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1989-10-11 第116回国会 衆議院 予算委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日平成元年九月二十八日)(木曜日 )(午前零時現在)における本委員は、次のとお りである。    委員長 中尾 栄一君    理事 小里 貞利君 理事 越智 伊平君    理事 中島源太郎君 理事 綿貫 民輔君    理事 佐藤 敬治君 理事 村山 富市君    理事 宮地 正介君 理事 玉置 一弥君       稲村 利幸君    上村千一郎君       小渕 恵三君    大坪健一郎君       大野  明君    奥田 敬和君       熊谷  弘君    倉成  正君       小坂徳三郎君    後藤田正晴君       近藤 鉄雄君    左藤  恵君       佐藤 文生君    砂田 重民君       田澤 吉郎君    田中 龍夫君       高鳥  修君    谷川 和穗君       玉沢徳一郎君    野田  毅君       浜田 幸一君    林  義郎君       細田 吉藏君    宮澤 喜一君       渡辺 秀央君    井上 普方君       上原 康助君    川崎 寛治君       菅  直人君    新村 勝雄君       辻  一彦君    野坂 浩賢君       大久保直彦君    坂口  力君       日笠 勝之君    水谷  弘君       川端 達夫君    楢崎弥之助君       岡崎万寿秀君    金子 満広君       不破 哲三君 ────────────────────── 平成元年十月十一日(水曜日)     午前九時開議  出席委員    委員長 中尾 栄一君    理事 小里 貞利君 理事 越智 伊平君    理事 佐藤 信二君 理事 谷川 和穗君    理事 中島源太郎君 理事 佐藤 敬治君    理事 村山 富市君 理事 宮地 正介君    理事 玉置 一弥君       稲村 利幸君    上村千一郎君       小川  元君    小渕 恵三君       大島 理森君    大坪健一郎君       大野  明君    奥田 敬和君       亀井 善之君    倉成  正君       小坂徳三郎君    後藤田正晴君       近藤 鉄雄君    左藤  恵君       佐藤 文生君    塩川正十郎君       砂田 重民君    高鳥  修君       野田  毅君    浜田 幸一君       林  義郎君    原田  憲君       細田 吉藏君    村山 達雄君       渡辺 秀央君    井上 普方君       伊藤  茂君    上原 康助君       川崎 寛治君    菅  直人君       新村 勝雄君    辻  一彦君       野坂 浩賢君    村山 喜一君       山口 鶴男君    市川 雄一君       坂口  力君    日笠 勝之君       水谷  弘君    川端 達夫君       楢崎弥之助君    岡崎万寿秀君       佐藤 祐弘君    辻  第一君       正森 成二君  出席国務大臣         内閣総理大臣  海部 俊樹君         法 務 大 臣 後藤 正夫君         外 務 大 臣 中山 太郎君         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君         文 部 大 臣 石橋 一弥君         厚 生 大 臣 戸井田三郎君         農林水産大臣  鹿野 道彦君         通商産業大臣  松永  光君         運 輸 大 臣 江藤 隆美君         郵 政 大 臣 大石 千八君         労 働 大 臣 福島 譲二君         建 設 大 臣 原田昇左右君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     渡部 恒三君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 森山 眞弓君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 水野  清君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      阿部 文男君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 松本 十郎君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      高原須美子君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      斎藤栄三郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 志賀  節君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 石井  一君  出席政府委員         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         内閣法制局第一         部長      大森 政輔君         公正取引委員会         委員長     梅澤 節男君         公正取引委員会         事務局取引部長 土原 陽美君         公正取引委員会         事務局審査部長 植木 邦之君         警察庁長官官房         長       浅野信二郎君         警察庁警務局長 仁平 圀雄君         警察庁刑事局長 中門  弘君         警察庁交通局長 関根 謙一君         警察庁警備局長 城内 康光君         宮内庁次長   宮尾  盤君         総務庁長官官房         長       山田 馨司君         総務庁長官官房         交通安全対策室         長       加美山利弘君         青少年対策本部         次長      福田 昭昌君         防衛庁参事官  小野寺龍二君         防衛庁参事官  玉木  武君         防衛庁参事官  村田 直昭君         防衛庁参事官  鈴木 輝雄君         防衛庁長官官房         長       児玉 良雄君         防衛庁防衛局長 日吉  章君         防衛庁教育訓練         局長      米山 市郎君         防衛庁人事局長 畠山  蕃君         防衛庁経理局長 藤井 一夫君         防衛庁装備局長 植松  敏君         防衛施設庁長官 松本 宗和君         防衛施設庁総務         部長      吉住 愼吾君         防衛施設庁施設         部長      大原 重信君         防衛施設庁建設         部長      黒目 元雄君         防衛施設庁労務         部長      竹下  昭君         経済企画庁調整         局長      勝村 坦郎君         経済企画庁国民         生活局長    末木凰太郎君         経済企画庁物価         局長      栗林  世君         経済企画庁調査         局長      田中  努君         科学技術庁研究         開発局長    須田 忠義君         科学技術庁原子         力局長     緒方謙二郎君         環境庁長官官房         長       渡辺  修君         環境庁企画調整         局長      安原  正君         国土庁長官官房         長       北村廣太郎君         国土庁土地局長 藤原 良一君         法務省民事局長 藤井 正雄君         法務省刑事局長 根來 泰周君         外務大臣官房長 佐藤 嘉恭君         外務大臣官房外         務報道官    渡邊 泰造君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省北米局長 有馬 龍夫君         外務省欧亜局長 都甲 岳洋君         外務省経済局長 林  貞行君         外務省経済協力         局長      松浦晃一郎君         外務省条約局長 福田  博君         外務省国際連合         局長      遠藤  實君         外務省情報調査         局長      山下新太郎君         大蔵省主計局長 小粥 正巳君         大蔵省主税局長 尾崎  護君         大蔵省銀行局長 土田 正顕君         国税庁次長   岡本 吉司君         文部大臣官房長 國分 正明君         文部省初等中等         教育局長    菱村 幸彦君         文部省高等教育         局長      坂元 弘直君         文部省体育局長 前畑 安宏君         文化庁次長   遠山 敦子君         厚生大臣官房長 黒木 武弘君         厚生省健康政策         局長      仲村 英一君         農林水産大臣官         房長      鶴岡 俊彦君         農林水産省経済         局長      塩飽 二郎君         農林水産省構造         改善局長    片桐 久雄君         農林水産省農蚕         園芸局長    松山 光治君         農林水産省食品         流通局長    鷲野  宏君         食糧庁長官   浜口 義曠君         通商産業省通商         政策局長    畠山  襄君         中小企業庁計画         部長      高島  章君         中小企業庁指導         部長      里田 武臣君         運輸大臣官房長 松尾 道彦君         運輸大臣官房国         有鉄道改革推進         総括審議官   大塚 秀夫君         運輸省運輸政策         局長      中村  徹君         海上保安庁長官 塩田 澄夫君         郵政大臣官房長 白井  太君         労働大臣官房長 若林 之矩君         建設省都市局長 真嶋 一男君         自治省財政局長 持永 堯民君         自治省税務局長 湯浅 利夫君         消防庁長官   木村  仁君  委員外出席者         自治省行政局選         挙部長     浅野三郎君         予算委員会調査         室長      右田健次郎君     ───────────── 委員異動 十月二日  辞任         補欠選任   熊谷  弘君     原田  憲君   宮澤 喜一君     村山 達雄君   綿貫 民輔君     佐藤 信二君 同月十一日  辞任         補欠選任   近藤 鉄雄君     大島 理森君   田澤 吉郎君     小川  元君   田中 龍夫君     塩川正十郎君   野田  毅君     亀井 善之君   井上 普方君     山口 鶴男君   新村 勝雄君     伊藤  茂君   野坂 浩賢君     村山 喜一君   大久保直彦君     市川 雄一君   金子 満広君     正森 成二君   不破 哲三君     佐藤 祐弘君 同日  辞任         補欠選任   小川  元君     田澤 吉郎君   大島 理森君     近藤 鉄雄君   亀井 善之君     野田  毅君   塩川正十郎君     田中 龍夫君   伊藤  茂君     新村 勝雄君   村山 喜一君     野坂 浩賢君   山口 鶴男君     井上 普方君   佐藤 祐弘君     辻  第一君 同日  理事山下徳夫君八月十日委員辞任につき、その  補欠として谷川和穂君が理事に当選した。 同日  理事綿貫民輔君同月二日委員辞任につき、その  補欠として佐藤信二君が理事に当選した。     ───────────── 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  国政調査承認要求に関する件  予算実施状況に関する件      ────◇─────
  2. 中尾栄一

    中尾委員長 これより会議を開きます。  まず、理事補欠選任につきましてお諮りいたします。  委員異動に伴いまして、現在理事が二名欠員となっておりますので、この際、その補欠選任を行いたいと存じますが、先例によりまして、委員長において指名することに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中尾栄一

    中尾委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  それでは、理事に       佐藤 信二君    谷川 和穗君 を指名いたします。      ────◇─────
  4. 中尾栄一

    中尾委員長 国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  予算実施状況に関する事項について、議長に対し、国政調査承認を求めることとし、その手続につきましては委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 中尾栄一

    中尾委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。      ────◇─────
  6. 中尾栄一

    中尾委員長 予算実施状況に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山口鶴男君。
  7. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 私は、日本社会党護憲共同を代表いたしまして、海部総理所信表明演説並びに当面する国政重要課題について若干の質問を行いたいと存じます。  まず最初に、大嘗祭についてお尋ねをいたしたいと思います。  我が党は護憲の党であります。さきに大喪の礼と葬場殿の儀がございましたが、これにつきましては、政教分離を定めました憲法二十条及び八十九条を厳格に守って、皇室典範で定められた国家行事とそれから天皇家の宗教的、伝統的な行事とは峻別して行うことを求めてまいりました。天皇は、皆さんとともに憲法を守り、ということをおっ しゃっておられます。政府は、最近、即位礼委員会を設けたと承っているわけでありますが、国家行事でありますところの即位の礼と宗教的、伝統的行事である大嘗祭とは峻別して行うべきものである、かように考えますが、総理見解はいかがですか。
  8. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 政府としましては、御指摘のように、即位礼準備委員会というものを発足させまして、そこで即位の礼、大嘗祭あり方等を含めてただいま慎重に検討しておるところでありますが、いずれにしましても、憲法趣旨に沿って、皇室伝統等を考えながら議論を進め、検討を進めていくことになる、このように御理解をいただきたいと思います。
  9. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 法制局長官お尋ねしたいと思います。  去る二月十六日だったと思いますが、私は、昭和五十四年の当時の真田法制局長官答弁を引用いたしまして、その確認を求めました。その際、法制局長官は、大嘗祭の方式、性格、意義につき検討し、それが宗教的な、憲法第二十条三項に規定する宗教的活動に該当することになれば、もとより政府が行うべきものではないというふうに明確に述べておられます。また、昭和五十四年の真田法制局長官もその趣旨を明確にいたしているわけであります。検討すると言ったわけでありますが、相当期間もたっております。検討の結果はいかがですか。
  10. 工藤敦夫

    工藤政府委員 ただいま委員指摘のとおり、平成元年の二月十六日、衆議院予算委員会におきまして前味村法制局長官お答えいたしまして、さらにそれをさかのぼりますと、五十四年の四月に衆議院内閣委員会真田法制局長官が御答弁申し上げております。  ただいま総理からお答えございましたように、私ども、即位礼準備委員会の中におきまして十分、今総理が申し上げましたようなことで検討をしてまいっているところでございます。
  11. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 当時、宮内庁次長だったと思いますが、大嘗祭皇室の長い伝統に基づく重い儀式であるので、これまでの長い伝統に沿った形で大嘗祭を行うべきものだ、このように述べております。  大嘗祭とは一体どういうものか、いろいろな書物を調べてみました。神器を継承することは形式的に皇位につくことであり、大嘗祭天皇としての霊力、資質を継承する最も重要な祭祀だというふうになっていますね。そうしますと、大嘗祭は明らかに神式に基づくこれは宗教的な行事、こう言わざるを得ないと思います。まさに神式でない大嘗祭というものはこれは考えられないということになりますと、これは国家行事として行うべきものではない、あくまでも皇室行事伝統的、宗教的な私的行事という形で行うのが、私は、憲法に沿う道であり、また天皇皆さんとともに憲法を守りということをおっしゃっておられるわけでありますから、そういう意味で憲法を守るということになるのではないかというふうに思います。この点、この大嘗祭性格、その上に立っての考え方を明確にしていただきたいと存じます。
  12. 中尾栄一

    中尾委員長 御質問はどなたにですか。——総理大臣海部俊樹君。
  13. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 先ほど申し上げましたとおり、憲法趣旨に沿い、かつ皇室伝統等を尊重したものになっていくと思っております。今検討委員会でそれは検討中のことでございます。
  14. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 それじゃ、宮内庁でいいですから、大嘗祭とはいかなるものか。
  15. 宮尾盤

    宮尾政府委員 ただいま総理からお答えございましたように、即位礼準備委員会でこの点については現在慎重に検討いたしておるわけでございます。先ほど委員からお話がございましたように、大嘗祭につきましてはいろいろな立場からの学問的な研究あるいはお説というものがあることは確かでございます。そういうことを含めまして大嘗祭というものをどういうふうにとり行っていくかということをただいま検討しておる段階でございますので、御了承いただきたいと思います。
  16. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 いつまでに検討するのですか。少なくとも明年度予算編成の際には一体どうするのか。国家行事とすれば、これは国家行事としての予算を組まなければならぬ。そうではなくて、我々の主張のように皇室私的行事であるということになれば、当然そのような形で対応しなければならぬということだと思いますね。とすれば、一体いつまでに結論を出すつもりですか。総理お答えをいただきたいと思うのです。
  17. 森山眞弓

    森山国務大臣 即位礼準備委員会は九月二十六日に発足したところでございまして、現在、今御指摘のような問題点も含め、広範にわたる問題を慎重に検討しているところでございますので、いつということは今のところまだはっきり申し上げかねますが、来年度の予算にかかわる分については間に合いますように検討を進めたいというふうに考えております。
  18. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 今までの学術的な見解その他を踏まえましても、大嘗祭がいわば祭祀である、宗教的行事であるということは明らかだと思います。これを国家行事として行うことは憲法二十条の原則に反することは当然であります。そのことは、さき真田法制局長官も明確に答弁しているところでありますし、これはもう明らかになっている問題だと私は思います。したがって、この点について検討と言うのですが、当然、出るべき答えは私は決まっていると思いますが、いずれにせよ、私どもは党としてこの問題については重大な関心を持っておりますので、ひとつ我が党山花書記長を窓口にいたしまして政府と折衝いたしたいと思いますが、その点はよろしいですね。
  19. 森山眞弓

    森山国務大臣 仰せのようなことで、十分御意見を承ってやっていきたいと存じます。
  20. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 憲法はあくまでも守る立場で対応することを強く求めておきます。  次に、海部総理政治信念についてお尋ねをいたしたいと思います。  総理は、三木総理が死去されました後、「月刊自由民主」の座談会におきまして次のように述べておられるようであります。三木先生は高い理想を持った人で、政治家理想を失ってはいかぬよということを常々申しておられた、自分は議会の子だから大衆の中に入ることを恐れない、大衆を信頼する政治家でなければならないということを常々おっしゃられたということを述べておられます。そして、信なくんば立たずと政治倫理を高く掲げ、議会政治発展のために献身されたというふうに述べて、議会の子は五十年の足跡を残して議会を去られたが、私は議会の孫として議会制民主政治発展のために全力を尽くしたい、このように述べておられるようです。  議会の孫として議会制民主政治、憲政の常道というものを踏まえて政治家として全力を尽くす、その信念は変わりがありませんか。
  21. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘のような気持ちで私が「自由民主」の対談に臨んだ、それはそのとおりでございますし、その気持ちを持ってこれからも国民皆さんの声に耳を傾けながら、議会制民主主義というものの本旨に立って私も一生懸命頑張っていきたい、こう決意をしておる次第でございます。
  22. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 ただいまの答弁はしかと承りました。  そうして、総理は、今国会所信表明演説で、参議院通常選挙に示された有権者意思を厳粛に受けとめます、こう言っておられますね。今回の参議院選挙争点は一体何だったのですか。いわゆる三点セットと言われた、消費税廃止の問題、それからリクルート政治改革の問題、そうして農政の不信の問題、三つの問題だったでしょう。これに対して有権者は鮮明な意思を示されたと私は思います。議会の孫として、通常選挙に示された有権者意思というものを尊重して、これからの政治をおやりになりますか。
  23. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 申し上げたとおり、私は去る参議院通常選挙の結果は厳粛に受けとめております。そうして、そこで争点になった問題、今御指摘三つ、それはそのとおりであったと思っ ております。したがって、私たちは、政治改革全力を挙げるということも、それから消費税の問題について国民皆さんに我々の考えておることを十分御説明をして御理解を得るような努力をするということも、農業問題についてもいろいろ御意見を聞きながら将来の明るい希望や展望ができるように政策努力を続けていくということも、みんな大切だと思いますし、選挙の結果ももちろんのこと、最近の各種の世論調査に示されております国民皆さん意思というものも、これは謙虚に受けとめて、前進していくための材料にさせていただきたい、こう受けとめております。
  24. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 それでは、一つ一つの項目については後でお尋ねをいたしたいと思います。  そこで承っておきたいのは、私は本年の六月二十一日、衆議院会議におきまして、野党を代表いたしまして衆議院解散要求に関する決議案趣旨弁明を行いました。そこで私は、二人の先輩について、お述べになりました言葉あるいは見解というものを引用いたしたのであります。  その一つは、日比谷公会堂での故浅沼社会党委員長言葉であり、そして凶刃に倒れた後壇上に残された原稿の言葉であります。  いま一つは、故保利元衆議院議長見解であります。海部総理も当時本会議場におられたので、覚えておられるだろうと思います。  浅沼社会党委員長は、「選挙の際は国民に評判の悪いものは全部捨てておいて、選挙で多数を占めると……」、こうおっしゃられて凶刃に倒れられました。そうして、壇上に残った原稿には、どんなむちゃなことでも多数に物を言わせて押し通すのでは、一体何のために選挙があり、何のために国会があるのかわからない、これでは多数党がみずから議会政治の墓穴を掘ることになります、このように書き残されておられたのであります。  それから、保利元議長見解の中で、その直前の総選挙で各党が明らかにした公約や諸政策にかかわらず、それと全く質の異なる重大な案件が提起され、それが国民の間で大きな争点となる場合には、改めて国民の判断を求めるのが当然である、主権在民、議会制民主主義の観点から当然な筋道であり、こうした手順がなければ正常な国会運営も期しがたいと言えよう、こう述べておられるのであります。  総理は早稲田大学の御出身だと承っております。浅沼社会党委員長は、党派は違っても尊敬しておられるだろうと思います。また、総理は私と一緒に議院運営委員会の理事も長くいたしました。保利元衆議院議長議会運営に対して卓越した指導力を発揮をされたということについても、私は党は違いましても、保利議長見解、これは議会政治の常道を示したものとして私は敬意を払っている次第であります。このお二人の見解、どのようにお考えになりますか。
  25. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘になったお二人の先輩の議会政治について申し述べられたことは、私はそれは傾聴に値する御意見だと思って今もここで承っておりました。ただ、山口委員も長い間議院運営委員会の中で、議長の権威を守ることとか議会運営の正しいあり方という問題についていろいろ御議論をし、御説を主張されたことを私はいつも覚えておりますけれども、議会政治というものはやはり、多数で横暴だとか押し切るとかいうことじゃなくて、国民皆さんの前で、一つの問題について、いいこと悪いことの問題点を議論して、合意できる点と合意できない点をきちっと議論をして、合意できる点と合意できない点が明らかになったときには、これは民主主義のルールに従って意思を決めていく。その意思について、国民皆さん意思の決め方が間違っておるということを思われるときは、その次の選挙というものはやはり国民意思を述べていただく場であろう。これは、直接民主制でなくて代表民主主義でありますから、議会政治というものはそういうものであって、数が多いから少ないからということよりも、その党は何を考えておるかということをお互いに議論し尽くしていくような努力をするところが議会であるということはよく私も知っておるつもりでございますし、お二人の先輩が述べられたこともそういうところに重点があったのではなかろうか、こんなふうに受けとめさせていただいております。
  26. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 総理、あなたはお二人の先輩の述べられた言葉のポイントを理解してないと思うのですね。浅沼元委員長のおっしゃったことは、選挙の際は国民の評判の悪いものは全部捨てておいて、いわば隠しておいて、そうして議会で多数を占めて何が何でもむちゃくちゃにやるということはけしからぬよ、こう言っておられるわけです。これでは一体何のために選挙をやったか、何のために議会があるかわからぬではないか、議会制民主政治の墓穴を掘ることだとおっしゃっておられる。  それから保利元議長は、直前の総選挙で各党が明らかにした公約、諸政策、それにかかわらず、それと全く質の異なる重大な案件が出てきた、そうでしょう、三年数カ月前のあの衆参同日選挙で、国民皆さんの反対する大型間接税と称するものは一切やらない、私のこの顔がうそをつく顔に見えますか、こういうような公約を当時の総理・総裁はおやりになって、そうしてこの選挙が終わった。そうしてその後、選挙で言ったことと正反対の大型間接税である売上税、あるいはその後消費税というものを強行しようとする。これでは正常な国会運営は期しがたい、したがってこの際は、その前に国民の判断を求めるのが当然ではないか、解散・総選挙をして国民の判断を求め、それからその質の違った問題についてはどうするかということを議論するのが当然だと、こう言っておられるのです。  問題は、議論をして云々というようなことを総理はおっしゃったが、そうではなくて、その前のボタンのかけ違いの問題になっているのですよ。選挙のときやらないと言った、正反対のことを押し通そうとする、これでは議会政治はだめですよということをお二人の先輩は言っておられる。そこを一体どう考えておるか、こう私は聞いているのです。
  27. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘の前回の衆議院選挙におけるいろいろな経緯がございまして、去る国会で売上税法案というのは廃案になったことは御承知のとおりでございます。そのときに議長のあっせんがあり、各党の代表にもお集まりをいただき、そしてそこから議長の裁定に従って国会で協議会もつくり、御議論もいただき、売上税の反省に立っての税制改革はしなければならぬという基本に立って提案しておるものでございますので、どうぞその間の経緯についてはひとつ御理解をいただきたいと思います。
  28. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 今の問題はまた別に議論しましょう。  私の聞いていることに答えてないじゃありませんか。選挙の際に公約したことと正反対のことをやる、これではだめだ、その際は改めて解散をして国民の判断を問うのが当然だ、それでなければ国会運営の正常な運営はできませんよということを保利元議長はおっしゃっておられるわけなんです。そのことについて一体どう考えるか、これを聞いているのですよ。
  29. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 そのことについて、私はすべてを含めて前回の参議院通常選挙の結果を厳粛に受けとめておりますと、こう申し上げましたのは、そういったことも議論になり、国民皆さんの側からはその視点に立った御批判があったんだというふうに謙虚に受けとめるべきは受けとめます。けれども、その間に国会の中でのいろいろな努力によって、売上税が廃案になり、その反省に立って、ただ、将来に向かって考えますと、だからといって今やめてしまうというのは無責任でありますから、御理解をいただきたいと思います。
  30. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そのことも含めて参議院で示された有権者意思を厳粛に受けとめると言ったんだ。だったら消費税は廃止するのが当たり前じゃありませんか。そうでしょう。あの参議院選挙の 比例区の投票の結果はどうですか。自由民主党の諸君は二十数%だったでしょう。社会党、公明党、民社党、消費税廃止法案を提案しております三党の比例代表の得票の合計は五一%を超え、そのほか消費税廃止を主張しておられる党派のこの比例区投票の得票を合計すれば、六〇%を超える国民皆さん方が私たちを支持していただいているではありませんか。まさに国民意思消費税廃止という意思が鮮明に出たことは当然だと思いますよ。参議院の際に示された有権者皆さん方の御意思を厳粛に受けとめる、それから保利議長あるいは浅沼元委員長の御見解なり残した言葉を十分踏まえるというならば、当然廃止、これが当然じゃありませんか。
  31. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 申し上げましたように、私は、この前の参議院選挙の論争点の中にそのような御議論があったことも率直に受けとめ、その結果を厳粛に受けとめておりますと申し上げたことですべて私の気持ちもそこにあらわれておるというふうに御理解いただきたいし、それからもう一つは、だからといって、直ちに消費税を廃止する、廃止するだけでどうなるんだろうか。これはもう既にスタートしておる制度でありますから。我々はいいと思って提案をしたのでありますけれども、参議院の結果であのような事実を見ますと、見直すべき点は思い切って見直さなければならない、それは理解を得るために、定着させていくためにしなければならないという角度で物を申し上げておるわけでありまして、参議院争点は、ただ単に消費税だけじゃなくて、消費税というものを含む税制全体の議論も確かにあったと思いますし、そのほかのいろいろな問題がいっぱいあったと思います。だから、そういう国政全体をとらえての中の議論の一つに、重要な争点として三つお挙げになったその中の一つ消費税の廃止問題もありましたけれども、しかし、あのとき有権者皆さんの方は、じゃ廃止した後どうなるんだろうかということについてまでの具体的な姿は、どうでしょうか周知徹底されて御理解なさったでしょうか。その消費税だけを取り上げて、これだけ存続するか、なしにするかだけの視点ですと、それは厳しい答えが出るでしょうけれども、その後どうなるかこうなるかも含めたら違うと私は思うのですけれども。
  32. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 質問していることについて的確にお答えいただきたいと思うのです。そうでないことについて長々御答弁されたんでは時間ばかりたってこれは大変よくありませんので、その点はひとつ御注意をいただきたいと思うのです。  いろいろおっしゃいましたけれども、少なくとも三木さん、三木総理を尊敬する議会の子、議会の孫と言っておられるわけでしょう。この三木さんがおられたときの昭和二十三年、取引高税というものができたでしょう。そうして一年四ヵ月だったですね、その後の選挙でこの取引高税が極めて評判が悪い、国民皆さん方から理解されなかった、有権者の批判を受けたということで、一年四カ月で取引高税は廃止になったでしょう。そのときは取引高税廃止法案だけを国会は通しただけなんですよ。財源については、これは当時の政府が当然面倒見るべきだということでやったわけですよね。そういうわけですから、今のような私の質問に対してはお答えにならぬじゃありませんか。  当時、三木さんもおられたわけです、昭和二十三年、二十四年には。その議会の孫と称されるあなた、しかも先輩の皆さん方のお考えはそのとおり、そうして参議院選挙では鮮明な有権者意思が出た、こうおっしゃるのですから、もうはっきり廃止、こうおっしゃるのが当然じゃないんですか。これは議会の孫としても当然だと私は思いますよ。
  33. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 昭和二十三年の前後のことは、その当時の社会情勢とかその当時の国のあるべき姿とか、いろいろなものがありまして、それを直ちに今短絡的に今日と結びつけてしまうのはいかがかな、粗っぽいなという感じが率直にいたしますし、また消費税の問題についても、消費税だけをつくり、消費税だけの廃止で議論したんじゃなくて、税制改革の一環でありますし、近く訪れる二十一世紀の高齢化社会、どうするんだ、これ以上負担が偏っていって、不公平だという中堅サラリーマンの声なんかにどうこたえるんだ、いろいろな角度から議論して、我々も政策を訴えて選挙を戦ってきたつもりでございますし、また最近の世論調査などを謙虚に見せていただけば、最近の世論調査は、やっぱり思い切って見直しをして存続させていけという御意見国民世論としてはあるわけでありますから、私はそれらを全部謙虚に受けとめながら判断をし努力をさせていただきたい、こういうように考えます。
  34. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 中身の議論は、これはまた後でいたしましょう。  私は、政治姿勢として、とにかくお二人の先輩のおっしゃられた言葉選挙の際の公約に反するようなことをやったんでは正常な議会運営は期しがたい、その際は潔く国会を解散して国民の判断を求めるべきだ、こうおっしゃっておられる、その言葉について議会の孫としてどう考えるか、こう私は聞いているわけで、中身を聞いているわけではありません。今までの総理お答えでは、どうも私は、お二人の言葉を十分踏まえて、教訓としてというお言葉には反する行動をとっておられる。  特に、そうじゃありませんか、この前のあの臨時国会の強行採決は、海部さん、あなたが委員長席に座ってあの強行採決をやったじゃありませんか。そうしてその言いわけとして、さっきもちらっとおっしゃいましたが、原衆議院議長のあっせんのことをおっしゃいました。あの原衆議院議長のあっせんというのは、当時、私、書記長でもございましたから、あのあっせんを受けました。そのとき私は、まあ他の野党の皆さんもそうだったと思いますが、多賀谷副議長にこのあっせんの趣旨については十分お話を伺ったわけです。そうして、この「直間比率の見直し等」、「等」というのは、これは野党の主張のように不公平税制の是正を徹底的に議論をする、それで結構なんです、要はこの税制改革に関して協議機関を設けてもらいたい、そこで十分な議論をしてほしい、これがあっせんの趣旨なんだというお話がございましたので、私はそういう趣旨であのあっせんを受け、あそこにQアンドAというので質問、答えというのが出ておりますが、野党を代表して私が質問し、廃案ですね、廃案です、こういう原衆議院議長お答えをいただいた次第であります。  この税制改革協議会ができましたでしょう。ここで議論を十分尽くしたんですか。そうじゃないじゃありませんか。決して、原衆議院議長のあっせんがあったということで公約違反が免罪になったなどというおっしゃり方は、これは絶対間違いです。そうでしょう。それははっきり確認してください。
  35. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 おっしゃいましたように、議長あっせんの中に「直間比率の見直し等」、「等」という字の解釈について、その「等」という字の中に不公平税制是正の意味も含まれておるんだ、こういう御指摘でありますが、それはそうだと思いますけれども、しかし、直間比率の見直しというのは等じゃなくてきちっと明示してあるわけでございますので、私たちはそれらを含めてきちっとやっていかなければならない。議長が裁定されたときの中心点もそこにあったと私は受けとめさせていただきますし、それからもう一つは、やはり今の時点に立って、きょう現在、そして将来に向かってどのような税負担でどのような社会をどのように支えていくかということの議論の中身をきちっとお見せしないと、国民皆さんに判断とおっしゃっても、国民皆さんに判断していただくためにはそれをお互いに出さなければならぬだろう、そういう努力の話し合いのさなかでありますので、どうぞ私の言うことも御理解をいただきたいと思います。
  36. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 税制改革協議会ができました。自民党七人、野党六人、座長は伊東さんでしたか。そうして十二回議論しました。そういう中で突如マル優廃止の中間報告を、野党の反対を押し切っ て当時の伊東座長が衆議院議長にされた、こういう経過があるだけですよ。今総理は、そこで十分議論をしてとおっしゃったけれども、十分議論しないまま、この税制改革協議会は当時の自民党の皆さん方のむちゃな中間報告で中断したままで終わっているわけなんですよ。そういう中で、公約違反の問題がこれでクリアされた、議長あっせんでクリアされたというようなことには断じてなりませんよ、これは。私は、その公約違反と、保利議長やあるいは浅沼委員長が言われたこととの関連を政治姿勢の問題として聞いているんですから。  一体どうなんですか、この議長あっせんということで公約違反の問題が解決したんですか。そう考えているのですか。だからこそ委員長席に座って強行採決をしたというんですか。その点をはっきり答えていただきたい。
  37. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 税の基本的な問題について、私どもは議長の裁定の趣旨に従って、将来に備えての直間比率の見直し等についていろいろ議論し、前進していかなきゃならぬ、こう受けとめておりますし、また、お触れになりました採決の問題については、あのような騒然とした状況の中で採決せざるを得なかったということは、いいことだとは決して思っておりません。その点についてはまことに残念なことだったと私自身は反省もしております。  けれども、やはり最初に申し上げましたように、審議を尽くして、そしてそこで合意点と合意できない点が明らかになったときには議会制民主主義のルールに従って決めていくということもまた、この点については保利先輩も浅沼先輩も否定はなさらなかったのではないでしょうか。議会政治全体の一般論として言えばそういうことではなかろうかと思っております。
  38. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そこが違いますよ。保利議長が言っておられるのは、直前の総選挙において公約をした、それと全く質の異なる問題が出てきた、そうしてこれが大きな争点になった、その場合には改めて国民に信を問うのが当然だと、こう言っておられるのですよ。解散をして国民意見を問うて、それからさらにその上に立って審議をする、これでなければ正常な国会運営は期しがたい、こう言っておられるのですよ。それと全く反するじゃありませんか。  私は、国会が多数決で動くことも、そういうことは当然あり得るということは承知をいたしております。それは議会制民主政治というものでしょう。しかし、公約違反ということではだめだということを保利議長は言っておられるわけなんですよ。そこをきちっと踏まえることが肝心ではありませんか。それが議会の子あるいは議会の孫というふうに自負されるのならば、議会制民主政治のいわば原点というものをきちっと踏まえていただかなければならぬ、そうでなければ話になりませんよと、こう私は申しているわけであります。その一点を私は聞いているわけなんですよ。あとの財源云々なんということは今聞いているわけではありません。これは後で私は議論をいたしたいと思うのです。
  39. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 選挙後の国会においていろいろな諸情勢の変化等があって、その党の基本的な方針や考え方というものが幾らか変わっていくということは、これは消費税の問題のみならず、いろいろなところであろうかと思いますから、その国会の審議を通じて、それを国民皆さんがずっと見ておって、次の選挙のときにまた御審判願うというのが私はあるべき姿ではなかろうか、こんな感じもいたしますし、また、今消費税の問題についてはいろいろ、いいと思ってやったけれども、この前の参議院通常選挙では厳しい審判も受けた、したがって、どうしたらいいんだろうかということで我々が今どこを見直して将来の姿はこういうものですということをお示しして、それを審判を受けよう、こう思っておるのでありますから、どうか、きょう、あすに向かっての議論をしておるということで御理解をいただきたいと思います。
  40. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 それじゃ、話題を変えましょう。  今おっしゃった、それではどう見直すか、それを示して国民に信を問いたいとおっしゃった。いつ示して、いつ国民に信を問うつもりですか。
  41. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 この間うち、いろいろな世論調査もありますし、テレビの長時間討論番組もありますし、論文等もいろいろございます。私はできるだけそれを注視しておるつもりでありますけれども、いろいろな御意見がたくさんございます。中には我々が説明不十分であったな、十分御理解をしておっていただけないんじゃないかなと思うようなお考えや意見を堂々とお述べになる方もありますから、私は、もっとそれを周知徹底するように我々の考えも御説明するとともに、各界の皆さんが何を見直せと期待していらっしゃるのか、政府の税制調査会でもあるいは自由民主党の方でもいろいろなところで意見を聞いておる最中でありまして、これは基本的な恒久税制を変えるわけですから、早く早くとおっしゃっても、私は独裁者でも何でもありませんから。だから、今すぐ思ったことをこうだと言うとこれはまた大変な混乱を起こしますし、それは拙速になると思いますから、各界の御意見を十分聞きながらそれをきちっとまとめて、そしてそこで決断するときは思い切って決断をしなければならぬ。ただ、それは予算編成の日程等も踏まえてきちっと考えていかなければならぬと思っております。
  42. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 どうも議会の子、議会の孫と自負される海部さんの言葉とは受け取れませんね。公約違反の問題は、これはやはり質が違う、質が変わった場合には、国民の信をまずそのときに問うべきなんだ、そうでなければだめだ、こう言っておられる先輩の皆さん方のこの貴重な教訓というものをきちっと踏まえることが、議会の子、議会の孫のなすべきことであるということを、私は、この際強く申し上げておきたいと思います。  そうして、次に話題を変えたいと思います。  私は、海部さんと一緒に議院運営委員会の理事もいたしました。国会決議というのは極めて重要だというふうにお互い理解していると思います。  食糧自給率の問題です。総理は、土井委員長あるいは河上議員の質問答弁で、食糧自給率はそのときどきの経済情勢や食生活の動向等によって変動する、したがって、目標として数字で明示することは困難です、このように述べておられるようであります。かつて当委員会におきまして、竹下元総理は、穀物自給率、これは三分の一、三三%を目標値にすべきかなということを申しまして、明確な数字でこの穀物自給率を示しておられるわけであります。海部内閣になって急に数字であらわすことが困難だということになったのですか。一体どういうことですか。
  43. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 食生活の変化というものが非常に著しいことは山口委員も御理解いただいておると思いますし、たしか、記憶に間違いなければ、米の需要も一人当たり平均七十二キロと言われておったのが下がってきた。そうなりますと、穀物の自給率は、今のところ大体御指摘のように全体の自給率がたしか七〇%、穀物は三〇%、カロリーベースでいくと四九%と私は理解をしておりますけれども、どこまでそれを上げるか今具体的に数字を示せと言われても、まさにそのときどきの国民の需要と要請で変わっていくものだと思うのです。同時に、国内でできるものできないものに、食生活全部が変わっていきますと、そこで自給率も変わってくると思うのです。ただ私は、全体として自給力を高めていかなきゃならぬ、食糧というものはできるだけ自給力を高めていく方向に持っていったらいい、そこでただいまのところ需給とそれから生産に関する長期見通しをつくる作業をしておる最中だと、こう思っております。  詳細について御必要でしたら政府委員の方から答弁をしてもらいます。
  44. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 大臣の方は結構です。総理見解お尋ねしておきたいと思うのです。  お話がありましたが、ECもかつては自給率、非常に低かったですね。イギリスのごときは非常に低かった。しかし、その後政策努力をやり、目 標値を決めて、今一〇〇%を超えているじゃありませんか。今EC諸国で一〇〇%を割っているのは、たしかイタリアが八十数%という状況でしょう。あとはフランスを初めとしていずれも一〇〇%を超える。これはやはり目標値を決めて政策努力をやったからこそ、そういう状態になっているんじゃありませんか。  とすれば、総理もこの自給力は高める必要があるということをおっしゃいました。現に国会では、昭和五十五年第九十一国会で食糧自給体制確立に関する決議ということをいたしまして、そうして全会一致で、食糧自給の向上を図り国民食糧の安定供給をすることは国政の基本的、緊急な課題である、したがって、食糧自給力を大いに高めるということを明確にしているわけであります。とすれば、今この三〇%そこそこ、それを一体三分の一あるいは三分の一以上に持っていくという具体的な数値を決めて、政策目標値を決めて努力をしていくということがなければ、食糧自給力は高まっていかないし、国会決議に沿うということにはならないんじゃありませんか。あの国会決議というものは極めて重要なものだということは、総理もよく承知しておられる。とすれば、国会決議に沿う形でいかなる政策努力をやるのか。目標値を掲げて努力をするということは当然じゃありませんか。このことも、私は議会制民主政治を守るというゆえんからいって重要だと思うのです。総理見解を承っておきたいと思います。
  45. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘のように、国会の決議というものは極めて大切なものであり、その趣旨を十分尊重しながら政策努力を続けていくということは、これは御指摘をいただくまでもなく当然のことであろうと私も受けとめさせていただきます。  また、さきにも申し上げましたように、今、中長期の見通し、需給と生産の見通しをどうするかということについて現在作業中でありますので、その作業の中で、いろいろただいまの御意見、御議論等も踏まえて検討作業を進めていくと思いますが、いずれにしましても、私も国内の食糧の生産力を高め自給率を上げていかなきゃならぬという基本的な方向についてはそのように考えております。
  46. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 高めていく、目標値を決めて努力をすることが当然だと思います。それでは、現在の数字以上に、三分の一、三分の一以上、あるいは三五%、四〇%、いずれにせよ具体的な数字の目標を掲げて努力をするということが当然じゃありませんか。一体その数字をどうするか、そこをはっきり言ってください。
  47. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 ただいま総理から答弁を申し上げましたとおりに、その長期見通しの中で当然国内の需要量はこの程度、国内の生産量はこの程度と、こういうことでありますから、おのずと食糧自給率については算出されてくるわけでございます。
  48. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 具体的に何%と言ってください。
  49. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 もちろんそういう長期見通しの中でそういうふうな需要と生産というふうなものが出されてくるわけでありますから、こんなような形になりますというふうなことは出てくるわけであります。ただいま総理が申されたとおりに、もう自給率がどんどん下がっておるわけでありますから、これ以上はもう下げるわけにいかない、いささかなりとも自給率を上げていかなきゃならない、こんな基本的な考え方になるわけであります。
  50. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 下げては困る、上げなきゃいかぬ、そういうふうにしたいと言うんだから、何%を目標かと、極めて単純な質問をしているわけですよ。総理、決断の問題だ。何%、答えてください。
  51. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 長期見通しが今作業いたしておりますので、そういう中でおのずと需要と国内におけるところの生産はどうであるかというようなことが出てくるわけでありますから、当然そこに自給率というふうなものも算出されるわけであります。それを今検討作業中でございます。(山口(鶴)委員「いつ答えが出るのですか」と呼ぶ)長期見通しにおきましては、大体今年中までには出したい、こういうふうな考え方でおるわけであります。
  52. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 今年中というのですから、もう余り日がないわけですね。現在の我が国の穀物自給率は先進国の中で世界で最低。こんなことではどうしようもないでしょう。少なくともEC諸国の自給率を目標にして、具体的数字を明示して政策努力をやっていただきたい。そうでなければ農政不信は払拭されないということをこの際明確に申し上げておきたいと思います。  それでは次に、話題を変えて、外交、防衛についてお尋ねをいたしたいと思います。  総理の国際情勢の認識についてお尋ねいたしたいと思います。  現在、世界は大きく転換していることは事実であります。一九八七年十二月八日、十二月八日というのは私たち日本人にとって忘れがたい日でありますが、この日の米ソ首脳会談ではINF全廃条約が調印され、また、最近米ソ外相会談におきましては、戦略核の削減の方向でお互い努力をしていこうということが確認されたようであります。ベーカー・アメリカ国務長官も両国は対決から対話、そして今や協力の関係にある、こう述べておられるわけであります。このような東西対話、そうして軍拡から軍縮へ、そうして対決からむしろ協力へという方向に大きく動いているということについて、総理、どのように考えますか。
  53. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘のように、最近の米ソの関係というのは、戦術核、それからさらに一歩進んで生物化学兵器、そういったようなことについても話し合いをしていこうという対話の機運が生まれておることは、これは基本的に評価していい方向であると私も考えますが、しかし、東西の両陣営の動きの中では、例えばお触れになった社会主義国の間にはペレストロイカとか自由化とか開放・改革路線とか、言葉はいろいろ違いますが、それぞれに大きな流れ、改革を必要としておる。しかし、西側陣営の間をとってみましても、インフレ懸念を持っておる国もあれば、経済摩擦の問題に対話を進めておる国もあれば、いろいろございます。また、保護主義が世界を覆うようなことになってはいけないという指摘等もあります。また、そういう大きな東西の対立のみならず、地域の紛争の問題についても、一進一退を続けてはおりますが、紛争解決への話し合いがいろいろなところで始まっておるということも見ます。  私は、ブッシュ大統領がゴルバチョフ政治に対して、これを排除していくんじゃなくて一つの話し合いの枠組みの中で話をしていく相手として理解していきたい、そういう努力をしていきたいということを言われたのも、これは世界の平和と安定のためにはそういった方向が望ましい、こう思っておられるからだと思うのです。けれども、一気に手のひらを返したように今直ちに軍縮というわけにはいかないでしょう。それは軍備管理があり、そして軍縮を究極な目的として両陣営ともにそちらに眼を向け対話の努力をしようとしておる方向性と熱意は認めることができますから、私はそれは基本的にはいい方向だと思い、そのことが確実に定着をしてその方向に進んでいくように私は強い期待をしながら見ておるところでありますが、必ずしもそのとおりになってしまうと楽観的に見ることもできませんので、これはいろいろな状況を注目してまいりたいと思っております。
  54. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 大筋としては対決から対話へ、そうして協力の方向に動きつつあるという認識は、さまざま、いろいろ言っておられますが、あるようであります。局地紛争につきましても、イラン・イラク戦争にしても、アフガンの問題にしても、カンボジアの問題にしても、一応話し合い解決の方向に動きつつあることは、これは総理も認めるだろうと思います。  そういう中で、PACEX89という軍事演習が今行われておることは総理もよく認識をしておられるだろうと思います。九月から二カ月間、アメリカの太平洋艦隊を中心とした在日米軍、在韓米 軍、カナダ、オーストラリア、韓国、フィリピンが参加する共同訓練、この期間中、我が国の自衛隊も空前の規模で参加をして日米共同訓練を実施しようとしておりますが、こういったことは、このアジア・太平洋の緊張をむしろ激化することであって、今総理が説明されたようなこの対話、協力への方向に逆行するものと、こう言わざるを得ないと思います。特に、このような共同演習に我が国の自衛隊が参加することは、憲法で禁じられている集団的自衛権の行使を前提とした訓練ということにもなるんじゃありませんか。このようなことについては我が国の自衛隊は参加すべきでない、このように考えますが、いかがですか。
  55. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 全体の大きな流れを申し上げまして、私は、世界の平和と安定に役立つようなことが望ましい、その方向は認めますが、お触れになったカンボジアの和平にしても、まだ残念ながら過日のパリ会談の結果では全面的な完全解決には至っておりませんし、また、つい先ごろ訪れられたPLOのアラファト議長にしても、テロ行為には自分はもう参加しない、テロ行為は否定するという言葉には、私は大いに歓迎したのでありますけれども、しかしパレスチナとイスラエルの話し合いということは、残念ながらまだ前進をしてきておらない。いろいろなところで解決の方向への期待は持てるような動きが出てきつつあっても、現実の世界というのは依然として力の均衡、力の抑止によって平和と安全が保たれているというのも私は実際の姿だろう、こう考えますので、そういうときに今現在の世界の平和を支えておる抑止力といいますか、力の均衡というものを一方的に崩したり、あるいはまた、そこで力に対する安心感、信頼感がなくなるというようなことになると、逆に平和と安定を乱すもとにもなるのではなかろうか、こんな考えがするのです。  そこで、日本有事の場合を想定したときには、これはいろいろな面で日本の自衛隊も共同行動をとらなければならぬということでありますから、日常からそういった有事のときを、起こってはいけませんけれども、最悪の場合には国のためにみずからの専守防衛の線で守らなきゃならぬわけでありますから、練度を高めておくということは必要なことであると私は理解をしております。
  56. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 九月二十九日から北海道周辺で開始される米機動部隊と海上自衛隊との共同訓練、アメリカの空母機動部隊は三沢基地のF16戦闘機の協力を得て日本北方海域で訓練を行い、苫小牧沖で海上自衛隊に合流をする、アメリカの海兵隊と陸上自衛隊が苫小牧に上陸の訓練をやる、この後、米機動部隊は津軽海峡を抜けて日本海に入り、そして韓国との演習に移る、こういうことになっています。とすると、今総理がおっしゃったこの専守防衛、枠をはみ出るんじゃありませんか。結局、この個別的な自衛権、それとこの集団的自衛権、これを区別をするということは自民党政府もしばしば明確に言ってきたわけです。この一連の動きというものを見れば、しかもカナダあるいはオーストラリア、フィリピン、こういう国々も参加をするということを考えれば、まさにこの集団的自衛権に踏み込む共同訓練ということにならざるを得ないじゃありませんか。このことは私は問題だと思うのです。いかがですか。
  57. 松本十郎

    松本国務大臣 日米安保体制を維持発展させることは我が国防衛の大事な柱の一つでございまして、このたびのPACEX、これは、有事の際に日米が共同して当たるということを頭に置いて訓練していることでございますので、あくまでこれは個別的な自衛権でありまして、集団的な自衛権の発動にはならない、こういう解釈で臨んでおります。
  58. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 今のような答弁国民の皆様方、理解はされぬと私は思うのですね。政府内部ですら、このようなPACEX89は集団的自衛権のおそれがあるというので随分議論になったんじゃありませんか。今私が言いましたように、一連の流れを見ればまさにこの集団的自衛権、それに踏み込む共同訓練、おそれあるというのは当然じゃありませんか。今のような答弁では納得しません。総理の明確な見解をお述べいただきたいと思います。
  59. 日吉章

    ○日吉政府委員 突然のお尋ねでございましたので、担当局長ではございませんが、私の方からお答えを申し上げさせていただきたいと思います。  いわゆる委員指摘の太平洋演習、これは俗に米側ではPACEX、こういうふうに言ってございまして、これは米軍がいろいろな観点から太平洋地域で実施している幾つかの演習を一まとめにした一つの総称、俗称でございます。いろいろな観点からと申し上げましたのは、多国間が共同で訓練をする観点ということではございませんで、米国の防衛費を効率的に使用するというような観点から、米国はそれぞれ同盟関係にあります国との個別の訓練をいたしておりますけれども、それらの訓練を、米軍を巡回させることによってその巡回地点で逐次個別に各国と訓練を進めていくということが一つの効率的なやり方ではないかというような観点もございまして、今回は米西海岸を出発いたしましたそれぞれの軍が太平洋を、これが適当な言葉かどうかわかりませんが、巡回してまいりますところで、そこの関係する国々が個別にそれに参加するということでございます。  したがいまして、今回の日米共同訓練も、太平洋演習を構成しております他の国と米国が行います訓練や演習とは全く別個独立のものでございまして、そういう意味で日米共同訓練、まさに日米共同訓練でございまして、これまでやっておりました日米共同訓練とその性格が変わるというものではございません。したがいまして、これはあくまでも集団的自衛権の行使を前提としたものではございませんし、今委員御心配のようなことは全くないと考えております。
  60. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そういうのは子供だましの論理というのじゃないですか。結局、アメリカがそれぞれの国と個々に共同演習をするその一環だ、こういうことなのでしょう。しかし、全体を見れば、それがチームとなって共同訓練をやっているということは当然じゃありませんか。だからこそ政府部内においても、これは集団的自衛権の行使になるのではないか、そのおそれがあるという議論が随分あったのじゃありませんか。当然だと思うのですね。そういった問題は、今世界が対決から対話へ、協力へと動いているときには、そういった緊張激化のことはやるべきではない。それは高い立場総理政治判断をする問題だと私は思いますね。そういう意味で、明確にこういうことはやらないということをおっしゃっていただきたいと思います。
  61. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 先ほども申し上げましたように、それぞれの平和とそれぞれの安定をきちっと確保していくためには、ただいまのところは力の均衡の上に成り立っておるという大きな前提があるわけでありまして、したがいまして、その平和と安定を引き続きより確かなものにしていきたいという願いは私も強く持っておりますが、それは将来に向かって我々が政策努力をする上において現実を踏まえて見たときには、やはりみずからの国の安全をみずからの力だけで守ることが不可能に近いような場面も想定されるならば、有事のときには共同訓練によって守らなければならぬという現実的な要請もあるわけですから、日米の共同訓練のために我が国の自衛隊が参加するということについて、私は、きちっと枠を守りながらその目的の範囲内で訓練を重ねていくということは、逆に平和と安定のための精神的な安心感をきちっとするためにも大事なことだと今考えております。
  62. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 今のような考え方でいけば、憲法で禁止する集団的自衛権に踏み込むおそれがある、そういった危険があるということをきちっと指摘をしておきたいと思います。  次に、防衛費の問題についてお尋ねをしたいと思います。  総理は、昭和五十一年九月までは三木内閣の官房副長官をしておられたと存じます。昭和五十一年十月「防衛計画の大綱」を国防会議と閣議で決定をされて、昭和五十一年十一月五日、当面の防衛力整備についてということを閣議決定し、防衛 費は対GNP比一%を超えないことをめどとするということを決定された。そのとき総理は自民党の国会対策委員長ではありましたけれども、しかしその前、三木総理あるいは坂田防衛庁長官が苦労してこの当面の防衛力整備についての閣議決定に持ち込む努力というものは、特に総理の側近として御努力をしていただいたのだろうと思う次第であります。  そういう総理の経歴をも踏まえてお尋ねしたいと思いますし、さらに総理は、昭和六十年二月四日、当時中曽根内閣でございましたが、予算委員会において、この防衛費対GNP比一%枠が大きな問題になりましたときに、自民党を代表して質問に立っておられるわけであります。歴代政府が一%枠を守ってきた、同時に、近隣諸国に脅威を与えないでこの安全保障というものが守られてきた、これは、日本国憲法とかシビリアンコントロールとかあるいは専守防衛の精神とともに、予算のめどとしてのGNP比一%枠が果たしてきた役割というものは極めて大きいということを強調しておられるわけであります。そうして総理が、今後ともその方針を守っていきたいという答弁をしておられるが、今日まで果たしてきた役割を十分評価されながら判断していくべきものである、こう述べておられるわけであります。当然、三木内閣の官房副長官として、三木総理あるいは坂田防衛庁長官のもとで苦労された、私は、海部さんとしての当然の御主張だろうというふうに思うわけであります。  総理、当時の、お述べになりましたときの考えと今の考えは変わらないというふうに理解してよろしいですか。
  63. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 お尋ねのような経緯が確かにございました。そうして、あのとき、五十一年の閣議決定のときには、当面一%を超えないことをめどにしてという一つの節度ある目標基準といいますか、あるいは当時、国民皆さんも八〇%を超える多数が自衛隊を支持をする、またアジア近隣諸国にも日本は軍事大国にはならないという意思表示にこれは受けとめてもらう、そうしてそのことが日本の平和と日本の安全を確保していく上に間接的に大きな役割があったものだ、そんな議論が背景にあって節度ある目標が大切であるという議論をし、あのような五十一年の閣議決定になったことは、私も、その精神はそれでいい、このように理解をしてまいりました。御指摘の、この予算委員会で私が自由民主党を代表して質問させていただいたときも、防衛力の整備というものには一つのめどがあってもいいではないかという角度に立って御質問申し上げたことも事実であります。そして、そういった一つの節度が要るんだということも、私は今も考えの中に持っております。  ですから、ただいまのところ我が国は、我が国の「防衛計画の大綱」に従って防衛力を整備してきておるのでありますが、五十一年の閣議決定の精神は、これは踏まえて節度ある防衛力の整備に努めていくということは今も続いておる閣議決定の精神だと思い、私はその精神は間違っていなかったと考えております。
  64. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 総理府が防衛費の問題に関して世論調査をいたしております。一%枠を決めましたときの五十一年、その以前の五十年十月の世論調査では、「増額した方がよい」が一二・七%、「今の程度でよい」というのが四八・二%、「今より少なくてよい」というのが一五・四%でございました。今回、昨年でありますが、昨年の調査は、「増額した方がよい」というのが一一一・七から一一・二に減少いたしております。「今の程度でよい」というのが四八・二から五八・〇へと大きく増加をしております。それから「今より少なくてよい」というのが一五・四から一九・二へと大きくふえているわけであります。  最近の傾向は、五十六年、五十九年それから六十三年という形で次第に「今の程度でよい」、「今より少ない方がよい」というのがふえている傾向にあるわけですね。ですから、この五十一年、あの閣議決定をいたしましたときよりは、今よりは防衛費はふやす必要はないんだ、今の程度でいいんだ、あるいは少なくすべきだというのがふえているということになっている。そうして、総理の今までの御経歴もあるということになれば、かつて中曽根内閣が一%枠というものを外して、そうして別な形の閣議決定をいたしましたが、私は、この海部総理の時代に、海部内閣の時代に、改めて防衛費一%枠を厳守するという閣議決定をして、そうして世界に、平和を願うこの日本である、海部内閣であるということを鮮明にすることが、議会の孫として、三木さんを尊敬する海部さんの政治姿勢として当然ではないか、こう思うのですが、いかがですか。
  65. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 最近の国際情勢を踏まえての山口委員の御指摘でございますから、委員が言わんとされることも委員立場に立って私は理解をすることができますが、我が方はそれよりももっと以前からそれと同じような立場に立って、五十一年の閣議決定の精神はこれは尊重していくということをきちっと腹におさめて、それから当面のめどであったものを節度ある防衛力という言葉にかえましたけれども、そこにはいろいろ総額明示方式できちっと額を決めてやっていこう。それは国民皆さんも、今御指摘くださったように、最近でも今程度のものならばそれは我が国の安全を守るために必要なんだということが大多数の御意見として御理解をいただけておる、こう考えておりますので、私は五十一年当時のことを思い出しながら、他の政策との整合性も考えながらあの精神は引き続き守っていくべきものである、こう考えております。
  66. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 どうも今のような御答弁は我々納得することはできません。  総額明示方式と言われましたけれども、とにかく一%枠という閣議決定は廃止をして、そうしてその精神は踏まえるけれども総額明示方式でということで一%枠を突破をする道を開いたことは間違いないでしょう、中曽根内閣当時。私は、それは誤りだ、世界の大勢に逆行するものだ。現に毎年五%、六%防衛費を伸ばしている国というのは先進国の中にありますか、ないじゃありませんか。そうして、そういう状況ですから、我が国はまさにNATO方式で言えば米ソに次いで世界第三位の軍事大国だということはもう世界の常識になっているじゃありませんか。  そういうときに六%も防衛費をふやしていく、せっかくありましたところの防衛費一%枠も外してしまうということは、私は世界の大勢に逆行する、そういうことを考えれば、しかも三木総理を尊敬する海部さんなんですから、当時のあの一%枠決定のときの苦労を一番知っているあなたなんですから、今こそこの問題について新しい閣議の方針をお決めになる、当然じゃないかと私は思うのです。重ねてそのことを御答弁いただくように強く求めておきたいと思います。
  67. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 繰り返しになって申しわけありませんけれども、五十一年の三木内閣の閣議決定しましたときのあの精神はそのまま大切に引き継いで、六十二年の閣議決定のときにもそのことはきちっと織り込んでありますし、きょう現在も私は、その精神を大切に守っていこうという考えに変わりはございません。
  68. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 それでは、違う角度から海部内閣の姿勢についてお尋ねをいたしましょう。  総理は六十年二月四日、先ほど申し上げた衆議院予算委員会で核軍縮、この問題についても発言をいたしております。今外交で一番焦点になっているのは世界的な核軍縮の問題、核廃絶の問題である。核軍縮の達成というのは具体的措置を積み重ねて実効あるものにしていかなきゃならない。日本は核の問題については一番発言できる立場にある、また、しなければならない国であるということを強調しておられるわけであります。そうして、核には核を、目には目を、歯には歯をという抑止論だけでは危ないということも強調しておられるわけであります。  総理、今私が述べましたような、核の問題は重要である、特に日本は核の問題では一番発言でき る立場だ、核軍縮、核廃絶のためには具体的措置を積み重ねていく必要があるんだという考えは変わりがありませんね。
  69. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 大変悲しい思い出になりますけれども、日本は核兵器の洗礼を受けたという体験を持っております。あの体験からいったら、世界に向かって核は廃絶すべきものであるということを究極の目標として主張することは日本の大きな責務である、この気持ちは私は今も変わりません。  そして、現実に両陣営に核がある。しかもそれは、詳しいことはわかりませんけれども、地球全体を何回か壊滅させるに足るほど強力なものがある。しかも核を使ったら、いろいろな方々の予測によると、地球にとっては大変な不幸な状況が起こって、人類の絶滅の危機すら予測される。これを廃絶する、その方向に向かって声を大にするということは、究極の目的に向かって世界じゅうが歩みを進めてくれることを強く願うからであります。そのために有効な査察の問題とか、軍備管理のレベルですが、両方がそれぞれ低い次元に下げていくということを、核保有国同士でそういったことについての話し合いが始まった、INFは、先ほどお触れになったように全廃条約に対する話し合いが成立したということになってきますと、私はそれは希望の持てる方向でありますから、現実的に着実に一歩一歩それが進んでいきますことを心から願い、日本がそれに対して発言をし続けていくこともこれは当然のことではないか、このように受けとめております。
  70. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 我が国は、この核の不幸な洗礼を受けた国である、それだけにこの問題については一番発言できる立場にあるという総理の考え方は変わりがないということは確認されたと思います。とすれば、当然核兵器を持たず、つくらず、持ち込ませず、非核三原則、これは堅持をする、当然ではないかと思うのですが、いかがですか。
  71. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 堅持すべきであると考えております。
  72. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そこでお尋ねをいたしたいと思うのですが、昨年までの防衛白書「国防の基本方針」、そこには「非核三原則」ということが大きな見出しになっておりまして、「わが国は、核兵器については、「持たず、作らず、持ち込ませず」の非核三原則を国是として堅持している。」このように明確に書いてございました。ところが、海部内閣になりまして、ことし九月に決めたこの防衛白書「国防の基本方針」、そこでは大きな見出しが消えて「非核三原則とは、核兵器を持たず、作らず、持ち込ませずという原則を指すものである。」という記載があるだけです。海部内閣は、今までは非核三原則は国是であった、今度は、海部内閣からは非核三原則は国是ではない、こういう認識なんですか、一体いかがですか。
  73. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、非核三原則は堅持していくべきものであると私は申し上げております。
  74. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 今まで、国是として堅持をするということで、国是と明確に書いてあった。今度の防衛白書は書いてない。国是という言葉は外して、非核三原則は要するに核兵器を持たず、つくらず、持ち込ませずだという説明だけなんですよ。こういうことが海部内閣の方針なんですか。今までの宇野内閣まではこの非核三原則は国是であった、海部内閣からは国是ではない。大きな政治転換をやるということなんですか。いかなることです。
  75. 日吉章

    ○日吉政府委員 これは白書の編集上の問題にすぎませんで、内容につきましては総理からもお答えがございましたように、政府の方針というものは変わっていないわけでございますので、編集上の観点から私の方から御説明をさしていただきたいと思います。  私どもといたしましては、国防の基本方針といたしまして、まず憲法がございます。それに続きまして、三十二年に国防会議、閣議で決定されました国防の基本方針がございます。それから、ただいまもお話が出ておりました一%枠にかかわる閣議決定がなされたときにいろいろと、それまで閣議決定がなされてはいませんけれども、我が方の、我が国の国防の基本方針に準ずるものとしていろいろ掲げられております事項が、車守防衛とかシビリアンコントロールとかそういうものがございます。その中に非核三原則というものがございますので、総括的にその国防の基本方針に準ずるものといたしまして我が方が閣議決定をいたしております六十二年一月の閣議決定の内容を御紹介しまして、それによりまして包括的にそれは堅持していくということを、守るということを書いているわけでございまして、その中の専守防衛とか非核三原則とかあるいはシビリアンコントロールというものを言葉の解説といたしまして掲げたわけでございます。重ねてそこに方針をといいますか、物の考え方を書く必要がございませんので、それは省略したということでございまして、決して昨年までの基本的な考え方と変わっているものではございません。
  76. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 今のような説明はだめですよ。  ことしの「国防の基本方針」では、「文民統制を確保し、非核三原則を守りつつ、節度ある防衛力を自主的に整備してきている。」そうして、「非核三原則とは、核兵器を持たず、作らず、持ち込ませずという原則を指すもの」だという説明です。昨年までは「非核三原則」、こう具体的な項目を挙げて「わが国は、核兵器については、「持たず、作らず、持ち込ませず」の非核三原則を国是として堅持している。」と明確にしているのですよ。しかも、非核三原則は、国会決議もあることは海部さん御案内でしょう。国会決議もある、国是であるということで、防衛白書には毎年このことを明確に書いてきた。今回は単なる説明に終わっている。守りつつということになっているだけですよ。大きな変更じゃありませんか。しかも、これは閣議決定しているのですから、総理の責任ですよ。海部内閣は今までの内閣と違って国是ではない、これからはもう国是としないという方針を決めたのかどうか、明確にしてください。明確にしてください。
  77. 松本十郎

    松本国務大臣 非核三原則が国是であることには変わりはございません。  ただ、ここにありますのは、非核三原則というのはこういう原則でありますということを言っただけであって、三原則でありますから原則だという記述をして間違いでないと思います。
  78. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 今の答弁、何ですか。国是であることは変わらないんだ、だったら何で国是であると今まで書いてきたものを外したんですか。とすれば、変更というふうにとるのは当然じゃありませんか。国是という言葉もないですよ、ことしは。だったら私は、この問題は閣議決定しているんですから、この問題は重要です。この扱いについてはきちっとしてください。
  79. 中尾栄一

    中尾委員長 内閣総理大臣海部俊樹君、明快に御答弁ください。
  80. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今山口委員の御質問を聞いておって、私もあの非核三原則というのを国会で決議しましたときに、先ほどお触れになりました保利議長のときのことであり、私が登壇をして賛成討論をしたことを思い出しました。  持たず、つくらず、持ち込まずということは、これは国民にも支持される大きな大きな問題である、国会で決議をしました。以来、私どもはこれを厳重に守り、国是として受けとめてまいりました。海部内閣になって国是を変えたのかとおっしゃいますが、そのようなことはありません。国是として引き続き堅持してまいりますから、明確に申し上げさしていただきます。
  81. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 海部内閣の考え方はわかりました。とすれば、今まで防衛白書に国是として非核三原則はあるということを明記しておったわけですから、ことしこれを外したということは問題だと思います。当然私は、防衛白書に、この問題は、非核三原則、これは国是であるというふうに書き直すべきだ、このことを強く要求いたしておきます。予算委員会で扱いについて相談してください。
  82. 中尾栄一

    中尾委員長 委員長として答弁いたします。  早速理事会を開きまして、この問題点についての扱いも行い、なおかつ明快にさせていきたいと思います。お願いいたします。  委員長——いや、山口君。
  83. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 まだ予算委員長じゃありませんので残念であります。  それでは、政治改革についてお尋ねをしたいと思います。  総理は、総裁選に立候補される前、また総裁に就任されました際、さらには総理に就任しました際、それぞれ記者会見をいたしまして、リクルート事件による政治不信の解消に努力する決意ということを述べておられるわけであります。ところが、今回の所信表明演説をお聞きをしたのでありますが、残念ながらリクルートのリの字もございませんでした。かつて中曽根内閣のときでありましたが、売上税の問題、公約違反が問題になっておりますときに、売上税のウの字もないということで国会で問題になりました。あのときと同じような気がいたしまして、まことに残念であります。なぜこの所信表明演説からリクルート事件、この問題について外されたんですか、その点まずお伺いをいたしたいと思います。
  84. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 所信表明演説のときには確かにリクルートという固有名詞が出てきませんでしたけれども、私はそのリクルート事件によって争われた参議院選挙の結果を厳粛に受けとめておると率直に最初に申し上げておりますし、また、リクルート事件に端を発して政治不信が起こっておるということも、これは私は厳しく受けとめておりまして、今山口委員いみじくもおっしゃったように、私は総裁選に立候補したときも、それから総理に就任しますときのあいさつでも、皆そのことを厳しく反省して、それによって失った政治不信というものを取り戻すためには、我々が力を合わせて党全体が厳しく受けとめて政治不信をなくするための努力をしていく、それが政治改革だということを一生懸命申し上げましたし、所信表明の中でもそのことはにじませて一生懸命申し上げたつもりでございますので、私があれを済んだことだとか、もうどうでもいいとかいうふうには決して受けとめておらぬということもどうぞ御理解をいただきたいと思っております。
  85. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 総裁選に立候補される前にもリクルート問題についてはお触れになった。それから、総裁に就任された後もお触れになった。それから、総理に就任したときもお触れになった。そして、所信表明演説では欠落をしているということでは、これは我々が不思議に思うのは当然だと思うんですね。しかし、今の御答弁いただきましたリクルートに対するこのけじめというものはきちっとつける、こういう決意だということですね。
  86. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 リクルートの問題がこれだけ社会的に問題を提起したわけでありますから、自由民主党も厳しく受けとめて、党は党全体の議論の中からけじめ案というものをきちっと打ち立てて、それに従って対応もいたしておりますし、それよりもまた、将来に向かって二度と再びこのようなことを繰り返してはいけないという決意のもとに、寄附禁止の法案であるとか政治資金規正法の改正の法案であるとか、いろいろなものを国会に出して、これがまず政治改革への入り口である。それから、党は機関をつくって政治改革推進本部が政治改革大綱をつくり、それ以外のいろいろな問題点指摘して、再びこのようなことを起こさないように党全体で挙げて取り組んでいこう、これはリクルート事件の反省に立っての党の決意でありますから、この方向に向かって私は一生懸命取り組んでいきたい、こう思っております。
  87. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 さきの通常会におきましては中曽根元総理の証人喚問が国会の大きな問題になりました。いろいろな経過はありましたが、衆議院におきましては証人喚問が実現をしたことは御案内のとおりであります。ところが参議院におきましては、さきの通常国会では、与野党間の大きな議論になりましたが、残念ながら参議院では証人喚問が実現いたしませんでした。今度の国会参議院選挙を経た後の国会であります。参議院におきましては構成も大きく変わっているわけであります。また、国会がかわったわけでありますから、いわゆる一事不再議という問題もございません。とすれば、当然参議院において中曽根元総理の証人喚問が実現されて私はしかるべきだ、かように思います。この点は、与野党一致してこのことを決めることが私はいいことだと思います。自民党の総裁としてこの点はいかにお考えですか、ひとつ明確な御答弁をいただきます。
  88. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 証人喚問の参議院における御発言でございますが、その問題は参議院の各党各会派で御相談をしてお決めになるべき問題であろう、このように考えさせていただきます。
  89. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 その際、自民党総裁としてはどういうお気持ちで対処されるかということを聞いたわけであります。
  90. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 参議院における各党各会派のお話し合いを見守って、その結論に従っていこう、こう思っております。
  91. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 それでは、衆議院も含めた問題についてお尋ねをしましょうo  このリクルート事件、五月二十九日に東京地検特捜部は捜査の終結宣言をいたしました。就職協定に絡む収賄で二人の政治家が起訴され、また、議員秘書四名の方が政治資金規正法違反で起訴されたにとどまりました。これでは国民皆さん方も、事件の全容が解明されたということについては極めて遺憾だという考え方をお持ちではないかと思う次第であります。  国会におきましては、かつてロッキード事件が問題になりました際に、これは当時河野参議院議長、それから前尾衆議院議長、お二人の議長議長裁定をお出しになりまして、そうして、刑事責任とは別に、国会政治的道義的責任を追及することが必要であるということを明確に示されたことを私は今でも覚えている次第であります。したがいまして、そういった国会の責務であるこの政治的道義的責任というものを明らかにするという意味におきまして、刑事訴訟法四十七条ただし書き、国会法百四条の規定によりまして、与野党できれば一致をいたしまして、国政調査権を発動してこのロッキード事件と同様にリクルート事件の全容を公表するということが私は当然の国会の責務ではないか、かように考えるわけであります。  このことにつきましては、言うまでもなく三木内閣のときに先例があるわけですね。そうしてそのときに総理は官房副長官としていろいろ御苦労され、委員会等でこの問題が質問になりましたときには、官房副長官として答弁もなされているわけであります。そういったことを考えれば、私は国会法百四条によって、いわば国政調査権の発動によって、この刑事訴訟法四十七条ただし書きに示された、起訴はされなかったけれどもこの全容はこうであったということを法務当局から公表させるということは当然ではないか、かように考えます。この点総理、過去の経験も踏まえてのお考え方をお示しをいただきたいと存じます。
  92. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘のような経緯がございました。  今回のリクルート問題につきましては、さき国会で御要求に応じて法務省は法令の許す範囲内で最終報告を国会にいたしたことも御承知いただいておると思います。  なお、その後の経緯、新たな問題としてさらに徹底して出せ、こういう趣旨の御質問だと思いますけれども、国会から新たな御要求がありました場合には、その段階において、法令の許す範囲内で何が御協力できるか、検討をさせていただくつもりであります。
  93. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 政府としては協力する用意がある、国会法百四条によって国政調査権が発動された場合は協力する用意ありということですね。
  94. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 法令の許す範囲内でどのような協力ができるかということについて、新たな御要求があった場合には、その御要求を受けて検討をさせていただきます、こういうことでございます。
  95. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 どうもちょっと歯切れが悪いで すね。三木内閣のときは、三木総理が、刑事訴訟法四十七条ただし書きがございます、起訴されない場合においても、その全容を明らかにすることはできるということを記者会見で総理みずからがおっしゃったのですよね。それだけリーダーシップを発揮されたわけです、三木内閣においては三木総理が。海部内閣においても、当然議会の孫である海部さんがリーダーシップを発揮してしかるべきではないか、こう私は思いますが、いかがですか。
  96. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 国会からの新たな御要求がありましたときには、法令の範囲内でどんな御協力ができるのかを検討させていただきます。
  97. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 協力する用意があるということですね。  それから、この問題については志賀環境庁長官が非常に御熱心のようです。そういう大臣も閣内にはおるということだけこの際申し上げておきましょう。  それから、総理のリクルートからの献金は一千四百四十万円、これが正確ですね。それ以外にはありませんね。
  98. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私の事務所ですべて調べて御報告しておりますから、それ以外にはないと思っております。
  99. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 次は、消費税の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  先ほど来、私、政治姿勢の問題としてこの問題を取り上げてお尋ねをいたしてまいりました。私は、さきの浅沼元委員長それから保利元衆議院議長のお示しした考え方からいけば、根本的にこの問題については、ボタンのかけ違いであった、公約違反であった、誤りであったということを、この際指摘をいたしておきたいと思いますが、さらに、私がここでお尋ねいたしたいのは、総理は、消費税皆さん理解を得られなかった、国民皆さん理解を得られなかったということを八月五日の記者会見で明確に申しております。また、自民党の実力者も、消費税国民によってリコールされたということを明確に言っておられるわけであります。確かにそうでしょう。比例区の選挙では、先ほどもちょっと触れましたが、自民党は二七・三二%の得票を得られたわけであります。消費税廃止法案を共同提案いたしました社公民三党は五一%の比例区の選挙の得票を得ている次第であります。そうして、その他消費税反対の政党会派を合計いたしますと六〇%を超える、こういう状況です。とすれば、所信表明演説でも、参議院選挙で示された有権者意思を厳粛に受けとめるということになれば、私は、その後、次いで、消費税の廃止は全く考えていないというようなことは、これは全く矛盾じゃありませんか。どうしてこの厳粛に受けとめるということと、それから廃止は全く考えない、どういう脈絡がここにあるんですか。理論的に言ったら、全く私は矛盾だと思いますね。
  100. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 参議院通常選挙の結果を厳粛に受けとめていますと申し上げましたのは、いろいろなことをすべて総合的に判断して、その中に、確かに消費税の問題もあった、農政の問題もあった、リクルートに対する政治不信を招いたという問題もあった、その他、地域によってはほかのさまざまな問題もあったろうと思っております。  それから、それなれば、廃止を考えておらぬというのは理論的に矛盾じゃないかとおっしゃいますが、私は、そんなに難しい理論づけはちょっと今ここですぐできないかもしれぬが、消費税というものは、あれは必要なものだと私は思っておるのです。ですから、正直に申し上げましたように、我が方にも消費税導入について、先ほど御指摘があったように、騒然とした中で、あのままの状況で採決をしなければならなかったという私自身の行為についての大変残念であったという気持ちも率直に申し上げましたし、それがために消費税の中身について、消費税というものが今度の税制改革の中でどういう位置を占めておるのかという問題について、あるいは今度の税制改革で、ずばり言えば、中堅サラリーマンの方々にはこんなに減税がいくのですよ、商店街の方々にはこういう恩典もいくのですよ、あるいは税は払っておらないのはどうするのだとおっしゃるお声には、これは消費税の問題だけではなくて、その他の一般歳出全体、財政全体の中でこのようにきめの細かいことをしておるのですというように、事を分けて御納得いただけるように、十分に議論や説明をする努力も足りなかったことも大変残念なことであったなと、みずからを顧みて反省もしておるわけですよ。  ですから、そういったことを全部含めまして、しかし、それでも将来の高齢化社会を見ると、無責任にこれをやめるというだけではいかぬわけであります。ですから、今の直間比率の問題をもし仮にこのままにしておいて、そして紀元二〇〇〇年に入れば二十一世紀、そうなったときのこの負担の問題を考えていくと、中堅サラリーマンには、今の直間比率でいけばさらに二倍近くの負担をまず求めなきゃならぬことになると、これは重税感どころの騒ぎじゃなくなりますから、今のうちにやるべきことはきちっとしなければならぬという気持ちも私は強く持っておりますので、そういった願いを含めて、消費税を廃止する考えは持っておりません、こう答えたわけでございます。  さらに、つけ加えさせていただきますと、あの選挙のときにも、消費税がなくなるかなくならぬかだけの議論がぎりぎり行われて、そのことだけを眺めて御判断なさった方もあるのではなかろうかと私は推測をするんです。消費税がなくなったら、また電気ガス税、そういったものが復活してくるとか、物品税が復活してくるということまであわせて御説明なさったわけではなかったんじゃないでしょうか。ですから、選挙後に起こったそういう状況等を全部見ておりますと、新聞の世論調査でもそうですし、この間のテレビの長時間番組、私もじっと見させていただきましたが、間違った視点に立っての御発言をなさっておる視聴者の代表も確かにいらっしゃったわけですから、そういった方々には、誤解を解いていただくように、中身をきちっと見ていただくように、公平に負担をしていただくためにはこうしなきゃならぬということを我々も申し上げますが、しかし、謙虚に反省して厳しく受けとめておりますから、改めるべき点は我々も改めながら定着を図っていきたい、こういう気持ちでございます。  余り理論的じゃなかったかもしれませんが、それが廃止はしないという意見と謙虚に受けとめるという意見と、それのつながりでございます。率直に申し上げました。
  101. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 昭和二十三年の例を私は挙げたでしょう、取引高税。国民の審判を厳粛に受けとめて、そして一年四カ月でもって廃止を決めているじゃありませんか。このときは、財源をどうするというようなことじゃなくて、たしかそのときの自然増収か何かでこれは措置したのだろうと思います、政府が。しかし、いずれにせよ、この財源をどうするかというようなことじゃなくて、廃止法案を決めて廃止をした、そういうことがあるわけです。  ですから私は、国民の、有権者意思を厳粛に受けとめるということであるならば、これは廃止をするというのがまさに当然のことだ、こう思います。  そこで、お尋ねをいたしますけれども、この直間比率の見直しばかり言っておりますけれども、所得と資産とサービス、バランスのとれた税制ということが今問題なんじゃないですか。としたら、今一番問題になっているのは、資産、いわゆるキャピタルゲインが非常にふえているということじゃありませんか。政府の出しました経済白書でも、一九八六年から八八年、昨年まで三年間、土地の値上がりによるキャピタルゲインは七百二十七兆円ですよ。株の値上がりによるものは四百四兆円。合計が一千百三十一兆円ですから、三年間のGNPを合計したものよりは、この株の値上がり、土地の値上がりのいわばキャピタルゲインの方が上回っているという、今極めて異常な経済情勢では ありませんか。こういう経済情勢を見て、これにふさわしい税制を一体どうするかということを考えるのは、私は当然のことだと思います。  しかもまた、直間比率の見直しばかり言いますけれども、これは竹下元総理が大蔵大臣当時、直間比率の見直しというのは入り口ではありません、初めに直間比率ありきではない、税全体を一体どうするかということを議論して、結果としてこのような直間比率になりました、いわば直間比率は入り口ではなくて出口であるということもおっしゃっているわけです。とすれば、今のような議論ばかりを総理が繰り返しおっしゃることは、大変遺憾だと思います。  それでは聞きましょう。問題は、見直し見直しを盛んにおっしゃる。見直しは大胆に行う。所信表明では、思い切って見直す、こう言っておられるのですね。大胆に見直す、思い切って見直す、大幅に見直す、どこをどう直すのですか。具体的にはっきり言ってください。
  102. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今、お尋ねの前に、ちょっと一点、私の方から事実関係として申し上げておきたいことがございます。  先ほど取引高税の話を例示に出されたわけでありますが、この取引高税はシャウプ勧告の中で廃止に触れられておりまして、シャウプ税制という全体税制を見直す中で、取引高税廃止の財源手当てがきちんと行われているものでありまして、今御指摘のように、ただ単に取引高税をやめたという経緯でないということだけは申し上げなければなりません。  それと同時に、確かに御指摘のように、キャピタルゲインの絡みの問題は事実問題として我々の認識にもあるわけであります。ですから、従来原則非課税になっておりました株関係の取引について、原則課税の方針もとってまいりました。また、今長々申し上げるつもりはありませんけれども、土地税制についても、税として対応しつつあるわけであります。ただ、同時に土地基本法を早く御審議をいただき、土地に対する哲学を確立していただくことによって、税の次の手当てもしてまいりたいと考えておるということだけ私から申し添えさせていただきます。
  103. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 一番最後に土地基本法に触れられましたが、土地基本法を先に出したのは、これは政府ではなくて我が野党ですよね。野党四党が先に出したわけですよ。そちらはさっぱり審議をしない。そこで今日に至っているということでしょう。その点は事実関係を明確にしておきたいと思うのです。むしろ我が党初め野党が提出した土地基本法、それを速やかに成立させていることがこの問題では重要であったということをはっきり申し上げておきたいと思うのです。  そこで、総理に聞くわけですが、大胆に行う、思い切って行う、大幅に行う見直し。何を見直すのですか。総理は次のようにも述べているんですね。見直しについては、福祉目的に使う。非課税については、食料品、入学金、薬局で買う薬など親切に判断しなければならないだろう、こう言っているわけです。見直しのある程度絵をお示しになったのだろうと思うのですが、一体何をどう見直そうとしているのですか。項目、内容、総理の考えを明確にひとつしていただきたいと思います。
  104. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私は、思い切って見直すということは、自分で思い切って見直さなければならぬだろうと思っておりますから、それは言いました。なぜかというと、私は税制改革全体の中でいいと思ってやったわけでありますから、だからいいんですけれども、選挙を通じていろいろな御批判を受けたということ、それから国民皆さん世論調査なんかを見ておりますと、いろいろな見直しのために、見直しなさいという答えが一番大きくなってきておるということ、これが世論だと思いますから、この委員会の冒頭で山口委員おっしゃいましたように、国民の世論にも謙虚に耳を傾けなきゃならぬというのは基本でありますから、その意味で、自分はいいと思って考えてきたけれども、選挙の結果を謙虚に受けとめたから思い切って見直すべきところは見直そう、こう申し上げたわけで、私はいろいろなところでいろいろなことを言ったとおっしゃいますが、私は思い切って見直すということについては、私の気持ちでありますから、率直にそのとおり申し上げたと、こう申し上げます。  それから、どこをどうするかということは、これは私はそれを言うんじゃなくて、国民皆さん、いろいろな立場の方々のお声を聞いて、その中からいろいろ重ね絵のように合わせて見ると、大体皆さんの求められるところはこんなところだなということがわかってくるはずです。それを拙速に一部だけを聞いたり、実施状況等の正確な把握もしないで、ここをこうする、あそこをああするということは言ってはいけないことだとみずからを厳しく戒めておりますから、だからあれをこうする、これをこうするということについては、私は今まで具体的に固めたこともありませんし、触れたこともなく、全く白い立場皆さんのお声を聞いておる。消費者の皆さんのお声も、皆さんのお声を聞きながらどこでどう固まっていくのか、政府税調にもその辺のお声を聞くことを頼んであり、党税調でもいろいろ見直しの議論をしていただいておる。まだ結論としてここをこうするということを申し上げることができませんので、いましばらく時間を与えていただきたいと考えます。
  105. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 八月五日、総裁選に立候補する前ですね。消費税については「当然使い道のほとんどは福祉目的になります。福祉目的税を含めて税制全体の中で考えていかねばならないと思います。」こうおっしゃっておられます。(「だれが」と呼ぶ者あり)海部さんがですよ。  そして八月九日、これは総裁に就任されてからです。「福祉目的に全部使うことにするのがいい、と明確にしておきたい。ただ食料品はどうするかというと、食料品の中には生鮮、加工品があり、どこでピリオドを打っていいか、私自身まだ整理ができていない。」というようなことを言っております。その後、入学金は課税だが、これはおかしいとか、薬局で買う薬は非課税でないのはおかしいとかということを言っています。保険の薬は非課税だが、薬局の薬は課税なのはおかしいというようなことを言って具体的に例示をしております。  そうして八月十二日、総理になりましてからの記者会見、ここで「臨時国会で、政治改革消費税の抜本的見直しをやり、成果をあげたい。」こうおっしゃっていますね。一体見直しをどうするかといったら時期をはっきりおっしゃいませんでした。  臨時国会でこの消費税の抜本見直しをやり、成果を上げたいということになれば、今臨時国会の会期は十二月十六日まで八十日間、与野党で一致してこの臨時国会の会期を決めました。この臨時国会で見直しをする、成果を上げるとおっしゃるならば、当然今ごろはもう見直しの案が国会に出ていなければおかしいんじゃありませんか。ですから、見直しは一体いつ出すのですか。総理になってからの記者会見ですよ、八月十二日。政治改革消費税の抜本見直しを臨時国会でやって成果を上げたいとおっしゃっているじゃありませんか。あの見直しの中身と提出の時期、しかも今国会で大幅見直しをやるんだというのですから、提出は当然早目にされなければならぬと思います。その時期を明確にしていただきたいと思います。
  106. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 総裁選に出る前、それから総裁になったとき、いろいろな記事に基づいて委員から御指摘がありましたけれども、私は、この消費税は福祉目的的に使う、福祉に全部使うようになるのは、気持ちとしてそういう気持ちを持っておりましたから、そういうことを言ったかもしれませんが、それはしかし国会できちっと御議論願って、そしてきちっと決まらなければ、個人でどうのこうのという問題でもないし、私の気持ちを申し上げた。  だから、御指摘になったようなことは、その当時いろいろなところでそのようなことを言ったかもしれません。しかし私は、二日の日の所信表明 できちっと申し上げたことを私の気持ちと御理解いただきたいと思いますし、今一生懸命努力しておる最中でありますから、政府税調にも党税調にも、その他各界にお願いをして、各省庁でもいろいろな聞き取りをやりながら、そしてどのようなものにしたらいいかということを前向きに今議論をしておるさなかでありますので、いささか正直に物を言い過ぎた点があったとしたら、私は反省をいたします。けれども、その気持ちを持って一生懸命取り組んでおるということでありますから、その熱意だけはお認めをいただきたいと思います。
  107. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 八月十二日、海部さんが総理になってからの記者会見ですよ。この記者会見で「臨時国会政治改革消費税の抜本的見直しをやり、成果を上げたい。」とおっしゃったのですから、この会期の中で見直しをきちっと衆参でやるためには、相当早目に見直し案を出す必要があるんじゃありませんか。そうでなければ、私は記者会見の趣旨に反すると言わなければならぬと思うのです。  あの臨時国会の所信表明が私の考え方だと言いましたが、少なくとも国民皆さん方は、総理の記者会見というのは、総理の考えを直接お述べになる、テレビを通じて報道もされるということで注目しているんじゃありませんか。これからはもう総理の記者会見というのは勝手なことを言うんですよということに今度は海部内閣になってからするというのですか。そんなことは私はできるはずはないと思う。とすれば、私は、今国会我々は廃止法案を出している。これを衆参を通じて成立をさせたい、これが我々の願いです。あなた方がこの見直し案を今国会で完全にやりたいというんなら、速やかに見直し案を出すべきじゃありませんか。それができないということなら、私は、国民に対する記者会見での公約違反、こう言わざるを得ないと思います。  とにかくこういうことでは私は話にならぬと思うのです。とにかく見直し案、いつ出すのですか。この記者会見で、総理の記者会見でおっしゃったのですから、時期を明確にこの委員会で示していただきたいと思うのです。
  108. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私は国会において、何回も申し上げてまいりましたように、廃止案というのは、我々が続けてやりたいというそこでの議論でありますし、また私は、見直しをしていかなきゃならぬ、それはいろいろな各界の御意見を聞いて思い切った見直しをしますということは申し上げましたけれども、内容について一々まだ結論を出しておるわけではございませんので、それはいろいろ、我々ができるだけ早くまとめていきたい、こう思って努力をしておるさなかでありますから、内容について今示せと言われてもお示しするわけにはまいりません。  いつということは、これはやはり私の努力目標としては、今一生懸命いろいろなところで御意見を聞いておるわけでありますから、予算編成の日程等も頭に浮かべながら、そして十一月の終わりまでには青写真や骨格を示したいという気持ちで各方面にお願いをしておるところでありますので、そんなころまでにお示しできるように鋭意努力をしておるところであります。
  109. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 今総理が示したような時期では今国会中に消費税の抜本見直しをやるということにはならぬと思います。このことだけは明確にしておきます。そうして、総理の記者会見が守られないというようなことでは、政治不信はますます私は深まると思います。  まさにもうこういった状況です。私は、速やかに国会を解散して国民に信を問う。消費税廃止法案、我々は参議院国民意思に従って廃止法案を出した。衆議院では残念ながら自民党さん多数、こういう状況では廃止法案がするすると成立をするということにはならぬと思います。とすれば、その際は思い切って解散をして国民に主権者としての意思を問う、これが私は議会の孫として議会制民主政治を守るゆえんだと思います。  その考え方をお伺いして、とりあえず私の後の伊藤政審会長に譲りたいと思います。
  110. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今申し上げましたように、それぞれの政策目標に取り組んで一生懸命努力をしておるさなかでありますので、解散のことは今考えておりません。
  111. 中尾栄一

    中尾委員長 この際、伊藤茂君から関連質疑の申し出があります。山口君の持ち時間の範囲内でこれを許します。伊藤茂君。
  112. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 山口書記長質問に関連をいたしまして、続行させていただきます。  山口さんが消費税のことで関連をいたしまして最後の部分で質問をされました。総理の御答弁を伺っておりまして、私は非常に不満であります。おかしいと思います。  まず、参議院選挙が終わった後、もう二カ月半から三カ月近く。この間に一体、与党の皆さん政府は何をやっていたんだろうかと思うわけであります。この前の参議院選挙では、最大の争点消費税をめぐる国民の関心でございました。これは否定できないと思います。そうして、その消費税を争った選挙の結果、国民の審判が出た。金丸さんが言われているとおりに、国民皆さん消費税はリコールをされた、これは当然の理解であろうと思います。私どもはその国民の審判の方向を具体化をする。どう具体化をしたらいいのかということで、私どもは大蔵省を持っていませんし、さまざまなハンディキャップがありますけれども、真剣にどう国民の負託にこたえるのかということで、一日も夏も休まず真剣な努力をいたしてまいりました。その間に一体政府・与党は何をやってきたのでしょうかという思いを深くするわけであります。そういう意味で、山口書記長が追及されましたことを引き続いて質問をさせていただきたいと思いますが、その前に一、二総理に所見を伺いたいのであります。  何か先ほど伺いますと、参議院選挙争点消費税だけではありません、確かに三点セットあるいは三点セットプラスアルファと言われたことは事実でありますが、いろいろあるので消費税だけで判断はできませんという趣旨のことを申されました。選挙が終わりました後、選挙の結果については七割ほどよかったという世論調査がある、御承知のとおりだと思います。あるいはまた、選挙のときのあなたの最大の判断、投票の基準は何になさいましたかという世論調査も二、三ございました。それらを注意深く見ておりますと、大体七割は消費税という問題であります。消費税及びいわゆる竹下税制改革と言われる問題であります。やはりこれにどうこたえるのかということが参議院選挙後の最大のやはり政治課題であるということは踏まえていただかなければなりません。  私は総理にまず伺いたいのですが、税についての基本姿勢をどうお持ちなのかということを伺いたいのですね。タックスデモクラシーとよく申します。税は社会の顔、国の表情とも言われます。民主的な税制が行われている国はデモクラシーがあります。不幸にして日本は政府調査を見ましても八割、八割以上の方々が常に日本の税制は不公平である、不公平感を持っている、そういうやはり残念な状態であります。  私はいつも対比をしているのですが、アメリカで行われた税制改革、レーガン税制改革と言われます。レーガン当時大統領が議会で、テレビ中継で提案演説をなさいました。そのときにこう言っております。  「我がアメリカという国は、不公平な税制に対する大衆の怒りから生じた革命的な動きのなかから誕生した。」ボストン・ティー・パーティー事件を引くまでもなく御承知のとおりであります。「二世紀後のいま、もう一つの革命が静かに進行している。それは、平和的な革命だが、やはり歪んでしまった税制に対する大衆的な怒りから生まれている。」今の日本の状況が、国民はそうだと思います。「アメリカの国民は、新しい制度を求めている。これは、ありきたりの党派的な問題ではない。」公平な税制の上に公平な活力のあるアメリカをつくろうではないかというわけであります。  なぜ、このような税を通じて社会の将来を語るというふうな見識が政府にどうしてなかったのだろうか、非常に私は残念なことだと思います。それがないから、このような混乱が生まれているというふうなことではないでしょうか。  そういう意味で総理にもう一度伺いたいのです。参議院選挙の結果、参議院選挙の投票の基準、重く受けとめて、参議院選挙の結果から税制改革の新しいスタートを切る、白紙に戻してやり直し、そこから広い視野で考えようではないか。なぜかと申しますと、私は税制の背景に大きな問題がたくさんあると思います。今求められているのは、まさに歴史的な大きな転換期だと思います。政治も大きく変化をします。日本の経済も社会も大きな変化です。世界も大きく変わってきます。そういう歴史的な大きな変化の中で、新しい枠組み、新しいパラダイムをどう描くのかではないだろうか。  総理、先ほどまでの御答弁では、多くの参議院選挙の投票者は納得がいかないと思います。前提の決意をまず初めにお伺いしたい。
  113. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 参議院選挙の結果を厳しく受けとめておりますと申し上げましたが、参議院選挙争点は、伊藤先生も御指摘のように、消費税だけを争ったわけじゃなくて、私どもが大変残念に思い、かつ厳しい反省をしますその一つは、やはりリクルート事件によって政治の信頼を自由民主党は著しく失い、有権者皆さんは自民党に一遍おきゅうを据えてやろうという声が、新聞紙上にもいっぱい出てきたような雰囲気であったということ、これは謙虚に反省をして、おきゅうは効きましたから、反省しましたから政治改革一生懸命取り組みますということを何度も申し上げました。この間の直近の国政レベルの選挙のときには、茨城県へ行って私は今と同じせりふを率直に申し上げてお願いをして、勝たせていただけたという謙虚な気持ちで申し上げるのですが、結果も出ておる。したがって、その問題やいろいろなことを踏まえての選挙でありましたから、消費税の問題も大きなテーマであったということは、これは率直に認めますけれども、そして、それがために定着するようにひとつ努力をしていこう、前向きにやっていこう、こう考えておる次第でございます。それが大前提であります。  それからさらに一つは、伊藤委員指摘のように、将来に向かって公平な税制であらなければならぬ、これはそのとおりであって、たしか一昨年ごろまでの新聞の世論調査の中で、特に税に関するものは、高過ぎるということと不公平だということがいつも回答の一番、二番であったように私は思うのです。諸外国と比べて法人税も高過ぎる、また諸外国の税制改革の姿なんか見ておると日本の個人の所得税、特に直接税のその部分には偏りが非常に多いという御指摘等もございました。そういった声を入れて抜本的に公平な税制にしていこう、所得と資産と消費とでみんながバランスよく考えていこう、国を支える人みんなで広く薄く社会共通の費用は負担をしていこう。いろいろなことがございました。  そうして確実に到来する高齢化社会というものを見ますと、福祉ビジョンの計算や、各省のいろいろ示す数字を見ましても、今のままで、税の仕組みを変えないで二十一世紀になってしまったら、個人の所得税が今より二倍になる、そんな負担に偏ってしまってはなおいけないから、今のうちに変えていかなければならぬ。いろいろな要請がありましたから、将来を目指して税制は改正しなければならぬという、そういった考え方に立ったわけでございますので、どうぞそれは前提として何を思っておるかとおっしゃいますので、率直にお答えをさせていただきました。
  114. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 参議院選挙で自民党におきゅうを据えた国民皆さんは、おきゅうで効き目があったとはまだ思っていないと思います。私は、そう思います。やはりこの参議院選挙後の新しい状況、参議院選挙を新しいスタート台にしようではないかと申し上げましたが、これはデモクラシーの基礎だと思いますけれども、そういう気持ちで、じゃあ参議院選挙の後、新しい状況が生まれたことを政府の、与党の議員の皆さんも私は実感として御理解されていないのではないだろうかという気がするわけであります。  参議院で与野党逆転をいたしました。私どもは消費税廃止、再改革、白紙に戻してやり直し、もう一度やり直そうという法案を提出をいたしております。可決をされるでありましょう。前のような、自民党が数の力で何とかなるという時代は終わったのであります。そういう状態になったのに、何か前と同じように思っているという姿勢にしか私受け取れません。そうして、何か野党が真剣に野党なりに努力をしている。何かそれに対して猛然と挑戦をしてあら探しをするというふうな姿勢になっているのだと思います。私は、参議院選挙後の議会の今後というものをどう考えるのかということが、今後の審議でのひとつ条件ではないだろうかという思いがいたします。総理、どう思われますか。  平成二年度予算はどう編成するのか、本会議答弁でもお答えになりました。あるいはまた消費税の問題、十一月あるいは十二月、幹事長は通常国会に法案を出すと言われておるようであります。消費税を見直しは私はできないと思いますけれども、消費税をほぼ現状のままベースにして予算を組むということにするのでしょうか。そういう予算を組んだ場合、これは将来のことですから仮にですが、あなた方は見直し法案か何かをつくったとしてもどうせ大したものはできないと思いますから、恐らく衆参で成立することはないと思います。予算の数字は決めたって執行できないという状態、間もなくもう予想されるのですよ。それが今日の参議院選挙後の新しい議会の特徴だと思います。内閣として、総理として、これから先どういうふうに責任をおとりになる決意でもって今語られているのですか。  私はそういうふうに考えますと、そういう展望論を踏まえて、今政府・与党が、今政府がどのような姿勢をおとりになるのかということを、これは真剣に、深刻に実はお考えいただかなければならないということだと思います。内閣がこれから今の姿勢でもって予算その他の法律などを通じて責任を持てるのですか。私はそうではないと思いますよ。したがって、今先ほどまでおっしゃられたような姿勢とは違った真摯な姿勢をとっていただきたい、とらなければならないと思いますが、総理、いかがですか。
  115. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 参議院選等にお触れになり、その反省の上に立ってという前提を置かれての御質問であります。その参議院選、あるいはその前にありました東京都議選の党の責任者としての立場を踏まえながら、私から少しお話をさせていただきたいと思います。  立場をかえて御想像いただけば、あの東京都議選、さらに先般の参議院選の先頭に立ちました者のそのつらさは御理解がいただけるでありましょう。そして、死に物狂いに私なりに国民にお願いは申し上げてまいりましたけれども、残念ながら我々は確かに敗れました。しかし、先ほど来山口委員、また伊藤委員の御質問消費税を強くおっしゃっておられますが、その矢面に立ちました私の感じは、個別政策の前段階、各党巻き込んで国政を混乱させましたリクルート事件というものが起こした政治不信の声が、挙げて自由民主党に集まった、その中での戦いであったという思いの方が非常に強くいたしております。  確かに消費税が大きな原因の一つであったことも私は決して否定をするものではございません。しかし、その政治不信の部分について御理解がいただけた方々は、賛成か反対かは別にして、消費税の説明にも耳を傾けていただきました。そういう思いからいたしますと、私は、消費税というものが税制改革全体の中の重要な柱の一つでありますけれども、それだけが税制改革ではないという点に、残念ながら国民に十分御理解をいただけていなかったという思いを強くいたしております。     〔委員長退席、越智(伊)委員長代理着席〕  ですから、敗北の直後に党の責任者として全国 の党組織に地方からの声をもう一度集めていただくようなお願いをし、現にそれは党で進めていただいております。また、私どもは本当に見直しをお約束してまいりました。法律の中にも明記されていることであります。ですから、消費者の今出されている声だけではなく、納税事務が現実に始まりますと、事業者の方々からも出てくるであろう声もあわせてというお約束のとおりに、今政府税制調査会が真剣な見直しの努力をしていただいております。  私どもは、その結果を踏まえて対応していかなければなりません。そして、政府立場といたしますならば、明年度の予算編成に着手いたします時点では、来年度の歳入をきちんと押さえなければならぬわけでありますから、その時点までに明年度の税制改革の中に取り入れるべき消費税の見直し事項が決定しておれば、それを織り込んだ上で予算編成に臨む、そういうことでございます。
  116. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 総理、簡単に答えていただきたいのですが、今大蔵大臣が話がございましたが、私は不満ですから、それは別途また論争を続けます。  私が申し上げたのは、参議院選挙の後、衆議院参議院含めて構造は変わりました。今までのように衆議院参議院も自民党、与党が多数で数の力で通そうと、消費税の強行がその最高の状態でございましたけれども、変わりました。そういう状況の中で予算を、消費税を前提にして組むと言われている。そうしてまた、消費税は存続、継続、そのためにも見直しということを言われている。私どもは、デモクラシーの論理からいっても賛成できません。そういう状態がこれからあるのですよ、現実に。  そういう中で政府として、総理としてどのような責任を持ってこれからおやりになるのですか。お考えになるでしょう。それだけに今とるべき姿勢がもっと変わらなければならない、与野党含めてそうかというような姿勢をとらなければならない。そうでなければあと政府が責任を持てますかということを総理にお伺いしているのです。
  117. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 しかし、現に税が存在をし、その税によって歳入が図られます以上、それを前提にし、予算編成に取り組むというのは、私は政府として当然しなければならないことであると思っております。     〔越智(伊)委員長代理退席、委員長着席〕
  118. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 お答えにならないのか、なれないのか。しかし、私は、政府の責任者としてはそういう展望を今お持ちになった上でどうするのかということを最もお考えにならなければならないのじゃないでしょうか。私は、野党の一員として、これから先さまざまの真剣な議論をしたいと思います。国民皆さんの前に、単なる反対ではなしに真剣な議論をしていきたいと思います。そういう政党になっていきたいと今真剣に努力をしています。そういうことですから、お互いにやはりそういう姿勢がなかったら、私は、参議院選挙から今後の政治の新しい風、新しい風が吹いている状態が生かされないと警告を申し上げておきます。  もう一つだけお伺いをしたいのですが、この参議院選挙の後、一体この夏何を政府は、与党は努力をなさったんだろうか。考えてみましたら、ただ一つあったのは、自民党の山中税調会長をやめさせたということだけではないだろうか、この夏のうち、という気がするわけであります。  何か、ある新聞に「ドンに罪をかぶせた自民党」という記事が載っておりましたが、私も、山中さんは大蔵委員会に長くいまして、政党、意見は違いますけれども大蔵委員会の顔という人だと思っておりましたが、山中税調会長に責任を問う。それでは政府の、これは総理任命でありますが政府税調の小倉会長は責任はどうするんだろうかと思いましたら、新聞を見ましたら、責任論につきましては御本人は馬耳東風だと言われているそうであります。  私は思うのですが、消費税の製造元の方に、あなた方の党の人事ですから、それはあなたがお決めになることなので介入はしませんが、消費税をつくったその総責任者にやめさせた、やめてもらったわけであります。つくり出した消費税がまずいからということしか国民は理由はわからぬでしょう。政府税調の会長は馬耳東風だと言っている。さらに含めて、先ほど山口書記長質問総理お答えになりましたが、昨年の暮れ、金丸さん、税制特別委員長が、おれはこんな議会は嫌だというふうにして、立ち去ったそうでありますが、その後、総理御自身が強行採決の委員長席にお座りになった。全部、私は責任があるんだと思います。山中さん、小倉さん、あなた自身の責任、これをどうお考えですか。
  119. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 税の問題につきましては、先ほどの繰り返しになって恐縮ですけれども、私どもは、あの消費税消費税だけじゃなくて税制改革全体の中の一環として、よかれと思って、考えてやったことでございました。  また、最後にお触れになったこの場所での強行採決ということについては、いろいろな騒然とした事情の中で採決をしなければならなかったということについては、決していいことだとは思っておりません。けれども、そこに至るまでのいろいろな背景とか、いろいろな原因とか、そういったものがあって、私どもはこれを見直して、国民皆さんに御理解をいただいて、定着させて、何よりもきょうから将来にかけての安定的な日本の社会の基盤を支えていくためにはこの税制改革は全体として必要不可欠なものだ、こう考えておりますので、いろいろ努力をしておるところでございます。どうぞ御理解をいただきたいと思います。
  120. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 納得できませんが、次に参ります。  先ほど山口書記長質問に対しまして、見直しの内容、鋭意これからやっていくところでございますのでというふうな御答弁でございました。まあしかし、今までの総理を含めましたさまざまの政府・与党の責任者の皆さんが発言をされているわけであります。  総理か大蔵大臣か、この辺はどうお考えになりますか。例えば、新しく任命をされました西岡税調会長、見直し項目について、生鮮食料品などの非課税品目、非課税化ですね、福祉目的税化、税額表示の問題、免税点や簡易課税制度の問題などを指摘されている、これらが問題だと考えている。同じ認識でしょうか。それから、総理も言われました、NHKの長時間討論番組の中でも三塚政調会長、この生鮮食料品の非課税品目については重要な気持ちを持ちながら対応していくというふうな発言もございました。大体これらのことが世間でも与党内部でもいろいろと議論になっているということですが、そういう認識はよろしゅうございましょうか。
  121. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 政府の税制調査会に対しまして、私は、国民から見直しの御要望の出ている御意見についてはそれをすべて俎上にのせていただきたい、そしてその上で、なぜ例えばそれを採用するか、あるいは、なぜそれが採用できないかを明らかにしていただきたいと申し上げておるわけでありまして、いろいろな御意見が出てまいりますもの、それはそれなりにすべてが見直しの対象になり得るもの、そう私は理解をいたしております。ただし、その見直しの対象にいたしましたものがすべてそのとおりになるということではなく、あくまでも検討の俎上にのせていくということであることは申し添えさせていただきます。
  122. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 総理に一言伺いますが、先ほど、総理の発言が消費税に関連をしてトーンダウンしたんではないか、大胆に思い切って云々という言葉から大分変わったんじゃないかという質問山口書記長からございました。総理からも答弁ございました。ちょっと念を押しておきますが、国民理解と納得が得られるような具体案で、そうしてそういう方向に思い切って見直していく、国民理解と納得が得られるように思い切って見直していくという気持ちは変わりないですね。
  123. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 国民皆さん理解を得るように思い切って見直していくというのは私の気持ちでございます。そしてまたそのようにしなければならぬとも思っております。いろいろなとこ ろでいろいろなことを言っておりますけれども、それは私は、今申し上げたことで、その気持ちでいつも発言をし続けてきておるつもりでおります。
  124. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 それでは、国民理解と納得が得られるようにということでございますから、国民の皆様が今何を望んでいるのかですね。何か最近の世論調査でも廃止よりも見直しの数字が上回ったとか、よく与党の方おっしゃっておられますが、私は違うと思います。数字は確かにそうです。ただ、見直しという中で要望されているのが何だろうかということを考えてみますと、これができるかできないかは別問題、与党の手では別問題という気がするわけであります。いろんな世論調査を全部調べてみました。消費税の将来をどうするのか。もちろん、廃止という方々が多い。それから九五%程度の方々は今のままではだめです。百人のうち四、五人しか今のままでいいという人はいないということをまず前提に踏まえた上で、消費税についてのさまざまな御意見がございます。大新聞でのいろんな世論調査がございましたし、あるいは先般のNHKでの議論とか、いろいろございましたので、私ども、全部それを表に並べてみました、何が中心だろうと。  総理国民理解と納得が得られるようにということですから、国民が求めていることに納得と理解が得られるように一体取り組むのか取り組まないのか、あるいはできるのかできないのか、今のところゼロなのか、はっきりしてもらいたいというふうに思いますが、数字を並べてみますと、一つは、生鮮食料品や教育、福祉は対象から外すべきである、これは圧倒的な数字であります。福祉目的税にすべきである、これが二番目に多い数字であります。その後には内税外税一本化の問題、それからぜいたく品の税率は高く、生活必需品の税率は低くするように改めなさい、朝日新聞で五四%ございました。それから、帳簿方式、簡易課税制度、免税点、税金が国庫に行くのか行かないのかわからない制度はおかしい、大体こんなところが御案内のとおりにずっと並んでいるという状態であります。  この間ある新聞を見ましたら、あなた方自由民主党の地方組織が何を望んでいるのかという調査もございまして、四十七都道府県にアンケートして三十四都道府県から回答があったようでありまして、一覧表が載っておりました。非常に興味深く私読みましたが、今私が挙げましたようなことを自民党の各地方組織もみんな要求をしているというのが今日の状態であります。総理の地元の愛知県の自民党の皆さん、主な見直し要求を五つ挙げなさいと言いましたら、第一、免税点、第二、簡易課税制度、第三、限界控除制度、第四、非課税品目、第五、福祉目的税化、ほぼ同様なことを総理の地元の与党の皆さんもおっしゃっております。大蔵大臣のところも同じようなことが並んでおりました。そういう状況を踏まえまして、国民理解と納得が得られるような努力、姿勢があるのかどうなのかということを確かめてまいりたいと思います。  まず第一に、一番要望の大きいところの生活必需品、生鮮食料品、教育、福祉などの非課税化という問題であります。  大蔵大臣も随分勉強なさっているようですから、いろいろと困難はわかっておいででしょうと思いますが、いろいろな問題がございまして、基準をどうするのか、線引きがどうできるのか。西岡税調会長は、米、麦、塩だけというふうな限定をしたのでは二重にうそをついていることになりますから、限定しないで生鮮食料品を含めると六日、就任に当たって記者会見でおっしゃっておられます。線引きはできるのかどうか。できないから大体売上税から消費税へという経過があったことも御存じでございましょう。  さらにまた、西岡さんが言われているようですが、食料品全部を非課税にいたしますと二兆円もの財源が必要になる。野党の財源案について与党は随分いろいろなことをおっしゃっております。これから参議院で正式の法案が始まったら堂々と御答弁を申し上げて、心配は全然ありませんということになると思いますが、では一体、そんなことをおっしゃっていますが、その二兆円かあるいは税収の二〇%、一五%程度か、一体どのような対応をなさるということがあるのでしょうか。  さらに理論で考えますと、税制から考えますと、このような非課税品目をふやした場合には、前の売上税もそうでしたが、当然やはりインボイス、税金伝票が必要になると思います。そうでなければ、お店でもどんぶり勘定では会計処理に混乱いたします。スーパーとかそういうところでも区分けをした売上管理ができません。これは当たり前の話であります。  このようなことが問題として大きくあるわけでありまして、一体こういうことを踏まえて、国民の皆様が要望している第一事項について、あなた方はやろう、必ずやるとかということがあるのかどうなのか、答えてください。
  125. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今いろいろな方の発言を御引用になりましたけれども、その中に私の発言が一つもありませんでしたようで、私は政府の税制調査会にお願いをし作業をしていただいている責任者として、しかも国民の関心を持たれる事項についてはすべて検討の俎上にのせていただいて結構である、またのせていただきたいと申し上げている立場として、個別具体的な問題については今日までも発言を控えてまいりました。それは審議会として中立性を保ち御論議をいただく上に当然私の守るべき礼儀だと思っております。ですから、今具体的にいろいろ御例示がございましたけれども、私個人がどう考えているかということについては御容赦をいただきたいと思います。  しかし、今委員指摘のとおりに、さまざまな問題点があることは事実でありまして、また国民の御要望の言葉一つずつの定義づけというものにも困難な問題が伴うことは御指摘のとおりでありまして、私どもとしてはむしろそうした点について御論議が深められていくこと、これを期待をいたしております。
  126. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 橋本さん、そんなことおっしゃるなら、私どもはとても難しいと思っておりますから、結局は不可能だろう。今おっしゃっているのは、何か幻想を振りまいて消費税を残すだけじゃないかという批判をしたくなりますが、面と向かってそう言ったらどうお答えになりますか。
  127. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 我々は、見直しをいたします、その根拠は法律の中にもきちんと定められております、そして、その国民の御要望はすべてその検討の俎上にのせますと申し上げておるわけでありますから、そこで御信頼をいただかなければなりません。
  128. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 見直しに関連をして国民の皆様から最も多い項目であります。やる、やらない、言えないんですか。
  129. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 ですから、その御提示になりましたような問題点のいずれもが見直し、検討の対象であり、先ほどから申し上げておるとおりであります。先ほどから申し上げておるとおりであります。
  130. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 検討の俎上にはあるが、どう料理されるか、できるかできないかは目下全く不明であるということが明らかになったと思います。  もう一つ伺いましょう。福祉目的税の問題。先ほど山口書記長との論議が総理とございました。注意深く伺っておりました。  私は皆さんに伺いたいと思います。あなた方が先般の参議院選挙のときに何を国民の皆様に公約なさったかということですね。単なる記者会見とかということでは正確であるかどうかということがございますから、あなた方自由民主党が選挙のときに法定選挙届け出ビラ第二号、三号。これは我が党の場合でも党が発行する。これは合法的な文書ですから、政審会長の私が最終チェックをいたします。与党の場合は知りませんが、同じく大事な扱いで見られているでありましょう。こういう内容が書いてございます。まず、法定ビラ第二号。「消費税はまるまる福祉に充当します」「国民の皆さまにご負担をお願いしている消費税額の全 額を社会保障関係支出に充当します。」第二号です。第三号があります。「消費税は優先して福祉の充実にあてます。」「自民党は、この消費税導入の趣旨を踏まえ、消費税を優先して国民福祉の充実にあてます。」  あなた方は参議院選挙で全国で膨大にこれを配布したわけですよ、有権者皆さんに。というと、重大な公約ですよ。やるのですかやらないのですか。どうなんですか。
  131. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 確かに現在進展しつつある高齢化社会の中で福祉関係財源というものは非常に大きなウエートを占めるものであります。消費税として国民からお預かりをし、地方にお渡しをする以外の部分が当然福祉に最優先で充当されていく、当然のことでありましょう。
  132. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 大蔵大臣がそんな御答弁をされるのでしたら、あえて私は申し上げましょう。  二つ申し上げます。  一つは、現在の消費税の税収の仕組みの中に福祉の増強に回るお金は一文もありません。これは事実ですよ。五兆九千四百億円。前に審議で平年度モデルで五兆四千億。その仕組み、歳入、消費税の収入とあと歳出の仕組みがどうなるのか、何遍も一覧表を出してここで議論をしましたですね。議論をしました。あなた方の御答弁にもあった内容だと思いますが、その六兆円弱の消費税の内容は、収入は何に使われるのか。一番大きいのは個別物品税などの解消の問題で三兆に近い。地方に行くお金が一兆以上ですね。その他減税財源、減税の中の一部分ですね、減税全体はむしろ自然増収を当て込んでやったのですから。  要するに消費税の収入の出口は全部決まっているのですよ。消費税の収入によって福祉が増強されるだの、福祉に回るお金がふえるだの、そんな姿は消費税の収支のバランスの構造自体に一つもないのです、これは。全くのうそですよ、そんなものは。僕は去年の審議の経過を振り返りながら、先ほど申し上げたあなた方が国民の前に配布をしたビラを読んで、何たることだろうかというふうに思いました。これが一つ。  もう一つ、これも否定できない事実だと思います。消費税の仕組みは基本的に反福祉、弱者いじめです。生活保護の皆さん、年金生活の皆さん、一年に一遍だけ——一年じゃない、たった一遍だけ一万円ぽっきりもらったって、十五万円で暮らされている厚生年金の皆さん、毎月五千円ぐらいずつ消費税負担がふえていく、減税の恩恵はない、悲痛な叫びを上げている。全世帯のいろいろな構造の調査も私ども研究してみました。二割から三割の皆さんは、消費税のおかげでみんな困っています。みんな怒っています。これが現実の構造ですよ。その全世帯を細かく割ってみて、それは共稼ぎ、片稼ぎ、それから子持ちの、子供何人いらっしゃるか、単身、いろいろな場合ありますね。詳細に勉強して、客観的事実としてそうなっているわけであります。  消費税は、基本的に弱者いじめで反福祉の構造です。あなた方、もっとそこを考えて、そもそもどうしてもっと考えられないのかと思いますけれども、そういう構造の中で、消費税を福祉目的税化します、あるいは福祉に使います、これは表示違反ですよ。まあJASマークもとてもこれは採用されないということだろうと思います。  いかがですか。今私が指摘をした二つのことをどう思いますか。これは事実ですからね。
  133. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 大変失礼な申しようになるかもしれませんが、消費税収は、地方にお渡しをするものを除いて、一般財源としてこれを歳出に振り充てていくわけでありますから、その点は御理解をいただかなければなりません。  同時に、福祉関係というお話がございましたけれども、先日、私自身が福祉関係の方々にもお目にかかりましてお話を伺ってみました。福祉関係の方々のお気持ちは、むしろ一般財源として福祉に手厚くしてほしいということでありました。むしろ福祉目的税というものを必ずしも求めておられません。そして、先ほど委員が読み上げられましたように、福祉目的に使いますと申し上げておりますことと福祉目的税という目的財源をつくることとは別であります。福祉に使うと申し上げておるそのお約束を我々は被るつもりはございません。
  134. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 総理、これは国民の皆様から見たら本当に関心のあることだと思います。あなた方与党は、与党自由民主党はこういうビラを国民の前に大量に配布をして、「消費税額はまるまる福祉に充当します」「消費税は優先して福祉の充実にあてます。」こんなことは子供だってわかるのだけれども、福祉に充てるとかいったって一般財源に入る。まあそうですね。そこにどういう色がついてどこに回りますか。特別会計か特別勘定か何かしなければ、そんなことだれもわからぬですよ、これは。お金に色がついているわけじゃないのだから。こんなことはないのです。  まあ具体的なことは、時間もありませんから、さまざま今後も議論を徹底的にやりましょう。我々も、国民の皆様が納得できる税制、そうしてまた将来を約束できる税制をどうするのかという立場で議論いたしているわけですから、真剣な、また白熱的な議論をしていきたいと思います。しかし総理、感想を聞かしてください。こういうことでいいんですか、本当に。
  135. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私も税制改革をなぜやるかというのは、先ほども申し上げましたように、負担の公平とか国際的に高過ぎるとか、いろいろゆがみ、ひずみを直すためとかいいますが、その中の一つの大きな目標に、来るべき高齢化社会を控えて、二十一世紀になれば大変な福祉の負担も要る、それを今からきちっと福祉の方に対して、そのときになってあわててはいけない、そういった意味で考えておるものでありますから、その消費税の税収を目的税にするかしないかとか、また、全額というと地方に行くようにも法律でもなっておりますし、いろいろ問題があるが、福祉関係者の皆さんの声や御家庭の方の声やみんなの意見を聞いて、なるほどと納得のできるところへ変えていこうということでございますし、また福祉には今現在でも大変たくさんなお金を使ってやっておるわけでありますから、その辺のところを考えますと、消費税皆さんに御理解、御協力願うのは、将来の福祉のために大切なものでありますからどうぞわかってくださいということも私も言い続けてきたし、これからもお願いをしていかなければならぬ角度の問題だと思います。そのことも含めて今議論しておるわけでありますから、今ここで出せ、今ここで言えるかどうか、もうちょっと考えさせてください。いろいろな意見を聞きながら議論をいたしております。
  136. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 もう一つ皆さんのおっしゃるところの見直しに関連して、もう一点だけ伺います。  基本的仕組みと申しましょうか、免税点あるいは限界控除の問題、簡易課税方式、帳簿方式、この消費税に頭にきたという多くの国民皆さんの中には、自分の払った税金が一体国庫に行くんだろうかどうだろうか。五千億円近い額であろうと大蔵省も試算をいたしております。消費税収全体の八%近く、また価格転嫁カルテルなどの状況を勘案をいたしますともっと多いかもしれない。消費税収の一割ぐらいはどこに行くかわからぬということがあるんじゃないかとエコノミスト、専門家からも指摘をされております。私は、やはりこういう制度は長期に安定する仕組みでないと思います。  昨年の夏に超党派で、与党の専門家の皆さんとも一緒に、間接税制の一番の元祖の方であるフランスに参りまして、勉強しました。そのときに、世上、世界で付加価値税の父とかネーミングをされているモーリス・ローレさんという人に会いまして、もう年配の方ですが、いろいろとEC型付加価値税をつくった経過などお話を伺いました。そのときに、日本ではどうしますか。今政府の方からは、単一税率、アカウント方式、大きな規模での簡易課税方式、高い免税点、この四つがポイントですと申し上げましたら、その付加価値税の父と言われる方は全部おかしいということを申さ れました。単一税率は、これは社会政策のない証拠、アカウント方式、帳簿方式は税金が見えません、高い簡易課税方式は大変な不公平が起きますという話でありました。私どももそのとおりだろうなというふうに思ってまいったわけでありますが、その矛盾が今あらわれているというふうなことだと思います。  こういう基本的な仕組みを、何か政府の税調会長などがおっしゃるところでは、来年一年やって、納付が終わったらその時点でこれは大きな問題として検討しなければならない、二段階。こういう基本的な仕組みも、やはり段階別にして検討しなければならないというふうにお考えでしょうか。
  137. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今御指摘になりました中には二つの問題点があろうかと思います。  一つは、まず簡易課税並びに限界控除の問題でありまして、これは、御承知のように十月二日の時点で業者の方々が選択されるかどうかをまず決定をされ、これから制度が動き出すという問題であります。また限界控除につきましては、御承知のように本年度の問題でありますから、まだ後にならないと実際にそれがどう動くかということについては不確定であるという状況がございます。ですから、いずれにいたしましても、これらを見直しをいたしますとすれば、当然その実績を見た上でという問題になろうかと思います。  また、もう一点御指摘がありましたその免税点につきましてでありますが、確かに、免税点以下の売り上げの方々が全体の三分の二ぐらいおられるということは事実であります。そして、往々この三分の二という数字がひとり歩きをいたしまして、売上高全体の中の三分の二が把握ができないのではないかというような誤解を生むことがございますが、念のために申し上げますならば、この三分の二の方々の売り上げというものは全売り上げの中の三%であります。三%程度であります。しかもその中で、例えば通産省にこれは調べていただいたのでありますけれども、小売の、零細小売の方々、大体四割くらいの方々は転嫁をしておられませんし、また、やはり零細のサービスの関係の方々も七割は現実に転嫁をしておられないという状況でありまして、仰せになりましたような膨大な数字がひとり歩きをし国庫に入らないということではございません。また、やはりできるだけ例外をつくらないということと、公平ということと同時に納税義務者の事務負担というものがはね返る物価等も我々としては考えなければなりません。そうしますと、ごく小さい業者の方々に大変きっちりとした事務処理をお願いを申し上げることについてさまざまな問題点もあろうかと存じます。ただ、基本的に今申し上げましたような点は御説明をしておく必要がありますので、申し上げました。
  138. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 大蔵大臣、ひとつ感想を聞きますが、今あなたのお話の中にございましたことに関連をしてなんですが、簡易課税、免税点、これらにつきまして、国民皆さんの懐から払った消費税が国庫に入らないのではないだろうか。この間、ある新聞で報道されておりましたが、消費税の運用益が、ある会社で、家電のお店のようですが、相当多額に出たので、これは自分のところのもうけに入れたのでは公費横領になります、やはり還元をいたしましょう。  それに関連をして、私、新聞を読んでおりましたら、消費税が国庫に行かない仕組みの問題がある。まあ、単純計算をいたしますと、六兆円、半年半年ですから、全く大ざっぱな計算なんですが、うまくMMCで回せば八百億円、半年だから四百億円が懐に入るのじゃないか。大きな丸めた数字ですから、そう単純にいかないと思いますが、何かやはり国民、消費者の皆様からは不満がある。それから、まじめな業者の皆さんは、何か消費税をいただいたが、それが決算で自分の会社のもうけに残っちゃった、これでいいのだろうかと、まじめな業者の皆さんはお考えになると思います。何かやはり基本的に、社会的にアンフェアなシステムではないだろうかと私は思うわけでありますが、どうでしょう。基本的仕組み、見直し。
  139. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 納税回数をふやせば、例えば今お話しになりましたような、国民である消費者から業者の方々がいわばお預かりになり、そして国庫に納入していただきますまでの期間を縮めることによって今のような問題は解決するでありましょう。しかし、その場合の徴税コストのはね返り等、私は、細かいそういう分野になりますと、専門家ではありませんので、十分な知識を持ちません。  そして今、こういうふうに市場で回せばと言われましたが、そういう分野のお金の運用というものの知識を私は余り持っておりませんので、お挙げになりました数字がそのとおりに正確なものであるかどうかについて判断をいたしかねますけれども、私はやはり基本的に、こうして納税義務者の方々が集められたものをきちんと納入をしていただく仕組みというものが十分に機能するようにしていくこと自体、我々の務めだと考えております。
  140. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 大蔵大臣、何か非常に進んで御答弁なさいますから、大蔵大臣に関係することを一つ伺います。  これは、消費税に関係する政府の広報問題であります。  選挙中、全国のいろいろの新聞に、減税がこうなっているとか、大変な大きな額のお金を使ったのでしょう、宣伝がございました。最近になりましても、週刊誌その他にさまざまのそういうたぐいのものが出されております。そうして、つい最近には、さまざまの週刊誌、雑誌というようなところで、大蔵大臣にお手紙をください、あるいはまた「もう一度、お話させてください。消費税について。」あなたの写真入りのですね、これは、はんらんするほどいろいろな新聞その他に出ております。私は、これは非常に大きな問題だと思います。  選挙中にもいろいろな週刊誌や新聞に出ました。あなたは減税に幾らになっていますという形での宣伝であります。国民皆さんに、この税制改革、消費税だけではありませんと今申しましたが、消費税と減税とを含めて一体どうなるのか、そういうところをきちんと言うというのならまだ話はわかるのです。それでも政府自身が選挙中に大宣伝するのはおかしいと思うけれども、まるで自分の都合のいいところだけ、しかも選挙中に国民の税金を大量に使ってこんな宣伝をする。こんなことはデモクラシーの社会として、政治として許されていいということなのだろうかと思うわけであります。  もう一つ申し上げます。  大蔵大臣、もう一度考えてください云々ということで、何かあなたにさまざまな手紙が来ているとか、手紙の比率はこうだとか記者会見でもおっしゃっているようであります。大変喜んでいるようですが、私はこれは問題だと思います。今、参議院選挙の後、新しい状況、新しい構造のこの国会で真剣に消費税をめぐる議論をしています。これは国民皆さんに与党、野党を含めて責任のあることですから、将来どうするのか、本当に真剣な議論をしなければならないと思っております。そういう中で、政府の、自民党の一方的な考え方を、しかも国民の税金を使って大宣伝をする。(発言する者あり)国費でPRをする。ファッショという言葉がありましたが、独裁国だって私はこんなことはしないと思いますよ。非常に大きな問題ではないかと思うわけでありまして、私はこんなことなら、国民皆さん国会の真剣な議論を聞いていただくことが大事なのですから、与党が宣伝する、野党が宣伝する、これは政党活動ですよ。こんな政府のお金を使ったことをやる、しかも中身も私ども反論したいのですが、あなたの言っている中身の一つ一つにこれは非常に大きな問題があると思います。アンフェアだと思います。正直ではないと思います。こういう内容について、やはり国民の税金でもって、国民意思を国権の最高機関で一生懸命議論しているときに、何かそういう宣伝がどかどかなされるということは、私は議会政治の根本としておかしいと思いますが、御 本人はどう考えていますか。
  141. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 事務方の諸君から私の写真を入れたいと言われましたときには、正直、戸惑いましたが、今御指摘のように、私どもは税の広報活動をいたしております。それは税制改革法第五条第三項に基づきまして、国民に対し消費税を含む現行税制の趣旨及び内容の周知徹底を図り、国民理解と協力を得るために行っておるものでございます。  そしてまた、投書をいただいておりますが、先ほど、ちょうどこちらに出てまいります前、聞いてみますと、既に九千通を超える投書をいただきました。私が目を通しておりますものはまだ三千通余りでありますけれども、その中に、これは賛成もありますし反対もありますし、条件つきの賛成、条件つきの反対、いろいろな御意見がありますけれども、それぞれに非常に真剣に御自分の考えを述べていただいております。私はこうした投書をいただくことが国民に対して礼を失することであるとは決して思っておりません。
  142. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 そういうのを私は居直りと言うのだと思いますよ。  これは与党、野党、それから政府立場、それぞれあるわけでありますが、私はさっきも申し上げたように、参議院選挙後の新しい政治構造、そうして政治に、国民の皆様の見る目、参加も含めて、いろいろ新しい風が吹き始めているというのが今日の時代だと思います。いろいろな意味で、私どもは、これからの政治のあり方の基本も含めて、新しい努力、新しい勉強をして、本当に国民とパイプがつながっている政治をつくっていかなければならないと思います。その基本は、やはり我々が国会で真剣な議論をして、そうして大汗をかいても国民皆さんの前に、何かリーズナブルな御理解、それで結論をどう出そうかと努力をするのがこれからの政治家に求められるゆえんであろうと思います。  そういう意味で申しますと、何か従来と同じ方式で、数の力があるような感じだけ持って、そうして政府はこうさせてもらいます、大蔵大臣、そうおっしゃいましたが、基本的に私はおかしいと思いますから、こういうことにつきましては、また別途どこかの場できちんと話し合っていただくようにお願いをしたいと思います。  あと、時間でございますので、ほかにも質問したいことがいろいろあったのですが、一つだけ、これは注意か、警告も含めて私はお願いしておきたいと思います。  大蔵省の態度の問題であります。何か、きょうのある有力新聞を見ましたら、参議院で自民党の皆さんが野党共同提案に対して猛勉強で質問の準備をしている、大体総論は終わったので、大蔵省のお役人とマン・ツー・マンでそれを詰めていくのだというような話であります。まあ、そんなことをかりなければならぬほど不勉強なことをという気もいたしますけれども。  それから、この間の経過につきまして、いろいろな新聞の投書もございましたが、私どもは、何か国民のために選挙で公約をした廃止、再改革というものをやろうじゃないかと、あなた方は当然意見があるでしょうが、我々は我々なりに真剣な努力をしてきました。何かいろいろ聞きますと、大蔵省の役人の皆さんは廃止法には手伝えない、手伝ってはならぬという話を聞くわけであります。私は思いますけれども、大蔵省の官僚の諸君が、国民の公務員なのですか、長年の自民党権力になれたそういう体質になっているのですかと、私は厳しく問われていると思います。やはり本当のイギリスの議会なんかでも、公務員は中立、誠実なパブリックサーバントですね、そうあるのが当然です、これは国家公務員法の基本からしても。今日の状況は本当におかしいと私は思います。もうそんな姿勢ならば自民党に雇ってもらいなさいというぐらい、余り言いたくはありませんが、私も長年大蔵委員会にいましたから、そんな気持ちでございますが、そういう大蔵省の職員、公務員、姿勢、あり方、活動について、きちんとやはり大蔵大臣は処理してもらいたいと思いますが。
  143. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 大蔵省の事務当局の諸君が各党からお呼びを受けましたものについて、行ってはいけないなどということを一度も私申し上げておりませんし、それぞれの例えば御注意あるいは資料の御要求等、公務員としてできる範囲の御協力は当然いたしておると思います。そうした行動をこれからもきちんと続けるようによく申します。
  144. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 時間ですからこれで終わりたいと思いますが、大蔵大臣、きれいごとを言われましたが現実は違うわけでありまして、よく厳重に注意をしていただきたいと思います。  書記長、私と引き続いて質問をさせていただきました。いずれにいたしましても、国民の皆様が大きな関心を持っている今日の問題でございまして、やはりそういう中で、デモクラシーの政治家であるならば、参議院選挙国民の審判の原点からスタートをして、白紙からやり直して、参議院では可決されるでありましょうから、その方向への努力に対応されるように強く要望いたしまして、質問を終わりたいと思います。
  145. 中尾栄一

    中尾委員長 これにて山口君、伊藤君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ────◇─────     午後一時一分開議
  146. 中尾栄一

    中尾委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。塩川正十郎君。
  147. 塩川正十郎

    ○塩川委員 きょうは私は、この予算委員会で総括的な問題について質問をいたしたいと思うております。  実はこの予算委員会も、今までも余りにも形式論的なことが多かったように思いますし、政治家同士の話としての予算委員会というのも割合に少なかったように思うのです。でございますから、どうぞ政府関係の諸大臣も、想定問答というものにこだわらず、政治家としての話をひとつしていただきたい、こう思いますので、冒頭ひとつよろしくお願いいたしたいと存じます。  まず最初に聞きたいのは、参議院選挙が終わりまして初めての本格的な臨時国会ということでございまして、私は、宇野内閣のときに臨時国会もいたしましたけれども、あれは要するに当面する問題についての処理であって、これからの新しい情勢の変化と社会党の方で盛んに言っておられますが、そういう時代を迎えての予算委員会というのは初めてだろう、こう思うのです。  そこで、まず一番基本となるのは、しっかりしておかなければならない問題は、この前の参議院選挙の結果を踏んまえまして、確かに議会の中でも勢力のあり方は変わったと思います。しかしながら、ここで我々が確認しておきたいと思いますことは、参議院で与野党が逆転したからといって、政権が野党に移っておるということではないということなのであります。政権の担当は、やはり衆議院において指名された政党が担当するんであって、その点が世間一般で見ますと、何か参議院の結果、与野党伯仲、そして参議院が逆転した、これは政権に大きいひびが入っておる、そういうふうに見られておると思うのでございます。私は決してそうじゃない。やはり議会議会としての機能であって、政権というものの、要するに行政権の責任者としての政府というものはちっとも変わっておるものではない、衆議院においてこれを選任するものであるということ、これは総理、一体どう考えておられるか、この点だけひとつ明確にしておいていただきたいと思うのです。
  148. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 憲法に、国会に関する詳しいいろいろな規定がございます。今塩川委員おっしゃいましたように、議院内閣制というものの信任をいただいておる基盤というものを自覚いたしますと同時に、また率直に申し上げて、参議院選挙の結果というものが、きょうまでとさま変わりした状況になっておることも、これは事実でございます。謙虚にそのことは事実として受けとめな がら、しかし与えられたこの立場とこの責任というものを十二分に果たしていかなければならぬ、こう考えております。
  149. 塩川正十郎

    ○塩川委員 そういう点から見まして、最近の議会内におきます参議院の逆転というものが、まるで行政権そのものにも大きい影響を与えるような空気で伝わっておるということは、非常に私は残念だ。その点はひとつしっかりと踏んまえていただきたい。  しかも、今度の参議院選挙を顧みまして、その前の東京都の議会選挙もそうでございましたけれども、何か政策論争は全くむなしかった。そして、参議院選挙の最中には、消費税に賛成の人は自民党、反対の人は社会党に入れよう、こういうふうな空気だけで選挙が行われてしまった。しかも、消費税とかあるいは税制に関する問題が、本当に責任をとるべきは私は国会ではないかと思うのです。国会でさっぱり議論しない、そして何にも国民は知らされておらない。そこへ、消費税賛成は自民党、反対は社会党、こういうふうな空気をつくられてしまったんでは国民は甚だ迷惑であった。特に、私は、これにはマスコミも多少悪乗りしておると思うのです。マスコミも、あの当時の選挙の状況を見ましたら、冷静さ、要するに公正な報道ということは言えなかったんじゃないか、私はそう思っています。それが最近もうやはりいろんなマスコミの紙面あるいは画面を見ておりますと、だんだんと冷静な判断で消費税を考える、あるいは農村問題を考えるということになってきておると思います。  そういう空気の中で行われたことは、これは要するに国民が知らされてなかった。その責任は一に国会にある。すなわち、衆議院においてもあるいは参議院においても、確かに大きい政治不信を起こしたことは事実でございます。それに対して、それを追及するためにリクルート特別委員会というのをつくった。そして、税制改正の特別委員会をつくった。ところが、両方とも十分に機能を発揮しておらない。国民皆さんどうおっしゃるか。国会で一体何やっているのですか、一体毎日毎日のろのろ遊んで、そして協議だ何だと言いながらちっとも我々に内容がわからない、もう少しリクルートはリクルート、それから税制は税制と分けて審議してもらえないかという要望が何遍もありました。それができなかった。だから、政治改革を言うならば、まずこの国会の改革ですよ。本当はこの国会の改革をしなければ、国民はわからないと思うのですよ。そういう中で行われたことであります。  私はそこで海部総理に、国会の責任が私は重大だと今言った。それについて、今後このPR不足を政府が補っていかなければならぬし、また同時に、この国会において、この前のような国民に知らさなかった責任というものを感じて、これからの国会は我々として懸命に努力いたしますが、総理として、政府として、どのようにこの税制改正と経済構造の変化というものをわかりやすく知らしていくかということ、これをまず、見直す前にこれが根本だと私は思うので、ちょっと考えだけお聞きしたいと思います。
  150. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 塩川委員おっしゃるように、税制を今変えていかなければ二十一世紀の高齢化社会に我々が安心して歩を進めていくことができないという大きな変革の状況を政府は考えて、国民皆さんにも議会皆さんにも御理解をいただきたいと思っておるところでありますが、御指摘のような状況があり、十分な議論ができず、国民皆さんの中にもよくわかっておらぬとおっしゃる方がいらっしゃることも事実です。  私は、この間あるスーパーマーケットへ買い物に行って、近所にいらっしゃる方々とお話し合いもいたしました。消費税やめてよと言う方もありましたので、どうぞこちらへ来てください、もうちょっとそこのところをお話ししましょうとお招きしたのでしたが、その方はおいでにならずに、ほかの方々といろいろなお話をしました。そこで、おたくの御主人の月給はどうですか、減税が先行しておりまして安くなっているはずだと思いますがと言っても、そうかねという反応ですし、それからまた、税金のことばっかりおっしゃるが、我々のような税金を納めておらない者についてはどうかということを言われると、それは税制全体できめ細かい配慮もしておりますし、いろいろなもの等も上げて、お金の方で御迷惑をかけないような努力も配慮もいろいろしながらしておりますが、それよりも何よりも、ちょっと長い目盛りで将来を見ていただいて、国民全体が公平に、できるだけ幅広く、すべての人が参加して支えていく、みんなで社会公共の負担を補って分担していこうという思想もありますし、将来の高齢化社会はスピードが物すごく速いのですよというようなこと等もいろいろお話をしましたが、初めて聞いたという方も多かったわけであります。  そういったことで、十分に御納得いただけるような御説明ができていなかったということも、これは率直に反省をしなきゃならぬことだと私は思いますし、同時にまた、この間の選挙の結果を踏まえ、また最近の一連の世論調査その他を見ておりましても、見直しをしなさいという声も一番多いわけでありますから、謙虚に国民皆さんの声を聞きながら、どこをどうしたらいいかということについても、皆さんが何を考えていらっしゃるかということを十分聞かせていただいて、各省庁にも手分けをして聞いてもらっておる、党の方でも全国代表者会議を通じて物を言ってくださっておる、毎日の新聞にもいろいろな投書や御意見が出ておりますから、そういったもの等も十二分に知りながら、判断しながら、定着を図っていきたい。この努力は一生懸命いたしますので、どうぞまた国会においても、与野党の皆さん方でそれぞれのお考えの違う立場に立って御議論をしていただき、それを国民皆さんが見て、よしわかったと言っていただけるような御議論の交流を心から期待させていただいております。
  151. 塩川正十郎

    ○塩川委員 国民に対する諸政策を徹底的に理解をしてもらうように、PRだけではなくして実際に即した説明をしていくということ、これを絶えず心得ていただきたい。特に、こういう税制改正のときなんか、この一段の努力をひとつお願いいたしたい、こう思うております。  私は、重ねて申しますが、見直し論をやると同時に、並行して、もっと税制全般の考え方はこういうことになっております。そして今後の日本の将来における高齢化社会というものはこういうふうになっていきますという、その関係をあらゆる手段を講じて努力をしていただきたいと心から念願しておきます。  それともう一つ、私は、先ほどの社会党の代表の方の御質問の中で、非常に遺憾だなと思うたことがあります。  それは、一つはすりかえ論が多いんですね。例えば海部総理三木総理の孫だと。すりかえ論なんですね、これは。議会の子の子だ、こういうことはまあいいといたしましても、私はひとつこれはぜひ総理に聞いておきたいと思いますのは、社会党の元書記長をやっておられました浅沼稲次郎先生、これは私は尊敬もしております。しかし、この方が、選挙などで国民の嫌がることを捨てていいことだけを言ってはだめだと、こういうことを指導しておられる。本当に社会党がその精神を酌んでいくとするならば、今度の参議院選挙で一体どういうキャンペーンをしてやられたか。消費税は廃止いたします、廃止するが、その代替財源というものは簡単なメモで出てまいりまして、それがだんだんと日を追うて中身を詰めていかれました。しかしながら、結局我々の知りたいと思うておることは、二年後だと、こうおっしゃる。再改革案は二年後だとおっしゃる。これは私は、選挙で嫌なことは国民に隠してという、それと同じことを社会党はやっておられたんじゃないか。野党はやっておられたんじゃないか。そうならば、本当に廃止をするならば、それにかわるものはこれでありますということを明示すべきであるのにかかわらず、代替財源だけ出して、本当の再改革案というものは二年後でございますとおっしゃる。これは大きいすりかえですよ。私は、これは おかしいと思うのです。こういう理論を、そうでございますかと聞いておるわけにいかない。どうぞひとつ我々が検討すべきは、見直し論と再改革案とこの二つを並べてどちらをとるかということ、それが当然なんです。二年後しか出てこないというのは一体何だ、こういうことですよ。これに対する感想を一回聞かせていただきたい。
  152. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 先ほど来御議論になっておりますように、私は、税制改革そのものはきちっとしていかないと、いろいろな不公平とか高過ぎるとか問題が出ておりましたから、税制改革をきちっとやっていこうということで基本的には取り組むべきでありますから、選挙のときに、今回の税制改革の中の消費税だけを取り上げて、これに賛成ですか反対ですか、なくしますか置いておきますか、それだけの選択ではこれはよくないとおっしゃる塩川委員の御発言に、全く私は同感でございます。ですから、正直に言うと私も、消費税を廃止しろとおっしゃるなれば、我が方は、いや、廃止はできません、これは存続いたします、それが同じ土俵の同じ議論ではなかろうか。  そして、先ほども山口委員に申し上げましたけれども、選挙の最中に、それでは消費税は廃止した、そうすると、あと二年間とはいえ、電気ガス税がよみがえってくるとか、物品税がまたもとへ戻るとか、いろいろなこともあわせて御説明になったかというと、これは寡聞にして承っておりません。ですから、二年先に何か審議会をつくってそこでやるんだ、こうおっしゃいます。それまでの暫定的なことだとおっしゃいます。我が方も、一生懸命国民皆さんに定着をしてもらって税制改革の基本はお認めを願わなければならぬわけでありますから、それはきちっと見直して出していく。だから、本当は見直し論というものと対比するのは、塩川委員おっしゃったように、社会党の再改革案であって、これは両方とも恒久的な税制として議論すべき問題ですから、そういったことを見ながら国民皆さんが御判断をいただけるのではないかと、私は御意見を聞きながら、そのとおりだと思いました。
  153. 塩川正十郎

    ○塩川委員 大体総理も同じような考えで、私はなるほど当然と同意をする次第です。  そこで、私は、参議院通常選挙をやりましたね。あの当時から見て国民皆さんは、消費税とは一体どういうことなんだ、そしてこの税の仕組み全体はどういうふうになってきているのか、今本当に研究をされるようになってきたと思うのですよ。それはやはり四月一日実施いたしましたあの時点では、完全にPR不足だった。何にも知らされてなかった。だから国会の責任だということを私はやかましく言うのです。それはまあいいです。しかし、最近はそういう傾向になった。その一つのあらわれが、この前の茨城県の参議院選挙の結果ですよ。これは実にやはり冷静に物を見るという目がふえてきた、こう思うておるのです。総理は茨城の参議院補選のあの結果をどのように受けとめておられますか。
  154. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 あの選挙は、内閣が始まって初めての国政レベルの選挙でございまして、非常に全国から注目をしておるというお話等もありました。私も正直言って、あの選挙はどうしても勝たせていただきたいと思って、現地へ行って、消費税の問題を論争点とされた選挙でありますから、我が方の考え方も率直に訴えてまいりました。  あの結果をどう受けとめるか。大変国民皆さん方が冷静な立場で御判断を下されたと思って、茨城県の県民の皆さんに率直に敬意を表します。同時に、あの結果、消費税というものをもう一回冷静な立場で見直して、冷静な議論を進めてやろうという雰囲気が出てきたのではなかろうかと、私はそのように喜んで受けとめております。
  155. 塩川正十郎

    ○塩川委員 一応参議院選挙に関係するものはこれで終わるといたしまして、最近いろいろな方々が、世界の情勢は変わったと。野党の方の代表質問の中にもよくございました。世界は変わった、時代は変わった。確かに変わっていっているのは当然なんです。しかしながら、世界は大きく情勢が変わったというのは、自由主義あるいは民主主義国はそんなに、基本方針はちっとも変わっておらない。変わっておるのは、繁栄をしておるということが変わっておるということなんですね。そして、より高度な社会へ向かっておる、これは確かに変化をしております。一方、社会主義国、共産主義国、そして独裁制をとっておる国、ここが変わったんですよ。世界が変わったというのは、それは東側が変わったということをはっきり言わなきゃいかぬと私は思うのです。  その変わり方の激しいこと、これは御存じだろうと思うのですけれども、この前七日の日に、ハンガリーの社会主義労働者党、これは共産党ですわね、この共産党が新しい社会党を創立するために宣言をいたしました。それをちょっと、野党の方には中には耳ざわりの方があるかもわかりませんが、ちょっとこれを読んでみますと、こういうことを宣言しておるんです。  「ハンガリー社会主義労働者党の名が意味を持つ時代は、わが国の歴史で終わりを告げた。」こう言っておるのです。そして、「これまでの社会主義の概念、スターリン主義に起源を持つシステムはそのあらゆる社会的、経済的、政治的、精神的資産を使い果たし、世界の進歩について行けなくなった」、こう宣言しているんですね。共産主義の国でこういう宣言をあえてするということ、これこそ変わったんですよ。ここが変わったんですよ、世の中ね。そして同時に、「社会主義労働者党の国家政党としての歴史も終わった。」こう言っておるんです。  こうして、まあ東欧諸国が激しく変わっていきます。その根底には何があるのかということであります。それはやはり社会主義あるいは共産主義、要するにマルクス、レーニンの思想を中心として、それで政党が組まれておるものが支配しておる国あるいは独裁権を固持しておる国、これでは人権の抑圧、そして個人の尊重、そういうものもない、そういうことになってまいりまして、どんどんと社会主義、共産主義国を捨てて新しいものを求めようという空気が起こってきておる。その一つが東独からの西独への脱出、あれは一体どういうことなんでしょうか。あるいはそのほかポーランド、あるいはソビエト国内におきましても、バルト三国なりあるいはウクライナ地域においてそういう民族自決の運動を求めようとしてきておる。  こういうことを見ました場合、もう既に社会主義と自由主義、民主主義というものとの勝負というものははっきりついた。それでは、マルクス・レーニン主義では、それに論拠を置く社会主義、共産主義では国家は成り立たないということがはっきり証明がついたと思うのですが、これをどう考えておられますか、総理。そしてまた、その東欧諸国の状況を見て、それに対して我が国との関係を外務大臣にちょっとお答えいただきたいと思います。
  156. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 国際情勢が御指摘のように大きな変化を今まさに遂げつつあるということは、私もそのとおりだと思います。そうして、私たちが属する自由民主主義陣営、そして、それを西側とよく言いますけれども、社会主義国の東側陣営、この東側陣営の中に今おっしゃるような数々の基本的な変化が起こりつつあるということも事実です。ですから、それがペレストロイカとなって呼ばれたり、あるいは改革・開放路線として言われたり、あるいは東欧の民主化の問題になってあらわれたり、いろいろしております。  表現は違うけれども、一言で言えば、やはりそれらの国々の政治の仕組みの中で、自由が欲しい、民主化しなければならない、この一点に尽きるわけであって、私も最近のIDUという世界の会議のときに、各国の人々がいろいろな立場からいろいろなことを意見表明されましたけれども、この東側陣営の中における基本的な変化ということと、同時に、自由と民主主義を遵奉してきた我々西側陣営の中でも、これでいいんだと甘んじないで、さらにより一層真の自由、真の民主主義というものを確立するために、お互いの間にある経済摩擦の問題だとか、あるいはお互いの間にあるインフレ懸念というものをきちっと抑えながら、同 時にまた手を合わせて、今度は地球の環境の問題であるとか、累積債務国に対する援助の手を差し伸べる問題であるとか、今お触れになった、せっかく自由化の波に乗ってきた東欧諸国に対しては、でき得る限りの手を差し伸べていこう、みんなが自由と、みんなが民主主義というものを大事にしながら話し合っていけるような方に、西側陣営は手を差し伸べるべきだというようなことについても意見の一致を見ておるわけでございます。  私は、この変化、この流れというものは歓迎すべき方向であって、これがきちっと定着して安定していきますように心から期待をいたしております。
  157. 中山太郎

    ○中山国務大臣 塩川委員お答えを申し上げますが、東欧における情勢につきましては、ソビエトにおけるペレストロイカの影響、また中央統制的に行われてまいりました社会主義経済体制の破綻によりまして、それぞれ、ポーランドにおいては連帯主導の内閣ができる、あるいはハンガリーにおいては新しい連立の、複数政党による議会制の民主主義を打ち立てようという動きが起こっておることは大きな歴史的な変革であると考えております。  ポーランドにおきましては、さきの国連総会におきまして、EC加盟国またサミット加盟国の外相等の協議に、中身は近くやってくるポーランドの冬、その冬においてポーランドの人たちが食糧危機に陥る、この食糧危機をどうして救うかということが西側諸国の協議の焦点でございまして、我が日本におきましても、ポーランドに対しても、サミット加盟国としてはアルシュ・サミットの合意に基づきましてこの支援をするべき状態になってまいったというふうに考えております。
  158. 塩川正十郎

    ○塩川委員 そういう東欧圏に対する援助等につきましては、後でODAの問題を聞きますときにあわせてひとつお願いしたいと思いますが、もう一つ私はやはり基本的にはっきりしておかなきゃならぬと思う問題は、最近日本でいろいろな選挙がございますが、もう当面の経済的に得か損かということが議論の対象ばかりになっておって、国存立の基本的な問題というものが選挙争点にならない。それは私は、それだけ日本が安定し、着実な基盤を築いてきた、これは自由民主党が中心となって今日まで四十数年かかってやってきたわけなんですが、それはそれとしても、最近これがいろいろな面において、どれが、どの政党がどういう哲学を持っておるのかということがわからぬようになってきたと思うのですよ。それで、やはり政治には哲学がきちっとしてなければならない。そうでなければ、あらゆる基本方針あるいは政策を言っても、さっき申しましたように、選挙に際しては国民の嫌がるようなことは言わないようにしてという、そういう選挙になっちゃってはいかぬ。  そういう意味で私は確認をしておきたいと思うのですが、それが実は連合政権と重大にかかわってくると思うのです。国民一般から見ましたら、連合政権は何か時の流れ——それは確かに時の流れもありましょう。ありましょうが、そのできてくる連合政権というものがしっかりとした考え方を持っておるもの、右でも左でも何でもいいですが、はっきりしたものを持っておる場合は国民はそれなりの選択をするであろうと思うのですが、そこが今ぼやかされてしまっておる。そうであるとするならば、我々政治家の手で、そのいろいろな政権の性質、それをつくっていくところの基盤となる政党の本質というものをやはり深く広く国民に知っておいていただかなければならぬ、そう思います。  そういう意味において、私は連合政権ができたら大変な事態になるという懸念も込めて、ひとつ私から話をしておきたいと思うのです。  最近社会党さんが、まあどの政党もそうでしょうが、非常に議論がいろいろと変わってまいりました。基本方針がそのたびごとに変わっていくのです。大体私たちは、石橋委員長委員長をやっておられましたときに、新宣言というのを非常に苦労しておつくりになって、国民政党へと脱皮しようというので新宣言を発せられました。その後いろいろと社会党の方でも構想が変わってまいりまして、つい最近におきましては、山口書記長が全国の選対委員長書記長会議において、例えば外交、安保問題に関して、当面安保条約を承認する、こういう意味のことを言っておられました。「当面」ということがついておる。「当面」ということは、これはしょせんは、本質的には廃止なんだ、本質は廃止なんだけれども、連合政権の都合によって当面はこれを存置しよう、こういう考えだ、私はそう見ます。世間もそう見ております。そうすると、安保条約というものは、日本が存立し、あるいはまた安全保障を確保していくための基本的な、本当に基本政策であろう、これが大きいひびが入ってくるということは当然ではないかと私は思うのです。  これに対して他の野党の諸君の方々はいろんな異議を言っておられます。だから、その点においてまだ議論は固まっておらないのであろうと思うのでありますが、この安保条約を破棄して、その後の日本というものはどのように考えられるのか。もしこの安保条約が破棄された場合は、本当に日本はどういう国になっていくのであろうか、この考え方をちょっと、想像で結構でございますから、想像できないことですが、ちょっと考えていただきたいと思います。
  159. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 日本の現在の立場からいきますと、明るい社会、豊かな暮らし、そういったものがつくり上げられた基盤には、自由と民主主義と市場経済の中で、日本が戦後、幸運にも自由と民主主義の中で政策努力を続けてきたことによってここに到達することができたんだというのは、私はそう思っておりますし、その陰には、日米安保条約によって日本の平和は守られてきた、日米の基本的な信頼関係の上に立って、安全保障のみならず、輸出輸入の経済関係でも日米間には極めて太いきずながありましたし、また、戦後の国民生活の中にもやはりアメリカの生活文化というものは相互の交流の中で随分入ってきておりました。  この状況の中で、日米安保条約を考えない将来というものはちょっと私には想定できませんし、今後ともこれは引き続き堅持していくということが、今の日本の政策としては極めて重要な、根底にあるものだと思うのです。  日米関係のこの経済問題を切り離して考えただけでも、日本の国内の情勢がどうなるのかということ、あるいは安全保障条約をなくした後の日本の安全はどうなるのだろうか、近隣諸国とのいろいろな関係をどうするのだろうか、日本の国の防衛はどうするのだろうか。根底が崩れてくるわけでありますから、それは今ここで軽々に、こうなります、ああなりますという予測をすることすら困難な、そして嫌なテーマでありますから、そうならないようにしていかなければならぬのが私どもの使命である、こう受けとめさせていただきます。
  160. 塩川正十郎

    ○塩川委員 それは当然想像もつかないと思います。我が国の基本の、存立の根本の問題でありますから、それは軽々にできないと思う。  ところで、最近日本でも、有識者と申しましょうか、インテリの人なんかがよく、世界の脅威はすべてなくなった、そして、米ソ新しいデタントのもとにおいてそういう脅威を対象にした政策をやることは間違いだ、だから日米安保あるいは日ソ友好というようなものをいろいろな面で議論しておられる方があります。  私は、現在一時的にしろ、確かに米ソはデタントし、核軍縮、それは世界の方向であると思います。しかし、それのよって来るところの原因は、専らそれぞれ国内の事情によって来た。特にソビエトについて申しますならば、もうアフガニスタンの駐留を解除せざるを得ないような状態、この一番根本は兵隊さんがだんだん少のうなってきたということなんです。兵役適齢期の青年というものはだんだん限られてきて、少なくなってきた。それに、経済力が非常に大きい犠牲を払わなきゃならぬ、こういうところからやむを得ずやってき た。それがデタントヘデタントへと歩みを近寄ってきた。これは世界としては私は喜ぶべきことだと思います。が、しかし、本質的にその国の思想とかあるいは国是として本当にそういうふうに根本から変わっていくのかといえば、それはそうではない節も多々あります。  そうとするならば、我が国の防衛、安全保障という問題については絶えず気を用いてなければならぬ。ところが、これがもし連合政権というものができたといたします、社会党を中心とした連合政権。その中に、こういうことがあります。社会党が前に新宣言の中にも言っておりますように、非武装中立、非同盟ということを言っておるのです。この非同盟というのが、いわば西側陣営のそれぞれの国にとりましたら、非同盟であるからして日米安保条約を廃止の対象にする、そう外国はとっても私は仕方がないのではないかと思う。そこが実は一番懸念しておる、国民が一番心配しておる、そこなんです。非武装中立、これはまあ話としてわかります。非同盟と書いてあります。こういうことを見まして、私はこの際に、やはり日米安保の意義ということを我々自由民主党としてはこれを十分に国民に説得し、納得し、それを継続する意思を固めていくということ、これが大事なことだと思うのです。  そういうことを踏まえまして、自衛隊の問題にもそれが波及してきております。自衛隊の中で、土井委員長のおっしゃっているのは、既成事実を現実としてそのまま追認する結果がどんなことになるのだろうか。土井構想の総論を見てますと、大体、ではなかろうか、どうなるんだろうか、だろうか、だろうかが多いのです。こうするということが余り出てないのです。これは勝手に解釈しろということかもそれは知りません。が、しかし、そういうふうなことが出ておる。  そこで、これを振り返ってみますと、一九八六年定期大会で採用された新宣言の中で、石橋さんが非常に苦労されまして、違憲ではあるけれども自衛隊は法的に存在する、こういうことも言っておられる。そうでしたね。そういうことを言っておられます。要するに、違憲合法論ということがそのときの言葉の流行になったことがあります。  そこで法制局長官、えらいあんた所管が違うかもわからぬけれども、違憲合法というようなものが法律的に存在するんだろうかどうか、これはどういうことになっておるんだろうか、どう解釈したらいいか、これ一度法律的にちょっと説明してもらいたいと思います。
  161. 工藤敦夫

    工藤政府委員 ただいま委員指摘の違憲であるけれども合法である、こういう言葉、実はどのような意味合いで使われておりますか、私つまびらかにはしておりません。  ただ、法律論として一般論を申し上げれば、憲法は我が国の最高法規でございますし、憲法に違反することは当然に違法と考えられるところだろうと思います。違憲であるけれども合法であるという考え方は、法律論としてはとり得ないのではなかろうか、かように思っております。
  162. 塩川正十郎

    ○塩川委員 そうすると、違憲合法ということは法律的用語では全く通用できない、解釈できない、法律論では解釈できない、こういうことですね。ただその場当たりで言っているということなんですね、結局は。そう解釈せざるを得ない、こういうことじゃな。  それから、もう一つ私確かめておきたいことがあるのです。これはよく、先ほども出てましたが、非核三原則、これは国是なんですよね。国是なんです。だからして、これは我々も厳守していかなきゃいかぬし、また政府自体も厳守してもらわにゃ困ると思うのです。  ところで、この非核三原則とかあるいは行政協定にまつわるところのいろんな協定、こういうものは実際はお互いが信頼して守るべきものだろうと思うのです。その信頼関係ができないということであるならば、それはもうその条約自体が無効になったと同じなんですね。私はそう思う。であるから、お互いがそれを遵守して、日本では非核三原則という国是があるからということをアメリカは十分承知し、また知っておりますから、それを尊重して今日まで来ておった。日本だってそのことをアメリカに大きく期待しながら来てきた。ところが、これがもしこういうことを確認するとか検証する、非核三原則で核兵器のないことを確証するとか、あるいはこれを検証する、検証というのは検察官の検に証明ですね、というようなことがもしあるとするならば、これは重大な両国間における不信感につながるものだと思うのです。これは、お互いが信用しているからこれを今まで継続し、そしてお互いに繁栄への努力をしてきた。ところが、ある日突然、おい、ちょっとおまえドス持っているのと違うか、ちょっと身体検査きせてもらうで、それが、身体検査しない限りはおつき合いできない、こんなことを言い出したら、友情関係、信頼関係というのはつぶれるのは当たり前ですよ。そういうことが、僕は平気で言うということは、これは非常に無理なことだと思う。お互いが信頼をすべきものだと思う。そういう点から見て、政府の方においても非核三原則というものはアメリカに十分尊重してもらうことは、これは当然言わなきゃならぬ。しかし、検証とかそういうものは事実できないものだと私は思うております。しかしながら、野党連合政権の中には、その文言をめぐって議論があるということ、これもやはり国民皆さんがよく知っておいてもらいたい、こういうことでございます。  大体そういう基本問題について私はお話ししました。しかし、私はこういう——今笑っておられる人なんか、やはり自分の一番痛いところを言われて、くすぐられて、気色悪いのだよ、これは。まあ、それはよろしいわ。  それから、今度の参議院選挙でやはり争点となった消費税それから農村問題なんかですね、それから政治不信問題ですね、そういうようなのが参議院の焦点になりましたよね。そうすると、これからやはり政府の政策を遂行していかれる上においてある程度この三つの問題がやはり基本であろうということは間違いないと思うのです。そこで、消費税の方は後にいたしまして、先に農村の問題から私はちょっと話してみたいと思うのです。  これは私はこんなメモだけのことですから、別にこう言おうああ言おうということは決めてきておりません。しかし、私も全国を遊説して回ったりして農民の方といろいろと話し合いをいたします。特に私は都市出身でございまして、農村問題について深い造詣もございません。しかし、政治家として肌に感じること、その肌に感じることを率直に申し上げたい。それは何か。政府なり自由民主党の農村対策というものはもっと真剣に、根本的に考え方を変えてもらわなけりゃならぬのではないか、私はそう思うのです。今農村問題で一番大事な問題は一体何だろう。米の自由化だとか、あるいは農村の後継ぎの問題だとか、あるいは負担金の問題だとか減反だとか、いろいろ言われます。一体何が一番問題だろうと思うか。これはそうだな、鹿野農林水産大臣に。一番大事なことを一つでいいです。
  163. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 やはり農業をやっていただく上において将来に対して不安をなくす、このことが一番大事なことだと思います。
  164. 塩川正十郎

    ○塩川委員 いやいや、さすがはやはり農村出身の鹿野大臣。いや、まさにそうなんです。将来が不安だということなんです。この一点なんです。それはいろいろな政策があるでしょう。例えば食糧の自給率だとか、あるいは米の減反率だとか、いろいろあるでしょう。そういうようなものは要するに瑣末なこととは言いません、やはり大事なことです、大事なことですが、農村の社会へ溶け込んでみて、いろいろと話をし、接触いたしますと、異口同音にその心の底に持っておるのは、おれたちおじんばはどうなるんだろうということなんです。この一点だと思うのです。この展望をつくってやらなきゃならぬ。この展望をつくらないかぬのです。私は、だから、農業政策というものは、農村政策は農業だけが対象じゃないのです。そこで農業をしておるそういう人間がやはり対象 だ。それを、農業対策、それから福祉対策、それから地域対策、そういうふうな個々に分けてやられておるところに、私は農村としては何となく、一生懸命やってくれているんだけれども、食い足らぬところがあると思うのです。  まず農村の実態で、ちょっと、私は最近ですけれども、こんなことを見たんです。私は、これは本当にじいっと見ておったのですが、私もちょっと遊説に行った先でもらったんですけれども、栃木新聞ですね、これは。栃木新聞なんですが、「南の国から花嫁さんを迎えよう!」フィリピン女性の特徴はこういうところで、いいところがある、こういって説明してある。言葉の壁はすぐに取り除けます。こういう新聞広告を出しているんです。こういう広告を出しているのです。  私は、これはイカサマなものかなと思いまして実はこっそりと調べさせた。しっかりした団体なんです、あっせんしているのは。それは、そういう人たちはボランティアでやっているのです。見るに見かねて、おじいさん、おばあさんの世話をだれかやってくれる者ないだろうかというのでこういうのをやっておる。引き合いはありますか。フィリピンの国からの引き合いは少ない、けれども、地元の栃木県からの引き合いは随分多いですよ、こういうことなんです。  これを見まして、私は本当に、わあ、気の毒な状態になっているんだなと。うわさでは聞いておりました。農村に嫁が行かないといううわさは聞いておりました。けれども、まあまあそれはお互い条件が合わぬのだろうぐらいに思うておった。私は農村を知らなかった。ところが、これが現実であった。  ところが、私ら四十年前を思い出しましたら、農村には随分と世話かけました。食う米もなかった。野菜もなかった。そのときに、つくれ、つくれといってどんどんとつくらして、そして強制徴収だといって米を徴収さして、それを配って、都会へ配ってやったのです。そうしてだんだんと国がよくなってきたら、今度は米食わなくなってきて、そして米がまるで邪魔者扱いみたいにされる。そして減反だ、減反だ、こうなってくる。これは私ら終戦後、命をつないできた農村のことを思い、そうして今、こうして後継者がないんだ、これはえらいことだと私は思う。そうならば、私は農業対策というもの、農村対策というもの、これはやはり考えなきゃならぬのだろうと思うのですが、そういう意味における農村の、農業の長期経営、鹿野大臣、ぜひひとつお願いいたしたい。  ただ、私は、自給率、これも大事ですよ。それから作柄の規制、それから融資、そういうことも大事です。大事ですが、そこで、農村で、やはり住んで生きがいがあるというか、住んでいいという、そういうふうなこと、それをテーマにした農業対策、これは僕は、輸入の自由化だ何だかんだという問題より前に、これがないから、だから自由化してますますおれたちの首を絞めるのか、こういうところへ行っちゃうんだと思うのです。どうでしょうか。
  165. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 御指摘のとおりだと思います。  そこで、私どもも、やはり農業でありますから、農業は農業としての産業政策、これは一本の柱であります。これはどうしても引き続いて進めていかなければなりません。同時に、今塩川先生申されたとおり地域政策です。農村に魅力を持つ、このことが大事だと思います。農業と農村、この二本柱でこれから魅力のある農業、農村づくりをしていく、このことが大事なことだ、このような認識を持っておるところであります。
  166. 塩川正十郎

    ○塩川委員 その中で、私は、やはり参議院選挙中でありましたけれども、農村へ行きまして非常に多く聞いたのが土地改良事業に対する負担金の問題ですね。こういうのはもう随分と聞きました。私は今にして思うと、はあ、そんなことになるのかなと思うて実は自分でもびっくりして反省をし、これを考えなきゃいかぬと思うておる。  私は、あるところで資料としていただきました。それを見ますと、農業所得に占める土地改良費、水利費ですね、これの推計が出ておりますが、これをもって訴えているんです、こんな状態になっているんですよということを私らに。私は、ちょうど官房長官をやっておりまして、そういう陳情を受けたんです。それはどういうことだ。昭和五十年、その当時農業所得が、農業だけの所得ですね、他の所得を入れないということですね、それで平均いたしまして百十四万六千円なんですね。それに対して、土地改良とか何か水利費の負担がその当時は一・八%であった。これは我々も、土地がよくなるから、そして生産が向上するからといって、この負担を喜んでというよりも、積極的にこの負担をしていった。ところが、昭和六十年になって、その時点で見ますと、農家の収入が減っておるんです。これで百六万五千円、まあ十年前よりも十万円減っているんですね、所得は。そうなのに、土地改良、水利費というものがそれの三倍近くなってきております。その結果として、農業所得に対するこの土地改良、水利費の負担というものが約五%になってきております。さらに進んで昭和六十二年、これの農業所得がまた十二、三万減っておるんです。そうして土地改良の費用は十万円ほどふえました。その結果として、農業所得に対する水利費なんかの負担が六・二%になってきておる。これは農林省の資料とも符合いたしまして、間違いございません。  こういたしますと、農家というもの、土地改良をやってもらってそれはありがたいことだ、結構なことだ、そして政府の方では、おまえたちの土地をよくしてやる、財産価値を高めてやるんだから辛抱して払え、こう言われても、もう払う限界が来ています、こう言うのです。土地改良並びに水利費のこの負担というのは非常に重い負担ですね。減反をさす、減反したところも同じように負担はかけなきゃいかぬのです。  こういうふうに見ますと、土地改良あるいは水利事業費、こういうものに対する政府の考え方、何かやはり特段の考え方をしなきゃならぬだろうと思うのです。これは自治省も相当負担金の応援をしております。ですから、農林並びに自治省、両方がこれに関係しておると思うので、両方から考え方を聞きたいと思います。
  167. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 私も今全国回っておりまして、農家の人たちからいろいろお話も伺っております。今塩川先生申された、いわゆる土地改良事業の負担の軽減、非常に強い要請、要望があるということも承知をいたしておるところであります。  そこで、今言われました減反のことについて、何とかその分ならないかという考え方でございますけれども、減反、いわゆる転作についても、かんがい排水の状況がよくなりました、機械も入るようになりました、農道の改良によっていろいろ作業も効率化が図られるようになりました、単収も上がるようになりました、こういう全体としての効果が発生しておるわけでありますから、その分だけ特別に何とか考えろ、なかなか難しい、こんなふうに思うわけでございますけれども、しかし、今申されたとおり、非常に農家の人たちにとり重い負担、こういうふうなことになっておるわけでございますので、今全国で土地改良事業が行われておるのは五千五百カ所ございます、その五千五百カ所がどんな実態になっておるのか、まずそういうところを把握しなければなかなか手を打つということもできない。このようなことから、我が省にプロジェクトチームをつくりまして、今調査検討をいたしておるところであります。明確になり次第、対策の確立をさらに図ってまいりたい、こんな考え方でおるところであります。
  168. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 ただいま塩川委員の農村対策、これは農業政策とともに地域政策が強く要求されておるというお話、大変傾聴すべきものであると聞き入っておりましたが、そのために今私どもは、北は北海道から南は九州、沖縄まで四十七都道府県、三千三百の地域社会に生まれた若者たちが、それぞれの自分の町に、自分の村に誇りを持って定住し、将来に希望の持てるような地域政策をやらなければならないと考えておるのでありますけれども、今御指摘の基盤整備の問題も、最近では大きなダムとか広域農道とか公益性の非常に大き い事業が次々と計画されており、地方自治体がこれを負担することも多くなっておりますので、それらの財政を何とか困らないようにするために、農林省と連絡して、十分御期待にこたえるような努力をしてまいりたいと思っております。
  169. 塩川正十郎

    ○塩川委員 私は、農村問題が、実は国土計画等非常に重大な問題がある、これは皆さんも同感であろうと思うのです。そこで、東京一極集中主義排除という政策が政府で一貫してとられております。今こそやはりこの政策と非常に密接につながっておるこの農村対策というものを、そういう点からもひとつ考えていただきたい。ついては、農村における産業誘致、そして同時に、それが都市へ行きました場合にはまた農業労働に返り、そして若い者と年いった者が同居して老後の心配のないような農家をつくる、こういう構想をぜひひとつお願いいたしたい。  今、よくサラリーマンが絶望的になっておる一つに、資産の格差というのがあるのです。今度の参議院選挙で、私はこれが相当影響を及ぼしておると思います。若くして就職を都会でした人たち、それで、その仕事の都合上やはり一生この職業に携わっていこうとする人、こういう人たちが都市で、都会で、例えば大阪、東京、名古屋、福岡、仙台、こういうところで一戸構えようといたしましても、マイホームはもう夢のまた夢みたいになってしまった。これはまさに土地政策の悪い欠陥がここに出てきた。地価がこれだけ高くてどうにもなりません、とてもじゃないが家はあきらめた、そうなった場合に、そういう有為な青年が家庭の中堅としてきたときに中産階級意識を失ってしまう。今、日本の国が安定しておりますのは、すべての人がみんな、おれは中産階級に属しておると思うておるからこそ、やはり国に対するロイヤリティーあるいはまた社会に対する奉仕、そして自分が生きがいをそこに、そしてそのことがさらに仕事にドライブがかかる、こういうふうな状態なんです。その中産意識を若い人たちが失ってきた場合にどうなるか、私はこれは本当に心配しておるのです。ところが田舎へ行きますと、やはり県庁なりあるいは市役所あるいはまた普通の企業に勤めて三十年たって退職金をもらったら、今では田舎では家も買えるのです。また、しかも、ちょっとした野菜づくり、菜園づくりぐらいのことだったら、少し無理をすれば家が買える。それだけ都市周辺と都会との条件が変わってしまったのです。  そうすると、このこと、つまり一極集中排除というのは、ただ単に人口の分散、国土の均衡ある発展、そういう問題だけではなくして、日本の将来の青年に希望を与え、基盤を支えていく、そういう基本問題につながってくる問題だろうと思うのです。やはり青年に夢を与える、そして安定した生活を保障する、そのためにはやはり重要企業あるいは官庁、学校というものの集中を排除して、そういう状態を、均衡状態をつくってもらいたい、こう思うのです。  これについて、国土庁長官が中心となっておられますが、新しいそういう観点を入れて、日本の社会を安定さすために必要なんだ、こういう観点からも見て、一度考え方をお聞きしたいと思います。
  170. 石井一

    ○石井国務大臣 塩川委員の御指摘はまことに当を得たものだと思っております。  我が国の資産の格差というものがますますふえまして、持てる者と持てない者との、土地を持っておる者と持っておらない者との差というものはさらに広がっておる。そして土地神話というふうなものがございまして、土地があればそれで融資も受けられる、資産の買いかえもできる、何とか持ち家も維持できる。しかしながら、まじめに額に汗して働いておられる方がいかに努力しても、今御指摘のとおり、例えば東京の通勤圏内で、一時間あるいは一時間半で土地つきの家を取得しようと思えば、五千万やそこらでは手が届かない。例えば一年の所得の五倍ぐらいが基準だというふうなことも言われておる場合に、もう既にマイホームの夢というものは過ぎ去ってしまった、こういうような厳しい情勢であるということを認識いたしております。  かといって、絶対的に厳しい客観情勢もございます。国土庁の試算によりますと、日本全土を今すぐ現在の評価で買い上げるのに千六百兆円、こういうような数字が出ております。我が国のGNP、一年、三百五十兆円くらいだと考えますと、四、五年かかって全国の土地が買えるということでありますが、重要なのは、アメリカの全土を買いますのに五百兆円、こういうふうに言われておりますと、我が国の小さいこの列島を買いますのにアメリカの三倍以上の金がかかる、これくらい我が国の領土というのは貴重なものでございます。アメリカの領土の大きさと日本とを比べますと二十五倍ということでありますから、そういうところから即断いたしますと、日本で一坪買うのにアメリカの百坪が買える、こういうことでありますから、我が国の土地問題の解決はアメリカの土地問題の解決の百倍難しい、こういうことにもなるのではないかと思います。  そういう意味で、今海部内閣といたしましては、土地問題の関係閣僚会議等を招集いたしまして、あらゆる問題を整理し、実行に移して、少しでも前進した解決を得たい、こう思っておりますので、ひとつ御指導、御鞭撻を賜りたいと存じます。
  171. 塩川正十郎

    ○塩川委員 農村問題の最後の問題ですが、竹下元総理が提案されたふるさと創生、これと農業の新しい農村づくりというものと私は非常に関係が深いと思うのです。  そこで、自治大臣に、一つの問題として、ふるさと創生の中で農村みずからが新しい農村として脱皮し発展していこうというような、そういう気概を込めたプランが何か出てきておるかどうか、まだふるさと創生事業、各自治体で今考えておる最中ですから、一応九月いっぱいですか、八月いっぱいですか、締め切りされたけれども、まだ実際は、早急に案としては出てこないと思うのですが、そういうふうな指導づくりをやっていただきたいということをひとつお伺いいたしたいと思います。
  172. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 今お話のありました農村の未来に若者たちが希望を持てるようなふるさとづくり、竹下内閣の時代に、これは人口によらず三千三百の全国の市町村、交付団体に一億円ずつ差し上げている。自分たちの町を、歴史を振り返り、また現在の条件を確かめ、将来の展望を考えるということで、今全国の町村の皆さん方が、若者たちも御婦人もお年寄りも集まって、一生懸命勉強をしていただいております。既に六割近く、ソフト面の事業あるいはハード面の事業、それぞれが将来に希望を持って今町づくり、村づくりの計画を立てておりまして、私もこの前、北陸三県のふるさとシンポジウム運動に行ってまいりまして、これは河野村という、かつては北前船で大変ににぎやかだったのですけれども、今非常に漁業が寂れて寂しくなっている、この村の人たちが、北前船の昔のにぎわいを取り戻そうということで真剣になってリゾートの問題やら漁業の振興の問題に取り組んでいる姿に、大変感激をしてまいりました。  また、これは私の県のことで恐縮でありますけれども、福島県の阿武隈山系ではカブトムシの村をつくろう。大阪や東京の子供たちは近ごろ、何かカブトムシが死んでしまうと電池を買ってこよう、こう言って探しに行くというぐらい自然に恵まれない大都会の子供たちに、自然に恵まれる環境をつくろうということで、大変一生懸命やっておられる。  この前、茨城県の水海道市に行ってまいりましたら、中学生が選ばれて、国際人に地方の人もなってもらおうということでオーストラリアに行ってきた子供たちの話を聞きましたが、その子供たちがこのふるさとソフト運動でオーストラリアに行ってきて、心の大事なことを知りました、また、ありがとう、ごめんなさいと言うことがどんなに大事かを知りましたというような話を聞いて、私は涙ぐんで聞いてまいりましたが、今や全国にみずからの町を、みずからの村を、必ず東京に行か なくても、塩川委員に申しわけありませんが、大阪に出ていかなくても、生まれた自分の農村で、漁村で、離島で、すばらしい未来をつくろうという大変熱心な努力をしておりますので、あの一億円はいわばふるさと創生事業の種をまいた。だから、これから私たちはこの種に芽が出るように水をかけ、肥やしをまき、花を咲かせ、実らせ、竹下内閣から、さらに海部内閣から、また将来まで続いていく自由民主党の内閣ですばらしいふるさとをつくっていきたいと思って、今頑張っておるところでございます。
  173. 塩川正十郎

    ○塩川委員 先ほど来話しておりますように、総理、ここだけはひとつぜひお心得いただきたい。  農村問題、農業の自由化だとかいろいろ言っていますが、自由化なんてなかなかそう簡単に進められるものではありません、長い伝統の上に現在の農村があり農業があるのですから。だけれども、やはり時代の進展に合わせなければならぬ。これは今ミニマムアクセスなんというようなことがささやかれてきておる。これはなかなか扱いは難しいと思いますけれども、とにかくそういう時代になってきた。そこで、もう一回農村問題というものは、都市と農村をどのようにしていくのかという考え、そして同時に農村で住んでおる人、人間というものにどのような生きがいを与えていくのかというこの問題、こういう観点から農業対策というものを考えていただきたいと思いまして、希望だけ申し上げておきます。  そこで、もう一つの問題は、大事な消費税が焦点でございました。消費税の問題に入る前に、橋本大蔵大臣、ちょっと突然でございますけれども、きょう、何か聞きましたら日銀が公定歩合を引き上げた、決定したということ。これは日銀がお決めになることであってなんでしょうが、しかし、これにはやはり大蔵大臣が重大な関係のあることでございますので、大蔵大臣にお伺いいたしたいと思うのです。  今まで日本では比較的物価が安定をして、長い間安定していますよ。景気も非常によろしい。イザナギ景気を上回ろうというような、いわゆる内需を中心とした経済の持続的成長がずっと続いてきておる。そういうことであると私たちは思うておる。がしかし、やはりそこに公定歩合を引き上げなければならぬという事情等があるのだろう。特に橋本大蔵大臣は、この前もG7に出られて、余りドルが強くなっては世界経済全体の問題として好ましいことではないというので、為替の安定を図ろうというようなこともお互いに相談して帰ってこられた直後です。そこでぽんときょう日銀が公定歩合を引き上げるということ、私は、このことはやはり深い考えがあって日銀がお決めになった。また、こんなにこっそりと、ぱっときょう決めたというのは珍しいですね。今までこんなことはなかったですよ。大抵、そろそろ何か公定歩合でも上がるのかとか、何かちょっとにおいがあって、それでやはりそれらしい空気ができてぽっとやられるのですね。去年ですか、上げられたときもそういうにおいが出てきた。今度は全くそういうにおいもかすみもない、うまいことやられた。実に上手だった。私は、このことはやり方がうまい。日銀、公定歩合なんて、これと解散は大体こんな調子でやるべきものなんですよ。だから私はそれがいいと思うのですが、しかしそこには大蔵大臣、何かやはり背景があったんだろうと思うので、まず大臣に背景をちょっと説明していただけたら結構だと思うのです。
  174. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 本日十一時から日銀において開かれました政策委員会が決定をいたしまして公定歩合○・五%引き上げを決断をされたわけでありますが、その報告を受けました私としては、非常に市場の実勢を受けた適切なタイミングを選ばれた、そういう感じを持っております。  結局、今回の引き上げと申しますものは、最近の為替相場、海外金利の動き、また国内景気、物価、マネーサプライの動向などを考えられた上で、これらを反映して市場金利が上昇しております中で金融政策を適切にまた機動的に運営をされた、その運営を確保されたもの、そういうふうに私は判断をいたしております。  先ほどお触れになりましたように、先般G7等で各国の大蔵大臣が集まりました場での論議におきましても、為替市場の問題や各種の政策協調につきまして幅広く議論が行われてまいりました。今回の措置は、まさに内需を中心としたインフレなき持続的経済成長を日本に続けてほしいという各国の心にも沿う行動でありますし、国際的な政策協調の趣旨に十分に沿うもの、そのように理解をいたしております。
  175. 塩川正十郎

    ○塩川委員 橋本大臣、続いてちょっともう一つ。  今度の公定歩合の引き上げで物価と内需拡大に影響があると思うのですね。物価の方は経済企画庁長官に後でお聞きいたしたいと思いますが、内需の方はどうでしょうか。公定歩合を引き上げるということになれば、やはり景気引き締め政策でございますから、内需拡大をずっと順調に続けてきた、ことしも四%台の実質成長を目指そうとしておる中で、これが果たして影響を受けないだろうかどうか、こういうことの見通し、雑駁なもので結構ですが・・::
  176. 中尾栄一

    中尾委員長 まず内需について、大蔵大臣橋本龍太郎君。
  177. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今申し上げましたように、国際的な枠組みの中で行われたものでもありますし、また市場の実勢を反映いたしまして、むしろ今後とも物価の安定を確保しながら内需中心の持続的な成長を息長く保ち続けるということに我々は資すると考えておりまして、十分物価等に、いわゆる内需の問題については心配はないと思っております。  ただし、むしろ労働需要の逼迫とかさまざまな要因がありますので、引き続き私どもとしては十分注意を払ってまいりたいと思っております。
  178. 塩川正十郎

    ○塩川委員 高原長官、物価の問題で、特に余り詳しく聞いては失礼ですからちょっと簡単に聞きますと、おれより詳しいのだから簡単に聞きますと、またこれ円安になってきましたね。何かずっとこのまま円安が続きそうな気配が起こったときに、そういうことがあって日銀が公定歩合をぽんと上げられたのだろうなと僕は僕なりで感じておるのですが、もしこのままずっと円安が続いていくということになった場合に物価にどういう影響が今後出てくるかということ。それと同時にもう一つは、今度公定歩合を引き上げた。引き上げたから物価はどのように見通しがつくかということ。概略で結構ですから。
  179. 高原須美子

    ○高原国務大臣 今度の公定歩合の引き上げは、やはり内外経済情勢のもとで金利の市場実勢を勘案して引き上げたものだと思っております。したがいまして、物価の動きが主因であるというふうには理解しておりません。最近の物価は、例えば東京都区部の消費者物価指数が九月には三%ということでちょっと上昇して心配をされたのですけれども、よく調べてみますと非常に一部のものが上がっているだけでございまして、基調としては非常に安定基調が続いております。  そういうことで、物価は余り心配はしてないのですけれども、では全く心配がないかといいますと、先ほど大蔵大臣がおっしゃいましたように、労働需給の引き締まりとかマネーサプライの高い伸びとかいうものもございますので、企画庁としては十分この先行きは注目していかなければいけないと思っております。今回の御質問の公定歩合の引き上げは、この物価の安定基調を持続させ、同時に景気を続けていく、両立させるために非常にプラスになるというふうに理解しております。  それから、円安が続くと物価にどういう影響を与えるかという御質問でございますけれども、円安は確かに物価を上げる要因にはなりますけれども、現在のところ、短期的な段階では、今回の円安がどういう形で反映するかということはまだはっきり申し上げることはできない段階でございます。  ただ、一般論として言いますと、確かにおっしゃるように、円安が持続いたしますと物価の上昇因となりますので、今後物価の安定のためには、為替レートが経済の基礎的諸条件の方向に沿って 動いて、動くというか安定していくということが非常に重要であるというふうに考えております。
  180. 塩川正十郎

    ○塩川委員 模範解答で、はっきりした回答で結構でございました。  そこで、今日本の社会が一番世界各国からうらやましく思われておるのは、物価が安定しておるということなんですね。消費税を実施いたしました四月一日以降、いや、暴騰するんだとか、便乗値上げで大変だとか言ったけれども、またしばらくずっと平静にして、最近では卸売物価が下がってきておるような状況ですね。安定してきていますね。この物価の安定というものは、経企庁として最大の、役所としての使命でございますから、これには十分な御配慮をいただいて、ぜひ物価の安定、そしてそのことが実質的に生活の向上ということに、国民は恩恵を受けるのでありますから、どうぞ一層の御尽力を期待しております。  そこで、消費税の問題なんですが、最初、冒頭に消費税について参議院選挙の後を踏んまえて総理、大蔵大臣に要請いたしました。  そこで、私は実は総理と大蔵大臣にぜひ確認をしておきたいことが一つあるのです。それは、今野党四党共同提案の考えでいくと、消費税の廃止に伴って、それに対する財源というものは二年以内に本格的な財源の対策を税制改正して行う、その間代替財源でこれこれしかじかだ、こういう話なんですね。そして二年後と、こうおっしゃるが、そこで二年後に決められる再改革法案、その税が直接税であったら時代に逆行するものじゃないでしょうか。そうすると、直接税であっては何の意味もない、二年間かかって何をやっておったんだ、これはまさに世界の趨勢に逆行したもの、フィルムをもとへ戻せということですよね。そうすると、直接税でなければ、二年後に出てくるものはやはり間接税ではなかろうかと思います。間接税であるとするならば、間接税で年間六兆、七兆というような大きい間接税というものがそんな一発でありそうなこともない。するならば、ばあっと幅広う取るんかな。何でもかんでも税を取るのか、それだったら物品税の単なる拡大をしただけのことではないか。あるいはまた庫出税ではないのか、それじゃ売上税に類似したものでなければならぬし、しかもサービスも対象にするんだ、情報サービスを対象にするんだといったら、まさに現在の消費税なんですね。そういうことなんですね。  そこで政府にお伺いしておきたいのは、二年後で野党がお考えになるにしても、政府立場から見た場合には直接税であったならばこれは困りますというか、時代に合うものではありませんとかなんかいうもの、どういうことを考え、直接税だったらどうだということを政府として考え方を言ってくれませんでしょうか。
  181. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 塩川委員昭和五十年代の後半を思い起こしていただきたいのでありますが、ちょうど五十年代の半ばから国民政府に対する御要望の中に税の問題がだんだんウエートが高くなってまいりました。そして五十年代の後半になりますと、まさに国民からの一番の大きな御要望は税制の改革だったわけであります。そして、その中で出てきております問題点は、勤労者層を中心とする直接税に対する重税感と同時に、個別に税率の定められておりました物品税を中心とするそうした体系の中からのゆがみとかひずみとか、さまざまな声でありました。  今回税制改革を行いました時点において、そうした国民の声にいわばおこたえをして税制改革は進めてきたわけであります。そして、直間比率の見直しという議長裁定を含む見解をも踏まえて御承知のような税制改革を行ってまいりました。  仮に二年とかそういうことを抜きにさせていただきまして、これから先、消費税が廃止をされ、一定期間他の財源が用意をされ、その後新たに見直された結果の再改革法がスタートをするとなりますと、まず第一の問題は、この消費税の導入に際しましてソフトウエアの変更でありますとか、その他の企業、事業主の投資というものが相当巨額に上っておると聞いております。これが一たんまたもとに戻るということでありまして、ここに再投資を必要といたします。さらにまた、再改革法案に基づく新たな税制がスタートをいたしますときにはもう一度投資を必要とすることになるはずでありまして、これは国民経済の上にも少なからぬ影響を及ぼすものではなかろうかと考えております。  いずれ野党各党から代替財源についての御意見が示される、あるいはその後の御意見が示されていきます中において政府としての意見を申し上げる場はあろうかと存じますが、手順から考えました場合には、少なくとも税制の根本的な変更に伴います投資というものは個人事業主をも含めまして相当な影響を経済に及ぼすものになるであろう、そのようなことだけは申し上げられるかと存じます。
  182. 塩川正十郎

    ○塩川委員 橋本大臣の方は経済の影響についてのお話でございましたが、この影響も確かに大きいですね。しかし、大体世界各国といいましょうか、時代が進んでいけば、直間比率というものはそれぞれ分に応じた程度に、極端に高くなってはどちらが高くなっても困る、お互い分に応じたものに平均化すべきであろう、こういうことは時代の趨勢、世界の趨勢ではなかろうか。そのとおりですね。
  183. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 まさにこれは御指摘のとおりでありまして、所得、消費、資産というものにバランスを置いた税制を指向しているのが事実であります。
  184. 塩川正十郎

    ○塩川委員 そうすると、二年後に野党の方々が再改革案をお出しになって、そのときに直接税中心であるということは時代おくれも甚だしいということが言えますな。いや、もう答えは結構です。そうすると、どうしても間接税でなければならぬということですね。そうするとお聞きしたいのですが、間接税で五兆、六兆、七兆というような大きい税収がはかり得る間接税というのはどんな種類がありますか。大蔵省、ちょっと答えてくれ。
  185. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 間接税制度について考えてみますと、やはり現在の経済社会は大変多様化しておりまして、物だけではなくてサービスも対象として広くとらえていくということが非常に大切なことと考えられております。それが消費課税として最も適切な方法であろうと思います。そのように広くとらえることによって、また税率を低く抑えるということもできるわけでございます。そういうような考え方が現在の世界の主流であろうと存じます。
  186. 塩川正十郎

    ○塩川委員 それはやはり間接税移行が時の流れだということなんです。だから、いかに知恵を絞っても、やはり今度二年後に出てくるのは消費税と同じようなものが出てくる、こういうことになってくるのですね。これはもう疑いのないところなのです。それをただ二年稼ぐということは、一番冒頭で言いましたように、ただ選挙のときに嫌なことを掲げないでというその精神に通じるということであって、私はそれ以外のものではない、こう思うておるのです。  そこで、各国とも直間の比率は、率は別としてもなぜ間接税をとっておるか。税には応能性、応益性いろいろありましょう。しかし、間接税というものがどの国においてもやはりそれなりの位置づけをされておるということは、直接税は日本ではクロヨンだとか言われて非常に非難を受けておりますけれども、これはやはりどうしてもこういうことにならざるを得ない。完全に捕捉しようとしても、本当に捕捉はでき切れるものじゃないのです。どうしてもそこには抜け穴を通り抜けよる悪いやつもおるのです。それを捕捉しようとしたら税務署を何倍にも広げなければならぬし、これこそ夜警国家みたいになってしまう。それが嫌だから、ある程度そういうものを補完していく意味においてでも間接税はやはり必要な制度として維持していかなければならぬ。日本の今度消費税をするのと違います。そういう意味じゃありませんが、直接税が重過ぎたからこそ今度間接税を大きくする、こういうことなんです。  大体、そういう捕捉は、直接税、所得税とか法人税というものは本当にしにくいものなんです。 第一、一番いい例は、パチンコ屋なんかどうですか。パチンコ屋、完全に捕捉しているのか、どうだ。ちょっと大蔵省に聞いてみる。パチンコ屋とか温泉マーク、完全に捕捉できるか。
  187. 岡本吉司

    ○岡本政府委員 国税庁におきましては、各種の業種、業態等に即しました資料等を十分に収集に努力いたしまして、日ごろからの課税の充実に努力しているところでございます。パチンコ等につきましても、やはり非常に現金商売でございますので、所得が把握しにくいという状況も十分念頭に置きながら課税の充実に努力しているところでございます。
  188. 塩川正十郎

    ○塩川委員 それから、いろいろな団体が団体の圧力をもって捕捉を困難にさせておる例があります。一例言いましょうか。民主商工会、どうですか。それから中小企業連合、いわゆる中企連というのはどうですか。これは完全に捕捉していますか。どうですか。答えてください。
  189. 岡本吉司

    ○岡本政府委員 我々が対象といたします納税者はいろいろな方がおいでになります。我々はそれぞれの階層に対しましてできる限りの努力はしているつもりでございます。先生御指摘のとおり、直接税はいろいろ限界がございますけれども、そういったことを踏まえながらこれからも十分に努力してまいりたい、こう考えております。
  190. 塩川正十郎

    ○塩川委員 それじゃ、そういう捕捉しにくい業界に対して捕捉をより徹底するようにいろいろな知恵を絞ってやるということ、これは約束してくれますね。国税庁、どうです。
  191. 岡本吉司

    ○岡本政府委員 今後とも課税の充実のために努力したいと思います。
  192. 塩川正十郎

    ○塩川委員 それからもう一つ、例えば民主商工会、集団で申告書を出してわあっと確認を押しつける。それから中企連、こういうのは個別交渉で団体の圧力をもってやる。こういうことはないだろうな。どうですか。はっきりしてくれよ、みんなこれをテレビで見ておって、地元ではこれは大変なのだよ、本当に。今度の消費税問題で非常に不平、不満が出ておるのはこういうところなのだよ。はっきりしてくれ。
  193. 中尾栄一

    中尾委員長 はっきりと答弁を願います。岡本国税庁次長
  194. 岡本吉司

    ○岡本政府委員 我々といたしましては、非常に難しい納税者もたくさんおいでになりますけれども、我々国税の職員といたしましてできる限りのことは努力してきたつもりでございますし、今後とも努力してまいりたい、こう思っているところでございます。
  195. 塩川正十郎

    ○塩川委員 なかなかはっきりしたことが出ていないですね。おかしいと思うな。しかし、いいです。努力してくださいな、みんなが見ておるからね。  それから次にお聞きしたいのは、消費税のことはいろいろ聞きたいと思うのです。これはしかし、今度の予算委員会、自民党は二十三時間もらっておるのですね。それで私が一番最初ですが、あとそれぞれ専門の立場に立っての質問がずっと続きますので、消費税問題はそういう専門の方に任しておくとして、一つ私はここで外務省の方、外務大臣、ちょっとお聞きしたいと思うのですが、ODA、貸付金等入れて、借款等入れて一兆三千億円ベースになってきましたね、ODA総額が。ところが、それは結構なことなのですが、ODAは、日本はそんな一兆三千億ありながら、一方いわばOECD加盟国の先進国、これとの関係を本当にうまく交際をし、そしてお互いが協力して一緒の研究をやろうとか、あるいはあるプロジェクトに参加しようとしても、そういう資金は割とないのですね。個別で組んでいかなければいかぬから、事業ごとに。  そうすると、これはどうでしょうか。ODAというのはそういう開発途上国を中心にした用途であるというならば、それに見合うものとして、OECDの国なんかと、要するにつき合う、交際費と言ったら語弊がありますけれども、文化、学術、スポーツ、あらゆる面でお互い共同でやっていこうという、そういう援助というか費用というか、日本も援助されることはあるかもわからぬ、そういうようなものに対する制度的な考え方、ありませんか。
  196. 中山太郎

    ○中山国務大臣 塩川委員お尋ねのODAにつきましては、御案内のように、先進国の対象といたしましては、文化、学術の交流ということで国際交流基金の運用益をもってこれに充てておるというのが現状でございます。  なお、発展途上国に対するものといたしましては、今まで日本だけでやるというようなこともございましたが、今後はOECD加盟国と協議をし、一緒にプロジェクトに共同で当たるというような方途が望ましい。評価にしましても、二国で評価するということによって非常に内容の濃いものがこれから誕生するのではないか、こういうふうに考えております。
  197. 塩川正十郎

    ○塩川委員 それともう一つ。ODAの金がどうもやはり、ハードの面と言うたら語弊がありますが、目に見えやすい港だとか道路だとかそういう建設関係が多いのですね。これからもっと文化の面で使ってもらえぬだろうかと思うのだ。これは事業者はちょっと違いますけれども、例えばインドネシアにボロブドールとかありましたな。あの遺跡がありますね。あれなんか、ユニセフですか、あそこが中心になってやりましたね。あれなんかもう現地へ行きまして、ASEAN諸国は物すごく喜んでいますね、日本の金が主体だったと。しかし、表面はユニセフなんですよね。しかし、ちゃんと知っているんですね、その国の人たちは、日本の金だったということは。今はもう大変な感謝をされております。  今度カンボジア三国が平和が実現する、これを望んでおるのですが、アンコールワット、こういうのはやはり日本が先鞭をつけて復旧をし、世界の文化遺産として残していくべきではなかろうかと思うのですが、どうでしょうか、アンコールワットについては。
  198. 中山太郎

    ○中山国務大臣 アンコールワットの遺跡の復元につきましては、カンボジアに和平が到来しました時点で、日本といたしましてはこの文化財の保存のためにできるだけの協力をするべきであると考えております。
  199. 塩川正十郎

    ○塩川委員 それと日本の、これは何も外務省の話じゃない、大体大蔵にも大きい責任があると思うのですが、大臣並びに主計局長、聞いてほしい。  これは、大蔵が文化、学術関係に金出すのはなかなかしんどいのですね、交渉は。これは先にやはり日本は建設主導、戦後から復興、繁栄というのが中心であったから。しかし、現在はやはりそういう心の政治問題というものを大事にしなければならぬ、こう思う。だから、文化、学術という面に格段の配慮を払ってほしいと思うのです。実は私たちは、外国の方々、大学なんかから大学の援助をしてくれぬかとよく言われますが、なかなかこれは日本からできないのです。国際交流基金というものがありますが、これは寄附を集めてきて、それをトンネルにしてやっている、免税のためにやっているだけなんですね。こういう格好は私は世間にとって格好悪いと思うのです。本当に格好悪い。だから、こういうようなものを扱うように何か基金をつくるべきではないか、こう思うのです。  その一つとして、例えばつくばにあります文部省の高エネルギー研究所というのがあるのです。トリスタン。ここなんか世界に冠たる研究所なんです。現に研究員の半分近くが外人なんです。こういうようなものをもっともっと世界に開かれて、そして世界のいわば高エネルギー研究所のセンターにしよう、そういう意欲を持ってこれから取り組むべきだと思う。  それから愛知県の岡崎に国立共同利用機関、三研究所があると思うのですが、総理の地元ですね。あれなんかでも実に世界に冠たる研究所なんです。そしてあそこにはノーベル賞候補の学者は数人もおるのです。ところが、これが国際的に交流しようとなったらいろいろな制限がある、非常に難しい。  こういうふうなものを消化していくために、予算で一々ぎりぎりと縛りつけてそういうことを やっていくというのではなくして、基金をつくってその基金の運用で、その基金の責任においてそういうことを専門に進めさせていくという考えがあるのかないのか、これをちょっと大蔵大臣にも聞いてみたいと思います。
  200. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 委員御承知のように、確かに御指摘を受けるような傾向がないとは私も申しませんけれども、日本自身、これは国の立場でもそうでありますし、また民間でも税制上の措置を利用しながら文化、学術の交流あるいは日本の理解を先進諸国の間に求めるための努力、さまざまな角度のものが行われております。  基本的に、今御指摘になりましたような問題点はこれからの日本として極めて大事な問題であることは間違いがありません。そうした認識を持ちまして、今後御相談がありましたならば各省とも話し合いをしてまいりたい、そのように考えております。
  201. 塩川正十郎

    ○塩川委員 それについて私の方からぜひ御協力をお願いいたしたいと思う。芸術、文化、そういうようなものの国内における振興、同時に国際的交流、こういう二つがあると思うのです。  まず国内の方も、これはどこが主管になってやっていくかといったら文化庁なんです。ところが文化庁はとてもじゃないがそんな金がない。人件費に食うだけが精いっぱいなんだ、事業費なんてほとんど、史跡を買うのがちょこっとある程度、もう金がない。ですから、文化庁を中心にしてそういう幅広い文化交流をやらしていこう、こういう考え方が一つあると思うのです。そうでなければもういっそのこと、芸術、文化、そういうものを専ら振興策とし事業としてやっていく基金をつくって、その基金にお任せする、その資金は国から計画的に出していく、こういうやり方でいこうとする。これは二つあると思うのです。これをどちらにするか。  私は、文化庁の予算がシーリングでずっと縛られておって、とてもじゃない、そんな予算は出てこないというならば、現在、六十三年度会計で余剰資金が少しあると聞いております。その中の一部でもそういう基金の発足に充ててもらって、それで、文化庁を中心として芸術、文化振興の仕事を対外的にも国内的にもでき得るようなことができないだろうか。いや、外国関係は別だとおっしゃるならば、それじゃ外国関係は国際交流基金の基金を厚くしてそちらを中心にやらすとするか、そこらを一回きちっと整理をして、ぜひひとつ文化、学術の振興のだけの特別の対策を講じてもらいたい、こう思うのです。  この一つの参考として私は申し上げたいと思うのですが、大分以前でしたけれども、私英国に行きましたとき、マンチェスターの大学に三井基金講座というのがあるのですね。御存じだと思います。それは大正時代に三井が綿花を買い付けに来たときに町に寄附した。その町の市長が、それじゃ東洋学の研究のためにとマンチェスター大学に講座をつくった。それが連綿として続いておる。金は一銭もないんだけれども、日本から何とかしてくれと言っているけれども何にもしてくれない。三井講座という看板だけが残っている、オリエント研究。そういうのがやはり全国にあると思うのです。  そういうようなことを考えますと、ぜひひとつ積極的に先進国と文化、芸術あるいはスポーツも入れて交わっていく、そういう共同提携していくということ、それができるような基金あるいは財団、何でもいいですが、詳しく話す必要はありませんが、まずこれは文部大臣、ちょっと考え方を一回言ってみてくれますか。
  202. 石橋一弥

    ○石橋国務大臣 お答えいたします。  芸術文化振興基金に対するお考え方でありますが、私も全くありがたく今の御意見をちょうだいをするわけであります。  実は、先般もある企業があるところに大きなミュージアムをつくったわけでありますが、相手国の総理がみずから参りましてその開館に出ました。私も総理のお供をして伺ったわけでありますが、いわゆる経済大国日本、これからの行く道、文化国家、芸術国家あるいはスポーツ国家を目指してやっていきたい、こう考えております。関係省庁とも十分連絡をとってぜひとも実現に向かって邁進をいたしたいと思います。ありがとうございます。
  203. 塩川正十郎

    ○塩川委員 ちょっと文部大臣。それで希望は述べられましたけれども、これは内閣の問題として取り上げてもらうように何かの措置を講じていかれますか、どうですか。
  204. 石橋一弥

    ○石橋国務大臣 お答えいたします。  もちろんこの問題、日本国家の将来、芸術国家である、文化国家である、あるいはスポーツ国家であるという観点に立ちまして、総理のお考えも十分お聞きを申しながらやっていきたい、こう考えております。
  205. 塩川正十郎

    ○塩川委員 それでは、中山外務大臣にもお聞きしたいのですが、私もあと持ち時間がないので省略させてもらって、文部省の文化庁を中心とした芸術文化振興基金の考え方ですね、つまり国内の方の文化振興の基金、外に向かっての国際交流振興の基金の充実ですね、この二つを今度近いうちに内閣として取り上げてくれますか。大蔵大臣と総理大臣ひとつ……。
  206. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は必ずしも文化、芸術あるいはスポーツといった分野が文化庁だけと考えておりません。ですから、各省庁の施策の中にさまざまなものがございます。また、すべて国が行うことが逆に芸術に対する官の干渉ととられることも考えなければなりません。御趣旨について方向は私は異論がございませんので、具体的に御要望が出てまいりましたならば、予算編成の過程で十分御相談をさせていただきたいと思います。
  207. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 国際交流基金を充実する問題は、私どももかねてから大切だと思って努力をしてきたテーマの一つでございますし、また、今新たに御提言になった芸術文化振興基金の問題、これはおっしゃるように心豊かな社会をつくり上げていこうとすればみんなが芸術、文化により一層親しんでもらうことが大切だと考えておりますから、具体的な構想は関係各省庁によく検討してもらいながら、先生の御趣旨が生きるような方策を考えてまいりたい。私も同感でございます。
  208. 塩川正十郎

    ○塩川委員 この前学者の会合とかがございまして、海部内閣が実現したこの機会にやってもらわないと、芸術文化基金というものを、おっしゃるように基金でなくてもいいのです、今大蔵大臣が言っていますように何か全般的なものを考える、財団か基金か、それでいいのですけれども、海部内閣のときでなければこういう問題は片づかないぞという過大な、過大じゃないな、当然の期待ですけれどもかかっておりますので、海部内閣のときにぜひひとつこれをつくっておいてやっていただきたい。もう一度しっかりひとつ頼みます。
  209. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御要求が出てまいりましたそのときに、前向きに一生懸命考えます。
  210. 塩川正十郎

    ○塩川委員 ひとつ、どうぞよろしゅうお願いいたします。  あとちょっと私は、土地問題と国鉄の長期債務についてお聞きしたいのです。  国鉄の長期債務という問題、これは総理よく認識していただいておりますね。この解決なんですが、実は、分割・民営いたしまして以来、専ら清算事業団は土地の処分に精力を挙げてきた。ところが、競争入札をやらしたら地価の暴騰が起こるというので抑えてきたのですね。その結果として、実はえらい計画がそごを来しておるのです。つまり、民営発足の当時、清算事業団としては、六十二年度で三千億円、六十三年度で四千五百億円、それから平成元年度で六千億円、合計一兆三千五百億円を売却して、ひょっとしたらこれ以上売却できたのです、売却して長期債務の返済に充てたい。ところが政府の方針で、つまり地価暴騰を抑えるという政府の方針でこれを抑制してきたのですね。その結果として、計画に対して半分も土地が処分できておらぬのです。  そこで、私は一つこういうことを長期債務の関係者の方に言っておるのです。東京、大阪とか都心の国鉄の用地がその土地財産の七割以上なんで す。ですが、その中で比較的面積の小さいものもあれば大きいものもあるのです。大きいものは、確かにそれ自体が競争入札でどこへ行ってしまうかわからぬような不安を地元に与えてはいかぬと思います。しかし小さいものは、比較的小さいものですね、例えば具体的に言うて三千平米とかいうようなもの、それ以下の土地については、たとえそれが監視区域であったとしても、まあ三千平米、千坪近くのものですから、これを売らして、むしろその地域の整備開発に役立たした方がいいんじゃないか、こう思うのです。  ところが、東京都を初めとして地方自治体の首長は、これに対して、競争入札に対して物すごい反対しておるんですね。そこを政府と地方自治体と話をしていただいて、三千平米以下のところは自由に入札さして返済をさそう、返済第一なんだ。このままほっておいたら二十七兆円、もう既に二十七兆を超えようとしているんですね。三十兆、金利が金利を生んでいく。毎年一兆五千億円金利がふえておる。分割してから以降、逆に国鉄の清算事業団の借金がふえておるというのは、これはほっとくわけにはいきませんので、そういう処分を許していくということを自治体との間で話し合いをしてもらったらどうだろう、政府と自治体の間で。そして、三千平米以上のところはそれぞれ地元との相談をして期限を切って利用についてまとめていけ、協議期間が過ぎたところはもう自由に入札さすぞ、こういうふうにでもしてやらぬとけりがつかぬのですね。けりがつかぬ。これに対する方針ですね、ひとつ運輸大臣、この方針、一回話をしていただいて、そしてそれを受けて大蔵、総理それぞれがそのとおりということで推進していただければ結構だと思いますので、よろしくお願いいたします。
  211. 江藤隆美

    ○江藤国務大臣 運輸大臣の先輩大臣であります塩川先生から国鉄問題についていろいろ御心配いただきまして、ありがとうございます。  仰せのとおり、国鉄が民営・分割されまして、ちょうど平成元年で清算事業団の借金の残りが二十七兆一千億になるであろうと思います。そういたしますと、毎年金利だけで一兆五千億ふえるわけでありますから、三年たちますというと、防衛予算の一年分をはるかに飛び越えてしまうだけの金利を支払わなきゃならぬ、こういうことに実はなりますわけで、いずれその結果は、これはもう当然国民の皆様の税金によって最終的にはしりぬぐいをしてもらわぬと補いがつかぬ、こういうことになりますわけであります。  したがいまして、私どもは去る二月十日に土地対策関係閣僚会議で、地価に影響のないものについては監視区域内にあっても競争入札でいいじゃないか、こういう一応の合意は得ましたが、一つ条件が仰せのようについておりまして、関係の地方自治団体のその意見の合意を得て、こうなっておりますものですから、決めてもらいましたがことしは五件しか実際には売却ができませんで、おかげで六千六百億有余の見込み違いが出てきて、そしてまた来年からずっと赤字がふえる、こういうことになりました。したがいまして、近々土地対策関係閣僚会議も開かれ、あるいは党においても細田委員会でいろいろと長期債務の御検討もいただいておりますし、また国鉄改革関係閣僚会議も催していただくということでありますから、率直に私の考え方を申し上げて、土地の売却の問題、それからもう一つはJRの株式の公開の問題、それらを通じてなるべく早くこの債務が完済できるように努めてまいりたい。それにはもちろん内閣全体として御協力を仰がなきゃできないことでありますが、幸い大蔵大臣も今回は運輸大臣経験者でございまして一番事情を御存じの方でありますから、よく閣内でも御相談申し上げて御協力を賜るようにしたい、こう思っておるところでございます。
  212. 中尾栄一

    中尾委員長 関連して、大蔵大臣橋本龍太郎君。
  213. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 国鉄の分割・民営の責任者であり、清算事業団をスタートさせました責任者であります私にとりましては、今の御指摘は大変気の重い御指摘であります。  当時、これほどの地価高騰というものを予測しておらなかったがために、私どもはこの土地の売却によって当然この累積債務が減少に向かうという計算で物事を処理しておりました。今日になりますと、明年度予算編成におきまして赤字国債依存体質から脱却いたしましたとしても、それにすぐ続く極めて大きな問題として、いわゆる隠れ借金の部分とあわせてこの問題に取り組まなければなりません。  今御指摘のありましたようなお考えも私は一つの方向だと思います。ただ、地価問題等なお予断を許さないときでありますだけに、関係地方自治体との話し合い等に関係各省の御協力をも相当いただかなければならないと思いますし、先ほど運輸大臣から御答弁がありましたように、十分相談をいたしたいと考えております。
  214. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 お二人から詳しく答弁がございましたけれども、この問題は視点を変えて考えると二つの立場があって、処分をしたいという、それからもう一つは余り高くなっては困るという、簡単に言うとそういうことでありますから、ここをどこでどう調和させるのか、関係者の話を十分聞いて相談をして、内閣としての態度を固めていきたいと思います。
  215. 塩川正十郎

    ○塩川委員 私の質問の後、関連しまして浜田幸一君が質問いたしますので、よろしくお願いします。
  216. 中尾栄一

    中尾委員長 この際、浜田幸一君から関連質疑の申し出があります。塩川君の持ち時間の範囲内でこれを許します。浜田幸一君。
  217. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 ただいま総理が出ておりますので、帰るまでお待ちしてよろしいでしょうか。
  218. 中尾栄一

    中尾委員長 はい、許します。——浜田幸一君。
  219. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 諸先輩のお許しをいただきまして関連質問をさせていただきます。  まず第一に、総理大臣の日ごろの活躍に対して敬意を表します。つきましては、より以上の活躍をしていただきますために、新しい時代の総理大臣として的確に処理をしていただかなければならないことがあります。それは何であるかというとリクルート問題のけじめであります。  この問題は、我々の先輩一人が責任をとり、そして今可罰性を受けようとしています。その問題は法律が定めたことでありますので、私はそれについては触れません。ただ問題は、政治資金として受け取った者と、そうではなくて、利権を与え得る者が権利を与えることによって得たその金によって株が買われ、その株の配分を受領した、その自由民主党党員に対しては、次の選挙においてけじめをつけるために党の公認候補はやるべきではないと考えますが、いかがお考えですか。
  220. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 けじめ問題について手厳しい御意見を日ごろ承っておりますけれども、我が党としては、リクルート事件の反省は厳しく受けとめて、今御指摘のあった方々に対してはこれは党全体が受けとめて、同時にまた、党の中でのけじめ案というのをつくって、そして株譲渡に関与した方は今そのけじめに従って対処をしてもらっておるところであることは御承知のとおりと思います。同時に、党を挙げて政治改革を行うことによってこの不信を解決し、また、政治改革を断行していくことによって党全体が再発防止しようと思って努力しておることも御理解をいただいておると思います。  御指摘の具体的な点につきましては、これは今、選挙のこと、公認のこと、ここでこの場で私の立場で申し上げるのは遠慮させていただきますけれども、政治家政治責任というものは、これはそれらの個々の人々がみずから決断をしてお決めになることが第一であるとともに、政治家というのは有権者の直接の支持を受けて一人一人が国政の負託を受けて出てきて動いておられるという大きな公の立場もあるわけですから、その場に立って御自身で御判断されるのがまず第一義的ではないか、私はこう考えます。その時期が来たときには党の執行部ともよく相談をしながら対処しなければいけない問題であると心得ております。
  221. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 私はこれ以上は申し上げませ ん。ただ、今まで私たちは野党から攻撃だけを受けておりました。しかし、政権政党というものはそういうものであるということで忍耐に忍耐を重ねて、反撃に移ったことは一回もありませんでした。しかし、今の政治情勢を考えるときに、やはり、自由民主党が政治姿勢を改める、そのことを基本的にすることができなければ日本の政治全体がだめになると考え、あえて諸先輩に対して失礼とは存じましたけれども、御決断を御要請した次第でございますので、その点は御理解をいただきたいと思います。  次の質問に移らしていただきます。  まず第一に、先ほど議論のありました国家安全保障問題についてでありますが、国家安全保障問題の議論を聞いておりまして、私が一つ非常に不審に感じたことがございます。それはどういうことかといいますと、米ソは接近はいたしておりますが、この米ソの接近の中で、接近をしながら世界の米ソ支配というものが今後も続くと私は考えますが、あなたはどう考えますか。
  222. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 米ソが世界の二大軍事勢力であることは、これは否定できない事実でありますし、それから今後も米ソが世界の対立する頂点にある、ともにそれぞれの陣営のリーダーであることも、これは続くだろうと思いますが、その米ソ両国の間できょうまでの対決、対立、そういったものがいかに無意味なむだなものであったかという点に対する反省も出てきておると思いますし、同時にまた、今持っておる兵器を使っての戦争なんかはしかけてはいけない、できないという判断も生まれかけての対話だと思いますから、私は、そのことは続くけれども対話の中で続いていく、さっき申し上げたようにこれが安定的ないい方向に行くように私は希望をいたしております。
  223. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 私が日本じゅうを回って、永世中立国スイスのような国になりたいと思う人手を挙げてと言って手を挙げていただきますと、たくさんの人が手を挙げます。そこで、なぜ手を挙げるのかと思っていろいろ考えてみたのですけれども、骨が折れなくていい、そう考えている人が随分多いようでありますが、ところで総理、このスイスの国の憲法の内容について何か御存じ寄りの点がありましたら御指導いただきたいと思います。
  224. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 突然の御質問でございますので、スイスの憲法一条から全部精通しておるわけではありませんけれども、しかし、私のきょうまでの理解と知識からいきますと、スイスの場合には憲法の中で、抵抗しなさい、降伏してはいけないというような記述があったことが一つと、それからスイスの人々は、永世中立とはいいますけれども、たしか各自がそれぞれ時々集められては、あるいは集まってと言った方がいいかもしれません、祖国を守るための防衛訓練をしておるということも私の記憶の中にはありますし、またスイスでは、民間が最近、家などをつくりますときはシェルターをつくるべきであるという、何か大きさによって制限があるようですが、すべて祖国防衛のために市民としてやらなきゃならぬこと等が全部記されてあったように記憶しております。
  225. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 御指導いただいてありがとうございました。  私は、日本国の憲法とスイスの憲法と比較して勉強してきたときに、村と国の相違点というものを痛切に、言葉は何といいますか、物すごく真剣に感じました。それはどういうことかというと、我が国の憲法九条の一ではすべての戦争を放棄し、憲法九条の二では、だから陸海空の兵力、これを持たない、しかし、自衛権は法律によってこれを認める、その中から先ほどのような幼稚な議論が出てきているわけでありますが、それから先の問題については申し上げません。ただし、スイスの憲法の中には、いかなることがあっても他国の軍隊の通行、これを許さない。もし無断で通行するものがあれば、州兵、これを派兵し、阻止するといい、明確に記帳してあります。一軒一軒の家庭の中に銃が配布してあり、妻や子がその銃を一生懸命掃除をしております。これが一つです。  それからもう一点の問題は、非同盟中立国と言われるユーゴスラビアの憲法ですが、ユーゴスラビアの憲法と日本の憲法を比較してみますと、これはまた村と部落、部落と——だから、もし——どこのところをやればよかったんだっけな。間違っちゃった。
  226. 中尾栄一

    中尾委員長 ユーゴスラビアの憲法の問題。
  227. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 それで、それを本当にひとつどういうことか言ってください。それ、必ずやっていたんだから。
  228. 小野寺龍二

    ○小野寺政府委員 委員指摘のとおり、世界にございます中立国、いずれもその非武装という中立の体制をとっておる国はございません。中立の概念といたしまして、その中立を侵されないというためにいずれの国も非常に大きな努力をせざるを得ないということから、委員指摘のとおり、例えばスイス、それからスウェーデン、ユーゴスラビアについても同盟を結んでいる国以上に大きな軍備努力を行っているという例も幾つもあるわけでございます。そういったことから、委員指摘のとおり、その中立というもの自身も、中立が侵されないための軍備すら必要であるということから、何と申しますか、空想的なそういう非同盟とか中立というものとは実態は非常に違うということは事実でございます。
  229. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 ここでお伺いしておきたいのですが、治安対策の部分でちょっと聞いておきたいのですが、治安対策は十分ですか。  それから、警察の不足はどの程度ですか。お答えをいただきたいと思います。
  230. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 浜田委員から治安対策について大変熱心なお言葉をちょうだいいたしました。  実は、私が国家公安委員長に就任した日に、国民皆さん方に非常に大きな関心を持たれておった綾子ちゃん殺人犯人が逮捕せられる見通しが出てまいりまして、埼玉県警に激励に参りました。七月、八月、炎天のもと、お盆のもとをもほとんど前線警察官の諸君が一日も休むことなく、若いお母さん方の不安を取り除くために、凶悪な犯人逮捕のために日夜を分かたず努力をしておった話をお聞きし、また非常に人員が不足をしておるということの実情等を聞かせられまして、これは海部総理にも、また大蔵大臣にも、またその他の閣僚の皆さん方にも今御理解を求めているような努力をしておるところでございます。
  231. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 これは治安対策と簡単に言いますと、いずれにしてもあなた自身の決断力によって決定をしていただかなければいけないのでありますが、いずれにいたしましても新東京国際空港、この問題を解決しますためにも、ここで長々しく申し上げる必要はありませんが、いずれにしても今まで相当数多くの犠牲者が出てきております。それを承知の上でやはり国際的なものをつくり上げていくわけでありますので、その努力する者に栄光のある社会をつくってやってほしいことをこの際お願いをいたしておきます。  それからもう一点、これは消防関係の方でありますが、消防関係の代表に、消防予算が年々減ってきて、十年間の間に十分の一になってしまった。建てられるものはどんどんでかいものが建っていくのに、それを守る者はどんどん少なくなっていく、この点が物すごく私には意味がわからないのですけれども、どなたかこの点を説明してもらいたいと思います。お願いします。
  232. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 先に国家公安委員長として、成田の国際空港についてお話がございましたが、私も先般現地に行ってまいりまして、まさに国民が、今や世界の中の日本が求められておるあの国際空港の建設が一部の無謀な人たちによって阻害され、また前線の警察官が大変苦労をしておる姿をありのままに見てまいりました。そのような妨げる者をやはり排除して、世界の日本として恥ずかしくない国際空港が建設されるために運輸大臣頑張っておられますので、国家公安委員長立場でもこれに協力してまいらなければならないと存じます。  また、自治大臣として、今消防についてのお話 がありました。まさに消防はそれぞれの地域におって国民皆さん方の生命、身体、財産を守るために一生懸命頑張っております。  先般、十三号台風のときに、私は現地に行って、民間消防の若い団員が災害救助のために体を張って頑張って、亡くなられてしまいました。話を聞きますと、何かもう少し無線機でも持っておったら亡くならないで済んだのではないか、こういう話を承りまして、消防の装備と近代化、これは大事なことだな。ところが、今浜田委員指摘のように、消防の補助百三十七億、これはぜひ増額するようにこれから努力をしてまいりたいと思いますので、御協力を賜りたいと思います。
  233. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 国防大臣、防衛庁長官にお伺いいたします。  アメリカの軍隊は日本に何万人いますか。教えてください。
  234. 小野寺龍二

    ○小野寺政府委員 本年の三月末現在で五万人足らずでございます。
  235. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 五万人の軍隊がいて日本を守っていて、そして今度予算委員会でいろいろな国家財政予算を組む場合に、思いやり予算というのはそれはどういう意味ですか。
  236. 松本宗和

    松本政府委員 お答えいたします。  思いやり予算という言葉でございますけれども、まずこの言葉から御説明させていただきますが、これは昭和五十三年六月、衆議院内閣委員会におきまして、当時の金丸長官答弁されました言葉の中に、これは正確に読ませていにだきますが、「日米関係が不可欠である以上、円高ドル安というこの状況の中で、アメリカから要求されるのでなくて、信頼性を高めるということであれば、思いやりというものがあってもいいじゃないか」という言葉がございます。  これは、当時の円高・ドル安に伴って在日米軍の駐留経費が非常に圧迫されておるといった状況の中で、予定されておりました日米首脳会談、これに臨まれる長官に対しまして、在日米軍駐留経費の負担についてどのように考えるかという質問に対しての答弁でございます。
  237. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 そうすると、前副総理の金丸先生が思いやりと言ったから思いやりでこれからも通していくということのように聞こえますが、実際問題として、みずからの国をみずからで守るということを考えてみた場合に、思いやりという言葉は間違っているのじゃないかと思いますので、その点は後ほど検討してください。ここでお答えをいただかなくても結構です。——答えますか。
  238. 松本宗和

    松本政府委員 実は、こういういきさつで思いやりという言葉がひとり歩きしております。私どもはそういう言葉を使っておりませんで、これは条約の範囲内で我が国が自主的に負担するということを前提といたしまして、在日米軍駐留経費の負担という言葉できちっと申し上げておりまして、これは日米安全保障体制の堅持を防衛の基本方針といたします我が国にとりまして非常に重要な事項であるということで、現在でき得る限りの努力を続けておるということでございます。
  239. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 実は、さっき失礼しましたが、今そういう答弁で通るならば、もう一回私は非同盟中立国のユーゴスラビアの憲法について明確に申し上げておかなければいけません。  非同盟中立国のユーゴスラビアの憲法の中にどういうものが書いてあるかというと、何人たりといえども戦争の降伏文書に調印をしてはならない。そこからパルチザン闘争が始まったと我々は教育をされております。それと比較しますと、現在の日本の自衛権というものと、各国の、百六十七ヵ国日本に来る国があるかどうかわかりませんが、国家安全保障上の見地から考えてみた場合に、国家らしい国家とは言えないと私は思いますので、今後勉強の機会がありましたならば、またひとつ御指導のほどをお願いをいたしておきたいと思います。  これは大臣にもお願いでございますが、やはり我々は苦しい状況の中から今日の自衛権というものを実は認めてもらっておるわけであります。ただ、私は、この中でなぜこの問題をしつこく言うかというと、議論が幾らされましても、その中で住宅問題、例えば隊員の住宅問題、警察官の住宅問題あるいは消防署の住宅問題、そういう問題はどうしても予算的についてくるのが遅いのです。人の生命を守り国家の生命を守る者が本当に安住できないような、そういう住宅政策では、それは自由民主党の政策が正しく行われてきたということにはならないと思います。  そういうものをどうしてもやっていくために必要なのは何かといえば、それが健全な野党であろうと、優秀な野党であろうと、我々は、財政という問題、税制という問題でこれは完全なる対決を行わなければならない時代が今来ていると思いますので、実は前段でその問題を申し上げたのでございます。どうかお願いでございます。防衛庁長官並びに警察庁長官、それから消防関係の代表の方々、給料は上がらなくても子供たちに教育を与え、せめて住むところだけでも人間らしい住宅に住めるような、そういうことを十二分に考え、御配慮を賜れば幸いであります。  それから特に、先ほどあちらこちらの問題を心配してくださるということを総理初め皆さん方が言っておられましたが、沖縄が戦争に負けて返ってくるまで二十七年間ありました。しかし、この二十七年間の間返ってこなかったその沖縄に対して行われた特別法は山中貞則先生がつくられた立法だけで、それ以外のものは何もありません。おくれっ放しであります。もし本当に一億円の問題を、各市町村に与えて、そしてその喜びを分かち合うということが議論の対象にこの国会でなるとするならば、同じ戦争で犠牲者を出した沖縄のあの二十七年間のおくれは一体だれがどうやって取り返すのか。やはり各市町村に対して一億円ずつやることも大事でありますが、おくれている沖縄に対して、犠牲を多く出した沖縄に対しては、それに倍する以上の予算投下をすることを真剣に考えられることが、海部総理を初めとして新しい時代の責任を運営するあなた方の考えるべきことだと私は思いますので、念のためにここで御警告を申し上げておきたいと思います。時間が一時間しかありませんから、答弁は結構です。  総理にお伺いしますが、自由主義以外に、生存するために安全はありますか。
  240. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私どもは自由主義を信奉して自由主義の中で生きておりますから、自由主義は我々にとって大切なものだと思っておりますが、自由主義以外にやはりほかの主義でも生きてきた国はあるわけでございますから、その中における質の高さとか、その中におけるいろいろな問題は確かにございます。最近の東ドイツから西ドイツへの大勢の市民の移動の問題なんか見ましても、やはり何が大切なんだろうかということを深刻に考える問題を提供してくれたと思います。しかし、現に世界にはいろいろな主義や考え方も共存しておるというふうに私は思っております。
  241. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 もう的確な答弁で、それに対してあえて質問する意思はありませんけれども、ただ問題は、自由主義国家陣営の一員として果たすべき責任の中に、回避してはならない問題が絶対にあるんです。先ほどの議論の中でも、前に決められた、国会において決議をされた非核三原則の問題が言われました。今日でも、一国の総理大臣であるあなたも、国会全体も非核三原則、このことを前提にあくまでも通そうとしています。しかし、私は違います。私は非核二原則を主張しているものですから、人に相手にされないことが多いのでありますが、核はつくらない、持たない、持ち込まない。持ち込む場合の安全性と持ち込まない場合の不安全性を考えた場合に、仮に非核三原則の方が美しく聞こえますが、安全性の上では私は不完全に聞こえてならないのです。それはなぜかといえば、核を保有している国に対して核が落とされることはないからであります。ですからこの問題については、またあのばかが始まったということで記録に残って、野党が今笑っておりましたけれども、この方々が気がつくまでにはまだ五十年はかかると思いますが、私はそう思います。  それから今あなたが御答弁されましたが、その 問題で一つだけ言わしておいていただきたいことは、自由主義国家陣営の中で、もし国民の欲望というものを七〇%も八〇%も満足させながら日本が安全であるかどうかという問題については、やはり考え直していただかなければならないと思います。  そこで、これは手を合わせてお願いなんですけれども、一つだけひとつおっしゃってみていただけますか、私の言うとおり。お願いできますでしょうか。
  242. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 内容によります。
  243. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 内容は簡単です。みんなで決めて——どうぞ、ちょっとおっしゃってみてください。みんなで決めて、そのままで結構ですから。いや、立ったままでどうぞ。
  244. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 あの、御質問をちょっと。
  245. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 みんなで決めて、みんなで動く、みんなのための政治、みんなで責任を持つ政治。おっしゃっていただけますか。
  246. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 みんなで決めて、みんなのためでしたか。
  247. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 委員長、ちょっと座らしてください。
  248. 中尾栄一

    中尾委員長 はい、座って。
  249. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 みんなで決めて、みんなで動く、みんなのための政治、みんなで責任を持つ政治
  250. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今御発言になった、みんなで決めて、みんなで動く、みんなのための、みんなが責任を持つ政治ということで……。
  251. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 今三番目のところが間違えましたけれども、抜けましたけれども、それはそれで結構なんです。  言葉で言うと非常に簡単なことですね。みんなで決めて、みんなで動く、みんなのための政治、みんなで責任を持つ政治。これは非常に簡単なことなんです。  ここから、簡単なことから、今度は大蔵大臣に移らせていただかなきゃいけないのですけれども、大蔵大臣、サラリーマン減税はどういう形でやりましたか。
  252. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 サラリーマン減税と申しますか、例えば、例を挙げさせていただきます。  夫婦子供二人のサラリーマン世帯におきまして、昭和六十二年九月及び六十三年十二月の二度の改正による所得税及び住民税の減税状況として、年収三百万円の場合、従来七万八千円の税負担をしていただいておりましたのが、六万九千円の減税になりまして九千円になりました。減税率は八九%であります。  年収五百万円の場合でありますと、従来三十九万四千円負担をしていただいておりましたものが二十三万一千円。十六万三千円の減税。減税率は四一%であります。  また、年収八百万円の場合でありますと、従来であれば百二十万四千円の御負担をお願いをしておりましたものが八十二万四千円に下がりました。三十八万一千円の減税。減税率としては三二%であります。
  253. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 そうすると、十三段階を五段階に分けたわけですか。それはそういうふうに解釈してよろしいですか。
  254. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 はい。
  255. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 そうすると、なぜ、税金が安くなっているのに国民の方々が怒っているのですか。その点どう考えたらいいでしょうか。例えば、税金は安くしたけれども消費税の方が多く取られて減税分は食われてしまったから、だからだめなんだとおっしゃっているんでしょうか。ひとつその点ちょっと教えていただきたいと思います。
  256. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私が理解をいたしておりますのは、参議院選のときでも、消費税以前の問題として政治不信というものに対するお怒りが随分ありました。そしてその上で、消費税が導入された経緯がよくわからないということから、説明不足という意味合いも随分あったと思います。また、何となく減税分の実感がないために新しく税を取られているという意識が先行された部分もあると思います。さまざまな要因が積み重なって、今私どもが大変苦労をしてもう一度御説明を聞いていただこうとしているような状況が生まれたように思います。
  257. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 そうすると、今聞きますと、やっぱりサラリーマン減税という約四千三百万から四千五百万と言われる人たちのその減税というのは、金丸幹事長時代に主張し始めてそれがあなた方の努力で減税が行われたことだけは確かですね、お答えください。
  258. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 減税が行われたことは間違いありません。
  259. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 今度は消費税の方ですけれども、消費税で例えば減税を行った分だけ埋め合わせようとしている額は五兆七千億なら五兆七千億という数字ですか、五兆六千億ですか、その点数字を教えてください。関係者なら関係者で結構です。
  260. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 先般の抜本的税制改革のときに六十三年度ベースでお示しした数字は五兆四千億でございます。ただいまのベースで計算いたしますと、大体六兆円ぐらい消費税で税収が上がります。
  261. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 これは座ってからでないとあれなんですけれども、それでは重ねてあなたに伺いますけれども、減税をした分と消費税でいただく分と合わせた分で実際に減税効果は上がっていると思いますか。
  262. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 先ほどの六十三年度ベースの数字で申し上げますが、所得税減税、住民税と合わせまして三兆三千億いたしました。先ほど申しましたように、消費税を五兆四千億でございますが、物品税などで三兆四千億、これは減税しておりますので、消費税と物品税合わせたところでは実は二兆円の増税になっております。所得税減税は三兆三千億でございますから、全体としてネットの減税、家計においてはネットの減税になっているわけでございます。
  263. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 その場合、例えば企業がある場合に、ABCD、これは分けて大変恐縮ですが、どんどん大きくなる会社、それから次に大きくなる会社、努力しても社員が二十名以上にならない会社あるいは十名以下の会社、例えば額に汗を流してという言葉がさっき国土庁長官から使われましたけれども、額に汗を流した場合でも、何十年働いても子供を大学に上げて家のローンを払い切れないような企業に勤めている人たちに対する対策というものは、税がだめだから税をやめるということよりも、税収のあった、さっきあなたが言ったように二兆円なら二兆円プラスアルファがあった、収入があったものの中から特別にそういう人たちに対しては教育費を貸与するとか、あるいはローンに対する配慮を十二分にするとか、そういう形で政治決断、政治配慮をすることによって国民理解を求められると思いますか。
  264. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 消費税のような間接税が所得の少ない方につらく当たるということについての御質問であろうかと思いますが、おっしゃいますように、全体として所得の少ない方につらく当たっているかどうかということは、税制全体として、それからまた財政全体として考えてみなければならないことでありまして、他方におきまして、そういう方々に対しましてどのような歳出上の配慮が行われるか、教育費でありますとか福祉関係でございますとか、そのような点でどのような配慮が行われているか、それとあわせて考えなくてはいけない問題であろうと思います。
  265. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 それでは例えば、これはあなたとやるより本当は政治家とやった方がいいんですけれども、あなた方がつくった「財政改革を考える」三十七ページ、この三十七ページを見ますと、ここであなたが説明していたような数字のものが全部出ているわけですね。減税額は三百万の場合は六万九千円、十一万五千円が四百万、十六万三千円、六百万が二十二万七千円、七百万が三十二万七千円、そういう形で、これは減税額ですね。これは減税額は減税額できちっと出ていて、その上で入ってくるものは入ってくるわけですから。しかし、それをあなた方は我々に言うときには、 法律案として出す場合には、これは変えることができないという形で上程しましたね。今になってどんなことが議論されているかというと、内閣総理大臣を初めとして、野党が反対して、参議院選挙に負けた場合にはこれを修正することができるということを言っていますね。あなたも同じ考えですか。  もう一点言います。もし修正した場合の財政収入は、もしその修正そのものが財政収入というものを伴う、例えば一兆円でも二兆円でも三兆円でも財政収入が伴った場合に、それは子供たちの時代には負担はかからなくても、その孫たちの時代により負担増がかかるという問題についての説明はどうされますか。
  266. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 委員指摘のように、税制改革は所得税の分野も法人税の分野も間接税の分野もいろいろあるわけでございます。現在見直し等が問題になっておりますのは、そのうち消費税についての話でございまして、減税等につきましては現在話題になっているというようには私ども理解しておりません。  それからもう一つの点でございますけれども……。済みません、ちょっと失念してしまいましたけれども、申しわけございません、もう一点何でございましたでしょうか。失礼いたしました、財源についてのお尋ねでございました。  見直しをいたしまして、そのことによりましてネットの減が生ずる場合には、やはりこれは制度上その手当てをしておきませんと、御指摘のように後世にその減収分の影響が及ぶわけでございますので、万一と申しますか、見直しの結果税収の減を伴うような修正が行われました場合には、それに対して制度上の手当てをきちんとしなければいけないだろうというように考えております。
  267. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 これは今どこへ行っても言われていることなんですけれども、今、五・九人で一人の老人を守っている、それがやがて二・三人で一人を守らなければならなくなる、そのことが盛んに言われているのですよ。それはあなた方がつくり上げられた、ページ数の十九ページに明らかに書いてあるのですね。確かにこうなる。こうなることがわかっていたとすれば、これはすべての者がこうなることがわかっているとすれば、どこかしらで譲歩した分だけはだれかに負担がかかっていくことになりますね。それで、自然増収が五兆なり六兆なり向こう三カ年間あるんだから税制は要らないではないかという野党の主張もありますけれども、それは百六十五兆円プラスアルファを考えていく、どんどんふえていくその負債に返すことがこれは常識だと私は思うのですね。  これ以上は言いませんけれども、ただ問題は、もし今ここで何らかの妥協を行った場合に、本当に老人の方々に豊かな生活をしていただく、そしてそれを子供たちあるいは孫たちの時代に負担増を与えないままにやっていこうとすれば、この税法そのものがスムーズに与野党の合意の上に通過していかなければおかしいのではないのですか。どう思いますか。
  268. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今、事務方の諸君からの御説明を申し上げ、また、委員お答えを申し上げたわけでありますけれども、基本的に今、委員の御指摘の方向はそのとおりであります。ですから、仮に歳入の見積もりが税制の見直しによって減が立つとすれば、それは新たな財源を求めるか、さもなければ歳出を恒久的にその分だけ減らさなければならないというわけでありまして、後代に影響を与えないとするならば、現時点において我々がその痛みをかぶるということになります。
  269. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 そうだとすれば、当然大蔵大臣、野党の代表と、これはあなたを中心とした自由民主党の代表と真剣に今後の財政問題のあるべき姿、この国家の自由主義経済社会に生存するための絶対的な条件を、与野党の闘いは闘いとして、協議すべきものはきちっと協議しなければならなくなりますね。例えば衆議院で通過したものが参議院で通過しなくなる。参議院で通過したものはそのまま衆議院ではだめだとする。そうすると、法律は何も通らない、前へ進まなくなる。国民はそのままでいいのかという議論になりますね。そうだとすればこれは——今そんなことはないと後ろ側で言って、それはもう自民党だけでやれというのか、社会党が政権とればいいというのか、それはわかりませんけれども、いずれにいたしましても、この問題は今までのような甘えの構造の脱却、すなわち今までの政治そのものを考えるときに、私が言っていることは何かというと、政府・与党と第一の野党であった日本社会党との安易な妥協による政策協定というものが今日の日本をつくってしまったと私は思っているのです。ですから、今後はそういう問題については十二分に配慮した上で、お互いの議論は議論として的確な議論を進め、妥協すべきものは妥協し、協議をすべきものは協議をして解決していかなければならないというのが私の考え方であります。  ですから、あなたには最後の答弁をしてもらわなければいけないのですけれども、あなたは大変な時代に総理大臣になりました。それは何かというと、もう我慢に我慢を重ねなければならないのです。あなたと一緒にやっている次の時代を担う総理大臣候補も忍耐に忍耐を重ねていかなければいけないのです。今までのように、野党がこう言ったから、じゃ力で押し切ろう、それはできないのです。なぜかというと、彼らを一人ずつ説得しなければ法律は通っていかないからです。だから、我々は闘うものは闘い、話し合うものは話し合わなければなりません。これは自由民主党にだけ強く申し上げておきます。それはなぜかといえば、今の野党にそれを言っても無理です。ですから、まあ耳の悪くない人は聞いていることですから何かしらを感じ取っていると思いますが、私はその点だけを明確に申し上げておきます。  残り時間が十二分間になりました。自民党は自民党で今、我々の反省すべき点は反省すべき点として明確に申し上げてまいりました。そこで、これから私は攻撃に転じなければなりません。  それは何かというと、自由民主党が、この中で、閣僚の中で党の国対委員長をやった人、経験のある人、手を挙げてください。国対委員長をやった人、経験のある人。——結構です。答えられたら答えてくだされば結構なんですが、答えづらければ答えていただかなくて結構です。野党の方々に理由なく金を渡したことのある人、手を挙げてください。これはありませんね。これはやがて私が政治家をやめたとき本に書きますから。その本に書いたときに、国対委員長を経験し党の幹部を経験したけれども、野党に対しては金を渡した者は一人もいなかったという記事がいかにうその記事であるかということが明確になる日がありますから、それまでお答えになる必要はありません。ただ、ここできちっとしておかなければならないことが一つあります。  総理、あなたはパチンコを知っていますか。パチンコをやったことがありますか。
  270. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 やったこと、ございます。
  271. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 あれはやはりおもしろいですか。
  272. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 おもしろい面もありますし……。
  273. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 なかなか苦しそうな答弁で、まじめなあなたに聞くのは大変ですからこれ以上質問はいたしません。  ただ問題は、今ここでいろいろなことが言われています。それは何かというと、第二のリクルートの始まりという言葉が使われています。問題はこのことなんです。実際にパチンコ業界の繁栄は、繁栄した分我々が税をいただくことですから、これはすばらしいことで、労働する者に対して遊ぶ時間を与え、楽しみを与えることはすばらしいことですから、称賛をします。ただ、その中で行われてはならないことが行われているとすれば、これは明確にしておかなければなりません。  その第一の問題は、その業界を守るために神聖であるべき国会の中で、主張してはならないことを主張したという人たちが何人かいます。私は、このことは非常に残念に思います。ただし、きょうはまだ国会が始まったばかりですから、名前を 申し上げることは差し控えます。ただ委員長委員長にお願いは、本問題の取り扱いは新しい日本をつくるために絶対に必要な条件を備えておりますから、ひとつ十二分な審議と次の機会に対する発言の機会も与えていただきたいと思います。
  274. 中尾栄一

    中尾委員長 約束します。
  275. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 もう一点、私はこれは大蔵大臣にお願いしたいことがあります。  大蔵大臣はこのパチンコ問題が起こりましたときに、例えば警察庁長官と何かお話ししたことがありますか。なかったらないとおっしゃってください。
  276. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 別にそういう機会を持ちませんでした。
  277. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 法務大臣、お伺いしますが、本問題が国際的な問題である以上、だれもさわろうとしませんし、また非常に危険だと思って物を言おうとしません。しかし、実際問題として表面に出ている問題と裏面で行われている問題はやはり我が日本国家として放置できない面が多々あることも事実です。ですからお伺いしますが、あなたに本問題の報告は的確に行われていますか。お伺いします。
  278. 後藤正夫

    ○後藤国務大臣 お答えいたします。  新聞紙上にも大きく報道され、マスコミも大きく報道いたしておりますので、私どもばかりでなく恐らく検察当局の人たちもこれに対しては関心を持っているだろうと私は推定をいたしております。しかしながら、具体的なそれに対する事例等についてはまだ報告に接したものはございません。
  279. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 渡部公安委員長にお伺いしますが、ちょっと待ってください。これは雑誌ですけれども、雑誌に八週間、あるいは信頼されるべき文芸春秋という雑誌か週刊文春、そういう雑誌に書いてある切り抜き並びにあらゆる新聞紙上のものをきょう私はそろえて持ってきておりますが、この中に発表されているようなことがもし実際に行われていたとする場合に、あなたはどういう態度をとられますか。
  280. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 国家公安委員長は、警察庁の皆さん方がその職務を誇りを持って厳正に全うできるような環境をつくり上げていくのが私の責めでございますから、具体的な面については聞いておりませんけれども、そのような事実関係が確認され、それが刑罰法令に反するものであれば、厳正に対処せられるものと思っております。
  281. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 警察庁長官、いらっしゃいますか。——刑事局長、今の問題ですが、関心をお持ちでしょうか、お答えをいただきたいと思います。
  282. 中門弘

    ○中門政府委員 お尋ねの件につきましては、各種の報道等がなされていることは承知しておりまして、そういう報道を参考にしながら、的確に対応してまいりたいというふうに考えております。
  283. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 ありがとうございました。  あと時間まで四分でございますので、総理大臣に、また大蔵大臣、担当大臣にお願いだけをして質問を終わらせていただきます。  私は橋本龍太郎幹事長が最後の役員会を開いたとき、リクルートのけじめをつけるために、もし国家のためにすべてをささげてくれた中曽根内閣総理大臣国会を辞職してくださるならば、ともに辞職をしたいという申し入れをいたしました。しかし、残念ながらそれは実現はしませんでした。しかし、中曽根先生は中曽根先生らしく、党を離れ反省をされました。私は、今ここで自由民主党が決断をして、野党がとやかく言う前に我々自身の手によって潔く行動することができれば、政権の担当は国民から与えられるものと信じております。しかし、もし仮に、我々がそれをサボタージュして、あくまでも逃げまくるようなことがあれば、政権は野党に移る可能性があります。その場合に、国民の不幸は一体どうなるでしょうか。それは当然のことです。国家安全保障に対して責任が持てず、同時に、世界観の上に立っても、自由主義経済社会の一員としての責任を果たさない限り、あらゆるものを犠牲にして果たさない限り、日本人に幸福感は与えられないということをあえて主張することができ得ない政党、私は国民にとって非常に不幸なことだと思います。  最後に申し上げます。  もし、私が先ほど申し上げた方々が、政党を離党して責任をとり、あるいは国会議員をやめて責任をとり、自由民主党を救うという行動をする者があるとすれば、私はその人たちとともに行動させていただきます。予算委員会において宣誓いたします。どうか総理大臣初め予算委員長、真に新しい日本の政治、みんなで決めて、みんなで動く、みんなのための政治、すなわちみんなで責任を持つ政治は甘えの構造の脱却です。すなわち、国民の欲望を二〇%抑制するか、あるいは国民の方々自身が二五%抑制して世界において物の食べられない人たちに奉仕をするか、あるいは自由主義国家陣営の一員としての責任を果たすためにその予算を投下するか、忍耐に忍耐を重ねなければ我が国家の繁栄はないと私は信じております。  貴重な時間、発言の機会を与えていただきましたことを心から感謝して、定刻四時一分前に終わらせていただきます。ありがとうございました。
  284. 中尾栄一

    中尾委員長 これにて、塩川君、浜田君の質疑は終了いたしました。  次に、市川雄一君。
  285. 市川雄一

    市川委員 私は公明党・国民会議を代表して、総理の所信表明に対して消費税問題あるいは政治改革の問題、防衛問題についてお尋ねを申し上げたいと思います。  まず総理、本会議の御答弁や、あるいはきょう午前中、午後の御答弁を伺っておりました。参議院選挙の結果を厳しく受けとめた。それは消費税だけではなくて、リクルート事件もあり、農産物もあり、トータルで参議院選挙の結果というものを厳しく受けとめた。消費税については総理はどういう受けとめ方をされたのですか。参議院選挙の結果というものを、消費税に関しては総理はどう受けとめておられるのか。
  286. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘のように、参議院選挙の中で争われた争点一つでございますから、消費税に関するいろいろな批判やあるいはいろいろな不満や要望というものも全部あの参議院選挙の結果の中に含まれておったというふうに私は受けとめております。
  287. 市川雄一

    市川委員 そこでお伺いいたしますが、少なくとも社会党も公明党も民社党も、野党は参議院選挙の結果を、与野党逆転という結果が出た、午前中の質疑の中で社会党の山口さんもおっしゃっておりましたが、我々は参議院選挙の結果は、消費税について国民は廃止と、こう審判した、こう受けとめておるわけでございます。総理は、それをなんでしょうか、見直しと国民が決めた、こういう受けとめ方でございますか、どうですか。
  288. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 申し上げましたように、消費税を廃止するかしないかというだけで争った投票ではございませんので、その他の要素や、我々から率直に言わしむれば、大変残念な話ですが、リクルート事件に端を発した政治不信というものから我々に対する御批判もあったろうと謙虚に受けとめておりますし、ですからあの結果は、消費税をやめるとかあるいは続けろとかいうことだけの意思表示という角度からとらえられることはちょっと短絡的だ、私はこう受けとめます。
  289. 市川雄一

    市川委員 もちろん消費税だけで争われた選挙だとは思っておりませんが、少なくとも消費税についても相当国民は審判したと思いますよ。  事前の各種の世論調査、あなたはこの参議院選挙で判断の基準をどういうテーマに置きますかという、これは選挙前と選挙後、両方出ております。大体パーセントが高いのは全部消費税ですよ、総理消費税が大体六〇%とか六五とか、リクルート事件は二四とか三〇とか、選挙前も選挙後も、世論調査では大半の有権者の方が消費税で、まあ消費税だけではありませんけれども、消費税に相当ウエートを置いて選挙の審判をしているわけです。これは世論調査の結果にはっきり出ているわけですね。  ですから、そういうことを考えますと、今総理のおっしゃった消費税についてだけではないけれ ども、少なくとも消費税について、総理はそういう世論調査の結果や参議院選挙の結果をどう判断されているのか明らかにすべきだと思いますが、どうですか。
  290. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 消費税の問題は、先ほども申し上げたように、ほかのいろいろなことと一緒に税体系全体の改革の中で入れたものでありまして、そして中堅サラリーマンの所得をきちっと確保していくこと、あるいは企業の法人税が高過ぎると言われておったのを国際的な競争をしてもらうために活力を持ってもらうように下げていくこととか、いろいろなことを組み合わせてその中の一つ消費税があった。それは所得と資産と消費、この三つの段階で公平に負担していただくとか、すべての人々が公の費用を負担をしていっていただくとかいうような理念がたくさんあった。そうして、高齢化社会がどんどん来るときに、いつまでも直接税と間接税の現在の比率のあり方だけで推し進めていけば、やがて高齢化社会に必要な負担にたえられなくなってくる時代が来るから、今からそれに対して対応しようという、そういったいろいろなことを含めての考えでありましたが、その税の中身そのものを十分に御存じいただいておる方がまだまだすべてではないというのが私の率直な印象で、それはいろいろ市川委員お触れになりましたけれども、私は、直近の参議院の茨城県選挙のときは私も出向いていって、この消費税というものはこういうものですということを声をからしてお願いをしてまいりました。  その結果、みんなの努力によって茨城県では我が党の公認候補が勝たせていただいたというのも、これは直近の紛れもない国政レベルの選挙の結果でございますし、また各新聞の世論調査を見ましても、見直しによって行けという数字が非常に多くなってきておるということも私は御理解をいただき、そしてこの方向に努力しなければならぬなと思っておりますし、もっと肝心なことは、NHKの長時間の討論番組でも、皆さん御苦労さまでしたけれども、あの中のやりとりを聞いておって、あそこへ消費者代表としてあるいは市民代表として出てきた人の中で、真意を理解されずにちょっと我々から見ると間違った意見をおっしゃっていらっしゃる方もいらっしゃる。それは、もっともっと我々の考えておった税制改革の本当の姿というものを知っていただく努力も足らなかったのだな。  ですから、あのときの参議院選挙の大前提となった税制改革の本当の姿というものを国民皆さんに十分御理解いただくような努力も足りなかったということを私は省みて、これからはひとつ冷静な御議論をいろいろいただきたい、こういうことを午前中から一生懸命お願いをしておるところでございます。
  291. 市川雄一

    市川委員 参議院選挙の結果について、消費税有権者はかなり厳しい審判を下した。我々は廃止というふうに有権者は審判を下した。総理はこの点は全くノーコメントでございました、今の答弁は。  ただ、茨城の選挙の結果をおっしゃっておりますが、しかし、参議院選挙は野党が廃止を訴え、与党の皆さんは見直しを訴えたわけですよね。当時の宇野内閣総理大臣も、「見直すべきところは責任を持って見直すとの考えで乗り出したところだ」、数少ない街頭遊説でございましたが、大阪における街頭遊説に行かれたときの記者会見で宇野総理はこう言っておられる。  また、自民党の選挙政策、「わが党の公約」という参議院選挙に向けた自民党の選挙政策にも、「広く国民の声に耳をかたむけ、国民理解と協力を得ながら、必要に応じて見直しをする。」こういう公約を掲げておられたわけでしょう。ですから国民は、野党は廃止、政府・与党は見直し、そういうもとで消費税に対する判断をしたわけですよ。で、もちろんリクルート事件もありましたけれども、与野党逆転。この事実はやはり消費税を廃止せよ、我々はこう思っておりますが、総理はその点について全然お触れになっていない。答弁の中であえて避けている。  それからもう一点、茨城の選挙ではああいうことになった。最近の世論調査では見直しが廃止よりも多くなった。それも世論調査の結果では事実でございます。しかし、皆さんが見直しという幻想を盛んに振りまいていますからみんな期待しているのだろうと思うのですが、見直しができないということになったら一遍に廃止に変わりますよ、世論は。ですから、茨城県の選挙は、まだ見直しができるのかなという感じで見ていらっしゃると思うのです。そういう要素も一つあると思います。まだ見直しの骨格が出ていない、だからわからない。NHKの今お出しになった三夜連続の討論会でも、廃止より見直しが多い。ところが、設問を変えて、政府・与党は見直しができるかと聞くと、できないと答えた方が圧倒的に多いのです、今度は。矛盾していると言えば矛盾しているのですが、廃止より見直しを望むが多くて、じゃ政府・与党が見直しができますかというこういう設問をすると、恐らくできないだろうと答えた方が圧倒的に多い、こういうことも事実です。  ですから、やはりこれは見直しを、選挙が終わって八十日たっているのですから、そろそろもう総理お出しになったらどうですか。選挙で前の総理大臣が約束したのですから、もう早く出したらどうですか。いつごろお出しになるのですか。
  292. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 選挙のテーマの中に消費税の問題が影響しておったということは、私は最初からこれは認めて、ただ、それだけではなかったということを申し上げさせていただいたわけです。  それから、いろいろな御議論、御意見でありますけれども、やはり廃止をするとおっしゃる主張に対しては、これは必要でありますから廃止はいたしませんということでまず御議論をさせていただいた。  それから、野党の皆さんも、二年たったら再改革法案できちっとした恒久財源の姿を示す、それまでは暫定的に従来のところへ戻す、いろいろ線はありますけれども、そういう御発想であります。我々はこの制度を残していきたいと思っておりますから、残すためには謙虚に選挙の結果等も踏まえ、世論の動向等も踏まえて、どこをどう直したら理解がいただけるだろうかということをこれは真剣に考えなければなりません。実施状況も見ながら、また現に行われておるいろいろな各種会合の御意見等も聞きながら、政府税調でも意見を聞いております、各省庁でも意見を聞いております、こういったものを集めてきちっとしていかなければならぬわけでありますから、今出せ出せと言われても、直ちに出すというのじゃなくて、皆さん意見を十分聞いて耳を傾けて、そして予算編成の時期等も念頭に置きながら、私は十一月の終わりごろまでに骨組み、青写真みたいなものを国民皆さんにはお示しして、我々が見直すと言っておった問題の大体のところはこういう骨格であますというようなことを言いたい、こう思って今一生懸命に努力をしておるさなかであります。
  293. 市川雄一

    市川委員 やはりこれは総理にはっきりしていただきたいことは、この臨時国会に法案という形で見直し案を出すのか出さないのかということをはっきり明快にお答えをいただきたい。
  294. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 これは私からお答えをさせていただきます。  私どもは年末に通常どおり予算編成を行いたい、それを前提にして作業をいたしております。と申しますならば、十二月の中旬には次年度の税制改正の内容を確定させなければなりません。そのためには政府の税制調査会からの御意見もいただかなければなりませんし、それ以前に与党の中の論議もおまとめをいただくということであります。私どもとしては今国会の会期内とか会期外ということを考えておるのではなく、本年末例年と同様に予算編成を行うという前提でスケジュールを組んでおるということであります。
  295. 市川雄一

    市川委員 そうすると、この臨時国会に与党の自民党の考えている見直し案が法律として国会へは提出されない、こういうことですか、総理
  296. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 ですから私は、党の方からお考 えがどう出てまいるかは党の手順でありますけれども、それを受けて政府の税制調査会から御意見をいただき、次年度の税制改正の内容を決定するのは少なくとも十二月の中旬まで、予算編成の直前まで、そのように考えております。
  297. 市川雄一

    市川委員 大蔵大臣の今の御答弁ですと、十二月中旬とおっしゃっておりましたが、この臨時国会、会期が十二月十五日ですから、恐らくそういうことから判断しますと、この臨時国会には法律案という形では出しません、来年の通常国会です、こういうふうに今受けとめたのですが、これから総理と議論する前提としてこれは大事なことなのでちょっと確認したいのですが、そういう理解で間違いありませんか。
  298. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 内容がまだ固まり切っておらぬさなかでありますので、私は、できるだけ早く予算編成のことなども頭に入れながら作業を進めて、少なくとも骨格は十一月の終わりまでに国民皆さんにお示しするようにしたい、こう言っておるわけでありますから、どうぞ御理解いただきますとともに、そのときまでの努力によってどうなっていくかということをここで今結論づけてしまうのは、まだちょっと早過ぎると私は思っております。
  299. 市川雄一

    市川委員 そうすると、十一月末には青写真ができる、党の税調、政府税調を踏まえて法律に仕上がるのが十二月の中旬、この臨時国会に出すかどうかはまだ判断できない、こういうことですか。
  300. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今のような御理解をいただければ幸いであります。
  301. 市川雄一

    市川委員 総理はたびたび答弁で、野党は二年かけて、暫定財源で二年間は、与党は恒久税制改革を今見直しをしている、したがって野党も二年後の恒久税制改革論を、こうおっしゃっているのですが、もっともらしく聞こえるのですよ。何か野党が極めて無責任なようにあえて宣伝していらっしゃると思うのですけれども、しかし、私は違うと思うのです。  というのは、この税制改革の経緯ですね、冷静に考えていただきたいと思うのですが、売上税という問題が一つありました。昭和六十一年の衆参同時選挙、中曽根内閣でした。大型間接税は導入しませんという公約違反という問題が、議会制民主主義のルール違反というのが一つあった。それから消費税の強行採決という、またこれは手順を踏み間違えた問題が一つあった。そしてことしの参議院選挙という、消費税廃止か見直しかで国民の民意をそれなりに問うた参議院選挙というものがあった。  私は、この三つの事実を全くこれがなかったと仮定するなら、これは総理や自民党の方々がおっしゃっていることになるほどというふうに思うのですけれども、この三つ、公約違反という問題、それから強行採決した。私たちは、売上税のときも消費税のときも税制改革そのものを否定したわけではない。消費税導入ありきの税制改革はいかぬ、やはり国民のコンセンサスをつくるために向こう二年か三年ぐらいきちっと議論したらどうですかということを、売上税のときもそうでしたが、昨年も申し上げたつもりです。公明党は、税制改革基本法というものをあえて昨年出しました。改革の理念、手順、そういうものをうたった改革法を出した。それを皆さんは押し切って、昨年の消費税国会で導入を図った。ですから、公約違反があって混乱が起き、そして消費税の強行的な導入があって混乱が起き、その結果を参議院選挙国民が審判した。ですから、我々はこれは廃止と受けとめておるわけですよ。  では、廃止後はどうするのか。廃止後はどうするのかということは、皆さんが犯した拙速をまた我々は避けるために二年という、二年では短いかもしれませんが、短い二年という年限を置いて十分今後の税制改革を議論しましょうということを申し上げておるわけでして、皆さんはそういう公約違反とか強行導入とか、参議院選の結果というものを全くどこかへ忘れちゃって、どこかへ棚へ上げちゃって、そして野党の財源はどうだとか、あるいは二年後のこれを早く出せとか、これは極めて私は本末転倒の議論ではないかというふうに思いますし、それをおっしゃるなら、参議院選挙中から与党は見直し、こうおっしゃって、参議院選挙が終わって八十日たったのですから、堂々と見直しを出すのが筋じゃありませんか。総理はどうお考えですか。
  302. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 参議院選挙中という御指摘でありますので、当時の責任者として改めて私からお答えをさせていただきます。  当時、確かに我々は逆風の中の選挙を戦いました。そして、消費税以前に、政治不信に対してのおわびを申し上げることから始めなければ我々の主張には国民は耳を傾けていただけない、大変情けない、つらい戦いでありました。しかし、そのおわびを申し上げ、政治改革に取り組む決意を申し上げた上で、消費税について私が申し上げてまいりましたのは見直しのお約束であります。そして同時に、その時点において出ておりました見直しの声というものは、消費者のお声と、その消費者と接するいわば窓口の部分でありました。しかし、その後、納税義務者の方々の声も出てくるでしょう、これを両方を伺った上で我々は見直しを責任を持っていたしますと申し上げてきたのが、党のその時点における約束であります。  そして、この十月二日、簡易課税を選択されるか選択をされないかの届け出を初め、納税の事務がスタートをしたわけでありますが、まだ例えば限界控除につきましては本年の最後の決断を経営者の方々がされるわけでありますから、こうしたものまできちんと見届けて私はお答えを出すことがむしろ我々の責任だと考えております。
  303. 市川雄一

    市川委員 私の質問お答えにはなっていないと思うのですが、最近、与党の小沢幹事長が、衆議院選挙の結果もし過半数を割ったら野に下るとか、あるいは過半数を割った場合は、第一義的には幹事長の責任だけれども、総理の責任も出てくるとか、こういうことを記者会見でおっしゃっておりますが、総理、総選挙で過半数を割った場合は、総理の責任あるいは野に下るという、そういう御決意ですか、どうですか。
  304. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 新聞報道によってそういったことを私も承知しておりますが、いろいろな御意見があるというのは、これは民主主義社会ではあることでございますし、それから、負けたとか勝ったとかいう以前に、私は今ここで御議論願っておるような政策課題に真剣に取り組んで、政治不信を脱却し、税制改革を定着させたいという強い気持ちを持っておりますから、選挙のことは考えておりませんので、その後のことはこれも考えておりません。
  305. 市川雄一

    市川委員 しかし、与党の幹事長はたびたびおっしゃっていますよね、総理・総裁ですから。  それから、この際はっきりしておきたいのですが、もし衆議院選挙で過半数を割ったら消費税廃止、こうお思いになりますか。また後で、あれは違うんだ、こうだということはおっしゃいませんね。どうですか。
  306. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 そういったことを前提にして私は今汗を流しておるのでは決してないわけであって、私は必ずこれは御理解をいただけるようにしたい、そしてそのためにはどうしたらいいかということを、先ほどもおっしゃったように拙速はいけない、きちっと時間をかけて考えて、そして御理解がいただけるようにせよということでありますから、そういう国民皆さんの声にはきちっとおこたえしなければならぬと思いますので、勝つとか負けるとか、そういったことを前提で御議論を進めることは、市川先生、正しくないんじゃないかと私は思います。どうぞ勘弁してください。
  307. 市川雄一

    市川委員 さっきから参議院選挙の結果を伺っていても我々は廃止と受け取った、こう申し上げても、総理は、いやいろいろな要素があってどうのこうのと言うので、では消費税についてどう思いますかと言うと、どうのこうので明快なコメントがない。私たちはこの国会消費税廃止皆さんは見直し、両方並べて十分に議論して、争点を明確にして、まあ任期があと半年の射程に入って いるわけですから、いずれは解散・総選挙になるわけですから、私は、この国会で見直しか廃止か十分議論をして、争点を明確にして解散をやる。そのときは消費税廃止かどうか、参議院選挙に続いてやはり同じ争点で争われるわけですよ。そのとき与野党のルールを決めておかなければいけませんね。また参議院選挙の結果の受けとめ方みたいなことを言われたのでは、これは選挙にならない。ですから、与党の幹事長もはっきりおっしゃっているし、三塚政調会長もはっきりおっしゃっているし、過半数を割った場合はこれは消費税廃止、我々はこう思いますが、総理の御見解を明確にお答えいただきたいと思います。
  308. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 参議院選挙消費税だけで争われたのではないと申し上げましたが、それと同じように、いつ我々の任期中に来る選挙消費税だけで戦う選挙ではございません。現在の、先ほど来ここで御調論になっておる激しく動き変わる国際情勢の中で、日本は一体西側の一員としてどうするんだ、ここまで経済力が豊かだと言われながら、世界に貢献を求められながらどうするんだということも大きなテーマになってくると思いますし、日々移り変わっておる東側の内部の大きな移り変わりがどのように片づいていくのか、あるいは地域紛争の今壁に乗り上がっておるのがどう片づいていくのか、累積債務問題にはどうするのか、地球環境にはどう対応するのか、日本の政治に課せられておる責任は消費税だけではないと思います。  消費税も大切なテーマだけれども、ほかに国際的にも国内的にも、福祉の問題にしても何にしても、片づけなければならぬ問題はたくさんある。同時に、地域を活性化しなければならぬという、地方を魅力あるものにするにはどうするかということや、心を豊かにするためには教育はどうするかとか、いろいろな問題がありますから、私はこの次の任期が来るまでにいろいろなことを考えますけれども、次の衆議院選挙は決して消費税だけで戦うものではございません。ほかのことをみんな総合的に国民皆さんに訴えて、その中で消費税は、今既に行われておるけれども、これをこのように変えさせてもらいますという見直しの問題についても議論になり、それが重要なテーマになることはこれは当然でありますから、トータルとしてお考えをいただくのがありがたい考え方である、こう思います。
  309. 市川雄一

    市川委員 何か地球規模のことをるるおっしゃっておられましたが、要するに与野党で今対立をしているのは消費税なんですよ。地球破壊から地球をどう守るか、これは別に対決してないのですよ。むしろやり方が遅いというぐらいこっちはもっとしりをたたきたいぐらいです。あるいは累積債務問題だって深刻な問題で、これは別に与党と野党が見解が対立しているわけではないわけでして、特に今税制改革が先鋭的な争点になっているからお伺いしているわけで、総理、やはりそれは自信満々でしたら、何か過半数を割ると困るみたいな感覚でおっしゃっていますが、過半数を割りましたら消費税は廃止です、政権は野党に渡しますと明快におっしゃってごらんなさいよ。どうですか。
  310. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 そういうことを前提に物を考えたり、取り組んだり、そういったことはできません。
  311. 市川雄一

    市川委員 それじゃ質問の角度を変えます。  まあテレビを見ておられる方々はおかしいと思っていると思うのですよ。それは、参議院選挙のときも宇野総理は見直しをおっしゃった。それから、海部総理は茨城の選挙でも思い切った見直しということをおっしゃったわけです。これに書いてあります、「思い切った改革を」と。それから、所信表明でも思い切った見直しということをおっしゃっておられるわけでしょう。見直しという言葉だけが八十日間躍っておるわけですね、新聞、テレビを。それで一向に何をどう見直すのかという骨格もなければ、ポイントもなければ何もないのですよ。これはやはり国民皆さんはおかしいなと感じていると思いますよ。ですから、見直すと言う以上はまずい点があるから見直すというふうに思っていらっしゃるわけで、消費税にまずい点がないなら見直すということはおっしゃらないわけですから、では、どういう点がまずいと感じて見直しをおっしゃっているのか、そのまずいと思っておられる点を明快にしていただきたいと思うのです。
  312. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 消費税の問題については、私も何回も申し上げておりますように、我々は必要だと思って、減税も先行したりいろいろして、中堅サラリーマンのことも考えたり、高齢化時代に必要だというのがわかって、これは必要だ、いいことだと思ってお訴えをしたのですが、それは不幸にしてほかの問題、リクルートによる政治不信であるとか農政の問題であるとか、そのほかにも地域問題もいろいろあったでしょう、そういったことを含めて、結果として厳しい審判を受けたということを謙虚に受けとめますとともに、新聞の世論調査その他を見ても、これは見直しなさいという数が一番多いということになれば、逆に教えてもらわなければならぬので、どこがいけなかったんですかと国民皆さんから聞いておるのですよ。  聞くときに、それは各立場の違う方もいろいろありますから、そういったところで聞いておるわけですよ。聞きながら国民皆さんの声に謙虚に耳を傾けて、そしてその指さす方向と、そして我々が、よしそれではここを思い切って見直そうと思うところと合致すれば、それが見直すべき点であり、そして見直しましたからどうぞ理解をしてください。結局、先ほども言われたように、我々の思うとおりでいかなかったならば国民世論に耳を傾けて、そして見直そうということでありますから、どこをどうするかということを今対応しながら、実施状況等も眺めながら声を聞いておるというところですから、もうちょっと時間をかしてください。
  313. 市川雄一

    市川委員 我々が要求したわけではない、国民が要求したわけではないのに、我々が廃止を言い出したらあなた方が見直しを言い出したのじゃありませんか。見直しを言い出したということは、消費税のどこかにまずい点があると思うから見直しを言い出したのでしょう。だから、見直しを言う以上は、こういう点とこういう点とこういう点がまずい、まずい点としては何カ所かある、全部を見直すかどうかは別としても、我々がまずいと思っている点はこういう点でございます、こう言うのが議論の前提じゃありませんか。  それからもう一つ、今総理はいみじくもおっしゃいましたけれども、国民が言っている見直しと我々が思うところと一致するかどうか、こうおっしゃいましたね。我々が思うところはあるんでしょう。ここできちっと国民皆さんに言うべきじゃありませんか。
  314. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私は最初から何度も申し上げておりますけれども、税制改革全体の姿の中で、あれはいいことだと思って我々は出したわけでありますから、だから見直そうなんて初めから思っておったわけではないのです。ところが、選挙のさなかにあのような結果になりました。予断と憶測でもって物事を判断してはいけませんから、いろいろな事情の中で、消費税に対して廃止という議論にああいった結果が出てきたということについては、国民皆さんは我々の気づいていないようなところで何か気づかれてここをこうしろとおっしゃるのか、あるいはまた逆の立場からいうと、この間の例を見ても、十分我々が真意を御説明し足らなかったところがあるから、この間の討論会でもああいったちょっと事実に違うような角度からの御発言が出てくるわけですから、これはまだまだ周知徹底していないな、だから徹底させながら、そして御意見に耳を傾けながら、そしてここを直したら御理解願えると我々が判断できるところがあったら、そこは思い切って見直していきます、こう言っておるわけであります。今から我々が欠陥だ、欠陥に気がつきながら通しちゃったんだということではありませんし、たしか私の記憶に誤りなければ、法律に修正で見直しの条項 等もできておるわけでありますから、それに従って見直すことが全然いけないということでもないんじゃないでしょうか。ですから、その努力だけはお認めをいただきたいと思います。
  315. 市川雄一

    市川委員 今の総理見解は二つの点でおかしいと思いますね。というのは、選挙の結果を見て見直しを言い始めたとおっしゃっていますけれども、そうじゃないじゃありませんか。参議院選挙選挙中に宇野総理大臣は見直しをおっしゃったんじゃありませんか。それから、自民党の参議院選挙に向けた公約の中に見直しをうたっているじゃありませんか。ですから、参議院選挙の結果を見て見直しを言ったんじゃなくて、みずからの意思で見直しをおっしゃったんでしょう。だから、みずからの意思でおっしゃったんだから、消費税のどこが悪いと思って見直しを言ったのか言うべきじゃありませんか。これはおかしいと思いますよ。
  316. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 都議選のさなかからいろいろなことを肌で感じておったということを正確に申し上げるのを忘れましたから、それをつけ加えさせていただきますし、同時に、どこを見直すかということは、それは何度も申し上げますように、定着をさせるために、御理解をいただくために、どこをどうしたらいいかということをこれから検討していく、そのときにはいろいろな国民皆さんの御意見を聞く、こういう態度でおります。
  317. 市川雄一

    市川委員 もう一点、先ほどの総理答弁の中で、消費税の中に見直し条項がある、こうおっしゃっていましたが、これは消費税の中じゃなくて改革法ですよ。税制改革法の十七条にあるわけでして、これは消費税の見直しをうたっているんじゃないんですよ。勘違いしないでください。税の全体を言っているんじゃありませんよ。これは簡易課税と免税点と限界控除について見直しを言っているのであって、消費税全体を見直しをしているわけじゃありませんよ。どうなんですか、大蔵大臣、これは違いますよ。
  318. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 税制というものを不断に見直す必要があることは、これは当然のことであります。そうした中で今回の税制改革法十七条三項には見直し規定が入っており、私はこれを根拠にして見直せると理解をいたしております。
  319. 市川雄一

    市川委員 中小企業の事務負担などに配慮した諸措置はと、主語はこうなっていますよ。そして免税点、簡易課税、限界控除ですよ。法制局の見解も恐らくそうだと思いますよ。念のために衆議院の法制局に確かめたら、そういうふうにおっしゃっていました。どうですか、法制局長官、これは消費税全体の見直し条項ですか。だって、主語は中小企業の事務負担などに配慮した諸措置は、免税点、簡易課税あるいは限界控除、こうなっているじゃありませんか。ですから、そこへ表示をどうするとかこうするとか、そんなことは入っていませんよ。  これを要求したのは野党でしょう。特に、大変申しわけありませんが、民社党と自民党の間でこの話し合いが行われた。我々も賛成はしました。それはなぜかというと、消費税全体の見直しに賛成したわけじゃないじゃありませんか。我々が賛成したのは、中小企業者と中小企業者の間に再び不公正を生むのではないのか、免税点とか簡易課税とか限界控除という制度が。したがって、中小企業の事務負担などの軽減の諸措置については、これを実施状況を踏まえて見直すものとする、こうなっているわけであって、これは消費税全体の制度を見直すとか見直さないとかということではないですよ。冗談じゃありませんよ、これは。
  320. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 十七条の条文をそのとおり読みますと、「消費税の中小事業者の事務負担等に配慮した諸措置については、」中間を省略いたしまして、「その見直しを行うものとする。」というようになっております。与野党で話し合いが行われましたときに、ここに「等」というのがある、その「等」というのをどのように読むのかということが問題になりました。主たる御疑問は、帳簿方式と伝票方式の問題につきまして、そういうようなものは対象にならないのかということでございました。つまり、中小事業者だけの問題でないから対象にならないのかということでございましたが、そのようなものも含めまして、広く考えるということで御了解があったというように承知いたしております。  それからもう一点、私ども政府の税制調査会から答申をいただいておりますが、その中で、何しろ新しい制度をやることであるから、今の制度にこのままこだわるのではなくて、広くいろいろの声を聞いて、そして見直しを行っていくべきであるという答申もいただいているわけでございます。
  321. 市川雄一

    市川委員 答申をいただいておるということと税制改革法に消費税全体の見直しがうたってあるということは違う問題です。十七条で言っておる修正は、消費税の中小企業者の事務負担軽減などに配慮した諸措置については、その見直しを行うものとする。消費税全体の見直しだったら主語を変えなきゃいけませんよ、主語を。消費税の中小企業者の事務負担軽減などに配慮した諸措置なんです。消費者とは言っていない、消費者とは。よろしいですか。ですから、これをもって消費税全体の見直しを法律が義務づけているというふうに我々は全く認識をしておりませんし、考えておりません。総理、どうですか。
  322. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 法律の読み方や「等」という字の読み方についてのいろいろ意見を、これ以上闘わせるつもりは私ありませんけれども、要するに我が方といたしましては、これは見直しをして定着をさせていただきたい。それからまた、私個人がなぜ見直しを言っておるかというと、参議院選挙を通じてこのような結果が出た以上、定着させるためには、我が内閣としても思い切って見直しをしなければならぬというので、政府の税制調査会等にもお願いをしておるのでありますから、そういう気持ちをどうぞ率直にお認めをいただきたいと思います。
  323. 市川雄一

    市川委員 常識的に考えて、やはり国会がわかりづらいと言われる原因は、こういう議論をしているからわかりづらいと言われちゃうんですよ。見直ししますと言ったら、やはり自分がどこかまずいことがあるから見直しをしますと一般の人は受けとめるんですよ。それを、選挙が終わって八十日たってこれからどこを見直すか意見を聞いているのですと。で、その骨格もまだ示さなければ、どういうポイントなのかもわからないというのは、これは非常にわかりづらい議論なんです。  ですから、あえて伺いますが、今消費税で問題になっている点、税額表示について外税と内税という議論がある。見直すのはこの点かどうか。どうですか。
  324. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 その税額表示の問題につきましては、いわゆる制度的な法律条文までを含めた見直しの問題ではございません。なぜなら、その表示について法律は何らの義務づけをいたしておりません。ただ、消費者の方々が御自分のお求めになる商品をお求めになるときに、外税の方を望まれるのか内税の方を望まれるのか、あるいは総額表示を求められるのか、これは消費者の方々の一つは選択の問題であり、もう一つは、それぞれの業界の流通の形態にもよることであろうと存じます。ですから、これはある意味では、おのずから流れていくみんなの一番使いやすい方向というものにまとまっていけばいいと思うことでありまして、法律の改正を要するものではございません。
  325. 市川雄一

    市川委員 そうなんでしょうけれども、ある業界にはかなり指導された面もあると伺っております。  それからもう一つ、個々に伺いますよ、見直す点がまだわかりませんのでね。生鮮食料品を、例えば三塚政調会長はNHKの三夜連続の討論会では、生鮮食料品とか生活必需品という言い方をしていらっしゃるわけでして、あるいはこの間のテレビ朝日でも、十月四日の日ですか、代表質問のあった日に、生鮮食料品、イギリスでも、外国でも例がありますからやってできないことはない、こうおっしゃっておりますが、特にこの点に一番声が強いというふうに総理も会見でおっしゃって おられる。生鮮食料品を非課税にするということは強くお考えなんですか。
  326. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今、生鮮食料品及び生活必需品という二つの言葉をお使いになりました。生鮮食料品を含めた食料品につきましても、また生活必需品という言われ方にいたしましても、実はその定義がはっきりいたしません。しかし、そうした定義がはっきりしないことを前提にして申し上げますならば、非課税範囲の拡大を論議するとき、政府税制調査会等においても当然留意され、論議をされるべきポイントの一つであろうとは思っております。
  327. 市川雄一

    市川委員 この生鮮食料品というのは、線を引くのが非常に難しいだろうと思うのですね。生でぴちぴちする魚は生鮮食料品で、仮に頭を切っちゃったりしっぽを切ったりして並べたらどうなるとか、かまぼこに加工したらどうなるとかいろいろな御議論があるようですが、これ、やれますか。おやりになる考えですか、生鮮食料品の非課税というのは。総理、どうですか。総理も記者会見でおっしゃっていますね、そういう趣旨のことを。どうですか。
  328. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 ただいま申し上げましたとおりに、生鮮食料品とおっしゃる方、食料品とおっしゃる方、主食とおっしゃる方、いろいろなおっしゃり方がございますけれども、こうした問題が、非課税範囲の拡大を論議されるとき政府税制調査会においても論議の対象になるであろうということで、現時点はお許しをいただきたいと思います。
  329. 市川雄一

    市川委員 それでは、免税業者、簡易課税、限界控除、これもやはり議論になりますか。議論しますか。
  330. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 もともと私は、国民が見直しを要望される問題点についてはすべてを税制調査会の論議の対象にしていただく、その上で、なぜそれが採用されないか、あるいはそれが採用されるか、こうした点を明らかにしていくと申し上げております。こうした点についても、国民のお求めが強いと税制調査会が意見聴取等の中で御判断になれば、これらの点も論議の対象にはなろうかと思います。  現在、消費者団体を初め、順次意見聴取を続けておられるところでありますので、その状況の中で、私自身がどう税制調査会として対応されるかについて十分申し上げることはできません。
  331. 市川雄一

    市川委員 仮に生鮮食料品で非課税枠を設けた場合、帳簿式ではできないんじゃないですか。同じスーパーの中で非課税品目と課税品目を売る場合、帳簿で一々やっていたんじゃ処理がすぐにできなくなると思いますね。そうすると、帳簿式とか伝票式とかという問題がまた発生してくるんじゃありませんか。これはどうお考えですか。
  332. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 これは私が今お答えをするのが適切かどうか、非常に判断に迷っております。(市川委員「見直しをおっしゃらないから聞いているのです」と呼ぶ)いや、見直し自体を私は政府税制調査会にお願いを申し上げておる立場であります。そのお願いをした当事者として、その意見を拘束するわけにはまいりません。
  333. 市川雄一

    市川委員 見直しをしますと、こう言いながら、じゃ見直しの中身はと聞くとそれは今言えない。じゃ、具体的に一つ一つ今みたいに、まだあるのですが、伺っていっても、それは政府税調とかこうおっしゃって……。  ですから、恐らくこれ、見直しができるのですか、総理。私たちは見直しはできないと見ているのですよ。生鮮食料品の線引きだって、簡単にはいかないと思いますよ。大変だと思います。何が生鮮で何が生鮮でないのか。じゃ、その生鮮食料品をとる漁船はどうなるんだとか、いろいろな売上税のときと同じ議論が起きてくると思うのです。ですから、線を引くのが非常に難しいと思いますし、その場合帳簿式ではとても対応できないだろうと思いますし、常識的には伝票式ということになるのかなと。  あるいはもう一点、大蔵省の試算では、消費税導入のとき理論上の予想として四千八百億、消費税収入総額の約八%、これが国庫に入らない、納入されない、こういう試算を昨年たしかおっしゃっておりました。この問題も大きな問題だと思うのです。消費税の理論上では八%。総理は、免税業者のうち、小売で四割、サービスで七割の業者が免税ではあっても転嫁をしていないから、その分消費者に利益が還元しているんだ、こうおっしゃっていますが、しかし、小売で六割の人が転嫁しているわけでして、総理のおっしゃった四割を裏返しで言うと六割、サービスで三割の人が転嫁をしているわけでして、要するに、買い物に行った消費者がお店にお金を払った消費税が国にそのまま入らないということは、どこまでいってもこれは残るわけですよ。そういう納税者が、消費者が負担した税金が国に入らないというのはやはり大きな欠陥だと思うのですが、この辺も検討されているのでしょうか、どうでしょうか。
  334. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 まず、私の方から申し上げたいと思いますのは、確かに免税点以下の業者の方々が我が国の法人数の三分の二を占めているという事実であります。しかし同時に、これは売上高に換算をいたしました場合にはその三%を占めているということでありまして、三分の二の方々のお預かりをし、国にお納めをいただく税金に問題があるということではございません。  そして、総理からも御答弁を申し上げましたように、これらの業者の方々が理論値として完全にその三%を乗せていかれた場合という仮定の数字を大蔵省は申し上げたと存じますけれども、現実に小売の方々のうちの四割、そしてサービスの方々の七割が転嫁をしておられないということも事実であります。そして、これを完全に免税点をなくしてしまった場合を想定しました場合に、その徴税コストあるいは物価への影響等々相当さまざまな判断要因が別種の問題として加わってくるのではないか、そのようにも考えております。
  335. 市川雄一

    市川委員 例えばタクシーの場合は、免税業者でも同一料金制をとっておって、恐らく運輸省とか大蔵省は、免税業者でもタクシー料金には三%転嫁するように指導されているやに伺っています。こういうことがどういうことを生み出すかというと、消費者と物を売っている小売の方々、この間の信頼関係に何か非常に亀裂が入ったと思うんですよ。  もう一つは、同じ商店街の中で、同じ免税業者でありながら、あそこの商店は転嫁している、ここは転嫁してないという、今度は商店同士の信頼関係の亀裂、こういうものを現状生み出しているのではないかというふうに思います。  それで、さっき総理はおっしゃいましたが、廃止より見直しが多い。これは、見直しを本当に議論していくと見直しができないということになるんじゃないでしょうか。例えば生鮮食料品の非課税枠、大蔵省の大枠の試算が新聞に出ておりましたが、約六千億から九千億、生鮮食料品を非課税にした場合。これは収入減になるわけですね。この収入減を代替財源をどうするのか、こういう問題も起きてくる。橋本大蔵大臣はテレビでは、それは歳出をカットします、こうおっしゃっておりました。おっしゃいましたね、NHK討論会で。野党は、代替財源二年間に一兆三千億の自然増収を入れた。同じことですよ、歳出をカットするということも自然増収を入れるということも。要するに来年度の歳出入の中で調整するという考え方ですからね。ですから、歳出をカットするというのも、そんなに違うことをおっしゃっているわけじゃないわけです。  ですから、やはりもっとこの国会で廃止と見直しの両方の議論があって、それがきちっと議論されることを国民は期待していると私は思うのです。何か政府・与党の方が一方的に見直しを十二月の中旬の方へずらしていって、限りなく臨時国会が終わるころに持っていっちゃうという、これは僕はちょっとアンフェアだと思いますね。じゃ、百歩譲って、もし法律にするのは難しいとおっしゃるなら、考えの骨格ぐらいきちっとこの臨時国会で示すべきじゃありませんか。そして、野党の財源についてけちをつけるならわかりますよ。何もこう、何か十一月の中旬です、十二月の中旬 ですと全部先送り。これじゃ、この臨時国会の議論がかみ合わないじゃありませんか。総理、何らかの見直しの骨格を出すフェアな態度をお持ち合わせはありませんか。どうですか。
  336. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 何度も申し上げて恐縮ですけれども、我々はまず、皆さんの廃止ということに対して、必要があるからこれは存続ということで対応さしてもらうのがまず第一幕だと思いますし、それから、これはあくまで恒久税制でありますから、ですから、本当はそれに対応するのは二年先の、皆さんの再改革で二年たったらだとおっしゃいますが、我が方はそうじゃなくて、予算編成の日程等も頭に描きながらできるだけ早い機会に出したい。ただ、予断と憶測でもってこれだとまた言ってしまうということは、今おっしゃるようにいろいろな問題点もありますから、方々のいろいろな御意見も聞き、国民皆さんの各界の御意見も聞きながら定着が図れるようなものにしていきたい。  一つ一つ取り組み、見直しは今いみじくも御指摘になったように、ここはどこで線を引くのか、ここはどこで線を引くのか、いろいろ一つ一つ理詰めで考えていくと難しい問題がたくさんありますから、時間もかかるというふうにも御理解をいただきたいし、また、ヨーロッパ、アメリカのOECD加盟国の中でこの付加価値税というのをとっておらない国は、私の記憶に誤りなければ日本だけであって、しかも、社会主義国でもあるいはアジアの近隣諸国でもこういった税制は必要だと言っておとりになっておる。この間うち、IDUの会議で各国の党首が日本に大勢来られて、たまたまこの税の論議になりましたけれども、今日本では苦労しておるようだな、我が国ではこうだぞ、ああだぞという話の中に、今議論になっておるようなことが既にヨーロッパでは定着をして、一応食料品の問題なんかも、市川委員もお触れになったように、英国なんかではもう線を引いて実行をしておる。オーストリアでも実行をしておる。  そうすると、それらの国で実行するときも、姿かたちというものも検討するときの対象としてはこれは大切なものだと思いますし、また、午前中の議論でも、社会党の伊藤委員がそれを視察をしてきたと、いろいろ行われておる実態等も見てきたとおっしゃいますが、ヨーロッパ、アメリカに追いつこう、追い越そうということを悲願として戦後きょうまで営々と努力してきた我々から見れば、それらの国々が定着させ、成功させ、いいことだと思ってやっておることも参考に、一つの距離の中に入れて考えながら、見直し案というものはどういったものがいいのだろうかということを、恒久財源でありますから責任持って考えていかなきゃならぬので、いろいろそういったこと等も踏まえて考えておるわけでありますから、どうぞひとつ、十一月の終わりごろまでにそういった骨格だけは決めたいと思って、いろいろな意見を聞いて努力しておるさなかでありますから、お認めをいただきたいと思います。
  337. 市川雄一

    市川委員 諸外国は間接税、付加価値税を導入していると、さっきも主税局長が世界の流れみたいなことをおっしゃっていましたけれども、日本は、シャウプ税制以来総合課税というものを中心に据えて、総合課税をある意味では租税特別措置で外してきた歴史があるわけですよ。ヨーロッパは、取引高税とかいろんな、先に大型間接税を十年ぐらいかけて実験しておるわけですよ。それでようやく定着したわけです。しかも、導入するときに、八月に国会に出して十二月に国会を通すなんというやり方はしていないのですよ、ヨーロッパは。やはり二年か三年、国会へ出す前にきちっと議論していますよ、国民の間で。だから、ヨーロッパを例に出されるのはいかがかと思うのですよ。  私たちは、高齢化社会へ向けての税制改革はどうあるのか、昨年、二年か三年議論しましょうということを言ったわけですから、それをやらないでやったところに、一つはボタンの手順違いというのは大きい。公約違反が一つ入り口にあって、参議院選挙があって、それで今こういう事態になっているわけですから。野党に全く責任がないとは思いませんが、こういうこんがらかった状態をつくり出した一番の原因、これは与党じゃありませんか。公約違反があって、強行導入があって、参議院選挙国民の審判があって、ですから私たちは、これは廃止して出直せということを申し上げているわけです。皆さんは、廃止する必要ないとおっしゃっているわけです。それはそれでわかるのですよ、皆さんのお立場は。ただ、私たちは見直すのだとおっしゃっているのだから、どこを見直すのか早く言いなさい、こう言っているわけです。これは申し上げておきたいと思います。  それで総理総理は、大変古いことで恐縮なのですが、昭和五十四年の八月四日、約十年前ですね、一般消費税が大平内閣で話題になっているころ、記者の質問に答えて、「直ちに税金をあげればいいというんでは安易ですよ。増税に行くには〃そうか、それまでやってできなければやむを得ない″という国民的なコンセンサスがないと、なかなか成功しないと思う。まずぜい肉落としから始めるべきです。」  記者が行革ですか。総理、そうです。「今までず—っと歴代やってきたんですが、これは口だけでなかなかできない。官僚機構は根強いもんだから、軽々に手をつけない方がいいということでは、国民には納得できない話であって、やっぱり従来のカラを破って一歩踏み込んでいく姿勢というものがいるんじゃないでしょうか。」これは総理がおっしゃっているわけです。  さらに聞かれて、「大変な時期ですから、」各省の「一局削減、あれくらいの荒っぽいことを考えてやった方がいい。」とおっしゃっているわけです。  そういう前提に立って、ですから、一般消費税についての総理の考え方は、やはりその前提に行政改革がなければだめだ、国民は、ああ政府があそこまでスリムになるのに苦労したのか、それでもお金が足りないのか、それじゃやむを得ない、こういう国民のコンセンサスがまず先にあるべきだということを総理はおっしゃっているわけです。これは正論だと僕は思いますね。  それからさらに、「増税を言うだけでは片手落ちってことですか。」という質問に対して、「一獲千金、安易な道ですよ。」こう総理ははっきりおっしゃっているわけです。「汗を流さない安易な道になっているから、国民の側から体質的な反発が出てくるんじゃあないですか。」と。  こういう、十年前で大変恐縮なんですが、政治状況も多少は変わっておりますが、しかし、この消費税導入に当たって何か行革をやりましたか。国鉄改革と電電改革だけでしょう。省庁の、政府自体の改革はやってないじゃありませんか。しかも総理は一獲千金だと言うのです。どうですか、総理、お考えを。
  338. 水野清

    ○水野国務大臣 行財政改革をどのぐらいやったか、こういうお話でございますが、御承知のとおり、電電公社をNTTに民営化をいたしました。専売公社をたばこ会社にいたしました。また、日本航空の株の放出をいたしました。大体、それで金額にいたしますと約十一兆円の金を生み出して、これを財政の方へ回し、あるいは国債の減額に回した、こういうことでございます。  また、国家公務員の減員をいたしました。これが約三万人近い、細かい数字は覚えておりませんが純減をいたしております。大体、国家公務員一人年間平均して約五百万ぐらいの年収と計算をいたしますと、約千五百億ぐらいの財政支出を人件費の面でも減らした、こういうことでございますし、私のおります今の総務庁というのは、中曽根内閣のときに、行政管理庁と総理府を廃止いたしまして一つの役所にしたわけでございます。
  339. 市川雄一

    市川委員 国鉄改革は、要するに行革というよりも国鉄自体の赤字をどうするかということでやったことで、要するに行革というのは政府の省庁ですよ、外務省とか通産省とか大蔵省とか、これをどうするかということを国民に見せなければ、これはみずからの改革にはなりませんですよ。もちろん、国会も定数を減らすとか、我々は衆議 院を四百七十一名にまず第一段階戻そう、参議院は五十名削減して二百名でいいということを参議院選挙で提案しておりますけれども、国会ももちろん改革をしなければいけない。同時に、政府もそういうみずからの血を流すことをやってみせてということでなければいけないということを総理はおっしゃっているのですよ。総理、私が言っているのではなくて、総理がおっしゃっている。そのとおりになっていませんねということを総理に申し上げているわけです。そのとおりになっていますか、総理は、この消費税案の導入というものがそういう厳しい行革の上に導入されたのだという御認識ですか。どうですか。
  340. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 行政改革というものの必要性を認めて一生懸命努力をしてきたことはそのとおりだと思いますし、国鉄にしろ、あの一つだけをとらえてみても大変な努力で大変な行革だったと思いますし、また政府の内部においても、公務員の必要な部面についてはこれは認めても、その後いろいろ全体として削減の努力もしてきたということは今も総務庁長官が申し上げたとおりであると思いまして、そのときそのときにおける行政改革の努力は随分続けてきたと思います。  また同時に、平成二年度赤字公債に頼らない、そういった一つの目標を達成するために今鋭意努力をしておりますけれども、それが達成されたとしても、まだまだ公債利払いその他の問題等考えると、百六十兆という大きな残高も残るわけでありますから、今後もこれは引き続き行政改革には取り組んでいかなければならぬという決意もこの間申し述べたつもりでございます。そのように考えております。
  341. 市川雄一

    市川委員 消費税の見直し案を早く出していただくことを要請して、消費税問題は終わります。  次に、政治改革について海部総理見解を承りたいと思います。  海部総理は、三木総理を師匠と仰いでこられた。三木総理は、極めて政治倫理には高い理想を掲げてこられた方でございました。そういう意味で私たちは、海部総理の誕生において政治改革がここで具体的に進むのかなという期待を持って見たのですが、どうもこの御答弁を聞いていると余り違いが出てこない、極めて残念に思っております。  そこでお伺いしますが、宇野総理総理大臣当時、宇野内閣においては、リクルート事件については、リクルート事件に関係した人を閣僚に入れるか入れないかについては、リクルート事件発覚前の政治献金であったのかどうか、それから献金が職務権限に関連があったのかなかったのか、三番目として金額が極めて大きいものかどうか、この三点で私は閣僚を選びましたということをお答えになっている。海部総理は同じでしょうか、どうでしょうか。
  342. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 リクルート問題に関して党のけじめ案というのが党で決められました。私は、そのけじめ案に従って対処してきたわけであります。
  343. 市川雄一

    市川委員 それは今申し上げたようなことですか、具体的には。
  344. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 リクルート社からの政治献金というものは、リクルート社が今日のように社会問題になる以前のもので、そして通常の政治資金規正法によって届け出がしてあるということは、それは特に事件との関連はないというふうに私は判断して、ただ、それは今後みんなが厳しく戒めて注意していくべき問題だと思っておりますし、株の問題につきましては、未公開株の譲渡を受けた人に対しては、党のけじめ委員会が一定期間の辞退を決めておりますから、それに従って対応をいたしました。
  345. 市川雄一

    市川委員 ですから、事件の発覚前なのかどうか、職務権限に絡んでいるのか絡んでないのか、それから金額の大小、こういう観点はお持ちじゃないのですか。
  346. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 通常の政治資金規正法によって処理されておるもの、そしてそれが事件が発覚する前のもの、それは事件とは関係がないものとして、あとはけじめ問題の中に示されておることによって対処をいたしました。
  347. 市川雄一

    市川委員 政治家政治倫理というもの、政治家の出処進退は、まずみずからの見識による判断、これは私もそう思います、だれかに強制されたり、されるべき問題ではない。政治家選挙によって選ばれた人間なんですから、自分自身の出処進退については、自分の見識で、責任で判断をする、これは、第一義的にはおっしゃるとおりだというふうに私も思います。  ただ、みんながこうじゃないかと思っていることと違う出処進退をされる方が出てきた場合、その場合、国会のそういう政治倫理に対する自浄能力というものは、今度は国会全体として問われてしまうわけですょね、総理。ですから、総理がおっしゃっているのは政治家政治モラルですから、一人一人の政治家が第一義的には自分の責任と見識で判断すべきであって、これは私も全く同感なんで、そのとおりだと思います。  そのとおりなんですが、そこには一つの常識というものがあると思うんです。もちろん、厳しく見る人と緩やかに見る人では、個人差は多少あろうかと思いますが、それはそれとしても、やはり常識というものが、常識というのか良識というものがある。それに合わない方が出た場合、これは国会全体が問われちゃうんですよ、総理。そういう方が一人か二人いるだけで国会議員全体が、何か国会というものが自浄能力を発揮してないという批判を私は受けると思うんです。  そういう意味におきまして、野党は皆さんをリクルートでは追及した立場ですから、当然みずからにも起きた事件については厳しく対処をしました。大半の方が議員バッジを外して、次立候補する人しない人、個々に違います。私は、もちろん与党を追及する野党の方が責任が重いということは十分思いますが、同時に、自民党は政権党ですから、先ほども自民党の浜田委員からも御質問がありましたけれども、やはりそこに何か、個人任せというのでいいんでしょうかね、総理。それが清新をうたい改革をうたう海部内閣ですか。あるいは三木総理のまな弟子と言われる海部総理、全部その個人個人、個人個人、こういうことでいいんでしょうか。やっぱり何らかのそこに潔さというか決断というかリーダーシップというか、そういうものが必要じゃないんでしょうか。総理はどうお考えですか。
  348. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 繰り返すようですが、政治家政治倫理というものは個々人の確立によって行われるもので、政治家国民選挙によって選ばれて、負託を受けて議員としての立場を持って国会に来るということは極めて重いものだと思っておりますから、その重さを自覚して個々人が判断されるべきもの、まず第一がこれだと思っております。けれども、自民党は今度のリクルート問題というのは厳しく受けとめておりますから、先ほど浜田さんが触れたように、そうではあっても、未公開株の譲渡の問題で関係をした方は、党のけじめ案に従って一定期間は党の方から役職につくことをやめてもらうというけじめ案をつくって、それに従って対処をしておるところでありますし、そのけじめ案の最初のところに、人を名指しして個人がいけないというだけではなくて、自由民主党は党を挙げて厳しく反省をしていこう、そのためには党の改革推進本部をつくって、それで推進本部で将来に向かって二度と再びこういったことが起こらないように改革をしていこう、そうして国会にも政治資金の出の方と入りの方とをまず規制をする公職選挙法、政治資金規正法の法案を提出し、政治倫理確立のための政治資金、それを今度は公私混交になっておるんじゃないかとかいろいろなことから、資産公開法というのも今議運でお話し合いを各党がなさっていただいておると、こう承っておりますから、そういったようなことから政治改革に党を挙げて全力で取り組んでいこう、それが再発防止をし、今またおっしゃるように国民皆さんからの信頼を取り戻すゆえんでもあると、こう考えて対処しておるところであります。
  349. 市川雄一

    市川委員 何か余り具体的にはよくわからない御答弁なんですが、もう一つ、昨年の臨時国会からことしの通常国会も含めて、そのときどきの法務大臣がリクルート事件の捜査が終了したら国会に報告しますとたびたび国会でお約束をされて、先日なされたわけですが、それは捜査終結報告というか、私たちが期待したものより非常に何か縮小されちゃった、非常に抽象的な報告で終わっておるわけですね。したがって、これでは何か二人の代議士が起訴されただけの事件であって、あと全然、どういう事件だったのか全容が全くわからない。あるいは、政治的道義的責任というものを国民選挙のときに審判するというのですが、全く新聞にある意味では書かれただけで、心外に思っていらっしゃる方もいらっしゃるかもわからない。  そういう意味においては、私は、もっときちんとした報告を、少なくともロッキード事件のときのような報告まではすべきじゃないか。それで、私たちはじゃどういうことを報告しろというのかということで、これはことしの六月の十五日、中尾委員長の方に既に出してあるわけです。  一、リクルートコスモス社の未公開株の譲渡を受けた国会議員すなわち、昭和五十九年十二月の四名、昭和六十一年九月の十一名の国会議員の氏名、譲渡株数、売却益の流れについて  二、昭和六十一年九月の十一名の国会議員のうち最終報告で「職務権限外」とされた国会議員及び「抽象的にはその職務権限内の事項であると認められるものの、対価関係が認められない」とされた国会議員、それぞれの氏名  三、リクルート関係者からの政治献金を受けた国会議員の氏名、金額及び時期そのうち、政治資金規正法に違反する事実があるとされた国会議員の氏名、金額、及び時期  四、リクルート関係者からパーティー券を購入してもらった国会議員の氏名、金額、及び時期  五、「スーパーコンピューター購入」「政府関係機関各種委員就任」問題等に関し、中曽根元総理の関与の内容  六、NTTのボランティア基金からパーティー券等、資金提供を受けた議員の氏名、金額、及び時期  七、江副前会長の創業者利得の資金の流れについて 以上七項目について、法務省あるいは検察庁に刑事訴訟法四十七条ただし書きあるいは国政調査権による報告をぜひしていただきたいということを何回も申し上げておりますが、どうでしょうか、法務大臣。これは国会ではっきりと決まれば直ちに報告されますか、どうですか。
  350. 後藤正夫

    ○後藤国務大臣 お答えいたします。  前国会で御提案ありました件につきましては、法務省といたしましては、法令上許される範囲内において結果を御報告を申し上げております。したがいまして、前国会において法務大臣並びに刑事局長が申し上げましたことにつきましては、現在も考え方に全く変更はございません。
  351. 市川雄一

    市川委員 報告するということですか、国会で要求すれば。報告するかしないか、明確に答えてください。
  352. 根來泰周

    根來政府委員 ただいま法務大臣が申されましたように、この六月にこの予算委員会あるいは参議院で御報告したのは、刑事訴訟法等関係法令の許す範囲内で最大限国政調査権に協力するという趣旨で申し上げたところでございまして、それ以上のことについては現在のところ申し上げるつもりはございません。
  353. 市川雄一

    市川委員 しかしまた、国会で要請があれば、政治的道義的責任の国会での自浄能力が大事ですから御協力することにやぶさかじゃない、こういう答弁もされているわけですよ、これで。法務大臣、どうですか、これは。だから、国会で要請があれば協力する、こういうことですね。——いやいや、大臣に聞いているんだ、大臣。
  354. 根來泰周

    根來政府委員 先国会で申し上げたのは、六月十二日にこの委員会で委員の御質疑がございまして、申し上げました。そのときには、いわゆる灰色高官に関連いたしまして一定の基準を国会でお示しになった場合には国政調査権に協力するという趣旨で十分検討さしていただくということを申し上げたわけでございます。したがいまして、先ほど答弁したのは、まだ国会からそういう基準等のお示しがないわけでございますから、そういう検討はいたしておりませんので、現在のところいろいろのことを申し上げる予定はないと申し上げたわけでございます。
  355. 市川雄一

    市川委員 総理、今答弁を伺っていておわかりのとおり、灰色高官等について国会の御要請があれば報告しますと、こうおっしゃっているわけです。そういう基準を決めてください、国会で。これは予算委員長のもとで理事会で協議ということになるわけですけれども、結局、与党の方々は余り賛成なさらない、野党はみんな出せ出せ、こう言っているわけですね。ですから、これはどうでしょう、総理・総裁としてやはりこれはリーダーシップを発揮なさる気はありませんか、どうですか。
  356. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 前回もお答え申し上げましたが、前国会に提出をいたしました最終報告は、法令の許す範囲内で国会に御報告をしたものと私は受けとめておりますが、さらに新たな角度から協力を要請された場合には、法令の範囲内でどのような御協力ができるのかを検討させていただきます。
  357. 市川雄一

    市川委員 この間、六月のときの国会でも答弁されているのですよ。国会が公表基準を決めてくれればその基準に基づいた発表の仕方を検討します、こう言っているのです。国会が決めないから検察庁が仕事ができない、じゃ国会は何で決まらないのかというと、与党の皆さんがほとんど反対なんです。それを総理・総裁として御指導される気はありませんかということを聞いているわけです。どうですか。
  358. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これは、どのような御協力ができるのかは法令の許す範囲内でよく検討をさせていただきます。
  359. 市川雄一

    市川委員 総理政治資金規正法の改正案が今、国会に——自民党案ですか、政府案じゃなくて、自民党の議員立法の自民党案が出されているわけですが、恐らくこれは海部総理総理になられる前にこの自民党案というのはできていたと思うのです。  それで総理、自民党としてはこれで十分政治改革ができる、こうお考えでしょうか。
  360. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 政治改革を行うための第一歩だと私は申し上げております。そして、こういうところから手をつけて一歩一歩改革をしていかなければならない。二つ既に法律が出ておりますが、今後も党の改革大綱に従って党は御努力をいただくものと、こう受けとめております。
  361. 市川雄一

    市川委員 やはり、鉄は熱いうちに打てということわざがありますように、リクルート事件が起きて世論が沸いているときに厳しい政治改革をやりませんと、また世論が冷めちゃうとぬるま湯になっちゃうんですよ。ですから、そういう意味で私は、第一歩なんておっしゃっていますが、第一歩じゃこれはどうしようもないんじゃないでしょうか。  例えば、総理を例にして大変恐縮でございますが、総理はリクルート社から五年間で千四百四十万円の献金を受けた。だけれども、これは要するに、もちろん政治資金規正法に基づいて処理をしています、職務権限はもちろんありません、通常の政治献金です、こう総理はおっしゃられた。そのとおりだろうというふうに思うのです。ただ、そこで私たちが思いますのは、海部総理総理に就任したからこれは出たようなものでして、総理にもしなられていなきゃ総理がリクルート社から五年間にわたって千四百四十万の献金を受けたということは隠れちゃうんですよね。大体百万以下で処理されていますよね、恐らく。パーティー券を除いては、総理の幾つかの政治後援団体に恐らく百万以下で入っていると思うのです。そうする と、今の政治資金規正法は百万を超えなければどこから来たかということを届け出る義務はない。百万以下であれば収支報告の義務はない。公開義務はない。ですから、百万に分けて、いろいろな政治団体に分ける。そうすると、リクルート社からもらったかどうかということはわからない。こういう問題が起きてくるわけですが、自民党が今お出しになっている政治資金規正法の改革案ではそれが六十万に、四十万下げたのですね。四十万下げたということは多としますが、しかしまた、六十万以下は収支報告しなくていいのですから、団体の数をふやせばこれは限りなくまた下へ潜ってしまう。ですから、こういうことを考えても、例えば指定団体を一つにする、政治家政治資金の出と入りは全部そこにきちんと出てくる、それは一定の基準での公開義務を付す。そういう指定団体を一つにするという考え方を持ちませんと改革にならないんじゃないんでしょうか。どうですか、総理
  362. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 先ほど私が第一歩と申し上げたことにちょっと誤解があったようですから申し上げておきますが、この法律さえ通せば済んだというものではなくて、ここからさらに将来に向かっていろいろな改革を、政治改革をやっていかなきゃならぬ問題がたくさんある、こういう意味で第一歩と申し上げたのでございます。  それから、御指摘のようにきょうまでの政治資金規正法でいきますと百万円以下のものは企業の名前が直接出ないようになっておった。自民党の今度の案は六十万円ということになっております。そして、それのみならず、パーティーの限度のみならず、いろいろと政治資金の運用について縛りもかけておりますし、それからもう一つは、今政治団体を一つにする、それでなければわからないとおっしゃいましたが、政治資金の団体の関係政治家の名前は公表するということになっておりますから、おのずから政治資金の透明性というものはこれによって高まってくるものだろう、私はこう判断をしております。
  363. 市川雄一

    市川委員 だけれども、その全部の政治団体、例えば一千万をある企業から受ける場合に、十の自分の後援団体で受ければ全部百万ずつになっちゃうんですね。これはどこの企業からしたかというのは隠れて出ない。政治資金規正法の趣旨は、極力ガラス張りにするということじゃないかと思うんですね。そういうことを考えれば、やはり指定団体を一つにして、政治家政治資金の収支はそこで扱う、こう明確にした方が私はいいと思うんですね。  それから、この政治資金問題について、政治改革について申し上げますと、国会議員の資産の公開につきましては、私たちは、公明党は賛成ですから、一日も早くやった方がいいという、こういう思いでございます。これは与野党を問わず国会議員としてのモラルが問われている問題である。したがって、与党の案の中で、本人名義だけになっているところが我々は不満でして、むしろ同居の扶養親族まで名義を広げてこれは直ちにやった方がいい、こう考えておりますし、公職選挙法の寄附行為の禁止についても、ポスターについての規制はこれはいろいろ野党の中に意見があるようですが、寄附行為を禁止する、この考え方は次の総選挙から適用した方がいいのではないのかというぐらいに思いますので、この公職選挙法の寄附行為の禁止ということは早くやった方がいい、こう考えております。  ただ、今申し上げたように、政治資金規正法の改正については、公明党は企業、団体からの献金を禁止する、個人献金に絞るという公明党独自の法案をきょう国会に提出をさしていただきました。ただ、総理や閣僚の皆さんにそれで議論したんじゃかみ合いませんから、そうではなくて、例えば、非常に選挙にお金がかかるとか政治にお金がかかるということが言われておるのですが、一方で政党補助法ということが言われております。選挙の公営化ですね、あるいは政治活動の公営化。だけれども、その政治活動の公営化をやるという前提には、国民の税金から政治活動のお金をいただくわけですから、これはやはりその前に政治資金の抜本的な改革をやらなければ私は国民理解は得られないんじゃないかというふうに思うんです。  そういう意味からいいまして、どうですか、総理、政党と政党の政治資金団体、自由民主党で言えば国民協会ですか。自由民主党と国民協会は企業からの政治献金は受けられる、しかし、政治家個人、後援会、派閥、これは企業献金は受けない、このくらいの思い切った改革をおやりになる考えはありませんか。そして一方では、国民皆さんの御理解をいただいて政治活動なり選挙の公営化をやっていくという、こういう改革をすべきではないかというふうに思いますが、総理はどうですか、お考えは。
  364. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 選挙や日常の政治活動にお金がかかり過ぎるという点については我々も反省をいたしながら、どのようにしたらそれが改革されていくだろうかという現実的な路線をとっていかなければならぬと今思っておるところなんであります。そして、お触れになりましたように、政党の政治資金の毎年の公表を見ておりましても、随分たくさんかかっておるなあということをやはり国民皆さんも実感としてごらんになる点があろうと思います。まず我々は政府・与党として確実にできるところからやっていこう、しかし、お金が要らないような制度、仕組みをつくっていくということも、これは極めて大切なことでありますから、そちらの方の改革もあわせてやっていこう、こう思っておるところでありますので、今市川委員がいろいろと具体的な御指摘をなさいましたけれども、直ちにそれに取り組みますということは申し上げかねることでありまして、そういったところを目標としながら、それに近づくためにはどうしたらいいかということを私も一遍一生懸命また検討をさせていただきます。
  365. 市川雄一

    市川委員 具体的に指摘しますと、自民党案なる政治資金規正法の、例えば政治パーティーについて、二千万まではこれは従来どおりで結構です、二千万までは。パーティーの売り上げ二千万以上のパーティーを特定パーティーと称して、その開催の時期とかあるいは主催者とか収支報告を義務づける。一企業、一団体が出せる金額は一回百五十万なんですね。一年間百五十万じゃないのです、一回百五十万。だから、同じ政治団体が二回パーティーをやれば三百万出せるわけで、三回やれば四百五十万出せる。年間一回じゃなくて、一回当たり百五十万です。しかも総理、これは収支の届け出をするとはいうのですが、政治資金規正法の総量の枠、一つの企業が一年間に使える政治献金の額というのは資本金の割合で決められている。これとは関係なくパーティーにはお金が出せるという、その総量規制が、政治資金規正法の総量枠が形骸化されている、この点には全く目をつぶった改革案なんですよ。もうこれはむしろ皆さんの方が詳しいわけで、自民党の改革案にはそういう発想はないのですね。これは、ザル法と言われる政治資金規正法をさらに全く大ザル法にする改革じゃありませんか、別の見方をすれば。一つの企業が年間、政治家なり政治団体に出せる政治献金の総量というものを政治資金規正法で決めている。その決めている額とは無関係に、しかじかの届け出と手続を踏めばパーティーをやって結構ですと、新しい企業献金の形態を、政治資金規正法とは関係のない、総量枠には縛られないものを正当化してしまうという意味において、私は何ら改革になっていない、こう思うのですけれども、総理はどうお考えですか。
  366. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 現実の政治を行っていく上において、今の制度、仕組みの中でいきますと、政治資金が政治活動の自由を保障する裏づけにもなるわけでありますし、また、各党ごとにお届け出になっておるその年、その年の政治資金も——自民党だけが政治資金を使っているわけじゃありませんが、自民党としては主たる政治資金の集め方といいますか、きょうまでそういった方法に従ってやってきたことを、みずからこの厳しい世論の批判にこたえて、額を下げたり、あるいは政 治家名を公表したり、回数を制限したり、限度を決めたり、いろいろやっておるのでありますから、それを先ほど私はこれは改革の入り口だ、こう申し上げましたけれども、こういうことにして政治資金の明朗化を図りながら、もう一方ではお金のかからないような政治選挙あるいは日常活動の方法、仕組みに変えていくにはどうしたらいいかという、そちらの方も改革をして、結果としてお金のかからない選挙政治活動の実現に向かって努力をしていきたいと、こう思っておるところであります。
  367. 市川雄一

    市川委員 お金のかからないというとすぐ小選挙区制という、選挙制度のせいに与党自民党の方は大半がされるわけですよね。今の中選挙区制じゃ同じ党から二人出ている、したがって、政策の争いにならない、こういうことをおっしゃるのですが、そういう面もあるのだろうというふうに思いますが、しかし、お金をかけているのは人間がかけているわけでして、制度がかけているわけじゃないんですから、制度に全部責任を転嫁するという発想は政治家の考えとしていかがなものかというふうに私は思うんですね。  さらに申し上げますが、例えば、これは自治省に御要請申し上げたいんですが、NHKが九月七日、ニュースもしくはニュース・トゥデーで政治献金の実態を報道されておりました。昭和六十三年度分、簡単に申し上げまして、企業、団体からの献金が二百五十五億七千四百三十八万円。この企業、団体からの献金のうち百万以下で献金されたものがどのくらいあるかということを調べてみましたら、企業、団体からの政治家もしくは後援会、政治団体に対する献金ですね。このうち、百万円以下で寄附された金額が、企業、団体からの献金のうち何と九四・六%。九四・六%百万円以下なんです。  さっきの話と関連するわけですが、企業の名前が隠れるように、あるいは政治家の方から百万円ずつにしてくれということで、企業の名前を出さないように、両方の配慮が働いているのかどうか知りませんが、非常に透明度がない。どこからお金が入ってきたのかわからない。九四・六%。これはNHKが独自にお調べになって、ニュースもしくはニュース・トゥデーという番組で流されたものだろうと思うのですが、自治省もこういう客観的な立場で、今の政治資金規正法に基づいたこういう実態というものを、国民が判断しやすいように整理をして数字を発表するということが必要なんじゃないでしょうか。いつも自治省が発表される数字は非常に難しい。こういう企業、団体からの献金のうちの百万円以下で行われたものが九四・六%という、いかに企業、団体からの献金の透明度がないかということがはっきりしているわけでして、ここも総理政治改革の重要な点じゃありませんか。  こういう実態があるんですよ。九四・六%が百万円以下になっている。この辺も改革をしないと、これが六十万になりますと、また六十万に分けられるだけだと私は思うのです。こういう点ももっと改革をすべきだと思いますし、その辺について総理の考えと、自治省、こういうデータを発表するお考えはありませんか、今後。どうですか。
  368. 浅野信二郎

    浅野説明員 政治資金の公表に当たりましては、やはり統計の継続性ということもございますものですから、大体毎年同じような様式で発表をさせていただいておるわけでございますが、今後いろいろ工夫もしてみたいと思っております。
  369. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 でき得る限り政治資金が透明度を増していくということは、これは政治改革にとっても一つの目標でございますので、国会におけるいろいろな、適切な結論が出てきますように御議論を賜りたい、私はこう思います。
  370. 市川雄一

    市川委員 やはり政治資金規正法は国民の判断にゆだねるということを趣旨としてうたっているわけですから、こういうわかりやすい数字をきちっと整理して発表するということが、私は議会制民主主義を育てる上において、国民に判断しやすい客観的な材料を提供することが、そういう意味において大事だと思うのです。そういうことをやりませんとだめだと思うのですね。政治というものはきれいになっていかない。  例えば、これは朝日新聞に出ていたデータでございますが、今回の参議院の比例区、参議院選挙で行われた比例区の自民党、社会党、公明党、民社党、共産党、社民連という、こういう各政党の比例区での得票を基準にいたしまして、西独で行われている五マルクを掛けるという、一票五マルクを補助で国家が出すという、為替レートの問題がありますが、五マルクを約三百五十円で計算をしておりまして、国からの補助総額が三百十四億円。社会党が百十億、自民党が八十五・七億、公明党が三十四・一億、あと共産党が二十二・一億、民社党が十五・三億などなどと、西独方式で計算すると、三百四十億でこういう政党補助というものができる。  これは自民党にとっても総理、魅力あるのじゃないですか、八十五・七億なんという数字は。すぐこの財源をどうするか。三百十四億ですよ。今選挙にかけているお金が約三百四十億、選挙管理委員会の費用とかいろいろな意味で。これに約倍額、三百四十億としますと、これだけが政党補助で入ってくる。もちろん票にするのか議席にするのかという、スウェーデンとかいろいろなやり方をしています。議席でやるところもある。政党法という面倒な問題をクリアするためには、議席一つについてという計算の仕方もある。そうすれば政党は関係ない。あるいは西独のように政党の票で計算する。そういうやはり総理、公営化というものをしていくべきだと思うのですよ。そして、あとは個人の浄財に、個人献金に移行させていく。今すぐやれと言ってもそれは無理かもしれません。皆さんと私たちと考え方が違うし、やり方が違ってきたんですから、今すぐやれとは申し上げませんが、例えば五年とかあるいは十年とか、そういう歳月をかけてこういう選挙の公営化の方向に行くんだ。  したがって、企業、団体の献金は、これは政党と政党の政治資金団体以外は受けてはならない。政党もしくは政党の資金団体というのは今透明度が高いわけですよ。一万円以上収支報告義務がついているわけですから、これは非常に透明度が高い。そこへ企業献金や団体の献金は絞って、あとは個人とか後援会とか派閥はやらない、このくらいの何かこう先を示した、政治改革というのはそういうものじゃないでしょうか。ただ、一歩入り口です、入り口です、それがこれからどういう改革に結びついていくのかわからない、これでは私は政治改革とは言えないのじゃないのか。  ですから、鉄は熱いうちに打て、これは今やらないと、総理、できませんよ。あなたは三木さんという、一番政治倫理について厳しい、しかも理想の高い方をお師匠さんとされた方なんですから、こういう政治改革について、何かもうちょっと先行きの具体策というか、私たちはこういう具体的なことを申し上げているわけですが、総理見解を承っておきたいと思います。
  371. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘の点について、先ほど第一歩と申し上げ、次が続いておると申し上げましたが、そのとき私は、今まさに御指摘になったような政党法の検討をしながら公費の負担、公費補助の問題について考えなければならぬという、自由民主党の政治改革大綱の中にそれと全く同じ定めもございますから、これについても御説明をしようかと思いましたけれども、それはやめたわけです。けれども、この考えは党の改革大綱に決まっておりますし、また、政府としましては選挙制度審議会の方にそれはお願いもしてございます。どういう結論が出てくるかはまだ予断と憶測をもって物を言うわけにまいりませんけれども、今市川委員指摘になった西独のように、一票五マルクというので入るかもしれません。ドイツは、棄権した人の頭数まで全部計算に入れて、それを比例配分するというように変わってきたとも聞いておりますし、また議席で配っておるところもあります。  この間、アメリカのさる有力な政治学者と話しておりましたら、いきなり、日本は政治にお金が かかるということをあたかもいけないことのような立場に立って議論しておるのはおかしいではないか、政治にお金がかかるのだから、個人でお金を集め、個人でお金がかかるということをいけないことだと受けとめないで、それは国に対するサービスだから、例えばアメリカのように、秘書は下院ではたしか十七名とおっしゃったと思いますが、十七名まではみんな国費で持つとか、あるいは今文書通信費なんかは何万枚かかってもこれは国が出すとか、いろいろ国費でもって議員の活動を補助しておる制度等もたくさんある。こういったことで、必要にして要るものは国費、公費の方に頼るようにしたらどうかという御議論等も随分ございました。  そういったことを踏まえて、それにはやはり政党法をきちっと定めておいて、そしてその基準に従った国費、公費の負担ができれば、先ほど来、私が申し上げておるように、個人でお金を調達しなければならぬというところから、政策本位の日ごろの政治活動にも移行できるわけでありますし、結果として政治資金規正法の現在指摘されておる問題についても、より透明性を高め、より明らかにしていくということにも資するわけでありますから、私どもはその点についても検討を進め、審議会から答申がもらえましたならば、国会にもお願いをしていくような問題になる、検討すべき問題だ、こう考えております。
  372. 市川雄一

    市川委員 その政党補助というものは、やはり前提に厳しい政治改革というものがないとこれは国民にお願いできないと思いますよ。そんな簡単なものじゃないと思います。やはり政治倫理法とか今の政治倫理審査会、何か問題が起きた国会議員がいた、政治倫理審査会にかけようとしますと、かけるかかけないかを多数決で決めるという、これではとてもじゃないけれども政治倫理審査会というものは機能しない。もちろんプライバシーとか国会議員の基本的人権というものを守らなければいけないということは、それはそれなりに理解できますけれども、そういう国会の自浄能力の問題とか、少なくとも企業献金や団体献金についての政治資金規正法の厳しい、国民がなるほどと納得する改革をしなければ、私はこういう政党補助なんということは国民に向かって言えないんじゃないかというふうに思いますから、その点は総理に申し上げておきたいと思うのです。ですから、そういう意味で、与党のやはり政治資金に対する厳しい改革をしなければ、これは政党補助という問題は国民理解を得られない、こう思います。  そこで時間があと九分ですか、便宜供与ということについてお尋ねを申し上げたいと思います。  六月のたしか十二日、この予算委員会におきまして宇野総理大臣に伺いました。そして、当時の塩川官房長官が御答弁をされました。それは、簡単に言いますと、宇野総理が、当時の総理が、閣僚と特定企業の癒着を断つ、次官の資産公開とか閣僚の在任中の派閥離脱とか、こういう趣旨がある中の一環として閣僚と特定企業の癒着を断つということを宇野総理がおっしゃられた。その前提に海部総理もお立ちになっていると思いますがどうですか。これは前提が違っちゃうと議論にならないものですから。閣僚と特定企業というのは癒着してはならない、全くそのとおりだと思いますか。
  373. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 閣僚と特定の企業が癒着していけない、私もそう思います。
  374. 市川雄一

    市川委員 そこで、例えば企業から車の提供を受けているとか、あるいは社員の派遣を受けて秘書にしているとか、あるいは車とガソリンと運転手さんの提供を同時に受けているとか、こういう問題を実は取り上げたわけです。これは政治資金規正法でどういう扱いになるのか、これは寄附に当たりますというのが自治省の見解でございました。したがって、寄附に当たるなら、政治資金規正法に基づいて収支報告をしなければならない。ところが、大体なさっている方はほとんどいないというのが実情であったわけです。  それで、これについてここでいきなりお伺いするのは大変失礼なので、あらかじめ官房長官に今月の三日の日に、百十四国会の六月十二日の予算質問におきまして、宇野総理は、その問題は一回洗ってみたい、閣僚ですね、一回洗ってみたい、自主申告をしてもらう、塩川前官房長官は、首相が申しましたように、各閣僚の自主申告をするというのでそうしたい、調査さしていただきたい、報告します、こういう御答弁が六月十二日にあったわけですが、調査をされたのか、されないのか、今後、宇野内閣と同じように海部内閣においてもそういう調査をされてきちっと報告するのかしないのか、官房長官にまずお伺いをいたしたいと思います。
  375. 森山眞弓

    森山国務大臣 今先生がおっしゃいました六月十二日の予算委員会におきます前内閣の国会答弁につきましては、私も議事録を読ませていただきました。  それで、問題は、閣僚に限らず全議員にかかわることではないかということもその答弁の中にも触れてございまして、実施上これはなかなか難しい問題のように思われます。したがって、その方法その他非常に難しゅうございますので、現在検討中ということでございます。一議員、それぞれの方が議員としての立場での活動にかかわることでございますので、仮に対象となる人や物、その範囲、性格などの選び方について、結果がそのやり方によって非常に異なるというようなことがあってはいけませんので、客観的な基準を設けるということが必要かと思われます。いろいろ考えますと非常に難しい問題を含んでおりますので、現在慎重に検討しているところでございます。
  376. 市川雄一

    市川委員 総理、宇野総理大臣は当時、好ましからざるは是正する、是正しなければならない、それから閣僚についてはまずやります、当時の塩川官房長官が全国会議員にと私が要求もしてないのに広げられたわけで、もちろん全国会議員やっていただいて結構なんですが、そのときくぎを刺したのは、全国会議員というので広げてしまいますと今の官房長官のような答弁になりますので、まず閣僚だけやっていただきたい、こういうことを申し上げたら、そうしますという御答弁もあったわけでございまして、やはり車の提供を受けているとか、ガソリンの提供を受けているとかあるいは秘書さんを派遣されて使っているとか、こういうのは総理、やっぱり特定企業と閣僚の癒着になりませんか、どうですか、総理御自身の御認識は。
  377. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 いろいろな事情があろうと思いますから、これはよく検討させていただきます。
  378. 市川雄一

    市川委員 だから、その提供を受けているそのこと自体がどうこうということを申し上げているわけじゃないのですよ。それも問題ではあるけれども、それが政治資金規正法の寄附に該当しているにもかかわらず、政治資金規正法に基づいた処理が行われていないということを言っているわけです、もう一点は。  ですから、こういう閣僚の方がこういう企業から例えば車の提供を受けました、これは政治資金規正法でこういう処理をしていますというなら、それはそれで一つのお考え方だろうと私は思います。ただ、提供を受けていること自体がいけないということは、これは政治献金と同じことですから、そうすると、政治資金規正法の抜け穴の利用になっていますね、したがって、こういうこともきちっと政治資金規正法の改革点じゃないのですかということを申し上げているわけでして、どうですか。
  379. 森山眞弓

    森山国務大臣 先ほどの、申し上げましたように、提供されている人を例にとって申しますと、その人の研修であるという目的で出ているという方もあり得るわけでございます。そのほかさまざまな状態が、それぞれに違っているかと思われますので、また出ているところが企業であるとは限りませんし、労働組合なり宗教団体なり、その他さまざまな組織が考えられますので、やはり客観的な基準を設けて、それに基づいて調査をするならするというふうにいたしませんと問題があろうかと思いますので、そこを慎重に検討していると いうのが私から申し上げた趣旨でございます。
  380. 市川雄一

    市川委員 宇野内閣よりも後退しましたね、今の答弁は。宇野内閣は、閣僚については自主申告させますと言っているのですよ、総理。それから、洗ってみましょうと総理大臣がお答えになっている。綸言汗の如し、総理が答えているのですよ、総理。だから、これはきちっとその方向で、これは野党も身から血が出る問題ではあるのです。これは何も与党だけじゃないです、正直に言って。ですから、これは公平なんですよ。何も与党だけ責めているわけじゃない。野党だって出てくるかもわからない。ですから、正すべきことは——政治資金規正法の抜け穴になっている。新聞でもう閣僚の名前ずっと書いてありますよ。選挙が近いですからあえて名前は言いません、私は。だけれども、これはきちっとぜひ、前の内閣の約束ですから、前の内閣の約束の線まではやっていただきたいということを申し上げて、きょうの質問を終わりたいと思います。
  381. 中尾栄一

    中尾委員長 次回は、明十二日午前九時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時一分散会