○西村尚治君 私は、自由民主党を代表して、当面する内外の重要
課題について、
総理ほか
関係閣僚に対し若干の
質問を行うものでございます。
質問に入る前に一言申し上げます。
昭和天皇には、御快癒を願う
国民の切なる願いもむなしく崩御せられました。まことに哀悼のきわみであります。
六十二年間の長きにわたる御在位において、常に
国民の心の支柱として内外の試練にたえられ、
日本国の平和と繁栄のために心を砕いてこられました。
ここに謹んでその御聖徳をしのび、衷心より哀悼の意を表します。
私たちは、この深い悲しみの中から新しい平成の
時代を迎えました。平成の
時代が真に平和で豊かな、幸せに満ちた
時代となることを願い、
国民の皆さんと力を合わせて一層の努力を傾けてまいりたいものと考えます。
さて、
総理は
平成元年に当たっての施政の
方針を明らかにされたのでありますが、それにつきまして数項目にわたってお尋ねをいたしたいと思います。
まず第一は、
政治改革についてであります。
リクルート問題を契機として、今
政治に対する
不信感が国内にみなぎっております。
総理は、
内閣の最優先
課題として
政治改革に真剣に取り組むとの
決意を表明されました。既に
総理の意を受けて各機関で検討が進められておるようでありまして、その成果を期待するものでありますが、私は、
政治改革の
基本は
政治倫理の確立にあると思うのであります。
金のかからぬ
選挙や
政治ができるように
選挙法や
政治資金規正法等の抜本的
改革が必要であることはもちろんですけれども、まずその前提として
政治倫理の確立が肝要でありまして、それは、先ほども
総理が述べられましたように、
政治にかかわる者一人一人の自覚にまたなければならぬことは言うまでもありません。
その一人一人の自覚を促す一助として、先年,
衆参両院において
政治倫理綱領が決議されました。それを見てみますると、例えば第一項には、「われわれは、
国民の信頼に値するより高い倫理的義務に徹し、
政治不信を招く公私混淆を断ち、清廉を持し、かりそめにも
国民の非難を受けないよう
政治腐敗の根絶と
政治倫理の向上に努めなければならない。」。以下四項目にわたりましてまことに立派な
議員のモラルの規範が示されておるのでございます。各人がこれを遵守しておれば
政治が
国民の
不信を招くはずはないと思うのでありますけれども、残念ながら現実はそうなっておりません。ここに問題があると思うのであります。
そこで、みんながこの倫理綱領を拳々服膺しながら
国会の
自浄能力を高めていく、それを助ける手段として、例えば
政治倫理法のごときものを制定してはどうか。あわせて、
国会に
政治倫理特別委員会を設置して、その遵守励行をチェックする仕組みを考えていってはどうか。
議員としてこのような提案をすることは残念なことではありまするけれども、かつて我々が尊敬する先輩もこのような考えを持つ人がございました。
選挙法や
政治資金規正法の抜本的な
改革はもちろん必要です。必ず断行してもらいたいのでありまするけれども、この際、まず、この
政治倫理の確立を目指して
政治倫理法を制定することが緊要であると考えるものでありますが、
総理の御所見をお伺いいたします。
次に、
外交問題についてであります。
お話にもありましたように、最近の
国際情勢には新しい流れ、新しい動きが見られます。米ソ首脳の対話を初めとして中ソ間にも正常化の動きがありまするし、アジア・太平洋諸
地域に対する
ソ連の接近も目立ちます。
この際、
我が国としても当然積極的な自主
外交を展開する必要があるわけでありまして、
竹下内閣発足以来既に数度にわたって諸外国を訪問されていることはそのあらわれにほかならぬと思うのでありまするが、先般、
総理はアメリカでブッシュ大統領と会談されました。その際、両国が相携えて
世界の平和と繁栄のために貢献すべく
政策協調と共同作業を一層進めることを確認したとの報告がございました。日米
関係の
強化は
我が国外交の基軸でありまするから、そのような確認と合意がなされたことは歓迎すべきことだと思います。
ただ、ここで一つお伺いしたいと思いますることは、最近アメリカ国内において、
日本を
経済的脅威としてだけでなく、いろいろな意味での脅威になると誤解して警戒心を強め、
日本と対抗するために
ソ連と手を結ぶべきだという
日本脅威論、対ソ提携論がインテリ層の間にかなり出てきておると聞いております。さらに、それと関連いたしまして技術ナショナリズムの主張が台頭しておる、すなわち、技術を開放することはアメリカの優位性と競争力を失うとの懸念から開放をやめようとする動きがあるようでありまして、このたびのFSXの共同開発に対しアメリカ内部で異論が出ていることもその一つと思うのであります。
もちろん、
日本脅威論といい技術ナショナリズムといい、
我が国としても反省すべき点があるかと思いまするけれども、このような考えや動きが増幅することは、緊密であるべき日米
関係に亀裂をもたらすことになりかねはしないかと思うのでありまするが、
総理はこうした動きをどのように受けとめられておるかお聞かせ願いたいと思います。
次に、
ソ連との
関係でありますが、昨年十二月、シェワルナゼ外相を迎えてほぼ三年ぶりに日ソ外相間定期協議が持たれました。平和条約締結交渉も行われて、外務次官レベルの常設作業グループが設置されたということであります。
確かに一つの前進だったと思いまするし、両国の
関係の改善は私どもも心から望むものでありまするけれども、ただ、平和条約の締結は北方領土の返還がその前提でなければならぬごとは言うまでもないところであります。
ソ連側はこの領土問題に対して依然としてかたくなな
態度を捨てていないようでありまするけれども、そもそも北方領土は我々の祖先が血のにじむような努力を傾けて開拓した
我が国固有の領土であるわけであります。このことは一点の疑いもない事実であるにかかわらず、
ソ連が不法にこれを占拠して自国領だと主張して譲らず、あまつさえそこに軍事基地を構築して多大の兵力を配備し、長年にわたって我が方ににらみをきかしているという事実、これをそのままにして平和条約を結ぶなどということは我が民族にとってとても耐えられないところだと思うのであります。
この北方の四島一括返還は
我が国民の年来の非願であります。もちろんこのことはよくおわかりの上で御尽力願っているわけでありまするけれども、くれぐれもこのことを銘記されまして不退転の
決意を持って粘り強く交渉されまするよう、
国民の声を代表して外務大臣に強く要望いたしておきます。
次に、
経済問題についてでありますが、このところ
我が国経済は極めて好調に推移しております。民間設備投資と個人消費が牽引力となって、内需主導型の好もしい
経済パターンのもとに景気の拡大が続いていることは心強い限りだと思います。人によっては
昭和四十年代前半のイザナギ景気の再現を予測する向きもありまするけれども、今後とも現在のようなインフレなき
経済の持続的成長を確保するためにいかなる
政策運営を行うつもりか、その
基本方針を伺います。
ところで、こうした順調な
経済成長の結果、
我が国の
国民総生産は
昭和六十三年度で三百七十兆円余に達し、
世界経済の一五%を占めるに至りました。また、
世界一の債権国ともなっておるわけでありますが、反面、
国民生活の
実態から見ますると国の
経済力に見合った豊かさを実感している人が少ない。先般の
政府の世論
調査によりましても、それはわずか二〇%程度にすぎません。なぜか。その原因としてはいろいろありましょう。
まず、大都市周辺の土地や住宅が高騰しておること、また一般に居住水準が低いこと、社会資本の投下が十分でないことなどが指摘されておりまして、これについては抜本的な対策を早期に講じてもらいたいわけでありますが、私はもう一つ、この豊かさの実感を妨げている原因として物価高を指摘せざるを得ないのであります。もちろん物価の騰貴率の方は諸外国に比べて最も安定した状態にあるわけですけれども、物やサービスの値段そのものが高い。これが大きな原因になっておると思うのであります。
経済企画庁の
調査によれば、食料品の価格はアメリカの約二倍であり、ガソリンは三倍であるなど割高なものが多く、全体を平均しましても
日本の物価水準はアメリカの一・五倍と推定されております。今後、時短や週休二日制の普及などからやたらに賃金を上げることができない
状況にありましては、物の値段を下げ、実質所得を引き上げて生活を改善していくことが必要だと思うのであります。
そのためにはまず円高差益の還元を図ることが考えられるのですけれども、必ずしもまだそれが十分とは申せません。そういうことからも、例えばもっと並行輸入を
強化する、流通の合理化を
促進する、さらに規制を緩和して競争条件の整備を図るなど、打つべき手が多々あると思います。特に、
経済企画庁の
調査によりますると、
政府の規制のあるものほど国内物価は高どまりしておるということであります。しかも、こうした
政府の許可、認可などの件数は昨年三月末で一万件を超えたと言われているのでありますが、こうした規制を今後緩和する方向で検討すべきではないかと思うのでありますが、
政府の所見をお伺いいたします。
次に、財政問題についてでありますが、
平成元年度予算案は、ここ数年続いた厳しい歳出
削減方式を踏まえつつも、最近の
経済財政状態を勘案しながら
国民の需要、要望によく対応しようと努めたこと、さらに
公約である財政再建を強力に進めて平成二年度の赤字公債からの脱却を確実にしたという点で、はぼ満足すべき
内容のものと言ってよいと思います。
ただ、ここで一つの大きな
課題と考えられまするのは、財政再建達成後の新たな財政
改革目標の設定についてであります。
予算編成において赤字公債を大幅に減額したことで、
平成元年度の赤字公債発行額は一兆三千三百十億円となり、平成二年度を目標とする財政再建の達成はほぼ確実になりました。しかし、国債発行というフローの面では大幅な改善が進められたものの、累年発行されて根雪となったストックとも言うべき国債残高は、来年度において百六十二兆円に達し、
国民総生産に占める
割合は四二%。アメリカでは、財政赤字、双子の赤字ということがやかましく言われておりまするけれども、そのアメリカに比較してもかなり高い比率を占めております。それに要する利払い費は約十一兆一千億円、予算全体の一八%で依然高水準にあります。さらに、
昭和五十七年度以降、苦しい財政事情のもとで後年度に負担を繰り延べてきた借入金も約十兆円に上っております。
平成二年度で赤字公債からの脱却が
実現した暁には、財政のこうしたストック面の処理を含め、今後どのような新たな財政
改革の目標を設定されようとしておるのか、
大蔵大臣の御
見解を伺います。
財政の第二の
課題は、
消費税の定着についてであります。
十数年来の懸案でありました
税制改革が、昨年末の
国会で
実現することになりました。これに対してはいろいろな批判があり、また反対もありまするけれども、公平に見て、これは
竹下内閣のやり遂げた大きな業績であると言っていいと思うのであります。国税、
地方税合わせて実に五兆六千億に及ぶ大型減税を断行して、勤労者などの負担の軽減を図ったのみでなく、二十一世紀の長寿社会に備えて
福祉制度の充実、社会資本の整備等のための財源の確保を図ったという点からも、後世の史家は必ずや高くこれを
評価するものと私は確信いたします。
ただ、新税には当初いつも懸念がつきまといます。特に、今回の
消費税のように、すべての段階に一律に課税して消費者がこれを負担する仕組みの税金は初めての経験であります。それだけに
国民は不安を抱いております。だからこそ
総理は、
国民の持つ懸念を八つに整理してそれぞれにふさわしい対応策を示されたわけで、このことは
国民の合意
形成や不安解消にかなり役立ったものと思います。
今後は、四月一日から始まる課税の執行段階においてこの税をいかに定着させるかが大事なかぎとなるわけでありますが、そのためには、税を負担する消費者と税を預かる納税義務者の双方の信頼を得る税務行政でなければなりません。
その観点から二つの点についてお尋ねしますけれども、その第一は、納税義務者にとって最大の問題は、
消費税をいかにしたら円滑に適正に転嫁できるかであります。このためカルテル
行為が認められることになっておりまするけれども、競争の特に激しい分野や下請
企業などにとっては必ずしも十分な転嫁ができるか保証の限りでありません。その一方、消費者にとっては過剰転嫁、いわゆる便乗値上げが起こるのではないかとの
不信感があります。これら双方の不安と
不信をどのようになくしていくつもりか、
政府の
方針と対策を伺います。
第二は、
消費税の導入に際し帳簿方式などの制度的なさまざまの事務負担の軽減
措置を講じましたけれども、事務費の負担増は避けられません。その上、ふなれも手伝って、時として帳簿記入の漏れや計算ミス、あるいは手違いなどが生じるおそれがあります。このため一層税務当局による監視が厳しくなるのではないか、さらに重課されるのではないかなどのさまざまな懸念を抱く中小
企業が多いのであります。六カ月間の弾力的
運営のことは承知しておりますけれども、こうした
関係者には懇切丁寧に指導して、この税があくまで円滑に円満に
実施されるよう格段の配慮をお願いしたいと思います。
次に、「
ふるさと創生」についてお尋ねいたします。
ふるさと創生は、
竹下総理がかねてから掲げられてきた大きな旗印であります。
総理の意図を体して
平成元年度予算には「ふるさと」絡みの予算が各省軒並みと言ってよいほど出ておりまするけれども、その中で注目されるのは
ふるさと創生資金の配分であります。一律一億円の配分を受けることになって、
地方自治団体は大いにやる気になっております。
これまでの
地方振興は、概して国や県が計画を立て、市町村はお仕着せでその恩恵に浴するといりパターンが多かったわけでありまするけれども、今回の資金配分は、それから見まするとまことに画期的な新鮮味のある施策でありましく必ずや各
地方自治団体とも総知を絞って、それぞれの伝統と特性を生かした
地方振興策を案出するもりと考えます。この中で大いに見るべき施策や計画がありますれば、引き続き次年度以降も
実施、失行できるよう
政府としての援助をお願いしておきます。
これと関連をして、この際特に
政府に要望したいと思いますることは、
ふるさと創生を支援するものとして、全国的な交通網と情報通信網の整備を
促進されたいことであります。昨年制定された多
極分散型国土形成促進法を受けて、
政府は全国一日交通圏の構築など交流ネットワーク
構想を打ち出しております。これとタイアッブする形で高規格幹線道路一万四千キロを建設するという壮大な計画ができておるのでありますが、実際問題として、これがすべて全部完成するには三十年はおろか四十年はかかるであろうというのが専門家の見方であります。これでは絵にかいたもちになりかねません。そこで、一万四千キロのうちせめて九千キロは、これを二十一世紀初頭までに完成させようという
方針だと聞いております。このこと自体はまことに結構ですけれども、ぜひやってもらいたいところですけれども、ただ従来の手法を見ておりますると、交通量が多くて採算上有利な路線が優先されてしからざる
地域はいつも後回しにされる。高速道のついた
地方は大いに発展するけれども、後に残された
地域はますます立ちおくれが目立ってくる。これでは全国土にわたっての均衡のとれた開発、発展は到底望めません。
そこで、今後九千キロの路線決定に当たっては、
地方の拠点都市を、それも全部とは申しません、少なくとも県庁の所在地である
地方振興拠点都市をつなぐ路線については、重点的にぜひその枠に組み入れるよう
政府の特段の配慮を願いたいのであります。
ふるさと創生資金の配分をきっかけとして、
地方はソフト面ではかなり活気づいてくるものと思います。その上に交通網、情報通信網などのハード面の整備が伴うならば、そこに相乗的効果があらわれて
活力に満ちた本当の
ふるさと創生が
実現すること間違いありません。これこそが
総理の提唱される
ふるさと創生に真にかなう道だと考えるのでありますが、建設大臣の前向きの勇気ある
答弁を期待いたします。
最後に、農業問題についてお尋ねいたしますが、近年
我が国農業を取り巻く環境はまことに厳しいものがあります。毎年大幅の減反
政策がとられるのに加えて、国が関与する農産品価格は次々に低下する、外国からは農産物輸入自由化の圧力がかかる、これからの農業は一体どうなるのか、将来に望みが持てなくて農業から離れる若者が多く、放置しておいては農村は衰微するほかないという声を聞くのでありますが、もちろんこれは大問題でありまして、古くから農は国の
基本だと言われておりまするように、農業は、
国民の命を支える大事な食糧を供給するという使命を担っているばかりでなく、国土の保全、自然環境の維持という点でも大きな役割を担っておる、国の大事な基幹産業であるわけであります。
だからこそ、
政府にあっても農業の生産性の向上や後継者づくり、あるいは牛肉・オレンジ等の輸入自由化に対する対応策等々、このたびの補正予算においても、また新年度予算についてもいろいろと
措置を講じられておることは私も承知しておるのでありまするけれども、この際、
我が国農業の今後あるべき姿、将来展望について、農村の人々が安心して仕事に精出せるよう、農政通として定評のある羽田農林水産大臣からわかりやすく方向を明示してもらえたら幸いと思います。
なお、米についての輸入自由化の問題でありますが、一般的に市場の開放は
時代の流れであり、
世界の趨勢でありまして、国際社会の有力な一員としての
我が国も最大限これに
協力すべきことはこれは当然と思いまするけれども、しかも、米だけは別だという根強い考えがあるのでありまして、
国民の主食でありまた
我が国農業の基幹作物でありまする米についてはやはり別だと。しかも
我が国は食糧の自給率、特に穀物の自給率はわずか三一%、どこの先進国に比べても一番低いという点も考え、食糧の安全保障ということからしてとてもこれは認めるわけにはいかないと私どもも考えておるのであります。
この問題については、既に
衆参両院においても反対の決議をしておることは御承知のとおりであります。先般のカナダのモントリオールにおけるガットの
会議では幸い事なきを得たようでありまするけれども、四月にはジュネーブで高級事務レべルの
会議が開かれると聞いております。そこで米の問題が取り上げられるかどうかまだ決まっていないようでありまするけれども、いつどこにおいても常に毅然たる
態度でこの主張を貫いていただきたいと思います。
農林水産大臣の御
答弁をお願いして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣竹下登君
登壇、
拍手〕