○村沢牧君 御報告いたします。
去る二月一日から三日までの三日間にわたり、長野、群馬両県におきまして、
農林水産業の実情を
調査してまいりました。
派遣委員は、
福田委員長、岡部
理事、刈田
理事、星
委員、下田
委員、山田
委員それに私、村沢の七名でありました。
以下、日程に従って申し上げます。
まず、長野県におきましては、県当局から本県の
農林水産業の概況について、また、長野営林局から本県の国有林について、それぞれ説明を聴取するとともに、県当局及び農林業団体から陳情を受けました。
長野県は、
農家戸数、
農業就業人口ともに全国一という屈指の
農業県で、一戸当たり耕地面積では全国平均を下回るものの、高い技術力、大消費地に近い地の利、園芸作物への特化等により、土地、
労働、資本の
生産性のいずれもが全国平均を上回っています。反面、
農業従事者の高齢化、基盤整備の立ちおくれ、自由化の影響等の問題も抱えています。県は、
生産性と付加価値の高いたくましい
農業の創造を目指して、昨年「長野県
農業二十一世紀への展望」を策定しましたが、今後はこの計画を基本に
農政を進めていくとのことでした。
本県の森林面積は、全国第三位ですが、現在林業は、国産材の
需要停滞、過疎化による山村
労働力の減少など厳しい
状況にあります。これに対処して、営林局と県当局は、木材の
安定供給と特用林産物の振興を図るとともに、公益的機能の維持増進、森林レクリエーションの場の提供等にも力を入れています。なお、県では、二十一世紀へ向けて、森林資源の整備、森林
経営の活性化、森林づくりへの参加等を目指す「長野県森林・林業長期構想」を昨年策定しました。今後の施策は、これに沿って推進していくとのことでした。
水産は、ニジマス等の内水面養殖と寒天製造が盛んで、県もその振興を図っています。
概況説明を聴取の後、
調査団は中野市
農協を訪ねました。エノキタケの
生産は長野県が全国一ですが、中野市は、県下でもその指折りの産地であります。しかし、最近では、
価格の下落に加え、低温作業が高齢者にはきついこと等から、
生産農家は減少傾向にあります。
農協では、所有する種菌センターで
生産した優良種菌を
農家に配付することにより、
生産の安定と品質、規格の統一を図っていますが、今後も、選果、選別の複雑化に対処して集出荷施設の拡充に努め、キノコ
生産の総合供給基地を目指していくとのことでした。
次に、
調査団は、須坂市にある果樹試験場を訪ねました。本県の六十二
年度の果樹
生産額は、リ
ンゴ、ブドウ、ナシ、桃の四大果樹を中心に六百五十六億円に達し、全国第二位でありますが、県では二十一世紀には一千億円の大台に乗せることを計画しております。国際化の進展と
労働事情の悪化のもとで目標を達成するには、味がよく、個性的で、商品性の高い新品種の開発と、省力多収栽培、病害虫防除等の技術開発が不可欠で、試験場ではバイテク技術等を駆使して、それらの試験研究を進めていくとのことでした。
次に、十九ヘクタールのガラスハウスやビニールハウスが建ち並ぶ坂城町のバラ
生産団地を訪ねました。ここでは、三十三名の方が二十五種類のバラを周年栽培しています。
生産額は五億三千万円で、これは本県
生産額の六割に当たり、地元では日本一のパラ団地という自信を持っているそうであります。
農家の方々は、
内外からの供給増加、結婚式の減少等が重なって
価格が下落しており
経営は楽ではないが、さらに品質の
向上を図り、安定
生産と計画出荷にも努めて産地間競争に打ち勝ちたいと述べておられました。
調査団が長野県で最後に視察したのは、県産材の集出荷施設である小諸市の東信木材センターであります。東信地方の森林資源の七三%はカラマツであります。このカラマツは、耐水性、耐久性、木目の美しさ等により、建築用材として見直されており、その資源の活用が地元の振興に役立つものと期待されています。センターの敷地内の工場や事務所の建物は、すべてカラマツだけを用いてつくられており、自然な光沢が見事でした。地元の方々は、地域材の
需要拡大、外材輸入を適正化、
消費税転嫁対策等について要望しておられました。
長野県を辞した
調査団は、群馬県に入り、まず県庁で県当局から本県の
農林水産業の概況説明を受けました。また、農林業団体から陳情を受けました。
本県では、豊富な水資源、比較的温暖な気候、大消費地に近い地の利等を生かして多彩な
農業が行われており、一戸当たりの
農業粗収益は全国第五位と全国の上位を占めております。しかし、本県の
農業も多くの問題を抱えており、県では、昨年群馬県
農業・
農村活性化検討会を設置して、国際化への
対応の
強化と
農業、
農村の活性化を中心に検討を進め、現在その結果の取りまとめを行っているとのことでした。
本県の森林面積は全国第二十二位で、首都圏の水源涵養と国土の保全に重要な役割を果たしています。林業は停滞ぎみですが、県では、造林や林道の整備、間伐の実施等の施策の推進により、林業と山村の振興を図っています。
水産では、コイ、アユ等の内水面養殖が盛んで、県もその振興に力を入れています。
次に、赤城山麓で県営圃場整備事業を視察いたしました。富士見村と北橘村にまたがる中山間地の農地四百一ヘクタールの整備を図るもので、受益戸数七百九十戸、総事業費四十四億円で、工期は
昭和五十八
年度から
平成五
年度までとなっています。受益者負担の十アール当たり年償還額は、水田の場合一万八千円ないし二万円となっており、金利負担の軽減が
課題のようでした。なお、ここでは、県単事業で造成された「ふるさと公園」も見ました。
農村らしいふるさと景観の回復を目的としており、住民の憩いの場となっていました。
群馬の生シイタケ
生産は全国一でありますが、次の榛東村ではシイタケ栽培の実態を視察しました。訪ねた
農家は、ほだ木六万本を保有し、年間八・五トンの生シイタケを
生産しています。その方は、原木の入手難、休養ほだ場の確保難、輸入物との競合激化等により
経営は厳しいが、単価の高い良質品を作ることで何とか対処していきたいと話しておられました。シイタケ栽培は、重いほだ木を運んだり中腰で作業したりするため腰痛になりやすく、特に女性には重
労働とのことで対策が望まれているようでした。
繭とコンニャク芋の
生産も本県が全国一を誇っています。次の群馬町役場では、それらの
生産農家及び団体の方々と懇談しました。
火山灰土壌のこの地域では、深根性の桑はかけがえのない作物で、昔から養蚕は
農業の中心でした。しかし、近年の繭価の下落のため
生産農家は減少傾向にあります。出席した方々は、再
生産可能な繭価の維持、養蚕機械購入に対する助成、蚕業改良普及職員の増強等について要望しておられました。コンニャク芋の
価格も、
生産調整と不作が重なった昨年は例外として、近年低迷を続けており、一方資材費は上昇しているため、
農家経営は苦しくなっているとのことで、
価格の安定と輸入の規制、小
規模土地改良事業の促進、消費拡大対策等について要望が出されました。
次に、高崎市内にある高崎ハムを訪ねました。
我が国有数のこの食肉加工
経営は、
昭和初期の世界不況の中で、
畜産農民を救済するために
農協組織によって創業され、昨年五十周年を迎えました。
関係者の方々は、
消費者に信頼される商品づくりに努めてきたが、今後は、それとともに、
畜産物の輸入自由化に対処して、新工場の建設によるコストダウン等にも力を入れていきたいと話しておられました。
最後に、高崎市郊外の
酪農専業
農家を訪ねました。
経営者は四十歳代の方で、米国産の優秀な素牛の導入、受精卵移植技術の活用等によって乳牛の改良を重ね、
乳量一万キログラムを初めとする好成績を上げて、昨
年度の天皇賞に輝きました。借入金が少なく収益も高水準で、今後は、さらに優良な子牛の
生産、飼養管理技術の改良、
飼料自給率の
向上等に努めるとともに、牧場の一部を市民の憩いの場として開放していきたいとのことでした。
以上が
調査結果ですが、この中で触れることのできなかった県当局及び農林業団体の陳情につきましては、本日の会議録の末尾に掲載していただくようお願いいたします。
最後に、今回の
調査に御協力をいただいた方々に心から感謝申し上げ、報告を終わります。
以上です。