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1989-06-14 第114回国会 衆議院 商工委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年六月十四日(水曜日)     午前九時三十一分開議 出席委員   委員長 与謝野 馨君    理事 糸山英太郎君 理事 浦野 烋興君    理事 尾身 幸次君 理事 小杉  隆君    理事 額賀福志郎君 理事 奥野 一雄君    理事 二見 伸明君 理事 青山  丘君       逢沢 一郎君    井出 正一君       井上 喜一君    石渡 照久君       今枝 敬雄君    小川  元君       奥田 幹生君    片岡 武司君       古賀 正浩君    佐藤 信二君       園田 博之君    田原  隆君       谷  洋一君    中川 秀直君       中山 太郎君    林  大幹君       原田昇左右君    穂積 良行君       渡辺 秀央君    井上  泉君       小澤 克介君    上坂  昇君       城地 豊司君    関山 信之君       前島 秀行君    水田  稔君       権藤 恒夫君    森本 晃司君       薮仲 義彦君    工藤  晃君       藤原ひろ子君  出席国務大臣         通商産業大臣  梶山 静六君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局取引部長 土原 陽美君         通商産業大臣官         房長      山本 幸助君         通商産業大臣官         房総務審議官  内藤 正久君         通商産業大臣官         房商務流通審議         官       高橋 達直君         通商産業大臣官         房審議官    横田 捷宏君         通商産業省通商         政策局次長   南学 政明君         通商産業省貿易         局長      熊野 英昭君         通商産業省機械         情報産業局長  棚橋 祐治君         中小企業庁長官 松尾 邦彦君         中小企業庁次長 三上 義忠君         中小企業庁計画         部長      高島  章君         中小企業庁指導         部長      村田 憲寿君         中小企業庁小規         模企業部長   関野 弘幹君         労働省職業能力         開発局長    甘粕 啓介君  委員外出席者         文部省初等中等         教育局中学校課         長       辻村 哲夫君         文部省高等教育         局専門教育課長 草原 克豪君         労働省労働基準         局賃金時間部労         働時間課長   諏訪  佳君         労働省職業安定         局雇用政策課長 伊藤 庄平君         労働省職業安定         局民間需給調整         事業室長    戸苅 利和君         商工委員会調査         室長      倉田 雅広君     ――――――――――――― 委員の異動 六月十四日  辞任         補欠選任   田原  隆君     井上 喜一君   森   清君     園田 博之君   関山 信之君     前島 秀行君 同日  辞任         補欠選任   井上 喜一君     田原  隆君   園田 博之君     森   清君   前島 秀行君     関山 信之君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  地域ソフトウェア供給力開発事業推進臨時措置  法案内閣提出第三三号)  小規模企業共済法及び中小企業事業団法の一部  を改正する法律案内閣提出第三四号)  中小企業投資育成株式会社法の一部を改正する  法律案内閣提出第三五号)  中小企業事業団法の一部を改正する法律案(内  閣提出第三六号)      ――――◇―――――
  2. 与謝野馨

    与謝野委員長 これより会議を開きます。  内閣提出地域ソフトウェア供給力開発事業推進臨時措置法案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。城地豊司君。
  3. 城地豊司

    城地委員 地域ソフトウェア供給力開発事業推進臨時措置法案、非常に言葉が長いので、地域ソフト法案ということで今後言葉を省略して申し上げたいと思います。  具体的な質問に入ります前に、今回梶山通産大臣が誕生したわけですが、通産大臣所見に対する質問がありません。所見の発表がないままでございますが、ぜひとも、今起こっておりますいわゆる中国のいろいろな問題について、大臣所見を伺いたいと思う次第でございます。  といいますのは、中国がああいう状況国内がなっている。それに対していろいろな国が、これは大変なことであるとか、それを改めろとか、国としての考え方を申し述べたり、今度は中国側内政干渉であるということで、国と国との応酬がいろいろ行われております。そのことについては一応外務省とか総理大臣もいろいろな形で答弁しておりますが、そうではなくて、通商産業政策、主として中国日本貿易とか、特に経済交流とか技術供与共同開発等々非常に密接な関係があるし、そういう中で、例えばけさの毎日新聞ですが、こんな大きな見出しで「失速する中国経済」、これはちょっと誇張しておりますけれども中国経済にとって日本の果たす役割が非常に重大だと思うのです。こういうような状況であったにしても、日本の置かれる立場、通商中国貿易という関係では、中国側からも、ある意味では、国内でこういう問題が起こっているが、日本中国との貿易経済関係はどうしてほしいというのは、恐らく願望があるのではないかという気もいたすわけであります。  それらのことを踏まえて、最初梶山通産大臣に、中国貿易との関連についてのお考え方、そしてさらに、つい最近、中国貿易との関係では貿易保険料の料率を変更されました。貿易保険の問題については我が委員会で非常に詳細に審議をしていろいろな措置を講じてきているわけでございますが、それらの関係について最初に伺いたいと思います。
  4. 梶山静六

    梶山国務大臣 大変緊急な、重要な問題についての御質問でございますが、いずれにいたしても、貿易あるいは投資、それから、ひとり通産省のみのものではございませんけれども経済協力、そういう問題はいわば国の大きな政策と極めてかかわりが深いものでございますから、通産独自の考え方というものも、私はその大きな方向に従って行われるべきものだという認識はいたしております。  さはいうものの、私個人的な考え方からいいますと、今こういう大変遺憾な状態が起きたとはいえ、すぐ隣の極めて密接な、関係の深い中国でございます。しかも、私、大臣ということよりも個人梶山として感じますことは、我々日本人の今日を築き上げたものは、あるいは何百年、何千年にわたって朝鮮半島や中国大陸、あるいは海洋民族でございますから多くの南の島々から、その先はさらにインドや中近東、ヨーロッパ、そういう勢力というか文明、文化が東進をして、いわば東の島である日本に長い間堆積をしてでき上がったのが日本混合文化だという感じがいたします。そして、今日経済的なある意味での花が咲いたとするならば、そういう国々の恩恵を受けて今日の日本がある。ですから、私どもは、そういう恩恵の万分の一なりとできるべき事態にすることが当然の責務だという感じを今まで持ち続けております。  中国においては、御承知のとおり、昭和四十七年にいわゆる日中共同声明で国交が回復をして以来、急速に関係が深まってきたことは御案内のとおりであり、経済面でも近来とみに貿易の量、質ともにふえてまいっております。近年恐らく輸出入とも百億ドル程度になっておろうかと思うわけであります。しかし、今回の中国状況、これは軽々に即断することは、情報が少ないし、政体が違う国でございますから、我々の感覚のみで判断をすることはなかなか難しいかもしれませんが、武力鎮圧により多数の犠牲者を出すという痛ましい状況に至ったことはまことに遺憾という以外には言いようがございません。人道上は容認し得ない問題だというふうに考えております。  これまた新聞情報でございますから詳しい情報を知りませんけれども事態は一応は表面的には収束しつつあるように見受けられますが、外国に向かっての開放経済はさらに引き続き堅持をするという声明がなされておりますが、国内的な政策はどんなふうにこれから推移をするのか、残念ながらよく見きわめることができておりません。そういう事態に対応しながら、今々の貿易状態は全体としては既契約の履行には大した影響がないというふうに感じておりますが、中国に対して抱いているイメージ、こういうものが損なわれてきておりますので、これからの影響は予測し得ないものがあるのではないのかなという感じがいたしますけれども、できるだけそういうものは平穏に終始できることを期待するわけであります。  それから、投資でございますが、これも直ちには顕著な影響はないというふうに考えますけれども、これまた、今後投資については慎重な対応が各企業間においてとられるのではないかということが考えられるわけであります。  経済協力についても、日本中国にとっては一番の大きな、二分の一以上の供与国でございますから、中国に与えるインパクトは極めて大きなものがございます。基本方針では、近代化開放化努力にでき得る限り協力をするという建前は、その範囲内においては変わりがないと思いますけれども、今後そういう開放政策が維持されるのか、あるいは国内情勢がどうなるかということについては、予測を許さない問題になろうかという気がいたします。  貿易保険の問題でございますが、これは、こういう状況になりましたので、今まで中国というのは貿易にとっては大変安定的な国だというふうに理解をされ、また、そういう処理がなされてきたわけでありますが、今回の状況を見ますと、極めて高いリスクがあるという感じもいたしますので、保険実情というか実態に合わせた保険契約料金等の改定を実施したところでございます。これから駆け込み的な保険申請その他についてはチェックをしながら、その機能を十二分に果たすよう対処いたしてまいりたいと思います。
  5. 城地豊司

    城地委員 本題に入りたいと思います。  我が国の情報産業関係でいきますと、産業構造審議会情報産業ビジョンによれば、今後二〇〇〇年に至るまで、生産額売上高電子工業は年率一三ないし一五%、電気通信国内が七ないし一〇%、国際が一九九五年まで一三二%、以降一二%、情報サービスは一七%と、いずれも高い成長を示し、その結果、情報産業全体の生産額は、一九八六年の二十二兆円、名目GNP比六・五%から、二〇〇〇年には百四十四兆五千億円、名目GNP比二〇・七%と、約七倍に増大するというように試算をされております。そして、これとの関連で、いわゆるソフトウエア技術者需給バランスが二〇〇〇年には約九十七万人不足すると言われています。大ざっぱに言ってこういうような状況の中で、何とかしてソフトウエア技術者不足をカバーするために今回の立法に至ったのではないか、簡単に言ってそういう状況でございますが、それらの背景目的について、もう少し突っ込んだ説明を、今回の場合には特に従来と異なりまして通産省労働省が相協力して立法されたということも伺っておりますので、通産省並び労働省から、それら立法に至った背景目的、若干詳細に御説明をいただきたいと思います。     〔委員長退席額賀委員長代理着席
  6. 棚橋祐治

    棚橋(祐)政府委員 お答えをいたします。  城地先生指摘のように、ハード、ソフト等全部を含めての情報産業成長性は極めて高いものがありまして、産業構造審議会昭和六十二年の提言によりますと、二十二兆円程度生産額が二〇〇〇年には百四十四兆円という巨大な額になるというような見通しがございます。しかしながら、これも、今先生指摘のように、すべて順調に推移するとは限らない問題がございまして、特にソフトウエア人材の大幅な不足が憂えられるわけでございます。二〇〇〇年の展望では、プログラマーシステムエンジニア合わせまして九十六万五千人の不足が今のまま推移すれば生ずるであろうと言われておりまして、内訳としましては、これは統計上一九八五年の統計をベースにしておりますのでやや古くなっておりますが、その時点システムエンジニアで十七万人、プログラマーで二十六万人の合計四十三万人であるものが、二〇〇〇年時点ではシステムエンジニアが八十三万人、プログラマーが百三十二万人、合わせまして二百十五万人の需要がある。しかしながら、現状のまま推移すれば、両方合わせても百十八万人、つまり九十七万人弱の大変大きな需給ギャップが生じまして、これがソフトウエア開発のおくれと人材不足と二つ合わせていわゆるソフトウエアクライシスと言われているものでございます。  これはもちろん日本だけではございません、欧米においてもそうですが、特に情報化の急速な進展が予測されます日本においては一番大きな問題であり、放置すればゆゆしき問題になる、こういう問題意識を持っております。既に通産省としましては、シグマシステムソフトウエア開発生産性を大幅に向上するための技術開発等を行っておりますし、それから、プログラマー中心でございますが、情報学校構想等も展開をいたし、地方専修学校等約百三十校を情報学校に指定したり、いろいろな対策に懸命に取り組んできておるところでございます。これらによりまして、プログラマーの方は何とか不足を解消できるものと期待しております。  しかしながら、システムエンジニア不足については、これらの対策では極めて不十分である。数字を申し上げて恐縮ですが、システムエンジニアだけ見ますと、二〇〇〇年には八十三万人必要であるが四十一万人ぐらいしか供給できない、つまり四十二万人の大幅な不足になる。こういうことから、今回商工委員会に御提案申し上げておりますこの法律で抜本的な対策を講じていきたい、このように考えております。  地域的に潜在能力を持つ地域においてシステムエンジニア人材育成技術基盤整備等によるソフトウエア供給力開発を強力に行っていきたい、このように考え、これがソフトウェアクライシスの解消に大きく役立つものと期待して、本法律の提案をいたした次第でございます。
  7. 甘粕啓介

    甘粕政府委員 御説明させていただきます。  ソフトウエア関係需給展望につきましては、通産省の方から説明があったとおりでございます。そういう状況の中で、私ども労働行政といたしましては、そういう産業構造あるいは技術構造の変化に対応いたしまして、労働者職業能力の向上を図る、また、これを通じまして、そういう職種別技能別需給調整を図るということが基本的な目標でございます。現在、私どもといたしましては、こういうソフトウエア関係につきまして、雇用促進事業団立職業訓練短期大学校、これを年々増設あるいはそういう関係科目増加、あるいは都道府県立職業訓練校におきまして毎年こういう科目増設等を図り、あるいは民間活力を活用いたしました第三セクター方式コンピューターカレッジ、こういうものにおきましてプログラマー養成等に懸命の努力をしているところでございます。  ただ、繰り返しになりますけれども、特にこういうソフトウエア関係につきましては今後需要が非常に伸びる、特にSEクラスの高度のソフトウェア関係につきましてはこれが非常に深刻になるということでございますので、これにどう対応していくかということでございます。今回法案の御審議をお願いしているところでございますが、通産省労働省が共同いたしまして、それぞれの知見なりノーハウあるいは施策を総合的に講ずるということがより効果的であるということを考えまして、今回の法案の御審議をお願いしているところでございます。
  8. 城地豊司

    城地委員 ソフトウエア技術者の問題なんですが、今のところ非常に都市偏重型といいますか、都市部に八〇%、いわゆるその他の地域には二〇%というような概況であると伝え聞いているのですが、そのソフトウエア技術者供給力現状及び問題点についてお知らせをいただきたいと思います。
  9. 棚橋祐治

    棚橋(祐)政府委員 御指摘のように、全体的にもシステムエンジニアプログラマー不足が大幅でございますが、中央と地方分布状況を見ますと、特に三大都市圏、なかんずく東京圏ソフトウエア供給の大半といいますか相当部分が集中をいたしております。私ども調査では、三大都市圏東京圏、それから大阪圏関西圏ですか、それから中部、名古屋圏、この三大都市圏で約九割になっておりまして、それ以外の地域には一割程度の微々たるものでございます。なかんずく東京でも東京二十三区に五〇%を超えて集中をいたしております。  他方、地域におきましては、高度な知識、技術に触れる機会が少なく、システムエンジニアなどの高度な技術を身につけるような機会が少ないことから、技術者大幅不足になっているわけでございます。さらに、各事業者の規模も際立って小さく、経営基盤も脆弱なために、人材高度化のための努力と効率的なソフトウエア開発のための技術基盤の導入が立ちおくれておる、こういうことかと思います。  しかしながら、地域におきましては、ソフトウエア企業等に非常に熱意の高い企業がかなりございますし、それから東京等に見られます立地等の極端な制約難等地域にはないということで、地域においては潜在的にソフトウエア供給力開発する余地が十分にある地域がある、このように考えておりまして、我々は地域において総合的なソフトウエア供給力開発対策を講ずることによって、ソフトウエアクライシス全体の解決にも資していきたい、このように考えているわけでございます。
  10. 城地豊司

    城地委員 次に、先ほど局長が言われましたいわゆるシグマ計画シグマシステム、これが昭和六十年から五カ年計画で現在実施中である、そして来年の三月三十一日で一応五カ年の期限が切れる、言うなればもう五年のうちの四年数カ月を経過しておるという状況であるし、いよいよ最後のまとめの段階に入るというふうに考えられるのですが、このシグマシステム開発事業現状と今後の見通しについて伺いたいと思います。
  11. 棚橋祐治

    棚橋(祐)政府委員 いわゆるシグマシステムは、ソフトウエア開発効率性を図る、その高度工業化を図るということで進めておるものでございますが、この開発事業はほぼ我々の期待するとおり進捗をいたしておりまして、平成元年度末には当初の開発目標を完了する、こういうふうに期待をいたしております。今までに開発しましたシグマシステムプロトタイプを利用いたしまして、既に各種のモニター事業ユーザーにお願いして行っておりまして、そのユーザーからのモニターの結果を参考にいたしまして今年度プロトタイプ強化改良を実施していこう、このように考えております。今年度中にこの強化改良事業が成功すれば、来年度以降はシグマシステム普及を行う、いわゆる事業化段階になるものと考えております。
  12. 城地豊司

    城地委員 今シグマシステム開発事業現状と今後の見通しについては伺いましたが、一つだけ希望を申し上げておきたいと思います。  私どもも若干不勉強ではあるのですが、例えば五カ年計画でやられる。五カ年計画というのでやれば、例えば四年間たった後の一年間で急速に最後成果を整理するという方法もあります。一つ一つ積み上げていく方式もあります。このシグマ計画の場合には非常に難しいわけであります。ソフトウエア関係では、何か物を一個ずつ片づけていって五年間で百個ということにはならない。今も言われましたように、モニターでいよいよ最後の仕上げ的なものでやっていくということがあることは承知しておりますけれども、今後は、五カ年計画の場合には中間で、三カ年で一応この事業はこういうふうに進んできている、中間報告をぜひ今後の場合にはお願いをしたいということを要望として申し上げておきたいと存じます。  次に、今回この法律の中で地域センター設置をして、今言われましたような将来に備えての施策を行うということでございますが、五カ年計画で一年間六カ所地域センターをつくるということでございます。現在のところ、この法律案が通ってからでないと実際上はできないわけでありますが、下調べというか予告、希望条件希望をとるというようなことで行われておると思います。また、各地域におけるそういう希望についても、非常に強い希望、それから、まあそれならばやってみようかという希望、いろいろあると思いますが、現在のところそういう設置希望はどの程度あるのかということと、五カ年計画にして六カ所ずつで三十カ所、先ほど言われましたように都市圏集中して地域が少ない。地域が少ないわけでありますが、私自身の独断的な偏見かもしれませんが、これからはソフトというのは要するに紙と鉛筆があればいろいろ仕事はできる、ただそこに至るまでのいわゆる技術の習得とかいろいろなことは問題にしても、そういう性格だと思います。そういう意味では、このごろ、私の住んでいる日立の町でも、自宅でソフトウエア技術者仕事をやっている、一週間に一遍ぐらい上京してやるというようなこともあるわけでございます。それで仕事ができるのかといったら、それで十分仕事ができるというようなこともあります。細かく突っ込んではおりませんが、将来の課題としては性格的にそういうことになるのじゃないかと思うわけでございます。  とすれば、五カ年計画で三十カ所、日本は四十七都道府県あるんですが、恐らく余り一つの県、一つ地域集中するとかいうことにはならないと思いますし、できるだけ広く地域のアンバランスにならないようにやっていくのが普通でありますけれども、そういう意味では、希望の方も聞いてみないとわかりませんが、五カ年間で三十カ所というのは非常に少ないような感じがするんですが、それは予算制約かどうかわかりませんが、それらの実情考え方について伺いたいと思います。
  13. 棚橋祐治

    棚橋(祐)政府委員 ただいま城地先生がおっしゃいました、地域からどのくらいの要望が寄せられておるか、この事業、これから御審議いただきます法律案の中で、人材育成を行うことを中心とする業務と、それから技術基盤シグマサブセンターとして先ほど申し上げましたシグマ成果を大いに活用して、それを利用しながら、それを支援のツールとして使いながら、さらに技術のレベルアップを図っていくという技術基盤強化普及機能中心とするセンターあるいはこの二つを兼ね備えるセンター形態としては株式会社形態、いわゆる第三セクター形式、こういうものになろうかと思います。法律の第二条第三項第一号のイとロに記されておる事業でございますが、この分野では現在三十数地域地方から熱心な手を挙げておりますといいますか立候補の声が寄せられております。このほかにもう一つ、これは恐らく公益法人財団形式になる場合だと思います。したがって、こういう事業は行いませんが、いわゆるシステムエンジニア関係のいろいろな情報を集めたり、伝達したりあるいは展示したりするような拠点もこのほかに出てくるわけでございます。  私申し上げましたのは第三セクターについてでございますが、これは今地域から三十数カ所ございますが、平成元年度は予算上はおっしゃるとおり六カ所に一応なっております。これを五年間我々の期待では六カ所ずつ増加をしていきまして、五年間で三十カ所つくりたいと考えておりまして、一応この法律案は十年間の限時法になっておりますが、現時点では一応第三セクター的なものは予算上の見通しでは三十カ所ということで考えておりますが、なお地域のいろいろの御要望をよく踏んまえまして、弾力的にその時点で、五年たった後でよく考えてみたい、このように思っております。
  14. 城地豊司

    城地委員 これらの問題についての総括的な考え方は後ほど述べるとして、何か一つ事業をやる場合に、私のつたない経験ですが、物事は何でも初めが肝要だと思うのですね。ですから、五カ年計画とか、十カ年計画でも、六カ年計画でもいいのですが、初年度が非常に重要だと思うのです。初年度がまずモデルになる。そういう意味では、最初の取り組み、最初の第一年度というのが非常に重要だと私は考えています。したがって、そういう意味での初年度計画の重要性、初年度実施の重要性というようなことを考えますと、まず最初、ことしやるときに幾つかのネックが考えられますが、それらの課題を乗り越えていかなければならないと思うのです。     〔額賀委員長代理退席、委員長着席〕  時間の関係がありますので、若干あわせて質問いたしますが、今度の計画を実行するのに一番重要なこと、そしてネックは何だろうかといいますと、やはりこういう地域センターにしても、そこに従事して新たな人材を養成する人、いわゆるインストラクターですか、そういう人が非常に重要である。しかも、そういう人たちが確保できないのじゃないかという心配をするわけであります。といいますのは、各企業においてはそういうインストラクターがいますが、そういう企業で抱えている人をこういう地域の中に出向させてくれとか、さらに、それを出して協力してもらいたいといっても、なかなか難しい要素があるのじゃないかと思うのです。現在シグマ計画の中でも、各企業から協力して出ているという実情があるというお話も承っておりますから、可能であるというお答えがあればそれはそれでいいのですが、非常に難しい、一番難しいのがこのインストラクターの確保ではないかというふうに考えるわけであります。建物とかお金とかいうのは融通して何とかひねり出してなるという要素はありますが、人材だけはちょっとひねり出すというわけにはいかない要素がありますので、そういう人材確保が非常に重要だと思います。それ以外にもこれを実施するためにこういう点が特に心配なんだ、こういう点は何とか克服していかなければならないというようなことがあれば、そのこともお示しをいただきたいと思いますし、これらについては、通産省労働省、それぞれ違った角度で、例えば労働省の場合には雇用促進事業団がいろいろな事業をやっている、若干通産省とはかかわりが違うという面もありますので、それらを含めて通産省及び労働省の双方から考え方を伺いたいと思います。
  15. 棚橋祐治

    棚橋(祐)政府委員 まず先生最初に御指摘の、初年度が極めて重要であるという御指摘は、まさしくそのとおりでございまして、今後の事業展開のモデルになるわけでございますので、法律を成立させていただければ、平成元年度の事業をぜひ最重要課題として取り組んでいきたいと思っておりますが、その場合に、克服すべき課題として、主として三点あると思います。  まず第一が、先生指摘の、まさしく人材育成に必要なインストラクターの確保あるいは効果的なカリキュラムの作成が一番重要でございます。  第二に、何といいましてもこの事業を推進するのは地域でございますので、地域の産業界と関係者の本対策に対する十分な理解をいただくことが重要でございます。  三番目には、人材育成をより実践的にレベルアップするためには技術基盤高度化を図ることが必要である。そのためには、技術の研修を受けながらシグマなどを使って仕事をしていくという、その仕事の流れを相当程度確保することも重要かと思います。  こうした三点について、労働省と緊密な連携をとり、今回の対策の中核機関であります情報処理振興事業協会あるいは側面的な支援をいただく地方公共団体等の協力を得て、これらの課題の克服を図っていきたいと考えております。  特にこの地域センターの成功がインストラクターの人材確保にかかっているという点はそのとおりでございまして、この対策につきましては、やや詳しく申し上げますと、地域への支援の主体となる情報処理振興事業協会、IPAを通じまして各種の助言やあっせん活動をしていただく。それから第二に、コンピューターメーカーや情報サービス事業者に対するインストラクター派遣の協力要請を行う。それから第三に、今年度から新しく本事業と連携しつつ行います企業内リーダーの育成等の措置を講ずる考えでございます。特に企業内研修リーダーの育成は、関係地域におきましてすぐれたソフトウェア技術者に研修の方法を教えようとするものでございまして、インストラクターの確保に大変大きな効果を示すものと考えております。  付言いたしますと、これには今回の地域ソフト法のインストラクターの養成と一般的な企業内研修のインストラクターの養成をあわせまして、地方の商工会等におきまして、特に既に情報試験の資格で特種とか一種の高度な資格を持っておる技術者を対象にいたしまして、研修の方法論を教えます。一回大体一週間から十日程度、二十名から三十名程度の方々に全国五、六カ所で開催、秋から行いたい、このように考えておりまして、予算上も情報学校構想等の推進関係予算の中で確保いたしております。これによりましてインストラクターの養成が相当程度進捗するものと考えております。
  16. 甘粕啓介

    甘粕政府委員 基本的な課題につきましては、ただいま通産省から話があったとおりでございます。私ども労働行政の面から、それにつけ加える点あるいは若干重要だと思う点につきまして、説明させていただきたいと思っております。  基本的には、インストラクターの確保が非常に重要な課題だというふうに思っているところでございます。ただいま通産省から説明ございましたとおりでございますが、それとあわせまして、私どもの方では雇用促進事業団におきます職業訓練短期大学校あるいは都道府県の訓練校、こういう過程におきまして、いわゆるインストラクターの確保、それの研修、そういう問題につきましては十分な経験、ノーハウがありますので、そういう面を十分に活用していきたいというふうに考えておるところでございます。  それからもう一つは、こういう事業を行う場合に、その人材育成の受講者の確保の問題も非常に重要なテーマではないかというふうに考えているところでございます。これは労働者も個々の事業主の方も、こういうふうなものの育成ということにつきましては非常に重要な課題だと考えておるのは事実でございます。在職労働者を三カ月間にわたりまして仕事を離れてそこで研修をするということになりますと、今の需給状況その他から非常に問題が多いというふうに考える面もございますので、こういうPRなりあるいはこういう受講を円滑に進めるための施策ということにつきまして、私ども十分な検討と対応を考えていきたいというふうに考えているところでございます。
  17. 城地豊司

    城地委員 今伺ったところで、いろいろの克服しなければならない課題が多くある、そのとおりだと思います。  ここで大臣に特にお願いを申し上げたいのですが、六カ所で五年間、三十カ所という数は、私は少ないと思うのです。先ほどの局長の答弁ですと、やってみてさらに需要があればその後やるというのですが、私は、そういう行き方は、考え方としてはわかりますが、余り前向きではないと思うのです。しかし、前向きでないにしても、いいことならば追加をしてやるというのは、それはいいことですから、いいのですが、特に最初が非常に肝心であると言いましたが、その肝心である最初が、ことしの場合いろいろな政治情勢の関係で、きょう六月十四日法案審議をしているという状況で、これは大分おくれているわけでございます。しかも、ある意味で長いこれからの十一年間を眺めても、非常に緊急な課題であるということが指摘されているわけでございます。そういう意味合いでいきますと、お役所というのはそういうところなんですが、法律がしっかり決まってからやる、予算がしっかり決まらなければやらないというようなところがあるのは、これは事実なんでございます。そのことが悪いと言っているのじゃなくて、そういうような仕組みですから、それはやむを得ないにしても、ことしの場合にスタートが若干おくれる、そういうことも考え、そして先ほども言われましたように非常に全体的に希望が多い。しかも、いいことならば六カ所にかかわらず十カ所もやればいいじゃないかというにしても、予算が決まっているから、十カ所やれといっても、それはできないということに当然なるわけでございます。お役所は、しっかりと予算が決まらなければやらないし、予算が決まったら決まったとおり支出をしなければならないという、そういう宿命的なものがあるのですが、民間の企業だと若干そういう点は違います。少しフライングをしても、いいことをやって、その後成果が上がれば、よし、おまえは少し先走り過ぎたが、おまえのやったおかげで結果はこうであったというので、二重丸をもらえるということがあるわけでございます。  私は、そういう意味で、速く走ってフライングをやれとは言いませんが、その両方を折衷させて、例えば初年度は六カ所、次年度、第二年度が六カ所、すると十二カ所になるわけですね。二年間で十二カ所ですが、初年度の六カ所を早くやって、二年度予算がつく前のあたりに、具体的に言いますと年末から来年の平成二年一、二月にかけて十分準備をして、そして四月一日から平成年度予算でありますから、予算を前倒しして先にくれというわけにはいかないのですが、そういう体制にしてやっていけば、二カ月、四カ月、六カ月と非常に早まっていいことができる。しかも、それだけ需要が多いのですから、丸々二年たたなくても十二カ所そういうことでできる。そういう意味での応用動作を考えて、ぜひとも大臣から督促をし、そしてその法律の許す範囲内でできることというのは、やはりあると思うのですね。そういう点で、ぜひともそういう形でこの問題を処理していただきたいというふうに考えるのですが、大臣の御所見を伺います。
  18. 梶山静六

    梶山国務大臣 まさに城地委員の御指摘のとおりでございまして、こういうものは熱しているうちにたたかないと時期を失してしまう場合もございますし、初年度大変要望が高い点に制限を設けることはいかがか、こう考える点もございますが、熟度の低いところをなかなか一挙に引き上げることもできないと思いますので、恐らく初年度六カ所という計画は妥当な線をねらいながらやったものだというふうに推定をいたしますが、この役割を見ますと、五年間で三十カ所ということですから、算術的な計算の割りつけにもなっているかと思いますので、できるだけこの制度の許される範囲内で弾力運用を図りながら、各地区の要望にこたえて対処をしてまいりたいと思いますので、御協力を願いたいと思います。
  19. 城地豊司

    城地委員 また、今回の地域ソフト法案を失効法でなく廃止法としましたが、その理由、またこの法律の延長の可能性の有無について伺いたいと思います。
  20. 棚橋祐治

    棚橋(祐)政府委員 現段階では、本法律目的としますソフトウエア需給ギャップの解消を本法律の有効期限であります十年でぜひとも実現したい、こう期待いたしておりますが、この十年間あるいは十年後にいろいろの技術の革新的な進展がございましょうし、ソフトウエア事業等の実情も相当変わってまいりましょうから、本法律を延長するべきか否か、十年たって我々も検討いたしますし、また国会においても御審議をいただくという必要性が出てくるかと思います。また、やや技術的ですが、本法律に基づいて出資されました出資金の扱い等の財産関係、その他の権利関係等につきましては、十年たって目的を達した後にどう処理をするか、これは廃止法によって手当てをする必要が出てこようかと思います。こういう観点から、十年の有効期限の到来とともに失効するという失効法の形式をとらずに、廃止法を別途策定をし、その時点で延長するか廃止するか御審議をいただく、こういう考え方でおるわけでございます。  もし、これは、不幸にしてといいますか、諸般の情勢で、我々の努力にもかかわらず目的が達成されておらず、延長の必要性が強いという場合には、その時点でまたいろいろの角度から御審議をいただきたい、このように考えております。
  21. 城地豊司

    城地委員 最後に、セキュリティー対策について質問をしたいと思います。  昭和六十年の三月二十六日、衆議院の商工委員会で、情報処理振興事業協会等に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議ということで、その第四項に「電子計算機の正常な機能を維持し、情報処理の適確な実施を確保することは、情報化社会の極めて重要な課題であることにかんがみ、電子計算機システムの安全対策のための法的整備について、早急に政府部内の調整を図ること。」というようにこのセキュリティーの問題で述べられています。附帯決議で決議されているわけでございますが、実際に具体的な運用の中でこのセキュリティー対策が非常に問題になっている。民間のいろんな関係の人の意見を聞きますと、例えば通産省と郵政省、大蔵省というような各省庁間のセキュリティーに対する考え方が、この当時からもどうも若干食い違っていた面もございますが、それらの点では、民間の多くの意見を聞きますと、それを何とか統一してもらわないと困る、ますますこのセキュリティー対策が重要になってくるという状況にかんがみて、そういう要望が多いわけでございますが、それらについてのお考えを伺いたいと思います。
  22. 棚橋祐治

    棚橋(祐)政府委員 昭和六十年の情報処理振興事業協会等に関する法律の改正案を御審議いただきましたときに、御指摘のように、附帯決議といたしまして、電子計算機システムの安全化対策のための法的措置について早急な政府部内の調整を図れ、こういう御指導があったことは確かにおっしゃるとおりでございます。その観点で、通産省中心になりまして、各省にもお願いをいたしまして、昭和六十年四月に、当時の内閣審議室を取りまとめ役といたしまして、情報処理及び電気通信の安全対策等に関する関係省庁打ち合わせ会議が設けられて、その後頻繁にこの会議が催されておりまして、安全対策に関する意見交換等を進めてきたところでございます。  この会議成果は、私どもの見るところ相当高まっておりまして、各行政分野で情報処理システムの安全対策が講じられてきておるところでございまして、通産省はもとより、郵政省、大蔵省、警察庁、自治省等々、関係各省の所管する、例えば大蔵省で言いますと金融機関等コンピューターシステム、警察庁でいきますと情報システム安全対策等々につきまして、各省において具体的な安全対策が打ち出されてきておるわけでございます。  しかしながら、他方またコンピューターウイルスやハッカーなどの安全を脅かす新しい問題も生じてきておりまして、安全対策の重要性はますます高まってきております。通産省といたしましても、技術対策の実施や基準の見直しの必要性を常に認識しておりまして、随時対策についての見直しを行ってきております。  なお、この附帯決議にございます政府の統一法制につきましては、安全対策のための各行政分野での取り組み方、その種類や考え方に相当の相違がございまして、またリスクの種類が年々多様化していることもございまして、現在の段階では、まだ統一的な政府の安全対策法案の取りまとめには至っていないことを御報告申し上げます。
  23. 城地豊司

    城地委員 そろそろ時間でありますので、最後に、大臣要望を申し上げたいと存じます。  先ほどもいろいろ質疑の中ではっきりいたしましたように、新しい事業を始める、しかもその一番大きな関係では人材の確保というようなことがあります。これはやはり大きな見地で、日本全体を考えてやらなければならないので、企業企業、お役所はお役所とか、労働省労働省通産省通産省ということではまずいわけであって、そういう一貫して全体が力を出す、そのためにはやはり若干細かいようなことであっても大臣が一肌も二肌も脱ぐということが、こういう事業の遂行のためには必要じゃないかと思いますので、特にお願い申し上げておきたいと思います。  さらに、地域関係ですが、今のところ都市部集中して地域が少ない。地域にいろいろな拠点を設けますと、その拠点がどんどん伸びていくためには、やはり地域で業者が仕事がないという心配もあるわけです、仕事が直接とれない。そういうような場合には、例えば今も中小企業育成のために官公需の優先発注というような問題がありますね。必ずしもそれとイコールにはなりませんが、そういうような地域に対して保護してやる、育成するというような方策が具体的に必要になってくるんじゃないかと思うのです。これなんかも案外細かい問題のようでありますが、そういう血の通った対策を立てることが、この事業進展のために非常に大きな力があるというふうに思います。  また、先ほどこれは大臣に要請して御回答をいただきましたが、初年度、二年度とか、そういう関係について、やはり、やるときにはやるんだ、いいからどんどん推進するんだ、それだけ要望があるんだからやるんだという構えが必要になってくるんじゃないかと思います。  最後に、セキュリティーの問題でも、各省庁間、大分打ち合わせ会議でうまくいっているということでございますが、私どもが聞いているのでは、必ずしも、うまくいっている部面もそれはありますが、全体的に問題だ。省庁間の縄張りというのはお役所ではどこでもあるのであって、一遍言い出したら絶対自分の方は引かないという傾向もあるわけでございます。  そういう意味では、これらの問題、細かい問題かもしれませんが、大どころは大臣間でつかまえて、これはしっかりやってもらわないと困る。例えば、四大臣打ち合わせ会議というようなものをやって、大筋はそこでやって、後はやってくれというようなことも必要じゃないかと思うのです。いつも省庁間のとか何々についてと省庁にまたがることを提起されるのですが、なかなかうまくいかない。縦割り行政だからということだけで片づけられないで、これは組織と人間がやることでありますから、ぜひともそれらの問題も大臣が中に割って入って、そして解決をしていただきたい。  以上、総括的に重要点について要望を申し上げ、大臣から決意のほどを伺って、終わりにしたいと思います。
  24. 梶山静六

    梶山国務大臣 大変適切な御意見をちょうだいいたしまして、感動いたしております。  まず第一の件でございますが、まさに技術立国をすべき日本の国是でもございますので、こういう問題については、これから全力で取り組んでまいらなければならないと思いますし、しかも公の仕事でございますから、過ちなきをもってとうとしとする、いわば消極的な善を追求される部署でございますが、先ほど城地委員が言われましたように、民間においては積極的な善、例えば十仕事をやって三つ失敗しても七つ成功すれば差し引き四つ得したではないか、そういうことで、民間であれば登用されるわけでございますが、なかなか公という分野は一つの間違いを許すことができない、公金という理由もございますが。そういうことでございますけれども、そういう積極的な意欲をなるたけ酌み出すようにして、こういう問題に対処をしなければならないというふうに考えております。  なお、地域に力点を置けということでございますが、確かに、この問題にかかわらず、一極集中が進んでいる中でございますから、通常の産業というか経済の法則でいけば東京集中をする。集中のメリットがありますから、需要も金も人もおるわけでありますから、そういうことがえてして起こりがちでございますが、人間のいわば快適な環境やその他を形成する、多極分散型の国土を形成するという、大きな意味での四全総のことも考えれば、こういう問題は、地方に積極的ないわば公の力を加えることによって、そういうものが進出できる基盤をつくり上げていきたい、そういうことにこれから力を伸べていきたいと思います。  なお、省庁間、もちろん縦割りのいい点もございますが、悪い点もございます。実は今回の法案は、まさに労働省通産省が一体になってやっている仕組みでございますので、こういうものをさらに助長することによって、むしろ、各省庁間の縄張りを完全にとれるというわけにはまいりませんけれども、お互いに相互乗り入れができる形で推進をしていくならば、新しい民生の需要にこたえる道が開けるというふうに考えておりますので、そういうものに着意をしながら進めてまいりたいと考えております。
  25. 城地豊司

    城地委員 時間が参りましたので、終わります。
  26. 与謝野馨

    与謝野委員長 奥野一雄君。
  27. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 今城地委員の方からいろいろ質疑がございまして、大分重複している点もありますので、なるべくそういう点については別な角度からお尋ねをしていきたいと思っております。  最初に、城地委員の方からもお尋ねをいたしましたシグマシステムの方の関係でありますけれども、これがつくられるときに、大体予測をして、これくらいの技術者不足するというのを見越してこのシステムというものがつくられていったというふうに記憶をしているわけでありますけれども、当時私は、このシステムができればこういう人材確保というものはできる、こういう判断を実はしておったわけでございます。しかし、これだけでも少し足りない、こういう形になってきたのではないかと思うのですが、このシステムをつくったときの見通しと、なぜこれをつくってもさらにまた別な法案をつくらなければならなくなったのか、この辺のところはどうなんでしょう。  当初私はこれは別な角度から質問しようと思ったのですが、今城地さんの方から質疑もございまして、この状況とか今後の見通しについてはお尋ねがあったので、その点には触れませんけれども、今申し上げましたように、繰り返しますけれども、これができたときに、あらかじめこれくらいの技術者不足だということを想定しながら、それをカバーするためにこういうシステムがつくられていったんだろう、こう記憶しておったわけでありますけれども、それでもなおかつ足りなくなってまた新しい法案をつくってやらなければならなくなった。この辺のところはどうかということを、まずちょっとお尋ねをしておきたいと思います。
  28. 棚橋祐治

    棚橋(祐)政府委員 お答えいたします。  奥野先生指摘のように、シグマシステムを我々が想定いたしましたころ、これは昭和六十年でございますが、このときの需給ギャップが、先ほど申し上げました二〇〇〇年時点展望がまだできておりませんでしたので、それと大分格差がある。六十万人という数字が当時出されたことがございますが、それよりもさらに三十数万人ふえる不足が二〇〇〇年時点に出てくる。それだけ情報化の進展が我々が予測していた以上に大きかったということは一つ言えると思います。  それから、もう一つ、やや細かく、前提を置いての分析ですから何万人という単位ではちょっと不正確でございますが、一応我々の試算では、これは一九八五年を起点にして二〇〇〇年のシステムエンジニアプログラマー需給ギャップを先ほど城地委員にお答えいたしましたが、システムエンジニアプログラマーをどういう対策でどのくらい解消できるかという点について一つの試算をしてみますと、先ほど申し上げましたように、仮に二〇〇〇年に九十七万人不足する、システムエンジニア不足が四十二万人。プログラマー不足が五十五万人。シグマによる効果はプログラマーの解消に大変大きな効果があるものと考えておりまして、プログラマーの五十五万人の不足に対して、このシグマシステムによって大半、四十五万人が解消できる、このように考えているわけでございます。シグマによる効果はシステムエンジニアの方にもございますが、これは約十万人程度の効果にとどまるということでございまして、やはりシステムエンジニアの方は四十二万人不足する、残りの三十万人強がこのシグマ対策では賄えない、こういう事態でございます。  なお、情報学校という制度もございまして、これによっていろいろの情報技術者を養成いたしておりますが、この分野もプログラマー中心でございまして、情報学校等の教育制度では十万人ぐらいプログラマー不足を解消する。これによって、五十五万人の不足プログラマーは、シグマ情報学校構想によって大体解消できるであろうと現時点では見ておりますが、くどくて恐縮ですが、システムエンジニアについては、四十二万人のうちのシグマ効果は十万人強でございますので、三十万人残る。こういうことで、今回この法律を御提案して、ぜひこの法律によってシステムエンジニアの解消を図っていきたい、このように考えている次第でございます。
  29. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 その数字の説明はわかるのですが、これは私どもも、前にシグマシステム法案をやったときに、こっちの方も気がつかなかったということなのかどうかわかりませんが、今の御説明だと、二〇〇〇年までに九十七万人が不足をして、そのうちのプログラマーの方は何とか片がつくんだけれどもシステムエンジニアの方はどうもうまくいかない、それをカバーするためにということで今度新しい法案、こうなったわけでありますけれども、そのシステムエンジニアの方の関係については、このシグマシステムをやろうとしたときには、そういう面についてはこの想定の中には入っていなかったというふうに理解されるのですけれども、そういう理解でいいのですか。それが今になってから、システムエンジニアの方が足りなくなる、カバーできないというふうに、今日段階でそういう状況というものがわかってきたのか。これをやる段階からもしわかっておったということであれば、それなりの対応策というものを当初から考えておかなければならなかったんじゃないかなという気がするわけですけれども、その辺はどうなんでしょう。
  30. 棚橋祐治

    棚橋(祐)政府委員 私どもが初期の段階で想定しました需給見通しでは、大体システムエンジニアプログラマーを合わせまして六十万人ぐらいの不足かな、こう思っておりましたが、数年の間に我々の予測以上に情報化が急速度に進展をいたしておりまして、特にソフトの分野の、プログラムの開発の分野の伸びが、先ほども出ておりましたが二〇%近い年率の伸びになっておりますので、私ども見通しに若干の甘さがあったのかもしれませんけれども、三十数万人、四十万人に近いギャップの拡大が出てきたわけでございます。また、当時も確かにシステムエンジニア不足をするという見通してございましたが、その後特にシステムエンジニア需要が急増をいたしておりまして、先ほど申し上げましたように八十万人を超える需要を二〇〇〇年時点で想定し、その半分程度しか供給できないという事態になってきておりまして、システムエンジニア対策のより一層の強化を痛感し、今回の法案中心対策を講じていこう、こういう考え方になった次第でございます。
  31. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 そういたしますと、システムエンジニアの方は約四十二万人くらい少ない。そこで、シグマシステムの方で大体十万人くらいカバーできる。残り三十万人強、これを今度の新しい法案で大体どの程度、人数を計算すればある程度は想定できるわけですけれども、それと、そのほかの教育機関ですか、そういうものとで、どういうような形の中でこれを解消していくのか、ちょっとお知らせをいただきたいと思います。
  32. 棚橋祐治

    棚橋(祐)政府委員 システムエンジニアにつきましては、平成元年度六カ所、以降五年間に我々の今の見通しでは六カ所ずつ、五年間で三十カ所設けたいと思っておりますが、そこでの人材育成の内容としましては、既に各企業で相当程度ソフトウエア技術の習得がなされた方々、これは上級プログラマー等である場合が多いわけでございますが、そういう素地の非常にある方々にこの地域センターに来ていただきまして、三カ月間の集中訓練を大体四十人程度、したがいまして年間四回回転いたしますので平均すれば百六十人。これは地域の規模の大きさによっていろいろございましょうが、我々の一応の想定では年間に百六十人程度育成をするということでございまして、これが一年目は六カ所、二年目は十二カ所、十八カ所、こう累積していきますので、十年間で、仮に三十カ所にとどまっても、直接にシステムエンジニアとして養成できる者が四万五千人ぐらい我々は期待できる、このように考えております。  四万五千人では足らないじゃないかということでございましょうが、四万五千人の非常に高度の技術を習得した人たちが、それぞれの出身母体の企業に戻られたり、あるいは関係企業に戻られたりしまして、そこでその人たちがインストラクターとなって、一人当たり五人ぐらいはシステムエンジニアとしてその企業内で養成をしていただけるものと期待をいたしております。こうしますと、四万五千人のここで研修を受けて高度の技術を習得した方がインストラクターになって約二十二、三万人の養成ができるのではないか、このように期待をいたしておりまして、二十二、三万人の波及効果と、本来ここで教育をする四万五千人を合わせまして、三十万人にちょっと足りませんけれども、我々としては三十万に近いシステムエンジニアの養成が期待できるものと考えております。
  33. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 計算上はそうなりますね。私もちょっと試算はしてみましたけれども、年間百人から二百人くらいということで、最高の二百人をとっていきますと、五年間では一万七千九百人になるし、その後の五年間は三万人くらいになるわけですから四万七千九百人、一年間二百人にした場合そのくらいになる。そこで、今言われたように、四万五千人くらいの方がその企業の中で一人が五人くらいにさらにその技術を教えていくということになればということになるので、それはそれぞれ企業の中で必要であれば当然そういうこともやられるのだけれども、これは十年間の時限立法というような形だということなんですが、その地域センターに、例えば現在企業でもって低い方の技術を持っている方がセンターに入って研修を受けますね、そこで高い技術の方に行く。その場合に、その企業から地域センターの方へ行って研修される方には労働省の方からは助成されるわけですね。これではそういうシステムになっていますね。この場合と、そんなことをするかどうか、これは企業によってわからないのですけれども、そこの研修を終えて、訓練を終えて企業に戻った技術者が、同じ企業の中で、例えば五人くらいならやってほしい、これは法律的には別にそういうことについて義務づけや何かしているわけではないと思っているのです、あくまでもそれは企業内の努力というか、あるいはこちらの通産省の方から見れば、願望という言葉は悪いかもしれませんけれども、そういうようなことに一つはなるのではないか。もしやられなければ、あくまでも不足ということになっていくし、その企業の中でもしどうしても不足だということであれば、その企業努力をするということになると思うのですよ。しかし、その企業としてはそれでいいのだということになった場合に、果たしてそれができるかどうか。それから、先ほど言ったように、今企業で低い方の技術を持っている人がそのセンターに行って高い技術を習得するためには、労働省の方では助成をするはずだ。しかし、同じ企業の中でやった場合には、それはないわけでしょう。そういうあたりでもって、四万五千人の方が一人当たり五人を何とかやってもらえば三十万近い技術者不足がなくなるということなのだけれども、それは確実性というものを考えた場合に一体どうなのだろう。その辺のところが、何か少し願望的に今聞こえたものですから、それはどうなのかということなのですがね。
  34. 棚橋祐治

    棚橋(祐)政府委員 これは願望ではございませんので、この法律の中の仕組みといたしましてもそういう仕組みに、先生も御承知のことかと思いますが、なっておりまして、この地域ソフトウエア供給力の具体的な第三セクター中心に行われます事業は、法律の条文でいきますと第二条第三項の一号のイとロの業務にかかわるところかと思います。第二条の第三項の一号のイとロでございまして、いわゆるイ号の業務、「プログラム業務従事者のプログラムの作成に関して必要な知識及び技能の向上を図る業務」、これが言うなればここで短期に集中的に相当程度の知識を持った方々をSEに育て上げる。こういうことで、これによる十年間の効果は、我々百五十人程度で想定すれば四万五千人、先生がおっしゃった二百人にすればもう少しふえますけれども、ここで期待できる成果はそういうシステムエンジニアの増員になるわけでございます。  もう一つの、ロの「プログラムの作成に関する高度な知識及び技能を有するプログラム業務従事者が他のプログラム業務従事者を統轄しつつプログラムの効率的な作成方法を実践することによりプログラムの作成能力の向上を図ることを指導し、及び支援する業務」、ロ号業務におきましてこれは企業内等でイ号で教育を受けた人たちが中心になりまして、波及効果といいますか、実践効果といいますか、五名程度を一応想定しておりますが、一人当たり五名程度の同僚等をシステムエンジニアに育て上げる。そのための業務をこのロ号で予算上も支援をするということでございまして、これは願望ではなくて、このロ号において諸般の対策を具体的に講じていくつもりでございます。
  35. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 そうですが。ちょっと私そこのところを誤解しておったのではないかと思ったので、そういうことであればあれですが、そうすると、届け出を出して指定をされるというときには、そういう中身については、指定をしていただく、そういう計画の中には当然そのことが入ってなければ指定にならないということになるわけですか。
  36. 棚橋祐治

    棚橋(祐)政府委員 私どもとしましては、この法律の二条三項一号イ号業務とロ号業務をあわせ行う地方計画をワンセットとしてとらえまして、それを行う第三セクター等のセンターに対する助成というものを原則として考えているわけでございます。
  37. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 わかりました。  それから次に、これも城地委員の方から若干触れられておるわけでありますけれども、私が聞いている説明の中で、地域間のバランスの問題で、今東京方面に各地域の方からたくさんの注文が来ている。したがって今度、地域の方でそういう技術者や何かが養成をされていけば、今東京へ来ているものについては、その地域の中で今度は評価をされていくということになるので心配はないんじゃないか、こういうような説明もいただいておるわけでありますけれども、果たしてそのとおりになるのかという心配がまだ抜けないのですね。  資料なんかを見ておりましても、売り上げとかあるいは発注額とか、そういうようなものをずっと見ておりましても、やはり東京圏、名古屋、大阪と三大都市圏なんかが非常に抜き出て大きくなっているということになるわけです。だから、先ほど城地委員の方からも指摘をされておりましたけれども、その地域の中でどんどんそれを利用する企業やなんかというものが育っていかないと、一定のところまではいくかもしらない、今地域の中で必要としているものを東京方面に注文している、それが地域技術者ができることによってその部分についてはいくかもしれない、しかし今東京圏などを除くそういう地域の中で指定をしよう、こういうことになっているわけですから、仕事の量がそれに見合っただけ地域の方にいかないとバランスがとれなくなってくるという可能性があると思うのですね。だから、そういう面では、やはりそういう仕事地域の中にも定着をし、拡大をしていくということも一緒にやっていかなければ、ある程度は今東京へ来ている注文が地域の方に戻るということは考えられるけれども、限界というものが出てくるのでないだろうか。そうすると、地域の中に技術者が三十万人なら三十万人張りついていったにしても、そっちの方で仕事がなければ、ちょっとまたバランス上おかしいことになるのでないかな。だから、人材地域間のバランスをとるということも必要だけれども、同時にやはり仕事の面でも地域の中でバランスをとれるようなことをやっていかないというと、これはどうかなという危惧がちょっとあるのですが、その辺はどうなんでしょうか。
  38. 棚橋祐治

    棚橋(祐)政府委員 確かに関東圏、東京圏、特に東京二十三区が、売上高、従業員、事業者数を見ましても過半以上になっておる。しかし、過半以上になっているということは、そこにソフトウエア技術者もたくさんおって、かつまたそのユーザーもたくさんあるというようなことになるわけでございますが、他方、地方におきましても、いわゆるプログラム、ソフトウエア需要がある地域はもちろん相当数あるわけでございますし、またソフトウエア業者等もかなりの数が地方に展開をいたしておるわけでございます。どちらが先になるかということでございますが、我々は、そういう地方にある潜在力を生かしていこうということで、地方ソフトハウスがかなりあって、かつ今は力不足だけれども、支援をすれば、そこにおいていろいろのSE、システムエンジニアその他を養成すれば、そういうソフトハウスの実力が非常に高まっていく。それから、しかしそれは、高まっていっても、それを使ってくれる、注文するユーザーがいなければ、またおっしゃるように絵にかいたもちになりますので、そういうユーザー地方においてある程度期待できる、そういう地域を取り上げて、我々としては、いろいろな支援体制をしいていって、その力をレベルアップしていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  他方、東京等におきまして最近非常に問題になっておりますのは、地価の問題で立地等に大変大きな制約がございます。そういうことがあってネックがありますし、それから、先ほど城地委員もちょっと御指摘のように、ソフトウエア開発という職業は、何も交通至便の都会の中にいなくても、必要なツールやバックグラウンドがあれば、非常に思索にふけることができる山紫水明な地においてやった方がむしろいい場合もございますので、私は、有望な地域を拾い上げていけば、非常に有力なSEの養成によるソフトハウスの発展が期待できるものと考えているわけでございます。
  39. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 理屈としては今言われたようになるのが一番いいと思うのだけれども、どうもその点は私はまだ完全に納得できないという点なんです。東京一極集中主義がこんなになってしまって、今言われたようにそれぞれの地域の中で優秀な技術者が生まれて、仮に日本一だ、世界一だという技術者が出て、それで東京とか大阪、名古屋などのいわゆる三大都市圏にある企業が、ではそこに注文しようかというふうに簡単になるのだろうかという心配が一つあるのですね。これは地域の中でそれを利活用していこうというのがどんどんふえていけば別でしょうけれども、この法案では地域指定になるのは東京圏を除く地域、大体そうなっておりますね。そこで、今これからやろうとしている、まだ足りない三十万人程度の方々をそういう地域センターの方に張りつけていくことになる。しかし、そういうような技術をこっちの方で注文しようということが、東京集中している企業の方がやはり多いわけですから、これが地域的にうまく分散されていればもっとうまくいくということになるのだけれども、何せ全国三十カ所にも散らばっていくわけですから、果たしてそういうふうにうまくいくのかどうか、この心配が非常に抜け切らないのですね。もちろんこれは行政指導だけでもうまくいかない。  これは全然例が違いますけれども東京に本社がある大型店なんというものが今どんどん地方に進出しております。私ども地元で問題になっておりますのは、そこで使うようなもの、簡単な印刷物や何かでも、ほとんど地元には発注していないのですよ。地元に優秀な印刷屋があっても、全部本社でもって一括印刷をしてしまう。これは一括してやった方が安いからということになっているのだろうと思うのですが、これは全然この問題の例示にはなりませんけれども、そういう風潮がまだ残っているのですね。ですから、東京にある企業が、例えば北海道の札幌なら札幌にいるシステムエンジニアが非常に優秀だ、したがってそっちの方へ発注しようかということにつながっていくのかどうかが、私はやはり一つのポイントになっていくのではないかという気がしてならないのですね。そうでなければ、幾ら地域の方に技術者を分散させてみても、仕事そのものが分散していかなければ、うまくいくのだろうかという心配が抜け切らないのですけれども、その辺は本当に心配がないのかどうか、もう一遍確かめておきたいと思います。
  40. 棚橋祐治

    棚橋(祐)政府委員 この法律の二条の三項の柱におきまして「「ソフトウェア供給力開発事業」とは、ソフトウェア供給力開発を図るために行う次に掲げる事業」、先ほど申し上げましたイ号とかロ号の事業ですが、「及びプログラムの作成に関する取引のあっせんを行う事業」ということで、ソフトウエア供給力開発事業の有力な事業といたしまして地域にできます第三セクター等がプログラムの作成に関する取引のあっせんも主たる事業として行うということで、先生がおっしゃったように、確かに高度な開発環境をつくり上げても十分にそれを活用できないというケースは御指摘のようにあり得ますので、このセンターにあっせん事業もぜひやってもらいたい。特にその立ち上がりにおきましては、そのモデル的な事例がその地域ソフトハウス業者に配給されて、その成果が実際に使われるというケースが必要であるので、センターにおいてそういうあっせん業務をこの第一号のイ号とかロ号の業務の補完を行うという見地からぜひ積極的にやってもらう。こういう考え方で、注文等も、せっかくそこで身につけたシステムエンジニア東京に取りに行くということにならないように、我々としてもいろいろ努力してまいりたい、このように考えております。
  41. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 そうすると、ここで書かれております「取引のあっせん」、これは個々の地域センターの方でやろうということになるのか、あるいは中央なら中央で何かそういう情報を収集して、こっちの方にはこれだけの需要があるよということでやるのですか。これはどういう仕組みでやることになるのですか。
  42. 棚橋祐治

    棚橋(祐)政府委員 本来は地域センターの自主的な業務だと思いますが、我々といたしましては、情報処理振興事業協会等中央の支援センターを通じまして、いろいろの情報の提供等積極的な支援を行ってまいる所存でおります。
  43. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 それはぜひ強力にやっていただかなければならないのではないかと思っておりますので、その辺のところは力を入れていただきたいと思います。  もう一つの問題は、コンピューター機器相互の互換性の問題について、実情は今どういうふうになっているのか。  それから、将来、同じものがいいとか悪いとかということは私も言えないと思うのです、同じものだと競争力とか技術の発展という面でどうなんだろうという気もします。また、余り違ったものだと、使う方にとっては大変困るということもあるわけなんですが、そういう面の指導方針とか、将来どういうふうにやっていこうとするのか、何かお考えがあったら、その辺のところをちょっとお知らせいただきたい。
  44. 棚橋祐治

    棚橋(祐)政府委員 コンピューターの互換性につきましては必ずしも十分ではないケースももちろんあるわけでございます。基本的にはコンピューターの互換性を進めていくことは、ユーザー間のデータの交換など相互利用に当然資するわけでございますし、それからソフトウエア資産を自分で使うだけではなくて、もちろん適正な対価をもらうわけでしょうが、相手方にも使ってもらって、むだな投資を避けるというような、ソフトウェア資産の汎用性、利用性を高めるというような効果もあるわけでございまして、さなきだに足らないプログラム、ソフトウエアから来るソフトウエアクライシスの解消にも非常に大きな意味があることだと思っております。  そういう観点から、私どもは新規の機器の開発にもちろん力を尽くすわけでございますが、機械同士の互換性、インターオペラビリティーが行われるような技術開発にもあわせて力を尽くしております。既に国際的にもインターオペラビリティーの技術開発日本が相当進んでおりまして、先般東京においても日米欧とを結んでのコンピューターの相互接続等のデモンストレーションが相当程度成功裏に行われておるわけでございまして、欧米のコンピューター企業もそれについては非常に国際的にも熱心でございます。かつ、これは技術開発だけじゃなくて、標準化作業を進めるということによっても相当の効果があるわけでございまして、こういう点で互換性の確保のためにいろいろ努力をいたしておりますが、ただ一つ、コンピューターは日進月歩でございますので、その互換性の重要性を急ぐ余り、そういう新しい機械の技術開発の芽をもし摘むようなことがあると、これは逆に問題があるという点についても留意をしていかなければならないわけでございます。いずれにいたしましても、御指摘のように、今後特にコンピューターが我々国民生活の間に浸透してきますと、相互運用性というものもますます重要になりますし、言うなればコンピューターと人間との関係、使いやすいコンピューター、それも相互接続ができるコンピューターという観点からいきますと、そういう点での技術開発や標準化を通じての互換性の推進というものは非常に重要である、このように考えておる次第でございます。
  45. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 今お話ございましたように、技術開発という点とつなげて考えると、どちらがいいのかということはちょっと私はわからないのですけれども、やはり使いやすくするということは一つだろうと思うし、それを通じてまたさらに技術を発展させていくという意味もこれは必要だと思いますけれども、そういう面では使う人が使いやすいというのが一番いいんじゃないかという気がするものですから、ぜひその辺のところはまたひとつお願いしたいと思うのです。  それから、同じく城地委員の方からもお触れになりましたコンピューターセキュリティー対策関係でありますけれども、先ほどお話はお聞きをいたしましたので、そっちの方については触れなくてもいいと思うのでありますけれども、六十年に監査基準ができた後だと思うのですが、警察庁の方で企業調査をやっておられます。その発表を見ますと、非常に電算機犯罪に対しては無防備だというのが圧倒的な数になっているんですね。大体満足だというのはその調査の中で〇・七%より出ていない。これは六十年六月四日の警察庁の企業調査ですから、それからもう四年ぐらいたっているわけです。その後それぞれの企業の方ではこの電算機の犯罪対策というものについてはどのような形で進んでいるんだろうか、もし通産の方でそういうものについての何か調べたものがあったら、進みぐあい等についてちょっと御説明をいただきたいな、こう思っているわけであります。
  46. 棚橋祐治

    棚橋(祐)政府委員 先ほど申し上げました点と若干重複するかと思いますが、各省のコンピューターセキュリティー対策の取り組みは、大変具体的な形で熱心に行われておりまして、郵政省につきましては電気通信技術審議会で電気通信システムの安全、信頼性対策のあり方を中心に諸般の対策が講じられておりますし、大蔵省は金融機関におきますコンピューターシステムの安全対策基準を中心に各般の安全対策基準を出しておられます。自治省においても地方公共団体におきますコンピューターセキュリティー対策チェックリストをつくっておられますし、総務庁におきましては行政情報システムの安全対策ガイドラインについていろいろ御検討をいただいているわけでございます。  当省におきましては、つとに、電子計算機システムの安全対策基準につきましては各省に先駆けまして昭和五十二年、御案内のように電子計算機システム安全対策基準をつくっておりまして、昭和五十九年八月にこれを全面的に改定をいたしておりまして、設備面、技術面、それから運用基準面、合わせまして二百数十項目の具体的な基準を出しておるわけでございます。また、情報処理サービス業の電子計算機システム安全対策実施事業所の認定制度を行いまして、優秀なシステムの安全性の確保に従事しておられます事業所については、平成元年三月末までに百六十事業所を認定いたしております等、各般の対策を講じております。  今、先生、犯罪対策とおっしゃいましたか。犯罪面については、警察庁の情報システム安全対策指針については伺っておりますけれども、どういう対策を具体的に講じておられるか、ちょっと今ここで御披露する資料を持ち合わせておりません。
  47. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 各省の方でいろいろ指導指針を出しておるということは私も承知しております。それから、通産省としての安全だという通産大臣からの何かが行っているところも承知をしておりますけれども、あれは具体的に、調査というのですか、そういうものは各省庁ではやっておられるわけですか。ただ指導だけになっているのですか。通産省の方で、何か通産大臣の安全なんとかかんとかというあれが張ってあるのですけれども、あれは企業の方から出されたものだけで判断されるのか、あるいは現場に行ってそういう安全基準やなんかというものを確かめられてああいうものを出されているのか、それから、各省庁もやはり同じことをやっているのか、それはどっちの方をとっておられるのですか。
  48. 棚橋祐治

    棚橋(祐)政府委員 当省の関係のいろいろな安全システム基準につきましては、先ほど申し上げましたいろいろのシステムがございまして、特に昭和六十年の一月に策定、公表しましたシステム監査基準の定着化を図るためには、システム監査を行う技術者の養成を促進すべく、情報処理の促進に関する法律に基づく情報処理技術者試験の一環として、情報処理システム監査技術者試験を実施して、非常に高度な観点でのチェックをいろいろ行っておりまして、各通産局等からの安全化対策についての現地の実情調査等を行っておるわけでございます。  各省においては、それを行っておられるところもあると思いますけれども、このところで詳細にどのようなチェックを行われておりますかにつきましては、今具体的な資料を持ち合わせておりませんので、委員の御指摘があれば、後ほど資料としてお出ししたいと思います。
  49. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 時間がありませんので、あと、今までいろいろな中小企業対策とかそういう産業対策なんかで法案がどんどん出ていっているわけでありますけれども、PRの仕方というのですか、私はちょっと不足しているのではないかという感じを持っておるわけなんです。この前ちょっとお尋ねいたしましたら、今回のこの問題についても、ソフトウエア協会かなんかの方にいろいろな説明をされておるというふうなことをちょっと聞いたわけであります。それから、労働省の方なんかは、職業安定局ですか、安定所、そういうものを通じて各企業の方に周知をしておるというお話も聞いたわけでありますけれども、各都市には商工会議所とか商工会とかというのがあるわけなんですね、ここには余り行っていないという感じがするわけなんですよ。このことではないですよ、ほかのも、今まで出たいろいろな問題なんかでもそうなんですが、私も地元へ行って、例えば今度通産ではこういうことをやっておる、労働省では例えばこういうようなことをやっておるという話をしても、肝心の商工会議所の方々は余り知らないというのがあるのですね。ですから、そこから各企業の方におりていってないというのがあるのですよ。だから、特定の業界に対して周知をするということも必要だと思いますけれども最初は恐らく都道府県に行くだろう、それからそういう関係の業界へ行くのだろうと思うのだけれども一つの総括的な仕事をやっている商工会議所どか商工会とか何かにも通じてやらないと、末端の企業の方々はせっかくのいい制度があってもなかなかそれを的確につかんでいないというふうに思われてならないものですから、そういう施策のPR方法について、これは両省にちょっとお尋ねをしておきたいと思うのです。
  50. 棚橋祐治

    棚橋(祐)政府委員 今度の我々の人材確保対策につきましては、我々としましては労働省協力をしながら相当程度地域にこの法律案の骨子、考え方を御説明いたしておりまして、その成果といいますか、三十数カ所熱心な立候補が、まだ法律案が成立してない段階で、あるわけでございますので、私どもとしては、地方自治体等におきます熱意を強く感じておるところでございます。ただ、確かに、おっしゃるように、地方自治体によりまして受け取り方には強弱等相当ございまして、まだ我々のこの法律案目的、内容等についてよく御存じないところもございましょうから、我々としましては、この法律案制定の暁には精力的にこの法律考え方地方自治体等に徹底をいたしまして、地方の御理解を得るようなPRを大いにやっていきたい、こう考えている次第でございます。
  51. 甘粕啓介

    甘粕政府委員 先生のお話のように、確かにこのPR、浸透というのは非常に重要だと考えているところでございます。ただいま通産省からお話がありましたとおり、私ども懸命にやりたいというふうに思っておりますが、特に実際の事業が進んでいった場合に、これは人材育成ということでございますので、個別企業協力というのも非常に重要になってまいります。そういう意味で、私ども、職業安定所、県の能力開発主管課あるいはそれの関係で個別企業に能力開発推進者というふうなものを現在四万企業程度に置いておりますけれども、こういう点も十分活用いたしまして、末端まで浸透するようなPRに努めていきたいというふうに考えているところでございます。
  52. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 ちょっともう一つ確かめておきたかったのですが、今局長の方から、都道府県の方にはもちろん積極的に宣伝もするし周知もするという。北海道なら例えば札幌に通産局がありますね、通産局にも当然行くと思うのですけれども、私さっき言ったように、中小企業対策だとかそういういろいろな制度ができたときには、商工会議所とか商工会の方にはどのルートを通じて周知されることになるのですか。
  53. 棚橋祐治

    棚橋(祐)政府委員 私ども、毎年、予算が成立いたしまして、関係法案が成立をいたしますと、県によっては商工部長、商工労働部長、いろいろの名称がございますが、各県の商工担当の責任者、部長クラスの方々に全国からお集まりいただきまして、通産省政策、特に地域にかかわりの深い重要政策について、非常に細かく資料をお渡しして御説明をする機会を早急にやっております。  それから、各通産局を通じまして、関係の商工会議所、商工会等には、これまた通産政策についての御理解を得るべくPRといいますか、その情報の提供は積極的に行っている次第でございます。また、県によりましては、もう本当に御熱心に通産省にお見えになりまして、そういう会議を催す前にいろいろな情報をキャッチしようとする意欲のところも大変多うございまして、そういう成果が既に、法律案がまだ御審議いただかない段階で三十数カ所という、我々の候補予定地六カ所からどう絞り込むかという悲鳴を上げるような一応の立候補の集中が今あるわけでございまして、確かに県によっては県の体制の中でどういう受けとめ方をされているのかよくわからないところもございますが、そういうところにつきましては、先ほど申し上げましたような商工部長会議その他を通じて公平にまんべくなく情報の伝達、施策考え方の徹底を早急に図りたい、このように考えておる次第でございます。
  54. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 終わります。
  55. 与謝野馨

    与謝野委員長 薮仲義彦君。
  56. 薮仲義彦

    薮仲委員 ただいま上程されております地域ソフトウェア供給力開発事業推進臨時措置法案について、何点か質問をさせていただきます。大臣も御承知のように、急激な高度情報化の進捗、これは我々国民の側も目をみはるような進歩があるわけでございまして、先ほど来ここで論議されておりますように、産構審の答申にまつまでもなく、これは非常に重要な施策であるなとだれしも認識をいたしておるわけでございます。我々が表現の上ではよく高度情報化社会、こういう言葉を使います。二十一世紀どういう展望が開かれるのだろう、言葉の上では何となくぼんやりわかっているわけで、身の回りを見ると、大体の御家庭にいろいろな機器が入ってきている。例えばファックスもワープロもあるいはパーソナルコンピューターもどんどん身の回りに入ってくる。いろいろな機械も入ってくるわけです。どちらかというと我々は、高度情報化社会のイメージをハードなコンピューターであるとか、こういうかたいイメージで受け付けておりましたけれども、最近はそうばかりは言っておられない。今大きな課題になっております、マン・マシン・インターフェースといいますけれども、我々国民の側、ユーザー側から、非常に親和性のある、親しみやすい、そういう高度情報化社会をむしろ国民は求めていると思うのであります。  ここで大臣にお伺いしたいわけでございますけれども、我々が高度情報化社会の中で求めるのは、我々五十代の人間というのはコンピューター社会に育っておりませんから、例えばコンピューターゲーム一つにしても非常に違和感を感じますし、自分とは違う世界に感ずる世代が多いわけです。しかし、好むと好まざるとにかかわらず、家庭の主婦の方が、ぽんとボタンを押して、この高度情報化社会の中に飛び込んでいかなければならない。例えば銀行のオンラインでボタンを押しただけで、そこには高度なオンラインシステムというコンピューターが動いているわけです。ああいう事態がどんどん我々の家庭の中に入ってきますと、我々が求めるのは、高度情報化社会の中で我々が生活するときに、快適性あるいは利便性、そういうような生活空間というのは非常に重要になってくるのじゃないか。ある意味では未知への遭遇といいますか、非常に夢もあり期待感も持っておるわけです。しかし、私たちが望むのは、ユーザー側に立った、コンピューターにしましてもソフトにしましても、先ほどの論議にございましたように、今の極端な例はワードプロセッサーを持ってきまして自分で原稿を書いた、それをお友達になんといっても、互換性はありませんから、非常に不便を我々は感ずる。フロッピーディスクというのは、あのように似ているのに、なぜうちの機械と隣の機械で違うのだろう。それはシステムが違うのですよと言われても、我々はなかなかわからない。専門家に聞けば、それはOSの部分が違うから無理なのだとか、いろいろなことを言われたってぴんとこない。しかし国民の望んでいるのは、そういう意味での生活の中に取り込んだ高度情報化社会だと思うわけでございますが、私はやはり、これから通産省がそういう意味で我々国民に向けて、二十一世紀の高度情報化社会に安心して取り組んでいけるような政策のコンセプトというものを一番要求されていると思うわけです。その意味で、大臣のこの高度情報化社会に取り組む通産省政策コンセプト、その辺のところを冒頭にお伺いしておきたいと思うのです。
  57. 梶山静六

    梶山国務大臣 高度情報化社会の基本的なイメージは、情報産業の提供する機器、サービスが経済社会の幅広い分野で自由に利用をされ、情報化に伴うソフトウエア不足やセキュリティー等の問題が克服をされた社会と考えておりまして、そのために懸命な努力を払っているのが今の通産省の立場でございます。     〔委員長退席、尾身委員長代理着席〕  ただ、私個人と言われますと、確かに産業活動や人間生活を利便に、快適にするためのものでございますが、私個人にとりましては、もう電話でもゼロックスでも覚えること自身の方がむしろ苦痛だという気もいたします。ですから、一挙にこういうものが達成できる社会ではございませんで、私はやはり子供の幼児教育からこういうものになれて、利便さ、快適さ、そしてまた私たちの時代に持っていない、何といいますか、私たちは隣近所を見ながら生活をしたなりの道徳律を持っているわけでありますが、目に見えない、いわゆる情報の道徳律というか、そういうものを身につけなければやっていけないわけであります。  故意か過失かわかりませんけれども、私の議員宿舎にも夜中に、電話という利便なものですから、鳴ればつい急用が起きたと思って手を上げてとるのですけれども、何分たっても相手はうんともすんとも言わないで、しばらくたって置くとまたかけてくるというようなことも往々にしてありますから、こういうものまでチェックできるような機械にというか、そういうハードな面でもソフトな面でも開発ができるのでしょうけれども、それはむしろやはりそのセキュリティーというか道徳律、こういうものの不足によって起きる分野に対するいわば過剰なというか必要以上の投資でございますので、そういうものがなくて済む人間社会でなければならない。根幹にはむしろそれを据えてやらないと、結局は利便なものには必ず障害がある、そういうこともありますので、こういう利便社会になればなるほど、高いそういう意味での管理能力というか管理機構というか、そういうものと、高いある意味での道徳戒律、こういうものを求めなければならないと思います。  その分野で通産省の占める分野は、そういう意味ではむしろ逆に、大きく分けてハードの分野しかないかと思いますが、人間社会を挙げてそういうものに取り組む体制をこれからつくりながら、さはさりながら、そういうものを恐れて利便な、快適な社会を逃避するわけにもまいりませんので、私自身も一生懸命今覚えているのですが、覚えることが必ずしも快適だというふうにばかりは感じられない分野がありますので、大変複雑な思いで、やはり薮仲さんと十歳以上の差がありますと、これは感覚的にも、大変世の中が急速に進んでおりますので、あなたとまた若い方々にも違いがあるでしょうし、そういう中で、日進月歩のこういう大きな意味での技術を我々は利便として享受をするための努力を払っていかなければならないというふうに考えております。     〔尾身委員長代理退席、委員長着席〕
  58. 薮仲義彦

    薮仲委員 大臣がおっしゃっていただいたように、我々の世代というのは、高度情報化社会に非常に疎外感を感ずるわけでございますが、大臣の御発言のように、どうか、我々国民が親しくその中へ飛び込んでいけるような実現をしていただけるというようなことでございますので、私は心から期待をいたして、この具体的な法案質疑に入らせていただきたいと思うわけでございます。  先ほど来ここで論議がございましたが、ソフトクライシスと言われておりますように、いわゆるシステムエンジニアプログラマー合わせまして九十七万程度不足だろうという産構審の答申が出ているわけでございます。私は、今度の法案の一番大事なのは、プログラマーは先ほど局長シグマ計画のお話をなさいました。いわゆるシグマ計画の中で、プログラマー、プログラムの部分は、どちらかといえばもうプロトタイプもできておるということで、これから実践で、そこの人材の払底は私は何とかなるのかなという感じも一部持ち合わせておりますが、その辺も後ほどお伺いしますけれども、一番大事なのは、これからの二十一世紀、一番払底するであろうのはシステムエンジニアの部門であろうと私は思っております。  そこで、先ほどの局長の御答弁、私は必ずしも正確に理解をしておりませんので、確認の意味で何点かお伺いしたいわけでございますが、今度全国に六カ所このセンターをつくろうという問題でございます。  これはさっき山紫水明の地でというお話がございました。私も賛成です。しかし現実は、私は静岡県民ですから、静岡県で、東部と中部と西部と、大きく分けて三つの地域に分かれます。今高度情報化社会の頭脳がコングレスしているのはどこかといえば、局長御承知のように西部であり東部です。西部のテクノがあり頭脳立地がありますように、西部にはそれだけの企業群もあります。また東部は、御殿場、小山、裾野、あの辺に、テクノベルトと言われるほど外資系の企業がべったり張りついています。しかし東部の場合は、地元とのつながりというのが西部ほど積極的ではないと思うのです。  今こういう東、中、西と静岡県を例えにとれば、地元はこうやってよくわかるわけですから、ここでいったときに、確かに山紫水明の地でシステムエンジニアがシステムをつくりたいという発想はわかるわけです。ただ、これは労働省企業やあるいは個人に対して、間接的でございますけれども、助成をするというような仕組みになっておりますし、やはりこのソフトクライシスにそれだけの人材を確保しなきゃならない、あるいはそれだけの人材を供給する講師を派遣しなきゃならない。そうなってまいりますと、講師がそんな山紫水明の地まで行けるかどうか。  今、有能なシステムエンジニアというのは、そんなに数多く一企業の中にいるとは私は考えておりません。今、毎年理工系の学生が卒業しますけれども、ほとんど大手の情報産業社会で吸収してしまいます。中小企業ではシステムエンジニアを育てるのに非常に困難な状態にあるわけです。今度の政策のコンセプトは、やはりそういうことを解消するために、地域にしかるべきセンターをつくり、そこで、有能な教授陣を配置をして、中小企業やあるいはその地域の産業のニーズにこたえられるような、もちろんプログラマーも含めて、いわゆるシステムエンジニアを教育していこうということだと思うのです。  特に、局長御承知のように、オンラインシステムなどというのは、チームで一つ計画計画していくわけです。そのチームの教育の問題もあると思うのです。  また、人材の確保のために、毎年一カ所で四十名程度、それは前後するかもしれません、六カ所で二百四十名、それが三カ月のサイクルですから四回あるわけですね。そういうふうにやってみますと、例えば十年間で何名だろう。これはもう局長も簡単に頭の中で計算なさるように、この九十七万という膨大な数に対しては、これだけでは非常に大変だなという感じもするわけでございます。  まず第一点として、このセンターをつくるとなれば、いわゆる産業のベースの部分で、そこに人を派遣して、三カ月間、旅費を出して行くわけですから、それだけの産業の集積の基盤がなきゃならない。それだけの私は勉強したいという人材がいなきゃならない。また、そういう人に対して指導できる指導者がいなきゃならない。簡単にできるものじゃないと私は認識しておるのです。  私の認識が間違いであれば、ここで訂正していただきたいし、いわゆる各企業から人材を派遣するにしても、例えば富士通にしても日電にしても、有能なシステムエンジニアというのは、相当な高給取りであり、あるいは自分で独立できるほどの才能を持っています。そういう人間が例えば何時間かを割いて三カ月間だけそこへ行って指導しなさい、これは企業にとって、あるいは学校から教授を派遣するにしても、これは後できょうは文部省を呼んでいますから聞きますけれども、文部省も学部の増設をどんどん今やっているのです。優秀な教授を集められるか、これは大変な問題だと私は思うのです。建物をつくって、教室はつくって定員は増にしたけれども、優秀な先生が来なかったら、三十年前や十年前や五年前の古びたノートでやられたのでは、優秀なシステムエンジニアは育たない。そして大学は将来のために人材を育成するのですけれども、その教授を集めるのも大変だろうと私は思うのです。  そうしますと、このセンター設置するというところの一番の政策の根っこの考え方を明確に、私は先ほど来の論議の中でちょっと疑義を感じておりますので、ここでもう一度きちんとしたセンター設置の、何と何と何をもとにして考えて六カ所となさったのか、それを明確に御答弁いただきたいのですが。
  59. 棚橋祐治

    棚橋(祐)政府委員 事業を推進する際に、当該地域において事業を行うことが我が国のソフトウエア供給力強化にとって効果的であり、かつこの事業の採算性を見込むに足る利用が期待できるということでないと、おっしゃるように、せっかく第三セクター設置しても、これが所期の目的は確保できない事態になることは御指摘のとおりでございます。この趣旨で、事業計画が提出されました段階で、その地域のプログラム業務従事者数がどのくらいあるか、ソフトウエア業を営む事業者数がどのくらいか、電子計算機を利用する産業、これはユーザー産業等でございますが、この集積の程度がどのくらいか、そういうことを勘案して事業の推進に適する地域であるかを確認することが先決であることは、全く御指摘のとおりでございます。ただ、私が山紫水明と申し上げましたのは、東京二十三区と比べれば地方において山あり川あり、しかし山や川だけではもちろんございませんので、そこに今申し上げましたようなこのセンター目的を達成できるある程度の、あるいは相当程度の潜在的な諸要素がなければいけないということは、まことに御指摘のとおりでございますので、ここでその基準を明確に申し上げておきたいと思います。  ただ、具体的な基準、さらに突っ込んでいってどういうことにするかということにつきましては、現在まだ法律案を御審議中でございますが、関係部内で検討中でございますけれども、例えば人材育成事業を行いますセンターにおいては、我が国のソフトウエアクライシスの解消に効果的な役割を果たすためには、年間最低百人程度、先ほど四十人クラスで四回転ですから、計算上は平均的に一センターで百六十人SEを育成することが期待されておりますけれども、少なくとも百人の年間の利用が継続的に見込まれるような地域、先ほどの諸要素から見てそういう地域でなければいけない、このように考えております。  いずれにいたしましても、先ほど申し上げました重要な要素を前提にいたしまして、具体的基準については、法案の成立を待ちまして、関係省庁の御意見を調整いたしながら、基本的な指針をつくっていきたいと考えているわけでございます。  なお、年間六カ所で五年間三十カ所つくって、それを十年間で、三十カ所というのは横ばいとして、やっていって、SEがどのくらい育成されるかということにつきましては、不十分ではないかという御指摘がございましょう。これは先ほども別の先生が御指摘でございましたが、一応私どもの予測では、三十カ所に限定されましても、大体百五十人程度のSEを毎年育成できるとすると、十年間の累積で約四万五千人は養成できるであろうと期待をいたしておりまして、その四万五千人の方々が累次各企業において先生先生になって、波及的に五名、これも計算上でございますが、五名のSEを養成をするということによって、二十二、三万人のSEがさらに波及的な効果として十年間に育成されるであろう。本来ここで育成された四万数千人と二十二、三万人と合わせまして三十万に近いSEが養成されるものと期待し、そのための努力をしていきたいと考えておるわけでございます。
  60. 薮仲義彦

    薮仲委員 重ねてお伺いしますけれども、さっきの御答弁の中で、システムエンジニアが四十七万ほどというお話もなさっておられました。今三十万というと十七万不足する。それでも十七万足りないわけですが、この十七万の補てんは、例えばどういうような認識でいらっしゃるかということが一つと、今の御答弁の中で、それだけの頭脳の集積したいわゆる産業基盤のあるところが必要であるというお話がありました。そうしますと、通産省は、この前の法案で、私も審議に参加させていただきましたけれども、頭脳立地法が成立し、全国で四カ所承認しているわけです。こういう頭脳立地のかかっているところ、あるいはテクノの網のかかっているところ、こういうところは相当有力な候補地と理解してよろしいんですか。
  61. 棚橋祐治

    棚橋(祐)政府委員 先ほど申し上げました二〇〇〇年時点でのソフトウエア需給予測につきましては、あるいは私が舌足らずであったかもしれませんが、二〇〇〇年時点での需要は八十三万人想定をされまして、需給ギャップ不足分が四十二万人と申し上げたつもりでございます。この四十二万人のうちでシグマシステムによる解消効果が十一万人、一万人というのはちょっと細かい単位で計算しておりますが、計量分析では十一万人解消できるであろう。三十一万人のシステムエンジニア不足が二〇〇〇年時点で予測されますから、この三十万人強の人たちを、先ほど申し上げましたようにこの法律案成立の暁には十カ年でSEについては解消できるんではないか、こういう収支バランスを考えておるわけでございます。  それから、頭脳立地の対象地域と今回の我々のソフトウエア人材育成対策地域との関係でございますけれども、それぞれ対象とする事業目的、内容が異なるものでありまして、御承知のように頭脳立地法は極めて知識集約的な研究所等を地域に定着させて、それを核として技術開発基準を高めていこうという見地でございますが、我々はSE等の人材育成中心に考えておる。そういうことで目的、内容が異なるものでございます。しかしながら、双方の法律の対象の地域が重なるということはあり得るわけでございまして、そのような場合には、相互に緊密な連携をとりながら、双方の対策の実効が上がるように努めてまいりたいと思います。  地域が重複しまして、例えば頭脳立地の中核体と我々のソフトウエア人材育成の中核体とが同じ主体でいいのかどうかというような議論がもし出てきた場合、その場合についての検討は今後にまちたいと思いますが、現在の私の段階では、目的も違いますし、それから、これだけ重要なことを一つの主体で、株式会社でございますから経理区分もなかなかいろいろ制約がございますし、それをマネージする人材の問題もございますので、果たしてこれだけ重要な業務が二つ同じ主体で円滑に行われるどうか、原則論ではございますが、私はなかなか難しい面もあろうかと思います。ただ、地方自治体あるいは地方業界等の負担を軽減しなければいけない、そういう要請もまた他方ございましょうから、原則論は、私は、二つの事業の一体化、一緒にやるということはなかなか難しいと思いますが、なお地域の事情等をよく伺って検討してまいりたい、このように考えております。
  62. 薮仲義彦

    薮仲委員 もっとほかに聞きたいことがたくさんありますから、数字の問題とかこの問題は後にして、もうちょっとセンターの内容について立ち入ってお伺いしたいのですが、センターのいわゆる指導者、これは、ここへ集まってくる人は特種もしくは一種の資格を持った方々が集まっていらっしゃると思うのです。そうしますと、企業で言えば二年、三年、四年と現場で勉強した方々が、そこへ会社から派遣されてお集まりになってくる。そういう方を数えるということは、やはり指導者の指導者といいますか、先生先生と言うとちょっと語弊がありますけれども、相当な、一歩進んだレベルの方が指導に当たらなければならない。大体一センター何名ぐらいで、しかも教えるということは、これは通常の場合は、文部省だって教えるというといろいろなことを言いますけれども、文部省の話は置いておいて、一つのことを教えようとすると、そこで一体何を教えるか、これは非常に重要だと私は思うのです。そういう、先生が何を教えるかという問題、その教材は一体どこでつくられるのか。いわゆる先生先生を選ぶ条件、どういうことを基準に選考するのか。特に、こういう方の処遇等については非常に思い切ったことをしなければ、いい先生は集まってこないのではないかという考えもします。この辺のところは、どうお考えですか、講師の条件。
  63. 棚橋祐治

    棚橋(祐)政府委員 御指摘のように、人材育成事業の高度な教師となるインストラクターの確保が一番重要であるということは当然でございます。我々といたしましては、具体的には、長い蓄積を持っております情報処理振興事業協会、ここには優秀なインストラクターについてのいろいろな情報の蓄積等がございますので、このIPAと略称されております協会から地域センターヘインストラクターの確保についてのいろいろな助言やあっせんをまず行いたいと思います。それから、この地域センターに深いかかわりを持たれます地域のコンピューターメーカーや情報サービス事業者に対しても、インストラクターの派遣の要請をいろいろお願いしていきたいと考えておりますが、通産省としましては、この地域ソフトセンターのインストラクターの養成に今年秋から並行して積極的に取り組んでまいりたいと考えておりまして、既に、先ほども申し上げました情報処理技術者試験において特種あるいは一種の情報処理の資格を得ている非常に高度な技術を持っている方々を対象といたしまして、研修の方法論をいろいろ教える、これは一回一週間から十日程度集中的に二、三十名程度の単位で全国五、六カ所で行いたいと考えております。  これは、特に地域ソフトウエア開発センター、略称ですが、そのセンターの指定が行われた地域においてこうした高度の研修を行って、地域センターに必要なインストラクター、我々としましては五、六名程度を想定いたしておりますが、先ほども申し上げました情報学校構想等予算の中でこの手当てをいたしまして、早急に、平成元年度六カ所のセンター指定と同時に、あるいはそれに少し先駆けて秋口からインストラクターの強力な養成を行っていきたい、このように考えておりまして、これによって地域センターにおける人材育成のインストラクターは確保できるのではないか、このように考えておる次第でございます。
  64. 薮仲義彦

    薮仲委員 局長、時間が余りありませんから、すぱすぱとお答えいただいた方が、たくさん聞きたいことがありますので、余りかたくならずに楽に答えてください。私は素人だけれども局長は専門なんですから、もっとさっと答えていただいて結構です、ここでどうのこうのということを申し上げるわけじゃありませんけれども。  特にここで局長にお伺いしたいのは、我々がコンピューターについていろいろな方に聞いていきますと、世界においても国内においても、特にハードのメーカー側の非常に激しいシェア争いの中でコンピューターは育ってきているわけです。システムエンジニアもそういう中におるわけでございまして、例えば、御承知のように世界で言えばIBM、日本の国で言えば日電がガリバー型のあるいはシェアを持っていると言われる分野もあるわけでございます。そうなってまいりますと、どうしても、例えば参加企業があるわけでございますが、今の局長の御答弁を要約すると、企業から優秀な方が来てくださって、その方に、こういう内容を教えてくださいよという、いわゆる通産省流に言うとハウ・ツー・ティーチを教えて、それで集まってきた生徒に教えるということだと思うのです。  そこで、私が非常に心配しますのは、先ほど来問題になっている機種。自分は例えば富士通なら富士通、日本電気なら日本電気でシステムエンジニアとしていろいろなことをやってきた。そうすると、概念設計やいろいろな考え方というのは、そのコンピューターに合ったシステムを構築しなければならないということが頭の中にあるわけです。ここでは一体どういう内容で教えられるのか。  それから、そのセンターにはどういう機器をお入れになるのか。私は、これはある意味ではニュートラルであってほしいし、それによって将来の日本のコンピューターというものがどちらかにシフトされるということがないように、通産省は十分お考えであると思うけれども先生が何を教材にして、どういう機器をそこに設置して講義をするかによって非常に影響される。そういう意味で、ここでやられることは、メーカー側の利害がぶつかるとかそんなことは置いておいて、本当にニュートラルで、優秀なシステムエンジニアがその中で育っていくような、そういう教育環境であってほしいと私は思うわけです。しかし、それが余り純粋培養であってどうのこうのという、そんなことが現在の産業社会の中であり得ないことはわかっておりますが、少なくともある程度ニュートラルであるかなという感じ通産省としてはお考えだろうと私は思うのでございますが、この辺についてごく簡単にお答えください。     〔委員長退席、浦野委員長代理着席〕
  65. 棚橋祐治

    棚橋(祐)政府委員 お答えします。  薮仲先生は特に専門家でいらっしゃるので、緊張してお答えしているわけでございます。  このシステムエンジニアを対象として教える場合ですが、システムエンジニアの場合には、これは釈迦に説法でございますが、ソフトウエア設計作業等の上流分野のものでございますから、言うなればハード、ソフトやOSの違いは余り影響がないと思いますが、今回の教育は、シグマシステムにおいて異なる機種のハードウエアやOSを容易に接続してソフトウエアをやりとりできる工夫が技術的に施されておりまして、不整合の面の懸念は少ないかと思っております。
  66. 薮仲義彦

    薮仲委員 導入する機器はどういう機器を考えられるのですか。各センターで自由ですか。それとも、こういうものを導入しなさいと言いますか。
  67. 棚橋祐治

    棚橋(祐)政府委員 各社が共同開発しておりますシグマをベースにいたしますが、具体的な機種については、参加をしております十二の企業の自主的な判断でそれぞれの機種を使っていただきます。
  68. 薮仲義彦

    薮仲委員 余りこのことで時間を使っているとあれですから飛ばしますけれども、大事な点だけちょっとお伺いしておきます。  今シグマとおっしゃいました。これは基本ソフトの部分はUNIXを使っていらっしゃるわけでございます。私もいろいろなコンピューターメーカーの方と懇談をする機会があるわけでございますけれども、このUNIXについて一部で言われていることを率直に申し上げますと、私もここで確認の意味質問するわけですが、今シグマ計画の中で使っているソフトというものはUNIXの中のシステムV、リリース2というのですが、これを基本にしております。UNIXもどんどん技術の革新が進んで、今リリース4の段階です。このリリース2というのは、性能としては前世代とは言いませんけれどもちょっと前の機種でございます、こういう言い方をされております。むしろ今はリリース4にシフトしているのに、こういう古い機種でいかがなものですかというような御意見もございますし、中には、もっとすぐれているBSDという基本ソフトを使った方が、改良されたBSDを使った方がはるかに処理能力がすぐれておりますよ、もちろんワークステーションですから、そういう意味でこの方がいいですよ、こういう意見があるわけでございます。何か古い機械を持ち込まれるという意見が一部言われかねない空気にございますけれども、その辺はいかがでございますか。
  69. 棚橋祐治

    棚橋(祐)政府委員 シグマシステムのOSは、現在世界の主流になっておりますUNIX・OSをベースにしておりますことは御指摘のとおりでございます。このUNIXは利用可能な最新のものではありますが、御指摘のように、R4ですか、秋からUNIXの新しいバージョンが発表されることとなっておりまして、シグマシステムとしましても、こうした日進月歩の技術的な進歩、世界的な進歩に合わせまして、さらにシグマのOSを高度化させるということで考えておりまして、シグマシステムが時代の要請に取り残されないように十分考えていく所存でございます。
  70. 薮仲義彦

    薮仲委員 もう一度、このセンターの、今度は教えられる側の立場で、簡単にお答えいただきたいのですが、生徒の側ですね、生徒の側に対する教則本、いわゆる三カ月間のプログラム、きちんとした形のシステムエンジニアを教育しようという教則ですね、いわゆる教授内容といいますか、教える内容は、どこで、だれが、どのようにつくられますか。
  71. 棚橋祐治

    棚橋(祐)政府委員 基本的には今回の事業中心になります情報処理振興事業協会、IPAにおいて、指導の共通する基本的な部分あるいはインストラクターの教育の基準的な方針、こういうものについて、支援体制としてセンターにいろいろアドバイスを行うわけでございますが、やはり主体的には、各センターにおける特色もございましょうし、そこにおいていろいろの御意見でこれを進めていく所存でございます。
  72. 薮仲義彦

    薮仲委員 先ほど来システムエンジニアが論議になっているわけでございますが、プログラマーと違ってシステムエンジニアというのは、いわゆる高度のレベルをその人に要求されると私は思うのです。例えば私が銀行のオンラインをつくろう、あるいは商社のオンラインをつくろうというと、商社なら商社あるいは銀行なら銀行の金融関係に対する業務知識をしっかり持っておりませんと、向こうの要望に対してこたえられない。あるいは語学力を要求されてみたり、いろいろな意味で、その人の力、システムエンジニアの力によって、すばらしいシステムができるかできないか、これは使いやすくなるか使いにくくなるか、相当確度の高いといいますか、要素というのはあると思うのですが、例えば、このセンターをおつくりになって、そこから卒業してくるシステムエンジニアに対して、少なくとも、卒業したときに、これじゃしようがないなと言われたのでは、これは最初からけつまずくわけです。いわゆるシステムエンジニアを養成するということに対しては、お客様のいろいろな要望やなんかをきちんと聞いて、それを組み立てていくわけですから、プログラマーとしての基礎的な知識も必要でしょうし、あらゆる分野の対応が、解析力がなければならないと思うのですが、本当にそこで育ってくる例えばシステムエンジニアの資質について、何かこのくらいはというようなお考えはあるのですか。
  73. 棚橋祐治

    棚橋(祐)政府委員 おっしゃるように、システムエンジニアは、プログラマーと違いまして、単に情報化の知識がすぐれておるというだけではなくて、例えば銀行のオンラインをつくるという場合のシステムエンジニアは、銀行の業務に精通をしていなければいけない。特に、例えば地方であります場合には、地方銀行において、どういうニーズがあって、どういうふうにプログラムを組んでいくか。産業界においても、鉄鋼産業の場合にどうするか。いろいろの企業地域の特性に応じての対策が十分必要であると思いますが、私どもは、先ほど来申し上げておりますように、例えば地方銀行から優秀な人をシステムエンジニアの卵として派遣してもらって、そこで高度の育成をして、そういう人たちが企業に戻って、その当該企業のニーズに応じた、例えば第二次オンライン、第三次オンラインを構築していくということになることを期待しておりまして、これはもう実際そういう実践の場で生かせるような高度の教育を即戦力としてつくっていく、その人がまた企業に戻って周りの人を有能なSEに育てていくという、こういうような波及効果を期待しているわけでございます。
  74. 薮仲義彦

    薮仲委員 私はなぜこれをくどく言うかというと、これからの日本が高度情報化社会の中で、先ほど大臣に御答弁いただいた、我々とのいわゆるマン・マシン・インターフェースを含めた本当の快適な利便性の高い社会を構築していく、こういう中でシステムエンジニアのよしあしというのは非常に重要な施策中心でございますので、どうか、このスタートなさる、六カ所ですか、どこだと聞くと、どうせお答えにならないでしょうから、やめておきますけれども、一体どこへっくるのかということを本当は聞いて、そこはだめだよ、こうだと言いたいんです。私は、そんなところへつくってどうするのと文句を言いたいのはここまで出かかっているのですけれども、何回聞いたって言わないでしょうから、やめておきますけれども、私がこうやって質問している中で、このセンターに対しての非常に重要な拠点であるという認識を持って私はお話ししておるわけですから、後で、何だ、こんなところにつくってと言われないように、しっかりとした構想をお持ちでしょうから、私は期待しておりますし、すばらしいものをつくってほしいという願いを込めておるわけでございますので、よろしくお願いをしたいわけでございます。  そこで、これは局長の御答弁の中で、私が知っている認識とはちょっと引っかかるものですから、これは決してどうのこうのということじゃなくて、お答えをいただきたい。文部省を呼んであるものですから、これから文部省に聞くものですから、ちょっと認識で、言葉の使い方で、誤解があるといけませんので。  我々が認識しているのは、産構審の答申があったときに、通産省と文部省の間で情報学校構想について非常に意見がかみ合わなかった。例えば我々が地元へ大学を設置しようと思いますと、いわゆる学校教育法にがちっとはめられて、いろいろなことをやられるわけです。大学をつくるということについて文部省さんは非常に厳格であって、あだやおろそかにつくらせてはいただけないわけです。ただ、先ほど来何回か、情報学校構想を持っていらっしゃる、こういう御発言を質疑の中で伺っておりまして、情報学校ということは、通産省としては考え方としては持つけれども、表現の中では少し変えようというような合意が文部省との中ではあったような気がするのでございますが、やはり通産省としては情報学校設置するという、言葉の上が非常に問題なんですけれども、文部省とこれは引っかかるわけでありますけれども、その辺のところの正確な認識をちょっとここで教えていただけますか。
  75. 棚橋祐治

    棚橋(祐)政府委員 御指摘のように、人材育成については、いわゆる学校教育法に基づきます正規の大学におきます電子関係の専門家の育成、これを大幅に拡充することが望ましいことでございまして、文部省ともいろいろお願いをしたり話し合いをしておりますが、文部省も産業構造の変化に応じて教育構造の変化については昨今特に積極的にお取り組みであることは、私たちも大変高く評価しておるわけでございます。しかし、それだけでは、先ほど来申し上げておりますように、専門家の数が非常に足らないものですから、私どもは、専修学校等である程度のインストラクターその他のレベルを持っておる学校を認定いたしまして、いわゆる情報学校という看板を掲げていただいて、そこで意欲的な若者、情報関係に従事したい青年を技術者として育成をしていく、言うなれば専門学校程度の知識にまでぜひ持っていきたいということで鋭意これをやっておりまして、現在約百三十校を地方に指定をしておりまして、手前みそでございますが、プログラマーの育成を中心に大変大きな成果を上げつつあるものと考えております。  それから、もう一つは、先ほど来薮仲先生も御指摘のように、言うまでもなく企業内において優秀なSE等を育成していく努力を当然やっていただかなければいけない。そのための助力をするというのが今回の法案のねらいでございまして、こうした諸般の対策を講じて、教育面においても大いに実を上げていきたいと考えておりますが、情報学校構想については、今申し上げたような観点で行っているわけでございます。     〔浦野委員長代理退席、委員長着席〕
  76. 薮仲義彦

    薮仲委員 念のためにあれしますと、その専修学校の中に情報学校という看板が、名称が定着しているわけですね。それでよろしいわけですね。
  77. 棚橋祐治

    棚橋(祐)政府委員 文部省とは、そのお話し合いをして、御理解をいただいているものと思っておりますけれども、いわゆる情報学校というのは通称でございまして、情報化人材対策連携機関という正式な名称になっているわけでございます。
  78. 薮仲義彦

    薮仲委員 これはこの辺でやめておきます。  ちょっとシグマ計画について局長にお伺いしたいのは、先ほど局長の御答弁の中で、いよいよプロトタイプ、これは基本的といいますか試験機といいますか、そういう段階に入りました。それからいよいよ実践の段階に入っていくと思うのでございますけれども、これによって、先ほど来叫ばれておるソフトウェアクライシスに対する人材不足分に対してどの程度機械が取ってかわろうと考えていらっしゃるのか、これが一つ。  それから、これはちょっとシグマ計画とは違いますけれども、私は、これからの通産行政の中で、こういう問題を逆の方から解決するのは、いわゆるソフトについても、自分に合ったソフトをつくってください、こういうパーソナルな、自分に合ったという感覚ではなくして、標準化されているようなパッケージ型のソフトをお使いになったらどうですか、こういう使い勝手のいいのがございますよといって、そういうパッケージ型のソフトをこれからもっともっと民間や個人も使っていけるような対応を考えることが、このソフトウエアのいわゆるクライシスと言われることの解消には、逆の意味で役に立つのじゃないかと思いますが、この二点、いかがですか。
  79. 棚橋祐治

    棚橋(祐)政府委員 まず最初の御質問人材確保の需給バランスでございますが、一九八五年ではシステムエンジニアが十七万人、プログラマーが二十六万人で四十三万人、これが二〇〇〇年時点需要システムエンジニアが八十三万人、プログラマーが百三十二万人、合計で二百十五万人で、従来の施策の延長ではシステムエンジニアが四十一万人、プログラマーが七十七万人、合計百十八万人で、システムエンジニアが四十二万人、プログラマーが五十五万人、合計九十七万人の不足になる。これを我々の対策別に解消の計画を申し上げれば、プログラマーにつきましては、需給ギャップ五十五万人のうちで、シグマによる効果が一番大きくて四十五万人、情報学校等の構想で十万人で、大体解消できるものと期待しておりますが、システムエンジニアについては、需給ギャップ四十二万人のうちで、シグマ効果は十一万人、情報学校等ではこれは高度な教育ができませんので、SEは解消できない。つまりシグマによる効果だけで、三十一万人の不足を生ずるので、先ほど来申し上げました三十万人近い対策をこの法案成立の暁には十年間で期待をしたい、こういう需給バランスでございます。  それからもう一つの御質問の、日本ではどうも汎用プログラムの活用が非常におくれているのではないかというのが、現実問題として御指摘のように大変大きな問題でございまして、例えば、必ずしも適当ではないかもしれませんが、洋服で言うと、もう今やデパートには大体の体型に合う既製品があるわけでございますけれども日本人の方々は中には既製品じゃなくて全部仕立ておろしじゃないといけない。例えば、差しさわりがあるかもしれませんが、銀行のオンラインシステムの開発も、有力銀行がこぞって膨大なプログラマーシステムエンジニアを投入し、かつ相当の金額をそれぞれがお出しになって、なおかつ問題がある、完成をしていないというようなところもございますし、地方銀行、相互銀行においては、資金力、人材確保の見地からいって、その競争は大変に問題になっているわけでございまして、これは一つのプログラム開発の大きなネックになっておるわけでございます。そういう点で、我々としましては、既に汎用プログラムの促進ということで情報処理振興事業協会は大変しにせで、十年来その施策を展開しておりますが、徐々に汎用プログラムも上がってきておりますが、まだ全体のプログラムの一割程度でございます。アメリカにおいては六割が汎用プログラムと普及しておりまして、それを柔軟にそれぞれの目的にリアレンジしていくということで対応している。これが日本ほどソフトウエアクライシス、プログラムの大幅な不足、いいプログラムを確保するには膨大な人員とお金をかけても数年かかるというようなことになっていないアメリカの実情であろうかと思いますので、汎用プログラムの普及についても各般の対策を大いに講じてきておるところでありますし、これからも強化をしていきたいと考えておるわけでございます。
  80. 薮仲義彦

    薮仲委員 では、通産省はまた後ほどお伺いしますけれども、ここでちょっと文部省にお伺いしたいわけでございますが、先ほど来大臣局長が御答弁ございましたように、高度情報化社会への対応というのは日本の国にとって今非常に重要な政策課題であるということは認識の一致するところであろうと思うのでございます。しかし、我々の世代というのは、子供のときからコンピューターと接する機会が非常に少なかったものですから、先ほどお話ししたように、キーボード一つたたくのも非常に違和感といいますか疎外感を感ずるわけでございますが、さはさりながら、これからの二十一世紀を担っていくかわいい子供たちは、そういうことではなくて、ファミコンといいますか、ゲームソフトの中で、コンピューターに対して何するものぞとどんどん飛び込んできていらっしゃるわけでございます。そうしますと、学校教育というのは、こういう言い方は余りよろしくありませんけれども、とかく長いスパンで物を見ますし、こういう時代の急変に文部省が対応するのは非常に困難な面もおありかと察するところでございますが、この点を徐々にお伺いしたいわけでございます。  そうすると、まず我々が子供たちに、例えば小学校の子供たちに、どの程度のことを文部省では考えていらっしゃるのかな。子供たちは自分たちでコンピューターにはなれ親しんでいるわけでございますから、教育現場の中でこれをどう取り込んでいくか、これは非常に重要な課題でもありますし、それから中学校では、高等学校では、先ほど来問題になった専門あるいは専修学校の中でどうするかということは非常に大事ですし、大学の理工系の学生をどうするか等々、これは通産省の行政がございますが、それ以上に国民的な基盤の中で底上げするのは、文部省の二十一世紀へ立ち向かっていくといいますか、それに対応できるような教育の確立が非常に大事だと私は思うのです。しかし、現在までの文部省の教育の経験の中で、我々がそうであったように、例えば文部省の今行政を預かっている、きょうお見えの課長さん方の中で、コンピューターについては自分もオペレートできますよというくらいの方が数多くいらっしゃると思いますが、意外と少ないのかなという、これはあえて聞きませんし、そんな必要もございませんが、我々の世代はそういうところから非常に疎外感を持っているわけでございます。しかし、では何をどうするのかということについては、これは非常に重要なことであって、御専門であっても電子機器については余り理解が深まらない等々があると思うのでございますが、聞き及ぶところ、いわゆるCEC、この中でどういうことを教えていったらいいのかということをいろいろ研究していらっしゃるようですが、現在のCECの進捗状況、そこで何がわかって、それが現在の学校教育の中に生かされている部分があるかどうか、その辺のところをお伺いしたいのです。
  81. 辻村哲夫

    ○辻村説明員 小中高等学校段階で今どのような現状にあるかということと、それからCECがどのようなかかわりを持つかというお尋ねかと思いますが、昨年三月末現在の資料では、全国に公立の小中高等学校等四万校余りございますが、総数で十万台くらいのコンピューターが学校に導入されておりまして、小中高によってばらつきがございますけれども、おおむね三、四校に一校の割合でコンピューターが入っているということでございます。学校段階によってそれぞれ中身は違いますが、小学校、中学校段階では、なれ親しませるあるいはコンピューターを使ってシミュレーションを見せるあるいはドリルをさせるというような学習指導上の改善というようなことでやっておりまして、高等学校になりますと、教科としてコンピューターの中身あるいはコンピューターの機能等についての専門的な教育をする、こういうような現状でございます。今後は、これをさらにレベルアップさせて、中学校段階でも、選択教科ではありますけれども、教科としてこのコンピューターについて教えていこうというような方向に文部省も踏み出す。それから、高等学校段階でも、従来は職業高校中心でしたけれども、普通科高校におきましても情報というようなものを教科として取り組んでいくというような、新しい学習指導要領の改定を今回行ったところでございます。  それから、CECでございますが、CECは、通産省と文部省との共管の法人としてスタートしてあるわけでございますが、我々としては、この小中高校の段階でのコンピューターの普及ということになりますと、今はメーカーによってさまざまに操作方法といいましょうか、それが違うということで、この研究をやること一つにつきましても不便を来している。それから、子供たちの間の学習という面でも不便があるということで、できる限り、互換性と申しましょうか、そういうようなものを持って、メーカーがこぞって子供たちにふさわしいコンピューターを開発していただくということでお願いをしておるわけでございまして、現在精力的な研究が続けられているというふうに理解しておりますが、それが成果学校に還元していただきますれば、学校教育におきますコンピューター教育の普及という点で大変力があるであろうというふうに考えております。学校現場とCECとの関係ということになりますと、我々は、ユーザーとして、CECにそうしたすぐれた機能を持ったコンピューターを開発していただく、そういうお願いをする立場であるということでございます。
  82. 薮仲義彦

    薮仲委員 もう一点は、大学教育の方でやはり優秀な理工系の生徒の方を社会に送り出していただくということが非常に大事だと思うのですが、そちらの方はどうなっていますか。
  83. 草原克豪

    ○草原説明員 お尋ねの大学等における情報技術者計画的な養成についてでありますけれども、これについては、文部省の中に、臨教審の答申を受けて教育改革実施本部を設けまして、その中の情報化専門部会において検討を進め、昨年の六月に中間的な取りまとめを行ったところでございます。この中間まとめにおきましては、情報技術者の養成目標と、それから、それを達成するための具体的な施策についての提言をしております。  養成目標につきましては、情報技術者のとらえ方については、ソフトウエア技術者あるいはハードウェア技術者、こういうとらえ方もございましょうし、あるいは高度の研究開発業務に従事するような技術者、それから一般的な利活用を主とするような技術者等の分け方もあると思います。この中間まとめにおいては、それらをすべて視野に入れまして、広い意味での情報技術者というとらえ方をいたしております。  このようなとらえ方をいたしまして、二〇〇〇年に必要とされる情報技術者の数は二百三十万ないし三百万人ぐらいであろう、そのうち学校教育機関で養成すべき技術者の数というのは百五十万ないし二百二十五万人程度、こういうふうに想定をいたしまして、大学等における関連学科の定員増を図る必要があるとしているわけでございます。  また、このような量的な整備のほかに、質の充実ということが極めて重要でございます。このために、大学院の充実強化、教育内容の改善、すぐれた教員の確保、社会人の再教育、これらを推進する必要があるということを言っておりますし、また、大学はもとより、小中高等学校レベルにおける情報処理教育を含めた一般的な情報処理教育の充実強化を図る必要がある、こう言っているわけでございます。  文部省では、この中間まとめの趣旨に沿って、必要な施策を講じているところでございます。
  84. 薮仲義彦

    薮仲委員 ここは商工委員会でございますから、わざわざおいでいただいて大変恐縮でございますが、やはり日本の将来のために、今通産省もこの問題は大臣を初め本気になって、二十一世紀に向かって政策を実行しよう。やはりそのベースの部分は、きょうお見えの文部省の皆さん方のところで、すばらしい子供さんを、また社会に適応するような子供さんを育てていただくととが非常に重要でございますので、きょうはあえておいでいただいたわけでございますが、これはちょっと余り申し上げるのもじくじたるもので、しかしこれは残念だなと思いながら申し上げるのを、気にしないで、多少は心にとめて、聞いておいていただきたいのです。  いわゆる小学校ではコンピューターが学校数に対して一三・五%、中学校は三五・五%、高校へいきますと九〇%を超えているわけでございますし、私はやはり小学校、中学校の分野でこれはもう少し努力をしてくださるのだなと思っておりますし、ソフトをお持ちになっておる本数も余り多くはないのかなという感じはいたします。これはまた努力をしてくださると信じております。  ただ、コンピューターの設置場所について、これは意見の分かれるところだと思いますけれども、コンピューターの機器そのものが非常に精度の高いものであるということで、やむを得ない面もあろうかと思いますが、小学校、中学校というのは、やはりそのほとんどが、七割以上が職員室に置いてあるわけですね。僕は余りいい子供じゃなかったですから、職員室に呼ばれるのは大嫌いで、怒られるときぐらいに呼ばれるだけで、余りあんなところは近寄りたくない、遊んでいた方がよっぽどいい子供でした。でも、今のコンピューターは七割ぐらいあそこに入っているわけでございまして、やはり小学校、中学校は、もう少し特別教室やなんかの中で専門の先生がいて、もっと親しめるような雰囲気の中で使わせていただくことは教育上まずいのかなという考えは持っております。これは意見で、御答弁は求めませんけれども、そういうことも我々の立場から、もっともっと子供にまずなれ親しんでもらう、接してもらうという方向の方がいいのかなと、これは希望的意見として、聞きおく程度で結構でございます。  これはちょっとお答えいただきたいのは、今子供たちがやっていらっしゃるファミコンですね。もう物すごい台数が入っておりますが、あそこに出てくるのは、ほとんどゲームでございますが、最近有名になったのはドラゴンクエストⅢなんかありますけれども、最近のコンピューターも八ビットから十六ビット程度でやるものですから、非常にスピードも速い。しかし、あそこで出てくる物語は、どちらかというと、力をだんだんつけていって敵を倒していく。敵を倒すというのですね。あるときにはお金を獲得して次の新しい武器をつけていこうというのがあそこの中で物語として出ているわけです。  私は、あれは勇気やあるいは強くなっていこうという、人生経験の中では非常に大事なことだと思うのです。私は、あのゲームそのものがどうのじゃなくて、文部省もこれからソフトウエアの中でいろいろなことをもっと、真剣にいろいろなことを研究していらっしゃると思うのですけれども、例えば僕なんか昔は、科目が好きというんじゃなくて、先生が好きで小学校のときは数学が好きになった。あるいは音楽が好きになったのは、先生が好きでそこに行ったわけです。嫌いな先生の学科なんというのは、逃げて歩いて、行きもしない。それは不得意学科になっていくわけです。しかし、その小学校、中学校のときに、不得意学科を克服するために、ゲーム感覚で、例えば数学の集合であるとか因数分解であるとか、そういうのがゲーム感覚で子供がわかったらば、先生に教えられるより子供は接しやすくなるのかなという面も感ずるわけです、教育効果として。  それから、さっきのゲームの中で、何を言いたいかというと、我々が人生を歩んできまして、必ずしも力をつけるだけが人生じゃないな、あるときには親切とか思いやりとか、そういう優しさが人生にどれだけ必要か、あるときには休養することも必要だし、お父さんやお母さんに相談することも必要だし、友達と相談したり、困ったときに家族でどうするとか、いろいろなことが人生の中には出てくると思うのです。  ところが、今、お父さん、お母さんは、あのゲームに参加できないのです。もうスピードが速くて、とてもじゃないけれどもついていけない。しかし、もしも教育効果の中で、ああいうゲーム感覚の中で、お父さん、お母さんも一緒に参加して、家族で思いやったり、あるいは人生にはいろいろな悲しみや苦しみがあるけれども、どうしようか。決して敵を倒すだけじゃないと思うのです。一本の草木だって、あるいはあそこに飛んでくるいろいろな怪獣や何かいるわけですけれども、やはり生命のとうとさ等を教えていくというようなこともあってしかるべきじゃないか。ああいうものを教育の中で取り込んでいっていただきたいと思うのでございますが、これはごく簡単にお答えいただけますか。
  85. 辻村哲夫

    ○辻村説明員 何分にも小中高等学校、特に小中学校段階でのコンピューター教育というのは、率直に申しまして緒についたばかりということでございます。  そこで、我々も力を入れておるわけでございますけれども、ただいま御指摘ソフトにつきましては、学校の現場の方からも、もっと子供に魅力のあるようなソフトというような御要望もあるわけでございます。そういう意味で、一つの親子ゲームというようなのは具体的な例示を挙げての御示唆だと思いますけれども、そういった御意見も承りながら、我々協力してソフト開発、改善につきましては努力をしていきたい、こういうふうに考えております。
  86. 薮仲義彦

    薮仲委員 それから、これもごく簡単にお答えいただきたいのですが、私は、坂村助教授ですか、TRONの概念というのはすばらしいなという感じはします。いわゆる我々が使いやすいコンピューターを新しくつくっていこう、しかしこれにはいろいろ意見も分かれておるわけで、教育課程の中でこのTRONのコンピューターをという意見もあったようでございますが、最近の新聞の中で、TRONについては、いやよ、だめよというような御意見もあったやに出ております。これは私は、確かにTRONというのは今までの過去の歴史を断ち切って日本の社会の中で新しいコンピューター社会を築いていこうということですから、非常に問題も多いかもしれません。でも、必ずしもそれがアメリカやあるいはヨーロッパが受け入れられないかといえば、これをアルファベット社会の中、英語社会の中だって生かせるかもしれない。ああいうすぐれた研究というものは、緒についた段階でしょうけれども、温かい意味であるいは日米貿易摩擦の焦点になるとかなんとかという問題よりも純粋な新しい社会の概念として育てていくということも私はあってしかるべきじゃないか。余り世間の顔色ばかり見るのではなくて、純粋な意味での使いやすさ、国民にあるいは地球上の全人類に合ったようなコンピューター社会があってもいいと私は思うわけです。これが一点。  それから、もう一つ、先ほども質問があった、いわゆる互換性の問題ですが、私は、互換性について、先ほどおっしゃられたように、各企業が自分たちの専門分野で先鋭的に技術を革新し、他との差別の中で、あそこの機械より私の機械の方がはるかに使いやすいです、ソフトもこうです、これが現在の技術革新を生んで、とこまで進んできたと思うのです。でも、それは、ある意味では非常にすぐれて大事なのですけれども、今度はユーザー側から見ると、機械は、ハードはどんなにいってもいい、あるいはオペレーションシステムはどのようになろうともいいから、持っているソフトに互換性を持たせてくれというのがユーザー側の気持ちだと思うのです。どんなパーソナルコンピューターであっても、自分の持っているソフトが使えろというような社会を構築していただけないかな、それをクリアしていただけないかな、互換性という問題で今度はユーザー側からもう少し考えていただけないかというのが二つ目でございます。  時間が参りましたから、いろいろ、労働省さん申しわけなかったのですが、後日またお伺いさせていただきますけれども労働省さんも頑張っていただいて、今の二つの点について局長からお答えいただいて、るる申し述べましたけれども、私は今度の法案によって二十一世紀に立ち向かう非常に重要な施策だと思いますので、大臣最後にこの法案に取り組む御決意を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  87. 棚橋祐治

    棚橋(祐)政府委員 TRONというのは非常に耳なれない言葉でございますので一言申し上げますと、言うなれば、一九九〇年代の先進的な技術水準を前提といたしまして、リアルタイム性にすぐれた新たなコンピューターの体系をつくり上げようとするプロジェクトでございまして、東大の坂村助教授が提唱された大変世界的にも反響を呼んだ仕様でございまして、コンピューター、特に教育用コンピューターの関係ではBTRON、それからNTTの通信技術についてはCTRON、まあ各分野においてTRON構想が提唱されておるわけでございます。  このTRONは、コンピューターとかマイクロプロセッサーを対象に、インターフェースレベルでの一連の標準仕様を作成するもので、それによって特定のハードウエアやソフトウエア開発するものではないわけでございまして、特徴としては先進性とかオープン性とか緩やかな標準性、こういうようなものがあるわけでございます。昨今、一部の新聞に、この教育用のコンピューターの開発にTRON、これはBTRONというのですが、この仕様が採用されるという方向で検討されてきたところ、これが失敗というか、うまくいかないので、撤退するというような報道がなされておりますが、これは事実に反しておりまして、現在教育用の開発を行っております文部省と共管のセンターにおきましては、既に六十二年の、これは十二社のメーカーから提案されましたBTRONの思想をベースにいたしました試作機をつくりまして、この試作機についていろいろな角度から評価作業を行っておるわけでございます。確かに、実態調査によりますと、漢字を縦書きにしてやるとか、音楽のいろいろな教育方法についてこうだとか、いろいろたくさんの要望が寄せられておりまして、それをTRON仕様でどういうふうに教育用コンピューターについて取り入れていくか、こういうようなことで、いろいろな議論がありますので、少しく意思の統一がおくれておりますが、決して断念をしているわけじゃなくて、現在まだ鋭意研究を前向きに進めておるところでございます。  また、このTRONというのは、国際的にも注目をされておりまして、先般アメリカのUSTR等において、何か標準化をつくってアメリカのIBMがつくっておりますOSなどを排除するというような誤解を生じてきた面もありますが、専門家会合で私どものこのTRONの性格についての説明が十分説明されたと考えておりまして、将来教育用コンピューターの分野においても、アメリカのIBMのいわゆるMSIDOSの仕様でいくか、アメリカにおいてはアップルの仕様が非常に有力でございますが、日本においてはこのIBM方式かあるいはTRON方式が成功すればそれになるのか、これは両建てもあるわけでございます。また、誤解されております、これができたときに教育用コンピューターが皆TRON様式になってしまう、これを押しつけるというのも誤解でございまして、我々としては、これが成功すれば、その評価をよく認識していただいて、学校の現場において教育用にどういうOSを採用するかはこれは学校長の判断でございまして、そういう意味でこれは排他的なものを考えているわけではございませんが、TRONのすぐれた点はたくさんございますので、現在まだ鋭意検討中でございます。  それから、もう一つの、標準化を進めていく分野につきましては、先ほど申し上げましたように、ソフトウェア資産の有効活用、特に先生指摘の、我が国では汎用コンピュータープログラムの活用が非常におくれておりますので、この互換性によってそうしたプログラムの有効的な、経済的な活用を図るということも重要でございますから、その見地も含めまして情報機器の標準化、これは技術開発の面と標準化の面で非常に重要な問題として国際協力を含めて鋭意進めているところでございますが、これは行き過ぎますと日進月歩の技術開発の芽を摘みますので、両面よく見ながら相互互換性等の方向を検討していきたい、このように考えておる次第でございます。
  88. 梶山静六

    梶山国務大臣 委員の御質問やら御意見をお聞きいたしておりまして、半分わかった点もありますし、本当のところはわからない分野が多いわけでございますが、いずれにしても、高度情報化社会を求めて我々は懸命な努力をしているわけでございますが、特にこの法案、それに対応する人間というか人間の素質と申しますか、そういうものの開発を主軸にするものでございます。いずれにしても、産業の進歩や人間生活の上に欠くことのできない利便性、快適性、こういうものを忘れないで、しかも今御指摘のあったユーザーの立場を十二分に理解し合いながら、やれる分野のことを考えながら、本法案が成立をし、そしてこれが着実に実行されて、社会に貢献し役立つようにしてまいりたいと思います。
  89. 薮仲義彦

    薮仲委員 終わります。
  90. 与謝野馨

    与謝野委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十分休憩      ――――◇―――――     午後一時開議
  91. 与謝野馨

    与謝野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。青山丘君。
  92. 青山丘

    ○青山委員 まず冒頭、限られた時間ですが、大臣に見解をお聞きしたいと思います。  御承知のように、産業界にコンピューターを導入されて我が国の情報化時代の幕あけ、初期の時代に比較いたしますと、今日では情報処理の技術も相当進歩してきておりますし、通信技術の進歩も個々をとってきますと極めて著しいものがある。したがって、そういう意味では総体的に我が国経済社会の中枢神経とも言えるようになってきたこと、これは経済の高度化に大きく貢献してきたと私は思います。しかし、これは例えば悪いかもしれませんが、相当頭の方はがっしりと大きくなってきたけれども、全体のバランスとなると、これはまだまだ、時には神経が切断しておる場合もありますし、全体のバランスは決してとれておらない。そういう意味で、今日の我が国の情報化社会の課題というものを大臣はどのように受けとめているか、ひとつ整理をしてお話をいただきたいと思います。
  93. 梶山静六

    梶山国務大臣 確かに、御指摘のとおり、この情報化社会を迎えてますます高度化をし、そして今この情報化社会を抜きにして我々の生活が成り立っていないという実感を持つわけであります。特に半導体等のハードの低廉化に伴いまして、我が国の情報化は予想以上に進展をいたしております。今後、より多くの人々が安心をして、コンピューターを意識することなく、ここには括弧して除く梶山静六と書くべきかもしれません、私はとても意識しないでそういうことはできませんから。意識することなくコンピューターの情報処理能力を利用し得る社会システムを実現していくことが重要だというふうに考えております。  このための課題は数多くございますけれども、特に第五世代コンピューター、これは恐らく人間の考え方と近いような推理、推論の能力を持った、こういうものの開発等のプロジェクトに見られる技術開発をさらに進めていくこと、それからソフト需要の増大に伴い懸念をされるソフトウエアクライシスヘの対応、それから安心して利用し得るようなセキュリティー対策の充実等が極めて大切だというふうに考えております。
  94. 青山丘

    ○青山委員 今大臣も述べられましたように、ソフトウエアの供給体制を整備していかなければいけない。そうしなければ将来大変なときが来るであろう。そういうために、ソフトウエアの供給体制を向上させていくため、技術開発人材を育てる取り組み、人材養成等々に各種施策がとられてきました。  機情局長、そういう現状を踏まえて、現在のソフトウエア需要と供給のバランスをどういうふうに受けとめておられるか。また、この将来展望をどういうふうに受けとめておられるか、どういうふうに分析しておられるか。それから、今大臣が申し述べられたように、ソフトウエアクライシスを解消しなければいけない。ソフトウエアクライシスの解消がなければ、やがて経済社会全体に悪い影響が出てくるであろう。そうなってくると、いろいろな取り組みが必要です。今大臣が分析されておられるような方向に対して、いろいろな総合的な施策がこれから取り組まれなければならない。その総合的な施策というものをどういうふうに分析して今受けとめておられるか。また、その中で、今回の地域ソフトウエア開発をどういう位置づけで理解しておられるか。ひとつお答えいただきたい。
  95. 棚橋祐治

    棚橋(祐)政府委員 お答えします。  ただいま大臣からお話がございましたように、我が国の高度情報化社会の構築のためには、第五世代のコンピューターの開発その他ハード面での各般の技術対策、それからソフトウエアクライシスに対応して、ハードだけうまくいってもソフトの方がうまくいきませんと仏つくって魂入れず、こういうようなことになりますので、このソフトウエア対策が非常に重要であるわけでございます。  私ども、この情報産業は、現在二十数兆円の生産額でございますが、二〇〇〇年には百四十四兆円、百四十兆円を相当大幅に上回る、我が国の産業構造の一大中核インダストリーになることは間違いのないものと見ております。なかんずく、この二十一世紀までのソフトウエア産業の全国展開について基本的に考えますと、現在二兆数千億の生産額でございますが、二〇〇〇年には約十四兆円あるいはそれを上回る、これも大変大きな成長産業でございまして、このソフトウェア産業を育てていくことが、我が国の情報産業の発展はもとより、高度情報化社会の構築に大きな貢献をするわけでございます。  しかしながら、先ほど来先生方の御質問にお答えする形で申し上げておりますように、我が国のソフトウエア供給の体制は、その八、九割が三大都市圏、特に東京二十三区内に五〇%をかなり超える集中に、売上高の面でも人材面でも事業所数の面でも偏在をしておる状況でございます。それで、私どもは、このソフトウエア人材展望をいたしますときに、これも先ほど来出ておりますけれども、九十七万人、百万人近いギャップが生ずる、特にシステムエンジニアが四十二万人不足する、こういうような問題がございまして、これを放置すれば我々が期待する高度情報化社会への実現には大変大きな障害になるおそれがあるわけでございます。従来から先生方の御支援を得て展開しておりますシグマ計画等によりまして、あるいは情報学校構想等によりまして、プログラマー不足は何とか政策よろしきを得れば改善できるが、システムエンジニアの方は、シグマシステムの効果も十万人強ありますけれども、やはり四十二万人の不足のうちの大半、三十万人を超える不足が依然として二〇〇〇年に懸念される状況にあるわけでございます。  そうした観点から、我々といたしましては、今回、抜本的にシステムエンジニア中心とする高度情報処理技術者の育成を地域において図っていく。その地域において図るゆえんは、地域におけるソフトウエア事業者数、あるいはそれに仕事を提供するユーザー数、コンピューターの設置状況等重要な要素を勘案いたしまして、潜在力は十分にあるが、現在はシステムエンジニア等の大幅不足でそれがうまくいっていない地域において重点的にそれを行って、人材供給あるいはシグマ成果を利用しての実戦における高度な技術教育の支援体制をしいていく、あるいは事業のあっせん等も行っていくような第三セクター中心とする拠点をつくりまして、そこへ優秀なインストラクターを派遣してSEを育成していく。そのSEがさらに企業において波及効果を大いにもたらして、何とか三十万人と予測されますシステムエンジニアのギャップの解消に努めていきたい。こういう点が我々の情報化対策、特にソフトウェアクライシス対策の概要でございます。
  96. 青山丘

    ○青山委員 我が国の情報化が調和ある全国的なバランスのとれた発展をしていかなければいけない、同時にまた、ソフトウエアクライシスを解消していくという重要な命題を抱えておる。そういうときに、潜在的な能力があるかないか、これはこれから非常に重要な問題になってくると私は思いますが、地方経済活性化のためにも、地域において、地方においてソフトウエア供給力開発していく、一つ考え方として私はなるほどと納得しています。  ただ、先ほど来質疑が交わされておりましたように、地方においてその対応が一体可能なのかどうかという問題があります。地方が抱えている政治的な課題、これを整理してお答えいただきたい。だらだらと答弁いただくのじゃなくて、こういう点とこういう点とこういう点の深刻な問題をごれから克服していかなければいけない、しかしこれはこういう取り組みでやっていけるであろう、地域が抱えておる課題というものをどういうふうにして克服していかれるのかという問題がありますので、その辺はどういうふうに受けとめておられるか。いかがですか。
  97. 棚橋祐治

    棚橋(祐)政府委員 地域にこれを展開していく場合に克服すべき課題としましては、主として三点あると思います。  まず、地域において人材育成にどうしても必要なのは、すばらしいインストラクターの確保でございまして、これにつきましては、先ほど来申し上げました情報処理振興事業協会その他を通じまして、中央からインストラクターに関する情報やあっせんを行いたいと思いますし、また、効果的なカリキュラムの作成を行いまして、これを提供していきたい、これが第一点。  それから、何といいましても、地域において事業を推進する上で基礎となる地元産業界等の本対策に対する十分な理解が肝要であります。  第三点は、人材育成技術基盤高度化を行うわけですが、それを安定化させるための仕事の流れ、つまり相当程度ユーザーがいまして、せっかく人材育成技術基盤強化を行っても、仕事がないのでは、訓練を通じてのあるいは採算性の面についての問題がありますので、そういう点においての仕事の流れの確保をあっせん等の業務を通じて行っていきたい、これを労働省との緊密な連携を保ちつつ、中核機関である情報処理振興事業協会を中心に展開していきたい、このように考えております。
  98. 青山丘

    ○青山委員 また後で続きをちょっとやりたいと思いますが、労働省、来ていただいていますね。  現在、産業構造の転換が大きく図られてきております。そういう中で、就業構造の変化といいますか、転換といいますか、これが避けられない。従来は大きな船に向かってビスを打ち込んでおったけれども、近ごろはきちっとネクタイを締めて背広を着て営業に努力しておるとか、あるいはまた、まさに情報化社会に対応するために新しい教育を受けておるとか、いろいろな産業構造の転換に伴って就業構造の調整が進んできておると思います。この現状をまず労働省はどういうふうに見ておられるか。また、そういう状況下において、今話し合われておりましたソフト人材の育成をどういうふうに位置づけて取り組もうとしておられるのか。いかがでしょうか。
  99. 甘粕啓介

    甘粕政府委員 先生のお話のとおり、情報化、サービス化という大きな産業構造あるいは社会構造の変化の中で、就業構造あるいは職業構造というのは大きく変化しております。特に目立っておりますのは、いわゆるブルーカラーといいますか、こういうものが余りふえない。そしてむしろ専門的、技術的職業あるいはホワイトカラー、こういう層がふえておりますが、平成七年に向けましての我々の推計でも、やはりそういう傾向は一層増大をしていくということが見込まれております。さらに、同じホワイトカラーでも、従来型と違いまして、企画力、創造力、そういうふうなものが求められるとか、より幅広い知識が必要になるとか、そういう傾向がだんだん強まってくるのではないかというふうに思っておるところでございます。  もう一点、そういう技術革新の中で、情報関係の職種が今後非常に急増する、需要が増大するということが見込まれているところでございます。私ども労働行政といたしましては、公共職業訓練校あるいは職業訓練短大あるいは第三セクターコンピューターカレッジ、こういうものによりまして、そういう人たちの養成を図ってきたところでありますけれども、今回、地域ソフトウエア法案関係でお願いしておりますのは、もう一つ上のSEクラス、これが今後非常に増大するし、不足が最も見込まれるというところでございますので、私ども労働省の持っている知識、経験、援助施策と、通産省のそれぞれの施策、そういうものを総合的に対応いたしまして、より効率、効果的な対応を図っていきたいというふうに考えているところでございます。
  100. 青山丘

    ○青山委員 ぜひ政府が一体となって、まあ省庁の縦割りで今まで余りいいことを言われておらなかったのですが、今回こういう形で労働省と話し合いを進められてここまできたということは、一つはあなた方の努力成果がこういう形になってきたと私は受けとめています。ぜひひとつ、連携をとって、全体として調和あるものにしていっていただきたい。労働省、ありがとうございました。もう結構です。  それから、今回法律の題名に「地域」と入っておりますが、地方に限定をしてきた理由はどこにあるのか。また、具体的にはどこを今考えておられるのか。ソフトウエア産業というのは、仕事が何といっても大都市に集中してきた。情報も大都市に多い。したがって、そういう意味では、ソフトウエアクライシスを解消するという考え方ならば、ソフト供給力を拡大していくのは大都市がいいのではないかという考え方考え方としてあります。しかし、そうなるとなお頭でっかちになって東京一極集中が云々、これはもちろんありますよ。しかし現実には、ソフト供給力開発していくのなら都心がよろしいのではないか。仕事があるところがよい、そういう考え方は出てくると思うのです。そのあたりをどういうふうに受けとめておられるのか。  さらに、地方ソフト業者にとっては、何といったって最大の悩みは地方仕事がない。そういうところに供給力を拡大していくシステムを定着させようといっても、さて現実それが可能なのか。その辺の対応策をどういうふうに考えておられるのか、私の質問にも答えていただきたい。
  101. 棚橋祐治

    棚橋(祐)政府委員 まず第一に、法律の題名に「地域」、これも最初に入っておりますが、今回の施策では、事業のより大きな効果が期待される地域に支援策を集中的に投入することによりまして、全体として効率的に目標が達成されるような対象地域を限定していきたい、こういうふうに考えております。  まず大きな要件としましては、第一に、ソフトウエア供給力が自立的に発展をしておる、その意味で基盤が整っておる地域、今の段階ではっきりしておりますのは売上高事業所数あるいは従業員数等で全国の五〇%を上回っておる東京二十三区内は、私ども今回の法律制定の暁でも政令によって対象外にしたい、こういうふうに考えておりますが、そういう地域は自立的にできるわけでございます。  これと裏腹になりますけれども、第二は、その地域において事業の採算性を確保できる程度の利用が見込まれる地域ソフトウェア供給力の有効な開発期待できる程度ソフトウエア人材企業の基盤が整っている地域つまり現在はウエートも小さいけれども周辺に有力なユーザーがあり、かつ熱意のあるソフトウエア企業が相当程度存在しておって、ぜひやってやろう、こういうような供給力の有効なといいますか、潜在的な基盤がある地域を何カ所か選びまして、そこに集中的な対策を講じて図っていく。地域の過疎対策という観点は余りないわけでございまして、そういう意味地域潜在能力のある地域集中的な対策を講じていく、こういうふうに考えておるわけでございます。  なお、つけたりになりますが、この二十三区内においては、最近は地価も非常に高くて、ソフトウエア企業の新規立地も大変に大きな制約を受けておりますし、コストも高くなりますし、今もう飽和状態といいますか成熟状態ですから、人材の確保にも一つの天井が出てきているわけでございます。具体的な地域についてどうするかということにつきましては、除外地域東京二十三区とするかあるいはそれに次いで既にソフトウェア開発能力の集積度の高い特定の地域をそれに加えて除外するか、いろいろな指標とか各地の御意見を承って、本法律案成立後には関係者とよく御相談をして決めていきたいと考えているわけでございます。  それから、青山委員指摘の、むしろ仕事の大部分が発生する、ユーザーが非常にたくさんいる都心にソフトウェア産業を集積させた方が当面の需給ギャップ解消には役に立つのではないかという意見もあるかもしれぬ、こういうような御意見もあろうかと思いますが、今後予想されるソフトウエア需要の拡大は膨大なものと考えられるわけでございまして、これにこたえる供給を、過度の集中を伴う、地価の極めて高い制約条件のある大都市、特に東京二十三区に依存することには、今後大きな制約があると考えておるわけでございまして、需給ギャップの解消を可能とするためには、先ほど申し上げました潜在的開発の余地がある地域ソフトウエア供給を顕在化することが、我が国の政策として極めて効率的なものではないか、このように考える次第でございます。
  102. 青山丘

    ○青山委員 法律が通ってからではいけないと思って、私、もう一遍聞きます。  情報サービス産業の仕事は、大都市、中でも東京中心に発生するために、情報サービス産業の大都市集中傾向が極めて著しいわけであります。全国の仕事量の六六%が東京、千葉、埼玉、神奈川、すなわち東京周辺で発生をして、三大都市圏以外では一六%にすぎない、こういう状況のようであります。そのために、情報サービス産業の売上高を見てまいりますと、全国の六八%が今御答弁にありました東京周辺に集中しておる。六八%がある。売上高も三大都市圏以外で見ますと一五%にすぎない。また、事業所数、従業者数とも、大都市、殊に東京集中の傾向が著しい。  今の考え方で言えば、東京二十三区を中心に、それ以外にしていきたいという考え方がまず一つあるということは今お聞きいたしましたが、ただ、こういうふうになってきたのには、経済原則に従ったそれなりの合理的な理由があってここまできたわけです。したがって、もしそれが、いろいろな制約はあるにしても、経済原則に逆らった形で情報サービス産業を地方の中核産業に育て上げようとしても、それは考え方として基本にどこか無理がある。しかし、私は考え方として理解していますから、理解しておるというのは、これから地方ソフト供給力をふやしていく力をつけなければいけないという考え方を理解していますから、それだけに、これから東京地域を除く地方という考え方が極めて重要になってくる。例えば私の地元の名古屋あたりでは、資料によりますと、事業所数では全体の七・九%。八%を切っている。人材の数では五・二%。非常に低い。それを三大都市圏以外とか三大都市圏では全体という考え方になってくると、もしかすると名古屋は外れるかもしらぬ。それは東京から見ればやはり地方でもあるし、このあたりは少し確認しておかないといけないなと実は今私は思っています。いかがでしょうか。
  103. 梶山静六

    梶山国務大臣 具体的な問題については局長からお答えを申し上げますが、総体的な感じ方で、今青山委員指摘のとおり、確かに一極集中が深まったことにはそれなりの経済的な裏づけがあるからであります。すなわち、東京というのは、徳川以前から四百年、五百年にわたっての政治や経済の中心であり、東西日本中心、しかも東京湾という極めて静穏な港湾部を持っているわけでございますから、人口の集積や資本、それから情報、ありとあらゆるものの集積がございますから、そこに集中をしてまいることは当然であります。そのこと自身は悪ではございませんし、そのことによって今日まで日本が発展をしてきた、社会が進展をしてまいった大きな原動力になったことは間違いがございません。しかし、善プラス善プラス善はイコール善であるかということになりますと、ある限界が参りますとそれは悪になってしまいます。  今の東京が果たしてその好ましくない状況というか大変な破局的な状況であるかどうかという認定は別にいたしまして、好ましくない状況にあることは間違いがございません。それは一極集中のために地価が高騰をする、人口が集積をするために交通地獄や住宅難がある。ですから、幾ら企業活動が活発であっても、人間の住むに快適な場所ではない。しかもこれだけ東京というものの価値が高まっている中で、ここで言うべき言葉ではないかもしれませんが、万一震災等があった際に、ひとり産業だけではなく、政治も行政も、ありとあらゆる機能がここに集中をしているわけでありますから、日本全国が麻痺をする可能性すらあるわけでございますから、これからの政策目標はこの多極分散、しかもそれは平均的に全部直すということじゃございませんで、一つの大きなブロックをつくり上げて、少なくともこういう交通、情報、産業社会というものは、その中核をなす幾つかの日本の都市にそういうものが集積をすることが望ましいし、また、そういうことができませんと、日本という国土は二極分化をいたしまして、地方の富を奪いあるいは働く場所を失い、良好な環境が形成をされないわけでありますから、政策の最大課題であります。少なくとも人為的なものを用いない限り東京への集積はまだまだあると私は思います。ですから、経済の原則に従って捨てておけば、自然には、そういう人材というものは、東京では集められると思いますが、少なくとも政策目標とする公の観点から地方を目指していかなければならないのは、この分野だけではなくて、ほかの分野でもそうでございますし、例えば国土審議会で出された今回の答申を見てみてもそういうものは明らかでございますから、行政の一貫性という中で、特にこういうものが地方に進出することによって、その成果を上げていかなければならないという感じがいたします。
  104. 棚橋祐治

    棚橋(祐)政府委員 まず、全体的には、先生御承知かと思いますが、ソフトウエア需要の急増によって現在二兆円強のものが約十四、五兆円にまで拡大をするということでございますから、現在は東京において事業所数については五〇%を超えておるというようなところでございますが、東京の地価等の制約的な要因とか、人材面についてもこれはやはりなかなか大きな制約があるのではないかと思うわけでございます。つまり、それだけ、二〇〇〇年に七倍以上にも伸びるようなものを、果たして東京圏で吸収できるかどうか。  それからもう一つは、確かに今青山先生指摘のように、通産局別に見ますと、例えば事業所数で、東京通産局管内で五〇%強、その次が大阪管内で二一%程度、それからぐんと落ちて名古屋通産局管内で七・九%、同じ三大都市圏といいましても東京がダントツで、大阪を中心とする近畿圏においても大変に大きな格差があるわけでございますし、名古屋は大都市ではありますが一割を切っておる、こういう状況でございます。他方、大阪とか名古屋には大変多くのユーザー企業がいまだにあるわけでございますから、そういう意味でのユーズは十分に期待できますし、それから有名な大学等もございますし、情報学校と称しております専修学校等も関西、名古屋等に今相当大きく展開をいたしておりまして、そういう点での人材面での確保は十分できるものと考えております。
  105. 青山丘

    ○青山委員 だから、今回の地域という概念の中に、東京を除く、例えば三大都市圏ではあるが名古屋は含まれているというふうに私は理解してもよろしいのかということを確認をさせていただいたのです。今回の地域は、別に深山幽谷、山紫水明、東京、大阪、名古屋を離れて北海道のうんと北の方とかという意味でないことは私もわかっていますが、しかし今回の考え方を進めていこうとしますと、地域人材の養成、育成を図っていこうとすれば相当すぐれたインストラクター、講師が必要になってきますよ。かなり高度な情報処理の技術を持っておる人たちが地方にいるのかといえば、先ほどお答えのように東京から連れていかなければいけない。東京から行くにしては、その受け入れ態勢が全国的にさてどうかとなると、地域における問題がまたたくさんある。もともとそういう講師としての人材の層の薄い地方が今回の地域というふうになっていくのではないかと思いますと、そのあたりの対応は極めて難しい。その辺を、どういう決意を持っておられるのか、最後にお尋ねいたします。
  106. 棚橋祐治

    棚橋(祐)政府委員 地域の指定につきましては、申し上げましたように東京二十三区は集積度が大変高いわけですが、あとの地域においてどこを除外し、どこを指定させていただくかは、まだ白紙の状態でございます。しかしながら、先生方の御意見も大いに参考にしながら今後考えていきたいと思っております。  なお、インストラクターについては、情報処理振興事業協会あるいは雇用促進事業団からもセンターの運営事業費としての相当程度の助成がありますので、中央からも優秀なインストラクターの派遣その他いろいろな対策を講ずることが可能と考えておりまして、肝心のインストラクターの確保には万全を期したいと考えております。
  107. 青山丘

    ○青山委員 終わります。
  108. 与謝野馨

    与謝野委員長 工藤晃君。
  109. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 私は、四年前ですか、IPA法案審議したときに、あのときもソフトクライシスというのが大きな問題とされておりましたが、ある銀行の調査がやや誇大ではないかといったことを紹介したことがあります。事実あのころはプログラマーが大分問題だったのですが、今や、プログラマーの問題はやや解決、問題はシステム土ンジニアだということになってきていると思います。そのとき私は、日本の最も先進的な産業分野の労働条件が驚くほど悪い、これは問題じゃないか、ソフトクライシスならぬヒューマンクライシスじゃないかと言ったことがあります。  さてそれから大分時間がたって、今の状況について、八七年の賃金構造基本統計調査から一時間当たり所定内給与額、男子の場合を見ますと、プログラマーが千百十四・九円です。全労働者の場合が千四百二十三・八円ですから、一〇〇に対して七八・三にすぎないわけです。システムエンジニアはどうかというと、千三百四十二・五円ですから、これも全労働者の男子の平均と比べて九四・三にすぎない。依然として低い状態が続いております。  労働時間から言いますと、残業が大変長い。月間の残業労働時間を労働組合、電算労のアンケートで見ますと、これも男子の場合ですが、三十時間以上五十時間未満が三五%、五十時間以上七十時間未満が八・九%、七十時間以上が六・〇%、企業によると、最高ですが三百時間を超える場合もあります。  この前も電算労の方から伺いましたが、ここに九千名近いソフトウェア労働者がいる。その労働組合はできてから二十年たつ。この二十年の間、平均の年齢が相変わらず二十七歳である。厳密に言うと〇・九歳上乗せしただけである。つまり、相変わらずこの分野では三十五歳定年説というのが通用するような状況になっているということです。  私はまず通産大臣に伺いたいのは、この法案ソフトの供給を高めたいということだと思いますが、ソフトの供給を高めたいというのであるならば、やはりソフトウェア労働者の労働条件を大幅に改善することにもっともっと政府が関心を寄せるということが第一の条件ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  110. 諏訪佳

    ○諏訪説明員 ソフトウエア業につきまして、今先生から御指摘いただきましたように、残業時間が長いといったこと等指摘されております。そこで、労働省といたしましては、六十二年度におきまして、業界団体の協力を得ながら、ソフトウエア業の労働時間を中心とした労働条件の調査研究を実施いたしました。その結果、御指摘のように、残業時間は、全産業が百七十八時間に対しまして三百七時間と、調査産業平均を非常に上回っておる状況にあります。そこで、このような残業時間等の削減に重点を置きました対策に取り組むために、現在この調査研究に基づきまして業界の協力を得て自主的に取り組むという形で検討しております。したがいまして、労働省といたしましては、そうした労働時間短縮等の一層の推進を図るということで今後努めてまいりたいというふうに考えております。
  111. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 大臣にはまた後でお答えいただくことにしまして、労働者派遣法ができまして、派遣労働が固定化された面、それから、もちろん若干改善と言われた面があるでしょう。それからまた、派遣法ができたがゆえに隠れた形になってしまったというのもあるわけですが、ともかく形態としては請負形態がふえたということが広く指摘されております。しかし、先ほどの労働組合のアンケートを見ましても、派遣法ができてからよくなったというのもほとんどいない。もちろん特別悪くなったとも言ってないわけですが、変わらないというのが状況なんです。  そして、派遣法関係ですからこれは労働省に伺いたいわけですが、客先常駐という答えになるのですけれども、向こうの会社に行っているのですが、請負形態で派遣を偽装したと見られるようなものもありますし、自社内作業という場合でも、会社の中のどこか決めた部屋を相手の注文を出した会社に渡してしまって、そこでやっている、こういう形もあるわけです。だから、事実上の派遣がいろいろな形でも続いているという面があります。さらに、非常に問題だと思うのは、あの派遣法でも、一年ごとの契約が更新されてしまうと三年も四年も派遣されっ放し、それでそこの会社の社員にもなれない、こういうのは大変問題だと思うのですが、労働省としても来年派遣法を見直すというようなことを言っております。我が党ははっきり言ってこの派遣法に反対しましたけれども、しかし労働省としてどういう点は改善すべきだと考えているのか、その点伺いたいと思います。
  112. 戸苅利和

    戸苅説明員 一つは、派遣なのか請負なのかという質問でございますが、労働者派遣に該当するのかあるいは請負に該当するのか、これは客先の事業所で就労しているかどうかということだけではございませんで、業務処理の実態がどうなのかということに即して判断すべきものであるというふうに考えております。具体的には、労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準、これを告示で定めておるわけでありますけれども、これに照らして派遣事業に当たるというふうなことでありますれば、それは契約の形式が請負でありましても、やはり適正な派遣として行うために許可申請あるいは届け出を行わせる、それから適正な請負として是正できるものであれば、業務処理の方法を是正させて、適正な請負として実施するようにという指導を行っておるわけであります。  特にソフトウエア関係の派遣につきましては、先生おっしゃるように、潜りのといいますか、いわゆる潜りの業者も少なからず見られるというところでございますので、ただ単に許可なり届け出を行った事業所だけではなくて、許可、届け出を行ってない事業所も対象に、公共職業安定所を中心として指導監督を行っておるところでありまして、そういった適正でない業者がありましたら、それは適正な指導をしていくというふうなことで努力しているところでございます。  それからもう一つ、派遣契約のお話でございますが、派遣契約につきましては、常用雇用労働者と派遣労働者の代替、これが進むことのないようにということで、業務の種類に応じまして一定の制限を設けておるわけでありまして、ソフトウエア労働者につきましては一年を上限にいたしておるところであります。ただ、この派遣契約の更新というのは禁止されるものではございませんで、更新等が行われていることは先生おっしゃるとおりでございますけれども、更新につきましては、いたずらに繰り返されまして派遣先における常用労働者、常用雇用の代替が促進されているというふうなことが認められます場合には、その実態に応じまして、派遣元に対しましてその派遣を中止するなど、適切な措置を講じてまいるというふうな考えでやっておるところでございます。  それから最後に、派遣の見直しでございますが、現在、中央職業安定審議会の労働者派遣事業等小委員会の方で、いろいろ御検討をいただいておるというところが実情でございます。
  113. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 公取に伺いますが、ソフトウエア受託開発業における委託取引に関する実態調査をまとめられまして、関係団体への要望を出したということです。特に、この中で、独占禁止法、優越的地位の乱用の禁止に違反する行為があるという指摘もありますが、ちょっと全体の時間が短いものですからごく簡単にポイントだけ、どういうところが問題なのか。つまりソフトウエア業者が受託をする、メーカーの場合もあるあるいは同じソフト業界から受託することもある。その場合、独禁法に触れる問題があると見られるというので、関係団体に要望を出したということですが、その問題だけ、よろしく答えてください。
  114. 土原陽美

    ○土原政府委員 委員指摘のように、昭和六十一年から六十二年にかけまして、ソフトウエア受託開発業の実態調査を行ったわけでございまして、結果をまとめて公表しておりますけれども、その中で四点ほど独禁法上問題になり得る事例を示しております。  一、二御紹介いたしますと、一つは、発注内容が途中で変更されて追加作業を要することになったのにその分の代金が支払われなかった事例、あるいはまた、発注内容が途中で変更されたため納期に間に合わなくなった、それを理由にして代金を減額された事例とか、あるいは決められた委託代金というのが支払い期日に支払われなかったというような事例が幾つかあったわけでございます。そういうことでございましたので、この調査は実態把握のための一般調査ではございますけれども関係の団体に要望いたしまして、独禁法の考え方を会員に周知するようにということを要請したわけでございます。
  115. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 そこで、大臣に伺いたいわけですが、今も公正取引委員会の立場から見て独禁法違反がいわゆる事実上の下請のような契約の中である。一番よく見られるのは、注文を出した後でスペックを変えて、それでも支払い代金は変わらないというので泣く泣く押しつけられる。これがさつき言ったソフトウエア業界の、特に小さいところの労働者の労働条件を悪くしていることと直接関係があるわけですね。しかも、さっき言ったように、派遣法ができてから派遣形態が減って請負形態がふえたという中で、ここのところは非常に注目しなければいけないことになってきたわけです。  そこで、この管轄の問題というのがあるのですが、ともかく下代法となると物をつくるということが注目されて、物品もしくはその半製品、部品、附属品もしくは原材料の製造委託と修理に限られるというので、ソフトウエアは外れてしまうがゆえに、ここの分野というのは、上の発注元の大きいところ、それから下の方、下請、事実やるところとの関係で守られない点が大変あるわけなのです。実は公正取引委員会が団体に対していろいろ要望を出したのですが、これは各企業に、コンピューターメーカー、発注する方に、どうも行き渡ってないと思われるわけですから、至急通産省としても公取と連絡をとって各企業にこれが徹底するようにぜひやっていただきたいと思いますが、いかがですか。
  116. 梶山静六

    梶山国務大臣 ただいま公取からも御説明がございましたけれども、一、二そういう事例が調査の結果あるようでございます。ただ、委員指摘のとおり、どちらかというと、この製造業等についてのみという表現がいいかどうかわかりませんが、今まで対象があったわけでございますが、近時こういうサービス経済が伸展をするにつれまして、ソフトウエア業等のいわば非製造業的な分野に、これからそういう体制をとっていかなければならないというふうに考えておりますので、公正取引委員会とも連携をしながら、その実態調査をいたしながら、そういうことのないように適切にこれから処理をしてまいりたい、かように考えております。
  117. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 今御答弁いただいたわけですが、最初に言いましたように、最も先進的な情報産業ソフトウエアの分野で一番労働条件が悪いということは、まさにソフト供給の大きな障害だと考えるべきだと思うのですね。だから、本当を言うと、供給が不足である、クライシスであるというならば、仕事が下まで回ってきて、そこの売り上げがよくなって、価格がよくなって、賃金がよく上がるのだけれどもソフトの場合は逆になっているのですね。そこにいろいろな問題があるわけですから、ぜひこれは通産省も十分この問題と取り組んでいただきたいと思います。  さて次に、私は、ソフト業界が今どういう構成になっているのかというのを伺うわけですが、よくソフトというとソフトウエアハウスだけが問題になっている。その分野に中小が多いのは確かなのですが、ソフトウエアの生産がどこでやられているかというと、やはり大手であるユーザーのシステム部門、それからコンピューターメーカーのシステム部門、そこの比重が大きいわけで、これは通産省の「我が国情報処理の現状」をもとにした「プログラム開発分担状況一九八三年」によると、ソフト会社は一二%にすぎない。あと自分の社が三〇%、メーカーが五〇%、こういうことになっております。  さらに、ソフトハウスの中も今どうなっているかといいますと、これもIPAの報告書によりますと、これは一九八六年度売上高ソフトハウスだけですが、独立系が六四・五%、メーカー系が一九・三%、ユーザー系が一六・二%、このように着々とメーカー系やユーザー系の比率が高まってきているというのが最近の情勢なのです。  それに加えて、私も最近この資料を見ていささか驚いたのですが、経常利益率や従業員一人当たりの経常利益を見ますと、三百人以上とそれ以下でこの数年えらい格差が開いてきた。それから、五十人以下の場合はもう存続が危ぶまれるようになっている。例えば一九八三年と八六年を比べますと、三百人以上の経常利益率が六・八%から七・一%と上がっておりますが、五十人以下の場合は三・七%から一・二%と著しく減っております。これは従業員一人当たり経常利益から見ましても、五十人以下というのは数年前と比べてはるかに減っている、こういう状況になっているのです。今、こういうソフトウエアを生産している全体の業界の中で、特にソフトハウスと言われるところの一番小さいところが非常に急速に苦しくなって分化が進んでいっているというのが特徴なんじゃないか、これからもそういう傾向が一層大きく出るのではないか。  最近CCN革命などということがよく伝えられております。かなり劇的に書いているのだろうと思いますが、コンピューター・コミュニケーション・ネットワーク革命と言われて、とにかくコンピューターの性能も上がる、それから通信のいろいろな機能も高まって、これをつなげていって、そしてその全体としてのシステムをつくろうとするときに、これを受けて、システムインテグレーションと言って、ハードから、それから全体の組み立てから、通信体系から、全部を引き受けて、そしてシステムエンジニアリングをやるという仕事が新たに出てきた。また後でも言うように、昨年からそれに対して租税特別措置もつけたくらいですから、こういうときに、今ソフト業界の上下の差というのは非常に広がっていくのではないか。この面について、通産省としては大体どういう認識を持っておられるのか、このことだけ伺いたいと思います。
  118. 棚橋祐治

    棚橋(祐)政府委員 先生指摘ソフトウエア業界の現状ユーザー企業ソフトウエア部門やハードウェアメーカーによる開発部門とに分けた統計、必ずしも私どもの方に明確なものがございませんので、ここのところが明確に申し上げられないのは残念でございますが、当省として全体的な傾向として把握しておりますのは、ユーザー系あるいはメーカー系というよりも、独立のソフトウエア産業の占める割合がむしろ高まっているのではないかと推定をいたしております。  その理由といたしましては、ソフトウエア開発技術が極めて専門化してきておりまして、非常に特殊な分野、特異な分野というものが分化してきておりますので、ユーザー部門の間でこのための人員や技術を維持していくことについては採算上も問題がある、無理があるというふうに聞いておりますし、また、メーカーの場合にも、基礎的な技術開発やハードウェアの開発に人員を多く割いておるということから、個々のユーザーの多種多様なニーズに必ずしもこたえられないという制約があるように聞いております。  それから、ソフトウエア産業の中でも、資本的、人的に、メーカー系やユーザー系の比重について相当の影響があるのではないかという御意見でございますが、最近特にユーザー系の企業の別会社にしてソフトウエア産業への参入が活発化していることは、御指摘のとおりかと思います。ただし、多くの独立系企業も順調に成長をいたしておりまして、私どもの一応の試算では、昭和六十二年に、独立系のサービス産業というとらえ方ですが、約三千五百営業所、事業所がある、こういうふうに考えております。しかしながら、新規の参入によって、ソフトウエア産業全体が適正な競争によって活性化すること自体は、好ましいことだとむしろ考えている次第でございます。
  119. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 統計がないというのはちょっとよくわからないのですが、さっき私が挙げた、プログラム開発分担状況というのは、通産省の「我が国情報処理の現状」というのに基づいた数字ですし、そのほか、例えば八五年度我が国企業のアプリケーションソフトの外注比率は二五%である、確かに外注比率が少しずつ高まっていることは私も知っております。一方、さっき言った、ソフトハウスの中で、そういうユーザー系などの進出も活発になると同時にさっぉ挙げましたIPA「情報処理産業経営実態調査報告書」によりますと、五十人以下は八六年一人当たりの経常利益がわずか十万二千円、実は八三年は同じ規模で二十六万七千円が、こんなに落ち込んでしまっている。経常利益率が三・七%から一・二%に落ち込んできている一方、さっき言った三百人以上は急速に上がっている。明らかにそういう傾向が通産省関連した団体の調査であるわけですから、そこがはっきりしないような認識では、ソフト関係の行政を進めるのに問題があるのじゃないかと思いますが、今の私のようなことは、わかりましたか、はっきりしましたか。
  120. 棚橋祐治

    棚橋(祐)政府委員 工藤委員指摘の「情報処理産業経営実態調査報告書」、これは昭和六十二年度情報処理振興事業協会が出しておる資料をおっしゃっているのだと思います。それからもう一つは、通産省編になっておりますが、「我が国情報処理の現状」、この六十二年度統計になっておりますが、これはベースになる統計がかなり古いものでございますから、先ほど私が申し上げましたのは、最近時点においてどういう具体的な数字があるかは必ずしも把握をしていないということを申し上げた次第でございます。
  121. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 それでうまく逃げたかどうか知りませんけれども、ともかく今大変な集中というのは明らかなわけです。  ここで時間がなくなってきて私も困惑するわけですが、一つの問題として、特に通産省関係あるわけですが、日本のこれまでの産業構造政策というのが、六〇年代、七〇年代延々と続けられてきたわけです。その特徴として、そのときどきの戦略的な産業を選び出して、それに対して税制とか金融とかインフラでかなり集中的な支援をする、こういう形をとってきた産業構造政策というのは、外からはよく日本株式会社と言って批判されてきたのだと思います。ですから、最近は答弁でうっかり戦略産業と言えなくなってきて、せいぜいリーディングインダストリーぐらいに言われるのだろうと思います。確かに、比較してみますと、アメリカとかヨーロッパでは、特にヨーロッパなどは、衰退しつつある産業に保護をするとか、そういうところに重点を向けるけれども、これから育てるものに対して重点的に支援するということは、やられてもごく最近であり、また日本影響のもとにそういうのが進められてきたと思うわけなのです。  そこで、私がここで申し上げたいのは、かつての超しSI開発の例など、あのたぐいのコンピューター、半導体素子関係開発補助金というのは、調べてみますと、既に合計二千四百二十四億円に及ぶというかなりの額になっております。最近は情報産業の中でもソフトに対する支援というのが結局強まってきていて、それが余り見えない形で、例えば租税特別措置のプログラム準備金とか、システムインテグレーションとか、そういう税制の面で、もう既に先ほど言ったような、業界の中は分化して、中堅企業と言われたところも強いところとそうでないのに分かれていっているさなかに、どちらかというとより有力な企業にそういうものが利用されるようになってきているのではないだろうか。これは、例えばシステムインテグレーション税制を見ましても、まず登録します、登録企業というものをつくります。この一覧表を見ても、やはりソフトウエア業者の中でも強いところが登録されています。しかも一件の代価が五千万円以上の条件で適用されるということですから、五千万円の受託をしないとだめということになるから、やはり大きな仕事になってくるわけです。そういうことで、今の政府の政策は、結局、従来の重点的な産業を育てるというのでソフトに対してもかなり税制その他からの援助が強くなってきているというふうに判断しますが、その点、いかがでしょうか。
  122. 棚橋祐治

    棚橋(祐)政府委員 工藤委員指摘のように、最近は我が国の情報産業が将来の産業構造のリーディングインダストリーになるということで諸般の対策を講じてきていることは、シグマ計画その他で御指摘のとおりでございます。それから、税制上も幾つかの準備金制度等がございます。ただ、私ども、まず対外的には、アメリカも当時は産業政策上のいろいろな施策を批判しておりましたが、最近は、半導体について、アメリカの半導体企業、中堅メーカーが多うございますが、セマティック構想といいまして、年間数億ドルの膨大な金を投じてむしろ日本の産業政策を学ぼうというような形でもありますし、ヨーロッパにおいても、ユーレカ計画ということで、こういう先端産業分野に政府が入って、民間と一緒になって共同開発していくという点については、二十一世紀を展望してむしろ国際的に我が国の政策が容認されておるような勢いではないかと思います。しかしながら、これらの補助金につきましては、収益が上がれば適正にそれを還付をするということは、御報告申し上げたように、我々としてはきちっと行っておるつもりでございます。また、情報産業に限っての先ほどのいろいろな支援体制、例えばプログラム準備金などの租特措置につきましては、売り上げに応じて租特適用額が変化する仕組みであるために、見かけ上大企業がより多く使用している感じを与えることもありますが、規模の相対的に小さい情報サービス産業も大いにこれを活用いたしております。また、先ほどのシステムインテグレーションの総合システム保守準備金制度につきましても、現在までのところ百九十九社の登録をいたしておりますが、その中には中小企業が多数入っておりまして、これの活用、恩恵に浴しておるものと理解いたしております。
  123. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 時間がなくて大変困るわけですが、今そう言われましたけれども、登録企業の名簿も、大手からずっと並べた一覧表で見ると、上の方が多いのですよ。下も全然入っていないなんて私言っておりません。  それから、問題は、租税特別措置関係するのは大体六種類ぐらいありますが、租税特別措置は、補助金と違って、後で返ってくるというものではないわけです。  そこで、最後に一問だけ伺いますが、本法案によって整備する地域センターに出資して運営を主導しセンター機能をまた効果的に利用できるのは、結局シグマシステム開発本部、構成企業三十三社あります。それから、シグマシステム開発に参加している百九十三社、これはATT、IBMなど外資もありますし、メーンクレーマーもあります。ユーザーとしても大きいところもあります。それから、ワークステーションメーカー十三社もありますが、結局こういう今のシグマシステムの中核でやっているところが一番効果を上げて使うことになるのじゃないか。先ほど言いましたけれども、特にソフトハウスの一番小さいところは、本当にこれ以上やっていけるかどうかわからない状況にある。そうして専ら派遣しておる、そういうところは、例えばこの研修制度を一つとりましても、どこまで利用できるか非常に疑問を感じるわけなんです。そういうことから、結局この法案をつくっても、本来大手が負担すべき研究開発費の一部分あるいは研修費の一部分を国が面倒を見るということの方が比重の上で高くなったりするのではないか。  そのほかシグマシステムには私いろいろ疑問がありますが、時間が参りましたので、その点を伺いまして、質問を終わりたいと思います。
  124. 棚橋祐治

    棚橋(祐)政府委員 全国にソフトウエア開発企業は五千とも六千とも推定されておりますが、私どもは、御承認いただきましたら、地域センターにおいて中堅企業、零細企業の御利用も積極的に進めてまいりたいと思いますし、他方、これから御審議いただきます中小企業関係でも、ソフトウエア技術者の育成について中小企業事業団からのいろいろな対策が講じられますので、先生の御意見は今後我々としても十分に前向きにとらえていきたいと考えております。
  125. 与謝野馨

    与謝野委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  126. 与謝野馨

    与謝野委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  地域ソフトウェア供給力開発事業推進臨時措置法案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  127. 与謝野馨

    与謝野委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本案の委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  128. 与謝野馨

    与謝野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕      ――――◇―――――
  129. 与謝野馨

    与謝野委員長 次に、内閣提出小規模企業共済法及び中小企業事業団法の一部を改正する法律案内閣提出中小企業投資育成株式会社法の一部を改正する法律案及び内閣提出中小企業事業団法の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。  これより各案に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上泉君。
  130. 井上泉

    井上(泉)委員 私、若干質問を申し上げたいと思いますが、せっかく大臣がお見えでもありますし、慎重審議、時間に余り拘束されない気持ちで質問を申し上げたいと思いますので、委員長もよろしくお取り計らいのほどお願いをいたします。  そこで、私まず第一番に、従来から、その年度委員会が始まる場合、委員会審議に入る前には、所管大臣として非常に立派な決意を表明されるのが国会のしきたりのようでありますが、今度は急にかわられた関係もあったのでありましょうか、新大臣の所信表明というあいさつが全然なされてなかったので、あるいはそれは行政の一貫性というようなことで三塚前通産大臣が言われた所信表明をそのまま受け継がれた気持ちでやられるのか、あるいは大臣として、やはり通産大臣になったんだからおれはこういうふうな通産行政を進めていくんだという、何か心に期するものがあるかどうか、まず大臣に承りたいと思います。     〔委員長退席、浦野委員長代理着席〕
  131. 梶山静六

    梶山国務大臣 大きい方向では、内閣の一貫性、通商産業政策の一貫性がございますから、三塚前大臣政策を踏襲してやってまいりたいと思います。ただ、粗雑な私でございますから、私なりの年輪もございますし、小さい意味では一つ一つ多少の食い違いというか特色があろうかと思いますが、これからの私の活動というか政策の展開をお見守りいただければ幸いであります。
  132. 井上泉

    井上(泉)委員 内閣としての一貫性とか連続性とかいうようなことはともかくとしても、それはまあ前大臣が言ったことは、あれは間違い、これはこうしなければいかぬというように同僚としてもなかなか言えるものじゃないと思うわけですけれども、しかし、やはり議員である限り、大臣というものは皆願望のいすです。その願望のいすに着いたらおれはこうするんだという強い気持ち、抱負があってしかるべきだと思うわけですから、個々のことは問わずとも、新大臣としては、このことだけはおれは自分の任期中に、たとえ参議院の選挙が終わってからかわっても、どれだけのものを残しておくかというような、何か決意するものはないですか。大臣が任命されたときの所信表明、テレビで対談された新大臣の抱負ということだけのものでしょうか。何か私どもに感銘を与えるような決意はないのですか。
  133. 梶山静六

    梶山国務大臣 井上委員に感銘を与えるようなことになるかどうかはわかりませんけれども、私自身実は戦争に参加した人間でもございます。ですから、同じ日本人でありながら、昭和二十年を契機にして、過去は非常に暗く貧しかったという現実と、今が必ずしも全部明るいとは申しませんが、昔と比べて大変明るい豊かな社会が生まれたわけであります。その根幹にあるものは何かといいますと、私が感じまするのには自由社会と平和があればこそであります。  この自由社会の中で自由に物を思い、そしてまたこれを競争し合える、しかもまた、これは日本がつくり上げた体制でもございませんけれども、自由開放経済恩恵を受けて、ともすると戦前、閉鎖経済あるいはブロック経済であったものが、全世界の資源を輸入し原料を買い製品を買い、あるいは原料を輸出し製品を売ることができる、いわば自由開放経済体制の中での今日の日本の発展があるわけでございます。もちろんそれを取り巻く平和な環境ということは何にも増して大切なことでございますから、通商産業政策を進める上で、国民の幸せというものを考えれば、この自由と平和をどう守り抜いていくかということが根幹になければならない。これは通商産業政策といえども全くその範疇を出るものではございません。特に日本のように国土の狭い資源のない国でございますから、これから貿易立国、技術立国を目指していかなければやっていけない国柄だということは、私が常日ごろ考えていることでもございます。  特に私は、通産大臣になりまして、現在の日本の置かれている立場を考えますと、端的に申し上げますれば、輸入大国を目指していかなければならない、そのためには内需の振興をいたさなければならない。そのためには、地域の活性化や、いわば経済の原動力になっている中小企業その他の活力を見出すような政策に重点を注いでやってまいりたいというふうに考えております。
  134. 井上泉

    井上(泉)委員 非常に立派な見解で、そういう政治哲学を持って臨まれることを期待するものですが、これは思っておることと実際にすることが食い違うと大変なことになるわけです。  消費税が国民の大多数の反対に遭っておる、そして通産省所管関係のものが一番消費税の風当たりを受けておる、こう言っても過言ではないわけですが、大臣としては皆がなれるまでじっとしておこうというお気持ちですか。
  135. 梶山静六

    梶山国務大臣 これも本会議予算委員会等で総理や大蔵大臣がたびたび述べていることでございますが、新税というものはなかなかなじみの薄いものでございますし、特に消費税、こういうものは初めてでございますから、トラブルがある、あるいは受け入れるのに困惑を感ずることは当然ではないかなという感じがいたします。  ただ、私ども通産行政を預かる者として考えますことは、この消費税の中で転嫁を間違いなくするように、少なくとも第二法人税的なものにならないように、それから下請いじめにならないこと、便乗値上げをさせない、この三つを特に中心に考えながらこの税制に対処をしたというふうに聞いておりますし、私もそれが適切な対応であったというふうに考えております。ですから、我が国産業界に円滑に定着するためには、事業者が納税事務に適切に対応できること及び円滑な転嫁ができることが課題でございますので、納税事務については、消費税は売上税をめぐる議論、我が国の生産、流通の実態を十分に踏まえて、帳簿方式、免税点、簡易課税制度等の採用により仕組みの簡素化が図られ、中小企業に対しては所要の助成措置を講じているところでございます。  転嫁の状況については、通産省においては消費税導入後、価格動向調査の実施や全国通産局長会議等の開催を通じ状況の把握に努めているところでございますが、各業種、各地域においておおむね円滑、適正な転嫁が実現されていると認定いたしております。  今後とも、中小企業を初めとする産業界における納税事務や転嫁の状況についてしっかり実情を把握し、消費税が円滑に我が国に定着するように最大限の努力を払ってまいりたいと考えております。
  136. 井上泉

    井上(泉)委員 大臣などという言葉は失礼ですが、大臣ほどの方は、毎日消費税を払ったことや取られたことはないから、実感として消費税がいかに国民に大きな負担をかけておるかということは知らないと思います。私どもは毎日スーパーで買い物をする、それにも必ず何円かの税金を取られる。それで、消費税は定着するどころか、ますます消費税に対する不満が国民の間に充満し、それが拡大しておる。そういうふうに消費税の動向を私どもは見ておるわけですけれども大臣は消費税を直接払ってないから、それで施行後わからないかもしれないけれども通産省の方で、定着するようにするために具体的にどういうことを商工業者に、例えば小売商なら小売商に指導されておるのか、その点を。政府が言う定着、これは定着すれば問題ないわけですが、定着がなかなか難しいと思うので、定着を現に指導されて、それがどうなったのか。これは調査された担当の事務当局の方から報告を受けたいと思います。
  137. 梶山静六

    梶山国務大臣 私の誤解かもしれませんけれども大臣は消費税を払わない払わないと言われますけれども大臣は消費税を免れるものではございませんので、私どもといえども消費税は払うことになっておりますので、どうぞ御了解を賜りたいと思います。
  138. 松尾邦彦

    ○松尾政府委員 先生指摘のように、消費税は、その仕組みにおきまして、免税点、簡易課税制度等、中小企業実情に合うように種々工夫をなされているところではございますけれども、中小企業者にとりましては、納税事務負担、転嫁の円滑化という点において不安、懸念があることは御承知のとおりでございます。したがいまして、私どもといたしましては、法制面からの手当てのほかに、財政、金融、税制面からきめ細かくこれらの納税事務負担の軽減、転嫁の円滑化のための施策を講じてまいっておるところでございます。  このため、納税事務負担に関して申せば、記帳代行あるいは記帳機械化の推進を図るための助成あるいはきめ細かな相談、指導も行ってまいっておりますし、転嫁の円滑化のためには、特にお話に出ました小売商あるいは下請企業が転嫁に不安が大きいという実情にかんがみまして、中小小売商ができるだけ転嫁を円滑にできるような体力をつけて的確な転嫁ができるような基盤を整備する。下請企業につきましては、取引上、親の立場の方が強いことにもかんがみまして、親企業、下請企業、それぞれに下請代金法のガイドラインの徹底を図る、あるいは下請企業につきましては取引先が限られていることによって生ずる取引上の不利な立場もあってはいけませんので、できるだけ取引先を多角化するような助成等、きめ細かく業種、業態に応じました対応を図り、現在そのための施策を鋭意展開いたしているところでございます。
  139. 井上泉

    井上(泉)委員 大臣、私は大臣が税金を逃れているとか言っているわけではない。大臣ほどの高い身分の方は、自分で財布をあけて物を買うという機会はないだろう、だから自分で消費税を払う機会はないだろう、そういう意味で申し上げたわけでありますので、それは誤解のないようにお願いします。  今通産の方から、定着するようにごうごうというお話を承ったわけですが、現実にそれが行われておるかどうかということになりますと、個々の商店、個々の企業者に話を聞いても、こんなことを決められたら困るという話ばかりが上がってきて、これは将来いい税になるからというような形での指導というものを受けたものでもないし、文書、通達、そんなものは商工会を通じてやってきても、消費税を扱っておる業者にしても消費税を払う消費者にとっても大変な悪税だ、不要であることは間違いないし、この税金がよい税金だとまさか大臣も考えてはいないと思うわけですけれども、よい税金と考えておれば何をか言わんやでありますが、お百姓さんの製品にまでかけるような、国民生活に絶対必要なものにまで税金をかける、消費税を取るとかいうようなことは問題がある。現行消費税の内容については大変問題があるということを、政治家として、しかもまた通産行政を担当される大臣として、お考えになっておるかおらぬか、そのことをお伺いいたします。
  140. 梶山静六

    梶山国務大臣 通産大臣としては、特に産業界、納税者側の事業所、こういうものを中心に対処しているわけでございますが、先ほど申し上げましたように、転嫁を間違いなく、下請いじめにならないように、便乗値上げがないようにという、この三つの原則を守りながら消費税の定着を図っているところでございます。  税制全般に対しての考えはどうかということでございますが、もちろん私は、消費税そのもの、単独を取り上げて申し上げるのではなくて、資産、消費、所得の中で、どういう課税体制が望ましいか、特に日本の直接税中心主義が果たしていいのかどうか、こういう問題を見て、特に所得税の重税感それから累進税率の高さ、そういうものを考えることや、あるいは法人税、先進国では既に一番高くなっている今のような法人税の形でいいのかどうか、あるいは相続税等の重税感、こういうものと照らし合わせて、そういうものに減税をすべきである、そして減税をする反面、その原資の一部に消費税が導入されるということでございまして、その後の全般の税制の中では今回の税制改正は当を得たもの、そういう確信のもとに定着を図っているところでございます。
  141. 井上泉

    井上(泉)委員 大臣も政治家であります。もちろんすぐれた政治家でありますので、有権者の国民の声というものには非常に敏感に反応すると思いますけれども、消費税は天下の悪法として早くこれをやめてもらいたいという願望が国民にはあるわけであります。  しかし、消費税のことばかりやりますと、それこそ慎重審議のことができないので、きょうの当委員会に付託され、今審議の対象になっている中小企業関係の三つの法案、それぞれの関係者のいわば経営基盤強化するための法案だと思います。ところが、この法案をつくるに当たっての一番の基本に円高基調ということを置いておるわけですけれども、円高基調が崩れ去ってきて、将来また百三十円前後に円高になるのか、あるいは今の円安の傾向がさらに前へ進むのか、そういう点については、経済担当の通産大臣として、やはり為替相場の動向は注意を払わなければいかぬ問題だと思うので、その辺の見解を承っておきたいと思います。
  142. 梶山静六

    梶山国務大臣 ここへ来て急速なドル高が進行しておるわけで、大変憂慮をいたしております。  最近の為替相場というものを見ますと、一つにはお隣中国の政情不安等を背景にいたしまして、主として投機的なドル買い、これがドル高を導いたものではないかと思います。その投機になった原因というのを考えてみますと、米国の卸売物価が大変急騰をいたしております。五月の前月比が〇・九%ですから、年率に直して一割強ということになりますから、これは将来ともに大変な物価高、そうすれば必ず政策的に引き締めが行われるであろう、引き締めが行われるということは金利の上昇であるから、ドル高につながる、こういう一連の推論のもとに今回の投機買いが行われておるというふうに考えておりますが、アメリカの金利は長短期物そう上昇いたしておりません。そういうことを考えますと、経済の条件からいいますとこのドル高が中長期的に長く続くというふうには私は考えておりません。ですから、やがて投機買いは一巡をするというか、そういうことで下落をしてまいるというふうに私は考えております。  しかし、日本を取り巻く環境、特に急速な円高も円安も望ましいものではございません。為替相場が安定的に推移をすることが、産業基盤の何よりも大切なことでございますので、こういう急速な円安に対しては、通貨当局が適切に対応しながら、安定基調に参っていくことを期待いたしておるというのが現在の心境でございます。
  143. 井上泉

    井上(泉)委員 大臣のそういう見解というのは主管大臣として当然のことだと思うわけですけれども、ドル高・円安の方向がこれでとまるということについては、若干見通しが甘くないかと思うわけです。私も経済学者でないからそういうことについてはわかりませんけれども。  かつて狂乱物価のいわゆる引き金となったのが大手商社の買い占め売り惜しみ、それが物価を非常に引き上げた、そのことは大臣も御承知だろうと思うわけですが、きょうのニュースを聞いておりますと、日本の有力な保険会社がその莫大な日本円でドル買いの投資を随分しておる、それが今度の円安・ドル高の大きな背景である。これは、日本の円を持つよりもアメリカのドルを持っておる方がいい、その方が保険会社としてはもうかる、こういうふうな、私には全く理解のできない、国民感情としては理解のできない企業者の経営のやり方ではないか、こういうふうに思うのです。そのことが大臣のお耳に入っておったとするならば、そういうふうな大手金融業者の対応の仕方というものは、やはりこれは問題がありはせぬかと思うわけですけれども、どうでしょう。
  144. 梶山静六

    梶山国務大臣 そういうことが円安につながった直接の原因だというふうには考えておりません。少なくともアメリカの貿易収支が大変堅調に、もちろん大幅な赤字ではございますが、赤字の幅が急速に減少しつつある、そういうことを踏まえましてドルが高くなっている。これはひとり円だけが安くなったのではなくて、西独マルクもこれについてここ数カ月、日本の円と連動してというよりむしろマルクの方が下げ幅がやや速いテンポで行われたわけでございますから、その意味から考えますと、今回のここ数日間の急速な円安は、これは日本が一番きつく効果を受けているかもしれませんが、これは中国問題もこれありということがあるかもしれませんが、それは必ずしも生保会社その他のアメリカに対する過大投資というか投資あるいはドル買いにすべてが原因しているというふうには考えておりません。  しかし、残念ながらと申しますか、アメリカ人の神経を逆なでするような意味でのアメリカの土地や物件、会社、そしてドル買い、そういうものに対する彼らの憤りもあることでございますので、許される範囲とは申せ、企業には企業の倫理もあろうかと思いますが、いずれにしても、大切なお客さんの金をどう保全をしていくかという道もあろうかと思いますので、私から批判をすることは避けますが、それは当然厳しい企業倫理のもとにこれからも行われることを期待いたしております。
  145. 井上泉

    井上(泉)委員 私もそういうニュースを聞いてから、中小企業を含めて日本の経済を後退せしめるような、そういうふうな企業者の心理といいますか、それはリクルートで政界、官界、財界をまぜくり返したと同じようみことが、生保会社とか証券会社の持っておる金座よるドル買いでまた起こりはしないか。そうなってくると中小企業者が一番被害を受けるわけで、そういう点からも私は危惧の余り大臣にそのことについてお尋ねをしたわけであります。確かに、ニュースによると、大蔵省の某高官が保険会社の役員を呼んで、これはちょっと行き過ぎじゃないかというような注意喚起をしたという報道でありましたので、そのことを大臣も含んでおいていただきたいと思います。  大臣に対する質疑は、今度一般質問がありますので、そのときに時間をとって御質問申し上げたいと思うのですが、ただ一つ、今大臣がはしなくも口にされました、中国政府の言うことによれば動乱とか暴乱ですが、それによって日本企業は全く機能が麻痺したような形になって、商社員もどんどん日本に帰った。きょうあたりのニュースでは、引き揚げてきた人がもう大分任地、北京へ帰るというような話も出て、中国も落ちついてきているような状態であるわけです。しかし、海外へ進出した日本企業、例えば中国に進出した企業が、中国でああいうことが起こって、もう一切が引き揚げる。引き揚げるといっても、人間は引き揚げられても物は引き揚げられないですから、そうなったときに、中小企業の被害というものはもう大変なものだと思うのです。中国に限らずどこでも日本は海外へ投資をするというのは、日本経済としてはどうしてもしなければならぬ宿命であると私は思うので、海外投資に対する保護というものは現在の通産行政の中でどういうものがあるのか、どうしようと思っておるのか、御意見を承りたいと思います。     〔浦野委員長代理退席、尾身委員長代理着席〕
  146. 梶山静六

    梶山国務大臣 中国で民衆が武力で鎮圧をされたことは大変痛ましいことであり、まことに遺憾に考えますし、人道上許容し得ない問題でございます。しかしながら、日本中国の間は大変近い国でございます。城地委員にもお答えをいたしましたように、昭和四十七年に日中共同声明をいたしまして国交を回復して以来、今まで遠かった中国でございますが大変急速に我々は距離を短縮しながら、今日まで大変な友好関係を築いてまいったわけであります。ですから、産業界側と申しますか企業活動側においても、中国は極めて安全なところという認識のもとに今日まで貿易投資を行ってまいったわけでございます。今々のところ、この貿易には大きな影響を生じておりません。多少のトラブルはございましたが、そういうことはございませんが、これから新規契約には影響が出てくることは否定し得ない状況でございます。また、我が国の企業投資先として今まで中国に抱いていたイメージというのは損なわれたという表現がいいかどうかはわかりませんが、そういうことになるのではないかという懸念を我々はいたしているわけでありますが、いずれにしても、中国が早く冷静さを取り戻し、そして今までの開放政策をさらに進めていただいて、秩序ある中国が再現をし、日中間の友好がさらに高まり、経済間の協力もさらに進んでいくことを期待したいと思うわけであります。今々の事態に対しては、引揚者の輸送その他のことについては万全を期して行ってまいったように聞いております。
  147. 井上泉

    井上(泉)委員 大臣のそういう見解の中で、私は、中国との経済交流というものは後戻りすることなく新しい平常な状態に、中国当局は現在もう既にそういうことを言っておるわけですけれども、制裁とかなんとか、物による制裁とかということではなしに、向こうの中国日本との友好関係が本当に真に友好関係を持続、発展することのできるような、そういう対応の仕方を中国に求めていくようなことを、やはり仲のよい者は仲のよいなりに忠告するのが当たり前です。だから、自国の人民に鉄砲を向ける、銃口を向けるというような、とても日本では考えられないような事態というものは、今後再びあってはならないことだし、起こしてはならない、そういう環境というものに日本中国との友好関係を、悪いものは悪いと言って話のできる友好関係にさらに努力をしていただきたいし、経済的な交流というものもより安定をした形で交流ができるような指導というものをお願いを申し上げておきたいと思うわけです。  ところで、今度の三つの法案につきまして、これはいずれもまだ部会長から賛否について話は聞いておりませんけれども、およそ反対すべき法案ではない。私自身は、先走った考え方ですけれども、そういうように考えるわけですけれども、これはいい法律で、必要な、反対でない法律でも、運営の中身というものはどんなものかということをやはりたださないと、これはそのまま、はい、こういう法案が、提案理由の説明も立派な提案理由が言われておるがどうかということをお尋ねせねば、これは賛成するにも賛成のしようがないという性格の法律だと私は思うわけです。  やはりこういう法案審議するに当たって、要求すればいろいろな資料は提供していただけると思うわけですけれども、要求がなくとも、現在の中小企業投資育成株式会社はこういう経営状態であります、これだけ投資をしております、そして余裕金はこれだけありますというように、小規模企業共済法による制度についても、加入者がどれだけあって、その資金運用がどういう形になっておるという現行の資料というようなものをやはり提供していただいたら、それに基づいて、それは資金運用の仕方が悪いじゃないかとかあるいはこれじゃ役員が多過ぎるじゃないか、これじゃ職員の給料が低くないかとかいうような論議ができるわけです。私の不勉強のせいかもしれませんけれども、そういうふうな内容のものを資料として提出をしていただきたいということを前提にして、一つの事例として、小規模企業共済制度で現在加入している人がどれくらいであるのか、そしてまた、本制度の加入率というものが全体でどうなっておるのかということを御報告願いたいと思います。
  148. 関野弘幹

    ○関野政府委員 小規模企業共済制度の加入対象数でございますが、昭和六十一年度事業統計をもとにした推計によりますと、小規模企業共済制度の加入対象となる小規模事業者数は全国で約五百六万人というふうになっております。このうち小規模企業共済制度に加入している加入者数は、昭和六十三年十二月末現在で約百十八万人でございます。さらに、最新時点の数字として、昭和六十三年度末現在では百二十万人の水準に達しておりまして、加入対象者数に対する比率は約二四%になっております。
  149. 井上泉

    井上(泉)委員 これは五万円の共済掛金が七万円というように加入者の負担も増大をしてきておるわけですから、だから、これの運営といいますか、この機関の運用については、そういう非常に零細な者の汗の金ですから、大事な経営、慎重な経営の方法をお願いしたいと思います。  この三つの法案の中で、中小企業投資育成会社、これは東京と名古屋と大阪の三つの投資会社があられるということですが、その三つの会社がそれぞれ、大阪、東京、名古屋といえば企業が一番集中しておるところですから、これはやむを得ぬ、企業集中しておるからそこのところにウエートを置かれるのはそれは当然だと思うわけですけれども、今日、各地方の自治体でも、工場誘致というようなことをどこの自治体の長も看板を掲げてやっておるわけです。これは大臣も自治大臣をやっておられたのですから、自治体のそういうふうな政策というものはよく承知をしておると思うわけです。ところが、福島県においても青森県においても、我が高知県においても、どこへ行っても中小企業のそういう工業団地が満杯になっておるという話よりかむしろ、せっかく広いなにができたけれども、その工業用地に進出しておる企業が非常に少ない、ところによっては全然来ていない、こういう話も聞くわけです。そういうふうな状態で、いわゆる工場立地にせっかく開発したのに工場が来ていない、都会では過密である、こういうのをむしろ積極的にこの育成会社が企業に働きかけて地方の工場団地に進出をするような営業活動をしたらどうか、これは行政機関でないですからあえて営業活動と言いますけれども、営業活動するように行政指導されたらどうか、こういうように思うわけですが、どんなものでしょうか。
  150. 高島章

    ○高島(章)政府委員 先生ただいま御指摘いただきましたように、資本金一億円未満の中小企業分布状況を見ますと、圧倒的多数が東京、名古屋、大阪通産局管内に集中しておりまして、結果として投資企業もこれらの三地区に多くなっているのは御指摘のとおりでございます。ただ、投育社、投資育成会社は、各地方公共団体、商工会議所、中小企業金融公庫の支店等と連絡を非常に密にいたしまして、各地方の中小企業に対する投資活動を積極的に行っているところでございます。  投資育成会社は、以前から、ただいま問題提起なさいましたように、東京、名古屋、大阪といった地区以外におきましても投資先の開拓に非常に努めております。さらに今後は、地域経済をリードするような中小企業を積極的に育成することが非常に重要であるという観点から、創業支援を初め積極的に事業活動を行いまして、各地域の中小企業のニーズにこたえていくように指導していく考えでおります。  また、中小企業地方への進出が新会社の設立という形で行われる場合には、投資育成会社の創業支援出資の利用ができるようになります。これにあわせまして、工業再配置施策、テクノポリス施策、また頭脳立地施策といういろいろな施策があわせ活用されまして、御指摘のような企業地方進出が促進されることを期待しているわけでございます。
  151. 井上泉

    井上(泉)委員 期待をしたことがそのまま実現するということにはならない。期待をすれば、期待が実現できるような施策といいますか努力をしなければならぬと思うのです。  私がここで質問申し上げてもすぐ資料は整わないと思うわけですが、現在各自治体が工業団地用として土地造成をたくさんやっておるわけですが、その規模がどれくらいあって、それが何%くらい工業立地として利用されておるのか、そういうことをお調べになっておるでしょうか。ないとするなら、お調べになって、大きな企業のいわゆる部品工場とかいうのを、そこへ進出されたらどうですか、地域の活性化のためにもいいのですが、それに対しての資金を必要とするならうちもおたくの会社へ投資をしてもよございますよというような働きかけができないものだろうかどうか、その点ひとつ御意見を承りたいと思います。
  152. 高島章

    ○高島(章)政府委員 ただいま正確にお答えできるデータを持ち合わせておりませんので、後ほど正確に御報告を申し上げますが、通産省の中では、これは中小企業庁をはみ出ましたお答えになって恐縮でございますけれども、立地公害局等で正確な全体の数字をつかまえております。
  153. 井上泉

    井上(泉)委員 これは通産行政として非常に画期的ないい仕事ではないかと私は思うのです。各官庁が東京から引き揚げるとかいうよりももっと適切に実行ができはしないかと思うのでございますが、大臣として今の私のこの提言をどう理解されるか。
  154. 梶山静六

    梶山国務大臣 意味がよくわからなかったのですが、地方振興をしっかりとやれということだと思うのですが、私も、自治大臣時代も総理の命を受けて、いわゆるふるさと創生、中央から地方へという一つの政治の流れから、地方自身が物を考え、これが実行できるような体制を国が支援をする、今までと違った流れの政治や行政の仕組みを考えようということで、ともすると今まで経済の原則に従えば経済的な条件のいい東京に一極集中することは当然であります。ですから、私はこれ自身を否定するものではございませんが、このままで東京が過度に集中をし、地方に雇用の場すらなくなっていいのかという、これはだれしも考えることでございます。ですから、この政策目標をそこに重点を絞って、これからいわば均衡ある発展を遂げるというのが、これはひとり通産行政だけではなく国の一番大きな方向づけでなければならないというふうに考えております。そういうことを考えますと、各省庁が知恵を出し合い力を出し合って、このために努力をしてまいりたいというふうに考えております。  特に通産省はもともと工業の地方分散、工場の地方分散その他を主張してまいったところであります。ですから、昭和四十五、六年から五十年前半を考えてみますと、大変大規模な臨海工業地帯の造成等をめぐりまして、都道府県の税収をめぐりましても、地方のシェアが大分伸びて、東京都の比率が約七%程度減った時代がございます、約十五年程度でございますけれども。しかし、ここ四、五年の状況を見ますと、その半分以上既に戻しております。昨年単独だけでも二%近い東京都の税収のシェアが伸びたわけでございますから、最近の一極集中の弊害は大変極端なものになっております。そういうものをあれこれ考えますと、これからありとあらゆる方策を取り仕切りながらやっていかなければなりませんし、今、中小企業対策というこのものは、いわば中小企業対策でもあると同時に、いわゆる地域経済の活性化が一番大きなテーマになると私は考えておりますので、この三法に盛られている中の思想は、前二法がそういうものでございますし、最後はむしろこれからの中小零細企業の方々の共済制度、こういうものの受け皿をつくりながら、地方のいわば活性化のために総力を挙げて取り組んでまいりたい、こういう気持ちでおりますので、何とぞ御理解を賜り、御支援をいただきたいというふうに考えております。
  155. 井上泉

    井上(泉)委員 もう時間が参りましたので、終わるわけですけれども中小企業事業団法関係でも、中小企業構造の高度化を支援する事業というのを今度の助成対象の中に入れておる、これは私は結構なことだと思うのです。ところが、そういうふうに一つ法律があっても、その法律恩恵を受けるような業者が非常に少ない。今申し上げましたように、東京都では坪が何千万もする、田舎へ行けば坪が十万円でも買い手がない、工業団地でもそういう団地が至るところにある。そこら辺を通産省の方としては調査をされて、この工業団地を少なくとも梶山大臣のときには何%は工業化する、工場誘致をして地方の活性化を図るというふうにやるというような具体的な目標設定をお願いしたいと思うわけですが、大臣の御見解を承って、私の質問を終わります。
  156. 梶山静六

    梶山国務大臣 大変ありがたい御激励だというふうに感じております。私個人も、いわば地方主義者でございますし、地方の活性化なくして日本の発展はないという気持ちでおります。そういうことを考えますと、何はともあれ地方における企業活動をさらに活発にさせ、そして雇用の場をふやし、量質ともにそういうものを充実してまいる、そしてまた中央から地方に移転しやすい環境をつくっていく、そのための税制やその他のもろもろの制度を整備をしながら、両々相まって地方の充実を図ってまいりたいというふうに考えております。
  157. 井上泉

    井上(泉)委員 どうもありがとうございました。
  158. 尾身幸次

    ○尾身委員長代理 上坂昇君。
  159. 上坂昇

    ○上坂委員 今、井上先生から、中小企業三法関連で総括的な質問がありました。したがって私は、できるだけ各論的に質問をしてまいりたいと思います。  そこで、問題ですが、事業団の役割、これは最近は非常に多岐にわたってきている、また大変重要性を帯びていると思いますが、今回追加する業務として、環境の変化の中で高度化制度の充実、これを図ることを目的とする、こういうことになっておりますが、高度化の充実というのは具体的に言うとどういうことなのか、これは説明をしてもらいたい。そこにどういう政策的な目標を置いているのか、これが第一点。  第二は、それを行っていく、いわゆる二十一条一項二号のハの項でありますが、「中小企業構造の高度化を支援する事業を行う者」とありますが、これは具体的にはどういう組織を指すのか、ここのところをまず御説明いただきたいと思います。
  160. 高島章

    ○高島(章)政府委員 まず第一の点でございます。  現在の中小企業事業団法におきましては、事業協同組合等を主体とする各種の共同化、集団化事業などを中小企業構造の高度化に寄与する事業として中小企業事業団による助成の対象としておりますが、先ほど来お話がございますように、現在のように経済環境が複雑化し、かつ変化が加速している状況のもとでは、従来のような事業協同組合等を中心とする共同化等のみでは、これには十分対応できない事態が生じているわけでございます。このため、事業の共同化等のための施設整備やニーズの把握、共同事業の円滑な継続等のための調整等の支援を行う主体に対する助成を通じまして事業の共同化等を効果的に進めるようにすることが必要でありまして、これらを中小企業構造の高度化を支援する事業として助成の対象とすることとしたものでございます。  また、第二の点、御指摘いただきました、今回追加する「中小企業構造の高度化を支援する事業を行う者」とは何か、だれかという点でございます。  今回の法改正による中小企業構造の高度化を支援する事業を行う者としましては、当面は第三セクターとして設立される会社または公益法人を想定いたしております。会社または公益法人以外の組織といたしましては、任意団体や組合が想定されるわけでございますが、任意団体は、事業運営に当たる際の継続性が担保されなかったりあるいは責任の所在が不明確といったことが考えられまして、事業の実施主体といたしましての適格性を欠くおそれがあろうかと思われます。また、組合につきましては、中小企業者の自主的な結合体としまして、従来の、先ほど来御説明申し上げております高度化融資制度が主たる対象としてきた実施主体でございまして、中小企業者の自主的な努力のみでは実施が困難な場合に、先ほど申し上げました支援事業、支援する事業を行うという今回の法改正に係る実施主体といたしましては、本来適切なものでないと考える次第であります。  これらの理由から、冒頭申し上げましたように、制度発足に当たりましては、少なくとも、当面、会社または公益法人に限って事業実施主体としたいと考えております。
  161. 上坂昇

    ○上坂委員 第三セクターあるいは公益法人を対象にするということでありますが、第三セクターの方は最近地方自治体等がこれに参画をして大体見当がつきますが、公益法人ということになると、どういうふうになるのですか、この点を説明いただきたい。  それからもう一つは、ふるさと創造産業の育成と支援、こういうことになっておりますが、これは今ふるさと創生論とかなんとかというのが出てきて一億円ばかりついているわけですが、そういうのとはどういうふうに関連をするのか。  この二つについて説明をいただきたい。
  162. 高島章

    ○高島(章)政府委員 公益法人は第三セクターの中の一つ形態でございまして、営利活動を行います、営利を目的といたします会社という形態以外のものとして公益法人を考えているわけでございます。あくまで第三セクター一つ形態と御理解賜りたいと思います。  第二点の、ふるさと創生の財団等の話でございますが、本件も、我々が今考えております、各地において中小企業が活発な活動をし、地域に新しい力をつけていくということでは、同じ方向、同じ政策目的を持ったものと考えております。
  163. 上坂昇

    ○上坂委員 公益法人の定義みたいなものでありますが、これは民法の「第二章 法人」のところに出てきまして、第三十四条で「祭祀、宗教、慈善、学術、技芸其他公益二関スル社団」、こういうことになるわけでありますが、具体的に言えばこの公益法人の中では一体どんなことが想定をされるのか、もうひとつ説明を具体的にしてもらいたいと思うのですね。  もう一つは、第三セクターへの出資者、この構成と出資の割合。また、これは中小企業対策でありますから、本来は上限があるわけであります。いわゆる大企業の定義と中小企業の定義とに分ける上限があるわけでありますが、そのことについてはどういうふうにするのか。それから、もしそこへ出資をしていくという形になると、その事業団としての出資の比率というものはどういう格好になるのか。  時間が余りないから、もう一つですが、例えば自治体が加わるということは、地域のいろいろな活性化を図る、あるいは土地改造を行う、あるいは商店街の改造も行う、こういう形になってくると思うのですが、その場合、地方の自治体というのは今非常に財源に困っているわけであります。そこで、地方自治体がそういうところへ金を出すという形になると、財源的に非常に問題があるし、それから、その他の事業をやる場合もいろいろ支障を来す場合があると思うのです。これは例えば資金を金融機関から借りたりした場合でもそういうことが考えられる。  そういうことを考えたとき、そこまで考えた手当ての仕方というのですか、これを配慮しなければならないのではないか。それでないと仏つくって魂入れずになってしまうおそれがある、こういうように私は思うので、この点についての御説明をいただきたい。
  164. 高島章

    ○高島(章)政府委員 第一点の公益法人の中身を具体的にという御質問でございます。  先ほど法律のところでお触れになりましたように、あくまで公益を追求する法人でございまして、具体的には、例えばその地域の中小企業全体の最も必要としている研究活動を支援するとか、あるいは一緒にいろいろなデザインを工夫するための下地を準備してあげるとか、さらに、販路を開拓するためにはどうすればいいかといった共通のいろいろなノーハウを考え、そしてその成果関係地域中小企業の人たちに差し上げるということであろうかと思います。あくまで一つの例で御説明を申し上げました。  それから第二点の、第三セクターへの出資者はどうなるのか、大企業等はどうなるのかという御質問でございます。  現在、各地域におきまして、地元産業界、自治体が中心となりまして、地域ぐるみで、業種の垣根を越えまして、地域産業、中小企業が新たな環境に適応し発展することを支援しようという動きが出ておりまして、これが先ほど来申し上げております。その実施主体としての第三セクターになるわけでございますが、そういった横断的な地域ぐるみということでございますから、その第三セクターへの出資者には、中小企業事業団のほか、地元市町村それから都道府県といった地方公共団体、さらには地元の企業、産地組合等が考えられると思います。なお、これは中小企業がいろいろな活動をしていくための支援をする主体に対するものでございますので、その中に大企業が入ることは何ら拒むものではないと思います。  その次に、中小企業事業団の出資規模はどの程度かという御質問でございますが、これは個別事業案件ごとに、事業の規模とか内容、あるいはどのように資金を調達していくのかとか、さらにはその計画の採算性等、非常に幅広く事業計画を考えてまいる必要がございますので、一件当たりの出資額の上限、下限を特に基準を設けて設定するということは考えておりません。ただ、平成元年度に創設を予定しております事業につきまして、調査したところでは、現在のところ一件当たりの出資規模は、あくまで平均でございますが、一億五千万円程度でなかろうかと考えておる次第でございます。  それから、中小企業事業団の出資比率がその場合どうかということになるわけでございますが、出資は中小企業構造の高度化を促進するという政策目標を達成するために必要な限度で行うということがあくまで趣旨でございます。こういう趣旨から考えますと、当面中小企業事業団の出資割合というのは地方公共団体、都道府県あるいは市町村等の出資割合を下回る、これより小さいもの、いわゆるマイナーポーションにとどめる方針で制度を運営していく所存でございます。  それから、最後に御指摘ありました都道府県の援助で、都道府県とともにやるわけでございますが、そういった地方自治体の資金が十分確保されていなければ事業としてはいいものができないではないかという御指摘は、そのとおりでございます。我々といたしましては、この政策の樹立の当初から、各地方自治体と密接な連携をとりまして、実際に各地方自治体がこの事業につきまして応援できる、支援できる内容について把握した上でこの制度の創設を考えさせていただいておりますし、また実際に具体的な案件といたしましては、十二分に地方自治体と連携を密にいたしまして、地方自治体及び中小企業事業団が一体となって、その出資者としての役割が十二分に果たせるように努力してまいる所存でございます。
  165. 上坂昇

    ○上坂委員 中小企業といった場合には、中小企業基本法におけるその定義があるわけですね。ですから、一件当たり一億五千万円くらい大丈夫だということになると、これはもう大企業の部類に入ってしまう。ただ、従業員が三百名以上というもう一つの条件があるわけですが、これを満たすとすれば大企業に入ってしまうのです。そうなると、もうそういう範疇は超えてやるのだというふうに考えた場合、中小企業の定義の改定というようなものにつながっていくおそれがあるのではないか、私はこういうふうに思いますが、その辺をこの事業団法についてはお伺いして、次に移りたいと思うのです。御回答を。
  166. 松尾邦彦

    ○松尾政府委員 ただいま御指摘の点については、先ほど御答弁申し上げてまいってきておりますように、今回の法改正によりまして助成対象といたします「高度化を支援する事業を行う者」というのは、高度化を中小企業者が図ってまいります場合に、これに必要な研究開発施設等を設置する者を対象にしようと考えているわけでございまして、今先生指摘のように、第三セクターとなるかと思いますけれども、仮にそういった設置をする者が形式上大企業に当たる場合もあろうかと思います。ですけれども、私どもが考えておりますことは、何と申しましても最終的にこの施設を利用するのは、そして利用して構造転換などを図ってまいりますのは、受益者となる人というのはあくまで中小企業者である、その点を主眼に置きまして中小企業事業団からの助成を行おうと考えているわけでございまして、高度化を支援する事業を行う人が中小企業性を持っていなければならないかどうかというところよりも、むしろ受益対象が何者であるかというところを考えて申し上げているわけでございます。したがいまして、直に出資の対象、助成対象は中小企業に限定する考えはございませんけれども、さりとて、だれでもいいというわけにまいりませんので、先ほど御答弁申し上げましたように、その対象となる第三セクターが中小企業のために事業を行っていくんだという性格づけがはっきりした場合に限って出資を行うようにしてまいりたいと考えているところでございます。
  167. 上坂昇

    ○上坂委員 次に、中小企業投資育成株式会社法の改正についてお伺いしますが、創業資金というのは、今のところ環衛資金ののれん分け制度しか実際にはない。ようやく中小企業の分野においてもこれを導入するということになったのは画期的であると私は思うのです。その意味では高く評価をしたいと思うのです。  ところで、当初の要件として新事業の選択というのが必ずついてくるわけであります。したがって、要件が厳し過ぎたりすると、なかなかこれの効果があらわれない。そこで、投資先の新しくつくられる、創業される企業の、そこの選定基準をどうするかということが非常に重要になってくると思うのです。  もう一つは、例えば、何でもやりたいといっても、会社というのはいっぱいあるわけでありますから、また業種はすごく多いわけですから、同じような業種がたくさんあるところへ同じような業種ができても、これは果たして投資効果があるかという問題も出てくるだろうと思うのです。そういう場合を勘案したときに、業種を限定するようなことがありはしないか、こういうふうに思われますが、その辺の事情を御説明いただきたいと思うのです。
  168. 松尾邦彦

    ○松尾政府委員 現在、投資育成会社につきましては、従来の増資新株の引き受け等に際しまして、法律の第六条の規定に基づきまして、対象企業の選定基準を「事業に関する規程」として整備して、大臣の認可を得ることになっておりますけれども、その中におきましては、選定基準として、企業成長性、収益状況、自己資本の充実の必要性などを現在基準として運用してまいってきておるところでございます。  今回の改正によりまして、新たに設立新株の引き受けを行うことにするにつきましては、どのような選定基準をとるかということにつきましては、これから法律改正を待ちまして投資育成会社の方でまず検討することになっているわけでございますけれども、基本的に申しますれば、確かに先生指摘のように新規に設立する企業でございますから、既存企業の場合と異なり事業の実績がございませんから、設立しようとしている人が持っている技術とかノーハウとか、あるいは経営管理、マーケティング、そういったものの能力をよく審査して考えていくことになるのではないかと考えております。  もっとも、ですからと申しまして、先生指摘のように新しい分野にいかなければならないということでは必ずしもございません。既存の事業の中でも事業の伸長が見込まれるような成長分野を独立してやるとかいうような場合も当然あるわけでございますと思います。  また、業種につきましても御指摘がございましたけれども、現在と同様、設立新株の場合につきましても、原則として公序良俗に反するおそれのある風俗営業等、これは別でございますけれども、それらを除きますれば、広く中小企業全体を対象とし、中小企業全体の構造転換が円滑かつ着実に進展してまいるように広く考えてまいりたいと考えております。
  169. 上坂昇

    ○上坂委員 大臣一つだけお伺いしますが、それは、先ほど大臣から答弁がありまして、都市部への過度の集中を避けていかなければならない、企業地方分散を図ることが一つの大きな目的である。その目的に反するような状況一つ出ているということを指摘して、これに対する配慮をいただきたいと思うのです。  それは事業所税の存在なんです。これは人口が三十万以上になりますと事業所税をつくることができることになっております。ところが、これを実施しないと、自治省からとやかく言われる、あるいは交付税の対象としてマイナスになる、いろいろな問題が出てくるわけです。ところが、今は市町村の合併によって大きな地域が出てくるわけですから、都市部のいわゆる追い出し税というものは、本当は地方の受け入れ税でなくてはならなかったわけですが、受け入れる側に事業所税を設定するものですから、企業は来ないのですね、現実に。  具体的な一番いい例でいいますと、いわき市であります。いわき市のことについては、大臣はよく御存じのはずでありますが、通産省はわからない。幾ら実態を調べに来いと言っても一回も来ない。僕は十数年言っているのだけれども、一回も来ない。わからないのです。どのぐらい大きいかというと、南北五十一キロ、東西四十キロであります。その面積は実に千二百二十八平方キロであります。香川県より大きいんだよ。こんなに大きな市があって、その市の中に小中学校が百十二もある。都市があちこちに散在をしている。ですから、百や二百の工場が来たって、こんなものはどこに入ったかわからないぐらい広い。そのぐらい大きな地域で工場が来ないのです。新産都市の、先ほどのいわゆる臨海工業地帯、ペンペン草が生えて、最近ようやく少しは来るようになった。だから、私は、そのときに、合併でこれは辛酸をなめる都市になるからと注意したのだけれども、合併させちゃった。そこが問題なんだ。  この事業所税というのは、単に人口三十万だから自動的に適用するなどという考え方では問題にならない。これは人口密度によって勘案するという形でなければ、地方の活性化は図れないのです。これを幾ら言ってもわからない。歴代の中小企業庁長官と毎年私は会談をやって、これを主張しているのだけれども、わからない。わからないというより、わかろうとしないから困っちゃう。  そこで、これは大臣が閣議等でそこのところをきちんと言ってもらって、本当に合併した地域が人口が多くなったら、その地域企業を幾らでも受け入れられるような状況をつくるために万全の努力をしていただきたい。これは梶山大臣に対する特にお願いを含めて、御意見をいただきたいと思います。
  170. 梶山静六

    梶山国務大臣 私も、先ほど申しましたように、地方主義者でございまして、地方の自主財源の拡充強化という意味で、今までこういうものだけを眺めてまいりまして、今上坂委員の言われる、地方への企業の立地のいわば大きな妨げになっている、こういう観点でこの問題をとらえたことが実は残念ながらございませんでした。この問題もぜひひとつ俎上にのせてこれから検討してまいりたいと思います。  ただ、昨今言われますように、これはまた上坂委員におしかりを受けるかもしれませんが、赤字法人が大変多いわけであります。今五割を超えておると言われておりますけれども、この赤字法人、確かに今の法人課税は所得がなければかけないことは当然でありますけれども地方自治体にとっては、その面積なりあるいは営業規模なりというものによって、その地域地域で受ける利益があるわけでございますから、そこに所得が発生しないからかけないのだということで果たしていいのかということで、私は自治大臣時代にこの検討会、勉強会をいたしまして、これからの方向としてはむしろ外形課税的なものを導入すべきだ、そして地方がそういうものに対する一つの果実を得て、さらに地方の財源を充実すべきだということがございますので、この事業所税とあわせてもう一回この問題は私も勉強し、いわば通産省的発想に立ってもう一回問題をやってまいろうかと思います。  ただ、委員、この問題が極端な原因で企業が参らないというふうには私は考えておりません。例えば御地に常磐高速道路が入りますと途端に企業の立地が大変盛んになったということを考えれば、事業所税があるから企業が来なかったというのではなくて、高速道路網の方がその意味でははるかに影響力が高い。ですから、私のところにも、わきに城地委員がおいでになりますが、北茨城も高萩も十王も、我々を取り巻く山間地においてもいわば常磐自動車道路が完成をしたことによって、事業所税があったかなかったかは別として、こういうもので企業が最近盛んに立地をするようになってまいった。ですから、いろいろな基盤整備を行い、制度を導入し、その他税制上のもろもろのことを考え合わせながら、一体となってこういうものの振興を図るために、今御指摘になった点をひっくるめて検討をして、結論を出してまいりたいと思います。
  171. 上坂昇

    ○上坂委員 大臣の答弁につけ加えれば、もう一つ、景気がよくなったからということが落ちているような感じがするのです。  それはそのとおりなんですよ。常磐自動車道ができた。もう一つ加えれば、景気がよくなった。それらは当然なんです。だけれども、景気の悪いときは現実に来なかったんだ。一番近いんだから。近くても、そして複線化されているのですからね、それでも来ないのです。平以北は複線化されていないのですから。そういうことを考えないとだめなんですね。  だから、私はこれは非常におかしな法律だと思っているのですよ。全然機械的な法律になっている。だからだめなんで、もっと配慮をして、本当に都市部の追い出し税なら追い出し税で、地方の受け入れ税なら受け入れ税のような形に持っていかなければだめだということで御意見を申し上げたのですから、今大臣は十分考えるということでありますから、その十分考えるという方を私は強く受けまして、期待をいたしたいと思います。  もう一つ、この投資育成会社について、信用保証制度ですね、この協会との関係をこれからどうしていくのか、あるいは業務との関係がどういうふうになるかということについて、一言だけお答えをいただきたいと思います。
  172. 高島章

    ○高島(章)政府委員 申しわけございませんが、ただいま御指摘ありました協会の意味をもう一度……。
  173. 上坂昇

    ○上坂委員 信用保証協会です。
  174. 三上義忠

    ○三上政府委員 今、委員の御指摘は、投資育成会社と信用保証協会の関係というふうに承りました。  投資育成会社は、御承知のように中小企業の増資の際の新株の引き受けをするという意味での資本面からの支援をしてまいるものでございます。信用保証協会につきましては、これは各県に置かれておりまして、一般的な中小企業は担保力ですとか信用力に欠けておりますので、通常の金融機関からの融資がなかなか得られない場合に、この保証協会が大変割安の手数料をもちまして信用保証をいたします。それをもとにいたしまして一般の市中の金融機関が金融をするという仕組みになっておるわけでございます。
  175. 上坂昇

    ○上坂委員 僕は仕組みをよく知っているんだよ。仕組みじゃなくて、投資育成会社も信用保証協会を利用するような形になったのでは困るから、そういうことはどういうふうに考えているのかというふうに思うのです。  大体、増資したり、普通の営業のときの費用でも、運転資金でも何でも、銀行に借りにいくわけで、その場合に銀行が貸してくれるようにいわゆる信用保証協会が保証するわけだ。保証をするんだけれども、信用保証協会というのは保証しないところが多いんだよ、逆に。そして、我々に言わせれば、銀行の信用保証をやっていて、中小企業の信用保証をやっていないというところに問題があるわけだ。それは信用保証協会の経営の面からそういうことが必要になってくるんだとは思うのだけれども、しかし、そういう例がたくさんあるわけですよ。したがって、投資育成会社までがそういうことになると困るから、一言だけこれは念のために聞いておきたかったのです。もう一回答えてください。
  176. 松尾邦彦

    ○松尾政府委員 御指摘のように、投資育成会社の場合には、従来ですと増資新株の引き受けでございましたが、今回の改正によりまして設立新株の引き受けもできるようにさせていただきたいという改正内容でお願いいたしているわけでございます。当然のことながら、投資育成会社としてみますれば、リスクの大きい設立新株の引き受け、これは実は前からやりたかったところでございましたけれども、やはりなかなか投資育成会社の財政的な基盤が、その事情が許さないということが一つ。それから、もう一つは、審査能力という点におきまして、既に軌道に乗って、ある程度めどのつく会社であればともかく、全くの新規の会社ということになりますと、相当審査をしっかりやらなければならない。その二点が従来ひっかかりまして、今日まで設立新株の引き受けまでを業務にすることにためらってきたわけでございます。しかし、御案内のように、投資育成会社も既に四半世紀にわたる業績を重ねてまいりまして、審査能力においてもかなりのノーハウを蓄積いたしてまいりました。それからまた、上場企業が出るに及びまして、三社の内部留保も既に二百五十億円ほど蓄積されることになってまいりました。したがいまして、審査能力の面あるいは現実のリスクに挑戦するという面におきましての財政基盤、いずれもかなりの実力が私どもついてまいったと思います。さらなる研さんは必要でありましょうけれども、そこは信用保証協会のような場合とはかなり違った態度で対応できるものと思っておりますし、ぜひそのように進めてまいりたいと考えております。
  177. 上坂昇

    ○上坂委員 それでは、次に、小規模企業共済法のことについて質問いたします。  昭和四十年の第四十八回の国会でこれが制定されたわけでありますが、私が国会に出てきてから、五十一年に改正法律案を社会党として出したことを覚えています。そのときに、掛金の年限が二十年だったものをもっと縮めろ、それから金額を少し高くして、そして少なくとも八百万から一千万円ぐらいの、十五年だったら十五年で、退職金がもらえるようにしなければだめだ、こういう改正案を出した。翌年の五十二年の国会でこのことが可決をしたことを覚えております。そのとき、掛金が三万円になって、十五年の年限になったわけであります。  そこで、以来この制度が非常に大きく普及をしていると思いますが、現在この制度の普及率というものはどの程度までいっているのか。それから、もっともっと普及をさせて、これに加入する小規模企業者が多くならなければならないし、そのためにはどのような方針をとってこの促進を図るか。この二点について御説明をいただきたい。
  178. 関野弘幹

    ○関野政府委員 小規模企業共済制度の加入促進問題につきましては、長期加入促進計画というものを定期的に策定いたしまして、さらに年度ごとの加入促進計画も定めまして、その普及促進を図っているところでございます。昭和五十七年度から昭和六十一年度までの五年間には、第四次長期加入促進計画に基づきます加入目標が六十五万件でございましたが、これに対しまして四十二万五千件の加入を獲得したところでございます。現在は昭和六十二年度から平成年度までの五年間にわたる第五次の長期加入促進計画の期間中でございまして、この期間中の加入目標件数を七十万件と定めておりますが、計画年度の六十二年度におきましては加入目標件数十三万件に対しまして約十七万件、昭和六十三年度目標が十四万件に対しまして十八万件の加入を得ておりまして、順調に加入促進が図られてきているというふうに考えております。現在、昭和六十三年十二月末現在で百十八万人、さらに最新時点昭和六十三年度末では、百二十万人の水準に達しておりまして、小規模事業者数に対しまして約二四%の加入が実現しているというふうに考えているわけでございます。今後とも商工会議所、商工会といった委託団体、それから金融機関等関係各機関との連携を密接にいたしまして、少しでも多くの小規模事業者に入っていただけるよう普及促進にさらに一層努めていく考えでおります。
  179. 上坂昇

    ○上坂委員 先ほど申し上げましたように、今、退職金は、店を後継者に預けた場合あるいは廃業したりなんかする場合に、大体一千万円ぐらいはないとだめだろうということで、我々としては一千万円ぐらいの目標を持ってきましたが、今回の改正で掛金が最高七万円になって、これは何年ぐらい積み立てたら一千万円を超すか、それからまた、十五年満期になったときにはこれはどのぐらいの金額になるか。それから、十五年で満期になった以後ずっと契約をするということが、希望があればそれは幾らでもできるというふうになっているかどうか。その辺をお聞かせいただきたいと思います。
  180. 関野弘幹

    ○関野政府委員 本制度は昭和四十年に発足いたしまして、そのときの掛金限度額が五千円でございました。それが、四十七年に一万円に引き上げていただき、さらに五十二年に三万円に引き上げていただき、五十七年に五万円まで引き上げていただいたわけでございます。このような掛金限度額の引き上げによりまして、先生指摘のように、近年では一千万円の小規模企業退職金を受け取られる方も出てまいりまして、その数も次第に増加傾向にございます。  それから、御質問の仮にこれから本制度に加入いたしまして毎月七万円の掛金を払い続けるということになりますと、第一種共済契約におきましては、事業の廃止の場合では約八年間、会社役員の退職の場合には約十年間加入し続けますと一千万円程度の共済金を受け取ることができる、こういう制度になります。  十五年につきましては、現在ちょっと手元にその十五年の計算の数字を持ち合わせておりませんが、例えば十年掛け続けますと、月七万円でございますので八百四十万円の掛金になりますが、十年で事業の廃止をいたしました場合には千三百六十万円の共済金を受け取る、こういうことになります。  それから、十五年満期というのは、老齢給付が受け取れる基準が十五年以上掛け続けて六十五歳以上ということでございますから、その十五年をたった以後さらに事業を継続しておられる方については、当然継続して加入していただくことが可能でございます。
  181. 上坂昇

    ○上坂委員 共済金を一時金または分割で受け取ることができるように今度するわけでありますが、これは大変結構なことだと思います。その際の税法上のいわゆる優遇措置といいますか、これをどうするかということがお聞きをしたいわけであります。  それからもう一つは、分割支給の場合、ほかの公的年金との関係はどういうふうになるか、いわゆる控除の問題等含めて御説明をいただきたいと思うのです。  それから三番目には、分割支給の場合に、本人が死亡したらその共済金の受取者はだれになるか。また、受取人が遺族になった場合、一時金としてこれは受け取るのかあるいは分割支給の権利を継承できるのか。それから、もし一時金として受け取る場合でも継承する場合でも、これはそのときの相続税との関係は一体どうなるのか。少し多くなりましたが、これらについてお答えをいただきたい。
  182. 関野弘幹

    ○関野政府委員 先ほど御質問の、七万円の最高限度の掛金を十五年間掛け続けた場合の第一種共済の、事業の廃止の場合でございますが、共済金は二千四百四十四万六千円になります。  それから、ただいまの御質問のまず第一点でございますが、小規模企業共済制度におきます共済掛金、共済一時金、分割金に対する税制上の措置につきましては、本制度の政策的意義ということから、税法上の優遇措置が講ぜられております。具体的に申しますと、第一種共済契約につきましては、従来から共済掛金につきまして全額所得控除の対象になっておりまして、今回七万円に引き上げた場合にもこれは全額所得控除の対象というふうにしております。また、共済金が一時金として支給された場合には、退職所得扱いとなっております。それから、今回導入を予定しております分割支給制度に基づく分割共済金につきましては、公的年金等控除の対象とすることとなっております。  御質問の二点目でございますが、この場合、他に公的年金控除の対象になる収入があった場合でございますが、この課税所得の計算におきましては、その年に支給された分割共済金のほかに国民年金等その他の公的年金がある場合には、これを合算いたしまして、その合計収入金額から、その収入金額に応じた公的年金等控除額を差し引くということになっております。したがいまして、公的年金を合算して、その額に対して公的年金控除を控除する、こういうシステムになっております。  それから、分割支給金を受給している間に本人が死亡した場合の受取人がだれになるかという御質問でございます。これにつきましては、今回御提案しております改正法案第九条の四第一項第一号の規定にございますとおり、残りの期間中に支給されるべき共済金は、民法の一般原則によりましてその契約者の相続人に対して支給するということに定めております。その際の支給方法でございますが、これは小規模企業共済制度の本来の趣旨というのが小規模事業者本人を対象にした制度であるということ、それから、相続人について分割支給を継続するということになりますと、複数の相続人が存在するような場合には中小企業事業団の支払いに関する事務コストが増加するというおそれがございます。これらのことから、本改正案におきましては、残りの支給期間中に支給されるべき分割共済金は、その現価相当額を一時金として支給する、こういう制度にして御提案している次第でございます。
  183. 上坂昇

    ○上坂委員 今のお答えは了解をいたしました。  この法の改正に伴って事業団法の改正が行われることになるわけでありますが、その理由と背景というものについて御説明をいただきたいと思います。
  184. 松尾邦彦

    ○松尾政府委員 御指摘のございました小規模企業共済法の改正にあわせて事業団法を改正する点でございますけれども、共済法の改正によります掛金限度額の引き上げですとか共済金の分割支給の導入は、ただいますっと御説明申し上げてまいりましたように、小規模企業者にとりましてこの共済制度を一段と利用しやすくすることを目的といたしたものでございます。一方、中小企業事業団法の改正によります余裕金の運用範囲の拡大をお願いいたしているわけでございますけれども、これは小規模企業者からお預かりいたしました共済掛金をより効率的に運用いたしまして、この共済制度の財政基盤を強化することを目的といたしているわけでございまして、これらの改正は、この共済制度の拡充、運用改善を図る上で表裏一体の関係にあるものでございますが、一つ法律に束ねまして御提案し、御審議をお願いすることといたしているわけでございます。  なお、この共済制度の見直しを行いました結果、当面中小企業事業団法の改正を要すると考えられる点はこれで一応全部盛り込んで御提案申し上げておるつもりでございます。     〔尾身委員長代理退席、委員長着席〕
  185. 上坂昇

    ○上坂委員 聞きますと、債券を購入したりそこへ投資したり、国債のところへ投資をしたりしているようでありますが、商工中金への投資が一番多い、七〇%くらい占めているのだということでありますが、そのいわゆる中金債との利回り関係からいって他にそれより上回るようなところがあるのかどうか、そういうところを目標にして法改正をやって資金の運用を図ろうとしているのではないかというふうに思いますが、もし対象があればその対象について御説明をいただきたいと思います。
  186. 関野弘幹

    ○関野政府委員 今回、事業団法の改正によりまして、事業団の余裕金を政令で定める方式で運用できるようにするという規定を御提案しているところでございます。この政令で定める余裕金の運用方法で私ども今頭にありますのは、生命保険契約を締結して、これによって資産運用をしたい、こういうことでございます。  生命保険運用につきましては、例えば昭和六十二年度の厚生年金基金によります生保の運用利回りが八・三九%ということになっております。これに対しまして、現在、私どもの小規模企業共済事業におきます余裕金の運用の七割弱は、先ほど先生指摘ございましたような金融債で運用しております。金融債の現在の発行利回りが四・八%ということになっておりますので、生命保険契約による資産運用を導入することにより、全体としては相当程度の利回りの改善が期待できるのではないかというふうに私ども考えておる次第でございます。
  187. 上坂昇

    ○上坂委員 生保を利用して運用していくという場合、そこへかなり集中していくような格好になると、商工中金の方を今までの関係から全部引き揚げるというわけにはいかないだろうけれども、生保の方へどのくらいの割合でこれを回していきたいというふうに考えているか、その辺のところをお聞きしたいと思うのです。
  188. 関野弘幹

    ○関野政府委員 平成元年度の生命保険運用予定額につきましては、この法案が御承認いただいた場合には約一千億円程度をこれに充てたいというふうに予定しております。ただ、本制度の共済資金というのは、小規模事業者の積み立てた掛金が原資となっておるわけでございますから、極力中小企業者に対する還元につながる方法を主体として運用していくという従来の方針には変わっておりません。したがいまして、今後どの程度の金額を生命保険運用に回すかということにつきましては、今後の運用の実績あるいは金銭信託とか金融債等いろいろな運用手段のバランスを踏まえながら判断していくべき問題だというふうに考えております。
  189. 上坂昇

    ○上坂委員 中小企業関係法案を検討いたしまして、今までになく非常にいいところへ目をつけてきておられるということについては、これは感謝をすると同時に、これを実際に運用するに当たりましても、本当に中小企業者が救われるようにあるいは新しく企業を起こそうとするものの意欲が生まれてくるような形で運用されることを心から希望いたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  190. 与謝野馨

    与謝野委員長 森本晃司君。
  191. 森本晃司

    ○森本委員 きょうは中小企業三法をいろいろと私も質問をさしていただくわけでございますが、それに先立ちまして、新大臣が御就任いただきましたことでございますし、また大変厳しい中での御就任でもございますし、御苦労さまと申し上げたいと思うとともに、新大臣は、党の商工部会長をされておったり、また商工委員長をされておったり、あるいはいろいろと通産行政に御造詣が深い、そういうふうに思い、また同時に期待もしておるところでございます。  そこで、三法の内容に入る前に、これはやはり中小企業の皆さんにも大変影響も及ぼしてくることでございますので、現況におけるいろいろな問題の中から二点ばかり大臣にお尋ねを申し上げたいと思います。  まず、ここ数日非常に円安が進んでいるわけでございますけれども、この円レートに関する現状認識、また今後の見通し通産大臣としてどのようにお考えなのかという点をお伺いしたいと思います。  また、同時に、十三日の新聞に、十三日の閣議後大臣が、「金利が上がると、内需拡大基調に水をさし、貿易不均衡解消という大方針に反する。角をためて牛を殺すようなことはしたくない」ということから、公定歩合の再引き上げについて反対ということを申し述べておられるようでございますけれども、その辺もあわせて、大臣の今の円安の状況についての見解をお伺いしたいと思います。
  192. 梶山静六

    梶山国務大臣 冒頭、御激励を賜りまして、ありがとうございます。  ただ、私も、何年か前、先ほど申し上げましたように、日本という国は貿易立国、技術立国をしなければならない国だということで、私自身も商工行政に関心を深めてまいった一人でもございます。ただ、その潮の流れが速いと申しますか、技術革新の波が速い。世の中の流れが速いわけでございますから、私の持っている知識がむしろ逆に現在の商工行政を行う上でブレーキになりはしないかということを恐れております。できるだけフランクに、白紙に戻して皆さん方の御意見をちょうだいし、世論の赴く動向を見定めながら、懸命に努力をしてまいる決意でありますので、御指導を願いたいと思います。  今この円安の動向についての御質問でございますが、確かに、あの閣議後、記者会見で、私は、特に現在の円安の傾向がそれほど中長期的なものではないはずだという観点と、それから、これを心配する余り金利の上げ等が行われることは、今日まで定着をした内需の振興、拡大基調、そういうものを合わせますと、景気が後退をするということを考えますれば、むしろこれは通貨当局の適宜な処置ということを、そのときはわざわざ申しませんでしたけれども、少なくともそういうものに対応してこの時局を乗り切るべきだ、こういうことを実は申し上げたのが、私の円安の問題に関する一番端的な表現でございます。  ですから、先ほどもお答えを申し上げましたとおり、今回のいわば円安の為替相場というものは、中国の政情不安、と申しますのは、考えてみますと、中国というのは近来大変安定をしたと見られておったものの、こういう状況になるのだから、発展途上国にはやはりなかなかその内蔵する問題がいろいろある。そういうことで、むしろそういう意味では、先進国の、特にいろいろな意味での基盤の安定したアメリカのドル、こういうものに対する期待が高まったということが一番背景にあるという気がいたします。  そして、もう一つ加えて、アメリカの卸売物価が急騰をいたしました。これは五月は前月比で〇・九%上がったわけですから、年率一割強の卸売物価の上昇を見たわけでございますから、当然、物価高になればインフレ懸念がございますから、金利の引き締めがアメリカにおいても行われるだろう。引き締めを行うと金利が上昇する、上昇すればドル高という、そういう方程式のもとに、そういうものを予測しながら思惑買いが進んだのではないかという気がいたします。  しかし、本年来、アメリカの幾つかの経済の指標の中で見てまいりますと、いわゆる貿易の赤字の減少が目立っております。特にECに対しては相当な回復をいたしております。こういうのを見ますと、対ヨーロッパ、例えば、先ほども申しましたけれども、西独マルク等に関しては、日本の円よりもはるかに西独マルクの方が安くこの一、二カ月推移をいたしております。  そういうことを考えますと、これはひとり日本だけの問題ではなくて、やはりアメリカの持っているファンダメンタルズと申しますか、そういうものと、それから中国の問題が絡み合い、なおかつそこに投機が行われたという状況で今日のドル高の現象が生まれているという気がいたします。ですから、私は、いずれこの問題は鎮静化をするということを期待をいたしますし、また、そういうふうな予測を持って冷静に対応してまいるように当局と話し合いをいたしております。これから急激な円安ということがさらに進むようなことがあれば、特に円は急速に高くなっても安くなっても、これは経済に決していい影響を及ぼすものではございませんから、そのときは通貨当局の適宜適切なる出動を期待をしたい、こういう思いで現在おる次第であります。  ですから、このことで、私は、お互いに急激な対応を求めない範囲内であれば、物価が急上昇するだろうという懸念も、現在のところ実際はございません。物価も安定をいたしておりますし、その他のそれぞれのあれを見ましても、内需は着実に拡大基調にございますし、四月、五月の卸売物価、消費者物価、これは消費税、それから季節野菜等のことを勘案をすれば、さほど大きな変化ではございません。そういうことを考えますと、私は、この円安問題は早晩解決を見るであろう、そういうことを期待をしながら、冷静着実な対処をしてまいりたいというふうに考えております。
  193. 森本晃司

    ○森本委員 大臣、非常にお答えいただきにくいかと思いますが、ゆうべもテレビの番組で、経済企画庁長官がその答弁に大変お困りのようでございましたけれども、幾らぐらいが日本経済の中で一番今適切か、大臣のお考え方ではどれぐらいでしょう。
  194. 梶山静六

    梶山国務大臣 断定的なことは申し上げられませんけれども、長い過去の例を見ますと、百八十円より強くなれば日本の経済は危機的状況になるとか、百六十円になれば倒産が出るとかと、もろもろのことを言われましたけれども、結果としてそれを克服して今日に至って、極めて良好な経済状況を形成しているわけでございますから、今急速に瞬間的には約二割近い円安が進んだわけでございますけれども、現在の状況はやや高過ぎる。ですから、もとに完全に戻るかどうかはわかりませんけれども、私は、そういう意味で、安定したことが一番よろしいんだ、どこにめどを置くかということよりも急激に高からず安からず、そういう状況で安定をしていることが経済のためには一番よいスタンスだというふうに考えております。
  195. 森本晃司

    ○森本委員 そこで大臣、この数年間、おっしゃいましたように円高がずっと続いた、それでようやく安定してきたわけでございます。この数年間、二、三年特に円高で日本が大変な状況に陥るのではないだろうかという状況に至ったわけでございますけれども、やはりそのときいろいろなばねをきかしたのは、そして今の経済を支えたのは、日本の中小企業の皆さんではないかなというふうに私は思っているわけです。いろいろと苦労しながら、あの円高のときに、私もいろいろと現地を視察に寄せていただきました。また同時に、役所の方もそのことに対していろいろと城下町に対する施策等々を講じてきて、一番問題になってきたのは、今やはり日本の中小企業でも問題になっているのは、どう構造転換していくのか、付加価値の高いものをどうつくっていくのか、技術革新をどうするのかという流れの中で、やはり内需拡大へ向けてどう構造転換していくのかということが大きな課題であって、ようやくそれが今定着し、その施策が生き始めてきたところだ。ところが、これがまた今度は円安の方向へ行ってしまうと、今日までとってきた政策、あるいは最近出た中小企業白書あるいは通商白書でも、文章が全部、ようやく円高が定着しと、これに対する施策が書かれておるわけですけれども、今度の円安、こういった経済環境にどんな変化を与え、中小企業にどのような影響を与えていくのか。それに対して、通産大臣として、どのような施策を講じていこうとされるのか。まだこれから数日間状況を見なければなりませんが、きょうがちょうど質問をさせていただくときでございますし、新大臣御就任のときでございますので、お尋ねをさせていただきます。
  196. 梶山静六

    梶山国務大臣 大変予測の難しい問題でございますし、それからもう一つは、期待感というか、そういうものも私の中にはございます。先ほど申し上げましたように、急速な円高、円安はいずれにしても日本経済には大変マイナスでございますから、微動はあったといたしましても、大幅な乱高下がないことを期待をいたしますし、そういうことになりますと、どの程度の幅になるかということを予測を申し上げることはありませんが、大変大幅な変動が仮にあったとしますると、幾ら対応しても対応し切れない。その間の混乱、こういうものを来すわけでございますから、私どもは冷静にこういうものに、むしろ国内の金融をひっくるめて投機に走ってもらいたくない。それから、業界も、これに動揺しないで、着実な方式企業運営を行ってもらいたい。こういうことをすれば、この瞬間的な投機による大幅な円安の回避ができる、私はそういうふうに考えますので、この円安がさらに進んだどこでどういうことをということを今断定的に考える余裕もございませんし、また考えるべきではない。現在の状況がさらに悪化をしないためにどうすればいいかということに全力を尽くしてまいりたいと私は思っております。
  197. 森本晃司

    ○森本委員 続いて、今中小企業の経営者の皆さん、商店街の皆さんあるいは製造業の皆さんで一番困っておられるのが、やはり何といっても四月一日に実施された消費税ではないかと思うのです。ちょうどきようで七十五日、人のうわさも七十五日と言われるようでありますけれども、七十五日たってますます皆さんの中に今回の消費税けしからぬという声が、おさまるどころか高くなっている。ところが、各大臣の皆さん方の御答弁等々をお伺いすると、いろいろ複雑ではあるけれども、定着したのではないだろうかという御答弁がこの間から随分あるわけです。決してこれは定着してきたわけでもないし、まだまだ皆さんの中に大変な怒りと不満があるわけです。  消費者の皆さんもありますし、消費者の立場から見た問題につきましては、あしたちょうど物特がございますので、これは経済企画庁長官にあした物特で消費者の立場からお話をさせていただきたいと思うわけでございますが、きょうは経営者の皆さんの立場から、この消費税というのはもうけしからぬということを私は申し上げたい。  去る四月十日、実施されてすぐに私は、築地の市場を初めとし、これは物持でいろいろ視察させていただいたわけでございますけれども、今の流れの中で、新大臣も、中小企業の皆さんが大変困っているということは御承知おきいただいていると思います。大臣御就任、何かとお忙しかったとは思いますが、直接そういった業界の皆さんと、七十五日間たつ段階での状況を、御意見を拝聴されたことがありますでしょうか。もしなければ、早急にそういった皆さんの直接の声を聞いていただきたいと思うわけでございます。新大臣の中小企業の経営者が困っているということに対する見解をお伺いしたいと思います。
  198. 梶山静六

    梶山国務大臣 まず第一の、中小企業者が困っている、そういう実情の見聞をしたことがあるかということでございますが、まだ大臣に就任をして以来表に出る機会がございませんので、大臣就任後はそういう機会を持っておりません。しかし、税制が昨年末に国会を通過いたして以来、何遍か私も地元で座談会を開き、あるいは納税の専門の税理士の方やその他との話し合いをし、各業界の方々とも話し合いをいたしました。私も実は零細企業を営んだことのある体験者の一人でもございます。ですから、この四月以降何遍か町に出あるいは業界の方々とも話し合いをしたことがございます。  今ここで申せますことは、通産大臣としてでございますから、きょうは格別税制全般のお話を反論として申し上げようとはいたしておりませんが、長い目で大きなことを考えますと、私はそれぞれの税制に対する御意見はあろうかと思います。ですから、その中で、消費者の理論もあれば勤労者の意見もあれば、あるいは経営者の意見もあれば、もろもろの意見があると思います。それは、それぞれ正しいとか正しくないとかという基準を設けることは、なかなかできないと私は思います。税はまさに、自分に降りかかって、どちらが損か得かということが心の中では一番大きい物差しがもしれません。  ただ、考えますことは、よく国際化とか高齢化とか言われますけれども、私もどちらかというと商工に関心の深かった人間でございます。ですから、例えば我々の輸出が大変盛んになって、いわば日本の経済運営というのは世界に冠たるものだといって欧米先進国から大変うらやましがられもし、また、私も、自動車の交渉などでアメリカに参りまして、安くてよい物をアメリカに売ることがなぜ悪いんだと言って胸を張ったことを何遍か覚えております。しかし、その当時のアメリカあるいはヨーロッパの企業税制を見てみますと、確かに課税ベースがアメリカの方が広いとかヨーロッパが広いとか日本は狭いとかということがありますが、税本体から見ますと、日本はかつて法人税四一、二%、それから減税の財源あるいはその他もろもろの政策財源のために、必ずといっていいほど、景気がいいからということで、法人税の値上げをいたしてまいりました。そして最終には地方税をひっくるめて五二%強、超過税率を採用しているところは約五三%程度のいわば法人税になったわけであります。それに引きかえ、アメリカを見ましてもヨーロッパを見ましても、やはり日本企業税制というものに着目したのかどうかわかりませんが、国内の景気振興はもうちょっと企業を活発にしなきゃいけない、企業活動を活発にするためには税制で誘導をしなきゃならないということで、彼らの法人税制は大体四〇%前後、場所によっては三〇%台というものがございます。私は、税はどちらが正しいか正しくないかということは言えませんが、近傍類似、そう大きく世界の中で違いますと経済のスタンスが違ってしまいます。ですから、私は、やはり一つ企業経営というか事業経営、商工的な感覚によれば、少なくとも諸外国の法人税が安くて日本の法人税が高いということは決していい状況ではない。そして、この貿易摩擦の激化に伴いまして、日本企業は、いわば貿易摩擦の解消のためということで、現地に法人をつくり、現地に企業を持っていき、そこで活動することによって貿易のカウントから逃れる。逃れると言うと悪いけれども、そういう措置をとったわけでありますが、最近になって聞いてみますと、やはりそれは貿易摩擦の解消のためはもちろん一理がございますが、行ってみてよかったということがございます。一つはやはり法人税が安いために内部留保ができる、内部留保は再投資ができる。それから、行った優秀な技術者その他の、いわば累進税率が向こうは安いわけでございますから、所得税が安い。そういうことで、行った高給取りの方々は大変よろしい。  そういう状況を考えますと、私は、大臣という以前の政治家として考えますことは、政治というのは大体あるところからいただいてないところへ配るのが政治だ。そういうことを考えますと、いい企業がどんどん働いてくれるから税金がたくさん入るのだ、累進税率を納めるような高い所得者がいるから税金が入るのだ。それを、例えば私は地方に住んでいるものでございますから、国税で入ったものの三二%が原資になって交付税になって地方の財政が潤っている。あるいは中小赤字法人があっても税金を納めないで済むゆえんのものはどういうものか。ですから、ある者から取れる環境があるからこそ、ない者が納めないでも納める以上の行政水準、行政サービスを受けることができるわけでございますから、そういう観点からしても、やはり国内の空洞化を防ぐためにも、企業税制においては少なくとも外国並みに努力をしなければならない。それから、累進税率も諸外国に例を見ないほど高い。それが本人の努力以外のもので得たものであれば、それは当然社会に還元をすべきものでありますが、そういうもろもろの条件を考えれば、少なくとも外国とそれほど大きく違った税制でない方が望ましいという感じを私は持っているわけでございますから、特に法人税や所得税、これに大幅な減税の厚みを加えていかなければならない。  こういうことを考えますと、それじゃ諸外国は何でやっているかというと間接税だ。アメリカは直接税中心だといいますが、それは連邦税でありまして、州税はほとんどが間接税中心でございます。こういうもろもろのことを考えますと、間接税に外国とそれほど大きい違いのない税制を志向していくという努力の経過が国民にわかるような態勢をとっていくことは大勢としては間違いがない、私はこういう考え方を持っておりますから、この税制改正全般に関して、私は、理解と、むしろ推進論者の一人でもございます。  ただ、今の消費税の問題は、初めて導入された問題でございますから、頭の中で考えたもの自体が全部よろしいものとして出ているかどうかは確かに問題がございます。ただ、申し上げられますことは、今中小企業中心とする点でこの消費税はいかがかという議論でございますが、やはり転嫁を十二分にして第二法人税にするな、それから下請いじめをやってはいけない、便乗値上げをしないという、この三つの原則のもとに行った税制改正において、中小企業等においては特にいろいろな配慮がなされることによって、あるいは公平だとかなんとかというものが損なわれたと言われるかもしれませんが、中小企業に対する配慮はおおよそなされるものはなされて今日を迎えているという気がいたします。  ただ、言えることは、我々の視点が、政府は事業者から税を納めてもらうという立場でございます、最終的には消費者が負担をするわけでありますが、私の個人的な感触でございますが、どちらかというと消費者的な視点にやや欠けたことがあるのではないかなという反省を今いたしております。私の立場として、今それ以上申し上げる立場でございませんので、御理解をちょうだいしたいと思います。
  199. 森本晃司

    ○森本委員 きょうは中小企業三法の問題ですので、税制の議論をここでしようとは私も思っておりませんが、大臣大臣のお考え方をおっしゃっていただきましたが、その中で、あるところが税金を納めてくれるから、それを少ない者にもうまく配分することができるんだとおっしゃいました。だけれども、今の消費税というものは、ない者からでも取っていこうというやり方になっておりますから、その点も十分にお考えをいただきたいと思うのです。  大臣、これから恐らく商店街やあるいはいろいろな皆さんの御意見を聞いていただけると私は思うわけでございますけれども大臣、地元でも結構でございますし、直接に、しかし大臣が地元へ行かれると、恐らく地元の皆さんは大臣に恐れをなして率直な御意見をおっしゃらないかもわからない。したがって、商店街あるいは小さな中小企業経営者の皆さんのところへ大臣みずから気楽に足を運んでいただきまして、率直な意見を聞いていただくことが必要ではないか。  御就任早々でございますので、私は回ってきた中の一部の御意見を申し上げさせていただきたいと思うのですが、例えば商店街の場合でも、駅前商店街でいろいろな人たちがずうっと歩いてくるというところについては転嫁というのはさほど問題なく、まだ比較的スムーズに進んでいる。あるいは百貨店の場合もうまくいっているんじゃないかと思う。ところが、大変お困りなのは、そういった商店街ではなしに、その地域に根差した商店街がある。小売業の商店主のおじさんが、きょう来るお客さんはどういう人かと全部わかっている。それでコミュニケーションを非常に大事にされている、客と商店主の皆さんとのコミュニケーション。このおばあちゃんは、きょうは買い物に来たけれども、生活保護を受けていらっしゃる人だとわかっている。そういった人たちからも取らなければならないというその苦しみ。また人間関係を崩されてしまうのではないかという御意見を、私は何カ所も商店街を回りましたので、たしかとげぬき商店街かあるいはその近くの商店街の方へ行ったときに切実に訴えておられました。それから、ある店主さんは私に、ちょうど竹下総理が四月一日にネクタイ一本買ってテレビで堂々と報道されているその後でございましたので、ネクタイ一本買ってもらって、きれいなお嬢さんからありがとうございましたと言われて、それでこの税がわかったというふうに思ってもらっては困る。私が何党か全くわからないで、自民党の先生方とも一緒に行きましただけに、おっしゃっていたのは、竹下総理をここへ呼んできてくれ、一日ここで店番をしてくれと、それぐらいの勢いでお怒りをおっしゃっておりました、税務署にかわって三%を扱う者のあれを言ってくれと。  また、先般製造業界に行きまして、シューズの製造業界の皆さんと話をいたしました。そのときに、要するに製造業の皆さんが今度卸売業へ納めるときにやはり消費税分の値引きがある、もしその消費税分を加算したならばほかに客が取られてしまう心配があるということです。  そのほかに、これは中小企業消費税相談室の事例の一つですけれども、材料の無償支給を受けて受託加工をしている免税業者であるが、親事業者から消費税三%を上乗せして払う必要はないと言われている。あるいはまた別の方ですが、簡易課税を選択する運輸業者であるが、仕入れ原価はわずかであるため取引先から消費税を三%上乗せすることは多過ぎると言われている、どのように転嫁したらいいでしょうか。このQアンドAの答え、二つとも最後はその事業者間でよく話し合ってくださいという回答になっているのです。これが実際はできないわけです。  東京商工会議所が四月一日から十四日までいろいろ調べました。総じての答えは転嫁はうまくいっているというアンケート調査でございますけれども、例えば親企業とその下請の関係というのはどういうものであるかというと、親企業からいろいろな相談、要請があった場合、単価引き下げについては、これは消費税の問題だけではありません、だけれども、同様の考え方でいいと思う。「服従した」というのが四四・〇%、「一部認めさせた」というのが四〇・〇%。下請企業というのは、親企業から要請されれば八五%近くがそのようにしなければならない。今はうまくいっているかもしれませんけれども、いよいよ円安にいったから、原材料が上がったからといって、これからその辺の動きがいろいろとまた出てくるんではないだろうか、そのときに消費税分というのは厳しく言われるのではないか。  大臣、ほかを申し上げますと、その商工会議所の調査の中で出てきたものですけれども、「事務量増加で間接経費が大幅アップする」「税理士報酬の値上げ、会計ソフトの経費負担大となる」「今回は上乗せできたが近々値引き要請があると思う。監視指導を厳しくしてほしい」「転嫁できず利益にくい込む」「消費税導入は間接的に値下げ要請につながる」、それから、公取からいろいろアンケートが来るようでありますけれども、「下請・元請の力関係から公取のアンケートに正直に答えることはためらわれる。」というふうな御意見もあります。政府機関が行ういろいろな調査に対してはやはりなかなか素直に答えられないのが小さい人たち、ですから、大臣はその辺のことをよく踏まえて、中小企業の皆さんを守るためにも、これから、こういった御意見があるということ、今私は、政府の関係者がスムーズにいっているとおっしゃっていますけれども、それは余りにも現実と離れた認識のあり方だ、もっともっと現場へ出ていって今後も意見に耳を傾けてもらいたい、願わくば撤廃の方向に持っていくまで頑張ってもらいたいと大臣にお願いを申し上げるのでございますけれども、いかがでございますか。
  200. 梶山静六

    梶山国務大臣 再度の御質問、御意見でございますが、税制全般の御理解をぜひ国民の皆さん方に賜りたい、そしてその一環としての消費税、これはこの消費税を提案する際も当時の竹下総理が言われたように、ちょうど経済の物価が安定をし景気のいい時代でないと新税というのはなかなか定着しづらい、その意味では日本の昨今の置かれている立場が一番いい状況だから、これは今こそ税制改正を行うべき絶好の機会、この機会をおいてない、そういう判断のもとにされたことは私は正しいと思っておりますし、ぜひこの機会に、この制度を定着するためにもろもろの不足の点やそういう点があれば改正をしていくことにやぶさかではございません。なるべく早く中小四団体の方々とも意見の交換を行う予定をいたしております。そして、現実に国会でも終わりますれば、個々に幾つかの問題点を拾いながら実況見分をしながら、さらにその対策を進めてまいろうと考えております。
  201. 森本晃司

    ○森本委員 それでは、三法の内容に入らしていただきます。  まずは小規模企業共済関係でございますが、今回の分割支給制度六十歳以上、私は非常によき制度であるというふうに思っております。これは五十五歳にするか六十歳にするかという御意見もあったようでございますが、そのことはもうきょうは問わずに、よき制度をされたというふうに思います。同時に、これは今までにない新たな仕事ですから、今後業務がその分だけ非常に複雑化してくる。業務処理の体制を強化する必要があると思いますが、その点いかがでしょうか。
  202. 関野弘幹

    ○関野政府委員 御指摘のように、分割支給制度というものを導入いたしますと、業務内容も複雑あるいは非常に多岐にわたる、こういうことになります。また、今後資産の運用という面でも私どもできるだけ効率化していかなければならないというふうに考えているわけでございまして、御指摘の資産運用あるいは分割支給に伴います事務処理の合理化、このような点については最大限の努力をいたしまして、制度の効率的な運用に努めていきたいというふうに考えております。
  203. 森本晃司

    ○森本委員 資産運用についてお尋ねを申し上げたいわけでございますが、今回生命保険を選ばれたその理由はどういうところにあるのか。これは六月九日に厚生省が発表したわけですけれども、非常に利回りがいいということで、公的年金の自主運用をやったところが収入増が六百六億円になった。そういうことから考えてみると、確かに、いろいろと自主運用をし、それを中小企業の皆さんに還元していただくことは非常にいいことではないかなというように思いますが、生保を選ばれる理由は何か。  それから、私決して生保を目のかたきにしておるわけではございませんけれども、先ほどの質問の中で、今度は一千億ほど生保にお預けになるというふうな御回答をされていたのじゃないかと思います。一千億といえば大きな金でございます。そこで、風が吹いておけ屋がもうかるの反対みたいな話なんですけれども、これは大蔵省がいないので議論になりませんけれども、生命保険会社が今海外に大変な投資をしているわけです。資金運用面で高金利の米国債への投資を積極化させて、海外投資残高は合計十六兆六千三百億に達しているという生命保険、先ほども井上先生の話にもありましたけれども、それで生命保険がドル買いをやるとかあるいはほかにまたいろいろ投資をやる、それからアメリカで土地を買う、そういったことがだんだん貿易摩擦の形になってくる。貿易摩擦が生じてくると、今度は中小企業の経営者がまたそれで苦労しなければならない。中小企業の経営者が出したこの共済制度の金が、回り回ってまた中小企業の経営者を苦しめていくということには、直接的にはなりませんけれども、回っていってそうなるのじゃないかなというふうにも思うのです。いずれにしても、だから生保はやめなさいと言っているわけじゃありません、私が申し上げたいのは、いずれにしても中小企業の経営者の皆さんの大事な大事なお金を預かって運用していただくのですから、その生かし方については十分慎重にやっていただきたいというふうに考えておるのですが、御見解を。
  204. 関野弘幹

    ○関野政府委員 まず、今回の法改正において資産の運用に生命保険契約による資産運用を追加する理由ということでございますが、第一には、企業年金保険というような形で一般に普及した資産運用方式である。第二点目に、リスクが小さく長期的に安定した利回りが得られる。さらに、三番目に、先生も御指摘になりましたように、最近では非常に多くの公的年金あるいは共済制度におきまして生命保険運用が追加されております。これは例えば中小企業退職金共済事業団あるいは年金福祉事業団におきましては、それぞれ六十一年、六十二年に法律改正で生命保険運用が追加されたところであります。また、国家公務員共済、地方公務員共済におきましても、昭和六十三年から、これは政令改正で生命保険運用が追加されたということでございます。ただ、御指摘のように、有効利用に力を入れる余りに、中小企業向けの融資の資金であります商工中金債等にしわ寄せがいくのではないかという点につきましては、私ども、極力中小企業者に対する還元につながる方向を主体として資産運用を図っていくという従来の方針には変わりはないわけでございまして、生命保険運用にどの程度振り向けるかということにつきましては、今後の運用の実績あるいは金銭信託、金融債等、他の運用手段とのバランス等を総合的に判断しながら決めていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  205. 森本晃司

    ○森本委員 次に、第五次加入促進計画の進捗状況はどうなっているのかということをお尋ねしたいと思います。  先ほどの御回答の中で、小規模経営者は五百六万とおっしゃいましたが、その中の加入者は二二・四%というところですね。これは今後もこういう制度ができたことを大いにPRしていっていただきたいと思うし、同時にこの加入促進計画が非常に順調に進んでいるというふうにも私データをいただいております。しかし、加入者がふえればふえるほど事業団の運営費というのはふえてくるわけですね。それに伴って運営費に対する国庫補助というのはふえていかなければならないわけでございます。ここ数年の件数は、予算を立てられるときの件数より実績の方がはるかに上回っている、一面ありがたいことです。この辺の運営費の予算をつくるときの見直し、それから運営費の確保に全力を挙げて努められることが一番必要ではないか。どんどん進んでいくと運営費が上がってくる、運営費がオーバーしてしまうので何とかストップしようじゃないか、そういう形のものになっては、せっかくの計画意味がありませんし、よき制度が生きてきませんので、その辺の運営費の確保についてどのように考えておられるか。     〔委員長退席額賀委員長代理着席
  206. 関野弘幹

    ○関野政府委員 先生指摘のように、昭和四十年に制度創設以来二十数年たちまして、最近この制度が小規模事業の皆様方によく知られるようになってまいりました。その結果、六十二年度におきましても、加入目標十三万件に対して十七万件、六十三年度は十四万件の目標に対して十八万件と、順調に加入促進が進んでいるわけでございます。そこで、加入者の増加に伴いまして事業団から支払います手数料の金額が増加するという点は先生指摘のとおりでございまして、従来から、非常に厳しい財政事情の中にあって、加入促進のための経費増については、所要の予算措置を講じまして支障なきを期してきたわけでございます。今後は、このような観点を十分踏まえて財政事情は今後とも非常に厳しい中ではございますが、来年度以降の予算の獲得に全力を挙げていきたいというふうに考えております。
  207. 森本晃司

    ○森本委員 それから、この共済制度がだんだん充実するものになってきました。そこで、加入者への還元措置を今後も考えていかなければならない。法律の中に、教養施設の設置、運営を行うことができるというふうにあるわけでございますが、これについて今いろいろ検討されているように伺っているわけです。今後加入の促進を図るとともに、加入者への還元策の教養施設というのをどのように取り組んでおられるかということをお伺いしたい。
  208. 関野弘幹

    ○関野政府委員 教養施設の設置につきましては、中小企業政策審議会共済制度小委員会においても本格的な検討の必要性があるという指摘がなされておりまして、特に近年高齢化傾向が非常に目覚ましいわけでございますが、小規模事業者に対する質的な生活向上に資するような施設をつくってほしいというニーズが高まっているわけでございます。具体的には、保養とか休養のためだけの施設ではなくて、幅広い教養の修得ができるような施設の要望が高まってきております。こういうようなニーズを踏まえて、中小企業事業団においてその設置に向けて具体的な調査検討に着手しておりまして、昭和六十三年度においては、契約者のニーズの把握、ソフト、ハード両面における施設の基本的なあり方の調査分析ということが行われております。平成元年度以降は、これらの結果を踏まえまして、中小企業事業団において、さらに運営方法、資金収支等具体的な問題点を整理、調査分析するということになっておりますので、当省としても、事業団の調査分析状況を十分にフォローアップしまして、適切な指導を行っていく考えでございます。     〔額賀委員長代理退席、委員長着席〕
  209. 森本晃司

    ○森本委員 次に、投資育成会社の方に入ります。  先般、私、何人かの投資育成会社の皆さんとお会いさしていただきました。ちょうど二十五周年を迎えられて、よく頑張ってこられたなというふうにも私は実感をいたしましたし、中小企業経営者にとっては何といっても金、人、それから技術が、今一番欲しいところでございますが、こういった投資会社が積極的に事業を拡大していかれるということ、今回はまた殊に新規事業への挑戦をされるということでありますけれども、私も非常に歓迎しております。私の地元の方の知り合いの会社も、中小企業の方でありますけれども投資育成会社のことについては非常に感謝しながら、経営にゆとりを持ちながら頑張っておられるというところでございます。投資育成会社甘いろいろと投資という事業もされておられますし、それと同時に、いろいろなコンサルタント業もやっておられます。先般、経営権との関係はどうかというふうにお伺いいたしましたら、自主性を尊重していきますというふうに、決して中小企業の経営権を侵すようなことはいたしませんというふうに、すばらしいお答えをいただいたわけでございますが、経営者が非常に不安に思っているのは、投資育成会社から投資をいただくと、その分どこかから、あっちこっちから口出しされる、場合によっては育成会社からの派遣があるのではないだろうか、その辺を心配しておられました。しかし、先般育成会社の皆さんとお会いしたとき、そういったことは絶対やっておりませんということでございましたので、どうぞ経営者の自主性を守るという点については今後もよろしくお願い申し上げたいと思います。  ただ、思いますことは、この二十五年間なぜ今まで設立の段階で出資を行われなかったのか。非常にリスクが伴うからであろうと思います。それを今般そういう形に持っていこうとされたのは、どういうところにあるのか。また、個々に質問させていただこうと思ったのですが、ちょっと時間がなくなってまいりましたので、これを今回実施されるについてニーズがあるのかどうか、また初年度にどのくらいの投資を考えておられるか、あわせて簡単に御答弁願いたいと思います。
  210. 高島章

    ○高島(章)政府委員 第一点の、設立段階での出資を行わなかったのはリスクが大き過ぎるからではないかという御指摘は、全くそのとおりでございまして、それがために、これまで投資育成会社の事業といたしまして、設立段階企業に対する投資について非常に慎重な姿勢をとってきたわけでございます。しかしながら、現在では、この投資育成会社は会社設立以降四半世紀にわたり約千七百社、先ほど先生御出席いただきました二十五周年の会合にたくさん来ておられましたけれども、この千七百社に対する投資実績を持つに至りました。したがいまして、投資に関する審査の経験を豊富に備えるに至りまして、審査能力の向上のための一層の努力によりまして、こういった設立段階企業についても的確な審査を行うことは十分可能であるというぐあいに考えるに至りました。  さらに、投資育成会社におきましては、近年、投資先の上場等によりまして、内部留保が東京、名古屋、大阪三社合計で約二百五十億円に達するなど、財政基盤が非常に強化されてまいりまして、先ほど来お話がございましたリスクの多い設立段階企業に対する出資に関しましても十分たえられるだけの強い体質になったということでございまして、今般こういう新しい分野に投資育成会社の進出を考えた次第でございます。  それから、二つ目の御指摘ございました、ニーズはあるのか、あるいは初年度にどの程度投資を考えているかという御指摘でございます。現在でも投資育成会社に対しまして会社をつくる前から出資に関する要望とか相談が非常にたくさん寄せられてきております。最近の投資育成会社に寄せられた要望、相談というのは、既存企業が新規事業の開拓あるいは新規地域への進出、サービス経済化に対応するために新会社を設立しようとするケース、さらには個人が共同あるいは単独で創業を行おうとするケースで構成されておりまして、いずれのケースも、創業時において担保力が不足しておりましたり、採算見通しが容易でない等の事情から、資金調達が困難であるという共通の問題を抱えておるわけでございます。したがいまして、投資育成会社の新規事業による支援が極めて有効であろうと我々は考えている次第でございます。  初年度投資見込みでございますが、合計で十億円程度、件数にいたしまして百件を現在のところ目標といたしております。
  211. 森本晃司

    ○森本委員 投資育成会社が中小企業のためにさらにまたどんどん頑張っていただくように、社内での人材養成も大いに図っていただきたいとお願いをするところでございます。頑張ってくださいと申し上げておきます。  最後に、事業団法の関連でございますが、従来、高度化融資事業というのは、ハードのみにされてきたところに大変いろいろと問題があったと思います。ところが、昨年来、中小企業庁として非常にヒットであったと思うのですが、異業種交流のところにもいろいろと施策を講じてくださって、また、関係者が全力を挙げて異業種交流への力を注いでくださった。それに続いて今回は、高度化融資をソフト面にも及ぼしていこうというところは大変すごいことであると私は思っております。これは評価をさせていただきます。同時に、地域の産業興しにどうかこれが大きくつながっていくように、そして自主性を持つように、それぞれ事業者の創意工夫が生かされるように、これからもやってもらいたいと思います。  そこで、最後質問でありますが、平成元年度に予定されているのは、今回の法改正以外でも、高度化事業の拡大強化があるというふうに伺っております。今後も中小企業のニーズに対応していく上にも、こういった幅広い高度化融資事業が必要かと思います。その点についてお伺いさせていただきまして、私の質問を終えます。
  212. 松尾邦彦

    ○松尾政府委員 先生指摘になられましたように、確かに経済環境の大きな変化の中で、高度化事業につきましても、その時代に適合したものにしていかなければならないと考えており、今回の法改正はその一部分をなしていると存じますけれども、御指摘のように、あわせまして平成元年予算におきまして、例えば地域中小企業全体を活性化するために、地方公共団体等が出資または出渇いたします法人が基金を設けまして、その運用益を活用しながら、地域の中小企業の研究開発、商品開発、販路開拓などのようないわゆるソフト事業を継続的、安定的に行うようなことを考えている例が幾つも出てまいっております。  したがいまして、それに対しまして事業団から無利子資金を融資する制度を創設する、あるいはそのほかの事業といたしましては、情報化の共同事業につきましての制度を設ける、あるいは知識集約化の共同事業についても運用を拡大する等々のことを進めてまいりたいと考えておりまして、今後も、各地域実情、ニーズを十分酌み取りまして、御指摘になりましたように、二十一世紀を目指しました構造調整のための基本的な施策として、それにふさわしい内容を高度化事業に付与してまいりたいと考えている次第でございます。
  213. 与謝野馨

    与謝野委員長 青山丘君。
  214. 青山丘

    ○青山委員 限られた時間ですので、どうぞひとつ簡潔に誠意ある答弁をお願いいたします。  まず冒頭、中小企業白書から数点だけ質問させていただきます。  創業者精神、起業家精神は、社会の活力を維持する上で不可欠のものであります。アメリカが麻薬や犯罪の増大に苦しめられながらなお尽きせぬ活力を持ち続けているのは、アメリカ社会の根底にみなぎっているフロンティア精神あるいは起業家精神といった一本立ちの気風があるのではないかと思われます。すなわち、安定をした堅実な生活を志向していくというような、そういう発想ではなくて、いわば一種の冒険精神、こういうものが強くあるのではないかと思われます。  ところで、中小企業の創業、開業は、そうした精神の一つのあらわれであろうと思いますので、その創業、開業の活発度はその社会の活力の度合いを示すものではないかと思います。日米の創業、開業の度合いはどのようになっているのか、また、その割合に対してどのような所見をお持ちか、冒頭お尋ねしておきたいと思います。
  215. 三上義忠

    ○三上政府委員 お答え申し上げます。  最近出されました米国の中小企業白書によりまして、米国の新規企業開設数の推移を見てまいりますと、一九八七年に対前年比で七・六%と一時的な減少はございます。これは、それまで増加傾向で推移していたわけでございますが、ここで一転減少に転じておりますが、サービス業を中心にいたしまして引き続き活発な開業が行われておりまして、これにつきましては、同白書によれば、技術革新、需要の変化への機動的な対応という面で大変大きな役割を果たしている、こういう評価がなされております。  他方、我が国の中小企業の開業の状況でございますが、最近の国会に御報告を申し上げました中小企業白書の分析によりますと、昭和五十年代の前半は大変高い比率を示しておりましたが、五十八年を契機にいたしまして開業率が低下をいたしておりまして、ただいま先生指摘のとおりに、多くの中小企業が活発に開業される、これがまきにその国の経済を健全にする最大の問題であるというふうに私どもも見ておりまして、この開業率の高位安定あるいは向上というのが、今後の社会経済を活発化するに当たりまして最大の問題であるというふうに認識をいたしております。
  216. 青山丘

    ○青山委員 時間がありませんので、もう一点関連してお尋ねするつもりでしたが、先へ進みます。  やはり中小企業白書から、人手不足問題についてお尋ねします。  中小企業は、現在、構造転換の大きなうねりの中にあります。アジアNIESの追い上げを受けておりますし、経済のソフト化やハイテク化に対する対応、社会の高齢化など、厳しい経済環境変化への対応を迫られております。こうした状況下で、中小企業白書でも指摘されておりますように、現在、中小企業において人手不足が深刻になってきております。これに伴って外国人労働者の問題が出てきておる。  考えてみますと、二年前にあの円高不況で完全失業率が三%を超えた、そのことによって日本も欧米並みの高失業時代に入っていくのかと憂慮されたこともありました。それに比べれば、ある意味では、一面ではいい状況、しかし中小企業においては人手不足という新たな問題を提起してきておる。一体何がこのような状況になさしめたものか、何が原因であるのか、どういう状況があったと考えておられるのか。これは労働省だな、まずお答えいただきたい。
  217. 伊藤庄平

    ○伊藤説明員 先生指摘のように、最近雇用需要が非常に旺盛でございまして、中小企業中心といたしまして、人手不足感といいますか、なかなか人が採りにくいという感じが広まっております。  お尋ねのそういった状況、何が原因で出てきているかという点、業種とか職種によりまして、その背景、さまざま事情がございますけれども、大きく申し上げまして、一つ産業構造とか技術内容が変わってきている。それに見合う専門的な技術者等の養成が追いついていないといいますか、そういった仕組みが不十分であることもあわせまして、追いついていないといった一面。あるいは、労働条件がいろいろ悪い。労働時間が長いとか、週休二日制等がまだとられていないとか、あるいは職場環境等がやや未整備だとか、職業に対する社会的な評価とか、そういうものを総合的に見まして、特に若い人からなかなか魅力を感じてもらえない。そういった雇用機会としての魅力に乏しいものを抱えているために、なかなか人材確保が困難であるといった一面。そういった、さまざまな事情がございまして、それに加えまして、最近私ども、例えば職業安定所の窓口等で見ましても、求職者の高齢化というものが進んでおるわけでございましたが、我が国の企業は依然若年者志向が非常に根強いものがございまして、いろいろ年齢の条件等を緩和するように指導しているところでございますが、そういったことがございまして、なかなか求人者と求職者の結合がうまくいかない。そういったいろいろな事情が重なりまして、現在人がなかなか採りにくい、こういった状況が生まれているかと思っております。
  218. 青山丘

    ○青山委員 さまざまな原因があると思いますが、次は通産省労働省に、この人手不足問題でもう一点お尋ねしたいと思います。  人手不足、人手不足と言われておりますが、例えば高齢者の有効求人倍率を見てまいりますと、五十五歳から五十九歳までが〇・一八倍、六十歳から六十四歳が〇・一〇倍、日本においては、高齢者に職につく意欲や能力がありながら、なお職につけないという状況一つはあります。日本は高齢化社会を迎えて、高齢者の雇用を積極的に行っていかなければならないという一つの課題があります。  また、同時に、日本の中で労働力不足が極端なのは、東京とその周辺にすぎないと言われております。北海道や九州といった不況地帯では失業者が滞留している。東京一極集中の是正は我が国の克服すべき重要な課題にもなってきておる一これが第二点。  また、最近三キと呼ばれる仕事つまり、きつい仕事、汚い仕事、危険な仕事、これには若い労働力が集まらないと言われております。日本の若者が怠け者になったからだろうかということでありますが、決してそうではない。日本の産業が高度化をして、知識集約型経済へとトレンドが向いており、そうした流れを日本の若者が敏感に感じとっているからにほかならないと思います。労働集約型産業をアジア諸国に譲り渡して、アジア諸国の経済発展に貢献をしていく、これが一。次、国内産業を高度化し、高付加価値化する。これは我が国の国際的な責任ではないかと思います。  こういうふうに見てまいりますと、現在の人手不足を克服するために外国人労働者を導入しようという論議は、日本の課たすべき課題、日本の果たすべき役割、責任、こういうことに矛盾をしてくるのではないかという一面を感じます。すなわち、高齢化社会に備えて高齢者の雇用を促進していく、産業の地方分散、地方経済の活性化を図っていく、東京一極集中を是正していく、国内産業を高度化して、同時にアジアの経済発展に貢献していく、こういう観点で見てまいりますと、政策を推進するわけですが、現在の人手不足というものは一体害になるどころかむしろ役に立っていくのではないか、こういう一面を感ずるのでありますが、現在の人手不足、外国人労働者の問題、これらについての基本認識を通産省及び労働省にお尋ねしたいと思います。
  219. 横田捷宏

    ○横田政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のとおり、日本のグローバリゼーションといいますか、国際化が大きく進展していく中で日本産業構造もどんどん変わっていく。その中で人手不足問題が、先ほど労働省の方からも話がございましたように、いろいろな側面から来ておるわけでございますけれども、その不足を単純に外国人労働者等々で補っていくという考え方は、先生も御指摘のとおり、アジアへ日本がなかなかやっていけない産業を移転していくといった協力的な観点から見ましても、また、日本の産業を技術面あるいは産業構造面でも真に競争力のある形で、活性化のある形で発展させていくといった観点からも、とるべきではない、こう思うわけでございます。  ただ、御指摘のとおり、そうは申しましても、世界とともに歩む日本と申しますか、そういった観点も一つには外国人労働者問題の中に議論があろうかと思いますし、また、長期的な、恒常的な人手不足等々の予感の中で、中小企業を初めとする産業界の一部で大変関心も高まっておる。他方、不法就労者が大変ふえておる、こういう実態もあるわけでございます。現在国会には出入国管理及び難民認定法の改正案が出されておると承知いたしておりますが、まずは何よりもこれが国会で法として成立させていただければ、その厳正な運用を踏まえながら、さらに実態を見て検討していく、私どもといたしましては、中長期の観点から本問題に対する望ましい対応のあり方、コンセンサスの検討がなされるべきだと思っております。その際には、受け入れに伴います諸問題、影響等々について十分な検討がまず大切か、こう考えております。
  220. 伊藤庄平

    ○伊藤説明員 労働省といたしましても、外国人労働者の受け入れの問題、ただいまのお話のあったとおり、基本的な認識は全く同じでございますが、人手不足の問題、確かに広がりつつありますけれども先生指摘のように、別の面では、高年齢者は一たん離職しますと再就職が極めて厳しい状況とか、地域ごとに見ました場合に、有効求人倍率にしましてもまだまだかなりの格差が地域で目立ちます。そういった状況を考えていきますと、やはり外国人労働者の問題に、すぐそこへ結びつけるよりも、私ども、こういう職場の雇用機会にいろいろ魅力をつけるための事業者の方々の工夫を促したり、あるいはそういうことを通じて若い人たちに魅力を感じてもらえるような職場にしていく、あるいは高年齢者を活用する方法、いろいろ雇用管理の工夫の中で導入していってもらう、そういった努力をまず行っていくことが必要ではなかろうかというふうに思っております。そういった努力をなしに外国人の単純労働者を受け入れた場合には、そういった雇用管理といったものの近代化とか、就業構造の近代化、あるいは高年齢者の活用といったものの改善をおくらすことになる可能性が非常に大きいのではないかということを懸念しているところでございます。  したがいまして、外国人労働者につきましては、専門的な技術、知識を持つ人たちあるいは外国人ならではの感性とか能力を生かして働く人たちにつきましては、積極的に受け入れて国際化を図っていきたいと思っておりますが、いわゆる単純労働者の受け入れにつきましては慎重に対応していきたい、こういった考えでおるところでございます。
  221. 青山丘

    ○青山委員 この問題は極めて重要な問題ですから、私も実は党内で十分検討していきたいと思いますし、これから政策の立案や実施についていろいろと皆さん方と協議をしていきたいと思っております。特に、そういう意味では、我々が望む方向と、現実に我々はこうなっていくであろうということも考慮に入れながら、幅広い思考の中できちんとしたルールづくりをしていかないと、国際的にも日本はなかなか厳しい状況になっていくのではないかと私は思います。これは改めてまたやりましょう。  さて、小規模企業共済法の改正について、私の方からちょっとお尋ねします。  我が国の小規模企業者は、推計で約五百六万くらいということでありますが、この小規模企業者の共済制度への加入率はまだ二二・四%にすぎない。極めて低い水準にある。大多数の我が国の小規模企業者がまだ加入しておらない、こういう状況であろうと思います。そこで、引き続き加入の促進を図っていくための取り組み、方針をこの機会にひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  222. 松尾邦彦

    ○松尾政府委員 御指摘のように、小規模企業共済制度につきましては、鋭意加入の促進を図ってまいっておりまして、私どもの最近手元にございます六十三年度末現在の数字ですと百二十万人でございまして、対象となる小規模事業者に対しまして約二四%が加入したということになるわけでございます。  私どもとしては、かねてから推進してまいっております長期加入促進計画に従いまして、鋭意加入の拡大を図ってまいるつもりでございますけれども、特に最近の五カ年間にわたります第五次長期加入促進計画におきましては、都市部における加入促進の強化を図る、あるいは有望な業種の発掘、さらには制度の普及のおくれておる業種、例えば卸、小売とかサービス業に対する加入促進の強化を図る、さらにはまた業務の円滑な処理を図るために業務委託団体あるいは金融機関との連携を強化してまいるというようなことによりまして、御趣旨の線をぜひとも強力に進めてまいりたいと考えております。
  223. 青山丘

    ○青山委員 貸し付けの手続が煩雑であったりということは、中小企業にとっては苦手なんですね。また、金利もそんなに安くはない。あるいは、今度は教養施設の設置等を進めていかれるというようなことで新たな加入の促進のために取り組まれる。内部の事情で苦しんでいかれることも実はよく存じ上げてはいるのですけれども、ぜひひとつこの共済制度に小規模企業者の幅広い理解が得られるような取り組みをもっと進めていただきたい。余りたくさん進めていくと、手数料をたくさん払わねばならぬから運営に苦しむという側面もあるかもしれませんが、小規模企業のためだと思ってひとつ取り組んでいただきたい。  次は、中小企業投資育成株式会社法の改正についてお尋ねします。  最近の新規設立企業の動向を見てまいりますと、設立件数は、先ほども御答弁いただきましたが、日本は今、年間十万件前後、十年前の水準とほぼ同程度である。余り変わっておらない。しかし、アメリカの場合を見てまいりますと、人口は我々の倍の国ですけれども、年間六十万から七十万くらい、十年前の水準に比較すると約二倍、こういう状況でありますが、日本はいささか停滞した形で推移してきているのではないかと思われます。  日本において会社設立の問題点というのを一体どのようだと受けとめておられるか、ひとつ整理して御答弁いただきたい。
  224. 三上義忠

    ○三上政府委員 今御指摘のございました開業率の低下につきましては、種々の経済的、社会的要因が総合されたものというふうに考えられておりまして、その要因を確定的に判断することはなかなか困難でございます。ただ、先ほど申し上げました私どもの中小企業白書等におきます分析によりますと、創業時あるいは事業拡大時の問題点に関しますアンケート調査によりますと、一つ技術者、研究者などの人材不足、それから資金調達の困難性、市場開拓、情報収集力の不足、こうした点を問題として挙げておられるケースが多いわけでございまして、開業に際しましては、資金調達の円滑化あるいは今申しましたような技術人材情報などのいわゆるソフトな経営資源の強化、こうしたものが大変重要な問題であるということが浮き彫りになっているわけでございまして、昨年ここで制定させていただきました融合化法でありますとか、あるいは今ここで審議いただいております各種の法律は、こうした観点に立ちまして、今申しましたような問題点の解消にぜひ少しでも役立つようにという認識に立っております。
  225. 青山丘

    ○青山委員 今申されましたように資金調達が困難である、中小企業者にとっては、ここは最初から終わりまで苦しんでいく問題であります。ただ、中小企業者の資金調達に重要な役割を果たしてきたいわゆる民間のベンチャーキャピタルの状況は一体どうなっておるのか。日米欧ではどのような状況だと受けとめておられるのか。いかがでしょうか。
  226. 高島章

    ○高島(章)政府委員 我が国では昨年末時点で約九十社のべンチャーキャピタルがございます。その中の主要四十二社と、これが参加しております投資事業組合について見ますと、昨年末現在で投資残高が約二千六百十億円、普通社債引き受け及び融資残高は約五千億円に達しております。  我が国のベンチャーキャピタルは、本来事業であります投資事業に加えまして、営業のいわば補完策といたしまして短期の融資とか債務保証等を非常に盛んにやっております。また、投資につきましても、株式の早期公開を念頭に置きまして、創業期にある企業ではなく、ある程度成熟いたしました企業投資先として選ぶといった特色を有しているかと思います。  海外の事情でございますが、米国は、ベンチャーキャピタルの第一号が生まれましたのは一九四六年でございまして、もう非常に長い歴史を有しているわけでございます。一九八七年末現在のベンチャーキャピタル数は六百二十七社にも達しております。このベンチャーキャピタルの投資残高は、これも八七年末で見ますと、当時の円で約四兆二千億円になりますが、こういうベンチャーキャピタルは、スタートアップ段階での企業に対する投資が全体の二〇%と非常に高率を占めておりますところが特徴でございまして、先ほど御説明申し上げております我が国のベンチャーキャピタルとは異なるところかと思われます。  ヨーロッパでございますが、ここではベンチャーキャピタルの歴史は比較的浅うございまして、一九七〇年代前半から起こり始めたものでございます。八六年末の社数は西欧全体で二百六十七社、投資残高は、これは少し古くて恐縮でございますが、八五年末で円で約四千九百億円ということになっておりますが、特徴といたしましてはハイテクの分野への投資の比率が高いということのようでございます。
  227. 青山丘

    ○青山委員 創業期の融資というのはなかなか難しくて、やはりどうしても採算性の見通しが立ってからということにならざるを得ませんので、そこではひとつ中小企業投資育成会社が大いに役割を果たしていただきたいと思います。  それから、中小企業事業団法の一部改正についてでありますが、高度化助成制度についてどういうように評価をしておられるのか。高度化助成制度が中小企業の体質強化のために果たしてきた役割、またその時代その時代によって経済環境が変わってきておる、中小企業にとってはそうした経済環境の変化に適応していく力が非常に弱い、それを強めていかなければいけない、そういう意味では一定の役割を果たしてきている。しかし、率直に申し上げて、反省点も踏まえて、この高度化助成制度に対する評価をどう受けとめておられるのかが一点。  それから、中小企業高度化、特に中小企業ソフトな経営資源を強化していくために、今回経営資源の強化を図るための事業に対して出融資制度を設けるということになりましたが、この出融資制度を運用していく基本的な姿勢を明らかにしていただきたい。
  228. 高島章

    ○高島(章)政府委員 まず第一点でございますが、高度化事業の評価についてでございます。  最初に少し数字を申し上げさせていただきたいと思います。高度化資金の貸付件数は六十二年度末までで約一万七千五百件、貸付金額中の事業団負担分累計は約一兆七千億円、貸付残高は約九千四百億円に上っておりまして、こういう数字からも御理解賜りますように、我が国中小企業の振興に非常に大きな役割を果たしてきたものと考えます。  しかしながら、御指摘もございますように、最近中小企業をめぐる経済環境は非常に変化をしてきております。したがいまして、高度化事業に対しましても新たなニーズが生じてきておりまして、これまでの制度だけでは必ずしもこれにこたえられないケースも見られるようになっていることは事実でございます。御指摘のとおりでございます。特に最近の急激な技術革新とかあるいは情報化の進展、さらには消費者ニーズの多様化等々の環境変化の中で、各地域で活躍しています中小企業というのは、いろいろな創意工夫を生かして、きめ細かな対応をする必要に迫られているわけでありますが、その際に重要なのは、従来の建物といったハードだけではなくて、むしろ研究開発とか商品開発とか、さらには販路開拓といった、能力を必要とするソフトな経営資源でございます。また、商店街におきましても、いろいろなたくさんのお客様を集めるような消費者ニーズにこたえる場、豊かな町をつくっていく必要に迫られているわけでございます。こういった各地におけるいろいろな中小企業のニーズに対応いたしまして、さまざまのサービスを提供する場とかあるいはそういう人たちにお役に立つようないろいろな事業を行うことが必要になってきておりますし、商店街においても必要なコミュニティー施設等を設置して管理運営しようといったような要望も強まってきておりますので、こういった事業に対しまして高度化制度を用いまして適切な支援を行っていくことが不可欠であろうかと思います。こういった観点から、今回の中小企業事業団法の改正によりまして、こういった中小企業構造の高度化を支援する事業、お手伝いする事業を行う者に対しまして事業団が出融資を行えるようにして、地域の中小企業の育成を強力に推進しようとするものでございます。  二点目、御指摘ございました今回創設の出融資制度についてでございます。現在、産地とか企業城下町を初めとするいろいろな地域におきまして、地元の産業界や自治体が中心となって、地域の中小企業者が商品開発能力や販路の開拓能力等の向上を図れるように、そういった支援をすることによって、その地域の特色を生かした自前の産業興しを推進していこうという動きが非常に活発になってきております。今回の中小企業事業団法の一部改正法案は、このような地域の動きを積極的に支援いたしまして、地域中小企業の発展と地域経済の成長を図るということを目的とするものでございます。したがいまして、まさに、御指摘いただきましたように、いろいろな実態や特質を踏まえました非常に柔軟で弾力的な運用を図ることができて初めて政策目的は達成されるものと考えております。新制度の実施に当たりましては、今後こういう点に十分に配慮いたしまして、中小企業構造の高度化に真に資するものにしてまいりたいと思います。
  229. 青山丘

    ○青山委員 最後に一点。今回この中小企業事業団が第三セクターへ出資することになります。第三セクターへ出資することによって、中小企業事業団の経営参加によって第三セクターのみずからの創意工夫や自主性、そういうものが阻害されるのではないかという声も実はあります。出資に当たっての基本的な考え方を聞いて、私の質問を終わりたいと思います。
  230. 松尾邦彦

    ○松尾政府委員 地方自治体あるいは地域の経済界が自主的に地域の経済の活性化を図る観点から大変意欲的な計画を幾つも出してきておられますけれども、今度私どもが中小企業事業団の出資によりこれを助成しようとする趣旨は、御趣旨のように地域の特性を生かすと同時に、地域みずからの創意工夫をぜひ私どもとして支援したいという気持ちから出ているものでございまして、第三セクターに出資するからと申しまして、地方自治体のあるいは地域経済のみずからの創意工夫あるいは自主性を制約するようなつもりはいささかもなく、むしろそのような創意、自主性を大いに推進するためのお手伝いをするように心がけて運用してまいりたいと思っております。
  231. 青山丘

    ○青山委員 ありがとうございました。
  232. 与謝野馨

  233. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 政府は、景気は順調に回復している、中小企業も同様だというふうにおっしゃっておりますけれども、一九八五年九月のプラザ合意から昨年の十二月までの中小企業産地におきます転業、休業、廃業は、倒産件数の実に二〇・九倍、中小企業の経営が大変厳しい状態にあるということが示されております。その上、四月から消費税の導入ということで、今中小企業は本当に大変です。  そこで、中小企業事業団法の改正案について質問をするわけですが、今度の改正というのは、地域経済の活性化を図るという目的で、中小企業高度化を支援しようという地元産業界や自治体がつくる第三セクターに対して、出資及び融資を行えるようにしよう、こういうものであるわけです。しかし、今回第三セクターでやろうとしている施設の建設などは、先ほどから答弁していらっしゃいますように国がお手伝いしようというのではなくて、本来中小企業振興のために国や自治体がやるべきことではないだろうか、こういうふうに思うのです。それを地域の中小企業者に肩がわりさせるものではないかというふうに思うのですが、いかがでしょうか。     〔委員長退席、浦野委員長代理着席〕
  234. 高島章

    ○高島(章)政府委員 現行の中小企業事業団法におきましては、事業協同組合等を主体とする各種の共同化、集団化事業等を、中小企業構造の高度化に寄与する事業として中小企業事業団による助成の対象としているわけでございますが、先ほど来申し上げておりますように、現在のように経済環境が複雑化いたしましてかつ変化が非常に加速化している状況のもとでは、従来のような事業協同組合等を中心とする事業の共同化等のみでは、これに十分対応できない事態がたくさん生じてきているわけでございます。このため、事業の共同化等のための施設整備やニーズの把握、共同事業の円滑な継続のための調整等の支援を行う、地域ごとの適切な主体に対する助成を通じまして、事業の共同化等を効果的に進め得るようにすることが必要であろうかと思われます。  このような趣旨にかんがみまして、平成元年度に創設を予定している事業の実施主体としては、従来の組合等の組織にかわって、各地域地方公共団体及び民間の出資、出損する第三セクターを予定しているものでございまして、これによって最も効率的に中小企業構造の高度化が図れるものと考えている次第でございます。中小企業事業団としては、今後とも、地方公共団体と密接な協力のもとに、第三セクター事業が円滑に遂行されますように強力な支援を行っていく所存でございます。
  235. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 続いて高度化融資の実績をお聞きする予定にしておりましたが、時間がありませんので、これは省きたいと思います。  いただきました資料によりますと、商店街の近代化事業や小売商業店舗共同化事業、これを支援する金利二・七%の一般高度化事業というのは減少をいたしております。また、無利子の特定高度化事業も、設備共同廃棄事業を除けば減少をしているわけです。中小企業者にとりましてこんなに有利な融資制度でありながら、このように貸付件数が減っているというのは、設備の近代化をしたくてもそれどころではないというのが実態ではないでしょうか。第三セクターに参加をして施設を利用したり研究や開発などを行えるのは、ある程度余裕のある中小企業者でなければ難しいのではないかというふうに思うわけです。今でさえ中小企業者が高度化事業に取り組むのも大変になっているというときなのに、これではごく一部しか参加できないということになるのではないでしょうか。  さらに申し上げるならば、東京中心とした狂乱地価、この地価は今や全国に広がっております。大変な問題になっているところです。私は京都府にお話を聞いたのですが、地価が上がっている京都では、第三セクターがコミュニティーホールなどをつくろうと思ってもとってもできない、こういうふうにおっしゃっているわけです。まさにそのとおりだと思うのですが、こういう点についても、どう考えていらっしゃるのか、お尋ねしたいと思います。
  236. 松尾邦彦

    ○松尾政府委員 御指摘になりましたように、最近の高度化融資が、必ずしも拡大しているというわけではなく、低迷ぎみであることはそのとおりでございます。しかし、これにはいろいろな事情があろうかと思います。御指摘の地価の高騰もその一つかとは思いますし、また、最近まで続いておりました急激な円高に伴います中小企業の景気停滞、こういったこともあったかと思いますけれども、忘れてならない大事なことといたしまして、高度化融資制度と最近の経済情勢の変化との関係について、必ずしも適合しない面が高度化融資制度の中にあったのではないかというふうにも考えるわけでございまして、この点が私ども今般法改正をお願いいたしたゆえんでもあるわけでございます。つまり、最近の経済環境については改めて申し上げるまでもないことですけれども、消費者ニーズの多様化、個性化を初めとしていろいろなことが起こっております。そういう環境変化の中で中小企業が対応していくためには、いわゆるソフトな経営資源の強化を図ることが必要なわけでございます。そのようなソフトな経営資源を中小企業一人一人がみずから充実してまいるということは必ずしも容易なことではございません。したがいまして、そのような経営資源を強化するために中小企業努力されるのを側面から支援するために、新たな出資制度あるいは支援主体に対する融資制度を設けることにいたしたいと考えた次第でございます。したがいまして、困難な状態に置かれました中小企業者が、その体力のいかんにかかわらず経営力の強化を図れるように支援するという趣旨が私どもの法改正のねらいでございまして、むしろ御懸念の点にも配慮した結果の施策ではないかと思うわけでございます。  地価の問題は、御指摘のとおり、中小企業にとってさまざまな影響を与えておりますし、商店街のコミュニティー施設の整備等にも大きな問題点であろうかと思います。しかし、私どもがこのように御提案申し上げております第三セクター方式によります施設の整備というのは、むしろ中小企業者にとりましてはこの問題の解決のための一つの方法にもなり得るものと考えている次第でございます。さらにまた、商店街の振興の問題点につきましては、今般発表いたしました九〇年代の流通ビジョンにおきましても、いろいろな形でいろいろな制約要因を乗り越えて新しい町づくり、暮らしの広場づくりを進めるよう考えておるところでございます。
  237. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 できるだけ多くの中小企業者が参加できるように、また第三セクターが整備した施設など、多くの中小企業者、住民が利用できるように法律を運用し指導していただきたいと強く要望させていただきます。  次に、小規模企業共済制度の改正案についてお尋ねをしたいと思います。  掛金限度額の引き上げ、共済金の分割支給制度の導入というのは中小企業者の要求でありまして、今回の改正は、その皆さんの要求が反映されたものと言えます。また、限度額の引き上げに伴う掛金の全額所得控除の拡大、分割支給金に対する公的年金控除の新設が行われていて、中小企業者にとりましては有利な内容となっているというふうに思われます。しかし、この小規模企業共済制度の加入者を見てみますと、昨年十二月末で全国では百十七万六千八百八十七人です。対象となる小規模事業者の二割強という方しか加入をしておられないわけです。また、私の地元の京都を初め、お隣りの大阪など大都市部は、加入率が全国平均に比べて一層低くなっているという状況があります。  私は、この質問をするに当たりまして、何人かの中小企業者の方々に小規模企業共済制度についてお尋ねをしてみたんですが、そんな制度があるということは知らないという方が多いのに大変驚いたわけです。そこで、京都府へ参りましてお話を聞きますと、特定の都市において期間を定めて集中的に加入促進をするというピックアップ運動、こういうのを一九八六年度に京都で取り組みましたところ、当番が当たったわけですね、一年間で二千七百七十八人、いつもの年よりも千人近くも上回る人が加入をした、こういうことですね。こうしますと、やはりPRの差だというふうに私は思うわけです。中小企業経営者の皆さんにとって大変有利な制度なのですから、多くの方々が利用できるようにもっとPRを強化すべきだというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  238. 関野弘幹

    ○関野政府委員 小規模企業共済制度の加入促進につきましては、長期加入促進計画を定期的に策定しまして、さらに年度ごとの加入促進計画も定めまして、普及浸透を図っているところでございまして、六十二年度から平成年度までの第五次長期加入促進計画、これにつきましては加入目標を七十万件ということに置きまして、先生指摘の特に大都市部における加入促進の強化を図るということを一つの大きなテーマにして進めているところでございます。  特に、大都市における加入促進運動につきましては、今先生お話のありました、特定の都道府県の県庁所在地あるいは一定の人口を有する商工会議所地区から幾つかの都市を選びまして、集中的に加入促進運動を実施している、これがいわゆるピックアップ運動でございます。これは六十三年度におきまして全国で二十四の大きな商工会議所を選んで実施しております。こういうことのほか、政令指定都市におきましては、毎年一つか二つの政令指定都市を選びまして、広報誌でありますとかラジオのコマーシャルを使うとかいうことで特別加入促進運動を実施しているわけでございまして、六十三年度につきましては、先ほどのお話の大阪市をその対象に選定しております。  このような、いろいろ加入促進のための事業をやっておりまして、六十二年度につきましては目標が十三万件に対して約十七万件、六十三年度につきましても目標が十四万件に対して約十八万件の加入を得るというふうに、私どもは最近かなり加入が順調に増加しているというふうに考えておりまして、御指摘のように、さらに一層のPRに努めまして、できるだけ多くの小規模企業者が本制度に加入していただけるように、今後とも努力したいと思っております。
  239. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 広く中小企業者の皆さん方が利用できるようにお願いをしたいと思います。  続きまして、休業補償制度についてお聞きをしたいと思います。  私どもは、この間、やむにやまれず休業に追い込まれた中小企業者あるいは小規模事業者の皆さんの休業補償制度、この実現を繰り返し要求をしてまいりました。ところが、中政審の共済制度小委員会報告、これを見せていただきますと、「休業時の所得補償については、」「今後さらに時間をかけた検討が必要」、こういうことで、今回の改正案では導入が見送られたわけですね。私は大変残念に思っております。  労働者の場合に、雇用保険で失業した場合の給付制度というのがあるわけですね。ところが、中小企業者の皆さんは一生懸命まじめに営業に努力をされていて、自分たちは何の責任もないのに、突然政府の手によって、あの八五年九月のプラザ合意で全国の皆さんが直下型地震だと悲鳴を上げられた円高がつくり出されたわけです。そして、たくさんの皆さんが休業に追い込まれたわけです。こういう異常な事態に追い込まれた中小企業者の皆さんに、緊急措置として所得補償制度を設けるというのは、私は国がやらなくてはならない当然の責務、責任だと思うわけです。  この例のように、政府の政策選択によって経営が重大な影響を受けた場合であるとか、あるいは災害に遭ったとか、事業者が長期療養をしている場合とか、このような特別な場合に給付を限定すれば、そして都道府県の協力も得るというふうにすれば、国が必要な措置を講じて小規模企業共済制度の一環として休業補償制度は十分できるというふうに思うわけです。これは中小企業の皆さんの切実な願いでもあるわけです。休業補償制度を一日も早く実現するために、もっと本腰を入れた検討を進めていただきたい、こういうふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  240. 関野弘幹

    ○関野政府委員 昨年十一月に、私ども、中小企業政策審議会共済制度小委員会でこの問題を御議論いただきまして、先生指摘のように、その際には、その導入の可能性について検討を続けてきたが、制度運用、共済数理の観点等から依然として問題点が多数残されているので、今後さらに時間をかけた検討が必要であるという御報告をいただいているところでございます。  この導入の可能性ということになりますと、業種、年齢、地域別の複雑な数理設計が必要となるということが第一点。それから、休業をこの制度に導入いたしますと、休業の認定ということについてかなり難しい問題が生ずるのではないかということ等、制度の運用あるいは共済数理の観点から依然として問題が多数残されているのではないかというふうに私ども考えている次第でございます。したがいまして、休業時の所得補償制度をこの小規模企業共済制度に導入するということにつきましては、今後さらに時間をかけた検討が必要であるというふうに考えております。  ただ、一時的に病気とか災害によりまして資金が必要だというニーズが存在するわけでございますから、こういうケースにつきましては、具体的には今私どもの傷病災害時貸付制度という制度がございますので、その貸付金利の引き下げでありますとかあるいは貸し付け手続の簡素化を図るというようなことを早急に実施いたしまして、とりあえず当面これらのニーズに対応してまいりたいというふうに考えております。
  241. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 一時的災害や傷病などに対しては積極的にやりたいということはもちろん進めていただきながら、いつまでも認定は難しいとか問題が多数残されているとか、そういうことで終わりにしないで、今置かれている中小企業、零細企業の皆さんの立場、必死になって生き、地域経済も大きく支えている、ここがつぶれたら日本経済が困るわけですから、本当に真剣に検討をしていただきたいというふうに強く要望をしたいと思います。  中小企業の問題に関連をしてさらに質問をしたいと思うのですが、私は、この中小三法を審議するに当たりまして、いろいろな方にお話を聞いたわけです。その一つに、京都市の染織試験場というのがございますね、そこへ参りました。これは一九八七年度の実績だそうですが、例えば伝統的工芸品産業の技術後継者育成事業では五種類の研修や講習があり、合計千百二十二人が受講をしているとか、染織業関係者に対しては、分析試験をやったり、あるいは鑑定などを含めまして七千五十九件もの相談に乗っているということでした。大変よくやっておられるというふうに思うのですね。そして多くの方から利用されているというふうに思うわけです。したがって、地域中小企業者の皆さんから大変頼りにされているのが染織試験場だというふうに思うのですね。ところが、昨年度の国からの補助というのは、中小企業技術者研修補助金として二百七万六千円、また、技術開発研究費補助も七百八万三千円しか出ておりません。  そこで、昨年度中小企業庁技術力向上対策予算というのを私は調べてみたのですが、びっくりしたのです。何と中小企業技術者研修の事業費補助金というのは一億三千三百万円、また、技術開発研究費補助金も四億六百万円しかないのですね。全国の中小企業に対する技術力の向上予算というのは全体でも六十億一千五百万円にしかなっていないわけです。これでは各都道府県や市に対しまして、ほんのちょっぴりしか補助金が行かない。一生懸命やっているのに、このような補助金しか行かないというのは、大もとが足らないわけですね。したがって、スズメの涙となるのは当たり前のことだ、こう思うわけです。  中小企業の分野でも技術力向上対策は切実な要求となっております。ですから、もっとこういうところに対して予算を大幅にふやして、施策を充実させるように努力をすべきだというふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  242. 村田憲寿

    ○村田(憲)政府委員 技術開発関係の中小企業予算を充実させるべきだという御指摘でございますけれども、私ども中小企業庁といたしましても、技術革新の進展でございますとかあるいは国民ニーズの多様化、高度化といったそういう経済環境の変化の中で、中小企業が持っております機動性、創造性を生かして対応していくためには、技術力を向上させ、新しい製品や高度な技術に基づく製品を開発したり、あるいはそれに基づいた新しい分野に進出したりするということが重要であるというように認識しておるところでございます。  こういった観点から、従来から、先生指摘のような補助金あるいは補助事業といったものを初めといたしまして、いろいろの技術指導、技術開発関係施策の充実に力を入れてきたところでございまして、先生も御案内と思いますけれども昭和五十五年度から平成元年度にかけまして、技術力向上対策予算は、一般会計分をとってみますと二倍ぐらいにはふえておるわけでございますけれども先生指摘のとおり、全体でもまだ六十億ぐらいということでございまして、今後とも、いろいろ中小企業者の方のニーズ、それから都道府県等の関係各方面の方々の御要望といったものも十分勘案しながら、こういう従来やってまいりました事業成果が上がるように進めてまいりたいというように考えているところでございます。今後とも、いろいろ中小企業者のニーズ等を踏まえながら、新しいニーズに応じた内容の技術開発関係予算というものを獲得すべく頑張ってまいりたいと思っておるところでございます。
  243. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 では次に、大店法の規制緩和の問題について質問をいたします。  産構審と中政審は九日、合同で会議を開きまして、計画から出店までの期間短縮、地元の同意がなくても一定期間さえ過ぎれば見切り発車で出店を許可するなど、大店法の骨抜き等を内容とする「九〇年代流通ビジョン」なるものを決定をいたしました。     〔浦野委員長代理退席、委員長着席〕  小売業は七百万人近くが従事しております。そのほとんどが中小の小売業者によって占められているわけです。中小小売業は、国民生活を支えるとともに、地域経済、地域文化の担い手として重要な役割を果たしておられます。ところが、大手のスーパーなどは、大店法の規制緩和を見越して、八八年度には大型店の出店届け出を急増させております。それは大型店出店抑制策をとった一九八二年度以降で最高の水準というふうな状態に達しております。  十日の日経新聞によりますと、全国のショッピングセンターの総数は六月末時点で千三百七十九店、年内に四十店前後の開店が予定されているにもかかわらず、そのほか千五百店のショッピングセンターの建設に弾みがつくのではないか、こういう報道をいたしております。  私は、これまでにも大型店出店問題について、京都のイズミヤの問題あるいは二条駅周辺開発で大規模な商業施設計画があるという問題など、地域の住民や商店街の皆さんが心配をしておられる問題をこの委員会で取り上げてまいったわけですが、四月からの消費税導入強行に続いて大店法の規制緩和が強行されれば、中小企業者への重ねての大打撃ということになるだけでなくて、地域住民の暮らしにも影響を与えることは明らかです。中小企業者の営業と暮らしを守るためにも、ビジョンを見直して、大店法の規制緩和をやめるべきだ、こういうふうに主張をいたしたいわけでございますが、いかがお考えでしょうか。
  244. 高橋達直

    ○高橋(達)政府委員 御指摘のように、いわゆる大店法の問題につきましては、六月九日に御答申をいただきましたいわゆる九〇年代の流通ビジョンの中で一定の提言がなされていることにつきましては、ただいま委員指摘のとおりでございます。  ただ、内容といたしましては、当然ながら、現在の流通構造の特質というものに評価を加えまして、その現実の中で、大店法の法の枠組みというものは維持する必要があるという結論になっております。ただ、十五年ぐらいこの大店法制定後たっているわけでございまして、そういう中で、法本来の趣旨から逸脱した運用の実態等があるのではないかということで、ごれを是正するべきであるという、そういう御答申でございまして、いわゆる適正化という観点からの答申という内容になっているわけでございまして、ただいま委員のお話がございましたように、見切り発車をするとか、そういう内容にはなっていないというふうに私どもは理解をしております。  いずれにいたしましても、当省としましても、この御答申を踏まえまして、大店法の運用の適正化を実施してまいりますけれども、先ほど申し上げましたように、現在の流通構造の特質、これはやはり私ども政策の中でも十分に念頭に置いて進めていかなければいけない問題でございます。でありますから、総合的な流通対策を推進するという観点から、中小小売業の体質強化あるいは商店街の活性化等々、これまでこの委員会でも、また、ただいま御議論がなされているような観点につきましても、あわせて推進してまいる所存でございます。  なお、委員から御指摘のございました出店状況でございますが、確かに最近ちょっと数がふえておりますけれども、これは私どもがいろいろ聞いてみますると、むしろ地元側が来てほしいというような地元側の要請によるものもかなりあるようでございまして、そういう意味では、いわゆる法律の手続に入ります前の事前説明というものが手間が省ける、そういうことで結果的に多くなっているというような状況かと認識しておりまして、特に大型店の方で出店ラッシュが行われているという認識にはないわけでございます。  なお、新聞の件につきましても言及なさいましたけれども、確かに六月十日の新聞の一部報道に「千五百店、建設に弾み」というのがございます。私どもがショッピングセンター協会に確かめてみましたところ、大体千三百店ぐらいショッピングセンター計画があるそうでございます。ただ、これはデータ的には、ショッピングセンター協会が自分で調べるのではなくて、新聞や何かのそういった情報をもとに件数を固めたということでございまして、その中には多分既にもう調整が済んでいるものも入っているということでございます。  いずれにしましても、中小企業のことも考えながら十分にやってまいる所存でございますので、御理解を賜りたいと思います。
  245. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 今の御答弁なんですけれども計画、出店まで二年弱でやれるとか、あるいは大型店の営業時間を延長するとか、休日の問題など、いろいろあるわけで、時間がありませんのできょうは申し上げませんが、とにかく中小零細企業者は大変な打撃を受けるのが大型店の出店ですね。事前説明なんかも手間が省けるんだとおっしゃいましたけれども地域住民の合意がなくても出発できるというふうな状態は、やはり見切り発車と言わざるを得ないと思います。  いろいろありますが、この論議をしていますと時間がありませんので、最後大臣にお尋ねをして終わりたいと思うのですが、アメリカの言いなりに日本の独特の生活慣行や産業構造まで変更して中小小売業に打撃を与えるというようなことは、私は認められないと思うのですね。中小企業対策予算は一九八二年をピークにしまして七年連続削減されております。一般会計総額に占める割合も今年度は〇・三二%と史上最低という比率になっております。本日私が取り上げたほんの幾つかの施策を見ましても、中小企業政策がいかに不十分かは明らかだと思うのです。私は、日本経済、地域経済を支えているのは中小企業だと言っても過言ではないと思うのです。  先日、私は、京都の皆さんから厳しい現実の訴えを聞いたのです。一つは写真材料店、現像やプリント、いわゆるDP分野への大企業のすさまじい参入問題です。このために経営難でついには廃業せざるを得ないということです。二つ目は米穀販売業、お米屋さんですね。これも全く同じで、大スーパーの進出などで圧迫をされて、もう息子らに店を継いでくれとはよう言いませんわと、こうおっしゃっているわけです。  政府の言う地域経済活性化のためにも、中小企業対策を、その予算を大幅に増額するとともに、中小企業つぶしだけではなくて、中小企業を振興させるというためにもつときめ細かな施策を手厚く実施すべきだ、こういうふうに思うのですが、大臣の御決意を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  246. 梶山静六

    梶山国務大臣 我が国経済社会の基盤であり、地域経済の発展にも大きな役割を果たしている中小企業対策に全力を挙げて取り組む所存であります。
  247. 与謝野馨

    与謝野委員長 これにて各案に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  248. 与謝野馨

    与謝野委員長 これより各案について討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  まず、小規模企業共済法及び中小企業事業団法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  249. 与謝野馨

    与謝野委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、中小企業投資育成株式会社法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  250. 与謝野馨

    与謝野委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、中小企業事業団法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  251. 与謝野馨

    与謝野委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました各案の委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  252. 与謝野馨

    与謝野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  253. 与謝野馨

    与謝野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十六分散会