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1989-12-07 第116回国会 参議院 運輸委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年十二月七日(木曜日)    午後一時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         中野 鉄造君     理 事                 谷川 寛三君                 二木 秀夫君                 田渕 勲二君                 片上 公人君     委 員                 伊江 朝雄君                 石原健太郎君                 上杉 光弘君                 鹿熊 安正君                 片山虎之助君                 野沢 太三君                 山崎 竜男君                 穐山  篤君                 喜岡  淳君                 小山 一平君                 瀬谷 英行君                 安恒 良一君                 小笠原貞子君                 粟森  喬君    事務局側        常任委員会専門        員        長谷川光司君    参考人        社団法人全日本        トラック協会理        事長       沼越 達也君        社団法人日本港        運協会理事長   山下 文利君        全日本運輸産業        労働組合連合会        中央執行委員長  秋田 哲也君        全国港湾労働組        合協議会議長   亀崎 俊雄君        日本大学商学部        教授       桜井  徹君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○貨物運送取扱事業法案(第百十四回国会内閣提出、第百十六回国会衆議院送付) ○貨物自動車運送事業法案(第百十四回国会内閣提出、第百十六回国会衆議院送付)     ─────────────
  2. 中野鉄造

    委員長中野鉄造君) ただいまから運輸委員会を開会いたします。  貨物運送取扱事業法案及び貨物自動車運送事業法案の両案を便宜一括して議題といたします。  本日は、両案審査のため、お手元に配付いたしております名簿の方々参考人として御出席をいただいております。  参考人方々を御紹介いたします。  初めに、社団法人全日本トラック協会理事長沼越達也君、次に、社団法人日本港運協会理事長山下文利君、全日本運輸産業労働組合連合会中央執行委員長秋田哲也君、全国港湾労働組合協議会議長亀崎俊雄君、日本大学商学部教授桜井徹君、以上五名の方々でございます。  この際、参考人の皆様に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ、本委員会に御出席いただきまことにありがとうございます。各参考人におかれましては、それぞれのお立場から両案に対する忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  どうぞよろしくお願いいたします。  次に、議事の進め方につきまして申し上げます。  まず、参考人方々からそれぞれ十分程度御意見をお述べいただきまして、その後委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際はその都度委員長許可を得ることとなっておりますので、御承知おきいただきたいと思います。  また、各委員質疑時間が限られておりますので、どうか答弁は簡潔にお願いをいたしたいと思います。  それでは、まず沼越参考人からお願いいたします。
  3. 沼越達也

    参考人沼越達也君) 私は、全日本トラック協会理事長沼越でございます。  平素からの業界に対しての御指導に厚く御礼申し上げます。また、本日は、法案に対し意見を述べる機会を与えられましたことをまことに光栄に存じております。厚く感謝いたします。  まず、トラック事業の概要について申し述べたいと思います。  トラック輸送は、昭和六十三年度の国内貨物輸送トン数六十一億トンのうち九〇・六%を占め、輸送トンキロにおきましても、四千八百三十四億トンキロの五〇・九%と半分を超えておりまして、今や国内貨物輸送の大宗を占めるに至っております。そのうち営業用トラックは、保有台数では八十九万台で全体の八・九%にすぎませんが、輸送トン数におきましては三八・五%、トンキロにおきましては六九・三%と、逐年シェアを拡大いたしております。  営業用トラックは、このように自家用トラックに比較しまして極めて効率の高い輸送力によりまして、一般消費者に対する宅配便引っ越し輸送を初めとしまして産業用資材輸送等についても、我が国産業経済国民生活の大動脈として重要な役割を果たしております。  さて、トラック事業者実情について申し上げます。  全国におけるトラック事業者数は約三万八千業者でございまして、その九九・五%が中小企業でございます。しかも車両数二十両以下の小規模事業者が七三%を占めているように、中小零細性ということがトラック事業特色となっております。  業界といたしましても、行政当局の御指導のもとに、昭和四十一年度から中小企業対策に取り組んでおりまして、昭和六十二年度からは経営戦略化構造改善事業推進いたしまして、経営方式改善共同マーケティング情報システム化人材開発の四本の柱を中心事業活性化を図っているところでございます。  トラック事業の特質といたしまして、輸送サービスは生産されると同時に消費が完結するという、いわば即時財的な性格を有しておりまして、ストックがきかないということから勢い価格競争に走りやすい性質がございます。事業者の中には、物流システム業者として独自のシステムを形成している者、あるいは輸送を核として保管、在庫管理流通加工までの一連の物流サービスを構築している者など、新しいサービスを創造し新規需要を開拓している者もあるわけでございますが、おおむねは非常に荷主依存型の企業が多うございます。現在、内需を中心に景気が好調でございまして、トラック輸送も好調に推移しておりますが、トラック事業はそもそも経営基盤が弱いので、将来についての楽観的な見通しが持てる状況にはございません。  トラック事業のもう一つ特色は、非常に人手を使う産業でございます。典型的な労働集約型産業であると申してよろしいかと思います。労働力確保は、したがいましてトラック事業にとって最大の課題でございます。しかしながら、最近における一般の風潮として、長時間労働単純肉体労働を忌避する傾向が強うございまして、トラック事業においては労働力確保が著しく困難となっております。  トラック事業従業員は約九十四万人で、そのうち運転者は六十七万人でございますが、最近の調査から見ましても、かなりの人数の運転者が不足しております。  トラック事業といたしましては、労働基準法改正に基づいて、労働時間の四十六時間への短縮について業界を挙げて取り組んでいるところでございますが、荷主ニーズ多様化等への対応を迫られる結果、総労働時間は他産業に比べて五百時間も多い二千七百時間の長時間労働となっております。労働時間短縮のためには、もとより業界自体においても生産性向上を初めコスト増対策を講じなければなりませんが、荷主サイド輸送計画の見直しによる手待ち、待機時間の削減など、荷主協力なくしては解決し得ない問題であると考えております。  次に、法案に対する意見について申し上げたいと思います。  規制緩和については、各事業者の態様によって反応はさまざまでございますが、大勢としては時代の流れであるということは十分認識しておりまして、今後は新しい法制のもとで業界発展を図ってまいりたいと考えておりますが、何分にも四十年ぶりの大改正でありますことから若干の不安もありますので、法施行に当たっては次の諸点を要望いたしたいと存じます。  第一に、トラック事業発展のため、業界としても全国融通配車のための情報ネットワークシステムあるいは長距離輸送における移動体通信システム開発など、生産性向上のための諸施策を講じつつあるところでございますが、規制のみでなく、今後とも中小企業育成強化を初めとする経営基盤の安定、確立について一層の御配慮を願いたいということでございます。  二番目には、法施行後においても、事業許可等に当たっては厳正にやっていただきたいということでございます。例えば、労働法規の対象ともならず、社会的規制を守るということも期待しがたいような一人一車の企業参入すれば秩序を乱すおそれが非常にございますので、最低車両規模確保等について厳正に運用していただきたい。また、届け出運賃等についても、安ければいいというだけの話ではなくて、適正な原価が反映されるような運賃届け出を受理していただきたい。また、必要がある場合の変更命令、また違反荷主に対する勧告など、法に定めてあることを厳正に実施していただきたいということでございます。  さらに、トラック事業者荷主に対しては弱い立場にございますので、適正な原価を下回る不当な運賃収受など不公正な取引を防止し、輸送秩序確立していくためには、法に定められております適正化事業実施機関が、運送業者だけではなく、直接に荷主及び荷主団体に対して啓発活動を広範かつ効果的に行うようにしていただきたいということでございます。  四番目は、労働力確保労働時間短縮推進を図るためには、生産性向上労働時間の改善は言うまでもないわけでございますが、運賃の増収による待遇改善あるいは要員の増強も大きなファクターでございまして、その意味から運賃改定業界の強い声でございます。しかも、緊急を要する問題でございますので、新法施行前にあっても現在の法律による運賃改定を実現できるよう特に要望いたしたいと存じます。  五番目に、輸送合理化を積極的に推進するため、行革審の報告でも取り上げられております車両の総重量などの緩和については、現在関係三省庁で検討されていると聞いておりますが、ぜひとも早急に実現するようにしていただきたいと思います。  また、輸送ニーズ多様化等によって配送センターなどの事業用施設の展開が必要となっておりますが、市街地における事業用施設用地確保は、用地の高騰または住宅地における公害対策等から問題も非常にございますので、現在、制限的に緩和運用されている市街化調整区域における開発許可についてさらに緩和を図っていただきたいということでございます。  六番目は、業界において自主的に推進しております情報ネットワークシステムなど、輸送合理化生産性向上のための諸施策過労運転防止のための休憩施設の建設及び輸送秩序確立のための適正化事業実施のため、いずれも多大の資金を必要といたします。これらの財源といたしまして、運輸事業振興助成交付金恒久化をぜひお願いいたしたいと存じます。  最後のお願いは、法律施行によって業界に著しい混乱の生ずることのないよう、公布から施行まで十分な準備期間をとっていただきたいということでございます。  以上をもって意見の陳述を終わりますが、何とぞ意のあるところをお酌み取りいただきたいものと考えます。
  4. 中野鉄造

    委員長中野鉄造君) ありがとうございました。  次に、山下参考人お願いいたします。
  5. 山下文利

    参考人山下文利君) 日本運協会理事長山下でございます。  日本運協会は、全国の九十六の港に散在しております港運業者のほぼ全員を組織した公益法人でございます。本日は、物流二法の御審議に当たりまして、私ども業界意見を聞く機会をおつくりいただきまして、大変ありがとうございました。  私ども港運業界といたしましては、この二つの法律案に対しまして賛成の立場をとらせていただいております。  実は、私ども業界は、今大きな転機を迎えてございます。そして、対応を迫られる問題を抱えておるわけでございますが、大きく申しまして二つございます。  まず第一に、港の機能が変わってきたということでございます。と申しますのは、従来は輸出主導型で輸出対応機能前提として港が運営されておりましたが、最近、輸入が物すごくふえてまいりまして、しかも製品輸入のウエートが急速に増大してまいりました。これに対応する港湾荷役能力というのが施設面においてまさにパンクする状態にございます。こういう点で、港湾運送事業者としての責任を果たすためにどうすればいいのかということに悩んでおるということが一つの大きな問題でございます。私どもとしてはこれに積極的に対応して役目、責任を果たさなければならない、このように考えておるというのが第一番目の問題でございます。  続きまして第二の問題といたしましては、既に御案内のとおり、国際複合一貫輸送ニーズが非常に高まってきたということでございます。この国際複合一貫輸送事業者組織しております日本インターナショナルフレート・フォワーダーズ協会略称JIFFAという協会がございますが、この正会員のうち四分の三近くは既に港湾事業者でもって占められております。したがいまして、これらについては私どもの仲間がやっておるわけでございますが、さらに一層こういった面に港湾運送事業者としての活路を求めていくべきであろう、このように認識しておるというのが大きな転機を迎えた私どもの第二の認識でございます。  それで、こういう前提に立ちまして、私どもとしては、港運業者が一人一人ではとてもやっていけませんので、共同して港湾管理者の御協力を得まして日本の主要な港、輸入を主体とした大きな港に総合輸入ターミナルというものを建設いたしまして、その総合輸入ターミナルを中核といたしまして、それに港湾貨物情報システム支援を受け、さらに国際複合一貫輸送とも連携いたしまして港湾貨物流通システムをつくっていきたい、こういった大きな夢を描いております。この中には中小企業港運業者も含め意欲と能力のある港運業者がみんな集まってきて、新しいメリットを受けて私どもの今後の進むべき道としたい、このように考えておるところでございます。  その推進役といたしまして、昨年、運輸省の御指導をいただきまして社団法人国際港湾貨物流通協会というのを設立させていただきました。この協会旗振りをやりまして、当面、東京港の青海地区に約二十五万平米の流通システムを構築することで、でき得れば年度内に着工いたしたいと思っております。さらに、大阪の南港地区にも同じようなシステム本年度目標に建設いたしたいと思っております。さらに引き続いて名古屋その他全国各港にこういったシステムをつくることによって、港運業者の生きるべき道を模索しておる状況でございます。  さらに、これとあわせまして、国際港湾貨物流通協会中心となりまして、世界の各港湾関係者と密接な連絡をとってネットワークをつくりたいということで、現在、ヨーロッパ、アメリカあるいは東南アジアと接触して、その整備に当たっての問題点とかあるいはあり方を着々と協議しておる最中でございます。  以上、いろいろ申し上げましたのでございますが、私ども港湾運送事業の起死回生の策として、運輸省の御指導のもとに、こういった方向で新しい業域を拡大していきたいというような気持ちでございますので、先生方のひとつ御理解と強い御支援と御助力をこの機会を通じてお願い申し上げたいと思う次第でございます。  以上のような背景でございますので、現在ばらばらな取扱業者関係一つにまとめてその地位を明確にするということは、むしろ飛躍を求める私ども業界の強く希望するところでございます。  こういった重要な局面に立っておるのでございますが、内部一つ大きな問題を抱えております。それは、一部の港湾事業者にあっては、残念ながら料金の完全収受につきまして必ずしも十分行われておらない状況がございます。これは業界にとっても大きな問題でございますし、運輸省からはたびたび注意喚起是正勧告を受けておるわけでございますが、これはむしろ業界内部の問題でございますので、私たちも深く反省しておりまして、これに対して組織的に対応を講ずる必要を痛感しておるところでございます。  以上、申し上げましたが、港湾における港運業者立場責任について御理解をいただきまして、積極的な御援助をいただきますようにお願い申し上げる次第でございます。  ありがとうございました。
  6. 中野鉄造

    委員長中野鉄造君) ありがとうございました。  次に、秋田参考人お願いいたします。
  7. 秋田哲也

    参考人秋田哲也君) 御紹介いただきました運輸労連中央執行委員長を仰せつかっております秋田哲也と申します。  私ども組織であります運輸労連は、主にトラック運輸産業に働く労働者組織しておりまして、本年十一月で結成後満二十一年になります。傘下加盟組合数は五百二十八組合、約十三万人の組合員を擁しておりまして、上部団体は「連合」に加盟し、また陸海空の大産別組織であります交運労脇にも参加しておりますことを御紹介申し上げておきます。  さて、本運輸委員会におきまして、貨物運送法案に関して参考人として意見を申し述べる機会をいただきましたことに心から感謝申し上げますと同時に、現場で汗している労働者立場から、またそれを組織している責任者として御意見を申し上げさせていただきます。  私たちは原則的に規制緩和については反対であります。しかし、全面的に反対しているのではなくて、今日の社会情勢、特に貨物輸送を取り巻く情勢からして、経済的規制についてはある程度の緩和はやむを得ないというふうに思っておりますが、社会的規制については、現行よりももっと厳しく規制すべきであるとの考え方に立っております。  これまでの道路運送法ザル法と言っても過言でありませんで、現に三万八千を超える事業者と今日の熾烈な過当競争状況を生み出していることが立証しておると思います。それをトラックに関する単独法によって安全確保等に関する規定が盛り込まれておりますことは一歩前進とは考えておりますが、内容的にはまだ不十分であると言わなければなりません。  以下、具体的事例を挟みながら、特に安全面労働条件面意見を述べさせていただきたいと思います。  私たちトラック運輸労働者は、道路が主な職場でございます。早く、安く、確実に、そして親切、丁寧にを守りながら輸送しなければなりません。しかし、そこに従事している労働者は、そのために過労運転過積載日常茶飯事という状況に追い込まれているのが実情でございます。特に最近のトラック輸送は、荷主ニーズ多様化に伴い、輸送長距離化高速化が進行し、かつ荷主の時間指定輸送が増大する中で、トラック運転者長期連続勤務、深夜勤務、拘束時間の延長等が拡大しておりまして、そのことが交通事故に結びついているのが実態でございます。  政府は、去る十一月二十八日に交通事故非常事態宣言を発表しましたし、十二月一日には死者が一万人を超えたとの報道もありました。このように交通事故が多発する中でトラックによる事故もふえ続け、高速道路における死亡事故件数を見ても、その半数がトラックによるものとなっているのが現状でございます。  交通事故には原因があり背景があるわけですが、最近のトラックによる事故が増加している中で目立ちますのは追突、衝突でありまして、車両相互間の事故の六〇%を占めており、若者無謀運転によるもらい事故も多発しております。  これらの事故原因を考えてみますと、第一に速度の出し過ぎ、第二に道路交通事情悪化、第三に居眠り、わき見、漫然運転、第四には過積載によるブレーキ等車両機能低下等原因として挙げられております。  そしてその背景には、長期間連続運転と長時間労働によっての過労から来る居眠り運転や覚低運転、前方不確認や錯覚運転注意力減退等が挙げられています。また、人手不足のもとでの無理な運行計画物流多様化によりセールスを伴う運転業務等ニーズへの対応複雑化、さらに製品の無在庫管理・時間指定納品システムの採用など、物流サービスの二十四時間体制とスピード化の進行によってトラック運輸労働質的変化と長時間労働が恒常化し、精神的、肉体的疲労の蓄積となっていることも否定できない事実であります。  そこで、労働時間の実態を見てみますと、労働省の毎勤統計調査によれば、八八年の年間総労働時間は、全産業平均が二千百十一時間であるのに対し、道路貨物運送業は二千六百八十七時間と五百八十時間も長くなっております。  さらに、運輸労連として毎年十一月九日に全国主要道路で一万人を超えるトラック運転者アンケート調査実施してことしで十四年目になりますが、本年分はまだ集計されていませんので、昨年の調査結果から一部を抜粋して御報告をしてみたいと思います。  まず、労働省告示による自動車運転者労働時間の改善基準に照らしまして、一日の運転時間九時間の基準を超えるものが三六%、一回の連続運転時間四時間の基準を超えるものが一六%。次いで休日と残業実態は、八八年十月は、月の休日が六日ありましたが、休みなしが五%、三日以下が三二%、月間の残業時間が八十時間以上が一四%、また自分の残業時間がわからないというのが二四%という実態であります。  一方、トラック事故原因には、過労と並んで過積載運行があります。七八年の道路交通法改正によりまして背後責任に対する罰則適用実施された直後はかなり違反が減少しましたが、その後はまた増加しておりまして、特に十トン車に二十トン以上を積み込む、いわゆる一〇〇%過積載がふえる傾向にあります。  最近、危険、きつい、汚いという三K産業若者が敬遠すると言われていますが、トラック運送事業はその上に暗い、つまり深夜労働、帰れない——長時間、長期間というような労働が加わりまして五K産業となってしまい、人が集まらないのが現実であります。そして、人が集まらないために、結果的には現有勢力で仕事を消化しようとしますから、さらに長時間労働という悪循環になっているところであります。そのために最近のトラック運送事業では人手不足が顕著となっておりまして、労働集約型産業であることから、労務倒産にもなりかねない深刻な問題となっています。  以上のような実態から、私たちはこれまでトラック事業の適正な運営と公正競争確立輸送の安全を確保する立場から各種の対策具体的措置を講ずるよう政府に要求してまいりました。その過程で、一九八三年四月二十一日の参議院運輸委員会において貨物自動車に係る道路運送秩序確立に関する決議全会一致で採択されましたので、それを重視しながら運動を進めてきましたが、残念ながら実効が上がっていないのが現状であります。  今般の法案提出では、規制緩和論が先行し、貨物輸送分野における輸送秩序確立安全確保を解決する視点が欠落しておりまして、参入規制運賃規制許認可制緩和のみが先行してきたと思うのであります。経済面からのみの規制緩和だけでは、労働基準法道路交通法も守れないような事業者参入を許し、トラック運送事業過当競争の激化や、さらには輸送サービス低下労働条件悪化につながることは必至であります。今必要なことは、過労運転過積載を防止し、交通事故をなくし、安全を確保するための社会的規制をいかに強化するかということでありまして、それなくしては安全、確実な輸送の提供は不可能であると言えます。  そこで、法案内容に対する問題点ですが、衆議院における審議経過と採択された附帯決議内容を踏まえまして、最低限次内容について具体的に措置されるよう意見として申し上げます。  一つは、輸送の安全を確保するために、一九八九年二月九日付の労働省告示第七号による自動車運転者労働時間等の改善のための基準事業者遵守義務事項として明記するとともに、貨物自動車運送事業に従事する労働者労働時間等、労働条件改善を図るための施策を強力に推進していただきたいと思います。  二つ目が、過積載過労運転の防止に資するため、自重計や運転者勤務時間を記録する運行記録計の装着義務化を図ることと、車両構造の改善に向け関係法令の見直し、整備を可及的速やかに行っていただきたいと思います。  三つ目ですが、貨物自動車運送適正化事業実施機関としての指定法人について、少なくとも三年以内に財団法人化を含めてその体制の見直しを行い、必要な措置を講じていただきたいと思います。  四つ目が、本法の趣旨、目的を達成するために必要な事項を審議すること及び貨物自動車運送適正化事業実施機関事業活動指針を審議することを目的として、関係行政機関、貨物自動車運送事業者団体、労働団体その他関係団体及び学識経験者から成る審議会を設置するために必要な措置を講じていただきたいと思います。  五つ目が、その他事業者資格の厳正審査等輸送秩序確立安全確保のための事業者遵守事項の規定等、万全の措置を講ぜられたいと思います。  以上、意見を申し上げましたが、今後の法案審議に当たりましては、十分に参酌いただきまして具体的な対策お願いしたいと思います。  意見陳述を終わらしていただきます。ありがとうございました。
  8. 中野鉄造

    委員長中野鉄造君) ありがとうございました。  次に、亀崎参考人お願いいたします。
  9. 亀崎俊雄

    参考人亀崎俊雄君) 全国港湾労働組合協議会議長亀崎でございます。  各先生方には日ごろ港湾労働問題等につきまして格別の御理解と御協力を賜っておりますことに厚く御礼を申し上げる次第でございます。同時に、物流法案審議に際しまして、私ども意見を申し上げる機会を与えていただきましたことに対しましても深く感謝を申し上げる次第でございます。  最初に、物流法案に対する基本的な考え方を申し上げたいと思います。  二法案の提案の経緯と各法案の目的等から見まして、二法案の真の目的が、実運送事業における現行の経済的規制を廃止して競争原理の導入を図り、運送事業者間の競争を一層促進させながら、利用運送事業者のもとに隷属化させ、ユーザーの求めに応じたより大きいサービスの提供と運送コストの引き下げを図ることに置かれているのは明白であります。しかし、日本の運送業界では圧倒的に中小企業が多く、荷主優位の現状から、経済的規制のもとにありながらも既に激しい過当競争が続けられ、実勢運賃は認可料金の半額程度と言われるほどに下がり、労働条件も他産業に比して非常に劣悪なものになっているのが実態でございます。運輸省の説明では、そのために社会的規制の強化を図り、労働条件改善、安全運転の実現を目指し、適正な競争を行わせるとしていますが、規制緩和と競争原理の導入を図り、一層の競争を促進し、運送コストの引き下げを企図する本法のもとで、どのように社会的規制の実効が上がるのか極めて疑問視されるところであります。  このような実態の中で、今改めて規制緩和を行い、一層の競争を促進させる政策をとる必要性は全くないのみならず、これを強行することはゆゆしい社会問題を引き起こすことにつながると考えるものでございます。  また同時に、利用者の求める新しいニーズ対応するサービスの提供と運送コストの低廉化を目的とする本法のもとにおける経済効果は、決して実運送事業のみでなく、その他の関連する物流事業者全体に対して強く及ぶものであることは必至であり、そのような見地から基本的に反対の立場を表明せざるを得ないのであります。  次に、この法案港湾運送及び労働に特に著しく与える影響について申し上げたいと存じます。  第一には、従来、外貿貨物の多くが荷主または船舶運航事業者と一種元請の間で港湾運送に関する直接契約が行われていたものが、利用運送事業者が介入することによって、利用される一種元請側に再編成が行われることになり、特に弱小一種元請は淘汰される危機に直面することが考えられる点であります。  第二には、一種元請の再編成が進められる過程で、生き残りをかけた厳しい競争を続ける一種元請に対して、認可料金の一層のダンピングが強く求められるであろうことが明らかに推察できることであります。  第三には、インランドデポ等におけるコンテナへの貨物の出し入れ等の業務などが、港湾運送事業法の規定が不十分なため、利用運送事業者によって行われることになることが考えられ、港湾運送事業者に対して重大な影響を与えることになる点であります。  このような影響が港湾労働者の雇用や労働条件に重大な変化をもたらすことは言うまでもないことであります。予測されるこのような事態に対して運輸省は、貨物運送取扱事業法が成立することによって新たに生じるものではないと説明していますが、利用者の利益の保護及びその利便の増進に寄与することを目的とする本法案が成立すれば、この法律を足がかりに現実の動きが一層促進されることは間違いなく、港湾運送事業法がさらに空洞化を続けることにつながることも明らかに予想されるところであります。  また、料金のダンピング等については、それぞれ縦割り事業法に基づいて遵守を図る必要性があることを説き、その努力をすることを運輸省は繰り返し説明されています。しかし、認可料金制をとる港湾運送におきましても、その完全収受を行うことが一層至難となることが考えられるのであります。  今日まで認可料金が完全に守られなかった背景には、激しい過当競争が存在したこととともに、行政による監査が不十分であり、かつ違反の事実に対してもいまだかつて一度も罰則規定の発動を行ったことがなく、単なる警告程度にとどめられてきたことにも大きな原因があるのではないかと考えられるのであります。また、いささか社会理念に欠けると思われる荷主も決して少なくない状況でございますが、荷主に対する罰則規定もないという事態の中では、経済法則がすべて荷主優位に働いたことは当然であったというべきであります。今日までに罰則規定の発動が一度もなかったという事実の中で、今後の料金遵守を事業者の自主努力や監視体制に期待するとしても、公平な法運用の立場から、建前上はともかく、現実に違反者に対する罰則規定の適用はますます困難になると見なければならず、一段と輸送コスト引き下げの圧力の強まる中で料金完全収受は大変厳しい試練に直面することになり、運輸省の説明も説得性を持ち得ないのであります。  以上のとおり、港湾運送事業など関連する物流事業者に対しましても重大な影響を与えることが明白である限り、その影響を防止するためには、法制上の問題があるとしても、何らかの保障措置が必要であり、ぜひ法案の修正等を強く要望申し上げる次第であります。  その第一は、港湾運送事業を除外する旨の規定を条文の中でより明らかにしていただきたいこと。第二に、実運送事業者港湾運送事業など関連する物流事業者における届け出運賃、認可料金等を遵守する義務を有することを条文において明記し、遵守義務を怠った利用運送事業者に対する運輸大臣の勧告権を明示していただきたいこと。第三に、インランドデポ等におけるコンテナの出し入れ等の既存の職域を確保する担保措置を明確にしていただきたいこと。第四に、中小の港湾運送事業者に対して免許基準の引き上げ等による集約化ないしは協業化の実現に努めていただきたいこと。第五に、ILO百三十七号条約の早期批准とその理念に基づく国内法の整備、制度の実現を運輸省労働省一体となって期していただきたいこと。  以上申し上げまして私の意見とさせていただきます。ありがとうございました。
  10. 中野鉄造

    委員長中野鉄造君) ありがとうございました。  次に、桜井参考人お願いいたします。
  11. 桜井徹

    参考人桜井徹君) 日本大学商学部桜井です。政府規制の問題について少し研究をしております。  私は、主として貨物自動車運送事業法案について問題点を述べます。  今回の貨物自動車運送事業法案の最大の特徴は、道路運送法と比較して事業区分の統合や需給調整を伴わない免許制への移行などのいわゆる参入規制緩和運賃、料金の届け出制への移行、事業の休廃止の届け出制への移行、さらには運送引受義務規定の削除など、全体としていわゆる経済的規制を大幅に緩和するものとなっているところにあります。研究者としては、今回の規制緩和に理論的根拠を与えたいわゆるコンテスタビリティー理論についての見解を展開すべきでありますけれども、時間の関係上、ここではそれ自体は非常に抽象性の高い、かつそれが成立する上で幾つもの前提があるということだけ指摘しておきたいと思います。  さて、交通、運輸の公共性には、一般的には安全の確保、公害の防止、第二に平等性、普遍性と利便性の確保、そして第三に各交通手段の均衡的発展という意味での総合交通体系が含まれます。  以下、私は、経済的規制緩和を主内容とする今回の貨物自動車運送事業法案がこれらの公共性と矛盾する面を持つということを簡単に述べます。  第一の問題点は、今回の法案によって輸送の安全の確保、公害の防止を行い得るかという問題です。  参入規制緩和が需給関係にアンバランスを生じさせ、それが運賃制度の届け出制と相まって過当競争を引き起こします。このことを通じて中小零細業者の倒産ないしはその大手業者への下請化という現象が一層生ずることも予想されますが、同時に強調したいことは、そうした過当競争が、既に多くの参考人も述べられましたように、労働集約型産業という特性からも長時間過密労働、交通労働の条件を一層低下させ、過積載、スピードアップなどの行為を促進し、交通事故の多発及び交通騒音、排気ガスの増加に一層結果するのではないかと心配されることです。  もちろん、こうした懸念は法案作成者も当然予想していたことでありましょう。まず、過当競争の歯どめとして、需給調整措置や標準運賃、標準料金の設定、料金の変更命令及び違反荷主への勧告、命令が規定されていますが、これまでの議事録での質疑を拝見しましても、事後的措置であるということを含めてその実効性は乏しいものと考えております。  また、労働条件低下交通事故の多発については、事業開始の資格要件という点で、また安全遵守義務を課すなどのいわゆる社会的規制を強化するという形で防止し得ると本法案では考えられているようであります。このことについて、私は二点主張しておきます。  一つは、経済的規制緩和されたところで、社会的規制の強化は果たして可能であるのかどうかということです。私は、経済的規制緩和は、社会的規制にかかわる問題を必然的に発生させ、換言すれば、社会的規制経済的規制とは密接な関係を有していると考えております。経済的規制緩和はこの面からもするべきではないと思います。しかも、経済的規制緩和のもとでの社会的規制の強化は、監督官や警察官の増加などという形での規制の新しい大きなコストを社会全体に発生させるものであろうと思います。  もう一つは、本法案安全確保の規定は現行法規のそれとほとんど変わりないものであり、現行法規のもとでさえ安全確保がなされているとは言えない状態を考慮したとき、もっと実効性のある規定を設けるべきだと思います。積載重量及び運転時間を正確に把握するための車両機器の開発とその装着の義務化、運転者休憩施設の整備など、いわゆる衆議院での附帯決議にも挙げられていますが、そういう附帯決議ではなくて、法律の中に組み入れられるべきものだろうと思います。  自動車公害の防止については、この法案では何ら考慮されておりません。  ついでに、参考までに一九八〇年七月からザ・モーター・キャリア・アクト・一九八〇、つまり一九八〇年道路運送法によって州際道路貨物輸送規制緩和を行ったアメリカの場合について簡単に触れておきます。  倒産件数の増加と並んで一九八四年のザ・モーター・キャリア・セーフティー・アクトなどによる安全規制の強化にもかかわらず、一九八一年から一九八六年の五年間で約一五%の交通事故が増加しているということが報告されている点をつけ加えておきます。これは、コングレス・オブ・ザ・ユナイテッド・ステーツ・オフィス・オブ・テクノロジー・アセスメント、ギアリング・アップフォー・セーフティー、ワシントン、セプテンバー・一九八八の五ページからです。つまり、日本語で訳しますと、合衆国議会の技術評価局が「安全をめざしスピードアップ」という題名の本を一九八八年九月に出しております。その中でそう書いてあります。  第二は、総合交通体系と法案関係であります。  今日、環境汚染問題、特に自動車公害の解決が重要になっており、その最大の原因者であります自家用車を含むトラック走行量を規制すること、もう少し言えば、物流イコール輸送需要全体をコントロールしつつ、他方では、道路、鉄道、海運、航空の各交通手段のそれぞれの特性、この場合はエネルギー効率や社会的費用を考慮した意味での特性でありますが、そういう特性を組み合わせた総合交通体系の策定が必要になってきている、そういう段階に来ているのではないかと考えますが、今回の立法は、それを前提とせずに、個別事業法の整備を先行させたものとなっています。しかし、あるべき総合交通体系の議論を踏まえて、道路貨物運送事業の位置づけを明確にした上で立法化すべきであったと考えております。  このことは、さらに貨物運送取扱事業法案においても一層当てはまる問題です。というには、同法案は、陸海空を通ずる複合一貫輸送を促進し、それを全体的に運営する貨物運送取扱事業者を育成する意図を持っているからです。そこでは、これら四つのモードを自由に競争させて、大手企業参入が予想される、そういう貨物運送取扱事業者が自己の採算性に通した輸送手段を構築していくということになるわけですが、これは国民経済から見た適切な輸送体系を構築するということとある意味では矛盾する、阻害要因となるということも考えられる、そういう心配があるということであります。  第三は、貨物自動車運送事業法案といわゆる交通、運輸の利便性、平等性の確保関係の問題です。  この点について、最近、公益事業学会編で「現代公益事業規制と競争」という本が出ましたが、その中にこの法案についての問題点が書かれておりますが、そこでは、貨物運送サービス荷主企業一般利用者とに分けた場合、立場の強い荷主企業は確かに運賃値下げ競争やその他ダンピングでその物流コストを大幅に低減できるでしょう。しかし、それに対して一般利用者は、規制緩和で利便性ないし平等性、普遍性が損なわれる可能性が生じます。すなわち、運送の引き受け義務がなくなり、事業の休廃止が極めて容易となった状態で、低採算地域でのサービスを享受し得る一般的保証はあるのかどうか、また情報の不完全性について見ても、営業所等において運賃や運送約款を掲示するだけでは極めて不十分であると思います。つまり、トラック業者との交渉で一般利用者は不利な立場に置かれる、そういう状態の発生も予測されるわけであります。  最後に、私は、経済的規制社会的規制の双方の保持を主張するものでありますが、その際に、これまでの規制のあり方でいいと言っているわけではありません。規制内容もさることながら、規制の主体が公共的に直接責任を持ち得るものであり、かつ、その運用が民主的で透明、公開されているということが特に必要だろうと考えております。この点で、全国及び地方の適正化事業実施機関という規定は極めてあいまいなものであると思いますし、また、広く言えば、広範な利害関係者が参加できるような運輸審議会の改善も求められます。  以上で終わります。
  12. 中野鉄造

    委員長中野鉄造君) ありがとうございました。  以上で参考人からの御意見の開陳は終わりました。  それでは、これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  13. 田渕勲二

    ○田渕勲二君 両法案の質問の持ち時間が十五分ですから十分時間はございませんが、ひとつ簡潔に要領よく御答弁をいただきたいと思います。  まず最初に、貨物運送取扱事業法案について御質問いたします。  先ほど日港協の山下参考人の陳述を聞いておりますと、これはむしろ貨物運送取扱事業法案意見陳述というよりは、現在の立場責任といいますか、業域拡大への協力という、そういう観点でお述べになったと思うのであります。しかし、この法案が通ることによって、今も亀崎参考人からるる問題点が出ましたように、この事業活動というものに非常に大きな影響を受ける、こういう御意見がございましたが、これに対する日港協のお考えについて、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  14. 山下文利

    参考人山下文利君) ただいま私が劈頭申し上げましたように、私どもとしては、むしろ取扱業を含めて、そういった事業に進出する機会をふさがれるということが一つの問題であるということで申し上げたわけでございます。  それから、個々の問題につきまして、いろいろ弊害があるであろうという御指摘がございました。例えば荷主が利用運送業者に取ってかわられることによって、再編成の問題、料金ダンピングの問題等々出てくるということでございますが、これは現在でも黙っておっても出てくる問題で、それについては、業界が自覚を持って挙げてこれに対応していくという覚悟が必要でございますし、それは日本運協会としてまとまって対抗していこうという意思表示をしてございます。そういった面で、弊害が出ないようにこれから努力してまいるつもりでございます。  以上でございます。
  15. 田渕勲二

    ○田渕勲二君 割合簡単におっしゃいますけれども、確かにいろいろ言われたこの法案改正に伴って、業域、職域というものがいわゆるインランドデポなんかに影響を受けるということは、これはそこに働く港湾労働者にとりましては死活の問題なんですね。非常に心配をしているわけです。それに対して、港湾事業者としてこの法案が通っても何ら影響はない、大丈夫だということが言えるかどうか。  それから、今も参考人意見陳述の中に言われましたいろいろダンピング問題が非常に問題になっている。これは、一部業者がというような言い方をされましたけれども、私の知る限りでは、一部業者というよりは、やはりかなりの範囲でこういう荷主から認可料金がそのまま収受されない状況が生まれていると思うのですね。そういうような状況業界団体としてどういう手だてでこの認可料金を十分収受できるように指導され、またどのように対策されるのか、これについてひとつ御見解を伺いたいと思います。
  16. 山下文利

    参考人山下文利君) 認可料金のダンピング問題につきましては、先ほど一部と申しましたが、その一部が大部分なのかどうか、はっきり実態はつかめない状況でございまして、かなりそういう実情があることは認識しておるところでございます。  これに対しまして何らかの組織的な対応策、これは事業者の自覚を求めるという場をつくる必要があるのではないかという点について痛感しておる次第でございますので、今後第一番の大きな課題として取り組んでいこうということで、最近、内部の意思表示もしておるところでございます。それによってこの問題を何とか解決していきたいという意欲はございますので、そういったことで努力してまいりたいと思っております。
  17. 田渕勲二

    ○田渕勲二君 なかなかお立場上そういうお答えしかできないかもわかりません。いずれにしても、港湾関係労働者にとりましては非常にこの点は心配されている向きがありますから、ひとつ業者としてもそういう心配が杞憂に終わるような対策をぜひ講じていただきたいということをお願いしておきたいと思います。  時間がありませんので、もう一つ貨物自動車運送事業法案についてお尋ねをしてまいりたいと思います。  まず、沼越参考人にお伺いいたしますけれども、今日のトラック業界はもう申すに及ばず大変激烈な競争が行われておりまして、運賃ダンピング、過積み、過労、こういったことが全く日常茶飯事状況になっているのでありますけれども、これまでもトラック協会としては輸送秩序確立に向けていろいろお取り組みになったと思いますけれども、私の見るところでは余り実効が上がっていないと思うのですね。なぜそういうふうに実効が上がらないのか。この要因は一体何でしょうか。これについてひとつお考えをお聞きいたしたいと思います。
  18. 沼越達也

    参考人沼越達也君) トラック事業の特性といたしまして、冒頭申し上げましたように、基本的には受注産業という宿命を背負っておるということがあろうかと思います。  例えば、現在、ほかの参考人もおっしゃいましたけれども荷主ニーズに適合するために、ジャスト・イン・タイム輸送であるとか、また荷主の庭先に行きましても、例えば向こう側の都合による順番待ち、指示待ち、そういった待機時間、そういったようなものもございます。また、工場労働などと違いまして、管理者側がきちっと自主的に労働を管理する、これが非常に困難な事情もある。そういったことから、例えば労働時間などについても非常に長くなる。  それともう一つは、非常に中小零細企業が多うございますので、例えば特定荷主に対する隷属性が非常は強い事業が多数を占めております。そうなると、何と申しましても運賃の問題あるいは輸送の問題、すべてについて荷主に対して非常に弱いというところが理由かと存じております。
  19. 田渕勲二

    ○田渕勲二君 今おっしゃった理由というのは、個々の事業者がそういうような状況に置かれているということの説明だと思うんですが、それはよくわかるんですが、そうじゃなくて、トラック協会としてそういう状況をどのように改善されてきたか、またこれから積極的にどのような取り組みをされようとしているのか、トラック協会としてのお考えをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  20. 沼越達也

    参考人沼越達也君) そういった運賃ダンピング、それから輸送秩序の問題というのは、旧法下四十年間、旧法と申しますか、現行法下四十年間取り組んできたところでございますけれども、はかばかしい成果をおさめるというところに至ってないことは御指摘のとおりでございます。  まず、我々が行いました取り組みの一つといたしまして、やはり荷主産業との関係というものの取引条件の改善ということに何回も取り組んだわけでございます。これは独禁法の共同行為に触れるというようなことで、非常にそこに手が出しにくいという点がございました。これは一番大きな理由かと私思っております。
  21. 田渕勲二

    ○田渕勲二君 今の神奈川の例なんかは神奈川の県トラック協会なんかが非常に積極的に事業者の声を代弁していろいろおやりになっている点は私もよく承知しておりますが、やはりトラック協会としてこれからのそうした努力を単に県ト脇、事業者だけに任せるんじゃなくて、全日本トラック協会としてのやはり指導性をもっと発揮してもらわないと、なかなかこの業界におけるこうしたいろんなダンピング、過積み、過労というような問題は解決をしていかないという意味で、ひとつ全日本トラック協会の奮起を要請しておきます。  次に、秋田参考人に対してお聞きしたいんですが、意見陳述の中で具体的な事項を幾つか挙げられましたけれども、そのうちに、貨物自動車運送適正化事業実施機関の指定に関して、三年以内に財団法人を含めて体制の見直しをと指摘をされておりますが、それはどういう理由で、またどのような考えでそういう御主張があるのか、もう少し具体的にひとつ御説明願います。
  22. 秋田哲也

    参考人秋田哲也君) 過去に私どもトラック協会と交渉しまして、今日の秩序が乱れている中身について、業者間の競争による足の引っ張り合いがあるんじゃないかということで、やっぱり協会自体が秩序を守る運動をすべきだということで要求をした経緯がございます。  ただし、この要求した中身につきましていろいろ今日までしてまいったんですが、私どもの考えとしては、各県ト協を、県を中心に行政機能を補完する事業としてこの考え方を持っておりまして、中央にはその連合会を設置したらどうかと。それで、今、秩序改善指導員が配置されていますから、その専任指導員もこれに包含をして具体的な対処をすべきじゃないかということで申し上げているんですが、仄聞するところによりますと、自分の首を自分で絞めるようなばかはいないというようなことでして、そんなものつくるわけがないというようなことがありまして、ぜひそのことを守らなきゃだめじゃないかということで私ども主張しているわけです。  今回衆議院で通過した中身を見てみますと、運輸省もある程度トラック協会の方にそれを指名するやに聞いておりますので、これでは中立公正な組織と言えないんじゃないかと、いわゆる利害得矢がありますから。そうでなくて、全く中立な立場できっちり指導できるようなものをつくっていただきたい、このような考え方で私どもとして意見を申し上げておりまして、特に三年以内に見直しをするということも書かれておりますから、法律の成立後直ちに財団法人を設立するというのもちょっと難しいんじゃないかと思いまして、ぜひ次善の策としてそういったものをつくっていただきたいなということでございます。
  23. 田渕勲二

    ○田渕勲二君 じゃ、もう一つお聞きしますけれども、私もこれは先般の委員会運輸省に対して質問したり意見を述べたんですが、行政なり業者なり労働組合なり入れた審議会、この審議会方式を非常に重要視されているようですけれども、その辺についてもう一度具体的にお考えを聞かせてください。
  24. 秋田哲也

    参考人秋田哲也君) 事業適正化をやるのは、まあ極論を申し上げますと、私ども労使ですから、特に企業組合でございますので、どうしても自分の企業のことになりますと、組合はそちらにいろんな意味でどっちかというと味方するようなことが多いわけで、それと同時に、組合も自分のことばかりを主張しても社会的に通用しないんじゃないかと。したがって、ぜひそういった立場で、公平な場で審議できるものをつくった方がいいんじゃないか。それには各関係省庁、特に警察、運輸、また通産、いろいろありますけれども、そういったような関係の団体、あるいは私どもとしては労働組合の代表もぜひその中に入れていただきたいし、さらに事業者、それから学識経験者、それからまた荷主、それを利用している人、こういった広い意味で財団法人をつくっていただいたらどうかなと考えています。現在、タクシーの関係ではタクシーの近代化センターがございます。ここでいろいろ具体的に指導されているやにも聞いておりますので、ぜひそのようなものを設立していただければ、いろんな意味で公正なものが審議できるのではないかなと考えておりまして、ぜひその審議会をつくっていただきたい、このようなつもりで申し上げた次第でございます。
  25. 鹿熊安正

    ○鹿熊安正君 ただいま全日本トラック協会沼越理事長よりトラック事業の概要をお聞かせいただいたのでありますが、トラック業界発展には秩序を保ちながらの競争が必要であることから、全日本トラック協会輸送秩序指導員を配置し、白トラ行為、名義貸し、過労、過積み等の違法行為について自主的に指導、取り締まりなど防止活動を進められていると聞いておりますが、これは自主防衛の観点からもまことに結構なことであります。  そこで、巡回指導等により名義貸し、過積載、白トラ行為などの悪質な違反件数がどのくらいあるものか。また、その体制はどのように組織化され、運営、実行されているか、これまでの実績を説明願います。
  26. 沼越達也

    参考人沼越達也君) 輸送秩序の問題は、さきにも申しましたとおり、業界の古くて新しい問題でございます。従来から協会なりに一生懸命その対策は講じてきたつもりでございます。  現在の体制を申しますと、各都道府県にございますトラック協会に百九十九人の輸送秩序指導員を配置いたしておりまして、トラック事業者事業所の巡回指導、それから街頭パトロール、街頭取り締まりなどを精力的に行っております。また、輸送秩序改善のためには荷主側の協力理解が不可欠でございますので、荷主との懇談会の開催や、新聞、テレビ等によるPRも実施しておるわけでございます。巡回指導などによりまして名義貸し、過積載、白トラなどの悪質な違反者を発見した場合、運輸省に通報しまして、これにより運輸省は行政処分を行っておられまして、一定の成果は上げておると考えております。  最近の実績について述べますと、昭和六十三年度に輸送秩序指導員が違反者を発見いたしまして運輸省へ通報した件数及び運輸省によってそれに基づいて処分された件数は次のとおりでございます。  まず区域外営業四十三件、これは情報提供件数を先に申し上げます。情報提供件数として区域外営業について四十三件、名義貸しについて四十八件、過積載について二十五件、白トラ三百二十二件、その他としまして三百五十件、計七百八十八件でございます。  これを受けて運輸省側で処分されました状況は、免許取り消しから注意喚起まで合わせまして計五百五十件でございます。  以上のような成果を上げておりますけれども、今後とも輸送秩序確立に当たっては業界挙げて取り組みたいと考えておる次第でございます。
  27. 鹿熊安正

    ○鹿熊安正君 今概略お聞きしたわけでありますが、違反者に対する行政処分の種別ですね、これは何段階に分かれているのか。また、処分数などの内容についてお聞かせ願います。
  28. 沼越達也

    参考人沼越達也君) 運輸省がなさいます処分といたしましては、一番重いのが免許取り消しでございます。その次が営業停止かと存じます。その次が車両の数を限っての使用停止、それから文書警告、口頭注意という段階になっておるというように考えております。  六十三年度のそれぞれの件数について申しますと、免許取り消しが三件、車両使用停止が九十二件、文書警告が六十八件、口頭注意などが三百八十七件となっております。  以上でございます。
  29. 鹿熊安正

    ○鹿熊安正君 次に、貨物自動車運送事業法案において適正化事業実施機関の指定法人制度が創設されているが、指定の御要望の有無を含め、この指定法人に対する全日本トラック協会の所感をお聞かせ願います。
  30. 沼越達也

    参考人沼越達也君) 適正化事業実施機関は、トラック事業者に対する指導のみではなくて、荷主及びその荷主団体に対しても啓発活動を行えるような団体にしていただきたいということが冒頭私どもお願いでございます。  それで、全ト協及び各都道府県協会が進めてまいりました輸送秩序についての問題は、先ほども申しましたような件数にもございますとおり、一定の成果を上げておるものと私ども考えております。  そこで、今後とも適正化事業実施機関という法律上の機関として位置づけられ、さらに荷主及び荷主団体へのアプローチも可能になるということになるとすれば、私ども今まで以上の成果が期待できることと信じておりますし、これは全ト協はもちろんのこと、各部道府県もそのような団体であるということを熱望しておることは疑いないところでございます。  なお、この事業の円滑な推進のためには財源が必要でございますので、冒頭、陳述で申しましたとおり、運輸事業振興助成交付金制度の恒久化等を含めまして財源措置の確立をぜひともお願いしたいと考えております。
  31. 鹿熊安正

    ○鹿熊安正君 次に、トラック輸送活動には道路運送法以外にも数多くの法規制が加えられているが、トラック事業の円滑な運営を図る観点から、その緩和を特に図るべきであるという具体的要望があるか、お聞きしたいのであります。
  32. 沼越達也

    参考人沼越達也君) 業界として、何といいますか、業界事業周辺における規制で特に緩和していただきたいというものが二つございます。一つは、大型トラックの重量規制を緩めていただきたいということ。それからもう一つは、市街化調整区域に車庫用地など事業用施設用地を求めることを容易にしていただきたいということでございます。  具体的に申しますと、車両総重量につきましては、現行二十トンが限度でございますが、これを二十五トンに、高さにつきましては三・八メートルを四・二メートルに改めていただきたいということでございます。道路構造の強度等のいろいろなファクターがあるということは十分承知しておりますが、輸送合理化推進過積載防止といった視点からは極めて重要な事項でございますので、新行革審の答申にも取り上げられていることでございますので、ぜひ早期の実現をお願いいたしたいと考えております。  第二点は、最近における輸送需要の多様化労働力不足の深刻化の中で、物流合理化のための配送センターなどの事業用施設用地確保したいということでございます。市街地におきましては用地の価格の高騰、あるいは市街地における公害問題というようなことがございますので、市街化調整区域開発許可について一層の緩和お願いしたいと思うわけでございます。現在、路線事業者については市街化調整区域に立地することができるわけでございますけれども、中小業者の多い区域事業につきまして、現在は四車線に面していなきゃならないとか、あるいはインターチェンジから五百メートル以内でなければならないとか、いろいろな制約がございまして、なかなか適合する土地を見つけることが困難な実情にございます。よろしくお願い申し上げます。
  33. 鹿熊安正

    ○鹿熊安正君 最後に、最近における交通事故の多発はまことに憂慮すべき状況にあり、既に十一月二十八日には交通事故非常事態宣言が発せられているが、全日本トラック協会として交通事故防止のためどのような対策を行っているか、お聞かせ願います。
  34. 沼越達也

    参考人沼越達也君) トラック事業道路産業の基盤としておるわけでございまして、交通事故の防止は最重点項目としていろいろな対策を講じてございます。春、秋の交通安全運動等に積極的に参加するということはもとよりのことといたしまして、業界独自でも東名高速道路などにおけるパトロールは実施しております。また、専任指導員による事業所あるいは路上等における安全指導、ドライバーの運行管理者研修、あるいはトラックドライバーコンテストの開催など、いろいろな対策を講じておるところでございます。  最近における交通事故の激増はまことに憂慮すべき状況でございまして、トラック業界としても業界挙げて取り組んでおるところでございまして、この年末にかけて交通事故防止のために一大運動を展開いたしたいものと考えております。年末年始の輸送の安全総点検については、特に安全運行に関する指導を重点事項として実施するとともに、業界内部のみならず、広く一般に対してもラジオ、テレビ等を通じて呼びかけを行いたいと考えておる次第でございます。
  35. 片上公人

    ○片上公人君 本日は大変お忙しいところ参考人の皆さんにおかれましてはありがとうございます。  初めに沼越参考人にお伺いいたしたいと思います。  全日本トラック協会は、この法案によりまして全国及び地方貨物自動車運送適正化事業実施機関として指定されることに予定されておりますし、また指定試験機関としての役割も担うことになる等々、公共的な機関としての性格が大変高まるわけでございますけれども、先ほどお話が出ておりましたように、トラック協会貨物自動車運送事業者によりまして組織されておる団体であって、それが輸送の安全を阻害する行為の防止あるいは貨物自動車運送秩序確立という、いわば身内を縛るような機能を適正かつ確実に果たすことができるかどうか、秋田参考人もちょっとおっしゃっていましたけれども、そのようなことに対してちょっと疑問視する面が我々にもあるわけでございますが、そのことに対しましてどのように考えていらっしゃるのか、お伺いしたいと思います。
  36. 沼越達也

    参考人沼越達也君) 先ほどトラック協会として輸送秩序維持のために果たした実績を申しました。例えば区域外営業、名義貸し、過積載、これらはすべて身内に対する活動でございます。したがいまして、身内についてやりにくいだろうという御懸念は当たらないんではないか。  それからまたもう一つは、従来は全日本トラック協会というのは単なる社団法人でございましたが、今度、適正化事業実施機関ということになれば、これはやはりその法律によるその資格をしょった団体になるわけでございます。その負託に応ずるべく一生懸命やるということにおいては、従来とは格段の差をもって実施に当たりたいというように考えております。
  37. 片上公人

    ○片上公人君 ひとつよろしくお願いしたいと思います。  次に、秋田参考人にお伺いいたします。  先ほどからいろいろな御要求をお持ちだということはよく存じておりますけれども、そこで社会的規制強化の大きな柱となっておるのは輸送の安全対策でございますが、とりわけ過労運転の防止のための措置が今回のこの制度によりまして本当に期待どおりの効果が発揮できるかどうか、またその辺をどのように考えていらっしゃるのか。また、運用上の問題がありとすれば、それはどのような問題なのか、御所見を伺いたいと思います。
  38. 秋田哲也

    参考人秋田哲也君) 私どもの職場を申し上げますと、先ほども申し上げたんですが、管理の面で不行き届きな面が非常にあります。例えば、私ども実態調査をやりまして、出勤時間は何時かということを運転手に聞きますと、大体八時半とか、大体九時だとかというようなことで、大体とはどういう意味だというと、荷物があれば直ちに仕事につくけれども、なければ一時に出ることもあり、ずっと夕方までそのまま詰所にいることもあると。こういったことがありまして、労働者を管理する立場として事業者としてふさわしいのかどうかというのが非常にあるわけです。それはやはり人を使うんですから、きちっとした勤務体制なりそういったものを事前に、荷物がどのぐらいあるかとか、荷主にどういう要請をするとか、そういったものがぜひ必要ですから、そういうものをある程度掌握できれば、そう時間的に長時間にならずに済む場面も多々あろうかと思うんです。ただ、一度頼まれれば、せっかくの仕事ですから、東京から九州まで走れなんということは往々にしてあるわけです。そうすると、行った先で、せっかくの行った先ですからということで行った先から会社に電話をして、次の行く先どこかないかと。そうすると、会社の方はどこどこへ寄れと。そこで荷物を持ってどこどこへ走れという指図があります。転々として、ひどいのになりますと二十日ぐらいほとんど事業所へ帰らずに走ってしまうというような業者が結構おるわけです。  それで、私どももやはり過労運転になるのはほとんど自分の家に帰らずにやる。ですから、どんないい施設でも、いろいろな設備があっても、やはり自分の家が一番安らぐ場ですから、最低でも十日に一遍は家へ帰れというようなことを指導するのでありますが、中小零細の方はなかなかそうはまいりませんので、その点をぜひしっかりとした運用の中で……。と申しますのは、先ほど申し上げたんですが、例えば運行記録計とかそういったもので見て、事前にどういった生活態度をしているのかということを、勤務態度をわかるようにしていただければ、管理も非常にしやすいですし、いろいろ指摘もできるんじゃないか、こんなことを考えている次第であります。
  39. 片上公人

    ○片上公人君 山下参考人にお伺いいたしますが、今回の制度改正の結果、運送取扱事業者の介在する機会が増大しますわけでございますから、料金のダンピング圧力といいますか、そういうのが随分高まるのではないかと思っておりますけれども、この辺どのように見ていらっしゃるのか、伺いたいと思います。
  40. 山下文利

    参考人山下文利君) 料金のダンピングに対する圧力というのは現在でもあるわけでございます。この法律が仮になくなったとしても、当然あることでございまして、それとはかかわらず、これに対する団結の力でもってはね返すような努力をしなければならないと思っておりますし、そのようにやっていきたいと思っております。
  41. 片上公人

    ○片上公人君 亀崎参考人にお伺いいたしますが、現在の認可料金の収受の実情と、本法施行後における見通しについて伺いたいと思います。
  42. 亀崎俊雄

    参考人亀崎俊雄君) まず、認可料金の収受状況を簡単に申し上げますと、一つの港である元請事業者は一〇〇%の料金を収受する、ある事業者は七〇%の料金しか収受しないということになりますと、当然貨物はすべて七〇%でやるところに流れていくわけでございます。現実には大きな変動はないわけでございますので、一つの港では恐らくほとんど一定の料金水準がとられていると思うわけでございます。  私どもは、一段と低い労働条件改善のために、日本運協会とも産業別の交渉を持ちながらやっておるわけでございますが、近年ではそこで協定された各種の内容も、支払う原資がないということでほとんどの企業で守られていないという実態が明らかになっておりまして、日本運協会も協定当事者の一員として大変御苦労なさっておるようでございますが、このようなことから考えまして、港の一定の水準というのは極めて低い、当然認可料金を大幅に割り込んだ料金の収受しか行われていない、こういうことが容易に推察できるわけでございまして、私どもの見方からいえば、ほとんど全社が料金は割り込んでいる、こういうふうに見なければならないというふうに理解しているところでございます。  新しい法律ができますことによってどのように変化するかということにつきましても、現状がそのような状況でありまして、これに利用運送人もしくは運送取次事業者荷主港湾運送事業者の間に介入してくるということになるわけでございます。利用運送人同士の貨物を収受する激しい競争も起こってくることと考えられますが、したがって料金ダンピングに対する圧力というのは従来と比較にならぬほど大きなものになってくることが予想されるわけでございまして、私どもにとっては大変な事態であるというふうに考えているところでございます。
  43. 片上公人

    ○片上公人君 最後に、桜井参考人にお伺いいたしますが、一九八〇年の米国の規制緩和について、この間話が出て、先ほど参考人も簡単に触れられましたけれども、これにかんがみまして、我が国におきましても急速に寡占化が進み、中小零細業者の倒産、一部大手事業者の下請化の進行、寡占価格の形成など、深刻な事態に立ち至る危険性もあるという、こういう見方は承知しておりますけれども、先ほどの参考人のお話、もう少し詳しく分析した話をお伺いしたいと思います。
  44. 桜井徹

    参考人桜井徹君) 先ほど私が言いました資料は、私が一昨年から昨年にかけて西ドイツにいた際に、その帰り道アメリカに寄ってきて得た資料であります。  確かに、アメリカの規制緩和について、それがどういう影響を及ぼしているかということについては、肯定的評価と否定的評価というような二つのものがあるだろうと思います。しかしながら、先ほども言いましたように、どういう視点から見るかといった場合に、社会的規制にかかわる問題が発生していないかどうかという点から述べられるべきである。確かにある程度運賃は安くなる、そしてまた一部にはサービス向上が見られるというようなことも言われるわけですけれども、しかしながら、最大の問題である交通事故が増加しているというようなことがあります。それからもう一つは、倒産件数も一般産業の平均以上の高い比率を示している。これはもう明らかな姿だろうと思います。  そういう意味で、この規制緩和についての見直しが、全面的にではありませんけれども、そういうことが現在例えばビジネスウイーク、そういうような雑誌で主張されています。  そういうことだけ簡単に述べさせていただきます。
  45. 片上公人

    ○片上公人君 ありがとうございました。  終わります。
  46. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 まず最初に、桜井参考人に伺いたいと思います。  先ほどの御発言の中で、総合的交通体系がさらに歪曲されていくという心配という言葉をお述べになりました。私も総合的交通体系というのがきちっとしているということが基本的には大事だと思うんですけれども、なかなかそれがいかない。そこで、特に先生は諸外国をお歩きになって御研究になっていらっしゃるので、鉄道とそれから道路関係で、諸外国で具体的に参考になるような事例がございましたらお知らせいただきたいと思います。  それから、続けてもう一つの問題言いますね。もう一つは、社会的規制というのが大事だと、もうこれは言うはやすく行うはかたし。この社会的規制も、例えば外国でどのような措置がされて、そしてそれが役割を果たしているかということで、先生御経験になって、御研究になった中からお答えをいただきたいと思います。
  47. 桜井徹

    参考人桜井徹君) その前に、私の意見陳述の中で一カ所補充させていただきたい。それは総合交通体系にかかわることだからです。  総合交通体系は、確かに昭和四十六年に運輸省は策定しておりますけれども、皆さんも御存じのように、最近、運輸省は再び総合交通体系を見直して新たな策定作業に入ろうとしているわけです。入ろうとしている段階で、既に交通体系が合わないから、その道路貨物運送面だけを手直ししようというのがいけないんじゃないかということを私は言っているわけです。  先ほどの小笠原委員からの質問で、外国における総合交通体系ですが、すべてについて私は十分な知識を持っているわけではありませんが、見てきた中で重要だと思われたのはスイスとスウェーデンの例である。スイスでは、現在、環境問題を非常に重視しまして、それを交通政策の最大、最高の価値と考えて、その環境保護のために鉄道と道路の分担をどうすべきか、そしてそのためには鉄道に多く投資する、そしてまた鉄道と道路のいわゆる協同一貫輸送というものを重視する、そういう協同一貫輸送を促進する、そしてまた、現在、EC統合などでスイスを通ってドイツからイタリアというような形で国際輸送が頻繁に行われるわけですけれども、そういうものに対しても、スイスを渡るときには鉄道をよりたくさん利用するというような方向でもって政策基調が言われていると思います。  それから、スウェーデンについては、一九九〇年交通政策というものが通りまして、ことしから実施されているところであります。それも環境問題というものを非常に重視しております。つまり交通による環境破壊を減らすこと、そしてまた、一九九〇年代のニーズに合わせた基礎施設の開発、それから輸送施設全体の効率を改善する道路安全性の改善、さらには全国各地に十分な交通サービス確保するというような意図から交通政策が行われておりますけれども、その中で特筆すべきことは、スウェーデンでは、社会的費用を内部化して、そして各交通機関の費用負担を適正化するということが言われております。つまり交通事故であるとかあるいは環境汚染対策費用、そういうようなものを社会的費用に換算しまして、そして道路と交通の費用負担の適正化を求めるというようなこと。そしてそのためには、例えば自動車の燃料を引き上げるというようなことがスウェーデンでは行われている。そういうことは日本においても、環境問題が重要視されつつある現在、かなり参考になるのではないかと思っております。  それから、安全規制等のいわゆる社会的規制の問題でありますけれども、これも例えばスイスやそれからまたオーストリアではこの十二月から実施されたと思いますけれどもトラックの夜間運行の禁止ということが実際に行われております。これは先ほど言いました公害問題ということの関係からもくるわけです。それからまた、西ドイツの方では、一定距離以上はトラックは二人乗務ということが義務づけられております。  そのほかに一番強調したいことは、先ほど言いましたように、労働時間の問題あるいは公害防止問題というのは、これはこの法律だけでは必ずしも解決できないのでありますけれども、しかしこの問題を契機にそういうトラック産業労働時間を規制する、そしてまた公害防止も強化する、そういうことがもっと適切な政策で行われるべきではないかと思うわけであります。つまり、日本的経営と言われて各国から一面では評価されながらも、しかしその実態はやはり過酷な長時間労働の上に成り立っているものである。そして、それは一般産業においても長時間労働として各国から非難されているわけですけれども、しかしながら、それ以上に過酷な労働条件にあるということをもっと国民一般改善を求めるような意識を植えつけることが必要じゃないだろうかと思っております。
  48. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 ありがとうございました。  それでは、時間がなくなってまいりましたので、あと秋田参考人と、それから沼越参考人に同じ質問をいたしますので、お二人簡単にお答えいただきたい。それから最後に、港湾亀崎さんにも質問いたしますが、時間を倹約する上で今三つ一緒にやりますので、よろしくお願いをいたします。  今度の参入規制緩和ということで、だれでもと言ったら語弊がありますが、自由に入れるというような結果になってまいりますと、一番心配されるのは大手が中小を俗な言葉で言えば食いつぶしちゃう。自由な競争をしてくれということで食いつぶされてはたまらない、そういう心配がございますので、そういう意味で、中小の立場に立って、皆さんはこの法案で営業が守れる保証があるとお考えになっているか、とても大変だとお思いになるのかという点を簡単にお答えをいただきたいと思います。  それからもう一つの問題は、運賃届け出制と、こうなります。そうしますと、三万八千の業者がそれぞれ適正な利潤だ適正な原価だということで出しても、それぞれの規模によって違ってくるわけですね、大きいところはコストが低くなるだろうし。そういうことになりますと、ばらばらでいっぱいの運賃が出てくる。これで社会的に業界秩序が保たれるだろうか。中小の差がますます開いてくるのではないか。そういう中で、またこれも中小の皆さんがしっかりと運賃確保していくという、そういうことが期待できるでしょうか。  私はこのことを特に言いたいのは、京都のMKタクシーなんて問題になりましたですね。あれはもうけしからぬ、直せと言われても、いやうちは適正な原価、適正な料金でございますと。直せと言われても直さない。裁判に持っていったけれども、これも結局解決つかない。そうしますと、非常に混乱が起きてくるということが心配。だから、そういう意味で、中小の皆さんはこの運賃問題についてどう考えていらっしゃるかというのをお二人から、同じ質問、お答えいただきたいと思います。  それから、港湾亀崎さんに伺いたいんですけれども、これまた大変な立場にお立ちになっていらっしゃると思います。これによって今度は大企業の利用運送業者荷主の代行として港湾運送業者と契約ができるようになる。もうその辺については十分御承知だと思う。そこで私が伺いたいのは、それじゃ具体的にどういうふうな影響が深刻に出てくるかという具体的な問題を伺わせていただきたいと、そう思います。よろしくお願いします。
  49. 秋田哲也

    参考人秋田哲也君) 最初に、大手が中小を食いつぶすという御質問がございましたが、私も大変懸念しております。一番私が懸念しているのは、それよりももう少し突っ込んで懸念しなきゃなりませんのは、過去にいろいろ労働運動を通じてトラック協会とも交渉したりいろんな資料を得たりしていますが、一番心配しておりますのは、労働基準法道路運送法、道交法を守っていたら、この企業はやっていけるわけがないという業者が結構多いわけです。こういう業者に今まで何で免許を渡したのかというのが、これが大変私は疑問だと思うんです。少なくとも人を使う以上、そこに働いている労働者のやっぱり最低限労働基準法は守ってもらわなきゃいかぬ。それを守らずにやる。そして、その使用している業者の言うことには、大きな業者と同じ料金で運んでは荷物が来るわけがない。したがって、当然のことに値引きするんだと。で、値引きして原価が合うのかといったら合わない。合わないから倍積むと、こういう議論であります。それでは何のための安全性かということになりますので、そういう事業者には決して私は免許を与えてもらいたくないわけです。  そういったことのためにぜひお願いしたいのは、少なくともある程度の資本力、そしてある程度の賃金を払うだけの能力、そして事業規模、そういった一定のものが具備されなければ、この業はなかなか参入できないというものがあってやはりしかるべきではないか、当然そこに働く労働者の保護の問題がございますから。そして私は、この法律ができますと、先ほど御意見がありましたように、今までそういう営業をやっていた者がつぶれるかもしれません。しかし、つぶれないためには、やっぱりお互いに協業化をするとかお互いに補完し合うとか、そういったものをしなきゃいかぬと思うのです。  特に今心配しておりますのは、労働時間短縮問題に今取り組んでおりますけれども、そこの組合員が休めば、社員が休めば代替がいないから社長がハンドルを持っていくと。そんなところが休めるわけがないと言われると、そこにいる従業員は、おれが休んで社長に、あの老いぼれにハンドル持たすわけにいかないなんていうようなことで、結局休まずにどんどん働く。こんなようなことがよく聞かれるわけであります。そういう場合には企業ごとに交代して休めというようなことまで今議論がありまして、ぜひそういった意味で、中小は中小なりで、特に大手企業では回し切れない、いわゆる小回りのきいた事業としても非常にいい面を持っていますから、そういったものを生かすようなことをやって、ぜひ資格のない者については免許、まあ許可になるかどうかわかりませんが、与えた場合には一切やめてほしいというのが意見でございます。  それから、運賃届け出でありますけれども、この届け出も、私ども今まで運輸省とも交渉しながらやってまいりましたが、特に倍積む、三倍積むというのは半値の五割引というお話があります。一トンで一万円するものを同じようにやっていたのではだめだから、七千円にする、七千円ではおれのところに荷物が来ないから五千円にすると、どんどん値引をしまして、到底原価を割れていながらその料金でやるということがありますから、これから届け出制になりますとそれぞれ各個に届け出をすると思うんですが、それを受理する際、当然原価割れをすると思うようなものは一切受けてもらいたくない。これを受けるということは過積みを奨励していることになりますから、そういったことについてチェックポイントをどこに設けるのかというのは、当然車の値段あるいはガソリンの値段、それから道路を使用する場合の高速道路の値段、さらにそこに働く労働者労働賃金の問題、こういったものが具備されるはずですから、それによって原価割れするものについては、ぜひそういったものについては認めてもらいたくない、こういったものがありますので、その辺でぜひこの運賃問題につきましても届け出ではチェックする機能を持っていただきたいなと思っておるところであります。  ありがとうございました。
  50. 沼越達也

    参考人沼越達也君) 続いてお答え申し上げます。  まず参入の問題につきましては、冒頭申しましたとおり、私ども自由な参入ということではないと思います。やはり有資格の方が参入されるという状況はきちっと守らなければならないと思います。  それから、運賃届け出につきましても、やはり適正原価というもので、それは若干の幅はございましょうけれども、その範囲内におさまるものでなければならないというように考えております。  また、これは法律に書かれておることでございますので、無秩序な競争を助長するような運用は絶対にやっていただきたくない。これは我々がこの法案に、何と申しますか、同意する一つの条件でございます。  それから、現在の中小企業については、やはり中小企業中小企業のよさもございましょう。いろいろな職域を見つけていかれることと思いますけれども、従来にも増して中小企業対策というものを私どもも熱心にやりますし、お国のベースでもさらにやっていただきまして、不安のないようにということを図ってまいりたいと考えております。
  51. 亀崎俊雄

    参考人亀崎俊雄君) 本法案の成立に伴いまして港湾運送事業に与える具体的な内容でございますが、第一は、先ほども少し申し上げましたが、何といいましても、この法律施行されることによりまして大企業が利用運送事業者としてあるいは運送取次事業者として進出をしてくるわけでございますので、この大企業といいますのは、当然のことながら、国際複合一貫輸送を考慮する場合には外国にも数多くの支店だとか代理店を持ち、あるいは国際的なルートを数多く持ち、かつ各国語に堪能な有能な人物を持つということがなければならないわけで、これだけのことを可能にする大企業が進出することを考えてみますならば、当然国内におきましても圧倒的な量の貨物をこの大企業が自分の手中にすることは明らかであろうと思います。そこで、しかし港湾には関係がないという立場から港湾運送事業者を利用して港湾運送をするということになるわけでございますが、この利用運送人が港湾運送事業者を利用する際には、当然特定の大企業を利用するということになるのもまた必然であろうかとも思うところでございます。したがって、その利用される大企業のところは大きく伸びていく可能性があるわけでございますが、中小の関係でそのルートから外されるところは倒産の危機などの現実に直面していくことになるのではないかというふうに考えるところでございます。  もう一つ重要な点は料金の関係でございますが、これも先ほど申しましたような関係で、この法律の目的そのものが荷主の利便を図り、かつその利益を保護するという立場にある関係から、したがって規制緩和を行い、よりこの料金を、運送コストを引き下げるという目的にあるところでございますので、利用運送人の激しい競争の中から当然従来以上に厳しい料金ダンピングの攻撃が加えられるということは明らかでございまして、こうした点から大変重要な影響を運送事業者に与えるものと思っているところでございます。  もう一つ、時間がないということでございますが、現在インランドデポなどにおきますコンテナのバンニング、デバンニングという業務は、これは運送事業法でも規制をしておりませんし、今度の新しい法律でも規制されていないまさに空白地点でございます。ここにおける業務が今はほとんどのところを港湾運送事業者が現実にはやっているわけでございますが、大手の利用運送事業者がこの部分にも進出をしてくることは必然でございまして、仮に港湾運送事業者と対抗するということで、全く規定のないところでございますから、いかに安い料金でやっても違法ではないわけでございますから、極端に言えば貨物を集めるための手段として無料でやるというふうなことも可能であるわけでございまして、このようなことをされることによって港湾運送事業の業務が大幅に減少するなど大変重要な影響がもたらされてくるのではないか、このように考えるところでございます。
  52. 粟森喬

    粟森喬君 山下さんにお尋ねを申し上げたいと思います。  今の亀崎さんの話にも若干出てきたんですが、私の聞き違いかもしれませんのでもう一度お尋ねをしたいと思いますが、先ほどの一番初めの説明のときに、いわゆる港湾運送事業者としてもこの際積極的に前に出ようと思っていることがあるから、この意味では積極的に賛成したいというふうに言われました。しかし、一方では港湾運送事業法というのは、ある意味では保護規定であり、規制であり、そういう意味で一定の権益を保護しているんだろうと思います。賛成するということと、保護規定的な、保護的な立場のこの法律をこれからも維持していくというのが妥当なのか、適当なのかということについてお答えをいただきたい、こういうふうに思います。
  53. 山下文利

    参考人山下文利君) 港湾運送事業は、その業態の特殊性から現在免許制になってございます。現在の御審議いただいている法案も、これを前提にしてらち外に置いていただいておるわけでございます。これは港湾の特殊性から今後とも引き続き免許制を維持していくことについては、ぜひともお願い申し上げたいわけでございますし、またそれによって中小企業を含めた港湾運送事業者の生存の道が最低限確保されるということでございますので、それは前提でございます。
  54. 粟森喬

    粟森喬君 その上で、先ほどの亀崎さんが最後に申されたことですね、例えばコンテナのところはサービスで運送取扱業者がやるなんていうことが出るということは、港湾事業者立場から見たら困ることだと思いますが、そのとおりですか。
  55. 山下文利

    参考人山下文利君) ただいま亀崎参考人からもお話がございましたインランドデポの問題は、これは非常に複雑な問題がございまして、それが当然に港湾運送事業の範囲内なのか、あるいは事実上そこまで伸びておるのかによって非常に問題がございます。例えば山奥まで出張れるのかどうかとかなると、これはまた問題がございますので、その辺は法律問題よりはむしろ事実の問題だろうと思います。それは力関係というとあれですが、実力でもって獲得した権益は守るべきでありましょうが、当然にこれはおれの縄張りだというような代物ではないんじゃないかと思っております。
  56. 粟森喬

    粟森喬君 今の論議を聞いていると、実力の問題だと言われましたね。私は、弱肉強食の論理というのが規制緩和をすれば当然出てきますから、そうなれば、必然的に港湾業者はかなり不利な立場に置かれるんではないか、こういう認識をしていますが、いかがですか。
  57. 山下文利

    参考人山下文利君) 先ほどお話のございましたインランドデポへ現に進出しておるのも、やはり港湾運送事業者が力があるといいますか、やっていただくのがいいんだということで実績的に積み上がってきたものでございます。そういう意味で、仮に新しい事態が出てきてもやはりメリットのある方に業者は注文するであろうと思いますので、いわゆる権益は守れるんじゃないかと思います。今後も努力していって、むしろ広げていくという努力はしていくべきだろうと思っております。
  58. 粟森喬

    粟森喬君 次に、秋田さんにお尋ね申し上げたいと思います。  今、私たちのこの委員会でも論議しているときに一番問題になっているのは、やっぱり料金の問題と労働条件の相関関係です。私の知る限りで、トラック労働者労働条件を守るということで、例えば高知だったと思いますが、トラックの最賃をつくりましたね。ところが、その後それを引き続きつくろうとしたときに、それに阻害要件になったのは、一つは経営者の側はそれを認めたくないというか、そういう立場をとったことや、運輸省労働省も必ずしも積極的ではなかった。したがって、規制緩和をすればするほど料金の問題はさまざまな疑念が出ているわけでございますが、いわゆるトラック労働者の利益を守るという立場から見て、規制緩和でこの点の懸念を少しお聞かせ願いたいと思います。
  59. 秋田哲也

    参考人秋田哲也君) 最賃問題で御指摘ありましたが、おかげさまで継続して高知ではできました。現在、私どもでそれぞれ重要な都道府県を選抜して具体的な運動を進めております。できれば各都道府県でこの最賃をつくっていただきたいな、こう思っています。これはあくまでもトラック最賃でございまして、それ以下では働かしてはならぬということで実は今具体的に取り組んでおるところです。  今、先生御指摘ありましたように、料金と労働条件は常にこれは経営者よりも私どもの方が心配しておりまして、特に私ども組織の中でも運賃歩合などというのがあります。例えば千円もらったらおまえは幾らもらえるというようなことです。ただ、これはあながち悪いシステムかどうかというのは少し議論があります。と申しますのは、安い荷物を積まない、高いやつじゃなきゃわしはいやだというようなことがありまして、逆に経営者にこんな安いやつを何でおれが積まなきゃいかぬ、もっと高いのをよこせというふうなことがあって、経営者の方もこの運賃歩合がいいか悪いかというので大分迷っているようなところもあったりしまして、いい面ではそうなんですが、ただ悪い面になりますと、たくさん積めばそれだけ運賃もらえますから、結局倍積んだり三倍積んだりというようなことがあります。  これは余り大っぴらに言えませんが、私の組織の中でも三倍も積んで走ったなんというのがいますから大きなことは言えないんですけれども、これの相関関係が非常に難しくなりますので、私はやっぱり労働条件は最低限労働基準法、そして先ほど陳述申し上げましたような、例えば一回のハンドル時間と一日のハンドル時間はこれ以上持っちゃならぬ、そういうものをきちっと整理しませんと、どうしても不眠不休で運転するということがございます。その結果、道路と川と間違って走っていたなんというような話もありまして、よく覚低走行だということが言われているんですが、疲労で眠くてそうなっているということが随分ありますので、ぜひそういった面では具体的に取り組んでみたいと思っています。  そして、私ども運動として言っていますのは、安い料金で引き受けてはやっぱり我々のところの労働条件関係ありますので、一体この荷物は幾らで引き受けたのか、そういうものも現場段階でチェックする必要があるんじゃないか。こんな安いものを引き受けているから我が社はもうからないとか、おれの条件が悪いんだということをぜひ企業側とやる。そういうようなものも含めて、大きく言えばトラック協会その他にも、なぜそうなったかという原因を調べて、過当競争でこうなった、じゃ悪い荷主は一切協会の中で運ぶな、そういう運動もぜひ進めてみたいなと思っているところでございます。
  60. 粟森喬

    粟森喬君 秋田さんにその上でお尋ねしたいんですが、私の感想を若干申し上げますと、トラック関係労働者の賃金といいますか、給与は、名目上はかなり高く見えます。しかし、その労働密度だとか肉体の消耗度合いとか、あるいは例えば定年が六十になっても、必ずしも現場の労働者は六十歳定年も反対だと。むしろ五十五歳にしてもらわなかったら体がぼろぼろになるなどという話も断片的に聞かされるわけです。したがって、全体の審議の中にもトラック関係労働者労働条件実態で、特に賃金の場合は、固定給に見せながら結果的に歩合給というか、恐らくこれは白ナンバーと変わらないような賃金の実態もあるということを時々新聞などでも見るわけでございますが、時間の関係もございますが、その実態について少しお示し願いたいと思います。
  61. 秋田哲也

    参考人秋田哲也君) 御指摘ありました定年の問題は、実は私ども今定年延長問題で取り組んでおりますが、各企業とも定年延長に取り組まなければならないと言っているんですが、現実に私ども組合員に聞いてみますと半分半分です。といいますのは、延ばしてもらいたいのが半分、もっと縮めてもらいたいのが半分であります。なぜかといいますと、今先生が御指摘ありましたように、体がもたない、これ以上やって足腰立たなくなってからほうり出されたらかなわないというのがございまして、むしろ五十歳で選択定年をさしてくれ、そしてその間に、五十歳ならまだほかの職場も見つける可能性がある、そういった労働者もおります。  しかし、そうかといって、じゃなぜそうかという原因を聞いてみますと、やはり長時間労働、家にも帰れない、非常な肉体労働でほとんど疲れ果てている、いわゆる勤続疲労で体がもたなくなっている。したがって、時間さえきっちりやれれば、この労働でも六十五歳までは優にもちますというようなことを言われています。したがって、労働条件面労働時間のやっぱり短縮問題にぜひ取り組んでいかなきゃいけませんし、労働者はやはりどうしても自分の労働寿命というのを長くもたせたいわけでして、使い減りしたんでは大変だと。特に自分のそれぞれの家庭環境がありまして自分の生活設計がありますからまだまだやりたいわけです。  先般、私は個人のタタシーに乗ったんですが、運転している人が大分お年寄りだったので、幾つですかと聞いたら、七十三歳だと言っていました。七十三歳でもまだ結構やれますねと言って、多少は危ないなという気があったんですけれども、大丈夫だと、自分の体調に合った時間で労働すれば、しかも長い間この仕事を三十年も四十年もやってきた、一番自分に合った職場だということで、それを勤めているのが自分にとって一番いいというようなこともございましたので、私はぜひ我々の職場も、一たん定年が来ましてほうり出されたけれども、結局またいつの間にか同じ職場に戻っているということが随分ありますので、その中で長もちできるような労働条件をぜひ確立していただきたい。  名目上は、御指摘のとおり、非常にもらっているんですけれども、私は組合員に言うんですけれども、途中でサボっているから長時間労働でももつのかと。いわゆる工場内ですと、とてももちそうもないような長時間労働だというようなことも言うんですが、結果的に、先ほど申し上げたように、途中で息抜きして断続的にずっとだらだら勤務させられているのが随分あるものですから、ぜひ管理面でお願いしたいなと、こう思っておるところであります。
  62. 粟森喬

    粟森喬君 亀崎さんにお尋ねを申し上げます。  先ほどの意見陳述の内容をお聞きしていましたら、この法律は時期尚早といいますか、反対だという立場を言われました。全体の審議状況の中で反対でいけない問題や、あるいは立法技術上の問題で亀崎さんの言われたことが必ずしも全部通らない場合というのがあると思うんです。そのときに、例えば政省令とか、具体的にそういう行政指導の中身でそのことを生かそうとするということがあると思いますが、基本的に反対というのは、今申し上げたような幾つかの問題点が解消すれば、それは賛成だという意味なのかどうかということと、それができない場合の次善の策というのは、それを仮説として立てることが果たして妥当なのかどうかという御意見もあろうかと思いますが、そのことについての御意見をお聞きしたい、こういうふうに思います。
  63. 亀崎俊雄

    参考人亀崎俊雄君) まず、最初の法案に対する私どもの基本的態度にかかわる問題でございますが、意見の中でも申し上げましたように、大手の企業荷主に対してその利便を一層図り利益を保護するという観点からの法律であるということで、そこに働く労働者の問題がほとんど考えられていないということで基本的に反対というふうに申し上げたわけでございます。  その考え方は変わらないわけでございますが、しかし、この法案がやはり通るとすれば、そのような欠陥をどのように是正するかということを考えるのは極めて当然のことでございまして、後段で申し上げましたように、法律がどうしても通るとすれば、こうした点について十分御配慮を賜り、このような是正をひとつぜひ行っていただきたいということをお願い申し上げたわけでございます。  その場合の労働者への影響をどのように是正するかという問題に関しましての取り扱いの仕方でございますが、先ほども料金の関係で申し上げましたように、いろいろ料金を完全収受するための努力というのはされるでありましょうが、やはり運輸省が本気になって罰則規定を発動するなどの毅然たる厳正かつ機動的な対応がない限り極めて困難だというふうにも申し上げたところでございます。そのような意味から見ましても、第一原則は何としても条文を修正していただくということをぜひお願い申し上げたいと思うところでございます。  しかしながら、それがどうしても立法技術上できないということになりますと、先生御指摘のとおり、次善の問題としては、当然政省令でこれをどのように是正を図るかということを考えなければならないわけでございまして、私どもも十分それは承知しておるところでございますので、ぜひよろしく御配慮いただきたいと思います。
  64. 中野鉄造

    委員長中野鉄造君) 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人の皆様に一言御礼のごあいさつを申し上げます。  本日は、お忙しい中を本委員会の審査のために貴重な時間をお割きいただきましてまことにありがとうございました。ただいまお述べいただきました御意見等につきましては、今後の本委員会の審査に十分活用させていただく所存でございます。委員会を代表いたしまして重ねて厚く御礼申し上げます。  ありがとうございました。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時二分散会