運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1989-11-28 第116回国会 衆議院 内閣委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年十一月二十八日(火曜日)     午前十時二十分開議  出席委員    委員長 吹田  愰君    理事 榎本 和平君 理事 斉藤斗志二君    理事 宮里 松正君 理事 田口 健二君    理事 竹内 勝彦君 理事 塚田 延充君       天野 公義君    大村 襄治君       玉生 孝久君    古屋  亨君       堀之内久男君    森下 元晴君       上原 康助君    角屋堅次郎君       関山 信之君    広瀬 秀吉君       井上 和久君    柴田 睦夫君  出席国務大臣        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  松本 十郎君  出席政府委員         防衛庁参事官  小野寺龍二君         防衛庁参事官  玉木  武君         防衛庁参事官  村田 直昭君         防衛庁参事官  鈴木 輝雄君         防衛庁長官官房         長       児玉 良雄君         防衛庁防衛局長 日吉  章君         防衛庁教育訓練         局長      米山 市郎君         防衛庁人事局長 畠山  蕃君         防衛庁経理局長 藤井 一夫君         防衛庁装備局長 植松  敏君         防衛施設庁長官 松本 宗和君         防衛施設庁総務         部長      吉住 愼吾君         防衛施設庁施設         部長      大原 重信君         防衛施設庁建設         部長      黒目 元雄君         防衛施設庁労務         部長      竹下  昭君         外務省北米局長 有馬 龍夫君         海上保安庁次長 野尻  豊君  委員外出席者         警察庁長官官房         審議官     鈴木 邦芳君         法務省刑事局刑         事課長     松尾 邦弘君         外務大臣官房審         議官      荒  義尚君         外務大臣官房審         議官      時野谷 敦君         外務省国際連合         局軍縮課長   神余 隆博君         水産庁振興部沿         岸課長     木下 寛之君         運輸省港湾局計         画課長     堀井 修身君         高等海難審判庁         海難審判書記官 平石 英世君         内閣委員会調査         室長      林  昌茂君     ───────────── 委員の異動 十一月二十二日  辞任         補欠選任   多賀谷真稔君     田邊  誠君 同日  辞任         補欠選任   田邊  誠君     多賀谷真稔君 同月二十七日  辞任         補欠選任   多賀谷真稔君     河野  正君 同日  辞任         補欠選任   河野  正君     多賀谷真稔君 同月二十八日  辞任         補欠選任   大出  俊君     関山 信之君   多賀谷真稔君     上原 康助君 同日  辞任         補欠選任   上原 康助君     多賀谷真稔君   関山 信之君     大出  俊君     ───────────── 十一月二十一日  人事院勧告早期完全実施に関する請願(石橋大吉君紹介)(第四九八号) は本委員会に付託された。     ───────────── 十一月二十四日  人事院勧告完全実施に関する陳情書外十八件(第一号)  青少年の健全育成に関する陳情書外三件(第二号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出、第百十四回国会閣法第一三号)      ────◇─────
  2. 吹田愰

    吹田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出、第百十四回国会閣法第一三号、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案議題といたします。  この際、お諮りいたします。  ただいま議題といたしました本案につきましては、第百十四回国会において既に提案理由説明を聴取いたしておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 吹田愰

    吹田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  4. 吹田愰

    吹田委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。斉藤斗志二君。
  5. 斉藤斗志二

    斉藤(斗)委員 私は、現在議題となっております防衛庁設置法及び自衛隊法の一部改正に関する法案につきまして若干の質問をさせていただきたいと思います。  現在、内閣が提案されておられる防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案は、自衛官定数を五百五十九人、予備自衛官員数を一千五百人それぞれ増加するものを内容とするもので、平成年度予算に関連するものであると理解をいたしております。自衛官定数の増は、既に契約された護衛艦等及び海上自衛隊航空自衛隊航空機等、過去の年度予算によって調達された新規装備品平成元年度において配備されることなどに伴うものであるわけであります。また、予備自衛官員数の増は、有事の際の後方支援体制整備するために逐年整備を行ってきているものの一環であると聞いております。  これらは、いずれも中期防衛力整備計画の四年度目に当たる平成年度業務計画実施するために必要なものであると理解をいたしております。自衛隊任務遂行に必要な自衛官を確保することは、我が国防衛のために必要不可欠なことであります。ここに改めて本法律案概要とその改正理由について御説明いただきたいと思います。
  6. 児玉良雄

    児玉政府委員 今御審議をお願いしております防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案概要改正理由は、今先生が言われましたとおりでございますけれども、概要を御説明申し上げます。  まず初めに、防衛庁設置法改正でありますが、これは自衛官定数を五百五十九人増加することを内容とするものであります。この定数の増は、既に調達をしております海上自衛隊艦艇海上自衛隊航空自衛隊航空機の就役に伴うもの、それと統合幕僚会議におきます通信電子業務の充実を図るためのものであります。  これらの定員増につきましては、いずれも業務省力化合理化等に努め、その上で必要な最小限要員を確保しようとするものであります。  次に、自衛隊法改正でありますが、予備自衛官員数を千五百人増加することを内容とするものであります。  予備自衛官は、防衛出動下令時におきまして自衛隊の実力を急速かつ計画的に確保することを目的として逐年整備してきているところであります。今回の員数増もこうした考え方に基くものでありまして、後方警備であるとか支援船の乗り組みであるとか基地防空のために必要な要員に充当するためのものを計画したものでございます。  以上、概要改正理由でございます。
  7. 斉藤斗志二

    斉藤(斗)委員 次に、国際情勢でございますが、私も先般激動する東欧諸国を訪問し視察をいたしてまいりました。御承知のとおり、最近、東欧諸国におきましては、ハンガリー、東独、ブルガリアにおける指導者の交代、さらにポーランドの非共産党主導内閣の成立、いわゆるベルリンの壁の崩壊など、政治的多元化さらに民主化動きが急速に進展をいたしております。このような動きは、我が国にとりましても歓迎すべきものではありますが、一方で、これまでの東西の対峙により安定していた欧州情勢を不安定かつ流動的なものにすると考えられるわけでもあります。  片や極東に目を向けますと、欧州NATOWPOのような集団安全保障体制は構築されておりませんし、また、東西両陣営のいずれにも属さない中国や強大な極東ソ連軍の存在ということもありまして、当面、我が国安全保障に直接影響を及ぼすような大変化が生ずるとは予想しづらいようにも考えております。  防衛庁並び外務省にもお聞き申し上げたいわけでありますが、現在のヨーロッパにおける冷戦の終えんとも言われるような大きな変化をどのように認識していらっしゃるのでしょうか。
  8. 松本十郎

    松本国務大臣 最近の東欧の各国における民主化あるいは開放その他の動きにつきましては、委員指摘のようにまさに激動といいましょうか、劇的な変貌を遂げつつありまして、その象徴的なものがベルリンの壁の撤廃ということだと思うのでありますが、これからそういうものを受けてどのように国際情勢、とりわけ欧州情勢が移っていくのか、なかなか予断を許さないものがある。委員指摘のとおり、まだまだ不安定なものもございますし、そういう中で、これまでは自由主義共産主義あるいは自由経済社会主義経済というふうなイデオロギーなり経済の理念の対立等もあり、そういう中で、米ソ中心とした軍事力というものを頂点に一つ冷戦構造があったわけでございます。これがNATOWPOに象徴されておったわけでありますが、大きく変わろうとしていることは事実でございます。しかしながら、ヨーロッパ情勢そのものについても、一直線に安定の方向に向かうのか、冷戦構造がどういう形で変わっていくのか、にわかに予断を許さないものもあるわけでありますし、とりわけ極東におきましては、委員指摘のとおり、半島あり島嶼あり、地形的にも地政学的にもなかなか複雑な要素を蔵している上に、いわゆる日本アメリカ安全保障あるいはアメリカと韓国との間の体制、そういった二国間の複雑な積み重ねといいましょうか、入り組んだ中での安全保障体制があるわけでございますので、一概に、ヨーロッパがどんどん軍備管理軍縮方向に進むからといって極東においても同じような方向に今すぐ行くというふうなことは考えられないわけでございますし、そういうことを考え合わせますと、今後の国際情勢の推移というものを慎重に見きわめながら、しかも十二月二日、三日にはマルタ島の近くの艦上において米ソ首脳会談が行われるわけでございますが、そういった会談でどういう方向が打ち出されるのかというものも見きわめつつ、しかも極東特殊事情というものも考えて我々は対処せざるを得ない、こういうふうに考えております。
  9. 斉藤斗志二

    斉藤(斗)委員 今長官から御答弁いただいたわけでありますが、大変な激動であります。私は、歴代防衛庁長官日米安保体制の中での訪米というのは、どちらかというと頻繁に行われているというふうに思っておりますが、早速この大きな激動東欧に飛びまして御視察され、そして日本安全保障に資するようなお考えはございませんでしょうか。
  10. 松本十郎

    松本国務大臣 委員指摘のとおり、このような情勢の中にありましては、日米安保体制の維持、発展ということは喫緊の課題であります。また、そういう意味では、一度訪米してチェィニー国防長官といろいろひざを突き合わせて懇談もしたいと考えておりますが、国会情勢あるいは先方の日程等もございましてまだ実現をしておりません。近いうちに、機会を見てそういうことで大きく動く国際情勢なりそれに対応する軍事的な問題等についても話し合いをしたいという願いは持っております。
  11. 斉藤斗志二

    斉藤(斗)委員 それでは、次の質問に移りたいと思います。  最近、ソ連は、ゴルバチョフ書記長北京における極東ソ連軍の一方的戦力削減発表等平和攻勢をかけております。一見すると、これは大いに歓迎すべきものであるように見えます。しかしながら、冷徹に見てみると、極東ソ連軍は依然として近代化を継続しておりますし、さらに、強大な軍事力を保有するソ連は、我が国に対する潜在的脅威を形成していると私は認識しているところであります。  私、先般東欧視察いたしました。東ドイツではソ連軍駐留軍として十九個師団、約三十八万人も駐留しているという現実に触れました。ちなみに東ドイツ軍事力、総兵力十七万二千人という数字、そしてさらに、国防予算が約百二十七億五千万ドル、これはミリタリー・バランスからとったわけでありまして、幅が広くてその基準によって違うのでありますが、日本GNP比に比べますとかなり高いものになっている。同様にポーランドにおきましても、軍事予算というのは私ども日本では常識では考えられないほど高いものになっているわけであります。  そこでお伺いしたいと思いますが、ゴルバチョフ書記長極東における兵力削減提案は現在実施されているのでしょうか。また、防衛庁は、極東ソ連軍近代化増強状況をどのように把握していらっしゃるのでしょうか。
  12. 小野寺龍二

    小野寺政府委員 委員指摘のとおり、ゴルバチョフ書記長は、本年五月、北京において、極東方面から兵力十二万人、陸上師団で十二個師団航空連隊十一個、艦艇十六隻の一方的戦力削減及びモンゴルに駐留いたしますソ連軍四個師団のうち三個師団撤退を発表いたしております。その一部については既に実施に移されている模様でございます。例えば、モンゴルについては、その三個師団撤退すると発表しております兵力のうちの一個師団は少なくとももう撤退したと言われておりますし、航空師団についても同様でございます。  このように、ゴルバチョフ書記長がその五十万人兵力削減の中でアジアについても一部の兵力削減意思表示をいたしていること自身、これは我々としても一応評価すべきものと考えております。ただ、その内容については非常にあいまいかつ不明な点が多くございまして、これはヨーロッパ部における兵力削減撤退等に比べましても、アジア部については総じて漠然としているという問題がございます。  それから、いずれにいたしましても、現在発表いたしております量的な削減程度では、ソ連は依然として極東において非常に膨大な軍事力を有するということには全く変わりはございません。かつ、委員指摘のとおり、質的な強化が継続いたしておりまして、量的な削減がその質的な強化によって相殺されるという事態もあり得るわけでございます。そういった観点から、防衛庁といたしましても、実施状況、全体のソ連軍事力について今後冷静かつ慎重に見きわめる必要があるかと存じております。  ソ連軍近代化状況につきましては、ソ連は一九六〇年代中期以降、極東地域において一貫して質、量、両面にわたる軍事力増強を行ってきたわけでございまして、現在極東ソ連軍は、全ソ連軍の三分の一ないし四分の一程度戦力極東配備しているわけでございます。ゴルバチョフの政権が成立いたした後におきましても、例えば、海軍においては海洋発射巡航ミサイルを搭載した新しい潜水艦、やはりミサイルを搭載した新しい駆逐艦、それからごく最近におきましては原子力実験艦の非常に大きなものを極東に回航しているという実態がございます。航空機についても、第四世代戦闘機追加配備というようなことが行われておりまして、特に、海空中心とした装備質的強化というものが非常に目立っております。そういったことから、全般的に戦力の再編成、合理化近代化が行われているというふうに我々は見ております。  それから、配備地域につきましても、極東の中でも我が国に比較的近い北方領土、沿海地域、樺太、オホーツク海、カムチャッカ半島等に重点的な配備展開が行われているのが特徴でございます。ソ連軍の地上、航空戦力全体のうち、師団では約六割、それから戦闘機につきましてもやはり六割、ただ新しい第四世代戦闘機になりますと八割ぐらいがこの地域配備されております。爆撃機につきましてもほぼ八割がこの地域配備されていると見られております。それから、艦隊につきましてはウラジオストクが主要拠点となりまして、そこに新しい艦船が配備されてきておるわけでございます。  こういう新しい配備に伴う艦艇軍用機の行動も非常に活発でございまして、そういった意味では、委員指摘のとおり、潜在的な脅威という観点から変化はないというふうに見ざるを得ないと見ております。
  13. 斉藤斗志二

    斉藤(斗)委員 これは戦略上の考え方になるかなと思いますが、アメリカブッシュ大統領もたしか発言されていると記憶いたしておりますが、国防に関する基本的な考え方として、一方的な削減はしないとアメリカの方も考えているというふうに全体の中で述べておると聞いております。戦略上の一方的削減ということにつきまして、これはすべきでないというのが常識だというふうに思いますが、この軍備の一方的削減についての基本的な考えをお伺いしたいと思います。
  14. 小野寺龍二

    小野寺政府委員 一方的削減というのは、今ゴルバチョフのイニシアチブによる一方的削減が非常に注目されておりますけれども、ほかの国におきましても一方的削減というのは実際には行われる場合がございます。アメリカにつきましても、最近国防予算が伸び悩んでいるというか実質的にはマイナス成長をいたしております。その過程におきまして、例えばアメリカ目標としておりました六百隻艦隊というものが実施できず、昨年度においては駆逐艦早期に退役させるというようなことも行われております。それから、航空師団等削減されているわけです。これはある意味では一方的な削減でございます。  ただ、東西のコンテクストで見ますと、一方的削減というのは検証ができない、実際にどれだけ削減されたか、その削減されたものが戦力に及ぼす本当の効果というものが非常にはかりにくいということで、そういう観点からは、アメリカなんかは、特にソ連との関係において、お互いの交渉によって削減し、その削減されたものを検証するということがより重要であるという立場をとっております。それが恐らく正しい考え方ではないかと私も存じております。
  15. 斉藤斗志二

    斉藤(斗)委員 これまでいろいろ申し上げましたように、国際情勢は大きく動いておりまして、どのような方向に行くかもいまだわからない現在、我が国安全保障政策というのはどのように進めていけばよいかというのは重大な問題であるわけです。実は先ほど激動する東欧関係で御質問申し上げたのでありますが、外務省からまだ御意見を賜っていないことでもありますので、その辺、外務省の御意見をお願いいたします。
  16. 荒義尚

    荒説明員 お答え申し上げます。  先ほど防衛庁長官からのお話もありましたとおりでございまして、基本的な認識は全く同じでございます。  委員指摘のとおり、現在東欧諸国で進めている改革というのは、自由及び民主主義並びに市場経済体制を目指しました極めて抜本的な動きであるというふうに認識しておるわけでございます。特に、最近では、御承知のように、東ドイツチェコスロバキアといった従来保守派と目されていた国にもこのような改革の波が押し寄せまして、国内の民主化圧力が増大し、東ドイツにおきましては東西ドイツ間の自由通行を認めるといったような大きな前進があるわけでございますが、我が国としてはこのような動きを歓迎するというのが一つ立場でございます。  それで、東西欧州情勢というのは、こういうわけでいわば激動の時代を迎えておるというふうでございまして、戦後の世界を特徴づけてまいりました対立構造、そこから新しい関係を模索しているという段階に至っているというふうに認識しておるわけでございます。  先生からお話がありましたように、このような変化が例えば北大西洋条約機構及びワルシャワ条約機構に今後いかなる影響を与えていくかといった問題につきましては、今後の情勢を慎重に見きわめていく必要があるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  17. 斉藤斗志二

    斉藤(斗)委員 それでは外務省の方、ありがとうございました。結構です。  最近の風潮を見ますと、一部には現在の情勢デタントと称し、我が国防衛力もその流れに合わせて減らすべきであるとか、防衛力整備はもはや必要ではないといった議論がございますが、私は、防衛力整備というのは一朝一夕にして成るものではなく、先ほどおっしゃいましたような考え方によって進められている以上、現在の情勢下にあってもあくまでも継続的かつ計画的に行っていくべきものと考えています。政府は、現在いわゆる次期防の策定作業を行っておられると承知しておりますが、作業進行状況や具体的な検討事項についてお伺いしたい。
  18. 松本十郎

    松本国務大臣 デタントあるいは緊張緩和というムードは出ておりますが、しかしながら、極東における情勢、とりわけ軍事情勢につきましては、先ほどお答え申し上げたとおりでございまして、そういう前提に立っていきますと、我々としましてはやはり着実な防衛力整備はやらなければならない。しかも、戦後四十数年間平和が保たれましたゆえんのものは、米ソ中心とした核の抑止力が働き、その結果平和が保たれたということでございますので、そのような大きな枠組みというものは、とりわけ極東においてはしばらく間は大きく変わるものではなかろう、そういう前提に立ちまして、今、平成年度以降の防衛計画というものをどうすべきか、いろいろ考えておるわけでございまして、委員指摘のとおり、そういう情勢ムードはありましょうとも、我々としましてはやはり現実に即して着実に防衛力整備しながら進めてまいりたい。抑止による平和の確保ということは変わらない、そういうふうな方向でやっておるわけでございまして、安全保障会議の決定を受けまして防衛庁内部ではまだ検討作業を続けておる段階でございます。
  19. 斉藤斗志二

    斉藤(斗)委員 デタントに関しては、長期の世界平和ということを考えたときは一つ考え方であると思いますけれども、足元をすくわれないように、ぜひしっかり防衛策を講じていただきたいというふうに思います。  次に、隊員募集についてお伺いいたします。  現在、自衛官募集は大変厳しい状況にあるというふうにお聞きしておりますが、その募集難理由をどう考え、また、どのような対策をおとりになっておるか、よろしくお願いいたします。
  20. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 委員指摘のとおり、現在、自衛官募集状況は大変厳しい状況でございます。例えば平成元年度におきます二士男子、これは一般の自衛官の中の大宗を占めるものでございますけれども、その募集状況について申し上げますと、上半期の実績でその目標の約九割程度を確保したにとどまっておりまして、特に最近非常に厳しい状況にあるという認識でございます。  こうした状況はどこから来ているのかという御質問でございますけれども、年度当初からの求人倍率の急激な上昇あるいはまた企業におきます新規学卒者への意欲的な採用計画といったようなものから、労働需給が著しく逼迫しておるということで、民間との競合による部分が大きいというふうに認識いたしております。
  21. 斉藤斗志二

    斉藤(斗)委員 実は先般、内閣委員長吹田先生の御配慮によりまして、私ども、陸上自衛隊市ケ谷駐屯地並びに海上自衛隊横須賀基地を訪問し、視察させていただいたわけでございます。委員長にはこのような立派なアルバムまでおつくりいただいて、大変感謝申し上げておるわけでありますけれども、与野党とも視察に参りまして、自衛官待遇改善等々実際に見てまいったわけでございます。いろいろな感想を抱かれたと思いますが、これは狭いとか、随分古いものを使っているんだねとか、いや、これで隊員にプライバシーはあるのか、こういったことが異口同音に先生方の間から出たわけでありますけれども、若い隊員の多様化しているニーズがなかなか満たされない、また、士気や隊員募集にも悪影響を与えているのではないかと大変憂えているわけでございます。防衛予算の中でも、宿舎などの後方関連に重ぎを置いているようでもありますが、宿舎の充足がいまだ十分とは言えないと聞いております。この宿舎整備状況及び今後の改善施策についてお伺いしたいと思います。
  22. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 宿舎につきましての御質問でございますけれども、これまでも逐年改善努力をいたしてきたところでございますが、それでもなお現在八九%程度の充足率ということでございまして、御指摘のとおりでございます。これではいけないということでございまして、平成年度の概算要求におきましてもこの点に最も力を入れているところでございます。宿舎の充足率の低い地区の充足向上あるいは老朽木造宿舎を解消するといったような点に重点を置きまして整備を図りまして、この中期防におきます五ヵ年間の計画の予定でございます九〇%までの充足を概算要求がそのまま認められますと果たせるというような状況でございます。  なお、平成年度以降におきましても、宿舎等の後方施設につきまして最も重点を置いて整備してまいりたいと考えておるところでございます。
  23. 斉藤斗志二

    斉藤(斗)委員 私の選挙区にも四つの駐屯地並びに学校がございます。富士学校、駒門、板妻、それから滝ヶ原。そして隊員の皆さんも大変御苦労されている中、日本国防に努力されておるわけでございます。そういった隊員に勇気を与えるように、また励みになるように、そしてやる気を起こさせるような後方関連への対応をよろしくお願い申し上げます。  そこで、この夏ですか、防衛庁長官にはわざわざ富士山ろくにお越しいただきまして、大変な雨の中を総合火力演習というのを御視察いただいたわけでございます。長官にも激励のごあいさつをいただいて大変喜んでおったわけでございますが、総合火力演習についての御感想があれば、長官からお伺いしたいと思います。
  24. 松本十郎

    松本国務大臣 斉藤先生初め多数の国会議員の先生方の御臨席をいただいたあの火力大演習、大変な暴風雨の中でございましたが、士気旺盛、しかも練度の高い演習を実施できたわけでございまして、さらに今後も練度の向上のために隊員の士気を鼓舞しながら進めてまいりたいと思っております。  ただ、だんだんと兵器が発達してまいりますと、射撃距離が長くなるという火器がふえるわけでございまして、あれほど大きな東富士演習場にしましても、今のような日進月歩の軍事技術のもとではまだまだ狭くなるというのが実情でございます。そういう意味では、広い演習場が必要なのだなということをしみじみ感じた点もつけ加えて報告しておきます。
  25. 斉藤斗志二

    斉藤(斗)委員 私も選挙区内ですからよく訪問させていただくのでありますけれども、記念式典がある、そしてその中でパレードが行われるわけでございます。記憶が定かではないのでありますが、昨年のことだと思います。パレードのさなか、戦車が実は動かなくなってしまったわけでございます。大変な観衆が見守る中、立派な行進を続ける中で戦車がえんこしてしまったというようなことで、私は一体どうしたことかなと疑問に思いましていろいろ聞きましたところ、何か大変古い戦車を、言葉が悪いのでありますが、だましだまし使ってきてそのような事態になったという説明を受けました。そのような事態はやはり好ましくない、そういった装備も新しくしていく必要があるということをお願い申し上げておきます。  私の時間がなくなりましたので、先般東欧視察旅行した際の感想を申し上げまして、質問を終わりたいというふうに思います。  東西ベルリンを拝見させていただきました。四十年余にわたる分割、そしてあのベルリンの壁は二十八年続いたわけであります。東ドイツの方々は、今回旅行の自由を与えられまして大変喜んでおられました。逆に言えば、旅行の自由さえもなかったのかなという素朴な疑問もあるわけであります。歴史の運命の中で、第二次世界大戦の終戦ということで東西両ドイツは同じスタートを切った。そして構成員は同じ民族。同条件で用意ドンのスタートを切った。平和と繁栄を求めた両国の今日の結果を見ますと、ゴールに大きな差が生じたわけでございます。それはなぜか。コースの選び方が違ったからであります。自由主義陣営のコースと社会主義陣営のコースと、それぞれ違ったコースを歩んだ結果が現在の激動だと理解をいたしても妥当だというふうに思っています。  そこで、今日の繁栄、そして世界のリーダーの役割をしております自由主義陣営の繁栄がこれからも続くように、ぜひ防衛庁の皆さんには確固たる防衛力整備していただき、そしてさらに隊員の士気を高揚させる施策を講じていただいて、このかけがえのない自由主義陣営をお守りいただきたいというふうに思います。  以上、終わります。
  26. 吹田愰

    吹田委員長 次に、関山信之君。
  27. 関山信之

    関山委員 私は、ただいま提案をされております防衛庁設置法並びに自衛隊法の一部改正に関連をいたしまして、昨年の七月二十三日に発生をいたしました海上自衛隊「なだしお」と第一富士丸の衝突事故にかかわる問題について御質問を申し上げたいと存じます。  冒頭、私のこの事件に対する基本的な認識と申しましょうか考え方を申し上げて、大臣のお考えを伺いたいと思うのです。  今回の事故は、御承知のとおり、そもそも海難事故としてはそう難しい、複雑な問題であったというふうには私は考えていないわけであります。もとより、東京湾における船舶のふくそう状態というのはつとに指摘をされておりまして、事故が発生をいたしました浦賀水道では、一日に七百隻もの艦船が航行をする。そこを横切り横須賀港に入港する船舶との関係について、重大事故の発生については過去にも事故がありましたし、いずれ大変な事態が発生をするということについては各方面からのいろいろな指摘があったわけで、そういう意味では極めて重要なテーマではございますけれども、衝突ということに関して言えば、海上交通における動力船二隻の衝突事故ということなんでありますけれども、今回はそれにとどまらず、それ以上に自衛隊というものにかかわるさまざまな社会的関心を呼び、社会的な問題の提起がなされて今日に至っていると思うのです。  何分にも事故発生によって三十名からの方が亡くなっているということ自体極めて重要でありますし、しかも、昨年の事件発生当時のことを思い起こしていただけば十分御承知のとおり、全体として自衛隊の救助体制におくれがあったのではないかということが指摘をされました。加えて潜水艦という特殊な艦船の持つ海上航行上における船舶の設備から、あるいは隊員のさまざまな資質の問題から、あるいは自衛隊の艦船の運航のルール等にわたって極めて不十分な体制指摘をされるところとなったわけでございます。加えて、今回この問題をめぐって当時の事故の記録に自衛隊側による改ざんが行われていたということになってきているわけです。  私は、そもそも一般的に自衛隊と市民との間に日常的、常識的な信頼関係の保持というものは極めて大事なことだろうと思っておりますし、それは絶えず自衛隊のサイドからさまざまな努力や対応があってしかるべきだろう。そのことは市民の側からの要求であると同時に、自衛隊そのものにとっても極めて大事なことなんじゃないか。もちろん自衛隊というものが本来守るべきものは何かということをめぐってはさまざまな御議論があるのでしょう。国民の生命、財産なのか、国家体制そのものなのかというふうなことについて、私は今議論をしようとは思いませんけれども、いずれにいたしましても、自衛隊がその本質的な役割に国民の生命、財産というものを守るということを基本に置いているんだという常識認識の中において、その信頼関係が崩れたということに今回の「なだしお」の事故の問題の極めて重大な特質があるのじゃないか。  私は以下そういう観点に立って御質問を申し上げることになるのでありますけれども、大臣はこの辺の基本的なスタンスについていかがでしょうか。まず伺っておきたいと思います。
  28. 松本十郎

    松本国務大臣 昨年の「なだしお」の衝突事故、安全を常に考え、事故防止に努めてきました海上自衛隊といたしましては、防衛庁といたしましてもまことに遺憾至極に考えております。そして、委員指摘のとおり、自衛隊は国民の皆様の御理解と御支持、そして信頼関係があって初めて機能が果たせるわけでございまして、それについては常日ごろからできるだけの努力は払っているわけでございまして、その点は御理解を願いたいと思うわけでございます。今後もさらに安全に留意しながら、先般の事故の原因を究明し、二度とこういうことが起きないような施策を講じようとしているのが現在の防衛庁自衛隊立場でございます。
  29. 関山信之

    関山委員 そこで、まず、今回の航泊日誌ほかの問題をめぐっての出来事について事実関係をお尋ねをしたいと思うのですね。  実は私、交通安全対策特別委員会に所属をいたしておりまして、先ごろ当該委員会でも問題になりまして、この種問題を議論するに当たっては、まず事実をしっかりととらえた上で議論をすべきだろう、したがって、きちんとした資料を出してほしい、こういうことを申し上げたのですけれども、その時点ではなかなか困難だということでございました。実は私、大変残念なことではありますけれども、この問題をめぐっての私どもの知識というのは専ら新聞報道しかございません。私の手元に十九枚の新聞のコピーがございますけれども、今はこのコピーを頼りにして事実関係一つ一つ確かめていくほかはないということでございます。  そこで、以下お尋ねを申し上げてまいります。  まず最初に、この航泊日誌改ざんの事実を防衛庁としてはいつ承知をなされたのか。新聞報道等はさまざまな書き方をしておるのですけれども、今回一連の問題の全体像がおぼろげながら明らかになってきているわけです。まず最初に、いつこの事実を御承知になったのか、そして、今回この事実が明白になったことについてはいかなる認識をお持ちか、お伺いをいたします。
  30. 米山市郎

    ○米山政府委員 航泊日誌の問題でございますが、この書きかえをしたという事実につきましては、事故後早い時期に防衛庁といたしましてもその事実に気がつきまして、関係者に事情を聞く等の措置をいたしているわけでございます。  この事実につきましては、当時の錯綜した状況の中で鉛筆書きをしてあったものを事後に整理、清書して航泊日誌が作成をされたということでございまして、その際山下艦長が、時刻については速力通信受信簿の方がより正しいであろうという判断に立って、衝突事故についてもこれを整理させたものであるということでございます。事故後、私どもも書きかえの事実につきましてただしましたところ、こういう話でございまして、結論的に改ざんといったようなものではないという判断をいたしたわけでございます。
  31. 関山信之

    関山委員 早い時期にというのは、昨年の七月三十一日ということでしょうか。
  32. 米山市郎

    ○米山政府委員 事故発生後約一週間後というふうに承知をいたしております。
  33. 関山信之

    関山委員 西廣次官の会見では、七月三十一日という日取りが具体的な日取りとして新聞記事に報道されておりますが、それでよろしゅうございますか。
  34. 米山市郎

    ○米山政府委員 私、その当時その衝に当たっておりませんでしたが、次官の会見ではそのように申しておりました。
  35. 関山信之

    関山委員 私は、本問題については改ざんという言葉を使わせていただきますけれども、航泊日誌の改ざんが明白になった端緒として、先ほども申し上げましたが、内部文書の存在というものが伝えられているわけですけれども、それは一体どのようなものなのでしょうか。私は、申し上げましたように資料として提出を求めたわけでございますけれども、交通特の段階では、いまだこの問題については所在そのものが確かめられていないというお話でございました。その後、時間の経過もございますし、改めてお尋ねをしたいと思うのです。あわせて、この内容が新聞紙上で明らかにされた経緯等につきましても、その後調査によって明らかにされているようでしたら、その経緯も御説明をいただきたい。
  36. 米山市郎

    ○米山政府委員 内部文書というものを私もじかに見ているわけではございません。新聞報道等では内部文書という言葉が使われておりますけれども、それ自体を見たわけではございません。どういうものが報道されている内部文書であるかということについていろいろ調査をいたしておりますが、現段階、少なくとも公式な文書としてはそのようなものは見当たらないということでございます。
  37. 関山信之

    関山委員 非公式な文書としては特定されたのですか。
  38. 米山市郎

    ○米山政府委員 事故後、事故原因究明のために関係者からいろいろな形で事情聴取をした私的なメモといったようなものもたくさんございますが、具体的にどの文書が報道されている内部文書であるかということについては、特定はされておりません。
  39. 関山信之

    関山委員 特定できないというのは私、やはり常識的に納得ができないのです。それと申しますのも、昨年九月八日に私は事件発生後、交通安全対策特別委員会でこの問題について質問をいたしております。当時の新聞をお読みになっていただけばわかるのですが、その当時からそういう問題の指摘があったわけですね。しかも、そういうことでありますから、当然内部では事実調査が行われていたわけでありましょうし、西廣さんの会見でもその関係は七月三十一日という早い時期に認識をしておるわけですから、当然のことながら明らかにされていったと思うのですよ。しかし、そういう御答弁から前へ進めないのであれば、私は朝日新聞の記事に即して事実関係を幾つか確かめてみなければなりません。以下申し上げますので、一つ一つについてお答えをいただきたいと思うのです。  十一月十五日付の新聞では、「即座に「海上保安庁の捜査官が来るまでに整理を終わっておけ」と、航泊日誌の改ざんを命じた。」これは山下さんの話ですね。これは事実ですか。
  40. 米山市郎

    ○米山政府委員 朝日新聞の報道等にもいろいろ細かい事実がございますが、事実関係につきましては、現在海難審判の最中でもございます。また、検察当局の取り調べも関係者は受けている段階でございまして、私どもも一々の事実についてつまびらかにいたしていないところもございます。また、こうした席で一々の事実について、その確認について御答弁を申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  41. 関山信之

    関山委員 それはやはり困るのですね。裁判といいましてもこれは行政裁判でございまして、いわゆる一般の裁判とは性格が違うわけですし、私は、冒頭申し上げましたように、皆さん方の方からきちんとした報告なり諸文書による説明が我々になされていればこういうことを一々お聞きするつもりはない。しかし、現実にはこういうものが報道されているわけですから、これが本当なのかうそだったのかということは、申し上げているようないわばこの問題をめぐっての国民の認識を私どもは明らかにする責務があるということでお尋ねをしているわけです。  幾つか申し上げますので、全体としてもう一遍お答えください。  「航泊日誌の改ざんは、乗組員の手によって、士官室で行われた。」それから「消しゴムで消しても跡が残るという理由から、一ページ分をそっくり清書し直し、日誌の張り替えが行われた。その際、山下艦長がメモを渡して、改ざん内容を指示した。」また、「その点について、「『航泊日誌を整理した』といえば、すぐマスコミに大きくたたかれることは必至だと思ったからだ」という山下前艦長の言葉が記述されている。」それから「「速力通信受信簿」の「四十分」が正しいのかで、意見が交わされていた。このやりとりの中で、「三十八分」を主張する部下の一人が、その裏付け資料としてこの海図を持ち出し「潜望鏡で見て『漁船沈没』と言った時、時計を見たら午後三時四十分だった。海図にも、衝突後に測定した艦位を入れた位置に『三十九』と書いてある」」、こういったような事実は、実に臨場感あふれる言葉で書かれておりますから、したがって、こういうことがあったのかなかったのかという事実は、これに即して全体としてどうなのかということをお答えをいただけませんか。
  42. 米山市郎

    ○米山政府委員 先ほど御答弁申し上げましたような理由によりまして、個々の事実に対する確認と申しますか、それに対するコメントにつきましては、大変恐縮ですが差し控えさせていただきたいと思います。
  43. 関山信之

    関山委員 大臣、そういう立場をお変えになりませんか。別に明らかになったからといって――うそならうそでいいのですけれども、否定もなさらないわけですから、そういうところに申し上げたような国民の一般的、常識的な信頼がそのこと一つ一つによって崩れていくのですよね。このことが明らかになったからといって、今急に自衛隊立場が悪くなるなんてことはないと思いますね。むしろ明らかになさる方が今後の対処についても自衛隊立場ははっきりしていいのじゃないか、こう私は思うのですね。  もう一回お尋ねをいたします。この記事について確認をすることはやめましょう。船内会議というのは行われたのか、何時から何時までか、当日現場で書き直しが命じられ、修正が、それでは、ここでは修正と言いましょう、書き直しと申し上げましょう。書き直しが行われたのか、山下艦長は書き直しを指示したのかしていないのか、それから寺下第二潜水隊司令も同乗していたという新聞記事がありますが、その場にいらっしゃったのか、この事件に関与しているのかいないのか、これ、どうですか。
  44. 米山市郎

    ○米山政府委員 航泊日誌と申しますのは一つの薄冊、一カ月単位でそれを作成するようになっているわけでございまして、一日裏表二ページということで、その中へ時刻に応じた出来事を記入をしていくというようなシステムになっております。大変錯綜した状況あるいは訓練中いろいろな出来事があるような場合には、鉛筆書きでとりあえずメモをしておいて、それを後刻整理、修正をするというようなことはよくあることでございます。あくまでもこれは最終的には艦長の責任ということになりますので、艦長を中心に航泊日誌について、速力通信受信簿のデータなりあるいは関係者のいろいろな状況報告、そういったものを聞き合わせながら、艦長の責任のもとでこの当日の航泊日誌が確定をされたということは事実であろうと思っております。  なお、寺下隊司令でございますが、当日ずっと「なだしお」に乗艦をいたしておりましたが、十九時ごろ、七時ごろに退艦をいたしております。
  45. 関山信之

    関山委員 当日現場で書き直しされているわけですね。
  46. 米山市郎

    ○米山政府委員 私が承知をしている限りにおきましては、当日の夜分、現場において、現場といいますか艦内において整理、清書がなされたというふうに承知をいたしております。
  47. 関山信之

    関山委員 この書き直し、私どもの方からいえば改ざんということになるのですが、航泊日誌のほか海図も行われたということがございます。  それからさらには、この航泊日誌は当初衝突時間についての書き直しということでございましたが、沈没時間についても書き直しが行われたというふうになっておりますが、そういうことでよろしゅうございますか。
  48. 米山市郎

    ○米山政府委員 航泊日誌は当直士官が発令所において記載をするように義務づけられているわけでございますが、実態としては、当直士官の指揮を受けまして航海科員が記載をするというような形になっているようでございます。海図につきましても、この発令所におきまして同一人物が海図を記入をするということでございますので、俗な言葉で平仄を合わせるような形で時刻の修正と申しますか、当初の三十八分というのが四十分に変わったことに伴う整理が行われたというふうに認識をいたしております。
  49. 関山信之

    関山委員 ちょっと海上保安庁に伺いますけれども、第一富士丸の船長の事情聴取はいつどこで始めましたか。
  50. 野尻豊

    ○野尻政府委員 突然の御質問でございますので正確なことは記憶しておりませんが、たしか当日当庁の横須賀の保安部で取り調べをしたというように記憶しております。
  51. 関山信之

    関山委員 何時ごろだったですか。
  52. 野尻豊

    ○野尻政府委員 何時かということについても、私今、突然でございますので記憶にありませんが、多分夕方から夜分にかけてだというように記憶しております。
  53. 関山信之

    関山委員 わかりました。  「なだしお」の山下艦長についてはどのような対処をなさいましたか。――いえいえ、保安庁に聞いています。
  54. 野尻豊

    ○野尻政府委員 夜半というように記憶しております。
  55. 関山信之

    関山委員 いや、夜半じゃなくて、いつどこでどうしてくれというお話をなすったのか、そして結果的にいつどこで何時ごろから事情聴取が始まったのですか。
  56. 野尻豊

    ○野尻政府委員 「なだしお」に当庁の取り調べ官を派遣いたしまして、そこで艦長から事情聴取等を行っております。
  57. 関山信之

    関山委員 この程度のことは通告してなくても事実関係なら記録で持っていらっしゃるだろうと思って聞いているのですけれども、近藤船長の方は午後七時ごろから横須賀海上保安部に出頭して事情聴取を受けていた、「なだしお」の山下前艦長に対しては十一時ごろ現場でと。そこでどういう事情があったかということを聞きたいのですよ。要するに、十一時まで山下艦長の事情聴取の時間がおくれたわけですね。  問題は、先ほどから申し上げておりますように、事故発生の七月二十三日午後三時三十九分、これは理事所の、あるいは審決の確定時間ですけれども、それから七時間の間にいろいろと自衛隊のサイドの、自衛隊からいえば書きかえ、我が方からいえば改ざん、こういうことが行われたということについて不審が持たれているものですから、その間の事情を明らかにするためにお尋ねをしているわけですけれども、時間のずれについてはどういうふうに御説明をいただけるのでしょうか。
  58. 野尻豊

    ○野尻政府委員 衝突後「なだしお」は相手船の第一富士丸の乗客、乗員の救助活動に当たっておりまして、海上におきましては衝突船がまず相手船の救助活動に当たるということがシーマンシップとして当然の行動であります。したがって、当庁といたしましては、当初は「なだしお」艦長などの取り調べにつきましてはそういう観点から差し控えておったわけでございます。
  59. 関山信之

    関山委員 この際改めて、何に、何が、どういうふうに書かれていて、何がどう修正されたのか、ここでひとつきちっと記録にしておきたいと思います。速力通信受信簿、航泊日誌、海図の三つについて、その中身の何がどのように書きかえられたのですか、防衛庁
  60. 米山市郎

    ○米山政府委員 速力通信受信簿につきましては、事故周辺のことだけ申し上げさせていただきますが、十五時三十六分停止、十五時三十七分前進強速、十五時三十八分停止、後進原速、後進いっぱい、そして十五時四十分停止、衝突警報というような記載になっております。  航泊日誌でございますが、十五時三十六分停止、十五時三十七分前進強速、十五時三十八分停止、後進いっぱい、十五時四十分防水部署発動、第一富士丸と衝突、十五時四十一分溺者救助部署発動、十五時四十二分第一富士丸全没というような記載になっております。  それで、もともと鉛筆書きでどういうものがあったか、今残念なことに手元にございません。したがいまして、どういう形で何をどのように書き改めたかということにつきましては私どもも細かくは承知いたしておりませんけれども、少なくとも衝突時刻につきまして、十五時三十八分と鉛筆書きしてあったものを四十分に直したという事実については把握いたしております。
  61. 関山信之

    関山委員 最初に書かれたものは一切残っていないということですか。これは航泊日誌ですよ。
  62. 米山市郎

    ○米山政府委員 航泊日誌の鉛筆書きのものは破棄をされたというふうに聞いております。私ども、この点につきましては大変残念に思っております。少なくとも、事故の一方の当事者がそうした書類を破棄するということは適切を欠いた行為であるというふうに考えておりまして、防衛庁といたしましても、常々、今後そういうことのないように指導をいたしているところでございます。
  63. 関山信之

    関山委員 そうしますと、航泊日誌が書き直されたという事実認定はどこでやっているわけですか。関係者の証言によってわかった、確定をした、こういうことですか。  これはもう一つつけ加えておきますけれども、七月三十一日の時点では既にその種のメモなり書き直される以前の証拠物件といいましょうか、資料はなかったのですか。
  64. 米山市郎

    ○米山政府委員 当初の事故報告が十五時三十八分ごろということで第一報がなされているわけでございますが、航泊日誌の記述が十五時四十分になっているということでおかしいではないかという疑問を防衛庁内局の方でも持ちまして、問題意識を持って関係者の事情聴取をしたというのが実情でございます。もし意図を持って修正をしたということであれば大変なことだということを当時の関係者も考えたようでございまして、そういう観点から実情を聴取したというふうに聞いております。
  65. 関山信之

    関山委員 海図の方は、これは海図そのものの修正がされているわけですね、要するに以前書かれたものが。担当の方で結構ですけれども。
  66. 米山市郎

    ○米山政府委員 海図につきましては、衝突時点の記載はなく、衝突後一分後の位置が記載をされている、それが四十一分という記載になっていると承知をいたしております。
  67. 関山信之

    関山委員 これはいろいろ既に伝えられているところですけれども、航泊日誌等の書き直しは自衛隊の規則に明記されているというふうにまあ聞いてもおるわけですし、先般もそのことは確かめておるのですが、それほどのような規則で、いかなる規定なんでしょうか。いずれにしろ、今の御答弁で原紙は破り捨てられたということが明らかになったわけでありまして、その規則と合わせてこの行為はどういうことになるのですか。
  68. 米山市郎

    ○米山政府委員 「航泊日誌の記載に関する細部事項について(通知)」というものが一つの達として出されております。これに従いまして航泊日誌が記載をされているわけでございます。記載事項の訂正のところを申し上げますが、「記載事項の訂正は、青色又は黒色のペンで行うものとし、字句を削る場合又は字句を改める場合は当該字句を一線で抹消し、訂正印を押す。」という規定はございますが、ただ、今まで申し上げております「なだしお」事故に関します航泊日誌につきましては、航泊日誌の訂正というよりも航泊日誌を作成する過程の問題であるということで、この達そのものには直接かかわってこない。要するに、メモを清書することについての手続については何も規定をされておりませんので、そういう意味でこの達とは直接かかわりがないという判断を私どもはいたしております。
  69. 関山信之

    関山委員 小林訓練課長でしたか、書きかえはごく日常的なことでしょっちゅうやられていることだというような御答弁というか御発言をされているのですが、これは原紙というのはしょっちゅう破り捨てられているのですか、メモをもとにして。
  70. 米山市郎

    ○米山政府委員 原紙がしょっちゅう破られているかどうかについて、ちょっと私も確認はいたしておりませんけれども、航泊日誌の簿冊の裏の方には予備紙ということで十二枚ほどミシン線で切り取れるような形でスペアの紙がついております。これは先ほど申し上げましたように、一日の出来事を二ページに記入をするという建前で一応つくられているわけですが、事項が多い場合にはそれで足りなくなる、あるいは場合によって書きかえるような場合、そのミシン線で切り取って予備紙を使うというようなことは一般的に許されていることだというふうに考えております。
  71. 関山信之

    関山委員 そうですよね。破り捨てることが日常的にやられていたのでは航泊日誌の権威なんかなくなってしまうわけだし、この原紙には通しナンバーが打たれているそうですね。  これも新聞記事ですから、事実関係も含めてお尋ねする以外にないのですけれども、「六月末、横浜地検による山下前艦長の取り調べ後の事情聴取などから知った。航泊日誌の各ページにある通しナンバーが、一枚だけ欠落しているのが決め手になったという。」これはどうですか。
  72. 米山市郎

    ○米山政府委員 「なだしお」事故に係ります航泊日誌がどのような形で連番がページに打たれていたか私は確認をいたしておりませんが、航粕日誌そのものには、原簿冊と申しますか、そのものには一連番号は付されておりません。
  73. 関山信之

    関山委員 そうすると、この記事の記載は誤りだというふうに受け取っておかなければなりませんか。
  74. 米山市郎

    ○米山政府委員 先日、私、航泊日誌を取り寄せて見せていただきましたところ、そのような番号は打ってございませんでした。
  75. 関山信之

    関山委員 航泊日誌というのは具体的に使用している航泊日誌ですか、番号がどういう時点でどういうふうに打たれるかということは私ども存じませんので。これから使おうとする航泊日誌は、最初はナンバーは全く打たれていない。しかし、使っているものについてはナンバーが打たれている。私は通しナンバーぐらい打たれているのは当然だと思うのですが、そういうものはないのですか。いつでも取りかえがきいて、破り捨ててしまえばそれはそれでわからなくなってしまうという、そういう程度の仕掛けのものなんですか。
  76. 米山市郎

    ○米山政府委員 先ほど申し上げましたように、航泊日誌の記載事項というのは一日二ページというような形になっておりまして、あえて番号をつけなくても日を追って書くような形になっておりますので、恐らく番号をつけなくともわかるということだろうと思います。したがいまして、私としてはその一連番号が付されているというものは確認をいたしておりません。
  77. 関山信之

    関山委員 ここで押し問答をしてもしようがないのですが、何のために聞いているかということを十分おわかりの上でそういう御答弁をなさるのだから困るのだけれども、航泊日誌というものを私自身も見ていません。ですから、確定的なことを申し上げるわけにもいかないのですが、通常、鉛筆で書かれているものと書き改められたものは一見してすぐわかるというようなそういう指摘もありますし、また被り捨てられたということ自体は遺憾なことであったという御発言もあるわけですから、そこはそこで事実関係としてお認めになっているのですから、それはそれでいいでしょう。  ところで、先ほど速力通信受信簿というお話がありましたが、海上保安庁、こちらも海の専門家なんですが、私は素人ですけれども、航海の公式記録としてどちらも重要だなんて答弁じゃなくて、航泊日誌と速力通信受信簿なるものはどちらのウエートが重いという御判断をお持ちになるのですか。これは一般的なことを聞いているわけですから、今回の事件にどうのこうのと言っているわけじゃないのですよね。
  78. 野尻豊

    ○野尻政府委員 私ども捜査当局の立場から申し上げますと、今回の事件につきまして、今問題になっております衝突時刻の認定につきましては十五時三十九分と認定しております。この認定に当たりましては、単に航泊日誌等の記載だけではなくて、乗組員からの供述あるいは他船の乗組員からの事情聴取、あるいは私どもの出先機関であります海上交通センターのレーダー映像の解析結果、あるいは第一富士丸の船内時計、こういったようないろいろな状況等から判断して、そういう十五時三十九分というように認定したものでございます。
  79. 関山信之

    関山委員 ちょっと聞き方が悪かったんだな。私の聞いているのは、この事件の具体的な問題ではなくて、一般的に航海をする上でさまざまな海図の問題だとかたくさんあるみたいで、そういうものの中で航泊日誌というもののウエートは、僕は法律的なかかわりも不勉強で申しわけないのですけれども、どういう位置づけ、重要性を持つのかという意味です。書かれている中身じゃなくて記録そのものとしてのウエートといいましょうか、重さというのがあるのでしょうか、ないのでしょうか。
  80. 野尻豊

    ○野尻政府委員 捜査当局の立場から申し上げますと、衝突時刻の認定に当たりましては、先ほど申し上げましたように航泊日誌ももちろん一つの参考になりますが、ただそれだけではなくて、そのほかのいろいろな状況あるいは証拠書類等を勘案しながら決めるものであるというように申し上げたわけでございます。
  81. 関山信之

    関山委員 それはわかるのですよ。だけれども、捜査当局としてではなくて、海事関係の専門家とでもいいましょうか、船の専門家とでもいいましょうか。一般的に、これは野尻さんでなくてもほかの方でも結構ですけれども、どうなんですか、こういう公式簿の一般的な評価の問題というのは、さまざまな法律や規則とのかかわりなどにおいてもウエートの違いというのはやはりあるのでしょうか、ないのでしょうか。ないならないでもいいのですけれども。
  82. 野尻豊

    ○野尻政府委員 私は、捜査当局の立場からここに出席しておりますので、あくまでもそういう立場でのお答えしかできないわけでありますけれども、いずれにいたしましても、先ほど来申し上げておりますが、航泊日誌にしても海図にしても、その他諸般の書類、いずれも一つの記録として私どもとらえているわけでありまして、証拠上は同じというように考えております。
  83. 関山信之

    関山委員 そこで米山さん、衝突時間をさっき後者に、後者というのはつまり速力通信受信簿に合わせたという山下艦長の判断というものはどういう根拠だったのか。また、そのことをそういうふうに判断をした山下艦長の判断というものについて、海上自衛隊もしくは防衛庁としてはその判断が妥当であったというふうにお考えになったのかならないのか。結果的に四十分で通していらっしゃるのですから、それは妥当だったというふうにお答えになるのかもしれませんけれども、なるのだとすれば、それはどういう根拠によるものなんですか。
  84. 米山市郎

    ○米山政府委員 航泊日誌と申しますのは、先ほども申し上げましたように航海料員が発令所で記入をいたしているわけでございます。この発令所と申しますのは、事故当時艦位の測定その他の業務もあって非常に錯綜をした部署であるということは一般的に言えると思います。  一方、速力通信受信簿の記録というのは、これは機関室で機関科員が専ら艦の運転のみに従事をしているということで、一般的にはその速力通信受信簿の記載の方がより正確であるというふうな判断がなされるものでございまして、恐らく「なだしお」の艦長もそういう判断から決断を下したものと思っております。  ただ、その判断の当不当と申しますか、それは別といたしまして、先ほど申し上げましたように、特に一方の事故の当事者でございますので、一つには現場保存というような観点からもそのままにしておいてよかったのではないかという判断をいたしております。
  85. 関山信之

    関山委員 この衝突時間を二分間おくらせるということが客観的にどういう意味を持つかということになれば、これは改めて御確認するまでもないのでしょうけれども、要するに三十八分ということになれば、再加速の一分後に衝突したということになるわけです。ですから、そこで二分の余裕があるということは、余裕を持って右転の判断を下したという、いわば前艦長の判断というものが正しいということを客観的に裏づける数字になってしまうということ、それ自体はやはり客観的にはお認めになるでしょう。
  86. 米山市郎

    ○米山政府委員 結果論としてそのような疑いを持たれる余地が出てまいったわけでございますが、恐らく当時の艦長の判断としては、先ほど申し上げましたように、三十八分と四十分という二つの数字がある場合に、やはりそれを統一したいという気持ちから、一般的に信頼性があると言われている速力通信受信簿によったものというふうに考えているわけでございます。
  87. 関山信之

    関山委員 これ以上この問題をやりとりするのは、この辺で防衛庁との関係ではやめましょう。やめますが、整理か改ざんかという場合に、整理で押し通すのに無理があると僕は思うのですね。改ざんという言葉には、字引を引きますと字や語句を直すこと、多くは悪用する目的に使う、こうありますが、すべてが悪用とも書いてないので、悪意があったとか意図的だとかということは皆さんの方でおっしゃるのだけれども、今ここで問題にされていることは、その書きかえに悪意があったとか意図的であったとかということ自体を問題にしているのではなくて、少なくとも今おっしゃったように統一をしたい、なぜ統一をしたいと思ったのか。いずれにせよ、山下前艦長の意図で残されるべき記録が改められたということになるわけでして、先ほど来原紙の問題のお話などもございましたけれども、私は、これは単なるミスや手続上の問題では済まされないのではないか、だから問題になっているのではないかというのが世間の常識というものだと思うのですね。  これはまさに海難審判も続行中でありますし、これから裁判もあるのでしょうが、やはりこういう建前だけで押し通されることは、最初の指摘に戻るのですけれども、いいことじゃない。この際、やはり改めて何らかの意図で書きかえが行われた、それを改ざんと言うかどうかは別として、そこに恣意的なものがあった、整理などという説明で私は通せないと思うのですけれども、この辺についてどうか、重ねてお尋ねをしておきたいと思います。
  88. 松本十郎

    松本国務大臣 航泊日誌を書き直したことにつきましては、またそのことが国民に不信感を与えたことにつきましては、まことに遺憾であると考えております。しかしながら、先ほど来るる質疑応答がございましたように、わかる範囲の事実関係では、やはり航泊日誌というものと速力通信受信簿とその他の諸般の情勢を合わせたいという願いで書き直したと我々は聞いているわけでございまして、そこには事後の立場を有利にしようとするような意図もなかったし、改ざんではないというふうな理解をいたしております。しかしながら、原始的な記録といいましょうか草々の間に書いた最初の鉛筆書きのものを被り捨てた、これはまた大変遺憾なことだと考えておりますが、今後こういう点につきましては十分戒飭しながら、こういうことがないように進めたいと思っております。  なお、一言つけ加えさせていただきますと、先刻来海上保安庁が言っておりますように、あくまでも航泊日誌は事実関係を究明する場合の参考資料の一つであるようでございまして、海難審判の進行状況、我々はとやかく申す筋合いはございませんが、この航泊日誌の書き直しが海難審判庁の判断に影響を与えていないというふうな答弁が前の交通安全対策委員会であったと聞いておりますので、その点もつけ加えさせていただきます。
  89. 関山信之

    関山委員 大臣、私が申し上げておりますのは、この結果が審判に影響を及ぼすかどうかという総体的な評価はこれから先出てくるでしょう。しかし、第一審で出ている結果はやはりかなり厳しいものであるのですね。ですから、そのことから前へ戻ることは私はないと思いますから、そのことよりも、つまりはこういう事態がもう既に昨年の事故発生当時明らかになりながら、しかも、それが規則どおり手続が行われることがなかったという問題、これが一つですよ。いろいろおっしゃっていますけれども、やはり残すべきだというのが大前提でしょう。残した方がよかったというようなことはやはりいいかげんなお答えになると思うのです。当然残すべきですよ。違ったまま残せばいいのですから。その判断は周りがするのですから。記録というのはそういう性格のものでしょう。そういうことをいろいろとおっしゃって逃げ道をおつくりになる、これがいかぬ。これが国民の目から、我々の目から見るとなかなか理解のいかぬところだ。もう一つは、この海難審判の審理の中でこれが明らかにされればまだよかったのですね。明らかにされていないということだと思うのです。この辺について重ねてお聞かせをいただきたいと思います。  もう一つ、責任の所在とけじめについて。ことしの七月に防衛庁の皆さんに一定の処分が行われているようですね。山下艦長四十日間、寺下司令七日間ですか、停職処分が行われているようですけれども、処分の理由はどういうものだったのでしょうか。この時点としては既に記録の修正問題なども内部的にはつかまれていたわけですから、これはこの処分の中で含まれているのか、含まれていないのか。
  90. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 先般行いました「なだしお」事件に関する処分のお尋ねでございますけれども、これは職務の責任あるいは事故の重大性等にかんがみまして総合的に判断して処分をしたものでございまして、その際に、いわゆる航海日誌の清書といいますか書き改めた点についてはその当時既に我々としては知っておりましたし、それを含めて総合的に判断して処分したということでございます。
  91. 関山信之

    関山委員 総合的にということは、その部分も含めてということですね。――そうなりますと、その文書の書きかえについては根拠がなければならぬわけですから、改めて伺いますと、達で定められた正式な手続をとらなかったがゆえに、いろいろあるけれども、総合的な判断の中にその部分も含めて処分が行われた、こういうことですね。
  92. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 先ほど来教育訓練局長から答弁申し上げておりますとおり、達に直ちに違反したというふうには我々は理解しておりませんで、航海日誌に至る過程で清書をしたということでございますので、形式上は達に違反したという形にはなっておりません。そういうものとして理解いたしておりません。したがいまして、この点は承知をいたしておりましたけれども、その点を実質的にも勘案しながら総合的に判断して処分を決定したということでございます。
  93. 関山信之

    関山委員 その答弁ではわかりませんよ。総合的に判断をしてというのは、書き直しの部分も含めてということなんでしょう。それは達に違反してない、違反してないなら何で処分の総合的な判断の中に入ってくるのですか。書き直しも一定の規則や秩序に従っていなかったということで初めて問題になるのじゃないですか。
  94. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 統合的に判断したと申しましたのはその書き直しの点についてではございませんで、要するに事故が現実に発生したということ、あるいはその他の職務に照らして総合的に判断した、その以外のことを含めて総合的に判断したということを申し上げているわけでございまして、ただいま御指摘の書き直しの点につきましては、これは達に違反していないということでございますので、それは承知いたしておりましたけれども、その他のことから判断して処分を決定したということを申し上げているわけでございます。
  95. 関山信之

    関山委員 微妙に変えているので困るな。委員長、聞いていてそう思いませんか。最初はそうはおっしゃらなかったんだよ。
  96. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 先ほど来申し上げておりますとおり、達に直ちに違反するものではございませんけれども、米山局長からも御答弁申し上げておりますとおり、破棄をしたことは適切な処理ではなかったということはそのとおりでございます。私どももそう思っております。しかし、その事後処理の仕方も踏まえて総合的に判断したということでございます。
  97. 関山信之

    関山委員 もう一遍確かめる。適切な処理でないこともこの処分に入っているんですね。あなた、二転、三転しているんだよ、答弁。
  98. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 そのとおりでございます。
  99. 関山信之

    関山委員 これはしかし、世の中そういうことは通用しないんだよ。規則に違反していないけれども適切でない、それは言葉としてはわかりますよ。公式文書というのは、役所の中ではあらかじめさまざまな規則、文書通達、その他いろいろな仕掛けでがんじがらめになって存在するから、それなりに公式記録としての位置を持つわけで、ですから、それを達には違反していないけれども適切ではなかったというのは、どう理解したらいいんですか。
  100. 吹田愰

    吹田委員長 関山君、だれに質問されましたか。
  101. 関山信之

    関山委員 まあいいでしょう。それでは質問を変えましょう。その事実だけは明らかにしておきましょう、また質問の機会もあるでしょうから。  それと、仮に今の達に違反していないけれども適切でなかった、この管理責任はだれが負うのですか。
  102. 米山市郎

    ○米山政府委員 航泊日誌の作成は最終的には艦長の責任でございますので、艦長に帰するものと思います。
  103. 関山信之

    関山委員 しかし、適切でなかったと判断する上の判断があるわけでしょう。航泊日誌そのものの責任はそうでしょうけれども、そういう問題の責任の所在がそういう次元で問題になったときにはもう一つ上に上がりませんか。
  104. 松本十郎

    松本国務大臣 そのような場合には、あくまでも責任は艦長にあるのですが、抽象的な監督責任。何も航泊日誌に限りませんが、万般の処理に対して適切であるかどうかについて、上司の者がそれは監督責任はありましょうが、その責任というものはあくまで抽象的、全般的であって、そんなに個々、具体的にどうこうではないと私は考えます。
  105. 関山信之

    関山委員 これは審判係属中ですけれども、今回の海難審判では、海上自衛隊第二潜水隊群を指定海難関係人に指定したのですね。そしてそこに勧告も行われた。僕は山下さんも気の毒だと思うのです、何でもかんでもしょって。よくある話ですから、そこだけ気の毒だと言って済ましてしまえばそれでいいのかもしれないけれども、この海難事故で当初から問題にしてきている我々の、というのは交通安全の立場から、要するに全体的な海上交通の中で海上自衛隊のこういうものに対する対応というのが一般の海運関係者とはちょっとずれているんじゃないかということが問題になって、その後皆さんの内部でもいろんなことをおやりになっている。その努力も私ども承知しているんですよ。そのことは、問題の本質は当初から明らかになったけれども、ここへ来て明らかになったから、やはり信頼関係が問題になっているのじゃないかということだけを、単純な話を一時間も延々やっているわけですね。しかし、やはりそういうもののけじめはつけておかなければいかぬということで聞いているのだけれども、今の大臣の御答弁に従って、この場合の管理責任というのはだれになるのですか。寺下さんですか、もう一つ上の人ですか、もうちょっと上ですか。
  106. 松本十郎

    松本国務大臣 衝突事故の責任はもちろん上司の者にもありましょうが、この航泊日誌のことについてはあくまで艦長が責任を負うことでありまして、万般についての監督責任は上司にあると私は考えております。
  107. 関山信之

    関山委員 これははっきりしていただいた方がいいと思うのですが、私が今申し上げているのは、達の違反で山下前艦長が処分を受けたということがはっきりすればそれで済む話です。達には違反してないけれども取り扱いが不適当だったというような判断は、これは艦長にできますか。できないですね。米山さん、そう思いませんか。――いいんですよ、この問題というのは今係属中ですから。そうしますと、この管理責任については、いずれの機会か事態が全面的に明らかになった時点で、今の単なる整理であったというような説明で通らなくなったときは、改めてそれはそれできちっと管理責任を明らかにするということになるんですね。
  108. 吹田愰

    吹田委員長 意見ですか、質問ですか。
  109. 関山信之

    関山委員 いや、意見じゃありません。なるんですねと聞いているのです。
  110. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 今御質問の趣旨は、いわゆる航泊日誌の書きかえに伴う責任の問題について、事後にもう一度責任の所在が追及されるのかという趣旨と理解して御答弁申し上げますが、これにつきましては、先ほど来御答弁申し上げておりますとおり、事後の処理の仕方を含めまして、当時既に知っておりました事実としてそれも含めて総合的に判断して処分を下したということでございます。したがいまして、これに伴って改めてということはないものと理解しております。
  111. 関山信之

    関山委員 寺下さんの一週間の中にも同じようなことが言えるのですか。
  112. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 すべての者についてそういう判断でございます。
  113. 関山信之

    関山委員 ちょっと今、記録を探しておりますけれども、すべての者というのは、山下さんほか寺下さんなどが処分をされた日の処分をされた該当者の皆さん全員ということですか。十五人ですね。
  114. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 そのとおりでございます。
  115. 関山信之

    関山委員 わかりました。  この時点で私はたまたま山下前艦長と寺下前第二潜水隊司令のお名前を挙げましたが、このほかには西廣事務次官や東山さんやみんなのお名前もずっと出ているようですから、こういう方たちも含めて、今回の書き直し問題については既にその一連の事故の問題と含めて処分は済んでいたというふうに、大臣、理解しておいてよろしゅうございますか。
  116. 松本十郎

    松本国務大臣 衝突事故という悲しむべき事実に対するすべての責任で処分が行われましたので、そういうふうな御理解で結構だと思います。
  117. 関山信之

    関山委員 海上保安庁の方に伺いますけれども、最初にちょっと、さっきも取り上げましたが、昨年九月八日の質問で私が質問をしたときに、山田長官の答弁は、私はこう聞いているのですね。「エンジンの操作を記した当直員のメモについても山下艦長の供述どおりに改ざんの問題だとか、かなり具体的に」これは新聞が「指摘をしているのです。あったと言っているのじゃないのです。そういう疑いがあるという記事ですが、そういう疑いがあると見られるような事実関係についてはどういう御認識でいらっしゃいますか。」。これについて、「この新聞報道を私も見まして、こういう事実がもし仮にあるとすれば、これは非常に大変なことだと思います。」「現在まで私どもとしてはその御指摘のような事実」御指摘のような事実というのは、そういう疑いがあると見られるような事実ですよ、事実があったかなかったかじゃないのです、そういう疑いがあると見られるような「事実というものは承知しておりません。」と答弁をされている。  先日野尻さんは、当初から承知をしておりました、こう御答弁になったのですが、これはちょっと説明していただきませんと、私も引っ込みがつかないのですけれども。
  118. 野尻豊

    ○野尻政府委員 まず、修正の事実について認識していたかどうかということについて御説明申し上げます。  事件当初、自衛隊の横須賀地方総監部から横須賀の海上保安部にあった連絡では、衝突時刻は十五時三十八分ということでありました。海上保安庁といたしましても、対外発表もこれに基づきまして十五時三十八分ということで当初は発表しております。この時刻は、速力通信受信簿あるいは航泊日誌の記載時刻であります四十分と異なっておりました。そのために、当初から詳細な捜査を行っておりまして、初期の段階から航泊日誌の修正という事実については承知しておりました。  今先生質問の、昨年九月八日の御質問の件でありますけれども、これは読売新聞の記事を引用されながら、防衛庁が組織的に虚偽の事実を述べたのではないかという御質問でありまして、これに関しては、御質問のような事実は承知してないというように答弁をいたしたところでございます。前の長官であります山田政府委員の答弁の趣旨は、組織的に虚偽の事実を述べたということは承知してないということでありまして、このことは現在においても変わっておりません。
  119. 関山信之

    関山委員 私もそうお答えになるだろうと思って質問の記録を読んだのですけれども、私の質問の趣旨は、そういう部分が指摘されているけれどもそのような事実があるのか、要するに組織的に謀議をしたとかなんとかというようなこと自体を問いたわけじゃないのです。私は、今そのことで余り議論しようとは思いません。それがもし勘違いだということであったら、あの当時そのような事実関係があるとするならやはりそれなりの御答弁があってもよかったんじゃないかと思うものですから。しかし、よく読んでいただけばいいのですけれども、防衛庁が組織的に虚偽を述べたと見られるという読売新聞の記事を紹介はしていますけれども、そういう疑いを招くような事実関係があったのかなかったのかと聞いているわけですから、疑いを招くか招かないかは別として、そういう修正の事実があったということを当時おっしゃらなかったのですね。ですから、この答弁は間違いであったというふうに野尻さん客観的に見て御確認いただけますか。今さら山田さんを連れてくるわけにもいかない。
  120. 野尻豊

    ○野尻政府委員 ただいま先生から御指摘ありましたように、先生の御質問の中で、「実は事故後、捜査の初動時に防衛庁が組織的に虚偽を述べたと見られるという読売新聞の横浜支局の署名入りの記事があるのです。」ということから御質問に入っているわけでありまして、そういう前提での御質問に対する山田前長官の答弁であるということで御認識いただきたいと思うのであります。したがいまして、当初から私ども航泊日誌の修正という事実は承知しておったということは変わりがございません。
  121. 関山信之

    関山委員 まあこんなことで押し問答してもしようがないのですけれども、私が問題にしているのは、当初からやはりそういうことについていささか問題の所在を隠しておこうという姿勢があったのかなというふうに思わざるを得ませんね。後で議事録をよく読んでみてください。私は「そういう疑いがあると見られるような事実関係」というふうに申し上げているわけですから、やはり修正があったというのはそういう事実として当時ここで答弁されていなければならない。ここで答弁されていれば今ごろこんなふうに問題にならなくて済んだのかもしれない。まあいいでしょう。  そこで、承知をしていたというわけですけれども、防衛庁は七月三十一日の段階で事実を知ったという御答弁がさっきありました。今あなたの御答弁では早い時期にということなんですけれども、その皆さん方の方が承知をした前後の事情というのをもう少し具体的にお聞かせをいただくわけにはいきませんか。
  122. 野尻豊

    ○野尻政府委員 繰り返しになりますが、先ほど申し上げましたように、当初の海上自衛隊からの通報では十五時三十八分ということでありまして、私ども捜査の初期の段階におきましてこの十五時三十八分という連絡されてきました時刻の事実と、それから航泊日誌あるいは速力通信受信簿の十五時四十分の食い違いがあるという事実は承知しておったということでございます。
  123. 関山信之

    関山委員 当初、その航泊日誌と報告との食い違いというのは、これがどういうものであるか、つまり先ほど来議論されております書き直しという自衛隊側の説明ですね、一方から言えばやはり海自の内規を無視した書式で、残すべき原紙を破棄したものであるというふうなこと、そういうこともこの七月三十一日前後なんだろうと思いますけれども、その時点でも承知をされておったのかどうか。また、こういうような事実をその当時どう受けとめて、その後の航泊日誌についての信頼性というものを捜査を進める上でどういうものとして認識をしていたのかよくわからないのですけれども、お聞かせをいただけませんか。
  124. 野尻豊

    ○野尻政府委員 先ほど申し上げましたように、航泊日誌あるいは航泊日誌の修正があったということは初期の段階から私ども承知しております。ただ、この修正という事実が私どもの捜査にどのように影響があったかという趣旨の御質問かと存じますが、私どもの方の捜査では、単に航粕日誌あるいは速力通信受信簿といった記録だけではなくて、そのほかの例えば海上交通センターのレーダー映像の解析分析結果とか、あるいは第一富士丸の船内時計の停止状況といったようなこと、その他いろいろな乗組員等の供述等から判断して、客観的に見て十五時三十九分というふうに認定しているわけであります。したがいまして、航泊日誌の修正云々という問題については私どもの捜査に全く影響がないというふうに認識しております。
  125. 関山信之

    関山委員 それは影響がないということはそれなりの説明としてわかるのですけれども、これは海難審判庁の方にも伺いましょうか。先ほども申し上げましたように、この問題が事件の捜査の過程あるいは海難審判の過程で明らかになればそれなりに納得のいくことだったのだろうと思うのですけれども、こういう問題についてはどの程度の問題意識をお持ちになっていたのでしょうか。審判庁の方、いかがですか。
  126. 平石英世

    ○平石説明員 航泊日誌の改ざんがあったかどうかについては、私どもは認識しておりません。
  127. 関山信之

    関山委員 今改ざんというお言葉になりましたが、書き直しも承知していないということですね。――海上保安庁は海難審判庁の理事所とどういう関係に立つのか。一方では裁判所に対しての告発権を持つと同時に、審判庁との関係では捜査の中身その他は連携をしないのでしょうか。
  128. 野尻豊

    ○野尻政府委員 海上保安庁の立場はあくまでも刑事訴訟手続の一環として行われるものであり、海難審判庁の立場は海難審判手続の一環として行われるものであって、相互に直接関係はないというように承知しております。
  129. 関山信之

    関山委員 審判庁の方に伺いますけれども、この審判の関係で何人ぐらい「なだしお」の乗組員は証人としてお呼びになっていますか。
  130. 平石英世

    ○平石説明員 現在、高等海難審判庁で第二審の審理をしておりますが、証人関係についてはこれから尋問する予定でございますので、今のところ決めておりません。これからの問題でございます。
  131. 関山信之

    関山委員 第一審です。
  132. 平石英世

    ○平石説明員 突然の御質問ですので、第一審はちょっと今のところ確認しておりません。
  133. 関山信之

    関山委員 いずれにしても、海難審判の過程における「なだしお」の乗組員の方たちの供述あるいは証拠書類というようなものについては、いわば改ざんあるいは書き改められたデータに基づいて、四十分という航泊日誌の、いわば作為された数字と私どもは思うのですけれども、そういう数字で終始供述は行われたということですか。
  134. 平石英世

    ○平石説明員 第一審の横浜地方海難審判庁の裁決では、衝突時間につきましては第一富士丸の機関室時計の停止時間等に基づきまして認定したということでございますが、現在、これから第二審でもってそういう点も含めまして審理いたすつもりでございます。
  135. 関山信之

    関山委員 あなたの立場は審判庁であると同時に理事所の立場も両方兼ねて御答弁をなさっていらっしゃるのだろうと思うのですけれども、いずれにしても、先ほど改ざんの事実は承知していなかったいうお答えがあったのですが、なぜ航泊日誌あるいは海図の改ざんが裁判の過程で明白にならなかったのだろうかということを実はお尋ねをしておるわけでございます。  また、航泊日誌は証拠として提出されたのかどうか。されたとすれば、この航泊日誌をごらんになって、先ほど幾つか議論がございましたけれども、その修正について不審に思われなかったのかどうか。これはあなたというよりも全体の海難審判の進行の中でです。
  136. 平石英世

    ○平石説明員 海難審判の事実認定につきましては、一つの証拠に限ることなく全体もろもろの証拠を総合的に判断した上で事実関係を確定しております。したがいまして、一つだけの証拠に基づくものではございません。
  137. 関山信之

    関山委員 それはいいのですけれども、これも新聞記事の中に、海難審判庁の理事官やあるいは審判官から自衛隊の皆さんの供述に対して、「「あなた方の証言は距離については答えるが、時間の問題になるとはっきり答えないのはなぜか」「航泊日誌を書き直していないか」などと詰問される一幕もあった。」こういうことになっておる。私どもも海難審判庁の審判記録を全部読めばいいのでしょうけれども、そういういとまもないままにこうやって立たされておるものですから、あなたに事実関係を伺っておるわけです。そういう一幕もあったということですか。
  138. 平石英世

    ○平石説明員 原審の審判ではそういう事実があったと思います。そういうことを知っております。
  139. 関山信之

    関山委員 そうしますと、それは事実関係はあったけれども、そこのところはいわば審判の裁決全体を左右する事柄でもないので、事実関係を明らかにしないまま前へ進んでしまったということになるのでしょうか。
  140. 平石英世

    ○平石説明員 裁決でどの証拠をとるかということは証拠説明で書いておりますし、私どもといたしましては、そういう事実とかほかの証拠もろもろ総合判断した結果第一審の裁決が出たと思います。
  141. 関山信之

    関山委員 それからもう一つ、今は乗組員の方たちのという抽象的な形でお伺いをしましたけれども、山下さんの供述でこれにかかわることについてこれまたどういう御判断を持ったかということなんですが、いずれにしても、審判の過程で、山下さん自身の口から書き直しの事実関係は明らかにされなかったということですか。
  142. 平石英世

    ○平石説明員 第一審のことでございますのでよくはわかりませんけれども、ほかの方からそういう質問があったということを聞いております。
  143. 関山信之

    関山委員 質問があって、山下さん自身はそういう書き直しがあったといっても、整理してといっても、どういう言い方でもいいでしょう、要するに、最初に書かれたものを別な数字に改めたという事実関係についての供述は審判の過程ではなかったのですか。
  144. 平石英世

    ○平石説明員 事実関係のことにつきましては、現在審理中でございますので、御答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  145. 関山信之

    関山委員 しかし、審判に差しさわりのある話なんでしょうかね。あなたは今御存じないなら御存じないでいいのですけれども、知っているけれども今言えないということですか。
  146. 平石英世

    ○平石説明員 内容につきましては確認しておりませんので、答弁は差し控えたいと思います。
  147. 関山信之

    関山委員 いいでしょう。いずれにいたしましても、この間、最初の通報が三十八分、そして自衛隊の方から四十分という数字が出て、そして三十九分、これは保安庁並びに海難審判庁理事官、最終的には海難審判庁そのものも衝突時間を三十九分に確定したという全体の関係になるのですが、もう一遍ちょっと済みませんが、野尻さん、保安庁の立場として、この間の数字の推移、三十九分と定めた根拠を示していただけませんか。  それから、一緒に伺いますけれども、審判庁の方は修正の事実は御存じなかったと最初お答えになりましたね。これを御存じなかったというのはちょっと私理解しがたいのですけれども、三十八分という報告があった事実くらい知っているわけだし、四十分という航泊日誌の数字がわかるわけですから、そこに何らかの修正、訂正があったということは客観的に明らかになるわけですから。いずれにせよ、三十九分ということで確定した根拠をそれぞれお答えいただけませんか。
  148. 野尻豊

    ○野尻政府委員 まず最初に、先生が御指摘になりましたように、当方に海上自衛隊から通報がありました衝突時刻は十五時三十八分、ところが航泊日誌等では十五時四十分ということで、二分間の食い違いがあるという事実は承知しておったわけでございまして、そういうことを前提にしつつ、私ども捜査したわけでございます。この捜査の過程におきましては、今御指摘のありました航泊日誌等の記載だけではなくて、そのほか乗組員の供述あるいはほかの船舶の乗組員からの事情聴取、それから海上交通センターのレーダー映像の解析結果、第一富士丸の船内時計の停止状況、こういったような諸般の事実を確認した上で、私どもは十五時三十九分というように認定した次第でございます。
  149. 平石英世

    ○平石説明員 海難審判の第一審裁決によりますと、衝突時限は三時三十九分少し前となっております。この根拠につきましては、先ほどちょっと私が申し上げましたとおり、第一富士丸の機関室の時計がとまっていた時間等を総合しまして、したものでございます。それにつきましては、山下艦長その他のもろもろの方の証言をいろいろ総合的に判断した上で確定したというふうに言われております。
  150. 関山信之

    関山委員 野尻さん、当初から書き改めの事実は承知していたということはわかりました。しかし、その後の事態の展開の中で、先ほども議論がございましたように、規則の違反ではないけれども処理が不十分であった、残すべきものを残していなかったということは防衛庁の方もお認めになっているのですが、この段階で補充捜査を行うお考えはありませんか。
  151. 野尻豊

    ○野尻政府委員 当庁としましては、先ほど来るる申し上げておりますように、航泊日誌の修正の事実は捜査の初期の段階から承知しておったものでございます。そして、この修正が証拠を隠滅したり、あるいは文書を偽造するといったような意図を持って行われたものとは認識しておりません。したがって、私どもとしましては、この件に関して再捜査することは考えておりません。
  152. 関山信之

    関山委員 海難審判庁の方は、これまた新聞報道で大変恐縮ですけれども、航泊日誌の改ざんが事実であるとすれば、「なだしお」側が提出をした証拠や供述内容のすべてを見直す必要が出てくるとしているというコメントが紹介されているわけです。お話しのように、保安庁の方は当初からそういう事実を承知していたけれども、海難審判庁理事所は書き直しの事実は承知していなかった。今回の新聞報道等によって事態が全面的に明らかになったということになりますと、再尋問もお決めになったようですけれども、予断をすることをあなたに迫っているわけではありませんが、当然のことながら、こういう状況に今立っているという認識はよろしいでしょうか。
  153. 平石英世

    ○平石説明員 海難審判におきましては、関係者の質問を終えた後、必要に応じて補充尋問という形で尋問することができます。したがいまして、尋問するかどうかにつきましては、質問があればそういう形になるとは思っておりますけれども、細かい点につきましては、合議体の決めることでございますので、やるかやらないかについてはここでは発言は差し控えさせていただきたいと思います。
  154. 関山信之

    関山委員 ぜひひとつこの際事実関係をしっかりと明らかにしていただいて、今後の海上交通事故に資するためにも、すべての疑惑を解くことに全力を挙げてほしいということを申し上げておきたいと思います。  それから、検察庁はきょうおいでいただいていませんか。これも捜査中ですからなかなかお答えしにくいのだろうと思いますけれども、捜査の状況、今後の見通し、それから今度の問題についてどういう姿勢で臨まれるのか。私の申し上げたいことは今審判庁に申し上げたことに尽きているのですけれども、許せる限りひとつ御答弁いただいて、この間の姿勢を明らかにしておいていただきたい。
  155. 松尾邦弘

    ○松尾説明員 いわゆる「なだしお」の衝突事件につきましては、現在横浜地方検察庁で捜査中でございます。この件につきましては、昨年九月二十九日、十月七日の二回にわたりまして横須賀海上保安部から事件送致を受けております。現在、横浜地方検察庁におきまして、海難審判の推移を見守りつつ、関係者の取り調べ等、所要の捜査を継続しているところでございます。先生お尋ねのいわゆる改ざんの事実関係等を含めまして捜査を遂げ、いずれ適正に対処するものと思っております。
  156. 関山信之

    関山委員 ところで、問題が変わりますけれども、第一審の裁決で、第一富士丸の主張や理事官の論告では、横切り船航法を、海上衝突予防法第十五条の適用を主張していたけれども、それを否定して、海上の経験則である船員の常務というもので審決をしたということです。私は、それがいいとか悪いとかということではなくて、ぜひこの際伺っておきたいのですけれども、適用法令のこの二つの選択は事故の過失の認定においてどういう意味を持ちますか。つまり重いとか重くないとか、そういう関係はどうなんでしょうか。
  157. 平石英世

    ○平石説明員 この問題は、横切り関係であるか船員の常務であるかというそれぞれの航法判断でございまして、そのどちらが重いとか軽いとかという比較はできません。
  158. 関山信之

    関山委員 これに関して書かれたものを読むと、  「船員の常務」による場合は法律上の明文の根拠がないから、両船の回避義務に質的差異はなく、従って現実にいずれに主たる原因があるかを決定するに当っては、総合的な事実認定から「見張不十分」とか「不当航行」といった要素を勘案しなければならない。   本件の場合は、安全航行の基本原則に遡って、なだしおの「見張不十分」の要素を大きく評価することにより、なだしおに主因ありと断定したのであり、結果的には理事官の論告以上になだしおの過失の割合を加重評価したものと解される。 という神戸商船大学の照井さんという方の論評があるのですが、今の御答弁と、これはいろいろ説があるのはあってしかるべきだと思いますので、参考のために、こういう指摘に対してはどういうお考えに立つのでしょうか、審判庁。
  159. 平石英世

    ○平石説明員 審判庁といたしましては、先ほどお答えしましたとおり、どちらが軽いとか重いとかいう比較はしておりません。
  160. 関山信之

    関山委員 わかりました。ありがとうございました。  海上保安庁は横切り船航法の適用の方を賛成というニュアンスで承知をしているのですが、そうなんでしょうか。
  161. 野尻豊

    ○野尻政府委員 今お尋ねの件につきましては、過失認定の核心に触れるものでありまして、現在なお横浜地方検察庁において捜査中でもありますので、明確な回答は差し控えたいと思います。
  162. 関山信之

    関山委員 今審判庁の方では、過失認定に航法の適用上の判断はかかわりないとおっしゃっているのですが、そこはどうなんですか。
  163. 野尻豊

    ○野尻政府委員 お尋ねの件につきましては、もちろん私ども捜査の対象にしております。ただ、その件につきまして先ほど申し上げましたように、その内容あるいはそれの評価につきましては、捜査の核心に触れるということでございますので、その点についての発言については御容赦願いたい、こう思います。
  164. 関山信之

    関山委員 ちょっと意地の悪い質問になるかもしれませんけれども、野尻さん個人はやはり横切り船航法をとるべきだというふうにお考えになっていらっしゃるのですね。ジュリストの御発言をずっと拝見をいたしますと、そういう御発言のように承りますが、これはいかがですか。
  165. 野尻豊

    ○野尻政府委員 ジュリストにおける私の座談会の発言は別といたしまして、きょうは海上保安庁次長という立場でここに出席しておりますので、再三申し上げておりますように、その点についての公の立場としての発言については御容赦願いたい、こう思います。
  166. 関山信之

    関山委員 防衛庁に戻りますが、昨年の八月、潜水艦隊群の特別監査というのをおやりになって、当時中身を教えてくれないかと言ったら、まだまとめができていないからというような御答弁だったと思うのですが、その後この監査報告は何らかの形で公表をされたのでしょうか。不明にして私存じ上げないものですから、されていないとすればこれからされるのかどうか、またどういう中身のものであるのか。それは相当膨大なものでもあろうと思うのですけれども、取り扱い並びにその内容等についてこの際お聞かせをいただきたいと存じます。
  167. 米山市郎

    ○米山政府委員 お尋ねの特別監察につきましては、昨年の十二月に取りまとめを行いました。ただ、この特別監察を含めまして内部で実施する監察につきましては、本来、組織みずからの問題指摘による改善を目的としたものでございますので、公表は原則としていたしてございません。したがいまして、この今回の特別監察につきましても公表をするということはいたしてございませんが、この事故の重大性にかんがみまして、その概要についてここで申し上げさせていただきたいと思います。  潜水艦部隊は、潜水艦の運航及び教育訓練等をおおむね適切に実施しているものの、本件事故を契機に一層の航行安全と救難体制の充実を図るため、次のような点について改善することが適当であるということで、まず、運航体制につきまして、航海術科訓練装置の活用、いわゆるシミュレーターでございます、それから艦橋と発令所間の連携の強化、海難救助体制整備等。それから第二点といたしまして、人事管理につきましては、潜水艦乗り組み幹部について水上艦勤務の機会を人事ローテーションに組むことについての検討。それから三番目に、教育訓練といたしまして、水上航走技能向上のための潜水艦幹部の教育課程の内容の充実、また、水上航走についての訓練指導に関する海上訓練指導隊による分担、こういったものもあわせてやるべきでないか。それから装備につきましては、他の船舶に対する救助能力の強化、通信用装備の充実、こういった点を勧告といいますか報告の中にまとめてございます。  なお、この特別監察における指摘の大部分は昨年八月に防衛庁が取りまとめました「艦船等の事故再発防止対策等について」の中にも含まれておりますことから、現在、これらの事項の実施を図っている段階でございます。
  168. 関山信之

    関山委員 ちょっとこの一連のことを随分しつこく伺ってまいりましたが、問題意識は最初の一問にあるわけでございまして、この時期やはり防衛庁自衛隊として信頼回復のためにあらゆることをおやりになっていただかなければならぬのじゃないかなというふうに思うわけですし、また、それなりにいろいろと御努力されていることも私どもは承知をしておるわけでございます。  そこで、ずっとトータルで言いますと、冒頭申し上げましたように、この事故で、いわば国民の生命、財産というもののらち外に自衛隊というものはいて、自衛隊自衛隊の中の論理で行動しているのではないかという抜きがたい不信感が当初発生をして、しかも結果的に今回の問題の発生はそういうものを上塗りをしているということに尽きるわけでして、そこで個々の事例を幾らつまびらかにしてみても問題の解決にはならないということだと思うのです。  そこで、東京湾の状況は先ほど申し上げたとおりなんですけれども、東京湾に限らず本来自衛隊の任務としていわゆる救難活動、これは別に海難事故に限りません、防衛庁全体でいえばさまざまなところでそれなりの対応もあるのでしょうけれども、特に、今回海難問題をめぐってこれだけクローズアップされておりますだけに、海難救助について海上保安庁、これは何といっても一元的に海上保安庁の方がそういう役割を担うのですけれども、そことの関係の連係プレーというようなものが極めて不十分であったのではないかという指摘もございますし、海難救助協力協定というようなものをさまざまなそういう両者の対応を詰めながらこの際お取り決めになって、この日本の周辺、さまざまな場所に海難事故の危険性というものは不断に存在をいたしておりますし、もちろん自衛隊がかかわる部分というのはそれなりに限定はされているでしょうけれども、そういうものをおつくりになって、この時期国民の信頼確保の一助にするというようなことを私は御提言を申し上げたいと思うのですけれども、大臣、いかがでございましょうか。御検討をなさる御用意はございませんか。
  169. 松本十郎

    松本国務大臣 このような痛ましい事故が二度と起きないようにさらに努力は重ねますし、また必要に応じてそういったことも検討いたしたいと思いますが、「なだしお」の事故の際も乗組員が数名の救助のために身を賭して救難に当たったということもこれは事実でありまして、至らぬ点はあるいはあったかもしれませんが、最善の務めをやったし、今後もさらにやってまいりたい、こういうふうに考えております。
  170. 関山信之

    関山委員 少し時間を残しますが、最後の質問にさせていただきます。  運輸省からおいでをいただいていると思うのですが、第三海堡の撤去の問題について、既に平成元年度で予算措置がされておるようでございますけれども、この問題はどういう経過をたどっているのでしょうか。平成年度、これから先に向けてどういう対応が展開をされていくのか、この機会に伺っておきたいと思います。
  171. 堀井修身

    ○堀井説明員 お答えをいたします。  第三海堡の撤去につきましては、先生指摘のように、非常に私どもといたしましても早期に着工したい、このように考えておるわけでありますが、当該海域が非常に好漁場であるというようなこともございまして、漁業者との調整が必要でございます。これにつきまして今現在積極的に調整に当たっておるわけでありますが、現段階では御理解がまだ得られておりません。私どもといたしましては、粘り強く交渉を重ねていきたい、このように考えておるところでございます。
  172. 関山信之

    関山委員 技術的な関係については何も問題がないというふうに理解をしておいていいでしょうか。
  173. 堀井修身

    ○堀井説明員 技術的な検討でございますが、例えばどのような施工法で撤去をするのかというようなことについて現在いろいろ検討を進めております。全く技術的に問題がないかということにつきましては、例えば船舶が航行をしておるところで工事を行うわけでございますし、また好漁場でございますので、濁りを発生させないように工事を行うとか、いろいろな制約条件がございますので、なお詰めなければならない点は多々あるというふうに考えております。
  174. 関山信之

    関山委員 終わります。
  175. 吹田愰

    吹田委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十三分休憩      ────◇─────     午後一時三十六分開議
  176. 吹田愰

    吹田委員長 休憩前に引き続き会議を聞きます。  質疑を続行いたします。井上和久君。
  177. 井上和久

    ○井上(和)委員 防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案並びにこれに関連する問題につきまして、若干質問をいたしたいと思います。  ちょうど昨夜でございましたが、スイスで軍備が要るかどうかという国民投票が行われたというようなことがテレビで報道されておりました。それで、三五・何%かが要らない派だったというような結果だと思います。これにつきましてコメントがございまして、予想外にこれは高かったということであります。これは現在話題となっております東欧等の動き、こういう事柄が、そのスイス国民の中へ影響を与えておるのじゃないかというふうなことが実は取り上げられておったと思うわけであります。  そこで、特にこういうふうに大変激しい働きを見せておりますドイツの問題からお伺いをいたしたいと思いますが、先ほども御議論ございましたように、二十八年ぶりにベルリンの壁が取り払われるというような、まさに歴史的な出来事が起こっております。これは東欧だけでなく我が国においても大変関心のある問題であろうというふうに思うわけでありますが、これにつきまして、まず政府の御見解を承っておきたいと思います。
  178. 松本十郎

    松本国務大臣 スイスにおいて、永世中立国でありながら国民皆兵といいましょうか、常に訓練をして国を守る体制があるわけですが、若い方々にこういう時代ではそろそろ軍備はしなくてもいいではないかというのがあって、国民投票したそうです。やや要らないという数字がふえたそうですが、依然として三分の二の方々は永世中立国であってもどうしてもみんなで国を守らなければならぬということになったようでございます。やはり回の防衛というものはそういう性格を持っているものではないかと私は考えております。  委員指摘のとおり、最近では東ヨーロッパの各国々におきまして、自由化、民主化という流れの中で大きく激動しております。したがいまして、政治、経済あるいはイデオロギーの面でやや東西対立というのが希薄になり、これからどんどんと対話が進んでいくだろうということが期待され、これがまた望ましい方向であると考えております。また、そういうふうな政治情勢を受けまして、軍事面におきましても、軍備管理なり軍縮交渉、核兵器あるいは通常の戦力につきましてさらに交渉が進み、対話が進むものと考えておりますが、ただ、極東におきましては、委員御高承のとおり、半島あり、島あり、海峡あり、複雑な地形を持っておりまして、地政学的にも、欧州軍縮あるいは軍備管理が進むからといって直ちにこちらの方でも同様に同じテンポで進むということはなかなか難しいのではないかという感じも持っております。また、ヨーロッパではNATOWPOというような形で集団と集団で冷戦構造、これまでは対峙しておったわけでございますが、アジア、とりわけ極東におきましては、日本アメリカ、韓国とアメリカ、あるいはソ連とどこそこというふうな形で二国間の安全保障体制の複雑な組み合わせの上に成り立っておる上に、中国という巨大な国がございまして、これがどういうふうなスタンスをとるのかなかなかわからないというところでもございます。したがいまして、今直ちに極東において欧州と同じようなテンポで軍縮方向に急速に進むという感じはまだとても持てないわけでございまして、それらの動きを慎重に見守りながら、我々も現実に対処して防衛政策を進めたいと考えております。  十二月二日、三日、マルタ島の近くで米ソ首脳会談があるようでございますが、けさほど、海部総理との間で電話でいろいろお話し合いがあり、会談に臨む前、日本とも話しておきたいということだったようでございます。やはりアジア・太平洋における日本の役割の重大性ということについてもブッシュ大統領は十分認識した上で、ゴルバチョフ書記長にも話を進めたいというふうな話し合いがあったようでございますので、それやこれや情勢動きというものを十分に見きわめながら対処してまいりたいというのがただいまの気持ちでございます。
  179. 井上和久

    ○井上(和)委員 大臣から大変御丁寧な答弁がございまして、私が聞こうかなと思ったことをどんどんお答えがございまして、聞くときやりにくくなりますので、ひとつ聞いたことだけお答えいただきますように。  ただいま言われたこと、確かにそういう面があろうと思いますが、特にチェコスロバキアというのは、御案内のように二十一年前でございましたか、プラハの春というふうな大変話題を呼んだところでございます。ここにおきましては、変革の波といいましょうか、まさに革命的な動きだと私は思います。その中で、特にベルリンの壁の意義というものと現在チェコスロバキアで起こっておる事柄というのは多少持つ意味が違うのじゃないかという気がして、私は、実はそういうこともお聞きしようと思っておったので、今ここでお聞きするわけなんですが、その違いあたりも我が国はどうしても同じ感覚で見がちじゃないかというふうな憂いがあると思いますので、そこのところをちょっとお聞きできたらと思います。
  180. 荒義尚

    荒説明員 お答え申し上げます。  まず東独の方でございますけれども、先生指摘のように、これはひとり東独内の改革が進んでいるということに加えまして、やはり東独の現在の分断の状況が今後どういうふうにいくかというところにインパクトが及ぶ、したがいまして、広い意味での東西欧州関係の行方についてもいろいろな影響が及び得るという側面が一つあるかと思います。  チェコの方につきましては、必ずしも直接東独の動きと連動しているというふうに割り切るわけにはいきませんけれども、御承知のように、ゴルバチョフのグラスノスチ以来、やはり東欧の中のいろいろな動きが波状的に、いわば連鎖反応というような状況になっているということは言えるのではないかと思います。チェコの動きにつきましては、当面いろいろな動きがございますけれども、私どもとしては、来年の一月後半だと思いますが、党大会というのが予定されておるそうでございまして、まず、そこでの議論、そこで出る方向性といったものを注目してまいりたいと思うわけでございます。
  181. 井上和久

    ○井上(和)委員 チェコスロバキアあるいは東ドイツ等にしましても、WTOというのですかワルシャワ条約機構の国でありますが、二十一年前は、ソ連が力でもってそれを抑えたという事実がございました。今回、こういうふうな動きの激しい中で、我々の知る範囲ではソ連の具体的な干渉というのはないように実はとらえておるわけなのでありますが、先ほど、現にベルリンに行かれた方の御意見もございまして、大変参考にはなったわけでありますが、この一連の動きに対しまするソ連の対応といいましょうかとらえ方、これはどういうふうに我が国としては見ておりますか。
  182. 荒義尚

    荒説明員 お答え申し上げます。  一般的なお答えになるかと思いますけれども、ソ連は、基本的に社会主義への道は多様であるということを再三繰り返しておるわけでございます。言いかえますれば、かつてのハンガリー、チェコ動乱のように、介入ということにつきましては、現在では異常に敷居が高いと申しますか、容易にそういうことはしないというようなことを秘めた表現ではないかと思います。  それで、そちらのワルシャワの内部の関係でございますが、それぞれの国におきます民主化の進展につきましては、ゴルバチョフも再三言っておりましたように、そういう働き自体はソ連としては支持するというふうに言っておると理解しております。
  183. 井上和久

    ○井上(和)委員 そこで、聞くところによりますと、海部総理がポーランドにお行きになるという話を聞いております。今ポーランドは、御案内のとおり連帯を中心といたしまして新しい体制ができ上がりつつあるというのが実情じゃないかというふうに思うわけでありますが、考えてみますと、日本の国内における政局もまさに混迷というような状況下であろうと思うのであります。そういうときにポーランドにお行きになる。もちろんいろいろな意味がおありだろうと思うのですが、具体的なものにつきまして、詳細にお伺いしたいと思います。
  184. 荒義尚

    荒説明員 総理のポーランドを含めました東欧訪問についてのお尋ねというふうに理解いたしますが、本件につきましては、現在種々の状況、要素を勘案しまして鋭意検討しておるということでございますので、現在のところ具体的な決定を見たということではございません。
  185. 井上和久

    ○井上(和)委員 では、行かないこともあり得るということですね。
  186. 荒義尚

    荒説明員 そういう言い方は私はしておりませんで、もう一度繰り返しになりますけれども、総理の東欧を含めた外遊につきましては、現在種々の状況を勘案しつつ、いかなる首脳外交が展開できるか、可能であるかというところを検討しているところでありますが、現在は具体的な決定を見てない、こういうことでございます。
  187. 井上和久

    ○井上(和)委員 わかりました。では、行かれるのは行かれるけれども、どういうことをやるかはまだわかりません、こういうようなことなんでしょうね。それだったらちょっと大変だという気もするのですけれども。  それと、総合的にといいましょうか、ワルシャワ機構とNATOとの問題でありまして、これは古くからの事柄でありますが、こういうふうな全体的な動きの中で、ワルシャワ機構とNATOとの双方の機構的な関係にこの民主化動きというものがどういうふうな影響を持ってくるかということについてお伺いをしたいと思います。
  188. 荒義尚

    荒説明員 先生も御指摘のように、現在ヨーロッパにおきましては、東側の急激な変化というものを受けまして東西欧州がいわば激動の時代を迎えておる、そしてこれまでの対立構造から新しい関係を模索中の段階であるというのが現状かと思います。  それで、お尋ねの、しからばこのような変化北大西洋条約機構及びワルシャワ条約機構、あるいはその相互の関係にどういう影響を与えているかということでございますけれども、現時点では、やはりそれぞれの組織の根本的な変質にまでは、そこまではまだ行っていないというのが我々の認識でございまして、いずれにしましても、今後の情勢を慎重に見守ってまいりたいというふうに考えております。
  189. 井上和久

    ○井上(和)委員 私どもが考えますには、こういうふうな関係の一環として行われるのがこの十二月二日、三日の地中海のマルタにおける首脳会談であろう、こういうふうに思うわけでありますが、これにつきましてソ連のスポークスマンでありますゲラシモフ外務省情報局長が、十二月の米ソ会談では冷戦に終止符が打たれ、地中海の底に沈められるであろう、こういうふうに述べたということが言われております。また、九月の下旬だったと思いますが、米ソの外相会談の後、ベーカー国務長官でしたか、米ソ両国は対立から協力の時代を迎えた、こういうふうに語っております。  この首脳会談について政府はどういうふうな認識を持っておられるのか、それからまずお伺いしたいと思います。
  190. 時野谷敦

    ○時野谷説明員 ただいま先生指摘ございましたように、近時、米ソ間の対話が進展をしておる、こういう状況でございますが、今度マルタにおいて行われます首脳会談と申しますのは、先ほど来御議論がございましたように、ソ連あるいは東欧情勢変化というものを踏まえまして、議題を定めずに非公式に現下の国際情勢、特に、今後の東西関係でありますとか米ソ関係でございますとか、そういうことについて率直に意見交換を行いたい、こういうことで持たれることになった会談というふうに承知をいたしております。  ブッシュ大統領は、御承知のとおり、昨年の十二月でございましたが、副大統領当時に、当時のレーガン大統領とゴルバチョフ書記長がニューヨークで会談いたしました際に同席をいたしておりますけれども、それ以降お二人で話し合ったということがないわけでございまして、今度初めて個人的にも接触をされる、こういうことでございます。  私どもは、そういう形で自由に意見交換をされるということは、ただいまのように情勢が速く展開をしておる、こういう状況においてそういうことが行われるということは非常に意義のあることだというふうに認識をしておる次第でございます。
  191. 井上和久

    ○井上(和)委員 きょうの新聞だったですか、この首脳会談が行われて、直後にアメリカの国務省の高官が来日をしてその内容我が国に伝達をいたしますというような話が散っております。これはそうだと思うのですが、こういうことは今までも慣例的にといいましょうか、行われるものなんですか、ちょっとお聞きをしておきたいと思います。
  192. 時野谷敦

    ○時野谷説明員 これまでも、アメリカとしましては、こういう東西関係あるいは米ソ関係の話し合いをするに当たっては、西側諸国との意見の調整と申しますか政策の調整といいますか、そういうことが非常に重要である、こういう考え方に立って対応してきておる次第でございまして、これまでも、米ソ首脳会談あるいは米ソの外相会談ということが行われました場合には、いろいろな方法で私どもにもその模様を説明してくれております。人が東京に参るということもございました。したがいまして、今回どういうことになりますか、まだきちんと決まっているわけではございませんが、過去の例に照らせばそういうことは非常にあり得ることというふうに思っております。
  193. 井上和久

    ○井上(和)委員 これに関連をいたしまして、実は、来月の十三日にベルギーのブリュッセルで東欧支援多国間援助閣僚会読というのが開かれて、外務大臣が御出席になるということが書いてございました。しかもそのときに直接マルタ会談内容もお伺いをするということで、ちょうど二日、三日になされたものを十三日にお聞きになるのですが、外相が行かれるこの会議でどういうことが検討され、どういうことが審議されるのかということについてお伺いをしたいと思います。
  194. 荒義尚

    荒説明員 お答え申し上げます。  先生指摘の十二月十三日のブラッセルの会議といいますのは、繰り返しというかおさらいになりますけれども、アルシュ・サミットのフォローアップとしましてこれまで三回行われてきたものの打ち上げという意味を持っているわけでございます。具体的な議題につきましてはこれから詰めるということでございますけれども、一口で申しますと、各国の対ポーランド及びハンガリーに対する支援措置を一応この時点で総括するということが一つでございます。もう一つはアルシュ・サミットの東西宣言というのがございましたけれども、あれを踏まえてさらに何らかの政治的なサポートの意図表明をするかどうかということが来る会議でのポイントになるかというふうに思っております。
  195. 井上和久

    ○井上(和)委員 わかりました。  それでは次に、世界の軍縮動きにつきまして何点かお伺いをいたしたいと思います。  まず、ヨーロッパにおきましては通常戦力削減交渉というのが非常に急進展といいましょうか進んでおるわけでありますが、この状況について御説明を願いたいと思います。
  196. 神余隆博

    ○神余説明員 お答え申し上げます。  現在、ヨーロッパにおきましては、過去に行われましたヨーロッパ中央におきます戦力削減交渉の後を受けまして、これは実はMBFRというふうに申しておりましたけれども、その後を受けまして、本年の三月から実は大西洋からウラルに至る地域を対象地域といたしまして、通常戦力削減交渉が開始されております。現在、第四ラウンドを行っておるところでございまして、その目的といたすところは、圧倒的なアンバランスがございます欧州における東側のワルシャワ条約機構の大規模侵攻能力あるいは奇襲攻撃といったものを削減していくという意味での交渉が、四回目のラウンドにおきまして引き続き行われておる、こういう状況にございます。  このラウンドがいつ終了し、どのようになるかについて見通しを申すのは非常に困難でございますけれども、ソ連あるいは東側諸国としては、来年じゅうにその交渉を何とかめどをつけたいというふうに思っておるように承知しておりまして、そのようにいくのかどうかは別としましても、そういう状況に向かって進展をしつつあるという状況でございます。
  197. 井上和久

    ○井上(和)委員 防衛庁考え方としまして、我が国防衛力なんというのは軍縮の対象とはなり得ないという考え方を今日まで発表になられております。これは今でもそのとおりなのかどうか、ちょっと確認しておきたいと思います。
  198. 日吉章

    ○日吉政府委員 現在、米ソ中心といたしまして軍縮軍備管理の交渉、話し合いが続けられておりますが、私どもは、大ざっぱに考えまして、独立国といたしまして必要最小限度自衛のために持たないといけない部分と、それ以上の攻撃的性格を有している部分、なかなか明確に分けがたい点はありますけれども、軍備をそういう二つのものに分けて考えることができるのではないかと思います。  現在、軍備管理軍縮の話し合いを進めておりますのは、今私が申し上げました後者の部分につきまして、できるだけ低いレベルで均衡を保つ、低いレベルにしよう、こういうふうな話し合いが続けられている、こういうふうに理解をいたしております。  ちなみに我が国防衛力整備といいますのは、憲法の精神に照らしましてあくまでも専守防衛に徹した自衛のために必要最小限度の防衛力整備していこうというようなことでございまして、近代国家といたしまして世界の中で独立国として立っていくためには最小限度必要な防衛力、こういうふうに考えておりまして、直接的にすぐにパラレルといいますか、平行移動的な形で現在の軍備管理軍縮交渉の一つの相似形でこれが縮小されていかなければならないという性格のものではないのではないか「かように考えている次第でございます。
  199. 井上和久

    ○井上(和)委員 前から思っていたのですが、日吉さんが御答弁になるとたんだんわからなくなるというのが私の偽らざる気持ちであります。端的にお答えをいただいて結構だと思うのですが、通常兵器というものは削減の交渉の対象とはならないというふうに考えるのか、それが正しいのじゃないかというふうに思うのですが、核兵器が削減交渉の対象であって通常兵器はそういうふうなものではないとお考えになるのか、それとも、いや、通常兵器もそうなんですよということなのか。その辺が難しくなるのかもわかりませんが、わかりやすくひとつ教えていただきたいと思うのです。
  200. 小野寺龍二

    小野寺政府委員 ただいま防衛局長が申しました攻撃的な兵器というのは、必ずしも核兵器に限ったことではございませんで、ただいまヨーロッパにおいて進められております通常兵器削減交渉、これは通常兵器でございます。それにいたしましても、ヨーロッパで現在行われておりますのは、ワルシャワ条約、ソ連側が非常に強い侵攻能力、奇襲攻撃能力、つまり攻撃能力を非常に余分に持っているという部分をまず削ろうということに重点が置かれているわけでございます。したがって、通常兵器についても攻撃的なものの軍縮ということに重点が置かれているということでございます。  一方、核兵器の方は一般的にはそもそも攻撃的な能力と存じます。それについてはSTART交渉のようにその攻撃的な能力をできるだけ低いレベルでその均衡を達成しようというのが交渉の目的ではないかと存じます。
  201. 井上和久

    ○井上(和)委員 ヨーロッパにおける通常戦力削減の交渉、これにつきましては、戦車とかあるいは装甲車というのはワルシャワ機構側が優勢だそうでありまして、逆にNATO側が優勢なのが戦闘機であるとかあるいは爆撃機などという非対称性というものが存在をしておる。けれどもこの通常戦力削減の交渉が進められておるわけでありまして、まさに通常戦力軍縮交渉を不可能にするということにはなっていないというふうに私は思っております。  ところで、本年七月にソ連側から我が国に対しましてソ連太平洋艦隊日本海演習に招待をするという話があった。これを我が国は断ったということだそうですが、この経緯についてまず御説明を願いたいと思います。
  202. 荒義尚

    荒説明員 お答え申し上げます。  先生指摘の演習への招請の件につきましては、私ども承知しておりますところでは、本年の五月二十九日でございますけれども、ソ連側から、ソ連の太平洋艦隊の演習へオブザーバーを招待したいというのが正式にございました。  これに対しましては、我が国としましては基本的に三つの理由、まずそもそもソ連が日ソ間の相互信頼を妨げている基本的な問題、つまり極東ソ連軍の維持増強の問題、また北方領土の不法占拠、さらには軍事力配備等の問題に真剣に取り組んでいない、そういった状況のもとでこういう演習へのオブザーバーに参加するということが日ソ間の信頼醸成に本当に資するかどうかということについて我々は疑問に思っているということが一つ理由でございます。さらに、アジア・太平洋における平和と安全というのが海軍力に依存している、かかる状況のもとで海軍力の問題につきましては慎重に対処する必要があるだろうということ。さらに、今回の演習の内容等にかんがみまして、今回のオブザーバー参加につきましては意義に乏しいということで不参加ということを決定した次第でございます。
  203. 井上和久

    ○井上(和)委員 理由が三点あったのですが、基本的にはやはり演習をやるからそれを見に来たらどうですかという御招待であります。今大切なのは信頼の醸成だと思いますし、今の御答弁では、それに参加をすることは信頼の醸成にならないというお話でありますが、私は、むしろいっそのこと話し合いというか人間的な触れ合いも含めまして接することがやはり信頼の醸成の基本ではないかというふうにも実は思うわけであります。  東西ヨーロッパにおきましては、一九七〇年代の初めから信頼醸成の問題に真剣に取り組んでおる、そして一定規模以上の軍事行動の事前通告あるいは軍事オブザーバーの相互派遣、また大規模の移動に対する通知とかいうふうなことで非常に信頼醸成というものが進んできておるというふうに私は理解をいたしております。そういう意味からいいまして、今回一つの呼びかけでもございましたし、いわばチャンスであったのではないかというふうに思うわけであります。あくまでも積極的にこれに対しては対応するというのが、今の国際的な流れからいいましてもまた日ソの関係の面からいっても正しかったのではないのかというふうに私は思います。この取り組みについて、実はアメリカもそれに参加されなかったというふうに聞いておりますが、このあたりについて、これは防衛庁長官の御見解をもう一度賜りたいと思います。
  204. 松本十郎

    松本国務大臣 招請のあった事実はただいま外務省の方から答弁のあったとおりでございますが、一つは突然の招待であったこともあります。いま一つは、視察時間が極めて限定されておりまして、オブザーバーで出ていくのもどうかな。それやこれやもありましたので、今回は招待をいただきながら応じなかったということでございまして、将来のことは将来のことでまた検討したいと思います。
  205. 井上和久

    ○井上(和)委員 実は先ほどは、そういう理由を政治的な問題というものでしっかり答えられるかと私は思ったのでありますが、余り強くはなかったようにも思います。このことにつきまして、信頼の醸成の上において、これほかつて国連の別の機関でもございましたパルメ委員会におきましても、軍縮問題等については政治的な配慮というものはのけなければこの話は進まないというような提言がなされた経緯がございます。そういうような意味からいいまして、ぜひともこの問題に対しては前向きに取り組むようにお願いしたいと思いますし、そのときに政治的な問題というのをぜひパルメ委員会の提案のように別にしてでも私は進めてもらいたい、こういう気持ちを持っておるわけであります。  それで、ソ連軍事力脅威の件でありますが、まだまだ増大をしておるというふうな認識をお持ちになっておられるように書かれてございます。ところが、今の世界の情勢の中で、各国の評価というものも、ソ連変化というものに対しては評価を与え、積極的な対応というのを皆さんとられるというふうに私は理解をしております。  それで、このように軍事的な対立ということを表面に据えてずっとソ連をこれから見ていくということになりますと、私は、日本考え方というのが大変硬直しているといいましょうか、非常にかたくなであるというふうな評価を受けやしまいかというふうに実は思うわけでありまして、そういう意味から、今の時代の流れの中でも、あるいはゴルバチョフ書記長自身の動き、こういうふうなものの中からでも、私は今までの対ソ連観というものを少なくとも変化をさせなければならぬのじゃないか、こういうふうに軍事の脅威の増大ということをずっと変わらずに国民に訴え続けるという態度はよろしくない、こういうふうにも思うわけでありますが、これについての政府認識をお伺いしておきたいというふうに思います。
  206. 小野寺龍二

    小野寺政府委員 ただいまのは、今年度の防衛白書において、委員の御意見ですと相変わらずソ連脅威を強調しているという点についての御批判かと存じます。  しかし、その現実というものを見た場合に、ソ連は一九六〇年代以来ずっと極東において戦力の増大を続けてきたわけでございます。その結果として、ソ連全体のうちの三分の一ないし四分の一の兵力極東に現に存在するわけでございます。ゴルバチョフは確かにいろいろな新しい提案をいたしております。軍縮についても述べておりますし、一方的な削減を一部実施しているということもございます。これはそれなりに我々としても評価しているわけでございますけれども、同時に、ゴルバチョフ書記長が政権についた後においても、その近代化という点ではいろいろ行われております。特に、海空の面において近代化が進んでおりまして、これは一方的な削減が一部行われているものをかなりないしは完全に相殺し得るものではないかというふうに見ているわけでございます。それに、極東におけるこういう配備増強に伴う行動の活発化というものもこれまた現実でございます。  こう見てまいりますと、ゴルバチョフがいろいろ言っておられる中で、現実として進められるもの、これは我々としても評価すべきでありますし、それがさらに進むことを望むわけでございますけれども、同時に、現実にこういう戦力があるのだということ、これは我々としては国民に正しく理解いただくということが必要ではないかと存じます。そういった観点から、今回の白書Kおいてもできるだけ実態についての客観的な説明をしたつもりでございます。  昨年までの白書に比べまして、一部さらに詳細に書いているところがございますけれども、こういうムードとして緊張緩和軍縮が非常に言われている中で、現実はこうだということをはっきり示したいために従来以上に詳細に述べた点が一つでございます。  それからもう一つは、我々として何が潜在的な脅威であるかということをはっきり言うということ、これは決して大げさなことを言っているわけでもないし、かつ、緊張をあおっているという性質のものでもございません。例えばINF交渉、これは非常に幸いにして成功したわけでございますけれども、これは西側がソ連のSS20による脅威というものを非常に繰り返し述べたことでございますし、それから日本につきましても、アジア部におけるSS20の脅威ということを非常にはっきり言ってきたために、結局ああいう交渉の場にのり、そこで交渉の成果が得られたという実績があるわけでございます。それと同じように、現在欧州において進んでおりますCFE交渉につきましても、西側があれほど繰り返し何度もソ連の戦車の優位、攻撃的な性格というものを述べているうちに、ソ連も話に応じてきたというのが経緯でございます。  そういった観点から何が潜在的な脅威であるかということをはっきりさせておくということは、これは今後の物事の進展のための基礎をなすものではないかと我々は考えております。そういった観点から、国内的にも国外的にも白書においては詳細に述べている次第でございます。
  207. 井上和久

    ○井上(和)委員 白書については、また後ほど私の方でもしっかり聞きたいと思っております。  それでは、ヨーロッパに見られるような東西軍縮の流れというものが先ほど御答弁の中にも少しありましたが、アジア・太平洋地域で何らかの形でこのようなことがあらわれてくるのではないか、こういうふうに私は思うわけですが、これについてお答えをいただきたいと思います。
  208. 神余隆博

    ○神余説明員 お答え申し上げます。  アジア地域においても真に実効性のある軍備管理軍縮といったプロセスが実現するということは、長期的に見た場合にはこれは適切な目標ではないかというふうに考えておりますけれども、さらにまたそういった軍縮の基礎となるのが国家間の相互信頼関係であろうということは申すまでもないということだと思います。  他方、現状におきましては、先生承知のとおり、この地域には日ソ間に北方領土等を初めといたしましていろいろ未解決の問題がございまして、真に実効性のあります軍備管理軍縮を進めるためには、まずそのような地域国際情勢状況を改善していくということから進めていくべきではないか、それによって地域情勢の安定を図るというところがまず先決となってくるのではないかというふうに考えております。  また、委員指摘の点でございますけれども、現在、欧州で進行しております軍備管理軍縮ないしは信頼醸成に関する措置につきましても、これはそういったプロセスが始まる前に関係諸国間で重要な政治問題についての一定の政治的な決着があって初めて行われているものであるというふうに認識しております。したがいまして、我々といたしましては、まずこの地域におきましては地域の諸問題を一つ一つ解決していくための努力を継続していくということが肝要かというふうに、存じております。
  209. 井上和久

    ○井上(和)委員 いろんな問題があるということは私も認めるわけでありますが、特にこの地域の諸問題という中に、例えば日本ソ連の場合には北方領土という問題があります。そういうふうな事柄をずっと取り上げていくとこの話は進まないというのが事実じゃないかと思うので、これはまさに先ほどの提案にあったように、こういう問題を切り離して軍縮というものに対して積極的に目を向けてあげるというのが正しいのではないかと私は思うわけであります。  ゴルバチョフ書記長が、昨年の九月だったと思いますが、シベリアのクラスノャルスクで行った演説がございまして、アジア・太平洋地域安全保障強化のための七項目新提案というのを出しております。これについてどのように認識をされておられるか、お伺いをいたします。
  210. 荒義尚

    荒説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生指摘ゴルバチョフの演説の中での七項目平和提案でございますけれども、その内容は七点に集約されると思います。  まず一点は、アジア・太平洋の核兵器の凍結。第二点がアジア・太平洋地域の海軍力の凍結のための協議開催。それから第三点が、日中ソ南北朝鮮の沿岸における海軍及び空軍力の凍結及び引き下げ。四番目としまして、在フィリピン米軍基地とカムラン湾基地の相互撤廃。第五点としまして、海上、航空の事故防止措置。六点目が、インド洋平和地帯化のための会議開催。七点目が、アジア・太平洋の安全に関する何らかの交渉メカニズムの創設ということだったと理解しております。  これにつきましての我々の認識でございますけれども、これらの諸提案というものは、従来からソ連がやっております提案同様、海洋国家たる日本あるいはアメリカ、それから大陸国家であるソ連との間の地政学的な状況の違いといったこと、そういった客観的情勢を考慮しない提案ではないかというのがまず印象としてあるわけでございます。  それで、やはりソ連が本当にアジア・太平洋地域の平和と安定を望むのであれば、まさにその地域の平和と安定を阻害している基本的な問題、再三申し上げておりますように、北方領土問題の解決、それから極東ソ連軍の実質的な削減といった問題に真正面から取り組む、そういうことにもっと努力を傾けるということが先決ではないかというふうに考えておるわけでございます。
  211. 井上和久

    ○井上(和)委員 さらに今年の五月十七日に北京におきましてゴルバチョフ書記長が行った演説で、さきの国連演説における五十万人の兵力一方的削減表明を受けまして、八九、九〇年にソ連アジア部で二十万人の兵力削減、このうち十二万人を極東削減する。その内訳は、陸軍十二個師団削減、空軍十一個飛行連隊の解体、海軍は極東の太平洋艦隊から艦艇十六隻を撤去するとの内容を明らかにしております。さらに、この地域には話し合いの機構も定期的な多国間協議のメカニズムもない。国連の支援を得てすべての関係国の努力により全アジア的プロセスと呼ばれるものを築かねばならない。こういうふうに主張されております。  この七提案にいたしましても、不信を前提としてこれを見ていけば今の御答弁のようになるかとも思いますけれども、素直にといいますか、文言どおり読んでいけば、また、この演説等もあわせましたら、非常にしっかりととらえなければならぬときではないかというような気も実は私はするわけでありまして、このような具体的な提案もあるのですが、これについても御答弁をもらっておきたいと思います。
  212. 荒義尚

    荒説明員 ただいま先生指摘ソ連側提案でございますが、確かに右提案といいますのはソ連東部からの二十万人の一方的削減といったものを具体化したものでありますけれども、いろいろ我我の目から見ますと、例えば極東といってもその地域の範囲がどうであるか、あるいは削減の対象となる部隊あるいは艦艇の種類等がはっきりしないということで、これがアジア・太平洋地域戦略環境にどういう具体的影響が出るかということについては、今後のソ連側の具体的な実施ぶりを見ながらそこら辺は慎重に判断しなければならないと基本的に考えておるわけでございます。
  213. 井上和久

    ○井上(和)委員 結局、そういう場合、このアジア・太平洋地域関係国でもって軍縮討議というものをやろうじゃないかというような、まさにプロセスといいますか、場づくりというものを我が国が積極的に推進するというような気持ちはございませんか。
  214. 荒義尚

    荒説明員 ソ連との全般的な関係という角度からお答え申し上げますけれども、我々としても、ソ連との関係を拡大均衡に持っていきたいという基本的な考えはあるわけでございます。そのために、五つの要素と我々呼んでおるわけでありますが、まず領土問題を解決して平和条約を締結するということが最大のポイント、それ以外に、信頼関係を確立する、あるいは可能かつ適切な実務関係を進めていく、人的交流も進める、そのプロセスの中で要人間の交流も進めていく、こういった中でソ連との関係を進めていきたいというのが我我の基本的な考えということでございます。
  215. 井上和久

    ○井上(和)委員 具体的には五つの問題があってやれないという答弁なんですが、今私は日本立場からしっかり考えて、少なくともアジア・太平洋地域における軍縮については話し合いの場を持とうというようなものを打ち上げることは絶対に必要じゃないかというふうに思います。そして、領土問題やいろいろな問題があるからということで、それが解決しない限りこれをやらないというのでは到底できないであろうということも言えるのではないかと思います。そういうふうな意味からいいまして、我が国立場上、このアジア・太平洋地域における関係国でもって軍縮を話し合うような場をつくる努力を積極的に今やらなければならぬときであるというふうに私は考えます。  ところで、昨年の三月のアメリカ議会におきまして米海軍情報部長のスチュードマン少将がソ連軍事力について証言を行ったことがございますが、その内容についてお知らせをいただきたいと思います。
  216. 時野谷敦

    ○時野谷説明員 先生ただいま御指摘の証言は非常に長いものでございますが、彼が申しましたことは、ゴルバチョフ書記長の一連の改革が、軍備管理交渉でありますとか、あるいは軍事的十分性と彼らが呼んでおりますところの概念でありますとか、あるいはアフガニスタンからのソ連撤退でありますとか、私どもから見まして肯定的な変化、そういうものをもたらしておるということを言いつつ、他方において、ソ連があらゆる作戦分野、特に潜水艦の分野で装備の改善を続けている、そういうこともまた指摘をいたしまして、ソ連が依然として米国あるいはアメリカ海軍にとって最大の長期的な挑戦である、こういうことを述べている証言であるというふうに承知をいたしております。
  217. 井上和久

    ○井上(和)委員 これは、ソ連の海外軍事力というものがまだ数も大したことなく弱勢であるので、意味のある力の行使というものは不可能である。ソ連の一九八七年における海軍力の海外展開は、一九八六年に比較して六%減少し、これは最近三年間の下降傾向の延長上にある。ほとんどのクラスのソ連軍艦の領海外の行動率は、一九八四年の水準よりはるかに低い水準にある。こういうふうなお話をされたというのですが、どうですか。
  218. 時野谷敦

    ○時野谷説明員 ただいま先生が御引用になりました部分、直ちに私、見つけ得ないのでございますけれども、私が見ましたところ、この部長は、ソ連ゴルバチョフ書記長が政権について以来のそういう改革動き、それに伴うところの実体的な変化、そういったものを分析しつつ、他方において、先ほど私が申し上げましたような彼の見解でございますね、あらゆるところで近代化あるいは兵力の改善、そういった面での努力ということも依然として行われている、こういうことを分析しているものというふうに承知をいたしております。
  219. 井上和久

    ○井上(和)委員 もう一つございまして、これはアメリカの総合参謀本部議長のクロウ海軍大将が昨年の二月に議会に提出をいたしました資料の中でありますが、このように書いてあると言われております。「我々は、これら人的欠陥(軍隊の素質の悪さ、徴兵教育訓練の不適正、下士官、兵の不足、人種問題等)が、訓練不足、ロジスティック(後方支援・補給)体制の貧困、兵器・装備の低い信頼性、不十分な維持・補修システム、整備システムと能力、高度な中央集権化指揮組織等と組み合わさって、ソ連軍を蝕んでいる深刻な脆弱性を見出している」、こういうふうに明言をしております。また、その資料の中で、米ソが現に配備している兵器の技術レベルの比較が出ておるということでありまして、攻撃ヘリ、作戦航空機、水上艦艇等十六分野でアメリカがすぐれ、そして十分野で対等であって、アメリカが劣っているのは六分野だけである、こういうふうな分析がなされたというふうにありますが、これについて意見を言っていただきたいと思います。
  220. 時野谷敦

    ○時野谷説明員 先生ただいま御指摘になりましたことは、確かにこのクロウ参謀総長が昨年の二月に述べました証言において触れられておるところでございまして、人的な問題というものがソ連の軍にはある。トレーニングの問題もあるし、それから軍隊の下のレベルにおけるイニシアチブ、発意と申しますか創造的なそういうイニシアチブ、そういうものが見られない、こういった種類の問題。あるいはロジスティックスの面、後方支援の面でのディストリビューションの問題がある。あるいは機材の信頼性にも問題があるというふうなことを証言しておるということは、先生指摘のとおりでございます。
  221. 井上和久

    ○井上(和)委員 それでは、ちょっと防衛白書の件に関連をいたしましてお伺いをいたしたいと思います。  先ほども申し上げましたように、米の国務長官は、米ソ関係の緊張というものは今第二次大戦後で最も低いレベルにある、こういうふうに述べております。ところが、一方我が国は、防衛白書の中で、第一部の「世界の軍事情勢」というところで国際情勢の現状について、東西関係は、流動的な様相を強め、変化の兆しを示し始めているものの、軍事的対峙関係にあるという側面については、基本的に変化はない、そして対話・協調の努力も続けられており、「いわば一張一弛を繰り返しつつ推移してきている。」としている。  ゴルバチョフ政権に対しては、これは「言葉のみによって判断することは困難である。」先ほどの答弁ともこれは非常によく似ておるわけでありますが、ソ連軍の一方的削減が言葉どおり実施されたとしてもソ連軍事力は西側に対して優位にあり、その一方で質的強化を図っている。アメリカで話題になっておる先ほど紹介した文章は、むしろこれとは相反する結果になるわけであります。各種の軍縮提案も「依然あいまいな表現が多く残っている。」。  こういうふうに、読んでみますと、非常に懐疑的といいますか、まさに疑いの眼を持ち、ある意味では初めから、はなから信用はしないでいこうというような点が非常に見えるというふうに私は思うわけであります。  また、「極東ソ連軍の動向は、わが国に対する潜在的脅威であるのみならず、この地域軍事情勢を厳しくしている要因となっている。」こういうふうにお書きになっております。これでは、今の世界的な流れを本当に日本は正確に把握しておるのかというふうに思われても仕方がないのではないかというふうに私は思います。というのは、最も厳しいと言われた冷戦時代の防衛白書よりもソ連脅威というのは間違いなく今の白書の方が強い調子で述べられておりますね。これは、どうしてこういうふうになったのですか。
  222. 時野谷敦

    ○時野谷説明員 防衛白書の点につきましては防衛庁からお答えがあると存じますが、その前に一言、今先生質問の関連で、クロウ参謀長の証言に言及されましたので、補足的に申し上げさせていただきたいと思います。  先ほど先生から御紹介があり、私も述べましたようなソ連の軍が抱えるところの問題点、こういうものを参謀総長は分析をいたしておる次第でございますけれども、同時に彼の証言の中には、ソ連が依然として米国の安全保障や平和かつ安定的な国際環境にとって主要な脅威であります、そうあり続けておるのです、したがいまして、米国あるいはその同盟国が将来を展望して、今後ともソ連の行動に対応すべく万全な態勢、万全な準備、こういうものが必要であるということもあわせ証言をしておりますので、補足をさせていただきます。
  223. 小野寺龍二

    小野寺政府委員 委員から、冷戦の時代よりもさらに白書におけるソ連軍事力脅威についての判断が厳しくなっているという御意見がございました。  もちろん、脅威というものは意図とそれから能力ということになりまして、恐らく現在進んでおりますいろいろな政治的な状況というものは、アメリカのいろいろな報告にも言われているとおり、最も戦争の可能性が少ない時代に来ているということではないかと存じます。しかし、同時にその能力という点に着目いたしますと、全体といたしましてもソ連の能力というものは今のところまだ減っているわけではございません。  ただ、ヨーロッパ状況を見ますと、これは恐らく交渉も進みますし、それから一方的な削減というのもかなり実質的なものが行われるということが期待されて能力が恐らく減っていくであろう、そういう見通しがかなりつきやすい状況になっております。それに比べまして、極東においてはそういう状況というのはなくて、現にその能力というものは依然としてまだふえているのではないかと見られておるわけでございます。量的な削減というのは一部進んでおりますけれども、それを相殺するような近代化が行われているということでございます。ただ、これは極東だけにおける現象ではございませんで、例えば今盛んに進展が見られております東欧というかヨーロッパ正面、中央ヨーロッパでございますね、そこに比べますと、北欧、すなわちスウェーデンとかノルウェーに近いあたりのソ連軍事力配備についてはやはり非常に近代化が進められているという現象が起こっておりまして、ノルウェーそれから中立国のスウェーデンでさえもそういうソ連動きに対して大変な懸念を表明しているという事実がございます。  それから、先ほどアメリカのいろいろな報告について御発言がございました。確かにソ連は、量と質という点では、従来は非常に量に重点を置いた軍の発展をいたしてまいりました。その中で、先ほど委員指摘のいろいろな問題があることは事実でございます。それにもかかわらず、アメリカの報告、最近におきましては「ソ連軍事力」、これは米国防省が発表しているものですが、この中では、確かに戦争の可能性は最も低い時期になったのではないかと思われるということを言っておりますけれども、同時に、そのソ連の能力というものがアメリカ及び同盟国にとっての脅威になっている、そういう指摘がしてございます。
  224. 井上和久

    ○井上(和)委員 ソ連軍事力近代化をする、これはするであろうと思います。しかしながら、時の流れというか、やはり時代的なものが非常に大事でありまして、持っておるものがすごいかということは大事ではないというふうに私は判断をするのです。永久に使わなかったらないのと同じであります。したがって、そういう意味で今のこの流れの中で我が国が平和に対してより積極的な貢献をするというところに重点を置くべきであって、脅威を殊さらうたい上げるということに重点があってはならぬのじゃないかという気持ちがいたすわけでございます。  次に、先日来日をいたしましたヤコブレフ・ソ連共産党政治局員が我が党の石田委員長意見の交換を行いました。そのときに、日本の防衛費について、軍事強化の防衛五カ年計画すなわちポスト中期防は時代おくれではないかと思う、こういうふうな見方も実は示されたということも聞いております。この中期防の件でございますが、国際情勢変化によってこれもいろいろと変化をしていくのが本来正しいのじゃないかと私は思うわけであります。この次期防について、まずは概念的なことを簡単に御答弁をいただきたいと思います。
  225. 日吉章

    ○日吉政府委員 中期防期間が来年度で終了いたしますので、その次、平成年度以降どのようにして防衛力整備を進めるかということでございますが、防衛力整備といいますものは、できるだけ計画的に長期的なビジョンを持って、継続的に着実に整備を進めていかないといけないという性格があるものでございますから、昨年十二月の安全保障会議におきまして、中期防が終了後の平成年度以降の防衛力整備につきましても、中期防と同じような中期的な政府計画をつくるという方針が確認されたところでございます。それに従いまして、現在、防衛庁内部におきまして検討作業を進めているところでございますが、ある時期が来ますればこれは安保会議中心としました政府レベルの場で御検討を煩わしたい、かように考えているところでございます。  先ほど来委員いろいろ御議論をなさっていらっしゃいますように、その作業前提といたしましてはやはり国際情勢、その中でも国際軍事情勢をどういうふうに読むか、その中で我が国防衛力整備をどう進めるかということが非常に重要でございまして、国際軍事情勢は極めて流動的でございますが、これをどういうふうに見定めるかという点が非常に大きな課題になろうかと思います。そういう点もあわせて現在防衛庁内部でいろいろ検討を進めているところでございます。
  226. 井上和久

    ○井上(和)委員 端的にお伺いをしておきたい。まだお答えいただけないかもわかりませんけれども、防衛費の抑制あるいは防衛政策の見直しということは考えていない、とにかく現時点においてはまだまだ拡大充実を目指していかなければならない、こういうふうにお考えなのでしょうか、そこだけ確認しておきたい。
  227. 日吉章

    ○日吉政府委員 私どもは、防衛関係費はいかにあるべきかという点をまず金額の方からアプローチするということではありませんで、国際情勢の中において日本がどのような防衛力整備するのが望ましいかというところから作業をいたしまして、その結果はじき出されます金額が果たして日本の財政状況経済情勢というようなものあるいは国際的な軍事情勢等々から見まして妥当な、バランスのとれているものであるかどうかというようなチェックをして決められるべきものではないかと考えております。  ところが、ただいま委員の方から、具体的にまだまだ防衛力を増大、拡充していくのかというような御指摘がございました。拡充、増大ということは非常に抽象的な言葉でございますが、私どもといたしましては、やはり現在の国際情勢というものをひとつ勘案する必要がございます。それから、「防衛計画の大綱」の整備水準をおおむね達成するということを目標といたしました中期防計画が、現在のところ着実におおむね達成されそうな状況になっております。そういう事実も勘案しないといけないと思います。  こういうようなことを考えますと、私どもはまだ防衛庁内部で検討を続けている段階でございますけれども、例えば正面装備について申し上げますと、正面装備の量的拡大を図るというようなことよりも、むしろ周辺諸国の軍事・科学技術の動向等を勘案いたしまして質的な向上を図るというようなものにウエートが置かれるべきでありましょうし、あるいはもう少し広い概念から申し上げますと、正面装備というよりも、その持てる正面装備の能力を十分に発揮し得るようなトータルとしての後方支援体制をも含めました防衛力整備を図る、俗に言われております後方支援体制の充実といいますか、そういうような方面により重点が置かれなければならないのではないか。かような視点を持って検討を続けているところでございます。
  228. 井上和久

    ○井上(和)委員 今検討を続けておられるというようなお話がございました。御答弁にもありましたように、防衛大綱の水準、別表が平成年度で達成をする。そうすると、ポスト中期防というものは、少なくとも別表は一応達成をしたからもうこれは次期防では問題というか関係はなくなるのですね。この後は何ですか。
  229. 日吉章

    ○日吉政府委員 中期防計画に基づきまして、「防衛計画の大綱」が掲げております防衛力整備の水準は一応達成されるわけでございますけれども、この水準を維持していくということだけで毎年毎年それ相応の防衛努力が必要だという点がございます。  それからただいまお答え申し上げましたことの繰り返しになりますけれども、正面装備、別表に掲げられておりますものは主として正面装備あるいは編成事項を掲げておったと思いますが、それを支えます後方分野の充実を図らなければならないということがあろうかと思います。  さらに、最近におきます労働環境といいますか雇用環境、そういうようなものを勘案いたしますと、良質な自衛隊員の確保というようなものにも十分の配慮をしなければならないというようなことではないか、かように考えております。
  230. 井上和久

    ○井上(和)委員 次期防につきましては、どうでしたかね、年限はまだ決まっていなかったですか。あるいは総徹明示方式は総額明示方式であったですか。この辺、現時点で結構ですから、今のところどういうふうに思われておるか、作業はどういう作業に取り組んでおられるかをもう一度。
  231. 日吉章

    ○日吉政府委員 ただいまお尋ねをいただきました次期防の期間及び経費のあり方、総額明示方式でいくかどうかという点につきましては、我々の作業を一応終えまして安全保障会議の場でいろいろ御議論をいただきますときに、最終的に期間はどれだけにするかあるいは防衛関係経費をどうするかというようなことを御議論いただきましてお決めいただくのが筋ではないか、かように考えております。  ところが、そうは申しましても、中期的な計画でございますからその選択の幅は非常に限られてくるのでありましょうから、まあ短い場合には三年、長い場合にも五年、こういうようなところではないかと思います。  それから、総額明示方式でいくかどうかということでございますけれども、これにつきましては、整備すべき内容とそれに要する経費とをリンクさせてこの計画を立てる、金額をはじいているというような意味で、総額明示方式というのは一つの有力なやり方ではないか、かつ、中期防期間中昭和六十二年度からは、総額明示方式を一%枠にかわる一つの新しい方式といたしまして防衛関係経費を見ていく指標にしたわけでございますので、そういうふうな経緯も踏まえますと、総額明示方式をとるというのは一つの有力なやり方ではないか、こういうふうに防衛庁では考えておりますけれども、この点はさらに政府レベルで各般の御議論をいただきながら決定されるべきことだ、かように考えております。
  232. 井上和久

    ○井上(和)委員 しかし局長平成年度予算というのは、概算要求は七月か八月にはもう出さねばいかぬのでしょう。そうすると、そんなに悠長にやっていて大丈夫ですか。もう急がなければ、それのもう一つ前提の総額明示さえも、有力であるということではありますけれどもそれだということをはっきり言わないような段階で、これは大丈夫なんですか。
  233. 日吉章

    ○日吉政府委員 私、ただいまお答え申し上げましたように、作業は一応着々と進めているつもりでございますが、期間をどうするか、あるいは関係経費のあり方を総額明示方式でいくかあるいは別のやり方があるのかというような点は、一応作業を終えましてそれをどういうふうな形で政府計画でまとめ上げるかという段階で決断を、判断をしていただければよろしいことではないだろうか。あらかじめ五年と決めておく、あらかじめ総額明示方式でいくのだと決めておいて作業をする必要はない。むしろそういうふうな形で作業するよりも、その点は白紙にいたしておきましてこの計画を立てまして、後で期間なり防衛関係経費のあり方を御判断いただく方がよろしいのではないかと考えているわけでございます。  極めて具体的に申しますと、期間につきますと、私申しましたように三年にするか五年にするかというような選択肢がございますでしょうから、私どもといたしましては、五年先、十年先あるいは十数年先を見越した形で五年間の計画を一応素案としてつくっておくというような作業をしているところでございます。これを短くする分にはそれほど苦労は要りませんので、長くするということになりますとまた手戻りがあるかと思いますけれども、長目に作業しておけばそれで十分手戻りなく作業は完成するのではないか、かように考えている次第でございます。     〔委員長退席、榎本委員長代理着席〕
  234. 井上和久

    ○井上(和)委員 それでは、ちょっと話が変わる気もするのですが、確認をしておきたいと思います。  ヤコブレフ氏、ソ連の共産党政治局員が二十四日発売のソ連の政治週刊誌「新時代」のインタビューに答えて対日関係について見解を述べた、実はこういうふうな報道がございましたが、この内容について確認をしておきたいと思います。
  235. 荒義尚

    荒説明員 ただいまお尋ねの件でございますけれども、ヤコブレフ政治局員は、おっしゃるとおり、帰りましてから「新時代」でインタビューを受けまして、それが報じられております。その中身はいろいろございますけれども、四点ぐらい申しておると思います。  まず一点は、今般の訪日の印象につきまして、総じて日本の政界の指導者あるいは財界の首脳の人々は日ソ関係を改善したいという考えを持っているという印象を持ったと言っております。  それから第二点は、日ソ関係のいわゆる第三の道、これは現実に立脚した広範な問題に関する日ソ間の建設的対話という意味であるという説明をしております。  それから三番目としまして、経済関係では、極東あるいはシベリアの共同開発について可能性があるということ。  それから四点としまして極東軍事情勢につきまして、日ソ間で情報交換、それからオブザーバーあるいは査察官の相互交換といったことをそのインタビューの中で提案しておるというのが簡単に言いますと中身かと思います。  それにつきまして簡単に我々の考え方を申しますと、特に第四点の軍事関連でございますけれども、まず軍事情報につきましては、先生承知のように、我が方は公表しておるわけでございますけれども、先方は一部のみ公表しておるというのが実情でございまして、自国の軍事力を公表することなくこのような交換を提案してくるということの真意については疑問を感ずる、こういうことかと思います。  それから軍事オブザーバー、査察官の交換につきましては、再三お答えを申し上げましたように、私どもとしましては、日ソ間の基本的な問題、北方領土問題あるいは極東ソ連軍の維持、増強といった問題について実質的な進展があるかないかといったことを見きわめつつ、日ソ関係全体の中でそういうことが適当かどうかということを考えていかなければならない、こういうふうに考えておる次第でございます。
  236. 井上和久

    ○井上(和)委員 ということは、ぱっと言えば、これは「新時代」という雑誌のインタビューであったわけでありますが、正式に日本の国へ一つのルートを通してしっかりと、例えばこの中の一つであります情報公開的な双方の査察団の交換、これをやりましょうという話が正式に生まれたときには、どういうふうに対処されますか。やはり北方領土があるからだめという答弁になるのですか。
  237. 荒義尚

    荒説明員 お尋ねの件につきましては、先ほどちょっと最後に申し上げましたように、日ソ間の基本的な前提となる問題でございますけれども、領土問題、それから向こうが実質的な軍事力削減をやるといったことがやはり大前提になる、そういう点を見きわめることが先決だろうということが我々の考えでございます。
  238. 井上和久

    ○井上(和)委員 事実、北方領土の問題があるからということが障害になればなかなか解決せぬだろうと思いますし、むしろ人的なつながり、関係が大変大事なことではないかと思うわけであります。この雑誌「新時代」におけるインタビューというのは、ヤコブレフさんが日本の防衛白書の中に書かれてある事柄を批判しているということが前提にあるのではないかと僕は思うわけです。それでこういうふうなインタビューを受けられたということじゃないかと思うわけです。  実は、私が感じる範囲では、むしろソ連も信頼の醸成ということに対して目を向けているのではないかと思うわけでありまして、むしろ我が国の方が領土問題等があるということでそれを拒否するようになっておるのだということであれば、これは大変残念なことじゃないかという気もするわけであります。西廣さんも、査察の件につきましても大変結構じゃないかと言われたということも報道されております。それで、このことを日本においても進めるような方向でぜひ取り組んでもらいたい、これが私の気持ちであります。これは長官、一言。
  239. 松本十郎

    松本国務大臣 日ソの信頼関係といいましょうか、両国間の関係の安定化は望ましいことであり、長い将来にわたって進めなければなりませんが、同時に国民挙げての悲願であります北方領土の問題を片づけながら平和条約を結ぶことも大事でございまして、それらは相補いながら助け合ってというのでしょうか、並行して進めなければならぬということだと思いますので、長い目では、委員指摘のとおり、そういう方向を志向しながら進めてまいりたいと考えております。
  240. 井上和久

    ○井上(和)委員 アメリカ政府が一九九一年の会計年度から国防予算削減に踏み切る方針を決めたというふうに言われております。特に注目しておりますのは、今月の十九日でしたか、チェイニー国防長官がテレビの番組に出まして、米ソ間の緊張は今第二次世界大戦後で最も低いレベルにあるというふうに述べておりまして、こういう状況下であるならば財政赤字の解消に向けて国防予算削減に応じてもいい、こういうふうな軍縮の姿勢を国民の前に明らかにしたということが言われております。  削減の規模についてでありますが、九一会計年度で年率三%、百億ドル、さらに九二年から九四年度にかけて総額で千八百億ドルに上るということであります。これは大変な金額だと思います。アメリカが赤字財政とはいいましてもこれまでに大幅な軍事費を削減するということは、まさに国際政治というものがここ数年来世界的な規模で大きな変化を見せつつある、いよいよ本格的なデタント、すなわち緊張緩和の時代だ、それが期待される。その世論を背景にしてこのような政策をアメリカもとっていかれようとするのであろうと私は思うわけであります。  そういう意味を踏まえまして、我が国の防衛費の件でありますが、総額が四兆一千六百八十八億円にも上るわけでありまして、これは来年度の概算要求でありますが、これで中期防衛力整備計画は一〇〇%達成できると言われております。先ほど御答弁もいただいたとおりでありますが、どうもこういうふうなアメリカの取り組み、実態というものと我が国のこの中期防ないしポスト中期防についての取り組みに非常に大きな違いがあるのじゃないか、それは国際情勢に対する考え方、とらえ方が違うのじゃないのかというふうな気も私は強くするわけでありまして、現にソビエトも国防費は削減ないし横ばい、こういうふうな予算であるというふうにも伺っておるわけでありますが、この米ソ予算に対する、あるいは国防長官の話、こんな取り組みと、我が国のポスト中期防への取り組みというものとの関連について、例えば概算要求の金額の突出について、私たちは非常に疑問を持つわけでありますが、これについて見解を承りたいと思います。
  241. 日吉章

    ○日吉政府委員 概算要求の御質問でございましたけれども、概算要求は中期防計画に基づきまして中期防の最終年度として要求をいたしておる関係上、中期防計画を担当しております私の方からお答えを申し上げさしていただきたいと思います。  先ほども、軍備管理軍縮米ソ間の話し合いとの関連におきまして、我が国防衛力整備がいかにあるべきかという御質問をいただきまして、私がお答え申し上げましたこととあるいは重なるかと思うのでございますが、現在我が国が進めております「防衛計画の大綱」に基づきます防衛力整備といいますのは、「防衛計画の大綱」そのものが前提としております国際軍事情勢といいますのは、近い将来におきまして大規模な紛争あるいは戦争というようなものが世界あるいは我が国周辺においてはない、こういうふうな前提のもとにおきまして、その中において独立国として我が国が自衛のために持つべき装備の中の、平時から保有すべきある一定の限度、それは具体的に申しますと、限定・小規模の侵攻に対しまして原則として独力で対処し得るもの、それを持っていようというようなことでございます。そういうふうな基礎的な、基盤的な防衛力整備に努力をしているところでございまして、この整備はできる限り計画どおり達成をしなければいけない、かように考えている次第でございます。  なお、平成年度以降、どのような形で整備を進めていくかという点につきましては、先ほどもお答え申し上げましたように、平成年度以降の国際軍事情勢をどう読むか、なおかつ、その際に「防衛計画の大綱」で目標といたしました水準をおおむね一応達成した状態になっているというようなこと等々を勘案しながらこれから検討いたしまして、この計画を策定したい、かように考えております。
  242. 井上和久

    ○井上(和)委員 それでは次に、日米間で大きな問題となっております駐留米軍経費の負担について伺いたいと思います。  まず初めに、在日米軍の駐留経費の日米の負担割合が現在どのようになっておるのか、全経費とその負担割合あるいは米軍人の給与を除いた経費とその負担割合、また、日本人従業員の労務費とその負担割合、これについて御説明を願いたいと思います。
  243. 時野谷敦

    ○時野谷説明員 ただいま先生の御質問の数字でございますが、アメリカが在日米軍経費として負担しております数字で私どもが把握しております最近時点のものは八七米会計年度のものでございまして、この八七米会計年度におきまして、アメリカは約三十八億ドルを負担しておるというふうに承知をいたしております。したがいまして、この八七米会計年度に見合う我が国の負担額はということになりますと、六十二年度ということになろうかと思いますが、その数字をとりますと約二十億ドルということになります。したがいまして、先生おっしゃいます、その割合はどうか、こういうお尋ねでございますと、日本側の負担の割合は三五%、アメリカの負担の割合は約六五%となりますが、これは先ほど申し上げましたように、八七米会計年度と昭和六十二年度予算との対比における割合でございます。なお、注釈として申し上げますならば、元年度予算におきますところの日本の負担の額、これは約三十億ドルでございます。  それから、もう一点おっしゃいました日本人従業員の給与の負担の割合はどういうことであるかというお尋ねでございますが、平成元年度におきまして、在日米軍従業員の労務費総額、これは千二百三十四億円というふうに見込まれております。そのうち日本側が負担しますのが五百三十二億円、それに対しましてアメリカ側が七百一億円というふうに推定されますので、したがいまして、割合はどういうことであるかということになりますと、日本側が約四三・一%、アメリカ側が約五六・八%を負担しておる、こういう割合になっております。
  244. 井上和久

    ○井上(和)委員 去る八月の二十四日、アメリカの会計検査院が日米間のバードンシェアリングに関する報告書を公表いたしております。それによりますと、アメリカ当局は、日本が今以上の財政支援を提供できると考えておる。特に、日本が、光熱費、日本人従業員の本給あるいは艦艇の修理といった残りの円建て経費を負担することができると考えておる。こうした上で、米国が提案をしておる支援について、日本は現行地位協定のもとで法的義務を負っていないかもしれないが、日本経済状況は、現行地位協定が調印された一九六〇年代とは一変をしておる。アメリカで行われている論議は、地位協定よりも現在の経済状況を考慮した、より公正な観点に基づくものであるというふうに、日本がさらなる負担増をするのは当然だというふうな意見が出ております。アメリカ側のこのような姿勢についてどのような見解をお持ちでしょうか。
  245. 時野谷敦

    ○時野谷説明員 ただいま先生が御引用になりました報告書も、アメリカ国内、特に議会において見られますところの同盟諸国に対してより一層の責任あるいは負担を求めたいという一般的な空気を反映したものであろうかというふうに私どもは考えております。  駐留米軍経費の負担の問題について申し上げますならば、私どもは、この問題は日米安保体制の円滑な運用にとって非常に重要な問題であるというふうにかねて認識をいたしてきておる次第でございまして、そういう認識に基づきまして、かねてよりできるだけの努力をし、できるだけの負担をしてまいっている次第でございます。今後とも、私どもといたしましては、この問題についてはそういう日米安保条約の円滑な運用にとって非常に重要である、そういう観点を踏まえて、自主的に考えていくべき性格の問題であるというふうに認識をいたしております。
  246. 井上和久

    ○井上(和)委員 なかなかわかりにくかったのですが、だから、こういうふうなアメリカ側の要求というものがあって、それは現行地位協定が調印されたときと比べて違っている、だからこれはやってもいいんじゃないですかというふうな話になっていて、だから地位協定の改定はしないままでこういうことはやってもいいんじゃないかという話なんだと思うのです。だから、それでいいのですと言うのか、いや、それはいけませんと言うのか、どっちですか、はっきり言ってください。
  247. 時野谷敦

    ○時野谷説明員 アメリカ側から特に具体的にこういうことをやってほしいという具体的な要請が日本側に寄せられているということは目下ない状況でございます。私、先ほど申し上げましたのは、先生が御引用になりました報告書というものは、アメリカにありますところの一般的な対日期待、そういうものを反映したものであろうかということを申し上げた次第でございます。  現在、私どもが行っております駐留米軍経費の負担の枠組みというものは地位協定のもとにおいて行われてきている次第でございまして、先生御引用の中に各種の経費への言及がございましたけれども、私どもとして、現在のところ新たな負担を行うということで検討しているという状況にはございません。
  248. 井上和久

    ○井上(和)委員 ちょっと聞き方が悪かったのかもわかりませんが、こういう話が出ておるだけだということで言われるわけですが、例えばこれが具体的な問題としてそういうふうにアメリカ意見としてじゃなくして正式な要望としてやってきた場合に、日本は、これは地位協定の改定を必要とすることですよという態度をとりますか、それとも、そうですか、それじゃ検討してやりましょうという話になるか。そういうふうに聞けばいいんですかね。
  249. 時野谷敦

    ○時野谷説明員 先生が今おっしゃっております会計検査院の報告におきまして、日本側が円建て経費を負担できる、あるいは日本側に円建て経費を負担してほしいという種類の記述があるということは私ども承知をいたしておりますけれども、これにどう対応するかという御質問でございますれば、そういう種類の要請というものが別に日本側に参っているという状況ではございませんものですから、ここでその場合にどうするという種類の立ち入った議論をすることは不適当ではないかというふうに考えるものですから、その点は御容赦をいただければと思います。  いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように、私どもとしては、駐留米軍経費の負担の問題というのは日米安保条約の円滑な運用にとって重要な問題であるという認識に立って、今後とも自主的に考えていきたいというふうに考えております。
  250. 井上和久

    ○井上(和)委員 地位協定というものは非常に大事でもありますし、ここに決められておりながら、私どもから考えますとなしくずし的にといいましょうか、現行のままでもって円建てでどんどんやられるということが起こるということになりましたら、まさにこの経費負担についての歯どめというものがなくなるということであります。そういうふうになりますとこれは大変な問題だというふうに思うわけで、私はこれを聞いておるわけであります。特に地位協定の範囲内であるというのは、例えばアメリカでもってバードンシェアリングに関する報告書の中で取り上げられておる事柄の中で、これくらいまでならいいだろうというようなものが何かありますかね。これは長官、総体的なことでいいですから、答えてください。
  251. 松本十郎

    松本国務大臣 委員指摘の検査院の報告あるいは議会の動きを見まして、やはりアメリカの国内に駐留費について日本はもっと持ってほしいという期待があることは我々も理解しております。しかし、向こうの政府が正式にそれを受けてどう対応するのかまだはっきりしておりませんし、我々に対してこうしてくれという要望もまだ来ておりません。しかしながら、我々は日米安保条約の当事国といたしましてこの体制の維持、発展あるいは円滑な運用のために、自主的な判断で、日本独自に現在の地位協定の範囲内でできる限り駐留費について努力をしていくということは当然のことだと考えております。
  252. 井上和久

    ○井上(和)委員 この問題と多少関連をいたしましてお伺いをしておきたいと思いますが、それは駐留経費と次期防の総額との関係であります。これは、仮に次期防も総額明示方式というものをとったという場合に、その次期防期間内に駐留経費についての新たな負担増というものが行われたとした場合に、次期防の総額の枠内でこれを処理するということなんだと思うのですが、その辺について見解を伺っておきたいと思います。
  253. 日吉章

    ○日吉政府委員 ただいま長官の方からもお答え申し上げましたように、駐留米軍経費の負担につきましては、まだ米国政府の方から正式にこの意見表明、希望表明等もございませんし、これらにつきましては今後外務省関係省庁とも相談をしながら決めていくということになっておりますので、そもそもどのような経費になるかというのが今のところ見通しが具体的には立ち得ていないというような状況でございます。ただ、これまで駐留米軍経費につきましては、防衛関係費の中、また今次中期防衛計画の中で処理をしてきたというのは事実でございまして、それは今後の一つの参考になろうと考えております。
  254. 井上和久

    ○井上(和)委員 だから、別枠をつくって云々というようなことは今のところ考えていないということですね。そうですね。
  255. 日吉章

    ○日吉政府委員 現在のところ、そこまで具体的なことを考えてはおりません。
  256. 井上和久

    ○井上(和)委員 先ほど来「なだしお」につきまして大変細かな質疑、議論がなされました。私は、これにつきましても、大変大きな問題であると思いますので、一応言われております改ざん問題といいましょうか、あるいは修正問題というのですか、これの全体的な流れについて御説明を願いたいと思うのですが、これは防衛庁と海上保安庁双方からこの流れ全体につきまして問題点あるいは今後の対処等を明らかにしていただきたいと思います。
  257. 米山市郎

    ○米山政府委員 昨年七月の「なだしお」事故に係る当時の航泊日誌につきまして、これを改ざんしたという報道がございます。当時の錯綜した状況の中で鉛筆書きをしたものを事後に整理、清書して航泊日誌が作成されたということは事実でございます。その際、山下艦長は、時刻につきまして速力通信簿の方がより正しいと判断して衝突事故についてもこれをもとに整理をさせたというふうに承知をしているわけでございます。庁内におきましても、事故後かなり早い時期にこの書きかえたという事実に気がつきまして調査を行った結果、今申し上げましたような事実が判明をしたわけでございまして、防衛庁といたしましては改ざんとかあるいは事実をゆがめたものではないという判断をいたしたわけでございます。  しかし、先ほども申し上げましたように、事故の一方の当事者である「なだしお」の航泊日誌が、そういった事故に係る記録を整理するということは適切を欠いたものであるというふうに考えているところでございまして、再発防止に全力を挙げるとともに、こうした事後処理についての適切な対応を指導、教育いたしておるところでございます。     〔榎本委員長代理退席、委員長着席〕
  258. 野尻豊

    ○野尻政府委員 海上保安庁では、事故、事件が起きました当初、海上自衛隊から当方の海上保安部に連絡がありまして、その衝突時刻は十五時三十八分となっておりました。この時刻は速力通信受信簿あるいは航泊日誌の記載時刻であります十五時四十分と異なっておりましたので、当初から詳細な捜査を行っておりまして、初期の段階から航泊日誌の修正の事実があったということを承知をしております。当庁の認定しました犯罪事実では、衝突時刻は十五時三十九分ごろとなっております。これは単に航泊日誌等の記載だけでなく、乗組員からの供述あるいはほかの船舶の乗組員からの事情聴取、海上交通センターのレーザー映像の解析結果、第一富士丸の船内時計の停止状況等から判定したものであります。したがって、航泊日誌の修正が当庁の捜査に影響を与えたということは考えておりません。
  259. 井上和久

    ○井上(和)委員 実は、米ソでは、海の縄張り争いを避けるとともに衝突事故を避けるために一九七二年に公海及びその上空の事故防止協定というものを結んでおります。米ソ両海軍共用の特別信号というものを三十六種類も定めて、衝突しそうになったら光や旗を使って相手にそれを伝える仕組みだそうであります。この協定の内容と同じものを一九八六年にイギリスとも締結をしている、こういうふうに言われておりますが、これを掌握されておりましょうか。
  260. 荒義尚

    荒説明員 ただいま先生指摘のような協定につきましては、我々も承知しております。
  261. 井上和久

    ○井上(和)委員 それで、我が国海上自衛隊はどうしておるかというと、米ソの防止協定の信号をそのまま使用しておるというふうに言われております。これもそうですか。
  262. 日吉章

    ○日吉政府委員 まことに申しわけございませんが、突然御質問をちょうだいいたしましたので、正確な知識を持ち合わせておりませんので、答弁を御勘弁いただきたいと思います。
  263. 井上和久

    ○井上(和)委員 それでは改めまして、公海及びその上空の事故防止協定というものは、あれだけの事故があったことでもございますので、また現にそうやってアメリカソ連あるいはソ連とイギリスでも結んでおって、地理的にいいましても日本がこれを結んでいないという方がむしろおかしいのではないかという気がするわけでありまして、ぜひこれを結んで事故防止を図るべきだと思いますが、これについて御意見をお伺いしたいと思います。
  264. 荒義尚

    荒説明員 先生指摘のように、こういう協定を例えばソ連との間で結ぶということもお尋ねの中に入っているというふうに了解いたしますが、今具体的に日ソ間ということになりますと、再三申し上げておりますようにこのような信頼醸成の前提になる基本的な問題、くどいようでございますけれども、北方領土の不法古拠であるとか、北方領土を含む極東ソ連軍の実質的削減、こういったものについてまず実質的な前進が見られなければならないというふうに我々として考えておるわけでございまして、そういう協定を結ぶことがいいかどうかにつきましては、そういう基本的問題についての実質的な進歩があるかどうかということを見きわめつつ日ソ関係全体の中で慎重に検討をすべき問題である、こういうふうに考えておる次第でございます。
  265. 井上和久

    ○井上(和)委員 それは非常におかしいと思うのですよ。これは人の命にかかわる問題であって、現に「なだしお」の事故というのは人が死んでおる。そういうふうな問題が起こりやすい日本海でありますし、だから人命救助ということは何よりも大事だと私は思うわけでありまして、北方領土の問題があるからということでこれもしないというのは非常におかしいことだというふうに思います。人命というものに対してもっともっと尊重するという考え方がなければならぬのではないかと思うのです。何にも増してぜひやるべきだと私は思うのですが、長官、どうですか。
  266. 松本十郎

    松本国務大臣 人の命は地球より重いと言われておりますから人命は大事でございます。ただ、事故防止協定というものだけが突出して、日ソ間でまず結ぶというのはいかがかと思いますので、全体としての日ソの信頼関係というものを一つ一つ樹立しつつ、片づけながらその一環としてそういう協定が望ましいかどうかさらに勉強した上で対処したいと思っております。
  267. 井上和久

    ○井上(和)委員 これは人命に関する問題でありまして、ぜひ取り組んでもらいたいというふうに思います。  それから、先ほども議論がございましたが、自衛隊隊員の確保の件であります。大変難しいような状況でありますが、まず、来春の高卒予定者の募集状況はどういうふうなぐあいか、予測されることでしょうがお伺いしておきたいと思います。
  268. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 ただいま先生指摘自衛官募集難の問題でございますけれども、私どもも募集難が最近特に著しくなっているという認識をいたしております。特に、平成元年度、今年度におきます大宗を占めます二士男子募集状況について、上半期実績が出ておりますけれども、予定の約九割程度しか確保できていないという状況でございます。  また、来年の春卒業いたします高校生につきましては、今の段階では正確な予測は不可能でありますけれども、企業における採用予定計画というものがございまして、これが非常に高い形になっておりますので、これも採用確保が非常に困難ではなかろうかという感じを持っている次第でございます。
  269. 井上和久

    ○井上(和)委員 大変だと思いますが、しっかりそれはそれなりの努力を願いたいと思います。  それと、自衛隊の平均年齢はどのくらいなんですか。二、三年で結構ですけれども、その動きにつきましてちょっとお聞きしておきたいと思うのです。
  270. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 ことし、元年四月三十日現在の自衛隊の全体の平均年齢は三十一・九歳でございます。
  271. 井上和久

    ○井上(和)委員 これはどういうふうに動いていますか。どういうふうな流れになっているかというのが私は知りたいわけであります。高齢化しているんじゃないかなとか、あるいは若年化しているのか、そんなことが知りたいわけですから、ここだけ言ってもらってもわからぬです。
  272. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 六十一年四月三十日の段階でいいますと三十二・五歳でございます。六十二年が三十二・二歳、さらに六十三年が三十二・一歳、六十三年十月三十一日が三十二・二歳、元年四月が先ほど申し上げたように三十一・九歳という形でございます。
  273. 井上和久

    ○井上(和)委員 余り大きな変化はないというのが姿であると思います。  それでは、時間も参りましたので最後に、防衛施設庁の関係になると思いますが、海上自衛隊が那覇市に建設中の対潜水艦戦作戦センター、この建設に関して情報公開問題で地裁の判決があったというふうなことが報道されておりますが、まずこの概要について、どういうふうな事柄であったかということをお答えいただきたいと思います。
  274. 村田直昭

    ○村田政府委員 お答えいたします。  本件は、那覇防衛施設局が建築基準法に基づき那覇市建築主事に提出した海上自衛隊那覇航空基地に建設中のASWOC庁舎に係る建築通知書を那覇市が那覇市情報公開条例に基づきまして全面公開の決定を行いました。防衛庁としましては、この種の情報が無制限に公開されることは我が国の防衛上重大な支障を生ずるとの観点から、那覇市長に対し、口頭及び文書により再三にわたり非公開とするよう申し入れ、さらに行政不服審査法に基づき利害関係人としての意見陳述を行ったところでございます。これにもかかわらず那覇市が九月二十八日、全面公開を決定しましたので、行政事件訴訟法に基づく当該決定の取り消し訴訟を起こし、執行停止の申し立てを行ったところ、那覇地方裁判所は十月十一日、計画通知書添付図面四十四枚中、防衛上の秘密を含む二十一枚については公開決定の効力を本案判決の確定に至るまでこれを停止する旨の決定をいたしました。これを受けて那覇市は、執行停止対象外である文書二十三点の公開を十月十三日に行いました。国、那覇市とも即時抗告は行わなかったため、以後本案取り消し訴訟で争うことになりまして、十二月五日第一回の公判が行われる予定になっております。
  275. 井上和久

    ○井上(和)委員 これは大変重要な問題でもございますし、一概に現時点でもって私ども自体も判断できにくいような大変大事な問題だというふうに思いますが、これについてどういうふうな基本的な方針というもの、対処の仕方をお考えになっておるのか、伺って終わりたいと思います。
  276. 松本十郎

    松本国務大臣 情報公開制度は適切、円滑な行政の確保を目的とするものでありまして、それはそれで十分尊重されなければなりませんし、防衛庁はこれまでもできるだけ情報の提供には努めてまいりました。しかしながら、また一方で国の防衛にとってはどうしても公開できないものもございます。ふさわしくないものもあります。そのことはまたどこの国でも同じでありまして、その点については国民の皆様の御理解をいただきたいと考えております。防衛庁としましては、今後ともこの両者の調和ということを念頭に置きながら進めてまいりたい、こう考えております。
  277. 井上和久

    ○井上(和)委員 以上で時間が参りましたので終わりたいと思います。ありがとうございました。
  278. 吹田愰

    吹田委員長 次に、上原康助君。
  279. 上原康助

    上原委員 しばらくぶりに内閣委員会質問をする機会を得たわけですが、時節柄余り勉強する時間もなくて、先ほど国会に着いたばかりなのでどういうやりとりになるか余り自信もございませんが、できるだけ変わりつつある国際情勢あるいは国内の政治環境等々を踏まえて、社会党や私なりの考え方というか見解なども明らかにしつつ、防衛の基本にかかわる問題についてまずお尋ねをして、後、二、三具体的な事例についてお尋ねをいたしたいと思いますので、防衛庁長官初め答弁なさる政府委員の皆さんも、従来のように木で鼻をくくった答弁ではなくして、防衛論議が少しかみ合うように誠意ある御答弁をまず要望をしておきたいと思います。  そこで、お尋ねしたい基本はポスト中期防のことになろうかと思うのですが、これがどういう進捗状況あるいは考えで進められているか定かでありませんで、そういうことも含めてできるだけ明らかにしていただきたいわけです。  最初にお尋ねしたいのは、防衛庁長官、最近の国際情勢、いわゆる新デタントとよく表現されております。また、もう既に同僚議員の方からお尋ねがあったと思うのですが、ソ連のペレストロイカ、グラスノスチ等々いわゆる立て直し、情報公開、要するに地球的規模で今社会というものが大転換、大変革を起こそうとしている、これは否定できない現実だと思うのですね。同時に、国内の政治状況も御承知のような国会構造、構図になりつつある。防衛庁防衛予算を概算要求をして力ずくでごり押しをするという環境ではなくなりつつある、国民もまたそういうことは求めていない。こういう認識を私たちは持って、これからの日本の総合安全保障あるいは防衛政策、防衛方針というものを非常に慎重というか、そういった国際的デタントにマッチするように対応していけるようないわゆる軍縮というものを十分踏まえたこれからの防衛政策というものを樹立していかなければいかないと考えておるわけですが、今私が指摘をしたことについて、防衛庁長官初め防衛当局はどのような御認識でこれからの防衛方針というか、防衛政策というものを、また現にこれまで整備をされてきた防衛力というものを運用していこうとしておられるのか、そういった基本的所見というか、お考えからまずお聞かせを願いたいと存じます。
  280. 松本十郎

    松本国務大臣 東ヨーロッパの諸国が、あるいは民主化あるいは自由化、開放、連帯、ソ連のペレストロイカ等々言葉はいろいろございましょうが、大きく激動しつつ変貌しつつあることは委員指摘のとおりでございます。そして、これが一番象徴的にあらわれましたのがベルリンの壁の崩壊であったかと思うのであります。このような戦後、米ソ中心とした対峙の枠組みといいましょうか、冷戦構造というものがこれから転換するであろうということはもう展望されるわけでございますが、果たしてどのようなテンポでどういう道筋をたどりながら新しい姿になっていくのかということを考えますと、これはなかなか予見しがたいというものもございます。我々はそれを十分慎重に見きわめなければなりませんが、そういった動き中心は、今のところはほとんどすべてヨーロッパの舞台で行われているわけでございまして、グローバルな姿でそれが進むことが望ましいわけでありますが、太平洋とりわけ極東におきましては、まだまだその辺まではいっておらないと我々は認識いたしております。そういう中でございますので、今すぐにアメリカソ連中心とした膨大な軍事力、これを背景にした対峙関係というものが一挙に覆って姿が変わるというところまでは、特に極東においてはとても展望もできないわけでありますので、そういうものを踏まえまして、極東における情勢あるいは軍事的な動き等々を慎重に見きわめながら来るべき平成年度以降の防衛計画というものも考えなければならないと思っております。そういう角度から、これまでやってまいりました方向を積み重ねながら進めていくのが筋ではないか。言いかえますならば、日本の場合はまだ大綱に定めた水準にも到達しておらないわけでございまして、まずせめてそれに到達しそれを維持するためには、やはり国際情勢の変貌や軍事技術の進展の中で質的な改善もしなければなりませんし、また、これまでは正面装備の充実に力を尽くしておりました関係上、後方関係が立ちおくれになっている。これは厳然たる事実でございまして、そういった指揮・通信機能の充実を初め隊員の処遇改善あるいは勤務環境、生活環境の改善等々にも力を尽くさなければなりません。また、人員を確保してこれを育成するということが大事でありますが、なかなか募集難ということもございますので、経済の動向あるいは若い人たちの増減の見通し等々も十分勘案して、効率化し省力化考えなければならないということでございます。あれやこれや考えてまいりますと、今難しい局面に差しかかってはおりますが、にわかにこれまでの方向を転換するところまではいかないで、そういった内外の情勢なり軍事技術の動向なりを見きわめつつ次の中期防を考えてまいりたい、こういうふうに考えております。
  281. 上原康助

    上原委員 前段の方は私の方とある程度認識がすり合うわけですが、後段になると、これからも防衛力増強路線を堅持をしたいという執念みたいなものが防衛庁あるいは政府全体、外務省あたりでもありそうで、そこが問題だと思うのですが、その点はまた具体的に明らかにしていきたいと思うのです。  そうしますと、にわかに従来の防衛政策、防衛方針というものを変える段階にはない、太平洋とりわけ極東地域においての軍縮緊張緩和というもののテンポはまだ見定めがつかないというような御答弁なのですが、端的にお尋ねします。  これだけ世の中が宇宙的にグローバルで大変革を来して軍縮方向に向いつつある。それを受けて、日本の防衛政策なりこれからの安全保障というものを再検討する必要はない、そういう国際情勢でない、あるいは国内情勢でないという認識でやろうとしておられるのですか。まず、その点を明確にしてから議論を深めたいと思います。
  282. 松本十郎

    松本国務大臣 再検討は当然常にしなければならぬと思います。ただ、アメリカとかソ連というのは戦後数十年間にわたって蓄積された軍事力があるわけでありまして、ここで軍縮をするあるいは兵力削減すると申しましても、蓄積されたものが一挙に減るわけではございません。日本の場合は、徐々に充実をしてまいりましてまだまだ大綱の定める水準にまで到達しておらないということでございまして、その辺の段階米ソ日本では大いに異なるということでありますので、それらを考えますと、グローバルな方向軍縮が進み、そのことは望ましいことではありますが、最小限専守防衛の立場に立つ日本が今のままでは十分でないというふうな認識を持っておりますので、その点ではやや見解を異にせざるを得ないかというふうに考えております。
  283. 上原康助

    上原委員 余り早く見解が一致しても困るし、また余り突っぱねられても困る。しかし、私は必ずしもそうは理解できないわけです。  そうしますと、別の角度から一つ確認というかお答えいただきたいわけですが、我が国が保有すべき防衛力の水準というのは一体どこに置いているわけですか。
  284. 日吉章

    ○日吉政府委員 これは憲法の精神にのっとりまして、専守防衛の立場から独立国として平時から保有すべき必要最小限度の防衛的防衛力整備するということが憲法上許されているわけでございますが、ただいまのところは五十一年につくられました「防衛計画の大綱」ということで憲法上認められている枠組みの中で、なおかつ、平時から保有すべき防衛力、具体的には、「防衛計画の大綱」の中では、限定的小規模の侵略に対して原則として独力で対処し得る基盤的な防衛力整備しておくということでございまして、そういう形で防衛力整備を図ってきている。かつ、ただいま長官からお答え申し上げましたように中期防衛力整備計画が来年度で一応期間が終了いたしますが、現在のところ「防衛計画の大綱」が目標としました防衛力整備水準がおおむね達成できるのではないか、かように考えているところでございます。
  285. 上原康助

    上原委員 回りくどいことをいろいろ言いますけれども、要するに大綱水準ということでしょう。これは防白にも明確にされている。さっき防衛庁長官は、まだ大綱の定める水準に達していないからそれが努力目標だと言われた。これは私がこれから議論しようとする極めて重要な点です。  そこで、もう少し国際情勢認識の問題でお尋ねをしておきたいわけです。  防衛庁は一貫してそうなので私は残念なんですが、これだけ世の中が変わりつつあるのに――社会党に皆さんは防衛政策、安全保障政策が硬直化しているとか現実性がないと言うのだけれども、むしろ今、正直言って我々の方が現実的なんだ。防衛庁外務省が石頭で硬直してちっとも柔軟性がないというふうに私は思わざるを得ない。変わりつつあることに対しての真剣さが足りないのじゃないですか。  なぜそういうことを言うかと申しますと、八九年の「日本の防衛」、いわゆる防白と言われているものの基調は、これが出た当時からそうなんですがどのマスコミの社説や解説を見ても、基調は相変わらずソ連脅威論です。果たして今の国際状況あるいはソ連の変革の中で、従来防衛庁がとり続けてきた対ソ脅威論、これがなければ皆さんが続けてきた防衛力整備の根幹、いわゆる対象国がなくなるから守りたいという気持ちはわかるけれども、防衛庁の皆さん、国民はそうは見ていませんよ。その認識がどうかということを私は聞いておるのです。これは具体的に指摘するまでもないわけですが、一例を挙げますと、極東ソ連軍のいわゆる軍事脅威を今申し上げたように殊さら強調している。そういう基調になっている。ソ連の新しい軍事ドクトリンをどういうふうに理解をしていますか。
  286. 小野寺龍二

    小野寺政府委員 ソ連ゴルバチョフ指導部は、一つは合理的な十分性というものと、それから防衛的な軍事ドクトリンというものを盛んに強調いたしております。  合理的な十分性というのは、これは軍事費として使う資源というもの、これについて、これを過大に軍事の方に注いできたためにソ連経済的な停滞を来したという反省に基づいて、できるだけ軍事費を削減し、これを民需の方に回す、そういうための一つの理論として発展させてきたものかと存じます。ただ、合理的な十分性というものが何であるかということ、これは非常に抽象的なものでございまして、何であれば合理的でかつ十分であるかということを判断することは極めて難しいことではないかと存じております。  それから、防衛的なドクトリンにつきまして、これはゴルバチョフが登場する前からソ連は常に自分たちの防衛は防衛的であるという主張を続けてまいりました。それにもかかわらず、例えば欧州正面における侵攻能力、奇襲能力というものは、これはゴルバチョフも非常に攻撃的なものであるということを最近になって認めてきたわけでございます。アジア極東においてもソ連軍事力というのは攻撃的な能力を持っているというふうに我々は見ておるわけでございますが、その中で新たにまた防衛的なドクトリンということを主張してきたということ、これはある意味では非常に矛盾しているという感じがいたしております。  それにもかかわらず、確かにソ連において防衛的なドクトリンに関する議論というのが非常に盛んになっておりまして、単に軍人だけではなくて、民間の学者の中からもいろいろなことが言われております。ただ、特に軍人の展開しております議論というものを見てまいりますと、ソ連の中でも必ずしもまだ結論が出ていないのではないかという感じがいたしております。特に、軍人が今主張しておりますのは、相手が攻撃してきた場合に、これを食いとめて反撃して、それで決定的な打撃を与える、これも防衛的なドクトリンの範疇に入るという主張がなされております。これだとすれば、過去のソ連のドクトリンと余り違わないという感じがいたしております。そういった意味で、まだソ連で議論が続いていて結論が出ていないという感じを私どもは受けているわけでございます。  結局は、防衛的なドクトリンというのは、ソ連がいかなる装備を持っているか、その装備と、軍がどのように編成されていて、それがどういうふうに展開をし、どのような訓練をしているかということを見きわめないと、結局は本当に防衛的なドクトリンとなっているかどうかということは非常に判断しにくいのではないかと思います。  ソ連において全く発展がないということは私どもも思っておりません。現在ヨーロッパで行われておりますこと、これは先ほど来申しておりますとおり、ソ連の奇襲攻撃能力、侵攻能力というものを大幅に削減する方向で一方的削減ないし軍縮交渉が進められております。これが実施された段階においては、確かに欧州正面においてソ連はかなり防衛的になるであろうということは想像できるわけでございますけれども、それが全体としてどういう効果があるかということ、これはまだ見通しかつかないところではないかと存じております。
  287. 上原康助

    上原委員 そんな長々述べないでいいよ。説教聞いているんじゃないんだよ。簡単に、もう少しわかりやすく、こっちもわかりやすく質問しているんだから。  私も、別にこういう国際情勢変化をしてきたから即絶対的な軍縮がなされて、皆さんも指摘しているように、この国際情勢がまるっきり我々が望む方向にすぐ行くとは見ていないのですよ。ソ連だって警戒すべきところは警戒しなければいかないし、慎重に対処しなければいかぬのは慎重に対処しなければいかぬという基本は持っています。問題は、国際的にも国内的にも軍事力のレベルをダウンしていく、軍縮方向にやろうとする思考と哲学を政府がどう持つかということをただしているのですよ。  ソ連の新軍事ドクトリンが従来より防衛的性格に変わりつつあることは何人も否定できないわけでしょう。なのに皆さんは、ブレジネフ時代、あのときも防衛的性格と言ったのだが、どんどん軍拡をして今日のように軍事大国になったのだと言う。そういう考え方なんだ、今の防衛庁は。これからもそれでいいのですかということを私は聞いている。だから、防衛庁のこのような軍事情勢認識は、本当申し上げて困るのですよ。  ちょっと答弁する前に、では、その裏づけはないかといいますと、これまでもちゃんとあるのですよ。もうペレストロイカ、グラスノスチを言うまでもない。極東ソ連軍は、何やかんや言いますけれども、実際問題として八八年の十二月段階からいわゆる兵力五十万削減を国連で明らかにして、着々と進めているわけでしょう。しかも、一方的ですよ。それから国防費、いわゆる軍事費の削減あるいは軍需生産の縮小、こういうことを自国としても独自に進めながら、米ソ間でもINFの条約締結は言うに及ばず、戦略核まで五〇%削減方向に向けて今ジュネーブ会談が継続されている。近々、あと四、五日もすると、またブッシュ大統領ゴルバチョフが来年五月に向けての予備会談をする。こういう国際情勢変化に伴って、我が国は一体どういう軍縮、どういう防衛政策の新たな方向づけをやろうとしているのかという認識をただしているのです。そういうことに対しては、我々だってある程度物も調べ、国際の動きも見て、対応すべきところは対応していかなければいかぬじゃないかということを指摘をし、見解も述べているわけですから、これを、本を読むような答弁ではこれはますます理解しがたいですね。そういう認識では、防衛政策というものは本当にもっと国民の信を失いますよ、「なだしお」事件言うに及ばす。そういうことについてどうなんですか。
  288. 松本十郎

    松本国務大臣 グローバルな軍縮が進むことは大変望ましいことであり、我々もそれに大きな期待をかけております。  しかしながら、それが現実に進んでおるのはむしろ欧州ヨーロッパでありまして、極東ではいまだそれが進んでおらない。ゴルバチョフ軍縮発言をされましたが、その結果極東においてどの程度減っているのかというのもまだ定かではありません。中ソの間では少しは陸上兵力も減ったでありましょうし、西部シベリアではかなりの軍管区の整理をしたり、減ったとも聞かされておりますが、事極東に関しましては、例えば太平洋艦隊、これはソ連の最強の艦隊でありますが、古い、陳腐化しようとする艦艇は除籍しつつはありましょうが、新しい巡洋艦あるいはさらに新しい潜水艦配備し、最近は実験艦もヨーロッパから曳航してまいりました。あるいは航空機を見ましても、第四世代の飛行機も着々整備といいましょうか備えつつありますし、スリムにはなりましたが、我我の見る限りでは軍事力は減っておらない、むしろ強化されておる。しかも、二十年以上にわたって蓄積された軍事力というものはなかなか大きなものである。  したがって、その辺が現実に目に見えて減る見通しが立つならば、我々も日本として最小限の自衛でいいわけでありますから減らすことはできましょうが、今ソ連極東軍事力というものはそういう姿ではないと我々は現実に見ておるわけでございます。その辺のところが誤っておると言われればまた考えなければなりませんが、少なくともアメリカでも、「ソ連軍事力」というものをこの九月に出しましたが、やはりそういう面での潜在的な軍事力強化というものは依然として続いておるよというふうな見方をしておるのが現実でございます。
  289. 上原康助

    上原委員 どうも大変失礼なんですが、そういう認識ではちょっと国際的に通用しないのじゃないでしょうかね、長官極東ソ連軍、もちろんそれは見方はいろいろあろうと思うのですが、それはもう明らかに漸減しています。あなた、欧州は軍事削減、減るのだが、極東は、アジアはと言いますけれども、従来のアメリカの世界戦略とか軍事戦略から見れば、欧州正面なんですよ。それはもう議論すればいろいろありますがね。だから、当面欧州で起きることは即アジアにも波及してくるのです、これは国際的にも。その兆しは着々と出てきているのじゃないですか。その認識は今の国際情勢を見る上ではいかがかと思う。このことを強く指摘をしておきたいと思うのです。  極東ソ連軍軍事力というか、その量あるいは質の問題については、私もかつてこの委員会で防白を取り上げていろいろ指摘をしたこともありますけれども、皆さんが言うほどそんなに肥大化もしていないし、むしろ日本アメリカ、いわゆる日米の軍事力極東配備されている戦力というのははるかに質量ともに高いと思うのです。これはいずれ議論していいのですがね。だから、今まで皆さんが主張しているような論理だけでは通りませんよ。その点は指摘しておきたいと思うのです。  そこで、なぜ私がこういう認識をまず聞いたかといいますと、まず防白がなってないですね、今もあるように。そういう基調からしますと、いわゆるポスト中期防というのがもうわかり切っている。大体推測できる。どうも国内の政治や国民のいわゆる軍縮ムードというか、反核ムードというか、平和志向に世論が形成をされていくことにブレーキをかけるというのが皆さんの最たるねらいだと私は見ている、残念ながら。それは通用しなくなりますよ。  そこで、中期防問題に入りたいわけですが、さっきお尋ねしますと、防衛局長が憲法云々とおっしゃっておりましたが、要するに大綱の定める水準に達していない。大綱に定める水準が我が国防衛力整備目標なんでしょう。どうなんですか、長官
  290. 松本十郎

    松本国務大臣 目標ではあります。しかしながら、この水準を維持するということがまたこれ大変でございまして、技術は日進月歩でありますし、また、先ほどから申しておりますように、後方の充実なりあるいはまた隊員の確保、養成なり、やはりやるべきことはまだ立ちおくれておるので、残っておりますということでございます。
  291. 上原康助

    上原委員 どのくらい残っているのですか。
  292. 日吉章

    ○日吉政府委員 お答え申し上げます。  正面装備につきましてはおおむね大綱水準を達成するようなところまで来ておりますけれども、その正面装備中心といたしまして、防衛力全体のその能力をフルに発揮するような後方支援体制という面においてはまだまだ劣っております。どういう点が劣っているかと言いますと、例えば指揮・通信、情報機能等はそれほど充実したものにはなってございませんし、継戦能力あるいは抗堪性等につきましても諸外国と比べますとかなり貧弱なものではないかと思います。  さらには、何と申しましても、やはり国を守りますのは国民でございますし、自衛隊のいろいろな装備を操作いたしますのは隊員でございます。この良質な隊員を確保し、その士気を維持するための隊員施策という点につきましては、もう委員御自身が非常によく御存じと思いますけれども、いろいろな生活環境施設等はかなり立ちおくれた現状でございます。次期防期間中におきましてはこういう点にむしろ重点を置いて整備をしていきたい、こういうふうに申し上げたのが長官から申し上げました立ちおくれている部分の具体的な例でございます。
  293. 上原康助

    上原委員 今の隊員の補強とか人員の問題は、これはルーチンターというんだ。通常のことでしょう。やらなければいかぬこと。もちろん重要なことですよ、防衛力を維持していくという上では。  私が聞いているのは、「防衛計画の大綱」でいわゆる正面装備、ハードの目標としているのは、皆さんが主張してきたように、「防衛計画の大綱」で定めた水準、その別表が我が国が平和時において装備をすべき防衛力の水準でしょうということを聞いているのですよ。そうであるならある、なければない、明確にしてくださいよ。
  294. 日吉章

    ○日吉政府委員 大綱が予定しております防衛力整備水準の具体的な数量的表示は、まさに委員ただいま御指摘の別表でございます。この別表につきましては、先ほど来申し上げておりますように、最終年度平成年度予算はまだでき上がっておりませんけれども、現在のところ、若干の例外を除きましておおむね達成し得る状況にあろうと思います。  ただ、この大綱の中に掲げられております別表でございますが、この別表は注書きをいたしておりまして、ここに掲げられております装備等は、大綱を策定いたしましたときに保有しているもの、あるいはその段階整備を予定しているものを前提としてここに掲げたというふうに書かれてございますように、大綱が定性的に考えております防衛力整備水準というものも、その後の諸外国の軍事・科学技術の水準等の向上によりましては大綱の別表の中身が相対的に変わることがあり得る性格を大綱の別表そのものは持っているのだ、かように考えております。
  295. 上原康助

    上原委員 肝心なことを聞くとすぐ何か抜け道をつくって、いわゆるフリーハンドをいつでも持っておこうとする。それは防衛庁のシビリアンという面では、仕事をする上ではわからぬわけではないが、あなた、そんないつも逃げ道だけ考えちゃいかぬですよ。諸外国の軍事技術の水準云々よりか日本が一番先端なんだ。最先端なんだ、軍事技術は。だからFSX問題もアメリカとすったもんだしたのでしょう。ハイテクを含め、何が諸外国の軍事技術だ、日本がむしろ先導しているんじゃないですか。そんな空論というか、そういう理屈では我々納得できない。冗談じゃない。しかし、私が最初に指摘をしたいわゆる水準はおおむね達成した、その後どうするかを後で聞くから、余り予防線を張らずに、人の話に真剣に答えてくれ。  そこで、もう一点確かめておく。中期防の四年間の達成は何%なのか、それに要した費用は幾らだったのか、明らかにしてください。
  296. 日吉章

    ○日吉政府委員 金額につきましては、実は実質換算等の関係がございますが、進捗率で申し上げますと、昭和六十一年度から平成元年度まで四ヵ年間で約七八%でございます。六十年価格の実質額に換算いたしますと、十四兆数千億になろうかと思います。
  297. 上原康助

    上原委員 また数字が変わってきたね。皆さんのこれまでの国会答弁は十四兆三千三百億、達成率は確かに七八%、数千億というのは幾らなの。
  298. 日吉章

    ○日吉政府委員 失礼いたしました。  端数まで申し上げますと、十四兆三千三百億でございます。
  299. 上原康助

    上原委員 全体額はたしか十八兆四千億でしたね。
  300. 日吉章

    ○日吉政府委員 六十年価格で、おっしゃられたとおりでございます。
  301. 上原康助

    上原委員 この六十年価格というものがまたくせ者ではあるのですが、中期防を達成する一つの目安として皆さんが目標額というか予算化したのが五年間で十八兆四千億。これは単年度ごとの防衛予算とはリンクするの、しないの。
  302. 日吉章

    ○日吉政府委員 お尋ねの趣旨が正確に理解できているかどうかわかりませんが、十八兆四千億が毎年度必ず等比あるいは等差というような形で達成されなければならないというふうには考えておりませんが、現在まで四年間はおおむね等比の伸び率で予算が計上され、執行されてきている、かように理解いたしております。その結果が、達成率約七八%というふうになってございます。
  303. 上原康助

    上原委員 これも非常に防衛費を膨らませていく一つの手法というか、そういう技術としてとられてきている方式、いわゆる総額明示方式、それを単年度化していく、これは、もし次期防をつくるとすると重大な関係があるものだから、私はそれを聞くんだ。  しかし皆さん、僕は十八兆四千億ありきというのがおかしいと思うのですよ。六十二年でしたか、中曽根内閣時代に防衛費の一%枠を無理やり取っ払った。ここで考えてみると、中曽根内閣の罪悪というのは余りにも大き過ぎる。政治不信を招き、リクルートをまき散らした。これはもちろんその後の内閣とも関連している。あるいは国会審議権を無視する。防衛費一%枠を取っ払う。今そのツケがみんな回ってきているのですよ、政治にも。それは消費税とも無関係じゃない、我々はそう見ている。それは余談というか別の指摘なんですがね。  十八兆四千億ありきではないのですが、しかし、この十八兆四千億に近づけるために、年々の防衛費を他の諸経費よりもずっと多く概算要求を出し、国会のこの三百余りの議席というものを利用して進めてきたことは間違いない。  そこで、私がなぜこの点を指摘するかといいますと、仮に十八兆四千億ありきということではないけれども、さっき皆さんがおっしゃるように、もう次年度において、正面装備は大綱水準におおむね達する。後方支援問題は、いろいろあるけれども、まだ積み残しが幾らかある。その積み残しが幾らかはあるというのは、私も数字的に持っているけれども、これはいわゆる予側装備なんですね。自衛隊の運用について絶対不足しているという状況でない。むしろ逆に余ったものなんだ。余計なやつ。これが積み残しとして来年度中にあるいは残るかもしらないということになっちゃう。  そこで、なぜその点を指摘するかといいますと、次年度防衛予算を概算要求しているのは幾らなの。
  304. 藤井一夫

    ○藤井(一)政府委員 平成年度の概算要求額は、四兆一千六百八十八億円でございます。
  305. 上原康助

    上原委員 これはまさに防衛費の伸び率からしても、国際的にも皆さんがよく言うNATO諸国と関連しても、いろいろ数字のとり方はあるけれども、それを言うとまた絶対額云々を――絶対額でもNATOよりは高いんだ。あるいは対GNP比のことを言うかもしれませんがね。本来ですと、十八兆四千億を上限とするならば、来年度防衛予算の概算要求は四兆七百億で足りるはずなんだ。それを約一千億円も水増しをしている。また給与改定とかあれこれあると言うのでしょうが、これはおかしいですよ。この点、どういうふうに説明するの。何で防衛費だけ今の状況で特別扱いしなければならぬのか。お答えください。
  306. 日吉章

    ○日吉政府委員 委員がただいまおっしゃられました、二年度の十八兆四千億の中からの残りの部分は四兆七百億ではないかという御指摘でございますが、まさに六十年度価格に換算し直しました場合に、十八兆四千億の中から六十一年度から平成元年度まで予算措置されましたものを控除しました残りは四兆七百億になります。その点は委員指摘のとおりでございますが、この金額は六十年価格の金額でございますので、これを名目額に換算いたしますと、四兆一千六百八十八億という二年度概算要求とおおむね等しくなると思います。そういうことでございます。といいますのは、これは予算を立てて政府予算ができ上がりますときに、デフレーター等を経済見通し等に基づきましてどういうふうに設定するかということが決められるわけでございまして、今の段階で、この概算要求額が即そのまま正しい来年度のデフレーターをあらわして換算した上で概算要求をしたということには必ずしもなってございませんが、これはおおむね実質、名目等しい金額になっている金額が現在要求いたしております四兆一千何がしの金額になろうと思います。
  307. 上原康助

    上原委員 だから、六十年度価格というのはくせ者なんだがということを私も指摘をした。実質的には、実勢価格にすると十八兆四千億ではない、中期防トータルは。もしそうであるにしても、デフレーター、いろいろ数値のとり方があるでしょう。しかし、冒頭指摘したように、国際情勢変化、国民の世論、こういうことを考えるならば、最初に十八兆四千億ありきではないけれども、六十年価格とかなんとかかんとか言わぬで、理屈はつけないで、その範囲内でせめて努力をするということが防衛庁のこれまで言ってきたこととも合致するし、今の状況から私は妥当だと思うのですね。今後、四兆一千六百八十八億概算要求したからといって、今までどおりすんなり国会ももろ手を挙げてしゃんしゃんでいくと思うのですか、本当に。こういった今の防衛費というもの、防衛予算というものを非常に厳密にいろいろ吟味しなければいかない点があるのですが、きょうは目立った大きな点だけを指摘をしておきたいわけです。ですから、こういう予算要求あるいは伸び率も、他の予算案と比較するまでもなくべらぼうに高いわけでしょう。  そこで、この中期防と今の防衛予算の問題とをまとめてお尋ねしますが、ポスト中期防というのはどうするのですか。どういう基本的な立場で今進めておられるのか、まず御答弁ください。
  308. 日吉章

    ○日吉政府委員 委員御案内のように、次側防衛力整備計画は政府計画として決定されることになりますので、最終的には安全保障会議政府レベルの場で検討されることになりますが、現時点におきましては、その一員であります防衛庁限りの作業として作業が進められております。そういう状況にあるという点でお聞き取りいただきたいと思います。  防衛庁の中での作業状況でございますが、まず国際情勢をこの先どういうふうに見通すかという点が大前提になります。したがいまして、これにつきまして現在いろいろ検討しているところでございますけれども、現在の国際情勢は、先ほど来いろいろ御議論がなされておりますように、極めて流動的ではございますけれども、米ソ中心とします核相互抑止を含む力の均衡によって大きな武力紛争が抑止されてきた、こういうふうな構造そのものが将来中期防期間として予想されるような期間内に、根本的に根底から直ちに変化してしまうというようなことはないのではないかというような前提を直いております。しかしながら、国際情勢は極めて複雑、流動的でございますから、私たちは、次期防計画の作業の過程においても絶えず国際情勢の動向には注目を払わないといけない、かように考えております。  そういう前提に立ちまして、中身でございますが、先ほど来御説明申し上げておりますように、正面装備につきましては、委員もただいま御指摘のように、大綱水準におおむね量的に達しておりますものですから、量的拡大を図るというよりは、むしろ将来の方向を展望した、あるいは周辺諸国の軍事技術の動向等をにらみながら質的向上を図るという点に留意すべきではないか、こういう考え方を持っております。それよりも、むしろ全体として見ました場合には、正面装備と一体となってその能力を有効に発揮するための情報・指揮、通信機能等の各種支援能力の充実に力を注がなければならないのではないかという問題意識を持っております。さらは、人的資源の制約というような問題も社会環境の変化によりまして生じてきておりますので、その観点からの隊員施策の充実を図るとともに、逆に私ども自身が防衛力全般にわたって効率化、合理化を徹底させなければいけない。それによって省力化を図ることによって人的資源の制約にも対処しないといけないであろう、このような問題意識を持ってそれぞれ作業を進めているところでございます。
  309. 上原康助

    上原委員 防衛庁長門初め防衛局長がいろいろお述べになって、今の国際デタントの中で、さてポスト中側防をどうするか、どうすれば国民の納得、納得というか説得できるのか。基調としては従前どおりの防衛力整備増強路線を踏襲していきたいというのが残念ながら皆さんの頭にこびりついてしまっているからそういう言い方。苦悩していることはわかるわけですが、私は、それは通らないと思う。  ちょうど今の状況というのは、かつて四次防が終わって今の中期防ができたあの時点と似ているのです。あれよりもっとデタント志向、だから極めて大事な重大な転換期であるということだけはぜひお含みをいただきたいと思うのです。しかし、残念ながら巷間伝わっているところでは、防衛庁内部では次期防の九一年度以降、平成年度以降にも五年間で五兆円の巨費を投ずる計画が検討されているとか、盛んに指揮・通信、情報ということを――これはこの間の中期防の途中見直しでしたか、防衛費の一%枠を削ったときの官房長官談話か何かにもあったわけなんですが、明記されているわけだが、いわゆる洋上防空構想とか前方対処、OTHとか、あるいはAWACS、早期警戒機、場合によっては給油機、そういうことが想定されて作業が皆さんの内部あるいは制服間で進められていることはあるのか、ないのか。あなたが言うように量的においては概成されたというのであるならば、確かに指揮・通信、情報という面は現在装備されているもの、保有しているもののいろいろの取りかえであるとかあるいは若干の改良ということはあるにしても、新たに空中給油機であるとか――イージス艦だって、宝の持ちぐされだというので、アメリカ国会で問題になっているのですよ。イージス船というのもワーストテンの中に入っている。なぜそういうことを防衛庁は真剣に再検討してみようとしないのですか。そういうことも想定して次期防は作業が進められているのかどうか、この際明確にしてください。これは長官から答えてもらいたい。
  310. 日吉章

    ○日吉政府委員 今委員の方から幾つか個別、具体的な正面装備の名称が出されましたが、私どもはこれから各般の検討を進めていくということでございまして、まだ具体的な正面装備の積み上げ作業等には至っておりません。そういう状況でございます。
  311. 上原康助

    上原委員 さっきの答弁とちょっと違いますね。  では、角度を変えてお尋ねしてみましょう。  あなたは、正面装備においては水準をおおむね達成されたと。これは別に読むまでもないのですが、今度の防白の百ページ「防衛政衆 防衛計画の大綱」というのがある。   「大綱」は、わが国が平時から保有すべき防衛力の水準を明らかにし、わが国の防衛力整備のあり方などについての指針を示したものである。昭和五十二年度以降の防衛力整備は、この「大綱」に従って進められてきた。 だから私は、これが目標でしょう、水準でしょうと言っている。  さらに百一ページ「わが国が保有すべき防衛力」、   「大綱」は、わが国が平時から保有すべき防衛力の水準などの枠組みについて、  ① 防衛上必要な各種の機能を価え、後方支援体制を含めてその組織及び配備において均衡のとれた態勢を保有するものであること。  ② 平時において十分な警戒態勢をとり得るものであること。  ③ 限定的かつ小規模な侵略に原則として独力で対処し得るものであること。  ④ 情勢に重要な変化が生じ、新たな防衛力の態勢が必要とされるに至ったときには、円滑にこれに移行し得るよう配意された基盤的なものであること。 この四つしかないのですよ。  だから、国際情勢変化、むしろ今私が④で挙げた「情勢に重要な変化が生じ、新たな防衛力の態勢」云々は、緊張が激化したときに向けてというふうに読めるのです。今、百年か二百年に一回しかない国際デタントというような重要な時期に、政府みずからが打ち出したこの「防衛計画の大綱」を一体次期防において改廃するのかしないのか、いまだに何かアドバルーンを上げて国民の反応を見るとか陽動操作でやるのだが、そういうテクニックはもうよしてもらいたい。はっきり答えていただきたい。  今私が指摘をした、皆さんが防衛政策を整備をする基本方針として定めてきたこの大綱をポスト中期防においてどうするのか。これはまだ先のことだからといって逃げておっていい課題じゃないです、防衛庁長官。まさに国民が今知りたいことだ。国会でも最近は残念ながら余りこういう議論もせられていない。ぜひひとつ明らかにしてください。
  312. 日吉章

    ○日吉政府委員 「防衛計画の大綱」でございますが、これはただいま委員も御指摘になられましたように、これが策定されましたのは昭和五十一年でございまして、そのときはまさにいわゆるデタントあるいはデタントムードと言われる時期に該当するかと思いますが、そのときに策定されたものでございます。したがいまして、その「防衛計画の大綱」が前提としております間際軍事情勢も、東西間の全面的な軍事衝突あるいはこれを引き起こすおそれのある大規模な武力紛争が生起する可能性は少ない、それから我が国周辺においても同じだ、こういうふうな前提を設けて、その前提に立ちましてただいま委員がおっしゃられましたような我が国の保有すべき防衛力の水準の枠組みを設定しているわけでございます。  こういうふうな点から申しましても、私どもといたしましては、これから国際情勢をなお慎重に検討しながら次期防の作業を進めないといけないと思いますけれども、現時点におきましては、この大綱の基本的な枠組みを見直さなければならないというような国際情勢等の基本的な変化はないのではないか、かように認識いたしておりまして、この「防衛計画の大綱」の枠組みの中で作業することを今のところ考えているところでございます。
  313. 上原康助

    上原委員 私もさっき指摘したでしょう。五十一年、私はあのころから、亡くなられた久保さんといろいろやったのだよ、基盤的防衛力構想。随分勉強させられた。あの方が生きておれば今変わっておったかもしれぬ、失礼だが。失礼というか残念ですね、ああいう防衛の大家は今ごろ日本に役立っておったかもしらぬ。あのときの国際情勢デタントよりなお進行しておるのです。  皆さんは何と言った。七九年のソ連のアフガン侵略とか、中近東のあっちこっちで局地戦争が起きている、国際情勢は緊張の方向にある、ソ連極東軍は増強の一途をたどっている、ソ連は怖い怖い、そう今まで言い続けて、あの基盤的防衛力の基盤をなし崩しにして今日の防衛力、GNPの一%をとうとう取っ払ったわけでしょう。ところが、いろいろな起伏はあったにしても、今ほど国際緊張緩和が進んでいる時期はないのですよ。これさえも否定するというなら何をか言わんやだ。大綱のこの基本を、枠組みを変える国際情勢にはない、これは一つの見識でしょう。これまでも変えなければいけないとか検討しますなんて言ったら物笑いになりますよ、本当に。  そうしますと、大綱というのはその別表も不離一体でしょう。
  314. 日吉章

    ○日吉政府委員 まさに大綱の別表は大綱の中に不可分の別表でございますから一体でございます。ただ、私が先ほど申しましたように、大綱の基本的枠組み、大綱の基本的な物の考え方前提としつつも、別表というものには弾力的な性格を持っている点はあると考えられます。  ただ、私がこういうふうに答弁いたしますことは、それでは次期防期間中に別表を改定するとかそういう意味で申し上げているのではありませんで、大綱と別表とは一体であるなという御質問でございましたので、一体ではございますが、理論的な話といたしまして大綱の枠組み、大綱の基本的性格は変えないでも別表が改定されるということは理念的にはあり得るということを申し上げているわけでございます。
  315. 上原康助

    上原委員 余計なことはいいよ、後の方は。  そこで、まとめて長官からお答えいただきたいわけですが、その前に、次期防衛力の整価とも関係するのでちょっとだけ聞いておきます。  今度の法案とも関連するわけなんだが、何か報道によると、防衛庁は九〇年度末の人員を今年八月の概算要求時点での計画より約五千六百人減らす、そういう方針を固めたということですが、これは事実なのか、どうですか。事実とすればどういう理由で――まあわからぬわけじゃない、いろいろさっきのやりとりを聞いてね。
  316. 藤井一夫

    ○藤井(一)政府委員 先ほど来人事局の方から答弁がございましたように、募集状況が大変厳しいということは私ども十分承知しておりますが、現段階で八月時点の概算要求そのものを変えるというようなことは、まだ計画をしておりません。
  317. 上原康助

    上原委員 予算要求を変えるというんじゃない、その計画より五千六百人減らすという報道があるが、これは事実かどうかを聞いているのだよ。あなた方、一遍概算要求したのを減らすはずがあるか。
  318. 藤井一夫

    ○藤井(一)政府委員 概算要求そのものは、先生指摘のように変えることはできませんけれども、これから政府案の段階でいろいろ政府全体で検討すべきものであるということは、そのとおりでございます。
  319. 上原康助

    上原委員 そうしますと、自衛隊の定員の削減をする計画を持っているということですか。はっきりさせてください。
  320. 日吉章

    ○日吉政府委員 委員の御質問の趣旨が正確に把握できているのかどうかちょっとわかりませんが、今委員が御指摘になりました定員というのは、まさに定員をふやすという増員の問題と、もう一つ現実隊員をその定員の中でどれだけ採用するかという充足率の問題がございます。この定員と充足率というのは別の話でございまして、先ほど委員から御質問をちょうだいいたしました採用の人間を計画よりも減らすのかという点はむしろ充足率の概念でございまして、増員に伴います定員改定の概念とは、人の問題という点では同じでございますけれども、違う概念でございますので、この点を御理解賜りたいと思います。
  321. 上原康助

    上原委員 そこが矛盾しているから聞いているのです。定員は定めても充足はできない、そんなのはもう一々聞くまでもないです。また聞いてもむだです。何かの資料を見ればすぐわかる。いわゆる定員の十八万体制は変えないという。しかし、五千六百ぐらい充足不可能とすれば、これはもう変えざるを得ないわけです。検討しているというわけだ。そんなことをやっておきながら、また何でこんなに自衛官を増員とか予備自衛官をふやすような法案を出すの。八月あるいは七月ごろからそういうことでやってきたかもしらないが、まだ概算要求であって、次の予算審議はまたどうなるかもわからない。国の予算がどういうふうに査定されるかもわからぬ段階で、こんな矛盾したこともあるということを指摘しておきます。  そこで、ほかにも聞きたいことがありますから、きょうは基本的な点を問題指摘をして、長官にお答えいただきたいわけです。  先ほどから議論をしてきましたように、防衛局長からもある程度の見解表明、答弁はあったわけです。しかし、失礼ですが、私が聞きたいことにまだ素直に答えていない。そこで、今私が指摘したように、日本防衛力整備目標というものははっきりしている、防衛計画大綱を変えるような国際環境にない、当たり前の話。大綱と別表は不離一体のものである。理論的にはそうなんだ。しかし、別表は若干の柔軟性を持っている。ここは逃げ道だろうが、不離一体のものであるというならば、私たちが今ぜひ確かめておきたい、国民が知りたいことは、こういう国際環境で、さっきから指摘をし、議論をしてきましたように、「防衛計画の大綱」というものを一体政府は次期防において変えるのかどうかということなんです。別表は維持するのかどうか。少なくとも私は賛成じゃないのです、理解はできるところもありますけれども。やはり今の国際環境あるいは日本軍縮、いろいろなことを考えた場合には、防衛力の水準、レベルというものを中期防なら中期防の達成された段階で凍結をして、総点検をして、日本安全保障というものをもう一遍検証すべき段階だと私は思う。そのために、かつて坂田防衛庁長官がやっていた防衛を考える会でしたかね、あるいは今は税制協の問題とかいろいろあるのだが、学者、文化人を入れた形で、我が国のこれからの中期防以降の防衛力はどうあるべきなのか、このままどんどん膨れていっていいのか、国民的レベルで防衛力整備というものを再点検する何らかの新たな手法というものを考えるべきだと思うのです。  そういう意味で、ぜひまとめて、我々はそういう見解を持って、現実的に防衛政策に対しても対応できる面は対応していきたい。また、自衛官の待遇問題であるとか後方支援の問題であるとか、人間的立場で解消しなければいかぬ問題は、今日までも社会党もできる面は角屋部長中心にやってきた。だが、今までのように政府が正面装備であるとか防衛力はもう絶対不動のものだという考え方では、そういったテーブルの土台がつくれませんよ。まさに今国民はそれを求めておられるのじゃないですか。  そういう意味で、この「防衛計画の大綱」を再来年度以降も変更するつもりはない、大綱と別表は不離一体であるから、それもあわせて堅持をした上で次期防をどうするかを検討していく、これが今国民が、求めているというのは強過ぎるかもしれませんが、知りたい大事な点だと私は思うのです。これまでかなり議論してまいりました。また、私の考え方あるいは問題点も指摘をしてきましたので、松本防衛庁長官の方からまとめてお答えをいただきたいと思います。
  322. 松本十郎

    松本国務大臣 大綱の水準そして別表、これは変えません。しかしながら、御承知のように別表に掲げるいろいろの火器その他、航空機等を見ましても、艦艇もそうでありますが、技術の進展の中で刻々変わるわけでありますので、一回決めたからそれでもうすべて終わりというほど単純なものではございません。そういう変化に対応して新しいものに取りかえていく必要がございますから、そういう質的な転換というものによってかなりの予算もまた要るでありましょう。さらにまた、隊員の後方充実とか指堀、情報機能の充実もこれまでやってきたと言われますが、正面装備の充実に全力を挙げました結果、それらの指揮・通信機能の充実とか隊員の処遇改善とか生活環境、勤務環境の整備というものが甚だしく立ちおくれているのが現状でございます。恐らく委員も基地の現状をごらんになったように、余りにも古い、また狭隘な、しかも二段ベッドとか三段ベッドの残っておる隊舎、隊員の生活環境、あるいは狭い、やりにくい勤務環境、例えば北海道へ行けば、戦車の整備をするのに暖房装置もない、手の凍える中で仕事もできないのにどうしても整備をしなければならぬという現実もあるわけでございまして、それやこれやを考えてまいりますと、おくれておる後方の充実にはまだまだ相当の予算が要るということでございまして、そういう点から、今のままで凍結するということはとてもできないというふうな認識を持っております。  しかも、世界的なデタントあるいは軍縮、これは望ましいことでありますが、ムードが先行している割にはまだ我々の周辺には及んでない。かなりの時間、タイムラグを持ってくるのでありましょう。したがって当面は、望ましいことでありますがすぐに軍縮へと方向転換することは難しい、こういう認識に立って、これからの中期防について国際情勢の分析なり見通しなり、あるいはまた、軍事技術の進展なりを踏まえながら対応していきたい、こういうふうに考えております。
  323. 上原康助

    上原委員 基調はちっとも変わらないということだな、松本長官は。あなたも自民党内ではハト派ではないようだから、それはわからぬわけじゃない。しかし、そういう御認識はいかがでしょうか。皆さんは何かすぐみんなごっちゃにするから困るんですよ。後方支援体制、それはもちろん防衛予算のトータルではそうでしょうが、我々が問題にしているのは、計画大綱、別表というのはあくまで正面装備を主体にしたものなんですよ。指揮・通信、情報機能というものを防衛力の中で全く後方支援というふうに理解するのですか。必ずしもそうでもないわけでしょう。そういう論理はおかしいよ。  そこで、長官の御見解はわかったわけですが、大綱を変える意思はない、これははっきりしていますね。従来もそう言ってきた。また変えられないでしょう、まさか今の状況で。幾ら自民党にタカ派がおるといったって、今ごろ大綱を見直してもっと防衛力をばんばんやろうなんて言い出したら、それはおかしくなるよ。そうしますと、別表も、装備ですからいろいろ日進月歩をする、軍事技術によって変動はある。それは若干の柔軟性はまずは理解をいたしましょう、認める立場じゃないにしても。別表に定められている数量的なもの、それは変える意思はないわけですね。
  324. 日吉章

    ○日吉政府委員 まず大綱でございますが、大綱につきましては、現時点におきましてはその基本的な枠組みを見直さなければならないような国際情勢等の基本的な変化はないのではないか、かように認識いたしております。  さらに、その大綱の中の別表の改定の問題でございますが、これにつきましては、先ほども申しましたように、大綱の基本的な考え方、枠組みを変えない場合にも大綱の仕組みの上からは理論的には改定をし得る可能性があるということは、私御答弁申し上げたとおりでございます。これにつきましては、今後次期防作業を詰めていく過程におきまして、かつ、政府レベルの安保会議等におきまして最終的には御決定をいただくことになろうと思います。  ただ、この別表の問題につきましては、委員に御理解を賜りたいのでございますけれども、それほど硬直的にお考えをいただく必要のない面があるのじゃないかと思います。これは委員ただいま御指摘のように、装備あるいは部隊編成等を前提といたしまして数が書かれてございますが、場合によりますと、一つの例といたしましてその枠の組みかえをいたしましてトータルいたしました数量等につきましては増減はない、あるいは減になる、しかしながら近代的な装備体系あるいは近代的な編成体系を考えますと、今のような枠組み、区分けということは必ずしも合理的ではない、こういうような場合も考えられるわけでございます。したがいまして、別表の問題は、非常にリジッドに変える、変えないというような形で御議論をお詰めいただくということは、何といいますか、正確な御議論を進めていただく上で必ずしも適当ではないのではないか、かようなことを考えております。その点を御理解賜りたいと思います。
  325. 上原康助

    上原委員 またそういう答弁になると、こっちもまたいろいろ疑問もあるし指摘をせざるを得ないわけです。きょうのところはこの程度にしたいわけですが、今あなたが言う陸上自衛隊の基幹部隊の編成であるとかあるいはいろいろなことについては、前々から言っておるように、防衛力検討委員会ですか、検討されているというのを聞いている。また若干その資料も読んだことがある。重ねて念を押しますが、大綱変更意思なし、大綱を変える状況ではない、別表も大枠において変更はないと理解していいですね。
  326. 日吉章

    ○日吉政府委員 繰り返し同じ答弁を申し上げて恐縮でございますが、大綱につきましては、現時点におきましてはその基本的な枠組みを見直さなければならないような国際情勢等の基本的な変化はないのではないかと認識いたしております。
  327. 上原康助

    上原委員 それと、予算規模というのはどういうふうに考えているのですか。総額明示なのか、ローリングなのか、巷間伝えられるように二十五兆も目標にしての計画なのか、防衛庁としてはどういうふうに考えているのか、これも一応明らかにしておいてください。
  328. 日吉章

    ○日吉政府委員 防衛庁といたしましての次期防作業の思考のプロセスでございますが、先に金額ありきという考え方には全く立ってございません。先に国際軍事情勢等を勘案しまして、来たるべき次期防期間、これをいつ、どれだけの期間と設定するかという問題も別途ございますが、その期間にどのようなレベルのどのような内容防衛力整備を図ることが望ましいかということから思考をスタートさせたいと思っております。その結果、金額をはじきましたところその金額が幾らになる、その金額はすぐれて総合的な判断が必要となりますから、安保会議政府レベルで御議論いただくことになろうかと思いますけれども、国際的あるいは国内の経済財政事情とその他の施策とのバランスというようなものをとりながら検討されることになるのではないかと思います。  そのときに、これはまた安保会議等の場で総合的に御判断をいただくことでございますけれども、今の時点で防衛庁の希望なり考えを言えと言われますと、私たちとしましては、やはり防衛力整備計画の事業内容と金額とがある程度密接に結びついていた方が計画といたしましては実のあるものになるのではないかと思います。  それから、中期防期間中の六十二年度からは総額明示方式で防衛力整備してきたという経緯もございますので、総額明示方式というのは次期防におきましてもとり得る一つの有力な方式ではないだろうか。単に防衛力整備内容とは直接関係なくして、経済指標等に計数的にリンクさせるというような形で防衛力整備に要する経費の一つの枠組みを設定するということよりも、より適当なのではないだろうかというような感じを持っておりますけれども、これは各般の御検討をいただいた上で、政府レベル全体で最終的にはお決めいただく問題だと考えております。
  329. 上原康助

    上原委員 最後に長官からお答えいただきたいのですが、大体皆さんがどういうことを想定しながらいろいろやろうとしているかは私なりにある程度きょうの議論でわかったわけですが、また、この会議録で後ほど少し勉強して、もっと突っ込んだ議論もしたいわけです。御承知のようにアメリカも防衛費、いわゆる軍事費の大幅削減を最近打ち出しましたね。これを国民は見ていますよ。聞いている。当然でしょう。もう軍事力で世の中を支配しようといったって、そういう状態じゃない。ソ連だってそう。さらに、もう脱イデオロギーの時代なんです。どうすれば世界人類が平和で楽しく豊かに人生を生きられるかということに世界の志何は向きつつある。軍事の面においても経済の面においても文化の面においても私たちはそう理解する。もちろんそんなに簡単ではないということは前提ですよ。そういう状況で皆さんが次期のポスト中期防をおつくりになる。何かのものをつくるでしょうが、国民は大変関心を持っていると思うのですね。米ソの超軍事大国あるいはその他の、皆さんがよく言う西側陣営の各国がとろうとしている防衛費削減軍縮、そういうこともぜひ十分取り入れてやっていただきたいと強く注文をつけ、要望しておきたいと思うのですね。  そこで、いつごろまでに防衛庁としての作業はめどづけるのですか。この点は防衛庁長官からお答えいただいて、ひとまずこの件については締めたいと思うのです。
  330. 松本十郎

    松本国務大臣 国の防衛は国民の皆様の御理解と支持を得なければ進められないということは、もう委員指摘のとおりでございます。そして、世界的な軍縮とかデタントムードは先行して進んでおります。そういう中で、我々は来年度防衛予算なりそれに続く次の防衛計画をつくらなければならないという責務を負っているわけでございまして、いかに国民の理解を得るかということはこれからの大問題であります。しかしながら、GNPに対して二けたの防衛費、予算を長年にわたってやってきたアメリカとかソ連というものは、少々の軍縮をしたからといって軍事大国をおりるということは絶対にないと我々は考えております。あるいはヨーロッパの国々もどんどんと軍縮が進んでいくでありましょうが、GNPに対して今三%、四%というものが一挙に二になり一になるということは到底考えられない。日本は一生懸命やってはまいりましたが、その充実する段階アメリカとかソ連に比べて、あるいはまたヨーロッパの国に比べてもまだまだ立ちおくれているということは厳然たる事実でございまして、それやこれを踏まえながら、国民の御理解を得つついかに防衛予算をいただき、また防衛政策を進めていくか、この責務を果たしてまいりたいと考えておるわけであります。
  331. 上原康助

    上原委員 私が聞いたことにはお答えにならない。次期防をつくるのかつくらないのか、その作業はいつまでに防衛庁としてはめどづけるのですかということを聞いたのです。それはさっきあなたは言っておったですよ。
  332. 松本十郎

    松本国務大臣 来年度予算要求、夏までに大体決めるつもりでおります。
  333. 上原康助

    上原委員 かみ合わそうと努力をしても、皆さんの方が非現実的だからなかなかあれですね。私が指摘をしたことも、参考にできる点、あるいは国民が求めているというか、国民が期待をしているようなこれからの日本の防衛政策、そういうものがあると私は思うのです。私は、今まで自民党政府が進めてきたことが絶対であって他の選択はないとは思いません、防衛問題についても安全保障の面についても。それは幾らでもあると思う。我々はそれを模索していきます。不十分ではありますが、社会党もそれは勉強していますよ。むしろ皆さんの方が、すり合わせて共通の土台をできるだけ狭めていこうとしたら、どんどんアメリカの方に逃げてしまうからどうにもならない。その点も指摘をしておきましょう。  こういう議論だけしていると、私が聞きたいことがまた聞けなくなっても困りますから、次の問題に移ります。  「なだしお」とFSXの問題も聞きたいわけですが、非常に重要なことなので、昨年十一月金武町伊芸区で発生したいわゆる流弾事件の件で先にお尋ねしたいわけです。  一年有半かかってまいりましたが、沖縄県警がいろいろ御努力なさったことは、私はそれなりに敬意を表し、評価をしておきたいと思います。しかし、納得しがたい点も多い。といいますのは、十一月二十二日に、この金武町の被弾事件で、実弾を発射した在沖米海兵隊員ら、キャンプ・ハンセン基地司令官、当時の在沖米四軍調整官、計七人に対し那覇地検に書類送検をした、これは間違いないですね。どういう書類送検をしたか、まず簡潔にお答えください。
  334. 鈴木邦芳

    鈴木説明員 お答えいたします。  伊芸地区における米軍銃弾にかかわる事件につきましては、沖縄県警は、所要の捜査を遂げまして、ただいま先生指摘のように十一月二十二日、事件を那覇地方検察庁に送付をいたしたところであります。
  335. 上原康助

    上原委員 ですから、その送致をした中身、概要についてもう少し、明らかにできる範囲でいいですから。
  336. 鈴木邦芳

    鈴木説明員 捜査の中身でありますが、本件につきましては、警察といたしましては、射撃訓練場でありますレンジ6、それから被弾場所の実況見分、被告発人及び参考人からの事情聴取、弾丸の鑑定などの捜査結果を総合的に検討いたしまして、告発のあった器物損壊、暴行及び殺人未遂罪につきましては犯意の立証ができないなど証拠に乏しく、こうした理由から被告発人等の刑事責任を追及することは困難であるとの意見を付して送付をいたしたところであります。
  337. 上原康助

    上原委員 被告発人は何名ですか。
  338. 鈴木邦芳

    鈴木説明員 七名でございます。
  339. 上原康助

    上原委員 そこで、いろいろ難しい点があるということは、前にこの点をお尋ねしたときも推測というか理解できたわけですが、問題は、県警の方が努力をしてそこまで、米軍の軍事演習にかかわる事件で事件送致をした。こういうことはこれまで前例があるのですか、ないのですか。
  340. 鈴木邦芳

    鈴木説明員 これまでの前例はございません。
  341. 上原康助

    上原委員 それだけに、今回のこの県警がとられた行為には、基地被害で痛めつけられている県民の側からすると、不満足ではあっても何らかの歯どめになるのじゃないかという期待感があるということを警察庁も理解をしていただきたいと思うのです。  そこで問題は、容疑を立証する証拠に乏しく罪は問えないという意見書を添えて書類送検した、それは、書類送検の場合にそういう罪状調書というのは、私は難しいことはわからぬし、疎いものですからあれなんですが、なぜそういった意見書をあえて付したのか。むしろその点については検察側に任すべきことではないのかという指摘が強いわけなんですが、この点についてはどのような御見解をお持ちですか。
  342. 鈴木邦芳

    鈴木説明員 警察が事件の送致、送付を行うに当たりましては各種法令によって行うわけでありますが、犯罪捜査規範によりまして犯罪の事実及び情状に関する意見を付すべきものとされておるところであります。  本件におきましても、警察は捜査の結果、この犯罪捜査規範の定めるところによりまして被疑者の処分に関する意見を付したということであります。
  343. 上原康助

    上原委員 そこはいろいろあったのでしょうが、一歩踏み込んだ取り上げ方である点は努力を認めておきたいと思います。  そこで、現場の実地検証をやった、また被疑者の尋問というかそういうこともやられた。それでポイントは、住宅地域に銃口を向けた野蛮きわまる軍事演習であったがゆえにこの種の危険が起きたわけです。故意であったかどうかということは、起訴されればこれからいろいろ専門家の中で、裁判の中で明らかになるかもしれません。そこで、この金武町で起きた軍事演習が米軍の重大な過失があったがゆえに起きた事件であったということは捜査の結果認められるのかどうか。ここが肝心な点だと思うのです、仮に罪の立証ができなかったにしても。米軍の演習というものが重大な過失があったのかどうか、あったと認めているのかどうか。この点の御見解をぜひ明らかにしておいていただきたいと思うのです。
  344. 鈴木邦芳

    鈴木説明員 私どもは、やや長期間を要しましたが、事案の全貌を明らかにすることができ、そのことによって送致することができたと理解をしているものであります。  ただ、具体的な内容の詳細にわたりましては、先生指摘のように、検察庁の今後における捜査の問題等もございまして、ただいま私ども、詳細に申し上げかねるところもございますし、またあわせて、警察としては個々の行為の犯罪の有無については捜査をする立場にございますけれども、米軍の演習の全体について御質問のような過失の有無についてコメントする立場にはございませんので、御了承いただきたいと思います。
  345. 上原康助

    上原委員 そこからがまた警察のよくないところだよ。  そこで外務省、一番アメリカの友達、防衛施設庁も、こういう米軍演習によって事件送致をされた、私が聞く範囲においては、、重大な過失があったと認められる、だから事件送致をしたのだという判断が強い、こう聞いている。外務省や施設庁にはこのことについては通告があったのですか。また、このような事件送致をされたことに対して、沖縄の基地のあり方、米軍演習のやり方等について、外務省や防衛施設庁はどういうふうな認識でどう対処するのか、見解を聞かしてください。
  346. 松本十郎

    松本政府委員 送致の件につきましては、私どもの方には通知はございませんで、報道等に基づきまして承知したわけでございます。ただ、米軍といたしましては本件について非常に深刻に受けとめておりまして、例えばハンセンの第六射場の実弾射撃訓練の取りやめであるとか、すべての海兵隊の実弾射撃場の安全性の再確認であるとか等等の安全対策措置を講じたというぐあいに伺っております。
  347. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 今施設庁長官が答えられたことと同じことでございます。同じ立場でございます。
  348. 上原康助

    上原委員 そんなそっけない認識ですか。これだけ問題を起こして事件送致を仮にされても、仮にというか犯意立証が難しい、容疑立証が難しいがという条件はつけられておっても。私がなぜこれを聞くかというと、これは都市ゲリラ訓練施設とも重大な関連があるから外務省や防衛施設庁の認識を聞いているのです。賢明な回転の速い有馬局長なら私が言わなくてもその程度わかるでしょう。  そこで、もう一度警察庁にお尋ねします。これは今のお二人にも聞いておっていただきたいのですが、この書類送検と同時に、県警本部長名で基地内の全射撃場の総点検と抜本的対策を文書で申し入れた、このようになっております。私は直接本部長には会いませんでしたが、担当者に聞いてみたら確かにそういう申し入れを県警本部長名でやった。これは事実なのかどうか。この申し入れの中身を資料として提出してもらいたい。また、どうしてもだめというならば、どういう内容を含んでどういう内容で総点検と抜本的対策を必要と認めて申し入れたのか。外務省や施設庁はそれを知っているのか。受けとめているのかどうか。あわせてお答えください。
  349. 鈴木邦芳

    鈴木説明員 お答えいたします。  捜査の結果、本件の事案が米軍の訓練中に発生したものであることが明らかになりましたので、沖縄県警察本部長名で在日米軍沖縄地域調整官に対しまして、県下の米軍基地射撃訓練場の総点検を実施して二度とこのような事件が発生しないように抜本的な対策を講ずるように申し入れを行っているところでございます。  その内容でありますが、先ほど来お答えを申し上げておりますように、訓練中に発生した事故であるということと同時に、こうした事故がないように申し入れをしたということから、おおむね内容的なものは御理解をいただけると思いますけれども、具体的な内容の詳細につきましては検察庁においてなお捜査中の事件でありますので、御了解をいただきたいと思います。  なお、防衛施設庁に対しましては、その内容について連絡を行っておるところであります。
  350. 松本十郎

    松本政府委員 ただいまの文書につきましては、通報された後、私どもの方に連絡いただいております。
  351. 上原康助

    上原委員 検察庁が起訴するのかどうかも関心の持たれるところだが、さっき指摘しましたように、県警の書類送検というものが、前提がつけられている面ではなかなか期待を持てない面もある、今のところ断定して申し上げるわけにはいかないと思うのですが。それでは県民の期待あるいは金武町民、伊芸区民の期待に十分こたえ得ないおそれなしとしませんね。出せないのは出せないでいい。いいというより、こんなものをそんなにもったいぶる必要はないと思うのです。大体わかる。  そこで、レンジ6は、演習場そのものが住民地域と隣接をしているということと、構造上の欠陥があるのじゃないかということが指摘をされている。もちろんそのほかのあれもそうですよ。米軍の演習内容に問題があったのか、演習場の構造に問題があるのか。重要な点は二つだと指摘されている。どっちなんですか。
  352. 鈴木邦芳

    鈴木説明員 ただいまの御質問に十分お答えするように内容を申し上げかねるところでございますが、御指摘がございましたように、事故の発生いたしました当日は、レンジ6では訓練を行っておりましたし、レンジ6以外の場所では訓練がなかったということでありますので、このレンジ6における訓練によって事故が起きたというふうに理解をしてよろしいかと思います。これ以上の内容につきましては、先ほど申し上げました理由で答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  353. 上原康助

    上原委員 ここいらがこの問題の核心点なんですよ。そうしますと、今検察庁が取り扱いをするから明らかにできない。申し入れた文書も公にできないということなのか。ずっと不問に付すのですか。いずれかの段階で当然これは公表しますね。明確にいたしますね。その点が一つです、警察庁。  それと、特に外務省、あなた方はいつも安保条約とか地位協定云々だけ言うわけだけれども、軍事演習というものが事ここまで至っている。私が今指摘をした構造上の問題なのか、米軍の演習のあり方、手法、やり方、要するにこの訓練の安全性というか、戦場意識等でめちゃくちゃにやってそういう結果をもたらしたのか。どういうふうに理解をしているのですか。  まず警察庁の方からさっきの資料の公表の問題、いずれの段階かでそれはいたしますか。
  354. 鈴木邦芳

    鈴木説明員 私どもといたしましては、捜査を遂げて検察庁に送致をいたしたわけでございますので、後、検察庁がどのような判断をするか、そしてどのような処分を出すか、ある意味で事件は検察庁に移ったわけであります。したがいまして、そうした結果がいつ、どういう形で出るか、また、それに伴いまして検察庁がどのような判断をして公表をするか、ある意味で検察庁の判断で決めることでございますので、私どもからはコメントをいたしかねるところでございます。
  355. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 先ほど施設庁長官からお答え申し上げましたとおり、本件につきましては、事故発生当初から米側は米側でこれを大変深刻に受け取りまして、十二月二十三日にその調査の結果の発表と事故再発防止のためにとったもろもろの措置の発表をいたしております。  結果につきましては、大変簡単に申し上げますと、当時、一個歩兵中隊が分隊による歩兵戦術訓練を実施しておった。さらに詳細がございますが、それを省かせていただきます。それで、調査の結果以下が判明した。「(イ)少なくとも二名の分隊員が、意図的にではなく、銃弾が指定着弾地から外れ、伊芸地区近辺に着弾するような態様で発射。銃器は、伊芸地区をねらったものではなかった。」(ロ)は、「本件は、①当該使用部隊のレンジ安全規則の誤解、②移動部隊と伊芸地区の位置関係についてのレンジ担当将校の認識の誤り、の結果生じたもの。」そして、再発防止策といたしまして、まず、レンジ6につきましてはすべての実弾射撃の演習はやめました。それから(ロ)は、「沖縄における全ての海兵隊の実弾射撃レンジの安全性の再確認。」ということで、八つぐらいの項目を決めております。  先ほど私が施設庁長官と同じことでございますと申し上げましたのは、米側としてはこのように本件を深刻に受けとめて、一連の措置を去年の十二月末の段階でとっているということでございます。
  356. 上原康助

    上原委員 私がいろいろ調査をしてみますと、このレンジの構造そのものもいろいろあるけれども、やはり米軍の演習内容がより問題だった。いわゆる固定射撃じゃないんですね。グループを組んで、陽動作戦というか、陽動して動きながら銃を撃ちまくっている。だから、目標があっちに定まっているといっても、こっちに飛んだりあっちに飛んだりするわけだ。今ごろ、住民地域と至近の、一番近いところでわずか五、六百、七、八百、一キロ以内でそのような無謀な軍事演習が日常茶飯事のように沖縄基地であるんだよ、実際に。  松本防衛庁長官、せんだってもこういう問題や基地の整理縮小を含めて申し入れたところなんですが、今いろいろやりとりを聞いて、施設庁長官が一応の基地提供管理責任者であっても、あなたが最高責任者、防衛庁が。どうお考えなのか、また、今後この種の事件再発防止についてどのように対処なさるのか、御見解を聞かせておいてください。
  357. 松本十郎

    松本国務大臣 機会あるごとに米側に注意も喚起しておりますが、二度とこういうことがないように常々心がけてまいりたい、一層努力したいと思います。
  358. 上原康助

    上原委員 これも、ひとまずこれできょうのところは締めますが、警察庁に要望しておきたいことは、先ほど私が指摘をした事項について、検察庁に任せるのではなくして、県警の方はいずれその機会があれば、時期が来れば発表していい、それは構わぬですね。
  359. 鈴木邦芳

    鈴木説明員 基本的には先ほど申し上げたとおりでございます。県警の意見というふうにただいま先生指摘がございましたが、なおその点は検討させていただきたいと思いますが、事案は検察庁にかかわっておるということも御理解をいただきたいと思います。
  360. 上原康助

    上原委員 余り中央から締めつけてはいかぬですよ、政治も警察権力も。ぜひ県民の期待にこたえるようにもう一歩、二歩も三歩も努力をしていただきたいことを要望しておきます。きょうのところはもういいですから。  それと、これとも関連するが、もう一つ確かめておきます。  恩納村における都市型戦闘訓練施設は二カ所予定しておったのですか、どうなんですか。
  361. 松本十郎

    松本政府委員 一カ所と伺っております。
  362. 上原康助

    上原委員 これはきょうのところは確かめておいて、三十日の沖特でまた引き続いてやってもいいわけですが、レンジ21の道路施設はおおむね完成したという報道がなされた。これとやや離れたところのレンジ22のいわゆる射撃棟というものと標的棟を計画していたが、海兵隊報道部によると、住民の強い反対の声あるいは沖縄県議会等の強い反対決議もあり、挙げて反対しているから、このレンジ22における建設工事は無期延期したということが報道されている。この事実関係はどうなんですか。
  363. 松本十郎

    松本政府委員 ただいまのお話につきましては、私どもの方には入っておりません。
  364. 上原康助

    上原委員 では、確かめてください。  そうしますと、さっきの金武町伊芸区の被弾事件もあってみんな心配するわけですが、ここでもし都市ゲリラ訓練、実弾射撃訓練をやると、たとえピストルであるとか小銃弾であっても、ここは住民地域は伊芸区よりももっと近いのです。どんなに安全性が確保できたといったって、また飛んでくる可能性は十分ある。これはどうなさるの。アメリカはいつからやろうと言っているのですか。その二点だけきょう答えておいてください。
  365. 松本十郎

    松本政府委員 恩納村の都市型訓練施設につきまして、地元からいろいろ安全性につきまして御心配があるということは承っております。米軍の方では、この安全性につきましていろいろ配慮を行っておりまして、射撃の方向をすべて山側に固定するということ、それから、射撃に際しましては、安全担当将校、これは地元の地形等に詳しい将校でございますが、これを立会させて安全を確保する。当然、使用火器はライフルとピストルでありまして、地元で御心配になっておるような火災等の発生はないであろうというようなことでございますが、このようなことでいろいろ安全につきまして十分な配慮った上で工事を進めてまいったというぐあいに承っております。  防衛施設庁といたしましても、この安全につきましては機会あるごとに米側に申し入れまして、今後とも注意してまいりたいと思いますが、これは安全保障条約の目的の達成のために米軍が必要とする訓練を提供された施設内でやるということでありまして、この点、御理解賜りたいと思います。
  366. 上原康助

    上原委員 そういうあれでは理解はしませんから。  そうしますと、今のところ米軍はいつからやると言ってないわけですね。そこはどうなんですか。
  367. 松本十郎

    松本政府委員 現在、具体的に開始の時期については聞いておりません。
  368. 上原康助

    上原委員 どうせやめざるを得ない状況になると思いますから、外務省も施設庁もその点御留意をいただいて対処してもらいたいと思います。  そこで、時間もあと残り少なくなりましたので、もう一つ、これも簡単に確かめておきます。  駐労問題でこんなことまで一々お尋ねするのもいかがかとは思うのですが、要するに低位等級問題、不合理是正、特別休暇問題が三年近く懸案となっている。しかも、これは宍倉施設庁長官時代に、六十二年の七月一日までに何らかの改善措置を実施をしますという明言を皆さんはやったんだ。現在の交渉状況あるいは見通し、ぜひ明確にして、一日も早く解決をしていただきたい。
  369. 松本十郎

    松本政府委員 御指摘のように、この点につきましては、昭和六十二年の一月でしたか、宍倉長官からお約束した案件でございます。いまだに達成できないということにつきましては、大変遺憾に存じておるところでございます。  現在、在日米軍司令官にこの早期解決につきまして私も直接要請いたしまして、これを受けまして、統合労務委員会でございますか、ここで担当者がその解決につきまして鋭意努力をしておりますが、私どもの方も、連日のように米軍側と調整をいたしまして、一日も早くこの問題の解決を図りたいというぐあいに考えております。
  370. 上原康助

    上原委員 在日米軍経費はどんどんふやして、当然やらなければいけないわずかなことまでもやらないなら、基地関係、思いやりというのをみんな削っちゃえ。  外務省も、この点は防衛施設庁だけに任せずに、外務省外務省立場早期解決に努力しますね。
  371. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 努力いたします。
  372. 上原康助

    上原委員 最後に海上保安庁、わざわざ来ていただきましたが、時間が残り少なくなりましたから、確かめておきたいのですが、「なだしお」問題でちょっとお尋ねしておきたかったわけです。  いろいろありますから端的にお尋ねするが、艦船、船舶の航泊日誌というのと速力通信受信簿、事故が起きた場合の時間査定においてはどちらが優先するのですか。
  373. 野尻豊

    ○野尻政府委員 私ども捜査当局の立場からは、いつ衝突が起きたか、衝突時刻の認定という点からいろいろな証拠を調べております。その一つとして、今御指摘の速力通信受信簿あるいは航泊日誌がありますけれども、それ以外にも乗組員からの供述、事情聴取、あるいはまた海上交通センターのレーダー映像の解析結果、あるいは第一富士丸の船内時計の停止状況、こういったいろいろな証拠等を勘案して衝突時刻を認定しております。
  374. 上原康助

    上原委員 同じ政府という機関ですから、相互のもたれ合いというか、あるいはかばい合いがあると思うのです。要するに、航泊日誌というものが、そういった時間を特定するとかいろいろ解明する場合には、優先というか、まず第一に取り上げられるわけでしょう。注目されるわけでしょう。それを速力通信受信簿の時間に合わせたというところに作為的なものがあるということ。きょうはもう時間がないからあれですが、防衛庁長官、当初、事故後の海上自衛隊の被害者の救命のあり方についてもとやかくいろいろ指摘された。だが、人命尊重よりも自分たちの事故を隠すために密室でこのようなことをやっておったというこの艦長、自衛隊の一部を皆さんがどういうカバーをしようが、言いわけが立ちませんよ、それは。そのことが問題なんですよ。最近、明らかになってからの官房長官防衛庁長官の御発言も、自衛官を何とか擁護したいという立場はわかったにしても、国民はそれを理解しない、納得しない。その点を強く指摘しておきたいと思います。  御見解あれば、今お聞かせください。
  375. 松本十郎

    松本国務大臣 書き直しをしたということによって国民に不信感なり誤解を与えたことは大変遺憾に存じております。  ただ、一言申し上げたいのですが、救命作業は身を挺してやったわけでありまして、この書き直しをした時間というのはそれが終わった後だと聞いております。
  376. 上原康助

    上原委員 きょうのところはこれで終えますが、これからのこともありますし、とかく自衛隊に対する国民の目が厳しい。また、それは当然ですよ。軍隊というのは、いずれの場合だって、いずれの国家だって相当の犠牲を伴う組織なんです。それがわがまま勝手をするところに問題がある。ですから、今回の「なだしお」事件というものは、シビリアンコントロールという立場から考えても重大な、証拠隠滅をやろうとした意図がなかったとは言えないようなことだったということを指摘をして、二度とそういうことのないように特段の防衛庁の努力を強く要望して、時間ですから、質問を終えたいと思います。
  377. 吹田愰

    吹田委員長 次に、田口健二君。
  378. 田口健二

    ○田口委員 ただいま議題になっております防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に関連をして幾つかお尋ねをいたしますが、その前に、きょう農水省に来ていただいておりますので、一、二点そちらの方からお尋ねをいたしたいと思います。  実は、長崎県の対馬におきましてシイラ漬け漁業という漁法で漁業が行われておるわけです。私の承知しておるところによれば一船団十隻で今操業しておるということであります。これは、水産庁の場合は専門ですからおわかりになると思いますが、聞くところによれば、モウソウチクという非常に大きい竹でいかだのようなものを組んで海面に浮かべる、海底にアンカーを置いてロープで結んで、その竹のいかだの上には杉の葉か何かを差しまして、そこに魚が集まってくる、それを網でとるわけでありまして、大変収益性の高い漁法だということも聞いておるわけであります。これは恐らく前の日に設置して、夜は一度戻って、翌朝また行ってそこで魚をとるのだと思うのです。ところが、翌朝行ってみるとその漁具が大変な損壊を受けて流れてしまって、そこにはなくなっておる。こういう被害状況というのが、韓国の漁船によって行われておる、こう言われておるわけです。  この漁業の最盛期というのは大体五月から六月だと聞いております。私の手元に寄せられました資料によりますと、昨年の五月から六月の二ヵ月間で二百五十九個が損壊をされてしまっている。平成元年、ことしで見ますと千四百五個が損壊を受け流失しておるのです。大変な被害を受けておるわけです。地元の漁民にしてみればまさに怒り心頭に発しているというのが現状なんですが、こういう状況について水産庁の方は把握しておられるのか、まずそのことをお聞きいたしたいと思います。
  379. 木下寛之

    ○木下説明員 お答えいたします。  シイラ漬け漁具等の設置漁具の被害につきましては、六十年より日韓の西日本沿岸対策事業の一環といたしまして全漁連が調査をいたしております。  この調査によりますと、長崎県の過去三ヵ年の合計被害件数は、これはすべてが韓国漁船によるものか、正確には特定できておりませんが、五十八件、金額でいいますと一千八百万円程度というふうに報告を受けております。
  380. 田口健二

    ○田口委員 今、水産庁の方からそういう実態の把握についても報告があったわけです。  問題は、今後これをどのように防ぐといいますか、対応していくのか、このことが地元にとっても大変な関心といいますか、考え方があるわけであります。きょうは別に外務省も運輸省も来てもらっておりませんが、一応農水省として、今後こういう漁具の損壊、これらを防止をするためにどのような対応を考えておられるのか。これは、今も一千何百万という被害の金額をお話しになりました。本来ならば損失補償という問題もあるのですけれども、そのことはともかくとしても、今後の対応について考え方があればお聞かせをいただきたいと思います。
  381. 木下寛之

    ○木下説明員 お答えいたします。  韓国漁船の操業によりましてシイラ漬け漁具等に被害が出ているということは、水産庁といたしましてまことに遺憾に思っておる次第でございます。今後ともかかる漁具被害が生じないよう韓国側に対しまして申し入れを行ってまいりたいというふうに考えております。  いずれにいたしましても、シイラ漬け漁業の現在の漁場の位置それから盛漁期から見まして、韓国漁船が、日本と韓国の間におきます操業ルール、昨年一月から実施をいたしております自主規制措置、それから日韓漁業協定に基づきます底びき網の禁止区域を守って操業すれば、先ほど申し上げたような漁具被害は生じないというふうに考えております。したがいまして、私どもといたしましては、漁具被害の防止の観点からも、韓国漁船がこのようなルールを守るよう今後とも申し入れを行っていきたいというふうに考えております。したがいまして、政府として、これまでも種種の機会をとらえて、韓国側に対し、違反操業の防止それから指導取り締まりの強化を要請しているところでございます。特に、本年十月に開催されました日韓漁業定期実務者協議におきましても、同様の申し入れを行っております。  今後とも、これらの協議を続けていくことによりまして、韓国側に対して自主規制の措置あるいは日韓協定の遵守を強く求めていきたい、かように考えております。
  382. 田口健二

    ○田口委員 韓国側に対するそのような考え方はわかりますが、実際、現地の中で、農水省の取り締まり船もあるだろうし、あるいは海上保安庁の船もあるだろうし、地元の、県の漁業取り締まり船の派遣、監視、そういう点はどのようにお考えですか。
  383. 木下寛之

    ○木下説明員 取り締まりの問題につきましてお答えしたいと思います。  西日本海域におきましては違反操業が非常に多いということでございまして、これまでも、水産庁の船三隻程度を常駐させまして取り締まりを行っております。それから県の取り締まり船、あるいは長崎県におきましては飛行機によります取り締まりということにつきましても、水産庁から助成を申し上げておるところでございます。  いずれにいたしましても、取り締まりの強化を図るためには、基本的には韓国による取り締まりが有効であるというふうに考えておりまして、韓国側に対しましても、取り締まり船の増派を今後とも要求したいというふうに考えております。
  384. 田口健二

    ○田口委員 今後、こうした漁具の損壊が起こらないように、ぜひ今お答えになりましたような方向というものを強力に進めていただきたい。このことを申し上げておきたいと思います。  そこで、本題に戻りまして、まず松本長官、実は私も三年余りこの内閣委員会に所属をいたしまして、この間何回か防衛論議というのが行われ、先輩や同僚委員の皆さん方の質疑などにも耳を傾けてまいりましたし、私自身も何回かこの論議に参加をいたしました。  そこで、率直に私が感じておることですけれども、実は毎回、防衛庁側の答弁は独特な用語と独特な言い回しでいつも混乱をさせられておるわけです。私は、これまでの経過を考えてみたら、この国会における防衛論議というものは全く不毛な論議ではなかろうか、こんな気さえ時々するわけです。私は、もちろん専門家ではありませんから、あくまでも国会議員という立場、それは別な言い方をすれば政治家という立場でこの防衛問題について論議をしておる、こういう考え方で今日までも来ておるわけです。きょうもそういう立場で御質問をさせていただきますから、余り難しい言い回しはやめてもらって、率直な御答弁をまずお願いをしておきたいと思うのです。  そこで長官、今度防衛庁長官に御就任になりました。もうしばらく期間が過ぎておるわけでありますが、改めてお祝いを申し上げさせていただきます。  あなたが防衛庁長官に就任をされて、今後の日本の防衛問題の言うならば最高責任者ですから、総理大臣の問題はありますけれども、どういう基本的なスタンスでこれからこの防衛問題を担当していこうとしておられるのか、まずその基本的な御見解を承りたいと思います。
  385. 松本十郎

    松本国務大臣 国民の皆様の御理解と御支持を得ながら、国を専守防衛、憲法の規定どおり、その立場に立って防衛政策を進めたい。そうして、具体的には、自衛隊を育成しつつ、あわせて日米安保体制の維持発展を図り、その抑止力によって日本の国の平和そしてまた国民の皆様方の生命財産を守っていこう、これが私の基本的な立場でございます。
  386. 田口健二

    ○田口委員 そこで、まず最初にお伺いをしなければならないのは、やはり国際情勢に対する認識の問題であろうと思います。とりわけ最近における東ヨーロッパの急激な変化です。もちろんこの背景にはソ連のペレストロイカなりグラスノスチという問題があるのだろうと私は思っています。  ちょっと古い話ですけれども、一九六六年だったと思いますが、私も東ヨーロッパに参りまして、あの東ベルリンの壁のそばの哨所の二階から西ベルリンを見まして、いわゆるベルリンの壁と言われるものを見て、その後、ポーランド、チェコその他のところにも行ってまいりました。  八一年でしたか、ポーランドの連帯のワレサ議長が来日をいたしました。私は彼と二日間ほど長崎の地でいろいろ話をしたのです。そのときから見ても、今日の東ヨーロッパの変わり方というのは全く想像ができない状況です。ポーランドでは、連帯労組がいわゆる政権を握るという全く考えられないような状況なんです。こういう情勢について防衛庁はどういう認識を持っておられるのか、まずこのことからお伺いをしたいと思います。
  387. 松本十郎

    松本国務大臣 ベルリンの壁ができましたとき、ちょうど私はアメリカにおりましたが、当時ケネディ大統領がいかに対処しようとしたか、そばで見ておって、これは大変なことだと感じたわけであります。  その前後に、私も二回、あの検問所を通って東ドイツへ参りました。あの壁を越そうとして、あるいは下を潜ろうとして、警備の兵隊なり警察官に撃たれて死んだ人の写真その他を集めた建物もございます。それも見てまいりまして、何と申しましょうか、同じ民族でありながらこのような壁で遮られていることがいかに悲劇か、戦争というものがもたらした結果がいかに悲しむべきことであるかということをしみじみ感じましたが、その壁がこんなに早く撤廃されるとは思わなかったのが急遽撤廃になりました。これは先生指摘のとおり、ソ連のペレストロイカに始まり、ポーランドの連帯あるいはハンガリーの民主化、その他の東欧諸国の国々の新しい国民の自由を求める声を背景とした動きがこのような事態をもたらしたことは事実でございますが、一方でまた、アメリカ中心とした西側諸国、これが、自由と民主主義を価値観として持ちながら、力を持って、抑止力を働かせながら四十年近くこうしてきたということがあって、それに対抗しようとしたソ連というものが経済的な力その他から見て行き詰まってきた。共産主義は行き詰まり、そして社会主義経済がこういう姿になって事態が変わりつつある、こういうことでございまして、そのような国際的な情勢変化というものを十分頭に置いて我々日本としても対処しなければならないというふうに考えております。
  388. 田口健二

    ○田口委員 今大臣は、十分そのことを頭に置いて対処しなければならない、こう言われるのですが、私は防衛庁長官にお聞きをしているのです。外務大臣にお聞きをしているわけでも何でもないわけですからね。まさにベルリンの壁の撤去といいますか、崩壊といいますか、言うならば冷戦の終えん、こういう言葉も最近出てきていますね。そういう結果というのは、ある意味では戦後四十年間続いてまいりました東西関係の枠組みというのが壊れてしまった、こういう見方もできると思うのです。ですから問題は、そういう東欧中心にした急激な情勢変化に対して、日本の防衛政策、安全保障考え方も変わらなければならないのではなかろうかというのはだれしも思うわけですが、そのことについてはどうなんですか。ただ頭の中に置いて、対処だけすればいいという現状でしょうか。
  389. 松本十郎

    松本国務大臣 ヨーロッパにおいて劇的な変化が起こりつつあることは事実でございます。しかし、例えば十二月二日、三日のマルタ島近くの艦上での会談の後、続いてアメリカの国務長官NATOの諸国がいろいろとこれからの安全保障についても恐らく論議するでありましょうから、どういうことになりましょうか。  そういうことをおきましても、我々日本立場に立てば、まだ極東についてはそのような変化が及んではおりません。望ましい姿として、デタント方向あるいは緊張緩和の方に行きたいのでありますが、極東については、恐らくタイムラグがあるでありましょうし、今すぐにそのような事態になるとは思いません。また、そういう劇的な変化がありましても、西側の結束なり、あるいは冷戦構造が終わると言われてもやはり軍事大国としてのアメリカあるいはソ連というものが中心となって、その対峙の枠組みが一朝にして覆るというところまではいかないだろうと思うわけでございまして、それやこれやを踏まえながら見きわめつつ、我々は現実に即した防衛政策を立てなければならない、こういうふうに認識をいたしております。
  390. 田口健二

    ○田口委員 先ほどから、長官防衛庁の方も、聞いておりますと、そういう東ヨーロッパ中心に国際的な情勢変化が起こりつつあるといいますか、既に起こっている、そういう情勢認識をしながらも、極東情勢は変わらないのだということを盛んに言っておられるわけですね。我々は、極東情勢もやはり変わってきつつあると思うのですよ。極東情勢まで及んでいない、変わらないという根拠は一体何でしょうか。その辺、ひとつ見解をいただきたい。
  391. 小野寺龍二

    小野寺政府委員 ヨーロッパにおいて非常に大きな変化が起こっているということは、今長官からも申したとおりでございます。これは、戦後東ヨーロッパという緩衝地帯をソ連が長いこと政治的にも経済的にもまた軍事的にも支配し、かつ、それに基づきまして非常に大きな軍事力をもって西側に圧力をかけていたという事実に基づいているものかと存じます。これがまさにNATOとワルシャワ条約との対峙ということだったと思います。これが現在の東欧変化によって恐らく非常に大きな変化が生ずるであろうということはだれでも想像にかたくないところでございます。  ただ、これも現在においては、例えば東独になお三十八万のソ連軍がおります、西ドイツには三十万の米軍がおります。これがどういう形になるかということは、まだ今のところはわからないわけでございます。恐らくこれから進みます通常兵力削減交渉において、そのレベルが下がるということが期待されるのではないかと思います。しかし、ヨーロッパ正面におきましては、これは陸上の対峙であるということ、それからワルシャワ条約とNATOという集団安全保障体制の対峙であるということで、非常に簡単に言ってしまえば、割と単純な両極対峙という形をとっているわけでございます。  アジアになりますと、これは地理的には大陸、島嶼、半島、海峡というふうに地形が非常に複雑に入りまざっております。地形が入りまざっているということは、単に陸上の対峙ではなくて、海という要素が入ってくる。しかも、純粋に海ではなくて、海と陸が入り組んでいるということでございます。したがって、ヨーロッパで言われているような戦車対戦車というような形での軍縮の話が非常にしにくいということでございます。  それからまた、政治的にはNATO、ワルシャワ条約という二つのブロックということではなくて、日米それから米韓というような、アメリカとの間の関係も二国間関係で、例えば韓国と日本との間では安全保障関係はございません。東側につきましても、ソ連と北朝鮮との間の関係ソ連モンゴルとの関係というようなことで、集団安全保障体制を組んでいないわけでございます。それに加えまして、中国という極めて大きな軍事的な現実というものがございます。これが全くいずれにも属していないという形をとっているわけでございます。そういうようなことから対峙自身が非常に複雑でございまして、そういう観点から軍縮というものが進んでいく基盤が今のところないのではないかというようなことでございます。
  392. 田口健二

    ○田口委員 今のお話ですと、アジア地域においては一つは地形上の問題、それからヨーロッパに比べると非常に複雑な構図、相互の関係、こういう御説明ですけれども、米ソの世界戦略が変わってくる、対ソ戦略なりあるいは対米戦略というものが変わってくる、東西関係の軍事対立という構図が変わってくる。確かにヨーロッパアジアでは地形上のいろいろな問題があると思いますよ。しかし、その基本が変わってくれば、これは地形上の問題とかなんとかいう問題ではなくて、当然アジアにもその影響があらわれてくると見るのが正しいのじゃないですか。どうも今の御意見では私は納得できないと思うのですが、その辺はどうですか。
  393. 小野寺龍二

    小野寺政府委員 委員が御指摘のとおり、米ソ自体の考え方が変わってくることによって、もちろんアジアについても米ソの基本的な対立というものが変質をし、かつ、もっとレベルの低いものになるということ、これは我々としても大いに期待するところでございます。  ただ、今までの動きを見てみますと、ソ連については、先ほど申し上げましたように、東ヨーロッパという緩衝地帯におけるソ連安全保障考え方がかなり変わってきているということが推察できるわけでございますけれども、そういう東ヨーロッパという緩衝地帯のないアジアについても、それからまた我々はアジアのことばかり見ておりまして余り注目されておりませんですけれども、例えばヨーロッパの北の部分、コラ半島のソ連の基地、そこら辺もまた、東ヨーロッパのような緩衝地帯のないところでは、ソ連は今のところ軍事力によってアメリカと対抗しようという意思をなくしていないという状況が見られております。そのために、確かに兵力の一方的な削減においてその量的な削減が行われております。これはアジアについてもそういうものがこれからますます進んでくると思いますけれども、近代化のペースが非常に速いということでございます。  北ヨーロッパにつきましては、北洋艦隊近代化というものがある意味では我々の注目しております太平洋艦隊以上のピッチで進んでおりまして、例えば、最近ソ連は非常に大きな航空母艦をつくっておりますけれども、その第一隻目、トビリシという船が今度北洋艦隊に行くということが大体ソ連の方から発表されておりまして、ノルウェーなんかは大変な危機感を持っております。  そういった意味で、今のところヨーロッパ正面以外のところにおいてはソ連考え方の方が余り変わってないのではないかというふうに見ております。ただ、これは当然将来いつまでもそうであるということではないかもしれません。これはソ連自体の根本的な変化によってそれが他の地域に及ぶということも十分考えられるわけでございまして、アメリカについても同様でございます。したがって、未来永劫に変わらないということではなくて、我々としても大いに期待しているところでございますけれども、今のところはそういう兆候が余り見られないということでございます。
  394. 田口健二

    ○田口委員 国際情勢認識についてはなかなかかみ合わないところもまだあるのですけれども、こればかりやっておったのでは時間がありませんから、今から幾つか具体的なことをお尋ねいたしますので、明確にひとつお答えをいただきたいと思います。  それは、ことしの十月十四、十五日に東京で日米安保事務レベル協議が開催をされたというふうに聞いているわけですね。これはアメリカのブッシュ政権が発足してから初めての協議ではなかったのか。実は余りこのことが報道されてないのですね、いろいろ調べましても。ですから、ぜひひとつ中身を教えていただきたいと思います。  当然私どもが考えることは、一つには、今も論議がありましたが、国際情勢の問題、特に、極東における軍事情勢というのが恐らく大きな議題一つとして話し合われたと思います。あるいは日米防衛協力の問題もあるのではないか。さらには、これは後から当然お聞きをいたしますが、ポスト中期防の問題についてやはり日米双方で話し合いが持たれたのではないか。それから、先ほど来論議がありましたが、問題になっておる駐留経費の負担の問題ですね。当然こういうものが話し合われただろうというふうに推測しておるわけですけれども、中身についてひとつ教えていただきたいと思います。     〔委員長退席、榎本委員長代理着席〕
  395. 日吉章

    ○日吉政府委員 お答え申し上げます。  委員ただいまおっしゃられましたように、ことしの十月十四、十五日、土、日でございますが、国会開会中でございましたのでそういう時期に、日米双方の防衛担当の高級事務レベル会議を行いました。大体これは年に一回ペースで従来行ってきたものでございますが、今回は一年半ぶりぐらいで行ったことになります。  いろいろな意見交換をしたわけでございますが、大きく分けまして、国際情勢についてのお互いの認識を述べ合いまして、それの認識が一致していることを確認したという点。その場合には、主としてソ連に対する見方でございますが、これは、その後かなりソ連の対外外交政策が進展をしておりますので、今詳しく申し上げることが必ずしも時宜にかなっているのかどうかわかりませんけれども、ソ連がより多元的でより脅威の少ない、つき合いやすい国に変わっていくことを期待しているという米側からの発言がございまして、私どもも同様の認識を持っているということで、ソ連の今後の柔軟な外交姿勢というものに双方期待をするというようなことを述べ合っております。  それから、二つ目のテーマといたしましては、日米安全保障関係について話し合いをいたしまして、今後とも日米安全保障関係の重要性というものは続くのだということで双方の認識が一致いたしております。その場合に、日米双方の安全保障関係の中で分担し合います任務と役割でございますけれども、米国が日本及び日本を含みますアジア等で果たします安全保障上の任務と役割というのは今後ともやはり維持をし続けていくということでございまして、このことそのものは両国にとって今後とも重要だという点で認識の一致をいたしております。  なお、日米安全保障関係といたしまして、日米安保体制のクレジビリティー、信頼性を確保し高めていくというような意味で、日米双方の共同研究なり、訓練なり、日米双方の後方支援面での充実なり、インターオペラビリティーの確保というようなことは今後とも重要であるというような点で意見交換をいたしまして、この点でも基本的に意見の相違がなかったところでございます。  なお、今後、日米間におきましては技術交流というものの果たす役割はますます重要になってくるというようなことを確認し合いまして、今後、日米安全保障関係を展望した場合の重要な点の一つとして技術交流というものがあるということで認識の一致を見ております。  それから、今まで申し上げましたことは双方から考え方を述べ合いまして認識の一致を確認したわけでございますが、我が国の防衛努力といたしまして、私どもの方から中期防の進捗状況と次期防の検討状況説明いたしました。これは私どもが国会等で御説明を申し上げている内容の範囲内のものでございます。重複は避けさせていただきたいと思います。  それから、在日米軍関係につきましては、まず駐留経費の問題につきまして、米側からは日本におります在日米軍支援に感謝をする、今後とも米軍が日本あるいは東アジア地域、世界において果たしている役割について十分の理解をして、在日米軍支援につき努力を継続してほしいというような希望、期待の表明がございました。  私どもは、従来から我が国が行ってきました在日米軍支援のための自主的努力に関しまして、米行政府のみならず米国内一般に一層の理解を深めてもらいたい、精いっぱい私どもは努力していることをさらに評価してもらいたいということを申し上げ、我が国として今後とも自主的かつ応分の負担は行っていく所存であるということを申し上げました。  なお、在日米軍の訓練につきましては、米側の方から、在日米軍としては訓練時の安全を確保し、日本の地元の不安を最小限にすることが現在の軍隊として必要なものと認識しておりまして、この点につきましては真摯な努力を重ねていきたいという意思表明、努力意図表明がなされました。  我が方からは、在日米軍の安定的かつ円滑な駐留を図るためには、地元住民の理解が不可欠であって、米軍の訓練の問題、具体的には沖縄の基地問題とか、F16の低空飛行訓練の問題とか、NLPの問題等の解決に向けて米軍のなお一層の日本側の立場理解を深めてもらいたいというような要望をいたしております。  その他、若干個別的な問題といたしましては、在日米軍関係では、米軍家族住宅の建設の問題とか沖縄の基地問題とか在日米軍従業員の問題、先ほども御議論がありましたが、在日米軍従業員の処遇改善の問題等々につきまして話し合いがなされました。これら細かい問題につきましては、こういう議題について触れたという程度のことでございまして、こういう確認に基づきましてそれぞれの担当の部署が今後米側と話し合いを続けていくということを確認し合ったわけでございます。  二日間の会議でございましたが、概要は以上のようなものでございました。
  396. 田口健二

    ○田口委員 今防衛局長の方から内容について報告があったのですが、非常に一般的な言い方ですよね。聞いておったら、それは当たり前のことだなというふうに感じておる。  ただ、ここで私、お尋ねしたいのは、従来から事務レベル協議というのはハワイで持たれておったというふうに何回か聞いておるわけですね。今回わざわざ東京に場所を移して開催をした理由、あるいはねらいと言っていいのでしょうか、一体どういうことなのだろう。新聞論調によりますと、やはりFSXの共同開発の問題で日米間にあつれきが生じておる、あるいは日米間の貿易不均衡の問題でかなりアメリカ側に不満がある、一般的にそう報道もされていますね。ですから、それらを解消する。先ほども出ましたが、言葉をかえて言うならばバードンシェアリングですね。このことが強いアメリカ側の要求として背景にある、あるいは事務協議の中で強く出されてきたのではないか、こういうふうにも言われているのですが、その辺はどうですか、率直にお尋ねをします。
  397. 日吉章

    ○日吉政府委員 お答え申し上げます。  このSSCは大体年に一回程度の頻度で行われているものでございます。一昨年までは一月に行われる例が多かったのでございますけれども、昨年は我が方の国会事情等々もございまして五月の連休に行いました。そういうことから考えますと、一年たったところでことしの一月あるいは五月程度に行うのがまあ間隔としてはよろしいわけでございますが、アメリカの政権がレーガン政権からブッシュ政権に交代したということがございまして、この点は委員も御承知のように、アメリカの場合は高級事務レベルはすべてスポイルズシステムで、政権が交代いたしますと任命がえがなされまして、なおかつ、議会で承認を受けないといけないということでございまして、国務省の安全保障担当、国防省のそういう上級幹部の任命が非常におくれた、こういう事態がございまして、一月は政権交代の時期でもございますし、五月にもそれができなかったということでございます。それで、向こうのスタッフが決まりましたところでいよいよ開催をしようということになりましたところ、そのときに、ワシントンと東京の中間のハワイ、ハワイというのも特に意味はございませんで、平等にワシントンと東京の中間で集まろうやというようなことであったわけでございますが、当方が国会中でございますので東京にお越しいただけないか、なお、国会中でございますので、申しわけないけれども土曜、日曜と働いていただけないかということであったわけでございます。  そのように無理な日程で話し合ったにもかかわらず、今お話し申し上げましたように非常に抽象的かつ基本的な認識の確認に終わっているではないかという点は、これはまさにレーガン政権からブッシュ政権にかわり、それぞれの長官及び担当スタッフもかわりましたので、日米間でまず今後いろいろな問題を詰めていくときに基本的な認識において一致を見ておくことが必要だということで、日米双方にこの基本認識の一致をできるだけ早く見たい、それから具体的な問題の解決に向けて進んでいきたいというようなことで急ぎまして、国会中といえども土曜、日曜割いてやったわけでございまして、そういう目的でやったところから見まして、まさに目的どおり基本的な日米安全保障問題の関係につきましてお互いの認識を出し合いまして、その一致を確認し合ったということでございます。
  398. 田口健二

    ○田口委員 防衛局長というのは頭がいいのでしょうかね、非常に端的に御質問申し上げたことも非常に長々と御説明をいただくので、前任の方もそうで、途中で自分の言っていることがわからなくなったなどということもありましたけれども、問題は、最後に私がお聞きをしたように、この事務レベル協議の中で、新聞論調などでありますように、バードンシェアリング、すなわち責任の分担という問題でアメリカから特に強い要請があったのではないかということをお聞きしているのですよ。そのことだけどうなんでしょうか。
  399. 日吉章

    ○日吉政府委員 一言で申し上げますと、強い要請というものはございませんでした。私が申し上げましたように、これまで日本側が努力をしてくれたことを評価する、今後とも米側の役割、世界の平和と安全に果たしている役割等に十分の理解をしてもらった上で、日本がなすべき日本の役割、任務の範囲内でできるだけのことをしてもらいたい、それを期待するということでございまして、具体的な要求というようなものは一切ございませんでした。
  400. 田口健二

    ○田口委員 それでは、中期防の問題について幾つかお尋ねをしたいと思うのです。  平成年度で一応中期防というのは終わるわけですが、既に四カ年経過をしておるわけですね。後からお聞きをしますが、既に来年度分は概算要求も出されておるということで、この中期防が終わった段階で、特に主要な正面装備といいますか、これは一体どの程度達成ができるのかどうなのか、ある程度種別に、大きなものだけで結構ですから教えていただきたいと思います。     〔榎本委員長代理退席、委員長着席〕
  401. 日吉章

    ○日吉政府委員 主要な装備につきましては、おおむね中期防衛力整備計画で計画いたしましたとおり達成され得るような状態になっております。ただ、それには前提がございまして、私どもがただいま財政当局に提出いたしております予算要求がそのまま認められた場合という前提つきでございます。  ところが、要求の段階でも中期防期間中の調達計画を下回っているものがございます。それの方が少のうございますので、むしろネガティブリストといいますか、そちらをお話し申し上げた方がよろしいかと思いますが、固定翼対潜機P3Cが中期防で期間中に調達することを予定しておりましたものよりも一機少なくなっております。ところが、これは中期防策定時に見積もっておりました事故減耗が、幸いにも実績が策定時の見込みよりも下回ったということでございまして、中期防完成時の勢力といたしましては、中期防策定のときに予定したのと変わらないわけでございます。  それから、海上自衛隊の掃海ヘリコプターMH53Eでございますが、これは予定よりも二機少なく要求いたしております。これは、価格が著しく高騰いたしまして、かつ価格の低減の努力をしたわけでございますけれどもそれがうまくいきませんでしたものですから、次期防期間にかけましてなお価格低減努力をして調達をしたいと考えております。  それから、航空自衛隊の要撃戦闘機F15が五機でございますが、これは、先ほど海上自衛隊の対潜哨戒機P3C一機について事故減耗の実績が策定時の見込みを下回ったと申し上げたのと同じ理由でございまして、調達機数は少なくなりますけれども、完成時の勢力といたしましては中期防が予定したのと同じ勢力になるわけでございます。  主要なもので予定どおりいかないといいますか、予定と違っておりますのは今の三つでございます。
  402. 田口健二

    ○田口委員 それでは、平成年度の概算要求の金額は対前年度比何%になるのか、さらに、来年度中期防というのが終わることになると思いますが、この中期防以降に、今度は平成年度ですね、後年度負担として一体幾ら持ち越しをしていくのか、このことは当然もう概算要求が出されているわけですからわかっておると思いますが、お示しをいただきたいと思います。
  403. 藤井一夫

    ○藤井(一)政府委員 平成年度概算要求額の伸び率でございますけれども、六・三五%、金額にいたしまして二千四百九十億円でございます。それから、平成年度以降の後年度負担額でございますが、三兆二千六百十四億円でございます。
  404. 田口健二

    ○田口委員 平成年度の概算要求、今、率にして対前年度比六・三五%と言われた。この率というのは近年から見ても非常に高い伸び率だと思うのですね。こうした概算要求の率もしくは金額、こういうことになったのはどういう理由ですか。中期防最終年度だからつじつまを合わせてこれだけ要求するということなのですか、それともまた何か別に理由があってこういう金額あるいは伸び率になったというのですか。その辺はどうでしょうか。
  405. 藤井一夫

    ○藤井(一)政府委員 ただいま申し上げました二年度の概算要求額でございますが、これは閣議で決められました概算要求基準に従って要求したものでございます。昨年が、概算要求段階でございますが、六・一三%、それに対して六・三五でございますので若干、約二百億円程度多くなっている、こういう状況でございます。  この額はいろいろな調整の結果決まったわけでございますが、決めました考え方は、一つは、為替の動向だとか消費税、油の価格の上昇、こうした防衛費を取り巻く環境みたいなものを検討いたしました。それからもう一つは、先ほど先生もお触れになりましたように、中期防の最終年度でございますので、その円滑な達成を図りたいということと、それから厳しい財政事情、この辺をぎりぎりに調整いたしまして決着したものでございます。具体的には昨年度に対して約二百二十億ふえておるのでございますけれども、これは、前年度以前に契約いたしましたものの歳出化の中に含まれます消費税の額がちょうど二百二十億程度ふえておりますので、これを前年度に上乗せした、こういうような考え方で決められたものでございます。
  406. 田口健二

    ○田口委員 先ほど、後年度負担の問題、平成年度における問題をちょっとお聞きいたしました。ちょっと私も記憶がないのですが、中期防が始まる年度に前の年から後年度負担として持ち越されてきた金額は一体幾らになっているのでしょうか。
  407. 日吉章

    ○日吉政府委員 お答え申し上げます。  二兆三千五十八億でございます。
  408. 田口健二

    ○田口委員 先ほどもちょっと論議がありましたけれども、平成年度でいよいよ中期防が終わるということになれば、これはかねて政府もそう言ってきたと思うのですが、中期防が達成をされればいわゆる大綱の別表の水準は達成をされる、今日の段階でそのように判断をしていいのでしょうか。どのような見解をお持ちでしょうか。
  409. 日吉章

    ○日吉政府委員 おおむね達成されるとお考えいただいて結構でございます。
  410. 田口健二

    ○田口委員 そこで、私はポスト中期防がやはりどうしても問題になってくると思うのです。改めてこの次期防のスケジュールについてお尋ねをいたしたいと思います。
  411. 日吉章

    ○日吉政府委員 次期防のスケジュールでございますが、平成年度を初年とするわけでございますが、これにつきましては昨年の十二月に安全保障会議で御議論をいただきまして、平成年度以降も中期的な政府防衛計画を立てるという意見の一致を見まして現在作業を進めているところでございます。最終的には、安保会議政府レベルの場で御検討いただき、御判断いただくことになると思いますが、現在は、防衛庁の中で防衛庁限りで作業を進めているという状況でございます。  それで、私どもといたしましては、これはただいま申しましたように初年度平成年度でございますので、私どもの希望を申し上げれば、平成年度防衛庁の概算要求に間に合うように次期防、次期中期計画というものが政府計画として確定しておると非常にありがたいな、こういうふうな希望を持っております。
  412. 田口健二

    ○田口委員 スケジュールはそういうことで考えておるということでありますが、そうなりますと、これも先ほども出ておりましたが、次期防の計画の期間、これも中期防でもいろいろ論議になったと思いますし、また、所要経費のあり方、これは一体どういうお考えで進めていかれるのかお尋ねをしたいと思います。
  413. 日吉章

    ○日吉政府委員 まず計画年数、期間、それから金額をどういうふうな方式で決めるかという問題、この二つでございますが、この二つは、先にその期間を何年、あるいは防衛関係費のあり方をどうすべきかというのを設定しまして作業をするというよりは、むしろ最終的にいろいろ総合的な御判断をいただきますときに、期間また防衛関係費のあり方をお決めいただくのがよろしいのではないか、かように考えております。  しからば防衛庁として今どういうふうな作業をしているのかということでございますが、まず計画年数についてでございますけれども、一般的に申し上げますと、ある程度の期間がありませんと計画的、継続的に防衛力整備を図ることができませんので、ある程度の期間を設けることが望ましいわけでございます。特に、防衛庁が調達いたします主要な装備品は、調達リードタイムが三年ないし五年というふうに長いものがございます。ところが、先ほど来いろいろと御議論をいただいておりますように、国際情勢はここのところ極めて流動的でございます。そういうふうな流動的な国際情勢等に弾力的に対応していくためには、期間が長いということは、もしそれをフィックスいたしました形での長い期間でございますと、それは一つのマイナス要因になってまいります。そういうことを考えますと、常識的には五年とか三年とか、あるいはその中にローリングシステムをかませるか、かませないかとか、そういうふうな選択肢があるのではないかと思います。私どもは、どのような形になろうとも作業が手戻りにならないように、これまでの中期計画といいますものは、第一次防がたしか三年計画だったかと思いますけれども、それ以外の計画は五年であったというようなことを頭に置きまして、一応長い期間になりましても作業が手戻りにならないような形での作業を進めておりますが、何年にするかというようなことを全く決めておりません。最終的に御判断をいただく問題だと考えております。  それから、防衛関係費のあり方でございますけれども、これにつきましても、先ほど申しましたように、防衛庁考え方といたしましては、やはり主要な装備とそれに要する経費を一体として計画を組むということが望ましいのではないかというふうに考えておりますし、なおかつ、中期防期間中、六十二年度からは総額明示方式という方式を政府が打ち立てたばかりであるというようなことを考えますと、いわゆる総額明示方式というのが一つの有力なやり方ではないかというふうに考えております。  それにかわるものといたしましては、一般的な経済指標等にリンクさせて、それの何%というようなやり方等もあろうかと思いますが、具体的な防衛力整備内容と必ずしも直接的に一般的な経済指標というものは関連づけられませんので、必ずしも適当ではないのではないかというような感じもいたしますけれども、防衛計画といえどもやはり日本経済全体、財政全体の中で他の施策等とのバランスをとるという必要もあろうと思いますので、そのあたりは最終的に政府レベルで総合的に御判断をいただく問題だ、かように考えております。
  414. 田口健二

    ○田口委員 今の防衛局長のお答えですと、計画期間は常識的に見て三年から五年、余り長くなってもぐあいが悪いのではないか、所要経費についても総額明示方式が二、三年前に出たばかりだからそのことも頭に置かなければならぬ、これは確かに常識的なお答えなんですよ。私どもが一番今気になっておるのは、ただいまのお答えの中にもあったのですが、次期防というのはもう平成年度からスタートするわけですね。ですから、この時期にまだだれもが考えておるような常識的な線で防衛庁が検討を重ねておる、こうはなかなか理解しがたいわけです。  率直に言ってどうなんですか。今のお答えの中にもありましたが、国際情勢云々ということがあるのですね。だから、次期防策定に当たっての基本的な考え方、今までのこの十五年間続いてきた大綱の考え方、これをやはり変えていこうか、そのまま継続をしていこうか、その辺に率直に言って迷いがあるのではないですか、そこのところはどうでしょうか。
  415. 日吉章

    ○日吉政府委員 現在我が国防衛力整備は、五十一年につくられました「防衛計画の大綱」に基づきまして整備が進められているわけでございます。現在の中期防計画も、ただいまもお答えいたしましたように、大綱水準の達成を目標として計画が立てられ、それが実行されているところでございます。したがいまして、次期防期間中におきましても、この「防衛計画の大綱」を前提としまして計画をつくり、かつ、それを実行していくのかどうかということでございますが、これにつきましては「防衛計画の大綱」の前提となっております国際情勢につきましての認識がございますが、この基本的な認識を変えないといけないような国際情勢ではないのではないか、かように考えておりますので、現在のところ、私どもは「防衛計画の大綱」の基本的枠組みを前提といたしまして作業を進めているところでございます。
  416. 田口健二

    ○田口委員 なかなか具体的な中身が出てこないのですけれども、それでは角度を変えて、よく伝わってくる防衛庁筋の考え方というものの中に幾つかあるのは、例えば次期防の中で陸上自衛隊強化をしていく、こういう話も聞くのですが、その辺は具体的にどうですか。
  417. 日吉章

    ○日吉政府委員 現在の私たちの考え方の中には、次期防は陸海空の中で陸上自衛隊に重点を置く期間であるとかそういうふうな考え方は特に持っておりません。
  418. 田口健二

    ○田口委員 それでは、こういうことも聞くのですが、正面装備についても量から質へ転換をしていく、言うならば近代化・機械化だ。この辺についてはどうなんでしょうか。具体的な検討の計画、内容というのはあるのでしょうか。
  419. 日吉章

    ○日吉政府委員 これも総括的に申し上げますと、正面装備につきましては、先ほど来申し上げておりますように、大綱水準におおむね近づいた、おおむね大綱水準を達成したというふうな状況でございますし、かつ、現在のような国際情勢等々も勘案いたしますと、正面装備の重点は、どちらかと言えば量的拡大というよりはむしろ質的向上、この質的向上は周辺諸国等の軍事技術の水準等を勘案しながら、それに立ちおくれないような質的向上を図る方向に基本的に重点を置くべきであろうというような問題意識を持って作業をいたしております。
  420. 田口健二

    ○田口委員 なかなか具体的にならないのですが、先ほど長官の御発言の中にもあったと思うのですが、この次期防の中で当然考えていかなければならないことは後方支援体制の充実、これは隊員の居住環境等を含めてだと思いますけれども、そのほかに情報、通信の問題もあろうかと思うのです。その辺は具体的にどうなんでしょう。これもわかりませんか。
  421. 日吉章

    ○日吉政府委員 後方といいました場合には非常に概念が広うございまして、抗堪性とかあるいは継戦能力、その他もろもろのことがございますけれども、それらも十分重要でございますが、私どもといたしましては、一つはやはり指揮・通信、情報機能の強化ということが非常に重要ではないかと思います。これは軍事技術等の進歩のスピードというものが非常に早うございますので、それにおくれをとってはならないという点がございますし、専守防衛に徹する我が国といたしましては、情報機能ということは殊のほか重要な部門だと思います。にもかかわらず、残念ながらその方面は必ずしも進んだ状態にはないという問題意識を持っております。したがいまして、この点は後方支援機能の中の重要な点だと考えております。  もう一つは、やはり自衛隊が総合的に精強であり、その能力をフルに発揮し得るためには良質な隊員に支えられていないといけません。にもかかわらず、現在の雇用環境というものは非常に厳しゅうございますし、今後ともその状況には大きな変化はないものと思われます。そういう意味では、良質な隊員確保のための隊員施策、これが殊のほかおくれておりますので、その施策に重点を置きたい、かように考えております。しかしながら、世の中全体が効率化、合理化の時代でございますから、自衛隊もその例外であってはなりませんので、みずから省力化努力を重ねていきたい、かように考えております。そういうふうな省力化施策というのも、人事施策の一環として重要な柱になろうかと考えております。
  422. 田口健二

    ○田口委員 今省力化という問題がちょっと言われましたが、なかなかその中身というのは私どももわからないわけです。例えば装備関係整備を民間に委託をする、かつてこの委員会でもこの問題がちょっと論議になったことがあると思っておりますが、こういうことなども考えておるわけですか。
  423. 日吉章

    ○日吉政府委員 まず、正面装備そのものにつきましても、従来艦艇一隻に対しまして二百人とか三百人とか、こういうふうな定員が張りついている場合にも、機械化することによりましてできるだけ減らすことができないだろうか。その点は商船と違いまして、有事を前提にいたしますと、それぞれの部署に完全に張りつく必要がございます。それからまた、戦闘によりまして隊員が損耗いたしましたときに、それを補充する要員というものが必要でございますので、一般の商船のようなわけにはいきませんけれども、機械化することによりまして正面装備等につきましても乗組員等の数が減らないかというような工夫をいたしていきたいと思います。  それから、委員ただいま御指摘いただきましたように、後方の支援整備の中の例えば主要装備整備工場等を民間等に委託する方法はないだろうかという点は、検討いたしております。必ずしも私の担当ではございませんけれども、防衛庁全体といたしましてそういう方向で検討はいたしております。しかしながら、これも民間企業との関係等もございまして、それほど一挙にいくわけではございませんが、次期防ということではなくして、既にこの点は中期防期間中も、徐々にではありますが、検討を続けて進めているところでございます。
  424. 田口健二

    ○田口委員 もう一つ具体的にお尋ねをしますけれども、先日、私は内閣委員長と御一緒に市ケ谷の駐屯地、それから海上自衛隊の横須賀地方隊、それから海上自衛艦隊、これらを拝見させていただきました。問題になっておる例えば自衛艦における、これは陸上自衛隊も一緒だと思いますが、三段ベッドは、実際にこの目で見てみまして、やはり居住環境を整備するためには二段ベッドでなければならない、実感として私もそう思いました。ところが、二段ベッドにするためには護衛艦全部変えなければならぬ、このままではどうしようもないというのですね。それは当然そういうことになるのでしょうか。当然、次期防の中では、そういうことが考慮されて自衛艦がどんどん更新をされていかなければならない、そうしないとこの問題は解消しないということでしょうか、どうでしょうか。
  425. 日吉章

    ○日吉政府委員 今お尋ねの自衛艦というのは船のことかと思いますが、その中の主要な艦艇でございます護衛艦につきましては、お尋ねのような方向整備を進めているところでございます。
  426. 田口健二

    ○田口委員 最後に、長官にお尋ねをしたいと思うのです。  私は本委員会に所属をしたときに、最初に勉強させてもらうときに、「防衛計画の大綱」が策定をされたいきさつ、経過あるいはこれに対する解説などもいろいろと読ませていただきました。この三年余り、このことがいつも中心になって論議をされてまいりました。先ほどの長官の御答弁も、防衛局長のお答えの中にも、大綱で示されておる情勢等の変化というのはないのではなかろうか、だから今これを変える必要はないのではないかという御答弁もあったわけですね。  私が今一番疑問に思っていることがあるのです。それは、初めこの「防衛計画の大綱」を見たときに、その基本に座っている基盤的防衛力構想という考え方、率直に言って、私は随分これは身勝手な理論だなと思ったのですよ。軍事理論としてこういうものがあり得るのだろうか。それは国際情勢、国内情勢を一定のものに枠をはめ込んでしまって、そういう前提に立っていわゆる基盤的防衛力構想という考え方が出てきておる。これは軍事理論としてこういうものがあり得るのだろうか、率直に言って、私は初め疑問を持ちました。  しかし、ずっと論議をしていく中で感じたのですが、私は、これは政治の選択ではなかろうかと思うのです。確かに純軍事理論からいくといろいろ問題点があるかもわからぬ。しかし、その国が持つ防衛力、社会党の場合、基本的な立場は違いますけれども、安全保障というものを考えたときに、防衛力は私はある程度経済力に比例していくと思いますから、際限もなく拡大をしていく。したがって、これをその国の実情に合わせて一定の歯どめをかける、制限をするという政治の選択となれば当然こういう考え方はあり得る、それが今日の「防衛計画の大綱」が策定をされてきた政治的な理論というか、考え方ではなかろうかと理解もしているわけです。違ったら違うとおっしゃっていただいて結構なんですがね。ただ、その思想から、五十一年当時にこの「防衛計画の大綱」が策定をされ、片一方ではGNP一%という額の問題で、実質的な歯どめですよ。防衛庁は今まで歯どめではないと言ってきましたけれども、経過を見れば完全な歯どめになっているわけです。六十二年度からこれが撤廃をされたわけです。  そこで、その後の論議、これは次期防にも関係をしてくるのですが、洋上防空の問題、OTHの問題、早期警戒システムの問題、いろいろなものが中期防から出てきている。恐らくこれは次期防の中にも引き継いでいくのだろうと思います。こういうことになりますと、「防衛計画の大綱」の精神というか、基盤的防衛力構想の考え方から大きく逸脱をするのではないか、いつも私はそれが気になるわけです。確かに軍事技術は日進月歩でどんどん進んでいきます。ミサイルの射程距離もどんどん長くなる。当然それに対応するような兵器を備えなければならぬというのは、軍事理論からいえば当然だと私は思いますよ。しかし、政治的な立場で物事を考えていった場合に、今の日本防衛力整備のあり方は、「防衛計画の大綱」が策定をされたときの精神からはるかに逸脱をしている。今後もそういう方向に中身として進んでいくのではないか、私はこういう気がしてならないのです。この辺は長官、一体どのようにお考えでしょうか。
  427. 松本十郎

    松本国務大臣 大綱あるいはそれに関する別表等は、ディフェンスミニマムという言葉がいいのかどうか知りませんが、日本が車守防衛を全うするには最小限ここまで備えなければならぬということできたわけでございますが、委員指摘のとおり、軍事技術は日進月歩でありますから、最小限といいましても、その質は刻々と情勢変化に対応して向上しなければなりません。そういうことで出てくるのが今の考え方ではないかなというふうに考えます。
  428. 田口健二

    ○田口委員 それでは、重ねて長官にお尋ねをしますが、既に六十二年度から一%枠という額による歯どめが取り払われているわけですね。車守防衛というのは政府が一貫して絶えず言ってこられたわけです。しかし、車守防衛という概念も随分変わってきているのですよ。現実の経過を、この十五年間を眺めてみても、これが歯どめというものにならないと思うのです。いわゆる文民統制といいますか、文官という立場にある最高責任者として、どこで歯どめをかけたらいいのか、その辺はどうお考えでしょうか。
  429. 松本十郎

    松本国務大臣 総額明示方式に変わりまして、GNP一%というシーリングは外れました。しかしながら、それを決めた節度ある防衛力整備という精神はいつまでも尊重しなければなりませんし、その精神によって、私も防衛庁長官としての責任がありますが、同時に、シビリアンコントロールの立場にあります国会の諸先生方立場からも過度に伸びていくものを抑えてもらおう、これは当然のことであります。経済というものは景気のアップ・アンド・ダウンがあるわけでございますから、やはりそういう一%というものよりは総額明示で、しかも全体を総理大臣なり防衛庁長官、さらにまた国会立場でシビリアンコントロールで抑えていく、このことによって歯どめが十分全うできるでありましょうし、また、そうしなければならないというふうに考えるわけであります。
  430. 田口健二

    ○田口委員 では、終わります。ありがとうございました。
  431. 吹田愰

    吹田委員長 次回は、来る三十日木曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五十二分散会