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国務大臣(村山達雄君) 今の
日本の経済情勢は、非常に何と申しますか、私は順調にいっているだろうと思います。その点は成長の点からいいましても、生産の点からいいましても、また物価の点からいいましても、今は非常に安定しているところでございます。しかし問題は、これが一体どれぐらい長く続くのか、できるだけ長続きせにゃいかぬ、こう思っております。そして今、
日本は
自分の国の景気だけではなくて、世界的にやはり黒字国としての責任を問われているわけでございまして、重立った国が政策協調をやっていることはもう御案内のとおりでございます。
そこで、それでは心配がないかといえば、そんなことはございません。確かに今、物価は対前年比率で一・一でございますから、世界の中でも最も安定しているだろうと思います。しかしこの問題は、コストプッシュの問題と、それからいわばデマンドプルと申しますか、この両方の問題があると思うのでございます。
今までこうなってきたのは何かといえば、基本的に
日本の
企業というものが、非常に生産性を高めるということは、これは
実物経済をやっている人も、それから金融関係に携わっている人も、すべて生産性の向上というものを目指してきただろうと思います。そしてまた、
日本の特徴でございますけれども、大きな
企業を取り巻く中小
企業、これもまたしっかりしている。これが
かなり外国と違うような気がするわけでございまして、基本にそれはありますけれども、やはり環境としてよかったという点を
考えますと、円高という問題がどうしてもあるだろうと思います。円高をプラスに利用するためには、ある
程度のやはり国の実力が必要でございましたが、それは六十二年ごろ乗り切った。円高を
自分のフォローの風にし得るだけの犠牲を払ったわけでございます。そこで今、円高利益を享受できることになりました。それに原油の価格がずっと下がってまいりました。それから為替レートはどっちかといいますと円高になっておりましたから非常によかったわけでございます。ずばりそのもので、製品輸入が安い価格で入ってくる、こういうこともあっただろうと思います。そして金利が非常に安かった、安く済ませることができた、こういうこと、これもまた非常に役に立ったと思っております。
ただ、最近の
状況を見ておりますと、コストアップの方からいいますと、為替相場がどうなるかという問題、これが
一つ最近非常に大きな問題になっておりますが、ここの問題が
一つあります。それから、原油の価格が少しずつ今上がってきているわけでございます。それからもう
一つ、産業面におけるコストアップがどれくらいあるのだろうか。今度は春闘が行われているわけでございます。これはやっぱり賃金コストが上がらなければいい理屈でございますから、つまり、
企業収益が家計の所得につながる、家計の所得がまた
企業の利益につながるという好循環を維持すること、これは恐らく賃金コストの問題であろうと我々は見ているわけでございます。
しかし、そういう点が今不確定の要素が大分出てきたということから、日銀総裁あたりは非常に心配し、まあこれは物価に対しては何といっても一番心配するのは日銀であり、また我々であるわけでございますけれども、その点を心配しております。
それから、デマンドプルの問題につきましては、過熱になるとこれは大変なことでございまして、当然のことでございますけれども、これは長続きしないことは当然でございます。したがって、今の民間の
設備投資、こういうものは我々が見るところ、非常に
企業も冷静な立場で
設備投資をやっているようでございますが、これが少し短期に走りまして、そしてどんどん先のことを
考えないでやるようになりますと大変じゃないかと思っております。今のところはそういう心配はありません。
それから、先ほど由しました公共事業でございます。これは不況のときのカンフル注射としては非常に効くということは、六十二年の六兆円のあれでよくわかっているわけです。これは波及効果が非常に大きいということから来ることでございましょう。現在はいい
状況でございますから、やはり執行態勢としては自然態勢がいいのじゃないかと思っております。景気促進型でもなければ、まあ後退型にいたしますとまたいろいろの問題がありますので、今の状態の
もとでは自然型でいいのじゃないだろうかと思っております。
以上でございます。