○宮下創平君 私は、
自由民主党を代表して、ただいま
議題となりました四
野党提出の
消費税法を
廃止する
法律案外八件について質問を行うものであります。
自由民主党は、長年の懸案
事項でありました
税制の抜本
改革を実現いたしました。これは、
重税感の強い働き盛りの中堅新得者層に対する思い切った
所得減税を実施するとともに、特定の物品だけに偏っていた
物品税等
個別間接税のひずみの
是正など、従来の
税制が抱えていた諸問題を解決するためのものであります。
人口の高齢化が今後急速に進展していく中で、
経済社会の活力を損なうことなく豊かな長寿社会を築いていくためには、
国民全体が広く薄く
負担を分かち合うことが必要であり、
消費税はこうした抜本的
税制改革の一環として位置づけられておるのであります。
このように、現在実施中の
税制改革は、
国民の長期的、全体的利益にかなうものであり、必ずやその本来の意義が高く評価されるものと確信をいたしております。したがって、この
税制改革の中から
消費税のみを取り出し、悪税と決めつけて
廃止を求める
野党の主張には全く同意できません。(
拍手)私
たちは、堂々と我が党の
税制改革について
国民の
理解を求めつつ、その定着に努めてまいる決意であります。
今回の
野党案では、まず
消費税を
廃止し、二年後に
税制の再
改革を行うこととしておりますが、二年後の
税制再
改革の姿については、抽象的な言葉を並べ立てているだけで、具体的にどのような
改革になるのか、青写真が全く示されていないのであります。
野党提案の
税制再
改革基本法案において今後検討されなければならない課題として述べられておりますサービス、流通等に対する適正な課税、また
納税者番号制度の
導入や
土地税制等の
資産課税の
適正化などは、
国民生活に多大の影響を与えるにもかかわらず、その具体的
内容については、
参議院の
審議を通じて何ら明らかにされることなく、すべて
国民税制改革協議会で検討するというあいまいな態度に終始してきているのであります。また、いわゆる
不公平税制として
野党がかねてから主張しているみなし法人課税、公益法人課税の
特例等の
内容について、何ら具体的な
改革を示していないのであります。あらゆる問題を二年後の
国民税制改革協議会に先送りし、何らのビジョンを持ち合わせていないというのは、まことに不見識であり、無
責任な態度であります。
そこで、二年後の再
改革の具体的
内容、特に
消費税の対象として最もなじむ分野と考えられるサービス、流通等に対する適正な課税や
納税者番号制度の
導入、
土地税制等の
資産課税の
適正化の具体的
内容等について、二年後の
国民税制協議会で検討するというような無
責任な答弁ではなく、現在における
提案者の
基本的考え方を
責任を持って明確にお答えを願いたいのであります。(
拍手)
さて、
野党案では、
消費税を
廃止した後の二年間の暫定の増税策としての
代替財源案が
提案されております。しかし、これは、まず
消費税廃止ありきからくる整合性のないつじつま合わせそのものであり、
提案者みずから認めているように問題が多く、かつ、
国民を欺く
理念なき
措置であると言わざるを得ません。
まず、この
代替財源案の最大の
欠陥は、
消費税廃止による六兆円の減収に対して十分な
代替財源措置を講ずることができず、大幅な
歳入欠陥が生ずることであります。しかも、
野党は、その額を当初平
年度ベースで一兆四千億といたしておりましたが、その後
計算間違いが判明して一兆七千億と訂正し、さらに、肝心の
平成二
年度では三兆円もの巨額の赤字になることが判明いたしました。このような不十分な
代替財源措置によって
我が国の
財政を再び赤字
財政に陥れることに対して、どのように
責任を感じておられるのか、お伺いをいたします。
また、この
代替財源案によれば、直接税と
間接税の比率は、
現行の約七対三からほぼ八対二になるなど、ますます直接税へ偏り、
納税者の
重税感、
不公平感がますます拡大することになります。
参議院の
審議においても、
提案者は、将来は七対三の比率まで縮小したいと述べられておられましたが、なぜこの際直接税に偏った
税体系にするのか、しかとお伺いしたいのであります。
また、
物品税、入場税、通行税等の創設が
提案されておりますが、これにより、旧税の
矛盾もそのまま復活するほか、さらに恣意的な修正を加えていることにより、新たな
不公平感が生ずることになります。また、世界の主要国のほとんどすべてが
消費税と同じタイプの
間接税、付加価値税を実施しているのに、
我が国のみが
消費税を
廃止して問題の多い
個別間接税に戻れば、サービス、流通への課税ができなくなって不公平がますます拡大するほか、再び国際摩擦が生ずる等、幾多の問題が発生することは、火を見るよりも明らかであります。これらの点についていかようにお考えか、お尋ねいたします。
さらに、
野党各党は、確かに
代替財源には問題があるが、二年間の暫定
措置にすぎないので我慢してほしいと弁解してきました。しかしながら、
代替財源関係の各
法案には二年間の期限が付されておりません。したがって、問題の多い暫定
措置は、二年で終わることなく恒久
税制となるおそれがあります。二年間だから我慢してほしいという
提案者の弁解は
誤りであったと
理解いたしますが、いかがでありましょうか、お伺いいたします。
さらに、
参議院の
審議の過程を通じて、本九
法案に関して、
国民税制改革協議会の憲法違反問題を含め、
相続税の実施時期を間違えるなど、
税制の
基本的知識を欠く数々の重大な
誤りがあったことについて、まことに遺憾である旨表明しておきたいと思います。
私は決して揚げ足取りをするものではありませんが、
誤りを
指摘されでも、単純な
誤りだから正誤表で済まそうとしたり、なれていないとか、時間がなかったと言いわけをして、特段問題視していない
提案者の態度こそ、立法府に籍を置く
責任政治家としてあるまじきものであります。このことば、
税制改革を二年後の協議会にすべて先送りしていることと相まって、
野党各党が
政権担当能力がないことを雄弁に物語るものであると思います。
提案者はいかように受けとめておられるのか、所見をお伺いします。(
拍手)
さて、
消費税はほとんどの主要国で実施され、世界では
当たり前になっている税であるものの、
我が国にとって全く新しい税であるため、
国民の間にまだ批判や不満があることは否定できません。
国民の声に謙虚に耳を傾けるとともに、
消費税の
基本的な仕組みを損なわないで策定したのが今回の
自由民主党の
消費税見直し案であります。
私は、今回の
消費税の
見直し作業に参画した一人でありますが、今回の
見直しに当たっては、
国民の声を幅広く吸収し、
消費税をめぐるさまざまな
指摘、問題点をすべて検討の対象とし、さきの
参議院選挙における
国民の厳しい批判を謙虚に受けとめ、消費者の立場を十分考慮することを
基本的考え方といたしました。
こうして取りまとめました
見直し案は、以下申し上げる大きな四つの柱から成り立っております。また、その減税額は、平
年度実に一兆円を上回る大幅なものであり、まさに思い切った
見直しであります。
まず第一の柱は、
逆進性の緩和及び社会
政策的配慮のために、非課税取引を思い切って広げたことであります。
その
内容は、第一に、生命に対する
国民感情に配慮し、出産費用及び火葬・埋葬料を非課税とすることといたしました。
第二に、学校教育に係る父兄の
負担を軽減する見地から、入学金、施設設備費等を非課税といたしました。
第三に、社会的弱者への温かい配慮から、身体障害者物品や、老人福祉センター、身障者福祉センター等の第二種社会福祉事業、さらには寝たきり老人に対するホームヘルパー等の在宅サービスなどを非課税といたしました。
第四に、個人が借りている住宅家賃を思い切って非課税といたしました。
第五に、特に食料品に対する脱
負担の軽減を求める
国民の声が強いことにかんがみ、すべての食料品について、事業者間の取引には一・五%の特別低
税率を設定し、かつ、小売段階の販売を非課税といたしました。この
見直しにより、消費者が買う日々の食料品は確実に一・五%以上値下がりすることになります。
以上のほか、年金受給者への配慮から、
所得税及び個人住民税において、公的年金等控除額を引き上げ、年金受給者の
税負担の一層の軽減を図ることといたしました。
二つ目の柱は、
現行消費税の仕組みはややもすれば消費者サイドよりも事業者サイドに配慮したものになっているのではないかとの批判に対しても、思い切って手をつけたことであります。
具体的には、第一に、大企業が
消費税を納めるまでの間に財テクなどで金利を稼いでいるという批判に対しては、納付の回数をふやすことなどによって早く国庫に納めてもらうことにいたしました。
第二に、企業が交際費を支出したり乗用車を購入したときは、消費者と同様に税金を
負担していただくことにいたしました。
第三に、免
税制度、簡易課
税制度などについては、事業者の納税が一巡した時点で早急に結論を得ることといたしましたが、そのうち、売り上げ五億円以下の事業者が選択し得る簡易課税の仕入れ率は、
政令事項として、取引の実態に応じ速やかに対応し得るようにいたしました。
そのほか、価格表示カルテル、転嫁カルテルについても、独占禁止法の
原則を踏まえ、その取り扱いについて
廃止を含んだ検討をすることといたしました。
三つ目の柱は、消費者が日々買い物をするに当たって煩わしいと感じておられることへの対応であります。すなわち、商品の価格表示の問題については、消費者が最終的に幾ら払えばよいかわかるようにという消費者保護の観点から、総額表示を指導していくことにいたしました。ただし、事業者間の取引については、今までどおりいわゆる外税を堅持するように配慮しております。
四つ目の柱は、
消費税の使途の明確化と福祉の充実であります。
消費税は本当に福祉のために使われるのかどうかという不安にこたえるために、これを福祉に優先して使う旨の
趣旨規定を
法律で明確に定めるとともに、
予算の
歳出の面でも、高齢化に対応した公共福祉サービスを充実し、高齢者保健福祉推進十カ年戦略を立てまして、その十カ年間で思い切って五兆円を上回る事業費を
確保することといたしました。
なお、この
見直しは、
原則として
平成二年十月一日から施行を予定しております。その
財源措置は、
平成三
年度予算において、
歳出の効率化等
財政全般の中で対処していく予定でございます。
以上が
自由民主党がまとめた
消費税見直し案の
概要であります。
野党各党は、さきに述べたとおり、具体的な
税制再
改革の姿も示さないまま
消費税廃止を唱えています。二年間はバラックづくりの
欠陥税制で我慢しろ、その先は協議会で検討すればよいといった無
責任な態度をとっております。これに対し、我が
自由民主党は、
責任政党としてさきに抜本的
税制改革を実現したのでありますが、この税がより一層
国民に定着し確かなものとなるよう今回の
見直しをしたところであります。この
見直しを含め、今回行った
税制改革全体が二十一世紀の豊かな長寿・
福祉社会に向けての安定した
財政的基盤を
確立するものであることを確信するものであります。
終わりに、大蔵大臣に
自由民主党消費税見直し案についての所見をお伺いし、私の質問を終わります。
ありがとうございました。(
拍手)
〔国務大臣橋本龍太郎君
登壇〕