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1989-06-14 第114回国会 衆議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    六月七日  浜野剛委員長辞任につき、その補欠として相  沢英之君が議院において、委員長に選任され  た。 ――――――――――――――――――――― 平成元年六月十四日(水曜日)     午前九時三十二分開議 出席委員   委員長 相沢 英之君    理事 柿澤 弘治君 理事 北川 石松君    理事 中村正三郎君 理事 浜田卓二郎君    理事 深谷 隆司君 理事 河上 民雄君    理事 神崎 武法君 理事 林  保夫君       石井  一君    石原慎太郎君       糸山英太郎君    小沢 一郎君       大石 正光君    唐沢俊二郎君       鯨岡 兵輔君    坂本三十次君       椎名 素夫君    丹羽 兵助君       浜野  剛君    井上 一成君       石橋 政嗣君    渡部 一郎君       岡崎万寿秀君    松本 善明君  出席国務大臣         外 務 大 臣 三塚  博君  出席政府委員         内閣参事官   内藤  勲君         防衛庁防衛局長 日吉  章君         防衛庁装備局長 山本 雅司君         科学技術庁研究         開発局長    吉村 晴光君         外務大臣官房長 藤井 宏昭君         外務大臣官房審         議官      遠藤 哲也君         外務大臣官房外         務参事官    丹波  實君         外務大臣官房領         事移住部長   黒河内久美君         外務省アジア局         長       長谷川和年君         外務省北米局長 有馬 龍夫君         外務省欧亜局長 都甲 岳洋君         外務省中近東ア         フリカ局長   恩田  宗君         外務省経済局次         長       内田 勝久君         外務省経済協力         局長      松浦晃一郎君         外務省条約局長 福田  博君         外務省国際連合         局長      遠藤  實君         外務省情報調査         局長      山下新太郎君  委員外出席者         公正取引委員会         事務局経済部国         際課長     上杉 秋則君         防衛庁教育訓練         局訓練課長   柳澤 協二君         外務大臣官房文         化交流部長   田島 高志君         外務委員会調査         室長      藪  忠綱君     ――――――――――――― 委員異動 六月二日   委員池田克也君が退職された。 同月三日  辞任         補欠選任   小杉  隆君     山口 敏夫君   田中 直紀君     中村正三郎君   中山 利生君     内海 英男君 同月六日  辞任         補欠選任   内海 英男君     小沢 一郎君   中尾 栄一君     唐沢俊二郎君   深谷 隆司君     渡辺美智雄君   水野  清君     相沢 英之君   村上誠一郎君     丹羽 兵助君 同月八日  辞任         補欠選任   山口 敏夫君     糸山英太郎君   渡辺美智雄君     深谷 隆司君 同月十四日  辞任         補欠選任   佐藤 観樹君     井上 一成君 同日  辞任         補欠選任   井上 一成君     佐藤 観樹君 同日  理事田中直紀君同月三日委員辞任につき、その  補欠として中村正三郎君が理事に当選した。 同日  理事深谷隆司君同月六日委員辞任につき、その  補欠として深谷隆司君が理事に当選した。     ――――――――――――― 六月十四日  日本国平和宣言に関する請願(天野光晴君紹介  )(第二六二〇号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  常時有人民生用宇宙基地詳細設計開発、  運用及び利用における協力に関するアメリカ合  衆国政府欧州宇宙機関加盟国政府日本国  政府及びカナダ政府の間の協定締結について  承認を求めるの件(条約第六号)  宇宙空間平和的開発利用に関する件  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 相沢英之

    相沢委員長 これより会議を開きます。  この際、一言あいさつを申し上げます。  このたび、外務委員長に就任いたしました相沢英之でございます。委員各位の御指導、御協力を得まして、公正円満な委員会の運営に努めてまいりたいと存じておりますので、何とぞよろしくお願いを申し上げます。(拍手)      ――――◇―――――
  3. 相沢英之

    相沢委員長 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在理事が二名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 相沢英之

    相沢委員長 御異議なしと認めます。それでは、理事に      中村正三郎君 及び 深谷 隆司君を指名いたします。      ――――◇―――――
  5. 相沢英之

    相沢委員長 この際、三塚外務大臣より発言を求められておりますので、これを許します。三塚外務大臣
  6. 三塚博

    三塚国務大臣 このたび外務大臣に就任いたしましたので、外務委員会冒頭に当たりまして、一言あいさつ申し上げます。御承知のとおり、今日の世界は大きな転換期に立っております。米ソを中心とした東西関係は大きく変化しつつあり、中ソ関係も正常化されました。世界各地地域紛争もおおむね解決の方向へと進みつつあります。開発途上諸国東欧諸国等では、国民民主化へ向けての熱望が大きなうねりを見せております。  この点に関連して、中国において、四日未明以来の軍の実力行使により、多くの人命が失われるという痛ましい事態に陥ったことはまことに遺憾であります。政府といたしましては、今回の事態は、一義的には、我が国とは政治社会体制を異にし、価値観においても異なるところのある中国の国内の問題と認識し、かかる観点から対応しておりますが、民主化を求める学生、市民に対し軍隊が発砲するがごとき行為は、国の体制のいかんを問わず、人道上の見地から容認し得るものではありません。  このような国際情勢の激動の中において、我が国の平和と繁栄を確保してまいりますために、外交に課されました使命は極めて重大であります。我が国の存立は、世界国々との相互依存に深く根差しております。この現実に立脚すれば、「世界に貢献する日本」を実現し、世界国々から信頼される日本をつくり上げることは、我が国みずからの平和と繁栄を確保するための基盤を固めることにはかなりません。  その実現に向け、私は、力の限り努力していく所存であります。  そのための具体的な施策として、竹下前総理が提唱され、宇野総理外務大臣時代に誠実かつ積極的に推進してこられた「国際協力構想」を、宇野総理と力を合わせ、これまで以上に精力的に進めてまいる所存であります。  さきの所信表明演説におきまして、宇野総理は、「政府はスリムに、国民は豊かに」と述べられましたが、私は、これに「外交はシャープに」との一節を加え、我が国の抱えるさまざまな外交上の問題に挑んでまいる決意であります。  多年にわたり外交に真摯に取り組んでこられ、外交問題に精通されました、いわば外交のベテランである当委員会委員長を初め皆々様方より、今後とも忌憚のない御助言を賜りまして、外交に誤りなきを期し、日本の将来の発展のために尽力してまいりたいと考えております。よろしく御指導、御鞭撻のほどをお願い申し上げる次第であります。  ごあいさつにかえます。(拍手)      ――――◇―――――
  7. 相沢英之

    相沢委員長 常時有人民生用宇宙基地詳細設計開発運用及び利用におげる協力に関するアメリカ合衆国政府欧州宇宙機関加盟国政府日本国政府及びカナダ政府の間の協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上一成君。
  8. 井上一成

    井上(一)委員 まず、協定にしろ条約にしろ、当事国における関係というものは、当然立場がお互いにあるものですから、深いかかわりがある。しかし、その協定だとか条約、そういう関係を結ぶ場合に、これまた国際的にその協定なりがどういうふうに影響を与えるか、波及していくかということもまた一考に値する。そういう意味からも、この条約の条文の質疑に入る前に、今外務大臣所信の中でも申されました中国問題について、アメリカ中国関係についての現在の認識我が国中国との関係は今触れられました。さらに我が国アメリカ、いわば米中、日米、日中、いろいろとかかわりが、これは非常に大切であるわけであります。  そういう意味合いにおいても、まず米中関係、とりわけ方励之氏逮捕状が出ている、そういう状況の中で、アメリカ大使館が保護をする。こういうことで米中の関係がどういうふうになっていくのか、あるいは世界に貢献するという日本役割とは一体どういう立場意味するのか、冒頭外務大臣に少しこのことについて聞いておきたいと思います。
  9. 三塚博

    三塚国務大臣 ただいま極めて重要な今日的問題について御質問がございました。  先般来、天安門広場に繰り広げられました北京における、中国における出来事は、世界の耳目を集めさせるに足る大変な出来事でありましたから、我が国も、実はこの推移につきましては、最大の関心と注意力分析力を持ちまして見詰めてきたところでございます。基本的には、鄧小平・李鵬首相体制というものがほぼ鎮静をさせることに相なり、その方向でしばらく事態の収拾を図るのではないかという見通しに相なっております。  そういう中で、数々の事件収束のための秩序維持の諸方式が出されておるわけでございますが、その中に宇宙科学者たる方励之氏アメリカ大使館亡命という事態亡命なのかかくまってほしいということなのかまだ定かではないわけでございますが、いずれにしても、大使館に方励之氏が参りましたということで、逮捕状執行との関係米中関係が大変緊張しておるというのが事実でございます。  事件発生以来、米国も大分自制的な政策発表人道上の問題はきちっとしなければならぬと言いつつ、経済的な面については、また両国間の交渉については中断するということは言明しないでおったわけでございますが、米中は方励之氏をめぐりまして非常に緊張した状態にあるものですから、我が国としてこれにどうかかわり合うのかは、ただいまのところでは、その糸口を見つけるのはなかなか難しい状況にございますから、しばらくはその動向を見詰めていかなければならぬというのが本問題に対する我が国立場ではないだろうかというふうに思います。  そういう中で、日中関係というのは、前首相また現首相も本会議委員会等で表明いたしておりますように、長い歴史の経過の中で培われました関係でございますから、この関係というものは大事にしながら慎重に取り進めていかなければならない。米国及びヨーロッパ諸国等のストレートな対応とは我が国は違うのであります。慎重の上にも慎重という見きわめをしてまいる、このことがその中に含まれておるわけでございますが、そういう中で平静化が一日も早いことを期待していくということでまいるということになるわけであります。  そういう中で、日米関係はいかにするのかということでありますれば、これはまさに日本外交の太平洋をめぐる重要な基軸であります、こういうことでありますから、連携を密にしてまいるということは当然でございまして、率直に申し上げますならば、彼我の情報交換により、この中国に起きました出来事がよい方向に、開放化民主化方向に進んでまいるように期待をするということで進めなければならぬだろうという意味で、我が国としても大変難しい状況に立ち至ってはおりますが、こういうときにこそ国民世論を受け、国会の各党の強いサポートをいただきながら対応していかなければならないことではないのかなというふうに思っておるところでありますので、今後とも格段の御鞭撻を賜りますようにお願いを申し上げる次第であります。
  10. 井上一成

    井上(一)委員 日米関係日中関係、さらには米中の緊張している今日、私はあえて私見を申し上げませんけれども、主権国家日本としての役割というものをしっかりと明示されないといけない。  重ねてお聞きをします。スーパー三〇一条で、いわゆる通信衛星が枠の中に入った、そういうようなアメリカ政治の取り組みです。アメリカに追随するというか、アメリカにこびを売るというか、アメリカの言いなりになるということであってはいけない、そういうことなのです。中国の問題について午後いろいろと御議論があろうと思いますけれども、あえてもう一度ここで、我が国日中関係のいわゆるスタンスアメリカ理解をしているのか、さらに米中関係についてより深く、緊張緩和させるための働きかけを具体的にどうしていくのか、そういうことについてのお考えがおありであればひとつお答えをいただきたい。さらにつけ加えて、今申し上げました通信衛星が特定されたことについての認識もあわせて聞いておきたい、こういうふうに思います。
  11. 三塚博

    三塚国務大臣 スーパー三〇一に御言及されながら日本外交基本的スタンス、こういうことであるわけでありますが、いろいろ言われておりますけれども、私どもは決して米国といえども、大国といえども理に合わない要求というものに対しては屈服するつもりはございません。是は是、非は非として明確にこれに対応していかなければならぬということであるわけであります。  特に、米中そして日米という関係の中でどう対応するかという御趣旨かと思うのでありますが、前段申し上げましたとおり、米中問題につきまして我が国がどのようにかかわり合いを持てるのか、まさに主体的なスタンスの中で、日中が極めて重要であるならば、これにアプローチすべしということかとも思いますが、いましばらく方励之氏をめぐる米国中国との関係というものを分析し、その経過を見詰めながら、その中で我が国の果たす役割があるとすれば、その際はこういう機会でございますから、これにアプローチをするということにやぶさかではございません。
  12. 井上一成

    井上(一)委員 スーパー三〇一条の認識について、大国にくみしない、私はまさにそうであるべきであると思う。アメリカは、宇宙航空に対する我が国の頭脳というか技術というか、そういうものに非常に危機感を持っているわけなんです、一言で言えば。そういうことが今回のこの協定の中に随所に強くアメリカのその意思が表明されている。そういうことについて、この協定についてはいろいろな議論が必要になってくる。最初に、この協定日本文英文フランス文イタリー文正文と列記されているわけです。当委員会に出されたこの協定のこの案文が、日本文正式協定だと理解して議論しているのですが、これでいいのですね。
  13. 丹波實

    丹波政府委員 この協定日本語が正式なものであるかという御質問と思いますけれども、御承知のとおり、この協定の最末文のところに「千九百八十八年九月二十九日にワシントンで作成した。この協定は、イタリア語英語ドイツ語日本語及びフランス語をひとしく正文とする。」先生おっしゃったとおり明確に書かれておりますので、日本語も正確に正文でございます。
  14. 井上一成

    井上(一)委員 それでは重ねて聞きますが、大臣モジュールというこの英文解釈、定義、これについてどう認識されているのかお答えをいただきたい。大臣はどう認識されているのか、事務方はどう認識しているのか、これをまず聞いておきたいと思います。
  15. 丹波實

    丹波政府委員 モジュールは、日本側が提供いたしております実験棟という意味でございます。
  16. 三塚博

    三塚国務大臣 ただいま答えたとおりであります。
  17. 井上一成

    井上(一)委員 そのモジュールというのは、単一実験棟なのか実験室なのか、端的なことを言えば。複数なのか単数なのか。大臣、これはこの本文にも実験棟だということが九条の一に明記されているのです。そういう意味では、ジャパニーズ・エクスペリメント・モジュールという英文があるわけなのですけれども、これの本当の解釈というものは、実験棟なのか、あるいは実験棟の中に、例えば居住するその部屋、さらには実験する部屋それぞれがあるわけなのです。私は、むしろモジュールというのは単一のものだ、こういうふうに理解をしているのです。だからそういうことについては、棟というのは複数であるというぐらいの認識を持っているわけなのです。棟の中にそれぞれのモジュールがあるわけなのです。そういうことについての説明を願いたい。
  18. 丹波實

    丹波政府委員 先生のような解釈もあるいは可能かと思いますけれども、協定附属書に即して表現を改めたいと思いますが、附属書にはこの宇宙基地構成部分が全部挙げられておるわけでございます。特に日本に関連いたしますところをごらんいただきたいと思います。  この「3 日本国政府は、次のものを提供する。」ということになっておりまして、その中に、「利用要素として、有人本体日本実験棟」、「アズ ア ユーザー エレメント ザ ジャパニーズ エクスペリメント モジュール フォア ザ マンドベース」こうありまして、このエクスペリメントモジュールはまさに単数でございまして、有人本体日本実験棟そのものを指しておるというのが私たちの理解で、そういうぐあいに日本語表現しておるわけでございます。
  19. 井上一成

    井上(一)委員 それでは、有人施設の中のいわゆる居住モジュールをこの実験棟理解しているのですね。
  20. 丹波實

    丹波政府委員 四つのモジュールをこの宇宙有人本体は持っておるわけですが、その一つ居住用に使われる、アメリカが提供する、先生承知のとおりでございます。  再びこの附属書に返らせていただきますと、アメリカが提供する部分は次のようになっておるわけです。 「1 合衆国政府は、NASAを通じて次のものを提供する。」その一番目に「居住棟を含む宇宙基地基盤要素」とございまして、英語では「スペース ステーション インフラストラクチャー エレメンツ インクルーディング ア ハビテーション モジュール」こうありまして、まさにハビテーションモジュールというのが先生が言及されました居住棟意味しているものというふうに私たち理解しております。
  21. 井上一成

    井上(一)委員 モジュールというのは、今言ったように、あくまでも単一基本単位になる一つのものである。そして宇宙ステーションというのは、その本体とさらに地球観測を行ったりする複数のプラットホームがあるわけなのですけれども、そういうことは議論をする必要はないと私は思うのですが、この訳については、モジュールというのは、実験モジュールあるいは電力だとか水資源などとか貯蔵するモジュールも必要なのですよ、それらをひっくるめて棟という、複数で。だから、そういうことを考えたらこれは正訳でない、私から言わせれば説明が足りない、補足さすべきである、こういうことなのですよ。  外務省は、国会に提出するときに、常に意訳がいいのか要訳がいいのか、何かつつかれたらこうですと言うけれども、そういうことについての説明もなければ、そういうことについての理解を深める議論国会の中でできるような状況をつくらないというところに問題がある。  さらに、このモジュールと同様に、九条の八項の(b)、この日本語はどういうふうに解釈するのですか。この九条の八項の(b)の中間から後ですけれども、「宇宙基地基盤施設から得られる資源のいずれかの参加主体による利用を妨げるために援用されてはならない。」これはアメリカ主導権をとって、どの国であろうとも、いかなる国も平和的目的のものであるかないかについては、当該要素を提供している参加主体が決定する。しかし、この(b)の規定は、「いずれかの参加主体」に係る、英文の原文では係っているわけです。日本語では「資源のいずれかの」と、日本文としてこれは非常に解釈があいまいである、私はそう思うのです。それはこの「いずれか」は、上の「得られる資源のいずれか」、いわゆる複数資源のいずれかにもとれる、かけようと思えば。英文はそうじゃないです。英文はいずれかの国、参加の方になっている。それは基盤施設から得られる資源は、いずれかの国、参加主体によるいずれかの国の利用を妨げてはいけない、こういうふうに、この九条も同じようなことが言えると思うのです。  私は、この九条八項の(b)の後段の文についても、日本文としては少し言葉足りずというか、こういう案文は後に残るものですから、もう少し検討を加えるべきではないだろうかというふうにまず指摘をしておきたいのです。
  22. 丹波實

    丹波政府委員 多数国間でこの協定を長期間にわたって交渉いたしました際、確かにアメリカ協定全体で主導的な立場をとっておりますし、英語現実にはワーキングランゲージと申しますか、英語で交渉した、まず英語案文が確定したというのが現実であろうと思います。したがいまして、それを和訳するという形で日本テキスト文ができ上がるというのも、率直に申し上げて、それが現実であったと思います。したがって、その協定のいろいろなところに、どうしても英語を正確に日本語にしようというために、本来の日本語としてはわかりにくいところがたくさんあるという先生の御指摘、私ももっともだと思います。そういう点、今後国民の皆様全体にわかりやすい協定をつくっていく必要があるという点は、まさに私たち心がけなければならない点ではないかと思います。  九条八項(b)の「もっとも、」以下の文章につきましても、一読しただけではなかなかわかりにくい。しかし、協定のあちこちをとっくり返しひっくり返し、英語を見ながらなるほどなという、そういう到達過程になるというのは非常に不親切であるという先生の御指摘であると思いますけれども、その点については、特に反論申し上げるつもりはございません。
  23. 井上一成

    井上(一)委員 そういう点については、今後十分留意をしていただきたいということを申し上げておきます。  さらに、了解覚書の十一条で言う宇宙基地指揮官権限とは一体何なのか、このことについてお答えをいただきたいと思います。
  24. 丹波實

    丹波政府委員 了解覚書の十一条の五項、ページ数で百十六ページでございますけれども、この中に「宇宙基地に関する行動規範」という言葉が出てまいりまして、これは日本政府を初めとする各国の「十分な関与を得てNASAが作成し、」云々ということで、関係者が今後この行動規範というものを協議の上つくっていくということが書かれておりますが、先生質問宇宙基地指揮官権限というものも、今後つくられる行動規範の中に含められる、こういうことで現在は内容はわかっておりません。ただ、想像いたしますに、宇宙基地上におけるいろいろな指揮権限といったようなものが含まれるであろうというふうに考えられます。
  25. 井上一成

    井上(一)委員 この指揮官は、大体想像する判断でということよりも、じゃ指揮官は一体どこの国の人がなるのですか。
  26. 丹波實

    丹波政府委員 協定上は関係国乗組員はだれでもなり得るという建前で書かれております。その意味は、了解覚書の百十五ページでございますけれども、「特定の搭乗周期のための搭乗員を指名する。」これは関係国がですね。括弧の中に「宇宙基地指揮官を含む。」とございますので、宇宙基地指揮官は、この了解覚書表現上はまさにだれでもなれるという書き方になっておるわけです。
  27. 井上一成

    井上(一)委員 そういうふうには書いてあるわけなんです。書いてあるけれども、実質的にはアメリカ人指揮官になるわけです。そうでしょう。アメリカ人がならないということじゃない。どうなんですか。
  28. 丹波實

    丹波政府委員 宇宙基地乗組員は大体一飛行回で八人くらいが考えられておりまして、その割り当ては協定のいろいろなところに出てまいりますけれども、日本は一二・八%の割合、ヨーロッパは一二・八%の割合、残りは大体アメリカということでございますので、人数もアメリカが非常に多いことは先生承知のとおりで、そういうことを考えれば、アメリカ宇宙基地指揮官になる可能性といいますか頻度は非常に高い、こういうことになろうかと思います。
  29. 井上一成

    井上(一)委員 私は、最終的にこの協定によって、宇宙の基地全体での権限だとかあるいは管理等も含めて全部アメリカにゆだねられてしまうのではないだろうか、こういう一つの危惧を持つわけです。やはりそういう点については、もう少し我が国の主張というか、そういうものを明確にしておきたい。これは大臣、ひとつ国会の中ではっきりと、日本のいわば国益を守るというスタンスからも、アメリカの傘の中にすべて包括されてしまうというような状況協定というのは甘んじて受けるべきではない、こういう私の考えなんです。  このことについては、後でいろいろと具体的な問題を申し上げます。申し上げますが、まず冒頭大臣から、どういうスタンスに、どういう認識に立つのか、アメリカの言いなりにならないよ、もしそういうことがあれば、それは覆しますよと、それだけ当初に言い切ってくれるのか、いや、そうじゃないのか。後でこの協定の問題点を指摘しますから、そのことについてどう対応するか、まず大臣から答えてください。
  30. 三塚博

    三塚国務大臣 アメリカ及びヨーロッパ、カナダ、日本、こういう形の中で本計画が進むわけでございまして、御指摘のように、我が国は平和利用という基本的な命題がございます。こういう中でございますから、協定の趣旨はしかと踏まえるとは言いつつも、我が国立場というものは、御説のように、明確にその中で確立をしてまいるということだけはおっしゃるとおりであります。
  31. 井上一成

    井上(一)委員 平和的利用というお話が今大臣からあったのです。当然そういう状況の中で私たちは議論を重ねていきたい、こういうふうに思っているのです。  それじゃ大臣、率直にお尋ねをします。  我が国が持つ平和憲法の精神からいっても、宇宙空間の平和利用に徹することは、我が国の国是、いわゆる基本政策ということに私はすべきだと思うが、基本的政策、国是だと言い切れますか、大臣
  32. 三塚博

    三塚国務大臣 国是ということに相なりますと、国民世論に支持された重要かつ基本的な政策ということでございまして、国会の論議を踏まえてこれが決められていくということでございます。宇宙の平和利用はもとより重要な政策でありますが、これが国是となっているかどうかについて、ただいま本協定審議の中で断定することは難しいのではないかと思います。しかし、いずれにせよ、政府としては、我が国における宇宙の開発及び利用については、わが国における宇宙の開発及び利用の基本に関する国会決議がございますものでありますから、この趣旨を踏まえまして対処してきておりまして、宇宙基地利用につきましても、この方針には変わりがない、こういうことになると思います。
  33. 井上一成

    井上(一)委員 三塚大臣、平和的利用に徹するということが国是だとなぜ言い切れないのですか、国会決議もこれあり、我が国の憲法の精神から踏まえて。だから難しいことは、参事官が書いたその難しいことを読む必要はない、それは後で議論しますから。私はやはり平和的利用に徹するということは国是にしたい。国是、基本的政策であるべきだ。国民世論もすべて、我が国はやはり宇宙の平和的利用ということのみにかかわっていくべきであると。それはアメリカは非侵略的と――後で言いますから。大臣就任早々だから、これは少し差し控えたいと思いますが、過去の流れからいって平和的利用に徹するということは国是だ、これはやはり新大臣がしっかりとここで明言をなさらないと、私はこれは大変なことになるのじゃないか。大臣政治家としての理念、信念を重ねて問います。
  34. 三塚博

    三塚国務大臣 ただいま井上委員御説のように、政府統一見解をここで申し上げたわけでありまして、この中にも宇宙の平和利用という精神はにじみ出ておるという意味で私は申し上げたのでありますが、ただいま委員指摘のように、外務大臣として、我が国の平和国家を志向するという基本的な国是、これを基本といたしますれば、まさに宇宙もその方向で貫かれていく、こういうふうに思っております。
  35. 井上一成

    井上(一)委員 私はぜひ今のお答えを忠実に守ってほしい。  二十二条について刑事裁判権を認めた理由、これは何なんですか。
  36. 丹波實

    丹波政府委員 基本的には、二十二条の条文は、この宇宙ステーション上で刑事的な事件が発生した場合の管轄権の振り分けを行ったものでございます。
  37. 井上一成

    井上(一)委員 日本のいわゆる実験棟、この協定文からいけば実験棟となっていますから、私も、モジュール実験棟との訳は相ふさわしくないということは指摘していますが、今後実験棟とあえて申し上げます。  私の指摘をしたいのは、いわゆる刑事裁判権が全体としてアメリカの刑事裁判権がかかってくるということになれば、我が国実験棟、何かすべてがまたアメリカの枠の中に入り込んでしまう、そういうことになってしまうのではないか、そういうことを指摘しているのです。そのことに対してお答えをいただきたい。
  38. 丹波實

    丹波政府委員 協定それから了解覚書の各所に出てまいりますけれども、全体としてアメリカが、従来の経緯あるいは予算、そういう経緯もあり、主導的な立場というものをとっておるわけで、その点がこの二十二条の刑事裁判権の管轄権の振り分けの問題についても出てきておるという、先生その点を御指摘しておられると思いますが、全体としてはそういう構成になっておる。つまり一項におきましては、各国が、自国が提供する飛行要素について、それが第一、それから第二に自国の国民、二つについて刑事裁判権を行使することができると書いてありますが、アメリカに関しましては、それ以外の場合、つまりアメリカ国民以外の宇宙基地搭乗員アメリカが提供している実験棟以外で刑事事件を起こした場合でも、もしそれが有人本体またはその搭乗員全体の安全を損なう場合には、アメリカも刑事裁判権を行使することができる、そういうところにあらわれていると思います。
  39. 井上一成

    井上(一)委員 そういう意味からも、アメリカがすべて主導権をとるというか、アメリカの判断のもとに、あるいはアメリカ権限というものが非常に強いということなんです。  翻って、今度は十六条、「責任に関する相互放棄」というこの項目では、基地上で作業によって生じた人命や財産の損害については、参加主体間では相互に請求権を放棄することになっているわけなのですね。ところが(4)で知的所有権は例外扱いにされたのです。このことについてひとつ、これはどうしてなんですか。いろいろと相互放棄の、お互いに放棄するという申し合わせば、それまではずっとうまく条文としては流れが来ているわけです。ところが十六条の3の(d)の(4)で「知的所有権に係る請求」、これが例外扱いにされた理由についてひとつ聞いておきたいと思います。
  40. 丹波實

    丹波政府委員 お答え申し上げます。  まず、宇宙のこの種活動に関連いたします全体の請求権問題の枠組みがどうなっているかという点から御説明申し上げたいと思うのですが、いわゆる宇宙四条約のうちに責任条約というものがございます。この責任条約では相互放棄ということにはなっておりませんところを、この協定は相互放棄というふうにしておるわけです。  その理由は、この協定は現在のところ十二カ国が署名しておりますけれども、大変に活動リスクが高い、かつ損害賠償額が膨大になる可能性がある、それから法的な関係が非常に複雑になる可能性があるという三つの理由で、相互放棄にした方が相互協力というものが容易になるという観点から、相互放棄という規定になっておるわけでございます。  具体的に先生の御質問は、その相互放棄の例外として幾つかの項目が(1)から(4)、協定でいうと四十七ページですが、挙がっておる中に、なぜ「知的所有権に係る請求」というものが例外になっておるのか。この点は確かに「知的所有権に係る請求」、これだけがぽつんと出てまいりますので、私も最初読んだときに、ある意味では非常に唐突な感じを抱きましたけれども、いろいろ調べてわかりましたことは、要するに、この「知的所有権に係る請求」ということも放棄の対象に含めますと、宇宙基地において行われました発明などに関する保護が薄くなるかもしれない、そうであれば、研究者の宇宙基地協力への参加を阻害することになりはしないかという観点から、この知的所有権、具体的には特許権でございましょうけれども、特許権の侵害というものが行われた場合には、これは相互放棄の対象にはしないで裁判に出ていく、そういうことにしてあるという趣旨だと思います。
  41. 井上一成

    井上(一)委員 アメリカで今特許法が改正されているというふうに私は聞き及んでいるのです。それはどういう状態なのか、そしてなぜ改正を必要としたのか、そういう点の認識について聞いておきましょう。
  42. 丹波實

    丹波政府委員 お答え申し上げます。  これは具体的には協定の二十一条に関連することでございますけれども、二十一条の二項で「知的所有権に係る法律の適用上、宇宙基地の飛行要素上において行われる活動は、当該要素の登録を行った参加国の領域においてのみ行われたものとみなす。」と書かれてございまして、具体的に申し上げますと、アメリカの例で申し上げますれば、アメリカ実験棟の中で行われた実験の結果の発明というものは、アメリカの領域において行われたものとみなすという協定の建前になっておるわけです。この意味いたしますところは、アメリカの特許法上の建前は、アメリカの領土の中で行われた発明というものは、先に発明されたものが優先権を持つという建前になっておるものですから、それとの関連でこういう協定の文章が挿入されたわけです。  アメリカの特許法の改定の問題についての御質問でございますが、まさにアメリカの特許法をこの宇宙協定の言葉に合わせるということで改正が現在行われておる。具体的には、宇宙空間においてアメリカの管轄下にある宇宙船上で行われ、使用されまたは売却された発明は、この法律の適用上、アメリカ領域内で行われ、使用されまたは売却されたものとみなすという、この表現に合わせたように改正するために、今作業が行われておると聞いております。
  43. 井上一成

    井上(一)委員 アメリカは特許法を宇宙にまで適用しようとして今改正作業をしているのです。参加国で特許法を改正している国はほかにあるのですか。さらに我が国は、この協定に関して特許法をアメリカと同じように取り組もうとしているのか、取り組んでいるのか、あるいはこれから取り組もうとしているのか。我が国認識はどうなんですか。
  44. 丹波實

    丹波政府委員 正直に申し上げて、私、特許分野は大変知識がないので、確信を持ってお答えできるかどうか自信ございませんけれども、先ほど申し上げたような特許法上のアメリカの建前は、何と申しますか先発明主義という言葉で表現される方式だそうでございます。日本の場合には、これに対しまして先願主義、先に登録した者が勝ちということでございます。それで、こういう先発明主義をとっている国というのは、ほとんど世界の中でアメリカだけ、アメリカとフィリピンと聞いておりますが、非常に少ない。そういうことから申し上げて、アメリカのような国内の法改正を行わなければならない国というのは、この協定参加国ではないのではないか。現実日本でもこれに合わせて改正するというようなことは考えられていないと承知しております。
  45. 井上一成

    井上(一)委員 まさに先願主義と先発主義。それは領域内では先発主義であり、アメリカはやり方が非常に利口だという言葉がいいのか、やはりアメリカ一流のテクニックを使っているのではないか、私はこういうふうに思うのです。  そういう意味で懸念されるべき点はたくさんあるわけですけれども、それでは日本モジュールで、実験棟日本だけでそれが成功して研究開発をした、あるいは日米共同で研究開発をした、その成果をどうするか。さらにもう一つ、例えばその成果をアメリカアメリカで特許申請をする、日本日本で特許申請、そういうことが可能なのかどうか。それはどこの条文にそういうことが、サブノートも含めて説明されているのか。そんなことについて全然説明がないでしょう。
  46. 丹波實

    丹波政府委員 これは先生の御質問のあるいは全部にお答えすることにはならないかと思いますけれども、例えば二十一条の三項が御提起された問題の一つを少なくとも私は扱っていると思いますけれども、ここで言っておりますのは、アメリカ実験棟において日本人がアメリカのいろいろな実験にかかわる企業の下請として、例えばたまたま日本人がいたと仮定いたしまして、現実には可能性の低い仮定ですが、その日本人がたまたまアメリカ実験棟で発明したという場合に、この三項が言っておりますのは、日本に特許出願の秘密に対して保護を与えているような制度がない場合には、アメリカはその日本人が日本で特許出願を行うことを、延期を法律上強制し、または事前のアメリカ政府の許可の取得を要求することができるというふうに書かれておるわけです。  同じ条文で別な例をあれいたしますと、例えばアメリカ実験棟でイギリス人が同じような行動を行った場合には、イギリスには恐らくそういう秘密特許制度がございますから、アメリカはイギリス人がイギリス本国に行って特許出願することを妨げることはしないというようなことになろうかと思います。
  47. 井上一成

    井上(一)委員 いや、それはすべての答えになっていないのだけれども、じゃ、もう少しわかりやすく工夫して、今日本実験棟の中で日米共同でやった場合にでも網がかかっているということなのです。二十一条で指摘をしたいのは、それでは日本実験棟日本人がアメリカ人と共同で行つた発明、そして成果が出た。今度は日本実験棟。それはアメリカが国家安全保障上の目的のために、これは米国の秘密特許だと網をかぶせる場合があり得る。その場合に、いや、日本は平和的利用を目的としているのだから、それはできない、そういうことはできないのだということで妨げることができるのかどうか。妨げると言ったらおかしいけれども、それだけのことはできるのかどうか、そういう具体的な行為は。  さっきの二十一条の前段の答えには十分満足はしないし、不満なんですよ。だけれども、もう一つわかりやすく、日本実験棟を使ってアメリカ人日本の研究開発が成功し、アメリカが国家安全保障上の問題で秘密特許にすべきだという一つのべールを、私の質問の趣旨がおわかりいただけますか。さっきの質問とは少し……。その場合に、日本はそれを、いや、そういうことにはさせないというだけの一つの歯どめがあるのかどうか。これははっきりしておかなければいかぬ。
  48. 丹波實

    丹波政府委員 先生の御質問意味を一〇〇%理解できたかどうか確信ございませんが、まず、日本実験棟におきまして、宇宙開発事業団以下、日本関係者が研究、実験を行うという活動につきましては、事業団法の平和の目的云々、国会決議の平和の目的云々という言葉あるいは考え方がかかってくる点については、全く疑問の余地はない、それが第一点。  第二点は、先生質問しておられますのは、いやいや、その問題はそれはそれでいい、第二点の問題は、アメリカ実験棟日本人が研究した場合の問題だということだと思います。まさにこの点は、私は可能性は低いがと申し上げて、私自身が仮定の問題として出した問題ですが、日本人がアメリカNASAの下請機関のその下の下ということで入っていって実験その他を行う点については、そういう平和目的云々という日本の国内におけると申しますか規制というものは、そういう活動にはかかっていないというふうな考え方ができると思います。
  49. 井上一成

    井上(一)委員 いや、前段のものは私は了解してないのですよ。あなたの答弁で了解はしていないし、それはまだ……。わかりやすく後の質問をしたわけですけれども、あなた方は平和利用日本国会の決議だとか、いや、何だとかいう抽象論的な発言。私は、例えば日本の特許法でそういうものはきっちりと歯どめをかけているのだ……。アメリカは今度の特許法改正は宇宙にまでその適用を広げようとしているのですから、我が国の特許法で今言ったように歯どめがかけられないし、そういうかける約束事が協定の中にどこにもない。ずっと見てどこにもないわけなんです。だから、そういう点では日米の共同開発の成果というものはアメリカに組み込まれてしまうのではないか。日本の企業のというか頭脳というか日本人の研究の成果というものは、まさにアメリカに全部組み込まれてしまう。そんなことで日本の国益を考えられるのか。そんなことで日本の主権というものが維持できるのか。そこまでアメリカの言いなりになるような協定というものを本当に急がなければいけないのか。私はこれにはいろいろな疑問がある。  だから、あなた方に、それは丹波参事官、えらい申しわけないのだけれども、あなたがこちらに帰ってこられるまでにこれをいろいろやられて、大臣も就任早々だから、これは経緯、流れというものを十分御存じないのに余り申し上げるのはどうかと私も非常に気にしているのですよ。少しは遠慮がちに質問しているのですよ。だから、これはどう考えても、アメリカ権限の中にすべて包括されてしまう。そういう意味で、もう一度これは、あなた方が今指摘をした点については、アメリカと十分検討というか話し合いをして、しっかりとした歯どめをかけられるように私はぜひ注文をつけたい、こう思うのです。そうでない限り、全部秘密特許……。  ではもう一つ具体的に、アメリカ側が特許を出願する――日本で先にできるんです。日本がやったときにはアメリカはクレームつけません。あるいは同時にやった場合はどうなるんだ、そういうことだって議論しなければいけない。そんなことアメリカとやったのか、アメリカとやったなら、その辺の答えはどうなんだ、我が国の姿勢はどうなんだ、こういうことをきっちりと答えてもらわないと、限られた時間、私は三時間要求しておった。一時間半で質疑を終えよということだから守りたい。しかし、もっとしっかりとした答弁をしてもらわない限り、これは前に進まないよ。答えてください。
  50. 丹波實

    丹波政府委員 どうも先生のおしかりを受けて恐縮でございますけれども、せっかくの先生の御指摘、御懸念、大変ごもっともな御懸念でございますけれども、今後この問題はさらに研究させていただきまして、今後の運用に当たっては、十分日本の考え方を確保することに、私たち外務省のみならず科技庁その他関係者、全力を挙げたいと考えておりますので、よろしく御理解いただきたいと思います。
  51. 井上一成

    井上(一)委員 大臣に、大体今の質疑でおわかりだと思うが、例えばさっきも申し上げたように、我が国は平和的利用アメリカは非侵略的と言っておる。アメリカでは軍事用と言わない、非侵略的だと。アメリカが非侵略的であると認定をする、いわゆる軍事的という表現を避けます。避けますと言っても、アメリカはどう言っているか知りませんけれども、政府外務省はずっとそういう言葉を使ってきたんです。だから、あえて政府の言われている非侵略的-私は、日本の企業というか我々日本人の頭脳をやはりしっかりと守っていかなければいけない、そういうことが主権国家であり、先ほどから何度も申し上げるように、権利の保護になると思うのです。  それで、これは汎用品的なものがあるわけですね、秘密特許の枠の中に入れるかどうかという非常に際どい。そういうときにも、大臣は通産大臣もやられたのですから、これは我が国の権利保護のために、頑としてそういうことはない、必ず守る、そういうことをアメリカに強く申し入れる、そういう決意があるのかどうか、このことについて聞いておきましょう。
  52. 三塚博

    三塚国務大臣 ただいま井上委員政府委員との質疑応答を聞いておりまして、私自身も、宇宙団法に明記されている平和目的に限る、それを受けた国会決議、また先ほど来申し上げておりますことも、そのラインで申し上げておるわけでございますが、モジュールの中における研究開発一つのケースとしてあり得るケースかと私も思うのでありますが、米国モジュールの中における日本人科学者が参加をしてやるという場合のケース、二つに分けられるというふうに思います。知的所有権の先発と先願という問題も含めて、我が国モジュールでやりました問題については、極めて明快なスタンス米国に対しても、関係国に対しても理解せしめ、また我が国立場でこれが処理できるというふうに思いますし、また処理しなければならぬというふうに思います。  ただ、米国と共同でやり得るケースというのは、私も科学者でございませんからよくわかりませんけれども、しかし、こういう宇宙における産業、医療等の広範な分野にわたっての未知の分野への研究開発、よく言われておりますがんでありますとかエイズでありますとか、ほとんど難病と言われる問題がこの中で解明されるとも期待される。また新素材がそこで生まれていきまして、それが民生用に大きく活用されるであろう。さらにそれが非侵略的という意味で広範に活用されることも予想をされるわけでございますけれども、我が国としてきちっと方針を踏まえて、米国及び加盟国に対しまして我が国立場を申し上げながら、共同研究、共同開発という中におきまする仕分けがすべての分野で判然といくということはなかなか難しいとは思いますが、基本的方針におきまして、ただいまの論議を踏まえて、また宇宙団法の基本的精神、国会等の決議を踏まえて明確に物を申していくということは極めて重要でありますので、その点はきちっとさせていかなければならぬ、こう思っておるところであります。
  53. 井上一成

    井上(一)委員 ちょっと大臣日本実験棟の中での日米共同開発については、何か今の話では、大臣はすべて権利保障されているんだというような認識なんですか。そうなんですか。ちょっとそういうお答えに受けとめたのですけれども、大臣、そうなんですか。
  54. 三塚博

    三塚国務大臣 日本の研究棟、モジュール、こう言っているのですけれども、棟、あの細長いカプセル、わかりよく言いますと、カプセルかなと思うのですが、そこでやる分は日本の研究者が中心でありますから、さようなことになるだろう。研究分野がどういう分野になりますのか、その辺のところは定かでありませんので、日本でやる分野は民生に稗益する分野での研究開発が中心になるだろうという前提で実は申し上げたわけであります。
  55. 井上一成

    井上(一)委員 それは大臣にちょっと後でよく……。そうじゃないのですよ。大臣日本実験棟の中で日米開発されたものでアメリカの秘密特許の中の枠に組み込まれた場合に、我が国の企業の研究成果というものは奪い取られてしまう、そういうことへの権利保護が一つある、前段。そして今度、アメリカ実験棟の中で日本人が共同作業した場合の問題点がある。いろいろあるわけなんです。だから、そういう点について一つずつのケースについての取り決めのサブノートでもあるのかということを僕は聞いているわけなんです。  大臣お答えは要りませんが、そういうことなので、もう一度確認をしておきますが、いろいろ私が指摘をしてきたそういうことについては、さっきの丹波さんの努力意思を了としたいわけです。しかし、それはノートで、いわゆる合意文書で取り交わすべきですよ。それくらいの努力をしなさいね。いかがですか。ちょっとこれ聞いておきましょう。
  56. 三塚博

    三塚国務大臣 その前にちょっと。井上先生の言われるのはもっともでありまして、私の前提には、特許というものは、それを発明をした方が申請するわけでありまして、こういう分野に参加する科学者は、まさに我が国のそれぞれのトップレベルであります。ですから、彼の頭脳から発しましたその分野でありますから、当然これはその人に帰する。井上博士がやられたものは井上博士に帰する、これが仮にアメリカの分野のモジュールでありましても、これは井上博士のものである。こういうことで我が国のものである。こういうことでありまして、その場合に、汎用でありますから他に利用されるのではないかという御心配だろうと思うのです。ですから、それはまさに、先ほどの論議をお聞きいたしておりまして、宇宙団法がございまして国会決議があるわけでございますから、我が国はこの方針に従ってこの利用を進めなければならぬ、こういうことを明確に米国側に申し上げて、そこできちっとした整理ができるのではないだろうかというふうには思っておるわけであります。
  57. 井上一成

    井上(一)委員 これだけでももっと時間をかけて議論をしたいわけなんです。私は、汎用品的に向こうが秘密特許の中に入れ込んでしまう、そのときに日本はやはりそういうことはだめだと言い切れるのかということを聞いていたのですが、十分な答えはないのですよ。答えられないのですよ。そういうこともわかりながら質問をしなければいけないと言うとえらい悪いけれども、答えられるなら、そういうことをやります、そういうことはあり得ません、秘密特許の中に包括されませんということなら答えてください。そういう条文がどこにあるのか。私もまだ全文を一条一条、一項一項全部つぶさに検討を加えたわけじゃありませんけれども、大綱において私は目を通したつもりですから、そういうことがあるのですか、あったら答えてください。
  58. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 一言だけ私から答弁させていただきたいと思います。  先生指摘の点は、結局日本実験棟の一部分アメリカに貸すわけですし、あるいは日本アメリカとの共同研究もあり得ると思います。したがいまして、日本が貸すときの条件といいますか、こういうことだったら貸すのだ、あるいは共同開発、共同研究をやりますときは、こういう条件でやろうじゃないか、そのとき生まれてくる知的所有権はこういうふうに扱おうじゃないか、そういうふうな個々のケースで、何とかそういうふうな方向で、これは努力目標になって申しわけございませんけれども、そういうふうな努力目標を掲げながらやってまいりたいと思っております。
  59. 井上一成

    井上(一)委員 結局はサブノートはないのだ、これから個々のケース、ケースによって対応していきますということなんです。これはもうこれ以上つっつきません。十分私の意を酌んで対応していただきたい、こういうふうに思います。  時間がありませんので、それじゃ宇宙において自衛権はあるのかないのか、このことについてひとつ聞いておきましょう。
  60. 丹波實

    丹波政府委員 大変突然の御質問で窮しますけれども、急迫不正の侵害が国家に加えられた場合に、それに対応いたします必要最小限度の武力による排除の行為ができ得るということが従来の一般国際法上の原則、国連憲章五十一条でも認められておりますが、この場合の行動というものは、その国の領土、領海、領空に限定されないというのが第一点、それから侵害の対象となるものがその国そのものに存在する必要もないということでございますので、先生の御質問のようなケースが具体的にどういう態様で起こり得るか、私はちょっと想像しがたいのでございますが、そういう意味では、現実の可能性というのは私は想像しがたいのですが、観念的にはあり得る、観念的には及び得るということを申し上げることができるかと思います。
  61. 井上一成

    井上(一)委員 大臣もそう認識されますか。
  62. 三塚博

    三塚国務大臣 まさに観念的には私も実はそのように認識します。
  63. 井上一成

    井上(一)委員 これは大変なことなんだ。今の答弁は大変なことで、宇宙に自衛権があるなんて私は大変なことだと思う、宇宙に主権が存在しないということを否定されていることは。宇宙条約でこんなことを聞く必要はないのだけれども、それは御存じでしょう。主権のないところに自衛権が存在する、これは大変な答弁なんですよ。本当に確定解釈としてこれはいいのですか。
  64. 丹波實

    丹波政府委員 確定解釈としていいかと言われますと、私もちょっとよろよろといたしますけれども、例えば公海上において日本の船舶あるいはタンカーが組織的、計画的に攻撃された場合、こういうものに対して日本の自衛権を発動し得るということは確定した国際法の解釈でございまして、それじゃ日本は公海上に主権を持っているかという意味では、公海上そのものには主権を持っていない。そういう意味では、先生が言われるように、宇宙そのものにも主権を持っていない。しかし、そのことと、そういうところに存在しておりますところの日本の財産あるいは日本国民に対します組織的、計画的な攻撃に対しては自衛権の発動の対象になり得るという点は同じかと思います。  ただ、私が繰り返し申し上げたいと思いますのは、宇宙において現実にそういう事態が発生するかという点につきましては、私は非常に想像しがたいということもあわせて申し上げているわけでございます。
  65. 井上一成

    井上(一)委員 大臣、私があえて確定解釈でいいのかと言ったら、今ふらふらとしておるわけなんです。そうしたら前段で、主権と管轄権の違いをまず説明してください。
  66. 丹波實

    丹波政府委員 大変突然の御質問で答えに窮しますけれども、主権と管轄権は使われますところの文脈によっていろいろな意味があろうかと思います。ほとんど同じ意味に使われているケースは、例えば大陸棚条約、海洋法にも出てまいると思いますけれども、大陸棚条約は海底二百メートルまでの海底資源について主権的権利を沿岸国が持つと書いておりますが、この場合の主権的権利、あるいは漁業水域二百海里につきましても、海洋法条約は主権的権利を持つと書いておりますが、この場合の意味は、私は管轄権とほとんど同じであろうかと思います。  しかしながら、主権という言葉が典型的に使われますのは、領土主権という言葉がございますとおり、領土そのものの中で最高の権力を持ったそういうものを表現するために使われております。管轄権につきましては、領土を離れても存在し得るわけでございまして、その国家の権力あるいは処理の能力が及ぶところ、そういう意味で使われているかと思います。
  67. 井上一成

    井上(一)委員 あいまいな答弁で、唐突に質問をしたと言われれば、事前に全部こういう質問をいたしますと言ってすることが親切なのか。いや、やはりこういう議論を通して外務省の考え方を私たちがいろいろ知ること、あるいは議論をすることによって平和的な国づくりにより一歩前進していく、そういうことが大事だと私は思うのです。もとより国である限り主権があり、そして各国は固有の自衛権を有するということは否定しません。我が国も含めて固有の自衛権があるわけなんです。  私は、宇宙では主権は否定されている、このことをまず確認してほしい。宇宙で主権は否定されているのです。主権がないところに自衛権は及ばない、これが一番正しい理解だ。主権が及ばないから、管轄権というような形の中で何とか一つのいわゆる自分の意思というかパワーとかいうものを示していこう、こういうふうになってきたのではないか。それで自衛権というのはもともと主権に基づく行為であると私は考えるのです。どうなんでしょうか。私が今申し上げたことに対してひとつ答えてください。さっきの自衛権があるという答弁も、これは記録に残るのですが、それをあえて確定解釈なんだな、大変だぞと言えば一歩下がったので、これは最後に大臣から正確な答えをいただかぬと。この委員会で、宇宙に対する自衛権、こういうことについて私が今主権がない、そして主権のないところに自衛権は存在しない、いろいろ申し上げましたが、大臣お答えをいただき、あるいは先に参事官から答弁をいただいて、ひとつ大臣からまとめて答えていただきたいと思います。
  68. 丹波實

    丹波政府委員 先生御自身宇宙条約のことをおっしゃいましたけれども、この宇宙条約の第二条、短いので念のため読ませていただきますけれども、「月その他の天体を含む宇宙空間は、主権の主張、」ここのところがポイントだと思いますけれども、「主権の主張、使用若しくは占拠又はその他のいかなる手段によっても国家による取得の対象とはならない。」ここで言う「主権」というのは、私先ほど領土主権というのが典型だということを申し上げましたが、そういう主権の取得の対象にはならないということをまさに言っているわけで、この点、私は先生の御解釈と何ら異なるものを持っておりません。  ただ、観念的に、日本の財産というものが宇宙にあって、それに組織的、計画的な攻撃が加えられた場合、私は非常に可能性は少ないと思いますけれども、あくまでも観念論として言えば、そういうものを排除する自衛権というものが日本にもあるというのは観念的にはそうだろうと思います。しかし、実際上の問題として見れば、まず第一に可能性は少ないですし、そういうものを排除する能力をそもそも日本が持っておるかという点になりますと、答えはゼロでございましょうし、そういう意味現実論として言えば、先生の言っておられることと余り違わないのではないかなと思います。  ただ、米ソ間はまさにハンターキラーとかいろいろやっておりますから、私は米ソ間では彼らは自衛権はあるとはっきり言うと思います。ただ、繰り返して申し上げますが、現実日本の問題に当てはめますと、現実論としては先生と私は意見の対立は余りないのではないか、そういうふうに考えます。
  69. 三塚博

    三塚国務大臣 実は、先ほどの質問に対しまして観念論としての自衛権、私も同感であると認識を申し上げました。それはまさに参事官が言いますように、基本的にはそういう事態は起こらないだろう、こういうふうに考えましたがゆえであります。財産権の存するところ、生命と財産を守るのは国家の義務であるという基本概念からいたしますと、ここに投資をいたしました財産が侵害を受けるということであれば、さような発動があり得るのかな。しかし、具体的にはとても五百キロの上空を飛んでおりますこれに攻撃がかけられるはずもございません。これが我が国の今日の立場であります。  ただ、ただいま宇宙は偵察衛星、軍事衛星を含め人工衛星等がたくさん飛んでおりますことも御案内のとおりでありますから、これらの問題と本問題、平和利用に徹するというこの宇宙ステーションとの関連がどうか。これに攻撃を加える状態があり得るはずがないのではないだろうか、こういうふうに思いますし、そういう意味で、私は、宇宙はやはり全人類のものである、こういう観点から、宇宙の平和利用については、国際的にこのことについてコンセンサスを得るという努力が今後の中でも払われていかなければならないのであろう、こうは思います。  しかしながら、米ソの力の対立というものの中の均衡的な平和というのが今日保たれておることを考えますと、平和国家である我が日本の主張は主張として聞いてはいただけるものの、さて実現という段階になると、この両大国、一、二の三でやってもらう以外にないのかな。しかしながら、主張すべき点は、これは何回も主張し続けていかなければならぬことである。こういう意味で、観念的にあるとは言いましたが、それが宇宙という基本論の問題からいっていかがかと言われますならば、まさにそのことに余りこだわらぬでもいいだろう、こう私は思っております。
  70. 井上一成

    井上(一)委員 私は、観念論であったとしても――観念論である、いや、ともあれ実際の問題がどうであるとか、我が国外務省としての見解を聞いているわけですからね。だから、参事官と大臣との答弁は少しニュアンスが違う、僕はそう思います。  私は、宇宙には主権がない、主権のないところに自衛権は存在をしない。どんなハプニングが起こり得るか。宇宙ホテルがあり、あるいは邦人保護、いろいろな問題が、攻撃はあり得ないとは思うけれども、それはどんなそのときそのときの、これはまさにそのときそのときの状況によっての的確な判断は必要ではあります。ありますが、私が申し上げたいのは、宇宙にまで自衛権が及ぶなんという答弁を日本外務省がし切れるのかどうか。あえて確定解釈として受けとめていいなと私は言っている。私は何もそれについていいとか悪いとかいう認識を持っていません。持っていませんが、ここは大臣、ひとつもう一度、何か少しトーンを弱く落とされたわけですけれども、宇宙に自衛権があるのかないのか。あるならある。主権のないところにも自衛権はあるんだと発言をされるなら、答えをされるなら、そのとおり、いや、そうじゃありませんとおっしゃるなら、そう、もう一度明快にここはひとつ答えてほしいですね、大臣
  71. 三塚博

    三塚国務大臣 お答えします。  公海上にも我が国は主権がないわけでございますから、その延長解釈から申し上げますと、宇宙にも主権を持っておらない、こういうことで御理解をいただきますればと存じます。我が国はやはり平和国家でありますから。
  72. 井上一成

    井上(一)委員 主権がないというお答えはわかりました。主権のないところに自衛権があるのか。宇宙に自衛権があるのかないのかということを私は聞いたわけですから。もう一度重ねて聞きます、自衛権があるのかないのか。――いや、参事官、あなたの答弁はよろしい。私はやはり大臣の答えを、認識を聞いておきたいと思う。
  73. 三塚博

    三塚国務大臣 この点は、我が国は基本的には専守防衛でありますし、しかけられた、個別自衛権でいくわけですから、そういう点からいいますと、まさに井上委員の御発言とほぼダブりまして何ら矛盾はないわけであります。  ただ、確定解釈として基本的に法理論を展開するということになりますと、いささか私も、余り勉強しませんでしたが、法学部の学生なものでございますから、財産権という問題、国家の主権というのは、その国の生命と財産を守り抜くという基本的義務を負うておるという観点から申し上げますと、宇宙でありましょうと公海でありましょうと、それを守り抜いていかなければならないという国家の義務があります。それが自衛権と名称されるのか義務ということなのか。それで急迫不正の侵害をその状況の中で排除することができるかどうかは極めて難しい。参事官も言いましたが、ほとんど不可能であろうということで御理解をいただき、井上先生がぴしっと法解釈としてということになりますと、そういうことであります。政治論といたしますれば、まさに御説のとおりであります。
  74. 井上一成

    井上(一)委員 いや、それは政治論としてはいろいろなことを考えていって、いろいろなことが起こり得るであろう。僕は、法解釈として、毅然と、主権のないところに自衛権は及ばない、これはやはり明確にしておかなければいけない。しかし、平和的利用だということの中でいろいろな問題が起こった場合にはどうあるべきかというのは、それはそのときそのときに考えていくのだというお答えならいいけれども、もう一度重ねて、宇宙には自衛権があるのかないのか。大臣、くどいようですけれども、これはしっかりと聞いておきたい。
  75. 三塚博

    三塚国務大臣 これは大変御熱心な平和愛好者である井上委員の至情から出た御質問であります。私もそのとおり基本的なスタンスは持っておるわけでありますけれども、やはり外務大臣、国務大臣という立場に相なりますと、国の基本的業務というものを明確に定めてまいらなければならない義務を持つものでありますから、深い御理解を賜りたいと存じます。
  76. 井上一成

    井上(一)委員 次に、宇宙基地の寿命は大体二十年ぐらいではないか。これは遠藤議官、ちょっとお答えをいただきたいのだけれども、では、その後の所有権は一体どうなるのか。宇宙基地の寿命というか使用期間というか、その後の所有権はどうなるのですか。
  77. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 現在の宇宙基地でございますと、恐らく先生のおっしゃるとおり二十年とか三十年、あるいはそういうことなのかという感じがいたします。  それでは、もし現在の宇宙基地がそういうふうに使用にたえなくなったときの所有権、これも現在の所有権が引き続いて存続するのではないか、こういうふうに考えております。
  78. 井上一成

    井上(一)委員 いや、二十年たった後は所有権はどうなるのか。そして、それは使えぬようになったら一体どうします。宇宙のごみになるわけです。だから、宇宙のごみになりますと、所有権は放棄すると言うのか、いや、大事に持って帰りますと言うのか、そこらのことはどうなんですか。それを聞いておるのです。
  79. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 失礼しました。  宇宙のごみになるわけでございますけれども、やはり宇宙にそういうふうなごみがたくさんあっては非常に困るわけで、したがいまして、日本としては、持って帰る、あるいはどういうふうに解体するのかはまだあれでございますけれども、解体して持って帰るのが宇宙をきれいにしておくという観点からは正しいし、とるべき道ではないかと思っております。
  80. 井上一成

    井上(一)委員 限られた時間ですので、私は今この一時間余りの質疑で、いろいろと疑問点、さらには科学というものがどうあるべきか、そういう点で、人間の叡智というものが自然環境を破壊することに使われてはよくないし、人間の暮らしを豊かにしていく、幸せにしていく、そういうところに自然の摂理とどういうふうに協調しながらいわゆる人類の幸せをもたらしていくか。そういうことを考えてみるならば、この協定、こんなことを言うとえらいなにですが、非常に急がれているので、いろいろな矛盾点があります、疑問点もあります。この対応は非常に大変だけれども、しっかりしなければいけない。そういう意味大臣に、技術開発というものが人類の暮らしにどのように作用していけばいいのか。これは言をまたないわけですけれども、自然の摂理を崩して宇宙まで破壊をしていく、そういうことのきっちりとした、いわば二十年先ほどうなってもいいんだ、あるいはそういう対応一つすら考慮に入れずに物事を進めていくということが本当の技術開発、技術促進になるのかどうか。それは人類のいわゆる生存権というか、人間の生きていく上において本当に考えなければいけないことを抜かして物事が進められていく、そのことに私はどうも満足をしないと言うのです。そういうことについてちょっと大臣の所見を聞いておきたい、こう思います。
  81. 三塚博

    三塚国務大臣 ただいま段々の御質疑を承っておりまして、宇宙は人類共通の空間であります。たくさんの衛星が飛び交って、ごみになって、それが衝突するということはないという原理のようでございますけれども、どうなるのであろうかということをせんじ詰めますれば、私もその点に共感をいたします。  さはさりながら、ライフサイエンスということどもの中で我が国参加をしようとする民生部門、これはがんでありますとか、先ほど申し上げましたエイズでありますとか等々、ただいまの地上における実験、研究という分野ではなかなか進まぬものが、宇宙の無重力、無菌状態においてこれが行われることによりまして、その基礎研究がいち早く芽を吹く、あるいは効果が出るという意味で、まさにこの点が人類の生存にプラスをしていくのではないだろうか。この点は、摂理の中におきましても、あえて申し上げますならば、神仏が人間を愛する、慈悲を賜るお心とそこでその点においてマッチする。そういう点で、井上委員言われる、そのことが非侵略とはいいながら云々というこの問題につきまして、摂理に反することはやるなよ、こういう御指摘が御質疑の中に読み取れるわけでございました。  この質疑を通じながら、私は、技術開発の持つ重要性、特に宇宙空間におけるそのものの持つ意味の重さをしみじみと実は共感をし、また味わわせていただいた、こういうことであり、時間のない短い時間に云々という御指摘、大変恐縮であります。しかしながら、交わされた論議は今後の中で十二分に政府としては生かしていくのが国会論議でありますので、しかと体させていただきたいと存じます。
  82. 井上一成

    井上(一)委員 最後に私は、ヒューマンネーチャーとしての人間の心を破壊したり自然の摂理をつぶしていったり、そういうことをしてはいけませんよ。あくまでも技術開発、いろいろと世の中を進歩させるために、それはすべて一に人類の幸せを求めての対応でなければいけない。  八六年の一月にスペースシャトル・チャレンジャーが打ち上げられたときに、大臣、それを見ていた世界すべての人は拍手を送った。次の瞬間、その拍手を送った人たちは何を祈ったのですか。スペースシャトル・チャレンジャー号のあの打ち上げ成功の喜びと次の瞬間の世界の人々の思いはどうだったか、ひとつ大臣認識を聞いておきます。非常に答えが難しい、いや、答えにくい、そうじゃないのです。すべての人は、命だけは助かってほしい、人の生命を大切にしなければいけないということを神に皆祈ったわけなんです。私は、決してこの宇宙開発を平和的利用に――それはまあいろいろ議論を重ねた上で慎重に対応していくべきである、そういうことを強く持っているものですから。  時間が来ました。私はこれ以上の質問は終えますけれども、今申し上げたような私の質疑を通しての考え方をひとつ有効にお使いいただければ、この質疑は私なりに政府に対して一定の見解を添えることができた、こういうふうに思って、とりあえずこの協定に関する質問は終えます。
  83. 相沢英之

    相沢委員長 渡部一郎君。
  84. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 まず、大臣の御就任に対しましてお祝いを申し上げたいと存じます。したがいまして、きょうの質問はお祝いの質問みたいなものでございますので、よろしくお願いいたします。  私は、当外務委員会に所属することは、御在籍の皆様方の中で一番長いものですから、多少昔の歴史を回顧して恐縮なのでございますが、外務委員会における昭和四十九年二月二十日、当時大平国務大臣と私との間で論戦が何回も繰り返されまして、いわゆる憲法の上に規定されておりまする七十三条三号に基づく国会承認を経るべき条約の範囲について、またその他の国際的約束のうち、一定のものについて国会に報告すべきではないかという二点につき長い間の論戦をいたしたわけでございまして、この日それについての見解が発表された日でございまして、条約の取り扱いについての一つの公式としてその後確定したものと理解しているわけでございます。  ところが、今回の法案の処理に当たりまして、この規定に反するところがあるのではないかというのが私の不快の一因であります。すなわち、この最後のところに書かれておりますように、  行政取りきめであっても、国会承認条約締結するに際して補足的に合意された当該条約の実施、運用あるいは細目に関する取りきめについては、政府は、国会条約審議権尊重のたてまえから、当該条約国会審議にあたっては、従来から、国会に参考としてこれを提出してきております。政府としては、今後は、この趣旨を一そう徹底させ、条約自体について国会承認が得られた後に結ばれた同種の行政取りきめについても、当該条約承認した国会として、その条約がどのように実施あるいは運用されているかを把握しておく上で必要と思われる重要なものは、締結後できる限りすみやかに外務委員会に資料を提出することといたしたいと存じます。 こうあるわけであります。これは審議するに当たって必要な取り決めについては当委員会に全部提出するということを約束したものであります。  また、この国会承認条約のカテゴリーが挙げられておるわけでございますが、そのカテゴリーの中に、「いわゆる法律事項を含む国際約束」と、それからもう一つは、「財政事項を含む国際約束も国会承認条約に該当いたします。」と明示されているわけであります。ここはよく御存じのことと思います。したがいまして、この宇宙基地に関連する条約は、巨大な、大きな財政支出を伴うものでありますから、本委員会に正式に提出されるというのは、この扱いからいっても当然のことと存じますが、先ほど申し述べた必要な取り決めを全部提示するという意味では非常に手おくれあるいは遅々たるものでございまして、要求されてやっと出すというような不快な状況が続いたわけでございまして、初めから謝られそうな気配があるので、謝られてしまえばそれ以上言えませんけれども、いけないのではないかなと思っておるわけであります。  ですから、その辺の見識を承りたいと思っておるわけでございますが、まず原則的に、担当官はどうお考えでございますか、お答えいただきたい。
  85. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 まず、先生の御質問の実態面につきまして、私から若干御説明申し上げたいと思います。  この協定は、協定本体協定にくっついている附属書と、それからこの協定を実施しますいわゆる了解覚書、メモランダム・オブ・アンダースタンディング、この二つから構成されておるわけでございまして、国会に御承認の対象として御提出申し上げましたのは、協定附属書、それからMOUの方は、この協定の細目実施ということで参考書類として御提出申し上げた、こういうことでございます。  協定本体附属書、それからMOU、この協定に関します限りの書類はこれで全体を構成しているのではないか、こういうふうに私どもは理解しておるわけでございます。     〔委員長退席、中村(正三郎)委員長代理着席〕
  86. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 六十三年四月二日、毎日新聞のニュースによれば、本協定と別に交換書簡があり、国防総省がこのモジュールを使うことについて道をあけている由の報道が行われました。前委員会質疑の途中でようやく配付されました米国のリチャード・J・スミス国務省首席次官補代理と我が国の楠本祐一科学課長との間の交換書簡は、その記事が報道された内容と全く合致するものを含んでおり、一年前にさかのぼってこのようなものが打ち合わせされていたにもかかわらず、また本協定の審議において、私どもが注目すべき議論の中で、基地の平和的利用の問題について協議をしている真っ最中に、そのような文書が提出されないで審議の途中にまで至ったということは、甚だ不穏当そのものではないかと思いますが、いかがお考えでございますか。
  87. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 先生指摘のリチャード・スミス次官補代理と科学課長との間の交換書簡の点につきまして、ごく簡単に御説明申し上げたいと思います。  実は、この交換書簡は、平和利用に関して――平和利用とは何ぞや云々ということに関してでございますけれども、この平和利用につきましては、協定の交渉過程でも、アメリカ解釈、それから日本の適用及び解釈、ヨーロッパあるいはカナダ、それぞれの立場がございまして、このそれぞれの立場を一体どういうふうに調整しながら宇宙基地を組み立てていこうか、こういうことでいろいろ議論が行われたわけでございますけれども、結果として、それぞれの立場はそれぞれが尊重しながらやっていこうじゃないか。つまり日本実験棟につきましては、日本の平和利用解釈、適用でいく、アメリカについてはしかり、ヨーロッパについてはしかり、こういうことで言葉は余りよくないかと思いますけれども、すみ分け論というか切り分け論というか、そういうことで対処をしたわけでございます。  今御指摘の書簡は、こういったような解釈、つまりこれは協定で申しますと、九条の八項の(b)というところに書いてございますけれども、この協定の中身を念のために日米双方の交渉者の間で書簡で交換し合ったということで、これは全く何ら創設的なものではなく、全く念のため、こういうことで当初は国会に御提出申し上げなかったわけでございますけれども、先般の御要請もあり、たしか五月の中旬だったと思いますけれども、御提出申し上げたわけでございまして、この交換書簡の中身というのは、そういうふうな全く確認規定というか念のためのものでございまして、そういうふうなことで処理をさせていただいたわけでございます。
  88. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 米国側から国防総省がこの宇宙基地利用できるようにしてほしいという要求が交渉の当初からあり、この協定の本文の中に国防総省の利用の条項を織り込むように強く要求されたという事実がありますか。
  89. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 アメリカ側の、この宇宙基地というものにつきまして国防総省の利用の道を閉ざさないでくれ、もっとも今は何ら計画はないのでございますけれども、利用の道だけは置いといてくれという点につきましての関心があったのは、御指摘のとおりでございます。
  90. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 国防総省がこの宇宙基地利用あるいは宇宙基地の中でできた果実を利用できる余地を残しておかないと協定は成立しないという見通しを、日本及びヨーロッパの交渉者がこれを持った上で、日本及びヨーロッパはおのおのアメリカとの間で楠本交換書簡のようなものを結ぶ経緯になったと理解してよろしいでしょうか。
  91. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 今先生指摘のとおり、同様の書簡がアメリカからヨーロッパ、それからカナダ、日本に発出されておりますことからも想像されますように、アメリカがこの問題につきまして非常な関心を持っていたということは、そのとおりでございます。しからば、この書簡、こういったようなことが盛り込まれない限り協定ができなかったかどうかということにつきましては、何ともちょっと予想の域を出ないのでございますけれども、あえて推測いたしますれば、あるいはそうであったかもわからないというふうな感じもしておりますが、これはそういう事態にならなかったわけでございまして、全く私の推測の域を出てないわけでございます。
  92. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 この協定の第一条には、この基地の性格に対して、「国際法に従って」というのが一つ、「平和的目的のために」が一つ、「常時有人の民生用」という言葉を冠して、この三つの規定を加え、それに加えて各実験棟の中における平和に関するデシジョンは各国政府が行うという四つのあれを踏まえ、またその上に加えて、今後の運用については協議する機関を置くことを決めているわけですから、五つの縛りがかかっておる。その意味で、日本側の交渉者は本当によく粘ったし頑張ったと私は敬意を表しているし、褒めてもいるわけであります。しかしながら、この交換書簡の意味しているところは、この五つの縛りをしながら、なおかつアメリカ側が国防総省の利用あるいは果実の利用について粘り強く交渉したことを示すわけであって、彼らの道をちゃんと開いたというふうに見えるわけでありまして、これは日本側の持つ宇宙平和利用の原則と甚だ背馳するものであると言わざるを得ないのであります。したがって、アメリカ側が何でこんなに強硬に主張したのか、アメリカはこれで何をしようとしているのか、そこは交渉の途上で確かめられたと思いますが、どうなっておるんですか。
  93. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 先生、今御指摘のとおり、この協定には国際法、民生、平和目的あるいは運営、運営組織、このようなことで幾つかの縛りがかけられておるわけでございますが、なぜアメリカ側がこれほどまでにこの点につきまして固執したのかという点につきましては、やはりこの宇宙基地に対しましては約四兆円のうち三兆円ぐらいをアメリカが投資する、こういうこともあり、国防総省の利用の余地だけは残しておいてくれ、こういう関心があったわけでございます。  しからば具体的な計画が今あるのかという点でございますが、これは繰り返しアメリカに聞きましたし、アメリカ側も言っておりますところは、目下のところそういった計画はない、それからもう一つは、それであるがゆえに宇宙基地の建設に当たりましてこういうふうにしてくれという注文も要求もアメリカ国防省は出していない、こういうことで、また理論的可能性としての道は残しておいてくれ、こういうようなことにつきましては、かなりというか非常に強い関心があったのは、御指摘のとおりでございます。
  94. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 この協定は、もう一つ奇妙なのは、国会への提出が相当におくれたということであります。了解覚書、ここに提出されていないもう一つ了解覚書によれば、六月二十四日付で予備設計に関する日米協定の時間が切れてしまうということだそうでございます。もう審議がしにくくてしようがない、中身がどうなっているかわからないで手探りでやっているのですから。ところがそのときに、設計には普通四つの段階があるのでありますが、Aが概念設計、Bが基本設計であります。その基本設計の段階まで、この六月二十四日までに恐らく仕上げることになろうかと思います。そうすると、いよいよ具体的な設計や運営設計の段階に到達するわけでございますが、六月二十四日までに通らないと、この協定はほとんど意味がなくなるほどの大きな打撃を受ける。また宇宙開発事業団の非公式な説明によれば、四百人の研究者はその間仕事がなくてぽかんと空いてしまうということだそうであります。何で昨年の九月、十月の段階で国会にこの協定を提出されなかったのか。三千億円余の費用を出すわけです。三千億円の費用を出すのに、早く協定を出さなければならないのがわかっているのに、それを後ろに延ばして、しかも本国会のような他の案件でもう大もめになっているところの最終段階に突っ込んでくる。しかも自民党は日切れ法案にしようとしない。大臣よく御存じでしょうけれども、日切れ法案として突っ込んできたのがあるのに、その中にも入れてこない。国会最終末の打ち合わせの段階の法案にも入れなかったのですね。だから通るか通らぬかわからない。  私は今法案の賛否を言っているわけではありません。この政府の、政府というよりむしろ自民党のやり方ですね、甚だ奇妙なやり方と言わざるを得ません。これは生殺しにして絞め殺すための国会戦略であるとしか言いようがない。つまりこのやり方は、宇宙開発事業というものを暗黙のうちにつぶす、宇宙開発事業団に打撃を与えるために頑張っているとしか見えない。私は、大所高所が狂っていて、そのためにきょうのこの法案審議などが急がされる状況にあるということは見るにたえぬ醜態であると言わなければならないと思う。  さて、この点はどういうふうに御理解されておられるのか、これは答弁者がいないかもしれないが、だれか適当な方が答弁してください。
  95. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 政府の方だけにつきまして答弁申し上げますと、実はこの協定を調印いたしましたのは去年の九月二十九日でございます。このMOUを調印しましたのはことしの三月でございますけれども、交渉自身は実は九月の前後に終わっていたわけでございます。それではなぜ九月二十九日に署名した協定国会に提出しなかったのかということでございますけれども、たしか私の記憶でございますと、去年の臨時国会は七月から開催されておったわけでございますけれども、その臨時国会のほぼ終盤近い九月二十九日以降の時点において国会に御承認お願いするのはいかがかと思ったのがあれでございまして、こういうふうな大きな協定につきましては、ぜひ通常国会でもって御審議いただきたいと思って、この通常国会に御審議をお願いしておるわけでございます。なぜ急がすかと申し上げますと、これは私が申し上げるよりか国会の方の御審議の御都合で、ぜひともよろしくお願いしたいと思います。
  96. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 つまりリクルート事件がかかったために遠慮して出さなかったということが言えます。そしてこの十二月にまた出せばいいのに、大臣、そのときにはた出し損なって、最初に出せばいいものを一番後ろにくっつけて出したので、法案審議の序列がございまして、後ろの方になってしまう。簡単に言うとつぶれかかっているわけなんです。三千億出した意味合いが物すごく失われてしまった。つまり法案の賛否よりも、この法案の出し方が悪過ぎるために、これは意味が多大に減殺され、何千億という金が効果を極めて発揮しない状況になる。アメリカ日本との間の科学技術者同士、NASAとNASDAの間の技術者同士は相互不信に取りつかれておるというような状況まで招いたわけであります。これは連携が悪いというのか国会対策がだめというか、リクルート事件のせいというか、いろいろな言い方があると思いますけれども、こういうことで日本基盤産業の一つになるであろう宇宙開発事業というものが取り扱われるということは打撃がひど過ぎると思うのでございますが、ここは大臣の御見識をお尋ねするのがよかろうと思いますので、一言お願いします。
  97. 三塚博

    三塚国務大臣 私も突然六月二日の宇野内閣発足に伴いまして拝命をいたしたわけでございまして、最初の幹部打ち合わせの中で、本法案が極めて重要な法案でありますが、国会の協議の中で後順位になってしまいましたと、渡部先生指摘のような報告でありました。  しかし、さはさりながら、それだけ重要なものであれば、外務省挙げてお願いを申し上げる、各党の御理解を得る努力をする以外になかろう、こういうことを申し合わせをいたしましてスタートを切らさせていただきまして、実は私も、党の三役、特に国対委員長にも本件についてぜひ優先順位を上げていただいて、各党合意した分プラス一、こういうことでお取り組み賜れぬだろうか、この点は実はお願いを申し上げたところであります。さらに各党の国対委員長、国対関係者にも外務省政府委員室がそれぞれお願いを申し上げておるということでありますが、さようなことでありますので、不手際といいますか、進め方に大変徹底を欠いたといいますか、ちょっと表現しにくいのでありますが、大変残念であります。  しかしながら、先生指摘のように、重要なことについては間違いございませんものでありますから、何とぞ格段の御理解の中で御審議を賜りますようにお願いしたいと思います。
  98. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 自民党の方にとっても甚だ残念でございましょうが、この法案の前途は真っ暗であります。よほどのことがない限りは通らぬということを予言しておきますし、その責任は自民党の理事側並びに議運にあるということをちゃんと申し上げておきたいと私は思いますが、これは変な恨み方をされてもどうしようもない。要するに、この重要性を全く理解しない愚かさというもの、リクルート事件に意識を奪われたショックがこうなってきた。それは宇宙開発についてもう釈明のしようがないだろうと僕は思います。  この辺はうんと毒づいておきまして、さて、先ほどの問題に戻るわけでありますが、この交換書簡の内容によれば、もう一回改めて聞きますよ、ここがこちら側としては大問題だったのですが。米側の立場は、書簡から拝見する限り、日本側の平和に対する考え方と違うものであるということをお認めになるかお認めにならないか。これはもう明らかに認めざるを得ないと思います。立場が違います。そうすると、米側のモジュールの中で行われる研究は、日本側の平和原則から見てひっかかるものがあると認めるか認めないか。そこだけイエスかノーかで言ってください。
  99. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 先生の御指摘でございますが、確かに今御指摘のように、アメリカの平和利用とは何ぞや、それから日本の平和利用に対する解釈、適用とに差があるのはそのとおりでございます。したがいまして、日本モジュールにつきましては、日本の平和利用解釈を貫徹していく、アメリカ側につきましては、そのとおりということで、したがいまして、差があり得るということは、そのとおりでございます。
  100. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 したがいまして、はっきり言えば、米側のモジュールの中には、日本側が容認できないような平和原則に基づく研究が行われる可能性があるということを間接的に言われたんだと存じます。うなずいておられる様子ですから……。
  101. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 日本側が容認できないという言葉では必ずしもなくて、日本側とは違うことが行われ得るということは、そのとおりだろうと思います。
  102. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 その辺でもう勘弁しましょうか。明らかにこの問題は、そういう意味我が国国民としては甚だ不本意な分野が発生しておるということは事実でありますし、そのための討議はもう少し長時間をかけて、当委員会なり国民の前で討議しないと、後々に禍根を残すのではないかと私は訴えておきたいと存じます。  今度は大臣に伺います。これは余り難しいことを、外交的な煩瑣なことを言っているわけではございませんが、日本の宇宙開発技術というものは、この間国際水準からますますおくれ始めております。例えばロケットの商業打ち上げというのは、欧米だけではなくて、最近中国よりもおくれるようになったわけでございまして、日本の提供する商業ロケット打ち上げというのは行われておりません。また人工衛星は、日本のNASDAから人工衛星を他国に販売したという経緯は聞いていないわけであります。  事前に伺いましたところでは、その最大のガンというのは、予算にいたしまして米国の四十分の一、欧州の四分の一の予算ということでございまして、この四十分の一とか四分の一というのはもう話にならぬわけであります。特に中国の場合は、日本との為替の交換比率を考えますと、これも十倍以上の落差がございますから、これも四十倍、百倍というようなレベルの差がございます。そうすると、これは実際上は、いかに科学技術日本でございましても、宇宙開発事業のところは穴があいてしまいまして、何のフルーツもそこからは得られないという状況になってくるわけであります。これは私は我が国の中の最大の失敗と思う。     〔中村(正三郎)委員長代理退席、委員長着席〕  大臣、もう一つエラーがある。それは中国では宇宙省というのをつくってしまっているのですね。宇宙省というのをつくって、関係レベルを全部一本化して、今開発に進んでいるわけであります。これは背後に、将来ミサイル部隊とか宇宙軍とかにつながる構想もあるのかもしれませんが、宇宙省として機構を統一したために非常にスピードが速かったことがわかっております。  アメリカは、御承知NASAによってこの宇宙開発関係を統括いたしておりまして、この権限は交渉せられた科学技術庁の諸君がため息をつくほど、機構、システムその他全部整備されておりまして、一つの国家に匹敵するほどの交渉能力まで持っているわけであります。  ヨーロッパでは、我が国で言うところの局同士の連合体がつくられておりまして、宇宙連合のごときものを形成しておりまして、交渉の当事者として出てきたのは御承知のとおりであります。  ところが、我が国の方ですが、衛星だけ通じましても、気象衛星は科学技術庁、通信衛星は郵政省、探査衛星は通産省、衛星一つの小さな豆みたいのを三つの省がひったくり合いまして、どこに予算をつけて、どこが打ち上げるかけんかをする。もう本当に話のほかというか笑い話のたぐいであります。宇宙開発はやらぬぞというニュアンスが濃厚であります。  しかも、今回の宇宙基地の関連予算というのは、現在三百億レベルで拠出しなければならない。それからこれの維持運営安のためにも三百億ぐらい出さなければいけない。六百億要るわけですね。ところが宇宙関係予算全部合わせて千二百億という大枠が決まってまして、そこに食い込んでくる。この宇宙基地を打ち上げると半分なくなってしまうのですね。宇宙基地を打ち上げると、科学技術開発の予算が宇宙関係半分になり、全体の方にさらに大きなしわ寄せがいくのは当たり前なのですね。これは四畳半か三畳に住んでいて、キャデラックを買って、BMWをもう一つ買ったみたいな騒ぎになる。もう住んでいる場所がない。買う油がない、車庫がない、車庫の下に住むかというような状況になる。恐るべきものをこれは意味している。担当大臣とは言いませんが、国務大臣として、このような珍妙きわまる予算を組み立てて本条約を出すことの意味がどこにあるのかと私は言いたい。本当は予算委員会でやりたかったのですが、リクルートで手いっぱいだから、質問がはみ出しました。これは我が国としてみっともないです、大臣。実力大臣と言われる三塚さんに、私はぜひ根本的に筋の引き方をやり直してもらいたい。そうしなければ審議に値しない。法律もがたがたに穴があいているが、審議に値しないような予算措置からシステム措置からめちゃくちゃな宇宙開発関係、何を考えているのか。どんと出てきて、審議してくれったって、ごみために手を突っ込んで飯をつくれというのと同じじゃありませんか。過激な言辞を弄したことについては、人柄の悪さに免じてお許しをちょうだいしたいと存じますが、もう見るに見かねて短い時間で一言申し上げますが、御見識を承りたいし、今後の御努力をお願いしたいと存じます。
  103. 三塚博

    三塚国務大臣 ただいまの渡部先生の御指摘、私も一々納得のいくところでございまして、財政再建、シーリングという中で決められた枠がそこにあるわけひございますが、そういう中で苦悩いたしておるのも現実であります。同時にビューロクラシーが、総合行政、つとに国会サイドから毎回の審議で要求されながら、依然としてその縦割りが調整でき得ないという、この辺にも大きな問題があるということを、中国が宇宙省ということの中で物事を進めているということを承るに至りまして、痛切に感ずるところであります。今後、本問題を、予算概算要求が八月にあるわけでありますが、本日の御質疑政府と党との会議の中で御提示を申し上げなければならぬのかなと思っております。  それともう一つ、この機会に、衛星が優先してスーパー三〇一で受けたわけでありますが、その辺の一つの危惧感が、宇宙工業衛星分野、航空機分野まで日本のハイテク産業によって侵犯されるのではないかという懸念がそこに表明されて、経済摩擦となってきていることも事実のようであります。そういう中で、こういう共同研究の分野で進めるのが、民生用という我が国立場を強く貫くことによって前進をするならば非常にいい成果が得られる。同時に、先生指摘のように、三省も競い合うということではなく、多目的な衛星という意味で、御指摘は全く当を得ていることでございますので、四畳半がやむを得ないとすれば、四畳半に入るような工夫と努力をいたしまして、その方向に向けてどこまで前進できますか、一歩でも二歩でも前進できるように努力をしてまいらなければならぬと思っておるところであります。
  104. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 終わります。
  105. 相沢英之

    相沢委員長 次に、神崎武法君。
  106. 神崎武法

    ○神崎委員 前回に引き続きまして、宇宙基地協定についてお尋ねをいたします。  まず、宇宙基地の定義につきまして本協定の第一条第三項で述べておりますけれども、この宇宙基地宇宙基地複合体である。本体とプラットホーム、それから有人支援型自由飛行実験室、これは有人支援型のフリーフライヤーというのでしょうか、それから宇宙基地専用の地上要素の複合体である、そういう定義をしておるところでございます。この地上要素を除いて考えてみますと、本協定に言う宇宙基地は幾つかの宇宙物体を組み合わせて、一つの単位としてまとめて宇宙基地と呼んでいるようでございます。  そこで、この宇宙基地理解、頭の整理としてお尋ねしたいわけでございますけれども、船で例えますと、この宇宙基地は全体として一隻の船と考えていいのか、あるいはこれは一隻の船ではなくて船団である、こういう理解をするのか。飛行機で言えば、一機の飛行機か編隊なのか、こういうことになろうかと思いますけれども、まず頭の整理として、その点をお尋ねしたい。
  107. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 先生の御質問に対しまして、まず結論を先に申し上げますと、恐らく形としましては船団ではないかなという感じがいたします。と申しますのは、法律的にも、例えば日本モジュール実験棟アメリカ実験棟、いろいろな要素がございますけれども、それはそれぞれ人工衛星としまして宇宙物体登録条約によって登録することになっておりますので、それぞれが、アメリカ日本、カナダあるいはヨーロッパと登録することになりますので、一個の船団ではありますけれども、それぞれの船というふうに理解した方が実体に近いのではないかと思っております。
  108. 神崎武法

    ○神崎委員 そういたしますと、本体についても実験棟とか居住棟、いろいろ分かれておりますね。それぞれが一個の船である。本体についても一個の船ではなく船団である、そういう理解でよろしいでしょうか。
  109. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 本体につきまして、今先生の御指摘のような御理解でよろしいかと思います。
  110. 神崎武法

    ○神崎委員 そういたしますと、この協定第二条第一項で「宇宙基地は、国際法に従って開発し、運用し、及び利用する。」このようにございますが、この点との関連でお尋ねをいたしたいわけでございますけれども、国際法、これまでの宇宙関係の諸条約を見ますと、これは一個一個の宇宙物体を対象としているものでございまして、船団のような宇宙物体の複合集団である宇宙基地を従来の宇宙条約によってカバーすることはごきないのじゃないか、このように考えるわけでございます。  ところがこの二条一項では、宇宙条約、「国際法に従って開発し、運用し、及び利用する。」これはどういう関係になるのか、その点についてお尋ねしたい。
  111. 丹波實

    丹波政府委員 お答え申し上げます。  遠藤官房審議官の答弁にもございましたけれども、宇宙登録条約に従いまして、各参加主体が、自己が提供する要素を宇宙物体として登録するということになっておりまして、現在存在いたします宇宙関係条約上は、それぞれ登録されたものが法的には一つの法適用の対象ということで考え方が整理されているのじゃないかと思います。
  112. 神崎武法

    ○神崎委員 一つ一つの要素につきまして登録をされている。その意味では、一つ実験棟についても一個の船だ、そのように見ていると思うのですけれども、船団としての宇宙基地全体について国際法が適用されるというふうになるのか、適用ではなくて、準用というのですか、どういう関係でしょうか。そこのところを伺っているわけです。
  113. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 先生指摘の一個一個の船なんでございますけれども、船団を組んでいるわけでございまして、したがいまして、船と船との間の諸関係というものをどうやって規制するかというのが実はこの協定でございまして、今までの宇宙に関します国際法というのは、まだかなり未発達でございまして、この宇宙協定が恐らく将来に向かっての国際法体系のこういったような船団というような形での宇宙物体間の連係関係を規制する一つの先例になるのかなという感じもしないわけではございません。
  114. 神崎武法

    ○神崎委員 そうしますと、その「開発し、運用し、及び利用する。」という意味なんですけれども、宇宙条約に従って、宇宙条約が直ちに宇宙基地に適用されるわけではない。しかし、例えばここに挙がっている宇宙条約に従って開発し、運用がされる。いわゆる適用はされないけれども、国際法に準じて運用される、利用される、こういうことになるのでしょうか。それとも個々の宇宙物体について国際条約が適用されるのだから、この全体についても適用されるのだ、こういう解釈のお立場をとっているのか、その点どうなんでしょうか。
  115. 丹波實

    丹波政府委員 これは例えば了解覚書の第六条、二十六ページですけれども、「それぞれの責任」ということが書かれておりまして、各参加主体が自分の提供したものについては、これこれの責任を持って開発運用利用しようという規定がございますけれども、そういうところにあらわれておりますように、やはり先ほど私が申し上げた個々の一応切り離された考え方に立ってできているのではないか。他方、全体の運用というものについては、連係プレーをこの協定で定めているというのが考え方だろうと思います。したがいまして、宇宙基地全体として一つのものが一定の法体系の対象になるというふうには、あるいは例外はどこかにあるのかもしれませんが、全体としてはそういうふうになっていないのではないかと思います。
  116. 神崎武法

    ○神崎委員 次に、本協定参加主体米国あるいは日本等の国家になっておりますね、協力機関もございますけれども。国の責任で研究開発した宇宙技術の成果、これが将来商業用に利用されるということが十二分に考えられると思うのですが、その場合に国内法でどういう規制を考えるかという点でございます。  宇宙基地の実験によって得られましたデータが解析されて第三者に売られる、あるいはいろいろな形で宇宙開発の商業化、こういう時代が宇宙基地協定の実施によりましてこれから到来すると思うわけでございますけれども、国が公の金を投入して開発をした宇宙技術、これが特定の企業のみに、その利益に使われることのないように、そういう国内法の整備というのですか、これは当然必要だと思いますけれども、その点についてはどうお考えでしょうか。
  117. 吉村晴光

    ○吉村(晴)政府委員 お答え申し上げます。  国が投入をして研究をいたしましたその成果につきましては、私どもとしましては、できる限りその成果を広く公表する、公表することによって皆様方関係者利用に供するというがの基本的考え方でございますが、特許等にかかわるものにつきましては、国の財産の保護という点から適正な料金をいただくという建前でございます。  宇宙基地実験棟をつくります場合も全く同じような考え方になるかと思いますが、今お尋ねの、宇宙基地実験棟そのものを使っていろいろな方が実験をされる、その結果の成果についてどう扱うかということかと存じますが、それにつきましては、宇宙開発事業団の施設を使っていただくときには当然利用料金を取ることになるかと思いますが、利用料金を払って使われる方につきましては、知的所有権は原則的にはそういった方のもとに属するということになるわけでございます。したがいまして、私どもとしてやるべきことは、特定の方だけがそういったものを利用するという結果にならないように、できるだけ広い範囲で宇宙の実験棟を使っていただけるようにいろいろなことを考えるのが必要かと思うわけでございます。そういったことのためには、現在の宇宙開発事業団のそういう成果の利用の考え方と同じ考え方になるわけでございまして、格別何らかの法制がなければそういうことが進まないというものでもないというふうに思っているわけでございまして、考え方としましては、特定の方に偏らず、産学官に広範に利用していただけるような、そういうシステムをつくり上げたいということでございます。
  118. 神崎武法

    ○神崎委員 今おっしゃられたように、二つの場合があろうかと思うわけですね。日本実験棟あるいは米国実験棟日本の企業が使って成果を得る場合と、宇宙基地そのものの研究利用によって生まれた成果を特定の企業が使う、そういう二つの場合があると思うわけでございます。  その前の部分、特定の日本人あるいは民間企業が宇宙基地利用要素利用した場合のことについてちょっとお尋ねをしたいと思うわけでございますが、例えば日本人、企業でも個人でもいいわけですけれども、NASAと契約を結んで宇宙基地米国実験棟利用した場合と、この日本人が宇宙開発事業団と契約を結んで日本実験棟利用した場合で、これは本協定解釈上、知的所有権の帰属をめぐって異なった扱いになるように思われるわけでございます。  刑事裁判権についてもいろいろ問題が出てくると思うのですけれども、刑事裁判権でお尋ねをいたしますと、この日本人が米国実験棟で犯罪を犯した場合は、協定二十二条一項によりまして米国も刑事裁判権を持つことになるわけでございます。同時に、日本人でございますから日本も刑事裁判権を持つということになろうかと思いますけれども、そうなりますと、刑事裁判権が競合するということになると思いますけれども、その場合はどういうことになるわけでしょうか。
  119. 丹波實

    丹波政府委員 お答え申し上げます。  二十二条の刑事裁判権の二項の後段が扱っております管轄権の問題は、例えば日本人が米国の要素以外のところで行われたところの問題を扱っているわけですが、今の先生の御提起の問題は、日本人が米国提供の実験棟の中で犯罪を犯した場合の状況でございますけれども、これは二十二条の一項からいたしまして、まさに刑事裁判管轄権がダブる状況でございます。     〔委員長退席、浜田(卓)委員長代理着席〕  このときの調整をどうするかという点につきましては、協定上は何ら規定しておりませんで、したがいまして、この場合は日本アメリカが協議して裁判管轄権の振り分けを行うということになろうかと思いますが、同時に、先生も御専門でございますけれども、日本として可罰できるのは国外犯でございますので、そういう国外犯の規定が及ばないような犯罪であって、しかしアメリカの法が及ぶということであれば、裁判は恐らくアメリカがとると思いますけれども、それは一つの例でございまして、いずれにしても、日米がケース・バイ・ケースで協議して管轄権の振り分けを行うというのがこの協定の考え方であろうと思います。
  120. 神崎武法

    ○神崎委員 今の国内犯、国外犯の考え方ですけれども、そうしますと、日本実験棟日本人が犯罪を犯した場合、この実験棟日本の領土とこれはみなすということですか。要するに、日本の国内犯ということになるのか、日本人の国外犯ということになるのか。この点はどうなんですか。
  121. 丹波實

    丹波政府委員 お答え申し上げます。  刑法の適用上、もし協定日本実験棟日本の領域とみなすというような規定が置かれてあれば、そういうことになりますけれども、そういう規定はございませんので、先ほどちょっと申し上げましたように、日本の刑法の国外犯の規定がそういう日本人には適用になるということでございます。
  122. 神崎武法

    ○神崎委員 知的所有権でお尋ねいたします。  本協定は、知的所有権につきましては、法律の適用関係だげ規定しておりまして、知的所有権の帰属については全く定めを置いてないように思うわけでございます。  日本アメリカを例にとりますと、特許についての考え方が全く違います。日本の場合は、先願主義ということですから、出願が早いか遅いか、その前後で特許権の帰属が決まってしまうわけです。ところがアメリカの場合は、先発明主義というのですか、発明を先にやったか後でやったか、発明の前後で決まってしまう。日本の場合は出願、アメリカの場合は発明の前後ということで食い違いが出てくるわけでございますけれども、そうなりますと、アメリカ実験棟で発明が行われたか、あるいは日本実験棟で行われたのかということで、当然これは知的所有権の帰属について差が出てくるように思うわけでございます。  日本の企業が宇宙開発事業団と契約をして、同じ宇宙基地日本実験棟利用して発明を行った場合と、アメリカNASAと契約をして、アメリカ実験棟利用して発明を行った、そこで違いが出てくるだろうと思うわけでございますけれども、その点について、仮にアメリカ実験棟日本人が発明を行った。これはアメリカに出願をしないと、今の特許の運用上はアメリカでは出願できなくなるのですかね。ですから、アメリカ実験棟で発明をした、この方が早くなるのです。日本実験棟で発明をしてアメリカに出願する場合には、ちゃんとアメリカの方に出願をした日が発明の日になるわけです。そうしますと、そこで差が出てくるように思うのですが、その点はどうでしょうか。
  123. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 私は特許関係は詳しくないのでございますけれども、協定の立て方に関します限り、全く先生の御指摘のような、いわゆる日本実験棟日本の人が発明をした場合と、日本の人がNASAとの契約なりなんなりでアメリカ実験棟で発明が行われた場合の取り扱いというのは、違うことになるケースもあろうかと思います。  その場合、ではどうするのだという点につきましては、これはそもそも日本の先願主義とアメリカの先発明主義とのコンフリクトの問題であって、今特許関係でも、このハーモニゼーションの問題が論議されると承知しておりますけれども、こういったような一連のことの中で、結局やはり協議によって解決していく以外に方法はないのではないかなと思っております。
  124. 神崎武法

    ○神崎委員 小さな宇宙基地の中で、アメリカ側と契約するか日本側と契約するかによって、同じ日本人にアメリカ法が適用される、あるいは日本法が適用される。そこの調整が十分できていなくていろいろな不利益な扱いも受けるというのでは困ったものだろうと思うのです。その点は解決されていない問題が相当残っておりますね。今後も引き続き十分関係当局と議論をしていただきたい、お願いをいたしたいと思います。  それから、先ほど渡部委員の方からもお尋ねがありましたけれども、我が国は、宇宙開発を進めるに当たりまして、国として宇宙開発をどういう方向で進めて運用していくか、これを決めた実体法がないわけなんです。諸外国では宇宙開発についての判断、決定の基準あるいは政策目標を決めた実体法があって、さらにそれを受けた手続法がある。ところが我が国にはないために、国内法の読みかえとか運用とか切り張りをしながらやっているのが現実ではないかと思うわけでございます。  我が党は既に昭和六十二年の五月十五日に宇宙開発についての基本法である宇宙開発基本法案というものを参議院に提案しているわけでございます。やはりこういう基本法の制定というものは、今後宇宙開発を進めるに当たってどうしても必要である、このように考えますけれども、その点どういうふうにお考えになっておられますか。
  125. 吉村晴光

    ○吉村(晴)政府委員 御指摘のように、我が国の宇宙開発につきまして基本的な法制ができ上がっていないわけでございますが、現在は宇宙開発委員会という場におきまして、基本方針を決め、国としての統一的な方向づけのもとに努力をしておるというのが実情でございます。  基本法につきましては、御指摘もあるところでございますけれども、私どもの認識といたしましては、宇宙開発をめぐります世界の情勢というのが極めて流動的である。私ども従来余り予想もしていなかった宇宙ステーション計画といったようなものも出てまいりましたし、また宇宙活動の商業化といった新しい局面も出てきておるということもございます。それからまた航空と宇宙を結ぶような航空機というべきか宇宙機というべきかよくわからないような、スペースプレーンといったようなものの構想も出てくるというような状況でございまして、私どもとしてもうしばらく将来の動向、方向づけにつきまして見定める必要があるのではないかということを考えておるわけでございます。  今御指摘ございました貴党からの御提案がございます宇宙開発基本法案につきましては、政府といたしましても、国会におきます議論を見守ってまいりたいと考えておるところでございます。
  126. 神崎武法

    ○神崎委員 私は、これから単に宇宙基地だけではなくて、引き続きアメリカの宇宙開発政策によりますと、月さらには火星まで及ぼうという大変大きな計画の第一歩としてこの宇宙基地があるわけでございますから、そういう将来の方向性をにらんだ宇宙開発についての基本法、我が国の基本的な考え方、取り組み、手続というものをぜひ基本法という形で制定していただきたい、すべきである、このように申し上げておきたいと思います。  時間がございませんので、今度は大きな問題でございますけれども、簡単にお尋ねをしたいと思います。  本協定で一番問題になっている「平和的目的のために」というこの点でございますけれども、私は、条約解釈としてはどうなのかという点でお尋ねしたいわけでございます。  従来から我が国は、平和的目的というのはノンミリタリーである、軍事目的のためには宇宙を使ってはならない、基本的にこういう解釈であろうかと思うわけでございますけれども、その点はそれでよろしいですか。
  127. 丹波實

    丹波政府委員 先生条約解釈というお言葉を使われましたので、まさにこの条約、この協定解釈についてまず申し上げたいと思います。  協定の第一条一項、平和目的のために国際法に従って宇宙基地開発利用を行うということを規定しておるわけですが、この平和目的の定義に関する規定はどこを見ても実はございませんで、解釈運用につきましては、各参加主体の判断の余地が残されているわけです。ただ、「国際法に従って」という言葉がございますので、それじゃ、その国際法とは何かということになるわけですが、国連憲章以下の法体系が適用になりますが、典型的には、例えば宇宙条約第四条第一文で禁止されておりますような利用を行うこと、すなわち核兵器及び他の種類の大量破壊兵器を宇宙基地に乗せて宇宙空間に配置するようなことは認められないということになろうかと思います。  日本解釈はいかんというお尋ねであれば、これは宇宙開発事業団法第一条の平和目的あるいは国会決議の平和目的、そういうことをめぐりましていろいろ議論がございましたけれども、そういう国会における論議その他を念頭に置いて対処するというのが日本立場となるということになろうかと思います。     〔浜田(卓)委員長代理退席、委員長着席〕
  128. 神崎武法

    ○神崎委員 私は、日本解釈解釈として大変いいことだと思うのですけれども、問題は、条約解釈として、この宇宙条約解釈についても、日一本の考え方が本当に国際間の解釈として通用しているのかどうか。そしてまた、本協定でも平和目的をめぐって解釈に各国によって食い違いが出てきているわけですね。そうなると、今後この平和目的をめぐって具体的にいろいろな問題が将来生じた場合に、日本日本の主張をする、しかし国際的にはそれは通用しない、そういう事態が生じないかということを懸念しているわけでございますけれども、その点についてはどうでしょうか。
  129. 丹波實

    丹波政府委員 この点はただいまも御説明申し上げましたとおり、解釈はそれぞれの参加主体に任されておるというのが第一点。第二点は、それでは参加主体間で意見が一致しているかといえば必ずしも意見は一致していない。国際法の枠内ではあるわけですが、それぞれ解釈の違いが出てきておる。しかし、協定運用するに当たって、それを調整するものとして、例えば九条八項(b)のような規定を設けて、その利用要素の運営については提供者の判断に任せるという振り分けを行って、そういう問題を解決しているというのがこの協定の建前でございます。
  130. 神崎武法

    ○神崎委員 将来いろいろな何か紛糾が起こることを懸念するわけでございますが、その意味においても、いわゆる日本解釈ができる限り貫徹できるような形で、アメリカの軍事利用の問題についても運用上ぜひとも強い歯どめをかけていただきたい、このようにお願いをいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
  131. 相沢英之

    相沢委員長 次に、林保夫君。
  132. 林保夫

    ○林(保)委員 大臣初め皆様御苦労さまでございます。  前回に引き続きまして、宇宙基地協定に関する質問を行わさせていただきますが、いろいろな議論を通じまして、まだ非常にわかりにくいところがいっぱいある。これはまさに未知の世界への挑戦でございますので、当然だとも考えられます。しかし、なおやはりしっかり聞いておかなければならぬところがございますので、数点にわたりまして事務的なお答えをまずちょうだいいたしたいと思います。  実は、新聞報道などによりますと、一月の報道と今日の報道とは宇宙基地に関する報道もかなり変わっておる。日進月歩している。あるいは財政事情、あるいは技術的な事情でやはりうまくいかなかったというような反省もいろいろ取り上げられております。それらの経過につきまして、今どういうところが一番問題なのか。これは科学技術庁の方からまずお答えいただきたいと思います。
  133. 吉村晴光

    ○吉村(晴)政府委員 宇宙基地開発スケジュールにつきましては、一番当初、一九八四年にレーガン前米国大統領が提唱されましたときは十年以内ということでございましたので、一九九四、五年ごろにはできるということを目標にしたわけでございますが、その後いろいろな見直し等が行われてきました結果、おくれを来しておるということは御指摘のとおりでございます。現時点におきましての計画は、一九九五年から宇宙基地の各部分を順次打ち上げる、日本実験棟は一九九七年に二回に分けて打ち上げる、本格的な運用開始は一九九九年ということに相なっておるわけでございます。  ここに至りますまでにいろいろな各国の事情、技術開発の進展等によりましておくれを来しておるわけでございますが、現時点におきましては、各国この目標に向かって全力を尽くしておるという状況でございます。
  134. 林保夫

    ○林(保)委員 了解覚書第五条に建設計画の里程標がございますね。あれから理解いたしますと、九八年完成のような理解になると私は思うのでございますが、それが大体一年おくれるというような意味でございましょうか。現段階でどの程度おくれているのでしょうか。言うまでもなく、日本ではいまだに六月二十四日ですか、これを目指しながらもなおここで審議しておる状況ですから、おくれているのは当然でございますけれども。
  135. 吉村晴光

    ○吉村(晴)政府委員 ちょっとはしょって申し上げましたために、誤解を与えて申しわけございませんでした。  スケジュールにございますように、有人本体の組み立ての完了は一九九八年でございまして、本格的にこれを使い始めるというのが一九九九年ということでございまして、了解覚書に書いてございます日程の確保のために各国今全力を挙げておるという状況でございます。
  136. 林保夫

    ○林(保)委員 いろいろ新聞報道なんかによりますと、米議会で予算削減の動きだとか、日本も大変な金額的な負担をしなければならぬとか、各国やはり同じだろうと思いますね。財政事情の問題をまず先にひとつ、どういうふうな懸念が出ておるのか。四兆といったような数字をみんなではじき出さなければなりませんので、その辺の苦労話で結構なんです、ひとつ聞かせていただきたいと思います。
  137. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 日本の方の苦労話につきましては、科技庁の方から御答弁いただいた方がいいかと思いますが、まず肝心のアメリカなんでございますけれども、実は、アメリカも御承知のとおりの財政難で、昨年もたしかNASAは十億ドルばかりの予算を要求して、予算審議の過程におきましては、いろいろ上がったり下がったり――上がったりというか、むしろ下がったり下がったりの方が多かったわけでございますが、結果的には去年は九億ドルの予算がついた。来年度の予算につきましては、今アメリカで審議中でございますけれども、目下NASAの方は、この宇宙基地に対しまして二十億ドルを予算要求中と承知しております。ところが、これに対しましていろいろな意見が出まして、いや、もっと下げるべきだとかなんとか意見が出て、今行政府は四苦八苦しておるようでございますけれども、私どもといたしましては、何とか行政府にぎりぎり頑張っていただいて、先ほど科技庁の吉村局長の方から申し上げましたようなスケジュールに沿って進んでいただきたい。殊にアメリカは何といいましてもこの宇宙基地の大株主といいますか、大もとでございますから、大もとに頑張っていただきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  138. 吉村晴光

    ○吉村(晴)政府委員 御指摘のとおり、日本といたしましても、この条約参加をして義務を果たしていくというために開発費だけで三千億円程度の経費が必要になるわけでございまして、まずこの宇宙基地の仲間入りをするという意思決定をいたしますときに、やはり政府部内で大変大きな議論があったわけでございます。三千億円ものお金をちゃんとスケジュールに間に合うように用意をして技術的にもちゃんとついていけるかということ、それができませんと他の国に大きな迷惑をかけるということになるわけでございますので、その点大変慎重に議論をしたわけでございますが、財政的な見地から申し上げますと、仮に開発経費三千億を十年かけて消化をしていくということになりますと、年間三百億円程度になる。そのほかにもいろいろな経費が出るかと思いますが、現在の宇宙関係政府の予算が約千五百五十億円という規模でございますので、その程度の規模の中であれば、宇宙基地参加をするということは、もちろん今後の予算の拡大の努力というのが前提でございますが、努力をすれば目標達成ができないようなハードルでもないではないかということで、今後一生懸命予算拡大の努力をしながら、この宇宙基地計画への参加日本の義務というものを果たしてまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  139. 林保夫

    ○林(保)委員 大蔵大臣がいられたら早速確約がとりたいところでございますけれども、きょうばいらっしゃいませんから、それはそれといたしまして、技術的にもいろいろ問題があるように聞いておりますが、科学技術庁、特に御担当の立場で海外及び日本でどんな問題があるか、大ざっぱに列挙していただけたらありがたいと思います。
  140. 吉村晴光

    ○吉村(晴)政府委員 技術的問題は大変たくさんございまして、列挙するのが大変でございますが、まず第一に私どもが考えておりますことは、私どもは宇宙空間でそういったことをやった経験がないということでございまして、そこに行きますまでにアメリカのスペースシャトルを使って宇宙実験をやるというステップを一つ持っておるわけでございます。そういった宇宙空間につきましては、御承知のとおり重力がございませんので、重力がない場所で人間が動いたときにどういうことになるのか、機器がどういう動きをするのかということについての基本的なデータがないわけでございますので、私どもとしましては、外国からのそういったデータを収集し、地上で模擬装置と申しましょうか、そういうものをつくりながらどういうことになるかということを一歩一歩積み上げているというところでございまして、一番難しい問題は、重力がない場というものにつきまして日本の経験が非常に少ないということでございます。
  141. 林保夫

    ○林(保)委員 専門的にはいろいろあるのでございましょうが、人の問題に限って申しましても、塔乗員八人でございますか、計画の中にあるように聞いておりますが、欧州では既にもう養成計画を始めているというふうに聞いております。日本ではどういうふうになって、まだやっていなければ、どういう計画なのか、お願いします。
  142. 吉村晴光

    ○吉村(晴)政府委員 この宇宙基地には、日本からは大体めどとしまして常時一人ぐらいの人を提供できるであろうと考えておるわけでございますが、常時一人と申しましても、年じゅう乗っているというわけではございませんで、当然ローテーションの関係がございます。それから訓練とかいろいろなことを考えますと、常時一人の宇宙飛行士を宇宙基地に乗せるというためには、やはり十数人のプール要員を持っておく必要があろうかというふうに思っておるわけでございます。現在私どもが持っております宇宙飛行士は、先ほど申し上げましたシャトルを利用した宇宙実験のための宇宙飛行士の候補者三名だけであるわけでございますから、この宇宙基地のために新たに宇宙飛行士の募集をするということが必要になるわけでございますが、宇宙飛行士の訓練期間は大体五年ぐらいを考えております。そういうことでございますので、日本人が乗るその五年ぐらい前に宇宙飛行士の選抜をする必要があるというふうに考えておるわけでございまして、ここ二、三年内にはこの宇宙基地のための宇宙飛行士の選抜を行う必要があるのではないかというふうに考えております。
  143. 林保夫

    ○林(保)委員 それから基地と地上の基地とを結ぶ関係の案がいろいろ検討されたりなんかしておりますが、現在やり得る日本の考え方、あるいはよそではどういうふうになっているのか、その現状をひとつわかりやすく御説明いただきたいと思います。
  144. 吉村晴光

    ○吉村(晴)政府委員 宇宙基地と地上を結びます基本的な手段は米国のスペースシャトルでございます。私どもも基本的にはそのシャトルを利用するということで活動を行うわけでございますが、日本につきましてもヨーロッパにつきましても、将来宇宙基地と地上を結ぶ輸送手段の開発構想を持っておるわけでございまして、日本の場合にはHⅡロケットというロケットを現在開発中でございますが、このHⅡロケットの上部に無人の宇宙往還機と申しますか、シャトルの非常に小さなもの、そういったものをつけることによりまして、宇宙基地に対します物資の輸送、それから宇宙基地からの物資の回収といったようなことが可能になるわけでございます。将来的には、シャトルを使うことを基本としながらも、日本の輸送手段というものの活用ということも考えたいというふうに思っておるわけでございます。ヨーロッパにおきましては、エルメスという、日本の無人とは違いまして有人の構想も持っておるわけでございますので、ヨーロッパにおいてもそういった日本と同じような考え方で対処しておるのではなかろうかというふうに考えております。
  145. 林保夫

    ○林(保)委員 何か新聞報道によりますと、そのHⅡロケットが開発がおくれるおそれがあるというような報道もございますし、エンジンの改良が追い込みに入っておるというが、どんな状況なんでございますか。大変憂慮されている状態なんですか。
  146. 吉村晴光

    ○吉村(晴)政府委員 HⅡロケットにつきましては、その一段の主エンジンに当たりますLE7というエンジンの開発スケジュール自体におくれが出ておるという報道があるわけでございますが、このエンジンは液体水素を燃料とするという大変難しいエンジンでございまして、スケジュール自体のおくれは事実でございます。現在私どもはできるだけおくれを取り戻そうということで、種子島での原型エンジンの燃焼試験、それから宮城県の角田の液体水素のターボポンプの試験を鋭意進めておるわけでございます。こういった試験が順調にいけば、何とかスケジュールは取り戻せるのではないかというふうに思っておるところでございまして、いずれにしましても、技術開発という非常に難しい問題でございますので、今後の試験結果に注目をしてまいりたいと考えておるところでございます。
  147. 林保夫

    ○林(保)委員 率直に宇宙開発政策大綱に入ってお聞きした方がいいのかと思いますが、基地が完成された後も増設していくとかいろいろな方法を考えられると思うのですが、今国際的にはどういうようなコンセンサスになっておるのでしょうか。最終的な規模はどのような想定あるいは夢があるのか、ひとつ率直にお答えいただきたいと思います。夢で結構でございますので。
  148. 吉村晴光

    ○吉村(晴)政府委員 現在考えられております宇宙基地そのものを達成するということ自体、大変難しい目標でございまして、現在の政府としての目標は、現在の宇宙基地の完成というところにあるわけでございますが、中長期的には、また新しい科学技術の成果を適宜取り入れながら、日本実験棟の機能の拡充を図るなど発展の可能性を検討することが非常に重要であろうかというふうに考えます。ただ、現時点におきましては、まだそこまで具体的な発展構想を考えるというところまでなっていないのが事実でございます。  先ほど、夢のお話がございましたが、夢という点で申し上げますれば、私どもがこういった宇宙基地計画に参加をして、宇宙技術をマスターしたいというふうに思っておりますのは、せめて地球周辺の宇宙におきましては、日本の技術で自由自在に動き回れるような力をつけたいということが夢でございまして、この宇宙基地に国際協力参加するのも、そういう夢を達成するための一つの手段である、そういう受けとめ方もできるのではないか、こう思う次第でございます。
  149. 林保夫

    ○林(保)委員 私ども未知の世界でございますので、あれこれけちをつければつけようもいろいろあるかと思いますけれども、それと違って、これに参加する意義を、やはりやらなきゃならぬのだということで認めながら、さらにそれからの発展を実は大きく期待したいな、このように思っているわけでございますが、宇宙基地を足がかりにして、スペースコロニーや、またスペースプレーン構想などもいろいろと報道され、また日本にもそういういろいろな対応があるように聞いておりますが、その現状について、わかりやすくひとつ、時間ございませんので、簡単に御説明いただきたいと思います。
  150. 吉村晴光

    ○吉村(晴)政府委員 新聞報道等では、スペースコロニーとかスペースプレーンといった二十一世紀の夢の話がいろいろ出ておるわけでございますが、スペースコロニーにつきましては、私どもは、まずは宇宙基地の経験を積むことが大事である、その結果を見て、将来の問題として、そういった夢についても考えられるのかなという程度でございます。それからスペースプレーン、これは地上と宇宙基地またはそのほかの宇宙の場所を、航空機と同じようなやり方で結ぶ構想でございまして、これにつきましては、現在そのための基礎的な技術の勉強を始めたというところでございまして、その夢の実現性につきましては、今後の勉強の成果次第というような状況でございます。
  151. 林保夫

    ○林(保)委員 一つだけ。スペースプレーンは、アメリカの計画と、また独自に日本でやるということで研究しておられるのですか、それとも一体となってやるということですか。
  152. 吉村晴光

    ○吉村(晴)政府委員 アメリカにおきましても、オリエントエクスプレスと申しましょうか、そういった名前でスペースプレーンのような構想があることは承知をしておりますが、まだお互いに具体的にどういうものにするということを考えているところまでいってはおりません。私どもとしましては、いずれにしましても、みずからの手でやるか、国際協力でやるかは別といたしまして、非常にキーになるような技術をみずから身につけることが将来の発展のもとであるという考え方で、まずは自分たちの力をつけるということを基本目標に、基礎的な研究に着手をしたという状況でございます。
  153. 林保夫

    ○林(保)委員 今回の新宇宙開発政策大綱、今検討の最中のように聞いておりますが、従来のとどういうふうな変わりようをしておるのか、問題はどこにあるのか、明確にお答えいただきたいと思います。
  154. 吉村晴光

    ○吉村(晴)政府委員 宇宙開発政策大綱の改定につきましては、現在審議検討中でございます。内容につきまして詳細に申し上げることは差し控えさせていただきますけれども、基本的な考え方としましては、日本の自主技術の開発を進めるということが基本でございまして、従来から進めてまいりましたHⅡロケットの開発や大型の衛星の開発といったものが、だんだん目標ははっきりしてきたわけでございますので、次のステップの問題として、宇宙基地への参加、それから宇宙環境利用有人宇宙技術の修得といった新しい目標が出てきておるわけでございます。そういったものを内容にいたしまして、それへの到達のためのプログラムと申しましょうか、そういうものの考え方を決めるという方向議論をしておるところでございます。
  155. 林保夫

    ○林(保)委員 新聞報道によりますと、「新大綱は、欧米の宇宙先進国に追いつくことを目標にしたロケットや衛星などの研究開発がようやく国際的水準に達してきたとし、宇宙往還機、宇宙基地などさらに高度な総合的宇宙システムの開発を今後の目標にあげている。」このようなことも実は報道されておりますよね。まだ決まっていないものをお役所の立場から出せないこともよくわかるのでございますが、まず一点は、欧米先進国に追いつくことを目標にというのですが、どの程度おくれているのですか。どのような御認識なんでしょうか。それをまず先に承りたいと思います。
  156. 吉村晴光

    ○吉村(晴)政府委員 欧米との格差につきましては、これは分野によって非常にばらつきがございまして、一概に言うことは非常に難しいところでございます。  一番おくれておりますのは有人でございまして、日本有人についてはまだ宇宙に行ったことがないということでございます。既にアメリカは二十年前には月に人を送ったということでございますので、これはもう格段の差があるということでございます。  それから、ロケットでございますが、ロケットにつきましてもいろんなとり方があるわけでございますが、HⅡロケットが完成をすれば、現在アメリカ、ヨーロッパが使っておりますロケットのレベルには何とかいくんではないかという程度でございます。  それから、衛星につきましてもかなりのおくれがあるわけでございますが、これにつきましても大型衛星技術の開発を進めておりますので、技術の中身につきましては、かなり追いつくことができるのではないかということでございます。  こういった状況になっておりますのも、やはり政策の基本として大型ロケット、大型衛星の開発に重点を置いて努力をしてきたという結果でございまして、その結果、有人につきましてはまだ手がついていないということで大きな格差があるわけでございますが、宇宙基地計画への参加を通じて有人の技術をできるだけ早く身につけたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  157. 林保夫

    ○林(保)委員 それで、この報道によりますと、「衛星は民間主導で」というタイトル、今大きく出ておりまして、いわゆる従来の政府助成、育成型の宇宙開発から姿勢を変えるというような感じに受け取れますが、科学技術庁の方はどのようなお考えでおられますか。
  158. 吉村晴光

    ○吉村(晴)政府委員 宇宙開発政策大綱の議論の中で、産業化と申しましょうか商業化というものをどう扱うべきかということは一つの論点であるわけでございます。  詳細、内容にわたることは差し控えさせていただきますけれども、基本的な議論方向といたしましては、やはり国というものは、一番難しいと申しましょうか、先端技術を追っかけるべきである、それによって国としての技術、自主技術を身につけるというのが基本であろう。そういたしますと、過去からいろいろ手をつけておりました技術部分につきましては、国が直接手を出さなくても民間でカバーできるものが少しずつ出てくるであろう、そういったものについてはできるだけ民間の力でこなしていただきたいものである、こういう考え方が一つあるわけでございまして、そういったものの一環として、今御指摘のような衛星の一部分につきましては、将来の方向としては、そういったことで対処すべきではなかろうかという議論が確かにございます。
  159. 林保夫

    ○林(保)委員 今のはまことに理に合ったお話だろうと思うのです。難しいところは政府がやる、あとは民間に任せるという。これはもう古今東西を通じての鉄則であろうと思いますけれども、その背景にアメリカとの関係における技術摩擦あるいは貿易摩擦との関係があるやに報道もされ、私どもも認識しておりますが、科学技術庁はその点をどのように御判断されておられますか。
  160. 吉村晴光

    ○吉村(晴)政府委員 アメリカとの衛星の扱いの関係につきましては、過去からかなりいろんな議論があるわけでございまして、アメリカの基本的な認識と申しましょうか考え方は、日本は宇宙産業を幼稚産業として防壁を設けて育成しているということをアメリカが言っておるわけでございます。  それに対しまして私どもは、日本としては、宇宙技術というのは最先端の技術であり、国際的な地位にふさわしい技術を身につけるのは当然であるという考え方で対応をしておるところでございまして、私どもは、国と民間との関係におきましては、節度ある形での民間支援、これはアメリカでもヨーロッパでも当然やっておるわけでございますが、そういったことはやるとしても、外国から非難されるような形での民間支援ということまでやるのはいかがなものかというふうに考えておりまして、大綱の議論の中でも、そういった面での誤解を与えることがないように、十分注意をして作文をする必要があろうというふうに考えております。
  161. 林保夫

    ○林(保)委員 大臣にお話を聞く前にもう一点、大綱の中ではそういうもののけじめなりルールなりをきっちりつけられますかどうか。どうも宇宙開発基本法というものがもうなければいかぬのではないか。それがないがゆえに、例えば憲法があるから日本はこうやれるんだという姿勢が明示できると思いますよね。なければ、何かこう言われっ放しになるし、そのときどきの立場あるいは主張をせざるを得ないということで、そういう政策を推進される科学技術庁さん、そのほかの関係のところもお困りになっておるのではないだろうかと思われますだけに、どういうお考えなのか。一つは、その政策大綱の中でどういうふうなルールをおつくりになるのか。
  162. 吉村晴光

    ○吉村(晴)政府委員 私どもの基本的な考え方は、宇宙開発に着手をしたときから同じでございますが、日本として自由に宇宙活動を行えるような技術を身につけるというのがすべての基本であると思っておるわけでございますが、そういう目的を達成いたしますために、具体的にどういうことをやるべきかということにつきましては、そのときどき情勢の変化に応じて対応をする必要もあるであろう。したがいまして、大綱の見直しということも大体五年ぐらいでやっておりまして、大綱ができてからの今回の見直し作業は二回目でございます。やはり五年ぐらいで見直しながら、そのときの状況に応じて考えておく必要があるだろうというふうに思っておるわけでございまして、自主技術開発という基本を据えて、周囲の情勢を見ながら適時適切に対処をしていきたいというのが基本的考え方でございます。
  163. 林保夫

    ○林(保)委員 大臣、それでは一つお聞きしたいのでございますが、今お話がありましたように、五年ごとに見直しする、そのときどきに対応するというのはあるいは楽なのかもしらぬと思いますけれども、大臣は特に日米の貿易関係では御苦労なさった体験を踏まえられまして、実はきょうもここで決議をやるに当たりましてどうかという意見がございまして、平和目的に使う、この辺には私ども大賛成なんです。と同時に、この決議の中に、日本の創意あるいは自主的な努力、そしてそれが世界に認知されるような格好の項目を一つ入れておきたいなと思いまして御相談申し上げましたけれども、きょうは皆さん反対かあるいは消極的なあれでありまして、私の意見は通らないで大変残念なんです。その辺をきっちりしておきませんと、いつまでもいつまでも、何かこう、アメリカばかりではございませんけれども、よその国と日本が、技術にしても貿易にいたしましても、抑制的な立場でやらなければならぬ。これはまことに残念なことで、そのことがいかに民間活力に影響を与えているかというのを私どもはもろに見ておりますだけに、もう少し政治がきっちりして、大臣冒頭おっしゃられましたように、しっかり言うべきことは言って、ちゃんと日本の姿勢ははっきりさせるという視点から、大臣、どのように本問題あるいはよその国との対応をなさるかという点をひとつ承っておきたいと思います。
  164. 三塚博

    三塚国務大臣 ただいま政府委員との応答を聞いておりまして、林委員の先端技術、特に宇宙科学技術に対する情熱には深く敬意を表するところであります。  日本の技術というのは、他国の基礎研究を応用の中で活用していく、こういう分野が非常に戦後多かったことは事実であります。経済大国日本に相なりましたものでございますから、そういう観点からいいますと、今日こそ基礎研究の分野に力を注いでいかなければならぬだろう。そういう意味で、この宇宙科学という問題は二十一世紀に向けての最大の分野であろうと思います。これは民間がやろうとしても、そのリスクの大きさに逡巡をして後ずさりをする分野でございますから、この分野に積極的参加を表明した我が国立場はそこにあると思いますので、その分野で共同研究、基礎研究という意味で推進をしていかなければなりませんし、同時に、独自の分野で、先ほども議論がございましたが、衛星打ち上げ等に伴う研究が行われておりますことは、後塵を拝しておる我が国の技術水準からいいまして、この分野も力を入れていかなければならぬことは当然であろうと思いますので、今後さらに予算獲得等につきましても全力を尽くすことにより取り組んでまいらなければならぬ、こう思っておるところであります。
  165. 林保夫

    ○林(保)委員 ありがとうございました。  レーガン大統領の演説を引くまでもなく、二十一世紀あるいは子や孫たちへの責任という意味からも、本条約をきっちり承認するのを契機にして、宇宙開発政策大綱そのほかもしっかりひとつやっていただきたい。そういう意味では、わからない世界をなぞっているわけですので、大変御苦労が多いと思いますが、なおかつ、きょうは外務大臣しかおられませんけれども、予算の方もそれなりの対応をしっかりやっていかなければなりませんので、そのことを祈念いたしまして、短うございましたけれども、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  166. 相沢英之

    相沢委員長 次に、松本善明君。
  167. 松本善明

    ○松本(善)委員 二十四日の質疑の際に、外務省は、この協定の平和的な目的というのは、アメリカは国際法に従って非侵略的な軍事的なことを行うことも認められておる、そういう答弁をしたわけでありますが、同時に、一九八四年のNASAのベッグス長官の我が国科学技術庁長官に対する書簡をもとにして、国防省が宇宙基地を使っていくというような具体的な計画はないということになっているわけだ、こういうふうに答弁をいたしました。  しかし、一九八八年一月二十日、レーガン大統領が米国の国家安全保障戦略で体系的な米国の国家宇宙政策を打ち出したわけでありますが、その中では、五項目ありますが、宇宙利用の軍事政策として、抑止のための重要な宇宙システムを確保する。それから宇宙の自由利用。それから宇宙システムに対する敵の攻撃を抑止をする。それから宇宙システムの効率強化ということとともに、国家安全保障と民生用の政府活動と、さらにはうまくいく場合には、商業面での宇宙計画を相互に連携させるということを掲げております。  前回も申しましたけれども、八七年にはNASAのフレッチャー長官が宇宙基地は軍も利用できるというふうに述べています。それを見ますと、本協定有人宇宙基地全体がアメリカの国家安全保障戦略の具体化されたものだというふうに見れるわけでありますが、大臣はどう考えておられますか。
  168. 丹波實

    丹波政府委員 お答え申し上げます。  この協定の交渉の過程におきまして、アメリカ側は繰り返しアメリカ国防省による宇宙基地利用の具体的な計画はないということを関係国説明いたしておりまして、ただいま松本先生読まれた大統領のステートメントも、この間御説明申し上げたことと私は矛盾がないと思いますけれども、一つは、先ほど先生も言及された、八四年四月に岩動科学技術庁長官にあてた当時のベッグス長官め書簡の中にも、国防省としては当面この宇宙基地に対する要求はないということを言っております。それから八八年三月にアメリカの国防省が議会に提出した報告書におきましても、国防省による将来の現実の使用の問題、この協定宇宙基地の使用の問題でございますけれども、問題はアメリカの全体としての宇宙あるいは宇宙関連の研究開発政策、計画の文脈の中で考えられるというような表現がございます。それから同じ報告書ですけれども、別なところでは、現在プロジェクトの特定の性格はわからない、優先度を決めることもできないということで、いずれにいたしましても、具体的な計画は現在のところないということをいろいろなところでアメリカ側が言っておるということを申し上げたつもりでございます。
  169. 松本善明

    ○松本(善)委員 そういうことを言っても世間の方は通用しないと思うのですよ。八四年から後、八六年から始まった交渉で予想以上の難航を続けたのは、やはり国防省が平和目的には国際法にのっとった安全保障目的の活動も含まれるということで参加の意思を表明したということが最大の難関だったということも報道されているし、それからSDI絡みの研究について、スペースシャトルの将来に陰りが見え始めたので、SDI計画の中心であるレーザー兵器や粒子ビーム兵器の実験用施設として、国防総省が宇宙基地に目を向けたのは当然と言える、それらの報道は幾つもあるわけですよ。あなたはそういう報道がみんなされているということを全く無視をして、八四年のものなどを根拠にしていろいろ言っていますけれども、それでは到底国民は納得をしないと私は思いますね。  レーガン大統領がスターウオーズ構想、SDI構想を明らかにしたのは一九八三年三月二十三日ですが、その翌年の一月二十五日の一般教書で本協定有人宇宙基地構想を表明したということは、レーガン政権としては、アメリカの政権としては宇宙の軍事利用を考えていたのじゃないか。前回以来の外務省説明では、非侵略的な軍事利用というのはアメリカは平和利用だと言う。そうだとすれば、SDIのための研究に使うということも非侵略的だというふうにアメリカは言っているわけですから、SDIのために利用するということも、これはあり得るということになるのではありませんか。
  170. 丹波實

    丹波政府委員 八四年の先ほどのべックス長官以来、例えば先ほど引用いたしませんでしたけれども、八七年の二月五日に国防省がやはり本件につきましてステートメントを出しておりまして、この中でも、国防省は現在このスペースステーションを使うためのスペシフィックなプランツ、こういうものを持っていないということを言っているわけでございます。  それから、SDI云々とおっしゃいましたけれども、SDIの研究にも、例えば半導体の研究とかいろいろな、恐らく何百項目、何千項目ということが含まれているのだろうと思いますけれども、例えば半導体研究といったようなものも入っておると思います。ですから、それはまさにどういう項目が研究の対象になるかということによる問題でございまして、一言でSDIと言ってくくることができるかどうかという問題が存在するのじゃないかと思います。
  171. 松本善明

    ○松本(善)委員 結局SDIに関しては、半導体その他でいわばあり得るということを認めた答弁になっていると思いますけれども、違うなら後の答弁で否定をしてください。無関係なのかどうか、無関係ではないという趣旨で私は受け取っていますけれども。  それよりさらに一歩進んで、アメリカの下院議員のミネタ議員が、この問題については国防総省は具体的な利用計画を持っているわけではないと言っているけれども、既に宇宙兵器の補給基地として利用可能かどうか検討しているし、基地を使っての戦時の指揮、管制、通信システム、いわゆるC3Iシステムですね、これに関心を持っているということを、日系の二世ですけれども、アメリカの議員が言っています。これは、そういうことがC3Iシステムについて利用するということは拒否しているというふうに言えますか。
  172. 丹波實

    丹波政府委員 先ほどの半導体云々というところをもっと正確に申し上げますと、一九八七年二月にアメリカの下院におきまして、当時のNASAの長官でありますフレッチャー長官が、宇宙基地の上で兵器の研究は可能かという質問を受けまして、レーザービームのような兵器研究は行い得ないが、NASAも行うような半導体研究のようなものは可能であるということを言っていることを私は念頭に置いて御答弁申し上げたわけでございます。  アメリカの中で、ただいまノーマン・ミネタ議員の議論が紹介されましたけれども、いろんな議論があったと思います。それから交渉中にワインバーガー長官が書簡を発出したというようなことも聞いておりますけれども、そういういろいろな議論を経ながら、しかし最終的には現在の協定のような形で決着したというのが今回の交渉であったと理解しております。
  173. 松本善明

    ○松本(善)委員 しかし、この協定でそれは拒否できるということになっているのかどうか。C3Iシステム、そういうふうには答えなかったということは、拒否できないということではないか、こう思います。違うならば後のときに訂正をしてもいいと思いますけれども。  聞いておきますが、基地を使って相手の軍事動向の監視でありますとか軍事に欠かせない気象観測、あるいは宇宙基地で研究開発された新合金が宇宙兵器に使用されるということはもちろん大いにありますし、アメリカは軍事戦略上検討しているだろうということは容易に推測できるわけですが、こういうことはこの協定では禁止されているのでしょうか。
  174. 丹波實

    丹波政府委員 宇宙分野は、私は実体問題では素人でございますけれども、アメリカは多数の軍事衛星を持っておりまして、今のようなアメリカの国防上必要な観測その他ができる方法は恐らくたくさんあろうかと思います。いろいろな具体的な問題についてアメリカができるかできないかという点につきましては、まさにこの協定にありますところの国際法に従って平和目的に合致するかしないかということをアメリカが判断して、アメリカ実験棟で活動を行うという建前になっているのがこの協定でございます。
  175. 松本善明

    ○松本(善)委員 それでは、結局できるということですね。非軍事ではなくて非侵略的であれば軍事であっても利用できるというのがアメリカの平和目的の解釈なんですから、結局それは否定されないということを答弁されたということだと思うのです。  放射線に強いIC、集積回路、これも米軍の強い関心事でありますが、軍の使用を目的としてこういう宇宙基地で放射線に強いICの実験をするということはどうですか。これはされますか、されませんか。
  176. 丹波實

    丹波政府委員 どうも先ほどからすれ違いで申しわけないのですけれども、私申し上げておりますのは、国防省としては、現在この宇宙ステーションを使う計画がないということでございますので、まさに仮定の御質問であれこれ申し上げるのはいかがなことかというふうに考えます。
  177. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうじゃないですよ。この協定についてそれは拒否をされるのかということですよ。放射線に強いICの実験は、この協定上は拒否されるかどうかということを聞いているのです。今の計画にそういう計画があるかどうかということではないのですよ。協定解釈だから当然仮定のことじゃないでしょう。答えるのは当たり前ですよ。そんなことも答えられなければこんな協定の審議はできませんよ。
  178. 丹波實

    丹波政府委員 アメリカ側は、この協定の平和目的というものは、国際連合憲章以下の諸条約、宇宙四条約、そういったような実定法の範囲内で非侵略的なものであれば、それは平和目的として認められるという考え方をとっております。したがいまして、個々の項目につきましては、アメリカがまさにそういう国際法の枠内でできるかできないかを判断して、自分の実験棟の中でそういう活動を行うということになっておるわけでございます。
  179. 松本善明

    ○松本(善)委員 結局それも同じ、拒否できないということですね。基地を使ってのレーザーの発射、命中精度の向上を図るということも同じことになるのではないか。アメリカが非侵略的な軍事目的ということであれば、それは平和目的ということで拒否できない、同じことになるのではないかと思いますが、どうですか。
  180. 丹波實

    丹波政府委員 先ほどフレッチャー長官の証言を引用いたしましたけれども、フレッチャー長官は議会の証言におきまして、レーザービームのような兵器研究は行えないということを述べておるわけでございます。
  181. 松本善明

    ○松本(善)委員 それでは、日本実験棟での問題をお聞きします。  外務省は、協定九条八項の(b)が「要素の企図されている利用平和的目的のためのものであるかないかについては、当該要素を提供している参加主体が決定する。」ということを根拠に、基地は平和的目的に使われるように言っております。  それではお聞きしますが、よく聞いていてください。アメリカ日本実験棟を使って、一、宇宙兵器の補給基地としての利用、二、戦時の指揮管制通信、三、レーザー発射、四、相手の軍事動向の監視、偵察、五、軍事目的の気象観測、六、宇宙兵器のための新合金の研究開発、七、放射線に強いICの開発、八、SDI実現のための実験開発を行うことは許さないし許されていない、こういうことを今までの外務省の答弁は意味しているのですか。
  182. 丹波實

    丹波政府委員 抽象的に個々のアイテムをたくさん挙げられましたけれども、私たちの考え方は、あくまでも日本立場として、それが日本の考え方による平和的な目的に合致しているかいないかによってアメリカのそういう研究というものを仕分けをして、日本側の考え方に入ってこないものについてはお断り申し上げるということでございます。
  183. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、日本側の考え方というのは、非軍事、平和目的というのは非軍事ということですね。国会でも決議したりいろいろやっていますが、外務省の考えも平和目的というのは非軍事ということですね。
  184. 丹波實

    丹波政府委員 従来の国会論議の中で、そういう観点からの議論がございましたことも念頭に置いて対処していく考え方でございます。
  185. 松本善明

    ○松本(善)委員 ちょっと奥歯に物が挟まっているようですね。従来の国会論議でそういう議論が行われていることを念頭に置いて対処するということは、国会でそういう解釈でやられている、それを政府は守っていくというのかどうか。それはちょっと外務大臣にはっきり聞いておきたいのですよ。大臣国会では御存じのように、平和目的というのは非軍事ということで、そういうふうになってやっているわけですよ。それを政府はもちろん守っていくのでしょうね。大臣、答弁を求めます。
  186. 三塚博

    三塚国務大臣 ただいまの政府委員の答弁で明確であると思いますが、私に対する質問でございますから申し上げますと、開発事業団法の第一条、団法に関する附帯決議、四十四年六月、まさにそのとおりでありますから、平和利用にこれを利用してまいる、こういうことであります。
  187. 松本善明

    ○松本(善)委員 非軍事というふうに答弁されたと理解をいたします。  日本実験棟で、こういう場合どうなるのかちょっと聞きたいのですが、アメリカ人がした発明について、アメリカ側がその発明は国家安全保障上の目的のために秘密の指定を行うということはあり得ると思いますが、どうでしょうか。日本実験棟アメリカ人がした発明について、アメリカが国として、それは安全保障上の目的から見て秘密だ、こういう指定をするということはあるのじゃないか。
  188. 丹波實

    丹波政府委員 必ずしも私、特許法の専門ではございませんけれども、アメリカの特許法上秘密特許の対象になる発明というのはあり得るであろうと思います。
  189. 松本善明

    ○松本(善)委員 私の今言ったことについては肯定的な答弁がされたということだと思うのですけれども、違いますか。肯定的な答弁でしょう。
  190. 丹波實

    丹波政府委員 アメリカ日本実験棟の四六%を使っていろいろな実験をいたしますが、その四六%の中で行われたアメリカ人の発明がアメリカの特許法上秘密特許の対象になるケースはあり得ると思います。
  191. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、結局、日本実験棟で実験をした場合も、そのときは知らなくても、後からこれは軍事だ、軍事に必要だ、秘密の指定もされるということになると、結果的に軍事的に利用するということに道があいているのじゃないですか。これはやった結果が、秘密の指定が後からされるということもあり得るということですから、その指定がされるまでは軍事に利用されるのかどうかわからないということになるでしょう。違いますか。
  192. 丹波實

    丹波政府委員 日本実験棟でいわゆる軍事的に典型的な武器の研究が行われるということは恐らく排除されると思いますが、先生承知のとおり、現在どこの国におきましてもそうだろうと思いますが、極めて多くの汎用的なものが軍事にも使われておるわけでございまして、結果的にその汎用的なものが軍事に使われるということは、これはどこの国でも排除ができないことは御承知のとおりだと思います。
  193. 松本善明

    ○松本(善)委員 結局、汎用ということをいえば軍事利用にも道をあけているというのが今の答弁の結果明らかなんです。何もそれは宇宙で戦車をつくったり弾丸つくったり、そんなことになることはあり得ないのですよ。今の軍事技術というのがこういう汎用品という名目でどんどん開発されているし、宇宙でやられるのはそういうものであるということは明白ですよ。だから今の答弁は極めて重大なんだと思います。  それで、私はもう一つ聞いておきますが、先ほど外務大臣も答弁をされたとおり、日本における宇宙利用は、非核、非軍事ということを尺度としているというふうに思います。そうだとすると、これは将来、自衛隊が宇宙システムを利用するというようなことは、アメリカ実験棟であろうと日本実験棟であろうと使わせるということはあり得ないというふうに思いますが、閣僚としての大臣の見解を伺いたいと思います。
  194. 丹波實

    丹波政府委員 日本実験棟につきましては、宇宙開発事業団が運営、管理、利用いたしますけれども、現在、私たちとしては、宇宙開発事業団の職員以外の者を派遣する考え方は持っておりません。アメリカ実験棟につきまして日本の自衛隊員が搭乗するということは、私、どういう局面をお考えなのかちょっと想像もできないぐらいの状況でございます。
  195. 三塚博

    三塚国務大臣 これは先ほど来申し上げておりますとおり、事業団法に基づいてやりますので、その限りにおいてそれはないわけであります。
  196. 松本善明

    ○松本(善)委員 確かめておきますが、今のところ自衛隊が日本実験棟を使うということはないという話ですが、これはできないということとは違うのですか。日本ではそれはできないということだろうと私は思いますが、そうははっきり言えないのですか。今はないというだけですか。
  197. 三塚博

    三塚国務大臣 正確に申し上げますと、事業団法に基づいてやるわけでございますから、そのとおり御理解をいただいて、それ以上のことを議論しますと、とめどもなく発展しますものですから御理解をいただきます。
  198. 松本善明

    ○松本(善)委員 そんなことはないですよ。私は今はっきり聞いているじゃないですか。自衛隊は使えないのですかと聞いているのです。答えないなら答えないでもいいですよ、それは答えられないと受け取りますから。
  199. 三塚博

    三塚国務大臣 ですから、ただいまは自衛隊は使えない、こういうことであります。(松本(善)委員「そうじゃないのですよ。使えないのかということを聞いているのです」と呼ぶ)
  200. 相沢英之

    相沢委員長 委員長の許可を得てから発言願います。
  201. 松本善明

    ○松本(善)委員 使えないのかということを聞いているのです。
  202. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 大臣及び政府委員からも御答弁申し上げておりますように、現在の時点において宇宙開発事業団の職員を宇宙基地に派遣するということを考えておりまして、目下自衛隊につきましては、具体的な計画は一切ございません。
  203. 松本善明

    ○松本(善)委員 何遍聞いても自衛隊が使えないというふうには答えないのですね。現在はそういう計画がない、それであいまいにしているということ、これもまた本当に私は極めて遺憾だと思います。これは国会の決議その他で明らかになっているのですから、当然に答弁では自衛隊は使えないというのが出てくると思っていたのですけれども、そういう答弁にならないというのは極めて遺憾だし、この協定の危険性を物語っていると私は思います。  予算の問題を若干伺います。  アメリカでも、この宇宙基地計画についてはいろいろ批判が起こっておりますことは御存じのとおりで、大幅な計画修正、延期とかいうこともあるかもしれぬ。「総予算で約二百四十億ドルと巨額な予算が必要な割には宇宙基地により何が得られるか明確でなく、宇宙基地不要論が根強い。予算の圧縮への議会の意志は固く、最低四億ドルの削減は免れそうもないとの観測が広がっている。」というようなことも、これは五月十日の日本経済新聞の夕刊ですが、報道があります。このフリーダム建設計画が大幅に修正とか延期される可能性があるのじゃないか。その見通しについては、外務省はどう考えていますか。
  204. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 目下、アメリカ宇宙基地の予算、来年度予算の審議中でございまして、その帰趨につきまして、殊によその国の予算の審議状況について、私どもコメントするのはいかがかと思いますけれども、昨年の例を見ましても、大体今の予算の時期というのは、非常に厳しいというか、いろいろな予算の折衝の厳しい時期であろうと思っております。したがいまして、私どもとしましては、アメリカの国内におきましては、もちろん宇宙基地をめぐっていろいろな議論があることは承知しておりますけれども、この宇宙基地協定に基づいて、アメリカ政府としましては予定どおり進んでいくことを期待いたしております。
  205. 松本善明

    ○松本(善)委員 期待しているということで、見通しについて答えられないということは、私の言ったような危険性があるということですよ。もしそういうふうになってきた場合、日本に対して費用をもっと持てということを言ってくる可能性もないとは言えないと私は思うのです。それは外務大臣、断固として拒否をしますか。
  206. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 この点につきましては、まず結論から申し上げますと、それはございません。と申しますのは、宇宙基地の仕組み自身がアメリカ部分アメリカが責任を持ってつくる、日本実験棟につきましては日本が、これはキャッシュじゃなくて現物としてつくる、こういうふうな体制になっておりますので、そういうふうなことはないという仕組みになっております。
  207. 松本善明

    ○松本(善)委員 ないと言ったって、あなた、今はないと言っても、将来そういうことについて分担をしろというような動きが出てこないということは保証がありますか。どこかでそんなことは絶対しませんということは決まっていますか。そういういいかげんなことを言うといけないと私は思うのですよ。あなたは見通しさえも答えられないのに、そういうことは、それだけはありません、そんなことが言えるのかというふうに思います。  さらにお聞きしたいのは、科学技術庁に聞きたいと思いますが、今政府説明している宇宙ステーションの実験や観測の内容であれば、別にこのフリーダム計画でなくても、例えば一九九二年に打ち上げが決定をされているSFU計画でも十分だという有力な宇宙研究者の指摘もあるのですね。どうしてもこのフリーダムに参加をしなければならないという理由は一体どういうところにあるのでしょうか。
  208. 吉村晴光

    ○吉村(晴)政府委員 宇宙実験のやり方につきましては、いろいろな立場の方のいろいろな御意見があるかと思いますが、私どもの考え方は、長い間にわたって無重力の環境下で一体どういう物質や材料がどういうふうな挙動をするのかということを、直接人が立ち会う形によって確かめるということが非常に重要であるというふうに思っておるわけでございます。  御指摘になりましたように、SFUのように、無人の衛星の中に実験装置だけ積み込んで飛ばすというやり方は、守宙基地のような人間が乗っていく部分ができるまでの間のつなぎとしては、それなりに非常に意味があると思いますけれども、やはりもっとそういったことについての知識を深めるためには、人間が直接観察できる場所が必要であるというふうに思っている次第でございます。
  209. 松本善明

    ○松本(善)委員 今の説明でもそれなりに意味があるという程度であって、どうしても今これだけの予算を使って参加をしなければならぬという説明にはなっていないと思うのですね。  私は、もう時間ですからやめますけれども、こういう重大な問題について、そういう専門的な技術者を参考人としても聞かないで質疑を終結してやっていくというのは、国会審議としては極めて遺憾だと思うのです。私も限られた時間なので十分突っ込んで質疑はすることができない部分も残っていますけれども、本当にこういうようなやり方については、私は、極めて遺憾だということを申し上げて、質問を終わります。
  210. 相沢英之

    相沢委員長 これにて本件に対する質疑は終了いたしました。
  211. 相沢英之

    相沢委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。岡崎万寿秀君。
  212. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、宇宙基地協力協定に反対の討論を行います。  本協定に反対する理由の第一は、この協定アメリカの宇宙軍事利用を容認し、促進するものとなるからです。米政府は、一九八八年一月に発表した米国の国家安全保障戦略で体系的な国家宇宙政策を発表し、そこで商業面での宇宙計画を相互に連携させるとの政策を打ち出しました。本協定有人基地建設構想は、まさにこの米宇宙軍事戦略の具体化であります。  第二は、日本政府が本協定宇宙基地アメリカが軍事利用することを容認しているからであります。すなわち、日本政府アメリカとの往復書簡で、アメリカが実験、研究成果を国家安全保障目的に使う権利を持つことを、米国の権利が正しく述べられていると確認し、アメリカの宇宙軍事利用を公式に容認したのであります。  第三は、本協定自体が宇宙の軍事利用を認めているからであります。協定がうたっている平和的目的は、宇宙条約で使用された文言を横滑りさせただけのものであり、結局、本協定もまた核兵器配備以外の宇宙軍事利用を容認しているのであります。  本協定日本参加することは、アメリカの宇宙軍拡政策に参画するものであり、非核・非軍事とした六九年の当院本会議の宇宙利用に関する決議及び宇宙事業団法に違反するものであります。  第四に、本協定アメリカの特許・秘密法の網を宇宙基地全体にかぶせ、日本の科学技術をアメリカの対ソ戦略に動員するものとなっております。また、宇宙基地搭乗員について、他国民でも基地本体等の安全のためと判断すれば、アメリカの刑事裁判権が行使されるなどの問題もあります。  第五に、アメリカでは宇宙基地予算が削減される傾向にあり、その分、日本の負担増につながる危険性が濃厚であります。日本の宇宙研究予算へのしわ寄せも懸念されます。  以上述べたような理由から、本協定に反対するものであります。  まだ多くの解明すべき問題点が残っているにもかかわらず、審議を打ち切り、採決をすることに抗議の意思を表明して、反対討論を終わります。(拍手
  213. 相沢英之

    相沢委員長 これにて討論は終局いたしました。     ―――――――――――――
  214. 相沢英之

    相沢委員長 採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  215. 相沢英之

    相沢委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  216. 相沢英之

    相沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕      ――――◇―――――
  217. 相沢英之

    相沢委員長 次に、国際情勢に関する件について調査を進めます。  ただいま委員長の手元に、柿澤弘治君外四名より、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・民主連合及び日本共産党・革新共同の五派共同提案による宇宙空間平和的開発利用に関する件について本委員会において決議されたいとの動議が提出されております。  この際、本動議を議題とし、提出者から趣旨の説明を聴取いたします。柿澤弘治君。
  218. 柿澤弘治

    柿澤委員 ただいま題議となりました動議につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  案文の朗読をもって趣旨の説明にかえさせていただきます。     宇宙空間平和的開発利用に関する件(案)   宇宙空間を平和目的のために開発利用することは全人類の共通の利益である。我が国もかかる認識に基づき、二十一世紀に向けての科学の進歩のために、その平和的利用の推進に積極的な国際的貢献を行うべきである。   よって、政府に対し、左記の通り要請する。      記  一 我が国としてこれまで実績のなかった有人宇宙活動に関する技術基盤の確立をはかること。  二 我が国の行う宇宙の開発利用に際しては、「我が国における宇宙の開発利用は平和の目的に限る」旨の従来の国会決議を尊重すること。   右決議する。 以上でございます。  何とぞ各位の御賛同をお願いいたします。
  219. 相沢英之

    相沢委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  柿澤弘治君外四名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  220. 相沢英之

    相沢委員長 起立総員。よって、本件は本委員会の決議とするに決しました。  この際、外務大臣より発言を求められておりますので、これを許します。外務大臣三塚博君。
  221. 三塚博

    三塚国務大臣 政府といたしましては、ただいま採択されました御決議の趣旨を十分体しまして、宇宙基地協力を進めるべく最大限の努力を払ってまいる所存であります。
  222. 相沢英之

    相沢委員長 お諮りいたします。  ただいまの決議の議長に対する報告及び関係当局への参考送付につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  223. 相沢英之

    相沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  午後一時四十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時二十三分休憩      ――――◇―――――     午後一時四十三分開議
  224. 相沢英之

    相沢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。深谷隆司君。
  225. 深谷隆司

    深谷委員 このニカ月余り世界の注目を集めましたのは、お隣の中国の大混乱でございました。すなわち、胡耀邦元総書記の死去を悼む学生の追悼行進から端を発しまして、やがて民主化に向けての学生、市民を交えた大きな暴乱に移っていったわけでございます。五月十七日の北京のデモ行進は百万人を超える、ハンストの学生は三千人を超えるという状態に至りまして、この民主化る求める中国の動きは中国そのものを大きく変えるのではないかという、そんな予測すら立てるに至ったのであります。ところが五月二十日に至って、北京の中心部のほぼ全域に対して戒厳令がしかれて、ついに六月四日には流血の大惨事に至るという戒厳部隊による鎮圧が行われたわけでございます。かつて毛沢東氏は、政権は銃口によって初めて生まれる、そういう言葉を残しましたが、私どもは今さらのように共産主義国家、社会主義国家の恐ろしさを痛感いたしたわけでございます。  それはともかくとして、日本にとっての中国は、歴史的にも非常に深いかかわり合いを持ち、しかも隣国でございますから、その動きに一喜一憂したことは言うまでもないことでございます。このような憂慮すべき事態が生まれましたときに、何といいましても、その窓口に当たりますのが外務省でございます。刻々と移り変わるさまざまな情勢の動きを的確に把握して、それに機敏に対応するということが求められるわけでございますが、今日までの経過を見る中で、どうも外務省の情報が不十分である、あるいは対応がやや遅きに失している場面が多いといったような声も聞こえるわけでございます。  大変な事態でありますから、無理もないことではあるとは存じますが、今日までの経過を振り返って、外務省はどんなような情報を手にし、その折々にどのような形で機敏に対応してこられたか、どうぞそこいらの状況について御報告をいただきたいと思います。
  226. 長谷川和年

    ○長谷川(和)政府委員 今般の中国の情勢の動きに関しましては、種々の制約要因があったにもかかわらず、在中国大使館を中心としまして、あるいは中国内の総領事館、あるいは民間の方々、商社、メーカーまたは学生さん、こういった方々にも協力を頼みまして、種々の情報の収集を行ったわけでございます。また米国を初めとする主要諸国との情報交換あるいは分析も行いまして、外務省としては情勢の的確な把握それから分析に全力を挙げてまいりました。具体的にどのような情報を入手したか、こういうことにつきましては御説明を差し控えさせていただきたいと存じますが、軍事も含む政治あるいは社会経済情勢、こういった情勢全般につきまして、できる限り幅広く情報を収集するように努力をしてまいったわけでございます。  政府としましては、今回の事態というのは、第一義的には我が国政治的社会的体制を異にする中国の問題、こういった問題と認識しまして、このような観点から対応してまいったわけでございます。しかし、民主化を求める学生、市民に対して自国の軍隊が発砲するような行為は人道の見地から容認し得るものではない、こう考えまして、六月四日の早暁に発砲行為があったわけでございますが、六月の四日には外務報道官談話を出して、これに対する憂慮の念を表明し、また五日には官房長官が発言されまして、深く自制を求め、さらに七日には外務事務次官が東京の中国大使を招致いたしまして、このような事態はまことに遺憾である、自国の国民に対して銃口を向けるような事態というのは人道にももとる行為である、深く自制を求める、こういうことを強く申し渡したわけでございます。この間、在留邦人の保護あるいは本邦への退避その他につきましても、その都度その都度、節目節目において外務省としてはできる限りの適切と思われる対応を行ってきたということでございます。
  227. 深谷隆司

    深谷委員 今お話がありましたような、非武装の学生、市民に対して銃火を向けておびただしい数の死傷者を出した、この人民解放軍の行為というのは、世界から大きな非難を集めて当然であったと思います。私は、本来外交というのは内政不干渉の立場をとらなきゃならないと思っているのでありますが、今回のこの全く武器を持たない、民主化を求める学生や市民に対する発砲、これらはやはり大きな批判の対象にしていかなければならないだろう、こう思うわけであります。西側の諸国でも多数の国の政府の首脳が声明などを発表いたしまして、自由と民主を求める学生の立場に同情する姿勢を示し、あるいは中国政府の武力使用について最大限の非難を浴びせてまいりました。アメリカ、イギリス、フランスなど対中制裁措置をとる国もふえておりますが、それと比較した場合、どうも日本の主張というものは、あるいは発表というものは、遅くてなまぬるいという声もあるわけであります。これについて外務大臣はどのようにお考えか、伺いたいと思います。
  228. 三塚博

    三塚国務大臣 本件につきましては、ただいま深谷委員指摘のように、隣国たる中国との今日までの関係、歴史的に、また地形的にも大変深い関係でございました。当然人民解放軍という生命と財産を守るべき立場の軍隊が、その対象たる人民、学生を主体とした皆さんであったようでありますが、銃口を向けるという事態は極めて遺憾なことであって、あってはならぬことだということで、総理からも官房長官からも、同時に事務次官が在日大使を招致いたしまして、本件について申し渡しを、我が国立場を表明をいたしたところであります。  さはさりながら、その帰趨がどう相なりますか、外交の基本が内政不干渉、自決主義とよく言われるのでありますが、そこを見定めてまいるというのも我が国立場かな、こんなことで今日までその動向を見詰めてまいったわけでありますが、鄧小平体制が平静に向かいつつ体制を整備したということでありますから、一日も早く以前のような状態に立ち戻りますことを期待をいたすということが我が国立場かなと思っておるところであります。
  229. 深谷隆司

    深谷委員 隣国でございますし、また歴史的なさまざまな暗い過去もありますから、そういう点でも慎重であったろうと思いますし、また一体どういう形で平静化されるかということについて見定めるということも、それは当然必要なことだと私は思っておるのでありますが、ただ、無抵抗の市民や学生に向かって発砲するという事態になったときに、せめて武力行使は避けるべきだと即座に発表するぐらいの姿勢があってもよかったのではないかな、そんなふうに私は思っているわけでございます。  今後の対応について外務省もさまざまにお考えになっておられると思いますが、特に二十六日にワシントンにおいて日米外相会談が持たれると聞いているわけで、恐らくこの会談で重要なテーマにこの中国問題が浮かび上がってくるのではないだろうか、こう思考されるわけでございます。アメリカはブッシュ大統領みずから厳しく非難をして、対中武器禁輸に踏み切り、一方、反体制知識人の方励之氏を北京のアメリカ大使館に保護するなど強い措置をとっているわけでございます。私は、この方励之氏の保護という問題は、これからアメリカ中国関係に非常に大きな問題を投げかけるであろうと思います、そのよしあしは別として。そうなってまいりますと、この外相会談において、アメリカ日本に対しまして共同の歩調をとってくれというような話が当然起こってくるのではないだろうか。その場合に、日本は一体どういう対応をしたらいいのか、これは重要なことであろうと思うのですね。アメリカに対しても重要でありますし、中国に対しても重要でございます。したがいまして、日にちも近づいてまいっておりますので、出発の前に、これは日本政府の意思を固めて臨んでいかなければならない、こう思うわけですが、その点についてはどのようにお考えでしょうか。
  230. 三塚博

    三塚国務大臣 御指摘のように、今月二日、宇野内閣発足に伴いまして外務大臣を拝命をいたしたところでありまして、日米関係の今日の現況からいいまして、新内閣、特にサミット前でありますから、新総理が恒例に従いましてサミットの議題を整理するなどの会談があってよろしいわけでありますが、内政極めて多事多難でありますから、外務大臣として訪米をいたさなければならぬと考えておりまして、現在米側の日程を調整中でございます。会談に際しましては、御指摘のように、中国情勢の重要性にかんがみまして、近々の状況についての意見交換が行われることは、そのとおりであるということであります。  さて、我が国がどうこれに対応するのかということでありますと、基本的には前段申し上げました中国の情勢の落ちつき先を見きわめて、また国際的な動向も勘案をして慎重に検討をしていかなければならぬという従来の我が国の対中方針を踏襲をしていかなければならぬ、このように実は思っております。  その中にありまして、方励之氏の身柄の問題につきましてどうするのかという点、極めて重要な、まさに両国のスタンスをかけた重大な政治課題に相なっておることにかんがみまして、我が日本がそのことに調整役、ごあっせん役ができ得るのかどうかという極めてデリケートな問題があろうかと思いますが、御指摘のとおり、当然本問題についてもいろいろな意見交換がなされることどもを考えつつ、出発前までに外務省としての基本的な考え方、また当然政府としての本問題に対するマクロの考え方などを整理をさせていただきながら意見交換をしてまいらなければならぬ、このように考えておるところであります。
  231. 深谷隆司

    深谷委員 方励之氏の問題だけではなしに、例えば現在最恵国待遇を日本はとっているわけですが、これを停止してくれとか、これはあくまで予測ですけれどもね。世界銀行、アジア開発銀行による対中融資の検討などをアメリカ側から要請された場合に一体どうするのだろうかなと、数々の心配がございます。きょうこの場で対応をどうするかということについてのお答えは求めませんけれども、重要な時期でもございますので、どうぞ十分にそこいらについての御準備をなされた上で日米外相会談に臨んでいただきたいということをお願いしておきたいというふうに思います。  それから、外務省の重要な役割一つに邦人の保護がございます。いろいろなデータから私も私なりに判断をさせていただきまして、この邦人保護について外務省は非常に御努力をなさって大きな成果を上げたというふうに私は理解をいたしておるのでございます。この事態が悪化した時点で、在中国大使館が把握していた全中国の在留邦人は約八千三百名。事態の悪化に北京から四千人以上の邦人が無事帰国をしたというふうに聞いております。これは並み並みならぬ努力の成果であろうと思うのです。館員の諸君はまさに不眠不休の努力を続けてこのような答えを出されたのだろうと思うのでありますが、そういう問題については、遺憾ながら日本の国内で余り目立って表に出ておりません。この機会でございますから、そういう隠れた苦労話の一つもぜひお聞かせをいただきたいと思います。
  232. 三塚博

    三塚国務大臣 黒河内領事部長もいらっしゃいますから、後にひとつ付言をいただきたいと思います。  大変理解ある御指摘、感謝にたえません。こういう大事件が起きますと、在大使館、大使以下職員不眠不休の情報収集、また邦人保護の問題もございます。この二つの大きな目的に向かいまして、まさに不眠不休でありましたことは事実でございます。四千名近い邦人が短期間に無事に帰国することができ得た、こういうこともその成果であるわけであります。もちろんそれぞれの連携の中で、向こうにおられた邦人の方、また旅行者の方が大使館とのアプローチの中で意に尽くせないもどかしさの中で、それが不満ということに相なろうという面も全くないとは私も申し上げないわけでございますが、そういう中で感謝のあいさつなどもあることも一部新聞に報道されたとおりであります。まさに、後ほど聞いてみたのでありますが、大変困難した状況の中に館員がそこの幹事として同乗いたし、往復七十キロの空港との間を実に百九回にわたり運行しておるというようなことなどもございまして、時にストップに相なりまして、誰何、いわゆるどこに行くんだと人民解放軍にとめられ、公使がドアからおりまして、こういうかくかくしかじかということで誠心誠意、また危険を冒して説得をして、ようやく通過を認められたという、まさにハイジャックから解放された瞬間のように、帰りましたら万歳、ありがとう、今の恩人だというこもごもの話なども、直接私が帰られた方からお聞きをいたしたところであります。  かかる努力は当然のことといえば当然でありますが、今後もさらに万全を期していかなければなりません。同時に、よくやってくださったと私自身も感謝をいたしておりますし、この体験をさらなる今後に生かしていただくということであろうかと思います。
  233. 深谷隆司

    深谷委員 現地における各館員のそのような私を捨てた努力に対して改めて敬意を表したいというふうに思います。  国際化が進んだ我が国でございますから、これからもいろんな国々に相当数の日本人が出かけ、あるいはそこで居住するという場面が増大する一方でございます。これらの日本人をどう保護するかということは重要なこれからのテーマであろうと思うのでありますが、不幸な出来事ではあるけれども、かけがえのない体験を今度積まれたと、私はそう理解をいたします。これらの教訓を今後生かして、どのように対応していくかについての御決意をお聞かせ願いたいと思います。
  234. 黒河内久美

    ○黒河内政府委員 ただいま先生指摘のとおり、今回の事態というのは極めて多数の邦人が在留中に発生したということでございまして、私どもにとりましても未曾有の貴重な経験であったわけでございます。大使館、外務省ともに最大限努力したつもりでございますけれども、この経験を大きな教訓といたしまして、今後邦人保護体制の強化充実に一層努めていきたいと考えております。  具体的には、私どもとして担当人員の拡充、地域別、国別の邦人保護対策の見直し等種々の努力を行っていきたいと思っておりますが、他方、民間サイドの方々におきましても、平常時から自分の身は自分で守るとの意識の強化あるいは政府サイドとの協調等の自助努力が大事だということにつきまして、今後とも強く協力を求めてまいりたいというふうに考えております。
  235. 深谷隆司

    深谷委員 どうぞ今回の経験を生かして十分な対応をきちっとつくり上げていただきたいというふうに要望いたします。  さて、最近の報道によりますと、中国におきましては反革命分子の逮捕あるいは追及などが盛んに行われております。反革命分子狩りとでも申しましょうか、そのために密告の電話を市内各所に設置して、その電話番号がテレビその他を通じて報道される。次から次へと密告が続けられて、そのたびに大量の人々が逮捕されていく。およそ日本では考えもつかないような暗黒な政治という印象を強く持つわけでございます。  そこで、私どもが大変心配しているのは、中国に留学している日本人学生がこの暴乱の中に紛れ込んでいないだろうか、日本の留学生がこの混乱の中に参加していたり、あるいは逮捕されるとか勾留されるというような事態が起こりはしないか、大変危惧をいたしておるのでございます。今日までの外務省の情報の中に、例えば日本人学生が行方不明になっているとか、あるいは自宅に帰ってこないといったような、そういう事例があるかどうか。さらには日本人留学生が逮捕されたり勾留されたような場合には、一体日本はどういう対応をするおつもりか、この点についてお聞かせいただきたいと思います。
  236. 黒河内久美

    ○黒河内政府委員 北京におられます留学生の方につきましては、先ほど御説明申し上げたように、帰国につきましての御援助を申し上げ、安全な場所への移動等についてもいろいろお手伝いした次第でございますけれども、十一日現在では二十五名ほどがまだ残っておられるようでございます。また退避勧告の対象とはなっていない地方につきましても、当初は帰国を希望された方がかなりおりましたけれども、最近の情勢の推移を見ながら引き続き残るという方も少なからずおられるようでございます。在中国大使館及び各総領事館から、留学生の皆様方については、安全確保のための指導、支援を引き続き最大限行っておりまして、具体的に御家族からの要請などがございました場合には、照会に答えまして、一人一人についての安否確認等もやっている次第でございます。その結果、これまで御指摘のような行方不明があるとの報告には接しておりません。  他方、留学生が逮捕、勾留されるような事態にならないように願っておるわけでございますが、万が一そういう事態が生じました場合には、当然のことながら先方当局から我が方大使館等に通報が来ることになりましょうし、私どもといたしましては、それを受けて中国側からの事情聴取あるいは必要に応じて折衝を行い、また拘束された人の要求等も十分に聞きまして、所要の援護をしていくことになるというふうに考えております。
  237. 深谷隆司

    深谷委員 きのうの某新聞に在日中国人留学生の動静を探るために十二日現在二十人以上の中国政府公安関係者が東京都内を中心として各地で活動を続けているということが報道されたわけであります。こういう事態が実際にあるのかないのか、そういう情報を御存じでしたら教えていただきたいと存じます。  そして、いずれにしても、日本の国内で中国民主化運動に共鳴して立ち上がった人々、テレビ、新聞等で報道されておるわけでございますが、そういう人たちの新聞やテレビの報道を通じて何らかの処置がなされる危険がありはしないか、こう思うわけであります。仮に日本におられる中国人留学生に対して何らかの強制行為が行われた場合、日本はどのように対応するつもりか、その点もあわせて伺いたいと思います。
  238. 長谷川和年

    ○長谷川(和)政府委員 ただいま委員より御質問のございました昨日の夕刊紙による報道でございますが、この記事の内容につきまして、外務省としては関係当局とも連絡をとりながら事実の確認に努めておりますが、今のところ、これを確認する事実はございません。  それから、こういった事実があった場合あるいは何らかの措置を先方がとる危険の件でございますけれども、ただいま申しましたとおり、今のところそのような事実は確認されておりませんが、いずれにせよ、そのようなことがある場合には、関係省庁とも十分協議いたしまして、日本として適切な措置をとってまいりたいと考えております。
  239. 深谷隆司

    深谷委員 例えば直接的な強制行為がなくても、国費留学生などの場合に学費を打ち切るといつたようなことで、実質的に帰国命令が出るような形がとられる可能性があります。そういう場合は一体どういうふうに対応なさるおつもりか。これは人権問題だけではなしに、日本の主権にかか わる事柄でもございますので、この際明確にお立場、お考えを示していただきたい。
  240. 長谷川和年

    ○長谷川(和)政府委員 基本的な考え、立場につきましては、ただいま委員に御答弁申し上げたとおりでございますが、具体的に例えば文化面あるいは教育面、いろいろなことが想像できるかと存じます。こういった問題につきましては、ただいま委員の御指摘の趣旨を体しまして、政府としても種々検討してまいりたいと思います。
  241. 深谷隆司

    深谷委員 形はともかくとして、一応中国はやや平静状態を取り戻しているやに聞いております。平静化したということで、一たんは帰国いたしてまいりました日本の企業のいわゆるビジネスマン、これが早く帰任して活動を開始したい、こういう声も出始めているというふうに聞いております。  そこで、退避勧告あるいは渡航の自粛勧告を日本は行ったわけでありますが、これらについての解除をいつごろどんなふうになさるか、お考えになっておられるか、伺いたいと思います。
  242. 黒河内久美

    ○黒河内政府委員 ただいま委員指摘のとおり、政府としては渡航の自粛及び北京につきましての退避勧告を出しているわけでございますが、最近の報道等、私どもいろんなアプローチを見ましても、既に北京に戻るという動きが現実にあるように思われますけれども、本来政府が出しました勧告というものは、その趣旨からいたしましても、各企業等における緊要な職務遂行に必須な方々にまで北京からの退避や中国への渡航の中止を厳格的に求めるものではございません。現に北京に戻ろうという動きがございますので、私どもといたしましては、既に在外企業協会を通じまして、基本的にはまだ政府の勧告というものは解除されていないという事実、したがいまして、帰られる方につきましては、あくまでも御自分の判断と責任において帰っていただくということを御理解いただきたいということと、それから万が一現地に戻られた場合には、今後の大使館との緊密な連絡体制を必ず維持してほしいということをお願いして、趣旨徹底を図っておるところでございます。  今お尋ねの勧告の解除の時期でございますけれども、在外公館とも緊密に連絡の上、今後の北京市の状況等を総合的に勘案しながら決めてまいりたいというふうに考えております。
  243. 深谷隆司

    深谷委員 邦人の避難に伴ってJICAの専門家等の引き揚げで、経済協力も事実上はストップした状態になっております。政府としてはいつまでもこのような状態を続けるわけにまいりませんので、これについてのお考えと対応について伺いたいと思います。
  244. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 中国に対します経済協力の基本的な方針に関しましては、先ほど外務大臣中国に対します基本的な姿勢についてお話しなさいましたけれども、経済協力につきましても、それに沿いまして、具体的には中国の情勢の落ちつき先を見つつ、それから国際的な動向をも勘案して慎重に検討していくという方針でございますけれども、先生質問のJICAの専門家が携わっておりました技術協力関係のプロジェクトについてでございますけれども、御指摘のように専門家のかなりが引き揚げております。北京におりました専門家は全員引き揚げておりまして、地方におります専門家もかなり引き揚げておりますが、その結果、これらのプロジェクトは事実上大半が中断状態にございます。したがいまして、これらのプロジェクトにつきましては、今後事態が完全に復した際には、これらが中断されましたその経緯も踏まえまして、今後相手方が十分対応してこれるかどうかということを含めまして、協力を続行する上でいろいろな前提条件がございますが、この前提条件を十分見きわめた上で続けてまいる所存でございます。
  245. 深谷隆司

    深谷委員 時間になりましたので、以上で私の質問を終えますが、隣国中国日本にとっては政治、経済、文化、あらゆる面で非常に大きなかかわりを持ち、これからもかかわり合いを続けてまいります。日中関係の安定的な位置というものが持続されることが、日本にとっても中国にとっても、ひいてはアジア、世界の平和にもそのまま密接に結びつくわけでありますから、どうぞ外務大臣におかれましては、慎重かつ時には大胆な行為も含めて対応していただくように強く要請いたしまして、質問を終えたいと思います。ありがとうございました。
  246. 相沢英之

    相沢委員長 次に、河上民雄君。
  247. 河上民雄

    ○河上委員 このたび、外務大臣新たに御就任されまして、早速にいろいろな重大な事件が起きて御苦労のことと存じますが、ひとつ御健闘を期待を申し上げたいと思います。  きょうは時間もありませんけれども、対米問題、また対中国問題等についてお伺いをいたしたいわけでございますが、それに先立ちまして、ピョンヤンにおいて近く開催されます世界青年学生祭典についての政府の姿勢、態度を伺いたいと思います。  この件につきましては、この三月から四月初めに朝鮮民主主義人民共和国を訪問をいたしました社会党の田邊誠氏ら一行が、訪朝に先立ちまして、竹下内閣当時でございますけれども、外務省あるいは官邸筋ともいろいろお話し合いをいたしたわけでございますが、その中で朝鮮との関係改善への幾つかの布石といいますか、その努力のあらわれといいますか、といたしまして、当時の竹下内閣及び外務省首脳は、世界青年学生祭典につきましては、日本側としても側面的に援助したい、そして、そのことが日朝関係改善に役立つことを期待するというような意味の発言もあったわけでございます。その内閣が交代されたわけでありますけれども、この言明は内閣交代されても変わらないのでございましょうか。
  248. 長谷川和年

    ○長谷川(和)政府委員 本国会におきまして、前総理大臣が三月三十日の予算委員会におきまして、我が国の北朝鮮に対する態度につきましてお答えされた経緯がございますが、その御答弁の中で、日本政府としては前提条件なく北朝鮮と話し合いを行う用意があると、端的に申すとそういうことを申しておられるわけです。この考えは政府の考え方、立場でございまして、内閣がかわろうと同じ政府でございますので、これは現政府も、これを維持しておるところでございます。  七月一日から八日までピョンヤンで開かれます世界青年平和友好祭、これは一つの北朝鮮が主催する大きなこの種の祭典であると思って横から関心を持って見守っておるところでございますが、基本的な考えとしましては、政府としましては、こういった動きというのが大きな意味でもって南北間の緊張の緩和に貢献していくことを願っておるわけでございます。ただ、いろいろ具体的な話があるかと思いますが、政府としましては、現時点におきましては、いろいろな具体的な案件については話をするような状態にないということを申し上げたいと存じます。
  249. 河上民雄

    ○河上委員 今のお話では、基本的な姿勢は内閣がかわっても竹下首相が言明されました線に沿って対応したい、こういう御答弁でございました。具体的なことについては、今ここで言明する立場ではないというようなお話でございましたが、幾つか具体的な点についてお伺いいたしたいのであります。  その一つは、中国の現在の状況の中で、中国経由ピョンヤン行き、これで参加者あるいは代表団が従来どおり予定どおり行けるかどうかですね。何らかの新たな条件が加わってきているかどうか。  また、かつて神戸で行われましたユニバーシアードの際には、南北朝鮮両方から選手団が参加をいたしまして、いずれの選手団が入ってまいりましても、在日朝鮮・韓国人の方々のいわゆる観衆を含めまして、会場全体から拍手が起こったというような感激的な場面がございましたが、そのことを可能ならしめたのは、北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国から日本への直行便が認められた、特別に認められたということがあずかって大きな力があったわけでございます。今回逆に、この日本から向こうへの直行便というような考え方もないわけではないのでありますけれども、そういうことが可能かどうか、それらの点はいかがでございましょう。
  250. 長谷川和年

    ○長谷川(和)政府委員 ただいま委員質問の二点でございますが、中国経由でピョンヤンに参加者が行くことができるかどうか。私たちもいろいろ伺っておりますと、ある方々は中国経由でピョンヤンに入られる、ある方々は新潟からハバロフスク経由で入られる、いろいろなルートがあると了解しております。ただ、今私は、必ずしも本日において正確な情報かどうかわかりませんけれども、現在ピョンヤンと北京の間の航空路についてはいろんな制限があると聞いております。したがって、中国から、北京からピョンヤンに入ることが果たして可能かどうか、これについては具体的によく知りませんので、これはよく検討してみたいと思います。  ただ、基本にさかのぼってまいりますと、我が国と北朝鮮の間には国交はございませんけれども、通常皆さん一般の国民の方の往来というのは自由でございますし、もちろん航空便等が正常に運航されておれば行くことは可能かと思います。  それから、直行便について今委員が言及されたわけでございますけれども、確かに一部の方々がこの世界青年平和友好祭との関連で直行便についていろいろ熱心に御研究なさっているという話は伺っております。ただ、現時点において政府としてこの問題に関しまして確定的な立場あるいは態度は持っておりません。
  251. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、これはかねてからの懸案でございますが、この祭典を契機にいわゆるインテルサットを利用しての衛星放送が可能にならないかという声があるわけでございます。この点につきましては、郵政省関係は、外務省がオーケーを出せば、技術的には可能だというふうに言われておるわけでございまして、この点いかがでございますか。
  252. 長谷川和年

    ○長谷川(和)政府委員 インテルサットの件でございますが、行政府は一体でございまして、私どもは郵政省さんも私たちも同じ考えを持って本件については臨んでいると承知しております。ただ、私はいろいろな方々が大変前向きに北朝鮮との関係の改善に努力なさっている、これは政府としても大変に感謝申し上げているところでございます。しかし、こういった個別の問題、それぞれ意義があることかと存じますが、これはやはり全体の図の中でそれぞれ考えられるべきもので、一つ一つなし崩し的に検討するということは、政府としてはようなし得ないところでございまして、北朝鮮に対する全般の配慮あるいは先方の我が国に対する態度、こういったものを勘案しまして、前を向いて検討していくということであるかと存じます。     〔委員長退席、柿澤委員長代理着席〕
  253. 河上民雄

    ○河上委員 それではピョンヤンの世界青年学生祭典につきましては、この程度で質問を終わらせていただきたいと思います。  中国問題でございますけれども、もう既に委員会、この当委員会のみならず、本会議での宇野内閣に対する初の代表質問あるいは衆参の予算委員会において既に論ぜられているところでございまして、ここで重ねてそれを申し上げる立場にはございませんけれども、私個人といたしましても、日中関係にいささか携わってきた者といたしまして、今回の事態に対しては率直に申して悲しい気持ちを抑えることはできないのでございます。特に、平和的なデモに対して銃砲が向けられた、そして流血の事態を引き起こしたことは絶対に容認できないのでございます。先日、毎日新聞に、日中関係の改善、友好の進展のために生涯をかけてこられました岡崎嘉平太氏がインタビューに答えて述べておられましたお気持ちには非常に同感する点が多いのでございます。  ただ、ここでは私ども外交問題としてこの中国問題を扱わなくてはならないわけでございまして、今日の状態、あの事態から引き起こされました中国との国際的な関係というのは大変憂慮すべきところにあるように思います。客観的に見まして、中国は国際的に大きなダメージを受けた、こう言ってよいかと思うのでありますが、特に米中関係は、方励之博士に対する逮捕状、それから早速行いましたアメリカ政府の武器輸出禁止措置等によりまして、大きな暗影が投げかけられていると言って言い過ぎではないと思っております。ここで私どもが留意すべきことは、米中関係がひょっとして六〇年代、七〇年代の初頭までのあの時代に逆戻りせやせぬかという心配でございます。そして、もちろん日中関係も今日まで双方の努力で築き上げてまいりました一つのレベルというものが、今各面にわたって大きな打撃を受けておるわけでございまして、万々日中関係が六〇年代に戻るということはあり得ないと私は思っておりますけれども、米中関係がもしそこまで逆戻りするような事態が起きました場合には、外務省が再々申しておりますように、日米関係日本外交の基軸であるという立場から見まして、大きな影響を受けざるを得ないだろうと思うんですね。今や我々はお互いにチャイナカードを使うべき時代ではないと思います。アジアの安全を脅かすような米中関係の悪化あるいは日中関係の悪化というものは、この際あらゆる知恵を使って回避しなきゃいかぬ、こんなふうに思いますが、外務大臣、就任早々でいらっしゃいますけれども、こういう中での日本外交、どのようにしていきたいと思っておられますか、お伺いいたしたいと思います。
  254. 三塚博

    三塚国務大臣 大変示唆に富みました御質疑をちょうだいいたしたところでありますが、我が国外交の基本が日中関係というのがまた大きな基軸でありますことも御案内のとおりであります。  今日の天安門事件とあえて言わさしていただくわけでありますが、これに端を発しました国内の緊張状態、これに伴いまして、非人道的な行動という意味米国及びヨーロッパそれぞれの諸国から強いこれに対する非難が寄せられておるわけであります。我が国人道上の立場からこのことは明確にさしていただいたところでありますが、同時に米中関係は、方励之氏逮捕状執行、そしてこれを米大使館が保護するという、こういう政治的緊張状態が今日続いておるわけでございまして、この処理の仕方を一歩誤りますと、六〇年代の時代に逆戻りする可能性を、河上委員指摘のように、私どもも抱いておるところであります。でありますだけに、実は国際世論の一部からの強い指弾もあえて甘受しつつ、日中、中国関係の帰趨の慎重な見きわめを慎重の上にも慎重な分析の上で、実は今日まで来させていただいたところであります。  よって、今後日米関係を基軸としつつ、日中がまた我が国の基軸であるという、この重要なはざまの中で、我が国がなすべきことは何があるか、まさに誠心誠意の対応、また綿密な動向分析の上に立ちました行動が望まれるわけでございまして、本件につきましても、さらなる模索を試みつつ、御懸念のように、六〇年代のようなことに戻り、デタントから緊張へという一気の突入がございませんように、平和国家日本として、置かれておる立場の中で最大限の努力をしなければならぬのかなと思っております。
  255. 河上民雄

    ○河上委員 今大臣からそういう決意の表明がございましたが、従来外務省事態を静かに見守るということをしばしば言われておるのですけれども、そうしたスタンスに立って、その立場を守るためには、単に静かに見守るだけではいけないんではないか。我々が日中関係日米関係、そして米中関係というものをにらみながら、しかし日本として積極的に努力を展開するということが必要であろうと思います。  先ほど日米外相会談のお話もございましたが、近々パリでサミットがございます。歴代サミットはしばしば予定されたテーマ以外のというよりも、むしろその直前に起こった国際的事件が最大のテーマになってまいりましたので、今回も恐らく中国問題が最大のテーマになる可能性が極めて大と思うわけでありますが、そうした場合に、ここではサミットの性格から見まして共同行動ということが常に求められるのであります。そういう場合に日本政府としてどう対処するか。我々外交は常にその瞬間適切な処置をとるということが大事でありますけれども、その処置がまた二十年、三十年という長いスタンスの行方を決める転換期であるという場合がしばしばあるわけでございまして、かつての中ソ会談の決裂が中ソ対立三十年に及んだことを我々は教訓にしなければいかぬと思います。パリ・サミットに対して、この中国問題についてどういうふうな対応をされるおつもりか、お伺いいたしたいと思います。     〔柿澤委員長代理退席、委員長着席〕
  256. 三塚博

    三塚国務大臣 外交専門家である河上委員、全体の展望の中での御質疑であります。当然直前の大きな事件でございますから、懇談の場において、意見交換の場において提起されるであろうということは予測をせなければならぬのかなとは思います。同時に、御指摘のようにサミットは、政治討議におきましては、世界の平和と安全に積極的にかかわってまいる観点から、参加国の持つ最大関心事につきましてミーティングをするということになっておるわけでありまして、昨年のサミット以降、東西関係を初めとする国際情勢に進展が見られる状況を踏まえながら、西側先進民主主義諸国として、御質疑のように、連帯と協調の中で世界平和のために貢献をするということであるわけであります。  そういう中でありますから、その枠組みの中で、特にアジアからアジアの一員として一国だけ参加をいたしておる我が国、隣国中国の今日の置かれておる立場状況、見通し、これらを踏まえながら、この会議においてこれまた積極的に打って出るということはなかなか出にくい我が国立場であり、特にあの六〇年代に戻らないという、これが我が国にとりましても大事なことであり、中国人民にとりましても大事なことであるわけでございますから、その辺のところは十分な情勢分析と、時に発言を求められる中で、総理なり、立場外務大臣から情勢分析を申し上げつつ、人道人道として問題提起はあるわけでございますが、政治として、特に内政不干渉、民族自決主義というお互いの行動がそこで非常にきちんとしたことで相成ることの原則を踏まえて、どう対応するかということについても十分なる準備の中で臨まなければならぬのかなというふうに思っておるところであります。
  257. 河上民雄

    ○河上委員 これはあらかじめペーパーをつくって臨むというような趣旨、性格の会議ではないと思いますが、ひとつ総理及び外務大臣におかれましては、十分に現時点の適切な対処ということとあわせて、歴史的な展望も常に忘れぬように御活動いただきたいと思います。  先ほど来いろいろ各委員会等で既に出ているようでございますが、在日の中国人留学生に対する、万々そういうことがあってはいけないのでありますけれども、人権保護の用意があるというように外務省関係から御答弁があるようでございます。その点についての御確認と、それから今後中国から来る留学生、就学生、研修生の受け入れをどうするか。既に来ておられる方は当然許される滞在期間、またその他の状況の中でどうするかという御答弁があったわけですが、今後、これからの、つまり来年度といいますか、これからのそういう方々に対して、私たち日本政府としてどうするかということも非常に重要なことだと思いますので、あわせて御答弁いただきたい。
  258. 長谷川和年

    ○長谷川(和)政府委員 中国人の留学生の保護の問題でございますが、政府としては、中国の情勢の展開に我が国としてどのように対応していくか、こういうことにつきまして、中国の情勢の落ちつき先を見きわめつつ、また国際的な動向も勘案して慎重に対処していく考えでございます。  特に、日本にいる中国人の留学生等から中国の情勢の変動を理由として在留期間の更新申請があった場合には、既に十五件あったと承知しておりますが、政府としてもその考えを明らかにしておりますが、本人の申し立てる諸事情も勘案して、ケース・バイ・ケースで弾力的に対応する、こういうことでございまして、政府としては、この問題につきまして適切な対応を行っていきたいと考えています。  人権の抑圧ないしこういった留学生その他の方々の弾圧、こういった問題につきましては、先ほどほかの委員の方の御質問にもお答えしましたが、今のところそのような事実はございませんが、いずれにせよ、そのようなことがある場合には、関係省庁とも協議して、適切な措置をとってまいりたく考えております。  それから、研修生あるいは留学生等の問題でございますが、ただいま申したとおり、我が国の全般的な施策につきましては、今後の中国情勢の落ちつき先を慎重に見きわめまして、また関係諸国の動向も考慮に入れまして、その上で策定してまいりたいと存じますが、いずれにしろ、中国は今改革・開放政策をとっておりまして、これは一九七八年、三中全会で決定されたことで、私たちとしては非常に好ましい政策と思っておりますが、こういった留学生あるいは文化交流を通ずる人の交換というのが閉鎖的な社会を開放的にする非常に重要な手だてと考えておりまして、このようなことも頭に置きつつ、最終的な態度を決定する際には対応したいと考えております。
  259. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、対米関係について、残り時間が余りありませんけれども、大臣のお考えを承りたいと思います。  実は、五月二十四日に当委員会におきまして、私も質問者の一人であったわけですが、アメリカの水爆水没事故につきまして、我々は二十四年前の事実を初めて最近知ったわけであります。これは五月八日、新聞等で報道されたところでありますが、それ以降、予算委員会等立場質疑が行われましたし、今申しましたように、私も当委員会質問を行ったのであります。もうここで細かく繰り返すことは避けたいと思いますが、我々として一番大きな関心は、タイコンデロガが核を搭載して横須賀に入港したかどうかという点でありますと、それに対して有馬アメリカ局長は、既にアメリカ側に照会しており、その確認を得るに至っていないと答弁されたのでありますけれども、その後大分時間がたちましたが、アメリカから回答がございましたか。
  260. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 そのほかにも幾つか照会いたしておりますけれども、まだ接到するに至っておりません。
  261. 河上民雄

    ○河上委員 いまだに回答が得られない、確認が得られないというのは一体どういうことか。これは国民が納得しないますます疑惑を深めるだけではないかと思うのですが、あるいは確認があったけれども発表できないということではないか。あってはならないと思いますが、まさかそういうことではないと思いますけれども、なぜこんなにおくれているというふうにお考えになりますか。
  262. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 米国政府としても確認の努力を行っておりますけれども、何分、二十四年前のことでございまして、それに時間がかかっているということと承知いたしております。我が国政府といたしましても、当時、一九六五年十二月五日にこの事件が起きました後に、本邦で提供しております施設、区域に入港したのかどうかということを確認する努力をしたのでございますけれども、それができなかったということがございます。
  263. 河上民雄

    ○河上委員 それではタイコンデロガという空母は現在どうなっておりますか。
  264. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 これは一九七三年でございますか、退役いたしております。
  265. 河上民雄

    ○河上委員 そのころ、既に退役をした空母が水爆を搭載していたということは明らかですね。
  266. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 事故が起きましたとき、すなわち一九六五年の十二月五日に航空機がすべり落ちるわけですけれども、そのときにその飛行機に核兵器が搭載されていたことは事実でございます。
  267. 河上民雄

    ○河上委員 そのころでも水爆を搭載することが常態であるというか普通の姿であるといたしますると、それ以後の空母は当然すべて核搭載であるとみなす方が常識的だと思いますけれども、いかがでございますか。
  268. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 まず第一に、米国政府はみずから有しております艦船、航空機等の武器について詳細を公にしていないということがございます。  それから第二に、核兵器につきましては、それの抑止力の信憑性を維持するということで、その存否を明らかにしていないということもございます。
  269. 河上民雄

    ○河上委員 いずれにせよ、水爆水没事故が起きたことは確認されておる。タイコンデロガがそのとき水爆を搭載していたことも確認されたわけです。その後、タイコンデロガが横須賀に寄港したかどうかということがいまだにわからないというお話ですが、これは引き続き努力をされますか。
  270. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 いたします。
  271. 河上民雄

    ○河上委員 最後に外務大臣にお伺いいたしますが、外務大臣、このたび通産大臣から外務大臣になられました。外国から見ますと、これは大変重要な人事であるというふうに見られるのではないかと思いますが、先般OECDに三閣僚の一人としてお出かけになりました。そこで三塚通産大臣日本は輸入大国になるという言葉を使われました。この輸入大国化の具体的なスケジュールをお示しになる必要はあろうかと思います。これは必ずパリ・サミットで出てくるのではないか、こんなふうに思いますが、大臣、いかがでございましょうか。
  272. 三塚博

    三塚国務大臣 スケジュールということになりますと、彼我の関係でございますから、両国との間の関係でありますので、その条件等によって違ってはくると思いますが、当時通産大臣として、経済大国日本、黒字大国日本という観点の中で、経済摩擦をできるだけ鎮静化をしつつ、拡大均衡の中で世界経済に貢献する日本ということを目指すためには、輸入大国を目指す、これは輸出大国と同義語という意味で使わさせていただいているわけでございますけれども、輸出するだけではなく、かの国の製品輸入に努力をしてまいる。また共同開発などを行いますことにより、これまた輸入促進に資する。あるいはアンフェアだとよく言われます慣行、制度等改善をほぼしてきておるというふうには心得ておるわけでございますけれども、そういう指摘に対しまして、そのことの障壁がありとすれば、言われることによって正すのではなく、みずからその場合にはこれを是正をしてまいる、こういうことの中で風通しがいい形にこれを仕向けてまいるということであります。一年一年、また一カ月一カ月、四半期ごとに、あるいはまた最大の結果を見つつ、その状況を分析しつつ、さらなる努力を、国としてもさることなが.ら、それを担当しますのは産業界でございますものですから、各位の自覚と努力を待つ、もちろん国の政策として内需主導型の経済運営政策は、そのまま続けさせていただく、こういうことでありました。
  273. 河上民雄

    ○河上委員 それでは最後に、先般来アメリカの通商代表部、USTR代表のヒルズさんとかあるいは商務長官のモスバカーさんなどと直接交渉された三塚さんにお伺いいたしたいのでありますが、アメリカの対日政策は、いわば日本の占領時代から今日まで一貫して国務省がリードしてきた。ダレスというような名前を思い起こしますが、一貫して国務省がリードしてきた。しかし、どうも最近は商務省にイニシアチブが移ったのではないかというような観察もありますけれども、今通産大臣から外務大臣にかわられた三塚さんとして、今後交渉される上の一つのポイントになると思いますけれども、対日政策がどうも商務省を無視できないといいますか、商務省の方がどうもイニシアチブを発揮しているのではないかというような感想は御自身の体験から持たれたかどうか、それをちょっと伺いたいと思います。
  274. 三塚博

    三塚国務大臣 率直に申し上げさせていただきまして、スーパー三〇一、国会議員立法、上下両院大騒動をいたしましてつくられたものでありまして、この法律の執行は通商代表部に与えられておる。同時に、商務省も産業界を主管するという意味でこれに深くかかわり合う。こういうことどもの中で、経済摩擦が熱くなってまいりますと、前面に出てくることは御案内のとおりであります。しかしながら、バイにしろマルチにしろ、全体の外交展開ということになりますと、国務省がその主要な役割を果たしてまいるわけでございまして、バイによってカウンターパート同士の話し合いが、通産省及び商務省、通商代表部等において処理でき得るものがありますれば、それはそれなりのものでありますが、多角的な、重層的な分野に日米貿易がわたっているものでありますから、そんなことで両々相まちましてこれが行われなければならないと思ったところでございます。  以上でございます。
  275. 河上民雄

    ○河上委員 それではまた、そういう両大臣を引き続き経験された三塚さんならではの交渉能力を大いに発揮していただくことを期待していいのかどうかわかりませんが、これで私の質問を終わらせていただきます。
  276. 相沢英之

    相沢委員長 次に、井上一成君。
  277. 井上一成

    井上(一)委員 私は、リクルート疑惑で政界が大きく揺れ、今まさに国民政治に対する信頼を失っている、そういう中にあって、すべて政治の、特に政府の仕事についてはオープンでなければいけない、こういうふうに思うのです。ついては、緊急経済対策の一環として昭和六十二年に政府政府専用機の調達、購入を決定したわけです。この決定について伊藤忠を介入させた経緯、さらには契約金額、前渡金の支払い等々について、金の流れ、契約の経緯も含め非常に不明朗な疑いを持たざるを得ない幾つかの問題点を私なりに持っているわけであります。  そういう意味で、きょうはできるだけこの点に絞ってひとつ詳細にお聞きをしたい。でき得ることならば、防衛機の主力戦闘機の購入について一部始終公開せよ、そういちことではなく、いわば純然たる政府専用機、今回の購入は首相の専用機、さらには邦人の緊急避難の場合における専用機でありますから、一部始終を明らかにして、その疑問点に答えていくというのがまさに政治に信頼を取り戻すことであり、政治改革という、大げさな表現ではいろいろ言われますけれども、そのことすら十分できないようでは困りますので、前もって私のお尋ねしたいのは、すべて政府専用機の購入については明らかにしてほしい、公開をしてほしい、こういうことでございます。  そういうことについて、大臣、まずは明らかに公開をする意思があるかどうか、ひとつお答えをいただきたい。それから個々の問題について、それぞれの担当部局の方と私は詰めていきたい、こういうふうに思います。
  278. 三塚博

    三塚国務大臣 政府行政は透明性、明確でなければなりません。そういう意味で、疑念があるとすれば、政府委員の答弁の中で明確にいたし、疑念を情らしていかなければならぬ、こういうことであろうと思いますので、その趣旨に沿います。
  279. 井上一成

    井上(一)委員 まず、伊藤忠に介入をさせた、ボーイング社の決定以前の問題として何社からどのような推薦があり、いわゆるボーイング社に決定する経緯について簡単に説明を願いたい、こういうふうに思います。
  280. 内藤勲

    ○内藤(勲)政府委員 お答えいたします。  政府専用機の機種の決定に至る経緯でございますけれども、先生がおっしゃいましたように、緊急経済対策の一環、あるいは諸外国の例にも倣い、そういうことでございますが、決定いたしましたのは内閣官房に官房副長官を委員長とし、防衛庁、外務省、運輸省の関係局長で構成される政府専用機検討委員会というものを設けまして、その場で検討いたしました。そして六十二年十月でございますが、ボーイング社の747-400ということにしたわけでございます。  その決定の理由といたしましては、その飛行機が最新鋭機で航続性能等にすぐれていること、機体の容量が大きく運用に柔軟性があること、それから十分な整備支援体制を見込み得ること、そういった理由を勘案いたしまして、ボーイング社の飛行機に決定した、そういう経緯がございます。
  281. 井上一成

    井上(一)委員 ちょっとお願いをしておきますが、時間が限られておりますので、前回、私の質問主意書についてお答えをいただいたことについては十分了解しておりますので、それを読み上げてもらうことはむだである、そういう答弁は必要ない。今私が言ったように、何社その選考の範疇に入ったのか。
  282. 内藤勲

    ○内藤(勲)政府委員 検討の経緯では、複数機の検討を行いましたけれども、最終決定したのは、先ほどのボーイング社の747-400ということで、採用にならなかったものにつきましては、契約の対象になりませんでしたので、そういったものの経緯については説明を差し控えさせていただきたいと思います。
  283. 井上一成

    井上(一)委員 複数とか差し控えたいということでは、これはだめなんだね、今外務大臣が言われたように。だから内閣はこれを公表する意思がないのかどうか。そんなことでは私はよろしくない。政治に不信が募るだけだ。今整備体制のいわば見込み得る機種を選んだ、そういうことも言われているのですが、本来、ボーイングの代理店はどこなんですか。
  284. 山本雅司

    ○山本(雅)政府委員 私どもは、今総理府から御答弁いただきましたように、政府として決定した後で、この具体的な契約事務等の委任を受けましてとり行いました。その場合のボーイング社の代理店といたしましては、伊藤忠商事株式会社ということでございまして、これは契約に先立ちましてボーイング社からその旨の確認書をとっております。
  285. 井上一成

    井上(一)委員 あくまでもボーイング社の代理店は、民間機というと普通通常は日商岩井なんですね。今回、政府は伊藤忠を仲介代理店に指名をした、こういうことなんでしょう、ボーイングの日本における代理店。
  286. 山本雅司

    ○山本(雅)政府委員 この点につきましては、確たる書類による確認はしておりませんけれども、私どもの了解では、確かに今先生指摘のように、一般的な民間の商売に関しましては日商岩井、それから政府の調達に関しましては伊藤忠であるというように私どもは承知しております。
  287. 井上一成

    井上(一)委員 そういう国際取引、契約をやる場合には、公正取引委員会に報告義務があるわけなんです。公取の方、いらっしゃると思います。これはまたいろいろ企業秘密だとか云々ということでお答えが渋られると思いますけれども、あえてこの際、伊藤忠はこの契約について、いわゆるボーイングの代理店業務の実存を示すためにも、公取に提出をされていますか、そのことを聞いておきます。
  288. 上杉秋則

    ○上杉説明員 お答えいたします。  ただいま御指摘のように、独占禁止法上国際契約が結ばれますと、三十日以内に当方に届け出をされることになっておりますけれども、その範囲というのは公正取引委員会規則で定めることにな  っております。  具体的に代理店契約の定めを見ますと、国内事業者と外国事業者の間において売買を一年を超える期間にわたって継続して行う、こういうものについて届け出義務がかかっているわけでございます。  私どもの方で御指摘のような契約が伊藤忠からボーイング社を相手として当該期間にあったかということをチェックいたしましたところ、そのような届け出はございませんでした。今申し上げましたように、規則ではこういった一回限りの取引であれば届け出義務がないというふうに書いてございますので、届け出義務が今及んでいるかどうかという点については、もう少し調べないと即断できない状況でございます。
  289. 井上一成

    井上(一)委員 いわゆるスポットでの、一回限りでの契約では及ばない。これは国庫債務負担行為がついているのですよ、この政府専用機購入については。それは単年度という解釈を私はしない。複数機を買うわけです、二機を。まあ契約は一回であったとしても、これは単年度契約ではないし、むしろ伊藤忠はその義務を怠っているのではないか。あるいは急遽何らかの理由があったのかもわかりません。  そこで、私の質問主意書によれば、主意書に対しての答弁として、政府当局はボーイング機を政府専用機として購入するのに伊藤忠商事と契約をした、契約相手は伊藤忠であるということを答弁書に書いているのです。これは間違いございませんか。
  290. 山本雅司

    ○山本(雅)政府委員 私どもが政府の予算を支出いたしました場合の契約のベースになりますのは、予算の支出担当官であります調達実施本部長と、相手方は伊藤忠商事株式会社の代表取締役になっております。
  291. 井上一成

    井上(一)委員 あなた方はそういう答弁を――もともと代理店というのは業務の主体が仲介、いわゆるあっせんなんですよ。政府が買おうとする機種を伊藤忠がつくっているのなら私は理解ができる。今は公取の問題も一つ疑問が出てきました。日本の代理店である伊藤忠が契約当事者になるということは通常は考えられないことなんです。それを不思議にというか疑問を持ちませんか。あなた方はそういう点について何か疑問を持たなかったのかどうか。これはいかがなんですか。
  292. 山本雅司

    ○山本(雅)政府委員 確かに今井上先生指摘のように、一般的には継続的あるいは多量に買う場合に、これも確たる確認はしておりませんが、例えば日本航空とか全日空とかが買う場合には、自分の名前で、なおかつ相手は供給者というのが多いと了解しております。  ただ、政府が買います場合には、今度の場合には二機でございますし、一般的には、政府といたしましては、自分で先方にまで出向いて、あるいはいろいろ自分の手足を使ってやるという形を持っておりませんものですから、一般輸入の場合には、基本的には代理店といいますか、本邦にある先方の代理人を通して買う、あるいはそれと契約をするというケースが今までも多いのは事実でございます。
  293. 井上一成

    井上(一)委員 いわゆる政府筋と申し上げておきましょう。政府筋とボーイング社との何らかの直接の接触は全くなかったと言い切れるのでしょうか。
  294. 山本雅司

    ○山本(雅)政府委員 これは、やや内部の問題になって恐縮でございますが、私どもの契約事務等をやりました場合には、ボーイングと直接ではなくて、その代理人たる契約の直接の相手方たる伊藤忠商事とやったのは事実でございます。ただ、それまでの過程でいろいろ具体的な内容を詰める場合には、あるいはボーイングといろいろの話し合いをしたということはあるかと存じます。
  295. 井上一成

    井上(一)委員 そうでしょう。政府が直接ボーイングといろいろな詰めをしているわけなんです。私の調べでは、少なくとも今回日本政府の購入に関して、伊藤忠は契約交渉に関して、契約交渉に関して、日本政府の代理人として参加しなかったのかという私の質問に対して、ボーイング社は、していない、伊藤忠はボーイングのエージェントであり購入者の代理ではない、こういうふうにはっきり言っているのですよ。どういう経緯で伊藤忠を選定し伊藤忠と契約を結んだのか。これはやはりこれだけボーイング社がそういうふうに私にはっきり言っているのですから、ひとつそこは明らかにしてもらわないと、国民政治に対する信頼は取り戻せませんよ、政府は何をやっているんだと。疑いたくはないけれども、いろいろな金の流れというのを後でまた申し上げますけれども、あなた方は一体どういうふうに税金を使っているんだと言いたくなるわけです。ボーイングは、伊藤忠との直接契約ではない、こういうふうに私の調査で私に話しているのです。このことについてはどうお答えができるのですか。
  296. 山本雅司

    ○山本(雅)政府委員 これも今申し上げましたように、契約事務に関しましては伊藤忠と全部行いまして、その前提としてはボーイングとして正当なる代理権を与えているという証拠書類も実はとっておるわけでございます。したがいまして、今先生の御指摘のは、具体的な飛行機の性能とかよさとかいうものにつきましては、その契約事務の前の段階で、いわゆる機種選定の段階でいろいろ接触があったという点を見ますと、確かにおっしゃるように、ボーイングが中心となってやったということは実態としてあるかと考えられております。
  297. 井上一成

    井上(一)委員 私は今重ねて契約関係に関してと申し上げたでしょう。伊藤忠は、日本政府専用機購入に関して、いわゆる契約交渉に関して日本政府の代理人としては参加してない、こういうふうに言っているのですよ。機種選定のプロセスで向こうと接触したということでなく一さらに申し上げましょう。それでは契約交渉は日本政府と直接したのか、これに対して、そうです、こういうことを言っているのですよ。日本政府高官とボーイングの間で行われました、ボーイングの責任者がこのように私に。私の知り得るところの情報であります。そういう点はお調べになりますか。それでもなお、いや、全く政府は関与してないとあなたは言い切れるのでしょうか。
  298. 山本雅司

    ○山本(雅)政府委員 この点は、今井上先生再度御指摘でございますけれども、私どもの方はいわゆる具体的な契約事務を行っておりまして、その場合には、あくまでも形式的ではございますけれども、政府と伊藤忠との間の契約になっております。ただ、伊藤忠がなぜ出てくるかという問題につきましては、私どもといたしましても、確かにこれが正当なるボーイングの飛行機を取り扱う機関であるということを確認するために、事前にボーイング社から確認をとっておりまして、それはボーイング社から私どもの方に対する書簡の形で受け取っておるというのが実情でございます。したがいまして、それ以前の段階で具体的な話し合いがどうなったかということにつきましては、書類上は私どもは確認してないというのが実情でございますが、少なくとも契約行為につきましては、私どもといたしましては、あくまでもボーイング社の念書といいますか書類をとった上で、日本における代理権を持っております伊藤忠と契約をしたというのが実情でございます。
  299. 井上一成

    井上(一)委員 本来念書を必要としたのかどうかも疑問なんです。しかし、時間がありませんから深くそこには及びませんが、代理店である伊藤忠から買う。じゃ代理店手数料は政府は払うのですか払わないのですか。その手数料は購入価格に入っているのですか入ってないのですか。そして、なぜボーイングがわざわざ伊藤忠を指名してこなければいけないのですか。政府の方からそれをアプローチしたのですか。日商岩井が本来、いわば民間ベース、いわゆるこのような飛行機についてはエージェントだったのです。急遽ぱっと伊藤忠が出てきたわけです。その背景にもやはり疑問があるわけです。  だから、まず手数料はどうなんですか。代理店手数料を払うのでしょう。それは契約金額に入っているのですか、どうなんですか。
  300. 山本雅司

    ○山本(雅)政府委員 私どもと伊藤忠との売買契約につきましては、先方の見積書に基づきまして、原価の各項目について査定したわけでございます。その中の一項目といたしまして手数料という項目が入っております。
  301. 井上一成

    井上(一)委員 買う相手に、当事者に手数料を払わなければいけないような物の買い方があるのか、常識上。こういう貿易摩擦を解消、一連の特別的ないわゆる経済行為なんですよ。それ一つをとらえても非常に不自然である。さらに、それじゃ金額は幾らなんですかということで、既に私の質問主意書で契約金額は三百五十九億六千二百万円だ、こういう答弁があるんです。そして支払い方法としては、前払い金及び納入後の支払い。そして前払い金はいつ払ったのか。六十二年十二月、七十九億、六十三年六月、六十四億支払つた。これは契約書にそう書いてあるんですか。契約者はボーイングと伊藤忠なのか、伊藤忠と政府なのか。ボーイングと伊藤忠の契約書を知っているのかどうか。ボーイングはあくまでも伊藤忠を介した政府との交渉だ、私の情報ではこういうふうに知り得ているわけですから、伊藤忠が介入したこと自身に問題があるということを指摘をしておきました。だから、この前渡金、いわゆるトータルの金額に手数料は入っていない、こういうことで、手数料を支払うということもわかりました。さらに前渡金については明記をされたんですか。それとも明記をされずに支払ったんですか。
  302. 山本雅司

    ○山本(雅)政府委員 金額をお答えする前に、ちょっと手数料についてつけ加えますと、手数料というのは、私どもと伊藤忠との契約の中に一つの原価項目として含まれているということでございます。これは一般のいわゆる代理店手数料とみなすべきものかどうかということについてはいろいろ学説的な異議があるかとは思われます。  それから、具体的な支払いにつきましては、六・十二年、それから六十三年六月、さらに、実は議員に対する答弁書で申し上げた後、本年の六月にまた払っておりますが、この支払い計画というのは契約書に基づいた支払いになっております。
  303. 井上一成

    井上(一)委員 ことしの六月にまた支払っているんですか。幾らなんですか。
  304. 山本雅司

    ○山本(雅)政府委員 ことしの六月に支払いましたのは約六十二億四千百万円でございます。
  305. 井上一成

    井上(一)委員 総金額の割合からいけばもうどれだけ払ったんですか。
  306. 山本雅司

    ○山本(雅)政府委員 今まで答弁書で申し上げたのは七十九億と六十四億でございますから、約百四十億でございます。それから、これに六十億足しまして、約二百億というのが現在までに払った累計になっております。
  307. 井上一成

    井上(一)委員 政府の契約は一機幾らなんですか。
  308. 山本雅司

    ○山本(雅)政府委員 これはこの前答弁書で申し上げましたように、全体がたしか三百六十億でございますから、一機その半分といたしますと百八十億になっております。
  309. 井上一成

    井上(一)委員 百八十億にして、二百億を払って、その機材がもう手に入ったんですか。
  310. 山本雅司

    ○山本(雅)政府委員 これは国債行為でございまして、たしか五年国になっておるかと思われます。したがいまして、機材の手配などは先方でいたしますから、その関係で、契約で定められた必要な金額を払っているということで、どういう機材の手当てをしているかということは、私どもは具体的に直接つかんでいないのが実情でございます。
  311. 井上一成

    井上(一)委員 これは非常に不明朗きわまりない。通常の航空機購入については二〇%ぐらいの前払い金を渡して、引き渡し時に残金を渡す、そしてそこで、後で言いますが、割引クーポンという値引き分が追加されてくるわけです。これが航空機の通常の取引なんです。  今、例えば平成三年九月三十日が納期だ。私の知る範囲では一機がアバウトで一億二千万ドル。私は、この六月に六十二億四千百万円を払っているということは知りませんでしたので、少なくともその以前、百四十三億、今日のレートにすれば少しあれでございますけれども、トータルの四〇%以上支払っている。これは前渡金を支払い過ぎだ。なぜそれだけの金を先に支払わなければいけないのかと思って、そういう疑問があるのですと。今開けば、飛行機ももらわないのに半分以上払ってしまっているという。物を買って、それは何ぼトータルで三百六十億であろうが、二百億も先に金を払ってしまう、そんな契約がどこにありますか。  念のために、私は日本政府は既に百四十億支払っているということを先方に伝えました。ボーイングは、それはツーハイだ、多過ぎる、通常前払い金条項が契約書に含まれているが、それほど高くないとボーイングははっきり言っているのです。この金は一体どこへ行ったのですか。伊藤忠がどこへ持っていったのですか。伊藤忠がその金をどうプールしているのですか。そんなことをはっきりせずに、政府専用航空機の購入、これに私は大きな疑惑を持った。飛行機を納入もしないのに、それだけの金を支払うなんということは、通常通りますか。商品ももらわないのに、全額、それ以上に払ってしまう。ボーイングはそういうふうに言っている。  さらに、この契約はドルベースだというふうにボーイングは言っているのですよ。政府は私のその質問に対して、輸入品にかかわる部分についてはドル価格を基礎としている、しかしあとは円だ。全部輸入なんですよ。少なくとも日本でつくられるパーツ、部分的な製品は全部輸入なんです、飛行機全体が。ドル建てであるのかないのかという質問にも、そんなあやふやな答弁しかできない。直接あなたが折衝されたわけではないので、僕はあなたに対してこういう質問を非常にしづらいけれども、余りにも国会国民に対して真実、真相を言わないというところに私は強い怒りを持っているわけなんです。疑惑のないことを望みますよ。しかし、通常の、常識的な取引をしてもらわなければいけないし、常識的なことを約束してもらわなければ、これはおさまらぬね。委員長、これは内容をすべて国会に明らかにすべきだ、国民に明らかにしなければ、この問題はもう大変だ。  大臣大臣就任早々ですが、外務大臣としてこんなことはもう許されない。いや、外務大臣とか主管の大臣という問題ではない。今お聞きのとおりです。私がなぜ疑問を持たざるを得ないかということがおわかりでしょう。大臣、いかがですか。政治家として、外務大臣として、政府の閣僚として、私は大臣からこの問題についての認識をひとつ聞いておきたい。
  312. 山本雅司

    ○山本(雅)政府委員 今の井上先生の御指摘、非常に鋭いところを御質問なさっているのですが、その内容として一、二事実だけまずお答えしたいと思います。  一つは、契約そのものは円建ての契約になっておりますが、そのベースはドルをもとにして円をはじいているというのは事実でございます。  それからもう一つ、伊藤忠に払ったのがどうなっているかという点につきましては、私どもが支払うときには外貨の支払いをベースにして、それの円価が幾らかというのを見て払っているわけでございまして、その点についてはガラス張りにやっておるわけでございます。
  313. 井上一成

    井上(一)委員 大臣がわからないという――確かに私もそう思う。ただ、やはり聞いてもらっておって、こんなことが通りますか。みんなが選挙区に行って国民の皆さんに、自民党がこういうことをやっとんねん、そんなこと言ったら、それこそ国民から、ただでさえ支持率が低いのに、それはもうとんでもないことになる。私はリクルートとはごっちゃにはしたくない。ごっちゃにはしたくないけれども、私はあなたに対してとやかく余り強く責めることは、本来私の気持ちとしては本意じゃありませんが、あなたはお金を払うときにはちゃんとしていますということで、さっきも手数料も金額の中に含めてまんねんとか、そんなもの大体買う先に手数料払うばかがどこにあるか。ばかというのは、私から言えばそんなあほなことどこにありますか。  さらに、航空機購入に関しては、必ず引き渡し時、いわゆる受け渡し時に割引クーポンというものが、ディスカウントクーポンがつくわけなんです。これはJAL、日本航空だって全日空だってすべてそういう割引クーポンがあるわけなんです。それはボーイングだけにしか使えない、伊藤忠が割引クーポンをもらえば。伊藤忠にボーイングだけにしか使えない割引クーポンがボーイングから渡るわけです。あなた方はそういうことを知っていますか。飛行機を購入したときに、少なくとも割引クーポン、ディスカウントクーポンが引き渡し時に必ずついているという、これは商習慣としてそういうことがあるということは御存じですか。
  314. 三塚博

    三塚国務大臣 それでは時間もないようですから、私から。  ただいま熱心な御質疑を承りました。井上委員井上委員として調査の上の御指摘、また政府委員各位は事実に基づいたそれなりの報告、こういうことで、両方ごもっともだな、こう思うのであります。しかし、そういう点で、さらに本件について明確に相なりまして、質疑者である井上委員が依然として釈然としないところがあるとすれば、これは問題でありますから、釈然とするように政府の側もしなければならぬ、こういうことでありますので、三十分の間の質疑応答で冷静に聞いておったつもりでありますが、その点暫時、私は私で今よく承りましたものですから、政府代表という形に相なりまして聞いている感じでありますから、対応してまいります。
  315. 井上一成

    井上(一)委員 私の時間が三十分ということですから、委員会の取り決めでもありますから守っていきたい。  要は、伊藤忠を介入させたこと、その経緯、さらには前渡金がべらぼうに、もう今聞けばびっくりするぐらい、飛行機ももらわないのに、三年も四年も先の話を、全部一機丸ごと払っています。これはボーイングには入ってないわけですけれども、そういう問題。そして割引クーポンの問題も含め、この問題はきょうは全部詰め切れませんけれども、今大臣が今後この問題についてオープンな形で私に対しての返答、答えを出す。何か非常にどろどろとした、そこに常識でははかり知れない嫌らしいものがあるのではないか。そして、物を買うときにはもうちょっときっちりとした買い方を政府はしないと、こんな買い方をしておったら、これは国民は消費税どころか通常の税金に対しても払うことをちゅうちょせざるを得な、税金が正しく使われていない。私たちは、やはり国会の中ですべて真実を明らかにして、それに基づいての真摯たる議論をしていきたい、こう思います。政府専用機購入に関しては大変不明朗な購入の仕方であり、不明朗な点が幾多あるということを強く申し上げて、私はこの質問は留保しておきます。
  316. 山本雅司

    ○山本(雅)政府委員 一言だけ事実を申し上げますと、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、私どもが伊藤忠に支払う場合には、伊藤忠が外貨送金をしたという証憑をもとにしまして、それが幾らだということで支払いをしておりますから、伊藤忠に払ったものがどこかに回っているという事実はないということだけは証憑で確認しておるわけでございます。
  317. 井上一成

    井上(一)委員 政府専用の購入機である――それは伊藤忠はボーイング社といろいろな取引をしているのですよ。ボーイングにいろいろ払っているかもわからぬ。しかし、伊藤忠は大きな商売をしているわけですよ。政府の専用機の代金としてボーイングが――それじゃボーイングは引き渡しもしないのに全額、いや、それ以上に金を受け取ったというのですか、あなたは。そんなものを受け取るはずもないし、そして機材も受け取らずに金を払う、それこそとんでもない。そんなばかげた話は我々には通りませんよ、こういうことなんですよ。確かにそれは送金をした。それは何に対する代金であるか、前渡金は。もっと早く言えば、そういう契約をしたのですか。  それでは申し上げます。契約書を出しなさいよ。そんな契約をしたのですか。機材をもらわないで、これだけ、いついつに二百億も金を払うという契約をしたのですか。契約をしたとしたら、それは契約をした責任が問われるべきだ。私は時間を厳守するということで後にゆだねたのだけれども、あえて答弁をしたのだから、そんな契約をしたのかどうか、はっきりとしなさい。はっきりしなさい。そういう契約をしたのか。
  318. 山本雅司

    ○山本(雅)政府委員 私どもが契約しましたのは、先ほどもお話し申し上げましたように、私どもと伊藤忠の間でございます。その伊藤忠との間の契約の中では支払いの時期と支払いの金額は明示されております。  それから、先ほども申し上げましたけれども、伊藤忠が相手方のボーイングに払ったというのは証憑で確認して、その上で私どもが払っているというのが実情でございます。
  319. 相沢英之

    相沢委員長 井上君に申し上げます。質疑時間が過ぎておりますので、御協力お願いいたします。
  320. 井上一成

    井上(一)委員 私は決して満足ではないし、まだまだこの問題については時間を改めて質疑をします。委員会運営に協力をして、この質問はとりあえずきょうはこれでおいておきます。
  321. 相沢英之

    相沢委員長 次に、神崎武法君。
  322. 神崎武法

    ○神崎委員 初めに中国問題からお尋ねをいたします。  当委員会におきまして、既に各委員からいろいろな角度からお尋ねがございましたので、何点かに絞ってお尋ねをいたしたいと思います。  今回の中国におきます民主化運動に対する武力鎮圧、これに対する各国の対応、反応を見ますと、欧米諸国が厳しい対応をしているのに対して、我が国が極めて慎重な対応をしておるところでございます。この背景といたしましては、日本政府としては、過去の歴史もあり、特別な関係を配慮している点が強く感じられるわけでございます。  まず、大臣にお尋ねいたしたいわけでございますが、さきの日中戦争に対する外相の認識をお尋ねいたしたい。
  323. 三塚博

    三塚国務大臣 日中戦争に対する認識でございますが、我が国の過去の歴史に対する認識は、昭和四十年の日韓共同コミュニケ、昭和四十七年の日中共同声明に述べられておりますとおりであり、いささかの変更もございません。また我が国が過去において戦争を通じて近隣諸国等の国民に対し重大な損害を与えましたのは事実であり、かかる我が国の過去の行為について侵略的事実を否定することはできないと考えております。  我が国としては、かかる認識を踏まえ、平和への決意を新たにするとともに、このようなことを二度と起こさないよう、平和国家として世界の平和と安定のため貢献をしてまいるという考えでございます。
  324. 神崎武法

    ○神崎委員 そういたしますと、今回の問題に対する欧米諸国の対応と我が国の対応に際立って差が出た、その点はどこに判断が分かれたかという点でございますけれども、さきの戦争の歴史的認識を踏まえて、それに重きを置いた判断であるためか、あるいは今回の事態に対する特別な配慮があった上での判断なのか、その点についての外務大臣のお考えをお尋ねしたい。
  325. 三塚博

    三塚国務大臣 今回の慎重な対応は、まさに過去の日中関係という歴史の一つの事実の重みというものを踏まえながら、同時に内政問題という基本に立ちまして、その帰趨をしかと見定めてまいりますことが、特に最も近い隣国としての対応ではなかろうか。かように考えましたものですから、天安門における学生諸君に対する人民解放軍の銃口を向けた殺傷は人道上許しがたい、このことは表明しつつも、政治全体に対しては、ただいまのような対応をした、こういうことでございます。
  326. 神崎武法

    ○神崎委員 中国におきます邦人保護の問題をお尋ねしたいわけでございますが、現在の状況、邦人の帰国と残留はどうなっているのか。北京ではどうか、全国ではどうなのか。特に何か問題があるのかどうか、その点についてまずお尋ねをしたい。
  327. 黒河内久美

    ○黒河内政府委員 まず、北京の状況でございますが、七日に退避勧告を発出した後、邦人の退避が一応一段落したという段階におきましては、大使館が把握しておりました北京での在留邦人の数は、館員を除きまして約二百名でございました。しかしながら、同時に地方都市から北京を経由して出国される方、あるいは北京経由で他の地域に出る邦人というのが常時おるわけでございまして、さらにここ一両日現地に帰る人たちも若干出てきておりまして、大使館といたしましては、その数の把握に最大の努力を行っておりますけれども、現時点での数というのは、今ここで申し上げるのはかなり困難な点があることを御了解いただきたいと思います。  他方、中国全土の邦人数でございますが、これも同じく国内を移動している邦人が数多くあるわけで、正確な把握は困難でございますけれども、現時点で在中国大使館及び総領事館が確認している数といたしましては約千六百名でございます。さらに在中国の各公館におきまして、各地域と密接に連絡をとりながら邦人滞在者の動向の把握に努める所存でございます。  ただ、現在まで約四千人の方が無事日本に帰ってこられましたし、そのほか地方におきましても、事態は大体平静であるという報告を受けておりまして、特に問題があるとは考えておりません。
  328. 神崎武法

    ○神崎委員 今回の事態に対して在中国の大使館あるいは領事館の皆さん方は大変御苦労だったと思います。その点については心から感謝を申し上げますけれども、ただ、私は、欧米のこういう事態に対する対処と比べまして、我が国の対処が果たして万全であったかどうか、その点はもう一度外務省内でも御検討をいただきたいと思うわけでございます。  と申しますのは、天津の事例でございますけれども、天津の日本人留学生から父親に対して電話があった。そこでの話を聞きますと、日本人の留学生が十八人いる、欧米の留学生も多数いらっしゃる。その中で、今回大変な混乱がやはり天津においても生じた。死傷者も出たというような事実があった。そしてそれに対してイギリスもフランスも、マイクロバスが領事館の方からすぐ来て、留学生を避難させる、そういう態勢がとられた。日本人留学生だけがそういう対応策がとられていなかった。北京に至る道路も封鎖されている。鉄道もとまっている、ストップしている。どうしようもない。そういう中で一体どうしたらいいのかということで悲鳴を上げている、そういう電話が現地から父親経由で入ってきているわけでございます。やはり欧米諸国はある意味ではこういう動乱になれていると申しましょうか、大体そういうことがある場合にどうするか、そういう対応策というものが、これはもう過去の経験でいろいろできているのではなかろうかと私は思うわけでございます。それに比較して我が国の場合、果たしてそういう対応策というものが現地で十分できているかどうか。その点については、私は、今後省内でも十分検討していただきたい、このようにお願いいたしたいと思いますが、その点についていかがでございましょうか。
  329. 黒河内久美

    ○黒河内政府委員 先ほど御説明申し上げましたとおり、北京におきましては、非常な事態の悪化にかんがみまして退避勧告というものが出たわけでございますが、基本的には地方都市におきましては、若干の問題はございましたけれども、特に留学生の皆様につきましては、大学の中にいることの方がかえって安全である、むしろ北京に出てこられることが果たして安全確保の上で最善かどうかという判断もあったわけでございまして、私ども在北京大使館では、天津の皆様とも日本人会などを通じて御連絡をとりながら、御希望に応じて、また事態の推移を見ながら何が一番適切かということを考えて対応しようとしていたところでございます。ただ、情勢がその後鎮静化いたしまして、在北京大使館の方から地方当局及び大学当局に対して留学生の安全確保について十分配慮するようにという要請などをいたしましたものですから、当面のところは情勢も落ちつき、留学生の皆様方も当面事態の推移を見ようということになっているというふうに理解しております。ただ、御指摘の点は、私どもも十分反省いたしまして、今後の邦人保護対策の強化にさらに努力をいたしたいと考えております。
  330. 神崎武法

    ○神崎委員 その点はよろしくお願いをいたしたいと思います。  それから、今回の中国のこの事態の影響の問題でございます。我が国に対する影響という点で二点お伺いいたしたいのでございますが、人の見方によりましては、日中関係は今回の事態で十年ぐらい後戻りしたのではないかという見方が一方であるわけでございますが、その点についてどうかという点、それから対中国の経済協力の政策に変更が今後あるのかないのか、この二点についてお尋ねをいたしたい。
  331. 長谷川和年

    ○長谷川(和)政府委員 今回の中国の動乱の日中関係に対する影響でございますが、振り返ってみまして、このところ日中関係がずっと安定裏に推移しておりまして、これは過去の中国の改革・開放路線、この努力だと思いますが、こういった改革・開放路線の努力によって高まった中国の国際的信用というのが今回の動乱によって一気に落ちてしまったと言えるかと思います。この結果、中国の対外関係にもマイナスの影響が及ぶことは避けられないと考えられます。日中関係においてもいろいろ一定の影響が及ぶものと考えられます。  いずれにせよ、具体的な影響いかんにつきましては、今後とも情勢の推移を慎重に見守りまして、同時に国際的な動向も勘案しまして適切に対応していきたいと考えております。
  332. 神崎武法

    ○神崎委員 次に、香港での今回の事態に対する反応というものがいろいろ伝えられてきておるわけでございますが、この香港の返還問題に影響が出るのか出ないのか、この点について外務省とし  てはどのように見ていらっしゃるのか。
  333. 長谷川和年

    ○長谷川(和)政府委員 香港では、今回の中国の戒厳令の公布及び軍による武力鎮圧、これに対して大規模な抗議デモが行われたところでございますが、最近の中国情勢全般に関しまして、香港の住民の皆さんは非常に高い関心を持っております。我が国政府としては、香港の繁栄と安定は、我が国のみならず、アジアひいては国際社会全体にとっても必要あるいは重要と考えておりまして、今後とも一九八五年の中英合意が着実に実施されることを期待しておる次第でございます。  どのような影響を中英合意に及ぼすか、こういった問題につきましては、現時点では香港側は大変心配しておりますが、いずれにしろ、中国の情勢というのが現在平静に復しつつありまして、どのような格好に落ちつくか、それを見きわめてみないと確定的なことは申し上げることはできないと存じます。
  334. 神崎武法

    ○神崎委員 次に、米中関係でございますが、先ほどからも取り上げられておりましたけれども、中国民主化運動のリーダー、方励之さん夫妻が北京の米大使館に避難をしている。中国が逮捕令状を出している。この取り扱いをめぐって米中関係は今後大変厳しいことになることが懸念されるわけでございますが、外務当局としてはどのようにこの事態をごらんになっているのか。  それから、長い目で見たときに、この米中関係関係悪化という問題は我が国にとって好ましくないと考えるわけでございますが、この米中関係を悪化させないために、我が国として何らかのとり得る対応というものがあるのか、そういうことを考えておられるのか、この点についてどうでしょうか。
  335. 三塚博

    三塚国務大臣 米国が今般の中国事態に対しまして累次遺憾の意を表明いたしますとともに、六月五日にはブッシュ大統領が五項目の措置を発表いたしました。また九日には大統領が現在起こっております残虐な行為を非難いたしたわけでございます。他方、中国との関係米国にとり根本的に重要であり、維持する旨の米国の対中基本姿勢も表明いたしたところであります。  また、ただいま御指摘の在中国米国大使館が方励之氏を保護したことにつき、中国側が米国大使館の行動は理由のない中国内政への干渉を構成するとして、深く遺憾の意を表しますとともに、強く抗議するなど、今回の事態米中関係にもさまざまな影響を与えているものと考えられるところでございます。  いずれにいたしましても、米中関係は国際社会の中の重要な関係でございまして、我が国といたしましても、本件が円満裏に解決されることを希望するということは極めて大事なことだということであります。
  336. 神崎武法

    ○神崎委員 サミットでこの中国問題が取り上げられることは必至であるという角度からの御論議がなされたわけでございますが、その前に、ワシントンで日米外相会議が二十六日に開かれると伺っております。ここでは対中政策が最重要テーマになることは間違いないだろうと思うわけでございます。米国側から対中制裁で共同歩調を求められた場合、我が国としてはどう対処されるのか、外務大臣の所見をお伺いしたい。
  337. 三塚博

    三塚国務大臣 先ほども同様な意味の御質問がございました。サミットは、直前の政治問題を取り上げて共同歩調をとる、あるいは意見交換をするということがあるが、本件についていかがか、神崎委員もまさに同様の御趣旨かと思うのでございますが、サミットの政治問題につきましては、従来より直前の政治的諸問題に重点が置かれるといいますか、その傾向にありますことは、私どもも認めておるところであります。あとわずか一カ月ということに控えましたサミットにおきまして、外務大臣として政治問題がかくかくということで申し上げますことは、特に日中関係という極めて一衣帯水の、また歴史的にも交流の深い中国との関係でありますだけに、もう少し様子を見ていかなければなりませんし、また今米国に、今月末をめどに日程調整をいたしておるところでありますので、暫時見詰めていただきながら御激励賜りますならばと存じます。
  338. 神崎武法

    ○神崎委員 次に、日米関係についてお尋ねをいたします。  今、この世界的なデタントの傾向とともに国際情勢は大きく変化をいたしておりまして、軍事面では依然として東西間の対立は残っておりますものの、その他の分野では、従来の東西関係の枠組みというものが大きく変化しつつあるように思うわけでございます。そういう世界的な変化というものが、日米関係にも大きな変化となって、このブッシュ政権になりましてからあらわれているように思うわけでございます。  従来、私どもがアメリカに行っても、アメリカといえば国務省・国防総省という二つの柱、これが世界戦略を支えてきた柱であろうかと思うわけでございますけれども、ブッシュ政権になりまして、スーパー三〇一条問題での商務長官の言動、あるいは今般、法律を改正して商務長官を国家安全保障会議のメンバーに加えたということも伝えられておりますが、この軍事面での国務・国防両省中心の政府から、商務省・通商代表部中心の政府にブッシュ政権において変化があらわれているのではないか、そういう印象を持っているわけでございます。軍事の敵よりも経済の敵を、こういう観点からいかに米国が対処するか、こういうふうに変化が生じているように思うわけでございますが、大臣はどのように認識しておられるのか。
  339. 三塚博

    三塚国務大臣 従前の国務省・国防省という我が国の交渉のカウンターパートがそこにあるわけでありまして、日米問題はここに集約される感じでありましたのが、昨今、商務省・通商代表部が前面に躍り出てきたという感じは、お説のとおりであろうと思います。  これは、まさに我が国の貿易収支が四〇%から五〇%台に、全体の黒字の中に占める比率でありますが、五百億ドルを超えるということのいら立ちというものが経済摩擦ということで、ある意味で経済戦争のような形を示しつつあるのかなという御批判などもございますが、私どもは、そういう中にありましても、経済第一位の米国、第二位の日本が個別問題で激突するのではなくして、自由主義貿易という多角的貿易体制の維持という、こういう中で話を進めてまいりますならば、回避できるのではないだろうかというふうにも実は考えておりまして、そういう事態で、個別問題で深みにはまるようなことだけはということで、今全力を尽くすというのが政府立場であります。さような中で、お互いが基本の枠組みをしっかり踏まえながら取り進むというのが我が国のこれからの態度でなければならぬと思っているところでございます。
  340. 神崎武法

    ○神崎委員 米国の変化で、もう一つの変化ですね。ブッシュ政権になってからの変化として、従来のホワイトハウス中心の政治から議会中心の政治に変わりつつあるような印象を私は持っておるわけであります。そういう意味においては、政治の中心が議会に移ってくる、地域の利益を代表する議員の意向というものが政府の対日政策に大きく反映されてくるのではないか、そういうことを思うわけでございますが、その点についての認識はいかがでございましょうか。
  341. 三塚博

    三塚国務大臣 その点は通産大臣でありましたつい先ほどまで、モスバカー商務長官あるいはヒルズさんあるいはブレイディさんとお会いをいたしましたときに、端的に実は三閣僚からもその意向が表明されました。私どもは自由主義貿易を守り抜かなければならないということで頑張り抜いておるのでありますが、地域を代表するあるいはその州を代表するあるいは産業界を代表する意味で上下両院議員が民主、共和の枠を超えて、このままでよろしいのか、日本にもっとこれだけのものを買わしめることがパートナーではないのか、貿易黒字国日本がなぜそういう意味で門戸を閉ざすのかというようなところまでエスカレートしてまいっておる。まさに御指摘のように、スーパー三〇一はそういう中で制定をされてきた経過がございます。いみじくもそのうちの一人の閣僚が、法律がつくられ、執行が我々に任せられておる、この執行に不十分だと議会が認定した場合に、保護貿易主義に逆戻りする危険が極めて強い、それは自由裁量権を修正でもぎとってしまうのではないだろうか、まさに法律は、一方的制裁を前提とした、すべて包含をした形でくるのではないかということであるといういら立ちを言われたことを今鮮明に思い出すわけでありまして、政府国会関係、ある意味で民主主義が徹底し反映するのかなという一面があろうかとは思いますが、しかしながら、大国アメリカにしてその嘆きがあるということは、我々もひとつやはり同情するとかということではなく、同じ議会政治家の一人として、それなりに聞く耳を持ち、その中から、しからばどうしたならば協調点が見出せるかということで進まなければならぬのかなというふうに思っておるところであります。
  342. 神崎武法

    ○神崎委員 大臣はOECD閣僚理事会におきまして、世界貿易のルールを根本的に破壊すると、このスーパー三〇一条に対して対米批判の演説をされたと伺っておりますけれども、このスーパー三〇一条が日本を名指しに適用されたわけでございますけれども、改めて大臣からこの米国政府の決定と態度についての見解、さらに政府は今後どうこれに対応し、具体的にどう取り組まれるか、この点についてお尋ねをしたい。
  343. 三塚博

    三塚国務大臣 OECDにおきましても、私からも、また当時の宇野外務大臣からも、一方的な制裁措置を前提とした交渉には応じられない、これはなぜかならば、まさに保護主義であり、多角的貿易、自由主義体制に歯どめをかけるものである、こういうことから、その反省を実は強く求めたところであり、参加国からもこの趣旨の表明がなされたところでございます。よって、私どもは、米国国会のそういう民意という圧力また主張、それに米国政府がある程度コントロールされるのはやむを得ないのかなと思いつつも、しかしながら国際世論、自由主義経済体制、多角貿易というものが拡大均衡の中で世界平和のベースをつくっておることにかんがみまして、この点の反省を求めることは強くあらねばならないと思い、主張いたしたところであります。  さはさりながら、我が国米国というのは、経済第一位、第二位の国の関係でございますから、これが四つに組んで激闘する、衝突するということであっては芸がなさ過ぎるのではないだろうか。交渉はいたしませんけれども、静かなる対話の中で重層的なつき合いがあるわけでありますから、そういう中で理解を求めていく。我が方も足元をよく見つめながら、指摘をされる点について、そうなのかどうなのか冷静に分析をしてみる点があり、仮にその点がアンフェアということで米国側から言われている点だとすれば、言われるまでもなくみずからの発意でこのことが正されていかなければならぬ、こういうことがやはり黒字国日本という立場の中で、一つの柔軟性を持って進めていかなければならぬスタンスではなかろうかとも考えておるところであります。  いずれにいたしましても、今日のスーパー三〇一の措置は、一方的制裁を前提とした措置でありますから、このことは看過できない、こういう立場であります。
  344. 神崎武法

    ○神崎委員 ブッシュ大統領は、このスーパー三〇一条の対日適用を決定した後、直ちに対日戦略を中心とする新貿易政策の作成に取りかかった、こういうことが伝えられております。パリ・サミットの前までに、この内容については発表されると言われておりますけれども、その内容について外務省として情報を入手されておられるのかどうなのか、その点はいかがでしょう。
  345. 内田勝久

    ○内田(勝)政府委員 アメリカの行政府スーパー三〇一条に基づきまする優先慣行及び優先国を認定いたしました後に、新たな貿易政策というものを決定したということは、外務省として承知しておりません。
  346. 神崎武法

    ○神崎委員 今月十三日から日米の次官会議が始まっておりますけれども、これはスーパー三〇一条による交渉の一環として行われるものか、あるいはこれは全く別のものと理解していいのか、どうでしょうか。
  347. 内田勝久

    ○内田(勝)政府委員 委員指摘のとおり、昨日、きょうと二日間にわたりまして日米間で次官級経済協議が行われております。この協議は前政権からも行われておりました日米間の事務レベルの最も高いレベルでの協議でございまして、これは従来からあるものでございます。スーパー三〇一条に基づきます優先慣行についての協議という問題がありますけれども、この協議自身は、現在行われております高級事務レベル協議とは別個のものであると私どもは理解しております。
  348. 神崎武法

    ○神崎委員 次に移りまして、イラン情勢について順次お尋ねいたします。  初めに、最高指導者のホメイニ師が亡くなりまして、その後の新取高指導者にハメネイ大統領が選ばれた。ハメネイ大統領は故ホメイニ師の路線踏襲を明らかにしたと伝えられておりますけれども、このイランのホメイニ後の体制に変化があるのかないのか、外務省はどのように分析しておられるのか。
  349. 三塚博

    三塚国務大臣 お答えいたします。  イランにおきましてホメイニ師の死去後、直ちに後継最高指導者としてハメネイ大統領が選出されまして、イスラム革命政権の継承が宣言されるなど、新体制への移行が順調に行われている模様でございます。  イラン・イラク和平問題につきましては、イランの指導者は引き続き話し合いによる解決を図るとの立場を明らかにしておりまして、またイラク側も和平交渉継続を主張していることから、中東情勢に直ちに急激な変化が生ずるとはただいまの時点で思われないというのが現況でございます。
  350. 神崎武法

    ○神崎委員 国内体制への変化はいかがですか。これは変化はないというお考えですか。
  351. 三塚博

    三塚国務大臣 国内体制も、最高指導者にハメネイ氏がつきまして、体制をそのまま維持し、対応をいたしておるというふうに聞いております。
  352. 神崎武法

    ○神崎委員 最高指導者にハメネイさんがついて、変化はない、こういう御認識だということですね。  イランは現行の憲法の規定を修正して、外国からの借款導入に道を開くことを考えている、こういう報道があるわけでございます。あわせて、日本からの円借款供与によりますダム計画のプロジェクトを日本企業に打診をしておる、こういうことが言われておりますけれども、政府としてこの点を承知されておられるのか、そしてまた、今後こういう問題についてどう対処されるのか、あわせてお願いをいたします。
  353. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 先生指摘のようなプロジェクトに関して報道があるのは承知しておりますけれども、通常円借款というのは政府政府の交渉で行いますが、現段階でイラン政府から外交ルートを通じては何らのアプローチはございません。
  354. 神崎武法

    ○神崎委員 現在ないということでございますけれども、政府としては、今後イランからそういう外交ルートを通じて円借款供与の要請があった場合、基本的にどういう姿勢、対応をするつもりでございますか。
  355. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 私どもは、基本的には先ほど外務大臣が全般のことをお話しになりましたけれども、イランの復興に関しましても可能な範囲で協力を進めていくという考えを持っております。  しかしながら、具体的に円借款ということになりますと、円借款に関しますいろいろなルールがございますので、そのルールに即しまして、具体的な案件に関しまして要請がありました段階で検討してまいりたいと思っております。  先生、これはっけ足しになりますけれども、現に技術協力に関しましては、イランに対しまして研修員の受け入れその他の形でかなり進めておりまして、これは強化してまいりたいと考えております。     〔委員長退席、柿澤委員長代理着席〕
  356. 神崎武法

    ○神崎委員 次に、韓国問題についてお尋ねをいたします。  初めに、外務大臣は来日いたしました韓国の外務省担当記者団との会見でいろいろなことを言われたということが報道されておりますけれども、まず確認をいたしたいのですが、一つは、盧泰愚大統領の早期訪日を希望されておられるのかどうか。これが一点。それから二点目は、天皇陛下の訪韓につきまして韓国政府と協議する方針である、そういうお考えをお持ちであるかどうか。三点目は、二年間開かれていない日韓閣僚会議について、いつ開く予定であるか。この三点についてお尋ねをしたいと思います。
  357. 長谷川和年

    ○長谷川(和)政府委員 日本と非常に親しい隣国である韓国の盧泰愚大統領の訪日が諸般の事情によりまして過去二回にわたり延期されましたことは非常に残念なことであると考えております。我々としては、盧泰愚大統領の来日は日韓関係における最優先事項と心得ておりまして、できるだけ早い時期に、双方の都合のよい時期を選びまして、これが実現することを期待しております。  また、天皇陛下の御訪韓でございますが、これは天皇陛下が皇太子であられたころ御訪韓の話がありまして、これが中止となった経緯も踏まえまして、今後諸般の情勢を慎重に見きわめつつ検討していきたいと考えております。  それから、日韓の閣僚会議でございますが、御指摘のとおり過去二年間開かれておりません。本件につきましては、我々としてはできるだけ早い時期に開きたいと念願しております。ただ、先方のお国の事情、当方の事情がいろいろありまして、今までのところ開くに至っておりませんが、できるだけ早い時期を選びまして、双方の都合のよい時期に開きたいと考えております。
  358. 神崎武法

    ○神崎委員 外務大臣にもう一度確認をしたいのですが、特に天皇陛下の訪韓の点につきまして、今アジア局長の御答弁では、慎重に見きわめつつ検討したいということでございますが、これは韓国政府と積極的に協議をする方針というふうに承ってよろしいでしょうか。その点はどうでしょうか。
  359. 三塚博

    三塚国務大臣 そのとおりでございます。
  360. 神崎武法

    ○神崎委員 韓国におります被爆者問題についてお尋ねをしたいと思います。  現在、韓国国内には広島、長崎で被爆し、その後帰国した者が相当数いらっしゃいまして、韓国政府登録では千二百九十四名、韓国政府推定で未登録者を含めて約三千名、在韓被爆者協会推定では二万人いる、しかも高齢者である、こういうことを伺っておりますけれども、この問題に対する我が国の基本的な立場、これまでの対応と今後の対応はどういうことでしょうか。
  361. 長谷川和年

    ○長谷川(和)政府委員 韓国の被爆者の方々の数につきましては、ただいま委員指摘のとおりかと存じます。こういった数多くの朝鮮半島の出身者の方々が被爆されまして、今なお韓国国内でさまざまな後遺症に悩んでおられるということは、私たちとしても大変気の毒に思っているわけでございます。  他方、法的には、この問題は日韓間の請求権の協定、これは一九六五年でございますが、これによりまして解決済みであります。また在韓被爆者の問題は韓国国内の福祉の問題でございまして、第一義的には韓国政府の所管すべき問題であるというのが我が国の基本的立場でございます。  しかし、本件の人道的側面及び本件が過去の我が国の行動とも全く無関係ではないということ、同時に、これを韓国側で日韓間の心の問題ととらえていることにもかんがみまして、我が国としてはできることとできないことがありますけれども、できることから誠意を持って取り組むべきである、そのように考えております。平成元年度予算におきまして、在韓被爆者の方々への支援のために四千二百万円の拠出金を計上いたしましたのも、このような考え方に基づくものでございます。  いずれにせよ、この問題につきましては、今後具体的にどうやって協力を進めていくかというような問題もございますが、韓国政府と密接に協力しまして、我が方政府のこういった人道的問題に対する実のある態度、考え方、政策を具現していきたいと考えております。
  362. 神崎武法

    ○神崎委員 ただいま前向きの御答弁があったわけでございますが、この問題の解決のためにぜひ積極的な対応をお願いいたしたいと思います。  特に一九八七年十一月、在韓被爆者協会の辛泳法会長が梁井大使を訪問いたしまして、在韓被爆者の損害賠償として二十三億ドルの支払い及び原爆病院の建設を要求したということを聞いております。その後、一九八八年二月に竹下総理訪韓時にアジア局長がこの在韓被爆者協会の方と会われていると伺っておりますが、この問題の解決のためにぜひ積極的に対応をしていただきたい。人道的見地からいたしましても、この韓国内の被爆者の要望に早くこたえるのが我が国としてのとるべき道である、このように考えます。大臣の御決意を伺いたいと思います。
  363. 三塚博

    三塚国務大臣 ただいま長谷川局長から経過、今後の対応について答弁をさせていただきました。その趣旨を踏まえ、大事なことでありますから対応してまいりたいと考えます。
  364. 神崎武法

    ○神崎委員 韓国の金泳三統一民主党総裁の言うところの北東アジア平和強化のための協議機関設立構想、この点について、金泳三総裁が訪ソした際に、プリマコフソ連最高会議の連邦会議議長との会談において、ソ連、中国米国日本、南北両朝鮮の六カ国代表から成る協議機関の設立構想、極東、北東アジアの平和強化のための協議機関の設立構想を示したところ、同議長が積極的な支持を表明した、こういうふうに伝えられておるところでございますが、この点について、日本政府として、外務省としてどう評価されておられるのか。今後、ソ連側からこういう構想についての日本の対応について、いろいろな機会に打診もあるかもしれませんけれども、どういう評価、対応をされるのか、この点についてお尋ねをしたい。
  365. 長谷川和年

    ○長谷川(和)政府委員 政府としましては、金泳三民主党総裁がこれら六カ国の国会議員の間で交流、意見の交換を行う、こういった構想を有しておることは承知しておりますが、具体的にどうやってこういった交流を進めるのか、どういった事項について話し合うのか、こういった具体的内容については承知しておりません。  一般論といたしましては、朝鮮半島に関心を有する関係国の人々が交流、意見交換を行うことは非常に結構なことと考えておりまして、今後、仮に南北朝鮮を含めまして関係諸国の当事者の間で、この構想の実現に向けて具体的な動きが出てくれば、それはその段階で我が国としても側面的に可能な限りの協力を行っていく考えでございます。  いずれにしても、累次政府として申し上げておりますとおり、朝鮮半島の問題は、第一義的には南北両当事者の間で話し合って解決する、これが日本政府立場でございまして、こういった構想につきましても、まず一番重要な韓国と北朝鮮の当事者の間で調整されることが重要であると考えております。  なお、ソ連側がこの構想につきまして我が方に打診してくる、そういうことは現在のところ承知しておりませんが、仮に打診してきました場合には、ただいま述べました、こういった朝鮮半島の南と北、この問題に関する基本的な立場を踏まえて対応したいと考えます。
  366. 神崎武法

    ○神崎委員 最後に、サミットの関係で何点かお尋ねをいたしたいと思います。  宇野新内閣の外務大臣としての三塚外交、間近に迫ったサミット、まさに大臣の力量の発揮どころだろうと思うわけでありますが、宇野内閣は竹下前内閣の外交方針を継承する、このように述べておりますけれども、竹下前内閣の外交方針の一つに「世界に貢献する日本」というのがあります。大臣としてこれから世界にどのように貢献されていくのか、その点についての大臣のお考えを伺いたい。
  367. 三塚博

    三塚国務大臣 サミットの場はアジアからただ一カ国我が国参加するわけでありますが、竹下総理が「世界に貢献する日本」ということで表明をされたことは事実であります。まさに、累積債務問題に呻吟をいたしております途上国に対する今後の援助、技術協力、こういうものをどう進めるか、こういう点について我が国の持つ技術、経済でこれに当たっていかなければならぬというのが一つであろうと思います。この点は元利償還に非常に呻吟をいたしております開発途上国の問題でございますし、民間の問題もさることながら、政府援助という形の中でどのような、有償、無償の中でどう進めるかという基本的な命題もあろうかと思います。外務省といたしましても、関係省庁とその辺のところをよく協議をしておるところでありますが、これが第一点であり、さらに地球的規模の問題について、我が国が持てる先端技術、これまた我が国の経済力、こういう点の中で取り組んでまいるということになろうと思います。前内閣の継続性、一貫性ということどもの中で、着実にそれを前進をせしめるということが我が国立場かと存じますので、その方向総理をサポートしつつ全力を尽くしてまいる、こういうことであります。
  368. 神崎武法

    ○神崎委員 竹下前内閣の国際協力構想に、平和への協力政府開発援助の拡充、ただいまお触れになったところでありますが、それから国際文化交流の強化、こういう三本柱があるわけでございます。大臣といたしまして、これらの問題も当然継承されるわけでございますけれども、単に継承するということだけではなくして、こういうふうに引き継ぎたい、特に何かそういう新しいお考えは大臣お持ちでございましょうか。
  369. 三塚博

    三塚国務大臣 三本の柱を継承しながら国際協力を進めるわけでございますが、まだ私のカラーを出してどうということではなく、やるとすれば、確実にアクションがあって効果が出るということで取り進めていくということであろうかと思います。
  370. 神崎武法

    ○神崎委員 さきに竹下前総理の私的懇談会であります国際文化交流に関する懇談会が報告書を提出しておりますけれども、この報告書に対してどのように取り組まれる所存であるか。また政府開発援助の拡充につきましても、援助の拡充だけでなく、既に出されました援助に対するチェック、事前の調査機能の強化など、ODA全般に対する見直しをお考えになっておられるのかどうか。その点はいかがでしょうか。
  371. 田島高志

    ○田島説明員 竹下前総理に対して国際文化交流に関する懇談会から報告書を提出いただいたわけでございますが、宇野総理大臣所信表明でも申し述べられましたように、現在政府はこれに真剣に引き続き取り組んでいくという姿勢を出しております。外務省といたしましても、特にこの文化交流につきましては、日本語教育に対する協力、あるいは日本研究に対する協力、あるいは世界の文化に貢献するために、文化遺産の保護に対する協力、それから諸外国における文化振興に対する協力、特に国際交流基金は国際文化交流を進める上での我が国の中核的機関でございますので、その強化拡充、その実現に向けて、報告の中の提言の実現に向かって最大限の努力をしてまいりたいと存じております。
  372. 三塚博

    三塚国務大臣 ただいまの報告に基づきまして、委員指摘のような趣旨を踏まえながら、文化交流というのが、金による援助というような昨今の批判にも十二分にこたえる意味の面が強くにじみ出ておりますものですから、この点をさらに進めるという意味で、担当者が言われますように、ベストを尽くして取り組んでまいります。
  373. 神崎武法

    ○神崎委員 ODAについて、何か見直しの考えがあるかどうかという点について聞いている。チェック機関……。
  374. 三塚博

    三塚国務大臣 ODA全般についてでありますが、一部御批判がありますことは承知いたしておりますけれども、全体として成果が上がっておるというふうに思います。しかしながら、御批判がありますことは事実でありますから、そういう意味でチェックは、改めて機関を設けるということはただいまのところ考えておりませんけれども、従前の機構の中で再点検をしていく、こういうことどもを強化するという中で、これは人員が必要になってまいる、技術者が必要になってまいるという予算面があるわけでございますけれども、そのことがなかなか望み得ない現況でありますから、現機構の中でそのことに十二分にフォローできますように、またその成果が相手国に正確に伝わりますように仕向けていかなければならぬ、そういう意味のチェックに今後とも注意し、さらに注意力を喚起して全力を尽くすということで今後に対応してまいる、こういうことでございます。
  375. 神崎武法

    ○神崎委員 サミットにたどり着く前に時間が終わりましたので、これで終わらせていただきます。
  376. 柿澤弘治

    柿澤委員長代理 次に、林保夫君。
  377. 林保夫

    ○林(保)委員 引き続きまして御苦労さまでございます。  国際情勢一般につきまして、大枠三つの問題について大臣所信並びに現状分析について少し承っておきたいと思っております。  その第一は、いわゆる宇野内閣の発足によりまして、三塚外交の展開がいよいよ期待される時期でございます。それについては大変大きなマイナスをかぶってのスタートじゃないか、このように御同情も申し上げ、それだけに大臣にはひとつ頑張っていただかなければならぬ。  大臣、覚えていらっしゃると思いますが、去る三月三十日の予算委員会の暫定予算の一般質問で、私もちょっと恥ずかしい思いもしながら、ロンドン・エコノミストの雑誌二冊の表紙をお見せしながら、もう総理の御答弁だけでよろしいということで総理の御意見を承りました。その理由は、大臣、あのときおわかりいただいたと思いますけれども、私も二十二年の五月、憲法発布より三日おくれて――採用はその前ですが、以来、経済記者として海外そのほかへ行きながら、昭和電工事件、石炭国管事件、そして造船疑獄のときにはたまたま海外におって、大変つらい思いをいたしました。そして、その後の賠償事件、それから後数々あってロッキード、グラマン、そして今度のリクルートでございます。私は、またやったか、こういう実感を禁じ得ずして、総理、どのような決着をつけられるのか、こう聞きましたところ、国会では初めてだったと思いますが、「けじめはつけます。」と本当に真剣にお答えいただいたので、その場で引き下がったような次第でございました。  外国の論調がどうなっておるかは外務省が既に昨年新聞社に発表されました。その二回目以降はどうも発表されなかったようでございます。私も一部しか承知しておりません。しかし、私もこういう国政の立場にある以上は調べなければならぬと思いまして、あらゆる手法を使って私なりに調べてみました。大臣、お話しするのが恥ずかしいような日本に対する見方でございます。おわかり旧いただけますか。まさにこれは極東の異端の国、日本的な決着そのものだ、日本は信用できぬ、政治は四、五世紀おくれている、四、五世紀ですよ、大臣。そして国際機関の長には日本人はもう登用できぬ。対外援助は私たちの税金で賄っておるわけです。この対外援助が毒入りまんじゅうであるかのごとく言われ、商社の機能、為替レートがこの問題で支障を来すような失態を演じたことは、大臣もお感じになっておられると私は思います。したがいまして、新しい外交の展開で、そのときも申しました。平成元年になった。この折節だって、国民は向上心があれば期待するのです。二十一世紀に解決するという、それに対しても期待を持っておった。もう十一年しかありません、どうしますかということを申し上げたわけです。ひとつ冒頭は注文になりますけれども、二十一世紀へ向かう我が国外交政策、国際情勢の展開について、大臣なりの思い切ったひとつ哲学を持って堂々とやっていただきたい、このことをご要望しながら、大臣なりの国際信用の回復をどのようにされるか、まず承りたいと思います。
  378. 三塚博

    三塚国務大臣 大変重要な緊急的な今日の課題に触れられたわけであります。竹下内閣、引き続き宇野内閣と、厳しい国際批判の中にさらされておりますことは御案内のとおりでありまして、私ども内閣は一体であり、特に政府・与党という政党政治の帰結としての政治運営の責任を負うておるわけでございまして、たびたび海外出張の機会があるわけでございますが、経済は一流、政治は三流という言葉、林先生は四、五世紀おくれておるという御批判、外紙の報道を伝えられたわけでございますけれども、いかにして経済が一流、政治が一流と言われないまでも、一流に近い、経済と政治が並行していけるような状況をつくり上げていくかは、私ども一人一人の重大な責任であるというふうに思います。  そういう中で、やはり政治運営は透明性があるということであろうと思うのであります。それと仕組みがよくわかる、当今言われておりますけじめがよく出ております、こういうことであり、その延長、結論として改革が前進をして、現実のものとして前に進んでおります、こういうことであろうと思うのであります。  それと同時に、国家を代表して、外交の責任者として外務省職員各位と幹部職員が一体となりながら展開をするわけでございますが、平和国家日本という我が国の国是をきっちりと基本に踏まえまして、特に軍事大国にならない、経済大国として得た成果を誠実に世界に還元をしてまいる、こういうことで今後取り組んでまいる。まさにそのことは政治行為なわけでございますから、そういう中で効果あらしめる。金をくれてやる式のことであってはならないわけでございまして、誠実な対応の中で、その国の民生の安定のために、一人一人の生活の豊かさを求める糧に相なりますように、ひたすら使命感に燃えて国際国家としての貢献を果たすプロジェクトは何か、こういうことで自発的な対応の中で取り組んでまいる。また時に我が国の方から提案をする。こういうことどもの中で取り組まなければなりませんが、外交は内政の延長であります。そういう意味で、ひとり政府・与党の力によるところでは達成できないわけでございますから、各党の深い理解と支援、さらにその上にお知恵を拝借をいたしながら、よいものはそれを取り進めさせていただくということで取り組んでまいりたいと思っておるところであります。     〔柿澤委員長代理退席、委員長着席〕
  379. 林保夫

    ○林(保)委員 大臣の御決意を聞きながら、やはり私も同じような感じでございます。とりわけ大臣は、国内のすべてを担って外へ顔として出られるわけでございますので、まさに私たち一億二千万がちゃんとしなければ、これはどうにもならぬということでございます。  大臣の言葉じりをとらえるわけじゃございませんけれども、日本政治が四、五世紀おくれているというのは、私が言ったのじゃないのです。こう出ていますよ、こういうことです。もし必要であれば、きょうも私たくさん持っておりますので、全部読み上げてもいいのですが、ただ一つ申し上げたいのは、ジャーナリストですから多少奇妙に書くと思うのです。しかし、それが国際感覚とぴったりしておって、日本が奇妙と言ったってそれが通っているということですね。  一、二の例を言わなければ、これでは済まされないと思いますので、時間が足りませんけれども……「大物たちを起訴せず、秘書を見殺し……」とニューヨーク・タイムズは書いていますよ。それから「大きな魚は自由に泳ぎ回って……」とイギリスのエコノミストは書いている。おもしろいのは「十六人の悪質な秘書たち」と書いているのですね。私は秘書さんは一生懸命にやっていると思うのですが、「秘書たちは、国政に没頭する主人達の知らぬ間にカネの薄汚れた操作に夢中になっていた」というような皮肉な報道まで実は出ておるわけです。  私は、これからひとつ外務省の方にもお願いしておきたいのですが、世界は今やガラス張りですね。天安門広場で針の落ちる音一つまでも全部報道されるわけです。ところが日本はそういうことを知らない場合が間々あり過ぎます。私は、意図的に圧力がかかって二回目から、あの海外からの新聞情報特集は配られなかったけれども、今さらこのことでは申しません。しかし、なぜか一回だけでとまり、残念でしょうがありません。ごらんになったでしょう、十一月末に「政治の異質の国日本」という題で各紙書いてあったものです。そういうものを自由に出すべき時代になってきておりますので、ぜひ出していただきたい。  同時に、それに対してどういう対応を日本人が考えていくかということをひとつ考えていかなきゃならぬと思うのです。言うならば、いわゆる公職者の倫理の問題については、きのう、おととい、さきおととい以来いろいろな総理大臣にまつわる問題、さらには法律を犯して悟として恥じない政治の体質まで問われるようなことが、大臣、いろいろ出ていますね。法律というのは決まったら国民みんなが守らなければいけません。意図的であったかなかったかわかりませんけれども、報告漏れがあった、勘定科目が違っていたというようなことで国民に示しがつくわけがありませんでしょう、国会議員である以上は。結果的に、倫理上の責任を容赦しない世界の風潮にちゃんと対応しなければ、政府開発援助を幾ら配ったってこれはむだだ。書いてありますように、毒入りまんじゅうだと言われてもしようがない。こういうことをきょうは大臣議論をするつもりはありませんけれども、コンセンサスを持ってこれからの外交を進めていただきたい、口幅つたいようではございますけれども、このことを冒頭申し上げておきたいと思うのです。時間がございませんので、次へ入ります。  中国情勢でありますが、大変憂慮される情勢である。政治社会体制の違い、これもわかります。しかし、なお隣国であるし、歴史もある。大臣、それはそれで私も理解できると思うのです。アメリカと違った対応であって決しておかしくないし、日本独特の対応をまさにすべきときだと思うのですが、過般の緊迫した情勢以来、政府の政策、あるいはここには大変多額の八千百億円もの援助、借款ですか、あれを約束しております。そこらあたりを、あれ以来とめておられるのか、あるいはそのまま出しておられるのか、その辺をまず一つだけ事務的で結構ですから聞かせていただきたいと思います。
  380. 長谷川和年

    ○長谷川(和)政府委員 今後の中国に対する援助でございますが、我が国の対中経済協力の基本方針は、中国の近代化、開放化の努力に対してできる限りの協力を行うことにあります。今後、我が国としていかなる対応を行っていくかにつきましては、中国の現在の情勢の落ちつく先を見きわめつつ、また国際的な動向をも勘案しまして、慎重に検討してまいる所存でございます。  現在、援助関係者の引き揚げ等、こういったことがありまして、その結果、関連するプロジェクトは事実上大半が中断状況にございますが、今後事態が完全に復した際には、これら中断されている協力案件は、相手方の対応ぶり等、協力を続行する上で前提となる状況を勘案しつつ続けてまいる所存でございます。  第三次の円借款等、その他対中経済協力の進め方につきましては、なお中国情勢の落ちつき先を見守っているところでございまして、調査団の派遣を含め具体的な対応をどうするか、引き続き慎重に検討してまいりたいと考えております。
  381. 林保夫

    ○林(保)委員 そういたしますと、日本中国に対する手当てといいますか、援助といいますか、そういうものは一応、多少は中断しているわけですね。  同時に、もう一つ聞きたいのですが、あのとき以来、在留邦人の引き揚げ、そのほかを含めてかなり大きな手を打っていただき、それなりに成功したのだと思いますが、なお過日のテレビを見ますと、松下の工場が非常に活発に動いているというような中国側のテレビ報道もございました。その辺は一体どのようになっているかという点を一つ。  もう一つ、方励之さんの問題ですけれども、アメリカ側からどうしろというようなことがあったのかどうか、これからそういう場合にどういう対応をなさるのかという基本的な考え、その三点を事務局で結構ですから聞かしてください。
  382. 長谷川和年

    ○長谷川(和)政府委員 今委員指摘になりました件のうち、松下の件でございます。私も新聞でそれを見ました。中国の場合には、今回、北京の天安門を中心として、北京に関して言いますと、ああいった動乱がございまして、それから地方の幾つかの市において同様の動乱があった。ところが地域によってはこのような動乱が必ずしも北京ほどではない。あるいは上海、天津ほどではないというようなことがございまして、日本の進出企業の方によっては、安全、安定であると判断したところがあって、松下さんのように残って、そのまま営業を続けられたというところもあったのではないかと思います。  全般的な、かつ総合的な情報を把握することがなかなか困難でございまして、私たちとしては最大限努力をして情報を把握したわけでございますが、ただいま委員指摘のようなケースもございます。先ほど私が間接的に言及しましたが、現在、経済協力関係では、技術協力あるいは開発協力関係のミッションの派遣が十四件ほど延期にな  っております。それから中国に滞在中の専門家等、これは全部で家族も含めて百九名でございますが、こういった方々の引き揚げも決定して帰りつつございます。それ以外にいろいろな面で、経済交流の面で一時中断ないし延期されたものもございます。これが実情でございます。  援助の中断ということでございますけれども、ただいま申しましたように、開発協力関係のミッションの派遣延期、あるいは専門家等の引き揚げ等、こういうことがございます。基本的な立場、考え方につきましては、先ほど御答弁申し上げたとおりでございます。  問題は、方励之さんの件でございますが、種々の報道等によりますれば、七日、アメリカの国務省の報道官が、方励之氏、それから同氏の夫人及び子息が在北京米国大使館に保護されていることを確認されました。これに対して八日、中国外交部の副部長が、リリー在中国米国大使と会見した際に、米国大使館の行動は、理由のない中国内政への干渉を構成する、そう申しまして深く遺憾の意を表したということでございます。さらに十二日には、中国の公安部から中国各地の港湾、鉄道、通関部門に対して、通達をもって方励之氏夫妻に対する逮捕令が出た、そういうことを新聞が報じております。  いずれにしろ、米中関係というのは、国際関係などで大変重要な関係と私たちは認識しておりまして、米中関係、殊に重要なのは米国でございまして、米中両国が本件を円満裏に解決することをこいねがっている次第でございます。
  383. 林保夫

    ○林(保)委員 もう一つあるので、ちょっと急いで聞かせていただきたいのですが、ただいま聞きましたのは、方励之さんなどについてアメリカ側がどうしろというようなことが外交ルートを通じて来ているかどうかという点と、もう一つは、新聞報道によると、日本が医療品援助か何かをしようとしたところが、要りませんと言ったとかなんとかというような感じなんです。それから経済援助そのほかについても、つまり中国政府から外交ルートを通じてこうしてくれという注文が出ているかどうか。この二点を簡単にひとつお答えいただきたいと思うのです。
  384. 長谷川和年

    ○長谷川(和)政府委員 事実関係について簡単にお答えします。  まず、方励之さんの件でございますが、米国政府からそのような要請あるいは話は一切ございません。  それから、今月の七日に外務次官が中国の在日大使を招致しました際に、日本国としては中国に対して人道的な医療援助等を行う用意があるということを申しましたが、先方からは何の反応もございません。
  385. 林保夫

    ○林(保)委員 もうこうなりますと、この情勢が安定したと見るかどうかの大臣判断になりましたね。それと向こうが何を望んでくるかという問題。もう一つは、サミットにおいて欧米各国との感覚のずれが大きいと私は思うのですけれども、それをどうするかということで、時間もございませんので、次へ移りたいと思います。  実は、ゴルバチョフさんが北京を訪問されて、いろんな我が国に対する影響の大きいような問題が出てきております。これは言うまでもなく、一九八六年七月のウラジオストク、それから昨年九月のクラスノヤルスクの演説あるいは十二月の国連演説、それらを踏まえての軍縮の方向、それに伴ってどうやら欧州中心だったそれが、今度はアジア版がどうも出てきている、こういうような感覚を持つわけでございますが、防衛庁の方来ておられますか。どういう実際的な影響が出るというふうにお考えになっておられるか。竹下総理に過般防衛庁の分析を説明したという新聞記事もございます。概括的で結構ですから、急いでひとつ御答弁いただきたい。
  386. 日吉章

    ○日吉政府委員 委員ただいま御質問ございましたように、ゴルバチョフ書記長は先般北京で兵力削減の発表を行いました。これは、それまでのソ連側の欧州を中心とした兵力削減のある意味では極東版というようなものではございますけれども、それほど具体的なものではございません。ただ、それ自体といたしましては、やはり軍縮・軍備管理の方向を示しているわけでございまして、私どもといたしましては、一応評価に値するものと考えてございます。ただ、その内容でございますけれども、ヨーロッパに関して言及されているものと比べましても非常に中身があいまいでございまして、かつ、不明な点も多いところでございます。したがいまして、我が国の防衛に及ぼす影響につきまして、直ちに即断をするということは、その声明からだけでは極めて困難な状況でございます。  ただ、いずれにいたしましても、極東ソ連軍はこれまで長い期間にわたりまして増強されてきておりまして、その結果、極東におきますソ連軍のストックの状態としての蓄積軍備力というものは膨大なものになっているのは事実でございます。さらに量的な拡大はこのところ顕著なものはございませんけれども、質的に近代化がされているという点は、現在でも続いている状況でございます。したがいまして、私ども防衛庁といたしましては、ゴルバチョフのこの声明が意義ある削減を実行するというようなことに振りかわってくることを期待するとともに、今後その実施状況を慎重に見守ってまいりたい、かように考えております。
  387. 林保夫

    ○林(保)委員 矢継ぎ早で恐縮ですけれども、二つお答えいただきたいのですが、ソ連太平洋艦隊の日本海での演習、これにオブザーバーとして日本を含む十五カ国を招待する、こういう報道がございました。この事実及び日本がどういう対応をするのかという点。もう一つは、これまた新聞報道でございますが、ソ連側からの日ソ軍艦の相互訪問の申し入れ、あるいはソ連軍事研究機関に自衛隊員を招待するというような報道がございました。これも事実かどうか、どういう対応をされるか、お願いしたい。
  388. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上、げます。  太平洋艦隊の演習へのオブザーバー招待につきましては、五月二十九日にソ連外務省より我が大使館に参っております。御指摘のように、十五カ国がこれに参加を招請されております。主として日本海の北西部での演習への招待でございます。本件につきましては、どのように対応するかを目下防衛当局とも協議しつつ慎重に結論を出すべく努力をしている次第でございます。  それから、第二の問題でございますけれども、これは新聞等に一部報ぜられましたけれども、このような事実は正式にソ連側からなされたことはございません。その点だけお答え申し上げたいと思います。
  389. 林保夫

    ○林(保)委員 大臣、お聞きのように、短時間の中にも日本の周りも大変せわしく動いてきておるような情勢でございますが、これから大臣外交を進めていかれる上での平和・軍縮という問題について、大臣はソ連のああいう動きを単なるゼスチャーと見るのかあるいは本気だと見るのか。それからまたソ連側はブロック化を希望している。我が方には日米安全保障体制もある。どのような調整をするか、まさに大臣の双肩にかかっていると思うのでございますが、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  390. 三塚博

    三塚国務大臣 まさにペレストロイカ、グラスノスチで登場いたしましたゴルバチョフさん、評価によりますれば、レーニン以来のリーダーシップのある、展望に立った政治家だという評価なども評論家がされるようでございます。風貌から、また言動から見ましても、そのように私どもも痛感するのでございますが、依然として世界平和は米ソのバランスの中に存在いたしますことも事実であります。よって、米ソ大国の核軍縮というものが徐々に進行しておりますことも一つであります。  しかるに、北京演説にかかわりませず、極東におけるその方向は評価をいたすといたしましても、防衛局長指摘のように、全貌が見分けにくい、こういうことでありますれば、さらに注意力を喚起していかなければならないのではないだろうか。もちろん注意力を喚起しますけれども、日ソは日ソという隣国でありますから、その基本はあるわけであります。  しかしながら、我が国は北方四島の問題も実は存在するわけでありまして、これが大きなネックとなりまして平和条約締結にまいりません。まさに平和の状態は平和条約締結によって開始をするわけであります。さような意味合いから、この問題に真正面にソ連邦が取り組んでほしい、指導者が取り組んでほしい。宇野外相のシェワルナゼ外相との累次にわたる会談、またモスクワにおけるゴルバチョフ書記長との会談等を経まして、この領土問題が議題にのってまいりましたことは御同慶にたえません。その前進に私どもはこれから全力を挙げて取り組んでまいらなければなりませんし、主張するゆえんのものが決して無法なものではない、現実に根差した歴史的、地理的なものである、こういうことを御理解をいただく努力をしなければなりません。そういう中でソ連邦の今後のさらなるこれに対するアプローチを期待いたさなければなりません。  そういう中における実質的削減が行われるという演説は評価申し上げるわけでありますし、さらにはカンボジア問題の解決、また朝鮮半島の緊張緩和のため隣国の大国としてのソ連の御努力を継続いただきたい、こういうことなども期待を表明しつつ今後に対応してまいりたいと考えております。
  391. 林保夫

    ○林(保)委員 大臣のおっしゃるように、政治が三流か四流かでさえなければ、本当に世界のリーダーシップをとる、またとらなければならぬ立場でございますので、主張は主張といたしまして、提案もするぐらい大臣ひとつ積極的にやっていただきたい。  それから、風貌をおっしゃっておられましたけれども、大臣の方がすごいものですから、その点もひとつしっかり立場を踏まえられまして対応していただきますよう、これが国民の願いでもあるということをひとつ御記憶いただきまして、御敢闘をお願いいたしたいと思います。  短時間、恐縮でございました。ありがとうございました。
  392. 相沢英之

    相沢委員長 次に、岡崎万寿秀君。
  393. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 まず、中国問題からお尋ねいたします。  天安門の事態というのは、人民こそが国の主人公であるという社会主義の理念から見ましても、より徹底した民主主義を要求される社会主義的民主主義の立場から見ましても、さらに民主的自由を保障している中国の憲法から見ても、まさにあるまじき暴挙であると私たちは厳しく糾弾しているわけでございます。きょうも多くの委員質問しましたように、問題は日本政府のこの中国事態に対する姿勢、対応にあると一つは思っていますが、きょうは時間もありませんので、国際人権問題の側面からお聞きしたいというふうに思います。  人権の国際的保障という問題は、第二次世界大戦の経験、教訓から非常に重視されて、まさに戦後の国際関係の基本となっているものでありまして、それは、ここに持ちましたけれども、国連憲章、それに基づく世界人権宣言あるいは国際人権規約等々はっきりした国際的な基準が設けられておるわけです。  そこで、外務大臣政治的な形でお答え願いたいわけでございますけれども、こういう国際的な人権を保障している国連憲章や世界人権宣言等々から見まして、今度の中国事態は許されるものであるかどうか、御見識をお聞きしたいと思います。
  394. 三塚博

    三塚国務大臣 岡崎委員指摘のように、人権尊重は国連の目的の一つでございます。また世界平和の重要な基礎として国連憲章や人権規約等にうたわれておるところでございます。  今般、国連の重要メンバーである中国におきまして、民主化を求める学生、市民など多くの人命が失われるという痛ましい事態に至りましたことは遺憾でございまして、民主化を求める学生、市民に対し軍隊が発砲するがごとき行為は、人道の見地から言いましても容認のでき得ないところであります。かかる立場については、既に七日、外務事務次官より在京中国大使に対し明確に伝えますとともに、中国政府の自制を強く求めてまいりましたところであります。今後、要すれば、国連の場など国際場裏におきましても、我が国のかかる立場を述べてまいる所存でございます。
  395. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 国際人権規約から見ても大問題であるということをずばり言ってもらいたかったわけです。  そこで、宇野総理がいろいろな事情を述べて、私どもが衆議院本会議等々で要求しました、なぜ抗議をしないかということについて、抗議はしないという答弁でございます。これは国際人権問題に対する日本政府の姿勢が問われることになるのはないかというふうに思うのです。今も述べられましたけれども、日本も加盟している国際人権規約、ここでは諸国民の人権保障の問題と平和とは密接不可分のものである、そういう立場を貫いているわけでございます。ちょっと紹介しますと、「国際連合憲章において宣明された原則によれば、人類社会のすべての構成員の固有の尊厳及び平等のかつ奪い得ない権利を認めることが世界における自由、正義及び平和の基礎をなすもの」と、まさに人権というのは世界平和の基礎をなすというとらえ方をしているわけでございます。そういう点から見て、中国のこの事態に対する政府の姿勢というのは、人権問題の重みをどう考えているのかいささか疑問を感じざるを得ないわけでございますが、この点、どうですか。
  396. 三塚博

    三塚国務大臣 決してさようではないわけであります。一衣帯水であり、長い歴史の交流のあります我が国立場からいたしますれば、精いっぱい、人権、人道というものが近代民主主義の基本でありますということを、実は強く申し述べたところであります。  特に、御存じのことかと思うのでありますが、中国は国連には加盟でありますが、いまだ人権規約には加入をいたしておらないことがこうなるのかなとは1直接関係はないと思いますけれども、私どもの考えは、中国民主化要求運動というものは、中国の近代化が実現をしていく過程において生じてまいりました政治問題であり、さらに今後も中国の行く手にはいろいろ困難な問題がありますものですから、そういう事態を見きわめてまいる。国内問題ということもあります。またお互いが内政に干渉しないということのぎりぎりのラインを守り抜いてまいることによりまして、友好国としての交流と協議ができるという、この辺も隣国でありますだけに、抗議という意味においては、政治問題内政問題という意味で極めて慎重にならざるを得なかったことは御理解をいただきたいと思いますし、今回の日本政府のとりました態度につきまして、それぞれの御評価をいただいている向きもございます。また御批判もいただいておる向きもございますが、それは今後の結果において御判断をいただくことだなとは思うのであります。現時点における私どもの行動は決して間違っておらないという、実はそれなりの確信を持ちまして、対中政策にただいま慎重を期しつつ、動向を見きわめつつ、誤りなきを期してまいりたい、こういうことでおりますことに御理解をいただきたいと思います。
  397. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 人権が基本だとおっしゃりながら、中国は隣国だから抗議もしない、ここに私はどうも問題を感じるわけなんです。  歴史的に見ても、日本政府のとってきている人権問題に対する態度は弱腰ではなかったか、いろいろな思惑を優先させ過ぎているのではないかということを感じるわけなんです。例えば一九八〇年五月に起きた韓国の全斗煥のやった光州事件、さらに南アのアパルトヘイトの問題とかカンボジアの大量虐殺をやったポル・ポト派に対する態度等を見ましても、人権問題に対する姿勢がしゃんとしていないという多くの指摘があるところなんです。  私は、このような人権に国境なしと言われる戦後政治の基礎となっている人権問題について、隣国だから、国の遠近とか戦争責任といいますか過去のいきさつあるいは体制の違い、こういうことで人権問題について弱かったり強かったりすべきではないと思うのです。こういう問題は、やはりそういうものを超えて、直ちに毅然とした態度をとるべきであるというふうに思いますが、どうも答弁を聞いていると、あれこれの思惑、言いわけの方が優先して、戦後政治の一番の基本であり基礎である人権問題に対する姿勢が弱い、そう感じますけれども、大臣、どうですか。
  398. 三塚博

    三塚国務大臣 宇野首相も私どもも決してそのことが弱腰であったというふうには思いません。万感を込めて申し上げておるわけでありまして、人民解放軍というまさに人民の生命と財産を守り抜くために設置されました軍隊が、いかなる理由がありましょうとも、学生の自由化運動、政府に対する批判、こういうものに銃口を向けるということは極めて遺憾であり、なされるべきことではない、こういうことで申し上げておるわけであります。しかし、内政問題でありますことも事実でありますから、これはこれとして慎重に見きわめて、岡崎委員が言われますことは、合衆国やヨーロッパのように、軍事援助をやめますとか武器の売買をやめますとかということも指されるわけだと思うのでありますが、かの国も経済的な制裁に踏み込むとは言ってないわけであります。そういう点で、我が国は武器三原則、また平和国家でありますから、そういう事態にございませんから、当然その手だてはございません。そういう中で、状態を見きわめつつ今後に対応する、こういうことでありますので、御理解を願いたいと思います。
  399. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 経済制裁はともかく、抗議もしないというその姿勢を批判しているのですよ。  そこで、大臣、今言いました、こういう国際的な人権問題、人命問題、これは国の遠近とか過去のいきさつとかを越えて真っ先にこれを優先して対応すべきものだ、きっぱり対応すべきものだというふうに考えますけれども、この点についてはどうですか。
  400. 長谷川和年

    ○長谷川(和)政府委員 ただいま大臣が御答弁なさいましたとおり、政府としては一定の枠の中において人権問題というのを重視しましてきちんとした対応をしているわけでございます。  一つ御紹介しますと、先般村田外務次官が東京におります中国の大使を招致しまして、今回こういった痛ましい事態に至ったことはまことに遺憾である、また中国の行為というのは人道の見地から容認し得るものではない、中国政府に対して強く自制を求める、こういうことを申しております。私は公平に見ますと、これはやはり抗議あるいは日本政府の強い人権尊重という立場を配慮して行われた、人権尊重、人道という観点からの申し入れと思っております。
  401. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 大臣先ほど来言っているように、こういう人権問題というのは国の遠近とか過去のいきさつとかを越えて直ちにきっぱりとしてやるべきだという点についてはどうなんですか。
  402. 三塚博

    三塚国務大臣 人権とか人道は遠近の差も体制の違いもございません。
  403. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 体制だけじゃなくて、国の遠近とか過去のいきさつはどうですか。
  404. 三塚博

    三塚国務大臣 おっしゃるとおりです。
  405. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 それでは、隣国論というのはもう破綻したというふうに見ていいと思いますが、さて、その見地を貫いて、今後いろいろな問題が起きてきますから、やってもらいたいということを強く要望しておきます。  防衛庁、来ていますね。太平洋演習、パセックスの問題について質問いたします。  アメリカ太平洋軍は、この秋太平洋全域、これはカムチャッカ、アリューシャンからインド洋に至る非常に広範な区域で、初めて陸海空、海兵の四軍の統合実動演習、パセックスを実施するというふうに言われていますけれども、防衛庁には連絡がありましたか。
  406. 柳澤協二

    ○柳澤説明員 ただいまの先生の御質問、パセックスではなくて、私どもはパシフィックエクササイズということでパックエックスというふうに聞いておりますが、在日米軍といろいろなチャネルでいろいろ情報交換をしております中で、一般的な情報として、そういう太平洋軍演習を今年度実施する計画をしているということを承知しております。
  407. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 もうちょっと詳しく聞きたいのです、報道も相当されていますので。これはいつどのルートを通じて連絡が来ましたか。そしてまた、どういう計画、中身なのですか。
  408. 柳澤協二

    ○柳澤説明員 私ども共同訓練を毎年のこととして実施をしておりますので、共同訓練に関係いたしまして、統合幕僚会議と在日米軍司令部、陸海空各幕僚監部と在日の米陸海空軍の司令部との間で常時いろいろな相談をしております。その中で、特にいつということはちょっと申し上げにくいのでございますが、昨年ごろからそういう情報が入っておりました。ただ、それ以上私ども今具体的な詳細を必ずしも承知しておるわけでもございません。また米軍の演習のことでもございますので、ちょっとこれ以上詳しい内容を私どもとしてお答えする立場にないと今思っております。
  409. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 いずれにせよ、これまでにない規模の米軍の実動演習が日本を含む太平洋で行われることは事実で、九月一日から二月間というふうに言われているわけなんです。兵力も米軍だけで三十万を超えるだろう。これはリムパックの五万あるいは海軍だけに比べて大変大規模のこれまでになかった実動演習なんですね。  これはアメリカのことしの国防報告の中にもこれに関連する記載がございます。「世界戦争が発生した場合、アメリカの二つの主要任務はソ連潜水艦の出鼻をくじき、ソ連周辺近くに展開しているわれわれの空母機動部隊にたいする陸上および海上の脅威に対処することだ」つまり今アメリカはいわゆる米ソ協調を進める一方、太平洋方面では有事即応の体制を強化しているわけで、今度の太平洋総合実動演習というのも、こういうアメリカの太平洋戦略によるものであることは明らかだと思うのです。これは演習そのものが一つの抑止力としての意味を持ちますし、実動演習といいながら非常に実戦的性格を持っているわけです。  そこで、外務省にお聞きしたいのですが、フリーテックスの場合もそうでしたけれども、こういう性格を持っているアメリカの演習に日本の自衛隊が参加することは、憲法に禁止されている集団的自衛権の行使に当たると思いますが、いかがでしょうか。
  410. 三塚博

    三塚国務大臣 ただいま防衛庁の説明員との御質疑なども承っておりましたのですが、今度の日米共同訓練については、岡崎委員は九月と言っておりますが、防衛庁は承知する立場にないというのが政府の見解のようでありまして、私も未定というふうに承知をいたしております。したがいまして、仮定の議論に対しまして、ここでコメントするということは必ずしも適当ではないのではないかというふうに思います。  また、憲法違反の疑いがあるのではないかと言われておりますが、本件につきましては、いずれにせよ、自衛隊が行う訓練は我が国の個別的自衛権の行使を前提としたものでありまして、憲法上禁止されている集団的自衛権の行使を前提として訓練を行うというようなことは考えられないということだと思います。
  411. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 したがって、防衛庁はこういう太平洋実動演習に参加の要請があっても参加しませんね。
  412. 柳澤協二

    ○柳澤説明員 本年度のことでございますから、今おっしゃった太平洋軍演習に参加しろという形の要請なり提案なりというものは、実は受けておらないわけでございますが、私どもも、毎年やっております形の日米共同訓練につきましては、やはり自衛隊の練度の向上と有事の際の日米共同対処の円滑化という意味から見て大変大事なものと考えておりますので、あくまで我が国有事の共同対処の円滑化ということで整々と実施していきたいとは考えております。今先生言われましたような太平洋軍演習に参加するという形の要請といったようなものはございませんし、また、いずれにしましても、共同訓練はあくまでも個別的自衛権の範囲で我が国の防衛ということを前提として行うものであるというふうに考えております。
  413. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 まだ聞いてないことを先にお答えになるのは、どうもその辺にねらいがあるからのように思うのです。  では聞きますけれども、同じ時期に同じ区域、つまりアメリカの四軍が大変実戦的性格を持った実動演習をやっているこの時期に、この区域で日米共同演習の計画はございませんね。一般的に言っているわけじゃないのですよ。九月から十月の間、そしてアメリカの計画の一環の中に組み込まれるかのような、そういう訓練はありませんね。
  414. 柳澤協二

    ○柳澤説明員 具体的な形でということになりますと、太平洋軍演習の時期とか規模とか使用する地域といったものも必ずしも十分情報として得ておりませんし、決定されたものとも聞いておりません。我が方が行います共同訓練も、具体的にいつ、どこで、どの程度に行うかということを今まさに検討している過程でございます。  ただ、申し上げるのは、いかなる意味でも、集団的自衛権の行使を前提とするような共同訓練というものはあり得ないものだということでございます。
  415. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 防衛庁は前科があるのですよ。フリーテックス85のときもそうだったのです。米軍の演習そのものには、当時の加藤防衛庁長官は、自衛隊がアメリカ側と共同演習するとき、集団的自衛権についての疑義を差し挟まないようなものであるべきだと一面では答えているのですけれども、疑義を差し挟まないような形としながら、たまたま両軍がその場所でやったという形をとって、実際上はこれに参加することをやっているのです。こういうこそくなことはすべきじゃないということを私は言っているのです。日米の軍事関係からいっても知らぬはずはないでしょう、計画がないはずはないでしょう。国会の場ですから、はっきりとその辺は答えてもらいたいと思うのですが、どうですか。
  416. 柳澤協二

    ○柳澤説明員 先生の御指摘でございますけれども、やはり双方で最善の時期、最善の形で、お互いの都合も合わせて計画し、また演習場の使用等については地元との調整もありますので、現在どういう形で、どういうふうに計画しているかということを前提にお答えするのは御容赦願いたいと思っております。
  417. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 言いにくいようですからずばり聞いているのです。同じ時期に同じ区域で、しかも今度の太平洋演習軍に編成されている第七鑑隊や在日米軍と共同作戦訓練をやるべきではないということを要求しているのです。その計画はやりませんね。
  418. 柳澤協二

    ○柳澤説明員 先生承知のように、先方が計画していると言われております時期と、私どもで毎年やっております時期とかなり近いところになっておりますので、その辺どういうふうに整理していくべきか、またその太平洋軍演習の性格なり内容がどんなものになるのか、そこら辺を十分検討していかなければならぬと思いますけれども、先ほど来申し上げているとおり、日米共同訓練は従来の考え方に従って整々とやりたいというのが今の私どもの希望でございます。
  419. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 整々とかいうことではなくて、たまたま一緒になったという形で並行して、実際上は日米共同訓練がアメリカの太平洋実動演習の一環として行われることはすべきじゃないと言っているのです。これは集団的自衛権の行使に当たる、国会をごまかしてはいけないということを言っているのです。そういうことはしませんね。
  420. 柳澤協二

    ○柳澤説明員 おっしゃるように、集団的自衛権の行使に当たるような、あるいはそれを前提とするような形での共同訓練は行うつもりはございません。
  421. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 前提じゃなくて、並行して同じ区域で同じ時期に、その一環であるかのようにとられるようなことはすべきじゃないと言っているのです。やめますか。
  422. 柳澤協二

    ○柳澤説明員 太平洋軍演習の内容、性格がどんなものかということを十分見きわめた上で御議論いただかなければいかぬと思います。その材料が私ども今十分にございません。またその時期も並行することになるかどうかも確定してない段階でございますので、ただ、趣旨、精神は申し上げているとおりだということでございます。
  423. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 あなたとやり合ったって時間のむだですから、またやりましょう。  最後にタイコンデロガの問題、この間も随分やりまして、ここに詳しく載っていますけれども、もう既にこの問題が発覚してから二十九日目ですよ。私が有馬さんにいろいろ聞いて、それ以後二十一日目なんですよ。いつまで待つのですか。はっきりしてもらいたいです。
  424. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 ただいま先方に要請して、答えを待っているところでございます。
  425. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 アメリカは出したくないのですよ。隠そうとしているのですよ。わかっていながらなぜやらないのですか。  それでは聞きますけれども、この間の質問で、あなたは環境保護団体のグリーンピースが発表した航海日誌のコピーを入手しているとおっしゃいましたね。これは情報公開法に基づくアメリカの公文書館にあったものだと認定されますね。
  426. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 環境団体のグリーンピースがそのようなものとして配付したということは承知いたしております。
  427. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 逃げようとしていらっしゃるのでしょうけれども、その物を見てから、それが本物かにせものか、情報公開法に基づいて発表されたものかどうか判断がすぐつくはずです。アメリカがそういうふうにして出さないというよりは、日本が独自に情報公開法に基づいて航海日誌を取ったらどうですか。この二日だけじゃなくて、アメリカからベトナムへ行く途中で横須賀に入っている可能性が非常に強いのです。ですから、これはアメリカから横須賀、つまり日本を通り、ベトナムに行って、そしてベトナムから帰る途中事故を起こして日本に寄った。そこまでの航海日誌を、これはここまで来ていますので、責任を持って航海日誌を情報公開法に基づいて入手すべきじゃないかと思います。  委員長、これは何回となく質問している問題なんですよ。これはやはり当委員会において要求すべきだと思いますよ。もう四十日近くたってあんな状態でしょう。国の恥ですよ。この問題について聞いてから、私の質問を終わりたいと思うのですが、どうですか。
  428. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 一般論といたしまして、米軍艦船の航海の詳細については、米軍の運用にかかわることであって、我が方として承知する立場にはございません。しかしながら、今回具体的に照会しておりますのは、事故直後に日本に寄港したか否かでありまして、それとの関連で航海日誌のことも先方に照会しております。しかし、それはまさに事故後どこに行ったのかということとの関連でございます。  また、情報公開法に基づき我が国がこの資料を独自に入手すべきではないかということでございますけれども、これは我が国米国との間の関係上、我が国政府がこれをいわゆる情報自由化法に基づき要請するということは考えられないことでございまして、考えておりません。  いずれにいたしましても、タイコンデロガが事故後横須賀に寄港したか否かについては、米側に照会中でございまして、これに対する答えを米側は何に依拠して回答するかは日本政府として決めるところではないと考えております。
  429. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 これで終わりますけれども、委員長、この間松本委員の方から委員長にこの航海日誌を委員会として要求すべきじゃないかという提案があったはずです。ぜひこれは理事会で検討してもらいたいと思います。私どもは行きと帰りの航海日誌を入手すべきじゃないか。外務省政府はその責任があるということを強く指摘しておきたいと思います。
  430. 相沢英之

    相沢委員長 理事会で検討いたします。
  431. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 それじゃ終わります。
  432. 相沢英之

    相沢委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十九分散会