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1989-12-11 第116回国会 衆議院 決算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年十二月十一日(月曜日)     午前八時十一分開議  出席委員    委員長 中村  靖君    理事 魚住 汎英君 理事 尾身 幸次君    理事 岡島 正之君 理事 杉山 憲夫君    理事 谷津 義男君 理事 渡部 行雄君    理事 草川 昭三君 理事 大矢 卓史君       伊吹 文明君    小杉  隆君       園田 博之君    塚原 俊平君       二階 俊博君    松野 頼三君       宮崎 茂一君    上田  哲君       小川 国彦君    三野 優美君       武藤 山治君    小川新一郎君       古川 雅司君    野間 友一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  海部 俊樹君         法 務 大 臣 後藤 正夫君         外 務 大 臣 中山 太郎君         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君         文 部 大 臣 石橋 一弥君         厚 生 大 臣 戸井田三郎君         農林水産大臣  鹿野 道彦君         通商産業大臣  松永  光君         運 輸 大 臣 江藤 隆美君         郵 政 大 臣 大石 千八君         労 働 大 臣 福島 譲二君         建 設 大 臣 原田昇左右君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     渡部 恒三君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 森山 眞弓君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 水野  清君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      阿部 文男君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 松本 十郎君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      高原須美子君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      斎藤栄三郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 志賀  節君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 石井  一君  出席政府委員         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         内閣法制局第一         部長      大森 政輔君         警察庁長官官房         長       浅野信二郎君         防衛庁参事官  小野寺龍二君         防衛庁長官官房         長       児玉 良雄君         防衛庁防衛局長 日吉  章君         防衛庁経理局長 藤井 一夫君         防衛施設庁総務         部長      吉住 愼吾君         国土庁長官官房         長       北村廣太郎君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省北米局長 有馬 龍夫君         外務省欧亜局長 都甲 岳洋君         外務省条約局長 福田  博君         外務省情報調査         局長      山下新太郎君         大蔵大臣官房審         議官      石坂 匡身君         大蔵省主計局次         長       小村  武君         大蔵省理財局次         長       松田 篤之君         大蔵省銀行局長 土田 正顕君         大蔵省銀行局保         険部長     大津 隆文君         大蔵省国際金融         局長      千野 忠男君         大蔵省国際金融         局次長     江沢 雄一君         厚生大臣官房総         務審議官    加藤 栄一君         厚生省保健医療         局長      長谷川慧重君         農林水産大臣官         房長      鶴岡 俊彦君         通商産業大臣官         房商務流通審議         官       山本 貞一君         運輸大臣官房国         有鉄道改革推進         総括審議官   大塚 秀夫君         運輸省航空局長 丹羽  晟君         郵政大臣官房経         理部長     木下 昌浩君         建設省建設経済         局長      望月 薫雄君         建設省住宅局長 伊藤 茂史君         自治大臣官房長 小林  実君         自治省行政局選         挙部長     浅野三郎君  委員外出席者         公正取引委員会         事務局官房庶務         課長      植松  勲君         警察庁長官官房         会計課長    田中 節夫君         警察庁警備局公         安第三課長   伊達 興治君         総務庁長官官房         会計課長    大橋 豊彦君         北海道開発庁総         務課長     三浦 琢右君         経済企画庁長官         官房会計課長  小川 雅敏君         科学技術庁長官         官房会計課長  中村 光弘君         環境庁長官官房         会計課長    梅沢  泉君         沖縄開発庁総務         局会計課長   山城  勉君         国土庁長官官房         会計課長    安田 武臣君         法務大臣官房会         計課長     木藤 繁夫君         外務大臣官房会         計課長     林   暘君         大蔵大臣官房会         計課長     浅見 敏彦君         大蔵省主計局司         計課長     設楽 岩久君         文部大臣官房会         計課長     吉田  茂君         厚生省社会局保         護課長     炭谷  茂君         農林水産大臣官         房経理課長   前川 豊志君         通商産業大臣官         房会計課長   土居 征夫君         通商産業省産業         政策局取引信用         室長      梅村 美明君         運輸大臣官房会         計課長     永井 隆男君         運輸省地域交通         局自動車保障課         長       村上 伸夫君         建設大臣官房会         計課長     小野 邦久君         自治大臣官房会         計課長     田中 基介君         会計検査院長  中村  清君         会計検査院事務         総局次長    三原 英孝君         会計検査院事務         総長官房総務課         長       森下 伸昭君         会計検査院事務         総局第一局長  疋田 周朗君         会計検査院事務         総局第三局長  川崎 恒夫君         会計検査院事務         総局第五局長  安部  彪君         国民金融公庫総         裁       吉本  宏君         日本開発銀行総         裁       高橋  元君         日本輸出入銀行         総裁      田中  敬君         参  考  人         (全国信用保証         協会連合会専務         理事)     島津 邦夫君         決算委員会調査         室長      竹尾  勉君     ───────────── 委員の異動 十二月十一日  辞任         補欠選任   天野 光晴君     塚原 俊平君   宇野 宗佑君     小杉  隆君   金丸  信君     二階 俊博君   竹下  登君     伊吹 文明君   宮下 創平君     園田 博之君   小川 国彦君     武藤 山治君 同日  辞任         補欠選任   伊吹 文明君     竹下  登君   小杉  隆君     宇野 宗佑君   園田 博之君     宮下 創平君   塚原 俊平君     天野 光晴君   二階 俊博君     金丸  信君   武藤 山治君     小川 国彦君     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和六十一年度一般会計歳入歳出決算  昭和六十一年度特別会計歳入歳出決算  昭和六十一年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和六十一年度政府関係機関決算書  昭和六十一年度国有財産増減及び現在額総計算書  昭和六十一年度国有財産無償貸付状況計算書      ────◇─────
  2. 中村靖

    中村委員長 これより会議を開きます。  昭和六十一年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、まず、大蔵省所管国民金融公庫日本開発銀行及び日本輸出入銀行について審査を行います。  この際、お諮りいたします。  本件審査のため、本日、参考人として全国信用保証協会連合会専務理事島津邦夫君の出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中村靖

    中村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────
  4. 中村靖

    中村委員長 次に、大蔵大臣概要説明会計検査院検査概要説明、続いて、国民金融公庫当局日本開発銀行当局及び日本輸出入銀行当局概要説明会計検査院検査概要説明を求めるのでありますが、これを省略し、本日の委員会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 中村靖

    中村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────    昭和六十一年度大蔵省主管一般会計歳入決算並び大蔵省所管一般会計歳出決算、各特別会計歳入歳出決算及び各政府関係機関決算書に関する説明  昭和六十一年度大蔵省主管一般会計歳入決算並び大蔵省所管一般会計歳出決算、各特別会計歳入歳出決算及び各政府関係機関決算書につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、一般会計歳入決算について申し上げます。  昭和六十一年度収納済歳入額は五十四兆六千四百七十八億四千七百二十九万円余でありまして、これを歳入予算額と比較いたしますと二兆五千三百九十二億九千百九十三万円余の増加となっております。  以下、歳入決算のうち、主な事項についてその概要を申し上げます。  第一に、租税及印紙収入でありますが、その決算額は四十兆五千六百三十六億七千八百四十三万円余で、これを予算額と比較いたしますと二兆三千四百六億七千八百四十三万円余の増加となっております。これは、法人税等において課税額の伸びが見込みを上回ったこと等によるものであります。  第二に、公債金でありますが、その決算額は十一兆二千五百四十九億二千七百十万円余で、これを予算額と比較いたしますと二千四百億七千二百八十九万円余の減少となっております。これは、租税収入等が見積りより増収となることが見込まれたこと等により、公債発行額を予定より減額したことによるものであります。  以上のほか、官業益金及官業収入百五十三億二千百九十二万円余、政府資産整理収入千三百七十七億七千四百八十八万円余、雑収入一兆六千八百九十億五千三百九十二万円余、前年度剰余金受入九千八百七十億九千百一万円余となっております。  次に、一般会計歳出決算について申し上げます。  昭和六十一年度歳出予算現額は十一兆六千四百二十八億八千八百二十五万円余でありまして、支出済歳出額は十一兆五千八百四十七億千三百四万円余、翌年度繰越額は四百七十三億六千八百九十三万円余でありまして、差引き、不用額は百八億六百二十七万円余となっております。  以下、歳出決算のうち、主な事項についてその概要を申し上げます。  第一に、国債費につきましては、国債整理基金特別会計へ繰り入れるため十兆六千六百四十三億六千二百十八万円余を支出いたしましたが、これは、一般会計の負担に属する国債の償還及び利子等の支払並びにこれらの事務取扱費財源に充てるためのものであります。  第二に、政府出資につきましては二千二百億円を支出いたしましたが、これは、海外経済協力基金等への出資であります。  第三に、経済協力費につきましては五百十一億八千四百四十万円余を支出いたしましたが、これは、開発途上国等に対する食糧増産等援助等のためのものであります。  この支出のほか、食糧増産等援助費につきましては、相手国国内事情等のため四百六十九億五千九十三万円余が翌年度へ繰越しとなっております。  以上申し述べました経費のほか、国家公務員等共済組合連合会等助成費国庫受入預託金利子公務員宿舎施設費アジア開発銀行出資国際金融公社出資米州投資公社出資国民金融公庫補給金特定国有財産整備費及び特定国有財産整備諸費として七百九十七億三千九百三十二万円余並びに一般行政を処理するための経費として五千六百九十四億二千七百十三万円余を支出いたしました。  なお、以上の支出のほか、公務員宿舎施設費につきましては四億千八百万円余が翌年度へ繰越しとなっております。  次に、各特別会計歳入歳出決算についてその概要を申し上げます。  まず、造幣局特別会計におきまして収納済歳入額は七千四百二十六億三千五百六十三万円余、支出済歳出額は七千四百二十六億三千七百八十四万円余でありまして、損益計算上の利益は八百六十三万円余であります。  この会計の主な事業である補助貨幣製造につきましては、六億八千九十万枚、額面金額にして一兆二千五百十九億六千万円を製造し、六億八千七十万枚、額面金額にして一兆二千三百十九億六千万円を発行いたしました。  次に、印刷局特別会計におきまして収納済歳入額は八百十九億七千十五万円余、支出済歳出額は六百六十九億七千八百二十一万円余でありまして、損益計算上の利益は百六十五億六千六十二万円余であります。  この会計の主な事業である日本銀行券製造につきましては、三十二億七千万枚、額面金額にして十三兆九千八百億円を製造し、その全量を日本銀行に引き渡しました。  以上申し述べました各特別会計のほか、資金運用部国債整理基金外国為替資金産業投資、地震再保険及び特定国有財産整備の各特別会計歳入歳出決算内容につきましては、特別会計歳入歳出決算によって御了承願いたいと存じます。  最後に、各政府関係機関決算書についてその概要を申し上げます。  まず、国民金融公庫におきまして収入済額は三千九百九十七億四千八百九十四万円余、支出済額は三千九百十五億九千二百七十一万円余でありまして、損益計算上の損益はありません。  この公庫貸付けにつきましては、七十九万件余、金額にして二兆九千六百三十二億八百六十八万円余を貸し付けました。  このほか、住宅金融公庫農林漁業金融公庫中小企業金融公庫北海道東北開発公庫公営企業金融公庫中小企業信用保険公庫環境衛生金融公庫沖縄振興開発金融公庫日本開発銀行及び日本輸出入銀行決算内容につきましては、それぞれの決算書によって御了承願いたいと存じます。  以上が昭和六十一年度における大蔵省関係決算概要であります。これらの詳細につきましては、さきに提出しております昭和六十一年度歳入決算明細書及び各省各庁歳出決算報告書等によって御了承願いたいと存じます。  なお、会計検査院検査の結果、不当事項として税務署における租税徴収に当たり、徴収額過不足があったこと等の御指摘を受けましたことは、誠に遺憾に堪えないところであります。これらにつきましては、すべて徴収決定等適切な措置を講じましたが、今後一層事務合理化改善に努めたいと存じます。  何とぞよろしく御審議の程お願い申し上げます。     …………………………………    昭和六十一年度決算大蔵省についての検査概要に関する主管局長説明                 会計検査院  昭和六十一年度大蔵省決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項五件であります。  検査報告番号二号は、租税徴収に当たり、徴収額過不足があったものであります。  これらの徴収過不足の事態は、課税資料の収集、活用が的確でなかったため収入金等を把握していなかったり、法令適用の検討が十分でなかったため税額計算等を誤っていたり、納税者申告書等において所得金額税額計算等を誤っているのにこれを見過ごすなどしていたりして、徴収額過不足を生じていたものであります。  また、検査報告番号三号から六号までの四件は、資金運用部資金貸付額が過大になっているもので、貸付先の市町において、貸付対象事業財源として受け入れた分担金等貸付対象事業費財源に算入していなかったものであります。  以上、簡単でございますが説明を終わります。     ─────────────    昭和六十一年度業務概況                国民金融公庫  国民金融公庫昭和六十一年度業務概況についてご説明申し上げます。  昭和六十一年度わが国経済は、国内需要は緩やかに増加したものの、円高の急速な進展等により輸出が減少したこと等から、景気は総じて停滞傾向のうちに推移しました。こうしたなかで、中小企業の景況は、製造業を中心に停滞色が濃いものとなり、中小企業を取り巻く経営環境は依然として厳しい状況にありました。  このような状況におかれた中小企業者に対して、当公庫は、貸付限度の引き上げ、貸付利率引き下げ等により、中小企業金融円滑化のために積極的に対処いたしました。  昭和六十一年度貸付につきましては、計画三兆一千五百二十億円に対しまして、二兆九千六百三十二億八百六十八万円余の実行をいたました。  貸付種類別貸付実績を申し上げますと、普通貸付は、五十八万二千件余、二兆八千二百五十一億二千七百八十四万円、恩給担保貸付は、十四万二千件余、一千四十三億六千六十三万円余、記名国債担保貸付は、五百六十一件、二億一千二百十九万円余、進学資金貸付は、六万九千件余、三百十八億一千二百二十五万円余となりました。  なお、普通貸付貸付実績のなかには、生鮮食料品等小売業近代化資金貸付流通近代化資金貸付等特別貸付が、一万六千件余、八百三十九億一千七万円余、小企業等経営改善資金貸付が、十三万四千件余、三千三百二十八億六千四百九万円含まれております。  一方、六十一年度において貸付金回収が、二兆八千五百三十四億二千百二十五万円余、滞貸償却が、三十億二百四十七万円余ありましたので、六十一年度末現在の総貸付残高は、二百二十八万五千件余、五兆一千四百十億五千七十四万円余となり、前年度残高に比べますと、一千六十七億八千四百九十五万円余、二・一パーセントの増加となりました。  貸付金延滞状況につきましては、六十一年度末において延滞後六カ月以上経過したものが、一千七百八十七億一千四百七十一万円余でありまして、総貸付金残高に対する割合は、三・五パーセントとなっております。  昭和六十一年度貸付に要した資金は、二兆九千六百四十一億五千二百八万円余でありまして、その原資は、資金運用部からの借入金一兆六千五百五十億円、簡易生命保険及び郵便年金特別会計からの借入金一千八百億円、一般会計からの借入金七十七億円のほか、貸付回収金等一兆一千二百十四億五千二百八万円余をもってこれに充てました。  受託業務につきましては、環境衛生金融公庫からの受託貸付は、六十一年度における貸付実績が、五万三千件余、一千四百九十二億二千二百六十万円余、回収額が、一千九百四十六億八千六十一万円余となり、六十一年度貸付残高は、三十三万四千件余、五千億五千六百八十万円余となっております。また、労働福祉事業団からの受託貸付の六十一年度における貸付実績は、百二十二件、一億七千百四十八万円となっております。  最後に、六十一年度収入支出決算及び損益計算について申し上げます。  まず、収入支出決算について申し上げますと、収入済額は、三千九百九十七億四千八百九十四万円余、支出済額は、三千九百十五億九千二百七十一万円余となりました。  次に、損益計算について申し上げますと、貸付金利息等の総益金は、四千五百二十六億八千三百二十九万円余、借入金利息事務費、滞貨償却引当金繰入等の総損金は、四千五百二十六億八千三百二十九万円余となりました。この結果、利益金は生じなかったので、国庫納付はいたしませんでした。  以上をもちまして、昭和六十一年度業務概況のご説明を終らせていただきます。     …………………………………    昭和六十一年度決算国民金融公庫についての検査概要に関する主管局長説明                 会計検査院  昭和六十一年度国民金融公庫決算につきまして検査いたしました結果、特に違法又は不当と認めた事項はございません。     ─────────────    日本開発銀行昭和六十一年度業務概要  昭和六十一年度における日本開発銀行業務概要についてご説明申しあげます。  一、先ず、六十一年度資金運用計画は、当初計画として一兆一千五十億円を予定しておりました。  これに対し、六十一年度中の運用額は、出融資実行額が一兆九百十七億三千五百万円となっております。  これの項目別内訳は、資源エネルギー四千三百八億五千万円、技術振興一千四百六十九億三千万円、海運五百五十四億八千三百万円、都市開発一千九百九十八億二千九百万円、地方開発一千四百三十八億七千四百万円、国民生活改善七百四十五億七千九百万円、その他四百一億九千万円であります。  以上の六十一年度運用額原資といたしましては、資金運用部資金からの借入金六千三百八十八億円、簡易生命保険及郵便年金積立金からの借入金四百十二億円と貸付回収金等四千百十七億三千五百万円をもってこれに充てました。  二、次に六十一年度出融資運用の特色を申しあげますと、  (1) 資源エネルギーについては、原子力発電推進のための融資水力発電液化ガス発電等電源多様化をはかるための融資石油産業集約化石油及びLPG備蓄タンクに対する融資都市ガスの高圧、高カロリー化設備に対する融資石油代替エネルギー利用促進のための融資の他、資源エネルギー有効利用産業の省資源省エネルギー等促進するための融資を引き続き行ったこと  (2) 技術振興については、わが国自主技術開発促進及び技術水準の向上ならびに経済社会情報化の健全な発展をはかるため、産業技術振興出融資情報化促進出融資等を引き続き行うとともに、航空機の国際共同開発促進のための融資を行ったこと  (3) 海運については、貿易物資の安定的輸送確保の観点から計画造船による外航船舶の建造に対し引き続き融資を行ったこと  (4) 都市開発については、都市交通の整備改善、市街地の開発整備、流通機構の近代化に寄与する事業等に対し引き続き出融資を行ったこと  (5) 地方開発については、九州、四国、中国、北陸の四地方の開発のため引き続き出融資を行うとともに、地方都市圏の機能整備、地方適地産業の育成、工業の適正配置の促進について特に留意したこと  (6) 国民生活改善については、公害防止の推進のための融資、重度障害者の雇用施設等福祉対策に関する融資及び食品供給体制の近代化のための融資を引き続き行ったこと  (7) その他については、「構造改善」、「工場分散」、「輸入体制整備・対日投資促進」及び「航空輸送施設」等の融資を引き続き行ったことなどがあげられます。  三、次に六十一年度における既往貸付回収は、九千七百十三億二千二百二十六万円余となっております。  この他、六十一年度は、貸付金の債権償却一億四千九百十二万円余を行っております。  この結果、六十一年度末における出融資残高は、七兆七千九百九十九億九千二百五十五万円余となりました。  貸付金延滞状況につきましては、六十一年度末におきまして弁済期限を六カ月以上経過した元金延滞額は二百九十二億千九百七十九万円余で、前年度末に比して二十二億四千四百五万円余の増加となっております。  貸付残高に対する割合は、〇・四パーセントとなっております。  四、また、六十一年度において、新規の外貨債務の保証はなく、年度末保証残高は一千六十五億七千百十五万円余となっております。  五、最後に、六十一年度決算概要について説明いたしますと、五百九十六億三千六百五十二万円余の純利益を計上し、このうち二百三十三億五千八百六十九万円余を法定準備金として積立て、残額三百六十二億七千七百八十二万円余を国庫へ納付いたしました。  以上、六十一年度における日本開発銀行業務内容につきましてご説明申しあげた次第でございます。     …………………………………    昭和六十一年度決算日本開発銀行についての検査概要に関する主管局長説明                 会計検査院  昭和六十一年度日本開発銀行決算につきまして検査いたしました結果、特に違法又は不当と認めた事項はございません。     ─────────────    日本輸出入銀行昭和六十一年度業務概況  一、昭和六十一年度における日本輸出入銀行業務状況につき概要をご説明申し上げます。  まず、昭和六十一年度年度当初の事業計画において一兆二百八十一億円の貸付を予定いたしました。  これに対し昭和六十一年度貸付額実績は六千九百十九億六千六十二万円余で、年度当初の事業計画における貸付予定額を三十三パーセント程下回りました。  なお、この昭和六十一年度貸付額昭和六十年度貸付額七千七百五十九億二十七万円余に比較いたしますと十一パーセント程度の減少となっております。  以下、昭和六十一年度貸付額の内訳につきまして、金融種類別に前年度との比較において申し述べます。  まず、輸出資金貸付は、千七百十一億四千二百五十八万円余で、昭和六十年度の二千七百九十三億四千二百七十六万円余に対し、千八十二億十七万円余の減少となりました。これは、累積債務問題、一次産品価格の下落による発展途上国経済の停滞によりプラント市場が低迷した結果、プラントの輸出に対する貸付が低調に推移したことによるものであります。  次に、輸入に必要な資金貸付は、千五百七十三億八千四百四十九万円余で、昭和六十年度の千三十五億七千四百九十一万円余に対し、五百三十八億九百五十七万円余の増加となりました。これは、製品輸入について大型案件の貸付があったことによるものであります。  また、海外投資資金貸付は、千百六十億八千六百十一万円となり、昭和六十年度の千八百九十八億五千二十六万円に対し、七百三十七億六千四百十五万円の減少となりました。  このほか、外国政府等に対する直接借款に係る貸付は、二千四百七十三億四千七百四十二万円余で、昭和六十年度の二千三十一億三千二百三十三万円余に対し、四百四十二億千五百九万円余の増加となりました。これは、アンタイドローンの貸付額増加したことによるものであります。  以上の結果、昭和六十一年度末の貸付残高は、五兆四千百五十八億五千五百五十一万円余となっております。  なお、この貸付残高のうち、弁済期限を六箇月以上経過した元金延滞額は、五百五十六億四千四百三十八万円余となっております。  昭和六十一年度貸付資金原資といたしましては、資金運用部資金からの借入金三千三百八十億円、簡易生命保険及郵便年金積立金からの借入金三百三十億円、外国為替資金からの借入金十七億千二百六十八万円余のほか、自己資金等三千百九十二億四千七百九十三万円余をもってこれにあてました。  以上申し述べました業務の運営により昭和六十一年度の一般勘定の損益計算上における利益は、四千九百八十二億千七百六十五万円余、これに対し損失は、四千六百二十九億四千五百七十五万円余となりました。  この結果、昭和六十一年度の一般勘定利益金は三百五十二億七千百八十九万円余となりました。  一般勘定利益金は、法令の定めるところに従い、うち百六十二億二百二十四万円余を法定準備金として積立て、残額百九十億六千九百六十五万円余を国庫に納付いたしました。  なお、既往のインドネシア債務救済措置の実施に関する業務につきましては、日本輸出入銀行法による貸付金の利息の特例等に関する法律により一般の業務と区分して特別の勘定を設けて経理することといたしておりますが、昭和六十一年度の特別勘定の損益計算上、三億千百八十三万円余の利益金を生じ、法令の定めるところに従い、これを全額同勘定の積立金として積立てました。  二、以上、昭和六十一年度における日本輸出入銀行業務概況につき、ご説明申し上げました。     …………………………………    昭和六十一年度決算日本輸出入銀行についての検査概要に関する主管局長説明                 会計検査院  昭和六十一年度日本輸出入銀行決算につきまして検査いたしました結果、特に違法又は不当と認めた事項はございません。     ─────────────
  6. 中村靖

    中村委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小川国彦君。
  7. 小川国彦

    小川(国)委員 私は、本年四月から実施されております消費税につきまして大蔵省当局の見解をただしたいと思います。  最初に、消費税の見直しという考え方が自民党から出されておりますが、政府としてはこの見直しについて具体的にいつごろ政府案というものを発表されるのか。その内容はどのようにお考えになっていらっしゃるか。まず、その点から伺いたいと思います。
  8. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 本院におきましてもたびたび御答弁を申し上げておりますように、私どもは年内に明年度予算編成を完了いたしたいと考えております。その場合には明年度予算編成の前提となります明年度の税収をそれ以前に確定をいたさなければなりません。今月の中旬過ぎにはこれを確定するわけでありますので、その時点までが政府として次年度の税制改革大綱を決するとき、すなわち、消費税の見直しにつきまして法律を改正する必要のあります見直し内容というものは、その時点までに確定いたすということであります。
  9. 小川国彦

    小川(国)委員 法律の改正を要さないものというのはどういうものが予想されるわけですか。
  10. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 例えば表示の問題等がよく御論議になります。こうしたものにつきましては、これはもともと法律事項ではございませんので、何らかの方向を指向いたすといたしましても法律改正は必要といたさないと考えております。
  11. 小川国彦

    小川(国)委員 そのほかには、法律改正を要さないという問題点はどういう点をお考えになっていらっしゃいますか。
  12. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 いずれにいたしましても、今作業を進行させようとしておるさなかでありまして、改正内容等々について言及することはお許しをいただきたいと思います。
  13. 小川国彦

    小川(国)委員 いずれにしても、橋本大蔵大臣も自民党の一員であり、そして、自民党の見直し案というものについてはそれなりの見解をお持ちになって対処されてきたと思うわけでありますが、自民党案の中に示されております食料品の課税を一・五%にされるというようなことについては、大蔵大臣としてどういうふうな理解なりお考えを持っておられますか。
  14. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 自由民主党におかれましては、本年八月以来、消費税の見直しに向けて国民各層からの御意見を幅広く吸収されると同時に、消費税の実施状況の実態などの把握に努められ、検討された結果として先般「消費税の見直しに関する基本方針」を決定されました。この方針の中におきまして、消費税の見直しにつきまして基本的な考え方及び具体的内容が示されておるわけでありますけれども、その内容は、税制面のみならず広く歳出面、また、その他の制度面についても触れておられ、かつ、消費者、事業者双方の立場を十分に考慮されたものとなっておりまして、国民心理と税の理念の両面の調和に腐心されたものとして、その御努力に心から敬意を表しております。  政府としては、この基本方針の内容を十分勉強させていただくと同時に、政府税制調査会における今後の御審議なども踏まえて、平成二年度税制改正においての政府としての見解を、見直しの成案を得るように努力をしていくわけであります。  その中におきまして、委員は食料品非課税の問題についての見解を問われたわけでありますが、消費税のように消費に対して広く薄く負担を求めるために、取引の各段階で課税をする税におきまして例外品目を拡大することにつきましては、政府税制調査会の中間報告では、消費税の持つ基本的性格を忘れてはならず、経済取引に大きな攪乱要因をもたらすものであってはならないという御指摘がございます。また、経済取引において転々流通する物品について非課税を設定することにつきまして、税の累積を発生させるとともに、事業者の事務負担を増加させるなど、経済取引の攪乱要因となる度合いが極めて大きいことに留意する必要があるという指摘がされております。  今回、自民党において取りまとめられました食料品の特例措置というものは、事業者間取引については極力経済取引を攪乱させないような特別低税率を設定されると同時に、最終小売段階のみを非課税とする方式をとっておられ、経済に対する攪乱要因を極力排除しながら国民心理に十分こたえるものとなっておる、そのように受けとめておりまして、私どもは、その基本方針の内容を十分勉強させていただきますとともに、政府税制調査会の今後の御審議なども踏まえまして、平成二年度税制改正におきまして政府としての見直し案というものを確定いたしたい、見直しの成案を得るよう最大限の努力を傾注していこうとしておるところでございます。
  15. 小川国彦

    小川(国)委員 政府の見解としては、食料品の範囲というものをどういうふうに考えておられますか。
  16. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 これはさまざまな御論議がございます。しかし、今回その食料品というものにつきまして、自民党の案を私が御説明するのはいかがかと思いますけれども……(小川(国)委員大蔵省の考え方です」と呼ぶ)大蔵省としてはこれから確定をしてまいります。  なお、例えば参議院におきまして、飼料用のトウモロコシと人間の食用とするトウモロコシの線をどう引くかとか、あるいはフィッシュミールに加工されるイワシ、サンマと人間が食べるイワシ、サンマをどう判定するかというような御議論までございましたとおり、接点部分においては問題はあろうかと思いますが、常識の範囲においてこうしたものは律するものと心得ております。
  17. 小川国彦

    小川(国)委員 これは大蔵省としてもやはり一定の見解というものを現在お持ちであろうと思うのですね。自民党案の有無にかかわらずお持ちだろうと思うのです。ですから、そういう点について、この際、国民が食料品の範囲ということについて非常に疑念を持っていらっしゃる。例えばドリンク剤と清涼飲料水、この区分けはどうなるのか。ドリンク剤には医薬部外品と炭酸飲料があるわけですが、これなどは一体そのどちらに入るのか。リポビタンDとかオロナミンCとかあるわけでありますが、こういうものはどちらに入るというふうにお考えになるのでございましょうか。
  18. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 特定メーカーの商品の名称は差し控えさせていただきたいと思いますが、形状の似ておるものの中に確かに医薬部外品と医薬部外品ではないものがございます。医薬部外品は、薬事法上一定の法的地位を与えられております医薬品の範疇に入るものでありますから、これは薬効というものが保証されておるものであります。これはやはり、いわゆる飲食料品の範疇を脱しておると私は心得ております。
  19. 小川国彦

    小川(国)委員 そうすると、炭酸飲料のようなものは中に入る、こういうお考えですか。
  20. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 少なくとも炭酸飲料というものは薬事法上薬効の有無を問題とする対象とすらなっておらない、法的地位はそのようになろうかと思います。
  21. 小川国彦

    小川(国)委員 したがって、これは食料品の中に入ると。
  22. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 もう委員はその食料品の非課税が確定したようなごときお尋ねでありますけれども、私どもは税制改正そのものについてまだ政府としての成案を得ておる段階ではございません。  ただ、飲食用品の定義という点でお話しになりますならば、医薬部外品として薬事法の適用を受けておりますものとそれ以外のものとにおいては薬効という点においての有意の差がある、そのような分類ができようかと存じます。
  23. 小川国彦

    小川(国)委員 それから、食料品の範囲の中で非常に心配されておりますのは、例えば外食産業などで、これは引き続き三%の課税というものは持続されるというふうに思うんですが、ファーストフードの店での持ち帰り品の取り扱いというものはどういうふうになるのか。同じ商品を買いましても、店内で飲食すれば課税、持ち帰ったなら非課税、こういうふうな懸念があるわけでございますね。そういう場合はどうなるんでございましょうか。
  24. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 あくまでも、先ほどから申し上げておりますように、私どもは今作業をし、成案を得るよう努力をいたしております。そのプロセスについてのお尋ねにはお答えを申し上げるわけにまいりませんし、仮に自由民主党案を前提に置かれてのことでありましたならば、政府としてお答えのできる範疇を超えておると存じます。
  25. 小川国彦

    小川(国)委員 それからもう一つ、ほかほか弁当などですね、こういうものも持ち帰る場合食料品に入るのかどうか、こういう議論もございますが、こういう点もやっぱり大蔵大臣も一定の見解というものは、食料品の範囲の線引きというのは今現在明瞭でなけりゃならないんじゃないかというふうに思うんですね。それによって国民が、一体食料品の範囲というものはどういうものなのか。じゃ、自民党の出された考え方というものは大蔵省ではそれをどう評価されるのか。それから大蔵省自身、この食料品の範囲の考え方というものは今現在明確でなけりゃならぬのじゃないか、私はこういうふうに思うのですが、その点について、この辺やっぱり大蔵大臣大蔵大臣でありますけれども同時に自由民主党の一員でもございますから、先般までは幹事長をなすっていたわけだし、それ相応の自民党内での立場をお持ちになった方ですから、これはやはりそれについての一定の所見というものがおありになって当然じゃないか、こういうふうに思うのですが。
  26. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 強いてどうしても述べろとおっしゃるなら、私は自由民主党がまとめられました全食料品の範囲として掲げられました例示をそのとおりに申し上げます。  大蔵省としては、現在成案を得るべく努力をしておるさなかであると先刻来申し上げております。また、自由民主党案について十分勉強させていただくと同時に、政府税制調査会の御審議等も踏まえて成案を得ようとしておる、これも繰り返して申し上げております。  その上であえてお尋ねとなりますならば、自由民主党の基本方針の中で、「全食料品とは、① 人の飲用又は食用に通常供するもの(酒税法第二条第一項に規定する酒類を除く。)、② ①の原料、材料その他①の生産の用に供される動物その他の生物及び食品添加物、③ ①に係る繁殖の用に供される種子その他これに類するものを指す。1こおいても同じ。」このように書かれております。
  27. 小川国彦

    小川(国)委員 その見解についてもう一つ伺いますと、それではその中で一体肥料とか飼料はこの定義に当てはまるのかどうか、この点はどういうふうに御見解を持ってらっしゃいますか。
  28. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 肥料とか飼料というのは食料品とは異なると私は思います。
  29. 小川国彦

    小川(国)委員 それは、皆さん方の「全食料品」というのの定義の中に、酒類を除き「人の飲用又は食用に通常供するもの」、それからその「生産の用に供される動物その他の生物及び食品添加物、」こういうのが入っておるわけでございますね。そうすると、そういうものに供される「動物その他の生物」、こういうものの中には当然肥料や飼料などはその前提として入ってくるものである、こういうふうに考えざるを得ないわけでありますが、この点については、これはそうすると除外される、こういうふうに自民党ではお考えになっていらっしゃるんですか。
  30. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 自民党がどう考えておられるかにつきましては、自民党の委員の方々こちらにおられますのでお尋ねをいただければと思いますが、私どもが説明を受けておりますのでは、「その他の生物」という「生物」、これをどういうものを想定しておられるのか伺ってみましたところ、例えばイースト菌でありますとか納豆菌あるいは酵母といったものを想定しておられるというふうに伺っております。
  31. 小川国彦

    小川(国)委員 あなた、自民党こちらにいらっしゃるとおっしゃいますが、あなたも自民党なんでございまして、決して大蔵大臣になったから自民党抜けたわけじゃない、自民党の大蔵大臣だと思っておるんですが、そうすると、そういうものに限定されておるというふうに理解をしてよろしゅうございますか。
  32. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 確かに私は自由民主党所属党員でありますけれども、今は政府の一員であります。おのずから立場を異にいたしております。そして、「生物」という点につきまして自由民主党の方から御説明のありましたものは、今申しましたように、イースト菌あるいは納豆菌、酵母といったものを例示として述べられております。
  33. 小川国彦

    小川(国)委員 大体政府・与党というのは一体で動いておられますので、常に私は一体であろうというふうに思っております。そうすると、これはあくまで例示であって、この例示以外のものも当然考えておられる、こういうふうに理解してよろしゅうございますね。
  34. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 どうも自由民主党の案というもの、我々が今基本的に勉強させていただいておるさなかのものでありますから、これをベースにして御論議をいただくというのは、多少私としてお答えをしづらい部分がございますけれども、先ほど述べましたように、その定義の中で、「全食料品」としては、「人の飲用又は食用に通常供するもの」ということでありまして、「通常供するもの」の中に私は飼料とか肥料が供されるとは考えておらないのであります。
  35. 小川国彦

    小川(国)委員 そうじゃなくて、もう一つ、その「生産の用に供される動物その他の生物及び食品添加物、」というのが入っているんですね。その点で私伺っているわけです。
  36. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 ですから、例えば例示として今申し上げましたように、生物というものについてはイースト菌あるいは納豆菌、酵母というものが挙げられているということまで申し上げておるわけでありまして、私どもはその中に飼料とか肥料が入っておるという御説明は伺っておりません。ただ、政府としては、これは今十分勉強させていただき、政府税制調査会の御審議も得て成案を得ようとして努力をしているさなかでありまして、あくまでも進行中のことであります。
  37. 小川国彦

    小川(国)委員 その次に、卸と小売という問題について、非常に問題点が生じるのではないか、こういう懸念を私は持っているわけでありますが、大蔵省が食料品の小売段階でこれからこの問題、非課税にするかどうかという問題を検討されると思うのです。既に今までの簡易課税制度の中でやはり卸と小売というものの認定なり判断をなすってきたと思うのですが、小売と卸の両方兼ねている業者が非常に多いわけであります。この辺の線引きはどういう考え方で線引きをなすっていらっしゃいますか。
  38. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今、現段階で政府の一員として見直し案の具体的内容を申し上げることはお許しをいただきたいと先ほどから繰り返しておるところでありますが、一般論として申し上げますならば、仮に全食料品の小売段階非課税というものを制度化いたします場合におきまして、やはり何らかの形で小売業者なりあるいは小売販売所というものを特定するための制度上の仕組みは必要となるのではなかろうかと思います。これは消費者の方々に対する利便ということと、また税の執行者としての、徴収者としての仕事をしていきます、まあ言い方が正確かどうかわかりませんが、税務行政の上からもそういう必要はあろうかと思いますが、何といいましてもやはり小売業者である、あるいは小売の販売所であるということが消費者の方々にわかるような仕組みというものは何か必要になろうかと思います。
  39. 小川国彦

    小川(国)委員 小売業者の登録認定制度の新設というような問題が言われているようでありますが、そういったことを頭に置いておられるのではないかと思います。その場合、いずれにしても卸と小売を兼ねている業種、例えば肉屋さんであるとか米屋さんであるとかあるいはまた魚屋さんでもそういう例があろうかと思います。そういう場合、例えば肉やお米の販売の場合でいきますと、業者に売る場合には課税、それから消費者に売る場合には非課税、こういう問題が起こってくるわけでございますが、こういう点への対処というものはどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  40. 石坂匡身

    ○石坂(匡)政府委員 お答えいたします。  ただいまの御質問でございますけれども、大臣が先ほどから再三御答弁申し上げておりますように、あくまでもこれは自民党の案として出てきたものでございまして、政府はこれを十分勉強させていただいて、そして年度改正というふうなものを考えていくということでございます。したがいまして、そうしたことにただいま政府としてお答えする立場にございませんが、自由民主党の書かれております大綱を拝見いたしますと、「小売業者が行う」というふうに書いてございまして、その「小売業者が行う譲渡」につきましては、いろいろこれから検討をするというふうな記載になっておるところでございます。
  41. 小川国彦

    小川(国)委員 現実の問題としては、これは「小売業者が行う譲渡」といっても、卸と小売とを兼ねた御商売というのは非常にたくさんあるわけでございまして、認定制度というようなものを一つお考えのようでありますが、それを行ってもなおかつ当事者である業者の中に大変混乱が起こるおそれがある、こういう点は政府の方も十分御認識のことと思いますので、そういう点は私は今後重大な問題として検討されることが必要なのではないか、こういうふうに思います。  それから次に、消費税の一つの目的ということの中に福祉目的ということが言われているわけでありますが、大蔵大臣としてはこの消費税の税収の用途として福祉目的というものをどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、その辺のお考えを伺いたいと思います。
  42. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 消費税の使途の明確化、そしてその中におきまして福祉目的と言われておりますものは、今回の税制改革におきまして、消費税が将来の高齢化社会に備えるために導入されたということを踏まえ、平成二年度以降消費税収のうちの国分というものを優先して国民福祉の経費に充てる旨の趣旨規定を定めるもの、そのような受けとめ方をいたしております。また、予算編成におきまして、そうしたことを考えて対処していくということでありましょう。
  43. 小川国彦

    小川(国)委員 この福祉規定を設けます場合に、その規定の目的に沿って特別会計というものは当然目的を明確化する場合には必要になってまいるかと思いますが、特別会計の設置ということについてはどのような見解をお持ちになっていらっしゃいますか。
  44. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は、必ずしも特別会計がそのために必要だとは考えておりません。また、特別会計をつくることに別途の高慮もお考えをいただきたいと思うのであります。  これは、本院におきましても私は御答弁をいたした記憶がございますが、就任後、福祉関係の方々をお招きをし御意見を承りましたときに、消費税が特別会計をもって福祉に充てられるという制度が仕組まれた場合、その特別会計の枠内に福祉が抑え込まれるのではないかという不安感を強く訴えられた方々が多くございました。そして、それは実は売上税論議の非常にかまびすしかった当時、与野党の中におきましてまさに福祉目的税化することによって事態の収拾を図ろうという動きが非公式にありましたとき、福祉関係者の中からひとしく出た声でもございました。そして、そのときもその声に、私どもまた野党で関係されました方々もともに耳を傾け、これを断念した経緯がございます。やはり肝心の福祉関係の方々、その中に特別会計に対して非常に心配を持たれる方々が現にあります以上、私は、特別会計をつくることが必ずしもいいことだとは考えておりません。
  45. 小川国彦

    小川(国)委員 今ガソリン税は、六十三年度で約二兆一千六百二十億円というものが道路特別会計、地方道路譲与税の会計に使われておりますが、これが特別会計で使用されている、このことについて例年これを一般会計に繰り入れよ、こういう意見が出されておりますが、大蔵大臣としてはこれはどういう御見解を持っていらっしゃいますか。
  46. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 これは私は、実はこれについては両様の議論が成立し得ると思っております。国土整備の上から今後ともなお交通体系の整備のために道路の建設が必要である、そういう意味での目的財源が必要であり、特別会計が必要である、そのような論議は当然成立をいたします。また、全体の税収の中においてある程度弾力化を考えた場合に、弾力運用を考えれば一般財源化して同じ高速交通体系の整備におきましてももっと他の分野にこれが使えるようにという考え方もまた、私は必ずしも否定すべき考え方だとは思いません。要は、こうした制度の運用というものがバランスをとって行われるかどうかにおいて判断すべきものでありまして、理屈としては両方が成立し得るものと考えております。
  47. 小川国彦

    小川(国)委員 私は、大蔵大臣としては両方均等に見据えた御評価をなさいましたが、日本全国の国道、県道、市町村道を見ても、非常に道路の整備というものは進んでおる。今やこれは一般会計の一般財政の中に繰り入れた方がいいではないか。これはやはり国民の公正な見方としては、私は一つあると思うのですね。そういうことを考えてみると、これは大蔵大臣は福祉関係者の声が大きいと言うけれども、絶えずこれは税率アップと裏腹で、税率をアップすれば福祉は間に合うじゃないか、こういう声もある。そうすると、福祉目的ということを趣旨に自民党案はうたう、あるいは政府案もうたうでありましょう。しかし、特別会計をつくらない限り、厳密にそれに使うということの裏づけははっきりしない。そうすると、福祉というのはまさに口実だけに利用される。こういう福祉関係者の声も大きいわけでありまして、そういう点では、消費税というものを福祉目的と言うなら、その目的を明確化する裏づけをどこに求めるのか、ここをはっきりさせる必要があると思いますが、いかがでございますか。
  48. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今委員がお挙げになりましたような声があることも私は承知をしております。同時に、そのために消費税の税率がどんどん高くなるのではないかという心配をしておられる方々もございます。いずれにしても、私は特別会計という仕組みにおいて、福祉財源を固定する形が、少なくとも福祉関係者の中において多数を占めておるとは考えておりません。
  49. 小川国彦

    小川(国)委員 いずれにしても、これは最初は減税のためである、それから今度は福祉目的のためであるということで、初めに消費税ありき、こういう形で来ていることが、後から福祉目的を取ってつけたというような形になってあらわれているんじゃないかというふうに私どもは思うのですね。すると、大蔵大臣としては、その福祉目的の規定というものを考えられるならば、この消費税の、仮にこの税収というものをすべて福祉目的に限定して使っていく、こういう考え方だけは明確になっているんでございますか。
  50. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 まず第一点、今回の税制改革についてお触れになりましたけれども、今回の税制改革は幾つかの側面を持っておることは委員が御承知のとおりであります。そして、高齢化社会対応という目標が当初からございましたことも御承知のとおりであります。同時に、昭和五十年代後半に至って、国民の中で税制改正を求める声が極めて強くなった。それは同時に、例えばサラリーマンを中心とした方々の所得税減税に対する強い要望であり、また企業の法人税制の改正を求める声であった。そして、その負担を軽減すべく所得税減税、住民税減税、法人税減税が大幅に行われる。同時に、さまざまな問題を提起しておりました個別物品税を廃止して、広くサービスを含めた消費というものに着目した新しい税制をとった、こういう立場で税制改革を行ったということも委員は御承知のとおりであります。  そうした中で、今委員特別会計に非常に強く固執をして意見をお述べになりましたけれども、消費税の中には、御承知のように四割ほどの地方にお渡しすべき財源を持っております。その地方にお渡しをいたします部分につきましては、これは地方財政の現況、それぞれの地方自治体の財政規模等々から考えまして、使途を固定することは極めて困難であります。ですから、そういう意味で私どもは特別会計に固執する御論議に対してくみすることができないと申し上げておるわけでありまして、福祉目的に使用する国分について福祉に充当していくという考え方はそのとおりであります。
  51. 小川国彦

    小川(国)委員 時間が参りましたので終わりたいと思いますが、お金に色がついておりませんので、福祉目的に充当していくといっても、これは中央競馬会の国庫納付金じゃございませんが、畜産に使うといっても、畜産に使う金額の中身は不明である。同じようにこの点も極めて不明確である。私どもは、そういう点では消費税のあり方をもう一度根本から考え直してもらうように政府に強く要望をいたしまして、終わりたいと思います。
  52. 中村靖

    中村委員長 次に、上田哲君。
  53. 上田哲

    ○上田(哲)委員 本日は歴史的な日でありまして、参議院では政府の命運をかけた消費税廃止法案が通過をするわけであります。七月以来の国民の世論を受けての決定であるという立場に立てば、この際、政府は潔く民意を受けて消費税を撤回されるのが民主主義ではないか。御決意はいかがですか。
  54. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 せっかくの御意見でありますが、委員の御見解には私は従えません。委員は消費税のみを取り上げ、今御論議になりました。私は、この夏の参議院選の敗北の結果について一番責任を感ずべき与党の幹事長でありましたけれども、私自身選挙戦を戦いまして、その消費税の影響がなかったと決して申し上げるつもりはありません。  しかしそれ以上に強かったのは、リクルート事件を初めとする一連の不祥事に対する政治不信、しかもその事件そのものは我が党のみならず各党を巻き込んだものでありましたけれども、結果としてはその政治不信というものは自由民主党にのみ覆いかぶさってきた。そしてその中で、これについての御説明、おわびをする以前には、いかなる政策を訴えようとしても国民が耳を傾けていただく状況ではなかった。それが逆に、そのおわびは本気で申し上げておるということを御理解いただいた後には、消費税のみならず農政につきましても、それぞれの地域における最大の関心課題について少なくとも耳を傾けていただける状況にはなった。私自身がそのように感じておりますだけに、今委員の述べられたような見解には残念ながら逢着をいたしません。
  55. 上田哲

    ○上田(哲)委員 答えは総選挙で出すということになろうかと思いますが、そこで、自民党がお出しになった十二月一日の見直し案、これはまことにわからぬ。政府の見解は自民党案についてまた別な立場があるということでありますから、一般論としての立場はそうだろうと思うのです。  極めて具体的にひとつ御見解を伺っておきたいのでありますが、自民党の見直し案に沿って言えば、いろいろな矛盾が出てくる。これをひとつ具体的に伺うわけですが、例えばハンバーガーのお店で、これは外食産業だから、あの案によると一・五%になるわけです。これが持ち帰りということになると、小売ということでゼロ%になる。持ち帰りで買ったのだが、その場で食べてしまうと、同じ店で同じものを実は違った値段で買うことになる。大手のハンバーガーですと、大体六割がその場で買う、四割が持ち帰り、こういうことになっているわけで、六割、四割の形で同じものを違った値段で同じ場所で食べるということになるとすれば、大臣、これはぐあいがよくないと思いませんか。
  56. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 先刻、他の委員に対してもお答えを申しましたとおりに、私どもは今自民党の見直し案を十分勉強させていただいて、同時に政府の税制調査会の御審議を踏まえながら成案を得ようとしている状況であります。ですから、結論めいた話を申し上げる段階にはございません。
  57. 上田哲

    ○上田(哲)委員 いや、そういう矛盾が生まれたらどうかと聞いているのです。ついでに言えば、例えば肉のお店で卸と小売、これが半々くらいでやっている店があるとすると、一方は一・五、一方はゼロと、まさか同じものをこっちは高いですよというわけにはいかない。こういうことになると、これは具体案として、確かに困ったことだとお考えになるかどうか。
  58. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 困ったことだと答えさせたいとお考えなのはよくわかりますが、よく勉強しておるさなかであります。
  59. 上田哲

    ○上田(哲)委員 私は、それぐらいの勉強もできてない大蔵大臣とはお見受けしないのですが、いかがですか。
  60. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 皆さんが大変御苦心、御苦労になり、税制見直しの中で消費税廃止法を出されましたが、平年度の税収減だけをお考えになり、初年度の数字が食い違ったというふうなこともございました。やはり私どもも、ぎりぎりまでよく勉強させていただきたいと思っております。
  61. 上田哲

    ○上田(哲)委員 私は、我が党の参議院議員の方々が、大蔵省の知恵もかりずにあの程度の作品をつくったというのは見事なことだと思っておるわけで、その辺の枝葉末節は別といたしまして、私は、大蔵大臣が答えにくいのはよくわかるが、この段階でまだ勉強中だと言われては、小売業者、卸売業者の不満、不安というのはますます拡大するだろうということを申し上げて、この問題の結論は来るべき解散・総選挙に譲ることにいたします。  参議院では、六十二年度、六十三年度一般会計特別会計の各予備費の事後承諾三案件を不承諾といたしました。似たようなことはありましたけれども、こういう形というのは議会政治始まって以来のことであります。いかがお考えですか。
  62. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 過去に既に使用いたしました予備費につき正確に院に御報告を申し上げ、結果として不承諾という意思表示が一院においてなされた、両院の御判断が異なった御判断を示されたという事実は、大切な問題点として私は受けとめております。
  63. 上田哲

    ○上田(哲)委員 私は、事実の確認だけではない、政治責任を感じなければならないと思います。いかがですか。
  64. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 本院においては承諾をいただきましたものが参議院において不承諾となりました。これは大変遺憾な事態であると受けとめております。参議院で不承諾と御指摘を受けました原因につきまして、私どもは十分に検討しながら、その結果というものを真剣に受けとめ、自後における予備費の使用についてさらに十分配慮してまいりたいと考えております。
  65. 上田哲

    ○上田(哲)委員 このような事態は、恐らくこれからも陸続として起きるでありましょう。政治的責任の問題を後に大きく問うべきだと思っております。  さて、私がきょう中心に置いて質問したいのは、税収見込みの問題であります。  試みに伺っておきたいのだが、一九八九年度の補正予算が今策定中と言われておりますし、増収見込みは大体三兆一千億円と伝えられております。確定数字だとはあえて言いませんけれども、仮に三兆一千億円というふうに見た場合に、この際に数字を明らかにしておきたいのですが、八九年度当初における弾性値、それから三兆一千億円とする場合の修正弾性値をお答えいただきたい。
  66. 石坂匡身

    ○石坂(匡)政府委員 元年度の弾性値のお尋ねでございますが、平成元年度の当初予算におきます弾性値は一・一三でございました。時の経済見通しによります名目GNPの伸び率は五・二%でございます。これを用いて計算いたしました数字が一・一三ということでございました。  ただいま三兆一千億というお尋ねがございましたけれども、突然のお尋ねでございますのでそれに即した計算というのをしておらないのでございますけれども、いずれにいたしましても、この元年度どれくらいの税収かということにつきましては、まだ全く見当がつかないわけでございます。  若干敷衍して申し上げますと、十月までの元年度の税収を見てまいりますと、累計で見ますと前年同月比でマイナス一・一%ということになってございます。また、進捗割合で前年同月と比べてみますと元年度は三五・二%、前年同月が三五・七%でございまして、前年に対しましては進捗率が〇・五ポイント下回っているという状況にあるわけでございます。こうした実績を踏まえまして、現在見直し作業中でございますけれども、まだ計数的に現段階で申し上げられるほど固まっておる状況にはございません。  ただ、数字はともかくといたしまして、現在のいろいろな情勢を見ますと、ある程度の増収は期待できるのではないか、こう考えております。
  67. 上田哲

    ○上田(哲)委員 ある程度の増収という言葉では私は不満でありまして、巷間伝えられるところでは三兆一千億円。これはもっとあると私は思っているのですが、仮に三兆一千億、補正予算の規模を大体五兆円で抑えようということになれば逆にそういうことになると思うのですが、そういうことであっても、少なくとも弾性値は相当上がってこなければならない。  八九年度予算全体を見ると、この見込みが当初で五十一兆百億円、これは前年度税収実績が既に五十兆八千億円ですから、この差はもう初めからほとんどないのであります。八九年度は消費税の導入なり若干の減税措置の問題が加わっておりますけれども、それを考慮しても、今お話しのように政府経済見通しが成長率五・二%でありますから、最近の景気動向からしても、大体前年度比六ないし七%増というのが当然な常識でありまして、そうであるとすると、五十四、五兆円という税収は当然なこと、三、四兆円の増収見込みというのは当たり前な計算になってくる。こんなことはもう年度当初からわかっていた、あるいは少なくとも八六年以降の税収を見ていけば当然な数値であったと言える。  私は計算をしておいてくれと言ったのですが、まだ計算が出てない。三兆一千億円を前提にしてやってみればすぐはじけるわけですから、それが出ないのは非常に残念ですけれども、少なくとも当初の一・一三よりは相当、ある程度ではなくて相当高いというふうに見込むべきだったと思うのですが、いかがですか。
  68. 石坂匡身

    ○石坂(匡)政府委員 お答え申し上げます。  この元年度の税収につきましては、昨年の予算編成の時点におきまして、その当時の用い得ますところの経済見通しなり各種の経済指標、それから課税実績等を用いて計算をいたしまして、その程度のものというふうに見積もったわけでございます。  ただ、委員御指摘のように、ことしに入りまして、その見積もりに比べまして、法人とか所得、そういった経済活動、実態的な生産活動がかなり好調であるというふうなことを反映いたしまして、若干の増収は見込めるのではないかという状況に立ち至っているというふうなことでございます。
  69. 上田哲

    ○上田(哲)委員 非常におかしい話です。そんなことは専門家である主税局が――大体きょうは主税局長も主計局長も来ておらぬというのはけしからぬのだけれども、そんなことが前からわかっていなかったらプロではない。現実にこの数年間の税収を見てみればわかるのですが、例えば八六年度が当初予算の税収見込みが四十兆五千六百億円で結局一兆三千億円の黒。八七年度が四十一兆一千九百四十億円で四十六兆円の決算ですから五兆六千三十九億円の黒。昨年度は四十五兆九百億円の見込みで五十兆八千二百六十五億円の決算ですから五兆七千三百六十五億円の黒。ずっとこの二年は五兆円になっている。しかも八七年度は一兆八千億円、八八年度は二兆円の減税を差し引いてなお残った額なのですから、大変な額がどんどん出ておるわけです。  これを見て今の成長率を見れば、これはすぐにわかることです。それを、最近の傾向でこうなりましたなんという補正は、まことに数字の操作だと私は言わざるを得ないのです。だから、そういう意味から言っても、これはもうとにかく初めからわかっていたのを小さく見ていた、こういうことにしかならないと思うのですが、何か反論はありますか。
  70. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私はここ一両年の数字について委員と論争をいたすつもりはございません。ただ、六十一年の補正予算のときの本院における議論を思い起こしていただきたいと思います。六十一年の秋、御承知のような経済情勢の中で、政府は減額の補正予算を御審議願ったわけであります。しかし、そのとき院におきまして、政府の見積もりは甘過ぎる、もっと経済情勢は厳しい、もっと減額しろという御意見が本院におきましても行われました。当時、社会党の現伊藤政審会長の御質問等が代表的なものでありまして、政府に対して厳しく、もっと減額補正をしなければという御指摘がございました。しかし、結果としては、今委員がお述べになりましたように、むしろ増額すべきであったということもございます。  ですから私は、その数字について争うつもりはございませんけれども、政府委員が今御答弁を申しましたとおり、慎重の上にも慎重を期して努力をしていくのが我々の与えられた役割である、そのように考えております。
  71. 上田哲

    ○上田(哲)委員 数字は既に過去のものですから、争うといっても、これから先に役立たなければならないので、私は、財政見通しの問題というのは非常に冷静に議論しておかなければならないと思うのです。  そこで、客観的に見ていくとどういうことになるかということを、私が最近書いた本で「こんなに損していた日本人」というのがあるのですが、この中にこういうふうに指摘している。これで正しいかどうか。  これはつまり、   働きバチの日本社会がプラザ合意以来の円高の波を乗り切ったのだ。   あの時の円高は深刻なデフレ効果のなか、企業城下町などに悲鳴が渦巻いた。輸出型産業を中心に雇用不安や産業空洞化が叫ばれたもともと原料輸入の比率の高かった日本は円高で輸入の原料の値が下がり、原油の大幅下落、史上最低の金利、六兆円規模の経済対策などが企業に活力を与えた。 これは率直にそう言えましょう。  円高で製品輸入も増え、電力値下げも加わって物価が安定し、企業のコストは急速に低下した。このようにして、企業の収益が急速に回復し、大蔵省の法人企業統計(資本金一千万円以上)でも、企業の経常利益は前年比で、八六年度二・八%から八七年度には三四・六%、八八年度には二六・一%へと急速に増加した。   勤労者の賃金は、労働生産性の高い上昇にもかかわらず抑えられ、労働分配率は低下し生産コストの低下と物価の超安定をもたらし、消費が拡大し、内需主導型経済への傾向を強くした。   一方、超低金利などの金融緩和や大幅な貿易黒字、急速な企業収益の増加によるカネ剰りは、金融制度などの規制緩和と新しい情報化時代の幕開けとともに東京など大都市におけるオフィス需要を煽り、地価や株価を暴騰させた。こうしたキャピタルゲインによる資産効果は、企業による新しい設備や研究投資を促し、「いざなぎ景気」以来といわれる長期景気持続を実現し、企業倒産を著しく減少した。 こういう見方はいかがですか。
  72. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 個別の部分につきまして、私は多少異論がないとは申しません。しかし、全体の流れとしては、私は必ずしも委員の御見解を否定すべきではないと思います。  ただ、その御見解を前提に明年度以降あるいは本年度の税収を考えた場合におきましても、お考えをいただきたいのは、いわゆる三高二安というものによって支えられてきた日本の経済でありますが、本年度に入りまして以来公定歩合の引き上げ幅は一・二五ポイントでございます。また為替レートは、私ども非常に注視いたしておりますけれども微妙な状況でありまして、例えば日本の経済の実力と相応し、それをアメリカのドルと対比いたしました場合に、その相場はどうかといえば、委員もそれなりの所感をお持ちでありましょう。また、今日ただいまの時点においてその状況が出ておるとは決して私は申しませんけれども、エネルギーコストというものを長期に見通した場合、さまざまな問題がございます。そうした要因を考えてまいります場合に、私どもとしてはやはり、税収見積もりというものにつきましては、ぎりぎりの瞬間までその数字の正確度を期したいという気持ちで作業をさせていただくことも、御理解をいただけることだと思います。
  73. 上田哲

    ○上田(哲)委員 大綱において私は客観的に物を言ったつもりだし、恐らく多少意見が違うと言われるのは勤労者賃金の問題等々であろうと思います。これは意見が分かれても当然なことだと思いますが、大綱においては私はこういうことだと思うのです。一口で言うと余りにも簡単過ぎるけれども、働きバチがここまで頑張ってきたということにもなるだろうと思います。  そうした意味での弾性値の見方などというものは、やはりこれまでと少し次元が違ってきているというところがある。例えば設備投資だ、個人消費だということだけを見ていてはいけないというところが、非常に大きなウエートを加えてきているということがあります。そういう問題を考えて、これまでとは非常に違った見方で見なければならぬということは十分にあるのだけれども、しかし、これだけの数兆円を上回る自然増収なるものが毎年出てくるということになれば、あなた方の見通しというものが正しくなかったということはやはり反省しなければならないだろう、そういうことになると私は思うのです。これは、責任とかなんとかということを言うつもりはない。鈴木内閣のときの、前の福田主税局長の例もありますから、そういう問題もいろいろあると思うし、ふえても下がってもこれはやはり責任の問題はあると思うが、それはしばらくおきましょう。  そうすると、問題はこれから先のことになる。これから先の問題、例えば財団法人国民経済研究協会がまとめた一九九二年までの中期経済予測などもあります。国民経済研究協会というのはかなり中立的な研究機関だというふうに私は思っています。ここで出している数字などによりますと、赤字国債の発行やNTT株式の売却を見送っても九〇年度の税収は前年度より五兆三千七百億円ふえる、九一年度はさらに四兆三千六百億円、九二年度も五兆八千六百億円というふうに、それぞれ前年度よりふえるだろうと言っておる。まあ細かい数字はありますけれども、国民経済研究協会は、そもそも政府の経済見通し自身が低過ぎるという意見すら持っているわけですね。  こういうことからしますと、当然、これから先の弾性値のとり方というのはこれまでのように低い数字で推移してはならないということになるのではないか。少なくとも来年は二%台というふうに見るのが、計算の根拠は一々言う必要もないと思いますけれども、これが当然な数値になってくるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  74. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今述べられました数字は私も拝見をいたしました。私、ちょっと正確に記憶をいたしておりませんけれども、前提の置き方その他におきまして、政府とは意見を異にする部分が何カ所かあったような記憶がございます。  しかし、それはそれといたしまして、もう一つ本年度の税収につきまして私どもが慎重を期したいのは、税制改革の影響が本年度は非常に微妙な状況に数字の上で出てくるということであります。もっと率直に申し上げますならば、既往の税制のもとにおいて物品税が入ってまいりました状況と、消費税導入後、現在消費税が納入をされ始めた状況とには大きく税収の上での差異もございます。そうしたものを考えてまいりますと、私は、軽々に今数字を申し上げられるような状況にないというその姿勢も御理解がいただけるのではないかと思うのですが、いかがなものでしょうか。
  75. 上田哲

    ○上田(哲)委員 軽々に数字を言えとは言いませんが、もう一遍繰り返しますけれども、確かに八五年度決算はマイナスなのです。(橋本国務大臣「済みません、昭和で考えないと私はぱっとわからないので」と呼ぶ)それでは昭和で考えてください。これは確かにマイナスなのです。そして、そこから急激に上がってきているのです。だから、そこで発想の転換というか計数の整理の仕方というものが出てこなければならないわけでして、そういうところから来れば――これまでの二年、三年のことについてはあえて言いますまい。しかし、これだけたくさんの、もう抜き身で五兆円以上の黒字がどんどん出てきているということになると、これは考え方を変えなければならない。  私が言いたいことは、これは自然増収という言葉が違うと思うのです。自然増収というのは、言葉の正しい意味のいかんはともかくとしても、これはおのずから思いもかけず出てきてしまったという語彙だと思います。私は、ここで挙げられているような数値というのは、八六年だ、八七年だぐらいまではある種の瀬踏みであったとしても、八八年、去年まで来て既にもう減税を引いても五兆円というようなことになってくれば、これは先ほど言われた原料安の問題とか石油価格の問題とかいうものは既に一つの線を見せているのですから、その中でこれを全部低目に見積もっておいての自然増収という、こういう操作でしかなかった、こう言われても仕方がないのではないか。ですから、この辺で、税収についての基本的なデータである弾性値の見方というのはこういう数値であってはならないところへもう来ているだろう、こういうことを御同意を得たいと私は思っておるのですが、いかがですか。
  76. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 過去の数字について論議を申し上げるつもりはございません。委員が指摘をされている数字に誤りがあるわけではございません。ただ、私が申し上げたいことは、その六十一年度における補正論議がいかに政府の見通しそのものが甘過ぎるという御指摘であったか、いわばそこにおいて大きな狂いを生じた一つの原因があったのではなかろうか、素人なりにそんな感じを当時持っておりました。  そしてそういうことを考えてみますと、税収構造自体も税制改革によって変化を生じておる今年度におきまして、今その見積もりに対して最大限の正確度をもって努力をすべきである、それは私は御指摘のとおりだと思います。  そして委員が、自然増収という言葉の定義自体に問題があると言われましたとおり、これはまさに税収見積もりの誤りのプラスに転じた場合が自然増収と言われる現象であり、マイナスに間違えればこれは歳入欠陥でありますから、この確度を高める努力というものは私ども一生懸命にしていくつもりであります。
  77. 上田哲

    ○上田(哲)委員 私は、確度を高めるために一生懸命やっていないと思うのです。これは政策的な恣意だと私は思う。こんな計算大蔵省主税局においてできないはずがない。これだけのノーハウを持っていて、これだけのデータが上がってきていて、こんなことは通らない話だと思う。極力当初見積もりを少なくしておいて、その残ったところを自然増収という言葉を使っている。これは先ほど大臣も言われたが、政策的な誤りというところにいくのか、それとも恣意というところにいくのか。つまりそういう政策判断をした、あるいは誘導した、これは明らかに、減税要求を退け、消費税導入に道を開く政策的配慮だったと言われても反論できないだろうと私は思う。そうでなければ、極めて単純に、こんなに何年間も税収見積もりを間違っておりましたと謝罪するか、そうでなければそのそしりを免れないと私は思うのですが、いかがですか。
  78. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 その恣意的という御指摘でありますが、これに対しては私は大いに反論がございます。  先ほどから委員がお述べになっておりますように、委員は西暦をお使いになり、私は紀元を使ってお答えを申し上げておりますが、昭和六十一年度、この年から自然増収と言われる歳入見積もりの誤差というものが非常に大きくプラスに出てまいりました。しかし、その六十一年度補正予算審議において本院において行われた議論は、政府の減額の幅が少ない、もっと大幅に減額すべきである、もっと経済の実態は厳しいという御指摘だったわけであります。仮にもしその当時、院の御論議、例えば現に社会党で政審会長を務めておられます伊藤さんの御質問のような方向で、もっと大幅な減額補正をしておったなら、一体どういう結果を生じたでありましょう。これは恣意的とかそういう御批判を受ける性格のものだとは思いません。  ただし、その税収の見積もりの正確度が大きく誤っておったということについてはおわびを申し上げます。
  79. 上田哲

    ○上田(哲)委員 八六年度の議論は、これは私どもも反省なしとはしないです。しかし問題は、さっきも私はるる申し上げたように、プラザ合意が八五年九月二十二日なのです。このプラザ合意のところからこういう姿が出てきたということを考えれば、八六年度の議論はそうであっても、八七年、八八年、今年度に至るこのはっきりしてきた税収の伸びというものは、これは少なくとも、それだけの見通しを誤った、最低限そのことだけは反省されねばならない。これを正確にしようというのであれば、少なくとも八九年度、そして九〇年度、今年度の補正から、来年の当初予算の見積もりについての弾性値は大幅に改定されなければならないと思います。  時間が参りましたからもう一点つけ加えますが、そうであれば消費税というものの必要もなくなるということです。例えば先ほど来の国民経済協会の指摘というものもあるわけであります。私は、それについては恐らく同意をされないに違いないから、これもまた総選挙の結果にゆだねることにいたしますが、もう一遍繰り返すが、少なくとも八六年までの議論は確かに双方ともさまざまの見通しを誤ったところはある。しかし、財政当局の責任としては、税収見積もりの正確さを期するというのであれば、八七年以降今年度までの見積もりの誤りは明らかでありまして、そのことを訂正されるのであれば、九〇年度以降に向かっては、私はあえて二%と申し上げておきたいが、二%台の弾性値の策定というものは当然あるべきだということを申し上げておきます。
  80. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 ですから、見積もりの誤りについてはおわびを申し上げると同時に、今後における正確度を期したい、その努力をいたしておる、その前提で、先ほど委員が特定の数字を挙げてその弾性値を求められましたが、我々としては、現に正確度を期すための作業の最中でありまして、特定の数字をもってお答えできる状況にはない、この点についても御理解をいただきたいと思います。
  81. 上田哲

    ○上田(哲)委員 わかりました。私の意向は理解をされたというふうに了承をいたします。  そこで、このような増収という趨勢を考えるならば、いわゆる赤字国債の発行は九〇年度は考えられないというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  82. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 たびたび申し上げておりますように、明年度あくまでも赤字国債依存体質からは脱却をいたしたい。同時に、多少ともに、隠れ借金と言われておりますものについての解消も目指したい。院の御協力をも心からお願いを申し上げます。
  83. 上田哲

    ○上田(哲)委員 終わります。
  84. 中村靖

    中村委員長 次に、草川昭三君。
  85. 草川昭三

    ○草川委員 公明党の草川であります。大蔵大臣、参議院の関係もありますので、前半に集中をして質問をいたします。  消費税の見直しの問題でございますけれども、大蔵大臣は、総理を補佐される非常に重要なポジションだと思うのでありますけれども、総理は終始一貫というのですか、消費税の見直しについて、流通の全段階での非課税化ということを大変強く主張をしておみえになったようであります。特に見直し案の提示の期限を切る、こういうことも言われたわけでありまして、対話集会等でも食料品の非課税を見直しの柱とするというようなことを言われたようであります。問題は、これは新聞報道でありますから私ども確かなことかどうかは不明でございますけれども、先月の三十日午前中に橋本蔵相は首相公邸に海部首相を訪ね、消費税の見直し問題について、大蔵省の立場を踏まえつつ、いろいろな考え方を述べられたと報道されております。  先ほど来の議論を聞いておりますと、ただいま勉強中だという形で避けておられますけれども、いわゆるこの与党の見直し案に対する大蔵省としてあるいは大蔵大臣としての基本的な姿勢、スタンスというのはどうなのか。これは税体系の問題にも影響するわけでございますが、御見解を賜りたい、こう思うわけであります。
  86. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 三十日午前中に総理をお尋ねし、私、大蔵省の考え方と申しますよりも、私の考え方並びにそこに至る経緯について御説明を申し上げましたことは事実であります。しかし、それはあくまでもプロセスでありまして、自由民主党としての基本方針を既に決定をされ、私どもはそれを受けて今本当に勉強をしながら、同時に政府税制調査会の御意見を、御審議をも踏まえて、成案を得るべく努力をしておるさなかであります。でありますから、過去にさかのぼりまして、その中途経過についてお答えを申し上げることは控えきせていただきたいと思います。
  87. 草川昭三

    ○草川委員 中途経過をただ聞きたいという意味ではなくて、橋本大蔵大臣としての税に対する基本的な見解をお伺いをしたい、こういうわけであります。  ちなみに今回の見直し案が、与党案が与党の方から新聞等で発表されているわけでありますけれども、いろいろと既に批判が出ております。特に、ある新聞の社説を引用いたしますと、この案は「はじめに選挙対策ありきで、なりふり構わず、節を曲げ、筋をゆがめる。国政の基本であり、国民生活に大きな影響を与える税制の問題だけに、一体、こんなことでいいのか、」と思う、こういうことを言っているわけであります。こういう批判があることを大蔵大臣はどのように理解をされておるか、お伺いをしたいと思います。
  88. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は、大変そういう御議論は残念な御議論であると考えております。  大変過去にさかのぼりまして恐縮でありますが、私どもが東京都議選において、また参議院選において敗北をした原因、私はそれだけではないと申し続けてまいりましたが、野党の皆さんからは、常に消費税が指弾を浴びたという御指摘を受けてまいりました。仮にそうであるとするならば、自由民主党は、その国民の御意見が決して必ずしも消費税を好むものでないと思いつつも、それを理解しつつも、将来のために必要であるという政策を真剣にかざして訴えている、そしてその中において、その税制を理解していただき、定着させるための努力を払っておられる。私は、政党として評価をされるべき姿勢であると考えておりますし、それが政党として真剣な努力のあかしである、そのように考えております。
  89. 草川昭三

    ○草川委員 その与党に対する評価はそれで当然の評価だと思います、大蔵大臣としては。しかし、この議論の中で、公平、中立、簡素というのが税制改革法の基本であったと思うのでありますけれども、公平、中立、簡素というこの基本理念から逸脱をしているのではないだろうか、だからこそ、途中経過ではあるということではありますけれども、軽減税率の適用という問題を強く主張されたのではないだろうか、こう思うのですが、その点はどうでしょう。
  90. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は、自由民主党案というものを拝聴いたしました時点におきまして、以下申し上げるような内容で、この基本方針を評価をいたしました。その内容が、税制面のみならず広く歳出面や他の制度面にも及び、かつ、消費者と事業者の双方の立場を十分に考慮されたものとなっており、国民心理と税の理念の両面の調和に腐心されたものとしてその御努力に敬意を表する。以上であります。  その申し上げました趣旨は、今まさに委員が述べられましたような公平、簡素、中立という概念、そのぎりぎりの接点部分を求められたもの、そのように解したからでありまして、私は基本方針提示直後記者会見を求められ、以上のような感じを申し述べました。
  91. 草川昭三

    ○草川委員 では、次に移ります。  六十一年度一般会計決算不用額の主なものの問題点を指摘したいと思うのです。この不用額金額の多寡、いろいろとあるわけですが、例えば生活保護費というのがあります。歳出予算の現額が一兆一千百四億、決算額が一兆七百十四億ということで、不用額が三百八十九億に上っているわけであります。それでこの金額。それからもう一つは、特別会計の方へ参りますと、特別会計の方では、これも年金の不用額というのが八千六百七十九億でございますか、相当大きい金額になっているわけであります。  この中身をいろいろと検討するとそれなりの理屈はあるわけでありますが、まず、どういうような状況になっているのか、厚生省からお尋ねをしたいと思います。
  92. 炭谷茂

    ○炭谷説明員 生活保護についてまずお答えさせていただきたいと思います。  生活保護におきまして不用額が生じました理由といたしましては、当初見込んでおりました被保護者人員よりも減少したということが主な原因でございますけれども、その理由といたしましては、五十八年以降一時的な景気の後退がありましたもののほぼ好況で推移いたしましたこと、また五十九年以降離婚率が減少いたしまして離婚に伴う母子世帯の被保護者の発生が減少いたしましたこと、また年金制度等他法・他施策の充実をいたしましたこと、また私ども国・地方で実施いたしております生活保護の適正実施が推進されたことなどによるものと思っております。しかしながら、生活保護は国民の最後のよりどころとなるところでございますので、真に生活に困窮している方々に対しましては必要な保護は行っているところでございます。
  93. 草川昭三

    ○草川委員 特にこの生活保護の点については会計検査院の指摘もあるわけでありまして、厳格に窓口対応をしろということからも生活保護の適用が非常に厳しくなってきている、こういうのも一つの原因ではなかろうかと私は思うわけであります。そこで、検査院等の指摘も不正受給が社会問題化しているということになるわけでありますし、今厚生省の答弁の中の対象者が減っておるというようなこともありますが、一面では非常に厳しい窓口対応がある、そのことによって生活保護の受給率というのですか、適用が減っておるという一面もあるわけでありますので、角を矯めて牛を殺すというようなことのないように、ひとつ必要な生活保護世帯に対する対応は行っていただきたいということを強く申し入れておきたいと思います。  そこで、先ほど申し上げました今度は特別会計の方でございますが、これは大蔵省の方にお伺いをしたいと思うのであります。  年金の特別会計で、先ほど私が申し上げましたように不用額金額が非常に多くなってきている。こういうのも、よく見ていきますと、本来の不用額という意味ではなくて、手続上というのですか、運用のための積立金的な性格ではないだろうか、こういう感じがするわけであります。積立金というのか、あるいは支払い準備金というような項に、これは新たな款項目の項を立てるべきではないだろうか、こういう感じがするわけであります。これは運用上の問題になりますけれども、技術的な話になるかわかりませんが、大蔵省の見解を求めたい、こう思います。
  94. 小村武

    ○小村政府委員 委員御指摘のとおり、厚生保険特別会計の年金勘定の六十一年度決算額におきまして、歳出額において八千六百八十億円の不用が計上されております。この不用の中身を洗ってみますと、八兆円規模の膨大な年金給付費でございますので、その中に四千四百二十二億円の予備費を計上しております。この予備費を使用せずに済んだということが一つの要因でございます。残る金額につきましては、年金額の支払いが当初予定をしていなかった、予定よりも下回ったということによるものでございます。こうした不用が生じた一方におきまして、歳入の方におきましても約五千三百三十八億円の収入減がございまして、したがいまして、支出済み額と収納済み額の差額、これにつきましては当然積立金増加という要因になりまして、三千三百四十二億円が、結果的には六十一年度決算においては積立金がその分上回ったものとして処理をされ、合計積立金が四兆四千九百六十五億円の増加と相なったわけでございます。
  95. 草川昭三

    ○草川委員 だから私が今申し上げたように、予備費の未消化、それはそれなりで結構なのですけれども、我々がこの決算書を見る場合の一般論としての不用額と、今の答弁はなじまないのではないだろうか。だから、それは技術的な問題かもわかりませんけれども、新たな項を立てるべきではないか、こう思うのですが、そういうことは必要はないとおっしゃっている意味での答弁なのかどうか、改めてお伺いしたいと思います。
  96. 小村武

    ○小村政府委員 先ほどの八千六百八十億円の不用のうち四千四百二十二億円の予備費を使用せずに済んだという意味で、子備費は年金給付費とは違った項で立てさせております。したがいまして、委員御指摘のような歳出予算面においては一つの構造ができているということでございまして、決算ベースでは全体として八千六百八十億円の不用が立ったということでございまして、必ずしも御意見を異にしているというふうには考えておりません。
  97. 草川昭三

    ○草川委員 これは専門的な議論であり、また大蔵省的な決算のあり方ですからとやかく言いませんけれども、我々がこの決算書を一覧する場合に、十兆円規模の特別会計、こういう中で八千六百七十九億というのは許された範囲内だということになるかもわかりませんけれども、この不用額というのは、予備費を含めての話でありますけれども、八千六百八十億というのはいかにも不用額という印象からおかしいというのが私の意見であったわけであります。この件はこれで終わりたいと思いますが、これはまた別の機会でぜひ大蔵大臣の見解も問いたいと思うのであります。  不用額についての基本的な見解なのですけれども、役所の立場からいうならば、本来計上した予算を未消化をしたというのはそれなりの欠点があるという発想になるならば、なるべく不用額という金額を大きく立てたくない、だから年度末の工事なんかがどんどんふえる、こういうことになっていくわけであります。ところが民間の立場に立つならば、不用額が計上されるとするならば非常にいいことではないか。逆に不用額をたくさん出した役所に対しては逆ペナルティーというのですか、ボーナスを出したっていいのではないだろうか、こういう議論を私はかねがね持っておるわけです。ですから、今役所の決算のあり方に対して、未消化の予算を単純に不用額として計上するこの不用額というものの評価を改めていくのが基本的な臨調の精神でもないだろうか、こう思うわけでありますが、これは私の日ごろの意見でありますが、不用額についての大臣の見解が賜れれば幸いだと思うのですが、どうでしょう。
  98. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は、委員が指摘をされますような側面を持つ不用額というものが確かに存在をすると思います。そして、そういう御論議は以前からも委員において何回かございました。ただ同時に、その不用額というものが、例えば事業費として当然遂行されなければならない事業が何らかの結果によって行えず、その結果として生じた場合、必ずしもそれは褒められるべき事由ばかりとは限らない場合がございます。以前からその辺の判断でその論議は分かれていたような記憶がございますけれども、なお私はもう少し考えさせていただきたいと思います。
  99. 草川昭三

    ○草川委員 予算の編成というのは、当然対前年度プラスアルファ、新事業を計上することが役所にとっては大変誇らしいことになるようであります。また事実、新聞等の報道等を見ておりましても、新規事業というのが目玉になっている。際限なく予算が膨らんでいく、だからこそ臨調というものがいろいろと注意をした、こういう経過があると思うのですね。ですから、私は、今大臣の答弁があったことは十分理解をする立場から、一度不用額の積極的な見直しということがあってもしかるべきではないだろうか、考え方の見直しというのがあってもしかるべきではないか、こう思うわけであります。  そこで、運輸省にも来ていただいておりますので、ひとつここでお伺いをします。  自動車損害賠償責任再保険特別会計、自賠責特会というのがあるわけですが、これはたまたま六十一年度の場合には大変大きな金額が出ているわけであります。これは一兆二千億ですか出ておると思うのでありますけれども、過去をさかのぼりますと、五十八年度一般会計に二千五百六十億繰り入れられている経過があります。これはたしか大蔵大臣竹下さんのときだったと思うのですが、私どもも、それは泥棒だ、きんちゃく切りだという言葉で申し上げたことがあるのですね。そうしたら竹下さんいわく、黙って持っていけば泥棒だからこそ法律をつくっているのですよということで、では法律をつくって他人の我々の特別会計という財布から一般会計へ持っていくならば利子をつけたらどうだろう、こういう議論をしたことがあります。利子をつければ赤字国債と同じだから無利子で借りたいという経過がございました。これは幸いに、先ほどの議論にもありますように自然増収等もございまして六十二年に一括返済をされております。でありますから、その後、自動車特別会計の、特会の予備費の計上も八百億という形で特定化しているというように聞いておりますが、少なくとも六十一年当時の特別会計のあり方としては問題があったと私は思うのです。その点、運輸省としては今後どういう考えを持たれるのか、お伺いをします。
  100. 村上伸夫

    ○村上説明員 自賠責特会におきましては、保険特有の問題といたしまして保険料の収入と保険金の支払いの間に相当ずれが生じるということがございます。具体的に申し上げれば、収入につきましては車検時に納付されるわけでございますけれども、支出につきましては、自家用車の場合車検期間が三年あるいは二年ということもございます。また、事故が起きた場合に加害者と被害者との間に交渉がなされるのが通常でございまして、この間に時間がかかる。そういった事情もございまして、従来、この歳入と歳出の間に生じます収支差額といったものを、六十一年度までは全額予備費として計上しておったわけでございます。したがいまして、先生御指摘のように六十一年度の予備費というのは一兆二千億という数字になってございます。ただし、この点につきましては昭和六十二年度以降は見直しを行いまして、毎年定額で八百億円、こういった予備費を計上しているところでございまして、今後の問題につきましても、予備費については定額を計上していきたい、こういうふうに思ってございます。
  101. 草川昭三

    ○草川委員 予備費を八百億に定額にするというのはそれはそれでいいのですが、要するに、強制保険というのはまさしく強制保険でありますし、国民の皆さんも車を持つ度合いというのは年々ふえてきておるわけであります。だから非常に関心があるわけでありますから、この自賠責特会の設計、基本的な計算方法については、最小限のぎりぎりの計算をしておいていただいて、それで保険料を安くしてもらう、あるいはまた予備費があるならば、少しでも余裕があるとするならば給付の改善をしてもらいたいということを強く要望しておきたい、こう思います。  自動車損害賠償の特会の問題は以上で終わりたいと思います。  そこでその次は、きょうの決議の中にも入れていただくわけでありますけれども、海外不動産の投資問題、この問題についての大蔵大臣の見解をぜひお願いをしておきたい、こう思うわけであります。本決算委員会の締めくくりに当たる前に、この海外不動産の問題について、建設大臣あるいは国土庁長官、外務大臣、あるいは土地特等においてまた建設大臣、国土庁長官等の意見をずっと連続して取り上げてきて、きょうは最後大蔵大臣の見解を求めたいわけであります。  長々と実情を申し上げるつもりはございませんけれども、今、日本における資金量というのは膨大なものがあるわけでありまして、どうしても海外に投資が行くわけであります。海外における投資もさまざまなものがあるわけでありますが、その中で特に不動産投資というのが目につく。その不動産投費というのは、これは自由ではありますけれども、一定のおのずからの相手国の地域社会に対する影響ということを考えないと大変な対日不信感を招くことになる、こう思うわけであります。ですから、ぜひ相手国の地域社会における調和、貢献というのですか、そういうもののモラルを前提に投資を進められたい、そのような行政指導を篤とお願いをしたいわけであります。  ずっと日銀なりあるいは大蔵省の答弁も求めてきておりますが、海外融資の中で不動産融資資金量が一体どの程度あるのかということを繰り返し質問をしておりますけれども、残念ですが明確な答弁が今日まで寄せられていません。いつまでもそういうことでいいのだろうか、私はこういう疑問があるわけでありまして、別に投資を規制するという立場ではありません、正常な投資なり相手国に喜ばれる不動産投資であるならばいいわけでありますけれども、感情を逆なでする、こういうことであっては相ならぬのではないだろうかと思うのですが、その点大蔵大臣の御見解を賜りたい、こう思います。
  102. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 たまたま私が就任いたしましてから非常に論議を呼びまして、私自身が記者会見等で意見を聞かれましたものの一つが今委員御指摘の問題でありました。代表的なものはロックフェラーセンタービルの買収のケースであります。このとき私がまず質問をされました内外の記者の方々に伺いましたのは、これは敵対的買収だっただろうかという一言でありました。そして、それはそうではない、だがしかしという皆さんの御質問に移っていった過程がございます。  こういう点で私ども考えてまいらなければならないのは、まさに委員が御指摘になりましたように、それらの投資が地域社会で受け入れられるものであるのかないのか、その地域における住民感情等も一つのポイントであることは間違いがありません。しかし同時に、私は、現実に海外に対する日本の不動産投資というものが、例えばアメリカをとりました場合に、貿易赤字や財政赤字を埋め生産性を高める等の効果があること等々は、十分評価をされるべきであると基本的には考えてまいりました。そしてそれが節度のある投資であることを願っております。  今委員に御指摘をいただきましたポイントの幾つかの点でありますけれども、それでは対外不動産投資というものを完全に大蔵省として把握をしているかと言われますと、海外における不動産業に対する出資などいわゆる直接投資額という意味では大体の傾向はとらえておりますけれども、我が国の企業あるいは個人が全体としてどれだけ海外の不動産を取得をしているかということを把握するのは極めて困難でありまして、そこまで詳細をつかんでおると言い切る自信はございません。何となりますと、それぞれの海外における居住者としての不動産投資などというものは、基本的にはこれは自主的判断の問題でありますし、これがつかまえられる状況にないことは委員も御理解がいただけると思うのであります。  ただ、現実に本当に投資先におきましてさまざまな議論を呼んでおりますことでありますから、注意深くその動きを見守る必要はございますし、企業みずからが現地の事情に配慮して適切に対処することが望ましいことであることは言うまでもありません。  そこで、金融機関の融資がどうなっておるのか、それに対する方針はということになりますが、金融機関の自主的な経営判断によって決定されることが基本でありますけれども、金融機関の公共性というものにかんがみまして、社会的批判を招くようなことがあってはなりません。海外不動産に係ります融資につきましても、やはり国際的に摩擦が生じるような投機的な土地取引、これは国内でも金融機関の倫理が問われる問題でありますけれども、現在こうした点が随分改善されてきていることは委員御承知のとおりであります。同じことは国際社会においても言えることでありまして、投機的土地取引など不適切な取引に金融機関がかかわることは慎むべきことであると考えております。  こうした観点から、当局としては、海外不動産に係る融資につきましても必要に応じて指導しているところでありまして、今後とも適時適切に指導してまいりたい、そうした基本方針を持っておるところであります。
  103. 草川昭三

    ○草川委員 海外における不動産投資もかなり投機的な投資あるいはそれに対する融資というのが行われているたくさんの実例があるわけでありますが、きょうは時間の関係上申し上げませんけれども、きょうの決議にもお願いをしたように、厳重な対応をぜひお願いをしたいということを私は要望しておきたいと思います。  それで、時間がございませんので、地方税収などが非常に豊かな地方自治体に対する補助金を大幅に制限をする、また過日の新聞等では、政令指定都市に対する制限もするということを大蔵省は方針として決めているということが言われておりますが、その概要あるいは削減方法等を御説明願いたい、こう思います。
  104. 小村武

    ○小村政府委員 過日の新聞報道につきましては私どもコメントする立場にはございませんが、御指摘の富裕団体向けの補助金等に係る調整措置につきましては、私ども予算編成上重要な課題と考えております。ただ、内容につきましては、相手もあることでございますので、今後、予算編成過程で関係省庁とも十分検討して成案を得たいというふうに考えております。
  105. 草川昭三

    ○草川委員 この削減方法について、既に一部新聞報道等に出ておりますけれども、確かに相手の団体との関係もあるわけでありますが、これはかなり具体的な年度ごとの計画を持って削減をするのか、もう一度御答弁を願いたいと思います。
  106. 小村武

    ○小村政府委員 現在関係省庁と話し合いをしておりますが、具体的にどのような中身になるかという点につきましては、まだここで申し上げる段階ではございません。
  107. 草川昭三

    ○草川委員 あと二問、簡単な質問をしたいと思います。  警察庁がお見えなので、最近JR総連の組合の幹部の方々の暴力事件で大変な被害が生じております。暴漢等に襲われて重大な事故が起こっているわけでありますが、残念ながら今もって犯人が逮捕されていない。かかる事件というのは、我々も非常に社会的な関心を持っておるわけでありますけれども、この新聞報道等を読んでおりますと、内ゲバだというような報道がなされておりますが、必ずしも内ゲバという問題ではないのではないだろうか。私は、JR総連の労働組合の性格等を見ておりますと、国鉄再建という言葉はなくなったわけでありますが、民間になって非常に熱心な再建の努力をしてみえる労働組合の団体ではないだろうか。その幹部が襲われたということを内ゲバ的な報道をするということは、組合の名誉にとっても大変問題があるのではないかと思うのですが、そういうことも含めた警察庁の見解をお願いをしたいと思います。
  108. 伊達興治

    ○伊達説明員 御指摘のように、JR総連の役員の方が襲撃されて亡くなるという事案が最近発生しております。その前にも関係者が何人か襲撃され重傷を負ったり殺害されるという事件も起きているわけでありますが、こうした事件は、俗に過激派といいますか極左といいますか、そういう中の中核派とか革労協狭間派とかそういう連中が敢行したものであります。一番最近に埼玉で起きた事案につきましては、埼玉県警に捜査本部を設けて鋭意捜査中でありますが、これまでにわかった点につきましては、革労協狭間派というのが犯行声明を出しているということ、それから現場から約三キロ離れたところで逃走用の車両を燃やしていること、こんなことがわかっております。  一般的に申し上げまして、こうした極左が行うテロ、ゲリラ事件につきましては、敢行しているのが秘密部隊であります。厳しい規律のもとで訓練されておりまして、お互い同士の顔も知らないというそういう連中であります。しかも、犯行を行うについては事前に調査活動を行っております。実際、犯行を行う者は七、八名のプロの者なのですが、そのほかにも何十名かそれを支えるいろいろなグループがおりまして、綿密な調査を行い、攻撃する相手がどんな行動を平素しているか、あるいはどこで襲撃すべきか、あるいはどういうふうに逃走していくべきか、そんなことをいろいろ詰めた上で、周到な計画のもとに事件を敢行しております。  また、犯行を行うに際しては顔をヘルメットやマスクで覆ってみたり、先ほど言いましたようにあるいは逃走用の車両を燃やしてしまうというように、現場に痕跡を残さないようなやり方をやっております。また、周辺の電話線を切断して通報が直ちにされないようなそういう措置もとっております。このように逃走を容易にし、しかも徹底した証拠隠滅工作をしておりますので、捜査に当たって、事件を解決するに当たって大変難航しているというのが現状であります。  しかしながら、警察としましては、引き続き国民の皆様の協力を得つつ事件の解決に努め、あるいは極左の根絶に向けて総合的対策をとってまいりたいと思っているところであります。  たまたまでありますが、昨年九月二十一日には、千葉県の収用委員会の会長が中核派というのに襲われて重傷を負ったという事件がありましたが、この件につきましては、先週二名の者を逮捕しております。そのほかの未解決事件につきましても粘り強い捜査を継続して、解決を目指していく所存でございます。  それから、内ゲバというような問題についての御質問でございますが、今回の事件の被害者もJR総連の役員をしている方であるということは十分認識しております。ただ、犯行を自認しているのが革労協狭間派と見られるわけであります。記者会見の席あるいは革命軍の軍報、こういう中で主張しているわけでありますが、攻撃を加えたのは、対立するセクトの一員であるから攻撃を加えた、こういうふうに主張を重ねているわけであります。  私どもとしましては、今回の事件について、被害者がどうこうということではなしに、加害者側が対立セクトをねらったというその自認に基づきまして、分類する上で内ゲバの特質を備えた事案であるというふうな理解もしているわけでございます。こうした点について御理解を賜りたいと思います。
  109. 草川昭三

    ○草川委員 今のような経過はそれなりに私どもも承知をしておるわけでありますが、私が申し上げておりますように、JR総連というのは国鉄再建のために大変な努力をしている立派な労働組合だと私は思うのです。そういう方々の被害を、事件をどのように社会に発表するかということになりますと、十分配慮をしたことを考えていかないと、日本の将来の運動のためにも問題があるという意味で私は主張をしているわけであります。  大臣、時間があとわずかですから、結構です。どうぞ。  そこで、時間があと五分よりございませんので、最後に通産省と大蔵省の小口融資についての見解を賜りたいと思います。  具体的な事例は本日は申し上げません。一つの問題提起として、車の販売の場合に、自動車販売会社の営業担当の、この場合は所長でございますが、在職中ににせの車のクレジット契約をでっち上げて、客にかわって信販会社から一括して支払われる車代金を着服をした、こういう事件があるわけでありますが、そのいろいろな経過の中で、信販会社の支払い方法、あるいは契約をどのように確認をするのかということを聞きたいわけであります。  一般論としてこれは通産省にお伺いをしますが、正式に購入意思を持って締結された割賦購入あっせん契約において、販売業者から商品の引き渡しがないことを理由に割賦購入のあっせん業者からの支払い請求を拒むことはできるかどうか、まずこれをお伺いしたいと思います。
  110. 梅村美明

    ○梅村説明員 割賦販売法の第三十条の四におきましては、消費者保護の観点から、購入者は割賦購入あっせんの方法により購入した商品の支払い分の支払いの請求を受けたときは、「販売業者に対して生じている事由をもって、当該支払の請求をする割賦購入あつせん業者に対抗することができる。」いわゆる抗弁権が接続する旨の規定が設けられております。したがいまして、購入者が割賦購入あっせん業者の支払い請求を拒むことが信義に反しない限り、御指摘の商品の購入者が購入の意思を持って締結した割賦購入あっせん契約におきまして、販売業者から商品の引き渡しがないことを理由に支払いの請求を拒むことができるものと考えます。
  111. 草川昭三

    ○草川委員 それを理由に支払いの請求を拒むことができると考えるということを今答弁がありましたので、また具体的、個別の問題については通産省とお話をしたいと思います。  そこで最後の質問になりますが、いわゆる信販会社からの消費者に対する契約意思の確認方法を確実に行うということが大切だと思うのですが、通産省にお話を聞きますと、ただいまのところ電話確認が一番いい、こう言っておるわけです。私は、この電話確認のあり方というのは、一面確かにそういう問題があるかもわかりませんが、いささか軽過ぎるのではないか、こういう判断があります。  そこで、これは大蔵省に対してお伺いをしますが、金融機関における小口融資の手続というのはかなり慎重なあり方でやっておると思うのですが、大蔵省はどのように指導しているのかお伺いをします。
  112. 土田正顕

    ○土田政府委員 金融機関は、かなり大きな銀行でありましても、近ごろは小口の消費者ローンをやっておるわけでございますが、ここで代表的な例につきまして融資手続を御説明いたしますと、申し込みの受け付け、その次に審査、それから契約、カードローンの場合、それからカードの交付というような段階に分かれるわけであります。  その中の申し込みの受け付けのところでございますが、これは必ず申込者本人から申し込みを受け付ける、そして本人確認のために、運転免許証、健康保険証、印鑑証明書などの提示を求め、本人であることをチェックをいたします。銀行によっては住民票の謄本を徴求するケースもあると聞いております。それからさらに、返済能力その他の観点から所得を確認するために、源泉徴収票、納税証明書、給与証明書、住民税課税決定通知書などのいずれか一つを徴求するというようなことで、返済能力をチェックするということを聞いております。  あと、審査、契約と続くわけでございますが、契約締結後、本人にこのカードローンのカードを交付しますときには、郵送によっております。これによりまして、本人がいなければそのカードは戻ってくるというような仕組みにしてあるわけでございます。  以上の手続が決められておるようでございますので、私どもとしては、本人確認のために十分な手当てを行っているものと思っております。
  113. 草川昭三

    ○草川委員 時間が来ましたのでこれで終わりますが、通産省の場合も、信販会社からの消費者に対する契約意思の確認は電話でやるということにはなっておりますけれども、今の大蔵省の小口金融等の現状も踏まえて、今後契約をめぐるトラブルを招かないようにぜひしていただきたいということを申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。  以上です。
  114. 中村靖

    中村委員長 正午から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十時四分休憩      ────◇─────     午後零時一分開議
  115. 中村靖

    中村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。大矢卓史君。
  116. 大矢卓史

    ○大矢委員 大臣、御苦労さまでございます。  まず、信用保証協会の連合会から専務さんに来ていただきまして御苦労さんでございます。  私が中小企業の問題を中心にいろいろと国会の中での論議をさせていただいております。その中で、私がなかなか難しいなと思いながらこの解決をしていきたいと思っておりましたことが根抵当についてであります。  そこでまずお伺いをいたしたいのは、信用保証協会で扱っております根抵当と抵当権が現在どういうような扱われ方をしておるのか、まずそのことについてお伺いをいたしたいと思います。
  117. 島津邦夫

    島津参考人 私どもといたしましては、抵当権の設定に当たりましては、基本的に担保提供者の御選択によりまして普通抵当か根抵当かを決定いたしております。
  118. 大矢卓史

    ○大矢委員 選択によるといいますけれども、その説明がどのようになされておるのか。現実に私が経験をいたしておりますところによりますと、ただ単に根抵当の方が便利ですよとか、毎回切りかえをしなくてもいいからその手数料が要りませんよとか、いろいろなことで、あたかも根抵当がすべて有利なのだから、お金を借りる場合には根抵当でやりなさいというようなことで窓口でやっておったというのが、現状までの経過であります。  そこで、根抵当で心要な手形の割引でございますとかいうものにつきましては、これはなるほど、月末月末で決済がされていきますから、またそれを、枠を利用していくということがございますので、その根抵当の必要な金融については根抵当をつけていくという原則をまずお決め願いたい、それをまた確認していただきたいと思いますが、いかがですか。
  119. 島津邦夫

    島津参考人 中小企業の御利用の場合は、先生おっしゃいました手形割引などは当然でございますが、今後の反復継続的な協会保証の例が相当多いわけでございますので、そういう点から根抵当が多いわけでございますが、しかし一方におきまして、普通抵当権が適切な場合があるわけであります。それぞれの協会の窓口において十分説明を申し上げた上で御選択をいただいている、そういうふうに承知をいたしておるところでございますが、もし仮に、本来普通抵当権で行うべきところを根抵当権で対応しているというところがございましたら、そのようなことがないように努めてまいりたいというふうに存じております。
  120. 大矢卓史

    ○大矢委員 根抵当権で必要なときというのは、私申しましたように、反復反復でやるからといいましても、これは普通の場合には三年なり五年というものが経過をしないと、次の金融に入れないわけでありますから、その間、今私が問題にいたしておりますのは、根抵当の場合には、抵当権と違いまして限度限りだということで、その限度につきましても従来の考え方でなくして、二〇%増しをとるということを連合会の方で指導していらっしゃるということでございますが、そのとおりですか。
  121. 島津邦夫

    島津参考人 この根抵当権の設定に際しまして、根抵当権の設定のときの極度の定め方といたしましては、昭和四十六年の根抵当法の制定のときにおきまして、連合会が一応の目安として保証元本の二割ないし三割増しが適当であるとしたところでございますが、現在の信用保証協会の取り扱いといたしましては、原則としてこれを踏まえて運用をしておりますものの、中小企業者の能力いかんによりましてはこの目安を下回ったような取り扱いを行っている場合もあるわけでございます。
  122. 大矢卓史

    ○大矢委員 まず根抵当が必要であるかどうかという判断が、今おっしゃいましたように反復しているから必要なんだということは、やはり手形割引のような形におきましては確かに必要だと私は思います。それはもう当然そうあるべきだと思います。それによって、毎月毎月そういう繁雑な手続をしなくても、次から次へとその保証の限度内において借り受けができるということでございます。これは必要でございますけれども、そのほかのものにつきましては原則的に抵当権でいいのではないか。その説明をして、どちらを選択されるかということになりますと、当然その利害というものをきちっと説明をされましたら、抵当権でやっていただくということになると思いますけれども、それ以外にどうしても根抵当の方が有利だということがあるならお教えを願いたいと思います。
  123. 島津邦夫

    島津参考人 根抵当の方がいい場合と申しますのは、先ほど申し上げましたように、手形割引などは当然のことでございますが、金銭消費貸借、あるいは手形貸し付けなどの取引におきましても、反復継続的に協会保証を利用されるというような場合には、根抵当の方が便利じゃないかというふうに考えております。
  124. 大矢卓史

    ○大矢委員 だから、どういうふうに便利なんですかということなんです。一回一回つけることによってどういう不便があって、またそういうことをつけておくことによってどういう便利があるのですか。そういうことだけで、私がもしお金を借りに行く場合に、抵当権の場合はこうですよ、根抵当の場合はこうですよということできちっとした説明をなさらないと、判断にならないわけです。私自身も今の判断だけでは判断できません。どういうふうに説明をされて、本人がお決めになるということになるのか。私は、そういうことはおのおの違ったことで説明をされておると思うので、今言いますように、手形割引等の問題は当然根抵当でおやりになった方が便利だ、しかしそれ以外については原則抵当権でやるべきだ、そして、どうしても本人が根抵当したいという申し入れがあるものについては根抵当にすべきだということを言っておるのですが、いかがですか。
  125. 島津邦夫

    島津参考人 これはケースによりましていろいろあると思いますが、根抵当権の設定をした方が継続的に借りていく場合におきましては一回で済みますし、登録免許税も一回で済むわけでございます。それと、普通抵当を利用した方がいい場合ともちろんあるわけでございまして、これは、中小企業者が特定の制度保証を一回だけ取引を希望してその後の保証取引をする可能性が少ないというような場合、あるいは担保の提供者がこれから先保証協会との間に余り継続的な保証契約を望まないというような場合であるわけでございます。両方のケースについてやはり十分に御説明申し上げまして、そして、その中小企業者の御選択にお任せするというのが一番適切ではないかというふうに思っております。
  126. 大矢卓史

    ○大矢委員 登録税にいたしましても、普通の場合の登録税とは違うのでしょう。保証協会は、それだけの恩典があって、非常に安い登録税で済むはずであります。そしてまた、今言われましたように、反復と言いますけれども、やはり三年ないし五年という間は、既にお借りいたしておりますからその担保についての金額はそれ以上はお借りできない。それを反復反復といって、恐らくこれが三分の二ぐらいまで返さなければ次のは借りられないわけでありますから、当然そういうものがしょっちゅうしょっちゅう、毎月毎月の反復ならいざ知らず、それがそのことによって二割増しをとられるということ、これは非常に不合理だ。そして、当然二割増しのその返済、借りました翌日からこれが返せなくなったというような状態はほとんどないわけでありまして、過去に資料をいただきましたその中でも、一年間未満に返せなくなったような実情は〇・一%だと言われる。その〇・一%のために、全体の根抵当を設定しておるそれらの人々が二〇%もの余分な担保をとられるということになりますと、普通銀行では、いわゆる金融機関では評価額の六〇%だ、しかし公の場合には八〇%で見ておりますから、公はそれだけの中小企業に対して政策的に努力をしておるのだという説明が従来の説明でありましたけれども、八〇%であっても、それの二割増しをとるということになったら銀行と何ら変わらないわけであります。現在、そのむちゃくちゃな民間の金融というのになってまいりますと、物権の丸々一〇〇%は出す、またそれ以上に売り値の満額まで貸しておるというようなばかげた金融機関がございましたが、それはまた別にいたしまして、一般に言われておりますのは、六〇%を貸しますよ、しかし公の機関ですから八〇%ですよと言いながら、その二〇%増しをとっていくというふうになりましたら、そういう担保力をフルに活用していく中小企業にとりましては大変つらい。従来の、政府が中小企業向けにやっておった金融とは違う形になっていく。そこでやはり、今申しましたように、どうしても必要なところだけはそういうものをおつけになったらいいですけれども、それ以外の原則抵当権――なぜそういうことを申しますかといいますと、抵当権というのはやはりこれは返していったら減っていくわけであります。しかし、根抵当というのは返していっても減っていかないわけであります。現実に減っていかない。そういうことをよく御存じですね。減っていかない。そうなりますと、いつまでもそれが縛られていく。そして、今言いましたように、五年物でしたらその三分の二を返していった段階で次の金融の申し込みができるでありましょうし、また三年物でしたら二年たたないとできないわけであります。その二年間の間だけそれだけのものが活用できないわけですね。そういうことのメリットの方がそういうもので費用を負担することよりもやはり非常に私は大きいと思いますし、そういう現状を踏まえた中で、原則的に抵当権でいくべきだ。そういう指導をなさらないと、ケース・バイ・ケースだと言いますけれども、今あなたが御説明願ったような事情では、本当にその利益を守る側としたら、根抵当権の方がいいという判断はどこにもないわけであります。それでもなおかつ、ケース・バイ・ケースだと言いながら、十二分な説明をしないし、また借りる方といたしましたら、根抵当も抵当もどういう形のものであるかということを、私もこういうものを勉強したからわかりましたけれども、なかなかわからなかったわけであります。大臣、そういうことをおわかりでございますか。
  127. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 残念ながら十分な知識を持っておりません。
  128. 大矢卓史

    ○大矢委員 専門家の大臣ですらおわかりにならないことを、一般の中小企業の方に説明した、説明したということでなしに、やはり抵当権は抵当権として設定していくという原則をまずお決めになった方が、そして例外的にどうなんだという議論をした方がいいのではないですか。それはあくまでも皆さんの選択に任すと言いますけれども、今おたくが説明したことで、大臣が聞いておられてわからないと言うのですから、その長にあられる方がわからないことを、たまたま私はこれを勉強させていただいたからわかりますけれども、一般の人がお金を借りたい、こうしなさいよ、今おっしゃったように、当初は必ず費用がかさみますよということを言います、そしてこれの方が便利ですよと言います。そうじゃないんです、結果的には。そういうことを私も勉強してわかりましたから、それは改むべきではないかということであらゆるところで主張してきて、きょうは、すべてのところを通過いたしますと最後は連合会でお決めになっておるということでありますから、連合会でお改めになったらどうですか、改めていただきたいということを申し上げておきます。そういう原則をお決めになることがなぜぐあいが悪いのですか。
  129. 島津邦夫

    島津参考人 普通抵当権か根抵当権かについては、それぞれ特色があるわけでございますから、どっちが原則でどっちが例外というようなことじゃなしに、やはりいろいろなケースに応じて十分御説明申し上げまして、その上で選択をしていただくというのが適当ではないかと私は考えるわけでございます。
  130. 大矢卓史

    ○大矢委員 そのとおりなんですよ。しかし、今あなたが説明することで大臣もわからないと言っているのですよ。お聞き取って大臣が納得して、それは当然わかりやすく説明したから本人が選びなさいということならこれも一つの考え方ですけれども、あなたが説明できないことが窓口の人が説明できるわけがない。だから、金融機関として原則的に――現状は、おたくの方からいただきました資料によりますと、やはり抵当権よりも根抵当の方が圧倒的に多いという。それは、理解をして根抵当の方がいいから根抵当をつけたのでも何でもないと思うのです。今ですら理解できないのに、あなたの説明では私も理解できないのですね。それなのになぜそういうことに。だから、原則的に私は抵当権でいくべきだというのです。現状のままで、これから説明をしてこれがどう変わりますか。抵当権の利点、またその不利益、根抵当の利点、不利益というものを全部説明して、納得して自分はどうすべきだというその判断ができますか。あなたの説明では我々も納得しないし、また、あなたが説明ができないのに、なぜ窓口がそういう説明がついて本人に選択さすというようなことを言えるのですか。原則的にやはり抵当権――何も抵当をとるなというんじゃない、抵当は抵当としておとりなさいというのです。その抵当をとることがなぜ原則ではいけないのですか。本人の選択、もちろん最後は選択ですよ。ですから、いや私は抵当権よりもこの方が便利だからこれやらしてもらいますよ、根抵当やらしてもらいますよという方はそれはそれで結構です。しかしそれがなぜ言えないのですか。
  131. 島津邦夫

    島津参考人 私、窓口で十分説明すると申し上げましたが、窓口には実務家が、実務に詳しい人がおるわけでございますから、その人たちが十分に御説明申し上げることと思います。その場合に、普通抵当がいい場合には当然普通抵当になさったらどうかということを申し上げることと思います。あくまでもこれはお借りになる方の御選択だと私は思うわけでございます。
  132. 大矢卓史

    ○大矢委員 それはもう当然借りる人が選択するのはわかっています。ただ、それをどちらがいいかという判断をする場合に、私は今やっておられる場合には手形の割引については根抵当がよろしいと言っているのですよ。これは、原則的に手形割引は根抵当でやるべきですよ、便利なんですから。ですけれども、普通の有担保の貸し付けについては抵当権でやるべきだ。よほど本人の希望で根抵当でやってほしいという人があれば別ですけれども、それでなければ抵当権でやるという姿勢で窓口で説明をしないと、今のような説明では、窓口の人が非常に詳しい人がおるといいますけれども、それならこういう結果は出てこないと思うのですね。何のために自分のそういうなけなしの担保でもって一生懸命中小企業の人が資金繰りをやっていくか、それを二割も余計に縛っていくというようなことをやるはずがない。そういう現実に窓口で困っていらっしゃる姿というものをやはりあなたは知ろうとしない。私どもはそのためにこの国会においてそれを議論しているのです。このことを仲間の人たちに言ってもどうしてもわかっていただけない。それは私が経験してやったことがあるからわかるのです。だから、その経験に基づいてあなたに言っているのです。私自身はまた勉強もさせてもらいました、ですからわかりますけれども、ほかの人にはわからない。そういうことを、これは本人に任すのは当たり前なのです。御本人がこうしたいということならばそれでいいのですよ。特に今の場合、一番便利なのは手形の割引等についてはそれは当然根抵当でやられた方が便利なのです、これはわかるのです。しかし普通の場合に根抵当でやられるのが便利だという、それをどうしても便利だ、便利だというけれども、決して私は、便利よりも二割以上拘束されていることの方が中小企業者はどんなにつらいか、そういう現状を申し上げておるのです。  これだけ申し上げましても、なおかつそういうことで連合会はやろうとしないのか、いかがでございますか。
  133. 島津邦夫

    島津参考人 根抵当を利用する場合に手形割引が一番便利である、先生おっしゃるとおりでございますが、しかし、手形割引の場合でなくても、手形貸し付け等の場合におきましても、これからずっと反復的に、継続的に協会の保証を利用しようという方々にとっては、根抵当の方が便利な場合がやはり多い、それを望む場合には当然根抵当の設定になることではないかと思いますが、どうでしょうか。
  134. 大矢卓史

    ○大矢委員 大臣、これは今言いますように、根抵当は根抵当でいいと思う。ただ、二〇%が多い少ないは時間がございませんからそこまでいけませんけれども、今おっしゃるように、本人が希望してそれの方が便利がいいというものについてはそれでいいのです。しかし、現状は根抵当の方が圧倒的に多いという答えが来ているわけですから、私の今までの経験からすると、原則抵当権で、御本人が希望される場合については根抵当、そういうことぐらい確認ができないというのは僕はおかしいと思うのです。  大臣、なかなかわかりにくいことかもわかりませんけれども、お聞きになっておられて、これからまた、どうしてもということなら今後検討していただいて結構ですけれども、やはりそういう実際の、せっかく中小企業向けにおのおの努力していらっしゃって、それが実らないということになりますと大変残念でございますので、大臣から御所見を承りたい。
  135. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 まず第一に、私は、委員が実態を御自分でお調べになった上でこの議論をしておられると理解をいたします。また、信用保証協会のお立場は信用保証協会のお立場としてそれなりに御自分たちの業務の実際の遂行の上からのお話をしておられるのだと思うのです。しかし、正直私自身が自分の経験のあることではありませんだけに、今の御議論を伺っておりまして、要は利用される、頼っていかれる方々がいかにすれば一番わかりやすく、しかも必要な資金の調達が可能になるかということでありますから、より勉強をしてもらうべきことかな、そのような感じを持って聞いておりました。
  136. 大矢卓史

    ○大矢委員 時間が参りましたので、終わらせてもらいます。
  137. 中村靖

    中村委員長 次に、野間友一君。
  138. 野間友一

    ○野間委員 自民党の見直し案については午前中からいろいろ論議がありました。参議院選挙であれだけ手痛い敗北を喫したわけですから、廃止をするのは当然だと私は思っておりましたが、この選挙に対する審判への挑戦だと思いますし、それから中身をずっと調べてみますと、これは国民への影響というものは本当に微々たるものではないかというふうに私は思えて仕方がないわけです。目玉の中には、食料品についていろいろ軽減税率あるいは小売段階の非課税というのがあるようですけれども、いろいろ計算しますと、せいぜい食料品について下がっても一%前後じゃなかろうか、これに内税方式一本化ということになりますと、むしろ端数が切り捨てられて、上がりこそすれ下がることは難しいのではないかというふうに思えて仕方がないわけであります。  そこで、最初にお聞きしたいのは、大蔵大臣が参議院の税特で我が党の近藤議員の質問に答えまして、軽減税率、つまり一・五%程度あるいはそれに多少上乗せした程度の価格の下落になると思う、こういうふうにお答えされております。これは、いろいろそうかどうかということで調べてみたのですけれども、わかりません。その根拠についてまずお知らせいただきたいと思います。
  139. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 まず第一に、先般の参議院選挙を振り返りますならば、我が党も大敗北を喫しました。社会党さんのひとり勝ちであったということで、私は、自由民主党だけが参議院選において議席を減らしたわけではない、そして、その中において我々は非常に厳しい政治不信の風にさらされてきたという理解をいたしておるということをまず申し上げておきたいと思います。  そこで、自由民主党案といいますか、基本方針を示されましたものを、我々はこれを十分勉強させていただく、同時に、政府税制調査会の御審議等も踏まえて平成二年度の税制改正において政府の見解を申し述べるということも繰り返し申し上げております。  ただ、そこで自由民主党案の中について私がお答えを申し上げるということも本当は大変奇妙なことだと思いますけれども、今回の見直し案の中におきましては、酒類を除きます全食科品につきまして小売段階における譲渡を非課税とすると同時に、生産及び卸売段階における譲渡について一・五%の特別低税率を課す、設定するとされておるわけであります。正確な試算をしたわけではございませんから確たることを申し上げることは差し控えますけれども、少なくとも一・五%の特別低税率の設定によりまして卸売業者が小売業者に譲渡する価格というものは一・五%分低下をいたします。さらに卸売業者から小売業者への販売というものが外税方式がほとんどでありますから、明確に一・五%の値下げは行われることになります。第二の効果は、小売段階の譲渡が非課税となることによりまして、スーパーでありますとか百貨店でありますとか、小売業者のマージンの三%相当額の納税が不要になるわけであります。  この二つを合計いたしますと、総体的に見まして一・五%以上の値下げ効果というものは期待できるということでありまして、近藤委員は、御自身のあるいは共産党の推計による数字かもしれませんが、そんなに下がらないという御議論をされましたけれども、私はそうは考えておりません。
  140. 野間友一

    ○野間委員 今大臣がるる述べられましたけれども、その中で欠落しておるのは小売の物件費です。これは三%が依然としてかかってきます。これがカウントの中に全く入っていないということと、それから、従前の免税業者が丸々三%転嫁しておればともかくとして、二・四%の転嫁ですから、そういうものを考慮しますと、私どもの計算では一%強下がるだけということになろうと思うのですが、いかがでしょうか。
  141. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 その折にも私はお答えを申し上げましたけれども、自由民主党案についての御疑念は、本来、自由民主党に対してお聞きをいただくべきことでありまして、政府としてこれを云々する場にはございません。また、政府が今その数字を計算いたしておるわけではありませんが、ただ、お尋ねでありましたから先刻申し上げたようなことをお答え申し上げました。
  142. 野間友一

    ○野間委員 課税業者の場合、物件費には三%かかりますし、仕入れた物については既に一・五%かかっておる。これについて、経営指標からずっと割り出してみますと、物件費が〇・九%、仕入れについては〇・七五%、足しますと一・六五%、これを転嫁しなければ損をするということになろうと思います。そういたしますと、従来三%でありましたから、そこから転嫁の一・六五%を引きますと一・三五%の値下がりと、理屈の上ではそうなりますね。それから免税業者の場合は、転嫁しているのは今まで二・四%です。しかし、今回の見直しを前提として考えてみた場合に、いずれにしても一・六五%が転嫁に必要ですから、従来の二・四%から引きますと〇・七五%しか下がらない。これをトータルして計算しますと、しかも、今の課税業者と免税業者の売り上げの割合を五〇、五〇、大体そういう指標になっておると思いますが、それで計算しますと一%強という数字になるわけです。ですから、大蔵大臣が言われた一・五%ないしはそれを上回るというのはどうもおかしいと思うのです。  それで、大臣がおっしゃいましたけれども、これは確かに自民党案です。しかし、これに対して参議院でも具体的な数字を挙げてお答えになっておるわけですから十分検討されておると私は思いますが、いかがですか。
  143. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 申し上げておりますように、確かな積算をしているわけではございません。ただし、そのときにも申し上げましたように、今御議論になりました中でも、私ちょっと首をひねっておりますのは、卸売業者から小売業者への移動に伴って一・六五%と言われましたか……(野間委員「一・五%です」と呼ぶ)一・六五%という数字はどこでお使いになりましたでしょうか。というのは、一・五%の税率を超えた部分の問題がそのときにも御論議になったようでありますが、その部分は還付の問題、そのような議論もしたように思いますが……。
  144. 野間友一

    ○野間委員 いや、還付は小売価格に直接影響しないわけで、私が一・六五%と申し上げたのは、小売の物件費については依然として三%かかるわけでしょう、ですからその分と、それから仕入れの分については一・五%になりますが、それを計算しますとトータルで一・六五%を転嫁しなければ損をする、こういう趣旨で言ったわけです。
  145. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 ですから、一・六五%を転嫁しなければと言われますが、特別低税率は一・五%であります。そして、大変恐縮でありますけれども、私は、参議院でも、数字そのものを手元にお知らせをいただいたわけではなく、共産党としての試算を大変とうとうと述べられまして意見を求められました。ですから、そのときに私は感じとしてお答えを申し上げてきたわけでありますが、自由民主党案につきまして、私どもがそれを一定以上お答えする立場にはないものと心得ております。
  146. 野間友一

    ○野間委員 いろいろ計算いたしましたけれども、これはもう誇大広告だというふうに思えて仕方がないわけです。  それから食料品に関する税の減収、これについても新聞報道等ではいろいろ書かれております。トータルが九千九百億円安くなる、つまり税の減収になる、こういう数字が出ておりますけれども、大蔵大臣、この事実を確認されるかどうか。
  147. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 自由民主党の計数としてお示しになりましたものは、確かに飲食料品で九千九百億円となっております。しかし、今私どもは自由民主党の御試算を計数の精査をしておるところでありまして、現段階では何とも申し上げられないことを御理解いただきたいと思います。
  148. 野間友一

    ○野間委員 どうも数字が大き過ぎると思うのです。今申し上げたように、食料品については年間四十兆円、これは免税業者の分も含めてということになります。それから酒、外食を除いております。私どもの試算では、これの一%が下がるだけでありまして、国民の負担減は四千億円にしかならないと思うのです。仮に大蔵大臣がおっしゃるように一・五%下がるとしても、これはトータルいたしますと六千億円の減収でありまして、九千九百億円とはほど遠いと思います。これはいかがでしょうか。
  149. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 大変失礼でありますが、何回も同じことを申し上げさせていただきます。  自由民主党の数字が先ほどからいろいろ御批判をされておりますけれども、自由民主党の税制調査会の方々にその旨をおっしゃるならば、自由民主党として誇大広告などと言われないだけの反論を当然されるであろうと私は思いますが、政府としては今精査をさせていただいておるということを申し上げておるわけでありまして、一方的に誇大広告というような御批判をされるということは、これは政党同士の間におけるお話し合いとして御論議をいただきたい部分、そのように理解をいたします。
  150. 野間友一

    ○野間委員 いや、お聞きしておるのは、これが出まして、それで大蔵省もずっと、新聞では一緒に並行して作業を進めたという報道があります。それはそれで別におきましても、これが出た、しかもこれが思い切った見直しであると評価をされておる以上、国民の立場から見て、それがどれだけ税の減収になり逆に国民が利益を受けるのかということを、大蔵省としては十分に検討、精査されておるのが当然だと思いますので、こういう数字を挙げてお聞きしておるわけであります。それで、今申し上げたように、もう繰り返しませんけれども、九千九百億円というのは非常に膨大な数字で全然合わないと言わざるを得ないと思うのです。  次に、税額表示の問題ですが、これについては総額表示方式ということがこの骨子の中に書いてあります。  そこでまずお聞きしたいのは、総額表示方式とは具体的に一体どういうことになるのか、概念としてお聞かせいただきたいと思います。
  151. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 総額表示を申し上げます前に、私自身が政府の責任者として自由民主党の基本方針が提出されました際に評価いたしました言葉を、そのままに繰り返させていただきます。  基本方針においては、消費税の見直しについての基本的考え方と具体的内容が示されているが、その内容は、税制面のみならず広く歳出面や他の制度面にも及び、かつ、消費者と事業者の双方の立場を十分に考慮されたものとなっており、国民心理と税の理念の両面の調和に腐心されたものとして、その御努力に心から敬意を表するものである。  今、委員はいろいろ形容詞をつけてお述べになりましたけれども、私は形容詞はつけておりません。これが私自身が読み上げました記者会見における内容そのものでありますから、その点についてはそう御理解いただきたいと思います。  そこで、総額表示という点についてのお話でありますが、例えば、私は一昨年久しぶりに本屋に参りました。その本は、本体価格一千円、消費税分三十円、一千三十円、そういう表示がなされておりました。いずれにせよ、総額表示というものの意味は、要するに消費者の方が自分の求める商品を自分の手元に引き取るために幾ら支払うかという金額を明示するわけでありまして、その内側に、例えば本体部分を表示されるか、あるいは消費税額を表示されるか、あるいは双方をお書きになるか、いろいろなやり方はあろうと思います。私が購入いたしました本の場合は、括弧内には本体価格が書かれておりました。こういうやり方というのは、私自身も一つの考え方としていい考え方ではないかと思っておることであります。
  152. 野間友一

    ○野間委員 この方針の中では、今も言われたわけですけれども、事業者に対し商品の最終的な支払い額を明示するよう指導、普及に努める、こういう記載がありますね。そうすると、最終の商品の価格が、要するに値札があればいいわけで、税額は必ずしも明示しなくてもいい、どちらでもいい。  今本屋のお話がありました。確かに本は本体価格と税額をトータルして金額がありまして、内訳が書いてありますね。しかし、総額表示方式というのは、税額を記載しなくても、トータルとして幾らということだけでも総額表示方式になる、こういうふうに方針では受け取られるわけですけれども、それはそういうことですか。
  153. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 どうも大変ひねって御理解をいただくようでありますが、総額表示というものは、確かに最終的に幾ら払えばその商品が手に入るか、それをあらかじめ表示することが消費者の利便に供するのではないか、利するのではないかという消費者保護の発想に立つものであります。いわゆる内税方式、外税方式という議論とは別の観点に立つものと理解をいたしておりまして、わざわざ私が誤解のないように、一昨日買いました本を例示で申し上げておるとおりであります。
  154. 野間友一

    ○野間委員 いや、本の場合にはそうなっておるのですよ。しかし、骨子を見ますと、そうすると総額表示方式というのは、この中には、税額として記載をして、消費者がそれは幾らかかっておるかということを認識し得るというような表示をなさるかどうかです。
  155. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 どうも、自由民主党の書かれましたものに御質問をいただきますのは、私としては大変骨の折れることでありまして、自由民主党の基本方針におきましては、「消費者との取引においては、消費者の利便等に資するため、事業者に対し各商品の最終的な支払額を何らかの形で明示(総額表示)するよう指導を行い、普及に努めることとする。」となっております。総額表示というものは、今申し上げておりますように、最終的に消費者がその商品を受け取るために支払う金額の総体を明示する、その中におきまして税額を括弧書きでお書きになるのか、あるいは本体価格をお書きになるのか、その双方をお書きになるのか、もともと表示のやり方について法律が定めておることではございませんから、消費者と販売する方々がみずからの商品について一番好ましい形態を選択されるでありましょう。
  156. 野間友一

    ○野間委員 いや、総額表示方式というふうにここに表現がありますから、その中身についてお聞きしておるわけです。そうしますと、税額を必ずしも記載しなくても総額表示方式にもとることはないということになるわけでしょうね。
  157. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 ですから、自由民主党の基本方針については本来は自由民主党にお問いをいただきたいのであります。ただ、総額表示とおっしゃいますから、先ほどから繰り返しておりますように、その中に例えばトータルとしての金額以外に税額をお書きになるものはありましょう、本体価格をお書きになることによって引き算をすれば税額が出るようなお書きになり方をする方もありましょう、両方お書きになる方もありましょう、それはそれぞれの商品の性格にもよるでしょうけれども、結論は消費者の利便のために選ばれるものであると理解をいたしております。
  158. 野間友一

    ○野間委員 どうもかみ合いませんね。――いや、総額表示方式という概念がずっと歩いておりますからお聞きしておるわけです。  それじゃ聞きますけれども、大蔵省、この総額表示方式とはいかに、これについてお答えいただきたいと思います。
  159. 石坂匡身

    ○石坂(匡)政府委員 総額表示とは何かというお尋ねでございます。  これは、先ほど大臣からも総額表示とは何かということについてお答え申し上げたわけでございますけれども、消費者の側から見て最終的にお買いになる値段が幾らかということがわかる、そういうふうな表示をしてあること、これが総額表示というものの物の考え方であろうということは大臣からも御答弁申し上げたとおりでございます。
  160. 野間友一

    ○野間委員 そうしますと、この中には本体価格、それから税額というものを一切書かずに、要するにトータルで例えば千円なら千円という表示をするのも総額表示方式になるわけでしょうか。そうすると内税方式とは全く変わらないと思いますが、いかがですか。
  161. 石坂匡身

    ○石坂(匡)政府委員 これもただいま大臣から御答弁申し上げたことの繰り返しになるわけでございますけれども、あくまでも消費者保護、消費者がお買いになるときにどれだけのお金をお払いになればお買いになれるかという発想から、最終的な価格が表示してあるのがいいのではないかということでございまして、今おっしゃいましたようないわゆる内税方式とか外税方式とか、そういう観点を離れた物の考え方でございます。
  162. 野間友一

    ○野間委員 もっと率直に言ってほしいと思うのですよ。税額は記載しなくともトータルで最終の価格さえ記載されておったらよい、それも総額表示方式の中に入る、こういうことでしょう。
  163. 石坂匡身

    ○石坂(匡)政府委員 いわゆる内税万式のことをおっしゃっておられるのだと思うのでございますけれども、物の考え方が内税方式、外税方式ということとは全く別の観点から考えておるものでございますから、そこのところは若干お尋ねのことと私が答弁していることと食い違っておるわけでございます。
  164. 野間友一

    ○野間委員 どうもよくわからぬですね。  それじゃトータルの単価、例えばデパートに行きます、物が売ってあります、そこで消費税額も含めた例えば千円なら千円、これは最終的な消費者に売る場合の価格ですね、それでもいいということでしょう。つまり税金が見えなくてもいいということでしょう。
  165. 石坂匡身

    ○石坂(匡)政府委員 答弁の繰り返しになって恐縮でございますけれども、内税方式といいますものは何の税の痕跡もなくて完全に中に入っておるものが内税方式、それを念頭に置かれてのお尋ねだと思うのでございますが、私ども先ほどから御答弁申し上げておりますのは、消費者の側から見て、要するに幾ら払えばいいかということがはっきりしていること、それが総額の表示であるということを申し上げておるわけでございます。その総額の表示ということにつきましては、先ほど大臣も御答弁申し上げましたようにいろいろなバリエーションがあるだろうということを申し上げておるわけでございます。
  166. 野間友一

    ○野間委員 これは法律事項じゃないわけでしょう、いろいろなバリエーションがあるということですからね。そうすると、今まででありましたら税額が見えておったが、こういうことをやりますと税額が隠れてしまって、最終的には物の価格の中に税金が潜り込んで、それしか消費者は接することができないということになりますと、――大蔵省はいろいろパンフレットを出しておられますけれども、これで、税率アップの歯どめとしてのところでも「日々の買物で三%の税率が意識されており、消費者に痛税感があるので、国民のチェック機能が働きます。」、こう書いてあるわけです。しかし、今度の骨子を具体化する場合に、これは指導されるということのようですけれども、税額を見えなくされるということになりますと、今までの大蔵省が大々的に宣伝されたこれには相反するわけですね。痛税感は、三%の税率が意識されておる、だからこれがチェック機能を果たすのだということになるわけですから、総額明示方式というのはまさしくこういう今までの具体的な税の金額が国民から隠れてしまうということになるわけで、これはまさしく内税と変わらない。また一般的な概念としても、総額表示方式の中には税額を必ずしも記載しなくてもよいということがあるというふうに大臣もあるいは当局も答えたわけですけれども、そういうのは税隠しじゃないか、こう国民が言ったってしようがないと思うのですね。大体、消費者の立場に立ってとかあるいは主婦の感覚でとか今までいろいろなことを言ってこられましたけれども、私はそういうことになりましたら内税と同じように全く国民の目からは税金が見えなくされてしまう、これは大変なことだと思うのですけれども、大臣いかがでしょうか。
  167. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 そういう御議論を多分展開されるであろうと想定して、私はわざわざ私自身が一昨日購入した本を例示で申し上げました。  今まで皆さんからよく、私どもは、その痛税感がけしからぬというおしかりもいただきました。そして、買い物のたびにレジに行かなければあと幾ら負担をしなければいけなくなるのかがわからないという御指摘もいただきました。今回、そうした消費者の声にこたえて、最終的にその商品を手元に引き取るために幾らお支払いをいただければいいかを明らかにする方式として総額表示ということを申し上げておるわけでありまして、確かに、政府委員も申しましたとおり委員の御質問と私どもの答弁はかみ合わない部分があるようであります。しかし、最初に私が例示で申し上げております。
  168. 野間友一

    ○野間委員 時間が参りましたので終わりますけれども、要するに幾ら税の減収になるかについても、今検討中で、これは党の案だ、定かじゃない。それから、これだけ明確な表現にあります総額表示方式、これも税額が隠れてしまうようなこともこの中に含まれておるがどうかというように尋ねたわけですけれども、これについても明確なお答えがありませんが、引き続いてこれは国会で議論を進めたいと思います。  終わります。
  169. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 明確に申し上げておるつもりでありますが、御理解がいただけないことは大変残念であります。  以上、答弁を終わります。
  170. 中村靖

    中村委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五十二分休憩      ────◇─────     午後一時開議
  171. 中村靖

    中村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  これより昭和六十一年度決算外二件について締めくくり総括質疑を行います。  質疑に入るに先立って、質疑者各位に申し上げます。質疑時間は申し合わせ時間を厳守するようにお願いいたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。尾身幸次君。
  172. 尾身幸次

    ○尾身委員 本日は、六十一年度決算審査につきましての締めくくり総括でございます。自民党を代表いたしましてお伺いをいたします。  最初に、総理にお伺いをいたします。  最近における国際情勢の大きな変動とそれに対する政府の対応について、お伺いをしたいと思います。  先般のマルタにおける米ソ首脳会談は、ゴルバチョフ書記長、ブッシュ大統領両首脳の個人的な信頼関係が確立しているということを世界に示したという点におきまして、大きな意義があると考えているわけでございます。会談後の記者会見におきまして、ゴルバチョフ書記長は、世界は冷戦から新時代へ最初の一歩を踏み出したと述べ、またブッシュ大統領も、米ソ関係は全く新たな時代を迎えつつあると述べているわけであります。戦後の歴史が大きな転換点に差しかかっていることを象徴的に示していると考えているわけでございますが、総理といたしまして、このような現在の国際情勢、特に東西関係の変化をどのように認識されておられるか、この点についてお伺いをさせていただきます。
  173. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 マルタにおける米ソの首脳会談というのは、きょうまでの冷戦時代の発想を超えた新しい時代認識のもとにお話し合いが行われた、きょうまでややもすると東西は対立、対決という図式でとらえておりましたけれども、対立から対話、むしろレーガン大統領のいろいろなイニシアチブを見ておりますと、対話そして協力も考えながら、それはすべて世界の平和と安定と繁栄のために役立つ方向性がある、私はそう受けとめております。  会談の事前に、大統領から私にお電話もいただきましたし、私からも言うべきことはきちっと伝えておきました。先日も夜、中国を訪問した大統領特別補佐官のスコウクロフト氏がわざわざ日本に寄って私に面会を求められましたので、約一時間公邸でお目にかかってそのお話等も聞きました。両首脳の対話にかけた熱意といいますか、今委員御指摘になったように、それぞれの冷戦構造から新しい時代の模索をしていこうという熱意が感じられたということでございます。あらし等のために二日目の会談とか夕食会の決め事が実行されなくて、やや時間不足だった点も率直に言っておられましたが、今後ともこの対話の方向は続いていくもの、それは世界の平和と安定に役立つものと私は期待もし、そのように受けとめております。
  174. 尾身幸次

    ○尾身委員 関連をいたしまして、外務大臣に日ソ関係についてお伺いをいたします。  今回の首脳会談に見られますように、米ソの関係が先ほど総理の御答弁にもありました対立から協力へと進展をし、東西関係全般が変化をしているという中で、我が国といたしまして、領土問題という絶対に譲れない問題はあるわけでございますが、今後の対ソ外交をどのように進めていかれるか、お伺いをさせていただきます。
  175. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先生御指摘の日ソ関係のこれからの取り組みにつきましては、この米ソの首脳会談を通じて東西関係が対立から対話、協力へ向かう中で、私どもの日ソ関係がこれによっていい環境を与えられて、さらに日ソ間で話し合いが進展をすることを心から期待をいたしております。  なお日ソ関係におきましては、この十八、十九日、東京におきまして日ソ平和条約作業グループの会議が開催をされます。また、明年三月中旬にはシュワルナゼ外務大臣の訪日、さらに明後年にはゴルバチョフ書記長の来日という日程が既に設定をされております。私どもといたしましては、日本としての願いである北方領土問題の解決、この一括返還というものをソ連側にも十分協力をいただいて、日ソ関係が拡大し、さらに協力が進むことを心から念じておる次第でございます。
  176. 尾身幸次

    ○尾身委員 最近の東欧情勢につきまして総理の御所見をお伺いさせていただきます。  最近、東欧諸国における政情の変化はまことに劇的なものがございます。先月の九日には、戦後ヨーロッパ分断の象徴とも言われておりましたベルリンの壁が崩され、そして、二十八年間の長きにわたって相見ることのできなかった東西両ベルリンの市民たちが壁を越えて抱き合うさまが見られたわけでございます。これはまさに自由と民主主義の理念が鉄のカーテンを打ち破ったものと言えるわけでございます。  このような東欧諸国の自由と民主主義を求める動きは、東ドイツのみならず東欧における改革の先進国と目されているポーランド、ハンガリーさらにはチェコでも大衆の運動によって再三の閣僚の入れかえが行われる、あるいはブルガリアもジフコフ体制の崩壊が見られるというふうに、極めて大きな激動と進展があるわけでございます。この最近の東欧情勢につきまして、総理の御所見をお伺いさせていただきます。
  177. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 答弁の前にちょっとお許しをいただいて、先ほど委員に私が答弁しましたときに、大変申しわけありませんでしたが、ブッシュ大統領とレーガン大統領をちょっと混同して発言をした箇所があったという御注意をいただきました。すべてブッシュ大統領のことを念頭に置いてのお話でございましたから、訂正をさせていただきます。  東欧問題に関する御質問でありますけれども、最近の東欧の出来事というのは本当に目まぐるしい大きな変化だ、しかも私はその変化の肯定的な面を評価しております。すなわち自由と民主主義と市場経済体制というものに価値を認めて、そして自由と民主化の一つの大きなうねりである、こう考えます。  私が本院の議員に当選した翌年にベルリンを旅行しましたときがちょうど壁のできた年でございましたので、ベルリンの壁というものは東西分断の生々しい象徴でございましたけれども、二十八年ぶりにその自由通行が実現したこと、また、おっしゃるようにハンガリーあるいはその他の国々でも最近の東欧の変化というものは非常に目まぐるしいが、ただ一点言えますことは、自由と民主主義と市場経済体制を目標とするということでありますから、私は、これが安定的に推移していきますように、また、そういったことが欧州の平和と安定のみならず世界の平和と安定につながっていきますように心から期待をいたしております。でき得る限りの御協力は我が国としても応分なことをしていきたい、それが世界の安定につながる、こうも考えております。
  178. 尾身幸次

    ○尾身委員 今総理から御答弁がございましたけれども、今まで東欧諸国は地理的にも我が国から非常に遠い地域にございました。また、歴史的にも我が国との関係は必ずしも近くなかったことは否定できないわけでございます。しかし最近、先ほどの話にございましたように、この東欧諸国の動きは、東西ヨーロッパ、さらに東西関係そのものにも基本的な再構築を迫るようなものでございます。そして、先進自由主義陣営の大国に成長した我が国としても、この東欧諸国の動き、さらには東西関係に与える影響に十分な関心を払うべきものであると考えるわけでございますが、総理はこれら東欧諸国との関係を今後いかに進めていかれるか、この点についての御所見をお伺いをさせていただきます。
  179. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 確かに東欧諸国は地理的に距離的に非常に遠いところだったということと、いわゆる鉄のカーテンというものの中にある国だということで、何かこうちょっと距離が遠いような感じもいたしておりましたし、しかし今回、一連のポーランド、ハンガリーが進めております政治改革も含めた経済改革、これを見ておりますと、これは極めて抜本的なものでありますし、我々と目指す価値をともにすることができる、そんな方向に進んでおるんだと受けとめます。  これらについては、やはり私はできる限りの協力をして、こういった政治体制、経済体制の変化というものが定着するようにしていくことが戦後の世界の対立が対話・協力へと進んでいく一つの大きなポイントだと思いますし、このことが欧州とソ連との間、そしてソ連と日本との間、そういったものにもずっと押し広がっていくような変化であることを心から願っておりますので、東欧についてもできる限りの対応をしていきたい、こう思っております。
  180. 尾身幸次

    ○尾身委員 総理は来年の早々にヨーロッパ諸国を歴訪されて、特にその中で、東欧諸国の中で最も政治、経済両面にわたって自由と民主主義及び市場経済体制を目指した改革が進展しているポーランド及びハンガリー両国を訪問されると仄聞をしております。東欧各圏の全体の中で自由と民主主義を目指した改革の動きが勃興している今日、自由主義、民主主義の理念のもとで今日の繁栄を築き上げた我が国の総理が、これら諸国を訪問され、その改革の動きに対する我が国の支持を直接伝えられることは、まことに時宜を得たものと考えている次第でございます。そしてまた、さらにその後、西欧の諸国についても、各国首脳と会談をされる予定と仄聞をしているわけでございます。  総理は、このたびの一連の東欧及び西欧の訪問につきまして、私ども大いにその成果を期待しているわけでございますが、この諸国訪問に臨む総理の基本的なお考えをお伺いをさせていただきたいと存じます。
  181. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 いわゆる年の初めの国会の自然休会中という期間に、歴代の先輩総理が内閣の所管であります外交処理のために努力をしていらっしゃったことはそのとおりでありますから、私もそれに倣って幾つかの国を訪問することを検討いたしております。そして、その中に御指摘の東欧の二つの国も入っております。今、計画は各国との調整中でありますけれども、大体そういうことになろう、こう思っております。  このような訪問が実現しました場合には、私は、激動する欧州情勢を踏まえて、関係各国首脳との間で率直に幅広い意見の交換を行って、日欧関係の一層の強化を図っていこうと思います。欧州のそれぞれのサミット参加国の首脳からは、書簡を通じてそういったことに期待をする、こういうメッセージも受けておりますし、また私自身も、先ほどお答えしましたように、日本の立場として、自由と民主主義の方向に大きく軸足を変えよう、歩もう、技術協力はどうしたらいいか、日本のような市場経済というものはどういうものだ、どういう協力ができるか、いろいろ言われた場合には、応分の御協力をして安定的な推移をしてもらうように協力をしていきたい、こう思っております。
  182. 尾身幸次

    ○尾身委員 最近の先ほど来話に出ております国際情勢の急激な変化の背景といたしまして、世界の全体の流れの中で社会主義国がいずれも解決困難な経済社会問題に直面している、そういう形で社会主義が大きな転換点にあるということは否めない事実であると思うわけでございます。  大きな歴史の流れで特記すべき事項としては、私は、この東欧及びソ連の動きは二つあると思うわけでございます。  その一つは、社会主義、共産主義に基づくいわゆる国家計画経済方式が破綻をして、自由主義による経済発展を目指すべきであるという認識が各国共通の認識として高まってきたこと、つまりマーケットメカニズムなり市場経済というものに対する正当性、そちらの方がいいのではないかということをソ連、東欧諸国の首脳もあるいは大衆もその点について気づき始めているということが第一点であります。  それからもう一つは、ソ連、東欧諸国の共通の点に見られるように、共産党あるいは名前は変わっているかもしれませんが社会党、そういう形の一党独裁から民主主義に基づく自由選挙、そういうことに対する怒濤のような民衆の動き、民心の動きあるいは国全体の動きが東欧の諸国を揺れ動かしていると思うわけでございまして、この社会主義、共産主義から自由主義、民主主義への流れ、あるいは一党独裁から民主主義へといういわゆる民主化の大衆運動というものは、単なるリーダーの変更、例えばゴルバチョフが出てきたからそうなったというようなそういうものではなしに、まさに歴史の流れに沿っている、そういう方向の流れができていると思うわけでございます。  そういう意味で、我が国を含む西側の諸国が、幾つかの問題を抱えながらも自由主義と民主主義のもとで戦後四十四年間すばらしい経済の発展と政治的な安定を達成してきたということは、世界各国ともまさに認めるようになったことは大変に喜ばしいことと考えている次第でございます。つまりこのことは、とりもなおさず自由主義の社会主義に対する優越性ということを歴史が証明していると私は考えているわけでございます。  日本といたしまして、我が国といたしましても、このような認識のもとに、今後とも米国を初めとする先進民主主義諸国と協調しつつ、その主要な一員として自由主義、民主主義を軸に世界を発展させていくべきものであると考えているわけでございますし、また、日本の政治の流れにおきましても、自由主義、民主主義をさらに発展させていく、そして、それによって二十一世紀の日本を築くということをぜひ実現をしていかなければならないと思う次第でございまして、この日本の行くべき道、また自由主義、民主主義の将来に対する総理の御所見を最後にお伺いをさせていただきます。
  183. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 私たちは、戦後一貫して自由と民主主義と自由市場経済の中で、平和な国家、明るい社会、豊かな暮らしを達成しようと思って営々と努力をしてきました。二つの世界の対立ということをよく言われてまいりましたけれども、いろいろな結果、今日の大きな東欧諸国の枠組み、むしろソ連自体がペレストロイカと言ってソビエト自身の経済改革に言明をしておること、東欧諸国といいましても、経済改革だけでとどまっておる国と政治改革まで入った国等いろいろあることは間違いありませんが、政治改革の面を横に置いて経済改革の面だけ見ると、もうソビエト以下東欧諸国すべて、社会主義国が市場経済というものに向かって自由と民主主義の中で豊かになっていきたいという、これは国民的な願望が背景にあったと思いますけれども、大きな流れがあることは事実でありますから、私は、謙虚な気持ちで申し上げるのですけれども、世界的に自由と民主主義と市場経済の価値はますます認められて、大切になってくるだろう。  しかし、それだけでとどまらずに、委員も御承知のように、いわゆる西側陣営には基本的な価値の変化を求めたりいろいろなことは必要ありませんけれども、しかし、主要な西側陣営の国の間で例えば貿易不均衡の問題とか、我が国は極めて優良な状況で推移しておりますが、物価高の問題とか失業の問題を抱えている国もある。これをよりよく守っていくために、西側陣営も西側陣営の中における話し合いや協調を通じて、委員がおっしゃるようにより一層自由と民主主義と市場経済の価値を高めていかなければならぬし、より確固たるものにしていくために日本も政策努力をし、対外的には協調、協力をしていかなければならぬ、こう考えております。
  184. 尾身幸次

    ○尾身委員 どうもありがとうございました。以上で質問を終わります。
  185. 中村靖

    中村委員長 次に、渡部行雄君。
  186. 渡部行雄

    渡部(行)委員 まず、総理にお伺いいたします。  この間、会計検査院から昭和六十三年度決算報告書が提出されたわけです。ところが、今昭和六十一年度決算をようやく終わろうとしておるわけでございます。しかも一年間の審査をわずかに二時間でやるということ、こういう決算というのは、国の基本的な財政とその政策の裏づけとしての合理性、そういうものが議論されて次の予算というものが考えられなければならないわけです。それが今六十一年度決算をやっている、こういう事実についてはどのようにお考えでしょうか。
  187. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 国会における決算審査が極めて大切なものであることは、委員も御指摘のとおり私も極めて重要なものだと考えております。できるだけ審議を尽くしていただいて国政に反映されていかなければならぬものである、このように受けとめさせていただきます。
  188. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それではなぜこのようにおくれておるのか、その原因について考えたことがありますか。
  189. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 国会の御審議は各党の皆さんの御協議によって行われておるものであると承っておりますので、各党の御協議の中でそれらの問題は御議論を賜っておる、このように承っております。
  190. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それは表向きの答弁であって、実際中身を知らないからそういうような答弁をされるのですよ。実際なぜこれだけこの決算委員会がおくれて審査をしているかというと、審査日に他の常任委員会とぶつかると大臣がとれないのですよ。そして結局は審査できない。常に常任委員会の方が、決算も常任委員会ではあるけれど、専管の常任委員会の方が優先して、大臣がとれない、こういう事情でおくれているのです。これはまさに内閣の責任ですよ。委員会では一生懸命決算をやろうと何ほど真剣に取り組んできたかわからないのです。それはもう中村委員長に聞いたらはっきりするのです。そういうことで、この決算審査を本当によくやっていくには、私は予算委員会のようにある一定期間を全大臣、こういうふうにして徹底的にやればいいと思うのですよ。もっと何か方法があるべきだと思うのです。  そして、内閣が答弁者を出すその姿勢が最も悪い。例えば判断力のない説明員などというものをぽこっと一人出してよこす。これとどうして質問できますか。政府委員が出て説明員がその足らざるを説明するならいざ知らず、最初から説明員だけを出してよこして何が審査になりますか。こういう問題について具体的にお答え願いたいと思います。
  191. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 内閣の責任だとおっしゃいましたので、内閣が反省しなければならぬところがあるなれば具体的に反省もいたしますけれども、しかし、憲法上国会は国権の最高機関でありますから、その国会の運営に一々内閣が、この委員会はああしろ、この委員会はこうだというようなことはこれは極めて僣越なことでありまして、言ってはならないことでございますし、また、委員会同士のいろいろなお話し合いはそれぞれの各委員会同士の御相談と御理解によって運営をしていただくのが適切ではなかろうか、こう考えておりますし、内閣としては、出席を求められましたときにはでき得る限り、いろいろな状況を判断して出席して、審議に御協力をするように努めてまいりたいと考えます。
  192. 渡部行雄

    渡部(行)委員 総理、あなたは予算編成の最高責任者ですよ。予算編成するときに、今決算がどうなっているかということを考えたことありませんか。それは確かに委員会の運営の仕方は国会そのものにありますよ。国対にありますよ。しかし、実際自分が本気になって国の財政なり政策と財政の関連、そういうものを考えた際に、一体決算委員会の審査は今どうなっているのだ、そういうふうに聞くのが総責任者として当たり前じゃないのか。そういう姿勢で取り組まないからこういうふうにおくれたのですよ。いいですか、そういう点を十分お考え願いたいと思います。  時間が非常にありませんので、先に進みますが、次には、衆議院の解散と総理の権限及び首相としての指導力についてお伺いいたします。  その第一点は、衆議院の解散権は首相の専権事項と理解しているが、それに間違いございませんか。
  193. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 衆議院の解散は内閣の権限だと理解しております。
  194. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それならお伺いいたしますが、最近、自民党のかつての大幹部と申しますか、むしろ派閥の領袖と言った方がわかりやすいかもしれませんけれども、解散についてどんどんと発言されておるわけでございます。しかもその発言は、解散の日取りまで決めて、選挙の投票日まで決めているような発言がどんどんあらわれてきておる。例えば「二月総選挙の方向 安倍氏見通し」、それから「解散、二月一日前後 渡辺氏が見通し 通常国会再開後に」、時間の関係で見出しだけ読んでみます。「二月一日前後解散が大勢に 自民・渡辺氏も見通し」、同じような人が言ったのは略しますが、あと「一月末解散で一致 金丸竹下氏 投票二月二十五日の線も」、それから「総選挙投票二月十八日に 宮沢派首脳が見通し」もうこれは読み切れないのですよ。金丸さんと河本さんもおっしゃっておられるし、また「二月十八日投票の線 金丸、安倍氏見通し語る 解散は施政演説後」、こういうふうに外の方からがんじがらめにあなたは縛られて、まさに解散が総理の知らないうちに決まってしまったような状況について、あなたはこのくらい総理大臣としてこけにされたと思いませんか。
  195. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 いろいろ御意見があることは私も報道を通じて承知しておりますし、与党のみならず野党の方々の見通しや御意見があることも承知しておりますし、いろいろな立場のお考えがあると思います。しかし、私は、先ほど申し上げましたように、内閣の権限として解散のことは考えなければならぬわけでありますけれども、ただいまのところ、政策努力にいろいろ取り組まなければならぬことがたくさんございますので、具体的な判断はいたしておりません。
  196. 渡部行雄

    渡部(行)委員 総理、あなたは解散権という刀を持っているのですよ、名刀を。それを他の人に勝手に抜かれて適当に振り回されて黙っておられますか。こんなことをやらせておったらあなたの権威と性格が疑われますよ。私はあなたのためにも非常に悲しむべき現象だと思う。  そこで、新聞はどういうことを言っているかというと、「固まった解散・総選挙日程イライラ募る海部首相専権事項なのに”存在感”薄れ」、こんなふうになっているのですよ。それからその次は、十二月八日ですが、「非力さ目立つ海部政権 総選挙戦略・消費税見直し…国際情勢でも」と、みんなこれは非力になっているのです。こういうことがどんどんと報道されてまいりますと、日本の総理大臣に対して外国の指導者も信用しなくなってしまう。そういうあなたは日本だけの責任じゃないのですよ、今や日本全体を背負って世界に向かって自分の姿勢をつくらなくてはならないのです。そういうことを考えた際に、しかもあなたは自民党総裁でしょう、総裁として、首相として、そういう立場を考えたならば、このようなお年寄りの人たちの発言に左右されていてどうなりますか、この点についてひとつ御答弁願います。     〔委員長退席、岡島委員長代理着席〕
  197. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 いろいろ新聞報道に基づいての御意見でありますけれども、私は左右されておりませんし、私はまだ判断しておりませんし、それから、決めるべきときには私が総合的判断をして決めさせてもらう、こう私は申し上げておるつもりであります。  また、先生の説によると、刀であって、それを人に抜かせていいのかとおっしゃいますが、そのようなことはございません。また、いろいろな御意見があることは、与党のみならず野党の皆さんからも見通しその他を述べられておることは承知しておりますけれども、私はそれは御意見としてあることはそれまでも否定はしませんけれども、それによって私が左右されたり判断を強制されるとかいうことは全くありませんので、その点は御承知おきいただきたい、こう思います。
  198. 渡部行雄

    渡部(行)委員 しかし、これは相手が言うのは勝手かもしれませんけれども、ただ、ほうっておくとそれはむしろ非常に害を及ぼす。降りかかる火の粉は払わにゃならねえという昔のたんかがありますけれども、これはあなたに降りかかっている火の粉なんですよ。だから、適当な時期に対しては今余り刺激的なことを言うなくらいの指示は出していいじゃないですか。解散は私が決めるのだから余計なことは言わないでくれ、私はそのくらいのことは言って悪くないと思う。  そこで、今あなたが総理大臣として最も心がけなければならないことは、第一に、総理は常に世界に気を配り、内政に断固たる勇気を発揮することだと思います。第二に、世界史的政治動向を洞察して先見的対応を図っていくことだと思います。それから第三には、一国の総理たる者は一たん口にしたことは必ず実行する、そういう一つの信頼感を国の内外に示さなければならないと思うわけです。  しかるに、総理は、就任するやいち早く、消費税は思い切った見直しをやる、徹底的な見直しをやる、こういうふうに言われました。また、これを福祉目的税にするとも言われました。ところが、自民党から出された見直し案は全くのまやかしであり、国民からの期待と信頼を失っているわけでございます。また、消費税と目的税の混同は、税制度上、理論上矛盾するのではないでしょうか。消費税と目的税が一緒になることは論理上到底あり得ない、私はそういうふうに思いますが、これも余りせっかちに言い過ぎたのではないだろうか。  以上の点についてどのようにお考えになっておられますか、御答弁をお願いします。
  199. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 言葉じりをとらえての議論をしたいとは思いませんけれども、私はまず第一に、自民党の総裁候補として党内に所信を述べましたときも、自民党がいいと思ってやった税制改革が選挙の結果あのような結果を受けた、そして選挙中にも見直しの公約が出ておったわけでありますから、これは国民の皆さんの声に耳を傾け、思い切って見直しをするということは、私はきちっと申し上げましたし、また本院における所信表明演説におきましても、同じ立場に立って、思い切って見直しをするということも申し上げました。  また、先生御指摘のように、福祉目的税にするということも、これは言い逃れするわけではありませんけれども、私はその前の公報でも対談のときでも一度もそれを申し上げたことはございません。福祉目的税的なものを考えるというのは、それはやりとりでも随分申し上げたつもりですが、完全に福祉目的税にするということは申し上げたことはありませんし、またそれはできにくい状況がある。ですから、福祉に優先して国税の分は使うようにするということを今度でも、自民党の見直し案のときにも明らかにしておるわけでございますから、どうかその辺のところはきちっと一遍お調べ直していただき、そして我々が言っておりますことも御理解をいただきたい、こう考えます。
  200. 渡部行雄

    渡部(行)委員 福祉目的税とは言わなかった、消費税は福祉目的税的ですか、その的ということを具体的に言うとどういうことですか。
  201. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 目的税として限定してしまうということになりますと、いろいろな御意見がありまして、例えば国の分と地方へ行く分とある、あるいはまた福祉団体の皆さんの物の考え方の中にも、それを福祉目的税と固定的に決めてしまうことはよくない、いろいろな角度の御意見があったことを承知いたしております。同時に、福祉に使っておりますお金は、消費税で目標として置かれております額よりも現実にはるかにたくさん使ってもおるわけであります。そういったことどもを総合的に判断をして、それは福祉目的のために、来るべき高齢化社会に対応して必要な財源になるわけですから、そのほとんど国税分はそちらへ優先して充当するという考え方で、目的税にしてしまうということではないということであります。  当時、いろいろな意見を総合的に判断して、そういう発言をいたしました。
  202. 渡部行雄

    渡部(行)委員 だから、消費税を福祉目的税的に考えるというようなことを言うと、消費税イコール福祉目的税、こういうふうに受け取られてしまうのですよ。そんなこと何も一々言っている必要ないのじゃないですか。あなたが、これまで一生懸命消費税をやってきたんだから私はこれをやります、しかし福祉行政としては十分予算をとっていきます、それでいいじゃないですか。ところが、ますますわからない表現をどんどん使うからおかしくなって、その使うたびにあなたに対する信頼がなくなっていくというのが今の状況だと思うのですよ。  それでは、次にお伺いいたしますが、来年の一月八日から十八日まで外遊されるそうでございますが、その中で特にポーランドとハンガリーを選ばれた理由についてお聞かせ願いたいと思います。     〔岡島委員長代理退席、魚住委員長代理着席〕
  203. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 先ほどお答え申し上げましたように、まだ具体的に詰まり切っておりませんので、決定の暁に御報告をさせていただきます。
  204. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、この新聞はでたらめ報道しているのですか。ここには大分各国の名前が出ておりますが、読んでみます。「訪問先はポーランド、ハンガリーの東欧二カ国に加え、英、仏、西独、イタリアを歴訪。ブリュッセルの欧州共同体(EC)本部、西ベルリン、それにローマのバチカン市国も訪問する。」そしてその次に、「英国、西独の日程調整がついていないが、予定国に変更はない」、こういうふうに出ているのですが、これはうそでしょうか。
  205. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 確実に相手国との間できちっと固まったもの以外はまだ申し上げておりませんけれども、私が念頭に置いて考えておるということは申し上げております。ですから、ポーランドもハンガリーも、でき得ればそこでいろいろと会談をし関係強化もしてきたい、こう思っておりますけれども、まだ確実な最終的な、どこの国をいつ行って、どうでということはただいま調整中でありますので、きちっと決まりましたら正確に御発表をさせていただきます。
  206. 渡部行雄

    渡部(行)委員 その調整の対象はどの国ですか。どの国と調整をしておられるのですか。
  207. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 それは、外交上の問題で相手国もあることでございますが、大体そういうところと調整をいたしております。
  208. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、先ほどポーランド、ハンガリーという問題で尾身委員の質問に答えておられたようですが、今の東欧諸国の動きに対してはどういう評価、判断をされておりますか、お聞かせ願いたいと思います。
  209. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 先ほど尾身委員の御質問に対しても、このような訪問が実現したとする場合にはという前提を置いてお答えさせていただきましたけれども、同じ立場で申し上げさせていただきます。  東欧情勢の変化というのは、ソ連のペレストロイカ、それからポーランド、ハンガリーなどにおけるような自由と民主化を求めての一連の動き、それからドイツにおいてはベルリンの壁の通行自由が行われるようになる、さらに最近ではチェコとかブルガリアとかいろいろな国にも改革が波及しております。  ただ、それぞれの国によって差はあるわけでありまして、今は経済の改革のみにとどまっておるところや、政治の改革にまで入ったところや、一党独裁の制度が変わっていった国、けさの新聞等によりましても、チェコでしたか四十一年ぶりに共産党の独裁から複数政党政治に変わっていく、これはまさに政治的な民主化の動きであります。そういった一連の動きがきょうまでの東西関係の特に東側の枠組みの中で大きく起こっておるということは、その肯定的な変化というものが本当に定着していくように私は強く望んでおるわけであります。そのことは単に東欧の変化、東欧の安定だけじゃなくて世界の平和と繁栄にも役立つものであり、それは間接的にアジア・太平洋地域の平和、繁栄の方にもいい影響が及んでくるという期待を私は抱いて眺めておるということでございます。     〔魚住委員長代理退席、谷津委員長代理着席〕
  210. 渡部行雄

    渡部(行)委員 ソ連のペレストロイカあるいはグラスノスチ、これを唱えてから大きく東側陣営は変わってきておるわけですが、いまだ社会主義と決別するということは言っていないのです。自由と民主主義については非常なエネルギーを出して変革を行いつつあります。自由ということはある意味では人間の命よりも大事なものですよ。民主主義というのもそういう血の歴史の中からこれをかち取ったものですから、人間である限り決して軽視できない非常に重要なものです。しかし、それが即社会主義経済まであきらめたんだ、もうだめなんだ、こういうふうにはまだ言っていないのです。だから、そういう世界の動き全体を見てみると、これから純然たる資本主義でもない、純然たる社会主義でもない、むしろ社会主義と資本主義の折衷みたいな混合経済が進むのではなかろうか、私はこういうふうに考えるのですが、総理はどのように御判断されておりますか。
  211. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、それぞれの国の改革への受けとめ方、それは差があるわけであります。しかも、最近の動きだけを眺めても目まぐるしいものがありまして、今ここで予断と推測をもって、まあまとめてこうなる、ああなるというようなことは断言するのを差し控えさせていただきたいと思いますが、国によって政治改革のみにとどまって一党支配を変えるつもりはないと言っておる国もあれば、憲法まで改正して共産党一党の支配、指導をやめるということを決めた国もあれば、あるいは市場経済というものの価値を認めてそれをできたら取り入れていこうと考えている国もあってさまざまだと思います。  ただ、どこへどう定着していくかということについては、例えば東西ドイツの再統一というものをどう見るかということについても、欧州の隣の国同士でもいろいろ考え方に差のあることは先生よく御承知のとおりだと思います。私は極めて大きな関心を持ってこのことを見守らさせていただいておりますけれども、どうなるということは、まだちょっと断言するに足る状況ではございませんので差し控えさせていただきたいと思います。
  212. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、今度の外遊で各訪問国の首脳と会談されて、北方領土についてのそれぞれの理解が、日本政府の主張しているとおりに理解されているかどうか、そういう問題については話し合われるおつもりはございませんか。
  213. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 北方領土の問題につきましては、私は、日ソ間において改善することの重要性を話し合っていく、あくまで日ソ間の交渉によって解決すべき問題である、こう基本的には受けとめております。そして、この間、来日されたヤコブレフ政治局員との話し合いにおいても、基本的に領土問題を片づけて平和条約を締結して安定的な関係を構築していきたいということについては申し上げてありますけれども、さらにそれを拡大均衡といいますか、人物交流とか実務関係とかいろいろなものを通じて信頼関係の造成をしていこうと、あくまで二国間で話し合っておるわけであります。ただ、他国の皆さん方もこのことについていろいろ理解を示してくださったり、あるいは日ソ関係を本当の意味において改善していくことが重要であるという理解が深まることは歓迎をいたしておりますが、このことが私の欧州を訪問する最大の目標、問題ではないということでございます。
  214. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、今度日ソ間の懸案事項を進めていく上で、総理は政経分離でいくのかあるいは政経不可分でいくのか、その辺はどういうふうにお考えですか。
  215. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 日ソ間に真に安定的な状況を築き上げていきたいということでございますから、日ソ関係の拡大均衡に基づく関係改善というのを私は主張をいたします。  ただ、大前提として一番重要な課題は、領土問題を解決して平和条約を締結するということ、そして信頼関係を強化するために漁業問題や人権問題等でいろいろ話し合いはしていかなければなりませんし、適切可能な実務関係は行ってまいりますし、人物の交流も繰り重ねていきますし、首脳の相互訪問もしていかなければならぬ。この五つの項目についても、ソ連側にも我が方の考えは話してあり、ソ連側も幅広く拡大均衡で関係を改善していこうということについては理解を示しておると思います。
  216. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それでは次に、定数是正についてお伺いいたします。  その一つは、第百三回国会及び第百四回国会における国会決議についてどのようにお考えになっておられるか。また、衆議院議員の現行選挙区別定数配分規定については既に最高裁判所において違憲の判決が出されていることでございます。これらの問題を考えますときに、首相の責任として今後どういうふうにこれらを処理するおつもりなのか、お聞かせ願いたいと思います。
  217. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 衆議院議員の定数是正問題につきましては、昭和六十一年の定数是正に際し、速やかに抜本改正の検討を行う旨、衆議院の本会議において決議されておるところでありまして、これは事柄の性格上、各党で十分御協議いただくことが重要な問題であると考えております。     〔谷津委員長代理退席、委員長着席〕
  218. 渡部行雄

    渡部(行)委員 この前はそれを知らないで、憲法との関係はわからないで解散したということで逃げられるかもしれませんが、もはや確実に憲法違反であるということを知っていて、それをやらないで解散すればこれは無効になりませんか。
  219. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 ただいま先生お尋ねの衆議院の解散権でございますが、衆議院の解散権は、先ほど総理からもお答えございましたように、憲法上、国政の重大な局面におきまして民意を問う手段として内閣に与えられる、内閣の責任で決すべき問題、こういうことでございまして、いかなる場合に衆議院を解散するかは内閣がその政治的責任で決すべきもの、かように考えております。  なお、御指摘の衆議院議員の定数の是正が行われない場合におきましても、衆議院の解散権の行使が法律的に制約されるということはないものと考えております。
  220. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、解散は別に憲法などを考える必要ない、定数なんか考えなくてもやれるのだ、こういうふうに理解していいですか。
  221. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 衆議院の解散権につきましては、憲法の七条におきまして、天皇の国事行為ということで内閣の助言と承認のもとにそれが行われるということでございまして、格別のそういう意味の制約はないものと考えております。
  222. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これ以上聞いても同じような答えしか出ないと思いますから、次に移ります。  これは緊急な問題で、きょうの朝日新聞に「警察犯歴データ入手 大阪府警OB認める 後輩に依頼、二十~三十件」こういう見出しで出ておりますが、そして中を読んでみると、これは公務員法違反であるというような指摘がなされておりますが、私はそんな小さな問題じゃないと思うのです。これは人権に関する大変な問題である。しかも、権力機構の一部がそれをいいことにして、このような現職警官とOBが結びついて、こういう一企業の利益を図るということに奔走するようなことは断じてあってはならないわけです。それなのにこういう事件が出る。  大体、新聞の大きな犯罪というのはほとんど大阪府警かそういうところに関係しておる。これはよほど内閣総理大臣が意を決して調査に乗り出さないとどうにもならないと思いますよ。それについてひとつ総理の考え方をお聞かせ願いたい。
  223. 渡部恒三

    渡部国務大臣 ただいまお尋ねのありました報道された件については、現在警察庁でその事実関係を調査中であると聞いております。  いずれにせよ、警察の情報管理を厳正に行うことは委員御指摘のように大変重要なことでございますので、今後よく調べて適正に処理してまいります。
  224. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それでは、特別な捜査班というか調査班、そういうものを組織して派遣するお考えはありませんか。
  225. 渡部恒三

    渡部国務大臣 適正に処理してまいりますという答弁の中にそれらのことをも含んでおるという御解釈をいただいて結構だと思います。
  226. 渡部行雄

    渡部(行)委員 なかなか、それらのことの中に入っていると言われると、どういうふうに具体的なことを考えられているかわかりませんけれども、そのことについて、よほど厳正にこの問題は取り組んでいただきたい。
  227. 渡部恒三

    渡部国務大臣 国家公安委員会は、国民の皆さん方を代表して、警察が国民のための民主警察として立派に行われるためにこれを管理する責任がありますから、その国家公安委員会においてよく適正にこれから判断をしてまいることでございます。
  228. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これは、私は人権にかかわる非常に重大な問題と受け取っているからこういうふうに言うんですよ。しかも、国家権力の中でこういうことが行われたら、国民の信頼を失ってしまうということなんです。だから、もっと慎重に、国民から見てもなるほど今度はよくやったわい、こういうふうにしてほしいから今のような要望をしたわけです。その辺は間違いなくお願いしたいと思います。
  229. 渡部恒三

    渡部国務大臣 国民に信頼される、国民のための国家公安委員会としての責任を果たしてまいります。
  230. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これから非常に寒い中を交通取り締まりなんかやっておる警察官を見ると、本当に気の毒だな、よくやっているな、そして心から感謝するつもりになりますが、そういうまじめにやっている人まで、ある不心得者が出ると、皆傷つけてしまうんですよ。だから、そういう部分的な問題であっても、全体としてどういうふうにこれが動いていくのか、どういうふうな国民から見られ方をするのか、その辺を十分ひとつ考えていただきたい。  最後に総理、今までずっと総理に質問をしてまいりましたが、あなたはやはりか弱い総理ではだめですよ。もっと力強い頼りがいのある総理として、これからどのようにやっていくおつもりか。
  231. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 一生懸命に頑張って、頼りがいのある総理大臣になっていきたい、こう思います。
  232. 渡部行雄

    渡部(行)委員 お若いですから、若さを十分発揮してください。ひとつ歴史の流れとともに、若い者の時代としてよろしくお願いしまして、私の質問を終わります。
  233. 中村靖

    中村委員長 ただいまの渡部君の発言につきまして、一部その取り消しを求めるとの意見がありますので、速記録を調査の上、理事会で協議をさせていただきます。  次に、草川昭三君。
  234. 草川昭三

    ○草川委員 公明党・国民会議の草川であります。  最初に総理に、予備費の不承諾の問題についてお伺いをいたします。  過日、参議院の方で予備費の不承諾という決議がなされました。これに伴う国の、国というよりも政府としてどのように受けとめるかという問題でありますが、先ほど与党の質問で総理の外遊問題が取り上げられました。実は私どもはこの予備費に反対をしたわけでありますけれども、予備費の反対の理由の第一番に、予備費というのはいわゆる予見しがたいものの費用ではないか、総理の外遊というのはもうこれは慣例化しているじゃないか、だからそれは予備費に計上するのは問題があるという立場から不承諾、こういうことを言っておるわけであります。  事実、参議院の予算委員会だと思いますけれども、総理の外遊計画についての海部総理の答弁は、たしか慣例により一月上旬に外遊する、こういう答弁があったようであります。ただいまの与党の質問に対して、先輩という言葉は使っておみえになりませんでしたが、歴代総理に倣って一月の上旬、自然休会に訪問をするということを先ほど御答弁になっておられます。だとするならば、総理のお考えは、もう外遊というのは慣例化しておるのだ、こういう御発言だと思うのですね、答弁だと思うのです。まさしくそこを我々は予備費の不承諾の最大の理由にしておるわけですよ。だから、私は、大蔵省のレクチャーがよほど総理に通じていないのか、総理自身が参議院の不承諾というものの政治責任を考えておみえにならぬのか、どちらかだと思うのですが、どうでしょう。
  235. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 予備費の問題につきましては、その節度ある使用に留意して適正な処理に努めてきたところでありますが、今般、予備費の使用について参議院の承諾がなかったことについては、まことに遺憾だと思います。  なお、私は先ほど極めて素直にお答えしましたので、そういった細かい、先生が今指摘されたことについて、総理大臣の外遊というものは慣例だとかなんとかいうようなことまでは予見ができないことの中に入るのではないか、こう今は御質問を聞きながら思いました。今回、ヨーロッパその他といろいろ今日程は調整しておりますけれども、それもあらかじめこの予算を組む時期にはそんなことは全然予見されておらなかったのではなかろうか、こう考えますが、一般論からいって、そういった御指摘をよく私自身も研究させていただきます。
  236. 草川昭三

    ○草川委員 私は、決して言葉じりをつかまえているわけではありません。総理は大変正直に御見解を参議院でも、先ほどの答弁でもなされている。しかし、そこにこそ実は、今この予備費の不承諾の問題あるいはまた参議院等の与野党勢力の現状、こういうものを考えると、我々の声というもの、意見というものをやはり真剣に取り上げていただいて答弁をしていかないと、今後の国会運営もできないのではないだろうか、私はそう思うわけでありますが、一言、この予備費の不承語と内閣の政治責任、それは言葉だけのことではなくて、現状、我々がどういう点で予備費の不承諾ということを言っておるのか、しかと精査をしていただいて、それで真剣な対応をしていただきたい。そうでないと、予備費の不承諾は今後も続いていくものと我々は言わざるを得ません。そのことだけをまず最初に申し上げておきたいというように思います。  二番目に、米ソの首脳会談の問題について先ほど来からそれぞれ質問が出ておりますし、また総理の方からも答弁がなされております。実は、私が申し上げたいのは、米ソの冷戦体制の終えんを目指す歴史的な会見だというような受けとめ方をするならば、次の平成二年度予算編成にこれがどのように反映をするのか、これは大変興味のあるところなんです。具体的にはいろいろな点にそれは反映するといえばするわけでありますけれども、いわゆる防衛費との関連で眺めていくならば、一体この防衛費一%枠の堅持という一つの長い間の議論があるわけでありますが、それを非常に強く守っていくというような予算編成になるのか、あるいは従来の防衛計画というものを踏まえたままの予算要求になっていくのか、そこらあたりは非常に基本的な哲学というのですか、国際情勢の受けとめ方、それを内閣としてどのように反映するのか、私どもにとっては大変注目をしたい点だと思います。総理の見解をお願いをしたいと思います。
  237. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 マルタにおける米ソ首脳会談の評価につきましては、先ほども申し上げましたように、これは米ソ両首脳が冷戦時代の認識を超えて話し合いをした、それは世界の平和と繁栄のための話し合いである。東西の枠組みの対立というものが、対話と、そしてまたブッシュ大統領の方からはいろいろな面で協力の提案すら出ておったように私は受けとめておって、全体の方向性として非常に歓迎をしておるわけです。ただ、地域問題その他について、あるいは中米紛争の問題について、あるいはアジア・太平洋地域における海軍軍縮の問題において、まだ話が十分交わされていない面もあるわけであります。  御質問のポイントに移りますが、日本の国の防衛というものは、あくまで憲法や専守防衛の旗印のもとに、節度ある自衛力をもって我が国の安全を確保していくという基本でやってまいりましたが、そのことを、きょう、今の段階で、マルタ会談があったからどう変えるのか、手のひらを返したように速い緊張の移り変わりの状況というものはまだ読み取れない状況でありますし、先ほど来の御議論の中でも、東欧諸国の変わり方はどうなんだと言われましても予断と推測で物を申し上げることができないように、今いろいろな変化、流動のさなかにあると言っても言い過ぎでないように考えております。したがいまして、私は、平和時における我が国の基盤的な防衛力というものを先般御議論願って、国会の御決議もいただいていろいろとやっておるわけでありますから、この予算できょうまでやってまいりました防衛力の整備の方針というものを、来年は中期防の完結する年でもございますから、これはきちっと締めくくりをする年でもありますので、従来の路線に従ってやっていかなきゃならぬ問題であって、当面の平成二年度予算編成とこのマルタ会談でどこをどう変えるかということについては、私は基本的な方針を変えることはできない状況である、こう考えております。
  238. 草川昭三

    ○草川委員 じゃ、来年の予算ということを一歩置いて、将来の防衛計画の根拠になるこの国際情勢の変化を我が国の防衛計画の中に入れていくというお考え、あるいはまたそういうように指導するというお考えはないのか、お伺いをします。
  239. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 いろいろな国際情勢の変化や我が国を取り巻く環境を十分眺めながら、平和時における我が国に必要にして節度のある防衛力がいかなるものであるかということは、国際情勢の変化等も十分慎重に見きわめながら考えを進めていくべきテーマである、このように受けとめます。
  240. 草川昭三

    ○草川委員 その国際情勢の変化を慎重に受けとめるということと極東の情勢の変化なしということとは、現実には矛盾するわけでしょう。その矛盾点を我々国民は大変興味を持って見ておるわけですよ。ですから、いま一度具体的に、最初に戻りますが、来年度予算編成の一%枠厳守、これは強く働きかけをされますか。もう一度お伺いをします。
  241. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 きょうまで行われてきました中期防の成果と、それからそれは来年、平成二年度予算編成までを一応射程距離の中に入れた一つの計画でございますから、これが達成されるように、そしてそのことは、専守防衛と憲法に従った我が国の平和時における防衛力の基盤整備という大きな目的のもとにやっておるわけでありますから、節度ある防衛力の整備という角度からこのことは達成をさせていきたい、こう考えております。
  242. 草川昭三

    ○草川委員 時間がどんどん過ぎていきますので、この点はこれで終わりたいと思います。六十一年の防衛費の不用額が二百十二億もあるわけでありますので、本気で一%枠に取り組もうとすれば、それは十分ある、しかもそういう国際情勢の反映ではなかろうか、私どもはこう思うわけであります。  次に消費税について。今この席には御存じのとおり大蔵大臣はお見えになりません。参議院での最終的な段階に来ておるわけでありますが、本日、参議院で歴史的な税制改革、すなわち消費税を廃止するという法律が通るわけでありますが、その状況における海部総理の御見解を賜りたい、こう思います。
  243. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 参議院で御審議が続いており、今御指摘のような見通しになっておるということは報道その他を通じて承知をいたしております。それは参議院の院の意思の問題であって、私はその事実を受けとめさせていただきます。同時に、その後においては国会の衆議院の場においてまた御議論が続けられていくものと思いますので、それも注目させていただきます。
  244. 草川昭三

    ○草川委員 海部総理、まだまだお若い総理ですから、今後いろいろと御検討なされると思うのでありますけれども、従来の院の構成とは随分変わってまいりました。私、先ほどの予備費の問題も含めて申し上げておるわけでございますけれども、いわゆる強気あるいは、消費税が通過したときに海部総理はこの委員長席に座っておみえになったわけでございますし、我々もこの会場にいたわけでございますが、いわゆる強行採決というような時代はもう過ぎたと思うのです。よほど与野党の間における話し合いというのですか、十分な話し合いの基調というものが大切になってくると思うのですが、その点はどのようにお考えになられるのかお伺いをいたします。
  245. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 与野党の間の話し合いは私はきょうまでも非常に大切なことであったと受けとめさせていただいております。議院運営委員会や国会対策委員会の立場も私は十分理解しながら、話し合いは委員会の議論を通じて行っていただくものであり、御指摘のように、消費税の問題につきましても、衆議院の採決の段階、その後、民社党や公明党の皆さんの修正に対する御意向等も十分承らせていただき、私の記憶に誤りなければ、その点については御賛成もいただいて、本会議では御理解をいただき、成立、採決があったというふうにも記憶しておりますが、それは自由民主党が話し合いをして、野党の皆さんの御意見も取り入れるべきは十分取り入れてやっていきたい、こう思っております姿勢のあらわれでございます。  今後とも民主主義の本義に照らして、御意見を承ったならば十分それは検討させていただきながら話し合いの政治を続けたい、こう考えます。
  246. 草川昭三

    ○草川委員 そこで、今度は少し地元の話になるわけです。今の総理の十分話し合いを大切にしながら問題を取り上げていってほしい、こういう前提で申し上げたいわけですが、今、愛知県では二〇〇五年に向けて、二十一世紀の万博の誘致運動に大変熱心に取り組んでいます。ヨーロッパ等にもそれぞれ愛知県から誘致の駐在員を、これはパリですけれども出す、こういうような計画になっておりますが、まずこの点について通産大臣と総理の見解を賜りたい、こうお願いをします。
  247. 松永光

    ○松永国務大臣 先生御指摘の国際博覧会、いわゆる愛知万博でございますが、これは愛知県中部地区に大変大きな効果をもたらすのみならず国際交流の促進にも大きく貢献をする、そしてまた、日本全体にもはかり知ることのできないほどの大きな効果を及ぼすというふうに私は考えております。  それで、この開催に向けて中部地域の人たちが大変な熱意を持って取り組んでいらっしゃることは私も承知いたしております。国際博覧会の担当大臣として、私もこの博覧会の誘致に向けて可能な限りの協力をしてまいる所存でございます。
  248. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 愛知県におきまして二十一世紀の初頭に国際博覧会の開催が検討されております。そして、国際博覧会の開催は地域の活性化、国際交流等の観点から有意義なことだと私は考えております。  今後、構想を実現するためには、御指摘のように、国際博覧会の誘致に向けて関係者が努力をしていくことが必要でありまして、これに対して政府も所要の協力をしてまいりたいと思っております。
  249. 草川昭三

    ○草川委員 続いて、リニアの点についてお伺いをします。  新幹線の伸び率も予想を上回った伸びを示しているわけでありますが、その代替輸送機関として浮上してきているのがリニアであります。時速五百キロで東京―名古屋あるいは大阪を結ぶ超高速の列車になるわけでありますし、既にJR東海も約二千億の自己負担をすることで実験線を山梨につくる、こういうようなことになっておるようでありますし、また来年度予算編成にもそれが明らかになっておるようであります。  十二月の四日に江藤運輸大臣は名古屋で記者会見をしておりまして、八年後に実験を終わって本線に着手をする、こう希望を述べられているわけでありますが、総理としてこの点についてどのように受けとめるか、あるいはまたどのように対処されるのか見解を求めていきたい、こう思います。
  250. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 超電導磁気浮上式リニアモーターカーにつきましては、今後の技術開発の進め方、いろいろな検討とあわせまして、新たな実験線に関する調査を実施しておるところであります。御指摘の中央新幹線の問題につきましては、基本計画路線の一つでありまして、現在長期的な視点から調査を行っているところであります。
  251. 草川昭三

    ○草川委員 その程度の答弁では話にならぬわけなので、後でまた一括してひとつ決意表明をお願いしたいわけです。  中部新空港の問題でございますが、これも、一日運輸省への出席のために江藤運輸大臣が来名をされまして、六次空整の組み入れについての非常に力強い御発言をなされております。特に江藤さんは非常に歯切れがよくて、言語明瞭、意味も明瞭だというので、地元では非常に大好評でございます。しかも、総理の地元へ来たからリップサービスではない、わけのわからぬ表現はやめて、中部新空港という固有名詞を六次空整にきちんと入れる、こういうようなことにします、いろいろな前提はございますが、非常にすっきりとした御発言がなされておりまして、我々も大歓迎であります。  そこで改めて、きょう運輸大臣に、本当に質問するのかしないのか、やめようかと思いましたけれども、同じような御趣旨ならばもう一度決意表明をしていただきたい。つまらぬ後退ならこの際やめてもらおう、それで海部総理に聞こう、こう思っておるわけでございますが、どうやら非常にいい答弁が出そうだということでございますので、この際、いま一度江藤さんから歯切れのいい答弁をお願いしたい、こう思います。
  252. 江藤隆美

    ○江藤国務大臣 お褒めをいただいて大変恐縮いたしますが、歯切れがいいとか悪いとかじゃなくて、本当のことを言っておるということであります。  先般、名古屋を伺いましたときに、実は地元の強い要請がございまして、そのときにこういう話をしております。国会の場所ですからきちっとお答えをしておきたいと思います。  私どもは、日本全体のこれからの均衡ある発展ということを考えたときには、東京、大阪に国際便が集中するという姿は決していいことではない。しかも、先般の日米航空交渉を通じましても、地方空港に乗り入れをさせるという道を初めて開いたわけであります。それから、連日のように各国の首相、運輸大臣、外務大臣が成田への乗り入れを求めてまいります。そのときも、成田、大阪は今はだめですよ、その他の空港でありますならば場合によっては御相談に乗りますということを実は申し上げ続けておるわけです。  そこで、名古屋が官民挙げて、長い間、いろんな面で多額の費用を使って空港問題を検討いただいておることを建設大臣のときから私はよく知っておるのです。したがいまして、今回申し上げましたのは、ただいまの名古屋空港というのは二千七百メーターの滑走路を三千メーターにしようとしています。これで大体アメリカの西海岸に行くだけの施設は整いました。したがって、現在を見ますと乗降客が内外合わせて年間四百十四万人、貨物が同じく内外合わせて三万五千トン、まだ少ないのです。それから発着回数が十一万から十三万回数あるのですが、まだ七万五千回しかありません。そういうことを考えますと、今直ちに必要だとはなりませんが、しかし、今後二十四時間空港を必要とすることは言をまたないことであって、そういう意味から、国全体の均衡ある発展という立場から、六次空整の中で何らかの位置づけをいたします。ついては地元においても、成田のようなことにならぬように、いろいろとなすべきことがたくさんありますから、それらもひとつ御検討願いたいということを申し上げてきたところです。
  253. 草川昭三

    ○草川委員 今もきちっと、六次空整にのせる、こういうようなことも言っておみえになるわけでありますし、既に愛知県議会の方でも、知事は、年明け早々に基本構想の骨子を盛り込んだ中間報告を公表できる、そして、今お話もありました需要予測、採算性、施設の規模、交通アクセス、こういうような問題点を挙げられているわけであります。  この際、先ほどの答弁ではございませんが、海部総理も我が愛知県の出身でございまして、大変重要な総理としての期待があるわけであります。この答弁は愛知県の方々も大変注目をしておるわけでございますので、これはひとつ総理プラス郷土の偉大なる政治家としての発言を含めて、篤としっかり答弁をしていただきたい、こう思います。
  254. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 ただいまの運輸大臣と先生のやりとりを承りまして、私は基本的に全く同じ考えでおりますが、中部圏は先生も御承知のように産業集積が高くて、今後の発展を考えますと、いずれこれに対応した空港の整備が必要でもありますし、また、お互い地元出身の議員として、空港整備促進議員連盟の中でいろいろその必要性を説いてもきましたし、またそこで、地元の皆さん方のいろいろな熱意というものも十分承っております。したがいまして、運輸大臣に対しましても、地元の構想のまとまりをまって五カ年計画の対応を検討してもらう所存でおります。
  255. 草川昭三

    ○草川委員 それは運輸省が書いた原稿をそのまま読まれたのではないかと思うのです。私は、今せっかく、もう時間がございませんのであと一問だけ総理の決意を欲しいのですが、江藤運輸大臣が今非常に我が中部に理解を示した発言をしておみえになるわけです。しかもそれは、具体的に次期の空港整備計画の中に入れる、こういうことまで明確に言っておみえになるわけでありますから、それをバックアップするならばバックアップするとか、ぜひ一体になって我々も努力をしたいというようなことがあってもいいと思うのです。ぜひしかるべき決意を表明をしていただきたい、こう思います。
  256. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 それは最初に申し上げましたように、江藤運輸大臣の基本的な考え方に私も全く同感でありますし、同時に、地元の熱意、御要望がただいま御表明のように非常に強いこともよく私も承知しておりますので、その検討をしていただく考えでおります。
  257. 草川昭三

    ○草川委員 最後になりますが、在韓被爆者の問題について、これは外務省の方にも言っておりますし、きょうたまたま韓日議員連盟の運営委員会が第一議員会館で開かれておる状況になっております。それで、韓国側の方はこの在韓被爆者問題について大変強い熱意を持っております。残念ながら日韓との間には多少ぎくしゃくした経過がございます。しかしそういう経過を放置するわけにまいりません。ぜひ私は、在韓被爆者問題については政府の熱心な対応あるいはまた受け入れ、特に今年度予算には四千二百万の予算もついておりますし、その金も韓国赤十字の方に送金をしておるというような経過もあるわけでありますから、ひとつ総理としての在韓被爆者の問題についての決意をお伺いして、質問を終わりたい、こういうように思います。
  258. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 お尋ねの在韓被爆者に関する問題は、今日もなお数多くの韓国の方々が被爆の苦しみを背負っていらっしゃる、まことに我々としても心の痛む問題でございます。在韓被爆者問題については、韓国政府に協力してなし得る限りのことについては政府としても努力をしておる、また努力をしてきたつもりでおりますけれども、今後とも、いろいろな医療分野での既存の経済技術協力の枠組みの活用も含めて、我が国としてさらに何がなし得るかを韓国側とも協議しつつ、誠意を持って検討してまいりたい、こう考えます。
  259. 草川昭三

    ○草川委員 以上で終わります。
  260. 中村靖

    中村委員長 次に、大矢卓史君。
  261. 大矢卓史

    ○大矢委員 総理にお伺いをいたします。  六十三年度決算報告を先日お受け取りになられました。その中で、ODAの五十六件の調査の中で、六件もその趣旨を生かされておらないということを中心の問題が指摘をされました。これについては当然次の予算編成に会計検査院の報告事項としての対応はされると思いますけれども、やはりこの決算、先ほどから言われておりますように大変なおくれでございまして、この委員会で審議を終え、そして参議院で恐らく今回は初めて決算が不認定になる、そういう中で、それをどういうふうにしてこれから受けとめていかれるのか、そういうことも含め、また先ほどから言われておりますように、消費税の廃止法案が恐らく参議院できょう可決となりましょうし、そしてそれが衆議院に参りまして、両院の可決の結果を得られないといたしましても、やはり衆参両院いずれかでこれが可決になるというその中での内閣としてのそれに対する受けとめ方、それに対しての御所見をまず承りたいと思います。
  262. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 前半で御指摘の、ODAのあり方について会計検査院から指摘を受けました点は、私も数日前検査院の院長からじきじき報告を受けました。あってはならぬことでございますから、今後とも適切な行動をとって、ODAの趣旨にかなった援助ができますように、今度の検査報告の趣旨を踏まえて対応していかなければならないと考えております。  また、参議院で消費税廃止法案が可決されるということでございますが、それは参議院の現実として厳しく受けとめさせていただきますが、衆議院で新たにまた特別委員会ができてそれらの法案の御議論も続くもの、こう思いますので、注目をして各党の御議論を見詰めさせていただきたい、こう考えております。
  263. 大矢卓史

    ○大矢委員 今度の臨時国会は税制国会と言われております。ところが、総理も大幅見直しと言いながら、十一月末までにそれが自民党の案として出てこなかったし、政府としてもこの国会に提出をされるということが、――本来ですと、政府みずから召集をされたこの議会でございますから、会期の延長をしてでもその法律を出して審議を願って、自民党は自民党なりの形で、国民にその見直し案というものを、法律的には、衆議院でもって、現在多数でございますから、これを決めていくという手順であろうと思いますけれども、今のところこの国会に出てくるという見通しがないわけであります。それについての御所見を承りたい。  と同時に、先ほどの答弁の中で、今までも話し合いでもって議会の運営をやってきておるということでございましたけれども、今までの話し合いというのは自民党が衆参における絶対多数の上での話し合いであります。これからは、恐らく衆議院で通りましても参議院では通らないという法案が出てまいりましょうし、もちろん衆参ともに立法の機関ですから、これからもいろいろな法律が参議院先議で出てくる場合がございます。その場合に、参議院で通りましても衆議院で可決されない場合、また可決される場合、それらいろいろなケースが出てくると思いますけれども、現状からいたしましても、衆参が同じような議決が得られない、そういう中では、先ほどから言われております話し合いというのは、あくまでも自民党が衆参で絶対多数を持っていらっしゃるという中での話し合いでございましたけれども、この参議院選挙後の現状を踏まえた中での話し合いというのは、従来とは全然趣が変わらなければならぬ。私どもが参加をいたしましたあの消費税の本会議にいたしましても、あのままほっておいたらそのままの形で通っていく、少なくとも一年はお待ちになったらいかがですかということについても、とうとう耳はかされなかったというような中での強行採決、そしてまた本会議での議決ということになったわけでありますけれども、今現在はそういう民意でございませんので、衆参が違った形においての今後の話し合い、それも含めて御答弁を願いたいと思います。
  264. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 消費税の問題につきましては、党といたしましてもいろいろな御意見に耳を傾けてまとめ上げられた見直し案であります。そして、それをどのようなことで国会の御審議に供するかということについて今鋭意作業中であると私は理解をいたします。  また、先生御指摘の、従来の衆参のパターンと違って参議院のこの現実の中でどうかとおっしゃいますが、これはいまだ経験のない状況でもあるわけでございますから、参議院の結果と衆議院の結果が異なってくるということは数学的に考えれば間々あることでございましょうけれども、そこを何とか努力して、国民生活の向上のため役立つものは何だろうかという共通のことを目指して政治は行われるわけでございますから、そこで両院でいろいろな御意見が闘わされ、同時にまた、与野党を通じての話し合いもいろいろな角度から新たにひとつ展開していただいて、初めから向こうは数が多いから勝ち、こちらは数が少ないから負けということだけで決めないで、さらに実りある内容の話し合いが国民のためになされますことを私は心から国会の各党の皆様にお願いをして、議論を深めていただきたい、このように念願しております。
  265. 大矢卓史

    ○大矢委員 先ほどの先生方の御質問の中に、自由主義と社会主義というようなテーマで御質問があったと思いますし、また渡部先生からも、混合経済であるべきではないかというようなお話もございました。やはりこれも大きな選挙の争点になると思いますけれども、自由主義というものと社会主義というものを対比して考える物の考え方というのはおかしいのであって、自由主義に対するものは全体主義であって、資本主義に対するものが社会主義である、そういう中での議論でなければならない。それをすりかえて自由主義がいいのか、社会主義がいいのかというような議論をするが、そうでなくして、これは日本の国もそうでありますように、自民党にいたしましても、純然たる資本主義、強いものが勝てばいいんだということでなしに、やはり社会主義のいいところをどんどん取り入れていらっしゃると思います。そういう中でのこれからの経済のあり方は、やはり社会主義のよさと資本主義のよさを取り入れた混合経済でもっていかなければならない。そして、あくまでも体制は自由主義の体制でなきゃならぬ、民主主義の体制でなきゃならぬ。しかし、西側におきましても、やはり国の数だけその民主主義のやり方が各国違うわけでありますから、共産主義が変わると同じように、やはり西側の政治体制も変わらざるを得ない。そういう中で、日本が一つの共通的な考え方の中でこれからも政治をやっていく、そういうことでなきゃならぬので、基本的に自由主義か社会主義かというような論点ではないと思いますけれども、この点いかがでございますか。
  266. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 私は、きょうまでの世界の大きな戦後の流れというものを東西対立という関係で受けとめるのは、これは非常に一般的な議論であったと思います。  粗っぽい分け方かもしれませんが、世界は東西の対立でということはよくこの国会の議論でも使われたことでした。そして、それをまた大きく分けると自由主義陣営と社会主義陣営という、こういう分け方も粗っぽい分け方でありますが、それが定着して理解をされておったと思うわけであります。したがいまして、先ほど来のやりとりの中でも、私はそういったきょうまでの立場に立って議論を進めてまいりましたし、また東西の対立から東西の話し合い、東西の協力ということに、この間のマルタ会談の評価なんかもマスコミなんかでも共通して出ておるようでありますし、それは日本だけのことじゃなくて、世界がそのような評価をしておる問題ではないかと思いますので、私はそのような受けとめ方で御議論を進めさせていただいてきました。
  267. 大矢卓史

    ○大矢委員 これも先ほどから問題になっております解散の問題でございますけれども、この解散につきましても、総理はだんだん「今解散を考えておりません」というような声が小さくなってくるのですけれども、政府としては、私どもがすぐに民意を問えということは別にいたしましても、やはり予算というものを出して、自民党が考える見直し案を十二分に審議をしていただいて国民に審判を仰ぐ、本来ですとそういう形で、衆議院というものは予算を通していき、そしてまた参議院は今の現状ですと予算が通るわけでありますから、そういう形でやっていくのが常道だと言われておりますけれども、もう既にマスコミの動きというのはもう御承知のとおりであります。しかし、先ほどの答弁がございまして、通常国会召集冒頭解散ということは、総理が言われましたように国会の休会中に外遊されるということでありますから、それはあり得ないようでありますが、解散につきましては昔からうそをついてもいいというようなことを言われておりますけれども、中曽根さんがダブル選挙をやっておかしくなりましたけれども、やはりそのことについても、本当のことを言わないまでも、うそをついてもいいということじゃないと私は思います。  そこで、私どもは、やはり総理が堂々とその所信を国会でもって表明されて、そして野党があくまでもそれに対する質疑を行い、政府が答弁を行い、それは国会の中でのやりとりでなくして、国民に対して明らかに今度の選挙の争点をあらわして、しかる後どうしても議会運営ができなければその解散ということがあり得ることであって、今言われておりますような冒頭解散、総理が何も言わずにそのままさよならというような解散があってはならぬと思いますけれども、いかがでございますか。
  268. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 内外ともに重要な時期でございますので、私は与えられた政策課題に一生懸命取り組んでおるさなかでありまして、解散のことは何度も申し上げておりますように具体的に何の判断もいたしておりません。毎日毎日を一生懸命取り組んでおるということです。
  269. 大矢卓史

    ○大矢委員 そういうおざなりなことをおっしゃるようなことでなしに、本当に真剣にあなた方が国民に訴えることを堂々と訴えていく、そして野党も、私どもも廃止について今参議院で論議をいたしておりますことを国民にわかりやすく訴えながら、本当に国民の理解を得た中での議会構成がされていく、そういうことを私は望んでおきたいと思います。  そこで、もう時間がございませんので、従来から、この新しい税金をつくりますときに言われましたいろいろな理由が変わっておりまして、自民党さんがいまだに消費税にこだわっていらっしゃるその中で、まず大平さんが言われましたのは赤字の解消のため、そして中曽根さんが言われましたのは直間比率の見直し、そして今度は老齢者社会に向けて。いずれもその問題が、どのような赤字を解消していくのか、まずどのような直間比率が妥当なのか、そしてまた老齢者社会がどのようなものがふさわしいのか、その国民に対する負担、それが本当に国民が理解ができるようにお示しになることだと思いますけれども、最後にそのことをお聞きして、私の質問を終わらしていただきます。
  270. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 今回の税制改革で消費税の問題をお願いしましたのは、個人の所得税、それから法人税、いわゆる直接税に偏り過ぎておった税の不公平を是正するということと、同時に、所得と消費と資産との間にバランスのとれた関係をつくり出しながら、広く、浅く、すべての国民の皆さんに社会共通の費用を負担していただく、そして、そこで得たものは来るべき高齢化社会に対して福祉の充実を図っていかなきゃなりませんから、そういったことに主として使わせていただくものであるということを掲げたわけでございます。  直間比率の問題につきましては、昔から御承知のようにクロヨンとかトーゴーサンとか、いろいろな言葉も出てきて、税が不公平ではないかということの代表的なものにされてきた時期もずっとあったわけでありますから、直間比率というものについては、中堅サラリーマンの人を中心に考えてみましても、このまま税制を変えないでほっておくと、二〇一〇年には負担率において二倍になるということも明らかになっておるわけでありますから、それがわかっておるならばどのように改めていくかということで、今度個別の間接税を消費税というものに置きかえたり、いろいろな努力、作業をしてきたわけでございます。  そして、改革前の税制は、税負担がとりわけ給与所得を初めとする個人の稼得所得に偏っておった。今度はその中で、改革によって重税感とか不公正・不公平感を取り除いていくように努めていこうという目標があるわけでして、直間比率というものは、そういった総合的なすべての政策努力の結果、顧みてこうなったというところに落ちついていくもので、初めからそれを何%にするということを具体的に示して、それを示してからいろいろな作業をするものとはちょっと順序が違うのではないかと私どもは受けとめて、作業をしてきたわけでございます。
  271. 中村靖

    中村委員長 次に、野間友一君。
  272. 野間友一

    ○野間委員 最初に総理にお伺いしたい問題は、労働省ルートから今度はきょうは文部省ルートですね、リクルートの裁判がきょうからいよいよ始まりました。この高石被告に対する刑事事件、これは総理が文部大臣当時の出来事でございまして、いわば文部行政そのものが問われておると思いますし、また高石氏が事務次官に任命された、このときの文部大臣も総理その人だったと思います。  きょうから始まりました公判に対してどのような見解をお持ちなのか、これらの点を踏まえてお聞かせいただきたいと思います。
  273. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 御指摘のように、高石氏が事務次官在職中にリクルート社からの未公開株式を譲り受け、刑事訴追を受けるに至ったことはまことに遺憾なことであります。公訴事実につきましては今後の司法当局の判断をまつべきものと考えますが、政府といたしましては、今後とも綱紀粛正の一層の徹底に努めまして、このような指摘を受けるような事件が二度と起こらないように戒めていかなければならないと考えております。  なお、私の文部大臣在任中に高石氏を事務次官へ任命したことについてのお尋ねでございますけれども、当時はリクルート事件のことはまだ全くわかっていなかったことでもございますし、同時にまた、高石氏の問題については、入省年次とか行政能力とか経験などを総合的に参酌をして大臣として判断をしたものでございました。
  274. 野間友一

    ○野間委員 徹底した綱紀の粛正をぜひ強くお願いしたいと思います。  それでは、次に消費税の問題に移っていきたいと思います。  海部総理は、参議院選挙後から、思い切った見直しとかあるいは消費者の立場に立った見直しあるいは主婦の感覚に基づいた見直し、丹念に調べてみますと、随所でそういうことを言っておられます。今度一日に見直しの方針が出されました。これについても、所見を求められて総理は、これは思い切った見直しだと思う、こういうような発言もされております。ところが、十二月一日の方針が出た後から、マスコミがこぞっていろいろと世論調査、アンケート調査をしていることは御案内のとおりです。  毎日新聞によりますと、これは九月時点と十二月一日から三日までの比較ですけれども、見直しが五〇%から四四に大幅に減っておりますし、特に女性の見直しに対する批判が非常に強い点は新聞で御承知だろうと思います。それからテレビ朝日、これは十二月四日に放映した分ですけれども、見直し大幅かという問いに対しまして、思わないというのは七〇・三%、思うというのは一八・九%。存続に賛成かに対して、賛成が三三・四、反対が五八・一。それから朝日新聞はおととい出しましたが、見直しについて大いに評価、ある程度評価、これを含めまして三七%、余り評価しない、全く評価しない、これは五八%。随分と見直しについての厳しい世論が出ております。と同時に、消費税の廃止法案、これについては賛成が五八%、きょうは参議院でこれが可決されますが、反対が二六%。いずれの世論調査を見ましても、見直しが思い切った云々というふうに総理は御認識のようですけれども、しかし、申し上げたように主婦の感覚、消費者の感覚、立場から見たら、こういう非常に厳しい結果が出ております。  私はつぶさにいろいろ有権者のところを回ってまいりました。非常に勉強されておるのですね。その結果がこういうことになってあらわれておるわけですけれども、こういう世論調査を踏まえて、総理はどういう見解をお持ちなのか、お聞かせいただきたいと思います。
  275. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 私たちは、税制改革をまとめましたときに、これはよかれと思ってやったことでございましたけれども、参議院選挙の結果を眺め、そして見直しをしろという国民世論が非常に大きいことを率直に受けとめまして、党として思い切った見直し作業に入った。そして、この見直しは本当に思い切った見直しでございまして、一々細かくは申し上げませんけれども、例えば新聞の御意見の中でも、きょうまでいろいろ非常に厳しい、我々の立場から見るとひど過ぎるなと思うような計算結果を発表されておりましたある大学の意見にしても、食料品については思ったほど下がらなかったが、しかし教育費とか家賃とかこういったものについてはきちっと下がっておるという評価も出ておるわけでありまして、私は、消費税を廃止するかどうかというだけで御議論いただくと、消費税は廃止した方がいいという声が出てくるのはそれは率直にそうだろうと思うのです。けれども、消費税をもし仮に廃止した場合に、それじゃ従来の個別物品税は復活しますよ、法人税の下がり方は途中でとまりますよ、いろいろなこともあわせて、それでもいいですか、しかも二年たつとまたやり直しで、そのときの意見はサービスにも資産にも所得にも課税があるのですよということまで全部示して、どうですかという聞き方をされるといかがなものなのだろうかなという気がしますし、また消費者の立場に立って物を考えると申しましたのは、ある意味では委員も消費者でありますし、私も国民のすべての人が視点を変えれば消費者でもあるわけで、そしてその消費者の立場に立って考える。  ですから、食料品も小売段階では非課税、そこまでは半額。人間性の尊厳に触れる問題で、特に女性の皆さんから出産費にまで消費税をかけるのはという声が非常に多かったということも謙虚に受けとめて、そこも非課税にいたしましたし、教育も非課税になっておりますし、家賃その他も、いろいろと考えて思い切った見直しをして一兆二千八百億円ということで決めたわけでありますから、これを今後はいろいろまた各党の皆さんの御議論に供するわけでありますけれども、結果としてそれが思い切ったものなのかどうかという御批判はそれぞれあろうと思います。けれども、そういった努力をした見直し案であった、ぎりぎりの議論を詰めながら、自由民主党も政府の内部でも一生懸命研究をした結論であったということをどうぞ御理解を賜りたい、私はこう思っております。
  276. 野間友一

    ○野間委員 いや、消費者の感覚、主婦の感覚、立場ということをしょっちゅう言っておられましたから、その結果が今申し上げた世論調査として出てきておるわけですね。これは消費者あるいは主婦の方々もやはり一生懸命勉強していますよ。毎日毎日の生活に対する税金ですから、その結果が、これは大幅ではないあるいは反対だ、特に女性が、これが出てからずうっと廃止がふえて見直しが減っておるというのが特徴だと思うのです。だから、そういう感覚を、今総理はいろいろ弁解されましたけれども、私はそこに大変な乖離があるのじゃないかというふうに思えて仕方がありません。  そこで、今食料品の問題についてお話がありました。総理は今度の見直しで食料品がどのくらい下がるというふうにお考えになるか、お聞かせいただきたいと思います。
  277. 石坂匡身

    ○石坂(匡)政府委員 御答弁申し上げます。  ただいまどれくらい下がるかというお尋ねでございますけれども、ただいま発表になっておりますものは、これは自由民主党の案でございまして、政府といたしましてのどう下がるかということを申し上げる立場に私はないわけでございますけれども、今おっしゃいました、巷間伝えられております自由民主党の食料品につきましての措置を拝見いたしますと、一つは小売段階、これにつきましては全部非課税になるということになってございます。それからもう一つは、生産者それから卸という段階は一・五%の税率になるというふうに伝えられております。それを拝見いたしますと、卸から小売に移る段階、ここまでの税率は三%から一・五%に下がってまいります。それが物価に反映されてくる第一の要素でございますし、二つ目は今度は小売が消費者に売る段階で、そこで今度はその付加価値、マージンというふうなものが非課税になる、この二つの要素が値下がりの要素として働いてくるということで、その二つのものが重なった形で小売価格が下がってくる、そのように理解をしております。
  278. 野間友一

    ○野間委員 大蔵大臣は大体一・五%前後下がるであろう、こう国会でも答弁、きょうも午前中やられたわけですけれども、大蔵省は今言いませんでしたけれども、例えば小売の人たちは、物件費は依然としてこれは食料品ではありませんから三%、これをかぶってくるわけですね。それから、従前からのいわゆる免税業者、これがあるわけですね。いろいろ試算してみますと、免税業者の場合には転嫁が二・四ですから、そこから差し引きしますと〇・七五%ぐらいしか物価値下がりには寄与しない。それからいわゆる課税業者の場合ですね。この場合には一・三五、三%から一・六五、これが要するに仕入れの価格と物件費、これを引くわけですけれども、そうすると三%から引きますと一・三五%しか下がらない。しかもこれは免税業者とそうでない業者の割合を調べてみますと約半々。それで計算したら約一%しか下がらない。しかも、酒、外食は別にカウントしませんから、大体食品については年間の商い四十兆円、一%下がったとしても四千億円しか下がらない。これは思い切った見直しかどうかということになりますと、私はそうじゃないと思うのです。だからこそ、主婦の皆さんはそういう感覚で今度の見直しを見ておると思うのです。いかがでしょう。
  279. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 これは、消費税を廃止するかしないかということと見直しをどうするかということを比較、検討しますと、確かにおっしゃるように全部消費税を廃止した方が、そのところだけ見るとこれは減りますけれども、しかし消費税を廃止しますと、野党の皆さんの提案によっても、物品税は個別のものは復活するし、それから減税になるべき法人税も途中でとまってしまうわけでありますから、やはりそういったことすべてを含めて比較、検討もしていただきたいと思いますし、また、値上がりするというなら別でありますけれども、値下がりするというのは事実でございますし、また、政府も大いに努力をしながら消費者物価の問題については物価全体の努力もしており、つい先月の発表は、私の記憶に誤りなければ、東京都の一番中心の物価についても〇・九%消費者物価は下がっておるという結果も出ておるわけでありますから、そういったこと等を全部総合的に判断しながら、消費者の立場を考え、消費者を中心にした政治をやっておる。その中の一環として消費税の見直しをやって、必ず安くなっていくという確信を持っております。  〇・〇幾つという細かい数字のことになりますれば、これは政府委員から答弁をいたさせます。
  280. 野間友一

    ○野間委員 もう時間が参りましたのであとしばらくしかありませんが、今総理の答弁を見ましても、全体を総合して考えてくれ、こういう話なんですね。  だから、食料品そのものだけを考えてみますと私が試算したような一%しか下がらないというふうになるわけで、そのこと自体が、主婦が非常に切望しております食料品についてもっと下がるであろうという期待を持たせつつ、これが全然違うじゃないかというのが一つです。  それからもう一つは、今度は最終の小売商ですね。これは総額表示方式というのが自民党の骨子の中にありますよね、値段のつけ方ですけれども。総額表示方式、御存じでしょう。つまりそうなりましたら消費税そのものは隠れてしまう。これまた主婦が大変批判をしておる大きな問題であります。  こういう点で、私はやはり、ああいう小細工的な見直しによる存続じゃなくて廃止しかないということは、ますます世論調査でも明らかになっておりますし、私もそう思うわけです。そういう態度でずっと臨まれるとするならば恐らく総選挙でまた厳しい批判を受けられるであろうということを申し上げて、時間が参りましたので終わりたいと思います。
  281. 中村靖

    中村委員長 これにて昭和六十一年度決算外二件についての質疑は終了いたしました。  午後三時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後三時三分休憩      ────◇─────     午後三時三十九分開議
  282. 中村靖

    中村委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  昭和六十一年度決算についての議決案は、理事会の協議に基づき、委員長において作成し、各位のお手元に配付いたしております。  これより議決案を朗読いたします。     議決案   昭和六十一年度一般会計歳入歳出決算特別会計歳入歳出決算国税収納金整理資金受払計算書及び政府関係機関決算書につき、左のごとく議決すべきものと議決する。   本院は、毎年度決算審議に際し、予算の効率的執行並びに不当事項の根絶について、繰り返し政府に注意を喚起してきたところであり、政府もこれに対し特に留意して対策を講じてきた結果その効果が見受けられるものの、なお改善を要するものが認められるのは遺憾である。  一 昭和六十一年度決算審査の結果、予算の効率的使用が行われず、所期の成果が十分達成されていないと思われる事項が見受けられる。    左の事項がその主なものであるが、政府はこれらについて、特に留意して適切な措置をとり、次の常会に本院にその結果を報告すべきである。   1 上海就学生問題にみられるような日中の両国民に多大な相互不信を招来した一部の日本語学校の利益本意の反社会的、反人道的行為について、関係省庁は厳しい措置を行うと同時に再発防止の行政指導を強化すること。   2 地価高騰が国民に及ぼす影響の重大性にかんがみ、地価抑制のため一層適切な措置を講ずべきである。   3 海外における不動産投資に対しては、その投資の実情把握に努めるとともに、相手国の地域社会において調和貢献するよう引き続き指導すること。   4 産業廃棄物やゴミの排出抑制、減量化及び再利用の推進に努めるべきである。  二 昭和六十一年度決算検査報告において、会計検査院が指摘した不当事項については、本院もこれを不当と認める。    政府は、これらの指摘事項について、それぞれ是正の措置を講ずるとともに、綱紀を粛正して、今後再びこのような不当事項が発生することのないよう万全を期すべきである。  三 決算のうち、前記以外の事項については異議がない。   政府は、今後予算の作成並びに執行に当たっては、本院の決算審議の経過と結果を十分考慮して、財政運営の健全化を図り、もって国民の信託にこたえるべきである。 以上が議決案の内容であります。     ─────────────
  283. 中村靖

    中村委員長 これより昭和六十一年度決算外二件を一括して討論に付します。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。谷津義男君。
  284. 谷津義男

    ○谷津委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、昭和六十一年度決算につき、ただいま委員長が御提案になりました議決案のとおり議決することに、賛成の意見を表明するものであります。  当委員会は、予算の効率的執行、行政運営に関する問題について、各省庁別に順次審査を行ってまいりました。  ただいま委員長から委員会の審査内容を取りまとめて御提案になりました議決案に示されておりますように、予算の効率的使用が行われずに、所期の成果が十分に達成されていないと思われるものが見受けられ、特に留意して適切な措置をとるべき事項として、「上海就学生問題にみられるような日中の両国民に多大な相互不信を招来した一部の日本語学校の利益本意の反社会的、反人道的行為について、関係省庁は厳しい措置を行うと同時に再発防止の行政指導を強化すること。」などの四項目について指摘されております。  政府は、指摘されました四項については速やかに改善の措置をとるべきものであります。  また、昭和六十一年度決算検査報告において、不当事項百二十九件、不当金額にして三十九億千九十三万円の指摘が行われていることは遺憾であります。  政府は、不当事項が繰り返し指摘されないよう努めるべきであります。  政府は、議決案の指摘事項及び会計検査院の指摘事項について、今後の予算編成に反映させるとともに、予算の執行に当たっては効率的かつ厳正に行うべきであります。  また、議決案に指摘はされておりませんが、省庁別審査の過程において、我が党委員から各種の問題を提起してまいりました。これらの提起した問題については、鋭意検討を加え、今後の行財政運営に生かしていくことを要望いたします。  次に、昭和六十一年度の国有財産関係の二件につきましては、是認すべきものと議決することに賛成いたします。  以上をもちまして、賛成討論を終わります。(拍手)
  285. 中村靖

    中村委員長 次に、三野優美君。
  286. 三野優美

    ○三野委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、ただいま委員長から提出されました昭和六十一年度決算につき、その議決案に対し反対の意を表明するものであります。  具体的には、議決案の一つである不当支出の根絶と効率的執行を促す特別の措置を要求した指摘事項及び会計検査院が指摘した不当事項については、我が党も賛成であります。しかし、「前記以外の事項については異議がない。」として決算すべてを是認することになる議決案には、我が党は反対するものであります。  反対の理由は、まず昭和六十一年度決算は、大型間接税はやらないとあからさまなうその公約で衆参ダブル選挙を断行した中曽根内閣提出の、いわゆるいわくつき予算であることを指摘しておきます。  顧みると、当時の中曽根首相、竹下蔵相は、翌六十二年度にひそかに売上税の導入をもくろみ、そのために、その前年度の六十一年度税収を過少見積もり、さらに六十一年十月には一兆一千二百億円もの減額補正を行い、大増税導入の環境づくりを行った観があります。しかし、決算では逆に二兆四千三百億円もの自然増収を招来してしまったのであります。  こうした極めて恣意的とも見える税財政運営は、国民の名のもとに厳しく指弾されるべきで、今後のためにも絶対に看過されてはなりません。  同時に、土地、株等に対するキャピタルゲイン課税を怠り、金余り現象を放任、貧富の差をますます拡大させたことも容認できません。  また、歳出では、大幅増の防衛費を初め、不明朗なODA、福祉医療費の圧縮、さらには地価高騰に伴う地代、家賃の増高にもかかわらず、実質賃金の据え置きなど不当、不合理な点が枚挙にいとまありません。  とりわけ、高速道路通行料金のたび重なる引き上げ、さらに十年後の建設予定費やその予想する管理費までも先取りするという極めて不法、不当な料金収支決算等についても、認めるわけにはまいりません。  最後に、この昭和六十一年度決算で触れなければならないことは、四全総の中間報告として東京一極集中構想を一方的に打ち出し、並行して規制緩和、民活を推進させたことや、戦後未曾有のリクルート疑獄事件をも発生させた年度だったことなども想起し、議決案には強く反対するものであります。  なお、国有財産関係二件につきましても、反対するものであります。  以上です。(拍手)
  287. 中村靖

    中村委員長 次に、草川昭三君。
  288. 草川昭三

    ○草川委員 私は、公明党・国民会議を代表して、昭和六十一年度決算外二件に対して、是認できないことを表明し、ただいま委員長より御提案されました議決案に対し、反対の意思を表明するものであります。  以下、反対の主な理由を申し上げます。  まず第一は、議決案に「前記以外の事項については異議がない。」とされておりますが、政府に対し、この事項に限らず本委員会で指摘したように数多くの異議があり、決算総体を認めるわけにいかないからであります。  第二は、経済財政運営についてであります。  六十一年度予算編成の最大の課題は内需拡大に積極的に取り組むとともに、国民生活の防衛と福祉水準の向上、行政改革の徹底と「増税なき財政再建」の推進、防衛費の抑制などでありました。しかしながら、所得税減税の二年連続見送りや、たばこ消費税等で約四千億円に及ぶ増税の断行、三年連続で公共事業費を削減し内需拡大に逆行、国立大学授業料や国鉄運賃、消費者米価、医療費などが軒並みに引き上げられる中で、防衛関係費のみが異常に突出する結果となり、十分国民の要望にこたえたものとならなかったのであります。  第三は、会計検査院の指摘事項が、六十一年度決算検査報告によると、百五十六件、二百十四億三千五百四万円と、件数、金額いずれも前年度を上回っている点であります。特に補助金に関しては、六十五件、九十六億四千百四十一万円で補助金のむだ遣いが全体の四五%を占め、中には農業施設の設置等に関する補助事業のように六十二年度も繰り返されているものがあります。相変わらずずさんな補助金行政が浮き彫りになっております。  さらに、私どもが本委員会で指摘しました海外における不動産投資の実態やコンピューター基本システム設計の入札問題に見られる不公正な取引など、今後も厳しい監視が必要であります。  政府は、決算審査の結果については直近の予算に反映させる必要があり、今後の財政執行をより一層適切に行うように要望し、反対対論を終わります。(拍手)
  289. 中村靖

    中村委員長 次に、大矢卓史君。
  290. 大矢卓史

    ○大矢委員 私は、民社党・民主連合を代表し、昭和六十一年度決算外二件について、ただいま委員長より御提案のとおり議決することに反対を表明するものであります。  反対の第一の理由は、本決算が内需を中心とした景気を維持する上で極めて不十分な内容となっていた点であります。昭和六十一年度当時、我が国は深刻な円高不況に直面しており、一刻も早く経済を建て直すことが至上課題でありました。にもかかわらず、政府は適切な政策を講じず、傍観者としての立場をとり続けたのであります。その結果、昭和六十一年度の実質経済成長率は政府当初見通しの四・〇%を大きく下回る二・七%という最悪の結果となりました。  反対の第二の理由は、国民的課題である行財政改革が不徹底に終わっていることであります。公務員の定員削減による総人件費の抑制、補助金行政の大幅な見直しなど、かねてからの我々の要求が完全に実現していないことは極めて遺憾であります。また、一般会計租税及び印紙収入が当初の四十兆五千六百億円を一兆三千百六十八億円も上回る結果となったことも問題であり、今後、適正な税収見積もりが行われるよう強く求めます。  反対の第三の理由は、本決算が潤いとゆとりを国民生活にもたらす内容とはなっていない点であります。それどころか、老人保健法の改悪、公共料金の引き上げなど、国民生活の向上に反する措置が講じられたことは断じて容認できないことを強調して、私の反対討論を終わります。(拍手)
  291. 中村靖

    中村委員長 次に、野間友一君。
  292. 野間友一

    ○野間委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、昭和六十一年度決算を議決案のとおり決するに反対の意を表明します。  本決算は、「戦後政治の総決算」を財政面でも貫き、六年連続の軍事費異常突出、民活の名による新たな財界奉仕を優先させ、それらの負担と犠牲をすべて国民に押しつけて、国民生活を破壊するものとなりました。  反対理由の第一は、レーガンの核戦略を補完する歯どめなき大軍拡を推し進め、軍事費は、政府計画に格上げされた中期防衛力整備計画の初年度として最優先されるなど、軍縮平和と国民生活向上を求める国民の願いを踏みにじるものとなっているのであります。  反対理由の第二は、軍事費突出とは対照的に、社会保障経費を大幅に削減したことであります。国民の生存権を保障し、国の社会保障増進義務をうたった憲法第二十五条は、まさに空洞化されようとしており、断じて容認できません。  反対理由の第三は、民活の名によって新日本列島改造計画ともいうべき超大型プロジェクトを解禁し、ますます財界奉仕を強めようとしていることであります。東京湾横断道、明石海峡大橋などの推進は、国民には莫大な財政負担と環境破壊をもたらしつつ、大企業には大もうけを与えるものにほかなりません。  以上の内容を含む昭和六十一年度決算について、ごく限られた指摘事項のほかは異議がないとする本議決案には、到底賛成することはできません。  昭和六十一年度国有財産増減及び現在額総計算書は、国有財産の純増加要因として、軍拡路線を反映した防衛庁の艦船、戦闘機などの新造を含むものであり、このような国有財産管理のあり方を示す本計算書を是認することは断じてできません。  また、同年度国有財産無償貸付状況計算書については、制度自体の意義は否定しませんが、管理運用の一部に重大な疑義がある事態が残されたままとなっており、これは是認することはできません。  以上で私の反対討論を終わります。
  293. 中村靖

    中村委員長 これにて討論は終局いたしました。     ─────────────
  294. 中村靖

    中村委員長 これより順次採決いたします。  昭和六十一年度一般会計歳入歳出決算昭和六十一年度特別会計歳入歳出決算昭和六十一年度国税収納金整理資金受払計算書及び昭和六十一年度政府関係機関決算書を議決案のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  295. 中村靖

    中村委員長 起立多数。よって、議決案のとおり決しました。  次に、昭和六十一年度国有財産増減及び現在額総計算書昭和六十一年度国有財産無償貸付状況計算書の両件は、これを是認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  296. 中村靖

    中村委員長 起立多数。よって、両件は是認すべきものと決しました。  なお、ただいま議決いたしました各件の委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  297. 中村靖

    中村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  298. 中村靖

    中村委員長 この際、各国務大臣から順次発言を求めます。後藤法務大臣。
  299. 後藤正夫

    ○後藤国務大臣 ただいま御決議のありました就学生問題につきましては、従来からその適正な入国及び在留の管理に努めているところでありますが、今後とも御決議の趣旨に沿って努力してまいる所存であります。
  300. 中村靖

    中村委員長 次に、石橋文部大臣。
  301. 石橋一弥

    ○石橋国務大臣 ただいま御決議のありました日本語学校に係る事項につきましては、御決議の趣旨を踏まえ、今後とも努力してまいりたいと存じます。
  302. 中村靖

  303. 石井一

    石井国務大臣 ただいま御決議のありました地価対策につきましては、従来から所要の措置を講じているところでありますが、御決議の趣意に沿い、政府一体となって今後ともより一層の努力をしてまいる所存であります。
  304. 中村靖

    中村委員長 次に、原田建設大臣。
  305. 原田昇左右

    ○原田国務大臣 ただいま御決議のありました海外不動産投資につきましては、御決議の趣旨に沿うよう努力してまいる所存でございます。
  306. 中村靖

    中村委員長 次に、戸井田厚生大臣。
  307. 戸井田三郎

    ○戸井田国務大臣 ただいま御決議のありました産業廃棄物やごみの排出抑制、減量化及び再利用につきましては、御決議の趣旨に沿い、今後ともその推進に努めてまいる所存であります。
  308. 中村靖

    中村委員長 以上をもちまして、各国務大臣からの発言は終わりました。  次回は、来る十四日木曜日に委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時五十九分散会