そういったようなことも含めた分析を今いたしておりますけれども、一、二の品目についてちょっとグループごとに申し上げてみたいと思います。  日米共同価格調査の一ページをごらんいただきますと、グループのA、これは大体自動車関連でやってみましたが、まず自動車が七つございまして、一番上の日本製、これを東京を一〇〇といたしますと、大阪が一〇五・八、ニューヨークは一〇七・九、シカゴは一〇八・四ということになってございます。実は、これにはそれぞれの個表の数字があるわけでございまして、東京の一〇〇といいますものが例えば百三十八万九千円というような数字がございますし、ニューヨークの一〇七・九といいますものはニューヨークで一万五百五十五ドルというようなことで、これを一番上にありますように百四十二円で換算したものを指数化して比較いたしておるわけでございます。  ところが、これがある日本の有名なメーカーの有名な銘柄の車なのでございますが、さらに調べてみましたら、東京、大阪でのこの車は日本製でございます。ところが、ニューヨーク、シカゴではこの会社がアメリカでつくっておった車であるというふうなこともわかってまいりまして、現在どのようにしたらより正確な比較ができるのかということを精査いたしております。  この中には、例えば(5)米国製、この辺は有名なアメリカのメーカーの最新のモデルでありますけれども、アメリカでは五二から五五、それが東京に来ると一〇〇、日本向けにいろんな仕様をし改造をしてまいるとこういうようなことになるようでございますけれども、この辺ももう少し細目を分析いたしております。  次のページをごらんいただきますと、グループB、こう書いてございますが、この辺はオシロスコープ。オシロスコープと申しますと電流計測器の一種ということで、製品の品質管理に使う商品でございまして、いわゆる消費者の使うものというよりは資本財という分類に入りますが、こういうものを調査いたしました。  その下の液体クロマトグラフィー、これは成分分析器の一種で、薬などの組成分析に使うようなものでございます。これが日本製、ヨーロッパ製等でどうなっておるかというようなことも調べてございますが、なかなかこういう資本財になりますと、事業者が購入いたしますので、どれだけの数を買うかとか、どういう支払い条件にするかとか、いろいろな要素で相当変わってくるようでございます。この辺の分析も含めてこの数字の意味を調べてございます。  その次の三ページでございますが、グループCというところに例えばカメラがございます。カメラ・ボディ、カメラ・レンズ。私どもはカメラを買うといいます際には、カメラもレンズも一緒に一体となって実は買っております。しかしながら、アメリカ人にとっては、これはまことに特異なことでありまして、彼らはボディを買います。そして、それに合う必要なレンズをさらに買って、場合によっては自分がケースが必要ならば適当なケースも買ってやる。非常にある意味では合理的な購買行動をしておられるわけでありまして、私どもは先ほどの八月の調査では一体型で調査したわけですが、アメリカ側はそれでは承服できないと、アメリカ流のボディとレンズと別々で買おうではないかということになったわけでございます。  ここで例えば日本製のカメラ・ボディ1、東京は一〇〇、これは地域で随分違う。大阪では七七でございました。これがニューヨークでは七〇、シカゴでは九八、本当に地域によって、またこれがデパートなどで買いますと大変高い場合があるわけでございます。単純な比較というのは難しい証拠でございますが、ニューヨークは安くてけしからぬではないかという議論があるかもしれませんが、詳細を調べてみましたら、ここの注に書いてございますように、アメリカでの商品にはクォーツデートの機能、日付がぱっと写真に入って、ああ何月何日だれと撮ったなとわかるようなものが、これがアメリカでは六十九ドルするようでございます。それが入ってないとか、いろんなことがあったようです。  カメラ・レンズも、日本の方が、特に東京が高いというようなことがございますけれども、この辺がやはりレンズだけを特別に売っておる。そうなりますと、アメリカにはカメラメーカーはもうないわけであります。レンズメーカーは辛じて残って必死の競争をいたしておる。そうすると、アメリカの例えばこの(1)、これは五十ミリレンズでありますが非常に安い、そういったようなマーケットの差も、競争環境で出てくるという一つの事例でございまして、この辺いろいろな分析を現在もいたしております。しかしながら、カメラ・ボディとレンズと全体合わせてみますと日本が高いということには必ずしもならないなという状況であります。  次のページをごらんいただきますと、例えば電子レンジが七番にあります。その中で、またここでもニューヨークで安いのがある。しかしながら、この辺はやはり日本人の家庭の主婦がもう非常に複雑な機能を駆使してやっておられる。日本電子レンジは、トースターもできれば、最近インバーター機能とかヘルツフリーとか、生ものも解凍できるとかいろいろな機能が日本電子レンジにはついておる。向こうは温める一本やりというようなもので、その機能の差というものを分析しなければいかぬということでございます。  時間の関係もありますのでざっと飛ばしていきます。例えば六ページ、その辺はグループDということで、まさに身の回り品、香水でございますとかゴルフ関係のものがございます。  香水は、日本の某メーカーも最近では頑張ってアメリカで売っておりまして、日本品もアメリカでは五割高、それに対してアメリカ品、欧州品等等は日本では逆の五割高というようなことで、これをどう考えるかという問題はいろいろあろうかと思います。ゴルフクラブはやはり相変わらずアメリカからのお土産品の重要なものとなっておるようでございまして、アメリカ品が日本に来ますと相当高くなっておりますが、それなりの理由づけはあるようでございまして、この辺詳細に整理をいたしております。  ゴルフボールも同じような議論でございますが、先ほど物価局長の方から贈答とか企業文化というような話があったようでございます。あるアメリカのゴルフボールメーカーが日本で値下げをしてみたそうですが、そうすると高級ゴルフクラブで取り扱いがたちまち減ったような話も聞いておるわけでございまして、何と申しますか、プレステージといいますか、そういう高級品志向といった意味でも考えさせる話もいろいろあるようでございます。  そういったようなことで、現在この調査結果、もとの七ページの方に戻りますけれども、ここでは通産省所管以外の、例えば大蔵省所管の酒、たばこでございますとか、あるいは農水省所管のジャムやケチャップでございますとか、あるいは航空券から国際宅急便に至るまで調査の表がございますけれども、先ほどお配りいたしました細かい表からは通産省所管外でございますので、申しわけございませんが外れております。  現在、各省含めましてこの調査結果を、私ども通産省の場合にはそのほかの調査の結果資料も含めまして、単に日本とアメリカだけじゃなくて、場合によってはヨーロッパの主要都市等との比較も含めながら現在勉強をいたしておる次第でございます。アメリカとの関係では、一月の中旬にはまた日米構造協議があるわけでございます。  この調査結果の評価につきまして、前の六ページの方をごらんいただきますと幾つか書いてあります。これは私ども日本政府としての率直な評価でございまして、要するに、日本から輸出された製品というのは、調べてみたらやっぱりアメリカの方が当然ながら高いものが多かったということで、アメリカのおっしゃっている日本高というのは必ずしも正確じゃないですよと。②でございますが、しかしながら一部には、アメリカに行った方が安かったというものもあるわけでございまして、この辺を先ほど言いましたように詳細に分析しなければならない。他方、輸入品につきましては、ブランド品中心日本ではかなり高いという問題があります。欧州品が、同じヨーロッパでできた品物が、アメリカで売られている値段と日本で売られている値段と比べると、日本の方が高かったというような商品もあるわけでございまして、こういったことの問題点あるいは所要の対策を含めていろいろ検討をいたしておるところでございます。  それに伴います対策につきましては、冒頭申し上げたわけでございますけれども調査の結果を情報提供いたしまして、あるいは流通体制の、これから御説明いたしますより一層の効率化確保等の対策等と相まちまして、市場の機能が十分生かされた価格政策を進めてまいりたいと思っております。  引き続きまして、流通の方を中名生に説明させたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  9. 中名生隆

    説明員(中名生隆君) 通産省の商政課長の中名生でございます。  九〇年代における流通の基本方向、それから流通をめぐる制度のあり方ということで御説明をさせていただきますが、先生方のお手元に流通に関係いたします二種類の資料をお配りさせていただいております。一つは「九〇年代における流通の基本方向について」、いわゆる「九〇年代流通ビジョン」と申しておるものの要約版でございます。要約ではありますけれども、この資料、必ずしもコンパクトではございませんので、もう一つ「流通について」という表題でポイントを書き出しました資料がございますが、これに沿って御説明をさせていただきたいというふうに思います。  一番初めに、「九〇年代流通ビジョン」の性格が書いてございますけれども、産業構造審議会の流通部会、それから中小企業政策審議会の流通小委員会、この二つの審議会の合同の場におきまして、昨年の七月からほぼ一年をかけましてことしの六月の九日に「九〇年代流通ビジョン」ということで答申をいただいたということでございます。  この流通ビジョンの性格でございますが、そこに書いてございますように、一つは、我が国の流通についての現状の評価を行うと同時に若干の将来展望を行うということ、それから、これからの流通政策の基本的な方向についてお示しをいただく、さらには、流通に携わる業界の方々にとっての活動の指針あるいは消費者の方々にも御参考にしていただく、こういうことで策定をされております。まず第一部のところでは全体としての流通の問題を取り扱い、それから、後で御説明を申し上げます第二部のところでは流通にかかわる制度の問題、とりわけ大店法の運用の適正化の問題ということで御指摘をいただいてございます。  まず最初に、流通の現状と最近における変化ということでございますが、我が国の流通の特徴ということで従来言われてまいりましたのは、日本の場合には非常に零細な小売業が非常に稠密に存在をしている、あるいは流通の過程が多段階になっている、そういうことが日本の流通の特徴であるということで言われてまいりました。しかしながら、最近の動きを見てまいりますと、こういう構造に大きな変化が生じつつあるということがまず第一に指摘されております。  我が国の小売業の数というのは、商業センサスで包括的にとらえられておりますけれども、これが三年に一回ずつ調査されておりますが、昭和五十七年の数字で申し上げますと、小売商店の数は百七十二万店ということでございましたが、これが一番新しい昨年の統計によりますと百六十二万店ということで、戦後ふえてまいりました商店の数が、最近で申しますと十万店近く減少になっているということでございます。とりわけ規模別に見てまいりますと、従業者の規模が一人ないし二人という一番小さいところがこの期間で十六万店ぐらい減っているということで、結果的には我が国の商業の場合にも平均的な規模の拡大が進んでいるというようなことでございます。  それから、さらに小売の形でもいろいろと新しい形のものが伸びてきている。すなわちコンビニエンスストアでございますとか、専門の量販店でございますとか、あるいは通信販売でありますとか、そういう消費者のニーズに合わせた新しい形での商売の仕方、こういうものが、例えば売り上げで申しますと年率一五%とか非常に大きな勢いで伸びてきているということがございます。それからさらに申し上げますと、商業集積といいますか、商店街のあり方も変わってまいりまして、大都市の中の商店街の一部では停滞しているところがある反面、ショッピングセンターのようなものが着実に伸びてきている。そういうような形で我が国の商業構造というのも非常に変化をしてきているということでございます。  とりわけ新しい変化の方向ということで、そこに②ということで三つ書いてございますけれども一つは業際化といいますか、卸、小売あるいは物流、メーカーというようなそういう分野を超えまして相互に新しい分野に商売の手を伸ばしていく、こういう動きがいろいろ出てまいってきております。それからもう一つは、国際化と申しましょうか、外国の製品の取り扱い、これは製品輸入が非常にふえているということだけではなくて、例えば開発輸入でありますとか並行輸入でありますとか、輸入の仕方についてもいろいろと新しい形態が出てきているということでございます。それから三番目は、情報化の進展ということで、現在日本で使われておりますコンピューターの半分近くは流通業で使われているという状況でございますけれども、とりわけ最近ではポイント・オブ・セールスと申しますか、POSシステムと言っています、電算機とつなげて売り上げ、受発注というようなものをコンピューター処理する、こういうようなシステムというのが非常に急テンポで店舗に普及されておりまして、ことしの三月末現在では既に四万店を超えるお店でこういうシステムが採用されている、こういう状況になってございます。  それから第二番目には、我が国の流通業というのをどういうふうに現状を評価するかという問題でありますが、一番最初に、今申し上げましたように、非常に我が国の流通業は変わりつつあるので、古い姿での評価ということではなくて、現在のそういう動きを踏まえた評価をすべきであるということでございますが、評価の観点といたしましては、ここにありますように、四つほどの観点からの評価というものをいたしております。  第一番目は、流通の効率性はどうかという面からの評価であります。この点につきましては、流通業の効率性というのはサービスの内容というものとの関係があるので大変難しいわけでありますが、コストが幾らかかっているというだけではなくて、その流通業の中でどういうサービスが行われているか。日本の場合には非常にきめ細かなサービスが行われているということが言えようかと思いますけれども、そういうものとの比較、コストパフォーマンスの比較ということをすべきであるということを言っております。ただし、なかなかこのパフォーマンスの方は数字の上ではかるということは難しいわけで、小売業の従業者一人当たりの売上高というような国際的に比較可能な数字で見てまいりますと、日本の場合にはアメリカに比べますと若干小そうございますけれども、イギリスでありますとかフランスでありますとか西ドイツでありますとか、ヨーロッパの国々と比較をいたしますとほぼ同程度ということで、そういう幾つかの指標から見てまいりましても、日本の流通業が一概に非効率であるというふうには言えないのではないかということでございます。  ただし、流通業の効率性をさらに高めていくという観点からは、例えば非常に日本の場合には丁重な包装がなされているとか、あるいは非常に細やかな接客サービスかあるとか、それから常時非常に豊富な品ぞろえというものが確保されている。それ自身は大変結構なことなんですけれども、そういうことがそれぞれ人手がかかるということで、流通でのコストアップにつながっていないかどうかということは考える必要がある。あるいは日本の場合に特に顕著に見られる商慣行ということで、例えば返品制でございますとか建て値制でございますとか、そういう商慣行についても見直しをする必要があるというようなことが御指摘をいただいております。  それから第二番目には、競争環境という面からの評価ということでありますけれども、この点につきましては、基本的には年間六万店ぐらいのお店が入れかわっているというようなことで、流通業についても競争的な条件にあるということでありますけれども、商慣行の問題あるいは流通での系列化の問題、それから輸入総代理店の問題あるいは幾つかの規制の問題、こういう問題についての検討が必要であるということをいただいております。  それから三番目には、市場アクセスの問題、市場アクセスの面からの評価ということでございますが、これは流通の制度は基本的には内外無差別ということでありますし、円高に伴いまして外国からの製品輸入も非常にふえてきている。それから日本で活動しておられる外国の企業でも、日本の流通のシステムを非常に理解して十分な業績を上げておられる企業というのは、アメリカの企業、ヨーロッパの企業たくさんあるということで、外に対して閉鎖的であるということはないわけでありますけれども、例えば内外価格差との関連で出ております輸入総代理店制の問題等については検討する必要かあるということでございます。  それから最後に、ここでのテーマでございます内外価格差との関係で流通業はどうなのか。流通のところが非常に非効率でコストがかさんで最終的に消費者の手に届く価格が高くなっているのではないのかどうかという問題でありますが、ここは既に御説明がございましたように、流通以外の部分での要因というのがいろいろあるのではなかろうか。例えばレートが非常に急速なスピードで変化をするとか、地価の問題でありますとか物流コストの問題、それから規制のある物資についてはそういう規制との関係というようなこともあるだろう。ただし、流通の中の問題といたしましても、既に申し上げました商慣行なり総代理店制度の問題あるいは非常に流通でのサービスが過剰になっていることによってそれがコストにはね返っていないかどうかという問題。それから商品によっては流通の多段階性の問題、こういう問題については検討する必要があるだろうということを御指摘いただいております。  それから二ページ目、次のページに参りまして、三番目といたしまして流通の環境変化と将来展望ということでございますが、今後の流通を取り巻きます環境の変化ということでは、一つは高消費社会の出現ということで、第二次ベビーブーム世代というのがこれから消費の主体として登場してくるという問題、あるいは人口の高齢化でありますとか今後期待されます労働時間の短縮ですとか、女性の社会進出がさらに進むというような社会構造の変化あるいはライフスタイルの変化というようなものを受けまして、流通業界もこれに積極的に対応していく必要があるということを言っております。  例えば小売業界につきましては、ここに総合的生活提案型と書いてございますけれども、かつての高度成長期のように消費者が欲しいものというのは最初から非常に明示的になっている状態でないこれからの社会におきましては、こういう生活時間の使い方をする場合にこういう商品サービスが必要になるという生活提案とあわせてセールスを行うそういうような形でありますとか、あるいは片一方で、日々買うものにつきましてはより安くより便利にということで、ディスカウントストアのような形の低価格志向型でありますとか、それから特定の分野での豊富な品ぞろえを求めるというような形の専門性追求型、あるいは卸売業については情報志向型、輸入志向型あるいは小売支援サービス型、こういうような形の方向というのが目指されるのではないかということでございます。  こういう現状の評価、将来の展望を踏まえまして、最後に四番目といたしまして、流通政策の今後の方向ということが指摘されているわけでございますが、ここでは基本的な考え方といたしましては、流通業についても競争環境の整備に努めていく。それから同時に、そういう競争メカニズムの補完ということも考えなければいけない。それから三つ目には、流通にとってのインフラといいますか、基盤の整備を図っていくというようなことが基本的な観点ということでございます。そういう観点のもとに九つの政策の柱というものが出されております。  第一番目には、流通システムの合理化を図るということで、これは一つには制度あるいは商慣行の見直しを進めていくということで、とりわけこの制度の問題については第二部で指摘をされているということであります。それから、商慣行の問題というのは主として民間で取り組まれるべき問題ということでありますが、政府としても商慣行の見直しのための方向を示し、業界での取り組みを促していくということが必要であるということでございます。それからさらには、先ほど御説明申し上げましたような情報化、これを一層流通業について進めていく。あるいは物流の一層の高度化を進めていくということが必要であるということが言われております。  それからさらに、構造改善の推進あるいは商店街の活性化と街づくり会社構想ということが書かれておりますが、これは商店街の活性化を図っていくためには一つ一つの商店ではなかなか対応できない問題がある。町全体としての魅力を高めていく必要があるということで、第三セクターのような形をつくりまして、例えばコミュニティーホールでありますとかポケットパークでありますとか、そういう共同の施設の整備を図っていく。あるいはここに書いてございませんけれども国際的な総合流通センターというような形で中小の方々外国の製品に容易にアクセスができるような総合的なセンターを建設していく、そういう施策が出されております。  それからさらには、製品輸入の拡大という観点からはワールド・ショッピング・システム構想というのが打ち出されておりますが、これは今個人輸入等も盛んになってきておりますけれども、こういうものを、国際的な宅配便でありますとかを使いまして実物見本というようなものも容易に消費者がアクセスできるような形にして、さらにシステマティックに通信販売を進めていく、こういうような構想でございます。  それからグローバリゼーションの促進、それから消費者の利便性の向上、それからハイクオリティーライフの創造とハイマート二〇〇〇構想というのが書いてございますが、このハイマート二〇○〇構想といいますのは、新しいショッピングセンターといいますか、単に物を売るということだけではなくて、サービスあるいはレジャーあるいは金融、こういうものと組み合わせました複合的な新しい商業集積というものを大規模に建設していこう、こういう考え方でございまして、これは中小の商店それから大型店がいわば共存共栄できる場というものを建設していきたい、さらにそういう場所において製品の輸入というものにも資するような形に持っていきたい、こういう構想で、現在五つの地点でフィージビリティースタディーを進めているという状況でございます。  さらには流通業にとりまして人材の確保・育成、それと関連いたしますけれども労働環境の整備というものが重要であるということが指摘されているということでございます。  次に三ページでございますが、三ページのところでは第二部ということで、流通をめぐる制度のあり方、とりわけ大店法の運用の問題ということで具体的な御指摘をいただいております。基本的な考え方は、そこに書いてございますように大店法の枠組み自身はこれを維持するということでございますが、具体的な出店調整のあり方につきましては、法律の本来の趣旨にかんがみまして運用の実態を適正化していくということでございます。  内容的には制度の趣旨、手続の統一と徹底ということでありまして、とりわけ問題になっておりますのは、出店の調整のためにややもすると非常に長期化をするケースがある、極端な場合には十年かかる、こういうケースがあるということで、事前説明あるいは事前商調協、これらのシステムについては後の方に参考の一ということで、若干大店法の手続のフローチャートというのを御参考までにつけてございますが、こういう事前説明あるいは事前商調協というものに原則的な処理期間を設けるという考え方が打ち出されております。  それからさらには、軽微な案件の処理ということで、これは法律で最初からこういう軽微案件の処理ということを想定していたわけでありますけれども、具体的な条件というものがこれまで決まっていなかったわけでありますが、例えば売り場面積の増加につきましては、既存面積の一〇%あるいは五十平米のいずれか小さい方というようなものについては軽微な案件として処理をするというような形での軽微案件の処理、手続の簡略化ということでございます。  それからさらに、閉店時刻あるいは年間の休業日数というのもこれは調整の対象になってございますが、現在共働きの家庭がふえるというような形で消費者の方々の買い物時間が後ろの方にずれてきておりますので、そういう実態を踏まえまして、閉店時間の調整についても午後七時までということであればこれは調整を要しないというような形で、実態の推移を踏まえた運用の適正化を図るということでございます。こういうことで運用を行いまして、三年後にその運用状況を踏まえてさらに出店調整制度の見直しを行うといういわばフォローアップの規定というものもいただいているということでございます。  それから2のところでは、その他の営業に関する規制ということで、これは通産省といいますよりもほかの役所に関係するものでございますが、こういう点についてはそれぞれ規制目的がございますけれども、そういう目的を達成する範囲内で規制をできるだけ少なくしていく方向が望ましいということが触れられております。  最後に、四ページのところでございますけれども、こういうビジョンをいただきまして、現在通産省で流通問題への取り組みということでございますが、第一番目には具体的な御指摘をいただきました大店法の運用の改善ということでございます。これにつきましては、関係方面との連絡調整をさせていただきながら、具体的に通達、省令というものにすべく作業を行っているという状況でございます。  それからもう一つは、政府規制ということではなくて、商慣行の見直しということについても御指摘をいただいております。これはまた日米構造協議の場でもアメリカが指摘している問題でもありますけれども、こういう商慣行の問題につきましては、通産省の中にことしの八月に流通システムの合理化に関する検討委員会というのを設けまして現在実態調査を進めておりますが、その実態調査の結果を踏まえて適切に対処していきたいというふうに考えております。  それから三つ目には、先ほどごく簡単に御説明をさせていただきましたけれども、ハイマート二〇〇〇構想あるいは国際的総合流通センターの構想、それからワールド・ショッピング・システム構想、あるいは街づくり会社構想、こういう構想についても、その具体化に向けて現在努力をしているという状況でございます。  なお、一番最後に、こういう施策を進めるために、予算の面でも流通の実態調査を継続して行うための経費について財政当局にお願いをするとともに、組織の問題につきましても、新しく流通産業課というものを設けたいということで、そのための機構の要求、関連いたします定員のお願いということをしているという状況でございます。  簡単ですが、以上でございます。
  10. 遠藤要

    会長遠藤要君) どうも御苦労さんでございました。  それでは次に、公正取引委員会から御出席をいただいております。せっかく御出席をいただいておるのに時間のあれをするというのも申しわけないですが、各委員方々もそれぞれ都合があるようでございますので、お二人で三十分程度でひとつ御協力をちょうだいいたしたいと思います。各委員方々も多少時間がおくれますけれども、その点ひとつ御協力をちょうだいいたしたいと思います。柴田経済部長。
  11. 柴田章平

    政府委員(柴田章平君) 公正取引委員会経済部長の柴田でございます。  私から、最初に政府規制の問題について、先般私どもがお願いをしておりました研究会のリポーートがまとまりましたのでその概要を御紹介させていただき、その後で、内外価格差問題への公正取引委員会の取り組み等について佐藤審議官の方から御説明をさせていただきたい、こういうふうに思います。  お手元資料を配らせていただいてございます「競争政策の観点からの政府規制の見直し(概要)」という縦長のものがあろうかと思います。時間の関係もございますので、大まかな流れを、これをごらんいただきながら説明させていただきたい、こういうふうに思っております。で、必要に応じて、小冊子がお配りしてございますので、こちらの方にも触れるということにいたしたいと存じます。  この報告でございますが、公正取引委員会の事務局がお願いをいたしましたのを受けまして設置をしたわけでございますけれども経済規制中心政府規制の見直しと、それから関連分野における競争確保・促進政策について、昨年の七月以降十三回にわたりまして会合を開催し検討を進めていただき、そして先般、検討の結果を取りまとめていただいたものでございます。  今日なぜこのような規制の見直しが必要なのかという点でございますが、一ページの3のところをごらんいただきますと、技術革新あるいは情報化の進展、消費者ニーズの多様化、国際化の進展といったようなこと、あるいは事業者の事業遂行能力、消費者の選択能力の向上といったように、経済社会をめぐる環境が今日大きく変化をいたしていることが一つ挙げられます。それからもう一つは、世界的に規制緩和の潮流が見られるわけでございまして、これらの事態に対応して私どももやはり規制の見直しということを今日特に必要性を痛感いたしまして研究会に検討を依頼した、このようなわけでございます。  時間の関係もございますので、総論的なところは恐縮でございますが飛ばさせていただきまして、概要の三ページをごらんいただきたいと思います。ここで、「各分野における政府規制問題点と改善の方向」が書かれてございます。ここでは各分野別に経済規制、つまり参入規制価格規制を重点として取り上げて問題を提示しているわけでございます。かなり広範囲にわたっておりますので、時間の関係もございますので若干私が恣意的にポイントを引っ張り出すことをお許しいただきたい、こういうふうに思うわけでございます。御関心が主として価格規制の問題にあろうかと思いますので、価格規制のところを中心に御説明をさせていただこうか、こういうふうに存じます。  まず最初に、トラックあるいは利用航空運送事業あるいは倉庫業といったような貨物運送事業にかかわる規制についてでございます。これにつきましては、実はこの二月にかなりトラックの分野について一つ考え方を提示しておりまして、このリポートの中では主として倉庫が取り上げられております。したがって倉庫の料金について触れてみたいと思います。  この小冊子の十六ページのところをおあげいただきたいと思います。ここに倉庫料金について触れてございまして、倉庫料金につきましては、倉庫業法によりまして現在届け出制となっているわけです。したがって、本来、個々の事業者がみずからの創意工夫に基づきまして自由に料金を設定して、これを届け出ることができるというのが本来の制度の建前でございます。ただ現実には、長年にわたる行政庁の指導やあるいは業界の慣行等によりまして、級地制とか期制とか、それから基本料金等を定める統一的な料金体系が既に形成されておりまして、事業者にとって預かり、保管する物品の形態や保管の実態に応じた多様な料金体系を自由に設定することが難しい、そういう現実になっているわけでございます。したがいまして、倉庫料金の届け出制につきましては、制度本来の趣旨にのっとった運用を図って、事業者がみずからの創意工夫に基づき、自主的に料金を設定することを可能とし、最近の物流ニーズの高度化・多様化に対応できるようにすべきである、このように提言をいたしているわけでございます。  流通業、大規模店舗あるいは酒販業についても意見をまとめてございますが、ここでは主として参入規制の問題であり、かつ先ほど通商産業省の方からも御説明がございましたので、ここのところは飛ばさせていただいて、四ページの「タクシー事業」の方に進ませていただきたいと思います。  タクシー事業の価格規制でございます。二十六、七ページをごらんいただきたいと思います。タクシーの料金につきましては、既によく御承知のとおり、同一地域・同一運賃制がとられておりまして、こういった運賃制では、消費者にとって事業者間の競争によるメリットを享受することができませんで、むしろ事業者にもまた同時に経営努力や創意工夫を発揮して、競争を通じて生産性を向上させ業容拡大を図るインセンティブが失われている、このような事態になっているのではないか。したがって、タクシー事業においても基本的に事業者の自主的判断による運賃設定を認めることが望ましく、事業者による不当に高い運賃の請求を防止するという消費者保護を図るという観点からは、例えば最高運賃制、つまり事業者の定め得る運賃の最高額のみを規制する方式、このようなことがとれないだろうか。あるいは各社の運賃の違いがわかりやすい運賃計算・表示方式を考慮すべきではないか、このような意見を出していただいているわけでございます。  なお、ただ当面の改善策としては、効率的な経営により運賃値上げ申請を行わない事業者がいてもこれを容認すべきであろう。また運賃制度についても弾力化を行って、割引チケット、閑散期割引というふうなものを導入するとか、あるいは提供するサービスの質に応じた多様な運賃設定を可能にし、サービス内容をめぐる競争が生じ得るようにする必要があるというふうに考えを示していただいているわけでございます。  それから次に、航空運送事業でございます。国内国際と両面に触れてございますが、まず「国内航空運送事業」につきましては二十八ページをおあげいただきたいと思います。ここでもやはり価格規制について、将来的には事業者の自主的な運賃設定を認めて、運賃をめぐる競争を通じて消費者利益の向上を図ることが望ましい。基本的には国内航空運送にもそのような考え方を提示していただいておりますが、当面の改善策としては割引運賃を弾力化して事業者ごとの特色を十分出せるようなものとすべきであろう。このため割引運賃については、事後の届け出で済ませることも検討する必要があろうというふうに述べております。また、個人運賃にも季節割引運賃を導入するなど多様な運賃設定を行えるようにするとともに、提供するサービスに対応した運賃設定を可能とし、サービス競争を行えるようにする必要があろうというふうな御提言をいただいております。  同時に、実はパック旅行向けの航空運賃サービスの認可運賃でございます団体包括旅行運賃というのがあるわけですけれども、これが実際に旅行業者に対して提供される価格に比べて著しく高くなっているわけで、むしろ競争政策の観点からは、団体包括旅行運賃を取引の実態に合わせて見直すことが望ましいというふうに御提言をいただいております。  次に、国際航空運送事業にかかわるものでございますが、三十ページから三十一ページにかけてでございます。国際航空運賃につきましては、貨物、旅客いずれの場合も二国間の航空協定がございまして、ここで世界の主要航空会社で組織されておりますIATAというふうに略称しておりますが、国際航空運送協会の運賃決定機関において決定をされ、そしてその上で関係両国政府の認可を受けると、こういうふうな制度になっているわけでございます。  このような制度のもとに、実は国際航空運賃発地国通貨建て運賃で計算をしようと、こういうことになっております。このために航空会社間で大幅なコストの格差があったり、主要国通貨間での大幅な為替変動が生じますと、実は大幅な方向別格差、つまり行きと帰りと航空運賃に差が生じてしまうというふうな事態が不可避の現実になってきているわけでございます。  IATAもそういう観点から、実はこの七月から為替変動に伴います方向別格差を是正するために一つのフォーミュラを導入しているわけではございますけれども、なかなかすべてこの問題が解消するという事態にはなっていない。したがって、方向別格差の発生が不可避である以上、当面はIATAが考えているような制度にのっとってできるだけ速やかに為替レート変動等に伴う格差を埋めるように実行することがまず不可欠であろうというふうに提言をいただいておりますが、また同時に、円高に伴って発生する方向別格差の是正に当たっては、日本発運賃の引き下げによって対処すべきであるというふうに御提言をいただいているわけで、その最後のところが一つのみそであろうかというふうに考えております。  それから、話を先に飛ばして恐縮でございますが、金融業の関係をごらんいただきたいと思います。銀行についてはかなり自由化が進んできておりますので、むしろ今ごらんをいただきたいのは証券の関係、三十九ページをごらんいただきたいと思います。  証券の委託手数料につきましては、各事業者は証券取引所の定める手数料を徴収しなければならない、委託手数料をめぐる競争はしたがって存在しない、このような仕組みになっているわけであります。このような固定手数料制のもとでは取引コストの低減が手数料水準に反映されにくく、利用者が経営の合理化等によるメリットを享受することが困難な状況になっております。また、一般に手数料が固定的となっている場合には、限界的な事業者が存続し得る水準に手数料が決められて、その結果非効率な経営が温存されるおそれがある。  こういうことで、競争政策の観点からは、基本的には事業者が独自に手数料の水準を決定して、自由な競争が行われるようにすることが望ましいというふうに御意見をいただいておりますが、また現行制度のもとにおいても、手数料の変更について機動的、弾力的にむしろ対応していく必要がとりあえずあるだろうということをあわせて御意見をちょうだいいたしているわけでございます。  それから四十一ページで保険の関係でございますが、まず生命保険の価格規制に関しては、保険料を設定するためには現在大蔵大臣の認可が必要で、結果的に各社横並びとなっているわけであります。ただ、近年契約者配当の個別化が進められまして、これを加味した正味の保険料、保険料から契約者配当を差し引いた正味の保険料による競争が行われる、そのような方向に現在進みつつはございます。しかし、この契約者配当に対しても規制が行われておりまして、各社の経営効率の差が契約者配当に十分反映されているというような状態にはなっておりませんで、消費者利益が損なわれている可能性がある。それで、競争政策の観点からは契約者配当を各社が独自に設定し得るようにして、各社の経営努力、創意工夫の成果が消費者に還元されるようにする必要があるというふうに御意見をちょうだいいたしてございます。  保険につきましてはもう一点、四十二ページをごらんいただきたいわけでございますけれども、最近いろいろな保険に対するニーズがふえてきているわけでございます。その他の規制のところで、消費者のニーズに対応した多様な商品が提供されるとともに、消費者がそれらを購入する場合に、各社の保険商品の内容を十分理解した上で比較検討し、選択できるようにすることが望ましい。特にこのためには、各社独自の新商品の開発、発売が促進されるように新商品の認可を弾力化する必要がある。また、募集活動、募集文書に係る規制を最小限度のものとすることが必要である。このような御意見をちょうだいいたしているわけでございます。  それから最後に、農業について、四十五ページをごらんいただきたいと思いますけれども、農業の関係につきましては、一方で生産過剰の農産物がありますが、供給が需要に応じ切れていない、そのような事態があるのではないか。今後さらに一層需要の変化に応じた供給面での対応というものが進められる必要があるというのが農業に対する基本的な考え方であります。また、大幅な円高の進展に伴って内外価格差が拡大している農産物も多く見られ、これらについて内外価格差縮小して国民の納得の得られる価格水準の実現に向けて国内農産物の低コスト化を図っていく必要性も高まってきている、このような基本的な認識で規制緩和の問題に御提言をいただいているわけでございます。  特にお米の関係につきまして、一つは四十九ページをごらんいただきたいと思いますが、稲作の生産性向上を図り、そのコスト低減を生産者米価等に反映させる一方で、需給事情価格設定に反映させて、あわせて適切な品質格差を設けることにより需要の拡大に資し、ニーズの多様化に対応するとともに、生産者、生産者団体の需給動向に対応した生産努力、これを引き出す必要があろうというふうに述べ、そしてこのために一つは流通のところで一つ考え方を出しております。  五十一ページでございますけれども、お米の流通について、昭和六十三年にお出しになりました米の流通改善大綱、今後もこの大綱の方針に沿った一層の競争原理の導入を図って、集荷業者間の競争条件を整備して集荷活動の活発化を図るほか、小売業者がより多くの卸売業者から仕入れられるようにすることなどによって、需要に的確に対応した供給が行われるようにする必要がある。まず、流通部面から競争をより導入することによって、当初に申し上げたような事態の改善に向けて動きが進められないだろうか、このような御意見をちょうだいいたしているわけでございます。  時間の関係で非常にはしょった御説明になってしまってまことに恐縮でございましたが、一つの御関心のありそうなところだけ私が勝手に選んで御紹介させていただきましたので、あるいは次回等また御質問に応じて補足をさせていただければというふうに思っております。  この研究会は、冒頭に申し上げましたように、私ども事務局の依頼によって設置をし、開催され、そして研究の結果をいただいたわけでございます。私どもとしては、研究会の報告を尊重して今後の競争政策の運営に反映をいたしていきたいと、このように考えている次第でございます。
  12. 佐藤一雄

    説明員(佐藤一雄君) 取引、流通を担当しております官房審議官の佐藤と申します。よろしくお願い申し上げます。  先生方のお手元に「内外価格差問題と競争政策」と題する二枚紙のペーパーを用意させていただきましたので、それに即しまして御説明申し上げたいと思います。  まず最初に、私ども内外価格差問題につきましての競争政策上の基本的視点ということでございますけれども、技術革新の成果あるいは円高によって輸入価格が低下し、そのメリットが国民一般の消費者の利益として還元されていくような、そして生活の豊かさとして享受されるようなそういう状況をもたらすこと、これが私どもにとって大きな課題になっていることは申すまでもないと思います。内外価格差問題というのは、そういうことの一つの大きな課題となってあらわれてきているものというふうに受けとめております。またいま一つには、これも申すまでもないことですが、我が国経済構造を国際的に調和のとれたものにする必要がある。我が国市場をできるだけ開放的なものにして製品輸入を拡大していくとともに、貿易摩擦も解消する方向我が国市場を開放的なものにということが一つの大きな課題となっておると思います。  そういうことのために、私どものやっております競争政策、公正かつ自由な競争の維持促進ということで価格メカニズムをできるだけ働かせると申しますか、そういうことは非常に重要な意味を持っているというふうに思っております。そういうことで、外に向かって開放的に、また国内的にはできるだけ効率性を一層高める、そういうことが必要だというふうに認識しておるところでございます。  そういう立場から、公正取引委員会といたしまして、かねてから内外価格差の問題を含めまして、流通・取引慣行等と競争政策、そういった問題に関しましては随時必要な検討、施策を講じてきているところでございます。この中身については時間の関係もございまして詳しくは申し上げませんけれども、特に最近のものについて申しますと、ここに書いてございますように、昨年十二月に「流通問題に関する競争政策上の対応について」というペーパーを発表しておるところでございますが、そのペーパーの中でも、内外価格差問題について実態調査していく、あるいは外国企業の参入問題について実態調査していく、あるいは輸入総代理店について実態調査していく等々の施策について、既にその方針を発表しておりまして、それで逐次進みつつあるという状況にあるわけでございます。  そういう状況にあるところ、さらに最近の問題といたしまして、これは申すまでもありませんが、日米構造協議その他で流通問題が非常に指摘を受けておるわけでございまして、価格メカニズムあるいは流通システムあるいは系列の問題あるいは排他的取引慣行問題、こういった構造協議に取り上げられておりますテーマのうちでも四つほどについて私ども公正取引委員会として対応を求められておる、そういう状況にございます。そういう状況から、そういうことへの対応、それから内外価格差問題というのは、それ自身として外国から指摘されるまでもなく私ども自身の問題として、大きな問題としてあるんだというふうに思っておりまして、そういう問題が、非常に検討課題が多種多様なものになっておるわけでございます。  国内的ないろんな商慣行につきましてはいろいろな評価もあるわけでございますけれども、それらが相互に関連し合っておるというようなことから、これまで私ども公取として蓄積してまいりました考え方も踏まえまして、この際総合的な統一性のある、かつ各界各層の皆様に理解されやすい考え方、対応策、そういったものをまとめるということが喫緊の課題になっているというふうに受けとめておるところでございます。  そのために流通・取引慣行等と競争政策に関する検討委員会という委員会を設置いたしまして、各方面の有識者の方々に集まっていただきまして、本年九月末にその第一回会合を開催いたしました。今後、来年の半ばごろをめどにいたしまして同検討委員会の御提言をいただきまして、それに基づいて私ども競争政策に反映させていくということで作業を進めておるところでございます。  同検討委員会につきましては、具体的には二つの分科会をつくって検討を進めておるところでございまして、一つの分科会が内外価格差問題、それから流通の参入障壁問題、そういう問題で分科会を一つつくっておりまして、いま一つ我が国の企業間における閉鎖的取引慣行と言われる諸問題といいますか、例えば継続的取引が我が国は非常に多いとか、あるいはグループ内取引があるじゃないかとか、そういったようないわゆる系列問題と申しますか、それから、そういうことに絡む取引の問題、そういった問題について分科会をつくっておりまして、検討を月一回それぞれ同時並行的ぐらいのペースで進めていっております。  その検討委員会におきましては、それらに対する評価、考え方、それから競争政策上の対応の方向、この中身としましては、一つには当然のことながら独占禁止法の厳正な運用の必要性、二つ目には公正な競争を確保するための独禁法上の考え方の明確化、これは場合によってはガイドラインをつくっていくということでございますけれども、それから、直接的に独禁法の問題とは言えなくても、広く競争政策の観点から、公正な競争のための条件整備という意味での御提言もあるいは含まれてくるかというふうに考えております。  次に、内外価格差に関する調査でございますが、これを私どもとして現在進めつつあるところでございます。申すまでもございませんが、内外価格差の発生要因としていろいろ指摘されておるものとしては、政府規制問題のほかに、メーカーの価格政策あるいは我が国の流通機構の小規模性・零細性、多段階性といったような問題、それから流通の高マージンの問題、あるいは我が国独特の商慣行の問題、それから多頻度小口購入を志向する我が国の消費者の購買行動の問題等々いろんな原因が複合的に作用して内外価格差が生じているものというふうに考えられますけれども、このうち我が国の流通構造、取引慣行、こういったものがどのように内外価格差要因として機能しているのか、これらについて必ずしも明らかでないところがございます。  このために、特に消費財につきまして、内外価格差が大きいと言われている品目中心にいたしまして、流通段階における価格形成がどういうふうになっているか、その実態を諸外国の場合とも比較して調査してみるということをいたしております。それによりまして、我が国の内在する内外価格差の発生要因というものをできるだけ明らかにしていきたいという意図のもとに今調査をやっております。  内外価格差価格差自体の問題につきましては通産省あるいは企画庁、あるいは構造協議に絡んでの合同調査、先ほども通産から御説明がございましたけれども、そういうのがあるわけでございます。私どもとしても、まずこのペーパーの二枚目に行かさしていただきますけれども内外価格差の類型として二つあるわけですが、一つ輸入品内外価格差、二つ目に国産品の輸出に係るものの内外価格差があるわけでございます。私どもの意図としましては、一つには輸入品内外価格差、これに重点を置いてやるというふうに思っておりますけれども、国産品の内外価格差についても一部含めてやるということでやっております。  具体的な品目としましては、ここに載せてございます九品目選定いたしましてやっております。すなわちインスタントコーヒー、スパゲッティ、紳士用コート、バッグ、洋食器、ゴルフボール、カメラ、乗用車、電気かみそり、この九つをサンプリング的にかなり精選したものとして選んでおりまして、これらにつきまして関係事業者にアンケートをするなりヒアリングをするなりということでその内容を調べる。それから、内外価格差自体については、海外調査ということで出かけてやっておりまして、そういうことでやっております。  それから、輸入総代理店に関する調査でございますが、輸入総代理店につきましては、申すまでもなく、輸入品我が国市場に進出するに際しまして一定の役割を果たしますし、それによりまして国内市場における競争を促進する効果も持つということが言われているわけでございますが、同時に独占的な輸入販売権を持って商品を流通させておるわけでございますので、その地位や行動のいかんによっては非常に競争制限的に働く場合もあり得るのではないかということで、公取としては既に並行輸入の不当阻害に関するガイドラインというものを公表しておりまして、不当な並行輸入のチェックなどを行っているわけでございますが、そういうことを今後とも公取としてはやっていくということでございます。  それから二つ目には、実態調査それから認定基準の見直しというのをやっております。現在、いわゆる欧米ブランド商品につきまして、百貨店、チェーンストア等を対象に輸入総代理店経由の輸入品それから並行輸入品の流通実態というのを調査いたしております。また、輸入総代理店は国際契約の一種でございますが、独占禁止法第六条に基づきまして届け出制になっておるわけでございます。したがいまして、輸入総代理店契約等における不公正な取引方法に関する認定基準というものを発表して、それによって現在やっておるわけでございますが、この際、内外価格差問題もございますし、そういった観点から、この認定基準の内容の見直しを図っておるところでございます。それらの作業を鋭意公取として進めつつあるところでございます。  どうもありがとうございました。
  13. 遠藤要

    会長遠藤要君) どうもありがとうございました。  せっかく御出席を要請しても大変時間を限定して、恐縮いたしております。  以上で説明聴取は終わりました。  本日の調査はこの程度にとどめます。     ─────────────
  14. 遠藤要

    会長遠藤要君) 継続調査要求に関する件についてお諮りいたします。  国民生活に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、本件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  15. 遠藤要

    会長遠藤要君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成につきましては会長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 遠藤要

    会長遠藤要君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十三分散会