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国務大臣(村山達雄君) 今度の消費税を仕組むに当たりましての基本的な
考え方をまず
委員に御理解願いたいと思うのでございます。
売上税が失敗いたしましてから、我々は政府の税調の方から六十三年の四月に中間答申をいただきました。このときに税額票発行方式、つまり売上税と同じようなやり方かあるいは帳簿方式であるかという点につきましては、政府税調は両論併記であったわけでございます。我が自由民主党の税調におきまして、四団体を初めといたしまして百何十にわたる業種別の
会議を開きまして、なぜ売上税が失敗したかということを聞いてまいりますと、もう異口同音に事業者の手数が余りにもかかり過ぎる、だから事業者の手数を減らすことに全力を挙げるべきである、こういう心証を得たわけでございます。
この観点からいたしまして、
一つは帳簿方式を採用することにいたしました。それから課税期間は、なれております所得税それから法人税と同じ課税期間を選択いたしました。納税もまたそれと同じ時期にいたしたのでございます。税率は単一税率で複数税率はやらない。非課税はもうほとんど例外なしに認めない。こういう方針を打ち出しましたが、中小企業のものについてはなお手数がかかる、こういうことからいたしまして免税点、それから簡易課税制度、これが中心でございます。
ただ、免税点が三千万ということに決まった
関係からいいまして、免税点を境にして納税義務者については激変緩和を設ける必要があるであろう、これが限界控除制度を採用したところでございます。
そして、今、
委員が御指摘になりましたことは、そのとおりに行われればそのとおりになるわけでございます。我々が心配いたしましたのは、やはり免税業者といえ
ども、もしこれを免税業者でないという仮定をいたしますと、これは相当の手数を要することで、この種の税になじみの薄い事業者でございます。特に日本は、御案内のように、中小企業者が最も多いところだということでは国際的にも定評のあるところでございます。もしこの経理事務のために人一人を雇おうといたしましたら、これはその方からしてコストアップが来るに違いない。そういうことからいたしましてやったわけでございます。
また、簡易課税方式につきましても幾つかあるわけでございます。すなわち、非課税取引、仕入れというものは当然伴うわけでございますけれ
ども、それを一々もし売り上げからだけ計算するという方式でなくて、そして法律が言っているようなことを全部やりなさいということになりますと、非課税仕入れの分を全部これは整理しなくちゃなりません。それから、当然のことでございますけれ
ども、課税売上割合が九五%になるかどうか、これを一遍計算する必要がございます。そしてまた、仮に九五%以下であるといたしますと、課税仕入れについても案分計算を必要とするのでございます。これもやはり相当なれたところはあれでございますが、日本のようにまだなれていないところでこれをもし法律でやりなさいと言うと、やはりコストが非常にかかるんじゃないだろうか。そのことは結局別の意味でコストアップを招来して、そしてこの制度を設けるよりもあるいは消費者にとってコスト増という、物価騰貴という形ではね返るかもしれぬ。
そういう意味で、ぎりぎり
考えまして、まあこの程度のことなら受忍いただけるんじゃないかな、こういうことでつくったわけでございます。しかし、おっしゃることの意味はよくわかっております。
したがいまして、今度の税革法十七条の第三項に、与野党協議の上で、この事務負担に関して特別の制度を設けておるけれ
ども、これは仕組みの定着を待って果たして直すべき点がないかどうかまたよく
考えなさい、こういう
規定が十七条三項に入っているところでございます。我々は、この与野党協議の末挿入されました十七条三項というものを十分念頭に置きながら、この定着状況を見てまいりたいと思います。
ただ、一言だけ申し上げておきますと、
委員がおっしゃいましたのは、それ
自身もうそのとおりでございます。ただ、免税点以下の取引というものは、全体では数で言いますと六五%ぐらいでございますが、二・七%という取引、それから限界控除五億円以下でありましても、これは九十何%納税義務者になりますが、取引の額で言いますと二〇%を切るわけでございます。ですから、経済の常識で申しますと、恐らく税込み価格が支配するであろうということを我々は
考えておるのでございます。いずれにいたしましても、
委員のおっしゃったことはそれ
自身あり得る話でございます。
ただ、この問題につきましては、今、
総理を本
部長とする推進本部におきまして外税方式でやれるものは外税方式でやってくださいよと、これは納税者にはわかるわけでございます。しかし、小売の段階になりますと、外税方式というものは、その辺
考えてみますとできないところはたくさんあると思います。むしろいろんな
関係で、経済の実勢を見ながら税込みで決めることがあるかもしれぬ。このときはもちろん計算は課税業者の場合は百三分の三で計算するわけでございますけれ
ども、さっき申し上げたような原則で恐らく税込みで多くの場合決まるのではなかろうか。そして、このことについてはそれが便乗値上げであるとは言えない。
このことは、既に公取の方も言っているわけでございまして、何しろ新しい税でございますので、我々この消費税を設計するに当たりましては、先ほど言ったような
考え方に基づいておるということを御理解いただければ幸いだと思います。