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1989-10-31 第116回国会 衆議院 決算委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日平成元年九月二十八日)(木曜日 )(午前零時現在)における本委員は、次のとお りである。    委員長 中村  靖君    理事 魚住 汎英君 理事 尾身 幸次君    理事 岡島 正之君 理事 杉山 憲夫君    理事 谷津 義男君 理事 渡部 行雄君    理事 草川 昭三君 理事 大矢 卓史君       天野 光晴君    宇野 宗佑君       金丸  信君    竹下  登君       松野 頼三君    宮崎 茂一君       宮下 創平君    上田  哲君       小川 国彦君    三野 優美君       小川新一郎君    古川 雅司君       米沢  隆君    野間 友一君 ────────────────────── 平成元年十月三十一日(火曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 中村  靖君    理事 魚住 汎英君 理事 尾身 幸次君    理事 岡島 正之君 理事 杉山 憲夫君    理事 谷津 義男君 理事 渡部 行雄君    理事 草川 昭三君 理事 大矢 卓史君       宮崎 茂一君    上田  哲君       小川 国彦君    三野 優美君       小川新一郎君    古川 雅司君       岩佐 恵美君  出席国務大臣         外 務 大 臣 中山 太郎君         通商産業大臣  松永  光君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      高原須美子君  出席政府委員         経済企画庁調整         局長      勝村 坦郎君         経済企画庁国民         生活局長    末木凰太郎君         経済企画庁物価         局長      栗林  世君         科学技術庁長官         官房審議官   石田 寛久君         外務政務次官  田中 直紀君         外務大臣官房長 佐藤 嘉恭君         外務大臣官房領         事移住部長   久米 邦貞君         外務省北米局長 有馬 龍夫君         外務省欧亜局長 都甲 岳洋君         外務省経済局次         長       内田 勝久君         外務省経済協力         局長      松浦晃一郎君         外務省条約局長 福田  博君         外務省情報調査         局長      山下新太郎君         通商産業大臣官         房長      熊野 英昭君         通省産業省通商         政策局長    畠山  襄君         通商産業省貿易         局長      内藤 正久君         通商産業省立地         公害局長    岡松壯三郎君         通商産業省基礎         産業局長    高橋 達直君         通商産業省生活         産業局長    南学 政明君         工業技術院長  杉浦  賢君         資源エネルギー         庁長官     山本 雅司君         中小企業庁長官 見学 信敬君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部防犯企画課         長       根本 芳雄君         経済企画庁長官         官房会計課長  小川 雅敏君         環境庁大気保全         局大気規制課長 濱中 裕徳君         法務省人権擁護         局人権擁護管理         官       島野 穹子君         法務省入国管理         局警備課長   町田 幸雄君         外務大臣官房会         計課長     林   暘君         大蔵省主計局司         計課長     設楽 岩久君         厚生省生活衛生         局水道環境部環         境整備課長   坂本 弘道君         厚生省社会局生         活課長     浅野 史郎君         通商産業大臣官         房会計課長   土居 征夫君         労働省労働基準         局安全衛生部化         学物質調査課長 露木  保君         労働省職業安定         局民間需給調整         事業室長    戸苅 利和君         自治省財政局交         付税課長    黒沢  宥君         会計検査院事務         総局第一局長  疋田 周朗君         会計検査院事務         総局第五局長  安部  彪君         中小企業金融公         庫総裁     渡辺 喜一君         中小企業信用保         険公庫総裁   片山 石郎君         決算委員会調査         室長      竹尾  勉君     ───────────── 委員の異動 十月十二日  辞任         補欠選任   米沢  隆君     川端 達夫君 同日  辞任         補欠選任   川端 達夫君     米沢  隆君 同月十九日  辞任         補欠選任   小川 国彦君     辻  一彦君 同日  辞任         補欠選任   辻  一彦君     小川 国彦君 同月三十一日  辞任         補欠選任   野間 友一君     岩佐 恵美君 同日  辞任         補欠選任   岩佐 恵美君     野間 友一君     ───────────── 九月二十八日  昭和六十二年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その2)  昭和六十二年度特別会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書  昭和六十二年度特別会計予算総則第十三条に基づく経費増額調書及び各省庁所管経費増額調書(その2)  (承諾を求めるの件)(第百十四回国会内閣提出)  昭和六十三年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その1)  昭和六十三年度特別会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その1)  昭和六十三年度特別会計予算総則第十三条に基づく経費増額調書及び各省庁所管経費増額調書(その1)  (承諾を求めるの件)(第百十四回国会内閣提出)  昭和六十一年度一般会計歳入歳出決算  昭和六十一年度特別会計歳入歳出決算  昭和六十一年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和六十一年度政府関係機関決算書  昭和六十一年度国有財産増減及び現在額総計算書  昭和六十一年度国有財産無償貸付状況計算書  昭和六十二年度一般会計歳入歳出決算  昭和六十二年度特別会計歳入歳出決算  昭和六十二年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和六十二年度政府関係機関決算書  昭和六十二年度国有財産増減及び現在額総計算書  昭和六十二年度国有財産無償貸付状況計算書 は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  昭和六十一年度一般会計歳入歳出決算  昭和六十一年度特別会計歳入歳出決算  昭和六十一年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和六十一年度政府関係機関決算書  昭和六十一年度国有財産増減及び現在額総計算書  昭和六十一年度国有財産無償貸付状況計算書  〔総理府所管経済企画庁)、外務省所管通商産業省所管中小企業金融公庫中小企業信用保険公庫〕      ────◇─────
  2. 中村靖

    中村委員長 これより会議を開きます。  国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  すなわち、決算の適正を期するため  一、歳入歳出の実況に関する事項  二、国有財産増減及び現況に関する事項  三、政府関係機関の経理に関する事項  四、国が資本金を出資している法人の会計に関する事項  五、国又は公社が直接又は間接に補助金奨励金助成金等を交付し又は貸付金損失補償等財政援助を与えているものの会計に関する事項 以上の各事項につきまして、関係各方面からの説明聴取、小委員会の設置及び資料の要求等の方法により、本会期調査を進めたいと存じます。  つきましては、衆議院規則第九十四条により、議長の承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中村靖

    中村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ────◇─────
  4. 中村靖

    中村委員長 次に、昭和六十一年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、総理府所管経済企画庁外務省所管通商産業省所管中小企業金融公庫及び中小企業信用保険公庫について審査を行います。  この際、経済企画庁長官外務大臣及び通商産業大臣概要説明会計検査院検査概要説明、続いて、中小企業金融公庫当局及び中小企業信用保険公庫当局概要説明会計検査院検査概要説明を求めるのでありますが、これを省略し、本日の委員会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 中村靖

    中村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────    昭和六十一年度経済企画庁歳出決算説明  昭和六十一年度における経済企画庁歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、昭和六十一年度の当初歳出予算額は四百十九億四千四百八十九万円余でありましたが、予算補正修正減少額一億五千四百九十二万円余、予算移替減少額十億千四百二十六万円余、予算移替増加額二百四十六万円を増減いたしますと、昭和六十一年度歳出予算現額は四百七億七千八百十七万円となります。  これに対しまして支出済歳出額四百二億九千百八十六万円余であり、歳出予算現額との差額四億八千六百三十万円余は不用となった額であります。  次に、支出済歳出額のおもな内訳は、経済企画庁七十二億六千三百三十八万円余、海外経済協力基金交付金三百十八億八百五十万円余、国民生活安定対策等経済政策推進費五億三千五十七万円余、経済研究所六億八千六百九十四万円余等であります。  また、不用額のおもなものは国民生活安定対策等経済政策推進費でありますが、これは総合的な物価対策を要することが少なかったこと等によるものであります。  以上、昭和六十一年度経済企画庁歳出決算概要を御説明いたしました。何とぞよろしく、御審議のほどお願いいたします。     …………………………………    昭和六十一年度決算経済企画庁についての検査概要に関する主管局長説明                 会計検査院  昭和六十一年度経済企画庁決算につきまして検査いたしました結果、特に違法又は不当と認めた事項はございません。     ─────────────    外務省所管昭和六十一年度決算について  昭和六十一年度外務省所管一般会計歳出決算につきまして、その概要をご説明申し上げます。  歳出予算現額は四千七百六十九億九千一万円余でありまして、支出済歳出額は三千八百四十六億七千百四十八万円余、翌年度繰越額は八百七十六億八千二百五十七万円余、不用額は四十六億三千五百九十五万円余であります。  歳出予算現額の内訳は、歳出予算額四千四十九億二百三万円、前年度繰越額七百二十億八千七百九十八万円余でありまして、前年度から繰り越したものの内訳は、経済開発等援助費七百二十億八千七百九十八万円余であります。  支出済歳出額の主なものは、経済協力の一環として、青年海外協力隊派遣開発調査センター協力機材供与保健医療協力農林業協力産業開発協力開発協力専門家養成確保等事業アジア諸国等開発途上国に対する経済開発援助および国連開発計画等の多数国間経済技術協力のための拠出等に要した経費二千七百四十億四千四百九十四万円余、エネルギー対策のため国際原子力機関に対し同機関の憲章に基づく分担金及び拠出金として二十二億九千六百二十九万円余、並びに各種国際機関に対する分担金等として四十億四千九百四十一万円余であります。  次に、翌年度繰越額について申し上げますと、財政法第十四条の三第一項の規定による明許繰越のものは八百七十一億四千五百六十五万円余でありまして、その内訳は、経済開発等援助費八百六十八億四千二百十八万円余、在外公館施設費三億三百四十七万円余、及び財政法第四十二条の規定による事故繰越のものは五億三千六百九十一万円余、その内訳は、経済開発等援助費五億三千六百九十一万円余であります。  不用額の主なものは、外務本省の項で退職手当を要することが少なかったこと、及び在外公館の項では職員諸手当を要することが少なかったこと等のためであります。     …………………………………    昭和六十一年度決算外務省についての検査概要に関する主管局長説明                 会計検査院  昭和六十一年度外務省決算につきまして検査いたしました結果、特に違法又は不当と認めた事項はございません。     ─────────────    昭和六十一年度歳入歳出決算概要説明書                 通商産業省  昭和六十一年度通商産業省所管歳入歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、一般会計歳入歳出決算につきまして、御説明いたします。  通商産業省主管歳入につきましては、当初予算額は八十一億四千七百三十九万円余でありますが、予算補正追加額十三億九千七百四十四万円の増加がありましたので、歳入予算額は九十五億四千四百八十三万円余となっております。  これに対しまして、収納済歳入額は二百十八億三千百七万円余でありまして、これを歳入予算額と比較いたしますと百二十二億八千六百二十四万円余の増加となっております。  これは、補助事業に係る収益納付金が予定より多かったこと等の理由によるものであります。  次に、通商産業省所管歳出につきましては、当初予算額は七千八百二十一億九千八百九万円でありますが、予算補正追加額一千六百三十三億一千四百五十五万円余、予算補正修正減少額二千百十五億八千五百十四万円余、総理府及び文部省所管から移し替えを受けた額九十八億二千七十八万円、前年度からの繰越額三十五億六千百八十七万円余、予備費使用額一億七千二百六十万円余の増減がありましたので、歳出予算現額は七千四百七十四億八千二百七十五万円余となっております。  これに対しまして、支出済歳出額は七千百六十五億七千四百七十一万円余でありまして、これと歳出予算現額との差額は三百九億八百四万円余となっております。  この差額のうち、翌年度へ繰り越しました額は、五十一億四千五百四十一万円余でありまして、不用となりました額は二百五十七億六千二百六十二万円余となっております。  六十一年度における経費執行につきまして、その主な事項大要を御説明いたします。  第一に、エネルギー対策費であります。その支出済歳出額は三千八百九十一億九千三百十九万円余でありまして、その主なものにつきまして御説明いたします。  まず、石油及石油代替エネルギー対策費であります。  この経費は、エネルギー対策緊要性にかんがみ、石油安定供給確保の観点から、石油資源開発及び石油備蓄増強等事業並びに石油代替エネルギー開発及び利用を促進するための施策財源に充てるため、一般会計から石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計石油及び石油代替エネルギー勘定へ繰り入れるためのものでありまして、三千八百五十億円を支出いたしました。  次に、エネルギー技術研究開発費であります。この経費は、太陽エネルギー等の新エネルギー技術及び高効率ガスタービン等省エネルギー技術研究開発を行うためのものでありまして、三十二億三千三百五十万円余を支出いたしました。  第二に、中小企業対策費であります。その支出済歳出額は一千四百七億五百三十七万円余でありまして、その主なものにつきまして御説明いたします。  まず、中小企業事業団運営費であります。この経費は、中小企業構造高度化を促進するために必要な指導資金の貸付け及び共済等事業を行うための出資金及び補助金でありまして、三百二十六億七千三十三万円余を支出いたしました。  なお、同事業団が行った貸付事業実績は、一般高度化事業資金二百八十八件、特定高度化事業資金二百十六件、繊維工業構造改善事業資金三十五件等であります。  次に、小規模事業対策費であります。その支出済額は三百九十六億九千六百四十万円余でありまして、この経費により商工会商工会議所等小規模事業者に対して、六百十一万件余の経営指導、相談を行いました。  次に、小企業等経営改善資金融資制度であります。この経費は、小企業者等に対する経営指導金融面から補完し、実効性を確保するため、商工会商工会議所及び都道府県商工会連合会の長の推薦に基づき、国民金融公庫が、無担保、無保証人、低利による融資を行うためのものでありまして、貸付金として七十七億円を支出いたしました。  なお、同公庫が行った融資実績は十三万件余、三千三百二十八億円余に達しております。  次に、中小企業近代化促進費であります。その支出済額は七十三億九千七百六十二万円余でありまして、設備近代化補助金四億二千九百五万円余、中小企業機械類貸与補助金十四億九千二百九十四万円余等支出いたしました。  次に、中小企業指導事業費であります。その支出済額は九十六億七千七百六十万円余でありまして、診断指導技術指導及び研究促進等事業の一層の強化を図っております。  このほか、組織化対策費四十億九千三百六十九万円余、信用保証協会基金補助金三十九億円、中小企業金融公庫補給金二百九十億一千百万円等を支出いたしました。  第三に、科学技術振興費であります。その支出済歳出額は五百八十九億六百五十二万円余でありまして、その主なものにつきまして御説明いたします。  まず、大型工業技術研究開発費であります。この経費は、将来の技術開発の核心となり、技術的波及効果の大きい大規模な産業技術研究開発を行うためのものでありまして、四十九億七千四百七十二万円余を支出いたしました。  次に、電子計算機産業振興対策費であります。この経費は、我が国電子計算機産業技術力の向上並びに振興を図るため、新しい理論・技術に基づいた第五世代コンピュータ研究開発を行うためのものでありまして、四十四億二千七百六十九万円余を支出いたしました。  次に、次世代産業基盤技術研究開発費であります。この経費は、我が国が今後、技術立国を実現していくため、基礎的段階産業技術研究開発を行うためのものでありまして、五十三億一千百八万円余を支出いたしました。  このほか、通商産業省試験研究機関特別研究費二十五億七千九百三十九万円余、試験研究設備及び施設整備費十四億三千八百二十五万円余等支出いたしました。  第四に、公共事業関係費であります。その支出済歳出額は百五十九億百七十一万円余でありまして、その主なものは、工業用水道事業費補助であります。その支出済額は百五十七億四千六百七十二万円余でありまして、この経費により、地方公共団体において継続事業六十三箇所、新規事業十箇所の工事を、水資源開発公団において継続事業八箇所の工事を実施いたしました。  第五に、経済協力費であります。その支出済歳出額は百六十六億七千七百六十七万円余でありまして、その主なものにつきまして御説明いたします。  まず、海外経済協力費補助金であります。この経費は、発展途上国に対する経済協力を推進するため、経済協力関係団体が行う海外技術者受入等研修事業等に対する補助金でありまして、五十五億三千六十一万円余を支出いたしました。  次に、海外開発計画調査委託費であります。この経費は、発展途上国における鉱工業、資源等の分野における開発計画を策定するための調査等技術協力関係団体に委託して行うためのものでありまして、六十五億六千五百八十八万円余を支出いたしました。  次に、繰り越し及び不用について御説明いたします。  翌年度へ繰り越しました経費のうち主なものは、通商産業本省三十一億二千三十六万円でありまして、民間能力活用特定施設緊急整備費補助金につきまして、計画に関する諸条件等により、年度内に支出を完了することができなかったため、経費を翌年度に繰り越したものであります。  また、不用額を生じました経費のうち主なものは、石油及石油代替エネルギー対策費百六十億円でありまして、石油公団交付金等が少なかったので、石油税石油及び石油代替エネルギー対策交付金等財源石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計へ繰入を要することが少なかったため、不用となったものであります。  以上をもちまして、通商産業省所管一般会計歳入歳出決算に関する御説明を終わります。  次に、通商産業省所管の各特別会計昭和六十一年度決算につきまして御説明いたします。  第一に、電源開発促進対策特別会計であります。  電源立地勘定につきましては、収納済歳入額は一千六百五十三億九百七万円余、支出済歳出額は六百十八億五千二百十六万円余であります。収納済歳入額支出済歳出額との差額は一千三十四億五千六百九十万円余でありまして、翌年度へ繰り越しました額は五百十八億九千八百四十六万円余、剰余金は五百十五億五千八百四十三万円余となっております。  六十一年度における経費執行につきまして、その主な事項大要を御説明いたします。  電源立地対策費でありますが、この経費は、電源立地地域における公共用施設整備電源立地促進のための特別対策事業電源立地地域における安全対策等推進等に必要な事業費に充てるため、地方公共団体等に対して交付するためのものでありまして、六百十二億七千二百三万円余を支出いたしました。  電源多様化勘定につきましては、収納済歳入額は二千二百四十七億七十一万円余、支出済歳出額は一千六百二十二億五百四十三万円余であります。収納済歳入額支出済歳出額との差額は六百二十四億九千五百二十七万円余でありまして、翌年度へ繰り越しました額は二百八十四億三千二百五十六万円余、剰余金は三百四十億六千二百七十一万円余となっております。  六十一年度における経費執行につきまして、その主な事項大要を御説明いたします。  電源多様化対策費でありますが、この経費は、水力・地熱資源開発石炭火力発電所公害防止技術の実証、太陽光発電などの新エネルギー技術開発原子力発電推進のための技術開発等施策を行うためのものでありまして、一千六百十五億三千九百七十八万円余を支出いたしました。  第二に、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計であります。  石炭勘定につきましては、収納済歳入額は一千四百五十七億三千七百八十一万円余、支出済歳出額は一千百七十四億八千四百五万円余であります。収納済歳入額支出済歳出額との差額は二百八十二億五千三百七十六万円余でありまして、翌年度へ繰り越しました額は百四十九億七千三百二十三万円余、剰余金は百三十二億八千五十二万円余となっております。  六十一年度における経費執行につきまして、その主な事項大要を御説明いたします。  まず、石炭鉱業合理化安定対策費であります。この経費は、新エネルギー総合開発機構が行う炭鉱の整理事業に対する補助及び同機構が行う近代化資金の貸付けのための補給並びに石炭鉱業の生産体制の改善、経理の改善、保安の確保等の施策を実施するためのものでありまして、三百五十四億七百六十六万円余を支出いたしました。  次に、鉱害対策費であります。この経費は、石炭鉱事業団に対する鉱害復旧事業資金補助及び同事業団が行う鉱害賠償資金等の貸付けのための出資等を行うためのものでありまして、五百四十八億八千四百十六万円余を支出いたしました。  次に、産炭地域振興対策費であります。この経費は、産炭地域において鉱工業等の振興に必要な業務を行う地域振興整備公団に対する出資、石炭鉱業の終閉山により財政状況が悪化している産炭地域市町村に対する交付金の交付及び産炭地域小水系用水の開発事業等の施策を行うためのものでありまして、七十六億六千六百四十二万円余を支出いたしました。  石油及び石油代替エネルギー勘定につきましては、収納済歳入額は五千九百四十八億九千六百七十八万円余、支出済歳出額は三千八百十三億九千六百九十五万円余であります。収納済歳入額支出済歳出額との差額は二千百三十四億九千九百八十二万円余でありまして、翌年度へ繰り越しました額は一千三百九十一億三千三百一万円余、剰余金は七百四十三億六千六百八十万円余となっております。  六十一年度における経費執行につきまして、その主な事項大要を御説明いたします。  まず、石油安定供給対策費であります。この経費は、石油公団が行う石油及び可燃性天然ガスの探鉱等に対する投融資及び公団備蓄事業等に充てるための同公団への出資、同公団に対する交付金の交付、石油備蓄の増強等の施策を行うためのものでありまして、三千二百二十六億九千十二万円余を支出いたしました。  次に、石油生産流通合理化対策費であります。この経費は、石油の流通合理化及び生産技術研究開発等を図るための石油備蓄技術調査石油製品需給適正化調査及び重質油対策の研究開発等の施策を行うためのものでありまして、百五十億四百六十三万円余を支出いたしました。  次に、石油代替エネルギー対策費であります。この経費は、新エネルギー総合開発機構が行う海外炭探鉱に対する融資等に充てるための同機構への出資、日本開発銀行が行う石油代替エネルギー利用促進融資の原資の一部に充てるための同銀行に対する貸付金、ソーラーシステム普及促進、石炭液化ガス化等の石油代替エネルギー技術開発等の施策を行うためのものでありまして、四百二十九億八千四百九十九万円余を支出いたしました。  第三に、アルコール専売事業特別会計であります。収納済歳入額は三百五十三億四千六百三十九万円余、支出済歳出額は二百二十億六千七百三十万円余であります。  この会計の損益計算上の利益は百十三億三千七百五万円余でありまして、期末資産の減少相当額十一億七千七百八十八万円余がありましたので、合計百二十五億一千四百九十四万円余を一般会計に納付いたしました。  第四に、輸出保険特別会計であります。収納済歳入額は二千八百三十五億五千七百三十三万円余、支出済歳出額は二千五百三十四億七千九百七十万円余であります。  六十一年度における保険引受件数は五十七万一千件余、その保険金額は七兆三千百三十三億円余でありまして、前年度に対し三兆一千三百九十六億円余の減少となっております。  第五に、特許特別会計であります。収納済歳入額は五百億六千四百四十四万円余、支出済歳出額は三百九十億二千六百九十二万円余であります。収納済歳入額支出済歳出額との差額は百十億三千七百五十二万円余でありまして、全額剰余金となっております。  以上をもちまして、昭和六十一年度における通商産業省所管一般会計及び特別会計決算に関する御説明を終わります。  最後に、会計検査院から、昭和六十一年度通商産業省所管決算につきまして、不当事項として十一件の指摘がありました。  これらの指摘された事項につきましては、直ちにその是正の措置を講じたところであり、今後は、この種の事態の発生を未然に防止するため、より一層の指導、監督を行う所存でございます。  何とぞ、よろしく御審議のほどお願い申し上げます。     ─────────────    昭和六十一年度決算通商産業省についての検査概要に関する主管局長説明                 会計検査院  昭和六十一年度通商産業省決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項十一件であります。  これらは、中小企業設備近代化資金の貸付けが不当と認められるものであります。  この資金貸付事業は、都道府県が、国の補助金と自己資金等によって資金を造成し、設備の近代化に必要な資金の調達が困難な中小企業者に対して、設備の設置に必要な資金の額の二分の一以内を、五年以内の償還期間で、無利子で貸し付けるものであります。  六十二年次の検査におきまして、その貸付けの適否について調査いたしましたところ、 (1) 中小企業者が設備を貸付けの対象となった事業費より低額で設置しているのに、貸付対象事業費どおりの価格で設置したとして貸し付けていたものが七件、 (2) 貸付けの対象となる設備は、貸付年度中に設置するものであること、新品でなければならないことなどとされているのに、前年度に設置したり、設置した設備が中古品であつたものが三件、 (3) その他が一件、 ありました。  これらはいずれも本資金の貸付けとして、適切を欠いており、ひいては補助の目的に沿わない結果になつていると認められたものであります。  以上、簡単でございますが説明を終わります。     ─────────────    昭和六十一年度の業務の概要について              中小企業金融公庫  昭和六十一年度における中小企業金融公庫の業務について御説明申し上げます。 一、当公庫昭和六十一年度当初貸付計画は二兆一千四百七十八億円と定められましたが、その後、六十二年三月に五百六十億円の追加が認められましたので、これにより貸付計画総額は二兆二千三十八億円となりました。  これに対し、中小企業者に対しては二兆一千八百二十二億二千百三十一万円余の貸付を行ったほか、設備貸与機関に対しては二百四億七千七百七十四万円余、また、中小企業投資育成株式会社に対しては十一億円の貸付を行い、総額では二兆二千三十七億九千九百五万円余の貸付実績となりました。  中小企業者に対する貸付契約額のうち、設備資金は三〇・二%に相当する六千六百三十億四千三百九十二万円余、運転資金は六九・八%に相当する一兆五千三百三十四億二千八百二十万円余となっており、また、直接貸付は七二・二%に相当する一兆五千八百五十四億六千六百六十七万円(三万九十二件)、代理貸付は二七・八%に相当する六千百十億五百四十六万円(三万三千六百二件)となっております。  なお、昭和六十一年度末における総貸付残高は五兆八百九億六千六百四十万円余となっております。  貸付金の延滞状況につきましては、昭和六十一年度末におきまして弁済期限を六カ月以上経過した元金延滞額は千九十八億六千百十七万円余でありまして、このうち一年以上のものは九百六十億五千六百四十六万円余、総貸付残高の一・九%となっております。 二、昭和六十一年度融資に当たりましては、円高の進行に加え、技術革新、情報化の進展といった変化の激しい経営環境の中におかれている中小企業者に対し、その事業基盤の強化に資する資金について積極的に対処してまいりました。特に、社会的、経済的環境の変化等外的要因により、一時的に、売上の減少等業況悪化をきたしているが、中・長期的には、その業況が回復し発展することが見込まれる中小企業者の経営基盤の強化を図るための貸付制度を新設したほか、国際経済調整対策等貸付制度等の拡充を図るなど、中小企業者の環境変化に適応するための資金についてもきめ細かい配慮を払ってまいりました。  また、中小企業近代化促進法に基づく構造改善事業に必要な資金、流通機構の近代化、合理化のために必要な資金及び産業公害の防止、産業安全の確保等のために必要な資金についても配慮してまいりました。  なお、昭和六十一年度におきましては、中小企業者の一層の利便に資するため、池袋出張所を支店に昇格させました。三、次に、当公庫昭和六十一年度の収入、支出決算及び損益計算について申し上げます。  収入、支出決算について申し上げますと、貸付金利息等収入済額は三千九百二十七億三千四百十三万円余、支払利息等支出済額は三千八百三十三億七千二百八十七万円余となりました。  損益計算について申し上げますと、貸付金利息等の総益金は四千六百七十六億六千六百六十万円余、借入金利息、事務費、業務委託費等の総損金は四千六百七十六億六千六百六十万円余となりました。この結果、利益金は生じなかったので、国庫納付はいたしませんでした。  以上をもちまして、昭和六十一年度における中小企業金融公庫の業務の概況について、御説明を終ります。     …………………………………    昭和六十一年度決算中小企業金融公庫についての検査概要に関する主管局長説明                 会計検査院  昭和六十一年度中小企業金融公庫決算につきまして検査いたしました結果、特に違法又は不当と認めた事項はございません。     ─────────────    昭和六十一年度の業務概況について            中小企業信用保険公庫  中小企業信用保険公庫昭和六十一年度の業務の概況につきまして、御説明申し上げます。  昭和六十一年度におきましては、国の一般会計及び産業投資特別会計から、中小企業信用保事業の円滑な運営を図るための原資として、中小企業信用保険準備基金三百七十億円、信用保証協会の保証活動の円滑化を図るための原資として、融資基金百三十億円、合計五百億円の出資が行われました。  まず、中小企業信用保事業について見ますと、公庫が全国五十二の信用保証協会との間に締結いたしました保険契約に基づく保険引受は、件数で九十八万件余、金額で六兆五千七十八億八千五百九十七万円余になっており、これを前年度に比較いたしますと、金額で七%の増加になっております。  この結果、昭和六十一年度末の保険引受残高は、件数で二百六万二千件余、金額で十二兆七千二百二十三億二千五百二万円余となっております。  なお、中小企業信用保険保険金の支払いは一千五百四十三億七千四百十六万円余になりまして、これを前年度に比較いたしますと、四%の増加になっております。  信用保証協会に対する融資事業につきましては、昭和六十一年度に国の一般会計及び産業投資特別会計から新たに出資されました百三十億円、及び既往の貸付にかかる回収金等二千四百六億一千万円、合計二千五百三十六億一千万円をもちまして、二千三百二十三億四千七百五十万円の貸付を行いました。  この結果、昭和六十一年度末における貸付残高は三千二百七十二億三千七百五十万円になっております。  機械類信用保険事業につきましては、公庫が機械類のリース業者等との間に締結いたしました保険契約に基づく保険引受は、件数で二十七万七千件余金額で一兆二千六百四億八百九万円余となっております。  この結果、昭和六十一年度末の保険引受残高は、件数で九十五万九千件余金額で五兆六千二百四十九億九千五百五十三万円余となっております。  なお、機械類信用保険保険金の支払いは五十八億四千三百二十四万円余となっております。  次に、収入支出及び損益の概況について申し上げます。  まず、収入、支出について申し上げますと、収入済額は一千六百八億四千八十二万円余、支出済額は一千六百四十一億八千四百九十二万円余でありまして、差し引き三十三億四千四百十万円余の支出超過になっております。  損益計算につきましては、さらに支払備金等の整理を行いました結果、総利益は一千九百九十四億七百六十三万円余、総損失は二千三十六億七千五百五十六万円余となり、差し引き四十二億六千七百九十三万円余の損失金を生じましたが、これは中小企業信用保険・融資事業に係る損失金十二億八千八十二万円余、機械類信用保険特別勘定の損失金二十九億八千七百十万円余によるものであります。  このうち、中小企業信用保険・融資事業にかかる損失金は、中小企業信用保険公庫法及び同法施行令の規定に基づき、中小企業信用保険準備基金を減額して整理いたしました。また、機械類信用保険特別勘定の損失金は、機械類信用保険法の規定に基づき、損失の繰越しとして整理いたしております。  以上、簡単でございますが、昭和六十一年度の業務の概況につきまして、御説明申し上げた次第でございます。     …………………………………    昭和六十一年度決算中小企業信用保険公庫についての検査概要に関する主管局長説明                 会計検査院  昭和六十一年度中小企業信用保険公庫決算につきまして検査いたしました結果、特に違法又は不当と認めた事項はございません。     ─────────────
  6. 中村靖

    中村委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。尾身幸次君。
  7. 尾身幸次

    尾身委員 本日は、現在対外的に一番問題になっております貿易摩擦あるいは国際収支の改善問題について、お伺いをさせていただきたいと思うわけであります。  近年、貿易の黒字幅が非常に大きくなっておりまして、そのことが国際的な摩擦を引き起こしている、あるいは諸外国から日本に対するジャパン・バッシングと言われているような現象が起こっているわけでありますが、ここ数年の間に貿易収支が一体どういうふうに推移してきたか、特にアメリカとの関係がどうなっているかにつきまして、通産省にお伺いをさせていただきます。
  8. 内藤正久

    ○内藤(正)政府委員 お答え申し上げます。  まず我が国の貿易黒字でございますけれども、IMFベースで見ました場合に、一九八六年以降三年間連続して九百億ドルを突破する水準で推移しております。ここ二年間の黒字の推移を申し上げますと、八七年度は九百四十億ドル、八八年度は九百五十三億ドルという規模でございます。  次に対米の黒字でございますけれども、これも一九八六年以降年間五百億ドル程度の対米黒字で推移をいたしておりますが、八七年度につきましては五百八億ドル、八八年度につきましては四百九十億ドルということになっております。これを我が国の貿易黒字に占める比率で見てまいりますと、八七年度は五四・一%、八八年度は五一・四%ということで、五割を超えております。他方、アメリカ側の統計で見まして、アメリカの貿易赤字に占める対日赤字の比率を見てまいりますと、八七年で三七%、八八年で四四%という規模に達しております。
  9. 尾身幸次

    尾身委員 通産省にお伺いしますが、そういう三年間九百億ドルというような貿易黒字が続いているわけでありますけれども、日本以外の国で過去最高の黒字を記録いたしましたのは、一九八一年にサウジアラビアが八百十億ドルと、ちょうどオイルショックのときでございましたが、そういう大幅な黒字を記録いたしました。そのときも、その時点では史上最大ということでございましたけれども、サウジアラビアに対する世界各国の関心と非難が集まったように私は記憶しておるわけであります。  そこで、日本が今九百億ドルという黒字幅を三年間続けている、特にアメリカの赤字幅に占める日本のシェアが約五割というようなことになっているわけでありますが、ここ数年、この二年ほどはいろいろな努力によりまして貿易収支の黒字幅がやや解消しつつあるかという感じもするわけでありますけれども、しかし、まだまだ非常に大きな黒字幅が続いているわけであります。通産省もこの黒字幅の縮減、貿易収支の均衡化のためにいろいろな施策を一生懸命に行ってきたと思うわけでありますが、今までにどういう施策をやってこられたか、そしてまた、それが客観的に見て余り効果がなかったのではないか、少なくとも貿易収支の黒字を大幅に改善するというところに至っていなかったのではないかと思われるわけなんでありますけれども、その輸入拡大策としてどういう政策をとってこられたか、及びその効果につきましてお伺いをさせていただきます。
  10. 内藤正久

    ○内藤(正)政府委員 先生御指摘のとおり、貿易インバランスの解消ということが今緊急の課題であると思っておりますが、過去からもいろいろな措置を講じてまいりました。  御案内のとおり、貿易不均衡の解消という観点につきましては、まず適切なマクロの経済運営、それからファンダメンタルズを反映いたしました為替レートの水準、このようなマクロ経済上の問題が非常に大きなウエートを占めておると思っておりますけれども、あわせましてミクロ経済面でも、輸出国側における輸出拡大努力とあわせて輸入国側におけるマーケットアクセスの改善、規制の緩和、構造調整、それにあわせて先生御指摘の各般の輸入促進施策が必要であるということは我々も全く同感でございます。  そのために、通産省といたしましてはかねてからいろいろな施策を講じておりますけれども、その二、三を御説明申し上げますと、一つは、産業界に対する輸入拡大要請を従来から行っております。本年につきましても六月に、輸出を行っております企業を中心に三百十三社に輸入拡大の要請をいたしまして、現在そのフォローアップを行っているところでございます。  それから二番目に、国民に対する輸入拡大の啓蒙活動ということで、毎年十月を輸入拡大月間といたしまして、全国でインポートバザール、インポートフェア等を展開いたしておりますけれども、昭和六十一年度以来全国で延べ三万六千カ所で展開してきたということで、意識の改革を求めております。  それからさらに、政府系金融機関を通じます輸入促進金融、あるいは貿易保険を利用いたしまして前払い輸入保険制度等によりまして、輸入業務が定着するような支援策も講じております。さらに、相手国の輸出努力を支援いたしますために、ジェトロや製品輸入促進協会等を活用いたしましてその支援策を行っているところでございます。  その効果でございますが、これらの措置によっていかなる効果があるかということはなかなかすぐに判定困難でございますけれども、全体の数字で見ますと、これらの政策の結果、輸入は一九八七年には前年に比べて二百三十一億ドル、一九八八年には三百八十億ドルという大きな伸びをいたしております。それで、御案内のとおり三百八十億ドルという規模は世界最大の伸びでございますし、その増加額そのものはフィリピンあるいはギリシャの国民総生産にも匹敵するという大きな伸びになっております。
  11. 尾身幸次

    尾身委員 今三百八十億ドルの輸入が拡大をしたという話でありました。しかし、輸出も拡大をして、相変わらず貿易収支は九百億ドル前後で推移をしているということでありますから、少なくとも相手国から見た場合に、この貿易収支インバランス問題の解決が収支という面で有効に行われていないという感じがするわけであります。  もとより、貿易収支の改善ということが、日本の国だけの努力ではなしに、例えばアメリカの財政赤字の問題とか輸出努力の問題とか企業体質の問題とか、いろいろあるわけでありますけれども、結果として九百億ドルの黒字が続いているということは、実は大変な問題でありまして、日本としても、あるいは通産省としても、さらに抜本的な輸入拡大策を講じていかなければならないというふうに考えているわけであります。アメリカの方も大きな対日赤字を抱えているわけでありますから、早急に目に見える形での成果を求めているということでございまして、こういう要請にこたえるためにも、今後さらに一層、今までより以上の力を入れて輸入拡大あるいは貿易収支の不均衡という問題に取り組んでいただかなければいけないと思うわけでございますけれども、通産省、今後どういうふうな取り組みを考えておられるか、お伺いをいたします。
  12. 内藤正久

    ○内藤(正)政府委員 先生御指摘のとおり、輸入の増大にもかかわらず輸出が伸びるということで収支が改善をしないということでございますので、いま一層の輸入拡大策をとるということは本当に必要なことだと思っております。したがいまして、予算、税制、金融制度等を総合的に考えまして、今後の輸入拡大策を講ずべく政府部内で現在検討中でございます。
  13. 尾身幸次

    尾身委員 今のお答えよりもうちょっと具体的に踏み込んでお答えいただきたいのでありますけれども、今までの数年間の輸入拡大対策は先ほど言いました三百八十億ドルという効果を上げたわけなのでありますが、国際収支の黒字幅の縮減という点から見ると、輸出も伸びておりますからそういう形になっていないわけであります。  そこで、今までよりももう一段力を入れて輸入拡大あるいは貿易収支の黒字幅縮減ということをやらなければいけないと思うのでありますが、そういう点について、どういうところにさらに一段の力を入れているかという点についてお伺いをさせていただきたい。
  14. 内藤正久

    ○内藤(正)政府委員 先ほど御説明申し上げましたように、従来の輸入拡大策が、啓蒙でございますとか要請でございますとか、そういう形で非常に意識の改革を求めるものでございました。したがいまして、御指摘のように、今輸入拡大が非常に求められておる時期でございますので、それを定着するように、従来のような緊急輸入であるとかという啓蒙以外に、定着するような制度ということで、予算あるいは税制、金融上で具体的な中身を今関係当局と大いに詰めております。あわせて、日本だけの努力で成果が上がるものでございませんので、先生のおっしゃっておられました対米に関連いたしましても、アメリカ側にも輸出の努力をしてもらうというふうなことで日米でも話し合っているところでございます。したがいまして、まだ政府部内の検討中の案でございますので具体的なところはまだまとまっておりませんが、その段階でまたいろいろ内容を考えながら、おっしゃっておられる目的をぜひ達するように今後調整をしていきたいと思っております。
  15. 尾身幸次

    尾身委員 外務大臣がお越しでございますので、外務大臣に質問をさせていただきます。  我が国をめぐる国際情勢、先ほどの問題を背景として極めて厳しい状況に入ってきているのじゃないかと思うわけであります。新聞やテレビのニュースで見ましても、毎日毎日この日米摩擦あるいは対外摩擦の問題が報道されているわけであります。アメリカの最近における日本に対するいろいろな問題を見ましても、FSXの問題とかスーパー三〇一条の問題とか日米構造協議の問題等々の中で、アメリカ側が非常に厳しい対日要求あるいは対日批判を展開しているところでございます。  例えば、最近のファローズの「日本封じ込め論」あるいはウォルフレンの「日本権力構造のなぞ」というところにありますように、日本の産業構造そのものが諸外国にとって危険であるというような論調も出ております。それからまた、ビジネスウイークの世論調査では、ソ連の軍事力に対する脅威を感じている人が二二%であるのに対して、日本の経済力に対する脅威を感じている人が六八%というようなアンケート調査も出ているわけであります。これは世界全体の歴史の流れの中で、世界最大の経済の実力者のアメリカが今や債権国から債務国になってしまったという点に見られますように、アメリカの力が相対的に落ちて、パターン的に言えば日本の力が相対的に上がってきた、そういう転換点にあるわけでありますけれども、しかし、アメリカの対日要求あるいは対日非難の非常に大きな要因は、やはり巨額の貿易赤字が続いているということが最大の問題であるというふうに思うわけでございます。  そういう中で、ブッシュ政権に移行いたしましても、行政府の方も、議会その他の世論の動きを背景として、日本に対する強硬論が非常に強くなってきているというふうに思うわけであります。そしてまた、日本とアメリカは世界の全体の経済の中で四割のシェアを占めているわけでありますから、この両国が手をとり合って世界経済あるいは世界政治を動かしていかなければならないという状況にあるにもかかわらず、実を言うと日本に対するアメリカを初めとする各国の圧力が非常に高くなってきている。これは二十一世紀に向かっての日本という、国の進路に非常に大きな外交上、政治上の問題を提起するものであると思っているわけでございますが、外務大臣はこの点についていかなる認識をお持ちか、お伺いさせていただきたいと思います。
  16. 中山太郎

    ○中山国務大臣 外交の責任者といたしまして、委員御指摘のように、日米間におきます日本の一方的な膨大な黒字、これがいわゆる日米間の摩擦の最大の原因であるということは率直に認めざるを得ないと思います。この問題をめぐりましてアメリカ議会におきましても大変厳しい日本への批判が高まりつつある。その中でアルシュ・サミットの日米首脳会談において、構造調整協議というものが行われるということの合意が得られたわけでございまして、自来九月、十一月あるいは一月、三月と行われるわけでありますけれども、一方、スーパー三〇一条のいわゆるアメリカの新しい国内法によって問題の指摘もございます。  外交として考えてまいりますならば、委員御指摘のように、二十一世紀を展望するこれからの国際政治の中で、私どもが一番重要と思っている国家、アメリカとの関係をこのような状態で置いておくことは極めてまずいというふうに考えておりまして、この日米間にわだかまります諸問題を先送りすることなく的確に処理をしていかなければならない、これが外交にとっては極めて重要であるという認識をいたしております。
  17. 尾身幸次

    尾身委員 次に、経済企画庁長官にお伺いをいたします。  輸入の拡大という問題は、対外経済バランスという観点からだけではなしに、輸入品による国内価格への引き下げ効果があるのではないか、輸入の拡大は物価の安定にも寄与するのではないかというレポートが企画庁の方で出されているように聞いているわけでありますけれども、現在の日本の経済の実情を見ますと、実質的に相当な内外価格差がある、貿易がインバランスで、国内的には内外価格差があるという現状でありますけれども、輸入の拡大は物価の安定あるいは場合によっては物価の引き下げを通じて消費者利益につながるのではないかと思うわけでありますが、これについての企画庁長官の御意見をお伺いさせていただきたいと思います。
  18. 高原須美子

    ○高原国務大臣 委員御指摘のように、先ごろ企画庁で発表いたしました物価レポートでは、今回の円高による輸入拡大の物価に与える効果を二つ挙げております。一つは直接的な効果でして、輸入原材料にかかるコストの削減及び安価な輸入製品の増加を通じて物価を直接的に押し下げるという効果がまず挙げられます。また、もう一つは間接的な効果でございまして、これは輸入品との価格競争を通じてこれと競合関係にある国産品の価格を引き下げるという効果もあるということを物価レポートでは指摘しております。また、輸入拡大は消費者の選択の幅を広げる効果があるということも重要であるというふうに考えております。  そこでひとつ、物価レポートで行いました試算を御紹介いたしますと、これは耐久消費財と繊維製品を取り上げまして、製品輸入の拡大が競合関係にある国内の価格をどの程度引き下げるかというマクロ的な試算でございます。この試算によりますと、耐久消費財の輸入金額が一〇%増加すれば同製品の国内卸売物価は〇・七%、消費者物価は〇・一%低下するという結果が出ております。また繊維製品については、輸入金額が一〇%ふえれば同製品の国内卸売物価は〇・三%下がるという結果が出ております。  このように、輸入の拡大は物価安定に大きく寄与していると思います。特に、最近では製品需給や労働需給の引き締まりが指摘されておりますので、輸入の活用によりまして今後も国内の物価安定を図ることが大事だと思います。今後とも輸入の増加を図りまして、消費者の利益増進に努めていきたいと思っております。
  19. 尾身幸次

    尾身委員 輸入の増加に関連をいたしまして、日米構造協議が開始されているわけであります。構造協議の中では、流通問題とか土地政策等々我が国の社会的、歴史的風土に根差した問題も取り上げられておりまして、この解決には相当な時間がかかると予想されるわけであります。アメリカ側は目に見える結果を求めているわけでありますけれども、日本としてもこれに対する早急な対応が要求されると思うわけでございます。  そこで、日米構造協議のこれまでの進捗状況とこれからの見通しにつきまして、通産省にお伺いをさせていただきます。
  20. 畠山襄

    ○畠山(襄)政府委員 尾身委員御案内のとおり、日米構造協議につきましては九月四日、五日に第一回を行いまして、来る十一月六日、七日に第二回を行うという手順で進んでいるところでございます。  第一回のときは、日本側から七項目を指摘いたしまして、米側から六項目の指摘があったわけでございます。米側の六項目の指摘は、土地問題、貯蓄問題、今御指摘のとおりでございます。それから流通、排他的商慣行、価格問題等々でございます。それから、こちら側から指摘をいたしましたのは、貯蓄問題、米側の投資問題、企業ビヘービアの問題、それから輸出振興策にもう少し熱を入れろという問題、労働者の訓練と教育の問題、技術開発の問題等々でございます。  第一回の会合は、第一回ということもございまして、率直に申し上げてやや両方が自分の弁護をするといいますか、相手の反論をするといいますか、そういうトーンでございましたが、来る第二回は、そういう部分もあると思いますけれども、第一には、やはり事実を両方で正確に把握するということ、第二は、構造問題といいましても構造問題一般を議論するわけではございませんで、貿易収支の改善に役立つ構造問題を議論するわけでございますので、どういう筋道で貿易収支の改善に役立つのかということについての問題意識を共有するということ、それから第三に、できればお互いの具体的にどういう措置をとってもらいたいのかということについても話し合いを深めるという方針で今臨んでいるところでございます。
  21. 尾身幸次

    尾身委員 この日米構造協議は非常に難しい問題を幾つもはらんでいると思うわけでございますけれども、やはりこの問題に真剣にまともに対応していくことが必要なんじゃないかと思うわけでございまして、この点につきましての通産大臣の取り組みの御決意をお伺いしたいと思います。
  22. 松永光

    ○松永国務大臣 我が国はこれまでも自主的に構造調整に取り組んできたわけでありますが、率直に言ってまだまだ十分ではないというふうに思っておりました。そういうときに日米構造問題の協議が始まったわけでありますが、我々としては、アメリカから指摘された六項目についてはまあ友好国からの親切なアドバイスぐらいに受けとめまして、日本国民の生活の質の向上を図っていくためには、なすべき改革は国民のために我が国の責任においてこれをなし遂げるという基本姿勢で取り組んでまいりたい、こう考えております。  さらにまた、この構造問題の協議が始まった背景に、先ほど通政局長が申し上げましたとおり、貿易不均衡是正にいささかでも貢献するようなものを優先的にやるべきだ、こう考えますので、そういう観点から、一方においては我が国民の生活の質の向上を図るという立場から進めると同時に、我々としては、アメリカに対しましてもアメリカの構造上、アメリカの輸入超過、輸出が少ないという点についてのアメリカ側の改善措置がなされ得るような点につきましても、積極的にアメリカに言うべきことは物を申してまいりたい、こう考えます。そういう立場で誠意を持ってこの協議に当たってまいりたいと考えておるわけであります。
  23. 尾身幸次

    尾身委員 日本の今の国際関係及び日本の国内の関係を総合的に考えてみますと、私は幾つかの特徴があると思うのです。一つは、日本の経済力が非常に強くなったということでありまして、例えばGNPの一人当たりの水準が世界最高になったということが一点、それから二点目は世界のトップ水準の技術力を持つようになったということ、三点目は世界最大の資金力があり最大の債権国になったということ、四点目は先ほどの話のように年間九百億ドルの大幅な黒字が続いているという現状であります。こういう現状が世界の中における日本の位置づけという観点から見てあるわけでありますけれども、他方日本の国内はどうかといいますと、道路や下水道や住宅などのインフラが世界の先進国の中で見れば最低水準にある。平均労働時間はどうかと言えば先進国の中で一番長い。物価水準は総じて言えば世界一高い。内外価格差も極めて大きいものがある。そしてまた、特に都市部においては平均的サラリーマンが一生かかっても満足する住宅を買えないほど土地の値段が高い。つまり、国際的における資金技術面における日本の地位の高さと国内における本当の国民生活のあり方というものを考えると、そこに非常に大きなアンバランスがある。そしてまた、同時にその裏返しとして、貿易収支の黒字、それに伴う対外関係が非常に危機的状況にあるというふうに私は思うわけであります。この日本の内外の体制というものを本気で直していかないと大変なことになる。国内的な問題も大変なことになりますし、それから世界の政治、外交、さらに経済関係におきましても、先ほどの外務大臣のお話のように二十一世紀に向かって我が国が孤立化するおそれがある。日本は資源が乏しい、国土が狭い、そして防衛問題にしても日米安保条約を基軸として安全保障が確保されているような現状から見て、二十一世紀に向かって日本が世界の各国の中から孤立するということは、日本の将来が非常に危ないということにもなるわけであります。  したがいまして、私は、この貿易黒字問題につきましては、単に経済問題だけではなしに、日本の社会、政治、あらゆる問題の一つの焦点としてとらえて、日本経済社会の体質を改善するということも含めて海部総理が最大の輸入大国になると言っておられますけれども、同時に、日本の全体の構造を直すという抜本的な問題も含めて真剣に取り組んでいただかなければならない課題であるというふうに考えているわけでございますが、これに対しまして通産大臣及び外務大臣から一言ずつ御決意のほどをお伺いいたしたいと思います。
  24. 松永光

    ○松永国務大臣 先ほどから委員御指摘のとおり、我が国の貿易の黒字が三年連続九百億ドルを超しておる。委員の御指摘のとおり、一九八一年にサウジアラビアが八百十億ドルの黒字を出したら、史上最大の黒字だ、こういう状態では世界の自由貿易体制に大きな影響を及ぼすからということで積極的な輸入促進をみんなで迫って、そしてサウジの黒字が急速に縮減されたという経過があるわけでありますが、日本の場合にはそれを百億ドル超す黒字を三年連続出しておる、一方アメリカの貿易の赤字は五年連続千百億ドルを超しておるという状況、こういう状況が放置されておけば、委員御指摘のとおり日本が世界から孤立するおそれもなきにしもあらず、日本の存立の基盤であり発展の基盤である自由貿易体制そのものに少なからず影響の出る懸念もあります。  したがいまして、我が国として今最も力を入れていかなければならぬことは、積極的な輸入拡大策をやることによってこの黒字幅を縮減させる。先ほど局長も言いましたけれども、税制、財政、そして財投、あらゆる手段を講じて輸入拡大をし、そして世界の中で協調していける日本の経済の体質をつくり上げるということが大事なことではないか。それを的確に表現されたのが輸入大国を目指すという総理の言葉であったと思います。その総理の言葉が単なる言葉に終わらないようにこれから積極果敢な政策展開をしていかなければならぬ、こう思っておる次第でございます。
  25. 中山太郎

    ○中山国務大臣 尾身委員からいろいろと、これからの日本の貿易問題を含めて国際社会における日本の立場というものに対して大変御心配をいただいていることを私は心から敬意を表したいと思います。  私は、率直に申し上げまして、経済大国になった日本でございますけれども、国際社会で果たして今後このままでいけるのかという問題を絶えず考えながら外交をやっていかなければならない、そういうときに当たりまして、私はやはり、経済力はあるけれども信用のできない国家だというふうな国際的な評価を受けないように、信頼される日本国というものを世界に認識してもらう、このような努力を続けていかなければならない。その中にはやはり、日本だけが一方的に黒字を計上するというようなことでは国際社会では通用しない問題でございまして、これは挙げて、日本の国民の皆様方に十分国際化の問題を御認識いただいた上で、我が国の国際化のために、国際化が進めば恐らく国際的な社会の中で立派に通用する国家になろうか、このように考えております。  そういう意味で、この構造調整には国民の皆様方の深い御理解と御協力をぜひお願いを申し上げて、これからの日本のあり方というものを考えていただきたい、このように考えております。
  26. 尾身幸次

    尾身委員 終わります。
  27. 中村靖

    中村委員長 次に、谷津義男君。
  28. 谷津義男

    谷津委員 私は、ODAについて集中的に外務大臣にお伺いをいたしたいと思っております。  まずODA、今日まで日本は非常に努力をしてまいりまして、非常に金額もふえてまいりました。いろいろな喜ばれている面もあれば、また、ときによってはいろいろな面で現地の方たちからいま少し考えてほしいという話もあります。  私ども、昨年来現地に入りましていろいろな実情を調査をしたり、あるいは現地の方たちと話し合ってきた経緯を踏まえまして質問をしていきたいと考えておるわけでありますが、決算ということで、まずODAの今日までのあり方について、特に外務大臣、考えるものがあればそれをまずお聞きしたいと思います。
  29. 中山太郎

    ○中山国務大臣 谷津委員、かねてODA問題につきましては大変御研究をされておられますし、また現地等を実際に歩いてこられての御発言でございます。敬意を表しながら承っておりますが、日本のODAというものの歴史を見ますと、始まりは賠償に引き続いて始まってきたというふうに考えております。そういう中で、経済大国として国際的責任を果たす上で、ODA予算をふやし、発展途上国の皆様方の経済の発展あるいは社会基盤の整備というものに協力をしてきておると思っております。  いろいろと先生の御報告あるいはお書きになったものを拝見いたしましても、よく明白に指摘されておられますけれども、私も実は外務大臣として、どうも日本は一生懸命やっているけれどもやはり批判をされている部分がある、その部分を的確に把握をして、これからのODAを行っていく上に、この問題点を解決しながら真に国際社会から歓迎されるODAをやっていかなければならない、このように考えております。
  30. 谷津義男

    谷津委員 私どもが現地に入って非常に批判を受けた、あるいはまたODAのその後の実態が効果を上げていないというようなところへ入って話を聞きますと、まず地域の適性に合っていないあるいは宗教上の問題等の問題がある、そういうふうないろいろな歴史的な過程の中で、いわゆる日本の感覚で入っていくと、そこに違和感が生じてまいりまして、いろいろな問題が起きているというふうに実際に直面したわけであります。  特に、私は都市から農村地帯に入ったわけでありますけれども、例えば農業関係のいろいろな援助を見ましても、田んぼの中にトラクターが何台も動かないでそのまま放置されているのを実は見てきたわけてあります。いろいろ聞いてみますと、故障しますとその故障に対する部品が届かないためにそのまま田んぼの中に放置しているんだとか、いろいろそういう細やかな配慮、アフターケアといいますかそういった面がなかなか行き届かないという面が一つと、もう一つは、現地ではまだまだ、そういう機械を導入するには、そこの住民感情といいますか生産している人たちの感情からいってもなかなか難しいところに、近代的なものがばかっと援助として入ってくるということで、その扱い方等に困惑しているというふうな話も聞きました。それからまた、宗教上の問題からそういうものを入れるのはよくないというようなことで使わないという話も聞きました。  いろいろなことで非常に現状に合わないようなものがあるわけでありますが、その基本にあるものは、私は調査不足ではなかろうか、あるいはまた援助を受ける国側の考え方のみで、現地との調整をとらないままそういうものが入ってしまったという面があるのではなかろうかと思うのですが、この点外務大臣はどういうふうに認識しておりますか、お聞かせいただきたいと思います。
  31. 中山太郎

    ○中山国務大臣 一般的な意見といたしまして、私は外務大臣に就任以来ODA問題をいろいろ考えてまいりましたが、失敗しているケース、このケースの中には、相手国の要請どおりにやってそれが結局現地にうまく効果的に使われていないというケースがあるんじゃないか、相手国の政府の要請をそのままのんできたケースもあるのではなかろうかと考えておりますが、今後はやはり、先生御指摘のように、相手との十分な事前の協議それから調査、そういうものをしっかりとやらなければならない問題があるというふうに認識をしております。
  32. 谷津義男

    谷津委員 援助の最初の部門、いわゆるプロジェクトをつくる点について、日本の民間業者の人たちが現地に入りまして、かなりそういった面では現地の政府の依頼といいますか、あるいはまた自分たちで先に調査するといいますか、いろいろな面でプロジェクトファインディングというか、そういった面でやられている面がかなりある。しかも、その援助の中身を自分たちの会社に有利に、そこで事業ができるような方策でいろいろ日本の商社が考えてそれを政府に要求させてくる、日本に対して要求させてくる、こういう面がかなりあるというふうに私どもは聞いたわけであります。そういう面からいきますと、本来の援助の趣旨からいくとこれはちょっと違っている面が出てくるのではなかろうかというふうな認識を持って私は帰ってきたわけでありますけれども、この辺のところは外務大臣、何か聞いておりますでしょうか。また、そういうふうな問題についてどうお考えでございましょうか、お聞かせいただきたいと思います。
  33. 中山太郎

    ○中山国務大臣 外務省初め関係省庁、一生懸命やっておると私は信じておりますけれども、委員御指摘のようにいろいろな問題点がないとは言い切れないと思います。
  34. 谷津義男

    谷津委員 これは役所ベースだけではなかなかできない面があると思いますから、大いに民間の力をかりるということは私は反対ではありません。そういった面では大いに活用すべき面があろうかと思いますが、これはよほどうまくやらないとかえって反感を買う危険があるというふうに私は認識をしておるわけです。  そこで、ずっと現地を見てまいりまして、非常にこれは効果的だな、また喜ばれているなというような面は技術移転あるいは教育の問題。現地でそういったプロジェクトを組んでやっている例に幾つかぶつかってきましたが、非常にこれは喜ばれているわけであります。ですから、物をつくってやるあるいはいろいろな農業の施設をつくってやる、これも大事かもしれませんが、そういった技術移転、教育、こういった面にもっと力を入れていった方がより効果的ではなかろうか、また地域の要望にマッチするのではなかろうかというふうに実感をして帰ってきたわけでありますけれども、この辺のところは大臣はどういうふうにお考えになっておるのでしょうか。
  35. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先生御指摘のように、日本のODAに占めます技術協力の割合は一〇%前後でございます。これに対しましてDAC諸国の技術協力、これはODAに占める比率が約二〇%、こういうことになっておりまして、技術の移転、また人づくりのための教育、こういうものにこれからは日本はもっと力を入れていかなければならない、このように考えております。
  36. 谷津義男

    谷津委員 そこで、現地の技術協力、移転といいますか、それから教育面に当たっている人たち、こちらから行った人たちに直接お会いをいたしましていろいろと話を聞いてみましたら、こういうふうな話が出てまいりました。  要するに、技術者としていろいろな指導のために行っておる方たちが二年くらいで交代する、役所から行っても三年くらいで交代する場合が多いということで、人がかわっちゃうために、教育する面においても技術移転をする面においてもなかなか個人との意思が通じ合わないで、非常にマイナス面だけが目立っている、いま少し長期的な滞在といいますか、そちらに行って教育できるようにしなければならないのじゃないか。しかも大事なことは、単に技術を移転するとか教育をするとかいうのではなくして、もっともっと心の通い合うやり方をしないと真の意味の援助というものになっていかないのじゃないかというような話をされたわけであります。  確かに、そういう面からいくと、各役所から出られている方は一生懸命頑張っておられますけれども、いま少しいたいなと言っても、転勤ということでこちらに帰ってくる例が多いんだと聞いておるのです。この辺のところは外務省として何か新しい方策を考える必要があると私は考えておるのですが、大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  37. 中山太郎

    ○中山国務大臣 役所のことでございますから、ある一定の年限で現地に出した者は帰ってくる、また新しい人を出すという一つのシステム、基本的にこれをなくするということはできないと思います。しかし、御指摘のように、ODAを実施する上で相手の国との協力で十分効果が期待できるような人間の配置というものは、外務省としては今後慎重に検討しなければならない、このように考えております。
  38. 谷津義男

    谷津委員 私どもが流れの中でずっと見てきて、基本的に一つだけ、これはちょっと問題があるなと私なりに感じたものがあるのです。それはどういうことかといいますと、専門家の確保といいますか人員の不足といいますか、この点があるのではなかろうかと私は思うのです。  確かにJICAの方たちあるいは青年協力隊の人たちも一生懸命頑張っておられますけれども、絶対的な人員の不足というのはもうどうすることもできない状況にあるのじゃなかろうかというふうに考えておるのです。現地の人たちとの接触を見ましても、そういった面では、いま少し人員確保ということをやっていけるならばもっともっと効果的なものが出てくるであろうし、もっと現地とのなじみという者も出てきて非常にうまくいくのではなかろうかと思うのですが、この専門家の確保ということについて外務省はどういうふうに考えているのですか。来年度の予算要求の中にもあるようですけれども、その辺のところをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  39. 中山太郎

    ○中山国務大臣 専門家の確保という問題が、ODAのこれからの実施について極めて大きな要素であると私も認識をいたしております。  御案内のように、世界の先進工業国のいわゆるDAC加盟国でございますか、そこのODA予算とそれを担当している職員の数を見ましても、日本におけるるODA予算とそれに従事する職員の数は、もう圧倒的に日本の場合は比率が低い状況になっておりまして、これから経済大国として国際社会に経済協力をしていくというODAの予算の枠はふえますけれども、何はさて、この人員の確保というものが実は総定員法で縛られているというようなこともございまして、この点はひとつ国会の先生方の御協力を得て、必要な技術者の確保、要員の充実というものに努めなければODAも十分な効果を発揮することは難しくなってくる、このように認識をしております。
  40. 谷津義男

    谷津委員 最近、私ども選挙区でいろいろな話をしますと、こういう話が出てくるのです。それは、ODA、いろいろな海外援助が非常に大きな金額になってきたものですから、よく理解をできない人たちは、外国にそんなに大きな金額を出すんならもっと福祉に出したらいいじゃないかとか、いろいろなそういう話が私どもの耳にも入りますし、時々そういう質問を受けるのですね。そういうことを考えると、もっと国民の皆さん方に御理解を得られるような、PRといってはなんですけれども、そういった国内向けの対策も必要じゃなかろうかなというふうな感じを強く持つようになってまいりました。外務大臣はその辺のところをどういうふうにお考えでしょうか。
  41. 中山太郎

    ○中山国務大臣 私もいろいろと、国民の中に、自分たちの税金を政府は外国へ持っていってどんどん出している、むだ遣いがあるんじゃないかという声を聞くことがございます。御指摘のように、経済大国である日本が、国際社会にそういうふうな一つの責任を持った役割があるということを、国民の皆様方に御理解をいただく努力を外務省としてはもっとしなければならない、このように考えております。
  42. 谷津義男

    谷津委員 最近、社会党などODAの基本法というふうなことでいろいろと考えをめぐらされておるようであります。カナダではODA憲章と言われるようなものもあって一つの哲学を持ってやられているわけでありますけれども、このODAの憲章といいますかODAの基本といいますか、そういう問題と、四庁体制あるいは十六省庁にわたっていろいろな問題があるために、専管省庁をつくった方がいいというふうな議論もありまして、いろいろと今そういう話も出ているわけでありますが、この辺について大臣の考えを聞かしていただきたいと思います。
  43. 中山太郎

    ○中山国務大臣 いろいろと行政官庁が多岐にわたっておる、そういうことでうまく整合がとれていないじゃないかという御指摘があることも御意見として承ってきました。しかし問題は、これからの国際外交に占めます我が国のODAというものは即外交の一面でありまして、外務省が一元的にこの問題を責任を持って行うという体制は、外交を行っていく上で不可欠の問題であるというふうに認識をしておりまして、その点はひとつぜひ御理解をいただきたい。特に、別に省庁をつくってそれによって行うということは好ましくないというふうに考えております。
  44. 谷津義男

    谷津委員 ODAはこれからの日本にとっても大事なことでございますし、かつて日本も、そういった面では大変外国の支援を得て今日の日本があるというふうに私も思っております。それがために、ODAで援助するについてはやはり我が国としてもそれなりの哲学を持ってしっかりとやっていく必要があるわけでありますけれども、そういった面から見ますと、単にODAという援助の形だけではなくて、全体の中から援助のあり方というのがどうあるべきかということは非常に大事なことであろうと思うのです。  そこで、最後に外務大臣に、ODAからちょっと離れた質問で恐縮なのですが、首相が東西ヨーロッパを訪問する計画があるというようなことを新聞紙上等で私ども聞いておるわけでありますけれども、一月という微妙な時期に東西ヨーロッパに行かれるということについて外務省はどんなふうに進めているのか、そしてそれについてどういうふうな感触を得ているのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  45. 中山太郎

    ○中山国務大臣 一月の自然休会の間に総理に外遊をお願いするということは、例年、予算編成後の自然休会期に総理に海外に出ていただいて首脳外交をやっていただくと、それが日本の国益につながるというのが従来の一つのパターンであります。そういうことから、この国会が十二月の十六日に終了して予算編成作業が始まって、通常国会が十二月の下旬に召集され自然休会になると、その時点で、通常国会再開までの間に、サミット加盟国でまだ総理が直接お目にかかっておられない首脳たちとの会談を行っておくことが日本国の利益になるという判断をいたしましたために、そのようなことを私が申し上げたわけでございます。  現在、外務省といたしましては、政治日程がどのようなことになるかは定かではございませんけれども、一応このままの状態が続くという判断の上で、条件が整えば、東西のヨーロッパを御訪問いただくということは極めて大切であるということで、相手国の政治日程もございますから、外務省としては事務的に相手国と政治日程を詰めているということでございます。
  46. 谷津義男

    谷津委員 ということは、これは実行するということで受けとめてよろしいのでしょうか。
  47. 中山太郎

    ○中山国務大臣 政治のことでございますから、一寸先はやみと申されておりますけれども、一応この国会が終了して、年内予算編成が行われ、そして通常国会が召集されて自然休会に入りました場合には、そのような日程で実施をぜひ進めたいと考えております。
  48. 谷津義男

    谷津委員 ありがとうございました。  最後に、通産大臣に一つだけ聞いておきたいことがあります。それは、最近新聞紙上等でサマータイムについて見るようになったわけでございます。世界の先進国五十カ国でもう既に実施されていると聞いております。我が国においても過去に三年間そういうことをやったことがあるわけでありますけれども、これは資源エネルギー庁のいわゆる省エネ対策もあってこのサマータイムに向かって研究をしていきたい、そして新聞報道によりますと、来年度あたりから実施に踏み切りたいというふうに書いてあるのです。  いずれにしましても、この問題はこういうふうなもので検討されているというふうに聞いているわけでありますが、大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  49. 松永光

    ○松永国務大臣 サマータイムが省エネルギーにつながるということは委員よく御存じのとおりであります。そういう観点から、今通産省では、来年春を目途に、総合エネルギー調査会・省エネルギー部会において、省エネ推進のための具体的な課題について検討を行っているところでありますが、サマータイムの制度につきましても課題の一つとして検討していきたいと考えております。
  50. 谷津義男

    谷津委員 実は、韓国がオリンピックのときにサマータイムを取り入れまして、三年でやめた経緯があります。我が国におきましても、このサマータイムは、余暇のとり方あるいはまた勤めた後にできるだけ夕方の時間を多くとって、そこで健康増進などいろいろな面でやるということもわかるわけでありますが、一方においては労働強化にもつながるという一つの考え方があって、韓国なんかはそういう意味でやめたというふうに私どもは聞いておるのです。  しかし、この問題につきましては、私はむしろ積極的に検討をして、今後の省エネだけではなくて、総合的な各省とのいろいろな調整も必要だろうと思うのですが、通産省あたりがイニシアチブをとって進めてもらって、ぜひこういう方向に進めてもらいたいというのが私の考えなんです。大臣の決意のほどをお聞かせいただきたいと思います。
  51. 松永光

    ○松永国務大臣 よく検討してまいりたいと考えております。
  52. 谷津義男

    谷津委員 今検討してみたいということなんですが、これは所轄の官庁が随分あちこちに幅広く関係してきますから、通産だけでやれと言っても無理な話なんですが、単に省エネだけではなくして、またいろいろな面で考えなければならない問題がいっぱい出てくると思うのです。そういう中で、日本人の今日までの感覚の中でこういうサマータイムというのが合っているかどうか、あるいは列島がこういうふうに長いだけにいろいろな問題があろうかと思うのですが、最後にその辺の大臣の考えを聞かせていただきたいと思います。
  53. 山本雅司

    ○山本(雅)政府委員 この問題につきましては、委員御指摘のように単なる省エネルギーの問題だけではなくて、まさに労働時間の問題、さらには、かつて終戦直後三年ほどやったことがございますが、その当時は、笑い話のようなことですけれども、日が長くなるとおなかがすいて、しかも食糧不足だったというような事情もあったようでございます。  したがいまして、今後、この問題は、省エネだけではなくて、仰せのように各省庁にもまたがりますし、多分内閣などを中心に慎重に検討しなければならないということだろうと思います。  ただ、私どもといたしましては、省エネルギーあるいはエネルギーの効率的利用ということは、この前のサミットでも有力なエネルギー政策の手段とされておるものですから、その観点から今後十分検討して必要な提案とか政府部内の議論を進めてまいりたい、このように考えております。
  54. 谷津義男

    谷津委員 ありがとうございました。
  55. 中村靖

    中村委員長 次に、上田哲君。
  56. 上田哲

    上田(哲)委員 外務大臣にお伺いをいたします。  私は、最近東欧諸国の動きを非常に注目しておりまして、これはもちろん東欧だけではなくて全ヨーロッパ、私ごとですけれども、最近クラウゼビッツに倣って「戦争論」という本を書きまして、九〇年代デタントという言葉を考案をして大変力を入れているわけですが、昨日、一昨日ワルシャワで行われたワルシャワ機構の外相会談、ここでその質的転換が確認をされ、特にヤルゼルスキ大統領がその方向を確認し、ワルシャワ軍事機構とNATOが同時解消をこの十年以内にやる可能性は非常に強いということを言明された。さらにソビエトのプリマコフ連邦会議議長が、加盟国から脱退があるとしてもあえて引きとめないという、非常に大きな反響を呼ぶ発言がありました。大きな変化だというふうに思っておりますが、この変化について日本外交はどのような評価をされるのでありましょう。
  57. 中山太郎

    ○中山国務大臣 委員御指摘のように、私はやはりこの東ヨーロッパの変化というものは戦後初めての大変化であるというふうに認識をいたしております。この変化がどのような経過をたどってどのような結果になるかということは現時点では明確に申し上げるだけのものは持ち合わせておりませんけれども、変化が極めて大きい、しかもそれが一国だけではなしに一つの東ヨーロッパ、またソビエト連邦も含めて歴史的な大きな変革期に入ってきた、そういう中で西ヨーロッパ、特にECの経済市場の統合というようなものを含めまして、これからのヨーロッパ全域の軍事あるいは安全保障の問題、経済の問題というものは、現時点で的確にこうなるということを明確に申し上げることは避けさしていただきたいと思いますけれども、ポーランド、ハンガリー等における変化は既に逆戻りのできないようなところに来ているのではないか、このように思っております。
  58. 上田哲

    上田(哲)委員 私は、大事なことは、NATOとワルシャワ機構、この両方が同時にこの十年以内に解消しようじゃないか、ワルシャワ機構がそういう発言をし、クレムリンがそういう発言をするということも大事ですけれども、同時に、非常に具体的に言えば、ことしの五月の末に開かれたNATOの閣僚理事会、首脳会議、ここではっきり、四十年目の危機と言われる、冷戦構造の落とし子であると言われたNATOが明らかに、東西緊張を解消しよう、特に中距離弾道弾の全廃の上に立って今度はSNF、短距離弾道弾をやろうじゃないか、両方の歩み寄りからこういうところまで来ている。その意味で東欧側の、あるいはソビエト圏の反応というものも非常に歓迎さるべきである。全ヨーロッパ的にあるいは全世界的にと言いたいわけですが、少なくとも全ヨーロッパ的なデタントというものとして把握さるべきだということが一つ。  あわせて、この認識の上に立つならば、それが日本外交に与える影響あるいは我々から見る評価、この問題について踏み込んでもう一言伺いたいと思います。
  59. 中山太郎

    ○中山国務大臣 委員御指摘のように、このヨーロッパのデタントという問題をめぐりましては、その背景にあるものは、一九六〇年、戦後に始まった米ソの極めて激しい対立の状態から七〇年代に入って対話の状態になり、八〇年代に入って米ソが協力をし合う、そういうふうな国際情勢が醸し出されてきた中に、ヨーロッパにおけるINFの全廃条約あるいは通常戦力の削減交渉というようなものがいろいろな舞台で行われているということは、委員御指摘のように、一つの平和への大きな流れが始まってきたという認識は私は全く同様でございます。  日本といたしましては、今後の東ヨーロッパに対する考え方、委員御指摘の点は恐らくそこだろうと思いますけれども、やがて迫ってくるポーランドの厳しい冬に、ポーランドの国民が十分な食糧を確保することができないということも含め、また四百億ドルに上る累積債務を抱えたポーランドの経済、こういうものに対して日本も含めた西側諸国が協力をし合いながら関係者の会議をブラッセルで重ねて、ポーランドに対する食糧の緊急援助等も含めた新しい援助体制というものを現在協議中でありまして、日本政府といたしましてもごく近い将来にこの結論を出さなければならない、このように考えております。  一方、ハンガリー等におきましても、ハンガリーはポーランドに比べてまだはるかに経済状態はいいわけでありますけれども、ハンガリーに対する経済協力というものもこれから進めていかなければならないと考えております。
  60. 上田哲

    上田(哲)委員 私は想起するのですが、NATOの首脳会議の前に先回りしてブッシュ大統領がポーランドを訪れる、特にグダニスクを訪れてワレサと肩を組んで復興に力をかすと言ったまではいいけれども、ワレサが出した百億ドルの西側からの援助というものに対して、四百万ドル技術援助をするということを言って帰ってきた。どうもねらいは金持ち日本が行ってその分をやってこいというようなことになるのであれば、これは非常にグローバルな平和への、あるいは民主主義への寄与、あるいは窮乏からの脱出への助力というようなことはあるとしても、非常に政治的な意図というものがむき出しになってくるようなことでは困ると思うのですね。その辺はいかがですか。
  61. 中山太郎

    ○中山国務大臣 日本政府といたしまして単独で援助を行うというような考え方は持っておりません。あくまでもサミット加盟国の一員として日本が応分の協力と責任を果たしていくことによって、ポーランドの人たちの冬の危機をできるだけ和らげてあげるというふうな考え方で今日行動をせなければならないと考えております。
  62. 上田哲

    上田(哲)委員 外交というものが超党派あるいはグローバルな平和への志向の中で位置づけられるということに関する議論としては今まではそれでいいのですが、私は一つ懸念を表明しておきたいのは、ただいまも与党からも御指摘がありましたように、物情騒然たる政治状況の中で新総理大臣が国内政治もそこそこに外国旅行をされる。外国旅行に千両箱を持って出かけていって、殊さら、おまけは西欧であってねらいは東欧、そこで東欧の社会主義国を見てきて、どうも方向はこっちではないぞというようなことに選挙向けに外遊されるということになる、あるいは選挙のために外遊を利用するというふうな懸念なしとしない、この声についてはいかがでしょうか。
  63. 中山太郎

    ○中山国務大臣 選挙を意識して外遊をするということでは決してないということを、外務大臣としてはっきり申し上げておきたいと思います。  実は私も、外務大臣になりまして九十日の三カ月目をまだ迎えておらないわけでありますが、実は外務大臣として国際会議に、パリのカンボジア和平会議あるいは海部総理のアメリカ、カナダ、メキシコ訪問、あるいは引き続いて行われた国連での政府演説に参りまして、その間に多国間あるいは二国間の外相会談を随分やってまいりました。  そういう中で、このニューヨークの国連総会の最中に、ブッシュ大統領が主催する昼食会が実はございまして、これは通訳官も秘書官もだれも入れない、ただ外務大臣とアメリカ大統領と国務長官だけの会議でございましたが、海部総理がやがて出席をされるサミット、サミットに行かれた場合に全然顔見知りのない首脳たちがおられるということは、日本国の総理大臣にとっては極めて好ましい状態ではないというふうに外務大臣としては認識をいたしておりまして、私が数次にわたる二国間外交あるいは国連外交を通じて多くの外務大臣と知り合っておったがために、そのようないわゆる協議の場でも何ら当惑感というものは感じませんでした。そういう意味から申しまして、海部総理が、やがて各国大統領あるいは総理だけの会談がサミットで行われますが、それまでにはこのサミット加盟国のそれぞれの国家の指導者とはぜひ二国間で話し合いをしておいていただきたい、これが日本のためになるというふうに信じております。
  64. 上田哲

    上田(哲)委員 生臭い言い方をするのですが、あなたがお医者さんとしていろいろやってこられた、その延長線上のヒューマン外交なんというのは私は評価しますよ。しかし、この時期、選挙を前にして、東欧を選挙のために回るなんということに使うようなみみっちいことはやらないでもらいたい。これをひとつ、生臭い言い方をしますから生臭く答えてください。
  65. 中山太郎

    ○中山国務大臣 委員の大変厳しいお尋ねでございますけれども、政府として、総理大臣が、国民の納めていただいた税金を政府が援助に使うという国につきましては、私も手分けをして回るつもりでおりますけれども、やはり国民のとうとい税金をいわゆる他国の方々のために使うわけでありますから、その国情あるいはその国の政治指導者と意見を交換することは、日本国の総理大臣としては国民に対する大きな責任であろうと考えております。西、東を問わず、そのような考え方で処理をいたしたい、このように考えております。
  66. 上田哲

    上田(哲)委員 ちょっと言葉じりをとらえるのですが、税金を持って援助のために行くんだ、先ほどとの脈絡で言いますと、ハンガリー、ポーランドにはそういう援助のために行くんだ、こういうことになるのですか。
  67. 中山太郎

    ○中山国務大臣 総理が行かれる前に、この援助の問題は多国間の協議で決定をいたしたい、このように考えております。
  68. 上田哲

    上田(哲)委員 というふうに理解をしておきます。生臭くならぬように、ひとつこちらもよく注意をしていきたいと思います。  時間がないので話題を変えるのですが、九二年に英仏からこっちへプルトニウムの再処理分を輸送するわけでありますが、これの輸送に関して護衛艦を使えという議論が出てきて、大分自民党の国防部会と外務、防衛、さらに運輸等々の間でお話し合いがあったようであります。決着がついたと理解して確認のためにお伺いするのですが、これは護衛艦を派遣しない、自衛隊の護衛艦を派遣しないで、新たに運輸省、海上保安庁の要求する新建造費に基づく船をつくって航行するということの決着がついたというふうに理解してよろしいですか。
  69. 福田博

    ○福田(博)政府委員 突然のお尋ねでございますが、プルトニウムの輸送につきましては、現在再処理をイギリスとフランスに頼んでおりまして、それを船で運ぶのか飛行機で運ぶのかまだそれも決まっておりませんが、仮に海上輸送の形で行うという場合には、原則として護衛船というものをつけるということになっております。海上輸送の護衛は、盗取とか妨害行為を防止し、輸送船やその積み荷を十分に防護することを目的としたものでございまして、これは言いかえれば海上における犯罪の予防や鎮圧を目的としたものでございます。  我が国におきましては、委員御承知のとおり、海上保安庁が海上における犯罪の予防、それから鎮圧の第一義的任務を有するということから、その海上輸送を行う護衛船につきましては、海上保安庁の巡視船を護衛船として派遣する可能性について現在政府部内で検討中でございます。
  70. 上田哲

    上田(哲)委員 経過はよく知っているので、それはいいのです。だから、その決着がついたのかということを聞いておるのです。
  71. 福田博

    ○福田(博)政府委員 今申し上げましたように、検討中ということでございまして、政府で検討しておりますのは、海上保安庁の船によって護衛することを検討中ということでございます。
  72. 上田哲

    上田(哲)委員 海上保安庁の船によって輸送するのか、防衛庁の護衛艦を派遣するのか、どちらかになるかもしれないということを含んでいるのですか。それが決着したのですか、明確に。
  73. 福田博

    ○福田(博)政府委員 海上自衛隊の護衛艦、自衛艦ですね、それによって護衛することを検討しているのかというお尋ねであれば、それは検討していることはございません。
  74. 上田哲

    上田(哲)委員 いや、検討しているのじゃなくて、そうしろということでいろいろ折衝があったのです。  私が聞きたいのは、新建造費が七十億か百億かわかりませんから、来年度予算がどうなるか、きょう今は聞いていない。防衛庁の護衛艦を派遣せよという有力な意見がいろいろあったわけだから、この問題については護衛艦は出さないということについて話はきちっと終わったかということを聞いている。明確に答えてください。
  75. 福田博

    ○福田(博)政府委員 従来から、これは数回にわたりまして予算委員会で既に政府側から答弁をしておりますが、せっかくの委員の御質問ではございますが、政府で検討しておりますのは、船で運ぶか飛行機で運ぶかもまだ決まっておりませんが、仮に船で運ぶということになれば、その目的からいたしまして、海上保安庁の船でやるということが適当でないかということを検討しているということでございます。
  76. 上田哲

    上田(哲)委員 大事な時間をつぶされては困るのですよ。そっちは聞いていない。その中に、自衛隊の護衛艦を派遣するということは含まれているのかいないのか。含まれて検討されてきた経過があるのだから、そのことは、それは含まれていないという決着がついたかどうかを聞いているので、決着がついてないならついてないと言ってもらえばいいのです。明確に答えてください。余計なことは要らない。
  77. 福田博

    ○福田(博)政府委員 明確にお答えしたいと思いますが、海上自衛隊の自衛艦で護衛するということを検討したことはございません。
  78. 上田哲

    上田(哲)委員 護衛船と護衛艦は違いますか。
  79. 福田博

    ○福田(博)政府委員 日米原子力協定等に書いてあります護衛船というのは、まさにプルトニウムを運ぶ船を護衛する船でございまして、巷間言われております海上自衛隊の護衛艦というものも巡視船も理論的には含むと思いますが、少なくとも、とにかく言われていることは護衛する船のことでございます。
  80. 上田哲

    上田(哲)委員 はっきり答えてくれないと困る。その護衛船の中に護衛艦も含まれるのですか。明確にイエスかノーかだ。
  81. 福田博

    ○福田(博)政府委員 理論的には含まれると思います。
  82. 上田哲

    上田(哲)委員 理論的に含まれるのなら、政策としては護衛船の中に護衛艦を含みますか。
  83. 福田博

    ○福田(博)政府委員 日米原子力協定に、プルトニウムを海上輸送する場合には護衛の船をつけるということが附属書で書いてあります。それの中には、あらゆる形の船が理論的には護衛するのであれば入ると思います。
  84. 上田哲

    上田(哲)委員 理論的にはとは聞いていない。日本政府の政策として含むかどうか聞いているのだ。余計な時間をとらぬでくれ。
  85. 福田博

    ○福田(博)政府委員 先ほどからお答えしておりますように、護衛船として海上保安庁の船を使うことについて政府部内で検討しているということでございます。
  86. 上田哲

    上田(哲)委員 お答えしてないではないか。まるっきり役人答弁もいいところで、君は日本語を使えないのかね。護衛船という言葉の中に、理論的にというならそれを認めてもいいが、日本政府の政策語彙としては、護衛船の中に護衛艦を含むか含まぬかということを聞いているのです。答えられないならもう答えられなくてもいい。  それでは伺います。十月五日の衆議院本会議の政府答弁、総理答弁では「原則として護衛艦の同行が必要とされます。」と答弁されているのです。これは議事録だ。護衛艦と書いてあるのだ、総理大臣は。我々は護衛艦というものを自衛隊の護衛艦以外の言葉は知らない。これはどういうことになるのか。
  87. 福田博

    ○福田(博)政府委員 それは護衛船ということで使われたものと承知しております。
  88. 上田哲

    上田(哲)委員 わかりました。くだらぬ議論をする時間はもったいないから、そこできれいにしておきましょう。  これは、政府が間違っている、あるいは語彙を広げたのだ、これは護衛艦と書いてあるが護衛艦ではないということがはっきりしたのだから、責任追及だの、何だのはつまらない、ほじくった議論はよしましょう。この後問題が出てくれば、このことをしっかり議論の出発点にいたします。時間が非常にないので、ばかばかしい議論をしないでもらいたい。  そこで、大事なことを伺いたい。ことしの七月、八月にアメリカ上下両院で、日本の在日米軍駐留費の負担問題が法案として可決をされております。確認する時間を省きますが、これについて日本政府にはどういう連絡なり通知なり要請なりがありましたか。
  89. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 そのものについては直接何も連絡はございません。
  90. 上田哲

    上田(哲)委員 九月一日に中山大臣がベーカー国務長官と、一時間二十分とうかがっておりますが、会談をされた。報道されている限り、ここではアメリカ側から議会の動勢も伝えながら、この日本案についての内容について協力を求められた、静かな対話という言葉もついたというふうに言われておりますが、その辺の経過をお伝えいただきたい。――大臣がしゃべったのだよ。いつから大臣になったのだ。
  91. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 事実関係の部分でございますので……。  先ほど先生は、法案が成立したということを言われて、それについてということでございましたが、ベーカー国務長官から外務大臣にございましたのは、議会においてさまざまな議論があって、その中には日本に対する期待が強いということでございまして、実は法律そのものについての言及はなかったということでございます。
  92. 上田哲

    上田(哲)委員 では伺いますが、日本政府としては、アメリカ側のこの法案の内容、具体的な要求の内容についてどのように理解をしていますか。
  93. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 私手元に持っておりませんけれども、先生がおっしゃっておられるのは、最終的に採択される方向にございますナン・ウオーナーのことだろうと思いますけれども、ここにおきましては、米国行政府を法的に拘束する内容ではございませんけれども、最終的にそのような文章が出たかどうかまで確認いたしておりませんけれども、例えば日本の防衛費とODAがNATO諸国の平均のそれに近くなることといったようなこと。それから汎論として、在日米軍にかかわります米軍の経費にかかわる日本側の負担の増大を期待するといったことが盛られております。
  94. 上田哲

    上田(哲)委員 とんでもない話だな、これは。めちゃくちゃな話をしていたのでは困るな、日本の代表として、北米局長。あなたは非常に素直に物を言う人なのだけれども、そういう言い方をいつから覚えた。何言っているのですか、君。  いいですか。アメリカで決まったことをここで言わなければならないのは日本の国会の権威にかかわるのだが、アメリカ上院を通ったのは八月二日、下院を通ったのはその前の七月二十七日。法案の名前は、一九九〇年及び九一年会計年度国防予算授権法案でしょう。まさに下院では賛成二百六十一、反対百六十二、上院では賛成九十五、反対四。圧倒的多数で法案が可決されているのですよ。行政府を拘束しないもへったくれもありますか。  その中にどう書いてあります。下院では「日本政府に対し、日本に駐留する米軍人の俸給及び諸手当を除く在日米軍駐留経費を全額負担するよう、一九九一年までに接受国支援を増大するよう勧奨すべきである。」と書いてあるじゃありませんか。  いいですか、上院の場合にもはっきり書いてある。「大統領は、本法案成立後、在日米軍の直接経費に十分見合う貢献を日本が行うことに同意する旨の合意を得る為、日本と交渉に入らなければならない。」大統領に命じているじゃないですか。  この文章は私が勝手に訳したのじゃない。八月二十三日に外務省からちゃんともらった報告ですよ。今言っているのと全然違うじゃないか。はっきりアメリカで、堂々と圧倒的多数で、余り堂々という言葉をここでは使いたくはないが、こんなものがアメリカの上院、下院両方でもって堂々と決定をし、大統領にその命令を付している。もっと具体的な内容を言いましょうか。いつまでにどうしろということも書いているじゃないですか。  こんなことを知らないでどうしますか。そういうでたらめなことを日本国国会の権威にかけて言わないでもらいたい。具体的な例は幾らでも出すから。もう途中のことはやめる、非常に時間が短いから。途中のことはやめるから、向こうが言っている内容を、もし正式にまだ聞いていないという言い方をしたいのなら、日米外交を基軸にしている日本政府が、アメリカの上下両院の本会議でこれだけのものが明確になっているのに、経済負担がこれだけ多くなってくるという可能性があるのに、情報の一つもとらないで一体済みますか。  結論として質問したい。アメリカ側が日本に要求している具体的な経費負担というもののアイテムは何だ、内容は何だ。そして、その総額は幾らくらいと考える。
  95. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 米国政府は日本政府に対して、具体的な項目を挙げて、金額を挙げて要求をしているということはございません。
  96. 上田哲

    上田(哲)委員 まじめに答えなさいよ。これだけのことについて、この大きな問題について、具体的な内容は知らぬとおっしゃるとするならば、大臣、九月一日にベーカーさんと一時間二十分にわたって話をした、少なくとも日本に伝えられた新聞報道でも、この問題について協力を求められた、まあ、がたがたしないで静かな話にしようじゃないかとベーカーは言ったというふうに伝えられている報道は、全部誤電ですか、大臣。
  97. 中山太郎

    ○中山国務大臣 私に対しまして、ベーカー長官から具体的にお話があったことはございません。
  98. 上田哲

    上田(哲)委員 八一年以来陸続として続いておりますが、防衛事務レベル会議、先般の事務レベル会議で当然この話が出ています。どうなっていますか。
  99. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 この話は出ております。そして、これは私どもの方から取り上げまして、我が国としては日米安保体制の効果的運用を確保していくことは極めて重要である、その観点から、従来より在日米軍経費負担についてはできる限り努力してきているところである、その具体的内容を米側において、行政府は理解しておりますけれども、さらに一般的レベルを含めて米側における認識を深めてほしいということを申してございます。  それから米側からは、日本による在日米軍支援に対して謝意が表明されておりまして、今後とも在日米軍支援について引き続き努力がなされるようにという期待の表明がございました。しかし、具体的に項目あるいは金額といった要請はございませんでした。これは米側も、あくまでも日本側の自主的努力にゆだねるという基本的な姿勢を維持し続けてきていて、これを変えるつもりがないからだと存じております。
  100. 上田哲

    上田(哲)委員 もしこの要請にこたえる場合には、地位協定を改定しなければならないと思いますが、いかがですか。
  101. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 まず、地位協定を変えるということは今考えておりません。それから、現行の地位協定の枠組みの中でも従来からの努力があるわけでございまして、これを、この枠組みの中で何ができるかということを考えてまいりたいと思います。もちろん、改めて申すまでもありません、特に先生に改めて申し上げるまでもございませんけれども、労務費につきまして特別協定をお願いしているということは別にございましたが、現在具体的にその種のことを考えているところではございません。
  102. 上田哲

    上田(哲)委員 非常に重大な発言――はっきりしておきますよ、いいですか。  思いやり予算については今聞いていない。八月二十四日には米会計検査院が報告書を出している。それから同日、米下院軍事委員会の日米費用分担小委員会のパット・シュローダー議員が具体的な内容を示して、年間六億ドルの経費負担増を求めている。これは具体的に項目が出ています。時間を省きましょう。これは具体的な項目を挙げて六億ドルの問題が出ています。拡大解釈をすれば、ここまでは思いやり予算でやるのかもしれぬ。どうなんですか。
  103. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 パット・シュローターとそれから会計検査院の報告がそれぞれ費用分担について言及していること、あるいは具体的に挙げていることは承知しておりますけれども、何分米側からの具体的要請があるわけではございませんので、今地位協定の枠組みの中でこれを検討しているということはございません。
  104. 上田哲

    上田(哲)委員 いいですか、日本外交の権威にかけてしっかり答えていただきたい。日本の財政負担にかかわる問題をアメリカ側が上下両院本会議で圧倒的に決定し、大統領にその要請、具体的な指示をしているのですよ。この問題について、日本に外交が存在するならば、承っておりません、知りません、調べてもいませんでは済まぬでしょう。そんないいかげんな議論をしてもらっては困る。向こう側からどんなデータが届いているかどうかは別問題だというのなら、日本側のしっかりした見解を聞くのは当然な私たちの権利です。いいですね。  そうすると、シュローダーの言っている六億ドルまではまあいいとしよう。いいというのは認めるというのじゃないですよ、次元を別にしよう。少なくとも、今上下両院が言っている在日米軍駐留費の全額を、人件費は別だが、全部持てというようなことは、地位協定を改定しなければ、当然な安保条約の解釈論上の問題からいってもあり得ないだろうと言っているのですが、どうなんですか。
  105. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 それを受けるか受けないかということの前に、米側から、米国の議会におきまして論じられているもろもろの項目の中には、検討すれば現在の地位協定上持てるものもございましょうし、持てないものもあろうかと思います。また、その判断をしかねるような分野にあるものもあらうかと存じます。
  106. 上田哲

    上田(哲)委員 分けて聞きましょう。そうすると、全部をやろうとするならば地位協定の改定をしなければできないということになったわけですね。
  107. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 まず、全部を受けるというようなことを考えたことがございませんし、それからもう一つ、先生が御指摘になりました法案もいろいろなことを挙げておりますけれども、それを行政府に対して勧告はいたしておりますけれども、要求しているわけではない。したがいまして、私どもがそれを全部受けるという、受けるか受けないかというところにはならないと思うのです。  最後に、おっしゃられましたように日本政府と話をするようにということを申しておりますけれども、それは先生まさにおっしゃられましたように、日本が米国が在日米軍のために使っている費用に見合うような国際的貢献を行うようにということでございまして、その表現自体、日本を拘束しようというふうになっているというようには私ども考えていないのでございます。
  108. 上田哲

    上田(哲)委員 話をずらさないでもらいたい。だめだ、そんなに話をずらしたら。話をずらさないためにくぎを一本打っておくけれども、大統領は本法案成立後直ちに日本側と交渉に入らなければならない、あるいは、一九九一年度までにというようなことも全部書いてあるのだ。外交というのが存在するならばこのことに無関心でいられるわけがないでしょう。全然向こうから何も言ってこないから言ってくるまでは検討もしないなんて、そんなばかなことで外交が存在しますか。外務省が要らなくなるじゃないか。もっとまじめな議論をしましょう。  いいですか。あなたの言った言葉について今話をしている。地位協定を改定しなくてもできるものと改定しなければできないものがあるとわかったというのだから、全部やろうとするならば地位協定を改定しなければできないということになるだろうということになりますね。地位協定を改定しなければアメリカが議決をしたものを受け入れることはできないということになるのでしょう。そうでないというのなら、地位協定を改定しない、例えば特別協定などによってやろうということを考えているのですか。
  109. 福田博

    ○福田(博)政府委員 在日米軍経費をすべて持てという話が仮にあるといたしまして、それが現行の地位協定、あるいは地位協定とともに今特別協定が労務費についてはございますが、それの範囲内で全部日本側が今のままで持つことができるか、そういう御質問であれば、それはできないということでございます。
  110. 上田哲

    上田(哲)委員 そこははっきりした。そこで、さっき有馬さん、地位協定の改定は考えていないと言いましたね。そうすると、論理的には地位協定の改定をしなければできない。しかし地位協定の改定はしない、ということはアメリカの要求は受けないということになるのだが、それでいいのですか、大臣。
  111. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 全部を受けるか受けないかという選択ではございませんで、私どもとして自主的にさらに何ができるかということ、それについて自主的に努力していくということでございます。それは、今まさに現行地位協定の枠組みの中で何ができるかということを今考えているわけでございます。
  112. 上田哲

    上田(哲)委員 地位協定の中でどれだけできるかというところにはめ込めるならば、できるだけ部分的にでもこたえたいと言っているように聞こえるのです。それはちょっと横に置いておきます。  言葉じりをとらえているのではなくて必死にあなたの言葉にすがって物を聞いているのだが、受け入れられるものも受け入れられないものもある、あるいは地位協定の中にはまるものもはまらないものもあるというのである以上、向こうが要求しているものは何であるかということをあなた方は考えているということだね。そうでなければこの言葉はおかしくなる。もし考えていないというのなら、一刻も早く、アメリカの上下両院でこれだけはっきり法案を決めているのだから、いろんなデータが非公式には出ているのだから、これに対して、さまざまな公的会議も持たれながら、日米関係を基軸とする日本外交が全然向こうの言うことを、何を考えているか知らずにおりますということは許されないでしょう。即刻調べる、情報をとる、地位協定は改定しないという原則は崩れないように思うけれどもそこをどうなのかということを検討するぐらいのことは当然でしょう。  絞って聞くが、すぐデータをとる、相手方の要求の中身は何かということをしっかりやるということを明確にしてください。
  113. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 繰り返して申しわけございませんけれども、政府間の話し合いの中では具体的にこの項目をということは申してきていないのでございます。そして、議会の論議の中でさまざまな具体的な項目が言及されているということは承知いたしております。それから、法律の中に収れんされていった表現というものも承知いたしておりますけれども、私どもが考えておりますのは、あくまでも私どもが、もちろん米側から従来からさまざまな話を聞いておりますけれども、それを我が方の考え方で判断していく、こういうことでございます。
  114. 上田哲

    上田(哲)委員 議会でもいろいろ議論されているところは承っているというふうにおっしゃったから、急いでアメリカ側が法案で確定をした要求の中身というものはどういうものなのかということをとる、調査するということはこれは当然な外交努力でしょう。この努力はすぐやってもらいたい。大臣、それだけはお答えいただきたい。
  115. 中山太郎

    ○中山国務大臣 極めて重要な問題でございますので、早急に調査をさせます。
  116. 上田哲

    上田(哲)委員 わかりました。私は、そうであるとすれば怠慢だと思っています。  続けてお伺いをしますが、私の調べるところ、在日米軍駐留費、つまり駐留軍の人件費を除く総経費というものを受け入れ国が負担するということは、東西古今にわたってない。このような事態が発生するとすれば世界に歴史上かつてない形ができる、私はそのように先例を調べておりますが、いかがですか。
  117. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 私は歴史の先例をつまびらかにいたしておりませんけれども、正面装備から軍人の人件費から全部丸ごと見ているというのは、少なくとも第二次世界大戦後の集団安全保障体制というものができてからはないと存じます。
  118. 上田哲

    上田(哲)委員 そのとおりだと思います。これは歴史的事実です。大臣、ひとつ御決意を承りたいのだが、すぐ調査していただける、これは当然のことだと思いますが、古今東西と言ったら言い過ぎになるかもしれないが、今北米局長が言われたように、少なくとも私たちの視野の限りこういう例はない、こういうものを受け入れるということは大変おかしなことであるし、私はその意味で、地位協定を改定しなければできないものについてはやはりやるべきではないというのが日本のあり方ではないかと思うので、ひとつ大臣の御見解を承りたいと思います。
  119. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 技術的なところでございますので……。  先生がおっしゃられましたのは、まさに軍人の人件費、正面装備等々全部を含めて持っているというケースはない、こういうことでございましたね。その場合には……
  120. 上田哲

    上田(哲)委員 もういいから、時間がないから大臣に聞きたい。大臣どうぞ。
  121. 中山太郎

    ○中山国務大臣 事は我が国の安全保障の問題に関することでございますので、まだ私にそのようなお話も参っておりませんし、これからのいろいろな経過を通じて、私どもとしては、現在日本にあります法律、またアメリカ側の考え方、いろいろなものを考えながらこれから考えを進めてまいりたいと思っております。
  122. 上田哲

    上田(哲)委員 よくわからないのですが、技術論的とおっしゃったから、もう一遍大臣、このことのために地位協定の改定はしない、事務当局はそう言われたのだが、それでよろしいですね。
  123. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今局長が申しましたことは、まだ大臣の同意を得ずに言っている事務的な段階でございまして、外務大臣といたしましては、正式にアメリカ政府から直接話がありました時点でいろいろと協議をしなければならない、その上で、どのように判断するかということはその時点で政府として考え方を調整させていただきたいと思います。
  124. 上田哲

    上田(哲)委員 重ねてお伺いしますが、そうすると、地位協定の改定もあり得るのですか。
  125. 中山太郎

    ○中山国務大臣 あるとかないとかということはまだ申す段階ではございません。
  126. 上田哲

    上田(哲)委員 これは大変なことですから。――これが明快だと言う人はどうも日本語が理解できない部類だと思いますが、大変なことですよ。日本の立場としても日米関係としてもただごとではないのですよ。私はアメリカのためにも、こういうことをもし日本に押しつければアメリカ軍を全部日本が丸抱えにする、そうすればアメリカ軍は日本の傭兵となるではありませんか。まさにアメリカ軍の、アメリカ国の名誉にかけても、私はこういうことはあってはならぬ外交のあり方だと思いますよ。そのことをひとつ日米関係の外交論としてしっかり言っていただきたいというふうに思います。これは、今ごろまだこんな議論しかしていないということは非常に問題があると私は思います。  しかし、時間が参りましたから、最後に通産大臣、非常に懸念される今の日米摩擦、軍事と貿易のリンケージということが問題になっていまして、三〇一条の問題も含めてその辺のところが及び腰にならざるを得ないのです。  私は時間がないから一言伺うだけでとどめたいと思うのだが、それほどまでに例えば腰をかがめなければ、つまり具体的に言うと、こういう古今東西あり得ないような軍事要求、経費要求に対してでも、はっきりノーと言えない、ぐじゅぐじゅしていなければ、及び腰でなければ日米経済関係というのは成り立たないのか、私はその点の認識だけ一言承りたいと思います。
  127. 松永光

    ○松永国務大臣 突然の御質問であったわけでありますが、現在の日本とアメリカとの経済関係、日本側の大変な技術革新の努力やあるいはまた経済の力の上昇に伴って、技術力の面でもある程度日本がアメリカに追いついてきつつある。経済の力でも、少なくとも輸出輸入の関係においては、日本の方がアメリカに対して五百億ドルの黒字、アメリカがその同額の赤字という状況になっておるわけでありまして、経済の力でも相当日本がアメリカに追いついてきたという状況にあると思います。それが現在の貿易のインバランスの背景にあると思うのであります。  しかし、日本という国は少資源国でありますから、あくまでも世界で自由貿易体制が維持されてこそ存立できるし、また発展をできるという国でありますので、貿易インバランスの問題は誠意を持ってその縮減に努力して、そうして自由貿易体制が維持され、拡大されるその中で、日本の発展を図っていくという考え方で進んでいかなければならぬ、こういうふうに思っております。  先ほど三〇一条の話がございましたけれども、私どもとしては、その条項はガットの精神に反する条項であるので、制裁を前提とした交渉には応じないという立場で今後とも対応していきたい、こう考えておるわけであります。
  128. 上田哲

    上田(哲)委員 私が伺いたかったのは、いわゆるリンケージ、貿易と軍事のその兼ね合いでもって、向こうの軍事要求、軍事的経費要求にも応じなければ、日米経済摩擦はうまくいかないというふうに御認識かどうかということを言いたかったわけです。  経企庁長官、お待ちいただいているので一言だけお伺いしたいと思うのですが、――いやいや、ほかの問題なんで、今後の議論のために一言。  その前に、ちょっと済まないけれども、区切らないと悪いので、通産大臣にその一言だけ。
  129. 松永光

    ○松永国務大臣 私はそうは考えておりません。
  130. 上田哲

    上田(哲)委員 経企庁長官、結構だとおっしゃるのだが、一言だけ。  いわゆる中期防というのが、十八兆四千億円の軍事費というのが、ずっとここまで来まして、これが完遂されるわけであります。今度は四兆円を超える新年度概算要求が出ているわけでありまして、その後また五年刻みの新しい中期防というのが策定されるわけでありまして、これは当然な形として二十兆を超え、二十五兆に達することになるだろうと言われているわけであります。  きょうは一言だけ御認識を承っておきたいのでありますが、これであるいは御存じの「防衛計画の大綱」というのができ上がっているわけなんですが、そういうふうな世に言われる軍事大国化、世界で二番目とミリタリーバランスも言っているわけでありますが、そういう中で今後策定さるべき日本の軍事費の中期計画二十五兆と言われるとするならば、これは一体今後の日本経済成長の中で妥当な数字となり得るのかどうか、その辺の御認識を承っておきたいと思います。
  131. 勝村坦郎

    ○勝村政府委員 突然のお尋ねでございまして私も御答弁の準備がございませんけれども、先生御存じのとおり日本経済全体の中での防衛費の占めます比率というのは一%程度ということでございましてこれまでも日本経済成長にとって日本の防衛費が経済成長の阻害になるというような状況では全くございませんでした。基本的に軍事大国にならないという基本路線を今後とも守りながら経済の長期的な運営をしていくということから申しまして、そういうような経済成長の阻害になるというふうには全く考えておりません。
  132. 上田哲

    上田(哲)委員 終わります。
  133. 中村靖

    中村委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十一分休憩      ────◇─────     午後一時一分開議
  134. 中村靖

    中村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。渡部行雄君。
  135. 渡部行雄

    渡部(行)委員 まず、外務省にお尋ねいたしますが、昭和六十一年度決算において特別指摘事項はなかったようでございますが、その内容を見ますと、不用残等繰越金が非常に大きいと思うわけでございます。これはどういう理由によるものか。しかも、当時はマイナスシーリング等によって大変予算が厳しい状況にあったはずでございますが、それなのにこんなに残すというのはどんな理由によるのか、ちょっと理解に苦しむわけですが、その辺に対する御説明をお願いしたいと思います。
  136. 佐藤嘉恭

    ○佐藤(嘉)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま渡部委員御指摘のありました六十一年度決算におきます外務省所管繰越額の件についてのお尋ねでございました。八百七十七億円という額になりましたが、その内訳経済開発等援助費が八百七十四億円、それから在外公館施設費ということで三億円というふうに御報告申し上げておるわけでございます。  なぜこういうふうな状況になったかという御質問であったかと理解いたしましたが、経済開発等援助費につきましては、相手国との交渉の関係でございますとか、あるいは相手国の経済開発計画の事情等の面におきまして、この事業の実施に不測の日数を要したため、この年度内に支出を終わらなかったものでございます。かような経緯があったわけでございますが、その次の年度にはほぼ一〇〇%執行しているということを付言させていただきたいと思います。また、在外公館施設費の繰り越しにつきましては、相手国の行政当局等の許認可等のおくれといった相手国の事情により、当初の計画どおり遂行することが不可能になったという事情がございました。そういうような背景のもとに、年度内の支出を完了することができなかったものでございます。  一言で申し上げますと、経済開発等援助費につきましても、また在外公館施設費につきましても、相手国の事情との関係でかような状況になりましたことを御理解いただきたいと思います。
  137. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、これはこちらの問題ではなくて相手国の事情でこうなった、こういうふうに理解していいわけですね。
  138. 佐藤嘉恭

    ○佐藤(嘉)政府委員 そのとおりでございます。
  139. 渡部行雄

    渡部(行)委員 次には外務大臣にお伺いいたしますが、最近、在外公館の事務所、公邸及び職員宿舎などの整備拡充並びに給与、手当等についていろいろと改善が進められておるようでございますが、私から見ますと、これでもまだまだ不十分だと思うわけでございます。  そこで、現在の世界の情勢を考えますときに、異常な速度で国際化が進んでおるわけで、政治、経済、文化、科学においても、もはやグローバルな考え方に立たなければ問題を推進あるいは解決していくことは難しい、そういう状況に立ち至っていると思うわけでございます。しかも日本は、世界の経済大国としてその実力にふさわしい外交陣容というか外交体制を確立して、全人類から尊敬と親しみを持って日本を理解し、また受け入れられるようにすべきであると考えるわけですが、この点について大臣はどのようにお考えですか、お聞かせ願いたいと思います。
  140. 中山太郎

    ○中山国務大臣 輸送手段が非常に発達をしてまいりまして、人の行き来がかつて考えられなかったほどのスピードで行われるようなことになっております。そういう中で、外務省の人員は申すに及ばず海外諸国と比べると極めて弱いというふうに認識をいたしておりまして、ぜひともこの国際化時代に備えた、外務省としては必要な人員の整備をお願いしたい、このように考えております。
  141. 渡部行雄

    渡部(行)委員 前々から外務省では、定員の増強なりあるいは在外公館の拡充なり、いろいろそれを計画的にうたっておったわけですが、いつの間にかその計画が叫ばれないで、いまだに私は先進国というふうにはなっていないのではないか。そういう点についてはどういうふうにお考えですか。
  142. 佐藤嘉恭

    ○佐藤(嘉)政府委員 定員の増強につきまして御理解のあるお立場を御表明になったことにつきまして、大変感謝を申し上げるわけでございますが、私どもといたしましては、委員ただいま御指摘のとおり、あるいは外務大臣から御答弁申し上げましたとおり、この国際社会の急速な展開の中で日本の外交が十分な機能を果たしていくためには、在外公館整備あるいは定員の増強といったことを予算要求の最も大きな柱とさせていただいているわけでございます。かねがね、五千人体制といったような計画をもとに査定当局に要請をしてまいりました。私どもとしては、現在到達しつつある四千人を超えたスタッフの数ではありますけれども、まだまだ諸外国に比べて不十分というふうに申し上げざるを得ないわけでございます。そういう状況のもとで、私どもも引き続き、従来抱いていた計画あるいはそれ以上の目標を掲げまして、この定員の増強、強化ということをお願いを申し上げてきたわけでございます。幸いに、財政当局あるいは国会の御理解も得ながら漸次増大をしているということは感謝を申し上げているわけでございますが、私どもとしてはなお一層の努力をこの問題に傾けたいという考えでございます。  また、在外公館の規模の拡大ということにつきましても、これだけ多くの独立国がこの世界に存在するわけでございます。我々の情報活動、あるいは非常に数多く我が同胞が海外に出張される、旅行される、あるいは拠点を築かれるという状況がとみに顕著でございますから、できるだけ多くの在外公館の開設を考えていかなければならないというふうに思っております。なかなか、相手国の状況等もありまして容易な面もありませんけれども、私どもとしては、一層この公館の新設等につきましても努力を払ってまいりたい、かように考えるわけでございます。
  143. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それでは、日本の外交陣容というか体制というか、それはこれから五年あるいは十年というふうに考えた場合、一体イギリス並みにするには何年くらいでなるのですか。
  144. 佐藤嘉恭

    ○佐藤(嘉)政府委員 諸外国との比較でございますが、私ども手元にあります資料によりますと、イギリスが約八千二百名の外務省員を擁しているわけでございます。私どもの現在の定員数が平成元年度におきまして四千二百三十三名という規模でございますから、イギリス並みということを目標に掲げますと、なお相当数の年月がかかると申し上げざるを得ないかと思います。
  145. 渡部行雄

    渡部(行)委員 ちょっと聞こえなかったのですが、何年ですか。
  146. 佐藤嘉恭

    ○佐藤(嘉)政府委員 何年と詳しい年数をはじき出す根拠はございませんけれども、私どものただいま続けております努力、つまり厳しいこの財政状況のもとにおきまして外務省定員について格段の御配慮を賜っているわけでございますけれども、そういう状況を考えてみますと、この八千百名あるいは八千二百名といったところへ到達するのは相当の年月が必要かというふうに思います。
  147. 渡部行雄

    渡部(行)委員 この財政厳しい折からというお言葉がありましたが、一体イギリスと日本の財政でどちらが厳しいのでしょうか。これはもちろん歴史的な過程もございますけれども、しかし、今日本が財政が厳しいから外交はこの程度で仕方がないのだという認識であるとすれば、私は大変な間違いだと思いますよ。むしろ、世界の情勢を見たときに、今日ほど変化の多いときはなかろうと思うのです。まさに地球的規模で変化が起こっておる。そして、日本はその中で一番金持ち国と言われておる、もちろんいろいろな問題はあっても。そうした場合に、世界を本当に一つのものにして、そして人間の住みよい、幸せな地球にしていくには、相当の強力なイニシアチブと指導力というものを持たなければならないと思うのです。それを日本が本当に自覚しておるとするならば、まずこのODAで一兆数千億もぽんと使うならば、その前にみずからをどうして正さないのか、みずからをどうして充実しないのか、私はそう言いたいのですよ。  今、よそのうちに行くのに、結婚式や何かにで呼ばれて行くときに、顔に泥を塗って行く人がおりますか、あるいは普通の服を着て行く人がおりますか。やはりそれぞれきれいにして、相手に好感を持たれるようにしてみんな行くと思うのですよ、パーティーに行くにしても。ところが、日本の外交の、いわゆる日本国の窓口であるこの在外公館なんかはまだまだ改善が不十分である。これはまさに顔も洗わないで行ったのと変わらないと私は思うのですよ。そういう点で、この外交体制の確立という面ではどのように考えておられますか。これは大臣、ひとつはっきりした御答弁をお願いします。
  148. 中山太郎

    ○中山国務大臣 大変御理解のあるお話でございます。私は大臣として、先生のお話、御質問にお答えする際に、まず改めて、深い御理解をいただいていることに敬意を表したいと思います。  なお、御案内のように行政改革という大きな目標がございますし、総定員法という枠がはめられておりまして、外交官といえども、急速に社会の変化に対応できるだけの数を充実していくということは、現実問題としてなかなか困難でございますけれども、先生の御指摘の点を踏まえて、これから、政府の中におきましてもまた国会におきましても御理解をちょうだいした上で、外務省の要員の確保に努力をしてまいりたいと考えております。
  149. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、本当に、私はいつも、その行政改革で全体的に締めつけがあってどうにもならないというお答えを聞くと、いかにも官僚的な答えだな、こういうふうに感じるのですよ。大体、今自分が川に落ちておぼれそうになった、そういう場合に、恥ずかしいから声を立てないで、声を立てるなら死んでいった方がいい、こういうような精神構造と変わらないんじゃないか、こう思うのです。だから、何が日本にとって今重要なのか、何が必要なのか、このことを真剣に考えて、そしてそれを重点としてまずやる、そしてそれが終わったら次に移行していく。物事には順序があるのです。ところが、その順序を無視して全部適当にやっていったら、皆適当なものしかできないのですよ。  だから、そういう点で、今度はすばらしい外務大臣ができたと私は思っているのです。とてもテレビなんかで見ていると、あれ、ゴルバチョフが出てきたのかと思うくらい、間違うくらい私もちょっと目をみはるのですが、ひとつゴルバチョフくらいまでとは言わなくとも、それに近いくらいの指導力を発揮していただきたいと思います。  次に、ODAの予算についてお伺いいたしますが、これが年々非常に拡大しておることは私も認めております。日本の政府開発援助の金額は、今や、ことしでも世界一になるだろうと見通しがなされているわけですが、それなのになぜか外国から厳しい批判が絶えない、これは一体どこに原因しているのか。  私は、このODAというやり方は、やはりその対象国から尊敬され、親しまれ、そしてありがたがられる、こういう実際の効果をもたらすものでなければ、これは池にお金を捨てるようなものじゃないか、こういうふうに思うのですが、その辺については大臣はどのようにお考えですか。
  150. 中山太郎

    ○中山国務大臣 御指摘のように、ODAの対象国は発展途上国がほとんどでございます。そういう中で、相手国の行政力といいますか、行政機関の力も我々先進国と比べるとはるかに低い水準にございますし、プロジェクト一つにつきましても相手国政府の対応ぶりというものに一つのウイークポイントがあるのではないか。また、それに対して我が国の方も、協力をする場合に相手側との十分な協力をして調査をする、そしてプログラムを組むというような作業をしっかりとやっていかなければならない。そういうことによって相手の国のニーズを満たしていくという考え方を立てて、これからも努力をしていかなければならないと思っております。  いろいろ先生の御指摘のございました点も十分踏まえて、私どもはこれから絶えず反省しながら進んでいかなければならないと考えております。
  151. 渡部行雄

    渡部(行)委員 日本はエコノミックアニマルと言われておるように、援助という美しいのし紙に包んでお金をやるわけですが、しかしそれは本当に差し上げるのではなくて、そこに利息をつけたりあるいは仕事を約束させたりいろいろして、ひもつきが多過ぎるのですね。そして無償援助というのが非常に少ないのですよ。これは外国のODA予算と比較してみれば歴然としているわけです。ですから、今根本的にこのODAの中身について考え直さないと日本人の血の出るような税金が本当にむだ遣いされてしまう、こういうふうに私は思うのです。  実際に、私はこの前のマルコス疑惑のときはフィリピンを調査し、そして今回はインドネシア、マレーシア、シンガポールというふうに見てきましたが、やはりいろいろ問題があるわけです。例えて言うと、病院一つとっても、ジャカルタにある病院は液体窒素を使わなければそれを医療機械として使うことができない。ところが向こうでは液体窒素が余りにも高くて使えない、そこでせっかくの何億という機械が遊んでおる。こういうような状態で、やはり相手に与えたならばそれが十分使われて、そして相手の国民が喜ぶ、こういうところまで点検をする必要があるのではないか。そして、そういういろいろな諸外国の中から出てくる批判や問題をみんなで検討して、どういうふうにこれを克服していくかということでその方針を考えるべきだと思うのです。そういう点で、私は今日のODAというものは根本的に力の入れ方を考え直さなければならないだろう、こういうふうに思いますが、大臣はいかがでしょうか。
  152. 中山太郎

    ○中山国務大臣 外務省としても一生懸命今までODAについて努力をしてきておりますが、中にはそのような問題も多々あろうかというふうに私も認識をしておりまして、御意見を踏まえて今後とも十分努力をしてまいりたいと考えております。
  153. 渡部行雄

    渡部(行)委員 具体的な例を挙げるともう本当にたくさんあって、時間は二時間か三時間くらいないと言い尽くせないわけですから、きょうは時間がありませんから例は挙げません。  そこで次に、今日の世界情勢の変化とその対応について一体大臣はどのように考えておられるのか。言うまでもなく、ゴルバチョフ・レーガン会談によって中距離核ミサイルの全廃条約が締結されてから、世界情勢は大きく変わってきているわけでございます。そういう中でソ連は、ゴルバチョフのグラスノスチあるいはペレストロイカの推進によって、今までのソ連という国家の体制的な変化まで起こしつつある、こういうふうに私は認識しているのです。しかも東欧諸国、東側と言われる国々も皆相当な歴史的な変化を遂げようとしておるし、それは皆民主主義という問題に進んで取り組まなければならない、こういう気持ちが国民的な一つの規模で燃え上がっていると言っても過言ではなかろうと思うのです。しかも、きのうの夕刊で、ソ連のプリマコフ議長が、今のワルシャワ条約機構加盟国の中でもし同盟から脱退したいという国があればあえてこれを阻止しない、こういう言明すらしておるわけでございます。そうすると、ソ連とアメリカあるいはソ連とヨーロッパ、この関係というものは今までのような形で見ているわけにはまいらないと思うのです。その辺を考えると、これからどういうソ連に対する接近の仕方をしていくのかあるいは位置づけをしていくのか。しかも、最近イタリーはソ連との合弁会社をどんどんつくって、これは大変な大きな事業に着手しようとしておるわけです、数字等は言いませんが。そういう世界の流れに対して日本はどのようにこれから基本的に外交の展開を考えているのか、その点についてお伺いいたします。
  154. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先生御指摘のように、国際情勢は、百年単位というかあるいは五十年単位と申しますか、第二次世界大戦が終わってからちょうど四十五年ばかりたつわけでありますが、大変大きな歴史的な変革の時代に入ったというふうに認識をいたしております。  特に、極めて厳しい対立状態であった米ソの軍事力を背景とした対決状態から、やがて、米ソ双方とも膨大な軍事費の負担というものが恐らく背景にあったのでございましょう、ソビエト、ロシアの方からは社会的に経済的な不安が起こってきた、つまり国民生活を支えるべき経済活動に破綻が出てきた。こういう状態の中でゴルバチョフ書記長が登場されて、ソ連ではペレストロイカあるいはグラスノスチというようないわゆる改革が勇気を持って進められ始めたと認識をいたしております。そういう中で米ソの関係は対立から対話、そして現在は協力の状態が生まれつつある。こういう中で、率直に申し上げて、ソビエト政府はゴルバチョフを中心に今大変な苦労が続いていると思います。憲法の改正あるいは新しいペレストロイカを推進するための人事の異動、またそれに抵抗する保守的なグループというようなものがありますし、片っ方ではグラスノスチによって民族運動が多発をする。  また東ヨーロッパでは、ヤルタ会談以降のいわゆる線引きによって社会主義圏に入ったこれらの国々が、いわゆる共産党指導のもとでの経済政策が大矢敗を起こしてきて、やはり経済が崩壊する。その最も顕著なものがポーランドであろうと私は認識をいたしております。そういう中で、東側では一人当たりのGNPといいますか国民所得が最も高かった東ドイツですら、何万人という国民がハンガリーを通って西ドイツへ移動を始める。それに対して、かつてはベルリンの壁と言われたあのような厳しい出国管理が、いわゆる武器を使わないで黙認されるという時代が起こってきた。一つの大きな変革の時代に入ってまいったと思っております。  そういう中で、西側の諸国は、このポーランド、ハンガリーへの支援をどうするかということで、日本も含めてサミット加盟国が真剣に現在協議を重ねている段階でございまして、日本といたしましても、ポーランド、ハンガリーへの支援を行うことが東西緊張の緩和に役立つものであろうという考え方で、関係各国との協議を事務レベルでやっておる現状だと私は認識をいたしております。  一方、日ソの関係でございますが、先生もよく御案内のように、北方領土問題の解決がなかなか困難な時代が戦後四十数年続いてまいったわけであります。先生もかつてシベリアに抑留されて御苦労された経験をお持ちでございますけれども、そういう中で日ソ関係をこれからどう展開していくかというのが日本にとっても極めて大きな課題でございますが、ソビエトがどういうふうに日本に対して考え方を整えるかということは、現在までなかなか確固たる見通しは立ちにくい状態でございました。しかし、一昨年でございましたか、日ソの間に、宇野外相がモスクワを訪問された時点から、いわゆる平和条約作業グループというようなものをつくって、日ソ間の平和条約締結へ向けての事務レベルの協議をやったらどうかというような話し合いから始まった作業が進んでおります。また先般、ニューヨークにおきます日ソ外相会談におきまして、シェワルナゼ外務大臣は、明年の三月中旬日本を訪問して日ソ外相会談を開く、こういうことで同意を見たわけでございますし、また、来月の十二日からはヤコブレフ氏を団長とするソ連最高会議の方々が来日をされて、国会と各派各党の方々と御懇談をいただくことに相なってまいりました。また、十二月には日ソ平和条約の作業グループの会合が開催される予定になっております。来年三月中旬にシェワルナゼ外務大臣が日本に来られた後、今度は我が国外務大臣がソ連を訪問する、そして明後年、一九九一年にゴルバチョフ書記長が日本を訪問される、このようなかつて考えられなかったような一つの日ソ間の話し合いの時期、あるいは舞台というものが一応日ソ間で合意ができたということでございます。  このような状況の中で、米ソの対話あるいは協力の関係が出てきたこと、また東ヨーロッパの変化、あるいはワルシャワ条約機構から脱退しても大して非難をしないというような発言、あるいは西ヨーロッパの統合、こういうようないわゆる国際的な変化の中で日ソの関係というものを何とか改善をしてまいりたい、そして一日も早く問題を解決して平和条約の締結の日を迎えたいというのが私の率直な意見でございます。  膠着した外交関係というものは国際情勢の変化あるいは相手の国の国内政治の変化というものがなければ変化はなかなか起こしにくい、こういう時代が続いておったのでございますが、今大きな国際的な変化並びにソ連の国内における政治改革というものの中で、新しい日ソ関係の構築というものの可能性が出てきたというふうに私は認識をいたしております。
  155. 渡部行雄

    渡部(行)委員 時間の関係で先に進みます。  次に、通産省にお伺いいたしますが、日本のエネルギー事情とこれに対する今後の対策についてお伺いしたいと思います。  すなわち、今世界の石油需要がふえ続けてその供給能力に近づきつつあると、最近のアエラですか、それに書かれておりますが、一九八六年の原油価格の暴落以来、節約意識が薄れてしまったのではないかと考えられる節があるのであります。過去二度にわたる石油ショックのときは、代替エネルギーの開発と省エネルギーの推進が大きく叫ばれて、我が国でも新エネルギーの開発に大変な力を入れてきたわけでございますが、昭和六十年度をピークに六十一年度以降どんどんこれが下がってきておりますが、これは新エネルギーに対する長期戦略がない証拠だと思うわけであります。予算というのは言ってみればその状況をはかるときのバロメーターでもあるわけですから、そういう点で私は非常に心配をしておるわけであります。  このような状況を見てみますと、何か日本の政策というのは目先を追うだけで長期展望に立った戦略的な一つの物の考え方、こういうものが欠けているのではないだろうか、このような状態のままもし進んでいくならば、やがて取り返しのつかない状況に立ち至るであろうと思うわけでございます。しかも六十三年には、世界の需要量がどんどんふえる中で日本は世界全体の九・六%を占める結果になったということでございますから、このような状態には速やかに対処すべきであろうと思います。第三次石油ショックなどに見舞われないうちに、今こそ新エネルギー開発に全力を傾けて、そして世界の激しい経済競争の中でも新しいエネルギーをどんどんと輸出できる、しかもクリーンなエネルギーを輸出できる、そういう体制を急ぐべきでないかと思うわけでございますが、大臣の御所見をお伺いいたします。
  156. 山本雅司

    ○山本(雅)政府委員 我が国のエネルギー状況は、ただいま先生御指摘のように最近大変変わってきております。これは世界的にもエネルギー需要が伸びてきておりまして、一昨年が三%を越したところでございます。昨年は三・七%というように着実に増加してきております。また、我が国の需要もこのところ四・八%あるいは五・七%と、過去二年大変大きな伸びをしておるわけでございます。  したがいまして、このような形でまいりますと、たまたま一昨年につくりました長期エネルギー需給見通しでは需要が年平均一・三%の伸びと、つくったばかりでございますが、そのつくった直後からこのように五%を超えるような伸びになってきておりますから、これはやはり長期的にこの際再度検討してみなければならないということで、総合エネルギー調査会を十四年ぶりに開いて、来年春をめどに検討をお願いしている段階でございます。特にその中でも、今御指摘のように新エネルギー、いわゆる石油に代替するクリーンなエネルギー開発というのは、非常に重要な地位を占めるものと考えております。  ただ、いずれにいたしましても非常に技術的には難しい分野が多いわけでございまして、エネルギーの中で本当に大きな地位を占めることができるかどうかは難しいところはございますけれども、着実に技術開発を進めなければならないということを考えております。  ただ、最近の予算の状況は、今御指摘がございましたように、この一、二年やや伸び悩みと申しますか、額としては下がってきておりますけれども、私どもといたしましては、今後長期的なエネルギー需給をにらみながら、さらには技術開発の重要性というのを念頭に置いて、予算面においても原資の許す範囲においてできるだけの努力をしてまいりたい、このように考えている次第でございます。
  157. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、科学技術庁にお聞きしますが、この新エネルギーの分野で、例えば核融合とかあるいは燃料電池あるいは太陽エネルギー、超電導、そういうもろもろの問題で、今世界的なレベルで一体日本はどういう位置づけがされておるのか、それからその実用化への見通しはどうなっているのか、その辺をお聞かせ願いたいと思います。
  158. 石田寛久

    ○石田政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘になりました諸技術分野につきましては、いずれも技術的には我が国は世界の最先端にあるものと認識いたしておる次第でございます。特に先生おっしゃいました中で、核融合につきましては我が国はアメリカ、ヨーロッパ及び一部ソ連と並びまして世界最先端にあるわけでございます。ただ、その核融合でも技術的な実現は来世紀半ばということでございます。  新エネルギー、いずれもかなり困難な技術開発課題はあるわけでございますが、私ども各省庁協力いたしまして研究開発に取り組んでおりまして、開発の実を上げたい、かように考えておるところでございます。
  159. 渡部行雄

    渡部(行)委員 非常に困難な状況にあるからこそ、もっとたくさん予算をとって科学技術面を強化しなければならないと思うのですよ。私は、日本は科学技術立国でなければやがて生きていけない、そういうことを考えた場合に、こういう中途半端な予算で満足しておるようではどうしようもないのではないか、こういうふうに思うのです。そこで、これからの新しい政策というものをどのように用意してあるのか、その辺もあわせてお聞きしたいと思います。
  160. 石田寛久

    ○石田政府委員 お答え申し上げます。  私どもの新しい政策といたしましては、何と申しましても、現在、エネルギー問題の解決、あるいはそれに伴う地球規模の環境問題の解決ということに関連いたしました国際社会への貢献ということが大きな課題でございます。  それから、今先生が御指摘のとおりに、諸問題の解決の基礎は科学技術でございますので、創造的、基礎的研究の推進を大きな課題と思っております。それ以外に、科学技術の基盤を整備すること、あるいは科学技術全体を総合的に進めていくこと等々でございまして、もちろん新エネルギー、原子力、宇宙、海洋等多岐にわたります分野につきましても強力に施策を展開していきたい、かように考えているところでございます。
  161. 渡部行雄

    渡部(行)委員 最後にひとつ通産大臣にお伺いします。  これはきょうの新聞ですが、環境庁と通産省が激しい対立をしているということでございますが、「「先進国の二酸化炭素排出量を現状レベルで凍結」との主催国オランダの宣言案に環境庁が賛意を示しているのに対し、通産省は「世界経済が超低成長になることを強いるもの」と強硬に反対している。」こういう記事が載っております。これをずっと読めばもっとわかりやすいのですが、ここで私が言いたいのは、今この二酸化炭素、これは地球の温暖化現象なりいろいろと問題が出て一国では到底解決できない、これは世界全体が本当に連帯感を持って対処しなければ大変な事態になると思うわけですが、環境庁は当然、世界の環境、地球の環境、そして日本の環境を考えてこれに賛成したと思うのです。ところが通産省は、経済面だけからこの問題を見詰めて、そしてそれに反対するというのはどういう精神状態なのか。私は情けなくて、日本の政府の中にこんな省があるのか、こういうふうに考えたのですが、一体この真相をお知らせください。――何だ、大臣はわからないのかい。わかっていたら、大臣と名指ししているのだから大臣が答えるのが当然だろう。なったばかりでわからないなら、わからないとはっきり言ってもらった方がいいんだ。
  162. 松永光

    ○松永国務大臣 率直にお答えいたします。  CO2を出さないように、CO2の出し方を極力少なくしようということだけを考えるならば、化石燃料の使用を減らせばそれができるわけです。しかし、現在発展途上国でもまた先進国でも、その多くが化石燃料を消費してエネルギーを賄っておるわけです。そういう状況下でCO2の排出量を固定する、あるいは縮減するということをやればどういうことが起こるか。なるほどCO2の排出量はこれ以上ふえないでしょう、あるいは縮減することができるでしょう。しかしエネルギーの供給に応ずることができません。そういたしますと、発展途上国の経済の成長はありません。発展途上国の生活水準の向上もありません。同時にまた、先進国においても経済の成長はありません。先進国の経済の成長がなければ途上国の発展もあり得ないわけです。  そういう意味で、私どもの考えていることは、地球環境保全と途上国の発展、先進国の発展、この成長と地球環境の保全を両立させるという観点でこの問題には取り組みをしなければならぬ、こう申しておるのが我々の立場でございます。
  163. 渡部行雄

    渡部(行)委員 時間が既に過ぎましたので、この問題はまた別な機会に私は徹底的に追及したいと思います。  とにかく命あっての物種で、命を侵すようなことを平然と金もうけのためにやられたのでは大変なことですから、その辺はひとつよろしく考えていただきたいと思います。  終わります。どうもありがとうございました。
  164. 中村靖

    中村委員長 次に、小川国彦君。
  165. 小川国彦

    小川(国)委員 私は、最初に外務大臣にお伺いしたいと思いますが、海外経済協力、日本の立場での経済援助というものが年々増大してきているわけでありますが、海外援助の中で商品借款というものがかなりなウエートを占めてきているわけでありますが、商品借款というものがどのような効果を上げているか、その成果について大臣の御認識をまず伺いたい。
  166. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 お答えいたします。  先生御質問の商品借款についてでございますけれども、広義の商品借款ということでとらえますと、三つタイプがございます。つまり、商品借款とそれから構造調整のための借款、それからちょっと英語になりますけれども、セクター・プログラム・ローンと私どもが呼んでおります商品借款とございますけれども、全体に共通しておりますのは、途上国の国際収支の困難に対応するために提供するものでございます。
  167. 小川国彦

    小川(国)委員 何か違う大臣が答弁したようなんですが、大臣は商品借款というものについて今どういう理解と認識を持っておられますか。
  168. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今局長が答弁をいたしましたが、外務省としては大体あのような考え方で理解をいたしております。
  169. 小川国彦

    小川(国)委員 私がきょう質問をするのは、およそ商品借款ということは大臣も先刻御承知のことだと思いますので、いわゆる我が国の援助の中で商品借款の占める割合は何割ぐらいか、大臣なり局長からちょっと……。
  170. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 先生御承知のように、日本のODA全体は二国間と多数国間とございますが、二国間の柱の一つでございます円借款の大体四分の一になってきております。
  171. 小川国彦

    小川(国)委員 二五%ということでございますが、少なくとも海外援助の問題について質問するときに、その海外援助の予算の四分の一を占めている商品借款については、大臣は一定の見識があってしかるべきじゃないかと思うのですが、いかがでございますか。
  172. 中山太郎

    ○中山国務大臣 委員御指摘のとおり、私も十分認識して頑張ってまいりたいと考えております。
  173. 小川国彦

    小川(国)委員 大分不勉強さが目立つわけでありますが、商品借款というものの役割等について、経済企画庁長官もお見えになっていますから伺いますが、商品借款の果たしている役割、その成果、それについてはどういう御理解を持っていますか。――局長ならいいです。大臣が答弁できないということであれば答弁は結構でございます。しかし大変残念なことでありまして、海外援助そのものについて、大臣就任後それぞれもう相当な日数がたっているわけでありますが、商品借款そのものに対する認識を両大臣が持っていないということは、これから質問していくのにも大変心細いわけであります。しっかり勉強していただきたいと最初にお願い申し上げたいと思います。  そうしますと、私が六十一年五月十三日に衆議院の本会議で、当時の中曽根総理、それから安倍外務大臣に対して、商品借款というものが非常に伸びて、今お話しのように援助の四分の一を占めている。八七年でいえば七百五十八億、一九八八年でいえば千二百八十二億、こういうふうに承っているわけでありますが、その中身について、どういうものを商品として購入されるように日本の政府が指導をしているか、そういう中身についての公表を私ども従来から求めてきているわけですが、今回も質問に当たりまして、一九八七年から八九年度の三カ年において商品借款の被援助各国ごとに調達した調達品目の単価名、価格、数量、調達者、供給先、これについての資料提供を求めたわけでありますが、今回も公表されないわけであります。これは諸外国に比しても、日本の援助の秘密性、独善性、欺瞞性、さまざまな問題がこの中に含まれている、こういうふうに考えるわけでありますが、政府の考え方は、前回の六十一年五月十三日の衆議院本会議における中曽根総理の答弁では、「我が国開発途上国に対して行う資金協力の実施に関連して、被援助国政府が企業との間で締結する契約は、あくまでも被援助国政府と企業との間の契約であります。契約当事者でない我が国政府として、その内容を公表する立場にはないのであります。」こういうふうに言っておりまして、同様の答弁を安倍外務大臣もしておりますが、この考え方はまだ変わっておりませんか。
  174. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 先生御質問の経済協力にかかわります企業名の公表に関しましては、当時の答弁にございますように、基本的には相手国政府と日本の民間の契約ということでございますけれども、私ども、その後、企業名の公表に関しましては、相手国政府と話をいたしまして、事務の手続上の問題もいろいろ勘案いたしまして、原則として企業名は昭和六十二年度以降は公表するということで踏み切っております。  ただ、念のため申し上げますけれども、先ほど申し上げましたように二国間の援助に関しましては円借款が大きな柱でございますけれども、その円借款の中にも、先生まさに御指摘の商品借款のような私どもがいわゆるプログラムメニューと呼んでおりますのとプロジェクト援助がございますけれども、今私が申し上げましたのはプロジェクト援助についてでございまして、商品借款は、基本的な性格の点というよりも事務の点から申し上げて対象から除いております。
  175. 小川国彦

    小川(国)委員 そうすると、あなた方は、六十一年の段階で私は内閣に質問主意書も出した、それから本会議で中曽根総理、安倍外務大臣にも質問をした、そのときに、これは私契約であって公表する立場にはない、こういう大臣答弁をお書きになったのは皆さんだと思うのですが、その考え方は変わったということですか。
  176. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 今も申し上げましたように、基本的な考えは変わってはおりません。しかしながら、国会その他で今先生御指摘のような、先生の代表質問もその一つでございますけれども、企業名を公表すべしという声が国内でございましたので、私どもは、相手国政府と話をいたしまして相手国政府の了解を得た上で、昭和六十三年度に、先ほど私は円借款について申し上げましたけれども、そのほか無償資金協力、それから技術協力の一形態でございます開発調査、この三つの形態について、相手国政府の了解を得た上で原則として公表するという措置をとったわけでございます。
  177. 小川国彦

    小川(国)委員 私契約であるという考え方は変わってないわけですか。
  178. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 その点は、先ほどから申し上げておりますが、変わっておりません。
  179. 小川国彦

    小川(国)委員 もう一遍伺いますが、例えば日本政府がフィリピン政府に交換公文で円借款の内容を決定する、そして今度フィリピン政府はフィリピンの輸入業者に商品を発注する、あるいは日本の業者なり外国の業者にその商品を発注する、その発注したものは今度日本の業者がフィリピン政府に商品を納入する、そしてこの際海外経済協力基金の認証を受ける、基金は今度日本の業者に代金を支払う、そしてフィリピン政府はその商品を国内で販売する、こういうふうに一連の行為になると思うのです。その中で、日本が仮にフィリピン政府に交換公文で、商品借款で雑貨なりいろいろな品物を譲る、商品借款する、こういう契約を結ぶ、そして今度はフィリピン政府が日本の業者に発注する、大半が日本の業者ですが発注する。これは私契約だというふうにあなた方は最後まで主張して、それは法的に誤りないという自信はありますか。
  180. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 繰り返しになりますけれども、私どもは私契約と観念しております。
  181. 小川国彦

    小川(国)委員 そうすると、援助そのものの全体がそういう私契約的な考え方のものであるというふうに理解していますか。
  182. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 先生の御質問の円借款、先ほど来申し上げておりますように、プロジェクト借款とプログラム借款とございますけれども、いずれも最初の段階では日本政府と相手国政府との間で交換公文を締結いたします。これに関しましてはすべて公表しておりますので、まず出発点におきましては二国間政府の合意をもとに動き出します。したがいましてその段階ではあくまでも政府対政府でございます。
  183. 小川国彦

    小川(国)委員 それが、今度援助が途中で私契約だからその中身を公表できないというのは、まことにこれはでたらめでありインチキである、政府がそういうことをやっていていいのか、私はこういう思いがするわけなのです。  ちょっと参考のために伺いたいのですが、皆さんの方は六十一年五月の私が質問したときには私契約説を強調していた。ところが今度、私の方でいろいろ事情を聞くと、さっきの局長の答弁のように、品目が非常に不特定多数にわたる、流通経路が複雑、把握がし切れない、こういうことを公表できない理由にさっきあなたはおっしゃった。そして今度後段の方にウエートを置いてまた資料を出さないということなのですが、今度の私が資料提供を求めました商品借款の内容についてでありますが、一九八八年度でいえばインドネシアに七百二十四億、パキスタンに百九十五億、バングラデシュに二百八億、スリランカに三十億、フィリピンに百二十五億、合計一千二百八十二億円、こういうふうに理解していますが、数字はそのとおりでよろしゅうございますか。
  184. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 そのとおりでございます。
  185. 小川国彦

    小川(国)委員 今度の例えば八八年度で一番大きいのは、インドネシアに七百二十四億円の商品借款の援助をしているわけですが、どういう商品を購入されたかという、その中身は一体どこまで公表されるのですか。
  186. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 先ほど私一番最初にお答えいたしましたように、商品借款の主目的は、今先生御質問のインドネシアについて申し上げれば、インドネシアの国際収支対策のために提供するわけでございますが、インドネシア側は日本の商品借款を使って、通常であればコマーシャルベースでインドネシアの保有の外貨を使って輸入するところを日本の商品借款を使って輸入するわけですが、その品目に関しましては、私どもは、武器、弾薬とか奢侈品等々は除きましたリストをつくりまして、それを政府間で合意して、それに基づいて輸入していただく。したがいまして、最初の段階でどういう品目を輸入するかということはきちんと政府間で合意をして、それに基づいて輸入をしているということでございます。
  187. 小川国彦

    小川(国)委員 あなた方の方に、八七年から八九年の三カ年において商品借款の被援助各国ごとに調達した調達品目の単価名、価格、数量、調達者、供給先、この資料要求を求めたのですが、今の交換公文の内容についての資料の提示はなかったのですが、これは公表できるということでございますね、全体が。  それから、非常におたくの方、怠慢で、国会が国政調査で、しかも決算委員会でやるのに、そういう要求資料を出さないというのはちょっといかがなものかと思うのですが。
  188. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 先ほど申しました交換公文は今先生御指摘のインドネシアの商品借款に関しましてもございますので、これに関しましては御要望がございましたら提出させていただきます。  それから、先生が御要望なさいました具体的な品目別の数字に関しましても、インドネシアの今先生が御指摘の七百二十四億円については、現時点で私どもがそれなりに掌握しているところは先生に御説明したと承知しております。
  189. 小川国彦

    小川(国)委員 非常に皆さんの方は各国についての資料、大まかでございまして、少なくも私が要求した商品借款の調達品目の単価名、価格、数量、調達者、供給先、こういうものを一切出さないわけですよ。今申し上げたものを、例えば三カ年援助した各国について資料を出せますか。
  190. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 ちょっと先生、最初に一般論になって恐縮でございますけれども、私どもは援助に関します資料に関しましてもできるだけ公開してまいりたいし、それから御要望に応じて提供していきたいと基本的には考えておりますけれども、何分にも相手国政府の主権にかかわるいろいろなデータもその国で公表しておりませんデータ、それから、先ほどから私は私契約ということを申し上げましたけれども、その相手国政府として公表しないものも入っておりますので、そういうものに関しましては――しかしながら、私どもとしては相手国政府が了解してくれるものはそれなりに了解をつけて公開するという一般的な考えでやっておりまして、先生御指摘のように何が何でも公表をしないとかそういうことでは決してございませんので、その点に関してはぜひ御理解いただきたいと思います。  それから、さらにつけ加えさせていただきますと、先生御指摘の個々の品目の実績でございますけれども、先ほど私は冒頭で、広義の商品借款には三つ形態があると申し上げました。つまり、狭義の商品借款、それからセクタープログラム、それから……
  191. 小川国彦

    小川(国)委員 ちょっと発言中で悪いですが、その各論というかあなたの概論の説明はいいです。僕の言った質問について、どこからどこまで公表できるか、それだけ答えてくれればいいです。
  192. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 はい。構造調整融資と、三つございますけれども、このリストが、私どもの用語では、ポジティブリストとネガティブリストというのがございまして、例えばネガティブリストで除くものだけ合意しておりますのは、例えばこれを認証しております海外経済協力基金でも一々品目ごとに集計していませんので、そういう私どもとして持っていないデータというものも先生が御要望された中には相当入っておりまして、私どもが意図的に隠しているということではなくて、先ほど申し上げたように、私契約という限界から出せないもの、それから、現実に膨大な事務量になるので私どもとしてはじいていないので持っていないものと二つがございます。かなり後者の持っていないものもございますので、御理解いただきたいと思います。
  193. 小川国彦

    小川(国)委員 あなたの答弁は、私が質問したことに対して答えていないのですよ。私が、各国に調達した調達品目の単価名とか価格、数量、調達者、供給先、この中のどの部分は出せるのか、どの部分は出せないのか、原則的なことを聞いているので、そこをしっかり答えてもらいたいのです。  時間がもったいないから次の質問をやっていますから、相談しておいてください。  参考のために、各国がこういうことについてどういう態度をとっているかというのを調べてみますと、援助に関する「案件別指名業者リスト(実績)の公表」ということですね。米国の場合は、「案件入札情報は事前に官報に掲載する。案件別入札業者名のみならず、入札額についても、問い合せに応じ公表している。」それから、例えばカナダ、「案件入札情報は事前に官報に掲載する。」こういうふうに米国やカナダでは、「案件入札情報は事前に官報に掲載する。」となっている。こういうふうに、米国やカナダのように情報公開の進んだところではこういうことをきちっと公開しているわけですね。  例えば西ドイツでも、「援助国政府・被援助国政府・契約業者間の法律的関係資材供与、および土木工事の契約当事者は被援助国政府と個別企業であり、その関連契約書はKfWの承認対象となる。」KfWというのは復興金融公庫ということだそうですが、「KfWは入札書類、入札結果についても見直し、承認を行う立場にあり、この見直し結果いかんによってはKfWは被援助国に対し再入札を要求する場合もある。公示は少なくとも連邦通商情報局発行の通商広報に掲載される。」こういうふうに、各国先進国は経済協力のこういう援助の資料については皆公表しているわけですね。日本だけが、援助している国が援助している中身を国会に報告できない、公表できないというのは全くおかしな話で、援助を受けている国の承諾を得なければ、援助した国のどういう商品借款でやった品物について、援助している国の国会にその資料が報告できないという国はないのですよ。まさにそこに皆さんの独善性があると思うのですよ。
  194. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 先生の先ほど御質問の点は、海外経済協力基金の関係者から急遽聞きましたところでございますと、基本的には、先生が御要求されました商品借款の調達品目の単価名、価格、数量等は存在しておりません。ですから先生、これは私どもが持っていて出さないということではなくて、そういうものは掌握していないということでございます。
  195. 小川国彦

    小川(国)委員 そうすると、日本国政府が商品援助ということで品物で援助してやる、向こうの国はそれを売ってお金にかえて自分の国に役立てる。しかし、日本の国が商品援助で買った品物のそういう調達品目の単価名も価格も数量も日本政府は把握してないということですか。
  196. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 先生御指摘のとおりでございますけれども、ただ、この点に関しましては、ちょっと今すぐ私資料が出てまいりませんけれども、諸外国と比べまして日本が特にこの点を怠っているということではございませんで、私どもの商品借款のチェックメカニズムは、例えば見返り資金の点などに関しましてはむしろ諸外国よりも、アメリカは別でございますけれども、アメリカ以外よりも厳しくやっているということで、今の先生の御指摘の点に関しましても、今データがないのできちんと申し上げられませんけれども、諸外国に比べて決して私どもがチェック機能を怠っているということではございません。
  197. 小川国彦

    小川(国)委員 そうすると、もう一遍念のために聞きますが、私が申し上げた調達品目の単価名、価格、数量、これは資料として今ない。それで調達者と供給先は資料としてあるということですか。
  198. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 今先生がおっしゃいましたのは、調達者、供給先も、先生の御質問の相手国政府が、例えば政府機関なりが輸入をして、その原材料とか資本財はそのまま使うわけでございますね。ですから、まさにそれから供給されるというものはございませんけれども、例えば民間業者であればそこからさらに供給されるということはあり得ますけれども、そこは掌握しておりません。
  199. 小川国彦

    小川(国)委員 何か雲をつかむような話で、そうすると、あなた方の商品借款の援助は一体何をやっているのかなと本当に疑問に思わざるを得ないのですよ。こんなに多額のお金を援助としてやって、日本国民の税金を一九八七年でいえば七百五十八億、ことし一九八八年でいえば千二百八十二億、こういう援助を、日本の商品を持っていって、それを援助しますから売ってお金にかえてやってください、その商品の実態を全く把握してないというのは非常におかしいのではないですか。  これは、情報企画研究所というところで「経済・技術協力便覧 一九八八年版」というのが出ているのですよ。ちょっとコピーしてきたのですがね、大きな冊子です。その中を見ますと、例えば伊藤忠商事はバングラデシュに商品借款で九千八百万円、これはいすゞ自動車の六十二年円借款でやった。あるいはまた同じくバングラデシュに、第二KRというのは食糧増産援助、これで二千万円、同じくいすゞのもので無償援助でやったとか、これは全部民間の研究所で出した資料に出ているのですね。そういう民間の研究所が、商品借款援助の内容を企業別に、しかも年度とそれから発注品目と金額と出ているのに、政府がこういうものを把握していないのですか。
  200. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 先ほど先生に申し上げましたように、商品借款三つの形態がございますけれども、いずれも国際収支対策ということで、そこを私どもしっかり把握して、それから繰り返しになりますけれども、品目リストもポジリスト、ネガリストがございますけれども、しっかりチェックして、その上で、ポジリストの場合に関しては、これは先生にも別途御説明いたしましたように、それぞれの品目に関して今どのくらい累計でなっているかというのは掌握しておりまして、私どもとしてはその段階でしっかり目を光らせているつもりでございます。  それからもう一つ、見返り資金の点に関しましても先ほどちょっと触れましたけれども、アメリカと並んで日本は見返り資金に関しましても注文をつけておりまして、この見返り資金が、三つの形態申し上げましたけれども、例えばセクタープログラム、これは先生御質問のインドネシアのまさに七百二十四億円がそうでございますけれども、そこに特定のセクターに向けられるということまで義務づけているわけで、全体として申し上げれば、先生が御質問のような、個々の契約の価格、数量、調達者を掌握していないから私どもが商品借款の注意を十分払っていないということでは決してございませんで、国際的に見て、私どもとしてはかなり高度の注意を払ってしっかり運営しているつもりでございます。
  201. 小川国彦

    小川(国)委員 では、ちょっと伺いますが、例えばこの「経済・技術協力便覧 一九八八年版」情報企画研究所という御本、皆さんも当然見ていらっしゃると思いますが、あの程度のものを政府の報告書としてつくれないですか。
  202. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 先生、申しわけございませんが、今先生御指摘のものは私存じておりませんので直接お答えできませんけれども、先ほど申し上げましたように、私どもが昭和六十三年度に企業名公表で踏み切りましたのは、商品借款を除くいわゆるプロジェクト借款でございますので、商品借款については考えておりません。
  203. 小川国彦

    小川(国)委員 これで見ますと、例えば国がスリランカ、ユーザーが厚生省、品目プロジェクトは地方病院拡充計画、金額は六億四千四百万、メーカー名は日立メディコほか、六十一年度無償とか、こういうふうにずっと出ているのですよ。だから皆さんの方も、私は何円何銭までの細かい資料を出せと言っているわけではないので、少なくとも、商品援助の品目は百五十品目でしょう、百五十品目の中で、例えば八八年度インドネシアにやった中で、七百二十四億の中身はどういう品目であって、その総額は幾らなのか。そして、例えば一億以上の発注先はどういうところでどういうものであったのか、そのぐらいのことはあなた方、これは出せるんじゃないですか。  残念ながら、この八八年のインドネシア、パキスタン、バングラデシュ、スリランカ、フィリピンについて皆さんに資料の提出を求めても、そういうものすら出てこないのですよ。そういうことすら文書にもまとめていないというのは、さっきくしくも大臣お二人が商品借款のことも全く御答弁できないと同じように、皆さんは、国民を知らしめない状況の中に、大臣にさえ知らしめてないんじゃないですか。どの程度までの公表ができるのか。
  204. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 先ほどから同じことを繰り返して申しわけありませんけれども、私どもは企業名の公表に関しましても昭和六十三年度に踏み切ったわけで、プロジェクト借款についてでございますけれども、コンサルタントについては一億円以上、それ以外については十億円以上の契約を受注した企業は公表しておりますし、それから、この金額に満たない企業に関しましても個別に要請されれば企業名はお伝えするということで対応してきておりまして、決して意図的に隠しているということではございません。ただ、繰り返しですけれども、商品借款の場合は品目も多数にわたりますし、それから一つ一つも大変でございますので、私どもとしては、一言で申し上げれば、とても事務的な作業としてそこまでできないので掌握していない。  それから、これは先ほど来申し上げておることになりますけれども、全体、個々の最初の段階で品目リストをきちんと合意するということが重要で、かつ、そのリストに基づいてどのくらい輸入されたかというのを掌握するのが重要であって、それ以上に出て、先生の御指摘のような点まで掌握することが現段階では必要だとは私どもは考えておりません。
  205. 小川国彦

    小川(国)委員 あなた方がプロジェクトの援助のものを公表せざるを得なかったのは、マルコス疑惑の際にプロジェクト疑惑の問題が大変追及されて、そして、そのときに初めて落札企業者とか商社名の公表に踏み切ったのだ。あれだけの大事件の中で、いわば片方しか、プロジェクトしかやらなかったわけですよ。商品借款の方はまだやぶの中に置いている。そして、さまざまな問題が常にその援助の中で起こってきているわけですね。それは、あなた方がこういうことの実態を全く掌握していないところに大きな問題が存在しているというふうに私は思うのです。  そういう意味では、もう一つ聞きますが、皆さんの方は、その商品が今度日本の商社からフィリピン政府に渡されて、フィリピンの政府はその商品を今度どのように処分されているか。調達品目の処分先、それから処分先での処分方法、入札か随契か、処分価格の決定方法はどうやっているか、お金はどういうふうに調達されているか、それから日本の商社から売り渡した金額と処分金額の差は幾らあるか、処分金額の集計方法はどのくらいになっているか、集計額は幾らになったか、こういうようなことは掌握されてますか。
  206. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 商品借款の調達方式に幾つかございますけれども、商品借款のかなり多くは生産財、原材料でございまして、こういうものに関しましては調達後直ちに売却されるということでございませんで、具体的に申し上げれば、国の名前をちょっと別にいたしまして、一般的に申し上げれば、政府の外貨割り当てを受けた公営企業とか民間企業が輸入業者であって、その輸入業者が即生産活動を行う。つまり、生産財や原材料を商品借款で受けたその外貨割り当てをもって購入するということでございます。  ただ、先生に念のために申し上げたいのでございますけれども、輸入業者が輸出業者と、これは最近商品借款の場合は全部一般アンタイドでございますから、日本の業者とは限りませんで、どちらかといえば、比率からいえば外国の業者の方が多くなっているわけでございますけれども、途上国の輸入業者が輸出業者との間で結びます契約は原則として国際入札によっておりますので、ここで入札が行われてそれを落札した輸出業者との間に一般の商行為としての契約が結ばれ、それから物資の輸入が行われていくということで、その後は、今私が申し上げたように生産財、原材料の場合はそういう流れですし、それから時折消費財等もございますけれども、消費財であれば輸入業者はまさに輸入価格なりそのときの市場価格を勘案して販売価格を決定しているということでございまして、日本側が関与しておりますのはこの輸入の決済段階までですから、先生が何度も御質問の、具体的な販売の段階において価格がどうなって、数量がどうなっているということは私どもは報告を求めておりません。
  207. 小川国彦

    小川(国)委員 だから、そうすると、せっかく商品借款で日本から購入された品物が、今度は向こうで、仮にフィリピンに行った借款であれば、そこがどういうふうに処分をして一体どれだけのお金に相手の国ではなったのかということも把握してないということなんですよね。だから、日本が七百五十八億とか八八年で千二百八十二億というお金を商品で援助したけれども、向こうがその品物を売って、今度はそれが向こうの政府のお金としては幾らのお金になって役立ったのか、この確認はしてないわけですか。
  208. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 今御答弁申し上げましたように、商品借款の調達方式は、生産財、原材料の場合と消費財と異なりまして、一般には生産財、原材料が多いわけで、したがいましてこれを輸入者が売却するという行為はないわけで、それは輸入者がそれを使って生産活動を行うということでございます。先生御質問の売却行為を伴うのは消費財のようなもので、輸入者が購入した商品を国内市場で売却するということがまさに消費財の場合にはございますけれども、これは繰り返しになりますけれども、先ほど申し上げたようなことで私どもはそこまで掌握する必要はないと考えております。
  209. 小川国彦

    小川(国)委員 生産財と消費財の内訳などはきちっと把握されているのですか。
  210. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 私どもはきちんと計算はしておりませんけれども、先ほど申し上げたように多くは生産財、原材料でございまして、これは計算をすれば出てくると思っております。
  211. 小川国彦

    小川(国)委員 全く怠慢ですよね、援助している品物が生産財と消費財で生産財が多いと言いながら、その内訳を聞けば、その数字の集積もデータもできてないというのは。  じゃ一体、この生産財と消費財の計算をするのはだれがやるのですか。ちょっとお聞きしたいのですが、外務省の何局の何課の人がこの作業をタッチしてやるの。生産財と消費財と商品借款の内訳の計算やなんかができるのは、だれがおやりになるの。
  212. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 先ほど来私が御説明しております商品借款に伴います具体的な一連の行為に関しましては、外務省ではなくて海外経済協力基金で担当しております。
  213. 小川国彦

    小川(国)委員 そうすると、外務省はこの実態を全く把握してない、こういうふうに理解せざるを得ませんね。海外経済協力基金というのは今度は経済企画庁の所管になりますからね。そういうことでは、毎年毎年皆さんは、海外援助、経済協力が必要だといって予算の増額を、恐らくことしもするでしょうよ。しかし、しているけれども、こういう八百億とか一千億に上る国の予算を、七百五十八億対一千二百八十二億という予算を要求し、配分しながら、しかもそれが相手国に商品で、どういうもので、生産財、消費財で何%いったか、金額が幾らいったか、それもOECFの海外経済協力基金に聞かなければわからぬということでは、僕はまさに怠慢の極だと思いますよ。しかも、そういう資料をという国会の要求に対して、諸外国でも出している、我々も援助基本法でこういうものは公表すべきだと、社会党はきちんと基本法をつくって要求している、そういうことにも耳を傾けず、こういうふうに内容も把握できないままこれを隠匿しているというのは重大な責任だと思いますよ。  大臣、時間も参りましたので、今の議論をお聞きくださって外務大臣と経企庁長官に伺いたいのですが、皆さんも、国の援助の中でこれだけ大きな予算を占めている商品借款という問題、きょうは残念ながら食糧増産援助には私は入れませんけれども、そういうことの実態がこういうふうな形で、国会の論議に十分な資料も提供されない、しかもその実態を役所も十分把握していない、そして援助の重要性だけを説いている、こういうことでは国政上ゆゆしい問題だと思うのですね。そういう点について大臣としてどういう見解をお持ちになられるか。ひとつ中山大臣から伺います。
  214. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今政府委員の答弁を私も聞いておりまして、先生のお尋ねの問題点に十分核心に触れた御答弁ができなかったことを残念に思っております。ただ、私が大臣に就任以来、海外援助につきましては、やはり先生の御指摘のように貴重な国民の税金を使うわけでございますから、この点については十分注意をしてやるべきであるということは大臣として申し渡しております。  なお、海外に商品援助をする場合に相手国が入札をする、一般入札をやる、それの支払いを海外経済協力基金がやるということでございますから、私は、先生のお話のように、海外経済協力基金というものがその支払いの責任を持っている機関ではないかというふうに認識をいたしておりまして、いずれにいたしましても、大臣としてはこの問題について今後十分検討してまいりたいと考えております。
  215. 高原須美子

    ○高原国務大臣 商品借款といいますのは、今委員御指摘のとおり、開発途上国の国際収支の問題への対応、経済の安定に大変重要な役割を果たしていると思います。  経済企画庁経済協力基金の監督官庁でございます。この経済協力基金は十分その役割を果たしていると思いますし、現在その監視体制も十分とっております。しかし、委員せっかくの御指摘でございますので、この後も十分検討させていただくつもりでおります。
  216. 小川国彦

    小川(国)委員 検討させていただきますということではなくて、検討三年とか言うそうでございますから、三年も検討されては困るので、この経済協力基金が今実態を一番把握している、こういうことでございますから、経済協力基金がそういうところの今どこまで把握しているのか、先ほど来私がずっと挙げた品目名について経済協力基金がどこまでそれを把握しているのか、その把握している実態を国会に御報告を願いたいと私は思うのですよ。それをひとつ大臣に確認を求めたいと思うのです。
  217. 勝村坦郎

    ○勝村政府委員 お答え申し上げます。  委員ただいま御指摘のものは、商品借款に伴う相手国側の輸入物資についてでございましょうか、それとも見返り資金の使用についてでございましょうか、両方含めてでございますか。――基金は、御存じのとおり経済協力の貸付業務を担当しておりまして、そして、商品借款の供与に伴います輸入、どういうものが輸入されるか、それにつきましては、ENに基づきまして御存じのとおりローンアグリーメントを決めまして、それに基づいてディスバースを行っていく。その場合の品目の選定というのは、ENに定められましたもののうちから確実なものをお互いに協定をいたしまして貸し付けをしていくということであります。  それからさらに、その見返り資金につきましても、基金としましては、そのENにももちろん定められておりますけれども……
  218. 小川国彦

    小川(国)委員 制度の説明を聞いているのじゃなくて、経済協力基金の資料をどこまで出せるのかをきちっと答えてほしいと言っているのですよ。制度の説明じゃなくていいのですよ。
  219. 勝村坦郎

    ○勝村政府委員 はい。それで、その見返り資金の用途につきましても内容につきましても、原則として報告を受けるということをローンアグリーメントで定めております。ただ、その詳しい内容につきましては、先ほどから外務省が答えておりますように、そもそも基礎をENに求めているものでございまして、やはり外交上相手国側の承諾なくして裸のままで公表するということは適切ではないだろうというふうに考えておりますが、そういう資料を何か概括的にまとめたものとして提示する必要があるということでございますれば、可能な範囲で対応はしてまいりたい、かように考えております。
  220. 小川国彦

    小川(国)委員 援助している国が、援助されている国の承諾がなければ援助している国の国会に資料の報告ができないという、そういう援助の基本の考え方からあなた方、考え直してもらわなければならぬと思うのですよ。そうじゃなかったら税金を出している国民が納得しませんよ。どう使われたかという中身を尋ねているのに、援助をしてもらっている相手の国から聞かなければわかりません、了解を得なければできません、そんなばかな話がありますか。税金を出している国民がどこに使われたかということを尋ねているのに、金を渡した相手の承諾がなければ答えられませんということで国民に説明できますか。私は、この点を大臣初め皆さんに厳重な反省を求めて、私の質問を終りたいと思います。
  221. 中村靖

    中村委員長 次に、草川昭三君。
  222. 草川昭三

    草川委員 公明党・国民会議草川であります。  まず経企庁、それから外務、通産と順番にお伺いをしたいと思います。通産の場合は最後はちょっと時間切れになるかもわかりませんので、その点はお許しを願いたいと思います。  まず経済企画庁長官にお尋ねをいたしますけれども、長官は消費税について消費者団体と全国各地で意見交換を何回かしておみえになるようでございます。さまざまな意見が出されていると思うのでありますけれども、その意見交換の中で、例えば総額表示だとかいろいろな意見が出ておると思うのでありますが、例えばどのような意見があったのか、あるいはまた総額表示方式等については国民生活上物価との関連でどのように受けとめておみえになるのか、まずお伺いをします。
  223. 高原須美子

    ○高原国務大臣 委員御指摘のように、私は経済企画庁長官に就任以来、消費税を初めといたします国民生活上の諸問題につきまして、消費者の意見を聞いてまいりました。八月二十八日に東京で中央消費者団体との懇談会を行ったのを皮切りに、北は札幌、西は福岡まで歩きまして、延べ百十七人の方から意見を聞いてまいりました。  お尋ねの消費税に関しましては、まず導入の手続の問題として、消費者の意見を聞くことが少なく議論も十分になされないままに導入された、あるいは準備期間も短く、消費者に対する説明やPRが不足していたという、この点が共通して挙げられました。こうしたことから、消費税は一たん廃止して白紙に戻すべきだという厳しい意見もございましたが、一方では、これからの高齢化社会への対応にとって消費税は必要であるという、認める御意見もございました。ただし、消費税を認める人たちも、免税事業者制度や非課税品目など具体的な仕組みには問題があり、見直すべきだという意見がかなり出されました。  そこで、今委員御質問の見直しという点ですけれども、まず第一に、年金生活者とか低所得者などの社会的弱者に一律に課税されることから温かみに欠けるという意見があり、その対応策としては、生活必需品は非課税にしたらどうかというような声が聞かれました。また主婦の立場からも、食料品等の生活必需品には課税してほしくないという非課税品目拡大の声も聞かれました。  次に、簡易課税制度、免税業者等の制度につきましては、消費者が負担した税金が本当に国庫に届くのかなという不安が表明されました。  また、今御質問の表示の問題につきましては、便乗値上げの問題もなく、税金が国庫に納められる安心感もあり、税への関心も高まるということから、税額がはっきりわかる表示方式がよいという意見が出されました。  これらの意見につきましては、大蔵大臣、総理大臣に報告して、政府での検討へ反映してもらうようにお願いしてございます。
  224. 草川昭三

    草川委員 今新聞等でも非常にこの問題が話題になり、大蔵大臣等も昨日いろいろと意見を言っておみえになるようであります。政府の中でも消費税見直しの議論がはっきりと出てきたと見ていいわけでありますけれども、長官は民間出身の大臣でありますから、先ほど来から生活必需品等の非課税の見直し等の声もしかと承っておるという趣旨の答弁をしてみえるわけでありますから、単なる大蔵大臣にそういう報告をしたというのではなくて、閣僚の中で相当強く国民の声を反映しよう、例えば食料品の非課税についても私たちはかくかくこう思う、こういうような主張をなされる気持ちがあるのかないのか、お伺いいたします。
  225. 高原須美子

    ○高原国務大臣 私は民間出身でございまして、普通の主婦をしていたわけでございますので、消費者の立場を十分によくつかんでおります。ただし、税制改革、消費税の見直しを決める主務担当の省庁は大蔵省でございまして、今政府の税制調査会が中心になって見直しを進めているところでございます。そこで非課税品目あるいはその他の表示方式といったものが今後検討されるというふうに聞いておりますので、私としては閣僚の一員といたしまして声は上げてまいりますけれども、最終的に決めるのは政府の税制調査会であるというふうに思っております。  いずれにせよ、広い声をぜひ聞きまして反映をさせていくというのが私の責任だと思っております。
  226. 草川昭三

    草川委員 先ほども申し上げたように民間出身の、今も答弁にありますように主婦の代弁をするのは、閣僚の中で、私は、経済企画庁長官のみとは言いませんけれども、中心になられるのは経済企画庁長官だと思うのですね。そういう意味では、言うだけは言うけれどもと言って、後もぞもぞと税制調査会の方で云々というのは、これは私は余分な言葉だと思うので、せっかく民間大臣として選ばれたのだから、民意を反映すると力強く言っていただきたいと思うし、もう一回念を押しますが、例えば食料品の非課税についてはどう思われるのですか。
  227. 高原須美子

    ○高原国務大臣 先ほど申し上げましたように、政府税調におきましても非課税品目については精力的に議論が行われているというふうに聞いております。  そこで、私といたしましては、さっきの逆進性をなくすためにも、あるいは主婦の日常の買い物の痛税感を軽くするためにも、非課税品目をという声が上がってきております。ただ、どこまで非課税にするかといういわゆる線引きの問題、それからどの段階まで非課税にするかという段階の問題といったようなものを消費者の立場から考えましても、どの範囲に非課税を絞るのか、どの段階に絞るのかということははっきり私としてもまだ決めかねております。現に、つい先週も名古屋へ行って懇談会で意見を聞いてまいりましたけれども、消費者自身が、どこまでの線引きにするのか、あるいは非課税を小売段階だけにするのかといったあたりも、まだはっきり理解ができていない面もございますので、そういうことの理解を求めながら、さらに御意見を聞いて政府の方へ反映させていきたいと思っております。
  228. 草川昭三

    草川委員 消費者の声は、先ほど言われましたように廃止して白紙で出直せというのが圧倒的ですから、それは食料品を非課税にする範囲内の線引きについてここまでやればオーケーだ、こんなような声は出てこないと私は思うのですね。そこはひとつ間違えないように対応していただきたいと思います。この問題は幾らやっておりましても問題がございますので、何か答弁ありますか。
  229. 高原須美子

    ○高原国務大臣 お言葉に逆らうようで恐縮でございますけれども、廃止が多いというふうに今おっしゃいましたけれども、本当に白紙の状態で私は、いろいろな立場の消費者の方、非常にきつい反対意見の方も含めて聞きましたけれども、決して廃止が多いということではなく、見直しという声が非常に強うございました。それだけをちょっと言わせていただきたかったわけです。
  230. 草川昭三

    草川委員 そういうせっかくの御答弁ですけれども、今いろいろとマスコミ等でもこの問題についての世論調査をやっていますし、それなりの数字も出ています。そういうことは私ども承知をしておりますが、せっかく民間から出身された大臣としては、今のような御発言はいささか国民の皆さんに失望を与えるのではないかと思いますね。第一回の答弁程度なら我々も我慢をいたしますけれども、こういう際でございますから、私どもは、つい最近の参議院の選挙の結果を踏まえた条件でのこの消費税の問題を主張しておるわけでありますから、白紙に戻せというのが絶対多いとか少ないとかということを今長官が答弁をされるのは、いささかいかがなものかと思います。しかしこの問題で時間をとっておると問題がございますので、次に移ります。  いわゆる内外価格差問題でありますけれども、これは構造的な問題として大きな問題になっておりますし、九月二十五日でございますか、経企庁の物価レポートでも四割も日本の物価は高い、こういうようなことを言っているわけでございまして、何か日本の構造的な問題にメスを入れようとする試みがあるのではないかと思います。一体その原因は何だと長官は思われますか、ひとつお答え願いたいと思います。
  231. 高原須美子

    ○高原国務大臣 内外価格差の原因ということでございましょうか。――確かに、経済企画庁が発表いたしました物価レポートでは、ニューヨーク、ハンブルグの物価に比し日本の物価というか生計費の水準が一・四倍であるということを発表いたしております。ただ、物価水準を国際的に厳密に比較するということは、習慣や制度の違いがあって難しい上に、為替レートの変動などもございますので判定しにくいと思いますけれども、あえて企画庁で調査した結果は、確かに日本の物価は国際的に割高になっているということになりました。  そこで、お尋ねの内外価格差の原因でありますけれども、マクロ的な要因とミクロ的な要因に分けられると思います。  まずマクロの方では、一九八五年以降円高が急速に進行したのに対しまして、国内の価格体系が十分に円高を反映していないという面があったのではないか。それから、もう一つのマクロ的要因を見ますと、国際的に見て一人当たり国民所得が高くなるほど国内の価格水準が高くなるという傾向がありまして、日本についてもこの傾向が妥当する面があると思います。特にその背景として、製造業に比べまして卸、小売業や農業の生産性が低いといったことが挙げられます。これがマクロの要因として挙げられるということを物価レポートは指摘しております。  さらに、今度はミクロのサイドから見ますと、非常に政策的な規制がある分野につきましては、円高に伴う輸入価格の下落が国内価格の下落につながりにくいという規制の問題があります。それからブランド品につきましては、海外企業の高価格戦略に加えまして、消費者の側にも高い価格に対して寛大な傾向が見られるという、いわゆるブランド志向があるということが挙げられます。それから第三に、高い地価が家賃とか土地利用型のサービス価格を押し上げているといったような、この三つの原因が考えられるということです。
  232. 草川昭三

    草川委員 今その原因についての答弁がございましたが、問題は、その解消のためにどう取り組んでいくかということが今後の国民生活にとって非常に大きな問題だと思います。ぜひ経済企画庁にとっても突っ込んだ原因追求と解消のために所管庁とも連携をとってやっていただきたい、こういうように要望しておきたいと思います。  じゃ、経済企画庁の方はその程度にしておきまして、後でまたODAの行監の監督について答弁を求めたいと思います。  外務省にお聞きをいたしますけれども、十一月に入りますと、日米次官級経済会議、あるいはまた第二回目の日米構造協議、あるいはアジア・太平洋経済協力閣僚会議あるいは四極通商会議、あるいはまたガット非公式閣僚会議と、いわゆる経済外交のラッシュが続くわけであります。アメリカでの日本特殊論の高まりなどもあるわけでありまして、日米経済関係が新たな緊張状況に入ってきておるのではないか。こういう会議に臨む外務省の基本的な態度についてお伺いしたいと思います。
  233. 中山太郎

    ○中山国務大臣 委員御指摘のように、これから明年の五月ごろまでは、日米間あるいは多国間の経済外交が極めて頻繁に行われるわけでございます。そういう中で、アジア・太平洋関係閣僚会議の場合は、やはり二十一世紀に向けてのアジア・太平洋の、どういうふうな考え方で取り組んでいくかという各国の閣僚の意見交換の場ということになろうかと思います。片や日米の問題につきましては、先生の御心配のように、日本の一方的な貿易黒字の存在が、アメリカの議会を中心に、日本に対する極めてきつい、厳しい意見となってあらわれつつあることは事実であろうと私は思います。  こういうふうな中にありまして、外務省といたしましては、やはり国際外交の中で日本にとって一番重要な国家としてアメリカが挙がるわけでありますから、日米間の信頼関係が損なわれないように、また今後とも友好関係、信頼関係が持続できるように、両国にまたがる経済問題、簡単に言えば貿易黒字の問題でございますが、これをできるだけ具体的に解決するように進めていかなければならない、このように考えております。
  234. 草川昭三

    草川委員 今の答弁にもありましたが、オーストラリアで開かれるアジア・太平洋経済協力閣僚会議、これにはASEAN六カ国、カナダ、オーストラリアあるいはニュージーランド、そしてさらに韓国、こういうところが参加をするのではないだろうかということが一部言われておるわけでありますけれども、世界最大の経済圏ということになるわけでありますが、これは将来、中国だとか香港あるいは台湾等も参加するような見通しになるのでしょうか。ついでながらお聞きをしたいと思います。
  235. 中山太郎

    ○中山国務大臣 委員御指摘の中国あるいは香港、韓国というような国、この国々を今後どのようにこの会議で位置づけていくかということも踏まえて、この会議が開かれるものと考えております。――今韓国と申しましたが、間違いでございます。訂正させていただきます。台湾でございます。
  236. 草川昭三

    草川委員 この会議は、将来ECが一九九二年に統合する、あるいはまたアメリカ・カナダ自由貿易協定、こういうような地域ブロック的な動きに対する一つの対応ではないだろうかと言われている非常に重要な会議だ、こう言われておるわけでありますけれども、実はこれは一部の新聞の報道でありますが、通産省と外務省との間においてこの種の会議の評価が違う、と言うとちょっと言い過ぎになるかもしれませんが、いわゆる通産は通産として積極的に経済外交という面で対応したい、外務省の方は経済という言葉を抜いてこの会議を受けとめようではないかという趣旨の話がありました。先ほども少し政府委員の方と、経済という言葉を抜くのか抜かないのかということを本日の席上でも言っておったわけでありますけれども、どうでしょう、ざっくばらんに言って、我が国の足並みの乱れということについては関係諸国に対する不安を抱かせることにもなるわけでありますが、これは両大臣ともその点の懸念はないのでしょうか、それぞれお答え願いたいと思います。
  237. 中山太郎

    ○中山国務大臣 御心配をかけて申しわけなく存じますが、私ども全くそのような懸念はないと思っております。
  238. 松永光

    ○松永国務大臣 考え方は一致しておるわけでありまして、相協力してこの会議の成功に向けて努力したいと考えております。
  239. 草川昭三

    草川委員 ぜひその立場で進めていただきたい、こう思います。  そこで、実はこのオーストラリアの関係で一緒に御質問するわけでありますが、ことしの一月でございましたか、日本とオーストラリアの経済閣僚委員会外務省で行われたと思うのですが、その席上、豪州側から、日本の不動産投資が地価の上昇を招くというような指摘があったようでございます。無秩序な不動産投資が相手国の強い反感を買い、新たな対外摩擦になるのではないだろうか、私はこの点非常に関心を持っておりますので、きょうここでは余り議論をいたしませんけれども、そういう事実があったかないのかということだけ外務省からお聞かせ願いたいと思います。
  240. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 豪州におきまして、特にブリスベーンを中心に、観光開発のためにかなり急速に不動産投資が行われたということを中心に、現地におきましてかなり反感が起きてきたという事実はございます。しかし、先年の七月に竹下総理が訪豪されたときにも、ホーク首相の方から、一部にそういう反感があるけれどもこれは政府及び国民を代表する声ではない、豪州側としては日本の投資を歓迎しているという御発言がございまして、竹下総理の方から当時、日本側としてもやはり豪州に投資をする日本企業がよい市民として豪州社会に入っていくことを希望しているという応答をなされた経緯がございますので、そういう事実について、事実があったことは確認できるということを申し上げたいと思います。
  241. 草川昭三

    草川委員 もう一つ。ニュージーランドで、日本人が現地で正規の許可を得ずして専門学校等を開設しているということがあるやに我々は聞いているわけであります。この問題についても、日本における学校法人が海外に進出をする場合には、先ほどの不動産投資と同じような意味で申し上げておるのでありますけれども、同様の配慮をしなければいけないのではないか、こう思うのでございますが、ニュージーランドで日本人が現地で正規の許可を得ず専門学校等を開設しているという事実があるのかないか、承知をしているのかどうか、あわせて質問したいと思います。
  242. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 先生御指摘の専門学校は、我が国の民間団体が、ニュージーランドの首都ウェリントンの北百四十五キロにございますパーマストン・ノースという町において開設予定のインターナショナル・パシフィック・カレッジというものを指すものだろうと思われます。この学校は、本年九月にニュージーランドの文部省から登録申請を行っていたコースにつきまして登録認可を取得して、明年に開校される予定というふうに承知しております。この学校につきましては、一部におきまして日本の侵略であるというような批判があったということは承知しておりますけれども、しかし、市長等地元の幹部におきましては、この学校の進出についてはむしろ好意的に反応しているというように承知しております。  いずれにしましても、一般に本邦企業等が海外へ進出するに当たりましては、地元の十分な理解を得て、よき市民としてそこに参加していくという態度が必要であろうというふうに考えております。
  243. 草川昭三

    草川委員 この件はまた決算委員会の他の会議のときに申し上げたい、こういうように思います。  そこで、今度はODAの方に移りますけれども、ODAについて総務庁の行政監察というのが二回にわたって行われております。詳しくは申し上げませんが、経済協力に関する行政監察についてのそれぞれの所管庁の対応というのをまず三大臣からそれぞれお聞かせ願いたい、こう思います。
  244. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 私から先に御説明させていただきたいと思いますが、先生御指摘のように、無償資金協力と技術協力に関しまして第一次行政監察が昨年出まして、ことしになりまして有償資金協力に関しまして第二次行政監察が出ておりますが、外務省といたしましては、第一次、第二次、いずれの行政監察も非常に建設的な提言、勧告をいただいたものと受けとめておりまして、円借款、つまり有償資金協力に関しましては、これは四省庁体制のもとでほかの関係省庁と相談しつつやっておりますけれども、全体としてしっかり受けとめて対応していきたいと考えております。外務省の中に、第一次勧告が出ました際に、官房長をヘッドといたしますタスクフォースを設けておりますので、第二次勧告もそこで受けとめまして全省的に対応していきたい、こう考えております。
  245. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今局長から御答弁を申し上げたようなことでございますけれども、私は大臣として、この海外協力、海外援助、ODAを含めて厳しい対応をするべきであるということを就任当時から申しております。
  246. 高原須美子

    ○高原国務大臣 今回の第二次監察におきましては、国別援助方針の策定、完成案件のフォローアップの強化、海外経済協力基金の実施体制の整備など、今後我が国の有償資金協力を効率的、効果的に推進していく上で重要な指摘がなされております。  経済企画庁は、この経済協力政策の企画、立案及び総合調整を担当しております。また、政府開発援助の大宗を占めます円借款の実施機関である海外経済協力基金の監督官庁にもなっております。  そこで、今回の行政監察において指摘のあった事項につきましては、まず総合調整役といたしましては、各省庁と連携をとりながら改善策を講じてまいりたいと思っております。また、監督をしております海外経済協力基金の業務体制につきましても、監督官庁といたしまして、業務の効率化を図ると同時に、本部及び海外事務所の充実、外部専門家の活用を図るなど、引き続き整備に努めてまいるつもりでございます。
  247. 草川昭三

    草川委員 通産も直接はあれでしょうけれども、本来は大臣からも、いろいろな案件というのは通産省関係が非常に多いわけでございますから、ひとつどういう趣旨で受けとめられるのか、お伺いしたいと思います。
  248. 松永光

    ○松永国務大臣 外務、経企の両役所とよく連携をとりながら適切に対処してまいりたい、これだけをきょうは申し上げておきます。
  249. 草川昭三

    草川委員 今、厳しい対応が必要あるいはまた案件後、実施した後のフォローアップ、効率的な効果というものを期待したいという、それぞれの受けとめ方があるわけでございます。  そこで、DACというのがあるわけでありますけれども、西側主要援助国の集まりである開発援助委員会、このDACの援助計画の事前評価のための原則というのが、六十三年でございますか採択をされていると思うのです。この原則は援助の前提になる事前評価あるいは選定基準を被援助国あるいはまた他のDAC加盟国にも明確にする、こういうこととされているわけでありますけれども、これは主として日本を念頭に置いて、援助政策というものをもっとガラス張りにすべきではないだろうかというようなことを求めたのではないか、こう言われているわけであります。このDACの、開発援助委員会の援助計画の事前評価のための原則を外務省あるいは経済企画庁は今後どのように受けとめて対応をされるのか、お伺いをしたいと思います。
  250. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 先生御指摘のように、OECDの開発援助委員会、つまりDACで昨年十二月に案件審査の原則について採択を行っております。当時、確かに先生御指摘のとおり、日本を念頭に置いて事前審査のガイドラインをつくったという報道が一部にあったのは承知しておりますが、全くそういうことではございませんで、私どももこのガイドライン作成には積極的に協力いたしましたし、今後を展望いたしますと、このガイドラインに従いまして適切に事前審査を行っていきたいと考えております。  ちなみに、日本が従来から行っております事前審査のガイドラインというのは、今回、つまり昨年採択されましたDACの審査原則とおおむね同じでございまして、したがいまして、私どもは、基本的にまさに従来やってきた方向でさらに事前審査をしっかりやっていくべしというふうに受けとめております。
  251. 草川昭三

    草川委員 私はなぜそういうことを言ったかといいますと、今から一つの例を申し上げるわけですけれども、フィリピン問題であります。フィリピンのスビックというところは、アメリカの有名な第七艦隊がいるところであります。その港の反対側にスビックの造船所があるわけです。これは日本とフィリピンとの間に結ばれました――フィルセコの造船所と言われますこの造船所が、操業開始をしましたのが昭和五十七年一月であります。これはフィリピン側から六〇%、日本側から四〇%、これは第五次の円借款の適用になっているわけでありますけれども、百十一億の円借款で政府間の交換公文が締結をされまして、この造船所が稼働をしているわけであります。この造船所は三十万トンでございまして、しかも修繕岸壁もある。この港の反対側に、今私が指摘しましたスビックの基地があるわけであります。これは私は過去一回委員会でも取り上げたことがあるわけでありますけれども、現在この造船所がどうなっているのか。これはあらかじめ外務省にもこの問題を取り上げるということを言ってありますので調べられたと思うのですが、この造船所は非常にうまく運営されているのかどうか、所期の効果があったのかどうか、お伺いしたいと思います。
  252. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 先生御指摘のように、この造船所は、十年以上前に調査を行い、それを踏まえて円借款が供与されたものでございますけれども、最近の状況は、残念ながら造船不況が世界的な規模で続いておりますのでフィルセコ社の受注が低迷するという状況になっております。ちなみに数字を申し上げますと、昭和五十八年は受注の船の数は三十九でございましたが、その後六十一年には一度二十五隻に落ちましたけれども、六十二年は四十一隻という状況でございますが、五万トン未満の小型船が多い状況でございますので非常に経営を圧迫しております。
  253. 草川昭三

    草川委員 それで、日本側の経営者はこの造船所から手を引くのではないかと言われておりますが、その間の事情は御存じですか。
  254. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 私どもは、今申し上げましたような経営不振を背景といたしまして、フィルセコ社の民営化の問題が議論されているというのは承知しております。これはちょっと脱線いたしますが、今アキノ政権のもとでフィリピン経済全体の民営化、公社公団の民営化が検討されて、かつ実施されておりますが、その一環としてフィルセコ社の民営化も議論されていると聞いていますけれども、今先生御指摘のように、川崎重工がフィルセコ社の経営から手を引くということは具体的に私ども伺っておりません。
  255. 草川昭三

    草川委員 それでは、一回ここでスビックの修理造船所に関するフィージビリティースタディーと称する事前調査の報告書を出していただきたいと思うのですが、それは協力されるのでしょうか、どうでしょうか。
  256. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 これは七六年に国際協力事業団が実施しておりますけれども、先生の御要望で提出いたします。申しわけありませんが、きょうは全文持ってきておりません。一部抜粋しか持っておりません。
  257. 草川昭三

    草川委員 私どもが実は前に外務省を通じてFSの資料を出せと言ったときには、我々に提出をしなかったのですね。そこで、私どもも実は、その後自分たちでフィージビリティースタディーというのを持ってまいりました。私も造船所の出身でありますし、このフィリピンの造船所に私もみずから訪問をいたしまして、この造船所のヤードの責任者ともお会いをしましたし、それからまた、その反対側にありますところのアメリカの第七艦隊の基地司令官にも私は会ってまいりました。私がこのフィージビリティースタディーを欲しいと言ったのは、今外務省の答弁にもありますように、三十万トンのドックをつくっておきながら実際は五万トン以下の小さな船を毎年二十五、六隻しか受注していない。そういう現状をフィージビリティースタディー、事前調査がどのように把握をしたのか知りたかったわけであります。そこを篤と調べて御報告願いたいと思うのですよ。  これだけの百十一億の借款をしながら、なぜ三十万トンの大きな造船所をつくったのか。つくった人に聞くと、当然反対側にあるところのスビックの艦船修理ということを当てにして三十万トンのドックをつくった。ところがつくってみると、経済援助でありますから民生安定に限るということになるわけでありますから、こんなことならもっと別の場所で小さな漁船を修理するような、あるいはまた小さな漁船を建造するような造船所をつくっていただいた方が、フィリピンの民生安定のためにはどれだけ役に立つかわからぬというのが現地の考え方ですね。だから、フィリピンの軍事基地というものを頭に描いたフィージビリティースタディーというのがある、これが言いたいわけであります。  また、このフィージビリティースタディーの中にも明らかに、フィリピンのスビックの湾内にある米軍の造船所、別に造船所があるわけでありますけれども、そこの従業員を当てにして民間の日比合同の造船所をつくるんだというような趣旨のことが書いてあるわけですよ、フィージビリに、事前調査に。そういう非常にずさんなことをやるから、先ほど来から問題になっているように、せっかくの百十一億というのが大赤字になってしまって、しかもアメリカの艦船建造あるいは艦船の修理ができない、こういう制約があるわけですから宙に浮いておるのですね、この造船所は。私はもったいない話だと思うわけでありますが、こういう点での反省はどのようにお考えになられますか、お伺いしたいと思います。
  258. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 今私の手元にございます一九七六年に完成いたしましたこの造船所に関します計画調査報告書を拝見しておりますと、先生が御指摘のように確かにスビックに位置しており、アメリカの海軍基地の向かい側ではございますけれども、当初から日本の経済協力というものは軍事目的に供することができないということがはっきりしておりまして、これはフィリピン政府も重々その点を承知の上私どもに要請してまいりましたし、国際協力事業団調査も当然それを念頭に置いて行っております。  当時、つまり一九七六年の時点で見ますと、フィリピンにおきましては一万トン以上の修繕ドックが一基しかなく、フィリピンに出入りする外航船の修繕は海外のドックで行っていたわけでございます。したがって、フィリピン政府としては、ぜひ大型の外航船の修理もできる造船所を、修理所をフィリピンに設置したいということを強く希望したわけで、特に、先生御承知のように修理用の造船所というのは大変労働集約的な産業でございます。フィリピン政府としてはまさにこういう産業を必要とするということで、当時、今私の手元にございます資料によりますと、いわゆるエコノミック・レート・オブ・リターン、内部収益率と訳しておりますけれども、これが二五%になっております。繰り返しですけれども、軍事関係はもちろん前提にしない数字でございます。  それが、先生御指摘のように、その後なぜこういう状況になったかという点でございますけれども、第一次オイルショックの直後でまだ第一次オイルショックのインパクトについて十分掌握できておらず、その上、御承知のように七九年には第二次オイルショックがございまして、先生御指摘のような二十万トンとか三十万トンという超大型船による石油の輸送が余り行われなくなったために、当初もくろんでいたそういうものが十分活用されず小型船中心になったということで、七〇年代の半ばにその点を十分見通せなかったという点は、フィリピン政府も、これを引き受けた私どももそうではございますけれども、恐らくあの時点では現在の事態を正確に予告するのはなかなか難しかったのではないかと思っております。  しかしながら、先生御指摘のように、そうは申しましてもこういう事態になりましたことは私どもといたしましても決していいこととは思っておりませんので、今後事前調査を行うに当たりましては、中長期の見通しもしっかり立てて行っていきたいと考えております。
  259. 草川昭三

    草川委員 今外務省の方から若干の反省めいた答弁があったわけでありますけれども、私自身の現地訪問のときの現地の対応は、向かい側のスビックの海軍基地における艦艇の修理をしない、あるいは修理をするということを否定すると言えばうそになると現地の人は言っているのです。この計画を立てたときに、スビックの海軍基地における米艦船の修理をしたかった、その考え方がありましたよ。フィリピンの方は、真っ向からそれは当たり前だという言い方、日本側が否定するのだから仕方がないという言い方だったのです。だから私は、事前調査は一体どの程度真剣にやっておるのでしょうかと聞くわけです。その当時私が事前調査を要求したら、それは公開するわけにはいかないということで、きょう初めて公開すると言われたので、私は大いに期待をします。  あるいはまた、先ほど申し上げましたように、DACの援助事業の事前の評価基準があるわけであります。それも外務省の方は、私どもの資料請求に対して、英文の原文しかないという言い方です。和文のものを提供する意思はありますか。
  260. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 お答えいたします。  今私手元に日本文を持っておりまして、もし私どもの担当の者が、今先生が言われたように、英文しかない、日本語は差し上げられないということを申し上げたとしたら大変失礼をいたしました。日本語訳を持っておりますので、差し上げたいと思います。
  261. 草川昭三

    草川委員 大分前に言ってもらえたら、自分で金を出してこんな厚い翻訳をしていただいたわけですから、これも全くもったいない話です。これからそういう二重手間をやめるようにしていただきたいと思うのです。また後でこれは突き合わせをして少し検討したいと思うのです。     〔委員長退席、谷津委員長代理着席〕  実はフィリピンの問題についてもう少し、いわゆるアメリカと日本との関係、フィリピンとの多国間援助の問題について少しお話を聞きたいと思うのでありますけれども、時間がもう大分過ぎましたので、その点をはしょりまして、フィリピンの女性の方々が今日本にたくさん来ているわけでありますけれども、その問題をめぐる非常に重要な点を中心に話を進めていきたいと思います。  奈良県大和郡山市にある旅館街で、フィリピンなどのアジアから百人以上の出稼ぎの女性が来ているわけでありますが、この方々はほとんどパスポートを取り上げられ、暴力団の監視のもとに売春をさせられているということが今問題になっているわけであります。これほど大規模な外国人女性の管理売春が発覚をしたのは初めてではないだろうか、こういうことが言われておりますけれども、この多くの女性は日本で歌手として働いてもらう、こういう甘いブロー力ーの言葉にだまされて観光ビザで入国をする、それで国内の売春あっせん組織などの手で旅館街に運ばれたのではないか。長い方は一年以上も売春をさせられているということになっているわけでありますけれども、これが今回告発をされまして、現地等では新聞等でも相当な話題になっておるわけでありますが、このことが発覚をいたしましてから、百名前後見えたフィリピンからの出稼ぎ女性というのがどこかに送り込まれたのではないだろうか、行方不明になっておるということが今大変問題になっているわけであります。  この事件についてちょっと私も、最初はどんなことだろうかと思って関心を持ったのでありますが、聞けば聞くほど、これはもう人権上問題があるし、日本としても大変これは恥ずかしいことだというような感じがしてきたわけでありますが、まず事件概要について簡単に、これは法務省入国管理局の方からどのような経過で今日の状況になっておるのかお聞かせ願いたい、こう思います。
  262. 町田幸雄

    ○町田説明員 お答えいたします。  御指摘の旅館街における摘発は、昭和六十二年以降、約三十軒あると見られる旅館のうちの十七軒に対しまして、合計二十四回にわたって私ども立入調査を実施いたしまして、合計九十四名のフィリピン女性を摘発いたしました。  内訳を申しますと、六十二年に六回、二十五人、六十三年に八回、二十七人、本年は十回で四十二人でございますが、この間警察と、今申しましたうちで五回合同で摘発いたしております。  しかし、現在までのところ、背後にいるブローカーについては、若干の情報を入手いたしておりまして、これについて非常に関心を持っておりますが、その組織の全容の解明にはまだ至っておりません。引き続き警察などと協力しながら全容の解明に努めたいと思っております。  なお、本年十月六日、委員が御指摘されました新聞報道がなされた後、警察当局の手入れもありまして、同旅館街にはフィリピン人の女性はいないようであるというぐあいに私ども見ております。ただ、再び以前と同様の事犯が発生するおそれなしとしないと考えておりまして、引き続き関心を持って注視しておるところでございます。
  263. 草川昭三

    草川委員 それで、これは法務省でも結構ですし警察でも結構ですが、当時何人ぐらいいたのだろうか、そしてこの摘発ということで一部退去手続をとり、本国に帰したというようなこともあるわけでありますが、それ以外の方はどうなっているのか、これは入管として把握できる点があれば報告を願いたい、こう思います。
  264. 町田幸雄

    ○町田説明員 本年六月に私ども摘発した際の状況では、三十一名を摘発したわけでございます。その際のいろいろな供述等から、まだほかにも相当数いたようであるということはわかったわけですが、その後は、私ども摘発後は姿が見えなくなったといいましょうか、そういうような事実はあるようでございます。その後それがどこへ行ったのかというところまではまだ把握できておりません。
  265. 草川昭三

    草川委員 それに対して警察庁の方は、警察というのですか現場の奈良県警でございますか、どういうような対応を打ったのか、お聞かせ願いたいと思います。
  266. 根本芳雄

    ○根本説明員 この事件が発覚した時点と前の時点の人数でございますけれども、これは現在各旅館等から事情を聞いておりますけれども、この時点で見てみますと、大体フィリピンの方が八十八人ぐらい、そのほか台湾の方が若干と日本人、合わせると大体百人を超える人数がどうもここに働いていたのではないか、こういうふうに推測されます。そういうことでございましたので、その事犯が出てから非常に幅広く捜索とか事情聴取をいたしまして、現在はここにはほとんどおりません。  ただ、それがどういうふうになったのかということですけれども、三人の方は大阪入管に出頭し、三人ほど警察で身柄確保して入管の方に引き渡しさせていただいた、そのほか情報では十人近い人が既に帰ったのではないか、こういう感じですが、あとの人たちについてはわかっておりませんので、今奈良県警を中心として、関係のところ、どういう方向に散っていったのか調べているところです。  さらにまた、この背景には当然ブローカーとか暴力団が関与しているのではないか、こういうことでございますので、鋭意捜査を今続けているというところでございます。ただ、残念なことに、まだ暴力団がかんでいるというような事実は把握しておりません。
  267. 草川昭三

    草川委員 今約八十八名、これは現地の旅館をしっかりと調べればその当時いたということがわかるわけですから、多分そういう数字を言われたと思うのです。それでまた、法務省の方でそれぞれ退去手続をとって帰した、これも数字が二名か三名か知りませんがはっきりしております。今お話がありましたように十名ぐらい帰ったのではないだろうかというのは、それは出国のときのカウントというのですか、そこで把握したものなのかあるいは現地の情報で調べられたのか、どちらでしょう。
  268. 根本芳雄

    ○根本説明員 残念ながら一人一人の名前、パスポートは確認できなかったわけでございますので、情報としてどうも帰ったのではないか、こういうことでございます。把握しているわけではございません。
  269. 草川昭三

    草川委員 それで、今現地の警察の方から、連れ去られた事態を重視してそれぞれの所在確認の依頼を全国にしているというようなお話があったわけでございますが、それは各都道府県にこういうような事例を報告されて、それでその所在を少しでも早く知らせろというようなことをやっておみえになるということでございますか。
  270. 根本芳雄

    ○根本説明員 今までの検挙の経験によりますと、この女性の人たちは、一カ所にいる場合、それからちょっと危なくなるとまた別々のところへ移っていく場合、あるいは移されていく場合、いろいろあるようでございます。そういうことで、関係する県その他に奈良の事件との関連でフォローしていきたい、こういう捜査を続けております。
  271. 草川昭三

    草川委員 法務省にお伺いをいたします。  法務省はこれまでに二十四回にわたって立入調査を実施した、警察との合同摘発も五回やった、こう言ってみえるわけでありますけれども、どうなんでしょう、法務省の入国管理官、特に捜査課というのですか警備課というのですか、ここは人手が足りませんし、相当苦労しているということは十分承知をしておるわけです。それにもかかわらず、この摘発はかなり何回か、二十四回もやるというのですから、相当平たい言葉で言うならば悪質だということで、重点的に今やっておみえになると思うのですね。ということがうかがわれるわけでありますが、その割には警察との合同摘発が五回というのは少ないような気がするのですが、その点はどのようなお考えですか。
  272. 町田幸雄

    ○町田説明員 特段警察と仲が悪いということではなくて、警察と協力しながら努力していくというつもりでおりますが、たまたま摘発の際のいろいろな都合で独自の摘発が多かったのではないか、こう思っております。  私どもにつきましては、いわゆるブローカー対策が極めて重要だ、こういうぐあいに思っております。そういう観点からいたしますと、私どもの権限の及ばない部分が相当ございますので、ぜひとも警察と協力しなければやっていけないという考えでおりますので、今後とも警察と協力しながらやってまいりたいと思っております。
  273. 草川昭三

    草川委員 私は質問で、別に警察と仲が悪いという質問をしたわけではないのでそれはあれでございますが、やはり今法務省の立場からいうと足がないわけですから、当然のことながら足があるのは現地の警察だと思いますね。ですから、警察としても、法務省の方がこれだけ二十四回にもわたって立入調査をしておるという事実は当然のことながら承知をしておるわけでありますから、これは警察庁の方も積極的に対応をしてこの種のことをなくすということですね、摘発ということよりも根絶をするということをやっていただきたいわけであります。  それは、私が今さら言うまでもないわけでありますけれども、フィリピンに若王子事件というのがあったわけですね。この若王子事件のときに日本側は大変な騒ぎをやったわけですよ。国内を挙げて大騒ぎをやりました。これは若王子さんの生命ということを日本の国民が関心を持って見守る、当たり前のことですね。しかし、現地のフィリピン側に対する我々の見方というのは、やはり誘拐をするということは非常に非人道的だ、非常に恐ろしいことだというような意味でのキャンペーンも張られたわけでありますし、私自身もそういうつもりで見ておったわけですが、今度は我が先進国ですね、経済大国のこの日本において、現地の方々がどういう形であれ日本にやってきて、八十名近い方々、約百名近い方が所在が不明だということを我々が見逃すわけにはいかぬと思うのですよ、これは。ここは非常に重要だと思うのですが、これは、今のことを踏まえまして警察庁が少し乗り出していただいて、全国的に所在確認を指示する、こういう方針を力強く打ち出していただきたいと思うのですが、その点どうでしょう。
  274. 根本芳雄

    ○根本説明員 今先生御指摘になった点、大変大事な点だと思います。そういうことで、今入管とも協力をしてそういった事態をなくすように努力をしています。また、現地の大和郡山の集中地域だったところにも浄化作戦をしようということで、大々的に今取り組んでいるところです。  ただ、問題は、数にすると相当多数いるそういった女性の人たちの所在の確認は、実際は不法就労あるいは資格外活動、こういう自分自身が日本国の法律に違反する行為をしているわけでございますので、自分自身も伏せたい、それから暴力団だとかブローカーがいろいろぐるぐる回している点もある、そういうことで大変難しいやり方ですけれども、先生の御指摘を踏まえてできるだけいい方法を考えてそういった問題に取り組んでまいりたい、こういうふうに考えております。
  275. 草川昭三

    草川委員 ぜひこれは、もう国際的な問題になることでございますので、とりあえず警察庁の強い指揮を求めたい、こう思うわけであります。  ちなみに、今外務省の方から、フィリピンの有力な新聞であるフィリピン・スター、これは英字新聞でありますけれども、そこのコラムニストが日本に来ておるようでございます。マックス・ソリベンという方だそうでございますが、この方のインタビューの話を聞いておりますと、日本のやくざとフィリピンのブローカーが背後にいる、こういう構造的な問題はもう十年前から我々も指摘をしていたところだ、こう言うのですね。日本もフィリピンの両方の政府ともこの問題に対し何の対策も講じていない、当局が本気に取り組めば見つからないはずがない、こう非常に憤激をしておるわけですね。フィリピンの非常に有力なこういう報道関係の方が現実にこういう怒りを持つということは、せっかくの、先ほど来から申し上げておる日本とフィリピンとの友好関係、あるいはまたフィリピンをせっかく多国間で援助をしようというそういう国の中で、反日感情が高まっていくということにもなるわけでありまして、これは私非常に重要だと思うのです。しかも、俗に言うジャパゆきさん、こういう方々の救援策というのが、いわゆる日本の公な機関ではなくて民間のいろいろな団体に駆け込むという実情を見ますと、私どももこれは非常に反省をしなければいかぬことだと思うのです。  そこで少し、一体この関係省庁というのはどういうのがあるのだろうか、こう思って聞いてみますと、法務省には人権擁護局というのがある、あるいはまた労働省には職業安定行政という立場からもいろいろなものを見るというポジションがある、あるいは婦人少年局というのもある、あるいは厚生省の方でも各都道府県に婦人相談所というのを持っている。一体こういう外国人の人権問題というものを果たして日本の役所は受けつけるのかどうか、親切な対応ができるのかどうか、この点について少しお伺いをしたい、こう思います。  そこで、まず労働省の方はどのようなかかわり合いを持ち、今の私の話を聞いておりましてどういう考え方を持つのか、お聞かせ願いたいと思います。
  276. 戸苅利和

    戸苅説明員 先生御質問の不法就労問題でございますが、これに絡みまして職業安定法なり労働者派遣法上問題があるということが多々見られるわけでございまして、そういった労働法令上問題があると思われる事案を把握いたした場合には、関係機関とも連携を図りながら、その事業内容でありますとかあるいは就業実態等について調査いたしまして、法令違反があるという場合には、お話に出ておりますブローカーなりそういった職業紹介の違反事案者に対しまして厳正に対処していくということにいたしております。
  277. 草川昭三

    草川委員 じゃ、厚生省の関係をお伺いします。
  278. 浅野史郎

    ○浅野説明員 厚生省関係では、婦人相談所という機関が四十七都道府県各県一カ所ずつございます。ここでは売春防止法に基づく保護を必要とする女子という方々についていろいろな相談に応じ、また一時的な保護をする一時保護の機能を持っております。いわゆるジャパゆきさんという方々につきましてもその一時保護の機能を使いまして、多くは入国管理局に引き渡されるまでの間、必要な衣食住のへルプをするという状況でございます。  実績を申しますと、昨年度、六十三年度は十三府県で三十一名のいわゆるジャパゆきさんという方を一時保護という形で婦人相談所がお世話をしておるという状況でございます。
  279. 草川昭三

    草川委員 厚生省にお伺いをします。  いわゆる、このジャパゆきさん三十一人の一時保護は売防法三十四条という立場からやっておみえになるわけであります。もちろんこれは各都道府県が主になるわけでありますが、外国の方に対する通訳とか、当然通訳がなければ世話はできないわけでありますが、どういう状況になっているのか、あるいはまた今後どのような予算要求をなされるのか、お伺いします。
  280. 浅野史郎

    ○浅野説明員 この問題自体が最近の新しいことでございますので、これまでは、婦人相談所におきましても、そういう外国の方が保護を求めた場合に通訳の問題、それから入国管理局との連絡といったものについて予算が全くございませんでした。今年度平成元年度からわずかでございますけれども新たに予算をとりまして、今申し上げましたような通訳の手配、これは実は言語が非常に多くにわたっておりますので余り広く対応することは難しい状況でございますけれども、通訳の費用、それから入国管理局との連絡、また、もとの雇い主のところに荷物を取りに行くとか、そういった状況に対して対応する予算を今年度初めて確保したところでございます。まだまだ不十分な状況ではあるわけですけれども、実際にここを使う方というのは意外に少ないという状況もございますので、今のところそれで何とかと思いますけれども、その需要に応じましてまた今後とも拡充を考えてまいりたいと思います。
  281. 草川昭三

    草川委員 駆け込み寺のような組織、団体というのが残念ながら今民間団体になるわけでありますので、その婦人相談所というもののPRが果たして是か非か、いろいろな問題がありますね。そういう組織を宣伝するということがいいかどうかという問題がありますが、少なくともそういう方々が駆け込めるようなシステムにしていただきたいものだ、あるいはまた関係方面にこういうものがあるということをもう少し運動をしていただきたいと思うわけであります。  この問題について法務省にお聞きしますが、人権擁護の立場から東京の法務局ではいろいろと対応してみえるようでございますが、現状はどうか、あるいは今後どうされるのか、お伺いします。
  282. 島野穹子

    ○島野説明員 昨年の八月から、東京法務局の窓口におきまして外国人のための人権相談所を開設しております。一日に数件の相談を受けておりますが、今後とも積極的に外国人の人権相談を行ってまいりたいと存じております。
  283. 草川昭三

    草川委員 今お聞きになっておわかりのとおり、それぞれの省庁それなりの答弁があるわけでありますが、現実にいわゆるジャパゆきさんという方々が暴力団に監禁状況になるというのは十分予想されるわけでありますが、そういう状況の中での脱出に対応する、そういう位置づけではないと思うのですね。やはり役所は役所だ、こういう感じがします。だけれども、それは放置するわけにはまいりませんから、もう少し関係省庁がしっかりと連絡をし合って、私は、日本の国の恥でもあるわけでありますし、国際的にも大変恥ずかしいことだ、早急に人権擁護のためにも立ち上がらなければいかぬと思うわけであります。  最後に、外務大臣にお聞かせを願いたいわけであります。実は、若王子さんのときには日本の運輸省は運輸省観光局長の名前で、六十二年一月二十九日、日本旅行業協会の会長に「フィリピンへの渡航予定者に対する注意喚起」、フィリピンは大変物騒ですよ、観光客がかかる事態に巻き込まれるという考え方もなくはないということで、フィリピンに不要不急の旅行は差し控えるというような通達を出しているわけです、若王子さんという誘拐事件に対して。じゃ、もし今度フィリピンで百人近い方の行方不明という問題がキャンペーンになったら、先ほど来から言う多国間援助なんか吹っ飛びますよ、民衆レベルで。事実、過日の新聞でも多国間援助に対してフィリピンの野党が猛烈な抵抗をしているという記事だって出ているわけでしょう。  こういうことを考えると、非常に水面下に潜っておるこの事件というのは、外務省としても国内問題だから関係ないというわけにはいかぬと私は思うのですね。日本とフィリピンとの国際友好のためにも、あるいはまた先ほど来から申し上げます日本とフィリピンという戦略的な立場からいっても、このことは容易ならぬ事態だと思うのですが、外務大臣の答弁を求めたい、こう思います。
  284. 中山太郎

    ○中山国務大臣 委員御指摘のとおり、日本とフィリピンの友好関係につきまして、この種の問題はまことに遺憾なことだと考えております。政府といたしましても、この行方不明になっている数十名の方々の捜査、調査に努力をするように外務省としても努力をさせていただきたいと考えております。
  285. 草川昭三

    草川委員 この点、大臣に特に強く要望をしまして、また大臣、日ごろ大変歯切れのいい答弁をされるわけでありますから、外務省を叱咤督励、そして関係省庁とぜひこれは御連絡をなすって対応を立てていただきたいということを強く要望しておきたいと思います。  そこで今度は、通産省関係でお伺いをしたいと思います。  まず、これからの産業構造のあり方の変化、さまざまな問題が出てくると思うのでありますけれども、基礎エネルギーの問題についてどのような形でそれぞれの種目別にエネルギー事業というのが伸びていくのか、こういう立場から質問したいと思うのであります。  電力とガス事業の競合というのが非常に今活発になってきております。特にこれは産業用もそうでありますし、民生用の場合でも同じことが言えるわけでありますけれども、こういう競合状況をどのように把握しているのか、まずお伺いしたい、こう思います。
  286. 山本雅司

    ○山本(雅)政府委員 エネルギー事業につきましては、委員御指摘のとおりこれからますます伸びることが予想されます。特にその中でも第二次エネルギーでございますが、特に電気とガスが都市生活の上で大変競合するという事態が出てまいります。  なぜかと申しますと、御案内のように電気というのは非常に使いやすいエネルギーでございまして、家庭生活、さらには文化生活が向上いたしますと電気等の使用というのが出てまいりまして、いわゆる電化率というのもこの数年着実に上がっております。一方ガスの方も、これはいろいろの観点から、単に家庭用だけではなくて最近は業務用、さらには産業用にも伸びてきているということで、それぞれの分野で伸びつつ、なおかつ、エネルギー間の競合と申しますか競争関係というのも出てきているというのは事実でございます。
  287. 草川昭三

    草川委員 そういう競合状況という答弁が今あったわけでありますが、これは通産省としても各分野それぞれ所管をしておみえになるわけでありますが、どちら勝てとか赤勝て白勝てというわけにもいきませんし、また地域の実情によって当然の分野というのもあるわけでありますが、競合状況の中で過当なあるいは過剰な競争というのも若干見受けられないわけではありません。私どもきょう詳しくは申し上げませんけれども、そういうような点についてどのような行政指導をされるのか、お伺いしたいと思います。
  288. 山本雅司

    ○山本(雅)政府委員 一般的には、例えばガスと電気につきましてはコジェネレーションというような形である程度協力関係も進んでまいります。ただ、御指摘のように、例えばエネルギーの中でガスだけをとりましても都市ガスとLPガスあるいは簡易ガス、それぞれの分野でいろいろ競合する部面もございます。したがいまして、こういう点では健全な競争というのは非常に必要なことではございますが、過度な競合、しかもそれが企業間の事業のとり合いというような形になるのは非常に好ましくないと考えておりまして、そのような点につきましては、具体的な案件に即してできるだけ妥当な解決が図れるように今後ともきめ細かな行政もしてまいりたいと考えております。
  289. 草川昭三

    草川委員 そのことを踏まえまして、今度は自家発電の現状についてお伺いしたいと思うのです。  最近、大手企業における自家発電の許可というのですか、自家発電で電力を賄うという動きが非常に目についてきておるのではないかと私は思うのです。もちろん原油の安いということも前提になっておるわけでありますけれども。早く言うならば、力の強い企業はどんどん自家発電が採用できるわけでありますが、中小企業はそういうことをやれませんね。その自家発電の許可ということについて通産省は今後これをふやしていく方向なのか、どういう方向になるのか、あるいはまたどの程度の企業までには自家発電を認めるのか、お伺いしたいと思います。
  290. 山本雅司

    ○山本(雅)政府委員 自家発電につきましては、今御指摘のように最近大変伸びておりまして、六十三年度では対前年度比で一一%増になっております。  この自家発電の問題につきましては、実は一方におきましては発電事情が今後大変逼迫するのではないかというのが考えられますから、小規模発電というのはその意味では需給緩和に役立つというメリットもございます。ただし他方、この自家発電が無秩序にといいますか、どんどん出てまいりますと、それだけで済む場合にはいいのですが、それが例えば修理したり故障したりする場合には、そのバックアップというのを電力業界といたしましては供給責任の観点からやらなければならないということで、この調整が難しくなる面もございます。したがいまして、私どもといたしましては、自家発電で自分のところで純粋にお使いになる分につきましては特別に制限した運用はしないつもりではおりますけれども、ただし、これは全体として見ますと今御指摘のように大きなところに限られるというような部面がございます。  したがいまして、今後この実態をよく把握しながら、しかも先ほど申しましたメリット、デメリットそれぞれございますから、この実態に応じて今後ともこれを伸ばすべきところは伸ばしていくというような方針でやっていきたいと考えております。
  291. 草川昭三

    草川委員 もちろん大きい会社は、日本の電力料金が高い、こういうことから、原油が安ければ自家発電に回る、こういうことですね。メリットというのはそういうことだと思いますね。ところが、例えば原油が高くなる、あるいは自分の自家発電で賄い切れない場合には、公共性ということですから従来の電力会社からの供給を求める。従来の電力会社は当然供給をしなければいけない。今おっしゃいましたように、バックアップというのですか、それだけの受電の設備、変電所等もこれは電力会社が負担をしなければいかぬわけですね。だから電力会社の立場から言うならば、指をくわえて、工場の近くまで変電所も設け、いつでも供給できますよという体制を持ちながら、早く言えば売り上げは減る、こういうことになりますね。売り上げのない固定費だけは残る、こういうことになりますね。これは子供が見てもわかるはずです。そういう電力会社が負担しなければいけないコストというのはだれにかかっていくのでしょうか、お伺いします。
  292. 山本雅司

    ○山本(雅)政府委員 今おっしゃいましたように、自家発電につきましてはこれをバックアップする体制というのが必要になっております。したがいまして、現在自家発電をやる場合にも、自家発電をなさるその企業と電力会社との間に基本料金についての契約、さらには使用電力についての契約というのを結んでいただいておりまして、基本的には、バックアップする場合にはバックアップに必要なコストをその自家発を行う企業に負担してもらうという形で調整する形になっております。  ただし、その比率が例えば一割増とかあるいは二割五分増とか、いろいろな基本料金と使用量に応じた料金との場合がございますが、果たしてこれですべてをカバーしているかどうかという点につきましては、なお今後とも必要に応じ検討する必要があると考えておりますが、私どもといたしましては、基本的には、バックアップに必要な費用はその自家発を行うところで負担するというのが基本原則ではないかというように考えております。
  293. 草川昭三

    草川委員 いずれにしても、この種の問題が発生をしたのは電力会社の料金体系にも問題があると私は思うのですね。大口使用量の電力料金の体系が必ずしも大口消費者に納得しない体系だ、だったら自分たちでつくろうじゃないか、そういう事態に慌てて通産省の方も、今の答弁でも非常に歯切れが悪いですよ。通産省ですから、双方の監督指導があるわけでありますから、できるわけですから、もう少し知恵を出して、むだな設備投資をすることなく、何らかの円満な解決方法が知恵を出せば出ると私は思うのです。そういうことを通産省に私はきょうは要望するということにしておいて、議論はこの程度にしておきたいと思います。  時間があと五分よりありませんので、一問だけ、古紙の回収について通産省にお伺いをします。  最近、古紙の回収のサイクルが非常に混乱をしてきているのではないかと言われております。古紙の使用量が大体五〇%だと別に問題がないというようなことを言っておりますが、我々日常生活の中ではちり紙交換の回収率が非常に少なくなった、毎日来たちり紙交換が来なくなった、そして一般の家庭内のごみとして新聞等を出すようになった、そのために地方自治体の方の焼却も大変だ、こういう面があります。  その原因を調べていきますと、これは我々にも責任があるし、経済企画庁長官にもちょっと聞いておいていただきたいのですが、最近トイレットペーパーは古紙を採用しないのです、真っ白い紙を消費者が好みますから。だから古紙の混入率というのは下がってきた、こういうのも一面あります。それから、新聞等の軽量化という問題も出てきておるわけです。広告が非常に多くなった、そしてまた付録が多くなった。だから、新聞配達が非常に重労働になってきたので新聞の軽量化ということが言われる。そのために当然のことながら古紙の使用率が下がる。こういう現状があるので、きょうは時間が余りありませんので、この点については深く追及できませんが、そういう現実があることは事実であります。  この点について通産省はどのように把握し、私の意見をどのように聞かれるのかお伺いをして、私の質問をやめたいと思います。
  294. 南学政明

    南学政府委員 古紙の再利用は、紙の原料の確保という観点ばかりではなくて、森林資源の保護とか省エネルギーの促進とか、そういう観点からも我々極めて重要であるという認識を持っております。  したがいまして、通産省といたしましては、これまでも古紙再生促進センターの活用を図りながら、古紙の再利用に努めてきております。この結果、昭和六十三年度の古紙利用量というのは千二百五十万トン、これは十年前に比べまして一・八倍になっております。我が国製紙原料に占める古紙の割合、これは約五割に達しておりまして、アメリカの二六%に比べても高い水準にはなってきております。しかし、先生御指摘のようにこの現状で我々満足すべきでないと認識いたしておりまして、資源の有効利用の観点からも古紙回収、利用の促進にさらに努力を続けていきたい、このように考えているところでございます。
  295. 草川昭三

    草川委員 時間が来ましたのでこれでやめますけれども、今の通産省の答弁は我々も事前に十分に承知をしておりますが、現実はそうじゃないのです。いずれにしても古紙の最近の回収というのは非常に悪くなっている。そして、今申し上げましたように、製紙会社の方も古紙を使わない紙の生産に切りかえつつある。このことはパルプを購入するわけでありますから世界的な環境破壊にもなるわけでありますので、ひとつ十分な対応をしていただきたいということを申し上げまして、時間がきたので私の話を終わりたい、こう思います。     〔谷津委員長代理退席、尾身委員長代理着席〕
  296. 尾身幸次

    尾身委員長代理 次に、大矢卓史君。
  297. 大矢卓史

    大矢委員 郷土の先輩の中山先生、御就任おめでとうございます。  先ほどからもいろいろとやりとりを聞いておりまして率直にお話し願っておるわけでありまして、私も、外交というのは俗に言われておりますように水際までということで、やはり国内一致して日本の平和と安全のために協力していかなければならぬ、そういう立場でございます。  中山外務大臣には、かつて総理府の総務長官をそのころお務めになられまして、学術会議の問題等大きくなたを振るわれたわけであります。内閣でも一内閣一仕事といいますか、なかなかあれもこれもというと難しゅうございますけれども、経験豊富な大臣といたしましては、みずからの仕事の中でこれをやり遂げていきたいということがございましたら、まずお聞かせを願いたいと思います。
  298. 中山太郎

    ○中山国務大臣 委員から心温まる御激励をちょうだいいたしまして、まことに感謝にたえません。  外務大臣として何をやるかということをお尋ねでございますが、率直に申し上げまして、これから一年間、日本の外交は胸突き八丁といいますか非常に厳しい時代に入っていくのだろうと自分に言い聞かせております。それは先生も御案内のように、日米間には我が日本の一方的な膨大な貿易黒字の累積がございますし、むしろ、この日米関係の改善のために、米国の議会は、来年の中間選挙も控えて、日米間の貿易不均衡に大変厳しい姿勢で政府に発言をいたしております。アメリカ政府はアメリカ政府でもまた日本に対して厳しい意見を申し入れてまいっておりまして、日本の外交を預かる責任者としては、日本にとって一番大切な国がアメリカでありますから、安全保障の関係も踏まえて、日米関係の信頼の醸成、それから均衡した貿易関係というものをぜひ構築していきたい。それには、九月から始まった構造調整、さらにスーパー三〇一条の中間報告、あるいは明年のウルグアイ・ラウンドと、本当にこれからの一年間というものは厳しい日米関係が続くだろうと自分に言い聞かせております。  一方では、長年の懸案でございました日ソ関係の解決に全力を挙げてひとつ努力をしてみたいと考えております。先般の日ソ外相会談で、これから明年にかけて、ヤコブレフソ連最高幹部会議の議員が団長として来月お越しいただくわけでありまして、十二月には日ソ平和条約作業グループの会議がございますし、三月中旬にはシェワルナゼ外務大臣が来日される。また、明年の暮れまでに日本の外務大臣がソ連を訪問する。さらに、明後年はゴルバチョフ書記長が日本に来られるというような、これから一年間日ソ関係というものは非常に大きな局面を迎えてくるのではないか。  一方、日中におきましても、大変大きな中国の天安門事件以来の中国の変化がございますし、ヨーロッパはヨーロッパで統合の問題がございますし、東ヨーロッパには経済恐慌が起こりつつある。  こういう中で、外交は何か一つだけということではなしに、これだけ国際政治が激しく揺れ動く時代でございますから、全般的に、日本が経済が安定し、そして安全が確保され、そして世界各国から信頼される国家にぜひ日本というものの位置を築きたいというのが私の念願でございます。
  299. 大矢卓史

    大矢委員 アメリカ、ソ連、中国、これから大変重要でございますし、心強い御発言を聞かせていただきました。  そこで、きょう問題になっておりますのはODAの関係でございます。先ほどから大勢の先生方がお触れになっていらっしゃいますけれども、これは私もちょうど議会の方から、コスタリカでございますとかパナマ、それからバングラデシュ、そしてついこの間は渡部委員と一緒にインドネシア、マレーシア、ここらをODAの関係の視察をさせていただきました。マスコミにおきましてもいろいろとその問題が取り上げられておりまして、きょうからまた毎日新聞の方でキャンペーンを張られるようでありますし、読売新聞には過去二回にわたっていろいろと連載をしていらっしゃいます。  これは先ほどからお聞きをいたしておりますと原則があるようでございまして、日本から余り干渉がましいことを言わないでその国その国の申し出を受けてやることだということでございますけれども、やはり、先ほどから言われておりますように国民の大事な税金、それをそれらの諸国によかれと思って援助させていただくわけでありますから、在外公館は大変御苦労でございますけれども、その点の調査、またそうすることによって一体その後どういう効果が出てくるのか、そして、それによって両国間の親善と国民の友好がどう保たれていくのか、そういうことが中心に行われなければならぬ。  これはいろいろ四省庁どうのこうのということがございますけれども、やはり日本の外交の一環としてODAがある限りは、先ほどから経済協力局長が御答弁でございますけれども、外務省が中心になってやらないと、四省庁それぞれが中心で、また各省庁全部がかかわり合いをして思い思いにやっておられたのでは、その結果がマイナス面が出てくるのではないか。それには非常に関係者の皆さん方が御苦労で、予算も非常に少ない、人手もないということのようでございますけれども、やはり基本的には外務省が中心になってそれらのことを全部やって、そして、先ほどの大国に対するおつき合いとこういう国々とのおつき合いによって日本の平和を守っていく、安全を守っていくということ、軍備によらない今後の日本の生き方ということが出てまいらなければならぬと私は思うのでございますけれども、先ほどからいろいろと聞いていらっしゃいまして、大臣お忙しいですから全部が全部目を通すというわけにいきませんでしょうけれども、ODAに対してどのような問題があって、これをどのようにこれから解決していかなければならぬのか、基本的にお考えがございましたらお願いいたします。
  300. 中山太郎

    ○中山国務大臣 委員から大変心の温まるお話がございました。私率直に申し上げまして、ODAのあり方、こういうものについて、経済大国となった日本が軍事力によらないで世界の平和と繁栄に貢献するのは、やはりODA、これを充実さしていくことだというふうに考えております。  そのように申しましても、急速にこのODAの資金枠といいますか、予算も膨張してまいりますし、また、軍事大国にならないでこれを膨張させることが経済大国としての日本の生きる道でございますから、それに対応できるだけの陣容、員数が、あるいは技術者が全部直ちにそろっているかという点に一つの大きな問題点があろうかと思います。各国との援助額の比率を見ましても、日本は相当な金額を極めてわずかな人間で対応している。ここらに一つのODAの事務量のいわゆる過重問題があるのではないかというふうに率直に申し上げたいと思います。  また、全部何をやっても百点満点というわけにはまいりませんけれども、国民の間に、自分たちの納めた税金が外国でむだ遣いされているのではないかという声があることも事実でございます。こういうような声を耳にしながら、やはりODAの実施については真剣にやっていかなければならない、もしいろいろな欠点があれば、それを改善することに勇気を持って当たらなければならないと、私自身は就任以来役所に対しては厳しく申しております。これから、こういう問題を踏まえて、相手国の要請をそのままのんでいくという形ではなしに、受ける国といわゆる援助する我が方との間に、共同で問題の事前の審査を十分行う、そして、できれば第三者の評価も受けることが必要になる時代がやってくるかもわかりません。また、それが終わった後のいわゆる評価という問題も相当厳重にやっていかなければならない。  いずれにいたしましても、DAC加盟国の中ではまだGNPに占めるODAの比率が〇・三二でございますから、他の国は〇・三六の平均値を持っております、国際目標値が〇・七でございますから、私どもといたしましては、これらの先進諸国をやや下回っているということも率直に認識をしながら、このODAの拡充、充実に努力をしなければならないと考えております。
  301. 大矢卓史

    大矢委員 そこで、これからも大いにODA予算を伸ばすことにつきましては、軍備ではいろいろ問題がございますけれども、議論が分かれますけれども、ODAの予算を伸ばすということにつきましては、与野党これは一致できる問題である。ただ、それが本当に目的どおりに使われておるのかどうかということが大変問題だと思います。  そこで、今の各国からの申し入れということですけれども、私どもやはり実感的に見ておりまして、読売新聞にも載っておりますように、実際に各国が考えてこういうものを要請をしてくるんだろうかということになりますと、やはり日本の商社、それに類する人たちが日本の国に対して要求をする場合のアドバイスをしているのだ。そして、それは何ゆえやっているのかといいますと、その結果、自分たちが、工事であり、また品物であり、いろいろなものを納めていく、商売のためにやっておる。外務省の御説明を聞いておりますと、非常にコンサルタントが当初からいろいろな計画をしてやっておるというのですけれども、現実は、私どもが感じ取っておりますのはそういうことでなしに、やはりそういう商社なり建築総合商社が各国に働きかけて、そしてそれを日本向けの書類をつくって持ち込んでおるのだというふうに聞くわけであります。また、私どももそういう実感を持っておるのです。  このコンサルタントというのは、いろいろと資料をいただきますと、日本で登録数がたくさんあるのですけれども、実際にやっていらっしゃるところというのはやはり限られた数だと思います。経験等いろいろ言われますと限られてきます。ただやはり、コンサルタントが果たして当初からそういう国の相談を受けながらやっておるのか、逆にまたコンサルタントと商社とが一体となって売り込みに行っておるのか、そこらが大変紛らわしい面があって、これは外務省が現地の実情を一番よく知っているのですから、外務省の方で、こういうことをすればその国がよくなる、こういうことをすれば国民に喜んでもらえるということを、もっと在外公館の人数をふやしながらそういうものに取り組んでいただくのが一番いいことではないかと思うのですけれども、いかがでございましょうか。
  302. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先生の御指摘のとおりでございまして、関係する省庁が多岐にわたっておりますけれども、外交に対する責任は外務省でございますから、このODAに関しては外務省が中心的存在となって全力を挙げて努力すべきであるという、お説のとおりだと思っております。
  303. 大矢卓史

    大矢委員 そこで、先ほどから言われておりますように、行われていることの取りまとめも含めて全部掌握していただきたい、そしてそれの評価をしていただいて、次のステップにかかっていく、そういうことでなければ、他国のことだからとか、また他の省庁のことだからということで、必ずしも外務省が全部掌握していらっしゃるように思わないわけです。その点を申し添えておきたいと思います。  そこで、私ども各現地に行って考えられましたことは、今のコンサルタントが余りにも実際のコンサルタントとしてのお仕事をしていらっしゃらないのではないか。その割にいただいておる報酬というのは全工事費の一〇%に近い、またはオーバーしておるというようなことをいただいておるわけですね。そして、実際の現地のそれまでの詰めは全然違うところでやっておられて、設計と管理ということで、国内的に言いますと、大きな工事になりますと、いい悪いは別として二%か三%ぐらいまで、これでおさまる、諸外国だから少しは高くなるだろうけれども一〇%近い、またはそれをオーバーするようなコンサルタント料が払われておるということは、私ども見ておって、何かそこらに、果たしてこれでいいのだろうかという疑問を抱くわけです。それが、言われておりますように、現地なら現地政府、または国内なら国内のあらゆるところにもし不正に利用されておるというようなことがあったら大変ですし、それが現実にそのコンサルタントがいただいておるとしたら、きのうも聞きましたら大体八%ぐらいだと言っておりましたけれども、それよりも多い金額をいただいておるわけでありますね、そういうことになりますと大変不明朗な点がある。この点もこれからよく調査をしていただいて、果たして今のあり方がいいのかどうかということをやっていただきたいと思います。  そこで、事後の調査ということで、経済協力局が「経済協力評価報告書」というのを出していらっしゃいます。今もおっしゃいましたように第三者の皆さん方に評価をしていただいてということでございましたけれども、いろいろな方々がその後の評価をしていらっしゃるわけです。外務省と国際協力事業団が派遣した調査団、それから在外公館による評価、第三者による評価、経済技術協力実施機関による評価、これらをやっていらっしゃるわけです。そして第三者による評価、この中で見ますと、これはどういう方にその委嘱をされるのか、そういう基準か何かあるのですか。
  304. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 先生御指摘のように、事後の評価は大変重要だと私どもは思いまして、八二年以来力を入れて行ってきておりますが、その行い方に関しまして、まさに先生御披露されたような幾つかのやり方がございますけれども、有識者、外国人専門家等の第三者評価はさらに力を入れていきたいと思っております。  具体的にどういう人選を行うかということでございますけれども、自薦、他薦を含めまして、私どもから見まして、援助に関しましてそれなりに見識を持っていらっしゃる方には積極的にお願いしておりますし、それから、外国人の専門家という点では、国際機関関係者、それから諸外国の援助機関の専門家等にお願いをし、出しております。
  305. 大矢卓史

    大矢委員 先ほど大臣もおっしゃいましたように事後の評価というものも大変大事でありまして、今言われました方法でいいのかどうか。  その中に、私がちょっと不思議に思ったのは、本年度はございません、元年度の三月の報告書にもございませんけれども、六十三年度、そして六十二年度にもございません。六十一年度の、ただいま挙げました有識者に依頼して実施をした評価視察の報告書の中に、その有識者の中に、これはいろいろとその方、その方の持っていらっしゃる肩書があろうかと思いますけれども、自由民主党政務調査調査役というのが、おのおの違う方でございますけれども二年に一遍ずつ行っていらっしゃるわけですね。先ほど申しましたように、どこかでそういうものがセットされて援助がなされるというのと同じように、またその後のものを一政党の政調会の調査役という方が政府のあれとして行かれるということは、私どもからとりますとちょっとどうかなと。内部でやられることもそうですけれども、やはり政府・自民党、与党の一員の方が調査に行かれるということについてはちょっと解せない感じがいたしますけれども、いかがでございましょうか。
  306. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 先生御指摘のように、過去におきまして何回か自民党の政調会の調査役の肩書を持っていらっしゃる方にお願いしたことがございますが、それは、決してそういう肩書を持っていらっしゃる方にお願いしたということではなくて、農業問題について非常に見識のある方には東北タイの農業協力の評価をお願いするとか、ODA全般について従来から非常に関心を持って、自民党の調査役ということではなくて、賢人として関心を持っていらっしゃる方には全般のことについて評価をやっていただくということで、いろいろタイトルは書いてございますけれども、私どもがより重視しておりますのは、まさにそういう分野でそれなりに見識と経験を持っていらっしゃる方の御意見を伺いたいということでございまして、何々党は何々ということを考えての選択ではございません。
  307. 大矢卓史

    大矢委員 選択ではないと言いますけれども、そういうことでここに、おたくからいただいたものに載っているわけですから、余りみっともいい話ではないのではないか。ですから、専門家なら専門家としての何か名称をつけて行かれるなら行かれるのもいいですけれども、そういう自民党の政調会の調査役という方が、どういう地位の方か知りませんけれども、二年に一遍ずつ行かれるというのは、何かやはりODAの初めのときのいきさつからして、こういうことが一つでもあるとしたら国民の中に非常に不信感を持たれるのではないか、私はこう考えます。  大臣、いかがでございましょうか。
  308. 中山太郎

    ○中山国務大臣 自民党の政調会の調査役が依頼を受けて報告を出しているという御指摘でございますが、率直に申し上げて、党の政調会では、ODA予算も含めていろいろと予算編成の際の実務あるいは今後の、次年度計画等を絶えず作業をやっておりまして、そのような中で専門的な人間を外務省の方から委託をしたのかなというふうに認識をいたしております。
  309. 大矢卓史

    大矢委員 それ以上は大臣御無理でしょうけれども、そういうことがありますし、非常に何か我々も、その一連の流れの中に、それでなくてもどこかで仕組まれてどこかで金が出てというようなことが言われておるわけでありますから、そういうことを思われないようにこれからしていただきたいと思います。  そこで、経企庁長官にお尋ねをいたしたいのですけれども、先ほどから主婦の代表、消費者の代表ということで大臣に御就任になられまして大変御苦労だと思いますけれども、やはり各国会の先生方、与党の先生方は選挙に選挙を重ねて大変厳しい中で大臣のいすというものを獲得されるわけであります。そして、参議院のあのような消費税に対する国民の怒り、それを少しでも和らげようという形かどうか知りませんけれども、白羽の矢が立てられたと思います。今までの経済評論家としての、放送等で私も拝見をいたしておりましたが、本当に立派な御意見を述べていただいておるなと思っておったのでございますけれども、やはり大臣ということになりますと、専門分野はもちろんですけれども、やはり経済が専門でいらっしゃると思いますけれども、一つの大臣になられる場合には、やはりそれだけの経験を積み、また自分の得手とするポストにお座りになるということが一番ふさわしい。まあ中には順番だからということでどんな大臣もやられて非常につらい思いをしていらっしゃる方もあると思います。  そういう中で、期待を担ってなっていただいた長官でございますけれども、先ほどのお話で、私は消費税の問題で一点だけちょっと申し上げておきたいのは、いろいろな意見がある、また長官御自身の消費税に対しての意見があろうかと思いますし、それはまた閣議の中でお伝えをするということでございますけれども、長官は経企庁長官であると同時に国務大臣ということである。ですから、すべての閣議での決裁について、あなたがノーと言えば何も通らないわけであります。ただ単に経企庁だけの長官ということでなしに、内閣が一致しなければどのような法案も達せないわけでありますから、そのときに、せっかく今日まで消費者の味方として皆さん方が期待を持っていらっしゃる、そしてあの厳しい自民党の中から期待を持って選ばれた長官として、消費者のそういう感覚というものを政治の上にじかに実現をしていただきたいというのが望みだと思います。  ただ、先ほどもお話しのように、こういうことをお聞きしてそれをお伝えするということでなしに、あなた自身の、消費税についてどうお考えになっているか、これはもう選挙前と選挙後と、また大臣に就任されたときと違うと思いますけれども、ただいまの御心境をお聞かせ願いたいと思います。
  310. 高原須美子

    ○高原国務大臣 選挙を戦わずして大臣になっておりますので、その分私は民間の代表ということで大変責任を感じております。でも、男だから女だからという区別ではなくて、経済企画庁の長官といたしましては、経済の専門家として経済のかじ取りをしていきたいと思っております。  お聞きの消費税につきましては、私は、企画庁には国民生活、物価という非常に生活にかかわりのある担当分野がございますので、消費者の声を同じ消費者の立場として聞きたいということで、先ほど御答弁申し上げましたように多くの消費者の方の声を聞いてまいりました。ただ、私自身は政府の税制調査会の委員といたしまして税制改革に加わってまいりまして、消費税を含む今回の税制改革につきましては、これはひずみを直すと同時に高齢化社会に備えるという意味で、間違っていない基本的な方向だというふうに思っております。でも、御批判を受けていることも事実でございますので、その辺につきましては消費者の声をひざ突き合わせてじっくり伺おうということで、先ほど御報告申し上げたような声を聞いて、政府にお伝えしたわけでございます。  ただ、私はあくまでも民間出の大臣でございますので、いざとなりましたらきちんと筋を通すという気持ちは持っておりますので、そのときには必ず筋を通させていただくつもりでやっております。
  311. 大矢卓史

    大矢委員 もう細かいことを申しませんので、これからも筋を通して御検討願いたいと思います。  外務大臣、経企庁長官、結構でございますから、どうぞ。  それでは、通産大臣にお伺いをいたしたいと思います。  今アメリカと日本とで構造協議が行われておりますけれども、これは我々からいたしましてもごもっともだなと思うことが多いわけであります。日本の政治がだんだん変わってまいりまして、世界的にも共産主義がUターンをいたしますし、また我が国も、やはりこれから最低六年間というものは参議院では今の政府・与党が過半数を割っている、そういう中で、次の総選挙がどうなるかは別にいたしまして、そういう状態の中でのこれからの運用をしていかなければならぬ。そうなりますと、やはり利害の一致をいたします問題、これらについてはお互いに協力し合いながら日本を発展させていかなければならぬ、こういうことになってまいります。ですから、俗に言われておりますように、もう日本では与野党の区別がなくなってくるであろう、それでなければ政治そのものが混乱を重ねていくだけだというふうに言われておるわけです。  そこで、イギリスの野党はアメリカだと言われておりますけれども、そのアメリカからいろいろなことを言われて、そしてそれが、私どもも常におかしいではないかということを国内でも言っており、国会で言っておるのですけれども、やはり国内の声としては余りそれが通らない。そういう中で、この構造協議について、正すべきことは正していくという方針でこれからやっていただきたいと思いますけれども、いかがでございましょうか。
  312. 松永光

    ○松永国務大臣 先生、構造協議の話でしたかな。――この構造協議の問題でございますが、どういう背景で日米間の構造協議の問題が出てきたのかというと、先生御存じのとおり、日米間で貿易の不均衡が大変大きい。日米貿易の関係で、日本が三年連続して五百億ドルの黒字を出し、アメリカが同額の赤字を出しておる。また、世界全体から見ても日本の方は三年連続して九百億ドルを超す黒字、アメリカの方は五年連続して千億ドルを超す赤字と、なかなかアメリカの赤字が減らない。  そこから、その原因はどこにあるか。本当の原因は、この貿易不均衡を是正するための一番大事なことは、マクロの経済政策をきちっとやっていくことが一番の道なのでありますが、それだけでは相済まぬ。どうしても日本の経済構造の中に輸入を抑制する、そういう仕組みがあるのじゃないか。また、アメリカの方には輸入がふえて輸出がふえないという経済構造があるのじゃないか。双方がそれぞれ相手の国の経済構造について意見を述べ合って、そして直すべき点はお互いに直し合って、そして望ましい状態をつくり上げていこう、こういったことで日米の構造協議が始まったわけであります。  我々としては、アメリカから指摘されたことにつきましては友好国のアドバイスと受けとめて、直すべき点は日本国民の利益のために我々の責任において直していこう、こういう立場でこの構造問題の協議には臨んでいきたい、こう考えておるわけであります。
  313. 大矢卓史

    大矢委員 時間がございませんので、この日米構造問題協議、これからも発展すると思いますけれども、やはりアメリカが何か言う、また外国が何か言うと、日本の政府なりお役所はそれを受け入れるということでなしに、やはり国会で問題になったことを真剣に受けとめて改善をしていただきたい。  次に、私は、以前の決算委員会で根抵当の問題を取り上げさしていただきました。この問題について、保険公庫の総裁来ていらっしゃいますか。――恐れ入りますけれども、この決算書を見させていただいて私の考え方を申し上げると、支払い不能になりまして、そしてそれを保険公庫がお立てかえをされる、そしてそれを回収するという場合に、後に残りました金利と申しますか、それがどの程度この決算の中に入っておるのか、それをお答え願いたいと思います。
  314. 片山石郎

    ○片山説明員 ただいま先生御質問の点でございますけれども、私、今理解するところがちょっとあるいは間違ってとっておったらまた訂正いたしますが、損害金について公庫が収納しているわけでございますが、その収納している割合はどのぐらいになっておるか、こういうふうにお聞きいたしましたのですが、その割合は、回収納付金のうち、損害金としまして受けとっておる部分が九・七%、これが六十一年度でございます。六十二年度は九・五%、六十三年度は一〇%ちょうどであります。大体一〇%程度というふうになっております。  以上でございます。
  315. 大矢卓史

    大矢委員 ただいまお聞きいたしますと、損害金立てかえをして、それは物によりましたら七○%、七五%、八〇%の部分があるかもわかりませんけれども、見合いますのは一〇%程度だということであります。それはやはり全体の保証協会で保証を受けて、それが返済不能になって代位弁済をされて、そして元金が返っていって、最後に支払われる金利が大体一割だということであります。  そうなりますと、私がこの前も申しましたように、普通の場合に銀行は担保力というものを大体六〇パーぐらいにしか見ないけれども、その担保力を公の機関では八〇パー見るんだ、だから非常にすばらしいんだということを言ってきました。しかし、その根抵当のことについて、原則抵当、そして根抵当は特別の場合においてということの実施がなされておるのか。また、根抵当になりました場合にどうしても二〇%取らなければならぬ。法律ではさかのぼって二年間にわたって取れるんだから、根抵当の場合には二〇%限度枠しか取れないから、それをオンしなければならぬという考え方。現実に即しましても、今お答えのように一〇%しか取っておらないわけであります。それをなおかつ二〇%がいいんだという指導を中小企業庁はしたことはないと言うのですけれども、したことがないと言いながら、その保証協会の方でそれを指示して、また政府機関全体が、取るのなら二〇%増しということをとっておるとしたら、これはやはり、せっかく中小企業の政策を行っておるその気持ちとは裏腹にその結果が出ておるのではないか、そういうことを私は常にここで申し上げておるわけでありますけれども、大臣、このことおわかりでございましょうか。
  316. 松永光

    ○松永国務大臣 抵当権と根抵当権の問題でありますが、委員御承知のとおり、抵当権は最後の二年分の利息、損害金は抵当権の額として定められた金額のほかに担保されるわけですね。ところが、根抵当権の場合は御承知のとおり限度額以内、こうなっておる関係がありますので、そこで通常、根抵当権を設定する場合には、例えば貸し付けた金額に二割増し程度を極度額として定めて、そして金銭の融資がなされる、そういう仕組みだというふうに私は承知いたしております。その場合に、融資をする場合に、根抵当でいくか抵当権でいくか、これは借りる人、貸す人との間の協議で決まることでありますが、どちらが有利か十分話し合いをして、その上で抵当権または根抵当権が先ほど言った条件のもとに設定されるというのが通常の例だ、こういうふうに聞いております。  なお、委員御承知のような中小企業に対する場合にはどう配慮すべきかということでありますけれども、根抵当権の場合には返済がなされていけば余裕が出てくるという関係になるわけでありますけれども、限度額とそれから実際借りている残額との差が出てくるということでありますが、その場合には、話し合いに応じて極度額の減縮の登記をするなどという方法もとられておるということも聞いておるわけでありまして、そういった適切な方法をして中小企業者のために配慮をするということが望ましいことではないかというふうに私は考えております。
  317. 大矢卓史

    大矢委員 時間がありませんので、大臣にちょっとお聞き願いたいのは、やはり何が一番根抵当がいいんだといいますと、何遍も何遍もつけかえしなくてもいいから、費用がかからないからと言うのですね。それはそれで費用の面もやはり一般とは違う費用でございますから、そういう費用の面でいいからこれがいいんだという進め方をしてもらっては困りますし、また今言いますように、最終的に事故がございましても一割しか取っておらない、実際にそういう政策をやっておられるわけですよね。それなのになぜ二割初めから押さえておかなければならぬのか、そういうことは私は解せないわけです。だから、そのことをもっと大臣、通産を総括しておられる大臣としては、やはり日本の国の中小企業、これが事業数においても従業員数においても日本の経済を支えておる、せっかくそれに対してそれだけの手当てをしており、またそれだけの運用をしておるにもかかわらず、現在なおかつ、そういう法律論だけで、取れるから取るんだ、二割取れるから。だからそれは現実に事故があった場合にいけないからと言うけれども、大体五年ぐらいのもので、その時点では、借りた時点でそれがだめになるということはないわけであります。調査を十分しておられたら、平均的に言って少なくとも一年以内につぶれるところはほとんどないわけでありますから、既に二割はそれで補完をしておるわけである、それにもかかわらず初めから二割余計取っていくということは、私はこれは許せることではないと思います。  そういう点、時間がございませんので、大臣にもっとこの問題を研究していただいて、この次のときにはこの問題で明快な御答弁をいただきたい、こういうことを申し添えまして終わらせていただきます。
  318. 尾身幸次

    尾身委員長 代理 次に、岩佐恵美君。
  319. 岩佐恵美

    岩佐委員 今、第二次ごみ戦争という言葉が生まれているくらい、ごみ問題が大変深刻になっています。きょうはこのごみ問題についてお伺いをしたいと思います。  なお、委員長にお願いでございますが、途中で資料などを提示させていただきますので御了解をいただきたいと思います。
  320. 尾身幸次

    尾身委員長 代理 はい、結構です。
  321. 岩佐恵美

    岩佐委員 二〇〇五年には東京、神奈川、千葉、埼玉の一都三県で三百四十二万トン、東京ドーム二・五杯分のごみがあふれる、こういうふうに厚生省や首都圏廃棄物対策協議会が調査報告を発表いたしております。この点について厚生省いかがでしょうか。
  322. 坂本弘道

    ○坂本説明員 お答えいたします。  最近の消費活動の拡大や事業活動の活発化に伴いましてごみの排出量が毎年ふえ続け、全国のごみの総排出量は一日に約十二万トンということになっております。また、特に大都市におきましては、ここ数年全国平均の伸びの倍近い伸び率でごみが増加しておりまして、大きな課題になりつつあります。  現在、我が国では、ごみを焼却処理し、減量化、減容化、無害化した上で埋立処分しておりまして、特に十一大都市につきましては、ごみの減容化を図るためのごみの焼却率、これが昭和六十一年度で八三%と全国平均の七二%より大きくなっております。しかしながら、この焼却の残渣等の埋立処分場の確保が、土地利用の高度化している大都市を中心に困難となっている状況でございます。
  323. 岩佐恵美

    岩佐委員 ごみ問題については、考えればというか将来を見れば見るほど展望がない。特に首都圏においては非常に深刻な問題でございます。  例えば、ことしの五月に、千葉県から六百キロも離れた青森県に持ち込まれたごみが、その量が町の一年間のごみの総量に近い、そういう上に生ごみまでまざっていたということで、住民が持ち込みを拒否した、こういう報道がございます。  また、東京の例でございますけれども、九月の末に下町にハエの大群が押し寄せました。これは、東京のごみがふえ過ぎて生ごみを燃やさないまま埋立地に捨てたためハエが異常発生した、その結果だと言われているわけです。これはちょっと大臣に見ていただきたいと思うのですが、この写真ですね、ハエ取り紙にいっぱいハエがくっついています。北品川一の薬局の話なんですが、これは新聞に出ていたのですが、ハエ取り紙が例年だったら一年で五十本ぐらいしか売れないものが、この時期に三日間で七十本売れた。物すごいハエなんですね。これをちょっと見ていただきたいと思います。  東京都は新たにまたごみの埋立処分場をつくる、そういう計画のようでございますけれども、最近のペースでごみがふえ続ければ完成後の寿命というのは五、六年と言われています。しかも海の埋め立てについては、ことしの環境白書でも、東京湾などの「閉鎖性水域においては、貴重な自然や水面の確保に留意していく必要がある。」と指摘をしているように、最小限にとどめなければならない、そういう状況になっています。  結局、ごみ問題の最大の課題というのは、いかにごみを減らすかという問題だと思います。  首都圏など大都市部でごみのふえている原因は何だとお考えでしょうか、厚生省に伺いたいと思います。
  324. 坂本弘道

    ○坂本説明員 大都市におけるごみの急増でございますが、例えば東京都を例にとりますと次のようになっております。  ごみの収集量が昭和五十八年には三百七十八万トンでございましたが、六十二年には四百四十九万トンと約一・二倍に増加しております。このうち特に事業系の一般廃棄物の量は、昭和五十八年に約七十万トンでございましたが、六十二年には百七万トンと約一・五倍に急増しております。また、その中で紙の占める割合が増加していることが目立っております。
  325. 岩佐恵美

    岩佐委員 今お話がございましたように、東京都の清掃局の資料によりますと、この四年間で二十三区の一般家庭ごみは一三・六%ふえているのですが、事業者が出したいわゆる直接処分場に持ち込む、これは持ち込みごみというふうに言われていますが、これが同時期に正確に言うと七九・九%、八〇%伸びているということでございます。一九八四年には、ごみ全体の中に占める今の持ち込みごみの割合というのは一八・九%だったのですけれども、これが一九八八年には二六・九%と非常に高くなっているわけです。この持ち込みごみの問題は、中間処理、つまり焼却をしないでごみの中に生ごみもまざってそれで捨ててしまう。ですから、かさばるし、ハエが発生する、こういうような原因になっているわけです。この四年間のふえたごみの総量、これは札幌市の一年間のごみの総量に匹敵をするというぐらいな、物すごい膨大なごみのふえ方でございます。やはりこういう点から、事業者がごみを出しほうだい、こういうことを改めさせなければ、東京のごみ問題というのは解決をすることができないと思います。  また、プラスチック容器など処理が難しい、そういう容器をつくっている企業がごみ問題については知らぬ顔、こういうことでは通用しないと思います。  通産省は事業者、企業に対する監督官庁でございます。そういう点で私は、通産省のごみ問題に果たす役割は非常に大きいというふうに思っています。まず最初に、大臣の基本姿勢をお伺いしておきたいと思います。
  326. 岡松壯三郎

    ○岡松政府委員 ただいま御質問の東京都における事業系のごみの問題でございますが、最近の景気の好調あるいはオフィスビルが大変ふえているという実態があるわけでございまして、これに伴いまして紙類を初めといたしまして事業系の廃棄物が大変増加しているということでございます。これによりまして処分場の確保等の問題が生じつつございます。  通産省として、しからばどうするかということでございますが、従来から廃棄物の再資源化ということが重要であると認識いたしまして、紙類等の個別の廃棄物のリサイクルの促進等を積極的に進めておるところでございまして、今後とも一層の施策の充実を図りまして、問題の緩和に努めてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  327. 岩佐恵美

    岩佐委員 大臣、ちょっとよく聞いていただきたいのですけれども、要するに東京のごみの増加の最大の原因というのは紙ごみの増加にあるわけですね。この原因は大きく言って二つあると思っています。  一つは、円高によって輸入パルプが安くなったため、古紙の価格が下がってしまって、古紙が再生利用されずにごみとして捨てられている。新聞報道によりますと、製紙工場への売り渡し金が数年前までキロ五十円だった古紙が今では十円台だ、だから古紙回収業の方々が廃業される、団地でも古紙をほとんどとりに来るということがなくなってしまった、こういう状態になっているわけですね。最近二年間ですけれども、輸入パルプは約二〇%ふえています。それから輸入紙も約二一%ふえるということですので、その分古紙がごみに回っていると考えてもいいと思うわけです。  それからもう一つは、OA紙の使用増ですね。これでごみがふえている。最近二年間でコピー用紙、コンピューター用紙などの生産が六八%もふえているのです。東京のごみの問題はOA紙増による、ごみ関係者はこういうふうに指摘をしておられます。日本は世界の木材輸入の四分の一を占めています。熱帯林などの森林破壊の張本人ということで国際的な批判も受けているわけです。これも新聞報道ですけれども、東京二十三区一年間の紙ごみが百六十八万トンだ、これを樹木換算すると三千三百六十万本に当たるのだ、こういう計算もございます。地球環境保全という見地からも、古紙がむだ遣いされる、こういうことというのは非常に問題だと思うのです、ごみにどんどん回っていくというのは。やはりこれは、今言われたように、従来からもやっていますし、これからもやりたいというような、ちょっと従来型の取り組みでは間に合わない、思い切った取り組みが必要だ、そういう点で私は、大臣の基本姿勢についてお伺いをしたいということで申し上げたのです。
  328. 松永光

    ○松永国務大臣 我が国は従来から、森林資源の保護、省エネルギー、清掃事業の負担軽減、こういった観点から古紙の回収、利用に努力をしてきたわけです。現在では、我が国の紙パルプ産業の製紙原料に占める古紙の割合は約五〇%、世界的に見ても高い水準にあるわけでありますが、委員御指摘のように、最近増加しておるOA用紙については、オフィス等の事業所から排出される情報用紙等の回収システム、それから利用拡大策、こういったものを検討する必要があると考えております。  いずれにせよ、古紙利用の拡大の重要性をしっかり認識して、今後とも積極的に取り組んでまいる所存であります。
  329. 岩佐恵美

    岩佐委員 次に、プラスチックのごみについて伺いたいと思います。  家庭用プラスチックごみの大半は、食品やシャンプーなどの容器やポリ袋、発泡スチロールなどの包装材であります。特にその容器の中で一番多く使われているポリエチレンテレフタレート、PET容器と呼ばれていますけれども、これは最近五年間で三倍にもふえているわけです。プラスチック類のリサイクルは紙とかガラス、鉄、アルミと違ってほとんどもうゼロに近いという状況です。しかも有毒ガスを発生するものもあるために、東京二十三区の場合で見ますと昨年度の家庭ごみの一一%がプラスチックなんですけれども、そのうちの半分近い四三%が不燃ごみとしてそのまま埋め立てられているわけです。埋め立ての場合、このプラスチックごみというのは、かさばって場所をとり、しかも土の中で分解しにくい、そういう問題がございます。  最近、アメリカやヨーロッパでは、プラスチック容器の使用を法律や条例で規制をする、そういう動きが広がっていると報道されていますが、日本でも具体的対応が必要だと思いますけれども、通産省にお伺いしたいと思います。
  330. 高橋達直

    ○高橋(達)政府委員 ただいま委員から御指摘がございましたように、プラスチックの排出量と申しますかごみの中のプラスチックの量は、年々増加しているものと推定されるわけでございます。これは生産増もかなりのテンポでやっておりますので、国民生活にプラスチックが非常に便利であるということで、そういった国民のニーズに対応したいわば副産物であるというふうにも考えられるわけでございまして、こういった便利さがあることは事実でございますので、同時に、こういった環境への影響を抑制していくという両にらみの構えでいかなければいけないというふうに私どもは思っております。  そういう観点からまいりますと、御指摘がございましたような製造を規制するとかあるいは使用を規制するということは、やはり国民生活に多大の支障を及ぼすおそれがあるというふうに考えられますので、私どもとしては適当でないというふうに考えておりまして、むしろ現実的な対応といたしましては、当面は廃棄物の処理能力を拡充する、あるいは回収、再生利用、こういった方向で努力をしていくことが重要であるというふうに考えておりますし、また将来は、現在のプラスチックが難分解性であることが大きな問題であるわけでございまして、分解性のプラスチック、生分解性プラスチックの技術開発する、これは現在私どもの方でも手をつけておるところでございまして、こういった長期的な技術開発、そういうものも将来は推進しながら、社会的ニーズと環境保護の両立を可能とする技術によるブレークスルーを図ってまいりたいというふうに考えております。
  331. 岩佐恵美

    岩佐委員 今、分解する新製品の開発ということですが、これは非常に時間がかかるわけですね。それで、今言われたようにリサイクルだとかいろいろな問題についてうまくいっていればこんな深刻な問題は起こらないわけですから、最初に指摘をしたような問題が起こらないわけですから、だから今が大変なんだから今どうするのですか、そういう視点に立って事の重大性を認識してもらって考えていかなければいけないというふうに思うのですね。  例えば飲料の容器について言えば、同じ瓶を繰り返し使用するリサイクルシステム、これを確立することが望ましいということが一般的に言われているわけですね。例えば、通産省の資料によりますと、昨年のガラス瓶の生産・輸入量は二百四十万トンだそうです。ビール瓶などの再使用可能瓶が別に市場に二百八十五万トン保有されている。これがもし仮に三回程度再利用されたというふうなことにいたしますと、合計で千九十五万トン分の瓶が年間使用されている、こういうことになるわけですね。では、これを生産量で比較してみると、生産量の四倍に当たるわけですね。だから、もしリサイクルをやめたとしたら、途端に生産量をふやさなければならない。それは当然今度はごみになって出ていくというふうになっていくわけですから、これは重大な問題になるわけですね。  現在でも東京二十三区の家庭ごみの八%がガラスであります。だから、リサイクルというのはごみの減量にとって非常に重要だと思うのですけれども、この点、再度通産省の御認識について伺いたいと思います。
  332. 南学政明

    南学政府委員 ガラス瓶につきましては、重いとか壊れやすいとかいろいろデメリットはありますが、先生御指摘のようにリサイクルが可能であるというようなメリットがあるわけでありまして、資源の有効利用という観点から極めて好ましい面があるわけでございます。  こうした観点から、通産省では、昭和五十九年にガラスびんリサイクリング推進連合というのをつくっていただきまして、これは瓶メーカー、飲料メーカーあるいは瓶商、こういう人々に集まっていただいて連合をつくっていただきまして、このリサイクルの促進を図っているところでございます。関係業界あるいは消費者等に対する普及啓蒙、あるいは再使用可能瓶の再利用、ガラスくずの再資源化、そういうことを進めておるところでありまして、現在、こうした努力の結果、ガラス瓶の全使用量に占める再使用可能瓶の使用比率は、昭和六十三年で八割を超える水準になっております。  しかし、この現状に満足することなく、我々としてはガラス瓶の回収、再利用の一層の推進に向けて努力を続けていきたいと考えております。
  333. 岩佐恵美

    岩佐委員 しかし実際には、メーカーが努力をすればリサイクル可能なのに、その努力を怠る、時代の流れに逆らう、こういう出来事が最近相次いで起こっています。  一つは、消費税導入と同時に酒税が改正をされました。それに伴って、ウイスキーなどの洋酒メーカーがモデルチェンジを理由に一斉に回収瓶の引き取りを拒否をする、こういう事態がありました。空き瓶回収業者の方を初め地方自治体の関係者もこれを問題にして、何とか以前のような回収瓶の引き取りの復活というようなことがされるようになってきております。まだ不十分でありますけれども、そういう方向に向かっている。  しかし、最近また大手のしょうゆメーカーが、二リッター瓶を一・八リットルのPET容器に切りかえる、こういう動きが伝えられて、これがまた大きな社会問題になっています。  また、清涼飲料水については、一九八二年からPET容器が使用されるようになって、厚生省の指導で業界が一リットル以下の小さな容器は使わないようにしている、こういうことですけれども、最近これを破る動きが出てきているというふうに聞いています。  これらの問題について一体どういう指導を政府としてしているのかということについて、厚生省に伺いたいと思います。
  334. 坂本弘道

    ○坂本説明員 今の瓶等の使い捨ての問題でございますが、一般的には資源の有効利用、廃棄物の減量化のため、できる限り再利用可能な瓶等の使用が望ましい、かように考えておるわけでございます。  それから、プラスチックのことについてでございますが、プラスチック容器はその利便性によりまして広範に使われておるわけでございますが、このリサイクル可能な瓶がプラスチック容器にかわるということは、ごみの減量化の観点から好ましくないということでございまして、事業者に対する指導を行うなど、先ほど先生のおっしゃったような努力を重ねてきたところでございます。  また、生活水準の向上及び製造、加工、販売等の諸活動の拡大によりまして排出される廃棄物の種類が多様化いたしまして、市町村の行う一般廃棄物処理事業が困難となる廃棄物、このようなものも問題となってきておりますので、厚生省では「事業者による製品等の廃棄物処理困難性自己評価のためのガイドライン」というものを定めまして、関係者に示しまして事業指導を行ってきたところでございます。
  335. 岩佐恵美

    岩佐委員 厚生省がガイドラインによって指導されていたということでありますけれども、とってもなかなか困難なんですね。というのは、強制力がない上に、行政指導といっても容器の中に詰めるものによって担当省庁が変わるのですね。例えばお酒は大蔵省だとかおしょうゆは農水省だとか、あるいは果汁飲料も農水省。要するに統一的に対応できにくい、そういう問題があるわけです。  現行の廃棄物処理法第三条には「製品、容器等が廃棄物となった場合においてその適正な処理が困難になることのないようにしなければならない。」今言われたような、そういう規定があって、それに基づいて行政指導が行われておるんだけれども、訓示規定で強制力がないということでございますので、今のようなごみ問題が起こってきてしまっているわけです。  ですから、政府として、メーカーに製造者としての責任をきちんと自覚をしてもらうし、また、きちんと責任をとってもらうというような法的対応も含めて早急に何らかの手を打たないと、今のような縦割りの状況では本当に大変だと思います。  そこで大臣に、これはもう政府全体としてきちっと取り組んでもらうということでございますので、再度この点について、この縦割りの問題を整理していただきながら、政府として総合的に取り組んでいただくということで御意見を伺いたいと思います。
  336. 松永光

    ○松永国務大臣 我が国は、ほとんど国内に資源を有しない、したがって資源のほとんどを海外に依存する国でありますし、しかも経済大国であります。そこで資源の有効利用、我が国にとって極めて重要な施策なんでありまして、そういう見地から、今までも廃棄物の再資源化のための対策を講じてきたところでありますが、今後廃棄物が増大しておるという実態を十分認識をして、紙、プラスチックあるいは、先ほど瓶類の話も出ましたが、そういったものについてのリサイクル、そして業者あるいは消費者、その双方に対する啓蒙・普及といったことに一層力を入れて、資源の再生利用ということがより一層スムーズに進むように努力をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  337. 岩佐恵美

    岩佐委員 メーカーに処分困難な容器、過剰包装などごみをふやすようなことをやめさせると同時に、自治体や住民サイドからのリサイクルの取り組みを強めることが重要である、今大臣御指摘のことでございます。  例えば、東京・町田市では、可燃ごみ、不燃ごみ、それに乾電池などの有害ごみ、そして資源ごみとして瓶と缶に分ける、いわゆる五つの分別収集を行っているわけです。また、粗大ごみについては「はたらけバンク」という障害者施設で修理、再生して販売をして、住民に喜ばれています。こういう活動をもっと全国の自治体に広げていく必要があると思いますけれども、厚生省、いかがでしょうか。
  338. 坂本弘道

    ○坂本説明員 排出されましたごみは、焼却して減客化をする必要がございます。一方、リサイクルを進め、廃棄物量を減らすことも重要でございます。  現在、資源ごみを回収している市町村の数でございますが、昭和六十一年度に全国で一八・七%に当たる六百四十九となっております。  それから、厚生省では従来から地域の実情に応じた廃棄物の資源化、有効利用について指導してきたところでございますが、新たに本年度から廃棄物再生利用総合施設補助制度を導入いたしまして、その整備を推進することなどによりまして、今後ともこの再利用の促進を図ってまいりたい、かように存じております。
  339. 岩佐恵美

    岩佐委員 ちょっと話が変わりますけれども、次は八王子の清掃工場の解体問題について伺いたいと思います。  八王子市で、使用されなくなった北野の清掃工場、この建物の解体の際に、非常にやり方がずさんだったために、アスベストを周囲に飛散させるという事故が九月二十二日にあったということについてです。  経緯についてですが、六点に分けてちょっと説明をしたいと思います。  一つは、建物の横にあるコンベヤーの覆い部分にアスベストが使用されていたのに、アスベストを除去しないまま機械でドカンと壊してしまったということで、アスベストが飛散をしました。  二つ目に、その事故の九日後、つまり十月一日にこの工事に関する住民説明会があったときに、市の担当者は、アスベストのあるところはまだ解体していない、こういう説明をした。住民から事実を指摘されると、事故のことは聞いていなかった、こういうふうな回答をして住民の不信を買ったわけです。  三つ目に、そこで住民が説明会後現場に行くと、事故後九日もたっていながら片づけも十分されていなく、アスベストがあちこち落ちていたということです。ここにアスベストの一部をお持ちしたので、飛散をしないようにちょっと見ていただきたいと思います。  四つ目に、業者の労働基準局に提出した計画書には、どの部分にアスベストが使用されているのかという平面図がないんですね。ここにこういう「実施計画書」というのが業者から出ているのです。これだけ厚いものなんですが、市が環境庁などに説明をしたこの平面図だとどこにアスベストを使っているかというのはすぐにわかるのですけれども、それがわからないような計画書になっているということです。  五つ目に、その上、作業をした労働者はアスベストが使用されているのを知らないで破壊した、壁についていたアスベストをこすり落としていた。作業員への事前教育がなされていない。こういう点で、労働安全衛生法上から大問題ということだと思います。  六つ目に、市は付近の住民に解体工事中のアスベスト飛散についておわびの文書を配っているわけですね。十月十六日付で「過失について」というおわびの文書を配っているということでございますけれども、どうも業者のミスにして市の責任を明確にしていないということで、住民は市の責任回避だということで不誠実だと怒っておられるわけです。  環境庁、労働省、それぞれこの事件についてお調べをいただいて、しかるべく御指導をいただくということにしていただきたいと思っているのですけれども、その点について、それぞれ環境庁、労働省の説明をいただきたいと思います。
  340. 濱中裕徳

    ○濱中説明員 お答えをいたします。  八王子市の旧北野清掃事業所のアスベスト除去工事の際に、作業員の確認ミスによりまして、アスベストが吹きつけられている天井の一部が破壊されたという先生御指摘の件については、私どもも承知しております。  環境庁といたしましては、このような建築物の改修、解体工事の際に、アスベストによる大気汚染の防止を図ることが大変重要だと考えておりまして、六十二年十月に、大気規制課長通知ということで、都道府県、十大政令市の大気保全担当部局長に通知を行いまして、吹きつけアスベストで覆われた天井などが存在する建築物を解体する場合にはあらかじめ吹きつけアスベストを除去すること、またこの際には大気中へのアスベストの飛散を防止するための措置を講ずるように指導してきたところでございます。  御指摘の清掃事業所の件につきましては、作業員の確認ミスが原因とはいえアスベストが吹きつけられている天井を不用意に破壊したということでございますので、私どもで出しましたこのような通知の趣旨に照らしましてまことに遺憾であるというふうに考えております。  環境庁といたしましては、今後東京都とも十分連絡をとりまして、破壊された天井部分の吹きつけアスベストが飛散し周辺地域の大気が汚染されるということがないように適切に対処してまいりたい、このように考えております。
  341. 露木保

    ○露木説明員 お答えいたします。  今般、八王子市の北野町清掃工場におきまして吹きつけ石綿の除去工事の施行が行われましたが、一部の箇所に吹きつける石綿が存在していたにもかかわらず不適切な工事が行われまして、石綿が地上に残置されたままになっていたということにつきましては、石綿粉じんの健康障害防止を推進している労働省としましてもまことに遺憾に思う次第でございます。  今後このような事態が発生しないように、関係行政機関と連絡をとりつつ、必要があれば労働安全衛生法等に基づきまして発注機関に要請をし関係事業者を指導してまいりたい、このように考えております。
  342. 岩佐恵美

    岩佐委員 この問題については引き続き厳重に対応していただきたいと思います。  きょうも、住民の方から届けられた写真がございますが、十月二十九日に写した写真で、地下部分に蓄積された残骸と水、アスベストが白く浮上している。まだあるのですね。それから、ここに解体され、放置されたままのスレートの表面にアスベストが光って見えるとか、こういうアスベストがこびりついたままあるとかいう写真が届いておりますので、これはぜひ環境庁と労働省、あと通産省、大臣に見ていただければということでございます。  それから、厚生省に伺っておきたいのですけれども、全国にアスベストの吹きつけが禁止された一九七五年以前に建てられた清掃工場がかなりあると思います。それがみんな建てかえ時期に差しかかっているはずだと思います。例えば東京二十三区では、十三の工場のうちアスベスト吹きつけ禁止後建てられた二工場を除いてすべてアスベストを使用している、こういう実態でございます。ですから、解体工事をやるときに、今回のようなことがないようきちんとやれということで強力な指導が必要だと思います。その点を伺いたいと思います。
  343. 坂本弘道

    ○坂本説明員 アスベスト廃棄物処理につきましては、その処理が適切に行われますよう、昭和六十二年十月厚生省及び環境庁から全国に通知したところであります。またそれ以外にも、厚生省、建設省、環境庁、労働省から解体工事の際の留意事項等につきまして通知されているところであります。廃棄物行政を所管する厚生省といたしましても、これらの通知を踏まえ、適切に清掃工場の更新が行われるよう清掃部局を指導してまいりたいと存じます。
  344. 岩佐恵美

    岩佐委員 それから、この北野清掃工場を市は新しく建てかえて稼働させたいという意向のようですけれども、住民は、そこは住宅密集地であり、しかも現在し尿処理、下水処理場があるので、これ以上清掃工場は嫌だというような建設反対の運動が起こっています。住民のほとんどが反対しているような状況で建設が強行されるということはないと思いますけれども、一応その点について厚生省に確認しておきたいと思います。簡単に答弁をお願いします。
  345. 坂本弘道

    ○坂本説明員 各市町村が行う一般廃棄物に係る清掃工場の建設につきましては、工場建設の際に必要な事前調査、それから施設整備に伴う環境汚染の未然防止対策等々、事前評価及び必要に応じた都市計画決定等がなされているなど、関係法令を遵守して行われているところでございます。なお、国庫補助の際には、補助事業の円滑な遂行を図るために、必要に応じ施設整備に対する関係住民の了解が得られていることが前提になっております。  以上でございます。
  346. 岩佐恵美

    岩佐委員 さらに、自治体のごみの減量化、資源化の努力についてなんですけれども、今問題になっているこの八王子市は、一九八七年度に出されました東京都の資料によりますと、三多摩市町村の中で唯一リサイクル、資源化に取り組んでいない市町村なんですね。ゼロというのは八王子市だけなんです。一番多いのは先ほど申し上げた町田市で七千八百五十九トン、それからその次に多いのが府中市で七千八十トンとかとあるんですけれども、八王子市はゼロなんですね。それで、その住民の間からは、リサイクルの努力もしないで清掃工場建設の強行を主張するのはどうも納得できないという声も出ています。  先ほど厚生省として、自治体に具体的にリサイクル事業化を援助する、そういう答弁がありました。二割近い自治体がリサイクルをやっているということでありますけれども、自治省としても、交付税算定の基準にリサイクル事業などを組み入れるとか、あるいはその他の財源措置をするとか、そういう自治体への援助、指導をすべきだと思いますけれども、いかがですか。
  347. 黒沢宥

    ○黒沢説明員 お答え申し上げます。  御指摘の問題でございますけれども、これらの問題につきましては関係省庁におきまして適切な対策を講じられるべきものと考えておりますが、自治省といたしましても、関係省と十分調整を図りながら対処してまいりたいと思います。  それから財源問題でございますけれども、ごみのリサイクル問題につきましては、単に市町村が行う清掃事業ということだけではなくて、住民や民間業者等の関係もございますので、その実施状況あるいは経費負担の状況等十分見きわめながらその財源措置のあり方につきまして検討すべき問題である、かように考えている次第でございます。
  348. 岩佐恵美

    岩佐委員 時間が参りましたのでこれで終わりたいと思いますけれども、きょう各省庁の皆さんにも御出席いただいていろいろごみ問題の一部を議論させていただいたのですけれども、やはり、かなり通産省が中心になって強力な政治力でこの問題に取り組んでいかないと大変なことになる、もう大変なことになっているという状況でございますので、最後に大臣、一言大臣としての御決意、先ほどから伺っておりますけれども、トータルで聞いていただいての御決意をお願いしたいと思います。
  349. 松永光

    ○松永国務大臣 資源少国の経済大国日本としては、資源の有効利用は極めて大事なことでありますので、リサイクル、再生利用、大いに力を入れていきたい、こういうふうに考えております。
  350. 岩佐恵美

    岩佐委員 終わります。
  351. 尾身幸次

    尾身委員長 代理 次回は、来る十一月二日木曜日午前九時四十分理事会、午前九時五十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十六分散会