○早川勝君 私は、
日本社会党・
護憲共同を代表して、ただいま
趣旨説明のございました
租税特別措置法の一部を
改正する
法律案に対しまして、
総理並びに関係大臣に質問いたします。
売上税の
導入問題以来、これまでになく
税制に対して
国民、納税者の関心が向けられていることは
周知のとおりであります。そして、今は
リクルート疑惑の
解明と
消費税の
実施が最も大きな
国民的関心事となっているのであり、しかも、いずれも
竹下内閣に
不信感を強めている問題であります。
各種世論調査の
内閣支持率の低さといい、
福岡県の
参議院補欠選挙を初め知事
選挙、地方自治体議員
選挙にあらわれた有権者の
政府・
自民党に対する厳しい批判、審判を
総理はどの
ように
認識されているのか、まずお聞かせいただきたい。私は、リクルートは徹底的に
解明せよ、
消費税の四月一日
実施は認めないとの
国民の意思のあらわれだと思うものでありますが、いかがでございましょうか。(
拍手)
竹下内閣の使命は
税制改革にあるとして、昨年末には
税制六法案を委員会での
自民党の単独強行
採決の繰り返しによって強引に成立させました。税
負担の公平を確保する、
税制の
経済に対する中立性を保持する、
税制の簡素化を図ることを
基本原則にしたものですが、果たしてその
内容、実体はとなると、疑問を呈さざるを得ません。
昨年の五月十五日に
総理府が発表した社会意識に関する世論調査によれば、社会的不公平・不平等感を持っている第一位は
税制度で、八〇%の人が不公平感を抱いています。今調査してみたら、この比率がどこまで下がり、不公平感がなくなったと思いますか。また、確実に下がるとお考えですか。
所得税を
減税し、
相続税も軽減し、物品税の不合理を正した等々と自賛されるでしょうが、公平な
負担の観点から見ますと多々
欠陥を持つ
内容になっております。
所得税は、総合課税が最も望ましいことは今さら言うまでもありません。
所得税の最高税率を見ますと、七年前の七五%から五〇%にまで下がりましたが、課税ベースの
拡大となると、株の譲渡
所得、利子
所得に対する分離課税など高
所得者に有利な反面、低
所得者に厳しい
改革が進められてきております。しかも、
所得税の軽減を図る一方では資産課税を強化することで
負担の公平を実現すべきでありますが、かかる発想は見られません。物品税についても、高級品、ぜいたく品と考えて高率の
負担を求めても何ら不当と言えない物品への課税も三%に下げるということに大きな疑問を持ちます。
法人税についても、
国際化を
理由に基本税率の引き下げが行われますが、表面的な税率比較は余り意味もないし、比較自体も難しいと言われている上に、賞与引当金、貸倒引当金、退職給与引当金等の圧縮もなく、課税ベースの
拡大は十分に実現されていません。
租税特別措置法による減免税は、それ自体で不公平な制度であります。今現在、何項目の減免税
措置がありますか。期限の定めのない特別
措置が
所得税関係で三十一項目、法人税関係で十四項目というのでは、公平
税制の実現はいつの日になるのでありましょうか。全廃する方針をお持ちかどうか、お伺いいたします。
また、二十一世紀に向けての
税制改革として見たとき、今
改革過程の何合目まで到達しているのか、これから着手しなければならない課題は何か、お答えいただきたいのであります。
そこで、
竹下内閣がシャウプ
税制以来の大
改革を実現したと自負され、その中核となっている
消費税について伺います。
つじ立ちと称し、
消費税の
説明というよりも
消費税導入を説得して全国を行脚されている
総理のことですから、
国民の不安、混乱の高まりをよく理解されていることと思います。
消費税の
逆進性と便乗値上げによる家計への
負担はどうなるのか、
消費税の納税はどうするのか、
消費税のカルテルを組んだはいいが、うまく
消費税を価格
転嫁できるのか、
経済取引が変わってくるのではないかといった、納税者となる事業
経営者の悩みも確実に募ってきているのであります。
そこで、具体的にお尋ねいたします。
第一に、
消費税は消費者の
負担する間接税であると思います。消費者が直接税務署に納めない税金ですが、自分の
負担した税金は国庫に確実に入っていくと考えるものですが、
消費税はどうもそうならないのではないかと危惧するものであります。
簡易課税方式、限界控除制度、免税業者等、納税者の懐柔策ともいうべき便法を講じたことによって、税金を
負担する消費者の立場は軽視されへ不公正な税金になると考えざるを得ません。消費者の
負担する
消費税は間違いなく国庫に入るのか否か、もしそうでないとなれば、どのくらいの
消費税が消失するのか、率直なお答えをいただきたい。
第二には、
事業者、とりわけ中小の
事業者にとっての
転嫁の不確実性です。
政府は、帳簿方式だから事務も単純で
転嫁も保証すると言いますが、
消費税の課税対象、不課税さらに非課税、輸出、設備投資など、どう考えてもこれまでどおりの帳簿づけですべてよしにはならないし、簡易課税方式、免税業者の選択に当たっても一工夫要る
ようであります。免税業者となっても三%
転嫁すれば消費者からにらまれ、他方で大手取引先から利得を横取りされる事態も起こるのであります。
消費税は
経済的に中立て、中小
事業者の事業
内容に悪影響を及ぼすことはないと断言できますか、お聞かせいただきたい。
第三には、
消費税の
転嫁に関する問題があります。
その一つは、便乗値上げの問題であります。公正取引委員会は、
消費税導入を前に、独占禁止法違反、下請いじめの取り締まりを強化し始めましたが、消費者は便乗値上げの厳正な監視を求めています。しかし、そもそも便乗値上げとは何か、その具体的な
基準をどうするのか、明らかにされていないのですが、この際、明確にしていただきたいのであります。
いま一つは、
消費税の税率三%が物価に与える影響は一・一%程度であると
経済企画庁は試算しておりますが、その
前提には、
消費税の税額分は完全
転嫁されるものとしております。免税業者にも三%
転嫁を認めるとか、私鉄運賃等の具体的
対応策も明らかにされてきていますが、
さきの試算結果に変更はないものか、新しい要素を加味して試算し直す必要はないのかをお尋ねいたします。
第四には、
消費税の地方自治体における
転嫁の問題であります。
都道府県を初め各市町村において、
政府の言う
ようにすべて四月一日から三%の
消費税を上乗せできる状態ではなく、例えば愛知県でも四月一日からは上水道、工業用水道等の引き上げはできても、文化会館、住宅の家賃等は六月あるいは九月の定例議会に提案することにならざるを得ないといいます。そしてまた、
転嫁に当たっては、単純な上乗せを避けて、極力実質的に引き下げ
ようと
努力し始めています。物価抑制の観点からは歓迎すべき対応でもあります。地方自治体の対応について、地方自治尊重の立場に立つ自治大臣、
消費税転嫁優先の大蔵大臣、物価安定重視の
経済企画庁長官、それぞれの御意見をお聞かせいただきたい。
消費税は最初は多少混乱してもなれれば定着するという
ような無責任、強権的な姿勢は直ちに改めるべきであります。消費者、
事業者、地方自治体、さらに言えば税務当局ですら悩み、混乱しています。税そのものに
欠陥がある上に、増税法、しかも
我が国になじみのない新税で、しかも
大型の間接税を、公布からわずか三カ月間しか準備期間を置かないで
実施するという強引さに今日の事態を引き起こしている原因があります。
もはや四月一日から
消費税を
実施するのは困難であると断ぜざるを得ません。半年間の弾力運用で対処できる状況でもございません。また、
国民の声も、
消費税の
実施は中止し、百歩譲っても延期し、根本的に再検討しろというものであります。
総理のお考えをお伺いいたします。
税制の機能の一つに
所得の再配分機能のあることは御存じのとおりでありますが、
我が国の現状を見るとき、資産の再配分機能を重視し、資産課税を強化する方向をとるべきであると考えます。いわゆる金余り現象により株と土地の異常な上昇をもたらしたことは、八六年、八七年の二年間に株式の時価総額の
増加額は百四十九兆円、これに対して
国民総生産の
増加は三十兆円であります。まさに異常な腐朽化現象であります。
昨年の
政府の
国民生活白書でも、株式の保有割合は高
所得層ほど高いことから株価上昇は金融資産の格差を広げたし、土地資産額でも
所得階層間、資産保有階層間、年齢階層間で
拡大傾向を示していると、的確な指摘をしているのであります。
この
ような不平等
拡大が進んでいるにもかかわらず、
政府の
税制面での対応は、株式等の譲渡
所得については原則課税に
改正したとはいえ、申告分離課税方式と源泉分離課税方式を認めたことで、大口資産家を優遇した制度となっているのであります。特に、源泉分離課税方式を選択すれば、譲渡金額の一%の税を
負担するだけで資金源を明らかにしなくてもよく、したがって、脱税者に免罪符を渡した
ようなものだとの批判も出ているのであります。今後、どの
ように
改善していくおつもりか、
展望を示していただきたい。
ところで、今回の
改正案の柱として土地
税制が挙げられており、収用等の場合は譲渡
所得の特別控除を三千万円から五千万円に、農地保有合理化等の場合は五百万円を八百万円に引き上げるとしております。一年間の暫定
措置としておりますが、
政府税制調査会の、
租税特別
措置の拡充については厳にこれを抑制するとの答申に反しているのであります。
土地
政策とその一環としての土地
税制が重要なことは言うまでもありません。地価高騰は、東京圏から今や地方都市にも波及しているのであります。地価抑制を軸にした土地制度の抜本的
改革構想のないままに
税制のみ先行して不公平を
拡大することは、これまでの
政府の土地
政策の失敗を繰り返すだけになります。過去の教訓は、土地
税制は長期間にわたって堅持することですが、なぜ今回の
ような
措置をとられたのか、また、来年は廃止されるのかどうか、大蔵大臣の答弁を求めます。
また、今後資産課税について、公平、平等化のために強化をする方向をとられるかどうかについてもお聞かせいただきたいのであります。
竹下総理、税金は
政治そのものとも言われておりますことは十分御承知のことと思います。これは、
政治に
信頼がなければ
国民は納税拒否思想を持つ
ようになり、まして増税など容認しないことであります。今
竹下内閣がなすべきことは
政治の
信頼を回復することであり、それには
竹下内閣がまず総辞職することであります。あるいは、今回一連の
税制改革に自信と
国民に受け入れられるとの確信がおありならば、解散・総
選挙を選択すべきであります。
総理のお考えをお伺いして、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣竹下登君
登壇〕