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1989-10-13 第116回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年十月十三日(金曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 中尾 栄一君    理事 小里 貞利君 理事 越智 伊平君    理事 佐藤 信二君 理事 谷川 和穗君    理事 中島源太郎君 理事 佐藤 敬治君    理事 村山 富市君 理事 宮地 正介君    理事 玉置 一弥君       粟屋 敏信君    稲村 利幸君       小渕 恵三君    大坪健一郎君       大野  明君    奥田 敬和君       亀井 善之君    倉成  正君       小坂徳三郎君    古賀  誠君       後藤田正晴君    近藤 鉄雄君       左藤  恵君    佐藤 文生君       砂田 重民君    田澤 吉郎君       田中 龍夫君    高鳥  修君       二階 俊博君    野田  毅君       浜田 幸一君    林  義郎君       原田  憲君    保利 耕輔君       細田 吉藏君    村山 達雄君       森   清君    保岡 興治君       井上 普方君    上原 康助君       川崎 寛治君    菅  直人君       上坂  昇君    新村 勝雄君       辻  一彦君    坂口  力君       日笠 勝之君    冬柴 鉄三君       水谷  弘君    神田  厚君       楢崎弥之助君    岡崎万寿秀君       工藤  晃君    田中美智子君       辻  第一君    中島 武敏君  出席国務大臣         内閣総理大臣  海部 俊樹君         法 務 大 臣 後藤 正夫君         外 務 大 臣 中山 太郎君         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君         文 部 大 臣 石橋 一弥君         厚 生 大 臣 戸井田三郎君         農林水産大臣  鹿野 道彦君         通商産業大臣  松永  光君         運 輸 大 臣 江藤 隆美君         郵 政 大 臣 大石 千八君         労 働 大 臣 福島 譲二君         建 設 大 臣 原田昇左右君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     渡部 恒三君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 森山 眞弓君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 水野  清君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      阿部 文男君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 松本 十郎君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      高原須美子君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      斎藤栄三郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 志賀  節君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 石井  一君  出席政府委員         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         内閣法制局第一         部長      大森 政輔君         総務庁人事局次         長         兼内閣審議官  服藤  収君         北方対策本部審         議官      鈴木  榮君         防衛庁参事官  小野寺龍二君         防衛庁参事官  村田 直昭君         防衛庁参事官  鈴木 輝雄君         防衛庁長官官房         長       児玉 良雄君         防衛庁教育訓練         局長      米山 市郎君         防衛庁人事局長 畠山  蕃君         防衛庁経理局長 藤井 一夫君         防衛施設庁総務         部長      吉住 愼吾君         防衛施設庁施設         部長      大原 重信君         防衛施設庁建設         部長      黒目 元雄君         防衛施設庁労務         部長      竹下  昭君         経済企画庁物価         局長      栗林  世君         経済企画庁総合         計画局長    冨金原俊二君         国土庁長官官房         長       北村廣太郎君         国土庁計画・調         整局長     長瀬 要石君         国土庁土地局長 藤原 良一君         国土庁大都市圏         整備局長    三木 克彦君         国土庁地方振興         局長      野沢 達夫君         外務大臣官房外         務報道官    渡邊 泰造君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省北米局長 有馬 龍夫君         外務省経済局長 林  貞行君         外務省経済協力         局長      松浦晃一郎君         外務省条約局長 福田  博君         大蔵省主計局長 小粥 正巳君         大蔵省主税局長 尾崎  護君         大蔵省銀行局長 土田 正顕君         国税庁次長   岡本 吉司君         文部省初等中等         教育局長    菱村 幸彦君         文部省教育助成         局長      倉地 克次君         文部省学術国際         局長      川村 恒明君         文部省体育局長 前畑 安宏君         厚生大臣官房総         務審議官    加藤 栄一君         厚生大臣官房老         人保健福祉部長 岡光 序治君         厚生省生活衛生         局長      目黒 克己君         厚生省年金局長 水田  努君         農林水産大臣官         房長      鶴岡 俊彦君         農林水産省経済         局長      塩飽 二郎君         農林水産省構造         改善局長    片桐 久雄君         農林水産省農蚕         園芸局長    松山 光治君         農林水産省食品         流通局長    鷲野  宏君         農林水産技術会         議事務局長   西尾 敏彦君         食糧庁長官   浜口 義曠君         林野庁長官   甕   滋君         運輸省国際運         輸・観光局長  宮本 春樹君         運輸省航空局長 丹羽  晟君         郵政大臣官房長 白井  太君         労働大臣官房長 若林 之矩君         労働省職業安定         局長      清水 傳雄君         建設省道路局長 三谷  浩君         建設省住宅局長 伊藤 茂史君         自治大臣官房長 小林  実君         自治省行政局選         挙部長     浅野大三郎君         自治省財政局長 持永 堯民君         自治省税務局長 湯浅 利夫君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      右田健次郎君     ───────────── 委員の異動 十月十三日  辞任         補欠選任   上村千一郎君     亀井 善之君   奥田 敬和君     保利 耕輔君   玉沢徳一郎君     森   清君   渡辺 秀央君     保岡 興治君   野坂 浩賢君     上坂  昇君   大久保直彦君     冬柴 鉄三君   川端 達夫君     神田  厚君   不破 哲三君     辻  第一君   藤田 スミ君     工藤  晃君 同日  辞任         補欠選任   亀井 善之君     上村千一郎君   保利 耕輔君     二階 俊博君   森   清君     粟屋 敏信君   保岡 興治君     古賀  誠君   上坂  昇君     野坂 浩賢君   冬柴 鉄三君     大久保直彦君   神田  厚君     川端 達夫君   工藤  晃君     田中美智子君   辻  第一君     中島 武敏君 同日  辞任         補欠選任   粟屋 敏信君     玉沢徳一郎君   古賀  誠君     渡辺 秀央君   二階 俊博君     奥田 敬和君   田中美智子君     金子 満広君   中島 武敏君     不破 哲三君     ───────────── 本日の会議に付した案件  予算実施状況に関する件      ────◇─────
  2. 中尾栄一

    中尾委員長 これより会議を開きます。  予算実施状況に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。村山達雄君。
  3. 村山達雄

    村山(達)委員 村山でございます。  私、この間、国に帰りまして、いろいろ今度の根本的税制改革消費税の話を地元でしたのでございます。そのとき驚いたことに、例えば所得税配偶者控除引き上げの問題、あるいは十六歳から二十二歳までの人の割り増し控除の話、こういう話もちょっといたしましたら、そんなことがあったのかと、こんなことをやっているならなぜ我々に知らせてくれぬのだ、こういうことを多くの人から聞かされたわけでございます。  したがいまして、今まで我々の国、あるいは恐らく全国でもそうでございましょうけれども、今度の税制改革というものの全貌あるいはその趣旨、こういうものがほとんどわからないで、その中の一つのポイントである消費税だけが切り離されてやはり喧伝されたのではないか。しかも、その消費税というのがなぜこれからの日本にとって必要なのかという観点ではなくて、消費税は好きですか嫌いですかというような観点論議された嫌いが非常にあると思うのでございます。このことは、単に我々国民にとって本当に正確な判断を求める意味で困ったことだけではなくて、やはり将来の日本にとって非常に大事なことである、改めてこう思ったのでございます。  そしてよく考えてみますと、これは前回の通常国会における国会論議のあり方をそのままやはり反映したのではないだろうか。考えてみますと、あのときも確かにいろいろな議論を行いましたけれども、ほとんど全貌に対する質問というものがなかった。ほとんど消費税だけであった。しかも消費税の欠陥という点に多くの論議がささげられた。このことは、当然でございますけれどもやはりマスコミも国会論議中心にして報道するわけでございますので、そのことが私が行った国元における人々の認識につながったのではないだろうか、こういう感じがするのでございます。  したがって、今度の国会では消費税廃止法案、その代替財源法案、それから我が自由民主党、政府においては見直しの問題等が大きな問題になるわけでございます。しかし、この前の税制改正全貌というものがわからなければ、これはこれらの問題を判断する上にも至大の影響があると私は思いますので、きょうは改めてその問題、税制改革全体の問題の全貌とその趣旨、こういったものを明らかにしてまいりたいと思います。  なお、私は実は大蔵省に二十六年おりまして、ほとんど税の仕事をやっておりました。そのうち大体十五年ぐらいは立法に、そして十一年ぐらいは国税庁で実務に携わった者でございます。それからまた、国会へ出ましてから今日まで二十六年になるわけでございますが、終始税調に属しておったわけでございます。そして今まで私の経験した税制改革と言われるものが三つありました。昭和十五年の大改革、それから二十五年のシャウプ税制、これにも関係いたしました。それから今度の税制改革に党の税調におきまして関係させていただいたのでございます。  時間が非常に限られておりまして一時間でございます。それで、今度の税制改革の意義、それから各税がそれらを含んでどういうふうに変わっていったかということを中心にしながら、私の考え中心に述べながら、政府のお考えも確かめてまいりたいと思うのでございます。  最初に、今度の税制改革の骨格といたしまして、一つは直接税の減税なのでございます。所得税個人所得課税が三兆三千億の減税法人課税で一兆八千億の減税、それから相続税で七千億の減税、合わせて五兆八千億の減税でございます。しかしながら、課税適正化措置によりまして一兆二千億の直接税の増税を図っておりますので、差し引き四兆六千億の減税になっているのでございます。したがいまして、今後の租税体系上、直接税は四兆六千億減額することを意味しているということでございます。片や間接税でございますけれども、五兆四千億見積もられる消費税を導入いたしました。しかしながら、この身がわりといたしまして八つの間接税廃止し、七つの間接税の一部吸収を行っているのでございます。それらの廃止による、あるいは吸収による減税額が三兆四千億でございますから、したがって、間接税増税ネット二兆円ということになるわけでございます。そういたしますと、直接税、間接税ネット減税は、四兆六千億マイナス二兆円でございますから二兆六千億のネット減税ということになるわけでございます。  問題は、その租税体系改革というのはどこにあるかと申しますと、言うまでもなく今申し上げました所得税ネット四兆六千億の減税、それから間接税が、消費税という形で五兆四千億入ってくるのだが、ネットで言いますと二兆円の増税になっている。つまり消費税という形の間接税が二兆円ふえる。片方は四兆六千億マイナスで、二兆円ふえる。ここに実は租税体系の変革という問題があるわけでございます。  それから、今度の税制改革家庭に対してどのように影響を及ぼしたかということを見る場合には、所得課税マイナス三兆三千億とそれから間接税ネット増税分の二兆円で計算されるべきものであることは当然なのでございます。したがいまして、減税超過が一兆三千億になりますので、ほとんどの家庭はやはり減税の恩典を受けまして負担が減るはずなのでございます。ここをはっきりつかめていただきませんと、今度の税制改革本当意味がわからないだろうと思いますので、あえて申し上げておきます。  それから、これから各税の問題に入りますが、したがって各税の問題というものは同時に税制改革と関連しているということをやはり、そしてまた各税が持っておる固有の問題も同時に解決していく、こういう問題としてお聞き願いたいと思うのでございます。  まず、所得課税でございます。  従来言われております問題点は、一つは水平的公平の問題でございます。すなわち、所得種類間における公平の問題、特に給与所得対例えば事業所得の関係でございます。  普通このときにクロヨンというようなことをよく言いますが、あれは納税者割合を言っているのでございまして、それ自身は不公平ということを直ちにあらわしているわけではないのは当然でございます。しかもそのときの、例えば農業所得者兼業所得者は、税務統計上ほとんど給与所得者としてあらわれてくるはずでございますので、あの税務統計から見た主たる業種によって、それが納税割合をあらわしているわけでございますので、これではなかなかわからぬのでございます。  我々が本当の問題というのは、やはり所得捕捉格差にあると私は思っておるのでございます。国税庁の年報をずうっと見てまいりますと、大体個人営業者に対しまして一割ぐらい実額調査をやっております。その結果の平均でございますけれども、大体二割ぐらい所得が後で更正されておる、あるいは増加申告している状況でございます。これは平均でございます。必ずしも事業者がみんな悪いことをやっているということではないかもしれません。やはり、いろんな家計事業の経費の分類ということは難しいから、おのずからそういうところもあるかと思います。  しかし、くしくも我々は戦前の経験を持っている者でございますが、昔、主税局長通達というのが出ておりまして、主秘第一号、これは何と書いてあるかというと、「収支実調したものについては二割減額することを得。」こういう規定でございます。これは何を意味しているかといいますと、当時の所得決定は、公選から成る所得調査委員会に諮るわけでございますが、そしてそこの諮問を経て、そして初めて決定する制度でございました。その所得調査委員会に諮るときに、収支実調したものについては二割引きで提案してもいいですよ、こういう意味でございます。  ですから、考えてみますと、やはりこの所得捕捉格差問題というものは昔からある問題である。この問題を詰めるということはなかなか難しいのでございます。一割の実調だから税務官僚を十倍にして全部調べたらどうか、これはまた恐らく財政原則に反すると思います。したがって、何をやるかと申しますと、やはり調査能力の向上あるいは納税者協力をお願いするという形、あるいは納税環境に関するもろもろの制度を完備していくということ、この絶えざる積み重ねによりましてこの開差をできるだけ縮めるように今努力しているというのが本当ではないかと思っております。  それから次の問題は、垂直的公平の問題でございます。  所得税は非常にすぐれているというのは、その垂直的公平、これが保たれているところが非常に長所と、応能負担を満足させると言われております。すなわち、給与所得者給与所得者仲間同士で、所得が多くなれば負担能力に応じて税額がふえますよ、こういう意味ですね。事業所得者事業所得者仲間同士で、所得がふえるとふえますよ、こういう問題なんです。水平的格差の問題は、絶えず努力はしておりますけれども、実情はそのようなものであろう、こういうことでございます。  ただ、我々が考えておりましたその垂直的公平のところで二つ従来問題が指摘されております。一つは、余りにも累進税率税率が高過ぎるじゃないかという問題でございます。かつては住民税を合わして八八%と言っておりましたのが、ようやく旧法改正前の旧法におきまして七六%まで下がったわけでございますが、それにしても世界最高税率を見るときに圧倒的に高いということ、余りにもそれは過重ではないであろうか、むしろその過重であることが負担のバランスを崩しているのではないだろうか、こういう指摘でございます。  それからもう一つは、その税率刻みが余りにも多過ぎるために簡明性を欠いておる。特に日本の慣行といたしまして、毎年毎年ベースアップがあります。それが小さな刻みでどんどん累進税率で取ってまいりますので、やはりベースアップ実感がほとんどない、そういう意味の不平が随分多かったわけでございます。だから、旧法におきましては、所得税の方では十二段階、十五から十二に減らしました。そうして今度は、住民税の方は七段階、これはかつての十四段階を半分にしました。それにしても、十二プラス七でございますから十九段階あるわけでございます。しかもそのブラッケットの置き方によりまして非常に変わってくるのでございます。これが非常に累増感を招きまして、やはり事業所得者にしてもあるいは給与所得者にしても非常な累増感をもたらしておった。こういう弊害があったと思っておるのでございます。  この問題は今度の税制改革で見事に私は解決したと思います。今度の税制改革は、今度新しい発想でございましたが、サラリーマンの生涯収支というものを計算いたしました。従来は家計の生涯収支なんというのは計算したことありません。およそ収入がふえたらどれくらいにしたらいいのか、こういうやり方でやったのでございますが、今度は生涯収支を計算いたしますと、そうすると、ちょうど四十歳の後半から五十歳の前半、このときに一番収入が入るのでございますが、家計は赤字になる。なぜかというと、やはりそのときに子供を学校に上げる金がかかるあるいは住宅ローンの返済が始まる、こういうことでそのときにやはり家計マイナスになるということ。大体家計調査は、今度は就職してから五歳置きのずうっと家計調査をいたしました。それをもとにしてやはり家計実感に合うように課税最低限引き上げあるいは税率刻み方、数、こういうのを全部盛ったということは今度初めてだろうと思うのでございます。  もとより所得税累進構造につきまして決定的なものは、一つ人的控除の問題であり、もう一つは今言ったような税率の盛り方でございます。  結論から申しますと、今度の改正によりまして、それぞれ人的控除はもう思い切って引き上げました。しかもその引き上げの中に、やはり学齢適齢者の人については割り増し控除をやるとかあるいは寝たきり老人在宅介護については今まで八十万控除というものを百二十万控除にするとか、非常にきめの細かいものを織り込みながら人的控除引き上げておるのでございます。  課税最低限は三百十九万八千円、世界でもう最高課税最低限を設定することになったわけでございます。  税率の方はと申しますと、今度は所得税は五段階、そうして一〇、二〇、三〇、四〇、五〇、そうしてブラッケットを全く改正いたしましたから、大部分、サラリーマンの九割は最初の一〇%で済むように工夫されておるということを注目しなくちゃならぬと思います。そしてまた住民税につきましては、七段階を三段階、五、一〇、一五と非常にわかりやすい数字にいたしたのでございます。その結果といたしまして、当然のことでございますけれども、中小零細の方々は課税最低限引き上げが非常に効くわけでございます。それから高額所得者の方は税率改正の方が響くはずでございます。これのコンビネーションで決まっているのでございます。  そして結果を見ますと、これは減税率で見る以外にはないと思いますけれども、減税率で見ますと、やはり下の者ほど多くの減税を受けている形が出ております。そして従来余り影響のなかった、ちょうど中堅サラリーマン収入ベースで七百万とか八百万とかいうあたりでございましょうが、この辺も二割ぐらいの減税率が出るようになっているわけでございます。なお、全体の累進構造から申しますと、減税は非常に多いほど額は大きいわけでございますが、率で申しますともちろん下の方が圧倒的に大きい、そして全体の累進税率はと、こう申しますと、やはり累進構造はかなりふえているという結果になっているのでございます。  それで、累進構造というのは何で決まるかと申しますと、あるいは累進というのはどういう意味か、これをやはりはっきり定義しておかなければなりません。それは、所得がふえるほど所得に対する負担率がふえますという意味でございます。額がふえるのではございません。率で計算するわけでございます。そして、累進構造がきつくなったかどうかという意味は、例えば五分位の階層に属する者の負担割合とそれから第一分位に属する者の負担割合を、倍数を計算いたしまして、その倍数がふえるということになれば累進構造がふえたということになりましょうし、これが減った場合にはややそれが減退したということを意味するわけでございます。私の計算によりますと、改正前は六・五倍でございましたが、今度は二十五倍でございますから、明らかに累進構造は上がっているということが言えます。  なお、課税最低限累進税率とのその累進構造に対する影響度を考えてみますと、問題なく課税最低限引き上げの方が余計響くのでございます。それは当然のことでございまして、これは総所得の伸びに対して課税所得の伸び、これが圧倒的にふえるわけでございますので、当然そうなるのでございます。私の計算では、大体、課税最低限人的控除の方の響く割合が累進構造に対して八割、それから税率の方がほぼ二割ぐらいだと私は試算しているのでございますが、そういうことが見事に今度は貫かれているということでございます。  そのほかに、今度の改正におきまして配偶者特別控除、この引き上げをやったわけでございます。これも大きな問題だと思います。これはもう言うまでもなく、その問題の発足というものは、事業所得者の方はその奥さんなり子供さんに所得を分割することが合法的にもちろんできるわけでございます。それが悪いということではございません。青色申告になることによりまして所得を分割する。そうすると、所得税の構成は稼得者単位ですべて計算することになっておりますので、給与所得控除あるいは累進税率というものの適用が分割されていくこと、しかし、給与所得者は奥さんに分割することができない、しかし奥さんの貢献度を考えるときにそれはいかがなものであろうかと、そういった発想から、例えばアメリカは二分二乗という制度をとっておる、これを日本的に一つ消化したのが配偶者特別控除であるわけでございます。二分二乗という場合は、夫婦はともに働いている場合と格差がほとんどつかない、いかがなものであろうか、逆の公平論がございまして、配偶者特別控除制度ができたのでございますが、六十二年の改正でございますが、これが初めてでありました。しかし、所得税の方で十六万五千円、それから住民税で十四万円、これはまあいかにもひどいな、こう思っておりましたら、今度は物の見事に三十五万円まで上げていただいたのでございますので、これもやはり大変な負担軽減になります。この問題は、あわせていわゆるパート問題を同時に解決しておるということも申し上げておきたいと思います。  そのほか、内職者に対して最低経費率を設けたらどうか、こういう話もありました。これは与野党のいわゆる実務者会議におきまして皆さんとお諮りして、それで満場一致やった方がいい、こういうことで、これは与野党協議で満場一致で入れることになりました。これは問題は、当然のことなのでございますが、受注者が内職者と雇用契約を結べば何の問題もないのでございます。ただ、雇用契約を結びますと仕事を出す方の側に社会保障負担が伴うわけでございますので、どうしてもやってくれない。この辺の矛盾を今度の税制の方で最低経費という形で補ったと、こういう種類のものでございます。  そのほか、いわゆる不公平税制の問題といたしまして、医師の診療報酬の法定経費率の問題、今度五千万円以上の者については適用しない、こういうことにしたのは御承知のとおりでございます。  また、キャピタルゲインについて、原則非課税から原則課税に持っていった。しかしその場合、分離二〇%の申告とそれから源泉における選択を認め、それで、ことしの四月一日から実施しているということもあわせて御了解願います。  それからもう一つ、今度の減税でなかなかわかりにくいところは、これは実は三年間かかって平年度化するわけですね。つまり、所得税減税というのは、税率の方は昭和六十三年から始まっておるわけでございます。控除平成元年度から始まっております。それから住民税の方は、税率改正はこの平成元年度から始まっておる。これも六—五の住民税年度でやっておるわけでございます。そして控除引き上げは平成二年度の六月から実施になるわけでございます。だから、今度の税制改革の平年度が来るのは実は平成二年度であるわけでございます。そういうことで、これはいろいろな財政収支の関係等がございましてやむを得ずそうしたと思うのでございますが、それだけにまたわかりにくくなっておるということも事実でございます。  次は、法人税でございます。——だから、所得税におきましては、一般の家庭につきましてはネット三兆三千億の減税、こういうことをひとつ頭の中に入れておいていただきたい。  法人税について従来言われておりますのは、八〇年度の初頭におきまして日本の法人税の負担は、法人税の実効税率負担でございますけれども、これは世界で一番安かったのでございます。しかしその後、各国はやはり国際競争の問題あるいは事業の活性化の問題等考えまして、どんどん下げてまいりました。日本の方は逆に所得税減税をやるための穴埋めを法人税で行ってまいりましたから、今日では日本は西独と並んで実効税率の最も高い国になっておる。これは将来のことを考えるときに、やはり競争は国際的にもフェアで戦うべきではなかろうか、余りにも格差のあるのはいかがなものであろうか、もしそのままほっておきますとそれはやはり産業の空洞化、あるいは将来に向かっての国の雇用の問題に響くであろうと当然考えられるわけでございます。なお、付加価値計算で見ますと、法人の付加価値計算というものは、後で消費税のところで触れますけれども、約八割を占めておるということも注目していかなければならぬのでございます。そういう意味で、この実効税率を引き下げるということ。  それからもう一つは、実は、留保に対する税率と配当に対する税率の二本立てになっております。配当に対する税率が新たに設けられましたのは昭和三十八年でございます。このときの発想は、やはり自己資本の充実の見地から増資を促進する必要があるであろう、そういう見地から配当に対する税率は特に安くしたのでございます。しかし、その後の経過を見ておりますと、残念ながら少しも目的に沿っていない。結果として配当性向の高い会社の負担軽減にとどまっておるということがはっきりいたしましたので、今度は一本税率にしようということになったわけでございます。今度の改正では、今の留保に対する四〇を二年がかりで三七・五%、こういうことにしようとするのでございます。それからまた、配当に対する軽減税率もこれを廃止して、今三〇のものを三七・五に持っていくのでございますが、これも二年がかりで持っていこうとしているのでございます。この点がもう既に今度の税制改革で、ちょうど最初の経過年度でありますところで今税率が決められておるということでございます。  そのほか、受取配当の益金不算入の縮減、一〇〇%をやはり二年がかりで八〇%にするとか、あるいは少額資産取得の即時償却制度、これは非常に企業が望んでおりますので、十万円という限度を二十万円に上げるとか、こういう改正が行われているのでございます。これもやはり画期的なことだと私は思っております。  今度の税制改正全般を見ますと、全体の仕組みの異動も大変なことでございますが、一つ一つの税目、所得税、法人税、相続税あるいは間接税、これの変化だけをとってみましても、かつてない大きな規模の改正であるということをこの際申し上げておきたいと思います。  時間がございませんので、政府側に対する御質問は後でまとめてさしていただきたいと思います。  それから、相続税の話は体系と余り関係ございません。ただ、五十年のときに大改正をいたしまして、奥さんには相続税を原則としてかけるべきでないのじゃないかという制度をつくったのでございます。やはり世代間の遺産の継承にだけとどめて、配偶者間、奥さんからいただくというのはやめようというのが五十年の大改正であったわけでございます。それから十四年たちました。その間、土地の上昇あるいは物価の上昇等を考えますと、相続税というのは累進税率で盛っておりますので、何としても負担の適正化を図る必要がある、こういう観点から、あわせていろいろな今までの懸案事項を全部片づけた、これが相続税の七千億の減税の中身であるわけでございます。  その次に、間接税と、それからこれは当然税制改革に関連してまいりますので税制体系の問題、これについての私の考え方を述べたいと思います。  御案内のように、日本間接税というのは、いわば個別間接税制度をとっております。酒にしてもたばこにしても、あるいは代表的な物品税にいたしましても、ねらい撃ちでやっているわけでございます。しかし、世の中がどんどん進歩して、所得水準が向上してまいりました。昭和二十四年のときの一人当たりの国民所得は四万円でございます。現在二百四十万円でございますから、大体六十倍になっているわけでございます。いかに所得水準が上がったか。そして大体六〇%を占める消費でございますから、消費水準も上がったことはもう当然なことなのでございます。それで、やはりそこに消費水準が多様化してくる。あるいは消費に対する価値観が全く変わってくる。このごろの若い方を見ておりますと、別に高いものがいいというようなことでなくて、例えばジーンズがいい人はジーンズを買うとか、自分の求めるもの、まあ言葉で言いますと、よくわかりませんが格好のいいものとか、いろんなものがあるのでございましょう。そういうことで非常に個性的になっておる。  そのときに、例えば物品税でございますけれども、あの課税、非課税の区分は今だれか説明できる者がおるだろうか。コーヒーにはかかっておるが紅茶にはかからぬという説明をだれかできますかな。あらゆるところに全部あるわけでございましょう。ケヤキのたんすはかかるが桐のたんすはかからぬとか、毛皮は一万五千円からかかるけれども百万円もする高級織物はかからぬとか。私が考えますに、それぞれそのときどきにおきましてはそれなりの理由があったという歴史的遺産であると思うのでございます。そしてまた、日本所得水準の低いときあるいは消費水準の低いとき、そのことはやはりそれなりの合理性を持っておったと思います。しかし、今日振り返ってみますと、その課税になっておるもの、非課税になっておるもの、あるいは税率の区分、例えて言いますと、ゴルフセットは三〇%であるが小型のヨットとかモーターボートは二〇%とか一五%でよろしい、値段にしたら問題にならぬわけです。こんなことだれか説明できますか。だれもできないのです。それは要するにそのときどきの歴史的な所産でございまして、それなりの意味があったのでございましょうが、今日ではほとんど意味をなくしているということ。  それから、第二の個別消費税の欠陥は、特に日本の場合でございますが、家計の消費の五割以上を占めておりますサービスですね、これに対する課税というものが全然欠落しておる。言ってみますと、物だけ一生懸命押さえている、そしてサービスの方は全然やっていない。これもまたおかしな話であると言わざるを得ません。  なおかつもう一つは、このような個別消費税をやっておりますと経済摩擦を起こすのは当然なことでございまして、例えば酒の税金でございますが、これは従価税あるいは級別課税を中心として、分類差等課税と言われる方式でやっております。しかし、ほかの国は全部そんなことをやっていないで、やはり広く薄く課税しているわけでございますので、ガットにおいて我々はガット違反であるという判定を残念ながら受けたのでございます。そしてまた物品税におきましても、例えば、自動車についてはアメリカから絶えずなぜ大きな車だけ、おれのところだけ高いんだ、スイスは金時計だけがなぜこんなに高いんだ、それからカナダの方は、おれの方の金貨幣は高いが地金はなぜ無税なのか、わんわん、わんわんと言われるわけでございまして、これがまた貿易摩擦になっているのでございます。  あれこれ考えますと、要するに今の消費税というものは時代おくれであるということははっきりいたしているのでございます。世界の動向を見ておりますと、すべて課税ベースの広い間接税、一般的な間接税に移っているということでございます。とりわけ今から二十一年前にフランスとドイツが共同して実施いたしました付加価値税、これが今全世界間接税体系を風靡いたしているのでございます。世界で現在付加価値税を採用している国は四十七カ国あります。その中でアジアは七カ国ぐらいでございましょう。しかし、もうアフリカでも気のきいた国は全部やっている。それから、中南米もほとんどやっている。OECDは、五カ国、付加価値税が出る前に製造者売上税とかあるいは卸課税とか、こういうものをやった国を除いて、全部付加価値税でございます。OECDの国でも、現在そういった古い形の課税ベースの広い間接税から付加価値税への移行を検討している国もあることは御承知のとおりでございます。また、共産圏でありますハンガリーが既に付加価値税を実施していることも注目しなければなりません。  それなら、一体付加価値税の本質は何であろうか。したがって我が国の消費税の本質は何であろうか。これはもう言うまでもないことなんですね。国民経済の流れを考えてみますと、広い意味の生産に伴う付加価値の発生がございます。その付加価値の配分あるいは再配分に伴いまして経済主体に所得が帰属することになりましょう。帰属した所得を、それぞれの経済主体は、一部は、ほとんど大部分でございましょうけれども消費に充てる。その残りを貯蓄に充てる。その貯蓄がまた投資に向かうということは当然でございます。そこのところはまあ同じことでございましょう。  そこで、消費税というものを考えてみますと、実はその付加価値発生の段階で課税しているのでございます。そしてその負担を、ある仕組みによりまして、最後に最終消費のところに転嫁する、こういう方式をとっているのでございます。二重課税を排除し、そして税率のとおり最後に負担する仕組みを考え出してきたのがいわゆる付加価値税であるわけでございます。我が国も同じような方式を今度は日本的方式で今採用いたしたのでございます。  したがいまして、言えることは、この消費税の持つ大きな意味ということはそういう性質でございますので、何が特徴であるかと申しますと、やはり広く薄く課税できるということですね。付加価値発生の段階で課税して、それを消費段階に反映させるわけでございますから、これは広く薄くやれるということです。  それから、この仕組みからして、経済に対して中立性、この問題が非常に大事な問題なのでございます。市場経済でございますので、その市場経済に対してできるだけ中立、つまり市場経済がよく動くように、機能するように働いているのでございます。ですから、この仕組みですと大体経済に対して全く中立的である、こういう形でやっているのでございます。  第三番目で言いますと、捕捉の格差というものはあり得ない。つまり、消費はだれでも消費するのでございますから、捕捉格差というものはない。これが一つの大きな特徴でございます。そのことから、逆に言いますとある場合においては所得課税よりもより公平な場合がある、こういうことでございます。その意味は、例えば所得の大きい人は必ず余計消費するわけでございます。ただ、消費性向が違いますから、所得に対して消費の割合が落ちるということはありますが、必ず多く消費するわけでございますので、消費の多寡に応じて完全にやはり負担をしているわけでございます。  ところが、よく所得税の方で聞きますのは、いろんなところで聞きますのは、あの人は私よりも税金は何か少ないらしいが派手な生活をやっている、こういうことをよく聞くのでございます。この意味するところは何でしょうか。消費は所得の多い人がやっているが、所得は多いんだが税金は少ない、こういうことですね。この方がはるかに不公平であることは当然のことなのでございます。それは全部とは申し上げません。しかし、往々にしてそういうことがあるという事実はやはり我々は本当に率直に認めなければならぬと思うのでございます。そのことからいたしまして、今日一般に言われておりますのは、所得、消費、資産に対する均衡のある税制をとりなさいということの意味は、今私が言った意味からいいまして、それだけやはり経済に対する中立性、これがすぐれているということを経済的に意味いたしておるのでございます。  そこで、我が国は今、高齢化社会を迎えようとしているのでございます。これは世界でほとんどないようなスピードでやってまいりました。かつて働き手十人で一人を支えておったというのが、今日ではもう六人で一人、こういうことですね。二十一世紀になるとやがて二人ないし三人で一人を支える、これは統計的な正確さを持って必ず来るに違いないのでございます。そしてこのスピードは、我々が本当にびっくりするほどなスピードで来るに違いありません。  そのことは何を意味しているかといいますと、この相対的に少なくなる働き手、すなわち我々の子供、孫であるわけでございます。これに対して所得課税に偏重する税制をそのままとっておったとするならば、これは大変なことになりましょう。だから、いつか大蔵省が試算したものによりましても、二〇一〇年の実収入に対する負担は約倍になる、こう出ておるのでございます。負担率が倍になる。率が倍になるのですよ。それから、同じことをやはり厚生省が計算しておりますね。これも同じ結果を出しているのでございます。負担率が倍になる。それで今、例えば社会保障の方を考えますと、ほとんど大部分が現在のところやはり収入ベースでやらざるを得ない。ほかの基準がなかなかできないというところはやはり一つの問題でございましょう。これは間違いなくやってくる。税の方はそれでもまだ何とかやる道があるかもしれません。そういうことを視野に入れながら、しかもこれは大変だということで、今のうちにさっき申しましたような消費税という性質、特質を持った間接税のウエートをふやしていくということは極めて当然なことだと思うのでございます。  それからもう一つ、今度は減税を、今度のあれを通じまして家計に対する影響はどうかというのは、さっきの話でよくおわかりだろうと思いますが、要するに三兆三千億と二兆円の差額なのでございます。だから、家計調査で例えば消費税を幾ら払った、減税が幾らでした、払った消費税総額とそれから減税額を比較するのは明らかに誤りでございまして、そのうちのもう六割強はすべて旧間接税身がわりであるわけでございます。だから、消費税としてネット増税分は二兆でございます。間違った比較というのは三兆三千億と五兆四千億を比較しているということでございます。それは、当然のことながら三兆三千億と二兆を比較しなければならぬと思っておるのでございます。  それからもう一つの問題でございますが、このように消費税というものがかなり大きなあれを持っているということはもうおわかりになったと思いますが、この消費税の導入の時期、これが実は非常に問題であったわけでございます。当然のことでございますが、経済の不況のときには、納税義務者である事業者の方が心配するのは、これは転嫁できないのではないだろうか、結局は第二の事業税として自分たちがしょい込むことになりやしないか、このことが、ちょうど売上税のときは円高不況の真っ最中でございましたから、非常に大きな声になったわけでございます。それからもう一方は、今度は逆にインフレ経済のもとにおいてこれを導入いたしますと、便乗値上げを誘発して、そして消費者がたまったものじゃない、こういうことが十分この種の消費税を導入する時期として言われるのでございますが、幸いのことに、ことし四月の導入でございます。景気は最高潮でございました。物価は世界で一番安定しておるのが我が国であるわけでございます。安定が大事なのでございます。  そこで、その意味で私は、この消費税の適正転嫁、いろいろまだあると思いますが、概括的に見ますればやはり転嫁は多く適正に行われておったのじゃないか。それから物価も、当然その裏腹として予定どおり、経企庁の計算では三年間は大体一・二%ぐらいになるだろう、こういう計算でございました。それが果たしてそのとおりいっているかどうか。これはちょうど裏腹の問題ですね。適正転嫁であれば物価も大体経企庁の計算どおり来るであろう、過剰転嫁になればもっと上がるはずだ、こういう裏腹の関係でございますが、まあほとんど出尽くしつつあると思いますけれども、念のためにその点だけを、適正転嫁につきましては本当を言うと各省からお聞きしたいのでございますが、実施状況政府税調で調べておりますので、その点を代表して大蔵当局から、それから物価の点、その点については経企庁からお話しいただければありがたいと思います。
  4. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 転嫁の状況につきまして申し上げます。ただいま御指摘がございましたように、導入前非常に転嫁が心配されたわけでございますけれども、おかげさまで、国民の皆様の御理解によりまして、全体として円滑かつ適正に行われていると理解しております。  具体的に申し上げますと、通産省が行っております月末ごと時点の転嫁状況に関する調査がございますけれども、おおむね転嫁をしているというように考えております事業者の割合が、四月末の時点で八〇・五%でございました。これが七月末の時点では八二・五%となっております。業種別に見ますと、七月末時点の調査でございますが、おおむね転嫁をしている事業者の割合でございます。製造業者は一〇〇%、卸売業者は九八・七%、小売業者が七七・一%、サービス業者が六〇・九%というようになっております。  また、特に心配されました下請取引でございますけれども、通産省、公正取引委員会が協力されて御調査をなさっておりますが、本年五月から六月末に行われた特別調査の結果でございますと、ほとんどの取引が消費税分三%上乗せをしているという結果になっております。なお、ごく一部でございますけれども、消費税の適正な転嫁が行われていないなど、下請代金支払遅延等防止法に違反するおそれのある行為が行われている疑いもあるということが見られました。これにつきましては、関係当局で個別に事情聴取、所要の指導を行う、それから今後とも十分な監視を継続する御方針であるというように承知いたしております。
  5. 高原須美子

    ○高原国務大臣 お答え申し上げます。  消費税は最終的には消費者が負担する税でございますので、どうしても物価上昇につながることになりますけれども、これは一回限りの上昇でございまして、インフレ的な物価上昇とは全く性格を異にしているものでございます。一回限りのものでございます。  そこで、今村山先生御指摘がありましたように、企画庁では、この消費税の導入などによって消費者物価がどれぐらい上がるのかといいますと、平成元年度では大体一・二%ということを試算しておりました。その結果どうであったかと申しますと、消費税導入後の物価動向から基調的な上昇分を差し引いてみますと、消費税の導入などによる影響はほぼ一・二%という試算に見合っていると申し上げていいと思います。  便乗的な値上げというものは、特定の業種の、しかもその一部の事業者に限られておりまして、非常に少なかったと思います。その品目の価格上昇率も非常に落ちついてきておりまして、物価水準全体に今便乗値上げが大きな影響を与えているということは考えられません。また、物品税の廃止などによります税負担軽減分も、ほぼ適正に反映しております。  そうして、結果、消費者物価全体について見てみますと、消費税影響は四月中に大部分が出まして、五月に多少まだ影響が残りましたが、六月にはほぼおおむね出尽くしたというふうに見られております。
  6. 村山達雄

    村山(達)委員 どうもありがとうございました。  それから、さっき個人所得税の方でちょっとメンションを忘れましたが、重大なことは、今度の控除、それから税率のところで、やはり課税最低限が一番高くて、それから、非常に税率は下げました、しかしまだ最高税率住民税を合わして六五%でございます。これは世界の現行の税率から見ますとやはり格段に高いのでございます。そのことの持つ経済的意味は何だろうか。私は、言うまでもなくこの税制は中産階級をできるだけ育成したい、こういうことにあることは間違いないと思っておるのでございます。やはり税引き後で計算いたしまして、可処分所得から見ますと非常にそこに格差を縮小しまして、そして中産階級を志向しておると思っておるのでございます。  確かに、さっきも言ったように、所得水準が上がりましたので課税最低限もそれで上げていく。恐らく今の課税最低限は英国の倍ぐらいでございましょう。最も間接税中心のフランスでも二百八十万ぐらいでございますから、日本がいかに高いかということ、三百二十万でございますから。それから税率におきまして、やはり最高税率で断然高い。このことは、日本所得水準の格差がずっと縮まったわけですね。前と比べまして。その点を考えますと、やはりそこの最高税率の違いもほどほどにすべきだというのは、当然統計から読み取れるだろうと思います。かつて第五分位対第一分位の平均所得割合が五・八倍と言われておったのが、最近では二・九倍と言われておる。そういうものと対応いたしまして、大づかみにやはりそこのところの最高税率というものはおのずから下げてくる。しかし、全体のその構造を見ますと、明らかに日本は中産階級の育成を志向しておる租税制度だと言われても、やはりそうだと言うほかはないと私は思っておるのでございます。  さて、今まで申し述べましたように、今度の税制改革が各税ごとの改正の規模において、そしてその内容において画期的であるだけでなくて、やはり将来のこれからの人口統計に合わして考える、あるいは将来のそれに合わして租税体系というものを根本的に改めていったという意味では、私は画期的であると思います。その中心一つなしておるものは、税収こそ所得税にはるかに及びませんが、やはり消費税であると思っております。消費税についてはいろいろなことが言われるということは、むしろ新税でございますから当然でございますが、これだけの意味を持っておる消費税、これはぜひともやはり定着をさしていかなければなりません。  我々は、よく考えてみますと、日本は明治以来いろいろな税制改革をやってまいりました。そして、今度の改革は恐らく日本史上最も大きな改革であり、そして最も長期をにらんだ改革であると思います。それだけに非常に論議を呼ぶということは当然なことだろうと思いますが、やはり我が党が、また政府が十年かかって検討した、自信を持って提出した税制改革であり、消費税でありますので、どうかひとつこれの定着に向けて努力していただきたい。とりわけその点に関しては、総理の決意いかんがやはりその命運を左右すると思いますので、改めてこの点について総理の御所見、御決意のほどを承りまして、私の質問を終わりたいと思います。
  7. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 村山委員の長年にわたる御体験と御経験から出てきておりまする高い次元に立っての税理論の御質問をいただき、私もまたそれにお答えをしていかなければならないと考えてまいりましたこと等も既にすべてほとんどを先生の御意見としてお述べをいただき、資産と消費と所得のこの税体系の基本をきちっと幅広く公平なものにして、広く薄くいろいろな立場で全体を見直していけという御意見、また今の直接税、間接税のあり方のままで二十一世紀を迎えると、そのときには一番大切なサラリーマンの税負担率が二倍になって重税感どころではないぞ、これを何とかしていくことも社会の公正につながることではなかろうか。いろいろ先生のお話に私は強い同感を覚えながら、御質問を承っておりました。  私はそういった意味で、今回の税制改革のあるべき姿、また今国民の皆さんにお訴えしてきた全体の税制の仕組みの御理解と定着をさらに一層進めて、二十一世紀の高齢化社会を安心して迎えられるように、明るい社会というものを、豊かな暮らしというものを本当に安心して続けていくことができるような税制改革には全力を挙げていかなければならないと決意をいたしております。現実に政府税調、党税調、その他各省の間において、この間うちの一連の世論を聞き、国民の皆さんの声を聞き、消費者の声を聞き、国民の要求されておるものの中で見直すべき点は、これは思い切って見直していこう、そして定着をさせていこう、御理解をしてもらおう、こういう強い気持ちで前進をしていこうと決意をいたしておりますので、どうぞ一層のまた御質問のみならず、御指導やお導きもいただきたいと思います。ありがとうございました。
  8. 中尾栄一

    中尾委員長 これにて村山君の質疑は終了いたしました。  次に、保岡興治君。
  9. 保岡興治

    保岡委員 きょうは、私も予算委員会で質問するのは初めてで、こうやって与党の一人として質問させていただく機会を得たことを大変うれしく思って、これからは国会というところは、与党も大いに論戦に参加して、政策論議を深めて国民にわかりやすい国会を目指していくべきだと思って、与えられた機会に大変感謝をいたしているところでございます。  また、海部内閣がスタートいたしまして、海部総理大臣は、私たち自由民主党の本当に命がけでつくった政治改革大綱、これを実施するための、党にあっての政治改革推進本部の行動隊長として、政治改革の先頭に立たれるというようなことを、総理大臣になられる前に一生懸命努力をされておられました。また、三木元総理のもとにおいて、常に党改革、政治倫理の確立ということについては非常に熱心な政治家のお一人であったということは、きょう私が政治改革について質問のできることをまた大変うれしく思っていることの理由の一つでございます。  そこで総理大臣にお伺いしたいわけでございますけれども、信なくば立たずということは、これは政治の最高の理念である。この言葉は、総理の恩師である三木元総理大臣の最も好んで使われた言葉と承っております。そこで、リクルート事件を契機に広がった国民の政治不信は政治にとって極めて重要な、重大な意味を持っていると思うのでありますけれども、我が党は、責任政党として明確な政治的道義的責任を明らかにして、明確なけじめをつける立場にあったものと思います。国民の政治への信頼の回復に当たって、総理はリクルート事件のけじめについて今どのように考えておられるか、まずお伺いしたいと思います。
  10. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 御指摘のように、リクルート事件に端を発した政治不信というものが、自由民主党にとってはこれを厳粛に受けとめて、この不信を取り除いて前進していかなければならぬということは党を挙げての決意でございました。それは考えただけではなくて、御指摘のように自由民主党が直ちに政治改革推進本部というものをつくって、いろいろな立場における政治改革のための、もっとずばり言うならば、リクルート事件のようなことが再発されないような政治状況をつくっていくためにはどうしたらいいか。それを達成することによって政治不信を取り除き、国民の政治への信頼を取り戻していこうというのであの政治改革大綱ができたことは、委員もその重要な一員として参加をされておった。私も、御指摘のように行動隊長として参加をして、一生懸命努力を続けてまいりました。これにみんなが力を合わせて前進をし、これをなし遂げることが国民の皆さんの信頼を取り戻すための、自由民主党がこれからたどっていかなければならない大きな道筋であると考えております。
  11. 保岡興治

    保岡委員 確かに、政治の信頼を回復するに当たっては、リクルート事件のようなことが再び起きないように、あるいは今日の政治の課題を解決するということが終局のけじめのっけ方だと私も思います。しかし、私は総理にもう少しお答えをいただきたいと思ったのでありますけれども、自由民主党は内閣の総辞職をするという大変な、与党にとっては本当に、政治の責任にある者にとっては最高のけじめをつけたのではないかと私は思います。それに、御案内のとおり、自由民主党の中にあっては、けじめに対する一つの基準をつくって、多少批判を受ける立場に立たされた議員の方々は役職の辞退とか、その他政治家にとっては極めて大変な決心をして、それぞれこのけじめに対応したということも言えるのではないかと思います。そういう点、総理はいかにお考えでございましょうか。
  12. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 私はお答えのときに、大きな立場で党全体が取り組んだ問題についてのみお答えをいたしましたけれども、ただいま具体的に過去の事実について御指摘がありました。確かに、最高の責任者である内閣総理大臣が内閣の総辞職を決意してそれを行ったということは、これは極めて厳しいものであったと思いますし、また、みずから党を離れられた、そういう決断を示された方もありました。また党としては、政治家の責任というのはそれぞれの個人個人がみずから決断をされるべき問題であるという第一義的な前提は貫きながら、今御指摘のように、未公開株に関連をした方にとっては、党のけじめ案をつくってそれによって対処をされております。そしてその上に立って、その反省の上に立って全員が政治改革を行い、例えば寄附行為の禁止とか、あるいは政治資金の明朗化とか透明化とか、いろいろなことを御議論願い、率先して党の改革案を提出するという努力を続けておるわけであります。  私は、そういったことに対してこれを厳しく受けとめて、前進をしながら政治家一人一人が倫理をきちっと確立していくこと、また党が決められております政治改革大綱の中にも、既に国会で議決はしてありますが、政治家が守るべき行為規範、あそこの中にもいろいろなことがきちっと書いてあるのでありますから、それがさらに守られるように、院内における審査会の改正強化ということも自民党の結論としてまとめてあります。そういったことを守りながら、みずからを厳しく戒めながら、緊張感のある政治といいますか、そういったことに対してはいつも自分は政治家として厳しく考えながら行動をしていくんだという、その政治倫理の確立というものをみんなが一人一人この事件を振り返りながら再確認をされた結果の行動であった。私も、それを評価していきたいと思っております。
  13. 保岡興治

    保岡委員 我が党の場合は本当に責任政党でございますから、国民から非常に厳しいけじめの要求があったり、あるいは批判が集中するのは、これはやむを得ないと思います。そういった意味では、この間の参議院選挙において、保革が結党以来初めて参議院で逆転するという大変な、重大な結果を受けたということは、これは国民がさらに加えて我が党に厳しいけじめを求めたものだと、こういうふうに考えるのが本当であると思うのです。  そこで私は、政治的道義的責任とは一体何なんだということをやはりこの際はっきりしておきたいと思うのです。政治的道義的責任というのは、刑事事件のように過去のある犯罪について、ある事実について刑罰を科するというような、過去の責任を問うものとは性質が違うんじゃないだろうか。これは政治が常に進退をかけて真剣に政治を行っているということのあかしとして、政治の遂行上問題が発生した場合に、その事実がその者に直接関係するか否かということにかかわらないでその地位を辞するなど、その責任を明らかにする、これが将来の政治に対する信頼をつないで、また政治に緊張感をつくって、よりよい政治を行うための一つの重要な政治の大事な要素だと私は思います。そういった意味で、やはり政治の安定というものは、国家の安全保障と言われるぐらい重要でありますし、もちろん国家の安寧秩序、繁栄、すべて政治にかかっているという意味では、やはり政治の信頼をつなぐための政治的道義的責任を果たすという役割というのですか機能というものは、これはもう本当に重大である。そこで私は、海部内閣、本当に清新な内閣としてスタートされました。こういう政治的道義的責任については、今総理は答弁の中でるる言われましたからもうお答えは要りませんけれども、本当に我々はそういう姿勢で政治に当たっていかなければならない、そう考えているところでございます。  そこで、先ほど総理が言われましたとおり、最後のリクルート事件のけじめというものは、いよいよこの再発防止に全力を尽くす、あるいは今の政治の問題に本当に弊害が出てきていることにはっきりした対策を立てて、これは本当に我が党、戦後政権をずっと担当してきているのでありますけれども、十年に一回は政権を揺るがすような疑獄事件に遭って、有能な人材がそれにかかわっている、これは国際的にも非常に信用にかかわることでありますし、また国内的にも非常に大変な問題である。そういった意味で、今まで再発防止というものは何回も繰り返されてきたんだけれども、そのたびに党改革を言い、それなりの対策をしてきたんだけれども、今度こそは何が何でも新しい時代に向けて政治改革の実を上げる、このことについて命がけにならなければならない、こういうふうに思うのでありますが、総理はいかが考えられておられるでしょうか。
  14. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 御指摘のとおりでありまして、このまま何もしないで今のままでいて、個人の心構えだけを強調するだけでは政治改革の実が上がらないというのは、党の政治改革推進本部の御議論の中等でも種々出た問題であります。これからいろいろ皆さんの御理解、御協力を得ながら、一歩一歩政治改革の実を上げていかなければならないと考えております。
  15. 保岡興治

    保岡委員 そこで私は、政治は結果責任という意味で政治を眺めた場合に、戦後の政治というものは、今日の国家の繁栄あるいは経済的発展、国際的地位の向上といったことなどから見ますと、私は政治は非常にうまくいった、こういうふうに考えております。そしてまた、我が党は常に野党が主張するべきようなことまで、公害対策とか環境問題とかいろいろなことをどんどん先取りして、日中国交回復もしかりでありますし、日ソの外交の展開もしかりでありますし、どんどん政治を国民に対応するものとして進めてきたと、私はそういうふうに確信しております。  しかしながら私は、ここにやはり歴史の転換点が来ているというふうに考えるのであります。そして、先ほど総理が言われましたとおり、ここでこのままに推移したのでは、やはり今度のリクルート事件の発生の反省を真に生かすゆえんにならないし、また国家の将来の繁栄のために本当に重要な時期を失する、今こそやらなければいつできるか、こういう気概でやるべき時期に来ているのではないかと思います。  そういった意味で、私は戦後の政治というものを考えたときに、やはり外交は対米を中心に図式化が非常に簡素にでき上がっていたと思います。そしてまた国内問題も、各省庁が縦割りの行政を行う中で、立派な日本の繁栄を築いていくこともそう難しいことではなかったと思います。しかしながら、それは政治の安定の上に優秀な官僚の皆さんと国民と自由民主党が政権にあって一緒に進めてきた、そういう中に実現したものである。  しかしながら、外交も内政も非常に変質してきた。お役所の皆さんは非常に優秀ではあるけれども、やはり部署部署をかわったりするということもあって、やはり多くの人でやっておりますから、先取りして決断して、どんどん各省と総合調整をしながら自分の施策を進めるということはなかなか難しい。どうしても問題が出てから対処するというようなことにもなりがちである。こういうことを考えると、今までは日本の政治は先ほど申し上げたような進め方でよかったけれども、これからは総合調整の必要な分野がたくさん出てくるんじゃないだろうか。内政、外交ともそういう変化が生まれているのではないかということを感ずるのです。そういう観点から、まず外務大臣に所感を述べていただければ幸いでございます。
  16. 中山太郎

    ○中山国務大臣 保岡先生からの御指摘のように、私は外交をお預かりする責任者として率直に申し上げることは、戦後の国際政治は歴史的な転回点に来た。社会主義経済をやっておった国々は、経済理論のまずさから今日経済的な大混乱が起こっている。そういう中で、日本が先進首脳国の中で非常に経済的にも豊かになってきたという中には、先生の御指摘のように日米安全保障条約を基盤にした、日米関係を中心とした西側陣営の協力によって今日までやってまいったと思っておりますが、これからの新しい歴史の展開について、私は、外政即内政、内政即外政という考え方を持って当たらなければ、国際社会では信頼をこれから持ち続けることはなかなか難しくなる時代がやってきたのではないか、このように考えております。
  17. 保岡興治

    保岡委員 同じように内政の問題についても、いろいろ総合調整を要することはたくさんあるだろうと思いますが、私は、土地政策などやはり今日いろいろ問題がたくさんあって、革命をやらなければできないんじゃないか。極めてすぐれて政治的であるということを示していると思うのですね、そういう言葉の中に。私は、そういった意味で戦後の政治の中でやはり反省すべき点は、こういう総合調整を要する分野において我々は足りないところがあったのじゃないだろうか、そういうこともまた感ずるわけでございます。  そういう観点に立って、国土庁長官、土地基本法などを出して頑張っておられますが、所見をお伺いしたいと思います。
  18. 石井一

    ○石井国務大臣 就任いたしまして二カ月たっております。私もいささかふなれな分野でございましたが、この二カ月、いろいろ問題を追求してまいりました。そうして委員御指摘の、本当に根の深い、幅の広い、非常に困難な問題であるということを痛感いたしました。それだけに、今の政治改革という問題にあわせてこの問題の御指摘をいただいたことを、私としては大変感謝いたしておる次第でございます。  昨日も御答弁申し上げましたけれども、日本の土地はアメリカの土地の百倍と、こう申し上げてもいい、非常に高い、貴重なものになっております。しかしながら、日本における土地に対します人々の概念というのは、土地というのは個人の資産だ、そして自分の自由に使うべきものなのだ、こういうものがまず支配的にございます。そういう中から、公が優先せず私権が先行し、そうして複雑な行政が絡み合って、ある意味におきましては政策不在、すべて自由経済の中で放置された中に、今日のような価格、こういうような土地問題というものが顕在化してきております。しかし、本当にまじめに働いておる人々が一生働いても自分の土地つきの家が買えないという国であれば、いかにこの国が恵まれた豊かな国だといったところで、その実感本当に国民の、庶民の中に出てくるだろうかということを考えましたときに、私は、今ありますいろいろの問題の中でも、この土地問題の解決というのは最大の政治課題ではないかというふうに認識をいたしております。  今回、御指摘の土地基本法を国会で御審議いただきまして、野党の皆様もおおむね御賛同をいただいておるようでございますから、必ずこの法案を成立させまして、今、後ろの方でノーと言われておられる方もありますが、ぜひともひとつ基本的に土地というのは公のものなのだ、そして土地にはコストがかかるのだ、そして利用すべきものなのだ、基本的な土地に対する概念を変える。そうした中に、次に各省が総合的に、縦割りの行政でなく、すべてが連動した中に問題を解決していく。いろいろの問題がございますが、例えば農地を宅地化するという問題一つ考えましても、農林省、もちろん自治省、大蔵省、国土庁、建設省、ほかにも法務省も関係があるかもわかりません、こういう状況の中から出てくるわけでございますから、今後政治改革と政策の転換という意味から、私も土地担当大臣として総合調整機能を発揮いたしまして、また海部内閣の各閣僚にも御理解をいただいてその実を上げたい、そのように考えております。
  19. 保岡興治

    保岡委員 ありがとうございます。  農政などもやはりこれは今度の参議院の選挙の大敗の一つの要因にも挙げられておりますけれども、国内の農業を保護するということも極めて大事でありますけれども、やはり競争原理が働くようなふうに持っていくとか、市場性を導入するとか、あるいは現在国際化の波が急激に押し寄せる、そういうことを調整していかなきゃならない、この辺は非常に政治の有効性というものが発揮されなきゃならぬ分野だと思うのですが、農林大臣、いかがでございましょうか。
  20. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 農政におきましても、やはり思い切って、そのような国際情勢の中においてどうあるべきかということを当然考えてもいかなきゃなりません。思い切った政策を推進していかなきゃならない、このことは当然のことだと思います。しかし、農業、林業、漁業というふうなものは、単なる経済的な問題だけではなしに、日本の国の国土の保全なり自然環境の保全なり、また長い歴史の中で今日まで地域社会をつくってきた、地域経済の発展に大変な貢献をしてきた、役割をしてきた、こういう非常に重要な問題もあるわけであります。そういう中においてどこまでの決断をやっていくか、どこを守っていくかというふうなことを、これからそういう調整の中において、調和の中において決断をしていかなきゃならない、こう思っております。  そこで、基本的には農業をやっている人たちが、林業をやっている人たちが、漁業をやっている人たちがどういうふうな考え方を持っているのか、どんな夢を持っているのか、どんな悩みを持っているのかというふうなことを私どもは十分承知をしていかなきゃならない。そして私どもの基本的な考え方もよく理解をしていただくという努力もしていかなきゃならない。そのようなことから、そういう認識の上に立って私自身も九州にも行きました、四国にも関東にも北陸にも東北にも行ってまいりました。そして農家の人たちから、また林業をやっている、漁業をやっている人たちから直接、シナリオなしでいろいろな意見交換もさせていただいているところであります。そこに私どもの基本的な姿勢があるのだ、このように御理解をいただけば幸いと思うところであります。
  21. 保岡興治

    保岡委員 ありがとうございます。  結局、竹下総理大臣のときに、私的諮問機関で政治改革に関する有識者会議というのを開いておられました。答申も得て、それに沿って自由民主党も政治改革の大綱をなお充実を図ったものでございますけれども、その会議でメンバーの一人である京極純一東大名誉教授が、「世間の期待は、何も選挙制度や政治資金についてばかりではない。国民の生活の改善、土地やマイホーム、物価や流通の問題など、自分に成果が返ってくる政治をしてほしいということだ」と、こう述べておられます。私は、まさに卓見であって、政治改革の究極の目標というものは、時代の変化の中にあって、政治が有効性を回復して真に国民に利益を還元していける、こういう機能をいかに確保していくか、そういうことに今日の政治に問題がないか、こういう視点から政治改革に取り組んでいくべきではないか。そういう意味で、我が自由民主党の政治改革大綱はそのことを冒頭に掲げて基本的な認識として示しております。  そういう点、総理大臣として、今後の政治の有効性確保ということについて、政治改革との関係でどのような決意を持っておられるか、簡単に述べていただければ幸いでございます。
  22. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 政治を行っていくその目的は何だといえば、これは国の安全と国民生活の安定、向上にあると言って言い過ぎではございません。  ですから、何のために政治改革をやるのか、ただ政治家が選挙法とか政治資金のことだけをやっておればそれでいいというものではなくて、国民一人一人の生活の安定、向上につながるように持っていくことが大事ではないかとおっしゃる御意見は、私はそのとおりだと思いますし、特にまた、皆さん方の御努力によって、追いつこう、追い越そう、ひたすらに物の豊かさを求めてきた時代は終わって、物の豊かさから公正を求められる時代、心の豊かさを求められる時代に国民の要求も願いも変わってきたのだということも、私は、これは同じ角度のことでございますから、公正な社会をつくるというところに政策の重点を置きますと、先ほど来委員御指摘の、例えば土地基本法の問題一つとらえましても、土地は公共性のあるものであって間違っても投機対象にはしないという決意を秘めた土地基本法をまず成立させて、それによって、土地の値段による国民の間の価格的な問題に対する何か違和感を取り除いていくとか、そのほかに文化とか芸術、スポーツというものをもっともっと普及させていくことが生きがいにつながっていくとか、いろいろ政策努力には幅がありますけれども、そういったものを目指していくためにも、まず第一歩として政治改革をしてまず信頼を取り戻して、それから目指す社会は、そういった心豊かな、幅の広い、物の豊かさだけを追い求める社会ではない、公正というものを求める社会になっていかなきゃならない、これが私どもの目指す目標にならなければならぬ、こう考えて取り組んでおりますので、御理解いただきます。
  23. 保岡興治

    保岡委員 総理の所信表明の中の部分で、「今二十一世紀への跳躍台に立って、新しい時代の扉を開く重大な使命を深く自覚し、」と述べておられるのです。私は、これは海部内閣の最大のやはり所信表明における精神であったろうと理解しております。また、海部内閣は「改革と対話の政治」ということを標榜されました。私は、これも極めて政治改革に関係する重要なスローガンであろうと思っております。そういうことで、海部内閣の本当にこれからの御努力を心から期待するものでございます。  そこで、そういった基本認識はさておいて、現実の政治の問題でありますが、私は、参議院選挙の大敗の最大の原因、ベースにあったものは、やはり何といってもリクルート事件から起こった政治不信だろうと思います。その根底をなすものは、やはり私は一つには政治に余りにもお金がかかり過ぎる。それで、この政治にお金がかかり過ぎるというのは、政治資金というのは本来大事な政治を賄うためのものでございますから、本来なら、正しいというのか、本来の政治の目的に使うべき資金というものはむしろ積極的に確保を図るものであって、それが多ければ多いほどいいわけじゃありませんけれども、必要なものは確実に措置するのがむしろ政治資金の本質だと思うのです。  ところが、今度の参議院選挙の結果批判された政治資金の問題は、政治の本来の政策活動とか調査活動とかいったものに使われるもの以外の、選挙のための、支援を得るための、日ごろのいろいろな地盤をつくっていくための努力とか、あるいは同じ選挙区で競争が生まれる、しかも同じ政党の者同士の競争が生まれるために、どうしても政策で特色を出すわけにいかない、したがって、日ごろのおつき合いをできるだけよくして、そうして自分の特徴を売り込むというのですか、これは政治家の資質を売り込むというようなことになれば政治の一つの重要な要素だと思いますけれども、やはりどうしても自分を売り込むためのいろいろな経費もたくさんかかる、ここに私は根本的な今度の問題をとらえなきゃいけない。  いわゆる選挙を勝ち抜くために仲間同士が戦うということは、党が頼りにならない、要するに選挙で当選してくるためには、党のお世話にならないで個人の後援会をつくって頭張らなきゃいけない。そして、一人では政治ができないから、仲間が必要だからやはり派閥というものが生まれて、そうして人事をしっかり握り、そして、選挙の支援や、その人が政治活動ができる基盤を与えるのに努力するのは当たり前だ。私はそういうことで、やはり地盤培養のために、競争が激化してお金がかかればかかるほど、これはやはり派閥のリーダーというものも本来政治の素質を高く持った人がリーダーになっていかなければならない。しかし、そういう人ですら、やはり大変な資金の収集の努力をしなければ政治ができない、こういうことになって、そこにやはり族議員の問題などもありますけれども、いろいろこれには役割もちゃんとあると思うのでございますけれども、やはり国民から見た場合には、官界、政界、財界の癒着現象があるのではないかという疑問を持たれたのも、これはむべなるかなというところがあるのではないか。  そういった意味で、この金のかかる政治というものを、先ほど申し上げたように、何遍も何遍も疑獄事件を起こしてきて、そのたびに我々は反省してやったはずでございますけれども、なかなかそれが実行できなかった。今度はこの根本的な問題に対してどのような対策を講ずることが本当の問題の解決になるか、これは非常に重要なことを含んでおると思うのです。この点について、総理に、その淵源、根本的なところはどこにあるかということについて見解を賜りたいと思います。
  24. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 政治と政治に必要な資金の関係についてお触れになりました。我が国の政治にかかるお金の額が多過ぎるのではないかという御批判はいろいろなところから出てきておりますけれども、実際、私が諸外国を旅行させていただいて、そこの国会議員に会っていろいろお話を聞きますときに、例えば人件費とかあるいは交通通信費とか政治活動というものにかかる費用を国がほとんど抱えておって、個人で余り自分の日常の政治活動にお金をかけなくてもいいよ、例えばその代表的な例はアメリカでございました。また、ヨーロッパの国々のように、いろいろ個人は政策努力を一生懸命やれば、あと選挙区の培養とか選挙民との連絡という我々が今時間とお金を最もそこに費やしておるようなことは政党のそれぞれの支部が政党活動としてきちっとやっておってくれる。ああ、うらやましいな、こういうふうになれば個人でお金を集めるということに時間や能力を使わなくても、政策努力に一生懸命打ち込むことができるんだなということに私はうらやましさを感じたこと、率直でございました。  ですから、今の政治資金の問題で、今度出ております公職選挙法も、お金の出の方、選挙区に対する支出の方を縛っていこう、これも大切なことの一つでありますから、一人一人が自覚をしてブレーキをかけていかなければなりませんけれども、そこだけで片づくものでもないと思っておりますから、私はそれは政治改革の第一歩だということをいつもいろいろ申し上げてきました。  では、究極のことは何であるかというと、私はやはり欧米型の選挙といいますか、政策論争というものを中心にしながら、政党の支部というもの、政党の機関というものが政党活動として議員のそういった日常の活動を肩がわりする、と言うと言い方が悪いですね、本来のものとして政党の業務としてやって、議員は政策努力、政策活動、国会活動に専念できるようなそんな仕組みが必要である、こう思っておりますから、政府としては、選挙制度審議会の方にその抜本的な問題についてただいま諮問をしておるところであります。願いとしては、政策論争中心の選挙ができるように、そして個人が政治資金のことで、もっと必要だからもっと集めなければというところに余計な時間とエネルギーを使わなくてもいいような、本来の政治活動に精魂を打ち込むことができるような姿にしていくことが最も望ましいことであると思って、それに向かって私は努力を続けていく決意でございます。
  25. 保岡興治

    保岡委員 今総理が指摘されたように、私もこの間ヨーロッパ各国の選挙制度をお仲間の方と視察をしてまいりました。本当に信じられないぐらい選挙費用が少ないですね。それから、日常活動費も少ない。イギリスなどは百二十万から百四十万ぐらいで本当に選挙ができる、こう言うのですね。しかし、政党が徹底的に宣伝をしてくれる。これはまた大変なお金をかけているようで、やっぱり総理が言われましたとおり、政党が選挙や日常の政治活動をサポートする、選挙資金も政党に入れる、議員はひたすら本来の政治活動に専念して頑張っていけばいい。もちろん小選挙区を中心とするイギリスやフランスなどに見られるように、本当仲間同士の同士打ちということがないですから、さっき言ったような水膨れ的な地盤培養のための選挙資金などの拡大現象、がんのようにそれが拡大していくというようなことは全くないようになっているように思えたわけです。  私は、そういうことから、やはり政治家が、政治が必要であればあるほど、政策活動がこれから時代の要請として高まってくればくるほど、日本国会議員が時間的余裕を持って、スタッフも充実して、しかも場所もしっかりした、もっと広い議員会館をきちっと持って、そうして政策立案等の経費も十分に補助できるような体制をとっていかなければならないと思うのです。しかし、それには、政党法で国庫補助をするとかあるいは議員のいろいろな活動の公的な負担を大きくしていくにしても、私は、そこにはやはり国民が、議員定数を思い切って削減するというような血の出るようなことをやって初めて納得して、なるほどそういう政治の仕組みが必要なんだという理解をしてくれるんだろうと思うのです。  そういった意味で、私は、先ほど総理が言われましたとおりに、こういう問題もやはり選挙制度が根本にあるという認識を示されたように思います。私は、選挙制度審議会にいろいろ政治資金のことについても総理が諮問をして、鋭意検討を願って御努力を願っていることを承知しております。私は、そういう意味で、やはりこういう問題も根本には選挙制度改革というものがあるんだ、これを抜きにして、依然として中選挙区を維持していくような形の中でどんなに寄附の禁止をしても、あるいは政治資金の明朗化を図ろうと思っていろいろ努力しても、公費負担の拡大も図れないまま党への政治献金を、党に拡大してそちらの方に移していくということもなかなか難しいままにこの政治改革という大事な時期を失してしまうことがあるのではないだろうか。当面の対策として、寄附の禁止やあるいは政治資金の明朗化について我々は法案を出してあります。これとて現実の政治の中でこれを実現するということは大変なことなんです。  それで、私はそういった意味で、時間もなくなってしまって大変恐縮ですが、簡単なお答えをいただきたいのでございますけれども、政府広報とかあるいは教育の問題とか、そういうこともトータルでやっていくような決意でないと、総合的な、全面的な改正の中でこれを実現していくのでないと、この三つの法律も、またやったはいいが法定選挙費用のような、あるいは選挙違反はみんながやっているんじゃないかというような、それでいて警察もどうにもならない、たまに見せしめにやるだけだ、見つかったが損だというようなことに終わったのでは、この日本の政治をこの機会に改めようという趣旨に反するのではないか。そういった意味で、私は、この問題も選挙制度というものが根本に横たわっているということを深く認識すべきだと考えているものでございます。  それから、私は大変御質問が、ちょっと申しわけないのですけれども、時間がないので先に進ませていただいて、お答えを省略というのか、お答えいただくのは結構でございますが、私、この参議院選挙の結果を見るときに、消費税の問題はこれまた大変な問題だったと思うのですね。この消費税の問題は、私は十分国会で議論されなかったということが国民の理解を得られなかった最大の原因じゃないだろうかと思うのです。やはりこれだけの国政の基本にかかわるような大政策の転換を国民に十分理解してもらいながら、その共感を得ながら進める政治というものが必要だ。私は今度の国会の審議に消費税のあり方を見ると、やはり野党の場合には審議拒否とか牛歩戦術とか、審議をしないための戦術を駆使してこれを阻止しようとする、与党は与党で、何とか野党に通してもらいたいものだから減税を先にぽんと与えざるを得ないというような国会運営で、裏で何か話し合いをして、この減税消費税との兼ね合いというものが非常に大事であるにもかかわらず、それすら国民に理解されないで審議が進んでいく。これは与野党ともやはり問題があるのではないかと思うのです。  私は時間がありませんのでもう指摘にとどめたいと思うのでございますけれども、やはり国会が言論の府として、最高の機関として機能するためには活発な政策論議が行われなければいかぬ。それは与野党ともそうだと思うのです。そういった意味で、私はなぜこういうことが起こったのかという淵源を考えてみますと、私はやはり与党と野党の勢力が固定化してきているところに問題があるのではないかと思うのです。私は、悪いという意味ではないのです。そこに原因があるのではないか。それは自由民主党が永久政権だということです。野党は万年野党になっている。  なぜかというと、私は、今度の衆議院選挙が予想されていますが、社会党が百八十人立てようとした。これは、政権をとるためには、過半数とるためにはもっと二百四十人ぐらい立候補させなければいけない、それを全員当選させなければいけない。にもかかわらず百人の目標を立てた。最も順風満帆なときですら、現職の立場が困るとか、複数立候補することによってみんなが共倒れになったら困るとか、恐らくそういうことは当然政治の現実の中に起こってくる。やはり百三十人を立てられるのか、百五十人なのかという問題になってくる。私は、そのように、やはり社会党もかつては国民政党のように包括的な政党の姿をとった時代もあると思うのです。しかしながら、だんだん労働組合という一つの選挙母体や資金源というものがベースになってきておるのではないか、こういうふうに私は外から見て考えるわけです。そこに労働組合の組織率はどんどん落ちてくる、そして、自治労などのような、田舎の名望家がなっているような、エリートがなっているような地域では社会党が強くて、都会ではむしろ社会党が弱くなっている、こういうようないろいろな野党にも変質がある。私は、社会党も立派な政党として、政党は国民の共有の財産ですから、立派にやってもらいたいという意味では、本当にだんだんだんだん指定席というものが、従来のベースで政治をやっているのでは多数がとれないという環境になってきているということがあると思うのです。第一党の社会党ですらそうだから、他の野党も同じような問題を抱えている。そこに分裂も起こってなかなか政策協議もできない。これがやはり私は自由民主党が永久政権になってきた最大の裏の理由だと思うのです。  ですから、与党もだんだん野党の、国会での政策論議を徹底的にして過半数の支持を国民に求めていくという姿勢がいつの間にか失われて、自分の支持母体にサービスをしてそこに強力な支援を得るための部分的な利益の代表になってきているのではないか。そういう意味で私は、選挙制度というものが中選挙区であるがゆえに、やはり自由民主党は大変な金のかかる選挙を抱えてしまっているけれども幸い政権は保障されて、野党を相手に議論をしない国対国会を自然につくり上げてくる一つのベースになっているのではないかという気がするわけです。これが政権が伯仲して健全な野党が出て、そして本当に競い合うようになると、自由民主党とてもっともっと能力を発揮する力がわいてくるだろう。国民との対話をしながら国民のニーズを、共感を得ながら政治を進めながらもっとすばらしい政党に変わっていく。そういった意味で、私は現在の中選挙区制度というのは、必ずしも自由民主党の力を発揮することにもこれからの時代を考えるとならないのではないかというふうに考える者の一人なんです。  そういうことで、国会論議が与野党でできるように、この予算委員会も今度与党が数に応じて質問するという新しい改革をされましたが、まさにこういうことをどんどんやる。国対国会ではなくて委員中心主義で、本当委員会が独自性を発揮して国民のために議論する。それも野党が政府を追及するような形の審議ではなくて、やはり国会議員同士が、与野党の国会議員同士が国の将来の本質的な議論を深めていく、こういうことが私は大事なのではないかと思っております。これも選挙制度一つのベースがあるということを御認識いただければ幸いだと思います。  時間がないので先に進みたいと思いますが、ちょっと前後いたしましたけれども、私は企業献金ということについてお伺いしておきたいと思うのでございます。  私は、先ほど申し上げたように、必要な政治資金というものは確保しなければならない、これはもう当然なことなんです。それで、よく企業献金について禁止をするというような議論が行われます。しかし、この企業献金も社会的存在として日本の社会の発展に多大な貢献をしています。それでまた、昨今では地域や文化の振興、国際協力などで、幅広い利益追求以外の公的な役割というものを演じているわけなんです。しかも、企業は税金を払っているのです。タックスペイヤーである。これは、税金を払っているものは税金の使われ方について物を言ったり、政治に参加する権利があるということを意味しているのだろうと思うのです。私は、野党の一部に企業献金は廃止し、労働組合の献金は今までどおり認めるというものもあるわけですけれども、組合は法人税を払っていない、企業は払っているという差がむしろあるのじゃないかと思ったりするわけです。そういうことで、企業献金は自然人でなくて参政権が認められていないという議論もありますけれども、私は、実態に即して考えなければ、政治は現実でありますからおかしなことになる。  事実、ヨーロッパにおいても企業献金は全く禁止されておりません。額の規制すらないのが多くの国の例であります。アメリカでは個人献金が原則になっておりますが、PACという制度があってちゃんと、この間著名なアメリカの議員の一人に伺ったところが、やはり企業にPACという政治活動委員会みたいなのをつくって、そこに企業の構成員からお金を集める、しかし結局は、それは企業が払う給料がもとになっているという意味では、企業を中心とする献金であることは間違いないのです、実質は企業献金である。私はこのように考えたときに、日本には個人献金の風習がないですよね、習慣が。私はどこへ行っても、個人献金する人がいますか、手を挙げてくださいと言うと、我が党の支持者の中でも非常に少ない。私は、個人献金はむしろ経験的に言うと非常に利害に絡んで、何かこの人は多額持ってきたけれども何か頼み事があるのじゃないかなという感じさえ持つのが個人献金のあり方じゃないか。そういった意味で私は、企業献金というものはきちっと認めていくという姿勢を貫かないと政治がおかしくなると思うのですが、自治大臣、いかがでございましょうか。
  26. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 ただいまの保岡委員のお話、すばらしい御見識であると承っておりました。  これは企業も個人もそれぞれ社会的存在でございます。この日本の国が平和で豊かで自由に発展していくことによって、この国に住んでおる人たちの幸せがあり、またこの国の企業も発展していくわけでありますから、この政党こそが国の発展のために、我々の平和と自由を守ってくれるために役に立つ政党である、あるいはこの政治家こそがこの日本のために、平和と自由を守るために、我々の豊かさを進めるために役に立ってくれる政治家であるという、信頼する政党や政治家に企業が法に許された範囲での献金をすることは、これは美徳であって、これが悪いことのようにこれを一概に言うことは大変間違いである。ただ間違いなのは、それぞれ自分の利益とか個別的なものの何か代償を得るというようなことでやることが非難されることであって、企業献金全体を悪であるというような風潮は大変間違いであって、これは国民の皆さん方に正しく理解をしていただかなければならない問題だ、こう考えております。
  27. 保岡興治

    保岡委員 私は、そういう原理原則というものをきちっとするのが日本には少し足りないと思うのですね。例えばリクルート事件の献金問題などの流れを見ておりましても、やはり国民も理解がしてもらえるように、正当な手続を踏んできちっとやった献金というものは、その会社がやることは全部悪いというわけじゃないのです。その立派な、優秀な企業が過ちを犯したというだけの話です。その辺はやはりきちっと区別して考えていかないと、政治の本質を見誤ることになっていくんではないだろうか。やはり原理原則というのをきちっとすることが今の日本には必要なのではないかということを感ずるものでございます。  そこで最後に、もう時間もなくなりましたので質問させていただきたいわけでございますけれども、今政治改革の三つの法案が国会で審議されようとしているわけです。私は、先ほど申し上げたように、寄附の禁止の厳しい措置など大変な前進だと思うのですね。そしてまた、国会議員が全員資産公開するということも大変なこれはまた措置である。そしてまた、これは政治資金の明朗化を図るための、あるいは政治資金を投機的な株や土地に使わない、運用しないということなどもはっきり言って今度のリクルート事件の反省に立った具体的な対策なのですね。こういった三つの法案は、私は、なかなか現実の政治の中で、ここまでやはり工夫して確実に対策を出すということは大きな前進であり、確実な一歩だと思いますから、私は、この国会でも与野党でよく話し合って、とりあえずこの法律は成立させるということが一番肝要なことではないだろうか、これが国民にこたえるゆえんではないだろうかというふうに考えるものでございます。  しかし、私は、先ほど指摘しましたように、政治家が本当に政治活動に専念できる時代をつくらなきゃいけない。日本国会議員が選挙区のサービスやお金集めに時間や労力を割かないで、やはり本来の十分政策活動できる環境をつくることを考えないと、本当の政治改革の目的は達成できないということを申し上げたのですが、そういった意味でも、選挙制度というものがやはり根幹にあるんだ。これを改革せずに幾ら言っても現実を無視した規制みたいな形になって、国民の不信を買う結果になる。そして政策論議を深め、国民と政治を結びつける開かれた政治、開かれた国会というものを実現するためにも、先ほど申し上げたような活発な議論を行っていくためには、やはり健全な野党が育ってくるような、そして自民党がもっと頑張れるような、そういう政治の緊張の中で政治の浄化を図り、政策の推進を図っていくのが、これは民主主義のルールである。政権交代のない制度などというのは、私は、政党政治において極めて問題があると思う。そういった意味で、やはり野党の皆様方も中選挙区に数、それだけ与えられている定員の中で一つの支持母体に依存するというのではなくて、国民の包括政党たらんという努力が今後待たれるのであります。そういったことに沿った選挙制度というものはどこに求めるべきかということを真剣に考えていかなければならない、そして与野党で真剣な議論をしていかなければならないと思うのでございます。  私は、そういったことを含めて、自由民主党の政治改革大綱は、あのリクルート事件がまだ初めのころ、一月に発足して早くも二十七回の会合を重ね、有識者からどんどん意見を聴取し、しかも我が党の衆参の国会議員全員が集まって、三日間、丸九時間徹底的に議論しました。そしてまた、二万人の方にアンケート調査も行ってつくったこの政治改革大綱というものは、余り褒めてくれないマスコミの方も非常によくできているという評価が高かったと記憶しているのです。私は、そういった意味で、この政治改革の基本はどこにあるかということは、やはり抜本的な改正をやって、二度とこういうことを起こさない、今度こそ起こさないためには、その根底にある選挙制度を見直すことが急務である、こういうことが柱になっているものだと思うのであります。  そういった意味で、せんだって小沢幹事長が近畿の幹事長ブロック会議において、選挙制度改革というものを基本に置いて進めないと現実的じゃない。選挙制度改革というものは、今日出してある三つの法案を成功させる意味でも、さらにイギリス型の腐敗防止法を実現し、そうして資格争訟などを迅速に行って、もし間違ったことをした人は永久に資格を喪失する、これぐらい厳しいことをやって、本当に政治本来の活動ができる日本の政治の環境をつくり上げていくためには、やはり今出してある法律でもまだ不十分なんです。不十分なんです。抜本的改革とあわせて、定数の削減とあわせて、いろいろな政治資金の問題から万般にわたって根本的な改革ができる、ここに私は今度の今与えられている政治改革の基本があると思うのでございます。  総理は、こういう制度を実現するために選挙制度審議会に諮問をして、一生懸命、この間も会合に出て審議会の先生方に御努力願うことをお話しされておられました。委員の方々からも、我々の出す答申は当然尊重してほしいという御要請が口々に出たと思います。私は、選挙制度というものは党利党略でやるものでなくて、政党は、これは国民の財産でございますから、やはり公正な選挙制度をつくらなければならない。そういった意味では与野党の活発な議論もこれから必要でありましょうし、また国民の共感を得ながらやっていかなきゃならないという問題もございます。しかしながら、私は、それぞれの党が自分の党はこう考えるということをしっかり打ち出すことがまず前提である。そういった意味で、選挙制度審議会の答申について我々はこれを尊重するんだという国会決議をお互いにやっていくぐらい選挙制度審議会の先生方の御努力を待つ姿勢が今必要なんじゃないか、私はそういう気がするのでございますが、総理、いかがでございましょうか。
  28. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 いろいろな御意見を私も傾聴いたしました。そして、先ほど私も申し上げたように、今のままで、議員一人一人がみずから決意をするだけで、今のままの制度、仕組みのままでは政治改革には不十分であるということも申し上げて、政策中心の、そしてお金のかからないといいますか、かかるときには公の立場で、そして党を中心にお金は出す、けれども、議員個人は政策論争中心の選挙ができるようにしたいものだ、こういう希望も願いも述べました。  そしてさらに、今お話ありましたように、選挙制度審議会にも私はいろいろなことをお願いをしてきており、来年三月ごろまでにどうか答申をまとめていただきたい、これもお願いをしてまいりました。来た以上は、各党各派で御相談をいただき、その結果を十二分に尊重して、今おっしゃるようにそれはもう守っていきましょうというぐらいの心構えで受けとめていただけると本当に前進が図れるのではないか。  先生の御意見には私も同感でございますが、今後とも皆さんの一層の御理解とお力添えで適切な結論が得られていきますことを心から御期待をし、政府としてもできるだけの御協力をさせていただきます。
  29. 保岡興治

    保岡委員 私は、リクルート事件というものは本当に不幸にして起こったけれどもへ本当に議会政治のもう戦後の最大の危機だ、我が党結党以来の危機だと言ってあの政治改革大綱をまとめたことを忘れてはならないと思うのです。災いを転じて福とすると言うと語弊もあるかもしれませんけれども、この国民の政治不信はまさに今の政治に対する正しい評価を内に秘めているものだと思うのです。そして、未来に対する国民が期待する政治の実現の願いが込められているものだと私は思います。そういった意味で、議会開設百年というものが来年待っているわけでございます。このリクルート事件において国際的な信用がどうなったか、国内の政治がやはり不安定になってくる、こういうことで円安になったりして物価が上がったら何のための消費税の議論を、数%を争ってやっておるのかわからないようなことにもつながるわけです。  私は、総理が二十一世紀の扉を開く政治を実現するための努力を御自身がなさるんだと言われました。そういった意味で、二十一世紀の政治を実現するには、二十一世紀からスタートするような選挙制度を当てにして、十年後を考えて選挙制度をつくるなどというのは、将来の政治家を不当に縛ることにもなる可能性があるし、またそこに追い込んでしまう、将来の政治家を一方的に。それは勝手な話じゃないかと思いますし、また世の中の変化は非常に速いわけですから、そういった変化にも対応し得るのか。私はそんな悠長な話ではない、抜本的な政治改革の基礎になっているだけに、選挙制度改革というものは、やはり二十一世紀の政治の扉を開くためということであれば今から制度をスタートさせて、万般の根本的な政治、本当に全体の改革をするという、それはお互いが決心すれば今をおいてはできないわけですから、こういうときだからこそ私はできるというふうに思うのです。  私は、そういった意味で総理大臣が、また閣僚の皆様、内閣全体となってこの政治改革は打って一丸となって、総理も言われるように、国民と対話をしながら、対話の政治をやっていくということで国民の共感を得ながら、この運動は進めていっていただきたい。政治改革大綱にもそれが書いてありますので、ひとつよろしくお願い申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  30. 中尾栄一

    中尾委員長 これにて保岡君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四分休憩      ────◇─────     午後一時一分開議
  31. 中尾栄一

    中尾委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。森清君。
  32. 森清

    ○森(清)委員 私は、きょうは、憲法上の両院制の問題と衆議院の選挙制度について私の見解を申し上げ、総理のこれに対する御所見を伺いたいと思って質問をいたします。  最初に、我が国の両院制、衆議院、参議院制度の問題でございますが、申すまでもなく国会は国権の最高機関、唯一の立法機関として両院制度をとっておるわけでございます。両院制度をとっておりますと、二つの院がそれぞれ独立に、通常ならば過半数でもって意思を決定するわけでありまして、そうすると、それが相違をすることが間々ございます。で、相違をしたときにどうするかということになりますと、最終的には決定する方法が憲法あるいは慣習上ビルトインされておるわけでございます。ところが、我が国の憲法は議院内閣制でありながら全く世界に類例のない特異な制度でありまして、両院がそのように意見を異にしたときに調整の方法を欠いております。そこに、今後憲政上の運用として重大な問題があるわけであります。  と申しますのは、まず、我が国は議院内閣制をとっております。そして、その議院内閣制というのは、衆議院に基礎を置く議院内閣制であります。これは、衆議院において過半数の者によって指名された者が内閣総理大臣となり、内閣を組織し、行政権を持つわけでございます。そうしてその指名については、仮に参議院と決定が異なったとしても、両院協議が調えば別でありますが、参議院の決定いかんにかかわらず、衆議院の過半数で決定をすることになっております。それが第一であります。  第二に、その内閣に対して国会が不信任をする、そして、それによって内閣が総辞職するか国会が解散になるときには、これはそういうことは衆議院のみがやれることでございます。参議院は一切関係ないわけであります。したがって、内閣の存立、これは一に衆議院のみにかかっておるのでございます。  そうして、予算、条約については、あるいは内閣総理大臣の指名については、そのように最終的に衆議院の過半数で物事が決するようになっておりますから、両院において意見が違ってもそれなりに衆議院の意思が決定していく、こういう仕組みになっておるわけでありますが、その他の案件、すなわち特に重要な法律でございますが、これは両院の意見が一致しないときには衆議院で三分の二を占めない限り決定のしようがないわけであります。そうするとどういうことになるかというと、これはある法律をつくることができないという状態が生じ得るわけであります。  諸外国はどうなっているかというと、議院内閣制の国ではそれぞれその調整措置を講じておりまして、最終的には下院の過半数によって決定することができるようになっております。それから、上院の選出方法、構成、権限、大体単一国家の場合は実質上そういう意味では一院制になっておりますが、我が国のように実質上二院制をとっている国は少なくなっておりますが、唯一イタリーが我が国と同じように両院制であり、そして両院の意見が異なったときには非常に困ることになりますが、したがって、そういう場合には両院とも解散をいたします。解散をさせます、大統領が。そうして、両院とも同時に選挙を行って、民意が一致するような制度をとっておる。いずれにしても、憲法上、両院の意思が違ったときには最終的にはそういう調整方法があるわけであります。  ところが、我が国の憲法のみはそういう制度がないわけであります。すなわち、三分の二を下院において占める政権ができない限り、この憲政上の運用が非常に難しくなる、難しくなるどころかある部分ではできなくなる、こういう憲法の最大の欠陥があるわけであります。  これは、私はつとに十数年前からそれを指摘して、憲法を改正するなりあるいは参議院制度を改善するなりしてこれを解決しなきゃならないと言っておったのでありますが、たまたまといいますか、自由民主党が両院とも過半数を占めてまいりましたのでその問題が顕在化しませんでしたが、この間の参議院選挙の結果でこの問題が顕在化したわけであります。憲政上の非常な大きな問題がここに生じておるわけであります。今仮に、衆議院で自民党が過半数でありましてある法律を可決いたしましても、今の野党が反対するならば参議院で葬り去られ、三分の二を持っておらない限り、これは妥協が成立するかどうかは最終的には過半数でありますが、できなければこれは進まないわけであります。  そこで、そういうことになったときにはどうするかというと、もし衆議院においてそういう状態になればこれは解散であります。あるいは内閣が総辞職して、多数を持った者が内閣を組織するわけであります。ところが、解散をしても、衆議院が同じような状態になったならば事態は変わらない。参議院には解散制がございません。イタリーのように解散をすれば別であります。そうすると、最終的には、両院の意見が違ったときの調整方法を欠いておる。これが、我が国の憲法の両院制度における最大の欠陥であります。  しからば、そういう両院制がなぜできたかということでありますが、終戦、敗戦によりまして、憲法は、占領軍総司令官のマッカーサーが我が国にこれをやれということを言ってきましたが、そのときは一院制でした。したがって、そういう問題が起こらなかったのでありますが、そのときの政府は、両院制を強く主張いたしまして両院制にいたしました。  そこで、その両院制のときにどういう両院制にするかについては、大変いろいろな議論があったのだと思いますが、草々の間につくったわけでありますから、わずかの間に案をつくってしまって、いろいろなことを参考にしてつくったのでありましょう、大体二十一年の三月、四月ごろにその案をつくったわけでありますが、二十一年になって各政党が憲法草案を発表いたしております。その中で、その当時の日本自由党のみが、現在のような形の両院制で三分の二可決方式をとっておりますが、その他の政党、進歩党初め現在の社会党その他はすべて諸外国の例と同じように、もう一度になれば過半数で衆議院を通せばそれでいい、こういう憲法草案を各党出しておったわけでありますが、現実に採用された憲法制度はそういうことになってしまったわけであります。そのときは、共産党は一院制を発表いたしております。  そういうことになってまいりますと、世界じゅうの意見、まあ大統領制の国は別でありますが、こういう議院内閣制をとっておるという国においては、そのような憲法ではなかなか憲政の運用が困難を来す場合があると思うわけでありまして、これは憲法改正などそう簡単にできるわけでもありませんし、現に参議院で多数を占めている者が自民党以外の者でありますから、そんなことは簡単でありませんが、これについて、後でも私は所見を述べて解決を考えたいと思いますが、こういう事態についての総理の御所見を伺いたいと思います。
  33. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 国会の、特に衆議院と参議院とのあり方、憲法上の問題を含めての御指摘でございました。  日本では四十何年ぶりと報道されましたけれども、私自身の総理大臣指名のときに、衆議院と参議院との結果が異なり、両院協議会という憲法上の手続に従って再度衆議院の本会議を開いて御指名をいただいたということを私は肌で受けとめております。  しかし、法律問題になってきますと、今委員御指摘のとおりに違った結果が出るだろう。初めから違った結果が出ると私は決めてかからないで、参議院の方で新たな事情はありましたけれども、いろいろな立場を高い次元に立って御理解をいただいて、これは衆議院のために参議院のためにやるというよりも、むしろ政治は国家と国民のためにあるものでございますから、そういった国政が停滞するという混乱を政治家同士の高い次元に立った話し合いによって、討論によって、どこでどのように歩み寄っていき、どこでどのように解決していくかという議会政治本来の原点に立ち返って、与党と野党の皆さんの御協議やあるいは国会における討議や、合意できるところはどこで合意できないところはどこだということをまず明確にしたら、今度はどのようにして一歩前進あるいは二歩改革という努力をするか、その努力をまずすることによって、今御指摘になったような先行きが、見通しが全く立たなくなるような混乱を何とか防ぐような努力をしていくべきではなかろうかと考えますが、御指摘の問題は大きな問題として私も十分記憶にとどめて、どうしたらいいかということもさらにおいおい研究してまいりたい、このように考えます。
  34. 森清

    ○森(清)委員 憲法上の制度がそうなっておっても、今総理申されるとおりそれをする以外に道がないわけでありますから、そういう点についてまだ後にも触れますが、ぜひそういうことで憲政を運用していただきたい、こう思うのであります。  そこで私は、憲法上このようになっておりますが、ということは、結局参議院は六年の任期があり、半数改選であり、解散がない、こういう憲法上位置づけされた参議院というものは本来的に衆議院と異なる機能を目指してつくられたものだと考えるのが、憲法のさらに奥にある考え方だろうと思うのです。したがって、衆議院においては、そのときどきに起こる政治上の問題についてそれぞれ見解を異にする政党同士で争って、多数を占めた者が内閣を組織する、そうしてある決定をしていく、しかしながら参議院は、そういう立場に立って、それを踏まえて、それにさらに別の角度からといいますか、そういう角度からそれの是非を議論する、こういうふうに憲法は予定したものだと私は思うわけであります。したがって、この憲法ができたときに、政府の法制審議会あるいは各界の意見はそういうふうな参議院にするためにどういう選出方法をするかということが非常に工夫されたわけでありますが、結果としては、直接公選制だと憲法にありますからこういうことになって、しかもそれがだんだん政党化が進んで、今や完全に政党化になってきている、こういうことになりますが、憲法の奥底にあるのは、こういう憲法であるならば、衆議院の所期するところと参議院とは違うということであります。今、単に憲法の条文がどうだ、条文にこう書いてあるからできるじゃないか、こういうことではなくして、その憲法の奥にある考え方を私なりに整理して考えれば、先ほど申し上げましたように参議院の機能はおのずと違うのじゃないか、こう思うわけであります。  例えば明治憲法においても、これは明治憲法は、完全に帝国議会と全然別に内閣というものが組織されたわけであります。議院内閣制でも何でもありません。そして、これは参考までにちょっと読み上げますが、帝国憲法発布のときの内閣総理大臣黒田清隆氏の考え方、これは地方長官会議における説示でありますが、「政府というものは政党から超然として政党の外に立ち、至公至正、公正な政治を行うべきものである」、要するに政党政治ではないのだということをはっきり明言しております。憲法の草案をおつくりになられた伊藤博文さん、そのときは枢密院議長でありますが、やはり同じように演説をして、「およそ政党内閣制の行われている国でよい政治のなされている例は極めて稀である」「政府は政党の意向によって動かされてはならない」、こういう考え方で憲法をつくり、そして運用を始めたのでありますが、これはイギリスの議会も同じであります。最初は王の内閣であったわけであります。ところがだんだん政党が発達していって、ついに政党内閣になったわけであります。こういう過程を経てやりました。  したがって、最初のときはそういう超然内閣といいますか藩閥内閣、それが当然の憲法だと言っておったのですが、いわゆる大正の初め、第一次護憲運動です。第二次桂内閣のときに第一次護憲運動が起こって大騒動が起こって、国会に乱入するような騒動を起こした第一次護憲運動というのは何かというと、これは政党内閣をつくれという運動を、そのとき護憲運動、憲政擁護運動と称したわけですね。  その次に起こった第二次憲政擁護運動というのは、これは最初の政党内閣である大正七年にできた原敬内閣が、原さんの暗殺によって、その間、高橋さんがすぐ後そのまま引き継ぎ、そしてさらにその後加藤、これは友三郎の方でありますが、加藤友三郎とかそういう人に引き継いでいって、最終的にはどうなっていったかというと、加藤友三郎内閣、それから山本權兵衞内閣、それから清浦内閣というのは、これは官僚・貴族院内閣で超然内閣であって、それではいけないということでまた第二次護憲運動が起こって、護憲三派、これは政友会が分裂して護憲三派になったわけでありますが、護憲三派運動によって第二次護憲運動が起こった。ということは、憲法では超然内閣でもいいわけでありますが、憲法の奥にあるものはそういうものだということで、それが憲政擁護運動だ、こういうことになってきたわけであります。  そこで、これを我が国の現状で考えれば、参議院というのは形式上には今言ったようないろいろな権限はあるかもしれない、憲法上、条文には。しかしながら、その奥にある考え方は、先ほど総理も述べられたように、また私もこれから主張すると思うのでありますが、そういう個々の政策上の問題については、まず衆議院において十二分に議論をした上で、そうして決定をし、内閣も衆議院のみに基礎を置いておるわけでありますから、その結果について参議院は別の角度からこれを見直したり注意をしたりするという、こういう機能にとどまるのが、これは私は日本の現在の憲法の、いわゆる憲政の常道である、これを昔の言い方をすれば、これこそ護憲運動である、こう思うのでございます。  そういう中にあって、野党四派は税法というものを参議院に提出をした。これは私のそういう考え方からいえば憲法違反であると断定せざるを得ないわけであります。これは条文に反するとかなんとかいう問題じゃありません。要するに、憲法の奥にそのようなものが許されているのか、そういうものなら憲政は運用できないじゃないか、こういう考え方から私はこれは憲法違反と断定せざるを得ないのであります。特に……(発言する者あり)解散をしても、衆議院において同じ構成になれば同じなんです。最初の話をよく聞いてから言ってください。今解散をすればいいと言った、そうするとどうなるか。そうすると参議院の構成、三年間、六年間変わらないものが政局の全主導権を握ってくるでしょう、参議院と同じような構成に衆議院をしてこいということですから。そんなことはもう憲法の絶対予定するところじゃありません。そういうことはとやかく言いませんが、そういうことであります。  特に税法というのは議院内閣制であり、予算の編成権は内閣にのみ専属しているわけであります。そうして予算は衆議院に先議させねばならないし、もし仮に衆議院の決定に対して参議院がどのような異を唱えようと、自動成立をする規定になっている。ところが、税法というものは予算と不離一体をなしているものであります。その不離一体をなしている税法だけ切り離して、先ほど言った憲政の常道からいって、衆議院で議論し決定すべきものを参議院において議論をし決定する、法律の個々の条文、憲法の個々の条文ならやれるじゃないか、こういうことでやるその態度、私は、個々の条文がどうこうではなく、その奥にある憲政というもの、このことを考えて、そのような態度は極めて遺憾とするし、また、これは突き詰めて言えば憲法違反、私は憲法違反と考えますが、そういう点について総理の御所見を伺いたい。これは総理。法制局長官、役人はいいです、総理だけでいいです。
  35. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 ただいま憲法の条文を乗り越えて、もっと奥深いところにある憲法全体の精神というものを委員なりの御判断でお説きをいただきました。私も傾聴いたした次第でありますけれども、現実に憲法というものの存在があって、憲法のもとで我が国も二院制がしかれておるということもまた厳然たる事実でありまして、私が先ほど申し上げましたように、この状況の中でやはり条文を乗り越えて、政治は何のためにあるかといえば国家国民のためにあるわけでありますから、なるべくそれにふさわしい、それに合った結論が出るようにお互いにお願いもし、努力もし、御期待も申し上げる、こう言ったわけでございます。  したがいまして、全くこれは初めての経験でございますし、それからこのことについてどのような解釈をしたらいいのか、これはある視点に立って言えば、委員はこれは憲法違反ではないか、衆議院に最初に出すべきではないか。私どもも率直に個人の願いを述べろと言われれば願いを述べることは簡単でありますけれども、しかし国会は衆参両院のいろいろな立場があり、自主的に立法府でそれは御判断を願ってお決めいただく問題でもあるわけでありますから、行政府としてこの際意見を積極的に申し上げることは差し控えさせていただきますが、委員の御意見は傾聴させていただきました。
  36. 森清

    ○森(清)委員 したがって、きょうのこれは実は政府に対する質問ではなくして、本来ならばそういう提案をした人間に対して私は質問をしたいところでありますが、そういう機会がないわけでありますから、こういうことになりました。  総理に一言だけ申し上げますが、条文を乗り越えてとか条文に反してと言っているのではないのです。これは条文の奥にある精神ということで、精神がそうであるならば、憲法の条文などというのは刑法を判断するようなものではないのです。したがって、先ほどなぜ護憲運動の例を出したかというと、これは憲法の条文は明らかに国務大臣は国会と関係ないのです。ところが、護憲運動、憲政擁護運動とは何かというと、衆議院の過半数を占めた政党の党首が総理大臣になるべきだということ、これを護憲運動、憲政擁護運動というのです。そういう意味のことを言っておるわけでありまして、条文に反してとか条文を乗り越えてではありません。条文の奥にあるその原理に従って行動するということであります。その点は総理大臣として行政の長としてお答えになることはあれでございましょうから、これは私の見解を申し述べておくにとどめます。  そこで、前段が長くなり過ぎましたが、本題の選挙制度に入ります。  選挙制度改革について、総理初め自民党においても非常に積極的な態度をもってこれに取り組んでおりまして、私も長年選挙制度について研究した者の一人として大変喜んでおるのでございますが、まず、我が国の選挙制度の沿革をちょっと申し上げますと、明治二十三年に憲法が施行されたわけでありますが、その前年、二十二年に衆議院選挙法を制定して国会を構成したわけであります。そのときの衆議院の選挙法は、これは世界の大勢に従って、世界の常識に従って小選挙区制でありました。どうしても地理的に分割のできないところがあって、二人区が一部ありましたが、しかしそれは連記制であります。二人とも書くわけでありますから、これは実質小選挙区制であります。二人とも書く、これは連記制であります。  そういうことで始まったのでありますが、これがなぜ現在のような大選挙区、単記、非移譲というふうな制度になったかといいますと、明治三十三年、それまで政府はたびたび提案をいたしましたが、衆議院で否決しておったのです、そういう制度は。それはなぜかというと、政党政治を発達させるためには小選挙区制でなければいけない。そのときの政治情勢というのは、いわゆる自由民権派の流れをくむ立憲自由党、立憲改進党、自由党、改進党といっていたこの勢力が常に衆議院の過半数を占めてまいりました。そうして、ことごとく藩閥政権と対立をいたしておったわけであります。したがって、解散に次ぐ解散でありまして、何回も選挙をやりました。そこで、先ほど読み上げましたとおり、そのときの、憲法発布当時の黒田総理大臣なり伊藤博文さんが、要するに政党に政治を任すわけにいかない、これはやはり藩閥官僚が政治をやるべきである、衆議院はそれに協賛をしておればいいんだ、こういう態度でありましたから、しかしながら、現実には予算を出しても否決を食うような状態になってくるから、政府党、そのころは吏党と言いました。民党と吏党というのがありまして、その吏党を何とかして多く当選させたい。そのためには、一対一で争いますと吏党の方が大体負けます、地元の政党は自由民権派が強いですから。そこで、五人十人の中なら一人二人通るじゃないかということで、それで吏党、政府の意向に従う者をどんどん送り込める制度にしたのが、これが明治三十三年の衆議院の改正であります。  このときも、何回やっても衆議院は常に否決しておったのですが、三十三年のときも、衆議院は修正をしまして、政府提案を小選挙区制に返しました。そして貴族院に持っていったら、貴族院がまた政府提案のとおり返してきた。それで両院協議会を開いて、そして結局政府それから貴族院の力に押し切られて、衆議院が明治三十三年にこのような大選挙区制をとったいきさつがあるわけであります。  その後、大正七年に初めての政党内閣、原敬内閣ができました。政友会であります。この政友会が、当然のごとく小選挙区制に返しました。そして、先ほど言ったように、その後、原敬さんの暗殺などによってごたごたになって、それで護憲三派ということになって、またわけのわからない現在の中選挙区制というものができ上がった。そのときも山県系官僚が非常に強かったわけですね。そういう勢力を小選挙区制によって国会から一掃しなければいかぬ、そういう考えの意図もあって小選挙区制に返した。要するに、政党政治にしなければならないというのが小選挙区制のゆえんであります。  そういうことから考えまして、現在中選挙区制になっておるが、この結果については、もう総理もたびたびお答えになっているように、これは要するに政党政治に非常になじまないし、世界じゅうにないわけで、これは世界じゅうの国にないだけじゃなくて、地方団体、州の選挙にもこんな制度はございません。同じ選挙区で何人か立候補して、そのうち何人か通る、だれに投票してもいい、したがって、同じ政党の者が相争うというこんな制度は、世界じゅうに市町村選挙に至るまでどう調べても一カ所もない。日本だけの特殊な制度でありますが、しかし、それについては今言ったような意図もあり、それにもうなれ切ってしまって今現在に至っておるわけであります。  その最大の欠陥は、今総理も指摘されておりますように、要するに、政党間の政策上の争いではなくして、個人間の争いになるということ。それからもう一つは、これは政権交代の可能性を非常に小さくする。  例えば、現在、今までは自民党が大体衆議院選挙においては五〇%台の得票率、社会党が十何%、二〇%足らずというようなことで、しかしながら、二〇%でも五人のうちに一人は入るとか三人のうちに一人は入るから、社会党や公明党も議席を得てきたわけですね。ところが、社会党がそういうことで五人のうち一人しか立てておらないものですから、訓練されておらないといいますか、そうすると、この前の選挙のように、全国区においては自民党を圧倒して得票率は高い、地方区においても連合を足せば自民党を圧倒しているわけですね。それだけあるから、少々下がるとしても、自民党と同じくらい候補者を立てて堂々と争って過半数をとるだけの得票力は持っておるわけですね。ところが、今までやっておらぬものですから、一人のところを二人立てたら共倒れしはせぬだろうか、二人のところを、二人は普通はおりませんがね、そういうことでよう立てない。今現在でも百四十人しか公認候補は決めてないわけです。これに公明党が六十人弱、民社党はまだ三十人ぐらいですか、それから社民連何人か足してみたところで二百三十か四十ですね。全員当選したって政権はとれっこない、こういうことにならざるを得ない。そうしたら、百八十人立ててみたところでとれっこない。(発言する者あり)これからでもいいです。それをやったらいいですよ。それで、すぐ解散しろと言っているのですが、すぐ解散してそういうことができるのかどうか知りませんけれども、それはよろしい。不規則発言はやめなさい。あなたに答えることはない。  そういうことになるのはなぜかというと、中選挙区制だから、共倒れするからなんです。これは、私はそういうことを言うなら簡単な例を出しますと、柔道や剣道で十人ずつ出して、一人一人やって六人勝ったらそのチームが優勝だという試合があるとき、我々が優勝するんだと言って、たった四人しか選手を出さない。四人全部勝ったって、四勝六敗で負けなんですね。負けだとわかって試合に出ているようなもので、これはおよそ憲政の常道に反するわけです。だから、そういう選挙制度。中選挙区制というのはそうなんですね、やむを得ない点があるのですね。  これが小選挙区制なら、自民党は五百人立てますね、それから社会党も五百人立てられるわけですから、しょっちゅうそれで立てて争っているのですから、いつひっくり返るかわからない。一つも共倒れしない。そういう選挙です。要するに党内で争う、自民党にとってはです。社会党や公明党は党内で争いませんが、自民党、政権党は党内で争って人が減るようになっている。それから、野党からいえば、要するに共倒れを恐れて政権をとるだけの候補者を立てることができない。一遍政権を握って三百近い議席をとった政党は、少々減ることはあってももう下支えがあるわけですね。向こうは通らないのですから、自民党は自動的に通るわけですから、こっちが勝つとか負けるとか関係なく。こういうような選挙制度になっているということを考えて、私は選挙制度は抜本的に改革をすべきであると思うのであります。  これも総理に答えろといってもちょっとあれでございますから、そこで、私の持論である選挙制度はどうすべきかということについて申し上げます。  選挙制度というのは、世界にいろいろな国があり、いろいろありますが、選挙をやって決めるということについては人類の英知がいろいろ働いて、およそ世界に大体類型ができてきまして、その類型は小選挙区制か比例代表制しか現在ありません。それ以外の制度はあり得ないということであります。そこで、比例代表制というものが成立している国及びその運用の状態、小選挙区制の国の状態というものも、要するにどういうふうな投票があり、どういうふうに結果が出、そしてどういうふうに政局が動いていくか、全部私は、詳しくはありませんが調べられる限り調べまして、そして我が国の現在の実情というものを考えて、小選挙区制が我が国の選挙制度としていい、比例代表制はふさわしくないという結論に達しました。  その理由を簡単に申しますと、比例代表制が成立するには、これは政党というもの、個人じゃなくてもう政党に投票するんだ、あの政党に任せよう、こういう意識が国民に定着しなければ、この比例代表制というものは十分機能しないのであります。これは明治以来、要するに政党がありましたが、個人選挙を積み重ねてきたものですから、まだ国民の間にあるいは我々自身にも、政党選挙になじんでおらない。そういう段階で比例代表制を入れたならば、国民の意思というものと実際の結果というのは非常に違ってくるのではないか。そういうことを考えて、最終的に将来比例代表制がいいならそれでいいのでありますが、私はやはりこの際は小選挙区制にしなければならない、このように考えるのであります。  そこで、小選挙区制というのはどういうことかといいますと、これは一選挙区で一人を選ぶのでありまして、原理は、民主主義の原理である過半数で物を決めようじゃないかというその原理であります。過半数で決めた者を選出しようということでありまして、一人を選ぶということは過半数を選ぼう。  この小選挙区制ができたイギリスでは、大体二大政党であったわけですね。まあ二大政党というか、政党というのは非常に変遷がありますから、単純に二大政党とは言えませんが、そこで二人しか立候補しないから、そうして選挙をやればどっちかが過半数になるわけですから、それでいい。しかし、過半数で物を決しようというときに、三人以上立候補者があれば、過半数に達しない者でも比較第一位になる。これをその地区の代表とするのはおかしいということで、過半数をとっていないわけですから。そこでこの小選挙区制を導入した一八四八年に、ドイツとそれからフランス、大体同時期に近代議会ができて、それで選挙制度を導入しました。そしてイタリーはおくれて一八六一年に入れましたが、すべてそれは小選挙区制でやるが、党がたくさんあって立候補者が同じ選挙区におるものですから、これは過半数をとる者がおればそれで当選を決めますが、いなかったら大体上位二人ということで決選投票すればどっちかが過半数になるわけです。これは総理大臣を選ぶときにも同じなんですから、そうなっているわけですね。それが民主主義の決定方法。要するに、小選挙区制に一回投票制と二回投票制があるんだという議論をよくしますが、そうじゃなくて、小選挙区制の決定方法というのは過半数で決めるんだ、民主主義の原理で。過半数で決めるときに三人以上おれば、そう二回投票せざるを得ない、これは物の原理であります。  そこで私は、小選挙区制というのは、我が国ではそういう状況になっているわけでありますから、もう当然のごとく二回投票制でなければならない、このように考えてそれを提唱しているのでありますが、これについて総理の御所見をちょっと伺いたいと思います。
  37. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 私は、政策論争本位の選挙ができるようになることは非常に望ましいと個人的な考えを申し上げておりました。それから、今委員おっしゃいましたように、いろいろな制度、仕組みのあることも、私もよく研究をいたしておりますけれども、今ここでどれがいいということを決めるところまでは行き届いておりませんが、小選挙区の二回投票制で過半数を求めるということは、少なくとも死に票というのでしょうか少数得票を全部無にしないで、二度にわたって住民みんなの意見を聞きながら、あくまで過半数を選出基盤の数にする。面倒という言葉がありますけれども、その選挙民がどちらを選ぶかという選択の自由もありましょうが、全部そういったことをひっくるめて選挙制度を議論するときは考えていかなければならぬ貴重な御意見である、こう受けとめさせていただきます。
  38. 森清

    ○森(清)委員 それでは、そこで多少具体的にどういうことになるか。二回投票するのは面倒だと言う人もおりますが、そうなればオーストラリアでやっている一回投票制、そのときに、その人間がだめならおれは二番目にはこの人がいいという優先順位つき投票制というものもありますから、それはいろいろ工夫することがあると思うのですが、単純に、要するに三〇%もとったらおれは一番だからその選挙区を代表するんだというこの制度は、私は民主政治の原理からしてこれはおかしい、そういう現実がほとんどないところはいいのですが。  というのは、私はそういうことで実際に選挙区をつくってみまして、どういうことになるかということを試算をいたしておりますが、これは六十一年の衆議院選挙の結果を、複数自民党が出ておりますから、複数出ている人の票は全部その人に集まるという前提で、多党化している地域、しかもそういうことが分析できる地域は大阪市内とそれから福岡県しかありません。というのは、あそこは政令市でありますから、行政区ごとに得票結果が出ておりますから、それしかできないわけであります。  そこで、具体的に定数を割り振って小選挙区をつくって、前に自民党に投票した者は全部自民党に投票する、こういう前提でやりますと、まず大阪市内でありますが、これは死亡繰り上げは別にしますと、現在は自民党四人、社会党一人、公明党三人、共産党三人の十一名でありますが、私の定数配分によると十二名になるものですから、十二の選挙区をつくってその計算をしますと、大阪は自民党が弱いといっても全議席自民党が独占であります。これはもうそうなるのですね。自民党が三〇、四〇%といっても、次の政党が二〇%なら、それは負けっこないわけです。そういうことで全議席自民党が独占いたします。  そのときに、仮に二回投票制のときに社公民が合同すれば二回目のときどうなるか計算しますと、自民党が四で、社公民が八になります。それぐらいに逆転する、大阪は自民党が弱いですから。その次に共産党までそれに入れば、自民党が二人になって、社公民共が十人、こういうことになる。  福岡でそれをやりますと、現在は自民党九人、社会党四人、公明党四人、民社一人、それからここは社民連が一人出ております。共産党はゼロであります。それで十九人でありますが、私の配分では二十人になりますが、これで単純小選挙区をやると、この二十人を全議席自民党が独占いたします。これはできないのです、選挙区、まあつくってもいいですが、圧倒的に自民党の強いところはつくってももう全部なるのは当たり前なんですね。だから、自民党の弱いところ、多党化しているところで計算しました。  これを二回投票制にしますと、またさっきのように、社公民に社民連が合同しますと十三対七になるわけです。自民党が十三で向こうが七。それからさらに、共産党が向こうに入りますと、今度はこっちが、自民党が七になって、向こうが十三になる。こういう結果になるということは、これは要するに第一党の得票率と第二党以下の得票率に差があるとどうしてもこうなる。それはそのとおりだと思うのですよ、比較多数で通るのですから、どんなにちょん切っても。  社会党に非常に強力な方がおられる兵庫二区、土井委員長と堀先生ですね、おられる兵庫二区でお二人の票を出して、それから自民党の人の票も出して、どの開票区、市町村ですね、どの開票区を見ても、その社会党の票が自民党を上回っている市町村は一つもない。全部自民党が勝っているのですから、どういうふうに小選挙区をつくっても、それはあの兵庫二区においても全員自民党が通るであろうと私は思うのであります。これは前の選挙、六十一年の選挙結果で、今は別でありますけれどもね。  そこで、これはおもしろい数字があるのですが、ドイツは比例代表で投票させて、それと別に小選挙区をやる。そこで、バイエルン州という州がありますが、これはキリスト教社会同盟の州であります。ここは比例代表制でキリスト教社会同盟が五五%とっているわけです。それから社会党が二七%、約半分の得票率。これは大体自民党と社会党、社会党はもっと弱いですけれどもね、今日本では、もうちょっと下。こういうことになりますと小選挙区制ではどうなっているかというと、実際の選挙結果ですよ。これは四十五の小選挙区全部キリスト教社会同盟が独占しております。それだけ差があったら、もう当然独占しているわけです。  それから、もう一つ例を出しておくと、バーデン・ベルテンブルク州は、これはキリスト教民主同盟が比例代表で四七%の得票率があって、社民党が二九%、こういう得票率でありますが、このときに小選挙区制ではどういうふうになっているかというと、三十七の小選挙区のうち、キリスト教民主同盟が三十七のうち三十六とっている。一議席だけ落としている。だから、第一党と第二党の差がそれだけあると、ほとんど単純小選挙区をやると全議席独占になるわけです。  そこで日本の場合、今度は別として、六十一年の選挙を前提にして考えますと、仮に四百七十にしようと、今は五百でありますが、全議席ほとんど自民党が独占することになると思います。そうして、ただ、選挙でありますから、一割くらいは落ちる人がおるかもわからぬというようなことになって、こういう選挙制度は私は選挙制度としてとるべきではない。それは、選挙制度というのはやはり民意が公正に国会に反映する、そしてしかも政局が安定的に運営できる、だから選挙のルールは公正であるということでなければ選挙制度として的確性を欠くから、世上言われている単純な小選挙区制ですね、この選挙制度は私は日本の現状においてはそぐわない。  ドイツでもフランスでもイタリーでも、そういうことだから二回投票制にしたわけですね、三党以上あるから。だから当然にこれは二回投票制でなければ、単純なる小選挙区制を導入したのでは、これは恐らく野党の方はだれ一人賛成する方はおりませんし、また自民党としても、九割もとるようなそんな国会構成をするような単純小選挙区で決めるということは、私は問題がある。これは私としては反対せざるを得ないし、そしてまた、先ほど二回投票は面倒だといいますが、フランスが二回投票を現実にやっておりまして、私もこの間調べてきましたが、投票率は二回目の方がもちろん上がっております。大体一回投票のときに決まるのが二〇%くらい、あと八〇%の人は二回投票に臨んで、そして投票率が上がってそれぞれ議席が決まっていく、こういう実情にありますので、ぜひこの小選挙区制ということには、一回投票と二回投票という制度が二つあるということでなくして、二つしか政党がなくて、それが仮に拮抗している二つの政党ならば一回で決まりをつけてもいいが、そうでなければもう二回投票をするのは世界の常識であり、選挙制度の常識であるというふうに考えるのでありますが、その点について感想をひとつ、結論じゃなくて感想で結構でございますから。
  39. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 先ほど申し上げましたのも、私自身が各国の小選挙区制というものを見たり聞いたりしながら受けてきたときの感想を率直に申し上げさしていただいたのでありまして、要するに二回投票制は手間がかかるからいけないとは決して私も申し上げてもおりませんし、思ってもおりませんが、そういったことに関する国民の皆さんの合意と、それからいろいろな政党の力の配分関係からいって、日本のような特殊な政党の現在の存立基盤とか得票率のいろいろな数からいきますと、今、森委員御指摘になりましたような結果に対する大きな変動もある。したがいまして、自由民主党の政治改革大綱の中でも単純な小選区制だけを議論されておったんじゃなくて、そのときには、例えば比例代表の問題とかいろいろなこともすべて含めての御議論をなさったと私は理解をいたしております。ただいま政府としては、予断と憶測でもって将来のことを断言するのはいかがかと思いますし、選挙制度審議会にもそれらのことも踏まえて御検討をお願いし、急いで来年の三月ごろまでには抜本改正への答申もいただきたいとお願いしておる最中でございますので、感想はこの程度で御勘弁をいただきます。
  40. 森清

    ○森(清)委員 そこで、総理のお言葉の中にも小選挙区に比例代表制というものを考えていくというお話がございましたが、これについて私の見解を述べます。  小選挙区・比例代表制というようなことを言って、西ドイツはそういうことだと言っている人がおりますが、先ほど申し上げましたように、これは比例代表制です。それから韓国もそう言っておりますが、これは小選挙区制です、細かいことは別としまして。  そこで、今自民党でも一部言っている人がおりますが、昭和三十年代から四十年代にかけて政府の選挙制度審議会がいろいろな案をつくって、最終的にまとめた小選挙区・比例代表制と称する案が二つありまして、併用案と併立案であります。これはいかにももっともらしいことを言っておりますが、私はこれは選挙制度としては成り立ち得ない、確かに今奇妙な案と言っておりますが、これは全く奇妙な案であります。これはとるべきではないと思います。そのゆえんを申し上げます。これは全然選挙制度として成り立たない案であります。あのときなぜあんなものが選挙制度審議会で答申になったのか私は理解に苦しむのでありますが、これはこういうことであります。  要するに、大体五百人と仮にいたします。何人でもいいのですが、それをまず併立案を申し上げますと、その半分あるいは六割を小選挙区で、あとの半分ないし四割を比例代表制でやって、県ごとにやるというのですね。そうすると、今大体県が四十七でありますから、平均が十人ですね。ところが、東京や大阪みたいなのがありますから、大体の県は六人とか七人なんですね。三十くらいの県が六人か七人なんです。そうすると、それの半分というと三人とか二人なんですね、比例代表というのが。比例代表というのは十人ぐらいおらないと、十人おったら一割の得票率を持っておる者は一議席とれるわけです。五人の比例代表をやれば、二割の得票率を持たなければ一人の議席は得られないわけです。三人ならば三割の得票率を持たなければ一議席をとれない。そうすると、三人、四人の比例代表制ということは、もう今現実に当てはめれば自民党が三人独占か自民党と社会党ということになってしまって、大体公明党、民社党、共産党は一〇%以下の得票率しかないわけでありますから、だから十人以上あってようやっと一議席とれるかどうか。十人以上の県なんというのはわずかしかないわけであります。こういうことになっている。それは比例代表という名前をつけているだけであって、比例代表ではありません。比例代表というのは得票に比例して議席が案分されるということでありますから、少なくとも普通の政党、例えば民社党、共産党は大体五、六%でありますから、二十人くらい以上の定数ならばそれは比例代表と言えるでありましょうが、三人や四人のもので比例代表ということにこだわっているのは根本的に問題がある。こういうことに一つ大変な問題がある。  それから、もう一つの併用案というのは、西ドイツ式をまねたようになっておりますが、西ドイツ式は全国でやりますからこれは調整できますが、県ごとにやりますから、そうすると超過議席がどんどん出てくる。全国でやっても、大体の県は十人以下ですから、これだって比例代表制の原理が働かない。その上に、例えばある県で比例代表で四人しか通らなかった。しかし六人小選挙区を通るか、あるいは小選挙区制を六割、七割にすれば、そうするとその調整の仕方が、西ドイツの場合はそれは超過議席を認めるのですが、そんなことをすると大変混乱するから、あるいは小さいところで超過議席を認めるということは比例的にもなりませんし、その調整の仕方が非常におかしな調整の仕方をするものですから、投票の結果と議席とはでたらめになってしまう。こういう基本的な難点があって併用制もとることができない。  私はそういう意味で、小選挙区・比例代表制と称して、小選挙区制を基本とするが比例代表制を加味してそれを調整するのだということは、これは事実上不可能である。まず第一に、小選挙区制は単純過半数でありますから、何割とろうとほとんど自民党が独占してしまう。五割なら五割をほとんど独占してしまう。そして比例代表制でも、自民党が第一党でありますから、三分の一なり四分の一はとるわけでありますから、もう圧倒的に自民党が、この六十一年の選挙では五割の得票率を持っておるわけですから、五割の得票率で八割、九割の議席率になる、どの方法をとっても。そのような選挙制度というものは私はとるべきではない、このように思うわけであります。  そこで最初に返りますが、私は小選挙区制というものを、どうしてもこれはいい、そこで、それは理の当然として、論理の当然として二回投票制でなければならない。これは総理もたびたび行政府としてお答えになられないようですから、あと二つほどやりたいのですが、時間がございませんので次へ進みたいと思います。  総理も何かの機会に、今の選挙制度について、イギリスの腐敗及び違法行為防止法というものが一八八三年にできましたが、そういうものをひとつ取り入れたいというようなお考えでありますから、私も全く賛成でございます。そこで、ただ世上これも誤解されていることが非常に多いのでありますが、まず一つここに私はたまたま文章を持ってきておりますから、ディズレーリ自由党内閣のときでありますが、一八八三年に成立した法律でありますが、一八八一年に政府が提案をいたしております。そのときにタイムズの社説がございます。その社説によると、「これによって選挙のやり方に革命が起こる。このくらい厳しい法律でないと、鼻もちならぬ腐敗選挙を根絶することはできない。今までの法律では、違反した者のごく一部分しか有罪にならないし、裁判がのろかった。全く違反することができないようにする必要がある。」こういう評論をタイムズが掲げ、世論を喚起いたしましたが、私はこの評論は現在、日本に全くそのとおり当てはまるのではないか、このように考えるのであります。腐敗防止法は現在もちろんイギリスの選挙法、国民代表法にそのまま引き継がれております。  そこで、世上非常に間違っている点があるのですが、これは罰則が非常にきついんだという評価をしておる。その罰則を入れなければならないということを言われますが、これは間違いでありまして、罰則は日本の方がきつうございます。細かいこといっぱい罰則を挙げております。だから十二分なほどできている。特に抜けておったのは、今回公職選挙法を出しておりますが、その寄附行為の禁止の罰則、あのところが抜けておっただけでありまして、罰則は日本の方が行き届いております。だから、罰則強化なんというのは、寄附行為禁止に罰則をつけたこと以外は私は必要がない。罰則はもう十二分過ぎるほどついておるわけであります。  それでは、どこが違ったのか、どこにイギリスの腐敗防止法と日本の選挙法の違いがあるか。それを入れなければ入れた意味がない。もう罰則は入れてあるわけです。日本の衆議院選挙法というのは一八八八年にやりました。イギリスは五年前に成立しておりますから、条文を比べてみますとイギリスの腐敗防止法の翻訳であろうと思います。ほとんど表現が似ております、明治二十二年の衆議院選挙法の罰則は。それぐらいきちっと入れております、罰則は。  違った点は大きく言って二つあるわけであります。  一つは、これはだんだん判例や何かで重なっていったか最初からそうなっておるか私もそこまで詳しくは……。判例で重なっていった点もあるわけでありますが、日本の場合はいわゆる連座制というものがあります。連座制というのは、本人が本来責任を持って、そして本人が知り得べき状態にあってやるのだけれども、形式的には立証はできぬが、あれは本人に違いないということの範囲で連座制というものが働いておるわけであります。ところがイギリスの腐敗防止法は、これはそうじゃなくして、およそ日本的に言えば、もう時間がありませんから法律用語は使いません、簡単に言いますが、イギリス流というのは、日本のいわゆる我々の言う運動員、この人が買収、供応等をやれば、それはその人が運動員であるということの立証と、それが買収、供応をしたということがあれば、本人が失格します。そして、それから七年間公民権停止というか立候補禁止であります。したがって本人がそれを指揮したとかなんとかいうことの立証は要らない、こういうところまできつくなっておるわけであります。そこが根本的に違うわけであります。  そして、あそこは二つの政党が争っておりますから、お互いの監視をしておるわけであります。したがって、違反があればすぐ、後でもう一つ言いますが、訴えるわけです。そこで、今度行って調べてみましても、この違反事件というのは最近二件しかなかった。二件は、印刷費をどこかに発注したのがちょっと安過ぎたのじゃないかというのと、テレビ出演したのが違法じゃないかという二件だけが裁判になっただけで、あとはもう根絶しております。  私も行って各議員や政党に聞きまして、夢のような選挙だなと思ったのですが、クリスマスプレゼントをしていますかと言ったら、いや、それはしています。だれにするのですかと言ったら、うちの家族と選挙事務所におる秘書二人にやります。一般の人にやらぬでいいのですかと言ったら、そんなことは議員たるものができるはずがないじゃないですか。また一般も求めない。結婚式に呼ばれて行くでしょう、どうするのですと言ったら、結婚式に一般の有権者が来てくれなんて言うはずがないじゃないですか。こういうことなんで、一般の人に物を出すとかいうようなことは一切ございません。したがって、それを出したら全部選挙費用に重なりますが、選挙費用は、日本みたいに告示も何もありません、ずっと全部選挙運動期間でありますが、大体日本円で一人が百万円とか百五十万円とかその範囲であります。そういうことになっておりますが、そこまでやはり腐敗防止もいっているわけですね。  そこでもう一つの点は、もう一つ違うのは、日本の場合は、ある違反をした人間は警察が捕まえて、そして検事が起訴して裁判をしてやる。これは罪刑法定主義。しかも故意、犯意を必要とするという非常に厳格な、刑罰を科するわけでありますから、非常に厳格な裁判制度に従って認定されていくわけであります。したがって時間もかかりますし、なかなか警察はそうたびたび捕まえません。それで、私の実感からいっても選挙違反の九割までは逃れているのじゃないかとすら思うわけでありますが、そういうことになっております。ところが、イギリスはそうじゃない。これは日本で言う選挙無効訴訟でありまして、有権者であればだれでも訴訟できる。だから、具体的に言いますと、A候補の運動員、この運動員の某氏がレストランへ行って有権者と食事をしておった。そのレストランの支払いはあれがしたということが証明されれば、運動員であるかどうかの認定は、その人がA候補と一緒に歩いておった、選挙で歩いておった、あるいは選挙演説をするときに前語りの演説をしたとか、そういうことが一方で立証され、その人がレストランの支払いをしたということだけで、本人が飛んでしまう。ここまでいっているわけですね。お互い全部監視しておりますから、落選した方の候補はすぐ、だれでもいいですから有権者がやるということです。だから、裁判が起こらないのは、だれもそういう違反はしておらない、こういうことであります。したがって、英国の腐敗防止法を入れるということについては、罰則の強化は必要ない、これは入れてあるわけです。  あと問題は、そういう意味で本人の指揮監督でないものであっても、向こうが自発的にやったことであっても、本人に及んでくる、これはエージェントと言っております。エージェントの認定については判例でずっと積み重ねておりますが、そのことと、それから裁判手続は、要するに刑罰を科したものじゃない、これは当選無効訴訟によって有権者がだれでも出訴をできる。しかも一審であります。国会議員の場合は高等法院だけ、これだけで決まってしまう。こういう制度になっておりますから、もう違反をするような事態は絶対起こらない。  これがイギリスの腐敗防止法でありますから、総理もせっかくイギリスの腐敗防止法をひとつ勉強して入れたい、こうおっしゃるのですから、その二点を含めた改正について、政府においても、我々も、私も議員立法でこれをやってもいいと思って要綱もつくっておりますが、政府においてもこれをひとつ御検討願いたいとお願いする次第であります。その点だけちょっとひとつ。
  41. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 最初にお断りさしていただきますけれども、ただいま選挙制度審議会に抜本改正を諮問中でございますから、予断と憶測で物を言うことは差し控えさしていただくべきですが、せっかくの御質問でありますから、私のこの間申し上げましたことについての御質問でありますので、私の気持ち、考え方を率直にお答えさしていただきます。  それは今、国会に出してあります公職選挙法も、出の方に罰則がないから、いろいろ決めてあったことが守られなかった、ですから、寄附行為の禁止ということも余り罰則で縛るのはよくない、一人一人の政治倫理の確立で行われるべきだ、それは当然のことなんですけれども、本人の決意だけではどうしても、ここから先も言いにくい話ですが、中選挙区制の現状から見ますとそれもしなければならぬという、背に腹はかえられぬ実情等もあることもよくわかりますので、皆ひとしく守るように、ちょっと十八世紀的ですが罰則が加わってくる、こういうことであったと思います。  さらに一歩進めますと、そういった刑事罰とか罰則よりも、議員としての公の活動をそこでできないようにするというのが腐敗防止法のときの背景にあった措置でございますから、そういったことまで決断をしなければならぬ。刑事上の犯人にするのじゃなしに、議員としてのお休みを強制することになるぞ、だからそれは踏み込んではいけないよという物の考え方につながると思います。私はそういうことだと思って、そういったことをこの間うちは申し上げた次第であります。
  42. 森清

    ○森(清)委員 時間がなくなりましたので、要約して、最後の私の考えと、総理の御見解を伺いたいと思います。  これは、いわゆる定数是正、定数是正と言っておりますが、もっと端的に言えば、一票の価値の平等の問題であります。先ほど申し上げましたように、明治二十二年に衆議院選挙法ができて以来、明治三十三年に大改正があり、次の大改正が大正八年の小選挙区制、その次の改正が大正十四年の改正、それから昭和二十年の改正、昭和二十二年の改正、これだけ大改正をしましたが、その昭和二十二年の改正に至るまで、選挙区のつくり方はもう完全に人口平等でございました。したがって、あんな選挙区をどこにどう、どうしてああいうふうにつけかえたのかということを調べますと、それはこうつけかえなければ人口平等に反するということで、どの選挙区も完全な人口平等を明治二十二年から昭和二十二年までやってきたわけであります。  その後は、御存じのとおり人口変動に応じて変わったのですが、余り十分じゃない。例えば、東京は人口の一割以上になっておったにもかかわらず、昭和二十年近くまで空襲と疎開によってうんと、五、六%減った。したがって、同じ定数でも東京は昭和二十年のときは大正十年のときよりかうんと減ったのですね、定数は。そういうことがある。人口に完全に平等してやったのです。ところが戦後は、人口異動があったにもかかわらず、それを十分やらなかった。三十九年にやったのは、人口の平均の上下三分の一だから、二倍以内におさめようということでやったわけですね。その次、昭和五十年にやったのは、平均の一・五倍を超えているところだけで、下はもうほっておけということでやった。それから六十一年は、三倍を超えるところを中へ入れてやった。こういう微温的なことしかやっておりません。しかし、憲政始まって以来、昭和二十二年までは完全に人口平等でやってきたということをひとつ御記憶願いたい。  それから、外国はどうか。これも完全に人口平等で、それ以外のことを考える人がおらない。日本のように、二倍あっていいじゃないかとか三倍あっていいじゃないかという議論をする人がいない、そんなことは理の当然として平等であると。だから、二倍以内にしたいという議論がありますが、これは発想が間違いであって、二倍を超えたら憲法違反になるとかいう議論ならいいけれども、二倍以内ならいいということじゃない、これは当然に平等なんだ。しかし人口がどんどん変化するのに毎年毎年変えるわけにいかぬから、ある一定期間、十年なら十年たてば開いていくけれどもそれは認めよう、あるいは選挙区をつくるとき市町村単位でやりますから、ちょっとでこぼこいくと一年三倍になったりするかもわからない、それはいい。しかし、本来は平等でなければいかぬ。今度選挙区をどう割るにしても、客観的にやれといったって、人口平等以外の基準で、この選挙区は人口二十万に一人、この選挙区は三十万に一人でもいいよ、どうにでも選挙区をつくってくれといってもできるはずがない。完全平等以外にあり得ないことなんです。  外国もそうやっている。ドイツなんかは法制化もしているし、イギリスも法制化している、人口平等。アメリカは裁判が難しいですから本当にもう完全に人口平等にしている。こういうことを原則としてひとつお考えになって、これは現在の中選挙区制であろうと、あるいは比例代表制にしようと小選挙区にしようと、その原理は変わらないわけでありますから。  国会というのは国民が主権を持っておって、その主権を行使するために国民の一定の割合に応じて出てきて国会を構成しているわけですから、主権を行使するために出てきている人間に、主権を行使するのに過疎地域では過疎地域でない人間の三倍の発言力があってよろしい、二倍の発言力があってよろしいなどということはどこから先も出てこない。国権の最高機関として法律を決め、まあ防衛出動を命ずるとか命じないとか、こういうのは全部それでやるわけですね。そのときにある地域の人間の発言力が二倍あるなんということは考えられないことですね。国会は、過疎対策審議会ならそれをやってもいいと思いますが、過疎対策審議会じゃないわけであります。これは主権を行使する場所であります。主権を行使する場所に、一票の価値に不平等があってよろしい、二倍までならいいじゃないかという議論は絶対に成り立つ議論じゃありません。完全平等でなければならぬが、ほかの事情によって開いている事情がある、時の経過等ですけれども。それによって開いていっても、もうこれ以上はいけませんよという限界をどうするかというのが二倍論であったり三倍論であったりするわけです。  その点をよく踏まえていただいて、次からこの選挙区をつくったりするときは、二倍以内ならいいじゃないかというような議論じゃなくして、完全平等、私は、民主主義国家そしてその主権の行使を任された国会の構成にそれ以外の制度はあり得ない、こう考えておりますが、時間が来ておりますので、これを最後にして、もし総理がその点について御所見がございましたらお伺いをして、質問を終わりたいと思います。
  43. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 いろいろ貴重な御意見を承りました。選挙制度審議会から答申をいただきましたら、そのときに今の御意見等を十分参考にして我が方の対応も考えさせていただくとともに、各党各派においてもこの意見を参考にして合理的な適切な結論をお出しいただくように、国会の問題として御期待をさせていただきます。ありがとうございました。
  44. 中尾栄一

    中尾委員長 これにて森君の質疑は終了いたしました。  次に、保利耕輔君
  45. 保利耕輔

    保利委員 私は、当面する農政の問題について、総理大臣並びに各大臣に御質問を申し上げたいと思います。  去る七月二十三日に行われました参議院の通常選挙、我が党は残念ながら多くの議席を失ったわけでございますが、その原因としてよく言われる中に、政治に対する不信、それから消費税の問題、これと並びまして農政に対する問題点が挙げられておるわけであります。  そこで、この政治不信という問題、大変私も深刻に受けとめておるわけでございますが、現在そのために政治改革に関する法律案が国会に提出をされておる、これができるだけ早く成立をするということは喫緊の課題だと存ずる次第でございますけれども、しかし、私自身は実は、政治家というものはできるだけ自由でなければならぬ、余り束縛をされるということは自由な政治活動ができなくなるという面の心配、懸念を若干持っております。あれをしてはいけない、これをしてはいけないということを政治家に課するのではなく、政治家のみずからの政治的な倫理性といいますか、自主的な倫理性というものをしっかり確立をして個人個人の政治家が政治に取り組んでいくことが大事なんじゃないか、このように思っておるわけでございます。  なぜならば、政治に対する信頼というものを回復いたしませんというと、例えば農政で言われておりました自由化に対する問題あるいは米の値下げの問題、これは非常に御批判をいただくわけでございますが、これに対して私どもがいろいろ説明をしようといたしましても、政治家そのものが信頼をされないというような状況の中ではなかなか説明がしにくいわけであります。おまえたちは何だということで、説明をまともに聞いていただけないというようなことになってはいけませんから、やはり政治姿勢というものは常に正して事に当たらなければならないなということを、私はこの参議院選挙の中で痛切に感じておるわけでございます。  ところで、とりざたをされておりましたいわゆる農政不信という問題でございますが、これは自由化決定、牛肉・オレンジにつきましては平成三年の四月から行われます。それから、オレンジの果汁については平成四年の四月から行われるわけでございますけれども、この自由化決定の問題が一つある。それから、米価の引き下げ、五・九五%下げ、さらに翌年は四・六%下げるというようなことがございましたが、こういった問題に対しては私どもはきちんと説明ができることだと思っております。  しかしながら、私どもが選挙前、選挙後ずっと日本各地を回りまして対話をしていく中から、ある共通項として、現在日本全国、北は北海道から南は九州、沖縄まで農業が抱えている問題として、農家のいわゆる負担金問題あるいは負債問題というものが根底にあるな、どうしようもない、やるせない気持ちというのが一部の農家の中にはあるように私は見受けたわけでございます。  例えば一例を申し上げます。九州のミカン産地、これは自由化の打撃を受けるであろうところでございますけれども、ミカン産地の中のある町のある集落、三百戸ばかりの集落でございますが、ここで六百四十ヘクタールのミカン園をやっておる。三百戸の農家がほとんどミカンの農家であります。そしてそのミカン農家ができるだけ合理的な、そしてまた生産性の上がるミカン生産をやろうということで、県営の畑地帯総合整備事業というようなものを導入いたしまして、約六十億円を投入いたしまして山の上の方に約二十カ所ほどの小さなプールをつくる。それから配管をいたしましてスプリンクラーでミカンに水をやる、そういう施設を約六十億円をかけてやるという事業をやりました。三百戸の集落であります。  ところが、これがもう大体完了に近い時期になってまいりまして、六十億の中の農家の負担金約十三億にかかわるところの金利というのが毎年かかってくる。これが大体九千万円ほどかかってまいるわけであります。三百戸の農家で九千万円負担をするわけでございますが、県がこれに対しては若干の補助をいたしております。金利補給をいたしまして四千万ほど出しております。したがって、金利だけで五千万の負担をしていかなければならない。三百戸の農家であります。しかも一年でございます。  ところが、ミカンの売れ行きが悪くなる、単価が下がる、そこで返済能力というものがなくなってくる。したがって滞納がふえてまいります。滞納がふえてまいりますとどういう現象が起こるかというと、その土地改良区の理事が困りまして、自分で農協に行って滞納分を借金をしてくる、自分の判こで、理事の、責任者の判こで借金をしてくるわけでございます。ですから、借金が借金を呼んだような形になって、しかもミカン情勢というのが悪い、そこへ自由化というものが来た。ですから、いわば途方に暮れているわけでございますが、事業完了とともにいわゆる元本の返済もしていかなければならない、同時に県の四千万という金利補給も事業完了とともに打ち切られることになっております。したがって、もうおれたちはこれはどうしようもないんだ、山の中でありますから、ほかに何かやろうと思ってもできる所ではない。そういうようなものが、今一例を申し上げましたが、日本全国に広がっておるわけでございます。そういうところからやはり農政に対する不信というものが生まれておる。  そこで、まず農林大臣にお伺いをしたいのでございますが、こういった問題については、やはり負担の軽減というものをしてやらなきゃならない。そして農家が、総理も言っておられますように、明るい展望を持った農政をやれるようにしていかなきゃならないということで、この抜本的な対策を日本全国各地の規模でやらなきゃならないと思うのでございますが、農林大臣の御所見をまず伺いたいと思います。
  46. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 土地改良事業のいわゆる農家の負担金の軽減の問題につきましては、私も今日全国を回っている中におきまして非常に深刻な問題として、何とかしてくれという強い要請、要望、あるわけであります。  そのような中で、この問題に対処するために、土地改良の事業費の単価の抑制なり、あるいは基幹かんがい排水事業の創設などの国営事業制度の改善なり、国営事業における償還期間の延長と償還方法の改善なり、あるいは負担金の支払いを円滑にするための融資措置など、農家の負担を少しでも軽減をしたい、いろいろな施策を講じてきているわけでありますが、さらに、ただいま申されたとおりに、最近における厳しい情勢の中で、土地改良の負担金の償還が困難な場合も考えられる、このようなことから、私どもといたしまして負担金問題につきましてプロジェクトチームを設けまして、今日、全国で土地改良事業がなされておりますが、五千五百カ所ございます。実態、どのような状況にあるのか、まず調査検討いたしまして、そして明らかにした上において対策を確立していきたい、このように考えておるところでございます。
  47. 保利耕輔

    保利委員 プロジェクトチームをつくって対策を考えていただいているということでございます。まことにありがたいことでございますが、これにはやはり財政当局の御支援というものが欠くべからざるものだと思っております。参議院選挙のときに幹事長として大変立派な采配を振るわれた今の大蔵大臣橋本先生は、このことについてどのような御所見をお持ちになっていらっしゃるか、伺いたいと思います。
  48. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今、具体的なお尋ねの中身につきましては農水大臣から御答弁がありましたので、恐らくそのプロジェクトチームの結論がまとまり次第、何らかの御相談があろうと思います。これに対して誠実に対応していきたいということを申し上げます。  ただ同時に、今委員が提起をされました一例、これは一つの象徴的な例でありますけれども、同時に私どもとして今考えなければならないことは、農業の世界においても我々は高齢化社会への対応というものを考えなければならないということであります。現在、六十歳以上で後継者のない農家が全国に六十一万戸あると言われております。これからこの方々が何年農業をお続けいただけるのかわかりません。しかし、その方々が農業から引退をされるとき、それらの農地が農業を続ける意思のある若い方々に引き継がれていかれなかったとすれば、これは大変なことであります。となれば、円滑にその農地が生産を続ける意欲のある方々に引き継がれていかなければなりません。そのためにも今御指摘のありましたような問題、こればかりではなく、一つずつを我々は解決していかなければなりません。  問題として、私は決して政府が今までこうしたものに手を抜いてきたとは思いませんけれども、必ずしも十分にそれが機能していない現実は随所に見られるわけでありまして、私は、こうした視点をなお一層推し進めながら農水省を中心にいろいろなことを考えていただきたい。財政当局としてもこれに真剣な対応をしてまいりたい、そのように考えております。
  49. 保利耕輔

    保利委員 大変前向きなお答えを大蔵大臣からちょうだいいたしましてありがたく存じております。  実は、この問題は県にとりましても大きな問題でございまして、今申し上げました一例は県営でありますから、県もかなり責任を持ってこれに対処をしなければならないという立場であります。  そこで、県を指導していただいております自治省としてもいろいろと御支援をいただかなければならない。自治省が県を支援をしていただく、そして県はそういった農家を支援をするという形をぜひつくっていただきたいと思うのでございますが、この点について自治大臣の御見解をお尋ねをしたいと思います。
  50. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 保利先生、ただいま農家の皆さん方の当面する重要な問題に対して非常に御心配になり、またその将来展望のための基盤整備、その農家の負担、これについての大蔵大臣に御質問があり、大蔵大臣の答弁がありました。国の方でそういう問題について措置していただく、こういうことになれば、当然これとよく相談して地方公共団体でも協力すべき問題を検討してまいりたいと思います。
  51. 保利耕輔

    保利委員 ぜひ大蔵、自治両省にこのことについて真剣にお取り組みを願いたいと存じます。  そこで、このミカンの問題で、オレンジの自由化が決定したのにあわせましてかんきつ園地再編対策事業というのを起こしまして、これの助成金というものを出すということをお決めをいただいたわけでございます。ところが、この自由化によって打撃を受け、それのために園地を整理をしていくということの助成金に対して、通常でございますれば税金が当然かかってくるわけでございますが、全国各地からこれについて免税措置をぜひお願いをしたい、減税と言っておりませんで免税という陳情がたくさん来ております。これはなかなか難しい問題だろうと思いますけれども、似たような問題としては、水田農業確立助成金、これに対しての補助金、これに対しての減免措置があるわけでございますけれども、稲、水田の場合とミカンの場合と違いますところは、ミカンの木というのは不動産であります。不動産を切ってしまう。ひところチェーンソーの音が山にこだまをしておりました。非常に、何ともいたたまれないような気持ちでございましたのですが、この不動産を始末をするということに着目したことも考えられるんじゃないかということでございます。現在、これは私どもの党の中で論議をいたしました。果樹振興議員連盟からもぜひひとつ検討してくれというお話が私のところに来ております。  ところで、これの検討状況について、これは農林省の担当からでも結構でございますが、お答えいただきたいと思います。
  52. 松山光治

    ○松山政府委員 お尋ねの問題につきましては私どもにとりましても大変重要な課題である、このように認識をいたしておるわけでございます。これが取り扱いに当たりましては、助成単価がお尋ねの転作の場合に比べましてかなり高額であるという事情もございますし、まさに御指摘のございましたように、農家の方が長年にわたって育ててきた木を伐採する、しかもそれは償却資産であるという特殊な事情があるわけでございまして、こういったことを勘案いたしますと、少なくとも水田転作以上の減税措置を講ずる必要があろう、免税は難しいと思いますが、そういう基本的な考え方のもとに、関係方面とも相談しながらその具体的な取り扱いについて今鋭意検討を急いでおるという状況でございます。
  53. 保利耕輔

    保利委員 全国各地から陳情が寄せられております。ぜひとも温情のあると申しますか、前向きの答えを引き出していただくように御努力をいただきたいと思います。これは、大蔵省御当局にもお願いを申し上げておきたいと思います。  次に、総理は過日の本会議におきます施政方針演説で、農業問題にかなり長い部分を割いて言及をいただきました。その中に、今、農政に求められているのは、農業が自立できるように確固たる長期展望を示すことという一項が入っております。そこで、長期展望ということでございますが、これはなかなか詰めていくと難しい問題ではあります。たまたま昨日、農政審議会の需給見通し小委員会というのが開かれまして、「農産物の需要と生産の長期見通し」という試案が示されたと伺っております。そういう中で、かつて昭和五十五年に「農産物の需要と生産の長期見通し」というのでこういうパンフレットが出まして、これは閣議決定をされております。昭和六十五年の需給見通しを立てております。それで、これは長期見通しでございますから当たっているものもありますし当たっていないものもあります。  そこで、農林大臣にお伺いをしたいのですが、五十五年に策定をいたしましたこの見通し、これの評価をどういうふうに大臣はしておられるか。さらに、次の計画、つまり平成十二年、紀元二〇〇〇年を見通した計画、今、農政審議会で御審議を願うはずでございますが、その策定状況について御報告をいただきたいと思います。
  54. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 昭和五十五年に策定されたものにつきましては、この見通しはミカン等の一部の品目におきましては見通しと実績に大きな乖離が見られるわけでありますが、そのほかの品目につきましては、おおむね見通しに沿って推移いたしていると考えております。  それから、どのような状況になっているかということにつきましては、ただいま保利議員の方からお話がございましたとおりに、農政審議会の需給見通し小委員会を設けまして今作業を進めてきておるわけでありますが、これまで八回小委員会を開催いたしまして、総論的な議論を終えまして、現在具体的な見通し、数値の検討に着手をいたしておるわけであります。今後、小委員会での検討を重ねまして、本年中には策定をいたしたい、このように考えております。
  55. 保利耕輔

    保利委員 長期見通しということになりますと、いろいろな経済計画について経済企画庁がいろいろな計画をしておられるわけであります。私は、長期見通しといいましても余りそれを固定的に考えるのはいけないのではないか。つまり、何をどのくらい生産をするのかということを決めるためには、何がどのくらい食べられるのか、何がどのくらい売れるのかという需要の把握というのがまずある、それから生産のための設備投資が行われ、生産が行われ販売が行われるというサイクルが一つございます。そういったことに着目して考えますならば、その生産というものをきちんとやっていく、農林水産省がよく言われることでありますが、需給の動向に即した生産ということになりますれば、需給の動向というものをしっかりつかむということが必要なんじゃないかと思います。しかしながら、昭和五十五年につくりましたこの計画というものは、見直しが公式にはされておりません。そのままになっておりますから、例えばミカンの見通しなんというのは、非常に大きな見通しになったままであります。こういうものは適時見直しをしていくべきだと考えるわけであります。  経済企画庁におかれましては、いわゆるローリング方式といって、毎年毎年かあるいは二年に一度かというような形で見直して先々を見通していく、そういうような手法をやっておられると思いますが、生産を安定してやっていくためには、需要の見通しというものをきちんと立てるためにやはり同じような手法を導入すべきだと私は思っておるわけでございます。台風の進路でも、あるところに来てまたその時点で予測を出す、また台風が動けばその次のその時点でまた次の予測を出すというふうに、時々刻々需要というものは変わってくるものだと私は思っておるわけでございます。そういったことについて、経済の専門家でいらっしゃいます経済企画庁長官に、どういう御所見をお持ちかお伺いをしたいと思います。
  56. 冨金原俊二

    ○冨金原政府委員 やや技術的な問題になりますので、私がかわってお答えをさせていただきたいと思います。  先生御指摘の問題は、私ども計画をつくります際にしばしば議論になるところでございます。特にどういう局面で議論になるかと申しますと、特に経済社会の情勢が非常に大きく変わる、見通しが必ずしもつきにくいときに固定的な計画をつくることについては問題があるのじゃないか、ローリングプランでやったらどうかという御議論はよく出てくるわけでございます。  一般的に申し上げますと、先生御承知のとおりですけれども、今ローリングプランのメリットというのは、状況の変化に刻々即応しながら適切な数字を考えられるのではないかという点でございますけれども、これは長所はまた短所である面もございまして、しょっちゅう数字が変わるということになりますと、その結果として、政策スタンスが安定的でないのじゃないか、あるいは今そう言っていても次にはまた変わるのではないかというような疑問を持たれますと、計画自体の信頼性が損なわれるという面もございまして、結局、いろいろ議論するのでございますが、私どもの計画についてだけ申し上げますと、議論をしながら、結果としては計画期間が大体五年間くらいでございます。ということもございまして、期間を一年ずつ延ばしていくという形のローリングプランは計画ではとられていないというのが実態でございます。しかしながら、具体的にどう判断すべきかということになりますと、計画の目的とか内容とかあるいは期間、長さでございますね、あるいは環境の変化をどう判断するかということによってどちらをとるかということを判断するしかないのではないかというふうに考えております。
  57. 保利耕輔

    保利委員 私は、農業の需要の見通しというものを必ず一年ごとのローリング方式でやれと言っているわけではありませんで、きちんとした需要の把握を常にしておくということは安定した生産を続ける上で必要なのではないかという趣旨の御質問を申し上げたわけでございます。  例えば、この昭和五十五年につくりましたものでも、内外の経済情勢は流動的な状況が続くと予想される、したがって、今後この見通しと実績の推移を適時検討し、必要な場合は弾力的に見直すという条項が入っているわけでございますけれども、これが実際は見直されていないでこのまま出しっ放しのような形になっている。しかも、それが権威ある閣議決定という形になっているというのはやはり何かまずいのではないかと思いますので、適切な見直しをやっていくということを考えていただきたい、こういうふうに思うわけでございます。  そこで、次の問題に移らせていただきますが、最近この予算委員会でも取り上げられております穀物の自給率という問題について少し議論をさせていただきたいと思います。  ここに「ポケット農林水産統計」というのがございますが、それの自給率の項目を見てみますと、三種類の自給率が書いてございます。よく議論をされますいわゆる穀物自給率、昭和六十二年の数字で三〇%、これはここにも書いてございます。しかし、その一つ上を見ますと、主食用穀物自給率というのがあります。つまり人間が直接口で食べる穀物の自給率というのが書いてある。これは六八%と書いてあります。さらに食用農産物総合自給率というのがございまして、これは七一%と書いてあります。これだけ三つの自給率があるのでありますが、世間では、一番最初に申し上げました穀物自給率だけが取りざたされている嫌いがある。  そこで穀物自給率というのをつぶさに検討いたしてみますと、三〇%という数字でありますから、分子と分母の関係で三〇%という数字が出てくるはずでございます。そこで私なりにわかりやすくお話を申し上げさせていただきますれば、米は約一千万トン、完全に自給をしておる。一千万トンの生産があり、一千万トンの需要がある。そして、麦は約八百万トン。これはえさも含んでおりますが、八百万トン、大麦、小麦ございます。そのうち、国産でできるものは約百万トン強でございます。さらに大きなものとして、いわゆるトウモロコシとコウリャンがございます。これは一〇〇%輸入と言っていいと思いますが、これを両方足しますと、二千万トンという数字になるわけでございます。米が一千万トン自給、二千万トンのえさが輸入、そして麦の大宗が輸入ということになりますれば、これは大体三〇%ぐらいの比率になっていくわけでございます。  そこで、この三〇%の穀物自給率を上げようとするならば、米を動かすわけにはいきませんから、えさをどうするかという問題になってくるわけでございます。えさのトウモロコシ、コウリャンの二千万トン、米の生産量の実に倍であります。それをどうするかという問題になってまいります。  いろいろな説がございますが、えさ米を導入をしてはどうかというお話があります。しかし、今トウモロコシの輸入価格が幾らであるかというのを農林水産省に調べていただきました。トウモロコシの輸入価格は、CIF価格で昭和六十三年の数字が一万七千四百三十一円であります。これは一万七千四百三十一円トン当たりと言ってもわかりにくいのでありますが、一俵当たりは幾らかといいますと、千四十五円という計算が出てまいります。約千円でトウモロコシが輸入をされている。この千円というものを念頭に置いたえさ米の生産が果たして可能であるのかどうか、これは非常に難しいのではないかと思います。かなり財政負担をして、仮に六千円とか七千円とかで農家におつくりをいただいても大変な財政負担を伴うことになる。これを国民それから消費者の方々に許していただけるだろうか、こういう政策をとっていった場合。私はそれはなかなか説得が難しいことだなと思っております。コウリャンはもう少し安うございます。  そういうことでございますので、もし仮にえさ米を導入いたしましてえさが高くなるということになりますと、日本の畜産というのはやっていけなくなる、あるいは輸入の安いえさが入ってこなくなると日本の畜産というのは衰退をしていかざるを得なくなり、そして肉の需要がそのままでございましたら、どうしても輸入の方の肉がふえてくるということにならざるを得ないわけでございます。したがって、このえさ米の導入というのは、畜産業を一体どうするのだ、それから、この穀物自給率を上げるという問題は、日本の畜産業をどう考えるかという問題と密接な関係がありますから、そこのところの整合性のある御説明がないと、この問題は私どもとして理解することができない、このように考えておるわけでございます。  えさ米、前に大蔵大臣がおっしゃっておったと思いますが、面積が日本では足りないという問題もあった、同時に、価格は私が今申し上げましたとおり、極めて安いえさが入ってきているということでございますので、この点について農林水産大臣、どういう御所見をお持ちであるか、お聞かせをいただきたいと思います。
  58. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 今申されたとおりに、我が国の食生活の大きな変化によりまして自給率も変わってきたわけであります。穀物自給率がなぜ三〇%になったのか、今日そのような状況にあるのか、るる保利議員の方から説明があったわけでありますが、私どもといたしましては、そのような今日までの状況を、なぜこのようなことになったか、そしてまた今日のいろいろな問題点も含めまして、国民の理解を得ることができるようにあらゆる機会を通じて努力をしていくことが大事なことではないか、こんなふうに認識を持っておるところでございます。
  59. 保利耕輔

    保利委員 今大臣からもお話がございましたけれども、この自給率を上げるということはそう簡単なことではないという認識を私どもは持っております。自給率を上げるということは、私どもはこれは必要なことだと感じておりますが、現実的な政策問題としては、そう簡単に自給率を上げるということは、いろいろとあつれきを生じますし、バランスのとれた、やはりいろいろな角度からよく検討をしなければならないものだと思います。しかしながら、えさ米について検討をするということについては、そのことについてはやっていかなければならないことではあるというふうには考えておるわけでございます。  そこで、次の質問に移らせていただきます。次は、いわゆる米をめぐる問題について少し質問をさせていただきます。  まず、この予算委員会あるいは本会議等でもしばしば出ることでございますが、米の自由化問題というのがございます。過日ある全国紙で、「コメ開放策年内に」という大きな見出しでトップ記事が出ました。これは日本の生産者に対しては本当にショッキングな見出しであります。「コメ開放策年内に」、これはヒルズ通商代表が語っておることを見出しにされたわけでございます。いよいよ日本も米の開放策について年内に何かやらなきゃならないのかなという印象を持つ記事でありまして、私は非常にこれは心配をいたしておりました。  ところで、しばしば内閣総理大臣国会で言明をしておられますが、この大事な日本の米、特に日本の水田耕作というものは、単に米という商品をつくっているだけではないんだ、国土保全であるとかあるいは環境維持だとかということに水田は極めて役立っております。今、稲刈り前の田んぼへ行ってみますというと、黄色い稲穂が頭を垂れております。すばらしい日本の風景であります。こういったものを維持をしているのは水田耕作にほかなりません。  また、私もときどきこれは例を引かせていただくのでございますが、日本の水田面積は約三百万ヘクタール、今減反をいたしておりますから、植えつけは、作付は二百万ちょっとでございますが、三百万ヘクタールの水田、このあぜの高さというものは、農林水産省に調べていただきましたら全国で平均して二十七センチであります。水田にあぜというのがありまして水がたまるようになっている、そこは二十七センチのあぜ道があるわけであります。そこにすり切りいっぱい水がたまったら一体何トンの水になるのか計算をしてみますというと、八十一億トンという水になります。つまり、八十一億トンのダムの役割というものを水田は果たしているわけでございます。非常に大きなものだと思います。しかも、ダムのようにお金はそんなにかかっていない、しかも日本の水というものを供給している一つの大事なことである。  さらに、水田というものは、私は非常にいいと思うのですけれども、米には連作障害というものがございません。そこで、狭い土地で毎年毎年繰り返し生産をするのには米というのは非常に適した作物でありまして、日本のように土地の狭いところでは連作障害のあるものよりも、こういった水田というようなものを大いに利用して米を大いにつくっていただかなければならないということでございます。  そこで、そういう大事な役割をいたしておる米というものを守っていかなければならない、あるいは水田耕作というものを守っていかなければならない、これについて総理の御決意、自由化の問題も含めまして御答弁をいただければありがたいと存じます。
  60. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 所信表明のときにも私は申し上げましたように、第一には、戦後、食糧の極めて窮乏したときに国民のために土を耕し続けてもらった、あるいは水田に入って主食確保に御努力願った農家の方々に対する感謝の気持ちを基礎にして現在の農政に取り組まなければならぬ、私は申し上げたとおりでございます。そして、将来に対する希望と申しますか、魅力のある農村が誕生してくるようにどのようなことをしたらいいのか。今農林省でお答えがあったように、長期の需給と自給力を高めていく努力をいろいろ計画作業中でございますけれども、それよりも、今お触れになった農村というものの持っておるいろいろな多目的的な存在、そういったものに魅力を持ってもらうためには、農業としての農村だけを考えるのでなくて、その農村が暮らしやすい環境が生まれるとかあるいは農村にも文化が及ぶとか、いろいろ多面的な政策をそれぞれ行っていかなければならぬということも重要な目標の一つ考えております。  しかし、逆に考えてみますと、これは保利委員十分御指摘と思いますが、今世界で栄養のバランスという面からの食生活の問題もいろいろ議論されておる。日本型の米を中心として野菜とか魚介類に頼る栄養のバランスというものはすばらしいのではないか、そして、パンと芋と脂肪とお肉に頼るのはどうも偏りがあるのではないかというようなこと等もいろいろな情報として承っておりますと、私は自信を持って米の需要の拡大ということも考えていっていいと思うし、また当然考えるべき問題ではなかろうかと思うわけです。  私は、そういった意味日本の米というものに対する考え方、農村の考え方、農村が果たしてきた役割というものをすべて総合的に考えながら、魅力のある希望の持てる農業に導いていかなければならない、基本的にはこう考えております。  具体的にお米のことについてお触れになりましたが、お米のことは、言うまでもなく衆参両院での米の自由化反対に関する決議等もございます。私はその御趣旨を踏まえながら、米は国内産で自給するという基本的な方針で対処をしていくということを私の基本として考えて、これを本会議等でも申し上げ続けてきたわけでございます。
  61. 保利耕輔

    保利委員 そこで、米をめぐる問題については、国際間で問題になっていることについては現在ガット・ウルグアイ・ラウンドで交渉がされておる。それを意識してか、「コメの開放策年内に」というようなことで、この新聞に出ているようにヒルズさんも何か言っておられるということでございます。  農林大臣にお伺いいたしますが、ガット・ウルグアイ・ラウンドで現在どういうような状況であるか、これについて御所見を伺いたいと存じます。
  62. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 本年四月のウルグアイ・ラウンド貿易交渉委員会の中間合意におきまして、食糧安全保障というものを含む今申されたような貿易政策以外の要因も議論の対象となることが、私どもの粘り強い交渉の結果盛り込まれたわけであります。これを踏まえまして、食糧安全保障、国土環境保全といった農業の果たす大変重要な役割を十分主張しつつ、交渉に臨んでいきたい、こういうふうな考え方でございます。  また、九月の農業交渉グループ会合におきまして、食糧安全保障の観点から、海外依存度の高い食糧輸入国におきましては、基礎的食糧に関しましては所要の国内生産水準の維持を図る必要があるということなど、我が国の基本的な考え方を提示をいたしました。さらに詳細の提案を提出すべく検討を進めておる、こういうふうなことであります。
  63. 保利耕輔

    保利委員 ガットにおきましてはジュネーブの波多野大使も大変頑張っていただいて、今農林大臣からお話がありました食糧安全保障という観点からの御主張を強くやっていただいておる、大変ありがたいことだと思っております。  ところで、一つ外務大臣にお伺いをいたしたいのでありますが、国際交渉をやっておりましていろいろ気がつく点でありますが、どうもアメリカの政治制度日本の政治制度がちょっと違う。それは、日本は御承知のように議院内閣制であります。アメリカは大統領制をとっております。したがって、アメリカの中ではどうも議会とそれから政府との間の関係がぎくしゃくしたところがあるのじゃないか、あるいは意思疎通がうまくいってないところがあるのじゃないか。したがって、政府代表を相手にして交渉をしておるというと議会から何かとんでもないところから横やりが入ってくる可能性がある、そういう状況になっていると思うのであります。かつてFSXの問題が論議をされました。そのときにも日本の防衛庁と向こうの国防省との間でいろいろ取り決めたこと、それと議会の意向というのは必ずしも一致してなかった。総理もカーメルにおいでになったときにこの問題を議論して、もう少しやはり議会に対する工作というものを大いにやらなければいけないのじゃないかということを感じたわけでございます。  たまたまガットのウルグアイ・ラウンドという場で米という日本人にとって非常に大事なものが交渉されているというときでございますから、この交渉相手がどういう性格を持っているのかということをよく踏まえた上で交渉に当たりませんと間違ってしまうということがあろうかと思います。この点について外務大臣の御所見を伺います。
  64. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先生御指摘のように、アメリカの行政府、議会の関係と、私ども日本政府と議会の関係とでは相当大きな違いがございます。御案内のように、議院内閣制をアメリカの場合とっておりませんし、予算を含めてあらゆる法案は議員の提案権が憲法によって確保されておる。こういう状況の中で、ただいま政府を代表するアメリカの大統領は共和党の大統領であり、上院、下院の議員の過半数を占めるのは民主党である。こういう状況の中で、これから明年にかけて日米間でいろいろな問題が協議されると思いますけれども、やはりこの民主主義議会制度をとっている両国の間で、この仕組みの違いというものを当然踏まえながら、政府政府間で、また議会と議会との対話が極めて重要であるというふうに私は認識をいたしておりまして、私、就任直後に来られましたアメリカのアマコスト大使に対しても、ぜひひとつ、両国の理解、相互信頼を深めるためには両国の議会の議員の十分な話し合いをする場を両国がそれぞれつくっていくことが極めて大切であるということを申しております。  以上のような考え方を持っておりまして、議会は議会同士の話し合いを真剣にやらなければならない、このように存じております。
  65. 保利耕輔

    保利委員 この点については、議員外交を大変尊重して積極的に推し進めていらっしゃる海部総理大臣、御所見がございましたらお伺いをしたいと思います。
  66. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 私は、十数年前になると思いますが、OECDのDACの加盟国国会議員会議というのに初めて参りまして議員同士の話し合いをしましたときに、お互いにまだ知らないことが多いなということを肌に感じまして、それ以来機会あるごとに議員の立場で議員外交といいますか一生懸命交流をさせていただきました。今年の五月にも、保利先生のお供をしてカーメルで三日間合宿をしていろいろ議論をしてきたことを思い出しますし、また、ヨーロッパの国々ともいろいろ議論をさせていただいております。極めていい経験であり、極めていい勉強であり、またそれらの方々が言ってくる問題が時々相互の議会の中において、お互いの問題を政府間じゃなくて何か国会、議会同士で解決するような御努力や背景が生まれてきておるということは大変貴重な出来事だと思いますので、これは大切に育てていきたい問題だと私も考えております。
  67. 保利耕輔

    保利委員 ありがとうございました。  それでは次の質問に移らせていただきます。  水田農業確立後期対策、これをそろそろ決めていかなければなりません。前期対策におきましては、御承知のように七十七万ヘクタールを計画をいたしました。ことしの実績といたしましては、八十四万ヘクタール減反をしていただいたわけでございます。しかしながら、全国各地ではもうこれ以上減反はできない、無理だという声が非常に多うございます。  ところが一方で、年間の米の需要の落ち込みというのは非常に大きゅうございまして、昭和六十二年の需要の落ち込み量というものは十五万トンであります。十五万トンというとどうもぴんとこないのでございますが、大分県の一年間の生産量がちょうど十五万トンであります。大分県の生産量の分が需要が落ち込んでいる。これは面積にいたしますと、約三万ヘクタールという数字になります。こういう現実がある中で、生産調整をしないということは、これはもう米の管理をごちゃごちゃにしてしまうことになりますから、やっぱり需要に見合った生産というものをきちんとやっていくためには、水田農業確立の後期対策というものをきちんとやっていかなきゃならないなと思っております。  しかし、面積をどうするかという問題についてはこれからまた議論をしていかなければならないわけでございますが、まず、需要がこんなにおっこっちゃった、一年間で十五万トンも減ったということについて農林大臣はどういうふうな御所見をお持ちになっていらっしゃるか、あわせて、この米の需要拡大という点について農林水産省としてはどういうふうに取り組んでおられるか、この二点について農林水産大臣の御所見を伺います。
  68. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 ただいま先生の御質問の中で米の需給動向といったようなものについてお触れになりましたので、事務的に私の方から簡単にお答えさしていただきたいと思います。  米の一人当たりの需給の問題の原単位になります消費量でございますけれども、昭和三十七年の百十八・三キロをピークにいたしまして毎年減少を続けております。六十二年には、先ほど先生が触れられた点に関連するわけでございますが、七十一・九キログラムと、二十五年間で約四割の減少、三九%の減少という大きな数字になっているわけでございます。もちろん、この減少のテンポでございますが、五十年代あるいは六十年代、いろいろさま変わりでございます。五十八年から六十年の三年間に一%を切ったというような、これで減少が下げどまりかと言われたような点もございましたけれども、六十二年におきましては二%の減少という状態が示されているわけでございます。  この消費の減退の要因ということでございますけれども、この二十五年間に国民所得の水準が向上いたしまして食生活の多様化が進行しております。それによりまして畜産、油脂類の消費量が増加したということが主要因であったというふうに考えております。  今後の米の動向でございますが、食生活の面での洋風化といったようなものがこのまま続くといいますか、あるいは若い人たちが将来の人口の主体になっているということになりますと、引き続き減少傾向を維持していくのではないかというふうに思われます。特に六十二年度の数字は、畜産物あるいは牛乳、今まで停滞ぎみでございましたけれども、骨粗鬆症といったようなものによく効くとか、あるいは三・五%の乳脂肪分がふえたというようなことからふえたということになりまして、米が逆に減退したという状況でございます。  簡単でございますが、御報告いたします。
  69. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 今日、今お話しのとおりに八十四万ヘクタールも減反をしてもらっておるわけでありまして、このような状況が続くということになりますと、なかなか明るい展望が開けてこない、何とかしてこの米の消費減というものに歯どめをかけたい、こんな気持ちでおるわけであります。  そこで、やはり米というのは大事な我が国の主食でありますから、大変おいしいんですよ、栄養にもすぐれておるんですよ、健康にもいいんですよという正しい知識をこれからも一層啓発していかなければならないのではないかな、こんな認識を持っております。  そこで、今日までもいろいろと米の需要拡大、努力をしてきたわけでありますが、ここで改めて新しい展開を図っていきたい、こんなようなことから、米を中心としたところの日本型食生活というものをつくっていってもらいますのは特に若い女性の方々であります。そのような意味から、若い女性の方々を対象としたところのヤングレディー・ライスクッキング・コンテスト、このような企画もさせていただいておりまして、若い人たちを対象とした、より一層米というふうなものに正しい知識を持ってもらう、米は大切な、大事な主食なんだ、こんな認識を持っていってもらう。そして、そのほかに、やはり料理の専門の方々、トップの方々にも集まってもらって、料理サミット、このようなこともこれからやっていきたい。そのことによって一層新しいこれからの、何遍も申し上げますけれども、米を中心とした日本型食生活をきちっと確立をしていく、こんなようなことの重要性を認識をして、米の新たなる消費拡大に一層努力をしてまいりたい、こんなふうに思っておるところでございます。
  70. 保利耕輔

    保利委員 今ヤングのお話が出ました。そのヤングのまたその下のヤングの皆さんには学校給食というのが行われているはずであります。その中で米飯給食というのを盛んにやっていただいておる。目標としては週三回やっていただくことになっておりますが、現在、全国平均で見ますというと二・三回になっております。しかし私は、大都市の子供たちに対する米飯給食率というのが非常に低いということを懸念をいたしております。ちなみに、これは大変申しわけありませんが、大阪、神奈川、東京というような三カ所でとってみますと、一・何回というような数字しか出てこないのであります。  こういった大消費地の子供たちに米の味を覚えていただく、これは非常に大事なことだと思いますし、日本民族本来の主食でございますこの米の味というものを子供のときから親しんでもらいたいな、私はそういう願望を持っております。学校で米を食べさせれば、うちに帰りましてから、お母さん、御飯炊いて、という声が出てくるんじゃないか、そういう感じがいたします。さらには、子供には決して量だけ上げればいいというのではなくて、米はこんなにおいしいんだよということで良質米を上げるということも必要だと思います。  この点について、文部大臣、学校給食の責任者でいらっしゃいますので、御所見を伺います。
  71. 石橋一弥

    ○石橋国務大臣 お答えを申し上げます。  今委員御指摘のとおり、学校の米飯給食、平均して週二・三回であります。これを何とかして三回まで、一週間五回の給食でありますから、三回ということになりますとまあまあ半分以上のところまでいくと思います。でも、一回やっても五万トン、週三回ということになりまして十五万トン、その数は微々たるものでありますけれども、いずれそのお子さん方が大きくなり、そしてお米に対する郷愁というものを持つようになっていくと思います。  御指摘のとおり東京、大阪等はまだ平均値までいっておりません。そうしたことをでき得る限り努力をいたしまして、たとえ〇・一でも、たとえ〇・二でもこれを進めていきたい、こう考えております。関係省庁の御協力をお願いを申し上げまして、どうしてもこれをやりたいと思っておりますので、よろしくお願いを申し上げます。
  72. 保利耕輔

    保利委員 学校給食の問題についてはいろいろ障害もあるのだろうと思います。米飯給食がやりにくいとかいろいろな問題があるのだろうと思います。しかしながら、米という大事な日本の民族の主食でありますから、ぜひ子供さんたちには米にもっと親しんでもらうように文部大臣としてもお力をいただきますようにお願いを申し上げます。  実は国土庁長官、厚生大臣にもお伺いをしたいと思っておりましたが、時間が迫ってきてしまいました。大変申しわけございませんが、質問は割愛をさせていただきたいと存じます。  ただ、私は国土庁の長官にぜひ聞いておいていただきたいということがございます。それは過密過疎の問題でございますが、私、たまたま調べてみました。過密といいますから人がいっぱい住んでいるところでございます。人口の多い順に都道府県を並べてみますと、東京、大阪、神奈川、愛知、埼玉、これがベストファイブでございます。この五つの県で人口がちょうど四千万人であります。ところが、これは面積を調べてみますというと、日本三十七万平方キロの中でちょうど四%であります。日本の国土面積の四%の中に四千万人の人間、三分の一の人間が住んでいる。こういう状態というのは極めて不自然であるというふうに私は思います。国土庁におかれましては、地方の振興策、いろいろ講じていただいておりますが、やはり人口分散をいたしませんと土地の問題その他いろいろ出てまいります。そういう意味国土庁長官にひとつぜひ御尽力をいただきたい、このように御要望だけ申し上げておきますが、国土庁長官、では御所見を伺います。
  73. 石井一

    ○石井国務大臣 御要望だけということでお答えする必要はないのかもわかりませんが、国土庁は、国土の均衡ある発展、多極分散型国土の形成、まさに保利委員御指摘そのものを推進しようといたしておるわけでございます。これまでもろもろの事情で必ずしもそうなっておらない、特に過疎の問題等々いろいろ問題がございますが、今後その線に沿いまして各省と連携をとりながら努力したい、そう考えております。
  74. 保利耕輔

    保利委員 あと食品衛生の問題がございますが、これは割愛させていただきます。  そこで、最後に総理にお伺いをいたしたいと思います。  私は、実は議員になります前に二十年以上精密機械工業の分野で仕事をしてまいった者であります。いわば工業の最先端の中で仕事をしてきた。ところが、どういうわけか、私は今農業を一生懸命やっておるわけでございます。そこで、その違いというもの、工業と農業の違いというものがよくわかるような気がいたします。  私なりにいろいろ整理をしていますが、例えば、まず農業はおてんとうさま商売だとよく言われますが、日照については必要であるのと必要でないのと。それから農業には季節性というのがあります。ある季節にしか物ができないということ。それから生産時間というものは、種をまいてからでき上がるまでこれを短縮するということは、現在の技術ではちょっと大量生産をやるのは不可能であります。それから生産コントロール、途中で何かほかのものに変えるということができない。あるいは、これは非常に大事なポイントでありますが、需要の総量の伸びというのが期待できないということであります。人間が二千五百キロカロリーというものをとっておりますと、何か食べれば、おなかいっぱいになったらほかのものは入らない、そういう分野のものであります。あと、農産物というものは保存がやりにくい。それから非常に大事なのは、何といっても人間生命維持に直接重大なかかわりを持つものだと思うわけであります。  そこで、こうした農業というものは、御承知のように農業というのは毎年毎年同じことを繰り返していくわけでございます。したがって、農業の体質として余り急激な改革というものはなじまないという性質を持っております。したがって、急激な改革をやろうとするとどうしてもあつれき、摩擦が生じてくる。これは、農協自身も実はこういうパンフレットをつくりまして、「二十一世紀を展望する農協の基本戦略」というものをきちんとつくって生産者みずからも取り組んでいるわけでございますけれども、しかしながら、農業というものはほかの工業とは違って急激な改革というものにはなじまないと思うわけでございます。  そこで、改革は必要であるが、やはりこれは徐々に徐々にやっていくものである。一つの目標を持って徐々に徐々にやっていくものである。さらに、我々この日本列島に住んでいる民族が、将来もこの日本列島で日本人がきちんと住んでいくためには、食糧の生産基盤というものはしっかりしたものにして、そして子孫にこの食糧生産基盤というものをつないでいくということが将来の日本の繁栄につながるものだと思います。そういう意味において、総理大臣の農業に対する、農業が非常に重要なんだというその位置づけについての御所見をお伺いして、私の質問を終わらしていただきます。
  75. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 保利委員の長い間の農政にささげてこられた情熱とそれから御経験と、今いろいろ承りました自分の生活体験から踏まえての農政に対する御意見は、私も全くそのとおりだと受けとめさせていただきました。そのつもりで頑張ってまいりますので、どうぞ御理解と御協力をお願いいたします。
  76. 保利耕輔

    保利委員 ありがとうございました。
  77. 中尾栄一

    中尾委員長 これにて保利君の質疑は終了いたしました。  次に、古賀誠君。
  78. 古賀誠

    古賀(誠)委員 古賀誠でございます。  私は、本日、お許しをいただきまして、今国会継続審議になっております年金改正法案を中心に許された時間で質問をさしていただきたいと思います。  その前に、大変恐縮でございますが、私ごとで恐縮でございますが、私は、実は二歳のときに父親を戦場で失っております。日本の国全体が大変貧乏だった時代でございまして、恵まれない人たち、社会的に弱者の立場の中で育ってまいりましただけに、そういった痛みを人一倍理解できる一人だと思っております。私が政治を志しました原点は、そういう意味日本の国のみならず世界の国の恒久の平和であり、また弱者の人々たちに日の当たる福祉国家の建設、こういったことが私の政治を志した原点でもあるわけであります。  幸い、我が国は、戦後四十三年、大変な国民の皆さん方の額に汗する努力によりまして、世界で恐らく類のない自由の満喫のできる平和な国づくりができたと思っております。また同時に、経済的にも物質的にも繁栄を見ることができました。もちろん、ただいま申し上げましたように、全体の国民の皆さん方の努力の結晶でありましょう。しかし、忘れていけないことは、自由主義体制の中で、自民党が政権を担当し、我々の先人や先達があらゆる場面で諸施策の健全な推進のために努力をしていただいた、そのことを私は忘れてはいけないということを最初に申し上げたいと思う次第であります。  よく予算編成の時期やそれから選挙戦になりますと、野党の皆さん方は、必ずといっていいほど、防衛費の突出、福祉切り捨て、こうおっしゃるわけでございますが、私の記憶に間違いがございませんと、昭和三十年、我が国の全体の予算は一兆円になっております。うち、社会保障費は一千億円、防衛費は一千三百億円だと記憶いたしております。今日、本年度の予算は、皆様方が既に御案内のとおり六十兆四千億であります。そのうち、社会保障費は十一兆円、防衛費は三兆九千億だと思いますが、この数字からしても、我が国は着実に健全な福祉国家の建設に歩みを進めているということを理解していかなければいけないと思うのです。  しかし、これから世界に例のない高齢化社会を私どもは猛烈なスピードで迎えるわけでございます。御存じだと思いますけれども、ことしの敬老の日に示されました我が国の総人口の中で六十五歳以上の占める比率は一一・六%、二〇二〇年にはこれが二三%から二四%になるだろうと言われております。そして、今六十五歳以上のお年寄りを支える勤労世代、若者は六人の力を合わせて一人を支えることができておりますけれども、西暦二〇二〇年の高齢化のピークは二・三人に一人で支えなければいけない。大変な若者に対する負担がかかってくる時代が確かにやってくるわけなんです。そういった時代に、私たちはこれから今やるべきことは何かということを真剣に考えていく必要があると思います。  政治は、もとより、きょうよりあした、ことしより来年、日本の経済や国民の生活を豊かにすることは当然大事なことでありますけれども、むしろ最も大事なことは、三十年先や五十年先、我が国をこれから支えていく後世の人たちにこの豊かさと幸せ感を満足できるような国づくりに向かって今やるべきことをやる、このことは極めて大事なことだと思います。私は、そういう意味で、これからの福祉というものはそれだけの高齢化社会に備える必要がある、そして初めて我々が目指す本当の福祉国家の建設ができるんではないか。  総理にぜひお尋ねをいたしますけれども、福祉に対する考え方、そしてそういった厳しい将来の高齢化社会に備える福祉に対する決意、そういった点についてお尋ねをしたいと思います。
  79. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 福祉というものが極めて大切な国の政治の目標であるということは、今委員御指摘のとおりでございます。そして、社会的に弱い立場の方々に対して特に思いやりの目を注げということも、全く同じでございます。  私も、自分が初めて政治に志を持つきっかけになりましたのは、郷土の先輩の河野金昇という足の不自由な先生のもとで秘書を務めたときに、多くの兄弟の中で自分一人が足が不自由だというハンディのために、親が無理をして大学へ出してくれた、その親の思いやりの気持ちというものをありがたく胸に秘めたからこそ歯を食いしばってそれを克服して頑張ってくることができたんだということを聞きましたときに、私は胸打たれる思いがしたことを、今委員のお話を聞きながら思い起こしました。私が所信表明で、日の当たらないところに政策の光を当てなきゃならぬという思いを込めて書きましたのも、そういったこと全体を含めての私の福祉に対する基本的な姿勢を示したつもりでおりますので、委員のおっしゃることはよくわかるわけであります。  また、大変な高齢化社会が来ておる、御指摘のとおりです。たしか、私どもが初めて国会に出していただいたころ、昭和三十八年であったと思いますが、満百歳以上の方が百四十三名というところからスタートして、そして今まさに三千七十八名が満百歳を超えられたわけでありますから、大変な高齢化時代であります。けれども、そのことは極めていいことでありまして、本当に長命だけじゃなくて長寿社会になるようにも対応をしていかなければなりません。そのために施策を、きょうまで経験をしたことのなかった縦長い人口構造に変わっていくわけでありますから、その中でみんなが生きがいを持って、生きておってよかったと言いながら満足をして暮らしていただける社会、それが本当の福祉社会だと考えております。一生懸命取り組んでまいります。
  80. 古賀誠

    古賀(誠)委員 総理に福祉に対する大変心温まる御理解をお示しをいただきまして、心から感謝を申し上げる次第であります。  消費税についていろいろとこの委員会においても議論をされております。大変残念なことではございますが、さきの参議院選挙において我が党は大敗を喫しました。その大きな理由の一つにこの消費税の問題があるということは、私たちは率直に認めていかなければいけないと思います。  私は全国を歩いておりまして、我々の同僚議員のお話にもあっておりますように、この消費税の問題で何が一番国民の皆様方の不信を招いたかというと、なぜこの消費税が今必要なんだ、どういう目的なんだ、中身はどうなっているんだ、さっぱりわからない、わからないずくめで四月一日からこれが施行された、この点にあるということは大変私は残念に思う次第であります。  この消費税につきまして、あれだけの長い審議日程をつくっているにもかかわらず、いろいろな理由がございますでしょうけれども、野党の完全なボイコットによって一回もこの国会の場で審議をされない。これは議会制民主主義の根幹にかかわる問題でありまして、私どもは、国会という場は、いろいろな意見の違い、物の考え方の違い、こういったものをこの国会の場で真剣に議論をして、国民に、皆さん方に、理解し、御批判いただき、的確な選択をしていただく、このことが私は大事なことだというふうに思います。この消費税の導入というのは、まさに今議論をいたしております高齢化社会に備えて、こういう目的のために私たちは国民の皆様方に理解していただくことが大変大事ではないかというふうに思います。  大蔵大臣、私の消費税に対する導入の理解について御指摘をいただければ大変ありがたいと思います。
  81. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は、この消費税の導入といいますよりも今回の税制改革には、二つの側面があったと思います。  一つは、まさに昭和五十年代の半ば過ぎから国民の中に税制に対する不満がだんだん高くなり、五十年代の後半になりますと、税制の改正を求める世論が政府に対する要望の常にトップを占める状態になりました。それは所得税にあるいは法人税といった直接税を主としてまいりました日本の税制のその負担が中堅勤労所得者層に偏って、サラリーマンの方々から重税感というものが非常に強く訴えられるようになってきたこと。一方では、個別の商品に対する、物に対する課税でありました物品税の体系のゆがみとかひずみというものが国民生活の中にさまざまな影響を出してきた。そうした状況の中で国民が税制の改正を求められるようになった。それを受けて、所得税でありますとか住民税でありますとか法人税でありますとか、こうしたものの減税を行い、また、問題が非常に多くしかも国際的にも批判を呼んでおりました物品税を廃止するかわりに、広く薄く皆さんに御負担をいただく形の消費税を新設をした。これが一点でありましょう。  もう一点は、まさに委員が御指摘になりましたように、急速な高齢化社会の到来の中で、やはり特定の働き手だけに負担がかかるのでは必ず将来持ちこたえられなくなる、お互いがお互いを支え合う仕組みを今から用意しておこうという高齢化社会への対応と、二つの側面を持っておると思います。
  82. 古賀誠

    古賀(誠)委員 いずれにいたしましても、高齢化が進む中にあって、現役世代、働き手の無理ない負担ができるシステム、これがぜひ必要になることは当然のことであります。これが今回の税制改革であるし、また、これから御質問させていただこうと思っております年金法改正案の年金改革の問題だと思っております。  私は、今国会消費税についていろいろな立場で御論議をいただいておりますが、そのことはそのことで大変大事な問題でありますが、忘れていけないことは、今国会の継続審議になっております年金法の改正案、また当委員会でもいろいろ御議論がありました資産格差の土地問題等を解決するためにどうしても成立させていただかなければいけない土地基本法、こういったさまざまな法律を今国会で精力的に審議を重ね、そして一日も早く成立をさせること、これが今国会の大きな責務ではないかというふうに考えております。  総理、大変恐縮でございますが、私の考えております今国会の意義、ぜひひとつ御理解をいただきまして、今国会で種々の法律案をぜひひとつ精力的に審議を進めてそして成立をさせる、そういう国会意味もあるんだということを総理の方からひとつ御確認をいただきたいと思います。
  83. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 年金法の関連法案は今おっしゃるような目的を持って提案をし、各党で御議論をいただき、そして適切な結論が得られることを私、政府としても強く期待をしておるところでございますので、一層の促進をお願いしたいと思います。
  84. 古賀誠

    古賀(誠)委員 それでは、具体的な年金法の改正法案に入ります前に、昨日の当委員会におきます共産党の不破議員からの御発言に対しまして、ぜひひとつ政府がきちんと説明をしていただきたい点があります。  一点は、不破議員の御発言の中に、老人保健制度は老人に対する差別立法だという、ここだけはきちっと説明してもらわないと、国民に大変大きく誤解を招きかねない発言があった。私は、この老人保健法というのは、全くこの趣旨を曲解して国民に大きな誤解を与えたものであるというふうに思っております。  私は、老人保健法というのは、老後の健康を保持し、老人に対する医療にかかる費用の公平な負担を図ろうとするねらいで、自公民各党の賛成により制定されたものと承知いたしておりますが、この際、政府はきちんと国民にわかるように説明をしていただく必要があると思います。
  85. 戸井田三郎

    ○戸井田国務大臣 昨日の問題は、突然の御質問であったので、いろいろな意味で誤解を招いた点がありますけれども、日本の高齢化医療というのは、御承知のとおり平成二十二年にはおよそ全医療費の四〇%近い医療を高齢者の医療で賄われるようになるだろうというような時代になっているわけで、これからの老人医療をどのようにしたらいいのかというので、昭和五十八年に今の老人保健法ができたわけでありますが、それから六十年にも大改正が行われたわけであります。そしてまさに今の社会保障というものが世代間扶養の時代になっておりますが、医療も同じように、すべての保険者がみんなで負担を公平にしてそしてお年寄りを支えていこう、そして国民の多くの人たちも皆それに協力していただいた。それぞれの保険者はいろいろな苦労があるけれども、そういったものに協力をしてくださったわけであります。  それだけにまた、医療の面でも老人特有の状態があります。慢性病が多いとかいろいろな問題がありますけれども、そういうようなものに対しても、合理的なそして医療面でお年寄りのためになる医療というものを考え出していかなければいけない、そういうことが同時に、大勢の人が、すべての人が協力をしてくださっているということのために必要なんだ。そういうことで、同時に、若いうちから寝たきり老人にならないようにするために保健事業というものも十分にやっていこう、そういう仕組みの中で生まれたものでありまして、どういう見方からそういう言葉が出たのか、いずれまた参議院でもお話があるのかもしれません。しかし、そういった段階で私どもは高齢化医療を賄っていこうとしているものでありますから、決して差別医療であるというような考え方、昨日も私は見方を変えると大変な見方ができるんだなということを言いましたが、そういうふうに考えておりますので、決して差別医療などというものではないし、老人を虐待するというようなものでもないということを十分御理解願いたいと思います。
  86. 古賀誠

    古賀(誠)委員 もう一つこの不破議員の御発言の中で、政府のきちんとした見解を求める必要があります。  老人保健法の老人診療報酬制度にかかわる御見解の中で、この制度は老人が病院から追い出される事態が絶えないかのように御発言をなさっているわけであります。これは、不破議員は今日の老人医療の現状というのをよく御存じでいらっしゃらないのではないかというふうに思います。  そもそもこの制度は、老人の必要以上の薬づけや長期間の入院を強いられているといったような今日の状況を踏まえて、老人にふさわしい医療の確保を図るために設けられたものと理解しております。この点につきましても政府のきちんとした見解をお示しいただいておきたいと思います。
  87. 中尾栄一

    中尾委員長 厚生省岡光人保健福祉部長、ぴしっと答えなさい。
  88. 岡光序治

    岡光政府委員 診療報酬につきましては、一般の診療報酬と老人の診療報酬の二つから成り立っているわけでございます。老人の診療報酬につきましては、老人医療の対象者である高齢者の心身にふさわしい医療を提供しよう、そういう考え方のもとで設定をされているものでございます。  その基本的な考え方としましては、できるだけ御自分の住みなれたうちで生活が続けられるように、そういう配慮を一つしているわけでございますし、入院の場合でも、投薬とか検査などの治療重視というよりも生活の指導に重点を置く、そんなふうな考え方を基本にしておりまして、お年寄りの心身にふさわしい医療を提供しようという基本的な考え方で設定をしているものでございます。  それから、老人病院という制度がございますが、これは、病状が安定をしたいわば慢性期の高齢者の人を収容するということを主たる機能として設けられたものでございます。したがいまして、生活の介護に重点を置いた体制にしているわけでございまして、その体制に即するような形で診療報酬を設定しているわけでございます。そういう意味で一般病院との違いがあるわけでございますが、昨日の御発言の中にありましたように、一般の病院に比べて格下げをしているなどということは決して当たらないわけでございます。  それから、病院から追い出されるというふうな発言がございましたが、それは私どもは急性期の治療を行うということで病院に入院をしていた患者が治療の結果病状が安定をした、それでその心身の状態にふさわしい処遇ができるようなほかの病院であるとか他の関連の施設に移るようにしなさいとか、あるいは自宅でも療養ができるからうちに帰りなさい、そういうことを勧められ、指導されたものと理解をしているところでございます。
  89. 古賀誠

    古賀(誠)委員 それでは年金の問題に入らしていただきたいと思います。  最初に、社会保障に対します政治や行政の基本姿勢にかかわることについて私の考え方を申し述べてみたいと思います。  本来社会保障というものは、長期的展望に立った給付と負担のバランスを保つことが最も大切なことであるというふうに理解いたしております。高福祉低負担などという都合のいいことは絶対あり得ないのであります。ところが、昨今ともすれば政治の場におきましても耳ざわりのいい、いわば国民受けのする給付改善ばかりを強調しがちであるということは大変残念に思いますと同時に、国民に対していたずらに不満を募らせる結果になってしまうのではないか、大変危険なことだというふうに思います。政治や行政は、適正な給付には適正な負担が必要であること、こういったことを責任あるいろいろな場において、国民連帯の精神であるということがいかに大事なものであるかということを国民に十分御理解いただけるように努める責任が政治にも行政にもあるというふうに思いますが、厚生大臣はどのように考えられますか、お尋ねをしておきたいと思います。
  90. 戸井田三郎

    ○戸井田国務大臣 今お話がありましたように、私たち、今日本の社会保障というものはまさに世代間扶養の時代に入っている、こういうふうに思うわけであります。  御承知のとおり、親が子供を育てるというのはどの動物にも共通をして愛情を持ってやっていることであります。しかしながら、子供が親の時代を背負っていく、負担をするというようなのは人間だけにある現象であります。それが我々の、今高齢化社会に入っていくに従って、皆さん御存じのとおり、年金の問題一つとってみてもおわかりのとおりであります。  今、古賀委員がお父さんが戦争で亡くなったと言われておりました。二つのときに亡くなった。ちょうどその世代というのは大変貧しい日本の時代だったと思うのです。今、年金をもらっている世代の人たちがちょうどその当時に古賀さんのお父さんやなんかの世代だと思うのです。そしてその世代の人は、ちょうどすいとんやおかゆを食べて生活をして、わずかな給料をもらって生活をしていた世代であります。しかし、その世代の人たちが今、年金給付を受けているのは、まさにビフテキを食べて海外旅行をする時代の、その時代の生活の保障がなされておるということであります。そのことがまさに世代間扶養のためにできていることでありまして、ちょうど先年、例のオイルショック、そして狂乱物価がありましたけれども、あのときには既にそういう意味で物価スライドをしていくというような制度を四十八年に取り入れておりますので、それから後の給付というものは、あんなに大きな変動があったけれども安定した給付がなされてきた。すなわち、安定した給付がなされておるのもそういう意味で世代間扶養という仕組みのおかげであろう、私はかように思います。  今問題になりました老人医療の問題も、御承知のとおり大勢がみんなで支えていこう。でありますから、一カ月に数十万円、数百万円というような医療費も一軒の家では支えられない。昔は家の中でお年寄りを支え親を支えていたのは子供で、家族間でやっておったのです。それが世代間でだんだん扶養していくような仕組みになってきたおかげで、今言ったような年金の上でも医療の上でも大変大きな負担が家の中にかからないでできるようになってきたわけであります。  そこで私たちが大事なことは、この仕組みに対する国民的な合意があるのかないのか。私は昔、ちょうど昭和四十八年ごろの健康保険法の改正のときにテレビの討論に出たことがあります。そのときにいろいろお話がありました。それで、自民党がやっていることは、いつも言っているけれども、次にまた改悪するじゃないかということがありましたけれども、この問題はまさに負担と給付の問題にかかわっていると思います。  今、古賀委員のお話のありました負担と給付の問題、すなわち給付の面では、これをよくあめなんて言っているところもありますけれども、給付の面では皆さん御異議がないようであります。しかし、負担の面になるとどうしても反対意見が非常に強くなってまいります。でありますから、その負担の面をやらない場合にはどうなるかといえば、ちょうど足を縛って山へ登れと言うのと一緒で、登ろうと思っても登れない。あめだとかむちだとか言って、あめはいいけれども、本来年金制度という体質の中には、世代間扶養でありますから、世代間で扶養するわけでありますから、給付と負担が調和、バランスをとらないというといつでも病気になる。だからあめでもって、うんとあめをなめ過ぎたら、そういう体質の人は、糖尿病を持っている体質は甘い物を食べたら糖尿病になるのと一緒です。でありますから、そういうような意味で、給付の面があれば必ず体質を維持する補給がなければならない、それが負担であります。  でありますから、今委員から御提案のありましたように、まさに負担と給付というものは、この制度を維持していくための基本であります。でありますから、そういう意味で、私は、今国民的な合意を得なければいけない。そうでないと、常にこの法案が出るたびに給付のあめと負担のむちとの間で選択が違ってくる。そうなってくると、そのために法案が上がらない。年金でも、みんな待っている、待っているけれども、そういったことのために上がらない。そのためにみんなに迷惑がかかるということを考えていったならば、私は、まさにこれは国民的な合意を、このことに対する合意を受けることによって私たちの問題は解決し、世代間扶養というものが本当に実を結んでいくんだ。そしてまた、お年寄りが——負担が多くなってくるというとどうしても世代間戦争になります。しかし、給付がよければ、そのお年寄りたちは、当然その給付というものは、見ていい生活をしている。そういうことを見るというと若い世代の人たちに夢が出てくる。若い人たちに夢が出てくれば、当然その給付の負担はするようになってくる。そういう意味で、私はどうしてもこの負担と給付に対する国民的な合意を得るように努力をしていきたいと思います。
  91. 古賀誠

    古賀(誠)委員 大臣おっしゃるように、高齢化社会に向かって高福祉低負担なんかというのは決してあり得ない問題であります。私たちは、この年金の問題を国民の皆様方の理解の合意を得るために、やはり給付の中には必ず負担が伴うんだということを正確に教えてやる、これは我々の政治家としての使命ではないかというような気がいたします。  一部の野党の皆さん方の中に、今大臣のお話を聞いていただいて、特に年金制度というものが給付と負担表裏一体のものであるということはよく御理解いただいたはずでございますが、御理解をいただいた上でおっしゃっていただいているかどうかわかりませんけれども、年金の給付改善部分だけを、今大臣はあめという表現をなさっておりましたけれども、この年金制度全体の改正の中から切り離してそこだけを実施しようとする御意見を非常におっしゃる方々が多い。まことに曲筆貝任なことだと思っております。これでは将来の年金というのは成り立たないわけであります。  もし万が一このような切り離しを行った場合に、この厚生年金というのはどんな事態になるのか、念のために厚生省の方から説明を伺っておきたいと思います。
  92. 戸井田三郎

    ○戸井田国務大臣 負担と給付はまさに車の両輪でありますから、今申し上げましたとおり、給付の面だけで負担を伴わないということになると、それだけ、給付の改善部分だけもし先取りをしていくということになったならば、その後のついていく負担の面が伴わない限り、これは当然大きな赤字を伴うわけであります。厚生年金だけ一つとっても、給付面で十六兆、そして保険料で入ってくるのは十一兆、その差額というものは、当然御承知のとおり運用した利益や何かで埋めていくわけでありますが、当然赤字になってくる。平成五年度には赤字になってしまいますので、当然これは国鉄と同じような運命をたどっていくようなことになったら大変なことになると思います。
  93. 古賀誠

    古賀(誠)委員 たびたび申し上げるようですけれども、この切り離し論というのは無責任きわまりない考え方であります。年金制度というのは長期の制度であるだけに、長期展望に立って給付と負担収支のバランスをとっていくということは、大変これは大事な問題であります。これなくして、厚生年金は将来健全な制度として維持することはできないわけであります。  今大臣の御発言の中にもありましたけれども、今日の国鉄共済、極めて国鉄共済の受給者の方々に大変つらい、そしてまた大きな課題として御苦労いただいているわけでございます。もし仮にこの厚生年金が第二の国鉄共済になってしまうというようなことになると、これはもう大変なことであります。国鉄共済の受給者は約五十万を切っている、その程度かと思いますけれども、厚生年金ということになりますと二千五百万人、大変な人数になるわけでございます。仮に第二の国鉄共済になってしまうようなことが起きたとするならば、もう既にこれは年金制度の崩壊につながるものであります。そういうことのないように、私たちはやはり責任を持って給付と負担の問題について取り組んでいかなければいけないというふうに思います。  昨日も村山先生の御質疑があっておりましたけれども、本格的な高齢化社会を迎える中で、人生五十年が人生八十年になってくるわけであります。日本の経済が今後発展して活力のある社会を維持していくためには、やはり高齢者の雇用の問題というのは政府が先頭に立って真剣に取り組んでいく必要があろうかと思います。時あたかも十月は高齢者の雇用促進月間だというふうに聞いております。政府が今後この高齢者の雇用確保に具体的にどのように取り組んでいただくか、労働大臣の御見解をお尋ねいたします。
  94. 福島譲二

    ○福島国務大臣 お答えを申し上げます。  今お年寄りがどんどん大変ふえつつある、しかも、元気な、まだ働きたいとおっしゃられるお年寄りがたくさんふえつつあるわけでございます。そういった方々の老後の安定とまた生きがい、これを確保するためにも、そういった方々に適切な職場を確保さしていくということは何よりも大切なことでございまして、そのような意味合いにおきましても、今労働省といたしましては、まず第一に六十歳定年制度の定着を図ること、そしてさらに六十五歳までの雇用の継続を図ること、この二点を最大の重点として取り組んでおりまして、平成二年度予算におきましても、従来に増して画期的なこれらの助成策について今大蔵省と御相談のさなかでございまして、何とか皆様方のひとつ御支援もいただきながら、新しい立派な助成制度を講じてまいりたいと考えておるところでございます。
  95. 古賀誠

    古賀(誠)委員 この問題は、極めて高齢化社会に向かっていく中で雇用の問題、どうしても避けて通れない重要な課題でありますので、今後とも高齢者の雇用確保には万全を期していただく御指導をいただきたいというふうに思います。  今回の年金改正法案の中で、一つの大きな柱というものが厚生年金の支給開始年齢の引き上げの問題だというふうに理解いたしております。年金受給者の数も年々年々高齢化社会に伴って増大してまいりました。二〇一〇年には三千三百万人に達するというふうに言われております。長寿というのは、長寿社会というのは大変ありがたいことでございますけれども、反面、大変お金のかかることになるわけでございます。年金のみならず、医療などを含めた若い世代の国民負担というのがだんだんだんだん大きくなっていくことは避けられない状態であります。  しかしながら、勤労世代の若い世代の国民負担がどんどんどんどんふえていってしまうということになりますと、昨日も議論が行われておりましたように、イギリスだとかヨーロッパの先進国に見られるような福祉負担に耐えられなくて社会の活力を失ってしまう、こういうことになってしまえば、これは大変なことになるわけでございます。  しかしながら、老後の生活を支える年金の給付水準というのは、これはやはり維持してやらなければいけない。片一方では、担い手であります若者の負担も適正なものでなければ社会の活力を失ってしまう。こういうことを考えてみますならば、やはりこの年金制度の今後の方法として、今回の厚生年金の支給開始年齢引き上げというのは避けて通れない問題ではなかろうか、こんなふうに理解いたしておりますけれども、厚生省の見解はいかがでございますか。
  96. 戸井田三郎

    ○戸井田国務大臣 年金の安定のためには、給付と負担の側面が一つあります。もう一つの側面は、支える人と支えられるお年寄りとの数のバランスであります。  一方、先ほど言いましたように、給付の改善面に対しては当然負担が伴わなければ、これは半身不随で山に登ってしまうということであります。でありますから、当然、一方の数の面でも、いつまでも全部を負担の面でやっていけば安定した給付は得られないし、負担が重過ぎれば世代間の戦争になるし、そういう意味で数の一面から見ると、六人に一人が二・三人に一人というような世代が来れば、当然支えられてくる親の世代というものは子の世代に対しても大きな負担をかけないようにしようということになれば、当然そこで調整をとらなければならない、そういう意味でのバランスが六十五歳だと思います。  そして六十五歳というものも、既に昭和六十年の法律改正のときには本体の中に六十五歳ということをはっきりうたってあります。附則の中で、これは当分六十歳で支給をするということになっておるわけでありますから、これは当然今度のものは、そういった六十五歳にするスケジュールを立てて、そしてそれを平成二十二年までかけて三年ごとに一歳ずつ上げていくという形になっているわけであります。そういうスケジュールを立てて、そしてさらにもう一度国会でゴーのボタンを押すということになっているから、すぐ六十五歳になるというものではないわけであります。  しかし、これは一度本体の本則で決めているわけでありますから、当然そのスケジュールを、その後の五年後の見直しでありますから立てるのは私は当然で、しかもヨーロッパ諸国でもほとんどが六十五歳であるし、デンマークのように六十七歳というところもあるわけでありますから、私たちは健全な歩みを進めているつもりで皆さん方に御提案をしているわけで、よろしくお願いいたします。
  97. 古賀誠

    古賀(誠)委員 厚生年金の支給開始年齢の引き上げについて、大臣の方から詳しく御説明がありました。  この問題も消費税の問題と同じように、選挙区や全国のいろいろな方々にお会いしてお話しする中で、大変誤解と申しますかよく知らされていないというのか、国民の皆様方は、支給開始年齢の引き上げの問題で大変混乱をしていただいて、不安に思っておる。  どういうことかといいますと、この法律案が成立しますともう翌日からでもこの厚生年金の支給の開始年齢が六十五歳になってしまうというような、そんな考え方を持っておられる方がたくさんいらっしゃるんで実は驚いているわけなんです。今御説明をいただきましたように、大変長い時間をかけて、そして手順を踏んで六十五歳の支給に引き上げようということでありますから、私たちは、もっと政府のPRも必要でございますけれども、我々政治家も国民にいたずらに不安を募らせるようなことばっかりではなくて、丁寧に説明をしてやる必要がある、私はそういうふうに思うわけでございます。  今、六十歳や五十歳後半の方々がこの支給年齢の引き上げについて一番御心配なさっているわけですね。私たちは、そんなことはないんですよ、あなた方には関係のない、むしろ我々の時代にそういうことがやってくるんです、なぜなら六十五歳というのは平成の二十二年からなんですということを説明すると、やっと御理解をいただける。それだけ大変な混乱になっているわけでございますから、これは政府もしっかりとこの問題についてのPRをやっていただくと同時に、いたずらに年金受給者を初めとする国民の不安をあおるような、もしそういう言動があるとするならば慎んでいただいて、正確にこの問題を我々は責任を持って国民の皆さん方に教えてやる、そういう責務を果たしていきたい、こういうふうに思っております。政治家の姿勢として、これは我々がやらなければいけないことだというふうに考えます。  それから、今度の年金改正の中で、六十歳からの繰り上げ支給制度の創設、こういう新しい制度が創設されております。これは非常にきめの細かい制度だというふうに私は高く評価をしている一人であります。きのうも村山先生の方からお話があっておりました。要するに、高齢者の生活パターンというのがいろいろあるわけでございまして、もうすぐ年金生活に入りたい方、いやむしろまだ自分は元気だから働きに出たい人、働きに出たい、そう考える方々、そういった方々をこの六十歳からの繰り上げ支給制度の創設という、まあ一口で言えば、きのうもお話があっておりましたように、部分年金や部分就労ということになるんでしょうけれども、この制度を設けていただいたということは、非常に私は今後のこの年金制度のあり方としてきめ細かい、そして国民の理解を得る制度ではないかというふうに理解いたしておりますけれども、もう少し詳しくこの制度について御説明をいただければありがたいと思います。
  98. 水田努

    ○水田政府委員 お答え申し上げます。  支給開始年齢引き上げの措置が実施に移されました場合、この措置とあわせまして、六十五歳前に退職された方で御本人の希望によりまして六十歳から繰り上げ減額年金を支給する道を開くことといたしております。この場合、繰り上げ減額支給を希望される方が企業年金をもらっておられるとか、退職金あるいは老後の備え等自分の老後の生活設計との関連で、六十五歳前と六十五歳以後でその減額率を自由に選択を一定の範囲でできるように用意をいたしております。  また、今先生からお話がございましたように、六十歳を過ぎても勤務をし、マイペースで働きたいという方も当然おありかと思いますので、一定賃金以下の方の場合には、賃金を補完するという意味で、ただいま申し上げました繰り上げ減額の道を同じく開くように用意をいたしているところでございます。
  99. 古賀誠

    古賀(誠)委員 これは本当にいい制度だというふうに理解をいたしております。こういう制度をぜひ設けていただくことによって、来るべき高齢化社会にも不安のない年金制度をひとつ確立をしていただきたいというふうに思います。  時間が余りありませんが、公的年金制度というものが大変長期の制度であるために、今の我が国のように細分化され分立をしておりますと、大きな時代の流れの中で産業構造や就業構造というものがどんどんどんどん変化してまいりますと財政的に成り立たない、こういう制度が出てくるわけであります。まさにその代表的なものが国鉄共済ではないかというふうに思います。一国鉄共済ではなくて、今後こういった共済制度というものがどんどんどんどん見られるようになるわけでございますので、どうしても公的年金制度全体を長期的に安定したものにするためには、公的年金の一元化というものを実現していかなければならないと思います。公的年金制度全体が長期的に安定するために、国民全体の公平な世代間扶養の仕組み、こういうためにはこの一元化しかない、こういうふうに理解をいたしておりますけれども、厚生省いかがお考えでございますか。
  100. 水田努

    ○水田政府委員 公的年金制度は、厚生大臣からお答え申し上げましたように、財政再計算ごとに生活水準の向上や賃金の上昇に合わせた給付水準の見直しや毎年度の物価スライドを行うことによりまして、国民の老後生活の支えとしての機能を果たしてまいっておりますし、今後もその機能を維持していかなければならないと考えております。  この公的年金制度の機能を維持していきますためには、給付改善には必ず追加財源というものが発生いたします。この処理という問題が生じてまいるわけでございますが、公的年金制度はこの追加財源を後代の方に負担をしていただくという、先生御指摘の世代間扶養という考え方を導入することによって対応をいたしているところでございます。この世代間扶養による財政運営を安定的に成立させますためには、長期にわたって安定的な保険集団を形成していく必要がございます。そのためには、保険集団を産業構造や就業構造の変化を受けないものにしていくことが最も適当であると考えております。  公的年金一元化は、このような背景のもとに公的年金全体の長期的安定を図る観点から生まれたものであり、さきの年金改革において、公的年金一元化の第一歩といたしまして、全国民がひとしく加入する、そうして同じ負担で同じ給付を受けるという基礎年金制度を導入し、いわゆる一階部分の一元化を図ったところでございます。被用者年金、二階部分に相当するものについては平成七年目途にその一元化を図ってまいりたい、このように考えている次第でございます。
  101. 古賀誠

    古賀(誠)委員 年金の改正法案、今国会で我々が全力を尽くして成立をさせる必要があり、今いろいろな給付と負担問題等お聞きいたしました。年金というものが長期にわたる制度であるだけに、やはり適正な給付と適正な負担の中からこの制度というものを維持していかなければいけない、こういったことを正しく国民に理解をしていただく努力、これは我々政治家としても当然今後とも続けていかなければいけない問題であると、改めて認識をさせていただいたわけであります。  今、基礎年金のお話が出ました。最後になりますけれども、高齢化社会におきまして国民生活の基礎になるのは年金であります。その中でも、六十一年の四月にこの一元化に向かっての第一歩として、今お話があった基礎年金を導入させていただいたわけでありますが、この基礎年金は、サラリーマンから自営業者を問わず、全国民のある意味では共通の財産であるというふうに認識をいたしております。この基礎年金の制度というものを末永く安定をさせ、年金制度の根底を固めていくということは、この高齢化社会に備えることに私は大変大事な問題じゃないかというふうに考えております。  きのう村山先生の方から、この基礎年金の国庫負担率引き上げを提示なさっていたようでございます。現在この基礎年金には、国庫負担率三三%、金額にいたしまして三兆円に上る金額を実は国庫から負担させていただいているわけであります。確かに基礎年金の重要性にかんがみますと、この負担率引き上げというのは当然出てくる議論だろうと思いますけれども、片一方では消費税反対とおっしゃっているのでは、なかなかこういった議論というのは通らないのではないかな、こういうふうに思います。  なぜならば、我々が消費税を国民の皆様方に御理解を得ようとしている努力は、総理にもそれから大蔵大臣にもお話しをいたしておりますように、来るべき高齢化に備えてそういった誤りのない対応をしたいということで、この消費税を国民の皆様方に広く薄くお願いをいたしているわけでありますから、消費税は反対、この基礎年金の国庫負担引き上げなさいと言っても、それはなかなか難しい問題だと思います。  しかし、仮にこの消費税を国民の皆様方の御理解をいただく中でこの国庫負担率引き上げるということができれば、非常に国民の皆さん方にはこの消費税のあり方というのがわかりやすい。被保険者の方々には保険料率の抑制につながり、国民はいつかだれでも受け取る年金としてこれが還元をされる、こういうことにつながるのではないかという考えを持っているわけでございます。時間の関係であえて御答弁は必要ございませんが、総理、ぜひひとつこういった考えがあるということは御理解をいただいて御検討いただきたい、心からお願いを申し上げておく次第であります。  最後になりましたけれども、年金受給者二千五百万人の皆さん方が今度の年金改正法案というものを大変待ち望んでいただいているわけであります。どうしてもこの年金額の引き上げを実現するためにも、この年金制度というものは今政府が提案いたしております改正法案としてぜひひとつ成立をさせなければいけない、これは今日の私たちの最大の務めであろうと考えております。審議の促進と速やかな成立を心から祈願をいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  102. 中尾栄一

    中尾委員長 これにて古賀君の質疑は終了いたしました。  次に、粟屋敏信君。
  103. 粟屋敏信

    粟屋委員 先般の所信表明におきまして海部総理は、近年、社会の公正に対する国民の信頼が揺らいでいる原因の一つは地価の異常な高騰にあるとの認識のもとに、「投機的な取引はもとより、土地の取引に際しての法外な利益を許容しないという断固たる姿勢のもとに、需給両面にわたる本格的な土地対策を実行すべきときであります。」と述べられております。私もまさに総理と同じ認識に立つものでございまして、やはり国民の今最大の不満というのは、異常な地価高騰、住宅の取得難、そういうことに向けられていると思うわけであります。  最近の数年の地価高騰はまさに異常でございまして、まずは商業地、我が国が国際経済の中心地になることもあったでしょう、特に東京都心三区の事務所需要が増大をいたしまして、それによって地価が著しく上昇をしてまいりました。ピークは昭和六十一年で、五三・六%の値上がりをいたしております。これがさらに周辺住宅地に及びまして、区部南西部、世田谷、杉並等の例をとってまいりますと、六十二年、ピーク時には実に一〇二・二%の上昇をいたしたわけでございまして、この数年間に商業地もまた住宅地も地価が三倍から四倍になった。私は、これはかつてないことではないかと思います。今若干鎮静化傾向にあるといいますけれども、これは高値安定でありまして、決して喜ぶべきことではないと思います。  また、最近では次第にその地価高騰が大阪圏に及んでまいりまして、大阪圏の地価高騰は著しいものがあります。さらに名古屋圏、地方都市の一部にもこれが及んでおるわけでございまして、地価対策をきちっとやることは、私は国民のためにも、また我が国のためにも最も重要な課題であると思っておるところでございます。  まず第一に、この地価高騰はどういうひずみを国民あるいは我が国に与えるかということでございますが、私の認識を申し上げさせていただきますと、まず第一は、特に東京圏におけるサラリーマンの持ち家需要がほとんど絶望に近くなったのではないでしょうか。建設省は住宅取得能力は年収の五倍である、こういうことを言っておりますけれども、現在七・五倍だそうであります。ただ、この七・五倍も、同じ地域の土地について、住宅について七・五倍というのではなくて、次第にその地点を遠隔の地に移しながら七・五倍ということでございますので、大きな問題を抱えてはおるわけでございます。  それと、やはり総理の所信表明にもございましたように、持つ者と持たざる者との格差が拡大をして、国民の間に非常に不満が増大をしてきているということでございます。ある意味では精神の安定を欠く状態になったわけでありまして、この状態が続きますと、我が国の社会に非常に悪影響を及ぼすものと考えているところであります。  第二点は、やはり生活環境の整備に大きな支障を与えていることであろうと思います。  先般も伺いますと、東京で二百メートルの道路をつくるのに八百億円かかるということのようであります。これでは道路交通難の解消もなかなかできないわけであります。また、我が広島市においても道路整備等の用地費が約半分を占めておるわけでございまして、こういうことは本当に国民の生活環境整備のニーズにこたえられない、そういうことではないかと思うわけであります。  第三は、やはり我が国経済にも大きな影響を与えるのではないかと思います。非常に高い事務所を買う、また工場用地を買う、これでは生産コスト、また事務コストも上がるわけでございまして、ひいては我が国の国民生活、経済にも大きな影響を与えるのではないか。また、最近アメリカが構造協議の一つ問題点としてとらえているようでございます。アメリカの言い分のいい悪いはともかくとして、そういうふうに経済的にも大きな影響を与えてくると思うわけでございまして、やはりこの際土地対策をしっかり立てて、そうして果断に実行していくことが緊急の課題であると思うわけでございます。  所信表明において総理は御決意を述べておられますけれども、重ねて御決意のほどを伺いたいと思います。
  104. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 貴重な経験をお持ちの委員の土地問題に対する御指摘でございますが、私もこの問題は非常に重要に受けとめております。そしてすべての人々が同質社会意識と申しますか、みんなが中産階級になることを努力目標にして一生懸命にやってきた、その日本の中産階級意識というものがこの数年間崩れたというのは、これは所得、資金の流れ、資産の流れの方では、フローの面で見るとそのとおりであっても、ストックの方で今おっしゃるように土地の高騰というものが大変な格差をつくってきた。今、郊外に移った家でも年収の七・五倍だということをおっしゃいますと、これはなかなか夢としても持つことができなくなりますと、夢を失った人生というのはやはり極めて厳しいものになってまいります。何とかそういったものにこたえるためには、土地問題にきちっと手を入れていかなければならぬというのは当然のことでありまして、私が公正な社会ということを将来に掲げておりますことも、そういった一生懸命働いたならばやはり夢はかなえられるんだということが大前提にあるべきだと思いました。  そこで、土地問題についてどうしたらいいだろうか。これは土地の公共性というものをきちっと認めてもらうとともに、いやしくも公共性の強い土地を投機の対象にはしないという決意で税制とか政策努力を推し進めていくべきである、こう考えましたので、まず直近には土地基本法をきちっと成立させていただいて、それに従って土地価格の問題、同時に公共性をきちっと認めてもらう、それに続いていろいろな施策ができるように努力をしていきたいということを所信で申し上げた次第でございます。
  105. 粟屋敏信

    粟屋委員 総理の御決意のほどはよくわかりました。勇断を持って諸政策を実施をしていただきたいと思っております。  今、総理のお口から土地基本法のお話が出ました。土地問題といいますのは、やはり私は国民みんなが共通の意識を持ち合うことからスタートをしなければならないと思っております。  我が国は農耕民族でございまして、古来、土地が主な生産手段であるし、また人口の増減も耕地面積に左右をされる。そして所有権、古くは大宝律令時代の班田収授、これは公地公民制度でありましたけれども、土地所有権がその後ずっと尊重をされてきた、そういう意味で土地に対する愛着が深い。これはよくわかる。これに対してイギリスは、キングズランドとかクイーンズランドと言われますように、王様の土地、女王の土地という観念が行き渡っておりまして、先般の外国人の居住に関する調査を見てまいりますと、やはり外国人は土地の所有に対する考え方が日本よりはやや緩いなという感じがいたしておるわけでございます。  しかしながら、これだけ現代国家になり、高度に発達した社会になりますと、土地の利用の適正かどうかということがやはりその国の発展、また地域社会の発展に大きな影響を持つことになりますし、また同時に相互の依存関係も深まってくるわけでございますから、土地については国民の共通の意識、これを持ち合うような努力を重ねていかなければならないと思っておるところでございます。  そういう意味におきまして、土地基本法を百十四国会政府がお出しになりまして、土地は公的制約を受ける、また適正に利用されなければならない、投機的な土地取引はしてはならないというような土地に関する基本理念を明確にされまして、法律を制定をされよう、そうしてそれに基づいて土地対策を強力に実施していこう、こういうお考え、全く私も同感でありますし、ぜひとも土地基本法の早期成立を図らなければならないと思っております。野党の方々も百十二国会に同じく土地基本法案をお出しになっておるわけでありますが、土地評価の一元化とか土地行政機構の一元化、そういう点は野党の案にありますけれども、それを除きますと、私は趣旨においても内容においてもほとんど大差がないと思っておるわけでございまして、この問題は与野党を超えた国民的な要請にこたえる問題でございますので、ぜひとも今国会で成立をさしていただきたい。また、我々もその点で努力をさしていただきたいと思いますが、国土庁長官から土地基本法の成立に関する決意を伺いたいと思います。
  106. 石井一

    ○石井国務大臣 専門的なお立場からの粟屋委員の御意見、まことに傾聴に値するというふうに思っております。  土地基本法の問題に関しましては、中に盛られておりますその精神、土地に対します基本的な概念、また国民の意識の革命と申しますか発想の転換と申しますか、そういう意味では当然基本になるべき問題の指摘がございますし、なぜこの法案がもっと早く成立してなかったのか、そういう感じすら私は持っております。  また、野党がこの法案以前に独自の御発想によりまして御提出になりましたものにつきましても、十分拝見をさせていただいたわけでございますが、御指摘のとおり、二、三のマイナーな問題につきましては意見の相違もございますが、基本的には認識は一致しておる、そのように考えております。  幸い前国会でも継続審議、こういうふうな状況になっておりますので、総理も施政方針にお述べになっておるとおりでございます。我々政府といたしましては、もう一丸となりましてまずこの法律を成立させていただき、そうしてさらにそれに次ぐいろいろの施策を講じまして、今御指摘になりましたもろもろの問題について積極的に取り組んでまいりたい、そのように考えております。
  107. 粟屋敏信

    粟屋委員 国土庁長官のせっかくの御努力を御期待申し上げます。  問題は、土地基本法案ができただけでは土地対策ができるわけはないわけでありますので、やはり土地対策を総合的に、個別政策を充実をしながらやっていく必要があるわけであります。政府におかれましても昭和六十二年十月十六日に緊急土地対策要綱を閣議決定をされておりまして、それに基づいて各省庁、今鋭意努力をされているところであろうと思います。土地対策の範囲は非常に広うございまして、投機的な土地取引の抑制から、またそれを行う不動産業者に対する監督の規制を強化するとか、さらには都市再開発、住宅宅地開発の促進で供給政策を行うとか、また根本的には都市・産業機能の一極集中を排除する、そういう問題、非常に範囲が広いわけでございますけれども、私は特に今投機的な土地取引を抑制をするという観点から、三つの問題について御質問をさしていただきたいと思っております。  まず第一は、土地取引の規制であります。  昭和四十九年に国土利用計画法が制定をされまして、規制区域の許可制、また土地取引、一定規模以上のものでありますが届け出をする、そういう法制ができたわけであります。私は、本当にこの国土利用計画法は画期的な法制であると思うわけでございます。当時、四十七、八年、地価が異常に高騰をしまして、今と同じように社会問題となり、また国家的、国民的な問題となったわけでございますけれども、これを与野党、共産党はお入りになりませんけれども、一致をして衆議院の建設委員長として提案をされ、成立をされた。これは本当に私は政治が土地問題に取り組まれた第一歩ではないかというふうにも考えるわけであります。  一般的に土地の売買取引について許可制をしく、あるいはこれに介入をすること、私は大変なことであろうと思います。今でも例えば農地法の権利移転については許可制がしかれておりますが、これらは行政目的を達成するための許可制でありますけれども、この国土利用計画法の許可制または届け出制度といいますのは、異常な地価高騰に対処してその地価の鎮静化、また投機的な取引を抑制をしようという考えから出たものでございます。かつては、私の記憶では、国家総動員法に基づく物価統制令で土地売買について許可を受けることになっておったような制度があったようでありますが、これはほとんど動かなかった。そうして、この国土利用計画法ができたということは本当に画期的であり、評価できることであると思っております。その後も政府においては、監視区域制度をおつくりになって対応をされております。  後ほども伺いますけれども、例えば金融引き締めの問題にいたしましても税制にしましても、やはり監視区域制度、これが適正に的確に運用されることを前提としていると思うわけでございますけれども、監視区域制度の運用の実態についてお聞かせをいただき、また国土利用計画法につきまして、今回さらに投機的取引を抑制するための追加措置をおとりになるようでございますけれども、その辺につきましてお聞かせをいただきたいと思います。
  108. 石井一

    ○石井国務大臣 御承知のとおりに、昭和六十二年に国土利用計画法を改正いたしまして、監視区域制度を創設いたしました。  先ほど御指摘がございましたように、東京圏で相当の暴騰が起こり、またそれが地方都市に広がっていくというふうなことでございましたが、国土庁といたしましては、強力にこの制度の実施を各自治体に要請をいたしました。現時点におきましては、一都二府二十九県十一政令都市におきましてこの指定が行われておるところでございます。また、発足当時全国で三十九地区であったものが、昭和六十三年には二百四十地区に拡大し、そうして平成元年十月十三日現在でございますが、五百五十八の地点に広がっております。これは、やはり東京の地価が本年、あれだけ暴騰したのにかかわらず一部下落したところも出た。周辺の広がりというものについては、今後もこの地区を広げるなり、あるいは面積を少なくしていくという努力をしていかなければいけませんし、このためには地方自治体に対しましても相当の事務的手続、あるいはまた流通に対しますいろいろの阻害は与えるんでございますけれども、現実にそういう効果が出ておるということを考えましたときには、私は、この制度は有効に効果を出しておるというふうに一応評価できるのではないかと思っております。先日、全国知事会議が開催されましたときにも、私の立場から全国の知事にこの点を強く要望をいたしたところでございます。  なお、先日、七月一日現在の都道府県地価調査の価格が出まして、十月二日にこれが発表されたわけでございますけれども、特に京阪神等、あるいは広島、札幌等、著しい値上がりを見せたところもございましたが、これらの地域に対しましては、国土庁土地局長を通じまして強力に再度指示をすることとしたわけでございます。  なおもう一つ、同時に、この金融といいますか、金余り現象から起こってきます過剰な融資に対しましても、大蔵大臣に御要請をいたしまして、大蔵大臣からも適切な指示を銀行局を通じて全国の銀行関係者にも指示することとしたところでございます。ただ、この金融の問題は私からお答えするべき筋合いではございませんけれども、金の動きにはなかなか難しい、コントロールのしかねるところもあるようでございますが、今後そういう点で努力していきたいと思っております。
  109. 粟屋敏信

    粟屋委員 今、金融の引き締め問題について国土庁長官もお触れになりました。私は、この金融の引き締めを適期にきちんと行うことが地価高騰の抑制につながるのではないかと思っておるところでございます。  昭和四十七、八年の異常な地価高騰の際も、銀行局長通達を四十八年に出しまして、土地関連融資の増勢、伸び率でございますけれども、これを総融資額の範囲内にとどめるという措置をとったわけでありまして、これが大きく効果を発揮しまして、潮の引くように地価鎮静に至ったのではないかなと思っておるわけであります。ただ、金融政策は土地ばかり見詰めておるわけにはいかないこともよく承知をしております。当時の好不況の問題もありましょうし、また金融政策独自のお考えもある。これは私もよく理解をできるわけでございますが、やはり時宜を得て的確にやっていただくこと、これは必要ではないかなと思っております。  今般も銀行局長通達を三度にわたってお出しをいただいておるようでございまして、最初は、土地関連融資が社会的な批判を招かないように配慮をすべしということであったようでありますが、六十一年の十二月になると、投機的土地取引の融資については厳に慎むこと。また六十二年十月には、閣議決定の緊急土地対策要綱を受けて具体的な指示をされております。特に、監視区域内においては、勧告をしないという不勧告の通知があった場合あるいは一定期間内に判断が下されない、そういうような場合には融資をしてもいいがそれ以外は慎むとか、また、実需を対象として融資をすべきであって、融資対象土地の利用計画、建設計画をきちんと明らかにした上でやれ、こういうような通達もお出しになっているようであります。  私は、そのときどきに適切な措置をおとりになったと思いますけれども、やはり上がり切ったところでそういう措置をとってもこれは余り効果が出ない、やはり上がらんとするときに、異常な事態となろうとするときにそれを事前にきちんとつかまえた上で、早期に的確にやっていただくことが必要ではないかと思っておるところでございます。大蔵省のおとりになった措置は私は評価いたしますけれども、今の私の見解につきまして大蔵大臣からお答えをいただければと思います。
  110. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今まで金融政策として対応してまいりました部分につき御評価をいただきましたことには感謝を申し上げます。  先日、国土庁長官からもお話がございましたけれども、最近の地価動向にかんがみて監視区域制度に係る指導強化を検討中ということでありまして、大蔵省としてもこのような施策と平灰を合わせて、引き続き機動的、効果的な特別ヒアリングの実施などを通じて、投機的な土地取引などに対する融資が厳しく排除されるような強力な指導をしてまいるつもりであります。  ただ、基本的には、やはり土地に対する基本理念が確立をされ、国民の土地に対する意識というものがやはりその基盤にはあるわけでありまして、建設省、国土庁、鋭意御努力中でありますので、こうした御努力が実りますことを我々も期待しつつ、それと符節を合わせて努力をしてまいります。
  111. 粟屋敏信

    粟屋委員 銀行局長に伺いますが、特別ヒアリングはずっとおやりになっているようであります。二月ごろから重点的な特別ヒアリング、これをおやりになっているようでございますが、その内容、並びに伺うところによりますと、近く土地関連融資についての通達をお出しになるということでありますが、その内容につきまして伺いたいと思います。
  112. 土田正顕

    ○土田政府委員 お答え申し上げます。  金融機関の土地関連融資につきましては、かねてから、ただいま御説明をいただきましたように、通達の発出それから特別ヒアリングの実施などを通じまして、投機的な土地取引等に係る不適正な融資を厳に排除すべく、強力に指導を続けておるところでございます。  ただいまお尋ねのヒアリングの状況でございますが、実は昭和六十二年七月以降、金融機関の土地関連融資につきまして、個別の融資案件にまで踏み込んだ特別ヒアリングを実施してまいりましたのに続き、本年二月以降は、さらにこのようなヒアリングの一環として、最近の金融機関からの融資実績の報告その他を参考に、さらに一部の金融機関を対象に重点的な特別ヒアリングを大蔵省本省及び財務局において実施しております。現在までのところ、特別ヒアリングの対象となりましたものは、六十二年七月以来全体では百六十五金融機関であり、そのうち、重点的特別ヒアリングと称する本年二月以降のヒアリングの対象となりましたものは八十五金融機関でございます。  このヒアリングの内容は、最近の土地関連融資の状況全般についてのヒアリングとともに、融資態度の厳正化の趣旨が営業店まで徹底しているかどうか、融資対象の土地に係る取引価格、事業計画等の妥当性について十分な審査が行われているかどうか、融資実行後のフォローアップ体制が確立されているかどうか、そのようなものを重点的にヒアリングをいたしてまいりました。  その結果の現在までの印象でございますが、各金融機関とも、営業店に対する融資態度の厳正化について徹底に努める、それから、本部による集中管理体制の確立に努める、実効性のある審査機能の強化に努める、融資実行後のフォローアップ体制の強化に努めるなど、それぞれ具体的な措置を講じておるようでございまして、全体としては健全な融資態度が維持されるよう注意を払っているものと認められますが、なお今後とも適正な業務運営に努めるよう、厳正に指導してまいりたいと存じます。  さらに、後段のお尋ねでございますが、ただいま最近の地価動向にかんがみて国土庁におきまして種々御検討なさっておられる旨の御答弁もございましたが、例えば監視区域制度に係る指導強化などの措置を検討中ということでございますならば、大蔵省といたしましても、このような施策と平仄を合わせて引き続き機動的、効果的な特別ヒアリングの実施などを通じまして、投機的土地取引などに係る融資が厳に排除されるよう強力に指導していきたいと考えておりまして、その旨を盛り込んだ通達を発出してはどうかと考え、現在鋭意検討を進めているところでございます。
  113. 粟屋敏信

    粟屋委員 今後とも土地関連融資の規制につきましてはよろしくお願いをいたしたいと思っております。  三番目、土地税制でございます。よく、土地政策の中に占める土地税制の役割は補完的なものである、こう言われます。四十三年ごろでございましたが、政府税調で土地部会をつくりまして、土地税制について御検討になったことがありました。その際に、四十三年七月三十日に土地税制のあり方について答申をされたわけでありますけれども、その中で、「土地政策全般において土地税制の果たしうる役割は、あくまでも補完的、誘導的なもの」であるという答申がなされておるわけであります。私は、その時代はそれでよかったんではないかと思います。しかし、四十八年、まあ四十七、八年の地価高騰でありますけれども、そのときに土地税制の位置づけは私は変わったんではないかと思っておるわけであります。  四十八年の一月二十六日地価対策関係閣僚協議会、これが開かれまして、土地対策として三つの柱を立てたわけであります。第一番が土地利用計画の策定と土地利用の規制、第二が土地税制の改善であります。そこで、それを受けまして法人の譲渡益重課制度ができますし、また特別土地保有税ができたわけであります。これによってどういうことを期待をしたかといいますと、法人の譲渡益重課については、キャピタルゲイン、これを税によって召し上げることによって投機的な売買を抑制をしよう、また特別土地保有税は、管理及び取得に要する費用をふやすことによって未利用地の利用を促進をしよう、こういうことであったと思うわけでございます。私はそれなりの効果を上げたと思うわけでございます。  そこで、今回土地基本法がもし成立をいたしました場合、かねてから大蔵省は土地基本法の成立を待って抜本的な土地税制の改善を図ると、こういうふうに言われておると私は承知をいたしておるわけでございますけれども、そのあたりにつきましてお考えを伺いたいと思います。
  114. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は、土地税制というものを考えます場合に二つの側面があろうかと思います。従来から土地政策の一環として遂行されてまいりました土地税制といいますものは、土地の取得、保有、譲渡等に各段階においてそれぞれの措置がなされてまいりました。そして、税制が基本的に市場原理というものを通じて各経済活動に対しての影響を及ぼすものであります限りにおいて、土地利用法に関するルールなど市場原理の外にあるものについては、直接的な影響力を行使することには無理がございます。そうしたことを考えてまいりますと、土地税制を活用して特定の政策目的として個人や企業を好ましい方向に誘導しようとする場合には、やはり基本理念、土地でありますならば望ましい土地の利用のあり方などに関する基本理念、また、それに即して講じられるべき各段階の政策というものが整備されておることが前提でありますから、そういう視点から見れば、まさに私は補完的な役割という位置づけは出てくると思います。  ただ、このことは、政策手段としての土地税制というものの有効性を否定するものでは決してありません。また、今それとは異なった角度から、資産の大宗を占めている土地、その資産の大宗を占めている土地に対する課税というものが、所得、消費、資産というものに対する課税の中で特別な意味合いを持ってきておるという状況もございます。これは、資産課税としての役割というものはまた別途の観点から十分考えなければなりません。そうした考え方を踏まえながら、土地基本法というものにより理念が確立することを待ってと申し上げてまいりましたのはこうした視点を含めてのことでありまして、要は、私は国民がいかにして土地を入手することができ、利用することができ、そしてそれがお互いの福祉につながるかという視点から見れば、補完的であるとかないとかいう言葉の遊びは余り用のないことではないだろうか、そう思っております。
  115. 粟屋敏信

    粟屋委員 今、大蔵大臣が最後におっしゃいましたけれども、私も、補完的とか柱であるとか、それは言葉のあやの問題かなという気はいたしますが、しかし、総合的土地対策の中で供給の促進を図り、また投機的な土地取引を抑制をし、未利用地を放出させる、そういう機能を税制が持っていることも確かでございますので、総合的な土地対策の中における税制の位置づけということもひとつ大蔵省としてはお考えをいただいて、今後とも的確な土地税制をつくっていただくように心からお願いを申し上げるところでございます。  次に、土地評価の一元化の問題でございまして、これは、先ほども申し上げましたが、土地基本法の中における政府案と野党案の違いの中の一つであります。また、先般社会党の土井委員長は、代表質問の中でこの問題をお取り上げになったわけであります。  確かに、私も土地評価がきちんと一元化をしておればいいなという感じはいたしますけれども、それぞれ制度の成り立ち、またその制度の持っている本質、そういう点から見ると一元化することは容易ではないなという感じもいたします。例えば、固定資産税、相続税、地価公示額、三つ大体大きな柱があるわけでありますが、仮に地価公示額、これがきちんとしておれば、あとは税率の操作だけでいけるんではないかなという考え方もあるかもしれませんけれども、その辺を含めまして、土地評価の一元化についてのお考えを伺いたいと思います。
  116. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今委員が御指摘になりましたように、さまざまな考え方があることは事実であります。ただ、例えば私自身、父親が亡くなりましてから、相続税を払うために自分の家と土地を売り払った経験を持っております。相続税における財産の価値というものがそういう意味では大変大きな問題を含んでおるわけでありますけれども、財産課税のかなめという視点からまいりますと、やはりかた目の評価をするということが現実に即した対応でありましょう。私は、細かい理屈を委員に申し上げるつもりはありません。ですから、現実に地価公示価格の七〇%前後を目途としておるようであります。  また、地価公示が、その対象が都市計画区域に限定されているほかに、公示地が全国約一万七千点前後ということから、相続税評価に当たって活用するとしてもおのずから限界がございます。  また、相続税というのは、これは本当に一世代一回限りのものでありますけれども、固定資産税は毎年課税をされるものでありますし、その価値は年々変動すると申し上げても過言ではありません。両者の性格の違いというものもございます。そうなりますと、相続税の単価というのは毎年改定されているものですけれども、固定資産税の方は三年に一度の評価ということでありまして、必ずしもこれも一体のものではございません。  そうなりますと、相続税評価と地価公示及び固定資産税評価を一つにすることが、一元化してしまうことが果たして実態として国民の幸せにつながることかとなりますと、必ずしも私は今簡単にそうだと申し上げる自信はありません。しかし、やはりこの相続税評価と他の公的な土地評価価格の間における関係というものは、これから先も検討を続けていくべきテーマ、そのように受け取っております。
  117. 石井一

    ○石井国務大臣 大蔵大臣の御見解は正しいものと存じますが、私の立場から補足をさせていただきたいと思いますが、実際慣例的に全国的、継続的なこのような形で公的土地評価というふうなものが存在しておる。しかしながら、これが大きく分けて四つある。国土庁の土地鑑定委員会によるものと都道府県によるもの、どちらも国土庁から発表しております。国税御当局がやられるものと自治省が出されるものと、それぞれ評価が変わっておる。しかし、いろいろ中身を検討いたしてみますと、それなりの目的に応じた沿革があり、理由があり、また、それなりの評価をするべきところもございますけれども、一元化は直ちにできないにいたしましても、著しくどうかというようなところもたくさんあるようでございます。地点ももっとふやさなければいかぬというふうな問題もあるようでございますから、平衡化並びに適正化ということはこの時期に行わなければいけないのではないかということを考えます。  また、国民の立場から見まして、政府なり公の機関が出します土地評価に対しまして、一体何をどのように評価したらいいのかというような、そういう土地に対する信頼感というふうなものもございますので、この問題は直ちに一元化をするということは難しいといたしましても、過去の経緯を十分踏まえながら、十分検討に資する一つの問題ではないか、そのように認識いたしております。
  118. 粟屋敏信

    粟屋委員 今お話を伺いまして、それぞれ違った制度に基づく評価でありますから、それなりの考え方の相違もある、そういう意味で、今直ちにこれを一元化するというのは非常に困難だということも認識をいたします。ただ、やはりそれぞれの評価が国民の信頼を得ることは、これは必要でございますので、せっかく御努力をお願いをいたしたいと思っております。  次に、大都市の住宅問題であります。  先ほど冒頭申し上げましたように、特に東京圏、地価が高騰をして国民の持ち家需要、ほとんど絶望ではないかなというような感じになっているのではないか、それを危惧するわけであります。  建設省では、東京圏において大量の住宅供給を今後やろう、三百八十万戸ですか、そのために新しい法律または既存の法律を改正をして、手法を整えながら対応をしようというお考えのようであります。私は、それはそれとして結構であると思いますが、また一面からしますと、今までの持ち家主義でいいのかという問題が出てくるのではないかと思います。  昭和六十三年の世論調査、これを見てみますと、「土地や建物の所有にこだわることなく、賃貸でもよいから良い住宅に住めるようにすべきだ」、こういう人は五四%、「平均的な収入がある人が狭くてもよいから土地や建物を所有できるようにすべきだ」、持ち家主義ですが、これが三二%、むしろ賃貸でいいという人の方が多くなっておるわけです。これは、持ち家を持とうと思っても、今の地価高騰からすればもうあきらめざるを得ないから、いい賃貸住宅をつくってくれという、国民のそういう考えかもしれません。  そこで私は、やはり持ち家政策ももちろん進めなければなりませんが、賃貸政策をこれからきちんとやっていくべきではないかという感じがいたします。ただ、今の東京の土地高騰のことを考えますと、賃貸価格だって容易ならざる賃貸価格になるのではないかと思うわけでありますけれども、それに対して外国では家賃補助制度をとっておる国もあるようであります。また、建設省、労働省が、今度は家賃について所得控除をしようという税制改正要望をお出しになっているようであります。それと同時に、やはり社宅も含めまして民間で優良な賃貸住宅をつくる場合には、何らかの助成措置を考えてもいいのではないかなという気がします。  そうして、働き盛りのときは賃貸住宅に住みながら、またリタイアをした場合には、セカンドハウスといいますか、遠隔地というのもおかしいですけれども、本当に庭つき一戸建て住宅に住む、そういうライフサイクルがあってもいいのではないかと思いますけれども、この点につきまして建設大臣のお考えを伺いたいと思います。
  119. 原田昇左右

    原田国務大臣 この問題に大変御造詣の深い粟屋委員のお話でございますので、十分おっしゃること傾聴に値する問題だと思うわけであります。  特に最近の土地高騰に対しまして、何とかまじめに働く者に宅地、住宅を供給したいということで、御指摘のように、大都市地域におきまして大量の住宅、宅地を総合的に供給しようという計画を進めておるわけでございますが、御承知のように持ち家の取得は非常に困難である上に、今の賃貸住宅というのは非常に規模が小そうございます。そういうことからいいまして、賃貸住宅の供給を促進することは極めて重要な課題だと考えております。  このため、低額所得者及び都市勤労者等の中堅所得者に対して公営住宅とか公団住宅等の公共賃貸住宅を大都市地域において重点的に供給するということをまずやらなければなりませんが、同時に、民間の土地所有者等に対しましても、低利融資、税制上の優遇措置等を活用いたしまして良質な賃貸住宅を供給してもらう、こういうことをぜひやりたい、こういうように考えておる次第でございます。  なお、郊外に行きますとまだまだ低廉な土地が残っておるわけでありますので、高速鉄道の整備等と一体としてこの地域の宅地開発をやらしていただく。また一方、市内でも遊休地がかなりまだ存在しておるわけでございますので、こういうところもぜひ活用させていただくように、まず地区計画とかいろいろきめ細かい都市計画の手法を活用をさせていただくと同時に、税制の面でもいろいろ御工夫をいただくように私どもとしては検討してまいりたい、こういうように考えておる次第でございます。
  120. 粟屋敏信

    粟屋委員 私は、住宅問題というのはすぐれて大都市問題、特に東京問題であると思っておるわけであります。そこで、この問題解決のためには土地政策全般を強固にしながらやらなければなりませんが、今の持ち家、賃貸、その辺のバランスも十分お考えになった上で、的確な政策をお願いをいたしたいと思っております。  土地問題、いろいろとこの発生の原因はありますけれども、やはり我が国は国土が狭く、平地部が少ない。さらには、東京に政治機能も経済機能も集中をしている。そこで東京の地価高騰が起こり、そうしてまた同時に、その影響が地方にも及んでいく。また一面、過疎地帯においては、地価の値上がりを期待をしてもさっぱり上がらないどころか下がるばかりだ、こういう現象が生じておるわけであります。  そこで、やはり機能の分散ということが基本的には大事なことでありまして、政府におかれましても多極分散法でありますとか集中排除政策をお進めいただいておる。また、先般は国の機関の移転問題についても実行をされた。そういう御努力をちょうだいをいたしておるわけでありますけれども、首都移転論というような問題も出てまいっております。  私は、この首都移転というのは単なる東京の過密の解消という考えだけでは絶対済まない、やはり背景に文明論がなくてはならないということを考えております。今までの我が国の遷都の例を見ましても、特に京都から江戸へ移ったというのは、一つの革命に伴う人心一新をも含め、また従来の体制の変革を含めた移転であったわけでありますから、過密過疎の解消とかそういう観念だけでは済まない問題である。やはり二十一世紀に生きる我が日本、そういう立場を考えながら、国際的な役割を果たすためにはどうしたらいいか、そういうようなことも含めながら私は首都移転論を論じていかなければならないと思っておりますが、いずれにしましても、一極集中の排除ということは、これは粛々と着実にやっていかなければならないことであると考えております。この辺につきまして、非常に抽象的な質問で恐縮でございますけれども、国土庁長官のお考えを拝聴をいたしたいと思います。
  121. 石井一

    ○石井国務大臣 言うは易し行うはまことに難しい問題であると思うのでございますが、政府といたしましては、御案内のとおり、これまでいろいろの施策を講じておることは確かでございます。四全総に基づき地域の基盤を推進するあらゆる施策をやっておるということ、また多極分散型国土形成促進法に基づいて振興拠点地域というものの開発を進めておるということ、国土審議会におきましても、いわゆる産業の地方展開、事務所機能の分散、都市との交流による農山村の振興等々の戦略的施策が内閣総理大臣に対して報告がなされておる等々、すべての問題に対しまして東京一極集中を是正をしたい、そうして多極分散型国土の形成をしたいということを念願に置いておるわけでございますが、これは調べてみますと、例えばニューヨークとワシントン、ニューヨークはだんだんだんだんやはり人口が減っておるのですね。しかしながら、東京に人口の減る理由があるのか。なかなかやはり基本的な問題が解決されておりません。過日七十九機関の移転を決めまして、これも政府が率先垂範、そのような地方への分散の一歩を進めるのだということでこういう姿勢を示しておるわけでございますけれども、今後さらに発想の転換をしましてこれはやっていかなければいかぬ大きな大きな課題であると認識いたしております。
  122. 粟屋敏信

    粟屋委員 今長官がおっしゃいましたように、言うは易く行うは難し、非常に難しい問題であろうと思いますけれども、御努力をちょうだいをいたしたいと思っております。  なお、若干時間がありますので、消費税について一言触れさせていただきたいと思います。  私も今、特に御婦人方を対象にいたしまして対話集会を行って、そうして御理解を得る努力をしておるわけでありますが、どうもやはり今まで十分の御理解が得られないのは、国会論議も十分行われてない、また法律が通ってから実施までわずか三カ月間、その際に説明を申し上げる時間も少なかった、そういうことで御理解が不十分な点があったのじゃないかなと思います。消費税だけが突出してできたのではなくて、税制改革全般をごらんください、その中における消費税でございますという話を今いたしておるわけであります。税制改革は今行うべき時期に来ているという点についての御理解を得る努力を私は今いたしております。  高齢化社会の到来もそうでございますけれども、これに備えて安定をした財源をつくる必要がある。また、今までの税の仕組みは、昭和二十年というまだ生産も十分復興していない、国民生活も貧窮の中にあった時代につくられた税の仕組みが四十年たったまま、もちろん多少の修正とか増税減税はありながら、骨格としてある。経済生活も国民生活も大きく変わった現在、そのままにしておくとかえって不公正、不公平、そういうひずみが出てくる。所得税の重税感なんか、まさにそうです。  もう一つは、やはり国境のない経済になってきた。人も物も金も二十四時間世界じゅうを動き回っておる。そういう時代に我が国だけがよその国とかけ離れた税制を持っておると、これは世界経済全体に大きな悪影響を与えるし、その悪影響は我が国にもはね返ってくる。きょう、新聞またテレビの報道を見ておりますと、ポーランドも、経済改革を進めるその中の一つに付加価値税の導入をうたっておるわけであります。  そういうことから考えますと、やはり今税制改革をやるべき時期に来たし、その中における消費税というものを御認識をいただきたいということでお話をしてまいっているわけであります。私は次第に御理解が進んできたと思っておりますが、しかし、今見直しということを、これは政府も自民党も言っておるわけでありますから、その見直しだけは的確に行う必要があると思っております。  見直しの視点としては、非課税品目の拡大、内税か外税か、総額表示方式、それから福祉目的税にするか、あるいは免税点を含む税の仕組みについて見直すか、四点ぐらい視点があるわけでありますけれども、私は、これは当面やるべきことと、しばらく検討してやるべきことと分けていいと思っておるわけであります。やはり国民の皆さんが消費税を理解しても、まだ感性として納得しがたいあるいは煩わしいというお考えもあるのだろうと思います。定着を図るまでには、そういう観点で国民の皆さんが納めやすいように少し考えていく必要があると思うわけでございますので、私の意見を申し上げては恐縮ですが、非課税品目とか総額表示方式、内税、外税、これをまず当面やって、免税点その他の税の仕組みの問題は、これは事業者、消費者、また税の専門家によってもう少し真剣に長期間かけて検討してはどうかなという感じがいたしておるわけであります。  いずれにいたしましても、これは政策の選択の問題である。我が国の国民及び国家の将来にとってどの税制が、自民党の言う、また政府の言う税制改革が必要か、また消費税廃止して税制再改革をやるという野党のお考えが正しいか、私はまさに将来をかけた政策の選択の問題であると思っておりますので、政府は勇気を持って消費税の定着に御努力をいただきたいと思います。  以上申し上げまして御質問を終わります。ありがとうございました。
  123. 中尾栄一

    中尾委員長 これにて粟屋君の質疑は終了いたしました。  次に、二階俊博君。
  124. 二階俊博

    ○二階委員 国際社会において我が国の果たすべき役割が今日ほど大きな責任と内外の期待が寄せられている時代はかつてなかったのではないかとさえ私は思うのであります。  海部総理は、御就任早々、アメリカ、メキシコ、カナダを訪問され、我が国外交の基本姿勢を内外に示されると同時に、ブッシュ大統領を初め各国首脳との間に個人的な信頼関係を築かれました。また、英国首相を初め我が国を訪問された各国首脳との間にも、相互信頼関係を築くために対話を重ねながら、首脳外交に大いに力を注いでおられることに敬意を表したいと思います。  さて、総理は、先般の施政方針演説において国際文化交流の強化について言及され、また、さきの国連における中山外相の演説の中にも、異なる文化間の相互理解を促進する国際文化交流の強化を表明されておられます。  以下、私は、みずからの体験に基づいて、政府に対しお尋ねをいたしたいと思います。  かつて私がアフリカに参りました際に、当時のコートジボアールの大使より次のようなことを聞かされました。  私たちがこのアフリカで日本との友好を呼びかけようとしても、こちらの若い人たちの間では、日本人を知らない、日本の青年を見たこともない人もいます。外交の関係は援助の話が大半です。しかし、長い目で国と国との交流を深めていく道は、やはり人と人との交流が大切です。バレーボールはこの国でも盛んです。何とか日本の女子バレーボールチームのようなものをアフリカへ呼ぶことはできないでしょうか。しかし、これは私の夢です、と大使は熱心に話されました。  私はこのことをバレーボールの関係者に告げるとともに、スポーツだけではなく、文化の面でもと考え、マンドリンのチーム、生け花の師範にも御参加を願うことにして、スポーツ、文化の交流の一座を組んで、チュニジア、カメルーン、コートジボアール、さらにトルコの四カ国を後に訪問してまいりました。マンドリンの演奏会や生け花のデモンストレーションには、異国の文化ではありますが多くの人々が詰めかけ、バレーボール会場もいずこも満員の観客で、多くの皆さんの御協力をいただきながら成功をおさめてまいりました。  この種の文化交流を通じて感じることは、たとえ遠い国であっても、スポーツや文化をかけ橋にしてお互いに心の交流を通じて、互いに握り合った手のぬくもりを通じ、真の友好関係が生まれてくるのであります。政府はこうした草の根の文化交流にも積極的に支援をされようとしておりますが、これが推進のため、総理の御決意を最初にお伺いしたいと思います。
  125. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 今、御経験から出てきたスポーツ交流、文化交流というものについてのお考えを拝聴しましたけれども、やはり世界にはそれぞれ歴史や文化や得意とするスポーツやいろいろなものを持った人々がたくさんいます。それがお互いに知らないでいるよりも、お互いに交流をして知ることによって、世界には異なった文化があるんだ、異なったスポーツがあるんだ、しかしそれはお互いに理解し合って交流していくとすばらしい人生の幅が開けていくんだということは私は大切なことだと思いますし、また現に日本の青年が随分たくさん世界に出ていって、そしてスポーツの指導もしておってもらいます。それがいろいろなところで大変な成果を上げてきておる。  例えば、この前のオリンピックで、ペルーの女子バレーが二位になりました。銀メダルを取りました。あのことはペルーでは大変な話題になったのですけれども、ついこの間まで献身的にその女子チームを指導したのは日本から行ったコーチであって、残念ながらこの間現地で亡くなりました。そういったことから通じても、心の交流というものはいろいろな面で花開いていくものだと思います。  私は、そういう意味で、文化、芸術、スポーツの交流というものは極めて大切だと思っておりますし、また国際交流構想の中で我々は文化とかスポーツとか芸術の交流をより一層高めていこう、一つの方針としてこの間の所信表明でも申し上げた次第でございますので、力を入れてやっていきたいと考えておる施策の一つでございます。
  126. 二階俊博

    ○二階委員 国力に見合った国際的な役割を我が国が果たしていくために、昭和六十三年五月、ロンドンにおいて当時の竹下総理が国際文化交流の強化を世界に向かって表明され、今ここにこれが海部内閣に受け継がれ、ようやく花開こうとしております。  そこで、国際文化交流の中心的な役割を期待されている国際交流基金についてお尋ねをいたします。  国際文化交流行動計画において、国際交流基金がここ数年、海外からの強い要望にこたえることができるよう所要の資金の確保、海外拠点の拡充整備、必要な人員の確保を通じて活動基盤の強化を図り、さらに交流事業の拡充を図ると記されております。大変結構なことでありますが、政府として、外務大臣はこの点をいかがお考えか、御方針をお示し願いたいのであります。
  127. 中山太郎

    ○中山国務大臣 二階委員みずから一団を率いて、いろいろと発展途上国との間の文化交流に御苦労いただいていることに敬意を表しますとともに、ただいまお尋ねのありました国際交流基金、これは政府の出資金をもとに資金を運用して、その運用益等で、今年度は、昭和六十三年度の百五億円から平成元年度には百二十億円の予算を使いましてこれらの文化交流に努力をしてまいるということでございますが、いろいろと海外でも日本語学校も随分多く出てまいりましたし、また先般、浦和市に日本語国際センターなるものを設立いたしまして、海外から日本語をやっていただいている先生、外国人の先生方をお招きして、ここでもう一度勉強していただくというようなこともやっておりますし、さらに先生の御支援をいただきながら、この国際交流基金の活動を拡充強化してまいりたい、このように考えております。
  128. 二階俊博

    ○二階委員 次に、国際文化交流を効率的に推進するためには、多数の民間の方々に積極的に御参加をいただいて、いわゆる草の根の交流といいますか、ボランティアの役割も極めて重要であります。国際交流の場においても、ODAと車の両輪のように、国民総参加による心の交流を展開することが大事なことであります。一般の方々が、志ある人はだれでもが容易に国際交流に、国際親善の場に参加し、国家のためにあるいは国際社会にいささかでも貢献していただける機会をつくることも大切なことだと考えておりますが、外務大臣はこの点はいかがお考えでございますか。
  129. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先生御指摘の国際文化交流、これを国民挙げて各界各層でやっていくというようなお考えにつきましては、政府といたしましても、いろいろな国民の各層の方々の民間の御努力、そういうものに対しまして政府としては御支援を申し上げるということも踏まえて、この国を挙げての有志による文化の交流が進められていくことに大きな期待をいたしております。
  130. 二階俊博

    ○二階委員 次に、経済大国日本と言われながら、外交を結んでいる国に対して大使館を置いていない地域はまだまだたくさんあるわけでありますが、逆に開発途上国が日本に大使館を持つために大変な努力をしておるわけであります。外交はもとより相互主義であります。在外公館の充実は、総理の言われる国際協力構想を推進していく上で最初にやるべきことではないかと思うのであります。  さて、我が国において諸外国が大使館を持つために、最近の異常な地価高騰によって重大な影響を及ぼし、特に発展途上国からは悲鳴が聞こえてくるのであります。こうした問題を解決するために、土地対策の一環として国土庁においても当然努力されているものと思いますが、在京の大使館等の建設の問題についていかなる努力が払われているのか、国土庁長官から御説明を願いたいと思います。
  131. 三木克彦

    ○三木政府委員 在日公館の維持に関する問題につきましては、基本的には各派遣国の意思と考え方を中心考えるべきであるという基本的な考え方に立っておるわけでございます。しかし、昨今の東京における地価高騰によりまして、各在日外国公館の状況が非常に大変な状況にございます。政府全体としてもできる限り努力をしていく必要があるということで、関係省庁、地方公共団体等におきまして努力を重ねているところでございます。  また、民間を中心といたしまして大使館ビルや大使館公邸ハウスの建設の計画もあるということでございまして、この辺も十分理解をしながら、国土庁としても極めて重要な課題であるという認識のもとに、早期に問題が解決されるよう努力をしてまいりたいと考えております。
  132. 二階俊博

    ○二階委員 次に、最近の中国問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  先般、奥田敬和先生を団長とする日本中国青少年使節団の一員として訪中をいたしまして、楊尚昆国家主席、万里全人代常務委員長、王震国家副主席等を初め、多くの要人との会談を行い、さらに青年男女のスポーツ、文化の交流を通じ幅広い接触を行ってまいりました。渡航自粛勧告が解除されて三日後の訪中でありましたが、百六十名に及ぶ日本からの大型訪中団として、中国政府を挙げて大変な心遣いでありました。もちろん戒厳令は解かれておりませんが、町は非常に平静で、表面的には落ちついたものを感じました。  要人会談では、特にパリのアルシュ・サミットにおいて日本が中国の孤立化の回避のために参加国に働きかけたことに感謝を表明し、このような不幸な事件を再び起こしてはならないという反省が見られました。これからの中国は、十年間を教育に、後の十年を経済に全力を尽くし、開放・改革政策を続ける決意を述べておられました。  そこで、いずれにしても日中の関係は相互に引っ越しのできない間柄であります。隣国として言うべきことははっきりと言いつつも、サミットにおける宣言にあるように、中国が孤立化の道を歩むことのないよう、隣国の友人として特に配慮が必要であると考えております。  このような観点から、まず外務大臣にお尋ねをいたしますが、政府は今日の中国情勢をどのように理解し分析しておられるのか、お答えを願いたいと思います。
  133. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先生お尋ねの中国と日本との関係は、古い歴史の中で一衣帯水といいますか、とにかく引っ越しのできない土地であります。そういう国土をお互いに踏まえながら、我々は中国の文化も長い歴史の中でたくさん吸収しておりますし、またこの新しい中国の建設に向かって日本もできるだけの協力をしていかなければならないというふうに考えております。私どもは、天安門事件以来中国の方々に対して、改革・開放路線を堅持をして西側とよく話をしていただくというような環境をぜひつくっていただきたい、そういうことをつくっていただくことによって、日本も西側の諸国もこの中国の新しい建設のためにそれぞれの協力をしていかなければならないというふうに考えております。
  134. 二階俊博

    ○二階委員 仰せのとおり、我が国とは古い友好の歴史を持っておるわけでありますが、隣国の友人として、総理または外務大臣がこのような時期にこそ思い切って訪中をし、日本の天安門事件に対する基本的な見解を含め、今後の日中関係の前進について話し合うとともに、あわせて西側諸国に対しても中国問題に関しては日本が果たすべき役割も当然期待されているわけでありますので、この際適当な機会を選んで、外務大臣みずからが訪中されて、凍結状態になっている第三次円借款を含む新規経済協力の再開のため話し合いを行う御意思がおありかどうか、外務大臣にもう一度お尋ねしたいと思います。
  135. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先般、伊東訪中団の御帰国による御報告、また中島大使の帰任の際の中国側のお話等もいろいろ承りながら、私どもといたしましては、北京への渡航自粛勧告の解除を九月二十五日にいたしたわけでございます。その後、ニューヨークの国連総会におきまして日中外相会談を行いまして、中国外相にも、私どもとしては一日も早くこの環境が整備されるように心から願っておるということを申しておりますし、そのような時期が参りましたならば、中国を訪問していろいろとお話し合いをさせていただきたい、このように考えております。
  136. 二階俊博

    ○二階委員 環境の整備と申しますか、いわゆる条件が整うならば、私は総理自身も適当な機会に訪中されることを希望しますが、この際、中国問題に対する御認識と、あわせて御見解を承っておきたいと思います。
  137. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 外務大臣が詳細御報告しましたように、中国と日本の間には隣国として長い歴史がございます。そして基本的には、友好関係をきちっと打ち立てて協力していかなければならない隣の国であるという立場を私もしっかりと自覚をしておるところであります。  ただ、六月四日のあの事件はまことに異常な事件でもありましたし、あれによっていろいろな日中関係は、今停滞状態にあるということでございますが、先ごろ訪中された我が党の議員の皆さんの御報告や伊東団長の御報告やいろいろ承っておりますと、大体落ちつきが出てきた、平静になりつつあるというお話も聞いております。旅行者の交流も復活をいたしましたが、まだ第三次円借款というような基本的な問題に踏み込むに至っておりません。中国が開放・改革の路線を名実ともに定着させていく、そしてまた日本との協力が従来同様にオープンに、しかも表向き我々もその立場を理解して再開することができるような環境をつくるために、中国側も努力をしてもらうことを心から期待をいたします。  私どもがそういった条件を踏まえて交流できるようになる日を一日も早く迎えたいものだ、こう思っております。
  138. 二階俊博

    ○二階委員 私たちは訪中の際に、要人会談におきまして、さらに李鉄映教育主任にお会いをいたしました。  中国は、御承知のとおり八十歳をはるかに超えた長老がリーダーでありますが、李鉄映主任は、日本で言いますとニューリーダーあるいはネオニューリーダーに当たるような若手の有力な幹部であります。中国が今後教育改革を進めていく上で日本の教育改革を大いに参考にしたい、特に日本は科学技術及び職業教育にすぐれており、機会を見て日本の教育現場も視察をしたいと語っておられました。そして、でき得れば、近い将来日本の文部大臣にぜひ中国にお越しを願いたいということでございました。将来適当な機会にこの要請に応じられて、石橋文部大臣の訪中を期待いたしますが、文部大臣のお考えを伺っておきたいと思います。
  139. 石橋一弥

    ○石橋国務大臣 お答えいたします。  まず中国の文部大臣の招請を心から感謝を申し上げます。  そこで、御承知のとおり、中国は一衣帯水の間柄、そしてまた同文同種と昔から言われている仲であります。機会があれば中国側の責任者ともお会いを申し上げて、意見の交換をいたしたい、こう考えております。ただ、訪中の時期については十分検討をしていきたい、こう考えておりますので、よろしくお願いをいたします。
  140. 二階俊博

    ○二階委員 日中交流センターの建設の問題についてお尋ねをしたいと思います。  日中交流センターは約百億円の予算を投じ、昭和六十一年から日中両国政府協力で、日中両国はもとより、世界じゅうの青年の交流の場として、また日中友好促進のための象徴的な事業として推進されてまいりました。  本来ならば国慶節四十周年に合わせて竣工の予定でありましたが、私たちは現場も見てまいりましたが、諸般の情勢でかなりおくれております。完成は来年の春以降と中国側の中華全国青年連合会の幹部は説明しております。既に約束し、合意をして出発した青年交流のプロジェクトであり、いかなる困難な事情に遭遇しようとも、速やかな完成に努めなくてはならないと思います。  同計画の現状と今後の進捗について、外務大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  141. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 先生御質問の日中青年交流センターの現状と見通しについて御説明させていただきたいと思います。  先生御承知のように、現在七、八割は完成しておりまして、私写真を持ってまいりましたが、先生も現場でごらんになられたかと思います。  御指摘のように、本来はこの秋を目標にして作業をしておりましたが、北京市など大変に建設ラッシュで、労働者の手当て、それから資機材の手当てがそもそも大変おくれておりまして、工事がおくれがちのところに加えまして、先ほど来話に出ております天安門事件が六月に発生いたしましたために影響を受けまして、工事が中断いたしました。しかしながら、第三次円借款を含めます新規案件に関しましては、先ほど来海部総理、中山外務大臣から申し上げましたように、私どもなお慎重に検討するという態度をとっておりますが、日中青年交流センターのような継続案件に関しましては予定どおり進めるということで、今全力を挙げて作業を進めております。  先生御指摘のように、来年の春何とか完成させたいと思っておりますが、十二月には実務者レベルで日中間で話し合いを持ちまして、今後の見通しにつきましてさらに協議したいと考えております。
  142. 二階俊博

    ○二階委員 次に、国際交流のために最も重要な我が国の国際空港について二、三お尋ねをしたいと思います。  日本に対して国際定期航空路線の乗り入れを希望する国々が今日現在三十七カ国もあると承っております。このままの状態で置きますと、またまた今度は国際的に空の摩擦が生じかねない状況であります。またむしろ国際的に、日本にとっても大変大きな損失であります。外務大臣はこの問題をどのようにお考えになっておられるか、まずお尋ねをしたいと思います。
  143. 中山太郎

    ○中山国務大臣 お尋ねの外国航空会社の日本乗り入れにつきまして、成田空港が既に満杯の状態になっておることはよく存じております。このような状態の中で、海外からの申し入れの航空路を新しく開設するということにつきましては、先生にも大変お世話をいただいております関西国際空港の建設が一日も早く終了するということも一つの大きな問題でございますし、なおほかの国際空港で入れるところをどうするか、運輸省がいろいろと御配慮をいただいているところだと考えております。
  144. 二階俊博

    ○二階委員 ただいま外務大臣からお答えをいただきましたが、外国からの航空機乗り入れの問題で最も期待されるのは成田の二期工事と関西国際空港の早期完成であると思います。これらの見通しについて運輸大臣にお尋ねをいたしたいと思います。
  145. 江藤隆美

    ○江藤国務大臣 成田国際空港は未買収の農地が約二十一ヘクタール、農家数で八戸残っておりまして、この問題を片づけながら平成二年度の概成をめどにして今鋭意努力を重ねておるところでございます。  御意向のように、成田には三十七ヵ国が乗り入れておりまして、四十八社が入っております。なおかつまたそれ程度のものが、それは全部やはり増便をしてくれという要請、それから新たに乗り入れたいというのが三十七社から三十九社ぐらい多分あると思います。ですから、もうこれ以上逡巡することは許されない。したがいまして、いかなる困難がありましょうとも成田の問題は片づけなければ、ゴルフでさえもたった四人で六分置きにスタートするのですが、成田は三百人も五百人も乗せたジャンボ機が、ひどいときは二分置きでスタートするわけですから、これは大事故を起こさないのがおかしい。国際的な信用にかかわることでありますので、これから各方面の御協力を得て全力を挙げて、平成二年度の概成、すなわち第五次空港整備五カ年計画の中で目的を達成しよう、こう思っておるところであります。  それから、大阪空港、いわゆる関西国際空港でありますが、これは私、先般行ってきまして、目標どおり二十四時間営業の空港を平成四年度には完成をさせたい。工事は順調でありますので、このままいけば大体平成四年度の末にはこれは完成するものと思います。
  146. 二階俊博

    ○二階委員 成田の第二期工事の難しい事情についてはただいま承りましたが、関西国際空港も今、平成四年度と大臣の明確なお言葉をちょうだいしましたが、開港時期は既に世界に向かって公約をしているわけでありますから、関係者の一層の御努力をお願いしておきたいと思います。  さて次に、関西空港は海上につくる空港でございます。アクセスについてより一層の配慮が望まれるところでありますが、湾岸道路の整備、第二阪和道路の整備の促進を含め、空港のアクセスについてぜひ開港に間に合わすことができるよう、場合によっては建設大臣御自身が現地を御視察願って督励するぐらいのお気持ちで取り組んでいただきたいと思いますが、大臣の御見解、御決意を承りたいと思います。
  147. 原田昇左右

    原田国務大臣 二階委員のお話のあった関西空港のアクセス道路の問題でございますが、関係閣僚会議におきまして六十年十二月に関西国際空港関連施設整備大綱というものを定めたわけでございます。それに従って、アクセス道路の整備に向けて関係者は懸命の努力をしております。私もみずからこの前八月の末に行って、これは花博の関係で行ったのですが、ヘリコプターで上からずっと視察をし、関係者を督励してまいりました。  その際、近畿自動車道紀勢線というのはこれはほぼ間違いなく完成いたしますが、関西国際空港線というそれに接続するところがありますが、これは大分今、用地買収で関係者は非常に努力しておりまして、かなり見通しが出てきております。それから、阪神高速道路湾岸線等につきましても、関係者の努力で今の大綱の線、一部湾岸道路を使うことになっておりますが、それも大綱であらかじめ定められたとおり、供用開始までにはぜひとも完成したいということで関係者一同推進をし、頑張っておるところでございます。
  148. 二階俊博

    ○二階委員 先ほど運輸大臣からお話ありましたように、一日運輸省を関西でお開きになりまして、全体計画、つまり関西空港の第二期工事について積極的な御発言をいただき、意を強くしております。国際的な外交上の期待も先ほどからのお話にあるように大変大きいわけでありまして、計画の早期決定を願うものでありますが、運輸大臣の御見解を伺っておきたいと思います。
  149. 江藤隆美

    ○江藤国務大臣 先ほど第一期工事のことを、平成四年度には終わるようにいたしますということを申し上げたわけでありますが、御案内のように第五次空港整備五カ年計画が来年度で終わるわけでありまして、平成三年度から第六次空港整備五カ年計画が新たにスタートをする、こういうことに相なるわけであります。一方、昭和六十三年度から第二期工事全体構想についての調査を進めておりまして、平成二年度の概算要求にもそのことを実はお願いをいたしております。そういう調査とそれから第六次空港整備のいわゆるスタートと、こういうものをよくよく勘案しながら、近畿圏の航空需要あるいは関西国際空港のこれからの採算性、あるいはまた周辺には、伊丹空港を将来どうするのだ、あるいは神戸沖の空港あるいはまた滋賀空港と、もろもろの実は御意見がたくさんありますわけでありまして、それらを全体的に考え、調整をしながら、適切な対応をしていこう。いずれ将来は、やはり私は一本の滑走路では足りなくなる時代が必ず来るのではないか。それはやはり日本の経済発展の象徴になるであろう、こういうふうに考えておるところでございます。
  150. 二階俊博

    ○二階委員 なお、現在の一期工事の計画の中には空港に通ずる架橋は北側に一本つながっておるわけでありますが、将来は、交通量、旅客数あるいは観光客、さらに警備の面、また保安、消防、救急対策、特に災害等を考えますときに、またさらに空港が周辺地域に及ぼすはかり知れない経済の波及効果を考えるときに、南側にもう一本の架橋を必要とするわけでありますが、このことについて、この段階では一応研究してみるというお考えはないかどうか、大臣の御意見を伺っておきたいと思います。
  151. 江藤隆美

    ○江藤国務大臣 先ほどの関西国際空港の第二期工事の全容について一つ申し落としがありまして、今、中部国際空港の強い要請が実はあります。いや、総理がおられるから言うのではありませんで、これは地元で非常なやはり熱心な御研究が続けられておって、既に場所も選定をして強い要請があるわけであります。そういうものもあわせて検討しながら関西国際空港の全容というものを明らかにしたい、こう考えております。  それから、もう一本国際空港に南ルートの道路をつくるべきではないかということにつきましては、関西国際空港南ルート架橋に関する調査というのを地元でわざわざ予算まで計上して熱心に御検討いただき、私、こういう資料もちょうだいをいたしました。御案内のようにただいま関空は、往復六車線の道路に、それからJR並びに南海鉄道を同時に乗り入れるという構想のもとに架橋が進んでおりますわけで、一応当初の計画としてはこれで大丈夫である。それからもう一つは、神戸とか淡路とかなんかは海上で持ってくるという構想もありますわけですから、当初の計画からいたしますと大体これで間に合う、こういうことになって作業が進んでおります。しかし、せっかく委員の仰せでもありますし、地元でわざわざこういう御検討もいただいたことでありますから、その点も十分に承知をいたしまして、これから検討させていただくことについてやぶさかではございません。
  152. 二階俊博

    ○二階委員 過疎地域振興について次にお尋ねをいたしたいと思います。  過疎市町村は全国の市町村の約三分の一に相当する千百五十七の市町村で、面積は国土の約半分を占めております。御承知のように昭和四十五年、先輩各位の御努力によりまして議員立法でいわゆる旧過疎法が制定され、さらに昭和五十五年に現行過疎法が制定されましたが、今日まで二十年間、総投資額二十五兆円を上回る対策が講じられ、その結果過疎地の市町村の公共施設も次第に改善され、人口減少率もやや低下し、着実に成果を上げてまいりました。このことは、現行過疎法の果たした役割がいかに大きなものであるかを物語るものであります。しかるに現行法は、平成二年三月三十一日をもって失効する運命にあります。  そこで、自由民主党過疎対策特別委員会では、全国の過疎地の知事及び市町村長にアンケート調査を行い、さらに全国六カ所に調査団を派遣するなど、積極的に取り組んでまいりました。その結果、人口の減少、特に若年層の流出が今なお続いており、高齢化の進展は全国平均の十七年も先を行くこれらの地域に新たな過疎対策を確立する必要があり、重要な政治課題だという結論に達しました。新しい立法措置について本年一月の自民党大会でも要望決議がなされ、去る参議院の選挙の際にも選挙公約として新しい立法の道を開いております。  海部総理にお尋ねをいたしたいと思います。  私は、我が国には経済大国日本の名にふさわしい地域も確かにあります。しかし、経済大国からかけ離れたもう一つ日本が存在するような気がしてならないのであります。過疎対策、過疎問題に対する総理の心温かい見解をお示しをお願いしたいのであります。同時に、自由民主党の総裁の立場から選挙公約の実現に御努力を願いたいと思いますが、あわせて御決意のほどをお聞かせ願いたいと思います。
  153. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 過疎地域に対していろいろな配慮をしていかなければならないという先輩、同僚、皆さんの合意によって過疎法の歴史があったこと、ただいまお話のあったとおりでございます。ただ、過疎地域振興特別措置法が来年失効するわけでありますから、その後どうしようか。法律によって随分過疎地域も整備されたり、公共事業ができたり、人口の低下率が食いとめができたり、いろいろな成果は上がっているとは思いますけれども、まだまだそれをもってしても十分とは言えない状況ではなかろうか。そこで皆様方の御要望が出てきておるわけでありますから、よく実情を検討させていただきまして、新たな法的措置については適切な措置がとられるように私どもも努力をしていきたいと思っております。
  154. 二階俊博

    ○二階委員 現行過疎法を所管する国土庁長官に、現行法の最終年度に当たり、今後いかなる対策を講じようとされておられるのか、御方針をお伺いしたいと思います。特に、私どもが過疎地に伺いますと、ODAも結構なことですが、日本の中にもODAを考えてもらいたいという率直な声も聞かれるのであります。大臣の御所見をお尋ねしたいと思います。
  155. 石井一

    ○石井国務大臣 この法律が施行されましてからそれなりの実績を上げておるというふうに我々も評価いたしております。当初人口の流出が一三%以上もあったのが非常に減少し、また道路やその他の社会資本も整備され、あるいは老人の多いところに若人の人口が徐々に帰ってきた、そういうふうな実績もあることがわかっております。  四十五年には過疎地域対策緊急措置法という名前でありましたが、五十五年の十年後の改定期には過疎地域振興特別措置法と、いずれも議員立法で行われております。こういうことを考えましたときに、その必要性、また過去の実績というものは認めるわけでございますけれども、政府が提案すべき問題であるかどうか、これらにつきまして今後、もう期限も来ておるわけでありますから、前向きに取り組ませていただきたい、そのように考えております。
  156. 二階俊博

    ○二階委員 次に、文部大臣にお尋ねをしたいと思います。  過疎問題についてでありますが、高等教育機関の設置の際に、もちろん過疎対策を念頭に置いて対処しているわけではありませんが、国土の半分の面積を占める過疎地には大学がわずかに二校であります。他の残りの非過疎地の部分に千校も大学が集まっております。いかにも不均衡と言わざるを得ません。文部省においても、高校進学対策等も含め過疎地域の振興策について御検討を願っているようでありますが、この際、文部大臣の御見解を伺っておきたいと思います。
  157. 石橋一弥

    ○石橋国務大臣 お答えいたします。  ただいまのお話は、国立大学あるいはそのような機関を過疎地域等に持っていったらいかがか、こういうことであろうと存じます。  過疎過密問題は今の日本の大変な重要な問題でありますけれども、地域社会の活性化を図ることは一つ考え方であると思います。同時に、このような大学あるいは研究機関、こうしたものを設置するには、そこに十分な研究環境、大学の環境を確保することも極めて大切なことであります。それらの事情を勘案をいたしながら、慎重な検討をこれからも続けてまいる所存であります。
  158. 二階俊博

    ○二階委員 次は、過疎地の交通問題についてであります。  道路でいえば、周辺の市町村、例えば過疎地と地域の中心地を結ぶ道路の整備は依然として不十分であります。地域の経済活動が広域化しておる今日、今後広域的な過疎対策、広域的な道路網の整備が必要であります。このため、都道府県道の整備はもとより、過疎代行制度の隣接市町村への拡大が不可欠と考えておりますが、建設大臣の御見解を承りたいと存じます。
  159. 原田昇左右

    原田国務大臣 過疎地域の道路整備の重要性につきましてはまさに御指摘のとおりでありまして、基盤施設として不可欠なものだと考えております。このため、過疎地域の財源も考慮いたしまして、過疎地域道路については都道府県に代行させる制度というものを発足させておるわけでございますが、お話のようにこれから過疎地域を振興する際、広域的な道路といいますか、これは主として都道府県道になると思いますが、そのほかにも、市町村道であって近くの都市と直結したいというような御要望が多々あると考えられるわけでございまして、そういう場合に過疎地域から外へ出て現行の代行制度を活用するということも必要になってくるのではないかと思います。大いに前向きに、委員のお話でございますので、これからの過疎法の動向とあわせまして検討させていただきたいと思っております。
  160. 二階俊博

    ○二階委員 交通問題は、道路だけでなく、過疎地におけるいわゆる病人の発生、災害その他に直ちに役に立つヘリコプターによる輸送が円滑にできるよう配慮しなければならないと思うわけであります。かねてより運輸省でも御検討を願っているようでありますが、この問題についての方針がまとまっているようでありますならば、過疎地の地方バスの助成とあわせて、いわゆる過疎地の足の確保のための基本的なお考えを大臣から承りたいと思います。
  161. 江藤隆美

    ○江藤国務大臣 まず、私は過疎対策特別委員長、第二代の委員長でありました。その後、過疎地域の問題について関心を持つ国会議員の皆さんが少ない中で、二階委員には全国各地の過疎地域を回られていろいろ問題を集約され、また今後の過疎対策についていろいろお骨折りをいただいておるということにつきまして、私は心からまず敬意を表したいと思います。  さて、過疎地域の交通対策でありますが、まず第一番になってくることが、これはもう御承知のように過疎地域のバスの問題が出てきます。これはどうしても採算の十分でないものがたくさん出てくるわけでありますし、同時にまた、いわゆる鉄道の面でも例えばバス転換のところが大分出てきたわけですから、そういうバスの確保、バスによるいわゆる交通手段の確保というのは今後十分に取り組んでいく必要がある、こう心得ております。  それからもう一つは、もう昔とは違いまして、最近は非常にヘリコプターというのが盛んになってきまして、なかなかコミューター空港もできない、さりとて高速道路もできない、そういうところで発生するいわゆる緊急医療あるいは災害対策あるいはまた遭難等の捜索、こういうものにはどうしてもヘリコプターを使っていくということが極めて必要でございまして、昭和六十二年度の補正予算でもって、地方公共団体の設けようとするヘリポートについての助成措置を実は講じさせていただいたところであります。さらに、ただヘリポートだけではだめでありまして、しょっちゅうは使わないけれども時々そこで離着陸ができるという、いわゆるヘリストップというのを今度は設けておきませんと、あれはどこでもここでもおりたり飛んだりするわけにはまいりませんので、その行動半径が非常に限られてくる。したがいまして、ヘリポートの整備と同時に、そうした随時おりられるような、必要なところにおりられるようなヘリストップの設置について、技術的にあるいはその他もろもろの問題があるとするならば運輸省としては積極的にこれに対応していこう、こういうことで臨んでおるわけでございまして、どうぞひとつ、お互いに過疎地に住んでおりますから十分御活用いただくと大変ありがたいと思っております。
  162. 二階俊博

    ○二階委員 次に、農林大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  過疎地は全国の森林資源の大半を占めております。しかし、かつて地域経済の柱であった林業は残念ながら不振をかこっており、このことが過疎の地域の活力を失わせつつある大きな要因となっております。同時に、国土の保全や管理の面からも人手不足とともに深刻な問題を投げかけております。しかし一方、このような森林資源の存在は、水や緑といった国民全体にとって重要な意味を持つものであり、国内の森林資源をどのように守っていくのか、地球環境問題のまさに日本版であります。  過疎地が国全体の発展に大きく寄与している大事な存在であることを念頭に、これらの地域の活性化のために林業及び森林に今後どのような対策を講じられようとしておられるのか、農林水産大臣の御答弁をお願いしたいと思います。
  163. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 過疎地域におけるところの林野の占める割合は約八〇%、こういうふうなことを考えますと、過疎地域における林業というふうなものは大変そのウエートは大きいものでございます。それだけに過疎地域における林業対策、しっかりとやっていかなければならない。このような考え方から、従来から過疎地域におきましては、地域の基盤であります林道については補助率の優遇なりあるいは採択基準等の緩和を行っているほか、基幹林道については市町村にかわりまして都道府県が負担して行う都道府県代行制度等を実施いたしておるわけでございます。  今後におきましても、過疎地域における林業の重要性、このような認識のもとに、一つは、過疎地域の活性化を図っていく、そのような意味から林業構造改善事業をこれからも引き続いて推進をしていく。二つ目は、過疎地域等の林業集落を対象といたしまして、生活環境施設をこれから充実しながら定住基盤を整備していく。三つ目は、雇用機会の確保のための特用林産物の対策や総合利用の推進など、いろいろと施策をこれから一層進めてまいりたい、このような考え方でおるところでございます。
  164. 二階俊博

    ○二階委員 自治大臣にお伺いしたいと思います。  過疎対策には、御承知のように、国庫補助率のかき上げや市町村の基幹道路の整備のための都道府県の代行制度、先ほど建設大臣からお話のありましたとおりでありますが、低利融資さらには税制措置等の施策が講じられておりますが、特に過疎債等の財政措置が中心的な役割を果たしてまいりましたことも事実であります。過疎地を活性化させるためのかなめとなる過疎債の拡充が最も重要であります。また、ふるさとの名に最もふさわしい過疎地に対して、私は、この際、ふるさと創生の担当大臣でございます自治大臣にはさらに御熱意を傾けて支援策を講じていただきたいと思うわけでございますが、御決意のほどをお伺いしたいと思います。
  165. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 私は、自治大臣に就任して四十七都道府県、三千三百の市町村自治を勉強させていただいて、戦後四十五年、我が国の内政で反省しなければならない最大の問題は、今二階議員御質疑になったこの地域の過疎と過密の問題であると考えております。  先ほど土地問題がいろいろ議論されましたけれども、大都会では毎日交通渋滞のいらいら、そして地価が暴騰してサラリーマンが将来マイホームの夢を持てない。ところが地方に参りますと、二階委員の郷里にも私参上したことがありますが、あの美しい海、温暖な気候、あのすばらしいところに過疎で人が減っていく、これほどの矛盾はないと痛感をいたしております。したがって、これから二十一世紀に向かって内政上の最大の課題は、北は北海道から南は九州、沖縄に至るまで三千三百の全国の市町村の地域住民の皆さんたちが、東京に行かなくても、大阪に行かなくても、みずから生まれた郷里に誇りを持って、将来に夢と希望を持って暮らしていけるような地域をつくっていかなければならない。そのためにこそ、ふるさと創生が私はあると思います。そのためには、農業、極めて重要でありますが、同時に、私は通産大臣にいつも話をしておるのでありますけれども、これは企業の地方分散、あるいは今文部大臣お話がありましたが、大学の地方分散、文化、情報の地方分散、幅広い立場でこれから仕事を進めていかなければならないと考えております。  したがって、過疎法、これは自由民主党において立派な法律として新法ができていくものと確信をいたしておりますけれども、今までの事業に、さらに新しいニーズに応ずるように若者たちの定住等、対象事業を拡大し、また御指摘の過疎債については、これに十分こたえられるように、確保するように努力をしてまいりたいと思っております。
  166. 二階俊博

    ○二階委員 郵政大臣にお尋ねをしたいと思います。  私たちが過疎の調査で先般高知県の山村にお伺いしたときのことでありますが、山村の、山奥の木工の工場でございました。そこでは東京から、あるいは大阪から、デパートからその木工製品についてきちっとした図面、いわゆる仕様書を書いたものをファックスで届けられるわけであります。それを今度は地元で生産して、ふるさと宅急便でもってこの注文のあったところに送り届ける、郵政省が過疎に大変力になっていただいていることを発見したわけであります。  続いて、テレトピア構想という、いわゆる地方の情報化に際して先ごろから郵政省が積極的にお進めいただいている施策でありますが、私は、この際このテレトピア構想なるもののいわゆる過疎版ですね、過疎というものを中心にして郵政の情報化について大臣のお力添えをぜひちょうだいしたい、このように思っておるわけでございますが、大臣の御見解を承りたいと思います。
  167. 大石千八

    ○大石国務大臣 先ほど自治大臣が述べられましたとおり、一極集中型から多極分散型といいますか、均衡ある国土の発展という政府の方針どおり、郵政省も情報の地域格差をなくすという意味で二階委員御指摘のとおり力を入れているわけでございます。地域の情報化の推進、そしてまた全国二万四千の郵便局のネットワーク等を活用してそういった施策を行っているところであります。  具体的な過疎対策といたしましては、過疎地域における民放テレビの難視聴対策及びCATV整備の促進、あるいは遠距離電話料金の全般的の低廉化、あるいは今おっしゃった過疎地域におけるテレトピア計画の推進、そしてこれも今お話しになりましたふるさと小包の充実、地域の特産品を大いにこのふるさと小包を通じて全国各地へ便利に速く正確に送れるようにということをさらに充実をさせようと努力しておりますし、また過疎地域における簡易保険とか郵便年金の加入者福祉施策の整備も行っており、またそれによって過疎対策事業債への運用等もこういった簡易保険・郵便年金資金を通じて行ってきたところでございます。  テレトピアの計画に関しましては、今申し上げましたとおり、今全国で七十都市の指定をしているわけでございますけれども、地域の指定をしておるところでございますが、さらにそういった過疎地域の要望にこたえ、指定と同時に、充実したテレトピアの事業を遂行していきたい、こう考えております。  それから、特に先ほどから新過疎法の制定のことが言われておりますが、郵政省といたしましても、この新過疎法を制定することに関しまして自治省とか国土庁と今話し合いを進めておりますが、過疎地域におけるテレビ難視聴解消のためにテレビジョン中継施設を過疎対策事業債の対象とすること及び関連の税制上等の優遇措置をこの中に入れてもらうこと、こういったことをぜひやって、過疎で、特に民放テレビはなかなか採算が合わないということでどうしても設置がおくれておりますので、こういった過疎債を通じて中継所が建設できるように、またこれが過疎債を通じて国の制度で補助できるように、そういったことも今自治省、国土庁に新過疎法絡みでいろいろ話し合いを進めているところでございます。  いずれにいたしましても、こういった問題、地域の情報化推進という重要な役割がございますので、郵政省といたしましても全力で取り組んでまいりたい、このように考えております。
  168. 二階俊博

    ○二階委員 時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。まだもちろん通産大臣にも労働大臣にもあるいは厚生大臣にもお尋ねしたいことがあるわけでありますが、時間が参りましたので、どうぞこの問題は内閣挙げて取り組んでいただきますよう強く要望しまして、私の質問を終わります。
  169. 中尾栄一

    中尾委員長 これにて二階君の質疑は終了いたしました。  次回は、来る十六日午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時六分散会