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1989-03-02 第114回国会 衆議院 予算委員会公聴会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年三月二日(木曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 大野  明君    理事 越智 伊平君 理事 近藤 元次君    理事 田名部匡省君 理事 山下 徳夫君    理事 綿貫 民輔君 理事 佐藤 敬治君    理事 村山 富市君 理事 官地 正介君    理事 玉置 一弥君       稲村 利幸君    上村千一郎君       大坪健一郎君    奥田 敬和君       左藤  恵君    佐藤 文生君       志賀  節君    田中 龍夫君       高鳥  修君    野田  毅君       浜田 幸一君    村田敬次郎君       井上 普方君    上原 康助君       川崎 寛治君    菅  直人君       新村 勝雄君    辻  一彦君       野坂 浩賢君    坂口  力君       日笠 勝之君    冬柴 鐵三君       水谷  弘君    栖崎弥之助君       林  保夫君    安藤  巖君       石井 郁子君    浦井  洋君       岡崎万寿秀君    山原健二郎君  出席公述人         年金評論家   橋本 司郎君         中央大学商学部         教授      富岡 幸雄君         東京大学農学部         教授      荏開津典生君         亜細亜大学経済         学部教授    藤田 至孝君         大阪大学社会経         済研究所教授  森口 親司君         新日本婦人の会         中央本部副会長 高田 公子君  出席政府委員         総務政務次官  加藤 卓二君         防衛政務次官  榎本 和平君         経済企画政務次         官       今枝 敬雄君         外務政務次官  牧野 隆守君         大蔵省主計局次         長       篠沢 恭助君         大蔵省主計局次         長       藤井  威君         文部政務次官  麻生 太郎君         厚生政務次官  粟山  明君         農林水産政務次         官       笹山 登生君         通商産業政務次         官       奥田 幹生君         運輸政務次官  亀井 善之君         郵政政務次官  谷垣 禎一君         建設政務次官  野中 広務君         自治政務次官  松田 九郎君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      右田健次郎君     ————————————— 委員の異動 三月二日  辞任         補欠選任   米沢  隆君     林  保夫君   経塚 幸夫君     山原健二郎君   中路 雅弘君     石井 郁子君 同日  辞任         補欠選任   林保夫君       米沢  隆君   石井 郁子君     安藤  巖君   山原健二郎君     浦井  洋君     ————————————— 本日の公聴会意見を聞いた案件  平成年度一般会計予算  平成年度特別会計予算  平成年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 大野明

    大野委員長 これより会議を開きます。  平成年度一般会計予算平成年度特別会計予算平成年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会を開きます。  この際、御出席公述人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。平成元年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただくようお願い申し上げます。  なお、御意見を承る順序といたしましては、まず橋本公述人、次に富岡公述人、続いて荏開津公述人順序で、一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、橋本公述人にお願いいたします。
  3. 橋本司郎

    橋本公述人 おはようございます。橋本でございます。  衆議院予算委員会という国政上の非常に大切な場で意見を述べさせていただく機会を与えていただきまして、大変光栄に存じ、またありがたく思っております。  平成年度予算について意見を述べろということでありますから、テーマは年金福祉ということでありますので、高齢化社会中心的な課題になる老人及び年金という面からお話をいたしたいと思うのですが、基本的に私は政府案に賛成の立場を持っているものであります。  まず福祉関係でございますが、日本社会福祉社会保障というのは、社会保険の面ではもう世界的なレベルにある。また、福祉サービスでもメニューはもう一通り出そろっている。ただ、やや厚みが問題ではないかというふうな認識を私は持っております。その厚みの求められる社会福祉サービスでありますが、政府部内では在宅サービス社会福祉事業法の中に位置づけてさらに発展させたいというふうな考えも出てきているようでありまして、こうした理念の展開とともに、また平成年度予算ではその量的な拡大が図られているというところに注目をいたしたいというふうに思っております。  平成年度予算で申しますと、ホームヘルパーにつきましては三年計画による増員計画が進められることになります。増員の幅も、前年度は千九百人程度でありましたのが今度は四千三百人、補助率も三分の一から二分の一に引き上げるというふうなことが行われるというふうに拝聴いたしております。     〔委員長退席田名部委員長代理着席〕  それからまた、デイサービスにつきましても、将来の一万カ所を目指して現在の六百三十から三年計画で二千五百にふやすというふうなことも考えられております。それからまた、ショートステイの面でも、約二千四百床である現在をさらに千九百床ふやすというふうなかなり大幅な増加が図られるということになっております。これらはいずれもこれまでのベースを上回るものでありますが、ただちょっと、やや遅まきの感がないでもない。また、需要はもっと多いということも考えますと、今後さらに力を入れていただきたい部門であるというふうに思っております。  それから、こうした社会福祉サービスのニードを一番身近につかんでおるのは市町村であります。市町村でそれぞれの地域にふさわしい福祉計画を進めるというふうなことが必要になってくる。その意味で、市町村の役割は非常に大きいものがあるというふうに思います。たまたま審議中の予算にはふるさと創生予算などが入っておると聞いておりますので、これなどを巧みに使って福祉構築を進められるのも一つの着想ではないかというふうに思うわけです。  ただ私は、福祉というのは、こういうものをつくっていくばかりではなくて、一つにはこんな考え方を持っております。年金は非常に大事なものでありますけれども、年金受給することが福祉なのではなくて、それを有効に使うところに福祉が生まれるというふうに考えております。  そこで、次は年金問題でありますが、まだ関係法案国会に提出されておりませんので、関係審議会に諮問あるいは了承を得られました案をもとに私の考えを申し上げてみたいというふうに思います。  第一は、学生国民年金への強制加入の問題であります。社会保険というのは、その性格上強制加入社会保険料強制徴収というのが原則でありまして、その原則が守られないところには社会保険制度というのは成立しない。そして任意加入というのはどういう意味を持つかといいますと、その制度からの適用除外でありまして、つまり、その制度によって保障されるべき福祉からその人を外してしまうという意味が根底にあります。こういったようなことは余り好ましいことではないというふうに私は考えております6  それから、任意加入適用除外というふうなことを積極的に容認いたしますと、強制加入の方が不利であるということになります。強制加入が不利だということになりますと、その制度自体自己否定につながるというふうに思います。それから、もし任意加入が有利であるというならば、なぜ昼間部の学生だけに限っているのか。むしろ、それと同じ年配で学生よりも必ずしも恵まれている立場にあるとは考えられない、学生以外、例えば多くの専修学校学生、それから予備校にいる者、浪人、家庭にいる子女、それらの者がいずれも強制加入になっている。これは、もし任意加入の方が有利だということならば余りつじつまの合う話ではないというふうに考えます。  それから、学生につきましては特に収入がないということが問題になりますが、収入のないという点では無業の妻でも同じでありますし、先ほど申し上げました各種学校専修学校などの生徒あるいは浪人など、いずれも同じであります。現在でも保険料の納入は世帯主が責任を持つということになっておりまして、親元を離れて遊学している場合には、今納付できないのならば、一たんは免除を受けておいて十年後までに追納するという方法現行法のもとでもとれるということになっていることに注意する必要があるというふうに思います。  それから、一番焦点になりますと思われますのが、老齢厚生年金支給開始年齢を六十五歳に引き上げるという点でありますが、これは保険料引き上げとも絡み合う問題であるというふうに思います。これまでの傾向では年金問題がどうも余りに政策的といいますか、政治的に処理されてきた嫌いがあるのではないか。負担は軽く給付は多くということを言われているのですが、それはできない相談であります。これはまさに年金数理を無視する余り好ましくないやり方だというふうに思います。その証拠に、例えば今問題になっております国鉄共済年金問題でも、早くも二十年も前から、昭和四十年代の中ごろには既に、国鉄年金昭和六十年代の前半には支払い不能になるということが数理専門家の間では常識になっていた。これはもう数理専門家の間では皆さんがよく御存じのことであります。そういうことを無視してきた。しかも重要なのは、昭和三十一年にスタートした国鉄共済年金がわずか十年余りでもう将来の見通しがつかないというふうな状態になっていた。これはもう制度自体の異常さであると同時に、行政労働側使用者側もこれに対して適切なる努力を何らしなかったというところが重大な問題ではなかったかというふうに思います。  そこで、保険料段階的な引き上げとか六十五歳問題は年金財政計算の結果として出てきたものだ、率直に再計算内容を広く公表して冷静な判断を国民に求めるべきだというふうに私は考えております。確かに負担は軽い方がいいんですが、もう今の国民は、保険料を少しぐらい削ったようなこと、今の保険料負担は将来のピーク時の負担の半分ぐらいにしか当たらないこの時期にそういったようなことをしても、それが、いわば一瞬の負担軽減が将来の負担にどうはね返ってくるかということは国民自体の方がよく知っております。ですから、こうしたような甘い話はもうだれも信用しないだろうというふうに私は考えております。  保険料率が三一・五%にもなるだろうという予測が出ておりますが、三一・五%というような保険料はこれはとても徴収不能でありますから、これは軽減をしていかなければならない。それには方法二つしかない。一つ年金水準を引き下げるのか、あるいは受給者数を抑制するのか。受給者数を抑制するということは支給開始年齢引き上げるということにつながるわけですけれども、このどちらかの方法しかないというふうに私は考えております。  水準の引き下げというのはこの前の法律改正のときに実施したばかりでありまして、これ以上引き下げると公的年金老後保障中心的な根幹であるという意味を失ってしまうというふうに考えます。それから、企業年金などで補えばいいではないかという考え方もあるかもしれませんけれども、労働者の多くを占める中小企業労働者というのは退職金さえないというところさえあり、まして企業年金などは期待できません。これは格差を生むだけのことでありまして、いかにミニマムといっても、中小企業労働者などのことを考えると一定の水準年金制度は維持していかなければならないというふうに考えます。  六十五歳問題というのは避けて通れるよい方策があれば私はそれを支持いたしますけれども、今のところ、私自身それを見つけることはできません。ということになりますと、できるだけ早い時期に六十五歳を国民の前に示しておくことが必要である。その理由としては、個人としても老後生活の設計、心の準備などをしなければなりませんし、また、急に支給をおくらせるということを言われたのでは、これは戸惑ってしまうばかりです。どうせやらなければならないことなら、できるだけ早くからその方向を提示しておくことが親切である。また、現在でも厚生年金の実際の受給年齢は、私の承知しておりますところでは男子では六十二・一歳、五十六歳支給の女子でも六十・四歳、実際の支給開始年齢よりかなり遅いところで受給を始めるという現実があります。また、労働力需給見通しから申しましても、二十年後あたりになりますと、六十四歳までを労働力人口の中に組み入れていかないと労働力需給のバランスがとれないというふうな推計も私は拝見いたしております。そういうことを考えますと、六十五歳ということが本当に数字どおりの六十五歳のショックではないというふうに考えてもいいのではないか。  とは申しましても、六十歳代前半雇用環境整備というのはまことに重要であります。年金サイドからのこの問題への対応としましては、政府案にあるような選択的な繰り上げ支給制度、これをつくるというふうなことも考えられておりますが、年金サイドとしてはそういったようなことができると思いますけれども、しかし、何といっても雇用の確保ということは非常に大切であります。しかし、これは定年延長などといった単一な手法だけで対応できるものではない。精神的にも肉体的にも個人差の非常に大きくなる年代層に入ってくるからであります。そうしますと、非常にさまざまな工夫が必要になってまいります。例えば年功序列賃金からどうやって離脱するか、日本的なワークシェアリングをどういうふうに進めていくかなどなどであります。これはよく労働省が立ち上がりが十分でないというふうな批判も聞くのでありますが、労働省一省でできるというふうな事柄ではとてもないというふうに私は考えております。政府全体あるいは経済界あるいは労働界の知恵と協力がなければとてもできるものではない。それには時間がかかります。それには、六十五歳も早期に取りかかるという考え方を当然示すべきであるというふうに思うわけです。  雇用環境整備の方が先だというふうな御意見もございますけれども、こういう考え方は本末転倒ではないか、あえて言えば、木によって水を求むるのたぐいであるというふうに私は考えます。なぜならば、年金が六十歳から出るという状況のもとでだれが六十歳を過ぎてから後の雇用のことを真剣に考えますか。そういったような企業が出てくるとは考えられない。したがって、六十五歳問題を若干先送りする、例えば五年先の財政計算まで先送りするというふうなことをやりましても、その間に雇用環境整備が進むとはとても考えられない。そこで起ることは、六十五歳対策に注ぐべき五年間をじんぜんと失ってしまうということになる。よもやに引かされた国民は、急激に実施されることになる六十五歳に戸惑うばかりだという結果になると私は考えております。  今回もし六十五歳問題を見送るというふうなことがあったといたしますと、六十五歳を避ける手だてというものをきちんと提示しなければ、国民は六十五歳問題が解消したとは決して思わない。いっか必ず来る、二年後に来るのか、三年後に来るのかというふうに考えるだけであります。そのような一時しのぎをやっても、それは信頼される行動ではないというふうに私は考えております。というのは、国鉄問題を目の前にして、私と話す多くの人は、国鉄が困っている、困っていると言うけれども、なぜ今まで政治は何にもしてくれなかったのかということを真剣に言ってまいります。国民はそれを知っておりますので、きちんとした対応年金問題では必要であるというふうに私は考えております。  そこで、私は、年金制度改善するというその改善意味が今やもう変わってきているのだ、社会保障政策構築期には、私も当時新聞記者で、やれ行けそれ行けの調子の記事を一生懸命書きました。しかし、それは、そのときはそのときで制度構築するインパクトになったということはあると思います。野党、与党を問わず、社会保障の充実、年金制度の確充ということはどなたもおっしゃって一生懸命頑張ってきた。しかし、それはまあ年金制度についての考え方でいいますと受給者論理である。ところが、今日の改善は、そうではなくて、高齢化社会に向けて日本の進んだ社会保険制度をどうやって維持していくかということにあるというふうに私は考えております。ここで考えていかなければならないのは、受給者論理よりもむしろ負担者論理であるというふうに考えております。国鉄共済は人数が少ないですから、今度のようなみんなで力を出せば何とかなりますが、厚生年金がこけてしまったらもうだれも助けてくれるところはない、後はないのだというのを、私は十数年年金問題をやりながらしみじみと考えております。  それからもう一つは、年金制度国民政府との契約であるというふうなことがよく言われますが、私はむしろ世代間の契約であるというふうに思っております。後代の人が保険料を払ってくれるかどうか、そこに問題がかかっているのであって、ところが、その後代の人は今この契約をする現場にはいない、いわば不在契約と言ってもいいようなものです。そういう不在契約を結ぶときに、その後代の払い切れないような保険料を設定するというふうなことはまことに無責任であるというふうに考えるところであります。  それから、あと制度間調整の話をごく簡単に申し上げておきたいのですが、制度間調整法が出てまいりますと、これは年金改正本体表裏一体のものだというふうに私は考えております。というのは、今度の制度間調整は結果的に国鉄、たばこなどの苦しんでいる制度を救済することになりますが、それと同時に表明されているのが、助ける側に回る厚生年金自体が将来の展望が怪しいということを数理は言っているわけです。そちらの方の手当てがきちんとできないということになれば、よその制度を助けるというふうな段階ではとてもない、こういう意味で、制度間調整法年金法改正案本体、これは表裏一体のものであるというふうに考えておりまして、それが一緒に進行していかなければ重大なことになるのではないか。  時間が参りましたので、ちょっとまだ言い残したこと、多々ございますけれども、これで一たん私の発言を終わらさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
  4. 田名部匡省

    田名部委員長代理 どうもありがとうございました。  次に、富岡公述人にお願いいたします。
  5. 富岡幸雄

    富岡公述人 中央大学富岡であります。  私は、税制問題を研究者として勉強してまいった者でございまして、この衆議院予算委員会に招かれ、そしてつたないことではございますが、平素の研究の一端を申し述べまして、国会議員諸公の御審議参考にしていただくことができることを光栄に思っております。大野委員長初め委員先生方各位に謹んで厚く敬意と感謝を申し上げます。ありがとうございました。  さて、長いこと財政当局が念願しておりました大型間接税消費税がこの四月から施行されるわけです。もう一カ月ございません。承りました平成元年予算には、この消費税が五兆九千四百億、これが織り込まれておるわけですね。したがいまして、この予算形成の基礎になる重要な税収であるこの消費税中心とする税制問題につきまして、若干の所見を述べたいと思っております。  今回の抜本改革は、消費税の導入という画期的な事実を中心とするわけではございますが、同時に、所得税住民税相続税、そして法人税などの大幅な減税も行われております。勤労所得税中心のこれまでの我が国の税制を画期的に消費税にウエートを移行していくという方向づけの第一歩が踏み出されたわけでありまして、なるほど昭和二十四年のシャウプ勧告以来の大改革と言えると思います。  しかしながら、新税として強行導入された消費税は、矛盾と欠陥に満ちた大変問題のある税金であります。先生方が大変御熱心に御審議なさり、立派な案をつくられたことには敬意を表するわけではございますが、大変僭越ながら私は抜本改革などとは義理にも言えない、不公平税制の是正はまさにおざなりであり、ほとんど手がつけられてない、こういうふうに考えますが、いかがでしょうか。しかも、前代未聞の長期国会ながらリクルート疑惑の広がりもあって、税制審議は実質的に全く未消化であると国民考えておると思います。  実は、最近、政府の御指導によって各地の税務署やいろいろな経済団体が、お役所の方の御指導をいただきながら消費税説明会を全国でやっております。私は昨日、横浜で四時間半お話をしましたが、一生懸命四時間半話してもよく内容がわからない。特に、政府側の御説明を承れば、聞けば聞くほど中身がわからない。そしてだんだんとこれはひどい税金であり、とんでもない税金であるということがわかってきた。そして、それがいつの間にかできちゃったんだ。あれよあれよという間にできちゃったんだ。これはきのう終わった後、いろんな経営者の方に意見を聞いてみたんですが、言葉は大変よくないんですが、その方が言っていることを伝えるわけでありまして、私の意見ではございませんが、だまされたというような感じを受けるとか、ちょっと国会国民を愚弄しておるのではないかというような意見さえも私の耳に伝わってきたわけです。  そこで、この四月一日から施行される消費税は、救いがたい欠陥を備えた税金であります。消費税法条文体系を見ましても、消費税課税対象が極めてあいまいであります。消費税の建前は消費に課税する税金なんですが、その実態は財貨、サービスの販売、提供による売上高に課税するわけです。課税対象売上高であり、課税標準売上金額であります。消費税なんだから課税対象となるのは消費高であるべきなんだが、奇妙なことに消費という言葉もなければ概念もない。定義がない。付加価値税と言われますが、その課税客体の実質である付加価値については、税法のどこを見ても付加価値額算定方法が規定されてないわけです。一体これは何にかける税金ですか。課税客体は何なんですか。この辺にもう少しよく整理していただく必要があります。付加価値算定方法が必要なんでしょうが、その定義概念もなくて、今第一線の説明会は混迷を深めています。  そこで私はこの消費税について、まず原理的な問題点とそして技術的、構造的な問題点二つに分けて述べたいと思います。  まず第一の原理的な問題点については、十項目あります。  第一は、行政改革財政改革が不十分な段階で新しい安易な財源を与えることは問題がある。現に平成年度予算案を拝見しましても、これまで凍結されておったいろんな支出、その他の支出がいろいろ盛り込まれております。長い間の財政抑制先生方も大変である、お苦しみであることは私も承知はいたしておりますが、六・六%増の六十兆四千百四十二億円ですね。消費税収入は三兆六千百八十億円。一般会計は大幅な税収増に支えられて、実に総額六十兆四千億を超える、八八年度当初予算比六・六%増という八年ぶりの高い伸びを示しております。それは、消費税という税収の安定基盤、タックスマシンを獲得したことによって緩み出した財政の姿を浮き彫りにしているというふうに考えることは誤りでしょうか。  二つ目。広く消費一般に課税する普遍的間接税は、常々述べてきましたように、それ自身が本質的に不公平な本質を、体質を、構造を持つものであります。  第三に、新型間接税の導入は、低い所得者、低所得者への増税であり、高所得者への減税である、こういう点で、税の垂直的公平に逆行するのです。大蔵省の文書を拝見していますと、水平的公平が重要であり、垂直的公平の感覚が変わってきた、こういうふうに言われますが、税はやはり水平的公平と垂直的公平が備わって初めてそれはフェアな税制であるというふうに私は考えますが、いかがでしょうか。  第四に、直間比率の是正等や普遍的間接税の導入は、逆に税の不公正を拡大する。国情や税文化の伝統を無視した増税装置の設定である。この点は、甚だ残念でありますが、賛成いたしません。  第五は、大型間接税は、今問題になっておりますように計算技術的にも複雑であります。政府のパンフレットを見ると簡単だ簡単だと言うが、聞いている人は三時間聞いても四時間聞いてもよくわからないと言う。泣いているのです。実践的にも難点があります。矛盾を多く含んでおります。  第六に、我が国の独自の問題ですが、複雑な流通機構の特殊事情、これは税の執行、運営を極めて困難にするおそれがあります。  第七に、大型間接税は直接税よりもかえって執行面で大きな混乱と困難を生ずるおそれがあるのじゃないか。いや、なければいいということを私も願っております。  私は、若いときに十五年間、国税職員として税務行政の第一線にもおりました。そして昭和二十三年九月、東京の日本橋税務署に勤務したことがございますが、そのときたまたま例の取引高税が施行されたわけです。多段階、累積課税。このことを知っている方は少のうございます。私は、それを税務行政の第一線でこの身をもって経験した生き証人でありますから、このことを国会先生方によく申し上げなければならないことを自分の使命であると考えております。税務行政の現場は混乱しました。わずか一年四カ月でついにこの法律は廃止の憂き目を見たわけです。私は、同様の混乱が来月一日からこの我が日本国において行われるのじゃないかと考えると、まさに身の毛のよだつ思いであります。——質問をしてくださいね。やっているときは静かに聞いてください。  第六は、我が国独自の複雑な流通機構の特殊事情がございます。これがまた一段と税の運営、価格転嫁を困難にしているわけです。  そして、第七は先ほど申しましたが、第八は、新型間接税の導入は、内需の停滞、物価の上昇、便乗値上げ、そして場合によったらインフレ、国際摩擦の拡大を招き、経済政策にも逆行するおそれがあると考えております。  第九に、所得税が最も公平な税金なんです。消費税のような大型間接税の導入は、税体系を好ましからざる方向に転換するものでありますから、この点に大きな疑念を持つわけです。  最後、第十は、税制改革はまずもって現行の所得税法人税にある限りなきゆがみとひずみを是正し、税に対する公正と正義を確立することが優先でなければならないとかねがね申し上げておりました。不公平税制の是正は論じられてはきましたが、その見るべき内容はまさにお粗末きわまりない。キャピタルゲイン課税などは、質問に答えたいが、かえって新たな不公平をもたらすというふうに私は考えます。  いろいろおしかりがあることはわかりますが、以上十項目。  次いで、第二の構造的な問題点について触れます。  消費税はヨーロッパ各国で施行されている付加価値税がモデルであります。その付加価値税は累積課税を排除することが最大の特徴であり、いわゆる多段階、しかも累積排除型の税金です。  前段階で課税された税額を控除するという方法には、周知のとおり二つございまして、一つはヨーロッパ等で採用されておる税額別記による控除方式であり、いわゆる伝票方式、インボイス方式と言われております。いま一つは会計帳簿上の記録に基づいて控除する方式であり、これは帳簿方式またはアカウント方式と呼ばれておりますね。  今回導入された我が国の消費税は、前段階税額控除の方法として、この帳簿方式を軸にインボイス方式を併用するという妥協型の方式を採用しただけです。この方式は、消費税の導入をお急ぎになる政府が中小企業者や事業者の納税事務負担軽減し、反対を封ずるために採用されたものではないかというように言われております。  帳簿方式を採用したために、原則的に非課税品目を設けることができないということになったわけです。ということは、技術的な話でございますが、帳簿方式では売上高や仕入れ高、諸経費の会計上の勘定科目を包括的にとらえておりますから、個々の科目の中にもしも課税品目と非課税品目がありますと、その振り分け作業がありまして混乱するわけです。もしすべての取引について課税か非課税かを精査するようにいたしますと、伝票段階までさかのぼらなければ計算ができないわけです。そうなれば、インボイス方式の方がむしろ効果的なのです。  この原則非課税なしよという建前は、生活必需品まで課税するという、消費税のまさに過酷な実態を表現しております。非課税品目は、医療、福祉、教育の一部に限定されました。したがって、薬局で買うお薬もホームヘルパーの派遣料も学校の入学金も、すべてかかりますね。そして一方、理由はよくわかりますが、土地や有価証券の譲渡高や利子や保険料収入は非課税なのです。このような議論を専門家はわかっても庶民の隅々までわからせることは決して容易ではありませんし、時間をかけておやりにならなければ危ないと思います。  消費税は、画一的な一律三%の単一税率になりましたね。世界で三%などという消費税をやっている国はありません。低くなったということは、それなりに悪い税金ですが、悪さが少ないという意味で大変結構なのですが、問題は、ヨーロッパで行われているような複数税率を設けることがで きない、単一税率しか採用できなかったというところです。  単一税率では、ミンクの毛皮やダイヤモンドというような一般庶民の生活にかかわりがないようなぜいたく品も、それから一般庶民の生活に必要な食料品も、日常のいろいろな下着類のようなものも、すべて同じ率で課税する、消費に応分の負担を課するというお考えはわからなくはありませんが、そういう超ぜいたく品と生活必需品とが同じ負担能力があるかどうか、もう一度国会ではこの辺を考えていただかなければならないと思います。ヨーロッパでは複数税率を設けて逆進性の緩和に配慮し、フランスなどでは自慢しています。奢侈品には高い税率を、生活必需品には低い税率を設けることが世界の付加価値税の常識です。  次いで、さらに重大な構造的欠陥は、消費課税であることが保証されません。これは極めて重大です。今回の消費税は、前段階税額控除による累積課税を排除する仕組みを建前としながら、帳簿方式を軸としたために税額転嫁が不透明なんですね。この点は非常に問題があります。そして、きのうもどなたかお話しになりましたように、消費者の納めた税金が国に入らない、こういう矛盾がございますね。これは制度上技術的な欠陥です。  最後に、税の転嫁が便乗値上げをもたらす危険がある。特に、消費税は導入時は低姿勢で三%ですが、国民はこれが上がっていくということを懸念しております。  そこで、私は、このように国会議員の先生から今おしかりをいただくような大変失礼なことを申し上げております。この点は残念だと思います。なぜ私がこんなことを言っているか。私は若いときに十五年、国税の現場におりました。そして、前の一般消費税の経験をしました。もちろん時代が違います。ですから、同じに論ぜられないことを期待しています。もう一つは、戦後できたデモクラシーの原則を基調とする申告納税制度、納税者が自分の経済活動をまじめに正規の会計原則に従い会計帳簿に記載して自主的に計算し、自主的に納税するというセルフアセスメント、これを私は国税の現場で指導してきました。国税の現場で多くの国民や若い税務署の職員に、そのような、デモクラシーの社会は自分の税金は自分で納めるんだ、それで社会が運営されるんだという納税思想を長いこと教育してきました。お願いしてきました。しかし、今回、負担者負担した税金が国に入らないとかいうようないろいろな問題や構造的な欠陥を持った税金が導入され、そして今まで整然として行われてきた税の運営、税哲学が混迷に陥り、国民が税に対する不信の念を招くことを恐れるのです。  以上二点、私が先生方にお願いしたいことは、この際、思い切ってこの消費税を凍結していただいて、内容を十分検討しながら、さらに国民に一層の理解と協力を得るPRをやっていただいた方が、国会に対する信頼は高まるのではないかということをお願いし、御清聴に感謝して終わります。ありがとうございました。(拍手)
  6. 田名部匡省

    田名部委員長代理 次に、荏開津公述人にお願いいたします。
  7. 荏開津典生

    荏開津公述人 東京大学の荏開津でございます。こういう場で意見を述べさせていただく機会を与えられたことを感謝いたします。  私は農政学が専門でございますので、予算の中で農業関係の予算に関してだけ意見を申させていただきたいと思います。  衆議院からの御連絡は、平成元年度の農業予算に関して述べろということでございますが、農業予算はそう毎年非常に変わるというものではございませんので、近年の農業予算に関する意見、こういうようなことで御勘弁いただきたいと思います。  最初に、私の目から見ました近年の農業予算の特徴というようなものを四点申し上げたいと思います。  第一は、全体として農業予算は減ってきているということを感じるわけでございます。ことしは微減でございますが、一般歳出に占める割合も以前から比べればだんだん減ってきている、これが第一の特色であると思います。  第二は、全体として減る中で、土地改良事業関係費を中心とします公共事業費というものはふえ、他の部分の予算が減少してきているということでございます。  三番目に、その中で特に食糧管理関係の予算は非常に減っている、食管の赤字という、食管会計への繰り入れ分は、本年は前年比マイナス一一・五%というふうに拝見しましたが、非常に減っているということでございます。  第四点は、以上のようなことを反映いたしまして、農業関係の予算に占める公共事業費が半分を超えた、これは去年からであるかと思いますが、五〇%を超えるに至った、こういうことであります。  以上四点が、私の目から見ました近年における農業予算の特色である、特徴である、こういうふうに理解しております。  これに関して次に私の意見を申させていただきます。  第一点は、公共事業費がふえてきておりまして、その農業予算に占める割合も増加してきているということは、一般的に言えば結構なことである、こういうふうに考えられると思います。つまり、その場で使ってしまう金ではなくく公共事業の予算というのはかんがい水路でありますとか農道であるとかいう物になって残る、生産力として長く、農業土地改良の成果というのは百年、二百年にわたって生産力として国民経済に貢献するものでありますから、その場その場で使う予算に比べて望ましい、こういうふうに言えるわけでございますが、第二点、そういう一般的な原則はそのとおりでございますが、日本農業の現実に照らしてみますと、公共事業費が非常にふえてきている、農業予算の五割を超えている状態は必ずしも一〇〇%望ましいとは言えないというのが私の見解でございます。理由は後ほど申し上げます。  第三点は、一〇〇%望ましいというふうには言えないのみならず、近い将来において再び公共事業費ではない非公共の農業予算が増加する、あるいは増加させざるを得ないというような事態も考慮しておかなければならないし、そういう可能性も相当ある、そういう観点から少し長い目で農業予算というのを見ていただきたい、こういうふうに私は思っております。  以上述べました意見、もう一度繰り返しますと、公共事業費の農業予算の中での、端的に言えば土地改良事業費でございますが、それがふえてきているということは一般的に言えば望ましいことである、しかし、現在の日本農業の現実というものに照らしてみますと、必ずしも一〇〇%望ましいとは言えない、のみならず、公共事業費ではない、非公共の予算が近い将来においてまたかなりふえる可能性あるいはふやさざるを得ない必然性というようなものもある、こういう三点の意見の理由を申し上げます。  まず、必ずしも望ましくないという理由でございますが、端的に言えば、これは土地改良事業のもたらす効果というものについていろいろの問題が生じてきているということでございます。これは、反面からいえば、あるいは現実的な問題点ということからいえば、生産農民、受益者である農民の負担部分というものが非常に重くなってきている。そのために、事業そのものも、これは御承知のことと思いますが、非常にやりにくくなっておりますのみならず、現実に農民の側から、これは農林公庫のお金を借りて返していくということでございますが、その償還そのものがなかなか困難になってきている、そういう現実があるわけでございます。  その理由は、これも御承知のことと思いますが、面積当たりの土地改良事業の事業費というものは近年非常に高くなってきている。一反歩当たり二百万円というようなケースすらないではございません。その反面、米価を初めとする、あるいは乳価を初めとする農産物の価格が、これは引き下げられてきている。  こういった二つのことはいかんともしがたい動きでもあり、また農産物価格等の引き下げも、ある意味では非常に望まれる方向であると思いますが、この二つの理由によって、土地改良の受益農民負担というものは非常に重くなってきているのでありますから、必ずしも土地改良にどんどんお金を使えばいいというふうに断言できないと私は思います。  第二点は、この公共事業費の割合がふえてきているということの一部の理由として、稲作の転作に金を使わないという方向へ農業政策は動いているわけでございますが、私は、これはいい面もあると思いますが、問題も大きい、こういう意見でございます。  米は現在、経済学的な言葉でちょっと恐縮ですが、いわゆる需給均衡価格よりも高い米価が設定されているわけでございますから、ほうっておけばどうしても余ってくる。転作をせざるを得ないということでございます。ところが、転作というのは、稲作農民、田んぼを持っている人からすれば、つくりたい米をつくらせないということでございますから、ある意味で強制することでございます。この強制を行政的な手段あるいは農協等の農民の組織を使いまして金を使わないで行わせるということは、私は非常に無理がある。あるのみならず、そういうことであれば協力しないという農民、経済学の用語で言いますとフリーライダーと申しますが、ただ乗りですね、ただ乗りする。つまり、多くの農民が生産調整とか転作に協力することによって米価は高く保たれているわけでございますが、その中で自分は協力しない、転作をしない農民がその米をやみで売りまして高い米価を享受することができる。フリーライダー、ただ乗りでございます。転作に金を使っていれば転作協力者はそれなりの見返りがあるわけでございますが、金を使わなければ見返りはゼロである。そしてただ乗りをする転作非協力者が得をする、こういうことは、俗な言葉で言って正直者は損をする制度でございますから、必ずしも望ましいとは言えない。近い将来に転作をやめるという可能性がなかなか立たないのである以上、そのためには応分の財政支出をするべきであるというのが私の意見でございます。  第三点に、これは今年度予算にもあらわれてきていることでございますが、市場開放、私は米の市場開放ということには反対でございますが、なかなか避けられない情勢であろうかと思います。特に、日米関係を大切にするというような観点からいたしますと、これは国会におかれましても牛肉やかんきつについて開放しないということを言っておられたわけでございますが、日米関係を重視する、あるいは国際的な関係を重視するという観点から、牛肉・かんきつは自由化するということは決定いたしました。  と同様に、米も、あるいは近い将来にそういうことを国会としてもあるいは政府としても方針を転換されるということは、私は起こり得ることである。それは日本の農民にとって、あるいは農業にとっては大きな問題でございますが、国際社会における日本立場というようなことを考えると、必ずしも、絶対に米は自由化しないとか、一粒も輸入しないというふうな方針を押し通すことはできないかもしれないと思います。  そういうことであれば、そういう国境のところの壁を取り払った後には、やはり国内農業を必要であると考える以上、その維持あるいは育成には金を使わなければできない、予算を使うことが必要であるということは、ある意味で明らかであるかと思います。多くの国が不足払い、そのほかの制度を持っているわけでございまして、日本においても輸入の数量割り当て、あるいは輸入しないという方針が既に変わってきており、最後に残っている米でありますとか若干のものも、近い将来にあるいはそういうことをせざるを得ないというようなことになれば、その後は金を使って国内農業を維持、育成していかざるを得ない、こういうことは今からでも十分にお考えいただきたいことであるというふうに私は思います。  最後に、あと八分ばかりの時間がございますので、農業政策に関する基本的な意見を若干述べさせていただきたいと思います。  私は、日本の農業というのは、純経済的な観点からすればなかなか効率的なものにはなり得ないという意見でございます。中には、特にエコノ、くストとしてジャーナリズム等にお書きになる方々の中には、政府が口を出さない、市場原理に任せれば日本の農業というのは効率的なものになり、米もあるいは輸出可能になる、こういう意見の方もございますが、私は専門の観点から、米、牛乳等についてアメリカ、タイ、そのほかニュージーランド等々の国の農業と比較しまして、それは絶対にできないというふうにはもちろん、将来のことでございますから申せませんけれども、甚だしく困難である、つまり純経済的な観点から、日本農業を効率的であるというふうな形に持っていくのは非常に難しい、こう思っております。  そこで、経済的な観点からは必ずしも効率的ではあり得ない農業というのを維持するか維持しないかというのは、これは価値判断の問題でございます。この点こそ、国会のような国の考え方というものを決定する場において判断を下されるべき問題点であろうと私は思います。  つまり、経済的な観点からは必ずしもプロフィッタブルではないものを維持するか維持しないかというのは、これは価値判断の問題である。国民がそれを必要とするか必要としないかという問題でありますから、私は必要であるという意見でございますが、これは最終的には国会で判断を下されるべき問題である、こう思います。  必要であるという理由について申し上げたいところでございますが、時間がございませんので、本日は、それは省略いたします。私の書いた本などを御参照いただければ幸いでございます。  私の意見では、必要であるというのは、必要であるので国内農業を維持しなければならないということになれば、市場開放が世界の大勢であり、日本もそれに順応せざるを得ない以上、予算をそれに使わなければならないという時代が来る。食管等々、先ほど申しましたように土地改良事業費以外の農業予算というのは非常に減ってきたわけでございますけれども、またこれが逆転してふえていき、あるいはその農業予算に占める割合も逆転して増加していくということが近い将来に来るということも頭に入れておいていただかなければならぬ、こういうふうに私は思います。  そうして、そういうお金を使いまして日本の農業を維持し、あるいは農村を維持するということは農業生産者のためではない、私はこういうふうに思っております。国民全体がそれを必要とする、そういうことでありまして、農業生産者の利益のためにのみ国内の農業を保護し、そのためにお金を使うということではない、あるいは農業生産者のためにだけお金を使うということであれば、これは公正の原理に反することであって望ましくはない。私は、日本の農業を維持し保護するために財政を、支出を充てるということは、そういうものではない、国民全体の利益、非常に大きな意味における利益であって、経済的利益ではございませんが、利益にかなうことである、そういう観点からジャスティファイされることである、こういうふうに考えております。  そういう考え方は、これも御承知のことであると思いますけれども、日本に固有のことではありません。アメリカなどでもそういう考え方はありますが、アメリカは非常に大きな国であり、日本に比べてはるかに大きな農業土地資源というものを持っておりますので、おのずからそこの考え方日本と異なってくると思いますが、ヨーロッパの諸国は国内農業の維持ということに対しては予算を使わなければならないという根本的な信念を私は持っているように思います。食糧の自給ということもございますけれども、農業を維持し、農村社会を維持していくことは国民の文化と申しますか、精神と申しますか、そういう観点からして重要である。英語ではカントリーサイドという言葉を使いますが、カントリーサイドの維持ということについて非常に大きな関心、価値を置いているわけでございます。私はイギリスでしばらく暮らしましたけれども、これも御承知と思いますが、イングランドのカントリーサイドというのは実に美しく維持されている。そのためにイギリスは金を使うべきであるという政治的な判断、価値判断というものを持っている、こういうふうに私は考えております。  そういう意味で、現在の農業予算が、土地改良費が中心になってきております現状はそれなりに好ましいことではございますが、いろんな要件を考え合わせますと、将来必ずしもそういうことではなくなる、またもとの方向へ戻る可能性がございますが、その戻る場合に、できる限り望ましい形で国内の農業を保護育成していかれる方向へ制度をお考えいただきたい。  以上でございます。どうもありがとうございました。(拍手)
  8. 田名部匡省

    田名部委員長代理 どうもありがとうございました。
  9. 田名部匡省

    田名部委員長代理 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。綿貫民輔君。
  10. 綿貫民輔

    ○綿貫委員 きょうは公述人の皆様方、御多用の中ありがとうございます。限られた時間でございますので、要点について質問をさせていただきたいと存じます。  まず最初に、橋本公述人にお尋ねしたいと思います。  先ほど、日本福祉というのは世界的なレベルにまで今進みつつある、これから厚みをさらに厚くするような時代だというようなお話がございまして、来年度平成元年予算につきましても、その方向づけについての高い御評価をいただきました。また、年金問題につきましては、国鉄共済の問題を初め、いろいろの問題があるけれども、再計算を公表して国民にもっと理解を得るようにしたらどうかというような御意見でもございました。特に、負担は軽く給付は多くということはこれは望めないことである、これは適当な負担と適当な給付というものがあるべき姿であるというような御意見につきましても、全くそのとおりだと思います。特に、世代間の契約であって、これは未来の不在契約者との問題だというような御意見にも大変に興味を持って聞かせていただいたわけでございます。  そこで、先ほど冒頭に福祉の問題につきましては、市町村においてきめ細かい問題が一番よくわかるんだ、ついては、今竹下内閣がふるさと創生ということでいろいろ力を入れておるけれども、これとのひとつ接点というか、あるいは融合政策をとれば非常にいいんじゃないかというような御意見がございましたが、これについてどういうようなことがおもしろいのかな、ちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  11. 橋本司郎

    橋本公述人 私、福祉の問題を考えておりますときに、地域によって需要が非常に違うというふうに思うのです。  例えば、老人の非常に多い、人口の高齢化の進んでいる市町村もありますればそれほどでない地域もある。それから、児童の保育の問題を考えましても、夜に保育をしてもらいたいところ、それは要らないところ、あるいはゼロ歳からやってもらいたいところ、いやその辺は大丈夫だというところ、いろいろあるんではないか。地域地域によって人口の将来もまた違ってまいります。そうすると、何か一律的な、ただ福祉を伸ばせばいいということではなくて、その地域にはどういった施設がどのくらい、どんなタイプの運営の仕方が必要なのかというのをやはり個々の市町村が自分のところの住民のニーズを吸い上げながら考えていただく。例えば、そういったようなことのマスタープランをつくるというふうなことにそういったようなお金を使っていただくのも一つの案ではないかというふうに考えて申し上げたわけであります。
  12. 綿貫民輔

    ○綿貫委員 日本の国はまさに福祉大国でございまして、平成元年予算案の内容を見ましても、まさに地方交付税、国債費を除いて十兆を超える福祉予算ということでございまして、これからやはりこれは予算をふやすということと同時に、使い方あるいは知恵の働かせ方、こういうことに非常に重要な点があるんだなという御指摘でございまして、私どもも同感でございまして、ただいまの貴重な御意見を私どもも十分受けとめていかなければならないと思います。  その次に、富岡公述人にお尋ねしたいと思います。  まず、富岡公述人は、この消費税という税制法案が既にもう成立をしておるわけでありまして、まきに実施を前にしておるわけでございますが、特に最後のお言葉で私は大変ひっかかっておるのですが、現場で、国税におられまして、いろいろデモクラシーということを中心にして、税金というものはいただいてそれを適正に使うんだ、こういうことを指導理念にしてやってきたと言われますが、デモクラシーというのはやはり議会制度の多数決によって物事が決まるというのもデモクラシーなんですね。その今、デモクラシーを信奉されるあなたがこれを凍結すべきだというようなお言葉が最後にあったのにどうも私はひっかかるものがあるわけでぐざいます。  そして、特に最初に、消費概念というものがよくわからない、こういうことでございましたが、今般は消費税というものとあわせまして、日本税制の中で物品税を廃止するとか、消費全般についてもいろいろの深いおもんぱかりが私はなされておると思っております。その中で、またがっては取引高税というものが一年四カ月で取りやめになったというような実例とか、あるいは物品税というものは奢侈品にかけるべきであって、こういう一般の庶民にまでもやるという逆進性の問題についてのいろいろ御言及もございました。これらの問題につきましては、既に竹下総理大臣が七つの懸念、八つの懸念というようなことで、いろいろな懸念というものを、国民の側に立っての懸念についていろいろと今までつじ立ちもし御解説をされてきたわけでございますし、この国会の場でも、今、先生がおっしゃったような問題についてはいろいろの質疑応答がなされた後でございます。  この税制の不公平を直すためには、特に野党の皆さん方からもクロヨンはどうした、トーゴーサンはどうした、いろんな話がございまして、今回は所得、消費、資産、いろんな面での公平というものも考えてこの税制が提案され、また成立したものだと私は承知いたしておるわけでございますが、先生は、今いろいろ申されましたけれども、デモクラシーという問題とあるいはこの消費全般の大きな舞台の上での話で消費というものを考えていただかなければならぬと思うのでございます。消費税というものだけに消費概念がないとかいろいろおっしゃいますけれども、私は、国民大衆の側に立つと、もっと大きな意味での消費という問題を考えていかなければならないと思うのでございますが、先生の御見解を承りたいと思います。
  13. 富岡幸雄

    富岡公述人 綿貫先生から貴重な御教示にあずかりまして、ありがとうございました。もちろん、消費税を含む税制抜本改革は昨年の暮れに立派に成立しているわけでございまして、今それを国民は法として受けとめながら、それを四月一日から施行するべぐ一生懸命勉強をしている、こういう段階ですね。  私の乏しい経験ですが、きのうの横浜の講演会、その前は山口県にも参りましたし、ほとんど一日置きのように全国を回ってお話を申し上げているわけですが、なかなか難しい、よくわからない。提案された政府の気持ちは相当わかっておられるようですが、わかりにくい。技術的にも困難だ、聞けば聞くほどわからない、こういうことでして、税は公平とか簡素、中立という点もございまして、今度はかなり簡素という点に力点を置きながら、免税点を高くしたり簡易課税を思い切って多くしたりおやりになりましたね。それはそれなりの点で私は御努力に対しては敬意を表するわけですが、かえって納税義務者に対する思いやりがまた新たな混乱をもたらしているのじゃないかということです。そのようなことは、つまり本質的に問題のある税金を構造的、技術的な問題でカバーしよう、そして国民の理解と協力を得ようとなさった努力は大変敬意を表するわけですが、そのことが裏目に出まして、国民に配慮した技術的な措置がかえって混乱をもたらし、大変失礼な言い方ですが、消費者が負担した税金が国に入らないのじゃないかというような議論が行われているということです。  もちろん所得税、直接税だけで全部賄うことができれば理想ですね。私は、日本の国は活力のある国であり、企業の所得も大きく、国民の能力も優秀であり、一生懸命働いて相当な所得を上げてきておるわけですし、幸い先生方の政治の施策もよろしきを得て大変な今好況であり、空前の自然増収も多く出ておるわけですね。そのようなときに余りお急ぎになられてそのような税金を導入されることがどうなのか。新税について賛成はしないのだという気持ちはわかりますが、まあまあ我慢できるという程度税金にしていただいて、それからじっくりおやりになっていただいた方が、かえってそのようなものが受け入れやすくなるのじゃないか。抵抗はもちろんありますが、抵抗の度合いが少なくなっていくのじゃないかというような気がするのでございます。  大変恐縮でございますが、手元に、ある新聞、二十三日の新聞がございますが、税制改正については理解を示したわけだが、消費税導入を柱とする今回の税制改革について賛成は四%、どちらかといえば賛成が一二%、合わせて賛成は一七%にとどまっているのですね。どちらかといえば反対が三四%、それから反対を合わせると実に七一%の国民が、ある新聞の世論調査ではございますが、圧倒的に消費税に対して疑念を持っているわけです。まさに、デモクラシーというのはこのような庶民の声を国政に反映していただくことが最もよろしいデモクラシーではないか、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。  実は、先ほど、おまえの講義を聞いた学生はかわいそうだというようなお言葉をいただいたように私の耳には伝わりましたが、たまたま中央大学の私の講義を聞いている学生、三年生に税務会計学の講義をしているのです。急いで答案を採点したのですが、こんな答案がありました。消費税についてどう思うかという問題なのですが、最後のところだけ読み上げます。これは学生の答案、生です。コピーをとってきました。  消費税に対する私の意見 四月一日から消費税が実施される。竹下首相は税率を三%に抑えると公約しているが、二、三年後には財政需要を理由に引き上げられるに違いない。物価は上昇し、インフレとなり、国民の購買力は下がり、消費は停滞し、日本経済は活力を失なう。不公平税制に対して、解決の努力もしない自民党という政党が与党であるという事実は、我々、消費者でもある国民が、 学生言葉ですよ。  彼等を選んだのである。代表たる多数決の彼等が消費税を実施させてしまったのは、我々国民の責任である。我々が、少しでも人を見る目を持ち、税金というものに対して、もっと関心を持ち、研究していたなら消費税は導入されなかつたのかもしれない。消費税とは日本のデモクラシーが健全に機能していない証であろう。 おしかりをいただきましたが、こんなような、若い、将来二十一世紀を担うまじめな学生の声もあるわけですね。これらをひとつ受けとめていただいて、ぜひよい政治をしていただくことをお願い申し上げて、お答えにしたいと思っております。
  14. 綿貫民輔

    ○綿貫委員 ただいま学生の論文までもお読みになりましたが、竹下総理は、この税制をやれば必ず、やってよかったなと言われるということを、一国の総理がここで言明しておるわけです。今、生活体験も未熟な学生の論文を読んでこれを批判されたり、あるいはまだ実施もしないものについて、税率を上げないと言っておるのに、上がるだろう、上がった場合はこうなるだろうという、そういう想定をしてこの税制に反対をするというような意見は、まさにデモクラシーに逆行する意見だと私は思います。このことは私は強く公述人にも申し上げて、そのような教育がなされる日本の国に対して大変大きな危惧を持つものでございます。  最後に荏開津公述人に一言申し上げます。  先ほど経済的観点から、日本の農政というのは本当は成り立たないんだ、しかし生産者のみを擁護するというのではなしに、日本の農村とかそれらのものも含めて、これは国としてやるべきものだというような御意見のように私は受け取ったわけでございます。  今、食管制度というものについてもいろいろの検討が加えられておりますし、また構造政策につきましても、先ほどの公共関係が五〇%を超す、しかしそれは中身としてはどうかなという意見もございましたが、私は日本の農政の中で、例えば私どものところでとれるコシヒカリは、もっと高くても欲しいと言ってもないのですね。いろいろ質の農業というものがこれから考えられるのではないか。農民の知恵、創意工夫、競争原理、こういうものも入れながら、日本の農業というものは、私は、もっと考えればもっと新しい展望が開けるのではないかと思いますので、先ほどの先生の御意見は何か非常に悲観的な御意見でございますが、これについてはいかがお考えでしょうか、お聞かせいただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  15. 荏開津典生

    荏開津公述人 簡単にお答えいたします。  悲観的というわけではございませんけれども、裸で日本の農業が、例えば日本の米がアメリカの米なりあるいはタイの米なりと競争するということは、私は、甚だ難しいというのは現実であって、これは余り愉快な現実ではございませんけれども、否定できない現実である、こう思います。  私は、去年は四カ月バンコクで暮らしまして、その間、タイの米を毎日家内が炊いて食っておりましたけれども、末端価格で大体十キロ五百円ですね。五百円で、朝私は茶漬けにして食っておりましたが、十分うまい米です。日本のかなりうまい米と比べてもまずくないと私は思います。それで、これは十キロ五百円ですが、日本の米は、私が今東京で食っている米は恐らくコシヒカリを食っておりますが、大体五千円するわけですね。これを三千円にするというようなことは、私は、それは可能でありやっていただかなければならぬと思いますが、では五百円にできるか。あるいは牛乳は今、日本で大体百円する、こういたしまして、ニュージーランドは二十円。こういうものに対抗できるかといいますと、それはできない。ということは、余り愉快ではございませんけれども、日本の自然条件あるいは歴史的なものも含めました非常に零細な土地所有の条件という、単に自然のみならず歴史的、社会的なものまで含めた日本農業の置かれた条件というものの中で、裸で競争することはできないというのが私の意見でございます。  ただ、現在よりも効率的なものにする余地は相当残っている。例えば今お話しになりました食管法等は、もう既に五十年を経過した古い法律であって、相当大幅な改正の余地があるというのが私の意見でございます。  以上でございます。
  16. 綿貫民輔

    ○綿貫委員 ありがとうございました。  では、終わります。
  17. 田名部匡省

    田名部委員長代理 次に、辻一彦君。
  18. 辻一彦

    ○辻(一)委員 まず消費税、それから農業問題、年金という順序でお尋ねしたいと思います。  富岡公述人のおっしゃった点、大筋としては私も共鳴するところが多いと思うのですが、なお二、三意見を伺いたいと思います。  先ほどもお話がありましたが、消費税がああいう強行採決という形で決められて四月一日から導入ということになっておりますが、現場では、実態を聞けば聞くほどなかなか難しいというか、いろんな混乱が起きておると思います。そういう中で、まず今回の消費税は、その仕組みがいわゆる抜け穴や矛盾が非常に多いと思うのですが、第一点として、なぜそういうふうになってしまったのか、そういう欠陥的な税制ができ上がった理由やその背景というのをどういうように考えるか、これが第一。  第二は、ほかの国に比べて事業者免税点や簡易課税制度等がかなり高いのでありますが、それはそれとして、それでも中小企業の方にそういう恩恵が及ぶならまだいいと思うのですが、なかなかそちらの方に、中小企業の方に恩恵が回ってこないというような懸念もあるので、それらの点をどうお考えになるのか。  第三には、将来の税率の引き上げの問題です。私も去年の九月にIPUの会議に出て、イギリス、フランス、イタリー各国の皆さんと時間を見ていろいろ懇談をしたのですが、初めフランス、イタリーも三%で導入しているが、今一八・六、一八%、イギリスは八%で導入したが一五%というように、いずれもほとんどの国が二けたにどうも引き上げておる。ほかの国のことは余り詳しく存じてはおりませんが、各国のそういう状況等を比べながら、将来税率引き上げのおそれについて所見をひとつ伺いたい。  幾つかありますので、まずそれでひとつお尋ねしたいと思います。
  19. 富岡幸雄

    富岡公述人 辻先生の御質問にお答え申し上げたいと思います。  まず、これは一昨年、中曽根内閣のときに売上税という税金が提案されまして、国民のいろんな批判が高まり、これが廃案になった、こういう経緯がございまして、政府はそれらの反省にお立ちになりながら、新しく名前も変えて仕組みも変えて消費税内容は実質的に大型間接税ですが、これを導入、提案されたわけです。ところが、中曽根さんの売上税のときに反対したのは、消費者にかかる税金なんですが、消費者も反対したが、それ以上に納税義務者、税金の代理徴収入である事業者が大変エネルギッシュに反対された、異議を述べられたというふうに私は理解しております。  そこで、竹下内閣になられましてからは、事業者が余り反対しないような仕組みをつくる、これが先ほど来問題になっておりますいろんな中小企業への配慮です。温かい政治の思いやりではありますが、免税点が三千万とか限界控除が六千万とか簡易課税が五億円とかいうふうに、世界各国でこのような税金をやっておる幾つかの国がありますが、そこでは全く考えられないようなけた外れの大きな特例をつくったわけですね。  業者の数で見ますと、むしろそういう特例の適用を受ける業者の数の方が多いわけですね。事業者免税点三千万、課税売り上げ三千万以下は、実に納税者数の六八・二%に及びます。一方、簡易課税は実に、これは政府の数字ですが、九六・七%の者がこの適用ですね。もちろん日本は中小企業の数が多うございます。それらが実際に扱っている経済量はこの比率とは違いますが、実際納税義務者の圧倒的多数の数の者がむしろ制度的には例外として位置づけられているような仕組みに乗っかっていく。そこにまたいろんな、消費者が納めた税金が国に入らない。それは、簡易課税の場合ですとみなしマージン率、みなし付加価値率が、一般の場合は二〇%、卸売業の場合には一〇%ですね。実際の付加価値率がそれよりか高い場合には消費者からいただいた税金を国に納めなくて済むという、私はこれを益税と言っています。税金のもうけ、益税。節税という言葉を私は三十年前に提案した男ですが、節税というのは、自分が納める所得税法人税を勉強して節約することが節税で、これは普及しましたが、今度は他人が納めた税金を事業者がちょうだいする、雑収入になる、国庫補助金になる。怒らすような言葉を使いますと、他人の納めた税金を横領するというような、益税ということができるわけですね。しかも、それが圧倒的に多くの業者にあり、それが混乱をもたらしている。  問題は、そのような中小企業者が、益税によって実際は消費税負担が三%以下なんです。消費税の税率を三%と言っているのは違うんです。消費税にも実効税率がございます。実効税率というのがございまして、実際の実効税率は三%ではないのです。  ちょっと資料を書いて持ってきていますが、委員長、これを掲示してよろしゅうございますか。紙に書いたものをちょっと見せたいと思います。よろしゅうございますか。——ありがとうございます。  つまり、消費税の税率は法律では三%ですが、課税の特例制度がたくさんございまして、実際の消費税率は三%ではないんです。これは企業の課税形態別、付加価値率別に違うんですね。課税形態がありますね。五億円超の正規の課税業者、これは確かに三%です。ところが、五億円以下、六千万までの簡易課税業者は限界控除によって低い税率を適用になるわけです。三千万以下の免税業者は課税されません。しかし、仕入れに含まれておるコストアップ部分を転嫁しなければできないわけですね。その場合、仕入れの割合が九〇%、八〇%、七〇%、一〇までつくりました。仮に免税業者、三千万以下の人が仕入れ率が一〇%の場合は、転嫁すべき税率は三%ではございません。〇・三なんです。十分の一なんです。このように消費税の実効税率があるわけです、卸売業者の実効税率。税金は、法律に書かれた税率と実際に行われている税率とは違うんです。これはもう常識です。消費税にも実効税率は三%ではないという業者が圧倒的にたくさんある。これが今トラブルの原因なんです。ですから、下の人たちは一・六とか一・七、〇・九で済むわけです。その場合、三%、三%といって政府の御指導のように三%ずつ転嫁したらどうなりますか。政府指導の便乗値上げです。経済に混乱をもたらします。  問題は、その中小企業や零細企業が受ける益税を、大変失礼な言い方で怒られますが、親会社、元請会社が下請発注価格を出すときに、おまえのところは益税でもうかるんだから三%じゃないな、計算して一・六だな、一・六でいいぞと言って三%の転嫁を抑えるわけです。これが盛んに今行われて、公取でも下請いじめをやめなさいという御注意が出たということが報道されていますね。このようなことが消費税の実態なんです。しかも、三%は払わない、一・六払い、一・七払いながら、今度の制度ですと仕入れ控除といって、仕入れは帳簿方式ですから、帳簿に記載された仕入れ額の三%が引けるんですね。払ってない税金を引けるんです。ですから、今回の予算書を見ましても何か見積もりが非常に抑えられて、最初言われた五兆四千億から三兆六千億くらいに数字が抑えられている。これらの中身についてしっかり審議していただいて、どのくらい消費者が納めた税金がどこかへ行ってしまうのかということが大変問題なんです。  辻先生の御質問の本文の方に戻しますが、結局そのようなことを、つまり……
  20. 田名部匡省

    田名部委員長代理 もう資料はよろしいですか、公述人。
  21. 富岡幸雄

    富岡公述人 はい。ありがとうございます。  例えば、事業者免税点は三千万ですね。フランスではフォルフェと称する協定課税制度対象者は年間の税額が実に一千三百五十フラン、私が換算しますと約二万八千七百円です。納税額二万八千七百円の業者だけが免税業者なんですね。西ドイツでは年商売上高が前暦年度において二万マルク、邦貨換算で百四十万八千六百円です。イギリスでは年商売上高が二万五百ポンド、約四百六十一万七千円以下の者が免税業者なんです。日本は三千万。とてもけた外れの、世界にまれなるユニークな税制をあなた方はつくられたわけです。簡易課税においても、年商売上高が五億円以下の業者が選択できるわけですが、フランスでは年商売上高が、物品販売、宿泊業では五十万フラン、約一千三十万五千円ですよ。その他の事業者では十五万フラン、約三百九万千五百円以下の者に限られているのです。西ドイツでは年商売上高が十万マルク、約七百四万三千円以下の者。イタリアでは七億八千万リラ、約七十六万二千四百円。これが世界の消費税のような税を導入している主な国の状況です。このようなことを踏まえて、やはりやるにしても制度をもう少し妥当なものにしていただく、こういうことがなければ混乱をもたらしていくんじゃないかということです。  それから、先生の御質問で、とりあえず三%で竹下さんは私がやっている間は上げませんとおっしゃった。国民は竹下さんがいつまでも総理大臣でいらっしゃることを願っています。五十年も百年も上げてほしくないからです。ところが実際はそうでないと思います。世界の形勢は、先ほど先生も触れられましたように、フランスは現在標準税率が一八・六です。西ドイツは一四、オランダが二〇、ルクセンブルクが一二、ベルギーが一九、アイルランドに至っては標準税率二五です。イタリアが一八、イギリスが一五、スペインが一二、ポルトガルが一六、ギリシャは一八、スウェーデンに至っては実に二三・四六%。これが付加価値税を導入している国が現在到達している状況ですね。  この点、我が国においてもそのおそれなしとしません。これは私自身の意見を述べるよりか、政府の数字によります。政府は、昨年、社会保障と行財政改革二つのビジョンの中期、長期展望を公表されましたね。これによりますと、いろいろな年金問題とか高齢化社会の問題があるのです。先ほどお話がございましたが、まさに深刻な問題です。現在、六十三年度国民所得に対する税負担社会保険料負担は三六・六%、国民負担は三六・六%なんですが、政府の数字によると、二〇〇〇年には四一・六%、二〇一〇年には四六・四%というふうになっておるのです。仮にこれを抑えて四四にしても、付加価値から逆算しますと、時間がありませんから結論を言いますと、さらに一三%消費税を増加しなければなりません。もちろん経済の基盤が拡大しますから、付加価値が上がっていきますからそれほどいかなくても、絶対に一〇%は超えるのです。  国民はこの際、三%で済むんじゃないんだ、この税金はやがて五%になり七%になり、そして一〇%になり、時と場合によっては一五になるということを踏まえた上でしっかりこれに対応していただきたいということです。国会もそれに対してしっかりこたえてほしい。  以上がお答えであります。ありがとうございました。
  22. 辻一彦

    ○辻(一)委員 諸外国の状況はよくわかりました。  それで、私の質問時間が五十分までなので、あと五、六分ぐらいで御答弁をお願いしたいのですが、第二は、価格転嫁の問題が非常に大きな問題になっております。言うまでもなく公共料金上乗せで非常な混乱が起きておりますが、これについてどう考えられるか。  それから、私のちょっと知人で東京で中小企業をやっている方と汽車で一緒になりました。そのときに、ペンキ、内装品をやっておるのですが、大手からこれを卸して受ける、そのときに転嫁されてくる。それを中小企業の小さいところへ渡すときには転嫁はできると思う、しかし今度は公団であるとか政府機関の大きなところへ納めるときには、これはなかなか公団等になると、大きいところへ納めると力関係で転嫁ができない、こういう実態があるというのです。いわゆる力によって転嫁の問題がいろいろ変わっていくような矛盾もあると思うのですが、これらの点はどうお考えになるか。  それから第二は、一万円ほど低所得層に特別な手当がいろいろ出される予定になっておりますが、しかしそれではとても、低所得層は消費税によって受ける打撃の方が大きいと思うのですが、これについてどうお考えか。  もう一点は、それを伺って時間があればお伺いいたします。
  23. 富岡幸雄

    富岡公述人 お答えいたします。  広範な問題をちょうだいして、時間が限られておりまして十分お答えできないのが残念でありますが、まず転嫁問題。  消費税というのは取引の川上から川下に下がって転々流通するんだ、事業者が負担する税金でない、こうおっしゃいますが、現にお役所の一部である地方団体において、住宅とか水道料とかそういうものについて企業努力によってコストダウンをしたというような御説明のもとで、この際、四月からは転嫁を見合わせるというような議論が行われているわけですね。私はそれは大変いいことだと思います。つまり、地方公共団体がいろいろ企業努力をなさって経営的に吸収できる自治体の公共料金は据え置いていくことは国民が期待しているのです。消費税の転嫁をするために四%下げて消費税三%を転嫁するというようなやり方は納得できません。実質的に下がるなら消費税と関係なく下げていただきたいのです。これが国民の声じゃないですか。物価の安定の問題について地方公共団体が率先してやる、政府はそれを指導していくべきである、こう思います。しかし、公共料金をめぐる混乱は、消費税の転嫁が政府やお役所が言っていらっしゃるようなぐあいにスムーズにいかないんだ、こういう一つのあらわれであり、この税金の持つ本質的な欠陥の露呈であるというように反省していただきたい、こういうことを私は述べてお答えにいたしたいと思っています。  それから、福祉家庭について若干の特別な配慮をなさる。私は、温かい思いやりでありまして、竹下総理がやられた努力に対して敬意を表します。でも一回限りじゃなくして、これを毎年毎年、できれば毎月毎月、消費税負担の度合いに応じてこれをやっていただくことをお願いしていただかなければ、せっかく国がやろうとしたことが消費税を導入する時点だけの話だというようにとられますと政治不信も高まりますから、この際十分にお気をつけいただくようにお願いしておきます。  それからもう一つ、時間がありませんが、大蔵省が、税制改革によってどうなるんだ、年収三百万から全部減税になるというデータがございます。これも資料を持ってきておりますが、もう時間がないからやめますが、この計算に問題があります。つまり、これは所得のうち消費に向ける消費性向、消費支出の割合が抑制されているのじゃないか。また、消費支出のうち課税割合と非課税割合の見方が、物品税の廃止とも絡んで、大変恐縮ですが問題がある。三百万円以下、つまり二十五万円以下の人は、大蔵省は一万五千円の減税であると言っていますが、私の計算ですと二万四千円の増税です。四百万の人で一万六千円の増税です。数字がここにございますが、必要ならば掲示をさせていただきます。  それで、問題は三百万以上しか出ていないのですね。つまり月十五万の人、つまり福祉家庭とか老齢者とか年金生活者、こういう人たちは所得税の減税の恩恵に浴さないわけです。そういう人は消費税のふえた分だけふえるのですね。私の計算ですと、十五万の人は消費税が三千六百四十円かかりまして、一年間四万三千円の増税です。もしも一五%消費税になったときは実に二十一万八千四百円の負担でございまして、一カ月間の収入の一・四倍が消費税で消えていくのです。それに対してもしおやりになるならば、最後まで福祉、歳出面における配慮、これを絶対に忘れてほしくない。  しかし、国民から税金を取って、その税金をまたばらまく、そうすると税金を取るために税務官吏の給料もかかります。また支出するためにお役所の方の給料もかかります。取って配る、その間には蒸発する部分があります。ロスですね。行政改革に逆行しますね。ですから、そういう方からは税金をお取りにならないように。弱い人たちから消費税のような税金をお取りにならないように。生活必需品や基礎的なものについては免税にするとか非課税ですね。——非課税でもだめです、仕入れにかかっていますから。あるいはサッチャーさんがやっているようなゼロ税率にして、食料品等は還付すれば完全に免税になりますね。 食料品とか薬とか学校の授業料とか、そういうものはゼロ税率。ゼロ税率でやっている国はイギリスその他たくさんあります。そういうものを参考にしていただいて、本当に思いやりのある、福祉国家にふさわしいような税制にしていただきたいというのが意見です。  もう時間がないと思います。最後は、辻先生が、おまえはそう勝手なことを言っているけれどもどうするんだ。結論は、大変恐縮でおしかりいただきますが、せっかくできた法律でございますが、これをぜひしばらく凍結していただいて、そして頭を冷やして、私がこれから述べる不公平税制の是正を徹底してやる。それによって財源を得るとともに、国民の税に対する不信感を払拭し、政治に対する信頼を獲得して、それから必要に応じて、必要ならば大型間接税をよりよいものにして検討していただくことを切にお願い申し上げて、終わります。
  24. 辻一彦

    ○辻(一)委員 非常に時間が限られて恐縮ですが、農業問題でお尋ねしたいのです。  日本の穀物自給率のベースがここ数年三二%から今三〇%に低下しております。そういう点でサミット参加の国では最低の自給率になっておるのですね。そういう点で、こういう状況を食糧安全保障論というような立場からどうお考えになるかということ。  それから、このままでいくと、公述人も——はい。ちょっとほかの方がにぎやかなので……。  食糧自給率がここ数年三二%台だったのですが、最近の発表によると穀物自給率で三〇%。これはサミット参加の国では全く最低。イタリアの八九%が最低ですね。あとは西ドイツの九五、あとは全部一〇〇以上ですから。それを国家の食糧安全保障という観点から、こういう食糧自給率の低下をどうお考えになるか。  それから、公述人もおっしゃったように、このままでいくと米は輸入枠設定に追い込まれて、牛肉・オレンジのようなわだちを踏む懸念があると思うのですが、これは絶対私は自由化、市場開放は許してはならないと思うのですが、その点についてどうお考えになるか、二点をちょっとお尋ねしたいのです。
  25. 荏開津典生

    荏開津公述人 第一の点でございますが、日本の食糧の自給率、特に穀物の自給率というのは甚だ低い、大人口を擁します先進国の中では最も低いということはおっしゃるとおりでございます。ただ私は、これを高めるのは非常に難しいというふうに思っております。一億二千万の人間がおりまして、農地は五百万町歩ぐらいしかないわけでございますから、これを高めるというのは非常に難しい。ただ何とか下げないように維持するのがぎりぎりではないか、こういうふうに思っております。  国家の安全保障上も相当の問題があるのではないか。私は安全保障問題の専門家ではございませんので十分にはわかりませんが、問題があるのであろうと思います。そういう意味で軍備にも、まあ軍備と言ってはよくないのかもしれませんが、防衛にも相当のお金を使っておられるわけですから、農業に関しても国防という観点から、ディフエンスという観点から考えてもお使いいただいてもいいのではないか、こういうふうに私は考えております。  それからもう一点、米の市場開放については、私は先ほど申しましたが、反対でございます。この理由はなかなか面倒で短い時間に申し上げ切れませんけれども、反対でございます。ただ、牛肉・かんきつについても国会でも反対という御意見であったと思いますが、国際関係を考慮する上から開放せざるを得ないことになったわけでございますので、米についてもあるいはそういうことに近い将来なる可能性はあると私は思います。そういう場合に国際的な説得力を持つ政策というのは、日本は国内に米を維持する必要があるということであれば、不足払いその他の形で日本予算を使うのである、使って維持するのだ、国境でただ入れないというだけではなくて、お金を使って、財政を使って維持する、そういうことが一つの説得力になる、こういうふうに私は考えております。私は入れないという意見でございますけれども、しかしなかなかそれは通しにくいのではないか、こういうふうな見通しも持っております。  以上でございます。
  26. 辻一彦

    ○辻(一)委員 先ほどもその点は伺ったわけですが、今我が国の食糧安全保障論は、一億二千万の人口をこの狭い島国に抱えているというか、こういうところで最低の食糧を自給しなくてはならない。だから先生のおっしゃるように、やはりこれ以上下げないということがまず第一として大事なんですね。昨年ここでも総理は、三分の一の自給率は守らなければならぬ、こういう発言だったのですが、それが現実にどんどん下がっていこうとしている。米の市場開放をすればこの自給率がさらに下がる。米を完全自給しているからまだ三〇%確保できるのであって、これを市場開放すれば、これはもう我が国の自給率は二〇%台に転落してしまう。かつてイギリスが民族の活力を失ったような時代になりかねないという懸念を私は持つのですね。そういう中で、今言われるように私もこれ以上下げさせない、そのためには米の市場開放は認められない、こういう考えを持っております。  もう一つは、今アメリカは、レーガン大統領も昨年の暮れに前総理、現総理に親書を送っておりますが、彼らも食糧安保論を論議しようと言っておるのです。だけれどもこれは、去年の九月に私はガットの本部へ行って一日この論議をしたのですが、そこでも言っているのは、穀物のできるところで生産をして備蓄をしておいて、そしてそれを要るときに必要な量を持っていけばいいじゃないか、運べばいい、だから自由貿易こそが食糧安全保障論の基礎である、こういう考えをガットやあるいはアメリカの方は持っておるのですね。食糧安保論といっても全く日本考え方が違う。これをやはり反撃していかなければならぬと思うのですが、この点についてどうお考えになっているか、ちょっと伺いたいのです。
  27. 荏開津典生

    荏開津公述人 この点につきましては国際的な、特にガットやOECDの場でどういうロジックを使って反論するかということは非常に難しいわけでございますが、私はこういう考え方一つ発表しております。  それは、今ガットを中心にして農業の保護率という概念を用いまして、保護率を切り下げていく、アメリカはエリミネーションという言葉を使ってゼロにする、こう言ったわけですが、切り下げるんだ、そういう議論が行われております。保護率というのは端的に言えば内外の価格差でございますけれども、内外の価格差という単一の指標を使って農業政策を論じることは無謀である。農業政策というような非常に複雑なことを論じるのにただ一つの尺度、保護率という、端的に言えば内外価格差といっただ一つの尺度でそういう政策を論じるのは無理がある。多元的な尺度を用いなければだめだ。少なくとも保護率と自給率という二つの尺度を用いて、それで各国の農業政策の評価をすべきである、私はこういう主張をしておりますが、この二つ概念を使いまして、攻撃的な保護率と防御的な保護率という考え方を私は出しておりますけれども、そういうものも一つの国際的な説得の手段になり得るのではないかと私は思っております。  アメリカは穀物の自給、食糧の自給というようなことについては日本とは非常に違った国でありますので、なかなか理解されがたいとは思いますけれども、ヨーロッパの国についてはかなり理解される点があると私は思っております。  以上でございます。
  28. 辻一彦

    ○辻(一)委員 時間が来て、もうこれで終わりますが、年金問題でお尋ねしたがったのです。大変時間の制約で申しわけないと思うのですが、六十五歳まで年金給与の引き上げは、六十五歳までの雇用の安定確保を図らなければ、それを待たずしてやるということは非常に無理がある、この点についてお伺いしたがったのですが、時間の点で無理なようでありますので、また終わった後からでもちょっと聞かしていただくようにお願いしたいと思います。  では、終わります。
  29. 田名部匡省

    田名部委員長代理 次に、冬柴鉄三君。
  30. 冬柴鐵三

    冬柴委員 公明党の冬柴鉄三でございます。三先生におかれましては貴重な意見をいただきまして、ありがとうございます。厚く御礼申し上げます。  私、十五分間時間をちょうだいいたしておりますので三先生にそれぞれ一問ずつお尋ねしたいと思いますので、よろしく御協力のほどをお願いいたしたいと思います。  まず、年金専門家であられます橋本先生にお伺いいたしますが、このたびの消費税導入というものが年金制度及び年金生活者に対してどのような影響を及ぼすと考えていらっしゃるか、そしてこれに対する対策というものが、そのようないろいろな懸念、危惧というものに対して十分こたえられているというふうに解していちつしゃるのかどうか、その点をお尋ねしたいと思います。  なお、先生からお話の中で、在宅福祉の量的な拡大を歓迎するというお言葉をちょうだいいたしました。これは公明党といたしましても、かねてから寝たきり老人の福祉対策というものが重要であるということを申してきたわけでございまして、例えば今回のホームヘルパーを倍増する、二万七千人を五万人ぐらいに三年間で倍増する、それからデイサービス六百三十カ所を二千五百カ所まで量的拡大をする、それからショートステイベッドにつきましても二千五百床を一万床に持っていく、これをわずか三年でやるというわけですから、我々としてもその点については、消費税の導入ということは大変問題でありますけれども、こういうものがそういう弱者というものに対する施策の一つの観点ではあろうと思います。そのような意味から先生の端的な御意見、今年度予算年金生活者に対してのそのような問題についてこたえているかどうか、この点についてまずお伺いをいたしたいと思います。
  31. 橋本司郎

    橋本公述人 お答えいたします。  私はそういう面の専門家ではございませんので、私お答えするのは不適当だと思います。  それから弱者対策のお話ございましたが、公明党が大変力をお入れになって、それが今度の予算のインパクトにもなっているということも十分承知しております。これは国民全般のためですので、力を合わせて努力してまいりたいというふうに考えております。
  32. 冬柴鐵三

    冬柴委員 それでは荏開津先生にお伺いいたします。  農業改革等につきまして先生の論文も拝見をさせていただきましたが、先生が我が国の農業政策の現状につきまして、特に農産物価格ないしは農業所得支持のための財政支出とかあるいは生産割り当て政策というものを妥当なものとして是認していられるというふうに承知しているわけでございますけれども、先生も詳しくお述べいただきましたように、これをグローバル、マクロ的に見て、今後の我が国の農業構造の調整というものに対する端的な御意見と、そしてそのような切り口から見た今年度予算がそういうものにこたえている、そういう方向に踏み出したと評価されるのかどうか、その点についてお尋ねしたいと思います。
  33. 荏開津典生

    荏開津公述人 お読みいただいたものがどの論文であるかわかりませんが、私は、現在の日本の国内の農産物価格政策あるいは転作政策がそのままで結構であるという意見ではございません。  農業政策に対する私の基本的な考え方を一言で申しますと、ちょっと今では遅くなった感がありますけれども、国内では、国境のところでの保護措置は別としまして、国内でできる限り自由化できないか。特に食管制度等は、最初にも申し上げましたが、やはり相当古くなった法律でございますので、思い切った自由化ができないであろうか、こういう基本的な考え方でございます。  ただ、国境のところで自由にするということになりますと、先ほどから繰り返しておりますように、日本農業が外国の農産物に太刀打ちしていくことは甚だ難しいと思いますので、それは残さなければならないけれども、国内ではもっと相当大胆な食管制度あるいは農地法等についての改革をしてもいい時期である、ちょっと遅いくらいである、こういう意見でございます。  それから、長期的な観点から今年の予算を批評せよということでございますが、食管の赤字等が減ったのはそれなりに結構であると思いますが、制度の根本的な改革なくして予算だけ減らしていくことには相当問題がある、私はこういう意見でございます。食管制度に関する予算を減らしていく、あるいは転作にかける金を減らすということであれば、制度の根本的な改革が必要である。その方向については、ちょっと時間もございませんので省略いたします。  以上でございます。
  34. 冬柴鐵三

    冬柴委員 ありがとうございました。では、最後に富岡先生に税の問題についてお伺いします。  私は、今回の消費税、いろいろな問題があると思うのですが、法律的な側面でも非常に重要な問題をはらんでいるように思われるわけでございます。  それは、御存じのように、憲法二十五条では「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」このように生存権を保障されているわけでございますけれども、この内容を立て分けますと、一つは、そのような最低限の生活を営む能力に欠ける人、そういう人たちに対して国家は積極的に作為をもってこちらから働きかけて保護をしていく、保障していく、こういうことを要請しているわけでございますし、反面、最低限度の生活を営むに足る所得のない人からは少なくとも税を徴収してはいけないという不作為義務を課している、このように考えるわけでございます。  そうしますと、非常に今回の消費税は無差別に、消費者の資力ということに関係なくだれにでも課税される、このような性格があるわけでございまして、この憲法二十五条とバッティングしてしまいます。では消費税は絶対導入できないかといったら、それはそういうふうにはすぐにはいかないわけでございまして、これを導入するためには、そういうような弱者対策というものが要請されるわけで、その弱者対策ができないと二十五条にバッティングする問題が起こってくる。いわゆる違憲訴訟というものが将来起こる可能性があるのではないか、このようにも思うわけでございます。  そのような観点からアメリカのレーガン大統領が税制改革を試みまして、財務省報告の中に詳細にその対策が述べられているようでございます。それは三つの方法を挙げていろいろ検討しているわけですが、一つは、社会保障の保障費等の完全物価スライド制というものがもう絶対必要だ、そういうような観点。それから二番目には、富岡先生もおっしゃいましたけれども、生活必需品の非課税措置というものが必要である。それから三番目には、弱者に対する独特の還付制度というものを創設していかなければいけない。こういうようなことを検討したことが明らかになっているわけでございまして、アメリカではこれは最終的には導入されないことになったのは周知の事実でございますけれども、そのような真剣な討議がされたという足跡が残っているわけでございます。また、ドイツでもこういうものは違憲ではないかという論議があって、憲法的な措置もされているようでございます。  そのような観点から、富岡先生のいわゆる弱者対策と今回の消費税についてのお考え、先ほどもるるお述べいただきましたけれども、その観点からお願いしたいと思います。
  35. 富岡幸雄

    富岡公述人 冬柴先生から貴重な御質問、御質問というかむしろ御助言を賜りまして、ありがとうございました。  今回は、広く、薄く、原則例外なし、そのかわり率は三%という極めて特色のあるやり方をされたわけですから、基礎的な食料品を初め医薬品からあらゆるものにかかりますね。この点、一昨年の中曽根内閣の売上税のときは、飲食料品や一定の飼料、えさですね、販売手数料、立竹木・住宅の譲渡、住宅の新築・増築の請負、建築物の貸し一付け、そして医薬品、出産、身障者の特定の物品、それから運賃ですね、電車賃、宅急便、検定済み教科書、新聞等々、かなりきめ細かい配慮がございましたね。その決め方をめぐって少し混乱したというふうに言われておりますが、私はその努力は非常にすばらしいと思います。そうすることによって、先生おっしゃるようにやはり税の基本原理というのは応能負担原理でございます。負担能力に応じて課税する。つまりそれは間接税にもあるわけです。直接税だけが応能負担原理の独壇場じゃないのですね。間接税においても応能負担原理があるわけです。  フランスが標準税率一八・六に対してぜいたく品は割り増し税率三三カ三分の一%、さらにいろんなもの、例えば新聞とか雑誌、書籍、医薬品、飼料、農業用製品、野菜、宿泊サービス、演劇、交通は軽減税率七%ですね。さらに、水とか食料品とかワイン、コーヒー、紅茶、ケーキ、お魚、農畜産物はさらに一段と低い特別軽減税率ですね。これが付加価値税の母国であるフランスの実態なんです。フランス人はこのことを誇りにしております。フランスでは哲学として、消費の態様に応じて税率を決めるんだ、社会政策的な配慮を加えることに重点を置いているんだ。ただ、執行面での調和もございますがね。したがって、決してフランスの付加価値税は今日本で言われているように逆進的ではない、場合によったら累進的であり、少なくも比例税率であると彼らは誇っておりますね。これはもって他山の石とすべきです。  もちろん消費税そのものがなくなることが一番理想なんですが、どうしても将来これがいろいろな意味においてやらざるを得ないというときは、そのような、努力はしても健康でないとか、あるいは一生懸命働いてお年を召して老後の生活をされているとか、あるいは母子家庭の方々とか、そういう政治が手を伸ばすべき日の当たらないところの人々に対して思いやりのある政治をしていただくことが大事ですが、福祉年金その他もふやしていただくことはありがたいのですが、年金の話を聞きましても大変なようです。そういうところはお取りにならない方がよろしいですね。したがってもう一度、基礎的な食料品とかより生活に密着したものについてはできれば課税をしない。できればイギリス式ならゼロ税率で還付をして完全免税にする。多くの国が現にやっております。例外ではありません。そのような配慮をしていくことをお願いいたしたい。先生から貴重な御示唆をいただきながら、私も一段とそのようなことであるべきだというふうに考える信念を深めて、ありがたいと思っております。ありがとうございました。
  36. 冬柴鐵三

    冬柴委員 貴重な意見を三先生にいただきました。我が党ももう一度、一年間凍結の上じっくりと考え国民の期待するところにこたえていきたい、このような信念でおるわけでございますけれども、本日はどうもありがとうございました。
  37. 田名部匡省

  38. 林保夫

    ○林(保)委員 公述人の御三方には本日、御苦労さまでございます。  民社党・民主連合の林保夫でございますが、御三方に、制約された時間の中でございますので余り議論することなく、ひとつ実地に体験を踏まえて、私どものところへ寄せられている意見をひとつ先生方にいかがでございましょうかと、こういうことで承らせていただきたい、このように考えておりますのでよろしくお願い申し上げたいと思います。  まず橋本先生には、先ほど来るる御説明がございまして、非常に勉強させてもいただきましたけれども、二点ひとつお伺いしたいと思います。  その一点は、社会保険が世界的レベルに達しておると。その実態と、それから世界的レベルに達しているんだったら二十一世紀に向けてもう下げたらいいのかという問題がございますので、みんなが老齢化してなお元気である、また富がふえてくる、そうすると今の社会保険年金制度ですね、世界的レベルに達しているんだったら上げるよりもむしろ下げる方向に行くのかどうか。私どもの立場からいきますと、大勢の方がもっともっとやってもらいたいという要望が強うございますが、専門のお立場で、制約はやはり財政上の負担国民負担が要ることでございますので、その一点をひとつお伺いしておきたいということと、それからまた、今度厚生年金の六十五歳の支給年齢の引き上げが出てまいりまして、公民一元化の問題、いろいろと今までも議論された古く新しい問題でございますけれども、これらについて、いわゆる公務員の共済年金そのほかと厚生年金との整合性でございますね。これはもう私ども選挙区ばかりでなくて、どこへ行っても大変大きな問題になっておりますので、先生はそれをどういうふうに解決され、政治的な信頼を取り戻すにも、この辺も非常に大事になっておりますので承りたい。  関連いたしまして、国鉄共済のああいう危機状態を救わなきゃならぬ。そうすると、私どもの立場からいいますと、自助努力をまずやってもらいたい。その上で一体どうなんだ、その余地があるのかどうか、先生の考えをお聞かせいただきたいと思います。  以上でございます。
  39. 橋本司郎

    橋本公述人 お答えいたします。  私、社会保険が世界の最高水準になっていると申しましたのは、例えば医療保険にしましても国民皆保険である、しかも一部負担は一割から三割、極めて低いところでかかります。それからドクターの質、これはいろいろ議論のあるところだと思いますが、医者にかかりやすさ、そしてかかったお医者さんの信頼度というものからいっても日本の医療制度というのはすばらしいものであるというふうに思います。高度の医療もほとんどそれでカバーできる。それから年金制度につきましても、もう厚生年金の平均が既に十二万というところまで来ております。外国でも年金制度の扱いには非常に苦労しております。  それで、上げるのか下げるのかということなんですが、私は、下げないためにはどうするかということに全力を注ぐべきではないか。例えば医療保険で申しますと、これからふえてまいりますのが老人関係の医療費。これは高齢者がふえれば当然ふえていくのは当たり前のことで、避けることはできないわけですから、それをどういう形で合理的に負担していくのかというのをもう一度しっかり追求していかないといけないのではないかというふうに考えております。  それから、年金につきましても、結局は先ほど申しましたように世代間の契約という形にならざるを得ないわけですから、その範囲内でどういうものがつくれるのか、これは非常に冷静に検討する必要がある。ただ、かつてめちゃくちゃにしてしまいました国鉄の共済年金のようなやり方をしますと、これは本当に根っこから崩れてしまうということになりますので、そうではないためにはどうするのかというのが我々が今取り組むべき問題だ。そのうちの一つが今度の六十五歳問題であるというふうに考えております。  それと同時に、官民格差と言われたものはこの前の法律改正で表面上はほとんどなくなるという形になりまして、共済年金には三階建ての部分が上積みされているだけということになります。今は経過措置の進行中なので共済の方がいいところが大分残っておりますが、一応そういう格好ができた。  それからもう一つは、今度の制度間調整法が、まだ法律として提案されておりませんけれども、今審議会等でかかっております。私も審議会に関係しておりますので内容は見せていただきましたけれども、それの基本は、厚生年金レベルの年金社会保障年金としてとらえて、その部分については全国民がすべて、全国の労働者が全部同じ保険料率で賄うという思想であります。そうすると、そのレベルのものについては社会保障として全国均一であるという形が一応でき上がると思いますので、そういう方向に進んでいけば官民の整合性というのもできてくるというふうに思います。ただ、職場の特殊性からそこに何を上積みするかというのは、民間では企業年金もございますし、公務員は公務員なりの特殊性が当然出てくると思いますので、これもまた慎重に考えていかなければならない。  それから、国鉄の自助努力のお話ですけれども、これは今度やられるのはちょっと、非常に荒っぽいことをやりますので、既裁定年金の切り込みということまでやります。実は、私はもっときついことを常日ごろ言っていたのですが、まあこれ以上のことはちょっとというところまで一応やってきている。自助努力といいましても、努力をする人の数が少ないものですからそれほどの余り大きな期待はできない。そのために厚生年金などが、地方共済とか、お金を出し合うという格好になるわけですけれども、これは年金の一元化ということを念頭に置けば、非常に無理な政策ではありまするけれども、マイナス掛けるマイナスがプラスになるというふうな意味で、年金一元化の方向の中で理解していくべきではないかな、そういうふうに考えております。
  40. 林保夫

    ○林(保)委員 ありがとうございました。  富岡先生に、続きまして消費税の問題をお伺いしたいと思います。  実地に率直にお聞きしたいので、私も実は取引高税が廃案になったころにそれを担当した新聞記者をやっておりまして、何か運命的なものを今現場の混乱を見て実は感じているわけです。その中で先生に御意見を聞きたいのは、先ほどもおっしゃいましたが、日本的な産業経済構造の中でこれをやるには大変無理があるという御指摘でございましたが、私も同じ観点でこれには最後の最後まで反対、いまだに反対してきているわけです。  その理由は、ほかでもございませんが、欧州なども実際に私も行ってみまして、先生、文房具屋なんかは一つの町に二軒か三軒しかありませんわね。ところが、私らの田舎でも、一つの市があると小学校、中学校の前には全部文房具屋があって大変激しい競争状態になっておりますね。三千万以下の業者であると、それはそれといたしましてもなお、帳簿方式でやるという前提に立ちますと、多くの人が言っておりますのは、これはもう間接税でなくて、転嫁できないがゆえに直接税であって、法人税にプラスされるものだ、こういうような意見を持っておりますので、この点について先生がどのようにお考えになっておられるか。これは主として転嫁の問題とも関連いたしますので、まず第一点お答えいただきたいと思います。
  41. 富岡幸雄

    富岡公述人 林先生の御質問にお答え申します。  日本の場合は非常に流通が複雑でございますね。それ自身は問題であるとは思います。そしてまた同時に、もう一つ中小企業が非常に多い。中小企業の零細性ということですね。しかし、この中小企業の皆さんの努力が我が国の経済の活力の源泉なんですね。この点はやはり大事なことです。そして、税抜き価格にして一それからプライスリーダーとなるような大手の企業はこの消費税については何の心配もないのです。流通の段階でもカルテルを結びまして、固まっている組織、固まることができる組織の場合はカルテルを結んでいますからそれでかなりいこうというような傾向もございますが、一番心配なのは末端流通ですね。小売の段階ですね。小売の段階消費者と小売業者がぶつかり合うわけですね。消費税の第一線は小売の段階、小売店の店先で火花を散らすことになります。  そこで、先生がおっしゃるように非常に日本の業界は過当競争が激しいわけです。努力して勉強しますね。消費者も賢明ですね。そういう意味で、三%きちっと転嫁することは建前としてはわかりますが、それをやりますと恐らく売り上げが減ってしまうとかお客さんが逃げてしまうとかいうことが行われるのではないかなということを今多くの中小企業が、小売流通段階が心配しているのです。これは非常に深刻な状態ですよ。オーバーに言えば、少しパニック状態になってきているわけです。ぜひこれを救っていただきたいのです。混乱をもたらします。一番被害を受けるのは末端流通です、そこでぶつかるわけですから。そこで、転嫁できない場合には仕入れ先に向かって逆転嫁ができればいいですよ。問屋さんはさらにメーカーに向かって逆転嫁ができればいいですが、何かそうはいきそうもないですね。  結局、消費税というのは、所得の低い低所得者に所得に対して割高の逆進的な税金であると同時に、納税者、事業者にとっても、力の弱い、過当競争や構造不況業種や末端流通の零細中小企業等のところで転嫁できないから、これは第二企業税と言われるように‘かぶってしまうのですね。直間比率の是正とおっしゃるが、少しも直間比率の是正なんかにならないです。事業者は納税義務者と称する代理徴収入でございます。しかも、今回の構造は、課税期間一年間のトータル計算を事後的にやるわけです。四月一日から来年三月三十一日までの一年間の決算の課税売り上げのトータルの三%、課税仕入れ等のトータルの三%、AからBを引いた差額を納めるわけですね。それは三月決算なら来年の五月に納めるわけです。来年五月にならないと納税額が確定しないわけですよ。それを来月一日から転嫁しなさいと言っているわけですね。うまくできますか。トータル計算です。ですから、うまく転嫁できるところは三といわず五とか七とか過剰転嫁をし、転嫁をできないところは転嫁をしない。商品のミックス政策とかいろいろな経営戦略のテクニックが今盛んに産業界で計画、勉強されておるわけですね。  結論として、これは事業者にとっても力の弱い業者は転嫁が困難になっていくのじゃないか。結局、転嫁の原理は、行政上の法律とかお役所の指導もさることながら、経済は力関係ですから、水は低い方に流れるという形でいってしまう。中小企業や零細企業が大変な深刻な打撃を受ける。私はこのことを非常に心配して、ぜひ御配慮をいただきたいと思っております。  以上であります。
  42. 林保夫

    ○林(保)委員 ありがとうございました。  第二点としまして富岡先生には、益税がどれくらいの規模になるのかですね、御承知のように。便乗値上げ、便乗値下げ、いろいろ今混乱しております。そしてまた、スーパー及び百貨店なんかでは一律に売り上げへかけるといいますけれども、これがもう生産、卸、そのほか中間段階を経過して入っている商品でございますので、一体どういう標準でいくのか、いろいろな問題がございますのでお聞きしたいのでございますが、時間が切れましたのでまたお教えいただきたい、このことをひとつこいねがっておきたいと思います。  最後に一つ、荏開津先生に先ほど来非常に厳しい日本農業の問題を御指摘いただきまして、私どもも非常に同感したわけでございます。特別御承知のように、市場開放あるいは貿易摩擦という線から来ておりましたが、先生に一言だけお聞きしたいのです。  過去数年あるいは最近ひどかった状況が、私、欧州とアメリカをちょっと見たのですけれども、ちょっとトーンが変わっていますね。各国ともこのような形で、米や肉でも何でもいいのですけれども、裸にしてしまったら、中小国はもちろんのこと、大きな国でももう立ち行かなくなる。それは都市政策、農村政策、いろいろな国との関連が、先生がおっしゃるとおりあるわけですけれども、したがって今度は、自給率を主に国の安全保障及びその他の条件をつけて日本も少し腰を伸ばして突っ張らなければならぬ、こういう状況が今かなり来ている、このように認識いたしますが、先生、いかがでございましょうか、その点一言だけ承りたいと思います。
  43. 荏開津典生

    荏開津公述人 簡単に申し上げます。  おっしゃるような状況はやはりある程度はあると思います。ガットの会議でもアメリカが若干意見を取り下げるような、弱めるようなこともございましたが、ただ、去年の世界的な不作の問題というものもそういう情勢の変化にある程度の役割を果たしているように思いますので、また、ことし非常な豊作で、膨大な在庫がアメリカ、欧州等に累積するというようなことになりますと、ちょっとまた雲行きが変わってくるのではないかということも考慮に入れておかなければならない、以上のような考えでございます。
  44. 林保夫

    ○林(保)委員 ありがとうございました。  これで質問を終わらせていただきますが、政策の面もひとつ、先生方もしっかり立案していただきまして、私どものしりもたたいていただきとうございますし、私どももきっちりした対応を先生の御意見を踏まえてやりますことをお誓い申し上げまして、感謝いたしたいと思います。ありがとうございました。
  45. 田名部匡省

  46. 石井郁子

    石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。初めに、年金問題で橋本公述人に伺いたいと思います。  老後に不安を抱いていらっしゃるという方が八割という世論調査の結果を先ごろ東京都が発表いたしました。豊かな国の日本の現実がこういう形で示されているというふうに私ども思うわけですが、今回年金支給開始年齢六十五歳に繰り延べという改悪案については国民が非常に強い関心を持っていると思います。  二点伺いたいわけですが、今回の年金改悪案の特徴は、やはり国民には保険料負担増という形で示されているというふうに思うわけですね。厚生年金の掛金のアップは月収三十万の方で年間四万円の増、それから先ほどお話しいただきました学生への強制加入の問題ですね。月額八千四百円という額は、今親元を離れて下宿している学生には大体十万ぐらいの仕送りなんですね、実は私の息子もそうなんですが、そのうちのさらに八千四百円となると、八%強というのは非常に額としては高いと思うのですね。それから、自営業者に対しましても国民年金の掛金アップという形で出ているわけであります。一つは、年金の財源で国の負担はふやさないという考え方がこの前提にあるのではないかというふうに私ども思うわけですが、一体、この年金問題で国の責任ということをどうお考えになっていらっしゃるのか、お聞きしたいと思います。  二つ目には、こういうやり方を続けていきますと、つまり保険料を払えない人が大量に出てくるのではないか。既に国民年金では四人に一人、五百万人の方が滞納または免除になっているということが出されていますね。こういうことで、将来無年金者が大量に生まれるということがもう早くも予想されるわけであります。そういう点で公的年金制度の根幹が崩される。この年金制度の精神というものを本当にどう考えたらいいのかという点をお伺いしたいと思います。
  47. 橋本司郎

    橋本公述人 お答えいたします。  六十五歳問題その他について改悪というふうにおっしゃいましたけれども、私はそうは存じておりませんので。  先ほども申し上げましたように、世代間の契約というふうな形にどうしてもならざるを得ない。その費用の中にはもちろん国庫負担も入ってもいいと思いますが、その国庫負担という場合には、これは税金ですから、どっちみち国民から徴収しなければならないということになります。それで、今の構造ですと、どうしても負担の範囲内でしか年金支給できない。その負担という意味は、保険料、税両方を含めての意味であります。ということになりますと、今の段階ではまだまだ国際的に見ても非常に安い保険料であるというふうに私は承知をいたしております。この段階でもう負担の限界というふうなことでは、これはもう年金制度は何ともならない、率直に言えばやめてしまうよりないということになるのではないかというふうに思います。  高齢化社会を控えて国民が力いっぱいに生きていく、その中でできるだけの負担をして高齢者を支えていくということをやらなければだめだ。また、その支えられる側が感触が最近大分変わってまいりまして、高齢者といえども元気であります。それを、支えられる側を支える側の中に取り込んでいかなければ、数字的な人口の高齢化の状況からいっても、だれが考えても不可能に近いということになってしまいます。  そこで、今の保険料で相当程度の免除者がおりますが、実はこれはちょっと不思議なことなんですが、免除の率よりも実際に年金受給している人の免除の期間というのがうんと少ないんですね。後から追納して、払えるようになったときに払っておいでになる方が相当数おいでになるというように私も聞いております。  それから、国の責任ということですが、やはり国はこういう年金制度をしっかり維持していくというところにまず第一の責任があると思います。もし国民の合意が得られるなら、例えば今基礎年金に入っております国庫補助の三分の一を、これを二分の一にする、あるいは三分の二にするというふうなことが合意が得られるなら、それはそれなりの意味があると思います。そのための手法として消費税をそれに回すということも考えられないではないと思います。その場合には消費税の値上げになりますので、そういったようなことについて全般的な合意が得られれば、切り抜ける方法はいろいろあるというふうに私は考えております。  以上でございます。
  48. 石井郁子

    石井(郁)委員 ありがとうございました。  富岡公述人に伺いたいと思います。  先ほど来、消費税が矛盾と欠陥に満ちているという具体的な御指摘がございました。大変ありがとうございました。私も、納税義務は事業者が負うということで考えますと、この四月実施を前にして今大変混乱が起きているというふうに承知をしています。  そこで、初めに、日本の場合事業者の七割が三千万円以下の免税業者であるということですけれども、中小零細業者、とりわけ零細業者にとりまして、この消費税は一体どのような影響を及ぼしていくのかということを、まとめてちょっとお伺いできればというふうに思います。
  49. 富岡幸雄

    富岡公述人 石井先生の御質問にお答えします。  先ほど林先生の御質問にもお答えいたしましたが、三千万になったということで、率直に言って中小企業者はほっとしているのです。きのうも横浜で質問がございましたが、先生は三千万がおかしいとおっしゃるが、それはいつごろ直るんでしょうか。つまり、三千万が免税業者、六千万が限界控除、そして簡易課税が五億円、これらが前提になって、中小企業者はそれほど昨年は鉢巻きをしなかったというふうに僕は思っております。しかし、中小企業者がそれを受け入れる、事業者が受け入れる重要なファクターとなったことが消費税の持つ構造的欠陥であるということに、この税の持つ悲劇があるわけです。この税の持つ本質的問題点があるわけです。ここはよく考えていただきたいと思います。  そこで、経済は力関係です。私は消費税説明をするときに、消費税の概要を説明しながら、転嫁ができますかとかいろいろ質問を受けますが、それはあなた方企業の努力によるんだ、企業の自主的努力によるんだ、企業力がつけば、企業の体質が強ければ転嫁ができる。仮に一〇〇%転嫁できなくても、マージン率、付加価値が高ければ若干の利益を減殺することによって生き残れるが、マージン率が低い、利益率が低い、黒字か赤字か限界のような限界企業は、転嫁できなかったら生存を失います。私は、そのようなことが非常に多くなってくるんじゃないかと思う。  ただ問題は、先ほども触れましたように、政府が温かい思いやりと称して三千万の免税業者、五億円の簡易課税、こう言っておりますが、それらの点は計算上は確かに恩典がありますが、それらが果たしてそういう事業者に吸収されるのか。私は吸収すべきでないと思います。消費者が払ってはいけないのです。益税分は消費者が払ってはいけないのです。中小企業者といえども、益税によって、消費者が負担した税金でたとえ幾らかでも商売以外の税金をもうけるということはやはり道義的にも許されませんね。これから消費者が、一体免税業者の場合には幾ら転嫁してくれ、簡易課税業者の場合には幾ら転嫁してくれ、先ほどここで私が掲示したあの表を全国民に知っていただいて、消費者が消費税によって割を食わない、こういう体制ですね。今回の消費税は事業者の反対に対する配慮、はっきり言って、事業者におもねて、事業者にあめを配ってその結果消費者不在の消費税になっているのです。この点は非常に残念なことです。  もう一つ、事業者といえども中小零細企業は決して安泰ではない、このように考えておりますが、お答えにならなかったらさらに引き続き御質問してください。
  50. 石井郁子

    石井(郁)委員 ちょっと取り違えられた面もあるのですが、私は、先生が御説明のように、今回消費税の本質的な問題を避けるためにとおっしゃったでしょうか、回避するために構造的な技術的な配慮というか、思いやりがかえって混乱をつくっているというのは本当にそうだと思っているのです。三千万円以下の免税がおかしいとかいいとかという評価は私は一言も言っていませんで、そういうものをつくったということの持っている意味や、そして、現実に零細業者が圧倒的に多いわけですから、そういう方々に対してどのような混乱や影響があるのかということをお伺いしたがったわけですが、それはおきまして、もう一点。  今回新聞にも報道されておりますように、既にこの簡易課税方式やいろいろとったために、メーカー、大手業者の下請いじめだとか、調査票を送りつけるという形でいろいろ問題になっております。大手の不当転嫁というようなことがかえってできやすい構造をつくったのではないか、あるいは持っているのではないかということで、もう一点お伺いしたいと思います。
  51. 富岡幸雄

    富岡公述人 中小零細企業や庶民の方々が消費税でどれだけお苦しみになるかというのは、私よりか石井先生の方がお詳しいのじゃないですか。私は教えてほしいと思っています。私は大学の研究室におる人間ですから、現場のことがよくわかりません。ただ、私自身も、現場から離れていますがそのように感じるのです。そこに問題があると思います。  それから問題は、先ほど先生お言葉の、大手が下請の管理価格、発注価格の場合には免税点や簡易課税による益税分を発注価格の切り下げという形で吸い上げる。ですから、益税の額がどのくらいあるか、これは私はわかりません。速やかに大蔵省がこの予算委員会に提出して、それを国民に明らかにしていただきたいと思います。ただ、平成元年予算書を拝見しますと、複雑な計算の基礎で徴収歩どまり等アローアンスが見込まれているということは一体どういうことなのか、私は質問したいのです。公述人は質問ができないというのです。質問されたことだけ答えろと、非常に不便なのです。バッジがついてないからでしょう。この点はバッジのついている先生方がしっかり政府にただしていただきたい、私はそう思います。  結局、大手が中小企業や下請をいじめていく。もちろん独禁法では禁止しています。下請代金遅払い防止法という法律がありますが、それで親会社を訴えた零細下請がいましたか。訴えることができれば、もうおまえは来なくともいいよと言って飯の食い上げになるのです。これが厳しい経済の実態ですね。ですから政府は、独禁法の緩和、いろいろ配慮していただいておりますが、それが裏目に出ていってしまって、独禁法を緩めることによって自由経済の根幹にひびが入りながら、さらに新たなひずみが出てくるというようなことがこの消費税という税金の持つ構造的、本質的欠陥である。速やかに凍結して根本的に検討し直すことを重ねてお願い申し上げてお答えにかえます。ありがとうございました。
  52. 石井郁子

    石井(郁)委員 ありがとうございました。  私はもちろん消費者の立場でこの消費税の問題をよくわかっているわけですけれども、消費税は所得に占める負担率でいいますと、本当に年収四百万以下の方には大体二・〇九%ぐらい、一億以上の方では〇・二八%という形で、所得格差を一層広げるという最大の不公平税制だというふうに思っていますが、きょうは先生が特に法人税等々税制問題にお詳しいということで中小零細業者の問題で実は御質問させていただいたわけです。  最後に、荏開津公述人に伺いたいと思いますが、これはちょっと農業の専門の中身ではありませんが、この間、一連の福岡補選から始まって鹿児島知事選挙、そして今行われております宮城の知事選挙等々、自民党には非常に厳しい結果が出ているわけでございますけれども、農村県でこういう問題が起こっているということにつきまして、今、国会の当面の問題のリクルート、消費税はもちろんでありますけれども、やはり我が国の農政に対する批判が噴き出ているのではないかというふうに感じられるわけですが、先生のこの点での御見解をちょっと伺いたいと思います。
  53. 荏開津典生

    荏開津公述人 私は今の御質問については、選挙でなぜ自民党の方がうまくいっておられないか、専門が全然違いますので、ちょっと申しわけございませんが、お答えできません。
  54. 石井郁子

    石井(郁)委員 どうもありがとうございました。  以上で終わります。
  55. 田名部匡省

    田名部委員長代理 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  午後一時半より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十九分休憩      ————◇—————     午後一時三十一分開議
  56. 大野明

    大野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、御出席公述人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。平成元年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただくようお願い申し上げます。  なお、御意見を承る順序といたしましては、まず藤田公述人、次に森口公述人、続いて高田公述人の順序で、一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、藤田公述人にお願いいたします。
  57. 藤田至孝

    ○藤田公述人 藤田でございます。  予算につきまして、最初に全体的な意見を申し上げまして、次に個別的な施策についての意見を申し上げさせていただきます。  まず、総括的な意見でございます。  現在、政府は、経済運営五カ年計画におきまして、真の豊かさを実感できる生活の実現を政策の目標にしております。また、野党各党も、生産大国から生活大国へ、あるいは生活先進国を目指しまして政策を推進しておられます。また、現在春闘のさなかでございますが、組合側は、欧米並み賃金から欧米並み生活へ、あるいはゆとりある幸せな家庭づくりをスローガンにいたしております。また、経営側も、豊かで活力ある生活の確立を目標にいたしております。このように、現在我が国は、政府・与党、野党、労使を挙げまして豊かな生活づくりということを目標とし、それについて国民のコンセンサスが成立いたしておるわけでございます。このことは、逆に言いますと、まだ我が国は豊かな生活ができていないということをあらわしたものでもございます。そこで、予算は、このような大きな豊かな生活づくりのために編成されるべきであるというのが私の意見でございます。     〔委員長退席、綿貫委員長代理着席〕  さて、なぜそのような豊かさが実現されておらないのかということを考えてみますと、理由は次の六つに要約できると思うのでございます。  一つは、欧米に比べまして、異常な物価あるいは土地の価格でございます。この高い物価には、一つ全部に共通なものが通っております。それは外国から持ってこられないということ、これが高い共通点でございます。例えば土地は企画庁の計算によりますと、アメリカの百倍でございます。これは完全に持ってこられないからでございます。次に、米の値段、肉の値段、このような農産物が高いのでございます。これは持ってこられるのにもかかわらず、その自由化が制限をされておるということでございます。第三に高いのは、電車賃、バス賃、郵便その他のサービス価格でございます。あるいは航空運賃などもそうでございまして、これは要するに、外国よりも賃金が高くなりましたので、外国よりも高いということでございます。しかしながら、外国の方が安いからといって、例えばタクシーがアメリカの方が日本より安いといって、アメリカへ行ってタクシーに乗りましても、いつまでたってもここに着くということにはならないのでございます。そこで外国から持ってこられないもの、買えないもの、これは千倍いたしましょうとも、幾ら高くとも日本で使わなければならない、そのようなものが非常に高いのでございます。それが一番目でございます。  それから二番目には、住宅が量、質ともに不十分であるということでございます。これは土地との裏側であるわけでございます。  それから三番は、労働時間が非常に長く、自由時間のゆとりがないということでございます。  四番目には、その裏側でございますけれども、自由時間を楽しむ文化、体育、レクリエーションその他の施設などの社会的資本の不足及びサービスの不足、また自然空間の不足など空間資源の不足及びその不十分な活用ということでございます。  それから五番目でございますけれども、老後でございますとか不時の場合でございますとか、そういう場合の所得あるいは医療につきまして不安がある。今はある程度豊かであるけれども、将来についてそれが持続できる確信がないという、将来に対する不安ということでございます。  それから六番目には、その豊かさにかなりの格差がある。例えば土地でありますとか株でありますとか、そういう資産を持っている人と持っておらない一般のサラリーマン、あるいはほとんど所得が完全に捕捉されまして、それに全部税金がかかるという人々と税の捕捉が不十分な人、まあ結果的に所得が高くなるというそのような人、あるいは大企業労働者中小企業労働者、あるいは常用労働者とパートでありますとか、そういう人との間の格差の存在、このような六つがこの豊かな生活の実感を薄めているということであろうと思うのでございます。  このような六つの点を是正するということが、まず私は予算に要求されると思うのでございます。  この平成元年度の予算を拝見いたしますと、例えば物価対策につきましては、生産性向上、流適合理化など一般、特別会計を通じまして四兆二千億が付されております。あるいは住宅につきましては、六十二万七千戸の公的住宅の建設、あるいは五十四万五千戸の公庫融資というふうなかなりのものがつけられておりますけれども、これも地価の関係で実行できるのかどうか危ぶまれるのでございます。あるいは初めて生涯学習対策費といたしまして百億円がつけられてございます。いろいろ新たな豊かな時代に対する対応は見られるのでございますけれども、まだまだ不十分でございまして、豊かな生活づくりの予算にはなっておらないというふうに考えるわけでございます。  特に重要でございますのは、今年度のような、経済が順調でございまして、今この一、二年の経験から見まして、ことしも五兆円程度の自然増収が見込まれるわけでございますけれども、このような貿易も黒字、税収も黒字というような時代はもう数えるほどしかないということが私の予測でございます。すなわち経済成長率は長期的には人口に依存するわけでございまして、それは基本的には出生率に依存するわけでございます。現在のように、出生率が予想をいつも下回って低下している、そういう状況の中で、早ければ日本の高齢化率は二十一世紀初頭には欧米を超える、そしてこのまま人口が推移しますと、二〇一〇年ごろには日本の人口は絶対的な減少をたどるということでございます。そうなりますと、日本の経済は縮み始めるのであります。人間も六十を超えますと、背がだんだんと縮み、細胞が減少して、健康を維持するという、そういうどちらかといいますと老衰期に入るわけでございますけれども、日本経済も、考えてみますと、今が盛りではないのか。だんだんと人口が減り子供が減り下り坂に入る、それは恐らくあと二十年後には間違いなく来る、そういうことが考えられるわけでございます。この黒字の時代に、その黒字の余剰を十分に活用いたしまして、そして高齢化時代に豊かさを実現できるという、そういう国づくりをすることこそ、ことしを含めまして今後の予算の課題である、政策の課題であると考えるわけでございます。  基本的には、例えば厚生年金だけでも積立金は七十数兆円に達するのでございます。年々四兆円近くがふえているのでございまして、それを活用して社会資本の充実を今こそ図るべきである、このように考えるのでございます。  以上が総括的な意見でございまして、次に個別の施策に移らしていただきますが、まずどうしても避けられない消費税に関する意見でございますが、この消費税は検討が不十分でございまして、また不公正税制の是正も不十分でございまして、またいろいろ今テレビその他で準備状況が報道されておりますけれども、なかなかこれも順調にはいっていないようでございまして、準備も不十分と申さなければならない。したがいまして、この消費税は言ってみれば未熟児ということではないのかということで、これが成熟するまで実施を延期すべきではないのかというふうに考える次第でございます。  特に、この消費税はもともと高齢化対策あるいは社会保障の金が要るからということで導入されたわけでございますけれども、今度の補正予算におきまして、例えば介護手当が年五万円、二十万人で百二億円、あるいは老齢福祉年金受給者四百二十万に対しまして臨時福祉給付ということで一万円、これが四百十九億円、あるいは在宅看護、ショートステイ、ホームヘルパー、デイサービスなどでございますが、そういう事業のための出資が百億円、あるいは生活保護受給者社会福祉施設入所者等百五十万に対しましての一時金、これが九十六億、合わせて七百十七億円が六十三年度の補正予算に組まれておるわけでございますが、これが六十四年に入っていないということは、私は大変に、消費税導入の経緯から、その理由づけからいいまして問題であると考えるのでございます。そしてこの補正予算平成元年度の予算に入れたとしても、六兆円から七兆円と推定されまする消費税収入に対しまして一%しか回しておらないということは、これは問題ではないかというふうに考えるわけでございます。  それから二番目でございますけれども、労働者が大変心配をしておりまする厚生年金を将来六十五歳に引き上げるということ、そして厚生年金保険料を千分の百二十四から千分の百四十六に引き上げるということ、そして標準報酬の上限を四十七万から五十一万に上げるという、このことでございます。例えば五十一万に上げられた人の場合は保険料は三三%ふえる、あるいは平均で一八%ふえる、このようになっておるのでございまして、これでは減税分が帳消しになるという計算になるわけでございます。  そこで、私の考えでございますけれども、この際、部分年金・部分賃金というものを導入いたしまして、そして定年制が今六割が六十歳になったばかりでございますので、この年金と賃金をセットいたしまして、いわば在職老齢年金を拡大をいたしまして、そして部分的な引退を図りまして、そして六十五歳の実質的な定年を実現する、その後に六十五歳の引き上げ考える、そのようにすべきであると思うのであります。  この部分年金・部分賃金は、スウェーデンで約十年前に導入されたものでございまして、これは要するに、六十五歳で定年になりまして引退をして年金をもらい始めますと、非常に病気にかかる人、それから病気で死亡する人がそのとき突出するわけでございます。それはそうでございまして、きのうまで毎日働いておりましたのに、きょうからはもう働かないということでは、生活のリズムが狂いまして、病気になったり死ぬ人が多いのでございます。そこで六十からずっと、例えば週五日働いていたのを四日にする、六十三になったら週二日働く、あるいは一日八時間働いていたのを六時間にする、段階的に完全引退にソフトランディングをするわけでございます。その時間を減らした分につきましては部分年金を払う。それにつきましては、部分年金法というのをつくりまして、厚生年金とは別建ての年金をつくって、千分の二の保険料で賃金の相当分五割を給付する、そういう制度でございます。  私は、日本には雇用保険という制度がございまして、その中で使用者だけが千分の三の保険料負担いたしましていろいろな雇用改善事業をやっておりますので、その中に部分年金を導入してはどうか。そうでありませんと、これはスウェーデンの例からいいますと、これをつくりますと、非常に多くの労働者が適用を申請いたしますので、年金財政をかえって赤字にするおそれがあるのでございまして、今雇用保険の改善事業は幸いにして黒字でございますので、そちらの方でこれをやってはどうかというふうに考えるわけでございます。  それから三番目でございますけれども、これからの最大の課題は余暇でございます。総理府の、あなたは今一番何が欲しいかあるいは何に所得を使うかという調査を見ましても、余暇が住宅でありますとか耐久消費財であるとかを大きく抜きまして、今は大体日本では百円賃金が上がりますと六十五円は余暇に使うようになっておるわけでございます。  そこで、この問題でございますけれども、金融機関あるいは公務員もだんだんと週休二日制になってまいりましたので、週休二日制が拡大をするでありましょう。そしてこれからの時代は長期余暇の時代でございまして、いわゆる週休二日制から有給休暇の時代へというふうになっていくわけでございます。そこで日本の場合には、高速道路が、例えばそういうお盆でありますとか年末年始には、もう三十キロ渋滞であるとかあるいはもう交通機関が満杯であるとか、そういう問題がございますので、私はこの需要の方も分散してとらせる。すなわち夏とか年末年始とかに集中することなく、また週休二日制も土曜、日曜に集中することなく、これを一点重点主義をなくし休みを分散する。今のデパートのようなとり方を国全体に広める。ドイツなどはそういうことをやっているわけでございますけれども、あるいはこれから恐らく小学校の週休二日制が問題になると思いますが、その際も、例えば土曜日ではなくて木曜日と日曜日を休みにする、そういうことが必要であろうと思うのであります。  そこで、今度は供給でございますけれども、日本労働者はなぜ有給休暇をとらないかといいますと、結局これは子供を連れてまいりますと、例えば高速は満杯である、あるいはディズニーランドは夏休みなどはもう予約だ、そういうことで、とにかく余暇にこんなに金がかかる国はないわけでございます。そこで私は政府のやるべきことはたった一つでいい。それはうんと余暇施設をつくり、あるいは生涯教育をやり、とにかく休みをとれば楽しく過ごせるという、そういう社会資本をふやすということでございます。  特に、私がヨーロッパで生活をいたしまして参考になりましたのは、ヨーロッパは今、夏は労働者が自動車でヨーロッパ・ソビエト圏も含めまして、いわば民族の大移動をいたしております。それは農村に都会の労働者が泊まるわけでございまして、それでこれはBアンドBといいまして、ベッドアンドブレークファストといいまして、農家がそういう都市の労働者を泊めまして、一人大体二千円でございます。ですから、四人家族でも一万円かからないということでございます。それで一方農家も大体子供が二人でありまして、日本も全くそれは同じですが、子供を育て終えちゃって、物すごく大きい家に、隠居まで別建てである家にもう夫婦二人しか住んでいないというのが半分以上でございますから、そういうことでもう農家はあいちゃっているわけです。また農業の自由化でいろいろ生活も問題があるわけでございます。そこでふるさとの交流というのを行いまして、大都市の労働者の有給休暇を、夏とかそういうときに自分の家に泊める、そして朝飯を食べさせる、それで二千円くらいで泊めてやるということで、これは非常な交流になり、ふるさとづくりにもなるということで、その改造に国がどんどんお金を貸してやるという、そういうことの奨励をぜひやっていただきたいと思うのであります。  あと二分程度になりましたので、最後に結論的なことを申し上げたいのでございますが、それは、この高齢化の問題にいたしましても、年金の改正の問題にいたしましても、医療の問題にいたしましても、その基本は子供が年々年々少なく生まれているというところに原因があるわけでございます。高齢化というのは間違いでございまして、これは出生率の低下あるいは子供の年齢の人口の減少ということでございます。ですから、五年ごとに国勢調査を行い、そしてその結果として高齢者が多くなっている、寿命が延びている、子供が少なくしか生まれてないということがわかりまして、そして五年ごとに人口の将来推計をやり直しまして、それに基づきまして年金の再計算をいたしておるわけでございます。ですから、例えば十五年前の人口予測によりますと、昭和六十三年には赤ん坊は百七十万生まれているはずなんであります。それが十年前の予測では百六十万になり、五年前の予測では百四十万になって、実際に昨年生まれたのは百三十一万人でございますから、要するに、その差が年金保険料を上げたり、あるいは年金の給付を引き下げたりせざるを得ないのでございます。  そこで、昔は賃金も低く貧しかったかもわかりませんけれども、子供を二人か三人産もうと思えば産めた時代だったのであります。ところが今は産みたくとも産めないというのが現実であります。なぜ産めないのかというと、大きく分けまして私は三つ理由があると思うのであります。一つは子供を育てるということが非常に危険になってきている。こんなことを言うと怒られますけれども、例えば子供にバットで殺されたとか、そういうニュースは決して新しくないのであります。すなわち人間の意思決定というのは大きく分けて二つに依存するわけです。一つはどっちを選べば殺されないで済むかということであります。殺されないで済むためには子供を持たない方がいいのであります。では、なぜ子供はそういう異常な行動に出るかというと、今我々はゆとりを話しています。時間短縮をやって大人に労働基準法を守らせてゆとりをやろうと言っているのに、子供にはどうですか。皆さん、子供に労働基準法がありますか。子供は一時も二時も三時までも勉強しているのですよ。小学校四年生以上は、NHKの調査によりますと、学校を終えてから一日五時間も勉強しているのです、そんな年端もいかない子供が。世界の子供は遊ぶのが仕事であります。それで大学生は一時間ですよ、勉強は。サラリーマンは三十分ですよ、皆さん。大の大人でさえも一日一時間か三十分しか勉強できない。それを四時間も五時間も強制して、それで大人と言えるだろうかと私は思うのであります。今こそ子供に労働基準法を守らせてくださいよ。そうでないと、いつまでもオリンピックに勝てないし、病人が出るし、学校暴力、家庭暴力、これでは本当に国がつぶれてしまいます。  そういうことを私は申し上げるので、子供が伸び伸びと暮らせるようにしてほしいということが一番であります。二番目には住宅、家が建てられる。それから老後の不安をなくす。以上でございます。  時間が参りましたので、どうもありがとうございました。勝手なことを申し上げまして……。(拍手)
  58. 綿貫民輔

    ○綿貫委員長代理 どうもありがとうございました。  次に、森口公述人にお願いいたします。
  59. 森口親司

    ○森口公述人 森口でございます。  私は、専門でありますマクロ経済分析の観点から、景気の現状と、それから我が国が国際社会にコミットしております構造調整政策に基づいて内需を拡大し、貿易の黒字を縮小するという方向を目指しているわけですが、そういう観点から見て、新年度予算案がどういう性格のものであるかということに関しまして、私の考えを申し述べたいと思います。  まず、最近の景気の現状でございますが、昭和六十三年度はまだ終わっておりませんけれども、昭和六十三年度日本経済は、個人消費、住宅投資、設備投資などが非常に活発でありまして、国内民間需要だけで伸び率を見ますと六%を超えるのではないかというふうに思われます。したがいまして、昨年来、財政の出番はないということで、公共事業もやや抑えぎみといいますか景気に中立的というような形で運営されているわけです。現在、絶好調の国内民間需要の中でも、特に設備投資が好調でございますが、当面の問題はそれがいつまで続くのかということであります。設備投資につきましては、随分大きな変化が生じておりまして、構造不況に悩んでおりました素材型の産業でかなり活発な設備投資が昨年来始まっておりまして、それが現在も続いております。  これは、次のような事情によるのではないかと私は思っておりますが、それは第一に一九八〇年代の前半は低成長ムードがびまんいたしまして、これは財政当局のキャンペーンもあったと思うのですけれども、三%経済成長がノーマルな状態になったのだというような認識が広がり、企業経営者もそういった中期成長率の低い状況に適応するということがあったかと思います。現在それが大幅に修正されつつありまして、私の見るところ、当面の中期的に維持可能な成長率というのは四・五%を超えているのではないかというふうに思います。昨年策定されました中期経済計画見通しが四%弱ですから、これはちょっと低過ぎたというべきではないかと思っております。  そういうふうに期待成長率が変化いたしますと、それまでは低い成長経路に適応した企業の生産能力というのは当然足らなくなりますから、大幅な設備投資の拡張が必要になってまいります。そういうことで最近の素材型産業の設備投資は、かなりの部分が生産能力の増強という要因を持っておりまして、そのウエートがかなり高いのですね。しかし、同時にまた、マイクロエレクトロニクスの技術の革新を背景としまして、合理化、新技術への投資、それに業種転換を行う。同じ製造業の中でもいろいろと業種をふやしていって、古い一つのタイプの業種から多方面に伸ばしていく。その背景にありますのがここ数年非常に大幅に値上がりしました土地、有価証券等の資産価格でありまして、その資産効果によって日本企業の転換が大いに支えられている、こういうことでございます。  しかし、そうは言いましても、この設備投資ブームは三年近くたっておりまして、従来の見方からいたしますと、ことしの年度の後半あたりから反転して低下に向かう。それから投資が大きなサイクルを描く場合は、反転して低下に向かいますと伸び率はマイナスになっても不思議ではございません。そういうことがあり得るかと思うのです。そういう意味では、内需拡大をサミット等でコミットしている日本としては、そういった状態に備えて、財政政策のあり方もフレキシビリティーを維持しておく必要があるかと思うわけであります。  次に、貿易摩擦との関連で、製品輸入の伸びについて見ておきたいと思うのですが、ここ二年非常な勢いで製品輸入がふえております。これはもちろん円高による大幅な相対価格の変化、つまり輸入価格の大幅な低下ということから、供給面でも、輸入を商売にすればもうかるというような誘因が働いているわけであります。それ以外に、多くの輸入競争型の産業が海外に展開して、海外でつくったものを国内に輸入するということを行っております。そういうことで、国内の消費と設備設資の活動水準が高くなっていることも反映いたしまして、価格効果と合わさって、製品輸入の伸びが昨年一年間ですと、前年比で四〇%を超えるという勢いで伸びておりまして、この勢いはいましばらくは続くのではないかというふうに思います。  こういうふうに見てまいりますと、内需は六%で拡大している。それから輸入も随分伸びている。日本が世界の国際社会に対して持っている経済政策運営上の責任というのは相当果たしているのだということになるかと思いますが、私はこのコミットメントというのはかなり長期間にわたるものでありますので、そう安心してばかりもおれないと思うのです。  そこで、さらに当面の消費税の導入等を含みます新年度予算の経済効果ということから見ますと、次のようなことが言えるかと思います。  消費につきましては、物品税をかなり大幅に引き下げることと同時に、三%の消費税が導入されるわけであります。これによって一般物価は消費者物価指数で言えば一・二、三%それがない場合に比べて上昇するということは確かなのですが、ではそれで、消費税の導入によって物価が上がって、国内の消費とか住宅投資等の需要にマイナスの影響があるのかといいますと、必ずしもそうは言えないように思うのです。といいますのは、物品税等、大型の消費財にこれまでねらい撃ち的にかけられておりました高い税率が是正されますと、乗用車を初めとしましていろいろな電気製品あるいはエレクトロニクスグッズと我々呼びますが、そういうものの相対価格は下がります。そうして最近の好調な消費需要のもとでは、これらの大型の消費財あるいは耐久消費財に対する需要というのは、専門用語を使いますと、かなり価格弾力性が高いのですね。価格が安くなりますと消費需要が大きく伸びる、それからまた所得が伸びますと同様に需要が大きく伸びる、そういうことがございまして、物品税の手直しによって、耐久消費財と、それから耐久消費財でなくても、高級ウイスキーのような非耐久財の一部、こういったものへの需要が大きく伸びて、それによって消費税全体がもたらす物価上昇のマイナスの効果を打ち消す可能性もかなりあるというふうに私は見ております。もちろんその背後には、消費税の導入は、私の同僚であります阪大の経済学部の本間正明教授が子細に検討しましたように、サラリーマンの年収別の分類で見ていきますと、三百万円以下の低所得の人々、あるいは年金等で生活をしております老齢層の方々、こういう方々にとってはネットで増税になるというようなことがございますが、それは新年度予算でも、特に老齢層については介護料の付加的な給付といったようなことで手直しがされておりますので、私は、全体としては、消費税の導入に伴います新年度予算のもとで国内の消費景気が水を差されるということにはならないのではないか、こういうふうに思っております。  次に、税収見通しでございますが、新年度予算では、政府経済見通しの四%成長ということを下敷きにしまして、そこで税収の見積もりをしているわけです。それによりますと、細かい数字は省略いたしますが、割と控え目な税収の見積もりになっておりまして、六十兆四千億円ですかのトータルの歳入の中で占める、五十一兆だったと思いますが、租税及び印紙税等の収入の見積もりは、もし今年度の成長率が四・五とかあるいは五%近くになるとしますと、私は多分その可能性が高いと思うのですが、税収の見積もりとしては、一昨年、一昨年に引き続いてやや過小見積もりであって、年度の終わりにまた大幅な自然増収という形の誤差が出るおそれはあるかというふうに思います。  支出面につきましては、景気に対してほぼ中立的ということなんですが、現在、一般会計予算から国民所得勘定別の政府支出、経常的な政府最終消費とそれから政府固定資本形成への支出、この二つに分けてそれぞれにどのような影響があるかということを見るのは大変難しゅうございます。それは、一つは地方交付金をふやすことで地方自治体がどの程度の単独事業等の公共事業をふやすのかがよくわからない。例えばふるさと創生費で三千億円のお金をつけますが、それが実際にどのような効果を持つのかということも大変難しいかと思います。それに加えまして、財政投融資関係で公共事業に結びつく投融資が行われますが、これも年々いいアイデアが欠如しているというようなこともありまして、やや使い残しぎみであります。もし地方経済を振興させるためにいい知恵を生むという意味でのふるさと創生費と呼ばれる三千数百億円のお金が生きていって、そして地方経済を振興する上でのいいプロジェクトが育つ、それに公共部門からのそういうかなりの余剰のあるお金が使われるということになりますと、かなり公共事業も伸びる可能性があるかと思うのですが、今のところそれはやや不明でありますので、それを抑えて見ましても、政府固定資本形成は政府経済見通しの二%よりはやや大きくなる可能性があるというふうに思います。これは既に決定いたしました六十三年度の補正予算で約二兆円の地方交付税交付金の付加的な支出というのが行われておりまして、実際にはそういったものが今年度にわたって使われるというようなことがあるわけです。  最後に、若干の問題点を貿易黒字の縮小ということに関連して申し上げたいと思います。  現在、輸入の伸びは非常に高くて、さしもの高い我が国の貿易収支の黒字を減少させるということに効果があるはずなんですけれども、現実にはそれほど大きく減っておりません。問題は輸出が再び伸びているということなんです。  この輸出につきましては、二つの大きな傾向がうかがわれます。一つは、日本の輸出の中で、特にハイテク輸出産業に関しましては、超電導のことをスーパーコンダクティビティーと申しますが、それにひっかけてスーパーコンペティティブだ。つまり超競争力を持っている。外国がどうであっても、円高がどうであっても、こういう輸出産業の輸出はどんどん伸びるんだというところがございます。例えばマイクロチップとかVTR、そしてファクシミリあるいは自動工作機械等々がそうなんですね。一方、在来型といいますか、伝統的な勤勉と安い人件費等を生かして伸びてきた産業の中には、いまだにそこで頑張っている部分がありまして、そこでは合理化のための努力が続けられる一方、労使協調の名のもとに長時間労働、賃上げの抑制などが続いておりまして、結果として賃金も格差が開いている。そして労働時間の短縮ということがちっとも進まないという海外からの批判もあるということがありまして、そして全体としては貿易の黒字が減らないものですから円高が続く、ますますそういう第二グループの在来型の輸出産業は長時間労働と賃上げの抑制でそれにこたえる、一種の悪循環なんですね。これを断つ必要がございます。その悪循環を断つためには、やはり何といっても中期的にわたって国内需要の拡大に努める必要がある。と同時に、労働行政といたしましては、たとえ中小企業等でもやはり労働時間短縮については労働省等の指導によってその実行を期待すべきであろう、こういうふうに思うわけです。  その意味では、やはり予算の方向としても、労働行政に関連して余暇の創出、有効な利用、そして労働時間短縮を全国的な、そうして苦労をしている企業についても同じように努力をしていただくという方向で配慮をお願いしたい。その点ではまだ十分でないのではないかというふうに思うわけです。この労働時間短縮という問題は、中曽根内閣以来構造調整政策の一つの目玉になっているわけですが、これだけが現在大きく取り残されているというふうに私は思います。  最後に、新年度予算に限らず、もう少し中長期的な観点から若干私見を申し上げて、私の公述を終わりたいと思いますが、まず全体的な認識としては、財政再建のめどはもう既に立っているわけです。そうして年々税収は過少見積もりを続ける傾向にございます。一方、政府が目指している構造調整の本番というのはまだこれからでありまして、流通産業、農業、土地問題、地方経済の振興、そういったことはこれからの政策に待たなくてはなりません。  そういう観点からいたしますと、現在審議中の新年度予算につきましても残念ながらどうも単年度主義のままで推移してきておりまして、これを多年度にわたってフレキシブルに財政政策を運営する一環として考えるという方向でやっていかなくては、構造調整政策と表裏一体をなす大切な財政政策の基盤としての予算のあり方というのは問題が多過ぎるんじゃないか、こういうふうに思うわけでございます。  以上で終わらせていただきます。(拍手)
  60. 綿貫民輔

    ○綿貫委員長代理 どうもありがとうございました。  次に、高田公述人にお願いいたします。
  61. 高田公子

    ○高田公述人 新日本婦人の会副会長の高田公子でございます。  一九八九年度国家予算案は、一口で申しまして、軍事栄え国民の命削る予算、しかも圧倒的な国民の反対を押し切って強行されました消費税の導入を前提としたものです。子育てや年老いた親を抱えての苦労、家計のやりくりに頭を痛めております主婦といたしまして、反対の立場から公述させていただきたいと思います。  まず第一に、物価をつり上げ、矛盾だらけの消費税は直ちに廃止していただきたいと思います。予算案では消費税税収を四兆五千億円と見積もっていますが、私たちの暮らしや家計の実態は既に赤字であり、これ以上の負担を負うわけにはまいりません。収入五百万で二人の子供を抱えた家庭では七万円減税ですが、年金改悪による保険料が四万円ふえ、消費税分は便乗値上げ分を入れなくとも八万円で、十二万円支出増となり、もともと赤字家計簿でさらに五万円の赤字が加わってくるのです。しかも、天下の悪税である消費税は、竹下総理自身が九つの懸念の中でも指摘されていますように、逆進性が強く、低所得者ほどその被害をもろに受けます。きょうを生きるのに精いっぱいの人たちの御苦労を思うと怒りが込み上げてまいります。  また、高齢化社会のためと大々的に宣伝されてまいりましたが、消費税導入の初年度予算案でどうしてお年寄りをこれ以上痛めつける年金改悪を盛り込まれたのでしょうか。人生八十年と言われている現在、支給開始を六十歳から六十五歳におくらせることによって、二十年のうち収入のめどが立たない五年間をどのようにして暮らせとおっしゃるのでしょう。男性よりも長生きする女性はもっと深刻です。女性は、今日の日本社会では、賃金も男性の約五二%にしか過ぎず、あらゆるところで差別をされております。当然その結果受ける年金にも象徴的にあらわれ、厚生年金の場合を見ても、月額九万円以下は男性二%に対し女性は七〇%にも及びます。こういう現状を無視して、年金保険料率も開始年齢も改悪した男子並みに持っていこうというのです。これ一つ見ましても、高齢化社会のための消費税でないことはだれの目にも明らかになりました。  さらに、授業料や医療は非課税だと宣伝してきましたが、竹下内閣みずから予算案の中に消費税転嫁による国立大学授業料や医療費の値上げを盛り込みました。軍事費は消費税分二百億円、公共事業費は千四百五十億円など、計約三千億円はきちんと手当てしておきながら、教育などは物件費が上がるからその分転嫁は当然と一%の値上げなのです。非課税の地代を含んだ公団家賃の三%の消費税はおかしいのに、この公団家賃を初めNHK受信料、JR、私鉄、地下鉄、バス、病院など政府主導の消費税転嫁は諸物価を引き上げ、便乗値上げを促進することは目に見えております。大企業には基本税率を昨年四三・三%から四二%に、ことし四〇%、さらに来年は三七・五%に引き下げるなど大サービスをしながら、我々庶民には暮らしと未来を破壊する消費税を押しつけるなど、不公平を許すわけにはまいりません。  第二に、我慢がならないのは、異常な軍事費の突出です。国の予算が苦しい、大変だ、財政を立て直すという口実で始まった臨調行革のもとで、最も国の税金で優先されなければいけないお年寄りや子供たちに冷たい仕打ちをしながら、その一方で軍事費や海外経済援助費には大盤振る舞いをしています。予算編成過程で竹下首相はその側近に、防衛費が消費税を食った印象を与えてはまずいと漏らしたと言われていますが、消費税がお年寄りのためのものでなく、軍拡とアメリカの世界戦略に沿った経済協力費が食ったことを如実に示した予算案ではないでしょうか。一八・三%増とウナギ登りの米軍への思いやり予算、その内容を見ると、ゴルフ場や教会はもとよりアル中のための米兵施設の設置にまで使っているのです。しかも、私たちの血税で日本にいる米軍の子供たちには冷暖房完備の三十人学級をつくり、我が家の息子たちは今なお四十五人学級のすし詰めの中で先生も子供たちも悪戦苦闘しているのです。未来を担う日本の子供たちのためにこそ思いやりをしていただきたいものです。  第三に、軍事費がふえ続けてきましたここ十年間の家計簿の特徴は、税金社会保障、住宅、教育費はもとより、光熱費や医療費など切り詰めにくい公共的料金の値上げによってその負担がふえ、家計が硬直化していることです。ここ十年間で家計支出の中で占める公共的料金の割合が四二%から五〇%へとふえ、半分にまで及んでおります。今回の予算消費税の導入、それに伴う諸物価の値上げによって、今以上に政府の支配力が家計に食い込んでくるなら、主婦が自由に腕を振るう部分がますますなくなってしまいます。  私たち新日本婦人の会は、ここ十数年間、公共料金の動きがわかりやすく工夫された家計簿五千冊を普及し、そのうち百五十名の家計簿モニターによって毎月家計調査を積み上げ、同時に毎年五月に三千五百名が参加した生活調査を行ってまいりました。その生活調査の結果でも、ここ数年、家計のやりくりは衣料費と教養娯楽費を削ってが八割を占め、主婦の楽しみである買い物も、人間的生活を営む上で欠かすことのできない文化もだんだん遠のきつつあります。しかも、被服費一つとってみても階層格差が広がり、実収入四十万円台では二万四千円使えているのが二十万円台ではわずか九千円で、下着類など最小限必要なものを購入するにすぎないのです。  この表をごらんください。国家予算に占める文教費の割合は、八〇年一〇・三%であったのが下降線をたどり続け、八九年度七・六七%まで落ちております。それに反比例しまして、家計で占める教育費は、八〇年九・九%であったのが今一三・六%とウナギ登りにふえて、家計を大きく圧迫する要因になっております。家計簿モニターで受験生を持つ方は、合否いずれにしても胸が痛みます、滑るとかわいそうだし、合格してもお金がついていくか不安です、退職金の一部を借りるしかないとは思いながらも、政府は一般人のこんな苦労、生活実態、知っているのかしらと声を寄せています。東大人学者の親の平均収入八百七十万円に示されているように、一定の収入のある子弟しか大学へ行きづらくなっているのです。もし仮に文教予算を八〇年のこの一〇・三%の比率のところまで来年度予算で確保していただきますと、今すぐ小学校の四年生以上の子供たちが高校生まで、とりわけすべての子供たちの授業料も含めて、四十人学級を実施し、無料にすることができるのです。どの子にも行き届いた心を届けたいと日夜頑張っておられる先生たちをどれほど勇気づけ、子育てに頭を痛めております母親を喜ばせることでしょうか。  それだけではありません。既に義務教育段階でも、給食費や教材費など小学校では年間十一万五千円、中学生で二十八万円と父母負担はふえるばかりで、無償がうたわれております憲法が絵にかいたもちになっております。予算案では学校給食用の牛乳や果汁への助成が一本当たり二十銭削る方向を打ち出されていますが、給食費の値上がりになって我が家にはね返ってくるのは必至でございます。子供たちの牛乳への助成金六億円を削る一方、私たちが願っていない、リクルートの汚職でまみれた臨教審関連法の実施である初任者研修予算は三・九倍と二百五億円の満額回答です。  軍事費ばかりふやして、二十一世紀を担う子供たちの教育を受ける権利を奪う予算案に怒りでいっぱいです。家計簿から見ても、軍事費を大幅に削減し、国民生活に回していただくことを願います。  四点目に、私たちの実際の生活実態からも、これ以上軍拡の犠牲にさせられることを認めるわけにいかない点について述べます。  消費税導入の際、政府は、所得も上がり、しかも平準化したため広く薄い消費税を導入できると説明してまいりましたが、政府の家計調査で見ましても、家計の実収入の格差は縮まるどころか年々広がっております。しかし政府は、日本はまだ三倍であり、アメリカの九・五倍に比べるとうんと低いと宣伝されていますが、これにはからくりがあります。日本の家計調査は勤労者世帯のもので、社長や重役などの役員やふえている一人暮らしの老人世帯など入っておりません。アメリカではすべての階層を入れた数字で、日本でもこれで見ると、政府の調査でも十三二倍の格差となっているのです。実際私たちの新婦人の生活実態調査を見ましても、七割の人が昨年より生活が苦しくなったと答えています。日本のGNPは世界の最高水準にあるのに、生活の豊かさを実感しているのは、総理府の世論調査によりましても五人に一人にすぎず、その原因に税金社会保険料負担が重いと六割が答えております。私も結婚以来二十年間家計簿をっけ続けてまいりましたが、二十年前給与からの天引き部分は六千四百九十円で家計支出の四%にしかすぎませんでしたが、現在八万円を超えて二〇%近くを占めるに至っております。新婦人家計簿でも、ここ十年間の推移を見ましても、二万四千円から八万三千円へと、収入は二倍にしかなっていないのに、この天引き部分は四倍にもなっています。  ところが、こんなに多額の税金を納めながら国民生活はその恩恵に浴していないのです。特に保育所、老人ホームなど社会福祉施設の措置費、生活保護費に対する国庫負担補助率の一律カットを四年間続けてきた中で自殺者まで出しながら、八九年度予算ではそれを恒久化しております。このようなことをしておいて、ふるさと創生を云々できるでしょうか。  福祉切り捨ての中で生活保護打ち切りのあらしが吹き荒れ、低所得者がふえている中で保護世帯はこの五年間で九万七千人も打ち切られ、七十万人を割っています。荒川や大分では自殺者が出て社会問題になりましたが、新聞に出ていないもので、北九州八幡区だけでも、夫婦で首つり自殺をされたのを初め次々とみずからの命を断たれているのです。姉は言いたいことも言えずここまで追い込まれた、福祉に殺された気がする、大分の河野さんの怒り、三月に保護を打ち切られると思うと夜も眠れないときようも生きている心地がしない大阪の方、まだ女として十分に役立つのではないかと事実上の売春を勧められた東京の方、人間の尊厳を痛めつけられ追い詰められたこの方々の思い、おわかりになるでしょうか。だれが好きこのんで生活保護を受けるでしょう。二人の子供を保育所へ預けて働く長崎の母親は、九万三千円の保育料で私の給料は全部消えていきますと訴えています。これでは預けたくても預けられない人が続出するのは当たり前で、国の補助率がカットされる中で保育所が百一カ所もつぶされています。保育を利用するのは一部の者、そのためにお金をかけるのはおかしいと攻撃をかけておりますが、日本政府も批准した女子差別撤廃条約では、子の養育は両親及び社会全体の責任の分担が必要と明記し、世界の流れは、子供の成長に欠かせない保育所や学童保育は社会的責任を明確にし拡充する方向にあるのです。しかも、夫だけの働きでは税金九万九千円のところ、子供を保育所へ預けている共働き家庭では四十七万円と四・八倍も払っているのです。幼子を抱え必死で働いているこれからの日本を支えていく若夫婦にこそ、補助率をカットしたまま恒久化するのでなく、もとに戻すのが筋ではないでしょうか。  また、国民健康保険料最高限度額は二万円引き上げ、年額四十二万円の予算が組まれています。今でさえ年平均三十万と高過ぎて払い切れず滞納する世帯がふえています。滞納のため保険証の交付がとめられ、医療が受けられなくなって死亡する事故が相次いでおります。営業不振で負債を抱え、保険料を滞納していた京都の五十一歳の方は、血便で区役所へ駆けつけたものの、五万円出さないと保険証は渡せないと宣告され、手おくれで、中学生を含む家族を残して死亡してしまいました。どんなにか心残りだったかと思うと胸が締めつけられます。かけがえのない人間の命を、金の切れ目が命の切れ目であっていいのでしょうか。神戸でも昨年十二月、資格抹消された五十一歳の職人の方が亡くなられました。死につながる保険証の未交付が神戸だけで一万五千八百九十四世帯もあり、神戸の一つ行政区だけでも、数百人もの資格を抹消された方がいるのではないかと言われている深刻な事態が起こっています。保険証を取り上げられ医者にかかれない、医療を受ける権利も奪われているのです。国民は健康で文化的な最低生活を営む権利を有する、社会保障社会福祉、公衆衛生の制度によって、この生存権をより具体化して、その向上、増進に努めなければならないとうたう憲法が、こんなに踏みにじられていいのでしょうか。生きる権利すら奪うような予算案に強く反対します。  最後に、リクルート疑惑の徹底糾明なくして予算案を語る資格がないというのが国民の正直な感情です。今子供たちの遊びに、悪いことをしてしかると秘書がやったと言う遊びがはやっているのを御存じでしょうか。大人社会の不正義を正さないで子供の教育に責任を持つことはできません。ことしに入ってのマスコミのどの世論調査も竹下内閣の支持率は急暴落、二〇%を割っている調査もあり、国民の怒りは相次ぐ選挙結果にもあらわれております。  軍事費の伸びが社会保障予算の伸びを抜いたのが八二年、国民の憲法で保障された最低生活すら次々と踏みにじられ、今日命すら奪われる事態になっています。今のまま推移しますと、九〇年度から九二年度にかけて軍事費が文教予算を上回ることになり、日本の未来と教育は一層危なくなります。消費税を廃止して軍事費を削って、福祉や教育を大切にする予算に組み替えられることを強く願って、公述を終わらせていただきます。  ありがとうございました。(拍手)
  62. 綿貫民輔

    ○綿貫委員長代理 どうもありがとうございました。     —————————————
  63. 綿貫民輔

    ○綿貫委員長代理 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田名部匡省君。
  64. 田名部匡省

    ○田名部委員 それでは、貴重な時間を割いておいでいただいた先生方に厚く御礼申し上げて、早速質問に入らせていただきますが、高田公述人に御質問申し上げます。  私どもの受けとめ方と全く違うなという感じを実は受けるわけですね。私も随分諸外国を回る機会が多くて、昭和三十二年から、私はアイスホッケーの選手をいたしておりまして、世界選手権で中国、モスコーに初めて行ったときから、随分共産圏も見て回りました。今も至るところの国に行くのでありますけれども、行くたびに思うのは、日本に生まれてよかったなということなんです。今あなたのお話を伺っておると、全く住んでいられない日本のような感じを実は受けるわけでありますけれども、私どもはそう思ってないのです。  実は、この学校教育の問題一つとってみても、初任者研修のお話がございましたが、大学を出ると二十二歳ですね。試験さえ受かると翌日から先生、先生と言われて子供に教育をするわけでありますけれども、世の中、私は二十二歳で先生と言われるのはいささかどうかなと実は思っておるのです。したがって、教える人がうんと能力を高めていい教育をしていただくということは大事なことだと思っているのですね。これがむだなことのようなお話ですので、まず、この一点を先に伺っておきたいと思います。
  65. 高田公子

    ○高田公述人 今先生が日本に生まれてよかったとおっしゃいましたが、私も日本に生まれてよかったというふうに思っております。やはり日本の経済がここまで発展してきたということは、私自身は、憲法の平和的な条項を守って軍事費を諸外国に比べて抑制してきたから、その恩恵が、それはやはり私たち自身が戦後のさまざまな運動の中で、国民が広範な人たちと手を携えて一緒に保育所にしましても学童にしてもつくり上げてきたものではないかなというふうに思います。  そういう意味で、私たちは、今まで積み上げてきたものが一つ一つ掘り崩されようとしているこのときに、ぜひこの軍事費優先の予算ではなくて、今まで積み上げてきたお年寄りや子供たちを大事にする政治を続けていただきたいというのが願いであって、このままほっておけば軍事費のために子供たちやお年寄りがもっと大変な状態になるのではないかな、今大事な転換のときに行き合わせているのではないだろうかということを、一点目としては私自身はそのように思っております。  もう一つの初任者研修につきまして、私も今高校二年生と小学校五年生の二人の子供を持っておりますので、先生が力をつけていただきたいと思うのは、今御質問されました先生と思いは一緒です。ただ私は、先生が力をつけられるのは上からのいろんな管理的なやり方ではなく、先生たちのさまざまな自主的な研修の中でこそ力がつけられるのではないだろうかなというふうに思います。実際、私たちの周りの先生方も初任者研修に行くために、クラスの子供たちを犠牲にして、クラスの子供たちにさまざまの心を残しながら研修に行っている。これでは学びに行っても落ちついて学ぶことができないということを言われておりますし、学びに行った先で君が代や日の丸のことなどもいろいろ教えられているということも伺いまして、先生が本当に力をつけていくのは、やはり子供たちの教育の場で、そして先生たちの同僚のいろいろな励ましの中で力をつけていかれるのではないだろうか。一番身近に二十二歳、去年先生になられた方が北海道の僻地に行ったのですけれども、そこで研修に行って学べなかった、一人の子供がいなくなったときにみんなで捜す中で、本当に先生が子供にどう思いを伝えていったらいいのかということを学び合うことができたというのを聞きまして、そういう上からの研修じゃなくて、先生同士の、もっと同僚として助け合って、励まし合って学んでいくような研修制度を私たちは願っております。
  66. 田名部匡省

    ○田名部委員 十五分しかありませんので、余り演説されると質問する時間がなくなるのですが……。  先ほど来から軍事費、軍事費というお話でありますが、私ども日本は防衛費でありまして、そこのところは間違わぬように御発言をいただきたいと思うのですが、子供やお年寄りを守るために、私どももそう思っておるのです。何といったって日本の今日の平和と繁栄というものは、国の平和と安全の中で達成されてきた。そして国民の勤勉さというものが今日を支えてきた。先ほど来アメリカのお話やら諸外国の話が随分されておりましたが、もともと敗戦の中から私どもは外国から随分な援助を受けてきたのですね。そのことはやはり忘れてはいかぬ。今豊かになったから外国は関係なかったというわけにはなかなかいかぬだろう。そういう総合的な中で日本の経済というものは高まってきた。ですから、物のスタートの考え方が、いわゆる日本の平和と安全の中に、そして資源が安定的に諸外国から購入できるという中で、私どもは今日の地位というものを確保してきた、こう思っているわけです。ですから、いきなりそこの考え方は、それは幾らお伺いしてもすれ違いだろうと思うのでありますが、そういう中で子供やお年寄りの幸せというものをちゃんとしていこうというふうに私は考えるのですが、この点についてはいかがですか。御意見がありましたら……。
  67. 高田公子

    ○高田公述人 私もお年寄りや子供たちは本当に大切にしていただきたいと思っておりますが、やはりここ数年間の予算を見ますと、お年寄りの医療費が無料であんなに喜ばれていたお年寄りが、今本当に死にたいような思いになっていらっしゃいます。だから、同じ出発点に立ちながら、お年寄りをいじめるような予算が組まれておりますので、ぜひお年寄りや子供たちが泣かないような予算を組んでいただきたいと思います。
  68. 田名部匡省

    ○田名部委員 私ども、お年寄りや子供をいじめたり泣かそうなんということは、もう毛頭考えておりません。私も子供を持つ親でして、そんなことは考えておりませんし、今後豊かな生活をどうしたならばやっていけるかということでいろいろと意見を闘わせておるわけであります。  特に健康保険の未交付のお話もありましたが、全部が全部おかしいとは思いませんが、市役所の職員等から聞くと、全く払わずに、そうして幾ら取りに行っても納めてくれぬ、本当に困ったと、こう言っておる。そういう人たちもおるのですね。ですから、なかなかお話のとおりには受けとめられませんけれども、いずれにしても時間が五十分でありますので、次に移らせていただきます。  次に、藤田先生にお伺いをしたいのですが、確かに豊かな生活ができていない。豊かな生活というのはどのあたりに置くかというと、これはなかなか議論のあるところだろうと思うのです。ただ、私は、確かに所得に応じて、国民一人一人が豊かさを感じていないということはあると思いますね。いろいろなものが、例えば物価が上昇した、土地の価格も上がった、アメリカの百倍の土地だ、こういうこともわかるわけでありますが、それもこれも日本の経済が大変高まった。狭い国土に一億二千万の人がおって、猛烈な日本の高度成長というか経済成長というものが、土地の価格でありますとか物価でありますとかいろいろなものを高めてきたのだろうと私は思うのですね。昔のようであればこんな土地の値段になるはずもないし、というところにやはり問題がある。土地政策はやはりしっかりしなきゃならぬ。私は物価もそうだと思う。所得がこれ以上上がって外国との格差がつくと、外国へ行ったときはいいわけでありますけれども、外国の人が来たときに、全く日本というのは生活できるような状態でないという感じは持つだろうと私は思うのですね。そういう意味では、先生のこの豊かな生活ができていないというのはよくわかるわけであります。  ただ、豊かさというものは、何か物ばかりということが多いようですけれども、私は心の持ち方だと思うのですね。私どもは、物価は安定し、所得が向上して、世界とあちこち比較してみるとよくなったなとは思うのですけれども、しかしどうしても問題なのは、個人個人の受けとめ方といいますか、そういう問題の方が非常に大きいのじゃないだろうか。こんないい国に住んでいると私ども思っているのですが、きのうからいろいろな先生方お話を聞いておりますと、全くすごい日本だという感じのお話が非常に多いものですから、私は、まあ人間ですから不平も不満もあるでしょう、そういう気持ちを持って生きていく、あるいはそういう人たちが集まって世の中を新しいものをつくっていこうということの方が、むしろいささか不幸ではないのかなという感じがするのですね。感謝の気持ちも何にもない。そっちの方が、もっとこの心の豊かさが進めば、私は豊かな生活の一部分というものは十分補えるのではないかなという感じがしますが、いかがでしょうか。
  69. 藤田至孝

    ○藤田公述人 私も先生と同じ意見でございます。昔本当にその日の飯も食えないという貧しい時代は終わったわけでございまして、また経済も完全雇用基調の経済でございまして、働こうと思えば働ける、そういう時代が参ったわけでございます。今先生がおっしゃられていましたように、物質的な豊かさから心の豊かさを持たなきゃならない、まさにおっしゃるとおりでございまして、そういう意味で、今度の予算で生涯教育あるいはいろいろな教養に対する施策あるいは制度の充実ができたということは大変いいことであるというふうに思います。
  70. 田名部匡省

    ○田名部委員 それでは、時間のようですので、最後に森口先生にお伺いしますが、何といっても企業の地方分散、雇用の確保とかいろいろなことが一番やはり問題だ。東京というか大都市の一極集中というものは何とか排除しなきゃいかぬということを考えるわけでありますけれども、これもなかなかこれをやればといういい手段というものはないのですが、何かいいお知恵がありましたらひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  71. 森口親司

    ○森口公述人 いい知恵というのはなかなかないのですが、ただ、経済学者仲間では、やはり東京へ物をつくる企業までが集中することはないだろうということで、特別事業税などを課して、名前は悪いですが追い出し税といいますか、そして土地を売ってよそへ引っ越して操業するというような場合には、税制上の特典を差し上げましょう、そういうようなことを提案しまして、かなり注目を集めたのですが、これも結局は日の目を見なかったというようなことがございますですね。やはり税制を国家的な見地から大いに活用するということに尽きるように私は思います。
  72. 田名部匡省

    ○田名部委員 時間でありますので、これで終わらせていただきます。  公述人の先生方、大変ありがとうございました。
  73. 綿貫民輔

    ○綿貫委員長代理 次に、菅直人君。
  74. 菅直人

    ○菅委員 きょうは三人の公述人の皆さんに大変貴重な意見を聞かせていただきまして、ありがとうございます。  それでは、社会党・護憲共同を代表して、幾つかの質問を公述人の皆さんにさせていただきたいと思います。  最初に、藤田先生のお話を聞きまして、共感する部分が非常に多かったわけです。それで、今の我々がやるべき最大の問題は、豊かな生活をいかにして実現していくか、それだけの経済力を持ちながら現実には豊かさを感じられない、あるいは単に感じられないというよりは、私はやはり必ずしも豊かな構造になっていないということだと思うわけですけれども、そういう中で私なりに、なぜこういう豊かになり得る条件を持ちながらできないのだろうか。先生が言われたこととも非常に共通する面が多いのですけれども、やはり一つは、空間と時間ということが日本の今の社会は非常にうまくいっていない。しかも、その空間と時間という問題は、例えば国際的な圧力によっていろいろそうせざるを得ないというようなことというよりは、どちらかといえば国内政治の中で、それはなかなか今までの経緯の中で難しい問題はあるにしても、国内政治の中でやり得ることがたくさんあるのにそれがやれていない。例えば土地の値段なんということも、先ほども先生の方から経企庁の数字としてアメリカに対して百倍ということがありましたけれども、これも別にアメリカが日本の土地を高くしているわけじゃないわけで、どちらかといえば日本がアメリカの土地を高くすることはあっても、その逆ではないわけであって、私は何とかやりようはあると思うわけです。そういう中で、先生が言われたいろいろな問題がありますけれども、一体どうしていけばいいのだろうか。個別にも幾つかのテーマを挙げられましたけれども、そのあたりを少し、最初の話に補足をする形でも結構ですので、一体政治的になぜこんな状況になっているのだろう、これは我々自身が考えなければいけないことなのですけれども、先生などの目から見て、なぜそういう改革が進まないのか、そういう点について御意見があればお聞かせをいただきたいと思います。
  75. 藤田至孝

    ○藤田公述人 先生がおっしゃられたように、確かに人口が多い、国土が狭い、それが基本的に地価が高いということだと思いますけれども、日本と同じぐらいの人口密度を持っている国は、オランダですとかベルギーですとかあるいはシンガポールですとかほかにもあるわけでございまして、そのような国は日本のような土地の価格にはなっておらないわけでございますので、やはりこれは土地の政策が不十分であるということが一つあると思います。あるいはシンガポールのように国土の三分の一が埋立地であるというふうなことにも学ぶ必要があると思いまして、やはりこれから埋立地の増幅あるいは湾岸地帯の造成ということは、土地供給の大きな課題であろうと思います。  それからもう一つ、直接的に今回の大都市の土地の値上がりといいますのは、国鉄の赤字を解消するために国鉄が持っております土地をできるだけ高く売ろうという、そういうおかしな考えが地価をかなり上げたという点がございますので、私は、それは大変に遺憾であって、国鉄の持っておりまする土地は、例えば国が買い上げまして、公共的な立場から社会的な資本をそこにつくるというふうなことが非常に重要なのではないかというふうに考えます。
  76. 菅直人

    ○菅委員 私は、今先生が言われたことに加えて、日本には大都市の政策というのが、都市政策というのが基本的に組み立てられてこなかったのではないか。今も先生も言われましたけれども、日本の場合、土地が狭いから高いと言われると、何となく納得をしてしまうようなところがあるわけですが、実際はそうではなくて、人間が住む広さとしては、例えば東京圏にしたって相当の空閑地は残っているわけで、ただ、それをどういう形で使うのか、公園として残すのかあるいは畑として残すのか、あるいはそのうちの何割かは住宅地にするのか、そういうふうな大都市としてどういうふうに土地利用をするかという観点があればもっといろいろな政策がとれたのだと思うのですが、なかなか都市政策というものの議論にならない。ふるさと創生論もいいのですけれども、ややもすれば大都市問題を放置する言いわけにふるさと創生論が使われて、大都市に住む、首都圏だけでも三千万、全国でいえば半分を超える国民が住んでいる地域の問題にならないのが大きな原因だったのではないかと私なりに感じているところですけれども。  先ほど藤田先生がおっしゃった中で、もう一、二点お聞きしたいのです。消費税の問題と同時に厚生年金のことを幾つか挙げられて、特にスウェーデンでしたか、部分年金制度が別建てのような形である、日本でも雇用保険を活用してそういうものを考えたらどうだというようなことをおっしゃられたと思うわけですが、大変興味深い話でありますので、できればもうちょっとこのあたりを、今回政府が出そうとしている年金制度の問題も加えて、御意見を聞かせていただければと思います。
  77. 藤田至孝

    ○藤田公述人 それでは、まず年金の問題にお答えする前に、先ほどの土地の問題を補わせていただきます。  欧米は大体通勤圏というのは百キロ圏でございまして、日本でいいますと、水戸と宇都宮と高崎と熱海を結んだ線が通勤圏ということになるわけでございます。時速が大体六十マイル、百キロで一時間通勤というのが大体通勤圏でございます。そういう点からいいますと、日本はまだまだ空間はあるわけでありますけれども、例えば運輸、交通の機関が不便であるというようなことから国土が狭くなっておるわけでございますので、今回通勤費を二万六千円から五万円まで減税にしたということは大変賢明なことであったというふうに思います。  それから、今の都市再開発、まさにおっしゃられるとおりでございまして、山手線の中でも七割以上がまだ一階建てだとかというふうに言われておりますので、都市再開発をすれば、東京はまだまだ土地が余るというふうに考えられるわけでございます。  その次の年金のことでございますけれども、結局これは先ほども申し上げましたように、例えば六十五歳以上を高齢者ととれば、高齢者の数は六十五年先までもうわかっているわけでございまして、結局子供が減るということなのでございまして、だから六十五年先までの高齢者あるいは成熟度などは確実に予測できるわけでございます。そこで、どうしても六十五歳からへの年金支給引き上げということは、結局自分たちが子供を持たなかった結果をしようわけでございますので、私はやむを得ない。そこで就労と年金というものをソフトランディングさせなければならない。そのためには、一挙に六十五歳への定年延長ということが難しゅうございますので、国も年金で援助をする、企業雇用で協力をするという、両方が協力し合って六十五歳の定年、六十五歳の年金支給というものを実現する。そのためには、今世界の中を見渡してみますと、スウェーデンその他の国で導入して成功しておりまする部分年金・部分賃金あるいは部分引退・部分就労という、そういう制度を導入するのが一番いいのではないか、そういう意見を申し上げたわけでございます。
  78. 菅直人

    ○菅委員 もう一点、藤田先生にお聞きしたいのですが、先生のお話の中で出生率の低下ということが、この年金制度だけではなくて、日本社会の大きな傾向として社会の変化に大きな影響を与える。私も年金制度などを議論していて、その出生率の低下ということが非常に気になるわけですけれども、一方、最近はDINKSなんという言葉があって、共稼ぎで子供は持たないで、ある意味では自分たち自身の人生を満喫するというのでしょうか、そういうふうな言葉がかなり広がるように、そういう生活パターンをとられている人もいる。  実は、もう二、三年前になりますけれども、社会党、公明党、民社党、社民連四党で育児休業法という法律を参議院に提出しているわけです。これはもちろん女性の就労といいましょうか、そういうことが大きな要素であるわけですが、同時にそのことは、働く女性が子供を産んで育てやすい環境を社会的につくっていく、そういう要素も非常に大きくあるわけでありまして、今回、連合という労働組合のナショナルセンターが政策課題として重点を置いている幾つかの中の一つにも入っているわけです。その産めない理由ということを先ほど一部言いかけられて、若干時間がなくてはしょられたようですけれども、この子供の出生率の低下の原因、そしてそれに対して何らかの対応すべき政策があるとすれば、どういう政策を考えられているか、その点をお聞かせをいただきたいと思います。
  79. 藤田至孝

    ○藤田公述人 お答え申し上げます。  確かに出生率の低下は、単に社会保障だけの問題ではございませんで、これからの経済成長あるいは財政全体の変化を導いておりまするいわばマッチの役割を果たしているものと私は考えております。  そこで、今先生がおっしゃられたように、育児休業法によりまして、婦人が働きながらあるいは子供を産みながらあるいは子供を育てながら就労も可能とされる、そういう道を開くことこそ出生率を高めるという基礎的な条件であろうと思います。今女の人は進学率も高くなっておりまするし、あるいは現在の婦人の社会的な機能は妊娠と出産である、子供を育てるということは男と共有的な機能であるというふうにも言われております。そういうことで、結婚しても、子供が産まれても働き続けるといういわゆるスウェーデン、アメリカ型のそういう就業形態というものがこれから導入をされると思います。そのような中にありまして、このような育児休業法をつくりまして、そして子供を育てながら、あるいは子供を産んだその直後だけ休んで、また賃金やその地位を失うことなく戻れるような、そういう制度を導入されれば、私は出生率の回復にある程度の役割を果たすのではないかというふうに思います。
  80. 菅直人

    ○菅委員 ぜひこのことは与党の皆さんにも、今の先生のお話を含めて考えていただきたいと思うわけです。私どももこの野党四党の案を考えるときに、今先生が言われたように、出生率のことというのはなかなか、産めよふやせよなんという言葉を出すと、何かちょっと別な、戦前のイメージが残っているわけですけれども、やはりバランスのいい社会を維持していく上でそういった観点も必要になっているのではないか。多少聞きかじりですが、フランスかどこかでは、第何子以降の子供が産まれた場合には、税金でそういうことに対してフォローするとか、そういうこともあるように聞いていますし、そういうことも政策課題として与党の皆さんも含めてぜひ考えていただきたいと思います。  それでは、森口先生に幾つかお尋ねをしたいのですが、先ほどマクロ経済という立場で現在の景気なり中期的な見通しをいろいろ解説いただいたわけですが、かなり最近日本の経済に対して楽観的といいますか強気というのでしょうか、そういう見方が広がっているように私も受けとめているわけです。なかなかこれは予測は難しいのでしょうが、どこまで日本の経済的な強さというのが継続し得るのか。今世紀中は大丈夫だろうとか、あるいは中には二十一世紀の半ばぐらいまでは強いのではないかとか、先ほどはスーパーコンペティティブですか、まさにどの国にも負けない競争力を持ってきた、その構造はなかなか崩れないのではないかといろいろ言われているわけですが、逆に先生のそういう中長期の見通し、大変難しいかと思いますが、御意見を聞かせていただければ、お願いしたいと思います。
  81. 森口親司

    ○森口公述人 私は専門が短期の経済予測ですから、余り中長期はあれなんですけれども、今の国際社会を見渡してみますと、競争力とか経済のパフォーマンスがいい悪いというのはあくまで相対的な関係でありまして、アメリカだってそうむちゃくちゃ悪くはないのですが、日本に比べるといろいろと問題が多い、そういうことなんですね。ヨーロッパ諸国とも比べますと、やはり日本が一九六〇年代以降特に理工学系の教育に非常に重点を大きくシフトした。これはアメリカもケネディはやったのですが、日本ほど徹底してなかったということがあったかと思います。大学の工学部の定員数はアメリカを絶対数で上回っておりますし、そういったことに加えて、先ほど別の公述人の方が日本の児童は五時間も強制労働させられているなんて言っておられましたが、やはり子供のときからよく勉強する同質性の高い大量の日本人がお互いに協力して支え合っているということは、他の国々には見られないことだと思うのですね。中国、ソ連、そういった社会主義国が現在大いに自由化の方向で近代化を図ろうとしていますが、日本から非常に学びにくいというのですね。余りにも隔絶したところがある。私は何も日本が特殊的に優秀であるとかいうことを申し上げるつもりは毛頭ございませんが、たまたま歴史的な環境としては非常にいい状況にあって、特にそれがハイテクノロジーの進行を図る上で鬼に金棒のような状況にあるということだろうと思います。  いつまで続くかということについては差し控えます。
  82. 菅直人

    ○菅委員 今先生が技術系の学生数がアメリカよりも絶対数でも多いというふうに言われたわけですが、その話でちょっと頭に浮かんだのは、最近は技術系の学校を出ても、商社とかあるいは場合によったら証券会社の研究所とか銀行とかで、いわゆる製造メーカーに行かない学生が非常にふえている。そういう話を大学の関係者によく聞かされまして、私ももともと技術系の学校を出たのですが、余り技術と関係ないところにやってきているのですけれども、そういう意味で、日本の産業構造がお金を動かす証券会社、銀行、そういうところが高い給料を払ってどんどん人を集めていく。しかし、今現在一番強いとされているエレクトロニクスとかそういう製造的な分野には、少なくとも証券とかそういう分野に比べれば、かなり大企業同士であっても賃金格差がありますから、そういうところに相対的に人が行かなくなっている。あるいはこの道はアメリカが通ってきた道なのかなという気もするのですけれども、そういうふうな変化も含めて、いい要素は先ほどから幾つかお聞きしたのですが、日本が抱えている不安材料といいましょうか、そういうものはそういうことを含めてないのかどうか、御意見があったらお聞かせをいただきたいと思います。
  83. 森口親司

    ○森口公述人 ありがとうございます。今御指摘になった点は、私が本当は申し上げなくてはいけないポイントでございまして、今の日本のこれからの問題というのは、確かにアメリカでビジネススクールの卒業生あるいはロースクールの卒業生がうんと高い給料を稼いで企業経営者の近道である、なかなかエンジニアリングデパートメントにいい学生が行かないということを聞いておりますが、日本の場合はなぜそうなっておるか。事実として確かにそうですね。一部の週刊誌等も盛大にキャンペーンしていまして、同じ年次の卒業生仲間で文科系と理工系を比べると生涯所得がどうも何割か低いようである。事実、技術職が就職する企業はかなり構造不況業種が多かったわけでございます。一方、なぜ文科系の銀行、証券会社あるいは保険会社が給料が高いかといいますと、これはまさに構造調整政策と大いに関係がございまして、これらの金融保険業界は日本の代表的な規制産業なんです。そこでは自由競争が行われておりません。大蔵省銀行局、証券局等の規制下にあって、よく言えばいわゆる護送船団方式で、弱者を、落ちこぼれを出さないようにしている。そういうところから高収益を上げている優良企業は給料がどんどんよくなるということがございますね。  一方、アメリカでは、一九八七年、一昨年の株価の暴落以降、実はウォール街が構造不況業種になってしまって、そういうMBAといいますかビジネススクールを出た人々の行き場も少なくなった。一方、エネジニアリングスクールをもっと活発にしようということにも国が重点を置き出していますから、その意味では、今のままですと、日米のアドバンテージの位置は逆転しかねないということは言えるかと思います。  ただ、こういう現在規制を受けている金融保険業界は、いずれ遠からず自由化されますから、私は大きな問題であるとは思っておりませんが、しかし、率直に申しまして、規制撤廃、自由化のスピードが余りにも遅過ぎるのではないかと考えております。
  84. 菅直人

    ○菅委員 それに、先ほども森口先生の最初のお話の中に、日本の中長期的な視点の中で、財政再建のめどは日本もほぼ立ってきた、ただ構造調整がまだまだこれからだ、そういう中にあって単年度主義的な今の予算のあり方にいろいろ問題点が多い、こういう指摘をきれたわけですが、私どもも、その単年度主義のために、どうも三月になるといやにあちこち穴が掘り起こされて、なぜかなと思うと、そろそろ年度が終わるからだとか、あるいはそういう関係の労働組合の皆さんの話を聞くと、年度初めは工事の実施は全然できなくて、設計とか見積もりとかが非常に忙しい、年度の終わりごろになると、今度はその部門はまるっきり暇で、非常にむらがあるなどという話も聞くと、どうもやはり単年度で物事を考える今の予算の方式というのはいろいろ矛盾があるのだなということは実感をしているわけですが、ほかにも問題点があるとすればどういうふうな問題点があって、あるいは改善の余地があるとしたらどういう形の改善策があるか、御意見を聞かしていただければと思います。
  85. 森口親司

    ○森口公述人 予算執行面で我が国の財政制度が既に単年度の建前から多年度化していることも事実でございます。例えば、特に防衛関連費では国庫債務負担行為ということで延べ払い的な、契約はしますが、将来にわたって支出を続けるという契約をするわけですね。それからまた、昨年、一昨年の決算、二年前までの決算から生ずる剰余金等が次年度に繰り越され、さらにそれを超えて次々年度に繰り越されるというようなことも行われているわけでありますし、それから国債整理基金でもって一般会計の公債金あるいは国債管理上の費用の出し入れなども行っている、こういうことでありまして、実質は相当多年度化しておりますので、私はそれにもう少し建前を与える。特に公共事業等を一年ごとに仕切ってしまうということは、今菅直人さんがおっしゃったように、多くの弊害を生んでいるわけです。少なくとも気候に合わせて財政年度の実行を北海道と九州とで分ける、そういったことも考えるとか、それからそういう国債整理基金のような考え方を公共事業についても考慮して、三年ないし五年の中期的なホライズンで支出計画を立て、その実行等について景気政策との関連で若干の弾力性を持たすというようなことは、それほど大きな制度的な変更なしにできることではないかというふうに思っております。
  86. 菅直人

    ○菅委員 時間が少なくなりましたけれども、それでは高田公述人に。  高田さんの話を私も聞いておりまして、確かに言われること、同感する部分も非常に多いわけですけれども、同時に、特に教育の問題をいろいろ費用の問題を含めて言われておりまして、教育議論というのは本当に難しいなという感じがしております。私にも子供が二人おりますけれども、自分の中学時代を思い出してみると、私などは団塊の世代の入り口で、五十八人ぐらいのクラスが十八クラスぐらいあって、一学年で千人ぐらいの中学校であって、運動会をやろうと思うと運動場が満員になりかけたというような記憶があるわけです。時々小学校に出かけていくと、狭いクラスに四十五人も生徒がいると、クラスが狭いせいもあって確かに大変だなという思いもするのですが、五十八人のときよりは少しはよくなったかと思っても、よくなったのか悪くなったのか、実感としては何とも言えないようなところも感じるわけですね。もちろん多くていいと言っているわけじゃないのですけれども、何かそういう財政的な問題、制度上の問題ということを超えて、今の社会の傾向が、先ほどたしかあれは藤田先生ですか言われましたように、子供にも労働基準法を守らせろという話がありましたけれども、何か親なり学校の先生が子供を見て言うのは、学校に行け、勉強しろ、その二言以外には何も言っていないようなところもあって、では何のために学校に行け、何のために勉強しろ、それを言う言葉がなかなか見つからないという感じも、これは私自身の経験を含めて思うわけです。そういったところ、婦人の立場ということもあると思いますが、教育の現状についてどういうふうにお考えか、考えがあったち聞かせていただきたいと思います。
  87. 高田公子

    ○高田公述人 先生のおっしゃるように、一昔前の子供たちは本当に数十人の中でも育っていったじゃないかということはよく聞きますが、敗戦後のあの混乱のときには、やはり子供たち自身も非常に精神的にもさまざまな中で飢えていて、学校へ行ってみんなで一緒になる、それで友達同士が一つのところで学び合うというのが大きな喜びであったと思うのです。だから、勉強の大嫌いな子供も含めて学校へ行くのが楽しみであった。そこに今との違いがあるのじゃないか。今は、やはり子供たちが退廃文化の中に囲まれて一人一人が精神的にも非常に飢えておりますし、さらに偏差値輪切りの新幹線授業の中で落ちこぼされて、いろいろな意味で子供たちが非常に孤立した状態に置かれている。そういう中で、先生たちの目が行き届かなければ必ず子供たちの中に非常に大きな精神的な負担がありまして、今登校拒否とか、そして高校中退とかというのが非常にふえているというふうに思います。
  88. 菅直人

    ○菅委員 それでは、時間ですので、これで終わります。
  89. 綿貫民輔

    ○綿貫委員長代理 次に、水谷弘君。
  90. 水谷弘

    ○水谷委員 三人の公述人の皆様、大変貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございます。限られた時間でございますので、多くはお伺いできませんが、よろしくお願いしたいと思います。  最初に藤田公述人にお願いをいたしたいと思いますが、大変大事な示唆をお与えをいただきまして、私どもまことにそのとおりであろうと感じている次第でございます。豊かさを実感できないという、国民の大多数が今そんな実感をされているのだろうと私は思います。  総理府が一月二十九日に発表しました「経済構造調整に関する世論調査」の中でも、世界最高水準国民所得を生活の豊かさで実感をしているかどうかというこの問いに対しまして、実感しているという人は二二・四%、実感していないという人は六九・二%、七割の方が豊かさを実感をすることができない、この数字は政府が行った世論調査でもございます。私は実態を明らかにしているものだろう、このように感ずるわけでございます。  そういう意味で、先ほど何点かお述べになりました中で、特に私二点ほどお尋ねをしたいと思います。  高齢化社会に対する対応の中で、年金とか医療とか重要な部分はたくさんございますけれども、雇用の確保といいますか、生きがい、働きがい、健康で社会に貢献をしたい、そういう方々の要求にこたえるという上からも、やはりその労働の場を確保するという観点から、労働時間の短縮という問題が非常に大事になります。さらには豊かさを実感するという上からも、自由時間をどのように生活の中で確保できるか、そういう観点からも、この労働時間の短縮というのは、いわゆる国際化の問題だけではなくて、我が国の二十一世紀を迎える社会構造をつくり上げていく中で私は非常に大事な観点だと思うわけであります。しかし、これは言うはやすくして行うはなかなか難しい。我が国の社会構造、また生活習慣、さらにはその上に賃金水準が非常に低い、また日給月給というような体制、一日働かなければ給料をもらえない、そういういわゆる労働環境の中で、千八百時間へ、現在の二千百時間から五年のめどでそこへ誘導する、非常にこれは難しいことだな。さて、どのようにこれが誘導できるのか。残業時間を減らすとか有給休暇の拡大とか完全消化とか週休二日制の定着とか、または一部検討されているようでありますが、長期休暇を義務づけるバカンス法等々、いろいろな形でこれを誘導しなければならぬわけでございますが、先生のお考えをお聞かせをいただければありがたいと思います。  もう一つは、この豊かさを実感できないという中には、やはり生活費に非常にお金がかかり過ぎる。先ほど余暇のためにこれほど高いコストがっく国はないとおっしゃっておりますが、それだけではなくて、日常の生活の中でそれを送るために大変にコストがかかる。言われておりますアメリカの価格、日本を一〇〇とすればアメリカの物価水準は七〇、西ドイツは八〇、このような数字も出ているわけでございますが、この物価に対する政府の取り組みとして具体的にどういう取り組みをしていくべきであるか、先生のお考えをお聞かせいただければありがたいと存じます。
  91. 藤田至孝

    ○藤田公述人 確かに先生がおっしゃられますように、豊かさを実感できないその二つは、自由時間のゆとりがないということと物価が高いということが大きな要因であろうと思います。  その中でも、特に雇用の確保ということ、これは豊かさの基礎でございますので、これがなければ、生活の豊かさというのはその上に建てられる建造物でございますので、そういう意味で、今後とも経済の景気を維持し、そして雇用を確保するということが基本であろうと思います。特に、現在我が国は有効求人倍率が一・一を超えまして、いわばオイルショック以前の労働力不足経済に入ったわけでございますけれども、それでは希望する人は就職の口を発見しているかというとそうではございませんで、いわゆるミスマッチ問題というのがございますので、やはり教育訓練というようなこと、あるいは労働移動に対するいろいろな住宅の対策でありますとか、そういうことを今後ますます力を入れていかなければならないと思います。  その雇用が確保されました上で、今度は労働時間を短縮するということでございまして、今先生もおっしゃられたように、今政府も組合の方もそれぞれあと五年で今の二千百十時間くらいを千八百時間にしようとしておるわけでございますが、やはりそれには何といいましても完全週休二日制を導入する。そのために労働基準法も改正されているわけでございます。それから二番目には有給休暇を完全取得させるということでございます。それから三番目には残業を減らすということでございます。  その中でも、特に週休二日制が当面基本になろうと思うのでありますけれども、この週休二日制、実は大企業では大体半分以上が行われておりまして、結局、日本の時短問題といいますのは中小企業の問題でございますので、それは今先生がおっしゃられたように、日給制で時間短縮をすれば、そのまま減収につながる、そういうことがあるわけでございますから、労働者の方もこれを受け入れられないという実態があるわけでございます。  そこで私は、そういう中小零細企業につきましては、いろいろな国の近代化融資でございますとか、あるいは今もやっておりますけれども、手形の日にちを短縮しそれを守らせるとか、そういう中小企業、零細企業の保護、特に下請関係の保護ということを十分にやっていかないと時短はとても進まないということが一つございます。  それから、今度は労働基準法によりまして、変形労働時間という制度が導入されましたので、ヨーロッパもそうでございましたのですけれども、一日八時間以上働きまして、それでもう一ですから、出たときは八時間あるいは八時間ちょっと働く、それで土曜、日曜あるいは週二日休むという、それが時短の方向でございますので、日本もそういう形で時短を進める必要があるだろう。そのためには、国としてやるべきことは、やはり社会資本の整備に尽きるということが私の考えでございます。  それから、二番目の物価でございますけれども、やはり何といいましても土地が高いためにお店の借り賃が高いということでございまして、今おもしろい現象が起こっておりまして、商店街を土曜とか日曜に回りますと、閉めている店とあけている店がございます。閉めているのは自分で店を持っている人かあるいは建てて自分でそのローンを払い終えた人が休んでいるのですね。それで土曜も日曜も年間全く休みなしで働いているのは、そういう土地を借りている人、家を借りている人で、それは非常に家賃が高いためにとても休めない、そういう現実があるからでございます。
  92. 水谷弘

    ○水谷委員 ありがとうございます。  まだまだお尋ねをしたいのでございますが、時間の関係で次に森口先生にお願いをしたいと思います。  貿易黒字の縮小という、これは今の我が国にとっては大変大きな問題でございますが、この点について、先ほど我が国の持てる超輸出競争力等々が中心になって輸出のオーバードライブの問題を挙げられました。しかし、どうしてもこれは克服をしなければならない。そういう意味から、先ほどいわゆる中期的にも国内の需要をさらに伸ばしていかなければならぬ、こういうお話があったわけでございます。  このような命題をしょって、なかなかこの実効が上がらない、なかなか具体的に減らない、そういう点についていろいろな反省点があろうと思います。それでより積極的な、今藤田先生にもお尋ねをしたわけでございますけれども、我が国の二十一世紀を迎えるにふさわしい社会構造を整える、そういうところに財政の出動を思い切ってやっていくことによって内需を積極的に喚起をさしていく、こういう観点から見ますと、ことしの予算は、私もちょっとこれではなかなかその目標に向かっての本格的な前進とは思えないな、こう思うわけであります。まだまだこの一、二年の政府予算を組んでいるその背景には、経済成長率三%時代に入ったとここ一、二年言いながら、ことしも先ほど御指摘があったとおり四%という若干低目に成長率を抑えている。これはやはりこの経済成長率、適正な見通しとそれに合ったいわゆる予算の歳出の組み上げ方、こういうものが適切に行われていかないと、私は予算の効果というものが十分に発揮されてこないだろうと思うわけでありますが、そういう観点から、ここ六十一年、六十二年、六十三年と、税収の伸びについても大変な見通しの誤りをしております。大変な税収、自然増収の伸びを見せているわけです。ことしの予算の中にも、既に予算の中に自然増収の伸びを五兆九千億から見込んで組み込む、こういうふうな実態でありながら、なかなか本格的に内需を拡大させるという方向に予算が機能しない。そういう点を踏まえた上で、先生から、どのようにもっと積極的な内需拡大の方向性を打ち立てていくべきか、お考えがございましたら教えていただきたいと思います。
  93. 森口親司

    ○森口公述人 今年度は、先ほど私申し上げましたように、国内民間需要が結構強うございますから、現在審議中の予算案でも何とか五%成長はいくんじゃないかと思うのです。ただ、問題は中期的な観点からですが、やはりそれを従来型の公共事業中心の、しかも国の行う公共事業中心財政政策ではまずかろうと私は思います。せっかく行革あるいは財政再建の方向で努力してきた努力が水の泡になりかねませんので、今後はやはり地方分権化の方向で地方自治体により多くの裁量の余地を与え、そこに財源をつけ、そこで民間と地方自治体とが一体となっていいプロジェクトをつくっていくということではないかと思います。  ただ、余暇産業を、国がどんどん金を使って、あるいは地方自治体にしても各地にどんどん何か安い民宿だとかペンションを建てればいいというふうな意見もございますけれども、それは私それほど簡単ではないと思うのです。というのは、我が国のレジャー産業というのはどうも構造不況産業になりかねない状況にあります。つまり現在、若い人たちのレジャー志向を見ると、国内旅行なんて行かないですね。海外に行ってより高い円の購買力をエンジョイする。しかもグアムや韓国に行く方が北海道や九州に飛行機で飛ぶよりも安いということがある。つまり交通運賃の水準が非常に高い。これも日本の高物価の一つの側面でございます。  そういうことで、地方分権、地方経済の振興に努めると同時に、思い切った交通政策の自由化を行い、そして運賃体系を思い切って値下げする方向で、これは通信も一緒ですが、NTTは随分電話料金の値下げをやっているといいますし、事実少しずつですが値下げに努めていますが、依然として日本の国内の電話、特に長距離電話の逓減率はアメリカなどに比べると非常に低いわけですね。  こういうことで、単に公共事業を地方に分割して地方レベルでどんどん工夫をするというだけではなくて、それに見合った交通運賃体系の抜本的な改革ということも必要だと思います。
  94. 水谷弘

    ○水谷委員 ありがとうございました。
  95. 綿貫民輔

    ○綿貫委員長代理 次に、玉置一弥君。
  96. 玉置一弥

    ○玉置委員 民社党・民主連合の玉置と申します。  きょうの公述人の三人の皆さん方、大変御苦労さまでございます。ありがとうございます。いろいろ参考になる御意見を承りました。特に藤田先生の方から、豊かで活力のある生活、これに対して政府予算の方が若干手ぬるいのではないかというよりも大変不足をしておる、こういうふうにも我々も思うわけでございます。また森口先生の方からは、労働時間の短縮、これがこれからの最大の山である、山といいますか、これから経済がまさに豊かになるかあるいは生活が豊かになるかというポイントでもあろうというような感じで私は受けとめさせていただきました。また高田さんの方からは、大変手厳しいいろいろな御批判があったように思います。  しかし、全般を通じて考えていきますと、裏返してみれば、豊かな生活が求められていて、一方ではまだ名目上しか世界の最高水準にないではないか、こういうことでございます。我々の方も、千八百時間年間労働時間というのがございまして、一つは千八百時間がいかに大変なものであるかということが国民の皆さんに意外と知られてない。また文教関係の方では、生涯教育が昔から論じられていながら、制度的なものあるいは施設的なものというものがなかなか充実をしていかない。こういうことで、つい最近になって出てきたような感覚を受けるわけでございますけれども、実際は十年以上前からこの生涯教育なりあるいは余暇利用というものが論議をされてまいりました。むしろもっと速いペースで追い込んでいかないと、千八百時間の残りが余暇になるわけでございますから、余暇が拡大されるわけでございますから、これに対応できないのではないかというような心配もございます。  そこで、ある程度的を絞って御質問いたしたいと思います。  今ありました生涯教育といいますか豊かな生活、豊かな生活をするために確かにお金も十分入ってこないといけないと思いますけれども、一つは物質的な満足感と、あと心の満足感というのがございます。物質面におきましては、金額で受け取るのも確かに満足感かと思いますけれども、実際に今住んでいる住居あるいは生活環境、こういうものがどのレベルにあればいいのかということが一つ。それから心の満足という意味で、自分たちが十分に余暇を楽しめるということ、あるいは先ほどのお話にありましたように、家族連れでどこかに出かけていって親兄弟と一緒に過ごせる時間がふえるということ、いわゆる核家族が今進んでおりますけれども、これに対応してそういう生活ができるということ、いろいろあると思いますけれども、この心の面での豊かな生活、これを実現するために、これから政府に対し、特に予算上あるいは国会を含めて日本の政治がどういう方向で論議をされていけばいいのか、その辺についてお伺いをしたいと思います。  間口が広いですから、要点だけで結構でございますから、よろしくお願いします。では、藤田公述人の方から順次お願いします。
  97. 藤田至孝

    ○藤田公述人 まず物的な施設の面でございますけれども、例えば私一昨年ジュネーブで一年間家族と過ごしましたのですが、例えば大きなスケート場が二つとプールが二つある大きいジュネーブの市民スポーツ会館のようなものがございまして、ここの入場料が一日いて三フランでありますから三百円ということでございます。ですから、そういう余暇を過ごす施設に行ってもほとんどが公共施設でありまして金がかからない。もちろんお金のある人はもっとスキー場でありますとかリゾートとか行くわけでありますけれども、とにかくお金がなくともそういう公共施設で余暇を十分楽しめるという、そういう施設が必要なんじゃないかと思います。もう一つ私がそのとき思いましたのは、例えば夏は屋外のテニス場なんですけれども、冬になって非常に寒くなりますと、そこに大きいテントを張りまして室内テニス場になるんですね。ですから、日本もこれだけの技術を持っているわけでございますから、そのぐらいのことはできるんではないかというふうに思います。  それから、一番問題なのは心の豊かさということでございまして、これは文化、体育、レクリエーション、趣味というふうな、あるいは先生が今おっしゃられた生涯教育、生涯学習、これによりまして、やはりそういう心の豊かさを伸ばせる、そういう機会と場所を得るということでございますけれども、そういう点では、今度文部省も社会教育局というのが生涯学習局というふうに名前を変えまして、まさにそういう変化に対応しておられるわけでございますけれども、やはり予算ももっとつけて、それから例えば今大学関係でいいますと、地域社会に対するサービスということをこの余暇の時代に対応していろいろ考えておるわけでございまして、それでいろいろな公開講座でございますとかあるいは施設の公開でありますとかいろいろやっておりますのですけれども、例えばそういうものに対して国の補助などがいただければもっともっと活用できて、そして市民の皆さんも余暇を十分エンジョイできるのではないかというふうに思います。
  98. 森口親司

    ○森口公述人 時間短縮の問題について簡単にお答えしたいと思います。  私は先ほどの陳述の中で構造調整政策はこれからが本番だと申し上げましたが、それは労働時間短縮を実現するのにはそれしかないと思うからです。どういうことかといいますと、一方で雇用確保と言いながら労働時間短縮と言ってもなかなか中小企業としては大変なわけでありまして、一方、勤労者の側はうかつに労働時間を短縮しますと、住宅ローンの金利が払えなくなるというようなことになるわけですね。結局、余暇をつくりながら同時に物価を下げて実質所得をふやすということをしなければ、私は実現不可能だと思うのです。  では、物価は下げられるかといいますと、やはり私は円高を利用して製品輸入をうんと活用する、それからまた円高メリットがまだ浸透していないような一部の業界では競争を促進してそれを進める、そういうことをして日本の物価をもっと下げる必要があると思うのです。経済学的にいいますと、例えば一ドル百二十円は行き過ぎだとして、例えば百五十円としましょうか、二百円でもいいのですが、二百円で見てもまだ日本の物価はアメリカあるいはヨーロッパよりも割高だ。これはある種の均衡化の力が働いて同じにならないといけないのですが、それの障害になっているいろいろな問題がございまして、一つが土地政策であり、一つがいろいろな国内の零細中小企業を抱える業界に対する保護の問題でして、やはりそれをなくさなければ物価は下がらないと思います。土地については、現在の土地税制は既に制度としてはかなりでき上がったものなんですが、実効上の問題がございまして、土地の価格が時価で評価されていないというふうなことから、休閑地を持っていてもまだそれほど税金を払わなくて済むというようなことから有効利用が阻まれているわけですね。そういうことで、土地税制を建前どおりに実行に移すというようなことなどをあわせますと、そういったことが可能になる、つまり実質所得の向上と時間短縮ですね、そういうふうに思います。
  99. 高田公子

    ○高田公述人 豊かさをどのように取り戻していくかという点では、一つはやはり今効率とスピードと能力を中心にしてすべての物事が、子育ても含めてですが、はかられているように思うのです。その物差しを、やはりもっと人間らしい考え方といいますか、そこらあたりが非常に一つ大事だなということと、もう一つは、やはり安心して子育てできる環境、そして安心して老後が過ごせる町づくりというのが大事ではないだろうか。そういう点では、私たち子育てしておりましても、夫と十分に話し合うこともできないような長時間労働に追いやられている。時短の問題とか住環境とか、そして子供たちが学ぶ教育環境とかというのも非常に大事になってくるのではないだろうか。  最後に、やはり一番安心して子育てができるというのは平和であって、だからこそ、今私たち母親は非常に核戦争の危機も感じておりますので、核兵器廃絶などして青い地球のもとで本当に安心して子育てしていきたい、そういう環境づくりを願っております。
  100. 玉置一弥

    ○玉置委員 森口公述人にお聞きをしたいと思いますけれども、今物価を下げるというお話がございました。労働組合のことしの傾向としては、時間短縮と賃上げを並行してやるというのがことしの傾向だというふうに聞いておりますけれども、私も会社におりましたときは、物価を下げるというよりも物の値段を下げるいろいろな専門的なことをやってまいりました。特に時間短縮になると、逆に原価を押し上げる要因にもなるわけです。設備の更新とかがうまく行えれば原価が下がらないこともないのですけれども、今の技術革新からいってある程度行き着いているような感がありまして、ごれをさらに追求をしていくということは大変な努力だと思います。確かにおっしゃるように、余暇の活用ということであれば、また雇用の拡大ということであればやれないことはないのですけれども、それをやるためには物価が上がってしまうように思うのですが、その辺についていかがお考えでございますか。
  101. 森口親司

    ○森口公述人 こういう問題があるのですね。例えば一部の電機メーカーの輸出品なんですが、国内で売っている値段と海外で売っている値段とが違う、いわゆる二重価格問題で、それで日本から海外に旅行するツーリストは、アメリカで牛肉とそれから例えばCDプレーヤーといったようなそういう機械を買ってくるということは、やはり問題なんじゃないでしょうか。つまり企業としてはコスト節減の努力はしていると思いますが、いいものをつくって海外では安く売りながら、国内の消費者には割高に提供しているということになっているわけですね、流通産業の問題がもちろんございますが。  それから、私が物価をもっと全体的に下げられると申しますのは、そういう国産品の工業製品の価格だけではなくて、むしろ輸入製品をどんどん活用する。労働組合でも、むしろ製品輸入をして、それを生協等で販売することでへうんと韓国製とかアジアのNIES諸国の製品を活用すれば随分安くてもいいものが使えるわけです。そうすると当然一部の企業はやっていけなくなるということはございますが、これが構造調整の最大の問題でありまして、それを余暇産業で吸収していく、第三次産業で吸収していくしかないというふうに思っています。
  102. 玉置一弥

    ○玉置委員 時間だそうでございますから、最後に、構造調整もこれは雇用の面から見て大変重要な課題でございますし、これから今度は産業間の構造調整とそれから雇用の関係ですね、これが非常に重要なポイントになってくると思うので、いろいろな面でまた御支援をいただきたいと思います。  また、先ほどの物価の話ですが、ことしはどうやら政府の方は公共料金を引き下げるというような面で見直しをやろうというのがございますが、我々の方も豊かな生活を目指すためには、実質的な効果を得るように物価の引き下げをぜひやっていきたいと思いますので、御協力をお願い申し上げて、質問を終わります。  ありがとうございました。
  103. 綿貫民輔

    ○綿貫委員長代理 次に、岡崎万寿秀君。
  104. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 公述人の方には大変御苦労さまでございます。日本共産党・革新共同の岡崎万寿秀です。私最後でございます。いろいろな質問ございましたので、私は国民世論との関連で質問をしたいと思うのです。  まず、消費税の問題で高田公述人にお伺いします。  今度の消費税、何といっても暮らしそのものに税金をかけるということに一番大きな問題があるわけです。戦後税制の特徴としまして、能力に応じて負担する応能負担原則とともに、生活費には税金をかけない、生活費非課税の原則があったわけです。これは生活権を保障しました憲法第二十五条に基づく原則でありまして、私どもはこれは戦後税制の中で非常に民主的な側面だろうと思うのです。そういう点から見まして、暮らしそのものに税金がかかれば、暮らしを預かる婦人、主婦にとっては一番の被害者になるわけなんですね。  きのうの公述の中でお産の問題が話されていました。男にはわからない婦人特有の受けとめ方を、お産にまで税金がかかるということについて考えなくてはいけないという話でございました。確かに二十万の出産費用がかかると三%ですから六千円ですか、一つの生命がおぎやあと生まれるのに六千円の税金を払わなくちゃいけない。私も生命に対する冒浜であろうというふうに思うのです。そういう点から、きょうは婦人としてお見えになっている高田公述人に、婦人の立場から見て、この消費税の導入と四月実施についてどうお考えになっているのか、町の声を含めて聞かしてもらいたいと思います。
  105. 高田公子

    ○高田公述人 ここ最近の私たちの周りの反応といいますのは、本当に消費者不在といいますか、そして国民不在ということの怒りが非常に強くて、とりわけ税務署にいろいろ聞きたいというので電話をしても、全然税務署自体がわからないということで、本当に一番負担かぶるのは、今岡崎先生おっしゃいましたように、消費者であるにもかかわらず、政府もそして税務署も説明消費者に対してはない、業者とか大きな大企業にはいろいろ説明なさっているみたいですけれども、私たちには一切説明がない。消費者不在の、本当に消費者をばかにしたような税金ではないだろうかなという怒りと、広く薄く平等にと言われましたけれども、実際次々と明らかにされている中身を見ますと、JRにしましても、百二十円はそのままで、そして百二十円の方は一銭も負担しないけれども、そのかわりを百七十円の人がするということで、これで平等なのだろうかというような思いとか、実際私たちは、政府は安くなるものもありますよということで、毛皮とかそしてダイヤが安くなると言われましたが、それは私たちの家計からしたらほとんどプラスにはならない。また業者の方は既に売り惜しみなど始まっておりまして、実際に建築資材なんか手に入らないというような、四月前にしていろいろな形で消費者とか、そして中小零細業者が苦しめられているというような状態も出てきておりまして、本当に私たち、この消費税は廃止していただく以外に国民生活守れないのではないだろうかなと、町の周りの人たちの思いも、広範な婦人団体含めて何とかしてみんなで力を合わして廃止させようよということで、一昨日もマイナス二十二度の名寄でも署名集めなどをしたりして、今婦人たちは頑張っております。
  106. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 ありがとうございました。  では、続いて藤田公述人に消費税に関連してお尋ねいたします。  もとより私たちは反対でございますし、世論の圧倒的多数も反対でございます。私、きょう読売新聞のごく最近の消費税税制改革に対する全国の世論調査の報道をされた二月二十三日付を持ってまいりました。想像を超えて反対が多いんです。賛成はたったの四%、反対が三八%で何と十倍近い反対なんです。どちらかといえば賛成を含めて賛成は一七%で、どちらかといえば反対を含めた反対が何と七一%になっているんです。随分PRされているにもかかわらず、そして現に消費税法案が通った後にもかかわらず、反対が何と七〇%を超えている、賛成はたったの一七%にすぎない。これは自民党の支持者でさえも賛成は二八%、反対が五八%、倍になっているわけですね。これは国民がこの消費税については納得してない、認知してないということの証明だろうというふうに思うわけです。この消費税はまさに大衆課税でありますし、国民に納得されない、理解されない、認知されないようなこういう税制が果たして定着てきるかどうかについて大きな疑問を持っているわけでございます。先ほど藤田公述人のお話の中で、この消費税というのは未熟児である、その実施を凍結すべきだということをおっしゃいました。未熟児という点では全く同感でございますが、これは果たして凍結することによって成熟児になるものかどうか、本質的に未熟児じゃないか、そういうことも感じるわけでございますので、定着てきるかという問題と未熟児問題について御意見を聞かしてもらいたいと思います。
  107. 藤田至孝

    ○藤田公述人 私は税金専門家ではございませんので、私自身がもっと勉強しなければならないのでございますけれども、ただ、伝えられておりまする例えば東京都の水道料金の消費税の問題で、これを経営努力によって吸収したい、そういうことが言われております。あるいはタクシーの業界におきましても、これを経営努力で吸収したい、あるいは個人タクシーなどは例の三千万の限界の中で転嫁しないでやりたいというようなこともございます。そこで私は今日本で一番大事なことは物価の安定ということでございますので、そのような経営努力によって消費税を吸収したいということであれば、むしろそれを奨励するような政策が望ましいんではないかというふうに思います。  以上でございます。
  108. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 ありがとうございました。  では、続きまして森口公述人にお願いいたします。  先ほど消費税に関連して物価値上がりについてはプラス・マイナスであってそれほど影響がないだろうというお話がございました。私はそれ以外の消費税についての御見解を、先生は計量経済学の御専門だというふうに伺っていますけれども、経済学者の立場からお聞かせ願いたいと思うのですが、これまでも随分公述人の方々の意見陳述ございまして、これは欠陥税制だという話も随分ございました。幾つもの例が挙げられましたけれども、例えば帳簿方式、小倉税調会長自身がこれは要するに堕落した税制だというふうに言われたことがありますけれども、これは早晩EC型のインボイス方式に変わらなくちゃいかないんじゃないかという意見もございます。また税率が三%でとりあえずスタートしたわけでございますけれども、ヨーロッパの場合一〇%ぐらいで出発して、現在は大体一五%以上にEC諸国なっているわけでございまして、日本も早晩上がるだろうという話があるのですね。つまり手直しを前提とした仕組みの導入じゃないかという厳しい指摘もあるわけです。政府の方は政治的に今の内閣の間はやらぬと言っていますけれども、これは日本経済、税制、今の仕組みでやっていく限りでは、早晩欠陥税制の手直しが必要になってくるんじゃなかろうかと思いますが、先生の学問的な見地からこの問題をどうお考えか聞かせてもらいたいと思うのです。
  109. 森口親司

    ○森口公述人 余り時間がないようですが、それに私は税制専門家じゃありませんけれども、国民の一人として間接税の必要性は大いに感じているのです。今回導入されました消費税の当面のあり方としてはいろいろ欠陥がございます。これは小倉税調会長もおっしゃるとおりで、なぜ帳簿方式が必要かというようなことは私はよくわかりません。しかし、三%程度付加価値税を導入することで、私は新しい時代にマッチした税制の改正の方向は一歩踏み出せているのではないかというふうに思うのです。  新しい時代は何かといいますと、今までは物の生産中心の課税であったのですが、時代はサービス経済化の方向に向いている。それからこれまでは生産、GNP、国民所得中心の経済だったのですが、既に高度成長を三十年続けて国民の資産の蓄積も大きく、アセットあるいはストックの時代に来ているわけですね。人々の租税負担能力というのは、今や所得でははかれないわけです。むしろどれだけの物を使っているかということではかる方が妥当でありますし、所得税についても、随分と自営業、勤労者、農家等々の間で所得捕捉の不平等などが出ていまして、そういった点を補うという意味では、私は基本的に方向としては正しいというふうに思っております。
  110. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 ありがとうございました。  予算に関連して、リクルート疑惑の問題を指摘されたのは高田公述人お一人でございましたのでお聞きしますけれども、おっしゃいましたように、今政治不信、大変なものでありまして、ナクルート疑惑を抱えて税制改革を語る資格なし、予算を提出する資格なしというのは多くの声だと思うのですね。そういう御発言であったというふうに思うのです。私たちは、税制改革にしろあるいは予算の提出にせよ、それは政治の前提、やはり信頼が基本であるというふうに思うわけで、このリクルート問題の徹底解明なくしては政治の信頼を取り戻すことにならないというふうに思うわけです。御発言がありましたけれども、このリクルートの徹底解明、これがやはり政治の信頼を取り戻す前提だということ、そういう立場からの御発言をお聞かせ願いたいと思うのです。
  111. 高田公子

    ○高田公述人 私たちが思っている以上に国民の怒りは激しくて、先日もリクルート徹底究明の街頭署名に立ちましたら、もう何人もが駆け寄ってきて、田中元総理も逮捕することができたんだから中曽根元総理も何とかしてほしいとか、本当に訴えかけられるように言われました。主婦連合会とか地域婦人団体連絡協議会とかキリスト教婦人矯風会など日本じゅうのあらゆる五十の婦人団体が一緒になって今さまざまな運動を積み上げておりますが、その五十の婦人団体が一致しまして、   国民はいま、政治不信と怒りの渦の中から国会でのリクルート疑惑解明の行方をみつめています。   国会はリクルート真相解明を最優先課題として徹底的に究明し、国民の前にその真実を明らかにすることを、私たちは主権者として強く要求します。 ということを訴えまして、運動をやっておりますが、この婦人五十団体の思いは、やはり日本のすべての人たちの思いと一致するというふうに思います。  トカゲのしっぽ切りではなくて、中曽根氏の喚問を初めとして徹底究明をされる中で私たち国民の政治への不信を一掃していただいて、そして本当に信頼関係を寄せる中で私たちの大切な税金である予算審議に入っていただきたいと思います。
  112. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 これで終わります。
  113. 綿貫民輔

    ○綿貫委員長代理 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。以上をもちまして公聴会は終了いたしました。これにて散会いたします。     午後四時六分散会