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1989-02-27 第114回国会 衆議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年二月二十七日(月曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 大野  明君    理事 越智 伊平君 理事 近藤 元次君    理事 田名部匡省君 理事 山下 徳夫君    理事 綿貫 民輔君 理事 佐藤 敬治君    理事 村山 富市君 理事 宮地 正介君    理事 玉置 一弥君 理事 吉田 之久君       相沢 英之君    粟屋 敏信君       池田 行彦君    石渡 照久君       稲村 利幸君    上村千一郎君       大坪健一郎君    奥田 敬和君       海部 俊樹君    熊谷  弘君       倉成  正君    小坂徳三郎君       後藤田正晴君    左藤  恵君       佐藤 文生君    志賀  節君       砂田 重民君    高鳥  修君       高橋 一郎君    月原 茂皓君       野田  毅君    浜田 幸一君       林  義郎君    細田 吉藏君       谷津 義男君    渡辺 秀央君       井上 普方君    上原 康助君       川崎 寛治君    菅  直人君       新村 勝雄君    辻  一彦君       野坂 浩賢君    斉藤  節君       坂口  力君    冬柴 鉄三君       水谷  弘君    青山  丘君       楢崎弥之助君    安藤  巖君       石井 郁子君    岩佐 恵美君       岡崎万寿秀君  出席国務大臣         内閣総理大臣  竹下  登君         法 務 大 臣 高辻 正己君         外 務 大 臣 宇野 宗佑君         大 蔵 大臣  村山 達雄君         文 部 大 臣 西岡 武夫君         厚 生 大 臣 小泉純一郎君         農林水産大臣  羽田  孜君         通商産業大臣  三塚  博君         運 輸 大 臣 佐藤 信二君         郵 政 大 臣 片岡 清一君         労 働 大 臣 丹羽 兵助君        建 設 大 臣 小此木彦三郎君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     坂野 重信君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)小渕 恵三君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 金丸 三郎君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      坂元 親男君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 田澤 吉郎君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      愛野興一郎君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      宮崎 茂一君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 青木 正久君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 内海 英男君  出席政府委員         内閣官房内閣内         政審議室長         兼内閣総理大臣         官房内政審議室         長       的場 順三君         内閣官房内閣外         政審議室長         兼内閣総理大臣         官房外政審議室         長       藤田 公郎君         内閣法制局長官 味村  治君         内閣法制局第一         部長      大出 峻郎君         公正取引委員会         委員長     梅澤 節男君         公正取引委員会         事務局取引部長 土原 陽美君         警察庁刑事局長 中門  弘君         総務庁長官官房         審議官         兼内閣審議官  増島 俊之君         総務庁長官官房         会計課長    稲葉 清毅君         防衛庁参事官  小野寺龍二君         防衛庁参事官  福渡  靖君         防衛庁参事官  村田 直昭君         防衛庁参事官  鈴木 輝雄君         防衛庁長官官房         長       依田 智治君         防衛庁防衛局長 日吉  章君         防衛庁教育訓練         局長      長谷川 宏君         防衛庁経理局長 藤井 一夫君         防衛庁装備局長 山本 雅司君         防衛施設庁長官 池田 久克君         防衛施設庁総務         部長      弘法堂 忠君         防衛施設庁施設         部長      鈴木  杲君         防衛施設長建設         部長      田原 敬造君         防衛施設庁労務         部長      吉住 愼吾君         経済企画庁物価         局長      勝村 坦郎君         経済規格庁総合         計画局長    海野 恒男君         環境庁自然保護         局長      山内 豊徳君         国土庁長官官房         長       公文  宏君         国土庁長官官房         会計課長    嵩  聰久君         法務省刑事局長 根來 泰周君         法務省入国管理         局長      股野 景親君         外務省アジア局         長       長谷川和年君         外務省北米局長 有馬 龍夫君         外務省経済局長 佐藤 嘉恭君         外務省経済協力         局長      松浦晃一郎君         外務省条約局長 福田  博君         外務省情報調査         局長      山下新太郎君         大蔵省主計局長 小粥 正巳君         大蔵省主税局長 尾崎  護君         大蔵省証券局長 角谷 正彦君         大蔵省銀行局長 平澤 貞昭君         国税庁次長   伊藤 博行君         文部大臣官房長 加戸 守行君         文部大臣官房総         務審議官    菱村 幸彦君         文部省学術国際         局長      川村 恒明君         文部省体育局長 坂元 弘直君         厚生大臣官房総         務審議官    末次  彬君         厚生大臣官房審         議官         兼内閣審議官  加藤 栄一君         厚生大臣官房老         人保健福祉部長 多田  宏君         厚生省援護局長 花輪 隆昭君         農林水産大臣官         房長      浜口 義曠君         農林水産大臣官         房予算課長   東  久雄君         農林水産省経済         局長      塩飽 二郎君         農林水産省構造         改善局長    松山 光治君         農林水産省農蚕         園芸局長    吉國  隆君         食糧庁長官   甕   滋君         通商産業省通商         政策局長    鈴木 直道君         通商産業省貿易         局長      熊野 英昭君         通商産業省産業         政策局長    児玉 幸治君         通商産業省機械         情報産業局長  棚橋 祐治君         通商産業省生活         産業局長    岡松壯三郎君         工業技術院長  飯塚 幸三君         資源エネルギー         庁長官     鎌田 吉郎君         中小企業庁長官 松尾 邦彦君         運輸大臣官房会         計課長     永井 隆男君         運輸大臣官房国         有鉄道改革推進         部長         兼内閣審議官  吉田 耕三君         運輸省運輸政策         局長      塩田 澄夫君         運輸省航空局長 林  淳司君         郵政省郵務局長 田代  功君         郵政省通信政策         局長      中村 泰三君         郵政省電気通信         局長      塩谷  稔君         労働大臣官房長 若林 之矩君         労働省婦人局長 佐藤ギン子君         労働省職業安定         局長      清水 傳雄君         労働省職業能力         開発局長    甘粕 啓介君         建設大臣官房総         務審議官    木内 啓介君         自治大臣官房長 持永 堯民君         自治大臣官房審         議官      小島 重喜君         自治省行政局公         務員部長    芦尾 長司君         自治省行政局選         挙部長     浅野大三郎君         自治省財政局長 津田  正君  委員外出席者         参  考  人         (日本電信電話         株式会社代表取         締役社長)   山口 開生君         参  考  人         (日本銀行総裁)澄田  智君         予算委員会調査         室長      右田健次郎君     ――――――――――――― 委員の移動 二月二十七日  辞任         補欠選任   梶山 静六君     粟屋 敏信君   倉成  正君     石渡 照久君   田中 龍夫君     谷津 義男君   浜田 幸一君     高橋 一郎君   村田敬次郎君     月原 茂皓君   日笠 勝之君     斉藤  節君   吉田 之久君     玉置 一弥君   米沢  隆君     青山  丘君   佐藤 祐弘君     石井 郁子君   松本 善明君     安藤  巖君 同日  辞任         補欠選任   粟屋 敏信君     梶山 静六君   石渡 照久君     倉成  正君   高橋 一郎君     浜田 幸一君   月原 茂皓君     村田敬次郎君   谷津 義男君     田中 龍夫君   斉藤  節君     日笠 勝之君   青山  丘君     米沢  隆君   安藤  巖君     岩佐 恵美君 同日  理事吉田之久君同日委員辞任につき、その補欠  として玉置一弥君が理事に当選した。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  昭和六十三年度一般会計補正予算(第1号)  昭和六十三年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和六十三年度政府関係機関補正予算(機第1  号)      ――――◇―――――
  2. 大野明

    大野委員長 これより会議を開きます。  まず、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。  委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっておりますので、この際、その補欠選任を行いたいと存じますが、先例によりまして、委員長において指名することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大野明

    大野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  それでは、理事玉置一弥君を指名いたします。      ――――◇―――――
  4. 大野明

    大野委員長 昭和六十三年度一般会計補正予算(第1号)、昭和六十三年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和六十三年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題とし、質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。野坂浩賢君。
  5. 野坂浩賢

    野坂委員 きょう午後三時から、前総理記者会見を約三十分間おやりになるということが新聞その他の情報で伝わっております。  今、中曽根総理は、リクルート疑惑の中の焦点の一人でありますし、特に、証人としての喚問が各党から要求されておるというのが現状であります。中曽根総理は、できるならば記者会見をする前に、今は一国会議員でありますから、これらの証人要求を受けて、この場でいろいろとお話しになってほしいものだと私は考えております。これが一つでありますし、また、記者会見の内容をお聞きいたしますと、中曽根番記者のみに限られて、しかも人数が極めて制限されておるというふうに承知をいたしております。これでは本来の記者会見ということにはならないのではないのか、テレビも頭撮りだけだということになれば、この際、疑惑解明をするためにも、社会部経済部政治部皆さんもそれぞれ出て、いろいろな質疑等を行われるということが最も望ましい今日的な現状ではないのか、そういうふうに考えるわけであります。  したがいまして、これらについて、中曽根総理から竹下登と指名された竹下総理はどういうふうにお考えでしょうか。
  6. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 中曽根総理からは、一昨日、大喪の礼が終わりましたことについての私に対する慰労のお電話をちょうだいをいたしました。しかし、今おっしゃいました記者会見等の問題については、その際お話を伺うことはございませんでした。したがって、まあ証人という問題は、これはまさに国会でお決めになる問題でございますが、中曽根総理のきょう記者会見をなさるということについて、実は私も、けさも最後の外国の御大喪の参列の王家の方にお会いいたしましたので、中身はつまびらかにいたしておりません。したがいまして、私の方からとかくのコメントをすべき筋ではない、こういうふうにお答えをせざるを得ません。
  7. 野坂浩賢

    野坂委員 まあ総理も、弔問外交等で非常に多忙であったということはよく承知をしております。  そこで、委員長にお願いをしたいと思うのですが、今の状況というのは、リクルート消費税の一色というのが国民の関心の的であるわけであります。しかも、その焦点に立たれる一人、中曽根総理記者会見をするに当たって、三時で、まだ間に合いますから、ぜひ、本当の意味のオープンにした記者会見をやるように委員長として申し入れをしてもらいたい。お願いします。
  8. 大野明

    大野委員長 私はその立場にないから、ちょっとこれは質問の御趣旨もよくわからないし、どうかそれは他の機関で御協議いただかないと、私は委員長という立場で、ちょっとそれは無理だというふうに思います。
  9. 野坂浩賢

    野坂委員 それでは委員長委員長という立場というよりも、私の要求でありますから、昼、理事会が開かれます。だから、理事会等十分協議をしていただくということをお願いしておきたいと思うのであります。――黙って聞きなさい、言いたいことは言うんだから。  そこで、次に質問をしたいと思うのでありますが、労働大臣、あなたは週刊誌のインタビューに答えて、こう言っていますね。株をもらう、リクルートの株ですね、それはいかぬと思いますかということを聞くと、あなたは、あれはいかぬと思う。丹羽さんだったら受け取らないかと言ったら、ええ。どこがいけないんですかと聞くと、なぜ私のところに株を持ってくるのかわからぬ、何か目的がなければ株を売りにくるはずはない、とにかく、金でも株でも年に百万円とか二百万円とかの大きな額になったら、相手に何か意図があると思うべきだと思う、こういつてお答えになっておりますが、これはそのとおりですね。
  10. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 お答え申し上げます。  私の政治家としての信念を申し上げたところでございまして、何らリクルートを意識したものではございません。私は、今でもそういう考えを持っております。
  11. 野坂浩賢

    野坂委員 申し上げておきますが、リクルートに関連しての質問ですので、あなたはリクルート株を意識してそういって物を言っておるということだけを、時間がたちますから申し上げておきます。そんなに深く追及するわけではありませんから。  そこで、二十三日の新聞皆さんはごらんになったと思うのですけれども、名前を挙げてまことに恐縮なんですけれども有馬元治さんと浜田卓二郎さんの件が掲載をされております。一人は五十九年の十二月に三万株、後で一万株返したかどうかは別にしまして当時三万株。有馬さんの場合は、御案内のよりに、パーティー券の百三十枚という問題があるわけであります。  御承知のとおりに、当時の職業安定局鹿野茂課長ですね、この方が今は検察庁にといいますか逮捕されまして、その逮捕状況事情聴取等によりますと、いろいろなことが言われておるわけであります。新聞記者も、人の名誉にかかわる問題でありますから、必ず裏づけをされるだろうと思っておるわけでありますが、一般論として、社労委員長であった、あるいは当時、特に外務の方の担当理事から社労にお回りになった理事、こういう方々から、一つの法案といいますか、職業安定法という法律の一つの成案ができた、それを原案としていろいろ議論をしておるさなかに、委員長として、あるいは理事として、陳情ではなしに圧力をかけるということになれば、それらの点については職務権限という範疇に入るのか入らないのか、法務省としての御見解を承りたいと思います。
  12. 根來泰周

    根來政府委員 ただいまの御質問は、いわゆるリクルート問題についてを念頭に置かれての御質問だと思いますけれども、現在、御承知のようにリクルート問題につきましては、被疑者八名を逮捕、勾留いたしまして、取り調べ中でございます。したがいまして、そういう具体的な問題について、ちょっと今申し上げかねる立場でございますので、ひとつ御了解をお願いしたいと思います。
  13. 野坂浩賢

    野坂委員 私は、一般論としてお尋ねをしておるわけですけれども、それでは、一般論としても御答弁をいただけませんか、いわゆる職務権限に入るのか入らぬのかという大きな意味で、
  14. 根來泰周

    根來政府委員 全く一般論で申し上げましても、リクルート問題を念頭に置かれたお話でございますので、ちょっとお答えいたしかねますけれども、ただ、そういう問題について、いろいろ学説等にも申しておりまして、非常に難しい問題がございまして、一般論お答えするということについても、なかなかいろいろの条件がございますので、ちょっとこれは今直ちにお答えしかねる問題だと思っております。
  15. 野坂浩賢

    野坂委員 それでは、これから総理お尋ねをしたいと思うのですけれども、私は総理の隣県でありまして、山陰に住まいをしておるわけでありますが、特に粘り強く、忍耐強く聞こうと思っておりますので、総理からは、さわやかに、端的に、言語明瞭にして意味明瞭という意味の、国民にもよくわかるようにお話をいただきたい、こういうふうに思うわけであります。従来から粘り強く、忍耐強くと言われておりますので、きょうはさわやかにやっていただくということが前提であります。  江副浩正、それから小林宏ファーストファイナンスの副社長あるいはリクルートの間宮、館岡、小野、この方たちの被疑事実、いわゆる逮捕理由をまず法務省から確認をさせてもらいたい。その理由を言ってください。
  16. 根來泰周

    根來政府委員 この江副浩正あるいは小林宏リクルート関係者でございますけれども、これは共謀いたしまして、NTTの役職員であります式場英あるいは長谷川寿彦に、値上がり確実な、あるいは一般人の手に入りにくい株式を五千株あるいは一万株というのを渡して、その利益を与えた、こういう日本電信電話株式会社法違反上の贈賄でございます。  それから、そのほかの者は証券取引法違反でございまして、これはやはり共謀いたしまして、法定の除外事由がなくて、あるいは大蔵大臣に届けをしないで、リクルートコスモス株式、七十四人に対しまして株式を売り出したという事実でございまして、証券取引法上の罰則に係るという犯罪でございます。
  17. 野坂浩賢

    野坂委員 大蔵省お尋ねをしますが、五十九年の十二月、そのときには大蔵省としては、これは証券取引法第四条に抵触をするという判断をしたと聞いております。しかし、これは三年の時効が成立をしておるので告発に至らなかった、こういうふうに承知をしておりますが、そのとおりでしょうか。
  18. 村山達雄

    村山国務大臣 そのとおりでございます。
  19. 野坂浩賢

    野坂委員 それでは、六十一年の九月に同じようなことがされておる。その場合は、なぜ証券取引法違反として断定をし、告発をしなかったのか。というのは、今も根來刑事局長お話しになりましたように、証券取引法違反逮捕する、法務省はその見解を明確にとった。大蔵省はなすすべもなく傍観をしておった、こう批判されても仕方がないと思うのでありますが、その点については大蔵省としてはどういうふうにお考えになっておるのか。
  20. 角谷正彦

    角谷政府委員 六十一年九月の今御指摘株式の譲渡が、証券取引法第四条違反に該当するかどうかという問題につきましては、私どもも昨年の参議院の税特委でもお話し申しましたように、その疑いを持ちまして、有価証券報告書等役員持ち株虚偽記載等の問題の調査とあわせまして、調査検討を行ってきているところでございます。  ただ、これを実際問題としてその認定をするためには、江副さんなど自身が、いわば売買契約当事者としての立場でこれを実行したという事実関係を認定する必要があるわけでございますけれども、この問題等につきましていろいろ私ども事実関係調査した感じで申しますと、リクルート経理担当者などが一括してそのいろんな手続を代行するなど、かなり組織的である、いかがわしい面があるといったことは認められたわけでございますけれども、何せいろいろ関係資料検察庁に押収されているといった等の事情もございまして、私どもとしてそこまでの心証を得るという段階に至っていなかったわけでございます。  ただ、先ほど御指摘ございましたように、先般検察庁におきまして、この問題の疑いということで強制捜査に入られたといったこともございますので、私ども、今後検察庁とも協力しながらこの問題の解明に努めてまいりたい、このように考えておるわけでございます。
  21. 野坂浩賢

    野坂委員 解明をするということでありますが、大蔵省法務省と同じように、証券取引法違反というふうに断定をしたというふうに認識していいわけですね。
  22. 角谷正彦

    角谷政府委員 法務省の方も、その疑いを持って強制捜査に着手されているというわけでございます。私どもも、まだそこまでの心証は得られておりませんが、事実関係等可能であれば法務省ともいろいろ御相談しまして、もしそういう心証が得られれば、そういうふうな判断を持つこともあり得るだろうというふうに思っております。
  23. 野坂浩賢

    野坂委員 まだその心証にはないということでありますが、事態はここまで進展をしておる。しかも、この逮捕理由というのは、だれが見てもわかるように、なかなか得ることのできない株、こういうものを出しておる。明確に書いてありますね。「被疑者らと特別の関係にある者以外の一般が入手することが極めて困難である株式会社リクルートコスモス株式」を取得する利益を供与しておるということが明らかにされておって、これが証券取引法違反ではないじゃないか、まだわからない。――ここまで事態は進展しておるのに、大蔵省は最初の五十九年のものは断定をしながら、六十一年については断定すらできないというのは、私たちは非常に不信感を持って大蔵省を眺めなきゃならない。この辺については、大蔵大臣としての見解と、いつごろまでにこの問題については整理をするつもりなのか、断定をするつもりなのか、明確にしてもらいたい。
  24. 村山達雄

    村山国務大臣 これは六十一年の九月の割り当て先からの譲渡が、割り当て先から直接譲渡されたのか、あるいは江副氏がひとりで買い取って、そして江副氏から譲渡されたのか、そこの問題なのでございます。  それでこれを、さっきも証券局長が言いましたように、当時書類が全部検察庁に押収されておりました。疑いは持って調査は始めておりましたけれども、この事実関係を究明するには、やはり契約者はもちろん、そのそれぞれの契約書あるいはその金がどう動いたかという事実関係を見なければわからぬわけでございます。したがいまして、大蔵省は、疑いは持っておりましたが、そこまで断定するに至りませんでした。  今度検察庁が、みずからの判断に基づいて、これは江副さんが買い取ったものである、こういう考えでやっているわけでございます。大蔵省といたしましては、今後検察庁と共同いたしまして事実の解明に当たりたい、このように思っておるわけでございます。
  25. 野坂浩賢

    野坂委員 申し上げておきますが、国会証人喚問の際に江副さんは、単なる仲介で、あっせんであったというようなお話でありましたけれども、そうじゃないですね。自分が買い取ったということは明確に今日的にはなっておるわけですから、その結果いわゆる贈賄として、証券取引法違反として逮捕しておるというのが現状でありますから、そういう認識に今はお立ちでしょうか。
  26. 村山達雄

    村山国務大臣 検察当局は自信を持っておやりになったことでございます。したがいまして、大蔵省としても検察当局と緊密な連絡の上でこの事実を突きとめていきたい、協力してまいりたい、かように思っておるところでございます。
  27. 野坂浩賢

    野坂委員 突きとめたら、告発をしますか。
  28. 村山達雄

    村山国務大臣 もう既に立件されているわけでございますので、告発という手続が要るか要らないか、こういう問題であろうと思います。
  29. 野坂浩賢

    野坂委員 総理お尋ねをしますが、従来から社会党の皆さんやその他の各党の皆さん質疑しております青木さんに絡む一万二千株の問題であります。  その前に、総理竹下内閣を改造するに当たって一番重点に置かれたのは、リクルート関係のない内閣を組織したい、こういうふうに竹下総理はお考えになって着手をされた。しかし、二名の皆さんが既にリクルートに関連をして辞任せざるを得なかった、やめた、こういう現状であります。今リクルートに関連をしてお残りになって論議の中心になっておるのは、総理、あなた自身ではないかと思うのであります。この点について総理はどのようにお考えでありましょうか。
  30. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 私の周辺で関連した二人の株の取引というものが存在しておることは事実でございます。したがって、私といたしましては、それが私自身が関与する立場になかったといたしましても、これの道義的な責任について当委員会等でいつも申し上げておるとおりでございます。  したがって、この問題について、私なりにいつも申し上げることでございますが、四つの点に整理をいたしました。一つ、有取法上の問題、二つ、税法上の問題、三つ、刑法上の問題、四つ、道義上の問題でありますが、先ほど来の御質疑にございますように、一と三がややダブつたという傾向にあるわけでございますが、それぞれにおいてこれにまず対応していかなければならないということが一つであります。  いま一つは、私自身の問題でございますので、本院におきましても坂上さんを初めとして、この私に対するいろいろな御質疑を賜っておるところでございます。可能な限りの整理をして、みずからの周辺の解明に当たるべきであるというふうに思っております。
  31. 野坂浩賢

    野坂委員 私は、きのうとおととい郷里に帰りまして、いろいろと皆さんお話ししたわけですけれども皆さん随分心配をしておられて、竹下さんは青年団長や県会議員のときはとてもかわいかったのに、このごろ人相まで悪くなったなと言っておられまして、心配しておられます。伝えておいてくれということでありますから、率直にお伝えをしておきたいと思います。  総理は、十月の二十日税制改革の特別委員会で坂上さんの質問、その他の我が党の矢田部さん等からの質問もありますが、青木伊平さんという方が、今は元秘書ですね、株の取得をリクルートから行ったという事実はお認めになっておるわけです。そのときには竹下総理は、青木伊平君は二千株はもらっておるけれども、他の株式を譲り受けたということはな…ように考えておる、二千株だけだよ、ほかにはないよ、こういうふうに国会で御答弁になっておったのですが、その後一万株、福田正問題が惹起したということは御案内のとおりであります。竹下総理としては、この一万株、福田正氏に絡む問題についてはいつおわかりになったでしょうか。
  32. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 青木伊平君の問題につきましては、新聞社から取材を受けた後、私に報告がありました。福田さんの分につきましては、日本社会党の調査の発表があったその夜、報告を受けて知ったところでございます。
  33. 野坂浩賢

    野坂委員 わかりました。  福田正さんは、九月に、自分はしょっちゅう東京に行くので、そのときはいつも青木君に会っておる。株の譲渡の話があったのは、繰り返すようでまことに恐縮でございますが、竹下東京事務所で行われたということは、竹下総理自身も国会の論戦の中で明らかにされております。この間に、十一月の八日に社会党が調べて、調査をして明らかにされた。後、九日の日には青木伊平さんがあなたを訪れておるわけですね。その前に、青木さんはあなたに、総理が青木さんにほかはないのかと、こう言ってお聞きになっておるのですね、議事録によりますと。そのときには、全然二千株以外にないと、こう言って青木伊平さんはあなたにはお答えになっておったのですか。それは表であって裏ではいろいろあったかもしれませんが、そういうことになっておるわけですか、いかがです。
  34. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 ちょっと正確に申し上げます。  七月の初め新聞取材を受けたという報告を私が受けました。六十一年の九月の中下旬に、中旬であったか下旬であったか、リクルート関係者から話があったという報告を受けました。それから、福田さんの分につきましては、今おっしゃいましたが、十一月九日の夜、私が報告を受けました。それまでに青木秘書につきまして、もうないかといったような、表現は定かに覚えておりませんが、尋ねたことはございます。ありませんという答えを聞いた記憶があります。
  35. 野坂浩賢

    野坂委員 総理が青木伊平氏に二千株以外はないのかと、ありませんと、こういうふうに言ったということですけれども、十一月八日の夜にはその事実が判明をしたということであります。しかも、福田さんは上京されて、東京事務所で青木伊平さんとお会いになって、そして株譲渡を決められたということでありますね。これは事実だと。  で、リクルート関係者から株譲渡の話があったというのは、この間も追及がありましたように、おいでになったのはリクルート社から来たわけですから、そんなに係長や主任が来るはずがないですから、あなたの事務所には言われるように間宮常務と小野部長、当時の部長、このお二人だったというふうに私たちは聞いておるわけです。  今までは、竹下総理国会答弁の議事録を読んでみますと、財界人からのあっせんでということでしたけれども、今は明確にリクルート社からと、こういうふうにお話しになったわけですから、リクルート社ということになれば、大体来た人の認定ができるのではなかろうか。この三カ月間整理に整理を重ねられて、頭脳明断、目配りと気配りは抜群という竹下総理でありますから、ちゃんとその辺は整理ができたと思いますので、特定をしていただきたい、こう思います。
  36. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 最初は経済人からと、こういう表現をいたしました。それから、リクルート関係者から話があったと申しました。ただ、どなたであったかともし特定して、それが間違っておったら本人に大変な御迷惑をかけるので、特定するわけにはまいりませんと、このようにお答えをしてきたわけでありますが、今でも、一人いらしたような気がするが、どなたであったかということになると、もし特定して、それがAではなくBでありあるいはCであった場合のことを考えると、特定するということについてはやはり失礼に当たるではないかという心境であることは事実でございます。
  37. 野坂浩賢

    野坂委員 その辺が霧なんですよね、第一番の。小さなことですけれども。でも総理、一番の、ここにいらっしゃる閣僚の皆さんの中で今霧が覆われておるのはあなただけなんですから、あなた自身の手でその霧を払うということをここで何遍もおっしゃったのですね。それなれば、十月ごろから随分といろいろと追及されて、人間の名前を挙げながらお示ししておるのに、それもまだわからぬと。このような、見たような気がするということもおっしゃっておりますね。金が入った問題ですけれども、見たような気がするのですが、この人だと思うというようなことまでも記憶は呼び戻せませんか、あなたの疑惑解明一つだと思うのですけれども
  38. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 あなたの疑惑解明一つだと、私もその親切はわかっております。しかしながら、だれであったような気がしますということは、およそ神聖な国会の場で言うには余りにも踏み込み過ぎではないかという感じがすることは事実でございます。
  39. 野坂浩賢

    野坂委員 でもあなたは、福田正さんと青木さんが話して即座に福田正は引き受けたということになっておるわけです。そのときにあなたは、五千二百万円、最初は二千二百万円の預金通帳を見たような気がする、その次には五千二百万だったような気がすると、写しであったような気がすると、こういう気がするという想像を含めて今までは御答弁になっておるわけですね。今回は、明確でなければならぬから私は言わないということですか。それでは、五千二百万円という預金通帳は見られたわけですね。
  40. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 その問題につきましては、入金は福田勝之氏の預金口座の写しで五千二百万円を見ましたというふうに本院で答えさせていただきました。
  41. 野坂浩賢

    野坂委員 問題は、時間がありませんからこれ以上はなかなかやりにくいわけですけれどもリクルート側は、江副さんを中心にして、過去世話になった人、これから世話になる人、そういうことを選別をして利益供与を与え、贈賄を行ったということになっておるわけであります。したがって、当初リクルート社側からはお二人の方がお見えになって、そこで話し合いができて、青木伊平は二千株は自分、一万株はあなたに相談をしたと私たちは思うのですけれども、あなた自身の発言からしても公平でどちらもいい立場の人を選んだというふうなお話ですけれども、そういう意味で福田正さんの方に渡った。福田正さんが自分の考え方で次男勝之氏の名義にした、その金は自分が払ったということであります。  で、議会でいつも押し問答になっておるのは、福田さんをあなたは御紹介申し上げたという事実を私自身も承知しておるわけでございますと、こう言っておりますね。したがって、この疑惑解明のための質疑については、私なりに話を聞けない間柄ではございませんから聞いてみるべきものなのかなというふうに今感じを持って聞いておるところだと。  私は、福田正さんもあなたを尊敬されておる、あなたも尊敬されておるということになれば、そういう間柄なんですから、これだけ国会であなたの問題、疑惑の問題が論議されておるならば、当然向こうも心配してお電話をかけられるでしょうし、あなたとの連絡もあるでしょうし、青木伊平氏もまことに申しわけないことをしたと言っておるかもしれない。言っておるかもしれないというのは、あなたと事前に相談をしておるという裏づけもあるだろうと思うのです。そういう意味であれば、きちんと支払いの具体的な内容、どの通帳からどういうふうに払った、約定書はどうなっておるとか、そしてだれにその利益が帰属したのか、こういう点の、三点セットというふうに通称言われておりますが、それらについてはこの国会で具体的に明示をされる必要がある。それはあなた自身がよく知っていらっしゃる宮澤前大蔵大臣が、それらの経緯を伝って考えてみると、その証拠書類はできなかった、だから涙をのんで辞任をされたという経緯も参考として考えるならば、それらの証拠書類は当然出さなければならない。しかも、江副氏はこう言っていますね、秘書も代議士も同じ財布なんだ。この財布は同じものであるという認識に立って、江副さんは竹下さんに贈ったんだ。そして、その秘書がだれにやろうとそれは我々の関知することではない、竹下側の判断に任せる、秘書に任せる、こういうふうにまで言い切っておるわけですから、それらが詰まってくれば、その三点セットの証拠書類を提出していかざるを得ない。  そして、整理をする、整理をすると言って、あなたはここ一二、四カ月毎日同じようなことをおっしゃっている。もう整理する段階も終わったと思うのですけれども、あなたは具体的に、我々が指摘する点について明確に証拠書類その他を提示する、整理する時期はいつまでだ、いつまでにやるんだというふうにお考えになっておりますか。伺いたいと思います。
  42. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 必ずしも何月何日までということを自分の念頭の中で区切りをつけておるわけではもちろんございません。  ただ、私が申しておりますのは、いわば私経済の中へ入っていくことになりますので、したがって、この問題につきましては国会で御相談をいただきたいということを申し上げておるところでございます。それについて私なりの意見もございますが、それはまた御相談のある際に述べさせていただこうかな、こう思っておるところでございます。
  43. 野坂浩賢

    野坂委員 どういう御意見か承りたいと思いますけれども、その時期ということでありますから、この際、委員長、私は三点セットを具体的に総理の手から出してもらう方が、福田さんにも青木さんにも迷惑がかからないと思いますが、今の答弁ではいかに地元であっても了承はできない。したがって、今お話がありました国会で相談をしてほしいということでありますから、元秘書の青木伊平、そして福田組社長の福田正氏を証人として喚問することを要求をいたします。よろしくお願いをしたいと思いますが、いいですね。
  44. 大野明

    大野委員長 理事会で協議いたします。
  45. 野坂浩賢

    野坂委員 それでは次に、農業問題についてお話をしたいと思うのであります。  農林大臣はいらっしゃいますね。農林大臣は農林省の幹部をして言わしめれば、御進講ずる必要がないほど農政については詳しいし、そして海外にも、当時自民党の総合農政調査会長でもありましたから、農林大臣に、あと二十分しかありませんから、お伺いをしたい、こういうふうに思うわけであります。  昭和五十五年の四月八日、第九十一国会で食糧自給力強化に関する決議がされたことは皆さん御案内のとおりであります。この中でこういうことが書いてあります。    食糧が外交手段に用いられる等、一段と不安要因が増大し、わが国の食糧需給に強く影響することが憂慮される。   かかる困難な情勢の下にあって、先進諸国に較べ低位にあるわが国の食糧自給力の向上を図り、国民食糧を安定的に供給することは、将に国政上の基本的且つ緊急の課題である。 こういう決議がされておりますね。  ところが、御案内のように食糧の自給率というのはだんだん低下をしておるというのが現状だと思うのであります。例えばアメリカは一七二、あるいはイギリスは一一三、フランスは二〇三と、先進国は一〇〇以上ないし一〇〇%に近い自給率を誇っておるわけでありますが、我が国は、まだ八八年のは出ておりませんが、一九八七年度で三〇%というふうに毎年毎年低下をしておる。その決議にあわせてどのような措置をとられてきたのか。これとあわせて、同じように農業、林業等の予算がこれまた年々減り続けておるということであります。  今や供給熱量の自給率もとうとう五〇%を割って四九%になってきたというこの現状は、決議とそして実績というものは全く相反比例するものだ、こういうふうに理解をしないわけにはまいりません。これについて、農水大臣見解なり御感想を承りたいと思うのであります。
  46. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 ただいま野坂委員の方から御指摘のございました国会の決議でございますけれども、これはちょうど委員たちと、皆さんと御一緒に私自身が実は理事を務めながらこの決議をやったことを今思い出しております。そして、今御指摘がございましたように、そういう自給力の強化の決議をしながら、自給率の方は今御指摘のとおり現在穀物自給率三〇%、あるいはカロリー自給率が四九%になっておるという現実、これはもう間違いない、御指摘のとおりであります。  こうなってまいりました事情につきましては、委員もよく御存じのとおり、米の消費量というのは今なお実は減りつつあるというのが現状であります。それともう一方では、畜産物の消費というものは非常にふえてきておる、あるいは国内でもこの生産がまた伸びてきておるということで、このための飼料用穀物の輸入というのはやはり相当ふえてきておるといりのが現状であります。そういう中で全体の自給率あるいは今のカロリー自給率というものは下がっておるといりふうに私は認識をいたしております。  ただ私は、このとき思いますのは、米につきましては、もう御案内のとおり、日本の場合には自給率は一〇〇%、約三割ほど転作をしておるということでありまして、主食についてはもう十分に確保いたしておるということ、あるいは野菜、果物、そして魚等につきましても、食用のものについては十分確保されておるという現状でございまして、確かに食生活が急激に変化したということの中で自給率は下がっておりますけれども、日本型食生活というものを考えたときにはきちんとしたものが確保されておると私は思っております。  ただ問題は、これから一体私たちはどうしていくのかということが一番の重要な課題であるわけでありますけれども、私どもといたしましては、今、自給力の決議というのは、まさに自給力というのは腰を強くする、いわゆる生産力を強くするということで、そういう努力をしておるわけでありますから、そういったものを今日までも続けてきておりますし、これからもやはり続けていかなければいけないというふうに思っております。  そしてもう一つは、長期的な目標を定めながら、私どもは、農業者の方々もこのものについてはここまでは大丈夫なんだという確信を持ってやはり生産していただけるような体制というものを、これからさらに続けていきたいと思っております。  そして、その基本にあるのは、やはり今は非常に過剰で世界的に買いなさいという声が強いわけでありますけれども、しかし、この一、二年の動きを見ておりましても、天候の異変等によりまして、国際的な在庫率というものも実は減ってきておるというのが現状であります。こういうものを考えましたときに、一億二千万人も抱える日本の国としては、きちんと基本的なものについてやはり確保しておく必要がある、これを常に私たちは念頭に置きながら農政を進めなければいけない、かように考えております。
  47. 野坂浩賢

    野坂委員 韓国から米を輸入したことがございますね。このときと、この間のアメリカの市場開放、米の輸入自由化の要求に対して、私どもは過去二回本会議で決議をしておることは御承知だと思います。竹下総理も、米は国内産でということを臨時国会の所信表明演説でも明確に述べられておるわけであります。最近、アメリカの市場開放問題がにぎわしておりますけれども、この決議は、「我が国農業の基幹作物である米の需給安定を図るため、食糧行政に万全を期す」と。そして、参議院では特に強く完全自給を図れということが条件としてつけられ、「このような情勢下において、今般伝えられる米国内の我が国に対する自由化要求の動きは、極めて遺憾であり、認められない。」ということを言い切っておる本会決議が行われておるわけであります。  私は、自由化反対というこの趣旨は、中身としては市場開放はしない、米の市場開放はしない、反対であるということを明確に言い切った決議であるというふうに認識をしておりますが、総理大臣は、その点についてはどうでしょうか。
  48. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 食糧自給力強化に関する決議、五十五年四月八日衆議院、それから四月二十三日参議院本会議、これの決議があることは十分私ども承知をいたしておるところであります。したがって、外交交渉等あるいは意見交換等の中において、この決議というものの存在を十分体して対応しておるものというふうに私は確信をいたしております。
  49. 野坂浩賢

    野坂委員 わかりました。総理大臣の言われたことは、決議を十分考えておる、したがって国民食糧は国内産でやるべし、したがって市場開放をしないというふうに認識をしておるという意味の答弁であったと思います。そのとおり農水大臣もお考えですね。
  50. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 ただいま御指摘の点につきましては、国会決議があることを私どもよく承知しておりますし、しかもやはり米が日本の食生活にとって最も重要なものであるということと同時に、やはり稲作が国土保全上あるいは水の涵養ですとか、そういった面でも非常に重要なものであります。私どもはそのためにこれからも食糧を自給していくというこの基本的な方針というものをしっかりと守っていきたいというふうに考えております。
  51. 野坂浩賢

    野坂委員 総理も農水大臣も、いろいろ言い回しはありましたけれども、市場開放をしないということを明言をしていただきました。  今、二月の十七日、十八日ごろ、ECとアメリカは非常に農畜産物の輸入自由化問題をめぐって接触をしておりますね。去年の十二月の五日、カナダのモントリオールでは、農水大臣佐藤農水大臣の時期に一緒に行かれた。ECとアメリカとの対立が非常に激しくて、米の問題はコの字も出なかった。ほっとしてお帰りになった。しかし、言う者に言わせると、日本の国はなるべくけんかをしてこっちに回らぬ方がいいとだれもが考えるのですけれども、堂々と国会決議を背景にして市場開放はやらないということを明確にすることをやらなければ、これからは問題だぞと書いてあります。  四月の上旬、第一週ごろには、スイスのジュネーブで高級事務レベル会談が開かれる。そこでは二年間の短期的措置と、そして長期的措置の十年間、これがいろいろ議論される。関係省庁の次官クラスの皆さん方が約四省庁おいでになって詰めに入るというような新聞報道がなされておるわけでありますが、私どもとしては、この日本の農業の現状、自給率の実情、そして日本農業の三割から四割も減反しなければならなかったという実情に訴えて、この問題は断じて譲ることはないと確信をしておりますけれども、EC、アメリカの状況というのは、今日状況としてはどのように把握をされておるか、関係の外務大臣でも農水大臣でも結構ですから、御答弁をいただきたい、そう思います。
  52. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 昨年の十二月のガット総会に臨むに際しまして、その当時日米間で米の問題が随分と議論されておりまして、現実の問題として精米業界からの提訴、それを取り上げるというふうな具体的事例もございましたが、私とシュルツ国務長官の間におきまして、日米間でこれ以上農業問題が一つ焦点として議論されるということは、一番日米関係をよくしなければならない時期に、決して両国にとってこれはプラスじゃない、だからひとつこうしたことは、日本に農林大臣先ほど言われましたような事情もこれあり、また国会の決議もこれあり、我々としては二国間でこれを議論することを続けるということは決してよくないと私の方からも申し上げ、またシュルツ国務長官も同意をされ、そしてこれはマルチの場において議論しましょうということになったことはしばしば御報告いたしておりますから御承知のとおりでございます。だから、ガット総会に臨むに際しましても、米国は取り上げません、これはマルチの場でやりますと、こういうことでございましたが、幸いなるかな、ガットでは具体的に米という問題は出なかったのであります。  我々は、ガットの場におきましては、米は、他国が、参加国が、あらゆる農産物並びに組織等々、そうしたものを議論するときに一緒になってやりましようと、こういうふうな話にいたしておりますが、昨年は農業を含みまして約四つの分野でこれが四月上旬の次官レベルの会議まで持ち越しと、こういうふうになったことは御承知のとおりで、二月に一部その議論が進められております。  そこで、正確を期すため申し上げますと、短期措置を中心に討議をされ、かかる措置としては農業保護水準を凍結するとの意見が多く表明されました。しかし、今次総会で何らかの合意ができたわけではなく、四月に向けてさらに交渉が続けられておる、これが現状でございます。  したがいまして、四月どうなるかということに関しましては、まだ私たちはこの問題に関しましてこうなるであろうというふうなことをここで申し上げることは適切でないと考えますが、日本は日本として従来どおりの主張で臨んでおるということでござします
  53. 野坂浩賢

    野坂委員 時間がありませんから多くを申し上げませんが、十二月五日のガットの会議の際にも、駐米大使である松永さんがお帰りになって、加工用米等についてはある程度こっちから提示をしなきやならぬ、こういうことまで各省庁お回りになったということが新聞紙上で報道されておるわけでありますから、それらのことについては、今市場開放はしないということを総理からも明言をいただいたわけでありますから、揺らぐことのないように米問題については今後対処していただくように希望しておきたいと思います。  次に、いよいよ長年評判の悪かった減反問題ですね。これは十年やってきた。暦年でことしでは終わるわけですね、農水大臣。前半の生産調整は終わる。いわゆるポスト減反ということが問題になっておるということであります。三年間は動かさない、こう言って、今は約三分の一の七十七万ヘクタールが減反対象面積ですね。去年は一〇二%やられて七十九万一千ヘクタール、その前は七十九万二千ヘクタールですか、一〇三で。その上に二十七万トン、緊急需給対策という名をかりて二十七万トンやれ、給食等もやれ、酒も飲め、こういうことをやかましく言われて、できなかった分はそれに上乗せをするぞという格好で八十三万ヘクタールを現状進めようとしておる、これが現状であります。  このポスト減反については、今までのやり方は、在庫米がたくさんになってくるからできるだけ減らしていかなきゃならぬ、その基準は百五十万トンであるということを農水省は言明されてきた。労働大臣も農業に関心がありますから頭を振っておられますけれども、そのとおりであろうと思うのであります。そこで、いわゆる来年、来年度ではなしに来年の十月の米の在庫というのは百五十万トンないし百三十万トンになるわけです、百五十万トン。年々二十万トンずつ減らすということになると、面積換算すると四万ヘクタールですね。それは政府が示しておるわけです。そうすると、少なくとも機械的に計算をして四万ヘクタールだけは今よりも減ってくるという、面積は減るということは機械的計算でそうなりますね。そのとおりですか、農水大臣
  54. 吉國隆

    吉國政府委員 お尋ねの御趣旨は、今の対策の中で在庫を減らしていくための生産調整面積が約四万ヘクタール含まれているはずであるから、自後の来年以降の対策にお…てはこの分だけ面積が減るのかというお尋ねであったわけでございます。  来年以降、水田農業確立対策の後期対策になるわけでございますが、これの目標面積をどうするかという点につきましては、全体の消費の動向、残念ながら減少傾向が続いているわけでございます。これと、また生産力がどうなるか、こういったこと、さらにはまた、現在の食管の在庫数量が御指摘のような対策の実施にもかかわりませず適正水準を若干超えているという状態にも対応いたしまして、これらを総合的ににらみまして設定をしていく必要があるというふうに考えております。
  55. 野坂浩賢

    野坂委員 私は、ちょっと待ってください。今までの方針というのは在庫百五十万というのを基準数量にしていましたね。だから、今みたいなばあっとした話じゃなしに、機械的に、今までの方針でやれば来年は百三十万トンから百五十万トンになりますよ。百五十万トンになった場合に、四万ヘクタールというものは減るんじゃないですか、政府が言うとおりに進んでいれば必ずそのとおりになりますよということを明確にしてくれということです、端的に。
  56. 吉國隆

    吉國政府委員 現在前期対策で実施をしております際の在庫減らしの目標といたしましては、平成二米穀年度末に百三十万トンに在庫を減らすという計画であったわけでございます。また、平成元年度、つまりことしの十月末には百五十万トンに減らす計画であったわけでございます。しかしながら、その後の消費の動向等によりまして需給均衡化対策を継ぎ足して実施をしていただいているわけでございますが、平成元年度、ことしの十月末の在庫見通しとしては、若干当初計画より上回るような在庫になるのではないかという状況が心配されているという現況でございますので、こういった適正在庫に減らしていくという問題と、それから需給ギャップ、これに対応することを総合的に目標面積の設定に当たって勘案をしていく必要があるという状況でございます。
  57. 野坂浩賢

    野坂委員 私は、もう全く時間がありませんので、これ以上申し上げることができないことは非常に残念でありますが、また総括質問のときにお尋ねをしたいと思うのです。  機械的に、政府が決めたとおり実現ができたらこうなりますかということを聞いておるわけですから、総合勘案というのは、今いわゆる農政審議会等で議論して答申をしようとする中身としては、この備蓄量をまた百万トンに減らそうか、こういうことが考えられておるから、ああいうまことにはっきりしない答弁をしていらっしゃる。私は納得ができません、これは。  したがって、最後に農水大臣に伺います。食管制度の根幹は堅持するということを前々から言われておりました。この食管制度の堅持、根幹を堅持するというのは全量管理をやりますかと、あなたはよく部分管理という言葉をお使いになりますけれども、あなたを信頼して、日本の農業を守るためにも全量管理は必須だ、必須条件だ、このように考えておりますが、その点については間違いないかということをお聞きをして、私の質問を終わりたい、こう思います。
  58. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 私どもは、もう従来から申し上げておりますように、この食管の根幹はひとつきちんと守りながらこれからも農政を進めていこうという基本的な方針には変わりないということを申し上げておきます。
  59. 野坂浩賢

    野坂委員 以上で終わります。
  60. 大野明

    大野委員長 この際、上原康助君から関連質疑の申し出があります。野坂君の持ち時間の範囲内でこれを許します。上原康助君。
  61. 上原康助

    ○上原委員 最初に総理お尋ねをしたいと思います。できるだけ私も質問の内容をわかりやすくといいますか、具体的にお尋ねをしますので、ぜひひとつわかりやすい答弁を各閣僚もお願いをしたいと思います。  そこで、昨日竹下総理は六十五歳の誕生日をお迎えになったようであります。そろそろ、ふるさと創生論も非常に強調されておられるし、御郷里に帰ってふるさと創生に励んでみたらというようなちまたの声もいろいろあるようですが、御感想をひとつお聞かせをいただきたいと存じます。
  62. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 どこにおりましてもそのふるさと創生ということにみんながある種の感懐を抱いておる、私も例外でない、こういうことでございます。
  63. 上原康助

    ○上原委員 そっけない御答弁ですが、とうとうケーキにはお手をつけなかったようですね。  そこで、総理のというか竹下内閣の政治姿勢という方がいいかもしれませんが、についてまずお尋ねをさせていただきたいと思いますが、一連のリクルート疑惑、あるいは強引に導入をした大衆課税、いわゆる消費税、また国際国家日本とか世界に貢献する日本というキャッチフレーズというか、そういうことを大変強調なさる割りには、外交面においてもいろいろ問題が出てきている感がしないでもありません。  大変失礼ですが、もう内外、竹下総理初め内閣、満身創痍の感を抱かざるを得ないですね。これも、国民の政治を見る目が厳しいわけですから、民主主義社会においては当然の帰結と言えなくもないわけですが、そういう状況でせんだっての福岡参議院補欠選挙で御案内のような結果が出ました。その他の地方選挙においても自民党与党に極めて不利な状況になってきている。国民の政治不信と竹下内閣に対する支持の低下は日を追って高く広く深くなる。しかも、きょうは宮城県の県知事選挙が告示になっているようですが、現職閣僚も二人おられるし、前、元閣僚もたくさんいらっしゃいますね、宮城県というのはね。しかも、竹下というか創政会のそうそうたるメンバーがいる中でとうとう断念をせざるを得なかった。こういう実態を総理は一体どう御認識なさっておるかということが一つですね。  それともちろん関係が深いわけですが、けさのある新聞によりますと、とうとう竹下内閣の支持率が一九%になった、まさに二〇%を割ってしまったですね、政権末期なんです。しかも先月と比較しますと、支持をするというのが九・五%も下がっているわけですね。支持をしない理由は、「首相を信頼できない」ということが九・三%も上がって、実に二二・六%と一番多いわけですね。大変残念なことですね。一国の総理大臣がやっていることが信用できない。リクルート問題しかりでしょう、元秘書や御親戚のやったことについても明らかにできないというのは、これはだれが聞いたって納得しがたいですよ。こういう政治不信に対して一体総理はどう対処していこうとしているのか、明確にお答えをいただきたいと存じます。
  64. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 私に対する御批判は厳しい御批判として素直に受けとめるべきである、絶えずそのように思っておるところでございます。   一連した事例を挙げてのお尋ねでございますが、その根幹にあるものはもとより私自身にかかわるこの問題、と同時に、やはり政治に対する信頼というものを失っておるというのが背景として一番大きな存在である、このように私も考えておるところであります。したがって、その政治不信というものを回復するのにいかにすればいいか、こういうことについて日夜腐心をいたしておるところでございます。  そこで、リクルート問題そのものにつきましては、四つに分類していつも申し上げておるところでございますが、何としてもやはりこの政治道義の確立ということに、一刀両断の措置はなかろうとも、私は忍耐強く取り組んでいくべきものであるというふうに考えております。
  65. 上原康助

    ○上原委員 総理の持論というか、あるいはテクニックかもしれませんが、我々が具体的に事例を挙げてどう御認識をなさるかと言うと、君の言っていることに言葉を返すつもりはないとか、批判する立場にない、それは正直申し上げて議論にならぬですね。私はもっと深刻に受けとめていただきたいということを申し上げたいわけですよ。野党がいろんなことについて、リクルート問題、消費税問題、防衛問題、あらゆるテーマについて具体的に各閣僚に聞いても、なかなか本音のことを言わない。委員長に注文をつけても、後で理事会で協議をいたします、何を協議したか我々わからない、この委員であっても。こんな形骸化された国会というのはいかないですよ。その点を含めて、国会を含めて改革というものが必要じゃないですか。あなたは政治改革と言うけれども、与党内でも全然進まないじゃないですか。にっちもさっちもいかない状態になっているじゃありませんか。そうであると、国民に信を問うのが憲政の常道じゃないかということを私たちは土井委員長初めみんながあなたに注文をつけ、自民党さんにもそれを強く申し入れているはずなんですね。そのことに対する厳しい御認識がないからこそ、与党が三百議席いるから何とか守ってくれるだろうという安易な政治姿勢が今日の深刻な事態を招いているとは総理は思わないのですか。
  66. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 私は安易な政治姿勢とは思っておりません。私は野党のお方の発言というものはすべて最善であるという立場に立って体制側はいつも耳を傾けるべきものだ、野党のあり方についてとかくの批判などを申し上げるべきものでない、これが体制側にある者の堅持しなければならない姿勢ではないかというふうにいつも思っております。
  67. 上原康助

    ○上原委員 総理のそういうお気持ち、お言葉ですから、一応は承っておきましょう。  しかし、いずれにしても、まだこの認識の落差というのが大きい。それに、今日の国民の政治に対する不信、不満、いら立ちというものに対して、最高責任者である竹下総理初め各閣僚あるいは与党の首脳の方々がどう思っておるか、いささか疑問を持たざるを得ません。そのことを強く指摘をしておきたいと存じます。  そこで、この政治姿勢の問題と関連をしてなんですが、総理の太平洋戦争に対する御認識を改めてお尋ねをしておきたいと思います。  何遍も議論されてきたことでありますので重複は避けたいわけですが、総理の太平洋戦争あるいは第二次世界大戦に対する御認識について、もう一度明確にお答えください。
  68. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 これは竹下内閣ができまして以来たびたび答えておるところでございますが、先般この国会で私が行いました答弁が舌足らずであったと私も思っております。それがために他の国々で批判的な反応を招くという事態になった、これはまことに遺憾でございます。したがって、正確に申し上げたいと思います。  我が国の過去の歴史に対する認識は、昭和四十年の日韓共同コミュニケ、そうしてまた昭和四十七年の日中共同声明、これに述べられておるとおり、いささかの変更もありません。  我が国が過去において戦争を通じて近隣諸国等の国民に対し重大な損害を与えたとの事実があります。かかる我が国の過去の行為について、侵略的事実を否定することはできない、このように申しておるところであります。  我が国としては、かかる認識を踏まえて、平和への決意を新たにするとともに、このようなことを二度と起こさないように平和国家として世界の平和と安定のために貢献していく考え方であるということを、今まで申し述べましたのを整理いたしましてこの際申し上げる次第であります。
  69. 上原康助

    ○上原委員 せんだっての御発言、御答弁とはまた修正というか、まあ修飾というのがいいのか知りませんが、やっていますね。  総理は、いわゆる中国の皆さんやあるいは朝鮮の皆さん、東南アジアの民族、諸国民の神経を逆なでするようなことを平気で本会議、本委員会でもおっしゃっているわけですよね。侵略戦争であったかどうかは後世の史家が決めるんだ、判断すべきなんだ。今はまた、侵略的事実があったことは否定できない。あの戦争が侵略戦争でなかったという認識に立っておられるのですか。なぜすぱっと侵略戦争であったということを、歴代の自民党内閣はそういう答弁を、いろいろこれもやりとりの中で出てきたことではありますが、それを大きく後退をさせたのですよね、あなたは。だからあれだけ中国やアジア諸国から、間髪を入れずに大きな問題になってきたわけでしょう。大喪の礼がなければこれは外交問題に発展したでありましょう。国内においては消費税リクルートで満身創痍になっている総理が、外交問題においても舌足らずであったということで片づけられる問題じゃないじゃありませんか、これは。改めて侵略戦争ということについての総理の認識をぜひ明確にしてください。
  70. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 確かに、後世の史家にゆだねるべきものであるということを過去でも先輩がいろいろ申されております。私が先般申し上げましたのは、あの際舌足らずと申し上げましたことは、侵略戦争というものの定義という問題についての考え方が私が踏み込み過ぎたではないか、こういう感じがあることは事実でございます。したがって、今までたびたび本会議委員会等で申し上げておりますように、私がただいま読み上げましたこれが、そのまま私の考え方でございます。
  71. 上原康助

    ○上原委員 そこで、あなたは日中共同声明あるいは日韓共同声明を引用なさいますが、日中共同声明では「日本側は、過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する。」ということになっているのですね。日本側の考え方を主体にしているのです。あなたが今おっしゃったことは、国際的に侵略行為があったという厳しい批判があるという第三者的なことを言っておられる。この間の官房長官談話しかり。侵略をしたのはどこだったのですか。日本帝国軍、軍国主義でしょう。軍隊でしょう。それがあるなら、主体的に我が方がアジア人民に対して深く反省をする意味を込めて、この戦争に対する謝罪というのか、あるいは国としての一つ考え方を統一をして、これが二転三転して絶えず外交問題にならないような一つの歯どめをするのが、今の一番のポイントじゃありませんか。  その意味で私たちは、これまでの政府の抽象的というか第三者的立場に立った定義づけというか考え方ではなかなか納得しかねます。もう一度、政府としての太平洋戦争あるいは第二次世界大戦に対する一連の行為に対して、戦争行為に対してどういう統一的見解というのか、考え方であるということを明確にしてもらいたい。
  72. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 このことは整理いたしまして、先般の答弁の舌足らずの問題は別といたしまして、私がいつでも申し上げておることでございます。  我が国の過去の歴史に対する認識は、昭和四十年の日韓共同コミュニケ、そうして今御指摘なさいました昭和四十七年の日中共同声明に述べられておるとおりであります。これはいささかの変更もございません。  我が国が過去において戦争を通じて近隣諸国等の国民に対し重大な損害を与えたことは事実であります。かかる我が国の過去の行為について、侵略的事実を否定することはできない、このように考えております。したがって、その原点の上に立って今日いわゆる平和外交を進めておるわけであります。憲法もまたそこに考え方の基本は存在するというふうに思っております。  我が国としては、かかる認識を踏まえて、平和への決意を新たにするとともに、このようなことを二度と起こさないよう平和国家として世界の平和と安定のために貢献したいというのがあくまでも原点にある考え方でございます。このことは正確に両院でも私が申し述べておるところでございます。
  73. 上原康助

    ○上原委員 まだ私のお尋ねしていることと幾分そごがありますが、要するに、さきの戦争が国際的に侵略だと厳しい批判を受けているのは十分認識しているとの政府の姿勢は全く変わっていない、こういうことなんですよね。二月二十日に政府見解として官房長官談話が発表されているのですが、それでもそういうふうに述べておられますね。だが、このいろんな反響を見てみますと、いわゆる歴代首相の中で一番無神経な発言だという言い分まであるわけですね。  そこで、そのことについてはじゃ改めて、この国際的に非常に不満を買ったことについて総理はどういう形で今後のあれをやるかわかりませんが、せんだっての発言は修正をした、訂正をした、そういう理解でよろしいですか。
  74. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 率直に申し上げて大変舌足らずでありましたので、熟慮し、この見解を整理したのを申し述べさせていただいた次第でございます。
  75. 上原康助

    ○上原委員 今後、発言の自由とかいろいろの考え方があることは当然でしょうが、こういう問題で、国際国家日本であるとか世界に貢献する日本であるとかいうようなことを外交の主軸、足軸にするというなら、誤解を招かないようにその点はきちっとしていただきたいと存じます。  そこでもう一点、これはまあ外務大臣でもいいわけですが、大喪の礼に参加をした国は何カ国ですか。
  76. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 経緯がございますからまず経緯から申し上げて、最後に国数を申し上げたいと思います。  大喪の礼に際しましては、台湾とかあるいはまたPLOとか、まだ国として承認をしておらず、また国交が絶えた、そうした国に対しましては招待状は発出いたしておりません。それと同じように、南アフリカとは既に承認済みでありますが今日国交はないということでございますから、したがいまして招待状は発出いたしておりません。しかし、今申し上げました国並びに地域からは、先方より参加したいという旨がございましたので参加はされましたが、いわゆる拝礼は行われておりません。だからアパルトヘイト反対という立場があるにもかかわらず何かもやもやしたことがあったんじゃないかというふうに新聞報道がございまして、確かにこの点は、発表なりあるいはまたそういう認識をもっとPRすべきがもたもたした点はあったかもしれません。この点報道機関に御迷惑をかけたと、こういうふうに私は思っております。したがいまして、アパルトヘイト反対という立場は崩しておらない、これだけは御認識賜ります。そうなりますと、南アフリカは今日国交がないとはいえ承認いたしておりまするから、それを足しまして百六十四カ国、以上でございます。
  77. 上原康助

    ○上原委員 これは深入りはしませんが、きょうのところは。しかし、私たちは非常に疑問を持ちますね。こういう特に外交の問題で南ア問題、アフリカ問題というのは、人権問題を含めてアパルトヘイト等々で各国が注目をしているところです。大使の交換であるとかそういう正常な国交がないということで、一月前から総領事が参加をするということは外務省に通告は行っているわけでしょう。参加しておられることもわかっている。余りにも弁解がましい御答弁じゃないですか。これは外交上の問題としてそういう措置はとるべきでない。しかも大喪の礼いろいろある中で、ある中というか、ああいう行事において何か来られる代表に差をつけるということは、日本の立場として私は妥当じゃないと思うんですね。その点を強く指摘をしておきたいと思います。何かお答えありますか。
  78. 福田博

    ○福田(博)政府委員 ただいまの御質問大喪出席者の問題でございますが、大喪の出席国の数につきましては、大喪の案内を出した国についてマークしていきましたところ百六十三ということになったのでそれを申し上げておったわけですが、南アフリカはアパルトヘイト政策の関係もございまして外交関係を持っておりませんので、案内を出しておりませんでした。したがいまして、国としては承認しておるわけですから、先方が領事を出席させたいと言ってきた時点で国にカウントすべきはずだったわけですが、大喪の礼の案内をしておりませんでしたのでカウントしなかった、これは事務的なミスでございます。  ただし、二月の二十一日付で出席国を全部在京外交団に通報いたしましたが、その中には入っております。ですから、外交的には問題はございません。
  79. 上原康助

    ○上原委員 外交的に問題はないというのは我が方の認識の仕方。しかし、相手がどう受けとめるかが外交の問題なんでしょう。そのことを私は指摘をしているわけです。今後、もう少し推移を見ながら、この件についてはまたお尋ねをさしていただきたいと存じます。いずれにしても、事務上のミスとして片づけられる性格の問題じゃないという点を指摘をしておきたいと思います。  次は、できるだけ早く回答ができそうな問題から。基地問題について、これも時間的な都合がありますから、どうしてもお尋ねをさしておいていただきたいと思います。  現在、在日米軍基地がどのくらいあって、本土、沖縄の区別について御答弁ください。簡潔に。
  80. 池田久克

    池田政府委員 お答え申し上げます。  在日米軍の基地でございますけれども、これは在日米軍が固有に保有している基地につきましては百五件でそのりち沖縄に四十三ございまして、面積で申し上げますと全体の七五%が沖縄に存在しております。  なお、これは地位協定の規定に基づきまして自衛隊等の基地を米軍が使っているものを合わせますと、全体で百三十五件で、そのうち四十五件が沖縄で全体の約三分の一でございますが、面積で申し上げますと二六%になっております。
  81. 上原康助

    ○上原委員 これは聞かないでもいいことだったのですが、聞かないとまた誤解があっても困りますからね。要するに、在日米軍基地の七五%は沖縄に存在するというのは政府も認めているわけね。各閣僚も全部それを知ってもらいたい。  そこで、これを図面で説明をすると、なかなか最近の世の中というのは目で見ないと納得しないという方が多いものですから、私がこうつくってみました。これが在日米軍基地の全体としますと、七五%が沖縄にある これはみんな与党の方々も見てください。これは見ればすぐわかる。日本の国土面積が三十七万平方キロですか、それで沖縄はわずかに〇・六%、国土の面積は、針の先ほどしかないんだ。こういう状態。基地は、こういう針の先ほどしかないところにこれだけの面積があるわけなんだな。こういう実態であるということ、これは。一目瞭然ですね。いかに沖縄に多くの基地のインパクトを与えているかということは何人も否定できない、こういう状況。――こっちにもまだ爆弾あるんだ。これはまた本論でやりますから、総括のときに。  そこで、こういう状況下で新たにハリアーパッド基地をどうしてもつくるということでこの二、三年来問題になっているわけでしょう。これは断じて認めるわけにはまいりませんね。これは何も私一人だけのことではなくして、もう党派を問わずこのハリアーパッド建設には強く反対をしておるわけですね。たしかきょうも県議会代表が上京して各省庁に強い要求行動を行っていると思うのです。岩国に今年六月に配備になる。国際情勢はデタントの方向に向かっているというのに、これだけ今でも基地の重圧を与えているところに、たとえ提供施設内だからとあなた方は言うかもしれませんが、新たな基地建設であることは間違いないですね。これはもう地域に集落があるということあるいは学校があるということ、また水がめがある、ダムに近接をしているということ、あるいはノグチゲラとかヤンバルクイナ、そういった保護鳥類が生息をしているという実態等々から考えても、この程度はやはり考えて、総理、あなたが基地問題についても最高責任者なのですから、このハリアー基地建設というものをやめさせることはできますね。明確にお答えをいただきたいと思うのです。
  82. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 上原委員指摘のように、在日米軍の基地は全体で百五、沖縄に四十三、七五%を占めている事実は確かでございます。しかし、このことは、上原委員はもう既に御承知でございますのであえて申し上げるまでもないことでございますが、日米安保体制の目標を達成するため、いわゆる安全保障を確保するというためにはどうしても米軍の駐留が必要である。さらには、必要な訓練をしていかなければならない。訓練をするための必要な米軍のいわゆる地域での施設を建設していかなければならないということは、上原委員承知のとおりでございます。  その中で、米軍が今ハリアーパッド、ハリアー機の練習のためのパッドを一応求めようとしているわけでございまして、今沖縄の中ではこれに反対する意向が非常に強い。過般も私、沖縄へ参りまして西銘知事さん初め皆さん方とお会いいたしましても、非常に強い反対でございます。したがいまして、私たちは、このハリアーパッドの必要性というものと、もう一つは地域住民、沖縄島民のいわゆる安全性を確保する、あるいは環境を保全するというような意味をも含めて、この問題はできるだけ円満な解決に持っていきたい、こう考えているわけでございますので御理解をいただきたい、こう思います。
  83. 上原康助

    ○上原委員 御理解できないのですよ、あなた。理解するなら質問しませんよ。そんな長々と答弁してみたって、安保条約があるからとか軍隊が訓練が必要だからといって、おまえたちはいつまでも基地の被害を受けて我慢しろと、そんな国策によって一地域だけ犠牲にするのはやめてくださいよ。冗談じゃない。  あなたはこの間沖縄へ行って見たというが、現場は行っていないのでしょう。ヘリコプターの上から見て、帰りはほいほいでコーヒー飲んで帰ってきたって実態がわかりますか。冗談じゃない。昨年だって十月十五日に金武町伊芸地区で実弾射撃があったわけでしょう。キャンプ・ハンセンの山火事が起きているわけでしょう。ヘリが墜落しているわけでしょう。十二月二十四日、クリスマスイブでのディスコに催涙弾を投げつけて、それも結局うやむや。そういった相次ぐ基地被害がどんどん起きている中で、こういった危険なハリアー基地をまたつくったら一体どうなりますか。だから与野党問わずこの問題はやめてくれということが県民の声なのですよ。もう我慢できないですね。万が一、あなた方、大喪の礼が済んだからということで三月には強行着工するといううわさもあるのですが、そういう考えはあるのですか。本当に血を見ますよ、今度は。一昨年、住民と米軍が直接に衝突したでしょう。円満に解決する方法は、この計画をやめること、中止をすること以外にないのですよ。ここではっきり答えてください。
  84. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 過般沖縄へ参りまして、ただコーヒーを飲んで帰ってきているわけじゃないのです。真剣に私も沖縄の住民の状況、あるいはヘリコプターでございましたけれども、ハリアーパッドの上空を、海兵隊のスミス少将から、あるいはまたデービス中将も同行して、よく状況を見、また説明を聞いてまいりましたし、また西銘知事初め多くの方々ともできるだけお会いする機会を得て実情をよく把握してまいったのは事実でございます。しかし、この問題については、先ほどキャンプ・ハンセンの事情等もございますので、この点については在日米軍に強く、私たちは今後こういうようなことを起こしてはいかぬ、したがいまして、キャンプ・ハンセンの事故の問題については、在日米軍も、二度とこういうことはしない、また再発防止対策も十分、何カ条かの規定を設けて、今後こういう原則にのっとって進めたいというような意思をも示しているわけでございます。したがいまして、今後沖縄住民の考えを在日米軍に十分申し入れをし、そうしてこの結論を出していきたい、こう思っているわけでございますので、御理解いただきたい。
  85. 上原康助

    ○上原委員 長々と弁解がましいことをおっしゃっても、それは納得しがたいのです。やるかどうかを聞いているのですよ。再発防止を十幾カ条にわたって米軍が何か示したと言うが、じゃ、こっちに示してください。後で資料として提供しますね。約束してください。
  86. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 よろしゅうございます。
  87. 上原康助

    ○上原委員 そういうのも一切明らかにしない。  そこで、あなた今何か、これはどうしてもやらなければいかぬというような印象しか私は受けませんけれども、地元のあれだけの反対、西銘知事や県議会の与党の皆さんには何か約束をしたとかいう報道も一部にはなされているのだけれども、そんなことで皆さんこの問題が解決するなんて思ったら大間違いになりますよ。とんでもない。  総理もよく聞いてください。あなた、この間も本会議でも一言触れておった沖縄振興開発。これはまた総括で開発庁長官にもただしますが、もう戦後四十三年ですよ。なぜこんなにまで沖縄だけに在日米軍基地の重圧を与えて、しかも戦後二十七年、きょう天皇メッセージは取り上げられなかったけれども、あの第二次世界大戦で唯一の陸戦場にされて、二十七年間アメリカの軍事支配下に置かれて、復帰して十七年になるのに、こういう状態を解決しないで新たに軍事基地をつくるなんて何たることですか。これをやめなさいというのですよ。これに対してはだれも反対できないはずなんです。国の安全なら一地域にこんなに重圧を与えていいのですか、本当に。そういう状態を戦後四十三年たっても続けることに皆さん党派を超えて反対しているのですよ。  だから、ハリアー基地は岩国地域にどうしても必要ならどこかにつくれ、そういう極論さえも出できますよ。最後まで聞いてくださいよ。私は、そういうぶっそうなやつはどこにつくるのも反対なんです。したがって、これは総理から結びとして聞きたいのですが、強行するとこれは絶対に簡単にいきませんよ。簡単というどころか、皆さんは機動隊を動員してあるいは米軍をたくさん動員をして実力行使をやることで考えているかもしれませんが、そんなことしてごらんよ、あなた、そういう問題じゃない。だから私が言っているように、これは計画を中止する以外にない。三宅だってそうじゃないですか。とうとうできないじゃないですか。総理からお答えください。
  88. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 お答えいたします。  確かにこの問題は、今在日米軍は計画を進めておりますけれども、島民の、いわゆる沖縄島民の考え方が非常に強い反対を示しておるものでございますから、したがいましてこれは今日までずっと延び延びになっているわけでございます、この計画は。実施されないままになっているのは島民の大きな反対があるからなのでございますので――県民の、失礼いたしました、県民の反対が強いことが今日までこの問題が処理されないままになっているわけでございますので、今後、私たちも県民の意向を体しながらこの問題に対応してまいりたい、かように考えております。
  89. 上原康助

    ○上原委員 そうしますと、総理、県民の意向を無視して強行しない、そのことは約束できますね、ここで。
  90. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 基地の七五%、そして四分の一世紀以上にわたって他民族の支配下にあった。また、よく言われます、小指の痛さを知らないかと。そのようなことは私なりにも十分理解しておるつもりであります。したがって、基本的には、これが理解と協力を得られるようにさらに努力をすべきものである、このように考えております。
  91. 上原康助

    ○上原委員 基本的に理解と協力を得られると言っても、得られないのですよ、もうみんな反対しているのだから。あなたがふるさと創生論で一億円ぐらいばらまいたって、こんなのは絶対だめ。もうそういう時代じゃない。  私がお尋ねしているのは、県民の意向を無視しては強行しないということは政府の現在の立場であるかどうかを聞いているのです。なければない、強行するなら強行するでいいですよ、それをはっきり答えてください。
  92. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 私は、いわゆる仮定のものを前提に置いてお答えは申し上げておりません。あくまでも理解と協力を得られるようになお努力すべきもの、このように考えております。
  93. 上原康助

    ○上原委員 改めて申し上げておきますが、もうこれはいわく因縁のある問題でありますので、実力で強行をするというような事態は絶対避けてもらいたい。そのことはいいですね、念を押すようで恐縮ですが。
  94. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 そういうことがないように、理解と協力を求める努力をさらにいたします。
  95. 上原康助

    ○上原委員 もう一つ、この間、北谷町で米軍油送管が破裂をして大量のジェット燃料が普天間川に流出をいたしましたね。これも米軍の発表と実際北谷町が調査をしたのとは流出量が異なっているわけですが、何とドラム缶の約三十本に相当する。引火でもすれば大変な惨事になる事故ですね。したがって、これまでも内閣なり沖特でも取り上げてはきたのですが、一連のパイプラインの撤去というのは日米間で合意を見ているはずなんだ、既に。だが、アメリカ側が新たな注文をつけて、補助用のパイプをもう一本敷けという注文をつけて、これは解決されていない。速やかにこの総点検をやって、パイプラインの撤去というものをやるべきだと思うのですが、この点についてどのようにお考えなのか、また、どう今作業が進んでいるか、明確に答えてください。
  96. 池田久克

    池田政府委員 御指摘の送油管の亀裂によって御迷惑をおかけしたことはそのとおりでございます。早速、米側は直ちにバルブを閉鎖いたしまして、流出した油を回収し、さらに、亀裂が生じました送油管の部分を掘り起こして現在対策を講じております。そしてまた、その他の部分につきましても、主として溶接部分につきましては今後さらに点検をし対応をしていくということで、現在調査を継続しております。  パイプラインにつきましては、米軍がつくりましたもの、日本側がつくりましたもの、いろいろございます。古いものはどんどん新しくかえていっているわけでありますけれども、本件のことにつきましては必ずしもそう古いものではないようでございます。調査の結果を見ないと何ともまだ断定はできませんけれども、不幸にして溶接部分に問題があったのではないかと思われますけれども、時代的にはまだ使える内容でございます。米側の今後の調査結果を見て、必要な対策は、要すれば対策を講じていく、こう考えております。
  97. 上原康助

    ○上原委員 私は早急にやるべきだと思うのですが、いつごろまでに結論出るのですか、米側の。
  98. 池田久克

    池田政府委員 米側は現在調査を鋭意やっているところでございまして、いつまでということを聞いておりませんが、早速照会したいと存じます。
  99. 上原康助

    ○上原委員 米側に促進しますね。
  100. 池田久克

    池田政府委員 御趣旨を体して促進を、督促をいたしたいと存じます。
  101. 上原康助

    ○上原委員 ぜひそうしていただくように強く要求をいたしておきます。  そこで、次にリクルート問題も取り上げたいわけなんですが、時間の制約がありますのでまた総括のときにやるとして、それにしても、二点だけ確かめておきたい。  一つは、先ほども同僚委員野坂先生からもあったのですが、竹下総理、あなたは、総理は昨年七月の臨時国会の所信表明演説で「若聞人なくば、たとひ辻立して成とも吾志を述ん」こう消費税問題の強い決意を述べて、いろいろつじ立ちもなさったわけよね。ところが、リクルート疑惑についてはその決意とは全く相反していますね、残念ですが。聞く人はいっぱいいるのに、余り本音を、本気のことを言っていただかない。  そこで、確認なんですが、総理の青木秘書に譲渡された二千株、親類の福田勝之氏へ譲渡の一万株にかかわる売買約定書、株購入代金払込証明書、株売却金振込証明書のいわゆる三点セットは、これまでのいろいろやりとりを聞いていますと、何か国会が要請があれば出してもいいとか、あるいはもったいないから出さないとかいうようなぐにゃぐにゃした御答弁しかやっていないのですが、国会の要請があればこれは出すのですか。それが一つですね。  しかし、こういうことは国会の要請がなくても、総理御自身にかかわることなんだから、あなた御自身が精査をして国民疑惑を晴らす、我々の質問に答えるというのが私はよりとるべき姿勢だと思うのですよね。この点についてまず明確にしておいてください。
  102. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 結論的に申し上げますと、国会で御相談願いたいということを言っております。そして、その際、私にも意見を、理事会等でございましょうが適当な機会に、あるいは理事さんを通じてでも意見を申し述べさせていただきたい、こういうことを申しておることはそのとおりでございます。国会の要請というのに従うということは、これは当然のことであろうと思っております。  ただ、私があえてその問題を申しておりますのは、私自身の問題、私の周辺の問題であって、そのことが第三者等に対して御迷惑をかけてはならないということ、そして国会そのものに対して、どこまで国会が追求すべきかということに対する私なりの考え方もありますので、そのような表現をさせていただいておるところであります。
  103. 上原康助

    ○上原委員 いずれにしても、じゃ国会がその三点セットは提出をすべきだという合意に達した場合は、総理はお出しになる準備はあるわけですね。
  104. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 その際に申すべき私にも考え方はございますが、国会の決定に従うことは当然のことであると思っております。
  105. 上原康助

    ○上原委員 そこで、委員長に要望と注文をつけておきたいわけですが、今、国会の要請があれば、国会で結論が出ればということなんですよね。それで、私たちが疑念を持つのは、総理総理がそうおっしゃっても与党が絶対過半数を握っているわけでしょう。理事会で協議不成立だというと出さなくても済むから、逃げ道としてそうおっしゃっているんじゃないか。そのことを国民は非常に疑問を持っている。私も疑問を持っている。みんな疑問を持っているわけですよね。委員長、これは解明しなければいけませんよ一いろいろのことを注文すると、理事会で協議をしますと言って、もう後わからぬじゃ困りますので、私も改めて青木伊平氏、場合によっては福田氏の証人を喚問します。これが一つ。  同時に、今総理は三点セット、国会の結論が得られれば出していいと 意見は言りけれども出さざるを得なければ出していいというわけだから、これは出すよりにぜひ協議をしてお取り計らい願いたいと思うのですが、どうですか。
  106. 大野明

    大野委員長 もう既に何回も同様な質問がございまして、理事会に諮るということにいたしておりますから。
  107. 上原康助

    ○上原委員 あなた、失礼ですが、やりとりするつもりはないですが、これだけ私も今総理のお気持ちも聞いて、総理考えも聞いて、国会が決まれば出していいというのだから。これはもし与党の皆さんがそういうことにふたをするというなら、まさにリクルート隠しですよ、これは。リクルート隠しですよ。あなた自身だっていろいろ問題があるのだ、本当は。そういう委員長が、積極的に出す意思を委員長お持ちなのかどうか、聞いておきましょう。
  108. 大野明

    大野委員長 与野党間においてお話しいただいた上で委員長というものは決定すべきことだと思っていますから。
  109. 上原康助

    ○上原委員 これは恐らくみんな聞いていらっしゃると思いますから、どこに問題の本質があるかもうわかっているのですよね。それを竹下総理がなさらない限り、この疑惑は晴れませんよ。ますます支持率は、今一九%、来月だったら一五。マイナスということはないかもしれませんが、困るんじゃないですか、それじゃ。失礼じゃないですよ、あなた。事実が証明しているじゃないですか。――ですから、マイナスにはならぬかもしれませんがと申し上げている。そこで、そのことについては私たちは厳しく注文をつけておきたいと思います。  もう一点、防衛庁長官に聞いておきたいわけですが、これももう少しいろいろ検討をして取り上げてみたいと思うのですが、にわかに防衛本庁の移転問題が出ましたね。しかも、中央指揮所というのは多額の予算をかけて建設を見た、まだ間もない施設なんですね。それにもかかわらずこの防衛本庁を市谷に移転をするという決定を見た。これについて私たちは疑念を持ちます。しかも元防衛庁長官リクルート問題について疑惑を持たれているという点、六本木の防衛庁跡地、時価一兆五千億とも言われているわけですが、いわゆる民活とかなんとかでこの問題が行革の中で出てきて、私たちも取り上げたことも、ちょっとさわりだけやったこともあるわけですが、今考えてみると、スーパーコンピューターというのはもともと軍事用のあれはコンピューターですね。  跡地はどういうふうに利用を計画しておられるのですか、それだけ聞かしておいてください。
  110. 村田直昭

    村田(直)政府委員 お答えいたします。  桧町地区に所在する防衛庁でございますが、当該地区が非常に商業地区として発展を続けておりまして、国有財産の有効利用の観点から当地区の活用を考えた場合、現在の防衛中枢を置くよりも、その位置、環境にふさわしい用途に利用するということで今回移転を計画したわけでございます。  今先生お尋ねの跡地の利用につきましては、八年後以降に跡地がきれいになるわけでございますが、その時点でこれは大蔵省に返還をいたしまして、そこで跡地の利用について御検討いただくということになっておりまして、防衛庁としては現在考えておりません。
  111. 上原康助

    ○上原委員 またこれは引き続きいろんな場でお尋ねをいたしますが、なかなか複雑な面もあるかもしれませんね。  次に、もう時間が大分迫ってまいりましたが、いずれ総括の中で防衛問題に絞って議論をする機会があるかもしれませんので、今の状態、五里霧中でどうなるかわかりませんが、FSXの問題について、この時間の範囲内でお尋ねをさせていただきたいと思います。  この点も相当時間をかけて経過なり含めて議論をしなければいけないわけですが、そもそもこの次期支援戦闘機、いわゆるFSXの位置づけというものを我が国の防衛力整備においてどういうふうにやっているのか、ひとつ端的に明確に答えてください、防衛庁長官
  112. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 次期支援戦闘機につきましては、F1の次期支援戦闘機として日米で共同開発で進めようということに相なったわけでございますので、今後二国間でなければできないすばらしい支援戦闘機をつくるということを目標にしているわけでございます。
  113. 上原康助

    ○上原委員 何を支援なさるの。
  114. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 国の安全を確保するための、いわゆる節度ある防衛力整備のための一環でございます。
  115. 上原康助

    ○上原委員 よくわかりませんが、F1の後継機としてFSXを計画をしておる。私は国産がいいとかあるいは共同開発がいいとか、そういう視点から尋ねているわけじゃありませんので……。  この種の、FSXというようなタイプの支援戦闘機というのは諸外国も持っているのですか、持っていないのですか。
  116. 小野寺龍二

    ○小野寺政府委員 米ソ、ヨーロッパ各国ともに何らかの形での支援戦闘機というものは保有いたしております。例えばアメリカでございますと、F16のような飛行機が現在の支援戦闘機としての役割を果たしておりますし、さらにはA10という、これは支援専門の戦闘機でございます。ヨーロッパでございますと、トルネードの支援型というのがございます。といったように、支援戦闘機というのは各国とも保有いたしております。
  117. 上原康助

    ○上原委員 今の、F16は支援戦闘機としては位置づけてないわけでしょう、あなた、アメリカは。そんな答弁じゃ納得できませんね。そもそもこれは日本の防衛力整備の中で、いわゆる専守防衛というものを基本理念というか概念として、日本の独特の支援戦闘機ということで、あれは最初T4だったか、それをモデルにしてF1に改良されたはずなんですよね。だから、今あなたが言うように諸外国もそういうものを持っているというように簡単に片づけられる位置づけでないですね、この支援戦闘機というものは。それが一つ。 同時に、なぜF16の改良機でなければいかないんですか、その理由。  そして、現在は支援戦闘機は何機持っているの。
  118. 日吉章

    ○日吉政府委員 お答え申し上げます。  我が国で航空機を運用いたします場合には、主として防空要撃戦闘機として運用する場合がございます。これは現在では主力戦闘機といたしましてF15を用いておりますのは、委員御案内のとおりでございます。  それからもう一つの主要な運用方法といたしましては、我が国に着上陸侵攻してまいります敵の艦艇等を攻撃いたします、侵攻を阻止いたします対艦運用あるいは不幸にして上陸されました敵の基地を攻撃いたします対地攻撃として支援戦闘機というものがございます。これが現在、委員ただいま御紹介ありましたように、F1という自主開発いたしましたもので運用いたしておりますが、これは約七十機現有しているというふうに私は理解いたしております。  なお、F16を主力にいたしまして、どうしてそれを改造することになったかということでございますが、これには委員御案内のように長いいきさつがございまして、そもそも全面的に自主開発するのがよろしいのか、あるいは既存の航空機を改造するのがよろしいのか、あるいは既存の航空機をそっくり外国から輸入するのがよろしいのか、いろいろ比較考量いたしましたところ、費用対効果その他運用上の問題等考えますと、日米双方の技術のいいところを結集いたしまして、なお非常に航空機につきましては経験の豊富な、かつ現時点におきましては優秀な支援戦闘機と評価されておりますF16を土台にいたしまして、それに今後十五年ないし二十年以上先の各国の軍事技術の水準等を見通した場合に、それに改良を加えて、それを次期支援戦闘機として日本側が運用するのが、費用対効果の点あるいは今後の運用の実態等を考えました場合に最も効率的であろう、かような観点に立ちまして、総合的判断からF16を土台にいたしまして、日米双方の持てる優秀な技術を合わせて共同開発しようという結論に立ち至ったものでございます。
  119. 上原康助

    ○上原委員 これは短時間ではできませんので、また総括のときに触れますが、今七十機ですね。七十機。なぜこれを百三十機にFSXはしなければいかないの。これが非常に問題であるということ。製作機数及び要求性能に、専守防衛あるいは防衛計画大綱から考えて非常に問題があるということですね。  だから、今七十機ならばやがて倍になるんですよ、百三十機。しかし、性能たるや、今はF15とF16しか戦闘機においては一番優秀な戦闘機はないはずなんだよ、一応日米間で持っているものには。しかもそのF16というのは核搭載機、これは三沢に配備されているのを今度また改良するということもある、これもいずれ取り上げたいわけですがね。性能面、性格面あるいは費用対効果とおっしゃるけれども、まさに高価な買い物だと断ぜざるを得ませんね。大綱別表の見直しを想定をしているということ。  同時に、これもまあ中曽根前内閣というのはよほどいろいろなことをやった。一%を突破したり、不沈空母論から始まって三海峡封鎖論。まさに一千海里、フィリピン以北、グアム以西じゃなくしてオホーツク海ですよ、オホーツク海。まさに三海峡封鎖のための次期戦闘爆撃機として位置づけてこれを改良しようとするのがFSXの皆さんがやろうとしていることじゃないですか。だから軍事費が幾らあっても足りない。こういう点を指摘をして、この問題については後日また性能面を含めて――あなた、F1との性能を見てごらんよ。何で五百キロが八百三十キロにもなるのですか、行動半径が。で、開発された場合に給油装置はどうするのかという点が一つ。  さらに、もっと大事なことは、日米間で一応取り決めにしたって、今米議会で大きな問題になっているわけでしょう。もし三月、米大統領が議会に勧告できない場合、共同開発をしたいということができなくなった場合には、六十三年度予算あるいは次年度予算にあるFSXの予算等については問題が出てくる。しかも百三十機を生産をする場合には、六十年度概算で優に一兆三百億ですか一兆五百億ですか、これだけのたくさんの買い物、高価な買い物をやるのに国会に資料も出さない、議論もしない、こういうことでは私たち納得できませんね。こういうことについてどうお考えかということ。  もう一つ、交換公文と了解覚書があるわけですが、交換公文についてはその概要というか概略については公表をかなりの部分されている。しかし、了解覚書あるいは細目取り決めについては全く出さない。これだけ問題になっているものを細目取り決めも出さないで国会は何を審議するんですか。ぜひこういう資料については具体的に提示をしてもらいたい。  以上三点について明確なお答えをいただきたいと思います。
  120. 日吉章

    ○日吉政府委員 幾つかの御質問がございましたが、私の担当範囲でまずお答えを申し上げたいと思います。  まず機数でございますが、これは現在保有しておりますF1は一九九〇年代の後半になりますと耐用命数が参りまして減勢してまいります。それを補てんする、補完するという意味で今から開発を始めないと間に合わないというものでございます。なお、開発が成功いたしました場合に、量産といたしまして何機量産するかという点につきましては、開発の見通しがつきました段階で改めて検討するということでございまして、ただいま委員が御指摘になられましたような機数を私どもは既に決めているというようなものではございません。  なお、F16を土台にいたしまして開発をいたしますけれども、私どもはこれに核搭載機能を持たせるというようなことは全く考えていない。したがいまして、大綱に言います専守防衛の枠の中をはみ出すものでないという点はよく御理解いただきたいと思います。  なお、攻撃的性格を持つのではないかという意味で足の長さ、航続距離の長さについての御指摘がございましたが、これにつきましては、対艦兵装いたしました状態で四百五十ノーチカルマイルということで、現在のF1よりは足は延びますけれども、他国に対しまして侵略的、攻撃的脅威を与え得るということは、それは相手の領土に到達し得る場合、しかもその場合には対地兵装を備えないといけないということだと思いますが、対地兵装いたしました場合には、このFSXはF1より若干航続距離は延びますけれども、著しく延びるというようなものではございませんで、その性能は決して他国に脅威を与えるようなものであるというふうには考えておりません。  なお、空中給油の問題は、全くFSX開発とは関係のない問題でございまして、これは別途中期防の中に盛られました趣旨にのっとりまして検討を進めているところでございます。  なお、残りの点につきましては装備局長の方からお答えをしていただきたいと思います。
  121. 上原康助

    ○上原委員 答弁してくださいね。  そこで、このFSX問題については日米首脳会談でも議論になったわけでしょう。今米議会で大問題になっていますね。日本側としては、今後この問題についてはどうけりをつけようとしていくのか、これは総理か外務大臣防衛庁長官から答えてください。そして私が言っているのは、給油機の問題は次に聞きますよ、給油装置はどうするのかということを私は聞いたのです。このことについて。
  122. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 今防衛局長申しましたとおり、この共同開発は日米間で最も必要なことだという認識で既に政府間の取り決めが行われておりまして、議会に対する通告がまだなされておりませんから、議会にも了解をしてもらい、また、通告をなし得るようにひとつ米国政府の御協力、そうしたものを私から期待します、要請じゃありません、お互いにもう理解しておるわけですから、期待します、こういう段階でございます。
  123. 大野明

    大野委員長 これにて野坂君、上原君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十一分休憩      ――――◇―――――     午後一時開議
  124. 大野明

    大野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。坂口力君。
  125. 坂口力

    ○坂口委員 二時間五十一分の長丁場でございますので、どうぞひとつよろしくお願いを申し上げたいと存じます。  まず最初に、本日各新聞等を拝見をいたしますと、日本から中国に立ち寄られましたブッシュ米大統領が、二十六日、人民大会堂で李鵬首相、そして鄧小平中央軍事委の主席と会談をされまして、良好な米中関係をさらに拡大強化をしていくということを合意をされた、また鄧小平氏は、ゴルバチョフ書記長の訪問を受けて中ソ関係の改善についても触れたというふうに報じられております。  米中ソが新時代を迎えようというふうにいたしておりますが、これに対応して日本としてどのような役割を演じる決意を総理はお持ちになっているのか、まずお聞きをしたいと存じます。
  126. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 ただいま坂口委員からお触れになりましたとおりでございます。  私が先般訪米しました際にブッシュ大統領から、御大喪の礼に参加した翌日、中国を訪問をするというお話は聞いておりました。したがって、今回またお会いいたしました際に、中国へお越しになる、いわば新政権でございますから、そしてみずからも中国に長らくいらした人でございますだけに、一層友好関係がこれによって増進することは私も好ましいと思っておりました。  一方、五月にゴルバチョフさんが北京を訪問されるということに対する問題につきましても、御案内のように、五〇年代の状態に返るというものではないという意味においては、本当に新時代という感じが私もいたすわけでございます。なかんずく日中そしてまた日ソの問題、一方日米の問題という関係にありますだけに、これらの機運がそういう結果を、手放しで楽観するわけでは決してございませんけれども、もたらしたということを高く評価し、我が国もやはり今後の残された問題としては、日中、日米は一層友好を促進すると同時に、日ソの問題についてはなお粘り強く、いわゆる困難な諸問題、すなわち我々の立場からいえば領土問題でございますが、これらを含め平和条約が結ばれていくことに対して最大限の努力を重ねていくべきものである、このように考えております。
  127. 坂口力

    ○坂口委員 こうした世界情勢というものが外交そして日本の防衛等にどういう影響を与えるかというようなことにつきましては、また外務大臣並びに防衛庁長官には後ほど防衛問題をやりますときに御意見を賜りたいと思います。  さて、今まさにリクルート問題が連日議論の対象になっているわけでございますが、私もこのリクルート問題のところから先に入らせていただきたいと思います。  総理大臣、今回のリクルート疑惑というのは一体何であるのか、何なのか、そのことを私は改めて問いたいわけでございます。その全貌をまだ国民皆さんもつかみかねていると申しますか、一体この問題はどこに核心があるのか、どこまで広がりを見せていくのかということに恐怖を感じていると言っても過言ではないと思うのでございます。  私も最初は、これは有価証券に対するルールの問題、あるいはまた有価証券の課税の問題ぐらいに考えていたわけでございますが、日を追うにつれまして、このリクルートという会社の金銭攻撃に、政治家はもちろんのこと、官僚そしてまたあらゆる分野にこれが広がっていきまして、大きな事件に発展をしてきたというふうに認識をいたしております。しかし、私が今申しましたように、今まで考えておりましたものと比較をいたしまして、その本質のあるところというのは、これは最初に考えていたところとは全く別のところにある、そういう思いで今この問題を見詰めているところでございます。  総理は、かなり時間が経過もしてまいりましたが、初期にこのリクルート問題について見解を述べられましたときとはかなり情勢が異なってきているというふうに思いますが、現時点でどのような見解をお持ちなのか、まずお聞きをしておきたいと思います。
  128. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 私も、若干の相違はあるといたしましても、リクルート問題というものにつきましては、かねて申し上げておりますように、有取法上の問題、税法上の問題、刑法上の問題、そうして道義上の問題と四つに整理をいたしておったことは御承知のとおりであります。  第一の証取法上の問題が刑法上の問題とこれがまたオーバーラップしてきておるということも今日変化の一つでございますが、それ以上に私どもは、いわば政治家個々の道義上の問題、これはもとよりでございますけれども、それが大きく今政治に対する不信感というものを惹起する原因そのものになっておるということに私は注目をいたしておることが一つでございます。  それから三番目の刑法上の問題、それが一番目の証取法上の問題も絡んでまいりましたけれども、この問題については、やはり検察が厳正、適切な対応をするものであろうというふうに確信をいたしておりますので、その中へ入り込んだコメントは私がすべき問題ではなかろう、こういうふうに考えております。
  129. 坂口力

    ○坂口委員 では具体的な問題に入らせていただきたいと思いますが、昭和六十一年の五月にNTTは米国のクレイ社製のスーパーコンピューターを購入いたしました。そのスーパーコンピューターXMP216型の購入価格というのは一体幾らなのか。かなりここでも何回か出たわけですが、まだ、なおかつ鮮明になっていない。しかし、この辺のところは、このリクルート問題が非常に大きな広がりを見せ、そして大変な事件になっておりますだけに、もうここに明確にされていいのではないかというふうに思うわけでございます。まず、その本体の価格は幾らであったのか。これは今までの復習も含めまして一度お聞きをしておきたいと思います。
  130. 片岡清一

    ○片岡国務大臣 お答え申し上げます。  スーパーコンピューターの購入・販売価格等契約の具体的な内容につきましては、企業の個別の契約内容にかかわることでありまして、これを明らかにすることは一般の商慣習に反しますのみならず、また当該契約の直接の当事者である相手企業のみならず、他のNTTとの取引企業の信用を失い、今後のNTTの企業としての活動に大きな影響を与えるおそれがありますので、御容赦を賜りたいと思います。
  131. 坂口力

    ○坂口委員 郵政大臣、今これはNTTの信用にかかわる問題だというふうにおっしゃいましたが、はっきりさせないことの方が信用にかかわるのですね。事ここに問題が至りました以上、もうこのぐらいなことは明白にして、そして国民皆さんにかくかくしかじかでございましたということを明確に申し上げることが信頼を回復する第一歩ではないかというふうに私は思います。それを現在までのいわゆる一般の商習慣的なもの、その延長線上でお考えになっているから今のような御答弁が出てくるのであって、この問題はもうそうした問題とはかなりかけ離れた別次元のものであると私は考えております。  したがって、今私は、こうした基本的なことはもう明確にしていただいてよろしいのではないか。特にNTTは、以前とは違って民営化されましたけれども、なおかつ国のかかわっております企業でございます。したがって、それだけに明らかにする必要があるのではないかというふうに私は思いますが、これはNTTからでもよろしゅうございますし、大臣からでもよろしゅうございますが、再度、もう一度お願いを申し上げたいと存じます。
  132. 山口開生

    ○山口参考人 お答えいたします。  先ほど大臣からもお話がございましたように、こういった個々の契約内容でございますので、やはり個々の契約内容が公表されるということは商習慣上いろいろと問題が起こるということで私どもは前からずっとお答え申し上げておるわけでありますが、まだ現在でも私どもそのように考えておりますので、どうぞ御了承いただきたいと思います。
  133. 坂口力

    ○坂口委員 そこが間違いだというふうに私は今指摘しているわけであります。これが言えなければ、その次に、NTTからリクルート社に転売した価格はどれだけかということについても言えないわけですね。  そうしますと、多くの国民皆さん方は、NTTがリクルートにかわって購入をして、そしてリクルートにひょっとしたら破格の安い値段で転売したのではないかという疑いも起こっているわけですね。そうしたことに対して答えるためにも、何十何銭までどうだこうだというようなことを私は言うつもりはございませんけれども、しかし、あらあらこれぐらいの値段でございました、そしてそれをリクルートの方に転売いたしましたのは大体これぐらいの値段でございましたということぐらいは、もりこの時点になりましたら明確にしなければ、皆さん方の企業責任というものを果たすことができないのではないかと私は思います。もう一遍、ひとつ御答弁いただきます。
  134. 山口開生

    ○山口参考人 マクロ的に、例えば十億のオーダーとかあるいは二十億のオーダーとかいうようなことは従来から申し上げておるわけでありますが、それ以上の本当に個々の数字になりますと、やはりいろいろと問題がありますので、現在でも御容赦いただきたいと思っております。
  135. 坂口力

    ○坂口委員 そこまでおっしゃると、それほど言えない原因があるのか、それほど言えない理由があるのか、そう我々としては詰め寄らざるを得ないわけでございます。  今までマスコミ等に出ました数字、また我々が独自でいろいろ調査をいたしました数字といたしましては、当初二十一億七千九百万円ぐらいで契約をなすって、その後値引き等がされて十九億何がし、約二十億円ぐらいを支払っておるのではないか、こり我々暗に理解をしているわけでありますが、そして皆さん方の方はそれをリクルートに転売をなすったときに、それに対して多少上乗せをした、二十億、それに五%ぐらいを上乗せをしたような形で転売をされたのではないか、こういうふうに伝えられておりますので、あるいはそれを信じるしかないのかな、こんなふうに思っているわけでございますが、私が今申し上げましたことが大体当たっているのか、それともかなり外れているのか、いかがでございますか。
  136. 山口開生

    ○山口参考人 お答えいたします。  どうもそういう数字がいろいろと報道関係で出ておりまして、私どもも当たっているとも当たっていないとも申し上げにくいことでございますので、御了承いただきたいと思います。
  137. 坂口力

    ○坂口委員 甚だ失礼な話であります。それでは、また後でお伺いをすることにいたします。  通産省の工業技術院が昭和六十二年の十月二十三日に購入されました同機種のスーパーコンピューターXMP216型の購入価格というのがあるわけですが、この通産省が購入をされました価格というのは一体幾らでございますか。
  138. 飯塚幸三

    ○飯塚政府委員 私どもの購入いたしましたスーパーコンピューターの本体機器部分についてのお尋ねかと存じますので、これは二十二億三千万円でございます。このうち半導体記憶装置三億六千万がついておりますので、それを除きますと十八億七千万円、さらにその中には基本ソフトウエア及び運送費等が入っておりますので、それを除いたハードウエアのみでございますと十七億五千万円になるわけでございます。
  139. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございます。これははっきりいたしておりますね。私たちもそのように承知をいたしておりますから、これははっきりいたしております。  同じ機種がこの値段で入っているわけでありますから、大体これ前後の値段でNTTにも入っているのであろうというふうに思いますが、この同じ機種が国の方にこうして入って値段が明らかになっている、そしてそれは通産省の方から明確に御答弁がある。それにもかかわらず、NTTの方は同じ機種を購入をしながらその値段を言わない。そこに非常に我々は疑惑を感じるわけでありまして、その疑惑を晴らすためには明確にしなければならないのではないか、そんなふうに私は思っております。  工業技術院の方は、この同機種のスーパーコンピューター、今本体価格をおっしゃったわけですが、これを購入をされますときに、通産省の方がNTTよりも後だったわけですから、通産省の工業技術院の方がお買いになりますときには、NTTが購入されました価格というのは一応参考にされて決められたのか、それとも全然そんなことは関係なくお決めになったのか、そこはいかがでございますか。
  140. 飯塚幸三

    ○飯塚政府委員 お答え申し上げます。  私どももNTTがクレイ社スーパーコンピューターと契約された価格を知る立場にはございませんですが、私どもの購入に当たりましては、予定価格の算定においてクレイ社の一般的な販売価格を参考にしたわけでございます。
  141. 坂口力

    ○坂口委員 一年ぐらいおくれているわけでありますから、こういうふうな機種というのは一年たちますとかなり安くなっておるわけであります。したがって、NTTがお買いになったものよりも本当はかなり安くお買いになってもこれは不思議ではないわけでございます。  この工業技術院の購入に際しまして入札が行われております。六十二年の八月二十五日の入札説明会には五社参加いたしておりますが、実際の入札に応じましたのはクレイ社のみでございました。また、このクレイ社のスーパーコンピューターの購入に当たりまして、IBMの前処理コンピューターも、これはクレイ社に発注をしてクレイ社からお買いになっている。定価は五億八千万円。しかもほとんど値引きはされていない。日本が日本IBMから直接購入すればはるかに安くなるわけでありますが、これもクレイ社を通じてお買いになっている。どうも通産省の方もかなり気前よくお買いになっているのではないかという気がするわけであります。  それから、六十三年の四月に東京工業大学でもスーパーコンピューターをお買いになっておりますが、その入札に際しましても、当初から国内企業を実質的に排除する規定が設けられまして、米国のCDC社ETA10に決定をしておみえになります。どうも一連の関係からいきますと、スーパーコンピューターの購入は、日米交渉を通じて米国のクレイ社とCDC社から購入することがあらかじめ定められていたのではないかという気がしてならないわけであります。  入札説明書なるものを手に入れましてちょっと拝見をいたしましたけれども、こんな分厚いもので、どうも専門的なことが書いてございまして、読ましていただきましても一向にどういうことが書いてあるのか、我々はわからないというのが実情でございますが、専門家に見ていただきますと、これはもうクレイ社しか買えないという入札説明書になっている、日本のなんかはもうこれはその中には入れない、これを読めばもう辞退をせざるを得ないという形になっている、こうおっしゃるわけであります。そういたしますと、形の上では内外無差別の競争入札という形をとってはおりますけれども、まさに国際談合と申しますか、これはもう初めからここに落とすということを決めてかかったことであって、そして、値段は非常に大盤振る舞いをしていると言わざるを得ないわけであります。  私は、こうした品物の買い方、たとえ日米間にどんな摩擦があり、そしてどうしても外国から、アメリカから買わなければならないというものがあったとしても、やはりそれはきちっと値段の交渉あるいは入札等につきましては誤りなきを期して行わなければならないのではないか。どうもこれでは随意契約なのか。随意契約は、しかしいろいろな形でできない。そういたしますと、これは競争入札にしなければならない。しかし、競争入札という形で見ますと、まさしく実質的には競争入札でなくて、そしてもう特定の企業にこれは落とす形になっている。まことに巧妙な形で売買されていると言わざるを得ないわけであります。  これはひとつ通産大臣、こういうことが好ましいというふうにお考えになるのか、果たして今後こういうふうなことでいいのか、ひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  142. 飯塚幸三

    ○飯塚政府委員 若干私どもの契約の経緯についてのお話がございましたので、私からお答えさしていただきます。  私ども、当初からクレイ社のスーパーコンピューターを購入すると決めていたわけではございません。私どもの十六の試験研究所の幅広い科学技術上の計算ニーズに対応するために非常に高度な機種が必要であるということはあったわけでございますが、私ども工業技術院の中で機種選定委員会を設けまして、研究者を含めて十分な議論を行って仕様書を作成したわけでございます。また、入札の一連の手続につきましても、広く内外のコンピューターメーカーが参加できるよりに仕様も若干考慮しておりますし、また完全にその仕様を細部まで満たさなくても契約ができるように技術審査を行いまして、同等の能力があるものについては入札に応ずるということで、できるだけ広く応札するよう進めた次第でございまして、特にクレイ社のスーパーコンピューターだけを前提にしたものではございません。
  143. 坂口力

    ○坂口委員 表向きはそういう話なんですね。そうなっている。ところがしかし、よく見てみると、内容はそうなっていない。そういう表向きにしながら、実際問題は、この説明書等を細かく見るともうほかの日本の企業等は参加できないような形になっている、こう私は指摘をしているわけでございます。  これからもこうした問題はあるわけでございます。したがって、日米関係だけではなくて、これからヨーロッパ等の関係もございますし、日本は外国からのいろいろの製品を買わなければならないこともあるでしょう。しかし、そのときに特定の企業に限定をするような形で、形だけは競争入札を整えたけれども、しかし前もってどこに落とすかということをあらかじめ決めておくようなやり方は、私は避けなければならない、これは厳しく指摘をしておきたいと思うわけであります。
  144. 三塚博

    ○三塚国務大臣 これはせっかくの御指摘でございますが、私もさようなことがあってはならないということで、本問題が起きましてから、通産関係局庁、特に工業技術院がこれを購入した経過がありますので調査をいたしました。  今、工業技術院長御報告のとおり、工業技術院内に機種選定委員会、委員長は工業技術院総務部長。工業技術院は御案内のとおり、我が国研究者集団、二千五百人の研究者ほとんどがドクターであります。そういう諸君が、筑波にございます十六機関の試験所、かねがね大型スーパーコンピューターが欲しい、官房を通じ大蔵と何回か交渉をした。しかし、マイナスシーリングの中で認められることができ得なかったわけであります。内需振興ということでたまたま補正が組まれるということで、通産省、工業技術院全力を挙げて政府部内の陳情、大蔵、もちろん官房が中心であったようですが、そんなことで、それでは認めようかということの中で、ただいま申し上げました選定委員会が行われまして、その研究の結果、入札等の一連の手続を組みまして適正に行ったというのが私に対する報告であります。  御指摘のように一つのものを特定をしてやるということ、なかなか政府機関、政府としてそういうことができ得べくもございません。特にこの説明会にはコンピューターメーカーたるクレイ社、CDC、富士通、日立、日電の五社が参加をいたしておりまして、工業技術院、いわゆる通産省として示しました要求仕様、納期六十三年二月二十九日、応ずるということで出したわけでございまして、これに結果的に応じたのがクレイ社一社であった、こういうことでありますから、坂口委員指摘のような、その辺の疑念があられたのかと思うのでありますが、さようなことのないことを、私も通産大臣として調査の上、明確にここで申し上げておきます。
  145. 坂口力

    ○坂口委員 結果としてそうなった、こうおっしゃるわけでありますが、その辺のところに我々としては疑問を感じる点が幾つかあるということを指摘をしたわけでございます。  さて、この問題は問答いたしておりましてもこれ以上進まないと思いますから、この辺にとどめておきますが、今後のこともありますので、より注意を申し上げておいたわけでございます。  話を次に進ませていただきます。  通産省に重ねてお聞きをいたしますけれども、NTTが購入をいたしました一号機から四号機までの輸入証明書というものを保管をされているかどうか。それがされているとするならば、エンドユーザー、最終需要者はそれにどう書かれているのかということをお聞きをしたいわけであります。
  146. 熊野英昭

    ○熊野政府委員 お答えをいたしたいと思います。  まず、御質問の輸入証明書というものはどういうものかについて、念のため御説明をさせていただきたいと思います。  輸入証明書、俗にインポートサーティフィケートの頭文字をとりましてICと申しておりますけれども、ココムにおける申し合わせを踏まえまして、戦略物資のココム規制対象国への横流れを防止するという観点から、輸出国政府が輸出先国として申請のあった国に、すなわち輸入国になるわけでありますけれども、その貨物が輸入されることを確認するため、輸入国政府が発給しているものであります。一般的に申し上げればそういうものでありますけれども、我が国におきましても、こういう立場から行政サービスの一環として発給をしているものであります。  そこで、お尋ねの本件におきます輸入証明書の最終需要者の欄はどう記載されていたかでありますけれども日本電信電話株式会社と記載されておりました。  なお、今回の御質問に際しまして、改めて調査を行いましたところ、資料が保存されている期間、原則的には一年間でございますけれども、八七年の八月発給分につきましては資料が保存されておりましたので、そのICにかかわりますNTTからの発給願に添付されました資料におきましては、輸入されるコンピューターはリクルート社に転売される予定であることが記載されておることを確認されましたので、あわせて申し上げる次第であります。
  147. 坂口力

    ○坂口委員 私も手元に国際輸入証明書なるものの写しを持っております。この国際輸入証明書を出しますのに、その前にまず通産大臣に対しまして国際輸入証明書発給願というのを出さなければならない。その発給願と申しますか発給申請書と申しますか、それを出します。その欄に最終需要者及び住所というのを記入することになっておりますが、ここはNTTの名前が書かれている、こういうことを今お答えになったのだろうと思うわけであります。  そういたしますと、NTTが購入されました四台の中で、二台目と四台目はNTTからリクルートへ転売されるということになっていたわけでありまして、転売をされますことが明確になっていたわけでありますから、二号機と四号機は最終需要者、エンドユーザーというのはNTTではなくてリクルートでなければならぬと思うわけです。ここはNTTと書かれて、そしてどこにリクルートにこれを転売するということが書かれてあったのですか。今おっしゃったのは、国際輸入証明書発給願の方に、これは転売をする、こう明確に書いてございますか。
  148. 熊野英昭

    ○熊野政府委員 ただいま御答弁申し上げましたように、発給願の方には日本電信電話株式会社と記載されておりました。ただ、その際にあわせて提出されております添付資料におきまして、今回これは改めて御質問があるということで私どもで調べたわけでありますけれども、いわゆる四号機につきましては資料が残っておりましたので、その保存されている添付資料についてチェックをしてみましたところ、添付資料の中に輸入されるコンピューターはリクルート社に転売される予定であることが記載をされておりましたということをあわせて申し上げた次第でございます。
  149. 坂口力

    ○坂口委員 今御指摘のようにこのほかにこの証明書に契約書を添えて提出することになっておりますが、この契約書に今おっしゃったようにリクルート云々の言葉が書いてある、こういうことをおっしゃったんだろうというふうに思います。  先日我々がお聞きをいたしましたところ、この一九八七年の二つだけではなくて、二号機の一九八六年六月のものも保管されている、こういうふうにお聞きをいたしておりますが、いかがでございますか。
  150. 熊野英昭

    ○熊野政府委員 先ほど申し上げましたけれども、これは各通産局に権限をおろしておりまして、本件につきましては東京通産局で扱っております。通産局の内規によりますと、資料の保存期間は発給日より原則として一年ということになっておりまして、御指摘の先まど申し上げました八七年八月に発給いたしましたものについては資料が残っておりましたけれども、八六年のものについては原資料は残っておりませんでした。(坂口委員「おかしいな」と呼ぶ)いや、一年が要するに……
  151. 坂口力

    ○坂口委員 一年であることはわかっておりますが、これは皆さんからいただいたものなんです。そういたしましたら、NTTが買いました一号機につきましては、もう既にございません、こういう御答弁でございました。しかし、二号機は一九八六年六月がIC発給時期でありますが、その一九八六年六月の分はございます、こういう答弁を私の方、いただいております。  それで、ここで余りとどまっておりますと時間がなくなってまいりますので、この問題先に進みますが、今申しました二号機に対しましては、あるのかないのかよくわかりません、私どもがお聞きしましたらございますといりお答えをいただいている。あるいはなくて八七年のものだけなのかもわかりませんが、まっきりとそここリクルートに転売すると書いてございますか。
  152. 熊野英昭

    ○熊野政府委員 私、先ほど申し上げましたように、原資料が残っておりますのは八七年発給のものでございまして、八六年発給のものにつきましては、台帳に転記をして、簡単なものだけ転記をしたものが台帳にあったことを先生ないしは事務局の方に御説明したんだと思います。いずれにいたしましても、原資料あるいはその添付資料等は八六年のものについては残っておりません。  それから、ただいま御質問の点でございますけれども、これは契約書は英語でございますので「ジェクイプメントウイルビーリソールドバイNTTツーリクルートカンパニー」「ウイルビーリソールド」こういうふうに書いてございます。先ほど来申し上げておりますように、転売される予定であるということと解しております。
  153. 坂口力

    ○坂口委員 我々がお聞きしましたのによりますと、それは転売とは書いてなくて、使用される、リクルートに使用されるというふうに書いてある、こういうふうにお聞きをいたしましたけれども、それはまさしくりソールド、間違いございませんですね。間違いなければ結構でございます。  さて、そういたしますと、四台の機械を購入するに当たって国際輸入証明書発給願、それに対しては最終需要者はNTTと書いてあるけれども、これはクレイ社との契約書の中にはリクルートに転売するということが明記をされている。これは、通産省としては、二号機、四号機をリクルートに転売されるということは承知の上でこの発給願なるものに、最終需要者NTTでいいというふうに判断をされたのか、そこは余りよく御存じなくて、これでいいじゃないかということになったのか、そこをひとつお聞きをしたいと思います。
  154. 熊野英昭

    ○熊野政府委員 先ほども申し上げましたけれども、輸入証明書の発給は東京通産局で行っております。したがって、先ほど来私が申し上げておりますのも、今回御質問に際しましていろいろ関係資料等を再チェックをいたしましてわかったことを申し上げているわけであります。  まず一般的に申し上げまして、ICは、外国の輸出管理当局が輸出許可の審査を行う際の参考資料といたしまして、当該貨物が他国に迂回販売されるものではなく我が国に輸入されるものであることを確認するために、いわば行政サービスとして発給しているものであります。こういった性格上、ICを発給する際に私どもが、一般的に通産局が確認する点は、現に輸入者が我が国に存在し、輸入を実行するという点が中心でありまして、通常その最終需要者の欄というのは参考程度にすぎません。したがって、今回調べましたけれども、担当者の記憶も必ずしもはっきりはいたしませんけれども、その際に契約書を一々中身まで当たってそこまでは照合していないと思います。一般的に輸入者が日本におりまして、それでその輸入者が輸入するということを契約書によって、事実契約書があることによって確認されれば、通常はそれで十分であるということではないかと思います。
  155. 坂口力

    ○坂口委員 外務大臣、こんな輸入証明書というのはなぜ出すのだろうか、なぜこんな面倒くさいことをするのであろうか。それは、言うまでもなくココムの規定によりまして、ココムの対象になります製品の中でそれが共産圏に流出するというようなことがないように、その辺のところをチェックするためにこれはつくられているものでありますから、この辺は中身まで余り詳しく見ていないというようなずさんなものであってはならないと思うわけです。これはかなり米国の国務省あたりも厳しい目で見ていることは事実であります。  私は今ここで、ココムのよしあし、その必要性等につきまして論じようといたしておりません。それにはいろいろの意見もあります。しかしながら、日本の国がココム規制なるものを守っていくという立場をとって、そして、過去にございました東芝の問題やダイキン工業の問題等々、ああしたことで大騒ぎをして、日本の国じゅうがひっくり返るぐらい大変な問題視をするのであるならば、全般にもっとやはり目をみはってしかるべき問題だというふうに私は思うわけであります。  コンピューターを日本が購入するわけでありますから、NTTがお買いになりましてお使いになりますのならば、エンドユーザーが明確でございますし、NTTのお仕事の内容も明確になっているわけであります。ところが、NTTからさらに他の企業に転売をされるということになりますと、その転売をされます方のその企業というのはどういう企業なのかということは、これは問われてくるわけであります。また、その企業が自分の会社でそのコンピューターをお使いになるというのであるならば、これはその企業の内容によりまして大体どういうことにお使いになるのかということも明確になってくる。しかしリクルートの場合はそうではなくて、時間貸しをされるわけでありますから、どなたにでもどうぞお使いくださいということにこれはなるわけですね。そうなってまいりますと、現在のような国際化の時代でありますから、国内の皆さんだけにお貸しをするわけではないでしょう。KDDを通じまして外国からのものもいろいろお受けになることは、これは当然だと思うわけです。そういたしますと、その使用される人というのは、それはどういう人が来るかは、これはわからないわけですね。これは共産圏の方が直接お見えになるかもわからないし、あるいは直接でないかもしれない、他の何らかの機関をつくって、そこを通じてこれはお使いになるかもしれない。  これは、私もぼんやり考えておりますときには、大した問題ではないと初め思っておりました。しかしながら、よく考えてみますと、これは東芝だとかダイキン工業どころの騒ぎではない大きな問題を含んでいるというふうに私は思うわけです。このココムの問題で、あの東芝のときのように日本国じゅうがひっくり返るような騒ぎをしないのならば、私はそれならばそれなりにいいと思う。しかし、片方でそういう騒ぎを起こしておきながら、一方においてここをノーチェックにしておるということは、これは私は理解のできないことでございまして、もっと大きな問題を含んでいると私は思う。  それは新聞で、外国の、アメリカの新聞で、非常に小さな記事でございますけれども、米国政府当局が、日本電信電話会社からの転売で入手して時間貸し事業に使っている二台の米国クレイリサーチ社製のスーパーコンピューターに関して、対共産圏技術流出を予防する十分な措置がとられているか、調査を日本政府に依頼したという、こういう小さな記事でございますけれども見たことがございまして、そこから私は問題を発展させているわけでございます。そうしたことで申し入れがあったのかどうかということも含めて、こうした取り扱いについてどのようにお考えになっているのか、お聞きをしたいと思います。
  156. 熊野英昭

    ○熊野政府委員 先ほど来申し上げていることでありますけれども、ココムの場での取り組みは、当該貨物が輸入国に輸入されることを確認するわけでありまして、エンドユーザーがだれであるかということは確認することになっておりません。したがって、私どもも国際輸入証明書において証明をしておりますのは、この貨物が日本国に輸入されるということを確認しているのでありまして、エンドユーザー、最終需要者がどうなるかということを確認は必ずしもしていないわけでありまして、先ほど申し上げましたように、参考までに最終需要者の欄は申請願には書いていただいているということでございます。他方、したがって、国際輸入証明書の方にはそういう欄は、最終需要者がどうかというようなことは一切書いてないわげであります。  以上でございます。
  157. 坂口力

    ○坂口委員 あなた、えらい得々と言っているけれども、ココムの精神というのは何かということをわきまえてあなた、言っているのですか、それ。もしもわきまえて言っているとしたら大変なことですよ。冗談じゃないですよ。余りにもそれは事務的過ぎじゃないですかと私は言っている。それはそうでしょう。日本は自由王義国家であり、共産圏ではありません。日本に出るのはそれはいいでしょう。しかし、こうしたコンピューターというものを時間貸しをするような業種であれば、たとえそれを輸入する先が日本であったとしても、使う人が共産圏の人であったら同じことじゃないですか。ココムの精神というのは一体何かと私は言っているのです。そこを無視して、そして、そんなことは書くところが決まっておりませんと言うのだったら、何のためにココムのことをやっているのかと私は問いたいですね。冗談じゃないですよ。もういい。外務大臣、ひとつお願いします。
  158. 佐藤嘉恭

    佐藤(嘉)政府委員 お答え申し上げます。  お尋ねの件につきまして、ココムの関連の精神において何か調査が要請されたかどうかという点であったかと思いますが、本件についてアメリカ側から、特に国内においてどういうふうになっておるのか、あるいはこの問題が処理される段階において特段の御質問あるいは照会といったようなことがあったというふうには承知しておりません。
  159. 坂口力

    ○坂口委員 念のために申しておきますが、この記事は昨年の十一月十八日付の記事でございまして、ワシントン十六日発になっております。したがいまして、向こうから何らかのそういうアクションがあったのだろうと思うのです。そうでなければこういう記事は出てこない。だから、向こうの方も関心を示していることは事実だと思うのですよ。  だから私は先ほど申しましたように、国際輸入証明書発給願にエンドユーザーを書く欄がきちっとある、そこをNTTと書いて当然だというような答えをしておみえになりますけれども、しかし、そのことに対して大丈夫かなという不安を感じていることは間違いない。だから私は、それでいいのかということを問うているわけであります。外務大臣、ひとつ御答弁いただきます。
  160. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 ココムは参加国十六カ国だと思いますが、それぞれが満場一致ですべてのことを決めて、そして処理をしておる。したがいまして、対共産圏貿易は非常に慎重でなければならぬ、それが精神であることはもう既に御承知のところでございましょう。  ただ、具体的な例として今佐藤局長お答えしたところによれば、そうした照会はなかったということでございますが、せっかくの御質問でございますから十分調べましてお答えいたします。
  161. 坂口力

    ○坂口委員 私が外務大臣にお聞きをしたいのは、そのココムの精神を解してこういうスーパーコンピューター等を見たときに、それは輸入国、輸入先でもって判断をするだけでいいのか。そして、それがいわゆる時間貸しをされるというような業種でありました場合に、それがもし仮に共産圏の方に使用されているというようなことになっていたら、それはそのときになって大騒ぎをするようなことはないでしょうな。全然それは考えてないのか、考えた上でやっているのか、私は随分違うと思うのですね。ですから、今までは確かにココムというのはどこどこの国に輸出をするという、その国先を問題にしてきたけれども、スーパーコンピューター等は、その輸出をする国先ではなくて、どこが使用できるかということによるのではないだろうか、そう私は指摘をしているわけです。したがって、この問題にはそうした疑問がある。だから、お買いになるときにそのことを念頭に入れてエンドユーザーをNTTというふうにお書きになったのではないか、こう私は言っているわけであります。  なぜ私がこの問題を指摘してみようというふうに思ったかと申しますと、ある方から、リクルートに共産圏の方が激しく出入りをしておみえになるけれどもそれはどういうことだろうかというお話をちょうだいをして、ふと、この小さな新聞記事との間の問題を、点と点を結んでいきまして、私はこの質問をしたわけです。ただし、その方がお使いになっているということを私たちは知るすべもありませんし、またそういうことに私たちは疑惑を持っているわけでも何でもないわけであります。そういうことではなくて、日本の国としてこういう問題をこれからきちっとけじめをつけておかなければならない問題ではないか。ましてやその転売につきましては、国が挙げて、時の総理中曽根総理も、これはNTTからそしてリクルートヘ、このことはよく承知をした上でアメリカとの折衝に多分当たられたのであろうと思うわけです。もしそうだとして、そしてそこで何かがもしも起こったとしたら、時の総理自身がそうしたことに手をかしたということになるおそれすらこの問題は含んでいる。まことに重要な問題だと思うわけであります。しかもNTTという、これは半分いわゆる国がかかわっております企業、それがお手伝いを今なおしている。この現実の中で、この問題はそう安易に終わるべき筋合いのものではない、こう思います。  NTTの方、何か御意見ございますか。もうこれという意見がなければ結構でございます。  総理大臣、今申しましたような経緯で、この問題に私は非常に大きな注目をいたしております。恐らくアメリカもその辺のところを大丈夫かなという心配をしているのではないかと私は思います。また、そうなる可能性というのは十分にあると私も思う一人であります。ですから、もしもこの問題を明確にしようということになれば、これは契約書なるものを一遍ちょっと見せていただく必要がある。そのときに添付された契約書はどう書いてあるのかということを我々はひとつ知りたいわけです。これは委員長、ぜひひとつ理事会等で御論議をいただいて、その契約書なるものを拝見することができればというふうに思いますが、よろしゅうございますか。
  162. 大野明

    大野委員長 はい、結構です。
  163. 坂口力

    ○坂口委員 じゃ総理大臣、全体的にひとつこのことに対するお考えを聞かせていただきたいと思います。
  164. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 今の問答を聞いておりまして、小さい新聞記事を一つの点として、そうしてココム問題に線を引いての、坂口委員そのものが疑念に思っておられることについての御指摘であったというふうに私も思うわけでございますが、ココムの問題はこれなりにしっかりやられておって、それが転売問題とどういう関係にまで至るかということについては、今の問答で私自身の考えを申し述べるだけの理論の構築はできませんでした、率直に申しまして。
  165. 坂口力

    ○坂口委員 私が述べておりますことの理解は総理もしていただいておるのであろうと思いますが、これ以上のことは転ばぬ先のつえの話でございまして、何かが起こっているということを私は言っているわけではない。だから、国が購入をするときにはそうしたことを十分注意をする必要があるということを私は言っている。しかも、エンドユーザーを初めからその書類にきちっと書いて、こういうことをいたしますというふうにして買うのならばいいけれども、その辺のところをあいまいにして買っている。それはクレイ社との契約書にはちゃんと書いてあるかもしれません、クレイ社はコンピューターを売ればいいのですから。それは書くでしょう。だけれども、アメリカという国と日本という国とが売ったり買ったりという形でこれを見ますときに、それじゃ国防省がそのことを一体どう思っているかということは、これはもう別の話でございます。クレイ社は契約書にそう書きました、それは私企業でございますから何書いてもらっても自分のところのコンピューターが売れればいいわけでありますけれども、しかし、対アメリカということになりましたらそうはいかないということを私は申し上げている。  その辺のところを、中身をそれほど検討はしませんでした、それほどのことをする必要はございません、そんなことは我々事務的にすることを命じられておりませんというようなことでこれは済ましていい問題ではない。ココムの問題に真剣に取り組んでいくのならばチェックすべき問題だ。要らないのならば私はとやかく申しません。しかし、先日来と申しますか、近年あの東芝やダイキン等で大騒ぎをしたという例を見ましたときに、それならばこれはなおざりにできない問題である、これを私は指摘をしているわけでございます。  ですから、このNTTが出された書類というものにそこまでの配慮がしてない、それはその辺をよくわかっていて書かなかったのか知らずに書かなかったのか、そこのところはいま一つ明確ではありませんけれども、どうも通産省も、その辺はリクルートに行くということを承知の上でその辺をルーズにしておみえになるということは、問題意識がないとも言えますし、あるいはまたその辺を十分勘定に入れてはっきり書かなかったということも言える。いずれにしても、重要な問題を含んでいると私は指摘をせざるを得ないのであります。  この問題はひとつこれぐらいにいたしておきます。  さて、リクルートの問題はこうした問題にとどまりませず、労働省に対する問題でございますとか文部省に対する問題でございますとか、いろいろの方面に広がっております。労働省等の関係につきましても、先般私の方の橋本議員が、労働省の元事務次官の加藤氏がリクルート問題調査特別委員会の証人として出席をされましたときに、就職情報誌の法規制案の大綱を知っていたのではないかと問いましたのに対しまして、当時求人誌関係は担当課長に一任していたとした上で、担当者に詰めたところ職安法改正大綱なるものがたたき台としてでき、職安法の体系の中で何とか求人誌を把握できないかと届け出制の素案を検討したという、しかし非常に難しいということで私のところへ全く報告も上がってこなかった、こう説明しておみえになるのですが、しかし、その後いろいろの事実が出てまいりまして、どうもこの答弁は違うのではないか、こういう状態になっております。  したがいまして、私は労働省に対しまして二、三お聞きをしたいと思いますが、昭和五十九年の七月十二日、部内会議が職安局長室で開かれたとき、加藤氏はそれを直接見ていたかどうか。それから、大綱を直接見ていなくとも、その大綱の内容を具体的に説明し、検討していることの報告は受けていたのかどうか。この二つをひとつお答えをいただきたい。
  166. 清水傳雄

    ○清水(傅)政府委員 お答えを申し上げます。  私どもといたしましても、当時の作業、業務の流れ、そうしたことにつきましてできるだけ関係者から話を聞きまして、状況把握もいたして努めておるわけでございます。  まず第一点は、七月十二日、職安法改正関係につきまして部内会議をやった関係でございます。確かに、当時の関係者事情を確認いたしましたところ、職業安定法の改正関係全体につきまして部内会議をやっておりまして、当時の局長もそれに参加をしておるという状況はございます。  ただ、安定法の改正と申しますのは非常に幅広い内容のものでございまして、当時、労働者派遣法の検討、制定作業をその以前からやっておりまして、その関係として需給調整全体をどういうふうに見直していくのか、そういうものを一通りの検討を事務レベルで、担当課で行っておったわけでございます。七月何日かの会議におきましても、その状況につきまして報告なり論議も行われたわけでございますけれども、そうした中で、就職情報誌に対する法規制問題そのものにつきましてはなお検討すべき状況にある、こういうふうな報告を行っておったようでございまして、具体的な内容についての深めた論議はなされていた状況ではなかった、このように関係者は申しておったところでございます。  職業安定法大綱そのものにつきまして当時の局長にそれを説明したとか、そういうふうな状況にはなかったということでございます。
  167. 坂口力

    ○坂口委員 よくわからない答弁でございますが、そうしますと、それは大綱の内容を具体的に説明はしたんですね。説明はしたということですか。
  168. 清水傳雄

    ○清水(傅)政府委員 職業安定法全体の見直しの内容というのは、例えば有料職業紹介事業、無料職業紹介事業のあり方でございますどか、あるいは募集のあり方でございますとか、あるいは労働者供給事業のあり方でございますとか、要するに派遣絡み全体につきまして当時の需給調整をどういうふうな形でやっていくかという、そういう見直しを事務的に行っておったわけでございます。そういうふうな事柄について全体として関係者の中で、部内で局長も交えた論議も行われた、こういうことでございます。
  169. 坂口力

    ○坂口委員 交えた中で行われたということがわかりましたら、それで結構でございます。  さて、今度は文部省の方でございますが、スーパーコンピューター研究所長のラウル・メンデスさんというのが雑誌に「スーパーコンピュータでは並列処理が大きな潮流になる」という、これはマスコミの方がつけた題名だろうと思いますけれども、インタビューにお答えになっておりまして、この中で「外部へのコンピュータ開放、大学との共同研究を通じ、産業界に貢献したい」というところがございます。「いま進めている共同研究は四つあります。」これは一般の雑誌に出ておることでございますから、お名前を申し上げてもよろしいんではないかと思いますが、東京工業大学の何々先生、まあ先生のお名前は伏せておきましょう。Y先生としておきましょうか、Y先生。複雑な経過を通じて一つ情報を処理する生物の神経網をヒントに並列処理を考えようと、ニューラル・ネットワーク一神経網)のシミュレーションを共同研究中です。あとは大阪大学レーザー核融合研究センターのN先生、東京大学生産技術研究所のK先生とは流体力学で、また慶応大学のH先生とは半導体デバイスのシミュレーションで共同研究中です。共同研究をあっちこっちの大学としておみえになる。  これは企業がいろいろのところに支援をなさるということは、産学協同ということがあるわけで、別にそのことを私はとやかく言うつもりはございません。しかしながら、お聞きをしますと、大学に年間百万くらいの助成、出資をして、あるいは人を一人送り込んでいるというようなことをなすっているようでございます。このラウル・メンデスさんというのが言っておりますのは共同研究ということを言っているわけなんですが、これが共同研究なのかそれとも大学に対する援助なのか、ここのところ、どっちにでもとれる感じもするわけであります。文部省の国立大学に奨学寄附金制度がありますけれども、その制度というのは一体どんなものなのか、もう時間余りありませんから、もしも簡単に伺うことができたら聞かせてください。  それから私ども調査によりますと、リクルート社からは五つの大学に対しまして総額一千四百万円、これは六十二年に寄附がなされているわけであります。これは文部省が確認しておみえになるのかどうか。六十三年は一体どうなのかということであります。  この大学に寄附をされるという話とそれから共同研究というものとは別なのかあるいは同じなのか。考え方によりましては、年間百万くらいのお金を出し、一人くらいの人を出しということで、そこで研究されましたことを企業がちょうだいをするといりのであるならば、それは援助というよりもむしろ企業の側の方が取り分が多いのじゃないかという気もするわけであります。この産学協同の問題も一つ間違えますとこれは大きな問題を含んでいるわけでありますから、ひとつこの辺のところはきちっとした線を引いておかないととかく言われることになる可能性がある。こういう時代でありますから、その大学等で、そこで研究が実って、そしてでき上がりました成果というものが、例えばその特許権なるものは、それは大学そのものにあるのかその先生にあるのかあるいはそれを援助した企業にあるのかというような問題もこれからはあるわけでございます。この辺のところも含めて、ひとつできるだけ簡略にお答えをいただきたい。
  170. 西岡武夫

    ○西岡国務大臣 お答えいたします。  ただいま委員指摘のとおり、大学に対します民間との関係は民間企業との共同研究と委託研究、それから研究委託のほかに研究委託員という制度がございます それともう一つ奨学寄附金という制度がございまして、最後にお尋ねのございましたリクルート関連企業との関係につきましては、昭和六十二年度に、委員指摘のとおりに一千四百四十万の奨学寄附金が九十五大学中の国立大学五大学九部門にわたりまして行われていることは事実でございます。ただいま委員指摘のとおりに、この問題につきましては、基礎的な研究が御承知のとおり大学におきましては基本でございますので、原則といたしましてこの研究の成果は公表されるという、公にされるという性格のものでございます。  ただ、この企業からのそれぞれの資金を導入するに当たりましてはいやしくも社会的な批判を受けない、そういうきちっとした姿勢がまず大事でございますし、手続といたしましては、それぞれの大学の教授会等で十分な審査をいたしまして、それを学長が決定をし、これを受け入れているというのが実情でございます。今後これまでのいろいろな経験を踏まえまして、なお慎重にこの問題につきましては文部省といたしまして対応してまいりたい、このように考えております。
  171. 坂口力

    ○坂口委員 リクルート社という、リクルートの名前がつけば何でも悪いということを決して私は申し上げているわけではありませんし、こういう際でありますからきちっとけじめをつけておかなければならないということを言っているわけであります。国体あたりの安比スキー場の問題でありますとかあるいは就職情報誌の問題でありますとか、何か金さえ出せば何でも自分の手に入るという考え方のもとにリクルート社がやっていたということだけは全貌が明らかになっているわけでありますから、文部省の関係のところもそういう金銭でもっていろいろと言われるようなことになっては大学そのものの名を汚しめることになりますよということを私は指摘をしているわけでございます。  これで私ども調べてみますと、まだこの事件が発覚をいたしました後も寄附をお受けになっているところもあるわけです。こうした問題も一遍どうするのか検討をしていただかなければならない問題ではないかというふうに思います。それからまた、先ほど申しましたように、共同研究をされるというのであるならば、その成果というものは一体どういうふうにするのかというような問題もひとつはっきりとしておいていただきたいと思います。そういうことでこういう問題があるということを指摘しておきたいと思います。  最後に、総理、このリクルートの問題はいろいろの分野に及びましたいろいろの問題を起こしているわけでございます。労働省関係あり、文部省関係あり、そしてそれが国民のスポーツの祭典である国体あたりにまで、強引にリクルート関係をしておりますスキー場に変えたのではないかというような疑惑が起こりとか、いろいろの問題があるわけですね。そしてその背後には必ずと言っていいほど高級官僚の人の影がちらつく、その人の関係するときに必ずそうした問題が起こっている。ここに最大の問題があるわけであります。  ですから、今国民は、一体政治あるいは行政というのは公平に行われているのであろうか、そうした何か手を差し伸べる人の方向に曲げて行われているのではないだろうか、そういう疑惑を持ち、厳しい目で見ている。それが内閣の支持率にもあらわれているのだというふうに私は思うわけであります。これを立て直すために総理としてはどう考えられるのか。後で時間がありましたら政治倫理の問題を行いたいと思いますが、アメリカにおきましても英国におきましても西ドイツにおきましても、今まで過去にいろいろの疑惑事件を経験をしてまいりまして自分たちで厳しい法律をつくっております。  それは、政治倫理というのはいわゆる倫理、心の中の問題なのか、それとも政治倫理というのは単に心の中の問題ではなくて、それは一つの法律とした形のものの中で縛るということを含んでいるのか。そうした方向に行こうと総理はしておみえになるのか、総理の政治倫理というのはそこに法律という問題を含んでいるのかいないのか、単なる心の中の問題として取り上げておみえになるのか、それともこれはやはり一つの法律としてお互いに縛りをかけてその中で我々は生きなければならないというふうにお考えになっているのか、その辺だけひとつお聞きをしておきたいと思います。
  172. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 おっしゃる意味は私にも理解できます。  まず現行の刑法上の問題は、これは厳正、適切な対応がされるであろうと思います。  そうして政治倫理の問題でございますが、倫理というものは申すまでもなく人一人一人の心構えであります。しかし、その人の心構えが、それがゆがめられるあるいは誘惑に流される、そういう環境を整備していくということになれば、ここに私は法律上の問題が出てこざるを得ないというふうに思うわけでございます。で、元来性善説に立った議論をする場合には、倫理の問題と法律とでなかなか並立しない問題がございましょうけれども、やはり私は、基本的に性善説に立つべきものであるけれども、間々誘惑というようなものが生ずる際に、それができない環境というようなものを整備していくのが、やはり迂遠なようであるけれども、法律事項そのものを含むと結果的にはなるではなかろうかというふうに考えております。
  173. 坂口力

    ○坂口委員 では、リクルートの問題、一応これだけにしておきたいと思います。山口社長、どうもありがとうございました。  日銀総裁、お越しいただいていますか。――では次に、消費税の問題に移らせていただきたいと思います。  消費税の問題に入ります前に、インフレにつきましてのお考え、そうしたものをまず先にお聞きをしておきたいと思いますが、澄田日銀総裁にはきょうはお忙しいところを御出席をいただきましてありがとうございます。お礼を申し上げたいと思います。  最近の経済状況、インフレ懸念が強まっているというふうに私も考えております一人でございます。消費税導入は理論的には一回限りの物価上昇をもたらすこととなるわけでありますし、それゆえにインフレーション、すなわち持続的な物価高騰ではないとする意見もあるわけです。しかし、最近はドル高の進行によります輸入インフレ懸念も強まっておりました関係で、四月一日からの消費税スタートでどのようなことになるのかということを私は懸念をいたしますが、まず大枠として、総論的に見てこの消費税導入を含めた物価の問題をどうお考えになっているのか、ひとつお伺いをしておきたいと思います。
  174. 澄田智

    ○澄田参考人 お答えを申し上げます。  消費税の導入に伴う物価面への影響についてでございますが、消費税分がすべて円滑かつ適正に転嫁されるということになりますれば、私どもも、経済企画庁で試算されておりますように、消費者物価段階で一%を若干上回る押し上げ要因になるものというふうに考えております。
  175. 坂口力

    ○坂口委員 総裁は去る二十二日記者会見をされまして、そこで発言をされましたことが各紙にも伝わっているわけでございます。多少おっしゃったこととニュアンスの違いはあるのかもしれませんし、あるいはそのとおりかもしれないというふうに私ども見せていただいているわけでありますが、報道を拝見をいたしますと、消費税の適正な転嫁を前提としながらも、関係業者や機関がコストの見直しを図って、課税前の価格を引き下げ、実質的に消費税を吸収することも予想され、これ自体はよいことである。もう一つは、便乗値上げについて、消費税部分を上回る価格設定が横行することは、インフレ感の台頭を招き、物価の安定を損なう、こういうふうに発言をされたと伝えられているわけでございます。総裁の御発言について、今読み上げましたようなことに理解をさせていただいてよろしいかどうか、ひとつお伺いをしたいと思います。
  176. 澄田智

    ○澄田参考人 ただいま読み上げられた点でございますが、私が申しましたのは、これはあくまでも一般論といりことで申し上げたわけでございます。一般論といたしまして、企業等がその置かれた環境に即しまして改めてコストを見直しまして、そうして課税前の価格を引き下げるということによって、実質的に消費税が吸収されるというような動きがあるとすれば、こういう動きも当然予想されると思いまして、そういう動きがあるとすれば、そのこと自体はこれは物価安定の上で結構なことだと思う。ただ、やはりあくまで消費税の価格転嫁が円滑に行われるということは、これは消費税を定着させる上で必要なことである。そういうふうに申しました。  そうしてまた、価格の適正な転嫁でなくて、それを上回るような価格の引き上げ、いわゆる便乗値上げが行われるとすれば、これは消費税に対する国民の信頼を傷つけるばかりでなく、インフレ懸念の台頭も懸念されるわけでありまして、したがいまして、そういうことは物価安定という見地から我々としても到底看過できないことである、あってはならないことである、こういうことを申した次第でございます。
  177. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございます。よくわかりました。  それでは、次の問題でもう一つまたお聞きをいたしますので、もうしばらくお願いを申し上げたいと思います。  村山大蔵大臣、長くお待たせをいたしました。お聞きをしたいと思いますが、これも新聞報道でございますが、この澄田日銀総裁の発言に対しまして、これは新聞のとおり申し上げますのでおしかりを受けないようにしたいと思いますが、不快感を表明された、快感の反対でございますよ、不快感を表明された、こういう報道がございます。事実のほどはどうであったかよくわかりませんが、村山大蔵大臣はこの物価上昇の問題をどのようにお考えになっているかひとつお聞きをしたい。  それからあわせて、続きまして自治大臣にもお聞きをしておきたいと思いますが、東京都が公共料金における消費税転嫁につきましていろいろ苦労をしているニュースが伝わっておりますが、これに対しましては自治省としてはいろいろ意見を言っておみえになる、下世話に言えばいちゃもんをつけておみえになる、こういう感じもするわけでございます。自治体が住民負担を軽減しようと内部努力をすること、そのことに対して本当はどのようにお考えになっているのか。これは続いてお聞きしたいと思いますから、大蔵大臣からひとつお願いをしたい。
  178. 村山達雄

    村山国務大臣 私は、不快感を表明したという新聞記事は不幸にして見ておりません。私はまた、今、日銀総裁が言われたことについて不快感などは持っておりません。これははっきり申し上げておきます。  それから第二の、消費税の転嫁の問題でございますが、御案内のように、消費税というのは今の間接税の持っております根本的矛盾を解消すると同時に、今の租税体系全体を直そうとするものでございます。そういう意味で、ネット減税四兆六千億という大減税をやりましたのもひとえにそこにあるわけでございます。したがって、この消費税というものは、ただいま日銀総裁の言葉にもありましたように、適正な転嫁をしなければならぬ、それからまた過剰転嫁は困る、こういうことに尽きるわけでございます。  そういう意味で、我が政府では総理を本部長にいたしまして新税制実施円滑化推進本部をつくりまして、そして鋭意PR、指導、相談、こういったことに応じておりますし、また独占禁止法の例外規定を設けておりまして、中小企業については転嫁、それらのものについては表示のカルテルを認めているのもそういうわけでございます。  そしてまた、メーカーとか卸はそれほどではございませんが、一番問題になるのは末端の消費者に対するところでございます。そこで、納税者の方にはやはり今度の税制改革の一環としての消費税の持つ意味をよく理解していただく、適正な転嫁は受忍してもらわなくてはならぬということをやっているわけでございます。  また、事業者に対しましては、やはり自分が負担するのではなくて、それはコストを切り下げてやるというのは別でございますが、自分が負担するのではなくて適正な転嫁をしてもらいたい。そしてまた、お客にはよくそれがわかるようにしてもらいたい。そしてまた、手数がかからないように、チェーンストアとかその他では税抜き価格を明示してもらう。そのことの方が恐らく計算が便利でございましょう。こういうことを鋭意今やっているところでございます。  したがいまして、その点につきましては今、日銀総裁のおっしゃったことと根本的に何の違いもございません。
  179. 坂野重信

    ○坂野国務大臣 お答えいたします。  公共料金を値上げするということは私自身も余り賛成ではございませんが、先ほど消費税の性格、必要性については大蔵大臣が述べたとおりでございまして、したがって、消費税を普遍的に公平に浸透さすという立場からいいますと、東京都の問題の公共料金等についても、ほかの一般の事業者あるいは商店がおやりになるのと同じように、同じような立場で公平にひとつぜひ転嫁をお願いしたいということで今日まで指導しているわけでございまして、別に東京都のやり方をいちゃもんつけるとかそういうことではなくて、話を聞いてみますと、企業努力をやってそして公共料金を下げておいて、それにプラス三%の消費税をかけるとおっしゃるんですけれども、必ずしもその企業努力というものがはっきりいたしません。ある程度判明したことはございますけれども、なお明確な説明はございませんので、さらにひとつその辺の説明を求めたいということでございます。今のままですと、東京都のおやりになろう――東京都も永久にやめるということではなくて、四月には間に合いそうもないので、何とかひとつ四月早々からの実施を見合わせたいということでございますので、私どもとしては引き続きひとつ指導しながら、東京都の対応を、特に執行部の立場としてもう少しひとつ努力していただきたいということを申し上げているわけでございます。  公共料金の立場だけからいいますと、物価の押し上げということもございますし、それは日本銀行総裁のおっしゃることもわからぬわけではございませんが、消費税という立場からいいますと、何とか市民の皆さんの御協力を得て、そして徴収方法、転嫁問題についてひとつ何とかさらに一層の御努力をぜひお願いしたいということで、恒久的な財源ということもなしに、何かわけのわからぬようなことをやってしまいますとよその団体にも影響しますし、今度は民間の事業者あるいは商店の方でも同じことをやりかねぬ。そうなってまいりますと、消費税あるいは全般の根本的な税制改革の趣旨にも反するわけでございます。しかも、地方公共団体は法律でもそういう環境整備をするという責任も持っているわけでございますので、そういう立場で極力指導申し上げているような次第でございます。
  180. 坂口力

    ○坂口委員 きょうは比較的おとなしく自治大臣お話しいただきましたが、あと引き続きましてまたお聞きしますからひとつお願いしたいと思います。  それで日銀総裁、お時間あるようでございますから、もう一問だけ先にお聞きさせていただきたいと思います。  最近の出荷、在庫指数等を見ますと、生産や出荷に比べまして在庫はうんと落ちてきている。これは資本財につきましても資本財以外のものにつきましても、出荷、生産の方がかなり上がっておりまして、そして在庫はうんと落ちてきている。こういうところを見ますと、ちょうど第一次石油ショックのときにも、これは今とはスタイルは違いますけれどもよく似た状態というものがあったわけで、そして石油ショックのときには、石油が上がりましたことに対する他への影響というのは、ならしますと二%強ぐらいな影響であったというふうに思いますが、あのころと比較をいたしますとよく似たところもあるわけですね。何か一つ引き金がありますと爆発しそりな状態というのはあるわけです、こういうような在庫率みたいなものを見ましても。この辺のところを、心配というものはないのか、どういうふうにお考えになっているのかということをもう一つお聞きをしておきたいと思います。
  181. 澄田智

    ○澄田参考人 私ども立場といたしましても、既に内需中心の国内の力強い成長が三年目に入っておるわけでございます。おっしゃった生産とか出荷が伸びているというのはそのあらわれでございますが、そうした反面、製品の需給がかなり引き締まってきております。すなわち、当然のことながら在庫の水準は下がっている、こういうことになるわけでございます。このような状況に加えまして、金融面におきましては金融緩和を継続いたしておるわけでございますし、したがって、マネーサプライは多少伸びが鈍化をいたしておりますがまだ一〇%と高い水準にございます。また、企業の手元流動性も今までの、五十年代に入っては最も高まっている、こういうことでございます。  こういうような状況からもし、今のところは卸売物価、消費者物価ともに安定をいたしておりまして、すぐ物価の安定が崩れるという、そういう懸念はないものと考えておりますが、ただ、将来は十分注意をしていかなければならない。今御指摘のように生産と出荷、在庫のバランスが崩れるというようなことになりまして、そうしてそれが今は潜在的にとどまっておりますが、インフレ懸念というものが顕在化してくるというようなことになりますと、思惑的な在庫積み増しというようなことが当然に始まってくるわけであります。我々もその辺のところを最も警戒しなければならないと考えておりまして、十分な注意を払って、あらかじめ予断を持つことなく、今後とも十分注意をしていかなければならない、慎重に対処していかなければならない、かように存じている次第でございます。
  182. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございました。じゃ、日銀総裁、どうもありがとうございました。  公取委員長、お越しいただいておりますか。――はい、済みません。きょうはどうもありがとうございます。  公取委員長、大変御苦労なすっている様子がいろいろの書物等でわかるわけでございますが、このところ週に一度消費税導入に関する通達というかペーパーが出されております。この期に及んでと申しますか、間に合うのかしらという気がしてなりません。法律の公布からわずか三カ月で実施しようとしております消費税でありますから、かなりな無理がかかっていることも事実であります。  その問題は後ほど触れるといたしまして、二十二日に公取が出されました「消費税導入に伴う再販売価格維持制度の運用について」というペーパーがございます。そこに「一般消費者の利益を不当に害することのない再販売価格の設定及びその表示の方法」というところがありまして、「物品税との関係」とするくだりがあります。そこを読みますと、「再販商品の一部には現在蔵出段階で物品税が課されている。消費税導入に伴い、これらの物品税は廃止されることとなるので、物品税廃止によるコストの低下がそれらの商品の再販売価格に適正に反映されるものとする。」こう書いてありますが、このくだりのところをもう少し御説明をいただきたい。
  183. 梅澤節男

    ○梅澤(節)政府委員 ただいま御指摘がございましたように、再販商品の一部には現在蔵出し段階で物品税がかかっておるわけでございます。したがって、物品税が廃止になりますと、その分だけ当然のことながら消費者にいわば全額還元されるべきである、そういう考え方に立って、先般当委員会としての考え方を公表し、その趣旨でもって現在関係業界を指導いたしておるわけでございます。  具体的に、例えば化粧品で申し上げますと、現在化粧品には物品税のかかっておるものがございまして、これは蔵出し段階で一〇%の税率のものと五%の税率のものがございます。当然のことながら、一〇%の税率の部分につきましては、消費税導入後再販価格の改定が行われる際に、ただいま申し上げましたように、その分が的確に反映される、これは当然のことでございます。五%の分になりますと、これは小売段階ではいわば三%前後に、物によって違ってくると思いますが、なってまいります。したがいまして、消費税が導入された場合に、いわば消費税相当分と相殺されるものもあるいは出てくるかもわからないわけでございますが、いずれにいたしましても、先ほども申し上げましたように、全額がいわば消費者に還元される、そういう形で価格の設定が行われるべきであるということでございます。いずれ化粧品につきましては、四月以前にそれぞれ当委員会に新しい価格設定について届け出が出てまいるわけでございますので、これらを周到にチェックいたしたいと考えております。
  184. 坂口力

    ○坂口委員 じゃ、経済企画庁長官にお伺いをしたいと思いますが、経済企画庁では消費税導入などが消費者物価に与える影響につきまして昨年の夏に試算をされたことがございます。導入の初年度において消費者物価はどのぐらい上昇するのか。あのときは一・二と出されましたか、一・一でございましたか、一・二だったと記憶いたしておりますが、ひとつそこをお聞きをしたいと思います。まず、それを先にちょっとお聞きをしておきましょう。
  185. 愛野興一郎

    ○愛野国務大臣 消費税導入に伴いまして物価に影響を与える上昇率は、先生また日銀総裁が言われたように、一・二%と試算をいたしております。  それは、まず第一番に、適正に転嫁をしてもらうこと、それから、先ほどからお話があっております物品税の廃止に伴う、このことを考慮をいたしまして、それからもう一つは、いわゆる税負担以外の要因による価格の変化を考慮しない、この三つによって一・二%ということに経済企画庁としてはいたしております。
  186. 坂口力

    ○坂口委員 私も経済企画庁の資料をいろいろと見せていただきました。そういたしますと、消費者物価指数に含まれます非課税品目のウエートは六%、それから既存の間接税の廃止、調整のウエートは一五%、これらの結果として、導入初年度の物価上昇を一・二%程度と試算した、こういうことが出ておりました。  そこで、私は経済企画庁長官にもう一問お聞きをしたいのは、今回の税制改革全般を考えますと、消費税分三%を転嫁するという法律的な意味は、そのまま現状の価格に消費税分三%を上乗せすることと同じ意味ではないと思いますが、いかがでございますか。
  187. 愛野興一郎

    ○愛野国務大臣 先生言われますように、物品税と既存の間接税の廃止、調整による税負担の軽減額等が反映されることが重要でありまして、それを含めて経済企画庁が試算をいたしたわけでありますから、平成元年度の消費者物価の水準率は三%を下回る一・二%程度にいたしたというわけであります。
  188. 坂口力

    ○坂口委員 済みません、ちょっともう一つ。えらい申しわけありません。  私、今お聞きしましたのま、消費税分三%を転嫁するというのは、現状の価格に消費税分三%をそっくり上乗せするというのとは違いますねと。
  189. 愛野興一郎

    ○愛野国務大臣 いわゆる消費税の転嫁の問題と、それから消費税の導入に伴う物価の上昇率、それは違うと考えております。
  190. 勝村坦郎

    ○勝村政府委員 お答えを申し上げます。  ただいまの御質問の趣旨がちょっと私いま一つはっきりいたしませんが、あるいは物品税と既存間接税を引き下げた後に全体として三%の消費税がかかるべきものではないか、こういう御質問と解してよろしゅうございましょうか。――まさにそういうふうに計算をいたしてございます。  また、前にもこの場でお答えいたしたと思いますが、既存間接税等の廃止によります間接効果というものも、産業連関表を用いまして波及効果を計算した上で三%の消費税が乗るものである。もちろん非課税品目は別でございますが、一般の商品につきましては、そういうような計算でございます。
  191. 坂口力

    ○坂口委員 私が申し上げたいことは、消費税の転嫁につきましては、現在の価格に三%上乗せするというので果たしてよいかという問題提起でございます。  消費税の影響分析で、政府は先ほどお話ありましたように、経済企画庁として一・二%というふうに出しておみえになります。我が党でも試算をいたしておりますが、産業連関表を用いまして消費税の影響について産業分類別に試算をいたしました。産業全体では丁八%程度、私たちの数字ではなりますが、静岡大学の先生方は同様な方法で消費税の影響試算をされておりまして、これはおおむね一・五%程度に出しておみえになります。  総理、三%の消費税導入によって素朴にはそこに三%の物価上昇が起きるものと見られがちでございますが、そうならないのは、既存物品税が廃止されるわけでございますし、これが廃止されましたものが産業連関を通じて速やかにすべての産業に浸透するという前提でこのパーセントというのは算出をされているわけであります。つまり既存の間接税の廃止ないしは減税効果によって、直接払い戻された形の産業は当然として、それ以外の広い範囲の産業も含めて価格を引き下げる効果が働き、例えば現在百円のものが九十八円でありますとかあるいは九十五円でありますとか、そういうふうに引き下がりまして、その上に三%の消費税を上乗せする、こういうことになるんだろうと思います。公取委員会が再販売価格の決定に当たりましてその辺を行政指導しようとしているのだというふうに私は理解をいたしております。  しかし、現在行われております消費税による見直し価格では、いわゆる戻し的な税の一次効果しか念頭にないように思われてなりません。しかも、その一次効果ですら、公共的な性格のあるものやぜいたく品あるいは高級品は注目されておりますけれども、例えば日用品であります砂糖消費税なんかはもう忘れられがちでございます。そうして政府は消費税の四兆三千五百億円の税収を見込んでおります。一方、既存間接税の廃止で二兆三千億円、それから地方税分が一兆一千億円ございますから、合わせまして三兆四千億円に及ぶ減税を計算しているわけであります。消費税が、初年度計算でありますけれども、この間接税の廃止分がその八割に及んでおります。現状価格の三%上乗せのみが適正であるかのような大蔵省並びに自治省の表明というのは、私はこれは間違いではないか、こう思うのです。この三兆四千億円に及びます既存間接税の廃止分がすべての品目でまた完全に価格引き下げへと転嫁されるように監視すべきでありますが、これはどのように行政指導なり努力をこれからされていくのかということをひとつお聞きしたいわけです。この点につきまして、もう一度、簡単で結構でございますが、公取委員長お答えをいただければいただきたいと思いますし、もう御意見が先ほどで全部言い尽くしたということでございましたら、もうそれで結構でございます。  それから、経済企画庁、通産省、運輸省、建設省等々、これに対する御意見がございましたらひとつお出しをいただきたい。なければ結構でございます。
  192. 村山達雄

    村山国務大臣 今大蔵省は三%だけ考えているというのは、これは間違いでございまして、もちろん既存間接税の廃止あるいは一部吸収分、こういったものを全部計算して言っているわけでございます。  それから、もう一つでございますが、減税の方は一時的効果だというようなお話がありましたが、これはずっと続くわけでございますので、やはりずっと続くのだろうと思います。値下がりとしては、物価にあらわれる影響としては、対前年の関係では一時的でございましょう。しかし、その効果はずっと続くことは間違いございません。同じように、間接税につきましても、物価に与える影響は対前年では一時的でございますが、その影響はずっとある、こういうことでございます。
  193. 坂口力

    ○坂口委員 大蔵省は法人税の減税等につきましても、前回の売上税のときでございましたか、法人税の減税は最終的には個人に帰着をする、こういうことを申しまして、これもかなり大きなインパクトを与えるということを言ったわけでございます。これなんかは、タイムラグがございますけれども、これは効果あってしかるべきであります。しかし、これもほっておきますと、全部途中で吸収されまして、消費者には全然及んでこないということがあるわけでございますから、そうしたことも含めて実は申し上げているわけでございます。
  194. 村山達雄

    村山国務大臣 前回の売上税のときには、法人税の減税というものは長い意味では消費者にやはりいい影響を与えるであろう、製品価格の値下げであるとかあるいは配当の増加であるとか、まあマスグレイブが言っておるような学説に従ったわけでございます。しかし、おっしゃるように、坂口委員が御指摘なすっているように、この仕組み、タイムラグ、これはかなり難しいのでございますので、今度の消費税に当たりましては、その難しいのをやめまして、そして家計に与える影響は、所得税、住民税と直消費税との関係、もちろん既存間接税の減収分は計算してあります。法人税はカウントいたしておりません。
  195. 坂野重信

    ○坂野国務大臣 さっき大蔵省、自治省とおっしゃいましたので……。  私どもは、企業努力で公共料金を下げるということと、この転嫁とは全然別個の問題と考えておりますので、四月までにお願いしたい。もしそれまでに間に合わぬならば、四月でおやりになっておいて、そして後でゆっくり時間をかけて企業努力でお下げになるのは結構だ、それまでに間に合うものがあれば、それはあえて私どもはおかしいと申し上げていない。ただ、その中身がはっきりしないで、うやむやのうちに、都が裕福だからといって予算を持ってきて三%分を都の別個の予算で払うというようなことは、これはもうまずいということを申し上げておるわけです。
  196. 坂口力

    ○坂口委員 今から申し上げます。  なぜ私がこういうことを申し上げるかと申しますと、例えば鉄道運賃でございます。三%の増収になるように料金の改定作業が進められております。現に、経済企画庁の物価安定政策会議特別部会の資料の四ページを見ますと、増収率三%という表現が並んでおります。まさしく現在の料金に三%上乗せということになっておるわけです。この経費に占めます電気料金の割合は、これは一〇%から二〇%程度に上がっております。また運賃に占めます電気料金はほぼ七%というふうに考えております。電気料金は、円高差益還元で、平均いたしまして、電力用でございます、これは平均三・三%引き下げられますし、また廃止されます電気税も五%あるわけでございます。だから、合計いたしますと八・三%引き下げることになります。これをずっと私どもで試算をいたしますと、電気料金の低下によるコスト引き下げというのは、運賃を〇・五八%引き下げることが可能でありまして、現行の運賃から二・四%程度引き上げるだけでこの消費税を上乗せしたことになるわけでございます。これは電気料金低下によるものでありますが、そのほか、先ほど申しました物品税廃止の産業連関を考えますと、さらにコストの低下というものが考えられる、必要な運賃の引き上げ幅というのは二%を切るのではないか、こう考えているわけでございます。  こうしたものを私どもの方で産業連関表の七十二部門を推定計算してみましたが、その結果、運輸部門は、我々のところでは物価上昇率は二・一七%と出しております。電力の円高差益還元分を考慮いたしますと、多分二%を下回るのではないかというのが我々の判断でございます。同様に、水道部門の物価上昇率というのは二・一八%というふうに我々試算をいたしております。ですから、これは経済企画庁長官並びに運輸大臣にお聞きをしたいわけでございますが、私が申し上げましたことは、これはそっくり今までの額に三%上乗せということではありませんよ、電気料金の問題もあり、それから今申しました物品税の廃止等によりますところの二次効果、三次効果というようなものもありますよ、これらのことを度外視してそっくりそのまま三%ということは間違いではありませんか、私はこう言っているわけです。この辺、しかしどうも運賃の値上げ等は現状の三%、こうきているように思えるのですが、いかがでございますか。
  197. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 今御指摘がございましたように電気税は下がるわけでございますが、この電気税というものは、輸送用の電気というものは非課税ということになっておりますので、これは影響がないわけでございます。そういうことで、電気料金が全部でもって三・三%ほど引き下げられますが、そのときに電気料金が鉄道の総費用に占める割合というものは、比較的その割合が高いとされている私鉄、大手の私鉄の場合でも七%だということでございますので、総費用の低減効果というものは〇・二%になる、こういうことでございますし、また、JRの場合には三%程度でございますので、低減の効果は〇・一%になる。実はこういうふうな試算をしております。  また一方、鉄道の費用の中では人件費また減価償却費というものの比重が大変大きいということで、そういうものの増ということを考えた場合に三%という運賃の改定は妥当だというふうに考えておるわけでございます。
  198. 坂口力

    ○坂口委員 今運輸大臣がおっしゃったことは、おっしゃろうとしていることはわかります。わかりますが、人件費がふえてきたからそれを合わせてこの際上に乗せようというのは、これは違うわけですね。全然違うわけです、これは。だから今はそういうことをしないようにと思って一生懸命政府の方はやっているのではないか。  ですから、私がここで申し上げたいのは、現在の政府がやろうとしておみえになりますこの消費税転嫁、公共料金に対する転嫁の問題も各省庁それぞれさまざまで、そしてその転嫁は現在の上に乗せようとなすったり、電気税やあるいはまた電気料金そのものが値下がりしたりというようなものを、それを計算に入れずにおやりになろうとしている。この辺のところに、内閣全体として非常にアンバランスが目立つということを私は指摘をしているわけであります。ですから、どうもこの辺のところは、もう少し整理をしていただいて、そしてなぜこの新しい税体系になったときにこういう経済効果が及ぶのかということをもう少し検討をしてからでも遅くはないのではないか、少し急ぎ過ぎているがゆえにこういう混乱が起こっているのではないか、私は今、言いたいわけでございます。  ですから、佐藤運輸大臣、おっしゃらんとしていることは、私は意味はわかりますけれども、その人件費やそんなものまでその中に入れて上げられたのでは、これは困るわけですよ。そうでしょう。
  199. 村山達雄

    村山国務大臣 今度経済企画庁の方で消費者物価、平成元年二%見ております。それで、その中で消費税の創設に伴うもの、これは間接税を減らすということも入れておりますが、その消費税関連では一・二%、こう言っております。ですから、それ以外のものが〇・八%あります、こういうことを逆に意味しているわけでございます。この〇・八%というのは、当然のことでございますけれども、経済企画庁がいろいろ見まして、消費税というものがなくても大体〇・八%ぐらい上がるであろう。その中のコストというものがいろんなものが入っているわけでございます。消費税はあくまでも消費税のかかるもの、人件費にかけるわけにはいきません。人件費に三%乗せたら、これはおかしな話でございますが、あくまで消費税にかかるもの、これで三%、それから後は課税仕入れの分を引いたりいろいろしているわけでございます。そして消費税の、既存間接税のつぶれる分、それを入れまして一・二%でございます。  したがいまして、はっきり申しますと、人件費というものがもしコストアップ要因になるのなら、もろもろありましょう、原油もありましょうし、いろいろありましょうが、それは〇・八%の中に含まれておる。消費税はあくまでも課税対象に対して三%、そのかわり間接税をつぶす、こういうことでございまして、人件費に三%かけるというようなことはいたすべきではないと思います。
  200. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 実は、先ほどまず私が申し上げたのは、電気税並びに電気料金の引き下げというものに絡んで御質問があったということでございますので、電気税は影響がない、関係がないということで、後は電気料金が今度三・三%下がるわけでございますが、それの影響というもの、効果というものは、私鉄の場合が〇・二%であって、それからJRの場合は〇・一%ということだと申し上げたわけでございます。実はそういうことを勘案いたしまして、三%という申請があった、それで実際的には二・九何%とかいうふうなことで査定が行われておるわけでございますから、そういうことが全部入っておるというふうにお考え願いたい、かように申し上げたわけでございます。
  201. 愛野興一郎

    ○愛野国務大臣 消費税の公共料金の改正につきましては、去る十二月二十七日の物価担当官会議におきまして基本的な考え方を取りまとめておるものであります。それは、公共料金にも消費税を円滑かつ適正に転嫁させるとともに、この既存間接税の廃止等による負担軽減効果を考慮すること、また税負担以外のコストの動向等を勘案し、必要なものについてはこれを新しい料金に適切に反映させることを申し合わせて、それによって各省庁と連携をとりながら消費税の問題に対処しておるところであります。
  202. 坂口力

    ○坂口委員 村山大臣が言われたのは、私が言っておりますこととちょっと違うわけでありまして、人件費に初めからどうのこうの言っているわけではないんです。佐藤運輸大臣が人件費のことを言われましたから、私はそれはおかしいではないか、この三%の問題に人件費まで持ち出すのはおかしいではないか、私はこう申し上げたわけで、〇・二%ぐらいしか下がらない、こうおっしゃいますが、それは電気だけでございましょう。それから、その電気に対してそのほか物品税の廃止によりまして、二次的、三次的にかぶってくるものもある。連関表で見ればそれは計算ができます。それらを加えれば現在の値に三%上乗せということには絶対にならないということを申し上げているわけで、そこが、政府の指導がそうなっていないと私は言っているわけです。運輸省あたりもそうなってなくて、現状に三%ということになっている。だから、私はそこが間違いだということを指摘をしているわけであります。  こんなことが起こるのも、余りにも性急に税制をやって、そしてこれを余りにも急いで事をやろうと思うから、こんなことが起こってくるわけですよ。だから、もう少しここは十分に検討しなければいかぬ。私は、急ぎ過ぎた結果がこの混乱としてあらわれている。それは各大臣の答弁の姿を見てもわかるわけであります。これは皆さん方が本当にしどろもどろおっしゃるところを見ると、これは十分にそこができていないからそんなことになるわけですね。  私は、もう一度この税制の問題につきましては、消費税反対、ここで一足飛びこ言うべきところでございましょうけれども、そこまでは一遍に手続上はまいりませんので、とにかく消費税導入につきましては一時凍結をしてでもこういうことをきちっと話し合いをしてからでないとこれはうまくいかない、こういうことを私はまず一つ指摘をしたいわけです。  それから、時間がありませんからもう一つ私はこの消費税の問題で指摘をしたいわけでございますが、消費税法が成立しましたのが昨年末の十二月二十四日、そして十二月三十日に消費税は公布されたわけです。これはわずかこの間、二十四日を入れましても一週間でございます。この消費税法の中でいわゆる工事ですね、建設なんかの工事の請負等に関する経過措置そいうのがございます。これは大変な今混乱を生じている。消費税は四月一日から実施されることになっておりますが、この工事請負等に関してま、昨年の十二月二十九日までに契約を結んだものは四月一日以降の引き渡しであっても課税しない、こうなっております。実質的にはしたがって四月からではなくて、十二月三十日からこれは実施されているのと余り変わらない、同然のようなことになっている。ですから、消費税成立の十二月二十四日から数えまして、二十九日というのですから、二十四日の次の日から数えても五日間しかないわけですよ。法律の公布は、法律の全文を官報などに掲載し、その内容を国民に広く知らしめることというふうに、大蔵省の言葉をかりますとそう言っているわけでありますが、一般国民が法律の内容を官報で知ったというのは、これはいつですか。いつ国民は官報でこの法律の内容を知ったのでしょうかね、どうですか。
  203. 村山達雄

    村山国務大臣 御案内のように、この消費税というのは転嫁に関する問題でございます。所得に対する課税ではないわけでございます。したがいまして、四月一日から直ちに転嫁をさせるかさせないか、これはもうけとは関係ございません。したがいまして、その転嫁を強制することが無理であるかどうかという一点にかかるわけでございます。そして請負契約でございますと、一遍契約いたしますとそれを直させるということは容易でないわけでございます。ですから、法施行前に、去年の十二月三十日以前に消費税ができるかできないかわからないでそれで契約を結びました、こういうものについては改めて契約をやり直させる必要がない、こういうことをうたったにとどまるものでございます。消費税というものの本質から考えまして、やはりこの種の経過規定は必要であると存じております。
  204. 坂口力

    ○坂口委員 経過規定は必要だとおっしゃいますが、何のために設けた経過規定ですか。経過規定になっていないということを私は言っているわけです。経過規定を法律の中につくりながら、そのことを知らしめた日というのは、官報が出た日というのはもう既にその経過を過ぎてしまっている。官報が出ましたのは十二月三十日ですか、三十日だったと思いますね。それが皆さんの手元にもしも行くとしましたら、年を越えてからですよ。だから、それをもしも皆さんが見て、工事なら工事にかかわる建設の関係の方がああこうなったのかと見たときには、既に十二月の二十九日までですからもう終わってしまっているわけですね。大蔵省がおっしゃる、法律の公布は、法律の全文を官報などに掲載し、その内容を国民に広く知らしめることという、その知らしめたのは後の祭りということになるわけです。これで果たしてよろしいかと私は言っている。これほど急ぎ過ぎてよろしいかと私は言っている。これはだめですよ。
  205. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 消費税は四月の一日から適用になるわけでございまして、四月一日以降の取引はすべて原則として消費税がかかるということでございます。したがいまして、この法律が公布になりました後の契約につきましては、四月一日以降の引き渡しのものについては消費税がかかるということを前提に契約をしていただくということなのでございますが、建築のような長期工事につきましては、通常、契約ができましてから実際に引き渡しが行われるのに相当の時間がかかります。長いものは二年、三年とかかるというものがございます。そうしますと、十二月の三十日に法律が公布になりまして、その前に結んだ契約でありながら実際に引き渡しが行われるのは四月一日以降ということになるケースが出てくるわけでございます。そういたしますと、それを課税いたしますと、そのまんまの契約では実は事業者の方の、建築業者の方の消費税分しょい込みになるわけでございますから、そこは四月一日以降の引き渡しでありましてもほかの通常のものの取引とは違うであろう。そこで、法律が公布される前に行われました契約につきましては、特別措置として、四月一日以降の引き渡しでありましても非課税とするという措置を設けました。これは四月一日以降の引き渡しであり、しかも契約がその前年の十二月三十日以前のものであったケースについて救おうというものでありまして、決してそういうケースをたくさんつくろうということを意図しているわけではないわけでございます。したがいまして、十二月三十日以降のものにつきましては、四月一日以降の引き渡しであれば消費税があることを前提に契約を結んでいただきたいということでございます。
  206. 坂口力

    ○坂口委員 だから、なぜ経過措置というのを法律の中につくったのか。その経過措置というのは、広く国民にこのことを知らしめるために経過措置をつくったのでしょう。だけれども国民がそれを知る手段がまだないうちにもうこの法律が動き出している。そんなことでいいかと私は言っているわけです。だから昨年の二十九日までにこの内容を知ってあわててやった一部の大手の建設関係のところは二十九日にやりました。だけれども、それを知らなかった中小企業のところは、官報なりその他で知ったのは既に後の祭り、こうなっているのです。これは建設大臣のところだったら、たくさんそういう声というのは届いているだろうと私は思うのですよ。ならば、なぜこの法律の中に経過措置をつくったのか、私は改めて問いたいです。何のための経過措置であったのか、こう私は言いたいわけです。
  207. 村山達雄

    村山国務大臣 これは詳しくは事務当局から説明してもらいますが、直接関係するのはその工事にかかわる下請業者なのですね。ですから、下請業者にも所要の規定を全部設けているわけでございます。そしてまた、それが不公平にならないように、それは今消費税をかけないというものについてのその建設業者については、課税売り上げの方には計算しない仕組みも全部一緒に知らしめているわけでございます。  国民という話でございますが、これは国民の方で非常に影響のある人、これは消費税全体を知れということにつながりますと大変でございますが、直接消費者に関係ある分についてはそれぞれ知らしているのでございます。直接にはその工事に係る下請業者がどうなるか、こういうことだろうと思います。
  208. 坂口力

    ○坂口委員 それは大臣、違いますよ。十二月の二十九日までに契約をするというのは、それは家なりビルなりをつくる施主と、そしてそれをつくる建設会社との間の話ですよ。下請の話じゃないんですよ。間違ってますよ、その大臣お話は。  だからそこが、もうそこすら知らないうちにそうなってしまっているということを私は言っているのであって、ただ私は建設業界がどうだとかこうだとかということを言うのではなくて、新しい法律をつくるときに、事ほどさように多くの皆さんにそれが理解が得られないままで事を運んでいいかということを私は今問題にしているわけなんです。これは、こんなに新しい法律をつくるときに、こういうやり方で果たしていいのか。だからここに反対運動が今大きくなってきている。こんなばかなことはないではないかという声が、これが大きくなってきているわけなんですよ。だから私は、とにかくこうした問題を一遍整理をする必要がある、このままで強引に推し進めたら、これは政治不信を大きくするばかりである、時には立ちどまって考える必要もあるのではないか、急ぐばかりが能ではないと申し上げたいわけであります。  これは、ここは総理、ひとつ御決意を聞かしてもらわねばなりません。単なる小さい法理論上の話ではございません。新しい法律を導入をするときならばなおさらのこと、そのことに、そうするならば、多くの国民皆さん方によく理解をしてもらい、そしてその理解の上に事を進めていかなければならないわけであります。それを、国民皆さん方に官報がまだ届かないというか、官報発行の日には既にもう事が決まっているというのでは、国民皆さんが知る手だてはないではないですかと私は申し上げているわけであります。総理大臣の、ひとつここはここ一番、これは決意を聞かせていただきたい。
  209. 村山達雄

    村山国務大臣 消費税の性格については何遍も申し上げました。そして、これが税制改革の中の一つの大きなポイントであるといりことも申し上げました。これがやはり円滑に日本経済に吸収され、定着されることが必要でございます。したがいまして、常識的に考えてみて、そして経過措置が一切要らないということにはならぬと思うのです。ですから、当然の常識として、改めて契約を、四月一日以降引き渡されるものであっても、従来の契約慣行からいいましてそれを改定させることが無理であるもの、そういうものを挙げまして経過措置に挙げているわけでございます。  したがいまして、その経過措置というものは、何も建設業に限ったことではございません。予約販売の問題もございます。通信販売の問題もあるわけでございます。そういうことをやるということは、やはりこの消費税というものが初めて行われる。だから、日本の経済社会あるいは契約慣行からいって無理でない。そしてまた、それが不当に利益を与えるものではない。間接税でございますから、所得に対する課税ではございません。そういうものとして、従来の取引慣行上素直に受け入れられるようなものを経過措置の中に入れた、このように御了解いただければありがたいと思います。
  210. 坂口力

    ○坂口委員 そこは素直に受け入れられないから言っているわけで、その経過措置が要らないところの騒ぎではなくて、経過措置が必要だから法律の中に経過措置がちゃんと書いてあるわけです。だけれども、その経過措置がきちっと理解がされるいとまもないうちに法律が動き出すということは、これは許せないではないですかということを私は言っているわけです。私の言っていることはおわかりいただけますか。(村山国務大臣「わかります」と呼ぶ)はい。  それじゃ、もう時間がないものですから、ありがとう。時間がないものですから、総理、ひとつここは……。
  211. 村山達雄

    村山国務大臣 経過措置というものは、やはり法律実施までに書かなければならぬものでございます。それであるから経過措置なのでございます。附則に入れなければなりません。本法を出しておいて後で経過措置を出すということは、これはまた普通あり得ないことでございます。
  212. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 きょう、今御議論になりましたのは、公共料金の問題についてのいわば電気料金等、第一次あるいは第二次、第三次関連でいろいろ影響がある問題が生じておるから、単純三%上乗せでは論理性がないではないか、こういうことと、それから今の問題は、公共事業等の契約に関するいわゆる経過措置の問題について、こういうことであったと思います。  今のようなまじめな議論がなされることによって国民皆さん方がより理解を深めていただく。したがって、やはり新税というものは、いつもこれは経過措置があったり、いささかの精緻性を欠く点もある場合があります。これをできるだけ少なくして、可能な限り早くこれが国民の暮らしの中に溶け込んでいくということが必要でありますだけに、今坂口さんは、だから延ばせということをあるいはおっしゃる気持ちかとも思いますが、私は、より早く定着さすためには、そういう一時期間延ばすという手段はとるべきものではないというふうに考えております。
  213. 坂口力

    ○坂口委員 だからやめろと本当は言いたいところを、その心を鬼にして、だから延ばせ、こう私は今言っているわけです。  今申しましたように、この三%に対する指導の問題も、それから政府の中のそうした公共料金に対する足並みも、そして今指摘いたしました工事等にかかわります問題等々も、これは余りにも急ぎ過ぎたために起こっております混乱なんです。もっとじっくりとどうあるべきかということを考えずにやっているから大きな間違いも犯している。だから私は、何が何でもやめろと言うんではなしに、こういうことがあるからちょっと待ってくださいよ、よく考えて前へ進んでくださいよ、立ちどまって一遍考える必要があるではないですかということを言っているわけですよ。  だから、そこをひとつ総理大臣に、もう一遍聞きたいけれども、まあ、もう一遍言っても同じことを言われると思いますから、もう申しませんけれども、私の言っているところを十分にひとつ理解をしていただいて、どうも坂口が言ったときにそれはそうだと言ってしまっては身もふたもない、おれが後でもう一遍じっくり考えて、そして独自の意見として言うときには言うというのならば、私は結構でございます、それで。今も言わず、後も言わずというのはだめですよ。よろしゅうございますか。ひとつその辺の総理大臣としてのお考えを十分におまとめをいただいて、いかにこの税が強引に今推し進められているかということをひとつ理解をして、それに対する対処を決定をしていただきたいと思います。
  214. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 よく坂口さんと議論をいたしましたときに、トライ・アンド・エラー、試行錯誤、そしてストップ・レシンク・アンド・ラン・アゲイン、こういうことを私も何回か申し上げたことがあります。立ちどまって考え直し、また走り出すと。しかし、今度は既に試行錯誤の問題ではなくして、思考して、そして決定し、国会で議決を得た法律というものの施行が前提になっておりますから、ストップ・レシンクというのは確かに人間生活の上において必要でありますが、この法律の施行に関してストップ・レシンクということはとり得ないということを申し上げざるを得ません。
  215. 坂口力

    ○坂口委員 だめですね。ひとつ、一晩よく考えていただいて、もう一度また御意見をちょうだいをしたいと思います。  さて、年金問題、厚生大臣、お待たせをいたしました。  竹下総理は、昨年の臨時国会におきます参議院における質疑で、消費税は精神的福祉目的税だ、こういうことを発言になっておみえになります。精神的福祉目的税とはよくぞ言ったものだと思って、感心をしながらその言葉を聞いたわけでございますが、しかし、ことしのこの予算等を拝見をしました場合に、それならば、消費税の導入によって、そしてそのことによってマイナスの影響を受けるところにどうするかという、その兆したるものを見受けることができ得ません。とりわけ、ことしの予算の中での年金問題でありますが、この年金に対して消費税が一体どんな影響を与えているのであろうか、影も形も与えていない、こう言わざるを得ないわけであります。  とりわけ、この消費税の導入によりまして一番大きな影響を受けますところは、年間三百万からもう少し下の二百万ぐらいなところ、生活保護等を受けるところは何がしかのことがされましたけれども、それ以上のところで三百万ぐらいなところ、この辺のところがどちらかといえばマイナスになる、消費税で負担増になるところでありました。そこは減税しても響かないところなんですね。そこに対して今度の年金の改革でまた負担がかかるわけです。だから、この部分のところは、何ら影響を受けることなしにさらにまた厳しくなっていくというわけです。この三百万というところが必ずしも厳しい御家庭ばかりではなくて、そうではない部分で、しかし所得としては三百万ですよ、こう言われる方もあるわけですね。それは、三百万の所得のところといりのが全部全部本当に三百万かといえば、そうでないところもまじっている可能性も私はあると思うのです。しかし、本当に年間所得三百万ぐらいというところは、この消費税でもパンチを受け、そして今度またこの年金でもそこに上乗せされていくことでダブルパンチになるわけであります。この人たちに対してもしも手を差し伸べるとするならば、私は、この年金改革のときの保険料の問題で手を差し伸べる以外にここは手の差し伸べようがない、こう思っていたわけでありますが、何らそこには手を差し伸べられない状態で今回提案をされているわけであります。  そこで、その問題もひとつ後でお聞きをいたしますが、厚生大臣、今すぐではありません、今から二十年ぐらい先の話でありますけれども、年齢が六十歳から六十五歳に引き上げられる。それは高齢化社会だかりやむを得ないじゃないかという意見も一方にございますが、しかし、ならば、それにあわせてこの定年の問題は一体どうなるかという、働く場所の問題もこれはついて回る話でございます。  私は厚生大臣に対しましては、こういうことは既に前の段階のところ、五十八年でしたか九年でしたか、前の改革のときに既にこういう状態になるということは予測されたことですね。前回のときに既に人口統計等から、何年になりましたら大体六十五歳の人はどれだけになってどうだというようなことはもうよくわかっていたはずでありますが、それをそのときにはそのままにしておいて、そして今回それを延ばそうと小出しに厚生省が出しておみえになる。  ところが、こういうことを小出しにされますと、国民の側は何となく、年金の基本がもう頻回に変わるように受けるわけです。確かに変わるわけですから。そうしますと、この年金に対する信頼性というのが失われてくるということを、私は非常に危惧するわけであります。これから先二十一世紀に向かって、このままでそれじゃ今度の改革でいいのかといったら、いつかの時点でまた変えようとされる。そういうことをしてはならない、年金というものは一貫して、こうあるべきだという基本を決めたらもうそれで行くべきだ、途中で変えるということはいけないというふうに私は思っておりますが、厚生大臣、その点はいかがですか。
  216. 村山達雄

    村山国務大臣 今厚生大臣が財政再計算のお話に関連してお答えになると思いますが、その前に年金生活者の問題についてお答えしておきますと、御承知のように、これは前年度の物価上昇率によりまして、従来、五%以上上がるというような場合は上げると言っておりました。今度は、今度の改正で完全スライド制を出しておりますので、前年の消費者物価の上昇率をやりまして、〇・七%上げるという案になっておるということを御承知願いたい。  なお、つけ加えますと、年金生活者につきましては、六十二年の秋の改正、それからことしの改正、課税最低限が随分上がっております。従来夫婦世帯でございますと二百数十万の課税最低限でございましたが、今は三百万を超えておるということも付言しておきます。
  217. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 大変広範囲な御質問だったのですが、要は、この年金制度を、年齢にしても余り変えると年金に対する信頼が失われるのではないかというのが主眼の御質問だと思います。  確かに、前回の改正で給付の水準をカットした際にも、将来六十五歳は避けて通れないであろう、また中には、前回の改正時に既に、六十五歳をはっきり言った方がいいのじゃないかという意見もございました。しかし、前回も大幅な改正でありましたし、まだ先の話であるからそう一挙に年齢の引き上げまでは触れないでいいであろうという意見が大勢を占めて、前回は六十五歳への引き上げは改正の中には含まれませんでした。  しかし今回、いろいろな人口構造、就業構造を考えてみますと、将来やはり現行の給付水準を維持するならば、引き上げない、六十歳のままに据え置くのならば、これは保険料の大幅なアップにつながる。逆に、それでは保険料をアップしないで六十歳を維持するのならば、これは今の七割程度の給付水準を五割程度に下げなきゃいけない。将来やはり年金制度に揺るぎない信頼感を国民に持っていただくためには、給付水準を維持しながら、そして時間をかけて準備するのが妥当ではないかということで、今回我々が考えているのは、これから二十年以上かけて、保険料のアップもそれほど大きくない、現行の給付水準も維持する、そして六十歳から六十五歳に段階をかけてやろう、しかもこれは、早く準備していただくために、前もって皆さんに理解してもらった方がいい。労働省とも協議しまして、六十歳以上の高齢者の方々の雇用環境も政府一体となって考えていかなきやならない。同時に、六十歳から年金をいただきたいという方には、減額して繰り上げ支給する制度も考えていかなきゃいかぬということで、やはりこの年金制度に対する信頼感を国民に持っていただくために、むしろ給付水準を維持しながら段階的に時間をかけて六十歳から六十五歳に支給開始を引き上げるのが妥当ではないかということで、私どもとしては、むしろ年金制度の信頼を維持するために六十五歳に引き上げた方がいいと考えて、今関係方面の御意見をちょうだいしながら、できるだけ早い機会に今国会にしかるべき法案を提出したいと考えているところでございます。どうか御理解をいただきたいと思います。
  218. 坂口力

    ○坂口委員 私が申し上げたいことは、年金の制度に信頼を得るためにはやはりわかっていることは早くからもうすべて国民皆さん方に申し上げて、こういうことになりますということを最初から申し上げて、そしてお願いをすべきものはお願  いをするという姿勢でなければ、途中で次々と、こうなります、実はこうでございますということを小出しにしているのでは信頼性を失うことになりますということを私申し上げたわけでありまして、厚生大臣がおっしゃいましたことも十分理解はできますが、しかし今後改革をするに当たっては、そうした今後のことを十分に理解をしてもらうようにひとつ努めていただきたいと思うわけであります。  そして、時間が大分迫ってまいりましたので、労働大臣にひとつお聞きをしておきたいと思いますが、今後の雇用の問題が一体どうなるのか、それがこの年金の六十五歳についていけるのかどうか。それがついていけるというのであるならば、まあ六十五歳というのは反対だけれどもやむを得ないなという人も中にはいるわけです。ところが、そこが明確でないものだからその人たちも、それではだめだ、こうおっしゃるわけであります。  日本の生産性の向上と、それに必要な労働者というのは一体どれくらい要るのだろうか、その中で女性の職場進出はどのぐらい見込めるのだろうか、あるいは定年延長のスピードはどのぐらいにすることができるのであろうか。私は、その辺のところはきちっとできていてしかるべきだ。それができていて、それと車の両輪として年金の問題をこうしたいと思うということが提案されるのであるならば、一つの説得力を持つのではないかと私は思うわけですが、しかし、その労働力の方が一体どうなるかということが現在のところ不明のままである。もしそこをきょうは労働大臣にはっきりとこういうことでございますということが聞かせてもらえるのならば、私はひとつ聞かせていただきたいと思うわけです。
  219. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 大変結構なお尋ねをいただきましたので、お答えさせていただきたいと思いますが、まず、年金の支給開始年齢の引き上げが考えられますときに、先生がおっしゃいましたように六十五歳までの雇用確保が必要である。六十五歳までの定年延長は可能なのか、また、現在無理だとしても何年までには六十五歳定年制というものを実現するというようなことが計画として考えられるか、それが考えられなければ大変だという御意見でございますが、もっともだと思います。  それで、要点を申し上げますると、ただいま申し上げましたように、年金関係のことも大事でございますが、それと同時に、先生からの御意見もございましたよりに、本格的な高齢化社会の到来を迎えまして、我が国経済社会の活力を維持していくためには高年齢者の知識、経験、能力が十分生かされるようにしていくことが、これはもう大変大事なことであります。このような基本的な考え方に基づきまして、お尋ねのございます、労働省としては六十五歳程度までの雇用就業の場の確保に努めていくこととして努力をしております。  ただ、このための施策として定年年齢を六十歳を超えて引き上げることについては、高年齢者の多様な就業ニーズや企業の継続雇用の現況等を考慮し、人事労務管理制度の見直し等の対策を総合的に実施いたしまして、今もお話がありましたように中期的課題として検討を進めていく考えでございまして、そのための長期的なビジョンも随分進めております。必要があれば当局からその長期的なビジョンについて説明をさせていただきたいと思いますが、時間の都合で私の答弁はこれだけにさせていただきたいと思います。
  220. 坂口力

    ○坂口委員 大臣、そうしますと、定年制の問題等を含めて雇用者の問題は今これからやるということですか、でき上がっておるということですか。これからでございますか、簡単に……。
  221. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 先生が簡単にとおっしゃいますから簡単に申しますが、御指摘のように今、目下検討中であり、進めております。
  222. 坂口力

    ○坂口委員 ですから同じ内閣の中で、厚生省と労働省は同じ建物に入っているのですから、片方の厚生省では、年金は六十五歳に引き上げていきますという案を出す、そして片や労働省ではまだこれから進めますではぐあいが悪いですよ、こんなことでは。これはやはり車の両輪の話でありますから、厚生省がお出しになるのならば、それに合わせた案を、労働省ももうでき上がっていてしかるべきではないですか、こういうふうに私は言っているわけでございます。だから、これは少々厚生大臣の方に年金のことは待ってもらいますから、労働省の方に早くひとつやっていただくようにお願いを申し上げておきたいと思います。  さて、もう時間がなくなりましたので、申しわけありません、あと一問だけ一あと二間ございますが、一つは北朝鮮の日本人妻の里帰りの切々たる話がございます。これは外務大臣にお願いをするのでしょうか、ぜひひとつこの人たちの願望を一日も早くかなえてやっていただきたい、こういうことで、特段の外務大臣の御配慮をお願いをしたいと思うわけであります。
  223. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 北朝鮮の日本人妻の問題はまことに哀切のきわみである、私はかように存じております。最近議員連盟も超党派ででき上がりまして、その御活躍をお祈りする次第でございますが、政府といたしましても、今日まであらゆるルートを通じましていろいろとその折衝に当たっておりますが、全く音さたなしということでございます。しかし、具体的にはシェワルナゼ外相にもお願いするというふうなことで、最近におきましては過般の外交方針演説で私も政府対政府の接触の場を持ちたいということを、あらゆる問題につきましてのそうした意見を吐露いたしましたので何らかの反応があるかと考えておりますが、現在ただいまではございません。しかし、仰せのとおり大切な、気の毒な問題でございますので全力を挙げたいと思います。
  224. 坂口力

    ○坂口委員 最後になりましたが、総理、きょう中曽根総理記者会見をおやりになったようでございまして、記者会見リクルート問題について、全く潔白であり疑惑はありませんと断言をされたようでございます。この点につきまして、もしも竹下総理の所見を伺うことができましたらお伺いをいたしまして、終わりにしたいと思います。
  225. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 記者会見の内容をつまびらかにしておりませんが、前総理の発言されたことはそのとおり私も受けとめるべきであると思っております。
  226. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございました。
  227. 大野明

    大野委員長 これにて坂口君の質疑は終了いたしました。  次に、青山丘君。
  228. 青山丘

    青山委員 私は、本年度補正予算案に触れつつ、当面する諸問題について総理並びに関係大臣お尋ねをいたしたいと思います。  まず、去る二月二日に決着を見ました韓国製ニット製品のダンピング提訴の問題についてお尋ねいたします。  韓国産ニットに対するダンピング提訴につきましては、韓国側の業界の輸出自主規制という形で一応決着を見ました。しかし、この問題は、御承知のように近年急速に伸びております輸入増大を憂慮しております業界にとっては非常に関心の高い問題でありまして、日本が経済成長著しいアジア諸国に対してこれからどういう対応をしていくのか、とりわけアジアNIESとの間にどのような経済の競争と協調の体制を確立していくのかという点では極めて関心の高い問題であります。そういう点で、今回韓国側の自主規制という形で決着を見ましたが、総理、この決着の経過はよく御存じだと思いますが、現時点でどのような感想をお持ちなのか、まず伺っておきたいと思います。
  229. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 これは、具体的には通商産業大臣からお答えをすべきだと思っておりますが、私もこの間の経緯につきまして関心を持っておったことは事実でございますので、私のこの問題についての感想を述べろということでございますので、あえて立たしていただいた次第でございます。  まず、私自身、最初これが起きましたときには、私が佐藤内閣の内閣官房長官をしておりました当時の日米繊維交渉という問題を想起したことは事実でございます。もう古い時代でございますけれども、そういう世界経済全体の中で我が国は今NIESに対しましていわば今委員もおっしゃいましたとおり協調政策をとって、これを疎外すべきでないという立場で対応しておるわけでございますけれども、当時のことを思い出したことは事実でございます。  したがって、法の定めるところによりまして提訴をされ、そしてこれがいわゆる自主規制という形で解決がついたということでございますので、やはり我が国といたしましても今後はより緊密な、今委員お話にも出ましたような協調体制の中で、我が方も産業構造の調整を図りつつも自由貿易主義というものを根底に置いて、絶えず注視しながら対応すべきものである。感想でございますので、そのようなことを申し上げておきます。
  230. 青山丘

    青山委員 通産大臣にこの感想をまた同時に求めたいと思います。  もう一点は、今回の自主規制という形での決着についていろいろな批判も同時に出ております。不公正競争を防止する手続としては、国際的にも認められておるダンピング関税をきちっとかけていくことも一つの解決の道ではないか。なるほど国際経済の中で日本の置かれている立場は、私どもよくわかっています。輸出ばかりではなく、輸入も製品輸入としてふやしていかなければいけない。しかし、不公正な競争まで許していくということにはならないというふうに考えますと、今回の自主規制の決着というのはいささかあいまいであったという批判も実は相当強い意見として出ています。こうした意見に対する御所見はいかがでしょうか。
  231. 三塚博

    ○三塚国務大臣 ただいま総理から、日韓貿易関係の全貌について展望を含めて感想が述べられたわけであります。青山委員から指摘されましたダンピング規制法等々まだ措置があるわけでございますから、それらの申請を待ちながら、なおかつかような意味は、国内業界からあるいは自由貿易という観点から批判を受けざるを得ないことではないのかということであったと思うのでありますが、本件は、青山委員も専門として見られておりましたことでおわかりいただけるわけだと思うのですが、最大の問題は、お隣の韓国と日本という一衣帯水、また過去の不幸な関係もこれあり、そういうものに十二分に配慮をしつつということがないと言えばうそになります。その辺のところは、我が国の貿易政策の中で基本方針は堅持しつつも十二分に気配りを示しながらというのが担当通産大臣としての感じでありましたが、これを業界に押しつけるということはいたしませんでした。まさに申請は申請と受けつつ、最終的に韓国商工部が将来の日韓ニット製品貿易の健全な発展を図りますために自主的な措置の導入の意向を表明いたしましたところから、実はこの問題についての韓国側業界の反応が出てまいりまして、日韓両業界の情報交換ということに相なりまして、これが自主的な方式により、双方痛み分けだというふうな意見もあると思うのでありますが、双方の事柄の重要性から解決に至ったということは、これは評価をしていかなければならぬだろうというふうに思います。  同時に我が国としては、秩序ある輸入が行われるとの重要性を認識しながら今後に基本方針を堅持して進まなければなりませんし、さような意味におきまして、自由貿易を堅持しながらさらに輸入拡大を図るといりことでなければならぬというふうに思います。今次のこの解決が日韓両国の相互の努力によりましてなされたといりことを重視いたしまして、経済関係が相互の理解の中で強化されるように我が省としても国内体制整備にベストを尽くすということの中で取り組んでまいりたい、かように考えております。
  232. 青山丘

    青山委員 通産大臣立場で今回の自主規制という決着を一定の評価をしておられる。私も立場大臣のそういう見解、理解をいたしますが、国内のこの産業の中には、不公正競争を防止する手続としてはダンピング関税をきちっと発動してほしい、これは国際的に認められていることである。つまり不公正な競争は、日本が今置かれている立場が輸出中心から輸入中心に、これから輸入を拡大していかなければならないという立場はよくわかりながらも、しかし不公正な競争がこれから出てきてはいけない。そういうことは、最近輸入急増しておるいろいろな産業分野の人たちにしてみれば非常に関心の深いことでありまして、このダンピング関税発動の手続をとるべきであったのではないかという考え方はあるのです。そういう考え方については大臣自身どのように考えておられますか。
  233. 三塚博

    ○三塚国務大臣 大蔵大臣との共管であるわけでございますが、我が国業界から申請が出されまして、審査を進行中でありましたやさき、御指摘の二月二日、解決を見たということでございますから、この実態を尊重してさように取り組まさせていただいたわけでございますが、将来ともにかようなことで進むのかと言われますればノーと申し上げさせていただきます。まさに今回の解決が政府のダンピング審査とはかかわりない形で終了を迎えたということの現実を踏まえて、今後とも公正かつ円滑な審査手続を進めてまいる所存であります。
  234. 青山丘

    青山委員 新聞報道によりますと、今回のダンピング提訴の手続をしていく経過の中で、あるいはまた審査が進められていく経過の中でいろいろな不満が述べられております。相当、アメリカに比べて日本は業界に対して冷たいとか不備があったとかいろいろ伝えられています。通産大臣は政府の対応をどう受けとめておられますか。
  235. 鈴木直道

    鈴木(直)政府委員 今回のダンピング提訴をいただいたわけでございますが、確かに非常に珍しいケースでございましたので、私どもも大変慎重に、大臣が申しましたように公正に判断をしなくちゃいけないということで、関係省とも十分打ち合わせをしつつ進めたわけでございます。私ども一般の民間の方におわかりやすいようなガイドラインというものを定めて、それに基づいて運用さしていただいたわけでございますので、今回の経験そのものも将来に対しまして非常にプラスになっていくと思いますし、十分私どもとしては公正にやったつもりでございます。
  236. 青山丘

    青山委員 今回はいわば初めてのケースでして、とりわけこのニット産業を支えてきておる人たちというのは中小企業の方々がたくさんあります。こうした問題がこれからも私は出てくると思う。そういうときに、中小企業者が主体となっておる産業に対してかなりの負担だなという印象を幅広くみなさんが持っています。このあたりをどういうふうにひとつ対応していこうと考えておられるのか、聞かしていただきたい。
  237. 鈴木直道

    鈴木(直)政府委員 確かに、御指摘のように中小企業の方々はこの点につきまして十分なる経験はございませんので、必要なる十分なる資料を整えるという面でいろいろな支援というものは必要かと存じます。私どもは手続に関しましては十分情報を提供いたしまして、中小企業の方々の不便でないようにしたいと思っておりますが、さらには、実は従来の経験なり勉強というものを積み重ねた情報というものを、公正貿易センターという財団法人をつくりまして、現在民間ベースでございますが蓄積しておりますので、そこにいろいろお問い合わせいただければ十分なる御支援、御指導ができるというような体制も整えておりますので、その面も今後強化してまいりたい、かように思っております。
  238. 青山丘

    青山委員 今回の提訴の問題を考えてみますと、アジアNIESの国々が相当速いピッチで経済成長を遂げている。その社会情勢と日本の産業の高度化、それから構造の転換、このスピードとの間の摩擦でこういう事態になったというべきであろうと思うのです。  総理大臣お尋ねをいたしたいと思いますが、実は日本の産業の高度化、構造転換というものがおくれていくことによって、アジアNIESとのいろいろな経済摩擦をこれから起こすのではないか。既に追い上げてきておる韓国ニットの業界も、中国や他のASEAN諸国から逆に追われている立場にももう立っているわけであります。そういう状況考えてみますと、非常に速いスピードでアジア諸国の経済は成長してきておる。日本がそれを現状にとどまってはいられない。産業の高度化を進めていかなければいけない。構造転換を進めていかないと、例えば、これから出てくるであろう、心配されておる鉄鋼であるとか合板であるとか、あるいは自転車やセメントといったような産業分野についても摩擦が起きる可能性が出ております。  そういう点を考えますと、我が国はよほど思い切ってといいますか、これまでも積極的に進めてこられたとは思いますが、産業の高度化、構造転換というものをよっぽど進めていかなければいけない。最近特に急速に出てきております外国人労働者の問題も、実は同じような背景があるのではないかと私は思います。そういう意味で、構造転換に取り組む政府の姿勢、まず総理大臣、この決意をひとつぜひ聞かしていただきたいと思います。
  239. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 翻って我が国のことを考えてみますと、昭和四十六年当時の日米繊維摩擦のことを思い出して申し上げたわけでございますけれども、我が国に内需主導型の経済政策に転換という一つのきっかけになったものは、私は昭和六十年九月二十二日のいわゆる為替調整の開始ということではなかったかというふうに思っておるわけであります。  その為替調整の打撃というのは、それが私どもも予想もしなかったほどの急速度な円高状態でございましたので、これが定着するまでの間、私は随分我が国の中小企業の方等に対する痛みを分かち合っていただいたというふうに思っておるところでございます。  そこで、政府として考えてみますと、やはり前川レポートが翌年の四月に出まして、それで内需拡大というところから六兆円の補正予算でございますとか、そういうところから今度は円高のメリットがやっと反映してきて、今外目に見ましたときに順調に進んできておるというふうに大方の評価はできるだろうというふうに思っておるところでございます。  しかし今度は、御案内の、今ニットを例にお出しになっての御質問のように、そういう円高傾向の定着等を背景にして製品輸入がふえたが、その製品輸入というものが一部業種の生産、雇用等にまで深刻な影響を与えていく、こういう状態が見られることは事実でございます。したがって、これらの業種の円滑な構造転換、なかんずく高度化の問題等については、これはいわゆる政策的な支援も行っていかなければならないという考えに基本的に基づいておるわけであります。  産業構造転換円滑化臨時措置法、ああいう法律をつくっていただきまして、今後とも、一方輸入の拡大を図りながら、そうした雇用等にも影響の出てくる問題についてきめ細かな配慮を行いつつ、ソフトランディングさせていくための努力を総体的に申しますならば進めていくべきであるというのがお答えではなかろうかと思っております。
  240. 青山丘

    青山委員 相当浸透してきてはおりますが、目標を明確に掲げて、国民にそれを示してきました。私は、その点では評価しています。ただ、その後は政府が政策的にきちっと構造転換を進めていく決意とそのためのいろいろな手順、政策というものを総合的に取り組んでよほどしっかりやらないと、かつてのアメリカやあるいはヨーロッパの先進国と同じよりな立場に必ず日本は立ってしまうという点がありますから、特にアジア諸国の経済成長は著しくて追い上げも厳しい、そういう現実の中で日本経済が新たに発展をしていく、高度化、転換という方向をひとつぜひ徹底をさせていくという決意で臨んでいただきたいと思います。  それから、消費税についてお尋ねをいたします。  実は、私ども国会にいまして、政府が消費税というものはとにかく導入さえすればいい、こういうあからさまな意向というものをひしひしと感じてきました。しかし、導入さえすればいいというものではないし、とりわけ世界的に類を見ない帳簿方式を採用すること、あるいはまた三千万円という免税点が私はいささか高いのではないかと思いますし、簡易課税であるとか限界控除制度の導入によってあいまいさが強く出てきておるといいますか、不正確な面が出てくる。とりわけ、四月一日から導入されるというこの消費税に対して事業者の準備、これはなかなか大変なものでありますが、進んでおりません。不安ばかりが先行しています。非常に消費税というのはあいまいなものになってきておる。学べば学ぶほどよくわからないという点も出てきておる。  さらに加えて、先ほどから議論されておりましたが、さて消費税が本当に転嫁できるのかという不安が特に中小企業者の中には非常に強くあります。私は率直に申し上げて、竹下内閣の支持率の問題でも、けさの新聞報道では落ちてきておる、これはやはり中小企業者が相当不安を抱いておりますし、転嫁できなかったらどうするんだ、第二事業税か、こういう声を私たちに強く言います。このことは、政府としてひとつぜひまじめに受けとめてもらいたい。  そこで質問いたしますが、当初政府原案では、事業者は「転嫁が行われるよう努めるもの」、国は周知徹底等を「講ずるよう努めるもの」、こういう中途半端な転嫁の条文ではだめだと私どもが申し上げて、自民党も受け入れていただいて、修正という形で、事業者は「転嫁するものとする。」あるいは国は周知徹底等を「講ずる」、こういうように事業者と国の義務を明確化させていこうということになってきました。  問題は、私は、このような字句の修正だけではなくて、本当に転嫁できる、こういう決意といいますか、何が何でも中小企業者に泣き寝入りはさせない、こういう決意をひとつ示していただきたい。いかがでしょうか。
  241. 村山達雄

    村山国務大臣 今青山委員の御指摘されました問題、帳簿の問題であるとか課税期間の問題、実はこの消費税を設計するときにこれが最大の問題になったところでございます。売上税のときの最大の難点、いろいろありましたけれども最大の難点は事業者の事務負担、これが一番大きな問題であったわけでございます。  それで、一般的にこれをまず除こうということで第一にやりましたのは、税額票発行方式でなくて帳簿方式にしたということ。それから第二番目には、課税期間、これを既に事業者がなれております法人税、所得税と同じ期間にしたということ。それから、納付につきましても大体同じようにしたということ。したがって、帳簿は所得税、法人税の帳簿をつけておいていただければ、あとほんのちょっと直していただければ大体納付税額は計算できるようにしたという点。それから、税率を一本にして最低三%にしたということ。複数税率を認めなかったということ。それから簡易課税、これは売上税のときは大変な話でございましたが、徹底して非課税を設けないということにしたこと。こういったことで、これは大企業、それから中小企業を通じてやったわけでございます。  しかし、なおそれでも中小企業については事務負担がある。いろいろ計算すると、人を雇わなければいかぬとかいろいろな問題が出るわけでございます。そこで考えましたのが免税点の問題であり簡易課税方式の問題であるわけでございます。これはこれなりに、青山委員のおっしゃるように、それ自体かなりの問題を持っていることは我々もよく承知しておるのでございますが、選択の問題として、この程度なら消費者も受忍できるのじゃないだろうか、逆にもしそうでない、この制度を設けないとすれば、事務負担が非常にふえてそのこと自身からコストアップがくるのじゃなかろうか、そして今のような話、少しうまみがあるかもしれぬなというようなそのうまみと、それからコストアップによるところの、三%以上にコストアップが出てくるという問題、これを比較勘案いたしまして今度のようなことにしたわけでございます。  それから第二点でございますが、今青山委員がおっしゃったようなことで、この消費税は世界各国、付加価値税は全部、四十数カ国先進国やっております。しかし、今度は日本では初めてのものであり、しかも帳簿方式でございます。これは今度日本が初めてでございます。したがいまして、これの転嫁についてこの前のあれでさらに強い決意を示しまして、それから同時に推進本部をつくりまして、総理みずからが本部長になって徹底的に適正転嫁、それから過剰転嫁の防止、これを政府、あらゆる機関を通じまして、公取まで動員いたしまして今鋭意やっているところでございます。したがいまして私は、ほかの国でも大体、あんな難しい複数税率で、それからかなり非課税品の範囲が広いのでも何とか、まあ楽とは言いませんが定着しているので、非常に進んでいる日本でございますから多分うまくいくであろう、またこれは将来の日本の税制としては画期的なものである、このように信じているところでございます。
  242. 青山丘

    青山委員 業界団体の人たちと懇談いたしますと、今回の税制度についていろいろな意見が出るのですね。帳簿方式にしたという知恵も評価している人もあります。これは一つの知恵としてなかなか評価できると言う人もあります。ところが、やはりあいまいになってきている部分もあるのですね。それはまさに簡易課税制度も同じことだと思います。  問題は、そういう知恵が逆に裏に出てきて、経済の仕組みの中でぎしぎしとひずみといいますか、出てくるのじゃないかという問題が、後でちょっとまた触れますけれども、一番いろいろな業界の人たちで不安になっておられるのが、転嫁できないだろう、非常に競争が厳しいので仕組みどおり転嫁したら外されるような気がする、こういう不安があるのですね。そうじゃない、必ずこの仕組みを徹底していかないと他の業者もやっていけないんだという、あるいは業界はこういうもので親企業から痛めつけられるものではないというような、そういう方式というか方途というのを明確に示していただかないと、私はこれはスタートが切れないという疑問を持っています。  事業者が転嫁できなくても強制的に納税させられるのがこの消費税。もうこれはまさに釈迦に説法ですから、ちょっと聞いていただきたいが、百円の品物を売るときに百三円で売ればそれは何の問題もない。三円は消費税として納付していただければいい。しかし、百円のものは依然として百円でしか売れないものもまたあるわけです。あります。こういう場合に三%の消費税がそれでも含まれているといりことで、三%分は納付させられるわけです、強制的に。例えば九十七円九銭の品物にその三%分の二円九十一銭の消費税が含まれているとみなされるわけです。しかし、税制改革法には円滑かつ適正に転嫁されるものと明記されている。明記されていても実際には消費税は取られておらない、転嫁がなされておらないというような場合でも取られていく、これは理屈に合わない。こういうことが実際に出てきます。そういうときに一体政府はどうされるのか、これが一点。  それから、これは公取にお尋ねすることになるのでしょうが、例えば下請の問題があります。下請業者に対して消費税を買いたたくことは下請代金法で禁止されて違反するおそれがある、こういうふうに政府は恐らく説明されるでしょう。しかし、取引の上で親会社と下請会社というのは力関係になってきておる。明らかに親企業は優位な立場に立っている。消費税分を理由に下請を排除するということはこれはできない、これはわかっています。しかし、違う理由で、例えばもともと価格が高い、あるいは製品の品質が悪い、いろんな難癖をつけて下請を圧迫してくるということは十分考えられる。こういうときに、下請業者が泣かないんだ、泣かないで済むという方策、方途、これを示していただきたい。
  243. 村山達雄

    村山国務大臣 今、端数の問題でございますが、これは主として小売の小さいところにあると思いますが、免税業者が大体個人では八割三分、人員で八割三分が免税業者でございます、我々の推計では。それから、全体としては六割四、五分に人員でなります。もちろんここでもコストアップの問題があります。しかし、残った三四%ぐらい、あるいは残った十何%の課税業者の問題でございますが、端数の問題、確かにあります。現在でも端数で一円玉をやっている、スーパーあたりはやっているようでございますが、少しそれが多くなるかな、それから、そうでなくてラウンドナンバーで売っているところで小さな単価のところがその問題が出ると思います。そこで我々の言っておりますのは、そのときに場合によってはその品物の内容あるいは施行時期、その辺で調整できないか、あるいは取り扱っている商品全体としてラウンドナンバーで整理して全体として三%になるようにできないか、そういう方向で具体的な相談に応じているということでございます。何とかその辺をお話がありますればみんなで知恵を出して、関係省庁とも相談しながらその辺の問題を解決したいということで今一生懸命やっておるところでございます。
  244. 梅澤節男

    ○梅澤(節)政府委員 消費税の導入に当たりまして下請事業者が不当な取り扱いを受けないようにという観点から、昨年十二月に公正取引委員会といたしまして親事業者がやってはならない行為につきましてガイドラインをつくりまして、今いろいろな機会を通じて周知徹底を図り、また御相談に乗り、指導に当たっているところでございます。  ポイントは、要するに親事業者が下請事業者に支払うべき代金は消費税相当額が上乗せされた価格であるべきである、これがポイントでございます。したがいまして、親事業者がその上乗せ分の代金支払いを拒む、あるいは消費税の導入の前に、導入の前といいますか、四月一日以前に今委員がおっしゃいましたように一方的に現在の取引慣行の価格を引き下げてくるといったような行為をとりますと、これは当然のことながら下請法に違反するわけであります。ただ、最近になりまして、まだ事例は若干でございますけれども、そういった四月一日以前の価格の引き下げ、あるいは既に親事業者に納入した商品を、これは四月一日以降になりますと、親事業者の立場からは四月一日以降納入された分についてはいわゆる仕入れ控除が働くものですから、一たん下請事業者に引き取ってもらって、四月一日以降また改めて納めてくれないかといったような動きがある、これは若干の事例でございますけれども、そういった苦情が窓口に寄せられておるものでありますから、先週二十二日にもう一度こういった考え方を明確に示し、そういった事態が起こった場合には現場において事業者にじかにきちんと指導するようにということで各事業所に厳達をしたわけでございます。  四月一日以降なるべく早い機会に、これは中小企業庁と連携して行うことになると思いますけれども、親事業者、下請事業者一斉の特別調査を実施いたしまして、そういった事実があらわれました場合には機動的に排除していくという方法をとりたいと考えております。
  245. 青山丘

    青山委員 同時に聞きましたが、大蔵大臣に再度お尋ねしたいと思います。  これまでの商慣行の中で端数の問題は私は乗り切れると思います。それを便乗値上げたとか、いろいろ余り言わないで乗り切れると思います。しかし、多段階で品物が流れていく途中の事業者は、実際問題競争の中にありますので、本音の話、三%の消費税が取れないと、泣くように言っています、本当に。取ったら私たちは生きていけない、だから本音の話、取れない、そうなるとまさに第二事業税になってしまうという、非常に不安に駆られていることが一つ。それから税制改革法では「円滑かつ適正に転嫁する」こういうふうに書かれておりましても、だからこそ三%は取られるわけでありますが、しかし現実、百円のものは百円でしか売れないものもありまして、取っていないものは一体どうなるのか、それでも払うのか、それならこの法律そのものに矛盾があるのではないか、取りなさい、転嫁できるものだ、しかし取っていない、どうなるのか、第二事業税だと思って払いなさいということなのかどうか、この点はいかがでしょう。後でまた公取の方はお尋ねします。
  246. 村山達雄

    村山国務大臣 青山委員と少し私、認識が違うのでございますが、製造業者あるいは流通業者、卸売業者ですね、ここでは一番大きな問題は、今公取が心配しているようなことだろうと思うのでございます。それ以外のものについては、大体我々は、みんな請求書を出すときにはとめて出すわけでございます、だからここは強弱の関係がいくでしょうし、それから、政府の方でこの転嫁というものがいかにこの種の税で大事であるかということをやっておれば、技術的な問題あるいは経済的な問題もそれほどないんじゃないか。きょうのどこかの新聞に出ておりましたが、卸売業界では大体八八%ぐらい適正転嫁ができるというようなことがありました。八八%には私もあれはありませんが、私が初めから心配しているのはその小さい方のやつ、これを心配しているわけでございます。  なお、大きな卸でも製造でも難しいところはあるというように出ておりますので、そういうところには具体的に関係省庁とともに相談にあずかって適正転嫁ができるようにしたい、このように考えております。
  247. 青山丘

    青山委員 小規模の事業者から今私が申し上げたような質問が出ますと、私も同じような答弁を実はしています。していますが、さて本当に、例えば繊維のように十段階以上も段階を踏んで品物が流れていく、そしてお得意さんから価格で交渉を受けるというようなときに、ほとんどの人が一様に言います。取れなかったらどうするんだ、こういうことを一様に言います。事業者の人たちからしてみれば、本当にこの税制改革法で転嫁が円滑に、適正にできるというふうにはなかなか思っていない。特に、今公取の方にもお尋ねしたいと思いますが、モラルの世界じゃないのですね。経済活動ですから、競争しているわけです。価格で競争しているわけですから、そのときに上乗せさせられる三%というのは、たとえ一%でもこの競争の中に出てくる負担になってくるわけです。モラルがきちっと行き届いた世界じゃない。それはモラルがないと言っているのじゃないのですよ。モラルの世界ではない。競争の世界だ。そうすると、価格の問題は極めてシビアになってくる。だからこそ、この三%の上乗せができないと言って泣いているんです。いかがでしょうか。
  248. 梅澤節男

    ○梅澤(節)政府委員 御指摘の点につきまして、公正取引委員会がすべてお答え申すべき問題であるかどうかということはございますが、今回の税制改革法の中に消費税の性格というものが明瞭に規定され、消費税法の附則で、特に今おっしゃいましたように、価格というのは本来市場メカニズムの中で形成される、これが基本でございますが、特にその転嫁に当たって、価格形成力が弱い中小企業者に時限的ではございますけれども、転嫁カルテルというものが認められたということもございます。  それから各段階における価格交渉等、早く新しい税制の中に溶け込んでいくようにということで表示のカルテル、これは全事業者について認められておるわけでございます。私ども、今カルテルの届け出件数が相当日を追って急増いたしておりますが、そういったものが適法に活用されるということをまず考えること。  それからもう一つは、そういったカルテルが機能しない分野、これは先ほど来おっしゃっておりますように、市場メカニズムの中でも強い弱いの関係があるわけであります。これは本来、独占禁止法なり下請法の考え方に基づきまして、消費税の問題の有無にかかわらず公正な価格形成という点で、我が国の独占禁止法体系はそれなりの制度的システムを持っておるわけでありますから、我々の立場としてはそういったものを十分に活用する。  同時に、カルテルにいたしましても、不公正な取引にいたしましても、一方で不利益が生じた方は、必ずこれはいろんな形で苦情というものが行政庁である我々の方にも寄せられるわけでありますから、我々としてはそういった苦情なり情報の端緒に接しました場合は、やはり機動的に対応していくというふうに考えております。
  249. 青山丘

    青山委員 大蔵大臣、実際に価格に転嫁できなかった、それでも納めていくんでしょうか。
  250. 村山達雄

    村山国務大臣 これは間接税でございます。したがいまして間接税は、当然ながら物価という形で負担を求めていくのが間接税でございます。したがいまして、間接税の形をとりましたときには、これは返すとか返さないとかいう問題はもう我々はないんだ、むしろやはり適正な転嫁に向けてこの際は全力を挙げるべきである、こういうふうに考えて今後とも一生懸命やるつもりでございます。
  251. 青山丘

    青山委員 私は、適正に転嫁されていけばこの制度は一定の定着を見ると思います。しかし、今まで全くなじみのない税制度ですから、多くの小規模な事業者、もちろん三千万円以下ならまた別ですけれども、簡易課税の制度を採用されるのかわかりませんが、あるいはもっと大きな企業でも同じように苦しんでいくことになりますが、適正に転嫁される仕組み、また、そういう制度というものがきちっとできないと非常に不公平がまた拡大していくのではないかと思います。  特に、こういうケースがもう新聞に報道されています。例えば、下請が簡易課税制度を採用するのか、限界控除の制度を採用するのか、どのような制度を利用してどういう支払いをするのかという調査票が、もう親企業から行っているというのですね。それはどういうことかというと、下請の企業がどういう税の支払いをするのかということを聞いて、そしてこの会社は新しい税負担はどれぐらいかという計算をしていくというのです。そうすると、親企業である我が社は、本来支払うべき三%の税負担を相当圧縮することができる、自分は片方ではきちっといただき、かつ税額控除も三%という形で税額控除していくというのです。そこには当然もうけが出てくるというのですね、親企業が。  これは二月十七日の朝日新聞の朝刊でありますが、一部の総合商社や大手流通業者、メーカーが、免税、簡易課税が生む利益の吸い上げをねらっている。そういうことで取引先や下請に対して、簡易課税を選択するのかどうかなどを聞く調査票を送っている、送付している、こういう報道がなされております。これは、そこまで実は我々も考えが及ばなかったのでありますが、今回の消費税について、これはかなり深刻な問題になってくるのではないかと思います。これは今回の消費税の重大なほころびになっていくのではないかと心配しています。  大蔵大臣の御見解お尋ねいたしますが、通産大臣と、またできれば公取も。その前に、この種の、親企業からこういう書類を送ってくる。送ってきてどういう課税制度を採用するかという返事を書くこと、これはまあ、それは別にとやかく言う筋合いのものではないかもしれません。しかし、そこに内在する問題を考えますと、この親企業と下請の関係、これは相当な締めつけになってきたり、あるいはまた下請業者に対して、下請も本来これは簡易課税制度を取り入れたというのは、先ほども大蔵大臣がおっしゃられたように、事務負担や税負担を考慮していかなければいけないという考え方で導入されていく制度です。それを逆手にとっていくということになっていくわけです。先ほど、モラルではない、競争の社会だと申し上げたのもそういう一面があります。黙って見てない、わかっていることはちゃんと利益として上げていこうという親企業の魂胆がもう見え見えてす。そういう点について、通産大臣と公取委員長の御見解、それから、ここで上げてくる利益は一体どういう形になっていくのか、大蔵大臣の御見解をいただきたいと思います。
  252. 三塚博

    ○三塚国務大臣 大変中小企業政策に該博な経験と知識を持つ青山委員から、具体的事例について御指摘をいただいておりました。私どもの及ばない点も考えざる点も、やはり競争社会ということであり得ることだなと思っておりまして、なお、本問題については、中小企業庁を通じ、また通産局を通じまして実態の調査に直ちに入らさしていただくことといたします。  さて、本問題の円滑な導入こそが四月一日からの税制が真に国民の血となり肉となる、こういうことで竹下総理を本部長とした推進本部もできて、産業界に私が副本部長として今日まで各業界との懇談、また意見交換を重ねてまいりました。自動車工業会、機械工業会等々、実はいちずに私からお願いを申し上げましたのは、適正な転嫁をこの際お願いをしたい、今日の自由主義体制の中で大企業、中企業になられた皆さんがこれを逆手にとって下請企業、また弱小な企業をいじめるようなことがありましては制度本体がおかしくなりますよ、この点は本部長に成りかわり、内閣全体に成りかわって、ひたすら体制を守る意味で、法治国家を守る意味でお願いを申し上げる、こう実は丁重に相努めてきたところでありまして、時に総理大臣にも出ていただいた場面もあります。  そんなことを通じながら、私自身は、返事が、明確にこの法の趣旨に従いまして努力をいたします、相努めてまいります、こういうことなものでございますから、それを信じておるわけでございますが、しかしながら、競争社会でありますから、公取委員長ともよく協議をさしていただきまして、特に中小企業庁相一致しまして、資本金一億円を超える事業者約六千社及び関連下請事業者に対して、親事業者が下請事業者との関係で課される遵守事項の遵守項目が行われておるかどうか、こういうことについて調査を実施することといたし、行っているところであります。さらに、懇談会で手の及ばぬメーカー、事業者に対しましては、的確に消費税を受け入れてくれますようにという、八千社、特にまた八百団体に対しましてもお願いを申し上げておるところでありまして、法の前の平等からいいましても、通産省全機能を挙げてでき得る分野全力を尽くすつもりでありますが、やはり公取委及び大蔵大臣、また時に内閣全体のこれに対するお取り組みがいただいて、初めて御安心をいただけるものかと存じます。よろしくお願いを申し上げます。
  253. 梅澤節男

    ○梅澤(節)政府委員 ただいま御指摘になりました点につきまして、公正取引委員会考え方を整理して申し上げます。  親事業者から、仮に簡易課税事業者であるか等々の照会があり、その報告を求めるという場合に、これが文字どおり任意であればそのこと自体下請法なり独禁法上の問題は生じない、これは当然のことでありますけれども、任意であればということは、強制にわたればこれは問題になるということであります。強制にわたればというのはどういうことかと申しますと、仮に照会に対して報告をしてこない、そういった事業者とはもう取引を打ち切る、あるいは簡易課税事業者を選択しない、そういったことを理由に取引を打ち切る、あるいはそういったことを理由に代金の減額を求める、こういうことになりますと、独占禁止法なり下請法の違反の問題が出てくるわけであります。したがって、この点を改めて明確にする意味で、先ほど申しました、先週二十二日の各地方事務所への通達によりまして、そういうものは厳重に監視するとともに、的確に対処するようにということを指示をいたしたわけであります。  それから、四月一日以降一斉の調査を実施すると先ほど申し上げましたけれども、その場合の調査の検討項目といたしまして、当然この問題は取り上げてまいりたいと考えております。
  254. 村山達雄

    村山国務大臣 適正な転嫁でございますが、実は免税者、これは三千万、それから簡易課税者、選択者でございます、これは五億でございます。数は非常に多いわけでございまして、先ほど申しましたように、免税業者が全体で法人、個人で六割五分、それから五億以下といいますと、九十何%に当たります。しかし、取引金額で見ますと、免税業者のものは三%を切る、二・何%ぐらいでございます。それから、五億以下の人たちの取引金額も大体二〇%を切るというところでございます。ですから、市場としては当然のことでございますが、我々は、やはり税込め価格、これが恐らく市場の価格を支配するであろう、こういうふうに思っておりますので、転嫁の可能性はそういう意味では割とやりやすいんではないかな、初めから設計はそういうふうに仕組んであるわけでございます。  それからもう一つでございますが、これは売上税のときはちょうど円高不況のときでございまして最も難しい、今は円高で一番好調でございます。これは偶然ではありましたけれども、本当にこの種の税を設けるときとしてはもう絶好である、これ以上いい時期はないであろう、このように考えているところでございます。  それから第二点、今の消費税があんまり厳密でないことによって少しもうかるのがありゃしないか。例えば簡易納税者でございますが、これは売り上げからだけ納付税額は決められるわけでございます。そのときの前提は、マージンが二割だ、こういうことになっております。したがって、二割以上マージンのある者が、自分では三%を転嫁して、納付のときは今言ったような簡易税額でいきますと、そこはもうけが出る。それから今、今度は逆におっしゃいました、親会社が子会社に対して、これは任意だとしましょう、任意だとして、そしてあなたは簡易課税業者を選択するんですな、そうするとあなたの実際の納付税額は幾らになりますな、それでは私の方の売り掛けもそれだけにとどめてください、そして自分はそれとは無関係に三%値上げをすれば、これまたもうかる理屈でございます。そういうことがないように今公取初め通産省の方で一生懸命やっているわけでございますが、仮にそういうことがあったときには、これはもう言うまでもございませんが、所得税、法人税が働いてくるわけでございます。したがってその差額はすべて所得課税の対象になりますので、まあ残る問題はその残りであろう、こういうことに、筋道としてはそうなるかと思います。
  255. 青山丘

    青山委員 帳面にきれいにその数字が出てくればいいのですね、その差額の数字がきちっと出てくればいいのです。しかし、形は三%の税額控除がなされているという形になってきますと、所得税の対象にはなってきませんね。(村山国務大臣「なりますよ」と呼ぶ一いやいや、それは表向き、いろんな形で埋没される可能性がやはりあります。そういう点が一つ。  それから、今回消費税が導入されることによって企業の分割やあるいは合併、統合が行われる可能性が非常に強いと言われています。税制度が原因で企業の分割や合併というのがあり得るというのはまことにおかしな話。これはどなたに、通産大臣になりますかね。――ちょっと待ってください。経営学の論理から出てくる分割やあるいは合併、統合というのではなくて、税制度が原因する合併や統合また分割というのは、これは企業の活力をそぐものになっていくのではないかと思いますし、経営の方針をゆがめていくのじゃないか、こういう問題は当然出てきますが、そのあたりはいかがでしょうか。
  256. 村山達雄

    村山国務大臣 まず分割の問題でございますが、これはほとんど、分割というのは御案内のように現物出資をしまして、それを中心にして分割するわけでございます。そのときの要件は、親会社が九五%持っておったという要件でございますから、これは現物出資に伴うものでございまして、非常にレアケースであろうと思います。そしてまた、この消費税法の中でそのような分割をやっても、過去にもしその親会社が、分割前のものが三千万円以上であれば三千万円と計算しますよ、こういう規定も働いておるところでございます。そしてまた、分割それ自身もコストはかかる問題でございます。それから所得課税。法人税、所得税の方からいいますと、御案内のようにいろんなものを扱っているときに、あるものは損が出、あるものは利益が出る、総合して幾らになるか、こういうのが実は法人税の課税所得になるわけでございます。そのとき、分割いたしますと通算いたしませんから、所得税の世界では恐らく損が出るであろう。そういうことを考えますと、なかなか分割というのは私は余りないであろう、こういうふうに見通しておるのでございます。  合併の問題でございますが、これは合併というものは、それ自身企業の一つの合理化でやるということはあり得るだろうと思います。しかし、このことのために合併をやるということが果たしてどんなときにあるであろうかと考えてみますと、合併には消費税の方からは余り出てこないのじゃないだろうか。つまり、この消費税を契機として企業合理化をやろう、そしてマージンをふやそう、こういう努力はあるいはあるかもしれません。しかし、それがいかぬという場合というのは余りないのじゃないだろうか、こんなふうに思っております。
  257. 三塚博

    ○三塚国務大臣 もう村山大蔵大臣の分析で御理解いただいたのかなと思うのでありますが、産業政策として消費税が産業に中立であるという形でそれぞれの制度が構築されておりますから、本来考えられないことなのでございますが、せっかくの御指摘でありますので、注意深くその辺も目を光らして見ておりながら、さようなことのないようにやらなければなりませんし、ただいまの御指摘を中小企業庁、通産局を通じてよく監視するようにいたしておきます。
  258. 青山丘

    青山委員 これは、粗利が大きいところでは得をするというような考え方もあります。また、粗利が小さいところは、例えば簡易課税などは粗利が小さければ小さいほど得をするというような説もいろいろありまして、税制度によって企業が得をしたり損をしたりするということがよくないと私は言いたいのです。  それから、消費税導入に伴って産業間の格差が出てくるのじゃないか。――時間がないから、これは飛ばしましょう。  この点、ひとつお尋ねをしておきます。今回、消費税導入に伴って中小企業の納税事務負担の軽減を図るために、政府系中小企業金融三機関消費税導入円滑化貸付制度が創設されます。これの金利は、納税事務負担の軽減を図るために必要なコンピューターの導入、電子レジの導入、こういう資金が四・二%の金利ということで、また転嫁円滑化対策資金が四・七%ということでありますが、納税事務負担の軽減を図るための必要な措置四・二%。  それで、この制度は、消費税が導入されることのために必要な施設設備を導入しなければならないということで、この制度の創設には私は評価します。評価しますが、しかし利息を取っていくという考え方は、中小企業者は納税の協力者なんですから、そのための施設設備を新しく導入しなければならない これは通産大臣じゃなくて中小企業庁長官ですかな。せめて高度化資金ぐらい――私は本当はこれは無利子でやるべきだと思っている。だから、せめて高度化資金ぐらいの金利でなければおかしいじゃないかと思いますよ。いかがですか。
  259. 松尾邦彦

    ○松尾政府委員 消費税の導入円滑化のために、私ども、先ほど来御議論いただいておりますように法制面のほか、財政、金融、税制面等からきめの細かい対策を講じさせていただいております。  ただいま御指摘消費税導入円滑化のための中小企業の金融制度につきましては、貸付規模約五千億円を確保いたしておりますが、金利につきましては、先生御指摘のとおり四・二%ないし四・七%ということになっておりますけれども、この金利は政策金利といたしましては、御案内のように激甚災害のときに特別被害の大きかった被災者の方々に対してさらに低い金利があるのを例外といたしまして、政策的に認められた金利としては最も低い優遇された金利になっているところでございます。さらに、先生御案内と思いますけれども、特に小規模企業の場合につきましては、この貸し付けに当たりまして無担保無保証の制度も設けているところでございます。  さらに申し上げるなれば、税制面からも全額損金算入制度を設けておりますほか、無利子の貸付制度として設備近代化資金貸付制度がかねてからございますけれども、来年度におきましても四百二十億円の無利子の貸し付けを行うことによりまして、中小小売商業者を初めとする小規模企業者の納税事務負担の軽減等に、あるいは転嫁の円滑化に資するよう活用してまいりたいと考えているところでございます。
  260. 青山丘

    青山委員 それから、企業組合についてお尋ねします。  消費税導入によって企業組合に相当な影響が出ることが懸念されております。これは大蔵大臣お尋ねしますが、企業組合は中小企業等協同組合法によって、零細業者が協同して経済的地位の向上を図る、そのためにつくられた組織であります。中小企業等協同組合法の第一章第一条「法律の目的」の中には、「自主的な経済活動を促進し、」とありますように、この企業組合は、おのおのの店が自主的に企業活動をすることに目的、ねらいがあるわけです。個々の企業が自主的に企業活動をやっていく。ところが、今度は企業組合を一つの法人としてみなして課税の対象にしていく。こうなっていくと、企業組合、協同組合法の精神に私は矛盾するものではないかと思うのです。恐らく事業者の大半は三千万円以下の免税業者がほとんどであります。しかし、三千万円以下の免税業者であっても、集まるとこれは企業組合となって課税の対象になっていく。そこに理論的な矛盾が私はあると思うのです。いかがでしょうか。
  261. 村山達雄

    村山国務大臣 これは委員も御承知のように、企業組合というのは、これは完全合同でございますから、ですから法人とみなすのではなくて法人そのものなのであります、法律上。したがって、協同組合のように仕入れなり販売なりその他の共同行為をやる、事業分量配当というものは、当然これは協同組合では伴うわけでございますが、そういうものはないわけでございます。その意味で完全合同、法人そのものでございますので、三千万円も五億もやはりこれを基準にして考えざるを得ない。やはり法治国でございますので、一般私法の定めるところに従ってやっておる、こういうことでございます。
  262. 青山丘

    青山委員 協同組合法の目的の中には――個々の企業がそれぞれの事業活動を積極的に展開するための組織なんですね、そういう目的があるわけです。これは時間がなくなってきているからあれです、恐らくそれ以上出た答弁はしていただけないと思いますから先へ進みますが、構成しておるメンバーの中からはこういう不満が強く出ていますよ。  それから、消費者の立場からお尋ねしますが一ちょっと長くなるかな、これは。ちょっと違うのに行こう。  経済企画庁にお尋ねしますが、消費者の立場から見ますと、消費税が導入されることによって便乗値上げされるのではないかと懸念されているわけですね。便乗値上げされたときの対策、また便乗値上げが生じないような対策、どのような対策を考えておられるのか。また、悪質な便乗値上げが行われたときにはペナルティーが科せられるのかどうか。  また、今回の税制改正で物品税が廃止されました。物品税が廃止されたことによって適正な価格の低下というものは当然期待されております。しかし、それがもし適正でなかった場合、適当であった場合、これは便乗値上げと同一のものとみなされなければなりません。そのあたりはどのように適正化をさせていくおつもりか。いかがですか。
  263. 愛野興一郎

    ○愛野国務大臣 この消費税導入によります物価の影響について、二%の中に、当然今申されましたような物品税の廃止に伴う問題も含めて一・二%というふうに申し上げたわけでありまして、この便乗値上げのいわゆる監視、あるいは物価動向をずっと監視するためには、経済企画庁としてはモニターを倍増したり、あるいは地方団体、都道府県、市町村と綿密な連携をとり、また都道府県自体も物価動向を調査していただいたり、あるいは苦情相談を直接経済企画庁や都道府県の物価の関係にしていただくようにいたしたりしておるわけであります。そしてそれは、消費税導入の四月一日以前、今日ただいまもそういうふうな物価の動向監視をいたしておるわけであります。関係省庁と十分綿密な連携をとりながら、消費税の定着のために物価の動向監視をしていきたいと考えております。  今のペナルティーの問題でありますが、経済企画庁それ自体にペナルティーの法的な問題も権限もございません。しかし、例えば公正取引委員会の方であるとかあるいは各省庁、ペナルティーではありませんが、いろいろな強力な御指導をいただくわけでありますから、経済企画庁としても十分ひとつそういったことを的確に把握をいたしまして各省庁と連携をとっていきたいと考えております。
  264. 青山丘

    青山委員 便乗値上げがされないようにひとつぜひしっかり取り組んでいただきたいと思います。  それから次に、厚生年金の支給開始年齢の問題で、厚生大臣大蔵大臣、自治大臣お尋ねをいたします。  厚生年金の支給開始年齢が六十五歳になっていくというような報道がなされておりますが、具体的にはどのような案を検討しておられるのか、公務員についてはどうなのか、お尋ねをいたします。
  265. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 どのような案を考えているかということでありますが、現行の給付水準を維持しつつ時間をかけて段階的に、将来、今の六十歳支給から六十五歳支給へ引き上げていきたい、六十五歳支給にしていきたい。  先ほど公明党の坂口委員からお話がありましたが、なぜ前回やらなかったのか、むしろもっと早くやれというように受け取れるような御質問もありましたが、私は、こういう年齢を六十歳から六十五歳にやるというのは、できるだけ早く国民に知らせた方が雇用の対応もできるし、またそれなりの国民自身の準備もできるし、今回その六十歳を六十五歳にするというのは決して早過ぎることはないと思っております。しかも、これがことし成立したとしても、現在五十歳あるいは五十一歳の方は六十歳から支給されるわけですから、本当に六十五歳になる方は、現在、男性の場合は四十二歳以下の方が六十五歳になる、女性の場合は三十七歳以下の方がそういうふうになるということですから、私ならば、この問題というのは大きな問題ですが、むしろ前もって早い段階に、こういうことになるということを段階的に十分な準備期間を持って国民に理解をしていただく方が、早くそういう制度が変わったことに対しての対応ができるのじゃないかということで、現行の給付水準を維持しつつ、そして保険料のアップもさほど上げない、なおかつ六十歳から支給を受けたいという方には繰り上げ減額年金の制度も設けるというような対応をしていくならば、将来若年者の労働人口も少なくなっていくわけですから、六十歳代前半の方々の雇用状況も、今から準備していくならばそれなりの対応ができるんじゃないかというふうに考えております。  また、公務員の関係はというお尋ねでございますが、現在公務員の方は五十七歳支給、そして平成七年度に六十歳に移行する、そういう段階でありますから、これは公務員制度との関係もあります、しかし基本的には厚生年金と整合性を保つべきだ、そういう方向で準備を進めていきたいと思っております。
  266. 村山達雄

    村山国務大臣 国家公務員の関係でございますが、今厚生大臣お答えになったとおりでございます。  実を言いますと、雇用関係の環境が整わなくちゃいかぬ、こういう議論があるのですが、実は雇用主が国であるわけでござしますので、国自身がその問題に一生懸命やらにゃいかぬということでございます。しかし、厚生年金の方で六十五歳ということになれば、当然国家公務員その他、今国共済の方、これも上げざるを得ない、こういうことは我々も思っているところでございます。
  267. 坂野重信

    ○坂野国務大臣 お答えいたします。  ただいま厚生大臣大蔵大臣の答弁ありましたような、全く同様の考え方でございまして、地方公務員共済制度につきましても国家公務員共済年金とのバランスを考えながら、最終的にはまた厚生年金と整合性を図るということでございますが、国家公務員共済制度の方で六十五歳ということになれば、地方公務員の方でもこれに右へ倣えということにせざるを得ないというふうに思っております。
  268. 青山丘

    青山委員 総理大臣も今聞いておられたと思いますが、民間である厚生年金の支給開始年齢が六十五歳に引き上げられる、本当は引き下げられると私は言うべきじゃないか、引き延ばされると言うべきでしょうか。公務員は大分先になっていく、今のところはまだすぐやらない。私は総理大臣、これは新しい官民格差が生まれるのではないかという疑問を持っています。その点について総理、どう思われますか。  それから労働大臣お尋ねしますが、私どもはさきの臨時国会で政府に対して福祉ビジョンを示してほしい、こういうことをお願いをし、昨年十月二十五日に社会保障ビジョンというものが示されました。これは、雇用その他の条件整備を図りつつ、支給開始年齢を六十五歳としたいという内容でありました。しかし私は、雇用条件の整備、雇用環境の整備を進めずしてこれはなかなか進められるものではないという気がいたします。その辺の雇用ビジョンというものをお持ちかどうか。  それからさらに労働大臣お尋ねしますが、六十五歳までの雇用保障はまことに難しい状況だと私は思います。六十歳定年はようやく一般化してきておる段階でありますし、六十一歳以上の定年の実施については全体のまだ五%程度、六十歳以上の再雇用を認めている企業は全体のまだ一割程度、また日経連も六十五歳までの定年延長には賛成できないと言っているというような社会環境の中で雇用計画というのは一体どうなっていくのか、そういうのをひとつぜひ示していただきたい。  時間がありませんから申し上げたいと思いますが、本来この年金制度というのは財源論から余り深く考えられるべきものではない。基本的には、ライフサイクルの中で一体いつまで働いていくのがいいのか、いつごろから年金を受けるのがよろしいのか、所得保障政策の中で論議されるべきものだと私は思います。そういう意味で雇用保障計画というものを示していただきたいと思います。総理及び労働大臣に御見解お尋ねします。
  269. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 ただいまお尋ねの二点についてお答えさせていただきますが、私どもこんなことを考えて目下進めております。それはお言葉にもございましたように、本格的な高齢化社会のもとで――これは大変結構なことでございますが、高齢化社会というものが進んでまいりますので、この高齢化社会のもとで我が国経済社会の活力を維持していきたい。それには、予想以上に高い高齢者の就業意欲があるのです、この意欲に応じ、その能力を十分に活用することが青山委員もおっしゃっていらっしゃるように重要なことでございまして、そのためにいろいろと論議を進められております。そのために労働省では、昨年の六月でございますか策定しました、今お尋ねの第六次雇用対策基本計画に基づいて六十五歳程度までの継続雇用の推進を中心とした高齢者の雇用就業対策の推進を進めております。さらにこれもお尋ねの、新年度においては、二十一世紀を展望した人生八十年時代にふさわしい雇用のあり方についての基本を示す長寿社会雇用ビジョンの策定に取り組むことといたしております。しっかりやっていきたいと思っております。  それからもう一つお尋ねでございます。これも趣旨は同じようなことだと思いますが、今申し上げましたように、本格的な高齢化社会の到来を迎えまして、六十五歳程度までの雇用就業の場を確保していくことは、これまた私も本当に重要なことだと思います。これはやらなくちゃならぬ将来にとって大きな課題であると考えております。このため労働省は高齢者の多様な――こっちが考える、こっちが考えると言っても、高齢者がどんなことを思っておりますか、どういうことを考えておりますか、これはよく考えてあげなくちゃなりませんので、就業ニーズに応じて、六十歳定年を基盤とした六十五歳までの継続雇用の推進、円滑な再就職の推進、シルバー人材センターを通じた臨時的、短期的な就業の場の確保を柱とした総合的な対策を講じているのであります。  さらに新年度においては、長寿社会雇用ビジョンの策定に取り組むこと等により高齢者雇用就業対策の計画を推進的に進めてまいります。どうぞ御協力をお願いいたします。
  270. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 私に対する一つの問題は、いわゆる支給開始年齢、これから生ずる官民格差、こういうことでございます。これは先ほど来お答えがあっておりましたが、いわば雇用者が国であるわけでございます。私、この問題についてまず年金そのものから考えますと、最初いわゆる基礎年金というものを御議論をいただきました。途中で一度国鉄年金の問題が別の問題として存在しました。そうして財政再計算期のことし、六十五歳という平成二十二年を展望した目標をお示し申し上げよう、そうして七十年にいわゆる年金の統一問題について答えを出そう、こういう経過で進んでおりますが、今おっしゃいましたいわゆるライフサイクルの角度からとらえるべきだ、これは私もそのとおりだと思います。ただ、あくまでも保障政策ではなくしてやはり基礎年金部分、基本的な問題を保障しつつもやはり保険制度であるという立場は今後もとっていかざるを得ないではなかろうか、こう申し上げたいわけでございます。  それから長寿社会雇用ビジョンについてお触れになりました。今、長寿社会雇用ビジョン研究会、労働大臣からもお答えがございましたが、それの学識経験者の皆さん方にお集まりいただきまして、国会等の議論を踏まえながらこれが策定に全力を尽くしたい、このように考えておるところであります。
  271. 大野明

    大野委員長 これにて青山君の質疑は終了いたしました。
  272. 大野明

    大野委員長 この際、平成元年度総予算の公聴会の件について申し上げます。  公述人の選定につきましては、さきに委員長に御一任いただいておりましたが、本日の理事会において協議いたしました結果、お手元に配付いたしました名簿のとおり決定いたしましたので、御報告いたします。     ―――――――――――――     予算委員会公述人名簿一、意見を聞く問題 平成元年度総予算について  ○三月一日(水)     東京大学教養学部助教     授          舛添 要一君     日本労働組合総評議会     事務局長       真柄 栄吉君     経済評論家(内外情報     研究会会長)     河野 光雄君     経済評論家      井上 隆司君     熊本県小国町長    宮崎 暢俊君     明治大学政治経済学部     教授         吉田 忠雄君  ○三月二日(木)     年金評論家      橋本 司郎君     中央大学商学部教授  富岡 幸雄君     東京大学農学部教授  荏開津典生君     亜細亜大学経済学部教     授          藤田 至孝君     大阪大学社会経済研究     所教授        森口 親司君     新日本婦人の会中央本     部福会長       高田 公子君     ―――――――――――――
  273. 大野明

    大野委員長 次回は、明二十八日午前十時より開会し、本日に引き続き昭和六十三年度補正予算の審査を行います。  本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十一分散会