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1989-12-05 第116回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年十二月五日(火曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 新村 勝雄君    理事 青木 正久君 理事 川崎 二郎君    理事 木村 義雄君 理事 高橋 一郎君    理事 穂積 良行君 理事 小野 信一君    理事 森本 晃司君 理事 塚田 延充君       伊吹 文明君    臼井日出男君       鴻池 祥肇君    谷津 義男君       伊藤 忠治君    岩佐 恵美君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      高原須美子君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局官房審議         官       糸田 省吾君         公正取引委員会         事務局経済部長 柴田 章平君         公正取引委員会         事務局審査部長 植木 邦之君         経済企画庁調整         局長      勝村 坦郎君         経済企画庁国民         生活局長    末木凰太郎君         経済企画庁物価         局長      栗林  世君         経済企画庁総合         計画局長    冨金原俊二君         経済企画庁調査         局長      田中  努君         資源エネルギー         庁次長     深沢  亘君  委員外出席者         公正取引委員会         事務局経済部調         査官      松山 隆英君         公正取引委員会         事務局経済部国         際課長     上杉 秋則君         大蔵省主税局税         制第二課長   野村 興児君         大蔵省銀行局調         査課長     中井  省君         厚生大臣官房老         人保健福祉部老         人福祉課長   辻  哲夫君         通商産業省貿易         局輸入課長   樋口 正治君         通商産業省産業         政策局物価対策         課長      鈴木 孝之君         通商産業省産業         政策局規模小         売店舗調整官  金子 和夫君         資源エネルギー         庁石油部石油企         画官      斉藤 茂樹君         資源エネルギー         庁石油部精製課         長       宇都宮 誠君         資源エネルギー         庁石油部流通課         長       岡本  巖君         資源エネルギー         庁公益事業部業         務課長     森本  修君         資源エネルギー         庁公益事業部ガ         ス事業課長   河本 博隆君         中小企業庁小規         模企業部小売商         業課長     沖   茂君         運輸省運輸政策         局運輸産業課長 小幡 政人君         郵政省郵務局企         画課長     藤野 利行君         郵政省電気通信         局電気通信事業         部事業政策課長 有村 正意君         郵政省電気通信         局電気通信事業         部業務課長   濱田 弘二君     ───────────── 本日の会議に付した案件  物価問題等に関する件      ────◇─────
  2. 新村勝雄

    新村委員長 これより会議を開きます。  物価問題等に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川崎二郎君。
  3. 川崎二郎

    川崎(二)委員 それでは、まず最初に高原長官に一言御意見をお聞かせ願いたいと思います。  経済は極めて順調の中にあるように思います。好況の中に物価安定が続き、非常に順調に推移をしておるという認識があると思います。一方、しかしながらどうも物価は高値安定じゃないかという意見も聞かれるようになってきたように思います。特に国際間の交流が飛躍的に増大した現在、そういった意味では先進国と比べたときに日本価格はどうであろうか、重要な意味を持ってきておるように思います。  そういった比較論から内外価格差問題というのが出てきているわけですけれども、今、長官現状何を問題点としてお考えになっているか、そしてこれから何をしていこうと考えられているのか、二つについてお答えをいただきたいと思います。
  4. 高原須美子

    高原国務大臣 今、何が問題点かという御質問でございますが、物価水準国際比較を行うということは、厳密にするのは大変難しいことだと思います。国によって生活水準とか生活習慣とか制度が異なりますし、また為替レートが変動することなどから、比較はなかなか困難だと思いますけれども、やはり最近の円高の進展、一人当たりの所得の向上といったマクロ的要因、そのほか公的規制流通段階競争阻害要因といったミクロ的要因、こういったものがありまして、我が国物価水準国際的に見て割高であるというふうに問題は認識いたしております。  それではどうするのかということでございますけれども、内外価格差是正策としては、今後とも次のようなことを行っていくのが重要と考えております。  まず、市場へのアクセス改善などにより製品輸入を促進する、それから昨年十二月に閣議決定された規制緩和推進要綱を踏まえて規制緩和を確実に実施して競争を促進していく、それから規制緩和や独禁法の厳正な運用等により合理的な流通構造実現を図る、これが三点目です。それから四番目に、農業などにおける一層の生産性向上に努める、そして五番目に、消費者への情報提供に努めるといったようなことを是正策としてこれから実施していきたいと思っております。  そこで、昨日政府与党内外価格差対策推進本部が設置されましたので、これは一企画庁ではなく、政府与党一体となって実施していくという考えでございます。
  5. 川崎二郎

    川崎(二)委員 今、市場開放規制緩和等いろいろな対応をお話しいただいたのですけれども、私は、その中にありませんでしたが、政府としてやはりまず公共料金というものに基本的に責任を持つべきではなかろうかなというように考えております。  そこで、各省庁よりちょっと現状をお聞きしたいと思います。  まず通産省。電気ガス料金について、東京ニューヨークロンドンパリ、この比較説明してください。十一月二十四日の為替レートでお願いします。
  6. 森本修

    森本説明員 電気料金関係でございますが、ただいま長官からもお話がございましたように、国際比較、なかなか難しい問題がございまするけれども、先生の御指定為替レートで換算をいたしますと、家庭用モデル需要で見ました場合に、一キロワット当たり東京で二十三円七十一銭、それからニューヨークで二十一円三十銭、ロンドン十七円八銭、パリ十九円三十銭ということで、いずれも我が国が割高な傾向が出ております。ただ、これを購買力平価とか、あるいは一時間当たり賃金で買える電気の量とかいろいろな尺度があるわけですが、これを用いてみますと我が国の方がむしろ安いというケースもございまして、そういう意味比較の難しさというのがあろうかと存じます。  さらに、我が国電気事業の場合、特に燃料を大部分海外に依存をしているという制約の中でやってきておりまして、その中でかなりの供給信頼度とか生産性向上ということを達成しておりますので、そういう面も加味すると一概に割高であるというふうに決めつけるのはいかがかという感じはしております。  電気料金につきましては、御案内のように六十一年六月以降、為替円高とか原油価格の低下に対応いたしまして四回にわたりまして引き下げをやってきておるところでございまして、今後とも供給コスト低減ということに努めるのは当然のことというふうに考えております。
  7. 河本博隆

    河本説明員 ガス料金国際比較についても同様でございまして、厳密な比較は困難でございますが、先生の御指定為替レートによりまして比較いたしますと、家庭用モデル需要で見た場合、一万キロカロリー当たり東京で百二十三円十銭、ニューヨークで七十五円三十銭、ロンドンで四十八円四十銭、パリで九十七円八十銭と、いずれも我が国が割高になっております。  この理由につきましては、まず第一に、我が国では気体である天然ガスを液化いたしまして東南アジア等から輸入し、これを再度ガス化して供給するのに対しまして、欧米では天然ガスがパイプラインで気体のまま直接ガス事業者に送られるので、貯蔵費とかガス化費用がかからないというふうなことがございます。第二番目に、一需要家当たりガス消費量欧米我が国の四倍程度と非常に大きくなっておりますし、また工業用等の大規模需要ウエートが高いということもございまして、一般用の原価、すなわち固定費を非常に大きく引き下げ要因となっているわけでございます。また三番目に、欧米では一般にメーターから先の配管、消費機器の設置、メンテナンス等についてガス事業者一般的には関与いたしませんが、我が国ではそこまでガス事業者に保安の義務を課しておりますために費用の差が生じているわけでございます。  なお、ガス料金につきましては、電気料金と同様に六十一年六月以降三年間に四回の料金引き下げを行ってきたところでございます。  いずれにいたしましても、ガス事業といたしましては、一層の経営効率化推進によりコスト低減に努めるべきは当然だというふうに考えてございます。
  8. 川崎二郎

    川崎(二)委員 今お話しいただいたのですけれども、もちろん円高による値下げというものが数回行われていることは事実であります。しかしながら、経営効率化営業努力によってこう下げたというものがどうも国民の中に感じられないというように私は思っております。  運輸省国内航空JRバス地下鉄タクシー、同じように御説明をいただきたいと思います。  なお、昨年来問題になっておりました国際航空運賃については、運輸省いろいろ御努力をいただいて、かなり緩和されたように思っております。まさにある意味では営業努力一つ成果だろうと思いますけれども、その辺についても簡単に説明をしてください。
  9. 小幡政人

    小幡説明員 お答え申し上げます。  単純に、若干大まかに比較させていただきたいと思いますけれども、まず国内航空運賃でございますけれども、普通運賃で見てみますと、欧米諸国と比べまして大体同程度ないしは若干安目というのが現状でございます。  ただ、南北格差と言われますように、実は日本国内航空運賃路線ごと賃率相当格差がございます。また、普通運賃と、特に団体旅行運賃との間に大きな格差があるということで、一方また、個人割引のメニューが貧困だというようないろいろな問題がございますので、実はそのような問題の解消につきまして現在検討中でございまして、年内にも考え方をまとめるというようなことで進めているところでございます。  次に、JR地下鉄でございますけれども、これについては諸外国とおおむね同程度という状況かと思います。  次に、バスタクシーでございますけれども、これは単純に比較しますと日本が割高という数字が出てまいります。ただ、両者とも労働集約的な事業でございまして、人件費要因が非常に影響してくるという事業でございます。  特にタクシーにつきましては、御存じのようにコストの約八〇%が人件費でございます。それで、その人件費につきましても、実はタクシー労働者の方々の賃金というのは他の産業と比べましても相当低い状況にございます。また、外国運賃体系というようなものも、例えばチップというような慣行は日本にはございませんし、また、外国においては人数、お客さんの数がふえますと割り増し料金がついてくるというような意味での料金体系等についても、大分異なる点があるというようなことも考慮しつつ比較する必要があるかというふうに考えております。  また、バスにつきましては、諸外国においては手厚い助成が行われておるということも考慮する必要があると考えております。  最後に、国際航空運賃方向別格差の是正問題でございますけれども、簡単に申し上げますと、六十年の一月と比べまして、実はヨーロッパ線につきましては二六%の引き下げを行いまして、現在の方向別格差指数は、具体的にはロンドンが九五、パリが一〇五ということになっております。それから、アメリカにつきましては、同じく一八%の引き下げを行いまして、ロサンゼルスが一〇四、ニューヨークが九七という状況でございます。なお、豪州・シドニーにつきましては、一七%の引き下げで一〇四でございます。  それから一番格差がございました東南アジアにつきましては、二一%から二七%の引き下げを行いまして、方向別格差は七五から九九まで改善しております。まだ東南アジアを中心に格差が残っておりますけれども、これにつきましては引き続き努力するということで、継続中の対策でございます。  以上でございます。
  10. 川崎二郎

    川崎(二)委員 どうもありがとうございました。  続いて、郵政省長距離電話郵便についても同じような説明をお願いしたいと思います。  なお、競争原理の完全な導入によりまして非常に成果が上がったと言われております国際電話についても、過去二十年間にどのぐらいの値下げが行われてきたのか、外国との比較もあわせて御説明をお願いしたいと思います。
  11. 濱田弘二

    濱田説明員 まず、電話関係についてお答え申し上げたいと思います。  国内電話料金長距離電話料金ということでございますけれども、各国の一番遠いところの通話料金先生指摘の方法によって比較いたしますと、よく使われております三分間料金比較で、平日昼間で申し上げますと、日本NTT電話料金は三百三十円でございますけれども、アメリカのAT&Tの料金は半分以下の百四十一円、それからまた、イギリスのBTの標準区間料金は百一円、フランスNTTの約半分の百六十四円となっておりまして、NTT料金相当割高になっておるわけでございます。  したがいまして、郵政省といたしましては、遠距離料金はもちろんでございますけれども、他の市内近距離料金もあわせて今後ともより一層低廉化推進していく必要があると考えておるところでございます。  それから、国際電話の方でございますけれども、KDDについて申し上げますと、昭和五十四年以来毎年のように電話料金値下げをしてきておりまして、去る十一月一日にも相当大幅な値下げをしたところでございます。先生指摘のように、二十年前の料金比較いたしますと、ちょうど二十年前は、アメリカイギリスフランスあて、ともに日本から発信の場合には、やはり平日昼間三分間料金で申し上げますと三千二百四十円であったわけでございますけれども、現在KDD料金は、対アメリカでいきますとこの十一月一日から七百三十円ということで、この二十年間で二三%の水準まで落ちてきておる。イギリス及びフランスについて申し上げますと、千百十円ということで、対アメリカよりは若干高いわけですが、これでも二十年前に比べますと三分の一の水準になってきております。  それから、先生案内かと存じますけれども、この十月一日から国際事業者二社が登場してきておりまして、この二社の料金KDDよりもさらに安い料金が設定されておるところでございます。  最後に、外国との料金比較でございますが、このように毎年のように料金引き下げてきておることもございまして、我が国料金相当に安い水準に達しておると言ってもよかろうと思っております。例えば、平均的な通話分数、六十三年度の例でいきますと、三・六分というのが一回当たりの平均的な通話分数ですが、これでアメリカの場合で比較させていただきますと、日本からアメリカ電話する場合の料金を一〇〇といたしますと、アメリカから日本電話される場合の料金は一三一ということで、日本の方が相当に安くなっております。さらに、国際事業者料金でいきますと、日本からかける料金を一〇〇といたしますと、アメリカからかける料金は一四〇ということで、さらに安いということでございます。対フランスにつきましてもおおむね同様の傾向にございます。イギリスについても、KDDはほぼ同じ料金でございますけれども、国際事業者の場合には日本からの方がやはり安い、そこまで料金が下がってきておるわけでございます。  郵政省といたしましては、今先生から競争お話もございましたけれども、この国際三社がさらに切磋琢磨をされて、国民利用者の方により一層使いやすいサービスになってもらうことを期待しておるところでございます。  以上でございます。
  12. 藤野利行

    藤野説明員 郵便料金比較についてお答え申し上げます。  現在、日本の場合には封書は六十二円でございまして、はがきは四十一円でございますが、封書につきましては、アメリカ料金為替レートで換算いたしますと三十六円でございます。イギリスにつきましては四十四円でございます。フランスにつきましては五十二円でございまして、いずれも我が国の方が高くなっております。はがきにつきましては、我が国は四十一円でございますが、アメリカは二十二円で我が国よりも安くなっております。しかし、イギリスにつきましては四十四円、フランスは五十二円となっておりまして、我が国よりも高い料金でございます。  我が国料金でございますが、本年四月の消費税転嫁に伴う料金改定を除きますと、現在の料金昭和五十六年から続いておりまして、当時はイギリスフランスと同程度でございましたが、五十六年の値上げ以後八年半以上にわたって据え置いているわけでございまして、その間数次にわたりまして、国際郵便料金値下げとか、あるいは最高三〇%まで割引をいたします広告郵便物制度の創設、あるいは定形外郵便物の大幅な料金値下げ等によりまして、利用者にとりましてより利用しやすい料金にするよう努力してきているところでございます。しかしながら、為替レートの大幅な変動によりまして、イギリスフランス等におきましてはこの間数回にわたりまして値上げが行われたわけでございますが、現在のような料金になっているところでございます。  また、日本と諸外国におきましては郵便に関する事情も若干差がございます。例えばアメリカでございますが、国土が非常に広大でございますので、通信販売というようなものが非常に盛んである等の理由もございまして一人当たり郵便利用通数日本の約四倍でございまして、これによります事業運営上スケールメリットが働いているという点もあるのではないかと思います。さらにまた、アメリカにおきましては、政策郵便物に対しましては国庫からの補てんが行われております。  そういう状況でございますが、アメリカ郵便事業はしばしば赤字に陥っているところでございます。また、サービスの質につきましても、アメリカフランス等ではおくれというのがしばしば問題になっているようでございまして、必ずしも良好なサービス水準にあるとは言えない状況でございます。これに対しまして、我が国におきましては現在非常に良質な郵便サービス提供しておりまして、しかも、国庫からの補助もいただいておりませんで健全な事業財政を維持しているところでございます。  また、郵便事業におきましては、我が国の場合ですと人件費が八五%を占めている点も料金に非常に響いてくるものではないかと思っております。  このように、日本郵便料金と諸外国郵便料金比較するに当たりましてはいろいろ考慮すべき事情があるものでございます。しかしながら、今後につきましても利用者ニーズに応じましたサービス提供に努めるほか、効率化を図ることによりまして健全な事業財政を維持することによりまして、現在の料金水準をできる限り長く維持していくよう努力してまいりたいと考えております。
  13. 川崎二郎

    川崎(二)委員 今のお話ですけれども、やはり利用量がふえれば価格が下がる、これはKDDの例で端的に示されておるわけであります。そういった意味で、NTT利用量がふえている割には、もうちょっと努力のしがいがあるのじゃなかろうかな。はがきにおいても、確かに五十六、七年に値上げされて赤字解消されてきておるわけですし、利用量もふえてきている。確かに人件費ウエートは高いのですけれども、年賀状くらいは割引をしてやるということに郵政省もそろそろ取り組んでもらいたいなという思いをいたしております。  公正取引委員会に今のNTTの関連でちょっとお聞きしたいのですけれども、公正取引委員会研究委託機関において、今話題となっていますNTT経営状況について調査をされ、現状を肯定されるような意見が出たという新聞報道がされております。  今お話しのように、国際比較においては料金が非常に高いという現状にあるわけであります。その根本理由が、寡占状況でどうも対等な競争がなされていないのではないかな、こんな認識を我々は受けております。そうした認識の中においていろいろな論議が繰り返されているときに、先に公正取引委員会がそうした意見を発表された理由。いや、新聞はちょっと誤報でそういう真意じゃなかったのだということならば、こういうことですよという説明をお願いしたいと思います。
  14. 柴田章平

    柴田(章)政府委員 競争政策が公正かつ自由な競争を促進することで消費者の利益を確保することを目的としていることは、今さら申し上げることでもないと思います。  今御質問のございました「電気通信分野における当面の競争政策上の課題」ということで、情報通信分野競争政策研究会一つ意見を出したわけでございます。この中では、現在の電気通信市場NTTが特殊な地位に立っていて、公正かつ自由な競争を制約する可能性もある、あらかじめそれを防止してNTT新規参入者の間で公正な競争条件が確保される必要があるというふうにいたしておりまして、むしろNTT現状を今必ずしも肯定をしているというわけではございません。  ただ、電気通信市場構造を変革するということが公正な競争条件を確保する一つの手段であるとは考えられます。しかし、ある意味で独占的な事業分野競争が導入されたわけでありまして、現在競争は非常に流動的な状況にございます。したがって、当面はNTTに、収支分計明確化による内部相互補助の防止、NTTとの接続条件改善によるイコールアクセス実現接続のために必要な情報等の開示などの措置を講ずることによって公正な競争条件をまず整備しろというふうにしているわけでございます。このように競争条件の整備が行われますと、競争は活発に行われて、むしろ料金引き下げにもつながっていくのではないかという期待をいたしているわけでございます。これが報告書考え方でございます。  あえてなぜ今の時点でというのが先生の御質問の趣旨であったかと思いますけれども、先刻御承知のように、日本電信電話株式会社法で、実は平成元年度末までにNTTあり方について検討を行って、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとするというふうになっているわけでございます。私どもとしては、競争政策の観点からNTTあり方についてかねがね関心を持っておりまして、政府全体としてのNTTあり方検討の参考にしていただければということで一つ意見を公表した次第でございます。
  15. 川崎二郎

    川崎(二)委員 実は、内外価格差ということではないのですけれども、先ほどの各省庁からのお話しのとおり、日本特殊事情はあるものの、やはり利用量が非常にふえてきた場合は、価格をそのまま維持するという努力よりも値下げをするという努力に入っていかなければならないというように私は思っております。  そういった意味で、実はきょうは大蔵省には来ていただいてないのですけれども、振り込み手数料もたしか六百円、八百円に上げましたのは五十六年七月のことでございます。そのとき、昭和五十五年の利用数が振り込み手数料で一億九千七百万件、六十三年になりまして四億一千六百万件ある。人件費ウエートが高いからとても下げられませんという話を大蔵省からちょっともらっておるわけでありますけれども、こういった点について経企庁もいろいろ資料をとっていただいて御論議をいただきたいというように思います。  それから経企庁にちょっと。新聞はこの三月に値上げされましたけれども、どうなっているのかなと言うと、資料がない。資料がないという回答はちょっとぐあいが悪いのではなかろうかなというように思います。聖域をつくってはいかぬと思いますので、特にお願いをしておきたいというように思います。  経企庁におかれましては、各省任せではなくて、今は各省からお話を聞いたのですけれども、やはり物価の番人として目を光らせていただき、特に公共料金引き下げについてはリーダーシップをとっていただきたいというように思います。この「物価レポート」にも大変いい分析が書かれているのですけれども、分析だけで、どうせいという話がないのです。物価現状の分析だけで終わってしまっている。ひとつリーダーシップをお願いしたいと思います。そのとき、もちろん日本の特殊性、また、きょうは為替レートを使わせていただいたのですけれども、購買力平価という考え方もあるように思います。ただ、国民の中には購買力平価というのがまだなかなか浸透していかない、こういった面について、先ほど国民へのPRというお話もありましたので、お願いを申し上げたいというように思います。  いずれにせよ、公共料金を五年、十年かけて長期的にどのくらいのところに置いていくんだという目標を経企庁なり各省が持っていただいて、下げるという気持ちを持たないと下がらないのではなかろうかなというように思っております。  最後になりますけれども、この「物価レポート」の、昨年もことしもそうだったのですが、今、国民の中で論議を呼んでおりますのは、国際比較の中で、日本が最も得意としている分野の中で日本で買うよりアメリカで買う方がよっぽど安いものがある、これは変なことが起こっているんだなという感じを実は与えております。たまたま特殊品でこんなものがあったんだというならともかくとして、常態としてこのようなことがあるとしたらこれは大変なことになってまいります。  実はこの「物価レポート」、食品を除きますとわずか十三品目とっているだけなんです。二年間連続、カラーテレビはアメリカで買えば約五万円、日本で買えば十万円だという統計が実は出ているのです。もしこれが事実だとしましたら大変なことです。日本が最も得意なカラーテレビの分野でアメリカの倍の金額、これは二十一インチですけれども、大変なことになる。  もしこれが事実だとしたら、長官、どういうふうに取り組まれるか。いや、統計のとり方でいろいろなのがあって難しくて、たまたま――たまたまという表現はちょっと悪いと思うのですけれども、カラーテレビにはこんな数字が出てしまったということならば、これはひとり歩きします、この図を見てもガソリンとカラーテレビだけが高くて、それでこんなものをどんどんつくっていけば、日本はこんな構造があるのかな、アメリカではうんと安く売っているんだなという誤解を国民に与えます。やはり国民に正しい認識を与えるのは必要ですから、間違ったというか、ちょっと混同されるような統計のとり方をされているとしたら改めていただきたいと思います。そのことについて長官に御意見をお聞かせ願えたらと思います。
  16. 高原須美子

    高原国務大臣 今御指摘のありましたカラーテレビは、確かに今おっしゃられたような数字を挙げております。ただし、この調査は昨年の十一月に行ったものでありまして、その後、日本では物品税が廃止されたことなどによってカラーテレビの価格はかなり下がっておりますし、また為替レートも円安傾向で推移しております。ちなみに、ことしの十一月時点で東京での小売価格を見ますと八万九千七百円、またニューヨーク価格を最近の為替レートで換算しますと六万五千七百十九円ということで、現時点の価格為替レート比較すると、日米間の価格差は昨年の十一月よりは、若干といいますか、かなり縮まってきているということは言えると思います。  一般的に申しますと、日本競争力が強い分野では日本国内の製品価格は輸出先における価格よりも安い、そういう強い商品だというふうに思っております。したがいまして、今後は「そういう円安傾向にあることもありまして、日本の強い製品がなるべく価格が安定していくように努めていきたいというふうに思っております。
  17. 川崎二郎

    川崎(二)委員 どうもありがとうございました。
  18. 新村勝雄

    新村委員長 次に、伊藤忠治君。
  19. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 私はいただきました時間の中で、公取委が九月の十四日に発表されました情報通信分野競争政策研究会の報告に対する質問と、十月の二日に出されました電気通信審議会の中間答申に対して質問をいたします。  まず第一点、政策研究会が設置をされたのは何を目的に設置をされたのか、提言をされておりますが、これは今後どのように政策に生かされていこうとされているのか、お伺いいたします。
  20. 柴田章平

    柴田(章)政府委員 今御指摘のございました情報通信分野競争政策研究会でございますが、実はこの情報通信の分野に競争が導入されました六十年、そのころから私どもかねがねずっとこの分野の競争あり方には関心を持ってきているわけでございます。その当時から、いろいろそのときどきの競争政策上の問題点について考え方をこの研究会に提示していただくようにお願いをしておりました。  そういうことで、実は過去四回にわたって六十年から六十二年までいろいろな御意見を出していただいているわけでございますけれども、今般、御承知のようにNTTの会社法の見直し、再検討の時期が来ているということで、私ども、そのような観点からもう一度この問題を御議論をお願いをしたいということで、ことしの春ごろから再度御議論をしていただいた、こういう経緯でございます。
  21. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 電通審の中間答申は十月の二日に出されまして、当研究会の報告は検討の結果九月の十四日に出されております。研究会報告の考え方を電通審の中間答申に組み込んでいただきたい、考え方を生かしていただきたい、こういう立場で検討されたのか、それとも電通審は電通審、研究会は研究会の立場でそれぞれ結論を出されて、その間の相互関係というのは何ら期待をしてないのか、それとも、私が当初申し上げましたとおり、研究会報告が中間答申に最大限コミットされるということを期待して出されているのか、この点はどうでございますか。
  22. 柴田章平

    柴田(章)政府委員 私どもの立場は、先ほど来申し上げていることであろうかと思いますけれども、政府平成元年度末までにNTTあり方について検討を行って、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものというふうにNTT会社法でなされているわけでございます。むしろこのために、私どもとしては競争政策の立場あるいは観点からNTTあり方について検討を加えて、政府全体としてのNTTあり方検討の参考にしていただければという趣旨でございます。  したがって、そういう意味では、私ども、必ずしも電通審の中間答申だけに視点を置いているわけではなくて、むしろ政府全体としてのあり方の御議論の中に競争政策の観点も十分反映させていただけたらありがたいということで公表いたしたものでございます。
  23. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 一般的な価格政策とか競争政策に対する研究会のコメントではなくて、ここで取り上げられておりますのは、電気通信市場が開放されまして自由化競争状態が発展をしつつあるわけですが、そういう状況の中で電通審の最終答申が来春の二月段階に向けて現在検討が進められていると聞いているわけです。それに対して競争政策上の立場から政策研究会が一定の考え方を出されている、このように私たちは判断をしているわけです。  ですから、一般的な物価政策だとかあるいは公共料金のあるべき考え方という、つまり一般論ではなくて、具体的な電気通信市場競争分野における競争政策上、価格政策の問題に対するコメントである、このように理解をしておりますが、よろしゅうございますか。
  24. 柴田章平

    柴田(章)政府委員 公正取引委員会の立場あるいは競争政策の立場と申しますのは、繰り返すまでもなく、自由主義経済体制の我が国経済が基本的には競争を最重視した政策運営ということが必要だというのがその立場であろうかというふうに私ども考えております。したがって、経済活動が行われておりますあらゆる分野について私どもとしては常に関心を寄せておりまして、そういう意味で、いろいろな経済活動ができるだけ競争促進的に行われるようにということで考え方を表明したりあるいは直接の規制を行ったりしているわけでございまして、その一環として、この研究会でむしろ専門家の方々にお集まりをいただいて競争政策の立場から電気通信事業分野における競争あり方についての御意見を伺ってまとめていただいた、こういうことでございます。
  25. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 私は、研究会の報告はこの冊子で質問させていただきます。幾つか出ていまして、これがオーソライズされていますので、これで質問いたします。  ページ二十五、この中の「エ 考え方」という項目の中で、NTTの組織再編については次のようにコメント、報告されているわけであります。「現在のところNTTによる明白なNCC排除のための行為が問題となっているわけではなく、」云々とずっとございまして、「そのため、現時点でNTTの長期的な在り方を決定付けるための措置の是非を判断することは、必ずしも適当ではなく、今後の市場における競争状況を十分に観察する必要があると考えられる。したがって、競争政策の観点からは、当面はウで述べたような代替的な手段を講じて公正な競争条件を確保するように努めることとし、その結果を踏まえ、公正な競争条件が十分確保されない場合には一定期間後に、市場構造の変革についての具体的方法を検討することが適当ではないかと考えられる。」こういう表現がございますが、これが言うならば結論である、このように理解をしてよろしゅうございますか。
  26. 柴田章平

    柴田(章)政府委員 幾つか中でいろいろな議論をしておりますけれども、今先生がおっしゃっておりますのは、NTTのいわゆる地域分割に関する部分、これについての結論ということでございましょうか。――それはそういうことで御理解いただいて結構でございます。
  27. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 それでは二十一ページから二十二ページにかけまして質問をいたします。  まず第一点、(イ)項の「予想されるデメリット」の中で、「b 市内通信会社と市外通信会社の連係が、現在のようにエンド・トウー・エンドのサービス提供されている場合と比較して、円滑さを欠くことになる可能性がある。」この点について、どういう意味でございましょう。
  28. 柴田章平

    柴田(章)政府委員 NTTの市内も市外も別会社に分離した場合でございますが、今のようにNTTがむしろエンド・ツー・エンド、すべてのサービス提供する場合と比較しますと、市内のサービス提供する会社と市外のサービス提供する会社との間に意思疎通などが円滑に行われなくなる可能性があると考えられるわけでありまして、このことによりまして顧客に対するサービスが低下するなどの影響が生じるというふうに考えられます。  例えば、事故が発生をいたしまして、顧客にとってどの事業者に修理を依頼すればよいかが直ちに明らかにならないような場合、復旧に時間が要るということになったり、あるいは顧客の損害の補てんが円滑に行われなくなったりする可能性もあるのではないか、こういうふうに考えているわけでございます。
  29. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 その次にございます「責任範囲の不明確化による混乱が生じることも考えられる。」この点はどういう意味でありますか。
  30. 柴田章平

    柴田(章)政府委員 今、先生の御指摘をいただいた点、「顧客に対するサービスの低下や責任範囲の不明確化による混乱」でございますけれども、私が先ほど触れてしまった点とも関連いたしますが、むしろ二社に分かれることによって例えば顧客の損害の補てんが円滑に行われなくなるという可能性、そのようなことを包含をして意味しているわけでございます。
  31. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 その次のc項にございます「NTTの研究開発力の低下をもたらす可能性がある。」この意味はどういうことを言っておるのか質問いたします。
  32. 柴田章平

    柴田(章)政府委員 今、NTTは通信に関する分野においてその技術力は非常に高いものがあるというふうに評価をされているわけでございます。その研究開発力も相当なものだというふうに理解をしているわけでございますけれども、分離分割が行われますと、研究開発のために用いられる資金あるいは人材といったものが削減されたり分散されるということもあろうかということになりますと、やはり全体としての研究開発能力あるいは力というものが低下するのではないかという懸念でございます。
  33. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 その次に(ウ)の項なのですが、こういう表現がございます。「その他の考慮要因」、「現在NTTの市内と市外の電話料金の収支について分計を行うための検討が進められているが、仮に市内の電話サービスが赤字であるとすれば、分離を行う場合には市内通話料金又は基本料金値上げが必要となる可能性があると考えられる。」つまり、ここの指摘は、市内と市外の電話料金収支分計が行われまして、その結果市内が赤字であれば、分離を行った場合は市内料金や基本料金値上げが必要となる、こういう意味でございますか。
  34. 柴田章平

    柴田(章)政府委員 現在、NTTは複数の業務を並行的に行っておりまして、経営体としては全体として収支を出しているわけでございます。ところが、現実の競争というのは、例えばNCCを見てみますと、第二電電等ということになりますと市外分野での事業を営んでおりまして、その分野と、それからNTTは市内、市外の両方で営んでいるわけでございまして、そういう意味では競争条件が必ずしも明確になっていないわけであります。したがって、そういう意味NTTが二つの事業を今仮に行っているというふうに単純化いたしますと、それぞれの収支を明らかにすれば、むしろ第二電電とNTTの市外通信分野の競争というものが行われているか行われていないか、どういうふうな競争があるのかということが明らかになっていくだろう、こういうふうに考えているわけであります。  さて、現在のNTTがどちらでどれだけ赤字を出しあるいは黒字を計上しているのかということは必ずしも明確にされていないわけでありまして、そういう点で、仮に市内の電話サービスが赤字ということになってきますと市外の部分が市内の赤字の補てんに回っているわけでありまして、市外同士の競争がそういう意味では必ずしも適正に行われてないという懸念が生じるわけであります。そういう意味で、なるべくそれぞれの競争条件を明らかにすることは私ども基本としては望ましいというふうに考えているわけであります。  したがって、もし市内の電話サービスが赤字であったとすれば、むしろ市外から市内へ補てんされている部分、その部分についてはまた別の対応が本来必要になるはずなので、その赤字の補てんというのは市内の値上げによってむしろその補てんが必要になるようなケースが出てくる、むしろそれが競争というものではないだろうかというふうに私どもとしては考えている、こういうことでございます。
  35. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 私が言ったことと一緒なので、それだったらイエス、このようにお願いしたいのです。回り回って一緒のことを言われているので、もう一度確認いたします。  したがってここで言われていることは、今るる説明がありましたけれども、市内と市外電話料金収支分計が行われまして、その結果市内が赤字であれば、分割を行った場合は市内料金や基本料金値上げが必要になる、結局はこういうことなのでしょう。
  36. 柴田章平

    柴田(章)政府委員 もし赤字であればということで、そのとおりであります。
  37. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 そうでしょう。前提があるのでしょう。  三十八ページについてお伺いをいたします。  「料金規制の対象範囲について」の(ア)の項ですが、時間の関係で読むことはやめますが、ここで二点指摘をされているわけであります。  まず第一点の指摘は、ポイントは、多数の新規参入がありまして「競争的な状況に移行したと考えられる時点」というのがまず第一点。第二点は、「料金認可の対象から順次外す方向で検討すべきではないかと考えられる。」というのが第二点の提言のポイントであろうと思うのです。  そこで、この二点について質問をいたします。  つまり、「競争的な状況に移行したと考えられる時点」というのは、具体的にはNCCの参入度合いをどの程度にイメージをされての提言なのか、これがまず第一点。  第二点の質問は、つまり認可の範囲ですね。それを「順次外す」と言われておるわけですが、「順次外す方向」とは、料金内容もさまざま多岐にわたっているわけでありますが、具体的にはその中身をどのように振り分けて外していこうと考えられているのか、具体的な考え方がございましたらお答えをいただきたいと思います。
  38. 柴田章平

    柴田(章)政府委員 まず第一点は、「競争的な状況に移行したと考えられる時点で第一種電気通信事業者に対する料金認可の対象から順次外す方向で検討すべきである。」という点であろうかと思います。大多数の消費者にとってNTTとNCCの間での現実的な選択の余地が生じたと考えられる場合には、そのサービスについての料金規制を行わないことにすべきであろうということでございます。  それで、具体的には、NCCのサービスがほぼ全国をカバーをし、料金サービス内容等からNTTサービスと実質的な代替関係にあると考えられるようになった場合を想定いたしております。  それから、第二点につきましては、そこまで具体的な内容までは実は私どもまだ議論はいたしておりませんので、御了解をお願いしたいと思います。
  39. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 これに関連をして次に質問をいたします。  結局のところ、料金決定の原則からしまして、報告書もるる指摘をされているわけですが、独禁法が存在をし、これが機能することを前提にするなら、NTTをNCCの比較において特別扱い、すなわち差別的に取り扱うということは正しくない、このように私は考えますが、どうでしょう。
  40. 柴田章平

    柴田(章)政府委員 今、先生がおっしゃった点でございますけれども、確かに通常独占の問題を議論いたしますときには、競争があって、そこからだんだん独占が出てきて、それで独占が弊害をまき散らす、これが普通私どもが独占に対応するときの問題意識であろうかと思います。ところが、今回は、制度的に本来独占の分野でありましたところに競争を導入したわけでありまして、そういう意味では、一般的に私どもが独占に対応するケースとは、ある意味で逆のような観点に、あるいは流れになっているということであろうかと思います。  基本的に、競争が十分に行われます、あるいは競争が行われなければいけないというのは、先生がおっしゃったように、むしろ対等に戦えるような、あるいは競争基盤の整備が行われて対等な競争が行われているような状態というのを私ども望ましい状態と考えているわけでありまして、一日も早くそういうことが実現をしてくれればよろしいわけでございますので、私どもとしては、例えば市外の分野について今のNCCのグループが十分育ってくれて、対等な競争が行われる日が一日も早く来ることを念願しているわけでございます。
  41. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 次に、電通審の中間答申について質問をいたします。  郵政省、お見えですか。――まず第一点、中間答申は分離分割を前提に考えられたものですか、その点について。
  42. 有村正意

    ○有村説明員 お答えいたします。  先生御承知のように、NTT法の附則第二条におきまして、政府は、会社の成立の日から五年以内にNTTあり方について検討して必要な措置を講じなさいということになっているわけでございまして、これに基づきましてただいま検討しておることでございます。  先般出されました中間答申では、「NTTの在り方」につきまして、現状を幅広く分析をいたしまして、例えば経営上の問題点、公正有効競争上の問題点、それから研究開発、地域振興等の問題点につきましてさまざまな問題点が挙げられておりますが、それらの解決方策といたしまして、「現行組織形態のまま改善措置を講ずる方法」とか「組織を再編成する方法」、あるいは「個別業務を分離する方法」という三つの方策を並列的に提示しておりまして、一定の方向を出しているものではございません。したがいまして、この中間答申も組織の再編成という方向を決めているというものではございません。
  43. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 だから、分離分割を前提に考えているんじゃないですね、こうお聞きしておるわけです。どうですか。
  44. 有村正意

    ○有村説明員 お答えいたします。  政府といたしましては、NTT法附則の課題に沿って検討している状況でございまして、分離分割を前提として検討しているというものではございません。
  45. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 国会審議の経緯について、次の点は御存じであろうと思います。なければない、あるならある、こういうことをお聞かせいただければいいです。  分割問題については、一九八四年の六月二十七日、つまり八四年のこの時点では電電改革の一連の法案審議が国会で行われました。その衆議院逓信委員会で奥田郵政大臣がこう答弁をされているわけでございます。「今日の体制、一元体制といいますか、こういった形で分割をしない方向の中でこの問題を進めてまいりたい。」こういうことでございます。次は、同年七月五日に同じく逓信委員会で当時の郵政大臣が、「分割という形については私は考えておりません。」こういうことがはっきり確認をされているわけでございます。これが第一点。  第二点、NTTの分離問題について、これも当時、法案審議の最終場面におきまして両院で附帯決議を採択いたしました。その附帯決議の中で、分離問題については、「自主性を尊重すること。」このことが全会一致で決議をされているわけでございます。  この経過について、郵政省は、そういう国会におきます一連の議論を踏まえて今後問題解決に当たられるのかどうなのかについてお答えいただきたいと思います。
  46. 有村正意

    ○有村説明員 先生が御指摘になりました三点につきまして、もちろん郵政省といたしましても存じておるわけでございます。  最初の奥田大臣の当時の答弁でございますけれども、何回か奥田大臣は見直し規定に関しまして答弁を申し上げております。当時といたしまして、まずNTTを分割することなく民営化をいたしまして、あわせて新規参入を認めていくという形の中で、将来的にも競争原理が働くことが期待できるという趣旨をもちまして述べたものと考えておりまして、この趣旨は、当時の国会におきまして奥田大臣が一連の答弁を通じて申し上げているところでございます。  また、業務の分離につきます附帯決議につきましても、当事者たるNTTの「自主性を尊重すること。」は当然でございますし、そういったことで臨みたいと考えておりますが、検討自体につきましては、NTT法附則第二条によるNTTの全般的な見直しを行うに際しまして、経営の効率化とか公正競争の確保といったような観点から、NTTの自主性を尊重しながらも個別業務のあり方に係る問題の検討を行うということも、このNTTあり方の対象に含まれているものというふうに考えているところでございます。
  47. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 私がお聞きしておりますのは、一連の国会審議の経過を踏まえて郵政省は問題解決のために対応されるのかどうかということを聞いておるのです。どうですか。
  48. 有村正意

    ○有村説明員 先ほど申し上げましたように、当時の大臣答弁でございますとか附帯決議はもちろんよく踏まえまして検討しておるつもりでございますし、今後ともそういうふうにやっていきたいと考えております。
  49. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 電通審議会のメンバーですが、会長は豊田英二さん、つまりトヨタの会長さんが電通審の会長さんをされておみえでございます。元来、審議会というのは中立性を最大限保障するというのが審議会メンバーを選考する場合の趣旨であろうと私たちは考えております。ところが、会長に豊田英二さんが就任されているということは、御承知のとおり、日本高速通信、NCCのオーナーでございます。そうしますと、NCCサイドに立つ人であることは間違いがありません。この点、そうであるかどうかということの確認が一つ。  二つ目は、それではそれに対抗して、中立性を保障するということであればNTTサイドに立つ人がこの委員にいるのかいないのかということをお聞かせいただきたい。以上二点です。
  50. 有村正意

    ○有村説明員 電気通信審議会の委員は、電気通信審議会令に基づきまして学識経験のある方から郵政大臣が任命をするわけでございます。任命に当たりましては、この審議があらゆる角度から総合的になされるようにということで、広く各界から国民の意向を代表するにふさわしい方々を選んでお願いしておりまして、言論界とか利用者でございますとか労働界、行政経験者、大私企業等からも委員になっていただいておりまして、先生が二番目にお話しになりましたようなNTT御出身の方も入っておられるわけでございます。  ところで、会長の問題でございますけれども、会長は、このような高い見識と深い経験を有する審議会委員二十二名の互選で決まることになっております。豊田会長は、運営に当たりましても、委員個人としての高い見識に基づく適切な判断とか、幅広く各界を代表される方々との合議によりまして、審議が特定の利害に偏ることがないように、審議会の円滑かつ適切な運営に尽力をされているというふうに承知しております。したがいまして、豊田会長の所属されます企業が電気通信事業に出資をされているわけではございますけれども、それだからと申しまして審議会の会長としての判断がそれによって影響されるものではないというふうに考えておるところでございます。  先ほど申し上げましたように、電気通信審議会は幅広い分野から出ていただくということになっておりまして、こういった観点からの欠格事由というものもないわけでございます。今や電気通信は社会経済に非常に密着をしておりまして不可欠のものでございまして、電気通信に全く無関係という方々も存在し得ないほどになっているということも御理解いただきたいと存じます。
  51. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 いろいろ言い方はあるのでしょうけれども、第三者が見まして誤解を生むような構成はやめた方がいいと思います。現に現役でありまして、日本高速通信といえば新規参入の三つありますうちの一つで、言うならばその株主でございます。その方が審議会の会長になられるというのは、どういう理屈があろうと誤解を生みます。審議会というのはやはり中立でなければいけません。各界から委員を選ばれるのも結構でございます。しかし、会長にこの方が座られるということは、審議会を代表するわけですから、どうしたって誤解を生みます。避けようと思えばできるわけです。ところが現実にはこういう構成で審議会が稼働しているということです。  これは大変問題点だと思いますから、この点は、郵政省の方で中立性を確保されることを最大限追求されるという姿勢があるならば、そのことはきちっと整理をされた方がよろしかろうということを私の方で申し述べさせていただきます。  次は、審議会が審議を進められるに当たりまして、意見が対立する問題の議論に資料が提供されまして、資料を中心にした議論もさまざま行われると思うのですが、その資料は、意見の対立する問題については共通の資料をもって議論をしていただきたいと思うのです。明らかにその資料をめぐって意見、評価が対立するような資料に基づいて議論が行われていくということは妥当性を欠きますから、この点は郵政省において今後十分検討いただきたい、善処いただきたい、こう思いますが、どうでしょうか。
  52. 有村正意

    ○有村説明員 審議会の審議に際しましてさまざまな資料を私どもも提出し、またヒアリングの際に各事業者等からも提出されたわけでございますけれども、それらにつきましては、先生方が審議の際にその持つ意味等十分御検討されまして、先生方が取捨選択をされまして中間答申に記載する等のことが行われておりまして、先生の御趣旨はそのとおりであると存じております。
  53. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 中間報告の中ではさまざまな指摘がされているわけですが、時間の関係がございまして三つに絞って質問をいたします。  まず第一点、NTTの人員削減の問題について指摘があるわけです。その中の表現で、人員削減が単に退職者と採用者の差にすぎない、こういう指摘がございまして、言うならば企業の効率化、合理化が不十分だ、こういう評価につながっているわけです。これまでやってきたことが不十分という評価ですから、それ以上の人員削減を求められているわけです。つまり、人員削減というのは退職者と採用者の差にすぎないじゃないか、この程度じゃないかという評価なのです。  さてそこで質問なんですが、それ以上の人員削減の具体的な方法としては、私が考えますに三つしかないと思います。その一つは職員の首を切ることです。二つ目は採用を完全にストップすることです。三つ目は現にいる職員を子会社へ行かせることです。これ以外にないと思うのですが、そのうちのどれをさらにやれとこの中間答申は言われているのでしょうか。
  54. 有村正意

    ○有村説明員 中間答申で書かれておりますことは、民営化以降六十三年度末までに約七万三千人の要員を削減しておりますけれども、このうちの約半数の三万六千人は単に営業部門へ振りかえられておりまして、この営業部門の大幅増員の必要性については必ずしも明確にされていないこと、あるいは先生お話しになりました在籍出向というようなことも考慮いたしますと、本来的な意味での要員削減数は約二万七千人にとどまっているということでございまして、そういったことからNTTの要員削減が十分とは言えないとの認識のもとに、要員削減の方法としまして、NTTに対しまして「長期的な要員削減計画及びそれによるコスト削減効果を含む長期合理化計画を作成し、公開する。」ことを求めているところでございます。  この人員合理化につきましては昨年の新行革審答申においても言われているところでございまして、今後NTTにおきまして国民の理解が得られるような要員削減努力が期待されているところであるかと存じております。
  55. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 何かすれ違っているわけですけれども、人は減るほどよろしい、経営効率化のためには必要なのでしょう、第三者機関である審議会が提言される自由はあるのだろうと思います。しかし、そのことは本来経営が主体的に考えていくべき問題でございます。国民が見ていて、人が多いか少ないかが問題ではなくて、その企業の料金サービス消費者にとってどれだけメリットのあるものか、しかもその企業の利益がそういう面にどれだけ還元をされているかということが消費者にとっては大切なのでございまして、その中に人が何人いるかどうかということは第一義的な問題じゃないと思うのです。これは挙げて経営者の責任でございますし、その責任が果たせなければこれは経営責任を問われるということになるわけでございます。  ですから、今お話を聞きましても、単に営業部門に人がスライドしただけだという表現がございましたけれども、郵政省御承知だろうと思いますが、他の部門にいた人を何万人の単位で他の部門に動かすということは、配職転を伴うわけですね。公務員の皆さんだったら御承知でしょう、勤務時間が長くなるわけです。OJTが必要なんです。それには経費が要るわけですね。だから、そういうことは経営の効率化ですから、やることによってそこの職員も非常に苦労しますし、それに伴う諸経費ももちろんかかるのですが、やらなければいけないと思うのです。  だから、そういうことを問題にしているのじゃなくて、ここで言っておるのは、人がまだ多いと言っておるわけですね。人が多いと言いながら、具体的に一体何を求めているのかといったら、全然そのことは具体策が提起をされていないというのでは、これはもう悪く判断をすれば、何かいいかげんな経営をやっているんじゃないかという宣伝みたいなものですから、具体的に示されなければこれは問題の解決にならぬと思うのですね。だから、もし郵政省が事務局を担当されていましてこれから具体的な人員削減計画を検討されるのだったら、もっと責任を持てるような具体的な施策を提起いただかないと、これはためにする宣伝のように聞こえてなりません。  私が強調させていただいたように、退職者と採用者の差しかない、その程度しか人は減っていないというのだったら、さらに人を減らせというのだったら、三つのケースしかないのです。ですから、それをどのようにやっていけというのか。そこまで第三者が言えないとするならば、経営者が自主的に努力をいただきたいということ、提言の中では責任を持ってその点をきちっとコメントすべきだろう、私はこう思っておりますから、答えは要りませんけれども、今の答弁を聞いていましても非常に抽象的です。これでは何の問題解決にもならぬ、こう私は強調しておきたいと思います。  次に移ります。  こういう指摘がございます。他産業に比べ勤務時間も短いという表現があります。  私も関係者を呼びまして実情をお聞きいたしました。六十年の民営化以降、労働時間は一分も短縮されていません。むしろ人が減りました。時間外労働がどんどんふえているわけですね。これは一昨年の労働基準法の改正によります、一九九二、三年ごろには千八百時間にまで国として全体の労働時間、全労働者に対する労働時間というのを短縮していこうという国家の重点目標からしても、この指摘は明らかに逆行している、私はこう思うのです。  それで、人が少なくなれば所定労働時間内に仕事がはけませんから、残業がどんどんと膨らんでいくわけですね。実労働時間というのは民営化後うんと伸ばされているわけです。そういう実態を十分精査をされた上での指摘なのか。  しかもこの表現が、他産業に比べ勤務時間も短い――短いということはいけないんだということを言っておるように私はとれるのですけれども、この点はどのようにお考えですか。
  56. 有村正意

    ○有村説明員 NTT職員の勤務時間が短いこと自体は、先生も今お話しになりましたように、欧米に比べまして日本の労働時間が長く、これを短縮することが課題となっております現状を考慮いたしますと、結構なことであると存じております。  中間答申に書かれましたのは、この「NTTの在り方」の検討と申しますのは、昭和六十年にNTTが民営化されました際の一つの大きな目的は、民営化することによって効率的な経営を行って、料金低廉化、多彩なサービス提供をするということにあったわけでございまして、そういった期待に沿うているかどうかということが審議の対象であったわけでございますけれども、その審議の過程で明らかにされましたこういったNTT職員の勤務時間の実態というのを踏まえた上で、人件費や要員削減等の状況も分析をしておるわけでございまして、全体としてNTT経営効率化が十分な状態にはないということを指摘されているものでございます。
  57. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 時間が来ましたので最後になりますが、子会社の問題についてこういう指摘がございます。子会社が百三十五、六ですか、大きいのから小さいのまでさまざまあるのですが、これらは効率化に余り貢献をしていないという指摘がございます。  感じとして言われたのじゃ困るので、私たちも問題解決のために国会で議論しなければいけませんからお聞きするのですが、どの点を指して言われているのか。つまり、数が多いから問題だと言われるのか、あるいは子会社のほとんどがスタートしてから間もございませんから赤字なんですね、赤字だからこれはいかぬ、つまり効率化に余り貢献をしていないと言われるのか、それとも、会社の数は多いけれども、職員は総体として、トータルとして余り多くありませんから、つまり人減らしのためには役立っていないので、その面をとらえて効率化に余り貢献をしていないというふうに考えられているのか。抽象的な表現なものですから、ところが表現の仕方というのは非常にきつい表現ですから私はお聞きするのですが、その点はどうお考えですか。
  58. 有村正意

    ○有村説明員 民営化される以前は投資は認可制であったわけでございますけれども、これが自由化されましたのは五十七年七月の臨調答申も受けておりまして、この臨調答申では「合理化推進の観点から、業務範囲については公益上支障のない限り、大幅にこれを認め、弾力的投資活動を行わせる。」というふうに指摘されておりまして、経営の劾率化の促進の観点から自由化されたわけでございます。  そこで、中間答申で述べております効率化の観点からの問題点といたしましては、先生お話しになりました二つが該当するわけでございますけれども、NTTが出資した子会社等は公社時代設立のものを含めまして百三十一社に上っているわけでございますが、NTTデータ通信への転籍者を除きますと、この出向社員三千五百六十七人のうち大半に当たります三千五百十六人はNTTに身分を残したままでのいわゆる在籍出向となっておりまして、根本的な要員削減にはなっていないというふうにされております。  この在籍出向に関連いたしましては、民営化の際に例えばNTTの出資比率が二五%以上等でございますと、そういった子会社につきましてはNTT共済組合制度の包摂適用が可能となっておりまして、転籍によっても待遇上不利益が生じない制度的手当てがなされているわけでございますが、それにもかかわらず、「この制度が活用されていないことに留意する必要がある。」という指摘がございます。  それからまた、NTTが民営化以降出資しております子会社等のうち半数以上が赤字会社となっておりまして、これにつきましては、先生指摘のように新しいということももちろんあるわけでございますが、「採算性について必ずしも十分な見通しが立っていないものもある。」といったようなことで、その二点から、子会社等の現状が「NTT本体の経営効率化に大きな寄与をしているとは必ずしも言い難い。」そういうふうに指摘をされているところでございます。
  59. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 今も審議会の議論の経過を郵政省が答弁をされたわけですが、経営内容を見ますと赤字会社が多いというのですね。それはそうでしょう。この子会社というのはみんな新規参入として出発しますものね。  では聞きますけれども、NCCは電気通信市場が自由化をされまして二年ほどたって市場参入されたわけですが、初年度からNCCは黒字だったですか、NCCが大きな黒字だったですか、その点どうです。
  60. 有村正意

    ○有村説明員 NCCの状況でございますけれども、元年度の中間決算を見ますと、長距離系三社と、それから幾つかのテレメッセージの会社が経常で黒字を出しておりまして、先生お話しのように赤字のものが多いわけでございます。  これらのNCCにつきましては、全く白紙のところから極めて多額の設備投資を行いまして事業を行うというものでございます。例えば、元年度で申しますと、NCC全体で約二千五百億円程度の設備投資を行っているということでございまして、白紙のところからネットワークをつくってサービス提供するという会社でございますので、NTTの子会社とは、その会社の成り立ちと申しますかそういったものが違うところが多いということも申し上げさせていただきたいと存じます。
  61. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 私はこういうことを言っているのです。  売り言葉に買い言葉の議論ではなくて、例えば、子会社というのは、もう既に進出をしようとします市場というのは競争状態なんです。そういうところへ子会社として、言葉は悪いですが切り込んでいくわけです。だから、初年度から黒字になるなんというのは、そういう商売というのは転がっているはずがないと思うのです。これはあなたも御承知でしょう。ところが、電気通信市場というのは独占状態からこれが自由化されたわけです。言うならば、新規参入の皆さんお入りくださいという市場の条件というのは受け皿として用意されているじゃないですか。装置産業が設備投資の規模も大きく資金がかかるというのは私わかるのです。しかし子会社というのは、言うならばもう既に競争が過密状態でやられている中に入っていくわけですから、会社を起こして初年度から黒字経営が期待できるなんということは、これはJRの場合だって恐らくそんなところは少ないのじゃないですか。私は常識的に言っているんですよ。  ですから、審議会のメンバーの皆さんは学識、しかも有識者でございます。そういう皆さんが議論をされて、そういう面をとらえて、何か子会社をつくるということがいかにも効率化に貢献をしていないのだというふうに短絡的に評価をされるということは、これはどう考えても一面的というか、そのスタンスがどうも妥当性がない、こういうふうに私は言わざるを得ません。  それから次の、NTTから子会社に人が行きますね。身分の問題というのは、これは移行過程の問題であるかもしれませんし、さまざまこれはその主体である経営の方で考えていくべき問題でありましょう。しかし、全体として子会社に行っている人間が少ないから、もっと多く出せばそれは人減らしには役立つという点ではわかりますけれども、そんなに多く子会社に送り込んだら、またぞろ赤字がふえるだけじゃないですか。経営というのは、そのシェアが確保できて、そして利益が上がって、これをどのように人件費を含めて総合的な黒字経営でやっていくかということが、経営が求められているある意味では至上命題であろうと私は思いますから、ですから、いいとこ取りでこういう指摘をされるというのはどうしても反論を呼び起こすと思うのです。  ですから、権威ある審議会ございますから、もう少し問題の解決はどこなのかという――そういう意味で公取委の政策研究会の指摘というのは、非常に大きな問題をとらえて、そして提言されています。ですから、本来ならばその企業が自主的にあるいは主体的にやるべきことを、何か労使関係そのものにまで介入するような言うならばタッチでもって中間答申がるるさまざまやられているということは、私はこれはよくない、問題を正しく解決することにならぬ、このように考えまして、質問をずっと続けさせていただいたわけでございます。  事務局を預かっていただきますのが郵政省でして、事務局を預かるということは、大体そこでエンジンを回してどちらに向いてウイングを広げて飛ばすかということなんですから、郵政省がもっときちっとその辺を踏まえて、ひとつ誤りのない電通審議会の最終答申に向けて今後審議を促進をしていただきますようにお願いを申し上げたいと思います。特段答弁は要りませんので、私の考え方をここで要望させていただきまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  62. 新村勝雄

    新村委員長 次に、小野信一君。
  63. 小野信一

    ○小野委員 長官長官への就任おめでとうございます。遅まきながらお喜びを申し上げます。ただ、経済大国として世界的な責任を果たさなければならないような我が国現状につけても、我が国経済運営について誤りのないよう御精進されることを心から祈念を申し上げます。  物価特別委員会と余り関係ないとは思うのですが、やはり聞いておかなければならないのは、日本時間で三日の日に行われた地中海のマルタ島での米ソ首脳の会談の成果についての長官の御感想でございます。というのは、共同記者会見でもあるいは共同発表でも冷戦の終結をうたっております。世界の人々から大きな共感と共鳴を得ておると存じます。この件について、長官の所見をまずお伺いいたします。
  64. 高原須美子

    高原国務大臣 米ソ首脳会談についてでございますが、今回の二日間にわたる会談におきましては、広範な問題について、立場の相違点も含めて、率直でかつ建設的な意見の交換が行われた模様であるというふうに理解しております。米ソの協力関係確立のよい基礎固めができたというふうに考えております。  企画庁としましても、今回の会談を契機に種々の分野での米ソの協議や交渉が今後さらに発展を見せまして、世界の平和と経済の安定が図られることに大いに期待をいたしております。
  65. 小野信一

    ○小野委員 私は、両首脳の会談の歴史的な意味について毫も否定したり疑問を挟む余地を持っておるものではございませんけれども、米ソの対立が、冷戦をつくり上げ、鉄のカーテンをつくり上げ、あるいは世界の人々の命運を決定するような不幸な事実を積み上げてきたこともまた事実だと考えております。  したがって、ヤルタ協定によって世界の人々に対して大きな影響を与えました。今、東ヨーロッパでは、自分の命運は、現在、将来とも自分自身の力で、自分自身の考え方によって切り開かなければならないという動きになっておると私は思います。ところが、今回の米ソの首脳会談は、その東ヨーロッパあるいは西ヨーロッパの皆さんの考え方に幾らかニュアンスの違いをもたらしておるのではないだろうか、逆な意味のヤルタ協定になってはいないのだろうか、このことが東ヨーロッパの皆さんに大きな不安をあるいは共鳴を、両方与えておるのではないだろうかという気がしてなりません。  私のこのような感想について、長官はどういうお考えをお持ちになりますか。
  66. 高原須美子

    高原国務大臣 今度の米ソ首脳会談の合意項目を見ますと、東欧各国の自決権を尊重し、民主化の動きを支援するというふうになっておりますので、東欧のそういう自立した動きを認めているという形で私は評価をいたしております。
  67. 小野信一

    ○小野委員 この会談の成功が、今後の日本の方向、特に日米関係にどんな影響をもたらすとお考えになりますか。
  68. 高原須美子

    高原国務大臣 日本経済あるいは日米経済関係にどのような影響があるかというお尋ねでございますけれども、現段階ではまだはっきりしたことは申し上げにくいと思います。  ただ、一般的には、東側諸国の債務問題とかあるいは経済協力問題等困難な課題は残されておりますものの、経済の民主化により、ソビエトを含む東側諸国との経済交流が一層進展することによりまして、世界経済の拡大が期待できるのではないかと思います。さらに、今後デタントによる両国の軍事費、経済負担の軽減化が実現することになりますと、これらの面からも世界経済あるいは日本経済に望ましい影響があるというふうに考えております。  いずれにしましても、ブッシュ大統領のソビエトへの提案を含め、今後の両国の対応に注目していきたいというふうに考えております。
  69. 小野信一

    ○小野委員 本論に入りますけれども、長官は、経済の専門家として、野にあって政府経済政策について提案したり批判したり、あるいは厳しい注文をつけてきたことは私自身知っておるつもりでございます。ところが今回は逆になりまして、提案を受け、注文を受け、あるいは批判される立場になりました。平成元年度の経済白書も「物価レポート」も長官が就任される前につくられたものですけれども、同じものであっても、野にあったときの見る感じと中に入って見る感じとでは違うものでしょう。感想をお聞きいたします。
  70. 高原須美子

    高原国務大臣 いまおっしゃられますように、私は、野にありましてはいわゆる経済評論家というような立場で、企画庁が出す白書とかレポートを批判したり引用したりしてまいったものでございます。  特に、経済白書が三十冊目を迎えましたときに、三十冊の経済白書ということで、白書の歴史を振り返って、そのときに改めて白書とかレポートの目的、ねらいというものを考えました。  そこで私が挙げた目的は二つございます。一つは、白書、レポートによりまして経済とかあるいは生活の現状について国民に情報を提供し、国民日本経済について理解してもらうということが第一点です。第二点は、政府の政策に対して理論的な根拠あるいはバックアップを与えるというのが白書のねらいだというふうに思っております。  企画庁に入って作成する立場に立ったわけでございますけれども、今御指摘のあるように、私が直接タッチする以前に今回の経済白書あるいは「物価レポート」は、私になってから発表いたしましたけれども、既に作業は進んでおりました。しかし、ことしの経済白書あるいは「物価レポート」を見ましても、私が従来から考えておりましたこの二つの目的を果たしていると思います。  特に、最近出ました「物価レポート」について言いますと、消費者への情報提供ということで、例えば内外価格差現状について提供しておりますし、政策の根拠ということで言いますと、この内外価格差指摘が政策の根拠となりまして、昨日、内外価格差対策推進本部ができるというような形になっております。したがいまして、私が野にいるときと評価は変わらないわけでございます。  ですからこれからも、作成する立場としては理解しやすい形で国民情報提供していくということに努めていきたいと思っております。
  71. 小野信一

    ○小野委員 長官が野にあったときに書いた著書、「男性経済論への挑戦」東洋経済新報社発行を読ましていただきました。一ページめくりまして「まえがき」というところを、長官は自分で書いたものでありますから十分承知しておることですけれども、読ませていただきます。   「石油ショック後、消費者は賢くなったといわれるが、ちっとも賢くなっていない。今日、ジーパンの特売場を通りかかったら、中年の主婦がむらがっていたが、はきもしないジーパンを安いからといって買い込むなんて、賢くない証拠だ。」   これは、女性の委員は私だけという、ある政府の審議会で、中堅の経済学者が自信たっぷりに語られたことばです。 云々、   こういう男性たちが、政府の中枢で個人消費支出見通しを立て、また企業で売行き見通しを立てているのですから、”作れば売れる”時代が終わった今日、その見通したるや、怪しいものです。   石油ショック後の不況のさなか、国民総支出の五〇%以上を占める個人消費支出の見通しは外れどおし、その結果は景気見通しの外れ、景気対策の誤りにつながったものです。政府や企業の中枢にいるのは男性。ところがその男性方は、仕事熱心のあまりか、消費の場である家庭のことも、消費者の中心を占める主婦のことも、全然といっていいほどご存知ないのです。これでは経済の見通しが狂うのも当り前でしょう。 かなり厳しい批判を序文で書いております。  平成元年のこの経済白書について、やはり長官の言う言葉はそのとおりでございますか。
  72. 高原須美子

    高原国務大臣 その著書は、十年ぐらい前だったと思いますが出しました著書でございまして、そのころはまだまだ男性優位、生産優位の政策というものが続いていたと思います。しかし最近では、海部政権になりましても、生活重視、消費者利益優先ということで、大変消費に目が向けられてまいっております。したがいまして、私が経済企画庁長官に女性の立場でなったということもそういう動きと関係があるということで、私が長官になりましたのもそういう歴史の流れの中で、消費者重視、したがいまして、消費を担当する女性にも目が向けられてきているということではないかというふうに思っております。  したがいまして、経済白書につきましてもそういう視点も十分出されておりますし、特に国民生活白書は担当課長も女性でございまして、私は女性、男性というのを区別するのは嫌いですけれども、今のところ女性の方が生活感覚があるということで、国民生活白書は担当課長が女性ということで、消費の中枢を占める女性、主婦の目というものも十分生かされているというふうに考えております。
  73. 小野信一

    ○小野委員 そこで、経済白書の内容に入りますけれども、政府経済白書の立場は、久しぶりの景気拡大等もあって、現状はイザナギ景気以来の大景気、投資と消費が好循環を続けている景気拡大を手放しで評価する楽観論である、私はこう読ましていただきました。さらに、平成経済のスタートに当たり、高度化、グローバル化、ストック化の三点を挙げて、円高経済の定着による新しい潮流が生まれている、こう強調をいたしております。その潮流は、景気後退の予兆も見せず、投資と消費は好循環を続けるだけではなくて、対外バランスも国内バランスも改善を続けている。内需主導型経済成長の持続は十二分約束され、仮に問題があるとすれば労働時間の短縮と社会資本の充実ぐらいなものであろう、こういうふうに私は読ませていただきました。  私のこの判断は、感想は当たっておるでしょうか、それとも読み不足でしょうか、あるいは誤りでしょうか。
  74. 田中努

    ○田中(努)政府委員 経済白書におきまして日本経済現状分析をいたしまして、かなりこの現在の景気拡大というものが長続きをする要因があるだろうということにつきまして経済白書は分析をいたしております。これは短期的な動向のみならず、その背後にございます構造的な変化にまで立ち入って分析をしないと本当のところはわからないじゃないかという観点から、今御指摘の高度化、ストック化といった問題も取り上げたわけでございます。  その結果、現在の景気拡大はかなり持続性がある、こういう分析をいたしたことは事実でございまして、その根拠となりましたのは、現在行われております設備投資循環というものが、その生産力効果と需要効果とが比較的バランスのとれた形で進展をしている、そのために、資本ストック循環による景気の激しい変動というものは当面起こる可能性は少ない、こういうふうな立場に立ったものでございます。  しかしながら、手放しで楽観をしているわけではございませんで、やはり労働の需給関係が次第に引き締まってまいりまして、そのことが賃金コストの上昇を通じてインフレーションにつながるおそれはないか、そういうような点につきましても指摘をしているところでございますし、それから、構造的変化に伴って生じてきております新しい種々の問題、例えば地価の上昇でございますとかあるいは株価の激しい変動でございますとか、そういう問題につきましても注意をしているところでございまして、手放しの楽観論を展開したというわけではないのでございまして、そこを御理解いただければありがたいと存じます。
  75. 小野信一

    ○小野委員 この景気拡大は八六年の十一月以降ですから、約三十六カ月になりますか、したがって八七年十月のブラックマンデー、今年の十月十三日のブルーフライデーがその景気拡大の中に含まれております。ブラックマンデーの株の暴落は五百八ドルでございました。その率において一九二九年のあの大恐慌、暗黒の木曜日よりも大きい、こう言われております。  このような金融経済のパニックを含む激動を無視して、我が国の景気動向への楽観論であるとすれば一面的な見方ではないのだろうか、こういう危惧を私は感ずるのですけれども、財政あるいは金融不況というのですか、こういうものに対する配慮が今回の経済白書の場合にどういうウエートで見られておったのか、お尋ねをいたします。
  76. 田中努

    ○田中(努)政府委員 金融面の分析につきましては、白書の中で「ストック化」という章がございまして、そこで、十分ではございませんけれども、今回の白書でかなり重点的に取り上げたつもりでございます。  その中で、御指摘の株価の動きにつきましても分析をいたしておるわけでございまして、その大きな決定要因といたしまして、金融関係要因、つまり金利が安い、あるいは通貨供給量の伸びが高い、そういうふうな金融的な要因にも十分注意を払ったわけでございますが、同時にやはり企業の収益が好調であるというふうな実態的な側面、つまり我が国経済あるいは企業の実力、ファンダメンタルズというものが評価されて株価が上がっている面もあるのではないか、こういうふうないろいろな側面から分析をいたしたわけでございます。  六十年、六十一年ごろの株価上昇につきましては、主として金利の低下によるところが大きい。さらにその後、貨幣数量の増加という要因が加わっている。さらに、御指摘のブラックマンデーの時期に近づいてまいりますと、こうした要因に加えまして一種の心理的な要因、株価の将来の価格の上昇に対する期待要因というものが寄与の度を高めてまいりまして、そういった要因が株価の上昇をいわば増幅をする作用をしたというふうな点を分析をいたしております。いわば、よく世上言われておりますバブル現象というふうなものが株価について起こりまして、それが株価の暴落と同時に破れたというふうな可能性も否定できないというふうな分析をいたしておるわけでございます。  そして、株価暴落後の動きにつきましては、日本の場合には六十三年の四月ごろに既に暴落前の水準に戻るという非常に急速な回復を見せたわけでございますけれども、この時期の要因といたしましては、今申し上げました株価上昇期待要因というものはむしろマイナスの要素として働く、すなわち株価に対して抑制的な要因に働いておりまして、逆に、企業の業績に対する評価、企業の収益性、実力というものに対する評価の要因が大きくなってきている、そういうふうに分析をいたしておるわけでございます。  その後、日本の株価はさらに上昇を続けておりまして、この上昇につきましては十分注意をしていく必要があると存じますけれども、白書のただいま申し上げましたような評価を踏まえますと、現在までのところ、やはり日本経済の実力というものをかなりの程度反映した動きであろう、そういうふうに評価をいたしております。
  77. 小野信一

    ○小野委員 高度成長期の景気拡大と今日の状態を比較して目立つ特徴は、私は何といっても実物経済の動きと金融経済の著しい乖離であろうと思います。実物経済が順調に伸びておるから、理想的に拡大しておるからといって、金融経済に混乱が生じないということは保証されません。したがって、むしろ実物経済が安定的に拡大しているにもかかわらず金融面での混乱が生じないだろうか、こういう観点がもう少し深く指摘されてもいいのじゃないか、こういう感じに私は読ませていただきましたけれども、いかがですか。
  78. 田中努

    ○田中(努)政府委員 金融面の混乱につきましては、一つはやはり株価の激動ということがあるかと存じます。それからもう一つは、何と申しましても為替の変動、こういうことがあり得るわけでございまして、主としてこの二つのルートを通じて金融混乱が発生をするというふうに考えられます。  この株価の変動の問題につきましては、今御説明させていただきました分析を行っておりまして、もちろんさらに今後ともこうした分析を深めてまいりたい、こういうふうに思っております。  為替の変動につきましては、今回の白書では特に立ち入った分析を行っておりませんけれども、日本経済のストック化、その種々の問題点について触れた部分におきまして、日本が現在外貨建てで持っている資産につきましては、これはやはり為替リスクというものをこうむる可能性があるという点につきましては指摘をさせていただいておるところでございます。
  79. 小野信一

    ○小野委員 一層の注意深い政策への研究をお願いいたしておきます。  次に、新しい潮流と言われる中の一つ、「日本経済のストック化」について質問をいたします。  私は、単純に言ってストック化とは資産の蓄積を利用して生活が豊かになる、こういうふうに理解するのですけれども、こういう理解の仕方でよろしゆうございますか。
  80. 田中努

    ○田中(努)政府委員 白書で取り上げておりますストック化は、経済の諸活動におきまして、例えば金融資産の蓄積に伴いまして家計の資産に対する選択行為、あるいは企業の選択というふうなことが経済に対して従来にも増して大きな影響を与えるようになってくるであろう、そういう純経済的な側面と、ただいま御指摘ございましたように、国民生活の豊かさにつながる側面、この二つの側面があると存じます。  経済白書でも大体そういう取り扱いになっておるかと思います。それぞれにつきまして、プラスの面、マイナスの点、長期、短期というふうな観点から多面的に取り上げているつもりでございます。
  81. 小野信一

    ○小野委員 特に目立つこのごろの我が国のストック化は、土地、金融資産の名目的水膨れ現象によって加速されました。土地、金融資産の価格上昇は、一九八〇年で対GNP比一・四倍という、国民経済にとって異常なひずみを引き起こしました。あえてひずみと言わせていただきたいと存じます。この土地、金融資産の異常な価格上昇をもたらした要因は何だったとお考えになりますか。
  82. 田中努

    ○田中(努)政府委員 今回の地価の上昇は、都心部の商業地の地価の上昇に端を発しまして、それが住宅地にも波及する、あるいは地域的に申し上げますと、東京都心、東京圏、さらにその他の大都市圏、そして地方圏に波及していく、こういうふうな経過をたどったわけでございます。この点、従来の例えば昭和四十七、八年に起こりました地価上昇がほぼ全用途地域にわたりまして同時に起こったという点と比べますと、かなり際立った特色を持った地価上昇であった、まずこういう分析をいたしまして、その要因の分析に取りかかっているわけでございます。  その場合に、やはり東京一極集中と言われるような経済活動、特に金融機能の東京に対する集中ということを背景に、都心部におきまして事務所需要の増大が起こっているというふうな、いわば東京一極集中を背景とした需要の増大、こういう実態的な要因というものがかなり働いているということを分析をしております。さらにそれに加えまして、マネーサプライの増加といった金融緩和要因、これも寄与をしているという分析を行いました上で、さらに、地価の将来の高騰を期待するいわば予想要因というふうなものにつきましても分析をいたしておりまして、これが今回の地価の上昇を増幅させる作用を持ったという点につきまして指摘をいたしておるわけでございます。  以上は主として東京圏の商業地についての分析でございますけれども、さらに住宅地につきましては、同じような金融要因、それから予想地価要因、こういうものが働いておりまして、特に住宅地につきましては予想地価要因というものが大きかった。さらに供給面におきまして、農地転用による宅地供給が昭和四十八年ごろをピークにずっと下降をたどっているというふうな供給面での問題も、地価上昇に影響を与えているというふうな分析を行っております。
  83. 小野信一

    ○小野委員 実は、私、土地対策特別委員会のメンバーでもありましたし、建設委員でありました、現在もそうですけれども。東京のオフィス需要が東京の地価を異常に上昇させたという分析の時点で、東京の事務所空き家、空地を調査して発表になったことを承知いたしております。実は、事務所が求める空き家は十分ありました。したがって、オフィス需要、国際的な金融都市としての東京でオフィスの供給が不足しているために地価が上昇したのだということは、一〇〇%うそだとは言いませんけれども、やはり遠い要因であったということが明らかになったと私は理解をいたしております。  私の理解の仕方からすれば、ブラックマンデーの再発を恐れた各国の政府が協調的な低金利政策を採用して、今や世界的な資金供給国となった日本経済が史上かつ世界最低の低金利経済を続けてきたためではないんだろうか、そういうことが第一ではないかと私は考えております。したがって、超低金利に誘導されて、投資と消費が拡大し、それ以上に土地と金融資産の名目的なものが上昇したのだ、私はこういう理解の仕方をいたしております。  白書の分析は、今局長が答弁したように、国際日本によるオフィス需要が地価を上昇させた、加えて過剰流動性が重なって加速させたと説明をいたしておるその内容と、私はちょっとニュアンスの違いを感ずるのですけれども、私の意見についてどういう感じをお持ちになりますか。
  84. 田中努

    ○田中(努)政府委員 そのあたりは量的に確定することは非常に難しいことかと思われますけれども、白書で行いました分析によりますと、やはり六十二年におきましては金融緩和要因というものがかなり大きくなってきているのも事実でございます。またさらに、それに先立ちますかなり長期間にわたりまして金融緩和状態が続いているということもまた事実でございまして、分析をいたしますと、そのころの金融緩和要因というのは、特に大きく地価の上昇に影響を与えたという分析結果は出てまいりませんけれども、一つの背景と申しますか、伏線といたしましてそういう状況というのがあったということは事実であろうかと思います。  分析の結果を白書の中で要因を分解いたしまして図示いたしておりますけれども、六十二年ごろにつきましてはかなり予想地価要因が大きかったという結果も出ているわけでございまして、いろいろな要因が複合して地価の上昇をもたらしたということであろうかと思います。
  85. 小野信一

    ○小野委員 先ほど局長は、日本のストック化について功罪あり、こう答弁いたしましたけれども、私はそのとおりではないかと思います。確かに土地や金融資産の膨張は、非常に大きなメリットを生みますけれども、しかし国内取引ではそれは相殺されるはずです。国外でその資金力の強さを発揮する、こういう側面をもっているはずでございます。日本が貿易が大変黒字だ、その資金力が外国に大きな影響を与えているときに、このストック化はやはり功罪半ばするのではないだろうか、こう思います。  資産化の増大、ストックは資産化を生みます。長期的には消費ブームを支えて企業の投資や担保能力を向上させることは間違いございません。しかし、急激だったために我が国の不平等を極端に大きくしたことも事実であります。その意味で、ストック化というのは功罪半ばだとお考えになりますか。
  86. 田中努

    ○田中(努)政府委員 ストック化のプラスの面といたしましては、やはり長期的に見まして、美しい都市が建設されるとか、住宅、社会資本が整備されるとか、そういう側面があるわけでございまして、望ましいストック化の目指す方向はそういう方向であろうと思うわけでございます。  短期的に考えますと、いわゆる資産効果というふうなことがございまして、これが経済にプラスの面をもたらすということも考えられるわけでございます。逆に、マイナスの面といたしましては、やはりその過程におきまして地価の上昇をもたらすというふうな面もございますし、あるいはそれが金融資産の蓄積となりまして、その差額と申しますか、債務と債権の差額が回り回って外国における外貨建ての資産蓄積に回る、それが過度に及びました場合には、ただいま御指摘になりましたような弊害も生ずる可能性もあるかと存じます。  ただ、現在の日本の対外金融資産の蓄積というものは、あくまでも最終的には個々人の御選択によりまして自己の持たれる資産をそういう形で運用されているということの総体としての結果でございますので、これはやはりそれなりにその選択というものは尊重されなければならないのではないか。  また、マクロ的に考えますと、アメリカで非常に大きな貿易あるいは経常収支の赤字が生じておりまして、貯蓄が不足をしている、そういうときに、日本はどちらかといえばまだ貯蓄率が非常に高うございまして貯蓄にゆとりがある、そういうところから、貯蓄の不足国、貿易赤字国に資金が流れるということは、世界経済の円滑な循環、発展にとりましてやはり寄与している面もあるわけでございます。  そういったプラスとマイナスの両面がストック化に伴ってあらわれているということではないだろうか、そういうふうに思う次第でございます。
  87. 小野信一

    ○小野委員 ストック化の功罪、私は国内的な問題として地域格差の拡大をもたらした、あるいは生活における不平等を大きくしたという意味で、やはり功罪半ばだという感じを持つわけです。特に、国際化によって、ストックが拡大した場合、日の当たる地域と日の当たらない地域が出てまいりました。日の当たる産業と日の当たらない産業が出てまいりました。私は、ストック化というのは紙の表と裏のようにどうしても切り離せないものだとは考えておりません。したがって、今、政府あるいは経企庁が中心になって最も早急に取り組まなければならないのは、この地域格差の解消ではないだろうか、そういう感じを持つわけです。  局長、いかがでしょうか。それらに対する解決策としてどういうことを今行わなければならないのか、経企庁として政府に対して提案しなければならない時期であると私は考えるのですけれども、いかがです。
  88. 田中努

    ○田中(努)政府委員 ストック化に伴う功罪の罪の方に資産の格差というものがあることは御指摘のとおりでございまして、経済白書におきましても、地価の上昇を背景として土地なり住宅なりを持てる者と持てない者との間の格差が拡大しているという点につきましてはいろいろな手法を使って分析しているところでございまして、その分析結果を踏まえまして、この点での格差の拡大が無視し得ない問題であるという点を指摘しているわけでございます。  この問題を解決するための基本的なポイントといたしましては、やはり東京経済活動が過度に集中をしているのではないかという点につながってくるわけでございまして、そういう点におきまして、例えば政府の機能が東京に集中をしているということが経済活動の過度の集中を招いているのではないかという点につきましては、これを分散する必要があるということで、現在その分散を図っているところであるわけでございます。  それから、地方圏に広域的な経済圏をつくるというふうな方向で社会資本ストックを拡充いたしまして、情報ネットワーク、幹線道路網あるいは高速鉄道網といった社会資本を整備することによって経済活動の地方における活性化というものを図る、あるいはそういった情報ネットワーク、交通機関の拡大と相伴いながら新しい宅地を東京圏の都心から比較的離れた部分あるいはそれを超えて拡大いたしまして、そのことによりまして東京の一極集中を分散していく、そういったふうな種々の手法が必要であろうということを白書で指摘しているわけでございます。  さらに、東京への集中に伴いますいろいろな混雑現象、これがともすると経済活動の主体に内部化されないで外にいわば垂れ流されるというふうな外部不経済を招いている面もございまして、こういった点を是正するためのもろもろの社会資本投資につきましては、やはりそれによって利便をこうむる経済主体に応分の負担をしていただくというふうな受益者負担の原則によりまして社会資本を大都市圏において進めるという点につきましても、白書の中で御提案を申し上げているところでございます。
  89. 小野信一

    ○小野委員 残念ながら、首都圏からの地方への分散あるいは一極集中の排除、いろいろな提案がなされておりますけれども、地方から見ておりますと、それが実効が上がって地方が豊かになった、あるいは企業が進出してきてくれるというような実感を持つことができません。そのことを率直にお伝えをいたしておきます。  もう一つは、経済白書は、我が国経済は内需主導型経済へと体質改善されたと強調しております。しかし、輸出は増加し続けております。輸出依存、いわゆる外需主導の体質は基本的に変わっておらないのではないか、私はこういう感じを持っております。円高を利用して輸入がふえておるだけだと私は思います。したがって、内需主導型経済への体質改善は、その評価は疑問のあるところでございます。ある人は現在の日本経済の実情を、輸出主導型、輸入拡大への体質転換、こういう言葉で表現をいたしております。この批判に対して局長はどうお考えになりますか。
  90. 田中努

    ○田中(努)政府委員 輸出が拡大を続けているという御指摘があったわけでございますけれども、これを数量ベースで申し上げますと、六十一年には〇・六%の減少となっておりまして、六十二年に〇・三%の増加、六十三年に五・一%の増加ということでございまして、六十二、六十三と増加いたしましたけれども、この伸びは、以前のいわゆる輸出依存大国であった時代の日本の輸出の伸びに比べますと、格段に低い伸びとなっているわけでございます。他方、輸入の数量につきましては、これは六十一年以降、輸出数量の伸びをはるかに上回る高い拡大が続いているわけでございます。この輸出、輸入両面の効果によりまして、実質ベースでのいわゆる純輸出額、輸出から輸入を差し引いたものでございますけれども、これの経済成長に対する寄与は、プラスでありましたものがマイナスに転じたわけでございまして、六十一年度以降今日までそういう状態が続いてきておるわけでございます。  したがいまして、現在の経済成長は、専ら設備投資、個人消費等の内需の拡大によってもたらされているわけでございまして、純輸出あるいは外需というものの寄与は、むしろマイナス、成長を低める方向に作用しているわけでございます。これに伴いまして、経常収支の黒字額も、ドルベースで見まして六十一年度をピークに低下傾向をたどっておりまして、GNPに対する比率で申し上げましても、六十一年度の四・五%というのがピークでございまして、その後低下をしてきておりまして、ことしの四―六月にはこれが一・八%というところまで低下をしているわけでございます。  私どもといたしましては、こういった点から我が国経済成長は内需主導型になってきている、こういうふうに考えているところでございます。
  91. 小野信一

    ○小野委員 続いて「物価レポート89」について質問をいたします。  東京物価水準は、ニューヨーク比較して約四割高、ハンブルクに比べて約五割高、こう九月二十五日に発表をいたしました。国内物価比較的安定しているにもかかわらず、内外価格差が大きい実態をこのレポートは国民の前に明らかにいたしました。  レポートは、物価サービス価格を五つに分け、それぞれについて内外価格差を分析しております。大変参考になりました。  生計費からの分類で見ますと、ほとんどの品目で東京物価水準が、ニューヨーク、ハンブルクよりも圧倒的に高く、特に日本が最も得意とする分野のカラーテレビ、電気冷蔵庫、ミシンなど家事用耐久財で非常に高いことが明らかになりました。  先ほど川崎委員から質問のありましたカラーテレビは、「物価レポート」が書かれるために調査した時点の価格差が六万円、現在時点では六万円と九万円で、調査した時点よりは三万円価格差が縮小した、こう報告を受けました。しかし、なぜ日本でつくった製品の国内価格が、アメリカに輸出をしてアメリカの皆さんに売られる価格よりも三万円も高いのでしょう。このことが国民の前に明らかにされない限り、これらに対する不信は払拭されるとは思いません。いかがですか。  もう一つ、モスバカー米商務長官が来日中の講演で、なぜ日本製のコードレス電話東京ではニューヨークの三倍になるのですか、こういう疑問を述べておることは御承知のとおりです。  カラーテレビにいたしましてもコードレス電話にいたしましても、これらがなぜかというその要因理由国民の前に明らかにされない限り、政治への大きな不信となり、自分たちの生活に対する不安となってあらわれてくることは間違いございません。この二つについてお尋ねをいたします。
  92. 栗林世

    ○栗林政府委員 お答えいたします。  一部の日本製品が日本国内で買うよりは海外で買う方が安い場合があるという指摘が、今先生からも御指摘ありましたようにいろいろとされていることは、我々としても承知しておるわけでございます。  ただ、この問題につきましては、規格の相違等から国内向け製品と海外向け製品との正確な価格比較が非常に困難であるということにつきましても御理解いただきたいというふうに思います。また、六十年秋以降の急激な円高によりましてドルベースの価格の改定が追いつかないというふうなこともありますので、一時的に見かけ上の価格差が生じるということも考えられるわけでございます。  そこで、ただいま御指摘がございましたように、そういうことがもとになりまして、十月の下旬に日米で共同で価格調査をしてその辺の解明をしようということでございまして、その価格調査の結果が現在出ておるわけでございます。膨大なデータでございますので、今その評価、分析をしておりまして、この場でその評価を御披露することは難しいわけでございますが、その調査によりまして、例えば日本からの輸出品に関する関係につきましては、現在の調査の大枠で見ますと、必ずしも日本の輸出品がすべて向こうで安く売られているということではございませんで、アメリカ価格が高い例というのがどっちかといいますと多く見られておりますが、中には日本価格の方が高いということもございます。  そういうことがございますので、我が国の流通におきます商慣行の問題とか価格競争の制約といった面につきまして、その分析の結果等も踏まえまして、今後とも競争条件の整備、効率化というのを進めて価格の縮小に努めたいというふうに考えております。
  93. 小野信一

    ○小野委員 私はこのレポートを読みまして、日本からの輸出品の内外価格差はある程度やむを得ないのではないか、こういう立場でレポートが書かれたのではないかという感想を持ちました。その理由として三つを挙げております。今答弁をいただきました。  同時に「物価レポートは」、輸出品の国内卸売物価指数と輸出物価指数の変化も追跡して分析をいたしておることも承知をいたしております。それによりますと、一九八五年の平均を一〇〇とした場合に、輸出物価指数は八八年の一月に七七・七六まで下がりました。国内卸売物価指数は今年三月に九一・六〇まで下がったのが最低であります。両者には八八年初頭で一五ポイントの開きがあったことも「物価レポート」は認めております。  問題は、海外ではこの現象は日本のダンピングではないかという危惧を持っておることでございます。強く批判をされております。円高の進行に伴って日本企業が外貨建てで輸出価格をどの程度追随率で引き上げたかが問題になると私は思います。この調査は行っておりますか。
  94. 栗林世

    ○栗林政府委員 確かに、「物価レポート」で国内卸売物価と輸入物価とを比較しまして、規制がある品目とない品目に分けまして、規制のない品目の場合には国内卸売物価が輸入物価に追随して下がっていくということが見られますけれども、規制のある場合にはやはりそこが下がりにくいということを指摘いたしております。  それから、追随率でございますが、これは計算が非常に難しくて、どういう条件をやるかということによって違うのでございますが、ちょっと正確な数字がわからないので大略でございますが、現時点では表面的には六〇%近くは追随しているというふうに考えております。ただし、その場合に、日本におきましては輸入したものが下がりますので、原材料も当然下がっておりますので、輸出産業におきます原材料の低下ということも考慮に入れなければなりません。当然そこは価格引き下げ要因になりますので、そういったものも考慮いたしますと、大体七五%近くまでは追随しているというふうに一応考えておる次第でございます。
  95. 小野信一

    ○小野委員 最後に、長官にお尋ねいたします。  前川レポート、続いて出ました新前川レポートが、構造調整を我が国の政治課題として強く訴えました。あるいは経済政策の目的として訴えてまいりました。あの新前川レポートが言う目的は、経企庁が持つ経済政策の目的として今でも大きなウエートを占めておりますか。
  96. 高原須美子

    高原国務大臣 企画庁といたしましては、今後とも我が国は、短期的には景気の維持を図るとともに、やや中長期的には経済構造調整を進めていくということで、前川レポートは生きているというふうに思っております。  先ほどから局長が答弁しておりますように、民間消費あるいは民間設備投資を中心とした内需主導型の経済拡大が今続いておりますし、一方では、経常収支の黒字幅も減りまして対外不均衡も縮小しつつあり、そういう意味で、経済構造調整は進んでいるというふうに私は判断しております。  ただ、先ほど生活の立場という御質問がありましたけれども、そういう国民生活の分野で経済調整につきまして見ますと、先ほどからお話のあります地価の適正化とか労働時間の短縮とか今出ておりました内外価格差の是正とか、そういった面ではまだまだ残された問題があり、必ずしも十分な成果があらわれていないと思いますので、私としてはその面に今後十分力を入れて政策運営のかじをとっていきたいと思っております。
  97. 小野信一

    ○小野委員 局長経済白書によりますと、日本経済は、高度化、グローバル化、ストック化、この三点セットによって新しい潮流が生まれた、こう評価をいたしております。問題は、今、長官指摘をいたしました新前川レポートが提起した構造調整が、この新しい潮流によって見事に解決されるのだということになるのでしょうか、局長の所見をお伺いします。
  98. 田中努

    ○田中(努)政府委員 白書で取り上げております三つの潮流、例えば生活の高度化という点は、これは国民の福祉の向上をもたらすと同時に、内需の拡大を通じまして対外不均衡の是正に役立つ、そういう点では前川レポートの精神に沿ったものであると思います。また、ストック化あるいはグローバル化というふうな点につきましても、前川レポートでは社会資本の充実あるいは対外投資の拡大というふうなことを対外不均衡是正のための重要なポイントとして挙げておられたと思います。そういう意味で、大きな流れとしては前川レポートの実現に沿うものであるというふうに考えております。  しかしながら、全部が全部そういうわけでもございませんで、高度化の流れの中で立ちおくれている部分というものもございます。これは労働時間の短縮という点でございまして、前川レポートで強く指摘をされていたわけでございますけれども、この生活の高度化あるいは産業の高度化、それを背景といたしました経済の急速な拡大の中で労働時間の短縮は進んでおらないわけでございまして、こうした点を初め、生活に密着したいろいろな政策の面ではこれからまだ力を入れていかなければならない部分が多々残っているというように考えております。
  99. 小野信一

    ○小野委員 終わります。
  100. 新村勝雄

    新村委員長 この際、休憩いたします。     午後零時二十八分休憩      ────◇─────     午後一時三十二分開議
  101. 新村勝雄

    新村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。森本晃司君。
  102. 森本晃司

    森本委員 まず、高原経企庁長官は、在野で大変御活躍をされておりまして、今回そういった視点を持った方が経済企画庁長官に御就任になられましたこと、私たち大変期待をしております。我が国が世界一の豊かな国になったということが言われて久しいわけでございますけれども、実際国民の生活にその感があるかと申し上げますと、ほとんどその実感を持たないというのはこれはもう長官も十分御承知のことだと思います。また、長官もゆとりある国民生活をということをかねがねから主張されておられますので、それだけに国民もまた大きな期待を寄せているのではないだろうかと思うところでございます。私も大変な期待を寄せておりますので、どうぞ御活躍をよろしくお願い申し上げます。  そこで、まず物価に大変影響してまいります消費税の問題でございますけれども、施行されて八カ月、いろいろな国民の声が沸き上がってまいりまして、政府・自民党もいろいろな角度の上からやっと重い腰を上げられて、そして海部さんの抜本的見直しという大きなせりふとは別に、複雑でわかりにくい、国民にとって果たしてこれが実効性あるものなのかというふうな見直し案が出されたわけてあります。思い切った見直しというのはもうほとんど感じない状況で、むしろ選挙向けの見直しをされたのではないかなというふうに思っておりますが、この自民党の消費税見直し案に対して長官はいかな考え方をお持ちになったのか、その辺をまずお伺いしたいと思います。
  103. 高原須美子

    高原国務大臣 この見直し案は、本年八月以来、消費税の見直しに向けまして私も消費者の声を聞いてまいりましたけれども、国民各層からの声を幅広く吸収しますとともに、消費税の実施状況の実態などを踏まえまして、検討を重ねられた末に出された案だというふうに思っております。  この基本方針におきましては、消費税の見直しについての基本的な考え方と具体的内容が示されておりますが、その内容は税制面だけではなくて歳出面などまでに触れております。また、かつ消費者事業者の双方の立場を十分考慮しておるものとなっておりまして、国民各層の声と税の理念の両面の調和を図るように努力した見直し案ではないかというふうに理解しております。
  104. 森本晃司

    森本委員 長官が在野におられたら恐らくそういう御答弁はなかったのではないかなと、私は今の答弁を聞きながらそう思いました。  一方、してやられたという声もあったというふうに聞いている大蔵省、いかがでしょう。
  105. 野村興児

    ○野村説明員 お答えいたします。  ただいま長官から御答弁ございましたように、この消費税の見直しに関しますところの基本方針、この中身については、税制面のみならず、広く歳出面あるいは他の制度にも及んでいるわけでございまして、かつ長官からお話ございましたように、消費者事業者双方の立場を十分考慮し、配慮したものとなっていると思います。国民心理と申しますか、国民の声、それと税の理念、税の制度両面の調和に非常に腐心をされている、こういうふうに受けとめているところでございます。  なお、政府といたしましては、この基本方針の内容をこれから十分勉強させていただきまして、そして政府税調の今後の御審議をも踏まえまして、平成二年度税制改正において政府としての見直しの成案を得るように今後最大限の努力を傾注していく、このような考え方でございます。
  106. 森本晃司

    森本委員 前回の参議院選挙で票が逃げた、そういった生産者に対する配慮をいろいろやり、政治的に解決したのではないかというふうに巷間言われておりますが、私は、余り消費者の立場からの配慮がなかったのではないかなというふうに感じておるところでございます。  そこで、具体的にお伺いをさせていただきたいわけでございますけれども、食料品の流通段階一・五%、小売段階非課税、こういったのは非常に複雑で、果たして実行可能かどうかということをひとつお伺いしたいわけであります。  また同時に、小売段階非課税、そこまでの段階は一・五%だといいながら、よく言われている食料品以外にかかってくる輸送に関する三%、あるいは包装に対する三%という状況等々を見てまいりますと、流通コストにかかる三%の費用等々を考えてみますと、一・五%ではなくして二%ぐらいは実質にかかっていくのではないかなというふうに思うわけであります。例えば一個百円のキャラメルは幾らぐらいになるでしょうか。大蔵省、どうでしょうか。今百三円ですね。
  107. 野村興児

    ○野村説明員 お答えいたします。  先生指摘のように、今回の自民党の見直し案によりますれば、全食料品、これは酒を除いておるわけでございますけれども、これをまず小売段階の取引については非課税とする、そして生産あるいは卸といった取引段階におきます事業者間の取引、こういったものについては一・五%の特別低税率を設定する、こういうことでございます。  この二つの措置によりまして価格がどういうふうに変化するか、これについては正確な試算をまだ必ずしも十分やっているわけではございませんけれども、概して言いますと二つの効果がある。一つは、一・五%の特別低税率によりまして、卸売業者が小売業者へ取引いたします、譲渡いたします価格、これが一・五%分低下するわけであります。したがいまして、恐らく今のキャラメルの実例につきましてもそういった形で一・五%は低下するというところが、まず第一の点でございます。それから第二番目の効果といたしましては、小売段階の譲渡が非課税となる。それによりまして、例えばスーパーとかお菓子屋さん、こういったようなところのいわゆる小売業者のマージン、これが今三%かかっているわけでございますが、その三%分が納税不要になる、こういった効果があるわけです。  そういった前者と後者の効果を合わせますれば、総じて言いますとおおむね一・五%以上の値下げ効果があるというふうに期待できるのではないか。これにつきましては、いろいろ御議論ございました。例えば全段階で非課税とする、こういったことも一つの手法として御意見があったわけでございますが、そういった場合に比べますと値下がりの効果はより具体的に、しかも大きいものになる、このように考えているわけございます。
  108. 森本晃司

    森本委員 理論上大蔵省は一・八%の価格が下がるというふうにおっしゃっていました。また、きのうですか、橋本大臣がお答えになっております。食品価格が二%下がるというふうにきのう参議院の税特委で答弁されているという記事が載っていますけれども、実際にそれほど二%も価格が下がると本当に大蔵省は確信していらっしゃいますか。しかも、消費者はどれだけの食料品の価格が下がるかという確実な裏づけがないわけでして、小売段階での価格転嫁の不透明感も否めないものがあるなと私は思います。  しかも同時に、小売業者がそこに来るまで、商品が来るまでのいわゆる川上から流れてきた税金を控除できないので、実際逆転現象も起きてくるのではないだろうか。非課税だけれども一・五%あるいはそれ以上上回る大きな、価格を上回ってしまって逆転現象が起きるかどうかということを伺いたいのと、そういった場合、その負担は消費者に来るのでしょうか。それとも小売業者がその逆転現象の分を補うのでしょうか。何か後で申告すればそれは返ってくるのだという話も聞いておりますけれども、実際そんなことを業者ができるのでありましょうか。そういった川上から流れてきた税の控除等々を含めて本当に小売業者が逆転現象をフォローし、あるいは消費者がフォローするのか。そういった問題、ちょっとその辺の流れについて私も十分わかりません。自民党のその案を読ませていただきましたけれども、何がどうなるのかさっぱりわからない。国民の一人として、一体私たちの価格はどうなっていくのか、小売価格はどうなるのか。あるいは、いろいろな事務負担費等々を今度は業者が負担して、それが業者の犠牲の上に、小売業者の犠牲の上になるのか、消費者に転嫁されてくるのか、その辺をお伺いしたいと思うのです。
  109. 野村興児

    ○野村説明員 お答えいたします。  ただいまのお話、御指摘ございました点でございますが、小売の段階におきまして今御指摘のような現象はなかなか起こり得ないのではないかと思うわけでございます。一般的に生産段階で、その前に要しておりました、例えば農家でありますれば、いろいろな機資材とかあるいは肥料、飼料、こういったものが食料品という取り扱いでないがために三%の課税が行われているといったような問題、そして低減税率であるところの一・五%、これとの関係でそういった問題が若干なりとも起こる可能性というものはございますけれども、今御指摘の小売の段階の話につきましては、先ほど御説明いたしましたように、卸から小売に行きます段階ではあくまでも一・五%の税率になっておる、その分は必ずその価格引き下げ要因になるわけでございます。そして、かつ二段階といたしまして、小売段階につきましては非課税でございますので、この非課税の分についてはマージン分、今まで三%かかっているわけでございますが、その分がかからなくなる。  ただ、先生御懸念であろうと思われますところのその他の経費、例えば食料品以外の包装であるとか運搬費とか、こういったものは当然最終小売の業者の方といえども負担があるわけでございます。そういったものについては、これは三%の負担が実質的にあるといったことでございますので、そういったものがそのウエートによって若干値下がり率に影響を与えるということはあろうかと思いますが、一般的に申し上げますれば、小売の段階のそういったような経費というのはそれほどウエートが大きいものではございません。したがいまして、各小売業者の付加価値率といいますか、事業の形態といいますか職種といいますか、そういったものによりまして相当程度影響を受けますけれども、基本的には、先ほど申しましたように、卸から小売に行きますところの一・五%の特別税率でありますところの低い率がまさにそこで効果を発する、このようにお考えをいただければと思うわけでございます。
  110. 森本晃司

    森本委員 それで、さっきもちょっと触れましたけれども、小売業者も見直しによって事務等の変更を今必要とされてくるわけでございます。これは大変な状況になってくると思いますし、小売業者は必ずしも食料品だけを扱っている店ばかりとは限りません。食料品でない課税対象の三%課税されるものもあわせて売っているところが圧倒的でございまして、そういった分類を、事務を一つ一つこれから小売業者はやっていかなければならない。伝票方式では比較的そのことはやれそうでありますけれども、現在の帳簿方式でその対応は可能なのでしょうか。  それから、かかってくるそういった事務経費がコストに転嫁されていくのではないだろうかというふうに我々は思っておるわけですが、その辺はいかがですか。
  111. 野村興児

    ○野村説明員 お答えいたします。  小売段階でいろいろな、例えば食料品であるか否か、そういった意味の区分、仕切りをしなければいけない、そういったものが現在の帳簿システムで果たしてできるかという御質問でございますけれども、このあたりについては、現在既に非課税品目も若干ながらあるわけでございますし、帳簿方式といいましても、我が国の場合かなりのところは機械会計を採用いたしておりまして、事実上各事業者間の取引におきましては伝票が必ず交付されている、こういったような実態があるかと思います。したがいまして、その事業者間取引においては現在既に外税が定着していることからおわかりいただけますように、そのあたりの取り扱いについては、消費税導入前にいろいろ懸念されておりましたところのもの、本当に帳簿方式でできるのであろうか、こういったようなこともうまく機能しているわけでございます。したがいまして、私ども今後このあたりについては所管とも十分御相談をしながら、帳簿方式のもとでこの制度が円滑に運営できますようにいろいろ努めてまいりたい、このように思っているわけでございます。
  112. 森本晃司

    森本委員 見直し案を見た実感は、一つ物価が下がらない、政府の税収は減る、業者は事務負担がふえるだけだというふうに私たちは今感じているわけでございます。  もう一度最後にお伺いしたいわけでございますが、この消費税で物価が下がるのは一・八%、これは大蔵省の試算でありまして、きのうは大蔵大臣が二%下がるというふうに参議院でお答えになったようでございます。経済企画庁長官はいかほど下がるとお考えいただいておりますでしょうか。
  113. 栗林世

    ○栗林政府委員 お答えいたします。  物価にどの程度影響を与えるかということにつきましては、今後細目を検討しまして、私どもの方が消費税の導入に当たりまして検討しましたと同様の考え方で、今後どの程度全体の物価に影響していくかということはこれから十分詰めていきたいということで、現在詰めている段階でございます。
  114. 森本晃司

    森本委員 私たちは、消費税自民党見直し案は選挙前の態勢づくりだけであるというふうに受けとめて、余りやる気はなかったのではないかなというふうにも受けとめております。断じて消費税については廃止しなければならないというふうに考えておりまして、次の質問に入らせていただきたいと思います。  これは長官も御就任のときにおっしゃっておりましたけれども、内外価格差に対する問題でございます。先ほども申し上げましたように、世界一豊かな国になった我が国がその実感ができない要因一つは、土地問題もあり、さらにまた大きな内外価格差の問題があると思いますし、長官も就任されましたときにこの内外価格差の問題に取り組んでいくというふうにごあいさつをされたと伺っております。内外価格差に対する長官の所感をお伺いしたいと思います。
  115. 高原須美子

    高原国務大臣 おっしゃいますように、日本が一人当たり国民所得では世界の最高のレベルに達していながら豊かさが実感できない一つ理由は、物価水準は安定しておりますけれども、物価が割高であって、内外価格差があるからだというのが一つの原因ではないかと思っております。  そこで、この内外価格差の問題でございますけれども、物価水準国際比較を厳密に行うということは、国によって生活習慣あるいは制度が異なる、あるいは為替レートが変動するなどいろいろの要因がありまして困難でございますけれども、最近の円高の進展、それから一人当たりの所得の向上などマクロ的な要因のほか、ミクロ的な要因もありまして、国際的に見て割高であることは否定できないと思います。先ごろ企画庁が発表いたしました「物価レポート」でも、国際的に見て内外価格差があることを指摘しております。  そこで、この内外価格差是正策としては、いろいろ対策をとっていかなくてはいけないと私も考えております。どんな対策があるかと申しますと、例えば製品輸入の促進あるいは公的な規制緩和による競争の促進、さらに流通構造を合理的に変化させていくということ、それから農業などの生産性向上消費者への情報提供、こういったことをやって、内外価格差を是正して本当に所得が使いでがあるようにしていかなければいけないと思っております。そこで、きのう政府与党内外価格差対策推進本部というのができまして、私もその一員でございますので、政府・与党と一体になりまして内外の価格差の是正に取り組んでいきたいと思っております。
  116. 森本晃司

    森本委員 内外価格差の実態、現状は、私も「物価レポート」を読ませていただいて、随分開きがある。それぞれの国の事情もあって一概に言えない部分があるけれども、確かにそういったものは大きいものがある。  先般テレビを見ておりましたら、あるテレビ局が別の表をまた持ってまいりまして、価格差比較表というのをやっておりました。ウイスキーが日本は九千二百円、アメリカは一千八百七十六円、ビール二百四十円と百五十五円、香水三万円と一万七百二十五円、ゴルフクラブ十万二千四百円と四万四千三百八十円、そのほかに航空運賃等々も挙げておりました。これが放送されましたときに、私、何人かの人たちと一緒にたまたまそのテレビを見ていたわけですけれども、こんなに差があるのですかと。私の女房もその場におりまして、ウイスキーには余り関心を示さなかったけれども、香水には大変関心を示しました。何人かと随分あるなと。これは率直な質問で、本当にこれほどの差があるのですか、このデータは正しいものなのですか、データのとり方が間違っているのですかという質問も私にありました。こういった数字、今申し上げましたけれども、いかがでございましょうか。実際にこれほどの価格差がある、あるいはそれに近いものなのか、いやそんなことはありません、それは数字のとり方だというものでしょうか。
  117. 栗林世

    ○栗林政府委員 お答えいたします。  確かに国際比較をしますときに、先生も御指摘のように、いつの時点でとるかとか、そのときの為替レートはどうであるかとか、また比較している物の質とかそれに付随したサービスとか、いろいろ差がございます。今御指摘になりました品目についての価格調査がどういう形かというのは、申しわけありませんが私は存じておりませんけれども、そういったことにつきまして、特に今回の日米構造協議におきましてその辺の、特に日本からの輸出品の価格がどうなのか、あるいは特に外国からの輸入品についてはどうであるかというところが視点になって調査をしております。  その結果によりますと、輸出品につきましては、今まで言われておりましたように、すべてがすべて日本価格よりも向こうで安く売られているということではなくて、大方は日本国内よりも外国での価格の方が高い。一部に日本国内の方が高いというようなものも見られますけれども、そういう調査結果が出ております。それから輸入品につきましては、確かに日本国内に来て割高になっている、今御指摘のような数字も入っていると思いますが、割高になっておるということは、今回の調査でも出ている結果でございます。これにつきましては、今後その原因を十分分析いたしまして、できるだけ価格差の縮小に努めてまいりたいと考えております。
  118. 森本晃司

    森本委員 以前この委員会でも私は質問させていただいたのですが、今例を挙げましたように、ウイスキーが九千二百円と千八百七十六円。日米構造協議の中でもいろいろと検討議題に上がった、あるいはまたアメリカの方からそういう話があったように私も聞いているわけでございますけれども、例えばこのウイスキーの場合に輸入総代理店制の問題がある。並行輸入を一部やっておりますけれども、なかなかそれはうまくいかない。その輸入総代理店の場合に、ウイスキーの場合には日本の洋酒メーカーが輸入総代理店になっている。こういったウイスキーだけにかかわらず、輸入総代理店制度の問題が構造協議の中でも言われたのではないかと思っておりますが、公取の方の考え方はいかがでございましょうか。
  119. 上杉秋則

    ○上杉説明員 お答えいたします。  輸入総代理店というのは、ある国内事業者がその製品について独占的な販売権をもらうということでございますので、もしそういった事業者が非常に国内における地位が高いということになりますと、かなり高価格をもたらす要因になるのではないかと見ております。  もし内外の価格差が非常に長期間にわたって続くとすれば、これは私どもは真正商品と呼んでおりますけれども、海外から真正商品を購入して日本で売る、いわゆる並行輸入のビジネスが成り立つのではないだろうか。そういうことを通じて、国内競争に対して圧力をもたらして価格形成を良好ならしめるというのも、一つの独禁法上の重要な目的であるということでございますので、輸入総代理店がこういった並行輸入を阻害しないように監視をする。あるいは、私どもは国際契約で輸入総代理店等の契約の届け出を受けておりますので、そういった契約の中に並行輸入の阻害の原因になるような条項が見られます場合にはそれを是正させるというような措置をとっております。
  120. 森本晃司

    森本委員 先ほど長官のお答えの中にもございましたが、今度内外価格差対策推進本部というのが設置されて、きのうスタートした。それで経企庁長官あるいは通産大臣、官房長官等々のメンバーの発表があったわけでございますが、その中における具体的なビジョンとその実効性についてどのように考えておられるのでしょうか。それから、日米構造協議の中で、来年春ぐらいに内外価格差の問題について何らかのめどとしての回答を出すというふうな話があったようでございますが、その実効性についてどう考えられるのか。また同時に、これは今日まで言われ続けてきているわけですけれども、各省庁の縦割り行政がある。したがって、総論賛成、各論反対という形で出てくるのではないか。せっかく推進本部を設置されてもその実効性は乏しいのではないかというふうに思われるところがありますが、長官としてはいかがに考えておられるのでしょうか。
  121. 高原須美子

    高原国務大臣 具体的ビジョンというお問い合わせでございますけれども、何分昨日スタートしてきょう閣議で報告があったということでございまして、まだ本部も会合を持っておりませんので、具体的ビジョンにつきましてはできるだけ早くこれからつくり上げていきたいというふうに思っております。  その実効性でございますが、今まで何回も言われながらやられなかったではないかということでございますけれども、今度はそういうことであってはならないということで本部を設けたわけでございますので、この実行には前向きに取り組んでいきたいというふうに思っております。それはいつまでかというのも、まだ具体的なビジョンというものができておりません段階ではいつまでというお答えは申し上げられません。ただ、日米構造協議との関係で申し上げますと、私といたしましては、これはあくまでも日本消費者重視のために行っていきたい、そこに力点があるということで、内外価格差が是正されることによって日米関係も結果として良好になっていくであろうというふうに考えております。
  122. 森本晃司

    森本委員 推進本部はできたけれども、結局内外価格差については何ら縮まらなかった、せっかくやりながらそれぞれの行政の縦割りの中で行き詰まってしまったということのないように、今長官お話を伺いますと、そういうことを乗り越えるために今回設置されたということでございますので、私たちも大いに期待しておりますので、取り組んでいただきたいと思います。  今、長官のお答えの中に消費者重視の政策へさらに展開していきたいというふうなお話もございました。そこで、この内外価格差のデータ公開ということについてはどのように取り組んでいらっしゃるのか。この内外価格差の数字、「物価レポート」というのは一般消費者はなかなか見ないわけでございまして、今後こういった価格差のデータ公開を、一般消費者重視のためにどういう公開をしようとされているのか、お伺いをしたいと思います。
  123. 栗林世

    ○栗林政府委員 お答えいたします。  今までも、今御指摘のように経済企画庁といたしましては、ずっと長い間内外価格差調査ということで「物価レポート」で一応公開してきておったわけでございます。内外価格差そのものは、頻繁に調査してみても結果的に為替レートの変動をただ追うだけということになる危険性もございますので、その辺は、私どもとしてはそういう意味もありまして年に一度「物価レポート」で公開するという形をとっておりますが、今御指摘のような点も含めまして、今後できるだけ消費者にこういった価格差情報というのを提供するように努めてまいりたいというふうに思っております。
  124. 森本晃司

    森本委員 次に、公取の方にお伺いしたいわけでございますけれども、本年二月に公取の研究会で政府規制の見直しが発表されました。その中で大規模店の出店規制の緩和について提言されておりますし、それから先般の日米構造協議の中でも、この大店法に対する意見がいろいろと出ていたようにも伺っております。その内容及びこれに対する公取の考え方をお伺いしたいと思います。
  125. 松山隆英

    ○松山説明員 お答えいたします。  本年二月に先生指摘のとおり、大規模店の出店規制に関しまして私どもが検討をお願いしております政府規制等と競争政策に関する研究会というところで御見解をおまとめいただきまして、公表させていただいております。そこにおきましては、大規模小売業につきまして大店法に基づきまして届け出制による出店規制が行われており、しかし現実には、法律による手続の前に地元商店会等に対する事前説明というものが事実上の調整の場になっている、こういう現状において、法律に予定している手続が形骸化されまして学識経験者や消費者意見も十分反映できないとか、地元調整のために非常に長期間を要する、あるいは多額の支出を要するといったこと、出店者が過大な負担を強いられる場合もあるのではないか、こういう問題点指摘がなされております。したがいまして、改善の方向といたしまして、将来的には大規模店の出店を自由化する方向で見直すことが望ましい、ただ当面は、新行革審の答申等も踏まえて、事前説明なり商調協審議の適正化、それから五十七年以降続いている行政指導の見直しといったような運用の改善といったことを図っていったらどうだろうかという御報告をいただいております。  これを受けまして私どもといたしまして、公正取引委員会の今後の対応でございますけれども、研究会の報告書を尊重いたしまして私どもの競争政策の運用に反映させていきたいと考えておりまして、報告書の公表とあわせまして関係省庁にも配付させていただきまして、各省庁におきます政府規制の検討でございますとか、あるいは規制緩和の実施の参考にしていただければというふうに考えております。
  126. 森本晃司

    森本委員 通産省、お見えいただいておると思いますが、大店法の規制緩和という方向は、これから取り組まれて進んでいくように私も思うわけでございますし、また、消費者の立場から考えるとそうでなければならないなという感もいたします。しかしながら、中小小売店舗は一体どうなっていくのかという問題が同時に出てくるわけでございます。今日まで大店法と中小小売店舗との共存性がうたわれてまいりましたけれども、その辺についてどうされてきたのか。あるいはまた、これからそういった規制緩和の方向になっていきますと、先般元通産大臣の村田さんがテレビで商店街の活性のための大幅な補助金を出していくんだというふうな、これは村田元通産大臣のみの考え方であるかどうかわかりませんけれども、そんなこともちょっとおっしゃっておられたように思いますが、大店法と中小小売店舗との関係、今後について。それからもう一つ、中小小売商の輸入促進についてセンターをつくるとかという考え方もあるように伺っておりますが、そういった点もあわせてお伺いしたいと思います。
  127. 金子和夫

    ○金子説明員 お答えいたします。  まず大店法の問題でございますが、私ども大店法の運用の適正化の件につきまして、昨年末の行革審答申、その後引き続き検討されました産構審、中小企業政策審議会の答申という中で、大店法の運用につきましては適正化すべしという提言をいただいておりまして、それを現在実施に移すべく作業をやっている最中でございます。  大店法の運用適正化と中小企業者の共存の問題でございますが、その運用の適正化を提言されているビジョンの中で、基本的な考え方といたしまして、例えば出店調整に係る審査の考え方でございますが、その際には、従来どおり既存の地域商業計画等に対する配慮を強調する、あるいは既存の商店街の立地等との調和を図るというような配慮をするというようなことが述べられておりまして、私どもといたしましては、引き続き地域経済社会との調和を図りつつ行われるということを期待している次第でございます。  中小企業の振興施策につきましては、別途、中小企業庁を中心に商店街活性化等の支援策等が検討されておりますので、それら施策と相まちまして、基本的な考え方でございますが、中小小売業の機能、それから大型店の特性、そういうものがバランスよく機能分担されて出店がなされることを期待している次第でございます。
  128. 森本晃司

    森本委員 中小小売商への輸入促進、これは内外価格差の問題とあわせてですが、その辺はどのようにお考えですか。卸売センターをつくるとか、そういう方向も提言されているようでございますけれども。
  129. 沖茂

    ○沖説明員 お答え申し上げます。  中小小売商業は、地域経済の発展、消費生活の充実などを図る上で非常に重要な役割を担っておりまして、その活性化を図っていくことが極めて重要であると考えております。このため、これまで施策を強力に推進しているわけでございますが、その中で中小小売商業者等の海外からの製品の調達力の強化を図るため、そのアクセスを簡易にするということに協力するため、国際総合流通センター構想というのを現在持っておりまして、この構想を強力に推進していくといったことを通じまして、中小小売商業者の海外製品へのアクセスを簡易化する、あるいは輸入品の調達をしやすくしていくといった施策を強力に展開していきたいというふうに考えております。
  130. 森本晃司

    森本委員 内外価格差の問題についていろいろ質問させていただいたわけでございますけれども、いろいろな推進本部、さらに強力に推進をしていただきたいと思いますと同時に、先ほどちょっとお答えいただきました、小売業が簡単なアクセスで入っていくということが、一つはある意味一般消費者へのデータ公開にもなっていくというふうに私も思いますし、中小小売商の輸入促進へのプロセス、またはそれに対する援助をやっていかなければ、現実に内外価格差はなかなかつづまっていかないのではないかと思うところでございます。  次に、公取の方にお伺いしたいわけでございますが、先般、梅澤公取委員長が日米独禁当局の意見交換のためにアメリカに行かれたと伺っております。大変御苦労さまでございました。三日にお帰りいただいたところではございますが、アメリカ独禁当局との意見交換でどういった内容が議題になりましたか。
  131. 糸田省吾

    ○糸田政府委員 ただいま先生お話のありました日米独禁当局の意見交換でございますけれども、これは日米双方の独禁法の運用当局、日本ではもちろん公正取引委員会でございますし、それからアメリカでは司法省と連邦取引委員会でございますが、その双方が毎年一回定期的に会合を持って、それぞれの独占禁止法の運用の状況につきまして広く意見交換をする、それによって相互の理解を一層高めるという趣旨で行われているものでございます。今回も先週の木曜日と金曜日、ワシントンにおきましてこの会合が持たれたわけでございます。お話にありましたとおり、これには公正取引委員会委員長以下が出席しているわけでございます。  今回の協議のテーマでございますが、例年どおり、双方の独占禁止法の運用の最近の状況といったことについての意見交換が中心でございました。その他、それぞれ競争政策に関するトピック的な出来事として、例えば知的所有権の取引にかかわる独占禁止法上の問題とか、そういうようなこともありましたし、それから時節柄、今会合が開かれております日米構造協議に関しても、その中で特に独占禁止法にかかわるような事柄について意見交換が行われたというところでございます。
  132. 森本晃司

    森本委員 日米構造協議では、日本の独禁法運用は非常に甘いという指摘があったように報道されているようでございますけれども、今回の話し合いの中でも、その辺日本は甘いのではないかという議題が出たかどうか、こういった点を話し合われたか。それからまた、そういう話が出たとするならば、公取として今後どのように取り組んでいかれるのか、その辺をお伺いします。
  133. 糸田省吾

    ○糸田政府委員 御指摘のように日米構造協議におきましては、我が国における構造的な輸入障壁の問題がテーマになっているわけでございます。その一つとして、日本市場においては排他的な取引慣行が存在している、それがために外国の企業が日本のマーケットになかなか入ってきにくいといった指摘があるわけでございます。それにまつわる問題として、もし日本の独占禁止法の運用が十分であるならばそういった問題の解消には非常に役立つところであるが、果たして日本の独占禁止法の運用は十分に行われているのであろうかということが、この構造協議においても指摘事項の一つとなっているところでございます。そういった観点から今回の日米独禁当局の会合におきましても話が出たことは事実でございます。これに対しまして、私ども前から日米構造協議その他において、日本の独占禁止法は当然のことながら厳正に運用してきている、これからもそういった方針で運用することについていささかの間違いもないということを申し上げていて、独占禁止法の運用に関する理解を引き続きアメリカ側に求めていきたいということを考えているわけでございます。  それからまた、これとの関係でちょっと申し上げたいと思いますのは、日本の独占禁止法に関するアメリカ側の理解がどうもいま一つ十分でないところもあるいはあろうかと思います。そういったような点につきましては、今後の問題として、独占禁止法の考え方を例えばガイドラインをつくるというふうなことでより一層明確にして、一層の理解をアメリカ側にも求めていくということで対応していきたいと思っておるところでございます。
  134. 森本晃司

    森本委員 経済国際化する中で、独禁法の運用もこれからますます国際的な調整が必要になってくると思います。今アメリカに対して理解を求めるようなことも話し合ってきたというふうにおっしゃっておりますが、そういった国際的な調整をどうぞこれからも行っていただいて、いたずらにアメリカに批判される形だけではないようにもしていきたいし、また実際独禁法の運用で我が国で甘い部分があれば、甘い部分を強化していく必要があるかと思います。国際的な調整について、いかが考えていらっしゃいますか。
  135. 糸田省吾

    ○糸田政府委員 まことに先生おっしゃいますとおり、経済国際化がますます進む中で、企業の事業活動もこれまた国際的な展開が一層活発になるのは当然だろうと思っております。そういったことから考えますと、独占禁止法の運用につきましても、各国間の連携といいますか、広い意味での意見交換がどうしても必然的に大事になっていくことではないかと考えております。  例えばアメリカに関しましては、先ほど申し上げましたとおり、双方の独禁当局同士の会合を十数年にわたって持っているわけでございますが、これをほかの国との関係においても持つということで、アメリカ以外にも例えばECとか西ドイツとかフランスといった諸外国の重立ったところの独禁当局と我々公正取引委員会との間で定期的な会合を持って、広く意見交換を行っているところでもあります。それからまた、先生御承知のように、OECDにおきましても競争政策を議論する部会がございます。こういった部会にも公正取引委員会は積極的に参加しておりまして、その場で、いわばマルチの格好で各国の独禁当局と意見交換を行っていく、こういったことが非常に大事なことではないかと思っておりますので、今後ともその方向で仕事を進めてまいりたいと思っております。
  136. 森本晃司

    森本委員 次に、最近主婦の間でよく言われていることでございますが、なぜあんなに銀行の手数料、送金手数料が高いのであろうかという声をもうあちらこちらで、私も今地元へ帰って一生懸命いろんな主婦の皆さんと懇談を重ねているところでございますが、三会場へ行けば一会場ぐらいそういった質問等々も出てくるわけでございます。何であの手数料、あれだけキーをたたくだけで高いのか。場合によっては、自分が操作して、それでなおかつ自分の金を送るのにお金を、手数料を取られる。一体、その内訳はどうなっているのか。あるいはまた、なぜ三万円と三万円以下との差があるんだろうかといったことを、郵便局で送ると非常に安い、どうなっているのだろうかという声を非常に多く聞くわけです。  これに対して大蔵省が、銀行手数料に競争原理を導入しようということで、料金体系を改めるよう銀行界を指導する方針を固めたというふうな記事が十一月の二十七日に出ているわけでございます。長官は恐らく在野にあるとき、いろいろと送金を御自分でされた経験もたくさんあると思います。恐らくそのコストも十分よく御承知だと思いますが、あの手数料、銀行の送金手数料、高いな、あるいはなぜかなということを一主婦として感じられたことがありますでしょうか。いかがでしょうか。
  137. 高原須美子

    高原国務大臣 高い安いは別といたしまして、一主婦として感じたことを申し上げますと、このコストといいますか中身はどうなっているのかなということを、もうちょっと消費者情報提供してほしいなという感じがいたしました。やはり競争原理の導入も必要ではないかなというような感じも持っておりました。
  138. 森本晃司

    森本委員 大蔵省の方がお見えいただいておると思いますが、五十六年に改正されました、至急扱い、電信の場合には、三万円未満だと六百円、三万円以上だと八百円、これにそれぞれ消費税がかかってくるというわけでございます。また文書扱いだと、それぞれ四百円、六百円という形になる。これも五十六年、それまでいろいろと競争原理が導入されていたようなのに、あるとき突然そういう形になってきた、どこの銀行もみんな同じようになってきたというわけでありますけれども、まずお尋ねしたいのは、三万円未満と三万円以上がなぜ二百円の違いがあるかということ、それからまた、文書扱いと電信の扱いとにどこが二百円分違うのかということについて教えていただきたいのですけれども。
  139. 中井省

    ○中井説明員 お答えいたします。  そもそも基本の論議でございますが、金融機関の各種サービスの手数料につきましては、各金融機関が提供するサービスの内容とコストを勘案し、合理的範囲内でそれぞれ自主的に定めているものでございます。したがいまして、先ほど競争原理の導入というお話ございましたけれども、基本的には各金融機関が自主的に競争の中で決めていくものだということでございまして、政府の規制等があるものではございません。  しからば、今御質問の、なぜ統一的に価格がなっているのだろうか、こういうことでございますが、我々、銀行界といろいろ議論しておりますといろんな見方がございまして、一つは、この送金サービスなり自動振り込みサービスなりなんなり、非常に均質的なサービスであるということがございまして、どうしても一物一価と申しますか、そういうところに収れんしていくという傾向がある、そういう点は否めないようでございます。  それから、その絶対水準でございますが、我々当局としてこれが適正かどうかということについて判断するすべは持っておりませんけれども、具体的に申し上げますと、五十年代半ばの金融制度調査会の報告によりまして、基本的には、「内国為替、自動振替等サービス提供と受益の関係比較的明確な分野については、受益者負担の見地から費用に見合った収入を確保していくことが原則である」と考えている、こういうことが述べられておりまして、我々としましては、金融機関がその精神にのっとって価格を設定するものと考えております。  それから、金額の多寡によります相違でございますが、我々が聞いておりますところでは、印紙税負担の違いがあるというようなことも伺っております。  それから、文書扱い、電信扱いでございますが、これはいろんな面が価格にはございまして、やはり一つは受益の程度と申しますか、文書扱いでございますと文書が伴いますので、それにコストがかかるという面もございます。けれども逆に日数がかかります。電信扱いの場合はほぼ当日の決済で済むというような点もございまして、そういう受益の程度コストを総合的に勘案して金融機関が価格づけをしているのではないかと考えている次第でございます。  なお、そういう価格水準につきまして消費者の方に御不満があるということでありましたら、基本的には金融機関が、やはり先生おっしゃいますように、消費者なり預金者の理解を十分得られるよう懇切に説明していくという努力が必要なんではないかと考えている次第でございます。
  140. 森本晃司

    森本委員 今の答弁の中で、手数料は各銀行、自主的に決めているということですね。
  141. 中井省

    ○中井説明員 はい。
  142. 森本晃司

    森本委員 全く納得できないわけであります。自主的に決めている銀行がなぜ統一価格になるのか。現実は自主的じゃないじゃないですか、全く。  それから、それに関連いたしまして申し上げますが、銀行で手数料を決めるのはリーディングバンク方式というのがあるというふうに伺っておりますが、これはどういうものなんですか。
  143. 中井省

    ○中井説明員 お答えいたします。  自主的に決定しているというのは、そのとおりでございまして、例えばほとんど大勢は同一価格になっておりますけれども、一部の信金等で価格体系が違うところもあるわけでございます。  それから、リーディングバンク方式と申しますのは、俗に言いますのは、我々が聞いておりますのは、全銀協の会長行がある程度価格を最初に発表いたしまして、それを他行が追随するというような形態を指しているんだと思っております。
  144. 森本晃司

    森本委員 リーディングバンク方式で、その会長が言ったことに右へ倣えになるということは、決して自主的じゃないんじゃないですか。
  145. 中井省

    ○中井説明員 お答えいたします。  その場合に、リーディングバンクが価格設定をいたしまして、例えばその裏に相談があるということであれば、それはもちろん独禁法の問題になるわけでございまして、我々はそういうことはないと信じております。  それから、やはり物には相場というものがございまして、例えば口幅ったいようでございますけれども、リーディングバンクが設定した価格につきまして、とてもコストが償わないといって高くしようとしても、逆に下がる圧力と申しますか、おたくの銀行だけどうしてそんなに高いんだというような話もあるわけでございます。もちろん、その逆の場合もあるわけでございます。要するに、受益とそれからコストの総合的勘案で金融機関が設定しました価格がどれだけ消費者の御理解を得られるかということでございまして、その辺も踏まえて我々としては、金融機関が顧客の理解を十分得られるよう自主的な努力をしていくことを期待しているわけでございます。
  146. 森本晃司

    森本委員 一定の目安というものがあって、目安はどこにもあるということは私たちもわかりますけれども、目安がぴたりとみんな同じだということは、一般国民の感覚として納得できない。  それから、均一的サービス、同じようなサービスなんで料金が皆同じようになっているんだ。しからば、国民の目から見て同じような形で送金をする。郵便局で送りますと、八百二十四円銀行でかかるものが百三十円ですね。どこに違いがあるのですか。
  147. 中井省

    ○中井説明員 お答えいたします。  私も郵便局の送金手数料のコストを詳細に検討したことがございませんので、確かなことは申し上げるわけにはいきませんけれども、我々がいろいろ聞いておりますと、一つは、郵便局というのは国営でございまして租税公課の問題、それから建物の償却の問題でございますとか、かなり民営の金融機関とはコスト構造が変わっているというふうに伺っております。
  148. 森本晃司

    森本委員 それから二百円の格差、印紙税だとおっしゃいましたが、確かに二百円の印紙税だと思います。この価格の違いは、確実に印紙税によるものですか。
  149. 中井省

    ○中井説明員 お答えいたします。  先生よく御存じでございまして、先ほど申し上げましたように、そういう説明をする金融機関が多いということでございまして、それが確実に印紙税部分だという確定したことをこの場で申し上げるわけには、我々も聞いていないということでございます。
  150. 森本晃司

    森本委員 その辺が非常に、銀行の方に伺ってもあいまい、大蔵省に伺ってもあいまい。もし印紙税だとすると、八百円に三%の消費税をかけて八百二十四円にしているということ、本来は六百円に三%かけた分プラス二百円ということにはならないのか。そうでなかったら二重課税になっていくのではないかという素朴なる疑問がありますが、どうですか。
  151. 中井省

    ○中井説明員 その点は確かに御指摘のとおりでございまして、銀行の方では、全体として収支が償うような料金設定をしている、こういう説明の仕方をしていると聞いております。
  152. 森本晃司

    森本委員 いずれにいたしましても、大蔵省、この辺よくこの手数料の問題については御検討いただきたい。銀行の方に聞いてもあいまいな感じ、大蔵省に聞いてもあいまいな感じ。大蔵省は、あるところに書いておりましたけれども、ティッシュペーパーの配る枚数まで銀行を管理しているのに、この手数料だけ全く野放しにしているのは何事だ、そういう声を聞きますと、消費者の中に、利用者の中に、私たち国民の中に、そういったことに対する不満がいっぱい出てくるわけです。  あと、例えば公共料金の振り込みが安いのはありがたいけれども、それは大手電力会社あるいはNTTが負担する分については安くなっている、あるいは大企業が送金する分については実は内々で安くなっているんだということも、私たち巷間聞いております。したがって、手数料については、一般国民、個人は、いつも銀行の決めたままにさせられているんだ。これはまさに利用者不在の手数料のあり方ではないか。大蔵省は先般そういった問題について指導する方針を固められたというわけでございますので、印紙税だと聞いて、はっきり印紙税だとも大蔵省も言い切れない。その辺は一体どうなっているのかということも詰めて、国民利用者に納得いただけるように銀行の手数料というものは今後やっていってもらいたいというふうに思うところでございます。いろいろとこの点についてもう少し聞きたかったのですけれども、時間が参りました。  最後になりまして、これは長官初めお答えいただく時間がもう終わりましたので、私提言をさせていただきたいと思いますけれども、我が国が今日まで経済が大きく発展してきたのは、大変企業の努力もあった。同時に、一般国民努力もあった。しかし、事消費者問題に関しては、極めて企業中心の考え方で来たので、日本の中に消費者の主権、権利というものは主張されていないのではないかという意見が今多くあるわけです。商取引には商法があり、日常生活の中に民法があり、企業と労働者の関係においては労働法がある、それぞれ法律があるわけでございますけれども、消費者との関係においてあるのは消費者基本法しかない。しかも、この基本法でいろいろと七十種類ほどの法律がそれぞれ各分野であるわけでございますけれども、しかし、実際に何か問題が起きて消費者がどこかへその問題を尋ねようと思えば、やれこれは通産省、やれこれは農水省、やれこれは厚生省だと、本当に消費者一つの窓口で問題を解決してもらえるところがない。このままの状況では、日本消費者というのはいつも泣かされる立場にある。日本経済もこれだけ発展してきた中で、これから本当に消費者の側に立ってやる行政、あるいはそういった省庁も必要であり、あるいは消費者基本法の抜本的見直しもやらなければならないときがやってきているのではないだろうか。また、製造物責任者法についても、諸外国ではその点が進んでいるけれども、我が国では非常に対応がおくれているというところでございます。さらにまた、これはそう簡単にはできないし、行政改革の流れの中でありますけれども、消費者側に立った立場の省庁ができてもいいのではないか。もはやそういう時代に入ってきたのではないかと私も思い、提言をさせていただきたいと思うわけでございます。消費者保護基本法の問題については、また時間を改めていろいろと御質問もさせていただきたいと思いますが、総括して、長官のお考えをちょっと一言だけお聞きいたしたい。
  153. 高原須美子

    高原国務大臣 細かいことはともかくといたしまして、やはりこれからは消費者重視の時代ということで、消費者行政には十分力を入れていきたいと思っております。特に近年、情報化、高齢化、国際化というように大変変化が大きく、また新しい消費者問題も起こってきていると思いますので、これからは消費者の利益を擁護すると同時に、自立した消費者も育ってもらうように、新しい消費者行政を積極的に展開していきたいと思っております。
  154. 森本晃司

    森本委員 どうもありがとうございました。
  155. 新村勝雄

    新村委員長 次に、塚田延充君。
  156. 塚田延充

    ○塚田委員 日本経済力は一流である、しかしながら生活水準は二流であるということは、よく言われております。なぜこのようなことになっているのか。これを働く者の立場から見ますと、例えば住宅を中心とする生活環境、これは欧米と比べるとまだ水準的にかなり低い状況にある。そしてもう一つは、労働時間の問題でございます。これがゆとりある豊かな生活とはほど遠いような時間を強いられて、働かなければ食っていけないというような状況にまだまだ多くの日本国民は追い立てられているわけでございます。しかしながら、それに負けず劣らず、生活水準に対して日本国民が納得できない、苦しんでおるという原因は物価高にあるということが、最近各界において特に強調されているところであります。  折しも日米構造協議ということで、特に去る十一月六日、七日に行われました第二回日米構造協議におきましては、その結果についてマスコミを通じてかなり広く国民に報道されました。非常にわかりやすい形で、日米の価格差がこんなにあるんだよというのを一覧表に近い形で出されて、ははあなるほど、高い高いと思ったけれども、そんなものなのかということを国民は実感して知った。それから、為替レート円高に急激に変化したときに、いわゆるアメリカなどからの逆輸入問題を国民が知って、これはおかしな話じゃないか。輸出すれば、手間暇コストをかけて、必ず輸出された物の方が仕向け地においては高いのが経済の原則のはずなのに、それが輸出先において安くて、さらにそれを日本に持ってきても、日本の同じメーカーの商品よりも安く買える。何かからくりがあるのじゃないか、おかしいぞ、このように国民が気がついたわけでございます。  そんな中に申し上げた第二回日米構造協議が行われたわけでございますが、そもそも構造協議という言葉自体がどうも翻訳語のような感じですね。今まで経済摩擦とかいう言葉はかなりなじんだわけでございますが、構造協議、これは中学生か高校生の試験問題に出したって、こんな新造語みたいなのは全然わからない言葉です。少しずつ定着してきそうな感じはしております。  そこでお伺いしますけれども、そもそも構造摩擦といいましょうかそれについて協議を行う構造協議というのは、どういう趣旨、目的を持って、どういう構成を持って、またインターバルを置いて日米間で協議が始まったのか。第一回はいつだったのか。そして、それに基づいてこの有名な十一月六日、七日の第二回構造協議が行われたわけでございますが、まず第一回に持ち込まれた経緯といいましょうか、そしてその趣旨について御説明いただきたいと思います。
  157. 鈴木孝之

    ○鈴木説明員 御説明申し上げます。  ただいま先生の御指摘の日米構造協議につきまして、私がお答えするのが適当かどうかちょっと問題がございますが、私の理解といたしましては、日米貿易摩擦の中で貿易赤字を解消するために、双方の貿易阻害をしている各市場の中の構造問題について協議をしようということで始まったと聞いております。第一回は九月四日、五日に開催されました。  そこで、先生から御質問いただきました日米共同価格調査の結果についてですが、この点につきましては、この第一回の会合におきまして、我が国価格メカニズムを議論するに際しまして、日米が共通の事実認識を持つことを目指しまして実施に合意いたしたものでございます。したがいまして、品目といたしましては、電気製品、自動車、日用品、資本財等の輸出品、輸入品、それから航空運賃等のサービスから成ります四十品目余りを対象といたしました。中心となりましたのは、日米両国の市場で共通して見られます貿易財ということでございまして、同じメーカーの同じ銘柄につきましてそれを両国の市場で見つけて、その実売価格を百貨店、専門店、ディスカウント店と店舗形態を区分いたしまして、東京、大阪、ニューヨーク、シカゴで十月下旬に両国政府職員が共同で調査を実施したものでございます。  その結果でございます。通産省所管の工業製品について申しますと、まず輸出品と輸入品に分けまして、我が国から輸出された製品について見ますと、調査対象四十二銘柄中、米国での価格の方が我が国での価格より押しなべて高いものが二十四銘柄と過半を占めております。何分にも店舗形態を分けておりますので価格はさまざまでございまして、例えば百貨店で比べてみると日本の百貨店の方が高かったけれども、専門店あるいはディスカウント店で比べると日本の方が安かったというような、どちらが高いと一概に高低を明らかにできなかったものが七銘柄ございます。それから、米国の方が安かったという調査結果になっているものが十一銘柄ございました。次に、我が国に輸出された製品について見ますと、調査対象三十四銘柄中、我が国での価格の方が米国での価格より高い例が三十一銘柄と多くなっております。  なお、逆輸入というお話がございました。フィルムなどがございましたが、フィルムにつきましては、アメリカ製品も日本製品も、現在ではこの調査結果によっても日本の方が安いというような結果になってございます。  それから、これらの調査結果から、特に我が国からの輸出品につきまして、米国はこれまでの協議において、我が国の製品価格国内で高くて外国で安い、あるいは為替調整メカニズムは日本の輸出に働かないと指摘をしていたところでございますが、今回の調査で輸出品に関する米側の指摘は必ずしも事実に合致しないことが明らかになったと受けとめておるところでございます。ただし、輸出品、輸入品を通じまして、日本の方が高いという内外価格差が見られる事例も事実ございます。  価格差が生じている要因につきましてとりあえずコメントさせていただきますと、輸出品については、何分にも国あるいは市場を異にしますので規格、市場の違い、それから品質、性能の違いや消費者の好みの違いもあると考えられます。それから輸入品につきましては、これらの点に加えまして消費者のブランド志向、海外メーカーの販売戦略等の要素が考えられます。これらの要因分析については今後十分分析を行い、必要に応じ適切な対策検討する考えでございます。
  158. 塚田延充

    ○塚田委員 ただいまの御答弁は、私の意図にちょっと反しまして、第二回の日米構造協議において両政府で共同調査した内外価格差調査結果についてかなり御説明いただきました。ありがとうございます。しかし、私が質問の意図といたしましたのは、そもそも構造協議とは何ぞや、構造とは何なのか、人口構造なのか社会構造なのか何構造なのかということで、日米どちらから言い出したのかとかいうような、イロハのイということを中学生が社会科で質問するように定義などについてお伺いした、こういうわけでございました。  それはさておくとしまして、次に簡単に質問いたします。  この構造協議につきまして、日米で二回行われて、第三回目も予定されておるようでございますが、欧州など他の国からこの協議をしたいというような申し入れがあるのでしょうか。それからまた、日本からこのような協議をしようというふうに欧米諸国などに申し入れた経緯はあるでしょうか。――わからなければ結構でございます。後で通産省、だれか責任を持って私のところに:::国民だれもが知りたがっておる。とにかく構造協議という言葉そのものが物すごく目新しい、耳新しいのですよ。ですからそれについてお伺いしたわけでございますが、それはそれで、後で結構でございます。しかし、このくらいは皆さん通産省だったら、省庁部局関係なしに知らなくちゃおかしいのじゃないですか。我々委員の方は黙っていますけれども、そんなのはみんな笑っていますよ。  さて、今御説明を受けました日米価格調査によりまして、いろいろでこぼこはあるけれども、日本消費者がやはりそうだったのか、我が国価格の方が高いぞということを証明していただいているに近いような結果になったと思います。このような実態が明らかになったことに対しまして、通産省としてはでこぼこがひどい方について今後どのように対策しようとするのか、この共同調査の結果を踏まえて、通産省としての今後の対応策についてお伺いしたいと思います。
  159. 鈴木孝之

    ○鈴木説明員 ただいま御説明申し上げましたように、輸出品の中にも我が国の方が安いという例が見られましたし、輸入品につきましてはかなり多くのもので日本の方が高いという事例が見られたことがございます。これらの品目につきまして、それぞれ海外メーカーの価格戦略とか、あるいは消費者の性向がどう違うのか、あるいは流通の関係で経路がどう違うのかとか、さまざまな要因がございます。私どもといたしましては、要因分析を早急に行いまして、その対応を適切に行うよう考えたいと思っております。
  160. 塚田延充

    ○塚田委員 それでは、経済企画庁にお伺いいたします。  同様な内外価格調査結果につきまして、経済企画庁としてはどのような認識をされているでしょうか。
  161. 高原須美子

    高原国務大臣 経済企画庁といたしましても、先ごろ「物価レポート」を発表いたしまして、ニューヨーク、ハンブルクで調べました物価につきまして東京比較すると、東京は一・四倍前後になるという内外価格差を発表いたしました。それと、今度の日米構造協議での内外価格差との関係でございますけれども、内外価格差というのは五つのカテゴリーに分けられるのではないかと思うわけです。  まず一つは、食料費とか住居費とかレジャー費を含めました全般的な生計費の物価水準についての価格差でございます。第二は、特定の輸入できる品目についての内外価格差。第三は、日本から輸出されている特定の個別品目についての内外価格差。第四が、国際航空運賃等の国際サービス料金方向別格差。さらには、輸入が不可能な特定のサービスについての内外価格差が五番目でございます。この五つに分けて把握する必要があると思います。  そこで、先ほど通産省の方から御報告のありました今回の日米の共同価格調査は、今申し上げたうちの二と三、つまり日本からの輸出品、それから米国や欧州からの輸入品四十数品目について価格調査を行ったものでございます。この評価について今後いろいろな検討が必要であると考えております。「物価レポート」で企画庁が出しました内外価格差は、生計費の物価水準比較しておりまして、我が国物価水準はこの数年の円高に伴って国際的に見て割高になったという認識を示しているわけでございます。他方、日米の共同価格調査の方は、四十数品目という品目も限られておりますことや消費財以外のものも含まれていることなどを考えますと、日米の全般的な物価水準についてここから判断することはちょっと無理ではないかなと考えております。
  162. 塚田延充

    ○塚田委員 第二回協議におきましてCEAのテーラー委員は、日本の高物価の原因は、日本の複雑な流通制度、排他的な取引慣行にあるとしております。経済企画庁は、このような大きな内外価格差を生みました原因について何であると考えているのか、端的にお答えいただきたいと思います。
  163. 高原須美子

    高原国務大臣 物価水準国際比較というのは大変難しいことではありますけれども、端的に原因をということですので、内外価格差の原因を指摘したいと思います。  大きく分けまして、一つはマクロ的な要因でございます。これは、昭和六十年以降円高が急速に進展したのに対して、国内価格体系が十分に円高を反映していないという面があるために起こったことです。第二に、国際的に見ると一人当たり国民所得が高くなるほど国内物価水準が高くなるという傾向があって、日本につきましてもこの傾向が妥当する面があることでございます。こういった円高あるいは国民所得水準の高さといったマクロ的要因が、まず指摘できます。  そのほかミクロの要因としては、政策的な公的規制のある分野について、円高に伴っても輸入価格が下がらず、国内価格の下落に結びつきにくいということ。ブランド品については、海外企業の高価格戦略に加えて消費者の側にもブランド志向があるという、ブランド志向というかそれに対して寛大な傾向があるということ。それから三番目のミクロ的要因としては、高い地価とか家賃が土地利用型のサービス価格を高くしているということが原因として挙げられると思います。  CEAのテーラーさんが指摘しました我が国の流通制度、商慣行の複雑さというのも、やはり内外価格差の一因であるというふうに思っております。ですから、我が国の流通制度、商慣行は、今後独禁法の適正な運用、規制の緩和等による競争促進によって合理的な流通構造に変えていくということも必要であると同時に、消費者に対してもそういうきめ細かい豊富なサービス、品ぞろえというものがある意味では高くなるんだというようなことも説明しつつ、この問題は解決していかなければいけないと思います。
  164. 塚田延充

    ○塚田委員 極めて残念なことではございますが、テーラー委員指摘、複雑な流通制度や排他的な取引慣行、この辺に大きな原因があるぞということについては、我々も襟を正して、しかもこの解決によってかなりの面が改善される、このように把握し、今後対策を講ずるべきかと思います。  さて、我が党では、先ごろ永末ビジョンという形で、当面する緊急課題の第一に高い物価水準引き下げを掲げまして、そのために特に内外価格差を縮小する必要があるという観点から、総代理店制度改善、並行輸入の促進、流通・販売にかかわる公的規制の緩和、公共料金引き下げなどを求めたわけでございます。  それでは、まず総代理店制度につきまして、有名ブランド品などの著しい内外価格差、既に各委員から指摘されておりますけれども、この大きな要因となっておる総代理店制度改善すべきだと思うのですが、どのように改善すべきかにつきまして、公取の御意見をお伺いしたいと思います。
  165. 上杉秋則

    ○上杉説明員 お答えいたします。  輸入総代理店というのは、特定の商品が我が国ではそのところしか流れないということで、非常に独占的な地位を与えることになります。したがいまして、その商品が非常に有力であったり、その事業者が非常に有力であるという場合には、国内にいわば弊害をもたらすというおそれがございます。特に、そういう輸入総代理店制をとっている商品について内外で非常に大きな価格差が存在するということになりますと、海外からその商品を買って我が国に持ってくるいわゆる並行輸入というものがビジネスとして成り立つということになるわけでございますので、私どもは独占禁止法の立場から、そういった並行輸入が不当に阻害されないように、こういうことを通じて国内の高価格に対して競争圧力を高めていくという政策をとっております。この観点から昭和六十一年に、どういう行為が並行輸入の不当阻害になるかということを明らかにいたしまして、輸入総代理店とか国内の流通業者に理解を求め、その考え方の周知徹底を図っているところでございます。  それから、輸入総代理店の行為とか並行輸入については、かなり経済実態に伴っていろいろ変化をしていきますのでその実態把握に努めているということで、現在、輸入総代理店経由の輸入品とか並行輸入の品目の取り扱い状況というものを調査いたしておりまして、そういった調査を通じてさらに新たな問題があるかどうか、あるいは是正する必要があるかどうかということを把握して、適正な独禁法の運用に努めていきたいというふうに考えております。
  166. 塚田延充

    ○塚田委員 総代理店制度にある程度の弊害があるということは、今もお認めになった上での御発言かと思いますけれども、消費者にとりましては、やはり価格引き下げるという意味においてこの並行輸入に積極的に対応していきたいという希望が非常に強いわけでございます。ところが、この並行輸入に対しまして、一部においてこれを言うなれば妨害に近いような動きがあるということも聞いておりますけれども、このような動きに対しまして、通産省はどのように把握し、対策考えておられますか。
  167. 樋口正治

    ○樋口説明員 お答え申し上げます。  私ども輸入拡大ということを国是ということでやっておるわけでございますが、一層の輸入拡大のためには多様な輸入のチャネルを確保するということが非常に重要であるということは、実は「九〇年代流通ビジョン」でも指摘されているところでございます。そういう中で並行輸入という問題があるわけでございます。これは先生案内のように、輸入総代理店と契約を結んだ人以外の人が輸入をするということでございますので、業者の方がやられる場合もございますし、個人輸入と言われております個人の方々が直接お買いになる、こういう場合もあるわけでございます。今公正取引委員会の方からもございましたように、そういう意味での並行輸入というのは、競争促進効果というのがやはり期待されるわけでございますし、これによって輸入品の価格の低下ということがメリットとして期待されておるわけでございます。そういう意味で私どもも、並行輸入が不当に阻害されることのないよう市場競争性の確保ということは極めて重要な問題であるというように思っておるわけでございます。具体的には、例えば独禁法に基づきまして公正取引委員会が並行輸入の不当阻害についていろいろ監視をしていただいているというようなことも、非常に重要なことだろうと思っております。  それから、私どもといたしましても、広い意味の並行輸入、こういったものを促進するために、例えば一例でございますが、この十月、政府は輸入拡大月間として、輸入品の拡大ということを国民の方々に訴えておる期間がございますけれども、その一つの時期に行いました事業でございますが、製品輸入促進協会あるいは日本貿易振興会が一緒になりまして、ニュー・インポート・ビジネス展というものを東京で開いたものでございます。これは開発輸入なり並行輸入なり、こういった新しいビジネスが育ってきておるよということを広く皆様方に知っていただく、そういう中でいろいろな情報を皆様がとっていただくということで、新たな競争条件の整備をしていく。あるいはまた個人輸入をやられる方、あるいはまたその代行をされる方というのも、だんだん出てきております。こういった情報を皆様方に御提供することによって流通チャネルの多様化ということが実現する、ある意味では、最終的には製品輸入の拡大ということが実現できるのではないか、そういった方向で努力しておるところでございます。  どうぞよろしくお願いします。
  168. 塚田延充

    ○塚田委員 物価引き下げるための一つの方法として、並行輸入促進の条件整備について一般論として通産省もそれなりの対応をされておりますし、公取もその立場において目を光らせておられることにつきましては、わかりました。  それでは、この問題について端的なケースについて、ずばり公正取引委員会調査結果及び今後の対応についてお伺いしたいと思います。  それは、最近アップル・コンピュータ・ジャパンなどの輸入総代理店及びそれと一緒の某日本の販売会社なぞが並行輸入を妨害したというような事実に基づきまして、公正取引委員会はその輸入総代理店に対して独禁法違反の疑いで調査しているというふうに報道されております。その内容はどのようになっているでしょうか。
  169. 植木邦之

    ○植木政府委員 先ほど私の方の国際課長がお答えいたしましたように、私どもは六十二年に、並行輸入の不当阻害についての独占禁止法上のガイドラインという、詳細なガイドラインを出しているわけでございます。それで、このような輸入総代理店が真正商品、つまり正しい商品でございますね、にせものじゃないということでございますが、その並行輸入を不当に阻害する行為につきましては、独禁法に規定する不公正な取引方法に該当するということで、いろいろな事案について排除に努めるという方針を明らかにしているわけでございます。  それで、先生先ほどおっしゃいました米国製のアップルコンピューターの場合でございますけれども、御指摘の輸入総代理店などが並行輸入業者が輸入をしました商品の広告の掲載を妨害するとか、あるいはその取り扱いについていろいろ文句をつけるというようなことがございましたので、これは私どもの審査事件といたしまして、ことしの十月三日立入検査を行って、かなりの書類を留置したということでございます。相当膨大な資料を留置したわけでございますし、それに基づきまして現在調査を進めておるところでございますので、鋭意審査を進めてまいりますが、内容につきましては現在のところちょっと差し控えさせていただきたい、そう思っております。
  170. 塚田延充

    ○塚田委員 公共料金につきましては、どうも我が国が他国と比べて割高であるということがよく言われております。ですから、その引き下げを図っていくことが大変重要だと思います。この公共料金引き下げにつきまして、経済企画庁のお考えをお聞きしたいと思います。
  171. 高原須美子

    高原国務大臣 公共料金についての国際比較を行う場合には、為替レートが変動することあるいは制度面が各国によって違うことなどから、単純な料金比較だけではちょっと内外価格差の実態を把握することは困難ですけれども、近年における円高等を背景として幾つかの品目において内外価格差が生じていることは事実だと思います。けさほどのこの委員会でも、運輸省郵政省などからそういう御報告がありまして、幾つかの公共料金が割高であるということは認識いたしております。  そこで、このような内外価格差の縮小を目指した物価構造の是正については、昨年の政府経済運営五カ年計画「世界とともに生きる日本」においても重点課題の一つとして掲げられておりまして、そこでは「公共料金について、国際的な観点からコスト構成等の検討をも行いつつ、一層の生産性向上に努めることによって、料金の適正化を図る。」というふうにされております。企画庁といたしましても、従来からこの方針に従いまして料金の適正化に努めておりますが、今後とも規制緩和による競争条件の整備や一層の生産性向上などを図ることによりまして適正な公共料金が確保されるように、関係の担当の省庁とも密接に連絡をとりながら努力していきたいと思っております。
  172. 塚田延充

    ○塚田委員 我が国のいろいろな価格が高いことは、単に物品のみならずサービス面でも多々あるわけでございますが、それらにつきましてはどうも業界内部での不公正な協議に基づくものがかなり多いということを指摘されておりますし、一般国民もそのように受け取っております。つい最近のマスコミ報道によりましても、ある県において観光バス料金などについてどうも官をも巻き込んで取り決めが行われているようだというような報道もありますが、そうなりますと、消費者の味方としての官庁でございます経済企画庁、そして公正取引委員会消費者国民のために果たすべき役割はますます強まってきたと思います。両官庁の消費者のための行政がもっともっと促進されますようお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  173. 新村勝雄

    新村委員長 次に、岩佐恵美君。
  174. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 まず、家庭用灯油についてお伺いをしたいと思います。  家庭用灯油は、冬場の暖房用として広く一般家庭で使用されています。昨年の灯油使用量は全国で二千七百五十七万キロリットルですけれども、家庭用灯油はそのうち六五%、一千七百九十四万キロリットルに及んでいます。特に東北、北海道など寒い地域では、灯油はお米と同じ必需品として使われています。北海道の生協のアンケート調査によりますと、一世帯の年間の灯油使用量が二千リッター、二十リッター入りのポリ缶にしますと百缶になります。ところが、今本格的な灯油の需要期を迎えて石油元売会社は、生協初め共同購入に取り組んでいるところに対して、石油メーカーが希望する価格を認めないなら灯油を出荷しないなどの圧力をかけ、灯油の価格引き上げを強引に行おうとしています。そのため、昨年より既に灯油はかなり高目な設定になっています。  ある北海道の苫小牧に住む方の例ですけれども、御夫婦お二人、年金生活世帯で年金受給額が月十二万円だそうです。住宅は二十年でかなり古くなっていて、十月から夏場まで、ですから一年のほとんどは灯油をたくという状況です。昨年リッター当たり灯油は三十三円だったのが、ことしはもう既に三十八円と五円上がっています。そうしますと、月千五百円の負担増になります。既にことしの四月からの消費税で、この御家庭の場合月三千円以上の負担増になっているそうです。冬場に向かって衣料品だとかいろいろ冬支度など考えると、恐らくこの消費税の負担というのはもっと多くなるだろうと思います。生活がますます苦しくなっている。こういう御家庭は結構あるわけですね。そしてそういう御家庭は、今、夜は早く寝て朝は遅く起きる、暖房費を節約をする。夏場にまきを拾ってきておいて、まきストーブを使わざるを得ない。これは、お年寄り家庭の場合は特に危険であるわけですね。こういうような、本当に人間としてそれこそ生きていてよかったなと思えるような生活を送ることができない、そういうところに追い込まれているわけです。  家庭用灯油は、まさに生活必需品で、安定的に適正な価格消費者に供給される、これはもう国民生活安定のために必要不可欠だと思います。高齢者世帯や低所得者世帯を泣かせるようなことがあっては決してならないというふうに思います。まず、経企庁長官にその点についての基本姿勢をお伺いしたいと思います。
  175. 高原須美子

    高原国務大臣 おっしゃいますように、北海道のような寒い地域を中心に、今や灯油というのは生活必需品になってきていると思います。私のうちも冬の暖房は灯油でございますので、これの値段については関心を持たざるを得ません。ただし、灯油の価格の決め方につきましては、他の商品と同じように、基本的には需要と供給といった市場メカニズムにより決められるものだというふうに考えております。そして、最近の灯油の価格動向につきましては、おっしゃいますように、昨年に比べまして原油価格が上昇していることや為替レートが円安に推移していることなどコストアップの要因がありますことから、前年をやや上回る水準で推移しているというふうに認識をいたしております。
  176. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 石油会社は、一九七二年から七三年にかけて、生産及び価格に関する独占禁止法違反のやみカルテルを結んで、一九七四年二月十九日に公取から告発をされました。同年五月二十九日、東京高検は石連、元売会社を独禁法違反事件ということで起訴をしております。そして一九八〇年九月二十六日には、東京高裁で石油会社に対して有罪判決が出されています。一九八四年二月二十四日には、最高裁でこの件についての上告棄却の判決が出て、有罪が確定をしているわけです。  一方、一九七四年十一月二十四日には、主婦連、生協などが民事訴訟をこの件に関して起こしています。そのうちの鶴岡生協の灯油裁判、これは一九八五年三月二十六日、仙台高裁秋田支部におきまして、原告、消費者勝利の逆転判決が出ました。この判決は、社会的に大きな注目を集めているわけです。ここに原告の声明がありますので、ちょっと御紹介をしたいと思います。   本日の高裁の判決は、まず五回の価格カルテルと四回の生産カルテルのすべてにつき、原告らの主張どおり、また公正取引委員会の認定どおり、その存在を認定し、これらが独禁法に違反する不法行為であると認めた。判決は、価格カルテルと、原告らの損害との因果関係及び損害額の算定につき、消費者に不可能を強いる一審判決をくつがえし、一部を除き認めた。   判決はまた、生産カルテルの事実もすべて認めた。ただ、これと損害との因果関係は認められないとしたが、しかし、生産カルテルが違法であるだけでなく、これに関する行政指導も適法ではなかったとして、通産省にも責任があることを認めた。 こういう判決の中身についての声明でございます。この事件の最高裁判決は、今月の八日、もうすぐ出る予定でございます。  このような業界の価格つり上げのためのやみカルテル、これは国民の暮らしを圧迫します。あってはならないことだと思います。改めて公正取引委員会及び通産の、こうしたやみカルテル事件等についての基本姿勢を伺っておきたいと思います。
  177. 岡本巖

    ○岡本説明員 鶴岡灯油裁判の最高裁判決が八日に予定されているということについては、私どもも承知をいたしております。通産省としてこの件についてどうかという点につきましては、司法府の判断の問題でございますので、判決の行方を見守っているところでございます。  それから、カルテル云々の点につきましては、私どもは機会あるごとに元売会社から販売業界に至るまで、独禁法遵守ということについては指導してまいっているところでございます。
  178. 植木邦之

    ○植木政府委員 お答えいたします。  今先生、鶴岡生協の訴訟の問題について触れられましたが、この関連につきましては、司法の問題でございますから、私ども現在特段申し上げるということはいかがかと思うわけでございますけれども、公正取引委員会といたしましては、御承知のように独占禁止法違反がありましてそれが消費者に損害を与えるということになりますと、厳正に取り締まっていくという立場をとっております。今後とも、独占禁止法違反の取り締まりあるいは未然防止を図るという観点から、独占禁止法の厳正な運用に努めてまいる所存でございます。
  179. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 そこで公取にお伺いしたいのですが、最近、北海道で石油元売会社による灯油やみカルテルが摘発をされたと報道されています。どのような内容なのか、公取はどう対応しておられるのか、経過を含めて簡単に御説明いただきたいと思います。
  180. 植木邦之

    ○植木政府委員 お尋ねの件でございますが、私どもは、北海道での石油の元売業者が、特約店への灯油の卸売価格を一リットル当たり三十一円とすることを決めたのではないかという疑い、それから、安値販売を行っている小売業者に製品を卸している卸売業者に対しまして卸させないようにしているのではないかという疑い、この二点の疑いがございましたので、先月の十四日でございましたか、立入検査をして調査を開始したわけでございます。現在のところ、立入検査をして半月ぐらいでございますが、実態把握を鋭意行っている段階というように御承知おきいただきたいと思います。
  181. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 ところで、同じようなことが現在全国各地で起きています。これは私が調べたところで、ほんの一部だと思いますけれども、例えば生活協同組合九州地連へ入った情報によりますと、業者が元売からの指示で、七百二十円以下では売るな、十円でも下げない、事後調整は行わない、こういうふうに言われているということです。それから広島の生協ですが、業者二十七社のうち十五社から、税金別七百五十円以上の価格が決定されない限り配達しない、そういった文書が各支所あてに一斉に届いた。ある業者に対して手紙を出したかどうかの確認の電話を入れたけれども、実はその業者は出していなかった。そのことを言ったら、自分がかわりに出しておくとかわりの業者が言った。これまで十数年間、慣行として十一月初めから価格交渉に入って、まだ暖かいので価格は後から決めて、とりあえずは配達はしましょうということでやってきたのだけれども、十一月の三日から四日にかけて、ほとんどの業者が七百五十円で折り合わないならもう配達をしないということで、十一業者はいまだにストップをしている。組合員のお年寄りや病人から何とかならないのかと電話がかかってくる状況である。それから石川県の例ですが、経営的にはできないということではない、ただ立場上四十二円でないと困る。立場とは何かと聞くと、県の石商、元売との関係をにおわせている。十三年続いた五つの取引関係業者とは取引をやめざるを得なくなった、その分は今自主配達をしている、こういうことですね。それから埼玉県の例では、出光興産が系列販売業者に前年比三割の供給カットを行っている。三割カットしてきた。  どうも石油元売会社が供給制限をちらつかせながら、販売業者と生協の共同購入の価格交渉に介入をしているという疑いが強いわけです。この点について、公正取引委員会並びに通産省、事態をどう認識しておられるか、伺いたいと思います。
  182. 植木邦之

    ○植木政府委員 御指摘の具体例でございますけれども、今先生かなり細かく事例を挙げておっしゃいましたけれども、私どもとしてはまだその実態の十分な把握ができていないということでございますので、これが違反するかどうかということにつきましては、ちょっと意見を差し控えさせていただきたいのでございますけれども、先ほど申し上げましたように、北海道地区では審査を開始したわけでございますし、ほかの地区におきましても価格カルテルが行われているというような具体的な端緒がございましたら、私どもとしましては所要な調査を行いまして、違反事実がありましたら厳正な措置をとっていく、そういう考えでいるわけでございます。
  183. 深沢亘

    ○深沢政府委員 お答え申し上げます。  今先生指摘のいろいろな具体的な事例につきましては、当庁といたしまして正確に事実関係を把握しているわけではございませんので、それぞれにつきましてのコメントというのは差し控えさせていただきたいと思います。  私どもが承知しております限りで申し上げますと、原油高、円安、それから輸入灯油の価格の上昇がございますから、こういうものを踏まえまして、元売といたしますとやはり夏以降灯油の仕切り価格を引き上げる。それから特約店サイドにしますと、そういう仕切り価格がアップしてまいります。それから、自分自身でも、人手不足等々に伴います配達のための人件費増などがどうしても出てまいります。そういったところを踏まえまして、販売店への卸売価格とか生協等需要家の皆様方向けの販売価格値上げ、こういうことをいろいろお願いしながら交渉しているということにつきましては、承知しているつもりでございます。  ただ、御指摘のような事例がどのような格好であったかということは私ども正確に承知しているわけではございませんけれども、いずれにしましても通産省としましては、今回承知している段階におきましては、値上げをお願いしている。それに関連しまして、元売から販売業者に至るまで独禁法上きちっと遵守していくようにということにつきましては、先ほど関係官庁からも申し上げましたとおり、折に触れいろいろな場所で、いろいろな人に対して指導していきたいという実態にございます。
  184. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 出光興産が前年比三割カットの供給制限を行っている、こういうことを紹介したわけですけれども、具体的に通産省にお伺いしたいのですが、今年度上半期の灯油の供給計画それから販売実績、それにことしの九、十の在庫状況について、簡単に御説明いだきたいと思います。
  185. 宇都宮誠

    ○宇都宮説明員 元年度の上期の灯油の需給動向を御説明いたします。  内需が、六十三年四月の灯油の需要が非常に旺盛であったというような原因もありまして、七百九万キロリッターということで、前年同期と比べますと九七・八%ということで少し減っております。供給計画も少し下目に組んでいたのですが、それよりも二十九万キロリットルほど下回っております。  供給につきましては、生産が七百七十三万キロリッターということで、前年同期に比べますと九〇・四%でございまして、輸入につきましては二百五十九万三千キロリッターということで、前年同期の八八・二%になっております。この生産と輸入を合わせました量で一千三十二万六千キロリッターということになるわけでございますが、供給計画に対しましては、生産の方は百七十一万キロリッター下回りまして、輸入につきましては百五十六万キロリッター上回りまして、両方合わせますと、結局十五万五千キロリッターほど下回っております。  この九月、十月の動きでございますけれども、内需につきましては、九月には前年同期に比べて六・三%の増、十月は五・六%の増でございます。それに比べまして供給の方では、生産は前年同期に比べて九月で九・四%の増、十月は四・三%の増。一方、輸入の方は九月で五十七万二千キロリッター、十月は六十六万六千キロリッターということでございまして、前年を上回っております。  それから在庫につきましては、三月末では二百八十七万二千キロリッターということで、前年に比べますと五〇%ぐらい上回っております。九月の在庫につきましては、五百八十八万四千キロリッターということで供給計画に比べてほとんど差がないわけでございますが、十月末在庫は六百三十二万三千キロリッターということで、九月よりもさらにふえまして、大体昨年のピークがこのぐらいだったのですが、同じぐらいにまでなっております。  以上でございます。
  186. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 今説明いただいたように、在庫は十分あるわけですね。ですから、今回の出光興産のように元売会社が供給制限をする、こういうことはおかしいわけですね。しかも、その価格引き上げの手段としてこのような供給制限を行うということは絶対に許されないことだと思います。出荷制限をしながら同調値上げを図る、こういうことは、今公正取引委員会も通産省もそれぞれ独禁法に触れるようなことは許されないということで発言をしておられますので、引き続き厳重に監視をして、きちっとしかるべく対応をしていっていただきたい、こういうふうに思います。  そこで、通産省にちょっと伺いたいのですが、原油のCIF価格の昨年の平均価格、それからことしの平均価格はどうなっているでしょうか。
  187. 斉藤茂樹

    ○斉藤説明員 お答えいたします。  昨年の原油価格は、OPEC諸国の増産を背景にいたしまして秋以降下落いたしました。十二月の我が国の通関CIFは、バレル当たり十二ドル九セントまで下がったわけでございます。その後、本年に入りまして平成元年年初は、OPEC諸国が生産上限を比較的尊重していたということや北海やアラスカで事故が発生したことなどから、原油価格は反転に転じました。他方、OPECは、バレル当たり十八ドルという価格を六月の総会では参考価格と位置づけておりますし、さらにこの十一月の総会では最低基準価格と位置づけるなど、価格重視の姿勢をとっていることもございまして、今年度上期以降の通関CIF価格は、おおむね十七ドルから十八ドルといった水準で推移しているわけでございます。
  188. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 私、四月から九月までの原油のCIF価格をもとに、灯油の価格がリッター当たりどのくらいになるのか、ちょっと試算をしてみました。これは全部が有証で、きちっと内容をあらわしているわけではありませんので全社というわけにはいかなくて、昭和シェルと日石、コスモ、三菱、この四社、直近の決算を決算書からはじいてみたわけです。昭和シェルの場合には直近がなかったので去年の十二月、あとは皆ことしの三月期決算からはじいてみました。原油のCIF価格についてはリッター当たり十五円二十一銭、原油関税が三十五銭、石油税が二円四銭、金利が三十七銭、自家燃料代が九十銭、精製費が二円四十銭、販売管理費が三円四十一銭、トータルしますとリッター当たり二十四円六十八銭、約二十五円になるということでございます。生活協同組合でも試算をされておられるわけですけれども、これもリッター当たり大体二十六円だということです。生協の場合、これにリッター当たり二十八円の輸入灯油だとかマージンをいろいろ入れても、一缶十八リッター当たり六百二十円が妥当だというふうな試算をしているわけです。  ところが、今石油各社は、十一月に入ってから各卸や特約店に対して、仕切り値はリッター当たり三十一円、先ほど北海道の例が示されましたけれども、末端価格は八百三十円、そういうことでこの価格を通告をして、その価格をのまなければもう供給制限だぞとか取引はしないぞというようなことで、横並びで押し通そうとしてきているわけですね。それはさっきから話があるように、原油が上がりました、あるいは円安でございます、確かに一定の価格の上昇がある、そういうことがある程度あったとしても、試算をしてみると異常な値上げの仕方だ。しかも、高値をこういう格好で押しつける、これはまさにやみカルテルで便乗値上げを強行することだと思うのですね。こういうことは絶対に許されないと思います。  通産省にその点再度お伺いをしたいと思います。
  189. 岡本巖

    ○岡本説明員 お答え申し上げます。  まず、灯油の出荷量が先ほど来の先生の御質問で大変減っているということでございますが、私ども、出荷について逐一役所が報告をとるということでもございませんが、きょう御質問があるということで、何社かに出荷の状況を聞いてみました。その結果は、十一月の平均気温というのが去年に比べますと三度ぐらい暖かくなっておりまして、経験的に灯油の販売量というのは、気温が平均で一度違いますと六、七%需要が減るという過去十年余の経験値がございまして、そういう気温の変化ということと、それから各元売会社としては、系列の特約店の過去の販売実績といったものを考えて、実需に見合った出荷をやっているということでございます。  それから納入ストップ、辞退というような点についてでございますが、例えば北海道でそういう時期が一時ございました。現在は解消しておりますが、ただ、その時点で私どもが北海道の方々に、灯油の安定供給という点では大丈夫なのかということで関係者に問い合わせました際に、納入を辞退しているところは、この回答価格では出血販売を余儀なくされるということで納入辞退しているわけですが、同じ北海道に住む業者として、灯油の大事さというのは十分に知っているものですから、生協の方々と話をして、組合員の方々から納入辞退をしている特約店に配達の申し込みがあった場合には、あらかじめの生協との打ち合わせに従ってこちらへ連絡をしてください、そうい御紹介をするというようなこと、あるいは他の販売業者が納入を続けるという事実もありまして、灯油の供給ということについては大きな支障はなかったのではないかというふうに考えております。  それから、仕切り価格についてのお尋ねでございますが、灯油の輸入製品のCIF価格というもので見てみますと、去年の十一月とかあるいは十二月ごろというのはリッター当たり通関で十七円ぐらいでございました。これに先ほど先生もおっしゃいましたように、石油税、関税というのを合わせますとリッター当たり二円六十七銭課税されることになります。ことしの直近時点で、十一月の通関CIF価格というのは二十六円台に現在上がってきております。そういう価格が、あるいはコストが増高しているということを踏まえながら、元売会社と特約店との間で仕切り価格についての話し合いが行われているのではないかというふうに私どもは承知をいたしておりまして、今先生から御指摘のございました具体的な仕切り価格水準の適否については、私ども役所の立場ではコメントは差し控えさせていただきたいと思いますが、原油、為替、さらに加えて今申しましたような製品輸入コストが急激に上がっているという事情を踏まえて、元売、特約店さらには需要家のの方々との間で適正価格についての話し合いが行われているものと理解をいたしております。
  190. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 ちょっと公正取引委員会に伺いたいのですが、末端価格を元売が指示をするということは、これは再販価格ではないかということで許されないのじゃないか、そういう話があるわけですけれども、八百三十円、それでちゃんと売りなさい、あるいは三十一円の元売仕切り価格を乱すような販売の仕方はだめですよということで、元売が指示をする、この点についていかがでしょうか。
  191. 植木邦之

    ○植木政府委員 御指摘の点でございますけれども、私どもが指定しております不公正な取引方法の十二項に、法文そのままは読みませんですが、自分の供給する商品を購入する相手方に正当な理由、これは競争関係を無視してということでございますが、拘束条件をつけて商品を供給することは不公正な取引方法に該当するということになっておりまして、元売がその売り先の卸、それからその売り先の小売、そこまでに価格を出すということは、この指示に該当するおそれがあるという形の指定がなされております。
  192. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 大体、コストが上がった分、価格に必ずしも上乗せできない場合がある、これが競争社会の原理だと思うのですね。だから、コストが上がったからといってその分上がっても当然です、こういうことには絶対にならないわけですね。自由な競争があれば価格が下がる、それはもう当たり前のことなのですね。それをさせないために力ずくでいろいろやる。だから、今こういう問題が起こってきているわけですね。  例えば先ほど通産省から御説明があったように、供給減は暖冬のせいで少なくなっているのですとか、実需に見合った販売を行っていますということであるならば、国会で私がこうしてあれこれ取り上げなくても済むはずなのですね。今そうなっていないから、だから何とかしてくださいということで、皆さんからいろいろ訴えがあって国会で取り上げる、あるいは公正取引委員会が北海道の例については立入検査を行うということが起こっているわけです。その点について、コストが上がったからといって力ずくで便乗値上げを行っていく、そのことが許されるのだったら、国民の暮らしはもう無法状態、本当に大変なことになってしまう。ですから、冒頭に過去の事件のことをいろいろ詳しく御紹介をして、基本的にどういうふうに考えておられますか、その基本姿勢に従ってちゃんと対応してくださいということを申し上げたので、繰り返しそのことは対応をきちっとしていただくように私は強く要望しておきたいと思います。  それからもう一点、一日の朝日新聞によりますと、OPEC総会で決まった新生産協定から除外されたアラブ首長国連邦のオタイバ石油相が「よその加盟国がきちんと守らない限り、うちは割当量の二倍の生産をする」、こう公言した。このため原油市場には早くも先安感が広がって、需給は緩和ムードにあるというふうに言われています。通産省は、原油価格の先の見通し、このことについてどう考えておられるのか。簡単で結構です。
  193. 深沢亘

    ○深沢政府委員 お答え申し上げます。  御案内のとおり、五月以降非常に落ちついた水準で推移してきておるのは御承知のとおりでございます。それで十一月のOPEC総会で、確かに第一期二千二百万バレルというような合意をOPECでいたしております。それにつきましては、今先生の御指摘のような別途のコメントがあった等々のいろいろあれはあるわけでありますが、この総会の結果は、スポット市場原油価格、これに対しまして余り影響を及ぼしていないのかなというふうに見受けられるところでございます。よほど突発的な状況というのは別といたしますと、今後の原油価格の見通しということでまいりますと、当面現在の基調にそう急激な変化というものはないのじゃないかな、こんなふうに考えております。
  194. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 長官に、この灯油問題で最後にちょっとお願いをしておきたいと思います。  この冬、消費者が困ることがないように灯油の安定供給あるいは適正価格の確保ということで、いろいろ必要があれば閣議で問題提起をされて、そして対応していただきたい、このことをお願いしたいと思います。
  195. 高原須美子

    高原国務大臣 灯油につきましては、民生用燃料として生活必需品とおっしゃいましたけれども、そのとおりで、国民生活にとり重要な地位を占めていると思います。きょうの先生の御調査あるいは御指摘は、大変参考になりました。こうした民生用の灯油がまず安定的に供給されることが重要ですし、適正な価格が維持されることも大切だと思いますので、企画庁といたしましては、きょう答弁のあったような関係省庁と緊密に連携をとりながら、引き続き価格、それから供給の動向について十分注視していきたいと思います。同時に、一消費者といたしましての立場も生かして、目を光らせてまいりたいと思っております。
  196. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 次に、高齢化社会に向けて在宅福祉の問題が非常に重要になっています。  これは町田市の例なんですけれども、明るい老後を考える会のボランティアの方が、週二回お弁当をつくって高齢者の方を訪問して届けているという、食事のサービスを行っておられます。この会は百二十食から百三十食つくっておられるのですが、材料費については、一食について二百五十円の補助が市からされているそうです。この会にお伺いをしましたら、お弁当をせりがや会館というところまでみんなボランティアの方がつくりに行くわけです。そして、また一戸一戸訪問して届けるので交通費がかかる。月に二万円かかるということです。交通費の半額は都の地域振興財団から出るようになったということですけれども、直接私も伺ったのですけれども、このボランティアの方々が言われるには、自分たちは労働力を無料で提供する、あるいはバザーをやってある程度、百二十食から百三十食分なのだけれども、それ以上のお弁当をつくる分とかそういう分はバザーから生み出したお金で賄ってもいいのだ。ところが、交通費というのは非常にばかになりません。配達のガソリン代を一部負担ということだと、十カ所でも二百円だし五カ所でも二百円だしとか、そういうふうにかなりきめ細かにやればやるほどお金がかかりますというようなこともあるのです。こういうボランティアの活動を何とか伸ばしていくような、そういうことをぜひ国としても考えるべきではないかというふうに思います。  きょうは厚生省においでをいただいているので、政府としてこういう在宅福祉の一環として行われる食事サービス、これについてどのような対応あるいは検討をされようとしているのか、伺いたいと思います。
  197. 辻哲夫

    ○辻説明員 今お尋ねの高齢化に対応した給食サービスについてのあり方の厚生省の考え方を申し上げます。  これからひとり暮らしのお年寄りあるいは夫婦だけのお年寄りの世帯、大変ふえてまいりますので、給食サービスというものは非常に大事になってくるだろう。現時点におきましては、毎日の給食サービスというよりも、在宅でいらっしゃる方というのはお食事そのものを毎日基本的にまず食べられるという状態を前提にしていますので、むしろ週に何回かといったように、様子を見に行くあるいは心と心の触れ合いで安否を確認するといったような形での給食サービス一般でございます。そういう状況認識でございますが、これからは公的サービスとしても給食サービスというものを考えていかなくてはいけないだろうということで、デイサービスセンターというものを地域の拠点として、市町村の事業として整備していく中で、今の時点ではまだ来ていただいて食べていただくということが多うございますが、今後は訪問サービスというものを整備してまいりたいと思っております。  ただ、今申しましたような心と心の触れ合いといいますか、地域でのことからボランティアによる活動というものも極めて重要であるということで、こちらの方もその性格上大いに伸ばしていかなくてはいけないということで、国といたしましては、福祉ボランティアの町づくり事業、俗称ボラントピア事業と言っておりますけれども、このような形態で国の補助を入れまして、市町村の社会福祉協議会を指定いたしまして、障害者や高齢者のためのボランティア活動を促進いたしております。  そのときの助成のあり方としましては、さまざまな基盤整備費に補助いたしますが、ボランティアの自発性というような観点から、個々の活動費補助までは国の補助としては現時点では出てない。ただ、これから給食サービスが大変重要になりますので、そのときにもポイントはデリバリーといいますか配食体制でございますので、公的なサービスとボランタリーな取り組みとの関係をどう見るのか、あるいは財源といたしましても、そのような性格上自主的な地域の助け合いというものとの関係をどうするのか、そのようなことも踏まえまして、しかしながらこれからは重要な問題でございますので、各地のさまざまな取り組みを勉強させていただきまして、今後このようなことにつきまして検討を進めさせていただきたいと思っております。
  198. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 長官最後にお伺いしたいのですが、行政として必要な福祉サービスを行う、これは当然のことです。国だとか地方自治体がやるべきことはちゃんとやるべきだと思います。  同時に、きめ細かい福祉サービスに積極的に取り組んでいこうというボランティア活動、これも私は重要だと思います。そのボランティア活動が本当にその方々の自主性とか自立性とか積極性とか、そういうものを伸ばしながら発展させていくような国のきちっとした対応というのが今は求められていると思うのですね。その点について御意見を伺いたいと思います。
  199. 高原須美子

    高原国務大臣 私ごとでございますけれども、私は母が十五年間寝たっきりで亡くなったものですから、高齢者の福祉というものについては人以上に関心を持っていると思います。お年寄りは、住みなれた地域でサービス提供を受けることが一番望ましいと思います。しかし一方で家族の負担というのもございますので、この軽減を図っていくということもまた、特に女性の立場からは必要になってくると思います。  そういうことで、おっしゃるように地域のボランティア活動ということは、こうした地域に密着した在宅サービスの担い手として重要になってくると思っております。したがいまして、こうした観点に立ちまして、今厚生省から御説明もありましたように、福祉ボランティア活動の普及とかボランティアリーダーの養成など、いろいろな施策が行われておりますけれども、経済企画庁といたしましても、私も長寿社会対策閣僚会議の一員でございますので、今おっしゃったようなことを十分生かせるように施策に反映していきたいと思っております。
  200. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 終わります。
  201. 新村勝雄

    新村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時五十二分散会