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1989-05-24 第114回国会 衆議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年五月二十四日(水曜日)     午前十時二分開議 出席委員   委員長 浜野  剛君    理事 柿澤 弘治君 理事 北川 石松君    理事 田中 直紀君 理事 浜田卓二郎君    理事 深谷 隆司君 理事 河上 民雄君    理事 神崎 武法君 理事 林  保夫君       石井  一君    石原慎太郎君       大石 正光君    鯨岡 兵輔君       小杉  隆君    高村 正彦君       坂本三十次君    椎名 素夫君       中尾 栄一君    中山 利生君       村上誠一郎君    石橋 政嗣君       岡田 利春君    高沢 寅男君       野坂 浩賢君    伏屋 修治君       渡部 一郎君    岡崎万寿秀君       松本 善明君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宇野 宗佑君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房審議官   中津川英雄君         科学技術庁研究         開発局長    吉村 晴光君         外務大臣官房外         務報道官    渡辺 泰造君         外務大臣官房審         議官      遠藤 哲也君         外務大臣官房審         議官      谷野作太郎君         外務大臣官房外         務参事官    時野谷 敦君         外務大臣官房外         務参事官    丹波  實君         外務省北米局長 有馬 龍夫君         外務省欧亜局長 都甲 岳洋君         外務省中近東ア         フリカ局長   恩田  宗君         外務省経済局長 佐藤 嘉恭君         外務省経済局次         長       内田 勝久君         外務省条約局長 福田  博君         外務省国際連合         局長      遠藤  實君         外務省情報調査         局長      山下新太郎君  委員外出席者         防衛庁防衛局防         衛課長     萩  次郎君         国土庁計画・調         整局総合交通課         長       小浪 博英君         運輸省国際運輸         ・観光局国際航         空課長     土井 勝二君         運輸省航空局監         理部航空事業課         長       圓藤 壽穂君         外務委員会調査         室長      藪  忠綱君     ――――――――――――― 委員の異動 五月二十二日  辞任         補欠選任   伏屋 修治君     池田 克也君 同月二十四日  辞任         補欠選任   坂本三十次君     高村 正彦君   高沢 寅男君     野坂 浩賢君   正木 良明君     伏屋 修治君 同日  辞任         補欠選任   高村 正彦君     坂本三十次君   野坂 浩賢君     高沢 寅男君   伏屋 修治君     正木 良明君     ――――――――――――― 五月二十三日  常時有人民生用宇宙基地詳細設計開発、  運用及び利用における協力に関するアメリカ合  衆国政府欧州宇宙機関加盟国政府日本国  政府及びカナダ政府の間の協定締結について  承認を求めるの件(条約第六号) 同月十八日  日韓渡り鳥保護条約締結に関する請願(園田  博之君紹介)(第一六一七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 四月二十日  ジュネーヴ条約追加議定書の加入に関する陳情  書外一件  (第六三号) 五月十七日  人種差別撤廃条約等早期批准に関する陳情書  (第一二三号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  航空業務に関する日本国オーストリア共和国  との間の協定締結について承認を求めるの件  (条約第二号)  航空業務に関する日本国トルコ共和国との間  の協定締結について承認を求めるの件(条約  第三号)  常時有人民生用宇宙基地詳細設計開発、  運用及び利用における協力に関するアメリカ合  衆国政府欧州宇宙機関加盟国政府日本国  政府及びカナダ政府の間の協定締結について  承認を求めるの件(条約第六号)  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 浜野剛

    浜野委員長 これより会議を開きます。  航空業務に関する日本国オーストリア共和国との間の協定締結について承認を求めるの件及び航空業務に関する日本国トルコ共和国との間の協定締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。  これより両件について政府より提案理由説明を聴取いたします。外務大臣宇野宗佑君。     ―――――――――――――  航空業務に関する日本国オーストリア共和国との間の協定締結について承認を求めるの件  航空業務に関する日本国トルコ共和国との間   の協定締結について承認を求めるの件     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  3. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 ただいま議題となりました航空業務に関する日本国オーストリア共和国との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この協定に関しましては、昭和六十三年十一月にオーストリアとの間で交渉行い協定案文につき実質的合意に達しましたので、本年三月七日ウィーンにおいて署名を行った次第であります。  この協定は、我が国オーストリアとの間の定期航空業務を開設することを目的としており、そのための権利相互に許与すること、業務開始及び運営についての手続及び条件等を取り決めるとともに、両国指定航空企業がそれぞれの業務を行うことができる路線を定めるものであります。また、この協定は、我が国が従来締結した多くの航空協定形式内容においてほぼ同様のものであります。  この協定は、両国友好関係強化に資するとともに、両国間の人的及び物的交流の一層の増進に役立つものと期待されます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  次に、航空業務に関する日本国トルコ共和国との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この協定に関しましては、昭和六十三年十月にトルコとの間で交渉行い協定案文につき実質的合意に辻しましたので、本年三月八日東京において署名を行った次第であります。  この協定は、我が国トルコとの間の定期航空業務を開設することを目的としており、そのための権利相互に許与すること、業務開始及び運営についての手続及び条件等を取り決めるとともに、両国指定航空企業がそれぞれの業務を行うことができる路線を定めるものであります。また、この協定は、我が国が従来締結した多くの航空協定形式内容においてほぼ同様のものであります。  この協定は、両国友好関係強化に資するとともに、両国間の人的及び物的交流の一層の増進に役立つものと期待されます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  以上二件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  4. 浜野剛

    浜野委員長 これにて提案理由説明は終わりました。     ―――――――――――――
  5. 浜野剛

    浜野委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河上民雄君。
  6. 河上民雄

    河上委員 ただいまの二つ航空協定に関連いたしまして御質問いたしたいと思います。  まず最初に、少し技術的なことを幾つかお伺いいたしますが、我が国は既に三十七カ国と航空協定締結していると伺っておりますけれども、現在我が国に対しまして航空協定締結を希望している国がほかに何カ国あるか、そのことをまず初めにお伺いいたします。
  7. 丹波實

    丹波政府委員 お答え申し上げます。  現在、日本に対しまして航空協定交渉を明確に要請しておって予備的な協議をしております国は一国ございまして、ネパールでございます。  以上でございます。
  8. 河上民雄

    河上委員 航空協定、今回は二つ結んだわけでございますけれども航空協定締結するための我が方の条件ですね。言いかえれば、こういう条件が満たされたら航空協定を結ぶという基準が当然あろうかと思うのですけれども、こういうことにつきましては、一定の基準というものを持っておられるのかどうか。
  9. 丹波實

    丹波政府委員 要すれば、運輸省当局からも御聴取いただきたいと思いますけれども、私からとりあえず申し上げますと、私たちといたしましては、新たに航空協定を他国と締結するに当たりましては、その国との政治、経済文化等交流関係、それから両国間の航空需要の見通し、これが大切だと思いますけれども、それから日本航空企業乗り入れ計画、あるいは相手国ハイジャック防止対策への配慮、こういった点を踏まえまして対処するというのが従来からの考え方でございます。
  10. 河上民雄

    河上委員 今の御答弁では、幾つかの要件を挙げられまして、その中で需要というのもその重要な要件になっているようでございますが、それでは現在、我々今審議しておりますトルコそれからオーストリア両国との関係はどうなっているか。ちょっと私どもの方で調べましたところ、乗客相互往来日本オーストリア間が、去年の場合十一月までですけれども約十六万五千人、日本トルコの間は、これは昭和六十二年度、おととしでありますけれども約二万四千人と大分開きがあるのですけれども、こういうことにつきましては、何か基準があるのか、それとも先ほど言いました、もう政治的、文化的というところだけで判断しておるのか。
  11. 恩田宗

    恩田政府委員 先生指摘のとおり、トルコに行く日本人、それからトルコから来る日本人の数はオーストリアに比べまして二万数千人と少のうございますが、最近急速にこれがふえております。そしてまた、トルコ日本との間の貿易、投資、経済協力に関連する経済関係も急速に密接になっておりまして、私どもとしては、航空運輸需要が直接航空路を開設し得る状況になった、そしてまた、こういうことをすることが現在両国間の伝統的な友好関係にかんがみても必要である、かように考えて、今回トルコとの航空協定締結するに至った次第でございます。
  12. 河上民雄

    河上委員 今ネパールからの希望があるというようなお話でございますが、それ以外にもあるのかどうか知りませんけれども我が国航空協定締結しておりましても、まだ我が国に実際には乗り入れていない国もあるのか、乗客数が少ないからというようなことで乗り入れていない場合もあるのか、それとも締結した以上は必ず大いに繁盛しているのか。いかがでございますか。
  13. 土井勝二

    土井説明員 お答え申し上げます。  現在我が国との間で航空協定が結ばれておりますのは三十七カ国ございますが、基本的にはこの協定を結んでいる国との間では、いずれかの国の企業乗り入れを行っております。一つビルマにつきましては、双方企業乗り入れをしておりません。非常に例外でございます。
  14. 河上民雄

    河上委員 今ビルマという例を挙げられましたが、バングラデシュはいかがでありますか。
  15. 土井勝二

    土井説明員 お答えいたします。  バングラデシュにつきましては、バングラデシュ航空乗り入れておりましたが、現在のところ運休中でございます。
  16. 河上民雄

    河上委員 私ども今回二つ航空協定が結ばれることは非常に結構だと思っておりますし、オーストリアのごときは、相当将来需要が伸びるかもしらぬというような予感も持っているわけでございますけれども、これは承認して発効いたしましても、その後どうなったのか余りはっきり報告もないし、我々も知らないうちに、実際には就航していないとか、いろいろな問題ができておるように思うのです。国会が単なる協定を通過させるだけの機関になる心配もございますので、ちょっと幾つか伺ったようなわけです。  今回の協定をずっと拝見してまいりますと、第一条の二に「付表は、この協定の不可分の一部を成すものとし、「協定」というときは、別段の定めがある場合を除くほか、付表を含むものとする。」こうなっております。我々はここでお伺いしたいのですが、両協定とも付表を含めて国会承認を求めておられるのでしょうか。
  17. 丹波實

    丹波政府委員 お答え申し上げます。  付表は、先生指摘のとおり、両国指定航空企業業務運営することのできる路線を具体的に定めておるわけでございますけれども協定の第一条二項は、先生がまさに今読み上げたとおりのことが書かれておるわけでございます。  他方、十六条には、この付表改正手続が書かれておりますけれども、一条二項と十六条をあわせて読みますと、まさに先生がおっしゃるとおり、協定と一体をなす付表も含めて国会の御承認をいただいておる、こういう立て方になっております。
  18. 河上民雄

    河上委員 それでは、今度は、付表というものは今お話しのように路線を定めておるわけですが、路線変更の場合、付表改正ということに当然なろうと思うのですが、付表改正には国会承認は必要でしょうか。
  19. 丹波實

    丹波政府委員 お答え申し上げます。  先ほどちょっと言及いたしました第十六条は三項から成っておりまして、一項は、いずれの締約国もこの協定改正するために協議ができるということが書かれておりまして、二項は、改正がこの付表を除く協定そのものについて行われる場合には、それぞれの国が国に帰って憲法上の手続を経るべしということが規定されております。第三項目は、改正付表についてだけ行われる場合には、外交上の公文の交換によって発効するということが書かれております。  したがいまして、付表だけが改正される場合には、行政取り決めということで処理し得るという考え方で従来処理されてきております。
  20. 河上民雄

    河上委員 そういたしますと、これまで路線変更、特に以遠権の問題なんかで二国間で大変政治問題になることがよくございます。私は付表改正というのは極めて重要な内容を持つ場合もあると思うのですが、今のお話ですと、第十六条第三項に基づいて、一々国会承認を得る必要がないというお立場のようでございますけれども、いかがでございますか。現在三十七ある航空協定の中で付表改正のみが行われた協定はどのくらいございますか。
  21. 丹波實

    丹波政府委員 具体的な数字をつまびらかにしておりませんけれども、非常に多くのものが、そういう改正が行われているのではないかと推察いたします。
  22. 河上民雄

    河上委員 そういたしますと、私は、航空協定成立そして批准の経過から見まして、第十六条二項、三項に基づいて行政取り決めだけでいいという解釈でございますけれども、やはり付表改正が行われた場合には、国会報告ぐらいはしてもいいのではないか、報告義務はあるのではないか。承認は別といたしましても、報告義務ぐらいはあるのではないかと思いますが、これは大臣、いかがでございますか。こういう場合、数多く実際は改正が行われておる。しかも、時には以遠権の問題とか、そういう重大なことも含まれる場合があるわけでして、そのときは、国会批准はしたけれども、後どうなったかさっぱり報告がないというのも、これはちょっとおかしいのではないかと思いますけれども大臣、いかがでしょうか。
  23. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 非常に大切な御指摘であろうと思います。過去、慣行もいろいろございますから、一応そうしたことも含めまして十分検討させていただきます。
  24. 河上民雄

    河上委員 では大臣、この問題は必ず検討していただいて、今後一つ慣行にしていただきたい、こんなふうに思いますが、いずれまたそのことをお答えいただきたいと思います。  では、これはまじめに御検討いただくというふうに理解してよろしゅうございますね。――うなずいておられますので、そのように私の方は理解したいと思います。  それから、日米航空協定改正をめぐる交渉が行われているということを新聞で私ども見ているのでございますけれども、五月十五日から十七日まで日米航空交渉東京で行われたけれども合意に達することはできず結論は次回に持ち越された、こういうふうに新聞で報道されております。このたびの日米間の航空交渉というのは一体どういう点を、またどういう根拠に基づいて行われているのか、お願いをいたしたいと思います。
  25. 時野谷敦

    時野谷政府委員 お答えを申し上げます。  かねて日米間におきましては、一九五二年に結ばれました日米間の航空協定を見直しまして、要すれば改定を行うという交渉が行われてまいっておりますけれども、この交渉にはなかなか時間がかかる、こういう状況でございます。ただ、他方におきまして、貨物旅客双方とも拡大をしておるという状況にかんがみまして、ともかく協定改定にかかわるような交渉はひとまず置きまして、緊急の需要にこたえるための日米間の話し合いをまとめたらどうか、こういうことで現在話し合いを行っているわけでございます。  先生指摘のとおり、今月十五日から十七日までその意味での協議アメリカ側と持ったわけでございますが、この協議におきましては、主として当面手当てを要する路線権交換、そういうことにつきまして協議を行った次第でございます。今回の協議におきましては結論を得ませんでしたけれども、引き続きアメリカ側協議をしていく、こういう段取りになっている次第でございます。
  26. 河上民雄

    河上委員 今の交渉というのは、いわゆる本協定改正そのものではないわけですね。
  27. 時野谷敦

    時野谷政府委員 本協定を包括的に見直しまして協定改正するという意味ではございませんで、当面手当てを要します路線権の問題を中心日米間で話し合いを行っている次第でございます。
  28. 河上民雄

    河上委員 そうすると、交渉の焦点になっておりますのはどういうところなのか。また、例えば日米間に民間航空運送協定などがございますけれども、それのどの部分なのか。それをちょっと具体的に御説明いただきたいと思います。
  29. 時野谷敦

    時野谷政府委員 交渉の中身に入りますことは差し控えさせていただきたいと思いますが、先ほど申し上げておりますとおり、路線の問題、すなわち日本から幾つ新しい路線アメリカ側に開設するか、あるいは逆にアメリカ側から、どの地点からどの地点路線幾つ開設するか、その路線の問題を中心協議を行っているという次第でございます。
  30. 河上民雄

    河上委員 内容はなかなか今話できないということですけれども、そういたしますと、今審議しております二つ航空協定は大体同じスタイルだと思いますが、その第十六条の付表改正、いわゆる第十六条三項に基づくものとしてやっておるわけですか。
  31. 時野谷敦

    時野谷政府委員 日米航空協定にも付表がございまして、現在話し合っております協議の結果は付表改正につながり得るものと承知をいたしております。
  32. 河上民雄

    河上委員 そういたしますと、民間航空運送協定改正もかかわっているわけですか。
  33. 時野谷敦

    時野谷政府委員 ただいま先生指摘の点につきましては、私どもが現在アメリカ側ととりあえず合意をしようということで協議を行っておりますのは、付表改正をして路線権手当てをするということで話し合いを行っているわけでございまして、追加的に路線を認めるということでアメリカ側協議を行っている次第でございます。
  34. 河上民雄

    河上委員 今どの線で意見が戦わされているかということは、ここで発表できないわけですか。
  35. 時野谷敦

    時野谷政府委員 合意の形にもよりますし、地点を特定するかしないかというようなこともございますし、現在のところ、ここでお話しし得るような段階に至っていないというのが現状でございます。
  36. 河上民雄

    河上委員 要するに、トルコのケースで言いますと、十六条三項に基づく付表改正という形で今交渉を行っている、こう理解してよいかと思いますけれども日米航空協定昭和二十八年に発効して以来、この第十六条に基づく付表変更は今まで何度行われておりますか。
  37. 土井勝二

    土井説明員 今ちょっと具体的な資料を持っておりませんけれども協定締結以来、付表改正されたのは多分一、二回あるかと思います。
  38. 河上民雄

    河上委員 私も質問するに当たって幾つか調べたのでは、何か性格がちょっと違うのかもしれませんが、何かもう少し多いような気もするのですが、もう一度はっきり調べてもらわないと困るのですね。
  39. 時野谷敦

    時野谷政府委員 付表の修正が行われましたのは、過去三回でございます。
  40. 河上民雄

    河上委員 こういう航空協定の、特に付表改正の場合、国会にもう承認を求める必要はないということで、何が協議されているのか、交渉されているのか、どうも国会並びに国民には何にも知らされていない。よく知っているのは一部の業界だけであるという状況が非常に多いのですね。今までのやりとりで大臣もお気づきになったと思いますけれども、こういうことは、この際、せっかく二本の航空協定審議に当たりまして、態度をはっきり改めていただきたい。そんな気持ちがありまして、先ほど、付表改正については承認を求める必要はないとすれば、改正が行われた後できるだけ早い時期に国会報告してほしいということを申し上げたわけです。  今回の交渉と深く関係があると思うのでありますが、アメリカ政府国際航空貨物政策につきまして、料金や路線設定自由化を含みます七項目にわたる対外交渉基本方針をもう既に公表しております。その内容というのは実は余り我々よく承知していないのですが、政府でわかっておるなら、これを今ここではっきりおっしゃっていただきたい。
  41. 時野谷敦

    時野谷政府委員 ただいま先生指摘の七項目というふうにおっしゃいましたが、私ども承知しておりますところによれば、企業参入の自由でありますとか、運航の自由、運賃の自由、輸送力制限撤廃地上施設の使用上の制限撤廃貨物フォワーダー営業の自由、その他差別的な制限撤廃、こういうものを内容とする政策基本方針として明らかにしておるというふうに承知をいたしております。
  42. 河上民雄

    河上委員 今そういう非常に抽象的な七項目でありますけれどもアメリカ政府がそういう態度を明らかにいたしております以上、今の日米航空協定にかかわる交渉協定までいくかどうかあれですが、日米航空交渉にどういう影響を与えるというふうに政府は考えておられるでしょうか。
  43. 時野谷敦

    時野谷政府委員 アメリカ政府がただいま申し上げました基本方針で言っておりますことは、基本的には、米国の貨物航空企業の競争的かつ効率的な航空輸送市場参入機会拡大という、従来からのアメリカの空の自由化と申しますか、そういう路線に沿ったものであろうというふうに思っております。  ただ、これが日米航空交渉にどういうふうに影響を与えるかということにつきましては、今後のアメリカ側の具体的な出方を見る必要があるのではないかというふうに考えております。
  44. 河上民雄

    河上委員 もう今交渉をやっている中で、従来とその点違ってきているなというようなことを感じておられるのかどうか。いろいろあると思うのでありますが、先ほどのお話ですと、日米航空協定の本格的な改正は相当時間がかかるという。相当大幅に変えなければいかぬので時間がかかる、こういうお話でした。したがって、今のところ当面の手当てである、こういうような御説明があったのですけれども、近い将来、いわゆる協定本文改正を考えておられるというふうに私どもは受け取ってよいのかどうか。  この前、日米航空協定をちょっと調べてみましたら、最後の署名のところに岡崎勝男さんとマーフィーさんの大変懐かしい名前がありまして、昭和二十七年署名しておられて、発効は二十八年ですけれども、なるほど、当時の日本、飛行機もほとんど飛んでいないような日本、空港もほとんどないような日本というものとの間の航空協定であったわけで、これは当然その間にあります不平等というものは改正しなくてはいかぬというふうに考えておられると思うのでありますが、近い将来、協定の本文の改正を考えておるのか、その点を伺いたいと思います。
  45. 時野谷敦

    時野谷政府委員 私ども、かねて現在あります日米間の協定を見直しまして、これに改定を加えるという可能性を念頭に置きましてアメリカ側と話をしてまいっておるということでございますけれども、いろいろな問題がございまして、日本側とアメリカとの間での考え方の違い、例えば、先ほどもお話がございましたけれどもアメリカの基本的な考え方というのはなるべく物事を自由にしよう、こういうことでございますし、日本側の考えていることあるいは日本側の事情となかなか相入れないというような要素もあるわけでございます。したがいまして、アメリカとは引き続き話をしてまいるつもりでおりますけれども、現在のところ協定改定を加えるというようなめどが立っているかということでございますならば、そういう状況には立ち至っていないというのが現状でございます。
  46. 河上民雄

    河上委員 今の御答弁ですと、いろいろやろうということでやっているけれども、まだ本格的に取りかかるに至っていないというようなお話ですが、聞くところによりますと、もう二年前ですか三年前ですか、予備的な改正交渉をやっているというふうにも我々聞いておるのですが、その点はいかがですか。本格的な交渉はまだであるけれども、予備的な交渉は既に一九八六年以来やっているという話も聞いておるのですが、その点はいかがでございますか。
  47. 時野谷敦

    時野谷政府委員 この協定改定交渉と私ども呼んでおりますものは、かねて相当前から行っているものでございますけれども、ごく最近におきましては、八四年の三月に再開をいたしまして、それ以来数回にわたりまして協議を行ったということでございます。
  48. 河上民雄

    河上委員 今のお話ですと、八四年三月から予備的な交渉というのをやっているということでございますので、岡崎さん、マーフィーさんという懐かしい名前を見るにつけても、これは当然どこかでやらなければいかぬことだな、こんなふうに思っておるわけであります。  大臣、先ほど来私から何度か申し上げておりますように、日米間の交渉について、交渉事でありますからなかなか報告するには時期があるという考え方もありましょうけれども、国民に向けてあるいは国会に向けては、報告する義務のない限りはなるべく黙っておるという傾向は非常に強いように思うのですが、今、日米いろいろな摩擦が起きておるときでございますだけに、私はそういう点はこれから少し態度を変えていただきたい、こんなふうに思います。この航空協定というのは、政治全体から見たら必ずしも大きな比重でないという意見もあるかもしれませんけれども付表改正ですらやはり報告報告としてやってほしい、こんなふうに思います。  ついでと言っては恐縮でございますけれども、同じ飛行機の問題ですので、FSXの共同開発についての交渉について、ここで政府側からしっかりとした御報告をいただきたいと思います。  アメリカの上院は、五月十六日、FSXの共同開発承認を与えましたが、同時に、共同開発をめぐってアメリカ側の生産段階でのシェア拡大を求める修正案をも可決していることは皆さん御承知のとおりであります。このことは、既に日米両国政府間で締結した了解覚書の変更に波及しかねない問題を含んでいると思うのでありますが、この点につきまして、大事なことですので伺っておきたい、確かめておきたいと思います。交換公文と了解覚書とはともに国民に公表しておられますか。
  49. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 交換公文は公にされておりますけれども、実施にかかわる細目取り決めは公にされておりません。
  50. 河上民雄

    河上委員 それでは、日米間で合意されたFSX共同開発内容について御説明いただけますか。
  51. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 まず交換公文の概要を御説明いたします。  これにつきましては、昨年の十一月に日米間で合意が成立したものでございますけれども一つに、日本国政府は、実施細目取り決めに従い、米国政府協力のもと次期支援戦闘機システムの日米両国による共同開発に関する計画の実施のために必要な資金を全額負担し、システムの開発を計画し、実施する。これは第一項でございます。第二項、計画は日米両国企業が参加して実施される。第三項は、実施細目取り決めは、両政府の権限のある当局の代表者により締結される。この了解及びこれに基づくすべての取り決めに基づいて日本国政府が負担する債務または支出は、憲法上の規定に従い予算上の承認を得たところにより行うというふうになっております。
  52. 河上民雄

    河上委員 今のようなお話でございますけれども交換公文は公表した、了解覚書は公表できないということで来ておられるようでありますが、今後アメリカ政府から要請があった場合、了解覚書の変更に応じるつもりなのか、それとも、これは一たん決まったことだから一切変更に応じないというおつもりなのか、その点を伺いたい。
  53. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 昨年十一月に成立いたしました合意、これに基づいて、この共同開発を進めようと考えておりまして、これの変更を現在は考えておりません。
  54. 河上民雄

    河上委員 今の局長の御答弁ですと、今は変更に応ずるつもりはないということでございますが、現在既にアメリカの上院は、五月、変更を求める修正案を可決しているわけですね。確かに現在はそうかもしれないですけれども、じゃこの修正案に基づいて、アメリカ政府から何かその趣旨に沿った要求があった場合には、交渉に応ずるおつもりでしょうか。
  55. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 現在まで米国政府からその要請はございません。  それから、先生が言及されましたバードの決議案は、上院では通っておりますけれども、それをめぐって現在米国の行政府と立法府の間で話し合いが行われているというふうに承知いたしておりますし、また下院でもこれの討議が行われたということでございます。したがいまして、米国の立法府において行われることについて、日本政府が今ここで物を申すということは適切ではないと考えます。しかし、私ども承知しているところでは、米国政府はこの取り決めを合意されたとおりの姿で実施していこうという決意であるように承知いたしております。
  56. 河上民雄

    河上委員 今問題になっております了解覚書でございますけれども、FSXの問題はいろんな角度から日本新聞にも報道されておりまして、国民が非常に深い関心を持っておるわけです。その了解覚書が公表されていないというところに何かあるのではないかという懸念をだれしも持っておるわけです。  日本政府は、これはアメリカ政府の要請に基づいて公表しないようにしたというふうに述べておるのでありますけれども、今度はアメリカ側からの情報によりますれば、了解覚書などの文書が秘密扱いにされたのは、日本政府の依頼によるものだと米国政府外交筋が答えているという報道もあるのでありますが、これは大変重大なことでございますので、この場所で明らかにしていただきたい。我が国アメリカ政府に非公開を依頼したのかしないのか、その点を伺いたい。
  57. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 このFSX共同開発にかかわる交換公文は、御承知のとおり日米相互防衛援助協定、いわゆるMDA協定に基づくものでございますが、このMDA協定に基づく交換公文の実施のための細目取り決めにつきましては、従来より一貫して日米間でその文書自体を不公表とすることとされてきております。今回のFSX共同開発にかかわる細目取り決めも、かかる従来からの取り扱いに従おうということで、そのようになっているわけでございます。
  58. 河上民雄

    河上委員 今の政府の御説明によりますれば、これまでの相互の了解に基づいてそうしたということであって、アメリカ政府が要請したわけでもなく日本政府が要請したわけでもないというふうにお答えされたように聞こえるのですが、そういうことですか。そういたしますと、従来しばしば我々が聞かされておりますアメリカ政府の要請に基づいてこれを非公開にしたというのは間違っているわけでございますね。
  59. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 今先生がおっしゃられましたような鮮明な答えが何についてどのような御質問に答えてなされたかは私存じませんけれども、いずれにいたしましても、従来より一貫して日米間でその文書自体を不公表とすることとされてきておりまして、これをそのように措置していこうということでございます。
  60. 河上民雄

    河上委員 それでは、最後に確認いたしますが、米国政府外交筋による日本政府の依頼によるものだという報道は間違っているというように日本政府は考えておられるわけですか。
  61. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 どうしてそのような報道があったのか存じませんけれども、繰り返しになりますが、従来どおりの取り扱いでこれを行うべきであろうということになっているわけでございます。
  62. 河上民雄

    河上委員 いずれにせよ、こういう非公開、両国政府交渉結果の非公開という場合には、いや、実は向こう側の要求でそうしているんだという弁明がしばしばなされるのですけれども、そういたしますと、反対側の方から、いや、実はあっちから言われたんだという話がよく出てまいりますので、非常にその点不明朗だと思うので、特にこのFSX、我々は共同開発に対しましてこれを肯定しているわけでは全くないのでございまして、こういう攻撃的な性格を持った兵器の開発というのは日本国憲法にも抵触するという立場でこれを受けとめているわけでございますけれども、しかし、現実に日米間で交渉が行われている以上は、その行方に我々は非常に注目せざるを得ないのでございます。本来ならば、やはりこれは国民にこうなっているということをぎりぎりのところまで明らかにすべきではないか、私はそんなふうに思います。  きょうはたまたま航空協定審議の日でございますので、それに関連してこのことを伺っているわけですが、こういうことは今後ないようにしていくためにも、例えば今審議いたしております航空協定付表改正の場合は、今後ぜひひとつできるだけ早くしかるべき時期に、この国会に、そして審議をした委員会にやはり報告をしてもらいたい、私はそのことを強く申し上げたいと思います。  大臣、このことを含めて大臣一つのこの問題についてのお考えを重ねてお伺いしたいと思います。
  63. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 重要な協定を御審議願っておる次第でございますから、付表等の後々改正あった場合の報告をせよという御質問に対しましては、先ほどお答えいたしましたとおり、検討させていただきます。  なおかつ、FSXに関しましても、十二分に日米間の共同プロジェクトとして推進いたしております。現在は上院で、ああいうふうに本会議で可決されております、バードさんの決議案が。続いて下院の方も、委員会の方が決議されて、本会議はまだでございます。上下両院のそうした決議がなされました場合に米政府がどう対応されるか。私たちといたしましては、お互いにクラリフィケーションという建前でこの問題を詰めてまいりましたので、米政府とされましても、その趣旨を尊重されることであろうということを期待いたしておるわけでございます。  なおかつ、FSXは攻撃的とおっしゃいましたが、あくまでも我が国の自衛隊は専守防衛でございます。有事即応でございます。したがいまして、もしそれ我が国の領海、領空、領地を侵犯する者あるときには、これを排除するという建前でございまして、決して他国にのこのこ出かけていって攻撃するというためではないということも、この際に御理解を賜っておきたいと存ずる次第でございます。
  64. 河上民雄

    河上委員 きょうは航空協定批准でございますので、これ以上この問題については深く触れません。また別な機会にFSXの問題につきましてはさらに質問させていただきたいと思います。  きょうはこれで私の質問を終わります。
  65. 浜野剛

    浜野委員長 次に、伏屋修治君。
  66. 伏屋修治

    伏屋委員 最初に、近年とみにオーストリアとは文化的あるいは人的な交流が高まっておるときに、このオーストリアとの航空協定が成立するということに対しまして、個人的に私も非常に喜んでおる一人でございます。  先ほど河上委員からのお尋ねがございましたけれども日本との航空協定成立を希望しておる国はたくさんあるわけでございますけれども、とりわけ今回オーストリアトルコ両国締結に至った、この経緯について御説明をお願いしたいと思います。
  67. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  最初に、私の方から、オーストリアとの関係航空協定締結に至りました経緯につきまして、御報告申し上げたいと思います。  オーストリアとの間におきましては、定期航路開設につきまして、先方から昭和五十四年以来強い希望がございました。私どもは一般的に航空協定締結については需要が伴わなければならないということで従来対応してきたわけでございますけれども、近年に至りまして、両国間の貿易、投資等の経済関係の緊密化が顕著でございまして、航空運輸需要も直通航空路を開設するのにふさわしいものになってきているという状況がございましたので、政府としましては、この伝統的に友好関係のあるオーストリアとの関係で、これを締結することは極めて重要であるという判断に至りましたので、この交渉を昨年の十一月、東京において行いました。そして、その結果、協定案文につきまして実質的な合意に達しましたので、本年の三月七日にウィーンにおきまして、我が方の矢田部大使とオーストリア側のクレスティル外務次官との間でこの協定署名をいたした次第でございます。
  68. 恩田宗

    恩田政府委員 トルコとの航空協定でございますが、これは昭和四十九年以来、トルコ側より累次にわたって協定締結の希望が表明されてまいりました。近年に至りまして、貿易、投資、経済協力等急速に両国関係が緊密化してまいりまして、人的往来も、昭和六十二年には二万数千人、それから六十三年には、非公式な統計でございますが、これが二万八千人を超えるという状況になってまいりましたので、私どもとしては、航空運輸需要がほぼ直通航空路を開設する状況になったと判断いたしまして、日本トルコとの伝統的な友好関係にかんがみて航空協定交渉に応じるべきである、かように考えまして、昨年十月、東京において案文の交渉をいたしまして合意に達し、本年三月八日、東京において宇野大臣トルコ側アルク駐日大使との間で協定署名に至った次第でございます。
  69. 伏屋修治

    伏屋委員 経緯については大体了解いたしましたが、この両協定とも大体内容が同じようなものでございますけれどもトルコとの交換公文にはオーストリアとの交換公文4に該当するものがないわけでございまして、トルコにおける地上取り扱い業務はどのような扱いになるのか、その辺をお尋ねしたいと思います。
  70. 恩田宗

    恩田政府委員 トルコにおきましては、地上取り扱い業務は主として航空企業の支配下にある機関あるいはその代理業者ということに限定されておりまして、例えば日本指定航空企業トルコに行きまして、他の航空企業から地上取り扱い業務のサービスを受けるという状況になっておりません。したがいまして、この附属交換公文によって通常規定されております地上取り扱い業務の問題を省略させていただいた、こういうことでございます。
  71. 伏屋修治

    伏屋委員 次の問題に移りますが、付表に定められた路線についてちょっとお尋ねしたいと思います。  日本オーストリア航空協定付表には、「中華人民共和国内の地点を除く。」とあるわけでございますが、どうして中華人民共和国内の地点を除かなければならなかったのかということをお尋ねしたいと思います。
  72. 土井勝二

    土井説明員 お答えいたします。  どういう路線を日墺間に設定するかということにつきまして双方で協議している間におきまして、私ども政府双方企業の希望等を聞くわけでございますが、双方企業とも中国を経由して日本とウィーンとの間で航空路を開設する具体的な希望がなかったということで、私どもといたしましては、中国を地点として入れる必要がないんだ、これは日本政府もそうでございますし、オーストリア政府もそうでございますが、そういう判断をいたしまして除いております。
  73. 伏屋修治

    伏屋委員 日本オーストリアの判断でございますが、これは何か中国との航空協定との間にそういう差しさわりがあったのかどうなのか、その辺もお聞かせいただきたいと思います。
  74. 土井勝二

    土井説明員 お答えいたします。  中国との関係について議論が出たことはないと承知しております。
  75. 伏屋修治

    伏屋委員 日本トルコ航空協定路線が南回りになっておるわけでございますが、聞くところによりますと、金丸前副総裁等々がトルコの方へ飛んだときには北回りで行った。北回りで行きますと、時間的にもモスクワ経由で行って給油をしても大体十四時間くらいだ。南回りですと、それが十八時間四十分くらいかかるというわけでございますけれども、それを今回の協定によりますと、わざわざ時間のかかる方の南回りを選択された、こういうことになっておるわけでございますけれども、その路線決定がどういうふうに、どういう理由でそういうふうなことになったのか、お聞かせ願いたいと思います。
  76. 土井勝二

    土井説明員 お答えいたします。  この日本トルコ路線につきまして、先ほどオーストリアについて述べましたのと同じように双方で議論したわけでございますけれども、この交渉の過程におきまして、具体的な運航計画を有しているのが現在トルコ側の航空企業でございますが、このトルコ側の航空企業は、現在アジアにつきまして南回りで既にシンガポールまでは運航している、いわばその地盤というか根拠もシンガポールまでは持っておるということがございまして、そういった背景もあるかと思いますが、当面は南回り路線以外の具体的運航計画を持っていないということで双方が南回り路線交換合意したということでございます。それから今先生最初の方で、最近北回りで直接モスクワ経由で入ったということをおっしゃられたかと思いますが、これは去年確かにチャーター便ではそういう運航が行われております。
  77. 伏屋修治

    伏屋委員 それから、その次ですが、通常、航空協定ということになりますと、相手国の以遠の地点についてそれぞれ権利を確保するということが多いわけでございますが、日本オーストリア航空協定では、オーストリア側の路線東京どまりになっておるということでございますけれども、それは何か理由があったのかどうか、お尋ねしたいと思います。
  78. 土井勝二

    土井説明員 お答えいたします。  航空協定締結あるいは双方の路線の開設に当たりましては、両国の航空権益、利益の実質的なバランスが図られるべきだという一般的な考え方がございまして、国際的にそういう考え方があるわけでございますが、その場合に、東京とウィーンの航空市場としての価値に実際には大きな差異があるということでございます。東京は大変な、世界の経済、政治その他で中心的な都市でございまして、その辺のところから東京とウィーンの価値に大きな差異があるということでございまして、そういうわけでございますので、オーストリア側に東京以遠というのを認めないとしても、オーストリア側から東京乗り入れるということに大変価値があるとすれば、その航空権益が均衡するのではないかということでございます。そういう議論を交渉の中でもいたしまして、オーストリア側も納得をしたということでございます。
  79. 伏屋修治

    伏屋委員 航空協定については私どもも賛成でございますので、この辺で打ち切りたいと思います。  航空協定の問題に関連いたしまして、少し他の問題についてお尋ねをしたいと思いますが、輸入航空券問題について少しお尋ねをしたいと思います。  こういう輸入航空券というのは、これは数年来いろいろと取りざたをされてまいりましたし、私も物価対策特別委員会におりましたその二年ほど前にも、やはりこの問題が質問をされたことがございます。どうしてこういうような輸入航空券が出回ってくるのか。これは運輸省の方ですね。
  80. 圓藤壽穂

    圓藤説明員 お答え申し上げます。  いわゆる輸入航空券と申しますのは、実際には日本から出発されるお客さんでございますが、その方が外国で発券されました、その外国を出発地として日本を経由地として他の外国を目的とする航空券を取り寄せまして、その航空券のうち出発地である外国から経由地である日本までの区間の搭乗用片を破棄した上で、その航空券を日本を出発する旅行のために使用する。つまり実際には例えば東京から出発するお客さんでございますが、それをソウル発あるいは香港発という切符で東京経由をするという切符を買う、それを実際には香港から使わないで東京から使用するという場合にこの問題が生ずるわけでございます。  なぜそういう輸入航空券が出回るのかというお尋ねでございますが、国際航空運賃は出発地の国の通貨によって設定されるということが国際的なルールとなっておるわけでございまして、昭和六十年のG5以降の急激な円高の進行によりまして、同一地点目的とする場合でありましても、外国発日本経由当該地点行きの運賃の方が日本発当該地点行きの運賃よりも安いというようなことが出てまいるわけでございまして、このことが輸入航空券の発生を招いているというふうに承知しておるわけでございます。
  81. 伏屋修治

    伏屋委員 数年来こういう問題があったわけでございますけれども、再三指摘されたにもかかわりませず余り大きな問題にならなかったわけでございますが、最近にわかにこの問題がクローズアップされてきたのはどうしてなのかということをお尋ねしたいと思います。
  82. 圓藤壽穂

    圓藤説明員 この輸入航空券の問題というのは、制度的な問題として申しますれば、発地国通貨建て主義というのが全世界的に採用されているということでございますれば、今のように外国発の航空券を買うわけでございますから、その外国を真の出発地とする旅客だけが利用するということが許されるわけでございます。日本を真の出発地とする旅客がこのような航空券によって搭乗する場合には、改めて日本発の運賃との精算を行うということは国際的なルールとして確立しているわけでございます。これは以前からそういうことでございまして、なぜ急にということは我々としても十分承知しておるわけでございませんけれども、一部の新聞で最近、二、三カ月前に報道されたというようなことがきっかけとなって、相当大きな問題になってきておるというふうに承知しておるわけでございます。
  83. 伏屋修治

    伏屋委員 最近というのは、やはり日経連の鈴木会長あたりの発言で、いわゆる同方向格差というものの是正、なくしてやるというような問題、もっと自社努力が必要でないのかというようなことを言わんばかりの発言があった。そういうところからひとつ大きな問題になってきたのでないかと思うわけでございますが、それまでに至る間、かなり多くの方々がこの輸入航空券で海外に渡航しておるという事実もあるわけでございます。ことしの二月ぐらいから急にこの問題がクローズアップされてきてから、日航もそういう輸入航空券問題につきましては、正規運賃の差額をちょうだいする、またその差額を支払わない人は搭乗拒否をする、こういう強硬な姿勢に出てきたということから、この問題がクローズアップされてきたわけでございます。  この輸入航空券問題は、先ほども申し上げましたように、かなり以前から問題になっており、そしてこの輸入航空券を利用して安く海外へ渡航しておった人がたくさんおったわけでございます。それも国会でも指摘されておったわけでございますけれども、運輸省はそれに対してちょっと指導の適切さを欠いておったのではないかにわかにクローズアップされてきてからこういう問題が顕在化して、今指導に入った、こういうような感じもなきにしもあらずでございますけれども、今まではどのような指導体制をとってきたのか。また出発地国の通貨で発行するということであるならば、日本の急激な円高の状況から考えて、いわゆる航空運賃の算定、そういうもの等々を運輸省もきめ細かくやるべきであったのではないのかということを考えるわけでございますが、そのあたりはどういうふうにお考えですか。
  84. 圓藤壽穂

    圓藤説明員 輸入航空券問題というのは日本だけで発生している問題ではございませんで、例えばベネズエラからアメリカ経由でヨーロッパに行く場合とか、カイロからフランクフルト経由でアメリカに行くというような場合にも発生しておりまして、それぞれの国においても厳しく対応しておるという実態にございます。ただ、こういう問題が発生する根本といいますのは、結局は日本発の運賃が非常に高い、それに対する利用者の方の御不満が非常にあるということが背景になっているものというように私どもは認識しておりまして、昨年の九月にいわゆる方向別格差の是正に関する措置を発表いたしました。平たく申しますと、平成元年度中に北米線、欧州線あるいはオセアニア線、こういった国との方向別格差を解消する、あるいはその他の東南アジア等の主要国についてもできるだけ格差を縮めるというようなことを発表いたしまして、それに基づきまして強力に航空会社を指導してまいったわけでございまして、だんだんにその効果もあらわれてきつつあるという状況にございます。今後とも日本発運賃が高いという利用者の不満を十分に体しまして、私どもとしては強力に航空会社を指導してまいりたい、かように存じておるわけでございます。
  85. 伏屋修治

    伏屋委員 運輸省を責めるわけではございませんけれども、運輸省の今までの指導のタイミング、指導内容に適切さを欠いておったのではないかという危惧を今も持っております。というのは、公正取引委員会等々も、輸入航空券を認めないなら航空会社は日本発の運賃をもっと値下げすべきであるという内容を運輸省に突きつけて、そして運輸省はそれを受けてやっと重い腰を上げた、こういうような感じがなきにしもあらずですが、その辺の経緯はどうなっておりますか。
  86. 圓藤壽穂

    圓藤説明員 昭和六十年のG5以降急激に円高が発生してきておる、そういう状況の中で、日本発運賃と外国発運賃の間に相当格差を生じてきておるということが深刻になってまいりましたのは、六十一年度以降でございます。私どもは、六十一年度以降徐々にではございますが、何回にもわたりまして日本発運賃の値下げをずっと実施してきております。去年の九月に発表してから後やつたというわけではございませんで、去年の九月には、期限を切って、平成元年度中にとにかく格差を解消するんだという方針を明確にして、それによって指導した方がよかろうということで、さらに指導を強化したわけでございまして、我々としては円高が発生した六十一年度以降強力にこういう指導をしてまいっておるわけでございます。その辺は御理解いただきたいと思います。
  87. 伏屋修治

    伏屋委員 評論家の屋山さんの記事も載っておるわけでございますけれども、本当に円高における方向別格差を解消するという努力をしよう、真剣になってやろうとするならば、もう二年前、三年前にこれはできておるはずなんだ。けれども、国際航空運送協会の会議で決める運賃、それを受けて運輸省が値下げを許可するという仕組みになっておるわけでございますが、そのいわゆるIATA、協会の方への今日的状況による運賃の値下げに対する努力というものを日本側としてやっておらなかった。それを強力に言うならば、諸外国の外貨獲得が減収になる、だからそれを取りまとめることは無理ではないかというような消極的な姿勢があったし、また方向別格差がますます開いていくのにもかかわらず、そういう運賃改定会議日本側が申し込んだというような事実もないようであって、そういうことを厳しくやっていくならば、もっと早い時点で方向別格差が解消できておった、こういうような記事も私読んだわけでございますが、そのあたりはどうお考えですか。
  88. 圓藤壽穂

    圓藤説明員 昭和六十年のG5以前の数年間、つまり五十六年くらいから六十年くらいの間はむしろ日本発の運賃の方が外国発の運賃よりも安かったわけでございます。したがいまして、その時点では方向別格差の是正をする必要はなかったわけでございまして、六十年以降円高が発生したわけでございます。それに伴いまして日本発の運賃が高くなった。その時点から我々としてはむしろ航空会社を指導いたしまして、IATAの場で日本発の運賃の値下げを政府主導型で実現しておるというのが実態でございまして、IATAがなかなか腰を上げないというよりも、政府が航空会社を動かし、そしてIATAを動かして値下げを実施しておるというのが実態でございます。
  89. 伏屋修治

    伏屋委員 最近、連休後に日本航空あたりも航究運賃の値下げを発表したようでございますけれども利用者の側から考えれば、ソウルにも日本航空の支店があり、また香港にも日本航空の支店がございます。そこで搭乗券を購入する。極めて安く購入ができる。そして同じ日航の飛行機で同じサービスを受けるなら安い方がいいのじゃないかということで、自衛上利用者はそういうような形をとってきたわけでございまして、いわゆる自衛上とってきた搭乗者に対して日本航空は差額を要求した。そしてまたそういうことに対しては搭乗拒否をするというような強硬な姿勢を示して、安い搭乗券を手に入れた人があたかも悪であると言わんばかりの姿勢で臨んできたというところが今日的に非常に大きく問題化しておるわけでございまして、そのあたりのところ、どうお考えになっておられますか。
  90. 圓藤壽穂

    圓藤説明員 先ほど来御説明申し上げておりますように、制度的な問題自体として申し上げますれば、ソウルで輸入航空券を買って日本から乗るという行為は、これは運送約款上におきましても、搭乗用片は旅客用片に記載された出発地からの旅程の順序に従って使用しなければならないということが明記されておりまして、法的にはこのことが航空会社と旅客との間での運送の条件とされているわけでございます。したがいまして、この問題に関しましては、差額を徴収するということ自体は適法な行為でございます。したがいまして、利用者の公平感という観点から見ましても、正規の運賃を利用される方と、そういう輸入航空券という安い運賃を利用される方、そういう不公平の問題というものが生じてまいるということもありまして、制度的にはこういうものがいいとは決して言えないということははっきりしておるわけでございまして、ただ、そういう苦情が起こるのも、結局は日本発の運賃が高いからだ、それをできるだけ安くしようというふうに一生懸命努力をしてまいりたい、かように存じておるわけでございます。
  91. 伏屋修治

    伏屋委員 だから、その努力が先行しなければならないのにもかかわらず、その努力をされないままに利用者に厳しい姿勢で臨んだというところに今日的な問題があるわけでございまして、ですから、今運輸省の方も方向別格差の解消に努力して、日本発の運賃を下げていこう、こういうようなこともおっしゃいましたけれども、それを受けてか、今度は日航の方も運賃値下げというようなことを言っておるわけでございますが、今後この運賃値下げに対して強力な指導方を要請したいといますし、どういうふうにそれを指導し、そしてまたどういうふうに運賃値下げのスケジュールを考えておられるのか、その辺もお聞かせをいただきたいと思います。
  92. 圓藤壽穂

    圓藤説明員 方向別格差の是正につきましては、昨年九月に発表した目標に向けまして、先ほど申しましたとおり、平成元年度中に米国線、欧州線、オセアニア線につきましては、普通航空運賃にかかわる格差を解消する、それから東南アジア線等の主要路線についても、大幅な格差是正を図るという方針で取り組むように、昨年の九月に関係航空企業に対して指導を行ったところでございます。この方針に従いまして、航空会社においても逐次値下げを実施してきておりまして、方向別格差という問題につきましても、日本発運賃のレベルを一〇〇とした場合に、相手国発の運賃のレベルが、例えばロサンゼルスはもう既に九五になっております。それからロンドンは八七、それからシドニーが九八ということで、アメリカ、ヨーロッパ、オセアニアに関しましては、かなり改善されるに至っておるわけでございまして、この方針ができるだけ、遅くとも平成元年度中でございますけれども、できるだけ早く実現されるように我々としてはさらに指導を強化してまいりたい、かように存じておるわけでございます。
  93. 伏屋修治

    伏屋委員 日本航空の経常利益についてもお尋ねしたいのですが、六十二年度においても三百億を超える経常利益を上げておると聞いておりますし、また昨年の六十三年度は、まだ決算前でございますけれども、予想によりますと大体三百七十億ぐらいの経常利益が出るのではないか、このように言われておるわけでございます。  この四月からオセアニア路線の方も値下げがされたわけでございますけれども、この日本航空の方向別格差是正の方法がちょっと理解に苦しむようなところがあるわけでございまして、日本発の方を一〇%値下げすると、向こうの現地発は一〇%上げるというようなならし方、こういうようなならし方があると聞いておるわけでございますが、なぜそれだけの経常利益があるのにもかかわらず、そういうふうなならし方をするのか。利用者サイドに立って、利用者から喜ばれるような値下げというものがなぜ考えられないのか、こういうふうに私は思うわけでございますが、そういうような経常利益というものを背景にしながら、今後強力な、利用者本位に立った値下げの方向を考えていただきたい。そのあたりのお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  94. 圓藤壽穂

    圓藤説明員 我が国といたしましては、現在の円高に伴う航空運賃の方向別格差の是正につきましては、我が国が主体的に行うという観点から、あくまでも日本発運賃の値下げに主眼を置いて格差是正を進めているところでございまして、相手国発運賃の値上げを求めているわけではございません。ただ、相手国発の運賃の値上げという点につきましては、民間企業である航空企業から正式に申請があった場合に、その申請が不合理なものでなく、かつ我が国政府だけじゃなくて相手国政府もその実施を認めるというときには、その値上げが行われることもやむを得ないということであろうかと思います。  具体的に申しますと、主として相手国発運賃が値上がりになるということのメカニズムは、日本側あるいは日本企業から求めているわけではございませんで、むしろ日本発の運賃を下げますと、相手国発の企業日本発の運賃の値下げによります減収が生ずるわけでございまして、それを補てんするために、相手国発の値上げによって企業経営の維持を図ろう、そういう場合が多いのではないかと考えられているわけでございます。我々の方から値上げを求めているわけでは断じてございません。
  95. 伏屋修治

    伏屋委員 方向別格差がかなり解消されるというようなことでございますけれども、全く一対一になるわけではございません。まして為替が変動相場制でございますから、今後の為替の変動において運賃がいろいろと変わってくることは予想できるわけでございますが、そういうものに対して運輸省が住民サイドに立った適切な指導と、そしてまた航空会社も適切な住民サイドに立った運賃改定というものを、時期をおくらさないで適切な時期に的確にやっていただきたい、このことを強く要請をいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  96. 浜野剛

    浜野委員長 次に、林保夫君。
  97. 林保夫

    ○林(保)委員 大臣初め皆様、御苦労さまでございます。時間が限られておりますので、事務的な問題を駆け足で質問いたしまして、まず御答弁を得たいと存じます。  本日議題になっておりますオーストリアトルコ航空協定につきまして、その交渉の経緯と内容をまず御説明いただきたいと思います。
  98. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  経緯につきましては、先ほども説明申し上げた次第でございますけれども昭和五十四年以来、オーストリア側におきまして日本との定期航空路開設を強く要望し、そして航空協定の申し入れがございましたけれども、私どもといたしましては、当時の時点におきまして、まだ航空運送需要が十分でないということで断ってきたわけでございますけれども、最近に至りまして、貿易、人的交流等かなり顕著な増加が見られますし、そういう意味オーストリアとの関係も非常に重要な展開を見せておりますし、重要な友好国でございますので、この際、オーストリアとの航空協定を結び、そして両国友好関係をさらに固めるという意味で意義があるというふうに判断して、昨年の末に交渉いたしまして、本年の三月にウィーンにおきまして署名に至った次第でございます。  そして、本年は日墺修好百二十周年に当たりますので、特に人の往来がいろいろな計画されている事業との関連でふえるとも思いますので、そういう意味で極めて時宜を得たことだろうというふうに考えております。この結果、日墺間におきましてモスクワ経由の航路が開設されるということになる次第でございます。
  99. 林保夫

    ○林(保)委員 まず、オーストリア航空協定に関しまして、ただいまのような経過をたどって今回批准手続を我々進めなければならぬ立場にございますが、具体的に、週二便と聞いておりますが、それらの点につきまして、あるいはこれは三社運航ということになるというふうにも聞いておりますが、その具体的な点をもう少し詳しく御説明いただき、またどれくらいの往復が見込まれるのか、採算がとれるのかどうかという点、まずオーストリアの方について御説明願います。
  100. 土井勝二

    土井説明員 お答え申し上げます。  オーストリアにつきましては、協定が発効した後、オーストリア航空を運航企業として、オーストリア航空が機材、要員を提供するわけですが、我が国企業、それからソ連の航空企業、この二つがその業務に参加をして、いわばその三社の共国運航という形でウィーン-モスクワ-東京、この路線を週二便の運航を計画いたしております。それで、機材、飛行機といたしましてはA315を予定しております。  それで、需要でございますけれども、一応私ども聞いておるところでは、三万数千人の需要が見込まれておりますので、十分採算がとれるというふうに考えております。
  101. 林保夫

    ○林(保)委員 国営オーストリア航空をメーンにして、ソ連はアエロフロート、それから日本は全日空というふうに伝えられておりますけれども、その御確認と、それから、以遠権の問題について、ウィーン以遠を一ないし二でございましたかね、向こうが約束している。東京はそれでとまるというようなことも聞いておりますが、ウィーン以遠権の行使はいつごろになるのか。どういうことを考えておるのか。それから東京どまりという場合には、向こうはそれで得心した上で協定を結んだと思いますけれども、その辺のいきさつを御報告願います。
  102. 土井勝二

    土井説明員 お答えいたします。  実際に参加する企業我が国におきましてどこか、ソ連の航空企業はどこかというのは、まだ協定が発効してない段階で確として申し上げることはできませんけれども、私ども聞いている希望といたしましては、我が国については全日空、それからソ連につきましてはアエロフロート、ソ連航空が希望していると聞いております。  それから、こちらから行きまして、いわばオーストリア以遠、ヨーロッパということについてのお尋ねと理解いたしておりますが、これにつきましては、これもまだ協定発効がしてない、運航も開始されてないということで具体的にお答えできませんけれども、今のところ、私ども承知しているのは、当面その以遠が具体的に行使されるということはないのではないかと思います。(林(保)委員東京はどうですか」と呼ぶ)失礼しました。向こう側から見て東京以遠につきましても同じような状況だと理解しております。当面具体的に行使するということはないと思います。
  103. 林保夫

    ○林(保)委員 同じくトルコの場合についての展望について、ただいまお話しいただいたようなことでお聞きしたいのでございますが、ここにつきましても、言うまでもなく大変熱心な両国関係が近ごろできておるように思いますので、その辺も踏まえて展望をひとつお聞かせいただきたいと思います。  それから、これもやはり以遠権の問題が、イスタンブール、東京、両方ございますので、どういう展望になっておるか。  それからまた、もう一つ、非常にあれだと思いますのは、何かトルコの場合は、向こうのトルコ航空がこちらへ来るけれども、ちょっと私どもなかなか考えにくいのですけれども日本側は運航しないというような感じの話も承っておりますが、その見通しもひとつしっかり御説明いただきたいと思います。
  104. 土井勝二

    土井説明員 お答えいたします。  トルコにつきましては、協定発効後におきまして、国営トルコ航空がイスタンブールードバイーバンコクー東京という路線をやはり週二便の運航を計画しております。  それで、この日土の航空路につきましては、私ども聞いているところでは、あるいは承知しているところでは、トルコ航空のみが乗り入れてくる、日本航空企業についてはまだ具体的な乗り入れの計画がないように理解しております。  それから、以遠につきまして、双方が以遠を持っているわけでございますけれども以遠権の行使についても具体的な計画は特に聞いておりません。  それから、ちょっと順序がばらばらで恐縮でございますが、予想される輸送需要でございますが、やはり大体オーストリアと同じようなレベル、三万人ぐらいではないかと考えております。
  105. 林保夫

    ○林(保)委員 ところで、大体そういうことだろうかということになるわけですけれども、過日、これは公文書だと思いますが、外務省、平成元年四月二十五日現在の「早急に御承認いただくことが必要な理由」、こういう文書を実はちょうだいいたしております。  大げさなことを言うわけではございませんけれども、責任政党、実務を大事にするということになりますと、これは実は大変だ、こういう思いで今日までおったわけでございます。国政の渋滞は私ども野党も責任を負わなければなりませんのですけれども、そういうことからいきまして、このオーストリア航空協定の場合は、五月上旬に日本国航空企業による免許申請、相手国航空企業による事業許可申請、相手国による航空企業の指定、外交上の公文の交換。それからその次は、今度は六月はもう許可にかかわる国内手続で、七月八日許可・免許、七月十六日運航開始希望日というのが出ておりますね。これはいけるのだろうか。  それから、特にトルコに至っては、今申し上げた五月上旬には免許申請、事業許可申請、それからいろいろな指定をして許可にかかわる国内手続、六月一日にはもう許可するというふうになっている。きょうは何日でございますか。とても六月一日には間に合わぬのではないかと思いますね。そして六月七日には運航開始希望日が出ておりますが、これがぎっちりできるのかできないのか、もしできないとしたらどういう実務的なおくらせる手だてがあるのか、はっきりひとつ御答弁、責任を持ってお答えいただきたいと思います。これは運輸省でしょうか。
  106. 土井勝二

    土井説明員 お答えいたします。  ことしの冬ないし春の時点でオーストリア側それからトルコ側、それぞれ協定署名されたということで、それぞれの企業がなるべく早い機会に実際に運航を開始したいという希望を持っていることは事実でございます。  それで、私ども聞いているところでも、オーストリア航空につきまして七月の中旬、あるいはトルコについては六月の上旬というような希望も聞いておりますし、五月、今月だと思いますが、それぞれの企業から五月の時点で申請も出ております。率直に申しまして、やや申請のドラフトに近いいろいろな、まだチェックすべき点があろうかと思いますが、そういうものが出ていることも事実でございます。  それで、これからの予定ないし見通してございますけれども、ただいま国会承認のための御審議をいただいておりますので、その審議及び御承認が完了した時点で政府といたしましても必要な外交手続を行う。それから私ども運輸省の担当の当局といたしましても、それぞれの申請についてできる限り迅速に手続を進めまして、それぞれの企業の希望を念頭に置いて許可をしたいというふうに思っております。  ただ、率直に申しまして、オーストリア航空については希望の日についてまだ少し時間がございます。それに対しまして、今先生も御指摘のように、トルコ航空については、今のところ航空企業側が六月上旬にしてくれという希望になっておりまして、これは国会の方の御審議ともかかわるかと思いますけれども、具体的に六月上旬に必ず運‘航できるか、企業の希望に沿えるかと申しますと、若干不確定な要素があろうかと思います。
  107. 林保夫

    ○林(保)委員 時間がなくなりましたが、このような忙しい時代に、民間の仕事を政治や行政が邪魔することのないように、やるものはきっちり国際責任を持ちながらやるということで私どもも対応したいと思いますので、皆さん方もそういうお心がけでぜひひとつやっていただきたい、このことを申し上げておきたいと思います。  最後に二つお願いしたいのでございますが、先ほど来質問ございまして、三十七カ国と航空協定を結んでおる。三十七カ国の名前を全部挙げていただきたいのです。何か今交渉中が一カ国ある、それから申し込みが、ここの新聞報道によると三十九カ国から乗り入れ要請があるというふうに言われておりますが、交渉段階に至っていませんけれども、どれくらいあるのかという点をひとつお聞きしたいと思います。  それから、その次には大臣、御答弁をひとつお願いしたいのでございます。  そういう情勢に対処して、きょうは国土庁も呼んでおりますけれども、ローカル空港を活用するということも国土庁の方のいわゆる地方の国際化空港活性化調査委員会などでもう既に案は出ているようでございますが、これをどのようにされて一体的におやりになるのかという点と、大臣にはもう一つ、先ほど出ておる日米航空協定、これは国辱的な協定だということを我々はよく知っているわけです。ところが、それを自由にせいというと、またこれ大変なことになる。しかし、なおきっちりとした対応を、やはり平成元年でございますのでやらなければなりませんので、全体を踏まえて、日本の国益を踏まえながら、なおかつ新しい時代に即応するような航空網の整備に関連する日本の姿勢をどうやっていくかという点、恐縮ですが大臣、最後に一つお聞きしたいと思います。  まず、協定の実績及び見通し、これをちょっと。
  108. 土井勝二

    土井説明員 お答えいたします。  協定を既に締結している三十七カ国でございますが、ちょっと時間をおかりしますが国名を挙げますと、アメリカ合衆国、連合王国、イギリスでございます。それからオランダ、スカンジナビア三国、これは一つとして扱っています。それからタイ、カナダ、インド、フランス、オーストラリア、スイス、ブラジル、ベルギー、ドイツ連邦共和国、パキスタン、インドネシア、イタリア、エジプト、クウェート、マレーシア、それからソビエト連邦、シンガポール、韓国、レバノン、フィリピン、ビルマ、メキシコ、ギリシャ、中華人民共和国、それからイラク、ニュージーランド、バングラデシュ、フィジー、スペイン、フィンランド、スリランカでございます。  それから、我が国へ国際定期航空路線を乗り入れたいという開設の希望でございますが、先ほど外務省の方がお答えなさったように、実際に予備的な協議を行ったことがあるのはネパールーカ国でございますが、私どもいろいろな機会に乗り入れたいという希望を聞いてございますのは三十数カ国ございます。
  109. 林保夫

    ○林(保)委員 棒読みで結構ですから、ちょっと具体的に言ってください。
  110. 土井勝二

    土井説明員 それでは、私ども承知している、希望を聞いたことのある国を申し上げます。  マダガスカル、モーリシャス、ブルガリア、サウジアラビア、パナマ、ジョルダン、ザイール、エチオピア、アフガニスタン、ケニア、タンザニア、ウガンダ、イスラエル、ラオス、チリ、チェコスロバキア、ポーランド、カンボジア、ユーゴスラビア、ルーマニア、ルクセンブルク、ナウル、パプアニューギニア、ウルグアイ、グァテマラ、ネパール、東ドイツ、モロッコ、ポルトガル、南アフリカ、コロンビア、オーマン、アラブ首長国連邦、マーシャル諸島、ブルネイ・ダルサラーム、モルジブ、バーレーンといった国でございます。
  111. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 二つ航空協定、御審議願っておりますが、実は私、国際会議に出るたびに、いろいろな国から、我が国ともひとつよろしくというような申し入れがたくさんございます。それは今運輸省が読まれたとおりだろうと思います。また、既に結んでおりましても、さらに増便というような要求も非常に強い。それほど我が国の国際的地位は高くなったと喜んでおりますが、それに対応するいろいろな面において貧弱であることは言うまでもありません。成田空港一本ではとてもさばき切るものでもございませんので、したがいまして、多くの申し入れがありましても、それを早急に受け入れるということが至難な状況である。こういうふうに私たちもその必要性を痛感しております。したがいまして、例えば成田でも、この間霧が出ましたのでなかなかおりられないというような状況で、一部の外務大臣は羽田へおりたというふうなことがあったり、遠くは名古屋へおりたということがございます。小さい国でありながら、そういうふうな不便を抱えておりますから、今後空港の整備充実ということは大切なことで、なかんずく場所あらば地域におきましてもそうしたことを考えなければならないだろう、かように私は考えております。  もう一つ日米航空協定でございますが、仰せのとおりの面もございますが、日米両国間におきましては、両国のきずなをますますかたくしなければいかぬ。だから、いろいろな面においてバランスはとっても、それは縮小均衡であってはいかぬ、拡大均衡が大切であるということを言っておりますから、航空協定の面におきましても、日米それぞれが拡大均衡という面において今後協力したい、かように思っております。
  112. 林保夫

    ○林(保)委員 ありがとうございました。  問題意識は僕も共通しておりますので、ひとつ決断しながら、お互いに鋭意努力する、こういうことで前向きで頑張っていただきますようお願いを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
  113. 浜野剛

  114. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 二つ航空協定について質用いたします。  これまで二国間の航空協定、三十七カ国と結んだというふうに言われていますが、平等互恵の国際交流、国際協力を進めていくために必要なことだろうと思います。そこで問題になるのが以遠権のことです。相互主義を貫く上からも、以遠権の問題は、やはりそれぞれ平等でなければいけないというふうに思うのです。  今回の日本オーストリア航空協定の場合、以遠権日本だけになっているわけでございますけれども以遠権問題について、航空協定を結ぶに当たっての基本的な考え方、このことを最初にお答え願いたいと思うのです。
  115. 土井勝二

    土井説明員 お答え申し上げます。  航空協定におきましての以遠権の位置づけと申しますか、形態でございますけれども航空協定を結ぶ場合に、私ども、先ほど外務省の方からもお答えございましたように、二国間の関係であるとか、あるいは二国間の航空輸送需要の見通しであるとか、あるいは航空企業の具体的な運航の希望とか、そういうあたりを十分考慮しまして、二国間の双方の当局あるいは政府が相談をして決めていくわけでございます。  その場合に、まず二国間協定におきましては、一般的に申し上げますと、その二国間の輸送需要、お客さんとか貨物の輸送需要というのがどのくらいあるか、あるいはそれをどういう形で担うべきか、運ぶべきかというところが議論の中心になる。それからさらに、今先生おっしゃいました以遠権につきましても、その二国間の輸送の需要あるいは形態に関連いたしまして、それより遠くへも行くことが適当である、あるいはその必要があるという場合にお互いに以遠権を認める場合があるということでございます。
  116. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 お互いに認める場合と認めてない場合もありますね。そういうことがあるのでお聞きしたわけですが、大体おっしゃることはわかるので、先に進みましょう。  先低どから質問があっています日米航空協定改定交渉が今進んでいるという話なんです。この日米航空協定の場合の以遠権はどうなっていますか。
  117. 土井勝二

    土井説明員 お答え申し上げます。  日米航空協定におきましては、協定の中では以遠権につきまして米国側は制限がついておりません。無制限でございます。日本側は制限がついてございます。この結果でもありますけれども、それで実際に双方の企業が以遠地点として使用している地点も大きな開きがございます。
  118. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 アメリカは無制限、大きな開きがあるという話ですが、これを今度の改定交渉でどう変えようというのですか。今進行中でしょうけれども日本側の姿勢をお聞きしたいと思います。
  119. 土井勝二

    土井説明員 お答えいたします。  先ほど来お答えもあったかと思いますけれども、以遠地点についてかなりの不均衡が日米間にあるということで、その点につきましても協定全体の見直し交渉の中で一つの重要なポイントとして議論がなされつつあるということでございます。ただ、具体的に協定全体の枠組み全体をどうしようかという見直しであることもあって時間もかかっております。それからさらに、今後その以遠権の形について、その見直しの中でどうなるかというところも議論が進行している最中ということで、ちょっと具体的にお答えすることはできない状態でございます。
  120. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 いずれまた当委員会でも論議することになろうと思いますが、不平等を残さないようにしっかりした交渉をやってもらいたいと要望しておきます。  国際航空の問題と関連しまして、国内の中の離島のための航空行政についてお聞きしておきたいと思います。  離島の場合は、本土との陸上交通の手段がございませんので、とりわけ公共交通として航空機の占める比重は大きいわけでございます。また離島なるがゆえのいろいろな特性がありまして、滑走路は延ばせないとか航空需要が少ないとか、こういう点があって、今日でも千二百メートルの滑走路、八つのうちに七つまでが離島なんです。千五百メートルの滑走路、六つのうちに五つまでが離島になっているわけです。そういう点がありますので、離島の特性に見合った多様な航空行政が求められているというふうに思うのです。  例えば、ごく東京の近くでいいますと、伊豆七島の場合、八丈島の場合は千八百メートルでジェット機が飛んでいますし、それから三宅島、大島の場合は千二百メートルでYS11が飛んでいますし、それから新島や近くできる神津の場合も、これはセスナ機が飛んでいるわけなんです。  そういう形で、地域の特性に見合った、また離島振興という点から見ましても、こういう航空行政が必要だろうというふうに思いますが、運輸省の基本的な離島のための航空行政についての考え方をお聞きしておきたいと思います。
  121. 圓藤壽穂

    圓藤説明員 離島にお住まいになっておられる地域の方々にとって、離島航空路線というのは、足の確保という面で極めて重要な位置を占めているというふうに考えているわけでございまして、我々としましても、航空会社のその路線を維持することによって極力住民の足を確保するように努めているところでございます。
  122. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 極力住民、利用者の利便を図るように努力しているというお答えでございました。そうでなくちゃいかないというふうに思うのです。  今離島で多く使われているのはYS11なんです。これは国産機としてこれまで百八十二機ほど生産されておりまして、構造も非常に堅牢でございますし、安定性がある、快適、しかも経済性においてもすぐれているというふうに言われているわけです。今日、エアーニッポン、エアシステムなどで約六十三機が運航しているわけなんです。そういう中で、まだ耐用年数は十年から十五年くらいあるというふうに技術的には言われているわけです。そういうことから見ますと、このYS11の後継機問題、まだ今検討すべき時期には入っていないように思いますけれども、これも運輸省の御見解を聞いておきたいというふうに思います。
  123. 圓藤壽穂

    圓藤説明員 YS11型機につきましては、安全性という観点からいいますと、適切な整備が実施されている限り問題はないというふうに考えているわけでございますが、経年化に伴いますメンテナンスコストの増加、部品入手のためのコスト増加といったような経済性の低下といったような問題が生じつつあるのは事実でございます。しかし、YS11型機の後継機の問題につきましては、それぞれの航空会社がどういう機材を導入するかということは、それぞれの航空会社においてあるいは検討しているところもあるかと思いますけれども、我々としては、どういう機種にすべきだとか、そういう指導をしたことはございませんし、会社の社内でそれぞれの会社の事情に合った機種の選定を検討しておるという段階だというふうに承知しております。
  124. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 運輸省として、全体的な航空行政の見地からYS11問題についての検討の時期はいつごろをお考えになっているのですか。各会社任せじゃなくて、特に離島航空という点からいいますと、YS11は非常に重要な意味を持っているわけです。そういう点でお聞きしているわけです。
  125. 圓藤壽穂

    圓藤説明員 運輸省として、YS11型機の後継機をどうするかという問題を検討したことはございません。ただ、航空会社におきまして、これは離島ではございませんけれども、地方の空港のジェット化が進むにつれまして、YS11をジェット機に切りかえるということはどんどんなされているわけでございまして、その場合にはボーイング御でありますとかあるいはB767といったような機種に転換が行われている路線もあるわけでございます。
  126. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 各会社がいろいろと検討していることは聞いていますけれども、運輸省の姿勢を聞きたかったのです。  お聞きしますけれども、YSからジェット機の方に切りかえる場合、つまり機材変更でございますね。その場合でもいろいろな諸条件が必要なわけなんです。まず滑走路の問題がありますし、何よりも航空需要の問題があるわけなんですね。離島の場合は航空需要がそう簡単に伸びるわけじゃありませんで、例えば大島約七万、それから三宅島約五万ですね。今名前を挙げられましたボーイング737ですか、これなんかをもし運航するようにしますと、採算性の面から言うとどうしても十一、二万は必要なんですね。こういうことがあるにもかかわらず、一会社の思惑でいろいろと事態が進むということは、全体の航空行政、先ほどおっしゃいましたように、離島のための航空行政という点から見て、運輸省としても重大な関心をお持ちになってもしかるべきじゃないかというふうに思うわけです。  機材変更については、航空法の百九条に百一条の準用がありまして、航空輸送需要に対して著しく供給過剰にならないことということも一つ基準になっているわけです。こういう点から見て、安易にジェット化する方向ではなくて、いろいろな諸条件、離島の特性を考えて、足の便を考えた上で運輸省として指導なさるべきであるというふうに思いますけれども、その点についていかがでしょうか。
  127. 圓藤壽穂

    圓藤説明員 もとより離島の地域の方々の足の確保というのは極めて重要な課題でございますので、YS11型機、安全性そのものには今問題はございません。したがいまして、いつの時点でこれが退役するなんということははっきりしているわけではございません。したがいまして、YS11型機で今言ったような離島につきましても運航は継続されるもの、少なくとも当分の間は継続されるものというふうに我々としては考えておるわけでございまして、YS11型機の後継機が必ずジェット機であるというようなことを考えているわけでは必ずしもございません。  それは、会社において機種を選定する。YS11型機がだめな場合は、同じようなプロペラ機で大体同じような席数の機材が外国にないわけではございません。そういうようなものも選定の対象になりましょうし、いずれにしましても、それは運輸省が決めるわけではございませんで、航空会社が主体的に自分の会社の路線に合った機種としてはどういうものがいいかということを航空会社において検討するというふうになるということであります。我々としては、具体的にどういう機種で何便運航したいという申請が来た時点で、その事業計画の変更の申請という格好で上がってくるわけでございますけれども、それにつきまして、それが適正かどうかということを判断するわけでございます。
  128. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 各会社が決めるのであったにしても、全体としての航空行政の見地から適切であるかどうかについての判断が必要だろうというふうに思うのです。その判断を今聞いたわけです。  冒頭言いましたように、離島というのは陸上の足の便がないわけでございますので、どうしても航空輸送というものが大きな比重を持つわけです。そういう点で、いろいろな制約の中でYS11への要望が非常にあるわけですが、それが一企業の思惑だけで動かないよう、十分こういう法規にも照らして指導をしてもらいたいということを要望しておきます。少なくとも現在の水準は減らさない、今の利便について打ち切ったりなんかして減らさないくらいのことは、運輸省としての航空行政の見地から、その決意があってもしかるべきじゃないかというふうに思いますけれども、この点はどうでしょうか。
  129. 圓藤壽穂

    圓藤説明員 仮定の上の議論ということになりますけれども、もとより住民の足の確保というのは極めて大事なテーマだと考えておりますし、利便性の確保という問題も我々の判断の要素の中に当然入るわけでございますけれども、その機材が何人乗りぐらいの機材になるか、ジェット機であるかどうかということは別としまして、そういうこととも便数というのは絡んでくるわけでございまして、例えばジェット機になりますと、B737でございますと、百二十席以上の機材でございますから倍以上の供給力になるというようなことで、航空会社の採算性という面もまた片一方で考えなければいかぬ要素だ、両方を考慮して決めなければいかぬ要素だというふうに考えているわけでございます。
  130. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 離島の航空についても重大な関心を持って行政を進めてもらいたいと要望しておきます。  じゃ、終わります。
  131. 浜野剛

    浜野委員長 これにて両件に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  132. 浜野剛

    浜野委員長 これより両件に対する討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  まず、航空業務に関する日本国オーストリア共和国との間の協定締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  133. 浜野剛

    浜野委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  次に、航空業務に関する日本国トルコ共和国との間の協定締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  134. 浜野剛

    浜野委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  135. 浜野剛

    浜野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  136. 浜野剛

    浜野委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時七分休憩      ――――◇―――――     午後一時六分開議
  137. 浜野剛

    浜野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  常時有人民生用宇宙基地詳細設計開発運用及び利用における協力に関するアメリカ合衆国政府欧州宇宙機関加盟国政府日本国政府及びカナダ政府の間の協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。  政府より提案理由説明を聴取いたします。外務大臣宇野宗佑君。     ―――――――――――――  常時有人民生用宇宙基地詳細設計開発運用及び利用における協力に関するアメリカ合衆国政府欧州宇宙機関加盟国政府日本国政府及びカナダ政府の間の協定締結について承認を求めるの件     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  138. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 ただいま議題となりました常時有人民生用宇宙基地詳細設計開発運用及び利用における協力に関するアメリカ合衆国政府欧州宇宙機関加盟国政府日本国政府及びカナダ政府の間の協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  この協定は、昨年九月二十九日に我が国を含む十二カ国によって署名されたものであり、国際法に従って平和的目的のために宇宙基地の詳細設計開発運用及び利用を行うことに関する協力の枠組みを確立することを目的とするものであります。  宇宙基地は、天体及び地球の効率的観測並びに低重力、真空等の宇宙環境を利用した地上では行い得ない実験を可能にするものであり、産業、医療等の広範な分野における技術進歩の機会を大きく開くものであります。我が国の宇宙基地協力への参加は、我が国としてこれまで実績のない有人宇宙活動に関する技術基盤の確立に資するとともに、二十一世紀にかけて人類の科学の進歩に資する本件協力への積極的な貢献を通じ、国際社会の我が国に対する期待にこたえていく上でも重要であります。我が国がこの協定締結することは、このような宇宙基地協力の枠組みの確立に資するとの見地から有意義であると認められます。  なお、米国、欧州諸国及びカナダは既にこの協定に沿って協力開始しておりますところ、我が国といたしましても、宇宙基地協力の活動が本格的な段階に入るに当たり、宇宙科学技術の発展等のために貴重な機会を提供する本件協力への円滑な参加を確保するため、早期にこの協定締結することが極めて重要であります。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  139. 浜野剛

    浜野委員長 これにて提案理由説明は終わりました。      ――――◇―――――
  140. 浜野剛

    浜野委員長 次に、国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。浜田卓二郎君。
  141. 浜田卓二郎

    ○浜田(卓)委員 それでは、自由民主党の立場におきまして、最近の国際情勢に関連して若干の質問を申し上げたいと思います。  まず、宇野外務大臣、激動する国際情勢の中で日夜日本政府を代表して外交に取り組んでおられますことに心から敬意を表したいと思います。  私は、御承知のように、国内政策の面におきましては、輸出中心型の社会構造から内需中心型の経済社会構造へという大転換が成功しつつあるわけでありまして、国内的な、現在の国際社会に対応する歴史的な転換というものが、ここ数年にわたって進められてきたというふうに理解をいたしております。しかも、最近の情勢を見ますと、外交政策においても歴史的な政策転換を行い、今までの枠組みとまた違った新たな枠組みでの日本外交の展開というものが求められてきているのではないか、そういうふうに私は感ずるわけでありますが、そういう観点から三点ほどに絞って大臣の所見並びに事務当局のお考え方を聞かせていただきたいと思います。  ブッシュ大統領が五月十二日の演説の中で、今後の政策として、戦後の対ソ連封じ込め政策というものを乗り越えて、ソ連を国際社会に統合する、インテグレーティングと言っておりますけれども、これを目標とする政策に転換するんだという宣言をしておられます。また、先般の中ソ首脳会談におきまして、中ソ和解という新しい時代の始まりが告げられたわけでありまして、その後、御承知のように、今、天安門広場を中心として、中国学生を中心とする民主化要求のデモが大きな広がりを見せているわけであります。こういう最近起こりつつある一連の国際情勢の変化の兆しというものを注意深く検討していく必要があると私は思いますけれども、概括的に言いますと、戦後の後といいますか、また脱冷戦時代、そういったことが今確実に始まりつつある、そういう認識を持つわけであります。  こういう中で、中ソ和解ということは、我が国のアジアにおける立場あるいは外交政策に多大の影響を与える問題だというふうに考えるわけでありますが、この中ソ和解によって我が国の外交がどういう影響を受けるのか、あるいは我が国のアジアにおける外交的な対応がどのように変化していくものか、さらには、中ソ和解の後は日ソ関係の改善だという言い方もあるわけでありますけれども、その辺の状況につきまして、外務大臣としてどのようにとらえておられて、今後このような状況に対応して日本がどういう対応をしていくのか、その点をまずお聞かせいただきたいと思います。
  142. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 中国も、またソ連も大切な隣人である、これには変わりありません。同時に、この両国は、社会主義の国家である、我が国の資本主義体制あるいは自由主義経済体制とは全く体質を異にする国家である、この認識も変わりありません。しかしながら、両国はただいまペレストロイカあるいはまた開放・改革というふうに、内部的な大改革に乗り出しておられる、このことも私たちはしかと確認いたしております。そこで両国とされましても、三十年来お互いに国境で銃を構えていた姿勢がいいかどうかというような問題について、お互いの首脳それぞれがお考えになった。その結果、国際的環境も整えることが必要である、そのことはひいては国内における改革を円満に推進するゆえんである、こんなことが私は今回の中ソの首脳会談というものの実現に至ったことであろう、かように思っております。  その直前に、私は中国の銭其深あるいはまたソ連のシェワルナゼ外相、またゴルバチョフ書記長とお目にかかったわけですが、そういう息吹は十二分に感じ取れました。だから日本といたしましても、御成功をお祈りいたしますということを申し上げたわけで、両国のそうした国交の正常化は、アジアの安定のみならず世界の安定にも大いに寄与するものであります、また、中国、ソ連と日本ががっちり合うことも、このこと自体は当然アジアの安定に寄与するものであります、私はそういう基盤で皆様とお話をいたしております、こういうふうに申し上げております。だから日本の中ソに対する姿勢は変わりありません。変わりありませんが、みずから国際環境を整理されて内容を充実された、その充実された内容に対して、それが我が国に今後どのような影響を与えるか、これはよい影響を与えるように私たちは祈念する、期待する、これが日本の立場です。
  143. 浜田卓二郎

    ○浜田(卓)委員 私の質問で一点触れていただいておりませんが、中ソ和解の後は、ソ連は日ソ関係をアジア政策の重点に置いてくるであろうという見方があるわけですけれども、その点について最近日ソの事務レベル協議等も行われているわけでありますけれども、どのような感触をお持ちなのか、この点についてちょっとお答えいただきたいと思います。
  144. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 ソ連の首脳とは、今申されましたような観点において、私は既に新聞等々で発表されておりますような会談をすることができました。したがいまして、やはり国境線、何といいましても七千五百キロにわたる大国境線でございますから、ここで対峙するということは、両国にとりましても、民生上、経済上大きな影響がある、こういうふうなことが今回はある程度は緩和されるであろう。また私たちは同時に、ゴルバチョフ書記長が五十万人の削減を言われたことは結構だが、アジアは二十万人というふうに聞いておるが、我々の関心事は沿海州である、このことについてもはっきり申し上げたいと申し上げておきましたが、一応十二万という数字、大体私たちの感じ方によれば極東軍管区、そしてザバイカル軍管区かなという感じを抱いておる。そうしたことも今後日ソ間におけるところの緊張というものにつきましてはよい影響を与えるであろうと期待しております。
  145. 浜田卓二郎

    ○浜田(卓)委員 それでは、第二の点でありますが、一九八八年、ゴルバチョフ書記長のクラスノヤルスク演説において、アジア・太平洋地域の安全保障に関する検討を国連安保理事会の常任理事国である米中ソで開始することを提案しているわけであります。この提案が実現するかどうかは別にいたしまして、私どもこういう問題の出し方で感ずることは、我が国が特に国際社会の中で、特にアジアの平和に貢献していくことを求められている中で、我が国を除いたアジアの安全保障を考える枠組みが提唱され、それが実現に向かうかどうかは別にして、我が国の立場というものがそこから外されているということを極めて重大なことであるというふうに感ずるわけです。  また、最近のソ連の動きは、国連重視の姿勢を打ち出しているわけでありますし、アメリカも一時は違った傾向もあったわけでありますけれども、国連重視の傾向に戻りつつあるというふうに理解されます。私は先ほど申し上げました脱冷戦時代というこの新しい時代の枠組みの中では、国際社会の安定を図る場として国連安全保障理事会というものが今後重要な役割を果たす可能性というものが高まってきているというふうに考えるわけです。我が国もずっと国連中心の外交というものを展開してきているわけでありますが、残念なことに、この国連安全保障理事会の常任理事国にはなっていないわけであります。ですから、私は本当に「世界に貢献する日本」、そしてアジアの中で特に平和への貢献ということを外交の柱にしていく以上、今後アジア諸国の同意を得ながら国連安全保障理事会の常任理事国になるべく努力すべきであるというふうに考えますけれども、この点について大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  146. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 ちょうど去年浜田委員は政務次官をやっておられまして、当時日本が国連の非常任理事国であるが安保理に参加しまして大いに活躍をした、世界から大変期待されたということは身をもって体験されたところでございます。残念ながら昨年の十二月三十一日でその任は解かれました。やはり国連事務総長は、昨今における日本の国連におけるいろいろな功績、努力、これを高く評価されております。  そこで、我々からそういうことを申すのがいいか悪いか。例えば日本もドイツもイタリーも、ともども経済成長は大変でございました。今、国連におきましては、アメリカ、ソ連等に次ぎまして大いに貢献をしているのではないか、かように察せられます。だから、時と場合に、そうしたものがお互いに国連の平和のために尽くすことはどうだろう。たまたま三国は敗戦国であり、かつての忌まわしき戦争のそうした反省の上に立っておりますから、平和という上でひとつやったらどうだろうかと、寄るとさわるとそういう話もしておるわけでございますが、こちらから言い出すということにつきましては甚だ難しい問題もございます。特に、御承知のとおり、安保理における常任理事国は国連憲章上軍事参謀委員会の構成等の軍事的役割を果たすことが期待されておる。我が国のような非軍事大国が常任理事国となる意義は否定はできません。否定はできませんが、そのためには国連憲章の改正が必要である、これが極めて難しい問題となっておる、こういうふうに私たちは考えております。しかし我が国は、すべての常任理事国を含む加盟国の大多数の支持を得るためにも、国連の諸活動に対し協力強化し、実績を積み上げていく必要がある。今回は、いろいろな世界の紛争に関しましても平和的な役目は果たしますよということをどんどんと申し入れ、実践しておるというところもそこにあります。このためにも、平和のための協力の一環として平和維持活動に対する貢献を積極的に進めていきたい、かように考えておる次第でございます。
  147. 浜田卓二郎

    ○浜田(卓)委員 今の御答弁のとおりだと思うのですが、常任理事国になるための一つの実績づくりといいますか、条件づくりということは、今後大いに積極的に考えられなければならないし、取り組まれなければならないと私は思うのですが、その一つとして平和維持活動というお話が今ありましたが、私は最低限国連平和維持軍への参加という問題が出てくるのではないかと思うわけであります。これは軍というふうな言葉がつくわけでありますが、敵を持たない兵士という言い方もありますし、戦闘を目的とせずさまざまな地域紛争解決に対する貢献をするということで、これは国際的にも高い評価を受けているわけであります。御承知のように、昨年はノーベル平和賞をも受賞しているということであります。ですから、私は、この世界への平和的貢献ということを標榜し、国の大きな外交の柱として掲げている日本がこの国連平和維持軍への活動に参加できないというのはどうも釈然としない、参加すべきではないかという考えを持つわけであります。  この際、私は、こういう世界の新しい枠組みを前提としつつ、この国連平和維持軍というものの性格を見きわめつつ、自衛隊派遣の問題も含めてまじめに検討すべき段階に来ているということを申し上げたいわけであります。この自衛隊の派遣が直ちに無理だという御判断であれば、せめて国連監視団への派遣という問題は早急に検討さるべきだと思いますが、こういう具体的な常任理事国化へ向けての実績づくり、条件づくりという点について、もう一度大臣の見解を伺いたいと思います。
  148. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 イラン・イラクには既に文民を派遣いたしておりますし、既に停戦も決まりましたナミビアの独立に際しましては、その選挙等々の監視のために国連が要員を派遣いたします。これにつきましては、先般、地方公務員の方々にも協力してほしいということで、その待遇あるいはいろいろな面においても政府考え方が大体まとまりました。したがいまして、今後そうした面において、やはり金だけではなく身をもって日本人も来てくれたということが必要ではなかろうか、かように私は思います。  そういう意味では、海外派兵ということは憲法上禁止されておる。ですから、海外派兵から考えれば、武装した日本の自衛隊が交戦の目的を持つてある国の領海、領空、領地に入っていく、これは海外派兵で絶対にいけません。しかし、それ以外なら、平和ならいいじゃないかという議論もございます。はっきり申し上げますと、そのためには、自衛隊にはそういう目的が与えられておりませんので、したがって、自衛隊にそういう目的が今すぐに与えられるということはなかなか困難な面もあるのじゃなかろうか、かように私は思っております。したがいまして、今直ちに自衛隊を充てようというのじゃなくて、今のところは文民をもってそうした平和活動に大いに貢献したい。ただし、今後は、国会の御議論もございましょうし、国民からも日本は平和にもっと貢献すべしといういろいろな御意見がございましょうから、そうしたことを我々といたしましても十分テークノートし、また分析もして、そして日本として本当に平和に貢献するにはどういう姿がいいかということについても検討していかなければならない、かように考えております。
  149. 浜田卓二郎

    ○浜田(卓)委員 それでは最後に、朝鮮半島の問題について一点伺いたいと思います。  私は今アジアに新しい時代の兆しというのが非常に大きく高まりつつあると思っております。例えばアジアNIES諸国やASEAN諸国における急激な経済成長とか民主化の波がビルマ、中国、そしてソ連へと伝播しつつある。このような動きが先ほど申し上げました戦後の外交の枠組みを変えるような底流になっておると思うわけでございまして、これがさらに進んでいくことによって東西対立、さらには南北対立の枠を超えていける、そういう可能性が十分あると思っておるわけであります。私どもはこれを発展と民主化のためのリンケージというような言い方をするわけでありますけれども、この波、新しい波の拡大というものが今後我が国が積極的に推進していくべきアジア外交の基本だと私は思うわけであります。  そういう観点から考えるわけでありますが、例えば昨年七月、韓国の盧泰愚大統領が七・七宣言の中で、韓国は中国、ソ連などの社会主義国との関係改善を進めると同時に、日本や米国などの友好国が北朝鮮との関係改善にも協力してほしいということを求めているわけであります。それと同時に、私どもがいろいろ話し合う韓国の中央政府に近い人たちの言動等で感じますことは、北朝鮮の経済的な安定が朝鮮半島全体の安定につながるのだ、そういう面で日本もやれることがあるのじゃないか、こういう感触も受けとめられるわけであります。  ですから、私はこういう底流を踏まえながらひとつ提案をしたいわけでありますが、韓国との政策対話を十分やっていくことが前提でありますけれども、それを十分行いながら、国際機関の活用あるいは多国間援助の手法を参考にしながら、北朝鮮に対する民間レベルを含めた経済的な協力というものがもっと進められるべきであるというふうに考えます。この点についてどうか。さらには、これが戦後処理の問題とかまだ残っていることがいろいろございますので、大変時間がかかる課題だということであれば、せめて日朝間の学術文化交流の促進がもっと積極的に図られるべきじゃないかと考えますけれども、大垣の所見を伺いたいと思います。
  150. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 北朝鮮に対しましては、既にことしも数次にわたりまして、総理大臣も私もその関係改善を念願し、言うならば政府政府、直接接触を望みます、こういうふうに申し上げております。なおかつ、先般この委員会におきましても、旅券法の改正に御協力を賜りまして、そうした改正を通じましても、将来その交流を図りたいし、また旅券が数次にわたって発行されるということになれば、渡航者の安全も我々は確認したい。その意味で海外の事務所も設けることもあり得べし、そういうようなお話もどんどんとしておるわけでございますが、残念ながらまだ北朝鮮からは何の応答もありません。中国にもお願いしました。中国の首脳も先般行かれまして、そして帰ってきて私ちょっといろいろと情報を聞いたのですが、何の応答もありません。これは非常に残念なことでございます。したがいまして、いろいろな協力の面は、政府間の接触さえあれば、そこでどういう問題があるんだとか、そういうことが話し合えるのではないかと思いますから、そういう段階を飛び越えて、すぐに経済協力がいいとか悪いとか、私はこれはまだ申し上げる段階でも何でもない、かように考えております。  ただ、国際間の協力、特に多数国間におけるところの協力ということは、私は、これはやればいい、こういうふうに思っています。幾つかのそういう試みもあるらしゅうございますから、そうした場合には、政府は側面的に可能な限りの便宜を計らいたい、かように思っております。(浜田(卓)委員「学術文化交流」と呼ぶ)今申し上げましたその中に学術文化交流というもう一つの問題が含まれている、そういうふうにお考えいただいていいと思います。
  151. 浜田卓二郎

    ○浜田(卓)委員 以上で終わります。
  152. 浜野剛

    浜野委員長 次に、河上民雄君。
  153. 河上民雄

    河上委員 きょうは国際情勢につきまして、いわば外交哲学といいますか、そうしたレベルにわたって少し外務大臣の御意見を承りたい、こう思っております。  それに先立ちまして、最近の国際情勢の発展の中で、中国の動きが、動静が世界のマスコミの注目を浴びておることは大臣もよく御承知のところかと思います。  私ども社会党は、御案内のとおり一九五七年、当時の浅沼書記長を団長とする訪中団の派遣以来、国交回復前から中国とは深い友好関係を保ってまいりましたし、特に一九八三年の三月に党と党のレベルの関係を樹立をいたしまして、そのときに中国側の方から一つの原則といたしまして、独立自主、完全平等、相互尊重、内部問題不干渉、こういう四条件が提示されまして、我が党もそれを了として関係をつくったようなことでございました。その後、先方から喬石さん、そして宋平さんが来られ、また我が党からは石橋前委員長土井委員長、田邊前書記長などがそれぞれその関係において相互訪問をいたしております。そういう意味で、私どもは中国の重大な動きに注目をしているわけでございまして、もちろん内部問題に干渉する意図は全くございませんけれども、ただ、先般当委員会におきましても、李鵬首相の訪日に合わせて日中投資協定を緊急に批准をいたしまして、両国首脳の間でこれについての最終的な儀式が行われたわけでございます。  ただ、新聞等によりますと、今回のいわゆる北京における戒厳令が我が国において対中投資機運に水をかけるのではないかという懸念が起きているようでございますけれども日本政府としては、この際どういうふうにお考えになっておられますか、またどのようにしたいと思っておられますか、お伺いをしたいと思います。
  154. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 昨今いろいろと中国、特に北京の情勢が報告されておりますが、我が国政府といたしましても、こうした事態に対しましては、憂慮の念を持って事態の推移を引き続き見守っているところでございます。もちろん我が国は、昨年十周年の記念もやりましたし、今おっしゃいました投資保護条約等々新しい段階を迎えておりますので、中国の近代化は大いに歓迎するところでございますから、現在の困難な事態が円満に解決されるよう、そして開放・改革政策が推進されるよう、そのことを今日私たちは期待しておるというのが現状でございます。
  155. 河上民雄

    河上委員 先般、外務大臣はソ連を訪問されまして、ゴルバチョフ書記長とも会談をされたというふうに伺っております。その御報告も当委員会ではまだいただいていないように思いますので、また後ほどそれも伺いたいと思いますけれども、恐らくゴルバチョフ書記長とお会いになりまして、大臣も肌で感じられたかと思いますが、一九八五年のゴルバチョフ書記長の登場以来、ソ連の外交が大きく変わりつつある。それに対して日本も果たして従来の米ソ対立を中心とした冷戦外歩の一翼を担っていてよいのだろうかというふうにお感じになっておられるんじゃないかと思うのでございます。  最近、アメリカの上院の外交委員会におきまして、これは四月四日でございましょうか、公聴会といいますか聴聞会が開かれまして、有名なジョージ・ケナン氏が、一時間ぐらいにわたってでしょうけれども、現在のゴルバチョフ登場以降の国際情勢、ソ連外交また米ソ外交のあり方、アメリカの対ソ外交のあり方について意見を述べたということで、大変反響を呼んでおるのであります。アメリカ新聞によりますると、上院のそこに出席していた議員はもとより速記者まで全部立ち上がって非常に長い長いスタンディングオベーションをした、拍手をしたということでございます。こういうことはアメリカ国会でもまことに異例のことであったというふうに、これはワシントーン・ポストにそう書いてございます。ジョージ・ケナンはどういう人かということは、もう大臣本よく御承知で、戦後のいわゆる封じ込め政策、コンテーンメントポリシー、ソ連の封じ込め政策を起案した人でありまして、アメリカ新聞によれば封じ込め政策の父というふうに呼んでおりますが、その人が、今やソ連はそのような意味における脅威ではなくなった、封じ込め政策の終えんということを告げておるわけでございます。それ左受けまして、ブッシュ大統領もある大学での講演で、条件つきではありますけれども、封じ込め政策をやめるべきときが来た、こういうふうに述べておるわけです。  ジョージ・ケナンは、単に戦後の冷戦が終わったというだけではなくて、ゴルバチョフ書記長は一九一七年以来のソ連の枠組みを変えるものであるとの評価をいたしておりました。そして、それに基づきまして三つの要素が今考えられる。一つは、ソ連は伝統的に平時であるにもかかわらず過大な軍備を持ってきて、それは本来防衛的なものであったけれども、国際的に非常に脅威ということになってきた。しかしゴルバチョフ書記長は初めて大幅な削減に踏み切っておる。第二は、一九六八年のチェコ介入を頂点とするソ連の東ヨーロッパに対する支配というのがゴルバチョフ書記息の登場とともに後退して、今や東ヨーロッパの独立ということが大きな傾向になってきている。三番目には、核軍縮という今までだれもそれは本気にできないと考えていたことをゴルバチョフは初めてやるようになった。それに対してアメリカ政府は必ずしも誠実に対応していない。こういうような三つを挙げておるのでございます。その背景には、伝統的な核抑止戦略というものはもう行き詰まった、したがってソ連側は一方的な行動を起こしていこうとしているんだ、こういうことをリョージ・ケナン氏も強調いたしているわけであります。  そこで、ではアメリカはどうすべきかというとが問われているというのが実は趣旨であろうと思います。これが今度の中ソ首脳会談でも大き九話題になりました新思考ということだと思うのであります。日本は、私どもの若い時代、ジョージ・ケナンが登場してアメリカの外交政策の元締めをしていたころ、朝鮮戦争などがあったころのことを考えてみますると、封じ込め政策の一環として日米安保というものが締結されて、それが日本外交の基軸になってきたということは否定で善ないと思うのであります。宇野外務大臣、ゴルバチョフ書記長にじかに最も近い時期にお会いになった政治家として、こうした問題についてどのようにお考えになるか、ケナンが今指摘しておりますことをどのように受けとめられるかを伺いたいと思うのです。  ジョージ・ケナンは、実は八年前に戦術核の来ソ双方五〇%削減を主張いたしまして、当時は、そんな夢みたいなことを、こう言われたのでありますけれども、今やこれが米ソ首脳会談の最大の課題になっておる。この事実を思いますときに、本年四月、上院の外交委員会の公聴会におけるじョージ・ケナン氏の発言というものは極めて重要なものだと私は思うのでありますが、大臣、その川点どのようにお考えになりますでしょうか。
  156. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 シェワルナゼ外相とはしばしば出会ってことしで三回になるのですが、その間に私は、従来のソ連の拡大主義、こうしたものをペレストロイカにおいて改めていらっしゃる努力を私たちは一応評価しています、また、アメリカ側との話し合いにおきましても、対決が対話になったということは結構であります、こういうふうに私は申し上げてありますし、特に、先般ブッシュ大統領の大学におけるスピーチにおきまして、封じ込め作戦はやめた、そのかわりにソ連とひとつ今後は話し合いを続け、なおかつソ連も国際的な舞台の中に取り込んでいきたい、組み込んでいきたい、こういうような希望を申しておられますが、これは新しい時代におけるアメリカ指導者としての非常に正しい認識ではないだろうか、かように私は考えております。  したがいまして、そういう土台で私は首脳会談も行いましたし、特に、ゴルバチョフ書記長とは四十分ぐらいの予定でございましたが、話が弾み一時間三十五分お互いにしゃべり合った。その中で、ゴルバチョフ書記長は、日本との間におきましても、やはりせっかく育った芽であるから、この芽を大木に育てたいということをはっきり明言されました。そしてペレストロイカをあんた知っていてくれますかと言いますから、十分知っています、グラスノスチも知っています、民主化も知っています、このことを申し上げまして、これについてしばらく自分の見解を申し述べて、言うならば意気軒高たるところがあって、私たちも大いにそのことを期待しますよと申し上げたのです。  話の途中におきまして、やはり軍事問題を相当語り合いましたが、特に大切だったのは、今ジュネーブで米ソの間の話はしばらく途切れておりますが、あなたみずからはSTARTをどう考えられますか、成功すると思いますかどうですか、こういうような非常に短兵急な質問もされました。私は、戦略核の五〇%削減そのものは検証段階においても非常に困難な問題ではあろうけれども、ぜひともこれはやはり米ソ間で成功してもらわなければならない問題として私たちは意義づけておる、こういうふうにお答えしながらそれぞれの見解を申し述べたのでございます。  やはりいろいろ困難があることは十分わかっておりますけれども、その困難を排除して、そして今や、従来のソ連の社会主義は守っていくが、内容的には民生安定、経済拡大で臨みたいという熱意が非常にあふれておったということは、私はまざまざと、御本人と本当に一メートルも隔てずにしゃべっているわけですから、もう呼吸から息遣いからすべてを感じ取りながらしゃべれたことを非常に有意義に存じております。  だから、日本といたしましても、ゴルバチョフ書記長が今後ともペレストロイカ、グラスノスチで健闘あられることを期待して、そうした新思考の上に立ってひとつ北方四島を解決しましょうや、こういう提案も当然ながら申し上げて帰ってきました。この問題だけは平行線でございますが、しかし、お互いにニェ・ズナーユとか、そういうものはありませんという段階ではなくして話し合ったということは、日本の外交にとりましても大切な外交であった、かように認識いたしております。
  157. 河上民雄

    河上委員 今の外務大臣の御答弁の中でも、ソ連外交の急速な変化といいますか大きな変化を感じておられるように思います。そして、それがゴルバチョフ書記長の言うところの新思考のあらわれである、こういうことでございますけれども、それなら日本外交はそれにどう対応するのか。従来どおりの日米安保条約を基軸とした外交でいくのかどうか。その場合にいろいろなことが考えられます。ソ連の対応は変わったけれども、こっち側の対応は変えない。しかし、その枠内でゴルバチョフ書記長が提案している軍縮に対して、日本側も何とか軍縮の方向に行こうとするのか、それとも日米安保条約は変えないけれども、ソ連の呼びかけに、新思考に対しては、日本も新しい思考で対応していくというのか、それから日米安保条約そのものを変えて新しいよりどころに立って、この新しい変化に対応していくのか、いろいろな道があろうかと思うのですね。少なくとも旧態依然たる姿勢では、日本だけが逆に取り残されてしまうのではないか。もはや中ソ首脳会談で、三十年続いた中ソ対立は、いろいろ問題はまだ残っておるけれども、もうこれで対立は終わった、まさに対話の時代に入った、こう言われておりまして、中国とソ連が仲が悪いという前提に立っていた外交というのはもう成り立たなくなっていることは明らかでございますね。西ドイツはコール保守党政権ですら新しい東方外交をやろうとしておる。特に経済面でそっちの方向へ行こうとしている。こういうときに、日本外交、相変わらずゴルバチョフの言うことは、あれはもう宣伝にすぎない、だまされちゃいかぬよということだけでいいのかどうか。大臣はまさかそういうふうなお考えではないと思いますけれども、先ほど言いました、少なくとも三つくらいの選択があろうかと思いますけれども、外務大臣、いかがお考えでございますか。
  158. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 日本の外交の基軸は日米関係にある、これはいつも申し上げております。これには少しの変化もありません。また日本はアジア・太平洋の一員であり西側の一員である、こういう日本の立場も鮮明にいたしております。これは今後も変わりません。特に中ソが対話に入られたその裏には、やはり西側の結束があったということも私たち忘れることはできません。したがいまして、今後もINFだけではなくしてSTART交渉等々、単に戦略核の問題だけではなく、そのほかの人道問題、いっぱいございますが、そうした問題におきましても、やはり対話を推進することは非常に大切であって、我々はやはりそのためには米国を応援しましょう、西側は協力してやっていきましょう、この姿勢は私は少しも変化さすべきものではない、かように考えております。  なおかつ、安保体制に関しましても、シュワルナゼ外相との間で議論しました。かつてソ連は、日本が安保体制を新しく改定したから、だから過去のソ連との間の約束はもうふいになったというような発言もなきにしもあらずだったのですが、今回私は、日本は、ソ連とはソ連との関係アメリカとはアメリカとの関係、きちっとしてやってますよというふうな話し合いから、もう安保論議はこれでやめにしましょう、そして安保体制下にある日本とはいえ、日ソ平和条約を結ぶのに何らそれは障害になりませんということを相互に確認し合うということ等々も私は一つの発展ではなかったかと思います。  そのほか、もう河上委員も御承知だろうと思いますが、平和条約は残念ながらまだ結ばれておりません。簡単に言えば、平和条約は戦争が終わったときに結ぶべきもので、そして領土と賠償とさらには戦後処理、そういうような問題があるのでございましょうが、その平和条約が結ばれないままに一応共同宣言で終戦ということはもう成り立ったわけでございますから、だから領土だげが残っておる。したがいまして、それが基本的な平和条約で、ソ連はそこへ友好条約をのせるとかいろいろ混乱した面がありますから、私たちは実は整理しておるのです。だから領土問題を解決して、そして平和条約を結びましょうというのは、そこは一つの線でございまして、だからその中に、本当にいろいろとお考えになるんだったら、友好条約的な問題も含めてこれは可能なんですよということも、この間の会談で私から申し上げた次第でございます。  既に、通商条約を初め、両国間におきましてはもう十本からの協定が存在しております。そのほか、ソ連は新しい協定の問題も提案されておりますが、今回私は、環境問題に関する協定はひとつお互いに考えましょうという新提案をしておきましたが、今申し上げましたような戦後処理の問題が片づいておらないということは、我が国にとりましてもソ連にとりましても極めて不自然なことでございますから、これだけは我々はそう簡単に曲げるわけにはいかぬ。しかし、そのほかの問題は、今申し上げましたようなことで、それぞれ今日まで双方の努力で解決してきたのです。それでゴルバチョフさんが言われました。中国の貿易高いですね、韓国の貿易多いですね、うちは少ないですね、こうおっしゃいましたから、私は次のように言いました。中国とは二百億ドルくらいになるでしょう、韓国とは二百六十億ドルくらいになるでしょう、おたくとは残念ながらまだ六十九億ドルです、その日本がソ連の貿易相手国としては、フィンランド、西ドイツ、日本は三番目です、フィンランドの人口と日本の一億の人口を考えたら、これは不自然な姿ですね、というのもまだ法的体系の上に両国が立っておらないからではないですか、私はこうやって申し上げたわけです。  そういうふうにいたしまして、今申し上げましたように、決してかたくなな姿勢はとっておりません。ソビエトも大切な隣人でございますからいろいろとお話をすることは必要だ、私はかように思っております。ただ、安保を解いてはどうか、これはまだそういうような段階ではないと私考えます。日米間と同じようにソ連とやったらどうかという御意見もあるかもしれませんが、これもやはりまだ日米というものの関係我が国外交の基軸である、これは私ちょっと訂正するわけにはまいりません。十分そのことばソ連にも言ってあります。日本の立場はこうですよ、しかしながら中ソも三十年間の和解、日本と、あなたとこうやって三年ぶりに出会うけれども、十二分今後話していきましょうや、そして大切な芽を育てましょうということで意見の一致を見ました。そういう姿勢で今いろいろとアドバイスをしていただきましたが、そういう気持ちを体しまして、私たちも大切な隣人との友好は今後も大切にしていきたい、そうして極力改善すべき点は改善していきたい、かように思っている次第でございます。
  159. 河上民雄

    河上委員 ゴルバチョフ書記長の登場とともに、今体系化されただけではなく、現実に、特にヨーロッパだけではなくアジアに向けて今展開されております新思考外交に対応できる柔軟な外交姿勢というのをそろそろ考えなければいかぬ時期じゃないか、私はそう思っておるのでございまして、今大臣からお答えがございましたが、その点で私と大臣との間に完全な意見の一致を見るにはまだ時間があるようですけれども、しかしいろいろな選択肢があるというところまではお考えいただいておるようでございますので、ひとつそういう基本線でこれから少し根本的に枠組みを考え直す機会にしていただきたい、こう思います。  ソ連のゴルバチョフ書記長が今度は十二万人の兵力の削減を提案をいたしました、これはアジア地域におけるとなっているのでありますが。日本の外務省におきましては、この十二万人の削減というのは北方四島における駐屯兵の削減を含んでいるというふうに理解されておるのか、そうでないとお考えでいらっしゃるのか、これを伺いたいと思います。
  160. 山下新太郎

    ○山下政府委員 お答え申し上げます。  ゴルバチョフ書記長が北京における演説で、確かに十二万ほどアジア部から削減すると言明されたことは事実でございます。その十二万でございますが、御承知のとおり、昨年十二月七日国連におきまして一方的軍縮措置をゴルバチョフ書記長が言われたわけでございますが、その後アジア部から二十万引くという話がソ連側から伝えられているわけでございます。このたび北京で、この二十万のうちの十二万がどういう形で引くかということを明らかにされたもの、こう理解いたしております。  このたびの演説によりますと、アジア部、といいましても極東地域から十二万、その内訳は陸軍の師団十二個、それから航空連隊十一個、太平洋艦隊に所属する艦船十六隻、こういう言い方をいたしております。  そこで、極東地域という場合、これが一体どこなのか、あるいは十六隻という船がどの船なのか、さらにまた十一の航空連隊、どこに配備されているものなのか、詳細がわからない状況でございます。一つ、これは全くの推測でございますけれども、中ソの間で、言うなれば首脳会談に際して行われた演説で明らかにされた次第でございますから、中ソ国境沿いに展開されている部隊、これが削減されるのではなかろうかというふうに想像はできます。したがいまして、北方領土におります一個師団がどうなるかということは、今回の北京における演説からは直接的に右だ左だということを申し上げる根拠がないのではないか、こう考える次第でございます。
  161. 河上民雄

    河上委員 それでは、日米関係について大臣のお考えを承りたいと思います。  実は、先日私モスクワから帰るというアメリカのコーネル大学の教授と会う機会がありまして、その人がなぜモスクワへ行ったかというと、一九六二年のキューバ危機のようなことが二度と米ソ間で起きないようにというので、お互いにあとう限り秘密文書を出し合って、当時の実際に決定に参加した人の証言を集めて、実態がどうであったか、そしてそれがどうしてあんな危機に至ったか、また危機を最終的に避けられたのはどの時点であったかというようなことを研究するために、アメリカの学者とソ連の学者、そしてお互いの関係者が出席して国際会議をやった。一回じゃ足らぬので、今度はアメリカでやるというような話でございまして、ソ連側からはミコヤンとかフルシチョフの息子さんなんかが出てきて、いや、当時はそう伝えられていたけれども、実はこうだったというような話まで出たりして、大変おもしろい会議だったというのでございます。  今や米ソ間はもうそのくらいになっておりまして、特に首脳会談だけ考えますと、アメリカの大統領はゴルバチョフ書記長と‘九八五年から八八年まで実に五回も会っております。日本の総理大臣は実はまだ一回も会談をいたしておりません。どうもそういうようなことから、表向きの建前では日米友好関係というのは不動のように思われますけれども、米ソ関係の方がむしろ層が厚くなっているような感じさえしないわけではないのでございます。  そういう点から見まして、私も日米友好関係というのは、日中の友好関係の維持とともに極めて重要なものだというふうに認識している一人でございますので、そういう観点から、スーパー三〇一条の適用問題で今緊張が高まっております。その原因は一体どこにあるのか、また日米関係のあり方として、アメリカの対日政策あるいは日本の対米政策というものはどうあるべきかということを外務大臣にまずお伺いいたしたいと思います。
  162. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 竹下総理とブッシュ大統領の会談あるいは昨年の竹下総理とレーガン大統領との会談等々を通じまして、お互いに今後経済拡大され、また平和が続く、そうした中においては必ずやいろんな問題で摩擦も生ずるだろうが、これはぜひとも共同政策なり共同計画で一つ一つ解決しましょう、そしていやしくも日米間において、世界の経済の安定のためにも、お互いの関係がバランスはとったが縮小であってはいけないので、ぜひとも拡大均衡ということを目指しましょうということが確認されております。だから政府政府はいろいろな意味合いにおきまして、お互いにしばしば交流もしておりますから、お互いにわかり合って話しているのじゃないか、かように私は思っておりますが、昨今の米国の議会の面におきましては、必ずしもそうでない。だから私たちも行くたびに議会の方々とは上院、下院を問わずお目にかかって、院内総務の人たちとは朝食をとりあるいは昼げをともにしていろいろと議論を交わすことにしております。また国会議員の先生方もそれぞれがそうした面で努力をされておりますが、いかんせんやはり我が国の貿易における優勢というものがいろいろな問題を起こしているのじゃなかろうか。現に昨年は輸入も三三%ふえた。輸出もふえたが、それは二〇%台であった。また百億ドルという巨大な黒字も減少した。こういうふうな実績もあるのです。ことしはややそれが鈍化しておりますことは事実でございますが、そういう実績があるときにおいてすらやはり何か日本経済政策にいろいろと批判が集まっておる。そうしたことがついぞ三〇一条というふうな問題に集約されておる、あるいはFSXの問題に集約されておる、この間のテレコムの問題にも集約されておるというふうな感じがいたすのでございます。だから、政府間におきましては、政府同士の努力というものはお互いに認め合っているのでございますが、やはり貿易というものが相当巨大になりつつあるというところにおいて、特に対米黒字、これが日本がほとんど引き受けておるというようなことでございますから、ここら辺がその発端ではなかろうか、私はさように考えております。
  163. 河上民雄

    河上委員 今の外務大臣の御答弁で大体尽きておるように思いますけれども、もう少し詳しく申しますと、日本側としては、去年建設業への参入、牛肉・オレンジの市場開放、これはいずれも大変でしたけれどもアメリカの要求を受け入れておって、今では米の自由化問題を除いては、もうほぼすべて障害は取り除かれたと日本側は主張しているわけでございますが、アメリカ側は、今大臣も言われましたように、年間五百億ドルの対日貿易赤字という不均衡がある限り、どこかまだ足らぬのじゃないか、何かもっと根本的に間違っているのじゃないかという主張をしておるわけですが、最近、駐米日本大使館の高官というふうに伝えられておりますが、その方が、不均衡の原因はアメリカ側にもあるが、日本もやるべきことはまだ残っているというふうに発言して、日本政府は早く明確な方針を出すべきだと指摘したというふうに、これは日本新聞にも伝えられておるのでありますが、大臣はこの大使館高官と伝えられる人の発言を、大体それは無理がないことだというふうにお考えになりますか。いかがでございますか。
  164. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 それがだれかは知りませんが、私個人の見解を申し述べましても、日本も努力しなくちゃならない点は努力しなくちゃなりませんが、やはりアメリカにも努力をしてほしい面が多多あるというのが偽らざる気持ちでございます。
  165. 河上民雄

    河上委員 そういたしますと、日本としてやるべきことはまだ残っているという考え方を肯定されるのか、否定されるのか、否定されるならば、ここではっきりおっしゃっていただきたいし、肯定されるならば、あとどういうような問題が残っておるとお考えになりますか。
  166. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 先ほど河上委員が引例されました、昨年来の日米の懸案事項が、十二品目、さらには公共事業、さらには科学技術協力協定、さらには牛肉、缶詰等々ございまして、これは一応二国間ということで終わりました。そこで米が残りましたが、これはシュルツ国務長官と私が、日米間のことを考えると、米というような問題で議論をしておるということは、やがては感情問題になってしまってとんでもないことになるから、せっかくウルグアイ・ラウンドで、マルチの場で議論しているんだから、そこの農産物の一つの問題として、私はマルチの場で議論すべきだと思う、これで一応これは外されました。ちょうどブッシュ大統領が選挙の最中に、やはりこの問題が再燃したのですが、そのときヤイターUSTR代表は、たまたまガットのためにカナダに渡っておりました私に対しましても、ちょうど羽田農林大臣も助けに来てくれたのですが、両者に対しまして、この問題は、日米間の問題に米はいたしません、そこでもはっきり言ってくれまして、精米業界から提訴がありましても、我々は受理しません、ここまではっきり言ってくれましたから、一応そうやって一つずつ解決しておることは事実でございます。  今度のスーパー三〇一つまり包括貿易法案によりますと、不公正な慣行、そういう国は名指しでやれ、どういう慣行があるか、それもやってしまえというようなことが、大きな法律がありましたから、その法律が今動いておる。その法律に対しまして、それぞれの業界が、うちにはこういう問題がある、うちにはこういう問題がある、もちろん日本だけではありませんが、全世界の問題をそこに惹起しておる。その中からいよいよ政府としてその問題を決めなくちゃならない時期が迫っておるが、さてどうしましょうかというのが現在の立場で、我々といたしましては、本当に公平な公正な理由がっく指摘ならばいざ知らず、余り公正でもない、公平でもないような問題がここで取り上げられて、そのこと自体が日米間の感情問題につながるというようなことは決してよいことではない、私はかように思っております。  したがいまして、日本もこれですべてが終わっておるとは決して申しません。いろんな面におきまして、まだまだ話し合いもし、あるいはまた日本も努力をしなくちゃならぬ点があると思いますが、アメリカ側におかれましても、当然努力をしていただかなければならない点もあるであろう、かように思っております。  だから、先ほど申しましたように、いろいろな問題が出たら、共同作業あるいはまた協調政策によって、こつこつとひとつ処理していこうじゃございませんか、この姿勢は依然として両国とも持っておるはずである、私はかように考えております。
  167. 河上民雄

    河上委員 大臣はそういうふうにおっしゃっておられるのでありますが、今経済政策閣僚会議というのでしょうか、そこで問題になります五十八品目が挙げられまして、それを絞り込んで、特定の国と特定の品目を決めるということでございますね。まだブッシュ大統領も決断しかねているというような、きのう、きょうのニュースではそうなっておりますが、現在のところ日本では、木材とか宇宙機械、大型スーパーコンピューターなど挙げられているやに聞いております。  これは私の誤解であればいいのですけれども、聞くところによりますと、これは毎年春先報告が出て、そこでどれが悪い、どれがいいとかいうようなことが決まるように聞いておるのですが、もしそうだとすると、これは年中行事になってしまうのではないかという気がするのです。そういうことは、日米関係というか、これは外務省その他の各省も大変しんどい話でございますので、年中行事にならない道というのはないのか、なるという心配は全くないのか、その点はいかがでございますか。
  168. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 ちょっと五十八品目というのも解釈がございますから、それも含めまして局長の方からすべてについての答弁をさせていただきます。  ただ、私から申しますと、USTRがまとめました問題の認定をするというのがちょうど今作業が行われているわけでございますが、これに対して私たちはひとつアメリカ政府としての良識というものを大いに尊重したい、かように思っております。  単に日本だけではなくして、たまたまOECDがそのころ開かれますから、OECDにおきましても、こうした保護的な政策というものに対する批判の高まりは十分あるのではなかろうか。だから、こういうものが年中行事だったらたまったものじゃないということはお互いに言い得るんじゃなかろうか、私はかように思っております。
  169. 佐藤嘉恭

    ○佐藤(嘉)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま河上先生指摘の対日貿易障壁に関する品目数でございますけれども、これはいろんな数え方がございますが、四月二十八日にUSTRが発表いたしました外国貿易障壁に関する年次報告というのがございます。これはアメリカの法律によりまして毎年USTRが報告書を提出することになっております。  ことし出ましたこの項目の数は、七分野と私ども言っておりますが、輸入の措置でございますとか政府調達の項目でありますとかあるいは新しい分野におきます紛争事項、半導体でございますとか、その他スーパーコンピューターの問題等々全部含むわけですが、それを項目として全部数え上げると、おおよそ三十四品目になる、こういうことで御理解をいただきたいと思います。
  170. 河上民雄

    河上委員 そうすると、これは年中行事になることは避けられないということでございますか。それを避ける何かサミットみたいなものを設置して、それを防止するというふうな道はあり得ないのかどうか。
  171. 佐藤嘉恭

    ○佐藤(嘉)政府委員 アメリカの通商法によりまして、USTRが日本を含めたアメリカの主要な貿易相手国との交渉状況あるいは貿易関係状況というのは、これは毎年報告せざるを得ない仕組みになっているわけであります。そしてこの趣旨は、アメリカの対外的通商上の権益をどのような方法で確保していったらいいのかという趣旨から、毎年こういう報告書が出されるということになっております。  その中で、行政府としてあるいは議会の判断として、ある特定の項目について、やはり重点的に交渉してほしいという要望が出てきますると、それは行政府としてはそれなりの取り上げ方をせざるを得ない仕組みになっております。これはスーパー三〇一ということで大々的に報道されているわけでございますけれども、私どもは、こういう過程の中で毎年一つのおどしと申しますか圧力と申しますか、そういうことを受けながら交渉するのではなくて、外務大臣から御答弁がございましたように、日米経済関係の重要性という見地に立った共同の努力で一つ一つの問題を片づけていこう、こういうことで対応をしてまいりたいと思っているわけでございます。
  172. 河上民雄

    河上委員 それでは、やや個別問題になって恐縮ですが、さっき大臣も触れられましたように、電気通信市場の開放問題でございますが、一部の報道によりますると、アメリカのモトローラ社の自動車電話機の参入問題では、郵政省との話し合いで、一三七七条に基づく制裁は回避されるというような話もあるのですけれども、これの見通しはいかがでございますか。
  173. 佐藤嘉恭

    ○佐藤(嘉)政府委員 お答え申し上げます。  河上先生指摘になりましたとおり、モトローラ社のいわゆる自動車電話が日本の市場、特に東京、首都圏という市場にどのようにして参入できるかということが、ただいまの日米間のいわゆる通商摩擦の一つとして生じていることは事実でございます。私どもただいま郵政省と事務的に話をしておりますが、これはとみに周波数の割り当てという郵政省の権限の中で処理されなければならない要素が非常に大きいわけでございます。したがいまして、私どもとして最終的に技術的な判断をする能力は持ち合わせないわけでありますが、それなりにこれまでの周波数の割り当ての経緯あるいは今後改善されていく自動車電話のシステムといったようなことにつきまして、外務省と郵政省との間で今専門家を会わせて相談をしているところであります。  また同時に、ちょうどタイミング的にそうなつたわけでございますが、モトローラ社の関係者もただいま東京に滞在中でございますから、先方の要望が最終的にどのようなものであるのかということをもう少し詰めて考えたいと思っているわけでございます。  最終的にこの制裁の回避ということになり得るかどうかということにつきましては、ここ一日、二日の話し合いの進みぐあいということで私どももこの判断をしたいと思っておるわけでございますが、技術的な側面と、それから日米関係の全体における位置づけの問題ということを勘案しながら、適切な対応をしてまいりたいというふうに思っております。
  174. 河上民雄

    河上委員 局長も大変御努力されておる、郵政省もまた御努力されているとは思うのですけれども、こういう問題ではいつもどうにもならないところまでこじれこじれて、最後は結局大幅譲歩をして解決する。アメリカとしても、日本は押せば結局はのむのではないかという予見を与えるような交渉のパターンがちょっと多過ぎるような気がするのでございまして、そういう点、今後もう少しこの交渉を始める前に、こちら側のスタンスをはっきり決めて対応するということが必要ではないかと思うのでございまして、あと二日とか三日とかいうお話ですが、ひとつ御検討いただきたいと思います。  そこで、最後になりましたが、日米関係という点から見まして、最近起きました水爆機の沈没に伴うさまざまな問題でございます。  日米安保が日本外交の基軸であるという考え方は、この委員会でも何度も伺っているわけでございますが、ここに二十四年前の事件が明らかになりまして、これはもう過去のことだから水に流すということではなくて、こういう問題をきちんとすることが本当の日米関係を確立するゆえんではないか、こんなふうに思うのです。先ほどちょっと私が触れましたように、米ソ間ではキューバ危機のようなことについてさえ、お互いにあるもの全部出し合って、秘密文書も出し合って討議して、二度とこういうことが起きないようにしよう、こう言っている世の中でございます。日米関係で、この事件について、アメリカ日本も知り得る資料は全部出し合って、どうしてこういうことが起きたのか、今後再びこういうことが起きないようにしなければいかぬ、そのかぎはどこにあるかということを討議するのが至当ではないか、私はこんなふうに思うのです。それをあしたにやれと言っても無理かもしれませんけれども、ひとつ姿勢としては、そういうふうに切りかえていかないと、何度も聞いているように、アメリカが言ってこないからないんでしようというようなことでは済まない、私はそのことを強く大臣に申し上げたいと思うのです。大臣、いかがですか。
  175. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 事故そのものに関しましては、やはり核物質の問題もございますから、直ちに外務省が中心となりまして、一応アメリカ報告を受けて、その報告に基づいて、我が方としてはまだこれだけ照会事項はあるよということを各省庁でまとめてほしい、ようやく昨今まとまっておると思います。やがてこれを外務省で整理整とんして、照会すべきことはきちっと照会しなくてはいけない、かように思っております。  そこで、その船が核を積んでいて横須賀へ入った、それに対してどうかというような問題でございますが、我々といたしましては、地位協定に基づきまして事前協議というものは確立されておりますから、アメリカからそうした核持ち込みの話がない限りは搭載されておらない、これが私たちの今日までの姿勢でございますし、今日その姿勢を変える所存は全くございません。だから、その当時もそうしたものがアメリカからなかったわけでございますので、私たちといたしましては、そうした安保条約上の信頼性の確認のためにも、子のことに関しまして従来の姿勢を国会においても御説明申し上げておるというところでございます。
  176. 河上民雄

    河上委員 至急どういうことをアメリカに問い合わせているかということもこの委員会にはっ勇り御報告願いたい。これはぜひお約束いただきたいと思いますが、いかがですか。
  177. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 この件に関しましては重大な関心を日本政府は有しておるということを、私はこのことが起こりました当日に予算委員会で申し上げましたし、なおかつ国民の、また近辺住民の不安を早急に私たちは除去しなくちゃいかぬ。そのためには日本政府は可能な限りの経験者によるところのそうした会合を持ってもらって解明に当ガってもらう、こういうふうに申しておりますから、したがいまして、このことはきちっと皆さん方にも御報告をしなければならないだろう、かように考えています。
  178. 河上民雄

    河上委員 大臣から非核三原則、それから事前協議、こういうことで御説明いただきまして、アメリカから報告ないしは事前協議がないから核は存在しない、したがって非核三原則は守られている、こういうようなお話でございますが、これはある意味においては二十世紀最高の論理的な傑作じゃないかと私は思っておるんです。ところが事実は必ずしもそういう論理学のとおりになっていないわけでございます。  余り時間がないので、私は事実関係だけをお尋ねして御答弁を求めたいと思いますが、一つは、空母タイコンデロガの元乗組員ウィリアム・レーン氏の証言、これは新聞に出ておりますが、「滑り落ちたあと、機体から外れて波間に十秒-十五紛間浮き沈みしながら「灰色の煙を噴き出し、一瞬爆発するのではないかと思った」」というようなレーン氏の証言があり、またこの空母は核は五十個ぐらい積んでおったという証言をいたしておるのでありますが、この証言を事実として認められますか。
  179. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 そのような報道があることは存じておりますけれども、今の一私人の発言につきまして、彼が申していることを事実として受け入れるわけにはまいりません。
  180. 河上民雄

    河上委員 この証言は、事故の二日後、一九六五年十二月七日に同空母は横須賀に入港したとしておりますが、この事実関係日本政府は調査をしておられますか。もし調査していないとするならば、今後調査するとここでお約束していただけますか。
  181. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 既に米側に照会いたしております。それから我が方でもできる限りの調査をいたしましたけれども、その確認を得るに至っていないということでございます。
  182. 河上民雄

    河上委員 そうすると、アメリカ政府からまだ返事がないわけでございますが、もし返事があった場合、そういう事実はないという返事か、それともそういう事実はあったという返事かどちらかだと思うのでありますけれども、もし後者であった場合、政府はどう対処されますか。
  183. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 いずれの場合でございましても、もちろん現在米国がいかなる回答をよこしてまいるかわかりませんけれども、重要なことは、先ほど大臣が仰せられましたように、日米安保条約上、艦船によるものをも含めて核兵器の持ち込みが行われる場合には、すべて事前協議の対象となるのである。また核持ち込みについての事前協議が行われた場合、政府としては常にこれを拒否する所存であるということは一貫しているわけでございますが、米国から事前協議がなかった。それから、念のためでございますが、五月九日米国防省が、これを行いましたのはハワードという報道官でありますけれども、対外説明を行いました際に、米国は核兵器に関する日本国民の特別な感情を承知しており、日米安保条約及び関連取り決めのもとでの義務を誠実に履行してきており、今後も引き続き遵守するとの趣旨を述べております。
  184. 河上民雄

    河上委員 アメリカ政府からの最初の説明というのは、外務省の有馬局長がさきに別な委員会でも読み上げておられたのをテレビでも拝見いたしました。しかし、多くの国民は、果たしてあのとおりなのだろうか、例えば汚染の心配は全くないというのか。そんなことになりますると、国民の不安というのはなかなか消えないと思うのです。アメリカがこう言っているから間違いないと言うだげではなく、米ソ間では、さっき言いましたように、キューバ危機のような最高機密を含んだ問題ですら米ソ両国の当時の関係者あるいは学者がみんな集まって徹底討論をしている。それもそういう危機が二度と起きないように、危機が破局にならぬようにということでやっておるわけでございます。  こうした問題、この事実が現実に起きているわけですから、真相はどうであったか、今後二度と起きないようにするにはどうしたらよいかということを、ただ両国の外務省同士で文書のやりとりをするだけではなく、あらゆる専門家を集めて議論するくらいの真剣さが私必要だと思うのです。そうしなければなかなかこういう問題についての不安は消えないと思います。  最後に、私もう時間がありませんので、そういうことを含めまして、四半世紀たつまでアメリカは一切沈黙を守っておった。事件が起きたことだけはもう既にわかった、認めたわけですから。この二十四年間、四半世紀アメリカは一切沈黙を守ってきたことを外務大臣としてはどうお考えになるか、それを伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  185. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 核そのものは、不幸でございますが、全世界に幾つもある。だからそれは一つの抑止力としての作用を持たして、地球全滅というような核戦争になってはならない、こういう役目も果たしておるわけで、その意味で、米国に限らず、いずれの国も核の存在を明らかにしないし、また有無も明らかにしない、これが普通の抑止力のためには必要ではなかろうか、こう思います。だから秘密に囲まれておると申し上げても過言ではないのかもしれません。しかし、この事故が起こったときに、ではアメリカはどうであったかということ、今の照会に対するアメリカ側説明では、これも私は参議院の予算委員会で申し上げたのでございますが、その当時十年ばかりで三十二、三件、こういう核物質を積んだ武器の事故が起こった。海は今回の、というよりも、この空母一つであって、そのほかは全部飛行機の事故であった。そのときにはアメリカはちゃんと核保有国としての責任上、一定の基準がございまして、発表するに至らず、発表しなければならない、簡単に言えばこういう基準があって、その三十何件のうち発表しなければならないのが二件ありました。したがいまして、日本近海のものは発表しなくてもよろしい、公表しなくてもよいという基準の以下でございましたので、そのままずっと来たわけでございます、というのがアメリカ一つ説明でございました。なおかつ、それでは説明が足りぬというので再度照会いたしましたときに返ってまいりましたのが、まさか四千八百メートルの深いところに落ちるとは夢にも考えず、そういう設斗にはなっておりませんから、したがいまして、核爆発そのものの装置が壊れてしまいました、壊れておりまするから爆発は起こらなかったのでございます、そして核物質は海底に沈殿、融合しました、だから環境汚染という問題はございません、こういうような三点ばかりに分かれた回答が寄せられました。だから、その回答を中心日本の専門家が寄って、ではこういう点をもう少しく照会してください、この点をもうちょっと詳しく聞きたいと思いますというのを今外務省が取りまとめておる段階でございますから、私は、二十何年間黙っておったがどうだろうとおっしゃる御質問に対しましては、今の核政策上、これはアメリカのずっと持ち続けてきた政策であるとしかお答えしようがない、かように思っております。ただ、汚染問題は我々といたしましても関心が深うございますから、この問題は当然究明をしていきたいということでございます。
  186. 河上民雄

    河上委員 終わります。
  187. 浜野剛

    浜野委員長 神崎武法君。
  188. 神崎武法

    ○神崎委員 私は まず日本の政治の腐敗と国際的信頼という問題について、簡単にお尋ねをいたしたいと思います。  リクルート疑惑をめぐります長期にわたる日本の政治の空白、あるいは竹下総理の退陣によります指導力、問題処理能力の低下は、日本の国際的な信頼を失墜させるものであると考えるわけでございます。政府は常日ごろ、我が国が国際社会において責任を果たすべきである、このようなことを言われておるわけでございますけれども、現実には全く逆の結果になっているわけでございます。経済は一流であるけれども政治は三流である。こういう批判もあるところでございますけれども、外務大臣は、今日の我が国のこの政治に対する世界の見方、どのように見ているというふうに認識しておられるのか、まず御所見をお尋ねいたしたいと思います。
  189. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 私も外遊をして親しき友人に出会いますと、非常に憂慮をして、どうなのかということを率直に聞かれる方々も多いことは事実でございます。またいろいろと諸外国の出版物にもそうしたことが書かれておることも事実でございます。したがいまして、やはり外交をやるには内政が充実しておらねばならぬ、また内政充実してこそ外交は我々の使命を果たすことができる、かように思いますと、速やかに今日の空白が埋められますように我々もひとつ努力をしたいものである、かように考えております。  同時にまた、我が国の予算は単に日本だけではなく、今日では世界的な責任も帯びている予算である、そういうことで、先般いろいろと御尽力を賜っておりますが、速やかなる成立を私たちとして期待いたしておるというのが現在の私の心境でございます。
  190. 神崎武法

    ○神崎委員 ただいまもお話があったところでございますけれども、外交の立場から申しまして、日本の現在のこの政治の空白の元凶というものは、日本の外交に支障を来しているのではないかと思うわけでございます。特に、大変懸案事項が数多く重なっている日米間におきまして、対米交渉にとっては大きなマイナス要因に働いているのではないかと思われるわけでありますけれども、外務大臣の認識、御見解を承りたい。
  191. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 日米関係を取り上げました場合には、竹下総理が辞任されるわけでございますから、速やかにその後継者を決めまして、やはり日米我が国外交の基軸であると申し上げる以上は、今のいろいろな問題に対しましても、首脳会談なり、また外相会談というものが早急に開かれるべきである、それが今ちょっと停滞しておるのは甚だ残念と言わざるを得ないというのが現在の心境でございます。
  192. 神崎武法

    ○神崎委員 大臣も自民党の実力者のお一人でございますから、この後継総裁の選出を含めまして、この政治の空白を埋めるためにぜひ御尽力を賜りたいと思うわけでございます。  ところで、ブッシュ政権発足後の日米関係、最近の日米関係を見てまいりますと、FSX、次期支援戦闘機の共同開発計画をめぐります紛糾あるいは対日市場開放要求に関しましての包括通商法スーパー三〇一条の対日適用など、一段と厳しさを増しておるところでございまして、日米間の対立調整が非常に困難なものになっているわけでございます。  ところで、このブッシュ政権の外交政策につきまして、現在、対ソ、対東欧、対西欧の三つの分野で外交政策の見直しが国務省を中心に進められているということも言われているわけでございます。果たして対アジア政策の見直しあるいは対日本政策の見直しがあるのかどうか、大変大きな関心が持たれるわけでございますけれども、こういったFSXあるいはスーパー三〇一条問題での紛糾等を見ておりますと、ブッシュ政権の対日政策に基本的な変化があったのだ、こういう見方も一方であるわけでございます。この点について基本的にどのように認識をしておられるか承りたい。     〔委員長退席、浜田(卓)委員長代理着席〕
  193. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 ブッシュ政権が誕生いたしまして、率直に申し上げますと、やはり新しい政権で、レーガン政権を継承されるとはいいながら、スタッフを配置するのに多少当然のことながら時間がかかりました。特に我が国におきましては、マンスフィールド大使が引退されまして、そしてようやくアマコスト大使が着任されたわけでございますが、この空白は確かに大きかった、私はこういうふうに考えております。したがいまして、ぜひともこの空白を埋め直さなければなりません。しかし、政府首脳間の話し合いは、先ほどもお答えいたしておりますとおり、いろいろな問題が出ましても、共同作業、または政策協調で一つ一つ確実に解決をしてまいりましょう、大切な日米関係でありますということでございますから、日米関係を含めまして、米国のアジア政策というものはそう大きな変化はない、私はかように読んでおります。  ソ連に対しましては、やはり非常に慎重であったのではなかろうか。しかし、べ-カーさんとシェワルナゼ外相会談が行われまして、ようやく新しい政権の第一ページをお互いに広げられた。シェウルナゼさんも私に自動車の中で個人的に言われました。レーガンさんのときには、ソ連のことをもうあしざまにののしられて、それから八年かかってようやく米ソはよくなったのです、その後をブッシュさんがお継ぎになるのだから、レーガンさんの政権の初期とはまた味が違っておりまして、一段と友好関係の中からスタートできるのじゃないだろうか、おれはこう思うが、どう思うとシェワルナゼが言いましたが、私もそう思うよ、きっと日ソと同様に、やはり米ソももっともっと、回数を重ねて出会っていらっしゃるのだから、よい結果を生むだろうと思う、期待していますというぐらいに、米ソ関係も新しい段階とはいいながら、レーガン政権の後を追いながら今静かにいろいろな究明をしていらっしゃる段階ではなかろうか。しかし、五月になりますと、早々とSTART問題等々に関する両方の会合が既にして開かれるというのでございますから、そうした面も私たちは期待しなければなりません。  特に、東欧諸国の最近の変わりようは大変なものでございます。ポーランドしかりハンガリーしかり。したがいまして、当然それに大きく米国は着目をされておる。欧州の指導者も着目されて続続と東欧には行かれるのじゃなかろうか、かように思っておるような次第でございまして、確かに新しい時代の中にまた新しい潮が流れ出しておる、こう確認していいのではなかろうかと思います。
  194. 神崎武法

    ○神崎委員 アマコスト新駐日大使が議会で、日米関係協力と競争の関係にあると証言されたということを伺っておりますけれども、今回のFSXの問題あるいはスーパー三〇一条の問題等を見ますと、競争関係の表面化が非常にはっきりしているように思うわけでございます。今後日本の対米貿易の黒字が続く限り、この日米関係協力面よりも競争面が前面に出てくるのではないか、このように思うわけでございます。これまでのように、単に日米関係協力関係という面から強力にアメリカの要求に応ずるような、そういう協力関係を重視するだけではなくて、やはり競争関係を続ける限りにおいて、どのように日本としても対処していくのか、新たな対応というものも考えられなければいけないように思うわけでございますが、その点について大臣、どのように認識をされておられますか。
  195. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 日米協力というのはもうあらゆる面でやっていかなければなりません。また、それがアジア・太平洋の私たちの安定につながり、また両国合わせまして今やGNP三七%と言われておるぐらいでございますから、やはり日米関係がうまくいかないということは、世界にとりましてもうまくいかないんだよ、そのことは常にお互いに語り合っておるところでございます。だから、新大使の協力、競争という競争も、よい意味でおっしゃっているのではなかろうか。お互いに血を出し合って、そして殴り合いをせよというような競争じゃなくして、よき意味の競争ではなかろうか。  例えば、先ほど来問題になっておりまするところのFSX一つにいたしましても、これはやはり日本の技術というものに対するいろいろな見方もあったでございましょう。そうしたところから議論が分かれたと思っておりますが、政府同士といたしましては、また関係民間同士といたしましては、協力が大切であるということにおきまして、共同プロジェクトとして進もう、そういう意味の共同プロジェクトの中における競争というものが世界に貢献すればよろしい、私はさように考えておる次第でございます。
  196. 神崎武法

    ○神崎委員 今大臣の御答弁にありましたFSXの関連で一つだけお尋ねをしたいわけでございますが、この問題についてはいろいろな角度から十分時間をとって議論をしたいと思うわけでございますが、その前提となる事実ということでお尋ねをいたしたいと思います。  FSXは政治的には共同開発となったわけでございますけれども、当初は自主開発、それから共同開発、現有機の転用、それから外国機の導入、こういう四つの選択肢があったわけでございます。それぞれ検討された結果、共同開発ということになったわけでございますけれども、それぞれにつきまして、日本側から見てどういうメリット、デメリットがあったのか、またアメリカ側から見てどういうメリット、デメリットがあったのか、頭の整理の意味で、その点についてだけお尋ねをいたします。
  197. 萩次郎

    ○萩説明員 ただいまお尋ねにありましたように、FSXについては三つの選択肢を持って検討いたしました。  一つは、現有機、現在航空自衛隊が持っております航空機を転用したらどうかというのが一つの選択肢であります。  二つ目は、現在外国で飛んでおる航空機、外国機の導入はどうであろうかというのが二つ目の選択肢でございます。  三つ目は、開発という選択でございまして、この開発の中には国内開発もあれば共同開発もあろうかと思われます。  いずれにしましても、この三つについて検討したわけであります。その結果、私どもといたしましては、現有機の転用、それから外国機の購入、この既存の戦闘機を使うということにつきましては、このFSXというのは今世紀末から採用を始めまして、本格的に使うのは二十一世紀でございますから、そういう点、それから我が国運用構想、それから地理的な特性ということを考えますと、既存の航空機はいずれも要求を満たさないということになったわけであります。  そこで、開発ということになったわけでありますが、私ども種々検討いたしました。先生おっしゃいましたように、国内開発をしたいという有力な意見もございましたけれども、私どもいろいろ総合的に勘案しますと、既に飛んでおりますアメリカのF16という大変優秀な航空機、これをベースにして、アメリカの進んだ技術に日本のお得意の生産技術と申しますか、そういうものを合体をして共同開発をするということが一番日本にとって、先生のお言葉からいうとメリットがあるのではないかということで決断をしたわけであります。  御案内のとおり、この過程におきまして米側から種々意見があったわけでありますが、日米安保条約に基づきまして、日本の防衛に責任を持つアメリカとして意見を申すのは当然であろうかと私どもも考えておりますし、そのアメリカの意見等も踏まえ、私どもの先ほど申しましたような種々の問題点を自主的に勘案した結果、いずれにしましても、日米共同開発がベストであろうということで、今回の共同開発に踏み切った次第でございます。
  198. 神崎武法

    ○神崎委員 スーパー三〇一条の関係では、間もなく決定がなされると伺っておりますけれども、現段階で特にこのスーパー三〇一条の適用国、項目などについて見通しが明らかにできますか。できるのであればちょっと見通しを言っていただきたいと思います。
  199. 佐藤嘉恭

    ○佐藤(嘉)政府委員 お答え申し上げます。  スーパー三〇一条についてのアメリカ側の判断の見通しの問題についてだと思いますが、私ども、このスーパー三〇一条そのものについて、国際経済システムの中で位置づけるとすれば、大変一方的な判断基準に基づく措置になりかねないということで、ガット体制という関係から見ましても不適当な条項ではなかろうかと考えております。  したがいまして、そういう趣旨のお考えを外務大臣から先方の政府、あるいは私どものレベルにおきましても随時述べてまいりましたが、残念ながらこの包括貿易法というのが昨年でき上がってしまいました。その結果、行政府としては、これを実行しなければならない立場に立っているわけであります。私どもとしては、こういう形で日米間の交渉が行われるということはなかなか容易なことではないという考えを持っておるわけでございます。  このアメリカ側の判断がいつどのような形で出てくるのかということにつきましては、私どもも全貌をとらえているわけではございません。しかし、法の立て方からいいまして、この五月二十八日までに判断を下さなければならない立場にアメリカの行政府は立っております。したがいまして、間もなく行政府としての判断を下すということになろうかと思います。  日本についてどう考えられるかということがお尋ねの点だろうと思いますが、先般USTRが掲げました報告を出しましたけれども、ことしのアメリカ日本との通商関係において、いわゆる貿易障壁とUSTRが考えている項目が三十四、五項目挙げられました。したがいまして、その中からアメリカ政府において日本交渉するのが適当だということが考えられる項目、具体的には最終的にどうなるかはわかりません。しかし一般的に、例えばスーパーコンピューター等が、これは政府調達の関係でございますけれども指摘をされております。私どもとしては、今アメリカ側の判断が出る前に、日本側としてどう考えるかということについて御意見を申し上げるのはちょっとはばかりたいという感じがいたしております。  いずれにいたしましても、先ほど外務大臣から御答弁申し上げておりますように、日米間の経済問題については、もしそこに一つのイシューというものがあるとすれば、共同の努力によって一つ一つ解決をしていこうというふうに考えているわけでございます。
  200. 神崎武法

    ○神崎委員 現段階ではなかなか難しいと思いますけれども、仮に我が国にスーパー三〇一条が適用された場合でございますけれども、基本的にどういう手順で交渉を進め、制裁措置の発動回避に向けてどう対応するのかという点でございます。これはケースによると思いますけれども、一方的で我が国を差別した制裁はガット違反としてガット提訴をすることも含めまして、基本的にどういう考え方でいらっしゃるのか、その点についてお尋ねをいたします。
  201. 佐藤嘉恭

    ○佐藤(嘉)政府委員 お答え申し上げます。  このスーパー三〇一条の条項の定めによりますと、行政府がこの判定をいたしましてから二十一日以内に当該国との交渉に入るというふうな定めになってございます。したがいまして、仮に日本がこの認定を受けるということになりますと、この手続によりまして、二十一日以内に交渉開始され、その後一年あるいは一年半にわたりまして日米間の協議が行われるということになるわけであります。これはどの問題が指摘されることになるのか、まさに今先生の御指摘になったところが問題だと思うのでありますけれども、私どもとしては、アメリカ側日本との通商貿易関係におきまして、ある特定の項目について交渉したいという趣旨であるならば、我々としても日米経済関係の円滑な発展という見地からこの問題を取り上げ、日本側の事情をこの協議の場において十分説明し、米側の理解が得られる対応をしなくてはならないかと思っております。  このスーパー三〇一という問題は、アメリカ政府におきましても、報復をするための条項ということではございません。アメリカの通商利益をいかにして増進をしていくかという一つのメカニズムとして立法がなされたというふうに理解をいたしております。だとするならば、アメリカ側との関係におきまして、日本の市場においてアメリカの関心が那辺にあるのかということをきちんとお互いに理解を積み上げた上で、その摩擦現象が起こらないように対応しなくてはならないと思いますし、ましてや報復措置というようなことに発展しないように交渉当事者としては対応をしなくてはならないかと思います。  万が一、話し合いが調わずして何らかの措置がアメリカ側からとられてしまう、そしてそのアメリカ側の措置がガット違反という措置になるのだとすれば、これは私どもとしても、ガットの場におきまして、協議を深める、問題を解決するという対応をしなくてはならないかと思っておりますが、基本的に重要なことは、仮にこの三〇一条のもとで交渉が始まるということになったとしても、その後予想される協議の場におきまして、お互いの理解を深め、問題の解決に対応したいと考えているわけでございます。
  202. 神崎武法

    ○神崎委員 次に、水爆の水没事故についてお尋ねをいたします。  基本的なことをまずお尋ねいたしますが、日本政府としてこの事故を知ったのはいつか、何によってこれを知り得たのかという点について、まずお尋ねをいたします。
  203. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 この事故につきましては、一九八一年の春に米国政府の国防省・エネルギー省が発表いたしました一九五〇年から一九八〇年までの間に生じた核兵器にまつわる事故三十二件についての報告書、これに簡単な記述がございました。しかしながら、最近に至りまして、これが日本近海で生じたということが報じられましたものですから、私どもといたしましては大変深い関心を持ちまして、早速米国政府に事実関係を照会したわけでございます。その結果、米国政府から事故の概要について説明を受けた次第であります。その内容につきましては、先般来お話し申し上げているとおりでございます。それから米側からの通報もお話ししたとおりでございます。
  204. 神崎武法

    ○神崎委員 こうした事故を起こしながら、アメリカの雑誌に報道されるまで放置し、具体的な事実関係を公表しなかったアメリカ政府態度は無責任ではないかと私は思うわけでございます。この点について外務省としてはどのようにお考えになっているのか、今後のこともありますので、日本政府として明確な意思表示をしておくべきである、このように考えますが、いかがでしょうか。
  205. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 この点につきましては、先ほど外務大臣が言及されたわけでございますけれども、実はこの報告書の頭書きのところに、「核兵器にかかわる事故について核兵器の存在を明らかにするか否かは公共の危険または警報の必要性が生ずるか否かの可能性のいかんによっている。したがって、この報告書の中の幾つかの事故については的確な場所等についての叙述は行っていない」そういうふうに書いてございます。  それで、実は場所が明記されておりますのは二つございます。一つはスペイン、一つはグリーンランドでございますけれども、この二件の事故が環境に影響を与えた、こういうことでございます。  したがいまして、この事件が最初に起きましたときに、これが環境に重大な影響を与える、あるいは安全性に問題があるといったようなことがなかったという米国の判断に基づいてということでありまして、したがって、米国政府からは報告がなかったというふうに考えております。
  206. 神崎武法

    ○神崎委員 私がお尋ねした後段の部分で、今後のこともあるので、日本政府として明確な意思表示をしておくべきではないか、この点についてのお答えがないように思いますが……。
  207. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 先日、我が方から照会しておりました安全性にかかわる一連の情報が接到しております。これを我が国といたしましては大変重いものと受けとめておりますが、関係省庁が現在これを検討いたしております。これの結果いかんによりましては、今先生がおっしゃられましたようなことも含めて、米側に改めて接触する可能性は排除されていないと思っております。     〔浜田(卓)委員長代理退席、委員長着席〕
  208. 神崎武法

    ○神崎委員 米側の回答によりますと、核物質は海底に沈殿し、環境汚染の心配はないとしているわけでございますけれども、専門家の間では、海流によって動き、長い間に影響が出る可能性もある、こういう指摘もあるのであります。  また、今月二十二日の沖縄県議会の抗議決議と意見書採択、これは全会一致で採択しているわけでございますが、その中で、特に真相の徹底究明と公表、それから県民の生命と安全を守るため、水爆を直ちに回収し、撤去する。それから核関連部隊の撤去、非核三原則を厳守するため実効ある措置を講ずる、こういうことを強く求めているわけでございます。  まず、アメリカ側に継続調査を要求するとかあるいは日本独自の海洋調査を実施するとか、日米合同で調査するとか、いろいろな方法で徹底的な調査を行って国民の不安を解消すべきだ、このように考えますが、この点についてはいかがでしょうか。
  209. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 今局長申しましたように、相当広範な各省庁の専門家で、ここを照会しろ、あそこを照会しろというような、それぞれの各省庁間の方はまとまっております。今それを外務省でまとめております。  したがいまして、それによって私はもう一度アメリカに照会すべきはきちっと照会しましょう。もし、その照会の結果、回答が寄せられ、説明がなされますと、それによって我が国の専門家がまだする仕事がある。その中に調査があれば、それはまた一つの大きな問題として必要であろうと思いますが、何分にも四千八百メーターというところから、例えばその沈殿したものを取り上げるという話があるのですが、これは本当にできるかできないか、私が簡単にイエスと言えない問題であるかもしれません。  同時にまた、この間も参議院の予算委員会で、直後でございましたから、各党の御質問、これに集中しまして、我が方の政府委員も随分と答弁しておられましたが、水産庁のごときも、あの地帯においては、水産庁の専門的判断から見るに、二十四年たったことであるし、その間の経緯から見ても、そうした汚染の事実なしというふうな判定も大体下されておった。だから、それを総合しまして、やはりきちっとした対応をして、本当に国民の不安を除去するというのは、これは政府の役目でございますから、これだけはやらねばならない、かように考えております。
  210. 神崎武法

    ○神崎委員 先ほど北米局長も一九八一年春のこの国防総省報告に触れられておりましたけれども、民間の調査機関の調査によっても、戦後核爆弾が四十八個ですか水没しているとかあるいは原潜の事故で原子炉が九つ水没しているとか、そういう調査結果も公表されておりますし、国防総省の発表でも、やはりそういう原子力事故というものは起こっているという。ところが私たちはそういうことは全く知らされていないわけでございます。私たちの近くでそういう事故があったことすら知らなかったわけでございます。  三年前のチェルノブイリ原発事故を契機といたしまして、原子力事故に関する二つ条約が採択されたわけでございますけれども、まず条約の解釈として、この二つ条約の適用対象として、軍事施設で原子力の事故を起こした場合に適用されるかどうか、この点をまずお伺いいたします。
  211. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 今先生指摘二つ条約のうちの一つの原子力事故の早期通報条約でございますけれども、これが該当するかと思います。この条約は、原子力事故に関しまして通報を二つのカテゴリーに分けておりまして、一つ義務的通報、つまり通報しなくちゃいけないというものと、もう一つは任意通報と二つに分けておるわけでございます。  そこで、御指摘の点に関連して申し上げますと、原子炉の事故につきましては、これはその原子炉がどこの場所にあれ、つまり、いわゆる民間の施設にあれあるいは軍用施設にあれ、これにつきましては義務通報の対象になっております。しかしながら、核実験あるいは核兵器等々につきましては、任意通報の対象、こういうふうになっております。しかしながら、五つの核兵器国すべてがこの条約の採択会議におきまして、任意通報ではあるけれども、核兵器の事故あるいは核実験等等におきます放射性物質の影響が他の国に及ぼすあるいは及ぶようなおそれのある場合には、任意的ではあるけれども自主的に通報するということの意図表明を行っております。したがいまして、確かに、例えば原潜の動力炉による事故の場合には義務的通報になりますし、そうでない核兵器あるいは核実験につきましては、任意通報ではあるけれども自主的にやる、こういうことになっておるわけでございます。
  212. 神崎武法

    ○神崎委員 この二条約の採択前の原子力事故、これは民事あるいは軍事を問わず、これにつきましても、やはりプルトニウムの半減期は何か二万四千年だということも言われておりますし、一過性の事故でないわけですから、これは条約の採択前のものについても加盟国間で通報するように、それは自主的であってもあるいは義務的であっても構いませんけれども、少なくとも通報、自主的にあるいは義務的に通報する、そういう措置をとるべきである、このように私は考えますけれども、そういう申し合わせというものはできませんか。
  213. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 言うまでもないことでございますけれども、この義務なりあるいは任意通報が発動されますのは、この条約が効力を発生し、かつ個々の国にとりましては、個々の国がこの条約を受諾したとき、こういうことになるわけでございます。したがいまして、条約的には今先生おっしゃったようなことが非常に難しいかと思いますが、今の御指摘の点につきましては、承って、考えさせていただきたいと思います。
  214. 神崎武法

    ○神崎委員 それから、一般論としてお尋ねしたいわけでございますが、本件のように、水爆を搭載した航空機、これを積載した米軍の艦船が日本の港に事前協議なしに入ってきた場合に、日米安保条約の解釈上はどういうことになりますか。
  215. 福田博

    ○福田(博)政府委員 我が国を初めとしてどの国家もいろいろな条約とか協定を結んでおるわけでございますが、特に安全保障というような国の根幹にかかわる問題について条約を結ぶという場合には、両当事国、二カ国であれば両当事国ですが、それが基本的な信頼関係を持っているというのがもともとあるわけでございます。我が国は、専守防衛に徹する自衛隊と、それから日米安保条約ということによって国の安全を確保するという仕組みをとっておるわけでございますが、こういうところでは、特に日米間では信頼関係がなくてはそういうことがあり得ないわけでございますから、政府としてはアメリカ条約上の義務を履行してないというようなことを考えるということはないということでございます。
  216. 神崎武法

    ○神崎委員 確信をされるのは結構なんですけれども条約の解釈を今お尋ねしているわけですね。そういう事前協議を経ることなしに本件のようなケースが起こった場合に、これは日米安保条約違反になるのかならないのか、こういう条約の解釈です。
  217. 福田博

    ○福田(博)政府委員 今のは基本的に安保体制というものの信頼がもとになっているということを申し上げたわけです。  ただ、それでは条約によって、あるいは条約を離れて一般国際法上の問題として義務違反があった場合にどうなるかといえば、それは一般国際法上の問題として、それに対する救済、救済というのはいろいろございまして、例えば原状回復とかいろいろあると思いますが、そういうものは条約に規定があるかないかにかかわらず、一般国際法上の問題として当事国の権利としてございます。
  218. 神崎武法

    ○神崎委員 そうしますと、この日米安保条約上は重大な条約違反があった場合にはどういう措置がとり得ることになっているのですか。
  219. 福田博

    ○福田(博)政府委員 昨年の国会で、予算委員会の冒頭でたしかいろいろ議論が行われました。安保条約の四条にかかわるいわゆる随時協議と言われるものですが、そういうようなものが活用できないかとかできるとか、いろいろ議論がございましたが、それは今申し上げましたように、条約に規定があるかないかにかかわらず、理論的な問題としていえば、明らかに条約違反があるという場合には、一般国際法上の条約締結する国の権利として、それを是正することを相手国に求めることができるということでございます。
  220. 神崎武法

    ○神崎委員 この問題については、時間をかけてまた議論をしたいと思います。  最後に大臣に、最近の中国の国内事情、北京での学生たちの民主化運動、この問題について外務大臣としてどういうふうにごらんになっているのか、またどういう方向で収束するという見通しを持っておられるのか、御意見があればぜひ伺いたいと思います。
  221. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 この学生騒動が起こりまして、一たん平穏になったかというときに、私北京に立ち寄りまして、そして銭其深外相の見解もお伺いしておったのですが、帰ってくるやまた拡大されたというような経緯がございます。だから到底日本政府としてはどうなるかということは一向わからないというのが本音でございますが、こういう事態は我々として憂慮いたしておりますので、十二分にその推移を見守っていきたいし、同時にまた、日中間は非常によい関係に現在あるわけでございますので、近代化が進むということは大いに歓迎もいたしておりますので、ぜひとも円満に解決されることを望みながら、開放・改革政策が順当に中国の福利となって実ることを私たちは心から期待するというのが現在の私の見解であります。
  222. 神崎武法

    ○神崎委員 以上で終わります。
  223. 浜野剛

    浜野委員長 林保夫君。
  224. 林保夫

    ○林(保)委員 大臣初め御苦労さまでございます。また時間が限られておりますので、ひとつ三月三十日の予算委員会代表質問の継続という形で、平成時代、大事な時期に差しかかり、国際情勢も余り悪い方向じゃないと思うのですが、しかしなお激動しておりますので、御苦労ではございますけれども、外務大臣初め国際国家の衝に当たられる方々にひとつ頑張ってもらわなければならぬ、こういう趣旨も含めまして、率直にきょうはお伺いしたいと思っております。  実は、それに先立ちまして御報告しておきますが、私どもも二月の二十二日、三日の大会で永末中央執行委員長という新しい体制をつくりまして、従来から国際関係は私ども大事にしておりましたので、四月の五日と十日の日に二回に分けまして在日主要公館トップの人を呼びましたところ、思いもかけず大勢の方が来ていただきまして、一回目が三十二人だったと思います。大使、公使ですね。二回目も同じように来られまして、肌で感ずるほど日本に対する期待の大きいことを確認いたしました。そういった中で、やはり日本がやらなきゃならない役割と同時に、大臣も常々本委員会あるいは予算委員会そのほかでお聞きしておりますと、もうちょっと存分に日本大臣としてやっていただきたい、大臣もそれらのことを念願しておられるのだろうと思うのです。そういった意味で、最近の事件につきまして、まず過日の航空母艦タイコンデロが号の水爆搭載機の水没事故について、アメリカの方から公式な回答があり、その資料も私ども見さしていただきました。それについての御所見も新聞紙上あるいは当委員会で先ほども承りましたけれども、何か国民的な感覚からいたしますと、隔靴掻痒の感がすることは否めないと思うのです。つきましては、日本側もそれなりに調査するということでございますが、どういう手順でおやりになるか、大臣の御決意をまず承っておきたいと思うのです。
  225. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 横須賀入港の問題は別に置きまして、まず核物質がどうなったかというのが国民の一つの大きな不安でございます。それに関しましては、幸い水素爆弾は機能せずに途中で破壊されましたから、爆発は起こさなかったんです、なおかつ水素爆弾の起爆剤になります高性能火薬の爆発もなかった、こういうふうに書かれております。そして水爆は海底深く沈んで、そこでばらばらになっていますから、核物質も沈殿、融合しました、だから環境に影響ありません、これだけでございます。しかし、これはアメリカとしての調査の重みのある説明だと私は思いますが、これだけで国民の皆さんどうですかというわけにはまいりません。やはり我が国も相当な関係者がいらっしゃるわけですから、外務省を中心といたしまして、防衛庁、海上保安庁、さらには運輸省、環境庁、水産庁といったような関係省庁に即刻集まっていただいて、そしてまず今私が受け取りました重みのある説明、この説明から皆さん方はさらにどういう説明を必要とされますか、ぜひともこれについてそれぞれ御検討賜りたいというので、その答えが出たわけでございます。それを外務省で現在きちっと整理整とんいたしまして、いずれそのことは、照会すべき事項というのがほとんどでございますから、再びアメリカ政府日本政府としてこれだけの照会をさらに求める、こういうふうにやっていきたいと考えております。
  226. 林保夫

    ○林(保)委員 深海ですよね、一万六千フィートのところでございますから。今深海調査船などがあるので、国民感情としては、それなら入って調べたらいいじゃないかという意見までありますが、具体的には洋上で、日本列島の中じゃないのです。洋上でどういうことをやろうと意図しておられるのかということを承りたいと思うのです。
  227. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 ただいま接到いたしました米側の情報を分析しているところでございまして、例えば今先生がおっしゃいましたような海洋の調査をする必要があるのかどうかということは、この検討の結果いずれ出てまいると思います。これまた大臣が先ほど仰せられたことでありますけれども、何分四千八百メートルのところに沈んでいて、それも二十四年前のことである。それで、今の段階で何が可能であるかということは、それらの要件を念頭に置きながら検討していかなければならないことだと存じております。
  228. 林保夫

    ○林(保)委員 時間がございませんので、次へ行きます。  アメリカのグリーンピースの調査というのが新聞報道に出ておりましたね。それによると、これは日本近海だけじゃないわけです。水爆搭載機の水没のような類似の事故が五十九件も第二次大戦後米ソなどでいろいろあるということでございますね。これは実際動いておりますので、事故がいろいろあったり、そしてそれが手違いになっていろいろあることも私はやむを得ないと思うのです。そういった中で、この場合は八年前に知らせがあったわけですが、しかし、今日まで知らされていなかったという問題とか、それから今大臣がこれは別と言われたような非核三原則にもとるような米艦の航行の問題についても大変な疑いが出ております。これを大臣一人で話せというわけじゃございませんけれども、これからの問題として、そういう疑いを持っておれば日米友好の基軸が揺らぐと思うのです。どういう対応の方法があるのか、大臣の御所見をちょっとお伺いしておきたいと思うのです。これは日米安保条約その他関連のものでの事前協議を含む問題についてどういう形があるのか。向こうから通知がないからもう何もないんだというだけでは主権国家としてもう済まされない問題に来ていると私は思うのです。御見解をひとつ。
  229. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 安保体制は幸いに今日まで円満に機能いたしておりまして、そして日本が今日の繁栄を得ておると申しても過言ではありません。  また、核は究極的にはもう廃絶されるべきであるというのが日本政策でございます。しかし、その間においては抑止の一つの手だてである。しかし、それとても決して高レベルじゃなくして、低レベルにおいても十二分にバランス並びに抑止ということは機能を果たし得るではないか、それが我が方の常に主張いたしておるところでございます。この間の京都の軍縮会議でも、私そのことを申し述べ、また軍縮会議における竹下総理の演説も今申し上げたことが述べられております。  したがいまして、我々といたしましては、そうした経緯の中において、今日はアメリカの核の傘の中におりますよというのが日本でございます。そうした意味で、抑止にもなるバランスも必要であろう、傘の中にいることも必要であろう、こういうふうな考えからいたしますと、やはり日米安保条約というものは信頼関係において初めて成り立つものである。かように存じますと、従来から申しておりまするとおりに、核の有無に関しましては、抑止をきかすという意味アメリカは明らかにいたしません。どの艦船にこれだけ積んでいますというようなことも明らかにいたしません。そうした意味で、二十四年前とは申せ、事前協議がなければそうしたことはなかった、我々としてはそのことを信じておるというのが今日も変わらざる政府の方針でございます。
  230. 林保夫

    ○林(保)委員 大臣のおっしゃるような前提条件は私もそのとおりだと思うのです。ただ、これだけ疑惑が出ているのをどういうふうに晴らしながら前へ進めて、一層の国民ベースの安全保障をつくるかという点については一工夫も二工夫もしたい。そういう意味で、先ほど来議論になっておりますFSXの問題も、日本でできるのに何か向こうへとられちゃったという感じを強く持つ。しかもそれが政治絡みでやられたんじゃないかというような批判もあるような状況がございます。これは指摘だけにとどめます。  今問題になっておりますアメリカの通商法スーパー三〇一条の問題でございますが、これもアメリカの行政府の判断が近く出るわけでございます。EC各国は、これがガット違反だ、こういう特定があれば米国にいろいろな問題で報復というか攻勢もやるというような姿勢を強く出しておりますね。それに対して日本は、余りにも、先ほど来のお話を聞いておりましても、待ってみるというだけの話のようにしかとれない側面もございます。出た上で、外務省も通産省もあるいは郵政省、そのほかの省庁もしっかり対応してくれると思いますけれども、もう少し強く、交換条件を出してでもやる姿勢がなければならぬと思いますが、大臣のこの問題に対する御決意を承っておきたいと思います。
  231. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 この問題は、累次御説明いたしておりますとおり、包括貿易法案そのものが存在する以上は、米国政府としてもそれに従ってしなければならない一つの重要な事柄である、これは御承知賜っているところだと思います。  そこで、初めてのこととは申せ、いよいよ政府にもその場面が来ました。このときには、いわゆる不正慣行の国に対しまして、その慣行国の指名とか慣行そのものをどういうふうに発表していくかという問題が残っております。私たちは決してこの発表を見てからというようなことにはいたしておりません。やはり努力をいたしまして、今日の日米間の大切な経済関係をるる相手にも伝え、なおかつ米国は日本にとって常に豊かな国でなくちゃならないんですよ、あなたのところは政策も立派だし、経済的にも大きな国でなければならないんですよ、そして私たちもやはりあなたたちにとっては大切な国なんですよ、こういうふうな関係におきまして、私たちは申すべきは常にきちっと申さねばならぬ、かように思っております。米国の閣内には今もいろいろと慎重にこの問題を議論されておりますが、そうした慎重になっていただいている裏には、我が国我が国として、この三〇一条についての見解を申し述べ、またこれの取り扱いに関しましても、日本考え方を伝えておるというのが現状でございますので、まだまだ相手国の閣内の問題でもございますから、こうした、ああしたというのは申し上げがたいこともございますが、決して供手傍観しているわけではない、こういうふうにお考え賜りたいと思います。
  232. 林保夫

    ○林(保)委員 ありがとうございました。ひとつしっかり対応していただきたいと思います。  そこで、大臣、過日はモスクワまで本当に御苦労でございましたし、大変有効な実績をおさめられた、果実はこれからでございますけれども。その間、私どももその後のいろいろな情勢を聞いておりますと、ヤルタ会談以来の諸問題の糸をほぐさないとなかなかできないというような状況にあると思います。したがいまして、この問題について、北方四島の返還でございますが、一歩、二歩踏み込んでやるためには、もう一つ大きな網を打たなければならぬ、このように私は考えております。  そういった視点で、なぜゴルバチョフさんの年内来日が無理になったのかという点と、それからブッシュ政権も日本の北方四島返還問題について大変関心を寄せて、グローバルな解決というよらな感じの話が出ておりますが、その二点について、簡単でよろしいですが、展望をお聞かせいただきたいと思います。
  233. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 ゴルバチョフ書記長の訪日はみずから申されました。ことしは残念ながらスケジュールがいっぱい組まれておるので、来年早々の外相会談で具体的な日程を議論していただいたらいかがであろうか、私は訪日は必要だと考えております、こういうふうにも言っておりますから、訪日されるということは約束された。これは初めてのことでございます。  なおかつ、ブッシュさんがこの間大学でスピーチなさいましたときに、北方領土問題に触れていただいております。これはアメリカがしばしば、前レーガンさんもシュルツ国務長官も、あのINF交渉のときにおいてすら一つの問題として触れていただいておりますが、今回は、ソ連のいわゆる新思考に基づく望むべき理想的な姿として、日本に北方四島を返されたソ連の姿、そういうものを私は期待しますよ、こういう表現で北方四島問題に関して応援をしていただいた。これは大切なことでございます。  なおかつ、次官クラスのワーキンググループではヤルタ会談等々の問題がまた出ております。しかし、この問題に関しましても、常に米国は、あのときは米英並びにスターリンの三者が寄ったわけであるけれども日本には領土移転の義務なし、国際的な義務ありません、こういうことをはっきり言ってくれている。私もまた英国に行くたびに、もう四十年前の物語でありますが、これは常に大切な問題として確認をしておる。そういうことで我々といたしましては、ヤルタ問題に関しましては、ソ連の言い分は、今さらそんな問題を出すというようなことは、それこそ新思考にふさわしからざる考え方ですよ、スターリンの拡大時代のお話じゃありませんかというふうに私たちは今応対しておる、ひとつこういうふうに御理解賜ります。
  234. 林保夫

    ○林(保)委員 御努力を謝しながらも、私ども過日、ソ日親善協会のボリメルさんが来られまして、三十分、永末中央執行委員長、河村副委員長、私と党本部で会いました。そのときに、ぜひひとつゴルバチョフさんが来られるまでにハードルを低くしておいていただきたい、こういうことを申しましたら、ハードルを越えるのはきつい、山も登っておりるのはきつい、だから回りましょうと言う。どういうふうに考えておるのか、あるいは棚上げなんだろうかというようなことがございました口の下で、よく聞いてください、ただいま衆議院議長、参議院議長に会ってきました、その席で、私は最近、三百五十年前の沿海州、東シベリア、千島の地図を発見いたしました、こういうことです。それで、それをコピーしてお送りすることを約束してきました、おたくもどうでしょうかと言われました。永末中央執行委員長は、そんなものがあるわけないと言われました。言うまでもなく、伊能忠敬が二百五十年前に調べたものをもって嚆矢とするのが世界史の常識じゃないですか。後、言葉はございませんでしたけれどもね。そういうような形ででも、あらゆる場面であらゆることをやっていかなければなりませんので、大臣には格別ひとつ国際関係での手の打ち方ですね。それで私は、一言で言うと言いにくいですけれども、なお沖縄もそうではなかったかと思うのですけれども、あそこを持っておったのではどうにもならぬという状況が出たから返ってきておる。北方四島なんか特にそういう状況をつくらないとなかなか返ってこない。こういうことも御配慮に入れながら実際的な解決を後世代のためにやるように、この際、御尽力いただきたい、このように考えます。  それから、最後でございますが、大臣にちょっと聞いてみたいことがあるのです。一国の総理がやめることを予告して海外へ回られるという事実を、世界じゅう、生まれてから聞かれたことがありますかという問題です。過日も予算委員会でやりました。そのことのために大変な国益をマイナスにしている。きのう、きょうの為替、円の相場なんか見てもそうだと思いますけれども、それなくしては語れない問題だと思います。したがって、お互いにひとつ政治の立場にある者としては、この問題を早く決着させなければ、行政府やそのほかの仕事が立ち行かぬような状況になってしまってはどうにもなりませんので、しっかりした対応を、個々の立場ででもやっていただいているとは思いますけれども、なお、その問題の解決に向かわなければならぬと思います。  最後に、新しい政権についての大臣の御所見を承りまして、時間が参りましたので、きょうは質問を終わりたいと思います。
  235. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 過般の総理のASEAN訪問は、我が国の国益にとりましても、また外交上の約束といたしましても大変有益だった、かように私は考えます。実は総理も、おれはやめることを表明した後だからというようなヘジテートは確かにあったと思いますけれども、私も外務省でいろいろ皆と相談をいたしまして、やはり外交の一貫性、今回は総理がお行きになって、次の総理に当然申し伝えられるだけの実力を余して総理大臣はおやめになるのだから行っていただこうじゃないか、そういうことで行っていただきました。各国において本当に歓迎されております。中にはレームダックの総理が来たと言ったというような外電もございましたが、そうじゃなくて、タイ国におきましてシアヌーク殿下あるいはまたベトナムのグエン・コ・タク外相と出会えなかった、予定をしましたが出会えなかったというのは、タイ国の事情がございまして、はっきりとタイ国の方でチャチャイ首相の事情がございましたので、これは万やむなきことであって、決してレームダックだからグエン・コ・タクさんが断り、シアヌークさんが断ったという問題ではないということだけは、私もソ連にちょうど並行して行っておりましたから、帰ってから記者会見でそういうことも公にいたしておきました。  だから私は、外交は一貫性がなくてはならない、かように存じております。その外交もやはり内政あっての外交である、こういうふうに考えなくてはなりません。また外交あっての内政である。両者は車の両輪だとかつて私は申し上げましたが、そういうことでございますので、ただいま内政がいささか、総理はおやめになることを表明されたが、会期末を控えてまだ後継者も決まっておらない、だから空白だというようなことは非常に残念なことでございますから、これは我々与党の仕事ではございますが、十二分に皆努力をいたしまして、政治に対する名誉回復をなしつつ、また新しい時代に備えての日本の政治のあり方なり、また外交のあり方をより一層鮮明にしなくてはいけない、かように考えております。
  236. 林保夫

    ○林(保)委員 本当に行政府の皆さんには申しわけないのですが、混迷政局がこういう新聞の見出しになるように外交にしわ寄せなんていうようなことのないようにしなければならない、これが国会の責任だと私は思っておりますので、御理解いただけると思いますし、来る五月三十一日からのパリのOECDあるいは七月のサミット、何かこうサミットあたりになると、国内の意見あるいは外の意見なんか聞いてみますと、日本はどうも総理がしっかりせぬからオブザーバーぐらいに格下げになってしまうのではないだろうかという懸合を生むような情勢になっていることをお互いに認識しながら、ひとつ大臣御苦労でございますけれども、頑張っていただきますようお願い申し上げて、本日の質問を終わりたいと思います。
  237. 浜野剛

  238. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 水爆機の事故問題に関連して質問をいたします。  この問題は、きょうも各委員取り上げていましたけれども二つの問題点があるのです。一つは海水の汚染の危険という問題、もう一つ日本への核持ち込みの疑念ですね。宇野外相はしばしばこの問題については重大な関心を持つというふうに答弁されていますけれども、重大な関心というのは、海水の汚染問題だけではなくて日本への核持ち込みについても重大な関心を持つというふうに理解してよろしゅうございますか。
  239. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 私といたしましては、やはりいろいろとそうしたことも言われております。だから当然今岡崎さんが指摘されました面に関しましても、どうだったんだろうかということは外務大臣として考えるべきことである、こういうふうに考えております。しかしながら、やはりその当時、外務省の記録を見ましても、事前協議がなかったわけですから、核の持ち込みはなかったのである、かように私たちは考えております。
  240. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 核持ち込み問題についても重大な関心を持つというふうに言われたわけですが、この問題がなぜそうかといいますと、二つの事実があるのです。きょうもしばしば答弁されていますように、核の存否を明らかにしないというのがアメリカの方針でございまして、ただ、今回の場合は、水没事故ということがありまして、B43があったことがはっきり判明したわけなんですね。つまり日本周辺で作戦行動中の米空母が水爆を搭載したという事実、これはもうはっきりしたわけです。もう一つは、後でも質問いたしますけれども、どうもそれが間違いなく日本の港、横須賀に寄港している。この二つの事実から見ても、非核三原則、今日もございますが、それを国是とする日本政府として重大な関心を持って事実を調べるのは当然だろうというふうに思うわけなんです。そこできょうも各委員が聞きましたように、まだ寄港の事実の確認さえもできていないということなんですね。これは海水汚染については事故の概要について早速アメリカ筋から回答があったわけですけれども、なぜ今日に至るまで、半月余たつわけですけれども、この横須賀寄港についての確認がとれないのか。アメリカは故意に隠しているんじゃないかというふうに疑われてもしようがない状況だろうというふうに思うのです。いつまでその確認をとるつもりなんですか。
  241. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 現在照会中であって、まだ回答に接していないということでございます。
  242. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 それは何回も聞いています。督促をしましたか、こういう重大問題について。
  243. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 折に触れて言っていると承知いたしております。
  244. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 本当はいつまで確認をとるかについても答弁願いたいのですけれども、おっしゃらないでしょう。急いでできますか。――いつまで。急いでやるということができますか。     〔委員長退席、田中(直)委員長代理着席〕
  245. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 米国政府は現在のところわからないと申しているわけでございます。
  246. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 これは重大な問題なんですよ。まだ調査中で確認がとれないのとわからないというのでは、「まだ」が違いますからね。わからぬということでしたら、こちらが何回その調査方を依頼していてもわからないという答弁で終わるわけなんですね。安保の信頼性ということを盛んに言われますけれども、これは事実関係なんですね。二十四年前とはいえいろんな記録があるわけです。その記録に基づいて調べればわからぬはずはないわけなんで、わからぬというのは、言いたくないと思わざるを得ない状況だろうというふうに思うのです。  その一つに、アメリカの情報公開法に基づいてグリーンピース、アメリカの環境保護団体が入手した同艦の航海日誌がございますね。これは幾つかの新聞等にも載りましたので読みますと、なかなかリアリティーがあるのです。一九六五年の十二月五日午後二時五十分に事故が起こっているわけです。そして午後四時四十分まで救難捜査活動をやったけれども、それを打ち切って横須賀へ向けて直行し始めるわけです。そして十二月七日の午前零時から四時まで日本本州の南海沖を通って午前六時過ぎに東京湾に入り、午前八時三十分に横須賀基地十二番埠頭に接岸した。これは実際の記録でないとこういうことは言えないようなリアリティーを持っているわけです。これは実物として認定されていますか。
  247. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 今おっしゃられました趣旨のことが記載されている資料をグリーンピースが配付したということは承知いたしておりますけれども、そのような資料そのものは入手いたしておりません。
  248. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 入手してないのは困るのですけれども、実物かどうかについての検討はなさいましたか。相当詳しく発表されていますし、リアリティーがあるのですよ。どうですか。
  249. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 この航海日誌の入手方は米国政府に対して要請いたしております。
  250. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 私の質問に答えてほしいのですよ。航海日誌、これについて米国方に今問い合わせているのですか。これまで発表されたものについて、実物かどうかの確認は、日本政府として独自におやりになることはやっていませんか。
  251. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 日本政府としては、それが何であるかを確認する手だてを持っておりません。
  252. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 したがって、今アメリカにこれが実物かどうかの照会をなさっているのですか。
  253. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 私どもが今米国政府に求めておりますのは、一九六五年十二月五日にこの事故が発生した後のタイコンデロが号の行き先ほどこであったかということでございます。
  254. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 先ほどそれはないというふうにアメリカから回答があったということなのでしょう。しかし、現に航海日誌があるわけなのですよ。情報公開法に基づいて、グリーンピースが出しているわけでしょう。そうすると、残ったものとして、この航海日誌が非常に重要性を持つわけですけれども、これが実物であるかどうかについての照会はされてないのですか。
  255. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 それが実物であるかどうかという確認がとれてないということでございます。     〔田中(直)委員長代理退席、委員長着席〕
  256. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 確認がとれてないというのは、確認されたのですか。まだ来てないということと理解してよろしいですか。
  257. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 繰り返しになりますけれども日本政府が、タイコンデロが号がこの事故を起こしました後、どこに参ったかということを照会しているということに当たっては、何に依拠して米側が答えてくるかということは、米政府が決めることだと考えております。
  258. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 有馬さん、そんなふうに持って回って言わずに、先ほどないと言ったでしょう。アメリカの方はもう確認しようがないというふうに言ったと言っているのですよ。しかし、残っているのが航海日誌でしょう、発表されているのですよ。この航海日誌が実物かどうかについてなぜ聞かないのです。なぜ日本でも独自に入手しようとなさらないのです、聞きたいのですが。
  259. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 私、そのコピーは見たことがございますけれども、それが本物であるかどうか乏いうことは、米国政府は何も申しておりませんし、まさにそれをも含めて全体、もしもそれが本物であるならば、それに依拠して米国政府は答えてくることができるはずなのであって、私どもが米国政府に聞いておりますのは、どこに行ったのか乏いうことであって、米国政府はそれを確認することはできないということを今申しております。
  260. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 聞いていて非常におかしいのですよ。航海日誌はある、しかしアメリカとしては確認できないと言っているという。では、この航海日誌はどうなんです。実物ではないということ九んですか、アメリカにとっては。
  261. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 私ども、この問題が起きましてからまさにさまざまな報道がございましたから、この空母が事故後どこに行ったかということを来国政府に正式に照会しているわけでございます。  他方、このグリーンピースがフリーダム・オブ・インフォメーション・アクトに基づいて入手したという資料があることも承知しておりますけれども、それが本物であるかどうかということを来国は確認しておりませんし、かつ、もしもこれ飛本物であるならば、米国政府としては我が方に対する答えを行う根拠があるのだろうと思いますけれども、それを行っていないということは、まさにこれが何であるかということを確認し得ないということだろうと思っております。
  262. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 今宇野外務大臣も重大な関心を持っているというふうにおっしゃったのですね。外務大臣が重大な関心を持っていらっしゃるのに、こういう問題について調べないでアメリカ任せというのは通用せぬですよ。はっきりと航海日誌が発表されていますし、この問題についてコピーを取り寄せたのだったら、これをはっきりアメリカに事実かどうか聞くぐらいのことはしたらどうなんです。そして、あわせてこれを国会に出すように私は要望したいと思うのです。
  263. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 先ほど外務大臣がこの事件全体に関心を寄せておられるということはおっしゃられました。そして、かつ、大臣は、米国から事前協議が行われていないということをもおっしゃられたわけであります。  また、繰り返しになりますが、この事件が起きた後、この航空母艦はどこに行ったのかということを照会しておりまして、もちろん今おっしゃられましたような資料が配付されたということは承知しておりますけれども日本政府としては、米国政府に今申し上げた照会を行っていて、その回答を待っているというところであります。
  264. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 では、航海日誌について実物かどうかについての照会をして、今その回答を待っているというふうに理解してよろしいですね。  そうしますと、その回答を待つまでもなく、早く国会に出してもらいたいのですね。当委員会に出してもらいたいのですよ。こういう重大問題について、どこに行ったかもわからぬというのは、これは外交のうちに入らぬですわ。どうですか。
  265. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 そうおっしゃられますけれども、二十四年前のことでありまして、我が方といたしましても調べたのでございます。それでもわからなかった。それで米国政府政府として問い合わせているということでございます。
  266. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 二十四年前と言ったって、航海日誌が現に示されているでしょう。何にもないわけではないのです。航海日誌であるわけですから、航海日誌について直ちに実物かどうかについてアメリカに確認をとるということ。確認をとれば、アメリカ側がどこに行ったか確認しようがないということは打ち消されるわけなんです、日本に寄っているわけですからね。  二つ目には、これを国会へ提出してもらいたいと思うのですよ。重大な関心を持っている問題であったら、当然当委員会でも審議すべきなんです。どうですか。
  267. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 我が方がアメリカ政府に照会しているという事実の中には、当然御指摘の諸点も含まれているわけであります。したがいまして、それが確認されていないというのが現段階の状況でございます。
  268. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 それは航海日誌に基づいて日本に立ち寄ったかどうかについて、航海日誌が実物かどうかの確認を含めて今照会しているというふうに理解してよろしいですね。
  269. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 私が申し上げましたのは、まさにこの船はその後どこへ行ったのでしょうかということを照会しているわけでございます。そして、先ほど御提起がこの委員会でございましたけれども、もしこの船が横須賀に行っていたならば、そのような回答があったときにどうするのかということがございました。その際、政府側からは、我が方からはどこに行ったかが問題ではなくて、事前協議が行われていなかったということをもって、その問題は基本的には解決されているということでございます。
  270. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 問題をそらしちゃだめなんですよ。どこに行ったかが今は大事なんです。事前協議は後の問題なんです。なかったことははっきりなかったとおっしゃっているから。どこに行ったかということは、恐らく行きに寄ったのだったら落ちた水爆は少なくとも一発は載っていたはずなんですよ。明らかな持ち込みなんです。もし帰りに寄ったのだったら、落ちてなかったらこの一発は載っていたはずなんですよ。ですから、どこに行ったかというのは非常に大事なんです。それをあいまいにするということは許されないというふうに思うのです。それで航海日誌は国会に提出してもらえますか。
  271. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 米国の一民間団体であるグリーンピースがコピーとして配ったものを資料として提出するということの意味合いはいかがなものかというのがとりあえずの感じでございます。
  272. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 今それを含めて、アメリカ側にどこに行ったかということについては照会しているわけでしょう。そして航海日誌は実物かどうかについては確認をとっているわけでしょう。それに基づいて出せませんか。一民間団体じゃないでしょう。
  273. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 私が先ほど来申し上げておりますのは、米国に聞いておりますのは、この船がどこへ行ったかということでございます。それに答えるに当たって米国政府がいかなることに依拠するかというのは米国政府が決めるであろう。したがいまして、日本政府から照会している以上、その背景は向こうも承知しているわけでありまして、それをも念頭に置きながら向こう側は我が方に対していかなる答えをするかを判断しようとしているのだろうと思いますけれども、現在のところわからないということを米国政府は申しているわけでございます。
  274. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 半月もたっているのですよ。重大な関心を持つ問題なんですよ。それについて、こういうあいまいな態度アメリカ任せでは通用しないというふうに私は思います。  これが明らかになると非常に重大な問題が派生するから恐れているのですよ。先ほど言ったように、これはきょうも各紙に載っていましたね。ウィリアム・レーンさんですね。当時の乗組員で、読売新聞の記者あるいは共同通信の記者にもインタビューで答えています。寄ったのだというのですよ。これは真珠湾記念日だったからはっきり覚えている。十二月八日です。午前零時に入っているのです。はっきり覚えていると言っているくらい記憶は鮮明なんですよ。航海日誌にも載っているわけです。入ったことは事実ですよ。行きにも寄っているという話ですけれども、行きに寄ったのだったら核兵器を積んだまま寄ったことになりますね。帰りには寄っていることは事実です。しかし、それが落ちなかったらあのB43という少なくともこの一発の水爆はそのまま日本の横須賀に来ていることになるわけですよ。そういうふうになりませんか。
  275. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 かつてタイコンデロガに乗っていたという人の記憶に基づく発言が今朝本邦の一部の新聞に報じられていたことは承知いたしております。しかしながら、大切なことは、日本政府がこの航空母艦が事故を起こした後どこへ行ったのかということを米国政府に照会しておりまして、その答えを今待っているというところでございます。
  276. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 全然答弁になっていませんね。一発落ちなかったら日本にそれを積んだまま寄港したであろうということを聞いているわけですけれども、答弁できないでしょう。同じことは、一発で済むわけがないのです。一発あったということは非常に重要なんで、一発あったということは、ほかにも同種の水爆、核兵器が搭載されていたということを示すわけなんです。そうすると、この一発が落ちても残ったものを積んで横須賀に寄港したという事実、これは日本への核持ち込みの決定的な問題だというふうに思うのですね。そういうふうに認識できませんか。問い合わせがなかったから、事前協議の申し出がなかったから、そんな紋切り型の答弁だけでは通用しない問題だと思いますよ。
  277. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 先ほど来申し上げておりますように、日本と米国との間では艦船によるものをも含めて核持ち込みが行われる場合には、それは事前協議の主題となる。もしもそれが我が方に対して取り上げられれば、これに対して我が方は否と言う。従来事前協議が行われていないということをもって核の持ち込みは行われていないということに、私どもは何ら疑念を抱いていないわけであります。
  278. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 もうそういう答弁はだれも信用しないですよ。これほど事実が明らかになりながら、いまだもってそういう答弁を繰り返す政府の姿勢というのは、本当に国民の総批判を受けてもいいと思います。なぜ事前協議しなかったか。これははっきりしていますよ。事前協議しないでいい合意があるからなんですよ。トランジット、一時寄港の場合は事前協議の対象にしないという合意が六〇年にあったということを私たちは一昨年四月にアメリカの公文書によって明らかにしました。そしてまたライシャワー駐日大使もそういう合意があるということを明らかにしているわけです。そういう問題については幾つもの新聞でさえも指摘していますよ。  例えば東京新聞の二十二日号についても、「タイコンデロガの事故は、核持ち込みをめぐる"日米密約"が存在する疑いをさらに強めたといえそうだ。」というふうに書いています。それから十六日の朝日新聞でも「核爆弾水没事故を起こしたタイコンデロガの横須賀寄港や、ミッドウェーなど核疑惑艦の入港を日本政府が黙認しているのは、この密約があるためだと思われる。」今度の事故を通じ、また政府のそういう態度を通じて、こういう一時寄港等については核兵器を積んでいても問題にしない、黙認する、こういう合意があったということを逆の面から証明することになっているというふうに思うのです。これは将来の問題じゃなくて今日の問題にもかかわると思うので、こういうことは許されないというふうに思うのです。もう時間がありませんから、外務大臣に一言だけ御答弁を願いたいと思うのです。
  279. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 これは事実関係にかかわる問題でございますので、私から答弁させていただきますが、今先生が引用されましたのは、一九六六年二月二十四日付の米国務省発在京米大使館あての電報だと思いますけれども、確かにこの中に「コンフィデンシャル・アレンジメンツ」とか「コンフィデンシャル・アグリーメント」とかいうよくわからない表現がございまして、これにつきましては、米国政府に照会いたしておりますけれども、あえてそんたくいたしますに、これはいわゆる藤山・マッカーサー了解等について、これに言及しているのではないかということで、国務省に対する照会に対する先方の答えは、「語句の使用方法等の点で厳密であるとは言い難く、例えば、核持込みについての事前協議に関する交換公文及び右にかかる口頭了解を、秘密でないにもかかわらず、「コンフィデンシャル・アレンジメンツ」ないし「コンフィデンシャル・アグリーメント」として言及しているように、全体として不正確なものであり、右文書の表現の一々をとらえて厳密な考証」云々と申した後に、「同電報は、核持込みを可能とするような秘密の合意があることを示すものではない。」ということを申しております。すなわち、核持ち込みの問題につきましては、安保条約第六条の実施に関する交換公文及び同交換公文の解釈を日米両国の了解事項として交渉当事者が口頭で確認したいわゆる藤山・マッカーサー口頭了解がすべてでありまして、秘密であると否とを問わず、このほかに何らかの取り決めがあるということはございません。
  280. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 外相の御見解を最後に開いたのですが、ございませんか。
  281. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 今密約があるという御質疑でございますが、局長が答えましたとおり、その当時も交換公文も明らかにされております。その内容に関しましての解釈も、藤山・マッカーサー間におきまして口頭了解がある、それがすべてだ、このことは倉成外務大臣も二年ばかり前の外務委員会説明をしておられます。私もそのとおりだと思います。
  282. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 もうその答弁は通用しないということを強調して、終わりましょう。      ――――◇―――――
  283. 浜野剛

    浜野委員長 次に、常時有人民生用宇宙基地詳細設計開発運用及び利用における協力に関するアメリカ合衆国政府欧州宇宙機関加盟国政府日本国政府及びカナダ政府の間の協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河上民雄君。
  284. 河上民雄

    河上委員 先ほど外務大臣より提案の御説明がありました宇宙基地協力協定でございますが、これはかなり専門的、技術的な内容が含まれておりまして、短時間で実態を明らかにするのは非常に困難だと思うのであります。しかし、先ほど本委員会で行いました航空協定のように、これまで一定のマニュアルがありまして、ただ対象国が違う、新たな対象国との協定であるというのとは事情を異にしまして、全く新しい、世界の問題、過去にこれを取り扱うマニュアルが全くないものでありますだけに、私はやはり慎重な審議というものが特に本委員会に要請されている、こんなふうに思っております。  まず、余り時間もありませんけれども、本協定締結された際の締結目的及び本協定締結に至る経緯というものを伺いたいのでございますけれども、これをまず簡単にお願いしたいと思います。
  285. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 簡単に御説明申し上げます。  実は、人類が宇宙に出ていくというのが具体的になりましたのは、一九五七年のスプートニクでございますけれども、それから以降、宇宙開発がどんどんかなり進んでまいりまして、ある段階から、宇宙開発一つとして、人間を恒久的に宇宙の上に置いて実験なり生活体験なりをさせるという宇宙基地をつくったらどうかという考えが抱かれるようになったわけでございます。それで本件協定の宇宙基地に関しましては、アメリカが一九八二年ぐらいからこういった宇宙基地をつくりたいなというようなことで、私ども日本側にも内々の相談があったわけでございますけれども、一九八四年にレーガン大統領が年頭教書におきまして、十年以内、つまり一九九四年ごろまでに宇宙に恒久的な基地をつくってはどうか、ついてはこういうふうな非常に金のかかる、リスクの大きい大規模なプロジェクトでございますから、日本あるいはヨーロッパあるいはカナダ等に参加しないか、こう呼びかけがあったわけでございます。その呼びかけを踏まえまして、カナダ、ヨーロッパ、日本ともそれぞれ前向きにでは対処していこうじゃないかということで検討が始まったわけでございますけれども先生が先ほど御指摘のとおり、何分にも宇宙というのは新しい分野でございまして、どういうふうな権利義務関係を宇宙というもので構成していくかということにつきましては、いろいろと検討すべきことが多くて、検討に若干の時間がかかったわけでございますけれども、幸い四極と申しますか、日本、ヨーロッパ、アメリカ、カナダの意見がまとまりまして、去年の九月二十九日に本協定署名を終えたわけでございます。  そういうことでございまして、これから一九九五年ぐらいをめどにして宇宙への打ち上げを開始し、今からちょうど十年後ぐらい、したがいまして当初の考えからは若干おくれておりますけれども、一九九九年ぐらいから宇宙基地のいわゆる全面操業といいますか全面利用に入りたい、こういうふうに思っているわけでございます。
  286. 河上民雄

    河上委員 それでは、外務省にお伺いいたしますが、本協定合意された以上、ここに使われているいろいろな言葉等につきましては全く疑念のない解釈の統一性があるのか、それともまだこの点については今後検討していくというような部分も多々残っておるのか、いかがでございますか。
  287. 丹波實

    丹波政府委員 これは多数国間の条約でございますけれども、もちろん二国間の条約にもあり得ることですが、特にこのような多数国間の条約の場合に、つくった条約の中身の言葉について同じ考え方をとるために努力するというのは当然なことでございますけれども、何しろ事柄が非常に膨大な垣でございますから、あるいは事柄次第によっては考え方がそれぞれの主体にゆだねられているというものもあろうかと思います。
  288. 河上民雄

    河上委員 その点、大変重要なことでございますので、ちょっと伺ったわけであります。  技術的なことを伺いますと、宇宙基地というのは地上から四百八十キロぐらいでございますか、そうしますと、東京から新幹線で行きましても宇野外務大臣の選挙区ぐらいのところでございまして、というとえらい近いところに浮いているよらな感じもいたしますし、ジェット機が一万メートルと思いますと、さらに遠いところだという感じもいたしまして、宇野さんの選挙区あたりだと思うとえらい身近に感ずるような気もするのですが、それだけにこれは大変なことだなと思っているわけであります。一体こんなに大金をかけてたぜ宇宙でいろいろ実験を行わなければならぬのか、必然性が余りよくわかりません。地上でもそういう条件をつくってやれなかったのかどうか、そっちの方が経費が少なくて済んだのではないかというような、いろいろな疑問、基本的な疑問は幾つもあるのですが、それはさておきまして、日本の参加分担費は三千億円、こういう話でございまして、今年度予算に三十億円が計上されておる、だから予算関連法案だから早くやってくれというような話もございますが、どうも何かわけがわからぬうちに上げてしまうというようなことはいかがかと思うのでありまして、一体こういう数字はどういう根拠で算出されたんでしょうか。
  289. 吉村晴光

    ○吉村(晴)政府委員 お答え申し上げます。  この宇宙計画に対しまして、日本としてどういう参加の仕方をするかということにつきましては、国の中のいろいろな分野の専門家の方にお集まりをいただきまして議論をしていただきまして、日本として一番メリットのある参加の仕方は、日本の実験室をつくることであるという結論になったわけでございますが、その実験室の中身をいろいろと検討をいたしまして、その中でどういう実験室の形にするか、どういう実験装置を積み込むかといったものにつきましていろいろ検討をし、経費を見積もった結果が三千億円ということになったものでございます。
  290. 河上民雄

    河上委員 外務省の御説明では、日本義務的財政負担はないというような話でございました。どうもその意味がよくわからないのでございます。これはどういう意味ですか。
  291. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 この宇宙基地協定を御承認いただきました暁には、日本はこの協定に参加することになるわけでございますけれども、そのときに要ります経費といいますのは、こういうことではなかろうかと思うわけでございます。  一つは、先ほど先生おっしゃいましたような、いわゆる日本の実験棟をつくる、開発と申しますか建設費、これが三千億円というふうに言われて見積もられておるわけでございますが、それからこれを上げますときの費用、それからもう一つは、この日本の実験棟を維持管理していきますときの費用、そういったいわゆる義務的という意味が、私、必ずしも正確には理解できないわけでございますけれども、いずれにしましても、これを建設する費用、それからこの宇宙基地の日本の実験棟を維持運営していく費用、それからいわゆる宇宙基地には共益費みたいなのがございますから、共益費をある比率に応じて分けて支払う費用というものは、当然これは日本が負担せざるを得ない費用だろうと思っております。
  292. 河上民雄

    河上委員 それと、昭和六十年度から既に行われております日米科学技術協力協定に基づく予算が幾つか出ていますね。こういうものが、ちょっと計算しますと百八十億円に上るのですけれども、この負担は一体どういう性格のものなんですか。これと関係があるということでございますか。
  293. 吉村晴光

    ○吉村(晴)政府委員 今御指摘お話は、恐らくこの宇宙基地に参加するための日本の実験棟をつくる、そのための予備的な設計検討を行うための経費のことではないかと思うわけでございますが、本格的に参加をするという意思決定をいたします前に、予備的に設計検討いたしまして、日本としてどの程度のことができるかということを見定めて参加の意思決定をするわけでございますので、そういった予備的な段階での検討の経費というふうに理解をいたしてございます。
  294. 河上民雄

    河上委員 そういたしますと、先ほど御説明がありましたいわゆる打ち上げとか維持管理費のようないわゆる共益費的なものの経費というのは、また別に予算化せねばならないというふうに理解するわけですが、それでよろしいわけですか。
  295. 吉村晴光

    ○吉村(晴)政府委員 先ほど御説明申し上げました経費は、日本の実験棟をつくる経費でございます。遠藤議官からもお話がございましたように、その実験棟を打ち上げるための経費、それから実験棟を地上から支援するための施設の経費、また定常的に実験棟を運用するための経費、そのほか宇宙基地全体を共同で運用するための共益費と申しましょうか、そういった種類の経費が出てくるわけでございます。
  296. 河上民雄

    河上委員 そういたしますと、日本の参加分担費用は三千億円といいますけれども、それはいわゆる実験棟に関するものであって、それ以外に、どのくらいの額になるかちょっとわかりませんが、これはまた別なものであるというふうに理解いたしますと、ではその別なものは大体どのくらいかかると想定されておりますか。
  297. 吉村晴光

    ○吉村(晴)政府委員 実験棟は、開発をされましたときには二回に分けてスペースシャトルで打ち上げるという予定でございますが、スペースシャトルの打ち上げ経費につきましては、NASAが米国政府機関に対すると同じ条件で引き受けてくれるということになってございまして、スペースシャトルの打ち上げ経費につきましては、そのときごとに少しずつ変わるということもございまして、現時点において正確な数字を申し上げることは大変難しいというふうに思っておるわけでございますが、現在の打ち上げ経費を前提にすれば、二回分で約三百億円程度の経費がかかるのではなかろうか。それから宇宙実験棟を支援します地上施設の建設経費とか運用経費等につきましては、現在内容をいろいろ固めておる段階でございまして、今の時点におきまして、具体的な数字を申し上げ得る段階になっていないという状況にございます。
  298. 河上民雄

    河上委員 どうも経費の面では今のところやってみないとわからぬというようなお話がかなり残っているようでございます。今度の参加主体というのは、米国、日本、カナダ、これはいわゆる国家主権があるものでございますけれども欧州宇宙機関というのは九カ国で構成されているというふうに聞いておりますが、この場合、主体は四つというふうに考えるのですか、さらに欧州の各国にもそれぞれの何か拒否権とか主張権とかいうものが認められるのですか。
  299. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 欧州、つまりESA、欧州宇宙機関につきましては、宇宙機関一つ協力機関、つまりアメリカでいいますと、アメリカ協力機関というのはNASAになっておりますし、日本の場合は協力機関が科学技術庁ということになっておりますが、ESAというのは一つの共同機関であって、参加主体の方は、欧州のこの宇宙基地に参加するESAの加盟国ということでございまして、参加主体という意味では、ヨーロッパの場合九カ国ということで、それを代表しますのが、実権を与えられて、いわゆる執行代理人と申しますか、それがESAということになっております。
  300. 河上民雄

    河上委員 なぜそこを伺ったかといいますと、当然、事前の御説明によりますと、実験棟にそれぞれ自分のテリトリーが決まっておりまして、そこでの管轄権というのが問題になるわけなので伺ったわけですが、参加主体は各自のテリトリーについて管轄権及び管理の権限を有するというふうに規定されております。それで、日本の実験棟は当然日本が管轄権を持っているわけですけれども、しかし、先ほど言いましたように、共益的な部分もありますし、それから一木の実験棟でも四十数%アメリカ利用できる、こういうふうになっておりまして、かなり実際の活動は入り組んでいる、こうなっておりますが、打ち上げはNASAがやってくれるということになりますし、どうも実際のところアメリカの指揮命令のもとにその他の三つの主体が入らざるを得ないのではないかという心配を私は持ちますが、いかがでございますか。
  301. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 お答え申し上げます。  この宇宙基地、大体の建設費の額から申しますと、先ほど申しましたように、日本が大体三千億円くらい、アメリカが約三兆円くらい、カナダが千二百億円くらい、ヨーロッパが約六千二百億円、こういう数字、全部で四兆円くらいになるかと思いますが、このうちアメリカが大体三兆円くらいを持つということ。それからアメリカがこの宇宙基地に対して供給しますのは、実はインフラストラクチャーと申しますか骨組み、つまりコアと称する部分、それからアメリカの実験棟、それから宇宙飛行士の寝る場所、居住する場所、こういうふうに大体アメリカがかなりの金を払い、かなりのものを投入しているということで、ある程度アメリカの主導というか、主導という言葉はよくないかもわかりませんけれどもアメリカの発言権が多いということは、やはり貢献度の観点からいきましても認めざるを得ないところかと思います。  しかしながら、やはり宇宙に上がりまして、日本も三千億円の金を投入しヨーロッパもそうであるということで、やはりその活動におきましては、いわゆる本当の意味でのパートナーシップということを守りたい、こういうことから先生指摘の管轄権であるとかあるいは管理権等々につきまして、なるべく参加主体、つまりヨーロッパならヨーロッパ、日本なら日本の立場が反映されるように努力しました結果が、今お手元の協定案であるわけでございます。
  302. 河上民雄

    河上委員 かなり正直にお答えいただきましたので、大体よくわかってきたような気がいたします。確かに四兆円のうち三兆円出している者が、打ち上げも担当している者が発言権は大きい、こういうお話でございますが、今度は十二カ国の署名の段階になりますと、各国の署名というのが重要になってくるのですね。運営は、主体は四つだけれども署名は十二カ国である、こういうことでございますが、それでいいわけですね。それで日本以外の十一カ国は去年の署名日に暫定適用の措置をとっておりまして、ほとんどの国はまだ署名してない、ノルウェーだけしか署名してないというふうに聞きましたけれども、それでよろしいか、ちょっとそこを正確に教えてください。
  303. 丹波實

    丹波政府委員 お答え申し上げます。  前文に列挙されておりますヨーロッパの各国、この協定の四ページでございますが、それからアメリカ、カナダ、日本と全部署名。そのうちノルウェーだけは国内的な協定を発効させるための手続は了したという意味でございます。
  304. 河上民雄

    河上委員 そのとおり。署名ではなくて批准に当たる行為をしているのはノルウェーだけである、ちょっと私が言い間違えましたが。今我々が求められているのは批准手続なんです。  そこで、ここでちょっと二つ問題がある、疑問があるのでありますが、それではなぜよその国は批准をせずに暫定適用で今のところしのいでおるのか、日本はなぜそうしなかったのか。それからもう一つは、今日本批准をいたしましたら直ちにこの協定は効力を発するのか、それとも日本批准をしても直ちに効力ま発しないで、十二カ国のうちの何カ国かが批准乳続をしなければ効力を発しないというのか。何かその辺、我々は今批准を求められているわけですから、そこをはっきり伺いたい。
  305. 丹波實

    丹波政府委員 大変ごもっともな御質問と考えます。  まず、他の関係国がなぜ暫定発効取り決めに署名したかということでございますが、先ほど申し上げましたように、昨年の九月二十九日に署名されてから今日まで国内手続を了した国はノルウェー、実はアメリカ協定本体につきましては了しておりますけれども協定関係するところの特許法に関係する国内法の処理がまだ終わってないという意味で用意はできてない、そういう意味でノルウェーしか用意ができてないということで、全部の国が用意ができるまでは時間がかかる。しかし、それは待てない、具体的な協力を始めていこうじゃないかという考え方のもとに暫定発効ということで処理をしたというのが第一点でございます。  それから、協定に立ち返りまして効力発生条項でございますけれども、この二十五条の三項には、この協定アメリカとどこかの一カ国、日本またはカナダあるいはヨーロッパは一つの団体、アメリカとそのどこかが発効行為をしたときに協定が発効するということになっております。したがいまして、今度国会で御承認をいただきまして、日本批准の用意ができた、しかし、アメリカがもう若干、数カ月かかるというような状況を御質問しておられると思うのですけれども、やはりその間は協定は発効しない。なぜならば、アメリカがまだ準備ができていない、そういう状況というのが現出されるであろうと思います。  しかしながら、繰り返して申し上げたいことは、日本を除く他の関係諸国は実質的にこの協定を発効させておるということで、事実上協力が始まっておる、日本はそういう手続をしてない。私たちは、何よりもまず国会に御承認をいただくことが先決であるという考え方で、国会の速やかな御審議をお願いしておる、こういう状況でございます。
  306. 河上民雄

    河上委員 我々は素人ですから、批准を早くしなければならぬ、こう言われますと、日本批准手続が済んだらそれでもう発効するのか、こう単純に、考えてはいませんけれども考えがちでございますが、今の御説明のように、アメリカがまず批准手続を終わらぬ限りこの協定は発効しないということですね。そこははっきり押さえておかなければいかぬと思うのであります。  宇宙基地建設に向けて、今後そういう状況の中で打ち上げ等具体的なスケジュールというのはもう大体決まっているのですか。余り専門的に詳しく説明していただかなくていいのですが、これは条約上の問題とは別にどういうスケジュールになっておるのですか。
  307. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 これはもちろん予定でございますけれども、大体の今後のスケジュールを申し上げますと、第一回の打ち上げを一九九五年に予定いたしております。それから人間が一応住めるような状況になりますのが一九九六年、その一年後を考えております。それでは日本の実験棟をいつ打ち上げるかと申しますと、実は日本の実験棟を打ち上げますのには、二回シャトルを使う必要があるのでございますけれども、一回目のシャトルが一九九七年、それから二回目も同年、半年ぐらいおきまして一九九七年に日本の実験棟を打ち上げる。組み立てが全部終わりますのが一九九八年でございます。それで、その後検証等々がございまして、いよいよいわゆる運用にかかりますのが、今からちょうど十年後の一九九九年でございます。
  308. 河上民雄

    河上委員 先ほどアメリカ批准手続を終えていないのは国内法との調整のためというようなお話がございました。本協定実施のために我が国では国内法整備の必要は全くないのですか、例えば特許とかそういう点で。
  309. 丹波實

    丹波政府委員 先生承知のとおり、いわゆる条約国会におかけする理由の一つは法律事項があるかないかという基準でございますが、そういう意味では、この協定には法律を改正しなければならないという意味での法律事項はございません。ただ、この宇宙基地協定に加入することによりまして、宇宙開発事業団法を現在のまま維持する法令維持義務日本としてはできるという意味の法律的な問題はあろうかと思います。
  310. 河上民雄

    河上委員 今の問題はまたもう少し確かめたいと思いますけれども、私の場合余り時間がありませんので、同僚の方々からまた詰めていただきますが、この協定で私どもが一番関心を持ちますのは、平和的目的の担保の問題です。第一条では、目的について、平和的目的、民生用というふうに目的をうたってありますけれども、しかし第九条の八の(b)では、それが平和的目的にかなうものかどうかというのは参加国の判断にゆだねる、こうなっております。そうなりますと、先ほど来申しておりますように、日本の実験棟で仮に平和的目的に限定をいたしましても、今度宇宙基地全体としてはアメリカが国防総省に利用させるとかいうようなことで軍事利用の余地が残っている限り、全体として平和的目的に外れる場合がある。アメリカは外れていないと言うかもしらぬけれども、我々からいえば外れているという場合があり得る。また日本の実験棟の中でも、四六%ですか、アメリカ利用権を与えている。こっちはいろいろな共益部分がありますので、カナダにも三%利用権を与えている。その場合にアメリカやカナダが、これは平和的利用だということで日本の実験棟を利用するが、しかしそれは日本からいえば、少なくとも日本国会などで宇宙の平和利用をうたっておる決議もあるわけですけれども、こういうようなものに照らしてみて明らかにこれはどうも外れているんじゃないかというものがあっても、これは参加国の判断ということになる可能性があるのではないか。そういう点、この九条で言う平和的目的の担保は、本協定中最も疑義のあるところではないか、私どもはそういうふうに考えるのであります。なぜなら米国流で平和的利用というのは、軍事的な利用であっても自衛のためなら構わない、非侵略的であればいい、こういうような言い方でございますので、実際にはSDIの研究開発でも何でも自由に行われてしまうのではないか、そういう心配がございます。したがって、宇宙基地建設計画に参加すること自体が宇宙の軍拡に手を貸す可能性、危険も残っているのではないかという懸念を私どもは持っているわけでございます。この第一条、第九条に平和的目的、民生用が強くうたわれているだけに、ここが一番重要な問題であると私どもは思いますが、その点について政府はどのようにお考えですか。
  311. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 今先生指摘のまず第一条に関連してでございますけれども、この宇宙基地というものの性格づけにつきまして、まずこれは民生用であるということがうたわれております。それからもう一つは、この宇宙基地の運営というものは、国際法に従ってやらなくてはいけないということ、それから、これは順番でございませんけれども三つ目に、この宇宙基地というものは平和的目的のために行わなくてはいけない、そういうことで、この宇宙基地の性格につきましては、大きな意味での三つの傘がかぶっておる、こういうふうに御理解いただきたいと思います。  そこで、それではそれとの関連におきます九条の八の(b)はどういうことかという点の御指摘でございますけれども先生まさに御指摘のとおり、平和的目的につきましては、実は各国にとりまして解釈なりあるいは適用につきましてのそれぞれの立場がございます。そこで、そういったような各国の立場をどうやってこの宇宙基地協定との関係で処理をしていくかということが御想像のとおり非常に大きな問題であったわけでございますけれども、お互いの立場を尊重しながら宇宙基地の協力を進めていくためには次のようにしようではないか。つまり宇宙に打ち上げられました各国の持ち分といいますか要素といいますか、それぞれの要素につきましては、自分の平和的目的の解釈なり適用なりでやっていこう。逆に言いますと、日本の実験棟につきましては、日本の平和的目的の解釈を適用していくということでございます。しかしながら、アメリカにつきまして同じくアメリカの解釈を適用する、こういうことでございますけれども、先ほどの繰り返しになりますけれども、大きな傘はかぶっておるということでございます。  それから、先生御質問の第二番目の点の、日本の実験棟は確かに四六%はアメリカにこれを貸し、三%をカナダに貸す、こういうことになるわけでございますが、それではアメリカに貸した分あるいはカナダに貸した分はどうかということにつきましては、これは日本が決定するのだということで、これは日本の解釈を適用していく、こういうことでございます。
  312. 河上民雄

    河上委員 それでまいりますと、日本の実験棟に関しては日本の解釈、しかしアメリカの実験棟に関してはアメリカの解釈、こういうことになりますので、宇宙基地全体としてはどうも日本の解釈が貫徹しないという場合もあり得るのではないかという心配を持たざるを得ないですね。  新聞の古い切り抜きでございますが、去年の四月二日の毎日新月にかなり大きく出ていたものでありますけれども、宇宙基地協力協定には、そういうアメリカ国防総省の利用を盛り込むことができなかったので、別に四者で書簡を交換し、米国防総省の利用に余地を残したという記事が出ております。書簡を交換するとの合意が成立していることが四月一日わかったという記事でございますが、これについて政府はどういうふうに弁明をされますか。
  313. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 今先生指摘の書簡でございますけれども、この協定を調印いたしましたのは去年の九月二十九日でございますけれども、その日に、交渉にタッチしました実務担当者の間で書簡を交換したわけでございます。しかしながら、この書簡といいますのは、今御承認をお願いしておりますこの協定の、既に書かれております中身の確認ということであって、別にこの書簡がなくても、この協定自身どうということはないという、つまり全くの念のためというか、確認というものでございまして、別に新しいことを創設しているものでは全くございません。
  314. 河上民雄

    河上委員 そういうふうにお答えになりますけれども、それならばひとつここで確認していただきたいのは、さっきの御答弁では、どうも宇宙基地全体については、アメリカの実験棟の運営については日本としてはタッチできない、タッチできないというか平和的という解釈を貫徹できない、しかし日本の実験棟の利用については、共同実験の場合も軍事利用しないという約束は取りつけられるのか、られないのか。
  315. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 先生の今の御質問の、まずアメリカの実験棟の運営ではなくて、運営につきましては非常に相互関係があるものでございますから、かなり共同してやるわけでございますが、いわゆる平和利用という定義というか解釈につきましては、アメリカについてはアメリカ日本については日本、こういうことでございます。  それから、御質問の点でございますけれども、今先生指摘の書簡によりまして、このようになっております。「日本の実験棟の企図されている利用が平和的目的のためのものではないと決定するような場合には、そのような利用は行われないことを確認する。」こういうことで、日本の実験棟に関しましては、日本が平和利用でないという判断をしたときには、そういう使用は拒否する、こういう立場でございます。
  316. 河上民雄

    河上委員 大分いろんな意味で少しずつはっきりはしてきたのですけれども、まだ何となく漠然とした点もあるのですが、参議院議員丸谷氏がさきに質問主意書を出しておりまして、それに対する答弁書が政府から出ております。日米防衛特許協定等に関する質問でございます。  その中で「常時有人民生用宇宙基地詳細設計」等々に関するアメリカ合衆国、欧州云々ですね、現在やっております「協定については、附属書を含め、その締結について国会承認を求めるために国会に提出した。」云々となっておりまして、「同協定交渉に関し交渉担当者が発出した御指摘の書簡については、国会等からの資料提出要求に応じてこれを提出することとしている。」こういうふうに書いてございますが、これは具体的に提出されたのでしょうか。
  317. 丹波實

    丹波政府委員 これは本件に関心を持っておられる個々の先生方の御要望により、今までお出し申し上げている、そういう意味を書いたつもりでございます。
  318. 河上民雄

    河上委員 しかし、我々はこの協定を現に審議しておるわけですので、丸谷参議院議員だけではなく、これは外務委員会にも提出すべきものだと思いますが、いかがでございますか。そして、これはだれからだれに出された手紙なのか、それをとりあえずここで明らかにしていただきたい。
  319. 丹波實

    丹波政府委員 今の書簡の件でございますが、一点、直接お答え申し上げる前に、私からクラリファイさせていただきたいと思うのですけれども、この協定の第一条一項、それから第九条の八項(b)を二つ合わせて読まれますと、まさにあの書簡に書かれてある、そのとおりの結論が出てくるわけでございまして、そういう意味で、先ほど遠藤議官申し上げたとおり、あの書簡は全くこの協定で言っていることを確認したものにすぎないということで、あの書簡も、先ほどのような処理を今までしてきたわけですが、先生せっかくの御提起でございますので、書簡を外務委員会にお配りすることを検討させていただきたいと考えます。
  320. 河上民雄

    河上委員 だれからだれへ。
  321. 丹波實

    丹波政府委員 これは、日本の場合には、楠本科学課長から国務省のスミスという担当の者に出したわけですが、そのほかにも関係国の書簡がありますので、関係国に異存があるかないか、それを調査した上で、それも出せるかどうか検討したいと思います。
  322. 河上民雄

    河上委員 なるべくそういうものはちゃんと出していただくことが大事だと思うのです。また、丸谷参議院議員の質問に対する政府の答弁書の中に、「三の(五)について」というのがございまして、それは次のように書いてあるのです。「米国が提供する宇宙基地の要素において米国の秘密の情報が取り扱われ、我が国が派遣する宇宙飛行士がそのような情報に接することと航る事態は、想定し難い。」、こうなっております。これはどういうふうに理解したらよろしいのでしょうか。
  323. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 まず最初に、アメリカのいわゆる国防省の利用の件でございますけれどもアメリカ国防省、全く今のところ、現時点においては宇宙基地を利用する具体的な計画は何ら持っていない、こういうことを言っておるわけでございます。  それからもう一つ、それより先に宇宙基地を、概念設計、予備設計にかかっております際、現時点におきましても、アメリカ国防省からアメリカのNASAに対しまして、いわゆる注文といいますか、こういうふうにしてくれ云々という、そういったようなリクワイアメントというものが全くなされていないということで、アメリカ国防省のいわゆる宇宙基地利用に関します件といいますのは、今のところ、これは一つの理論的可能性ではないかというふうに私ども思っておるわけでございます。  それが一つと、第二番目に、この質問書でございますけれども、御質問のあれでございますけれども、宇宙基地の上で秘密の軍事研究が行われる、あるいは軍事研究の結果秘密が出てくる、こういう場合に、日本の宇宙飛行士が知り得るような立場に置かれるかどうか。どうも私自身幾ら考えても、そういった事態というのは現実にはほとんど想定しがたいのではないかなという感じがし、かつそういうふうに思うわけでございます。それがこの答弁書の意味でございます。
  324. 河上民雄

    河上委員 なぜこれをもう一度取り上げて御質問するかといいますと、アメリカの秘密ということにつきまして、特に防衛に関する秘密につきまして、これは藤島宇内氏がエコノミストの去年の十一月二十二日号で取り上げておるのでありますが、久しく休眠状態にあった日米防衛特許協定の活性化というようなことを言っておりまして、宇宙基地で行われるさまざまな実験の中にそれがまた出てくるのではないかという心配が一つあるからでございます。  もう一つは、今の幾つかの御答弁で、協定に際して交わされた書簡は、要するに大したものではないんだ、ただ協定をもう少し明確にするためのものであるというような御答弁でございましたけれども、これがアメリカの軍事利用を暗黙のうちに認めた根拠になっているのではないかという疑いがあるからであります。そうした疑いを明らかにするためにも、この点ぜひ今後書簡など、我々が質問しなければ出さないということじゃなくて、批准手続をしてほしいということであれば、この際、あらゆる資料を出していくという姿勢をぜひとってほしい、こんなふうに私は思います。大したものでないというようなお話でございますけれども、いずれにせよ、まず書簡の公表をぜひお願いいたしたいと思います。いかがでございますか。
  325. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 先ほど丹波参事官の方からお答え申し上げましたように、日本アメリカの書簡交換の公表につきましては、至急検討いたしまして、そのように処理したいと思います。欧州とアメリカあるいはカナダとアメリカとの書簡交換につきましては、何分にも第三者のものでございますので、これにつきましては検討させていただきたいと思います。
  326. 河上民雄

    河上委員 きょうはちょっと条約的な側面だけで御質問をいたしましたので、技術的な点はまた他の同僚議員から深めさせていただきます。  私の質問はきょうはこれで終わります。
  327. 浜野剛

    浜野委員長 神崎武法君。
  328. 神崎武法

    ○神崎委員 それでは、私の方からお尋ねをいたします。きょうは協定そのものよりも、宇宙開発全体の流れの中で、この協定の位置づけはどういうところにあるのか、そういう角度からお尋ね々いたしたいと思います。  本件の宇宙開発計画につきましては、本協定の前文でもうたわれておりますように、一九八四年一月二十五日のレーガン大統領の年頭教書の発表に端を発しているわけでございます。その後、レーガン大統領は宇宙開発の将来計画を練るための特別委員会を組織いたしまして、一九八六年五月にこの委員会が「宇宙フロンティアの開発」と題する報告書を提出いたしまして、これがペインズレポートと呼ばれているところでございます。その内容は、今後五十年間のアメリカの宇宙開発政策を明らかにしたものでございまして、その第一段階として、恒久的宇宙基地の運用開始という本のがうたわれているわけでございます。その後、低コストの輸送手段の開発とか月基地の開発、火星旅行、火星基地の開発アメリカはこのように五十年以内に宇宙開発を行っていく、こういう政策をこの委員会では発表しているわけでございます。  このアメリカの宇宙基地計画というものは、このような基本的な、長期的な考え方、長期的な貝通しの上に立って行われているものと私は承知しているわけでございます。もとよりこりペインズレポートは政府報告書ではございませんで、諮問委員会報告書でございますけれども、基本的にはそういう大きな枠組みの中で今回の宇宙基地づくりというものが行われるんじゃないか、それを踏まえた上で議論しないと、本当のところ正確な議論ができないんじゃないかと私は思うわけでございます。その意味におきまして、このようだアメリカの宇宙開発政策というものを政府としても十分承知されておられるのか、またペインズレポートをどのように評価され、位置づけておられるのか、この点からまずお尋ねをいたしたい。
  329. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 それでは、私から最初に概略御説明を申し上げて、科技庁から補足をお願いしたいと思います。  先生おっしゃいましたように、アメリカの宇宙基地、宇宙政策と申しますか、軌跡をたどってまいりますと、最初は無人の人工衛星を打ち上げ、その次に人を人工衛星に乗っけた。その次にいきましたのが月に人を送り上げるアポロ十一号でございます。その次にシャトルの開発。そのシャトルの開発に続きますのが今御審議いただいております宇宙基地だろうと思います。  それから、宇宙基地の後、それではアメリカはどこの方向に向かっておるのかという点につきすしては、確かに先生おっしゃいましたように、ぺインズレポートは別に政府の採択したものではないのですけれども、やはりアメリカの宇宙政策一つの志向方向を示しておるものだと思います。それを考えますと、御指摘のように、宇宙基地の次がやはり月面基地、それから恐らく火星へり右人探査あるいは火星への移住とまでいきますかジうかあれですけれども、火星、さらにはその次、こういうふうなこと、他方、輸送体系としますと、シャトルから次にはスペースプレーン、こういうふうに進んでいくのかなということで、そういうふうな位置づけの中に私どもは宇宙基地というものをとらえておるわけでございます。
  330. 吉村晴光

    ○吉村(晴)政府委員 補足をさせていただきますと、先生指摘のペインズレポートでございますが、大変野心的な内容でございまして、アメリカの宇宙におけるリーダーシップを今後とも維持するということを基本的な国家目標として、太陽系への惑星有人探査等を長期的な目標にしておるもけでございます。私どもが現在宇宙開発の基本にしております宇宙開発委員会の宇宙開発政策大綱というのがございますが、これの見直し作業を現在進めておるところでございます。それの見直しを始めましたのも、一つの契機は、アメリカに吹きましては、こういったペインズレポートが出されまして、長期的な視点のもとに十分議論をして宇宙政策を進めておるということにもかんがみまして、日本としても、やはりそのときどきに衆知を集めまして、長期的な見方のもとに宇宙政策を進めるべきであるという考え方で始めたわけでございます。  ただ、御承知のとおり、日本の宇宙開発アメリカの宇宙開発では、歴史、投入資金、技術力、いずれをとりましても大変な格差があるわけでございます。私どもといたしましては、アメリカのような大きな計画は非常に難しいまでも、せめて地球の周辺における宇宙活動については、何とか自主的にやれるような方向で進めたいということで努力をしておるものでございまして、現在審議をお願いいたしております宇宙基地計画への参加も、そういった考え方の一環であるということを御理解いただきたいと思います。
  331. 神崎武法

    ○神崎委員 そういたしますと、このペインズレポートで予定しておりますような第一段階、宇宙基地の運用利用、こういう第一段階での取り決めが本宇宙協定であろうかと思うわけでございますけれども、この協定でつくられたところの枠組みというものが次の段階、月基地の開発だとか火星旅行だとか、そういうところまで同じ枠組みでいく可能性があるというのが一つ。  それから、日本としては、この宇宙基地、これについてだけは参加しましょうと思っていても、これはもうアメリカの宇宙政策として、次の段階というステップが決まっておるわけでございますから、そういう宇宙基地づくりに参加をするということは、法的には拘束力はないかもしれませんけれども、事実上この枠組みで次の段階、次のステップにもアメリカ協力をしていく、こういうことになろうかと思うわけでございますけれども、そういう一つの展望を持った上で、それを踏まえた上で、この協定に参加をするということを政府としては決められたのかどうか、その点をお尋ねしたい。
  332. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 今先生指摘の点は二点あろうかと思いますが、まず第一点の、この宇宙基地協定でのいわゆる法律的な枠組み、これには管轄権、その管轄権の一部としましての刑事裁判権とか民事裁判権あるいは知的所有権の取り扱い等等あろうかと思います。今回のそういったような法律的な枠組みが今後どうなるかということでございますけれども、何分にもアメリカからヨーロッパ、日本、カナダということでありますし、もちろん東側の国が別に入っているわけではございませんけれども、まだ未発達な宇宙国際法の一つの先例にはなっていくのかなという感じはいたしております。  それから、二番目の点でございますけれども、月面基地あるいは火星基地等々につきまして今後日本としてどういうふうにやっていったらいいのかというのは、具体的には個々のケースに基づいて、そのメリットなり、どのぐらい金がかかるのかまだ全くわかりませんですし、あるいはそのときの日本の技術力はどこら辺まで進んでいるかという点もよくわかりませんので、何とも言いかねるわけでございますけれども、しかしながら、そういったような巨大な開発というものには、アメリカばかりでなく、いわゆる広い意味での国際的な協力というものなしては到底できないというふうに私は思っております。したがいまして、国際協力ということはぜひ必要な点ではないかと思っております。
  333. 神崎武法

    ○神崎委員 私は、後にも触れたいと思うのですけれども、今回のこの枠組みの中にいわゆる東西関係を持ち込んだ枠組みができ上がっているのではないか。いわゆる西側諸国による宇宙基地づくり、それが宇宙基地だけではなくて、その後の月基地あるいは火星旅行、火星基地づくり、いわゆる宇宙全体に東西関係を持ち込む危険性があるという点を非常に危惧しているわけでございますが、この点はまた後で議論したいと思っております。  そこで、ただいまの御答弁でも次のステップに進むかどうかについては大変予算とのかかわりもあるようでございますけれども、実際に今のこの宇宙基地自体についても膨大な予算はかかりますけれども、さらに次のステップ、さらに次のステップと続いてまいりますと、膨大な予算が必要となるかと思います。  そこで、この予算面についての基本的な考え方関係省庁でどこまでは予算を出そう、こういうような合意ができているのか、その点についてどうでしょうか。
  334. 吉村晴光

    ○吉村(晴)政府委員 宇宙開発予算そのものにつきましては、それぞれの関係省庁におきます宇宙開発のニーズと申しますか、そういうものに合わせまして、各省のいろいろな資金事情を考えながら組み立てられるというわけでございまして、長期的に幾ら出そうというような合意ができているわけではございませんが、少なくともこの宇宙基地計画に日本として参加をするという議論をいたしましたときには、大変膨大な資金を要するということもございまして、本当に日本がやり切れるかということを私ども非常に慎重に議論をしたわけでございます。これに参加をいたしますことによります意義と申しましょうか、それから緊要性、後年度負担といったことをいろいろ検討した結果、この計画には参加する意義があるし、資金的にも何とか対応できるのではないかという判断をしたわけでございます。  宇宙開発予算は、平成元年度予算案で、各省庁合わせまして千五百五十億円程度の規模でございまして、今後各省力を合わせて拡大に努めたいというふうに考えておるわけでございまして、そういった規模を考えますと、他のプログラムとのバランスをとりながら、この宇宙基地計画への参加ということを推進することは十分可能であるというふうに考えておる次第でございまして、今後とも宇宙開発関係予算の資金確保に努力をしたいと考える次第でございます。
  335. 神崎武法

    ○神崎委員 今本協定に限ってのお話でございましたけれども、本協定の次の段階、さらにその次の段階に行ったらますますもって膨大な予算を必要とする。どう関係省庁で合意ができておるのかということを聞きたいわけでございますけれども、本協定に限ってみましても大変な予算を要するわけでございます。  ただいま御答弁がございましたように、我が国の宇宙開発予算規模が千五百五十億円である。そうした場合に、通常の開発予算を圧迫するのではないかという危惧の声も上がっているわけでございます。国際約束として別枠にでもならない限り他の計画に影響を与えるという声もありますけれども、基本的にどういうお考えでおられるのか。その点はどうですか。
  336. 吉村晴光

    ○吉村(晴)政府委員 宇宙基地計画への参加のその次の段階のお話につきましては、私どももそのときにやはり十分考えなければいけないというふうに思っておるわけでございまして、そのときの問題であるわけでございますが、宇宙基地計画参加そのものにつきましては、国会の御承認を得て参加する以上、外国に迷惑をかけないような形で、十分な貢献ができるようにする必要があるというふうに考えておるわけでございまして、これに参加をする議論をいたしましたときも、その点が非常に重要なポイントであったわけでございます。  先ほども申し上げましたように、千五百五十億円の現在の予算規模であるということでございます。宇宙基地に持ってまいります日本の実験棟は三千億円でございますが、約十年近い歳月をかけてつくり上げるものでございますので、年割りにすれば千五百五十億円の予算規模の中でのみ込めないものでもございませんし、また千五百五十億円ということで満足をすべきものではなくて、もっと資金確保に努力をする必要があるというふうに考えておるものでございますので、そういった観点から、ほかにもいろいろな需要がございますが、そういった需要に圧迫を加えないで、バランスをとりながら宇宙開発を進めることが可能ではないかと思っておるところでございます。
  337. 神崎武法

    ○神崎委員 先ほど申し上げました宇宙に東西の対立を持ち込むのではないかという危惧の点でございますけれども、この計画によりますと、宇宙基地建設は一九九四年ごろになるのでしょうか、本格運用は一九九八年ごろでしょうか、これは若干違っているかもしれませんけれども、そういう見込みであるということが言われております。  他方、ソ連は、一九八六年二月に宇宙ステーション・ミールを打ち上げまして、一九八七年四月には重さ十一トンの宇宙実験モジュール・クバントをミールにドッキングさせているわけでございます。今後別の幾つかの実験モジュールの追加も検討されているということが言われているのでございます。クバントの科学実験モジュールの主要部はレントゲンと呼ばれる高エネルギー宇宙物理の装置で、ソ連と西側諸国の科学者たちが協力してつくり上げたものでございます。ソ連は宇宙開発計画にもっと多くの諸外国の参加、協力を招請しており、極めて積極的な市場開発運動に乗り出している、こういうことも言われているわけでございます。  こういう前提の上でまずお尋ねしたいわけでございますが、本協定に基づきます宇宙基地フリーダムよりソ連の宇宙基地ミールの方が技術的に進んでいる、こういう見方が一方でございますけれども、その点はどのように認識しておられますか。
  338. 吉村晴光

    ○吉村(晴)政府委員 御指摘のように、ミールは一九八六年二月に打ち上げられました基幹モジュールを中心にいたしまして、その他のモジュールをくっつける形で運用されておるわけでございまして、実験、観測、製造といった、そういう多様な目的に使われているというふうに理解をしておるわけでございます。ミールの内部の技術的な詳細につきましては、私ども十分把握できる状態にはございませんが、全体の大きさと申しましょうか、そういった点からまいりますと、ミールの総容積は、私どもが参加をいたします宇宙基地の約五分の一程度、それから人が滞在する能力は四分の一程度、発電能力は最大で十五分の一、平均値で九分の一程度ということでございまして、規模的には現在のミールは私どもが考えております宇宙基地よりはかなり小ぶりであるというふうに理解をいたしております。ただ、ミールの発展型という計画も九〇年代には出てくるかと思いますので、その詳細につきましては、まだ十分把握していないところもございますので、私どもとしましては、ミールに比べまして宇宙基地が非常に劣っているという理解はいたしておりませんで、むしろ宇宙基地の方がいろいろなことができるという可能性を秘めておるというふうに理解をいたしております。
  339. 神崎武法

    ○神崎委員 その点の評価はいろいろあろうかと思いますけれども、宇宙は平和利用と国際協力というものが原則とされている空間だと思うわけでございます。ソ連は、宇宙開発で日ソ協力を行い、日本の宇宙飛行士をソ連の宇宙船に乗せてはどうかという提案を一九八六年九月ごろにしたのに対して、外務省は、宇宙開発は米国と協力し合っていくと言って断った、こういうことが言われておりますけれども、そのような事実があるのかどうか、事実とすれば、それは宇宙に東西間の対立を持ち込む発想にならないのか、その点をお尋ねしたい。
  340. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 まず最初、私の方から事実関係だけ御説明を申し上げますと、昭和六十一年九月にこういうふうなミールに日本の搭乗員を乗せてはどうか云々というソ連からの提案ということでございますけれども結論を先に申し上げますと、実はそういう提案はなかったわけでございます。この六十一年九月といいますのは、実は東京におきまして、日本とソ連との間の科学技術協力委員会というのが開かれまして、その場でソ連側から協力したい、協力のいわゆる関心分野の一つとしまして、こういうのがあったわけでございますが、宇宙の平和利用、具体的には惑星の探索、それから人工衛星内での実験等という一般的な形の提案がございまして、それに対しまして、これは何分日本側としましても突然な提案であったわけでございますから、とりあえず提案を聞いておいたということでございまして、実は、その後これにつきましてのソ連からの再度の話はございませんし、要するに、そういうことにとどまっておるというのが現状でございまして、そういうことでございますから、搭乗員云々の件は、具体的な提案は今まであったとは承知いたしておりません。
  341. 神崎武法

    ○神崎委員 立花隆さんの論文の「宇宙への道」を読みますと、立花さんは、日本アメリカとの宇宙協力に際してソ連カードを一枚持つべきである、こういう主張をされているわけであります。例えば欧州宇宙機関、ESAのつくる宇宙基地モジュールは、アメリカの宇宙基地にもドッキングできるけれども、独自の欧州の宇宙基地を構成することもできるし、場合によってはソ連のミールにもドッキングできるような設計になっている、こういう指摘がされているわけでございます。私は、米国を中心とするこの宇宙基地計画に日本が参加することに何ら反対するものではないわけでございますけれども、そうだからといって、先ほど申し上げましたように、まず宇宙に東西間の対立を持ち込むことに対しては反対である。したがって、日本は、アメリカのこの計画に参加するとともに、ソ連の計画にも大いに協力をすべきであるし、できる限り宇宙に東西間の対立が持ち込まれないような形で国際協力が行われるように、むしろ積極的にリーダーシップを発揮すべきではないか、このように思うわけでございます。またアメリカ中心とする宇宙基地づくりをするに際して、日本アメリカとの間のハイテク技術における競争面というものがあるわけでございますから、一つのカードとしてソ連カードというものを持って交渉に当たるということも、交渉のテクニックとしては、これは必要なことではないか、このように思うわけでございます。  そういう意味においては、私は立花さんのこの提言というものは大変重要な提言であると思うわけでございますけれども、その点につきましてどのようにお考えになっておられるか。
  342. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 今後ソ連ともいろいろな面で協力をしていかなくちゃならないということは先般来私申し述べております。だから、今宇宙戦争にならないよう、東西の対立というものが宇宙に及ばないよう、これは本当に私たちもそのことをこいねがわなければなりません。だから、今回の宇宙基地の問題も、あくまで平和、あくまで民生、そして医療産業に大いに貢献しましょう、そうした新技術の開発にも我が国は参加したい、こういうことでございますから、したがいまして、この協定は将来宇宙に関してソ連との協力を、そうした可能性というものを決して排除するものではない、私はこのように考えてよいのではないだろうかと思います。  特に、ソ連との間におきましては、もう既にハレーすい星の観測なんか欧米と一緒になりましてやったという実績もございますし、また一定範囲の宇宙に関する情報交換等々も行われておるわけでございますから、今後どのような分野において私たちはそうした面における協力をすべきか十分に検討していって、そしてやはり前向きに対処したらいいのじゃないか、こういう考え方を抱いております。
  343. 神崎武法

    ○神崎委員 今大臣が御答弁なされたように、ぜひ宇宙に東西間の対立を持ち込まない方向で、できる限り宇宙においては地球は一つ、そういう国際協力ができるような環境づくりのために、日本が積極的なリーダーシップをとっていただきたい。よろしくお願いをいたしたいと思います。  それから、TBSですか、これが本年三月二十七日に、宇宙開発事業団に先駆けまして、ソ連の協力のもとに日本人を宇宙に送り込む計画を進めているということが報道されておるわけでございますけれども、宇宙開発事業団としては、このスペースシャトルヘの乗り込み時期を米国に要請して早めてもらうとか、いろいろそういうお考えはあるのかないのか、その点はどうなんですか。
  344. 吉村晴光

    ○吉村(晴)政府委員 宇宙開発事業団が進めております第一次材料実験で、日本の宇宙飛行士をスペースシャトルに乗せるという計画は前々から推進してきたわけでございますが、いろいろな事情からおくれおくれになっておるということで、私どもとしては、一刻も早くやりたい、進めたいというふうには思っておるわけではございますが、これはそれなりの技術的なバックグラウンドを持った方が宇宙環境を利用した研究開発有人技術の習得をやるというものでございまして、単に宇宙飛行を行うものでもございません。そういう意味で、TBSの推薦するジャーナリストがソ連の宇宙ステーションのミールに搭乗するということと競争関係にあると申しましょうか、そういった性格のものではないわけでございますので、そのことをもって第一次材料実験計画のスケジュールを変更するということは考えていないわけでございます。  いずれにしましても、従来からできるだけ早く進めてまいりたいと思っております計画でございますので、今後とも所期の目的を達成できるように、着実な計画の推進を図っていきたいと思っております。
  345. 神崎武法

    ○神崎委員 それから、これは科学技術庁の方の御答弁をいただくことになると思いますけれども、一九八七年五月二十六日、宇宙開発委員会の長期政策懇談会が「宇宙開発の新時代を目指して」という報告書を発表されております。そこでは宇宙活動の全面にわたって自主技術を開発するという方向を明確に打ち出されておるわけでございます。さらに、先ほども御答弁の中で一部ございましたけれども、二十一世紀に向けた日本の宇宙開発の基本政策を定める新しい宇宙開発政策大綱を今作成中であるということが報道されておりまして、内容的には「日本独自の有人飛行計画の推進」と、「通信衛星など実用分野は民間企業の商業ベースの活動に移行させる」ことであるというのが新聞報道で出ておるところでございます。  本協定関係で申し上げますと、本協定の米国を中心とする国際協力による宇宙基地づくりの考え方と、それから今長期政策懇談会あるいは新宇宙開発政策大綱で考えております自主技術の開発、これは将来自前の宇宙基地を持つことも考えておられるようでございますけれども、そこでの考え方とどういう関係になるのか、二つの考え、構想というものがどういう関係、位置づけになるのか、この点について明らかにしていただきたい。
  346. 吉村晴光

    ○吉村(晴)政府委員 ただいま御指摘のように、宇宙開発委員会におきましては、現在の宇宙開発政策大綱の見直し作業を進めておるわけでございまして、その詳細につきまして現在申し上げられる段階にないわけでございますが、御指摘の自主技術開発という点につきましては、現在の政策大綱の時代からずっと一貫した考え方でございまして、今後ともこの考え方が変わるはずはないものでございます。  そういった考え方と国際協力による宇宙基地計画の推進というものの関係でございますが、有人宇宙活動の実施に当たりましては、信頼性、安全性につきまして極めて高いシステムの開発が必要であるわけでございます。我が国独自の有人宇宙活動を展開するに当たりましては、さらに十分な調査検討を行い、その技術的見通しを得てこれを進めることが必要になるわけでございますが、こういう見地から、有人宇宙活動の分野におきましては、当面は国際協力プロジェクトでございます宇宙基地協力日本の実験棟をもって参加することを通じまして、有人宇宙活動に必要な基盤技術等の習得、開発に努力をすることが適当であるというふうに考えておるわけでございまして、やはり独自の有人宇宙基地を日本が持つかどうかといつたことは将来の問題としてあるかと思いますが、現在我々が保有しております技術ということ考えますと、こういった国際協力に参加するこを通じて、有人活動の技術の基盤を培うことが今の段階では最も適当な方法であるというふうに考えておる次第でございます。
  347. 神崎武法

    ○神崎委員 終わります。
  348. 浜野剛

    浜野委員長 林保夫君。
  349. 林保夫

    ○林(保)委員 常時有人民生用宇宙基地詳細設計開発運用及び利用における協力に関するアメリカ合衆国政府欧州宇宙機関加盟国政府日本国政府及びカナダ政府の間の協定につきまして、宇宙基地協力協定というのだそうですが、先ほど大臣から提案理由の御説明をいただ弐ましたので、二回にわたりまして詳細承りたいと存じますので、事務的に交渉の経緯をまず御説明願いたいと存じます。
  350. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 交渉の経緯につきまして御説明申し上げます。  宇宙基地建設計画というのはヨーロッパも実は持っておりましたし、アメリカも持っておりましたし、日本は残念ながらヨーロッパあるいはアメリカに比べますと宇宙開発技術がかなりおくれているものでございますから、独自の宇宙基地計画を持っていなかったわけでございますけれども、いずれにしましても、宇宙基地計画というものが七〇年代の終わりぐらいから徐々に出てきまして、そこで一九八四年一月、レーガン大統領が年頭教書で宇宙基地というものを今後の人類二十一世紀にかけての宇宙開発一つの過程として、十年以内に――したがって、一九八四年でございますから一九九四年までにつくろう、つくるに当たっては、こういう巨大なプロジェクトでございますから、国際協力でやっていこうということで、日本、カナダ、ヨーロッパ諸国に参加を呼びかけたわけでございます。  その後、レーガン大統領の呼びかけを受けまして、NASAの長官も日本に二回ばかりおいでになりまして、日本との協議を踏まえ、日本も前向きに対応する、ヨーロッパも前向きに対応する、カナダも前向きに対応するということで、一九八五年からいわゆる予備設計という段階が始まったわけでございます。予備設計の結果を踏まえまして、これはどうも本設計にいけるのではないか、開発にいけるのではないか、こういうめどが立ってきますと同時に、やはり本設計、開発、それから運営ということになりますと、一つ協力の抑組みをつくる必要があるということで、宇宙基地協力協定交渉が一九八六年くらいから始まったわけでございます。  この交渉にはかなりな時間がかかりましたわけでございますけれども、幸いにして一九八八年、去年の九月二十九日でございますけれども、この日に十二カ国、つまりアメリカ、カナダや日本、それからヨーロッパ宇宙機関傘下の九カ国合わせて十二カ国の署名を得たわけでございまして、子の後日本を除きますヨーロッパ、カナダ、アメリカは暫定適用ということで、この協定を既に適用いたしまして、本格設計の段階に入っておる現状でございます。
  351. 林保夫

    ○林(保)委員 続いて宇宙基地の目的及び意義について概略御説明いただきます。
  352. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 宇宙基地の一つ目的といたしましては、あるいは意義といたしましては、やはり地上四百六十キロの上空でほとんど真空に近い、それからほとんど重力のない状況でございます。殊に重力のない状況をつくりますというのは、地上ではほとんど瞬間的には可能でございますけれども、長期間無重力状態をつくるということは、今のところ不可能でございまして、したがいまして、そういったような状況におきまして、医薬品とか新材料、新素材等々の開発実験ができる、こういうふうな新技術開発の機会が与えられるのではないか、これが一つでございます。  それからいま一つは、やはり上空でございまして、その四百六十キロの上空から天体観測なりあるいは地上観測、地球観測というものが恒常的に可能になり、かつそれも人間をして天体観測なり地球観測が可能になるという、こういうメリットがあろうかと思います。  それから三番目には、この宇宙基地を基点としましてというか、これを一つの足がかりとしまして、今まで飛んでおります衛星の回収とかあるいは衛星の修理、あるいは将来的には恐らく宇宙基地からさらにまた衛星を打ち上げる、こうなりますと、ほとんど重力のないところですから、わずかな推進力でもって、例えば静止衛星軌道まで人工衛星を上げることがより簡単になる。一種の中継基地みたいな機能も期待し得るのではないかと思います。  こういうふうな、今挙げましたような三つぐらいの目的なり意義があろうかと思っております。
  353. 林保夫

    ○林(保)委員 だれが想像しても大変なプロジェクトで、予算面の苦労というのは格別だろうと思いますが、全体として四兆円、日本としては三千億円、これの各国別の割り振りをひとつ具体的にお示しいただきたいと思います。
  354. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 先生今おっしゃいました四兆円というのは、実は宇宙基地の建設費用そのものであって、これは実は割り振りというよりは、今の私ども一つの枠組みでございますと、日本の実験棟は日本がつくる、それからヨーロッパはヨーロッパがつくる、それからアメリカは自分の実験棟、居住棟の二つといわゆる共益的な部分、つまり骨組み等々をつくるというので、これは別に現金拠出が行われるのではなくて、現物をつくって合わせる、こういうことでございます。  つけ加えさせていただきますと、できた後でございますけれども、宇宙基地の運営段階になりますと、恐らくこの共益費につきましては、共益費は当然要るわけでございまして、これはそれぞれの分担率に応じてそれぞれが持つ、こういうことになろうかと思います。
  355. 林保夫

    ○林(保)委員 説明を受けましたのでは、米国の場合が二兆九千億とか欧州が六千二百億円とか日本が三千億円とかいうことでございますが、今の御説明によりますと、詳細はまた別といたしまして、日本としては大体一九九九年までにどれぐらいのものが要る見込みになっているのでございましょうか。
  356. 吉村晴光

    ○吉村(晴)政府委員 日本がつくります実験棟につきましては三千億円程度と見積もられておるわけでございます。その後、その実験棟を打ち上げますための経費でございますが、シャトルに載せまして二回に分けて打ち上げるわけでございますが、シャトルの打ち上げ経費につきましては、刻刻変わるという要素もございまして、今の時点で確定的な数字を申し上げるのは非常に難しい状況でございますが、現時点におきましては、二回分で約三百億円程度というふうに理解をしておるわけでございます。  それで、そのほかに日本の実験棟を地上から支援するための地上の設備だとか日本で実験棟を運用するための経費だとか、それから先ほどもお話ございました全体の運用の共益費だとかいったものがあるわけでございますが、これは今具体的な中身をそれぞれ詰めておるという状況でございまして、今の時点ではっきり数字を申し上げられる状態にないわけでございます。私どもとしましては、私どもの宇宙開発予算の中で十分吸収できる程度のものであるというような判断で、この計画に参加をしたいというふうなお願いをしておるところでございます。
  357. 林保夫

    ○林(保)委員 私は予算面が大変大事だと思うのです。一銭一厘まで確定しろということではございませんけれども、腹づもりだけはしっかりやって、やる以上は有意義な打ち上げになり、また運用にならなければならぬ、こういうふうに考えますので、また次回にでもその点をもう少し詳しく聞かしていただきたい、留保しておきたいと思います。  といいますのも、新聞報道によりますと、アメリカの、これは日本人の特派員が書いているわけでございますが、NASAで宇宙基地計画の修正とかいうようなことも――アメリカ議会が予算をえらい渋っておる。この報道によりますと、二十億ドルの開発費を要求しているのだけれども、議会は四億ドル削減した場合に計画が受ける影響を試算するようNASAに求めているとか、あるいはまた、これはちょっと古い報道だと思いますが、安上がりな新計画も浮上しているとか、いろいろと出ております。アメリカ中心になってやるわけでございますが、その辺の情勢を事務当局はどのようにとらえておられるか、その御判断、あるいはデータがあれば、報道の事実などをお聞かせいただきたいと思います。
  358. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 アメリカのことでございますから、よその国のことでございますからあれなのでございますけれども、例えば昨年の例をとりますと、実は、昨年は宇宙基地の予算というものは、一九八九会計年度でございますけれども、全部で九億ドルであったわけでございます。当初、大統領予算教書では十億ドルを要求いたしまして、結果的には九億ドルがついたわけでございますけれども、その中間過程におきましては、非常に下げられたりしていろいろないきさつがあったわけでございますけれども、結果的には九億ドルがついた、こういう状況でございます。今先生指摘のとおり、確かにアメリカ大統領府は二十億ドルを要求しておる。それに対しまして厳しい声も出ておるということでございますけれども、私ども何とかアメリカ政府に頑張っていただきたいと思っております。  他方、これはアメリカが既に暫定適用しておりますこの協定の第十五条にも、各国はそれぞれの予算手続に従って、資金上の義務を履行するよう必要な資金についてそれぞれの承認を得るよう最善の努力を払うことを約束するということでありまして、私どもとしましては、ぜひともそういうふうな協定の精神を体して、アメリカの行政府の措置を期待したい、こういうふうに思っております。
  359. 林保夫

    ○林(保)委員 この予算面の問題、これを使用する以上は、参加する以上は、日本日本なりにしっかりした対応を予算面でもしなければならぬ、こういうことだと思うのです。  もう一つ大きな問題として、これはまた新聞報道で恐縮でございますけれども、今日に至るまでに、アメリカの、特に国防省あたりからの意向が強かったというふうに聞いておりますけれども、軍事目的に活用するというような意向が出て、そうしてまた本協定では、それぞれに実験室で、日本日本で、あるいはアメリカアメリカで、それなりの目的を果たすような形になっておるという報道が出ておりますので、その辺を私どもにもわかりやすいように、どういう論争があり、どういう決着になったのか、この協定が平和、民生目的にいける、日本はそう思っているわけですが、経緯をお聞かせいただきたいと思います。
  360. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 宇宙基地につきましては、そもそも最初からこれは民生用である、それから平和目的のためだ、もう一つは国際法に従ってやる、こういう大きな傘はあったわけでございますけれども、まず先生指摘アメリカ国防省の関係につきましては、当初からアメリカ国防省は、この宇宙基地につきまして、それではこういうふうに設計してくれないかという注文を出してきたことは全然なかったわけでございます。したがいまして、この宇宙基地は、アメリカに関する限り、アメリカの費用は全部NASAから金が支出される、こういうことになっております。しかしながら、アメリカの国防省の立場といたしましては、今特にこの宇宙基地について何に利用させてくれという要求はないけれども、ただユーザーの一人として、金を払って、その宇宙基地を使う計画はないけれども、将来にわたってこれは絶対使ってはいかぬのだと、その道だけは閉ざさないでくれ、こういうことでございます。したがいまして、いわゆる理倫的な可能性といたしましては、そういうユーザーの一つとしての国防省の利用というのは否定はできないかと思いますけれども、しかしながら、計画もない、特に今のところ具体的な計画もない云々ということで、私はいわゆる現実的な可能性としては非常にリモートなものではなかろうか、こういうふうに思っております。  しかしながら、そういうふうな立場も踏まえまして、それぞれの平和利用目的という立場も踏まえまして、第九条の八項の(b)、つまり各平和目的をどういうふうに解釈していくかということは、各国のいわゆる実験棟なりそれぞれのものについては、それぞれの立場でそれを適用していく、こういうことになったわけでございます。したがいまして、繰り返しになりますけれども日本の実験棟につきましては、これはだれが使おうと、日本が使おうとほかのアメリカ、カナダに貸す部分であろうと日本の平和利用解釈を適用していく、こういう立場を貫いたわけでございます。
  361. 林保夫

    ○林(保)委員 今のお話のように、平和といえば、やはり安全保障を含めて平和を維持するのですから、武器そのほかに関するものでなければいいのじゃないかという理屈だってありますね、高い金を出して打ち上げるわけですから。先ほど来も御提案がありましたように、それをひとつ国際協力の中で宇宙が一つなんだという形でうまく持っていくということが非常に大事だろう、このように思います。  したがいまして、最後に大臣に、そういう大きな理念とそれに伴う予算措置そのほかについての自信なりお心づもりをひとつ承りまして、残余の質問は次回の委員会に移したいと思います。
  362. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 この基地はあくまでも平和的になされるべきであり、またそのことが民生に役立つ。そして今審議官言いましたように、国際法に基づいてやりましょうということでございますから、我が国といたしましても、未知の世界への挑戦と申しましょうか、既に外国がそれぞれ国民を宇宙に上げておりますが、我が国ではまだ上げておらない。そういう意味でも、有人基地というものは我が国の将来にとりましても大切なものである。そして人類の英知というものはどこまで発達するかわかりません。そうした意味でも、宇宙の特性を生かしました新技術等々が発明、発見されることは非常に人類の福祉に貢献するものである。そういう気持ちを持って、なおかつこれは国際的にやらねばならぬので、いやしくも宇宙戦争を招くようなものではない、また宇宙にそうした国境はない、お互いの人類共有のものとしてこれを活用すべきである、こういう理念で私たちはこの計画に参加することを決めたような次第でございます。したがいまして、今委員が申されましたような予算におきましても、アメリカが主であるけれども日本の今日の経済的立場から申し上げましても、やはりおくれをとらない平素からの備えが必要である、こういう決意で臨みたい、かように思っております。
  363. 林保夫

    ○林(保)委員 ありがとうございました。終わります。
  364. 浜野剛

    浜野委員長 松本善明君。
  365. 松本善明

    ○松本(善)委員 宇宙基地協定の質問に入ります前に、ちょっと委員長に要望があります。  それは先ほどタイコンデロガの問題については各党質問しましたが、外務省の北米局長が航海日誌の写しを持っているという話もありました。それにとどまらず、アメリカの情報公開法によって日本政府がこれを入手することができるはずでありますね。委員会として、この写しと航海日誌を情報公開法によって手に入れて、それはアメリカを出発してからフィリピン、日本、ベトナム、その帰路に事故があったわけですが、その後横須賀へ寄港した、その全部についての航海日誌を入手して提出するように、これを理事会で協議して委員会として決めていただきたいということをお願いいたします。
  366. 浜野剛

    浜野委員長 なお確認して、理事会で話し合ってから御返事いたします。
  367. 松本善明

    ○松本(善)委員 協定でありますが、第一条の平和的目的というのが各委員から質問されました。先ほど書簡の問題にも触れられましたけれども、リチャード・スミス国務省首席次官補代理から楠本祐一外務省科学課長あての一九八八年九月十九日付の書簡によれば、「常時有人民生用宇宙基地のすべての利用を国際法に従って平和的目的のために行うことを規定する同協定に従い、合衆国が国家安全保障上の目的のため、自国の要素を利用し及び宇宙基地の基盤施設から得られる資源であって自国に配分されたものを利用する権利を有することを確認する。これらの要素及び資源のそのような利用に関し、これを同協定の下で行うことができるかできないかについての決定は、合衆国が行う。」こういう書簡が来ている。内容はこのとおりですか。
  368. 丹波實

    丹波政府委員 今松本先生が読み上げられた書簡、一九八八年九月十九日付、アメリカのリチャード・スミス国務省首席次官補代理から楠本科学課長にあてられたものであります。
  369. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、アメリカは安全保障上の目的のためにこれを使う、したがって、この平和的目的というのは、アメリカとしては軍事利用を含む、こういうことですね。そして、その使用についてはほかの国には物を言わせないでアメリカ合衆国が決める、そういう意味ですね。
  370. 丹波實

    丹波政府委員 協定の第一条一項は、平和的目的のために宇宙基地の開発利用を行うことなどを規定しておるわけでございますが、協定上平和的目的というものの定義に関する規定がないことは御承知のとおりでございまして、その解釈と運用については各参加主体の判断の余地が残されておる。ただ、協定第一条一項は、同時に国際法に従って利用等を行うことを規定しております。したがいまして、例えば宇宙条約第四条第一文で禁止されているような利用を行うこと、すなわち核兵器及び他の種類の大量破壊兵器を宇宙基地に乗せて宇宙空間に配置するようなことは、いずれにせよ認められていないということで、一定の国際法上の枠がかかっていることは御承知のとおりでございます。  また、この問題に関連いたしまして、一九八四年に当時のNASAの長官でありますベッグス長官から日本科学技術庁長官に書簡が参っておりまして、その中では、この宇宙基地を検討するに当たって国防省が将来必要とするかどうかということをいろいろ国防省にも聞いてみたけれども、国防省としては、有人宇宙基地に対するいかなる要求もないという結論を出した、したがって、NASAは大統領に対する提案を民生用及び商業上の要求に基づいて作成したというふうになっておりまして、国防省が宇宙基地を使っていくというような具体的な計画はないということになっているわけでございます。
  371. 松本善明

    ○松本(善)委員 具体的計画の有無にかかわらず、アメリカはこの解釈をどうしているかということを聞いているのです。今おっしゃった宇宙条約については、我が党川上委員が当特質問をいたしまして、政府説明は、核兵器を持っておらない普通の衛星は宇宙空間では禁止されていない、だから核兵器を持った軍事利用はしない、そういうことは宇宙条約でやっていますけれども、普通の軍事利用ということについては禁止していないというのが宇宙条約なんですね。そういう点でいえば、アメリカがこの書簡で言っているのは、宏全保障上の目的のためにこれを使う、それは軍事的な目的も含む、非軍事ではない。日本では非軍事だというふうに思いますが、その点でアメリカ日本とは解釈が違うのだ。アメリカは軍事も令んで平和的目的ということを解釈している。そういう意味でしょう。その点をごじゃごじゃ言わないで、国会ですからごまかさないで、イエスかノーではっきり答えてください。
  372. 丹波實

    丹波政府委員 宇宙以外でもそうなんですが、宇宙に関します平和的な目的とは何かということを、特に先生も御言及になりました宇宙条約を例にとってみますと、宇宙条約三条は、国際連合憲章に当然従うということが書いてありますが、四条にはしてはならないことが誓いてあります。それは先ほど私が読み上げたとおりでございまして、そういうものに当たらない、例えばICBMの実験、発射、あるいは核兵器の宇宙の通過、あるいは軍事衛星の利用といったものは、現在の国際法の実定法では認められておるわけでございます。したがいまして、アメリカは、平和的な目的という場合には、国際法に従って非侵略的な軍事的なことを行うことも認められておる、そういう立場に立っておるわけでございます。
  373. 松本善明

    ○松本(善)委員 今認められたように、非侵略的な軍事利用については平和利用というふうにアメリカは考えている、こういうことですね。そうしますと、NASAのフレッチャー長官は宇宙基地は軍も利用できるというふうに述べたということが報道もされておりますが、まさにそういうことだろうと思うのです。アメリカの国防総省の議会に出した報告書では、「戦略防衛構想(SDI)研究の実験、開発に基地利用を検討するだろう」ということが、全文を入手した朝日が六十三年三月四日の夕刊で報道をしております。アメリカがそういうふうに解釈をしているとすれば、SDIについて利用することも否定されていない、そういう具体的計画が現在あるかどうかは別問題でありますけれども、それは否定されていないということになるんではないかと思いますが、どうですか。
  374. 丹波實

    丹波政府委員 今言及された報告書は、八八年三月に国防省が議会へ出した報告書を言っておられると思いますが、その中には確かに「我々は宇宙基地を利用して兵器体系の実験を行うことは考えていない。ただし、戦略防衛研究を支援するために承認される実験・開発活動のような一定の活動のために宇宙基地を利用することは検討するかもしれない。」と述べられておりますけれども、再三申し上げておりますとおり、現在国防省が宇宙基地を使うことは具体的には考えていないというのが現状でございます。
  375. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、やはりレーザー兵器とか粒子ビーム兵器の実験用施設にならないという保証はないわけであります。  それから、このことについて楠本外務省科学課長がリチャード・スミス国務省首席次官補代理に出した一九八八年九月二十日付書簡によれば、「一九八八年九月十九日付けの貴官の書簡に関し、本書簡において、同日付けの貴官の書簡が合衆国の要素の企図されている利用及び宇宙基地の基盤施設から得られる資源であって合衆国に配分されたものの企図されている利用政府協定の下で行うことができるかできないかを決定する同協定の下での合衆国の権利について正しく述べていることを確認する。」ということになっていますが、内容はこのとおりですか。
  376. 丹波實

    丹波政府委員 ただいま先生が読み上げられた書簡は、外務省の楠本科学課長発米国リチャード・スミス国務省首席次官補代理あて一九八八年九月二十日付の書簡でございます。
  377. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、今アメリカ側が軍事利用する、非侵略的ということであれば軍事利用も含むというふうに考えている解釈を、日本側はアメリカがそういうふうに解釈して利用することを認める、こういう意味ですね。
  378. 丹波實

    丹波政府委員 私の解釈では、この書簡の中で「合衆国の権利について正しく述べていることを確認する。」というところを先生は言っておられると思いますが、この意味は、アメリカが従来から交渉の途次説明してきたアメリカとして考えるこの協定上の建前を従来どおり述べていますねということを確認したものと考えております。
  379. 松本善明

    ○松本(善)委員 しかし、結局アメリカ側のを認めることになるわけであります。  外務大臣アメリカがこういう形で利用する権利があるということになると、宇宙へ軍拡、軍備競争が拡大する危険が極めて大きいと私は思います。第三十八回国連総会で採択されました軍縮に関する決議は、賛成百四十七カ国、反対一カ国、これがアメリカであります。そして、これは「宇宙空間は、もつ。はら平和的目的のために利用され、軍備競争の舞台になるようなことがないことを再確認する。」「軍縮会議が、宇宙空間における軍備競争の防止の問題を優先事項として検討するよう要請する。」等々のことを決めております。アメリカがこれを軍事利用することを日本が認める結果になるこの協定は、宇宙に軍拡、軍備競争が進むということにならざるを得ない、そういう重大なものだと私は思います。これについての外務大臣の見解を聞くと同時に、日本政府はこの国連の軍縮に関する決議については賛成しておるのですから、その立場からするならば、このような協定を結ぶことはできないはずではないかと思いますが、いかがお考えですか。
  380. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 我々といたしましては、今回の協定はあくまでも平和ということを一つの大きな課題として、そして、この基地の人類に対する貢献に参加したい、これがあくまでも日本の主張でございますから、しかも、そのほか日本を含めまして十二カ国いるわけで、我々といたしましても、その趣旨は貫いていきたい、かように考えております。(松本(善)委員「軍縮決議との関係、軍備競争の防止決議です」と呼ぶ)
  381. 遠藤實

    遠藤(實)政府委員 委員がただいま引用されました国連決議は、宇宙が専ら平和的利用、平和的目的のために利用されることを確保するためには、効果的な国際管理下の全面完全軍縮が達成されることが必要であるということを再確認いたしますとともに、このような全面完全軍縮という究極的な目的に向けて、地上での軍縮努力のみならず、宇宙においても、このような努力は及ばなければならないという認識を一般的に述べたものと理解しております。  他方、本件の宇宙基地につきましては、先ほどから答弁がございますように、国際法に従って平和的目的のために運用利用され、ライフサイエンス等の科学実験、天体観測等を通じまして宇宙空間の科学的、技術的及び商業的利用を促進しようとするものでございまして、この点は協定上も明らかである、したがって国連決議の趣旨に違反すると言うことはできないと考えております。
  382. 松本善明

    ○松本(善)委員 幾ら言葉を並べても、それではとてもだめですよ。それは外務大臣も言われたし、今も言われたけれどもアメリカはこの宇宙空間における軍備競争の防止の決議に反対をしているのですよ。軍事利用をするという権利を留保しているわけですよ。それをいかに言葉の上で平和のためだというふうにごまかしても、それはだめだと思います。  科学技術庁、来ていますね。伺いたいのだが、我が国での国会決議や宇宙事業団法でも、やはり平和目的ということが書かれています。これは木内、安田各科学技術庁長官がそれぞれの時期に答えておりますが、非軍事という意味ですね。
  383. 吉村晴光

    ○吉村(晴)政府委員 今まで国会におきまして、委員指摘のような議論があったということは十分承知をいたしております。
  384. 松本善明

    ○松本(善)委員 非軍事であるというふうに答身ていることですね、そういうことですね。
  385. 吉村晴光

    ○吉村(晴)政府委員 非軍事と理解する、そういった議論があるということを十分承知をいたしております。
  386. 松本善明

    ○松本(善)委員 そういうふうに各科学技術庁長官は答えているわけです。  そうすると、外務省が先ほど来各国で平和的目的の解釈が違うのだというふうに言っているのは、まさにアメリカ側は軍事利用を含む、安全保障上の目的のために使う、それから日本は非軍事ということで解釈をするという言い方によってアメリカが宇宙に軍拡を進めるという権利を認めることになる、それがこの協定にとっては一番重大な問題である。それらの点について各委員がいろいろ心配をして聞かれたわけです。そして外務省はそれでないかのような答弁をしていますが、私はこれは全く違うと思います。本当に国民の前に真実を明らかにして、そして一体これが本、に平和のために役立つのかどうかということを論議をしなければならないと思います。  時間が終了いたしましたけれども、引き続いてこの協定については徹底的に疑問の余地がなく論議がなされなければならないというふうに思います。外務大臣から何か答弁がございましたら、お聞きしたいと思います。
  387. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 当委員会におきまして、まだ審議の時間もございますから、そこでいろいろと討論を尽くしていただきたい、かように思います。
  388. 松本善明

    ○松本(善)委員 終わります。
  389. 浜野剛

    浜野委員長 次回は、来る二十六日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十二分散会      ――――◇―――――