○堀昌雄君 ただいま
議題となりました
平成元年度の
財政運営に必要な
財源の
確保を図るための
特別措置に関する
法律案について、
日本社会党・
護憲共同を代表して、
宇野内閣総理大臣に質問をいたします。
まず最初に、
宇野総理は、これまでたびたび答弁の中で、この
内閣として政治
改革が大変重要だ、こういうふうにお話してございます。私もそう思います。しかし、一体その政治
改革というのは、政治倫理、政治
資金規正法、選挙制度の
改革で、これで政治のすべてを包括しているのでしょうか。私はそうは思わないのであります。
今の時点では、確かに政治倫理の問題、政治
資金の問題、選挙法制度の問題、私も
昭和三十五年から公職選挙の特別委員として今日まで約三十年近くこの
委員会におりますから、これが非常に重要であることは、私は最初からもう何回も鈴木
総理やあるいは竹下
総理に提案をいたしておるわけでありますから、そのことは非常に重要でありますけれども、今私どもは、戦後四十五年がたってきておりまして、非常に全体の情勢、戦後のあの情勢から大きく実は変わっておるということは、皆さんも御承知のとおりであります。にもかかわらず、非常に重要な財政制度について、あのときにつくられた財政法、
昭和二十二年三月三十一日につくられた財政法に縛られて、適切な国債の発行に関する
運用が実は行われていない。
私は、五十六年二月の
大蔵委員会で、当時の渡辺美智雄
大蔵大臣に、国債
資金特別会計を設けて、要するに国債の発行についてはこの会計で自由に発行をして、そうして一般会計はこの会計から必要な
資金の供給を受けるということにすべきではないのか、これが一点であります。二点目は、やがて来る大量の借りかえに対して何も手を打っていないで借りかえができるのか。四兆、五兆のものを一遍に借りかえすることは不可能ではないか。そこで、短期国債を発行して事前に
資金を調達をして借りかえをスムーズにやるべきではないか。
同時に、
日本は、皆さん御承知のように貿易が主としてドル建てになっているわけであります。ドイツはほとんど六〇%以上がマルク建てでありますから、要するに円が動こうと動くまいと、ドルが動こうと動くまいと、余り大きな影響はありません。しかし、
日本はほとんどの貿易がドル建てでありますから、ドルが動くことがまさに
日本経済を揺さぶることになるのであります。
私は、五十六年二月に、そういう意味で、今の短期国債をアメリカのTBのような短期国債として発行をして、短期金融市場をこれでつくろう。同時に、この年の五月の銀行法
改正の中で、コマーシャルペーパー、CPの法的
整備を進めて速やかにCPを発行できるようにしろ。この二つはいずれも短期金融市場の主要商品でありますから、この短期金融市場を大きくすることによって円建てで問題が処理できるようになる道が開かれるのでありますけれども、五十六年に提案をして今日まで八年たっておりますけれども、短期国債だけはスタートできましたけれども、肝心の国債
資金特別会計というのは現在もそのままなのであります。
皆さん、この国債の金利というのは非常に高いときと低いときがあるのであります。例えば、一番金利が高かったのは
昭和五十五年四月債が八・七%、一番安いのは六十二年六月債が三・九%、要するに三・九の倍以上、実は高い金利と安い金利のときに国債には四・八%も金利の差があるわけであります。だから私は、金利の高いときには短期の国債を発行をして、そしてつないでいく。長期の国債は金利が高いわけですから、それこそ一年の国債でもいいし二年でもいいから金利の安い短期国債で泳いでいて、金利が安くなったらそこで長期国債に乗りかえる。こういうような本来行われるべき問題の処理をすべきではないのか。私のこの提案で計算をいたしますと、仮に五十六年四月から私の制度が導入をされて、六十四年の三月まで
運用いたしますと、五兆九千億の金利が実は節約をできておる、こういうことなのであります。
だから、私はそういう問題について何回か
大蔵委員会で問題を提起しておるのでありますけれども、ちょっとここに、私の考えだけではなくて宮澤前
大蔵大臣も同じ考えだということを簡単に御紹介したいと思います。
六十一年三月二十四日、「当面の政策について」、当時宮澤さんは総務会長でございますが、
今日のような低金利の時代には既発国債をもっと低利なものに借換えれば大きな国益になるはずであるが、このような発想が浮かばないのは、現在の財政制度が大福帖式で、金利の観念がないからである(関係法令はほとんど終戦直後のもの)。将来制度を改め国債の発行や管理を景気動向、金利、税収などを勘案して経済法則に則って弾力的に行なうこととすれば金利支払などかなりの節約が可能になる。
こういうふうに宮澤さんは総務会長のときに新聞に発表しておられるのです。
私は、昨年の四月二十二日の
大蔵委員会で、同じくこの問題について実は問題を提起をいたしました。それに対する宮澤大臣の答弁も、極めて適切な答弁であります。
この点も従来から堀委員が御指摘になっておられることで、基本的なお考えには私は共感を覚える点が多いわけでございます。
一般に政府が仕事をいたしますときに、
国民の税金あるいは
料金等々、いわば金利のつかない金で仕事をするというのが基本の部分なものでございますから、その金利という観念が、全くこの点は民間の企業と違った立場に立っておるということが私は根本にあるのだろうと思います。しかし、実際にはこういう世の中になりまして、国が現実に借金をしておるということになっておるのでございますから、金利ということに無関心であってはならないのだと思いますが、なかなかそこのところの全体の仕組みが、まさに会計の制度からそうなっておらないというところに問題があろうと思います。御指摘のとおりだと思います。
そこで、今度財政法にいろいろな問題がある。従来からの御指摘の問題は、先ほど銀行局長も申し上げておりましたように、借換債のところで事前発行あるいは繰り延べ発行等々の弾力性を持たしていただきましたが、ここのところは、結局今の財政法というものが戦争中のこともあり御承知のような経緯で、建設国債はともかく、借金というのはしてはいかぬものだという基本に立っておると思うのでございます。
そういうことですべてのことが動いておりますから、これは借金をふやすものではない、ふやすのじゃないのだということで、きっとああいう読み方ができるということになったのだと思いますが、堀委員の言われるように物を考えていきますと、借金はしてはならないという原則の
法律から、いかにして借金を経済的にやるかということへ、ふっと考えをある程度シフトさせていくという部分がどうしても私は出てくるのだと思います。それにつきまして、当
委員会におかれましては委員各位がそういうことについての御造詣が深うございますので、そのことの意味なり
国民経済あるいは
国民福祉に与える寄与なりをよく御存じでございますが、ふと問題を、今度借金をしてもいいようになったのだというふうに財政法を変えていくというふうな大変に短絡的な理解というのは、また世の中で一方でありそうでございますので、その辺のところがさてどういうものだろうか。大蔵省という役所は、そういう点は実は一番保守的に考える役所でございますから、そういったところで従来この問題が基本的になかなか解決していかないのだと思います。
しかし、他方で、幸いにして
昭和六十五
年度に
特例公債を脱却できるといたしますと、いわばそういう
歳入補てんの意味での公債ということは一遍そこで離れられるかもしれない。建設公債をどうするかということはまた別の議論があろうと思いますので、おっしゃいますような問題はやはり常に私ども考えていかなければならないし、また、
特例公債を脱却しますような時期にもう一度考えてみるべき問題であろうこういうふうに昨年の四月に宮澤
大蔵大臣は答弁をしておられるわけであります。
そこで、今、御承知のように、この
特例債が本
年度でどうやら終わりになって、来
年度は
特例債の発行が行われない。宮澤さんの御指摘になったような情勢がここに生じてきているわけであります。
しかし、皆さん、実はですね、この
平成元年度は七兆一千百億の国債を発行しております。これは、四条債が五兆七千八百、
特例債一兆三千三百でありますが、さらに十五兆二千億円借換債を出さなければなりません。ですから、結局、新しい新発債七兆一千百億、それに対して新しく借換債として新規に十五兆二千億、合わせて二十二兆三千百億円をこの
平成元年には出さなければなりません。
これはずっと続くわけであります。来年から
特例債がゼロになりましても、四条債を五兆七千八百は出していくと仮定いたしますと、発行額の合計は、来年、
平成二年が二十三兆三千、その次二十兆九千、その次二十三兆五千とだんだんいきまして、ちょうど西暦二〇〇〇年、ここへきますと、発行額は二十八兆になり、国債の残高は百九十六兆五千億になる。
これから五十年も百年も借換債を新たに出していかなきゃならない。そのときに、今のような、そのときの金利だけでやっているというようなことは、大きな
国民に対する負担を、税によって賄っているわけでありますから、御承知のように今度の国債費は十一兆余りでありますけれども、これは予算の一九・何%、ほぼ二〇%を国債費が占めておるというのが
日本の財政でありますから、このことを考えれば、速やかに私の提案のように国債
資金特別会計を行うべきだ。
この財政法ができました背景には、これは当時の大変なインフレ状態の中でありましたから、
昭和十九年の東京の小売の物価というものは、十八年を一〇〇としますと、十九年が一一二、二十年一六四、二十一年一〇一〇、二十二年二七二〇、二十三年七九八二、二十四年一二九八八、異常なインフレーションが起きているわけでありますが、これは、御承知のように、国債を日銀引き受けで一方的にどんどん出して不換紙幣を発行した結果このような事態が起きておる。そのときに、米軍は国債の発行をストップさせるという
措置をとりまして、その後で今の財政法というのがつくられたのでありますから、超均衡財政なのであります。
現在のこの財政法は、第四条で、「国の歳出は、公債又は借入金以外の
歳入を以て、その
財源としなければならない。」こう書いてあります。「但し、公共
事業費、出
資金及び貸付金の
財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。」こうありますけれども、だから、今
特例債と言っているのは、私に言わせれば、この財政法の考えていない
法律で、今の四条債というのが
特例債なんです。均衡財政でやらなければなりません、ならないと書いて、例外に今の四条債、これが
特例債。今我々が
特例債と言っているのは特
特例債を実は出しておるというものが現状でありますが、そういう状態になっているのは、そのような
昭和二十二年の三月三十一日につくられた
法律だからそうなっているのであります。
現在百六十二兆円もの残高のある国債を抱えて、さらに毎年二十兆以上のものを出すときに、この財政法に縛られていてはどうにもならないのでありますから、まずこの財政法を改めて、私の国債
資金特別会計の提案を政府は速やかにやることが政治
改革の非常に大きな私は部分だと思います。イギリスにおきましても一九六八年に新しい制度でこのような方向が設けられておるということをひとつ皆さんにも御理解をいただきたいと思います。
その次に、今度はもう一つ問題がありますのは、実は
日本電信電話株式会社法というのがやがて
改正になります。私は御承知のように各党の皆さんと御一緒に社団
法人国際金融経済研究所というのをやっておりますが、国際的に非常に大きな問題になっておる一つが、実は電電公社の株式は外国人に持たせないというこの制度であります。
日本電信電話株式会社法第四条は、「会社の株式は、記名式とし、政府、
地方公共団体、
日本国民又は
日本国
法人であって社員、株主若しくは
業務を執行する役員の半数以上、資本若しくは
出資の半額以上若しくは議決権の過半数が外国人若しくは外国
法人に属さないものに限り、所有することができる。」ところが、皆さん、アメリカのAT&TあるいはイギリスのBT、いずれもこのような制限がないのであります。
それでは、一体これらの国が持っておる外国人の保有率というのは、大体私の調査によれば、AT&Tでは五%程度は外国人が持っておるというのが現状であります。さらに、BTにつきましては、外国に販売したものは約一四%、全体の七%が、米国、カナダ、
日本で売却をされているのであります。
だから、このことは、私が接触する関係者は、あなたは
日本が開かれておる、開放的だと言うけれども、ここは象徴的に閉鎖をして、要するに我々がNTTの株を買うことを
法律で禁止しているではないか、それが閉鎖性でなくて何だと私たちはやられているわけであります。
どうかひとつ、
宇野総理大臣は外務大臣の御経験者でもありますし、サミツトにおいてこの問題が出るおそれもあるわけでありますから、この会社法の
改正で速やかに、この問題については、各国とも一五%程度以上を持ってはいかぬという制限は設けておりますから、そういう制限があってもいいのでありますが、少なくともアメリカのATTやイギリスのブリティッシュテレコムのような対応をぜひとっていただきたいということです。
そこで、最後に、最も問題がありますのが
日本銀行法という
法律であります。これはちょっと読み上げますが、第一条、これは
昭和十七年二月二十四日にできておりますので、「
日本銀行ハ国家経済総カノ適切ナル発揮ヲ図ル為国家ノ政策二即シ通貨ノ調節、金融ノ調整及信用制度ノ保持育成ニ任ズルヲ以テ目的トス」、二番目が「
日本銀行八専ラ国家目的ノ達成ヲ使命トシテ運営セラルベシ」、第五条「
日本銀行ノ
資本金ハ一億円トシ」「一口ノ出
資金額ヲ百円トス」、いいですか、皆さん、これは百円玉になっているのですよ。そうしてその次に、第五条「政府ハ勅令ノ定ムル所二依リ五千五百万円ヲ
日本銀行二
出資スベシ」、第七条「
日本銀行ハ
出資二対シ
出資証券ヲ発行ス」「前項ノ
出資証券二関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム」、いずれもこういうふうになっているのでありまして、さらにこれらの問題についても……