運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1989-05-15 第114回国会 参議院 予算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年五月十五日(月曜日)    午前十時二分開会     —————————————    委員の異動  五月十二日     辞任         補欠選任      小野 清子君     降矢 敬義君      久世 公堯君     志村 哲良君      田辺 哲夫君     増岡 康治君      松浦 孝治君     木宮 和彦君      松岡滿壽男君     鈴木 貞敏君      太田 淳夫君     和田 教美君      中野  明君     猪熊 重二君      諫山  博君     上田耕一郎君      抜山 映子君     栗林 卓司君      秋山  肇君     野末 陳平君  五月十五日     辞任         補欠選任      野田  哲君     矢田部 理君      野末 陳平君     秋山  肇君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         初村滝一郎君     理 事                 青木 幹雄君                 岩本 政光君                 遠藤  要君                 田沢 智治君                 野沢 太三君                 対馬 孝且君                 中野 鉄造君                 近藤 忠孝君                 勝木 健司君     委 員                 石本  茂君                 岩上 二郎君                大河原太一郎君                 大浜 方栄君                 木宮 和彦君                 佐々木 満君                 志村 哲良君                 下稲葉耕吉君                 鈴木 貞敏君                 関口 恵造君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 谷川 寛三君                 中曽根弘文君                 中西 一郎君                 永田 良雄君                 林 健太郎君                 林田悠紀夫君                 降矢 敬義君                 増岡 康治君                 及川 一夫君                 千葉 景子君                 福間 知之君                 本岡 昭次君                 矢田部 理君                 山本 正和君                 猪熊 重二君                 及川 順郎君                 和田 教美君                 上田耕一郎君                 吉岡 吉典君                 秋山  肇君                 喜屋武眞榮君                 青木  茂君    国務大臣        内閣総理大臣   竹下  登君        法 務 大 臣  高辻 正己君        外 務 大 臣  宇野 宗佑君        大 蔵 大 臣  村山 達雄君        文 部 大 臣  西岡 武夫君        厚 生 大 臣  小泉純一郎君        農林水産大臣   羽田  孜君        通商産業大臣   三塚  博君        運 輸 大 臣  佐藤 信二君        郵 政 大 臣  片岡 清一君        労 働 大 臣  丹羽 兵助君        建 設 大 臣 小此木彦三郎君        自 治 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    坂野 重信君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 小渕 恵三君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  金丸 三郎君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (沖縄開発庁長        官)       坂元 親男君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  田澤 吉郎君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       愛野興一郎君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       宮崎 茂一君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  青木 正久君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  内海 英男君     政府委員        内閣法制局長官  味村  治君        内閣法制局第一        部長       大出 峻郎君        内閣総理大臣官        房審議官     文田 久雄君        内閣総理大臣官        房管理室長    櫻井  溥君        公正取引委員会        委員長      梅澤 節男君        公正取引委員会        事務局官房審議        官        糸田 省吾君        警察庁警備局長  城内 康光君        総務庁長官官房        会計課長     稲葉 清毅君        総務庁人事局次        長        兼内閣審議官   服藤  收君        北方対策本部審        議官       鈴木  榮君        防衛庁参事官   小野寺龍二君        防衛庁参事官   福渡  靖君        防衛庁参事官   鈴木 輝雄君        防衛庁長官官房        長        依田 智治君        防衛庁防衛局長  日吉  章君        防衛庁装備局長  山本 雅司君        防衛施設庁総務        部長       弘法堂 忠君        防衛施設庁施設        部長       鈴木  杲君        防衛施設庁労務        部長       吉住 慎吾君        経済企画庁物価        局長       勝村 坦郎君        科学技術庁研究        開発局長     吉村 晴光君        科学技術庁原子        力局長      平野 拓也君        科学技術庁原子        力安全局長    村上 健一君        環境庁長官官房        長        渡辺  修君        国土庁長官官房        長        公文  宏君        国土庁長官官房        会計課長     嵩  聰久君        法務省刑事局長  根來 泰周君        公安調査庁長官  石山  陽君        外務省北米局長  有馬 龍夫君        外務省条約局長  福田  博君        大蔵大臣官房総        務審議官     土田 正顕君        大蔵省主計局長  小粥 正巳君        大蔵省主税局長  尾崎  護君        国税庁次長    伊藤 博行君        厚生大臣官房総        務審議官     末次  彬君        厚生大臣官房老        人保健福祉部長  多田  宏君        厚生省社会局長  小林 功典君        厚生省年金局長  水田  努君        農林水産大臣官        房長       浜口 義曠君        農林水産大臣官        房参事官     武田  昭君        農林水産大臣官        房予算課長    東  久雄君        林野庁長官    松田  堯君        水産庁長官    田中 宏尚君        水産庁次長    中村 晃次君        通商産業省貿易        局長       熊野 英昭君        通商産業省機械        情報産業局長   棚橋 祐治君        通商産業省機械        情報産業局次長  水野  哲君        運輸大臣官房審        議官        兼内閣審議官   金田 好生君        運輸大臣官房会        計課長      永井 隆男君        運輸省運輸政策        局長       塩田 澄夫君        海上保安庁次長  野尻  豊君        郵政省郵務局長  田代  功君        郵政省電気通信        局長       塩谷  稔君        労働大臣官房長  若林 之矩君        労働省職業安定        局高齢障害者        対策部長     竹村  毅君        建設大臣官房会        計課長      鹿島 尚武君        自治省行政局選        挙部長      浅野大三郎君        自治省税務局長  湯浅 利夫君    事務局側        常任委員会専門  宮下 忠安君        員     —————————————   本日の会議に付した案件 ○平成年度一般会計予算内閣提出、衆議院送  付) ○平成年度特別会計予算内閣提出、衆議院送  付) ○平成年度政府関係機関予算内閣提出、衆議  院送付)     —————————————
  2. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 予算委員会を開会いたします。  平成年度一般会計予算平成年度特別会計予算平成年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。     —————————————
  3. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 理事会協議決定事項について御報告いたします。  本日の総括質疑は、日本社会党護憲共同五十四分、公明党・国民会議二十五分、日本共産党二十四分とすることと決定いたしました。     —————————————
  4. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) この際、竹下内閣総理大臣から発言を求められておりますので、これを許します。竹下内閣総理大臣
  5. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 五月十日、矢田部委員から財団法人世界平和研究所につきまして御質問がありましたが、私の記憶など正確を欠く点がございました。そこで、事実関係につきまして補足答弁させていただきます。  一、代表設立発起人中曽根総理であって私ではなく、私は設立発起人にもなっておりません。  二、関係行政機関協力等をうたったのは閣議口頭了解——口頭と申しましたが、それではなく、昭和六十三年六月二十八日付の閣議了解であります。  三、設立時の基本財産は二億円であり、二百億円はその後の資金増勢目標額であると聞いております。  四、財団寄附行為第七条によれば、基本財産のうち現金は、郵便官署もしくは銀行等への定期預金信託会社への信託または国債、公社債購入等、安全確実な方法で保管しなければならないと定められております。したがって、本財団株式を取得しておらず、今後とも御指摘のようなことはないものと承知しております。  なお、公益法人監督官庁としては、資産の管理運用については安全確実な方法で行うよう指導しているところであります。  以上でございます。     —————————————
  6. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) それでは、これより総括質疑を行います。矢田部理君。
  7. 矢田部理

    矢田部理君 今の総理の答弁につき、一、二だけ私の意見を申し上げておきたいと思います。  総理設立代表者でない、あるいは発起人にもなっておらないということはわかりましたが、例えば世界平和研究所のパンフでは、一番最初総理がこの研究所に対する大変大きな期待を表明する文章を載せているなど、事実上一定の役割を果たしておられるということ、あるいは総理大臣としてこの財団の認可をされたことなど、さらには各省庁から中心的な負担を依然として省庁でやりながら相当人数の人たちをこの財団に送り込んでいることなど、問題なしとしないのでありますが、総理説明はそれとして承っておきたいと思います。  もう一つは、株式とこの財団との関係であります。今、寄附行為について総理が読み上げられましたが、確かに公社債とか、そういうことを重点的にということではありますが、株式の取得を必ずしも排除しているものではありません。むしろ、安全確実な方法などということになりますれば、値上がり確実な未公開株などはこれに入るというふうにも読めるのでありまして、特に私が問題として指摘をしましたのは、公になっている予算書を見ますと、有価証券購入ということになって、ここでも株式を排除していないので、私は問題提起をしたのであります。しかしながら、財団の運営上、指導としては株式などを求めるべきでないという考えであるとすれば、それはそれとして了としていきたいというふうに思っております。  それから、きょうの本論に入りたいと思いますが、具体的な内容に入る前に、総理政治姿勢政治に対する最近の受けとめ方などについてまず伺っておきたいと思います。  総理退陣を表明されるに当たって政治不信ということを非常に強調されました。空前政治不信だろうと私も思います。国民の世論、考え方と永田町の論理との乖離がいろんな面で言われていることもかってなかったことであり、ある意味議会制民主主義は深刻な危機にさらされているのであります。この議会制民主主義を改めて蘇生させる、民主主義の復権をかち取るためにどうしたらよいのかということになりますれば、総理がおやめになる、内閣退陣するというようなことで簡単に回復するような状況ではないというふうに実は私は思っております。  その意味では、だれがどういう時期に解散をするかということは一つありますが、早期解散をして国民に信を問う、改めて国民の審判を受けてそこから新しいスタートを切るということが政治の信を回復する一番大きな道であり重要な道だと私は受けとめておりますが、総理認識はいかが でしょうか。
  8. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今の空前政治不信という認識は、私も等しくしておるものでございます。  それから、私自身退陣という問題につきましても、私個人にとりましてはやはり熟慮したものでございまして、そう軽々に行ったという気持ちではございません。熟慮の上でございます。さて、その上に立って解散選挙、いわゆる俗に今まで使われた言葉といたしましては出直し解散という言葉がかつて使われたことがございます。そういう歴史は私も承知をしておりますが、私自身今の事態解散選挙というようなことは念頭にございません。
  9. 矢田部理

    矢田部理君 その辺の認識総理といささか異にするわけでありますが、十二日の晩に伊東総務会長とかなり長時間話し合われたと伝えられております。その話の内容を余り立ち入って聞くのもどうかという感じはしないわけではありませんが、今日の政治を語る上においては非常に重要なポイントの一つでもありますので、あえて二、三お聞きしたいと思います。  伊東さんから、現在の自民党政府考え方では政治に対するけじめがついていないと、かなり厳しい御指摘があったと伝えられております。とりわけ、リクルートで汚染をされた主な人たちは議員を辞職すべきだと。当然のことながら中曽根さんも含めてでありますが、同時に、中曽根氏は証人として国会証人喚問に応ずるべきだというような意見も出されたと伝えられておりますが、いかがでしょうか。
  10. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 矢田部委員感想の中にお話しになりましたように、その話の中身を聞くについてはどうかとも思うが、という前提がございました。その気持ちは私もわかります。問題は、伊東先生と私の間でいろいろ意見交換をいたしましたのは、今の政治不信に対する現状認識について意見交換をいたしたわけでございまして、その中で、今お尋ねの具体的な喚問問題でございますとかいうことについて、格別に触れたお話し合いはいたしませんでした。
  11. 矢田部理

    矢田部理君 具体論は別として、政治けじめつけ方について、今の総理なりあるいはその他の自民党首脳部との間に大きな食い違いがあると、認識の違いがあるということはあったのでしょうか。
  12. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 現状認識について、私と伊東さんとの間に大きな隔たりはなかったというふうに私自身は受けとめておるところでございます。
  13. 矢田部理

    矢田部理君 にもかかわらず、伊東さんがお受けにならなかったのは健康上の理由だけでないというふうにも伝えられておりまして、いまひとつ総理説明ではわかりにくいのでありますが、それはその程度にいたします。  やはり私は、今日総理退陣表明をされた後やるべきこととして、少なくとも三点あるというふうに考えております。  その一つは、三点セット、きょうじゅうにもお出しになるということでありますが、その三点セット提出をぜひきょうじゅうにおやりになるということとあわせて、全容解明のために最後の努力をされるということが第一点であります。  それから、同時にまた中曽根さんの証人喚問全容解明に欠かせない課題でありますから、総理としての最後指導力を発揮されて、総理・総裁としてというふうに言った方が正確かもしれません、この実現のために全力を尽くしていただきたいというのが二点目であります。  そして、最後になりますが、総辞職をされて、この点も伺っておきたいと思います。予算が成立したら直後におやめになるというお話でしたが、何か新聞筋によると、どうも後継が決まらないのであとしばらく続投などという話も伝えられないわけではありません。そういうことではなしに、きちっとけじめをつけることは非常に大事な点でありますが、同時に、与党の中で政権たらい回しというのはいかがなものでしょうか。  もともと、汚れた手できれいな内閣をつくるというのは自己矛盾も甚だしいのでありまして、これは昨年末の改造内閣試験済みのことであります。その点では野に下って野党政権を回す。もとより、野党としましても緊急に処理すべき課題は処理するとして、やはり早期解散選挙をして、これはもう暫定内閣選挙管理内閣でありますが、改めて国民に信を問うて、そこから政治改革なり政治不信の克服をスタートさせるべきだというのが私の気持ちであります。その点、総理感想を伺っておきたいと思います。
  14. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず最初、三つのことをおっしゃいました。  俗に言う三点セット、これは全容解明のために必要である、委員長にお出しするという、委員長からきょう提出するようにという要請を受けておるというふうに承っております。そのとおりを実行したいと思います。  それから、二番目の中曽根総理喚問問題でございますが、これはやはり国会そのものでお決めになる問題でございますが、党人であります中曽根総理がその扱いについて安倍幹事長に一任されたという経過を申し上げるにとどめるべきだと私としては思っております。  それから三番目の予算成立後実行に移したいと申しておりますのは、総辞職という行為そのものでございます。  それから、政権のいわゆるたらい回しはいけない、すなわち自由民主党の内閣ではいけない、野に下っていわば選挙管理内閣に、野党第一党ということでございましょうか、譲るべきだという考え方は、一つ考え方として承らしていただくにとどめさしていただきます。
  15. 矢田部理

    矢田部理君 もう一点、総理政治状況に対する認識の深刻さについて、体で実は伝わってこないのでありまして、その点では総理のような受けとめ方では今の民主主義危機議会制度危機というのは簡単に克服できるような状況でないということだけを指摘しておきたいと思います。  あわせて、もう一つ冒頭にお聞きをしておきたいのは、先般我が党の山口書記長右翼に襲われました。これまた民主主義にとってゆゆしきことなのでありまして、こういうことが頻発するようなことになりますれば、言論ではなくて暴力が跳梁する、民主主義が非常に大きな危機にここでも陥っているという点で、この点について私たちは軽視するわけにはいかないのであります。  国家公安委員長から事実の経過現場における対応、今後の問題等についてお聞きをするのと、あわせて総理に、この種事態に対する考え方なり今後の対応策なりについて、伺いたいと思います。
  16. 城内康光

    政府委員城内康光君) まず、事件の概要という技術的なことにつきまして私から答弁さしていただきます。  この事件は、五月十二日の夕刻、大津市の滋賀会館におきまして開催された「県民のつどい」において、社会党山口書記長演説中に、会場にいた右翼二人が壇上へ駆け上がって、壇上にいた人のうち一人に傘を投げつけて傷害を与え、また他の一人の顔面を殴打するなどの暴行を加えた上、演説中の山口書記長体当たりをして傷害を与えた事件でございます。  右翼二人につきましては、直ちに警戒中の警察官が暴力行為等処罰ニ関スル法律違反及び傷害現行犯逮捕をいたしました。昨日、その逮捕に係る二つの罪名にさらに威力業務妨害罪を付加いたしまして、大津地検身柄つきで送致をいたしたところであります。
  17. 坂野重信

    国務大臣坂野重信君) お答え申し上げます。  ただいま事務当局から御報告いたしたとおりでございますが、当日滋賀県警におきましては情勢対応した所要の警護対策を講じまして、警備警護の万全を期したところでございますが、結果的にあのような事件の発生を見たことはまことに遺憾であります。  今後、これを貴重な教訓として、再発防止に一層努力する決意でございます。
  18. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 山口書記長に対する先般の暴行事件、私は政治家として今日まで過ごしてまいりましたが、一番遺憾なことであると思っております。  再発防止についての警備の万全を期すとか、そういう問題は当然のことでありますが、そうした風潮自身について、私自身の身の処し方もないだろうかと自問自答しておるというのが現在の心境でございます。
  19. 矢田部理

    矢田部理君 総理等お話を承っておきたいとは思いますが、演説会場の周辺で既に右翼アジ演説などをやって、いろんな情勢が察知されたにもかかわらず、この種不祥事件を未然に防げなかったというのは警察としても少しく怠慢にすぎないか、問題がなかったのかということを私は言いたいのであります。  もう一言国家公安委員長に、その点に関する、万全を期したが結果としてなんというものではないというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  20. 城内康光

    政府委員城内康光君) 現場警備措置の問題でございますので、私からお答えいたします。  当時、滋賀会館の外でもこの当該右翼団体聖魂塾が街宣をしておったわけでございます。そのメンバーの二人が会場に入りまして、これは公開の集会でございましてだれでも入れるということであったわけでございます。ただ、私どもといたしましては、会場の中に約三十名ほどの要員を配置して警戒に当たったわけでございますが、なかなかそういう不審者が入るということについて十分なチェックができなかったという問題がございます。また、さらにさかのぼれば、やはりそういう事前動向を、なかなか難しゅうございますが、察知して防止できなかったという点を考えておるわけでございます。  それからさらに、現場で一瞬警護員の飛び出しがちょっとおくれまして、結果的にあのようなことになったということにつきましては、十分反省もいたし、またいろいろと検討を加え、再犯、再発防止について力を注いでいかなきゃならないというふうに考えております。
  21. 坂野重信

    国務大臣坂野重信君) 今、局長から答弁したとおりでございます。全く予期しない、警察としては万全を尽くしたつもりでございましたが、結果的にああいうことになりましたので、絶対今後はこういうことがないように警備に万全を期してまいりたいと思う次第でございます。
  22. 矢田部理

    矢田部理君 それでは、テーマを変えますが、タイコンデロガ米空母が水素爆弾を積んだ飛行機を水没させてしまったという事故についてであります。  政府としてもその後、米政府などにいろいろ照会をしたりして事実関係を相当それなりにつかんできておられると思いますが、政府がつかんでこられた事実経過と事故状況について、まず御報告をいただきたいと思います。
  23. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 米空母タイコンデロガの事故は、政府といたしましても非常に重大関心を持って米国に照会いたしておきました。先週の週末でございますが、ワシントンでペーパーで追加的な説明が行われましたので、北米局長からその経緯、内容を報告させます。
  24. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) ただいま大臣から御発言がありましたとおり、この件につきまして、米側に対しては詳細な情報の提供を頼んでおったところでございますけれども、今般追加的な説明をペーパーで受けましたので、報告させていただきます。  これは仮訳でございますが、   米国立研究所の核兵器設計専門家チームは、一九六五年十二月五日に起きた一個の核兵器搭載のA14機の事故の短期及び長期的な核の影響に関して評価を行った。同チームの調査結果は以下のとおりである。  一、この兵器システムは、本件事故の状況下で、安全操置を解除する、もしくは解除する指令を受けるようには設計されていないため、本件事故時には、核爆発或いは高性能爆薬の爆発は起こり得なかった。  二、当該事故に巻き込まれた核装置は、極めて深い海底において構造的に完全な状態のままであるようには設計されていなかった。従って、一万六千フィートの海底に至る前に、構造的な破損が起こり、核物質は海水にさらされた。又、高性能爆薬の成分も同様に、海水腐食効果にさらされた。このような作用は、核爆発或いは高性能爆薬の爆発が、現在の環境下においても、また、将来の環境下においても、決して起こり得るものではないことを保証する。  三、環境への影響については、本件関連の核物質の溶解性を測定するために海中試験が行われた。これらの試験により、核物質は比較的短時間で溶解することが判明している。核物質の高い比重の故に、溶解物は極めて素早く、他の堆積物とともに海底に沈殿する。従って、環境への影響はない。  さらに、口頭で補足の説明がございました。これは、本件事故当時、事故現場においてはいかなる海洋汚染も測定されなかったということでございます。
  25. 矢田部理

    矢田部理君 きょうも新しい事実が一つ、しかも重要な事実が判明をしたわけであります。  外務省として、アメリカ政府に照会中のもの、これで全部回答は終わったのでしょうか。それとも、こういう点とかかる点について照会をしておるが、まだこの点は未到着てある、さらに調査中であるというような事項はございますか。
  26. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 例えば、当時タイコンデロガがどこへ行くところであったかといったようなことの情報にはまだ接しておりませんし、まだ確認されておりません。
  27. 矢田部理

    矢田部理君 いや、例えばの話ではなくて、照会事項は次のごときものであると、そのうち回答があったものはきょうのものも含めてこれであり、残っているものほかくかくであるというふうに御説明いただけませんか。
  28. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 今、追加説明のありました件に関しましては、米国防省としてもきちっとした説明を我が国にしてくれたと思いますが、信用するに足ると思います。しかし、我が国は我が国で、やはりこれらに対しましても関係省庁の専門家に集まってもらいまして検討さす必要があると、私はかように考えております。  なお、その後、この空母が日本に寄港したかしないかという問題に関しましては、これはまだ確認できておりません。
  29. 矢田部理

    矢田部理君 そこで、その点についてもう少し後でやりますが、今新しく説明があった米政府の回答でありますが、なるほど核爆発はしないということはそれなりにわかります。現に時間もたっておるわけであります。しかし、同時にまた非常に重要な点は、もともと爆弾でありますから壊れないものでは破裂しないのでありまして、構造上は破損しやすくつくってあると、そのためにいわば海水にさらされるや構造的な破損が起こったというふうに言っておるわけですね。  この構造的な破損というのは、海水にさらされてどのぐらいの深さのところで起こったのでしょうか。
  30. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) そのようなところの説明は受けておりません。
  31. 矢田部理

    矢田部理君 その核物質、まあプルトニウムなどが考えられるわけでありますが、これは非常に溶けやすい、比較的短時間で溶解することが判明している。しかし、比重が重いからその溶解物は素早く他の堆積物とともに海底に沈殿してしまった。だからこの影響はないと、こう言っているわけでありますが、この実験はいつ行われ、どんな方法でやられたのでしょうか。
  32. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) これは今般行われた分析だそうでございまして、核物質を海水中にさらした結果七日間で溶解した、右から割り出された溶解率、これはレート・オブ・ディゾルブというのだそうでございますけれども、これを基礎に問題の兵器の核物質が溶解するに要する時間を割り出した結果、比較的短期間に溶解するとの結論を 得ている、こういう説明でございます。
  33. 矢田部理

    矢田部理君 いつ、どんな条件で、どんな条件設定、例えば海水の——深さとか動いている水なのか静止水なのか、幾つかの条件設定が実験をやるに当たってはあってしかるべきだと思うんですが、その辺の前提なり条件なり、それから実験の方法なりについては何か説明がないんですか。
  34. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) この試験がなされましたのは、エネルギー省のサンディア試験所及びロスアラモス試験所、これはいずれも核エネルギー関係の試験所だそうでございますけれども、今仰せになられました具体的な基準等については承知いたしておりません。
  35. 矢田部理

    矢田部理君 前提なり条件なりがわかちないと、にわかに信用できるかどうかということになると疑問が残るわけでありますが、それだけではなくて、この核物質の溶解物というのは、全量が沈殿するというふうには考えられないわけですね。溶解が早いと言っているわけでありますから、下に行くまでの間に相当程度拡散をする可能性なども否定し得ないのでありまして、その点に  ついてはどう考えていますか。
  36. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) これは関係省庁の専門家の方々の御意見をも承るということがございますので、それを踏まえて、今後何が必要かということを検討してまいりたいと思っております。
  37. 矢田部理

    矢田部理君 核物質の溶解率は極めて素早いと、こう言っているわけでありますが、この溶解物が生物にどんな影響を与えるかということについては影響はないというふうに断定できますか。
  38. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) これにつきましては、本件事故の場合には、少量の核物質が膨大な量の海水と接触し溶解した物質も薄められており、積年にわたる海流の流れもあり、危険性はなくなっているという説明になっております。
  39. 矢田部理

    矢田部理君 説明がどうなっているかではないんですね。環境への影響はないという断定をしているわけですが、これは重大なやっぱり疑問と問題点が依然としてある。  例えば、溶解したものを微生物が摂取をする、これを魚が食べる。人間とか環境に対する影響ということが当然考えられるわけでありまして、食物連鎖といいますか、こういう状況についても幾つかの問題点が残っているわけでありますが、この辺はどんなふうにお考えになりますか。
  40. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) ずっと経緯を申しますと、先週この問題が出ましたときに直ちに照会をいたしまして、米国からは、本件紛失により環境に悪影響が及んだと信ずるに足りる理由があった場合には公表することを定めた規定が当時もございました、現在も存在いたします。本事故はそのような事例に該当しなかったのでございますと、こういう返答が来たことはここで私御答弁しました。  その後に今の答えが三つに分かれまして来たわけでございまして、今、局長が申しましたとおりにこれは翻訳したてでございます、週末でございますから。だから、外務省といたしましては、私は、これはこれで信ずるに足る資料であろうが、今いろいろ委員が申されましたような点に関して、やはり我が国は我が国できちっとしなくちゃいけない、だから早急に関係省庁の専門家を集めてこのことを検討しましょうと、こういうふうに私は先ほど申し上げたわけで、きょうから早速その作業に入りたいと、かように思っておる次第でございます。
  41. 矢田部理

    矢田部理君 そこで、この責任はアメリカにあるわけですね。ですから、アメリカのこの程度の文章で満足するのではなくて、今、外務大臣もおっしゃられましたが、我が国でもそれは国民生活に対する影響が極めて深刻かつ重大なことにもなりかねませんので、言うならば、やらなきゃならぬ点はあるかもしれませんが、基本的な責任はやっぱり米側にあるということでこの実験の全データを取り寄せる。  それから、その事故時に爆発がなかった、したがって汚染はなかったというふうな説明が追加されましたが、その後海洋汚染なり、魚とか海藻などに対する影響についてアメリカでは、まあかなりの期間はたっているわけでありますが、チェックしているのかどうか。何か検査なり調査をしているかどうか。その辺はいかがでしょうか。
  42. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 大臣が今申されたとおり、我が方の専門家の意見をも聴取しながら、何が必要であるかということを考えてまいりたいと思います。
  43. 矢田部理

    矢田部理君 それはいいと言うんですよ。我が国でやるのはそれは私はやってもらいたいし、やる必要があるでしょうが、基本的な責任はアメリカにあるのですから、アメリカ側での実験の状況を全部取り寄せなさい、それは約束できますかというのが一つ。  それから、実験だけではなしに、これまで相当年数もたっているわけですが、海洋汚染の調査とか、あれこれについて何かチェックをしてきたのかどうか。それについても問い合わせをし、必要な資料を取り寄せるべきだと言っておるんですが、その点はいかがでしょうか。
  44. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 当然、今おっしゃるようなことは、専門家会議でどういう資料が欲しいかどうとか、いろいろあると思います。したがいまして、そうした答えが出ましたときに私も早急に対応しなければならないなと、かように思っております。
  45. 矢田部理

    矢田部理君 専門家会議の結論とか意見ではなしに、やっぱり外務省の姿勢として、アメリカが第一次的な責任というか——第一次的じゃないですな、基本的な責任を持っておるのでありまして、その点ではアメリカ責任論でまずかぶせるべきだと。そこをやっぱりきちっと外交はしていただかなきゃならぬという点が第一であります。  それから、日本で専門家会議をつくるということですが、どんな構想、どんなメンバー、どんなスタッフでということをもう少し具体的にお話しいただけますか。
  46. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 今まさに検討しておるところでございまして、関係省庁には資料をお渡ししつつありますけれども、正確にそれがどこの省庁であるか、私ここでにわかにお答えできません。申しわけございません。
  47. 矢田部理

    矢田部理君 質問の順序が少し順不同になりますが、外務省の対応がどうもいま一つ迫力に欠けるというか、敏感でないという感じがしてならないわけですね。もともと八一年に国防総省の核事故報告書でこのことは指摘をされたわけでありますが、どうしてあの段階で対応しなかったんでしょうか。
  48. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 先般来、説明申し上げておりますように、一九八一年にこれが最初に公になりました際、その他三十一件のものと一緒に掲げられているわけでありますが、ただ単に太平洋、陸地から五百海里ということだけが記載されておりまして、当時、にわかにこれが我が国にかかわるものであるというふうには考えなかったわけでございます。
  49. 矢田部理

    矢田部理君 これはビキニの例を見るまでもなく、太平洋の魚とかたんぱく資源というのを非常に重要な日本人の食料にしているわけですね。我が国から遠いか遠くないかということで、この種事故問題を扱ったのでは、いささか怠慢に過ぎると私は思っています。特に陸地から五百海里ですか、という指摘があったわけですから、その陸地はどこなのか、日本に近づいているのか遠ざかっているのかですらこれだけでは判明できないわけでありますから、その時点で直ちに対応してしかるべきだったのではないでしょうか。アメリカに釈明を求めるべきではなかったのでしょうか。その点はいかがですか。
  50. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) その報告書の頭書きのところに実は、もしもこの事故が環境に影響を及ぼすものであるならばこれを発表しなければならないという趣旨のことが書いてございまして、そこで示されておりますことは、これらの事故は発表されているものを除いて、環境に影響を与えるものではないという判断がなされたというふうに書いてあるわけでございます。  それから、今般のことにつきましては、大臣が先ほども言及されましたけれども、国防省は、本件事故は適正な手続を通じ報告され、また調査された。しかし、国家安全保障上の理由により公表されなかったとしている。本件紛失により環境に悪影響が及んだと信ずるに足りる理由があった場合には公表することを定めた規定が当時も存在し、現在も存在する。本件事故はそのような事例に該当しなかっただけであると向こうは申しております。  したがいまして、一九八一年の事件に戻りますと、原則として今の趣旨が書いてございまして、陸地から五百海里であるということに加えて、当時、この事故をも含めまして三十二件のうち二件を除いては環境に影響を与えるものではないという判断が既になされていたということがわかっておったものですから、改めて照会する必要があるとは判断しなかったということでございます。
  51. 矢田部理

    矢田部理君 にもかかわらず、今照会しているのは必要性があるということじゃありませんか。説明がおかしいんですよ。  農水省、日本は、これだけやっぱり海洋資源を対象にしてたんぱく資源の供給を求めているわけでありますが、こういう事実関係は八一年段階ではつかんでおらなかったでしょうか。何か対応策をとっておられたでしょうか。
  52. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) あの水域は、御存じのとおり、水深五千メートルという深い地域でございまして、漁場的には余り活用してないということも恐らくあったのかもわかりませんけれども、八一年段階におきまして、ああいう問題につきまして水産庁が意識をしたという記録にはなっておりません。
  53. 矢田部理

    矢田部理君 先ほど外務大臣が報告された中身によれば、プルトニウムが海中に没して、その後腐食するとか破損して出てくるというんじゃなくて、もう落下する段階から全部裸になると。拡散の可能性を持っておったわけです。現に拡散した可能性が強いわけであります。こういう問題に対する対処の仕方は非常に敏感でなきゃならぬという点で、外務省が基本ではありますが、水産庁も含めて、大変政府は怠慢だったという感じがするわけであります。  同時に、核兵器事故に関する国防省の報告によりますと、どうもやっぱり太平洋関係、我が国に関連すると思われるものがあと二件ぐらいは少なくともその表から見受けられるわけですね。一九五〇年十一月十日、米国外の海洋上空で事故があった。これは現在なお状況は不明である。それから、五九年一月十八日にF100が同じような核事故を起こしている。その詳細は紹介を省きますが、これは太平洋基地というふうに言っておるわけであります。これらがどこなのか、どういう状況なのか、これについても緊急に問い合わせてしかるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  54. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) それらのことをも照会しております。
  55. 矢田部理

    矢田部理君 だから私は、先ほどほかに照会事項はないかと聞いたんじゃありませんか。じゃ、それは照会の結果を待つということといたします。  もう一つは、先ほど照会事項として重要な点でありますが、このタイコンデロガは沖縄沖で事故を起こした後、どこに向かって行き、どこに寄港したのでしょうか。
  56. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) いまだ確認されるに至っておりません。
  57. 矢田部理

    矢田部理君 どこから来たのでしょう。
  58. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 米国政府は、原則として艦船の運用上の情報を提供いたしません。しかし、いずれにいたしましても、この際、タイコンデロガがどこからどこへ航行をしていたのかは、その情報にはまだ接しておりません。
  59. 矢田部理

    矢田部理君 私どもにもそのタイコンデロガの航海日誌は入手してあります。これは特殊海域といいますか、から横須賀に向かってというふうに書いてあるんですよ。そういう事実もつかんでないんですか。
  60. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) そのような報道があることを承知しておりますし、それからそのような報道が何によってであったかという資料も、私拝見いたしております。
  61. 矢田部理

    矢田部理君 拝見したからどうだというんですか。
  62. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) グリーンピースが、これを航海日誌ということで配付をされたということは承知いたしております。しかし、私どもは米国政府に照会しているわけでございます。
  63. 矢田部理

    矢田部理君 グリーンピースが単に自分たちでどこかから持ってきたという資料じゃないんですね。情報公開法に基づいてアメリカ政府から入手したというか、公開の結果手に入れたものなんでありまして、こんな程度のものをいまだに外務省が入手してない、あるいは確認できないというのはおかしいじゃありませんか。
  64. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 照会はいたしておりますけれども、まだ確認するに至ってはおりません。今、米国政府は確認できないと申しているわけでございます。
  65. 矢田部理

    矢田部理君 何度も言うのもなんですが、米国政府保管の文書ですよ、これは。それを情報公開法でアメリカの民間団体がとって明らかにしたわけでしょう。これが米政府が確認できないとか日本政府も照会中だとかいうのは少し緩過ぎませんか。外務大臣、どうですか。
  66. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 従来から政府は、やはり米政府に対しまして照会をし、また回答を得ておるということでございますから、そうしたグリーンピースが発表されたことも、またその経緯も私たちは十分知っておりますから、なお一層米政府に対して確認を急げと、私はこういうふうに言っております。  しかし、米政府といたしましては、今のところ局長が答えた回答のみであります。
  67. 矢田部理

    矢田部理君 大体、日本政府なり自治体も関与しているかもしれませんが、米艦船というよりも軍艦ですが、これの入出港というのはどういうふうな把握の仕方をしているんでしょうか。その仕組みはどうなっているかということをまず一般的にお聞きしましょうか。
  68. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 一般論として申しますと、米軍艦船の個々の寄港状況などは日米安保条約のもとで米軍の運用にかかわることであり、我が方としてこれを承知する立場にはございません。すなわち、地位協定第五条二項は、米軍艦船が米国に提供されている施設、区域に出入することができる旨定めておりまして、出入のたびごとに我が方に通告すべき義務は課されておりません。  なお、地位協定第五条三項は、一般の港への米軍艦船の入港に当たっては、通常、我が国当局に適当な通告を行うことを定めております。もっとも、米国の原子力推進艦が我が国に入港いたします際には、通豊かかる入港の少なくとも二十四時間前に日本側に通告することとなっておりますので、これらについては捕捉いたしております。
  69. 矢田部理

    矢田部理君 関連質問を千葉議員にお願いをしたいと思いますが、外国艦船、特に軍艦等の入港についてこれほど緩い国は珍しいんですね。諸外国はどうなっていますか。無通告で入れる、それから少なくとも通告を要する、許可手続を必要とする、三ランクがあるとされておりますが、諸外国との国際比較はどうなっておりますか。
  70. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 個々の国について、すなわち米国がいわゆる地位協定を締結しておりますすべての国々のそれぞれについて、今、先生が御指摘になりました点をいかように取り決めているかについては具体的には捕捉しておりませんけれども、これにはさまざまなケースがあるように承知いたしております。
  71. 矢田部理

    矢田部理君 米国の軍艦がいつ入っていつ出ていったか全く日本はフォローしていないで、相手の国に問い合わせなきゃわからぬというのは、少し国家としてひど過ぎませんか。  いいですか。約百五十カ国の調査表があります。これはアメリカの海軍作戦部長通達、「米海 軍軍艦の外国の港への寄港について」という文書でありますが、国別の入港手続がずっと記載をされています。これを一読いたしますと、北欧三国はもう全部許可手続です。オーストラリアもそうです。NATO諸国はおおむね少なくとも通告が必要だと。無通告で入れるのは日本と韓国とフィリピンだけですよ。だから、これだけ重要な問題が出ても一々問い合わせをしなきゃならぬ。こんなばかなことがありますか。
  72. 千葉景子

    ○千葉景子君 関連。
  73. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 関連質疑を許します。千葉景子君。
  74. 千葉景子

    ○千葉景子君 今、矢田部議員の方から入港手続について質問させていただきましたが、我が国においても横須賀、佐世保、岩国、沖縄等への入港というのは、全くのフリーパスで米海軍軍艦の入港が許されているという状況です。しかし、私は地元に横須賀を持っておりますけれども、横須賀等は、すぐ近くに一般の港湾施設もあり、また東京湾という、浦賀水道という極めて過密な航路も通って入港してくる。こういうところを全くフリーパスで入港してくるということについては、極めて危険もあり問題の多いところかと思いますけれども、この点について今後何らかの通告手続あるいは許可手続、こういうものを検討される必要があるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  75. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 御指摘のとおり、浦賀水道等大変混雑していて、海上の安全を確保しなければならないというところがございますが、私どもが理解しているところでは、米国政府はそれらについて内部規定があって、事故を避けるための最大の配慮をしてきている、今後ともするというふうに申しておりまして、そのように承知いたしております。  それから、先ほど説明申し上げましたように、地位協定第五条の仕組みがあって、原子力推進艦以外につきましては、我が国が提供している施設、区域には、海上保安庁でありますとか、あるいは外務省に対して通報することなく入港を許されております。しかし、これは日米安保条約の目的を達成するために施設、区域を提供しているのであって、このようなことが米国の艦船に対して許されているということは理解されることであろうと思っております。
  76. 千葉景子

    ○千葉景子君 米海軍が内部的にどのような手続をとられようとも、私どもには全くどんな船が入ってきているかわからない、あるいはその近辺を就航している、あるいはその近くの港湾施設などを使っている日本国民にとっては、一体どんな危険が隣り合わせているかわからない、こういう状態が現状として存在しているわけです。こういうことについてもう少し日本政府として、国民の安全等の面からも断固たる措置を考えてしかるべきだというふうに思います。  とりわけ、横須賀というのは米海軍の拠点でもありますし、ミッドウェーが母港として使っているところでもございまして、そういう意味では今回の問題は、神奈川県民あるいは横須賀市民にとっては大変波紋が大きいわけです。これまでもラロック証言であるとか、あるいはクレーター発言、ライシャワー発言等、細かくは申しませんけれども、再三核兵器の持ち込みについての疑惑、これで現地は揺れ動かされているわけですけれども、今回の問題は、さきに質問に出たように、既に航海日誌あるいは元乗組員の証言等も報道されておりまして非常に具体性を帯びている。そういうことからも横須賀等の市民の間では、これはほとんど核が持ち込まれていたのではないか、そしてそれが現在も続いているのではないかというのが常識的な話になっているわけです。  それについて先ほどから航海日誌等の入手あるいはその後の横須賀寄港の有無などについてまだ調査中ということですけれども、一体今後いつごろまでにこれは判明させていただけるんでしょうか。
  77. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) この事故が起こったのはもう大分前であって、その事故についてグリーンピースが発表されたのは先週ぐらいでございましたが、そのときにもやはり米国政府は、五月九日でございます、これもこの委員会で私報告をいたしておりますが、国防省は、米国は核兵器に関する日本国民の特別な感情を承知しており、日米安保条約及び関連取り決めのもとでの義務を誠実に遵守してきております、今後も引き続き遵守します、こういう報道をいたしております。  今、いろいろと心配なさっている面のお話がございまして、これは議員といたされましても関心の深いところであり、私も重大な関心を抱いておる、こう申しておる次第でございまして、日米安保条約というものが円満に機能しておるなればこそ安保条約締結以来我が国は安全であったということも言い得ます。だから、なお安全を期するためには、ああもせよ、こうもせよといろいろお話はございましょうが、やはり安保条約というものは日米の相互信頼のもとにでき上がっておるものでございます。だから、今回の事故に関しましても早速私たちは照会もいたしておりまして、週末に先はどのような回答を得た。これは米国の回答だから、我々としては、日本は日本でひとつ関係省庁の専門家に集まってもらって、どういうところがまだわからないか、どういうところを知りたいか、こうしたことも日本政府としてやはり研究をして、そして照会を求めるところあらば照会を求める、そして国民の方々に安心をしていただく。  こういうふうな姿勢を私たちは持っておりますので、その点に関しましてもこうして米国は、はっきりと日米安保条約に基づいて、もし核を搭載している艦船等々が日本に入る場合には事前協議に付したく思います、ただしそれは米国から発議をする問題でございます、そういうふうに昔から言っております。発議がなければ、相談がなければ我々といたしましてもそのことを疑わない。こういうことで今日まで参っておりますから、そのこともまた五月九日に米国の国防省は、いち早くこうして日本国民に対しましても十分知っておりますということを申し述べておりますので、やはり我々といたしましては今後そうした信頼関係を大切にいたしまして、一たん緩急のときには日本を守ってくれるのでございますから、したがいまして、やはり我々は一たん緩急がないように今日日本は平和外交を進めております。  しかし、まだまだ我々といたしましてはやはりいろんなことで我が国の国民の生命財産を守ることは必要だ、そのためには安保体制が必要だ、こういうことでございますので、今のことに関する国民の不安に対しましては、私たちは十分努力をしてその不安を解除するようにいたさなければならない、かように思っておりますので御理解願います。
  78. 千葉景子

    ○千葉景子君 双方の平和外交を進める意味でも、具体的な事実関係を双方でやはりきちっと確認し合っておくということは重要なことだというふうに思いますので、早急なまた調査の進展を要望しておきたいと思います。  あと一点お聞きしたいと思いますが、核能力を持った艦船ということがしばしば言われておりますけれども、核能力を持つと同時に、さらにその上に正式に核兵器の承認検査、核兵器の装着と発射が可能である、そういう準備ができているという検査を受けている船がある、こういうことは外務省の方では御存じでしょうか。
  79. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 先ほども申し上げましたけれども、米国政府はみずからの装備の詳細を説明いたしませんけれども、私どもが理解しておりますのは、艦船については核の能力がある、あるいはないということではなかろうかと存じております。
  80. 千葉景子

    ○千葉景子君 これも決してとんでもない話ではございませんで、やはりアメリカの国防省核兵器技術検査システム、この技術マニュアルの中に、きちっと、核能力がある艦船、そしてさらに、その核能力を持った上に正式に検査を受けた艦船が就航しているということが記載をされているわけです。  この辺については、どういう艦船が日本に入港 しているのか、こういう事実関係認識する上でもこういう事実関係あるいはその制度というものをもう一度照査し直す必要があるんではないかと思いますが、その点どうでしょうか、今後ぜひ検討をいただきたいと思いますが。
  81. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 米国政府は、みずからの核抑止力の信憑性を維持するために核の存否については肯定も否定もしないという政策を維持しておりまして、今御指摘がございましたような規制がそれに背馳するような形で行われているというふうには存じておりませんので、そのような照会をする必要はないと思います。
  82. 千葉景子

    ○千葉景子君 具体的に内容ではなくて、こういう制度、仕組みになっているということは認識をされておく必要があるのではないですか。その点についてぜひ一度きちっと調査をなさることを要望したいと思います。  外務大臣、いかがですか。
  83. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 核の保有国は随分あるわけでございますが、やはり核の扱いにつきましては非常に慎重であると私は思います。そうでなければ、軍艦に積んでおる積んでおらないにいたしましても、第一その人たちが危ないのでございますから、私は非常に慎重であるだろう、かように考えます。したがいまして、米国におきましても、今、千葉委員が質問されましたように、当然これは核の能力があるかないかいろいろとあらゆる検査をしておるんじゃないだろうか、私たちはさように考えております。  ただ、御承知のとおり、何回もここで御説明をいたしておりますが、やはり核というものは、日本といたしましては究極にはもう廃絶してほしい、これは総理も常にはっきりと国連総会で演説をなさっており、私たちもそのことを訴えております。  要は、それまでは、つまり戦争を未然に防ぐ一つの抑止力を発揮しておるということでございますから、したがいまして、抑止はもっと低レベルでできるよ、これが日本の主張でございますが、そのためには、その存在はどこにあるかないか。今、海の中にあるのか海の上にあるのか、それすらも言いませんよ。これが一つの世界のそうした保有国の常識であろう。こういうふうに考えますと、私たちも、同盟国のアメリカが核の存在につきましては言いませんよ。しかし、我々日本がアメリカの核の傘の中にあって今日一応抑止のきいた、そうした戦争を未然に防止するという体制にあるわけでございますから、したがいましてそこがやはり信頼関係でございます。だからおっしゃることは私はよくわかります。よくわかりますが、一々あれはどうだこれはどうだと守ってもらう方がそのようなことをある程度は言わなければならないかもしれぬが、それにも限度がある、私はかように思います。  そうしたことで、信頼関係あればこそ、アメリカも日本との間において円満に今日安保体制をしき、それを運営していてくれる、かように思いますので、今の御意見は私は私なりに受けとめておきます。
  84. 矢田部理

    矢田部理君 核の問題は私もやらなきゃならぬと思っておるんですが、その前に、米海軍の寄港、出入港についてもう少し事前に知るとか、通告制度を確立するとかということぐらいはこれを機にやってしかるべきじゃないでしょうか。一々後になってから、あのときいかがでございますと聞くのも我が国の外交としては下策じゃありませんか、外務大臣。
  85. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 今までのずっと長い安保締結以来の経緯がございますから、私もここで、はいよろしいとか、だめだとか言い切れない面がございます。私は、その経緯を十分一回調べてみたいと思います。
  86. 矢田部理

    矢田部理君 やはり一度国際比較をしてみて、何流国という言い方は控えた方がいいと思いますが、ごく一部の国しかやっていない。先進国と言われる国あるいは同盟国と言われる国ですらやっていないというのを、日本だけがこういう体制にあることは大変まずいと思います。  それから、もとに戻しますが、このタイコンデロガに搭載されておったA4という飛行機は何機ぐらい載っておったのでしょうか。それは核搭載能力があることは当然お認めになりますね。
  87. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 先ほども申し上げておりますように、米国政府は正式に何機載っていたということは明らかにいたしておりません。
  88. 矢田部理

    矢田部理君 これは核の有無の前に、その種飛行機が、どんな種類のものが何機ぐらい載っておったかということも明らかにしないんですか。
  89. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 私どもが承知しているところでは、政府の公なものの中にはそれが明記されているというふうには考えておりません。
  90. 矢田部理

    矢田部理君 ちょっと意味がわかりません。
  91. 小野寺龍二

    政府委員小野寺龍二君) 米空母タイコンデロガは、大体六十機ないし七十機の航空機を積んでおりました。ただ、そのときそのときによりまして、ミッションによりまして航空機を積んでいる種類が非常に違っておりまして、その当時どういう飛行機を大体何機積んでいたかということは、必ずしも詳細に我々としても把握いたしておりません。いろいろ公表の資料によりますと、時によって十機とかそういうようなことが書いてございますけれども、権威のある答えを申し上げることはできません。
  92. 矢田部理

    矢田部理君 A4の核搭載能力は。
  93. 小野寺龍二

    政府委員小野寺龍二君) A4攻撃機は、公表のいろいろなジェーン年鑑等によりますと、機関砲、それから通常爆弾、核爆弾、それから空対地ロケット、空対空ロケット、魚雷等を積載できるような能力を持っているようでございます。
  94. 矢田部理

    矢田部理君 改めて聞くまでもありませんね。核爆弾抱いて沈んじゃったっていうんですから、搭載能力があるのは当たり前の話なんでありまして、このA4機が一機だけだなんというばかなことはないんです、航空母艦ですから。とりわけ、ベトナムの北爆の主役だった。この艦艇には三十個ないし五十個の核爆弾が積まれていたと。それが沖縄を十二月五日に北上して、七日の日にはそこの乗組員が東京に遊びに行ったと言っているのでありますから、横須賀に七日段階で入港していたことは明白なんです。当然に核持ち込みがここで問題にならざるを得ない。  この事実の前に、日米関係は信頼関係だとか、事前協議制度があって通告がなければ、その連絡がなければ持ち込まれていないなどという神話は崩れているんであります。この厳粛な事実の前にどういう対応をするかというのは、まさに日本政府の外交の基本が問われていることになるし、非核三原則の根本が問われていることになると思うのですが、外務大臣、そして総理、いかがでしょうか。
  95. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 過般も御答弁いたしましたが、非核三原則、この前にも既に日米安保体制下で事前協議制度があるわけで、今、矢田部委員おっしゃったとおり、核の持ち込みの場合にはアメリカから通告する、それはアメリカの義務である、こういうことでございます。だから、それがない限りは私たちはそうしたものはないということを疑いませんということが従来私たちの信頼関係でございますから、そのとき横須賀に入ったか入らないかということに関しましては、もちろん照会いたしておりますが、まだ確認し得ておりません。  だから、その航空母艦に関しましても、また他の一般論といたしましても、私は、今申し上げたような姿勢が政府の姿勢である、かようにひとつ御理解願いたいと思います。
  96. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今回の米御説明の受けとめ方につきまして、政府は今般米側より受けた説明をしかるべく検討するも、米側がかかる評価をしていることはそれはそれとしての重みのある説明と考える、それから二番目は、必要に応じ引き続き米側に対して照会を行うことを排除するものではない、これが大体基本的な筋でございます。したがって、総合的には外務大臣が今お答えいたしたとおりであります。
  97. 矢田部理

    矢田部理君 政府の態度は、核の持ち込みが明 白な場合でも事前協議がなければ核は持ち込まれていない、こういう言い分なんですね。そこまで言い張るんですか。
  98. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) これは言い張ると言うと何か強弁しているように聞こえますが、そうじゃなくして、お互いの信頼関係で、通告なければ持ち込まれておらないということに対して疑いは挟みません、もし持ち込みますというときには非核三原則に基づきましてお断りいたします、これはもう日本政府としての基本姿勢でございます。だから、この基本姿勢はずっと今後も貫いてまいります、こういうことであります。
  99. 矢田部理

    矢田部理君 水爆を積んだ飛行機が墜落した、それを載せた航空母艦が横須賀に入港した、重大な核艦船の寄港になるわけであります。その核の有無、核を搭載したまま入港の有無、途中でおろしてくるなどということは日程上考えられないわけでありますから、それは米国政府にきちっと問い合わせてしかるべきだと思いますが、いかがですか。
  100. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) つまり、搭載有無よりも、その航空母艦がその後どうしたかということに関しましてただいま照会中だと、こう申し上げておるわけであります。グリーンピースは既に発表されておりますが、政府はやはり政府間のきちっとした回答を得ることが必要だと、かように思っております。
  101. 矢田部理

    矢田部理君 いろいろ質問したいことがあるわけですが、どうもやっぱり入港までまだ確認できないのは、入港するということになるとそういう問題が出てくるものだから、それを恐れて引き延ばしているんじゃないかとすら考えているわけであります。  いずれにしましても、その空母の前後の行動経過、核搭載の有無、事故状況については、米側にさらに詳細に問い合わせるなどして事実関係を明確にしていただきたいというのが第一点です。  二番目には、非核三原則上、かつてライシャワー氏のあの指摘もありました。ラロック証言もありました。今度ほど具体的かつ明確に核艦船の寄港が指摘をされる事例はかってなかったことでありまして、その点は、政府としても重大な関心を持って、核艦船の寄港を許さない立場で、あるいは非核三原則を厳守する立場で、もう少し毅然たる態度を持って米国政府との交渉に当たるべきだというのが二点目であります。  それから三点目には、海洋汚染、環境に対するプルトニウムの影響、これももう少し本当は議論したかったわけです。四キロのプルトニウムがあの爆弾の中には仕込まれていたというんでありますから、これは大変な量なんですね。全人類を四十回ぐらい、許容量を超える限度の放射能汚染にさらすことができるというデータなどもあるわけでありまして、その点では緊急にアメリカ政府の基本責任、そして日本政府国民の生活を守る立場でこれは調査検討をすべきだと。  それからさらに四点目としましては、民間レベルでは原子力事故の通報制度が確立しました。条約もできました。ところが、軍事上の核事故についてはいまだそれが確立しておりません。任意的だというふうに条約上はなっているわけであります。これだけ重要な事故が近海で起きるということが間々あるということになりますと、安全にとっても生活にとっても非常にゆゆしき状況でありますから、米国との関係などにおいて、この軍事上の核事故についてもやはり通報制度の確立を外務省としては真剣に追求すべきだと思いますが、最後に外務大臣の答弁を求めて、質問を終わりたいと思います。
  102. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 核保有国に対する我々のごとく核を持っておらない国々のやはり要求なり、そうしたものいっぱいございます。だから私は、過般の軍縮会議におきましてもそうした趣旨で、核保有国は持ってない国々の不安に対しても、また恐怖に対してもやはり国際的にやるべきことはやってほしいということを訴えておる次第でございます。  そうしたことでございますから、今の矢田部委員のいろいろの問題に関しましても、私は、十分に脳裏に刻み込んでおりますから、今後国民がそうした面におきましても不安を抱かれないように、我々として政府は全力を挙げなければならない、かように考えます。
  103. 矢田部理

    矢田部理君 終わります。
  104. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 以上で矢田部理君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  105. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 次に、上田耕一郎君の質疑を行います。上田君。
  106. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私は、まずアメリカの空母のタイコンデロが号の事故問題を取り上げたいんですけれども、今聞いたニュースで、アメリカ政府があの飛行機が積んでいた水爆ですね、これ放射能が漏れているという事実を発表したということを聞きましたが、外務省、つかんでおりますか。
  107. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 我が方が承知いたしておりますことは、先ほど大臣の御趣旨を私が読み上げましたことに尽きております。
  108. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 この問題一層重大になってくるので、放射能事故としてもさらに追及したいと思います。  今度の事故は、日本周辺を作戦行動中のアメリカの艦船に核兵器が積み込まれていたという事実が確認された最初のケースだと思いますけれども、外務省、いかがでしょう。
  109. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) この事故において、一九六五年に米空母タイコンデロガからA4航空機が核兵器とともに水深一万六千フィート、約四千八百メートル以上の海底に沈んだことは米国政府も明らかにしておりますけれども、他方、米国は、一般的に特定の艦船における核の存在を肯定も否定もしないとの政策を堅持しております。米国政府が実際に右政策をどのように運用しているかの詳細及び公海上における米軍艦船の活動につき、核搭載の有無を含め、具体的に政府として承知する立場にはございません。  以上でございます。
  110. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 つまり、核兵器の存在も非存在も明らかにしないという態度なんですから。ところが、事故が起きたので明らかになった。ですから宇野さんね、もし横須賀に停泊中に事故が起きると、あなたのフィクションは全部崩れるんですよ。横須賀でなくてよかったと思うでしょうけれども、最初のケースなんですね。それで、もし事故が起きなかったら、水爆をあのタイコンデロガ号は格納したまま横須賀に入ったんだろうと、そういうことになるんですよね。  そこで、初めてそういうことが暴露されることになるんですが、横須賀に寄港したかどうかアメリカ政府に照会してもアメリカ政府は言わないと。アメリカ政府も、だから明らかになるのは困るのでこれ引き延ばしているのだと思うんですが、海上保安庁、お伺いします。  先ほどお話しのように、米軍地位協定に基づいて勝手に使えることになっているんだけれども、浦賀水道、東京湾は世界でも最も有名な過密の海なので、特に大型の艦艇、原子力推進でなくともアメリカの空母が入港するときは、アメリカ側はやっぱり連絡をとり合って、あそこの出入りについてやっているというんですね。だから、海上保安庁にはその記録があると聞いておりますけれども、海上保安庁、いかがでしょう。
  111. 野尻豊

    政府委員(野尻豊君) 海上交通安全法に基づきまして、浦賀水道航路を航行する場合には、巨大船、いわゆる二百メートル以上の船舶につきましては通告があることになっております。  ただ、この海上交通安全法が施行されましたのは四十八年の七月でございまして、タイコンデロガの今回の事件については直接関係ないというふうに考えております。
  112. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 残念でした。どうも、聞いても海上保安庁からなかなか答えが来ないのでどういうんだったろうと思ったら、今わかりました。ははあ、そうか、四十八年七月からか。ということで辛うじてセーフということになったんでしょうな。しかし、そういうことで喜んではいられな い。  読売新聞に、タイコンデロガに当時爆弾手として乗り組んで、事故の一部始終を目撃したウィリアム・レーンさん、この方がカリフォルニア州サンジエゴで読売新聞のインタビューに応じた。彼はいろんなことを、重要なことを言っていますけれども、「同空母の航路については、「米国を離れてからフィリピン、日本、ベトナムに行き、その帰路事故にあった」と語り、日本寄港が二度にわたっていたことを示唆するとともに、「日本寄港時には核を含む作戦上のすべての装備が搭載されていたはずだ」」と言っているんですよね。  ですから、こういうアメリカの空母というのは大体核爆弾百個積んでいるのが普通なんです。このことは非常に有名な新聞記事で、八三年二月二十三日付に朝日新聞の小川ワシントン特派員がアメリカの議会に出された国防総省の説明資料に基づき、また軍事専門家の調査に基づいて、アメリカの空母は百個核兵器を持っているということを詳細に書いた有名な記事があります。ですから、一個海に落ちてもまだ九十個以上あるんです。そのことは宇野さんに言っても絶対認めないでしょうが、事実なので申し上げておきます。  しかし、一個あったことは今度の事故で明らかになった、初めてね、一個。少なくとも一個は積んでいたんですよ、タイコンデロガは。そうすると、十二月五日に事故が起きて、十二月七日に横須賀に寄港して四日間いたというんですけれども、それは帰りだ。事故が起きて一個は海に沈んだ。しかし、行きは少なくとも一個は持っているんだから、タイコンデロガは少なくとも一個の、一個以上と言っておきましょう、水爆を積んで横須賀に行きに寄港していたんですよ。帰りは一個落ちて一個減っていたんですよ、マイナス一個で。百個だとすると九十九個になっている。そういう事態なんですね。  だから、事実は、今度は極めて明確になった。日本近海で作戦中のアメリカの空母が核兵器を積んで行きと帰り横須賀に寄港して、行きには明らかに水底に今沈没している水爆B43を持っていったと。  当時、アメリカから事前協議の申し入ればありましたか。
  113. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) ございません。
  114. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ここにからくりがあるんです。アメリカは水爆を積んだ空母が横須賀に寄港しても日米間の取り決めに違反してないと思っているんです。それで、日本側は事前協議の申し入れがないから核兵器はございませんと言い抜けることになっておる。  このからくりがずっと国会で問題になってきて、この問題については、先ほども矢田部議員も申しましたけれども、七四年九月のラロック証言がある。日本などの港に入る際、核兵器を外すことはないと、自分の体験に基づいて証言しました。それから、ライシャワー大使がその秘密を暴露しました。というのは、トランジットとイントロダクションは違うんだと。トランジット、寄港についてはオーケーということになっているんだ、だから、日本政府の言う核持ち込みというのはトランジットじゃないんだ、本物を陸揚げして据えつける、これがイントロダクション、持ち込みだと。トランジットについては黙認するということになっているということをライシャワー大使が明らかにされた。  我が党は、おととしアメリカの調査に参りまして、そこで六六年二月二十四日付のラスク・アメリカ国務長官のライシャワー大使に向けての極秘電報を手に入れて公表し、国会でも問題にしました。それは、六〇年の安保条約下の核兵器持ち込みに関する秘密取り決め、コンフィデンシャルアレンジメンツ、一九六〇年秘密合意、コンフィデンシャルアグリーメント、秘密合意があるんだということがラスク長官の訓令にはっきり書かれていて、それには、日本の港湾に寄港中のアメリカの艦船、それからトランジット中のアメリカの航空機に積載された核兵器の存在に関して日本政府が受け入れてきたあいまいさと。あいまいにしてあるということなんですね。これがそのからくりです。  宇野外務大臣、日米間にトランジットの場合、寄港の場合にはこれはあいまいにしておこうという秘密合意があり、だからこそあなたは今度のような大事故が起きても、事前協議がないから核兵器は入っていないというフィクションを厚顔にも言い続けているんじゃありませんか。
  115. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 先生が最後に言及されました米側の電報なるものにつきましては、当時既に、「語句の使用方法等の点で厳密であるとは言い難く」ということに始まります国務省の回答に接しておりまして、「例えば、核持込みについての事前協議に関する交換公文及び右にかかる口頭了解を、秘密でないにもかかわらず、「コンフィデンシャル・アレンジメンツ」ないし「コンフィデンシャル・アグリーメント」として言及しているように、全体として不正確なものであり、右文書の表現の一々をとらえて厳密な考証・分析を行うことは、上記の次第に鑑み、無意味であると考える。いずれにせよ、同電報は、核持込みを可能とするような秘密の合意があることを示すものではない。」という回答を得ております。  事前協議の主題といたしますこのいわゆる事前協議にかかわる取り決め、これはまさに交換公文及び右に係る口頭了解以外は何もございません。
  116. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) この問題に関しましては、昭和六十二年当時の倉成大臣からも密約があるかないかという話で答弁しております。  私、繰り返してそれを申し上げますと、核持ち込みの問題については、安保条約第六条の実施に関する交換公文及び同交換公文の解釈を日米両国間の了解事項として交渉当事者が口頭で確認したいわゆる藤山・マッカーサー口頭了解がすべてである、このほかに何らかの取り決めがあるという事実はない、これが倉成さんの答弁で、私もこのとおりでありまして、今、上田委員はフィクションとおっしゃいましたが、決してそのようなフィクションはございません。このとおりだと御理解願いたいと思います。
  117. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 日米間の秘密協定で口が裂けても言えないでしょうし、あなたも知らぬかもしれぬ、あなた知らなくても有効なんですから。この問題、自民党政府国民をだまし続けたフィクションが次第に暴露されつつある。もう辞職もので、すよ、辞職表明しているので二度はできないでしょうけれども。そういう問題であることを指摘して次に移ります。  資料配付をお願いします。    〔資料配付〕
  118. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 先日吉岡さんが示しました株式の売買約定書を、きょうは理事会の承認を得て配付いたしました。新しく、亡くなられましたが青木伊平氏のはがきのコピーも入っております。首相は筆跡鑑定人じゃないと言われましたけれども、事実を究明する上でやっぱり筆跡の問題が重要で、だからこそ三点セットについてもコピーを我々は要求しているわけですね。  まず、首相にお伺いします。この福田勝之氏名義の売買約定書、首相が提出されると言われるものと同じものでありますか。
  119. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 後刻何か提出することになっておるようでございますが、正確に比べて今は見ておりませんが、多分そのようになると思います。
  120. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 これ、いろいろ重要なことが確認できる。私ももちろん筆跡鑑定専門家じゃございませんけれども、素人が見てもここの署名、これは三枚目にあります福田正、福田組社長の筆跡とはまるで別物です。このことは素人でもわかると思う。ところが、福田さんは新潟での記者会見で、東京に行った、竹下事務所に寄ったら青木秘書からこの株の話をされてその場で引き受けたと、そう言っているんですよ。その場で、引き受けたら恐らく御自分でサインするだろうと思うんですね、これは推測ですけれども。それはまあ推測で、それ以上詰めませんが、少なくとも福田さんのサインではないということはほぼ明らかなん ですね。それで青木さんのサインでもありません。  そうすると、私は首相にお伺いしたいんですが、私どもはまだ青木さんの約定書を見ておりませんが、青木さんの約定書のサインと福田勝之さんの約定書のサインとほぼ同じ筆跡ですか。
  121. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ちょっと後から私も見てから申し上げますが、私の記憶でございますけれども、青木君はいつでもゴム印と実印を使っておったと思います。
  122. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 なるほど。青木さんのはゴム印で、福田勝之さんのは、ゴム印は当然事務所にないからだれかが書いた。ですから、竹下事務所ですから、竹下事務所の事務の担当の方が書かれたんだと思う。  竹下さん、御自分の事務所の方よく御存じでしょうけれども、思い当たりございませんか、この字は。
  123. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 事務所もここのところ二年ばかり行っておりませんが、一度ぐらい行ったことございますが、一人一人の、たくさんおりますので、ちょっと筆跡まで全部承知してはおりません。
  124. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 これまで明らかにしましたように、竹下事務所に間宮さん、小野さんが二人で訪ねて、株を全部用意してあって、譲り渡し人のビッグウエイ、ドゥ・ベストの判こまで押してある、それを渡して帰ってくる、そういうことなんですね。  お示ししました資料の中の二枚目、これがドゥ・ベストの売買約定書、これは青木さんのじゃございません。これは別件ですけれども、プライバシーがあるので名前は消してあります。名前が消してあるドゥ・ベストの約定書とビッグウエイの約定書、見てごらんなさい。株数の字、単価の字、受け渡し時期の字、数字、全く同じなんですね。だからリクルート側は、こういうものを全部書き込んで判こまで押して、あとは株を譲り受ける方がサインして三文判を押せばそれで契約は成り立つという形式で処理している。  ですから、竹下事務所で青木さんが二千株の御自分の分と、江副さんが証人喚問に出てきたとき東中議員に答えて、竹下総理の分は青木さんに話したと。竹下総理の分というのは、だからこれは全部竹下事務所で処理されたということになる。そうすると、あなたがこれまで、例えばこの間の四月十一日の釈明で、これは青木氏個人に帰属する取引であって、私の取引でもないし私の政治資金の関係ではないと、そう言われたのは違うことになりますよ。いかがですか。
  125. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 別に違うと思っておりません。
  126. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 なぜ違わないんですか。
  127. 竹下登

    国務大臣竹下登君) それぞれ主観に基づいて断定なさいますが、私は思っていないということを申し上げておるわけでございます。
  128. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 思っていなくても事実は明らかなんですよ。秘書が秘書が、妻が妻がというので言い抜けしたのが全部暴露されてきたでしょう。あなたは弟の妻の父がということで福田正さんにかぶせているんですよ。  あなたは、首相はこう言ったんです。リクルートからだれか信頼できる人をと頼まれて、リクルートに福田さんを紹介した、十二月十五日、我が党の橋本議員に対する答弁で、国会での答弁。ところが、リクルートに紹介されたといっている福田正氏本人は、コスモス株は青木秘書と直接取引したものだと。青木秘書が株をだれから引き受けたか知らないと言っているでしょう。だからリクルートと全然関係ないですよ、福田さんは。あなたの言うことと違うじゃありませんか。
  129. 竹下登

    国務大臣竹下登君) どう答えたか正確に記憶しておりませんが、別に違っているとは思いません。
  130. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 だめです、だめです、そんな、私は具体的に聞いているのだから。  知らないって、あなたはこう答えているんです。リクルートに福田さんを紹介した、ところが福田正氏は、青木さんとやったと言う、リクルートと全然関係ないと言うんですから、違うじゃないですか。
  131. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私が発言をしたことには責任を持たなきゃなりませんが、別に私は違ったことを言っているとは思いません。
  132. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 あなたはもう退陣表明をしているので、安心してそういう答弁ではぐらかそうとしているけれども、これは宮澤さんが河合さんを使ったと同じように、全く無関係の福田正さんを引っ張り出したんですよ、あなたが。弟の妻の父がということで、そういう疑惑がますます強まっている。  なぜかといいますと、きょうあなたは三点セット提出されると言われますけれども、代金の払い込み、それから売却代金の問題については銀行確認書、これをお出しになるんですね。
  133. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まだ委員長の手元に届いていないようですから、その前に予告することは差し控えさしていただきましょう。
  134. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いや、予告じゃないんだ。四月十一日の釈明で、「株式購入代金の払い込みを受領した銀行の確認書及び株式の売却代金の送金を受領した銀行の確認書は準備いたしました」と御自分で言っているから聞いている。
  135. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 間もなくお出しいたしますので、書いているのを読み上げても結構ですが、やはりそういう手続が決められたようでございますから、そういうことを守らしていただきます。
  136. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 株式の売却代金の銀行の確認書というのは後からつくったものですよ、当時こういうものが入っていましたと。そんなものではなくて、あなたは国会で何回も福田勝之名義の通帳を見た記憶がある、最初は二千万円と言い、後で五千二百万円と訂正されましたが、通帳を見たことがあると言われた。その通帳の提出をしなければ、銀行が今になって確認したという程度のものではだめなんです。通帳を、あなたが見たことがあるものをなぜお出しになりませんか。
  137. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 通帳というものは、通帳でございましたか、いわゆる元帳でございますか、そこのところは正確に記憶しておりません。通帳は、私なりに個人的に調べてみましたが、人によりましては十年以上保管しておる人もございますし、あるいは保管していない人もあるというふうに承知しております。
  138. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 通帳を出してほしいと言っているんです。
  139. 竹下登

    国務大臣竹下登君) あるなしは別としまして、出してからひとつ御相談くださいませ。
  140. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 全く無責任。あなたは四月十一日に銀行確認書を準備したと言っているんですよ。銀行確認書というのはだめだと、売却代金の振り込みの証明になるのはあなたが見たと何度も国会で答弁している通帳だと。三点セットを出す出すと言ってそういう別のものを出したってだめだから、通帳を出しなさい。なぜ出せないのか、はっきり答えてください。
  141. 竹下登

    国務大臣竹下登君) やっぱりちゃんと院で、私が最初申し上げますと、衆議院へ持ってまいりました。しかし、いろんな都合でお受けいただけませんでした。したがって、出す意思は、そこで持っていったわけでございますが、今日はいろいろ御協議の上後刻提出するようにということでございますから、提出前に議論をすることは差し控えるべきだと思ったわけでございます。  それから、今の上田委員からお配りなすった資料で、やっぱりお手入れになっておるところの写しを黒くしていらっしゃいます。第三者の問題でございますから、したがって、それらに対する問題の配慮は私が持っておる気持ちと一緒なのかなと思っております。
  142. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 竹下首相との関係のものだったら我々は明らかにする。これは別の件だからこういうことをしたので、しかも御本人の承認を得ておりませんから。  この問題は、退陣表明をしたとはいえ、首相自 身にかかわる問題で、きょうの答弁でも、あなたは本当に率直に事実を申し述べようとされない。そういう態度だからやっぱり伊東総務会長にも振られるということになるんですね。けじめをはっきりさせるということがあなたはできない。国民は参議院選挙でそういう態度に厳しい批判を下すだろうと思います。  次のテーマに移りますので、午前中はここで中断したいと思います。
  143. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 上田耕一郎君の残余の質疑は午後に譲ることとし、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十分休憩      —————・—————    午後一時一分開会
  144. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 予算委員会を再開いたします。  平成元年度総予算三案を一括して議題といたします。  休憩前に引き続き、上田耕一郎君の質疑を行います。上田君。
  145. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 午前中にも問題になりましたタイコンデロが号の核兵器搭載機の事故問題、二十四年前にこういう事故が起きて核物質が海水にさらされていたというんですけれども、沖縄の沖永良部島から三百キロのところですよね。  当時、アメリカ政府からこういう事故が起きたという通知はありましたか。
  146. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 事故発生のときにはないわけでございまして、四十年のそのときに、今まで答えておりましたとおり、大陸より五百海里のところにおいて事故があったと。その当時はたしか世界じゅうの事故が発表されたと思っております。  なお、詳細は政府委員が来ましたら報告させます。
  147. 福田博

    政府委員(福田博君) 一九八一年にアメリカの核兵器事故の例というものがまとめてアメリカ国防省から発表されまして、全体で三十二件あるということが概略報告されております。
  148. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 非常に危険なことです。  九日の日にアメリカ国防総省は記者会見で、空母艦載機の攻撃機は現在も日常的に核攻撃訓練を行っている、そう述べていますね。空母ミッドウェーは横須賀が母港なんですから、日常的にこういう訓練を行っているというと、そういう事故の発生の危険もまた極めて大きいということになるんですね。  今の答弁だと八一年に知ったというんだけれども、二十四年前に起きているときには知らせられていないと。これはもう米政府に当然抗議すべきで、一切のこういう核事故については直ちに日本政府に知らせろという抗議的通告を行うべきだと思いますが、外務大臣。
  149. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 今までの経緯を申し上げますと、八一年に初めて発表があったわけでございまして、それよりはるかなるかなたにおいて事故が発生していたと。八一年の発表のときにも、実はアメリカにはそうした事故のときには公表すべきかどうかという一つの規定があると。その規定は、海水が汚染されたという場合にはそれに基づいて発表することになっておりますが、今回の事故はそれに該当しませんので公表をしておりませんということが一つ。  また、事故発生当時は、やはり繰り返し申し述べておりますが、核の有無に関しましては常にアメリカは返答いたしません。また、外洋におけることでございますから我々としても知りようがないので、なぜだったかということになりますと、やはり国家機密保持のためである、そういうようなことであったという経緯もこうしたときにお答え申し上げております。  したがいまして、こうしたことがやはり太平洋で起きればその太平洋諸国の方々の人心に大変な不安を与えるわけでございますから、私といたしましては、そうした不安がないよう今後やはり日本政府としても努力をしたい。また、そうしたことも機会あるごとにアメリカに対しましても申し述べるべきである、かように思っております。
  150. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私、先ほどタイコンデロが号が往路も横須賀に寄ったという乗組員の証言を言いました。帰路に横須賀に寄った問題だけではなくて、往路についても横須賀に寄ったのかどうか、アメリカ政府に照会してほしいと思いますが。
  151. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) これも照会中である、まだ確認を得ていないということでございますから、往路ともに照会しなければならないだろう、かように考えます。
  152. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 次に、破防法の問題に移ります。  五月十一日に我が党の吉岡議員の質問に対して石山公安調査庁長官は、「御党が今の綱領を根本的にお変えいただいて、社会民主主義下の政党におなりになる」、そうすれば「規制の対象から外されることになろうかと思います」と、公党に綱領の根本的変更を求め、さもなければ破防法に基づく不当な調査を継続するという暴言を吐きました。一体我が党の綱領のどこを変えろというんですか。
  153. 石山陽

    政府委員(石山陽君) まず、前回の答弁の真意について少しもう一度詳しく申し上げたいと思います。  すなわち、日本共産党に対して現在もいわゆる破防法の調査対象としている法的根拠等についての御質問でございましたので、破防法は暴力主義的な破壊活動を行う団体を規制するための法律でありますところ、本法を所管する立場から申しますと、日本共産党の重要な政治指針であります現行綱領には革命の手段、方法については明示されていないのであります。  しかしながら、当時の文献等によりますると、綱領に明記されなかった理由について、いわゆる敵の出方論の立場から、革命の平和的あるいは非平和的移行の可能性のいずれについても手を縛られることのないように、また敵に弾圧の口実を与えないためであるという旨の説明がなされております。そして、この点につきましては現時点に至るまで改められておりません。  したがいまして、破壊活動防止法を所管しております当庁の立場から申しますると、将来革命達成の手段、方法について日本共産党暴力主義的な破壊活動に出得る危険性が現時点で全く除去されているとは申しがたく、したがって調査の対象から外しにくいということを申し上げる趣旨でありました。  なお、綱領を変えては云々という点は、これは全くの比喩でありまして、例えば他の社会民主主義政党の綱領に見られますように、革命達成の手段として平和的かつ議会主義に徹するものとし、暴力を一切用いないという趣旨が明示されているような場合であればそもそも私どもの調査対象になりませんので、その趣旨を例示的に御説明申し上げたまでであります。  もとより、日本共産党の思想、信条あるいは結社、政策決定の自由などを侵害するつもりは毛頭ございませんでした。
  154. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 まことにこじつけとすりかえの論理ですよ。長官、あなたは、私どもは「最終的に御党が今の綱領を根本的にお変えいただいて、社会民主主義下の政党におなりになる」、こうすれば調べませんよ、そう述べたんだから比喩どころじゃございませんよ。これは治安維持法的発想なんですよ。共産党を社会民主主義の政党に思想を転向しろ、綱領を根本的に変えろ、そうでなければ調査し続けるぞと。  私は、こういう不当なことは比喩だろうが何だろうが取り消す、それを要求します。
  155. 石山陽

    政府委員(石山陽君) 私は、公党に対しまして綱領を変えろなどと申した趣旨は毛頭ございません。(「言っているじゃないか」と呼ぶ者あり)「いただければ」ということの意味は、あくまで主語は共産党であります。
  156. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 法務大臣、いかがですか。ああいう言い抜けをして取り消しもしない。どうですか。私はこういう方は罷免すべきだ。  木村法務総裁が当時、この破防法というのは構造的に根本的に治安維持法と違う、治安維持法の苦い経験の反省の上に立っている。治安維持法というのは思想犯、結社犯、思想を問題にした。その苦い経験から今度は暴力主義的破壊活動を行った団体が継続、反復する、それが明らかな場合、この団体を規制することにしたんだと何度も言っているじゃありませんか、治安維持法的発想だと。法務大臣、いかがですか。
  157. 高辻正己

    国務大臣(高辻正己君) 破防法の制定過程に私も若干かかわりを持ちましたので、その辺からお答えを申し上げたいと思います。  破防法が思想、信条の規制を内容としたものではなくて、暴力主義的破壊活動に出る危険性をはらむ団体を規制することを内容とするものであることは、これは明らかなことでございます。ある団体が公安調査官の調査の対象とされるかどうかは、これは御存じのことだと思いますが、過去に暴力主義的破壊活動を行ったことのある団体が、将来においてもその種の活動を行うと認められる危険性があるかどうか、これは法律によると非常に詳しく書いてございますが、ごく大ざっぱに申しますると、そういう危険性があるかどうかということでありまして、その団体が特定の思想、信条を抱懐しているかどうかということでは全くございません。ある団体がいかなる思想、信条を持とうと、それは全くその団体の自由でございます。  公安調査庁長官が吉岡議員にお答えした内容は、団体の思想、信条そのものについてどうこう申したわけではなくて、(「綱領を変えろと言っているじゃないか」と呼ぶ者あり)破防法の執行の職責を担う者として、共産党が破防法上公安調査官の調査の対象とされている理由につきまして、同党に係る暴力主義的破壊活動の危険性の有無が十分解明されていないということを申したものと私は理解しております。その趣旨はただいまも石山長官が御説明申し上げたとおりでございまして、私はその発言が憲法に違反するということは全くないと思っております。
  158. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 法務大臣、結局長官は、共産党が綱領を変えない限りその危険があるから調査し続けると言うんですよ。今言われた破防法の第五条で、要件は二つ決まっていますよね。かつてやった、しかも将来継続または反復してやるというのは明らかだ、この二つの要件の五条に当てはまろうが当てはまるまいが、綱領を変えない限り、社会民主主義に転向しない限り調査し続けますよというんだ。それでいいんですか。
  159. 高辻正己

    国務大臣(高辻正己君) その趣旨は、今、石山長官が話したところだと思いますが、綱領を変えろというわけでは無論なくて、そういうことが変われば今言ったような危険性の有無が明瞭になるだろう、そうなれば当然規制の対象から外されることになるだろうと、そういうことを申したと私は聞いております。
  160. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 法務大臣、この破防法の解釈の根本問題だよ。五条でしょう。言われたでしょう。五条の二つの要件にかなうか、かなうまいかということとは別に、日本共産党の場合には綱領で不明確だからいつまでも調査し続けると。破防法の精神規定と全く違うじゃありませんか。法務大臣はそれでいいというの。
  161. 高辻正己

    国務大臣(高辻正己君) 綱領を変えろということを実は言ったわけではなくて、それは調査の対象となるかどうかの観点から申したわけでございまして、今上田委員が仰せのようなそういう乱暴なことを申したとは私は到底解されません。(発言する者あり)
  162. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 傍聴席は静かに願います。
  163. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 こういうことが起きるのは——破防法は二つに分けてあるわけだ、調査と請求は公安調査庁がやる、規制の決定は公安審査委員会がやるということになっているね。三十六年間、うちの党を調べて調べて、それで全然請求しないわけですよ。我々、綱領を決めてから二十八年たっておる。何も暴力主義的破壊活動を継続もしない、反復もしない、何にもしていないでしょう。何にもしていないのに三十六年調べ続けていまだに調べると言っている。この間は、遠い将来まで調べる、綱領を変えない限り調べ続けると言うんですよ。おかしいじゃありませんか。  なぜこういうことが起きるかというと、公安審査委員会からの請求が議題にもならない。毎年全然問題になっていないんですよ。ところが、調査するというのは、公安調査庁長官が自分で決めて独断でやっているのだ。そうでしょう。どの団体を調査するかはだれが決めるんですか。
  164. 石山陽

    政府委員(石山陽君) 破防法に基づきます公安調査官の調査の権限は、法第二十七条に基づきまして独立の調査権を既に初めから法律に基づいて有しているわけでございます。  ただ、それを公安調査官に任せっ放しで自由にゆだねておきますことは、時にして重点の分散でありますとか行き過ぎとか、そういう問題が生じますので、私どもは内部の決裁手続をもちまして当面、事務の効率化、統一化を行う見地から、重点的に調査を執行すべき団体というのを指定しておると、こういう仕組みになっております。
  165. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 その指定はだれがやるんですか。また、調査の基準はどうなっておりますか。
  166. 石山陽

    政府委員(石山陽君) 指定は、内部部局の決裁請求を待ちまして私が指定をいたします。  それから、調査の基準等は内部的な規定に定めてございますが、私どもの業務の性格上、特に詳細について触れることはお許しいただきます。
  167. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 全く法的根拠のない不当な調査を我が党に対して三十六年やり、今後も綱領を変えない限りやろうというんですよ。全くひどい話です。  五二年当時、関法務府特審局次長はこう言っている。「団体の活動として暴力主義的破壊活動を行なった団体に対して、当該団体が継続又は反覆して将来又同様の行動をする、そういう事実が団体にない限りは、それに対して調べをするということは正当付けられない」と。  我々は、その前も党としてはやったことがない。綱領を決めてから二十八年、何にもないんですよ。調べることは正当づけられないと、関さんが当時言っているじゃありませんか。それを勝手にやっているのは、うちを調べないと仕事がなくなるんですよ、公安調査庁の。それから、莫大な国費を使って共産党というのは何か公安調査庁で調べられている、ちょっと危なっかしい団体だなと思わせる反共主義的偏見からだと、そう私は思うんですね。  法務大臣、こういう不法なことは、あなたはやめさせなきゃならぬ。いかがですか。
  168. 高辻正己

    国務大臣(高辻正己君) 公安調査庁は破壊活動防止法の執行の責任を負わされた当該官庁でございますが、したがって当該官庁の判断というものはまず第一義的に尊重してしかるべきものだと思っております。  随分長年の間、毎年報告の中に載せていないということは極めて幸いなことでございます。ただ、その危険が全くなくなっているのかどうかということの考え方は、第一義的には公安調査庁長官の判断にまってしかるべきものだと私は思っております。
  169. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 敵の出方の問題は何回も反論しまして明らかにしているけれども、平和的な道を保障するために、もし政府ができたときに暴力的なクーデターが起きたときにはそれを守らにゃいかぬから、平和的な道を保障するためにそういうことを明らかにしているんです。発達した資本主義国でも、フランスでアルジェリア問題のときにコロンが暴動を起こしてパリまで攻め上ろうとしたんだから。だから、ドゴール政権がああいう成立をしたんでしょう。あり得るんですよね。  だから、未然にそういう暴力行為を防ぐために我々は明らかにしている。何度も、大会でも国会の場でも明らかにしているんです。そういうことを本当にもう無視して、破防法の乱用ですよ、いつまでも綱領を変えて思想を変えなければ共産党は調べ続けますよと、とんでもない話です。  最後に首相、お伺いします。非常に重大問題ですね、憲法の結社の自由、思想、良心の自由、こういう問題にかかわる問題なんです。  七三年一月に共産党と自民党の党首会談があった。当時、野坂議長が田中総理に、共産党をこういう破防法容疑団体の指定から直ちに外せという要望をした。田中総理は破防法問題の再検討を当時言明したんです。ただ、金脈問題でその実行をしないまま退陣したんですが。私は、こういう不当なことをここまでずっと続けていることは、これは共産党だけの問題じゃなくて、法治国家として大問題だと思うんですよ。  私は首相に、一国の首相として責任を持って、憲法四十一条で決められている国権の最高機関の国会の構成にもかかわる問題なんですから、政党の基本にかかわる問題なので、この問題について共産党に対する指定の取り消し、不当な調査を直ちにやめさせること、こういう措置をとるよう強く要望したいと思いますが。
  170. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 第一義的には、今、法務省からお話がありましたように、法務省及び同庁が具体的理由に基づいて判断しておるものであろう。だから、私から見解を述べることは差し控えるべきであると思っております。  私も野坂先輩のいらしたときのことを承知いたしております。そのときにも例の敵の出方論の問題について私自身も勉強をさしていただいてお話しした記憶がございます。あの敵の出方論というのは、実際問題として宮本先輩やそれから上田さんも含め随分苦労してつくられたものだなという感じは今でも私も持っておりますが、第一義的に私がその調査をやめろとか言うべきものではないというふうに思っております。
  171. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 時間が来たので終わりますけれども、この問題非常に重大なので、強く抗議して、こういう不当なことを一刻も早くやめなければ日本の議会制民主主義が健全に発展しないということを再度強調して質問を終わります。
  172. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 以上で上田耕一郎君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  173. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 次に、山本正和君の質疑を行います。山本君。
  174. 山本正和

    山本正和君 きょうのお昼のニュースで、北京空港にゴルバチョフ書記長が到着して中国の首脳との会談がきょうから始まる、こういうふうなことが報道されておりました。  私も戦前はずっと中国におりましたし、中国の国民感情はいろいろ私なりにつかんでおるつもりでございます。そして、特に戦後三回ほど中国を訪問いたしましたが、国民感情としてソ連に対する非常に厳しい、いわゆる匪賊という言葉を使うぐらい厳しい国民感情が中国の中にあった。これは現実に今もまだ消え去らないと思うんです。  というのは、日露戦争あるいは第二次世界大戦終結後のソ連の占領政策、特に東北部におけるさまざまな出来事の中で、在留日本人はもちろんでありますけれども、東北におった中国人の皆さんも随分激しい奪略、暴行、強姦等も受けているんですね。またおまけに、我が国が旧東北に置いてあったところのさまざまな財産、これを全部撤去して持っていく、あるいは文化大革命までにソ連が中国にさまざまな供与をしたものを一挙に取り去って生産をとめる、そういうさまざまなことがあった。しかし、今中国はソ連と和解をして、そして世界の平和ということを真剣に議論しようと、こうなってきている。ですから私は、特に国際政治がやはり大きく転換していきつつある一つの証左、こういうふうにも思えるわけです。  ところが、我が国は両国にいずれも隣接しておって、しかも政治的、経済的、また軍事的にもさまざまなかかわりを持っている。ですから、今この段階で中国とソ連の間の話し合いがどういうふうに進められるか、恐らくそういうことが我が国に深くかかわってくる、こんなことをきょう感じておったわけであります。  そういう意味で、ひとつこの中ソ首脳会談ということについて我が国はどういうふうな、何といいますか、これからの問題も含めて対応をしていかなきゃいけないのか、そういうことも含めて、総理並びに外務大臣にまずお伺いしたいと思います。
  175. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) ついこの間ソビエトのゴルバチョフ書記長、またシェワルナゼ外相ともこの問題を話し合いました。また、総理は李鵬首相との間におきましても中ソ首脳会談の話をされておりますし、私もたまたまモンゴルの帰途、北京に寄りまして銭其シン外相と、ことしで四たびでございますが、四回目の会談をしてその間のお話をしております。  いずれにいたしましても、やはり米ソの間の対話継続という新しい流れが世界に見え始めました。結構なことだと我々はこれを評価しております。そうした中におきまして、社会主義の国におきましてもやはり経済的に何とか立ち直りたいというようなことが言われ出して、ソ連ではペルストロイカ、また中国では開放改革というような路線が執行されるに至ると。そうした中で中ソの三十年ぶりの和解でございますから、これは我々といたしましては、アジア、特に極東の安定のためにも非常に歓迎すべきものである、かように思いまして、ついこの間、私たちはその成り行きを注目し、また成功をお祈り申し上げます、ともどもにひとつ大いに協力して世界の平和並びに経済の繁栄に、そして民生の安定に努力しようじゃございませんかというふうにそういうような言葉を交わした次第でございます。  いよいよきょうからその首脳会談が開かれるということは日本にとりましても非常に大切な時点である、十二分に今後両国に対しましても、やはり国交改善を果たしながらひとつ我が国も大きな役割を果たさなければならないと、かように思っております。
  176. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず最初に、山本委員が過去の歴史を振り返っての気持ちを訴えられました。およそ私もその気持ちはひとしくいたしておるところでございます。  外務大臣からもお答えがございましたように、アジアの安定、世界の平和というものにこれはつながっていくことであろうと、心からこれを祝福しておるというのが今の心境でございます。
  177. 山本正和

    山本正和君 そういう形で中ソの和解、さらには米ソのいろんな協議等もございますから、我が国の従来の外交防衛政策についても、新しい観点から今後十分な対応をぜひお願いしておきたい、こう思っております。  さて、予算に関する質問を今からさせていただくわけでありますが、まず平成元年予算、これは首相の施政方針演説も、また大蔵大臣の所信表明も読ましていただきました。この平成元年予算というのは従来の予算とやっぱり私はかなり大きく変わったものがなくちゃいけない、こういう感じがするわけでございます。  そういう意味で、総理並びに大蔵大臣がこの平成元年予算においてどのようなところに特徴点を置いて編成されたのか。これは所信表明演説だけではちょっとまだ余り大づかみ過ぎてわかりにくいので、その辺をお聞かせいただきたいと思います。
  178. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 平成元年予算は、今の民間の経済状況を考えましてやはり内需拡大という問題はありますが、その観点から見まして、公共部門につきましては去年とずっと横ばいでいく、しかし景気刺激的にはやりませんということを言っております。しかし同時にまた、財政の効率化を進めるために平成二年度赤字国債脱却を目指してやります、そのために厳しく査定してまいります、こういうことを言っております。  それから、福祉の問題と申しますか、高齢化社会をねらいましては、今度は初めて消費税が導入された年でございますので、これをしっかり育てていきたいということも入れているわけでございます。また、高齢化に向けまして年金改正その他、大変な将来を見詰めましてもろもろの改正をやっております。それから鉄道共済の再建の問題、あるいはそれと絡んで被用者間の年金の調整 の問題等々やっているわけでございます。  いずれにいたしましても、現在の日本の経済社会に必要と思うこと、それから将来に向けて財政の対応力を高めておくこと、そういう必要なもろもろの施策を盛っておると承知しております。
  179. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ただいま大蔵大臣からお話がありましたように、性格としてはいわば景気刺激型というものをとらない内需中心にするところの経済運営でございますから、インフレなき持続的成長を期するということであります。それから中身は、いわゆる高齢化社会というものを意識して、より景気に左右されない安定的歳入構造というのが消費税というものでひとつ立証されていったではなかろうかということであります。また、今お話しのありました年金問題等少しく二十一世紀を展望した芽がこの予算で出たのではなかろうか。いま一つは、やはり平成二年度赤字公債依存体質脱却という見通しというものに立ったということも大きな特徴ではなかろうかというふうに考えておるところでございます。
  180. 山本正和

    山本正和君 総理、当予算委員会あるいは昨年の税制特別委員会その他でいろいろと御説明をいただいております。そこで言われた言葉の中に、とにかく竹下登政治生命をかけて新しい税制を導入したんだと、要するにこれは二十一世紀における我が国の対応のためになくてはならないのだ、こういうことを盛んに強調されておられるわけです。そして、二十一世紀問題というのは、これは財政上の問題ということよりも、我が国日本の国のあるべき姿といいましょうか、予想をし得る姿といいますか、そういうものをみんなで考えながら、それにどういうふうに我々がアプローチしていくかという問題だろうと思うんです。  ところが、今の大蔵大臣の御説明でも総理の御説明でも、財政再建と、あるいは何といいますかインフレを抑えるために云々と、こういう部分はかなり強調されるのがありまして、それから税制改革というふうな大変な問題をやるということは、これは何十年に一遍の事柄ですね。しかし、税制改革をやったと、それは我々としてはこういうことを目指していますよということが政府として国民にわかるようにしていただかなきゃいけない、こういうことを私は思うんです。  所信表明演説の中で総理が言っておられるのは、「この改革が」、要するに税制改革ですね、「我が国経済社会の活力を維持し、豊かな長寿・福祉社会をつくる礎となるものと確信いたしております。」と税制改革の目的を非常に高らかにうたっておみえになる。また、福祉関連のところも「国民のだれもが、長い人生の中で」云々と、福祉社会の実現を目指す、こういうことを言っておられるわけですね。また、大蔵大臣もそういうことに触れて「高齢化・国際化の進展等将来の展望を踏まえ」、こういうふうに言っておられる。  ところが予算を見ると、どうもそういうアクセントがない。恐らく厚生省にしても労働省にしてもあるいは文部省にしても、従来から、二十一世紀に対するさまざまな思いをかけて、省庁内でいろんな議論をされて未来像をいろいろつくっておられる。それへ向けての予算要求というのがずっとありまして、その中できておるとは思うんですけれども、では、我が国が今、平成元年予算を組むに当たって、そういう福祉社会をつくるんだという明確な予算となっていないように私は思えてならないんですね。  簡単に言いますと、大蔵大臣が御説明になると大変学問的に予算説明なさいますけれども、国民から見たら、待てよ、何が変わったんだと、一体福祉社会の実現というと何を具体的にやったんだ、こう言われると、説明のしようがないんですよ。その辺はどういうふうに御説明いただけますか。
  181. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 実は、昨年通りました税制改革これ自身が、もうあそこにうたっておりますように、将来の福祉社会あるいは国際化、こういったことを第一義的にねらって、そして安定的なバランスのとれた租税体系をつくるということはもう昨年の国会で済んでおりますので、そのことは特には強調はしていないということを御了承いただきたいと思うんですが、これが何よりもやはり一つの大きな歳入構造の問題あるいは負担の公平の問題、あるいは所得、消費、資産のバランスのとれた問題、あるいは所得だけ重視する租税制度というものは恐らく将来適さなくなるであろうという問題、あるいはまた将来のことを考えますと、今のような個別間接税のような根本的な問題を持っているものについて思い切ってメスを入れて、これから所得者が減るわけでございますから、したがって広く薄く持っていただく、赤字法人にしても持っていただく、政府の機関にしても持っていただく。  所得税には、何といっても一つの限界があるものでございますから、そういう点を強調しておるのでございますが、これは税制の問題で、昨年通ったものでございますから、ことしはそれを導入して、先ほど総理が申し上げましたように、安定した収入ができました、こういうスタンスで言っているわけでございます。  歳出の方でございますが、ごらんになるとわかりますように、全体的に申しますと四・九%ぐらい思い切ってふやしておるのでございますが、これはその金額の枠の話でございます。  それから、中身に入りますと、画期的な、財政再計算の年に当たりますので、年金については今度は再計算に基づく給付それから保険料の改正、あるいは国民年金につきましても、基金をひとつつくったらどうかという思想も入っておりますし、学生については、やはり強制的にこれから入れようという問題も入っておりますし、それから今後は給付は完全に物価スライドにいたしますという問題も出ておりますし、そのほか将来の問題に備えまして、六十歳から六十五歳という問題までも今のうちから予告した方がいろいろの問題で、雇用の問題あるいは自助努力の問題、こういったことを準備していただくことがよろしいんじゃないでしょうかということも出ているわけでございます。そのほかに、在宅福祉につきましては画期的な三本柱も推進しております。その他、今までお話しいたしましたように、生活保護につきましては四・二%引き上げますとか、あるいはいろんな施設の入所者の生活につきましては三・五%上げますとか、そういう問題をきめ細かく入れているわけでございます。  去年の税制国会で示されました豊かな長寿社会ということで政府は出させていただきましたから、あの構想に従いまして、もろもろの二十一世紀を目指すそれぞれの施策について、平成元年においてやれる限りのことをやろうということで出している、こういうことでございます。
  182. 山本正和

    山本正和君 個別の問題は今からやってまいりたいと思いますし、特に今おっしゃった年金問題等は、今から厚生大臣にもお伺いしてやっていきたいと思うんですけれども。  私は、父親がかつて衆議院議員であった濱地文平さんと懇意にしていただいておりまして、そういう年齢の方々で影響を受けた人たちの知り合いが田舎で割合多いんです。そうすると、その高齢者問題ということでよく議論が出ます。いろんなところへ行って話をさせられたり、話を伺ったりするわけですね。  ところが、お年寄りが言っておられるのは、福祉社会というふうなことを言い始めて随分たつけれども、一体どうなっているんだと。私も国会議員の一人ですから、おまえも責任があるんじゃないかということでいろいろおしかりを受ける。その中で今一番、これはまた後ほどお聞きしますが、きょうは公正取引委員会委員長に来ていただいておりますので申し上げておきたいんですけれども、ちょっと横道にそれますが、何か知らないけれども政府はインフレを助長するような政策をとったのと違うか。特に消費税を通すためには少々物価が上がっても構わぬよ、業者の皆さん、まあ適当にやってくれと、こういうふうなことを言っておる。これは三重県の税務関係の人が言ったかどうか、これは申し上げませんけれども。したがって、事業者にとってはこの消費税の導入と いうのは絶好の機会だというふうな受けとめ方をしている部分もあるわけですよね。  お年寄りから見ると、長いインフレで、戦争の経験をされて戦後のあの時代を迎えておられるだけに、政治の安定の根本は物価だと、一体どうなっているんだと、こういうおしかりをよく受けるわけです。ところが、公正取引委員会が何かカルテルに味方しているような、そんな受けとめ方をしている部分もないでもない。  ひとつ公正取引委員会にお伺いしたいんですけれども、消費税について、導入にかかってそういう業者との関連、物価の問題も含めてどういうふうに受けとめておられるのか、ちょっと公正取引委員会にお伺いしたいと思います。
  183. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 今おっしゃいましたのは、消費税が実施されるに伴いまして、御承知のとおり、特別立法をもちまして転嫁並びに表示に関する独占禁止法の適用除外のカルテルが認められました。そのことにつきまして、一般事業者に不当な値上げの機会を与える口実を与えているんじゃないか、あるいは誤解があるんじゃないかというふうな御懸念であろうと存じます。  今回の特別カルテルの趣旨は、毎度申し上げておりますように、特に転嫁カルテルにつきましては市場競争力の弱い中小企業者に限定をいたしまして、事前に我々の委員会に届け出を出してもらう。しかもその内容は、消費税が転嫁される前の価格につきましては事業者がそれぞれ独自に決められるべきものでありまして、それをベースに消費税相当額分をいわば上乗せするということに限定したカルテルでございます。  現時点までの私どもの認識を率直に申し上げますと、これは前回の委員会でも申し上げたわけでございますけれども、実施前に、つまり三月三十一日以前にいわば駆け込み的な形でのやみカルテルと申しますか、値上げカルテルというものが一部の業種に見られまして、これらにつきましては現在調査し、既に措置なり指導を終えているものもあるわけでございますが、それらを通じて私ども感じておりますのは、今回の特別カルテルについて誤解があって、値上げをしてもいいんだということを制度的に認められたというふうな誤解を持ってそういうことが行われたという状況にはないというふうに見てよろしいかと思います。それから、四月一日以降につきましても、現在までのところ、いわゆるやみカルテルによって便乗値上げが顕在化している状況にはないと判断をいたしております。  ただ、委員が御指摘なり御懸念になっております問題につきましては、昨年十二月にこの制度の特別の措置の内容につきましてわかりやすいガイドラインをつくり、それ以後今日までいろんな機会に周知、指導に努めておるわけでございますけれども、今後とも万そういう誤解に基づく値上げカルテルというものが行われないように、我々としても引き続き周知、指導に努めてまいらなければならないというふうに考えております。
  184. 山本正和

    山本正和君 今の委員長お話、大変わかりにくいんですね、一般国民説明する場合に。ですから、消費税を乗せたら、これは三%分の消費税を乗せた、その部分については一緒に相談してもいいよと、しかしそれ以外の相談をすることは、これは公取は厳重に取り締まりますよと、そういうふうにはっきり言ってもらえばわかるんですけれどもね。そこら辺はどうなんですか。
  185. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) ただいまの私が申し上げましたことをやや説明不足という御指摘でございます。これは御指摘のとおりでございますが、ただ先ほど申しましたように、周知、指導を図る中で、昨年の十二月のガイドラインにも明記してございますように、今、委員がおっしゃいましたそういう範囲を逸脱するカルテル行為は、法律によって独占禁止法に禁じられているカルテルに該当するということは明らかでございますし、そのことはあらゆる機会を通じてやっております。  同時に、今後ともそういう事態が起こりました場合には、迅速かつ厳正な対処をしてまいる、これは言うまでもないところでございます。
  186. 山本正和

    山本正和君 二年間の暫定措置と言って、いわゆる大変わかりにくいカルテル行為、これが認められていると、こういうふうに受けとめている向きが非常に多いわけです。特にまた、大蔵省の指導なのか、国税庁の指導なのか、これはわかりませんけれども、各県税事務所に至るまで、一体話し合いはどういうふうにしてやるんだ、値段を決めるのにどうしてやったらいいんだというところまでいろんな議論をする。そうすると、まあまあと、こうやってやられるわけですよ。私は、これは公取からいったら、いわゆる本体価格についての値段の相談というのはこれは絶対いかぬと、こういうことを言えると思うんですよ。その辺はどうなんですか。もうちょっとはっきり言ってください。
  187. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 本体価格の統一につながるような、かつ暗黙といえどもそういう共通意思の形成と見られるような価格の情報交換を含む相談というものは、独占禁止法に抵触するということでございます。このことはいろんな機会を通じまして、当委員会の説明会等でも明確にいたしております。
  188. 山本正和

    山本正和君 それでは国税当局と大蔵省に、特に今の公取の見解をひとつ間違いないように末端に伝えていただきますように、これは要望しておきたいと思います。  それから次に、総理の先ほどの御答弁、大蔵大臣の御答弁のところにかかわりますけれども、高齢者対策、要するに福祉社会の実現、こういうことで所信表明演説でも、また本予算委員会でもたびたびお話がございます。ところが、平成元年予算の中に占める高齢者対策の経費、これは全体で一体幾らで、それで何%ぐらいになるのか。さらに、昭和六十三年度予算に占める高齢者対策予算との比率はどうなっているのか。この辺ちょっと数字を教えていただきたい。
  189. 小粥正巳

    政府委員(小粥正巳君) 長寿社会対策の関連予算についてのお尋ねでございますけれども、長寿社会対策の関連予算としましてどのような範囲の経費を含めるかにつきましては、実はなかなか難しい問題もございまして、必ずしも明確に一義的に申し上げるのは難しいように思います。  ただ、お尋ねでございますので、一つは総務庁の老人対策室でこの関係の取りまとめが行われております。各省庁にまたがります長寿社会対策関係予算としまして総務庁の方でまとめられた数字は、一般会計で元年度五兆八千五億円という数字が出されてございます。それからもう一つ、私どもの主要経費別分類の社会保障関係費は、御存じのように、総額十兆八千億を超える数字でございますけれども、その中で高齢化の進展と関連の特に深い予算、これを取り出しますと、老人医療費では四兆九千七百六十一億円、年金では三兆四百三十億円でございます。なお医療費、これは全体としまして高齢化にかかわりが深いと考えておりますけれども、さらにその中で、いわば狭義の老人医療費、直接の老人医療費といたしましては、先ほど申し上げました四兆九千億円余のうち二兆五百二十三億円、こういう数字になろうかと存じます。  なお、先ほど申し上げました総務庁の取りまとめられました長寿社会対策関係予算は、長寿社会対策大綱、これに関連をいたします予算の総計という趣旨でまとめられたものと伺っております。私が申し上げました年金、医療のほかに、高齢者の雇用促進あるいは生涯学習体制の整備、さらに高齢者の住みよい生活環境の整備等が含まれていると伺っております。
  190. 山本正和

    山本正和君 占める比率なり、昨年や一昨年の予算構成と比べてどうなのか。そこはどうですか。
  191. 小粥正巳

    政府委員(小粥正巳君) 先ほど申し上げました総務庁で取りまとめられました数字につきましては、恐縮ですが私どもの数字ではございませんので、先ほど元年度予算の数字を申し上げましたが、伸び率、比率等については、ただいま直ちに持ち合わせがございません。  そこで、先ほど申し上げました社会保障関係費ということで仮にお尋ねの比率等を申し上げます れば、先ほど申し上げました元年度予算で計上しております社会保障関係費十兆八千九百四十七億円でございますが、六十三年度は十兆三千八百四十五億円。この間の伸び率は、先ほど大臣から御答弁がございました四・九%、伸び額で五千百;億円でございます。  なお、政策経費の合計でございます一般歳出に占める割合で申し上げますと、この社会保障関係費は、元年度予算で三二・〇%、前年度六十三年度では三一・五%ということで、伸び率としても予算各経費中最大でございますが、一般歳出に占めますウエートでごらんをいただきましても、ウエートも増加をしているという状況でございます。
  192. 山本正和

    山本正和君 私が指摘したいのは、私どもは、この消費税の導入あるいは税制改革のあり方について、税制改革そのものは賛成ですけれども、しかしこのやり方についていろいろ批判しているわけですが、まずせめて政府が提案する以上は、整合性を持って提案していただきたいということを思うんですね。  そうすると、消費税による増収というのは全く新しい収入増、これは新しい費目ですから。減税というのは、これは自然増もあれば、いろんな問題の処理の中で減税という問題もやっぱり浮かび上がりますけれども、しかし新しい税を導入するのを減税の手段にしたと盛んにこうおっしゃるんだけれども、消費税というのは、税制改革の一番基本の部分なんですね。その基本の部分の税制改革の理由を、政府は高齢化社会に対する対応とか、二十一世紀を展望したとか言っているんだけれども、じゃ、その五兆何がしというものがふえた、要するに全く新しい税収がふえたというものが国民の前に、なるほど高齢社会に対応するということを言っているのがここでは合うなという部分があればいいんですけれども、今の御説明、私もここで資料を自分で整理してみたんだけれども、六十三年度あるいは六十二年度、また五十七年からのゼロシーリングからマイナスシーリングに至る大変いろんな経過がありますね、それ以前に、我が国が経済発展していく過程の中における社会福祉費の伸び、我が国の施策の方向、四十八年度の福祉元年と言われた時代、そういうものから見た場合、この平成元年度におけるアクセントというのは何もないんですよ、高齢化、福祉社会は。額にして今五千億伸びているのは厚生省予算です。  厚生省予算そのものが、例えばこれは御承知でしょうけれども、私は余り言いたくないんだけれども、大体ほかのところから金借りてきて隠れ借金をつくっている。そして、少なくとも戦後我々が一生懸命になって日本の国に住んでよかったなという気持ちになりかかっていたのを、福祉予算については当然増は削らぬでおこうという長い習慣が自民党の中にもついておったんですね。中曽根さんのときになって、急にどっと変わったけれどもね。それで今度、平成元年にするときには、こういうことじゃいかぬからということを言った以上は、何かしなきゃいけない。ところが自然増分については、これはやっぱりぴしゃっと削っているわけでしょう、大蔵サイドの予算査定では。  ですから、そういうふうなことでいろいろ言っているけれども、消費税を導入したというのは、政府の言っているのと違うじゃないかという国民の感情はぬぐえないんですよ。今のあのお話で言いますけれども、平成元年度長寿社会対策関係予算、ちょっと総額をもう一遍言ってください。
  193. 小粥正巳

    政府委員(小粥正巳君) 再度のお尋ねでございますが、私が先ほど申し上げました、総務庁でまとめられた各省庁にまたがります長寿社会対策関係予算として私ども承知しております金額は、元年度予算で一般会計計上分五兆八千五億円、こういう数字を私ども伺っております。
  194. 山本正和

    山本正和君 伸び率、前年度伸び率。六十三年度との比較。
  195. 小粥正巳

    政府委員(小粥正巳君) ただいま総務庁でまとめられました数字は、前年度六十三年度分の数字では五兆五千百八億円と伺っております。したがいまして、伸び額で二千八百九十六億円でございますから、今ざっと見当つけますと約五%程度の増加、先ほど申し上げました社会保障関係費の五・三%でございます。先ほど申し上げました社会保障関係費の伸び率四・九%と比較的近似した伸び率になっております。
  196. 山本正和

    山本正和君 ですからね、別に消費税が入ったからとか入ってないとかということに関係ないわけですよ、ほとんどこれは。ですから私は、政府がやっぱり国民の前でいろいろと公約をし、あるいは何といいましょうか、いろんな国民の中にある不信というものをなくそうと思ったら、少なくとも説明し得る根拠というものを明確にしていただかなければ、これはやはり予算についての理解は得られないし、特にことしの重要な問題は消費税が入っているということ。その予算だ。それが今の話でいきますと、いわゆる伸び率の範囲内、ですから五兆という消費税の税収というものがあった場合に、これが入ったから少なくとも例えばそのうちの高齢化社会対策はこれぐらい伸びていますよということが説明できなければいけない。ところが今の話では、なだらかな今までの流れの中で、各省庁が一生懸命要求したものを総務庁が総まとめして出した数字が今のような数字なんです。何もアクセントがない、こういうふうに言えるんですけれども、どうですか、その辺は。
  197. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 税制改革は税制改革でございまして、やはり負担の、一言で申しますれば現在並びに将来の負担の公平をねらっております、一言で申しますと。そしてまた、それは長寿社会の租税体系に合わせてあります、こういうことでございます。そして、税制改正そのものによる減税額はいつも申し上げておるように二兆六千億、こういうことでございます。そして、自然増収というのはこれは別の話でございまして、現行法であったならば幾ら収入があるところを税制改正によって幾ら減るか、こういう話でございます。自然増収は自然増収の話でございますから、そのようにひとつ受け取っていただきたい。  それで、これは目的税ではございません。したがいまして一般の歳入に入ってくるものでございます。その中でほかの税が、恐らく二十五ぐらい税目がありましょう。その他税外収入もございます。そしてまた、社会資本でございますと建設国債で原則としてやっておるわけでございます。そういう中で歳出は何を優先してやるかというところが、今言ったように、福祉関係はこういうふうに重点的になっております。  したがって、総務庁のところでは、あれでまとめれば五・三%、それから社会保障全体として見れば四・九%です、中身はこれこれです、こういうことを申し上げているのでございまして、消費税の、あれはグロスで五兆四千億、間接税はつぶれますからネットで二兆にしか出ないわけでございますが、それをすぐこれからの高齢化社会にそのネット増の二兆円を充てるとか、あるいはグロスの五兆四千億をこれに充てるとかということはやっていないということは、目的税でございませんのでそういう形にはなっておりませんが、思想的にはやはり福祉という問題は非常に大事な問題だということを我々は十分認識して予算を編成している、こういうことでございます。
  198. 山本正和

    山本正和君 厚生大臣にお伺いしますけれども、この前の本委員会での厚生大臣の御答弁の中に、税制改革というものとそれから厚生省が考える将来の福祉ビジョンあるいは高齢化社会、年金の成熟、こういうふうな問題を含めて考えた場合に、これは厚生省としては独自で厚生省のいろんな立場からどうなければならないかということを一生懸命考えております、こういうふうな趣旨の御発言があったんです。  ですから、今、社会福祉関係の問題を議論する人が真っ先に言うのは、高齢化社会における我が国の対応ができるのかできないのか、特に年金問題がどうなのか、将来展望はあるのか、こういう議論をしているわけです。その中で新しい法案が提出されてきているわけですけれども、そういう 新しく対応していくために、厚生省としては収入の問題を無視しては議論できない。そうすると国庫負担、国からいろいろやっていくときに、それは今のようなままでずっとやり得ると、こうお考えなのかどうなのか。その辺はどうですか。
  199. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 税制改革、消費税、そして今、福祉関係予算とのお話だと思いますが、これから高齢化社会、確かに年金受給者等が将来三倍にふえる、それに伴って年金とか医療とか福祉関係予算もふえていく。そういう中で、税制改革しないとなれば、直接税七割以上の現行のどこに財源を求めるかというふうになると、結局、現行税制を改革しないならば、より所得税とかあるいは法人税とか物品税にますます負担を求めざるを得ない。これでは余りにも現行のゆがんだものをさらにゆがんだものにしてしまう。そういうことがあってはならないということで、一般の消費とか資産とか所得全般を眺めて改革をされたのが、今回の消費税を導入した一連の改革だと私は理解しております。そしてその際に、確かに消費税を福祉目的税に使ったらどうかという議論は法案になる前にいろいろありました。しかし、最終的には消費税は一般財源だ、福祉目的税には使わないということで税制改革がなされた。  ですから、これから長い目で見た場合、やはり消費に着目したこの消費税というのが伸びていく。結果的には、今消費税全般で五兆四千億円ですから、福祉関係予算はその倍以上使っていますから、考えようによっては、お札に色がついていないわけですから、消費税は全部これは福祉に使っているよと説明すればできないことはない。しかし、一般財源としていろいろな歳入項目から福祉に使っているわけですから、これから将来あるいは消費税というものを全部年金関係とか医療関係とか何かに使えという議論が出てくる可能性はあるとは思いますが、現在のところ、消費税というのは幸いにして一般財源で使われることになり、さらに一歩進んだ税制が施行されたわけでありますから、この福祉関係のいろいろな予算等、これからどうやってあるべき高齢化社会に充実した福祉施策が進めていけるかどうか。さらに、これからますます福祉的な需要が高まりますから、そういう際に、早く財政再建をなして、財政基盤を強化、安定さすことによってもろもろの施策が推進していくんじゃないか。  どんな施策を推進していく上におきましても、財政基盤の安定なしにば砂上の楼閣になりますものですから、まず今回、将来の高齢化社会、あるいは日本の国力が充実して国際社会の責任もいろいろ果たさなきゃならない、そういう財政需要を考えるならば、今のゆがんだ現行税制をより一歩進んだものにするということによって、今回消費税導入ともろもろの減税措置を導入した税制改革がなされた。ですから、一応今後いろんな施策を進める上においての基盤が今回の税制改革によってなされたんじゃないかというふうに私は考えております。
  200. 山本正和

    山本正和君 公取の委員長どうぞ……。  今、厚生大臣に御説明いただきましたけれども、じゃちょっと伺いますが、公的年金は、将来の財政展望ですね、これは今のような仕組みのままでずっとやっていって大丈夫とお考えですか。ちょっといろいろ難しいこと、前提を抜きにしまして、大丈夫ですか、こう聞いたときに、大丈夫ですと国民の前に言えますか。
  201. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 大丈夫なように、揺るぎない安定した制度を維持していくために今回年金改正法案を提出しているわけでありまして、どういう点が大丈夫なのか、抽象的なことでちょっとお答えしにくいわけですが、我々としては今の公的年金制度が大丈夫なように、揺るぎない安定したものにするために今改正法案を提出して御審議をお願いしているところでございます。
  202. 山本正和

    山本正和君 厚生大臣がそうお答えにならなかったら困りますから、それはそうお答えになると思うけれどもね。  どうでしょう、これは昭和五十二年の十二月に社会保障制度審議会が年金問題の建議をされておりますね。そして、これはどうしてももちませんよと、こう言っているんです、昭和五十二年に。その後、社会保障制度審議会でいろいろ議論をしておっても、どうにももたないよという話が出てきて、そして、例えば健保組合からちょっと融通してくれ、調整と称する名前で厚生年金から共済を助けてくれと、いろんなさまざまなことが行われているわけです。しかし、本来からいうと、そういう調整と称する名前のあれはごまかしなんですよね。要するに、今ここに積んである金をちょっと貸してくれ、こういう話なんですよ。そういう形で今ずっと現実に行っているんですけれども、それでも大丈夫か、こういう話になるんですが、その辺はどうなんですか。
  203. 水田努

    政府委員(水田努君) お答え申し上げます。  今、公的年金制度は大きく言って二つの課題を抱えていると思います。一つは、制度をどう長期的に安定した運営をさせるかという問題が一つでございます。それからもう一つ課題は、戦後日まぐるしく産業構造、就業構造は変革をしてまいっております。今後も変化してまいると思いますが、こういう変革に対応しながら公的年金全体をどう安定的に運営していくか、この二つが大きな課題になっております。  このため、政府は五十九年の閣議決定で公的年金を一元化するということと、それから公的年金を通じて給付と負担の両面にわたって公平化を図るという大きな方針を打ち出しまして、そのプログラムに従って年金改革を進めているわけでございます。前回六十年改革で、一階部分に相当しますところの国民年金につきましては、全国民がこれに加入することによって負担もそれから給付も完全な公平化を図ることができた。それから、二階部分の問題は被用者年金でございますが、被用者年金につきましては、六十年の改革の際に、給付につきましては将来に向かって共済組合が厚生年金に合わせるという整合性をとっていただきましたので、被用者年金で残されている課題は負担の不均衡の問題でございます。  今回の改革ではこの二つの大きな課題に取り組みますために、被用者年金の中核をなしますのは何といいましても厚生年金でございますので、厚生年金の長期的安定なくしては被用者年金制度全体の安定を期し得ませんので、私どもは給付水準を維持しながら開始年齢を段階的に十分時間をかけて引き上げることによって中核をなす厚生年金制度の安定を期す、こういう方策をとらせていただいておるわけでございます。  それからもう一つ、制度が分立していることによって非常に共済年金というものは将来的に見ますと大丈夫かという問題が多々あり得ますので、これは五十九年の閣議決定の際に、昭和七十年すなわち平成七年に一元化を完了させる、こういうことになっておりますが、それぞれ被用者年金制度は歴史、沿革を持っております。一挙にこの一元化というものを達成することは種々問題がございますので、その中間地点に当たります今回の再計算のときに、一応厚生年金をベースとした負担の不均衡の是正措置を中間的にとらせていただいて、平成七年の被用者年金の一元化についての歯車を確実に進める、こういう方策をとらせていただいておる次第でございます。
  204. 山本正和

    山本正和君 国民年金の今度の言っているのが五万五千円、四十年と、こういう一つの数字が出ているわけですね。現実にはなかなかそうならない。これは大蔵大臣もかつて厚生大臣を御経験でございますから、恐らく社会保障関係というものが今後我が国の財政問題の中でいかに重要な位置を占めるかというのは御承知だと思うんですけれども、今までいろいろ議論されている中で、どうしても今のような積立金による運用、あるいはそれに若干の国庫補助というふうな形ではもたないと、これはもういろいろ議論されておるわけですね。その議論されている中で、社会保障制度審議会ばかりでなしに各種の審議会で出ているのは、国の責任というものをどう考えるかと。要するに、国民負担というものをどういう格好で考えるかということが議論されていると思うんです。  ですから、先ほどの厚生大臣のお話で、厚生省としては何としてもそれはきちっとしていかなきゃいけないというのはあるけれども、国民負担の問題はどういうふうにお考えになっているのか。また、今度の平成元年予算の中で社会保障という問題を含めて国民負担の問題をどういうふうに議論されたのか、その辺をちょっと御説明願いたいと思います。
  205. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 国税、地方税を含める租税負担とそれから社会保障負担、合わせて国民負担と言っているその国民負担のお話だろうと思います。  これは、もう最終的には社会保障負担は社会保障負担の問題、それから租税負担は租税負担の問題でございますが、詰めて言えば、そのときの給付とそれから負担について国民が一体どういうことを望むかということで最終的には決まるのであろうと。形式的といいますか、通り一遍の回答は恐らくそうなるであろうと思います。しかし、この国民負担を必要以上に重くするとか、あるいはできるだけ工夫を凝らしてやはり低位に抑えるということは非常に重要なことでございまして、それに失敗したと思われるところはそれぞれ活力を失っているということは、もう世界各国見ればよくわかるわけでございます。  そういう意味で、臨調答申初めそれを引き継いだ行革審であるとかいろんな審議会で、やはりヨーロッパ諸国の負担よりは低位に抑えるべきであるという提言もございますし、それで二十世紀ぐらいまでには、ある程度高齢化社会ですから負担がふえるのはやむを得ないにしても、四〇%の前半で抑えるべきであるとか、こういう提言をいただいているのでございます。我々も方針としては全く同じ気持ちでありますので、率を幾らにするかということは別にいたしまして、できるだけ低い負担で、その中で安定した歳出、その中で安定した長寿社会の年金、医療、こういったものを築いていきたいものだ、こんなふうに考えているわけでございます。
  206. 山本正和

    山本正和君 ちょっと具体的な数字を出しながら、今の大蔵大臣のお話と現実との違い、どう考えておられるかを聞きたいんですが、まず国民年金、これは五万五千円というのを、四十年間、四百八十月完全に納付した場合の最高額、そしてそれに到達していくために、今度の法改正あるいはいままでのさまざまな施策の中に出てきているのは何かといいますと、一体毎月の掛金は幾らになるのか、その数字ですね。それから現実に、そういう今掛けている掛金を掛けられないためにこれに加入できない人たち、あるいは無年金あるいはさらには低額年金、こういうふうなものは一体どうなっているのか、ちょっとその辺数字を示してもらえませんか。
  207. 水田努

    政府委員(水田努君) 今回の改正で、基礎年金、満額年金を五万五千五百円にさせていただいております。これは、基本的には四十年加入ということでございまして、遠い将来にしか出ないんではないかと、こういうことをよく指摘されますが、前回の改正でこの基礎年金を導入いたしました場合に加入可能年数というものを設定しておりまして、二十五年で満額年金を出すという、年齢によって手当てはしてございますので、平成三年度からこの満額年金が出ます。現在、国民年金の加入しておられる方で一番高い年金は二十三年加入の方でございますので、五万五千円掛けることの二十五分の二十三という金額の年金がこの十月から出るようになるわけでございます。  それから、国民年金の保険料は現在月額八千円でございます。今回の再計算の結果、平成二年度から四百円ずつ引き上げるということで具体的には来年の四月から八千四百円になる、こういうことに相なっているわけでございます。  それから、免除なりあるいは滞納の状況はどうだ、こういうことでございますが、一番直近のデータといたしましては六十二年度の実績でございますが、免除者は一一・九%でございます。それから未納率は一六・三%、こういうことに相なっております。この未納の状況を分析いたしますと、大都市圏の人口の流入の高いところの県がやはり未納率が高い、こういう問題がございますので、三カ月払いの保険料を毎月払いに直すほか、いわゆる自動振込制度の励行を図っていくことによって人口移動の高い都市部における未納率の低下を図ってまいりたい、このように考えている次第でございます。
  208. 山本正和

    山本正和君 未納あるいはこれに加入しない、さらには今まで掛けておったけれどもやめてしまうという人がふえているわけですね。
  209. 水田努

    政府委員(水田努君) 未納の状況を手元の資料で申し上げますと、六十年度が一〇・三%、六十一年度が一七・五%、六十二年度が若干下がって一六・三%、こういう状況になっております。
  210. 山本正和

    山本正和君 これは、しまいには月の掛金が一万六千円を超える、夫婦なら三万二千円を超える、こういうふうな格好になります。それからまた厚生年金の方を見ても、現在の厚生省の出しておる数字からいきますと最終的には二三・九%の負担をしなきゃいけない。要するにサラリーマン一人が、これの半分ですから、月給の大体一〇%を超える負担をしなきゃいけない。こういうふうな問題がずっと背景にあるわけですね、現在のこのままの年金制度でいった場合。そこへもってきて、共済年金あるいは厚生年金の方から老齢者対策に、どんどん老人保健の方に金を回さなきゃいけない。拠出金もだんだん、これはもうことしは赤字になる。こういう状況からいった場合、今のような財政の中に占める福祉関係のあり方では私はどうしても不安で仕方ないんですけれどもね。  ですから、その辺の問題は、やっぱりこの辺で政府がきちっとした方針を、二十一世紀における長寿社会の中での財政対策はこうなんだということを明示してこなきゃいけない、こういうふうなことを私は思うんですけれども、厚生大臣、その辺はいかがですか。
  211. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 基本的には年金も保険料で賄う、税とどの程度組み合わせるかというのはそのときどきの国民の選択によると思います。どの程度税で持って、どの程度保険料で賄うか、と同時に給付水準をどの程度にするか、保険料の負担との関係で出てきます。それで、現在我々が進めようとしている支給開始年齢、こういうものをやはり総合的に見ながら進めていく。  今回、五年ごとの財政再計算期に当たりまして、我々としては、長期的に見て揺るぎない安定した制度にしなきゃいかぬということで、給付水準は維持しよう、そして保険料負担も急激に上げてはいかぬということで一二・四から二・二%上げる、そして支給開始年齢を六十歳から六十五歳に二十二年かけてやろうということで今御審議をいただいているわけですが、国民の動向は必ずしも現在の状況をずっと続けようという意見になるとは私も思っておりません。ですから、その時点で少なくともどういう組み合わせがいいのかというのは、将来のやはり国民の選択というものを我々国会議員が吸収して審議をしていかなきゃいかぬと思っております。
  212. 山本正和

    山本正和君 今はとりあえずこういう法案を出すけれども、将来国民の選択に従っていろいろ考えていったらいいと。簡単に言いますと賦課方式もあるわけですし、それは将来の国民の選択だ、こういうことならそれはそれでわかるんです。ただ、今まで終始、この厚生年金の基金運用にしてもさまざまな問題にしても常に大蔵省というふうに、これは冤罪をこうむるかどうか知りませんけれども、断固としてこれを死守するということで、例えば健保組合なら健保組合、あるいは共済なら共済がそれぞれいろんなさまざまな知恵を出そうとしてもストップを食らっている。そういう実態の中でだんだんやりくり財政、そして特に特徴的に言えることは、これも大変誤解があるかもしれませんけれども、政府自民党、与党の数が圧倒的にふえたときにこの年金改正をやるんですよね、与党の数がどんとふえたときに。そして、そのときにはもうとにかくいろんな議論をしてもなかなか言うことを聞いてくれないんです。それ が進行してしまうんです。これが今までの年金改正のどうも例になっているように私には思えてならないんですよ。  特に、今度の年金問題で健保組合を含めてこの問題を真剣に考えているそれぞれの団体が大変頭を痛めていることは何かというと、何で一体国鉄共済のあの赤字を健保組合で賄わなきゃいけないんですか、国鉄共済の破綻というのは一義的には国の責任だと。なぜ国鉄がこうなったかというのは、赤字路線を平気でつくってみたり、それからまたもっと言えば、日本の国が戦争に負けて海外から帰ってきた人を国鉄が過重に抱えた、しかしそれは全部国の政策の中で行われてきたことなんですね。そうなるとぱっとやってくる。しかも、そういうものを一元化してやるのはいつも与党が大変数の多いときに強行される。  それからもっと言うと、今度の年金改正法の最大の問題は、六十歳を六十五歳にまで延ばしますよということをいきなり言ってきた。ところが、六十歳定年制も何もまだできていない。まだ大企業だけでやっと五〇%ぐらいですよね、そういう大きいところを中心にして。細かい数字を言うと五八%ぐらいになっているというけれども、ほとんどの国民は六十歳まで働かせてくれるだろうかと心配を持っている。その中でこれがぽこっと出てくるわけですよ。ですから、総理がいろんなことをおっしゃっても国民がどうしても今の政治に対して信頼ができないのは、三百議席あれば何でもできる、この際弱者切り捨てをどんどんやり抜くのかと、ここしかいかないんですよね。  ですから、平成元年予算の性格ということで冒頭にお尋ねしたのも、そういうふうな配慮を一体おやりになっているのかいないのか。もっと簡単に言えば、健保組合や今たくさんのサラリーマンが抱えているこれからどうなるのだという問題に対する——これは整理するのは非常に簡単なんですよ。国庫負担をもう一割ふやしてくれればいいんですよね、まず言えば。だから、平成元年度になったからとにかくこれを一応のせましたよ、こう言ってもらえれば済む話なんです。そうすると、もうちょっと消費税騒動も形が変わったと私は思うんですけれども、いかがですか、その辺は。
  213. 水田努

    政府委員(水田努君) 技術的な面を先にお答えをさせていただきます。  まず、国鉄共済の問題についてお答えをさせていただきたいと思いますが、確かに満州から引き揚げてこられた方々はほとんどの方が恩給期間でございまして、この恩給期間に伴う財源というのは全額清算事業団が持つと、こういうことになっておりまして、今回私どもが考えております制度間調整の対象になっていないということを、まずひとつ御理解いただきたいのが第一点でございます。  それから第二点目は、私ども決して国鉄共済が放漫な財政運営をしたことのしりぬぐいを他の被用者年金制度が行うという考えは全く持っておりませんで、この点につきましては、国鉄共済は産業構造の変革によって、四十万強いた組合員が現在十九万人程度というふうに激減しております。そういう共済組合に責任のない分野について、先ほど申し上げましたように、一元化というのは、そういう産業構造や就業構造の変化に伴って負担のアンバラが生ずるのを合理的に是正するというねらいでやっているわけでございまして、制度が分かれていることによって特定の集団グループが大変重たい負担をしたり、制度が分かれていることによって負担が楽になるというのは公平の原則から見ておかしいわけでございますので、そういう観点から今度の制度間調整をやらしていただいたということでございます。  国鉄共済は三十一年にスタートいたしておりますが、向こう五年間の暫定措置を今回とっているわけでございます。年度平均で見ますと給付費五千三百億かかるわけですが、制度間調整で支援を受けるのは、その二七%程度の千四百五十億というところを見ていただきましても、自分の問題は基本的に自分で解決するということで対処しているということをおわかりいただけるのではないかと思います。一応、国鉄共済関係について釈明をさしていただきます。
  214. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 今、年金局長が言ったとおりでございますが、詰めて申しますと、やはり国鉄共済が悪くなったという点については、今言った客観情勢の変化による分もありますし、また国鉄みずからがやはり反省しなくちゃならぬところもあるわけでございます。  そういう意味で、国鉄の自助努力を求めるところもございますし、また最終的には国の負担となるであろう清算事業団の負担に求めるところもあります。そういうことをやった上で、やはり今の年金の一番大きな問題は一元化、昭和七十年までに一元化するということ、これが安定しませんと全体の年金財政というものははっきりしない。従来の個々の年金ごとに過去の経緯があったからといって、それをそのままに置くということは国民全体から見ていかがなものであろうかということで、一元化の手直しの中途の段階としてある程度の合理的調整をお願いしておる。こういうことでございまして、いずれまたこの法案をお願いしたいと、このように思っておるところでございます。
  215. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに山本委員、私どもの同年輩の者がたくさん満鉄からあるいは帰ってまいりまして、そうして戦後の雇用の場として、また輸送力増強の面からいうと最高の役割を果たしたんじゃないか、本当にあごひもを締めて、軍手をはめて、体で押すようにして乗客を運んだ諸君が、この国鉄共済の今日の状態下において不利な立場をとられるというのは忍びがたい、こういう気持ちがもちろんございました、情緒的に申し上げますと。  そこで、この国鉄共済、いわゆる国家公務員共済等の改正をやる際に、私は今思い出してみましたが、費用負担という点を超して、もう一つ労働者連帯というような感じで対応してもらえないかというので、この三公社それぞれお集まりいただいてすったもんだやりました。しかし、ある種の合意をいただいてこれが六十四年までのところは救済されたと。私にとっても大変思い出深い大きな法律案でございました、大蔵大臣が所管しておったものでございますから。  そこで、年金問題ということになりますと、各党に専門家がいらっしゃって、私も何度か、本当に一夏集まっていただいて議論していただいたような記憶がございます。したがって、そういう集まりの場を設けて議論すると物事は進んでいくものだな、むしろ多数と少数になり過ぎますと、若干お互いの責任感の欠如も出てくるのじゃないかという感じもいたしますが、こうした福祉問題についての政策の進め方というものについては反対だ賛成だというだけの立場でなくして、そうした合意形成に至るこの各党間の努力というようなものが大事ではないかなと。そういうことで、平成七年度の一元化を目指してこの基礎年金部分をやりましたが、一つ一つ積み重ねていくべき問題ではなかろうかというふうに考えております。  ただ、その際もいわば目的税という議論も随分いたしましたけれども、景気の変動に大きく左右されない安定財源というのが一つ存在しておることは好ましいことだというベースで話し合って今日まで進んできたような気がいたしますので、さらに話を詰めていけば、私は平成七年度、この一元化問題というものには歩み届いていく可能性をいつまでも求めながら進んでいくべきだと思っております。
  216. 山本正和

    山本正和君 年金の中に占める国庫負担の数字をちょっと教えてくれませんか。
  217. 水田努

    政府委員(水田努君) 御案内のとおり、六十年の改正で公的年金における国庫補助というのは、基本的には国民ひとしく受益する基礎年金に集中して入れるということで三分の一が基礎年金に集中的に入る。それで、三十六年四月前の、皆年金前の期間に係る分だけ経過的に国庫補助が残る、こういう形になっております。  平成元年度におきます厚生省所管分の年金に対 する国庫補助は三・六兆円でございます。
  218. 山本正和

    山本正和君 先ほどの国鉄の話でいきますと、千五百億のお金を健保組合が千百億負担するわけですね。あとその他の共済含めまして千五百億つくる。そのお金が何で一体国庫の中でできないんだろうか、これはもう素朴な疑問ですね、国民からいえば。ですから、どういう議論があったとかなかったということでなしに、サラリーマンがみんな自分たちの月給から積み立てていった、そして大事につくった基金がそうなって使われる、こんなばかなことがあるかと、まずこう思うんですよ。ですから、そんなことも、ちょうどだまたま厚生省から法案を出されたものだから余計何だということにしかならない、これは一つはね。  それからもっと言いますと、これは今から労働省にお伺いしたいんですが、六十五歳まで働く場を確保するんだと、こういうことを厚生省が先におっしゃって、そして労働省は後から慌てて、ちょっとそうは言うけれども、という形での議論が行われたというふうに聞いているんですけれども、この高齢者の雇用問題は、一体今現在労働省としてはどういうふうな御認識でございますか。
  219. 水田努

    政府委員(水田努君) 国鉄共済を厚生年金がなぜ支援するのかという点についてお答えをさせていただきたいと思いますが、基本的に被用者年金は、先ほど申し上げましたように保険料で賄うという仕掛けをとっておりまして、厚生年金について申し上げますと、法律で少なくとも五年ごとに再計算をしなければならない、こういう規定がありまして、今回その再計算する年に当たっているために、再計算をし、その結果に基づいた法律改正を出させていただいているということでございます。これが、小泉大臣から、消費税の導入があろうがなかろうがかかわりなくやらなければならない話だったという点はこういうことでございますので、その点はひとつ御理解をいただきたいと思います。  それから、政府の方針として、先ほどもお答え申し上げましたが、五十九年の閣議決定で公的年金の一元化をやるということで、平成七年に被用者年金の一元化を達成するということでございました。その一元化のためのプロセスとして、被用者年金があたかも一階部分の基礎年金と同じく三十六年の四月から共済組合が厚生年金に加入していたとするならば、負担がどうなっていたであろうかという姿を仮定します。その仮定した姿から見ますと、割安になっている制度も割高になっている制度もあるわけでございます。割高になっている制度が国鉄であり、たばこであり、私どもの国家公務員共済でございますが、今回は中間措置でございますので、非常に財政の不均衡が著しいたばこ、それから鉄道についての負担の不均衡是正措置をとらせていただいた。制度が分かれていることによって比較的割安になっているところは、合理的な範囲で負担の不均衡の是正をさせていただいた、こういうことでございます。  それから、六十五歳への引き上げに当たって、これは労働省の守備範囲でございまして、私ども決して雇用問題について云々をしたつもりはございません。ただ、客観情勢については若年労働力が一九九五年から急速に減っていくということは厚生省の人口動態推計等で明らかでございますので、そういうことを申し上げた。あるいは労働時間を短縮するという政府の方針が既に決まっておりますから、そういうことで客観情勢は整いつつあるのではないか、こういうことを申し上げておりますが、その具体的展開はあくまでも労働省の政策を待たなきゃならぬし、これは政府が一体となって、労働省を中心として取り組むべき問題だと、このように認識いたしております。
  220. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) 先生にお答え申し上げます。  先ほど厚生年金のことについて六十五歳に引き上げられることになるということで、厚生省の方からいろいろと意見が出て、労働省は労働関係でそのことを聞いて慌てていろいろ考えておるようだがどうだ、特にそうなれば高齢者の雇用関係というものは大変なことになるので労働省としてどのように考えておるか、こういうお尋ねでございますが、もっともなお尋ねで、私どもは一生懸命にやらなきゃならぬことだ、こう考えております。  ただ、厚生省からそういうことが出たから慌ててやっているわけではなくして、大変ありがたいことにお互いの年齢が伸びてまいりましたので、年をとって楽しい人生が送れるように、働けるようにしてあげなくてはいかぬということは、年金問題だけではなくして、前々からそれはもう当然頭に置いておりますが、もっと基本的に考えてまいりました。それで、先生からも言われまするように、高齢者が安んじて生活を送る、楽しい生活ができるためには、やはり高齢者のとうとい体験、知識、能力、こういうようなものが十分生かされるようにしていく、そして働けるようにしてあげなくてはならぬ、こう考えております。  それを私どもは中心にしまして、六十歳代前半層の雇用対策を最重要課題といたしまして、今後さらに長寿社会雇用ビジョンの対策等を、社会的合意を得なくてはなりませんので、これを一生懸命になって労使の合意の得られるように努力いたしまして、六十五歳までの雇用就業の場の確保について必要な施策を進めてまいりたい、こう思っておりますが、私どもが一生懸命になりましても進むことでございませんので、どうか先生のような御理解のある方の御協力を心からお願い申し上げておきたいと思います。
  221. 山本正和

    山本正和君 労働大臣のお答えを聞いておりますと、高齢と言っては大変語弊がございますが、やっぱり七十歳という年齢を経験された方の人生というものは心から共鳴といいましょうか、本当にすばらしい、私もこういう感じがいたします。政治家も七十歳を超えた方は立派な方が多いというようなことを言うつもりじゃございませんが、本当に我が国の一番厳しい時代に暮らされた方々を大切にするというのが日本の国のあり方だと私は思うんです。  ところが、お年寄りに不安を与えるような政策が随分続いている中で、もう時間がございませんから、これはこれから後、集中審議等で年金問題、福祉問題をぜひ質問させていただきたいと思っておりますけれども、最後に、一番みんなが不安を感ずる問題について、これは特に総理に私から意見を申し上げて、質問を終わりたいと思います。  税というのは、国民が、自分たちが持っている財布の中からいや応なしに払わなきゃいけない税金です。ですから一つは、だれがどう考えてもわかりやすいものでなきゃいけない。それから平等でなきゃいけない。ところが自分の納めた税金が入ったか入らぬかわからぬ。しかも、その税制度が入ったがためにどんどん物価が上がっている、一体どうなんだと、こういう不満が今まさにちまたにあふれている。総理府の報告や経済企画庁の調査、いろいろあろうかと思うんですけれども、国民感情を見ていただいたら、こんな不公平なことがあるかと。この気持ちがいっぱいであります。  ですから総理は、何と言われても、どんなに辞意を表明されても、我が日本の国の総理大臣です。ですから、そういう意味で、ひとつこの消費税問題についてやっぱり総理自身もきちんとした対応を、まだ総理大臣でございますから、何としてもとっていただきたい、このことを最後に要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  222. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 以上で山本正和君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————    〔委員長退席、理事遠藤要君着席〕
  223. 遠藤要

    ○理事(遠藤要君) 次に、和田教美君の質疑を行います。和田君。
  224. 和田教美

    和田教美君 米空母タイコンデロガの水爆搭載機の水没事故に関する米側の回答については、午前中の委員会でも議論が出ておりましたけれども、非常に重大な問題ですから私も二、三点お聞きしたいと思います。  まず、米国の回答ですけれども、核兵器は海底 に至る前に破壊された、そして海水にさらされたから核爆発は決して起こり得るものではないというふうなこと、それともう一つは、環境への影響はない、この二点が中心になつでいると思うのですけれども、しかし一万六千フィートの海底に至る前に水爆の容器が破壊されて核物質が海中に流れ出したということを認めている点は、私は非常に重大な点だというふうに思うのです。核爆発は起こらないという点は一応米側の回答を是認するとしても、少なくとも環境への影響という問題については、日本の国内の反響を聞いてみましてもいろいろな異論が出ておるというふうな状態でございます。  政府は、どうも重みのある説明だというふうな受け取り方で、必要があればもう一回照会をするというふうなことですが、水爆の核物質は一体どういうものだったのか、それからどの程度の量なのか、あるいはまた流れ出た水没事故の現場はどこなのかというふうなことさえはっきりわかっていないというふうなことで、こういういわゆる長期的な核の影響調査というふうなものではなくて、今度の水没事故の全体についてのさらに徹底的な回答を当然要求すべきだと思うのですけれども、まずその点を外務大臣にお聞きしたい。
  225. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 累次私も、この事故があったということが我が国にとりましても重大な関心事であるということを申し述べてまいりました。そして米国に照会を重ねてまいった次第でございますが、先週の週末に、午前中に申し上げました三点に関しまして回答があったわけでございます。  一九八一年に公表されましたときには、実は一九五〇年から八〇年にかけて米国の内外で発生した核兵器の事故例の概要が公にされましたが、合計で三十二件とされております。その三十二件のうち特にいろいろと核物質がある程度の範囲にわたって漏出、拡散したと指摘されている地点が地球上に二点ございました。それがスペインのパロマレスとグリーンランドのチュールでございます。これは艦船によるものではなくしてむしろ爆撃機によるものである、こういうふうに発表されました。そして、これまたその当時も現在も、米国にはそうした場合に、どれだけ汚染をされたかという一つの物差しがあって、その規定があった場合には発表する。しかし、沖縄近海のやつはその規定ではかりましても公表するに至らざるものであった、こういうふうなことを私、午前中にもお答えした次第でございます。  そうした経緯をずっと探ってみまして、一応米国としても重みのある回答をしてくれた、こういうふうに思っております。思っておりますが、やはり国民の不安、これを払拭しなければなりませんから、したがいまして政府といたしましても、早急に関係省庁の専門家に集まってもらって、米国のこうした追加説明についてさらに政府政府としての検討を加えたい、現在こういう状況にあるということでございます。
  226. 和田教美

    和田教美君 沖縄の反響を聞いてみますと、この水没した艦船を引き揚げろというか、核装置を引き揚げろというふうな意見もあるし、それから少なくとも近海の環境調査は当然やるべきだというふうな意見もある。そうすると、やっぱりどこで起こったかという場所を特定することが重要だと思うのですが、グリーンピースの報告によると、沖縄県の沖永良部島の東約三百キロの海域ということですが、その点もわからない、また確かめる気もないのですか。
  227. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) その位置は次のようなものと承知いたしております。  北緯二十七度三十五分二秒、東経百三十一度十九分三秒の位置で生じた、そういうことでございます。
  228. 和田教美

    和田教美君 そうすると、沖永良部の近くということになるのですか。
  229. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 沖永良部それから奄美大島、それの東の方になります。
  230. 和田教美

    和田教美君 特に私が重視するのは環境調査の問題ですが、環境の影響、この報告は非常に楽観的なことが書いてありますけれども、例えば日本の学者でも、一九五四年のビキニ環礁での水爆実験の際、放射能が深海で垂直方向に拡散する、こういうことが日本の調査でも確認されている。生物の食物連鎖を通じて核物質が広がる可能性もある、直ちに環境への影響がないとは言えないはずだ、深海艇などを使って海域を詳しく調査すべきではないかというふうな意見を述べている人もあるわけですね。日米共同でやるか、あるいは日本独自でやるか、いずれにしてもそういう調査は絶対必要だと思うのですけれども、あるいはまたそれに伴うデータを米国に強く要求すべきだと思うのですが、どうでしょうか。
  231. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 米国の説明の中にもありましたとおりに、四千八百メーターまではまさか沈まないという構造であったがために途中で破壊しましたと、つまり不能になったということが言われております。ただし、そこから漏れました核物質は沈殿をいたしましたと、こういう説明でございます。  だから、四千八百メーターというと相当深いところで、果たしてそこまで探り得るいろいろの手だてがあるかという問題もございますが、いずれにいたしましても、垂直なのか、あるいは水平なのかいろいろ問題がございましょう。だから、専門家にそうしたことを一応洗ってもらおう、それからやはり国民の不安というものを除去するためには政府としても最大限のことをやらねばならぬ、こういうふうに思っておる次第でございます。
  232. 和田教美

    和田教美君 それから、この事故を起こしたタイコンデロガがその直後に横須賀に寄港したということは諸種の情報から見ると確実だと思うのですね。ところが、今の外務省の答弁によるとこれは確認できない。  要するに、事前協議に関する要求がアメリカからなかったからそういう核持ち込みはないというふうに考えておるというふうな従前どおりの態度ですけれども、これだけ事態がはっきりしている状況については、事前協議条項の云々ということに逃げ込むのではなくて、もっと別の確認の方法というものを日本側として考えるべきではないか、そしてそれを提案すべきではないかと思うのですけれども、その点は外務大臣どうお考えでしょうか。
  233. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) その船が横須賀に入っておるとすれば核が積んであるから事前協議はあったのかといういろいろと御質問もございましたが、その船が横須賀に入ったかどうかということに対しまして照会中でございまして、まだ確認に至っておらないというのが現状であります。
  234. 和田教美

    和田教美君 この問題を押し問答していると時間がたちますので、とにかく国民の不安は非常に深いものがあると思うので、通り一遍のことでは言い逃れできないと思うので、その覚悟でひとつ取り組んでいただきたいということを要望しまして、次に移らせていただきます。  次に、総理退陣予告と政治改革の問題でございます。  総理が先月の二十五日に、平成元年予算の成立を待って退陣するということを表明されました。それから既に二十日がたっわけでございます。しかし、自民党内の後継総裁争いが、伊東総務会長が後継を断るというふうなことがあって混迷を深めておるわけでございます。後継問題をめぐる混乱が長期化すれば、今月下旬に、予算成立後にやめるという総理のスケジュールそのものもどうもおかしくなってくるということも考えられるわけでございますが、総理の今度の表明の仕方は非常に異例だったと思うのですね。要するに予告なんですね。退任予告、辞任予告なんですけれども、なぜそういう形をとったのか、それから辞任の予告を知ったら後の後継総裁選びがこんなに混迷をするというふうに予想されておったのか、それからまた、退任が延びた場合にその影響をどういうふうに考えておられるか、そういう三点についてひとつお考えをお聞かせ願いたい。
  235. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに、和田委員おっし やいますように、私、従来、実は保利茂先生の追悼記の中に各野党関係者の皆さん方と一緒に手記を載せていただいております。その際も申し上げましたのは、佐藤栄作先生に、若いときでございますが、もののふの進退は、ある日あるとき突如として決すべきものであり、一たび言の葉に上れば威令これを行えなくなる、これを書いております。だから、それを本当はみずから貫きたかったなという気持ちは率直に言ってございます。それこそ「国民の皆様へ」と申しましたように、私自身そのとき予告という形をとりましたのは、全文を読み上げるのは省略いたしますが、「政治に対する国民の皆様の信頼を取り戻すために、私は、みずからの身を引く決意を固めることといたしました。しかしながら、国民生活にとって極めて大きな意味を持つ平成元年予算は、今日に至るもなお国会審議の見通しが立っておりません」、四月二十五日のことでございますから。「私は、全力を尽くして新年度予算の成立を図り、その実現を待ってみずからの決意を実行に移す考えであります」ということを申し上げたわけであります。従来の私の哲学からいえば不本意であったということは率直に私も認めますが、政治判断をした結果、予告の形をとってもその方がよいとみずからが判断したからでございます。  したがって、今日いろいろな政局の混迷が取りざたされるのは、いわば総理自身の、竹下自身の責任ではないかということを言われますならば、それはそのとおりと受けなければならないというふうに思っております。  ただ、後継総裁の点でございますが、この点はお互い各党のいわば党内事情等につきましては内政不干渉とでも申しましょうか、そのことでお答えにかえさせていただきます。  それから最後に、いわばずるずるといいますか、こういう状態だったら一体行政の責任はどうなるかと、こういうお尋ねと理解させていただきますならば、やはり行政の停滞というのは寸時たりともこれは許されないことでございます。したがいまして、予定されておったASEAN訪問も行いました。そして私は、みずから身を律しながら毎日、国会が終わりました後も行政の停滞がないように、私なりに閣僚の皆さんの協力を得ながらその任に当たって今日に至っておるということでございます。
  236. 和田教美

    和田教美君 総理は、十日の本予算委員会の答弁で、今回の辞意表明について、政治家としての私個人のけじめであって、リクルート問題のけじめという思い上がった考えはしていないということをおっしゃった。これは当然のことだと思うんですけれども、しかし自民党の中には、どうもそういう受け取り方をしてない人もあるようでございますし、それからまた伊東総務会長の話ですと、今いきなり政治改革ということに取り組めば、けじめをつけないでそれをやるということになると、かえってリクルート隠しと言われるというふうなことも言っておるわけです。  とにかく、政治改革の前提条件としてけじめをつけるということは私は絶対に必要だと思うので、その点についても伊東さんはどうも総理なんかと考え方が違うようなことをおっしゃっているわけですけれども、総理としては、このけじめについては一体どういうことをやるべきだというふうにお考えなのか、お聞きしたいわけです。
  237. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに申しましたように、私も、私が辞任するということ、これそのものがリクルート問題全体のけじめだなどと思い上がっていないということは、毎日自分の心に言い聞かせておるところであります。まさに政治家竹下登一つのそれもけじめであったというふうに思っておるところでございます。  そこで、けじめという、伊東さんと私とのいわゆる現状認識において大きな隔たりはないというふうに、私はお話ししながら思っております。きょうもお話ししてまいりました。が、けじめという問題につきましては、これは非常に世論の渦巻きの中からは少し遠い問題であっても、まずは、いつも申し上げました税法上の問題、証券取引上の問題、そして刑法上の問題、これが一つあり得ると思います。  それで、いま一つは、いわゆる道義責任の問題がございます。これにつきましては、政治家個々はいろいろな考えがございましょうが、私は、有識者懇談会の御提言をもとにして政治改革の緒につけるということが一つけじめであろうというふうに考えておるところでございます。
  238. 和田教美

    和田教美君 ある政治評論家は、現在のようなこの後継総裁問題をめぐる混迷について、自民党執行部が機能を失ってほとんど無政府状態だというふうに評しております。この混乱が長期化すれば国際的な悪影響というものも決して軽視できないというふうに思うんですね。  そうすると、政権担当の機能を既に喪失していると見ざるを得ないと我々は思うわけです。潔くこの際野党政権を譲ると、そして野党の手で解散選挙をやるというふうな方法をとるのが憲政の常道だと私は思うんです。前々から総理はそれを否定されておったんですが、この期に及んで、改めて考え直す必要があるんではないかと思いますが、いかがですか。
  239. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわゆる野党政権をゆだねるという論理そのものを私は否定したことはございません。それは一つの見識として承らせていただきますと言うにとどめて今日までまいりました。今日もなお私は、今の和田さんの御見識は一つの見識として承らせていただくと言うにとどめさせていただきます。
  240. 和田教美

    和田教美君 総理は、さきの黒柳委員の質問に答えて、政治改革について、竹下内閣の手でやること、これは政治改革に関する有識者会議の提言を受けて、それに総理感想をつけて、自民党政治改革委員会にお願いして改革案を出してもらうまでだというふうなことをおっしゃっていたと思いますが、いずれにしても、政治改革というのは竹下内閣のもとでは全部できないわけでございまして、竹下内閣のもとでやることと、それから次の政権にバトンタッチすることと、ここで区分けをして、ひとつ主な点で結構ですから、御説明を願いたい。
  241. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私が緒につけると申しましたのは、法律を出すという意味であるのか、あるいはぎりぎりのところ、党の政治改革委員会へ私の意見を添えて、この政治改革に関する有識者会議の提言に基づいての作業をお願いするというところが一つの緒と言えば言えるのかなというような感じでお答えいたしたわけでございます。  そこで、いろいろ今、議論をいただいておりますが、大体緊急に講ずべき措置ということになりますと、閣僚の資産公開の改善の問題が一つございます。  それから閣僚等の株式取引の自粛等、これにつきましては、いわば可能な限り新しい内閣で一括して出すとすれば、そこで方針として出された方が適当なのかなと、こう思っております。  それから国会議員の政治資金とその他の資金の区分の明確化、この問題等につきましては、あるいは政治資金規正法の改正ということになるんではないかというと、この国会中に提案をしてもらいたいという気持ちは持っております。  それからパーティーの規制、これにつきましては、これは法律で議論すべきものかあるいは自粛の中で議論すべきものかという問題点がございます。  それから冠婚葬祭の寄附規制の強化、これは罰則規定の新設等があるとすれば、当然公職選挙法の改正ということになろうかと思っております。  それから政治倫理綱領の実効性の確保という問題につきましては、これは、倫理というのは法律になじまぬという議論は私も十分承知しておりますが、法制化の検討というところは始めなきゃいかぬなと思っておるところでございます。  それからリクルートコスモス社の非公開株式の売却益の社会公共への還元等、これは私自身の問題もございますが、私の任期中であるか、あるいは数日ずれるかということは別問題として、やらなきゃならぬことだと思っております。  それから、少し話が長くなりますが、はしょって申し上げます。  中長期的に講ずべき問題ということになりますと、来年秋には国会開設百年を迎えるので、その時点までに具体的な改革が逐次実現されることを目指しまして、明治二十三年七月一日が初めての選挙でございますから、そういうことからいたしまして、衆参両院の定数のあり方、選挙選挙制度、それから政治献金のあり方、それから政治資金の透明性の確保、これは短期的にやれるものと中長期的なものがありますから、重なるようでございますが、書きました。    〔理事遠藤要君退席、委員長着席〕  それから政党法、政党への公的助成のあり方、それともう一つ国会運営のあり方というようなこと、参議院制度の改革、それから政治浄化運運、それに地方政治の改革というようなものが中長期の問題ではなかろうかというふうに考えております。
  242. 和田教美

    和田教美君 今も触れられました政治倫理法の問題ですね、政治倫理綱領の法制化という問題ですけれども、総理は二つのことをおっしゃっている。一つは、倫理というものは法律になじまないということもおっしゃっている。しかし、法制化も検討するとおっしゃっている。一体どっちに重点があるのか。今すぐは法制化はしないということなのか。甚だその点で意味不明なんですけれども、その点はいかがですか。
  243. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私も、私の頭の中の体操をやりまして、法制化をやった方がいいと実は思っております。  ただ、法律議論をしますと、倫理というものが法律となじむかという議論があることも承知しておりますので、やはり私も余り唐突にそういう結論めいたものを申し上げてもなりませんから、そういう議論もあるということを必ず言うようにしておりますが、私自身は法制化して、中身自身も私も勉強したことございますけれども、その方がいいと思っております。
  244. 和田教美

    和田教美君 我々は、この政治倫理法というのは、政治資金規正法の改正と並んで国民政治不信への信頼を回復するための車の両輪だというように考えて、既に政治倫理法案要綱というものを発表しております。そういうものは各党も出しておられるわけですから、そういうものを含めて、これはもう自民党だとか野党だとかということじゃなくて、知恵を出し合ってひとつ練り上げていくというふうなことをぜひおやりになったらどうかと思うんですが、いかがですか。
  245. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 貴党からお出しになった要綱、私も承知いたしております。各党からお出しになるその種のものは大体私全部集めて読むように昔からいたしておりますから、そういう話し合いの場ができて、衆知を絞って結論を出そうということは大変歓迎すべきことであろうと思っております。
  246. 和田教美

    和田教美君 政治資金規正法の問題でいろいろ聞きたいことがあるんだが、時間がありませんので一つだけお聞きしたいんです。  どうも政治資金規正法というのは、かねて抜け穴が多いというふうに言われておったわけで、ざる法だというようなことを言われておる。それで我々は、政治資金の透明度を高めるために、この際、個人の資金団体を指定団体というような形にして、それは一人一団体に限定するというふうなことをやったらどうか。総理自身も、幾つかの団体に分けてばらまいたために公表しなくてもいいというふうな抜け道を使ったということがあるわけですが、それぐらい徹底してやるべきじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  247. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 三木内閣のときに改正をいたしました。当時で言えば大改正であったと思うのであります。私も、若いときでございますが、旧規正法の時代に実は会計責任者を務めた経験もございます。青天井の時代であるとか、いろんな問題がございました。  そこで、確かに百万円以下の問題につきましては、これは寄附者のプライバシーの問題が一つございました。そういうことでこの制限が加えられておることは事実でございます。したがって、今日の時点では違法性はございませんけれども、これが今御指摘のように、問題であるからということで、党内でもそれについて御議論をいただいておるというふうに承知しております。  それから指定団体の問題でございますが、言ってみれば、個人の後援会とグループの後援会あるいは一つの政策目的で集まった団体というような種類がございますだけに、この点につきましても議論が今詰められておる段階ではなかろうかというふうに私は承知しております。
  248. 和田教美

    和田教美君 第二の企業献金と言われる政治パーティーの問題ですけれども、政治家個人が主催し、あるいは発起人形式で催されるものはすべて禁止する、そして、政治団体主催のパーティーの会費も政治資金規正法上の寄附ということにするということにすれば、パーティー券を一時に二千万円も買ってもらったけれども、全然規制がないというふうな状態はなくなるわけですから、それぐらいの徹底したことをやったらどうかと思うんですが、いかがでしょうか。
  249. 竹下登

    国務大臣竹下登君) パーティーの問題については、税法上からこれをとらまえてみたらどうだという議論も昨年以来随分やってまいりましたが、なかなか結論が出かねておることも事実でございますが、自由民主党におかれて、今自粛の案ができたというようなことを私も承知しておりますので、それを土台に、恐らく最終的には政治資金規正法の範疇にまで入れる場合には各党の相談が要ることでございましょうから、国会等で議論があるであろうというふうに私も思っております。
  250. 和田教美

    和田教美君 次に、リクルート疑惑についてお尋ねしたいわけです。  リクルート事件の政界ルートを追及している東京地検特捜部が藤波元官房長官を参考人として事情聴取されたということと関連をして、一部には政界ルートの捜査が最終段階を迎えたというふうな報道もあります。また、検察当局は、できれば竹下内閣が次期政権にバトンタッチする前に政界ルートの捜査を一段落させる方針で詰めを急いでいるという報道もございます。  そういうことで、政界ルートの捜査というのは、今や最終段階に入ったと見ていいのかどうか、もしそうだとすれば、いつごろ捜査終了宣言ということになるのか、これは法務大臣にお聞きしたいと思います。
  251. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) お尋ねのリクルート事件というのは大変難しい問題でございまして、昨年の十一月十日ぐらいから未公開株を中心にずっと続けてきたわけでございます。  その内容については、その犯罪性という見地からいろいろより分けをいたしまして、犯罪性の認められるものについては順次強制捜査をして起訴してきたわけでございます。まだ残る問題がございますが、それをお尋ねのような政界ルートという言葉を使うのが適当かどうかという点については若干問題がございますけれども、そういう長さの点からいいまして、そろそろ事件も終わりかと思いますけれども、何しろ事件というのは流動性がございますので、いっ終わりということは申し上げられないところでございます。  また、そういう政界のことをいろいろにらみましてスケジュールを立てているというわけではございませんで、いずれにせよ検察庁は、早期に、厳正に結果を得るべく努力しているところであるということを御理解いただきたいと思っているわけでございます。
  252. 和田教美

    和田教美君 現在までに政界ルート関連ということで事情聴取されたと報道されているのは二人ですね。そして、これらの事情聴取の焦点は、どうもリクルートの就職情報誌事業と関連する就職協定の問題にあるというふうな報道が多い。しかし、リクルートコスモスの還流株の六十一年秋のばらまきに限ってみても、それを受け取った政治家自民党幹部を中心に十三人にも及んでおるわけです。また、これまでも疑惑の核心として、N TTルートに絡むスーパーコンピューターのリクルートへの転売をめぐる当時の中曽根政権の中枢が関与していたかどうかというふうな問題、そういう数々の疑惑が伝えられておるわけです。就職協定問題というのは重要な問題かもしれないけれども、疑惑全体から見れば、むしろマイナーなものではないかというふうに私は思う。  私は、東京地検の捜査を信頼しておりまして、それに干渉する意思は毛頭ありませんけれども、もし就職協定問題ぐらいで検察が政治家ルートの幕引きを急ぐということでは、多くの国民から割り切れないという気持ちが出てくるのは避けられないんではないかというふうに思うわけでございます。  例えばスーパーコンピューターの問題、こういう問題は、政治家の関与が云々という問題ですが、これは今回の刑事事件としての追及に当たっては、結局対象外ということになるのか、その点を明確にしていただきたい。
  253. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 従来から申し上げておりますように、検察庁は何を調べているかということについては一切申し上げない建前でございます。  いずれにせよ、昨年の十一月十日以来、未公開株を中心に調べておるということは事実でございまして、その犯罪性についてより分けをしているわけでございますから、その犯罪性のあるものは捜査をいたしますし、ないものは落としていくという作業をしているものでございますので、今のお尋ねに対しまして的確な答弁を申しかねる状況でございますので、ひとつ御理解をいただきたいと思います。
  254. 和田教美

    和田教美君 口がかたいですね。  次に、法務大臣にお尋ねしたいんですが、十二日の記者会見で、リクルート事件捜査の中間報告について、国会から要請があればお答えしないわけにはいかないというふうに述べておられます。そしてまた、同じようなことはこの委員会でも質問に答えられて述べられたと思うんですね。また、法務大臣は、政界ルートの捜査が大詰めを迎える中で、国会への報告を捜査終結後に延期することもあり得る、こういうふうなことも言っておられるわけです。  そうすると、中間報告を行う条件は、結局近く整うというふうに見ておるのか。そしてまた、この中間報告というものは捜査一段落を意味するというふうに解釈していいのかどうか、その辺を明確にしていただきたい。
  255. 高辻正己

    国務大臣(高辻正己君) 御指摘のように、私は従来、国会の側から中間報告の御要請があれば対処方を十分に検討さしていただくということを繰り返し申してまいりました。  ところで、中間報告がいつ行われるか、これは、これを求められる国会の御決定になる事柄でございますので、捜査がその時点で一段落しているかどうかは国会の御要請がいつあるかにかかる問題でございまして、その時点がわからない当方で、その当時の捜査の状況がどうなっているかということを申し上げることはできないということになる次第でございます。
  256. 和田教美

    和田教美君 次に、政府税制調査会特別委員の江副選任の際の最終決裁印は当時の藤波官房長官が押したというふうに報道されております。  そこで、小渕官房長官にお聞きしたいんですけれども、これは確認をされましたか。また、同委員の任命権者は中曽根総理である。藤波氏は官房長官としてこれを代行したにすぎないというふうな解釈をとれば、当然中曽根総理も関与したということになるわけですけれども、この事実関係についてお聞きしたいわけです。
  257. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) お答えいたします。  税制調査会の特別委員の任命にかかわる決裁文書は、他の同様な審議会の場合と同じく、総理府の文書管理規則により官房長官が専決処理することとされております。  それから、中曽根総理の関与につきましてでございますが、本件につきましては、衆議院の予算委員会でも答弁されておられますが、一般的に言って人事の具体的選考過程は、いわば人事の秘に関するものであって、申し上げるものでないと考えておりますので、そのように御理解いただきたいと存じます。
  258. 和田教美

    和田教美君 また、中曽根総理関係ですけれども、スーパーコンピューターの購入をめぐって巨額のリベートが流れたんだけれども、そのリベートの紹介をしたのは中曽根総理であって、だから、前総理国会に喚問するのが事件解決のかぎだというふうな趣旨のことを藤尾元自民党政調会長が、たしか足利市の自分の後援会大会でのあいさつの中で述べているという記事が出ております。内容的には非常にショッキングな内容だと思うし、藤尾さん自身が当時の自民党政調会長であったわけですから、いろいろな情報が、そうでたらめな情報があるわけでもないと思うんですが、このような情報について竹下総理は何か調べられたことがございますか。
  259. 竹下登

    国務大臣竹下登君) その種の記事は読んだことがございます。直接だれに指示したかということは覚えておりませんが、そのような事実はないということを聞きまして、そのままにしております心
  260. 和田教美

    和田教美君 郵政省はこの点についてお調べになりましたか。
  261. 片岡清一

    国務大臣(片岡清一君) この問題につきましては、今ちょっと、事実関係に関することでございますので、事務当局から後から御報告申し上げますが、中曽根総理から、このクレイ社のスーパーコンピューターの購入については郵政省として指示を受けたことも何にもないということだけは、私は前任者から聞いておることだけを申し上げて、あとは事務当局から答弁させますので……。
  262. 塩谷稔

    政府委員(塩谷稔君) お尋ねの件につきまして、私どもNTTから、以下申し上げますように報告を受けているところでございます。  まず、クレイ社のスーパーコンピューターにつきましては、これまでNTT用に二台、それからリクルート社用に二台を購入いたしております。  リクルート社用の二台につきましては、これは昭和六十年の秋と六十二年の春にリクルート社からの注文によりまして、RCSと言っておりますが、リモート・コンピューティング・サービスという事業でございますが、RCS事業の設計建設受託契約の一環として、クレイ社のスーパーコンピューターを適正な手続を経て適正な価格で購入し、またリクルート社への機器の引き渡し価格等についても、機器の直接購入費及び設計建設に要する工事費、それから工事に要した諸経費に適正な利益を織り込んで決定しており、これらの契約は適正に行っているということでございます。  それから、NTTのスーパーコンピューターの購入に関して、NTTとしても中曽根総理から何らの指示はなかった、以上の報告を受けているところでございます。
  263. 和田教美

    和田教美君 中曽根さんの問題については、それ以外にもいろんな疑問点があるわけですね。例えば、リクルートコスモス株の売却益、これを盆暮れの政治資金に使ったなんというのもまことに漠然とした話であって、到底了解できないというふうなことから、やっぱり証人喚問を衆議院でやるか参議院でやるかはともかくとして、やることがとにかく問題を前進させる、国会の正常化も前進させる決め手になると私は思うんですけれども、総理の在任中にその点はひとつけじめをつける、はっきりけりをつけるというお考えでしょうか、どうでしょうか。
  264. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはいつもお答えいたしておるとおりでありまして、証人喚問というのはあくまでも国会そのものでお決めになる問題である。自由民主党としては、中曽根総理安倍幹事長に一任をしておるという報告は受けておりますが、喚問そのものに対しますと、個人個人、それはいろんな意見があろうかと思いますが、私の立場から今申し上げるのは、それが限度だと思っております。
  265. 和田教美

    和田教美君 次に、国税庁当局にお聞きしたい んですが、去る二月二十日の衆議院の予算委員会で、公明党の坂井弘一さんの質問に対して伊藤国税庁次長が、株式をその取引時点における適正価格よりも低い価格で譲り受けるといったような場合には、その態様のいかんによっては贈与税あるいは所得税が課税される場合もあり得るという答弁をなされておるわけです。今度のリクルートコスモス株の譲渡については、検察当局の判断も、これはもう明らかに適正価格よりも低い価格で譲り受けた、ぬれ手にアワでもうけた、それは結局現金贈与と同じだというふうな見解をとっておるわけなんです。  そうなりますと、この見解に基づいてその後国税庁当局としてはそういう線で調査を進めておるかどうか、その点をお聞きしたい。
  266. 伊藤博行

    政府委員(伊藤博行君) お答え申し上げます。  一般論として、改正前の税法のもとにおきます個人の株式の譲渡益の課税関係、これがまずベースにあるわけでございますけれども、本年三月までの譲渡益につきましては原則として非課税ではございますが、年間三十回以上かつ十二万株、六十二年分までは五十回以上、二十万株以上の売買による所得、あるいは年間同一銘柄十二万株以上、六十二年分までにつきましては二十万株以上の譲渡による所得、あるいは事業譲渡類以の株式の譲渡による所得等、特定の場合に限って所得税が課されるというふうになっております。  なお、株式を含みます資産の値上がり益につきましては、現行税制上、譲り受け人がその資産を譲渡して利益を得たときに課税されることになっておりますので、その資産を取得したときにおいて将来期待し得る未実現の値上がり益を課税の対象とするということにはなっておりません。これはまあ一般的な所得課税の大原則でございます。  お話は、それが大原則でございますけれども、株式の取引におきまして、株式を譲り受けの時点における価格との対比で極めて著しく低い価格で受けたような場合、その態様のいかんによっては贈与税等がかかるのではないかという御質問かと思いますが、仰せのように、一般論として申し上げればそういうケースもあり得ようかと思います。ただ、事柄は、原則非課税、譲渡所得につきましては実現時に課税という大原則のもとでのそういった特殊なケースの問題でございます。それだけにその事実認定等は非常に難しい問題がございますが、ただ、本件に即してという点にりきましては、従来からお断り申し上げておりますように、事柄の性質上答弁は差し控えさせていただきたいと思います。  いずれにいたしましても、一般的に申し上げまして、課税上問題がある場合には必要に応じて調査を行うといったようなことで、課税の適正化には今後とも努めてまいりたいというふうに考えております。
  267. 和田教美

    和田教美君 一般論を聞いておるわけじゃないんで、これだけ大問題になっているときに、ただ一般論を相変わらず繰り返すというような答弁では到底納得できない。だから、要するにそういう線で調査を始めているのか、そうでない、今言ったような、今の一般論で、これはそういうケースに当たらないという判断をしているのか、その点だけでもひとつ答えていただきたい。
  268. 伊藤博行

    政府委員(伊藤博行君) いずれにいたしましても、個別問題ということについてはお答えできない立場にあるということは御理解賜りたいと思いますが、国税当局といたしましては、当議会での御議論あるいは新聞その他における情報等々も含めまして、課税上問題がある場合には、その適正化に努めるということを前提に常時仕事に努めておるつもりでございます。
  269. 和田教美

    和田教美君 それでは次に、コスモス還流株の譲渡ですけれども、仮に課税関係が発生するというふうに仮定をした場合に、還流株のばらまきと売却益は六十一年の秋のことですね。ところが、今も総理から答弁がありましたように、売却益については自民党関係議員がそろって社会還元するということを考えておるというお話でございますけれども、社会還元という問題を仮に行っても、年度が違うわけですね、かなり遅くなってからの社会還元ですから。課税関係が発生するということはあくまで生きてきて、一応それが済んでから改めて社会還元ということになるのか、その辺の関係はどういうふうに考えたらいいんでしょうか。
  270. 伊藤博行

    政府委員(伊藤博行君) 具体的な問題につきまして私ども十分承知しておりませんが、一般的に申し上げまして、所得課税の問題は発生段階の話というのが大原則でございます。キャピタルゲイン等につきましては原則非課税ではございますけれども、先ほど申し上げましたように、実現した段階で一定の場合に課税になる。しからば、その後の処分がどういう課税関係を発生させるかという点につきましては、これは所得の処分ということでございます。したがいまして、一定の場合に、特定寄附金等に該当する場合には寄附金控除等という別の問題はありますけれども、過去の課税関係がそのことによって変わるというものではございません。
  271. 和田教美

    和田教美君 まだまだリクルート関係をお聞きしたいんですけれども、余り具体的な答弁がありませんのでこのぐらいにしまして、次に、財政運営と税収の過小見積もりという問題について大蔵当局の考え方を聞きたいと思います。  租税収入の三月までの実績は、前年同期比七・三%、六十三年度の税収ですね。非常に好調ですね。それから、政府、日銀が金融市場の資金繰りのためにつくっている統計に対民間収支というのがありますけれども、この統計の収入に計上される租税は税収の先行指標というふうに我々は見ているわけです。ところが、四月までのこれの実績、さらに五月の予想も極めて好調なんですね。  こういうことから見ると、状況が前年度と大体同じような動きをするというふうに仮定をしますと、この民間収支からも、六十三年度の税収の予測は、補正後よりもさらに二兆円以上上回るというふうに見るのが常識的だと、こう思うんですけれども、大蔵大臣はいかがですか。
  272. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) おっしゃるように、現在までの収入状況を見ますとかなり好調でございます。前年度に対しましておっしゃるように七・三%ぐらい好調だと思っております。ただ、あと四、五月あるわけでございますが、これが全体の税収の四分の一を占めておる、この二カ月で。  その中で一番問題になりますのは法人税でございます。法人税は、やはり一つはそのときの状況がどうかという問題と、それから会社の決算態度がどういうふうに出るのか、決算の姿勢でございます。そういうことがありますので、何ほどかの自然増収が期待できるだろうと思いますが、今のところ金額を申し上げるほどの自信がない、こういうことでございます。
  273. 和田教美

    和田教美君 私は自信を持って大体二兆円以上というふうに言っているわけですけれども、そうすると六十三年度は、補正段階で既に三兆円以上出ているわけですね、自然増収が。今後仮に二兆円追加すると、当初予算に比べて五兆円以上ということになりますね。ところが、六十一年度も当初と決算の差額は一兆三千億円ぐらいあった、六十二年度も五兆円以上あった、こういうふうにもう三年続きなんですね。そうなると、村山大蔵大臣はこれは臨時的な財テクだとか土地の値上がりだとかそういう理由によるんだということを盛んにおっしゃるけれども、そうではないんではないか。経済の構造が変化してきて、そういう五%ぐらいの成長でも相当な税収が得られるような状況になってきているんじゃないか。そこは大蔵省の考え方を変えなきゃいかぬのじゃないかというふうに思うんです。それとも大蔵省は、そういうことはわかっていながら、わざと当初は、要するに自然増収を過小に見積もっておって、後で補正で自然増収が出たからといってばらまくというふうなそういう手法をとっているのか、どっちかだと思うんですが、いかがですか。
  274. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) もちろん意図的に過小見積もりをするなどということは絶対にございません。税収の見積もりというのは、その見積もり 時点までの課税実績と、そしてその後における経済の指標、そういうものをずっと見まして各税日ごとに積み上げていく性質のものでございます。  ただ、それを検算する方法といたしまして一つの弾性値というものを使っていることは御案内のとおりでございます。過去の弾性値をずっと見ますと非常にぶれの多い、特に法人税でございますけれども、非常に多いのでございまして、五十六年、五十七年に六兆円とかあるいは三兆円の歳入欠陥が出てしまったということはもう御案内のとおりでございます。近年、六十一年度、六十二年度は、普通の弾性値でございますと大体一・一というのが十年間とって普通なんですね。ところが、六十一年度の決算の収入で計算いたしますと弾性値が二になっておる。それから六十二年度が三を記録しているということですね。これは全く異常な経済状況と言わざるを得ないということは過去の経験からも今言えるわけでございます。弾性値が一を割ったこともたくさんあるわけでございます。  そういうことを考えますと、収入見積もりはやはり的確でなくちゃいけませんけれども、今後いろんな情報をとって、そして的確に見積もっていくように努力したいものだと、こう思っております。  問題は、やはり土地の値上がり、株の値上がりももちろんありますけれども、株の動きというのが、日本の株というのはみんな土地含みだと、こういうことで、日本の株価というものと世界市場の株価の乖離性というものが論じられておるのでございます。その中で、いろんなものを入れますと、やはり土地の値上がり、こういうことを普通言われているのでございますから、株の値上がり、土地の値上がりといいますけれども、どちらかといえば土地の値上がりの方がより大きな原因になっているんじゃなかろうかと、こう思っております。
  275. 和田教美

    和田教美君 それからもう一つ財政運営で最近感じることは、一般歳出ですね。これが当初と補正の結果とでだんだん開きが大きくなってきているんですね。例えば、六十一年の場合にはその差額が大体八千億ぐらいだった。六十二年は二兆二千億ぐらい差額が出て補正で膨らました。六十三年度は二兆五千億ぐらい膨らましている。平成元年度も恐らくそうなるかもしれませんね。  こういうふうなことだと、税収の見通しも狂う、これ補正で相当大きく変えるということだと、当初予算というものを我々は本当に真剣になって審議するのがばかばかしいような感じさえするわけですね。この点はどういうふうに考えるのかということと、過去に、税収の見積もりが間違ったということについては、過大見積もり、つまり歳入欠陥が出たという場合には非常にやかましく政治責任が国会でも論議されている。ところが過小見積もりの場合、後で自然増収がふえるということになると、まあまあいいやということで政治責任の問題は余り出てこないということなんです。しかし、私は問題は同じだと思うんですね。見通しが間違ったのは同じで、どの程度が許容範囲なのか。やっぱりそれに伴って政治的な責任というもののけじめをつける必要があると思うんですけれども、その点について大蔵大臣はどうお考えでしょうか。
  276. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 当初予算に比べまして最近補正予算の追加額が余計になっているということでございますが、これはもちろん財政法の規定に従ってやっているわけでございます。補正予算に計上し得るというものは、やはり法律上あるいは契約的な義務的経費に不足を来した場合、それから当初予算のときには見込めなかった新たなる事態が生じて、しかもそれを緊急に措置しなければならない場合に限って補正追加が認められているわけでございます。  したがって、六十三年度の例をとってみましても、一つは、貿易摩擦の関係で緊急輸入の問題、それに伴う緊急に措置しなくちゃならない関係の経費、あるいは前回の税革国会で与野党協議の結果、消費税と絡んで一時金を出さなくちゃならぬという問題あるいは適正転嫁の問題、過剰転嫁の取り締まりの問題、そういったことで税務執行上円滑な消費税の実施に要する経費、こういうものでございます。もう一つは、大きなのは、厚生年金の繰り延べをしておりましたが、それを一兆五千億繰り入れました。これは、ことしは財政再計算の年でございまして、そして特に厚生年金の安定が望まれる、こういう非常にやかましい年でございます。そういった意味で、やはりこの際財政の基礎を確実にさせておくことに緊急性がある、こういうことで繰り入れさせていただいた。  こういうことでございまして、決して恣意的にやっているわけではないということだけ御了承いただきたいと思います。
  277. 和田教美

    和田教美君 責任はないと。
  278. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 税収の問題につきましては、これは、歳入欠陥を生じましょうともあるいは過剰であろうとも、その理由がいかようであれ、やはり直すべきものは直さにゃいかぬ、もっと工夫せにゃならぬ、こういう意味の責任を感じているということを申し上げておきます。
  279. 和田教美

    和田教美君 二兆円の自然増収というんで、大蔵大臣の考え方だと、赤字公債の発行をさらに減らすというふうなことに主に使うという、そういうことだと思うんですけれども、しかし自然増収というのは、私は税の取り過ぎだと思うんですね。だから、やっぱり一義的にはこれは減税財源に使ったらどうかと思うんです。大蔵大臣はそれを否定されておりましたけれども、せめてそのぐらいのものは減税に使うべきだというふうに思いますが、いかがですか。
  280. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 今度の税制改革は、しばしば申し上げますように、いわば四十年間の問題、そして将来を展望いたしまして、実に数年かかって税制体系を改めようというものであり、しかも、一つ一つの税目につきまして従来の懸案をほとんど片づけている、私はこう思っているわけでございます。  そういう意味でございますので、この際自然増収が出たからといってそれを臨時に減税に回すのはやはりいかがなものであろうかと、こう思っております。もう一つは、当然、決算上剰余が出ますと、その使途がもう決められておるわけでございますので、そのようにさせていただきたいと思っております。
  281. 和田教美

    和田教美君 何回かこれはもう既に議論になりましたけれども、今回租税と同様に、実質的な国民負担の増加になります社会保険料の引き上げが十月から実施されるという法案も出ているわけですね。そうすると、大蔵省は減税減税ということで所得税減税の効果ということを盛んに強調されますけれども、実質的には国民負担というものはこの面でもふえるわけで、それを差し引き計算すると、大蔵省の宣伝のような、とにかく大変な負担減になるということは言えないわけです。ここにも表がございますけれども、三百万円の年収の人は、保険料の引き上げを考えるとかえって増税になるというふうな表も出ておる状況ですね。  そういう状況から見ても、そのぐらいの所得税の減税をやらなければ、これはもう消費税が上乗せされた上にさらに社会保険料の負担が加わって、実質的には全く減税の効果がもうマイナス——マイナスまでいかぬにしても、非常に減殺されるということになるんではないかと思うんですが、いかがですか。
  282. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 年金再計算の結果、保険料が今度の案でございますと二・二、それから勤労者本人にとりましてはその半分の一・一上がるということでございますが、それはやはり財政再計算で給付そのものがふえてくる、それとの見合いになっているわけでございます。したがって、国民負担を総体として余り上げたくないという意味では一緒に考えにゃならぬ面はございますけれども、やはり基本的に制度はそういうふうに分離されているわけでございます。  片方は、一般歳出に必要な共通の経費、行政に必要な経費に充てる。片方は、年金数理に基づいて給付と負担の関係でございますので、この原則 を乱すわけにはいかないのじゃないか、こういうふうに私は思っております。
  283. 和田教美

    和田教美君 消費税の問題について幾つか質問したいと思ったんですけれども、時間が参りましたので、これはまた一般質問に譲りたいと思います。  これで私の質問を終わります。
  284. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 以上で和田教美君の質疑は終了いたしました。(拍手)  明日は午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十三分散会