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1989-11-16 第116回国会 衆議院 社会労働委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年十一月十六日(木曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 丹羽 雄哉君    理事 伊吹 文明君 理事 高橋 辰夫君    理事 野呂 昭彦君 理事 畑 英次郎君    理事 粟山  明君 理事 池端 清一君    理事 貝沼 次郎君 理事 田中 慶秋君       粟屋 敏信君    石破  茂君       稲垣 実男君    今井  勇君       古賀  誠君    佐藤 静雄君       笹川  堯君    高橋 一郎君       竹内 黎一君    津島 雄二君       戸沢 政方君    中山 成彬君       三原 朝彦君    持永 和見君       大出  俊君    大原  亨君       川俣建二郎君    河野  正君       永井 孝信君    渡部 行雄君       新井 彬之君    伏屋 修治君       吉井 光照君    児玉 健次君       田中美智子君    大橋 敏雄君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 戸井田三郎君  出席政府委員         内閣官房長官 藤本 孝雄君         北海道開発庁計         画監理官    竹中 勝好君         厚生政務次官  近岡理一郎君         厚生大臣官房総         務審議官    加藤 栄一君         厚生大臣官房審         議官      森  仁美君         厚生大臣官房老         人保健福祉部長 岡光 序治君         厚生省健康政策         局長      仲村 英一君         厚生省保健医療         局長      長谷川慧重君         厚生省生活衛生         局長      目黒 克己君         厚生省薬務局長 北郷 勲夫君         厚生省社会局長 長尾 立子君         厚生省児童家庭         局長      古川貞二郎君         厚生省保険局長 坂本 龍彦君         厚生省年金局長 水田  努君         社会保険庁運営         部長      土井  豊君  委員外出席者         議     員 大出  俊君         議     員 坂井 弘一君         議     員 吉田 之久君         警察庁刑事局保         安部生活経済課         長       篠原 弘志君         総務庁人事局参         事官      畠中誠二郎君         大蔵大臣官房企         画官      河上 信彦君         厚生大臣官房審         議官      清水 康之君         労働省職業安定         局高齢障害者         対策部高齢者雇         用対策課長   長谷川真一君         自治省行政局選         挙部管理課長  谷合 靖夫君         社会労働委員会         調査室長    滝口  敦君     ───────────── 委員の異動 十一月十六日  辞任         補欠選任   永井 孝信君     大出  俊君 同日  辞任         補欠選任   大出  俊君     永井 孝信君     ───────────── 十一月十六日  国民医療改善に関する請願岡崎万寿秀紹介)(第三四八号)  年金医療制度改悪反対等に関する請願安藤巖紹介)(第三四九号)  同(田中美智子紹介)(第三五〇号)  同(田中美智子紹介)(第四三六号)  年金改善に関する請願岡崎万寿秀紹介)(第三五一号)  脊髄空洞症特定疾患難病指定に関する請願西中清紹介)(第三五二号)  同(伏屋修治紹介)(第三五三号)  同(大久保直彦紹介)(第三七五号)  同(木内良明紹介)(第三七六号)  同(斉藤節紹介)(第三七七号)  同(水谷弘紹介)(第三七八号)  同(吉浦忠治紹介)(第三七九号)  同(坂口力紹介)(第三八九号)  同(冬柴鉄三紹介)(第四八三号)  国民医療改善に関する請願岡崎万寿秀紹介)(第三九六号)  同(田中美智子紹介)(第三九七号)  同(不破哲三紹介)(第三九八号)  同(渋沢利久紹介)(第四一七号)  同(新村勝雄紹介)(第四一八号)  同(戸田菊雄紹介)(第四一九号)  同(山花貞夫紹介)(第四二〇号)  同(工藤晃紹介)(第四三七号)  同(佐藤祐弘紹介)(第四三八号)  同(松本善明紹介)(第四三九号)  同(松本善明紹介)(第四八四号)  腎疾患総合対策早期確立に関する請願外一件(大原亨紹介)(第四一五号)  国民年金等公的年金改悪反対に関する請願大原亨紹介)(第四一六号)  看護職員大幅増員労働生活条件改善に関する請願児玉健次紹介)(第四三二号)  同(田中美智子紹介)(第四三三号)  同(村上弘紹介)(第四三四号)  同(山原健二郎紹介)(第四三五号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  公聴会開会承認要求に関する件  国民年金法等の一部を改正する法律案内閣提出、第百十四回国会閣法第六六号)  被用者年金制度間の費用負担調整に関する特別措置法案内閣提出、第百十四回国会閣法第七七号)  平成元年度における国民年金法等年金額等改定特例に関する法律案大出俊君外二名提出、第百十四回国会衆法第一〇号)  厚生関係基本施策に関する件      ────◇─────
  2. 丹羽雄哉

    丹羽委員長 これより会議を開きます。  この際、戸井田厚生大臣及び近岡厚生政務次官からそれぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。戸井田厚生大臣
  3. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 戸井田三郎でございます。  私は、御承知のとおり、長い間この委員会でお世話になり、このたび海部内閣の発足に伴い、厚生大臣に就任することになりました。今までも本当にいろいろと御指導をいただいたわけでありますが、これからはさらに一層の御指導を心からお願い申し上げます。特に厚生行政は二十一世紀に向かって長寿社会、新たな構築をしていかなければなりません。年金医療福祉も、そしてハンディキャップを持った方々あるいは児童、こういった方々のこれからの福祉行政を進めていく上におきましても、皆様方の御指導をいただかなければなりません。今後ともよろしくお願い申し上げ ます。(拍手
  4. 丹羽雄哉

  5. 近岡理一郎

    近岡政府委員 厚生政務次官に再任されました近岡理一郎でございます。  厚生行政は多くの重要な課題を抱えておりますが、私は、委員各位の御協力をいただいて大臣を補佐し、人生八十年の長寿社会にふさわしい安定した社会保障制度確立を図ってまいる所存でございます。  何とぞよろしく御指導、御鞭撻を賜りますようお願いを申し上げます。(拍手)      ────◇─────
  6. 丹羽雄哉

    丹羽委員長 第百十四回国会内閣提出国民年金法等の一部を改正する法律案被用者年金制度間の費用負担調整に関する特別措置法案及び第百十四回国会大出俊君外二名提出平成元年度における国民年金法等年金額等改定特例に関する法律案の各案を議題とし、順次趣旨説明を聴取いたします。戸井田厚生大臣。     ─────────────  国民年金法等の一部を改正する法律案  被用者年金制度間の費用負担調整に関する特別措置法案     〔本号末尾掲載〕     ─────────────
  7. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 ただいま議題となりました国民年金法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  我が国は、世界に例のない速度で高齢化が進んでおり、老後の問題は国民の最大の関心事となるとともに、老後生活の主柱としての公的年金制度に寄せる国民期待は極めて大なものがあります。  こうした国民期待にこたえていくため、昭和六十年の年金制度改正においてすべての国民に共通する基礎年金制度導入が行われ、公的年金制度全体の長期的な安定と整合性ある発展を図る上での礎が築かれたところでありますが、高齢化のピークを迎える二十一世紀に向けて、さらに、年金制度全体を揺るぎなきものとしていく努力を重ねてまいることが必要であります。  このような考え方に基づき、今回提出いたしました改正案では、必要な年金額の確保を図るとともに、後代負担を適正なものとするため、厚生年金支給開始年齢を十分な準備期間を設けて段階的に引き上げていくためのスケジュールを明示する等所要改正を行うこととしております。  以下、改正案内容につきまして、御説明申し上げます。  まず、国民年金法及び厚生年金保険法の一部改正について申し上げます。  第一に、年金額引き上げにつきましては、本年十月から、国民年金基礎年金の額を月額五万五千五百円に引き上げるとともに、厚生年金保険制度成熟時における加入期間四十年の場合の標準的な年金額月額十九万七千四百円に引き上げることとしております。旧法国民年金及び旧法厚生年金保険の額も、これに準じた引き上げを行うこととしております。そのほか、配偶者や子に係る加算・加給年金の額を引き上げることといたしております。  第二に、物価スライド制につきましては、平成二年四月から、物価変動に完全に対応して年金額改定を行う完全自動物価スライド制とすることといたしております。  第三に、厚生年金保険在職老齢年金につきましては、本年十月から、その支給割合現行の三段階から五段階に改める等の改善を図ることとしております。  第四に、老齢厚生年金支給開始年齢につきましては、給付水準を維持しつつ、後代負担を適正なものとするため、十分な準備期間を設けて、平成年度から平成二十二年度にかけて段階的に六十五歳に引き上げることといたしております。また、これに伴い、老齢厚生年金の繰り上げ支給制度を創設することとしております。なお、これらの改正施行につきましては、別に法律で定める日からとしております。  第五に、厚生年金保険標準報酬につきましては、最近における賃金の実態に即して、本年十月から、八万円から五十三万円の三十等級に改めることとしております。  第六に、保険料につきましては、年金額引き上げ及び受給者増等に対応して年金財政健全性を確保するため、国民年金については平成二年四月から月額八千四百円に改定し、以後段階的に引き上げることといたしております。また、厚生年金保険については、本年十月から保険料率男子については千分の二十二引き上げ、女子については男子との格差を解消するため、千分の二十三・五引き上げ、その後男子の料率に達するまで毎年千分の一・五ずつ引き上げることといたしております。  第七に、現在、国民年金任意加入となっている二十歳以上の大学、専修学校等の学生につきましては、年金を保障するため、平成二年四月から、国民年金の当然加入の被保険者とすることとしております。  第八に、基礎年金厚生年金等支払いにつきましては、本年十月から、年六回支払い改善することといたしております。  第九に、自営業者等に対する基礎年金上乗せ年金制度を実現するため、現行業種単位の職能型の国民年金基金設立要件を緩和するとともに、一般自営業者等加入する都道府県の区域を単位とする地域型の国民年金基金を創設することといたしております。  第十に、厚生年金基金につきましては、積立金運用の一層の効率化を図るため、運用方法を拡大するとともに、積立金管理及び運用に関する業務について、所要規定の整備を行うこととしております。  次に、平成元年度におきます年金額特例物価スライド等について申し上げます。  拠出制国民年金及び厚生年金保険年金額につきましては、最近における社会経済情勢にかんがみ、特例的に昭和六十三年の物価上昇率に応じて年金額引き上げを行う特例物価スライド実施することとしております。また、老齢福祉年金の額につきましても、拠出制年金の額の引き上げに準じて引き上げを行うこととしております。  最後に、児童扶養手当法及び特別児童扶養手当等支給に関する法律の一部改正について申し上げます。  児童扶養手当及び特別児童扶養手当等手当額につきましては、年金額引き上げに準じて引き上げを行うとともに、平成二年四月から、物価変動に完全に対応して手当額改定する完全自動物価スライド制導入することとしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容概要であります。  続きまして、ただいま議題となりました被用者年金制度間の費用負担調整に関する特別措置法案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  我が国公的年金制度を今後の高齢化の一層の進展や産業構造就業構造の変化の中で、公平で安定した揺るぎないものとしていくためには、公的年金制度一元化を図る必要があります。  その第一段階として、昭和六十年の年金制度改正においては基礎年金制度導入を行い、公的年金制度の一階部分について給付負担の両面にわたる一元化を行うとともに、二階部分に相当する被用者年金制度についても、共済年金給付水準を将来に向けて厚生年金給付水準にそろえることにより給付面における公平化を図ったところでありますが、公的年金制度一元化を完了するためには、被用者年金制度負担面における不均衡を是正していくことが課題となっているところであります。  この法律案は、このような課題を踏まえ、被用者年金制度間の負担調整を進めるため、公的年金制度一元化が完了するまでの間の当面の措置として、厚生年金及び共済年金老齢退職年金 給付のうち共通の部分について費用負担調整するための制度間調整事業実施しようとするものであります。  以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。  第一は、調整交付金交付であります。制度間調整事業実施主体たる政府は、各被用者年金保険者が行う老齢退職年金給付のうち各制度に共通する部分費用に充てるため、各被用者年金保険者に対し調整交付金交付することとしております。  第二は、調整拠出金拠出であります。調整交付金の財源に充てるため、各被用者年金保険者は、その標準報酬総額に応じて、制度間調整事業実施主体たる政府に対し、調整拠出金拠出することとしております。  第三に、制度間調整事業の事務の執行に要する費用は、国が負担することとしております。  第四に、制度間調整事業社会保険庁実施することとしておりますが、その円滑な実施のため、各共済組合からの社会保険庁長官への報告等について所要規定を設けております。  このほか、厚生保険特別会計法被用者年金法等について、制度間調整事業実施のための所要改正を行うこととしております。  なお、この法律施行期日は、平成二年四月一日としております。  以上が、この法律案提案理由及び内容概要であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  8. 丹羽雄哉

    丹羽委員長 大出俊君。     ─────────────  平成元年度における国民年金法等年金額等改定特例に関する法律案     〔本号末尾掲載〕     ─────────────
  9. 大出俊

    大出議員 平成元年度における国民年金法等年金額等改定特例に関する法律案趣旨を御説明申し上げます。  私は、日本社会党護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・民主連合の三会派を代表して、平成元年度における国民年金法等年金額等改定特例に関する法律案提案する趣旨について、簡潔に述べたいと思います。  本案の対象となる拠出制国民年金老齢福祉年金厚生年金、各共済組合年金、及び児童扶養手当特別児童扶養手当等受給者およそ二千五百万人は、新たに導入された消費税による打撃を最も大きく受けるにもかかわらず、所得税減税による恩恵を受けない人々がほとんどであります。これらによる影響を緩和するためには、せめて年金手当給付改善を急がなければなりません。とりわけ、必要経費二百五億円が既に平成元年度予算に組み込まれ、政府提案国民年金法等改正案にも含まれている四月からの〇・七%物価スライド措置については、これ以上その実施をおくらせるべきではないと考え、去る六月十九日に提案手続をとったものであります。  この措置については、与野党ともに全く異論かないにもかかわらず、この臨時国会まで持ち越され、既にさきの通常国会給付改善法改正が行われた原爆被爆者戦傷病者戦没者遺族などとの間に不公平が生じているのであります。本案がもしこの国会成立を見ないならば、来年二月の支給月にさえ間に合わなくなり、お年寄りたちをさらに五月まで待たせる事態を招くのであります。  一方、政府提案国民年金法等改正案については、与野党合意の可能な点だけを速やかに成立を図るべきであります。今国会においてそれが円滑に行われるならば、本案は必要がなくなる性格のものであり、私たちは、もしそれが成立に至らなかった場合に備えて、本案を準備した次第であります。  以上の理由から、本案を可及的速やかに審議されることをお願い申し上げ、簡単ではありますが、私の提案を終わります。(拍手
  10. 丹羽雄哉

    丹羽委員長 以上で趣旨説明は終わりました。     ─────────────
  11. 丹羽雄哉

    丹羽委員長 この際、公聴会開会承認要求の件についてお諮りいたします。  ただいま趣旨説明を聴取いたしました各案につきまして、議長に対し、公聴会開会承認要求をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 丹羽雄哉

    丹羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  なお、公聴会は来る十一月二十七日開会することとし、公述人の選定そのほかの手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 丹羽雄哉

    丹羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ────◇─────
  14. 丹羽雄哉

    丹羽委員長 厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊吹文明君。
  15. 伊吹文明

    伊吹委員 ただいま、国民の大変な関心事でございます年金法案及び野党三党の共同提案に係る法案趣旨説明がございました。きょうは、一般質疑とあわせて年金の問題について、自由民主党を代表して厚生大臣に御意見を伺いたいと思います。  まず、一般論として申し上げれば、参議院選挙自民党が大変な敗北を喫しました。これは自民党にとってはまことに残念なことではございましたけれども、その後、国会緊張感が戻り、野党与党とも議論し合うという議会本来の風潮が戻ってきたことは、私は議会人として大変よかったと思います。  良薬は口に苦しという言葉がありますけれども、我々自民党税制改革議論を振り返るときに、率直に申し上げまして、健康な体にし、健康な日本社会にし、健康な、将来にわたって元気に生きられる日本税制をつくるということを余りにも強調し過ぎて、そのために痛い手術が必要だ、あるいは苦い薬を飲まねばならないということについて国民に率直にお話ができなかった点を反省いたしております。しかし同時に、あの参議院選を通じて、一部野党皆さん方選挙戦を通じての御議論も、手術は痛いからやめた方がいい、この薬は苦いから好きか嫌いかという議論に終始をして、まことに残念なことだったと私は思います。しかしその後、参議院選挙が終わって税制改革法案が、消費税廃止法案参議院審議が始まって、野党皆さんにも我々がいろいろなことをお伺いし、野党皆さんの御意見に対する批判も国会を通じて国民方々にお示しできる状況になったことは非常によかったと思います。  一般質問としてお伺いしたいのでございますが、政治家として大臣は、このような、お互い議論をし合い、その中から妥協点を見出すという雰囲気が国会に戻ってきたということについて、どのように評価をされますか。
  16. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 委員御指摘のとおり、国会審議を通じて機能を果たすということは当然なことでありますが、そのときそのときの政治問題というものが、やはり政党間それぞれの主張がありますので、いろいろな形でそのときに一つの激しい対立等が起こることも、これまた政党間の政治というものを行う上において当然あり得ることだろう、私はかように思います。  しかしながら、そういった意味でなく、例えば年金法のようにイデオロギーではなく、将来定年退職後の所得保障をしようというお互い国民間の約束事である、こういったような問題については、やはり審議を通じて国民期待にこたえるということが当然だと思いまずけれども、これは私ども政府の立場で申し上げることではなくして、当然私も一人の政治家としてそういう姿勢を貫い ていきたい、かように思っております。  そこで、この年金法案についても最近各党間で非常に関心を持っていただき、熱心な御意見等も私ども承っていること、これは大変ありがたいことであると思いますし、そして二千五百万人の受給者期待にこたえることが当然重要な役割だろう、その期待に私どもはこたえて、皆さん方の御熱意にこたえて一生懸命に頑張っていきたい、かように思っております。
  17. 伊吹文明

    伊吹委員 今大臣がお話しになったように、ただいま趣旨説明の行われました年金法案は、イデオロギーの問題よりも国民生活安定のために各党が知恵を出し合ってお互い妥協点を絞り出して、しかしながら国民に口当たりのいいことだけをやっては年金というものは成り立たないのだということを十分認識し合って議論をしていくことが私は大切だと思います。したがって、今後の年金審議の中で野党三党の御提案になった法案問題点についても今回は我々自民党として十分の質問をさせていただき、野党としてのお答えもいただきたいと思っております。  さて、今回の年金改革法案は、当委員会大蔵委員会農林水産委員会文教委員会地方行政委員会にまたがる大改革法案でございまして、その骨子は、四月から〇・七%、そして十月から六%給付改善するという政府提案、そのための保険料の見直し、また平成十年から厚生年金支給開始年齢段階的に六十五歳に引き上げていくという第二点、国民年金基金の創設、厚生年金基金等運用預託先の拡大、そして国鉄共済年金への援助を通じて、まじめに善良に働いてきた国鉄人たちへの年金支払いに支障を来さないようにする、この五点が私は大きなポイントだと思いますが、この認識に間違いはございませんか。あるかないかだけ、大臣簡単にお願いいたします。
  18. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 そのとおりに認識をいたしております。
  19. 伊吹文明

    伊吹委員 それではまず、この年金法案をぜひとも早期成立させねばならないという観点から幾つかのお尋ねをいたしたいと思います。  今大臣がおっしゃいましたように年金受給者は約二千五百万人と言われております。この二千五百万人の方々給付をふやすということはもちろんでありますが、将来年金受給を受ける我々にとっても、安定した年金給付されるという基盤を確立する意味からしても、この法案はぜひ早期成立させねばなりません。四月から消費税導入されました。そして年金生活をしておられる方の生活水準は、消費税導入に伴う物価上昇のために実質的に目減りをしていると言われております。年金生活者の数が二千五百万と言われておりますが、国民年金厚生年金、各種共済年金ごとにどれぐらいの数になっているのか、年金局長、時間が余りありませんから、数だけ答えてください。
  20. 水田努

    ○水田政府委員 六十三年三月末、今から一年半前の数字でございますが、国民年金千百八十五万人、厚生年金八百六十四万人、国共五十七万人、鉄道共済四十六万人、電電共済十一万人、たばこ共済三万人、地方公務員共済百二十一万人、私学共済八万人、農林共済十七万人、計二千三百十三万人でございますが、その後の差を見ますと、先ほど申し上げました二千五百万になると思います。
  21. 伊吹文明

    伊吹委員 各種年金にわたって約二千五百万人の方の生活が消費税導入によってどうなったかということでございます。おのおのの各種年金の平均給付月額はどれくらいですか。
  22. 水田努

    ○水田政府委員 拠出制国民年金は、六十三年三月末現在で二万九千円、厚生年金十三万二千円、国家公務員共済十七万七千円、鉄道共済十七万二千円、NTT共済十八万六千円、たばこ共済十七万円、地方公務員共済十九万三千円、私学共済十五万六千円、農林共済十三万三千円でございます。
  23. 伊吹文明

    伊吹委員 約二千五百万人の人が今政府委員が御答弁になった年金で毎月の暮らしを立てております。例えば厚生年金を例にとって、年金受給者のうちで所得税の納付をしておられない方、つまり税制改革に伴い所得税減税の恩恵を受けられなかった方はどれぐらいおられますか。
  24. 水田努

    ○水田政府委員 六十三年十二月末で年金のみで生活をしておられる方の厚生年金で推計をいたしますと、課税対象者は七十二万人全体の約一六・二%、非課税対象の方は三百七十二万人約八四%、こういう関係になっております。
  25. 伊吹文明

    伊吹委員 そうしますと、消費税導入されて、もちろん税制改革の結果かえって値段の下がったものもたくさんあることは事実でありますが、大部分のものの価格は平均三%上がっておると考えるべきだと思いますが、今政府委員がおっしゃったようなことだとすると、年間収入百五十万、二百万、三百万、それで夫婦お二人だとして所得税、住民税の減税額と消費税負担増額との関係で生活が苦しくなっている層が大部分だと思いますが、百五十万、二百万、三百万について各家庭の税制改革に伴う負担増の状況を教えてください。
  26. 水田努

    ○水田政府委員 厚生省がお答えするのが適当かどうかでございますが、お尋ねでございますので、あえて私の方で試算いたしますと、百五十万の年金収入のみの夫婦の場合は消費税の影響額が一万三千円、それから二百万の階層が一万八千円、三百万の階層は消費税の影響が二万五千円でございますが、住民税、所得税の減税効果が三万一千円ございますので、プラス六千円の減税効果があった、こういうことでございます。
  27. 伊吹文明

    伊吹委員 そうすると、税制改革の結果、負担増になっている年金受給者の家庭の比率はどれぐらいですか。
  28. 水田努

    ○水田政府委員 お尋ねでございますが、そこまではちょっと厚生省の方では追求しておりません。
  29. 伊吹文明

    伊吹委員 私どもの方で調べている数字では、厚生年金受給者で大体八割五分ぐらいじゃないかと思うのですが、それらの人たちは生活が実質的に目減りをしている、つまり減税の恩恵が少ないが消費税負担効果の方が高いということですね。消費税が逆進性があると言われるのは、まさにこういうところに問題があると私は思うのです。税制改革というのは、日本の将来をしっかりと健康な社会として立ち行かせるためには私は避けて通れないものだと思いますが、その結果生ずる弱者に対して十分な手当てをする、そこに政治の本来の意味がある。それがまさに今回の政府提案法案の一番大切なポイントだと私は思います。  野党の方をも含めて、平均六%の給付改善ということについては反対はだれもないと私は思うのです。ところが、保険というものは厳密な数理計算によって成り立っておる。つまり、将来年金受給する人、例えば国民年金でいえば六十五歳、厚生年金でいえば現在六十歳、こういう人たちは各年度何人ずつふえてくるかということは、あらかじめこれはわかっております。そして給付月額を決めれば、それから逆算をして現在そして将来にわたってこの保険料負担しなければならない人数も推計としてわかっております。そして、納めてもらった保険料運用する利回りが、これは公定歩合の動きによって違うであろうけれども、大体平均してわかっておる。だとすれば、給付額を平均六%引き上げるとすれば、できたらそうしたくはないけれども保険料の一部を引き上げさしていただくかあるいは給付の年限を少し後ろへずらさせていただくか、さもなければ国民の税金、つまり消費税としていただいたものの一部を国庫負担としてその中へ投入するか、これは野党が考えても自民党が考えても三つに一つしか答えは出てこない、これ以外の答えは出てこないと思うのです。  ところが、とかく国民に受けのいいことはみんなやりたがる。しかし、国民の嫌がることはやりたがらない。その結果、やりたいこと、つまり国民に受けのいいことだけがどんどん先行していくということがあってはならぬと私は思うのですね。これは将来的には大変な問題を呼び起こす。このことについては後ほど詳しく質問をいたしま すが、まず政治家として、苦しいけれども整合性ある提案をしなければならないと思いますが、厚生大臣政治家戸井田三郎としていかがですか。
  30. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 御承知のとおり、今お話ありましたように、この公的年金というものは、やはり定年退職後の将来の生活、所得保障というものの基礎になっているわけでありまして、そういう意味からすれば、日本年金制度はちょうど昭和四十八年の改正以来、物価スライド、そして今度は完全物価自動スライド、こういう仕組みで将来の保障を安定していこう、そういう仕組みになっております。そのことは、同時に世代間で支えていくわけでありますから、年金受給する人の立場からすれば、給付が完全に安定した形で常に保障されていることは非常に大事なことであります。それを平均的な所得水準の七〇%保障をしようということでありますから、支えていく人たち負担というものも当然それに見合った負担をしていかなければならない。今厳密な数理計算と言われましたが、まさにそのとおりであります。  そういうふうな形で仕組まれているわけでありますが、それでは負担をする人が何ぼ負担があってもいいのかというと、これは負担の限界というものがあります。そういう観点からするというと、特に長寿社会が急速に進んできて、お年寄りの数がふえてくる。そうなってくるというと、今度は数の上でその負担をどう支えていくかということになると、同じ負担の中でも、大勢のお年寄りを少数の現役世代が支えるということになると、安定した世代間扶養の約束を実施していく上においては、その年齢というものも非常に大事なことになってくる。したがって、給付改善と、そして同時に現役世代の負担の問題、それでは幾つから支給するかという問題は常に関連をして、安定という大原則に物差しを合わせていかなければならない問題だと思います。
  31. 伊吹文明

    伊吹委員 去る予算委員会質疑で、社会党の山口書記長、委員でありますが、保利衆議院議長と浅沼稲次郎委員長の言葉を引かれて、政治家はとかく選挙のときは国民に受け入れやすいことだけを言って票をとるが、その後の責任のとり方について大変問題があるという趣旨の御指摘をされました。私はその後予算委員会で御質問をし、自民党としてこれを拳々服膺しなければならないが、同時にそのことは野党皆さんにもそのままお返しをしなければならない言葉だということを申し上げました。  石橋湛山さんという総理大臣が、民主主義というものは民意を尊重せなければ動かないものではあるけれども国民にすべて迎合してしまっては成り立たない制度だという言葉を吐いておられます。この厚生年金の改革の問題を議論するいい例が、この法案の中に入っております国鉄共済の相互助け合いの問題に私はあると思います。  国鉄の共済がなぜこんな大変な状態になったのか。これは国鉄の労使双方に責任のない多くの観点があることは事実であります。例えば旧満鉄職員の恩給を引き受けさせられた、あるいはまた鉄道省の恩給そのものを引き受けさせられた、また、国鉄改革の際に二号俸の特別昇給をすることによって人員整理を行った、その結果年金支給額がふえた、こういう問題があります。これは、国鉄の労使には直接責任のある問題ではないと私は思いますが、しかし、それ以外に労使交渉でいろいろな問題が決まっておったということもあります。このあたりのことについて、大臣の御感想を伺いたい。
  32. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 鉄道共済年金の赤字の原因につきましては、先生御承知のとおり、鉄道共済年金問題懇談会の報告書、昭和六十三年の十月七日でありますが、そのときにも指摘されておることでありますが、交通革命によって鉄道産業が斜陽化し、人員の縮小を余儀なくされたというような産業構造の変化に伴う半面と旧国鉄時代の制度運営に起因する側面の二つがあると言われております。特に後者の旧国鉄時代の制度運営に起因するものとしての報告では、成熟度に見合った保険料引き上げの努力がなされず、財政的裏づけのないままに過剰と思われる年金給付が行われたという指摘も載っております。こういったことがやはり一つの原因ではないかというような、そういった公的な報告書の中にあらわれていることを私ども強く感ずるわけであります。これは一つは、その間における制度の中でも、例えば料率改定をこうやって法律でやる場合と、それから共済の、国鉄のように一部労使間で話し合うということになると、やはり刺激が強い負担の方についてはいろいろどうしても人間人情でそういった方向に流れやすい、こういう傾向があらわれた一つの傾向ではないかと思います。
  33. 伊吹文明

    伊吹委員 今大臣からお答えがありましたように、私は、この国鉄の問題は国鉄の労使に責任のない要因と、それから今有識者のまとめとしておっしゃったように、まさに労使双方の話し合いの中で私が先ほど申し上げた厳密な保険の数理計算を破って、ツケを後世に、解決を後世に残しながら、その場その場でいいことをしていこうというやり方に要因があったことは確かだと思います。しかし、それは経営者の責任であり、労働組合幹部の責任であるかもわからないけれども、まじめに一生をささげて国鉄やJRのために働いてきた多くの職員には何の関係もないことだと思うのですね。だから、指導者がしっかりしていなければ、結局、国鉄の善良にまじめに働いてきた多くの職員が今どんな気持ちでこの年金改革法案審議を聞いているかと思うときに、私は指導者としてやはり筋を通すべきことはきっちりと筋を通さねばならぬと思うのです。  今問題になっております厚生年金の問題についても、過去四回、私の調べでは昭和四十四年、四十八年、五十一年、五十五年と改革が行われておりますけれども、このおのおののときに当たって、政府提案である保険料をこの委員会で、自民党にも責任があったと思いますが修正をして引き下げて、同時に給付の総額を政府原案よりもこの委員会の修正で引き上げている例がある。つまり、保険の厳密な数理計算で成り立たないことを国民が喜ぶからといって保険料を引き下げて、あるいは給付引き上げて、当然赤字になるその残りは何の手当てもせずにほったらかしてあるというのが現状だと私は思うのです。厚生年金というのは、そういう意味では今大臣がおっしゃった国鉄改革、国鉄年金と同じ道を歩んでいると私は言わざるを得ません。  今申し上げた四十四年、四十八年、五十一年、五十五年の政府原案と国会において修正された案との結果、どの程度の後世へのツケ回しが残っておりますか。
  34. 水田努

    ○水田政府委員 四十四年以降の修正による減収はおおむね二兆円程度と推計をいたしております。
  35. 伊吹文明

    伊吹委員 つまり、四回の修正によって厳密な数理計算ではなくて人気取りをするために二兆円というものが後世に回されたということですね。つまり、それを今我々はしりぬぐいをさせられておるということだと思うのですね。五年後、十年後、十五年後に、この委員会で今決定に携わる我々が同じことをしたと言われないように私たちはしなければならない。そのためには、保険というものは、イデオロギーで幾ら考えても厳密な数理計算は自民党野党と違ってくるわけはありません。国鉄のあの道を、そして善良なまじめな国鉄職員が今どんな気持ちでこの年金審議を聞いておるかということを考えるときに、厚生年金受給者を私たちは同じ立場に追い込んではならぬのです。  したがって、政府提案である保険料引き上げと、そしてまた退職年齢の平成十年からの段階的な繰り下げということがだめであるのならば、それは年金給付額を減らすか、あるいはどこかからその財源を持ってくるか以外に方法はありません。ただし、支給年齢を引き下げるためには当然退職年齢もそれに応じて動かしてもらわなければ、働いておるサラリーマンとしては耐えられないということもまた事実でしょう。  まずそこで、労働省は、平成十年から六十一歳 に厚生年金支給年齢をおくらせるということについて、退職年齢の問題をどのように考えておられるか、お伺いをいたします。
  36. 長谷川真一

    ○長谷川説明員 お答え申し上げます。  現在、高年齢者就業実態調査によりますと、定年前に退職する者を含めました民間企業におきます平均退職年齢は五十九・二歳となっております。それから、制度面で見ますと、我が国企業の定年制につきまして六十歳以上を定めておりますのが六一・九%、五十五歳を含めまして五十五歳以下が一七%、五十六から五十九歳が二一・二%という現状でございまして、六十歳以上定年はある程度一般化してまいっておりますが、まだ五十九歳以下の定年も三八%程度あるというふうに考えております。
  37. 伊吹文明

    伊吹委員 今労働省がお答えになったのは、厚生年金受給できるような比較的大きな企業においての数字ですか。
  38. 長谷川真一

    ○長谷川説明員 それぞれ調査は三十人以上の企業を対象にしておりますので、その平均でございます。
  39. 伊吹文明

    伊吹委員 労働省はこれを厚生大臣とよく話をしていただいて、厚生大臣にも労働大臣と十分のお話をしていただきたいと思いますが、退職年齢をおくらせるということは同時に年金の問題と非常に厳密にリンクをしておりますから、年金支給年齢だけをずらすということがあってはならぬと思います。  特に、労働省の場合は民間企業を相手にしておるわけでございますが、政府が雇用者になる場合、つまり国家公務員及び地方公務員、公庫公団等の職員について、これは政府がみずから決めなければならぬことですね。だから、政府がこのことを決められなければ当然民間もそれに追いついてこない。追いついてこなければ、厚生年金支給年齢だけを一方的にずらすということは、野党皆さんが批判するように私はもっともな点もあると思う。政府は国家公務員、地方公務員、公庫公団等についてどう考えておりますか。これは総理府ですな、人事局。
  40. 畠中誠二郎

    ○畠中説明員 まず、公務員についてお答えいたします。  将来、共済年金についても厚生年金と同種の措置が講じられた場合に生ずる公務員の雇用問題につきましては、関係省庁の局長クラスを構成員とする検討委員会をこの四月に発足させ、検討を進めることといたしております。  国家公務員の定年制度は、先生御存じのとおり、計画的な人事管理を通じて公務の能率的運営を図ることを目的としておりまして、定年の延長につきましては、共済年金支給開始年齢改定問題のほか、こういった公務の能率的運営に与える影響とか民間企業の定年制度の動向など、諸般の事情を総合的に勘案して検討する必要がある課題であるというふうに考えております。
  41. 伊吹文明

    伊吹委員 これは厚生大臣というよりも、年金担当の国務大臣としての戸井田大臣にお願いをしておきたいのですが、このあたりはやはり内閣で十分お話をしていただいて、そして遺漏のないように将来的にお取り計らいをいただきたいと思いますが、いかがですか。
  42. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 年金給付と雇用の問題というものは、まさに密接に関連をしている問題でありますので、今後とも関係省庁と十分話し合ってその実現に努力をしてまいります。
  43. 伊吹文明

    伊吹委員 政府の原案では、平成十年から厚生年金支給年齢を六十一歳とするということでありますから、六十一歳になるのが平成十年より万が一にでも後におくれたということになると、現在六十歳であるのが平成十年からは六十一歳になるわけですから、将来的には一年分の給付の額とその給付の額の運用益とがパンクするということですね。そう理解していいと思いますが、だからこういうことはやはりしてはいかぬですな。先ほど私が申し上げたように、この四回の委員会国会での修正の結果、やはり二兆円という大穴があいておる。私は野党皆さん方も十分そのことは考えておられると思いますが、万が一にも、平成十年から六十一歳というスケジュールが仮に十年おくれたら、どれくらい穴があきますか。
  44. 水田努

    ○水田政府委員 引き上げのスケジュールを十年ずらしまして、その場合の最終保険料を二六%に抑えるという前提で計算をいたしますと、利息を含めまして減収額は平成二年から六年の五年間で六兆円、平成二年から十一年までの十年間で見ますと、利息を含めて二十四兆円程度の減収になる、こういうふうに見ております。
  45. 伊吹文明

    伊吹委員 今、政府委員の言われた金額は、いずれ私たちの子供が税金で負担せねばいかぬということですね。そう理解していいですか。
  46. 水田努

    ○水田政府委員 保険料か税金か、いずれかによって負担する、こういうことになろうかと思います。
  47. 伊吹文明

    伊吹委員 もう一つ、これもあってはならぬことでありますが、保険料率は、今回の六%の給付改善のために一二〇四%から一四・六%にまず引き上げるというふうに設定をされております。仮に、かつてそういうことがあったわけでありますが、これを〇・一%この引き上げ幅を抑えるということになって、しかも、その資金的穴埋めを一般会計の負担、つまり消費税収からやらないということになると、どれくらいの負担になりますか。
  48. 水田努

    ○水田政府委員 〇・一%引き下げますと、平成元年度、満年度ベースで約九百四十億の減収になります。
  49. 伊吹文明

    伊吹委員 今の数字で、もうこれ以上何も論ずることはないわけでありますが、退職年齢の繰り下げと保険料引き上げというのは、国民にとって嫌なことであります。私もできればそうしたくない。しかし一方、給付改善というのは国民にとっては非常に望ましいことであって、だれも喜んでくれる。そしてだれしもがそうしたい。特に選挙の洗礼を受ける者はみんなそうでしょう。しかし、そういうことをやれば大変なことになるということが、今政府委員の答弁から、私は慄然としてこれを聞きました。あのまじめに働いているJRや国鉄職員のような人たちの気持ちに厚生年金受給者をさせてはならない。そのためにも私は政府原案どおりにこの法案を通すべきだと思います。  「菜根譚」という中国の漢籍に「一時の寂莫を受くるも、万古の凄涼を取ることなかれ。」そのときに国民からは何か言われるかもわからないけれども、後々そしりを受けない政治家の方が私は立派な政治家だと思いますが、大臣どうです。
  50. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 その前に、先ほどの年金と雇用の問題についてちょっと補足をさせていただきます。  それは、年金の開始年齢がおくれて、そして雇用が十分でない状況を想定されてのいろいろの御質問でありましたけれども、大体、昭和六十二年の実際に年金受給している方々の平均的な年齢が六十二歳になっております。でありますから、雇用はその年金の開始年齢よりも進んでいるというのが現状ではないかというような見方もできるのではないかと考えます。  そして次の御質問で、将来にツケを回してはいけないという問題でありますが、そのとおりでございます。そして財政再計算に見込んだ保険料の幅が大きく減るというようなことになると、次の財政再計算のときには非常に苦労しなければいけないし、それだけの負担が同時にまた重なってくる、こういうことになると思います。そして今度の場合には、約三十年後に二六%程度に抑えるという前提に立って、五年ごとの引き上げ幅を二・二というふうに設定をして極力小幅なものにいたしたわけでありますが、さらにこれが縮小していくということは、今委員御指摘のようないろんな問題になるし、次の対策というものが非常に大きな負担につながっていくということになるわけであります。  そういうふうになれば、まさに国民の合意が得られない状況がさらに出てくるだろうというふうに考えております。でありますから、今委員の、国鉄共済がたどった道を歩かぬようにという御指摘は拳々服膺していかなければならない、かよう に考えているわけであります。そして給付負担のバランスというものを常に考えて対策を立てていかなければいけない、かように思います。
  51. 伊吹文明

    伊吹委員 次に、保険というものは、年金というものは世代間の助け合いですから、今六%の給付引き上げてもらうのは、現に年金受給している方々ですね。ところが、その保険料負担し、退職年齢を後へずらされるのは、これから年金を受ける団塊の世代といいますか、そういう人たちだと思うのです。団塊の世代にとっては、六十歳から年金をもらっている人を支えて、自分たちも六十歳になったら同じようにしてもらえるというふうな前提で保険料を納めてきておったのに、将来的には年金をもらえるのが六十五歳になって保険料が少し上がってくるというのは一体どういうことだと、これは素朴な疑問だと思いますね。大臣、どうです。
  52. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 そのとおりにだれでも思うだろう、かように思います。しかし、年金というのは一方に給付改善という部面もあるわけで、私は世代間扶養という観点からすれば、やはり終局的に退職した後において安定した給付、すなわちその退職した時代の人が受けている平均的な給与の七〇%の所得を保障するということが最も合意として大事な合意だろう、かように思います。それを達成するために年齢というもののある程度の引き上げが考えられるということだと思いますので、そういう意味で整合性を保っていかなければいけないというふうに考えています。
  53. 伊吹文明

    伊吹委員 それでは、今度厚生年金保険料が二・二%引き上げられるということに伴って、現在働いている人たちの家計の状態はどうなるか、これが国民的合意が形成できるかどうかというところのポイントだと思うのです。なるほど大臣がおっしゃったように、自分たちはいずれ将来また年金によって生活を支えてもらうんだから今は負担はしなくちゃいけないんだ、これは論理としてはわかる。しかし実感として生活が苦しくなればだれしもいやなんですね。  それで、大蔵省来ていますか。大蔵省にちょっと伺いたいのだけれども、年収三百万、五百万、六百万、中堅的なサラリーマン、こういう人たちを例にとって、今回の税制改革の結果、所得税減税がどれぐらいあったのか。それからモデル計算でいいから、消費税負担額はどれぐらいあるのか。そして今回保険料が二・二%引き上げられる結果、負担増がどれぐらいになるのか。つまり最終的に三百万、五百万、六百万の人は税制改革年金改革の結果、生活が実質的にプラスになっているかマイナスになっているかという数字を教えてください。
  54. 河上信彦

    ○河上説明員 お答えいたします。  夫婦子供二人の標準世帯につきまして、片働きということで給与収入が三百万円の場合に、昨年十二月の税制改革によりまして所得税、住民税の減税額は四万円でございます。五百万円の給与収入の場合には八万五千円の減税、六百万円の給与収入の場合には十一万九千円の減税でございます。一方、消費税導入に伴います負担の増ということにつきまして試算してみた結果でございますが、給与収入三百万円につきましては約二万五千円程度の増加、五百万円につきましては三万七千円程度の増加、六百万円につきましては四万一千円程度の増加でございます。  なお、保険料引き上げにつきましては、私どもの方の試算では出てございません。
  55. 伊吹文明

    伊吹委員 それでは年金局長、今の保険料負担については大蔵省は入れていないと言っている。これも困るんだな。政府質問しているのだから余り省庁ごとのセクショナリズムを発揮せずに、だれかがぽんと答えてくれれば一回で済むのですから。今の保険料負担増を含めて三百万、五百万、六百万の家計が最終的にどうなるのか、それを教えてください。
  56. 水田努

    ○水田政府委員 今大蔵省の設定された標準世帯で、保険料の実質負担増との相殺関係を見ますと、三百万の年収階層では九千円の負担増になります。最終的に九千円の負担増です。五百万の階層は減税効果が依然として残りまして一万四千円でございます。六百万の階層は減税効果がなお残り三万八千円、このようになっております。
  57. 伊吹文明

    伊吹委員 それで、私はいずれ後でこのことも聞きたいと思うのですが、日本年金を受けている人たちには厚生年金、これはつまり比較的大きな企業の年金を受けている人たちと、国民年金厚生年金に入れない、それでも一生懸命まじめに人生を生きている人たちが受けている年金とがあると思うのです。  厚生年金というのは比較的大きな企業の方が受けておられる年金だから、今の政府委員の御答弁では、年間収入三百万円の人は年間九千円ですかマイナスになる。しかし五百万、六百万の人は保険料引き上げがあってもなおプラスになるという御答弁なんだが、比較的大きな企業で三百万の年収を受けておられる若年サラリーマンというのは、一生懸命働くことによって将来的に五百万、六百万、七百万の所得を受け得る可能性が国民年金受給者よりはるかに大きな人たちでしょう。そういう方々が将来自分たち税制改革の結果、所得税減税の恩恵を受け、年金が受けられ、あるいはまた安定した老後が送れるということになれば、そのあたりはつらいけれども、私は、年収三百万の方々にも政治家みずからが説得をし、厚生省も積極的にPRしなければいかぬと思うのです。厚生大臣、その辺はどうですか。
  58. 加藤栄一

    ○加藤政府委員 真に手を差し伸べるべき方々に対しましてはそれなりの、今年三月にも臨時福祉特別給付金等も給付もいたしましたし、そういうことにつきましては積極的にPRをいたしてまいりたいと思っております。  また、厚生年金につきましては、そういう将来負担になるべきものにつきましては、やはり給付負担のバランスをとる上で必要なものでございますので、そういう趣旨も十分にPRをしてまいりたいと思っております。
  59. 伊吹文明

    伊吹委員 厚生大臣、私、要望しておきますが、税制改革のときも非常にPRがだめなんですね、我々にも責任があると思いますが。だから、今言ったようなツケ回しをしてその場逃れをすればどういうことが将来起こるのかとか、厚生年金国民年金は別ですから、厚生年金というのは比較的大きな企業のサラリーマンのものですから、この人たちについての将来的な問題がどうなるかということは十分PRをしてください。  さて、そこで、もしも今回の会期内にこの法案成立したという仮定のもとに立って言えば、支給のスケジュールというのはどういうふうになりますか。
  60. 土井豊

    ○土井政府委員 会期中に法案成立した場合の支給でございますけれども年度内最後の支払い期であります平成二年二月、そのときに改定差額を何とか支払いたいと考えておりまして、そのためには、年金支払い作業に相当の日数がかかるものですから、十一月末ごろを目途にその作業に入る必要があるというふうに考えております。
  61. 伊吹文明

    伊吹委員 相当な日数がかかるというのはいいんだけれども、十一月終わりぐらいまでにめどが立てれば、いつごろにあなたはこれだけの差額が受けられますよということを通知できて、いつごろに実際の二千五百万人という実質生活が目減りをしながら待っている人にお金がいくのですか。
  62. 土井豊

    ○土井政府委員 改正法案に基づく新しい年金額改定通知でございますけれども、これは一月末ぐらいまでに各人のところへ全員送達できるというスケジュールでございます。それから具体的なお金でございますけれども厚生年金受給者は二月一日、国民年金受給者は二月十五日というふうに予定をしております。  なお、差額が幾らであるかというのは、現在の実務処理上そういう形の処理に相なっておりませんので、これにつきましては直接個々人に対しては行かないという仕組みになっております。
  63. 伊吹文明

    伊吹委員 衆議院の社会労働委員会というのは、野党皆さんも、何というのか、大変まじめに議論をしていただき、そして物のわかっておられる皆さんばかりですから、私は順調に審議が進 むのじゃないかと期待をしておりますけれども、しかし、参議院の自主性というものもあるわけだからそう簡単にあらかじめ準備をするというわけにもいかぬと思うのですね。ですから、我々政治に携わる者も審議のスピードアップをするという義務があるが、あなた方もスケジュールのスピードアップをしてもらわぬと困る。最大限努力していつまでにできますか。
  64. 土井豊

    ○土井政府委員 過去の業務の実績をもとに、私ども七十日の日数が必要であるというふうに考えておりますけれども、これは何としても年金受給者に二月の定時払いには一緒に改定差額を払いたいということで内部で種々検討しております。その場合に、具体的に申し上げることは困難でございますけれども、事前に何らかの準備に取りかかるというようなことで今のようなスケジュールに何とか間に合わせていきたいという気持ちでおります。
  65. 伊吹文明

    伊吹委員 それで、これは年金額によってばらばらだからかえって誤解を招くといけないのだけれども厚生年金国民年金について、この差額ですね、六%相当分は一カ月当たり大体平均すればどれぐらいになるのですか。
  66. 水田努

    ○水田政府委員 老齢基礎年金満額の場合は一月当たり約三千二百円、それから厚生年金の場合はおおむね一月一万円前後、それから老齢福祉年金の場合は九百円、それから障害年金の一級の方の場合はおおむね四千円、こういう感じになります。
  67. 伊吹文明

    伊吹委員 今の厚生年金の場合は御家庭ごとの計算で一万円ということですね。——モデル計算で、それはいい。ただし国民年金の場合はそれは一人当たりだから御夫婦だと倍になるのですか。
  68. 水田努

    ○水田政府委員 そのとおりでございます。
  69. 伊吹文明

    伊吹委員 そうすると、四月から始まったとして十二月まで、四、五、六、七、八、九、十、十一、十二月、九カ月分のその金額が大体国民方々のお手元に行く、こういうことですね。
  70. 水田努

    ○水田政府委員 四月から、二月払いでございますので、来年の一月までですから、十カ月でございます。
  71. 伊吹文明

    伊吹委員 これは私が一番最初に申し上げたことなんだけれども税制改革の結果、やはり一番しわの寄っている人たちですから、我々も野党皆さんとともに政治家として一生懸命頑張りますから、どうか政府の方も徹夜してでもやってください。厚生大臣いかがです。
  72. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 御指摘のとおり、今二千五百万人の受給者はこの年金の行方をじっと見守っているのだろうと思います。精力的にその期待にこたえるように努力をしてまいりたいと思います。
  73. 伊吹文明

    伊吹委員 次に、私は今厚生年金議論をしたわけですが、年金の中にもいろいろな不公平があると思う。そして、その年金を受けている人たちの強者か弱者かという社会的な立場も十分考えなければいかぬ問題をたくさん含んでおるのですね。例えばお亡くなりになった山口年金局長昭和六十年の改革で大変公平な道筋をつけられたと私は思う。しかし、それは必ずしもまだ十分そこまでいっていない。あの改革の前は、驚くべきことだけれども厚生年金給付に二〇%の補助金が入っておる。つまり、大きな企業に勤められなくて零細な、店頭で物を売ったりあるいは一人か二人の町工場、本当に小さな町工場で自分一人で働いておられる方々が納められた所得税で、それよりはるかに大きな厚生年金をもらう人たちの二〇%を負担していたということですから、私はこれは全く驚くべきことだと思う。今は亡き山口年金局長の改革でそのあたりが取り払われて、基礎年金と、そして厚生年金についても二階建てあるいは厚生年金基金という三階建てになったということは、私は非常によかったと思いますね。しかし、まだいろいろな問題が残っていますよ。例えば国民年金は既に六十五歳の給付になっておるわけでしょう。ところが、厚生年金は今度六十歳を段階的におくらせることについていろいろな議論が起こっている。もちろん自営業者につきましては、これがサラリーマンかどうかというようないろいろな問題がある。そして、定年制があるかないか、どうかという問題もある。しかし、また一方で所得税やいろいろな問題もあるということも事実。そして同時に、年金というものがサラリーマンから始まったということも事実だけれども、この辺の将来的な負担給付一元化というか、公平をどうするかという問題について、いかがですか、年金局長
  74. 水田努

    ○水田政府委員 政府制度の長期的安定を図るために五十九年に既に公的年金一元化を図るという方針を決めているところでございますし、今御指摘の自営業者とサラリーマンの開始年齢の格差、これを埋めるということも今回の改正課題といたしているところでございます。
  75. 伊吹文明

    伊吹委員 一つの具体的な例を挙げますと、今回この法案の中で国民年金基金というものがつくられたということは私は制度としてはよかったと思う。これが動くかどうか、実際的にはこれが大問題だ。なぜかというと、厚生年金の中の一階部分基礎年金ですね、これはいわゆる国民年金と言ってもいい、これの二階建ての厚生年金部分、三階建ての厚生年金部分加入している大企業を中心とした人たちは、その掛金が所得税の計算上これはみんな控除されているわけでしょう。そして、法人負担の分についても法人税の計算上これは経費の計算になっているわけですね。ところが一方、自営業者の人たち国民年金に入っておっても、厚生年金の二階建て、三階建ての部分に当たるそういう受け皿が今までなかったから、民間での生命保険だとか信託銀行だとかの年金商品に入ると、所得税控除は驚くべきことに年間五千円しかないんだね。ということは、厚生年金加入している人たちは、所得税で年間一体どれぐらい掛金のために恩典を受けておるのか、そして厚生年金基金のためにどれぐらいの恩典を受けておるのか、そして法人税計算上どれぐらいが企業負担として経費に落ちているのか。これは、大蔵省、わかりますか。
  76. 河上信彦

    ○河上説明員 お答えいたします。  具体的な推計につきましては、個人、法人別の金額だとかあるいは被保険者に占めます実際の納税者の数、こういった数字がきちんとしたものがございませんとそのような推計は非常に困難でございますが、しかしながら、例えば現在被保険者が二千七百万人を超えておるとか、あるいは厚生年金保険料の収入が八兆円を超えておる、こういったようなことを考えますとそれなりにかなりの額になっておるのではないかというような感じを持っております。
  77. 伊吹文明

    伊吹委員 具体的な数字はわからないけれどもかなりの金額になるということは、国民年金に入っている人たちの立場からいうとまことに腹立たしいことなんです。つまり、自分たちは自営業者としての所得税をまじめに納めている。しかし一方で、厚生年金に入っている人は将来のために備えていけばその分が経費に落ちていく、所得税から控除されるということですからね。だから、その受け皿として今回国民年金基金をつくられたというのは発想としてはよかったと私は思う。国民年金基金に自営業者が加入をした場合には、その加入をした金額は、上限はあるだろうが所得税控除の対象になる、こういうことでしょう。ただ、これはうまく動きますか。どう思います。
  78. 水田努

    ○水田政府委員 地域型基金と職能型基金がございますが、職能型基金については既に十を超えるところが準備を進めておりますし、地域型基金についても各県十分設立することができる、私どもはこのように見込んでおります。
  79. 伊吹文明

    伊吹委員 これは国会でスマートに答弁をしたということで済む問題ではないと私は思う。各都道府県に置いてある保険課ですか、こういうところを通じてよほど指導してもらって、そして同時に、余り許認可のときに難しいことを言わぬこと、これはぜひよろしくお願いをしておきたい。これは自由主義というものの本来のいいところをどう評価するか、あるいは社会主義的な物の考え方に立つかということによって違ってくると私は思うのですが、基礎年金というものは現に今国庫負担が入っていますね。国民から集めた税金でその 三分の一をカバーしておる、保険計算だけじゃなくてカバーしておる。しかし、その上の二階建てである厚生年金部分、あるいは厚生年金基金の分は、今まではあなた方が関与している部分については所得税の減税だとかいろいろいい目を見ておったけれども、あなた方に助けてもらえない零細自営業者の人たちはみんな自己負担老後に備えておったわけです。ですから、今年金型商品に設定されている五千円という所得税の控除額を大きくとるということも一つの方法だと思うけれども、将来的には厚生年金の二階建て部分、三階建て部分国民年金基金あるいは民間のどの商品に加入しようと、国民一人当たり幾らという所得税の控除額をとって、まじめに働いてどんどん積み立てる者は老後に厚い手当てを受けられる。しかし、積み立てない人は人間らしく暮らしていける生活の最低水準を守る基礎年金でやってもらうという形にした方がむしろいいのじゃないかと思うのだけれども、この辺はおのおの政治家が持っている政治哲学のような問題ですから大臣にちょっと答えてもらいたい。
  80. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 今伊吹先生が御指摘の問題は、非常に多方面にわたって検討すべき問題が含まれていると思います。そのために一言で申し上げることはできませんけれども伊吹さんの場合には長い間そういった年金制度について私見を持っておられるということはかねがね聞いております。私自身としては、一つの御提言としてそういった方向についてもよく考えてみたい、かように思っておりますが、今言いましたようにこれは非常に多方面にわたっております。今先生が言われたのは政治家である個人としてどう考えるのかという御意見でございますので、そういう意味に受け取らせていただきます。
  81. 伊吹文明

    伊吹委員 イギリスのロブソン教授という方の著書の中に、これからやらねばならないのは福祉国家という概念から福祉社会という概念に進んでいかねばならない。つまり政府がすべて主導的な立場に立ちながら福祉をやっていきますと、とかく今言ったような不公平が気がついていない中で出てくる。だから社会全体として福祉がどうなるかという形に持っていかねばならないということになると、私の生きざま、政治哲学から言うと、私は自由主義の原則をもう少し福祉の中へ注入した方がいいと思っていますから、戸井田厚生大臣は社会福祉の面での指導者でありますし今後もそうあられると思いますから、今の御答弁、お約束は私は重く受けとめておりますので、よろしくお願いをいたします。  時間もだんだん迫ってまいりましたが、今度は厚生年金基金のようなお金を預かった方です。これはもう少しちゃんと運用して、ここにこそ自由競争をもっと入れてやってもらわなければいかぬという部分もある。しかし、これを余り強調し過ぎると、ともかく利益を上げたらいいんじゃないかといって投機に走って、穴をあけられたら後はどうするかという問題もある。今回の法案の中で預託先の多様化をしておられるのだけれども、これはどういうスケジュールで進みますか。
  82. 水田努

    ○水田政府委員 一応法案成立させていただきましたら、私ども年度からこの制度の運営を開始いたしたいと思っておるところでございます。
  83. 伊吹文明

    伊吹委員 これも先ほどの国民年金基金と同じで、書いてあることはなかなかいいことだと思うのです。けれども実際の行政指導運用、この辺に余りくちばしを入れ過ぎずに、といって野方図なことをされずに、これは難しい。ひとつうまくやってください。  それから、結論的に言えば、先ほど大臣がおっしゃったように、二千五百万人といえば有権者の三〇%です。選挙が近いから票をとりたいとか、そういうことではなくて、これは野党方々も我々もみんな、国民福祉を預かっている社会労働委員会の一員として、受給者期待を裏切ってはいかぬ、しかし同時に、もしこれがおくれることがあるならばどういうことでおくれたのか。実は三月に国会へこの法案を出されたわけでしょう。国会の中でいろいろなことがあったことも事実だ。それは行政府としては言いにくいことでしょう。しかし、この議論をできるだけ開かれた議論として国民に聞いてもらって、なぜおくれているのか、野党のポイントはどこにあるのか、それが保険の数理計算として成り立つのか、あるいは自民党の主張のどこが野党の御提案を聞いて直さねばならないのか。私は、国会の役割はまさにそこにあると思うのです。そして国民に判断をしてもらわねばならぬわけですから。  しかし、一番大きな問題は、先ほど私が言ったように、そのときに国民に好かれることだけをやって、後々ツケ回しをしてそれは知らぬぞという形は困るのです。これは過去四回、この中にはおられないと思いますが、当時社会労働委員をしておられた方の責任は重大だと私は思うのです。そういうことを言われないようにしなければいけないと思いますが、健康になるのならば苦い薬も飲んでもらいたい、痛い手術も受けてもらわねばならないということを勇気を持って言う政治家で私はありたいと思うのですが、どうですか、政治家戸井田三郎は。
  84. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 伊吹委員御提言のことはそのとおりだと私は思います。しかし、我々政府といたしましては、一つの理想であると思う負担給付のバランスをとりながら、そして国民期待にこたえられる年金制度というものを御提案申し上げているわけであります。御提案申し上げた以上は国会で御審議をいただいて、早く成立させていただく、この一言でございますけれども政党間には、これは同じイデオロギーではないといっても、それぞれ重点として考え、国民のためにどう言ったらいいかという主張はいろいろおありだと思います。しかし、そのある主張というものを十分に闘わせていただいて、そして早く結論を出し、二千五百万人の大勢の人が待っているということにこたえてあげていただきたい、かように思う次第であります。
  85. 伊吹文明

    伊吹委員 私のところに国鉄の共済年金受給者の方がよく来られます。そのお話を承って、私は本当にお気の毒だと思う。指導者というものが場当たり的なことをやれば、多くの人たちは必ずつらい目に遭います。幸い社会労働委員会野党の先生方も、イデオロギーよりも国民福祉というか、今の年金受給者方々のことを思うという大きな旗のもとで審議が順調に進んでいくと思いますから、厚生大臣もそれを受けて、一刻も早く今の年金受給者が困らないように支給のスピードアップ等を図っていただきたい。  以上で終わります。ありがとうございました。
  86. 丹羽雄哉

    丹羽委員長 河野正君。
  87. 河野正

    ○河野(正)委員 御承知のように昨年七月から精神保健法が施行されまして、この法の精神に示された障害者の人権の問題あるいは社会復帰を促進するというような非常に大きな基本的な使命があるわけです。そこであの改正は、大臣も御承知のように大変画期的な、歴史的な改革だったと思うのです。  そこで、長い間の古い歴史がありますから、あの中でああいった抜本的なあるいは画期的な改正が行われたら、それが一体スムーズにうまくいくだろうか、こういう議論があったことは御案内のとおりでございます。ですから、今諸外国におきましてもあの法の改正内容については非常に高く評価をいたしております。であるけれども、なるほど内容というものは高く評価すべきであるが、果たしてそれがスムーズに、適正に運用されるかどうかということについては国際的にも非常に関心の深いところでもございます。     〔委員長退席、畑委員長代理着席〕  そういう意味で、やはりあの法改正というものが非常に画期的な、歴史的な改正であっただけに、それをぜひそのまま運用し、また適正化を図っていかなければならぬということが一般的な現場の皆さん方の御見解だと思うのです。でございますから、私はそういうことを考えてまいりますと、なお中身的には運用面において矛盾のある点も若干ございます。当時大臣は社労のそういう方面のエキスパートとしていろいろ理解を示された 経緯があるわけですから、きょうの質疑に対しましても多くの期待をいたしておりますし、同時にまた、大臣の当時の御見解等をぜひこの運用の中で生かしていただきたい。そういうことで若干の点に触れてまいりたいと思っておるわけです。  そこで、基本的には、人権の擁護それから医療の適正化という点で、例えば任意入院制度を中心にしなければならぬとか、あるいは適正な運用のためには精神保健指定医というものが新しくできまして、そして多くの義務というものが与えられてまいったわけです。そういうことで、私は、その発想は従来のような収容施設的な考え方では困るんだ、やはり本来の治療施設という見解でこの円滑な運営に当たっていかなければならないということだったと思うのです。  でございますから、後で若干の点については個々に申し上げますが、一応大臣に対しましては、そういった法改正に基づく発想、それからまたこうあるべきだ、それが一番法の精神を生かす道だという御見解がありましょうから、私ども最初にその御見解を承って、後で若干の質疑を続けたい、こういうふうに思います。
  88. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 河野先生、精神衛生法の改正のときには大変御尽力いただいて、特に病院側で不安といろいろな御心配をしておられたときにも積極的に御尽力いただいてあの大法案が通過したわけでありますから、今そのときのお話を聞きながら思い出して、心から感謝をいたしております。  そこで、もちろん人権擁護あるいは収容施設的な役割として果たしていくということが主要な考え方でございましたので、精神医療については精神保健法の改正やあるいは衆議院及び参議院社会労働委員会での附帯決議の御趣旨等も踏まえまして、そして昭和六十三年四月の診療報酬改定のときには、外来診療を重視する観点に立って通院カウンセリングの点数を引き上げたり、あるいは精神療法についても点数を引き上げるとともに、応急入院にかかわる新たな点数を設定したところでありますが、必ずしもそのことによって十分満足していただいているわけではなく、いろいろな御意見があったこともよく存じております。また、平成元年度の予算においても、措置入院者の定期病状報告書の作成にかかる経費等についても助成をする措置等も講じておりますし、これからも法改正の精神にのっとった対応を十分していきたい、かように思っております。
  89. 河野正

    ○河野(正)委員 今大臣から御見解をお述べいただいたわけでございますけれども、全くそのとおりでございます。私ども当時一番心配しましたのは、非常に画期的な改正を行った、一体どうなるだろうかというような危惧があったことは事実です。そういう御意見等がいろいろ述べられて、結果的には衆参両院で、この法律成立させるけれども、こういう点についてはぜひ改善を図っていかなければならぬという附帯決議が出されましたことは大臣お話しのとおりです。  衆参両院の附帯決議の内容というものは大体同じでございます。それらを見てまいりまして一番考えますのは、任意入院、応急入院というものが柱になるわけですから、そういったことが新設された、したがって、それの運営については円滑な運営がなされなければならないということは当然でございます。そこで、今諸外国でも法律内容については非常に高く評価する。しかし、それを運用する、円滑な実施をする上において政府が一体どういう措置をとられるだろうかということについて非常に大きな関心を持っておるということで先ほど御見解を承った、こういうことでございます。  そこで、当時この法改正に基づいていろいろな杞憂があった、心配事があった、それに対してはこうやりますよという意思表明の附帯決議があったと思うのです。実際には「今回の改正趣旨、今後の精神医療のあり方を踏まえ、診療報酬の面等において適切な配慮を行っていくこと。」こういうことがあります。それから、任意入院、応急入院等云々につきましては今申し上げたとおりでございます。ところが、現実に今大臣に若干お答えいただきましたような改善が行われたことは事実でございます。しかし、具体的にはなおこの法の精神と矛盾するような面が多々ございます。改正が円滑に実施されるためにはそういった面の解決も必要ではなかろうか、こういうふうに考えるわけでございます。  そこで、その点について若干触れておきたいと思います。  大臣は、そういう意味では非常に御理解をいただいてまいりましたから私どもがとやかく言う立場ではないと思いますけれども、ぜひひとつ御検討をいただきたい。あるいは御善処をいただきたいというふうに思うわけです。  それは、今措置入院については前年度から配慮したということでございますけれども、今度新しく医療保護入院という制度が設定されました。ところが、要するに精神保健指定医に義務づけられておるわけです。義務的に今提出を求められているわけです。それは医療保護入院患者の定期病状報告、それから入院時の届け出、これは義務づけられておる。しかも、それも単なる医師ではないのですね。精神保健指定医に対して義務づけられておる。そういうことになりますと、ここにもありますけれども大変な書類になるのですね。これが一年に一遍の定例報告書の内容ですね。大変な書類になるのですね。それから入院届、これもまた示さぬでも御承知だと思うから、ただごらんいただければ結構だと思います。しかも、これはだれが書くかというと、精神保健指定医が書かなければならないという義務づけが行われたわけですね。  措置入院については、昨年度からいろいろ御配慮いただいておりますからとやかく申し上げるわけではございませんが、それと並列して義務づけたならば、届け出も義務づけですね。それから、これを記載する人も特別な指定医というライセンスを持った人が義務的に届けなければならぬということでございますから、これは相当前向きで御検討いただいておると思うけれども、これも医療保護入院患者の適正化という意味で義務づけられておるわけですから、これについては当然の配慮を行うべきだろうと思うわけです。これについての御見解を承っておきたいと思います。
  90. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 お答えいたします。  先生お尋ねの医療保護入院につきましては、お話がございましたように医療保護入院の入院届、あるいは定期病状報告書の作成が義務づけをされておるわけでございます。この医療保護入院につきましては、家族等の保護義務者の同意による入院であるいうのが基本的にはあるわけでございまして、基本的には病院と家族間で民事的に対処するべきことというぐあいに思うわけでございます。先生のお話にございましたように、新しくつくられました精神保健法を円滑に運用するためにも、この報告書の作成が病院なり家族なりに過重な負担とならないように私ども方策を考えなければならないということで、現在いろいろ検討いたしておるところでございます。
  91. 河野正

    ○河野(正)委員 過重な負担にならぬようにということであるけれども、新設されたわけですから負担になっていることは事実ですね。ですから、それに対してどういうふうに配慮をされますか、こういうふうにお尋ねしておるわけです。
  92. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 厚生省といたしましては、来年度予算概算要求におきまして、この医療保護入院のための入院届け出及び定期病状報告書の作成にかかわります経費の助成について財政当局に要望してまいりたいというぐあいに考えております。
  93. 河野正

    ○河野(正)委員 これは医療保護入院の適正化を図っていく意味においてこういうことが義務づけられたわけですから、当然我々は医療保護入院の医療の適正化を図っていく意味において協力をしなければならぬということだと思うのですね。ですけれども、非常に煩雑ですね。負担がかからないようにとおっしゃるけれども、これは大変な作業でしょう。したがって、措置入院については既 に措置がとられておるわけですから、それに並行して考えられるべき筋合いのものではなかろうか、こういうふうに思うわけです。ですから、これはもう既に概算要求をされておるという話ですけれども、ぜひ今申し上げましたような実態について折衝に当たっていただきたいと思いますが、これはいかがですか。
  94. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 先生の御要望の趣旨を体しまして、私ども精いっぱい努力するつもりでございます。
  95. 河野正

    ○河野(正)委員 そこで、先ほどちょっと大臣の見解を承ったわけですけれども、従来ややもすると精神医療というものが収容施設だという発想で運用されてきたところにいろいろ世論とか出てきたと思うのです。ですけれども、実際には、世論で言われておりますように収容施設ではなくて治療施設である、こういう発想が原点にならなければ本当の新法の精神を生かすということはなかなか難しいと思うのです。  そういう意味で、今局長からお答えいただいたように、措置入院でできるわけですから、医療保護入院についても、負担を過重にさせてはいかぬという発想であればなおさらのこと、この点については恐らく大蔵省と折衝が残っておるわけですから、ぜひ善処をお願いしたい、こういうふうに思います。よろしゅうございますか。
  96. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 努力してまいります。
  97. 河野正

    ○河野(正)委員 私は、今申し上げましたように今度の新法というものは非常に画期的な改正だったと思うのですね。そして中身的にも、世界でも評価されておりますように、一つには人権擁護、一つには社会復帰促進ですね。それが、私どもが言っているように収容施設ではないんだ治療施設だという発想でいかないと、入れておけばよろしい、収容施設だという考え方ではこの法の円滑な運営というものはできないと思うわけですね。そういうことで私どもが考えてみますと、どうも今まで収容施設的な感覚で運営されてきたという長い歴史があります。ですけれども、この新法はそうじゃないですね。要するに、人権尊重もさることだけれども、社会復帰を促進しなさいと言っているわけですから、そういう意味ではやはり治療施設という発想で運営していかなければ、またもとの収容施設的な感覚での運営に戻ってしまう。これでは新法ができ上がった意味がございませんので、ぜひ善処をいただきたいというふうに思います。  時間がございませんから多くを申し上げることはできませんが、そこで、今日本の医学医術も非常に進歩しまして、そして新しい先端技術というものが次々に誕生しますね。ですから、この精神医療についても、なるほど、向精神薬とかその他いろいろ新しい医術が導入されてきたということはそのとおりですけれども、これはもう内部矛盾でございますけれども、感覚的にまだ再検討しなければならぬ面がたくさんあると思うのです。  それは例えば例を挙げて申しますと、隔離入院、この隔離入院はだれでもできないのですね。いわゆる人権を尊重しなければならぬという建前から、隔離等の場合には精神保健指定医に義務づけられておるわけですね。そして、これは少なくとも毎日診察に当たらなければならぬ、やらなければならぬ、そういうような義務づけがあるわけですね。それからもう一つは、そういう隔離した場合は一般医療でいうICU、集中治療的なものですね。精神医療の中ではそういうもの。ところが、これも何ら考慮されていないという面がございます。  そこで、現場ではとにかく何とかして新法の精神に沿うて努力しなければならぬ、ところが、さっき局長がおっしゃったように、そのために仕事の負担が過重、そういうことがあってはならぬという話がありましたけれども、これは確かに隔離の場合には今申し上げましたような実情がありますね。ICUのような性格を持っておるし、それから、これは新しく誕生いたしました精神保健指定医に義務づけられておる、これ以外の人は隔離することはできないわけですから。それからまた、診療についても必ず一日最低一回、頻繁に診療しなさい、診察しなさい、こういうことも義務づけられておりますね。ですからこういう点、どうしても技術料というものが余り新法に沿うたような形で考えられてないのじゃないかという気がいたしますね。この点についてはどうでしょうか。
  98. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 精神衛生法の改正に基づきまして、先ほど大臣からもお答えがございましたように、改正趣旨を踏まえた診療報酬の改定ということにつきましても私どもとしては努力をいたしたわけでございますが、実際に診療を担当される側の立場から見まして必ずしも十分でない面もあろうということについては、私どももいろいろとそういう認識は持っておるわけでございます。  ただいま御指摘のありました、隔離の際の毎日の診療を含めます医療の評価という問題につきましても、やはり現在の精神医学におきまして、患者の病状によって個室に隔離し、常時診察を継続する、こういう必要性があることも承知はいたしております。こうした御指摘の点につきまして、今後どのような診療報酬の対応をなすべきかという点につきましては、先ほどもまた御指摘ございましたような外来診療の重視という面もございますし、そういう精神医療全体のあり方の中で十分検討をしていきたい、こう考えておるわけでございます。  診療報酬の問題は、いずれにいたしましても中央社会保険医療議会において御議論をいただきまして、私どもその御意見を踏まえて、その対応を考えていくということになるわけでございますが、ただいまの点は、私どもとしてもそういう問題があるということを認識の上で今後の検討を進めたいと存じております。
  99. 河野正

    ○河野(正)委員 すべてはしょって申し上げますので、お答えにくい点もあると思いますが、いずれにしても先ほどから何回も繰り返して申し上げますが、とにかく精神病院というものは治療施設である、そして新法では人権を尊重しなさい、社会復帰を促進しなさい、こういう大きな柱のもとで、いろいろな意見がございましたが、成立をして、もう既にかれこれ一年間実施をされたということで、その経験の中から、当時いろいろ杞憂があった、心配があった。内容は実にすばらしいものであるけれども、実際に適正に運営ができるのかできないのか、そういう点のいろいろな疑問があったわけでありますけれども、今もう既に実施されて一年、非常になにされますけれども、いろいろ実施のために努力をされておるという段階です。  そこで、私がさっき言いましたように衆参両院で法成立に当たっての附帯決議が行われておるわけですから、少なくともその附帯決議については善処をしていただきたいという建前から申し上げておるわけですが、その根幹になるものは、やはり今申し上げますように精神医療の実態というものへの認識不十分ではなかろうかという感じがいたしますね。それは例えば隔離のごときは精神医療だけに限っているわけですから。これは一般的に言えば、ICU、集中治療室と同じような性格のものですね。ですから、そういう問題があります。それから、御案内のように、あの新法の精神に沿うて現場ではやはりその成果が上がってくるような努力を一々やっていかなければだめです。  そういって、先ほど局長からもちょっと御答弁がありましたが、いわゆる負担を過重させてはいかぬというお話もありました。ですけれども負担が過重されておることは、これは事実なんですね。させてはいかぬといったって負担が過重されておるのは、例えば先ほど申し上げましたように定期病状報告とかあるいは入院時の届け出とか、こういうものがありますね。それから、例えば隔離の場合のいろいろな義務づけが出てきましたね。これは負担が過重されておることは事実なんですね。ですから、まずそういう点は附帯決議の精神に沿うて、これは最終的には大臣に御見解を承りたいと思いますけれども、これは中医協の議 論もございます。中医協の議論を踏まえて大臣が告示をするわけですから、これは十分そういう方向が理解されるような努力をぜひお願いしておきたい、こういうふうに思います。これはよろしゅうございますね。
  100. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 ただいまの附帯決議の御趣旨も十分私どもは踏まえながら今後対処してまいりたいと考えております。
  101. 河野正

    ○河野(正)委員 そこで、矛盾点を申し上げたのですが、例えば社会復帰を促進するための努力をしなければならぬのですね。医療の運営の中で社会復帰を促進するために努力をしていく、そういうことに今後力が注がれなければならぬことはそのとおりですね。ところが、運用の面では、それに逆行するような形の運用が行われている事実があるわけですね。例えば、精神療法とかあるいは作業療法、こういうものは社会復帰を促進するためにはとにかく積極的に展開をしなければならぬ。ところが、それに対して制限が加えられておるわけですよ。要するに、精神療法なり作業療法というものは社会復帰を促進させるための作業の一環ですから。それをべらぼうにやれということを我々は言っておるわけじゃないんです。ところが、それに対して、とにかく入院患者の精神療法のごときは週一回、それから作業療法のごときも週五日、土曜、日曜は休みなさい。しかし、社会復帰を促進するためには、とにかく例えば作業のごときほ毎日やってでも一日も早く社会復帰ができるように努力すべきだと思うのです。特に任意入院制度ができましたから、やはり精神医療でも仕事の中のウエートがいろいろ変わってきました。ですから、社会復帰のためには精神療法というものを積極的に展開をしなければならぬだろう、こう思っておるわけだけれども、それを今のように制限をするということになりますと、一方では社会復帰を促進しなさい、こういう使命を与えながら一方ではそれを阻害するという格好が出ていますね。そういう点は早く改めていただかなければならぬのではなかろうかと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  102. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 ただいま御指摘のとおり、精神医療にかかわる診療報酬につきましても、社会復帰促進の観点に立って考えるべきであると私ども考えておるわけでございます。  例えば、そういう見地から、六十三年四月の診療報酬改定の場合におきましても、入院中の患者に対する精神療法でありますとか通院カウンセリングの点数を引き上げるといったような社会復帰促進の観点に立った改定を行っておるわけでございます。今後とも、外来診療の重視あるいは新しい精神医療の方向に沿った診療報酬の合理化を行っていくということは必要なことであると考えておるわけでございまして、御指摘の趣旨をも踏まえまして、中央社会保険医療議会の御意見も伺いながら私どもも検討を重ねてまいりたいと考えている次第でございます。
  103. 河野正

    ○河野(正)委員 今私は精神療法と作業療法について述べましたが、これはカウンセリングの問題もあります。これもやはり社会復帰を促進する、あるいは再発を防止していくということです。  これは、言われておるように、再入院の医学管理料の問題があります。再入院する場合に管理料をどこから起算するか。ある意味においてはカウンセリングによって再発を防いでいくということになればこれはやはり非常にいいわけですけれども、しかし、残念ながらこれは、精神分裂病を初めとしてなかなかそういう状況にはない。そうしますと再入院ということになる。そうすると、今のでは要するに再入院の管理料というのは第一回目の入院から通算する、こうなっております。ですけれども、一遍入院をして退院をして、そしてまた再入院をする、こういう状況のもとでは再入院の場合の管理料の起算、それは改めて入院したところから起こるというのが適切ではなかろうか。何も我々は物取り主義で言っているのではなくて、新法の精神に沿うていくためには、そういう矛盾というもの、あるいはいろいろな問題点というものを解決するということが必要ではなかろうかというふうに考えるがゆえに、この問題についてもぜひ御検討をいただきたいと思っているわけですが、お答えいただきます。
  104. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 入院時医学管理料につきましては、御指摘のとおり、入院期間の経過に即して点数が逓減するように設定されておるわけでございます。したがって、一たん退院した患者が同一の傷病によって再び入院いたしますと、入院期間の計算は初回の入院料を基準として算定するという扱いになっておるところでございます。  精神障害のような傷病のものでございますと、確かに、本質的に長期にわたりまして寛解、再発を繰り返す者があるということは御指摘のとおりであろうと思います。そういった性格を持っている傷病につきまして入院時医学管理料をどのように取り当てていくか、これも今後の検討課題の一つであろうと私どもは理解できるわけでございまして、中央社会保険医療議会の御意見も伺いながら検討を進めてまいりたいと考えております。
  105. 河野正

    ○河野(正)委員 そういうことをずらっと各論で検討してまいりますと、基本というものは、精神医療のあり方に対する理解というものが十分でないのではなかろうか、要するに、従来の収容施設的な、入れておけばよろしい、これは長い歴史があるわけですから、そういう発想でそういうことがいろいろやられてきた、運営されてきた、だからそういう矛盾点、不合理な点というものが残ってきた、こういうことだと思うのです。精神医療については新法ができて世界的にも国際的にも非常に評価されておる。ですから、私どもはそれはそれなりに対応するような努力というものをしていかなければならぬということはそのとおりだと思っております。  そのためには不合理というもの、例えば初診時ですね。患者を初めて診ます。家族それから関係者等の問診をかなりして、最終的には患者の問診ということになるわけですから、一般の風邪引きとかあるいは胃腸障害とかと違ってかなりの時間を食うわけですね。しかし、それらについても何ら考慮されてない。しかし人権を尊重する建前からいえば、そういう診療に長時間を要するということになれば、当然それについては負担を加重させてはいかぬとおっしゃっておったが、負担をかけておることは事実ですから、それも考慮に入れなければならない。ということを考えてまいりますと、率直に言って、どうも全般的に昔の収容施設的な発想で来た、長い間の慣習となった、ですけれども、今は精神医学そのものも進歩したし、法律そのものも非常に内容的に進歩してきておるわけですから、それに対応するような措置というものを、一つずつ申し上げると本当に時間がありませんから申し上げませんけれども、発想というものは、そういうふうな出発点が少し、ボタンのかけ違いではないけれども間違っておったのではなかろうかという感じがいたします。ですから、その点一言お答えいただきます。
  106. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 法律も新しくなりましたし、また医学も新しい内容をもって日々行われておるわけでございます。私どもとしても、従来の発想にとらわれることなく、新しい医学の実態に即してこういった問題を考えていくべきであるという点については先生の御指摘と考え方を同じくしておるわけでございまして、ただいまお述べになったような今後の新しい精神医療のあり方というものを十分踏まえながら、この問題の解決に当たってまいりたいと考えております。
  107. 河野正

    ○河野(正)委員 時間がございませんから結論に入りますけれども大臣ひとつお答えいただきたいと思うのです。  それは、今も申し上げますように、新法は国際的にも高く評価されました。ですから、評価されるだけではなくて、問題は、その評価されたと同じような適正な運用が行われる、そういうことが一番大事だと思うのですね。そうしなければ仏つくって魂入れずですから、そういう意味で私は新法のときにはいろいろ、大臣は当時与党の責任者として御理解をいただきましたが、私ども大臣に対して非常に大きな期待を持っておるわけで す。そしてそのことは、何も我々があれも欲しい、これも欲しいというのではなくて、要はこの新法の精神にのっとった運営というものを図りたいという一念から申し上げておるわけですね。でございますけれども、残念ながらどうも今各論の一部を触れましたけれども、一つ一つ見てまいりましても、昔の収容施設的な概念というものが残っているのではなかろうか。しかし、我々が新法に即応してやっていくためには治療施設であるという建前で努力しなければならぬのだということで、若干の点について申し上げました。隔離の問題についても申し上げました、あるいは初診の問題について申し上げました、精神療法あるいは作業療法について申し上げました、あるいはカウンセリングについて申し上げました、挙げれば数限りないわけですが、その根本が少し食い違っておるのではなかろうかという感じがいたします。  いずれにしても、医療費の点についても中医協の意見を聞いて大臣が告示されるわけですけれども、なかなか中医協も必ずしも理解が深いということでもないようです。でございますから、ぜひひとつ政府当局がそういう点に対する理解を深め、また深めていただくという方向で努力をいただきたいと思うわけですが、もう時間が参りましたので結論だけ申し上げますけれども大臣が総まとめでひとつ前向きの御見解を披瀝していただきたい、かように思います。
  108. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 先生御指摘のとおり、精神衛生法から精神保健法に変わって、人権を主に考えて、今までと違った収容施設的な方向から治療施設に収容して治療中心に考えていく、こういう大変革が起こった後でありますから、改正された後でありますから医師の、担当する先生方の立場も、それからそれを受ける家族の立場も、いろいろな意味でその改革の中で十分順応できない部分もあることは当然考えられることであります。しかしながら、やはりこの精神に沿って努力をしていくことは日々怠ってはならない、かように思いますが、特に今たくさん御指摘のありました診療報酬の体系の中での問題、あるいは社会復帰の促進のためのいろいろな問題、こういったものについても今言った法改正の精神に沿って対応していくように私どもは努力をしていかなければならない。そのためには中医協にも十分お願いをして、そして診療側の先生方の御期待にもこたえるような努力をしていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。
  109. 河野正

    ○河野(正)委員 時間が参りましたので終わりますが、新法が国際的に評価されたということでございますから、その精神にのっとって現場でも最大の努力をしていかなければならぬという気持ちを代表してあえて申し上げたわけですから、何分の、ひとつ前向きの今後の御努力をお願い申し上げたい、こういうことを申し上げて、私の質疑を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  110. 畑英次郎

    ○畑委員長代理 渡部行雄君。
  111. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 まず、産業廃棄物の処理問題についてお伺いいたしますが、きょうはある程度具体的な問題で質問をさせていただきたいと思います。  これは、福島県いわき市田人町荷路夫牧野内不法投棄についてでございますが、大松工業株式会社という企業が荷路夫牧野利用農業協同組合と、牧草と牛ふんを混合し有機肥料を製造するため、組合所有の原野を昭和六十三年四月二十八日、賃貸契約をしたものですが、契約条件と異なって産業廃棄物、これは廃油、廃酸、廃プラスチックなどをこの牧野内に不法投棄して埋め立てたことが昭和六十三年八月七日に地区住民の通報で判明した、こういう事件でございます。  それで不法投棄場所は、いわき市田人町荷路夫字焼倉という地内でございます。そして不法投棄期間は昭和六十三年五月ころから同年八月七日までとなっておりますが、これは警察の調べでございます。そして埋め立てされた廃棄物の撤去量、これがドラム缶で四千三百五十六本、十八リットル缶で一万一千四百六十二本、その他が二千七百四本、こういうふうになっておるわけです。そこでその周辺環境及び水道の水質検査をしたところ、「水道法に基づく全項目及びトリクロロエチレン等の有機塩素系化合物試験を実施したが、有害物質は検出されず異常はみとめられなかった。」、こういうふうになっております。しかし、またここだけではなくて別な方ではこういう事案でございます。  これは同じいわき市でございますが、沼部町に不法投棄をされたということでございます。そこで、この不法投棄者は山野辺建設株式会社、処分委託者は大谷総業有限会社、不法投棄場所、これはいわき市沼部町鳴沢八十一の炭鉱廃坑内、こうなっております。そして不法投棄期間は昭和六十三年二月ころから平成元年七月ということでありますが、その投棄量はドラム缶三万七千本、約七千四百キロリットル、こういうふうになっております。そして、それが農地に被害を及ぼして稲が変色した田んぼが約四十アール、油が流れ込んだ田んぼが約三ヘクタール、こういうふうになっておるわけです。そして不法投棄現場付近及びその周辺環境の水質検査の結果は「流出場内及び下流の各水路の流水から水質環境目標値を越えるトリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンが検出された。」ということでございます。こういうような事案でありますが、これで実際私どももここに行って実地調査をしてまいりましたが、余りにもその現場はひど過ぎるという感じを持って帰ったわけです。  これについて厚生省はどの程度この事情を把握し、これに対する今後の対策についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  112. 目黒克己

    ○目黒政府委員 先生御指摘のこのいわき市の二つの事件については、その事実関係について県から聞いて報告を受けているところでございます。  また、御指摘の厚生省の対応でございますが、現在、当面福島県に調査検討委員会が、この不法投棄事件に関して設置されておるわけでございます。この検討委員会における検討状況の推移を注意深く見守っているところでございまして、県と連絡を密接にいたしながら廃棄物処理法に基づいて厳正に対処できるよう必要な指導に努めてまいりたい、このように思っているのでございます。  また、この不法投棄事件は、全国的に見た場合には、先生御指摘のとおり、他に類を見ないほど大規模で、かつ長期にわたっているのでございまして、このような状況に至った原因には多くのことが考えられるのでございます。このような不法投棄事件の直接の原因、間接的の原因が今後福島県によって解明されるものと期待をいたしておるのでございます。また厚生省といたしましても、福島県における原因の究明が行われれば、それに応じて、必要があれば制度的側面も含めまして多面的な検討を行ってまいりたい、このように考えているところでございます。
  113. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 このような投棄は福島県のみならず全国至るところにこういう現象が出てきております。そのいい例を見ますと、これは二十年以上ごみの不法投棄がなされておったという京都舞鶴市の、年間六万トン入り江を埋めているという、このことでございます。さらに、千葉市から産業廃棄物を運んで、しかも青森県まで運んで処理し切れず、そこに不法投棄をしたという事件もあるわけです。さらにまた、この問題でいろいろと住民とのトラブルを起こしている、そして非常に問題になっている。  この福島県の例も、その処理業者が倒産をしてどうしてよいかわからない、それでいろいろ追跡していっても、またその方の弟さんが死んでその先がわからないとか、いろいろとあるわけです。そういう場合に今の法律ではどうしようもない点がたくさん出てくるわけですよ。したがって、そういう点を今後どのように改めようとしておられるのか、その点をひとつお伺いしたいと思います。
  114. 目黒克己

    ○目黒政府委員 先生御指摘の法的な側面につきましては私ども慎重に対応いたしたいと思っておるのでございますが、御指摘の点の中で事後処理 の問題等ということになりますと、福島県の場合を例にとりまして、この検討委員会のいろいろな原因、因果関係あるいは具体的な事例をもとにいたしまして、これに対して慎重に検討をいたしてまいりたい、私どもこのように思っているところでございます。  今先生から御指摘の、どのような点について改正ということについては、まだ具体的に何をどうするといったような形では私ども考えておらないのでございます。ただ、法制的な問題以外に、運用の問題といたしまして、先生一番御指摘の問題点は、排出事業者から出た産業廃棄物の流れがこのような不法投棄に至るまでのような問題があるわけでございますので、このような流れをきちんと把握できるような、いわゆる積み荷目録、マニフェストシステムといったようなものを現在試行的に行っているところでございます。こういうようなものの結果を見ながら私ども慎重に対応してまいりたい、このように考えているところでございます。
  115. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、産業廃棄物については廃棄物の処理及び清掃に関する法律というものがあるわけですけれども、これではどうしようもない面があるわけです。そこで、そのどうしようもないというところを今後法を改正して埋めてもらわないと完璧な法律とは言いがたいと思うのです。  そこで、御承知のように、これはいろいろかかっておりますが、産業廃棄物には事業活動に伴って排出される廃棄物のうち、燃え殻それから汚泥、廃油、廃酸そして廃アルカリ、廃プラスチック類その他十三種、合計十九種類が定められているが、五十九年にそこに木くずが加わって二十種類、そして有害物質は八物質であったが、そこに平成元年にトリクロロエチレンとテトラクロロエチレンが追加されて十物質になったということでございます。  そこで、この処理に当たって排出事業者の責任が第一義的に考えられます。これはみずから処理するということです。産業廃棄物処理業者に委託するのがその次の方法であります。そして三つ目は、地方公共団体のサービス提供を受けて処理する。大体現在はこのような三つの方法で処理が考えられているようでございます。そこで、時間が余りありませんからはしょって申し上げますけれども、生活環境審議会廃棄物処理部会産業廃棄物専門委員会昭和六十三年三月に報告書を出しているわけです。それによりますと、産業廃棄物処理の現状として、最終処分場の用地取得が困難となっていること、それから二番目が、相当量の産業廃棄物が都道府県域を越えて広域移動していること、三番目が、排出事業者がみずから設置する処分場が少なく、産業廃棄物処理業者が処理の中心的役割を果たしていること、そして四番が、法に基づく産業廃棄物処理及び施設に係る基準が包括的、一般的であるため、基準の理解に差が生じていることなどが指摘されておるわけです。  そこで、この産業廃棄物の処理体制の整備として、全国レベルの基本方針とブロック別処理計画の策定、それから優良業者の登録、そして広域処理センターの整備、こういうものが一応提言され、さらに産業廃棄物処理方法等に関するガイドラインの策定、産業廃棄物の性状や取り扱い方法を記載した積み荷目録による管理制度、先ほど言われましたマニフェストシステムの導入などが提言されているわけですが、こういう点で今どのように具体的な指導がなされておりますか。     〔畑委員長代理退席、委員長着席〕
  116. 目黒克己

    ○目黒政府委員 御指摘の点でございますが、この審議会の答申を逐次私ども慎重に対応していっているわけでございますが、御指摘のマニフェスト制というもの、積み荷目録制が、先ほど申し上げましたような産業廃棄物の流れをきちっと把握するということで一番効果的であるということから、平成元年度からこの予算措置をとりまして現在試行をいたしているところでございます。また、この辺のことにつきまして、それぞれの都道府県に協力要請等を必要に応じいたしながら行っているところでございます。  また、広域的な産業廃棄物の移動処理等につきましては、私どもそれぞれ都道府県知事さんの間の調整をする、あるいは具体的な事例があれば指導をするといったようなことを行ってきているところでございます。
  117. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、この問題について県知事からの要請が厚生省に来ておると思います。これを全部読むことは差し控えさせていただきますけれども、「この産業廃棄物の処理に対する不信感が物すごく住民の中に大きくなって大変な事態になっている。」そして、「この産業廃棄物の適正処理については、関係法律に基づく機関委任事務として地方自治体としてなし得る各種の対策を講じてきたところでありますが、この際、国におかれましては、現行の廃棄物の処理及び清掃に関する法律について下記の事項を検討の上、改正されますよう強く要望します。」となっているのです。  そこで「下記の事項」というものは、「産業廃棄物の委託処理事業者、排出事業者に係る法的責任をもっと強化していただきたい。」それから二番目は、「産業廃棄物処理施設の設置、変更は、現行の届け出制から許可制にすること」、これは非常に大事なことです。届け出制というのは全く無責任な制度でありまして、これが残っている限りこれはざる法と同じでございます。私からも強くここを訴えておきたいと思います。そして三番目に、「産業廃棄物処理施設に対する国の財政的援助の確立について」となっておりますが、私もその現場を見てまいりましたところ、業者任せに処分場などをつくらせると、これはなるべく地価の安いところ安いところということで、一番上流の方、言ってみれば山の方にそういうところを見つけるわけです。そして、しかもそれが飲料水の上流に当たって、下流の住民は大変困り、また不安におののいている、こういう実態があるわけです。  したがって、この辺は届け出制でなくて、やはりそういうこれからの一般廃棄物あるいはこういう産業廃棄物というものは、公的機関、例えば地方自治体なり、それが中心になって計画的に、しかも住民の賛同を得られるような場所にもっと大々的に設置して、そこに国から補助なり援助をする、こういうふうにしていかないと、この産業廃棄物はこれからどうすることもできなくなると思うわけでございます。そういう点でひとつ大臣はどのようにお考えでしょうか。
  118. 目黒克己

    ○目黒政府委員 事務的にちょっと御説明をさせていただきます。  この届け出から許可制、一番先生の御指摘の件でございますが、これは先生御承知のとおり法に定めておるものでございます。これを具体的に申し上げますと、廃棄物の処理施設をつくろうとする者は計画を届け出の義務があります。届け出たものは、一定の基準に従って審査をいたします。この計画その他施設が不良の場合には、計画の変更または廃止を知事が命令するわけでございます。また一たびつくりました処分場につきましては、設置の後この維持管理等この基準が適合しない場合には、改善命令、停止命令といったようなことができるようなのが現行法律なのでございます。それからまた、排出責任者につきましても、許可を受けました産業廃棄物の処理業者に委託をして行った場合につきましては、この委託基準に従って行うようにというふうなことになっているのでございますが、さらにこの排出事業者が委託基準に違反をいたしますと、これは御指摘のような懲役等を含む罰則の適用があるわけでございます。また、認可の業者でこの委託を受けた者が不法投棄等を行いますと、これは生活環境保全上の重大な支障等々という要件になりますと、この支障のある廃棄物の除去あるいは発生の防止等々の必要な措置を都道府県知事ができる、このようなことになっているのでございまして、先生御指摘の不法投棄の問題はいずれもこの認可を受けてない業者が不法な形でもって行うというものでございますので、これは私ども排出事業者あるいは処理業者に対して強い指導を行うと同時に、 この法律を適正に遵守するように厳重に行うことによってかなり防げる、あるいは効果を上げていく、このように考えているところでございます。  それからまた、公的な関与につきましては、先生御指摘の点の中で特に私どもはこの処理業者に対しまして、いわゆる政策金融、中小企業金融公庫あるいは公害防止事業団等の低金利の融資制度のほか、御承知のように市町村、都道府県が関与した処分場がございます。しかし、いずれにいたしましても、これらの処分場におきましては排出事業者が経費を負担するという原則に基づきまして適切な費用を取る、こういったような仕組みで行っているのでございます。  したがいまして、現行法がきちんと守られないということが問題なのであって、これを守らせるようにするために、法規制以外に運用という面で先ほど申し上げましたマニフェストシステムのようなものをきちっとしていく、こういうことに重点を置いてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  119. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 法律を守ればそういうことは起きないんだと言うけれども、守らない人がいるから問題なんですよ。その守らない人たちにどうすれば守るようになるかという、そこが大切なので、だから届け出さえすればいいんだと思い込んでいるのですよ。そういう条件なんて何ら構ってないのですよ。そればかりか、まだ届け出る方はいいのですよ。遠くの方、どこから来たかわからないトラックで、何というか、くぼみの土地に捨ててそのまま逃げてしまうのですから、それをどうしてつかむのですか。まさか警察官がずっと夜通し立っているわけにいかないのですよ。そういう現実を私は見て見ないふりはできないと思うのです。だから、その辺をきちっとしていくには、やはり法というものは字で書いてあればいいのだ、ではない。最近、物すごい凶悪犯罪があるというのは余りにも刑罰が軽過ぎるからで、そうならたくさん、何億も詐欺で取って、そして二、三年入っても後は出てくれば一生ただで暮らせるというような計算ずくで詐欺をやっている人だっているのですよ。そういうふうに、計算ずくで悪い廃棄物投棄をやって、そして罰金を取られてもこっちの方が得なんだ、こういうことを許す結果になるのです。  だから私は、もしその法律改正しないで運用でやるとすれば、例えば、今アメリカでやっておるチケット制とかそういうもので排出業者から処分の間までの業者の介入した、いわゆる廃棄物の歴史がはっきりとわかるようなシステムをつくらないと、それはどうにもならないと思うのです。これはひとつ今後の産業廃棄物対策ということで、そういう点で非常に御理解のある大臣から御答弁を願いたいと思います。
  120. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 先生御指摘の福島県の問題は、今お話を聞いただけでも非常に重要な問題だろう、かように思うわけであります。そして、厳正な処理ということが一つは必要であろうと思いますが、どうも、私ども前にこういった業者の人から直接聞いた話もあるのですが、その当時、一番困っているのはアウトサイダーのような、今言ったどこで何をやっていたかわからなくて、行ってみたら今度は処理業者が倒産してどこにいるかわからないというようなものがあって非常に困るということを聞いたこともあります。そういうことから考え、また、今アメリカのやり方というものも御指摘がありましたけれども、これも大体日本と同じようなやり方をしているようでありますから、やはり一つは、法改正ということも先生のお気持ちはよくわかりますけれども、まず運用によって十分対処をしていく、厳正な処理をしていく、そのためには、この事件におきましては福島県における検討委員会の結果というものを十分に私どもも聞いて事後の処理をしていきたい、かように思っていますので、よろしくお願いいたします。
  121. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 時間が参りましたので、これで終わります。  警察の方、どうも申しわけなかったけれども、この次やりますから……。
  122. 丹羽雄哉

    丹羽委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十三分休憩      ────◇─────     午後一時十一分開議
  123. 丹羽雄哉

    丹羽委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。池端清一君。
  124. 池端清一

    ○池端委員 私は、最初に北海道のウタリ福祉対策についてお尋ねをしたいと思います。  北海道では昭和四十九年から今日まで第一次、第二次そして第三次にわたってウタリ福祉対策を進めてきておるところでございます。これは住宅、道路、上下水道あるいは教育、福祉といった面についてアイヌ民族の皆さん方の中にかなりの格差が見られるということで対策を進められてきたところでございますが、これについて厚生省としては今日までどのような姿勢で取り組んでこられたのか、まずその点をお尋ねしたいと思うのであります。
  125. 長尾立子

    ○長尾政府委員 厚生省のウタリの福祉対策についてのお尋ねでございますが、厚生省はウタリの方々の特に福祉の面につきましてその対策を講じてきたところでございます。まず、いわゆるウタリ集落の生活環境を改善するという観点からスタートをいたしまして、昭和三十六年度に生活館、共同浴場等の施設整備費を計上いたしまして逐年事業種目の拡大に努めてきたところでございます。それからもう一方は、こういった建物というか、ハードの整備と並行いたしまして、この運営費の面につきましては昭和四十八年度から生活館に計上いたしました。それからウタリの保育の問題につきましては、一般の保育事業の上に特別保育事業費を計上してまいったわけでございます。また、昭和五十六年度からは生活館運営費の中に人件費を算入するということもいたしまして、生活環境の改善、社会福祉の向上、保健衛生の増進といった分野につきましての諸施策を推進してきたわけでございます。
  126. 池端清一

    ○池端委員 それで来年度予算ではどのような施策を講じようとしておられるのか、その方針を承りたいと思います。
  127. 長尾立子

    ○長尾政府委員 明年度のウタリの福祉関係予算でございますが、今申し上げました地区改善等の環境整備費の分につきましての予算計上を考えておりますことと、生活館の運営費につきましては増枠の所要改善を図りたいということで要求をさせていただきたいと思っております。
  128. 池端清一

    ○池端委員 年々歳々厚生省のウタリ福祉対策予算も増額をしておりますけれども、来年度の概算要求を見ましても総額七億余り、こういうことで金額的には非常に微々たるものでございます。大臣、このウタリ福祉対策というものは国の方針じゃないわけであります。これは北海道庁の方針になっておりまして国のものではないわけであります。やはり国の責任というものを法的に明確にするということなしにはこの抜本的な解決はなかなか難しいのではないか、私はこのように思うわけでございます。  加えて、御承知のように、アイヌ民族の民族的な権利の回復を前提としましたアイヌ新法の問題につきまして、北海道知事は北海道にウタリ問題懇話会を設置していろいろ検討をいただいておったわけでありますが、三年余りの検討の結果、昨年の三月に、この懇話会が新法の必要性をまとめた報告書を知事に提出いたしました。その後、北海道議会におきましても、昨年の七月の定例道議会におきまして、満場一致、超党派でこの問題が可決された。八月には知事や道議会あるいは北海道ウタリ協会が、政府に対してアイヌ新法の制定についての要請、陳情活動を行ってきたところでございます。これは今日まで再三にわたって政府、関係当局に対してこういう行動を展開しておるわけでありますが、残念ながらまだその姿が一向に明らかになっておらないという状況なわけでございます。  そこで、厚生大臣は北海道旧土人保護法を所管 する大臣でもございますので、新法の制定に対してどのような認識を持っておられるかを承りたいと思うのであります。
  129. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 池端先生と長くこの社会労働委員会にいる間でも、数年の間、毎年毎年、最終の段階になって旧土人法の問題の処理についてお話し合いをしたことを今思い出します。そういう中で池端議員はいつも、もう少し待ってくれ、ウタリ懇話会の報告が、今北海道でやっているので、そこで集約された意見というものが必ず出てくるから、そのときにはひとつアイヌ新法についてやりたいという御意見等もたびたび聞いたことがあります。いわゆるウタリの権利の回復というものを中心にしたアイヌ新法については、今言った北海道知事の私的諮問機関のウタリ懇話会の報告や知事の要望等も聞いておりますが、その内容は人権擁護あるいはアイヌ文化の振興等を中心としたものであるようであります。  旧土人保護法を所管しておりました厚生大臣といたしましては、そういう意味では非常に重大な関心を持って取り組んでいきたいという考え方を当然持っておりますが、それには各関係省庁間でお互い調整しながら対応を進めていきたい、かように思っております。
  130. 池端清一

    ○池端委員 従来、北海道旧土人保護法の廃止ということで与党が提案をされておるわけでございますが、私どもは旧土人保護法の廃止だけではだめで、新法の制定と相またなければならないと主張してきたわけでございます。アイヌ民族は、多年にわたる有形、無形の人種的差別によって教育、社会、経済などの諸分野において基本的な人権が著しく損なわれてきた、これは厳然たる事実であります。このような差別を絶滅するためには、何よりも新法の制定が必要だ、こういうふうに考えるわけでございまして、そういう意味からこの際、旧土人保護法を所管する大臣としてではなく、国務大臣としての戸井田三郎さんの、先ほどの政治家戸井田という発言が何回もありましたけれども、御意見を承りたいと思います。     〔委員長退席、野呂委員長代理着席〕
  131. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 今、ウタリの人たちは、既に地域の方々と同和といいますか、同化といいますか、同じような関係で生活をともにしておるわけでありますが、やはり民族としての古来の文化というものをいろいろ持っておりますし、そういう意味での新しい生き方といいますか、そういうことについて私どもは、このウタリに対する人権、今差別の問題等が言われましたけれども、ウタリの人権、そして文化、こういったものが適当に、長い歴史の中にただ同化して消滅していくのではなくして、そういった存在といいますか、そういったものの歴史というものが高く評価されていくようなことが必要であろうというふうに考えております。     〔野呂委員長代理退席、畑委員長代理着席〕
  132. 池端清一

    ○池端委員 本日は、藤本官房副長官にもおいでをいただいておるわけでございますが、先ほども申し上げましたように、昨年の三月にウタリ問題懇話会が報告書をまとめて知事に提出をして、七月の末には北海道議会がこの制定を支持する決議を行った、そして八月には政府に対して正式にアイヌ新法制定の要請を行った、こういう経過になっておるわけでございます。     〔畑委員長代理退席、野呂委員長代理着席〕 そしてその後、再三にわたって北海道並びにウタリ協会、そして私ども日本社会党としても、関係大臣に対してもこの新法の制定を急ぐように、そしてとりあえずは窓口を決めてもらいたい、いろいろこれは関係省庁に広範にまたがる問題でありますので窓口を設けてもらいたい、あるいは政府審議会を設けてひとつ検討に入ってもらいたい、いろいろ要請をしてまいりました。国会でも何回となくこの問題が取り上げられてきたわけでございますが、既に一年有余を経過しておるわけでございますが、私は、全く事態は進展していないのではないか、こういうふうに思うわけでございます。  この新法制定の問題について、どういうような政府としては基本的な認識をお持ちなのか。また、これまでの取り組みの具体的な状況はどうなっているのか、この辺の状況について、藤本官房副長官から承りたいと思うのであります。
  133. 藤本孝雄

    ○藤本政府委員 昨年八月に、今池端先生からお話がございましたように、北海道知事からの要望書を政府はいただきまして、当時私厚生大臣でございましたので、記憶に間違いなければ、先生からの御質問に対しましていろいろ厚生大臣の立場から御答弁申し上げたわけでございまして、今戸井田厚生大臣の言われていること、全くそのとおりだと拝聴いたしました。  新法問題につきましては、今まで委員会におきましていろいろと御熱心に御質疑があったところでございまして、政府といたしましては、各関係省庁非常に多いわけでございますし、また内容的には教育、文化、生活、産業、就労等広範多岐にわたる問題を扱うわけでございますので、この取り扱いにつきましては十分に検討、研究してみたい。今日まで研究、検討してまいったわけでございますし、また今後十分に研究、検討してみたいと思っておるわけでございますが、私も内閣官房に参るようになりましたので、この点についてはどのように進めていくかということにつきましては非常に責任も感じておりますし、関心を持っておりまして、いろいろと事情を聞いております。いろいろな議論の中で今言われました窓口の問題等の問題もあるわけでございまして、政府部内で研究、検討をするわけでありますけれども、やはりどこかが中心になってやらなければならぬわけでございますので、内閣官房の内政審議室、これを中心にいたしまして北海道開発庁、総務庁、厚生省、文部省などの関係省庁でこの新法問題について取り組み方の検討を今いたしておる、こういう状況でございます。
  134. 池端清一

    ○池端委員 内政審議室を中心に総務庁、開発庁、文部省、厚生省等関係省庁と緊密な連絡をとって今検討を進めておる、こういうお答えでございます。初めて具体的な省庁の名前がきょう出てきたように思うわけでございますが、それじゃ今後一体いつまでに具体的なお答えを出す御予定なのか、今後の取り組みは一体どうなるのか、これは関係者の皆さん方、もう一日千秋の思いで待っているわけです。せめて早く窓口を決めて具体的な検討に入ってもらいたい。あすも北海道ウタリ協会は東京で集会を開いて再度関係者に対する理解と協力を深める、そして関係当局に要請をする、こういうような行動等も予定をされておるわけでございますので、このアイヌ新法問題への今後の取り組みをひとつ具体的にお示しをいただきたい、こう思うのです。
  135. 藤本孝雄

    ○藤本政府委員 今までの経緯もあるわけでございますので、私といたしましてはできるだけ早く結論を出したい、かように考えておりますので、御理解いただければ幸いでございます。
  136. 池端清一

    ○池端委員 できるだけ早くというのは、年内ぐらいというふうに考えてよろしゅうございますか。
  137. 藤本孝雄

    ○藤本政府委員 できるだけ早くでございますので、そのように御理解いただきたいと思います。
  138. 池端清一

    ○池端委員 できるだけ早くというのは、可及的速やかに、こういうことですね。
  139. 藤本孝雄

    ○藤本政府委員 そのように御理解いただいて結構でございます。
  140. 池端清一

    ○池端委員 もう時間でございますのでこれ以上申し上げませんが、本当にこの問題は緊急に処理をお願いしたい。本当に関係者の皆さん方はもう熱望をしている問題でございます。北海道からは高橋理事もお見えでございまして、私ども党派を超えてこの問題に実は積極的に取り組んでいるところでございますので、ひとつそれを受けて内閣官房としても、あるいは厚生省としても取り組んでいただきたいということを切にお願いを申し上げまして、私の質問を終わります。
  141. 野呂昭彦

    ○野呂委員長代理 貝沼次郎君。
  142. 貝沼次郎

    貝沼委員 細かい問題をたくさんやらせていただきたいと思います。  初めに、これは新聞の報道で知ったことでありますが、「「東大阪」五年間で 市ぐるみ七億円不正受給 徴収奨励の国保交付金食う」こういうことになっております。「赤字市町村の累積赤字総額が約千三百億円にもなる国民健康保険で、収納率が全国最下位の東大阪市が国からの調整交付金を不正に受けていたことが、会計検査院の調べで」「明らかになった。不正受給は市が組織的に行っていたもので、昭和五十一年度から始まっていたとみているが、同院では証拠書類の残っている五十九年度からの交付分について、不正金額は七億六百五十一万円にのぼると算定、「不当事項」として検査報告に載せる方針。」こういうふうなことが載っておるわけで、大変な数字でございます。こういうようなことが、この報道の内容というものが事実なのかどうか、まずこの点について伺っておきたいと思います。
  143. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 東大阪市におきまして国民健康保険の調整交付金の不正受領事件があったということは事実でございますし、また、この問題につきまして会計検査院が調査を行いまして、私どもの方にもその内容については連絡が参っております。
  144. 貝沼次郎

    貝沼委員 それで、これが一年だけとかそういういうことじゃないのですね。組織的に、しかも何年間にもわたってやっておる、こういうことは、どうしてわからなかったのか、これが一点疑問なんですね。また、どうしてこんなことが起こり得るのか、この点についてはどうお考えでしょうか。
  145. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 私どもは、国民健康保険の調整交付金その他国からの補助に際しまして、地方公共団体からの申請に基づいてこれを交付するわけでございますが、全国に三千以上ある市町村につきましては、第一次的にそれぞれ管轄する都道府県がその審査を行うことになっております。これは国の補助金の適正化法において、国の審査権を都道府県知事に委任しておるわけでございまして、したがって、申請の内容についてはまず都道府県が審査をいたしておるわけでございますが、やはり私どもにしましても、都道府県にしましても、市町村という地方公共団体が組織ぐるみでこういったことをやるということは通常予想し得ないことでございますので、やはり申請の内容については公的に提出されたものとしての審査をするのが通常でございます。したがいまして、この問題は非常にまれなケースと申しましょうか、市町村がそういうことを行ったということは極めてまれな事例だろうというふうに考えるわけでございます。  いずれにしましても、このケースにつきましては、実際の保険料の収納率というものを市町村の段階で数字を操作して申請をしておったものでございます。これは結局実際に保険料として調定した額と実際に徴収された額との比率が問題になるわけでございますが、もし、このような数字につきまして操作をされますと、これは最初から全部調定額と収納額と実地に調査をしなければわからないという面がありますので、なかなか発見というのは困難なものだろうと思っております。しかしながら、こういったことはあってはならないことでございますし、また、今回も私どもが直接調査する以前に会計検査院の方に投書が行ったというようなことも承っておりまして、やはり内部事情に詳しい人が通報してわかったということもございます。いずれにしても、今後こういった事例が生ずることのないように十分審査の面でも注意をしてまいりたいと考えております。
  146. 貝沼次郎

    貝沼委員 この種のものは今まで起こったことがありますか。
  147. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 実はこの東大阪のほかに、これも非常に似たようなケースでございますけれども、福岡県におきまして一つ事例がございました。これは、たまたま比較的近い時期に二つの事例がありましたので、私どもとしてはある意味では非常に驚いているわけでございますが、こういうことがしょっちゅうあるということではございません。
  148. 貝沼次郎

    貝沼委員 私は、これをさらに追及するとかそういう考えはございません。ただ、こういうことが起こりますと、厚生行政に対する不信が起こってまいります。これは大変申しわけないことでありますので、この際チェック体制というものをきちっとしておくべきではないのか。基本的には都道府県で審査たけれども、結果的にはやはり厚生省の信頼が問われるわけでございます。そういう点で今後さらにきちっとした姿勢でこれを審査していくということを望みたいと思いますが、いかがですか。
  149. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 今先生御指摘のとおり、今回の東大阪の件は全く想定のできなかったこういった不正事件でありますので、こういったものがやはり事前にチェックできるような、いろいろな意味での慎重な対応をしていくことによって国の行政への信頼を回復していく努力をしていかなければならない、かように思っております。
  150. 貝沼次郎

    貝沼委員 次の問題は、手話通訳制度の問題でございます。  私は、国会におきましてこの手話通訳制度、これを早くつくるべきであるということを何回も取り上げてまいりました。今回それが実現をし、いよいよ手話通訳士試験が行われ、十一月二十六日に筆記試験が行われるわけでございますけれども、大変喜ばしいことだと思います。  そこで、手話通訳制度につきまして、いろいろ決まっておるわけでございますけれども、果たしてこれが当初思ったようにうまく進むかどうかというのが実は気がかりな点でございまして、それでお尋ねしたいわけでありますが、いよいよ十一月二十六日に試験が行われるわけですけれども、現在、その申し込み状況というものほどうなっておるのか、また、それが予想どおりの数字になっておるかどうか、この辺のところをお聞かせ願いたいと思います。
  151. 長尾立子

    ○長尾政府委員 お答え申し上げます。  千人を超える申し込みがあるというふうに承知しております。
  152. 貝沼次郎

    貝沼委員 千人という数字はわかりましたが、予想どおりであったかどうか、この点もお尋ねしております。
  153. 長尾立子

    ○長尾政府委員 現在私どもの方で手話通訳ができると推定をいたしております数が、全国で大体二千人程度と考えております。日常会話というような程度ではなくて相当に高いレベルの通訳といったお仕事ができる範囲で申し上げたわけでございますが、そういう意味では今千名を超える受験予定というのはやや低いかなという感じはいたすわけでございますが、初めてのことでございますので、今後増加していくのではないかと思っております。
  154. 貝沼次郎

    貝沼委員 千名の人が試験を受けて果たしてどれだけ合格するのか、これはできふできがあるわけでありますが、しかし、これだけのことをやる以上、二千名ぐらいの人がおる、そのうち大体千名ぐらいの人が試験を受ける、そうしたら、まあ何名ぐらいまでは合格者にしたいものだというような予想というものがあると思うのですね。この点はいかがなのでしょうか。
  155. 長尾立子

    ○長尾政府委員 大変難しい御質問でございますので、お答えが難しいわけでございますが、今回の手話通訳士の試験につきましては、各方面の専門家の方に御参加をいただきまして、どういった試験内容にすることが適当かということについての検討をしていただいたわけでございます。  それで、この中で、手話通訳士として要請されます内容、率直に申し上げまして大変広く、また、非常に深いものがあるように思うわけでございます。もちろん手話という大変特殊なお仕事でございますので、一般的な意味の教養面の充実ということもございますし、もちろん手話技術というものも、日常会話的なものではなくて、相当広い範囲のものをしていただかなくてはいけないと思いますし、また、すぐれてこういった障害を持つ方々への気持ちの面で細かな御配慮がいただけるようなという、ある意味では大変欲張ったお願いであるかと思うのでございますが、そういうことを手話通訳士としてふさわしい方と考えて、この受験制度をスタートするわけでございます。そ ういう意味では、正直に申し上げまして、なかなか難しい試験ではないかという気がいたすわけでございます。
  156. 貝沼次郎

    貝沼委員 ただいまの御答弁のように非常に難しいと私は思っております。と申しますのは、手話通訳の場合は、単なる技術だけではなく、いろいろなものが加味されてきますので非常に難しいと思います。特に、例えば後でちょっとお尋ねしますけれども、選挙の政見放送とか、こういうときになってまいりますと、非常に影響が大きくなってまいります。  そこで、通訳士が誕生した、誕生した段階でどういうところにこういう人は配置されるのか、設置されるのかということが問題になるわけですが、義務的に設置されるものは一体どういうところをお考えなのか。また、それについて聾唖連盟等の団体からは、この方々意見をぜひ聞いていただきたい、要望を聞いていただきたいというような要望が出ておるわけでありますけれども、この二点についてお答えをいただきたい。
  157. 長尾立子

    ○長尾政府委員 お答えをさせていただきます。  今先生の御質問は、手話通訳問題の基本に触れる大変難しい問題の御指摘があるかと思うわけでございます。  それで、手話通訳ということの業務をどういうふうにとらえていくか、また、ある意味で手話通訳士の方に相当な責任といいますか、そういうものもかかってくるお話になるかと思うわけでございますが、ある意味ではこの事業、いろいろな御要望の中でいわば事業の端緒についたばかりと言える面があるように思います。私どもといたしましては従来社会参加促進事業という形で、都道府県でございますとか市でございますとか、そういったところで聾唖者の方が公的な機関への諸手続をなさいます場合に、こういった通訳の方を設置していただきたいということをやってまいったわけでございますが、まずスタートはそういうところに考えたいというふうに思っております。  今先生御指摘になりました、今後の、例えば意思をどれくらい正式に伝える責任といいますか、そういうものを考えていくかということは大変難しい問題だと思いますが、まず、この通訳士のスタートでございますので、私どももさらに検討させていただきたいと思っております。
  158. 貝沼次郎

    貝沼委員 これは出発ですから、よくそういう方々意見を聞いてやっていただきたいと思います。  それからさらに、手話、実は地方で何ぼかの方言があるようでございまして、それをならしまして標準手話四千四十五の言葉があるそうでありますが、そういう標準手話の普及というものが全国的なコミュニケーションのためには大変必要でございます。このため、標準手話を身につけた指導員の養成、それから手話通訳士を養成する公的養成機関、これが必要になってくるわけでございます。これについてはどういうお考えをお持ちですか。
  159. 長尾立子

    ○長尾政府委員 標準手話につきましては、昭和五十四年度から財団法人全日本聾唖連盟に標準手話の研究事業を委託いたしまして、その研究、それから造語という言葉が適当かどうかでございますが、そういった造語的なものを進めていただいております。この普及の問題でございますが、本年度から手話普及教材製作貸出事業の委託実施を開始いたしておるわけでございます。それから、今先生お話がございました手話通訳技能審査制度、この通訳士の制度というものもこの標準手話を基本といたしまして実施をいたしますので、これも普及の一助になるのではないかというふうに思っております。
  160. 貝沼次郎

    貝沼委員 これも非常に大事なことだと思います。  それからもう一点は、いわゆる補装具、日常生活用具と言われておる、聾唖者に対するファクシミリの利用についてでございます。現在、工事費は国で負担をしておるようでありますが、利用料の補助、つまり基本料金とリース料、特にリース料について都道府県では半額負担しておるところもあるし全部負担しておるところもあるようでありますが、この辺のところをもう少し公的負担をふやしていただきたいという要望があるわけでございますが、この点については検討したことはございますか。
  161. 長尾立子

    ○長尾政府委員 今先生お話しになりましたように、ファックスにつきましては、確かにいわばハードの面だけの助成を我々はやってきたわけでございます。日常の料金部分までということにつきましては、現段階では他の諸制度との均衡からいいましてなかなか難しいのではないかと考えております。     〔野呂委員長代理退席、委員長着席〕
  162. 貝沼次郎

    貝沼委員 時間の関係で急ぎますが、自治省の方にお尋ねいたします。  先ほどちょっと申し上げましたが、先だっての参議院ではありませんが、前の前だと思いますが、選挙のときに聾唖者が候補者として出たことがございます。テレビの政見放送で、その中で声は出なかったわけでございます。こういったことから基本的人権の問題といたしまして政見放送の問題が出てまいりました。そして、私も国会で何回かこの問題は取り上げさせていただいたわけでありますが、その基本は、やはり手話通訳というものが公認されないと、人によってやり方が違ったのでは票に影響を及ぼすので公平を欠くというようなこと、あるいはやる人の容貌とかそういうものが票に影響するのではないかというようなことがありまして、大変難しいと言われておりました。今回手記通訳士というものが誕生いたしますと、これが公的な存在になるわけでございます。公認された人であります。したがって、公職選挙法のあり方で、例えば政見放送のあり方とかそういうことに検討しなければならない部分が多々出てくると思うわけでございますが、この点は検討を始めておるのでしょうか。
  163. 谷合靖夫

    ○谷合説明員 お答え申し上げます。  政見放送は、いわゆる二面がございまして、聴覚、言語に障害のある方が立候補した場合の政見放送について、この点につきましては学識経験者から成ります政見放送研究会で研究をしていただきまして、その結果に基づいて、原稿を候補者の方から出していただき、これを放送事業者が録音したものを利用して政見を伝えることができるようにする、こういう形での措置を済ましております。  ただ、もう一面のいわゆる政見放送全体へ手話通訳を導入するという問題につきましては、これは非常に短期間の間に多くの候補者の政見放送を公平、公正に作成をしなければいけない、御指摘のとおりでございまして、そのためにはやはり全国各地域でレベルの高い均質の手話通訳者をいかに確保できるかというような問題も含めて、いろいろ政策上、技術上の課題があるわけでございます。これを引き続き政策研究会の方で専門的な立場から検討していただいておるわけでございますが、まだ結論を出すには至っておりません。ただ、今回のような手話通訳制度導入、試験制度導入ということを踏まえまして、さらに鋭意検討させていただきたい、かように考えております。
  164. 貝沼次郎

    貝沼委員 この手記通訳の問題は以上で終わります。  次に、医薬品の副作用の問題でちょっとお尋ねしたいと思います。  これは厚生省の調査でございますが、七十歳以上の高齢の外来患者に病院の窓口で一度に渡される薬の数は四ないし六種類が最も多いという表が出ております。また、十種類以上ももらっている人が全体の一割近くも占めている。中には二十八種類の薬を渡されたケースもある。こういうわけでございます。これが厚生省の実態調査でわかりました。一番多いのが三種類でありまして、高齢者はほぼ倍の薬を渡されていた、こういう実態でございます。この実態を踏まえましてお尋ねしたいわけでございます。  まず、薬は本来的には毒物ではないのか。どのようにすぐれた安全な薬でも、その服用の回数と か分量をやたらにふやすようなことになれば極めて危険な作用をあらわさないとは言えないのではないのか。また、同じような作用をする薬を何種類も一緒に服用することが考えられます。そうすると、その作用が、単独のときよりも計算以上強調される可能性があるのではないかという点、それから二種類の薬の成分で、たまたま同じような成分が入っておった場合には相乗作用を起こすこともあるのではないか。そんなことから、医師、薬剤師は処方の際配合禁忌といって相乗作用や副作用のないように薬の組み合わせに注意している、こう言っておるわけでございます。  このような点から考えて、厚生省の調査結果はまことに恐ろしい事実を示しておると思うわけでありますが、こういう事実というのは私はもう大体わかっておったのじゃないかと思っておりましたが、これは今調査して初めてわかったのでしょうか、それとも前から知っておったのでしょうか。
  165. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 お答えいたします。  先生がただいま取り上げられました高齢者に対する薬物療法に関する調査結果の件でございますが、これは私ども、国立病院・療養所の百四十四施設におきまして六日間、外来通院をした七十歳以上の高齢者六千四百十一例の服薬の実態を調べた調査でございます。この調査の結果、先生からお話ございましたように、一人の患者に処方された医薬品の種類は四ないし六種類が最も多かったわけでございますが、十種類以上処方されたケースが一割弱、最高は二十八種類でございまして、この二十八種類の投薬、服薬をされた患者さんといいますのは非常に高齢の方でございまして、いろいろな合併症を持っておるというようなことから、いろいろな薬が多種類投薬されておったわけでございます。  いずれにしましても、先生お話ございましたように、薬につきましてはいろいろな面での問題があるわけでございますので、今後ともそういう面で、薬の相互の反応といいますものを十分考えながら投薬するように指導してまいりたいというふうに思っております。
  166. 貝沼次郎

    貝沼委員 この報道によりますと、厚生省は「来年三月までに高齢者に対する適正で合理的な薬物治療指針と医師・薬剤師へ向けた服薬指導指針を作成する方針」、こういうように報道されておるわけでございますが、これはどういうことを意味しておりますか。
  167. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 今回の調査結果を踏まえまして、これは研究班でやったわけでございますので、その研究班の中におきまして引き続き適切な高齢者薬物療法の指針策定ということに向けて検討いたしたい。それからまた、病院内のチェック体制の整備を含めまして、有効かつ安全な薬物療法の確保に努めてまいりたいということで、研究班の中におきまして引き続きそのための指針的なものについての検討を進めるということでございます。
  168. 貝沼次郎

    貝沼委員 その言葉はよくわかるのですが、例えばどういうふうにしてそれをやろうという御研究をされるわけですか。
  169. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 具体的には、個々の病院におきましては診療会議とか薬剤委員会でいろいろ検討されているわけでございますが、そういうところに当たりまして、例えば多種類処方しております施設に対します個別指導についてのあり方、あるいは診療会議、薬剤委員会での十分な検討のやり方、あるいはカルテなりコンピューターシステムの導入によります他科受診のチェックのあり方、あるいは処方のあり方等につきましていろいろ検討して指針をつくりたいというぐあいに考えております。
  170. 貝沼次郎

    貝沼委員 これはなかなか難しいと私は思うのですね。病院から薬局へ行って買う場合もあるし、あるいは小さな病院をたくさん回る人もおるし、大きな病院ばかりじゃありませんのでなかなか難しいと思います、人間が動くわけですから。  そこで、私はこう思ったのです。「高齢者に対する適正で合理的な薬物治療指針」というところで考えたのは、薬と人間の年齢の関係、これは今までどおりでいいのかどうかということですね。例えば、子供と大人というのは、よく薬で書いてあるのですね。しかし、年をとってまいりますと体力もだんだん落ちてまいりますので、果たして大人という枠だけでこの薬というものを考えておっていいのか。それで、年をとってまいりますと体に悪いところがいろいろ出てまいりますから薬をたくさん飲むようになってまいります。そういった点から考えますと、やはり老人というのはある意味において、薬においては区別しても決して行き過ぎじゃないような気がするわけでございます。老人向けの薬の量とか成分とか、そういうことについて何か考えているようなことはございませんか。
  171. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 老人の場合に、今おっしゃいましたように腎臓とか肝臓の機能は衰えてまいります。いわゆる薬の代謝が大分普通の成人の場合と違うということでございます。それはそのとおりなのでありますが、老人に一定の服用量の基準を設けるということは非常に難しい面もあるわけであります。個人差といいますか、一般的な年齢の差よりも個人差が非常に大きい、人によって年をとって内臓の変化が、個人差が非常に大きいということがございまして、一律に服用量を決めるということは非常に困難なわけであります。子供さんの場合には年齢で大体並んでいる、こういう状況でありますけれども、そんなことで一般的に基準を設けるというのは難しいのでありまして、現実的にはやはり個々のお医者さんが個人ごとに御判断いただいてということしか、現在はそういう方法しかない、こういうふうに考えられております。しかし、もうちょっと科学が進めば、もうちょっと何かの方法はないかということで、薬事審議会などでいろいろ研究はしていただいておる、こういう状況でございます。
  172. 貝沼次郎

    貝沼委員 私は、そういう指針をつくれとかそんなに強く言っているわけではありませんが、そういう人間、年齢、体力ですけれども、それと薬、こういう関係でもっときめ細かく、例えば医師にもっとそういう面で指導するとかいろいろな面があっていいのではないか、こう思ったから申し上げたわけでございます。  それから先ほどちょっと申し上げましたけれども、例えば一人の高齢者が病院を渡り歩いて薬をもらう、合理的な薬物治療の指針ということを言われておりますが、どうやってそれをやるのか。本人が証明書みたいなものを持って歩くのか、あるいは初めに行った医師から薬をもらった、後にかかった医師の見立てで、前の医師の薬はかえってこれはまずいというふうにわかったとか、あるいはそれは間違っているということがわかった。いろいろな場合が出てまいりますけれども、その場合もらった薬を服用しない場合もあるし、飲んではいけない薬を飲む場合もあるし、いろいろなことが起こってくるわけでございますが、こういうことで副作用が起こってくると思いますが、こういう点については今後どういうようなことを研究しながらこういう副作用のないように進めようとしているのでしょうか。
  173. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 患者さんは、いわば自由に選択して医療機関に参るわけでございますから、先ほど御質問でお答えがありました国立病院の検査の場合は、複数の病院があるいは勘定されているかもしれませんが、患者さんは自由に病院に行ったり医療機関、診療所へ行ったりいたすわけであります。したがいまして、これをどこかでまとめなければ薬が重複になっているかどうかというのはわからないわけであります。あるいは医療機関で患者さんに尋ねるという方法も一つあろうかと思いますが、なかなか医療機関の方も忙しくて困難なことのようであります。  私どもが今考えておりますのは、患者さんに一軒薬局を決めておいていただいて、処方せんをもらってきて、そこで調剤してもらう。そこに一つの薬歴簿みたいなものをつくって重複あるいは先ほど御指摘のございましたような配合禁忌、こういうものをチェックしたらいかがか。特に老人の 場合には合併症が多いわけでありまして、どうしてもあちこちの医療機関に行く機会が多いわけでありまして、こういった薬の害を防ぐためにも、こういう表現がいいかどうかわかりませんが、かかりつけの薬局みたいなものを決めていただいて、そこでチェックするような仕組みを考えたらどうかと思っております。そのために、ひとつモデル的にどこかの地域でそういうことをやってみたいということで予算の要求を数カ所いたしておるところでございます。
  174. 貝沼次郎

    貝沼委員 それから、この薬の副作用を防ぐために、副作用が起こっておる事例の報告をたくさん集める、いわゆる密にする、これが大事であるというところからこの調査も行われたと思いますが、今回、来年中にモニター施設を総数三千程度にして、報告は当面五十件までふやしたい、こういうふうに書いてありますね。ここでなぜ五千件でよしとするのか。諸外国の数字も出ておりますが、例えば一九八七年、米国五万四千四百四件とか、西独が一万九千三十ですか、英国が一万九千六百二十二件とかいう数字から見ますと、我が国の五千件というのはちょっと見積もりが小さいですね。これでいいのかどうか。今少ないからせめてここまで、もっともっとということはわからぬことはありませんが、少ない。そしてなぜこれが少ないのだろう、予算の関係で少ないのだろうか、単なる予算だけであるとちょっと問題があると思います。ここの記事に書いてあるところを見ますと、一件の報告に対して政府の方が千五百円、メーカーの方では一けた多い、幾らかわかりませんが。こういうようなことも書いてあるわけです。そういうようなことでこの報告が少ないということなんでしょうか。それとも、この報告をする医師の意識の問題なんでしょうか。この辺のところはどうとらえておるのでしょうか。
  175. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 モニター病院の数は多ければ多いほどいいと思っておるのでありますが、協力していただくという建前のものでございますから、一遍にふやすのも困難であろう、こういうことでとりあえず三千ぐらいにふやしたい。先般までは大体八百から九百ぐらいだったのでありますが、これをとりあえず当面の目標として三千ぐらいまでふやす。今御指摘のとおり、日本の薬の副作用の報告数というのは外国に比べて非常に少ない、そのとおりであります。副作用の数が少ないのかというと、同じような薬でありますからそんなはずはないわけでありまして、たくさん数を集めてどういう場合に起こるか、こういうものを把握いたしますと次の手だてが打てるわけでありまして、そういうことからも、さらにまたお医者さんに協力をお願いしてふやしてまいりたいと考えております。
  176. 貝沼次郎

    貝沼委員 時間がありませんので、これぐらいにしておきますが、いずれにいたしましても、モニター病院に勤務している医師のうち副作用経験者、これを診た人ですね、九二%の人が診ている。うち、厚生省への報告一三%、メーカーへ三九%、こうなっておるのです。これは大変問題があると思っておるわけです。さらに高齢者の方、全部とは申しませんが、その中には医者に行ってただ診察をしてもらってもうれしくない、薬をもらわないと承知しない、こういう方も実はおるわけでございます。  そういうようなところから、やはり薬というのは本来毒物なんだということの教育が必要だと思いますし、決して栄養ではないということです。と同時に、そういうような薬に対する教育というものがなされなければならぬと思っておるわけでございますが、この点をひとつ、ぜひそうしていただくように要望して、これは終わりたいと思います。  それから、次は医療廃棄物の問題でお尋ねをいたします。  これももうくどくど申し上げる必要はないわけでございますが、医療廃棄物処理という問題で、例えば米国の北東部の海岸で不法投棄された注射器や薬瓶とか、そういうものが問題になりました。それから、国内ではたくさん起こっておりますね。岩手県の問題とかあるいは福岡県の問題とか山口県の問題とか、こういうふうなことが起こっております。これはもうよくおわかりのことでございますから一々申し上げません。  いずれにいたしましても、今そういう感染性の廃棄物というのは非常に重要な問題でございまして、きちっと処理しなければなりません。それに対しまして、政府医療廃棄物の適正な処理の確保に関する方策といいまして、医療廃棄物処理ガイドラインというものをおつくりになりました。まず、どういう実態が大事であり、そのためにこのガイドラインはどこにポイントを置いてつくったか、その点をちょっと御説明願いたいと思います。
  177. 目黒克己

    ○目黒政府委員 この医療廃棄物のガイドラインの主な内容と申しましょうかポイントと申すものは、大体こんな要領になっておるのでございます。  まず一つは、感染性の廃棄物の、どんな範囲かというものをある程度ポイントを定めて、それから医療関係の機関内の管理の方法をどんな方法でやったらいいかということ、あるいは処理業者への委託のやり方とかあるいは処理の方法、こういったようなことを主なポイントにいたしましてこのガイドラインをつくっていったわけでございます。また、いろいろな問題点があったために御指摘のいろいろな新聞報道等が過去にありまして、この検討会で今のその線でおまとめいただいたわけでございます。  もうちょっと詳しく申し上げますと、感染性廃棄物の範囲と申しますのは、一つは血液等が付着いたしました廃棄物を感染性廃棄物として取り扱うことだということで、例えば注射針とか透析の器具とか、あるいは血のついたガーゼというような一定の範囲のものをまず限定をいたしておるのであります。  それから次に、医療機関の中の管理の方法でございますが、これはまず管理責任者を設置するとか、あるいは処理の計画をそれぞれの医療機関の中できちんと策定をする、あるいは他の廃棄物と分別したり違うこん包にするという方法をきちんとする。あるいは処理業者への委託につきましては、廃棄物の流れを的確に把握いたしますために、いわゆるマニフェスト制、積み荷目録といったようなものを使用する。それから、運搬する場合の再委託を禁止する。それから処理の方法といたしましては、他の廃棄物とまぜて運搬しないようにとか、あるいは焼却等によって滅菌処理した後に理立処分するようにといったようなことを決めているのでございます。
  178. 貝沼次郎

    貝沼委員 そのガイドラインは私、大体わかりますが、これではちょっと弱いのではないかという感じがするわけであります。  そこで、例えば病院内の管理。これは岩手県の例がそうですね。小学校五年生六人が病院敷地内に野積みになっていた医療廃棄物のポリ容器から中身を取り出して遊んでいるうちに、使用済みの注射器、注射針で指などを刺したという、これがそうでありますが、この管理が適正であったかどうかということはだれがどのようにしてチェックするのか。また適正でなかったときはどうなるのか、この点についてお尋ねいたします。
  179. 目黒克己

    ○目黒政府委員 これは医療機関の外にある、今不法投棄とは申しませんけれども、それに近いような形の、ほうり出してあるようなものにつきましては、一般的に廃棄物処理法に違反したというふうに判断できるものについては、これは廃棄物処理法に基づいてある程度きちっと規制をするというふうな方策をとっておりますので、したがって、これは一般の産業廃棄物等を含めた廃棄物処理の監視員のようなもので各市町村においてこの処理方法についてきちっとフォローするということになろうかと思います。  それから、個々の医療機関ということになりますと、これはそれぞれの担当の部局でその医療機関への指導を行ってまいる。それから、処理業者のところでそういうものが出たらどうするかといったようなことにつきましては、それぞれ処理業 者に対して私ども厳しく指導していくというような形にいたしておるのでございます。
  180. 貝沼次郎

    貝沼委員 ですから病院の敷地内で、例えば子供の指を刺したとか、そういう事故が起こった場合に、これは適正でない方法になるわけでしょうから、その場合は罰則とかそういうものはあるのですかということをお尋ねしているのです。
  181. 目黒克己

    ○目黒政府委員 排出事業者として当該医療機関には当然廃棄物処理法に伴う罰則があるわけでございます。
  182. 貝沼次郎

    貝沼委員 それからもう一点確認いたします。  感染性廃棄物の処理委託に当たってマニフェストシステムで管理する、これはだれがだれを管理するのかということです。例えば業者を管理するのか、それとも、それを委託した病院側を管理するのか、どっちの方なんでしょうか。
  183. 目黒克己

    ○目黒政府委員 両者に対して、委託基準に従いまして、きちっと監督をするということに相なっておるのでございます。
  184. 貝沼次郎

    貝沼委員 その業者が違反をした場合はどういうことになるのでしょうか。
  185. 目黒克己

    ○目黒政府委員 委託基準に違反をして委託をいたしました場合には、廃棄物処理法によりまして罰則がかかるということになるわけでございます。つまり排出する事業者が業者に委託いたします場合に、委託の基準というのがございます。その委託の基準に従って適正に委託をしなければいけない、このようになっているのでございますが、この委託の基準に相反するようなことがあるということになりますれば、廃棄物処理法に従って罰則が設けてある、あるいは適切な規制を行う、指導を行う、このようなことになっているのでございます。
  186. 貝沼次郎

    貝沼委員 そこのところをはっきり聞きたいのですけれども、本当にそうなっているのでしょうか。どの法律の何条でそうなっているのですか。
  187. 目黒克己

    ○目黒政府委員 廃棄物処理法のたしか第十二条であろうかと思います。
  188. 貝沼次郎

    貝沼委員 それから、混載された他の廃棄物も感染性廃棄物とみなされるわけですね。一緒に滅菌するということですから、そういうことだと思いますが、この管理、つまり感染性廃棄物と一緒にしたもの、それまでも同じようにみなされるわけでありますから、その廃棄物についてまずい点があっても、その責任は問われるというふうになるわけですね。
  189. 目黒克己

    ○目黒政府委員 廃棄物処理業者の監督は、先ほど来申し上げておりますように廃棄物処理法に基づき都道府県知事が行うということになっているのでございますが、廃棄物処理のいわゆるガイドラインに適合しないということのみをもって直ちにこの罰則が適用されるということはないのでございます。しかしながら、不法投棄といったようなこと、先ほど来申し上げておるような不法投棄というふうなものに認められるもの等この廃棄物処理法に違反した場合には、同法によってこの罰則が適用される、このようになっておるのでございます。
  190. 貝沼次郎

    貝沼委員 いや、廃棄物処理法に決められている業者であればそれはその法律に従うのは当たり前なんです。  ところが、今回の感染性廃棄物はガイドラインにおいて、これは感染性であるがためにわざわざ滅菌するまでのことをいろいろ言っているわけでしょう。滅菌してしまえばこれは産業廃棄物、いいわけですね。それはそこから今までの法律でいいのですよ。それを滅菌するまで、例えば病院で滅菌する場合もある、それから滅菌しないものを運んでいってする場合もある。私が今聞いているのは、滅菌しないものをほかのものと一緒に積んだ、そうするとほかのものまで一緒に滅菌しなさい、こういうガイドラインですね。それをやらなかった、何か不都合なことが起こった、そういう場合に罰則はあるのですかというお尋ねをしたのですが、それは罰則があるという答弁だった。それは間違いありませんねと僕は言ったのだけれども、間違いないということでしたね。それは間違いないのですね。そこのところをもう一回確認しておきますよ。それから——じゃ、それを確認しましょう。
  191. 目黒克己

    ○目黒政府委員 先生御指摘の、具体的な事例としてこの感染性廃棄物と他の廃棄物と混載して、たまたまこれが混ざってしまった、それで何か事故が起こったような、つまりガイドラインに違反をしたということだけをもって罰則等が適用されるということはございません。しかし、結果としてその廃棄物がどこかへ不法処理なされるということになれば、なるということで、重大な環境上の支障を来すようなことがあればなるけれども、先生御指摘のように途中の時点でいわゆるガイドラインに違反をしたということだけでは罰則は適用されない。したがって、この点につきましては私ども、処理業者あるいは医療機関等を指導いたしまして、この混載に当たって感染性廃棄物をはっきり区別して、そのようなことがないようにということでガイドラインで指導している、そういうことでございます。
  192. 貝沼次郎

    貝沼委員 ですから、甘いというのです、それは。甘いのです。罰則がなければだめです、これは。ですから、廃棄物処理法の中にこういう感染性廃棄物の問題をきちっと入れないとこれはくくれないのですよ。私はその点をさっきから言っているのですが、罰則があると言うから本当にあるのかと思ったら、そうじゃないのですよ。滅菌したのを持っていってどこかへ捨てたら、それはありますよ。それはよくわかっているのです。だけれども、滅菌しないものはないから、それじゃ感染性廃棄物を扱う業者についてわざわざクレームをつけている意味が、それに違反してもただ指導されるだけであれば余り効力がないのじゃありませんか、これはきちっと罰則を入れた法的措置が必要じゃありませんかということを申し上げておるわけでございます。  この業者の募集によって随分申し込みが多いということでございますけれども、それは多いと思いますね、そういう甘いのであれば。難しいのはなかなか寄ってきませんけれども、恐らく規制が甘いのであると思います。ということは、そこにまた問題が起こり得るわけでありますから、もっと厳重にやっていただきたい。特に今、エイズの問題とかB型肝炎とかいろいろな問題で、血液の場合は難しい問題がたくさんありますから、もう少し強力に、ひとつお願いしたいと思います。  それから、時間がもうあと五分しかありませんので、はしょって申し上げます。  歯の方ですね、歯医者さん。歯医者さんのことで問題になっておりますのは、総義歯の不採算の問題、つまり高齢化社会を迎え、現行の保険点数では、歯科医師がみずからの技術を生かし最良の総義歯をつくることは不可能である。しかし、時代は着実に高齢化社会に向かっている。したがって、この点数をもっと上げて実際の仕事と合うようなものにしていただきたい。例えば総義歯をやる場合に、今自費でやりますと五十万とか百万とかかかるわけですが、これが点数でいきますと四万円ぐらいになるそうでございます。この点、改正する気はないか。  それからもう一つは、歯科医師の経営実態が大変悪くなってきております。こういう状況では恐らく立派な仕事ができないという不安が出てまいります。こういう点についての改善、そのための歯科診療報酬の適正化、こういうことをひとつ御検討していただきたいと思いますが、この点について御見解を承りたいと思います。時間がありませんので、まとめて申し上げます。  それからもう一つは、脊髄空洞症、これを難病に指定していただきたいということを私ども陳情いたしました。それについて厚生省は、今すぐの難病指定は困難であるが、原因究明、治療法確立など研究体制の一層の拡充が図られるよう何らかの方法を検討したい、こういう答弁をいただいておるわけでありますが、この作業が、いよいよ来年ぐらいに特定疾患対策懇談会に難病に指定するかしないかというような話としてこれをのせるという情報を得ておるわけでありますけれども、この点についてお答えをいただきたいと思います。  それからもう一点、これは同じく全国脊髄損傷 者連合会から陳情が出ておると思いますが、無年金者の救済について陳情が出ておると思いますので、この点についての御見解を承りたいと思います。  それからもう一点は、ハンセン病療養費関係の要望が来ておると思いますが、これもいろいろ御意見もあると思いますけれども、御見解を承ればと思っております。  以上、お願いいたします。
  193. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 歯科の診療報酬についてのお尋ねがございましたが、診療報酬につきましては、従来から国民医療費の動向、保険財政の状況、賃金、消費者物価の動向、医療経営の実態等、医療を取り巻く状況を総合的に勘案して改定を行ってきております。またその際、これも従来から技術料を重視するという観点に立って改定を行ってきているところでございまして、今後とも中央社会保険医療議会における御議論を踏まえまして診療報酬の合理化という方向へ向けて適切に対処をしていきたいと考えております。
  194. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 まず脊髄空洞症についてお答えを申し上げます。  脊髄空洞症につきましては先生も十分御案内のとおりでございますので、現在この脊髄空洞症がどうなっているかということでお答えいたしたいと思います。  このいわゆる特定疾患治療研究事業といいますのは、医療費の公費負担を行う、あるいは研究を行うというような事業をやっておるわけでございますが、現在この医療費の公費負担を行う特定疾患治療研究事業といいますものは、診断基準が一応確立した疾患のうちに重症度が高い等の要件を満たすものを対象としているわけでございますが、脊髄空洞症につきましては現在まだ診断基準が確立してないものでございまして、直ちに特定疾患とすることは非常に問題があるというぐあいに認識いたしております。しかしながら、今後本疾患につきましては調査研究を行い、診断基準を作成することにつきましては、関係者、先生もお話がございましたような懇談会の先生方に対しましてもいろいろ御意見を承りまして検討してまいりたいというぐあいに考えております。  それから、第二点目のハンセンのお話でございますが、ハンセン病に対する対策につきましては、正しい知識の普及は当然のことでございますが、それ以外に、私どもで持っております国立らい療養所におきますハンセン氏病対策につきまして、現在の考え方を御説明申し上げたいと思います。  国立らい療養所につきましては平成年度予算要求で、現在財政当局に要求いたしているわけでございますけれども、厳しい情勢の中におきまして対前年度四・四%増の三百二十七億円の要求をいたしておるところでございます。今後もこの要求の実現に向けて最大限の努力をしてまいりたいと思っております。中身といたしましては、患者さんからの要望等もございますので、入所者の高齢化あるいは身体障害の不自由度の増大等に伴いまして、医療の充実あるいは処遇の改善、施設の整備といいますものを三本柱としてその対策を推進してまいりたいと考えております。
  195. 加藤栄一

    ○加藤政府委員 脊髄損傷の無年金の問題でございますけれども、従来国民年金の任意適用の場合に脊髄損傷になりますと無年金ということも起きたわけでございますが、現在提案中の年金改正法案におきましては学生につきまして法定適用にするということにしております。これが成立いたしますとこのような事態は将来に向かっては解消するわけでございます。それをもって御了解いただきたいと思います。
  196. 貝沼次郎

    貝沼委員 終わります。
  197. 丹羽雄哉

  198. 田中慶秋

    田中(慶)委員 私は民社党の立場から、立党以来三十年福祉の充実を目指して取り組んでまいったわけでありますが、昨今、二十一世紀に向けて高齢化社会に対応した福祉施策を充実するために、普遍的かつノーマライゼーションの理念に基づいた施策の充実を図るとともに、将来の国民負担が過重なものにならないように効率的社会保障の確立を私どもは求めているわけであります。  そのために、国や地方自治体において各種の福祉サービスを効率的に受けられるようにするために総合的な施策が必要であろう、こういうふうに思います。国においては高齢者や障害者が地域で快適に生活できるような町づくりのためのアメニティーガイドラインの策定を行うとともに、各市町村においては総合的な地域福祉計画を策定し、社会的にハンディをしょった人たちがだれでも安心して生活をできるような環境の整備が必要だと思います。これについて大臣はどのようにお考えになっているのか、お伺いしたいと思います。
  199. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 高齢化社会が急速に進むに従いまして各種の施設の充実を図っていかなければならないようになっております。特に特別養護老人ホームであるとか、そういったものが農村には比較的つくりやすいけれども、先生のところのように都市の方にはなかなかつくりにくい、そういった個別のニーズに対応した取り組みをしていかなければならない。そのことによって、ある地域に偏っていくようなサービスではなく、全国的な範囲で行き渡るような対策をきめ細かくとっていかなければならないというふうに考えております。
  200. 田中慶秋

    田中(慶)委員 今大臣から施設の充実あるいはまた老人ホームの問題についてお答えをいただいたわけでありますが、やはり今施設の不足といいますかアンバランスが随所に目立っているような気がしてならないわけであります。大臣も今大都市についてという一つの例示を述べられたわけでありますけれども、これからの施設づくりというもの、今国はどちらかというと特別養護老人ホームに力を入れている、その特養についても全国的にアンバランスである。例えば横浜のようなところは、この特養を今申し込んでいても少なくとも二年、三年かからなければ入れないというのが実態であります。ハンディをしょった人たちが、それぞれ介護を要するお年寄りが二年も三年もそれだけ待てるかどうか、こんなことを考えてまいりますと、その施設の不足というものが大変目立っているわけであります。国においてはこの老人ホームあるいは特養については比較的充足したような勘違いをされているわけでありますけれども、これらについてどのようにお考えになるか、これからの取り組みについて具体的にお考えを述べていただきたいと思います。
  201. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 本格的な高齢化社会を迎え、介護を要するお年寄りが安心して暮らしていくためには、在宅福祉対策の充実と同時に、家庭で介護を受けられないお年寄りが適切に施設サービスを受けられるような特別養護老人ホームを充実していくことが必要であります。先ほど委員から御指摘がありましたように、長い間順番待ちをしなければならないというようなことがないように努力をしていかなければいけない、かように考えているわけであります。  平成十二年度を目途に特別養護老人ホームを約二十四万人程度整備することとして毎年八千人程度拡充しているわけでありますが、さらに平成年度要求におきましてはこのペースを速めて、五年間にわたり毎年一万人程度ずつ緊急に整備していきたいと考えております。  また今後は、心身が虚弱になりつつあるお年寄りができるだけ自立して安心して生活できるよう、新しい形の軽費老人ホームであるケアハウスも大幅に整備をしていく方針であります。同時に、高齢者の増大する都市における特別養護老人ホーム等の整備を進めるためには、地方自治体も積極的に取り組んでいかないとなかなかできません。特に公有地の活用をするとか、例えば保育園、そういうような施設があればその上の二階なり三階なりの部分を活用するとか、あるいは民有地の借り上げであるとか、そういったその地域に適合したような新しい取り組みによって施設の複合化を進めていくということも考えていかなければならない、かように思っております。
  202. 田中慶秋

    田中(慶)委員 大変前向きな答弁をいただいたわけであります。  特にこれからの特養の問題を一つとっても、確かに都市においては土地が高い、土地がない。公有地の活用ということが述べられて大変力強く感じておりますけれども、私は特養の基本的な考え方をいま少しまとめていった方がいいのではないかと思います。例えば、時代とともにこの特別養護老人ホームに入所される人たちも、長い間自分の生活の中で親しみを感じておる家具類であるとかそういうものが持ち込めるような個別の、個室化といいますか、そういうことも必要ではないか、こんなふうにも考えておりますし、あるいは、今軽費老人ホームのことについても触れられましたけれども、基本的には今制度上は軽費老人ホームという制度はありましても、地方自治体がそれを認可をしてくれません。こういうことであっては、制度をつくってあるにしても現実にそれが運用の面で大変厳しい環境でありますから、これらについてももっと力を入れてもらいたい。あるいはまた有料老人ホームについても、現実問題としていろいろな形の問題はありますけれども、これらに対する許認可の問題についても非常に難しい問題があるわけであります。  そんなことを含めますと、用地の問題は、例えば農水省初め建設省との話し合いも必要だと思います。調整区域やあるいはまたそれぞれの農用地区、こういう問題についても、規制が厳しいためになかなかできないという要素がありますので、こういうことも含めて御検討いただけるかどうか、お伺いをしたいと思います。
  203. 岡光序治

    岡光政府委員 まず、個室化の問題でございますが、先生御承知のとおり、軽費老人ホームとか養護老人ホームにつきましては、個室化という方向で整備を進めております。それから、特別養護老人ホームにつきましても、個室の必要な、例えば痴呆性のお年寄りのような、そういうケースについては、個室に入ってもらうようにその整備を進めておりますが、まず基本的には、手厚い介護が必要であるとか、あるいはお年寄りを一人にしておくと孤独になるんじゃないかというふうなことがいろいろ言われておりまして、その辺は特別養護老人ホームについては、完全に個室化というのはちょっと問題もあるんじゃないかという指摘も受けたりしておりまして、その辺はいろいろな試みをしながら、お年寄りの最も適切な処遇ができるような、そういう仕組みで内容の整備を図っていくのが適切ではないかなと思っております。  それから、軽費老人ホームにつきましては、先ほど大臣お答え申し上げましたように、新しいタイプの、地域の生活に根差しながら、かつケアがちゃんと受けられるようにということで、ケアハウスのようなタイプのものをつくっていこうと思っておりますが、本年度について申し上げますと、まだ四カ所しか整備できてない、そんなふうなことでございますので、もう少し地方団体とも相談をしながら、そういうタイプの軽費老人ホームの整備を充実したいと考えております。  それから、有料老人ホームにつきましても、いろいろ問題がありますので、少なくともケアつきでひとついいホームをつくってもらいたい。しかも、せっかくつくってもらうんだったらいいものにしてもらって、かつお年寄りがせっかく高い金を出して有料老人ホームを買っても、後でひどい目に遭うということでは困りますので、関係者で協議会をつくってもらって、質の内容を維持してもらうように、関係者内での努力もひとつお願いしたい。そして私どもも一緒にその辺を研究していきたい、そんなふうに考えております。
  204. 田中慶秋

    田中(慶)委員 老人ホームばかりやっているわけにまいりませんから、次の議題に移りますけれども、その前に軽費老人ホーム、四カ所でしょう、全国ですよ、あなた、一つの県や市じゃないんですから。その辺をもっと徹底してやっていただかないと困るんです。それぞれの地方においては、軽費老人ホームを建てようとしても、厳しい環境や補助率の問題で建てられないのですから、そのことを含めて私は申し上げているわけだし、有料老人ホームであれば、やはりそれは一つのモデル設計的なものを、マニュアルをつくっておけばいいんで、最低限これだけのものは整備してほしいよ、それが許認可の一つの要素としてつくっておく必要があるだろう、こんなふうに思っておりますので、そのことを含めてこれから前向きに取り組んでいただきたいと要望しておきます。  そこで、今、介護の問題についても若干お話が出たわけでありますけれども高齢化社会という大きな、過去に経験のしたことのない社会にぶつかるわけでありますから、お年寄りが安心して老後を送れるような社会保障制度の構築が不可欠となっているわけであります。中でも、体が不自由になったときどうするのか、家族の者が寝たきりになったり、あるいはまた国民の多くの老後の最大の不安となっているのは、今住みなれたこの地域、家庭、これを現実問題としてこれから離れていかなければいけないんではないかとか、そういう問題も心配をされております。  現在我が国は、寝たきり老人の介護施設等については不十分なため、高齢化に伴い体が不自由になるほど献身的な家族、殊に女性の犠牲が多いと言われております。老人病院や特養に入れる人は別にしても、老後の過ごし方そのものがやはりみずからの選択によって決められるようなことも必要ではないかと思います。そういう点で、なれた地域や自宅、あるいはまた老後を送れるような環境づくりを根本的に改める必要があるだろう。そういう点では、今在宅の場合においては非常に負担が多いわけですから、これらに対する補助制度を設けるために一定の基金をつくってみたり、こういうことを含めて、寝たきり老人あるいは寝たきりのお年寄りというものはまず考えてみますと日本が非常に多い、よその国では少ない、こういうことから寝たきり老人というもの、寝たきりの生活をさせないように努力する必要があるだろう、こういうふうに思います。その辺についてどのような考え方をお持ちになっているのかお伺いをしたいと思います。
  205. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 お年寄りが介護を要するようになっても、できるだけ住みなれた家庭で、家族とともに安心して暮らしていけるために住環境の整備をするとか、まず住環境が一番大切だろうと思います。特に二世帯住んでいるような場合には、やはりお互いが自由な時間を維持していくためにも住環境の整備が基本的に必要だと思います。このため、これまでも市町村を通じたお年寄りの居室等の整備のための資金の貸し付けであるとか、建設省との協力によるシルバーハウジング・プロジェクトや車いすが場合によっては使えるような新しい形の軽費老人ホームであるとか、そういう設備を充実をしていきたい。さらに、平成年度の要求においては、お年寄りの住みやすい住宅改造のための相談体制を整備をいたしております。さらに、日常生活用具等の給付の事業に車いす等の介護機器を追加する等の事業も実施し、在宅介護の環境づくりをさらに進めていきたいと思っております。そして、お年寄りが住みやすい環境をつくっていくことがまず第一に必要であろう、こういうふうに考えております。
  206. 田中慶秋

    田中(慶)委員 ありがとうございました。  いずれにしても、施設に入るのと在宅で介護をするのと、その差が余りにも税制その他においても大きいわけでありますから、これからも積極的な取り組みをして不公平感が出ないようにしていただきたい、こんなふうに要望しておきます。  お年寄りの問題とあわせて問題は、子供の問題、保育の問題について若干触れてみたいと思っております。  この三十年間、保育所の整備は著しいものが政府初めそういう所管庁の努力によってできてまいりました。一方においては、婦人の職場進出やライフスタイルの変化に伴い保育の需要が大きく変化しております。行政の対応のおくれもあり、保育所は乳児保育を行わないだけではなく、延長保育のニーズや一時的な保育のニーズには全くこたえることができてないのが現状であります。このため劣悪なベビーホテルや不安なベビーシッターサービスなどに子供を預けるのが現状であります。女性が安心して子育てを行えるようにするた めに、あるいはまた保育所での保育の時間を子供を預ける母親のニーズに対応できるような、相当幅を持った保育という問題について検討する必要があろうと思います。これらの問題について厚生省としてどのようにお考えになっているのかお伺いをしたいと思います。
  207. 古川貞二郎

    ○古川政府委員 御指摘のように、もろもろの社会の変化に対応しまして適切に施策を進めていくということは大変大事なことであろう、こう考えておるわけでございます。先生御指摘のような核家族化の進行あるいは婦人の就労の増加あるいは就労形態の変化、こういったことに対応しまして、私どもとしましては、保育所における延長保育あるいは乳児保育等の対策を従来から進めてきたわけでございます。ただ、やはり社会の変化により対応するということで、例えば延長保育につきましては五十六年度から実施いたしておりますけれども、これが対象の児童規模がおおむね二十人以上、こういうふうになってございまして、ネックもあるということから、平成元年度におきましては対象児童数の基準を大幅に緩和いたしました。これは、おおむね二十人以上というところから六人以上、こういうところも対象にするというような緩和をいたしまして改善を図ったところでございます。  また、乳児保育につきましては四十四年度から実施いたしておるわけでございますが、保育所数につきましても、前年度が三千七百三十八カ所対象になってございましたのを、平成元年度におきましては四千三百四十カ所というふうに大幅に増加させたところでございます。今後ともこういった延長保育あるいは乳児保育等の特別保育対策の一層の充実を図っていくという考えでございますと同時に、近年特に増加しておりますところのパート就労に伴う一時的な保育需要あるいは母親が病気になるとか、そういった疾病等による緊急の保育需要、こういったものにも対応するような対策を講じてまいりたい、かように考えている次第でございます。
  208. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いずれにしても、これらの問題もやはり全国的なバランスシートを考えていかなければいけないのだろうと思います。やはり首都圏においてはどうしても、あなたがおっしゃったように五十六年からいろいろなことが実施されてきたといっても、現実問題としてまだまだ厳しいわけであります。ですから、延長保育をしてくれるところは順番待ちでいるわけです。延長保育をしてくれないところは逆に定員割れをしておるわけでありますから、こんなことを考えてきめの細かさや、そういうことが必要であろう、こんなふうに思って私は現場を見てきて申し上げているわけであります。そのことが大変重要だと思いますので、デスクワークだけではなくして、そういうことを含めてちゃんとしていただきたい、こんなふうに要望しておきます。  さて、限られた時間でありますが、我が国医療をめぐる諸問題について若干述べさせていただきたいと思います。  我が国は、経済的な繁栄もあり、また医療保険制度の整備もあって、かつては国民病とまで言われた結核の激減に見られるように、国民の健康水準は大きく改善し、世界一の長寿国を誇っているわけであります。しかし、欧米諸国に比較してなお低いものの、国民医療費は国民の所得を上回って増加を続けており、重くなる医療負担、殊に老人医療を公平に負担するために制度改善が大きな課題となっており、医療資源の効果的利用を促進するなど医療費の適正化を一層推進することが必要となっていると思います。  現在、老人医療は、老人保健制度として各保険者拠出金を主要財源として運営されているわけであります。拠出金が急激に増加し、健康保険組合等の保険料引き上げも難しい現状になっているわけであります。このために、制度負担の公平を図るために公費負担をむしろ三割から五割に引き上げるとともに、加入者按分率などを現行の九〇%程度にとどめて保険者の自助努力の余地を残すことが適切だと思います。世代間の負担の公平を図るために、老人の一定額負担を五%負担に改め、高額医療制度導入して適切な診療を抑制されないように配慮することが望まれているわけであります。また、社会構造の変化に伴い財政基盤が貧弱になっている国民健康保険の抜本的な見直しを進め、現在市町村単位国民健康保険を都道府県単位改善する必要がある、こういうふうにも言われております。これらに対して政府としてどのような見解をお持ちか、お答えをいただきたいと思います。
  209. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 医療保険制度につきましては、これまでも給付負担公平化に向けて逐次改革を実施してきたところでありますが、現在検討中の老人保健制度及び国民健康保険制度の見直しの帰趨を見ながら、段階的に各制度間の給付負担公平化のための措置を講じていこうといたしております。その際には、現行保険料を余り引き上げないで済むように、また低くない給付率として八割程度にそろえるのが適当だろうか、かように思っておりますが、いずれにしても、こうした一元化の具体的内容については関係方面に種々御意見があるわけでありますので、その意見を踏まえて検討してまいりたいと思います。  また、特に老人保健制度に対する公費負担の問題についてもお触れになりましたけれども、これも今老人保健審議会において御検討をいただいているときでありますので、いずれその結論が出ました暁において十分検討していきたい、かように思っております。
  210. 田中慶秋

    田中(慶)委員 昔は医師が不足している、こういう時代だったと思いますが、医師も歯科医師も現在は、従来の人口十万人当たり医師百五十人、歯科医師五十人という数値をもう既にオーバーされているのが現状であります。ところが、医療間の格差というものがあるわけでございまして、現実には格差医療体制の改善ということが必要だと思います。地域における医療機関や医師等の数、無医村地区が現在地域医療指定の中で千二百七十四地区あると言われております。こんなことを考えてみますと、一方においては医師が過剰だと言われておりながら一方においては無医地区がある、こういう状沢がこの狭い日本で現在あるわけでありますが、これらに対してどう対応されるのか。医療というのはいつでもどこでも安心してかかれるような体制をつくっていくことが必要であろう、こんなふうに思っているわけでありまして、これらに対する対策をお伺いしたいと思います。
  211. 清水康之

    ○清水説明員 お答えをいたします。  御指摘の医師、歯科医師の需給問題につきましては、御案内のとおり昭和六十一年に、昭和七十年を目標にして新規参入の関係を医師については最小限一〇%、歯科医師については最小限二〇%を削減する必要がある、そういうような検討会の最終意見がありまして、それを受けまして私ども、文部省その他の関係方面と話し合いをし、医学部、歯学部の入学定員の削減についてはいろいろ協力をお願いしてきているところでございます。  その結果、平成元年度までの累計で申し上げますと、歯科医師についてはほぼ目標に近い一八・七%、医師については五・六%程度の入学定員の削減等が行われているというのが現状でございます。このような実情を踏まえまして、特に医師につきましては、今年八月には私どもの健康政策局長より文部省の高等教育局長あてに、なお一層の御協力方をお願いしております。私どもとしましては、御指摘のように適正な医師の水準あるいは歯科医師の水準というものがあろうかと思います。そういう適正水準の確保にまず努力してまいりたいと思います。  それからその次に、そうは言っても僻地その他では無医地区などがあるではないかという御指摘でございますが、残念ながらおっしゃるとおり、医師数にしても医療施設にしても地域間に格差があるわけでございますけれども、私どもといたしましては、御案内のとおり医療法の改正をしていただきまして、初めて都道府県が医療の分野に地域医療計画というものをつくることができるよう になりました。おかげさまをもちまして、今年三月に全部の都道府県でこの医療計画が出そろいましたので、この医療計画における二次医療圏ごとの過剰地域とか不足地域とか、そういうものを一つの基準にしながら今後一層適正な配置に努力していきたいと思いますし、これまでも離島、山村等の僻地につきましては僻地診療所の整備であるとか僻地中核病院の整備であるとか、それなりの努力をして、医療過疎に悩む方々にこたえるべく誠心誠意努力をしているところでございます。
  212. 田中慶秋

    田中(慶)委員 最後の質問になりますが、日本医療技術というのは確かに世界一という形で評価されるところまできたと思います。しかし、患者側にしてみれば、例えば三時間待って三分診療、こんな言葉が現在もございます。あるいは病院に入ってみますと、本来ならば温かく看護をするべきところでしょうけれども、冷たい給食という表現に今でも代表されるわけでありまして、こういうことを考えてみますと、医療というものが患者サービスの面でももっともっと質の向上を求められるのではないか、こんなふうに思うのです。こういう一連の問題を含めて、精神的にもぬくもりが要求されるのではないかと思います。  そこで、これらに対する行政の立場での指導をどのように行われているのかお伺いをして、私の質問を終わりたいと思います。
  213. 清水康之

    ○清水説明員 お答えをいたします。  御指摘のとおり、ぬくもりのある心のこもった医療サービスをしていくということは大変重要なことだと考えております。御案内のとおり先般も患者サービスの改善に関する報告書その他の御指摘、御報告をいただいておりますので、私どもとしてはそういう報告を受けながら、例えば給食が早くて冷たくてまずいといったような御批判を受けないように、民間機関への委託の活用その他を含めまして、御指摘のようなことが一歩でも改善されるような努力を、今までも続けてきているつもりでございますが、これからもなお一層努力をしていきたい、こういうふうに考えております。
  214. 田中慶秋

    田中(慶)委員 以上で終わります。
  215. 丹羽雄哉

  216. 児玉健次

    児玉委員 戸井田大臣は、就任後新聞社のインタビューに対して「老人保健の医療費の国負担を二〇%から三〇%にしたら将来的にいくらかかるか。そういう具体的な問題提起をしていこうと思う。」これは八月二十四日の毎日新聞の朝刊ですが、そのように述べていらっしゃいます。このインタビューは大臣が就任されて約二週間を経過し、満を持しての発言だと私は思いますが、この御発言がその後どのように具体化されつつあるのか、大臣にお伺いしたいと思います。
  217. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 その新聞に出たことは、いろいろな新聞それぞれ若干ずつニュアンスが違っておるのですけれども、私が申し上げたのは、当時消費税の問題に絡んで福祉税という構想がいろいろ打ち上げられて、その一環としてどのようにそれを考えているかというような御質問の中で、例えば老人健康保険とか年金とか、これも基礎年金制度導入されたんだから、そういう意味では公費がそこにつぎ込まれるということは一つの考え方である。しかし、これが将来ずっと伸びていくわけですから、財政硬直その他につながっていくというようなこと等は当然そういう懸念が考えられる。そして福祉関係者も、そのときには福祉関係者という言葉を言ったかどうかわかりませんけれども厚生省の予算というのは十一兆あるが福祉という目的税なものに行くと足りない、そういう意味で、そういうことは一つは考えられるけれども、そういういろいろな問題があるという発言をしたのが集約されてそうなったと私は思っております。
  218. 児玉健次

    児玉委員 消費税は、たとえそれが福祉目的税と言おうとどうしようと、国民の審判が既にきっぱりと下っているものですから、廃止以外にない。それで、私は大臣のこの御発言の中に、老人保健に対して、長く社会保障の仕事に参加されてきた戸井田大臣として、ある積極的な抱負をうかがうわけでして、その点での御努力をさらに強めていただきたい、私も努力をするということを述べて次にいきたいと思います。  きょう私は、一九八二年八月に成立した老人保健法のもとで老人の医療が現実にどのようになっているか、この点を中心にして質問します。  昭和五十八年三月に厚生省が発刊された「老人の診療報酬について(問答)」があります。その中で「(問2)老人保健法では、医師の診療が若い人にくらべ大幅に制限されるような診療方針・報酬が決められたそうですが、老人に対する不当な差別ではないですか。」このような質問を設定して、それに対して「決して必要な医療を制限するようなものではありません。」と当時答えておられます。この点今も変わらないかどうか、はっきり伺いたいと思います。
  219. 岡光序治

    岡光政府委員 おっしゃいますような「問答」を出しておりまして、基本的にはこの考え方は変えておりません。     〔委員長退席、野呂委員長代理着席〕
  220. 児玉健次

    児玉委員 私は、そうだとすればというのでまず歯科から伺いたいのですが、老人特掲診療料によれば「「歯周組織検査」とは歯槽膿漏症に必要な検査のことだ」こう書いてありますが、これが、老人保健法に該当する老人の場合、診療報酬に算定されないことになっております。七十歳を過ぎたら、ないしは寝たきり六十五歳以上の方には歯がないという前提に立つのでなければこれは理解できないのですが、ますます高齢を元気に生きてもらうためには歯に対する介護、治療というのは必要だと思うのですが、どうしてこういうことになっているのでしょうか。
  221. 岡光序治

    岡光政府委員 基本的な考え方を申し上げますと、お年寄りは心身の特性を考えますと、少なくとも個別の対応ではなくて総合的な管理ということが必要なのではないだろうか、このように考えて特掲診療料については整理をしているものでございます。そして、今の口腔疾患指導料についての御指摘でございますが、恐らく先生の御指摘は、「初診の日から当該初診の日の属する月の末日までに行った指導費用」について個別に請求できないではないかという御指摘であろうと理解をいたしますが、それは要するに初診時の基本診療料に含まれておるという考え方でございます。  繰り返しになりますが、お年寄りの心身の特性を考えますと、総合的な管理ということが必要でございますので、したがって、基本診療料というものを手厚くしているわけでございます。それで、そういった診療料に含まれると考えられるような指導費用については、したがって個別には算定しないでこの基本診療料に含まれている、こういうふうに理解をしているわけでございます。
  222. 児玉健次

    児玉委員 歯周組織検査とは、歯槽膿漏症の患者に対して、「歯及び歯周組織についてポケット測定検査、歯間離開度検査、歯の動揺度検査」云々とそう言って、「歯槽膿漏症に必要な検査をいう」こう明記されている。そして、老人保健法においては「本区分は算定できない」、こう書いてありますね。私が質問しているのは、結局、歯槽膿漏については診療報酬に算定しない、既に歯が抜けてしまって、そういうものが出てこないという前提でなければそれは理解できないじゃないですか。  大阪大学の新庄先生という方が一九八四年に養老院と老人病院での調査をなさっています。これは「食べもの通信」というなかなかおもしろい雑誌、去年の六月号にありますが、それによりますと、ぐあいが悪くて入院中、寝たきり、そして、悪いところなく元気、何とか普通に暮らせる、お年寄りを四つに区分して、その中で、歯がなく入れ歯もないという方は、悪いところなし、何とか普通に暮らせるという方が実に八〇%です。そして、入院中と寝たきりが二〇%ですよ。主に自分でかむという場合は、悪いところなし、普通に暮らせるという方が九二%で、そして入院中と寝たきりというのが八%ですよ。自分の歯を使って生活しているというのがどのくらい老後の生活を鼓舞しているか、元気づけているか、これは明白じ ゃないですか。そして、最近老人痴呆症についての研究の中でも、みずからの歯でそしゃくする人に発現率が非常に低いという新しいデータも出ていますね。今厚生省がおっしゃったことは、これらの治験に照らしてみても変更が迫られていると思いますが、いかがですか。
  223. 岡光序治

    岡光政府委員 申すまでもありませんが、診療報酬のあり方については中医協で御審議いただいておるわけでございます。そして、今の老人の特掲診療料につきましては、十分御審議をいただいて、お年寄りの心身の特性にふさわしいであろうということで現在の点数が設定されているわけでございます。それで、私どもは、良質の医療が効率的に行われるようにということで常に診療報酬体系の合理化については努めているところでございます。  それで、ただいまの御指摘につきましては、どうも直ちに、手元に資料がないので、私、具体的に御説明することができないでおりますが、基本的には繰り返しになりますが、初診の基本診療料であるとか、あるいは全体の検査の点数の中に入っておる、そういうふうに、お年寄りの状況から考えてそのような総合的な点数設定がふさわしいもの、そういう判断がされて設定されていると理解しております。
  224. 児玉健次

    児玉委員 部長、私が述べていることにぜひ率直に答えていただきたいのですが、老人の心身の特性ということを皆さん盛んにおっしゃいます。それで、私も皆さんが出されているものを持って聞いているんですが、歯周組織検査が要らないということは、高齢者にはもう歯が存在しないということを前提にしてでないと理解できない。全体の初診料が幾らか手厚く盛られているとか盛られていないとかいう問題ではなく、そうしか理解されない。しかも、最近の治験によれば、みずからの歯でそしゃくする人が老後元気である。厚生省は、今寝たきり老人ゼロ作戦という取り組みを始めていらっしゃるわけでありますが、そうであればなおさら、高齢者のためにもこの部分については早急な見直しをしなければならぬのじゃないか、こう思うのですが、いかがですか。
  225. 岡光序治

    岡光政府委員 例えば、歯科口腔疾患指導料というのは、老人保健と健康保険と比較をしてみますと、老人保健は八十点、それから健康保険の場合には四十五点でございます。つまり、老人保健の方にはそれだけ手厚く入っておるわけでございまして、この指導料の中にそういった検査的なものも組み込まれて、全体の、口の中の衛生も含めてこの指導料で対応してもらおう、そういうふうな点数設定にしているわけでございます。     〔野呂委員長代理退席、委員長着席〕
  226. 児玉健次

    児玉委員 この点についてはさらに引き続いて議論していきたいと私は思います。  先ほど、昭和五十八年三月に厚生省が出された老人の診療報酬についての問答、決して必要な医療は制限するものではない、そういうふうに再確認のお答えがあったのですが、私はここで一、二具体的な事例を挙げたいと思うのです。  その第一は、松江市における八十三歳の男性です。昨年十二月に入院なさった。肺炎と脱水による腎不全の悪化と診断されて、十二月九日から週一、二回の人工透析を行って、食欲も回復された。ベッドでみずから体を起こしていろいろと話をすることもできるようになった。そのことについて、当初島根基金審査委員会は、当然それを診療報酬として認めておりました。ところが、本年の二月、島根基金審査委員会は、一月分のものについて、年齢、症状、経過から見て人工透析の施行には疑問があります、あえて施行された理由をお知らせください、こうつけてレセプトを戻されたというケースがありました。それに対して、主治医や病院関係者が、透析を中止することは死を意味するもので、患者の命を守る医師の姿勢は、年齢その他によって変わるものではない、たとえ高齢であろうと、必要があれば私は透析をする、こう言って抗議をなさった。結果は、三月十四日、審査委員会が当初の年齢、症状、経過から見て云々ということでなく、技術的に困難と思われたからと釈明して、この申請については認める、こういう経過がありました。それが一つの事例です。  二つ目の事例は、山梨県の櫛形町、七十歳の男性です。本年の六月、肺がん、慢性呼吸不全急性増悪等によって、病院は人工呼吸器を一カ月装着しました。ところが、山梨県の社会保険診療報酬支払基金は、一カ月のうちの十五日分についてしか認めない。主治医から、末期がんの患者であり、機械を外せば数時間しかもたないことははっきりしている、長い間医師をやっているが、今回のようなことは初めてだ、こういう患者さんは死んでもらえということか、そう言って基金に抗議をした。結局、九月十四日に基金から、復活請求について認めます、そういう電話回答があったそうです。  この二つの事例について、厚生省、御承知でしょうか。
  227. 岡光序治

    岡光政府委員 率直に申し上げまして、けさ方、先生の御指摘で確認をさせていただきました。と申しますのは、各県支払基金の審査委員会での個別ケースについての審査、査定内容につきましては、自動的に私どもの方にその内容が上がってくるという仕組みではないからでございます。
  228. 児玉健次

    児玉委員 厚生省はこの事例を御承知でしょうかと私は聞いているんで、御承知かどうかお答えください。
  229. 岡光序治

    岡光政府委員 内容を確認させていただきました。
  230. 児玉健次

    児玉委員 私は、これらの事例を聞いて本当に暗然たる気持ちになりました。人工呼吸器を三十日間装着する。そのうち十五日だけ認めてあとの十五日は認めない。人間は十五日間呼吸してあとの十五日間は息をせずにまた来月生き返るなんという離れわざはできないのです。だから、主治医の方が、こんなことは長い間やっていて初めてだと抗議された。当然そうだと思うのです。そういう気持ちをお持ちになるのは本当に当然のことです。こういう医師がいらっしゃることを喜びたいと私は思うのです。厚生省は、ことしになって老人、高齢者を対象にして国保連や支払基金を通してか、または厚生省直接にか、支払い請求の取り扱いについて何らかの指示、通達または内簡をお出しになっているでしょうか。
  231. 岡光序治

    岡光政府委員 私どもの方からは出しておりませんが、毎年度の支払基金の審査の方針が支払基金の理事長名で出されておると承知をしております。
  232. 児玉健次

    児玉委員 それほどのような内容のものでしょうか。
  233. 岡光序治

    岡光政府委員 毎年度、審査の適正充実の諸方策についてということで、請求明細書の審査を充実にするように、あるいは長期入院とか一人の患者で多くの疾病を持っている多疾病の人の入院についての明細書を特に重点的に審査をするようにとか、そういう趣旨内容でございます。
  234. 児玉健次

    児玉委員 そうなりますと、特に七十歳以上とかなんとかについてどうこうするというものを出していらっしゃらないことはわかりました。  先ほど私が述べた二つの事例は、かなりたくさんの事例の中から選んだものです。例えば人工呼吸器について言えば、私のおります札幌でも最近同様なことが一つありました。そして、山梨県ではもう一つ事例があります。そのほか血漿交換についてとか、老人保健法の適用を受けている高齢者についてレセプトの審査で、さっきの非常に非常識な、さかのぼって一カ月の人工透析について最初は認めておきながら途中から認めないという事例だとか、一カ月のうち十五日のみ認めるとか十七日のみ認めるとか、いずれも具体的な事例です。先ほど言った二つの事例については、病院関係者や患者の家族の方々の非常に精力的な熱心な基金やその他との話し合いによって保険が認められましたが、こういうことが繰り返されてはならないと思うのです。どうしてこういうふうになるのか。どうしてでしょうか。
  235. 岡光序治

    岡光政府委員 個別のケースについてどのような医療が適切なのか、それは主治医と審査委員会 側のお医者さんとの判断の相違によるものだろうと思っております。
  236. 児玉健次

    児玉委員 厚生省が以前こういう基準を出されています。老人保健法の規定による医療及び特定療養費に係る療養の取扱い及び担当に関する基準、その中に「手術及び処置」というのがありまして、「イ 手術は、必要があると認められる場合に行う。」「ロ 処置は、必要の程度において行い、みだりにこれを行つてはならない。」先ほどの事例であった人工呼吸器の装着それから人工透析は手術に当たるのでしょうか、それとも処置に当たるのでしょうか。
  237. 岡光序治

    岡光政府委員 処置でございます。
  238. 児玉健次

    児玉委員 そうすると先ほどの島根と山梨の場合、いずれもそれぞれの処置について当初においてはそれが支払い報酬として認められ、事後においてそれが認められない、または部分的にしか認められない、こういう事態になっているのですが、その際、もしかしたら「みだりにこれを行つてはならない。」というところが基金なり審査委員会の判断の根っこになっているのじゃないですか。どうですか。
  239. 岡光序治

    岡光政府委員 先生十分御承知のとおりでありますが、老人保健法による医療の取り扱いの基準が決めてあるわけでございまして、その中に御指摘のような文言が入っているわけです。  考え方としましては、この文章を読ませていただきますと、「老人の心身の特性を踏まえて、患者の療養上妥当適切に行われなければならない。」「特に漫然かつ画一的なものとならないよう配意して行われなければならない。」、こういうふうに書いておるわけでありますし、また御指摘のような、みだりに行ってはならないという表現もとっておるわけでございます。これは要するに、漫然と画一的に検査が続けられる、投薬が行われるということではお年寄りの医療としてはふさわしくないのではないか、お年寄りの心身状態の特性に合わせながら、その変化に応じながら療養が行われるのが妥当適切なことなんで、そういうチェックをしないで漫然として画一的に検査、投薬が行われるのはまずいであろう、こういう考え方でございます。
  240. 児玉健次

    児玉委員 まさにその点なんです。先ほど部長は審査委員会なり基金の側の判断と主治医の判断の問題を答弁の中でお答えになりましたが、漫然、画一的とか、みだりにとか、そういう形である種の社会的な雰囲気が醸成され、保険診療の支払いに対する制限という形で経済的な強制力ないしは経済的な誘導がなされている。その結果、最初は認めるけれども二カ月目からそれは認めない、または部分的にしか認めない。この二つの事例は、結局は主治医の正当な意見を受け入れるという好ましい結果で終わりました。そのことを私は結構だったと思いますが、そういう事態が生まれていることについて、厚生省は今どうお考えなのか。皆さんはここで必要な医療を制限するものではありませんと言っているけれども、処置だといって、人工呼吸だとか人工透析というのはまさにフェイタルなものですよ。命が失われるかどうかという問題です。それに対してまでこういう制限が行われている。ここは手直しが必要だと思うのですが、どうですか。
  241. 岡光序治

    岡光政府委員 お許しをいただきまして、やや過去のこともさかのぼりながら御回答させていただきたいと思います。  現在のような老人の診療報酬体系に持っていきましたのは、実は昭和五十六年ごろ非常に象徴的な老人病院での非常に忌まわしい事件が起きたわけでございます。その中身は、結局、病気の診断と称して連日血液検査をやるとか心電図のチェックをやるとか、あるいは治療と称して大量の点滴注射や抗生物質の投与が繰り返されて、そこの病院に入ったお年寄りは極めてひどい取り扱いを受けたわけです。当時、薬づけとか検査づけとか点滴づけとかいう言葉があらわれたようなことにもまさに象徴されているわけでございます。  それで、昭和五十七年の老人保健法の附帯決議においても、「老人医療についての診療方針及び診療報酬は、老人の心身の特性を踏まえて改善を図るものとすること。」こういう附帯決議もついているわけでございます。それで、そのような考え方に従って中医協で十分御審議をしていただき今のような仕組みになっておるわけでございますし、療養担当規則もそれでお認めをいただいたわけでございます。この考え方は私どもは間違っていないのではないだろうか、そういうふうに思っております。ただし、個別の事例におきまして行き過ぎがあってはいけません。それで、そこのところは十分再審査という話し合いの機会というのはつくってあるわけでございまして、やはり主治医の考え方と審査委員会での先生方の考え方と、そこは十分突き合わせをしていただきたい、そんなふうに考えております。
  242. 児玉健次

    児玉委員 一般病院が老人病院に指定されたときにどのようなことになるのか、それから、いわゆる慢性の疾患における点滴その他の七百五十円と二百円の違いがどういう事態を現実に生み出しているか、これらについては十月十二日に私ども不破哲三委員が予算委員会で十分に論議をしたところです。  私がきょう取り上げたのは、高齢者で急性の症状、しかもそれが非常に濃厚な、集中的な治療を必要とする、そういう場合においてすら困難な、そして非常に遺憾な事態が生まれている。そしてもう一つは、歯科診療における皆さんの今とっている態度、それは最近の新しい治験に照らせばどうしても抜本的な是正をしなければならない、こういう事態に至っていることについて私は申し上げたのです。  老人福祉法の第二条に「老人は、多年にわたり社会の進展に寄与してきた者として敬愛され、かつ、健全で安らかな生活を保障されるものとする。」、高らかにうたい上げられていますよ。ところが、実際はそうなっていない。  そこで私は、老人特掲診療料、そしてさきに触れた老人保健法の規定による医療及び特定療養費の取扱い及び担当に関する基準、これは本来廃止すべきものだ。とりあえず、これらについては抜本的な見直しが必要だと思いますが、厚生省のお答えをいただきたいと思います。
  243. 岡光序治

    岡光政府委員 老人の診療報酬につきましては、お年寄りの心身の特性を踏まえて、お年寄りに適切な医療が提供されることを確保する観点から設けられているものでございまして、今後ともこうした観点に立って、関係審議会の意見を踏まえながら必要な改善を図ってまいりたいと思います。
  244. 児玉健次

    児玉委員 この点については、ただいまのお答えは、全国の高齢者の願いに全く反するものでして、そのことを厳しく述べて、質問を終わります。
  245. 丹羽雄哉

    丹羽委員長 次回は、来る二十一日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時三十五分散会